ファイアーエムブレム 草原の狼 (ミカりん)
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始まりの地は草原の国

初めましての方は初めまして。
別ジャンルの小説で知っている方はお久しぶりです。
PCが使えない期間を上手く使いたいがためにまた思い付きで投下していきます。
スマホ更新なので文章構成に問題があるのはご了承ください。


アカネイア大陸の北東。アカネイア王国の北にある草原の国オレルアン。

アカネイア暦585年の現在では、まだドルーアが復活しておらず大陸には平和が訪れていた。

しかし孤児などはやはり存在しており、それなりの数の孤児院が存在していた。

 

「……おい、大丈夫か?」

「見たところ怪我はないみたいだけど……」

 

紫の髪をした2人の少年たちが、倒れている少年を見つけ声をかけていた。

少年たちは近くの孤児院に住んでおり近くで4人で遊んでいたところ、倒れている少年を見つけたのだ。

すぐに一緒にいた赤毛でオールバックの少年と緑髪の少し地味な少年が院長先生を呼びにいっている。

 

そう、この4人こそ後にハーディンに仕えるオレルアン狼騎士団の重鎮になるビラク、ザガロ、ロシェ、ウルフである。

そして、この出会いが後に彼らの運命を変えることになったのである。

 

「……うーん、ここは……」

 

それから数時間が経ち、駆けつけた院長先生に保護された少年はゆっくりと目を覚ました。

もちろん、ウルフたち4人もその場にいた。

 

「大丈夫か?お前も両親を亡くしたのか?」

 

ザガロが少年に声をかけた。

少年は力なく返事をするがまだ本調子ではなく、ゆっくりと会話に応じていた。

 

 

 

(……ここは、どこだ?)

俺は、心の中で自問自答をした。

俺の名前は『永峰 智(ながみね さとし)』。こう見えても高校3年の漫画研究会の部員である。

でも、学校から帰るときに飛び出した猫を助けるために車の前に飛び込んで……そこからの記憶がない。

改めて冷静になって4人の顔を見てみることにした。

赤毛のオールバックな髪型をした青年。緑髪で少し髪が跳ねている髪色以外は目立たない青年。紫の髪色をした優しそうな青年。そして美形であり緑髪の青年に似つつも片目が下ろした前髪で隠れている青年。

まだまだ歳は6歳前後だが、俺はこの人たちを知っている気がした。

……もしかして、俺は死んであのゲームの世界に転生したのか?

 

ファイアーエムブレム紋章の謎。

お母さんが好きでシリーズが全て揃っており、自分も中学生の時にリメイクの新紋章の謎からプレイを開始し、案の定やり込むくらいハマってしまったわけで。

この4人は、その紋章の謎に登場したオレルアンの騎士団にいた4人に似ていたのだった。

 

「俺はサトシ、母さんが殺されて逃げてる途中に気を失ったんだ。」

 

軽く嘘を混ぜたが、母さんがファイアーエムブレム好きなのは事実だから利用することにした。

そしてみんなが自己紹介をしてくれた。

 

「俺はウルフ、こう見えても最年長だ。よろしく。」

「俺はザガロ、地味って言うなよな。」

「僕はロシェって言うんだ。よろしくね。」

「俺はビラク、ホモじゃないけどよろしく頼むよ。」

 

改めて自己紹介を聞いて納得をした。

ビラクたちがまだ小さい。ということはまだドルーアは復活してないみたいである。

そう判断した俺は見た目を確認するために顔を洗いたいと言って立ち上がった。

幸い、少しふらつくが特に日常生活をするには問題ないぐらいには回復しているらしい。

 

「洗面所はこっちだ、俺についてきてくれ。」

 

ウルフが先導して案内してくれている。

ザガロたちも一緒についてきてくれた。

やがて到着して顔を洗い、鏡を見ると更に驚いた。

髪色こそ青に近いけど……顔つきとかはルフレに近いのか?

最近流行りの『マイユニット』の枠なのか。

不思議なことがあると考えながらもルフレみたいな見た目になってしまった自分に染々と転生した事実を噛み締めることになった。

 

そして部屋に戻ると院長先生がおり、当てがないことを話せば孤児院に暮らしていいと言われたのでここで暮らすことになった。

この先暗黒戦争が待っているしその後は英雄戦争。

カミュのことや2000年先のギムレーのことを考えるとバレンシアにも行っておきたい。

Echoesの要素があるならアルムとセリカもアカネイアに来てテーベの地下迷宮に行くかもしれないし。

少なくとも原作知識を使って悲劇は回避できるものは回避したい。

そのためにも、ビラクたちと仲良く出来るのはありがたかった。

 

それから2年後。

アカネイア暦587年のとある夏の暑い日。

俺はビラクたちと5人で近くにある森を探検する名目で密かに訓練をしていた。

狩りで獲物を取り、同時に弓や槍の腕を磨く。

近くにある森は、絶好の訓練場所であった。

しかし、森でウルフが弓で大きな猪を仕留めたときに孤児院のある小さな集落の警鐘が鳴り響いた。

 

「村の警鐘だ、何があったんだろう。」

「さぁ、ただ何かヤバいことが起きたかもしれない」

 

俺とビラクで状況を相談し合う。

ロシェは不安そうにしており、ザガロは辺りを見渡していた。

俺たちは一度戻ることにした。

 

村は山賊が襲いかかったために壊滅した。

とあるRPGとは違い、山賊が村を彷徨きあちこちに村人の死体が転がっている。

俺たちは見つからないように散開して孤児院を目指した。

狩りで獲物を仕留めるためにこうして散開して一気に畳み掛けるやり方を練習していたのが救いだった。

無事全員合流したまでは良かったが孤児院はまさに焼かれたばかりであり、外には仲間たちの死体や山賊の死体が転がっている。

入口付近を見れば、院長先生が魔道書を手にとって戦っているのが見える。

 

「エルファイアー!」

「ちぃ、やるじゃねぇか!」

 

院長先生のエルファイアーが山賊の1人を焼き尽くした。

足元から吹き上げる炎に山賊たちは苦戦をしていた。

しかし、俺たちはここに来たことを後悔することになる。

 

「お頭!ここのガキがまだいたようですぜ!」

「何?そりゃ本当か!」

 

後ろを振り向けばザガロとロシェが山賊に捕まっていた。

ウルフとビラクも武器を取り上げられ首筋に斧が近づけられている。

俺もすぐに山賊に捕まり人質にされてしまった。

 

「さぁ、こいつらの命が惜しけりゃ金を出して抵抗を止めろ。」

「くっ……仕方ありませんね。」

 

院長先生はエルファイアーの魔道書を地面に置き、解放しなさいと訴えながら手をあげた。

 

「よし、観念したな……仲間の仇だ、死ね!」

「ウルフ……皆を頼みましたよ……エレミヤ……先に逝く兄を…許してくださいね……」

 

こうして、俺たちがまんまと人質に取られてしまったせいで院長先生は目の前で散々いたぶられた挙げ句に最期は首を斧ではね飛ばされ死んでしまった。

院長先生の死を前にしてあのウルフまでもが目に涙を浮かべていた。

 

「お頭、ガキ共はどうしやす?」

「奴隷として売り捌けば高い金になる。近くに奴隷を買っている族長がいたからそいつに売り払うぞ」

 

俺たちは抵抗することも許されずに、族長のところに売り飛ばされた。

送られた先は近隣の小部族の族長。しかし、その族長があくどい族長でありことあるごとに金を騙しとり奴隷は容赦なく虐げ、金と女に生きる典型的なクズだった。

俺たち5人はここで満足いく食事すら与えられずに馬車馬のように働かされることになった。

 

それから更に2年が経過した。

食事は1日1食、それも固いパンと冷めたスープだけを与えられる暮らしをしていた。

この時だけは5人揃って会話が出来るため皆この時間だけが楽しみだった。

 

『いつまでこんなことしなきゃいけないんだろう』

 

ロシェは静かに呟いた。

 

『ダメだよロシェ、下を向いてちゃいけない。』

 

ビラクがそれを励ますように肩を叩きながら寄り添い話しかける。

 

『あぁ、それにもしかしたら誰か解放してくれるかもしれないしね』

 

俺もそう告げた。

実際、暗黒戦争のことを考えるともうすぐハーディンが奴隷を解放しにかかって来るだろう。

幸いここは俺たちが暮らしていた孤児院から離れていない族長の家だ。

オレルアン城から距離は少し離れているが族長クラスの不祥事をあのターバンが見過ごすとは思えないからだ。

ウルフが希望を持ちすぎるなと指摘したがスルーして食事を終えた時、外から普段は聞こえない悲鳴や断末魔が聞こえてきた。

 

「何かあったのか?」

「山賊がまた来たのか?」

 

ザガロとビラクが口々に意見を出した。

俺はやっとハーディンが来たかとようやく安堵した。

程なくして一人の青年がこの牢屋みたいな5人の部屋にやって来た。

口髭こそまだ生えてはいないが白いターバンを被った出で立ち。

……うん、間違えようがないよね。

 

「君たち、大丈夫か?」

 

ハーディンと思われる人が駆け寄ってきて心配そうに声をかけた。

ロシェなんか、泣きそうになっているぞ。

ザガロですら涙を浮かべているんだから無理もない。

俺は「オレルアンの王様の弟が何故ここに?」と質問をした。

子供みたいに言うならこれぐらい噛み砕けばいいか。

 

「族長の動きが怪しいと聞いて調査していたが、そこで君たちの話を聞いてな。さぁ、まずはここを出よう。」

 

そう言ってハーディンは俺たちを連れて屋敷を出た。

そして民衆に対し『我がオレルアン王国は奴隷制度を廃止し、皆が平和に暮らせる世界を作ることを約束しよう』と演説をした。

演説を聞いた皆は感動したらしい。ハーディン様のために生きるんだとあのウルフが率先して熱く語っていた。

これが紋章2部の盲信に繋がるわけか、と俺は冷静に考えていた。

 

その後解放された俺たちはウルフがあまりにハーディン様に仕えたいと騒ぐし反対する人もいなかったので、ハーディンにもう一度会えないか彼が宿泊する宿屋にやって来た。

もちろん連れの兵士から門前払いを食らうが構わず5人で騒いでいると中からハーディンが出て来て兵士を一喝すれば俺たちを中に入れてくれた。

しかも、宿屋の主人に金を払い俺たちの分の食事まで提供してくれたのだ。

 

「さて、改めて自己紹介しよう。私はオレルアン王国の王弟ハーディン。狼騎士団を率いている。」

 

ハーディンは食事として出された美味しいパンや暖かいシチュー、新鮮な牛乳などを泣きながら食べる俺たちを前に自己紹介をしてくれた。

いや、俺は泣いてないがロシェとビラクは泣いてるしウルフやザガロも目に涙を浮かべているんだから仕方ない。

 

「私はサトシ。この近くに2年前まで存在していた村にあった孤児院の出身です。」

 

唯一会話が出来そうな俺が冷静に身の上を明かした。

かくいうこの俺もあまりに粗末な食生活に耐えきれず泣いたこともある。食べる手を休めるつもりはない。

 

「そうか、あの村の……すまなかった、間に合っていれば君たちがこんな目に遭わずに済んだかもしれないのに。」

 

ハーディンはそういうと身分を省みることなく頭を下げた。

それを見たウルフは驚いて目を見開き、ザガロはフォークを落とし、ビラクは固まりロシェは困ったようにオロオロしている。

俺はというと……

 

「ハーディン様、頭をあげてください。」

 

とりあえず、頭をあげさせた。

いやこのターバンガチで善人だろ、それを闇堕ちさせたガーネフ許さんからな。

原作知識あるが故にこの対応は余計に困った。

 

「それでも我々が今生きてこうして美味しい食事が食べられるのはハーディン様のおかげです。」

 

そこからまず感謝をしながらハーディンにいつか狼騎士団に参加して働きたいと告げた。

まだ最年長のウルフですら13歳なのですぐには無理だがどのみち参加しなくては原作知識もへったくれもなくなる。

 

「うむ、わかった。まだ子供だから今は無理だが我が騎士団は見習い騎士に限れば14歳から参加が出来る。明日のオレルアンの為に共に頑張ろう。」

 

そう言ってハーディンが遠回しに受け入れる姿勢を見せてくれた。

そりゃあ原作でもオレルアンの連中は奴隷出身とか言ってたしな、読み通りだ。

 

「君たちの住む当てがないならば我が城に来るがいい、兵士には話を通しておこう。」

 

その言葉に俺たちが顔を見合わせ、お願いしますと言えばハーディンはわかったといって歓迎してくれた。

そして、ハーディンとの会食は終わったあとは4人1部屋ではあるがハーディンが取ってくれた部屋に宿泊することになった。

これから何が起きるかはわからないが……こうなったからにはこいつらと運命を共にしていくさ。

転生したからって、ハーレムもチートもいらない。

ただ、『マイユニット』として俺なりに幸せになってやる。

 

 

 

それが、今の生きる目標だ。




相変わらずの見切り発進ですがやれるだけやるつもりです。
次回から後書きにはキャラクターについての補足やステータスをまとめようと思います。
ちなみに地味とかぶっちゃけて一番扱いが悪いザガロですが私は一番大好きです。
SFCでもドーピングしてまで使ってます。


異世界転生は流行りだけどあんまり私は触れてません。
どちらかというとマイユニみたいな感じでオリ主は進行します。
なので、色々不慣れな点もありますがご容赦ください。
では、次回からもよろしくお願いいたします。

後の話に矛盾が出たので少し修正しました。


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未来の騎士たち

スマホでポチポチとスキマ時間に執筆してるので中々速くは出せませんね……
ちなみに後書きはキャラ紹介です。
ステータスはDSリメイク準拠(にしないと、リメイク要素があるので……)

あと、早くもお気に入り登録ありがとうございます!
駄文ではありますが頑張らせていただきます。


「ハーディン様、かっこよかったなぁ…」

 

俺たちはあれからすぐにあのターバンが取ってくれた部屋にやって来た。

一言で言うと、ターバンマジイケメンだわ。

紋章2部でハーディン様に忠誠を誓ったはずと一蹴して盲目的に闇堕ちターバンの言うこと聞くはずだと納得したよ。

そんなこんなで俺たちは部屋に入り、ふかふかのベッドにみんなで足を伸ばして座りターバンの話をしているというわけだ。

 

「俺、決めたよ。何年かして認められたらすぐに狼騎士団に参加するよ。」

 

意外にもビラクが真っ先に宣言した。

あの改造作品じゃターバンとホモ婚してたし何となく察したよ。ホモじゃないから違うけどさこいつ。

 

「同感だ、俺もハーディン様に一生付いていきたい。」

 

ウルフまでそうやって言うんだからカリスマってすげぇよ、本当。

 

「ザガロとロシェはどうするんだ?」

 

俺は2人にもそう聞いた。

俺?俺は入るに決まってる。

原作知識使うにも何にせよ狼騎士団に参入した方が都合良いからな。

 

「僕もビラクたちと同じさ、それにハーディン様みたいに立派な騎士になってみたい。」

 

ロシェも賛成するみたいだ。

確かに民衆に慕われてるような話があった気がするぜ、SFC版はかなり前で細かいところだけうろ覚えだからDS版の記憶だけどさ。

 

「俺はウルフやサトシについていくつもりだ。ハーディン様のところでみんなで働きたい。」

 

ザガロは何故か俺たちが基準だったらしい。

気持ちは一緒だと思うが仲間思いはロシェやビラクの担当だろうが。

 

「そんなサトシはどうなんだ?」

「俺か?もちろんハーディン様についていくつもりだぞ。あの人は本当にすげぇ人だし、ついていきたい。」

 

ザガロに質問を返されたので何食わぬ顔でそう返した。

実際嘘はついてないよ、ちょっと未来で嫁さんに愛されず嫉妬して闇堕ちするのを知ってるけど。

てかアレは完全にニーナとアカネイア貴族が悪いから。

原因はガーネフと闇のオーブだけどニーナがもっとターバンに愛を注ぎアカネイア貴族もターバンにもっと優しければターバン闇堕ちしなかったから。

 

「じゃあ、明日ハーディン様にオレルアン城に連れていって貰えるようお願いしようよ」

 

俺はみんなにそう提案した。

全員、満場一致だ。

 

「ただ城に行くだけじゃない、俺たちもハーディン様に負けないように今から訓練するぞ!」

 

ウルフが熱く語り始めた。

普段クールなヤツなのにたまに熱くなるとこうなる。

むしろザガロの方が冷静に見えるぞ。

 

「もちろん、僕も負けないさ」

「あぁ、俺たちも負けてられない。」

「みんなで精一杯頑張らなきゃな。」

 

みんな口々にそう言っていたので俺も同調した。

でも実際俺はどんな職になるんだろうな?

