偶像たちの奇妙な冒険 (陸海空)
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第一部 綺羅ツバサは立ち上がる 第一部 綺羅ツバサは立ち上がる

 その日の朝、私は目覚めたの。寝る前の暖かいミルクと20分ほどのストレッチで得ることのできる、8時間の快眠からね。身長や胸は特に変化しないけど、お父さん直伝のこの睡眠法、まるで赤ちゃんのように疲労やストレスを残さず朝を迎えることができているわ。

 

 私は綺羅ツバサ。元スクールアイドルで現在はⅯ県S市にある大学に通っているわ。実家はⅯ県S市杜王町にあってお父さんと二人で暮らしているの。お母さんは死んでしまったわ。友人は主に二人、あんじゅと英玲奈ね。ともにスクールアイドルとして活動したこの二人も同じ大学に進学したわ。え?高校卒業後すぐに芸能界入りしたんじゃないかって?実はその予定だったのだけどアキバドームでの次期ラブライブ開催決定と同時に発表された大学生によるスクールアイドルの祭典『ラブライブカレッジ』に参加するため大学に進学したのよ。お父さんの教えである勝ち負けにこだわらず頭を抱えるようなトラブルのない『心の平穏』を保てている人生かはわからないけど、これはこれでいいものなのよ。好きなものはメイド服と赤色ね。

 

さて、私には人に知られたくない秘密が三つあるの。

 

 一つ目は、スクールアイドルの公式サイトのバストサイズを2cmサバ読みしていること。

 

 二つ目は、穂乃果さんの現在地。

 

 そして三つ目が、自分のお母さんの死ぬ瞬間を見たということ。細かいことは記憶に『鍵』がかかってしまったかのように思い出せないが、何かドス黒い意思のようなものが原因だということは理解しているつもりだ。もし『鍵』のかかった記憶を持つならば『パンドラの箱』のように決して開けてはいけない。とお父さんは言っていたしあまり深く考えないでおこうかしら。だからお父さんにもこのことを伝えていないの。

 

 さてと、朝食を食べましょうか。私はパン二枚を取り出し、トマトソースを塗ると私の方には赤いピーマンと赤やオレンジのトマト、お父さんの方には緑のピーマンに熟していない緑色のトマト。これらにチーズをのせて電子レンジで3分半。お父さんの抹茶ラテ、私のイチゴミルクを入れたら朝食の完成というわけよ。

 

 朝ごはんには結構こだわってるの。私のご飯は赤系統の色の食材をつかう、お父さんのご飯は緑で統一する。これは私の希望でありお父さんの希望でもあるわ。

 

 私が赤に執着する理由は自分でもわからない。きっと私の『サガ』みたいなものね。ただ、困ったことにこの『サガ』が少々行き過ぎることがあるのよ。まあ、例えば赤の他人みたいな赤が付いていればなんでもいいというわけじゃないけど、矢澤さんの赤い目をくりぬいて食べてみたいと思ったり、西木野さんの髪を舐めまわしたいと感じてしまうのよ。この『サガ』を抑えるために朝ごはんを赤系で統一しているわ。

 

 おいしくいただいた後、お父さんを起こそうと朝食を持って階段を上る。たしか、昨日帰ってきたのが11時の五分前、ホットミルクを味わうのに5分、ストレッチに20分歯磨き3分。合計二十八分のルーティンをお父さんはかならずこなす。そしてほぼジャスト8時間眠る。今なら丁度起きるころだろうとノックする。

 

 コン、コン。と鈍い音がドアからする。

 

 「おはよう。ツバサ。」

 

 「おはよう。お父さん、朝食よ。」

 

 トレイに乗せた朝食をトレイごとお父さんに渡す。

 

 お父さんの名前は『綺羅吉影』。33歳バツイチ、カメユーチェーン店というところに勤めていてそこそこの実績を持っているらしいが出世意欲があまりないらしい。たぶん植物のように平穏に生きたいという願いが出世意欲を出さない原因になっていると思うわ。

 

 ふと一つの疑問がわいた。お父さんはめったに残業などせずお酒はたしなむ程度、寝る前のルーティンをこなし必ず11時には寝るはずなのに最近は違う。11時前には帰ってくるがルーティンをこなすと寝るのは11時過ぎになるの。疑問はすぐに解消したい、寝るときに気になってあれこれ考えだしたら眠れないもの。余計な疑問を持たずベットに入る、快眠のコツの一つね。

