少女☆歌劇レビュースタァライト 君とキラめくために (レリ)
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第一話


皆様、こんにちは。この作品ではじめましての方ははじめまして。知ってるという方はこんにちは。レリです。やっと投稿することにしました。この作品はオリ主系なので無理な方はブラウザバックを。楽しみにしていたという方は楽しんでいただけたらと思います。

それでは君とキラめくために、第一話です。どうぞ。


 

聖翔音楽学園。それは、舞台俳優を育てる学舎であり、舞台創造科もある学舎だ。そして女子高である。

 

 

「・・・」

 

 

俺、岡峰零(おかみねれい)はその学園の校門前に立っている。相棒のバイクと共に。

 

 

「着いたけど、ここからどうしよう・・・」

 

 

なぜ男子がここにいるのかと言うと、実は母親がここの卒業生でここの理事長と友達で女の子たちだけだと重い荷物とか運ぶのが大変と母親に話すと、なぜか俺がここに特別編入させて働かせてもいいと冗談半分で言ったら理事長はすごい助かると言ってきて成り行きで俺が編入することになったというわけだ。

 

 

「確かここには華恋がいるよな」

 

 

幼馴染の愛城華恋。彼女もここに入学している。華恋に会うのはざっと12年ぶりだ。

 

 

「元気にしてっかな~。とりあえず入るか」

 

 

バイクを押しながら校内に入っていく。

 

 

校舎内。

 

 

「・・・迷った」

 

 

さっそく迷子になりました。

 

 

「職員室ってどこ?ん~とりあえずこっちか?」

 

 

勘で進んでいくと職員室と書かれた札を発見。

 

 

「ビンゴ♪」

 

 

コンコン・・・。

 

 

『どうぞ』

 

 

ガラッ!

 

 

「失礼します。今日から編入することになっている岡峰零です」

 

「お、お前が特別編入生か。まさか本当に男子とはな。理事長から話は聞いている。今は理事長がいないから後であいさつしておけ」

 

「はい。ところで俺はこれからどうすれば?」

 

「これから教室に行く。岡峰もついてこい。教室は2年A組だ」

 

「A組って・・・舞台俳優育成科じゃないですか!!なんで男の俺がそのクラスに!?」

 

「知らん、理事長がそのクラスならうまくやっていけると思うからと言っていた。クラスは舞台俳優育成科だけどいろんなクラスの手伝いをやるということにもなっているが」

 

「それならいいです」

 

「平常に戻るの早いな」

 

 

ここには手伝いで来ているため、どんな手伝いもする気なので一つのクラスの手伝いだけではないのなら別にいいと思っている。

 

 

「私が先に入るから合図をしたら入ってこい」

 

「わかりました」

 

 

 

ガラッ!

 

 

『おはよう』

 

『おはようございます!』

 

 

 

教室から女子の声がよく聞こえる。男子が編入してくるなど誰も予想してない。

 

 

『今日から編入生がこのクラスに入ってくる。皆、仲良くするように』

 

『また編入生?』

 

 

(ん?また?)

 

 

『昨日も編入生が来たよね。二日連続で?』

 

 

どうやら昨日も編入生が来たらしい。いったい誰なのか。

 

 

『ひかりちゃん、知ってる?』

 

『知らない』

 

 

(ん?今の声……そしてひかり?)

 

 

『入ってこい』

 

 

先生から合図があったので扉を開けて教室に入る。

 

 

『え?』

 

 

俺を見た瞬間全員が固まった。当然か。

 

 

「はじめまして。編入生の岡峰零です」

 

「な、なんで男が?」

 

「ここ、女子高だよね?」

 

 

(君たちは当然の反応だな。そして、いるし。二人が)

 

 

「え?レイちゃん……?」

 

「なんで、零がここに……?」

 

 

幼馴染の華恋とひかりがびっくりして見ている。

 

 

「愛城、神楽、知り合いか?ちょうどいい、愛城と神楽、岡峰の案内を頼むぞ。露崎も頼む。どうしても心配だからな」

 

「はい」

 

 

(華恋の隣に座ってる女の子が露崎っていうのか。他にも個性豊かな子たちがいるな。そしてさらっとあだ名なのかわからない名前で呼んだな、華恋のやつ)

 

 

「華恋、ひかり、あいさつとかはまた後でな」

 

「う、うん」

 

「………わかった」

 

 

 

 

 

放課後。

 

 

 

「レイちゃん久しぶりだね!何年ぶり?」

 

「12年ぶりだな」

 

「え?ひかりちゃんと同じ?」

 

「………そうなる」

 

「ひかり、なんか変わった?」

 

「そ、そう?」

 

「昔と比べるとだいぶ無口になってるような気がするんだが」

 

「………気のせい」

 

「さいですか」

 

「レイちゃん!ひかりちゃん!早くしないと置いてくよ!」

 

「案内役が俺を置いていくな!」

 

 

多少騒ぎながら廊下を歩いていく。

 

 

「あ、すまん。ちょっと待っててくれ」

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと持ってくる物があるからな。すぐに取ってくる!」

 

「行っちゃった」

 

「何を持ってくるんだろ?」

 

「さあ?」

 

 

ブオン、ブオンッ!

 

 

「「「え?」」」

 

 

零がバイクに乗って帰ってきた。

 

 

「そ、それ、レイちゃんの?」

 

「そうだよ。俺の相棒」

 

「双葉ちゃん以外のバイク乗りが来るなんて・・・」

 

「双葉?」

 

「赤紫っていったらいいのかな?そんな髪の色の女の子いたのわかった?」

 

「ああ、あの子か。そういや君の名前は露崎だっけ?」

 

「あ、うん。露崎まひるです。よろしくね、岡峰君」

 

「零って呼んでくれて構わないよ」

 

「じゃあ、零君!」

 

「おう。よろしくな、露崎」

 

「私のこともまひるでいいよ」

 

「わかったよ、まひる」

 

「うん!」

 

 

華恋とひかりに負けずの眩しい笑顔をみせる彼女も舞台少女だなと思った零であった。

 

 

「ところでこれからどこに向かうんだ?華恋」

 

「学生寮!」

 

「そうか、そうか。学生寮か・・・ん?はあっ!?」

 

「どうしたの!?レイちゃん!急に大声出して!」

 

「ここ女子高だよな!?そこに入学した男子が異例なのはわかってるが女子だけの宿舎に男子が入れるわけないだろ!!」

 

「落ち着いて!零君!実は先生から学生寮に案内してやってくれって言われてるの!そこに住むことになるんだからって!」

 

「いいのかよ!?」

 

「私は平気だよ!」

 

「私も」

 

「私もだよ」

 

「君たちが良くても他の子たちが許さないだろ!」

 

「大丈夫だと思うよ?みんなレイちゃんを見る目は普通だったから!」

 

「そ、そうか。なら案内させてくれ・・・」

 

「零君、一気に疲れた顔になったね」

 

「もうどうでもよくなったからな・・・」

 

「じゃあ、私たちの部屋に行こう!」

 

「はあっ!?」

 

「えぇっ!?」

 

 

華恋のとんでもない発言に俺とまひるの叫びが響いたのだった。

 

 

 

 




第一話を読んでいただき誠にありがとうございました。

いかがでしたでしょうか。そしてみんなの話し方がこれで大丈夫なのか不安です。特に香子の京都弁が。

バイクの方は双葉が持ってるバイクと同型の色が黒と青と考えていただければ幸いです。

そして、零のプロフィールです。


岡峰 零(おかみねれい)CV.神谷浩史


容姿はノラガミの夜トに似ている。母親が聖翔音楽学園の卒業生で父親が自衛隊のお偉いさん。息子の零も父親の遺伝子で格闘技などが強く、国から銃等の所持を許されている。だが、零自身は銃を扱うのが苦手で銃ではなく剣を持っている。国にいい剣がないか頼んだら誰も持つことがができない剣があると言われ、試しに持ってみると少し重いが振れないわけではなく、一応使えると国に報告すると、その剣は君のだと言われ、その剣の所有者になった。ちなみにその剣は漆黒の剣で某人気アニメに出てくる剣にそっくりなため、名を夜天の剣(やてんのつるぎ)と名付けた。夜天の剣の所有を両親は許しており、逆に父親から大切な人をその剣で守れと言われている。


こんなところです。第二話はちょっとかかるかもです。あと、別作品の「ISーマテリアルズの魂を持つ者ー」を執筆してますのでよかったらそちらも読んでくれたら嬉しいです。

感想などお待ちしております。それでは今日も一日頑張りましょう!レリでした!


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第二話

おはようございます。レリです。さあ、やっと完成しました。お待たせして申し訳ありません。第二話なのに文字数が三千文字を突破してしまいました。

それでは君とキラめくために、第二話です。どうぞ。


「到着~!」

 

「星光館……ここが学生寮か」

 

「そうだよ。じゃあさっそく私たちの部屋に」

 

「行かねぇよ!!別の部屋が用意されてるかもしれないからそっちに行くわ!!」

 

「え~」

 

「え~じゃない!!」

 

「仲がいいね、二人とも」

 

「……昔と変わらない」

 

「そうなんだ」

 

 

バイクを駐輪場に置いて星光館の中に入る。

 

 

「ここ、使われてない部屋だな。鍵も開いてるし、ここが俺の部屋か?」

 

「そこ、昨日までひかりちゃんが使ってた部屋だよ」

 

「ここじゃないな」

 

「……零なら使っても構わない。それに今は華恋とまひるの部屋にいるから」

 

「さらっと言ったな。っていうか男が女の子が使った部屋なんか入れるか」

 

「……零はそういうことしないってわかってるから」

 

「信用されてるのか俺は」

 

 

嬉しいような嬉しくないような気持ちになる零である。

 

 

~♪

 

 

「ん?電話だ。もしもし?……はい。はい、わかりました」

 

「レイちゃん、誰から電話?」

 

「先生から。まひるに鍵を渡しておいたからその鍵で空き部屋に入ってくれってさ。さあ、まひる。鍵を出すんだ」

 

「……エ?ナンノコト?」

 

「急に片言になったな!?何を企んでいる!まひる!」

 

「ベツニナニモ?」

 

「まひるちゃん、何をしようとしてるの?」

 

「ゴニョゴニョ……」

 

 

まひると華恋とひかりが集まり、何か話している。話してる内容は聞こえない。

 

 

「なるほど!」

 

「……いい考え」

 

「でしょ♪」

 

「お~い、さっきから何を話している?」

 

「レイちゃん!」

 

「なんだよ」

 

「私たちの部屋で過ごさない?」

 

「絶対やだ」

 

「即答だね」

 

「いきなり何を言い出すかと思えば。女子三人の部屋に男が泊まれるか!」

 

「……なら、私たちの部屋をきれいにしたりとかいろいろ手伝ってほしいことがあるから早く来て」

 

「なっ!?ひかり、お前、卑怯なことを……!」

 

「手伝ってほしいな~」

 

 

俺は手伝いで編入したということを彼女たち三人は知っている。だから手伝ってほしいといい、部屋に入れさせるつもりなのだ。

 

 

「わ、わかった……手伝うよ……」

 

「やった!」

 

「どうぞ~」

 

「お邪魔します……ってホントにちらかってるのかよっ!!」

 

「……言ったでしょ。部屋をきれいにしてほしいからって」

 

「そういえばひかりは片付けができないんだったな。どいててくれ、君たち。五分できれいにしてやる!!」

 

「レイちゃんの目に炎が見える……」

 

「ここは零君に任せた方がいいかもね。私たちは部屋の外で待ってよう」

 

「……うん」

 

 

燃えていると言っていいほどに零から炎を感じなからおとなしく部屋をでる。扉を閉めた瞬間にガタガタと音がし始めた。

 

 

「もう始めた……」

 

「五分待ってみよう!」

 

 

 

 

~五分後~

 

 

 

『終わったぞ』

 

「ホントに五分で終わったの!?」

 

「へ、部屋の中がどうなったのか気になるね」

 

「……入ってみよう」

 

 

ガチャッ!

 

 

 

「「「うわぁ~~」」」

 

 

ちらかっていた部屋がたった五分で物凄くきれいになっていた。太陽の光りで部屋全体がキラキラと輝いている。

 

 

「あ、思わず零君に任せちゃったけど下着とかは……」

 

「少々躊躇ったがやけくそできれいにたたんだ。下着とかは小さい頃から華恋とひかりのを見てきてたから大丈夫だったけどまひるのがな……すまない。タンスの前に置いた」

 

 

 

言われた通りタンスの前を見たら下着や服がきれいにたたまれていた。

 

 

「すごい、私よりきれいにたたんでる……」

 

「母さんに叩き込まれたからな。料理も一応できる」

 

「じゃあ後で私たちに料理作って!」

 

「……零の料理、久しぶりに食べたい」

 

「また後でな」

 

「零君、すごい女子力……」

 

 

ここに来ても尚、役に立つことを教えてくれた母親に心の中で感謝している零である。

 

 

~♪

 

 

「今度は誰だ?また先生?なんの用事だ?はい、もしもし……はい、えっ!?わかりました。すぐに行きます」

 

「今度はなに?」

 

「学校に俺宛の荷物が一つ届いたらしいんだけど、それが重すぎて動かせないみたいなんだ。ちょっと行ってくる」

 

「誰も動かせないんじゃ零君が行っても動くかどうか……行っちゃった……」

 

「バイクで行ったね。どんな荷物なんだろ?」

 

 

~♪

 

 

「「「っ!!」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(俺宛の荷物で重すぎる……まさか……)

 

 

バイクを運転しながら届いている荷物の中身を推測する。考えが合っていれば……

 

 

「来たな、岡峰。それだ」

 

 

学園の正面玄関で待っていた先生がそこに置かれている物を指さす。

 

 

「これですか。迷惑をおかけして申し訳ありません。すぐにもって帰ります」

 

「持てるのか?」

 

「大丈夫です、よっ!」

 

 

腰ぐらいまでの長さの棒みたいのが入ってる物を持つ。重すぎて動かせない物をいとも簡単に持ち上げた零を見て、驚いている先生。

 

 

「それではご迷惑おかけしました」

 

 

背中にしょい、バイクの元まで走り出した零。それを見た先生は。

 

 

「頼もしいお手伝いさんだ」

 

 

そう呟いていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱ親父からか。これを持っていったら目立つと思って置いていったのにまさか送ってくるとは。っていうかどうやって送った?」

 

 

差出人を確認すると父親の岡峰一哉と書かれていた。

 

 

タッタッタッ!

 

 

「ん?誰だ?」

 

 

誰かが走ってくる音が聞こえ、隠れて見てみる。

 

 

「華恋?なにしに来たんだ?校舎に入っていく?……追いかけるか」

 

 

届いたばかりの荷物を段ボールから出し、ふろしきのようなものにくるまれた物を持ってあとを追う。

 

 

「こんなところにエレベーター?地下でもあるのか?」

 

 

下行きのボタンを押すと……

 

 

ガシャンッ!

 

 

「え?うおっ!?部屋全体が下に移動してる!?」

 

 

バキィ!

 

 

「嘘だろっ!?うおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

 

壁が壊れ、放り出された零。何回か回りながら落下していき、明かりが届いていない暗い場所に着地する。

 

 

「オーディション二日目、渇望のレヴューの開演です。トップスタァを目指し、歌って踊って奪い合いましょう」

 

 

戯曲:The Stra Knows

 

 

「ここは、まさか舞台裏?なんでこんなところに………ん?これはどう見てもマントだな。使われていないのか……一応羽織っとくか」

 

 

落ちていたマントを羽織る。すると足元が揺れ、足元全体が上に上がり始めた。

 

 

「え?まさかこれセットなのか!?やべ!舞台に!」

 

 

気づいた時はすでに遅し。舞台に上がってしまった。

 

 

ヒュンッ!

 

 

「っ!!」

 

 

キンッ!

 

 

「何が飛んできたんだ?矢?なんで矢が?」

 

 

突然飛来してきた物を切る。

 

 

「え?レイちゃん?」

 

「お、岡峰君?なんでこんなところに……それにその剣は……?」

 

「ん?華恋?それに君は同じクラスの……確か星見だったな。この矢は君が放ったのか」

 

 

零の後ろには真っ二つになっている矢が落ちている。そして、右手に漆黒の剣が握られている。

 

 

「まさかこんな形でこいつの初陣になるとはな。この剣の名前は夜天の剣だ。こいつ共々よろしくな。で、これはなに?」

 

 

今この状況を聞くと二人してポカンとしている。

 

 

(俺、なんか変なこと言った?)

 

 

「話聞いてないの?あなたも飛び入り参加なら容赦しないわ」

 

「なんでいきなり敵意むき出しになってんの!?俺なんかした!?」

 

 

説明を頼んだだけなのに星見から敵意むき出しで矢を構えられました。

 

 

「これはスタァライトだよ!レイちゃん!」

 

「スタァライト?レヴューか。って、なんで俺がこんなところにいるんだよ!!」

 

「自分から来たんじゃないの!?」

 

「知るか!!放り出されたらここにいたんだよ!!」

 

 

華恋の見事なツッコミが来るがそんなの知ったこっちゃない。

 

 

「レヴューは続行です」

 

「ん?……なんで観客席にキリンがいるの?」

 

「このまま続けるの!?こんなの昨日とはまた違うイレギュラーよ!?」

 

「昨日?」

 

「私が飛び入りしちゃったの」

 

「あぁ、なるほどな……」

 

「舞台少女たちの科学反応、予想もつかない舞台。それにはイレギュラーも必要なのかもしれません」

 

「つまり、俺もこのレヴューに参加しろってか」

 

「その通りです」

 

「嫌だよ」

 

「トップスタァには星のティアラが渡されます。参加しないのですか?」

 

「なんで男の俺が参加せにゃならん!トップスタァ?んなもん女の子たちがなるのが普通だろ!俺が参加してなんになるって言うんだ?キリン!」

 

 

あらかた理解はできたができない部分が多すぎるうえにどんどん話が進んでいって置いてけぼりでイライラが爆発してしまった。

 

周りが静かになってることに気づかずに……。

 

 

「あ、すまん。ついカッとなってしまった。俺は見学してるから二人でやっててくれ」

 

 

舞台の端に移動しようと後ろを向いた瞬間。

 

 

ヒュンッ!

 

 

キンッ!

 

 

「なんですか?星見さんよ」

 

 

矢が飛んできたのでノールックで切る。ノールックで切ったので二人して驚いている。

 

 

「逃げるの?」

 

「舞台に上がれば年齢とか関係ない。敵同士って言いたいのか?」

 

「そうよ。愛城さんも岡峰君も敵。じゃないの?」

 

「ふぅ、だってよ。華恋。その発言なら華恋も俺のことを敵として見ることになる」

 

「レイちゃんが敵……」

 

「覚悟を決めるか。おい、キリン!勝敗はどうやって決まるんだ?」

 

「上掛けを落とされたら負けとなります」

 

「俺の場合はこのマントでいいか?」

 

「構いませんよ」

 

「よし、じゃあ、さっさと終わらせるか」

 

「参加ですね。わかります」

 

 

キリンから確認をとり、状況に追いついて来れていない華恋を放っといて星見に剣を向ける。

 

 

「んじゃ、レヴューを始めようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして謎のオーディションに参加した俺だった。結末があんなことだとは思わずに……。

 

 




第二話を読んでいただき誠にありがとうございました。オーディションはひかりが編入した次の日なので二日目から零が参戦です。最後の文字がなんか変だというのがありましたら感想までお願いします。


たった一話しか投稿してないのに評価とお気に入り登録をしてくださってありがとうございます!

評価をして下った師匠様(☆9)、ぼるてる様(☆4)、誠にありがとうございます!頑張っていきます!


第三話ですがなるべく早く投稿します!それでは一日頑張りましょう!レリでした!



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第三話


まさか一ヶ月以上経ってしまうとは思ってませんでした。ごめんなさい!なかなか浮かばなかった……

ってことで第三話です。どうぞ。


「れ、レイちゃん……」

 

「華恋、お前は下がってろ。落ち着いたら来ればいいだろう」

 

「う、うん」

 

 

落ち着きを取り戻すまで華恋は少し後ろに下がっていき、座り込む。

 

 

「さて、星見。わかってると思うけど俺はレヴュー事態が初めてなのでね。少しぎこちないがよろしく頼む」

 

「こちらこそよろしく。だけど、やるからには全力でいくつもりだから」

 

「それでいいよ」

 

 

星見は矢を構え、俺は夜天の剣を構える。

 

 

(彼女の命中精度は高い。遠距離を続けるとこっちが不利になるな。まずは接近だな。タイミングは……)

 

ヒュンッ!

 

 

キンッ!

 

 

「今!」

 

 

放たれた矢を斬り、すぐにダッシュし間合いを詰める。

 

 

カキンッ!

 

 

「えっ!?」

 

「やあっ!」

 

「あぶねっ!」

 

 

剣を降り下ろしたら弓で受け止めた。その瞬間に矢を一本出し、投げてきた。

 

 

「矢を投げるとはな。びっくりしたわ」

 

「まさかあの至近距離で避けるなんて」

 

「お互いびっくりしたってわけだな」

 

「そうね。でも今度は当てる」

 

「その意気やよし!」

 

 

夜天の剣を構え直し、再度突撃する。

 

 

「結構殺陣が上手ね」

 

「あ~レヴューだからやっぱ殺陣だよな。華恋でさえもあんなキレの動きをするとは思ってなかったわ」

 

「それ、愛城さんが聞いたら怒るでしょうね」

 

「聞こえてないから大丈夫ってことで」

 

「私が愛城さんに伝えてもいいけど?」

 

「勘弁してくださいよ、星見さんよ~」

 

「隙ありっ!」

 

「よっと」

 

 

キンッ!

 

 

 

隙をつかれようとしてもなんなく斬る零。

 

 

「強い……」

 

「星見も充分強いよ」

 

「ありがとう。でも、負けない!」

 

 

ヒュンッ!

 

 

キンッ!

 

 

「え……」

 

「……待ちかねたぞ」

 

 

矢を斬ったのは零ではない。矢を斬ったのは……。

 

 

「華恋!」

 

 

そう、矢を斬ったのは今まで後ろにいた華恋なのだ。

 

 

「遅くなってごめんね、レイちゃん!」

 

「ホントだよ。遅すぎるわ」

 

「そこまで!?」

 

「冗談だ。とりあえず助けてくれてありがとう……か?」

 

「素直にお礼言ってよ!」

 

「言ったわ。それと、華恋。星見が待ってるぞ」

 

「わわっ!ごめんなさい、星見さん!」

 

「別に待ってなんか……いえ、とりあえずそれはいいとして。愛城さん、リベンジの続き、しましょうか」

 

「うん!」

 

 

戯曲:The Star Knows 再演

 

 

(そういや、華恋と星見がやってる時は歌を歌いながらやってたっけ。俺、全然歌ってなかったけど。まあ、曲を知らないから当然か。さて、ここは華恋に任せて俺は遠くで観察するとしますか)

 

 

そう思いながら気配を消して二人から離れる。気配を消していたため、二人は全く気づいていない。

 

 

「私は、スタァになるためにこのオーディションを受けたの。このオーディションはチャンス。私はこのチャンスを逃すわけにはいかないの!私は私の星を手にいれて、私の舞台を終わらせない!これで、決める!!」

 

 

ヒュンッ!

 

 

キンッ!

 

 

「ノンノンだよ!一度で終わりじゃない!私たちは何度でも舞台に立てる!!」

 

(華恋……)

 

「情熱とキラめき。わかります。それが舞台少女の力」

 

 

隠れて華恋の言葉を聞き、彼女も夢を叶えるために努力してきたため、その言葉はなにか重みを感じる。

 

 

「諦めない……私だって舞台少々よ!私だって、スタァになりたいの!!」

 

「私は!ひかりちゃんと二人でスタァになる!!」

 

 

シャキンッ!

 

 

「星見の上掛けが……」

 

「あの星だけが未来を知っているのなら~空を見上げてそっと手を伸ばす~」

 

 

舞台の幕が閉じる。

 

 

「ポジションゼロ!!」

 

「オーディション二日目、終了します!」

 

「はぁはぁ……」

 

 

息を切らしているが彼女の顔はとてもいい笑顔だ。

 

 

「彼女が、なぜ最初から選ばれてなかったのか、わかりました。二人で一つの運命」

 

「華恋とひかり……二人の夢……か」

 

 

ステージではセットに幕が被さっている。その一部に華恋が走っていく。

 

 

「華恋、なにしてんだ?そこに星見がいるなんて確証は……」

 

 

バサ……

 

 

「お疲れ」

 

「いや、そこにいるんかい」

 

 

離れた場所でツッコミをいれる零。二人の会話はなんとか聞こえる距離だ。

 

 

「考えすぎかな、私」

 

「え?」

 

「だって、単純な方が強そうなんだもん」

 

「え、単純ってひどいよ~」

 

「よいしょ!」

 

「えっ」

 

「ふぅ~、でもこれで終わりじゃないもんね。だったら最後までやりきるだけよ。力の限り、スタァを目指して、ね?」

 

「星見さん」

 

「純那、でいいよ」

 

「わかった、じゅーんじゅん!」

 

「いきなり~?」

 

「こっちも華恋でいいよ!」

 

「そうよね、バ華恋って呼ばれてたもんね」

 

「え、ちょっ、じゅんじゅんひどいよ~」

 

 

(仲良くなれてよかったな、華恋。さて、都合よく終わったし、俺も早くここから出るか)

 

 

「そういえば零は?」

 

「あれ、レイちゃんどこに行ったんだろう……ってじゅんじゅん、今レイちゃんのこと」

 

「う……だって、今さら名字で呼ぶのも……」

 

「いいんじゃないかな!レイちゃんなら許してくれるよ!」

 

「幼馴染だからよく知ってるってやつ?」

 

「うん!」

 

 

(なんか名前で呼ばれてる……出た方がいいのかわからないな。俺も名前で呼んでってことだよな?マジか~)

 

 

「あっ!レイちゃんいた!」

 

「え?……うおっ!?」

 

 

いつの間にか目の前に華恋と星見がいた。後ろはセットがあるので逃げられない。

 

 

「こんなところでなにしてるのよ」

 

「え、あ、いや~……なんというか」

 

「言い訳はいいからさっさと行くわよ。華恋に零」

 

「うん!ほら、行こ!レイちゃん!」

 

「わかったから押すなって華恋!あとなにどさくさに紛れて俺の右手を引っ張ってんの?純那は」

 

「細かいことは気にしない!行くわよ!」

 

「お~!」

 

「だから自分で歩くって!!」

 

 

こうして謎のオーディションに飛び入り参加し、その二日目のオーディションが幕を閉じた。

 

 





第三話を読んでいただき、ありがとうございました。

なるべく早く投稿すると言っておきながら一ヶ月。申し訳ありませんでした!!次はいつ出せるかわからないです……。別作品の方も書いてるので……。じゅんじゅんの話し方が合ってるのかわからない!次回はオーディション三日目を書いていこうと思ってます。では、皆様、お待たせしてしまってすみませんでした。レリでした!



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第四話


お待たせしました!レリです!もっと早く投稿する予定だったのにいつの間にかこんなに経ってしまった……。さて、皆さんは2nd STAR LIVE "STARRY DESERT"は手にいれましたか?百色リメインも手にいれましたか?自分は2nd STAR LIVEは買ったのですが、百色リメインのCDは買ってないです……。

それでは第四話です。どうぞ!


昨日、謎のオーディションに(強制)参加した零。昨日のオーディションでは勝利はしていないが華恋が純那に勝ったことでオーディションが終了したため、零は勝利も負けてもいないという中途半端な終わり方をしたのだった。その次の日、零は遅めに学生寮を出て、安全運転でバイクで学校に向かった。

 

 

「おはようさん」

 

「お、おはよう」

 

「おはよう」

 

 

女子高に一人だけ男子がいるため、クラスメイトからは少し距離を感じるあいさつをされる。華恋、ひかり、まひるからは距離は全然ない。その三人以外で距離を置こうとしないクラスメイトは……。

 

 

「おはよう、零」

 

「おう、おはよう、純那。大場もおはようさん」

 

「あれ?私、自己紹介したっけ?」

 

「先生から名簿を見せてもらってどの子がこの名前だというのを教えてもらったからだいたいわかる」

 

「そうなんだ。遅れたけどおはよう。岡峰君。純那ちゃんとは名前呼びなんだね」

 

 

昨日のオーディションで仲良くなった純那と大場なながあいさつに来る。大場からは全く距離を感じない。むしろ、こちらが距離を作ってもどんどん来るタイプだと思う。

 

 

「おはようございます」

 

「おはよう、天堂」

 

「おはようございます。岡峰はん」

 

「おはよう、岡峰」

 

「花柳に石動もおはよう」

 

「ねぇねぇ、岡峰君。よかったら私も純那ちゃんと同じように名前で呼んでいいかな?」

 

「いいよ」

 

「ありがとう!零君!こっちもななかばななでいいよ」

 

「ばなな?」

 

「それはななのあだ名よ。華恋が思いついたの」

 

「あいつが考えたのか。純那にもあだ名つけてたよな」

 

「いきなりあだ名で呼ばれるとは思わなかったわ」

 

「わりと気に入ってそうじゃないか?」

 

「なっ///す、少しよ……」

 

「否定しないんだな。ところで華恋とまひるはどうした?ひかり」

 

 

窓際の席で自分は関係のないと言わんばかりに静かにしていたひかりにふる。

 

 

「え……知らない」

 

 

急に話かけられたので驚きながら返してくる。

 

 

「知らないことはないだろ。同じ部屋なんだから。さあ、答えてもらおうか」

 

「……知らない」

 

「そうかそうか。じゃあ、今度華恋とひかりにご飯を作る約束だったが華恋にだけ作ってやることにするよ」

 

「え……」

 

「答えたらさっきのは撤回するぞ。さあ、どうする?」

 

「うぅ……」

 

 

零とひかりのやりとりを見ていた純那たちは驚いていた。

 

 

「神楽さんを追い詰めてる……」

 

「すごいね」

 

「神楽はんもあそこまで焦ってるの見たことがないどす」

 

「だな。さすがは幼馴染だ」

 

「華恋は寝坊。まひるは華恋を起こしてた」

 

「お前は手伝わないで来たんだな」

 

「うん。答えたからさっきのは……」

 

「安心しろ。嘘だから」

 

「よかった……」

 

「神楽さんがあそこまでなるなんて零の料理ってどれだけ美味しいのかしら」

 

「よかったらお前たちにも作ろうか?」

 

「え、いいの?」

 

「この人数ならケーキとかの方がいいな。よし、帰ったらさっそく作るか」

 

「零君、私も手伝おうか?」

 

「いや、ここは俺一人で作るよ。ななは休んでていいから」

 

「なな、あなたが手伝ったら零の手料理にならないと思うのだけど」

 

「それもそうだね。じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 

ガラッ!

 

 

「ハァハァ……」

 

「ギリギリだな。まひる」

 

 

教室のドアが勢いよく開いたと思ったらまひるが華恋の腕を肩にまわして連れてきていた。華恋は抜け殻のようにグデ~ンとなっている。

 

 

「す、すごかったの。今日の華恋ちゃん……」

 

「全然起きなかったのか?」

 

「布団を引っ張ったり、膝にチョップしてみたり」

 

「膝にチョップって朝からわりと痛いとこ攻めてるな」

 

「それでも全然起きなかったの……」

 

「ほう、それでもまだ起きないのか。そうかそうか。お~い華恋。今すぐ起きないと俺の作るおやつ抜きだぞ」

 

「それで起きたら苦労はしないって……」

 

「起きます!!」

 

『起きた!?』

 

「よし、まひる。今後、華恋が起きなかったらさっきのを使え。これは使えるぞ」

 

「あ、うん。わかった」

 

 

ひかりと同様に華恋も零の嘘にのせられ、元気よく起きる華恋である。

 

 

「にしても、なんで全然起きなかったんだ?華恋」

 

「いや~、昨日も大変だったから~」

 

「それでも俺は起きたぞ」

 

「レイちゃんは寝坊してもバイクあるからすぐに学校に行けるじゃ~ん」

 

「それでも余裕をもって寮を出てるぞ」

 

「いい加減、自分で起きられるようにしなさい。このままだと露崎さんにも迷惑でしょ」

 

「わ、私は、そんな、全然!」

 

「おはよう!じゅんじゅん!」

 

「え?」

 

「ん?」

 

 

華恋が純那をあだ名で呼ぶと、まひるの髪の左右で結んでいる触角のような髪の片方が上がる。それに気づいているのは零とななだけだ。

 

 

「さすが、学級委員だね!」

 

「二年生にもなって遅刻しているのはあなただけよ。華恋」

 

「え?」

 

(両方上がったな)

 

「華恋ちゃん?星見さんとはどういう……」

 

「内緒♪」

 

「純那ちゃんもいつの間に」

 

「内緒」

 

 

ガラッ!

 

 

「HR始めるぞ~」

 

「華恋、後でお前だけが遅刻をしているというのを詳しく聞かせてもらおうか」

 

「え!?」

 

 

後に華恋への説教が決まった瞬間だった。

 

 

 

 

~昼休み~

 

 

 

昼飯を食べ終え、教室に戻る零たち。途中まではひかりも一緒だったのだが、バナナマフィンを持ってどこかに行ってしまった。今はななが裏方をやるというのでその事を詳しく聞き、花柳と石動がななをアメで買収していた。

 

 

「なな、ちゃんとオーディションしてね。私、絶対主役をとってみせるから!」

 

「お~、じゅんじゅんアグレッシブ!それじゃあ私も!」

 

「あ、あの、華恋ちゃんが主役なら私は、相手役を……」

 

「ボンジュール」

 

「うひゃあ!?」

 

「あ、クロちゃん!」

 

(西條がクロちゃんと呼ばれているとは。また華恋が思いついたあだ名なのか?)

 

「いや~私としたことが寝坊しちゃって~」

 

 

まひるの発言の途中に朝いなかった西條がまひるの耳元であいさつをする。それが原因でまひるは驚いてしまう。

 

 

「あら?聖翔祭?もうやるのね」

 

「クロちゃん、聞いて!今度の聖翔祭ばななが裏方に回るんだって!」

 

「え、そうなの!?はは~ん、なるほどね。主役の座を取るのにばななを買収してたって訳ね」

 

「買収なんて不粋やわ~」

 

「それじゃあ私も、ベリガンのマカロン♪」

 

「ちょ、クロちゃんは去年、メインどころやったからダ~メ!」

 

「はいはい、わかったわよ」

 

「おはようございます」

 

「っ!……おはよう」

 

(俺は完全に空気だったな~。西條は天堂のこと嫌ってんのか?あいさつが変だったがな)

 

「零、完全に空気だったわね」

 

「そうですよ、俺は女子高にいる異例の空気ですよ」

 

「そうひねくれないの。ほら、元気出して」

 

「へいへい。元気出しますよ。あ、そうだ。なな、裏方での勉強とかでやれることが言ってくれ。手伝うから」

 

「ありがとう、零君」

 

 

そう言って、午後の授業が始まっていった。

 

 

 

~放課後~

 

 

 

「今日も一日お疲れさんでした~と。あいつも持って帰らないとな」

 

「零君」

 

「ん?どうした?まひる」

 

「華恋ちゃん、知らない?」

 

「いや、すまねぇが知らないな」

 

「そっか」

 

「俺も探しとくからまひるは先に帰ってろ。もしかしたらもう帰ってるかもしれないしな」

 

「わかった。じゃあ、寮でね」

 

「あいよ。さて、さっさと見つけますか」

 

 

布の包まれた夜天の剣を持ち、グラウンドに出る。なぜグラウンドからなのかというと、おそらくまひるが校舎内を調べたと思ったからだ。

 

 

 

~♪

 

 

 

「なんだ?この着信音は……なるほど、俺も参加したからこの通知が来るというわけか」

 

 

ケータイにはオーディション三日目とあり、下の方にスクロールすると本日休みとあったので零は休みだ。

 

 

「これが来たということはあそこに行けば会うだろうな。行くか」

 

 

地下劇場に行く為のエレベーターがある場所に走る零。その場所の近くまで来ると、壁を叩きつける音が聞こえたので、夜天の剣を出し腰に携え、慎重にそこに向かう。すると、その部屋から赤い明かりが出てきて、重い扉が開くような音が聞こえたのですぐに向かう。そこにはエレベーターの扉が開かれ、下に続く階段があり、扉の前にはバールが落ちている。

 

 

「なんでこんなところにバールが?嫌な予感がするな。急ぐか!」

 

 

夜天の剣を持ったまま階段を急いで降りていく。

 

 

 

地下劇場では華恋が戦っている。その相手は……99期生主席、天堂真矢。

 




第四話を読んでいただき、ありがとうございました!

平成も終わりですね。令和になっても頑張りますよ~!そして、平成最後の投稿じゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

突然ですが皆さんは誰推しですか?自分は二人挙げてくれと言われたら純那とひかりですね。一人だけと言われたら純那ですね。この作品ではひかりがヒロインですが。

それでは皆さん、令和でも君とキラめくためにをよろしくお願いいたします!別作品のマテリアルズの魂を持つ者もよろしくお願いいたします!

レリでした!


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第五話

皆様、こんばんは。レリです!

前回投稿して早一ヶ月……時が経つのは早いですね…………。お待たせしました!!

それでは、どうぞ!!


零は今、地下劇場に続くと思われる階段をかけ下りている。

 

 

(入り口に落ちてたバール……一体誰が……まさか、ひかりか?)

 

 

『私は!ひかりちゃんと一緒にスタァライトするの!』

 

「っ!この声……華恋!なぜ華恋の声が……」

 

『一緒に……』

 

「この声は、天堂か!華恋の相手はよりにもよって主席かよ!くそ!!」

 

 

聞こえるはずもない声が聞こえ、悪態をつく。もし先に降りてる者がひかりだとすると嫌な予感が増大する。

 

 

「ひかり、頼むから変なことするなよ!」

 

 

そう願いながら降りるスピードを上げる。しばらくかけ降りてると、劇場の入口らしき扉の場所まで来た。が、その扉は開かれており、一人の人物が立っている。

 

 

(ひかり……華恋は……っ!?ここは校庭じゃないか!どうしてあの階段が校舎の玄関と繋がって……まさか、休日とかの奴らは入れないから自動的にここに着くようになってるのか?だが、この雨……普段とは違う嫌な雨だな……)

 

 

劇場の入口の扉の先は華恋たちが戦っているステージはなく、校庭となっている。天気は雨だ。ひかりを見ると、雨に濡れながら立っている。まるで、なにかを悟ったかのような立ち方だ。そのひかりに近づき、自分のブレザーをひかりに羽織る。そして、頭を撫でるように手を置く。

 

 

「お前があいつを信じなくて誰が信じるんだよ。無論、俺も信じてる。だが、華恋は俺よりもお前を信じてる。だからお前もあいつを信じろ。今回は敵が悪かった。それだけだ。な?」

 

「……うん……少し、いい?」

 

「あぁ」

 

 

ひかりの問いの意味をすぐに理解する零。するとすぐにひかりが顔を零の胸に埋めるように抱きついてくる。

 

 

「……っ……っ……」

 

 

すすり泣きをしているひかりを何も言わずに頭を撫で続ける。

 

 

「ひかりちゃん……レイちゃん……」

 

「華恋……」

 

 

後ろから華恋の声が聞こえ、後ろを向く。華恋も雨で濡れている。すると、顔を埋めていたひかりが離れ、華恋に近づく。

 

 

「ひかりちゃん……私負けちゃった……一生懸命歌って踊って戦ったのに相手にされなかったみたいな……」

 

 

パチンッ!

 

 

華恋が話している最中に雨が降っているというのに音が響く。ひかりが華恋を叩いたのだ。

 

 

「…………バカ」

 

 

小さな声でひかりが呟く。その声は華恋と零の二人の耳にしっかりと聞こえていたのだった。零は何も言わず、一歩も動かずに二人を見ていたのだった。

 

 

そして、その日のオーディションは華恋が負けた日となったのだった。

 

 

 

~次の日~

 

 

 

今日は休日。零は早めに起き、寮の庭で木刀で素振りをしている。すると。

 

 

ドタドタ……

 

 

「朝から騒がしいな。一体何があったんだ?」

 

「あら、零じゃないの」

 

「ん?なんだ、西條か」

 

「私には名前で呼んでくれないの?」

 

「長いからやだ」

 

「直球ね。あだ名で呼んでくれていいのに」

 

「んじゃ、クロでいいか?」

 

「えぇ、素直でよろしいわ」

 

「そりゃどうも」

 

「ところで零はなにしているの?」

 

「見ての通り素振りだ。剣道とかじゃないけどな」

 

「じゃあなんなの?」

 

「我流のやつだからな。なんならさっきまでしてた素振りとは違うやつを見せてやろうか?」

 

「いいの?じゃあお言葉に甘えて」

 

「はいよ」

 

 

ザッ……

 

 

ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!

 

 

 

木刀を腰に構え、まずは居合い斬りのように木刀を出す。そして、木刀を斜めに一閃し、一歩踏み出し、木刀を前に突き出す。その際の動きに無駄はなく、木刀は見えない速度だ。そして、木刀を腰に戻す。

 

 

パチパチパチパチ!

 

 

それを見ていたクロは拍手をする。

 

 

「結構すごいのね。木刀が見えなかったわ」

 

「ホントすごいわね」

 

「さすがレイちゃん!」

 

「え!?」

 

「純那に華恋。いつからいたんだ?」

 

 

クロの隣にいつの間にか純那と華恋がいる。クロは全然気づかなかったようで驚いている。

 

 

「零君って剣道とかしてたの?」

 

「ななまで……いや、剣道はしていないよ」

 

「え?じゃあ今のは?」

 

「我流だ」

 

「が、がりゅう?」

 

「自分で産み出したようなことよ。華恋」

 

「すごい!レイちゃん!」

 

「お前は後で勉強会だな。華恋」

 

「え!?」

 

「あはは……」

 

「あ!そうだ!レイちゃん!前に学校にレイちゃん宛の荷物が届いてたじゃん!あれってなんだったの?」

 

「あぁ、あれか。少し待ってろ。持ってくる」

 

 

華恋が俺が来てすぐに届いた荷物、夜天の剣のことを言ってきた。隠したままでもいいのだが、隠すのがめんどうなのでこのまま皆に見せる。

 

 

「お待たせ」

 

「あれ?それっていつも零君が持ってるやつだよね?それが届いてた荷物なの?」

 

「そうだよ、まひる」

 

「布でなんなのかわかりまへんな」

 

「零、これって竹刀とか入れるやつじゃないのか?」

 

「ご名答だよ、双葉。今出すから」

 

 

巻いてある布を取り、夜天の剣が姿を現す。皆は驚いている。

 

 

「黒い剣……?」

 

「ほ、本物……?」

 

「本物だよ。これは俺の親父がお偉いさんでね。お偉いさんでむちゃくちゃ強くてさ。その遺伝なのか俺も相当強いみたいで国から認められて俺も剣の所持を許されてる。だから、俺はこいつをいつも持ち歩いているんだよ」

 

「つまり、学校に関係のないものを持ってきていると?」

 

「ん?いやいやいやいやいやいや、待て、待ってくれ、待ってください」

 

「待たないわよ。なんでこんなのを持って学校に行っているのかしら?」

 

「純那さん、落ち着いてください。これは俺にとっちゃ持ってなくちゃダメなんだよ!」

 

「なんでダメなの?」

 

「持つのをやめたら親父に怒られ、国からも怒られかねないから」

 

「国って……」

 

「またずいぶんとでかい者に怒られてまうんやな」

 

「だから仕方なく持ってるだけなんだ。入学した時だって置いてったのにどうやって送ったのか不明だけど宅配で届いていたしな」

 

「剣一本送るなら造作もないんじゃないの?」

 

「普通に考えたらな。けどこいつは普通じゃないんだよ」

 

「どんな秘密があるのか気になりますね」

 

「おぉ、天堂。ここで参加か。試しに天堂、ちょっとこいつを持ってみてくれ」

 

 

そういうと、夜天の剣を床に置く。

 

 

「ねぇ、零」

 

「なんだ?純那」

 

 

純那が小声で話してきたので小声で返す。

 

 

「アレってオーディションで使ってたやつよね?確か、名前は夜天の剣だったかしら」

 

「ご名答」

 

「やっぱり」

 

 

そう話していると、天堂が夜天の剣を持ち上げようとしていた。だが……

 

 

「え……?」

 

「どうしたの?天堂さん」

 

「愛城さん、ちょっとバトンタッチを」

 

「へ?いいけど。持つだけだよね?」

 

「そうだぞ」

 

「珍しいわね。アンタ自らバトンタッチするなんて」

 

「まさか、そんな事はないはず……」

 

「今なんて言ったの?」

 

 

クロが天堂に話しかけているが、天堂は夜天の剣を見つめてクロの話を聞いていない。

 

 

「え!?なにこれ!?ねぇ、レイちゃん!これすごく重いんだけど!!」

 

「華恋、零が持てるのに持てないなんてそんな事はないと思うのだけど」

 

「じゅんじゅんも持ってみてよ!」

 

「わ、わかった……え、ホントに重い……」

 

「そう。こいつは剣にしては重すぎるんだよ。だから扱う奴がいない。だけど、俺が扱えるとわかるとその剣を渡されたんだよ。俺の所有物となったわけ。それと、こいつの名前は夜天の剣だ」

 

「夜天の……」

 

「剣……」

 

「カッケェ名前だな」

 

「こんなの持てるなんて零は一体どんな筋肉してるのよ」

 

「いたって普通の筋肉だが」

 

 

そういって腹筋を見せる。

 

 

「すごい、腹筋が割れてる」

 

「わ、すごい、硬い」

 

「まひるちゃんだけずるいよ~私も!」

 

 

割れてる腹筋を見て、触りたい娘達が許可も得ずに触りまくっている。触りたい娘達といっても全員だが。そして、零はあることに気づく。こんなにも騒いでいるのにあと一人いないということに。

 

 

「なあ、ひかりは?」

 

「………………あーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

零が聞くと、間があってから華恋が思い出したかのような声を上げるのだった。

 

 

「そうだよ!そうだったよ!レイちゃん!実はひかりちゃんがどこにもいないの!!」

 

「……は?」

 

 

華恋から聞かされた内容を理解するには珍しく遅くなってしまった。

 

 

「ひかりがどこにもいない?で「電話はしてみた?」なな、俺のセリフを……」

 

「あ、ごめん」

 

「いや、大丈夫」

 

「ばなな、ナイス!ばなナイス!!」

 

 

華恋はななのバナナを連想させるツインテールをポンポンと軽く跳ねさせている。

 

 

「まさかの気づいてなかったのか」

 

「ばなナイス……♪」

 

「ななは気にいったみたいだな」

 

 

トゥルルル……トゥルルル……ガチャ…

 

 

「あ、ひかりちゃん!今どこにいるの!?……ってまさかひかりちゃん、今外!?」

 

『えぇ!?』

 

「外出届出した!?門限六時って知ってる!?じゃなくてぇ!!」

 

 

そう叫ぶと華恋は出掛ける準備を素早くすませ、靴を履いている。

 

 

「華恋、外出届はどうすんだよ!」

 

「今日の廊下掃除はあなたよ!」

 

「ごめんなさい!いってきます!」

 

「あぁ、華恋ちゃん!」

 

「まひる、純那。すまないけど後頼む」

 

「え?零君?」

 

「まさか、零。あなたも行く気!?」

 

「あいにく入ったばかりなんで外出するのに外出届とか門限とか知らないんでね!」

 

「それ、ただの屁理屈よ!」

 

「あいつらをほっとくことができないんでね!居場所はいつも通り、勘でいく!」

 

「勘でって……あぁ、零!!」

 

 

華恋が走って行った後すぐに零がバイクにまたがり、まひると純那に説明した後、バイクを吹かし、走って行った。

 

 

(さて、ある程度の情報は華恋から聞くか。後は勘だな)

 

 

そう思い、信号で停まってる間に華恋に電話する。

 

 

『もしもし、レイちゃん!?今レイちゃんと電話してる場合じゃないから!!』

 

「いいから聞け!俺もひかりの捜索を手伝う。だからひかりから居場所の情報を俺のケータイにも送ってくれ!すぐに向かうから!!」

 

『わ、わかった!別行動ってわけでいいんだよね!?』

 

「その方が効率がいい。ひかりを探すぞ!!」

 

『うん!!』

 

 

(これで情報はある程度掴むことができる。さぁて、アホ幼馴染を探しに行きますか!)

 

 

電話はBluetoothを使用している。運転中でのケータイ操作は危険なので零はしっかりとBluetoothを使い、安全を徹底している。すると、華恋からメールが届く。バイクを路肩に停め、メールを確認する。メールの内容は、一枚の写真があり、『これなに?』というメッセージがあった。写真はボヤけているが、ガラスのようなところになにかがいる。零はそれを見て、勘で華恋に返信する。

 

 

『たぶん、クラゲ』

 

 

送信するとすぐに返信が来る。

 

 

『それだ!!』

 

 

(いや、それだって……クラゲなら水族館だな。近くから潰していくか)

 

 

進行方向を近くの水族館に向け、再度、バイクを吹かすのだった。




第五話をお読みいただき、ありがとうございました。

とっくに書き終わってるから後は投稿するだけだなと思っていながら時間だけが過ぎていく…………。時とはなんてこんなにも残酷なのか。投稿する時間はいくらでもあったはず…………なのに、スタァライトの四コママンガ読んだり、ガンプラ作ったり、ガンプラ作ったり、ガンプラ作ったり、スタリラの協力レヴューやったり、VSレヴューやって、負けたら編成を変えて勝ってということをしてきたのです。文字にしなくてもこう思う。何をやっていたんだっ!!!!と。次回はそんなに待たせずに投稿出来るように頑張ります!!

凛名館の『蝶になってみませんか』と『鬼紅忍絵巻』を聴きながら書いてます。『鬼紅忍絵巻』良い曲ですよね~。自分結構この曲好きです。

スタリラでのプレイヤーネームは変わらず『レリ』ですので見かけたらフォローよろしくお願いいたします。スタァランクはシルバー☆3ですので。弱いです。

それでは、皆様。一日お疲れ様でした。レリでした!


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第六話


皆様、こんばんは。レリです。

令和初の投稿ですね。だいぶ経ってしまった……。すみません……。

さて、話は変わりますが皆様は8日と9日のガルパーティとスタリラ祭、行きましたか?自分は二日目に行きました。スタリラ祭の色紙と懐中時計を買いました。懐中時計、カッコいい……。では、話はここまでにして。

それでは、第六話です。どうぞ!