ルフレみたいな見た目だが、紋章に戦術師はないしマージナイトはユグドラル2作と聖魔だからなぁ……

 

「でも武器の練習、何使おうかな……」

 

ロシェがふと疑問を口にした。

俺も気になってはいたがこいつらの職知ってるしDS基準だと何でもやりかねないヤツが2人いるのがなぁ……

 

「とりあえず俺とウルフは狩りの時にも使っていた弓を練習してみたい。」

 

ザガロが弓を提案してた。

そういや俺らが孤児院で狩りをして遊んでた時、俺が4人に指示を出してウルフとザガロが弓で仕留める係だったな。

ビラクとロシェ?あいつらは素早く獲物を棒切れで誘導する係だ。

しかも今は孤児院が潰されてからしばらく奴隷生活が続いていたせいで奴隷生活でなんだかんだで身体も鍛えられてるときた。

そこから俺は使う武器を提案することにした。

 

「ザガロの言うとおりだ。昔狩りをしていた時みたいに俺が知恵を出してビラクとロシェが追い詰めウルフとザガロの弓で仕留める。騎士になってからもこうすればいいだろうな。」

 

そう言ってわかりやすく提案をした。

 

「ザガロとサトシが言うならそれがいいかもな。」

「あぁ、俺も弓よりは槍とかの方がいいかもしれないしな。」

「うん、それに騎士ならやっぱり僕は剣とか使ってみたいしね。」

 

ウルフ、ビラク、ロシェの3人も異議はないらしい?

ザガロ?あいつが出した案に俺が補足しただけだから賛成なのはあの笑顔でもわかる。

 

「それじゃあ、決まりだな。明日から頑張るぞ!」

「「「「おー!!!」」」」

 

こうして俺たちは決意を胸にベッドで思い思いに寝た。

2年も虐げられてきたところに希望の光が射し込んできた今の俺たちは2年分ぐっすりと眠った気分だった。

 

 

 

翌朝、俺は一番最初に目が覚めた。

気付けばザガロが寝相で半分抱き締める形になっていたらしい。

そんなホモホモしい役目はビラクの役目だろうが。

腹が立ったのでザガロをとっとと起こして他3人も順に起こしていった。

 

「おはようみんな……」

「あぁ、おはよう。」

 

ロシェが最後に起きて挨拶をしたから挨拶を返した。

 

「ザガロ、どうしたんだ頭なんか押さえて。」

「俺だけサトシにかかと落としで起こされた。」

「哀れだな……」

 

ビラクがザガロに心配の声をかけ、ザガロが嘆いてウルフが呆れている。

滑稽だがとりあえずあのターバンに挨拶をすることになったので部屋から出てターバンに会いに行った。

ターバンは既にチェックアウトを済ませ俺たちを待っているところであった。

 

「おぉ、おはよう。よく眠れたかな?」

「ありがとうございますハーディン様、おかげで我ら5人久しぶりにゆっくりと眠れました。」

 

代表してウルフが挨拶をした。

そしてザガロが話があると言い出し俺が内容を伝えた。

 

「ハーディン様、私たち5人は元々孤児院の出身です。しかし孤児院を山賊に焼き討ちされ金のために奴隷として売られたので帰る場所がありません。どうか我らをオレルアン城にお連れください。」

「ふむ……そうか。」

 

俺が頭を下げて会話をし、お連れくださいと言った時に他4人も頭を下げた。

ただ下げただけではない。敬服するように片膝を上げる形で座り頭を下げた。

ターバンは話を聞いて少し考えた後……

 

「良かろう、ただし大人になったらどこかで働くのだぞ。」

「ご心配には及びません。我ら5人ハーディン様の騎士になると決意しています。歳が来たら我らも狼騎士団としてハーディン様についていく所存であります。」

 

ターバンが仕事の話をしたので騎士団に入りたいと告げた。

ターバンは笑顔になり頭を上げよと言ったので全員従った。

 

「ありがとう、君たちみたいな有望な若者が我が騎士団に参加してくれれば未来のオレルアンは安泰だ。」

 

……ほんまターバンイケメンだわ。

こりゃあビラクたちも盲信するわけだよ。

ありがとうと言うみんなが泣いてやがる。

俺か?目から汗もハイドロポンプも流してるわけ……いや、なんか目が熱いよ。こりゃ泣いてるわ。

 

 

 

こうして俺たちはターバン……もとい、ハーディンの元で暮らすことになった。

すぐにオレルアン城に向けて出発し、2~3日の野宿の末ようやくオレルアン城に到着した。

 

「ここがオレルアン城か……」

「大きいな、こうして見るとな。」

「緊張してきたな、僕たち大丈夫かな?」

「大丈夫だよロシェ、俺たちは常に一緒だ。」

 

ウルフは感無量とばかりに呟き、ザガロは城を見上げて気持ちを新たにしたか冷静に深呼吸をしていた。

ロシェは緊張しているみたいだがビラクがフォローをしていた。

てか、そのフレーズ好きだなビラク。未来でもそうだよロシェとか駄目だよロシェとか言ってるしな。

「ハーディン様!お帰りなさいませ!」

「うむ、それより後ろの者たちは私の客人である。丁重におもてなしせよ!」

「はっ!了解致しました!」

 

ハーディンの鶴の一声で俺たちは兵士に何も言われることなく城門を潜り抜けた。

このターバンときたら兵士にもしっかり教育を届かせているらしく、奴隷だった俺らに対する陰口も聞こえてこない。

そうして、まずは謁見することになり謁見の間に行くことになった。

オレルアン王はなんかいつかの総理みたいな見た目をしていると思ったがまだ暗黒竜の時代から約16年昔なのでもっと若く凛々しい印象を受けた。

てかハーディンとどんだけ歳離れてんだよこいつ。

ハーディンまだ15だぞ、16年でどんだけジジイになるんだ。

 

それはさておき、王様の謁見はすぐに終わった。

俺たちの願いを聞き入れたオレルアン王は快く俺たちを受け入れてくれた。

この兄にして、この弟ありか。

そして俺たちはというと、訓練するにも一番歳上のウルフですらまだ11歳。ビラクに至ってはまだ8歳である。

ちなみに俺とロシェは9歳、ザガロが10歳だ。

なので、とりあえず俺たちは14になるまでは掃除や勉強が仕事だった。

勉強をしながらも召し使いの手伝いで毎日掃き掃除。

そして空き時間は自由だったのでウルフは自分なりに弓を練習してビラクはロシェと今のうちから剣を習っていた。

俺はザガロと一緒に読書をすることが多かった。

ザガロはウルフと弓の練習もすることがあったが本を読んだり武器の手入れを学んだりとSFCの見た目からは考えられない勤勉さを持っていた。

俺は、単純に軍略の勉強だ。

ユグドラル大陸じゃ14で既に軍師になる天才もいるんだし、俺もしっかり学ばなきゃな。

 

それから3年が経ち、14歳になったウルフは一足先に見習い騎士になった。

もちろんホースメンとして今度は馬に乗って戦う訓練をしているんだとか。

ザガロが弓の練習を増やしたため俺は1人で過ごす時間が増えた。

その頃から俺はオレルアン王国の、そしてアカネイア大陸の地理を改めて昔の原作知識と合わせて学び始めた。

後の戦いで有利になるように、今から頭に叩き込むためともう1つ理由があった。

 

「……あった、これだ。」

 

そう、昔住んでいた孤児院があった村の跡地を探すためであった。

俺は前から気になってはいた。

 

(院長先生は司祭でエルファイアーを使っていた。そして最期に呟いたエレミヤという名前……何かあるはずなんだ。)

 

俺は、今はまだ動けないが見習い騎士になったらハーディンに進言しようと思った。

この辺りにはまだ山賊がいる。実地での討伐訓練には適している。

 

(……とりあえず、暗黒戦争までしばらくは準備していかなきゃな)

 

そう心の中で呟き、そっとオレルアン城の図書室を後にして部屋へと戻っていった。

明日からまた訓練しなきゃな、そう思いながら今日も夜が訪れ朝が来るのであった。




ハーディン
ソシアルナイト Lv:1
最大HP:20
力:6
魔力:0
技:4
速さ:6
幸運:2
守備:7
魔防:0
武器レベル:剣D槍C

武器
てつの剣
はがねのやり
きずぐすり

備考
オレルアン王国王弟。狼騎士団所属(副長)
年齢15歳。相変わらずターバン巻いたカレー屋さんみたいな出で立ちだがまだ口髭がない。
性格は当時から既に紳士であり武人である。


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意外な才能、そして初陣

この小説はたまにご都合主義が発生します。
オリ主はチートまでは行きませんが強キャラにはなっても仕方ないのです。
ついでにオリ主のクラスと今回の構成を考えるのに非常に悩み、クラスだけで1週間もかかってしまいました。


「今日から見習い騎士になった諸君!今日から我がオレルアン狼騎士団の仲間であるからには厳しい訓練を乗り越えねばならぬ!」

 

あれから1年が経過した。

一足早くザガロが見習い騎士になり、今日から始まる厳しい見習い騎士への訓練に望むことになった。

俺はそのためビラクやロシェといることが増えた。

正式な訓練に参加は出来なくても剣くらい出来なきゃ騎士団の訓練についていけないし、オレルアン城の図書室だけでは知識でも限界があった。

なので俺はしばらくはビラクたちと剣や槍の訓練をすることにしていた。

そして、夜にまた本を読み知識を深める。

これだけをする生活が続いていた。

 

そんなある日のこと、俺の書いていた文章をロシェに見られてしまった。

 

「本を書いているのかい?」

「あぁ、日記を書いているんだ。」

 

そう、今書いていたのは日々の日記だ。

いつ何が伏線になるかわからないし、俺がいることで何か原作と食い違う場所があるかもしれないからな。

「そうか、僕もつけてみようかな……」

「文章力もつくし失敗の反省も出来るから悪くないと思うぞ。」

 

これは、転生前の先生の受け売りである。

というか、ロシェがいないとオレルアンズ全員マルスの敵になるしな。そろそろマルスも生まれてるだろうし、アリティアの情報も集めねば。

 

そしてある日のこと。

魔法の国カダインよりオレルアン城に使者がやって来た。

カダインは大賢者ガトーが作った魔法学院を中心に自治が認められている都市。

そこからの使者ということで興味が沸いた俺はロシェとビラクの3人でこっそり覗きに来た。

オレルアン王やターバンと話をしている使者を見てみると、なんと……!

 

「おい、あれ……カダインの高司祭であるウェンデル司祭じゃねーか。」

 

見た目からすぐにウェンデルだとわかった。

ビラクやロシェは知らんけど俺は原作知識があるしゲームと全然見た目が変わらないからすぐにウェンデルだと察しがついたよ。

内容はどうやら所謂才能がある少年少女の留学についてらしい。

オレルアンには草原の民と呼ばれる奴隷階級もいれば孤児院に暮らす孤児だっている。

中には俺たちみたいに孤児院が焼かれ奴隷階級に身をやつすことになったヤツすらいる。

だからこそ、そういう人で才能がある人はカダインで保護をしたいという内容らしい。

ターバンは渋っていたがオレルアン王としては賛成らしい。

そして話が終わったので見つかる前に退散した。

流石に一撃離脱の訓練をしていたからか見つかることなく無事に部屋まで戻ることが出来た。

 

その後ビラクとロシェと別れた俺は一人ウェンデルを探しに行った。

理由は簡単、魔法の才能があるかを確かめるためだ。

当の本人は探したらあっさりと普通に客間にいたのを見つけたのですぐに会いに行った。

 

「おや、どなたですかな?」

「私はサトシ、狼騎士団に所属する予定の今は召使いです。」

 

一応後の代表者になるお方なので最低限礼儀正しく挨拶をした。

現実世界の礼儀が通用する辺り今まで転生前に生きた18年は無駄にはなってなかったので少し安心した。

「サトシさん、でしたか……?私に何か御用でもありましたか?」

「はい、ウェンデル司祭に私の魔法適正を見てもらおうと思い参りました。」

 

そう言ってこれまでの経緯と院長先生の話をするとウェンデルは快く才能を図ってくれた。

内容は簡単でファイアーの魔法とライブの杖を手渡され、実際にやり方を教えるからやってみよというものだった。

無論、室内でファイアーをぶっぱなして何かあっても困るし騒ぎを大きくするとカダインが戦争を起こしに来たと誤解されかねないため外へ出ていって、である。

そうしてファイアーの書を受け取り中身を見ると……

 

「……わかる気がする。ファイアー!」

 

内容の意味を何となく理解してしまった俺は難なくファイアーを使っていた。

これにはウェンデルも驚きの様子。

更にライブの杖を試してみるとこちらは適正がなかったらしくカエルの傷すら治せなかった。

 

「魔道士の才能は十二分にあるみたいです。本当でしたら我がカダインで正式に学んでもらいたいのですが……」

 

しかし今はオレルアンから出るわけにもいかない。

狼騎士団に参加しなければ、せっかくビラクたちと繋がった意味がないではないか。

 