 

 「ねえ、お父さん。最近帰りがとても遅いけど何かあったのかしら?」

 

 「いや、特にこれといった理由はない。どうかしたのか?」

 

 「クマが酷いから心配なのよ。最近快眠できていないんじゃないかって。」

 

 「いや、大丈夫だ。寝る前のホットココアに12分ほどの両手の運動。7時間ほどの睡眠でより良い朝を迎えることができる。」

 

 いろいろと違うのだけど。まさか、誰かと入れ替わってる!?なーんて。

 

 私はお父さんの口にキスをする。 ズキュウウウン

 

 「行ってきますのキスよ。いつもしているでしょ?」

 

 「…………ああ、そうだったな。行ってらっしゃい。」

 

 おててをフリフリ行ってきます。

 

 私の特技の一つにキスをした相手が本物か偽物か見分けるといったものがあるわ。人生で初めて役に立ったけど。お父さんは本物ね、たぶん。となるとやはり誰かと入れ替わっているか、仕事か何かのストレスでおかしくなってしまったか。まあ、あとでカメユーチェーン店に行って聞いてみましょ。

 

 さて、切り替え切り替え。今日も大学生活楽しんでいきましょ。

 

 

 

 

 「我は超大魔姫・あこなるぞ。我より発せられる闇の鼓動で、お主など、こうなんか…………」

 

 あれして!

 

 ぶつける!

 

 バーーーーーーーーーン!!!!!!!!

 

 大学も終わって、今はスクールアイドルの活動の一環として声優業をやっているわ。大学のスクールアイドル活動は声優業やアニメのオープニングを歌うなど商業的な活動が認められているの。英玲奈はゲームの主題歌をやるみたい。あんじゅは何か大手おもちゃ会社の販促アニメに出るのだけどなんてタイトルだったかしら…………カブト何とかみたいな…………

 

 「ええいっ!闇の力でなんかこう、燃やしちゃうぞ!」

 

 「はいおつかれー」

 

 収録が終わり次のフランスのハーフだという西條さんとバトンタッチ、エレベーターで1階に降りカメユーに向かう。最近のお父さんのことを同僚さんにでも聞いてみればわかると思うわ。

 

 物の数十分でカメユーの支店に着いた。丁度支店の前で同僚さんがお父さんについて語っているわね。

 

 「やめとけ!やめとけ!あいつは付き合いが悪いんだ。どこかに行こうぜと言ってもここ1週間ほどは断られるばかり…………綺羅吉影。33歳バツイチ。仕事は真面目でそつなくこなすが平穏に生きるため出世欲がなく今一つ情熱を感じないこともある男…………エリートっぽい風貌から女子社員にはモテるが…………死んだ奥さんのことが忘れられず皆玉砕している…………悪い奴じゃないんだが几帳面でうるさいところもある奴さ。」

 

 同僚さんの話を聞いて新入社員さんたちは三々五々と散っていったと。

 

 「こんにちは。同僚さん。」

 

 「おや………君は…………綺羅ツバサ、大学二年。綺羅吉影の娘かつA-RISEの一員で現在はⅯ県S市にある大学に通っていてそこでスクールアイドルをやっている…………知られたくない秘密を三つ隠し持っていて…赤色を見ると興奮するという『サガ』を抱えている…父親直伝の睡眠法のおかげで健康診断では異常なしといわれた……そんな君が何のようだい?」

 

 「最近、お父さんの様子がおかしいの。何かわからないかしら?」

 

 「詳しいことまでは『見えないッ』が漠然としたことならわかる…………。それでも聞くかい?」

 

 「ええ、お願い。」

 

 「結論から言うと、おそらく綺羅吉影は…あいつは何者かに思考を乗っ取られている。」

 

 「どういうことなの?」

 

 「君には、これが見えるかい。」

 

 そういった同僚さんの背中には彼の背丈の2倍はある、ところどころ何かが浮き出ている緑色で5つ目のヴィジョンのようなものが存在していたわ。

 

 「見えるわ。」

 

 「ずいぶんと驚かないんだな。」

 

 「いろいろとなれているのよ。」

 

 「スタンド使いなのかい?」

 