無断で外出している幼馴染のひかりを探す零。そして、今は華恋に送られてきた写真を手がかりに水族館に到着していた。

 

 

「大人一枚で」

 

「かしこまりました」

 

 

大人一枚分の料金を払い、水族館の中に入る。クラゲコーナーがある水族館に来ているので、真っ直ぐクラゲコーナーに向かう。

 

 

「いないか……」

 

 

クラゲコーナーにひかりの姿はない。いないと分かれば長居は無用だ。すぐに外に出てバイクにまたがり、別の水族館に向かう。そして、違う水族館に到着する。

 

 

「大人一枚お願いします」

 

「はい。かしこまりました」

 

 

中に入り、クラゲコーナーに向かう。が、ここにもひかりの姿はない。

 

 

「はずれか……どこに行ったんだか……」

 

 

ピロン

 

 

「ん?華恋からのメール。新しい情報か」

 

 

メールを見ると先程行った水族館と今いる水族館とは別の水族館のクラゲの画像だった。

 

 

「何がしたいんだよ、ひかりは」

 

 

そう呟きながら外に出てバイクで別の水族館に向かうのだった。

 

 

あれからしばらく経ち、空はもう夕焼けでオレンジ色になっている。今はバイクを近くに停めてベンチに座っている零。

 

 

「あれから華恋からのメールが来ない……忘れてるな。しゃーない。勘で行くしかないけどもう水族館巡りは終わってるような気がするんだよな~」

 

 

零のその考えは当たっている。現に華恋はひかりと電話しながらあちこち歩き回っており、ひかりもあちこち歩き回っている。だが、そんな情報が来ないので零は何も知らない。

 

 

「昔はよく三人で出掛けてたよな……十二年前……最後に別れたのは…………東京タワー……」

 

 

昔のことを思い出していると、東京タワーの麓の公園で遊んだ記憶が浮かぶ。

 

 

「そこに行ってみるか」

 

 

東京タワーに向かうためにバイクのエンジンをつけ、走る零。ここからの距離を考えると東京タワーに着くのはもう夜になってしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

東京タワー近くの駐輪場に到着し、バイクを停め、走る。すると、華恋の姿が見え、名前を呼ぼうと思い、口を開けようとするが、先に華恋が口を開いた。こちらに向けてではなく、華恋の目の前に向かってだ。華恋の目の前にいるのは十中八九ひかりだろう。そこに零も参加する。

 

 

「こんなところにいたんだな」

 

「あ!レイちゃん!」

 

「探しまわったんだぞ、ひかり。でも最後はこことはな」

 

「……私たち三人の思い出の場所だから」

 

「そうだな。華恋。お前も俺に連絡ぐらいしてくれよな」

 

「あ、ごめん」

 

「ひかり」

 

「……なに?」

 

「怪我とかしてなくてよかったよ」

 

「……あ、ありがとう///」

 

「で、これからどうする?帰っても怒られるのはもう決まってるし」

 

「……クラゲ見たい」

 

「だって、レイちゃん!」

 

「へいへい。んじゃここの水族館で最後な」

 

「は~い!」

 

「……うん」

 

 

華恋とひかりが先に行き、零はゆっくりと華恋たちの後を追う。そして、中に入り、チケットを買おうと窓口に着くと、華恋とひかりが上に設置されている掲示板を見て固まっている。

 

 

「どうした?」

 

「あちゃ~……」

 

「クラゲ……」

 

「何があったよ。ん?『機器点検のため、20時で営業を終了させていただきます』?あらら……」

 

 

掲示板に映し出されていた文字を読み、入れないことがわかったので東京タワー近くの公園に移動する。

 

 

「見たかったね~クラゲ」

 

「残念だったな」

 

「……うん」

 

「でも、また来ればいいよね。三人で!」

 

「俺もか」

 

「当然です!」

 

「……華恋。ちょっと耳……」

 

「へ?なに?ひかりちゃん」

 

「ゴニョゴニョ……」

 

 

ベンチに座っている華恋とひかりがこそこそと話している。零に聞かれるとまずいのだろうか。そう思った零は近くの自販機に行き、三人分の飲み物を買う。そして、戻ると。

 

 

「それならレイちゃん知ってるから大丈夫だよ!ね、レイちゃん!」

 

「話の内容を理解していない状態でんなこと言われても知らんわ。で、何の話だ?」

 

「オーディションの話!」

 

「オーディション?あぁ、キリンのか」

 

「……なんで」

 

「ひかり?」

 

「……なんで零も参加してるのよ!」

 

「好きで参加したわけじゃねぇよ。無理やり参加させれただけだ。実際俺は勝負とかどうでもいいし、相手がやって来るんだったら全力でやり返すだけだ。別にトップスタァになりたいとかないしな」

 

「……もし、私たちと戦うことになったらどうするの?」

 

「さぁな。その時はその時だ。俺は参加してるけど、みんなのレヴューを見守り続ける。俺はそう思ってる。ほら、飲めよ。お茶だけど」

 

「……ありがとう」

 

「ありがとう!」

 

「……あのオーディションは、合格できなければそこで終わり。舞台少女として一番大切な物を失う」

 

「一番……」

 

「大切な物……か」

 

「だから、負けちゃダメなの」

 

「やっぱり、すごいね。ひかりちゃんは。私の知らないことを知ってるし。だから私を閉じこめたんだ」

 

「はぁっ!?」

 

 

思わぬ華恋の言葉に驚き、お茶を飲もうとしていた手を止める。

 

 

「ひかりが!?華恋を閉じこめた!?」

 

「……うん」

 

「いきなり体育倉庫に閉じこめられてびっくりしたよ」

 

「それって昨日のことか?」

 

「そうだよ」

 

「どうりで探しても見つからないわけだわ」

 

「あれ、探してたの?」

 

「まひるに華恋を見たかって言われたからな。だから俺も手伝ったんだよ。そしたらオーディションのメールが来てな。あの場所に行けば会えると思って行ったら先にひかりが行ってたってわけ」

 

「……///」

 

「あれ?ひかりちゃん?」

 

「顔が赤いぞ。どうした?」

 

「……な、なんでもない。大丈夫(言えない。昨日、零に抱きついて泣いたことを思い出したなんて。絶対に言えない。それになに?この気持ち……零を見てると感じるこの気持ちは……一体なに……?)」

 

「?そうか。じゃあ、帰るか」

 

「点呼の時間過ぎてるね」

 

「まあ、もう怒られることは確定してるし。点呼の方は純那やまひるがどうにかしてくれてるだろ。俺らはなるべく早く帰ることだ」

 

「あ~……そのことなんだけど、レイちゃん」

 

「なんだ?金がないから電車で帰れないとでも言うつもりか?」

 

「…………」

 

「おい、まさかホントなのか、華恋」

 

「……零」

 

「なんだ?ひかり」

 

「……私も」

 

 

華恋は目をそらしながら黙っている。その後にひかりの言葉の意味を理解したのはすぐだった。

 

 

「はぁ~…………」

 

「……ごめんなさい」

 

「……ごめん」

 

「歩いて帰るしかないな」

 

「どれくらいかかるかな」

 

「さぁな。明日の朝に着くんじゃないのか?」

 

「レイちゃんはバイクだよね」

 

「そうだよ。言っとくが、二人乗りだぞ」

 

「大丈夫!そんな事は言わないから!ね、ひかりちゃん」

 

「なに?」

 

「……零」

 

「なんだ。まさか……」

 

「そのまさかだよ♪」

 

「嘘だろ……」

 

 

二人が考えている内容。それは、バイクで乗って帰ろうとしたらわかってるね?というのも含めて、三人仲良く歩いて帰ろうというものだった。

 

 

「ところでひかりちゃん。私を閉じこめた理由って私を守るような感じだったんでしょ」

 

「……うん」

 

「でも、あれだと私負けちゃわない?」

 

「不戦勝になるわな」

 

「え……あ」

 

「もしかして、わかってなかった?」

 

「……」

 

「ふふふ、ひかりちゃんって」

 

「な、なによ」

 

「なんでもない♪それと、ひかりちゃん。このオーディション、二人……いや、三人で合格しようよ」

 

「三人?」

 

「そう!三人で輝けば三人一緒にトップスタァになれるよ!キリンだって最も輝いた方にはホンニャラ、コンニャラ……」

 

「最も輝いた方には星のティラアが授けられ、トップスタァへの道が開かれるでしょうって言ってなかったか?」

 

「そう!それ!」

 

「そんな特別扱いあるわけない!」

 

「大丈夫」

 

「華恋……ある、かもね」

 

「でしょでしょ~」

 

「そうね。三人で一番キラめけばきっと」

 

「うん。きっとね」

 

「良いところすまないが三人って俺もか?」

 

「「当然!私たち三人で!異論は認めない!」」

 

「二人してなんかキャラ変わってねぇか!?」

 

 

そんな事を話ながら帰路についたのだった。

 

 

 

三人が星光館周辺まで来た時の時刻は朝六時近くだった。

 

 

「まさか、バイクを押しながら帰る羽目になるとは……」

 

「……バイクで来るのが悪い」

 

「誰のせいだ!誰の!!」

 

「……私?」

 

「自覚してんなら疑問系で返すな!!」

 

「落ち着いて、レイちゃん!朝から騒いでると近所迷惑になっちゃうから!」

 

「華恋ちゃ~ん!!」

 

「あ!まひるちゃん!」

 

「あなたたち!朝帰りなんてなに考えてるの!」

 

 

純那が聞いてくるとひかりが手に持ってた紙袋の中身を出すとそこにはクラゲのぬいぐるみがあった。

 

 

「……お金、なくなった」

 

「おい、ひかりが金がなくなった理由はそれがでかいだろ」

 

「……」

 

「目をそらすな」

 

「でも、六時にはちゃんと帰ってきたよ」

 

「朝六時って意味じゃない!」

 

「掃除当番、純那ちゃんが変わってくれたのよ」

 

「……///」

 

「あぁ~……じゅんじゅん、ありがとう~次十回分変わるから~」

 

「全く……」

 

「純那、なな、まひる。いろいろ迷惑かけてすまなかったな」

 

「あなたはバイクなんだから早く帰ってくることができたでしょ」

 

「そうしようとしたんだがな~」

 

「私たちが止めました!」

 

「堂々と言ってんじゃない!!」

 

 

ペチンッ!

 

 

「あうっ」

 

 

胸をはって言ってくる華恋のおでこに軽いデコぴんをする。すると、遠くから自転車のベルの音が聞こえたと思ったら隣を先生が通っていく。

 

 

「神楽と愛城と岡峰、後で職員室な。庇った連中も一緒だぞ」

 

「「「「「「え……?」」」」」」

 

「罰として、伝説のシゴキだからな~!」

 

「で、伝説のシゴキ……!?」

 

「あわわわわ……」

 

「なにそれ」

 

「純那の反応とまひるの怯えてる姿を見ると、とんでもないことだというのはわかるが」

 

「聖翔音楽学園に伝わるとてつもなく厳しい特訓のことよ」

 

「伝統のシゴキねぇ……どんなもんか見てみたいけどな」

 

「耐えきれずに先輩たちが学園を去ったって聞いてるわ」

 

「とんでもねぇな」

 

「だ、大丈夫だよ、みんな一緒なんだし。ね!」

 

「誰のせいでこうなってるのよ~……」

 

「すまん……」

 

「まあ、とにかく。無事に帰ってきてくれて良かったわ」

 

「っ……」

 

「おかえり」

 

「おかえりなさい」

 

「華恋ちゃんもおかえり」

 

「零君もお疲れ。おかえり」

 

「ただいま」

 

「ひかりちゃん!おかえり!」

 

「……ただいま」

 

 

ひかりの声を聞くと、華恋はひかりの背中を押しながら寮に向かう。

 

 

「お腹すいた~」

 

「ばななちゃん、朝ごはんなに?」

 

「お豆腐の味噌汁と~」

 

「お豆腐……嫌い」

 

「そういやひかりは豆腐とかプルプルしてるの苦手だったな」

 

「じゃあ、ばなな味噌汁!」

 

「「え……ばなな!?」」

 

「マジか……」

 

「ばなな……」

 

 

この後、点呼の時にいろいろやってくれた(結局バレた)娘たちにお礼と先生の伝言を伝えたのだった。

 





第六話をお読みいただき、ありがとうございました。

ひかりのあの気持ちは一体……?まあ、わかりやすいでしょうね……。

ここでちょっとした報告を。別作品のISーマテリアルズの魂を持つ者ーなんですが、しばらくはこちらのスタァライトに専念するため、投稿が止まります。もしかしたら書いて出すかもしれないです。このスタァライトに専念する理由は、進めたいと同時に早くアニメ編終わらせてRe:LIVE編に入りたい。早く他の学校を出したい、ということです。

なので、マテリアルズの方はしばしお待ちを。勝手で申し訳ありませんが、何卒ご理解のうえ、お願いいたします。

それでは、皆様、おやすみなさい。レリでした!


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第七話


皆様こんばんは、レリです。

前回の投稿で令和初と言っていましたが二度目でした。すみません。

スタリラで花嫁ジューンのひかりを当てようと引いたら虹が三つもきたのでやったと思ったら全部メモワール……ふざけんじゃねぇ!!まあ、ひかりのフィギュアが届いたから少しは気分晴れたけど……。

それでは、第七話です。どうぞ!


朝早くに校舎内の廊下を歩いている零。向かっている場所は朝、学校に着いたら必ず向かうレッスン室だ。レッスン室に着き、ノックする。

 

 

コンコン……

 

 

「入るぞ~」

 

「おはよう!レイちゃん!」

 

「おはよう」

 

「おはよーさん。しかし、朝早くに二人が行くのを見かけたから俺も早く来たら準備とかしてすぐに来いって言われたから来たわけだが。俺がいてもいいのか?」

 

「レイちゃんだからいいの!」

 

「その信頼というのか信用というのか……それはどこからきてるんかねぇ~」

 

「幼馴染としての長い付き合いってやつでしょ」

 

「それかもな」

 

「それに、いくらお手伝いでこの学校に来たとはいえ、レイちゃんも私たちと同じ仲間でライバル同士ってわけだよ!代表的なのがアレだね」

 

「狙うつもりはねぇんだがな。ほら、少し動いたとはいえ多少汗もかいてるはずだ。タオル持ってきたから使え。あと、スポーツドリンク」

 

「わぁ~ありがとう!レイちゃん!」

 

「ありがとう。零」

 

「おう」

 

 

渡したタオルで顔を拭き、スポーツドリンクを飲む二人。その光景を見ながら零は笑ってしまう。

 

 

「なによ」

 

「いや、編入した時と比べるとだいぶ柔らかくなったな~って思ってな」

 

「ひかりちゃんが?」

 

「私?」

 

「なんていうんだろうな。ひかりと接する時はなにか棘のようなものがあって、接しにくいって感じだった。だが、今は十二年前のひかりに戻ったようで接しやすくなったよ。お前たちで言う言葉を使うと、一昨日とかのひかりにはキラめきがなかった」

 

「……っ!」

 

 

零の最後の言葉、『キラめきがない』という言葉に異常に反応したひかり。華恋は気づいていないが、零は見逃さなかった。

 

 

「だけど、今のひかり……正確には昨日の東京タワーの時からそのキラめきを感じる」

 

「……そう」

 

「一度無くしたものはふとしたきっかけで見つかる、あるいは生まれる。再生産って感じにな」

 

「一度……無くしたものは……」

 

「ひかりちゃん!さっきのもう一回やろ!」

 

「うん」

 

 

再び練習に戻る華恋とひかり。すると、廊下の方から声が聞こえ始める。

 

 

『起きろ!香子!今日の鍵開け当番、香子だろ~!』

 

『堪忍や~……伝説のシゴキのせいでまだ筋肉痛が~……』

 

『あたしだってふくらはぎピキピキ!なんであたしまで早起き……』

 

 

ガラッ!

 

 

「あれ……」

 

「朝からお疲れさん。おはよう、双葉。花柳」

 

「華恋ちゃん!」

 

「おはよう、まひる」

 

「あ、おはよう。零君。華恋ちゃん……」

 

「開けたらもういたんだ」

 

「朝早くに来たからな」

 

「あ、おはよう!みんな!」

 

「おーす」

 

「おはようさんどす~」

 

「おはようございます」

 

「おっはよーございま~す」

 

「クロ、テキトーなあいさつだな」

 

「おはようございます」

 

「天堂さん!おはよう!」

 

「おはようございます」

 

「追い付くからね。絶対に」

 

「えぇ」

 

「……華恋ちゃん」

 

 

(まひる……?)

 

 

なにか、昨日のまひるとは違う様子に気づく零であった。

 

 

 

ちなみに伝説のシゴキでほとんどが筋肉痛だが、零も伝説のシゴキをやったがこれだけ動いたのならもっと動かすと言って自主トレをしていた。それを見たみんなは、どんな体力をしているのかと思っていた。さすがの真矢も苦笑いをしていた。

 

 

 

 

時間は経って次の日の朝。

 

 

「レイちゃん、おはよう!」

 

「まだみんな起きてないんだから静かにしような。おはよう」

 

「……零、おはよう」

 

「おはよう、ひかり」

 

「……っ///」

 

「ひかり?」

 

「な、なに……?///」

 

「朝から顔赤いぞ。大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫……///」

 

「そうか。なにかあったら言ってくれよ。手を貸すから」

 

「うん。ありがとう」

 

「ねぇ、レイちゃん。ひかりちゃんになにかした?」

 

 

小声で華恋が話しかけてくる。ひかりには聞こえないようにこちらも小声で返す。

 

 

「変なことはしてないはずだ。思い浮かばんし」

 

「ホントに?」

 

「そんなジト目で見られても何もない……はずだ」

 

「ほら、やっぱりなにかあるんじゃん!」

 

「ば、バカ。声がでかい!」

 

「何の話?」

 

「なんでもないぞ」

 

「そうそう。ほら、早く行こ!」

 

「そ、そう」

 

 

(危ねぇ……ひかりにバレるところだった。しかし、俺はひかりになにかしたのか?確かにひかりからよそよそしいというかそういうのを感じるしな。あるとするならあの時、ひかりが俺に抱きついて泣いたぐらいしか浮かばん。それがひかりになにかを変えたのか?まさか……恋ってやつか?まさかな……)

 

 

「レイちゃん!早く早く!」

 

「あぁ、わかってる!」

 

 

(考えるのはあとだな)

 

 

 

あと少しで学校に着く位置にいる三人。すると、ひかりが声を上げる。

 

 

「どうした?ひかり」

 

「……忘れ物」

 

「寮に?」

 

「……うん」

 

「しょうがない。ひかり、乗れ」

 

「え?」

 

「忘れ物取りに行くんだろ?バイクで行くぞ。その方が速い」

 

「う、うん。わかった」

 

「そういうわけだ。華恋。すまないが先に行ってくれるか?すぐに戻ってくるから」

 

 

「うん、わかった!先に行ってるね!」

 

「すまないな。ひかり、行くぞ。ほら、ヘルメット」

 

「あ、ありがとう」

 

 

フルフェイスのヘルメットをひかりに渡し、零もフルフェイスのヘルメットをかぶる。そして、先にバイクにまたがり、ひかりが乗りやすいようにバイクを傾ける。そして、ひかりが乗ったのを確認し、バイクのエンジンをつける。

 

 

「しっかり掴まっていろよ」

 

「うん」

 

 

そういうと、ひかりは肩に手を置く。

 

 

「それだとダメだ。俺の腹に手を回すように掴まれ」

 

「え……!?で、でも……///」

 

「そうでもしないと落ちるかもしれないんだぞ」

 

「わ、わかった……」

 

 

腹に手を回してギュッと抱きついてくるひかり。背中に女性特有の柔らかいのを感じるが、気にしない。別に女気がないわけではない。むしろ、零は華恋とひかりを幼馴染としての他に異性として見ている。

 

 

「よし、行くぞ!」

 

 

バイクを吹かし、寮に向かう。

 

 

「いってらっしゃ~い!」

 

 

華恋がそう言いながら手を振り、すぐに学校に向かう。

 

 

「いいな~ひかりちゃん……私にもわかるくらいレイちゃんを意識してるし。でも、負けないからね。レヴューも……コレも……」

 

 

そう呟く華恋は夢見る舞台少女ではなく、一人の恋する少女であった。

 

 

 

 

 

寮に着き、零は玄関で待機、ひかりは急いで部屋に行き、忘れ物を取りに行く。

 

 

近所迷惑になりかねないのでバイクのエンジンは切っている。すると、華恋とひかりとまひるの部屋からまひるの声が聞こえる。

 

 

「なんだ?あ、ひかり。今、まひるの声が聞こえたんだが」

 

「……別に何もなかった」

 

「でもここまで聞こえるとなると叫んでいるような感じになるはずだが」

 

「……何もない」

 

「でもな」

 

「な、に、も、な、い」

 

「そ、そうか。なら早く行くか」

 

「うん」

 

 

ひかりの勢いに負けて頷く零。そのまま学校に向かう。

 

 

 

それからというもの、学校では、ひかりが常にまひるを監視しているように見える。授業の後の休憩でまひるが華恋にタオルを渡し、汗を拭く華恋。華恋は純那と双葉に呼ばれ、タオルをまひるに返し、二人の方に行く華恋。まひるは華恋が汗を拭いたタオルをじーっと見つめている。すると、まひるの隣に零が渡したドリンクを飲んでいるひかり。何も言わずにどこかに行くひかり。するとまひるはタオルを前に投げる。投げたタオルは見事に花柳の顔面に直撃していた。

 

 

(朝、ひかりはまひるの何を見たんだ?)

 

 

そう思わずにはいられない零だった。

 

 

 

放課後。零は先生の手伝いをしていた。先生から言われたのではなく、自分から手伝いを率先してやっている。

 

 

「助かったよ、岡峰。私一人だとちょっと大変だったからね」

 

「いえ、これくらい手伝いで編入した身としては当然です。もちろん、このような編入じゃなくても手伝いますが」

 

「頼もしいよ。もう大丈夫だ。ありがとうな、岡峰。帰っていいぞ」

 

「はい。失礼します。さようなら」

 

「あぁ。気をつけて帰れよ」

 

「はい!」

 

 

先生と別れ、荷物を取りに教室に向かう零。

 

 

 

~♪

 

 

 

ケータイからオーディションの着信音がなる。

 

 

「オーディションか……今日はどうなんだろ」

 

 

ケータイをポケットから出して画面を見る。

 

 

「は……?」

 

 

零がこのような声を出す理由はケータイの画面に書かれた文字だった。それは、前回は休日とあった場所が今は『見学』と書かれていたのだ。

 

 

「見学?休日じゃなくて?まあ、いいか。とりあえず夜天の剣だけ持って行くか」

 

 

夜天の剣を持ち、地下劇場に行くためのエレベーターに向かう。そして、地下劇場に入る。

 

 

(見学って書いてあったから入れたが前回は入れなかった……やっぱり、休日の人は入れないんだな)

 

 

「お待ちしておりました」

 

「キリン……」

 

「あなたには、これからは見学として他の方のレヴューを見ていただきます。無論、出場もあります」

 

「なんで俺が見学なんだ?」

 

「あなたはレヴューなどの知識はほぼ皆無。なので、見学で勉強をしてもらおうと思いまして。それに。飛び入りが二人となるとスケジュールの調整もしなくてはならないので」

 

「強制参加させた間違いだろ。で?俺はこれから誰と誰のレヴューを観るんだ?」

 

「すぐにわかります。席に座るなり、そのまま立ったままご鑑賞でも構いません」

 

「わかった。観やすい位置に行くわ」

 

「わかります」

 

キリンがいる場所から離れた場所に移動し、席に座る。すると、幕が開く。

 

 

「始まるか……誰なんだろうな」

 

「星屑溢れるステージに、可憐に咲かせる愛の華!99期生、愛城華恋!みんなをスタァライト、しちゃいます!」

 

「華恋……相手は?」

 

「キラめく舞台は大好きだけどキラめくあなたはもっと好き。回る回るデュエットでずっとあなたと踊れたら。99期生、露崎まひる。ずっとそばにいたのは、私なんだよ」

 

「ま、まひるちゃん……」

 

「それでは、オーディション四日目、嫉妬のレヴューの開演です。トップスタァを目指して、歌って、踊って、奪い合いましょう」

 

「……まひるか」

 

 

 

まひるが立っているセットを見る零。すると、そこにある物に目が入る。

 

 

「ん?あれは……『レヴュー 第九十九回聖翔祭 舞台裏』?」

 

 

まひるの隣にある物に書いてある文字を読む零。

 

 

「あぁ、緊張でドキドキが止まらないよ~」

 

「大丈夫だよ、まひるちゃん。私がそばにいてあげる」

 

「華恋ちゃん」

 

「うん」

 

「え……!?それ、私……!?」

 

「そばにいてくれる?ずっと?」

 

「うん、ずっとそばにいるよ。まひるちゃん」

 

「あぁ~華恋ちゃ~ん」

 

「わ~い!」

 

「まひるちゃん、あの~……」

 

 

まひるの一人芝居(?)を見た華恋は困惑している。

 

 

「これが、私に見えるもの。私が欲しいもの。私が持っていないもの。華恋ちゃんがこのキラめきで照らしてくれるから私は頑張ってこられたの。あの日、約束したよね。ずっと一緒にいてくれるって…………だから渡さない。ひかりちゃんも皆も全部ぜ~んぶやっつけて私と華恋ちゃん。二人で運命の舞台を~!」

 

 

 

 

 

 

嫉妬のレヴュー

 

 

戯曲:恋の魔球

 

 

 

 

 

「今までのまひると比べるとキャラ崩壊しているような……」

 

 

観客席で呟く零。華恋のことになるとまひるのキャラはだいぶ変わるというのを今、零は知ったのだった。当のまひるはセットから飛び降り、まひるの武器、バトンをクルクルと回転させながら……

 

 

 

ドゴォォォォォォンッ!!

 

 

 

「…………………………は?」

 

 

ステージに叩きつけたのだった。威力はステージにヒビが入るほど。

 

 

「え……?え……!?…………あわわわっ!」

 

「あはは、あはは!」

 

 

全速力で逃げる華恋。笑いながら華恋を追いかけるまひる。もはやレヴューでもなんでもないような気がする。

 

 

「なに…………?これは…………」

 

 

零の独り言のように呟く。それを……

 

 

「嫉妬のレヴューです」

 

「んなもんわかってるわっ!!!!」

 

 

キリンが言った瞬間にツッコム零であった。その零の叫びは地下劇場に響いたのだった。

 





第七話をお読みいただき、ありがとうございました。

前回の投稿からだいぶ時間が経ってしまってすみませんでした。

VSレヴューで何度か花嫁ジューンのひかりがいる編成と戦ったのですがその編成に勝ったことが全くありません。アマテラスのひかりがいる編成も何度か勝ったけど負けが多い……。そして思う。皆さん強すぎない?って……。自分も強くしようとガチャを引くのですが、虹がきてよしって思うとメモワール……。あれ、最近メモワールしか当たってなくね?って思う。自分、運営とかに邪魔されてるのかな……。それともただ単に運がないだけ?どっちなんだろ……。自分で言ってて悲しくなってくる……。

まあ、後書きはこの辺で終わりにして。それでは皆様、おやすみなさい。レリでした!


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第八話


こんばんは。レリです!

めっちゃ久しぶりに一週間後に投稿です。

今回はいろいろキャラが出ます。モチーフキャラは後書きで。そして、零に新たな剣が!?

それでは、どうぞ!


トントントントン………

 

 

……チーン

 

 

包丁がまな板に当たる音、オーブンのセットしたタイマーの合図が鳴る。場所は学生寮、星光館のキッチン。キッチンからは香ばしい匂いが漂ってくる。

 

 

「ふんふふんふ~ん♪」

 

「これでよしっと。なな、そっちはどうだ?」

 

 

鼻歌を歌いながらオーブンから完成した料理を取り出すななにこちらの準備が整った零が聞く。

 

 

「こっちも終わったよ~。みんなを呼んでこないと」

 

「だな。お~い、みんな~。出来たぞ~!」

 

『は~い!』

 

 

零の声で七人分の返事がくる。すると、料理してたななとお風呂に入っているまひるを除く七人がリビングに入ってくる。

 

 

「おぉ~!まひるちゃん家のまひる芋の料理がこんなに!」

 

「なな一人じゃとてもできない量よね……」

 

「零君が手伝ってくれたからね。助かったよ」

 

「気にするな。俺がしたくてしただけだからな。あ、まひる!」

 

「なに?零君」

 

 

風呂から出たまひるがちょうどリビングの前の廊下を通ったので呼び掛ける。

 

 

「まひる芋、できてるよ♪」

 

「あ、わかった。部屋にお風呂セット置いてくるね」

 

「あいよ」

 

 

小走りで部屋に向かうまひる。

 

 

「いただきま~す!」

 

「こら、華恋。まひるを待たないのかよ」

 

「お待たせ~」

 

「あ、まひる。すまん、華恋のやつ先に食いやがった」

 

「あはは。華恋ちゃんはうちのお芋好きだからね」

 

『いただいてま~す!』

 

「……訂正だ。華恋だけじゃなく全員だった」

 

「あはは……」

 

 

ひかり以外が口を揃えてまひるに言うみんな。まひるは苦笑いしている。

 

 

「今年もと~ってもお料理のしがいがありました♪」

 

「量が去年より多い……」

 

「ななと俺の二人で料理したからな。どんどん作った」

 

「あ、そうなんだ」

 

「今年のまひる芋も最高だぜ~!」

 

「お芋、好きよね」

 

「Yes.This is お芋。ホクホクとした食感が……」

 

 

みんな美味しいだったり話したりして食事を楽しんでいる。

 

 

(華恋とまひるのレヴューの後とは思えない明るさだな。華恋、まひる)

 

 

そう、時間は華恋とまひるのレヴューから数時間が経過している。

 

 

(レヴューというか野球のようだったな。まひるの武器はバトンじゃなくてメイスだな)

 

 

嫉妬のレヴューは、今までのレヴューとはまた違ったものだった。野球のようなセットだったのだ。結果として華恋の勝利で幕を閉じた。

 

 

 

~♪

 

 

 

「ん?電話?誰だ?え?」

 

「どうしたの?レイちゃん」

 

「誰から電話?」

 

「悪い、ちょっと電話出てくるわ。みんなで食べててくれ」

 

「わかった。レイちゃんの分も残しておくからね」

 

「おう、頼む」

 

 

リビングを出て、自分の部屋に向かいながら電話に出る。

 

 

「もしもし、親父?」

 

『おぉ~、零。久しぶりだな』

 

 

電話の主は零の父親、岡峰一哉だ。

 

 

「そうだな」

 

『どうだ?新しい学校は?』

 

「問題ないよ。華恋とひかりもいるし」

 

『ほう、あの二人がいるのか。なら心細いことはないな。安心したよ』

 

「親父が心配なんて今日か明日は大雨か?」

 

『ひどいことを言うな……』

 

「冗談、冗談。で、わざわざ電話してくるとは一体どんな用件?」

 

『話が早くて助かるよ。実はな、どっかの女がまた剣を見つけたらしくてな』

 

「おい、その剣ってまさか……」

 

『お前の予想通りだと思うぞ。その剣はやはり誰も持てないことが確認された』

 

「まさかの二本目か。で、その剣を俺なら持てるかもしれないと?」

 

『ご名答。今、その剣をお前のところに送ってるから』

 

「は?送ってる?いつ届くんだよ」

 

『それは……』

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴ………………

 

 

 

 

「なんだ?この重低音は」

 

「レイちゃん!!」

 

「うわっ!ビックリした!!」

 

 

いきなり重低音が聞こえたと思ったら部屋のドアをすごい勢いで開けてきた華恋に驚く零。

 

 

「大変だよ!外になんか大きい車が停まってるの!!」

 

「は?大きい車?」

 

『おぉ、着いたか』

 

「おい、親父。まさかとは思うが」

 

『言ったろ?送ってるって』

 

「ちょっと、零~!零にお客さんよ~!」

 

「親父、後でお話しようか。わかってる!すぐに行く!!」

 

 

電話を切って急いで外に出る。外に出ると華恋の言う通り大きい車が停まっている。

 

 

「って、装甲車かよ!!しかもめちゃくちゃデカイやつだし!!」

 

 

大型の装甲車の後部のドアが開く。すると、よく知っている人が降りてくる。

 

 

「久しぶりだね。零」

 

「え、き、如月綾斗さん!なんであなたが!?」

 

 

降りてきたのは岡峰一哉の部下、如月斗真(きさらぎあやと)さんだった。

 

 

「え、なんで綾斗さんが?てかこんなデカイ装甲車で来るほどとんでもねぇ剣なの?」

 

「詳しくは車内で。あの方が待ってるよ」

 

「まあ、わかりました。みんな、すまんが行ってくる」

 

「う、うん。いってらっしゃい……」

 

 

装甲車の中に入る零。すると、剣が入っていると思われる大きな鉄の箱がある。後は大きな画面がある。すると画面が光り、誰かが映り出される。

 

 

『お久しぶりです。零君』

 

「桐谷優里総理大臣。お久しぶりです」

 

 

画面に映ったのは日本で珍しい女性の総理大臣、桐谷優里(きりたにゆり)さんだ。ちなみに一哉の後輩だ。

 

 

『そう畏まらないでください。あなたのお父上には頭が上がらないのですから。それに、敬語はやめてくださいとも言っていたはずですが』

 

「いや、流石に総理大臣に敬語を使わないというのは……」

 

『まあ、いいでしょう。それでは、今日ここまで来た理由ですけど。あなたの所有しているのとは別に新たな剣が発見されました。その剣は誰も持つことができないのです。それで、一本目を持つことができたあなたなら持つことができるのではないかと思ったのです』

 

「なるほど。で、その剣はこの中に?」

 

『はい。今開けます』

 

 

 

プシュー……ガゴンッ!ゴゴゴ……

 

 

 

重そうな音を鳴らしながら箱の蓋が開かれる。すると、その中には新たに発見されたと思われる深紅の剣が姿を現す。

 

 

「これが……」

 

『触ったり、持ってみてください』

 

「了解です」

 

 

そう言われ、剣に触れると一瞬紅い剣が光ったように見えた。柄を握り、持ち上げる。

 

 

『……やはり、持てましたか』

 

「……なんか持てました」

 

『ちなみに重さはどうですか?』

 

「夜天の剣より少し軽いですね。こいつ」

 

『では、前回同様その剣をあなたに託します。軽いのならもう一本の剣とその剣で二刀流にするというのもありですね』

 

「そうですね。一本だけだとなんか変な違和感があったんですよね。もしかしたらこいつが来るのを無意識で待っていたのかもしれません」

 

『そうなのですか。あ、その剣には名前がありません。なので所有者のあなたが名前をつけて下さい』

 

「いきなりですね……そうだな、紅くて華のデザインがある……紅い華……紅華の剣……うん、こいつの名前は紅華の剣(こうかのつるぎ)にします」

 

「紅い華で紅華ですか。安直ですね』

 

「ネーミングセンス0の自分に何を期待してたんですか」

 

『ふふ。では、これで今日の用事は終わりました。お父上と理亜さんによろしくお伝えください』

 

「わかりました。わざわざありがとうございました」

 

『いえ、それでは失礼します』

 

 

電話が切られ、画面が暗くなる。ちなみに優里さんが最後に言った名前は零の母親、岡峰理亜(おかみねりあ)だ。いつまでも車内にいるのは嫌なので紅華の剣を持ったまま外に出る。すると、華恋たち全員が出てくるのを待ってましたと言わんばかりに走ってくる。

 

 

「レイちゃん!車の中でなに話してたの!?」

 

「その手の剣はなに?」

 

「一体誰と話したのよ」

 

「自衛隊がここまで動くなんてあなたは何者なのですか」

 

「詳しく聞かせてもらおうじゃない」

 

「だぁぁぁぁっ!!わかったわかったっ!!後でちゃんと説明するから今は離れろ!!綾斗さんたちが帰れないだろ!!」

 

「あ、そうだった」

 

「ごめんなさい」

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

「綾斗さん。本日はありがとうございました。親父にはきつく言っときます。自分の部下をパシりみたいに使うなと」

 

「お気遣い感謝するよ。でも大丈夫だよ。自分が好きでやっていることだから」

 

「そう言ってくれると助かります」

 

「じゃあ、僕は行くね」

 

 

自衛隊の敬礼をした綾斗さんに零も敬礼する。そして、綾斗さんが乗った装甲車がゆっくりと前進し、帰っていった。

 

 

「それじゃあ、レイちゃん。話してもらうよ」

 

「わかってるよ。リビングで話す」

 

 

リビングに移動し、紅華の剣を床に置く零。

 

 

「さっき車の中で誰と話していたのかだけど、桐谷優里さんと話してた」

 

「桐谷優里って……桐谷優里総理大臣!?」

 

「ご名答。純那」

 

 

さすが学級委員長なだけあってこういうのはすぐに理解する純那。

 

 

「レイちゃんと総理大臣ってどんな関係が?」

 

「親父の後輩だよ。なんでも昔、親父に助けられてそこから親父を慕うようになったんだと。で、もともと頭もすごくよかったから総理大臣になれたって言ってたな。慕っている人の息子にも親父ほどではないけど信頼しているんだそうだ。総理大臣にむかってタメ口で話してもいいとも言われてるし」

 

「零君のお父さんってそんなにすごいんだね」

 

「総理にもなれたかもしれない親父がなぜ自衛隊にいるのかと思うよ。自衛隊ではめちゃくちゃ偉いらしいしな」

 

「で、その紅い剣が今回の用件?」

 

「そ。こいつは紅華の剣って名前をつけた」

 

「やはりその紅華の剣も夜天の剣と同様に重いのですか?」

 

「試しに持ってみろよ」

 

 

何人かが紅華の剣を持ち上げようとする。しかし誰も持ち上がらない。

 

 

「やっぱり持てないのか……」

 

「零は持てるんでしょ?夜天の剣と比べてどうなの?」

 

「夜天の剣よりかは少し軽いよ。夜天の剣と紅華の剣を両手に持って二刀流ができる」

 

「もう零はとんでもない人だというのがわかったわ……」

 

「なんか呆れられてる……」

 

「当然だと思うけどな~……」

 

「まあ、この剣の話は終わりだ!結構時間経ってしまったけど残りのまひる芋の料理を食べようぜ」

 

「うん!あ、そうだ、レイちゃん!いいもの見つけたんだよ!」

 

「いいもの?」

 

 

そう言うと華恋はリビングにあるテレビをつける。するとDVDかなにかが入っているのか、それが再生される。画面には北海道のテレビ番組が映し出される。画面が切り替わり、中学生のまひるが映る。

 

 

「あぁ~!忘れてた~!ダメェ~!!」

 

『どんなスタァになりたいですか?』

 

『スタァ!?えっと、大切な、大切な人たちを笑顔にできるような暖かいスタァになりたいです!』

 

 

画面のまひるの笑顔は現在のまひると同じキラめいている笑顔だった。

 

 

「ね!まひるちゃん、可愛くて暖か!そして、と~っても朗らか!」

 

「うん。キラめいてる」

 

「確かにキラめいてるな」

 

 

そう言いながらまひるの方を見るといい笑顔だった。その笑顔は今まで零が見た以上の笑顔だったのだった。

 





第八話をお読みいただき、ありがとうございました。

さっそくですが登場キャラの説明です。

岡峰一哉……機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズのラスタル・エリオンがモチーフ。モチーフがモチーフなだけに一哉もめちゃくちゃ偉いです。

桐谷優里総理……機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズのジュリエッタ・ジュリスがモチーフ。一哉の後輩であり、先輩である一哉を慕っている。名前はジュリの部分のユとリをとって優里にしました。

如月綾斗……学戦都市アスタリスクの天霧綾斗がモチーフ。零に次ぐ実力の剣の使い手。


こんなところですね。そして、零に託された新たな剣。わかった方が多いかと思います。紅華の剣はSAOアリシゼーションのキャラ、ユージオの剣、青薔薇の剣の赤バージョンです。ちなみに青かったら蒼華の剣(そうかのつるぎ)にしてました(たった今思い付いた名前)。


それでは、おやすみなさい。レリでした!


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第九話


皆さん、こんにちは。レリです。

前回投稿して早二週間……時が経つのは早いもので。

ひかり「…………い」

え……?

ひかり「……遅い」

え、あ、うん、ごめんなさい。それでは第九話です。どうぞ!


紅華の剣がきてから数日……。

 

 

「で、なんでお前らが俺の部屋にいるわけ?」

 

 

零の部屋にはクロと双葉がいる。

 

 

「零に話があるの」

 

「話?」

 

「そ。双葉がね」

 

「双葉が?俺に?」

 

「零。話ってのは今のあたしらの状況を知ってるよな?」

 

 

双葉たちの状況。それは双葉と花柳が喧嘩をしているということ。

 

 

「あぁ。知っている」

 

「それで、零には香子に手助けをしないでほしいというわけなんだよ」

 

「理由は?」

 

「零はこの学校に手伝いで編入したってことを知ってるから」

 

「ちょっと待て!?先生や俺はお前らにそんな事一言も言ってないはずだぞ!?」

 

「ちょっと前に華恋から聞いたんだ。あいつ、自信満々に言ってたぞ」

 

「あいつには後で伝説のシゴキよりも厳しいレッスンをしないとダメだな」

 

「アレよりも厳しいレッスンって……」

 

「まあ、そんな事より双葉と花柳が喧嘩してて双葉はクロの部屋で寝てるんだろ?そして通学のバイクは一人。花柳は歩いて行くしかない。だから双葉以外の唯一のバイク乗りの俺に花柳が助けというかそんなもんを言ってくるだろうってことか?」

 

「そうだよ。あいつも零が手伝いでの編入だっていうのを知ったらすぐに来るかもしれないからさ。だからあいつが来ても断ってくれ。頼む」

 

「花柳のためにもならないしな。わかったよ」

 

「ありがとう。零」

 

「礼には及ばんさ」

 

 

 

~♪

 

 

 

「ん?すまん。電話だ」

 

「いいよ。こっちも話は終わったから。クロ子、戻ろうぜ」

 

「ええ。じゃあね、零」

 

「あぁ、じゃあな」

 

 

手を振りながら部屋を出ていく二人。扉が閉まったのを確認して着信中のケータイを見る。画面には『岡峰理亜』と出ている。

 

 

「母さん?どうしたんだろ?もしもし、母さん?」

 

『久しぶりね、零。女の子ばかりの学園はどう?』

 

「久しぶり。居場所がないように思います。まあ、華恋とひかりがいるから大丈夫だと思うけど」

 

『あら、華恋ちゃんにひかりちゃんがいるの?懐かしいわね』

 

「まあな。で、どうしたの?」

 

『この前、一哉が零に剣を送ったって聞いたからね。どんなのかなと思って』

 

「なに、親父が母さんに言ったの?」

 

『そうよ。あの子に二本目を与えたって言ってたわ』

 

「わざわざ報告しなくても……」

 

『何を言っているの。母さんだけ知らないのはやめてほしいのよ』

 

「ごめん。で、剣なんだけど色は深紅で鍔に薔薇のデザインが施されてる。名前は紅華の剣ってつけた」

 

『紅華の……剣。いい名前じゃない。その二本で大切な人を守りなさい。華恋ちゃんやひかりちゃんとか』

 

「わかってるよ、母さん」

 

『じゃあ、用はそれだけだったから。切るわね』

 

「わかった。じゃあ、また」

 

『ええ。また今度。夏休みとかになったら帰ってきなさい』

 

「了解」

 

 

理亜との電話を切り、ケータイをポケットにしまう。するとドアがノックされる。

 

 

「誰だ?」

 

『岡峰はん。うちどす』

 

「花柳?」

 

 

(さっそく来たか)

 

 

双葉から言われてからそんなに時間が経っていないのに花柳が来たということはもしかしたら双葉が言ってたことを言いに来たのかもしれない。ドアを開け、花柳を部屋に入れる。

 

 

「どうした?花柳」

 

「岡峰はん……いや、零はん。ちょっとお話が」

 

「悪いが無理だ」

 

「まだ何も言ってへんやん!?」

 

「バイクに乗せてくれって話をしに来たんだろ?」

 

「せ、正解や……なぜわかったん?もしや、双葉はんが……」

 

 

(鋭いな)

 

 

「言っとくが双葉は関係ないぞ。お前たちが喧嘩してることは知ってる。花柳、これはお前のためだと思ってほしい。それだけだ。すまない」

 

「零はん……わかりましたわ。おじゃましましたわ」

 

 

部屋から出ていく花柳。

 

 

(案外すんなりわかってくれたな。変なことでも考えてなければいいが)

 

 

 

 

~♪

 

 

 

「オーディションか……今日は出演なんだな。相手は誰だか知らんけどやるだけだ。行くぞ、夜天の剣。初陣だ、張り切っていくぞ、紅華の剣」

 

 

そう言いながら夜天の剣と紅華の剣を掴む。その際に二本の剣は答えるかのように光ったのだった。

 

 

 

 

 

 

~地下劇場~

 

 

 

 

 

「さ~てと、相手は誰かな?」

 

 

零はレヴュー衣装に着替えている。零のレヴュー衣装は黒を基調とした服で黒のマントを着けている。

 

 

「零はん?」

 

「相手は花柳か」

 

「まさか男子の零はんが参加してるなんて……」

 

「強制だけどな。さて、やるか」

 

「こんな状況でやる気なんて…………隙あり!」

 

 

 

カキンッ!

 

 

 

「え……それは、まさか……」

 

「あ~そっか。こいつら使ってるのを知ってるのあいつらだけだったな」

 

 

右手に夜天の剣、左手に紅華の剣を握っており、夜天の剣で花柳の攻撃を難なく受け止め、花柳は驚いている。

 

 

「とりあえず離れてくれ!」

 

 

そう叫び凪ぎ払い、花柳を後退させる。

 

 

「しかし、花柳の武器は薙刀か。確か千華流の家元だったな」

 

「よう知ってはりますな。うちの千華流を知ってるのはそういないと思いはりますけど」

 

「なに、ちょっと調べただけだ」

 

「さいですか。このレヴューでうちが零はんに勝ったら明日からバイク乗せてってもらいます!」

 

「まだ諦めてなかったのかよ。まあ、いいや。行くぞ、香子。岡峰零、推して参る!!」

 

 

 

零と香子のレヴューが始まったのだった。結果は……

 

 

 

「負けてもうた……」

 

「薙刀の扱いは素晴らしいがまだまだだ。頑張っていこうな」

 

「はいどす……」

 

 

零の勝利で終わった。時間は五分もかからなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。

 

 

 

香子が学校を中退して京都に帰るということになった。

 

 

(双葉との喧嘩でそこまで考えるか。香子)

 

 

星光館では香子が既に出ていっており、双葉は考えてる顔をしている。

 

 

「双葉」

 

「零……」

 

「そんな顔してどうした?香子のことか」

 

「……うん」

 

「そんなに気になるなら行ってやれ」

 

「え?」

 

「あいつも待ってるだろうよ。今ごろ引っ込みきかなくなって迷ってるんじゃないのか?」

 

「あり得そう……よし、行ってくる!」

 

「あぁ、行ってこい」

 

 

ヘルメットを二つ持ってバイクをふかし、駅に向かっていった双葉を見えなくなるまで見送る。すると、後ろから声をかけられる。

 

 

「零」

 

「ひかりか。どうした?」

 

「さっきの見てた。零があんなこと言うなんてね」

 

「柄にもねぇこと言ったかもしれねぇな」

 

「ううん、かっこよかった」

 

「そりゃどうも」

 

 

ひかりの顔を見ると少し赤くなっていた。

 

 

「中入るか」

 

「うん」

 

 

寮の中に入り、部屋で過ごしているとオーディションを告げる音がケータイから鳴り響く。

 

 

「休日ぐらいゆっくりさせろ、キリンが。で、今日はどうなんだ?休みか。みんなにはすまんが俺はゆっくりするか」

 

 

 

 

~♪

 

 

 

「誰からだ?ひかり?ひかりがメールを送ってくるとはな。なになに?」

 

 

ケータイの画面には『頑張るから』とあった。どうやらひかりには零が休みだというのがわかっているようだ。こちらも頑張ってこいと返信をする。

 

 

「さて、休日を満喫するとしましょうかね」

 

 

 

 

その日のオーディションは終了し、次の日には双葉と香子はいつも通り仲良くなっており、二人で朝早くバイクで学校に向かっていった。その様子を零は部屋から見ていた。

 

 

「よかったな。双葉、香子」

 

 

これでまたあの二人の眩しい笑顔が見れるだろうと思っていた零であった。

 





第九話をお読みいただき、ありがとうございました。

ひかり「……なんで遅れたの」

ネタが浮かばんかった……。

ひかり「……それだけ?」

それだけだ!

ひかり「……仕置き」

え……?

ドスッ!!

ぐふっ!…………さ、刺さないでください…………ひかりさん……。

ひかり「……仕置きって言った」

だからってレヴューの短剣で刺さないでくれます!?下手したら死んでたよ!?

ひかり「……死なないようにしたから大丈夫」

どこが!?どこが大丈夫なの!?まあ、遅れたのは事実だから仕方ないけどさ……こっちでもやられると私の体が悲鳴をあげるよ?

ひかり「……遅れないようにするだけ」

こっちでは大丈夫かもしれないけどあっちだともう殺られるのはわかってるから。


ゾクッ…………


ねぇ、今どこかから殺気のようなものを感じたんだけど……。

ひかり「……早く出した方がいいってことでしょ」

なるべく早く出します……。では、以上、レリでした!



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夏休みスペシャル


イェアアアアアアアアアアア!!!!

夏休みスペシャルだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

皆様、暑い日が続きますね。熱中症にお気をつけください。レリです。

はい、というわけで、今回は夏休みスペシャル回です。前々回の投稿でリクエストが届いたのでそのリクエスト回でもあります。リクエストされた方はその描写はわかりますね。他の方はどこがその描写なのかを考えながらお読みください。そして、毎回そうですがセリフじゃない文字は作者目線というかそんな目線で見るとおもしろいかもしれません。それと、今回はちょっとやってしまったかな?と思っています。最後あたりにある五人のキャラが出ます。先に言ってしまいます。その五人は全員浴衣姿です。浴衣のデザインと髪型は皆様のご想像でお楽しみいただけたら幸いです。

それでは、どうぞ。



聖翔音楽学園の第百回聖翔祭が終了して数日。零たちは休日を過ごしていた。

 

 

「レ~イちゃん!」

 

「っと、なんだ?華恋」

 

 

寮の廊下を歩いていると後ろから抱きつくようにきた華恋。不意だったので少し前につんのめる零。

 

 

「何をしているの……?華恋……」

 

「なにって、抱きつき?」

 

「へぇ~……」

 

「華恋とりあえず離れろ。ひかりの目のハイライトが消えてるから!」

 

「は~い……」

 

 

名残惜しそうに離れる華恋。離れたのを確認すると目の光が戻ったひかり。ひとまずほっとしたのを気づかれないようにする零。聖翔祭が終わってからいや、正確には聖翔祭の後ではなくオーディションが終わってからだ。華恋とひかりがよく抱きついてきたり、腕に抱きついて一緒に歩いたりとかが多くなってきている。どちらかがその行為をやってくると必ず目のハイライトが消えて見つめてくる。

 

 

(ハイライトがない状態で見つめられるとちょっと怖いからな。やめてほしいものだがこの二人は争っているから無理だろうな)

 

 

その争いとは零がどちらを選ぶか勝負というものだろう。零はその争いの内容は知っていて黙っているが二人はその事を知らない。

 

 

「で、なにか用があって来たんだろ?なんだ?」

 

「えっとねぇ、これ!」

 

「なんだ?それ」

 

「チラシ」

 

「そりゃ見たらわかるわ!!その書かれていることだよ!!えっと、夏祭り?」

 

「そう!これ一緒に行かない?」

 

「日にちは今日で場所は結構近いんだな。いいよ、行くか」

 

「やったね!ひかりちゃん!」

 

「うん!」

 

「じゃあ、レイちゃん!私たち浴衣に着替えてくるから寮の入り口に待ち合わせね!」

 

「あぁ、わかった」

 

「零も浴衣に着替えてね」

 

「え……俺浴衣持ってないんだけど」

 

「大丈夫!私とひかりちゃんの二人でレイちゃんに似合う浴衣を選んで買ってきたから!浴衣は部屋にあるから!」

 

「勝手に部屋入ったんか、こら」

 

「じゃあ、入り口でね!行こ、ひかりちゃん!」

 

「聞けや、おい……行っちまった。まあ、いいや。二人が選んでくれたのか。どんなのかな?」

 

 

少し楽しみにしながら自室に向かったのだった。そして部屋に着き、見てみるとハンガーに浴衣が掛かってある。

 

 

「黒を基調にしてる浴衣か。悪くないな」

 

 

その浴衣は黒を基調にされてる浴衣だった。柄は薄い灰色のような線が縦じまに入っているものだ。

 

 

「よくこんなの見つけたな。さっさと着替えていくか」

 

 

浴衣に着替え、玄関に向かう。ちゃんと財布も持ち、夜天の剣と紅華の剣を布で包み背中にかつぐ。いらないだろうと思われるだろうがこれは零にとって大事な事だ。なぜなら先日、父親の一哉から連絡があり、この近所に不穏な動きがあると言われたからだ。華恋とひかりに被害がこないようにこの二本で守らなければならない。

 

 

(何もおきなければそれでいいんだがな)

 

 

玄関に着き、二人を待つ。するとすぐに浴衣姿の二人が来る。

 

 

「お待たせ!レイちゃん!」

 

「お待たせ」

 

「おう。浴衣、似合ってるぞ」

 

「えへへ、ありがとう!レイちゃんの浴衣も似合ってるよ!選んだかいがあったね!」

 

「うん」

 

 

華恋は赤を基調としている浴衣、ひかりは青を基調としている浴衣だ。華恋は珍しくサイドテールにしている。ひかりはいつもと変わらない髪型だ。

 

 

「それじゃあ、レッツゴー!!」

 

「「お~」」

 

「もっと気合い入れてよ~!」

 

「ただ夏祭りに行くのに何の気合いがいる」

 

「そうだけど~!」

 

 

そう言いながら夏祭り会場に向かった三人だった。

 

 

 

 

 

夏祭り会場に着き、出店をまわっている三人。すると、華恋がある出店を見つけた。

 

 

 

「レイちゃん!あれやろう!」

 

「ん?……げっ」

 

「え?」

 

「射的、だね。零はなんでそんな声出したの?」

 

「いや、実は俺、射撃とか苦手なんだよな」

 

「え、そうなの?」

 

「意外」

 

「苦手だから剣を使ってるんだがな」

 

「あ、そういうことだったんだね」

 

「じゃあ、やろう」

 

「人の話聞いてたか?苦手だって言っただろ」

 

「やるかやらないかは言ってない」

 

「そりゃ言ってないけどさ。だが、今の話ではやらないというのになるだろ」

 

「それは屁理屈」

 

「屁理屈じゃないと思うんですが…」

 

「ほら、やるよ!レイちゃん!」

 

「わかったから引っ張るな!」

 

 

そうして射的をするはめになった零。

 

 

「おじさん!三人お願いします!」

 

「あいよ。なんだ嬢ちゃんたち、二人で一人の男と回ってるのか。羨ましいね~」

 

「えへへ~」

 

「うん」

 

「まあ、幼馴染なもんでね。付き合うとまではまだいってないんですが」

 

「なんだ、そこまでいってないのか。嬢ちゃんたち、早めにやらないと他のやつに取られちまうぞ」

 

「がんばります!」

 

「急がないと」

 

「おう、頑張れよ」

 

「それはまた後でな。おっちゃん、どの銃を使えばいいの」

 

「お、そうだったな。どれでも好きなの使いな。色が違うだけだけどな」

 

 

出店の男性の言う通り、どれも色が違う。白に青いラインが入っている銃と白に赤いラインが入っている銃と白に黒いラインが入っている銃の計三丁が置いてある。

 

 

「なんか、それぞれの色に合ってない?」

 

「奇遇だな。俺も思った」

 

「私も」

 

 

そう言い、それぞれ銃を手に取る。零は黒の銃で華恋は赤の銃でひかりは青の銃だ。

 

 

「お、決まったんだな。一回でコルクの弾は五発な。どれも好きなのを狙って落としたら獲得だ」

 

「ありきたりなルールでありがとう」

 

「それしかねぇだろ。んじゃ始めな」

 

「はい!」

 

 

華恋は元気のいい返事で銃を構える。

 

 

「うまくできればいいが…」

 

 

零は少し心配そうに銃を構える。

 

 

「行くよ、白銀(しろがね)」

 

 

………………!?!?