「申し訳ありません、ですがもしウェンデル司祭が不定期にオレルアンに来られるようでしたら私も勉強をしたいと思います。」

 

そう言って頭を下げるとウェンデルはにこやかな表情で歓迎してくれた。

それから、大体2~3ヶ月に1度、数日の間のみだが俺はウェンデルから魔法の手解きを受けた。

俺とロシェが騎士団に参加する頃にはもうファイアーは完璧にものにしていたため溢れる才能だと評価されていた。

 

こうして俺は1年が経過し、ロシェと共に見習い騎士になった。

ビラクはあと1年先だ。歳が一番若いから仕方ない。

とはいえ、俺は槍も剣も未熟だし何よりクラスが魔道士だ。

ターバンと掛け合ってみたところ、軍師見習いとして参加したいという要望を叶えてくれた。

新紋章のカタリナみたいなものといえばわかりやすいだろう、実際あの女は魔道士で騎士団に参加してたしな。

 

軍師見習いになってからもう1つ嬉しいことがあった。

ターバンと会話することが増えたためターバンの信頼を得やすくなったことだ。

もしかしたら最悪ターバンの闇堕ちすら回避出来るかもしれない。

そんな希望すら持てるレベルである。

 

さて、他のメンバーの話をしよう。

ウルフは既にホースメンとして立派に活躍している。

一足早く見習い騎士を卒業し正式な狼騎士団の一員としてターバンと草原を駆けている。

ザガロはまだ見習い騎士だ。

とはいえ近々叙勲を受けることが決まっており、扱い的には正式な騎士と大差はなかった。

流石チートなイケメンホースメンである、リメイク仕様なのか割と強くなりつつある。

ロシェはソシアルナイトの部隊に所属している。

俺はターバンと戦術を練る係なのであまり詳しくはわからないがやはり厳しい訓練は待っているらしい。

ビラクは来るべき時まで相変わらず自主トレを続けている。

努力の甲斐があり馬には既に乗れるようになっており槍の腕前もまぁまぁといった感じらしい。

こうしてみると、ビラクだって普通の騎士なんだよな……なんでSFCまではゴミのようなステータスなんだ。

 

さて、そんなある日のこと。

ターバンと次の実戦での演習場所を相談した時に俺はある廃村を示した。

 

「ここは……7年前に山賊に潰された村か。」

「はい、そして現在も山賊たちが付近を縄張りにしていることがわかっています。」

 

ターバンは知らないだろうが俺には深い意味があった。

ここは俺が転生して最初に来た村。

7年前に山賊に潰された村。

ここには院長先生の遺物がもしかしたらあるかもしれない。

その僅かな可能性に賭けた提案である。

 

「この辺りの山賊は卑怯な手を好み今尚騎士団でも退治しきれていません。しかし、卑怯な手を使わねば略奪も出来ない山賊団ですから練度そのものは他の山賊に比べてあまり質が良くありません。」

「だから敢えてこいつらを討伐しより実戦的な訓練とする……か。」

 

ターバンはリスクも考慮し少し考え込んでしまった。

やがて、この意見は通ることになった。

ターバンとしてもメリットの方が強いという判断であった。

 

 

 

この話し合いから1週間。

ターバンを指揮官とした見習い騎士の部隊がオレルアン城を発ち、およそ1日の距離にある廃村を目指し突き進んでいった。

部隊はソシアルナイト小隊20人とホースメンの小隊10人。

その内ソシアルナイト15人とホースメン5人が見習い騎士である。

無論、ロシェとザガロもここに参加している。

そしてウルフも今回はホースメン部隊に所属して共に行軍している。

俺は馬にこそ乗っているがあくまでも軍師見習い。

多少剣は扱えても魔道士なので戦いの際には馬から降りて戦う。

この大陸にマージナイトが存在しないからね、仕方ないね。

 

そして途中に1度野営を挟み、翌朝目的の廃村に到着した。

野営の訓練はあまりないため貴重な経験になった。

 

「ハーディン様、山賊は恐らくこの近くに拠点があるはず。騎士団が来たとなれば必ず姿を現すでしょう。ここはこの廃村を拠点に4人1組でこの辺りをくまなく調べ、見つけ次第狼煙で知らせて皆で各個撃破致しましょう。」

「わかった、皆の者!これより4人1組で辺りをくまなく調べる。何かあればすぐに狼煙で知らせるように!」

 

このターバンの号令に皆が従い一斉に散開した。

廃村に残ったのはソシアルナイト6人とホースメン2人。

そして、奇しくもこの中にはロシェ・ザガロ・ウルフの3名も残っていた。

ビラク……ごめんよ。

 

そして残った部隊は廃村の探索になった。

廃村に山賊が潜む可能性もあるからだ。

あらゆる危険な可能性すら油断せずきっちり処理するターバンは普通にすごいと思った。

 

「ロシェ、ザガロ。覚えているかいここを。」

「あぁ、忘れもしない。俺たちが初めて出会った孤児院があった村だ。」

「懐かしいけど、あの山賊たちがまだいるということに驚きを隠せないよ。」

 

俺はロシェとザガロと孤児院の近くを探索していた。

ウルフ?あいつなら他の場所を探索している。

 

「そこ、私語は慎め。何があるかわからんのだからな。」

 

ターバンに注意された。

何か、こうして私語を注意されると学生時代を思い出すな。

死んでしまったから卒業出来なかったけどな……

そして、注意されたからには仕方ないので黙って探索に戻った。

院長先生が死んだあの場所にエルファイアーの書は流石にもうなかった。

山賊が持ち出したのだろう。

そして俺たち3人とターバンは孤児院の中を調べ始めた。

残りの兵は外を調べている。

 

「燃えてしまったけど、まだこうして廃墟になって残っているんだな……」

「あぁ、ほら見てよザガロ。僕たちが初めてサトシを案内した洗面所だ。」

 

ロシェとザガロは孤児院跡の洗面所だった場所に来たみたいだ。

話し声がこちらにまで聞こえてきている。

俺はターバンと院長先生の部屋だった場所に来ていた。

瓦礫などもあったためあまり行けない場所もあったが院長先生の私室は幸いにも通路が残っており入ることが出来た。

 

「……何か手がかりがあればいいけど。」

 

そっと呟きながら棚などを漁った。

ターバン?ターバンがこんなことするわけがないだろう。

何もないことを知って雑談してるロシェとザガロを注意しにいった。

その間に家捜しをしているわけだ。

そして、壊れかけの棚の奥からなんと手紙とシェイバーの書を見つけた。

ターバンが戻ってきたのでシェイバーの書のことを報告したところ俺が持ってて良いことになったためそのまま懐に入れた。

手紙は読もうとしたら外から兵の声が聞こえたため懐に一緒にしまいターバンと外に出ていった。

 

「騎士サマがわざわざこんな辺鄙な場所までご苦労様だな?死ね!」

 

外に出ると廃村は既に戦場になっていた。

ターバンも馬に乗りはがねのやりを振り回し山賊と戦闘を開始した。

 

「ロシェ、前衛を頼む!ザガロは弓でロシェを援護するぞ!」

 

そう言って俺はファイアーの書を出して敵に火の玉を浴びせにかかった。

火の玉を食らった山賊は死にはしなかったが顔を焼かれ悶えていた隙にロシェのてつの剣がそいつの首を狩り取った。

ザガロも弓でロシェの援護をしている。

山賊の脚を狙い足止めをしてロシェが馬で突撃しすぐ逃げる。

これは、ビラクとウルフも交えて練習していた作戦だ。

そこに俺がファイアーで援護をする。それだけを追加した即興アレンジだ。

 

「生意気なガキ共が、死ね!」

「危ないザガロ!ぐわっ!」

「大丈夫かロシェ、無理するなよ!」

「よくもロシェを、死ぬのはあんただよ……院長先生の仇!」

 

俺のファイアーとザガロの弓が同時にヒットした。

山賊の投げた手斧はザガロを庇ったロシェが喰らってしまい肩を抑えるもロシェの後ろから飛び出したザガロが放った矢がファイアーと同時に山賊の首筋にヒットしたのだ。

 

「大丈夫か皆よ!」

「はい、ロシェが少し負傷しましたが何とか撃破しました。」

「よくやった!こちらもほぼ鎮圧した。さぁ帰るぞ。」

 

ターバンたちは既に合流した兵たちと連携し騎士団が来たことで焦った山賊たちが潰しに来たのを返り討ちにしたらしい。

俺たちが相手にしたのはそのリーダー格だったらしい。

そりゃ手斧が飛んでくるわけだ。

ロシェだって肩からそこそこ血を流してるしな。

というわけで、止血を済ませた俺たちはこの辺りに陣を引き、一晩何もなければ城に帰還することになっている。

 

「大丈夫かロシェ?」

「あぁ、でもこれが戦争なんだね……」

 

その晩、孤児院の前で火に当たりながらロシェと会話をしていた。

ロシェの傷はきずぐすりを服用したこともあり既に大分塞がりかけている。

 

「ロシェは優しいからな。その優しさのおかげでザガロは無事だったわけだ。」

「そんなことないさ、それに……院長先生の仇は討てたんだからさ。」

 

そう言って話していたらザガロもやってきた。

見張りの交代があったので休みに来たらしい。

 

「ロシェ、ありがとうな。」

「気にしないでくれよ、おかげで俺は傷1つないんだからな。」

「でも、ザガロだって弓の腕上がったじゃないか。俺のファイアーだけじゃ勝てなかったぜ?」

「よしてくれよ、まだウルフに勝ったことないんだからさ。」

 

こうして俺たちは久しぶりに笑いあった。

ビラクとウルフがいたら良かったが、ウルフは正騎士だから見張りをずっとしてるしビラクはまだ見習い騎士になれていない。

だが、俺は知っている。

暗黒戦争では4人共ターバンと一緒に戦うことを。

 

「そうだロシェ、ザガロ。俺……院長先生の手紙を見つけたんだ。」

「院長先生のだと?見せてくれよ。」

「お前たちそこにいたのか。何をしてるんだ?」

「あ、ウルフじゃないか。見張りは大丈夫なのかい?」

「見張りなら交代の時間だ。それより院長先生がどうしたんだ。」

 

読もうとしたらウルフが来た。

ウルフにも事情を説明し、理解してもらったところで手紙を読み始めた。

手紙はかなり掠れていたが何とか読むことが出来た。

 

『親愛なる妹、エレミヤへ。今日も私は子供たちと仲良く暮らしています。最近山賊たちが幅を利かせているため中々会いに行けず申し訳ありません。こちらは今も大丈夫みたいです。一応エルファイアーの書くらいは買いましたがカダインにいる父上から頂いたシェイバーの書は万が一の時に備え私が持つことにしました。エレミヤの住む場所はパレスに近いのでしたね、ノルダの奴隷市場には気をつけてください。あと、シェイバーの書は私の孤児院の誰かに将来託すつもりです。エレミヤのリザイアはカダインでもあまり見ない魔道書、どうか大事にしてください。では、近々山賊たちが落ち着いたら会いに行きますね。ナハトより。』

 

 

院長先生の手紙は、妹に宛てた手紙だった。

しかし、エレミヤ……何か引っ掛かるな。

 

「そういえばシェイバーの書はあるのか?」

「あぁ、ここにな。」

「将来子供たちに託す……生き残りが俺たちしかいないんだからサトシが持っておけよ。」

「あぁ、そうするさ。」

 

ザガロにそう言われたため俺が正式に持つことになった。

院長先生……ナハトって司祭だったがカダイン出身だったのか。

ウェンデルに会ったら聞いてみようて心に決めた。

 

こうして、夜は更けていったのだった……




サトシ
魔道士 Lv:2
最大HP:18
力:0
魔力:4
技:3
速さ:5
幸運:6
守備:2
魔防:6
武器レベル:魔法D

武器
ファイアーの書
シェイバーの書

備考
現実世界では18歳の高校生。
趣味は読書とゲームで漫画研究会所属。
進学する理由もなく就職先を決めようとしたが交通事故で死亡して所謂異世界転生をした。
転生した先でウルフたちと出会い『草原の民』としての奴隷生活を経て狼騎士団に参加。
武器が不得手だがウェンデルに才能を見出だされ魔道士の道を歩み始めた。
見た目はルフレに近く、髪色も銀髪である。
ハーディンに対して忠誠を誓っているが他4人程ではなく柔軟に物事を考えている。


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ビラク参戦!決意の夜

皆さんお久しぶりです。
前回の話を投稿してすぐに仕事が決まり、2年程失踪してました……
仕事も慣れて落ち着いてきたので復活します。
復活早々説明回が続きますが、今後も草原の狼をよろしくお願いします。



「皆、今回の訓練はよく頑張った!また明日からも訓練は続く、心してかかるように!」

 

 俺たちはあれから何事もなく昼頃にはオレルアン城に帰還した。

 ターバンから労いの言葉がかけられ俺たちは本日の訓練はお休みで明日までゆっくり休むことになった。

 もちろん出兵した兵士全員なのでロシェ・ザガロ・ウルフも休みだ。

 

「ビラクはどうしてるかな……」

「ビラクももうすぐ見習い騎士になるはずだけど……」

「次の見習い騎士志願者募集は来月だ、ようやく俺たち4人でハーディン様にお仕え出来るんだ。」

「そうだな、俺たちは5人いてこそ仲間だ。ビラクとも早く共に草原を駆けたい」

 

 俺たち4人はビラクの話で盛り上がりながら部屋まで歩いていった。

 前回の戦いにしてももしソシアルナイトとしてビラクがいたならロシェのケガもなくもっと優位に立ち回れたかもしれない。

 個人的な感情もあるがやはりビラクには戦略的にも欲しかった。

 そうこうしてるうちに部屋に入った俺たちはビラクに挨拶をした。

 

「ロシェ!みんなも来たのか。」

「ビラク、今日はみんな休みになったからまた来たんだよ。」

 

 ビラクとロシェが挨拶してる

 やはりこいつらは仲が特にいいらしい、ウルフも比較的ザガロと一緒な時が多かったし無駄に原作に忠実なヤツらだよ。

 

「久しぶりに5人で演習でもするか?」

「いいのか?」

「ビラクだって、もうすぐ見習い騎士だし悪くないと思うよ」

「ロシェが言うなら……ウルフとサトシはどうなんだ?」

「俺は大丈夫だぞ、今日はハーディン様も休まれるから軍略談義をすることはない。」

「暇だしちょうどいいからビラクも鍛えてやる。」

 

 こうしてザガロが提案した『ビラクも交えた訓練』が満場一致で決定した。

 最近俺も軍師見習いとして城にいる時はターバンと軍略について頻りに語り合うことが増えていたのでたまにはいいだろう。

 それに、ビラクだけはあの戦いを経験してはいない。

 つまり、ゲームを基準に考えれば出撃できなかった分他3人とかなり実力が離れていることにもなる。

 