 「いいえ、スタンドとは?」

 

 「スタンド…生命エネルギーが作り出すパワーある像で…………スタンドを操れるものがスタンド使いと呼ばれる…原則一人一体のスタンドを保有する…スタンドにはスタンドでしか触れることができず…見ることができるのも心で見る才能を持った者だけ……本体の意志によって操作することができ、スタンドが傷つけば本体…スタンド使いにも傷つく……成長性と特殊能力を持った、面白い奴らさ……そして俺のスタンドの名は『スキャンダル』俺の理解可能な事象を相手から読み取ることができる……最も……怪奇現象や宇宙の謎、誰かの未来など俺の理解を超えたものはぼやけて見える……だがそれ以外、例えば君の秘密や今あいつがどこにいて何をしているか分かる……」

 

 「なら、お父さんは今どこにいるのかしら?」

 

 「君の父親、綺羅吉影は今自宅だ……」

 

 「そう、ありがとう。」

 

 と言って私が帰ろうとすると、

 

 「家に帰るのはやめとけ、やめとけ。あいつは何かにとりつかれている……それがスタンドのせいなのか…それとも別な何かか…それは私にもわからない…ぼやけて見えるんだ。それに君の出ているバンドアニメ……私は毎週楽しみにいている……演者死亡で放送延期になったらたまらない…」

 

 「大丈夫よ。お父さんが私に何かをするとは思わない。朝、キスもしたのよ。」

 

 きっと何かにとりつかれていても、お父さんが私に危害を加えるはずがない。大丈夫。死んだお母さんに瓜二つの私を手にかけることはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 「おかえり。」

 

 「ツバサァァァァ!!こっちを見るなァァ!!」

 

 普段からは、考えられないくらい恐怖した声。植物じゃない。野生の雄たけびだ。

 

 「『キラ・クイーン』第8の矢発動!コッチヲミロ~」

 

 お父さんの絶叫を聞いた時はもう遅かった。

 

 お父さんの指が髑髏をあしらった矢をかたどり、その骸骨の矢が喋りながら私めがけて飛んでくる。

 

 髑髏の赤く光った目と私の目があったとき、それは爆発した。私の目の前に光が走り…………

 

 痛みさえ感じる間もないまま…………意識が途切れた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 LINE!LINE!

 

 なんだか騒がしいわ…………

 

 LINE!LINE!

 

 もう、うるさいわね…………

 

 ミシィ、と音を立てて私のスマホにヒビか入る。

 

 ハッと気が付く。生きているの私…………

 

 先ほどの出来事がフラッシュバック。閃光、爆発、髑髏、赤く光る眼。

 

 怖い。怖い怖い怖い怖い怖い。私の拳に自然と力が入り、スマホは砕け散り私の手に傷を作った。

 

 傷から私の好きな、大好きな赤が手から零れ落ちていく。

 

 もったいない。舐めなきゃ。

 

 ペロペロペロペロ。自分の手を犬のように舐めまわす。美味しい。これこそ生きる喜び。

 

 5分かけてしっかりと舐めまわす。私はそこで気が付いた。

 

 あるはずの手の傷がない。

 

 「なんで……なんで…………」

 

 傷がなくなってるのよ!舐めたい。傷口から舌を突っ込んで、血管を感じて……生きている暖かさを感じて…………

 

 仕方がないから床にこぼれた血でも舐めまわそうと思ったその時、地に反射して私の顔と見知らぬ赤い顔が映っていたわ。

 

 見知らぬ赤い顔は身長157cm、女性のような体つきで頭部にオレンジ色の『ほのまげ』のようなものが存在している。華奢に見える両腕には双剣を携えていて、全身の皮膚は赤く目が青い。情報が頭にバァァァァと入ってくる。これは私の『スタンド』、脳幹を破壊されない限り自己再生が可能な程度の能力。自己再生中は一切行動できない、また外傷を受けない。このスタンドに『弱点』はない。

 

 「名前、付けなくっちゃね。」

 

 名前はついていることに意味があるのよ。でもどうしようかしら。

 

 「…………このスタンドは私に『立ち上がる勇気』をくれる…ariseは立ち上がるという意味がある……私たちはいつでも立ち上がってきた…」

 

 「アライズ。それがあなたの名よ。」

 