 

 

「ひかり、名前つけたのか」

 

「この名前がしっくりくるから」

 

 

そりゃ、まあ、うん………………。なんて言うか、その…………。

 

 

「俺はあれを狙うわ」

 

「あれ?あぁ、あのキーホルダー?」

 

「そう。あのキーホルダー、あいつらに似ているからな」

 

「確かに」

 

 

零が狙おうとしているキーホルダーが二本の剣をクロスさせたものなのだ。そして、剣のデザインは全く一緒というわけではないが、色が黒に赤なのだ。どうしても夜天の剣と紅華の剣に見えてしまうのだ。

 

 

「お、兄ちゃんいい物を目につけたな。あれはここいらではあまり手に入らない物なんだよ。ペンダントにもできるしネックレスにもできる代物だ」

 

「そんないいやつ狙っていいのか?」

 

「構わねぇよ。俺が持っていてもあまり似合わないからな。兄ちゃんのような奴が持っている方がこいつも喜ぶぜ。さあ、狙いな」

 

「んじゃ、遠慮なく!」

 

「じゃあ、私はあの王冠のストラップ!」

 

「私はあの星のストラップ」

 

「二人らしいものを狙うな。お互い頑張ろうか」

 

「「うん!」」

 

 

 

それから、華恋とひかりは三発で景品を取り、零に至っては……。

 

 

「兄ちゃん、もしかして射的苦手か?かすりはしているんだが」

 

「これで取ってやりますよ」

 

 

これで取ると言ってはいるが、もう七発目を撃ったところである。銃の構えは素晴らしいがいかんせん、命中率が悪い。

 

 

「ねぇ、ひかりちゃん」

 

「うん。まさかここまでなんてね」

 

「まだ私たちのほうが上手い気がするね」

 

「だから言ったろ!苦手だって!」

 

 

 

その後、十発目でなんとか獲得した零であった。

 

 

「はあ、疲れた」

 

「射的でそんなに体力使うかな?」

 

「精神的な問題だ。まさか苦手な射撃をやらされるとは」

 

「零の意外な一面の発見」

 

「んな一面知ったところで何があるんだよ」

 

「今後に役にたつ」

 

「さいですか」

 

 

その『今後』という言葉が気になるが聞いたらいけないと瞬時に思ったので口には出さない零である。

 

 

「ねぇ、レイちゃん。夏祭りにそれ必要かな」

 

 

忘れているかもしれないのでもう一度言おう。零は浴衣で夜天の剣と紅華の剣を持ち歩いているのだ。

 

 

「その気持ちはわからなくもない。だが、俺がこいつらを手放すのは死ぬ時だと思ってる。だからいつも一緒じゃないとな。主な理由は親父か総理に怒られるから」

 

「最後のが本音だよね」

 

「そうだよ」

 

「だけど目立ってるからそのうち警備員とかに話しかけられるかもね」

 

「それはない」

 

「なんで断言できるの?」

 

「何人かの警官に目をつけられたが俺のことを知っているらしく、すぐに理解したようだ。小さく敬礼してたし」

 

「それだとやっぱり……」

 

「あぁ、親父でだろうな」

 

「改めてホントにすごいね。零のお父さん」

 

「ここまでだと自分でもびっくりするよ」

 

 

そんな話をしながら歩いていると……。

 

 

「零兄ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

「ぐはっ!…誰だ…ってお前……」

 

「久しぶり!零兄!」

 

 

前から走ってきた紫の髪の色をした少女が零に抱きつく。突然のことで華恋とひかりは固まっている。

 

 

「お前…もしかしてあこか!?」

 

「正解!!」

 

「あぁ、確かに久しぶりだな」

 

 

零は抱きついている少女、宇田川あこの頭を撫でる。

 

 

「あこちゃん…急に走りだして…どうしたの…」

 

「お前は…燐子か」

 

「え…もしかして…零君?」

 

「久しぶりだな」

 

「……零君!」

 

 

あこと同様に抱きついてくる黒髪ロングの少女、白金燐子。

 

 

「宇田川さん、急に走っては危ないでしょう。白金さんも慣れない浴衣なのですから急な動きは控えて…くだ…」

 

「よう、紗夜」

 

「まさか、零君?」

 

「そう」

 

「久しぶりですね。元気にしていましたか」

 

「風邪ひとつひいていない。そういう紗夜こそ……は体調管理とかは人一倍気をつけてるから大丈夫か」

 

「そこまで気をつけてるかしら…」

 

「俺に体調管理の諸々を叩き込んだのはどこの誰だ」

 

「……そうね。体調管理は大事よ」

 

「開き直るな」

 

 

零に指摘され、開き直っているが零に会えて嬉しいのか若干頬が赤くなっている特徴的な髪の色をした氷川紗夜。

 

 

「みんな~知り合いでもいたの~?」

 

「紗夜、連れ戻しに行ったのに遅いから来たわよ」

 

「まあ、いるよな。リサに友希那、久しぶり」

 

「え……零…?零なの!?」

 

「……」

 

「おう。お前らが知っている岡峰零ですよ。そして、友希那?どうした?固まってるぞ」

 

「久しぶりじゃん!燐子、そこ代わって!」

 

「ここは…譲れません」

 

「えぇ~!アタシたちが来るまで抱きついてたんだからいいじゃん!代わって!」

 

「たとえ…今井さんの…お願い…でも…譲れません」

 

「いつになく強情だね、燐子」

 

 

零に抱きついている燐子と火花が見えそうなぐらい言い争っている茶髪のギャル風の少女、今井リサ。そして、零がいると認識した瞬間に固まったままの銀髪の少女、湊友希那。

 

 

「お~い、友希那~?」

 

「……はっ!久しぶりね、零」

 

「だいぶフリーズしてたぞ、友希那」

 

「そんなことはないわ」

 

「へぇ~ならこの固まったままの人はどこの歌姫かな~」

 

「……いつの間に撮ったの」

 

「ついさっき」

 

「あ、零。それ後でアタシにも送って」

 

「了解」

 

「リサ、あなたはもう零に抱きついてるのね」

 

 

リサは今、あこが代わってくれて零の右腕に抱きついている。

 

 

「今井さん、白金さん。それだと零君に迷惑でしょう」

 

「そういう紗夜はさっきからプルプル震えているのはどうしてかな?」

 

「なっ!こ、これは…」

 

「本音は?」

 

「早く私に代わりなさい……………あ」

 

「ぷふっ!あっはははっ!ホント、紗夜って零の前だと素直になるよね~!」

 

「ここまで素直に本音を言うとはな」

 

「零もナイスだね☆」

 

「…れ~い~く~ん~?」

 

「落ち着こうか、紗夜。まずは落ち着こう!」

 

「白金さん!」

 

「は、はい!」

 

「そこを代わりなさい」

 

「え…でも…」

 

「代わりなさい」

 

「は…はい」

 

「お前、容赦ないな。それに抱きつくのは堪えてたんじゃなかったのか?」

 

「もう本音を言ったので構わないわ。遠慮なんてしないわ」

 

「友~希那!今度は友希那の番だよ!」

 

「え、り、リサ…私は…」

 

「えぇ~せっかく譲ろうと思ったのに。じゃあアタシはこのまま☆」

 

「待ちなさいリサ。私は断っていないわよ」

 

「素直じゃないな~友希那は♪」

 

「零君、あの子たちは?」

 

「早く紹介してくれないかしら」

 

「お前らがどんどん来るから紹介が遅れたんだ。華恋、ひかり。こいつらは前に俺がいた地域の同級生たちだ。お前たちと同い年だぞ。一人だけ年下がいるが」

 

「は!えっそうなの!?」

 

「年上だと思った」

 

「私たちってそんなに老けて見えるのかしら…」

 

「あ…いえ、そういうことじゃ」

 

「お前らが大人びてるからだろ。で、一人ずつ紹介していくが、左腕に抱きついている時々ポンコツになるのが湊友希那」

 

「一言多いわよ、零。よろしくね」

 

「痛い痛い、ごめんなさい」

 

 

友希那に左腕をつねられる零。

 

 

「で、右腕に抱きついてるのが氷川紗夜」

 

「氷川紗夜です。よろしくお願いします」

 

「こっちのギャル風のが今井リサ」

 

「今井リサで~す。リサって呼んで♪」

 

「このおとなしそうなのが白金燐子。人見知りだから優しくな」

 

「よ…よろしく…お願い…します」

 

「そして、最後にこの子が宇田川あこ」

 

「よろしくお願いします!」

 

「私は愛城華恋です!こちらこそよろしくお願いします!」

 

「神楽ひかり。よろしく」

 

「二人とも、バンドのRoseliaって知ってるよな?」

 

「うん、知ってるよ。ね、ひかりちゃん」

 

「知ってる」

 

「この五人がそのRoseliaだ」

 

「え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?」

 

「まさかあのRoseliaが同い年だなんて…」

 

 

Roseliaの五人だと知った華恋とひかりが驚く。無理もない。今やガールズバンドの中でトップクラスの実力を持つ有名バンドがいるのだから。

 

 

「ご紹介に預かったRoseliaよ。改めてよろしく」

 

「は、はい!こちらこそ!」

 

「敬語じゃなくていいわ。同い年なんだから」

 

「は、はい!じゃなかった。うん!」

 

「この子たちが言ってた零君の幼馴染ね」

 

「よく覚えてたな」

 

「そ、それは、まぁ……………ライバルなわけだし」

 

 

紗夜の最後の言葉が零には聞こえなかったが、華恋とひかりには聞こえたらしく、親しく話していたのに急に火花が見えるぐらいにまでになってしまっている。

 

 

「あなたたちが零の幼馴染とはいえ、私たちは六年も一緒にいたんだから容赦しないわよ」

 

「それでも私たちは幼馴染っていう最強のカードがあるんだから!」

 

 

友希那たちRoseliaと華恋とひかりの勝負が今、始まったのだった。

 

 

「ねぇねぇ、零兄!せっかくだし一緒に夏祭りを歩こうよ!」

 

「俺は構わないが華恋とひかりはどうか」

 

「私はいいよ!まだまだ話したいことたくさんあるし!私たちが知らないレイちゃんのこととか!」

 

「ならそちらもその時の零の話を聞かせてもらうわよ」

 

「もちろん!」

 

 

 

その後、八人で夏祭りを満喫するのだった。八人中七人が女子で男子が一人というメンバーだったが。そして、やはり、Roseliaの五人も零の背中にある夜天の剣と紅華の剣が気になっており、後で話すと全員が驚いており、あこは瞬時に目を輝かせていた。Roseliaの五人も試したが誰も持てなかったのであった。紗夜に至っては「こんな剣はあり得ない」と言っていた。

 

 




夏休みスペシャル回をお読みいただき、ありがとうございました。

リクエストされた描写がどれなのかわかりましたか?正解は零が銃を使うという描写でした。リクエストされた方、銃を使う描写が少なくてすみません。個人的には短すぎるなと思っています。これで大丈夫というのなら感謝を。もう少しほしかったというのなら申し訳ありません。これが精一杯のような感じです。書いてある通り、銃の構えは父親の一哉に教え込まれてるので構えは素晴らしいのですが命中率が悪いということです。ひかりが名付けたコルク銃の白銀ですが、わかる方はわかりますか?ゆゆゆの東郷美森が小学生時代、鷲尾須美の頃に自分の武器に名付けた名前です。なぜそれを出したのかと言いますと、一応、これもリクエストのようなものかな?だからなのと、ひかりの声と美森の声を演じているのが、三森すずこさんだからです。つまり、中の人が一緒…ならやろうぜ!となったわけです!

そして、今回!!Roseliaの五人を出しました!!スタァライトにRoseliaを出すとはなんていうことをしてくれたんだ!と思う方がいるかもしれません。ですが、出してみたかったんです。だから出しました!としかいえません。話し方はこれであっているのかわかりません。

この話の時間軸は、百回聖翔祭の後、スタリラの前という感じです。

それでは、皆様、この暑さを頑張ってのりきりましょう!!レリでした!


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第十話

皆様、おはようございます。レリです。

アニサマの三日目に投稿です。アニサマ初の三日全部行くということがおきています。もうね、体がもたん……。

そして、私が投稿をはじめて一周年になります。いや~はやいですね~。

それでは、第十話です。どうぞ。


双葉と香子が仲直りをして数日がたったある日。零はキッチンルームで料理をしていた。

 

 

「よし、できた」

 

「何してるの?零」

 

「ん?ひかりか。見ての通り、ケーキとか作ってるんだよ」

 

「ケーキ?」

 

「そう。よかったらお前も…一緒に…」

 

 

ここで止まったのは理由がある。それは、ケーキと聞いたとたんにひかりの目がキラキラと光っており、食べたいと目がいっている。

 

 

「ひかり…」

 

「はっ!…零、そのケーキって私も食べていい?」

 

「あ、あぁ。一緒に食おうかと思ってたんだが」

 

「ひかりちゃんだけはずるいな~」

 

「うおっ!」

 

「か、華恋っ!?」

 

「私も食べる!!」

 

「わかったから!三人で食べよう!!」

 

「私たちは食べちゃダメなの?」

 

「え、純那!?ってかみんなもかよ!?わかった!わかったから!!全員してそんな悲しそうな顔をするな!!全員お皿持って並べ!!」

 

 

リビングでワイワイ騒いでいるみんな。廊下でリビングの入口の壁に寄りかかっている少女が一人。その少女は大事そうに台本を抱きしめている。その台本は古いのか、ボロボロとまではいかないぐらいになっている。その台本の題名は、『九十九回聖翔祭』。そして、少女はリビングに入らずにどこかに行ったのだった。

 

 

「………」

 

 

その少女の名は………………大場なな。零はななが立ち去るのを感じとったのだった。

 

 

 

 

星光館の廊下を歩いているなな。ななは何かを考えながら歩いている。

 

 

「今までにない再演……ひかりちゃんが来て、零君が来て……どうしちゃったんだろ…それにあの時……」

 

 

ななが思い出しているのは先日、いつもよりやけに赤い夕陽が校舎の廊下に射し込む場所で帰宅しているひかりを見ている時にひかりより後方のところに零がバイクを支えながらこちらに顔を上げて向いて立っていたのだ。

 

 

「あの時の零君の目……」

 

 

その時の零の目は、なにかを感じている目だった。鋭く、射ぬかれてしまいそうな目だったのだ。

 

 

「彼は…私の過去に気づきつつある…?だとしたら…なんで言ってこないの…?零君……」

 

 

ななは誰もいない自分の部屋に静かに囁いていたのだった。

 

 

「でも、私の再演は変わらないよ。零君」

 

 

そう言いながら、ななは台本をより強く抱きしめるようにするのだった。

 

 

 

時は経って次の日。零は自分のケータイの画面を見ていた。画面にはオーディションを告げる着信と共にオーディション参加と書かれていたのだった。

 

 

「今度は誰なのかね」

 

 

そう呟き、地下劇場へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

地下劇場。

 

 

 

「おい、キリン。今さらながら俺はこれに参加してていいのか?」

 

「構いません。舞台少女による科学反応には、イレギュラーも必要なのかもしれないと最初に言っています」

 

「そりゃ言ってたけどよ。で、相手は?まあ、なんとなくわかってるけど」

 

「わかります」

 

「さて、お前が考えていることを教えてもらおうか。なな!」

 

 

零が叫ぶと対面側にスポットライトがあたり、ななが姿を現す。右手に日本刀を持っている。

 

 

「やっぱり零君もこれに参加してたんだね。ひかりちゃんと同じで」

 

「まあな。で、なな。お前はいったいなにを考えている?」

 

「零君は過去に辛いことってあった?」

 

「……ないといえば嘘になるな」

 

「そっか…」

 

 

(あいつらと別れるのが辛かった……ただそれだけだからな…いや、華恋とひかりと別れた時も辛かったが再会できたから良かったがな)

 

 

零が思っている『あいつら』とは。それは、ここに来る前にいた地域でよく一緒に行動していた五人のことだ。

 

 

「オーディション、開演です」

 

 

ビュッ!

 

 

「っ!?」

 

 

キリンがスタートの合図を言うと、零が今までに見たことのない速度でななに接近し、夜天の剣を振り下ろす。が、なんとか反応したななが日本刀を使って防御した。

 

 

「今の…速すぎない?」

 

「少し本気を出させてもらったからな。完全に本気を出せばアレ以上の速度になるぞ」

 

「人間の素早さじゃないよね」

 

「さあな」

 

「でも、少し本気を出したって事は過去のことを思い出したからかな?」

 

「鋭いなぁ、ななは。で、どうする気だ」

 

「怖がらなくていいよ」

 

「は?」

 

 

つばぜり合いで話していたが、零が凪ぎ払い、ななを後退させる。その隙に零も後ろにジャンプをしてななから距離をとる。

 

 

「全部、私が受け止めて…あげるからっ!!」

 

「っ!」

 

 

キンッ!!

 

 

ななが隠し持っていたもう一本の日本刀を取り出し、振り下ろしてくる。が、零も紅華の剣を鞘から出し、防御するが同時に後ろに跳び、衝撃をなくす。

 

 

「あっぶね。どこからそれ出したよ」

 

「それは聞いちゃいけないやつだよ」

 

「さいです…かっ!」

 

 

キンッ!!

 

 

お互い二刀流になり、零が接近し、つばぜり合いになる。

 

 

「零君とひかりちゃんも私たちの仲間なんだから!!」

 

「仲間…か」

 

「そうだよ。だから、辛かったことを私が受け止めてあげるから。だから…」

 

「辛かったからなんだ?」

 

「え…?」

 

 

キンッ!!

 

 

「誰にだって辛い過去はある。ない人が少ない。だが、その辛かったことを糧に人は成長していく。無かった人は違う方法で成長する。その辛さを引きずったままだと人は成長できない。少なくとも俺はそう思ってる。仲間だからその辛さを受け止めるのはいいことだ。だが、その本人が辛かったらそいつは誰に受け止めてもらえばいい?なぁ、なな」

 

「……私は…辛く…ないよ。私は、私の再演で、みんなを守らなくちゃいけないの。だから、負けるわけにはいかないの」

 

「再演…だと?その再演って九十九回聖翔祭のことか?それはもう終わったはずだ……まさか」

 

「…」

 

「なな、君はまさか、過去戻りをしているというのか」

 

「…眩しい舞台はあれだけだった。仲良くなった仲間と離ればなれになる悲劇でもあるけど、私はあの舞台を終わらせたくないの」

 

「ふざけるなっ!!」

 

「っ……」

 

「その舞台は俺は観てないから知らない。でも、華恋たちのキラめきを見れば、どんなに素晴らしい舞台だったのかは想像できる。だが、ななからはそのキラめきは見えなかった」

 

「え…なんで…」

 

「君からは何かを成し遂げなくちゃいけないという焦りだけを感じていた。だからキラめきが見えなかったんだ。その焦りがなんなのか俺はよくわからなかった。だが、今確信した。君はなぜそこまでその舞台に執着する?」

 

「だって…だって!あれは私たちが初めてやった舞台なんだよ!?それに執着しないわけないじゃない!!それに!スタァライトは八人で紡ぐ永遠の物語!九人目、十人目は存在しない!なら零君は、あなたの役はなんなの!?」

 

「それこそ俺は知らん!スタァライトの主役の水先案内人ってところじゃねぇのか。だが、俺は君のその考えは否定する。過去がダメだったのならそれを糧に未来に繋げ!!」

 

「…未来…に……零君、君はどうしてそこまでしてくれるの。私なんて…」

 

「仲間、なんだろ?俺も」

 

「っ…零君、私…」

 

「未来に繋げ。大場なな」

 

 

シャキンッ!!

 

 

「オーディション、終了します」

 

 

このオーディションは零の勝利で幕を閉じたのだった。

 

 

 

オーディションが終了し、寮の自分の部屋に戻ってきた零。そこに来客が。

 

 

「どうした?華恋にひかり」

 

「三人でお話しようと思って!」

 

「何の話をするんだ?」

 

「スタァライトの話」

 

「ほう、興味深いな。中入ってくれ」

 

「おじゃましま~す!」

 

「おじゃまします」

 

 

部屋に二人を入れ、お菓子とお茶を出す。

 

 

「この三人でスタァライトの話するのってあの時以来?」

 

「だな。十二年前の東京タワーのふもとの公園だ」

 

「懐かしいね」

 

「俺は関係ないと思っていたがこんな形でスタァライトに関連するとは思ってなかったよ」

 

「あの時も私たちはレイちゃんに関係あるって言ってたでしょ!」

 

「あ、そうだったか?」

 

「もお~!」

 

「そういえばひかりはイギリスに行ってたんだよな?」

 

「うん。イギリスの王立演劇学園に行ってた」

 

「イギリスに行くって聞いた時は華恋はめちゃくちゃ泣いてたよな」

 

「そりゃそうだよ!ひかりちゃんがイギリスに行ったら会えなくなるんだよ?泣くよ!」

 

 

そう話しながら十二年前を思い出す。

 

 

あれはまだ三人が小さかった頃、東京タワーのふもとの公園でよく遊んでいた。

 

『ふぇぇぇぇん!!ひかりちゃん、いっちゃやだよ~』

 

『かれん、なきむしはスタァになれないよ!』

 

『え、だってだって!ひかりちゃん、ドンドンにいっちゃうなんて』

 

『ロンドンな』

 

『レイちゃんだってひかりちゃんにいってほしくないよね!?』

 

『ひかりが決めたのならおれはとめないよ。あとなきながらすべりだいすべるなよ』

 

『え~!?』

 

『きめた!』

 

『ロンドンいくのやめてくれたの?』

 

『わたし、スタァになるまでかえってこない!かれんにもれいにもあわない!』

 

『え、ふぇぇぇぇん!!』

 

『おれにもあわないのかよ』

 

『そうじゃないとかれんはわたしにあまえるから!れいはわたしがあまえちゃうから!』

 

『あまえてもいいんだがな~』

 

『ひかりちゃん!わたしにあわないなんて~!でんわは!?』

 

『だめ!!』

 

『んえ、えと、じゃあ、おてがみは!?ひかりちゃん、かかなくていいから!わたしがかいておくるから!ね!!』

 

『……うん』

 

『えぇぇぇぇぇん』

 

『ないてんのかよろこんでのかどっちだ』

 

『はぁ、かれん』

 

『ふぇ、ひかりちゃん』

 

『ぶたいであおうね』

 

『うん!!やくそく!!』

 

『ちがうよ。うんめい!だよ!』

 

『かんばれよ~』

 

『れいも!!』

 

『おれはおとこだからおまえらがたつぶたいにたてねぇよ!』

 

『ちがうぶたいでたてばいいじゃん!』

 

『んなむちゃくちゃな!』

 

 

 

 

三人で約束したこと。舞台に立つこと。それは変わった舞台ではあるけれど同じ舞台に立っている。

 

 

(叶っただけ嬉しいんだがな)

 

 

「レイちゃん?」

 

「ん?あぁ、いや、昔を思い出してただけさ。だが、ひかり。イギリスに居たのになんで帰ってきたんだ?」

 

「…それは」

 

「ひかりちゃん?」

 

「……二人に言わなくちゃいけないことがあるの」

 

「なに?ひかりちゃん」

 

「実は、私はイギリスで……………………」

 

 

ひかりの過去の出来事を聞いて零と華恋は驚いたのだった。そして、このオーディションの六日目を告げる着信がくるのもそう遠くないのである。

 

 




第十話をお読みいただきありがとうございました。

一つ言わせてください。ななの過去編めっちゃむずいよ!!どう書けばいいかわからなかったもん!!最後に小さい頃の三人を出しましたがやっぱり小さい華恋とひかりは可愛いですね。癒されます。可愛いは正義だ!!……って言いたくなるほどに……。次はひかりの過去編だけどななに比べたら比較的書きやすいですね。まあ、次はあまりひかりの過去に触れないですけどね(若干ネタバレ)。

そして、途中で私はなにを書いているんだろうって思いながら零とななの戦闘描写を書いてました。セリフとかあってるよね?ね!?書き慣れないやつに戸惑いながら書いてました。

それでは、アニサマに来ている皆様、最終日です!頑張っていきましょー!!そうでない方は休日をゆっくり過ごしましょう。体を休めるのは大事なことです。これが癪にさわるって言うのならごめんなさい。では、以上!レリでした!!



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第十一話


皆さんこんばんは。レリです。

前回の投稿からだいぶ時間が経っちゃいましたね……。それなのにストックもできてない……。ただ書き終わったやつの訂正しかしてないというね。あとはただ単に他の人の作品を読んでいたというね。今回はあの人たちが出ます。誰が出るかお楽しみに。

さて、話はここまで。では、第十一話です。どうぞ!



華恋とひかりが自分の部屋に戻り、一人、ベッドに寝ころぶ零。そこで零は、先ほどひかりが言っていたことを思い出していた。

 

 

『私は、イギリスでこのオーディションをやっていたの』

 

『え、イギリスで?』

 

『ってことは今回は二回目ということか』

 

『うん。私は、イギリスで…』

 

『ひかり、辛いのなら言わなくて大丈夫だ』

 

『零…』

 

『ひかりちゃんもむこうでも頑張ったのは伝わったよ。なら今回のオーディションは三人で合格しようよ。三人キラめいてればきっと』

 

『華恋…』

 

『頑張ろうぜ、ひかり』

 

『…うん…うん!』

 

 

ひかりから聞いたのは驚くものだった。

 

 

(ひかりはイギリスでのオーディションで合格できなかった。なら、前にひかりが言っていた舞台少女にとって大切なものを失ったことになる。その大切なものとはいったいなんだ?ひかりはなにを失った?考えろ、俺にとって大切な二人のうちの一人が大切なものを失ったのなら辛いはずだ。ヒントはひかりの発言にある。考えろ。………………っ!)

 

 

ベッドに寝ころんでいたが飛び起きる。

 

 

「君はまさか、キラめきを失ったというのか……?だが、ひかりはキラめいている。ならなぜ……考えられるのは君のキラめきはオーディションで失ってもまだ少しだけ残っていたということ…その残りのキラめきを胸に二回目のオーディション…そして、合格できなかったら今度こそ……」

 

 

そこまで考えつき、もう考えるのをやめる零。考えれば考えるほど残酷な未来にしかならないからだ。考えるのをやめて布団に潜り眠りにつく零。

 

 

 

~次の日~

 

 

 

寮の廊下を歩いていると着信がはいる。

 

 

「先生か。どうしたんだろ。はい、もしもし。岡峰です」

 

『あぁ、岡峰か。放課後にすまん』

 

「いえ、大丈夫です。それで、どうしたんですか?」

 

『いや、実はな…』

 

「ん?」

 

『今、学校に君の両親と名のるお二人が来ているんだが』

 

「は?」

 

『とにかく一度学校に来てくれ。頼むぞ』

 

「は、はい。わかりました」

 

 

そう言い、通話を切る。

 

 

「あの人たちはなにやってんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

そう叫びながらバイクがある駐輪場に向かう。

 

 

「零!?どうしたの!そんなに慌てて!」

 

「悪いが説明してる時間がない!急いでるんでな!すまない純那!ちょっと学校に行ってくる!あんのバカ親父がぁぁぁぁぁぁぁ!!直接学校に来やがってぇぇぇぇぇ!!」

 

「ちょっと!…行っちゃった。それにしても親父って。華恋に言ったほうがいいかしら」

 

 

その後、純那は華恋の部屋に向かったのだった。

 

 

 

学校では、入口のところで服を着ていてもわかるほどのたくましい体の男性と金髪の女性が立って先生と話している。そこにバイクのエンジン音が聞こえてくる。

 

 

「あぁ、岡峰。すまないな、わざわざ来てもらって」

 

「いえ!それで、そのお客は」

 

「ここだ。零」

 

「親父…に母さん」

 

「お久しぶりですね。零」

 

「本当に岡峰のご両親でしたか」

 

「だから何度も言っているだろう」

 

「親父、なんて説明した?」

 

「ん?ここにいる岡峰零の父親だ。零を出せって言ったが」

 

「言葉足らずだろうが!!しかもなに!?ヤクザみたいな言い方をしなくてもいいじゃねぇか!!それなら疑われても仕方ねぇわ!!ただでさえ親父は厳ついんだからよ!!先生、ご迷惑おかけしました。ほら、親父、母さん。寮に案内するから」

 

「岡峰、こちらで話しても問題ないぞ」

 

「いえ、これ以上先生に迷惑かけるわけにもいかないので。失礼します」

 

「お騒がせしました。ほら、一哉も」

 

「ん?あぁ。すまなかった。では、失礼する」

 

「いえ、お気をつけて」

 

「ところで二人はなにで来たの?」

 

「軍用車だ」

 

「んなもんで来るなよ!?」

 

 

零は二人を星光館に案内し、寮に入る。

 

 

「ただいま~」

 

「レイちゃん!」

 

「零!」

 

「うおっ!ど、どうした、二人とも」

 

「学校にレイちゃんのお父さんが来てるって聞いて!」

 

「誰から聞いた?」

 

「じゅんじゅん」

 

「あいつか~……」

 

「おう、華恋ちゃんじゃないか」

 

「あ、おじさん。じゃなかった。レイちゃんのお父さん、こんにちは!」

 

「おじさんで構わないよ。ひかりちゃんも久しぶりだな」

 

「お久しぶりです。零のお母さんも」

 

「えぇ、久しぶりですね。ひかりちゃん、華恋ちゃん」

 

「えっと…レイちゃんのお母さんはおばさんって呼びづらいです…」

 

「そうですか。なら、名前呼びでいいですよ」

 

「えっと、理亜さん?」

 

「はい。それでいいですよ」

 

「とりあえず、リビングで話そうか。親父はお茶でいいか?母さんは紅茶でいいんだよな?」

 

「あぁ、頼む」

 

「零に淹れてもらう紅茶は久しぶりですね」

 

「了解。ちょっと待ってて。華恋、ひかりは二人と話してたらどうだ?」

 

「うん。そうする」

 

 

一哉と理亜の二人を華恋とひかりがリビングの椅子に座ってもらって二人も座る。そして、話しが始まった。その間に零はキッチンに入り、お茶と紅茶を準備する。すると、入口から視線を感じ、チラ見してみると純那がみんなに話したのだろう。こっそりとみんなが覗いていたのだ。小さい声で何かを話しているが、零は覗いているみんなの話を聞きながら人数分のお茶を準備する。

 

 

「あれが岡峰君のお父様でしょうか」

 

「たぶんそうだと思う。でも、隣にいるあの金髪の女性は零のお姉さん?」

 

「確か、あの金髪の人がこの学校の卒業生だって零君が言ってたよね」

 

「え、そうなの?でもお母さんって歳にみえないわよね。それにしてもあの人が自衛隊のすごい偉いっていうお父さんでしょ?零にあの二本の剣を送ったっていう」

 

「見た感じ、結構厳しそうだよね」

 

「怒ったら怖そうだな」

 

「うちは怖すぎて話すのも無理やと思います」

 

 

順に天堂、純那、なな、クロ、まひる、双葉、香子が話している。そこに零が顔を出す。

 

 

「なにやってんの?」

 

『うわぁ!!』

 

 

突然零が顔を出したからみんなして驚く。

 

 

「零、その子たちは?」

 

「紹介するよ。みんな、そんなところにいないで紹介しやすいように並んでくれ」

 

「え、えぇ」

 

 

覗いていたみんながリビングに入り、椅子に座る。

 

 

「右から順に天堂真矢」

 

「はじめまして。天堂真矢です。よろしくお願いします」

 

「星見純那」

 

「星見純那です。はじめまして」

 

「大場なな」

 

「大場ななです。よろしくお願いします」

 

「西條クロディーヌ」

 

「西條クロディーヌです。はじめまして」

 

「石動双葉」

 

「石動双葉です。はじめまして」

 

「花柳香子」

 

「花柳香子どす。よろしゅう」

 

「俺は零の父親の岡峰一哉だ。これからも零をよろしく頼む」

 

「変なこと言わんでいいよ、親父」

 

「「「「………///」」」」

 

「華恋とひかりはわからなくもないがなんで純那とななまで赤くなってるんだよ」

 

 

一哉の発言で華恋とひかりの他に純那とななが赤くなっている。その反応で華恋とひかりが純那とななに目を向け、二人も目を向けている。火花が見えているのはきっと気のせいではないだろう。

 

 

「ほう。零、将来は安定だな」

 

「うるせぇよ、親父」

 

「改めて、同じく母親の岡峰理亜です。はじめまして」

 

『え……?』

 

「ん?」

 

 

理亜が自己紹介をすると、華恋とひかり以外のみんなが固まる。

 

 

「おい、どうした?みんな」

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?』

 

「うるさっ!!」

 

「え、零のお母様なの!?」

 

「全然その歳にみえない!!」

 

「お姉さんかと思った!!」

 

「ねぇ、零君!!お母さん若すぎない!?」

 

「あらあら」

 

「理亜、驚かれてるぞ」

 

「仕方ねぇよ。母さんは実際若いんだし」

 

「え、そうなの!?」

 

「私の年齢を知りたいですか?」

 

『はい!!』

 

「それは……秘密です」

 

『えぇ!?』

 

「まあ、当然だわな。女性が自ら年齢を言うと思ったか?」

 

「そりゃあ、まあ、言わないけど……」

 

「ほら、自己紹介は終了だ。ほい、親父にお茶、母さんには紅茶、みんなにはお茶な」

 

「おぉ、すまないな」

 

「ありがとう。零」

 

「ありがとう!レイちゃん!」

 

『ありがとう』

 

 

その後、親父と母さんがみんなに話を聞いたり、逆にみんなが二人に聞いたりしたりして話に花を咲かせた。そして、純那があることを聞きだした。

 

 

「そういえば、理亜さんってこの聖翔音楽学園の卒業生なんですよね」

 

「えぇ、そうですね」

 

「理亜はな、殺陣がとてつもなく上手いんだよ。それに、零に剣を教えたのは理亜だからな」

 

『えぇ!?』

 

「レイちゃんって理亜さんに剣を習ったの!?」

 

「まぁな。あれは辛かったな~。母さん、教えるのスパルタすぎてな。おかげで殺陣にも使えるからありがたいけどな」

 

「あれ…」

 

「ん?どうした?純那」

 

「あの、理亜さんって旧姓はなんですか?」

 

「私の旧姓は桐山ですよ」

 

「…桐山…理亜…」

 

「純那?」

 

「やっぱり!卒業生で舞台で一番キラめいて尚且つ、練習を怠わらなかったこの学園でも今までにない実力者がいたって聞いたことがあったの!それが零のお母様の理亜さんよ!」

 

「へぇ~、母さんってそんなにすごかったのか」

 

「軽いね、零君」

 

「零は興味がありませんでしたしね。仕方ありませんよ。零、紅茶のおかわりをお願い」

 

「ん、了解」

 

 

理亜に出したティーカップに紅茶をいれる。

 

 

「零、俺にもお茶の…」

 

「はいよ」

 

『はやい……』

 

 

一哉の発言の途中なのに違う湯飲みに出す零。あまりの速業に一哉と理亜以外が驚いている。

 

 

「そういえば、零。紅華の剣はどうだ?」

 

「一応、素振りはしているけどもう慣れたよ。夜天の剣よりかは軽いし使いやすい」

 

「そうか、それはよかった」

 

「零、その紅華の剣を私にも見せてくれないかしら。私はまだ見てないから」

 

「そういえばそうだったな。わかった、持ってくる」

 

 

リビングを後にする零。零がいなくなったことでリビングが静かになる。

 

 

「さて、この間に君たちに聞きたいことがある」

 

『は、はい!』

 

「そう畏まることもありませんよ。普通でいいですよ」

 

『わ、わかりました』

 

「聞きたいことは、零をどう思っているということだ。女子高に男子が編入したんだ。異例なのはわかっている。最初に思ったことと今の思っていることを聞きたいんだよ」

 

 

もともと鋭い眼光の一哉の目がより鋭くなる。それを見てみんなが固まる。ななに至っては(あぁ、零君のお父さんだなぁ……)と思っていた。その理由は、以前のあの零の鋭い眼を見たからだ。その眼光は親譲りなのだと。

 

 

「えっと、じゃあ、最初は私から!」

 

 

ほんの少しの沈黙を破ったのは華恋だ。

 

 

「えっと、最初は編入生って誰なのかなって思ってました。そしたらレイちゃんが入ってきて驚きました。夢じゃないかって思うほどに。でも話していると夢じゃないんだって実感してきて久しぶりの再会ですごい嬉しかったです。その後も授業やレッスンも手伝いで私たちを支えてくれて、たまに一緒に殺陣をやったりして、昔に想ってたことを思い出してそのまま今もレイちゃんにこ、好意を抱いています」

 

「零に好意を抱いているのは私も同じです。小さい頃はずっと零に甘えていました。小さい頃の零は同い年だけど私は零を兄みたいな人として見てました」

 

「ひかりちゃんは零といつもくっついていたからな。懐かしいよ」

 

「そ、それは言わないでください…///」

 

「ははは、まあ、華恋ちゃんとひかりちゃんが零に好意を抱いているのは昔から知っていたからね。他にも好意を抱いているのがいるそうだが」

 

「「……!」」

 

 

一哉の言葉に反応する純那となな。華恋とひかりは二人にジト目で見ている。

 

 

「じゅんじゅん……」

 

「ななも……」

 

「……///」

 

「あ、あはは……///」

 

「はっはっはっ!零は幸せ者だな。こんなにかわいい子たちが零を狙っているのだから」

 

「「「「かっ!?かわ……///」」」」

 

「一哉、からかうのもいい加減にしなさい。四人がオーバーヒートしてるでしょ」

 

「おっと、やり過ぎたか。まあ、さっきのは冗談じゃないからな。誰が零と一緒になるのかは俺は止めんからな」

 

「えぇ、私も同じよ。で、この話は……」

 

「お待たせ、母さん」

 

 

ビクゥッ!!

 

 

「?どうした、華恋とひかりと純那となな」

 

「なんで私たちに厳選するの!?」

 

「いやだって、お前たち四人が異様に驚いていたから」

 

「そ、そんなことないよ?ね、ねぇ、みんな?」

 

『う、うんうん』

 

「ふぅ~ん。まあ、いいか。母さん、紅華の剣、持ってきたぞ」

 

「ほう、これが」

 

『えっ!?』

 

 

みんなが驚きの声をあげる。それもそのはず、理亜が軽々と紅華の剣を持ち上げたのだ。

 

 

「いい剣ですね。零、大切にしなさい」

 

「わかってるよ。二本とも俺の大事な相棒だしな」

 

「理亜さん、持てるんですか?」

 

「夜天の剣は持てませんがこれなら持てます」

 

「さすが理亜だな」

 

「それは褒めてるの?一哉」

 

「褒めてる褒めてる。おっと、もう時間がない。零、また今度な」

 

「またね。零」

 

「あぁ、また。夏休みには帰るから」

 

「待ってるからね」

 

「おう。ところでなにで帰るの?」

 

「軍用ヘリだ」

 

「だからんなもんをここに呼ぶなよ!!あと自衛隊をコキ使うなよ!!」

 

 

一哉と零のやりとりで星光館は笑いに包まれたのだった。

 

 

そして、二人を送るのに近くの空き地に着陸している大型ヘリのところに零は向かった。

 

 

「マジでこんなデカいやつをここに呼ぶなよな」

 

「ははは、まぁそういうな。零、彼女たちはお前に」

 

「好意を抱かれてるのはわかってるよ。それに、二人が話してたのも聞いてたし」

 

「話をふろうと思ったのだけどね」

 

「そう思ったから聞いてないふりしてはいったんだけどね。まだ、選べないし」

 

「そうか」

 

「近いうちに決着をつけるさ」

 

「零、ちゃんとけじめをつけなさい。それに、あの子たちも零に会いたがってるわよ」

 

「わかってる。それより、なんで母さんがそんなことわかんの?」

 

「よく連絡がくるから。零は元気にやっているのか。いつになったらこっちに帰ってくるのかとか」

 

「あいつらはなにやってんだ……。まあ、後で連絡とかしたりしてみるわ」

 

「彼女たちも零に好意を持ってるからな。そうしなさい。それと、零。なにをやっているのかわからんが後悔はしないようにやりきりるんだぞ」

 

「っ……あぁ、わかってる」

 

「それじゃ、また来るからな。零」

 

「今度はフツーに来てくれよな」

 

「夏休みには帰ってきなさいよ、零」

 

「わかってる」

 

 

そして、二人を乗せた大型ヘリは飛び立ち、帰っていった。

 

 

「……たく、やっぱかなわねぇな。オーディションは秘密にしてたけど気づくなんてな。やっぱ親ってのはすごいもんだな」

 

 

空き地に一人残った零がヘリが飛んでいった方向を向きながら呟いたのだった。

 

そして、次の日、オーディション六日目を告げるメールが届いたのだった。

 

 





第十一話を読んでいただき、ありがとうございました!

さて、今回はひかりの過去編のつもりだったんですが最初だけでしたね。長くなくてもいいかなと思って前々から考えていた零の両親を出してみました。一哉の方は紅華の剣が出た時に説明しましたね。ですが皆さん、お気づきですか?理亜は今回が初登場ではないのですよ。まあ、二人とも電話でしか出てないですけどね。理亜が出たのは双葉と香子の喧嘩の時ですね。では、理亜の説明です。



岡峰理亜(おかみねりあ) cv.茅野愛衣

モチーフはSAOのアリス。整合騎士の時のアリスでだいぶ柔らかくなったアリスだと考えていただければ。一哉が言った通り、零に剣を教えたのは理亜です。内容はスパルタだったとしか言わないです。


こんなもんですかね。次はひかりとななのオーディションですね。どう書こうかな……。それと、スタリラがあと少しで一周年ですね。その記念回を書こうかなと思っています。内容はまだ考えていないのでリクエストがあれば感想までお願いします。

それでは、レリでした。





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第十二話


皆様、こんばんは。レリです。

台風19号…強力らしいので皆様も注意してください。

さて、スタリラ一周年まであと十日ですね。スタリラでも、一周年記念で三千スタァジェムのプレゼント…さっさとガチャやれって事なのですかね?

それでは、第十二話です。どうぞ!



「オーディション、六日目……か」

 

 

零は自室でケータイの画面を見て呟く。今回は見学らしい。

 

 

「行くか……」

 

 

夜天の剣と紅華の剣を持ち、地下劇場に向かった。

 

 

 

 

孤独のレヴュー

 

 

戯曲:RE:CREATE

 

 

 

 

「今日は、ひかりとななか。ななは二刀だがひかりの武器はなんだ?」

 

 

二人が戦っているのをよく見る。そして、ひかりの手に握られている武器が視界に入る。

 

 

「……短刀か。だが、短すぎないか?それに、あの刀身にある青く輝いている宝石……他のと比べるとそれも小さい。まさかとは思うがみんなが持っている武器はみんなのキラめきを現しているというのか?」

 

 

そう考えていると、なながひかりに話し始めた。

 

 

「ひかりちゃん!私ね、前に零君に言われたの」

 

「零に?」

 

「過去に辛いことがあったらそれを閉じ込めておかないで誰かに聞いてもらえって。私も過去に辛いことがあったから他のみんなの辛さを受け止めてあげようって思ってた。でも、零君は受け止める側の人はどうすればいいんだって言ったの」

 

「……」

 

「零君は仲間なんだから頼ってくれって。そう思ってる子たちはたくさんいるだろって。それで気づいたの、私の周りには頼れる仲間たちでいっぱいなんだって。だから、ひかりちゃんも何かあったら頼ってね。私たちの仲間なんだから!」

 

 

カキンッ!!

 

 

ななが右手に持った日本刀をひかりに振り下ろす。が、ひかりは受け止め、俯いている。俯いているせいで前髪でひかりの目が見えない。

 

 

「零がそんなことを……へぇ~……」

 

「あ、あれ?ひかり、ちゃん?」

 

「私も勝たなくちゃいけない理由だってある。だから私が勝つ」

 

「勝負だよ!ひかりちゃん!」

 

 

二人の戦いがより激しくなった。

 

 

「……なんか、この後すぐにひかりに謝ったほうがいいかもしれないな……」

 

 

その後、戦いは激しくなっていったが、途中からひかりがやみくもにななに攻撃していた。ななは難なくかわしたりしていた。

 

 

「なにをしているんだ、ひかり……」

 

 

零は心配そうに見ていた。最終的にひかりがセットの壁に追い込まれてななの日本刀をどうにか防いでいる。

 

 

「私は、このオーディションの結果でその後どうなるのか知っている。だから、華恋のキラめきは奪えない。でも、三人でキラめけば……そんなこと考えたこともなかった。華恋と零、二人が私を変えてくれた……だから!ハアッ!!」

 

 

カキンッ!!

 

 

ひかりが短刀を凪ぎ払いながら前に出てななを押した。ななも後ろに下がられながら体制を立て直した。すると、劇場のライトが全部消え、真っ暗になった。

 

 

「何が起ころうとしているんだ……」

 

 

すると、ライトが一点に照らされた。照らされたところを見ると、ひかりが短刀を上に掲げていた。その短刀の刀身にライトの光りが当てられていたのだ。

 

 

「だから……見えたの!」

 

 

ライトが消え、再び劇場が暗くなる。だが、一ヶ所だけ青い光を放っている場所がある。それは……。

 

 

「ひかりの短刀の宝石が光っている?」

 

 

刀身に埋め込まれている宝石が光を放っていたのだ。

 

 

「三人の……スタァライトが!!」

 

 

ひかりの声に反応するようにひかりの短刀の鍔が形を変える。それはまるで、一つの蕾が一輪の華に咲いたように。

 

 

 

レヴュー 第二幕:華、ひらくとき

 

 

 

「一つの華が……キラめきが…咲き誇る……」

 

「キラめきの再生産」

 

 

ステージでは、上空から逆さまになった東京タワーが水のあるところに落ち、巨大な水しぶきをあげ、波がステージをのみ込んだ。ステージがのみ込まれる寸前にひかりとななが再びぶつかり合った。

 

 

「波でステージがどうなっているのかわからないな。だが、ひかりは再び、以前以上のキラめきを咲き誇らせた。これで、勝敗が決まる」

 

 

すると、波が一閃され、波が爆発したように一瞬でなくなった。現れたステージでは、ひかりがななに短刀を横に一閃させ、その衝撃でななが吹っ飛ばされる。体制を立て直すのに短い方の刀を離し……いや、衝撃で手から離れてしまった。残った一本の刀をステージに突き刺し、勢いを無くし、なんとか止める。それで煙が上がっていてその煙の向こうからひかりの短刀が飛んでくる。ギリギリでななはかわし、後ろにあった壁に短刀が突き刺さる。その短刀にはワイヤーが付いているのがわかる。ワイヤーを辿っていくと、煙の中からひかりが姿を現す。ワイヤーはひかりの左手首に繋がっている。ひかりはそのワイヤーを使って自分を振り子のように飛び、一瞬でななの後ろに行く。壁から短刀を抜き、ワイヤーを引いて左手に短刀を持つ。そのまま、ななに斬り込むひかり。ななも負けじと日本刀を構える。

 

 

 

シャキンッ!

 

 

 

そして、二人がぶつかり、ひかりはななの後方に着地した。すると、演出なのか、それとも実際に起こったのかは不明だが、ひかりとななの間から煙が発生し、その中には水滴も見える。ひかりの黒髪が、煙で発生した風でなびいており、髪に水滴がついているのか、より一層輝いていた。

 

 

「……ひかりの……勝利だ」

 

 

ななの上掛けが床に落ちていた。

 

 

「ポジション・ゼロ!!」

 

「オーディション六日目、終了します!」

 

「素晴らしいオーディションだった。よくやったな、ひかり」

 

 

零は観客席から拍手をしていたのだった。

 

 

そして、オーディション六日目が終わったのだった。

 

 

 

 

オーディションが終了し、星光館に戻った零。オーディションが終了した後は自室でゆっくりしようと考えていた零だが、今は自分の部屋ではない部屋にいて、正座をさせられている。

 

 

(どうしてこうなった?)

 

 

遡ること三十分前、廊下を歩いていた零だが、後ろからものすごい気配を感じると同時にものすごい速さで接近してくる足音がしたので後ろを向かずに零は全力ダッシュをしたのだ。あと少しで自分の部屋というところで、柱の影から出てきた人に捕まり、連行されたのだ。

 

 

(てか、あの柱、隠れるような隙間なかったよな?それに、いくら隠れていたとしても気配を感じるはず……後ろの気配に気をとられすぎたのか……無念…)

 

 

「零…」

 

「はい!」

 

 

ドス黒いオーラを纏った状態のひかりに名前を呼ばれ、咄嗟に返事をする。さらに、正座している零の後ろにいるのが同じくドス黒いオーラを纏った状態の華恋だ。そう、零を追いかけていたのはひかりで、柱から出てきたのは華恋だったのだ。ちなみに二人とも目に光がない。

 

 

「自分がなんでこんなことになってるかわかる…?」

 

「え、なんでって、わか……る……わけ……」

 

 

そこで思い出す。オーディションの時を。なながひかりに言ったことを。謝ったほうがいいかもしれないと思ったことを。

 

 

「うん、なんとなくわかってきた気がする……ななのことか?」

 

「正解だよ、レイちゃん。ばななに言ったこと、ひかりちゃんから聞いたよ」

 

「辛いことがあったら頼れって感じで言っただけだ」

 

「なぁんだ、てっきりばななに言ったのかと思った」

 

「なにを想像していた。ななは過去に囚われていたからな。昔の俺みたいに……」

 

「最後、なに言ったの?」

 

「なんでもねぇよ。ひかり、お前も過去に囚われている」

 

「っ!」

 

「今はなにも聞かん。だが、後で聞かせてもらえると嬉しいな。じゃ、俺は帰っていいか?ゆっくり休みたいんだよ」

 

「聞きたいことは聞けたからいいよ。じゃあね、レイちゃん」

 

 

零が部屋から出ていき、華恋とひかりの二人になる。ひかりは黙ったままだ。

 

 

「どうしたの?ひかりちゃん」

 

「え、なんでもない…」

 

「?そっか」

 

 

 

 

 

 

廊下を歩いている零。歩きながら首や肩を回しながらストレッチのようなことをしている。

 

 

「休むつもりが咄嗟の全力ダッシュはなかなかキツいな。これから体力がない時にまた同じようなことが起きたらまた捕まるから体力をあげておくか。それにしても、ひかりはなにを考えているんだ」

 

 

 

 

 

 

 

数日後、学校では、第百回聖翔祭の仮の脚本が完成し、皆、新しい脚本を見ていたのだった。

 

 

「おお~、新しい脚本ですよ!」

 

「昨日、雨宮さんが作りあげたの。徹夜で」

 

「へぇ~……ん?徹夜!?」

 

 

ななが説明した言葉に驚いて零は雨宮さんを見る。当の本人はあくびをしている。

 

 

「A組が頑張ってるんだからB組の私たちも頑張らなくちゃって思ってさ」

 

「だからといって徹夜とはな。言ってくれれば手伝ったのにな」

 

「書いたら止まらなくてね」

 

「レイちゃん、いつの間に雨宮さんと話すようになってたの?」

 

「ん?まあ、舞台のセットのこととかでいろいろ聞いたりしててな。そこから普通に話すようになったな」

 

「そうね。岡峰君、すごく熱心に聞いてるもの」

 

「そりゃ、手伝いで入ったわけだからできるだけ一人でできるようにしておきたいからな」

 

「第百回聖翔祭でどれだけ動くのか期待しているわ。それに、岡峰君にはとっておきがあるから」

 

「は?とっておき?それはなんだよ」

 

「見ればわかるよ」

 

「なにを…」

 

「レイちゃん!」

 

「なんだよ、華恋。俺は今雨宮と話しているんだが」

 

「それより、ここ見て!!」

 

 

華恋が第百回聖翔祭の脚本の一部分を指差ししてきたのでそこを見る。

 

 

「えっと、あれ?スタァライトにこんな配役いなかっただろ。ん?はぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」

 

 

そこには今までなかった配役が書いてあり、そこだけキャストが書いてある。キャストは『岡峰零』とあったのだ。

 

 

「おい、雨宮!とっておきってこれのことか!?」

 

「そうよ、言ったでしょ?期待しているわって」

 

「マジかよ……」

 

「これでレイちゃんも私たちと同じ舞台に立てるね!」

 

「喜んでいいのかよくないのかわからねぇ……」

 

「すると、零は女装をするの?」

 

「するわけねぇだろっ!!」

 

 

このツッコミで教室にいる生徒全員が笑ったのだった。

 





第十二話をお読みいただき、ありがとうございました。


ひかりとななのレヴュー、書きづらかった……。そして、若干華恋とひかりがヤンデレなのかな?よくわからないけど、書いてるうちになんかそうなっちゃいました。最後の零の役はまあ、前に言っていた二人の水先案内人ってところですかね。

スタリラ一周年回も書いております。リクエストもいただいており、もう少しで書き終わります。現段階で文字数が七千を突破しているので結構長くなります。一周年の日に出そうと思ってるのでもう少々お待ちください。

ところで皆様、アキバでスタァライトコラボカフェをやるのをご存知ですか?自分は日曜日に行きます。台風、早くどっか行って欲しいな。まあ、天気予報だと日曜日は大丈夫そうなのでいいんですけど。コラボカフェ限定のグッズがあったら買わなくちゃ。コラボカフェも二回目ですね。もちろん一回目も行きましたよ。タペストリー買っちゃいました。日曜日、楽しみだな~。

それでは皆様、台風、注意しましょう。レリでした!


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スタリラ一周年記念!


祝!スタリラ一周年!!10連無料キラめきフェス開催!!一回目引いたら虹が二枚!結果!二つともメモワール!!一つは持っててもう一つがやちよと栞の水着メモワール!!嬉しいけどメモワールしか当たらねぇ!!

どうも、レリです。さあ、スタリラ一周年。めでたいですね~。今回はリクエストのひかりとのデート回です!!そして、リクエストしていただいた方から文字数のノルマをクリア!めっちゃ長い。疲れた。

それでは、どうぞ!


秋に入って少しずつ涼しくなり、過ごしやすい季節になってきた十月。零は今、横浜のある場所で待ち合わせをしている。

 

 

「そろそろか……」

 

 

そう呟きながら腕時計を見る。すると、こちらに走ってくる人物に気づく。その待ち合わせの相手は。

 

 

「ごめん、零。待たせちゃった?」

 

「いや、俺もさっき来たばかりだから大丈夫だ。ひかり」

 

「そっか、よかった」

 

 

待ち合わせ相手はひかりだったのだ。ひかりは青のパーカーのようなものを羽織り、その下は白のシャツで黒のスカートをはいている。

 

 

「服、似合ってるぞ。ひかり」

 

「そ、そう?ありがと///(よかった。服装のこと言ってもらえて)」

 

「じゃあ、行くか」

 

「うん」

 

 

零は、先月に四人から告白され、悩みに悩んだ結果、ひかりを選んだのだ。今日はそのひかりと付き合い初めて最初のデートである。場所はひかりがここがいいと言ったのでここ、パシフィコ横浜の近くで待ち合わせをしたのだ。

 

 

「しっかし、あと二ヶ月でここで舞台やったのも一年になるのか。まあ、来月のはじめに横浜アリーナで舞台があるけど」

 

「来月も楽しみだけど、あの時も楽しかった」

 

「それは良かったな」

 

「うん」

 

 

そう話ながら、パシフィコ横浜の近くの遊園地に向かったのだった。

 

 

「わりとデカイな。この遊園地」

 

「あの観覧車、夜になったらライトアップされる」

 

「それは知ってる。この前に見たからな」

 

「え、私、見てない」

 

「みんな疲れてたからな。最後、夜景を見ながら観覧車に乗ろうか」

 

 

そう言いながらひかりの頭に手をのせて軽く撫でる。

 

 

「うん///」

 

 

ひかりは顔を赤くしながら返事をした。

 

 

そして、それからいろいろなアトラクションを回り、遊んだ。今は二人してベンチに座っている。ベンチでは零がぐったりとしている。ひかりに膝枕をされながら寝ている。

 

 

「まさか、射撃の他にジェットコースターが苦手だなんて」

 

「……昔から絶叫系は苦手だからな。行けると思ったんだが行けなかった……」

 

「だったら乗らなきゃいいのに……」

 

「……ひかりの笑顔が見たかったからな」

 

「……バカ///」

 

 

顔を赤くしてそっぽを向いてしまったひかり。だが、手は零の頭を撫でている。

 

 

「よし、ひかり。もう大丈夫だ」

 

「ホントに大丈夫なの?」

 

 

零は起き上がり、背伸びをしながらひかりの方に振り向く。

 

 

「ひかりの膝枕で治ったよ」

 

「っ!そっか///」

 

 

ひかりもベンチこら立ち上がり、零の隣に来る。

 

 

「じゃあ、次行こうか」

 

「うん!」

 

 

そこからもまたアトラクションを回り、ゲームセンターにも寄った。そこでのクレーンゲームでミスターホワイトのキーホルダーを取ったりした。

 

 

「まさか、ミスターホワイトのキーホルダーがあるとはな」

 

「私もびっくり。でも、嬉しい」

 

「よかったな」

 

「うん。あ、私、喉渇いちゃった」

 

「俺が買ってくるよ。ひかりは何がいい?」

 

「じゃあ、お水で」

 

「水って。ジュースを言ってくるのかと思ったが。わかった。じゃあ、行ってくる。近くにベンチがあるなら座ってていいからな」

 

「わかった」

 

 

近くに自販機があったので、そこでひかり用の水と自分用のお茶を買い、ひかりがいるところに戻る。

 

 

「やめてください!」

 

「今の声……ひかり!?」

 

 

ひかりの声が聞こえ、急いで戻る。ひかりを見つけると、三人の男に囲まれていた。

 

 

「なあなあ、いいじゃんかよ。俺らと遊ぼうぜ」

 

「絶対楽しいってさ~」

 

「そうそう」

 

「と、友達を待ってるので……」

 

「そのお友達も女の子かな?だったらその子も一緒に誘えば問題ないって」

 

「いえ、彼氏です」

 

「チッ、んだよ、男かよ。んな奴ほっといて俺らと遊ぼうぜ」

 

「い、いやです」

 

「いいから来い!!」

 

「いや!!」

 

 

リーダーらしき男に腕を掴まれ、強制的に連れてかれそうになるひかりだが、必死に抵抗する。だが、男に力で勝てるわけもなく連れてかれる。

 

 

「(零…!)」

 

 

ひかりは、今ここにいない零を頭に思い浮かべながら、目を強くつむる。すると…。

 

 

「おい、貴様ら」

 

「あぁ?……っ!?」

 

「零!!……っ!」

 

 

想い人の声が聞こえ、振り向くと両手にペットボトルを持った零が立っていた。だが、今の零は誰にでもわかるくらいに殺気を放っていた。そのせいで、三人組の男たちが怯んでいる。

 

 

「貴様ら、俺の彼女に手を出すなんていい度胸してるな」

 

「な、なんだと!この子はな!俺らと遊びたいって言ってるんだ!邪魔するな!!」

 

「ほう?現に彼女は嫌がっているようだが。教えてやるよ、雑魚ども。今、この場で不利なのは貴様らだってこと。わかってるのか?」

 

「!……チッ、行くぞ、お前ら」

 

 

そう言って、男たちは去っていった。ひかりは走って零に抱きつく。

 

 

「すまん、ひかり。遅くなって。大丈夫だったか?」

 

「……」

 

「ひかり?」

 

「……怖かった」

 

「もう大丈夫だぞ。安心しろ」

 

 

震える手で抱きついているひかりを安心させるように優しく撫でる零。少ししたらひかりも落ちつき、零から離れた。

 

 

「さっきはありがと」

 

「どういたしまして。ひかりが無事でよかったよ」

 

「うん。でもあんなに殺気を出すのはどうかと思うけど」

 

「ひかりを無理矢理連れていこうとしてたからな。大事な彼女を守るために放った殺気だったからな。けど、そこまで出してたか?」

 

「出してた。私でもちょっと怖いって思っちゃったし」

 

「マジか……」

 

 

彼女の言葉で軽くショックを受けている零。それを見て、ひかりは小さく笑う。

 

 

「さ、行きましょ」

 

「あぁ」

 

 

 

 

水分補給もし、ほとんどのアトラクションを回ったのでもう乗るやつが観覧車だけになってしまい、夜まで待とうと遊園地の中を歩いて、外に出て改めてパシフィコ横浜を見るために入口近くに来た。隣は海なので、潮の香りがして、秋風が少し肌寒くなってきた。パシフィコ横浜の隣にある広場で座り、のんびりとしていた。ひかりは零の肩に頭を置いている。

 

 

「遊びまわる以外にもこんなふうにのんびりするのも悪くないな」

 

「そうね。もう少ししたらまた歩く?」

 

「そうだな。ショッピングモールみたいな場所もあったからそこにでも行ってみるか」

 

「うん」

 

 

そして、広場から出て、駅があるところにたくさんのお店があったのでそこに向かおうと歩き出す。

 

 

「だいぶ混んできたな。ひかり、はぐれるなよ」

 

「わかった」

 

 

ドンッ!