 というわけで俺たちは部屋を出て馬上訓練広場へやってきた。

 馬上訓練広場は外に近い場所にあり、そのまま裏口に繋がっている。

 早い話が原作5章(FCとDSでは6章)で盗賊が逃げていくあの階段降りた空間である。

 まさかここが馬上訓練に使われてる部屋だなんてな、SFCしかやってないヤツだったら馬に乗れないし考えもつかないだろう。

 最も、俺はDS版から入ったんだがな。

 

「ビラク、馬上訓練は初めてか?」

「あぁ、少し練習してはいるが本格的な物はまだやれていない。」

「なら、まずは馬で槍を振るう練習からしなきゃな。」

 

 ウルフがビラクの実力が気になったらしく少し質問をしていた。

 ビラクはどうやら自分なりに馬に乗る練習はしていたがまだ実際に武器を振るったことはないらしい。

 

 そこで俺はビラクの練度を確かめる目的もあり、まずは馬上で槍を振るう練習から始めることに決めた。

 まず、同じソシアルナイトのロシェをビラクと向かい合わせて訓練用の槍で実戦形式で試合をする。

 ウルフは指南役、ザガロはリフ……ではなくきずぐすりの準備だ。

 ウルフは俺たちより馬上での戦いの経験が2年分豊富だし戦うなら戦いかたの参考になるよう同じソシアルナイトのロシェしかいない。

 ザガロははっきり言って余りだが持ち物管理に関しては何故かしっかりしてるしリフでも準備してくれたら心強い。

 俺は見る係だが、ただ見るのではなくビラクの戦いなどを見て訓練メニューを考えたり新しい連携を考えたりと、ただのニートじゃ終わらないし…正直かなり頭を使うので大変だ。

 

「ビラク、遠慮なく来てくれよ。」

「あぁ、本気で行くからな。」

 

 こうして2人の打ち合いが始まった。

 ウルフは馬の乗り方をレクチャーして邪魔にならないよう下がる。

 ザガロ?あいつは隣にある物資保管室からきずぐすりをいくつか取りに行っている。

 ぶっちゃけホースメンと連携して戦う訓練でもないとあいつはいても仕方ない。

 

「くっ、流石に訓練の質が違うな。」

「いや、ビラクこそ我流でここまでやれるのはすごいよ。」

 

 立ち会いをしながらも二人は熱く語り互いを褒め称えていた。

 

「ウルフ、サトシ。あいつらはどうだ?」

 

 そこにザガロがたくさんきずぐすりを抱えて戻ってきた。

 決してどこぞのハゲの僧侶を連れてきたわけじゃないぞ。

 ちゃんと売ってるきずぐすりだ。

 

「大分見れるようになってきた、これならビラクもなんとか見習い騎士の訓練にはついていけるだろう。」

 

 ウルフも真面目に評価していた。

 既に見習いを卒業し狼騎士団で腕を振るっているためかかなり厳しく見ていたためビラクの腕は確かなんだろう。

 まぁ、それでもあまり強くないはずなんだけどね……カインとアベルはそう考えたら無茶苦茶強いわ。

 そう考えながら見守っていたらなんか訓練室に入ってきた人がいた。

 

「ほう、こんな時まで訓練とは感心するな。」

 

 まさかのターバンがログインしました。

 

「は、ハーディン様!?」

「ハーディン様だって!?」

 

 ザガロがすっとんきょうな声をあげ、それを聞いたビラクとロシェも一度訓練の手を休めターバンの方を見た。

 

「なるほど、休みになったからビラクの訓練に付き合っていたのか。」

 

 ターバンの前には俺らの浅はかな考えはお見通しらしい。

 いや隠したりしてないけどさ。

 

「どれ、たまには私が付き合ってやろう……全員剣と槍を取れ!」

 

 なんか勝手に訓練に混ざりだしたぞこのターバン。

 しかもなんか本気なんだけど。

 

「何をしておるウルフとザガロ。サトシも逃げずにきちんと剣くらい使えるようにならんか。」

「げっ、マジっすか!?」

「当たり前だ、サトシも逃さんし今まで頭しか使わなかった分みっちりしごいてやろう。サトシは体力がないからな……他の4人の練度を見てお互いに指導し合えるようにするまでの間、訓練広場100週!」

「ひえぇぇ!?そりゃないッスよハーディン様ぁ〜」

 

 ……それから数時間、みっちりみんなでハーディン様にしごかれました。

 俺魔法職なんだけど……ルフレみたいに剣と魔法使ったりしないんだけど……てかランニングは絶対関係ない……どこのテニスが強い学校なんですかあれ……

 

「うむ、皆よく頑張ったな。もうすぐ見習い騎士の選抜があるが、ビラクは確実だろう。精進するんだぞ。」

 

 そう言ってターバンは訓練室をあとにした。

てかなんでこんだけやっててターバンは全然疲れてないのはちょっとおかしくね?と思ったのは内緒の話だ。

 

「ビラク、訓練はどうだった?」

「正直ハードだったが……手応えは感じるな」

 

 ビラクは今回のターバンとの訓練で何かを掴んだようだ。

 これをきっかけに成長率的なものが上がれば良いんだが。

 ウルフとザガロの最近の力の付け方を見るに杞憂に終わるとは思うが何があるかわからない状況である、戦略を練るにはまず味方を把握しなくてはならないしな。

 日記に一応まとめてはあるが、こればかりはゲームではないので把握し切るのも一苦労である。

 

 

 それから更に月日は流れた。

 あれから1年が経過し、ビラクも見習い騎士に無事合格。

 ウルフだけでなくロシェやザガロも正騎士になった。

 ロシェはちなみに最年少での叙勲であり、俺は叙勲は受けずに正式な軍師として認められた。

 一応これで叙勲は受けていないが正騎士と待遇は一緒になり行軍に当たって戦うことも許されている。

 ちなみに体力強化を理由にウェンデル先生がいる1週間を除き毎日必ず訓練広場を10週させられたので多少周りの騎士にはついていけるようになった。

 

 

 あれから、俺は真面目に未来について考え考察するようになっていた。

 今から2年後、メディウスが復活してドルーア帝国を復活させるからだ。

 ガーネフの野望は一人では止められないし、正直暗黒戦争を仮に止めてもそのままでは正史で英雄戦争の起きるはずである607年から608年に封印の盾の力が完全に失われてしまう。

 そうなってしまえばいくらファルシオンがアリティアにあろうが大量に溢れ出てくる地竜を封印しきれずぶっちゃけ詰む。

 それに、ターバンに世話になりっぱなしだからこそ、正直いって英雄戦争の歴史だけは改変したい。

 

 

 その晩、俺はそのために改めて城に来てから作成した日記に見せかけた前世での記憶をまとめたノートを再び開いた。

 

 現在はアカネイア暦595年。

 今から2年後にドルーアの地にて地竜メディウスが復活。

 その後はグルニアやマケドニアがドルーアと同盟を組み、今から5年後には暗黒戦争が始まってしまう。

 正直暗黒戦争は起こってもらわないと破滅しかない。

 メディウスは元々人間に好意的だったがアカネイアの開祖となるアドラ1世に騙され封印の盾などを盗み出したがために失望し、そのためにドルーアを建国し大陸を支配しようとしたのだ。

 

「うーん、やはりメディウスは出来れば救いたいけど正直どうしようもないなぁ……これ」

 

 改めてノートを眺めてため息をふぅ、とついた。

 メディウスの改心をするには人間を信用して貰わなくてはならないし、アカネイア王国はゲームを見る限りどこぞの大陸一さん以外はどれもこれも貴族の連中が腐りきっている。

 あのターバンですら人格者なのに闇墜ちさせてしまうくらいに貴族階級が腐りきっているので正直メディウスが怒る理由も納得出来てしまう。

 なので、犠牲になる人たちには申し訳無いが暗黒戦争は起こさせてもらうし、メディウスはそのままあの世に行ってもらう。

 

「ん?サトシ、まだ起きてたのか?」

 

 ここまで考えていたところ、部屋に入ってくる声があった。

 振り向くと、既に普段着に着替えていたザガロがまだ起きていたのを見かねて入ってきたようだ。

 

「ザガロか、どうしたんだ?城内の見回りをしてたんだろ?」

「たまたまここを通りがかったらお前の独り言が聞こえたから来たんだよ。でも、お前こそどうしたんだよ。新しい軍略でも考えるには大きな戦争はないぞ?」

「あぁ悪い悪い、気にしないでくれ。最近ウェンデル先生から聞いた話を自分なりにまとめているだけだから。」

 

 ザガロには悪いが今原作知識を出したところで信じてもらえる話でもないのでウェンデル先生の話と誤魔化させて貰おう。

 ……うん?ウェンデル先生?

 

「そうか!その手があったか!」

「わわっ、なんだよいきなり大声なんか出して!」

「あっ、すまない……」

 

 というわけでこの閃きを明日ターバンたちに報告しよう。

 そしてザガロには「今日はもう寝るよ」と言ってベッドに入る。

 ちなみに部屋だが、ビラクも兵舎で暮らすようになったために俺しか使う人がおらず、実質的な俺の私室として扱われるようになった。

 そのため、俺が使いやすいようにビラクたちにも協力して貰って本などを運んだり不要になった机やベッドを入れ替えたりなどをしていたというわけだ。

 

「わかったよ、おやすみサトシ。ゆっくり休めよ?」

 

 ザガロもそう言って部屋を後にして見回りに戻っていく。

 俺も灯りにしていた火を消してベッドに横になり、辺りは真っ暗になった。

 翌朝一番にターバンに会いに行こう。

 そして先程思い付いたある行動を提案しに行く。

 そのために俺は、少し早めに眠りについた。




ウルフ
ホースメン Lv:1
最大HP:22
力:6
魔力:0
技:6
速さ:8
幸運:5
守備:6
魔防:1
武器レベル:剣D弓C

武器
てつの剣
てつの弓

備考
この世界ではサトシの存在によりハーディンとの関係がより深くなり、結果ハーディン直々に訓練をつけてもらう機会が出来たため現段階からレベル1の癖に原作の初期ステータス同等に。
基本的に原作と変わらないがサトシが度々ストッパーになったりするため原作2部のように熱くなりすぎたりはあまりしない。
ちなみに新暗黒竜におけるアホみたいな成長率はサトシが効率よく訓練を活かせるようマネージメントしてるからという裏設定なので『草原の狼』世界線ではビラクとロシェも原作より成長する予定。
余談だがザガロ、ロシェ、ビラクも現在初期ステータス及びレベル1の段階です。


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サトシの決意!オレルアン王の秘密

再び説明回。
今回は原作にはないこの小説独自の設定が多分に含まれていますので苦手な方は今すぐブラウザバックをお願いします。
ISの旧サイトにあった紋章の謎のデザイナーズノートを見つけてしまったのが運の尽きでした……(今回の話はデザイナーズノートで明かされた裏設定をかなり拡大解釈して今回の話を作りました。)
また、ここから少し自分なりの解釈も挟まるのでもう少し話数を重ねて暗黒竜と光の剣編が完結した頃にでも自分なりの紋章の謎の考察を活動報告にまとめたいと思います。
余談ですが紋章の謎(英雄戦争編)はリメイクの新紋章の謎をベースに書いていますが暗黒竜と光の剣編に関してはSFCの紋章の謎をベースにしています(リフやダロスたちは出るよ!)。

※今回は余韻を残すため、ステータス及び設定公開はお休みします。


 翌朝、俺は早起きをしてターバンに会いに行った。

 ターバンの予定は既に掴んである。

 今日はオレルアン王に謁見しており、王と政治について意見を交わしている。

 そのため俺は、謁見の間へと足を運んだ。

 ちなみに俺は軍師なので許可申請の必要もなく謁見の間に入る事ができる。

 

「では、私はこれにて……うん?サトシではないか、何か王に用事か?」

 

 ターバンは話が終わり引き上げようとしていたところだ。

 そこに出くわしたため、ターバンが「話なら場所を変えて」と立ち去ろうとしたが、流石に王にも許可を貰うに越したことはないので頭を下げて『王にも話が』と伝えてみた。

 王も二つ返事で承諾したため、そのまま謁見の間にて共に話を聞いてもらうこととなった。

 

「実は私に1年程カダインへと留学をする許可をいただきたいのです。」

「何、カダインとな!」

「サトシよ、そなたのことだ。何か思うことがあるのか?」

 

 カダイン行きはかねてよりウェンデル先生から直接王にも進言されてはいたが流石に唐突な話題だ、王は驚きを隠すことなく目を丸くしている。

 ターバンも急な話題に少し険しい顔をしている。

 だが、決意した俺はその決意を真剣に二人へと伝えた。

 

「正式な軍師となりましたが今の私はオレルアンの一部しか知らぬ未熟者。このままではいざという時にお役に立てません。それに、かねてよりカダイン行きに関してはウェンデル先生より勧められていたこともあります。カダインへの道筋を考慮してもアリティアやグラを通ることもあり、これからのためにも今一度外を知ろうと思います。」

「ふむ、なるほど……」

 

 実際には別に理由があるがいつもの如くベラベラと嘘という名前の方便を使う。

 ちなみにウェンデル先生のルートは既に把握済である。

 アドリア峠を超えてアリティアを経由してカダインに行くのである。

 原作紋章2部にてマルスたちがアカネイアに向かった際に使った道筋そのままだったのである。

 レフカンディ領を抜けてアカネイアを経由するルートではない理由は、あのアドリア侯ラングにある。

 アドリア領についてはラングのバカが既に好き放題して政治には無関心らしく、山賊などが横行しそのためにウェンデル先生自ら民を救うために経由しているんだとか。

 

「うむ、心得た。サトシには何か考えがあるのだろう。王……いや、兄上よ。どうかサトシのカダイン留学を許可していただきたい。」

「ハーディンよ、そこまで信頼するか。」

「王も以前より打診はされていたはず。私はサトシより聞いていたため詳しく把握しておりますが……」

 

 王とターバンは二人で話し合っている。

 嫌だとかそういう雰囲気はない、むしろ快く送り出すために事後について意見を交わしている。

 

 さて、この辺りでカダイン遠征の目的を改めて脳内でまとめてみることにしよう。

 理由は2つあり、1つはガーネフの動向を知ること。

 あまり深入りは出来ないだろうがもうあと数年もすればメディウスは生き返り暗黒戦争が始まってしまう。

 そのための敵情視察が目的である。

 もう1つの理由は学院内の地理について正確に把握し隠し部屋なども含めて存在を明らかにすることである。

 