 私は自分のスタンドに語り掛ける。スタンドに意思や感情のようなものがあるかはわからない、けどアライズが笑っているように見えたの。

 

 

 ところで何で私は裸なのかしらね…あたりを見渡すと燃えカスとなった服の破片が残っていたわ。

 

 服、着なきゃね。

 

 「アライズ。」

 

 どうせならスタンドを使って、服を着ましょ。なんて思ってアライズを呼びだす。そのまま、タンスまで行かせたのだけれどもそれ以上進めないのよ。射程距離は50Mといったところかしら。仕方がないので自分でタンスから服を取りアライズに着せてもらおうとしたら……

 

 「あっちゃー、あまり精密作業には向いてないのね。」

 

 私のそれなりに気に入っていた服はびりびりになってしまったの。ありふれた悲しみだわ。

 

 けどパワーは相当あるみたいで壁を殴るとあの金髪が石仮面を被せた吸血鬼が殴ったときみたいにへこんだ。

 

 ピーンポーンとチャイムが鳴る。

 

 「はーい。」

 

 「おい、ツバサA-RISE定例会議のこと忘れてるんじゃないだろうな…………何で全裸なんだ……」

 

 「エッチ、痴女、変態!」

 

 「え~と、話せば長くなるんだけど…………」

 

 「その前に服を着ろ!」

 

 仕方がない。でも何で人は生まれたままの姿でいてはいけないのかしら?

 

 適当に私服をきてA-RISEの仲間、英玲奈とあんじゅのもとへ向かう。

 

「着替えたわ。」

 

 「とりあえず聞きたいことはたくさんあるが一つだけ何で家がこんなに穴だらけなんだ?」

 

 「あ、」

 

爆発や壁を殴ったときのダメージで家がボロボロね。どうしようかしら。

 

 「まあ、いろいろあって…………それより英玲奈かあんじゅの家に泊めてほしいんだけど。」

 

 「あんじゅならもう帰ったぞ。」

 

 「な、なんで?」

 

 「明日からフランスにいくらしい、あとお前が裸でうろついてたからってのもある。あんじゅそういうのに耐性ないからな。」

 

 急にフランスなんてあんじゅも大変ね。

 

 「な・ら英玲奈!泊めて?」

 

 「その前に、なんでこの惨状なのか説明してもらおうか。」

 

 「それは…………」

 

 まあ、ごまかすのも面倒だし全部説明したのだけど信じてもらえるかしら…………

 

 「スタンド…なあ、ツバサこんな言葉を知っているか。『スタンド使いは惹かれあう』

 

 そう言い放った英玲奈の後ろには皮膚を剥がれ所々に血管が浮き出ている人間の様なスタンドが現れたの。

 

 「『マシーン・メサイア』私の全身を機械化する程度の能力だ。よく私の声を『ポケモン図鑑』だの『ロボット』みたいだの言うやつがいるが『ジャックポット』といったところだ。つまり!大当たりだッ」

 

 ビシィっと効果音がしそうな勢いで英玲奈はものすごく複雑なポーズをする。どんなポーズかと聞かれても答えられるものではない。

 

 「で、泊めてもらえるのかしら?」

 

 「Yes!Yes!Yes!勿論いいぞッ。………ところで何かもうちょっということはないのか?自分の友人がロボットだった件とか。」

 

 「いや、私もこんなだし。」

 

 私はアライズを英玲奈に見せる。すると、英玲奈はほっとしたような顔をしてから泣き出したの。

 

 「ちょ、どうして泣くのよ。」

 

 英玲奈の泣き顔なんてラブライブで敗れた時に見たきりでもう何年も見ていないわ。

 

 「うれしいんだ。ツバサが受け入れてくれたことが……拒絶されるのが怖くて誰にも話せなかった。あの事故で死ねたらよかったなんて考えてた時もあった…………受け入れてくれて『ありがとう』…… それしかいう言葉が見つからない…………」

 

 そういって赤子のように英玲奈は泣き続けた。

 

 

 

 

 

 次の日…………

 

 寝る前のストレッチとミルクのおかげで今日も快眠できたわね。さてと朝食を、と思ったらおいしそうなにおいがする。そういえばここは英玲奈の家だったわね。

 

 「おはよう。ツバサ。」

 

 「おはよーって、英玲奈その恰好!」

 