 

 

「きゃ!」

 

「!ひかり!!」

 

 

人でだいぶ混雑してきて、はぐれないようにひかりの手を握ろうとした瞬間、ひかりが人混みにのまれ、どこかに行ってしまった。否、連れていかれたのだ。

 

 

(クソ!!やらかした!!最後にひかりを見た時にひかりに向かって伸ばされた手があったな。おそらく、チンピラか、新手の誘拐か。どっちにしろ、助けに行かなくちゃな。まずは……)

 

 

コインロッカーにあるものを入れてあるのでそれを取りに行き、それからケータイでひかりのケータイのGPSを確認すると、わりと速い速度で移動していた。

 

 

「車か!!クソ!!場所は……赤レンガ倉庫の近くか!ここからならこの道のが近道だな。待ってろよ、ひかり!」

 

 

零は、ひかりの元にダッシュで向かいながらどこかに電話をするのだった。

 

 

 

場所は変わって赤レンガ倉庫の近くの人気のない倉庫に閉じ込められているひかり。

 

 

「んー!んー!!」

 

 

手足に口と縛られているため、助けを呼ぶ声も逃げ出すこともできない。前には何人も男たちがいる。

 

 

「(この人たち、さっきの)」

 

 

そう、ひかりを拐ったのは先ほど遊園地でひかりをナンパしていた男たちだったのだ。

 

 

「それにしても、結構な上玉を見つけましたね~アニキ」

 

「まあな。さっきは、あの男がいたから失敗したが、ここなら思う存分やれるな。おい、お前ら、最初は俺からだ」

 

「じゃあ、アニキの次は俺で」

 

「おい、ずりぃぞ!俺がアニキの次だ!」

 

「俺だ!」

 

 

順番の取り合いで言い争っている男たち。だが、リーダーらしき男はゆっくりとひかりに近づいている。

 

 

「(いや……来ないで……助けて、零!)」

 

「そう怯えるなよ。すぐに気持ちよくなるからよ。へへ」

 

「(いや……いや……いや……)」

 

 

ひかりはもう、この後の展開を想像し、涙を流す。

 

 

「泣く顔もきれいだなぁ。興奮してくるぜ」

 

 

男には逆効果でさっきよりも早く近づいてくる。

 

 

「(……零、助けて!!)」

 

 

ひかりが願った瞬間……

 

 

 

バキッ……ガラガラガラ……ズズン!

 

 

 

倉庫の扉が内側に倒れた。バラバラになって。扉が倒れたせいで倉庫内に土埃が舞う。外の太陽の光が倉庫内を照らす。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「と、扉が!?」

 

 

光が照らす中、光の向こうから一人の影が見える。倉庫に近づいている。倉庫内に入ると、その影がはっきりと誰なのかわかる。

 

 

「んー!(零!)」

 

「待たせたな、ひかり。すぐに助けるからな」

 

「お、お前は、さっきの!」

 

「やっぱり貴様らだったか。彼女を返してくれないか」

 

「誰が返すかよ!おい、お前ら!!」

 

 

リーダーらしき男の声で隠れていたのか、先ほどよりも多い人数が鉄パイプやらナイフやらを手に持ち、零を囲む。

 

 

「やっちまえ!!」

 

 

男の指示で、零を囲んでいた男たちが一斉に襲いかかる。零の姿が見えなくなり、男たちが襲いかかっているため土埃が舞う。

 

 

「あれほどの人数なら無事じゃすまねぇだろうな。じゃあ、あいつらに任せて俺は楽しむとしようか。おい、助からねぇけど彼氏の前でせいぜい鳴けよ」

 

「(嘘……零……いや……私のせいで……ごめんなさい……華恋も……みんなも……ごめんなさい……)」

 

 

ひかりがもう何もかも諦めた目をして俯いた瞬間……。

 

 

「ぎゃあ!!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

「!?」

 

「なんだ!?」

 

 

男の悲鳴が聞こえた瞬間、リーダーの男とひかりの間を零を囲んでいた一人の男がぶっ飛ばされてきた。ぶっ飛ばされてきた男は気絶している。

 

 

「な、なんでお前が飛んでくるんだ!?」

 

 

リーダーの男は零の方を見る。

 

 

「う、嘘だろ……」

 

 

土埃の中には大勢いた男たちはたった五人しか立っておらず、真ん中には右手に漆黒の剣に左手には赤い剣を握った零が立っていた。零の足元には真っ二つにされた鉄パイプと刃を砕かれたナイフが何本も落ちている。

 

 

「汚ならしい手で俺の彼女に触れるな、雑魚が」

 

「な、なんだと!おい、お前ら!さっさとやっちまえ!」

 

「おらっ!」

 

 

五人の内の一人が鉄パイプで殴りかかってくる。が、鉄パイプが真っ二つにされ、男がすごい勢いで後ろにぶっ飛ぶ。この時、零は動いていない。否、動いていないように見えた。

 

 

「は?」

 

 

リーダーの男は呆気にとられてボーっとしてしまう。ひかりも驚いて目を丸くしている。

 

 

「遅いし構えも悪い。これじゃあ、敵に攻撃できないしカウンターでやられて終わりだぞ。っと、どうした?雑魚ども。もう終わりか?」

 

「調子にのるな!」

 

 

キンッ!

 

 

「な!?」

 

「お前がな。そこで寝てろ」

 

「え?へぶっ!!」

 

 

今度はナイフを持った男が襲いかかってきたが、ナイフの刃の部分を紅華の剣で斬り、男の横腹を蹴り、ぶっ飛ばす。男は気絶し、動かなくなる。

 

 

「さて、残りはこの二人とそこの貴様だけだ」

 

 

ゆっくりと、男たちに恐怖を植えつけるように歩いて近づく零。

 

 

「ヒッ!」

 

「怖いか?それが貴様らが彼女に味あわせたちょっとの恐怖だ。彼女はこれの何倍もの恐怖を味わったんだ。覚悟はできてるよな?」

 

 

零の前にいる二人の男は、恐怖で足が震えて動かない。

 

 

「ぐふっ!!」

 

「ぎゃあ!!」

 

 

零は丸腰の二人を容赦なく蹴り、気絶させる。そして、リーダーの男を見てまたゆっくりと歩きだす。

 

 

「く、来るな!この女を殺すぞ!!」

 

「っ!!」

 

 

リーダーの男はひかりの首にナイフを突き立て、零を脅す。零は、表情一つ変えずに立ち止まる。男は勝ち誇ったような顔をしてひかりを連れたまま外に出ようとする。

 

 

「一歩でも動いたらこの女を殺すからな。一歩も動くんじゃねぇぞ!!」

 

「……わかった」

 

「へへ、よし、来い。お前、暴れでもしたら殺すからな」

 

「……」コク…

 

「よし、おま(ドゴッ!!)ぐお!!」

 

 

リーダーの男がひかりを見て脅し、零に顔を向き直ると顔面に夜天の剣の持ち手の部分が直撃する。拍子にひかりを掴んでいた手とナイフを離す。その一瞬に零はひかりを抱き上げ、男から離れる。夜天の剣も回収しながら。

 

 

「紐を斬るからじっとしててくれ」

 

「……」コクコク

 

「よし、ひかり……おっと」

 

「零……零、零!」

 

 

紐を切ると、口を縛っていた紐を自分で取りながらすぐに零に抱きつく。ひかりは、零に抱きつきながら泣いている。

 

 

「怖かったよな。遅くなってごめん。もう大丈夫だ」

 

 

ひかりを落ち着かせるために撫で続ける零。すると、リーダーの男が起き上がる。零は、リーダーの男を睨む。リーダーは、夜天の剣が鼻に当たったのか鼻血を出している。

 

 

「テメェ、動くなって言ったよな……」

 

「言われた通り一歩も動かなかったぞ」

 

「動いてんじゃねぇか!」

 

「お前は、一歩も動くなって言ったんだぞ。バカか、お前。もういい、彼女は返してもらった。これで思う存分やれる。覚悟はできてるよな?」

 

 

ひかりは零の後ろに立ち、零はひかりの前に夜天の剣と紅華の剣の鞘を交差するようにして守るように刺す。そして、リーダーの男に近づく。

 

 

「え、ちょ、おい。話を聞けって。待てよ、おい!」

 

 

男は後退りながら、叫ぶ。だが、零はそれを無視して近づく。そして、一瞬で男の目の前に行き、夜天の剣の持ち手の部分で腹をど突き、紅華の剣の柄で肩を叩き、最後に顎目掛けて蹴りあげる。男は宙を舞い、地面に落ちた後は口から泡を吹いて気絶した。

 

 

「それがひかりに怖い想いをさせた罪だ」

 

 

零は、男にそう呟き、ひかりの前に刺した鞘を抜き二本の剣をしまう。そして、背中に担いだ途端にひかりが抱きしめてくる。

 

 

「無事でよかった。ひかり」

 

「……すごく……怖かった……それよりも……私のせいで……零が死ぬんじゃないかって思ったら……今まで感じたことがない気持ちになって……」

 

「俺があんなので死ぬわけないだろ。それに、俺はひかりにもしものことがあったらと思ったら気が気じゃなかったよ。本当に無事でよかった」

 

「……ありがとう」

 

 

今、この倉庫では零とひかりの二人の空間だ。周りには気絶している男たちがたくさんいるが、そんなのはお構い無しだ。

 

 

「なぁ、ひかり。そろそろ……」

 

「いや……」

 

「えっと、そろそろ帰ろ……」

 

「いや!!」

 

「ちょっ!待て!く……首が……!」

 

 

ひかりの抱きしめがより力が入り、零の首をしめてしまう。

 

 

「あ、ご、ごめん……」

 

「ふぅ。なぁ、ひかり」

 

「なに……?まだ離れたくないよ」

 

「まあ、それもあるけど違う。ひかり、俺たちは付き合ってるんだよな?」

 

「……零は私と付き合ってなかったの?」

 

「ごめん、言い方が悪かった。だから再度首をしめようとするな」

 

「……じゃあ、なに?」

 

「その、俺たちって……いや、やっぱなんでもない」

 

「え、そこで言うのやめる?すごく気になるんだけど」

 

「今はまだだな。もう少し待ってくれ」

 

「ここで言っちゃえばいいじゃん」

 

「場所を考えろ、場所を」

 

「場所って……あ」

 

 

今の場所は何人も男が倒れている中心に二人がいる状態。この状態では、ムードも台無しだ。

 

 

「わ、わかった」

 

「よし、じゃあ、移動するか」

 

「で、でも、私は、まだ離れたくない」

 

「ひかり、しっかり捕まってろよ」

 

「え?きゃ!」

 

「よっと」

 

 

零は、抱きついているひかりをお姫様抱っこする。

 

 

「ちょ、れ、零!///」

 

「腰が抜けて立てないってことぐらい気づくさ」

 

「っ!……バレてたか」

 

「落ち着くまでこうするよ。外に出るぞ」

 

「うん。ところでそれ、使って大丈夫だったの?」

 

「ご心配なく。親父には知らせてある。派手にやってこいってな」

 

「おじさん……」

 

「外はもう暗い。あそこに行くぞ」

 

「あそこって?」

 

「忘れたか?昼間の約束を」

 

「約束……あ、そういえば」

 

「じゃ、行くぞ。お姫様」

 

「も、もう!///」

 

 

それから、倉庫を出たら何台ものパトカーが来ており、警察官十数名が待っていた。警察官たちは零に向かって一斉に敬礼する。ひかりは顔を赤くしながら戸惑っており、零は苦笑いしながら後のことを任せた。警察官たちは倉庫の中に入っていき、気絶している男たちを誘拐犯で逮捕した。遊園地近くまで来ると、ひかりも落ちつき、自分で歩いた。そして、夜になったパシフィコ横浜付近の電気の明かりを見ながら約束の観覧車に乗ったのだった。

 

 

ゴンドラの中は二人っきり。観覧車に乗る人がおらず、すぐに乗れたのだった。

 

 

「綺麗……」

 

「そうだな」

 

「ねぇ、零」

 

「なんだ?」

 

「さっきの話の続き、いい?」

 

「もちろんだ。もともとここで言うつもりだったしな。続きを言うぞ。俺たちって、結婚を前提に付き合ってるでいいんだよな?」

 

「え」

 

「え?」

 

「そ、そそそ、それって、つまり///」

 

「まあ、そういうことだ。ここの綺麗な夜景を見ながら言いたかった言葉だ。神楽ひかりさん、俺と結婚してください」

 

「……!」

 

 

ゴンドラ内で零がまっすぐにひかりの顔を、目を見て、言う。ひかりは驚きと嬉しさで涙が溢れる。口に手をおさえてもいる。

 

 

「……はい」

 

 

時間にして数秒のひかりの返事。だが、二人にとってはとても長い時間に思えたのだった。これで、二人は結婚をする事が決まった。

 

 

「……高校卒業してからだよね?」

 

「そうじゃねぇと結婚できねぇだろ」

 

 

このツッコミで二人は、軽く笑ったのだった。

 

 

「愛してる。ひかり」

 

「私も、愛してる。零」

 

 

鮮やかに光る横浜をバックに二人の影はそっと一つになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、数年の時が経ち、二人は二十歳を迎えたのだった。今零は、タキシードを着て、その時を待っていたのだった。

 

 

「準備できました」

 

「わかりました。それで、彼女は?」

 

「ここよ、零」

 

「おぉ……」

 

 

声のした方向を見ると、白のウエディングドレスに身を包んだひかりが立っていた。

 

 

「演目で花嫁ジューン役でウエディングドレスは見たが、あの時よりキラめいてるぞ、ひかり」

 

「ありがとう///」

 

「ひかりちゃ~ん!レイちゃ~ん!」

 

「よう、華恋」

 

「今日はおめでとう!ひかりちゃん、と~っても似合ってるよ!とってもグッド!」

 

「ありがとう、華恋」

 

「それじゃあ、私は外で待ってるね!じゃあね!」

 

「じゃあな。よし、俺たちも行こうか」

 

「えぇ」

 

 

教会で行われた零とひかりの結婚式。その場には、零の両親とひかりの両親はもちろん、聖翔音楽学園であのオーディションをやった八人の仲間たちに零が聖翔に来る前にいた地域から友希那、リサ、紗夜、燐子、あこのRoselia五人が参加したのだった。

 

 

「いや~それにしても、もう零が結婚なんてね~」

 

「お前は俺の保護者か、リサ」

 

「保護者はこっちだぞ、零」

 

「そりゃわかっとるわ!にしても、友希那たちも来れてよかったよ。Roseliaも今じゃ超がつくほどのガールズバンドで人気なんだろ?こないだはテレビに出てるの見たし、忙しかったんじゃないか?」

 

「短い間だったとはいえ、あなたも私たちRoseliaの一員なのよ?仲間の晴れ舞台に参加しないなんてあり得ないわ」

 

「ありがとさん」

 

「零君」

 

「なんだ?紗夜」

 

「君は仕事とかはどうするの?」

 

「超有名になった二人の舞台女優のマネージャーみたいなやつだな」

 

「その二人って……」

 

 

紗夜が言いながら華恋とひかりを見る。二人は聞いていたのかそっと顔をそらす。ちなみに紗夜は零に敬語は使わない。理由は零が同い年なのに敬語で話されるとなんかむず痒くなるらしい。

 

 

「やはりね」

 

「やはりって、なんか噂とか流れてるのか?」

 

「えぇ。その二人は他の舞台女優とは全然違う輝き…いえ、キラめきといえばいいのかしら?それがあるって聞いたわ。その二人はどこに所属しているのかとかいろんな情報が不明。わかっているのは聖翔音楽学園の卒業生で二人とも幼馴染ってぐらい。そんなところかしら。それに、ほとんどの情報が謎なのは零君の仕業でしょ?」

 

「仕業とは人聞きが悪いな。実際そうだけど。それに二人は俺が守るって決めてるからな。情報を手に入れて引き抜きとか家に突撃されても困るしな。もしそうやって来たらどこで情報を手にいれたのかを叩き潰してでも聞く」

 

「最後……とんでもなく……怖いこと……言ったね……」

 

「そうか?」

 

「りんりんの言うことは間違ってないよ、零兄」

 

「ねぇ、零。さっきから私たちのこと言ってるけど、あなたも人のこと言える?」

 

「なんの話だ?」

 

「知らないの?零兄の噂」

 

「俺の噂だと?」

 

「影で有名舞台女優を支え、女子校である聖翔音楽学園の唯一であり、異色の男の卒業生。影の中では最も有名。っていう噂」

 

「とんでもねぇ噂だな。てか影の中で最も有名ってなんだよ。確かに華恋とひかりを支えてるけどさ、影って言い方なくない?」

 

「この影の男に関しては二人の舞台女優よりも情報がないって言われてるよ。わかってるのは聖翔の卒業生ってだけ」

 

「華恋とひかりとも幼馴染でひかりと結婚したんだがな~」

 

「大丈夫。いずれ、零のことも世間に知れわたるから」

 

「おい、ひかり。まさかマスコミに言うつもりか」

 

「まあ、当たり前じゃない?超有名舞台女優が結婚、その婚約者が二人を影で支えている人物。これだけならマスコミにとってはもう最高のネタだから」

 

「マスゴミが……いっそのこと、ホントに燃やしてやるか」

 

「とんでもないこと言わないの」

 

「でもよ~純那。それだと華恋とひかりがストレス抱えると思わねぇか?」

 

「確かにそれは言えるわ。けど、それをどうにかするのが影としての仕事じゃない?」

 

「仰る通りで」

 

 

純那に言われ、何も言い返せない零は両手を上げ、降参のポーズをとる。タキシードで降参のポーズだと変な感じだが。

 

 

「ならレイちゃんも舞台男優としてやっていったら?それなら大丈夫でしょ!」

 

「影がとうとう表舞台に現れる。いいんじゃないかしら。華恋さんの言うとおり、それなら影でこそこそとやるより表舞台で二人を支えればいいだけじゃない。そうしなさい零」

 

「最後、命令になってるぞ、友希那。それに表舞台に出るのは嫌なんだよな~」

 

「あら、どうしてですか?零君が表舞台に出ればライバルが増える。これほどやりがいがあることはおきないですよ」

 

「それはお前だけだと思うぞ、真矢」

 

「え?零君が表舞台に出たら私も脚本頑張っちゃうよ?」

 

「いや、始めっから頑張れよ、なな」

 

「は~い」

 

『ははは』

 

 

教会の外で参加者とわいわい話す零たち。零とひかりの両親は親同士で話しててこちらもわいわい話している。すると、ひかりが零のそばに来て言ってくる。

 

 

「零、そろそろ中に入ってもらお」

 

「そうだな。じゃあ、みんな。教会の中に入って食事にしよう」

 

『は~い!』

 

「昔っから返事だけはいいんだよな」

 

「返事だけじゃないよ!」

 

『あははは!』

 

 

零の呟きに華恋がツッコミをいれるという珍しい光景にみんなが笑うのだった。そして、教会の中の食事場に入ると、零はある疑問が浮かぶ。

 

 

「用意されてる食事が多い気がするな……俺の気のせいか?」

 

「気のせいじゃないと思うよ。はい、ウチの新作パン。ちゃんと人数分あるから」

 

「お、サンキュー。お前のところのパンなんて久しぶりだな。それに人数分用意するのもさすがだな、紗綾…………………………って紗綾っ!?!?」

 

 

零の独り言に当然のように入ってきて自然と零にパンを渡すポニーテールの女性、山吹紗綾。突然のことすぎて数秒経ってから気づき、驚いて声をあげる零。

 

 

「久しぶり~零君」

 

「マジでビックリしたわ。久しぶりだな、紗綾。てか、俺は紗綾たちを呼んでいないぞ?まさか……」

 

「俺が呼んどいたぞ、零」

 

「やっぱり親父の仕業か!」

 

「れーく~ん!!」

 

「どわっ!?」

 

 

突然後ろから抱きつかれる零。後ろを見ると猫耳のような髪型をした女性、戸山香澄。

 

 

「香澄!?がいるってことは、まさか全員いるのか?」

 

「呼んだか~?零」

 

「有咲!?」

 

「やっほ~零」

 

「おたえ!?」

 

「久しぶりだね、零君」

 

「りみ!?おい!親父!まさかとは思うが他のバンドは……」

 

「残念ながら私たちだけ。他のみんなは忙しいんだって」

 

「なんだ、そうか。てか、ポピパ全員が参加しているとは……」

 

「零」

 

「どうした?ひかり」

 

「その人たちって零が前にいた地域の?」

 

「その通り。俺は呼んでなかったんだが親父が内緒に呼んでやがった。てかおい、香澄。いい加減降りろ!」

 

「え~いいじゃ~ん!せっかく会えたのに~!」

 

「せっかくのドレスがシワになっても知らないぞ」

 

「わ!降りる!」

 

「案外すんなりと降りたな。てっきりまだ抵抗するかと思ったんだがな。もしかして、明日香になんか言われてるのか?」

 

「ギクッ!」

 

「それを言うってことは図星か」

 

「零、正解だ。実は明日香にドレスはできるだけシワにならないようにしてって言われてる」

 

 

有咲の説明で納得する零。

 

 

「れー君!あっちゃんから伝言もらってるよ!おめでとうございますって!」

 

「了解。明日香にありがとうって伝えてくれ」

 

「は~い!」

 

「じゃあ、思わぬ来客があったがそろそろ食事にしようか!」

 

『お~!』

 

零の声を二人の両親以外が返事をし、スタッフといえばいいのだろうか、その人たちが次々と料理を運んでくる。みんなは食事をしながら話したり、席を立って記念撮影などをやっている。その中にはウエディングドレスのままのひかりもいる。ポピパのみんなも初対面の元聖翔音楽学園生に自己紹介をしたりしている。二人の両親も互いに酒を飲んだりして零たちの小さい頃を思い出しながら話している。零はゆっくりと椅子に座り、出された飲み物を飲んでいる。すると、親父がこちらに来いと手招きしているのに気づき、コップを置き親父たちがいるテーブルに向かう。

 

 

「なんだ?親父」

 

「呼んだのはひかりのご両親がお前に話があるからだ」

 

「おじさんが?」

 

「あぁ。突然すまないね。零君」

 

「いえ、そんなことはないです」

 

「小さい頃から君とひかりと華恋ちゃんが一緒にいるのを見てきて、将来ひかりを託せるのは君だけだと思っていたんだ。そして、君はひかりを選んでくれた。それが嬉しかったよ」

 

「おじさん……」

 

「もうおじさんじゃないぞ?」

 

「あっ………お義父さん」

 

「それでいい。この前、ひかりが君にプロポーズされた時のことを全部話してくれた」

 

「っ……」

 

 

ひかりの父親が言った瞬間、零は片手を強く握りしめる。あの時、ひかりは誘拐された。それを零が助けた。その時は、誰も死にはしなかったが、誘拐犯たちは重症だったり軽症の者がいた。最も重症だったのは誘拐犯のリーダーだ。右肩、あばら骨が折れていたと警察の人から聞いた。ひかりは被害者だが、警察の人から聞く時に零はひかりがいない時に聞いたのだ。あの後は、プロポーズをして出来る限り誘拐されたという恐怖を忘れさせていたのだ。警察から話を聞いたらあの時の恐怖がまた出てくるかもしれないと思ったからだ。そして、零は警察からあることを言われた。それは決してひかりや華恋、大切な仲間たちには知られてほしくないと思ったのが、誘拐犯が零のことを、『紅蓮と漆黒の剣を携えた鬼神』だと言ったからだ。これを聞いてみんなはどんな気持ちになるのかと思い、今も秘密にしている。それにひかりにとっては思い出したくもない出来事だっただろうからそれをご両親に自ら話したとなると驚く。

 

 

「君は、ひかりの為に危険だったにも関わらず助けに来てくれた。それだけでも充分嬉しかったとあの子は言っていたよ」

 

「そうですか……」

 

「時々その時の恐怖心を思い出してしまうが君がいつもそばにいてくれたおかげでその恐怖心もどこかにいってしまうと言っていた」

 

「お義父さん…俺は、彼女たちに秘密にしていることがあります」

 

「それは、『鬼神』のことかな?」

 

「っ!?ど、どうしてそれを!?まさか、親父!!」

 

「一哉さんを責めないでくれ。これは、私から聞いたのだ。ひかりが言っていたんだ。あれから君がなにかを隠している雰囲気がすると」

 

「ひかりが?」

 

「あぁ。それを確かめたかったんだ。幼馴染はなんでもわかるとも言っていたよ」

 

「その通りだよ、零」

 

「わ!?ひ、ひかりか。こんなところで驚かすなよな。て、さっきの聞いたのか?」

 

「零が『鬼神』って言われたこと?」

 

「……あぁ」

 

「それは、全員が知っているよ」

 

「はっ!?」

 

「たとえ、世間が零のことを『鬼神』だと恐れられても私たちは零の仲間だよ。絶対に。だからこそ結婚したんだよ?」

 

 

ひかりの言葉に後ろにいる大切な仲間たちが笑顔で頷く。それを見て零は目頭が熱くなる。

 

 

「………はは……俺はいったい、なにに悩んでたんだろうな」

 

 

そう言いながら右手で目を隠し、左手を強く握りしめる。その左手をひかりが両手で優しく包む。

 

 

「零君。これからもひかりを、娘をよろしく頼む」

 

「はい。絶対に、なにがなんでも守りきって、幸せにします。お義父さん」

 

 

そう言って零は、ひかりの父親と握手をし、その後、めでたい零とひかりの結婚式は終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数年後~

 

 

「理恵(りえ)~、二亜(にあ)~、もう少しでお父さんが帰ってくるから準備して~!」

 

「「は~い!」」

 

 

二人の子どもが玄関で待ち構える。すると、扉が開き、一人の男性が入ってくる。

 

 

「ただい(パァンッ!!)うおあっ!?」

 

 

男性が入った瞬間、二人の子どもが握っていた物、クラッカーが発射される。突然の出来事すぎて男性は変な声を上げながら驚く。

 

 

「な、なんだ?」

 

「「お父さん(パパ)!誕生日おめでと~!!」」

 

「え?あ、今日、俺の誕生日か」

 

「忘れてたの?自分の誕生日なのに。おかえり、零」

 

「案外忘れるもんだぞ。ただいま、ひかり」

 

 

仕事から帰ってきた男性、零が家の台所から出てきた女性、ひかりに返事をする。

 

 

「お父さ~ん、一緒にお風呂はいろ~」

 

「おう、いいぞ。じゃあ、少し待ってろよ。二亜」

 

「うん!」

 

「パパ!明日は私だよ!」

 

「わかってるよ、理恵」

 

 

零とひかりの二人の子ども、姉の二亜、妹の理恵。その二人に両手を引っ張られながら台所に行く零。それを笑顔で見守りながら後を着いていくひかり。この日は零の誕生日。家族から盛大なお祝いをしてもらい、嬉し涙が止まらない零。それをひかりに弄られ、零は仕返しとばかりに子どもたちに昔のひかりの秘密の話をしようとして慌てて止めに入るひかり。それを見て子どもたちは笑いあう。今日もこの幸せな時間が進んでいく。

 

 





記念回をお読みいただき、ありがとうございました!

長かった……ただただ長かった……。ノルマ一万越えってめっちゃキツい……。ぶっちゃけると文字数稼ぎにポピパのみんなを出しちゃったし。Roseliaも出てるから問題ないよね?あったらヤバいけど。

今回はちょっとやってみたかったヒロインが誘拐されるというやつをやってみました。そのせいでデートの部分が少なかったような気がしますけどね。まあ、最後は結婚式をあげて数年後に暖かい家庭ができていた。書いてたらそうなりました。零とひかりの子どもはなのはのアミタとキリエをモチーフにしています。アミタが二亜でキリエが理恵ですね。二亜の名前は零が数字だとゼロ、父親の一哉が一だから子どもは二がつく名前がいいなと思ってそれにしました。キリエの理恵はもう名前を考えるのが難しくて。最初は三がつく名前かひかりの名前に近い名前にしようと思ったんですけどなんかもう諦めました。そのせいで理恵になっちゃいましたけど。名前を考えるのはホント難しい。

では、スタリラでもガチャをやりまくりましょう。自分は舞台少女は一人か二人しか手に入らないと思うので皆様はいい舞台少女が当たることを願っています。自分はメモワールしか当たらないんでもう諦めているので大丈夫です。………………………なにが舞台少女出現率二倍だよ。メモワール出現率二倍の間違いだろ、自分の場合。

それでは皆様、自分が言える立場ではないですけど今後もスタリラとスタァライトをよろしくお願いいたします!レリでした!!


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第十三話


零「どうも、零です」

なな「大場ななです。ところでなんで私たちが前書きに?」

零「知らん。なんか作者が前書きに出てくれって言ってきた。ななも一緒にって」

なな「なんで私?」

零「それは後書きで言うって作者から渡された紙に書いてある」

なな「紙って……他になにか書いてあるの?」

零「ある。読んでくぞ。えっと、『読者の皆様、レリです。今回は1ヶ月もの時間が経ってしまい申し訳ありません。3rdスタァライブからさらに熱が入りスタリラをやっていてこれの次回のやつも書いてたらこんなに時間が経ってしまいました。3rdスタァライブ、楽しかった。そして、映画化。しかも完全新作ときた。こりゃあもう楽しみったらありゃしない。今はそれだけ。では、また後書きで。第十三話です。どうぞ』」

なな「……長いね」

零「前書きでこんなに長くしていいのか?まあ、とりあえず早く終わらすか。それでは」

零、なな「「どうぞ!」」


第百回聖翔祭の仮の脚本とステージ、衣装などを纏めた絵を貼っていき、みんなで意見を出しあいながら聖翔祭の準備が進められていく。そんな時零は教室の隅で衣装に関してはなにも口出しをせず、舞台のセットの絵を見ながらパソコンを操作していく。

 

 

(衣装に着替えるってなったら急いで教室を出ないとな)

 

 

「なにしてるの?レイちゃん!」

 

「華恋か。見ての通り、パソコンに去年の聖翔祭の舞台をベースにして俺なりに考えた今年の舞台を3Dデータにしてる」

 

「え、3Dデータにして作ってるの!?」

 

「なんだ、雨宮。どうした?パソコンが珍しいのか?」

 

「いやいやいやいや!パソコンをそんなに使える人ってそんなにいないしパソコンを使って舞台を考えるのだって何年ぶりだと思ってるの!?」

 

「んなの知るか。俺はこれがやれるからやってるだけだ。ちょっと見てみるか?」

 

「え、あ、見る!」

 

 

雨宮が騒いだことにより教室にいる生徒全員の視線が零に集まる。

 

 

(変なところで注目しちまったな)

 

 

そう思うしかない零であった。ちなみに華恋たちは零を見たまま固まっている。

 

 

「ね、ねぇ、岡峰君」

 

「なんだ?雨宮」

 

 

零が操作していたパソコンを雨宮に渡し、雨宮が見るとなんかプルプル震えながら名前を呼んでくる。

 

 

「こ、これって、岡峰君が作ったのよね?」

 

「あぁ。さっきも言ったが去年のベースに俺なりに考えた舞台だが。なんかまずいところあったか?」

 

「い、いや、その、逆よ」

 

「逆?」

 

「そ、その、岡峰君が考えた舞台が私たちが考えた舞台と完全に一致しているの。しかも私たちが考えてないところまで考えてあるの」

 

「は?」

 

「何一つ間違っていないほどに完全に一致していることに私も驚いてるわよ」

 

 

雨宮の言葉で教室が一瞬にして静かになる。

 

 

『え、えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?』

 

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

生徒全員が一斉に驚きの声をあげる。零に至っては耳をふさいでこれでもかと叫ぶ。

 

 

「え、なんで!?レイちゃんが考えた舞台が今考えてる舞台と一致!?」

 

「私も信じたくないけど事実なのよ」

 

「おい待て。それだと俺はそんなに信用なかったのか?」

 

「あ、いや、そういうことじゃないわ。ただ、ここまで一致してるとなるとね。ところで、これって……」

 

「安心しろ。それはもともと雨宮たちに見せてダメだったらボツにしようと思ってたからな。それでいいのならあげるよ」

 

「ありがとう!これでだいぶ捗ったわ!」

 

 

パソコンごと舞台の3Dデータを雨宮に渡す零。

 

 

(さて、やることなくなったな。調理室借りてなんか作ってこようかな)

 

 

そう思い、立ち上がり教室を出ようとすると腕を掴まれる。しかも複数。

 

 

「なんの用だ?お前ら」

 

 

見ると華恋、ひかり、純那、なな、雨宮が腕を掴んでいた。

 

 

「ねぇ、レイちゃん。雨宮さんがちょっと話があるんだって」

 

「それは今じゃないとダメなのか?」

 

(ヤバい。とてつもなく嫌な予感がする)

 

「ダメ」

 

「岡峰君、脚本は見たでしょ?」

 

「見たな。まさか……」

 

「あなたに役があったでしょ?」

 

「……」

 

「その零君の衣装が今ここにあるみたいなの。だから、サイズ調整とかで着てもらおうかって」

 

「……ちなみに断ったら?」

 

「「「「「……」」」」」

 

「せめてなんか言えよ!?」

 

「とにかく!レイちゃんには衣装に着替えてもらうよ!」

 

「んな強引な!」

 

「ほらほら!零君に拒否権はないよ!」

 

「ひどいな!?おい!!」

 

 

そう叫びながら零は五人に引きづられながら衣装がある場所に行くのだった。

 

 

「で、俺の衣装ってやつは?」

 

「これよ」

 

「めっちゃ黒だな」

 

「岡峰君は黒が似合うと思ったから」

 

「さすが雨宮さん!わかってる!」

 

「うんうん」

 

「そこの二人は黙ってようか」

 

「「え!?」」

 

「で、俺はこれに着替えればいいんだな?」

 

「そうよ。着てみて感想などを聞きたいのよ」

 

「了解、んじゃ着替えてくる。あ、あと一応言っておくが着替えるのに覗きに来るなよ。特にそこの四人」

 

「覗かないよ!」

 

「それより四人って」

 

「え、私も!?」

 

「覗かないよ~」

 

「純那は信用してるが後の三人がな。純那、三人の監視を頼む」

 

「わかってるわよ」

 

「そいじゃ、行ってくる」

 

 

零は着替えるのに教室を出て近くの空き教室に向かう。

 

 

「ねぇ、華恋」

 

「なに?ひかりちゃん」

 

「あの衣装を着た零を早く見たいと思ってるのは私だけ?」

 

「大丈夫だよ、私もそうだから。あと、たぶん二人もそうだと思う」

 

 

華恋の言葉に純那となながビクッ!と反応する。

 

 

「ほらね?」

 

「うん……」

 

 

それから数分後、教室の扉が開かれる。扉が開かれたことで教室にいた生徒全員がそこに注目する。そこには全身ほとんど黒の衣装を着た零が立っていた。衣装は赤いラインが入った黒の通気性のよいマフラーをしており、他はだいたいが黒だが青いラインが入っている。マフラーが長すぎるのか背中にマフラーの巻かれていない部分が腰より下のほうまで垂れている。零が普通に歩くとその垂れているマフラーがなびく。それだけで全員が目を奪われるほどに似合う。

 

 

「こんな黒ずくめの案内人がいるかね?あと、このマフラー?がめっちゃ長いんだけど。巻くの大変だったぞ」

 

「その長さが衣装として成り立っているから問題ないわ。どこか気になる部分はあった?」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「……強いて言うなら」

 

「言うなら?」

 

「雨宮。俺のサイズとかはどうやった?」

 

「え?愛城さんたちに聞いたのだけど」

 

「どうりでめっちゃピッタリなわけだ」

 

「さすが幼馴染ね」

 

「レイちゃん!サイズがピッタリならせっかくだし今日はその衣装のままですごしたらどう?」

 

「先生が許さんだろ」

 

「私は別にいいぞ。岡峰」

 

「先生!?」

 

「先生から許可も貰ったしレイちゃんは今日はその衣装のままで!」

 

「わかったわかった。着替えないでこのままにするよ」

 

『やった!』

 

「喜びの声を上げたのが急に増えやがったな!?」

 

 

零は生徒が喜びの声を上げたのにツッコミをし、その衣装のまま聖翔祭のデザインを見ていく。その途中でなながそれを見たまま立っていたのでななの隣にそっと立つ。

 

 

「やっぱり未練はあるだろ?」

 

 

その零の言葉はななにとっては充分すぎるほどに分かりやすいものだ。

 

 

「まあ、ないと言ったら嘘になるね」

 

「去年の聖翔祭はななにとっては素晴らしいものだったっていうのは伝わったよ。それが大切になるっていうのも納得だ。だが」

 

「過ぎ去った時間は戻らない……でしょ?」

 

「……その通り。だが、なな。君もアレに参加しているんだ。俺は未来に繋げと言ったがその言葉はななを縛り付けてしまう言葉になると後から気づいた」

 

「なにが言いたいの?」

 

「勝てばいい。それだけで勝者の、トップスタァの望みが叶うのだったか?なな。やめろと言っといてなんだが、諦めきれないのなら全力で立ち向かえ。その時にぶつかった相手も全力でぶつかってくる。君のスタァライトを掲げろ」

 

「零君……」

 

「それだけだ」

 

「……そう」

 

 

話が終わるとななは歩きだす。零の後ろを通る時に……。

 

 

「……ありがとう」

 

 

そう呟いたのだった。零は後頭部を手で掻く。所詮照れ隠しだ。そこに純那がくる。

 

 

「ななとなんの話をしてたの?」

 

「……別に。ただの助言だ」

 

「そう……」

 

「……純那」

 

「なに?」

 

「あいつらを頼んだぞ」

 

「……プっ。なにそれ。まるで零がどこかに行っちゃうみたいな言葉ね」

 

「……」

 

 

零はそっぽを向く。純那は珍しそうな顔をする。

 

 

「あなたが照れるなんて珍しいわね」

 

「照れちゃ悪いかよ」

 

「ううん。いいものが見れたなって思ってね」

 

「……さっきの言葉、胸のうちにしまっといてくれ」

 

「零?」

 

「あ~あ、喉乾いちまった。ちょっと水飲んでくるわ」

 

「え、ええ。行ってらっしゃい…………零、あなたは何を考えてるの?」

 

 

零が歩いていく姿を見て純那は呟いたのだった。

 

 

(そう遠くないうちに嫌なことが起こる……なぜかこの予感だけが頭から離れない……)

 

 

零は以前からずっとなにかが起こるという予感を感じていたのだった。

 

 

その日の夕方にオーディション七日目の知らせがきた。零は見学だ。

 

 

「イレギュラーだからかはわからんが見学が多いな……」

 

 

零は星光館の自室でケータイを見ていた。すると、ケータイに着信がはいる。相手は先生だ。

 

 

「びっくりした、先生?もしもし、岡峰です」

 

『あぁ、岡峰。突然すまないな』

 

「いえ、大丈夫です。それでなにかご用ですか?」

 

『大したことではない。岡峰。明日から君の制服は今日着ていた衣装に変更になった』

 

「は?」

 

『クラスの女子たちが岡峰の制服をあの衣装にしてくださいとお願いしてきたんだ。それで私から学園長にその話をしたら快く了承してくれた』

 

「えー……」

 

『という訳で明日から君の制服はあの衣装だ。話はそれだけだ』

 

「有無を言わさずに決めないでくださいよ……」

 

『まあ、あの衣装は結構似合っていたからな。それに、聖翔祭まであと少しだから初の衣装に慣れてもらおうというのもあるぞ』

 

「そういうちゃんとした理由があるなら先に言って下さいよ……わかりました。明日からあの衣装で行きます」

 

『バイクとかは気をつけるんだそ。ではまた明日』

 

「はい。失礼します」

 

 

そう言って通話を切る。ケータイをベッドに放り投げて自分もベッドにダイブする。

 

 

「はあ~……」

 

 

先生からの電話はある意味予想外だった。ため息をすると幸せが逃げるというがこればかりは仕方ないだろう。学校の正規の制服ではなく、舞台で着る衣装が制服になってしまったのだから。

 

 

「……行くか」

 

 

考えるのをやめて地下劇場に向かったのだった。

 

 

 

地下劇場ではすでにレヴューが行われていた。

 

 

 

 

 

レヴュー:絆のレヴュー

 

戯曲:星々の絆

 

 

 

 

 

 

「七日目は華恋とななか。ななは華恋が止めてくれるかな?」

 

 

ななの勢いにおされ、高台のセットの階段を登っていく華恋。階段を登りきり、高台のてっぺんで戦う二人。すると、ななが日本刀を突き出す。

 

 

「大嫌いよ、スタァライトなんてぇぇ!!」

 

 

ななの叫びが零の耳に届く。それを聞いた零は観客席にある手すりを強く握りしめる。

 

 

「仲良くなった相手と離ればなれになる、あんな悲劇!!だから、私が守ってあげるの!守ってあげなくちゃいけないの!私の再演であなたを倒さなくちゃ、私の再演が途切れちゃう!!」

 

「ノンノンだよ、ばなな!」

 

「っ!」

 

「舞台少女は日々進化中!!同じ私たちも同じ舞台もない!どんな舞台も一度きり!その一瞬で、燃え尽きるから!愛おしくて、かけがえなくて、価値があるの!一瞬で燃え上がるから舞台少女はみんな、舞台に立つたびに新しく生まれかわるの!!」

 

「ダメだよ、華恋ちゃん!みんなでずっとこの再演を演じてなきゃ、ダメ!!」

 

 

華恋とななが立っているところになにかが浮かび上がる。それは……。

 

 

「99回聖翔祭の……マーク……」

 

 

ステージに浮かび上がったものを見てつい最近見たものを呟く零。

 

 

「華恋ちゃん!ダメ、ダメよ!」

 

 

華恋はそのマークの外に向かって歩きだす。それを止めるなな。だが、華恋は止まらない。止まってしまったらなにかが変わってしまう。

 

 

「ごめん、なな」

 

 

華恋が呟くとマークが消える。まるで、もともとそこにはなかったかのように一瞬で。

 

 

「私はあの子と、ひかりちゃんとあの星を摘みに行く!」

 

「華恋ちゃん……」

 

 

ステージをライトが照らす。とても眩しい黄色の光が。

 

 

「どうしてそんなにキラめいてるの!どうしてそんなに眩しいの!!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

シャキンッ!!

 

 

 

ななの上掛けが落ち、幕が下ろされる。

 

 

「オーディション七日目、終了します」

 

「飛び出す必要はなかったな。お疲れ、華恋」

 

 

零はそう呟きながら夜天の剣の柄を掴んでいた手を下ろす。そしてゆっくりと、地下劇場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

校舎に戻り、明日からの制服を取りに行き、帰ろうと廊下を歩いていると中庭にななが座っているのを見つけて中庭に向かう。中庭に着き、ななの隣に行こうと足を出すが止める。理由はななの隣に純那が来たからだ。零は物陰に隠れ二人の様子を見ようとする。

 

 

「ずっと私たちのことを見ててくれたのね。何度もずっと一人で」

 

 

純那の言葉で零は気づく。彼女もななの秘密を知ったのだと。それに気づいた零は小さく笑いながら静かに帰って行った。

 

 

「守りたかったの、みんなを。私、間違ってたのかな」

 

「『いかに優れた人間でも時には我を忘れることもある』」

 

「え?」

 

「ウィリアム・シェイクスピアの言葉よ」

 

「『時間はそれぞれの人間によってそれぞれの速さですぎる』。これもシェイクスピアの言葉」

 

「もっと」

 

「も、もっと?え、え~っと、『前進しないものは後退していく。過去が現在に影響を与えるように未来も現在に影響を与える』ニーチェ。『なりたかった自分になるのに遅すぎることはない』ジョージ・エリオット。『人生で一番の失敗は失敗をするではないのかと恐れることである』エルヴァード・ハヴァード」

 

「他には?」

 

「他には!?えっと……あ!」

 

 

純那は悩んだ後に立ち上がる。そして……。

 

 

「『人には定めの星がある。きら星、明け星、流れ星、己の星は見えずとも見上げる私は今日限り!99期生星見純那!掴んでみせます、自分星!』」

 

「それって……」

 

「私の言葉よ」

 

「ふふ、あははははは!」

 

「な、なによ!」

 

「こんな楽しい純那ちゃん、初めて。あははは」

 

「ずるいわ、私はななのこと全く知らないのに」

 

「ふぅ、欲張りすぎたのかな」

 

「え?」

 

「あの一年がもっと楽しく、もっと仲良くなれるようにって再演のたびに少しずつセリフをいじったり、演出を加えたりしてた。でも、ひかりちゃんが来て、華恋ちゃんが変わって、みんなもどんどん変わって私の再演が否定されていくみたいで怖かった。だけど、新しい日々は刺激的で、新しいみんなも魅力的で、どうしたらいいのかわからなくなって」

 

「なぁんだ、あなたもちゃんと舞台少女なんじゃない」

 

「え?」

 

「もっといいものに、いい再演に」

 

「あ……」

 

「舞台も舞台少女も変わっていくもの。舞台少女なら大丈夫。だから、一緒に作ろう、なな。私たちで次のスタァライトを」

 

「ごめんね……私……私……!」

 

「知らなかった。ななってこんなに大きいのに怖がりで泣き虫で、子どもみたい」

 

「これ……」

 

「持っていこう。あなたが大切にしてきた時間、守ろうとしてくれたもの。全部持っていってあげて。次の舞台に!」

 

「……うん!」

 

 

この時のななは今まで一番キラめく笑顔だった。

 

 

「そんなことを零に言われてたんじゃないの?」

 

「う……」

 

「やっぱりね」

 

 

この時ほど零が聞いてないよねって思うななだった。

 

 

ちなみにななと純那が話してる時、零は華恋とひかりとまひるの部屋に行って華恋とひかりが同じ格好、同じ疲れた顔をしているのを見てまひると小さく笑っていた。

 

 

 




零「読んでいただき、ありがとうございました」

なな「作者さん、何してるんだろ?」

零「後書きでって言ってたのにどこにもいないな」

なな「もしかして逃げた?」

零「そんなわけないだろ。にしてもどこに」

やっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

零「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

あべしっ!?

零「急に大声だすな!!ていうかどっから沸いたっ!?」

零さん……痛い……。

なな「自業自得だよ」

ななは冷たい……。

零「んで、なにしてたんだ?」

なにって、スタリラのガチャを引いていました。そしたら前から欲しかったキャラが当たったんですよ!……ってあれ?どうしたの?零。

零「……」

零、タンマ……無言で胸ぐら掴まないで……。

なな「私たちに前書きを任しといてなにしてんの?」

いや、前書きは書こうとしたんだけど思いついたからせっかくだしやってみるかとなって二人に頼んだ。それと、なんでなななのかというと前のやつで零とななが戦って過去に執着しなくなったのに今回無理やり過去の執着を復活させてしまったというのを言おうかと思いまして。

零「なんで復活させたんだ?」

理由は二つかな。一つは、そうしないと華恋とななのレヴューシーンが書きづらくなる。二つ目はレヴューが終わった後に純那とななの二人でいるシーンが大好きだから書きたかったから。この時に流れる曲『ロンド・ロンド・ロンド』が大好きなのもある。あ、三つだったわ。

なな「そんなに好きなの?あのシーン」

大好きです!!そのシーン、自分も好きって人も必ずいるはず!!

零「断言しないのはいいことだ」

もし違うってなってたらのことも考えるとね。あ、それと、今回の零の衣装はSAOでのキリトの装備に長いマフラー?を首に巻いた状態です。風魔小太郎のゆっ子が巻いてるやつと考えてください。ちなみにレヴューでの零の衣装はだいたいは華恋たちと似ているけどズボンであり、上掛けの代わりに腰まであるマントを羽織ってて衣装の色は全部黒。衣装の右袖に赤いラインがあって左袖に青いラインが入ってます。

零「あれってマフラーなのか?」

マンガとかでそれを装備品としてつけてるのを見つけたから調べたら普通にマフラーって書いてあったよ。

なな「へぇ~。あ、そういえばさっきガチャで誰が当たったの?」

それはね、宮本武蔵のななが当たったんですよ!めっちゃ欲しかったやつ!!後はアマテラスのひかりが欲しい!!

なな「あれ、私だったんだ」

だから今回呼んだのですよ。さて、もう終わりにしないと。後書きだけで千文字を突破しちゃったし。

零「なが!」

長くしてしまって申し訳ありません。それと、投稿が遅れて申し訳ありませんでした!これからも寒いので風邪に気をつけましょう!レリでした!

零「零でした」

なな「ななでした!」

おやすみなさい!




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第十四話


皆様、お待たせいたしました!!

レリです!

ふぅ、なんとか今年中には出せた……。

それでは、どうぞ!!




この日、星光館ではオーディション最終日を告げる知らせが来ていたのだった。

 

 

零は華恋とひかりとまひるの部屋でななが作ったバナナの蒸しパンを食べていたのだった。

 

 

「……最終日、オーディション最終日って」

 

「華恋ちゃん、こぼれてるこぼれてる」

 

「どうしよう、なにをすればいいんだろう」

 

「……」

 

「ひかりもこぼしてるぞ。あと食べ方が小動物みたいだぞ」

 

「三人とも出て行きなさい!」

 

「「「え?」」」

 

「最終日なんだから気持ちも部屋もきれいにしておきたいの!」

 

「あ、じゃあ、手伝う!」

 

「私も」

 

「俺も。てか三人って俺もか」

 

「零君はありがたいけど二人は余計に散らかるからダ~メ!零君は幼馴染同士なんだから二人といてね」

 

「了解」

 

 

二人はまひるに無理やり部屋を追い出され、零は自分から外に出る。外に出ると華恋とひかりが同じタイミングで蒸しパンを食べていた。

 

 

「いよいよ動きがシンクロしてきてるな」

 

「どうする?」

 

「どうしよっか」

 

「どこかに出かけるか?」

 

「う~ん……あ、約束、思いだした!」

 

「約束?」

 

「行こ!」

 

「え、ちょ、あ」

 

「走ると危ねぇぞ!」

 

 

華恋とひかりの後を追う零。華恋が言っていた約束は覚えていたのでなんなのかすぐにわかっていた。

 

 

それからは先日にひかりを探しにあちこち回った水族館巡りをした。華恋がひかりから送られてきた写真を照らし合わせてどの場所だったのかを見つけていた。そして、最後に東京タワーへと足を運んだ。

 

 

「開いてた~!」

 

「あんま大きい声をだすな」

 

「あうっ」

 

 

華恋が両手を上に上げながら声をあげる。その左側にはひかりがいて右側は零がいて、華恋にチョップしている。

 

 

「約束ってこれ?」

 

「また三人で来ようって約束したでしょ?」

 

「約束は守らないとな」

 

「ひかりちゃん、覚えてなかった?」

 

「ううん、覚えてた」

 

「それじゃあ、楽しもうか」

 

「「うん!」」

 

 

それから東京タワー水族館に入り、中を周り、その後はショップに向かった。そこで零はあることを思いだす。

 

 

「そういや二人の髪止めってここで買ったんだっけ?」

 

「そうだよ!」

 

「俺も髪止めじゃないけどなんか買おうかな」

 

「ならそれは私たちが選ぶ。零は待ってて」

 

「なんか最近有無を言わさせないことが多くなってきてないか?わかった。待ってるよ」

 

 

零は二人と離れて一人で商品を見ていく。東京タワーのショップなだけあって東京タワーのミニチュアなどがたくさん置いてある。東京タワーのミニチュアの中にライトがあり、東京タワーが光っている。そこで零は立ち止まり、それを眺める。そして、フッと口角があがる。

 

 

「懐かしいな……」

 

 

思い出すのは十二年前、三人で舞台『スタァライト』を観た帰りに寄り、このライトアップされた東京タワーのミニチュアの前で華恋とひかりの二人がスタァライトごっこをしているのを観客役として見てたこと。すると、零の前に十二年前の自分たち三人の姿が現れる。少しボヤけているからきっと幻影だろう。

 

 

「懐かしい思い出……だな」

 

「あれからもう十二年経つんだね」

 

「そうね」

 

「早いもんだな」

 

 

隣に華恋とひかりが来る。零は少々驚いたが三人とも十二年を思い出す。

 

 

「ところでここに来たってことはもう決めたのか?」

 

「うん!」

 

「いいもの見つけた」

 

「ほう。どんなのか楽しみだな」

 

「はい!レイちゃん!」

 

「私たち二人から」

 

 

そう言って出されたのは黒い剣がデザインされたペンダントだった。

 

 

「よく見つけたな」

 

「なんかこの時を待ってたって言わんばかりにあって最後の一個だったの」

 

「レイちゃんならこれだねってひかりちゃんとすぐに思ったから買ったんだ」

 

「ありがとな。大切にするよ」

 

「うん!」

 

「気に入ってもらえてよかった」

 

「それにしても、ここも変わってるようで変わってないね」

 

「所々改装はしてるんだろうが昔のままってところが多いんだろうな」

 

「十二年前はここでスタァライトごっこやったね」

 

「あの時は零はお客さん役だった」

 

「そうだったな。だが今は…」

 

「零も舞台に立つ」

 

「びっくりしたよね~」

 

「一番びっくりしてるのは本人だぞ。手伝いで入ったってのにまさか舞台に立つことになるとはな。まあ、最初で最後だろうな」

 

「「え?」」

 

「え?」

 

「レイちゃん聞いてないの?雨宮さんから」

 

「雨宮がなにか言ってたのか?」

 

「来年の百一回聖翔祭も同じ役で出てもらおうって言ってた」

 

「初耳だぞ……」

 

「来年もフローラ役とクレール役をとらないとだね、ひかりちゃん」

 

「他の人には渡さないよう頑張ろう」

 

「うん!でも、ひかりちゃんもライバルだからね」

 

「たとえ華恋でも容赦はできない」

 

「なんの話だ?」

 

「「なんでもない!」」

 

「お、おう。そうか」

 

 

二人の息ぴったりで何も言えなくなる零。すると、華恋がひかりに手をさしのべスタァライトごっこを始める。ひかりもそれにのってスタァライトのセリフを言っていく。零はそれを前回同様見るだけ。だが、その時の零は先日に父親の一哉が言っていたことを考えていた。

 

 

(俺のことが好き……か。好きになってくれるのはすごい嬉しいが俺自身が誰が好きなのかがわからない……いや、わかっているんだ。俺が、誰が好きなのかを……ん?)