 暗黒戦争の際、学院にはグルニアのユベロ王子とユミナ王女が監禁されていた。

 正史でマルス王子がカダインに乗り込むのがわかっているので暗黒戦争のうちに救出することで俺がグルニアに上手く取り入れるようにするためである。

 カミュさえ寝返ればとりあえず英雄戦争フラグは1つ潰えることになる。

 メディウスが人間を憎む限り暗黒戦争は避けられない。

 だが、英雄戦争は元々ニーナがいつまでもカミュに対して未練タラタラだったこととアカネイア貴族の腐敗によってターバンが利用されたからである。

 つまり、英雄戦争を回避ないし形を変えることによりターバンの生存と救済を目標にするにはカミュとニーナはこの際結婚して構わないのである。

 許すかは知らないが最悪あのニーナにまともな政治が出来る気がしないのでこの際駆け落ちしても構わない。

 というかボアやティータには悪いがお隣の大陸にでも駆け落ちしていただきたいくらいだ。

 最もアカネイアとバレンシアはカダイン北にあるフリアの街でしか繋がりがないからそうなるかはわからないが。

 

「して、何故にカダインまで?」

「はっ、これからのオレルアンのため……そして、ハーディン様のために見聞を深めてより一層国のために働くためでございます。」

「ふぅむ、流石というべきか……」

 

 話し合いは終わったらしい。

 とりあえず聞かれた質問にはテキトーに答えてみた。

 昔から、というか前世の時から俺はこういう時にはそれっぽい答え方をする人間だったが……やはりというか、国と主君を想うからこそと勘違いしてくれたらしい。

 最終的な目標を考えた場合あながち間違ってはないが。

 

「で、いつ頃に旅立たれるのか?」

「今から5日後、ウェンデル司祭がカダインより参られます。その際にご一緒させてもらおうかと。」

「なるほど、確かにそろそろウェンデル司祭が来られるようになる時期であったな。」

「うむ、司祭も我が城に来るからには挨拶があった故にわしも承知しておる。では……オレルアン王国国王として軍師サトシに命ずる。カダイン魔道学院への留学をし、見聞を深め再びこのオレルアン城へと帰還せよ!」

「はっ!ありがたき幸せ!」

 

 まさかの王からの命という形で留学が承認されてしまった。

 反射的に頭を垂れその命を拝命する。

 ターバンはここで席を外し、俺も共に謁見の間を出ていった。

 

「しかし、遂にサトシもここから旅立つのだな。」

「いえいえ、これもすべてハーディン様が我らを開放し職と家を提供していただいたおかげです。これからも、ハーディン様へと忠義を尽くさせていただきますよ。」

 

 謁見の間から出た俺らは道すがらターバンと一時の雑談をしつつ廊下を歩いていた。

 ターバンが恩人なのは事実だし、ニーナやボア如きに人生を壊される謂れもない。

 オレルアン王が現在所持している命のオーブもその頃にはすべてを打ち明け封印の盾に収めるつもりであり、英雄戦争のキーになる封印の盾についても予め計画は立ててある。

 

 それから数時間後。

 昼食の時間に俺はザガロたちに夜俺の私室に顔を出すように伝言をお願いしたため、4人が座れるように部屋を片付けていた。

 そして約束の時間に4人はやってきた。

 

「どうしたんだサトシ、俺たちを集めて今度は何をするつもりだ?」

「今日はたまたま非番だったが、くだらない理由で呼ぶようなサトシではないだろう?」

 

 ウルフとザガロが口を揃えて俺に話しかけてきた。

 俺は全員に椅子に座るよう呼びかけ座ったのを確認してから決定事項を伝えた。

 

「次にウェンデル先生が来た時、俺は軍師としてのスキルアップのために1年間カダインに留学することが決定した。」

「えぇっ!?サトシはオレルアンを出るというのかい!?」

「嘘だろサトシ、俺達はハーディン様のためなら死んでもいいって誓ったはずだろ?我ら草原の民を奴隷の身分から解放してくれたのはハーディン様なんだぞ?」

 

 ロシェはこの話を聞いて驚き突拍子もない声を上げ、ビラクはなんか聞いたことがあるセリフを真顔で言い放った。

 まぁビラクのセリフは2部では言わせないつもりだ、ターバンの闇堕ちを回避させてみせるつもりだからな。

 

「だからこそハーディン様のために見聞を深めるんだよ。今はまだ平和だが、それに甘えて城で温々していてはいざという時に役に立てない。ビラク、ロシェ。ウルフにザガロも。俺たちは実戦で役に立てる実力をつけてハーディン様のために尽くそうじゃないか。すべての人を助け平等な世界を作るために。」

 

 俺は柄にもなく演説をした。

 元々ターバンは貧困や奴隷をなくし平等な国づくりをすることを目指している。

 俺も前世じゃそこら辺の問題とか切実だったしな、だからこそターバンの政治は期待してる。

 俺の演説に口を挟むヤツはこの4人には誰もいなかった。

 

「……そこまで覚悟しているなら俺たちは信じる他あるまい。ハーディン様のためにこの命を燃やすことは、俺たち5人の誓いだからな。」

 

 ウルフは目を閉じ、静かに呟くように言葉を出した。

 

「……だな。辛い時も苦しい時も俺たちは5人で乗り越えてきた。俺たちは騎士だからハーディン様のお側から離れるわけにいかないが、サトシならば外の知識もきっと蓄えてくれよう。俺たちがハーディン様のお側でサトシの分までお守りしよう。」

 

 ザガロもまた、同じように目を閉じて静かに決意を口にする。

 その表情は穏やかで、安心したように笑みすらうかべている。

 

「ビラク、僕たちもサトシに負けないように訓練して成長した姿を見せてあげないとね」

「そうだねロシェ、俺はみんなより経験が少ないから余計に頑張らなくちゃ」

 

 ロシェもまた顔を上げてビラクに話しかけ、ビラクも相変わらずの返しをロシェにしている。

 そうだよロシェは素のセリフなのがここ数年で判明している。

 だが、そうやって話をしていたら新たな来客が現れた。

 

「サトシ、ここにいたのか」

「ハーディン様!?」

 

 ターバンがログインしました。

 最近5人で活動しているとターバンが来ることが増えた気がする。

 しかし夜までターバン姿とはまた大変なことで。

 

「サトシよ、夜分遅くに申し訳ないが王が話があるそうだ。」

「へ?オレルアン王がですか?」

「サトシ、もう少し節度を弁えろ。」

 

 開いた口が塞がらない。

 あまりに情けない声を上げたもんだからウルフに注意されてしまったではないか。

 ターバンも詳細はわからないらしく、あまり失礼のないようになとしか他には伝えてくれなかった。

 しかし王様自らか……

 

「わかりました、王はどちらに?」

「どうも内密な話らしい、王の私室に来るようにとのことだ。」

 

 いや普通に何があるんだ。

 ターバンが無駄に真剣に語るもんだから怖すぎるって。

 ターバンにすら話せない内容の話とか不吉すぎるんですが。

 

「サトシ、行ってこいよ」

「ザガロ?」

 

 そこにザガロが話を持ち出した。

 話は終わりにして早く王の私室に行ったほうがいいと。

 流石に逃げるわけにも行かないしな。

 

「わかりました、ありがとうございますハーディン様。では私は早速。」

 

 そこまで言うと俺は部屋を後にした。

 ターバンも程なく出たらしく、後ろから足音が複数聞こえてきた。

 ビラクたちも解散したのだろう。

 俺はとりあえず王の私室に急ぐことにした。

 

 

 

「失礼します。」

「来てくれたか、すまないな夜も遅い時間に。」

「気にしないでください。それより、話とは……?」

 

 俺は王の私室に着き、扉をノックして自分だと告げた。

 王は自ら部屋の扉を開け、余程の話なのかと不安ばかりが襲いかかってきた。

 しっかりと礼節を弁えるよう、きちんと礼儀正しく部屋に入った。

 王の私室は当然初めて入るのだが室内はそこまで広くはなく流石に調度品はそれなりのを揃えてはいるがけして贅沢はしていないことが伺える程度でしかなかった。

 俺は部屋に入るなり王に話の内容を聞き出そうとした。

 

「とりあえず、そこに座りなさい。わしはお主に頼みがあるだけなのだから。」

 

 王に言われるがまま俺は席に着いた。

 机には茶菓子と茶が用意されており、用意したはずの使用人たちは既に部屋におらず二人っきりになっていた。

 普段は部屋を守るはずの騎士団員も人払いをされているのか今日は誰もおらず話を聞く人は他に誰もいない。

 

「わしが身体が弱いことは知っておるな?」

「はい、存じ上げております。確か妻には子供が出来ぬまま先立たれたことと王自らが病弱であり子供は無理だと……」

 

 それはゲームでも明かされている事実だ。

 オレルアン王がアドリア峠にある村でマルスに明かした事実そのままであり、そのために命のオーブを商人から買って命の糧としていたレベルである。

 その後マルスが命のオーブを受け取り封印の盾を完成させたため、間接的にオレルアン王も世界を救ったと解釈次第では取りようがあるわけだが……

 

「うむ、だが……今から言う話はハーディン及び当時から勤務していた兵士の中でもほんの一握りしか知らぬ話題。どうか他言はしないでいただきたい。」

 

 王は妙に話を引っ張っている。

 余程内密にしたい話なのか。

 歴史の裏に葬り去られた話題なのかもしれないが、ゲームの知識がある俺は構わず茶を啜っていた。

 ……最も、そこから語られた話で俺は盛大に茶を吹き出してしまったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実は、わしには死んだ妻との間に子供がおったのだ。」



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前日譚1 カダイン編入試験

王様の過去はあまりにも長すぎて1万文字は超えるわ掘り下げたらもれなく短編で数話くらいかけてしまうわそもそもまた数回書いたものが消えてしまうわで遅くなった上に過去話は後ほど短編で書こうと思いました。
代わりに新・紋章の謎の前日譚シナリオをベースに序章を追加しました。
そのため、今回よりタイトルも新・紋章の謎基準になります。
アリティア騎士団の第7小隊がそのままオレルアンズになったイメージになりましたがこれからもよろしくおねがいします。


「実は、わしには死んだ妻との間に子供がおったのだ。」

 

 は?マジで?あのオレルアン王にか?

 そんな話ゲームになかったぞ?

 どうなってるんだマジで、いやほんともう既に何か変な歴史改変おこしてない?

 ターバンが闇堕ちして王も子供が出来ないからマルスに国を託したとか言ってなかった?バカなの?死ぬの?

 まさに青天の霹靂である、そもそも妻がいた話もゲームにないし今どんなことになってるんだ?

 思わずリアルに茶を吹き出してしまった俺に対して王はそのまま話を続けた。

 

「驚くのも無理はない、最近来た兵士たちは知りもすまい。ハーディンを始めとした側近しか知らぬ事実だからな。では何故今まで隠してきたか……」

 

 俺はまさに固唾を呑んで話を聞いている。

 冷や汗が止まらない。

 口の中は緊張で今まさに茶を口にしていたにも関わらず既にカラカラになっている。

 王はそのまま話を続けた。

 

「あれは、アカネイア暦579年の時の話だ……」

 

 静かに、淡々と、まるで国会におけるかつての総理大臣のように語り始めた。

 

 

 ……話が長いんだよ小○純○郎。

 王様の話がクソみたいに長かったから要約すると、『オレルアン王には2人子供がいて、ちょうど俺がザガロたちと出会った時期に息子が拐われ母共々行方不明からの生死不明。

 そして、今から5年前に妻として貴族連中が勝手にくっつけた女との間に娘が出来るがハーディンの存在から政争に使われるのがオチだったために存在を秘匿させていた』という内容であった。

 ……どこのクリミア王国なんですかねぇこれ。

 でもヒゲが似合うダンディズムな王弟という共通点あるんだよなターバンとレニング様。

 まぁターバンはまだ王位継承権ないからレニング様とは違うんだけどさ。

 

「しかし最近になって離宮で匿うのも限界が来てな、誘拐されたことにして信頼出来る傭兵に預けたのだがアリティアに向かう途中にアドリア峠で消息を絶ったので探しに行ってほしいのだ……」

 

 王の願いはわかった。

 ターバンの兄だし仮にも自国の王からの願いは無下には出来ない。

 

「わかりました、私におまかせください。ただし、何があるかわかりません。数名の兵をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「構わない、明日ハーディンにもその旨を伝えておこう。人員はどうするつもりかね?」

「はい、気心の知れた特に信頼のおける兵士が4名います。王にもおわかりいただけるかと。」

 

 こうなったらあいつらも道連れだ。

 特にザガロとビラクはアカネイア戦記のエピソードがない分ここで実戦経験を積んでもらう。

 

「おぉ、彼らなら安心出来るな。聞けば先の遠征でもサトシの采配の下、彼らは獅子奮迅の活躍で山賊の首領を仕留めたとか。うむ、よろしく頼むぞ。」

 

 こうして俺は開放された。

 ターバンには明日伝えるらしい。

 俺は王様がやたら話が長いせいで眠くてたまらないため自室に急ぎ、ベッドに入るなりグッスリと眠っていった。

 

 

 

 翌朝。

 朝の日差しを受けて目が覚めた俺はゆっくりと朝食を取っていた。

 そこにいつもの仲良し4人組が現れる。

 

「サトシか、おはよう。」

「おはようサトシ。」

「サトシ、おはよう。」

「おはようサトシ。」

 

 ビラクとザガロの挨拶が一字一句同じなのに笑いながら俺は挨拶を返す。

 まだターバンからの辞令はないらしく話題はいつもの訓練の話になっていた。

 さて、俺はネタバレをするのは嫌いではない。

 というわけで俺からも話題にしようと思う。

 

「ところでみんな、実戦経験を積みたくはないか?」

 

 いきなり言うのも不自然なので遠回しに聞いてみる。

 

「ハーディン様を守ることに繋がるならば、俺はどんな戦もこなしてみせる。そうだろ、ザガロ?」

「もちろんだ、俺もハーディン様を守れる力は欲しいからな。」

「戦いは好きじゃないけど……僕もみんなと一緒に力になりたい。ビラクもそうだろ?」

「そうだねロシェ、俺たち4人はハーディン様の剣となり盾となる。そう誓ったじゃないか。」

 

 約1名バカの一つ覚えみたいに原作セリフ改変しかしないようなホモが一人いるが構わず話を続ける。

 

「みんな、俺についてきてくれ。俺たち5人の武者修行の旅、しかもオレルアン王自らのたっての願いであり勅命だ!」

「「「「な、なんだって!?」」」」

 

 全員驚きを隠さず声を上げた。

 ちなみにターバンから改めて辞令が出ると王様は約束している。

 原作18章の峠の戦いのことがあるから若干賭けではあったが……やはりターバンの威光は強かった。

 ウルフとか俺は死んでもハーディン様と共にあるんだ!とか叫ばれてもおかしくないからな。

 

「既にハーディン様にも許可を得ている。後ほどハーディン様自ら指令を下されるだろう。ここらで、俺と共にハーディン様を守れる力を身に着けてほしい」

 

 実際、荒療治ながらこのまま平和にオレルアンで暮らしていてもいずれアリティア軍に遅れを取り、ターバンならまだしもビラクなどはただの足手まといになる。

 そういやリメイク仕様なら心配ないザガロとウルフはいいがビラクの技とロシェの速さは成長率が悪かったな。

 そこも今回の遠征できちんと仕上げておこう。

 目指すはカミュ率いるグルニア黒騎士団だ。

 そういや部下のロベルトだかライデンだかベルフだかはゲームでも成長率悪くなかったしな、あいつらに負けないくらい鍛えてやる。

 

「……やろうみんな。俺たちはハーディン様の為なら死んでもいいと誓ったはずだ。ビラク、ザガロ、ロシェ、いいな?」

「あぁ、そして俺たちがハーディン様を支えられるようになろう。」

「俺はハーディン様のことが好きだ、そんなハーディン様を支えられるように俺たちも頑張ろう。」

「戦いは好きにはなれない……けど、オレルアンの皆が笑って過ごせるよう、守る力を僕もつけるよ。」

 

 皆、決意を固めてくれたようで何よりだ。

 未来を知ってる俺がいるんだ、ここまで来たら影の軍師としてターバンも死なせやしないし出来るならアカネイアの暗黒皇帝としてではなくもう一人の英雄王としてクロムやリズたちの時代まで語り継がせてやる!