 英玲奈は私の好みのメイド服を着ていたのだ。

 

 「ど、どうだ?似合ってるか?ツバサが好きだといっていたから着てみたのだが…………」

 

顔を赤らめながら話す英玲奈に対して言う言葉はただ一つ。

 

 「最高よ!」

 

 嗚呼可愛い。私が通い詰めたミナリンスキーに匹敵するレベルよこれは!でも何でいきなり着てくれたのかしら?前頼んだ時は断られたのに。

 

 「そ、それは、、ツバサのことがす、好きだ…いやなんでもないのよなんでも。気まぐれだ。」

 

 「気まぐれでも嬉しいわ!」

 

 なんか好きだと聞こえた気もするが気のせいだということにしておくわ。私にあいにくそっちのケはないはずなのよ。でも嬉しいわね。

 

 「ツバサ。今日は携帯ショップに行くんだったよな?」

 

 「ええ、壊してしまったし。」

 

 「了解。大学が終わる4時に待ち合わせして一緒に行こうか?」

 

 「いいの?」

 

 「ああ、ツバサのためになるならな。」

 

 「ありがと。よろしくね。」

 

 そういえばお父さんは今どこにいるのかしらね?

 

 

 

 

 

 大学も終わり、英玲奈と携帯ショップにむかうわ。

 

 「ねえ、英玲奈。」

 

 「何だ?」

 

 「手でもつながないかしら?そっちの方がデートみたいで楽しいと思うのだけど。」

 

 「で、デート…………あああ勿論いいぞ!!!」

 

 やっぱりこれくらいはサービスしなくちゃね。家に泊めてくれた上、わざわざ買い物に付き合ってくれてるんだもの。

 

 そう平和に英玲奈と歩いていた時だった。

 

 「うん?血かしら?」

 

 おいしそうな血が当たり一面にまき散らされていたの。それを辿っていくと、

 

 「同僚さん!!!」

 

 同僚さんが口から腹から全身から血を吹いていたの。

 

 「…………奴だ…………成長した『キラ』に殺された…………奴に内部から殺された…………二度目の爆弾は止められない…………

次は死ぬ…………人として…………奴のことは忘れて…………どこか遠くへ…………」

 

 それだけ言い残すと同僚さんは動かなくなった。血は流れ続けた。

 

 「ツバサ、今日は帰らないか?嫌な予感がするんだ…………」

 

 「残念だけど帰るのは無理そうね。だってほら、そこにお父さんいるもの。」

 

 「やあ、ツバサ。それに英玲奈君だったかな?」

 

 煙草を咥え、無精ひげを生やし、目は充血した今までのお父さんとはかけ離れた別人と化した男が立っていたわ。

 

 どうしましょうね。こっちから仕掛けるべきか、相手が仕掛けるのを待つべきか。

 

 

「まあ、少し『お話』しようじゃないか。なに、私の性癖についての話さ…………」

 

 

 『キラ・クイーン』だったかしら?お父さんにとりついているの。こいつ花の女子大生によく自分の性癖について話そうと思えるわね…………正直気持ち悪い。

 

 「フウウウウウウウウウウウ~~~~~~~~~~~~~~~私はね…………昔『レオナルド・ダ・ビンチ』の『モナリザ』ってありますよねぇ~あの絵、画集で見たときですねぇ~あの組んでいる『手』膝のところで組んでいる…………あれ初めて見たとき…………なんていうか…………ネチネチ舐めまわしたいというか…………『興奮』しちゃいましてねぇ~~~~~~~~それ以来、美しい手を見ると…………ペロ……舐めまわすようになったんですねぇ…………」

 

 「気持ち悪い!馬鹿!やめろ!!!私の手をなめるなァァァァァァァァッ」

 

 「英玲奈!」

 

 お父さん、いや『キラ・クイーン』は英玲奈の手をペロペロ舐めまわす。その手の舐めまわし方は赤ん坊が哺乳瓶に吸いつくよりも貪欲に、ロケットの部品を作る中小企業の作業より繊細に一本一本丁寧に素早く舐めまわしていたわ。

 

 「もうやめてくれ!『ロケット・パンチ』ッ最高時速マッハ60の拳を食らい消し飛べ!!!」

 

 英玲奈の両腕が火を噴き、回転しながら『キラ・クイーン』に激突したわ。刹那、黒煙。

 