 

 

二人しか見ておらず、考え事をしていたので気づかなかったが三人の周りに店にお客さんとして来ていた人たちが見ていたのだ。

 

 

(やべ、いつの間にかギャラリーに囲まれてる。早いとこ退散するか)

 

 

その後、華恋とひかりもギャラリーに気づいて顔を赤くして固まっているのを半ば強引に手を引っ張りながらお店を出たのであった。

 

 

店を出た先に向かったのは近くのあの公園だ。公園のベンチに二人を座らせ、零はひかりの方のベンチの背もたれの縁に寄りかかる。

 

 

「いつの間にかギャラリーに囲まれててびっくりした……」

 

「だね……」

 

「ちょっと恥ずかしかった」

 

「ちょっとね」

 

「ちょっとっていう割には結構顔赤かったぞ」

 

「「そんなことない!……たぶん」」

 

「息ぴったりだな」

 

 

そう話しているうちに笑いがこぼれる。すると、華恋が口を開く。

 

 

「また来ようね。ひかりちゃん、レイちゃん」

 

「おう。そうだな」

 

「うん……華恋、いつか、また……」

 

「ひかり?………っ!」

 

 

ザッ!!

 

 

ひかりの言葉に違和感を覚え、ひかりに目を向けた瞬間、零はある気配を感じ夜天の剣を引き抜き、気配のした方向を見る。が、そこにはなにもない。公園の遊具があるだけ。

 

 

(なにもいない?いや、一瞬だが見えた……あれは、十二年前の……ひかり……?)

 

 

~♪

 

 

「っ!この通知音」

 

「ひかりちゃん、メール……」

 

「うん……ありがとう、二人とも。ずっと、『私たち』でいてくれて」

 

「ひかり……ちゃん?」

 

「……」

 

 

ひかりの言葉を聞きながら夜天の剣を鞘にしまおうとする零。零は周囲を警戒しながらひかりを見る。そして、夜天の剣をしまいきった瞬間にキン!と鳴った音と共に三人の視界が暗転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗転した視界に眩い光が照らされる。その光は地下劇場のスポットライトだと気づく。地下劇場には四つのスポットライトが照らされている。照らされたところには机と椅子が用意されており、椅子に座っているひかりと真矢、少し離れたところに華恋とクロがいる。観客席には純那、なな、まひる、双葉、香子がいる。

 

 

「これは……」

 

 

この現状にひかりが最初に声を出す。すると、観客席にいるキリンが説明する。

 

 

「飛び入り参加された方々がいるので、スケジュールの変更が必要になりまして。そこで、あなたたちにはレヴューデュエットをしていただこうと思いまして」

 

「レヴュー……デュエット」

 

「タッグマッチってこと?」

 

「ひかりちゃん!やっぱりなれるんだよ!二人でスタァに!」

 

「華恋……特別扱い……」

 

「では、天堂真矢さん、選択希望舞台少女を決めてください」

 

 

真矢が机の引き出しを開けると二つの上掛けを留めている星の留め具がある。その一つを勢いよくクロに投げる。それをキャッチするクロ。

 

 

「準備はよろしいですね?」

 

「Oui!」

 

「では、神楽ひかりさん、選択希望舞台少女を」

 

 

ひかりが真矢と同様に星の留め具を華恋に投げる。

 

 

「愛城華恋!」

 

「うん!」

 

「レヴューデュエットα、わかります」

 

「(え?)」

 

華恋とひかりvs真矢とクロのレヴューが始まる。四人はレヴュー衣装に着替え、再びステージに立つ。

 

 

「これより、オーディション最終日、運命のレヴューの開演です。どちらか一方でも上掛けを落とされたら負けとなります」

 

「ねぇ、華恋。さっきキリンがさっきレヴューデュエットの最後にαって言わなかった?」

 

「あ、うん。そう聞こえたけどなんだろうって思ったけど。なんだろうね?」

 

「気になるけどまずは」

 

「これに集中だね。行こう、ひかりちゃん!」

 

「うん!」

 

 

 

 

レヴュー:運命のレヴュー

 

 

戯曲:Star Divine -finale-

 

 

 

「始まった……」

 

 

観客席にいる純那が呟く。ステージでは剣が交わることで火花が起きる。その火花が観客席からだと光にしか見えない。

 

 

「……あれ?」

 

「どうしたの?純那ちゃん」

 

 

純那の声にななが反応する。純那はステージを見た後に観客席、自分たちの周囲を見ている。

 

 

「零は……どこにいるの……?」

 

「そういえば……」

 

「まさか……!」

 

 

観客席で見ている純那たちはある考えにたどり着き、ステージを見る。ステージでは、真矢とクロが華恋とひかりに同時に剣を振り下ろそうとしていた。華恋とひかりの二人は攻撃を弾かれたせいなのか体制を立て直すのに必死で防御もできない。真矢とクロの剣が華恋とひかりに当たる……その瞬間…!

 

 

 

ガギィィィィィンッ!!

 

 

 

今までにないぐらいの音量が地下劇場に響く。観客席にいる純那たちは驚いている。ステージにいる四人も同様に驚いており、固まっている。真矢とクロに至っては先ほどまで握られていた剣が二人の後方に飛ばされており、その四人の上空には二本の剣が舞っている。すると、さらにその上から一つの影が落ちてきて二本の剣を掴み、四人の離れたところにセットとしてある高台に着地する。。よほどの勢いだったからか着地と同時に煙が起こる。その煙の中から人影がゆっくりと立ち上がる。

 

 

「悪いな。こっから乱入させてもらうっ!!」

 

 

高台に着地した人影、零が夜天の剣と紅華の剣を構えて叫んだのだった。

 

 

「αって、零のことだったの……?」

 

「そうみたいだな。そんな事より、やろうか。最初は誰が相手だ?」

 

「おもしろいじゃない。最初は私でいくわ!」

 

「ほう、次席が相手か。いいだろう、来い!クロ!」

 

「はあっ!」

 

「せやぁっ!」

 

 

零とクロの二人が剣を振るっていると零の後ろに回り込んでいた真矢が叫びながら突きをしてくる。

 

 

「デュエットだということを忘れないでください!」

 

 

 

カキンッ!

 

 

 

「なっ!?」

 

 

驚く真矢。否、真矢だけではない。地下劇場にいる全員が驚く。無理もない。なんせ、零は真後ろにいる真矢の突き攻撃をノールックで防いだのだ。

 

 

「忘れてるわけないだろう」

 

「くっ!はあっ!」

 

 

 

カキンッ!

 

 

 

「今です!」

 

「わかってるわよ!」

 

 

真矢が紅華の剣をなんとか払い、クロもつばぜり合いから払って零が体制を崩してしまう。そこを真矢がクロに声をあげ、二人同時に剣を零に向かって振り下ろす。

 

 

 

ガギンッ!!

 

 

 

誰もが決まったと思った。ステージで地に膝をついているのは真矢とクロの二人だ。零は紅華の剣をステージに置くように突き立て、夜天の剣を肩にのせている。

 

 

「いったい、何が起こったの……?」

 

「あんな速い動き……すごすぎです、岡峰君……」

 

「普通、あんな動きできないわよ……」

 

「そうか?」

 

 

零は二人に押しきられて体制を崩してしまった、否、わざと崩したのだ。二人に隙というものを見せて同時に斬りかかってきたのを狙って素早く紅華の剣を逆手に持ち替えて、すごい速さでその場で回ったのだ。威力が強すぎて二人は後ろに吹き飛ばされてしまったのだ。

 

 

「これはレヴューデュエットのはず。なら零は誰とペアなの」

 

「俺にペアはいない」

 

「え?」

 

「俺にとってのこのレヴューは四重奏……レヴュー四重奏(カルテット)だ」

 

「レヴュー……」

 

「四重奏(カルテット)……」

 

「まさか、岡峰君は四対一でやるというのですか」

 

「その通りだ、天堂。だから、華恋、ひかり。すまないが二人にも容赦はしないぞ」

 

「レイちゃん……」

 

「零……」

 

「やるしか……ないのかな。ひかりちゃん」

 

「あ、言い忘れてた。俺は勝利にこだわっていない。トップスタァはお前らの誰かがならないとな」

 

「え、じゃあ、なんで」

 

「なんで、か。これが今の俺ができること、かな。さあ、構えろ。華恋、ひかり」

 

「私は……嫌だよ。なんでレイちゃんと戦わなくちゃいけないの?三人で合格しようって言ったじゃん!あの時の約束は嘘だったの!?レイちゃん!!」

 

 

最初は声は小さかったが、最後につれてだんだんと声が大きくなり、最後は怒鳴った華恋。それを聞いた零は表情一つ変えず、黙って華恋を見ている。

 

 

「嘘……だったの……?」

 

「華恋……」

 

 

華恋の弱々しい声を聞いてひかりが華恋に視線を向ける。

 

 

「嘘を言った覚えはない」

 

「え……?」

 

「大切な幼馴染とした約束に嘘なんかつけられるか。つけたら俺は一生後悔するだろうな。お前らと三人で舞台に立ちたいさ。だからこそ、このオーディションで本気のお前らと戦いたいんだよ」

 

「レイちゃん……」

 

「さっきも言ったが俺はトップスタァになろうなんざ思ってない。なるのはお前たちだ」

 

「零は、どうするの」

 

「俺は、トップスタァへの道しるべさ。ふさわしいと思った者をトップスタァへと誘う者。それが俺さ。だから……」

 

 

紅華の剣の切っ先を華恋とひかりに向ける零。

 

 

「全力でかかってこい!華恋!!ひかり!!」

 

「零……」

 

「ひかりちゃん。ひかりちゃんはどうしたい?」

 

「私は……」

 

「と、こんな感じに言っとけばいいだろ」

 

「え?」

 

「れ、レイちゃん?」

 

「いや~、悪かったな。華恋、ひかり。今のは俺が登場するのにどういうセリフを言えばいいかわからなくてとっさに言ってたやつだ。強いていえば、演技?」

 

「え~……」

 

「……」

 

「岡峰君……」

 

「零……アナタって人は……」

 

「まあ、呆れられて当然だよな。だが、さっきの言葉に嘘偽りはない」

 

「それはわかってるよ。レイちゃんが演技だったとしてもこれが本心なんだっていうのはすごい伝わったから。ね、ひかりちゃん」

 

「うん」

 

「乱入者とはいったが基本はなんら変わらん。レヴューデュエット、再演だ。俺はたまに出ようって思ってるから。だが、その前に。華恋、ひかり。さっき言ったやつからスタートだ、全力でこい」

 

「レイちゃん……わかった!」

 

「いくよ、零」

 

「いつでも」

 

 

 

 

 

運命のレヴュー再演

 

 

 

 

 

「はあぁっ!」

 

「せやぁぁっ!」

 

 

華恋とひかりが同時に零に斬りかかる。それを零は……。

 

 

「ふっ!」

 

 

 

カキンッ!

 

 

 

二人の攻撃を防ぎ、凪ぎ払う。

 

 

「こんなものじゃないはずだろ?お前たち二人の力はぁ!!」

 

 

今度は零が華恋とひかりに斬りかかっていく。零は高速で二本の剣を振るっていく。零の猛攻は、剣で防いではいるが防ぎきれていないため衣装が少しずつ切り傷が増えていく。そのうち、上掛けが落とされそうな勢いだ。零の猛攻にひかりは脱出できたが華恋がまだ零の猛攻をくらっている。ひかりはパートナーの華恋を守るために離れたところから自身の武器の短刀を零に向かって投げる。

 

 

 

キンッ!

 

 

 

ひかりの攻撃を夜天の剣で弾き、零自身も一旦距離を置くために後方にジャンプする。着地した瞬間を後ろから真矢とクロが斬りかかるが前転してやり過ごし、前転しながら体をひねり着地した時には真矢とクロに狙いを定め、夜天の剣を構えものすごい勢いで突き出す。真矢とクロも驚きながらもそれをかわす。かわしたところで華恋とひかりが真矢とクロに斬りかかる。

 

 

これはレヴューデュエットのはずだが、この動きようはもはやレヴューと言っていいものなのかわからなくなる。それほどまでにすごい動きなのだ。入れ代わり立ち代わりで斬りかかっているのだから。

 

 

しばらくは華恋とひかりと真矢とクロの四人で戦っている。その間に零はセットに身を隠す。その場に留まらずに動いては隠れてを繰り返しているのでどこにいるのかわからない。

 

 

「はあっ!」

 

「くっ!」

 

「せやぁっ!」

 

「っ!」

 

 

 

カキンッ!

 

 

 

「な!?」

 

「おらっ!」

 

 

クロがひかりに斬りかかり、当たると思った瞬間セットの影から零が飛び出して二人の間に入りクロの攻撃を防ぎ弾き返しす。弾き返すと零は紅華の剣を離れている華恋と真矢の方に投げ、自身もそこに突っ込む。

 

 

「っ!?くっ!」

 

「え?わわ!?」

 

 

思わぬ方向からの攻撃で驚いて動きが硬直してしまう華恋と真矢。目の前に紅華の剣がきたと思ったら一瞬で追い付いた零が紅華の剣を掴み体を回して左右にいる二人を押し返す。そのまま零はセットの影へと隠れる。

 

 

「はあっ!」

 

「くぅ!……うわ!」

 

 

真矢が華恋に突き攻撃をしてそれを剣の腹で防ぐが後方に飛ばされる華恋。華恋は剣を地面に突き立てて支えにして立とうと体を起こし、しゃがんでいる状態で息が切れている。そこにひかりが華恋の手に自分の手を添える。

 

 

「華恋!」

 

「ひかりちゃん!」

 

「「アタシ、再生産!」」

 

 

ひかりの手を掴み立ち上がる華恋。それを影から見ていた零は笑っている。そして華恋はクロと、ひかりは真矢と戦っていて華恋は高台の上で戦っており、高台の端に追い込まれた華恋をクロが剣を水平に凪ぎ払うと華恋はそれを避けた。自ら落ちるように。これを見た零は内心少し焦ったがそれが無意味だったことにすぐに気づく。なぜなら華恋の動きを予期していたかのようにひかりが短刀を使って短刀に付いているワイヤーで空中を移動してきて空中で華恋をキャッチしたのだ。真矢とクロもこの二人のコンビネーションに驚いている。

 

 

「二人で一つ……!それがこのキラめきの!!」

 

「私たちだってぇ!!」

 

 

クロが自分の剣をセットの壁にめがけて投げて壁に突き刺さった剣を足場にして真矢が跳ぶ。

 

 

「二人で、いや、三人であの星を!!」

 

 

華恋もひかりが投げるのと同時にひかりの足に力を入れて跳ぶ。が、力が足りなかったのか少し低い。そこを零がステージから跳び、空中で反転して華恋の足めがけて足を突き出す。華恋もそれを見て意図を読み取り、零の足に自分の足をつける。

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

零の足を突き出すと同時に華恋も足によりいっそう力をいれて跳ぶ。今度は成功して高く跳ぶことができた。

 

 

「『舞台に生かされているー♪』」

 

「『切っ先に栄光とまれー♪』」

 

 

 

カキンッ!!

 

 

 

上掛けを留めていた星の留め具が斬られ、飛んでいく。それと同時に上掛けが落ちる。上掛けが落ちた者は…………天堂真矢。

 

 

「「ポジション・ゼロ!!」」

 

 

華恋とひかりがポジション・ゼロに剣を突き立てる。それを零は離れたセットのところで見ている。

 

 

「レヴューデュエット、終了します」

 

「待って!」

 

 

キリンの終了を告げる声が聞こえたら華恋とひかりの後ろからクロが声をあげる。

 

 

すると、クロは自ら星の留め具を取り上掛けを落とす。その顔は今まで見たことがない泣いている顔だ。

 

 

「負けたのは私!天堂真矢は、負けてない!」

 

 

クロは声をあげて膝を地面につき、泣いている。途中からフランス語になり話し始める。零はフランス語はわからないが真矢を想っての言葉だというのはわかる。すると、真矢もフランス語でクロに話しかける。そのやりとりを静かに見つめる三人。真矢がクロに手を出してフランス語を言う。それをクロは涙を拭ってフランス語で悪態をつきながらその手をとり立ち上がる。最後のやりとりを見た零は安心したのか口角があがる。

 

 

「勝てたんだ。私たち、あの二人に」

 

「……うん」

 

「……」

 

 

(レヴューデュエットで華恋とひかりが勝利した……。これでオーディションは終了なのか……?二人がトップスタァになって終了……になるのか……?なんなんだ……?胸騒ぎがおさまらない)

 

 

 

ガシュッ!

 

 

 

(ん?なんだ?今の音……。!二人の足元が……まさか!)

 

 

「私たちがこのオーディションの……!」

 

 

 

ドゴォォォォンッ!

 

 

 

「え!?」

 

「っ!?」

 

「なにこれ!?」

 

 

突如、華恋とひかりが立っている場所がすごい勢いで上に上がり始めた。零は動き出す瞬間に気づいたので間に合わなかったが二人が立っているステージの少し下の骨組みの部分に夜天の剣を突き刺してぶら下がっていた。星降りの塔に輝いている光の近くまで上がったステージが止まる。

 

 

 

「最終オーディション、悲劇のレヴューの開演です。トップスタァを目指して歌って、踊って、奪い合いましょう」

 

「ひかりちゃん!」

 

「そうよね。やっぱりオーディションの合格者は一人だけ。二人一緒には、スタァになれない」

 

「わかります」

 

「ありがとう、華恋」

 

「ひかりちゃん……?」

 

「あなたは私を覚えていてくれた。『私』と『私たち』でいてくれた。あなたのキラめきがが私を照らし、導いてくれた。私をもう一度舞台少女に生まれ変わらせてくれた。二人で……ううん、三人でスタァライトするために。でも、あなたのキラめきは奪えない。奪わせない。だから、華恋……」

 

 

 

カキンッ!

 

 

 

華恋の星の留め具がひかりによって斬られ、飛んでいく。華恋は何もせずにひかりがいるステージから落ちる。

 

 

「だから……さよなら……華恋。…………零」

 

 

華恋の頭をよぎるのはひかりの言葉と顔だった。その時のひかりの顔は涙を浮かべて笑っていた…………。

 

 





第十四話を読んでいただきありがとうございました!

前書きにもあった通り、これは今年中には出したかったのですよ。そして本来、今回のは区切って二話にするつもりだったんですけど一つにしちゃうかってなりました!(八千文字突破)繋げるのにネタ考えて書いていたらこんなに遅くなりました。ごめんなさい!ネタが浮かばなくて……。もう途中から無理やり繋げたようなところが多かったので変なところはあると思います。お許しください。

さて、皆さん、スタリラのチャットやってますか?私ですか?全然やってないです……。それより私はアマテラスのひかりが欲しくて持ってない状態でスキンがきたから、はあぁぁぁっ!?ってなってます。なけなしの初回半額分をひいていつも通りの虹が出ずに次の日になったら巫女のまひるがきて、おいこら運営!!ってなってます。運営を責めてしまってごめんなさい。けど!このまひるはひかりの誕生日後の十日までだからよしって思ってます。課金して一発で出たらもっとよし!ってなります。そしたら残ったスタァジェムをひかりの誕生日ガチャにまわします。巫女のまひるを当ててひかりのオリオンかアマテラスか花嫁のどれかが当たれば満足です……。当たってほしい……。そう思ってると絶対当たらないけど……。

次回は正月スペシャルを出そうと思ってます(書き始めたばかり)。元日か二日に出せるようがんばります。それでは、皆様、よいお年を。来年もよろしくお願いします!レリでした!!


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スタァライト正月スペシャル!


皆様、新年あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!

レリです!

はい、スタァライト正月スペシャルでございます!お正月に出せるよう頑張りました!

零「コミケに行くときの電車の中でも書いてたよな」

黙らっしゃい!書く時間がなかったんじゃ!それに書くのにちょうどいい時間でしょ!電車の中は執筆途中のを書くか寝るのどっちかでしょ!

零「いやでも書き終わったのついさっ『それでは!』おい!」

正月スペシャルです!どうぞ!!

あ、ちなみにこの回はスタリラ編に入っているとお考えください。


聖翔音楽学園の正門によりかかりここに来る人を待っている二本の剣を携えた人物、岡峰零は空を見て呟く。

 

 

「……いい天気だ。正月なのに雨じゃ嫌だしな」

 

「お~い!」

 

「……来たか」

 

「お待たせ!レイちゃん!」

 

「お待たせ」

 

「よう。そんなに待ってないから安心しろ。二人とも振袖似合ってるぞ」

 

「ありがとう!」

 

「ありがとう」

 

 

零の元に来た二人、零の幼馴染の華恋とひかりが振袖姿で到着する。

 

 

「てかなんで学校なんだ?寮で会ってそのまま行けばよかったんじゃないか?」

 

「え~、なんかそれだと雰囲気でないじゃん!」

 

「雰囲気の問題か?」

 

「初めて振袖を着るから時間かかると思ってたから」

 

「まあ、二人が決めたことなら異論はないけどな。んじゃ、行くか」

 

「「うん!」」

 

 

歩き出して近所の神社に初詣に向かう三人。初詣に行くことになったのは華恋とひかりが『三人で初詣行きたい!』と言ってきたからだ。

 

 

「それにしても、レイちゃんがどこにでもその子達を持ってくからなんかもう慣れちゃったな」

 

「人間、なにもかも慣れが肝心だぞ」

 

「今使う言葉じゃないと思う」

 

 

零は夜天の剣と紅華の剣を背中にクロスするようにして担いでいる。もちろん、布を巻いてそれが本物の剣だとバレないように隠している。

 

 

「正月だからなにも起こらなければいいんだがな」

 

「さすがに正月だから……っていうのはきかないもんね」

 

「犯罪をする奴らにとっては今が正月だからとか関係ないしな。まあ、そんな奴らがいたら即刻潰す。二人を危険な目にあわせないからな」

 

「その言葉は嬉しいけど零も無茶だけはしないでね。私たちは零が傷つくことともしものことが一番怖いんだから」

 

「あぁ、わかってる。怪我だけはしないようにするさ。な?」

 

 

そう言ってひかりの頭を撫でる。

 

 

「うん///」

 

「ひかりちゃんだけずるい!レイちゃん、私も!」

 

「はいはい。ところで今向かってる神社ってさ、やっぱりあそこなのか?」

 

「そうだけど、零は行ったことあるの?」

 

「あぁ、うん、まぁな……」

 

「「?」」

 

 

(あの神社だとあいつらと会う可能性が大だな。まあ、会って困ることではないが……)

 

 

この時の零は会う確率が高い知り合いを思い出していたが、零は知らない。その神社にいるのは彼女たちだけではないということを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた~!」

 

 

目的地の神社に到着し、華恋が声をあげる。

 

 

「やっぱり正月だから人が多いな。…………この人混みを使うか」

 

「人混みがなに?」

 

「え!?あ、いや!?なんでも!」

 

「?……」チラッ

 

「……」コク

 

「え、なに、今の一瞬のアイコンタクト?お前たちそんな技術をいつの間に」

 

「ねぇ、レイちゃん。レイちゃんさ、私たちに隠してることがあるでしょ?」

 

「え……いや、ない……けど」

 

「ちゃんと私たちの目を見て言って」

 

「私たちの予想だと前にレイちゃんがいた地域の人たち、Roseliaのみんなで来たんじゃないの?」

 

「……」

 

「正直に言って?零」

 

(今のこの二人がなんか怖いと思うのは気のせいだろうか……)

 

 

気のせいではないだろう。今の二人の目にハイライトがないのだから。

 

 

「わかった、正直に言う。二人の予想通り、ここにはあいつらと来たことがある。まさか、今いるところと前にいたところの境界線上にこの神社があるとは思わなかったが」

 

「偶然ってすごいね」

 

「逆に怖いけどな。さて……」

 

「あ」

 

「ん?」

 

 

別方向から声が聞こえ、そっちを見るとそこにいたのは……。

 

 

「まさか、お前たちまでいるとはな……」

 

 

凛明館女学校の巴珠緒に音無いちえ、フロンティア芸術学校の恵比寿つかさ、シークフェルト音楽学院の雪代晶に鳳ミチルの五人がいた。全員、振袖姿で。

 

 

「あなたたちにも会うなんてね、零君」

 

「ほんとびっくりだな。でもまさか全学校の生徒がここに揃うとはな。そして、何より晶がいることにびっくりしてる」

 

「それはどういうことだ、岡峰零」

 

「零でいいって言ってんだろ。まあ、お前のことだから初詣も大切だがレッスンも大事だって言って来なさそうだし」

 

「いくら私でも初詣には来るさ」

 

「ミチルに無理やり連れて来られたんだろ」

 

「……」

 

「図星か」

 

「零君、正解♪晶ったら全然行こうとしないからさ~。無理に誘っちゃった♪」

 

「で、いちえは珠緒と一緒にってとこか。つかさは一人なんだな」

 

「うん、珠緒が行くって言うから一緒に行くってね」

 

「みんな実家に帰っちゃってさ。一人だし、初詣に行こうと思ってね」

 

「なるほどな。あ、そういや華恋とひかりは……」

 

「シークフェルトの二人と凛明館の巴さんと話してるわよ」

 

「いつの間に……」

 

「せっかくだし一緒にお参りする?私もさっき来たところだから」

 

「つかさがいいなら俺はいいぜ。後は二人が……」

 

「レイちゃん!みんなでお参りしよう!」

 

「なんて言う心配はなかったな」

 

「あはは……」

 

 

それから合計八人でお参りをして、お守りや破魔矢を買ったりなどをした。

 

 

「あら?」

 

「よう」

 

 

途中、予想していた人たちと会ったりもした。

 

 

「レイちゃん!みんなでおみくじ買おうよ!」

 

「俺はいいけどみんなはどうなんだ?」

 

「全員買うって」

 

「もう決まってたんだな。んじゃ買うか」

 

 

最後に全員でおみくじを買い、少し離れたところでおみくじの結果を見る。

 

 

「あ、中吉だ~。ひかりちゃんは?」

 

「大吉」

 

「え、すごい!」

 

 

中吉の華恋と大吉のひかり。

 

 

「吉、か。まあまあね」

 

「私は小吉だったよ~」

 

 

吉の珠緒と小吉のいちえ。

 

 

「小吉か~」

 

 

小吉のつかさ。

 

 

「なんだった?晶」

 

「大吉だ」

 

「おお、私も大吉だったよ」

 

 

大吉の晶とミチル。

 

 

「中吉ね」

 

「あれ、友希那も中吉だったんだ。アタシもだよ♪」

 

「私は吉ね」

 

「りんりん、どうだった?」

 

「うん……私は……小吉……だよ……あこちゃん……は?」

 

「あこは紗夜さんと同じで吉だったよ」

 

 

それぞれの結果のRoselia五人。

 

 

「……」

 

「零、どうだった?」

 

「……」

 

「零?」

 

 

ひかりが話しかけても返事がない零。ずっとおみくじの紙を見たままだ。そっと、後ろから見るとそこには凶という文字が。

 

 

「結んでくる」

 

「いってらっしゃい」

 

 

おみくじを結びに行く零にその言葉しかかけられないひかりであった。

 

 

何はともあれ、鳥居の前で大人数で固まってそろそろ解散しようと話しているとき……。

 

 

「きゃあ!ひったくりよ!」

 

『!!』

 

 

近くにいた若い女性の悲鳴を聞いて全員がそちらを見る。見ると、小太りの男性が女性のバッグであろうものを持って走っていた。そして、零はすぐに動いた。

 

 

「華恋、ひかり!悪いがあの人を頼む!」

 

「え!?あ、わかった!」

 

「ま、任せて!」

 

「任せ、たっ!!」

 

 

ドシュッ!

 

 

零が足に力を込めておもいっきり地面を蹴り、走り出す。そのせいで零がいた場所から風がふく。

 

 

「よし、ここまで来れば……」

 

「逃がさねぇよっ!!」

 

「え!?」

 

 

 

ドゴッ!!

 

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

 

ドゴォォォンッ!!

 

 

 

「おし、犯人確保」

 

 

もはや人間の速さではない速度で接近した零が振り向いてきたひったくり犯に夜天の剣(鞘にしまったまま)で犯人の脇腹に叩きつけて壁にまでぶっ飛ばした。ぶっ飛ばされた犯人を気絶している。この一連の流れを見ていたみんなは呆然としていた。ひったくりにあった女性に寄っていた華恋とひかりも含めて。

 

 

「はい、盗られたバッグです」

 

「え、あ、ありがとうございます!」

 

 

気絶しているひったくり犯からバッグを取り返し、女性に渡す。女性は何度もお礼を言ってその場を去った。そして、華恋とひかりはすでにみんながいるところに戻っており、そこに零も戻る。夜天の剣を背中に担ぎ直しながら。

 

 

「みんな、怪我ないか?」

 

「私たちは平気だよ。レイちゃんは?」

 

「全くなし。で、お前たちはいつまで固まってるんだ」

 

「いや、だって……」

 

「あんなの……」

 

「人間業ではないでしょ……」

 

「零、お前は本当に人間か?」

 

「ドストレートに聞くな、晶。正真正銘人間だよ」

 

「でも、あそこまで風は起きないし、犯人まで一瞬で追いついたじゃん。いくら瞬発力がすごい人でもあそこまではいかないでしょ」

 

「まあ、時々人間離れした行動をするのは昔からだし」

 

「慣れたっていえば慣れた……かな?あはは……」

 

「しかもその剣も持ってきているとは」

 

「さすが……というべき……でしょうか」

 

「さすが零兄!かっこよかった!」

 

 

約一名だけ零の行動が異常だということがわかっているのかわからない反応をする。

 

 

「零、あのひったくり犯はどうするの?」

 

「すぐに警察が来るさ」

 

「あれほど大きな音がなれば当然かな」

 

「それもあるがさっき電話したし」

 

『いつの間に!?』

 

 

零の速すぎる行動に全員が驚いたのだった。

 

 

こうして、一波乱あったお正月も無事に幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか今までにない終わり方したな」

 

 

黙っていなさい。

 

 

「メタいな~……」

 

 

 

 





読んでいただきありがとうございました!

最後メタかったですね~(←書いた本人)。正直に言います。どう終わらせればいいかネタが浮かばなったんです。ごめんなさい。

さて、今回は毎度おなじみ三人が初詣に行ったという内容でした。神社に珠緒といちえとつかさと晶とミチルがいましたね。まさかこんなに早く出すことになるとは思ってもいませんでした。五人口調大丈夫かな?晶の晴れ着みてみたい(切実な願い)。Roseliaも出せたし、よしよし、ですかね。

スタリラでもガチャがきてますね~。スサノオの真矢様が!巫女のまひるとスサノオの真矢様欲しいですね~。ガチャ引いたけど星四の舞台少女は出たけどユニットスキルがアップ……あんまり育てていない舞台少女がスキルがアップ……どうしろと?しかも主戦力でもないし……。新しい舞台少女が当たらない!めっちゃ欲しい!なのに!過去に当てた舞台少女しか出ない!これってなんなんですかね。そうなってる人は少なからずいるはず……え、あんたと一緒にするな?ごめんなさい。でも課金するとしたらどっちにすればいいかなって思うんですよね。増量中の一万を使うかキラめきフェス限定舞台少女確定チケットのパックを買うか……悩みどころです。

さて、話が長くなってしまいました。それでは、皆様、今年もよろしくお願いいたします!!レリでした!!


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第十五話

皆様、こんばんは!レリです!

お待たせしました!アニメ回での十一話です!

アニメでひかりがいなくなった時……マジでどうなんのって初見は思って見ていましたね。最後あたりの舞台少女心得―幕間―はいい曲ですよね。

それでは、どうぞ!



「……ひかりちゃん」

 

 

あのオーディションから数日が経っていた。華恋はオーディションの後から姿を消し、学校を退学したひかりを探し続けている。

 

 

「今、どこにいるの?ひかりちゃん……」

 

 

どこまでも続く青い空を見上げながら呟く華恋。その華恋を物陰から見ている人物が一人いた。その人物は華恋とひかりのルームメイトのまひるだ。そして、そこに『彼』の姿はない……。

 

 

 

 

 

それからも時間は無情にも過ぎていき、オーディション最終日から数週間が経っていた。

 

 

華恋は以前ひかりがいたイギリスの王立演劇学園に電話をしたり、ひかりと行った水族館に行ったり、警察に行ったりなどをしてきたが結局ひかりは見つからなかった。ケータイにメールをしても返信はこない。電話をしても繋がらない。ひかりの所在はなにもわからぬまま、時間だけが過ぎていく。

 

 

そして、第百回聖翔祭も間近になってきて生徒たちはあわただしくなる。B組は舞台の制作により力を入れていき、脚本を作った雨宮をはじめ、キャストに選ばれた華恋たちがリハをしていく。これが聖翔祭までずっと繰り返し。朝は寝坊助の華恋も朝早く起きる。そして、ルームメイトのまひると一緒に登校をする。だが、華恋は寮の自分たちの部屋を出て少し歩いたところで立ち止まることが多い。立ち止まり、じっと見つめるその先は一つの部屋。そこを見つめる華恋の目はどこか寂しげだったとまひるは言う。

 

 

その部屋が空き部屋なのに……。

 

 

 

 

 

 

それからも数日が過ぎ、聖翔祭もあと数日という時のリハで華恋は思った。

 

 

(ひかりちゃんがいないのになんで私舞台なんかやってるんだろう……)

 

 

今までの華恋からすると、とんでもないことを思っているがそこで華恋は気づく。リハの最中だというのにも関わらず涙を流す。

 

 

「私、あんなに舞台が好きだったのに今、なんでって思っちゃった…………わかった…………わからないけどわかった気がする……ひかりちゃんは失くしてたんだ……大切なものを……」

 

 

その後、華恋は部屋に引きこもってしまうようになってしまった。

 

 

華恋がいないオーディションに参加した七人が集まってあのオーディションについてのことを話していた。その結果、あのオーディションは舞台少女にとって大切なもの、キラめきで運命の舞台が作られるということがわかった。そのキラめきは、参加した舞台少女から奪われ、集められたとなったもの。だが、ここにいる七人はなにも失っていない。なぜならそれをひかりが一人で肩代わりしたから、ということになる。

 

 

「なんで、神楽はんはそないなことをしたんやろ」

 

「奪えなかったんじゃないかな。華恋ちゃんのキラめきを」

 

「ついでにあたしたちも守られた……頼んでもいないのに……」

 

「でも、ひかりちゃんは全員のキラめきを肩代わりして今いったい……どこに……」

 

『……』

 

 

沈黙が流れる。だが、その沈黙を破った者がいた。机に手を当て、立ち上がった者、純那だ。だが、純那の顔は何かを思い出したような顔だ。

 

 

「じゅ、純那ちゃん?どうしたの?」

 

「……ねぇ、なな」

 

「な、なに?」

 

「私たちにも大変なことがおきてたみたい……」

 

「え?それって、どういう……」

 

「なな、一つ聞くわよ。あのオーディションから今までに『彼』はいた?」

 

「『彼』って、どうしたの?純那ちゃん。そもそも『彼』っていっ……たい……」

 

 

ここまで発言したななも驚愕と思い出した顔になる。そして、目から涙もこぼれる。

 

 

「私……たち……とんでもない……ことを……」

 

「急にどうしたの!?ばななちゃん!」

 

「なな、みんなに説明するの任せていい?私、『彼』の……零の部屋に行ってみる。何かあるかもしれないし」

 

「え?零って……」

 

「うん、わかった。説明が終わったら私も向かうね」

 

「ええ、お願い。…………皮肉なものよね。一度好きになった人のことを忘れるなんて…………」

 

 

そう言って純那は寮に向かって走り出した。この二人のやりとりを見ていた五人はまだわかっておらず首をかしげている。

 

 

「ねぇ、みんな。覚えてる?『彼』のこと」

 

「『彼』って一体誰のこと?」

 

「……そうだよね。私たちが忘れてたんだからみんなも忘れてるよね」

 

「大場さん?」

 

「みんなもわかるはずだよ。『彼』……岡峰零君のこと……」

 

「岡峰……零……………………っ!!」

 

「まひるちゃんは思い出したかな。他のみんなは……思い出したみたいだね」

 

 

ななの言う通り、全員が驚愕の表情をしている。まひるに至ってはななと同様、涙を流している。

 

 

「…………んで」

 

「え?」

 

「……なんで私たちは……」

 

「……岡峰君のことを……」

 

「……忘れてたんだろうな……」

 

「……忘れてたんじゃない……」

 

「え?」

 

「……私たちの記憶から存在ごとなくなってた……」

 

『!!』

 

「……な、なんで、零君の存在ごとがなくなってたんだろう」

 

「……考えられるのは、あのオーディションが関係してる。ううん、ひかりちゃんが関係してるんだ」

 

「どういうことですか?」

 

「零君がいなくなったのを思い出すと、あのオーディションからなんだ。しかもその時にひかりちゃんもいなくなった。同時にいなくなる、しかも私たちの記憶からなくなってたってのも考えるとひかりちゃんが関係してるってことになる」

 

「ってことは……」

 

「零君は、ひかりちゃんにとってのキラめきなんだ」

 

『!!』

 

「ひかりちゃんがキラめきをなくしたことによってひかりちゃんにとってキラめきの零君もいなくなったってこと?」

 

「たぶんね。だから今純那ちゃんが寮の零君に部屋に行ったの。零君が何か残してるかもしれないし。じゃあ、私も行くね」

 

「なな、寮まで送るぜ」

 

「え、いいの?双葉ちゃん」

 

「バイクのほうが早く着くからな」

 

「ありがとう、双葉ちゃん!お願い!」

 

「私たちは学校に岡峰君……いえ、零君の手がかりがないか探してみます」

 

「ななは早く寮に」

 

「ありがとう、みんな!」

 

「香子、頼んだぞ」

 

「双葉はんのぶんも頑張りますわ」

 

「あの香子から頑張るって言葉が……嬉しすぎて涙が出るぜ」

 

「双葉はん!それどういうこと!?」

 

 

香子のツッコミに少し笑いがおこる。

 

 

「よし、行くぞ、なな」

 

「うん、双葉ちゃん」

 

 

そして、双葉にバイクで寮に送ってもらったななは急いで零の部屋に向かう。零の部屋の前に着くと華恋と純那がおり、華恋は泣いている。

 

 

「華恋ちゃん、思い出したの?」

 

「うん。部屋にいるときにやっと思い出せたの」

 

「そういえば前からこの部屋を見てたんだっけ。その時は思い出せなかったんだ」

 

「うん。何かものすごく大事なことを忘れてる気がするってレイちゃんの部屋の前を通る時に毎回思ってたんだ」

 

「そっか。純那ちゃん、部屋には入れるの?」

 

「それを今から確認するところなの。鍵は……開いてるみたいね」

 

 

純那が部屋のドアノブを下ろし、ドアを少し開けた。

 

 

「それじゃあ、入るわよ」

 

「うん」

 

「わかった」

 

 

純那は勢いよくドアを開け、三人が中に突撃する。部屋の中はきれいに整理されており、ここが零の部屋だとすぐにわかる。だが、そこに零はいない。

 

 

「欲を言えばここに零がいればいいと思ったんだけど……」

 

「そう簡単にはいかないってことかな」

 

 

三人は整理された部屋の中を隅々まで見ていく。

 

 

「あ」

 

「華恋?」

 

 

華恋が声をあげ、純那とななが見ると華恋の手には一つの手紙があった。

 

 

「手紙?」

 

 

華恋はなにも言わずに手紙の裏側を見る。

 

 

『!!』

 

 

そこには、『華恋たちみんなへ』と書かれており、下のほうには小さく零よりとある。すぐに華恋が中から紙を出し、零が綴った言葉を読んでいく。

 

 

『あのオーディションに参加したみんなへ。

 

 

これを読んでるってことは俺の存在に気づいたってことだろうな。だから、これを残す。

 

 

あの後、俺は普通に登校してクラスに入ると誰もが俺に気づかないことになっていた。華恋でさえも目の前に立っているのに全然気づかないことに最初は驚いたが、ひかりが退学すると貼り紙があったからひかりに電話をしても繋がらないし、どこにいるのかもわからないので、誰も俺の存在に気づいてないのを利用して探すことを決めた。探していくうちに一つの考えに至った。だから、この考えを確実にするためにある物で答えを導き出した。その時に使ったやつは隣に置いておく。だが、その答えはここに書けない。これは華恋が自力で気づくことだ。華恋ならすぐにわかるはずだ。俺は先にその答えのほうに行く。時間はいくらかかってもいい。ゆっくりと確実に答えに突き進め。純那たちはその華恋のサポートを頼む。みんなの力で答えまでの道を導き出し、切り開くんだ。その先に俺とひかりは必ずいる。待っているからな、華恋。

 

 

零より』

 

 

「零……」

 

「レイちゃん……ごめんね……幼馴染なのに、気づけないなんて……本当にごめんね……」

 

 

華恋は手紙を読んでる時に涙を流して、読み終わった後もすすり泣く。

 

 

「手紙にある物って?」

 

「たぶんこれじゃないかしら」

 

「……それってひかりちゃんが持ってた『スタァライト』の戯曲本だ」

 

「ここから答えを見つける……か。華恋、手紙に書いてある通り、ここからは華恋がやることよ」

 

 

純那はひかりが持っていた『スタァライト』の戯曲本を華恋に差し出す。

 

 

「……うん、頑張る!」

 

「ええ、頑張ってね。零の頼みもあるから私たちもできるだけサポートするわ」

 

「うん!お願い!」

 

 

華恋と純那のやりとりを見ながら微笑み、もう一度机に目を向けるなな。すると、零からの手紙が入っていた包み紙に違和感を覚え、手に取り開けたところを逆さまにして右手に落ちてくるように何回か振ると、なにかが出てきた。

 

 

「ねぇ、これって……」

 

「あ!それ!私とひかりちゃんがレイちゃんにあげたペンダント!どこにあったの!?ばなな!!」

 

「手紙と一緒に入ってたみたいなの」

 

「零が置いていってしかも包み紙の中にってことは……華恋」

 

「わかってる」

 

「はい、華恋ちゃん」

 

 

ななから零のペンダントを受け取り、身につける華恋。

 

 

「これでレイちゃんはここにいるよ。レイちゃん、私頑張るから」

 

 

零のペンダントにそっと手を添えて呟く華恋。

 

 

「よし!じゃあ、さっそくやろっと!」

 

「やる気は素晴らしいけどまずなにからするの?」

 

「……なにからすればいいんだろう」

 

 

この華恋の言葉にななはずっこけ、純那は頭を抑えてため息である。

 

 

「この本を使うってことはわかるんだけど……」

 

「焦らないでゆっくりとやっていきましょう。零もそう言ってたでしょ」

 

「……うん、そうだね。ゆっくり考えてみる。じゃあ、私、部屋に戻るね。ありがとね、じゅんじゅん!ばなな!」

 

「ええ」

 

「頑張ってね」

 

 

 

 

 

その数日後、華恋はスタァライトを訳する事にして、学校でも寮でも訳すのに頑張るのだった。零が言っていたように華恋をサポートしていくみんな。

 

 

そして、教室で華恋はスタァライトのある部分を訳すと、ある考えが浮かび、それが答えなのだと直感で教室を飛び出しある場所に向かう。

 

その場所はオーディションの入り口であるエレベーターだ。だが、そこにエレベーターはなく、ただの壁だ。そこに華恋は持ってきたバールを壁に突き刺し、壁を削っていく。

 

 

「答えて!ひかりちゃん、レイちゃん……ううん、『零君』!!」

 

 

バールを振り上げ、叫ぶ。

 

 

「私たちはスタァライト、してなぁぁぁいっ!!」

 

 

その時、華恋の手に懐かしい感覚を感じた。華恋はその感覚がすぐにわかり、なにも言わずにバールを振り下ろした。

 

 

 

ガゴンッ!!

 

 

 

「っ!」

 

 

今までとは違う手応えと音に壁を見ると、そこには壁ではなくエレベーターの扉になっており、バールは扉の真ん中に刺さっていた。

 

 

「ふっ…………うぅ…………」

 

 

扉に刺さったバールを使って扉を開けようと力をいれるがなかなか開かない。すると、華恋が身につけている零のペンダントが輝いた。その瞬間、エレベーターの扉が開かれた。華恋は勢い余って転びそうになるがなんとか耐えた。扉の先に待っていたのは地下へと続く階段だった。

 

 

「……行くよ、ひかりちゃん、零君」

 

 

華恋はその階段をゆっくりと降りていく。

 

 

 

 

舞台少女心得 幕間

 

 

 

 

降りていきながらオーディションに参加したみんなから言葉を受けとる。

 

その言葉は……。

 

 

「舞台で待ってる」

 

 

華恋は階段に降りきり、地下劇場の入口の扉の前に立つ。入る前に後ろに振り向く。後ろの階段には一緒に降りてきたみんなが座っている。

 

 

「舞台で待ってて」

 

 

華恋はそう言い残し、地下劇場へと入っていった。

 

 

 

 

地下劇場のステージには、真ん中に星降りの塔を小さくしたようなものが置いてある。それを華恋は見つめていると、どこからかケータイの着信音が鳴り響く。見ると、星降りの塔の前にひかりのケータイが置いてあった。

 

 

「あれって、ひかりちゃんの!」

 

 

華恋は走ってひかりのケータイを拾い上げると、一つのチケットになった。そのチケットには運命のレヴューと書かれており、キャストは神楽ひかりで小さく『覚えてる?あの約束のこと』と書いてある。

 

 

華恋はチケットを見た後にもう一度星降りの塔を見ると、先ほどまで開いてなかったところが開いており、中に入れる。

 

 

「聖翔音楽学園第99期生、出席番号一番、愛城華恋!入ります!!」

 

 

華恋は星降りの塔に入っていった。

 

 

 

誰もいなくなり、静まりかえったステージに足音が響き、人が歩いてきて星降りの塔の前に立ち止まり、なにかを拾う。そこには別のチケットが。チケットには『待ってる』とただそれだけが書かれていた。その人は口角を上げ、チケットをしまい、中に入っていった。

 

 




お読みいただきありがとうございました!

いや~、前々から考えていたからすごい書きやすかったわ~。遅くなった理由は書き終わったから自分で読んで訂正するところを直しての繰り返しで、しかも今週の月曜に体調不良になってしまったんですよね……。今も本調子ではないんですが……。それで遅れたってところでしょうか。書き終わったのは先週ですね。さて、次はアニメ最終回だ。どう書こうかな……。ネタが浮かばなくて全然進まない……。

さて、皆さんはスタリラでポルックスの栞を手に入れましたか?私はジェムがなくて必死に貯めてる最中です。課金はひかりの誕生日ガチャでしちゃったのでできないです。昨日ステップ一の五連を引いたら最初にダウンロードが入ったので今のダウンロードはなに!?って思いながらタップしたら虹が一枚あったのでまさか五連で!?って思ったら持っていなかったメモワール…………うん、なんとなくわかってたけど残念なのは変わらないなって思いました。今はステップ二に挑戦するために必死です。明日までだからはやくしないと。

それでは皆様、体調管理と新型の肺炎ウイルス、コロナウイルスに充分お気をつけください。

レリでした!


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一週間以上遅れのバレンタイン記念


皆さん、こんにちは、レリです!


タイトルにもある通り、一週間以上遅れのバレンタイン記念回となります。遅れてしまってごめんなさい!


零「くたばれぇぇぇぇぇぇ!!」


ぎゃあああああああっ!?


零「では、本編へ」



「さてと、あとはこれを冷蔵庫に入れて冷やすだけだな」

 

 

星光館のキッチンで作業をしている零。冷蔵庫の中には銀色のトレーが何枚もあり、そのトレーにはチョコがある。だが、チョコの量がすごい。24個もあるのだ。

 

 

「さすがにこの量を作るのは疲れたな。冷やすのにだいぶ時間がいるし、この間に課題やっちまうか」

 

 

トレーを見えない位置に置き、部屋に戻る零。いつもは賑やかな星光館だが、今日は静かだ。それもそのはず、星光館にいるのは零だけなのだから。

 

 

「……この課題だいぶ資料が必要だな。しょうがねぇ、学校の図書室を借りるか」

 

 

クローゼットの中にある第百回聖翔祭で使われた衣装を着て学校にバイクで向かう。

 

最初は着るのに手間取ったが、今ではすぐに着れるようになるほど慣れた零である。

 

 

学校に着き、図書室に向かう零。その途中、調理室の近くを通ると、なにか声が聞こえる。

 

 

「ん?」

 

 

調理室に目を向けると、調理室のドアに貼り紙があり、カーテンが閉められている。

 

 

「……遠回しで俺は入るなってか」

 

 

その貼り紙には『男子入室禁止』と書いてある。

 

 

「まあ、入る気はさらさらないけどさ。こう書かれると少し傷つくな……」

 

 

そう呟きながら図書室に向かう零であった。

 

その頃、調理室のドアに二人が耳をあて、廊下の音を聞いていた。

 

 

「行ったね」

 

「うん。零には悪いけどこうするしかない」

 

「そうだね。それにしてもまさか本当にレイちゃんが学校に来るとは思わなかったね」

 

「念のための貼り紙が役にたった」

 

「貼り紙しといて正解だったね。みんな、レイちゃん行ったよ!はやく作っちゃお!」

 

『おー!』

 

 

調理室には24人の生徒がいる。聖翔の九人と凛明館の五人、フロンティアの五人、シークフェルトの五人が聖翔の調理室に集まっている。なぜここに集まったのかというと、明日がバレンタインということで皆が信頼し一部が好意を寄せている零にチョコを贈ろうとなったからだ。ちなみにこのことを零は知らない。もちろん彼女たちも零が24人分のチョコを作っているとは誰も知らない。

 

 

「最初は誰から渡す?」

 

「それじゃあ私たちから!」

 

「じゃあ、あるるちゃんたちフロンティアからにしよっか!次は?」

 

「では、次は私たちで」

 

「巴さんたち凛明館が2番目。3番目は……」

 

「私たちで行こう」

 

「雪代さんたちシークフェルトで最後は私たち聖翔の順番だね。順番も決まったしさっさと終わらせちゃお!バレンタインも明日だしね!」

 

 

全員がチョコを作るための最終段階に突入している。では、ここでここにいるグループを見ていこう。

 

 

「ちょっ!?あるる、待って!それは入れちゃいけない!!」

 

「そうかな?でもこれを入れればもっとよくなると思うの!」

 

「だからってなんでチョコにタバスコをいれるの!?」

 

「甘いチョコにタバスコって……」

 

「もはやチョコではなくなるわね……」

 

「静羽~、これでいいの~?」

 

「ララフィン、チョコにそんなものは必要ないわ。私と一緒に作りましょうか」

 

「大丈夫かな……ウチの二人は……」

 

 

二人だけがとても不安しか感じないフロンティアグループ。

 

 

「こんな感じかしら」

 

「え、珠緒のチョコのデコレーションすご!私にも教えて!」

 

「いいわよ。まずはね……」

 

「あとはこれね」

 

「ふ、文先輩。なぜポン酢を……」

 

「え?だってポン酢は必要でしょ」

 

「チョコにポン酢はいらないと思います~」

 

「ゆっ子!チョコの余りを食べてないで自分も作りなよ!なんで私がゆっ子の分も作らなくちゃならないの!?」

 

 

一人だけやる気が出ない凛明館グループ。

 

 

「お姉ちゃん……」

 

「栞はポン酢は使わないの?」

 

「使いませんよ!ちゃんとしたチョコを作ってます!というかやちよ先輩はどうなんですか?」

 

「あたしはもう冷やすだけだから冷蔵庫に入れたんだ~」

 

「やちよ!手が空いているなら手伝ってください!」

 

「はいは~い。じゃ、栞はちゃんとしたチョコを作ってね」

 

「は、はい!」

 

「で~?メイファン、これはどういうこと?」

 

「や、やちよ?あの、これは……」

 

「さっきちゃんとやりかた教えたよね~?」

 

「す、すいません!」

 

「ミチル、これでいいのか?」

 

「どれどれ?お、いいじゃん!さすが晶!」

 

「いや、ミチルの完成度には負けるな……」

 

「えへへ、ありがと!」

 

 

作り手順を間違えて怒られている人が一人だけいるが他は問題ないシークフェルトグループ。

 

 

「ひかりちゃんのチョコ、美味しそうだね!」

 

「華恋のも美味しそう」

 

「二人とも上手にできてるね」

 

「なな、これでいいのかしら?」

 

「うんうん、大丈夫だよ。あとは仕上げだね」

 

「チョコを作るのは初めてですがなんとかできてましたね。あとはデコレーションですね」

 

「もうデコレーションだけなの!?早いわね、天堂真矢」

 

「香子!サボらないで手伝えよ!」

 

「え~」

 

「え~じゃない!」

 

「なな!真矢にデコレーションを教えて上げて!」

 

「え?あ、うん。わかった!」

 

「西條さん、私はこのままでも大丈夫だと思いますが」

 

「大丈夫じゃないからななに頼んでるの!」

 

 

一人だけ壊滅的なデコレーションをするのと凛明館のゆゆ子同様、一人がサボっている聖翔グループ。

 

 

何名かが不安なままチョコが完成したのだった。

 

 

 

 

―次の日―

 

 

 

 

零はバイクで聖翔に向かっていた。

 

 

「今日もあいつら寮にいなかったな」

 

 

今日も星光館は静かだったので華恋やひかりたちはいないことを示していた。

 

 

「さてと、この本を返して帰るかな」

 

 

零は昨日図書室で借りた本を返しに学校に来ていた。図書室に向かい、本を返却して図書室を出るとある人物が待っていた。

 

 

 

case1.あるる

 

 

 

「びっくりした。どうしてここにいるんだ?あるる」

 

「いちゃいけないの?」

 

「いや、そんなことはないけどな。で、どうした?」

 

「はい、これ!」

 

「ん?それは……」

 

「チョコだよ!今日はバレンタインだしね。お世話になってる零君にってことで作ったんだ!」

 

「そうだったんだな。ありがとう」

 

「いえいえ!じゃあ、またね!」

 

「おう」

 

 

 

case2.美空

 

 

 

「まさかチョコを渡すために聖翔に来たのか?あるるは」

 

「先輩!」

 

「え?この声……美空まで」

 

「零先輩!こんにちは!」

 

「よう、美空。で、美空までここに来てどうしたんだ?」

 

「えっと、先輩にはこ、これを!」

 

「それは……チョコか?」

 

「はい!一生懸命作りました!ぜひ、どうぞ!」

 

「あぁ、ありがとう」

 

「では、また!」

 

「おう、気をつけろよ。全く相変わらず元気だな、美空は。それにしてもなんかこの流れが読めてきたような気がするな……」

 

 

 

case3.ララフィン

 

 

 

「零~!」

 

「ん?え、ララフィごはぁっ!!」

 

 

ララフィンにタックルされる零。

 

 

「零、これあげる!ってあれ?大丈夫?」

 

「いきなりのタックルはさすがにきく……。で、なんだ?ララフィン。イテテ……腰が……」

 

「これあげるね!……ホントに大丈夫?」

 

「あぁ、ありがとう。大丈夫。もう治った」

 

「よかった!じゃあまたね!零!」

 

「気をつけて帰るんだぞ~」

 

 

 

case4.静羽

 

 

 

「零」

 

「ううお、びっくりした……。静羽じゃねぇか。物陰に隠れるなよな、さすがにビビる」

 

「びっくりさせようとしたんだから隠れるのは当然でしょ?それより、はい」

 

「それは……チョコか」

 

「当たり、あげるわ」

 

「ありがとう、静羽」

 

「一個だけ激苦があるからね♪」

 

「静羽らしいけど聞きたくなかったし入れないでほしかったぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

case5.つかさ

 

 

 

「零~!」

 

「よう、つかさ」

 

「あれ、私がいるのに驚かないんだ?」

 

「慣れた」

 

「慣れたっていうもんなのかな?」

 

「だってあるるに美空にララフィンに静羽ってきたらつかさもいることは考えられるからな。それに、たぶんだけど他の奴らもいそうな気がするし」

 

「(愛城さんたちの言ってた通り鋭いな……)」

 

「で、どうした?」

 

「あ、うん。零にこれをあげたくてね」

 

「チョコか。ありがとな」

 

「い~え♪じゃあまた」

 

「おう。今度おすすめの本紹介してくれよ」

 

「わかった!あ、それとこの後は中庭に行ってね」

 

「なんで中庭に?」

 

「行けばわかる!さっさと行った!」

 

「変なとこで強引だな……」

 

 

 

case6.???