 

「次にウェンデル先生が来るのは4日後だ。訓練は休む訳には行かないが支度もあるしウェンデル先生自身も数日は滞在される。その間に支度は済ませてくれ。ルートはウェンデル先生に打診するつもりだから気にしないでほしい。カダインには1年滞在予定だからその間はカダインで訓練と行こう。」

 

 俺はカダインでの予定を予め決めていたのでウルフたちに適切な訓練日程を伝えた。

 砂漠での行軍訓練や各自の弱点の克服、それとDSなら闘技場も確かあったので闘技場での実戦も視野に入れてメニューを組んでみた。

 そういやマリクは主力だったから当然として、三井……エルレーンも守備が強かったな。

 俺ははっきり言って受けたら死にかねないし、課題として考えておくか……

 

 そんな話をしていたら兵士が一人部屋にやってきた。

 ターバンの指示で皆を迎えに来たらしい。

 そういやだいぶ長く話し込んでしまったな、俺も魔法の訓練くらいしないとな。

 

「悪いなみんな、さぁ行ってくれ。俺は魔法の訓練をして来るから。」

 

 俺は軍師なので通常訓練には参加はしない。

 参加するのは行軍訓練くらいなんだが、正直オレルアン兵のホースメン部隊が中々練度低いんだよな。

 グルニアも五十歩百歩とはいえやはりオレルアンといえばの強みが欲しいし、暗黒戦争に間に合えば付け焼き刃でも強化訓練くらいするか……

 そんな感じで時は流れ、あっという間に4日間が経過した。

 

 

 

「こんにちは、サトシ。では今日は……」

「ウェンデル先生、まずはお話が。」

 

 俺はここ数日の動きをまずはウェンデル先生に伝えた。

 カダイン留学と護衛のザガロたち、オレルアン王のことまですべてを伝えた。

 それとウェンデル先生なら大丈夫だと未来予知という体で暗黒戦争がこれから起きる旨も伝えてみた。

 これは、未来予知の力をカダインでなら伸ばせないかとウェンデル先生に判断させるためなのとあわよくば事情を把握するガトーが接触して来ないかを期待しての発言である。

 

「なるほど……では、試験をしましょう。合格したらカダインへと連れて行きます。だが、行くからには私も今までと違い一生徒として扱います、いいですね?」

「はい、よろしくおねがいします!」

 

 こうして俺はウェンデル先生の試験を受けるために城の外へと出ていった。

 ちなみに行きすがら説明を受けたが筆記試験は今晩作るので先に実技試験となった。

 いつの時代でも学校のテストはだるくてめんどくさいがやむを得ない。

 ちなみにウェンデル先生が滞在なさるのは5日間。

 初日の今日は実技試験だが筆記試験は2日後。

 採点と合否判定に1日費やして4日目の夜が結果発表、最終日が準備と出発という流れだ。

 ちなみにオレルアン城はいつも昼間に出発しその日はオレルアン領の村で夜を明かすらしい。

 これは、アカネイア領内の国勢が原因だ。

 レフカンディ侯は暗黒戦争時にお家騒動で動けないままアカネイアが敗戦したことを考えると今時期はもうキナ臭い何かがある。

 サムスーフ侯はデビルマウンテンのサムシアンを放置するような身分な上にドルーアに与した時点で黒。

 アドリア侯はあのラングが侯爵の時点で色々お察しである。

 ディール、メニディはそれぞれミディアとジョルジュの実家で比較的マシではあるがオレルアンからは程遠い場所なためぶっちゃけ地理的にアカネイア入りに関してだけなら俺たちには関係ない。

 というか、メニディはまだグラとの国境付近だからまだしもディールはアカネイア王国南部、ワーレンよりも遠いしパレスには行かないから方角的に真逆に近い。

 また、地図を見るだけならオレルアンとカダインは隣り合っているが2つを隔てる険しい山岳地帯がある。

 2000年程未来に当たるクロムたちの時代ではフェリア王国としてあの辺りを自由に行き来も出来ていたが少なくともマルス王子の時代にはその直通ルートはまだ開拓されていない、このルートは除外になる。

 つまり、必ずレフカンディ領を通るし最短ルートだとアドリア峠を抜けてグラとアリティアを経由することになる。

 そういやアリティアといえばマリクもそろそろ留学していてもおかしくないな。

 マリクと同期とかありそうだから怖い。

 

 閑話休題。

 色々考え事をしていたら実技試験の会場になる城外の平原についた。

 本当に何もない平原にオレルアン兵と思しきソルジャーが2人いた。

 狼騎士団は確かにソシアルナイトとホースメンが主力だが城内警備のアーマーナイトやソルジャーの部隊もきちんとある。

 ユグドラル大陸に行けばレンスター王国が誇るランスリッターにだってゼーベイアとか言う仲間にするのがクソみたいに難しいオッサンだっているんだから当然である。

 とにかく、そいつらがてつの槍を握って待ち構えている。

 

「城の警備兵をお借りしました。今からあなたには彼らと一人で戦ってもらいます。試験とはいえ気を抜くと怪我ではすみませんからね?」

 

 まぁウェンデル先生と戦わないだけマシか。

 ウェンデル先生が相手だと手加減込みでも勝てる自信はない。

 それに、槍歩兵程度に遅れをとっていてはとてもこの先長い暗黒戦争を戦い抜ける気がしない。

 

 

「わかりました、ではよろしくおねがいします!」

 

 こうして試験は始まった。

 少し距離はあるか、ファイアーの書を装備して距離を詰めていく。

 当然ゲームじゃないので敵もこちらに向かってきている。

 そしてお互いに距離を詰めていったがこちらは魔法のファイアー、初動はやはり攻撃範囲の差で俺の方が早かった。

 ファイアーの書で発動した火の玉は的確に命中するし怯みもした。

 そのまま俺は追撃を仕掛ける。

 速さはこちらが上、ソルジャーの動きから察した俺は続けてファイアーを使う。

 伊達に今まで訓練してきたわけじゃない、俺は戦える!

 ファイアーを2回も食らったソルジャーは沈黙し戦闘不能の意を示した。

 しかし俺は油断せずもう一人を向いた。

 もう一人はじっと動かずカウンターを狙っているのか隙がない構えをして立ち尽くしている。

 恐らくゲーム的には動かない敵将タイプなのだろうか。

 このまま待っていても埒があかない、俺は意を決して攻撃範囲まで近づいていった。

 

「俺はオレルアン城守備部隊のビッグスだ。今やられたウェッジの分までサトシ、貴様の実力を試してやる!」

 

 どこのフ○イナルファ○タジーだよ!

 敵の名前に心の中でツッコミを入れながらもファイアーを喰らわせた。

 しかし、いくらソルジャーとて上官らしい。

 一発目は躱されてしまった。

 

「こちらから行くぞ!」

 

 ビッグスはそのまま槍を投げてきた。

 手槍か!何とか回避するがそのまま追撃を喰らわせる。

 ウェッジよりは強いらしい、肩で息をするも戦闘不能には出来なかった。

 

「ぬぅん!!」

 

 ビッグスが手槍を更に勢いよく投げてきた。

 交わしきれず手傷は負うがターバンのシゴキが効いた!

 そのまま顧みずファイアーを再び発動させる。

 火の玉はビッグスの身体を包み込み、彼もまた地に伏した。

 そのまま彼から『参った』と降参宣言が出され実技試験は終了した。

 

「2人共ありがとうございました。」

 

 ウェンデル先生がリライブの杖を振ると2人の傷が癒えていく。

 ちなみにビッグスの方が重症だったためビッグスから手当をしている。

 

「サトシ、成長しましたね。魔法は上手くコントロール出来ているみたいだ。このように魔法は上手くコントロール出来れば戦いでも……」

 

 また先生の長い説教が始まった。

 戦いの術を教えはするがウェンデル先生はガトーの教えに従い争いの為に使うなだのなんだのとまた説教を受けてしまった。

 

 それから先生はオレルアン城での仕事があるため自由時間になった。

 俺は再び机に向かい、何年かぶりの試験勉強に取り掛かるのであった。

 試験勉強、頑張るぞ。

 元が学生だったので懐かしさを感じつつも俺はアカネイアの歴史を再び、今度は試験勉強のために自主的に学び直すのであった。




ビッグス
ソルジャー Lv:3
最大HP:20
力:5
魔力:0
技:3
速さ:3
幸運:0
守備:6
魔防:0
武器レベル:槍D

武器
てつの槍
手槍

オレルアン守備部隊所属のソルジャー、部下はウェッジ。
名前の元ネタはご存知ファイナルファンタジーシリーズから。
今回は新・紋章の謎の前日譚1のオマージュとしてジェイガンのポジションとして参戦。
オレルアン王の近衛兵で一応暗黒戦争の際にオレルアン王を守っている設定。
今後サトシたちの能力のまとめ方については、支援会話をメインとした上で別小説にまとめようと思います(設定メインだと規約違反の可能性が出てくるので。)
また、オレルアン王の過去は前書きにもチラッと書きましたが別途小説を投稿しようと思いますので気になる方はよろしくね。


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前日譚2 オレルアンズの旅立ち

また1年くらい失踪しましたが再開します。
戦闘はほぼスキップなんだ……すまぬ。
あとまた他作品キャラがオリキャラ扱いで参戦、クロスオーバータグつけようかなそろそろ……キャラは基本的に原作キャラ以外はノリと独断によります。


「サトシ、あなたは本当に素晴らしいですね。まさか満点を取るとは……約束通りカダインに共に参りましょうか。」

「ありがとうございますウェンデル先生!」

 

 単刀直入に言おう。

 テストは確かに難しかった。

 てかあれ高校入試レベル軽く超えてたぞ、カダイン魔術学院は早○田大学とか慶○義塾大学とかじゃないんだからさ……

 満点取れた理由?数学とか英語がないからさ!

 難易度は高かったが科目が地理、戦術、魔法基礎ではせっかくの高難易度も型なしである。

 何年ターバンと地理や戦術磨いたと思ってる、特に地理は原作知識豊富な俺にとってはサービス問題ばかりであった。

 魔法基礎に関しても今まで教わったことしか問われなかった上に数も少ないため問題はなかった。

 そして、そもそも俺はかつて学生時代においての得意科目は地理も含めた社会科と国語……英語も平均以上は取る、ガチの文系男子だったのだ。

 昔は勉強嫌いだったけど、改めて勉強することの意義を知った気がしたよ……

 さて、こうして俺のカダイン行きが確定したことでいくつか挨拶をしなきゃいけなくなった。

 当然直属の上司であるターバンと、オレルアン王にである。

 ザガロたちの支度もあるし、今夜は忙しくなりそうだ。

 

 というわけで、まずは訓練場にやって来た。

 話を聞いた限り、ターバンは最後にウルフたちを徹底的にしごいていたらしい。

 ウルフたちはターバンからも信頼され期待されていたらしい、今回はザガロとビラクもいるよな?

 訓練場に入ると、時間も遅いため既に訓練が終わったところらしく、皆で片づけをしていた。

 

「おぉ、サトシではないか。ウェンデル先生の試験はどうだったかね?」

「ハーディン様のおかげで無事、満点を獲得して合格をいただきました。」

「おぉ、それならば良い。カダインに行っても励むんだぞ?」

「はい!!」

 

 ターバンに話しかけられまるで修業を終えたク○リンのようにハキハキと返事をした。

 ……一応ターバンへは礼儀弁えてるからな?オレルアン王は知らん、王様が社長とするならターバンは所属部長みたいなもんだからな。

 礼儀は当然だが直接的には怖くもない。

 

「あ、サトシお疲れ様。試験はどうだった?」

「バッチリ!みんなでカダインへ行くぞ!」

 

 ロシェがいち早く気が付き俺に駆け寄る。

 ウルフたちも続き、話を聞けばやる気を滾らせている。

 

「カダインでも修業を重ねてハーディン様を守る剣となり盾になるぞみんな!」

「「「「おー!!!」」」」

 

 ターバンをダシにして4人を鼓舞する。

 人間何か目標がないと強くなれんからな、やる気は引き出させるに限る。

 俺は魔道士として前線にも行くが基本的にはマネージャーだ。

 某アイドル育成ゲームで言うならプロデューサーさんだ。

 というわけで、こいつらを育成という『プロデュース』を徹底的にしてアベルやカインを(笑)にしてやる勢いで行動している。

 ある意味、俺の中ではもう既に暗黒戦争は始まっているのだ。

 実際ガーネフは今頃闇堕ちしてメディウス復活に動いているだろうしな。

 

 話が長くなったがその後は訓練場を出てオレルアン王に改めて報告をした。

 オレルアン王との話は今更語るまでもないだろう。

 王様の御落胤を探す話になり、請け負った。

 そして翌朝、朝から5人で集まった俺たちはウェンデル先生を交え出発前の会議を行った。

 会議とは言ったが朝食を摂りながらの歓談みたいなものである。

 旅路について説明し、王様の頼みもあるためアドリア峠からグラ、アリティアを経由してカダインに行くことになった。

 話が終わり、夕方はオレルアン領内の村に泊まることもあるために俺たちは午前中に支度をし昼食を取った後出発と相成った。

 そんな昼食だが最後にターバンも交えて食事をしていたら王様もやって来て昼食に混ざりだした。

 

「サトシ、そしてウルフたちよ。お前たちが1年間成長してきた姿を見るのを楽しみにしているぞ。」

「わしの願いも吉報を待っている、気をつけてな。」

 

 それが、ターバンとオレルアン王から受けた出発前最後の言葉であった。

 ウルフたちも真面目に返事をした、俺も当然である。

 

 

 

「では、参りますよ皆さん。」

「よろしくおねがいします、ウェンデル先生!」

「我らも行くぞ、ハーディン様のために!」

 