 そして、シルエット。

 

 「私のもとへわざわざ手を、美しい手を飛ばしてくれたことは評価しよう。だがァこの程度の遅くパワーのないものをロケットパンチ呼ばわりすることは日本男児として認めなぁい~~~~、認めなぁい~~~いいか!!!『ロケット・パンチ』というのはこうやるんだ!フゥゥゥゥ。消し飛びたまえ!!!」

 

 「アライズ!」 「マシーン・メサイア!」

 

 「「防御しろ!」」

 

 こいつはやばいッ。

 

 再び黒煙。それが晴れた後、私は無事立っていたわ。でも英玲奈はそうも行かなかったみたい。

 

 「英玲奈、大丈夫なの?」

 

 「全身がスパークしているッ。両腕を戻すことには成功したが感覚がおかしいッ」

 

 「『キラ・クイーン』第二種の爆弾!ガン・パウダー!私の『呼吸』はすでに君の腕の中だ!!!」

 

 奴は叫びながら、まるでスイッチを押すような指の動きをしたの。

 

 カチッ。

 

 「ぎいぁァァァァァァ」

 

 「英玲奈ァァァ!!!」

 

 英玲奈の両腕が爆発した。あとには導線と複雑そうな何かしか残らなかった。

 

 そんな、英玲奈が…………死んだ?????

 

 「キラァァァァァァァァ!」

 

 「私も君もキラだろォ?」

 

 こいつ、おちょくりやがって!殺してやる!!!父親にとりついているとかはどうでもいい!

 

 私の英玲奈を殺した、こいつを殺す。

 

 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

 

 

 殺してやるッッ!

 

 ほかのことはすべてどうでもいい!ただこいつを殺すのよ!

 

 

 「『アライズ』何をしてもいい!こいつを殺せェ!パリパリパリパリパリパリパリィ…………ショッキング・

パーティ(いかれた舞踏会)!!!」

 

 無限に近い拳で奴を殴る。

 

 「『キラ・クイーン』対抗するぞ!第二種の爆弾!ガン・パウダー!私の『呼吸』はすでに煙草の煙の中だッ」

 

 「第二種の爆弾!発動!!!」

 

 

 閃光。

 

 「フ~~~ウ。私はやはり完璧か…………しっかりと上半身を吹き飛ばしている…………私は『キラ・クイーン』は無敵だッ」

 

 なーんて思っているのかしら?

 

 「なぜだ!なぜ生きている!!!」

 

 「私の『アライズ』が無敵だからよ…………さあ、死ね!!!」

 

 「貴様、実の父親を殺す気かぁ?????」

 

 そんなの当然でしょ。

 

 「英玲奈を殺した奴は殺す。当り前よねぇ!」

 

 「なんだぁ!なんなんだぁ!!!こいつの目、どす黒く濁ってやがる!!!『漆黒の意志』というやつか…………ちがう!狂ってやがる!理性の箍が外れていやがるッこいつの目、綺羅ツバサの目は自分の親がとりつかれているとかは関係なくどうやって私を残忍に殺すか…………それだけを考えてやがる!!!」

 

 「言いたいことは終わりかしら?死になさい!」

 

 「だが、私の勝ちだ!!ジャスト4時!時は満ちた!『キラ・クイーン』最後の矢!!!第三種の爆弾の発動だ

!!!」

 

 奴の最後の一本であった右の親指が私に飛んでくるわッ防御するまでもないわね…………私の『アライズ』は私たちのように完全無欠!爆破されても無限に再生できるのッッッ!

 

 爆発するかと思ったが特に何も起こらないようだわ。

 

 「残念ね。さあ死になさい!」

 

 「…………ツバサ?どうしたんだ?」

 

 脊椎をぶっこ抜いてやる!

 

 「辞めろッやめてくれ!!!」

 

 「死ね」

 

 たくさんの血液と内臓が飛び散る。それはとっても美味しそう。

 

 『なあ、綺羅ツバサ。お前が殺したのはお前の父親であって私じゃないッ俺はお前に負けちゃいないぜェ。第三種の爆弾発動!!!私は…………『キラ・クイーン』は君の脳内にいるッ!!!」

 

 え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ」

 

 

 血、血、内臓、そして血。私の中にイメージが見えるッ。爆発。内臓。髪の毛ッ。

 

 私がこいつだッ。キラ・クイーンだったのだッ両親を私は殺した!!!