 

 

 

「中庭に行けと言われて来てみたが、なにがあるんだ?」

 

「やっと来ましたね」

 

「ん?おぉ……」

 

「?どうしたの?」

 

「あ、いや、なんでもない。で、ずっと中庭で待ってたのか?珠緒」

 

 

case6.珠緒

 

 

「えぇ。いつ来るかわからなかったからね、だからここのお花を見てたの。とてもよく育ってるからお世話してる人が上手なのね。それでさっきはなんで固まってたの?」

 

「お褒めに預り光栄ですよ。別になんでもない」

 

「そう。それとこのお花たちは零君がお世話してたのね」

 

 

(言えるわけねぇ……。絵になってて見とれてたなんて……)

 

 

「それじゃあ、はい、これ」

 

「チョコか。ありがとな。なあ、聞くけど珠緒以外の凛明館の奴らもここに集まってるよな」

 

「さあ?どうかしらね」

 

「ずるい返しをするな……珠緒は……」

 

「ふふふ♪それじゃあね」

 

 

 

case7.いちえ

 

 

 

「やっほ~零!」

 

「よう、いちえ。中庭出てすぐに出てくるとはな」

 

「そんなタイミングいい?」

 

「俺はただの偶然じゃないと思ってる」

 

「そんな事ないと思うな~。………………こうしないと全員渡せられないからね」

 

「最後なんて?」

 

「なんでもない!それじゃあ、さっさと始めちゃおっか!零にあげる!」

 

「おぉ、ありがとう」

 

「それじゃあね!」

 

「じゃあな。……………全部のチョコを食べ終えるのにどれくらいかかるかな……」

 

 

 

case8.文

 

 

 

「ちょっといいかしら?」

 

「はい?なんだ、文か」

 

「なんだってなによ。私がいちゃ悪い?」

 

「んなの一言も言っちゃいねぇだろ。で、どうした?慣れない場所で道に迷ったのか?」

 

「そんなわけないでしょ!?零にはこれをあげたくて来たの!」

 

「チョコか。で、文。一つ聞かせてくれ。この明らかにチョコが入ってなさそうな袋はなんだ?持った瞬間重かったけど」

 

「なにってポン酢よ?」

 

「ですよね~。そうだと思ってましたよ。てか初めてだよ。チョコと一緒にポン酢を渡されるの」

 

「いい経験なんじゃない?」

 

「二度とない経験だろうけどな」

 

「それじゃ、またね」

 

「おう」

 

 

 

case9.塁

 

 

 

「あ、あの!」

 

「うおっと、塁か。どうした?」

 

「あ、あの、せ、先輩には、その……」

 

「とりあえず落ち着いてみろ。ほら、深呼吸深呼吸」

 

「は、はい。スーハー、スーハー……」

 

「落ち着いたか?」

 

「はい、ありがとうございます!あの、それで、零先輩にはこれを!」

 

「ん?あぁ、チョコか」

 

「い、嫌、でしたか?」

 

「そんな事ないよ。ありがとう。嬉しいよ」

 

「えへへ、よかったです……///」

 

 

(つい頭を撫でてしまったが嬉しそうだし、大丈夫か)

 

 

「では、私はこれで失礼します!」

 

「あぁ、気をつけて帰るんだぞ」

 

「はい!」

 

 

 

case10.ゆゆ子

 

 

 

「…………こんなところで何してるんだ?ゆっ子」

 

「ふぁ~い、零先輩が来るまで寝てました~」

 

「そりゃ見ればわかるが、まさかこんなところで寝るとはな」

 

「そんな零先輩にはこれを~」

 

「切り替え方な。で、なんだ?」

 

「チョコです~」

 

「ほう、ゆっ子も作ったんだな。ありがとう」

 

「塁に手伝ってもらいました~」

 

「……ゆっ子、一つ聞こう。それはホントに手伝ったのか?塁がほとんど作ったなんて言わないよな?」

 

「…………では、チョコを渡したので私は帰ります~」

 

「最初の間はなんだ。まさか本当に塁が作ったチョコでゆっ子はちょっとやったって感じなのか?」

 

「……私はちゃんと作りました~。では、サラバッ!」

 

「おい!ってはや……。普段のゆっ子からは想像できない素早さだったな」

 

 

 

case11.晶

 

 

 

「ここにいたか」

 

「ん?晶じゃねぇか。どうした?」

 

「いや、零に渡したい物があるのでな」

 

「晶から俺に?一体なにを渡そうと……」

 

「そう畏まるな。日々の感謝の気持ち、というやつだ。受け取ってほしい」

 

「晶から日々の感謝って……俺、晶に対してそんな大層なことしたか?」

 

「していたさ。それに…………私もだからな///」

 

「なにが?」

 

「なんでもない。とにかく、受け取れ」

 

「あ、あぁ、ありがとう」

 

「では、またな」

 

 

 

case12.ミチル

 

 

 

「れ~い!」

 

「うおっ!?ミチルか。いつの間に背後に……」

 

「え?普通に零を見つけたからそのまま声をかけただけだけど?」

 

「背後に回るようにルートを変えたような気がするのは俺の気のせいか?」

 

「気のせい気のせい♪(……やっぱ鋭いな~)」

 

「う~ん、腑に落ちないが俺の気のせいでいいか……」

 

「それより、はい!」

 

「おぉ?」

 

「チョコをあげる!晶と一緒に作ったんだ~♪」

 

「へぇ~、晶とか。ありがとう」

 

「ど~いたしまして♪」

 

 

 

case13.メイファン

 

 

 

「零さん!」

 

「よう、メイファン」

 

「零さんにこれを渡したくて!」

 

「おぉ、ありがとう」

 

「あとは零さんに占いをしようかと」

 

「それはやらなくて大丈夫だ」

 

「へ?そうですか?でも、零さんにはいろいろお世話になってるので感謝の気持ちをこめて占いをと思ったのですが」

 

「その気持ちだけで充分さ。ありがとな、メイファン」

 

「零さんがそれでいいなら私はもうなにも言いません!では零さん、また」

 

「あぁ、またな(……メイファンの気持ちはありがたいが占いがな……)」

 

 

 

case14.やちよ

 

 

 

「ん?あの髪は……」

 

「さてさて次は~……」

 

「なにしてんだ?やちよ」

 

「ひゃわっ!!」

 

「そこまで驚くとは、すまん」

 

「零センパイ~?あたしを驚かせるとはいい度胸ですね~」

 

「驚かせるつもりはなかったんだけどな。そもそもここ聖翔だから俺がいて当然だしなんでシークフェルトのやちよがいるんだ?」

 

「零センパイにこれをあげたくてここに来ました。受け取ってください」

 

「急に真面目に……。ありがとう、やちよ」

 

「い、いえ///それじゃ、失礼します///」

 

「じゃあな(なんか顔赤かったな)」

 

 

 

case15.栞

 

 

 

「零先輩!」

 

「あれ、栞?どうした?そんなに息切らして」

 

「零先輩がどこにいるのかと思って……探してました」

 

「あ、そうだったのか?悪かったな。体は大丈夫か?」

 

「いえ、大丈夫です!体のほうも問題ありません!」

 

「そうか、ならよかった」

 

「それで、先輩にはこれを」

 

「ありがとう、栞。だけど、あまり無茶はするなよ?いくら大丈夫になったとはいえ、急にくる可能性だってないとは言えないんだからな」

 

「お気遣い感謝します。………………零先輩はお優しいですね///」

 

「なにか言ったか?」

 

「いえ!なんでも!それともう一つ、零先輩に渡したいものがあるんです」

 

「もう一つ?」

 

「はい。これです!」

 

「これは?」

 

「これはチョコに合う紅茶です」

 

「紅茶か。そういえば最近飲んでなかったな。久しぶりに飲もうと思ったのが栞からプレゼントされた紅茶ってのは嬉しいな」

 

「そう言っていただけると選んだかいがありました♪では零先輩、私はこれで失礼します」

 

「あぁ、気をつけて帰れよ」

 

「はい!」

 

 

 

case16.香子&双葉

 

 

 

「零~!」

 

「おう、双葉……って、香子も一緒か」

 

「双葉はんがうちと一緒に行くって聞かんくてな~」

 

「あたしじゃなくて香子が言ったんだろ。あたしのせいにするな」

 

「だってよ、香子。人のせいにするのは良くないぞ」

 

「すいませんした~」

 

「反省してないな、ったく。まあいいや。零、これ、あたしたちから」

 

「おぉ、ありがとう。香子も作ったんだな」

 

「零はんのためやし、当然ですわ」

 

「テキトーなこと言うんじゃねぇの!ほとんどあたしに任せてただろ!?最後のデコレーションをちょっとやっただけじゃないか!」

 

「それはどういうことだ?香子」

 

「れ、零はん。顔がすごいことになってるで……」

 

「ほうほう、わかった」

 

「な、なにが……?」

 

「やれ、双葉」

 

「あいよ!!」

 

「双葉はん!?か、かんにんや~!!」

 

「逃げんな香子ぉぉぉぉ!!!!」

 

「相変わらず仲がいいな。それと、ふっといてなんだが香子には悪いことしたかな。でも双葉の話を聞く限り、叱られて当然っていえば当然か……」

 

 

 

case17.真矢&クロ

 

 

 

「零君」

 

「零~」

 

「お、二人が一緒にくるなんてな」

 

「西條さんに言われたので」

 

「貴女だって一人で行くか悩んでたじゃない」

 

「さて、どうだったでしょうか」

 

「とぼける気!?零、さっきまでの真矢の行動を教えてあげるわ」

 

「それだけは勘弁を……」

 

「真矢がクロに許しを……だと……?」

 

「そんな反応はいささか失礼ではないですか?零君」

 

「や、そんなことはない」

 

「ふふっ、零、これでも真矢はわかってないみたいよ」

 

「真矢はこういうのでは意外と鈍いんだな」

 

「え、な、二人して騙したのですか!?」

 

「や~、真矢の反応が面白くて」

 

「こんな真矢を見るのは初めてだったからね。ところで零、貴方にこれをあげるわ」

 

「おぉ~ありがとう、クロ」

 

「零君、私からも」

 

「真矢も作ったのか。ありがとう」

 

「後でそれの感想聞かせてよね。じゃあね」

 

「それでは」

 

「おう、じゃあな」

 

 

 

case18.純那&なな

 

 

 

「見つけたわよ」

 

「零君、みっけ♪」

 

「お、なに、俺は君たちから追われる立場なの?」

 

「そんなことはないわよ」

 

「純那ちゃんと一緒に零君のことを探してたからね」

 

「俺を探してた?なんかあったのか?」

 

「大事な用なのは間違いないわね」

 

「そんな大事な用事が?」

 

「私たちにとっては、だね」

 

「ん?」

 

「はい、零」

 

「いつもありがとね、零君」

 

「うん、確かに君たちにとっては大事な用事だな。ありがとう」

 

「ななにアドバイスをもらいながら作ったの」

 

「純那ちゃん、作るのすごく上手だったんだよ」

 

「ななにそんなこと言われると照れるわね……」

 

「ななに誉められて照れる純那とは珍しいな」

 

「うんうん♪ばなナイス♪」カシャッ

 

「っ!なな!その写真今すぐ消して!」

 

「拒否しま~す♪後で零君にも送るね」

 

「おう、頼む」

 

「『頼む』じゃなぁぁぁぁぁい!!」

 

「落ち着け純那ぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

case19.まひる

 

 

 

「最初なんて声かけようかな……う~、どうしよう……」

 

「どした?まひる」

 

「うひゃあっ!!れ、零君っ!?」

 

「お、おう、そうだけど。どうした?」

 

「や、えっと、その……」

 

「うん?」

 

「あ、あの、あのねっ!零君にこれをあげたくて!!」

 

「チョコ?」

 

「う、うん」

 

「そうか。ありがとう、まひる。嬉しいよ」

 

「喜んでもらえてよかった。あ、あと、これも」

 

「袋?ずいぶんデカい袋だな。どうしてこれを?」

 

「チョコを入れるのに袋があったほうがいいかなって思って」

 

「おぉ、助かる。ありがとう」

 

「じゃあ、私は行くね」

 

「おう、ありがとな」

 

「ううん。じゃあね」

 

 

 

case20.華恋

 

 

 

「レ~イちゃんっ!!」

 

「うおっと。華恋、いきなり後ろから抱きついてくるなよ。バランス崩したらどうする」

 

「レイちゃんなら耐えてくれるでしょ?」

 

「まあ、そうだけど。で、俺に用か?」

 

「用がなくちゃ抱きついちゃダメなの?」

 

「そんなことはないけどな」

 

「えへへ、ありがと!じゃあ、レイちゃんにこれあげる!」

 

「華恋もチョコを作ったのか」

 

「自信作!」

 

「華恋が自信作って言うんなら相当美味しいんだろうな。食べるのが楽しみだ。ありがとな」

 

「うん!それにしても、レイちゃんにチョコをあげるって初めてだね」

 

「確かにそうだな。まあ、12年前から一度も会わなかったからな。仕方ないさ」

 

「私はちゃんとチョコを渡せる時がきてくれて嬉しいけどね!じゃあ、私は先に帰ってるね!じゃあね、レイちゃん!」

 

「おう。急ぎすぎて転ぶなよ~!」

 

「大丈夫大丈夫!」

 

「……まったく、相変わらずキラめいてるな。眩しいくらいに」

 

 

 

case21.ひかり

 

 

 

「さて、帰るかな。ん?」

 

 

校舎から外に出て駐輪場に向かおうとすると、校舎の影から誰かが手招きしているのが目にはいる。

 

 

「誰だ?……ってひかりじゃねぇか。どうした?こんな校舎の裏側に」

 

「そ、その……」

 

「ん?」

 

「れ、零に、これをあげたくて……///」

 

「これって……」

 

「その……バレンタインだから、零にチョコをあげたくて……///」

 

「ひかり……ありがとう。嬉しい」

 

「……ば、バレンタインって好きな人にチョコをあげるって聞いたから、一生懸命作った///」

 

「え、な、ひ、ひかり。い、今、お前……」

 

「~っ///!わ、忘れて!それと、チョコは食べながら帰って!」

 

「お、おい、ひかり!……行っちまった。……せっかくひかりが言ったんだ。一つ食べて帰るか」

 

 

丁寧に袋を開けて箱からチョコを一つ取り出して口に運ぶ。

 

 

「ひかりらしいチョコだな~。カカオが強い」

 

 

チョコをしまい、校舎裏から出て駐輪場に着くと誰かに袖を掴まれる。

 

 

「ん?ひかり?」

 

「……///」

 

「どうした?」

 

「…………一緒に帰りたい///」

 

「……わかった。ほら、ヘルメット。ちゃんとかぶれよ」

 

「……つけて///」

 

「急に甘えん坊になったな。ほら、じっとしてろよ」

 

「……うん///」

 

「よし。じゃあ、しっかり掴まってろよ」

 

「うん」

 

 

ゆっくりと、そして優しく発車する零。道路に出て速すぎず遅すぎずのスピードで、ひかりに負担がかからないスピードで走る零。ひかりは零の背中に抱きついて顔を赤くしながらも笑顔だ。

 

 

「(暖かい。安心するな)」

 

 

そう思いながらより力をこめて零に抱きつくひかり。

 

 

「(ありがとう、零。これからもよろしくね)」

 

 

 

 

ー星光館ー

 

 

 

 

「着いたぞ、ひかり。ひかり?」

 

「スゥ……」

 

「バイクの上で寝るなんてな。それほど安心してくれてるってことか……嬉しいな」

 

 

ひかりから優しくヘルメットを取り、おんぶして星光館に入っていって華恋たちの部屋のベッドにひかりを優しくおろして布団かぶせる零。

 

 

「これからもよろしくな、ひかり」

 

「……うにゅ、零……」

 

「どんな夢みてるんだか……」

 

 

布団の中のひかりはとてもキラめいて気持ちよさそうな寝顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、零が24人全員にチョコを渡して全員が驚き、零が一人で作ったと言ったら全員がすごく驚いたのは別の話。

 





お読みいただき、ありがとうございました……。イテテ……。


零「ったく、なんで遅れた?」


この記念回を書こうと思いついたのがバレンタイン一週間前でネタを少しもらってそのネタにたどりつくまでのネタを考えるのに時間がかかりました……。


零「一週間もあれば充分じゃないのか?」


ネタが思いつかんのよ……。あと……。


零「あと?」


モンハンやらせてよ!!ずっと書いててネタが思いつかなくて止まってると他のやつに逃げたくなるんだよ!!


零「知らねぇよ!?てか急に逆ギレするなよ!?」


24人分のネタをセリフを考えるのすごい大変だったんだからね!?もう口調が合ってるかわからないもん!!


零「それでもここまで読んでくれた読者に」


最大の感謝を。

ところで皆さん、スタァライトの新曲『Star Parade』は購入しましたか?私はアニメイトで予約しといて発売前日に買いに行きました。いい曲ですよね~。同日発売のBanG Dream!7th LIVEのCOMPLETEBOXも一緒に買いました。

では、皆さん、遅れて申し訳ありませんでした!レリでした!


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第十六話


溜めに溜めたアニメ編最終話、お待たせしました!

どうも。スタリラのガチャでステップ4で人魚姫のまひるを無事ゲットしてテンションが高いレリです。

三月という空白の一ヶ月……すみませんでした!



星降りの塔を抜けた先にあったのはどこまでも続く砂漠だった。

 

 

「これが、ひかりちゃんの運命の舞台……」

 

 

華恋がいるところから遥か先に星降りの塔が見えるのでそこに向かう華恋。

 

 

「ここにひかりちゃんがいるのなら零君もここにいるはず……ひかりちゃんはこの先にいるのがなんとなくわかるけど零君がいるのかわからない……探しながら向かうしかないかな……」

 

 

砂の色はピンク色でサラサラすぎるので足元に注意しながら進んでいく華恋。途中、周りを見ながら。

 

 

そして、星降りの塔の近くまで来るとひかりの姿が見えた。

 

 

「ひかりちゃん……」

 

 

そこにいたひかりは砂に埋まっている星の形をした石を掘り出しながらなにかを呟いている。

 

 

「一年に一度の星祭り。私はフローラと」

 

「運命の出会いをした。……待たせてごめんね、ひかりちゃん」

 

 

ひかりの後ろに立ちセリフをいう華恋。その様子を遠くからキリンが見ている。

 

 

「また飛び入りですね。わかります」

 

 

キリンは二人のことを見ていたが、不意に別の場所の砂丘に目を向ける。キリンよりも離れた場所の砂丘に一瞬だが人の気配を感じたからだ。だが、そこには誰もいない。

 

 

「わかります」

 

 

キリンはそう呟き、視線を戻す。

 

 

「帰ろう、ひかりちゃん」

 

「……あなたは、誰?」

 

「……え?」

 

「わからない……。あなたの顔も、あなたのぬくもりも、あなたとの約束も。大切だった覚えがある。でも、わからない」

 

 

ひかりはそう呟きながら掘り出した星の石を持って華恋の横を歩いていく。

 

 

「取り戻せるかも!今日は一年で一度の星祭り、あの星を摘むことができればクレールの記憶も。一緒に行こう、ひかりちゃん。二人であの星を摘みに」

 

 

華恋の言葉にひかりは立ち止まるが、すぐに歩きだす。

 

 

「ひかりちゃん、待って!」

 

 

華恋も追いかけた先はひかりが積み重ねた星の石のてっぺん。追いついた先に華恋が見たのは空にある赤い星の石、いや、岩なのだろうか。それにひかりが手を伸ばし、セリフを言うとその星の岩がひかりと華恋がいる星の石の塔にぶつかる。衝撃で華恋とひかりが吹き飛び、空中で華恋がひかりの手をとろうとするが届かず地面に向かって落ちていく。

 

 

その時地面に落ちる瞬間、二人に優しく、暖かな感覚が包む。そのおかげでなのかは不明だが、落ちた衝撃と痛みはほぼなかった。

 

 

「(今のって……あの感覚……まさか……)」

 

 

華恋は剣のペンダントを握る。

 

 

ザッザッ……

 

 

「ひかり、ちゃん?」

 

「今日は、一年に一度の星祭り……」

 

「ひかりちゃんは一人でこんな舞台を……」

 

「私は、クレールと……」

 

「こんなの……ねぇ、ひかりちゃん。覚えてる?あの約束のこと。『三人』で約束した、あの約束を」

 

「……」

 

「帰ろう、ひかりちゃん。私たちの舞台はまだ、始まってない!」

 

「……ばか、ばかばかばか。バ華恋」

 

「……え?」

 

「……なんで会いに来るのよ。これじゃ……華恋に、『零』に会いたくなっちゃうじゃない」

 

「ひかり、ちゃん……!」

 

 

この光景にキリンの後ろにある星降りの塔が倒れる。

 

 

「セリフが止まり……舞台が、途切れた」

 

 

 

ザァ!!

 

 

 

「えっ!?」

 

 

ひかりを中心に砂が飛び散り、巨大な穴が姿を現す。この出来事に華恋は驚く。ひかりが立っている場所はとても細い塔だ。その塔に星のティアラがある。その塔をゆっくりと降下していく。

 

 

「この星のティアラにはなんの意味もない。クレールとフローラが目指したあの星と同じ。星降りの塔へと、新たな罪人を誘うための光。さよなら、華恋」

 

 

ひかりがいる塔が見えなくなり、華恋は走りだし、穴に向かって……否、ひかりに向かって飛ぶ。

 

 

「約束したんだから!!私は、ううん、『私たち』は!!絶対一緒に、スタァになるって!!」

 

 

 

 

『アタシ 再生産』

 

 

 

 

―地下劇場―

 

 

 

あの穴の先はここ、地下劇場へと繋がっていた。

 

 

地下劇場のステージには、何回も甲高い音が鳴り響く。その音は、華恋とひかりの剣がぶつかり合う音。

 

 

 

 

星罪のレヴュー

 

戯曲:スタァライト

 

 

 

 

今ここは、華恋とひかりの二人だけのステージ。そこで華恋はひかりを連れ戻すために戦い、ひかりは華恋を帰すために戦う。言い方を変えれば仲の良い者同士でよく起こるもの。所詮、喧嘩のようなもの。華恋はいつものレヴュー衣装に剣のペンダントを着けている。

 

 

「どうして、それを……華恋が着けているの!!」

 

 

 

カキンッ!

 

 

 

 

「レイちゃんが、ううん、零君がひかりちゃんの探している時に零君の想いを籠められたこのペンダントを託されたの!!」

 

「零の……想い……?」

 

「零君は、ひかりちゃんがいなくなった後、私を含めたみんなの記憶からなくなったの……」

 

「え……」

 

「零君は、私たちから忘れさられてもめげずにひかりちゃんを探してた!それでここにたどり着いた零君は先に行った。私は零君が残したヒントを頼ってここにたどり着いた!だから、私はひかりちゃんを、連れて帰る!!」

 

 

 

カキンッ!

 

 

 

誰もいない観客席、そこには、キリンが二人を見ている。

 

 

「なぜ、私が見ているだけなのか、わからない?わかります。舞台とは、演じ派が立ち、観客が見る。舞台とは、観客が望む限り続くのです。私は一人の観客にして、運命の舞台の主催者!そう、貴方が彼女たちを見守りた続けたように私は途切れさせたくない。舞台少女による化学反応、予想もつかない舞台!私はそれが見たいのです!!そう、貴方と同じように。わかります」

 

 

キリンが呟きながらステージとは違う方向を向く。そこの観客席に足音のような音が響くが、そこには誰もいない。

 

 

 

「はあっ!」

 

 

場所は変わってステージ。ステージではひかりが短刀を華恋に向けて投げ、短刀に付いているワイヤーを使い巧みに操り、自由自在に動き、軌道が読めない短刀をなんとか避ける華恋。だが、避けた瞬間にひかりが短刀を手に戻してワイヤーを華恋の左腕に巻き付かせ、短刀を引くひかり。短刀を引かれたことで伸びていたワイヤーが一気にしまり、華恋を飛ばす。華恋は、自身が持つ剣をステージに突き刺し威力を殺し、なんとかステージ枠ギリギリで止めることに成功する。

 

 

「ここには共演者も裏方もいない!一人で舞台は作れないのに!」

 

「華恋、わかって。あなたたちには私と同じように失う気持ちを味わって欲しくなかったの……」

 

「もう味わったよ!……ひかりちゃん、帰ろう!そして、約束を果たそうよ!零君だってそれを待ってる!だから……!!」

 

 

すると、華恋の言葉を遮るように何かが華恋に向かって飛来してきた。

 

 

「っ!」

 

 

 

ガシャッ!

 

 

 

その音と共に華恋の上掛けを留めていた星の留め具がひかりが投げた短刀によって粉々にされた。

 

 

「え……」

 

 

何が起こったのか一瞬わからなくなり、呆然とする華恋。だが、華恋に向けて赤いライトが照らされ、ステージの真ん中が割れて華恋がステージがどんどん下に降りていく。

 

 

「……ひかり、ちゃん」

 

「この運命の舞台、それが私の贖罪。二人の……三人の夢は、叶わないのよ」

 

 

 

ドドォン……

 

 

華恋がいるステージが下にある砂にたどり着き、砂ぼこりをあげながら見えなくなった。

 

 

「……」

 

『……い』

 

「はい?」

 

『……まだ、終わっていない』

 

「……」

 

『だろ?華恋』

 

 

観客席でキリンが黙っていると、ある人物の声が響く。そして、その人物がステージで負けた華恋の名を呼ぶと、ステージが出てくるのは同時だった。

 

 

「……ノンノンだよ」

 

「っ!」

 

「……ずっと、囚われていたんだね。私たちの罪を背負って。待ってて、クレール。貴女を連れ戻しに、行くから!!」

 

 

 

ガシュッ!

 

 

 

華恋がいるステージがタワー状の様に上がっていく。

 

 

「スタァライトは、必ず別れる悲劇。でも、そうじゃなかった結末もあるはず!クレールに会うために、もう一度!塔に登ったフローラが!!」

 

「……なに、これ」

 

 

 

 

星罪のレヴュー アンコール

 

 

 

 

「……終わりのない運命の舞台。結末の続きが始まる?運命の舞台の再、生、産……!」

 

「そんなことをしたら私の運命の舞台に囚われて華恋のキラめきも奪われちゃう!」

 

「奪っていいよ!私の全部!」

 

「っ!」

 

 

劇場の全てのライトが消え、暗くなる劇場。そこに赤いライトが光りだす。それは、華恋が立っているステージの切断面に東京タワーを模したものだ。

 

 

「奪われたって終わりじゃない!!失くしたってキラめきは消えない!!舞台に立つたびに何度だって燃え上がって生まれ変わる!!」

 

「……東京、タワー……」

 

 

 

「アタシ、再生産!!」

 

 

華恋の言葉でひかりによって砕かれた星の留め具が元に戻り、それと同時に華恋が着けている零の剣のペンダントが赤く、否、紅く光りだす。

 

 

 

ドゴォォォォォンッ!!!!

 

 

 

華恋がいるステージの後ろから轟音をたてて東京タワーが現れる。それは、華恋がいるステージを貫き、ひかりがいるステージをも貫く。

 

 

「飛び入りした舞台少女が結末の続きを始める?舞台少女による化学反応、予想もつかない舞台!」

 

 

 

 

舞台装着用『約束タワーブリッジ』

 

 

 

その名の通り、東京タワーが水平に華恋とひかりのステージを橋の様に繋げた。約束タワーブリッジにライトが灯り、いつかの夜に見た東京タワーと同じ輝きを放つ。そこを華恋がひかりに向かって歩いていく。

 

 

「あぁ~……!これこそ、私が観たかった舞台!!わかります!!」

 

「舞台少女は舞台に生かされてる。私にとって舞台はひかりちゃん。ひかりちゃんがいないと私の舞台は始まらないの。そして、レイちゃんも。二人がいるからこそ、私は舞台に立てる。ひかりちゃんとレイちゃんがいなくちゃダメなの。だから……」

 

 

立ち止まる華恋。ひかりは華恋を見ているが、それと一緒に先ほどから紅く光っている零のペンダントも見る。華恋の隣に零がいる。その紅い輝き、否、零のキラめきが零自身がそこにいると語ってみえる。

 

 

「ひかりちゃんを私に……全部ちょうだい!!」

 

 

「(これ……知ってる。初めて三人で舞台を観て分かち合った、キラめき……)……ばか、ばかばか。バ華恋。これじゃあ、二人と、スタァライト、したくなるじゃない」

 

「ひかりちゃん!」

 

 

 

新章

 

戯曲:スタァライト

 

星摘みのレヴュー

 

 

 

「星屑溢れるステージに、可憐に咲かせる愛の華。99期生、愛城華恋。あなたを、スタァライト、しちゃいます」

 

「生まれ変わったキラめき胸に、溢れる光りで舞台を照らす。99期生、神楽ひかり。私の全て、奪ってみせて」

 

 

場所は、地下劇場ではなく、最初にひかりがいた場所のステージ。違いがあるとするなら眩しいぐらいの朝日が二人を照らしているくらいだ。そこで二人が織り成そうとするレヴュー。それは、二人でだからこそできるレヴューだ。

 

 

「『君は~♪』」

 

「『傍に~♪』」

 

「「『『いたずっと 望んでいた~星は~♪』』」」

 

「「『『二人の スタァライト~♪』』」」

 

 

星の留め具が朝日に向かって飛んでいく。ステージでは、上掛けを落とされたひかりと勝者の華恋が手を繋ぎながら仰向けになっている。繋がれた手は、ステージの真ん中、ポジション・ゼロの上にある。

 

 

「私たちの運命の舞台は……」

 

「ずっと昔から始まってた」

 

「ひかりちゃんが私の掴もうとした星」

 

「華恋が私の求めていた、スタァ」

 

「覚えてる?あの約束のこと」

 

「覚えてるよ。あの約束のこと」

 

「「ポジション・ゼロ」」

 

 

 

星摘みのレヴュー、終演

 

 

 

キィィィィ……

 

 

 

「え?なに、この音?」

 

「えっ!?レイちゃんのペンダントの光りが、増してる!?」

 

 

 

カッ!!!!

 

 

 

「きゃっ!」

 

「眩しっ!」

 

 

急な出来事に飛び起きる二人。見ると、零のペンダントが急に輝きだし、強い光を放つ。あまりの眩しさに、二人は目を覆う。光が収まり、目を開けるよりも先に抱きしめられる感覚がくる。二人はすぐに目を開けると自分たちを抱きしめているのは、今、ものすごく会いたかった人物。

 

 

「お疲れ様。二人とも」

 

「え、レイ……ちゃん……?」

 

「れ、い……?」

 

「おう。二人の幼馴染の零だ」

 

「レイちゃん!!」

 

「零!!」

 

「おっと」

 

「今までどこに行ってたの!?」

 

「……ずっとそばにいたよ」

 

「え?」

 

 

会いたかった人物、零に会えたことで華恋はもちろん、ひかりも運命の舞台をやるには仕方ないと思っていても、心ではものすごく会いたかったのだ。だから、二人して零に抱きつく。そして、華恋は涙を流しながら今までのことを零に問いただすと、体を起こしながらポツリポツリと話し出す。

 

 

「手紙、見ただろ?」

 

「うん」

 

「あの後、俺は消えたんだ」

 

「「え……?き、消えた……?」」

 

「文字通り、な。気がついたら辺りは真っ黒。光もなにもないまさに闇の中にいたよ。それからどれくらい経ったかわからないけど急に光が射し込んでな。その光に向かったらある景色が見えてきた。その景色が俺の部屋だった。そして、三人の声が聞こえたんだ」

 

「三人って?」

 

「華恋、純那、ななだよ」

 

「あ、私たちがペンダントを見つけた時?」

 

「その通り。俺の意識はペンダントの中にあることがわかってそこからはずっと華恋が付けていただろ?だからペンダントからだったけど、そこでずっと見守っていたんだよ」

 

「そう……だったんだね……」

 

「でも、なんで急に消えたの……?」

 

「それは俺にもわからん。ペンダントを外した瞬間だからペンダントが関係してるのかもしれないな。まあ、過ぎた事だ。元に戻れたし、華恋のひかりを連れて帰るっていう条件達成されたんだし、さっさと帰ろうか」

 

「そうだね!行こ、ひかりちゃん!」

 

「……うん!」

 

 

それから地下劇場を出て戻ると、学校で残ったみんながご飯を作って待っていた。

 

 

「零!!あなた、心配させないでよ!!」

 

「悪い悪い、純那。俺がいない間、華恋のサポートありがとな。みんなも心配かけた」

 

「ううん。私たちも一時的にとはいえ、零君のことを忘れちゃってたんだし、おあいこだよ」

 

「そういってくれると助かる」

 

「華恋ちゃん、ひかりちゃん。おかえり!」

 

「ただいま!まひるちゃん!」

 

「……ただいま」

 

「それでは、三人とも来たので」

 

「三人もご飯にしましょうか!」

 

 

そこからは、後から来た三人が食事をして、食事をしながら先ほどの話をして楽しむのだった。最後に写真を撮ったりもした。

 

 

あれから、第百回聖翔祭のオーディションを再度行い、無事に華恋とひかりの二人が主役をとったのだった。

 

 

 

 

第百回聖翔祭

 

 

星のダイヤローグ

 

 

 

 

 

「『よくぞ真実に辿り着きましたね、フローラ。あなたたちが女神たちを解放したのです。私たちがずっとあなた方を見守っていたのです。そして、そなたも本当のお役目をしたのですね』」

 

「『貴方は、私たちを真実へと誘うための道標だったのですね』」

 

「『……』」ニコッ

 

「『せめて、貴方の名前を……』」

 

「『名乗るほどの者ではありません。強いて言うなら、旅人を誘う者、道標。ならばシルベ、と名乗りましょう』」

 

「『それが貴方の本当の名ではない……それはわかります。なぜそうするのかは深くは聞きません。なら私たちは、貴方が名乗った名で呼びます。ありがとう、シルベ』」

 

「『私は、真実に気づいてくださったことだけで満足です。お礼を言われる筋合いはありません。では、これからも貴女方に祝福の道が現れることを切に願っています』」

 

「『今こそ星がキラめくとき』」

 

 

『星摘みは、罪の赦し。星摘みは、夜の奇跡』

 

『お持ちなさい。あなたの望んだあの星を』

 

 

「『見つけたよ。私たちの星』」

 

「『見つけたね。私たちの運命』」

 

 

『これで、第百回聖翔祭を終演します。どなた様もお忘れもののございませんようお気をつけておかえりください』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、数日が過ぎた。新たなストーリーをいれた第百回聖翔祭は大盛況で幕を閉じた。

 

 

「よぉ~し、次は劇フェスだ~!」

 

「おー」

 

「とりあえず落ち着けお前ら!」

 

 

青空の下、いつもの三人が元気に走っていくのだった。

 

 

 





お読みいただきありがとうございました。

アニメ編最終話、書きづらかった……。ネタが浮かばないから次回のやつを書いてたりしてたらいつの間にか三月が終わる。やっちまったなと思いました。セリフとかちょっとオリジナルになっちゃってます。ご了承ください。

さて、話は変わりますが皆さん、スタリラガチャってますか?私はゼウスの真矢様が当たってたからガチャ運が絶好調で当たる、当たる。過去の私を……いや、今の私は、過去の私を凌駕する存在だ!!…………はい、グラハムさんのネタですね。本来は阿修羅すら凌駕する存在、なんですがね。これをきに見てない人は見てみてください。ガンダム00……いいですよ~、戦闘シーンやBGMが。…………スタァライトなのにガンダムを勧める。なにやってんだろ……。

では、無事(?)にスタァライト、アニメ編終演です!そして!ついに!スタリラ編が開演します!再演って言った方がいいかな?

それでは、レリでした!


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OVA―零の休日―

皆さん、こんにちは!レリです!

コロナウイルスが猛威をふるっていますね。かからないように予防を徹底しましょう。

さて、前回でアニメ編が終わり次回はスタリラ編だと言いましたがあれは嘘だ。はい、ごめんなさい。今回はOVAですね。タイトル通り、零の休日です。零がどこかに出かけるというお話ですね。今回はあるキャラたちが出ます。話し方がわからないのでそこはご了承ください。では、どうぞ!(ちなみに文字数は一万五千文字を突破しています)

オープニング曲

Roseliaで『Song I am』



「以前いた地域に遊びに行く?」

 

 

休日の星光館で零が出かける準備をしながら華恋とひかりに話し、華恋が呟く。

 

 

「あぁ、休日だし久しぶりに行こうかと思ってな。あいつらとも会ってないし」

 

「う~ん、私も行きたいけど……」

 

「悪いが今回は俺一人で行きたいと思ってるんだ。だから……」

 

「そう言うと思った。だから今回は留守番してる。だから、今度は一緒に出かけよう」

 

「わかった、すまないな。じゃ、行ってくる」

 

「「いってらっしゃい!」」

 

 

バイクを走らせ、聖翔に来る前にいた地域に向かう零。

 

 

場所は変わり、零が以前いた地域にあるライブハウス『CiRCLE』。そこに集まるのは六バンド全員。三十人という大人数でCiRCLE内はいっぱいだ。

 

 

「友希那~、どう?」

 

「ダメね。これっていうのが浮かばない」

 

「私たちもですぅ……」

 

「なんかすごく難しく感じる……」

 

「私たちもこの曲の次が何がいいのかわからなくて行き詰まってるよ……」

 

「みんなが笑顔になる曲はどれがいいかしら?」

 

「浮かばないのなら休憩してリフレッシュしたら何か浮かぶんじゃない?」

 

「そうですね。まりなさんの言うとおり、少し休憩にしましょう」

 

 

今、彼女たちは次のライブに向けてセトリなどを考えている。誰もがあまり進んでいないようだ。ちなみにここにはいないがRASもそのライブに出ることになっている。RASは別の場所でやっているらしい。

 

 

「はぁ、彼がいたらこんなのはすぐに終わらせていたでしょうね」

 

「彼……って誰のことですか?」

 

「そういえばましろちゃんたちは知らなかったね!彼って言うのは零先輩のことだよ!ですよね、友希那先輩!」

 

「えぇ、その通りよ。零ならこれをすぐに終わらせていたからね。彼がいなくなってからだいぶ経つけど、やはり彼の才能のありがたみがよくわかるわ」

 

「(れい先輩……か)」

 

「ん?どうしたの?シロ」

 

「え!?いや、なんでもないよ!」

 

「?そっか」

 

「(まさかね……)」

 

「ほほ~、それはそれは。で、どこで行き詰まってんだ?」

 

「ここよ」

 

「どれどれ。これならこの曲で繋げたほうがいいぞ」

 

「え?あ、これは……今までつまってたのが嘘みたいにしっくりくるわね」

 

「ならよかった」

 

「流石ね。零」

 

「伊達にRoseliaでこういうのをやってただけあるね、零」

 

「そりゃどうも」

 

『……………………ん?』

 

 

バンドメンバーで話している中、ちゃっかりと会話に入っている存在にようやく気づき、その存在にゆっくりと顔を向ける全員。そこには、左手に他のセトリなどが書かれている紙を持ち、右手を顎にあてて考えている仕草をしている零がいた。

 

 

『………………』

 

 

いるはずのない人物が目の前にいることで驚きで固まっていると、視線に気づいたのか紙から視線を外し、そこにいるバンドメンバーたちに目を向け、右手を上げ……。

 

 

「よう」

 

 

軽くあいさつする零。

 

 

『零(君/兄/先輩/さん)っ!?』

 

「気づくの遅かったな」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「な、なんで零がここにいるの!?」

 

「ひまりとリサは落ち着けって。せっかくの休日だし久しぶりに行こうかと思ってな」

 

「いつからいたの!?」

 

「十分ぐらい前かな?」

 

「いたなら普通に声かけてよ!!」

 

「かけようと思ったんだがみんな悩んでるみたいだったから脅かすついでに手伝うかと思って」

 

「手伝ってくれたのはありがたいけど脅かさなくていいよ!」

 

 

零とリサの漫才のようなことを見ながらいまだ固まっているのが数名。残りはなぜ零がここに?とこれは幻覚?と唸っているというカオスな状況。だが、そんな中に一人だけ零に近づく人物が。

 

 

「……お兄ちゃん?」

 

「うん?」

 

『はい?』

 

 

唐突な発言。それを聞いて零も固まる。零は声をかけてきた人物、ましろを見る。

 

 

「あれ?お前もしかしてましろか?」

 

「やっぱり零お兄ちゃんだ!」

 

 

自分に気づいてくれたのと久しぶりに会えたという嬉しさで零に抱きつくましろ。その光景を固まって見ているのと、先ほどから驚きの連発でもう頭の処理が追いつかないみんな。

 

 

「久しぶりだな。大きくなったな~ましろ。ところでなんでましろがここにいるんだ?」

 

「私もバンドやってるから」

 

「ましろがバンド!?パートは!?」

 

「ボーカルだよ」

 

「やっぱボーカルだよな」

 

「お兄ちゃんは他のをやってほしかったの?」

 

「うんや。小さい頃にましろの歌を聞いてたからな。幼くてもよくわかってたよ。とてもうまいなって。だからボーカルだって聞いたらなんか納得した」

 

「そっか。ありがとう!お兄ちゃん!」

 

「……零?」

 

「ん?うおっ!?」

 

 

呼ばれ、そちらに向くと、胸ぐらを掴まれてすごい力で引っ張られる零。そこには胸ぐらを掴んで引っ張った張本人、友希那が……。

 

 

「あ、あの、友希那さん!?お前どこからそんな力が出んの!?」

 

「静かにしなさい」

 

「ア、ハイ」

 

「倉田さんとはどういう関係なのかしら?」

 

「え、ましろとの?わかった、話すからその手を話してくれ。このままだと話しづらいから。あと、若干苦しい……」

 

 

今の零は、自分よりも身長が低い友希那に胸ぐらを掴まれている状態。体勢的に少し首が絞められているのだろう。

 

 

「答えなさい!!」

 

「お、おい!ちょ、友希那……くる……」

 

「ちょっ!?友希那!完全に零の首絞めてる!!落ち着いて!!」

 

 

慌ててリサが友希那を零からはがす。そこで友希那が零にしたことに気づき、零に謝る。

 

 

「ご、ごめんなさい。零。少し、冷静ではなかったわ」

 

「ゲホ、ゲホ……。あぁ、いや、大丈夫だ。ただ、あれが少しなのか?」

 

「何か言ったかしら?」

 

「イエナニモ。ところでましろとの関係だったな」

 

 

胸元の服を正しながら立つ零。そして、隣にましろがちゃっかりと寄り添う。それだけで視線が鋭くなるが無視する零。わざと咳払いをして鋭くなった視線を元に戻して説明を始める。

 

 

「ましろとは従姉妹だよ」

 

「従姉妹?」

 

「そ。まあ、ましろがこんなに小さい時から会ってなかったけどな。あの時もそうだったが、成長した今のほうがより綺麗に育って従兄弟としては嬉しいよ」

 

「えへへ♪」

 

 

ましろの純白の髪を撫でる零。またもや視線が鋭くなるが無視をし続ける零。

 

 

「で、そこにいる初対面の娘たちがましろのバンドメンバーか?」

 

「あ、はい!じゃなかった。ごきげんよう。二葉つくしです」

 

「やっほ~、あたしは桐ヶ谷透子!よろしく!」

 

「ごきげんよう、広町七深で~す」

 

「ごきげんよう、八潮瑠唯です」

 

「岡峰零だ、よろしく。ふと気になったんだが君たちは学校ってどこなんだ?」

 

「月ノ森学園です」

 

「月ノ森?確かあそこってお嬢様学校だったよな?ましろもそこなのか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「いいとこ入れて良かったな。それにいい仲間に出会えて俺は嬉しいよ」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

「零兄!久しぶりにここに来たんだったらなんか弾いて!」

 

「いいぞ。まりなさん、いいですか?」

 

「全然いいよ!」

 

「んじゃ、失礼します」

 

 

スタジオに移動する全員。零は夜天の剣と紅華の剣を置いて、ベースを手にする。それをベース組は嬉しそうな顔をする。

 

 

「零兄、ベースを弾くの?」

 

「今日はなんかベースの気分だからな」

 

「あれ、その言い方だと他のもできるの?」

 

「零はボーカル以外全部できるんだよ」

 

『え!?』

 

 

ましろ以外のモニカメンバーが驚く。

 

 

「で、なにを弾けばいいんだ?」

 

「じゃあ、アレでいい?」

 

「わかった」

 

「え、今のでわかったの?」

 

「んじゃ、リサのリクエストに答えて」

 

 

リサがリクエストしたアレ。それは……。

 

 

『~♪』

 

「やっぱり陽だまりロードナイトだったのね」

 

 

リサがリクエストした曲、『陽だまりロードナイト』をベースで弾く零。そして、弾き終わるとベースを戻す零。

 

 

「久しぶりだったからあまりできなかったな」

 

「の割にはとてつもなく上手かったけどね?」

 

「そうか?」

 

「その通り。素晴らしかったよ零。さすが、羽丘で孤高の歌姫の対となる存在と言われていただけあるね」

 

「え、俺羽丘でそんな風に言われてたの?初耳なんだけど。それと俺が羽丘で歌ったの薫が考えた劇でだからな?それは忘れるなよ?」

 

「も、もちろん、忘れていないさ」

 

「ならばよし」

 

「零先輩!後でベース教えて!」

 

「了解した。後でな、はぐみ」

 

「あ、じゃああたしのドラムも教えてほしいです!零さん!」

 

「あこも!」

 

「わかったわかった」

 

「ねぇねぇ零君!零君がさっき置いたこれってもしかして竹刀~?ちょっと見せて!」

 

「あ」

 

「ひ、日菜!それは!」

 

「おねーちゃんも見せて貰おうよ!零君、ちょっと見せて!」

 

「ダメよ!それは……!」

 

「重~い!!」

 

『あ~あ……』

 

 

二本の剣を知っているRoseliaは日菜の行動を止めようと紗夜が声を上げるが、それで止まる日菜ではない。布に包まれた状態で夜天の剣を持とうとした日菜だったが、重くて持ち上げることができなかった。だが、日菜が触ったことにより布が取れ、夜天の剣が姿を現す。

 

 

『え……』

 

 

Roselia以外のメンバーが驚きのあまり、言葉を失ってしまう。

 

 

「れ、零先輩。なんでおもちゃの剣なんか持ってるんですか~……」

 

 

声をやっと出せたのは紗綾。

 

 

「紗綾、残念ながらおもちゃじゃない」

 

「わかってましたけどそこは否定しないでほしかったです……」

 

「お兄ちゃ、んんっ!零君、おもちゃじゃないのなら……」

 

 

先ほどまでお兄ちゃん呼びだったましろだが、周りの目を気にして名前呼びにしてきた。若干寂しいが仕方ないと決める零。

 

 

「本物の剣だよ」

 

『本物っ!?』

 

「あと、順番で持ってみなさい」

 

「さらに驚くから。ていうかもう日菜はわかってるけど」

 

「友希那先輩にリサ先輩はこの剣のこと知ってたんですか!?」

 

「夏祭りの時にね」

 

「夏祭りに零先輩と会ってたんですか!?ずるい!」

 

「そういう問題じゃねぇぞ、香澄!」

 

「えっと、リサちゃん。持ってさらに驚くってどういうこと?」

 

「持ってみればわかるって。ほら、最初は彩からね!」

 

「え、勝手に決めないでよ~!」

 

「彩ちゃん、ファイトー!」

 

「うう~、つ、次は日菜ちゃんだからね!」

 

 

立て掛けてある夜天の剣の柄を掴み、一度深呼吸してから持ち上げようとする彩。だが……。

 

 

「お、重すぎるよ~!」

 

 

例の如く、持ち上げられないのであった。

 

 

「全然持ち上がってないよ~彩ちゃん!」

 

「だって、重すぎるよ!これホントに持ち上げられるの!?」

 

「彩ちゃん、そろそろ日菜ちゃんに変わってもらったら?」

 

「うん、そうする!ありがとう、千聖ちゃん!日菜ちゃん、パス!」

 

「え~、もっとおもしろい彩ちゃんを見たかったのに~!」

 

「おもしろい私ってなに!?」

 

「っていうかあたしはもう持ったから重さはわかってるから千聖ちゃんね!」

 

「え、私!?」

 

 

椅子に座っていた千聖が日菜からの予測していなかった言葉で驚く。

 

 

「じゃあ、千聖。俺が鞘を持ってるから剣を抜いてみろ」

 

「さっきのを見てると私も持てないのはわかってるわよね?」

 

「わかってるけどどれくらいの重さなのかを実感するといい」

 

「はあ、わかったわよ」

 

 

零が鞘を持ち、千聖が柄を掴んで引き抜こうと力を入れる。だが……。

 

 

「さすがに重すぎないかしら……」

 

「やっぱり……持てない……ですね」

 

「本当に零兄しか持てない剣だね」

 

「え!?零先輩持てるの!?」

 

「持てなかったらここにねぇだろ!にしてもホントになんつう剣なんだ?零先輩しか持てない剣なんて……」

 

「言ってしまえば俺専用の剣だな」

 

「あ、あの、零先輩!」

 

「ん?なんだ、つぐみ」

 

「これなんですけど、まさか……」

 

「布を取ってみればわかるよ」

 

「え、取っていいんですか」

 

「蘭~、零先輩も言ってるんだし~、取ってみよう~」

 

「あ、モカ!」

 

 

 

パラ……

 

 

 

『…………』

 

「……まあ~、そうだよね~」

 

 

モカが布を取ると、紅華の剣が姿を現す。紅華の剣を見てみんなは黙ったまま。モカが代表してみんなの気持ちを言葉にする。

 

 

「零!二本の剣を持ってるなんてすごいわね!」

 

「零さんはまさにブシ、ですね!」

 

「そこじゃないよ、こころ」

 

「イヴさんもそこじゃないですよ」

 

「ははは、確かに昔なら武士だな。なんならイヴも持ってみるか?」

 

「はい!と、言いたいですが持てないのが自分でもわかってしまうので……」

 

「まあ、そうだな」

 

「残念です……」

 

「でも、イヴにはイヴの刀があるだろ?それを持っていればイヴも武士だよ」

 

「!はい!私も零さんと同じブシです!」

 

「おう。お互い頑張ろうな」

 

「零さん、イヴさんを落ち着かせるの上手いっすね……」

 

「そうか?あ、そういえば麻耶、後でこの機材ちょっと調子が悪いからそれを直すの手伝ってくれ」

 

「お安いごようです!」

 

「ねぇ零君、なんで二本も剣なんか持ってるの?」

 

「実は親父が関係しててな」

 

「確かおじさんって自衛隊だったよね?階級はとんでもなく偉いところだったはず」

 

「とんでもなく偉いってどの階級だ……?」

 

 

ましろの言葉に有咲が呟く。

 

 

「この剣はこの国で見つかったものなんだ。それで親父が俺なら持てるだろうって話して俺に送られてな。それで持てるから所有者になったんだよ」

 

 

そう言いながら夜天の剣と紅華の剣を背中に担ぐ零。

 

 

「鞘から抜かないの?」

 

 

突然のましろの言葉に零は驚きながらましろを見る。ふと周りを見ると、Roselia以外のメンバーが『見たい』という目を零に向けている。零はため息を吐きながら二本の柄を握り、鞘から引き抜く。

 

 

「刀身まで黒い……」

 

「こっちは赤、いや、紅、だね」

 

「そのままでも美しいが鞘から抜くとより美しい。素晴らしい剣だ」

 

「刀身はこんな感じだ。さてと……」

 

「あれ?零兄、どこか行くの?」

 

「あぁ。まりなさんから新しいライブハウスの場所を聞いたからな。そこに行こうと思って」

 

「ということは『Galaxy』に行くのね。零、もしよかったら私たちが道案内をするわよ」

 

「お気遣い感謝するよ、友希那。けど、大丈夫だ。だいたいの場所はわかってるから。それに、俺の移動手段だとこの人数はきついからな」

 

「それってどういうこと?」

 

「零君……今まで……スルーしてた……けど、どうやって……来たの?」

 

「バイクだ」

 

『!!』

 

 

この時、Roseliaとましろが考えたことは……

 

 

『(もし、一緒に行けば零(君/兄/お兄ちゃん)のバイクに乗れることができるかもしれない!!)』

 

 

と一緒だった。

 

 

「零、私たちが案内するわ」

 

「ん?いや、お前らはセトリとか考えてるんだろ?そっちの方を優先していいよ」

 

「それは向こうでもできるからさ。アタシたちが案内するから」

 

「さっきも言ったがバイクで来てるんだぞ。それにバイクは二人乗りだぞ」

 

「では、誰か一人を後ろに乗せて案内すればいいんですね」

 

「いや待て、紗夜。案内はしなくていいってさっきから言ってるだろ」

 

「それじゃあ、誰が零兄のバイクに乗せてもらうかじゃんけんで!」

 

「人の話を聞け」

 

「お兄ちゃん」

 

「なんだ、ましろ」

 

「私、勝つから」

 

「じゃあ、行くよ!」

 

「俺の意思は無視ですか……」

 

「零先輩も大変だな……」

 

「そう思うなら助けてくれ、有咲」

 

「ごめん、それは無理」

 

「即答せんでも……」

 

 

CiRCLEでRoseliaとましろの白熱するじゃんけんが始まったのであった。

 

 

「んじゃ、これ、ヘルメットな。会話はBluetoothに繋げた電話だから大声出さなくても聞こえるからな」

 

「わかりました」

 

 

激闘の末、勝ったのは紗夜だ。勝った時の紗夜の顔は今まで見たことのない最高の笑顔を一瞬だが見せた。その後は、まあ……。

 

 

 

ー回想ー

 

 

『やりました!!』

 

『負けたぁ!!』

 

『まさか、紗夜がリサに勝つなんて』

 

『リサ姉じゃんけん強いのに』

 

『それを圧倒するほどの……強さ……ですね』

 

『私は従姉妹だからいつでも乗せてもらえる……いつでも乗せてもらえる……』

 

『ましろはちょっと落ち着け。んじゃ、案内役は紗夜でいいんだな?』

 

『はい』

 

『ん?どうした、紗夜。なんか明らかにさっきとテンションが違うが。バイク怖いか?』

 

『え、そうなの?なら無理しないでいいよ、紗夜。アタシがかわるから!』

 

『いえ、それは大丈夫です。せっかくじゃんけんで勝ったのです。案内役は私がやります。いいですね?零君』

 

『まあ、無理してないっていうなら……うおっ!?』

 

『い、い、で、す、ね?』

 

『ハイ……』

 

 

ー回想終了ー

 

 

 

(最後はちょっと怖かったが……)

 

 

真面目な紗夜に襟首を掴まれる時が来るとは全く思っていなかった零であり、恐怖を感じたのであった。

 

 

「零!」

 

「なんだ?リサ」

 

 

零もヘルメットをかぶり、先にバイクにまたがり紗夜が乗りやすいようにバイクを傾ける。紗夜が乗ってエンジンをつけようとしたらリサが声をかけてきた。

 

 

「今度はアタシだからね!」

 

「はいはい。今度な」

 

 

じゃんけんをして負けた者たちが密かに話し合い、じゃんけんで勝った順で零と一緒にバイクに乗せてもらうというのが決定された。もちろん、零の意思はない。ちなみに順番はリサ、あこ、燐子、友希那、ましろだ。

 

 

「じゃ、また後でな。紗夜、道案内頼むぞ」

 

「お任せください。湊さん、突然抜けてしまってすみません」

 

「構わないわ。私がそうなるかもしれなかったのだし。後でメールするから」

 

「すみません、お願いします」

 

「よし、しっかり掴まれよ!」

 

 

バイクのエンジンをつけて軽く吹かし、出発する零と紗夜。CiRCLEでは全員が二人を見送っていた。

 

 

「零君、あの交差点を右に曲がってください!」

 

「右だな。了解!」

 

 

紗夜も道案内をしっかりしてくれて、難なくGalaxyにたどり着いたのだった。

 

 

「隣が八百屋か。隠れ家的なライブハウスだな」

 

「ここは私たちRoseliaも一度だけライブをさせていただきました。とてもいいライブハウスですよ」

 

「紗夜がそういうのならすごいんだろうな。さて、中に入るか」

 

「はい」

 

「あれ、紗夜さん?」

 

「あら、朝日さん」

 

 

眼鏡をかけた女の子が声をかけてきたので零はその女の子を見るが、当然初めて会ったので誰だかわからないので紗夜にふる。

 

 

「知り合いか?紗夜」

 

「はい。このGalaxyのスタッフのバイトをしているのと同時にあるバンドグループのギター担当の朝日六花さんです」

 

「朝日六花です。はじめまして」

 

「へぇ、ギター担当か。はじめまして、岡峰零だ」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「あ、あの、岡峰、零、さんですか?」

 

「おう、そうだが。どうした?」

 

「お~い、ロック。なにしてんだ?」

 

「あら」

 

「あれ、紗夜さんじゃないですか。一人で家に来たんですか?」

 

「いえ、今日は道案内で来ました」

 

「道案内?一体誰を……そこの男ですか?」

 

「その通り。俺はここに来るの初めてだからな。紗夜に道案内してもらったんだよ」

 

「へぇ。で、あんたはなにもんだ?」

 

「岡峰零だ。そういうお前は?」

 

「あたしは佐藤ますきだ。って岡峰零……?」

 

「よろしく。なあ、紗夜。なんでこの二人は俺が名乗ったら固まってるんだ?俺なにかした?」

 

「いえ、たぶんお二人は……」

 

 

ガシッ!!