 こうして皆に見送られ、俺たちは先生と一緒に初めての国外への旅に出るのであった。

 カダインへはアリティアを経由するため1ヶ月程度の旅である。

 まずはオレルアン南部にある村を目指して行軍していく。

 ウェンデル先生は城から借り受けた馬車に乗り込みそれに合わせてウルフたちが馬を走らせる。

 ……当たり前だが徒歩で従軍すると暗黒戦争や英雄戦争みたいに1年くらいあっさり経ってしまうからこればかりは必要経費だ。

 それに馬車の御者は今は引退して指導役に回った元狼騎士団の人なので費用もあまりかかっていない。

 というか、指導役なだけで騎士団自体には在籍している英雄戦争の時のジェイガンみたいな立場の人なので賃金の概念すらない。

 

「しかしウェンデル様、周りが私たちのような一国の騎士団ばかりで疲れやしませんか?」

「大丈夫ですよ、それにカダインへ戻るための護衛ですから仕方ありませんよ。」

「そりゃあ良かった、何せ私も身体がキツくてねぇ……ブレナスク様と戦ってた時が懐かしいよ。」

 

 御者はウルフと同じ紫の髪を撫で、風を感じながら馬を走らせていく。

 先頭にビラクとロシェが並び、真ん中に俺と先生が乗った馬車、後ろがウルフとザガロが控える隊列である。

 御者は気のいいオッサンであるが弓の腕はオレルアン王が太鼓判を押す腕前で、現在頭角を表している後の大陸一、ジョルジュにも負けはしないと自慢していた。

 

 さて、そんな俺達だったがアドリア峠に行くにもまずはレフカンディ領を少し通り過ぎる必要がある。

 烈火の剣でエリウッドたちがラウスに行くためにキアラン領を通り抜ける必要があるのと同じである。

 そんなレフカンディ方面へ向かうオレルアン街道を進む俺たちだったが、その先にある村を前にしてこの旅が如何に過酷なのかを思い知らされる異変が起きてしまった。

 

「さて、そろそろ泊まる予定であるオレルアン街道の村に着きま……ん?」

「サトシ、大変だよ!」

「どうしましたか?」

「ロシェ、何かあったのか?」

 

 オレルアン城を出てしばらく走った先にある村。

 そこから煙が上がっていたのである。

 それにロシェが気が付き馬を止めたのである。

 

「村の方から煙!多分山賊が暴れてる!」

「ふむ、困りましたね……サトシ、どうします?」

「スルーするわけには行きませんよ、みんな、戦うぞ!」

 

 そう言って俺は馬車からファイアーの書を片手に降りて村の方へ進もうとした。

 モタモタしてたら時間も夕方、夜になればこちらが不利になってしまう。

 先手を取る、そう考えていたら馬車から先生も降りてきた。

 

「私も出ましょう、その方が早い。」

「先生!?」

「戦いは好みません、ですが人々を守るのはあなた方騎士の使命のはず。それに私は魔法だけじゃありません。魔法故に近接戦闘は苦手ですが治療の杖が使えます。あなた方が怪我をしたら治療の杖で治療して差し上げましょう。」

「治療なら荷台に確かライブの杖が1本積んであったはずだ!元々は輸送隊用の馬車だからな、軍のものだから遠慮なく使ってくれ!」

 

 どうやら元々輸送隊用の馬車だったらしい。

 先生あんたジェイガンなのかよ、いや最初から上級職的な意味で。

 ちなみに話を聞く限り先生はスーファミ仕様で司祭みたいだ。

 まぁリメイクで何故賢者にされたか知らんけど本職から司祭だしまぁ聞かなくても予想はつく。

 御者のウィンドルさんからライブの杖を受け取った先生は俺と馬車から降りる。

 

「サトシ!」

「ザガロ!敵はどうなんだ?」

「既にビラクとロシェが交戦してる!山賊団の一部がこの辺りに略奪しに来ただけみたいだからとりあえずは何とかなりそうだ、だがこの後は元締めを倒さないと村が後々危ないかもな。」

「それについてはオレルアン城からまだそう離れてない、伝令を村人にお願いして騎士団を派遣すればいいだろう。」

「わかった、俺たちは今はあいつらを蹴散らすぞ!」

「おう!」

 

 

 

 こうして俺たち5人にウェンデル先生を交えた6人で山賊をしばくことになった。

 数はざっと10数人程度。

 何となく原作ゲームのイメージで例えるなら聖魔のイム村に現れたバズバ山賊団の一部くらいと見た。

 この程度なら今の俺たちでもまぁ何とかなるだろうか。

 頼れるターバンはいないが代わりにウェンデル先生という回復役がいる。

 それに先生はブリザーの書を持っているから自衛手段もバッチリだ。

 更に言うなら、見たところ以前孤児院跡で戦った山賊よりも練度が低いのも訓練の成果か山賊たちの斧の構え方などからわかるようになっていた。

 勝てる、しかし慢心はせず確実に殲滅する。

 軍師の俺は例えるならばチェスのプレイヤー、如何に駒を減らさず敵の駒をすべて取るか。

 俺の戦いは、既に始まっていたのであった。

 

「やろう、ぶっころしてやる。」

「まずおまえからちまつりにあげてやる!」

「ヒャッハー!おれがいちばんのりだぜ!」

「ええいひらがなばかりで頭悪そうな奴だな!お前ら如きファイアーで充分だ!」

「サトシ、加勢するぜ!」

 

 ちょっとメタいセリフを吐いてしまったな。

 そしてザガロが援護に割り込んできた。

 なんだかんだザガロは俺とよく組むことが多い。

 ウルフとのBLはどうしたんだ2Pカラー。

 しかし、敵の息の荒さと来たらたまったもんじゃない。

 くさい息で攻撃するのはどこぞの最終幻想の世界だけにしてくれよ……

 などと雑念まみれだったがそれでも敵は減っていた。

 というか、ドルーアのマムクート軍団やグルニア黒騎士団、マケドニア竜騎士団なんて強豪とドンパチやって勝利せなあかんのにこんないかにもレベル1です山賊数人に苦戦なんかしてられない。

 山賊の斧は軽く回避し、確実にファイアーを当てる。

 それだけを意識し全集中。

 やがて山賊はリーダー格だったやつだけになった。

 ちなみにウェンデル先生は先に村へ行っていただいた。

 村の怪我人などは先生しか治療出来ないし、ウルフの馬に同乗して村に入っている。

 ビラクとロシェがそれぞれ村を担当、俺とザガロが馬車と村の間を文字通り掃討している。

 

「ちくしょう、オレルアン騎士団だと?聞いてねぇよ、死にたくねぇ……が、敵は討たなきゃなァ!」

「大人しく逃げていれば死なずに済んだのに……ファイアー。」

「うわっ!魔道士とは厄介だな……まずテメェだ、喰らえ!」

「そうはいかん!」

「へっ……?うわらば」

 

 俺にヘイトが行ったところで山賊の斧が振り上がる前にザガロの矢が山賊の眉間に突き刺さった。

 そこに槍が飛んできて後頭部に更に矢が刺さり、最後にまたザガロの矢。

 なんか馴染みが深い断末魔の叫びと共に倒れて最後の山賊は死亡した。

 うん、オーバーキルって怖い。

 

「無事か?」

「こちらも終わった、完全勝利だな。」

「サトシ無茶しすぎだよ……大丈夫?」

「百発百中だ、ありがとなサトシ。」

 

 振り向けばみんなが笑っていた。

 みんな駆けつけてきてくれたらしい、山賊もここにいたのは残らず始末したらしい。

 

「ありがとう、村に行こう。」

「そうしますか、軍師殿ってな。はははは!」

「あっ、からかうなよザガロ!」

 

 俺たち5人は暫し幼少期のように笑いながら、先生が待つ馬車に戻っていった。

 

 

 

「お疲れ様でした、怪我はありませんか?」

「大丈夫です!これでも騎士の訓練に付き合わされたんです、まだまだ余裕ですよ。」

「それは頼もしい、これから期待していますからね?」

「はい!ウェンデル先生、よろしくお願い致します!」

 

 まずは先生に報告。

 ホウレンソウは大事だからね。

 ちなみにビラクとロシェが先手を打ったので被害は最小限に食い止められ村人の死者も少なかった。

 怪我人は多数いたがそれも先生がライブの杖で治療したため無事である。

 しかし村の一角は既に燃やされ、早々と逃げ出せた子供たちくらいしか助からなかったのが悔やまれる。

 

「なぁ騎士様、ちょっといいか?」

「ん?どうしたんだ?」

 

 先生と事後処理について話をしていると逃げ出せたらしい子供が1人やって来た。

 

「アンタたちオレルアン騎士団なんだろ?オレはロニっていいます。騎士団の皆さんのおかげで俺はカイルや村のみんなと逃げ出せたけど、父さんたちは俺たちを人質に取られたせいで殺されちまった。オレはもっと強くなりたい、みんなを護りたい。頼む!オレも連れて行ってくれ!」

 

 少年はロニと名乗り、頭を下げた。

 白髪に短髪に日焼けした肌。

 おかしいな、FEじゃないゲームで見た気がするんだが……

 

「ふむ、どうしましょうかサトシ。」

「先生、俺が未来を占える話をしましたっけ?」

「いや、初耳ですね……なるほど、それがあなたの戦う理由ですか。」

「はい、予知夢ってヤツですね。とはいえ俺が予知出来るのはもっと未来の話……そこでこの大陸全土でまた戦争が起きます。かつての英雄アンリの時代のように……」

 

 俺はいい機会だから先生にだけはそっと予知夢の形で未来を伝えることにした。

 メタい理由だが仲間は増やしたい。

 ターバン闇堕ちルート回避のためにはまだ手数が足りないからだ。

 こんな場所でこんな少年と出会えたのも文字通り『運命』なのかもしれない。

 なので、味方にしたかったのだ。

 

「ロニ、騎士団には入れなくてもいいか?」

「強くなれるなら、カイルたちを守れるなら大丈夫です!」

「わかった、俺はサトシ。戦いはどうだ?」

「父さんの真似事だけど、斧が使えます!」

「戦士か、俺たちに足りない武器だ。俺個人の部下として一緒に強くなろう。」

「ありがとうございます!俺、スタンさんのためにも全力で頑張りますので!」

 

 テテテテーン♪

 外伝の仲間入りの効果音が聞こえた気がした。

 ロニは俺個人の部下として連れて行くことにした。

 カイルとかスタンとか、聞き慣れた名前しか聞こえなかったが村の名前、クレスタとかじゃないよな?

 

「おーいサトシ!村人たちが飯をご馳走してくれるって!」

「わかった、行こうぜロニ!旅立ちの前にカイルくんたちにも挨拶しなきゃだしな。」

「はい!よろしくお願いします、サトシさん!」

 

 こうして、新しい仲間を手に入れた俺は……ターバン闇堕ち回避ルートへの道を改めて歩みだしたのであった。

 そして……

 

 

 

「……というわけで、村に騎士団を派遣していただきたい。」

「わかった、ビラクよ。よく伝えてくれた、すぐに狼騎士団を派遣し警備に充てよう。明朝案内を頼めるか?」

「もちろんですハーディン様。我々も村まで案内した後合流して再出発致します。」

「気をつけるのだぞ。」

「はっ!」

 

 深夜のオレルアン城。

 ビラクは伝令役として先んじてオレルアン城に帰還してターバンと面会していた。

 村に泊まる間に伝令を俺がビラクに願い、単騎で走ってもらったのだ。

 その後翌日、村で騎士団を先導してきたビラクと合流してロニたち子供たちの親の墓を1日かけて作った更に翌日、カダイン目指して旅に出たのであった。

 

「スタンさん……ルーティさん……それにカイル。俺、強くなって帰ってくるからな。行ってきます、みんな。」

「ロニ!もういいか?」

「はい!よろしくお願いします、サトシさん!」

 

 ロニと俺の長い付き合いが、今始まった。

 未来はここにある、ターバンが英雄と呼ばれる新たな未来が、ここから、始まったのだった。




ロニ
戦士Lv:1
最大HP:22
力:6
魔力:0
技:2
速さ:2
幸運:4
守備:5
魔防:2
武器レベル:斧E

武器
てつの斧
手斧

村で仲間になった村人の少年。
年齢設定が元ネタよりかなり若く設定(12歳、ビラクの2つ下。)
ポジションは聖魔のロス、でも見習い戦士も村人もアカネイアには存在しないから戦士。
山賊に人質にされたせいで父親を始めとした大人たちが全員殺されてしまったことから強くなりたいと願い同行を申し出る。
サトシの部下は村人キャラにしたいと考えていたが作者がちょうどテイルズ熱が再燃しておりデスティニー2やってたのでコラボ参戦。
急遽書き換えてたのはナイショ。
またちまちま投稿はじめます


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前日譚3 峠の急襲

もはや年に一度の更新。
エタってないよ……作者が引っ越しや転職で忙しかったんだよ……あと合作始めていた。

今回かなりテイルズオブデスティニー2のネタが含まれるためクロスオーバーが苦手な方は注意してください。


 

「旦那ァ、もうすぐアドリア峠の麓に差し掛かりやすぜ。」

「ありがとう、近くに村があるはずだからそこに寄ってくれ、今夜はそこで休んで明朝に改めて峠を越えよう。」

「わかりやした、んじゃあ行きますか!」

 

 ロニの村を経ってから数日が経過した。

 俺たちオレルアン視察隊はカダインに向かうべくアカネイア王国領を通過している。

 なんで視察隊かって?ビラクたちは入学しないからだよ!

 そんなわけで俺はアカネイアのレフカンディを経由してアドリア領までやってきていた。

 

「しかし、本当にこれが近道なのか?」

「ザガロ、俺を信じてほしい。特にこの峠道は後に使う日が来る気がするんだ。」

「また、例の予知夢か?」

「あぁ、俺たちオレルアン騎兵隊はとある軍を滅ぼすためアドリア峠で敵軍を横から奇襲するんだ。まぁ、いざというときに向けた模擬訓練みたいなもんと思ってアドリア峠に行こう。」

 

 原作知識を実はこのように予知夢という形で最近ザガロたちに話をしていた俺は原作知識を使ってアドリア峠へと向かった。

 ウェンデル先生のカダイン行きルートとしても、覚醒の時代と違ってオレルアンから直接西側に行くことが出来ないために最短ルートの1つなのでそのようになっている。

 

「最近は物騒な噂も聞く、何かあってからじゃ遅いし俺はサトシを信じるよ。」

「ビラク……ありがとうな。」

「気にするなよ、俺はハーディン様のためになりたいだけなんだから。」

 

 ビラクから温かい言葉を聞いたところで村へと馬を走らせ……いや、俺やロニ、ウェンデル先生は馬車だから身を任せていった、かな。

 そんなこんなで日没までには村へと辿り着いたのであった。

 その間にロニの身の上を聞いていたんだが、村の名前がクレスタだったり育ての母親が元盗賊だったり育ての父が超がつく寝坊助な剣士だったり村の近くに原作ではオレルアンにあると言われなかったであろう遺跡があったりしたんだが……

 まさかタリスの北くらいにダイクロフトが墜落してたりしないよな?