 

 一人は爆殺しッもう一人は脊椎から抜いてッ!!!

 

 爆殺した時、私は記憶を封じたッ。幼いころだッ。

 

 でも、パンドラの箱は空いてしまったの。私はすべてを思い出してしまったわ。

 

 もう何もかも嫌だ。

 

 

 

 

 助けてよ。英玲奈。あんじゅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こちら、第三班。例のスタンド使いを捕獲しました…………気を失っているようで…………え?その辺に落ちている破片もすべて拾え?…………了解いたしました。小原様。すべては小原家のために…………」

 

 to be continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回 第二部 サイボーグはギャングスターの夢を見るか


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第一部スタンド解説

 

 アライズ

 

 破壊力(パワー)A スピードB 射程距離D

 

 持久力A 精密動作性E 成長性C

 

 本体 綺羅ツバサ

 

 外見 身長157cm女性のような体つきで頭部にオレンジ色の『ほのまげ』のようなものが存在している。華奢に見える両腕には双剣を携えていて、全身の皮膚は赤く目が青い。

 

 能力 脳幹を破壊されない限り自己再生が可能な程度の能力。自己再生中は一切行動できない、また外傷を受けない。精神的なダメージも随時回復することができる。恐怖や同情心を消すことができるのでためらわずに敵を殺害できる。再生能力も相まってタイマンには適したスタンドといえるだろう。ただし自己防衛のため鍵をかけておいた記憶を思い出すとスタンド能力のほとんどを失う。本体である綺羅ツバサは理解していなかったが少なくとも鍵をかけた記憶を持った時点でこのスタンドを発現していた。

 

 スタンド名の由来はセパルトゥラのアルバム『Arise』よりArise、またラブライブ!劇中アイドルグループA-RISEより由来する。

 

 

 

 

 スキャンダル

 

 破壊力(パワー)C スピードC 射程距離∞

 

 持久力∞ 精密動作性A 成長性C

 

 本体 綺羅の同僚

 

 外見 本体の背丈の2倍の身長、所々紫色の血管や、内臓、できもののような何かが浮き出ている緑色で五つ目。

 

 能力 本体の理解可能な事象を対象がどこにいようとも相手から読み取ることができる。『ヘブンズ・ドアー』とは違い相手に何かを命令することはできないが対象と直接会う必要がなく顔と名前が分かれば相手の記憶や体験を読み取ることが可能。戦闘に不向きではあるが便利なスタンドである。

 

 スタンド名の由来はクイーンの『Scandal』に由来する。

 

 

 

 

 マシーン・メサイア

 

 本体含む

 

 破壊力(パワー)B スピードB 射程距離∞

 

 持久力∞ 精密動作性A 成長性E

 

 スタンド単体の時

 

 破壊力(パワー)D スピードA 射程距離D

 

 持久力D 精密動作性A 成長性E

 

 本体 統堂英玲奈

 

 外見 皮膚を剥がれ所々に血管が浮き出ている人間の様(スタンド単体)

 

 能力 本体の全身を機械化する程度の能力。声が『ポケモン図鑑』のようになる。スクラップを吸収して本体の一部にすることも可能。おそらく電気で動いている。必殺技は『ロケット・パンチ』。作中では登場しなかったものの足を飛ばして攻撃することもできる。役には立たないだろうが巨大ロボットの頭部に変形することも可能。

 

 スタンド名の由来はセパルトゥラのアルバムMachine Messiahより。

 

 

 

 

 キラ・クイーン(綺羅吉影憑依時)

 

 破壊力(パワー)A スピードB 射程距離B

 

 持久力C 精密動作性A 成長性A

 

 本体 綺羅吉影

 

 外見 ジョジョの奇妙な冒険第四部に登場した『キラー・クイーン』と同一。違いは目が青くボディが黒い。日本男児だと思われる。

 

 能力 本体の自我を奪い憑依する。憑依の進行度により能力が解放されていく。

 

 第一種の爆弾 憑依先の指を屋の形をした爆弾に変えて飛ばす程度の能力。第一の矢から第九の矢まである。

 