 

 

「ん!?」

 

 

紗夜がなにかを言おうとした瞬間にますきに両肩を掴まれる零。突然のことで驚く零。

 

 

「あんた、なにか移動手段は!?」

 

「ば、バイクがあるけど……」

 

「あたしもバイクがあるからバイクであたしに着いてきてくれ!案内したい場所がある!」

 

「わ、わかった……」

 

「おい、ロック。用事を早くすませてきてくれ」

 

「わかりました!」

 

「零君、勢いに押されましたね?」

 

「あんなすごい勢い押されないほうがおかしいだろ……」

 

「お待たせしました!」

 

「よし!じゃあ行くぞ!」

 

「用事すませるの早いね……」

 

 

その後、ますきが運転するバイクに着いていき、たどり着いたのがマンションである。

 

 

「でけぇマンションだこと」

 

「やはりここに連れてきたかったのですね」

 

「紗夜は知ってるのか。てかなんでこのマンションに連れてきたかったんだ?」

 

「行けばわかりますよ」

 

「こっちです!」

 

 

六花に案内され、マンションの最上階に行き最上階の部屋に入る前にますきがインターホンを押す。

 

 

『はい、ただいまー!』

 

 

ガチャ

 

 

「ますきさんに六花さん!おかえりなさいませ!」

 

「おう、ただいま」

 

「ただいま戻りました、パレオさん。すみません、急に抜け出してしまって」

 

「問題ありません!あれ、氷川さん!いらっしゃいませ!と、お初の方がいらっしゃいますね」

 

「こんにちは」

 

「はじめまして」

 

「この二人はさっき偶然Galaxyで会ってな。案内してきた」

 

「お二人を案内、ですか?」

 

「あ、名乗ってなかったな。俺は岡峰零だ」

 

「え!?しょ、少々お待ちください!!」

 

 

六花にパレオと呼ばれたカラフルな髪色をツインテにした女の子が零が名乗ると部屋に入っていってしまった。

 

 

「なんなんだよ、さっきからこの反応は……」

 

「まあ、中に入ろうぜ」

 

 

ますきに言われ、部屋の中に入る零たち。

 

 

「チュチュ様~!」

 

「どうしたのよ、パレオ」

 

「二人が帰ってきただけなのになんでそんなに慌ててるの?」

 

「じ、実は!」

 

「お~す。チュチュ、客を連れてきたぞ」

 

「マスキング!」

 

「お客って、誰をって氷川さん」

 

「SayoHikawa!?」

 

「おじゃまします、和奏さん。チュチュさん」

 

「パレオ、氷川さんがお客さんならそこまで慌てる必要は……」

 

「紗夜、俺は入っていいのか?」

 

「「え?」」

 

「ええ、大丈夫です」

 

 

紗夜が言うと扉を開けて零が入ってくる。なぜ一緒に入らなかったのかというと、女の子がいると聞いた零が一応部屋の前で待つと言ったからだ。

 

 

「おじゃまします。で、朝日、さんだっけ。佐藤さんも再度聞くがなぜ俺をここに?」

 

「えっと、君は?」

 

「ん?あ、岡峰零だ。よろしく」

 

「え、岡峰って……」

 

「岡峰零!?」

 

「またこの反応……紗夜、なにか知ってるか?」

 

「知っています」

 

「知ってんの!?」

 

「ええ。零君は私たちガールズバンドと同じで有名ですから」

 

「は?」

 

「零君はこっちにいる時に私たちガールズバンドのみんなのセトリを考えたり、ステージのチェックなどをしていましたよね」

 

「あぁ。確かにしていたが……それと関係あるのか?」

 

「零君が引っ越したことで私たちはあなたが引っ越した次の日に緊急でライブをしたんです。私たちにとって大切な人に伝わるライブにしようと言って」

 

「……」

 

「そのライブでこれまで手助けをしてきてくれた大切な仲間、零君を公表したんです」

 

「は!?」

 

「それからは……」

 

「あなたはガールズバンドの伝説のメンバーと言われるようになったのよ」

 

「伝説って……」

 

「まあ、そこまで支えていたのなら最後までやれとか裏切り者とか呼ばれてたけどそう言っていたのは少数でしたね」

 

「……確かに裏切り者って呼ばれても仕方ないよな。俺は君たちを裏切ったのようなものなんだしな」

 

「そんなことありません!」

 

「そもそも引っ越ししたってだけで裏切り者呼ばわりはおかしいって言った人たちが多かったわ」

 

「詳しいですね、チュチュさん」

 

「調べたから当然よ。私もその伝説に会って私たちのバンドに入ってもらいたいって考えていたから」

 

「零君は渡しませんよ。零君は私たちRoseliaの一員ですので」

 

「入ってもらおうって思っていたのは最初だけよ。今は私たちのバンドもサポートしてほしいって思ってる。まあ、会えることすら難しいと思ってた人物が今目の前にいることが驚きだけどね」

 

 

チュチュと呼ばれた女の子が椅子から降りて零の前に立つ。

 

 

「はじめまして。私、チュチュと申します。伝説のメンバーに出会えて光栄です」

 

 

チュチュが自己紹介をしてくる。零は先ほどのチュチュの言葉にむず痒く感じる。

 

 

「伝説のメンバーってのはやめてくれ。自分がそんな風に呼ばれているなんて知らなかったんだし。普通に零でいい。よろしく」

 

「わかったわ、零」

 

「私はパレオと申します!よろしくお願いします零さん!」

 

「私はレイ。和奏レイです、よろしくね」

 

「私は六花と呼んでください!」

 

「あたしもますきでいいぜ」

 

「おう、了解。よろしくな。あ、チュチュ。それとパレオ。一つ聞きたいんだが」

 

「What?」

 

「なんですか?」

 

「本名は言わないでいいんだな?」

 

「Yes。私はチュチュ。本名は言わないわ」

 

「パレオも本名はあまり言いたくないですね」

 

「わかった。二人がそう言うなら何も言わないよ」

 

「あの、零さん」

 

「なんだ?和奏さん」

 

「あ、私はレイでいいです」

 

「あ、いや、でもな。同じ名前だし……」

 

「ならレイヤって呼んでください。バンドで使われている名前なので」

 

「お、それは助かる。俺もさん付けはいいよ。敬語もしなくていいし」

 

「いえ、そういうわけには。氷川さんにタメ口ならたぶん先輩だろうなって。氷川さんとは一個下なので」

 

「後輩だったのか。同級かと思ったぞ。まあ、いいや。で、なんだ?」

 

「零さんってなんでこっちに?引っ越ししたんですよね?戻ってきたんですか?」

 

「あぁ、その事か。今日はただ遊びにきただけだよ」

 

 

RAISE A SUILEN、通称RASというガールズバンドの一つである彼女たちに何しに来たのかを詳しく説明する零。

 

 

「くっ!戻ってきたのなら私たちのサポートをしてもらおうって思ったのに!」

 

「悪いな、チュチュ。そのかわり、今できることだけはやるよ」

 

「Thank You!ならさっそくお願いするわ!まずは私たちの曲を聴いてちょうだい!」

 

「わかった。改善できそうなところがあったら指摘するから」

 

 

それからRASの曲を聴いて演奏中の動きなどを提案したり、一人一人にアドバイスをしたりした。気がついた時には三時間もの時間が過ぎていた。

 

 

「久しぶりに真剣に曲を聴いたわ」

 

「さすが伝説のメンバーね。改善できるところをやった後の曲が今まで以上に素晴らしい曲になったわね。ねぇ、いつこっちに帰ってくるの?」

 

「いや、今んとここっちに帰る予定はないな。それに、今いるところで俺がやりたいって思ってたことができてるからたぶんそこから動かないかもな」

 

「そのやりたいことってこれですか?」

 

 

そう言って六花が見せてきたのは第百回聖翔祭の零が出ている部分だけが投稿された動画だった。

 

 

「これ、仮面を着けてますけど零さんですよね?」

 

「なぜ、俺だと?」

 

「いえ、雰囲気とかが似てるなと」

 

「ちょっと見せてください。……これ、零君ですね」

 

「紗夜、俺だと確定しないでくれ。他人の空似だろ?」

 

「あら、私たちRoseliaが零君を見間違えることはあり得ませんよ。それに、私たちRoselia全員はこの動画を何度も見返しています。零君が転校して行った学校の舞台なのですから」

 

「最初から詰みだったわけだ……」

 

「紗夜さん、この動画を見るに零さんが転校した学校って舞台とかで有名な聖翔音楽学園なんですか?」

 

「その通りですよ。まあ、私たちも知ったのは夏祭りの時でしたけどね。そこで零君と零君の幼馴染二人と会いました」

 

「幼馴染が二人もいるんですね」

 

「まあな。その学校に行ってまさかの十二年ぶりの再会だったけどな」

 

「十二年ぶりってそんなに会ってなかったんですか」

 

「あぁ。幼馴染の一人が十二年前にイギリスに留学して行ってな。そこから会わなくなったんだ」

 

「あれ?でもその学校って確か女子校だったはずでは」

 

「そうだよ。俺は異例の編入生であり、あの学校には手伝いとかそういう理由で編入したんだ」

 

「手伝い、ですか?」

 

「あぁ。女子校で舞台で使うセットとかも重いものがあるから女子だけでは大変だとそこの理事長が俺の母親に相談したら俺を編入させればいいと言ったんだ。勝手に決めやがったんだ」

 

「大変ですね。零さん」

 

「でもまあ、最初だけだったな。今ではもうあそこにいるみんなは俺も聖翔音楽学園にいる同じ仲間だと認めてくれてる。それが嬉しいんだ」

 

 

そして零は、聖翔音楽学園に編入して今までのことを話した。オーディションだけはふせて。第百回聖翔祭のシナリオがいかにして生まれたかなども話した。途中、紗夜が零の過去の話を録音しだしたのでなぜかを聞いたら『私だけこのような貴重な話を聞くわけにはいけません。皆さんにこの話を送るために録音をします』ということだった。

 

 

そして、話が終わるとちょうどいい時間だったので零と紗夜は帰ることとなった。すると、RASのみんながマンションの入り口まで見送ると言ったのでマンションの入り口まで話しながら向かったのだった。

 

 

「悪いな、ここまで見送ってもらって」

 

「全然大丈夫です」

 

「私たちも伝説のメンバーに出会えて私たちの曲も聴いてもらうことができたのだしこれくらい当然よ」

 

「零さんに出会えて光栄の言葉以外出ません!またお越しになる時を待っています!」

 

「まあ、零さんに出会えたのはロックがGalaxyに用事があると言って向かったから……」

 

「ロックに感謝だね」

 

「ふえっ!?そんな!本当に偶然なんです!お礼を言われることはないですよ!けど、私も一時期ポピパの皆さんのサポートをしていたと言われる零さんに会えて嬉しかったです!」

 

「そう言ってくれると嬉しいよ。チュチュに俺の電話番号を教えたからなにか気になるところがあったら電話してくれれば協力するから」

 

「その時はお願いします」

 

「どんどん電話しちゃうわよ!」

 

「どんとこいだぁ!」

 

「相変わらずノリがいいですね、零君」

 

 

そんな話をしていると後ろから気配を感じ後ろを見ようと振り返った瞬間、男の声が聞こえた。

 

 

「情報は本当だったんだ……!やあ、みんな!俺だよ!久しぶりだね!」

 

「どなたですか?」

 

「嫌だなぁ、忘れちゃったのかい?一時期君たちのサポートをしていた零だよ!久しぶりだね、紗夜!」

 

 

零、と名乗った男は両手を広げながら近づいてくる。そこを零が男と紗夜たちの間に入る。

 

 

「な、なんだ、お前は!邪魔をするな!」

 

「紗夜、これは以前にもあったか?」

 

「いえ、こんなこと初めてです」

 

 

男をガン無視して零は紗夜に聞くという二人してとても落ち着いている。紗夜の後ろにいるRAS(特に六花が慌てている)が少なからず慌てている。

 

 

「チュチュ、これって……」

 

「えぇ。まさか本当に出るなんてね」

 

「知ってるのか?チュチュ」

 

「えぇ。少し前に伝説のメンバーの名前を名乗ってガールズバンドに近づこうとした輩がいたらしいの。でもあくまで噂だから本当かどうかはわからなかったの」

 

「なるほど。つまり、今目の前にいる奴がそいつってことか」

 

「誰が偽物だ!俺は正真正銘彼女たちをサポートした零だ!!お前こそ何者だ!!今すぐ彼女たちから離れろ!!」

 

 

男が興奮しながら叫ぶが、零は頭に手をあてながらため息をする。

 

 

「紗夜、あのライブの時に公表したんだよな?その時、フルネームを言ったのか?」

 

「いえ、名前だけ公表しました。名字だけはみんなで話して公表しないようにしようと話になったので」

 

「なるほど。なあ、あんた。あんたが彼女たちをサポートしたのなら自分の名前ぐらい言えるよな?」

 

「と、当然だろ!!それがなんだ!!俺は零だ!!」

 

「名前だけじゃなくてそのサポートした奴のフルネームを言ってみろ。本人なら間違えないようがないよな?ちなみに発言は一回だけだ。言ったあとすぐに紗夜に答えを言ってもらう」

 

「な!?お、俺の名は……さ、佐崎零だ!」

 

「違います」

 

「誰だよ、佐崎零って」

 

 

男が頑張って考えた名前をバッサリと切り捨てる紗夜。零に至っては呆れている。ちなみに男は顔を赤くしながらぷるぷる震えている。

 

 

「そ、そういうお前は何者なんだよ!!」

 

「俺か?俺は岡峰零だ」

 

「え……同じ……名前……」

 

「彼こそが私たちをサポートしてくれていた伝説のメンバー、岡峰零君です。あなたのような人、私たち誰一人知りません。お引き取りください!」

 

「だってよ。わかったならさっさと失せろ」

 

「ま、まさか……本人がいるなんて……!クソ!!だったら!!」

 

 

男が隠していたナイフを出して紗夜に突きつけてきた。

 

 

「やられたくなかったら俺のところに来い!!」

 

「ひ!」

 

 

六花が怖がって声をあげるが、レイが近くに寄せて落ち着かせる。

 

 

「物騒なもん持ってんな。そっちが脅してるのならこっちも遠慮なくやらせてもらうか。今すぐそのナイフを置いて投降しろ」

 

「お前バカだな!!俺のほうが優勢なのになんでお前がそんなこと言うんだよ!!伝説と言っても所詮バカなんだな!!ガールズバンドの裏切り者ならさっさとそいつらを裏切ってみせろよ!!」

 

「そんなこと!!」

 

 

紗夜が男の発言に食って掛かる前に零が紗夜の前に手をかざす。紗夜はゆっくりと零の顔を見ると落ち着いているように見えるが怒っているのがわかるほど零の鋭く射ぬく目が男を睨んでいる。

 

 

「零君……?」

 

「俺が言えた義理でもないが落ち着け。もう一度言う。ナイフを置いて投降しろ。こちらも実力行使に出ることになる」

 

「ぬかせ!!」

 

「仕方ないか。我、これより実力行使に出る」

 

「うおぉぉぉ!!」

 

 

男がナイフを構えて突っ込んでくる。それに零も突っ込む。零の行動にRASのみんなは驚き、男は勝ったとニヤリ顔をする。だが、紗夜だけはアレのことを知っているので落ち着いている。零と男との距離がある程度縮まった瞬間…………。

 

 

 

カキンッ!!

 

 

 

その場ではありえないはずの金属同士がぶつかる音が響く。男は目の前にいる零に驚きの顔を向け、RASのみんなも驚きの顔をしている。

 

 

 

キン……

 

 

 

男の後方に男が持っていたナイフの刃と柄の繋ぎ部分が切断され真っ二つの状態で落ちる音が静かすぎるその場によく響く。

 

 

「…………な……何が……おき……ぐふっ!?」

 

 

いまだに何が起こったのかわからず呆けている男に零が腹に突きをして気絶させる。男はゆっくりと地面に倒れ、すかさず零が拘束するためにどこから出したのかわからない縄を使って拘束する。

 

 

「ふぅ、行動終了っと。みんな、ナイフの刃の破片とか飛ばなかったか?」

 

 

そう言って夜天の剣と紅華の剣を鞘にしまい、振り返る零。二本の剣と先ほどの素早さを見て驚いて固まったままのRASにわかっていたけど安心した顔をしながら零に近づく紗夜。

 

 

「わかってはいましたが無茶はしないでください」

 

「いや、あんな奴余裕で倒せる。てかあんな奴は俺にとっては弱すぎる」

 

「そうかもしれないですが油断は禁物ですよ」

 

「わかってる。ちゃんと気をつけてるさ」

 

「本当にわかってるんですか?」

 

「わかってるわかってる」

 

「もう……」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!!零!!さっきの動きとその剣はなに!?」

 

「全く見えませんでしたよ!?」

 

「気がついたらあの男のナイフが飛んでいってたよな!?どんな速業なんすか!!」

 

「その二本の剣、もっとよく見せてください!!」

 

「説明お願いします!!」

 

「わかったから少し落ち着けって!」

 

 

零は自分が所有する二本の剣、夜天の剣と紅華の剣を話してなぜ零が所有者なのかもくまなく説明した。

 

 

「夜天の、剣……」

 

「紅華の剣……か」

 

「お父様が自衛隊のお偉い様でこの剣を渡してきた……と」

 

「しかもこの二本は日本で見つかった物で零さん以外誰も持てない……ですか」

 

「紗夜さんは知っていたんすか?」

 

「はい。これは他のグループも知っていますよ」

 

「って言ってもさっき教えたばかりだけどな。紗夜たちRoseliaは前の夏祭りで教えたしな」

 

「じゃあ、さっきの零さんはどう動いたんですか?」

 

「さっきのか?簡単だよ。さっきは……あ、ちょっと待ってくれ。警察来たからこいつ引き渡してから話す」

 

「え、警察?」

 

 

零が不意に警察が来たと言うとさっきまで聞こえなかったサイレンの音が聞こえる。

 

 

「いつの間に呼んだのですか?」

 

「いや、この騒ぎで通行人が通報したみたいだ。呼ぶ手間が省けて楽だわ~」

 

「そういう問題じゃないよね?」

 

「もしかしたら零さんも連行されるんじゃ……」

 

「あ、いや、それは大丈夫」

 

「なぜそう言いきれるの?」

 

「まあ、そのうちわかる」

 

 

やがて一台のパトカーが到着し、二人の警官が降りて零を見ると驚きの顔をして急いで敬礼をする。RASのみんなが驚いているのを尻目に気絶している男を警官に引き渡して何があったかを包み隠さず説明する零。二人の警官は納得して男をパトカーに乗せて去る前に零に敬礼をしてその場をあとにした。

 

後日談。零と偽った男はネットで紗夜があるマンションの入口で目撃という情報があり、近いので行ってみると本当に紗夜がいて、情報になかったRASがいて驚いたが嬉しい誤算だと思って伝説のメンバーである零だと偽ればガールズバンドの子たちと仲良くなれると思ったのと、上手くいけば恋仲になれるかもと下心で行ったということと以前にも同じ事をしてあるグループのガールズバンドに接触していたことを警察から聞いた零とガールズバンドのみんな。まりなさん曰く、ガールズバンドのみんなは全員今までにないくらい怒っていたという。

 

 

「うし、お待たせ」

 

「さっきからありえない光景だらけでもう何がなにやら…」

 

「零、さっきの警官の行動も含めて説明して」

 

「はいはい。まずはさっきの男にやったことだな。あれはただ夜天の剣でナイフの刃と柄の部分を斬ったあとに紅華の剣で真上に飛ばしただけだよ。で、警官の方は親父のせいだ」

 

「お父さんの?」

 

「昔、なんか自衛隊と警察との合同で対人戦の模擬試合があってな。そこになぜか知らんが親父に無理矢理連れていかれて、そこで俺も対人戦をやってから警察の間では俺は敵にしていけないって話になったらしい。ある意味要注意人物にされちまったわけだ」

 

「それだけでそうなるって、一体どんなことしたのよ……」

 

「ちなみに何回戦ったんですか?」

 

「えっと、確か十回だな」

 

「戦績は?」

 

「全勝したな。ほとんど瞬殺してた」

 

「そりゃ警察でもそうなりますって」

 

「ま、俺の昔話はこれで終いだ。さっきの奴のせいでだいぶ時間かかっちまったからな。そろそろ帰らないと」

 

「そうですね。零君はこのまま帰っていいですよ。私は自分で帰りますので」

 

「却下。そんな事をする俺だと思ってるのか?」

 

「思っていませんよ」

 

「なら、早く行くぞ。てなわけで紗夜を送ってから俺も帰るわ」

 

「さすが長くいただけあってお互いのことをよくわかってるわね……わかったわ。さっきは守ってくれてありがと。また後でちょっとアドバイスもらうかもしれないからその時はお願いね」

 

「おう、任せろ。じゃあ、またな!」

 

 

その後、零は紗夜を家まで送り届け、すぐに星光館に帰宅し門限ギリギリの帰宅で華恋とひかりと純那にこっぴどく怒られ、その数日後の警察からの連絡が華恋たち全員に聞かれており今度は全員から怒られる羽目になった零であったのだった。

 




お読みいただき、ありがとうございました!

今回はバンドリキャラをほぼ全員出させていただきました!喋っていないキャラもいますがそこはごめんなさいです。ましろのポジションはやっぱ従姉妹ですよね。ましろかわいい……。バイクに乗せるの誰がいいかなと考えましたが意外な一面を見せる紗夜をみたいというのをいただいたのでしてみました。RASの口調が全然わからない……。最後の部分なんですが、例え休日でも零にトラブルはつきものなんですよ。それでも圧勝はしますが。

さて、皆さんはスタリラでガチャってますか?自分は前回投稿した後に人魚姫のガチャを引いたら二回目あたりで見事に当てて学校別のガチャではシークフェルト限定をやる前のステップで烏天狗を当ててシークフェルト限定を引いたら酒呑童子と源義経とマッチ売りの三人が一気に出て絶好調!!と叫びましたね。後日のシーズン限定ガチャでラストの十連だ!と引いたらアマテラスの真矢様が当たってマジで絶好調!!となりましたね。

突然ですがアンケートをとるのでご協力お願いします。内容は新しい作品を投稿するのはどれがいいか、です。初のアンケートです。ご協力お願いします!

それでは以上、レリでした!


エンディング曲

ガールズバンド全員で『夢を撃ち抜く瞬間に』


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スタリラ編第一話


ライブ行きたいし映画早くやってくんないかな……。

どうも、レリです!

さあ、やっとスタリラ編の第一話が完成しました。

それでは、どうぞ!


第百回聖翔祭が無事終了して数週間が経とうとしていた。聖翔は第百回聖翔祭が終了したにも関わらず、相変わらず賑やかだ。そんな中、あのオーディションに参加した九人は次に行われる劇フェスに向けて練習していた。

 

 

「ねぇねぇ、次の劇フェスってうちとどの学校が出るんだっけ?」

 

「えっと、確か」

 

「凛明館女学校とフロンティア芸術学校とシークフェルト音楽学院の三つよ」

 

「どれも劇フェスにいつも参加している学校よ。特にシークフェルトは強敵よ」

 

「え、なんで?」

 

「シークフェルトには天才と呼ばれている生徒がいるからです」

 

「そんなすごい人がいるの!?すごいね、ひかりちゃん!」

 

「うん、会ってみたいね。ところで、零は?」

 

「零君ならその劇フェスに参加する学校に向かっているよ。劇フェスについての情報とかを聞きに行ってるんだ。零君はバイクを持ってるからそれで回るって」

 

「私たち、そんなこと聞いてない……」

 

「レイちゃん、なんで何も言わずに行ったんだろうね……」

 

「えっと、零君は二人に言わないのはこの劇フェスのレッスンに集中してほしいからって言ってたよ」

 

「「……」」

 

「か、華恋ちゃん?ひかりちゃん?」

 

「……なら、仕方ないか」

 

「……その理由なら仕方ない」

 

 

この時、華恋とひかりを見ていた周りのみんなは二人の背後に般若の顔が見えた者や黒いオーラだけ見えた者がいたらしい。

 

 

「そういえば、シークフェルトだっけ?そこの天才の人の名前ってなんて言うの?」

 

「う~んと、なんて言ったかな?真矢ちゃんなら知ってると思うけど」

 

「え?天堂さん知ってるの!?」

 

「えぇ。知っています。彼女とは何度か面識があるので。その名は……」

 

 

 

ガラッ

 

 

真矢の発言を遮って、みんながいるレッスン室のドアが開かれ、一斉に見る。

 

 

「あら」

 

「シークフェルト音楽学院舞台俳優学科二年、雪代晶だ」

 

「同じく、鳳ミチルだよ!」

 

『え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!???』

 

 

突然の登場にみんなの驚きの声が聖翔に響いたのだった。

 

 

 

その頃、零は凛明館とフロンティアを回り、最後にシークフェルトに向かい、ちょうど着いた頃だった。

 

 

「さすが、お嬢様学校だ。門がすごすぎる。まず入れるかわからんな」

 

 

すると、校舎の方から先生らしき人物が歩いてくるのが見えたので待っているとやはり先生だったようですんなり入ることができた。その先生に生徒会室に向かってと言われ、場所を教えてもらいそこに向かう零。無事に生徒会室に着き、ノックするのに少し戸惑う。

 

 

「ええい、ここで立っているだけですごく不審者に見えてしまうかもだからな。まず女子高に男がいるだけでまずいしな」

 

 

 

コンコン……

 

 

 

『は~い、開いてるよ~』

 

 

 

ガチャ……

 

 

 

「失礼する」

 

「はいは~い……って、え?」

 

「やちよ?どうしました……か?え?」

 

「皆さん?え?」

 

「雪代晶と鳳ミチルはいないのか?」

 

 

生徒会室に入ると三人の女子がいた。零が入ったことで三人が固まっている。

 

 

「あ、え、えっと、お名前は?」

 

「ん?あ、まだ言ってなかったな。聖翔音楽学園舞台育成科、岡峰零だ」

 

「岡峰零って……聖翔の唯一の男子生徒!?」

 

「さっそく連れて来たんですね~」

 

「ん?ちょっと待て。連れて来た?なんのことだ?」

 

「雪代先輩とミチル先輩が今、岡峰さんがいる聖翔に行ってるんです」

 

「は?」

 

「二人は岡峰さんに用があって……」

 

「岡峰さんをここ、シークフェルトに編入させてほしいという話をしに行ってるんです。だから、お二人が連れて来たのかと思ったのですが……違いましたか?」

 

「そんな話聞いてないんだけど!?てか、聖翔に行ってる!?ちょ、ちょっと待っててくれ!華恋に電話してくる!!」

 

「あ、はい」

 

 

シークフェルトで零がその話を聞いてから少し巻き戻り、聖翔ではシークフェルトの二人が来たのだった。

 

 

「久しいな。天堂真矢」

 

「えぇ、お久しぶりです。雪代さん。ところで、今日はどうしたんですか?」

 

「ちょっとした話をしたくてな」

 

「話、ですか?」

 

「そうそう!こないだやった第百回聖翔祭で出演したこの学校の異例の編入生、岡峰零君のことでね!」

 

「零君の?」

 

「レイちゃんに何か用ですか?」

 

「お前が愛城華恋か」

 

「え、あ、うん。そうだけど」

 

「そして、神楽ひかり。第百回聖翔祭で主役を演じた二人は、岡峰零とどういう関係だ?」

 

「レイちゃんとは幼馴染だよ」

 

「ほう。ならあの目をしていたのは当然か……」

 

「雪代さん。零君に用事って……」

 

「あぁ、今日はあの岡峰零を我が校シークフェルト音楽学院に特別編入させてほしいという話をしに来た」

 

「え、レイちゃんを……」

 

「シークフェルトに、編入……?」

 

『えぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

「ちょっと待ってください雪代さん。なぜそのような事を?」

 

「お前でも慌てるんだな、天堂真矢」

 

「晶、説明不足!実はね、第百回聖翔祭を観て驚いたの。理由は第99回聖翔祭に比べて明らかにレベルアップした舞台だったからだよ。そこまでレベルアップしたのはきっと特別編入した異例の男子生徒、岡峰零君が関わっているって考えたんだ」

 

「確かに零君はいろいろ私たちをサポートしてくれましたが、私も感じましたがあなた方がそこまで言うぐらいに素晴らしかったのですか?」

 

「私が見ても素晴らしい舞台だった。だからこそ私たち『気高き君(エーデル)』に彼が入ることはできずとも支えてくれれば私たちも素晴らしい舞台を作れると思ったからだ。それで、肝心の彼はどこにいるんだ?」

 

「零君は今劇フェスに参加する三つの学校に行っています。おそらく今はシークフェルトにいるかと」

 

「なんだと」

 

「あちゃ~行き違いになっちゃったか」

 

「ミチル、すぐに戻るぞ」

 

「ちょ、晶、早すぎるよ。もうちょっと話していこうよ」

 

「彼がシークフェルトにいるのなら急いで戻らなければならない。早くしろ」

 

「戻ってもまた行き違いになると思うよ?だからここで待っていれば」

 

 

バンッ!!

 

 

『!?』ビクッ!

 

 

突然、レッスン室のドアが勢いよく開かれ全員がビックリしてそこを見る。そこには、息切れした零が立っていた。すると、零は華恋を見つけると華恋に向かって歩き出す。

 

 

「れ、レイちゃん!?」

 

「か~れ~ん~!!」

 

「えっ!?」

 

「何度も電話したのになぜ出ないんだ!!」

 

「ほ、ほへんなさい~(ご、ごめんない)」

 

 

華恋の頬をひっぱって怒る零。華恋は頬をつねられて謝っているがいまいちなにを言っているのかわからない。充分に華恋の頬をつねった零は手を話して改めて周りを見る。華恋は赤くなった頬をさすっている。

 

 

「ほらね、晶。すぐに戻らなくて良かったでしょ」

 

「なんの話だ?」

 

「君がシークフェルトに行ってるって聞いてすぐに戻るって晶が言うからまた行き違いになるよって話。それで、君が岡峰零君?」

 

「あぁ、その通りだ。で、シークフェルトの生徒会長様と副会長様が直々にここに来るのとはな。だいたいの話はむこうで聞いてる。俺をシークフェルトに編入してほしいって事だよな?」

 

「話が早くて助かるな、岡峰零。その様子だと理由も知っているな?」

 

「あぁ、鶴姫から聞いた」

 

「ふっ、そうか。では、その話を検討してほしい。いい返事が来ることを期待している」

 

「あ、晶待ってよ~!あ、私のことはミチルでいいよ!よろしくね、岡峰君♪」

 

「俺のことも零でいい。よろしくな」

 

「ミチル、早く行くぞ!」

 

「はいはい!じゃあまたね!」

 

 

雪代晶と鳳ミチルが去っていき、静かになるレッスン室。零はレッスン室のドアを見たまま考え込んでいることが周りからは固まっているにしか見えない。

 

 

「レイちゃん……」

 

「さて、どうしたもんかな……」

 

 

 

ポーン……

 

 

 

「ん?」

 

『舞台育成科2年A組岡峰零君。理事長がお呼びです。至急、理事長室にお越しください』

 

「零が、呼ばれてる……零?」

 

 

校内放送があり、零が呼ばれていることで全員が零を見てさっきのことだとすぐに頭に浮かびながら心配そうにするが当の本人は真面目な顔でスピーカーを見ている。

 

 

「……校内放送……この学校こんなのあったのか」

 

『あるよ!!』

 

 

真面目な顔でのボケに全員がツッコんだのであった。

 

 

 

ー理事長室ー

 

 

コンコン……

 

 

『どうぞ』

 

「失礼します。舞台育成科岡峰零です」

 

「やっほ~零君。久しぶり!」

 

「えぇ、お久しぶりです。遥香さん」

 

 

今回初登場である聖翔音楽学園理事長『入谷遥香(いりやはるか)』さん。この方が零の母親の理亜と同じ聖翔の卒業生である。殺陣は理亜よりもはるかに上だと聞く。無論、零とも何度か面識がある。

 

遥香は赤い瞳で零を見つめ、先ほどまで笑顔だったがすぐに真剣な顔になる。

 

 

「零君。ここに呼んだのはさっきのことでお話があるの」

 

「俺をシークフェルトに編入させるかさせないかの話、ですよね」

 

「その通りよ。まさかあの二人が直接来るとは思っていなかったけど……」

 

「俺も直接来るとは思わなかったですよ。で、どうするんですか?」

 

「そうねぇ。私的にはシークフェルトに行っていろいろ勉強してきてほしいって思ってるけどあの子たちが何て言うか」

 

「まあ、間違いなく拒否るでしょうね。でも、俺にとっては舞台で有名なシークフェルトに編入って話は悪くないと思っています。何よりあの天才がいる学校だからいろいろ学べるものもあります」

 

「……行くの?」

 

「……行こうかなとは思っています」

 

「……そう。ならあたしは何も言わないわ。存分に学んできなさい。ただし条件があります」

 

「条件?」

 

「向こうの人にも話すけど、たまにはこっちに戻ってきなさい。あなたは聖翔の生徒なんだから」

 

「わかりました。でも……」

 

「なに?」

 

「本当に行ってもいいんですか?本来俺がここに編入した理由が……」

 

「手伝いだから。それなのにここから離れてもいいのかってことでしょ?」

 

「はい」

 

「ホント零君は真面目でいい子ね。気にしなくていいわよ、次に零君に手伝ってほしいのは劇フェスだからね。シークフェルトも劇フェスに参加するんだし集まってやる時に力を貸してくれれば」

 

「それでいいのならわかりました」

 

「存分に学んできなさい」

 

「行ってきます。それでは失礼します」

 

 

 

そして、零は理事長室を出て華恋たちがいるレッスン室に向かっていた。

 

 

「って言ったのはいいけどマジであいつらにどう説明しよう……」

 

 

そう呟きながらレッスン室につき、ドアを開ける。が、そこには誰もいない。

 

 

「……どこ行った?」

 

 

誰もいない静かなレッスン室に零の声は妙に響いた。

 

 

 

 

ー地下劇場ー

 

 

 

「……なに、これ」

 

 

誰が発した言葉か……。目の前の状況に驚く言葉で全員が思った言葉である。

 

 

地下劇場に集った24人の舞台少女たち。彼女たちの前には謎の少女、『える』が現れ、舞台『スタァライト』が消えると言うことを聞かされた。その話が終わると今度は人間ではないナニカが彼女たちの前に現れる。そのナニカをえるは『コロス』と呼び、スタァライトを消すために現れたとされているというが、いかんせん数が多い。えるもここまで大量に出現したことはないという。コロスは各々の武器を構え、舞台少女たちに襲いかかり華恋たちも自分たちの武器でコロスと戦っていく。

 

 

どれくらい経ったのかわからないが少なくとも結構な数のコロスを彼女たちは倒した。だが、コロスが減っているというのは見受けられない。彼女たちも消耗が激しく、防戦一方だ。とうとうコロスが彼女たちを包囲し、追い詰める。やられる……。誰もが思ったが華恋とひかりだけは信じている。ここにはいない大切な幼馴染がきっと来る……と。

 

 

すると……。

 

 

 

ーーーー邪魔ーーーー

 

 

地下劇場に声が響く。誰の声なのかと彼女たちは辺りを見回すがコロスしか見えない。だが、コロスの胴体に一つの光が横に疾ったと思ったらたくさんいたコロスが全て消滅した。

 

 

突然のことで状況が飲み込めない彼女たちだが、聖翔のあの九人だけは自然と笑みが浮かんでいる。コロスが消滅した際に出る煙のほうから声が聞こえ、彼が姿を現す。

 

 

「たく、いくら一緒にいなかったとはいえ置いていくことないだろうが」

 

 

漆黒の剣と紅い剣を背中に背負っている鞘にしまいながら愚痴る彼、零である。

 

 

「レイちゃん!」

 

「零!」

 

 

コロスが消滅してすぐに現れた零に華恋とひかりが駆け寄り、それに続いて聖翔のみんなが零に近づく。それ以外のみんなは何が起きたのか把握できずに固まっている。

 

 

「遅かったわね、零」

 

「これでも学校内をめっちゃ探したんだぞ。最終的にまさかと思って来てみたらこれだからびっくりしたわ。で、アレはなんだったんだ?」

 

「あれはコロスっていうみたい」

 

「コロス?言い換えれば物騒な名前だな。で、そのコロスがなんで現れたんだ?あんな奴はじめて見たぞ」

 

「アレはスタァライトを消すために現れたって言ってたよ。だよね?えるさん……えるさん?」

 

 

華恋がえるを見ると、驚きの表情をしたまま呆然と零を見ている。そう、彼女は忘れていたのだ。あのオーディションで参加していた十人目のことを。キリンからは聞いていたがまさかここまでとは思っていなかった。あの数のコロスを一瞬で消滅させたのだ。実力はここにいる舞台少女たちに比べると圧倒的に高いのが先ほどのやつでわかる。

 

 

「君がえるっていうのか?」

 

「え、あ、はい。私はえるといいます。あなたがあのオーディションの十人目の岡峰零さんですね?」

 

「そうだよ。で、これは一体どういうことでしかもなぜ俺に通知がきてなかったんだ?」

 

「最初の質問はコロスにスタァライトを消させないためにあなた方の力が必要でお呼びしました。後者は……」

 

「後者は?」

 

「……すみません、忘れていました」

 

「は?」

 

『え?』

 

 

えるの言葉で零と聖翔のみんながすっとんきょうな声をあげる。

 

 

「華恋、ひかり。俺は帰るからあとはがんばれ」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」

 

「待って」

 

「離せ!!忘れ去られていたのなら俺はお呼びではないはずだ!!だから帰る!!だから離せ、華恋とひかりと純那となな!!」

 

「レイちゃん落ち着いて!!」

 

「離さない」

 

「またあの数のコロスが来たら私たちでは倒せないわよ!!だから!!」

 

「零君に手伝ってもらわないとスタァライトがなくなっちゃうよ!!」

 

 

帰ろうとしている零に華恋とひかりと純那とななが必死に零を帰すまいとしがみついている。さすがの零でも四人がかりに押さえつけられるとなかなか動けないようだ。だが、零は少しずつ出入り口の方に向かって進んでいる。この光景は聖翔のみんなはなんか見慣れた感が出ているが他のみんなは呆然と見ている。

 

 

「あ、あの、岡峰零さん」

 

「なんだ!」

 

「あなたも私たちに協力してくれませんか?忘れていた身でありながら何を言っているんだって話ですが正直に言いますとあなたがいてくれるだけですごく心強いです。だから、お願いします!」

 

「ほら、えるさんもそう言ってるんだし!」

 

「……」

 

 

零は頭を下げて必死に願っているえるを黙って見つめている。ちなみに零が動くのをやめたのでこの隙にとしがみついていた四人がまた帰ると言い出すと大変なのでひかりが零の背中に回り羽交い締めをしてフリーになった両腕を華恋と純那が掴み、ななは夜天の剣と紅華の剣の柄を掴んで拘束する。舞台少女四人に拘束されている男子に必死に頭を下げている少女を見るとなんともいえない光景である。

 

 

「零は私たちに協力してくれないの?」

 

「いや、流石にここまでされて突き放すほど愚かではないよ。わかったよ、手伝う。だから拘束を解け。帰らないから」

 

『わかった』

 

「ありがとうございます」

 

 

拘束を解いてもらい、拘束で若干固まった体をほぐそうと肩と首を回すとポキッと音が鳴る。地下劇場だからその音が妙に響いてしまう。

 

 

「レイちゃん、今骨鳴ったよね?」

 

 

華恋の問いかけでシンと静まりかえる地下劇場。零は何も言わずにまた首を回すとポキッとなる。

 

 

「二回鳴ったな」

 

「いや二回目思いっきりわざとだよね!?」

 

 

零の言葉に華恋がそう返すと、何人かが耐えきれなかったのか笑だしてしまう。その中にはえるもいる。

 

 

「笑いどころじゃねぇぞ~」

 

「笑わそうとしてきた人はだれよ、フフッ」

 

「和ませるにはいいだろ。それより、お出ましだぞ」

 

 

零が後ろに向かって親指を向けると何もない場所に突如コロスが出現する。それを見た舞台少女たちは笑っていた顔からこれから舞台が始まると顔になり、武器を構える。零も後ろに振り向きながら二本の剣を引き抜く。その様子にえるは驚いていた。自分でもわからないのに彼はコロスが出現するのをわかっていた。自分では感じないナニカを彼は感じているのだろうか。そう思わずにはいられないえるである。

 

 

「さっきのよりかは数は少ないけど……」

 

「これも大変かもね」

 

 

華恋の呟きに純那が続ける。純那も矢を三本構えていつでも放つことができるという表情で零を見つめる。零もそれに気づいて頷く。

 

 

「数が多けりゃいいってもんじゃないさ。お前らは少しずつコロスを倒していけ。俺はこいつらの中央に飛び込んでそこから攻める。純那、合図で頼む」

 

「わかったわ」

 

「え、中央ってどうやって行くの?零君」

 

 

零の指示に聖翔メンバーは武器を構えて戦闘態勢に入る。が、聖翔以外のメンバーが零の指示に困惑する。代表して聞いてきたのがミチルだ。

 

 

「ん?そのままの意味だが」

 

「そのままって……え?」

 

「コロスが動き出したよ!」

 

 

華恋の声で聖翔以外のメンバーがコロスに視線を向ける。戦闘、レヴューが始まる。

 

 

「さぁて、この短時間で鬱憤が貯まったんでな。人間ではないから思う存分剣を振るうことができるし……憂さ晴らしさせてもらうぞ!!」

 

『(あ、やっぱり怒ってたんだ)』

 

 

先ほどのやつでだいぶ零は怒っていたらしく、次々に出て来るコロスに向かって殺気が放たれる。その零の言動で舞台少女たちは思っていることが一致した瞬間だった。

 

 

「純那!!」

 

 

 

ビシュッ!!

 

 

 

零の合図で三本の矢を構えていた純那がコロスにめがけて放ち、三体のコロスに矢が刺さり消滅する。

 

 

「突撃!!」

 

 

零が叫ぶと聖翔メンバーが走りだし、遅れて他のメンバーも駆け出す。すぐに零も走りだし、華恋とひかりができるだけ道を作りだし、そこを駆け抜けて一気に跳躍しコロスたちの中央に飛び込んでいった。

 

 

「本当に飛び込んでいった!?」

 

「あはは!面白いなぁ、零君は!」

 

 

零の行動を見ていた栞が驚き、ミチルは笑っていた。けど、すぐに真剣な表情に戻り栞に声をかけてコロスを一体ずつ倒していく。栞もコロスを倒していく。

 

 

 

 

 

ここに彼と彼女たちにとって大切なもの、スタァライトを守るためのレヴューが始まったのだった。

 

 





お読みいただきありがとうございました!

さて、今回リクエストにお答えして零がシークフェルトに編入です。次回はスタリラの日常編みたいなのを書くかこのままストーリーが追加される前のラスボスのコロスを倒してから日常編を書くか迷ってます。こっちがいいという方は感想まで。リクエストも待っています。できる限り答えていくつもりなので!

さて、ちょっとここで零に登場してもらいましょうか。

零「どうも。作者よ。なんで俺は呼ばれたんだ?」

ん?ちょっと聞きたいことがあってさ。

零「ふぅ~ん。で、聞きたいことってなんだよ」

感想を聞きたくてさ。どうだった?

零「は?いや、何が?」

とぼけなさんな。ひかりたちに羽交い締めされたでしょ?

零「それがなんだよ」

ひかりが背中に回って羽交い締め、つまり……む『ドスッ!!』ぐはっ!!

零「ひかり!?」

ひ「……それ以上言ったら、わかってるよね?」

あの……ひかりさん……あなたに刺されるの二回目なんですが……。

零「刺されて生きてるあんたは化け物か?」

ひ「……あれでどうこうなる作者じゃない。それに別のところではもっと酷いめにあってる」

零「作者は大変だな。で、ひかり」

ひ「……なに?」

零「あの羽交い締めってさ……」


チャキ……


零「……」

ひ「……なに?」

零「……なんでもない」

おいこらちょっと待て、私を差し置いてなに二人で進めてんだ。

ひ「……作者」

はい?

ひ「…………後で今回のようなやつをまたよろしく」

合点でい。

零「なんの話だ?」

てめぇのことについてだよこの野郎!!ひかりに羽交い締めされやがって!!今回のやつめっちゃ眠いときに書いてた部分もあって自分でなに書いてるんだろって思いながら書いたんだぞ!!しかもライブもねぇし映画もいつやるのか全くわかんねぇし!早く映画観たいんだよ!!

零「知るか!!いきなりの逆ギレだなおい!!つーか眠いのなら寝ろよ!!俺に怒鳴っても仕方ねぇだろが!!」

はい、てことで今回はこれで終わりにしましょうか。

零、ひ「急に戻った(な/ね)」

そこ、黙ってようか。さて、今月のガチャは花嫁ジューンを当てるのにめっちゃ必死でしたよ(笑)。当たったからすごい安心したけどね。一年経ってようやく花嫁ジューンのひかりに出会えた……。よし、次はアマテラスのひかりだな。スタァを貯めなくては……。


それでは長くなってしまいすみません!コロナに負けずに頑張っていきましょう!!レリでした!!


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スタリラ編二話 日常Ⅰ

え……嘘でしょ……?前回投稿してもう三ヶ月……?

どうも、レリです。

今回は前回言っていたようにスタリラでの日常ですね。はたしてこれは日常と言えるのかわからないって思いながら書いてましたが……。

それでは、どうぞ!


[ーレポートー

 

 

シークフェルト音楽学院に編入生が来て一週間が経った。その人は聖翔音楽学園に編入していた岡峰零センパイ。センパイが編入してきて私たち『気高き君(エーデル)』にレッスンを見てもらい、以前よりも結構レベルアップしていることが自分でもよくわかるほどのセンパイの凄さ。流石、あそこまでの第百回聖翔祭を作り上げた人だと思います。それに、たった一週間でこの学校の生徒全員と仲良く話しているのを見た時はすごく驚いた。それもセンパイの人柄の良さ、なんでしょうね。

 

 

書記 鶴姫やちよ]

 

 

「やちよ~?」

 

「なんですか?ミチルセンパイ」

 

「零見なかった?」

 

「零センパイですか?私は見てないですね」

 

「零ならレッスン室に行ってるぞ。レッスン室を貸し切りにしてな」

 

「貸し切り?なんで?」

 

「さあな」

 

「なら、レッスン室に行きましょうよ。そこで零センパイがなにをしているのか気になりますし」

 

「そうだね。じゃ、行こうか!晶はどうする?」

 

「……私も行こう」

 

「あれ、意外と素直に言うね。てっきり行かないって言うかと思っていたら」

 

「私も気になるからな」

 

「では、行きますか♪」

 

 

晶、ミチル、やちよが生徒会室を出てレッスン室に向かっている途中、遅れて向かおうとしていたメイファンと栞に会い、二人も同行することになった。そしてレッスン室に到着し、扉には貸し切りと書かれた紙が貼られており扉は閉ざされている。窓にもカーテンがひいており廊下側から中を見ることはできない。

 

 

「ずいぶん徹底してるね」

 

「ここまで隠されると余計に気になっちゃいますね♪」

 

「やちよ、どこからメモ帳を出したのですか?」

 

「あの、ここまでだとそんなに見られたくないってことなんじゃないんでしょうか。諦めて生徒会室に戻りましょうか?」

 

「鍵は開いているようだな」

 

「え、雪代先輩?」

 

「晶がこんなに興味をしめすのなんてなかなかないけど、そんなに気になるの?」

 

「……いや、まあ、確かに気にはなっている」

 

「わあ、素直……これも零と関わってきたからなのかな?」

 

「ミチル、今何か言ったか?」

 

「何も言ってないよ?じゃあ、そっと扉を開けて隙間から見ようか」

 

「え、みなさん?」

 

「栞は見ないのですか?」

 

「み、見ます……」

 

 

扉を少しだけ開けてレッスン室を覗き込む五人。端からみたら生徒会のメンバーがなにをしているのかと思うところである。

 

 

「いたいた」

 

「あれ、零センパイがいつも持ってるやつですよね」

 

 

零はレッスン室の窓際の壁に布に包まれている二つの物を立て掛けて布を取ろうとしているところだった。

 

 

「いつも布に包まれてるから中身がなんなのかわからないやつだよね。なんか聖翔のみんなは知ってるみたいだったけど」

 

「なんだと。彼女たちが知っていて私たちが知らないのは許せないな。問いただすか」

 

「みなさん、布が取れます」

 

 

栞の言葉で話していた晶たちが黙って見つめる。零が布を取って中身の物の姿が露になる。それを見て全員が絶句する。

 

 

「なに……あれ……」

 

「黒い剣と……」

 

「紅い剣……?」

 

「まさか……本物……?」

 

「問いただす必要性がより出てきたな」

 

 

零は二本の剣を背中に担ぎ、剣を引き抜き構えに入る。そして、そこに敵がいるかのように剣を凪払っていく。その動作で零がいつも巻いているマフラーが舞っているかのように見え、とても綺麗である。

 

 

「綺麗……」

 

 

誰が言ったのか……わからないぐらいに彼女たちは見惚れている。

 

 

一通り終わったのか、紅い剣を鞘に閉まってレッスン室の奥に歩いていく零。廊下から覗いている彼女たちからは見えない位置に行ってしまう。

 

 

「み、見えない……」

 

「これ以上ドアを開けるわけにもいかないですよ」

 

「バレますしね」

 

「もうバレてるぞ」

 

 

ガラッ!