 そんなことしたらゲームがファイアーエムブレムじゃなくなるからないと信じたい。

 しかもガーネフなら悪用しかねん、アカネイアで天地戦争とかやられたら困るぞ。

 よし!ここはファイアーエムブレム紋章の謎の世界だ!

 

 

 

 そうして迎えた夜の村。

 ザガロとウルフは警備、ビラクはなんか公園に行ったらしいが紋章のビラクルートなのか?

 ロシェは日記を書いているらしい、たまたまロシェの部屋に行ったら日記らしき書物を隠されてしまった。

 そしてウェンデル先生は俺の前世知識という名前の告げ口をしたため、ロニに以前俺が受けたのと同じ魔法適正検査をしていた。

 後から聞いたが案の定ライブの杖が使えたらしい、やはりヒールを使うのか。

 覚醒の時代にはバトルモンクなる斧と杖を使うクラスがあるし、2000年くらい先駆けてしまうかもしれないな。

 

 そんな感じで俺はというと暇なので酒場で情報を集めることにした。

 まだ子供とはいえそこまで夜更けでもない、現実時間にしたら季節も考慮するなら夜7時程度である。

 そんなわけで酒場に入り、酒を飲む年齢ではないためミルクを頼みながら店主と話すことにした。

 

 

 

 酒場でマスターに金を支払い最近のアカネイア大陸の情報を集めているとやはり闇の魔導師の話が出てきた。

 あくまでも噂話だからと笑っているがやはり原作同様ガーネフが闇のオーブで闇堕ちしてドルーア建国のために暗躍しているらしいな。

 2年後にはドルーア建国だ、ガーネフもカダインにいないし今はミロア大司教の時代か。

 リンダを抱き込めるなら抱き込みたいが抱き込んだ結果オーラが手に入らなくなるのはまずいか。

 

「しかし兄ちゃん、どこに行くんだ?」

「アリティアに行くんだよ、アリティアからカダインに向かう。」

「アリティアかぁ、気をつけなよ?最近アリティアへの峠道に盗賊が出てくるらしい。中々手練でなんでも『紅の剣士』って用心棒が……」

 

 ブ〜!!!

 勢いよくミルクを吹き出してしまった。

 ナバールがいるのかよ!いくらなんでもナバールのキルソードとか一撃必殺でビラクの首が吹き飛ぶ未来しか見えねぇ。

 てかナバールこんときここにいたのかよ!

 まぁでもアイツサムシアンにいる前はパレスでレナさんと……いやそれならサムトーの可能性もあるのか、アカネイア戦記のナバール弱かったし……

 しかし年齢的にサムトーはまだ剣闘士時代のはずだしよくわからなくなってきたな……

 

 

 

 こうして翌朝村を出た俺たちは、昼過ぎにアドリア峠へと差し掛かった。

 アドリア峠。

 時系列的に今から12年から13年後に俺たち……いや原作の話だから俺とロニはいないしウェンデル先生がアリティア側になるんだが、狼騎士団がパレスに向かうアリティア軍を強襲し敗北する戦いが始まる。

 一応うちの王様が峠の小さな村にどうやったか先回りしていて、マルスが村に行くと退去命令下してくれるんだが……

 人によってはスーファミ版だとロシェ以外全滅させちまうんだよな。

 いずれにせよ、そんな峠を直接訪れる機会ができて良かった。

 アリティア軍を全滅させたら暗黒竜メディウス復活でどの道ゲームオーバーだし、ターバン闇堕ちが防げなかったということで目的自体が達成出来ないバッドエンドだから英雄戦争自体起こすわけにはいかないんだが。

 

「峠は険しい。もう昼も過ぎやしたし、今日はこの先にある村で休みやしょう。砦はアカネイアの連中がいやすし、何よりここはあの悪名高いアドリア侯爵領。身分が知れれば何を言われるかわかったもんじゃあありやせんよ。」

 

 案内役も務める御者のウィンドルの提案に乗り、ちょうどアリティアへの道のりにある村へと向かうことになった。

 ちょうど今は原作紋章の謎で狼騎士団が布陣しているあの場所である。

 

「……金目のものを置いていって貰おうか?」

 

 そこで謎の一団が現れたのであった。

 当然俺たちは敵襲だと知りビラクたちも戦闘態勢に入る。

 

「噂に聞く盗賊団か!」

「グヘヘヘ……俺たちを甘く見るなよ?」

 

 やけに余裕綽々とした盗賊たち。

 ふと俺は仲間になったばかりのロニを見る。

 

「初陣か、やれるか?」

「わかってますよサトシさん。男を磨くなら強くなりてぇからな!」

「それなら心配いらないね、だけどまだ子供だから俺から離れないでくれよ!」

 

 こうして俺はロニを守るように立ち、ビラクとロシェが前線にいてザガロとウルフがカバー出来るように距離を取って警戒している。

 後ろの馬車はウェンデル先生が控えているから心配はいらないだろう。

 最悪ウェンデル先生ならファイアーの書やブリザーの書が馬車にあるしウィンドルがやられることはない。

 てかあの馬車完全に扱いが封印の剣にいたマリナスだよな……

 

「グヘヘヘ……野郎ども!女はいねぇ!全員皆殺しにして金目のものは全部奪ってしまえ!」

「油断するなよ、オレルアンの山賊みたいにはいかない!」

 

 山賊も俺たちも布陣し、戦いが始まった。

 敵はおよそ20くらいだろうか。

 しかし敵のあの余裕と村の噂が気になる。

 

「まず俺が行く!」

「ビラク、援護するよ!」

 

 まずはビラクが先陣を切り敵にてつのやりを突き刺し、一度逃げてはロシェが反撃を受けないよう追撃をしてまた逃げる。

 原作会話で話していたやり方を予め訓練していたので慣れた動きである。

 なんだかんだで理に適った動きなのでそれを徹底している。

 その動きをサポートするのがウルフにザガロだ。

 やはり弓は強い。

 ビラクとロシェだけでは弱くなる複数戦に対して牽制をする弓の一撃で上手に一撃離脱戦法を手助けしている。

 

「スキあり!」

「させるか!ファイアー!」

 

 ザガロたちの弓を掻い潜った山賊の一人はまだ子供のロニを狙って突撃してきたのでファイアーで足止めしてロニの実戦経験にしてやる。

 

「喰らいな、双打鐘!」

 

 斧を振るいながらロニが勢いよく裏拳をかまして敵を倒している。

 他と違い格闘術を織り交ぜた戦いをしているロニに対して子供と嘗めていたこともあり、敵は対応出来ず気絶していく。

 やっぱりテイルズオブデスティニー2だなぁ……

 経験を積ませるため所謂削り役に徹しているが一人だけリニアモーションバトルシステムの世界に生きているのはやはり内心笑ってしまう。

 こうしてどんどん数を減らしながらやがて左手に砦、右手に村がある場所まで突き進んできた。

 進んできた視点の都合で左右が逆だが位置的にはマルスたちの初期配置の辺りである。

 

「どけ。オレがやる。」

 

 やがてビラクの前に一人の剣士が立ちはだかった。

 黒くて長い髪、手には必殺のキルソード、ふてぶてしい態度。

 背丈はまだ小さく俺たちと同年代。

 

「あ、あれはナバール!?」

「ほう、オレの名前を知るか……奴等は気に食わんがオレは強いヤツと戦い強くなりたい。一手手合わせ願おうか。」

 

 そこまで言えば少年ナバールが剣を構える。

 オレは指示を飛ばしてビラクを下がらせ守備に長けたロシェに出てきてもらう。

 

「ロシェ、お前はビラクより実戦経験が高くてしかも攻撃を受け流す戦いに長けている。そして馬上ではナバールの速さについていけない、馬から降りて戦うんだ!」

「わかった、『任せた』よ?」

「貴様が相手か……」

 

 そこまで言えばウルフたちには周りの雑魚をお願いし、一騎打ちの形にさせる。

 とはいえファイアーは構えているしロニに危害が加わらないよう警戒もしている。

 厳密な一騎打ちでもないためロシェも信じてついてきてくれた。

 

「僕が相手になるよ」

「構わん、オレは強いヤツと戦えればいい。」

 

 二人が剣を構え少年ナバールが先に動き出した。

 ロシェは受け流しやすいようじっと構え、ナバールの素早さに目を慣らすべく今は耐え忍んでいる。

 ナバールの剣戟はすべてロシェの剣によってギリギリのところで防がれている。

 

「防戦一方では勝てん、消えろ!」

 

 遂にロシェの後ろをついたナバールがキルソードの一撃を叩き込む。

 キルソードの剣筋が光り輝いており、ナバールの剣筋がロシェの鎧の隙間を綺麗に通り抜け、ロシェの身体から血飛沫が飛ぶ。

 幸い右肩部分であり急所は避けているのはロシェの成長とまだナバール自身も成熟しきってない未熟さだろう。

 

「くっ、流石だ……」

「終わりか、つまら……」

「蒼破刃!」

 

 ロシェにとどめを刺すナバールに対してシェイバーを解禁して助けに入った。

 腰のてつの剣にシェイバーの魔力を込めて振り抜いて擬似的にかぜの剣を再現することで出力を下げる。

 即興でやってみたけど上手く行ったみたいでナバールのキルソードだけを弾き飛ばしロシェは窮地を脱した。

 掛け声は……まぁ、ロニが近くにいるからテキトーだよ。

 

「……つまらぬ横やりが入ったが飛ぶ斬撃は見たことがない。……名前は?」

「サトシ、オレルアン騎士団の軍師見習いだ。」

「サトシか……覚えたぞ。次は貴様と戦いたいものだ。」

 

 ナバールはそう言ってキルソードを拾い姿を消した。

 砦の方に逃げたので目的地はノルダ辺りか、案外オグマとニアミスするかもしれないな。

 シーダはちょうど俺たちがターバンに拾われていた時期に生まれていたはずだし、ノルダの奴隷剣闘士が群れをなして逃げ出した話はまだ酒場などで聞けなかったのでもしかしたら間に合うかもしれないな。

 そんな事件が起きたら流石にアカネイア領内なら噂が広がるはずだ。

 

「いたた……ありがとうサトシ。」

「惜しかったなロシェ、でもお前の戦い方は凄かったし俺も参考になったよ。」

 

 そうしてロシェにきずぐすりを渡してやり、戦況を改めて確認してみることにした。

 今更ながらルフレな見た目が幸いしたのか、それともただのチート転生なのか。

 最近ゲームのように全体を見れるようになりつつあった。

 ゲームのように逐一兵士たちのステータスを確認したりは出来ないしあくまでも近く……マップに当たる中範囲の人数把握くらいしか出来ないが、軍師らしくなってきたじゃないか面白い。

 

「さて……ビラクたちも一通り終わりそうだな、俺たちは一度先生がいる馬車に戻ろう。ロシェの手当をしなきゃ。」

「ありがとう、でもあの技凄かったなぁ……蒼破刃、だっけ。」

 

 馬車に戻る道すがら、俺とロシェは先程の技の話をしながら引き返していく。

 馬はきちんとついてきてくれている、馬は無事で良かった。

 思えば、いつもより剣の刃こぼれが強い気がした。

 もしかしたら……いや、アカネイアだし流石にないか。

 

 

  

「先生!ロシェを!」

「酷い怪我ですね……わかりました、すぐ手当しましょう。」

「よろしくお願いします、ウェンデル様……」

「様付けなど……サトシのように気軽にウェンデル先生で構いませんよ。教え子の友人なのですから。」

 

 馬車に戻った俺たちは早速先生の手当を受けた。

 リライブの杖はやはり偉大である、城から持ち出した荷物の中に1本だけ紛れていたらしくウィンドルが先生に渡したらしい。

 しかしあの御者マジで何者なんだ。

 ロシェの手当が終わるとザガロたちも戻って来た。

 盗賊団のリーダーはウルフが仕留めたらしい、ナバールにかかりきりで攻略は任せきりだったからなぁ。

 

「大丈夫かロシェ?」

「怪我はないかいロシェ」

「大丈夫だよザガロ、ビラク。しかしあの剣士は強かったなぁ。」

 

 ザガロたちに目立った怪我はなく、やはりナバール以外は雑魚だったらしい。

 ナバールを追ってノルダに行きたいがそんなことをしたら先生を裏切るしオレルアンから亡命に近くなる。

 暗黒戦争には参加できようが原作紋章の謎ルートは避けられないしそれではターバンは救えない。

 今は記憶に留めておくべきだな。

 

「さぁ、無駄な時間を過ごしたから日が暮れて来やした。この先の村へ急ぎやすよ!」

 

 こうしてアドリア峠の戦いが終わった俺たちは原作で王様が待ち構えていたあの村へ急いだ。

 村へやって来たあとは書き記すことも何もなかった。

 無事に朝を迎えた俺たちはアリティアへ向けて旅立つのであった。




・久しぶりの更新
作者の時間リアルがようやく落ち着きました。
今連載開始した合作と交互に更新します。

・アンケート設置しました。
これからの展望で少しオリジナル職業(厳密には暗黒竜・紋章に存在しない他のFEシリーズのクラス)をつけていいかどうか考えてますので是非アンケートにご協力ください。

・ナバールについて
本編でナバールの過去はあまり語られてないため妄想が捗る捗る……作者の中ではナバールは紋章の謎終了時に20後半くらいのイメージでいます。
つまりサトシやオレルアンズと同世代くらいで描いてます。

・ノルダの街
シーダが幼少期にオグマの事件があったのでこの時期にサムトーたちが自由になったことにします。
サトシやオレルアンズと関わりがないため描写はしませんがこの時期にニアミスだけした……という独自設定です。
一般的によく使われがちな暗黒竜キャラではナバールがやや優遇気味な小説です。

・サトシのシェイバー
蒼破刃などのテイルズオブシリーズの技は風花雪月の戦技の扱いで描いてます。
今回はサトシのてつの剣が蒼破刃で一度に3消耗+シェイバーも1消費です。
風花雪月でもそんなタイプの戦技はない?残念ながら以降も耐久設定でいきます。
Echoesの戦技システム、面白いけど体力減るからあまり好きじゃなくアルムの獅子連斬と覇王断竜剣しか使ったことないんですよね……

・ロニのあれこれ。
アイツだけテイルズオブシリーズの戦い方。
技はサトシが入れ知恵しました。サトシくんはテイルズオブシリーズも大好きだったのです。
ちなみに故郷関連は意外とそのままです。
神の眼がアカネイアにあったらガーネフが絶対悪用するしマルス王子を洞窟内で溺死させたくなるな……(中の人ネタ)

・サトシの能力
最近たまにFE二次創作で見るゲーム画面風に全体を見れる力を採用してみました。
まだ不完全なのでマップを脳内で表示するだけ、ステータスなどはまだ見れません
ルフレな見た目にしたのはこの伏線。



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