 第二種の爆弾『ガン・パウダー』呼吸(吹き込んだ息)を爆弾にすることができる。指でスイッチを押す動作をすると発動できる。一度使用すると1分32秒発動できない。

 

 第三種の爆弾『最後の矢』憑依先を変更できる、憑依されていた側は開放される。人の記憶のカギを爆破する能力も併せ持っている。

 

 備考 綺羅ツバサの『アライズ』の出発点であり終着点。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 次回 第二部 サイボーグはギャングスターの夢を見るか

 第一話 目覚めと出会い


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鹿角聖良は動じない エピソード1 

 

 私の名前は『鹿角聖良ー喫茶店店員』。喫茶「ロハン」店員歴1年半と3日です。さて、喫茶店というところには様々な人が集まるのです。漫画家、料理人、薬物中毒、ギャング、ジョッキー、殺し屋、オタク、吸血鬼、スクールアイドルなどなど…………

 

 そんな喫茶店でとある人と再会したんです。これから話すエピソード1は友人の母親とのお話で…………

 

 

 

 鹿角聖良は動じない エピソード1 

 

 あれはある曇りの日でした。

 

 

 その日の「ロハン」は常連のお客様である漫画家さんとスクールアイドルさんの二人といった静かな空間でした。流れているクラシックに耳を傾けながらご注文が来るまでバックヤードで待機する。特にこれといってやることもなく、妹の理亞へのアドバイスでもメモ帳に書き留めながら時間を過ごしていました。

 

 「いらっしゃいませ」

 

 「…………あらユーは!」

 

 「鞠莉さんのお母様…でしたよね?お久しぶりです。」

 

 「久しぶりネーカモーン。」

 

 「カ、カモーン?私のことですか?」

 

 「Yes!ユーのシスター言ってまシタ。『セーラ!カモーン』だからカモーンデェス。」

 

 なるほど果南さんがハグゥ、ダイアさんがデスワと呼ばれたように私もカモーンと呼ばれるみたいですね。

 

 「わかりました。ご注文はありますか?」

 

 「コーヒーとパンケィクをプリーズ。」

 

 「了解いたしました。」

 

 私は注文を伝えるために厨房へ向かう。

 

 「店長、コーヒーとパンケーキを一つずつです。」

 

 私が店長に告げるとしすっとコーヒーとパンケーキが乗ったお盆を渡されました。うちの店長はお客様の顔を見ただけで注文したい商品がわかるという『技』を持っているんです。どのように会得したかは教えてくれませんがね…………

 「お待たせしました。コーヒーとパンケーキです。」

 

 「ワァオ、スピーティネ。」

 

 「それも当店のうりの一つですので。」

 

 「ディ・モールト・ベネ!、あ、そうだわ。どうせなら少しお話できないカシラ?」

 

 「そうしたいのはやまやまですが…………」

 

 ほかのお客様もおりますので、と断ろうと思ったら、

 

 「いや、話してくれて構わないぞ。僕の漫画のネタになるかもしれないしな。」

 

 「私もかまいません。」

 

 となぜかほかのお客様から許可をいただけました。

 

 「でしたらご一緒させていただきます。」

 

 「ベネ。…………最近どんな感じカシラ?」

 

 「最近…………ですか。そうですね、大学へ行ってここでバイトする、それくらいです。」

 

 「アラ?スクールアイドルはやめたのカシラ?」

 

 「ええ。高校の時で終わらせました。」

 

 本当は大学でもやるつもりでした。けど、メンバーを集められなかったのと『A-RISE失踪事件』による目標の喪失。忘れられないトラウマ。そして下半身不随。

 

 「そんなことより鞠莉さんは最近どうですか?」

 

 「マリーデスか…………」

 

 鞠莉さんのお母様の顔色はにわかに曇ったのです。

 

 「私とは完全に袂をわかちマシタ。彼女とは決着をつけなければなりまセン。それでも…………」

 

 「…………ご馳走様デシタ。」

 

 鞠莉さんとお母様の間に何があったかは私にはわかりません。もし理解してもどうにかできるといったわけではないです。それでも、何か一声だけでもかけたい。ああ、なぜ私は何も言うことができないのか。あの時から何も成長していない…………

 

 「またのご来店をお待ちしております。」

 

 これしかいうことができませんでした。

 

 ぽつぽつと外から音がします。

 

 雨が降り始めたようでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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