 

 

「っ!」

 

『きゃっ!?』

 

 

突然勢いよく扉が開かれ、覗いていた五人(晶以外)が声を出しながらレッスン室に入るように倒れる。

 

 

「たく、始める直前に視線を感じたからなんだろうかと思ってチラ見したらまさかお前らが覗いているとはな」

 

 

いまだに倒れている五人の目の前にしゃがみながら言う零。

 

 

「い、いつの間に扉の前に移動を……」

 

「見えなくなったの一瞬だよね……?」

 

「移動速度が速すぎるぞ、零」

 

「んなことはどうでもいい。晶、本来お前は来ないか止めるのどちらかだろ。栞は衝動に負けたか」

 

「す、すみません……」

 

「……私だってお前のことは気になっているんだぞ」

 

「晶~それ、変な捉え方されるよ?」

 

「……///」

 

「(あれ、まさか晶……)」

 

「ところで零センパイ。それ、なんですか?」

 

「これか……まあ、見られた訳だし今さら隠すことはないか。これはだな……」

 

 

零は五人に夜天の剣と紅華の剣のことを細かく説明した。案の定五人は驚いていた。

 

 

「まさかこんなに綺麗な剣が日本にあったなんてね~」

 

「それの所有者が零なのもすごいがな」

 

「あたしとしてはもっと詳しく教えて欲しいですね」

 

「メモ帳出してもこれ以上喋る気はないぞ、やちよ」

 

「残念ですね」

 

「ですが、零さん以外誰も持てないなんて本当なんですか?もちろん零さんを疑っているわけではありません!」

 

「確かに私もそこが気になっています」

 

「メイファン、栞、持ってみればわかるだろ」

 

 

そう言って夜天の剣と紅華の夜を壁に立て掛ける零。だが、何気にメイファンと栞が持ちやすいように調整している零である。

 

 

「いいんですか?」

 

「いいよ。体験した方が早いだろ」

 

「確かにそうですが……わかりました。では、失礼します」

 

 

メイファンが夜天の剣の柄を握り、栞が紅華の剣の柄を掴んで持ち上げようとする。が……。

 

 

「……え!?」

 

「ほ、本当に、持ち上げられない……!?」

 

「メイファン、持ち上げられないの?」

 

「やちよもやってみてください!」

 

「え?いいけど」

 

「栞、ミチルと交換して」

 

「あ、はい!どうぞ!」

 

「ありがとう♪じゃあ、やちよ。せーので持つよ」

 

「了解です♪」

 

「いくよ。せーっの!!」

 

 

舞台では自身の丈ほどの長さがある大剣を振るうミチルだが、びくともしない。

 

 

「……全然、ダメですね」

 

「引きずることもできないなんて……次、晶……」

 

「ミチル、大丈夫か?」

 

「た、たぶん大丈夫……」

 

「無理はするなよ。では、私もやらせてもらうぞ。零」

 

「どうぞ」

 

「いくぞ…………ダメか」

 

「本当に誰も持てないんですね」

 

「まあな。そういうことだからこの二本はずっと俺が持っているんだよ。真剣だから布で包まなくちゃならないけど他の人からしたら竹刀か木刀だと思うだろうからそうやってカモフラージュしてる」

 

「なるほどな。確かに私も最初は竹刀かなにかかと思っていたからカモフラージュとしては正解だな」

 

「すっかり騙されてたしね~」

 

「すぐにバレたらカモフラージュとして意味ないだろ。さて、と……お前ら、これからは暇だよな?」

 

「え?暇じゃないよ。生徒会としてやる仕事がまだたくさんあるし」

 

「それならここに来る前に俺が全部片付けた」

 

『えっ!?』

 

「ほう……。なら暇、ということになるな。ただ、私としてはレッスンをしたいと思っているが」

 

「安心しろ。これからレッスンをやる。殺陣のな」

 

「え、た、殺陣、ですか?」

 

「十分待つ。全員着替えて武道場に来い。殺陣のレッスンを叩き込んでやる」

 

「えっと~零?なんで殺陣なの?」

 

「決まってるだろ。見させないようにしていたのに覗き見した罰として。『気高き君』としての殺陣、期待しているぞ」

 

 

そう言って零はレッスン室を後にして五人だけが残り、静まり返るレッスン室。

 

 

「零の殺陣……一度見てみたいと思っていたから好都合だと考えるか」

 

「いや、あの、晶?なんでそんな前向きな考えができるの?」

 

「零先輩、完全に怒ってましたよね?」

 

「とりあえず、着替えて向かいますか。時間に遅れたら……」

 

「あれ以上に怒りそうですし……」

 

「って!確か十分って言ってたよね!?早く着替えて行かないと十分で武道場に行けなくない!?」

 

「い、急ぎましょう!!」

 

 

慌ただしくレッスン室を出て着替えて武道場に向かった五人。武道場に着き、扉を開けると零が夜天の剣と紅華の剣を置いて正座をして精神統一をして待っていた。

 

 

「待たせたな、零」

 

「おう。じゃ、お前らはこれを使え」

 

「え、それって……」

 

 

零が指差したところには五人がすごく見たこともあるような形の五本の武器が置かれていた。

 

 

「これは……」

 

「それらはお前たちがあそこで使っていた武器、さすがに完全再現は出来なかったがあれに酷似しているのを俺が作った」

 

 

「え!?こ、これを、作った!?」

 

「こ、これを使って殺陣を?」

 

「零センパイはなにを使うんですか?」

 

「俺はこの二本を使う。五人がかりでこい。聖翔で教えた殺陣をお前らにも教えてやる」

 

「そ、その殺陣って……」

 

「あいつらは結構キツイって言ってたな。唯一ついてこれたのは双葉だけだった。さあ、始めようか!!」

 

 

その後、武道場前を通りかかった生徒たちが今までに聞いたことがないすごい音がしていたのを聞いたと報告があったらしい。

 

 

 

ちなみに零が道場を出た後、武道場の中には晶が武器を畳に突き立ててそれを支えにして立ってはいるが疲れているのがわかる。他の四人は全員畳の上で横になってゼェゼェと息をしていた……。

 




お読みいただきありがとうございました!


さて、皆さん、映画は観ましたか?私は公開した時に劇場を調べたら近所でやってないってわかってふざけんなぁっ!ってなりましたが劇場追加と出て見たら近所でやるんでよっしゃぁ!って思って公開日を調べて金曜日だったので仕事帰りに行くか!って思ってふと気づいて日にちをよ~く見たらあれ、この日、富士急なんだけど。ってなりました。まさかBanG Dream!の8thライブとかぶっているとは思いませんでしたね。一日目が現地だったんで。楽しかったな~。で、結局映画は四回観ました。


次回はスタリラの二周年日に出そうと考えています。二周年記念回として、です。

さて、ここで皆さんにちょっとした報告を。今、新作品でラブライブ!を執筆中なんですけど、もう一作品執筆しようと思います。満足に投稿できてないのにまた増やすのか、やめろやって思う方がいるかもしれませんがこれは、仕方ないんです。だって……衝動には勝てないんだもん!!

キリン「わかります」

……失礼。ということで、予定作品はアサルトリリィです!書いている人いるのかなって見たらいるんだって思ってこれは書きたいって思いました。内容はこの作品と同じようにオリ主を出します。今はまだそれだけの情報しか出せませんが。完成して投稿したら皆さん、ぜひ見てください!よろしくお願いいたします!


まあ、ぶっちゃけアサルトリリィかBanG Dream!で迷ってたんですよね……。


それでは、レリでした!


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二周年記念!

こんにちは!レリです!


やっと書き終わったぁ!三日も遅れるとは……。


長話はやめです!それでは、どうぞ!


「はぁ?」

 

 

シークフェルトの生徒会室で零の間抜けな声が妙に響く。その声で生徒会メンバー、晶たちが零に目を向ける。五人に見られる中、零は構わず電話をしている。電話の相手は……。

 

 

「もう一度言ってくれるか?華恋」

 

『だから!昨日、ばなながくじ引きをしたら温泉旅館の招待券を当てて、それが十人までだから私たちとレイちゃんも行こって言ってるの!』

 

「温泉旅館、か。よく当てたな」

 

『ばななもびっくりしてた!』

 

「だろうな」

 

 

電話の相手は華恋だ。華恋から皆で温泉に入りに行こうというお誘いの電話だったのだ。電話がきて出るとすぐに温泉に行こ!と華恋が言ったのであのような声が出たのだ。

 

 

『で、行ける?』

 

「どうだろうな。こっちもわりと忙しいし」

 

「行ってもいいぞ」

 

「行っていいよ?」

 

「行ってきて大丈夫ですよ!」

 

「こちらは大丈夫です」

 

「聖翔の皆さんと温泉旅館、楽しんできてくださいね~」

 

『大丈夫みたいだね!』

 

「まさか全員に言われるとは……」

 

『じゃあ、旅館の場所はメールで送っておくから!あ、今日から旅館に行くから!』

 

「おい、聞いてないぞ。華恋」

 

『じゃあ、待ってるね!』

 

「おい……切りやがった。いいのか?晶」

 

「問題ない。正直、私たちは零にどうやって休んでもらおうかと話し合っていたからな」

 

「は?そんな事話してたの?」

 

「だってここんとこずっと働いてるじゃん、零。このままだといつか零でも体を壊すって心配してどうやって休ませるか悩んでたんだから」

 

「待って?今、休ませるって言った?え、強制的に休ます気だったの?」

 

「そうでもしないと休まないって聞いたので」

 

「待てメイファン。聞いたって誰から聞いた?」

 

「愛城さんと神楽さんと……」

 

「星見さんと大場さんから、ですね」

 

「多すぎない?てかあいつらだけじゃなくて純那とななもか……」

 

「ということで零センパイは今すぐ旅館に行って休息してきてください♪」

 

「へいへい。じゃ、悪いな」

 

「気にせず休んでこい」

 

「行ってらっしゃい☆」

 

「行ってくる」

 

 

零は校舎から出て駐輪場に停めてある自分のバイク(新しいバイク)にまたがり、一旦寮に戻って準備をし終え、向かおうとすると華恋からメッセージが届き、旅館までのマップが記載されていた。

 

 

「ここからだと地蔵通りを通ってからの方が早いな。よし、行くか!」

 

 

エンジンを吹かし、旅館に向かう零。途中、零が言った地蔵通りとは、彼女たちがいる地域だ。少し走ると地蔵通りに入るのでそこを走っていると地蔵通り由縁のお地蔵様が祀られている場所の前を通る零。そこにデカイバスが停まっていて彼女たちがいたことに気づかずに……。

 

 

 

―別視点―

 

 

 

バイクのエンジン音がして前の道路を見ると一台のバイクが走っていく。それを見て、見たことないバイクだったけど見覚えがあるような感じがした。運転してた人の顔はフルフェイスだったからわからなかったけど……できれば前を通ったのは彼であってほしくてさらに欲を言えば今から向かう場所に彼も向かっていてほしいと思いながらバイクが行った後をずっと見ていた。

 

 

「なにをしているの?早く乗るわよ、リサ」

 

「あ!ごめんごめん、友希那!」

 

 

 

―視点終了―

 

 

 

「……まさかあんなところで事故ってるとは思わなかった」

 

 

零は旅館にはたどり着けたが途中の道路で事故が発生しており、混雑していて予想よりも遅い到着となった。旅館の駐車場にバイクを停め、旅館の入口に行くとこの旅館の利用客が書かれている看板を見ると[聖翔音楽学園御一行様]と書かれており、他にも[Pastel*Palettes御一行様]と[地蔵通りリフレッシュ会御一行様]がある。

 

 

「パスパレが来てるのか。あとリフレッシュ会って婆さんたちだよな。見かけたら挨拶しておくか」

 

 

零は着替えが入っているリュックと二本の剣を持って旅館の中に入る。

 

 

「すみません!遅れた者なんですが!」

 

「あ、はーい!少々お待ち下さい!」

 

 

零が旅館の従業員を呼ぶために少し大声を出して見るとすぐに返事があったため、待つ。すると、綺麗な和服姿の女性が奥から歩いてくる。

 

 

「ようこそいらっしゃいました。聖翔音楽学園御一行様方から一人遅れていると聞いています」

 

「はい、すみません。途中事故が発生していて遅れてしまって。聖翔音楽学園の岡峰零です」

 

「私はこの旅館の女将の柊 雫と申します。では、部屋にご案内いたします」

 

「よろしくお願いします」

 

 

まさかの女将か、と零は思いながら女将の柊さんの後をついていく。向かいながら女将とこの道中のことなどを話ながら行くと、零の視界の端に一瞬茶髪が見え、立ち止まって見るとそこには誰もおらず、気のせいだろうと女将の後をついていった零であった。

 

 

「こちらの部屋でございます」

 

 

案内された部屋の前には『桜の間』と書かれた札がある。

 

 

「わざわざありがとうございました」

 

「いえ、それでは私はこれで。この旅館の名物は壺湯ですので良ければそちらをご堪能ください。それでは、ごゆっくり」

 

「はい、ありがとうございました」

 

 

女将が去った行き、零は部屋の襖を開けて中に入ろうとした瞬間急いで襖を閉める。

 

 

『なんで閉めちゃうの!?』

 

「それはお前らがいるからだろ!?なんでこの部屋にいるんだよ!!」

 

『私たちと零は同じ部屋だから』

 

「はあっ!?ちょ、おい!!」

 

 

いきなり襖が開かれ、中に強制的に入れられる零。中にいたのは華恋とひかりの二人だ。

 

 

「待ってたよ!レイちゃん!」

 

「遅い」

 

「いやだって途中事故ってて混んでたんだから仕方ないだろ。とりあえず、俺は部屋を出るからな」

 

「女将さんには話は通してあるから変えることはできないよ」

 

「やりやがったなお前ら……」

 

「最初から拒否権はないよ?」

 

「最近お前ら俺に対してなんか酷くねぇか?」

 

「こっちにも帰ってくるからって言っておきながら全然帰ってこない零が悪い」

 

「シークフェルトでも忙しいんだよ。俺が見てなくちゃあいつら無理するし」

 

「それはレイちゃんもでしょ?」

 

「……さて、なんのことかな」

 

「はぐらかさないで」

 

「シークフェルトの雪代さんたちから相談されてたんだよ?どうやったらレイちゃんを休ませることができるのかって」

 

「聞いたよ。んじゃ、せっかく来たんだ。温泉入りに行こうぜ」

 

「……混浴はないよ?」

 

「誰が一緒に入ろうって言ったっ!!」

 

 

温泉に入るために準備をして三人は部屋を出て廊下を歩いている途中何か大声が聞こえ、気になったので大声がした方向に向かう三人。そこは、この旅館の渡り廊下のような場所で椅子が置かれておりそこに二人の女子が座っていた。

 

 

「……なぜ、お前らがいる?」

 

「え、零?なんで零がいるの!?」

 

「零さん。お久しぶりです」

 

「あれ?リサちゃんだ!」

 

「と、知らない人」

 

「華恋とひかりも!?あれ、まさか聖翔で来てたの!?」

 

「たまたま友人がくじで当ててな。それで来たわけだ。で、なんでリサとレイヤがいるんだ?あとさっきこの辺で大声が聞こえたが」

 

「あ~、アタシたちは長老さんたちの代わりで来たんだ。出発直前で全員ぎっくり腰になっちゃって」

 

「それでこの旅行がキャンセルできなくて町内の私たちに代わりに行ってきてって親から言われたんです」

 

「ぎっくり腰とはまた災難な……」

 

「あはは……。で、さっきここで大声出してたのは有咲だよ」

 

「有咲が?なんでまた?」

 

「私がミュージックスクールのことを話したんです」

 

「なるほど。それで恥ずかしくなったってことか」

 

「当たり」

 

「零、そろそろ紹介して」

 

「おっとすまん。リサは知ってるだろ?こっちがガールズバンドの一つのRAISE A SUILEN、通称RASのベースボーカルのレイヤだ」

 

「初めまして、本名は和奏レイです」

 

「私は愛城華恋!よろしくね!」

 

「神楽ひかり。よろしく」

 

「はい」

 

「レイヤは後輩だぞ」

 

「え!?そうなの!?大人びてるからてっきり同い年かと思った!」

 

「私も」

 

「よく言われます」

 

「リサ、あと何人来てるんだ?」

 

「ポピパとアフロとパスパレとアタシたちとハロハピが全員で」

 

「RASは私とますきとロックの三人です」

 

「モニカは全員忙しいみたいで来てないよ」

 

「多いな。よくもまぁ、ここまで誰とも会わなかったな」

 

「ところで零たちは温泉に入りに行こうとしてたの?」

 

「そうだよ。大声が聞こえたからこっちに来ただけだ。まさかお前らがいるなんて思ってなかったが」

 

「あはは、アタシも零と会うなんて思わなかったよ。それより温泉行ってきたら?アタシたちはまだここで話してるから」

 

「あぁ、そうするよ。じゃ、また後でな」

 

「じゃあね、リサちゃん、レイさん!」

 

「また」

 

「またね~」

 

「ごゆっくり」

 

 

リサとレイヤから別れて再び温泉に向かう零たち。

 

 

「まさかこんなところで会うなんてね」

 

「びっくりだな。もしかしたらそっちの方に友希那たちがいるかもしれないな。ま、会ったらその時はその時だ。まずは温泉でゆっくりしよう」

 

「そうだね!」

 

「うん」

 

 

しばらく歩き、男湯と女湯と書かれたのれんを見つけ、零は男湯とある方に入る前に女湯に入る二人にまた後でと言い、中に入って服を脱いで扉を開ける。

 

 

「これが壺湯ってやつか。それぞれ戦国武将の家紋がデザインされてるのか。伊達家にするか」

 

 

零は伊達政宗の家紋がデザインされている青い壺湯に入る。

 

 

「ア"ア"ア"~やっぱ温泉は気持ちいいな~」

 

 

男子高校生らしからぬ声が出たが気にせずに温泉を満喫する零。

 

 

「ここは全部が露天風呂なんだな。景色も綺麗だ」

 

「レイちゃ~ん!!」

 

 

柵の向こう側から華恋の声が聞こえる。零はすぐに周りに誰もいないかを確認し、温泉に入っているのが自分だけだとわかって安堵してから華恋に向かって叫ぶ。

 

 

「バッ華恋!そんなに大声出してこっちに俺以外の人がいたらどうするんだ!まずそっちにも華恋以外に入ってる人はいるだろ!」

 

「私たちがいるわ」

 

「その声……友希那!?」

 

「私たちもいます!」

 

「香澄!?」

 

「聖翔メンバーは全員いるけど友希那ちゃんたちの方はみんなバラバラみたいだよ!」

 

「各々自由ってことか。そういやリサとレイヤは外にいたな」

 

 

女湯の方では聖翔メンバーが友希那たちと話しているようで話し声が聞こえる。

 

 

(話してる内容が全部俺についてなのはなぜなんだろう……)

 

 

そう思いながら温泉にゆっくりしようとしたが自分についての話しが聞こえるのでその場にいづらくなってしまう。

 

 

「華恋!俺はもう出るからな!のぼせないように気をつけろよ!友希那たちもだからな!」

 

『はーい!(うん/えぇ)』

 

「うし、出るとするか」

 

「零先輩!ロックがのぼせちゃったみたいです!」

 

「言ってるそばからのぼせんなよ!!香澄!悪いが更衣室の外まで頼む!その後は俺がおぶるから!」

 

「はい!美咲ちゃん、手伝って!」

 

「わかった」

 

「……美咲もいたのか。と、俺もさっさと出なくちゃな」

 

 

急いで温泉から上がり、用意されていたこの旅館の浴衣を着て更衣室を出るとまだ香澄たちはおらず、壁によりかかって待とうとした瞬間に香澄と美咲が出て来て二人で六花を運んできた。

 

 

「後は任せろ。ありがとな、香澄、美咲」

 

「いえ!」

 

「全然大丈夫です」

 

「ところでどこに運べばいい?」

 

「あ、じゃあ私たちの部屋にお願いします!」

 

「了解。のぼせてるからわかんないだろうけど俺がおぶるのを我慢してくれよ」

 

「……いいなぁ、ロック」

 

「……私もおぶってもらいたいな」

 

「なんか言ったか?」

 

「「何も言ってません!」」

 

「お、おう。そうか。香澄、案内頼む」

 

「はい!美咲ちゃんもありがとう!」

 

「あたしは旅館の人に言って氷水貰ってくるね」

 

「頼む」

 

「頼まれました」

 

 

そう言って美咲は旅館の人を探しに走っていき、零は香澄に案内されて香澄たちの部屋へ六花をおぶって向かったのだった。部屋に着いて零が「ポピーの間……?」と呟いていたが。

 

 

布団を出して六花を寝かせたら美咲が氷水が入った袋から持ってきて六花の頭の上に置き、後は香澄と美咲に任せて零は旅館の中をちょっと散歩していた。

 

 

「あれ、ゲームセンターか?ん?あの髪って……」

 

 

ゲームセンターから二人の人物がどこかに行ったのを見て零はクレーンゲームにあったぬいぐるみを取ってからそちらに向かおうとした瞬間、風呂上がりの紗夜に捕まったのだった。

 

 

 

場所は変わって自販機がある場所に千聖と麻耶と彩がいた。

 

 

「遅いわね、花音」

 

「道に迷ってしまったんでしょうか」

 

「そうかもしれないね。どうする?千聖ちゃん」

 

「探しに行くわ。ちょっと待ってて」

 

「あ、千聖ちゃん!」

 

「花音!」

 

「と、あの人って……」

 

「き、きききききき、キング!?はわぁ、こっちに向かってくる!」

 

 

千聖たちのところに花音と花音を連れたますきが現れ、ますきのことをよく知っている麻耶は慌ててしまう。その麻耶を彩は見ているが千聖は放っておいて花音に話しかける。

 

 

「よかった。探しに行こうとしてたのよ」

 

「道に迷っちゃってこの人に連れてきて貰ったんだ」

 

「そうなのね。ありがとうございました」

 

「ありがとうね」

 

「……Pastel*Palettes、大和麻耶さん……」

 

「「え?」」

 

「……え?」

 

「尊敬してるっす!」

 

 

 

ガタタンッ!

 

 

 

「なに今の音?」

 

 

近くでなにかが倒れたような音が響くが何もない。千聖は何もないなら気にしないでと言って全員が気にしないようにする。

 

 

「あ、自分、佐藤ますきって言います!」

 

「し、知ってるッス!」

 

「自分、麻耶さんのドラムがアイドルになられる前から大好きで!」

 

「ふへぇ!?」

 

「あんなすげぇドラム叩けてしかもアイドルまでやってるなんて凄すぎるっす!麻耶さんは自分の憧れっす!」

 

「う、嬉しいッスぅ……」

 

「どうしたんですか?」

 

「巴ちゃん」

 

「巴~鍵忘れてる」

 

「あ!悪い、沙綾!」

 

「あ、お姉ちゃん!」

 

「おう、あこ!」

 

 

この短時間でこの旅館にいるバンドメンバーの全ドラマーが揃うという奇跡が今ここに。

 

 

「は!これは……!」

 

「麻耶さん?」

 

「ドラマー会議、やりませんか?」

 

『ドラマー会議!!』

 

「その前にちょっと失礼~」

 

『え?うわぁ!?』

 

 

いつの間にかここにいる全員の中心に現れた零に驚き、声をあげながら数歩後ずさってしまう。

 

 

「れ、零!?」

 

「おす。ますき、これ」

 

「え?これって……」

 

「さっき狙ってたろ?やるよ。じゃ、ドラマー会議、楽しめよ」

 

 

零はますきにクレーンゲームで取ろうとしていたぬいぐるみを渡してどこかに歩いていった。その間、わずか数分の出来事だった。全員が呆気にとられながら零を見送っていたのだった。

 

 

「なんか変な様子だったから様子見してたらまさかますきが麻耶に憧れていたとはな。さ~て、また風呂入るか」

 

 

ドラマーのところからだいぶ離れた廊下を歩きながら呟いている零。そう。先ほどの物音はますきの反応に零がコケた音だったのだ。

 

 

「零」

 

「ん?ひかりか。どうした?」

 

「……一緒にいたい」

 

「そっか。なんか飲むか?」

 

「うん」

 

 

ひかりと一緒に自販機がある場所に行き、近くの椅子に座る。

 

 

「そっちはいろいろ大丈夫?」

 

 

ひかりが零が買った缶のココアを持ちながら零に聞いてきた。零は缶コーヒーを一度飲む。

 

 

「まあ、ぼちぼちだな。シークフェルトの皆も仲良くしてくれるしな」

 

「そう。ところで」

 

「ん?」

 

「……なんで全然帰ってこないの?」

 

「え!?あ、その……」

 

「……帰ってくるって言ってたよね?なんで連絡だけなの?なんで?」

 

「その、いろいろ忙しかったんだよ」

 

「休日は帰ってこれたよね?」

 

「……」

 

「寝てたんでしょ?」

 

「……」

 

「寝てて帰るの忘れてたんでしょ?」

 

「……はい」

 

「……」

 

「その、ひかり?」

 

「……零」

 

「は、はい!」

 

「次はないよ?」

 

「はい!すみませんでした!!」

 

「はぁ。あっちでの出来事、聞かせてくれる?」

 

「あ、あぁ。もちろんだ。その代わり、そっちも聞かせてくれるか?」

 

「もちろん」

 

 

そこから話していると途中で華恋、純那、なな、友希那、リサ、紗夜が参加し、零はもう一度自販機に行き、全員分の飲み物を買ってきてどんどん話が盛り上がった。盛り上がりすぎたのでここではなく、零と華恋とひかりの部屋に移動してまた話をしたのだった。移動中に燐子とあこと彩と千聖と花音とレイヤと会って参加すると言って結構な人数になったが。

 

 

 

 

これで零の無理やり行かされた休日が終わったのだった。

 

 




お読みいただきありがとうございました!


今回はBanG Dream!で温泉旅館に行くやつを零たちにも行かせました。零と友希那たちは同級ということにしているので時間軸が大変なことになっていますがそこは気にしないでください。

さて、スタリラ内はプレゼントとかガチャとかヤバいですね。去年同様無料ガチャがきてますね。二周年になる前にきた珠緒を当ててから虹が全く出ていない私ですが……。なんなん?全然虹出ないって一体なんなん?隠者のまひるを当てようと石が貯まったら引いているのに全然出ないし……。まひるは来月に絶対当てなくては!強さもそうだけどなにより衣装が可愛いんじゃ!!まじでなんで虹が出ないん!?まさか、今月のガチャ運が尽きたというのか……?なんということだ!!来月はやちよの誕生日があるからまひるを当てたらガチャ運を温存させておかなければ……!

それでは以上、レリでした!


遅れてしまってごめんなさい!!


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スタリラ編第三話


こんばんは、レリです。

前回のスタリラ一周年記念……自分で読んで思ったのが、結構無理やりだしなんか……うんってなりました。

今回は日常編ではなくコロス編?です。では、どうぞ!


「これで、最後!!」

 

 

ザシュッ!

 

 

地下劇場、そこに先ほどまで溢れていたコロスの最後の一体を華恋が倒して再び地下劇場に静寂が訪れる。それを見届けた零は夜天の剣と紅華の剣を鞘に入れて舞台少女たちを見ると連続で、しかも大量のコロスを相手にしたため疲労が溜まっているのが伺える。

 

 

「皆、今はできるだけ休め。次にいつまたコロスが来るかわからないから今のうちに休んでおかないと後が大変だからな」

 

「うん、そうさせてもらうね。レイちゃん」

 

「零も休んだら?」

 

「いや、俺は周りを警戒しとく。全員が休憩してる最中に現れて襲われたらすぐに動けないしやられる可能性があるし」

 

「そっか。わかった」

 

「私は必要ない」

 

「ちょ、晶?」

 

 

零の言葉で各々が座ったりする中、晶だけがずっと立ったまま零に言ってきた。

 

 

「ダメだ。休め、雪代」

 

「自分の身体は自分がよくわかっている。必要ないと思った。だからいい」

 

「わかっていないから休めと言っている。どの戦でも休息は必ず取る。休息をしないでぶっ通しでやれば後が大変なことになる。そうなってほしくないからお前らには休んでもらいたいんだ」

 

「私はそんな事は絶対にない」

 

「お前は本当に自分の身体のことをよくわかっているのか?先に言うぞ。お前はわかっていない」

 

「なに?」

 

「現にお前は他の人に比べて少ないが息づかいが少し荒い。それに少量だが汗もかいている。それは身体が疲れているという証拠だ。ここまで言ってもまだ言うのなら……強制的に休ませる」

 

「…………わかった」

 

「わかればよし。さて、今のうちにいろいろ確認しておきたいことがあるんだ」

 

「確認しておきたいこと?」

 

「そう。まずは凛明館、フロンティアの参加者はさっきぶりだから自己紹介は省いていいな。シークフェルトもだけど」

 

「零、なにを確認したいの?」

 

「簡単なことだ。皆が持っている武器を知りたいんだ。聖翔の武器は把握しているが他の学校のはな」

 

「では、まず私たちから」

 

 

巴 珠緒率いる凛明館女学校演劇部。その五人が持っている武器が

 

 

巴 珠緒…………咲散花(白鞘の日本刀)

 

音無 いちえ…………いちえハリセン(扇子)

 

夢大路 文…………川蝉(ソードブレイカー)

 

秋風 塁…………流星丸(長刀)

 

田中ゆゆ子…………凛明亭遊眠(クナイ)

 

 

である。

 

 

「じゃあ、次私たち!」

 

 

大月あるる率いるフロンティア芸術学校舞台表現コースの五人の武器

 

 

大月あるる…………ヘヴンメーカー(二丁拳銃)

 

叶 美空…………ワイルドパンチ(槍)

 

野々宮 ララフィン…………ワンミリオンス(ハンマー)

 

恵比寿 つかさ…………ダストデビル(トマホーク)

 

胡蝶 静羽…………ユニコーンメイデン(鎌)

 

 

 

「最後は我々だな」

 

 

雪代 晶率いるシークフェルト音楽学院の生徒会五人の『気高き君(エーデル)』の武器

 

 

雪代 晶『白金の君(フラウ・プラティーン)』…………プラティーンランツェ(突きに特化したランス)

 

鳳 ミチル『蒼玉の君(フラウ・ザフィーア)』…………ザフィーアベシュトラフング(大剣)

 

リュウ・メイファン『紅玉の君(フラウ・ルビン)』…………ルビーンヘッレバルデ(蛇矛)

 

鶴姫 やちよ『真珠の君(フラウ・ペルレ)』…………ペルレンプファイル(ボウガン)

 

夢大路 栞『翡翠の君(フラウ・ヤーデ)』…………ヤーデアングリフ(サーベル)

 

 

である。

 

 

「ふむ。一つの学校で前衛、中衛、後衛ときれいに分けられるな。だが一つ言わせてもらうとするなら……音無」

 

「いちえでいいよ。で、なに?零」

 

「じゃあ、いちえ。君の武器はなぜ、扇子なんだ?」

 

「なんでだろうね~」

 

 

全員の武器を見た零はたった一人だけが武器のようで武器ではないのだ。悪く言ってしまえば扇子でどうやって戦うと言うのだろう。

 

 

「ねぇ、レイちゃん。メイファンさんの武器ってなに?見たことないけど」

 

「あぁ、あれは蛇矛(じゃぼう)っていう武器で中国の長柄武器の一種だ。確かリュウは中国の留学生だったよな。だから中国の武器を使っている………んだと思う」

 

「零さん詳しいですね!正解です!」

 

「親父から教えもらったからな。ある程度はわかる。さて、簡単な提案だがお前らのことを名前で呼ぼうと思ってるんだが、俺のことも零で構わない。嫌なら名字で呼ぶが、どうだろうか」

 

 

零の提案に各学校のメンバーで相談し始めたがシークフェルトだけが相談せずずっと黙ったままで全員が目を閉じて笑顔だ。

 

 

「俺が言うのもなんだがシークフェルトの奴らは相談はしないのか?」

 

「愚問だ。もう決まっている。おそらく他の学校も我々と同じ答えだろう」

 

「同じ?」

 

「決まりました」

 

「こっちも決まったよ!」

 

「おう。じゃ、答えは」

 

「もちろん、名前で呼んでもらって構いません」

 

「私たちも!よろしくね!零君!」

 

「先輩だよ?あるる」

 

「名前で呼ばせてくれるんだ、それぐらい構わない。では改めてよろしく頼む。みんな」

 

『はい!(うん!)』

 

 

ここまで僅か数十分の出来事。この短時間でこの場にいる全員とここまでフレンドリーになれたことに驚きながら見ているえる。それと同時にここに零がいて良かったと思っていたえるである。

 

 

「じゃあ次は次の戦闘に備えて立ち位置を決めよう。皆の持っている武器を考えて決めようと思っている。まずは戦闘において重要な前衛だ。ここの一番前に俺が入る。あとはどうする?」

 

「レイちゃんが前に出るなら私も!」

 

「私も」

 

「私も出ましょう」

 

「私も行けるわ」

 

「私も出ます」

 

「ミチルも前に出るよ!」

 

「ちょっと待て、一気に言われるとわからなくなる。一人一人順番に言ってくれ。紙とペンはあるからここに書いていく」

 

 

という事で一人一人言って立ち位置が決まった。まずは前衛組。

 

 

前衛

 

 

岡峰 零、愛城 華恋、神楽 ひかり、天堂 真矢、西城 クロディーヌ、巴 珠緒、夢大路 文、野々宮 ララフィン、鳳 ミチル、リュウ・メイファン

 

この十人だ。次に中衛組。

 

 

中衛

 

 

露崎 まひる、大場 なな、石動 双葉、音無 いちえ、叶 美空、胡蝶 静羽、夢大路 栞

 

この七人。そして最後に後衛組。

 

 

後衛

 

 

星見 純那、花柳 香子、田中 ゆゆ子、秋風 塁、大月 あるる、恵比寿 つかさ、雪代 晶、鶴姫 やちよ

 

 

この八人だ。後衛組はほとんど遠距離武器を所持している舞台少女だが近距離武器の舞台少女もいるがそこはもし、万が一前衛、中衛が突破されて後衛に襲いかかろうとするコロスに対処してもらうためと単純に一撃が強い武器があるというのもある。

 

 

「よし、決まったな。える。コロスの出現の原因は奴らがスタァライトを消すためだったよな」

 

「はい。岡峰さんの言うとおりコロスたちはスタァライトを消すために現れます。あなた方にスタァライトを守ってもらいたく集まっていただきました。ですが、コロスがいつ出現するのかはわかりません。倒してもキリがない。先ほどのレヴューでご存知のはずです」

 

「あぁ。だが、出現する個体数は今のところ変わっていない。そう考えると今後もあれぐらいの個体数が出るだろうな」

 

「おそらく」

 

「レイちゃん!」

 

「どうした?華恋」

 

 

いつの間にか休憩を終わらせてコロスがいたステージのところにいる華恋に呼ばれて零が行くと華恋は床を見つめながら指を指す。

 

 

「さっきまでこんなのあった?」

 

「いや、無かったはずだ。これは……」

 

 

床に落ちていた物を拾ってよく見る零。それは、金色のメダルのような物だった。

 

 

「メダル?いや、コイン……なのか?だがこんなの見たことがないぞ」

 

「それはコロスからドロップするコインです」

 

 

零の後ろに来てコインを見たえるが説明する。

 

 

「ドロップって。ゲームじゃないんだぞ」

 

「そのコインはある場所で使えます」

 

「ある場所?」

 

「ご案内しますか?」

 

「後でいいよ。今はコロスに集中だ」

 

「うん。そうだね」

 

 

 

コゴゴゴゴゴ…………

 

 

 

「なんだ?」

 

「……揺れてる?」

 

 

突如地下劇場に鳴り響く聞いたこともない音。その音で休憩中の舞台少女たちは武器を取り立ち上がり辺りを見回すが音が響いているだけで何も起きない。

 

 

「っ!全員、衝撃に備えろ!!」

 

 

いち早く何かに気づいた零が声を上げると同時にステージの中央にヒビが入りステージの下から何かが突き破って出てくる。ものすごい振動で立っているのが困難で全員が膝をついて体制を維持しながら目にした物。それは……。

 

 

「……塔?」

 

 

ステージの下から突き破って出てきた物はとても大きい塔だった。

 

 

「一体なぜこんなものが……」

 

「考えるのは後だ。来るぞ!!」

 

 

塔の入口が開き、中からたくさんのコロスが出てくる。

 

 

「総員体制を整えて先ほどの隊列を編成!前衛組は整い次第攻撃開始!だが無茶はするなよ!中衛組は前衛組のサポート!後衛組の遠距離組は塔の入口から出てくるコロスをできるだけ迎撃!近距離組は最終防衛ラインだ!突破されないよう頼むぞ!!」

 

『了解!!(はい/うん!!)』

 

 

全員の返事を聞いて零は口角を上げながら夜天の剣と紅華の剣を引き抜き、

 

 

「行くぞ!!」

 

 

そう叫んで走り出す。コロス群の先頭にいた二体を斬って消滅させる。すると、両サイドから華恋とひかりが飛び出しコロスを消滅させる。それに続いて他の前衛組も戦列に参加してコロスを消滅させていく。

 

 

「レイちゃんの隣は!」

 

「私たちの位置!」

 

 

華恋の言葉に続くようにひかりが言うのを聞いて零は(任せられる)と思った瞬間にコロスにではなく目の前に一気にたくさんの矢が飛来しステージに突き刺さる。零はすぐに矢を放った人物、純那に目を向けると真っ直ぐ自分に矢を向けて放ってきたので急いで体をひねって避ける。

 

 

「あっぶねぇな!」

 

 

と、声をあげてもう一度純那を見ると先ほどのを無かったかのようにコロスに矢を放っていた。チラッとこちらを見てきた純那の目は、

 

 

『後でななとお話ね』

 

 

そう語っていた。それを零は、

 

 

(なんで!?)

 

 

そう思いながらコロス群に突撃していったのだった。

 

 




お読みいただきありがとうございました。


聖翔以外の舞台少女の武器の名前、あれは公式ですよ?いちえの扇子の名前がハリセンってことに驚きましたが。あと立ち位置は☆二の状態です。もしかしたらそのうち☆四の立ち位置に覚醒するかもですが。あと決して文字数稼ぎではないですよ?(震え)


スタリラでも青嵐メンバーが出てますが青嵐がいるメモしかでないんですよね、なぜか。皆さんは出てますか?自分はもう誕生日の珠緒と晶が出てくれたので満足してます。

それでは以上、レリでした!


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短編 クリスマス

メリークリスマス



byレリ


星光館のキッチンで洗い物をしている零。外は真っ暗で時刻も12時を過ぎていた。洗い物をしながらリビングを見ると眠っている者が何人かいる。

 

零は華恋たちに誘われてシークフェルトの寮から帰って来てそこでクリスマスパーティーをやっていた。パーティーで疲れてその場で眠っているのと寝る前にお風呂に入っているのと別れており、零は最後に風呂に入ろうと考えているので先に洗い物などを片していく。

 

 

「零君」

 

 

後ろから小さい声で呼ばれたので振り替えるとパジャマ姿のまひるとななが立っており、二人してエプロンをつけようとしている。

 

 

「お風呂あがったよ。あとは任せて」

 

「零君はお風呂でゆっくりしてきて。そのまま部屋に戻っていいから」

 

「わかった、頼む。華恋とひかりは?一緒に入ったんじゃなかったのか?」

 

「途中までは一緒だったんだけど二人して早く出ていったよ?」

 

「そのあとはわからないな」

 

「そっか。じゃあ風呂入ってくるわ」

 

「うん。さっきも言ったけど出たらこっちに来ないで部屋に戻っていいからね」

 

「手伝わなくていいのか?」

 

「零君のおかげで二人でやればすぐに終わる量になってるから大丈夫だよ」

 

「そこまで言うのならわかった。お言葉に甘えるよ。じゃあ、おやすみ」

 

「「おやすみ」」

 

 

零が風呂に入る準備をするためにリビングを出て姿が見えなくなったところでまひるとななは小さくハイタッチしていた。

 

 

「ゆっくりって言ってたけど俺はそこまで長風呂でもないんだよな」

 

 

零自身は風呂でゆっくりして疲れをとるということをあまりしない。たま~に行く温泉旅館などではゆっくりするが。

 

あまり長く入らずにサッと出てきた零はパジャマに着替えて部屋に戻る際、チラッとリビングを見るとすでにまひるとななはおらず、リビングで眠ってしまった者たちだけが残っている。部屋に戻る前にまひるとななが毛布を持ってきて寝ている皆にかけたようだ。寝ているうちの一人の純那にかかっている毛布がズレているのに気づいたのでそっと直してから部屋に戻る。

 

 

扉を開けて中に入り電気をつける。

 

 

「なにこれ?」

 

 

部屋のど真ん中にドデカイ箱が置いてあり、綺麗にリボンがついている。プレゼントボックスだ。

 

 

「マジでなんだこれ?さっきはこんなの無かったぞ。ん、手紙?」

 

 

箱の上に手紙が置いてあり、手にとって開いてみるとまひるの字が書いてあった。

 

 

『零君にちょっとしたプレゼントだよ。ちゃんと綺麗に開けてね?』

 

「プレゼント……か」

 

 

手紙を机に置き、手紙に書いてあった通りに綺麗にリボンを取り、いざ蓋を開けようとした瞬間、

 

 

バッ!

 

 

「おわ!?」

 

 

勢いよく蓋が開き、ビックリして数歩下がり出てきたのを見た瞬間固まった。

 

 

「め、メリー、クリスマス、零///」

 

「レイちゃん!メリークリスマス!///」

 

 

プレゼントボックスから出てきたのはサンタコスを着た華恋とひかりの幼馴染み二人だった。

 

今の状況は二人が出てきてすぐに零が片手で自分の目を隠しているのと二人は赤面しているまま。それには理由がある。理由は、二人がサンタコスをしているのは問題ない。クリスマスなのだから。だが、そのサンタコスに問題がある。はっきり言うと布の面積が少なすぎる。当然、肌の露出が多く、恥ずかしさで赤面しているのだ。それを見ないために目を隠している零。……なんだこの状況。

 

 

「なにしてんの、お前らは」

 

「え、えっと……///」

 

「これは……///」

 

「……とりあえずこれでも羽織っとけ」

 

 

パーカー二つを取り出して二人に投げる零。二人は黙ってそれを羽織る。羽織ったと音で判断した零は目を開けるとファスナーをあげて隠して欲しい前の部分を隠していない二人がいた。

 

 

「ファスナーをあげろ!!」

 

「そ、それはできない!///」

 

「なんでだよ!?」

 

「こ、これは私たちから零へのく、クリスマスプレゼント、だから!///」

 

「だからってなんでそんな格好を!?第一この箱はどうしたんだよ!?」

 

「まひるちゃんとばななが思いついたって言って……///」

 

「ノったら、こうなった……///」

 

「あいつらぁ……」

 

 

これでまひるが頻繁に言っていた理由がわかった。箱の中にいる二人のために早く戻れということだったのだ。

 

 

「ちなみに私たちは部屋に戻れません……」

 

「は?」

 

「鍵、持ってない……」

 

「はぁ!?」

 

 

二人を帰させないために鍵を持たせていない状態で零の部屋にいさせたとなる。

 

 

「……今頃計画通りと思ってるだろうな」

 

 

零は自分の部屋にいて今はこんな風になってるんだろうな~と想像しているまひるに向かって愚痴る。

 

 

「……久々に三人で寝るか」

 

「……う、うん///」

 

「……そうするしか、方法ないから、ね///」

 

 

零の性格上、二人を放っておくことはしない。それが幼馴染みならなおさら。それを見越しているまひるは策士と言ってもいいかもしれない。

 

布団を敷き、三人は布団に入る。ちなみに位置は零が真ん中で左右に華恋とひかりという川の字だ。

 

 

「こうしてると昔を思い出すね」

 

「昔もこうやって三人で寝てたね」

 

「懐かしいな」

 

「ねぇ、レイちゃんはさっきの私たちを見てどう思ったの?///」

 

「……掘り返さないでくださいませんかね、華恋さんよ」

 

「私も気になる///」

 

「……正直、綺麗だと思ったよ。他の男には見せたくないって思った」

 

「「……レイちゃん/零以外にはやらないよ///」」

 

「……さ、寝るぞ。もう遅いんだしな」

 

「うん。おやすみ、レイちゃん」

 

「おやすみ、零」

 

 

総意ってすぐに寝息をたてる二人。パーティーで疲れたのだろう。一方、零は、

 

 

(眠れるわけねぇだろ……)

 

 

先ほどの姿とどっちを向いても美少女の顔が間近にあるという状態にひたすら理性と戦っていたのだった。

 

 




はい、クリスマスということで初めての短編を投稿させていただきました。短編って言っても二千文字は突破してるけどね。

二人のコスは胸と腰しかない服です。そして最後に川の字……おい、零そこ代われ。

ちなみにこれは一昨日思いついてめっちゃ早く書いたので変な部分があると思います。さっき書き終わったしね……。

それでは、レリでした!


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スタリラ編第四話




再 生 産





突如現れた塔からゾロゾロと出現したコロスを舞台少女たちは迎撃し、次々にコロスを倒していった。

 

 

 

「ふぅ」

 

 

 

目の前にいたコロスの最後の一体を倒して消滅を確認してから息を吐きながら刀を鞘にしまう珠緒。

 

 

「珠緒先輩!お疲れ様です!」

 

「塁ちゃん。そっちもお疲れ様」

 

「いえ!珠緒先輩はお怪我とかしてないですか?」

 

「私は大丈夫。他のみんなは?」

 

「皆さん大丈夫だそうです」

 

「そう、よかった。けど……」

 

「えぇ、あれは……」

 

 

揃って顔を動かしてある方向を見る。二人が見ている先にあるもの。それは……。

 

 

 

幾本もの矢が飛び、二本の刀が振り下ろされる光景だった。その二つが狙うは一つ。

 

 

「…………どうしてアレを避けられるのかしら」

 

「……矢は弾いたりしてますけど、だいたい避けてコロスに流れ弾として当ててコロスを倒してますし」

 

「刀に至っては剣で受け止めてから流したりして避けて突きの攻撃はタイミングよく避けてコロスに当ててるしね」

 

「あら、いちえ。お疲れ様」

 

「珠緒と塁もね。けど、どうしてあんな風になってるの?」

 

 

珠緒と塁が話しているところにちゃっかりと混ざるいちえ。いちえも気になっている目の前の光景、いや、全員が気になってる光景だが。

 

 

二つが狙うモノは……

 

 

「避けないで当たりなさいよ!!」

 

「そうだよ!!」

 

「無茶言うなバカ!!」

 

 

休むことせずに次々に矢を放つ純那。隙を突いて二本の刀で接近戦をするなな。それを一つも当たることがない二人が狙う目標……零である。

 

 

「じゅ、じゅんじゅん!落ち着いて~!」

 

「大場さんも」

 

「関係ないと思ってるようだけどあなたたち二人も同罪よ!!」

 

「わぁぁぁぁぁ!?こっちにも矢を飛ばさないでよ!?じゅんじゅん!!」

 

「わ……!?」

 

 

二人を止めようとした華恋とひかりだが、純那には逆効果だったらしく、狙いを零から二人に変えて無数の矢を放つ。突然すぎてびっくりしながら必死に逃げる華恋とひかり。

 

…………レヴューの最中にやることではない。

 

 

「あ、純那ちゃん!!」

 

「え、なっ!?」

 

「隙ありだっ!!」

 

 

純那からの攻撃が無くなったのをいいことに零がななの攻撃から高速で離脱し、そのまま純那に向かって突撃した。一瞬反応が遅れたななが純那に呼び掛けるが時すでに遅し。ななの声に反応して振り返った純那の目の前に零がいた。驚愕で固まってしまった純那に零は弓に向かって夜天の剣を下から振り上げるようにして純那の手から弓を弾き飛ばした。

 

 

「弓が!!」

 

「純那ちゃん!!えっ!?」

 

 

弓を弾き飛ばされたことで自分の弓に視線が行ってる純那に零は追撃をせず、そのまま後ろに振り向きながらまたもや突撃。狙いは後ろにいるななだ。ななはまさか自分に来るとは思っておらず、純那の援護に向かう為に走っていたので急いでブレーキをしたが、その事で体が動かず……

 

 

「はぁっ!!」

 

 

 

ガキンッ!!

 

 

 

「くっ!?」

 

 

一本の刀を弾き飛ばされた。

 

 

「なな!!」

 

 

純那もタダでやられるわけもなく、矢を一本出して零に向かって突きを繰り出す。ななも残った刀で斬りかかろうと腕を振り上げ、零に向かって振り下ろした。

 

 

その一瞬で、純那とななの二人は自分たちの行動が誤ったというのを瞬時に理解した。なぜならーーー

 

 

 

 

ガギィィィィィィィィン!!

 

 

 

大音量の金属音にコロスと戦っていた舞台少女たち、離れたところで見ていた珠緒たち三人。挙げ句の果てには戦っていないコロスでさえも、全く動かずに発生源を見た。だが、珠緒、塁、いちえの三人は零のレヴューでの動きを見たことがなかった為に零の動きに驚きを隠せず、口をあんぐりと開けていた。

 

珠緒たちの目線の先には、両手に何も持っていない純那とななに体を屈み、腕をクロスさせて下から喉元に突きつけている零がいた。純那とななに至っては突きつけられている剣先を見ながら冷や汗を流している。

 

 

「…………決着だね」

 

「そうね」

 

 

 

その光景に静かに呟いた華恋とひかり。二人の周りには先ほど純那が放った無数の矢が刺さっているのを見るになんとか避けていたようだ。

 

 

「あんたたちいつまでバカやってるつもり!?そんなことやってる暇があるなら塔の扉を閉めたりとかしなさいよ!!」

 

『あ……』

 

 

謎空間に我慢できなくなったクロからいきなり怒号が飛んできて今の状況を思い出したバカなことをやっていた零たち五人。

 

 

「あぁもう!双葉!私たちで扉を閉めるわよ!!」

 

「え、わ、わかった!クロ!」

 

「援護するね!」

 

「私も~」

 

 

クロと双葉の二人が扉に向かって走り、それを後方から二丁拳銃を持ったあるるとクナイを出したゆゆ子が二人の前方にいるコロスに向かって攻撃し、二人の援護をしたおかげで二人は難なく扉にたどり着き、扉を閉めた。

 

 

扉を閉めたことでコロスが出てくることが無くなり、あとはステージに残っているコロスを倒すだけになった。

 

 

「あんたたち五人でこのコロスを倒しなさい!」

 

「うえっ!?私たち五人で!?」

 

「あんたたちがバカやってる間、誰がコロスの相手をしてたと思ってたの!?さっさと行きなさい!!なんか文句ある!?」

 

『い、いえ!ありません!!』

 

「ならさっさと行く!!」

 

『は、はい!!』

 

 

クロの無茶な指示に華恋が異議を唱えたがクロのド正論と気迫になにも言えなくなり、五人は残ってるコロスのところに急いで走っていった。

 

 

「全く……。みんなは手出ししないでいいから!!全部五人に任せていいから!!」

 

「わ、わかりました」

 

 

クロの気迫に何も言えないのは他の学校の舞台少女も例外ではないようである。

 

 

「だー!!めんどい!!華恋!ひかり!純那!なな!」

 

「わかった!」

 

「……わかった」

 

「え、大丈夫なの!?」

 

「純那ちゃんの言うとおりだよ!」

 

「大丈夫だ!!」

 

 

ちまちまコロスを斬っていた零だがだんだんとイライラしてきたらしく声を荒げてしまう。そのまま四人に声をかけるが、名を呼ばれただけなのに華恋とひかりは零の意図に了解の言葉をかけるが純那とななは二人とは逆の心配の声があがるが零は大丈夫だと言う。

 

主語は何一つ無いのに四人は零のどんな意図を読んだのか謎なのを聖翔以外の舞台少女は疑問になっていた。

 

 

「わかった。なら、任せたわ!」

 

「ケガしないでね!」

 

「オーケー任された!!はあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

雄叫びを上げながら零はたった一人で残りのコロスの大群に突っ込んでいった。他の四人は攻撃の手を止めて座りこんで休憩しだした。

 

 

『えっ!?』

 

 

たった一人で突っ込んでいったこと、四人は何もしなくなったこと、それを見た舞台少女たちが驚愕の声をあげるが残った聖翔の舞台少女は呆れていた。クロに関してはめっちゃデカいため息をしている始末。

 

 

「え、あ、あの、私の目には零先輩が一人で行ったように見えたんですが!?」

 

「大丈夫よ、塁ちゃん。私にもそう見えたから」

 

「ちょ、大丈夫なの!?一人であの数は!?」

 

「大丈夫ですよ、零君なら」

 

 

塁、珠緒、いちえが慌てて手助けに行こうとする中、落ち着いた声で真矢が言ってきたことで三人の動きが止まる。

 

 

「お忘れですか?一番最初の大群を一瞬で葬ったのは誰なのか」

 

「え……」

 

 

真矢が言った瞬間、一瞬だけ地下劇場が眩い光に包まれた。

 

光が消えるとステージに結構いたコロスの姿は一体もなかった。その代わり、二本の剣を背負ってる鞘に入れている零だけがいた。

 

 

 

 

 

 

全員はもう声をあげられないぐらいに驚愕しており、戦闘の音が響いていた地下劇場には耳が痛くなるほどの静寂に包まれたのだった。

 

 

 

 




大変長らくお待たせしました。アサルトリリィに集中してました。ごめんなさい。


今回はちょっと短めでしたが、ストーリーを忘れてしまっているため、ほとんど進んでません。ご了承ください。次から塔の中に入る感じですかね。


そして今日!!私の推しのひかりの誕生日!!めでたい!!ガチャ当てなくちゃ!!

はい、それでは以上、レリでした!



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