腐り目と魔眼の少女 (ミネラルいろはす)
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始まりの夜
まだもう一個の方も進んでないのに申し訳ないと思っているが、後悔はしていない。
それではどうぞ
薄暗い地下室にたたずむ一人の少年。
時刻は深夜二時を過ぎていて、辺りには静寂が満ちている。
物音一つしないこの静寂を今部屋にいる唯一の人物が破る。
片手を足下に広がる魔法陣に掲げ口を開く。
「銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 陰陽の果てにて我らが悲願を。」
彼の言葉に反応するように足下に広がる魔法陣が赤く光る。だが、本人はそんなことを気にせず詠唱を紡ぐ。
「降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、
王冠より出で、
王国に至る三叉路は循環せよ」
先ほどまで静かだった地下室がガタガタと音を立てて揺れ出す。
激しい揺れに本棚や道具棚の中身が落ちて来る。
「
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。」
地下室には魔法陣を中心にして、どこからか激しい風が吹き荒れる。
揺れも先ほどよりも段々と大きくなっている。
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総すべての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷しく者。
されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
汝、狂乱の檻に囚われし者。
我はその鎖を手繰る者――。」
今や地下室には先ほどまでの静寂さは欠片ほども残っておらず、この狭い空間に台風でも直撃したのではないかという荒れ具合だ。
本棚に入っていた大切な資料は一冊残らず地面に落ち、研究に使うための実験器具も棚から落ちて、大半はもう使い物にならないであろうことが見てわかる。
そして、その原因を作り出した少年は毛ほども気にした様子はなく最後の詠唱を紡ぐ—-
「汝 三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
刹那。先ほどまで吹き荒れていた風や物音が急激に大きくなり、衝撃が起きる。
落ちていた本や器具は吹き飛ばされる。それは、魔法陣の前に立っていた少年も例外でなく、後方に思いっきり吹き飛ばされる。そしてそのまま、頭を床に強く叩きつけられる。
「いっったいなぁ」
座り込んだ状態で打った場所を軽くさする。さすった手に血は付いていなかったので、幸い大事には至っていないようだ。
血が出てないことを確認した少年はすぐさま立ち上がり魔法陣まで戻る。
魔法陣の周りには先ほどの衝撃かそれとも風の影響のせいかは定かではないが、煙が魔法陣の周りを覆っている。
だが、魔法陣を覆っていた煙も段々収まっていくと、うっすらと魔法陣の上に人影が見える。
しかし、先ほども述べたようにこの地下室にいたのはこの少年一人である。
ならこの人影は一体なんなのだろうか。
煙が晴れるのを待っている少年に痺れを切らしたのか、謎の人影が魔法陣から出てくる。
「おい、あんたがオレのマスターって奴か?」
出て来たのは、着物の上に赤いジャンバーを羽織った、なんとも奇抜なファッションをしたショートカットの人物だった。
比企谷君が召喚したサーヴァントですが、普通に考えてどうやっても召喚できませんが、召喚できるように理由を後付けしました。
それも後々話して行くと思うのでよろしくお願いします。
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真名
魔法陣から突如現れた存在に俺は驚きを隠せずにいた。
確かに俺は、聖杯戦争に参加するためにサーヴァントと呼ばれる歴史に名を残した英雄と呼ばれる存在を召喚し、それに成功したはず、はずなのだ。
だが、目の前の彼女の格好を見てみると少し疑問を覚える。
着物を着ているのはわかる。
日本の英霊ならその可能性も十分にあるだろう。
だが、しかしその上に羽織っている赤いジャンパーがその可能性を否定する。
多分、おそらくだが、日本の歴史において着物の上にジャンパーを着ていた人物など歴史に詳しくない俺には皆目見当もつかない。
「…おいおい、召喚したらしっぱなしか?全く俺はとんでもないマスターを引き当てたみたいだな」
こちらに話しかけてくる件の少女。
だが、彼女の言っていることは正しい、彼女は俺の召喚に答えてくれたということは、俺が彼女を招いたことになる。なのに、彼女からすれば呼ぶだけ呼んでほったらかしにしていることになるからな
それに彼女が何者なのかも本人に聞けばわかることだし、考える必要はないか
俺は立ち上がり彼女の方まで歩いて行き手を差し出した。
「いや、すまん。ちょっと混乱してた。改めて俺は比企谷八幡お前のマスターだ、よろしく頼む」
「…ふん、まあいい、俺はサーヴァントアサシンだ。聖杯とやらに興味はないが、呼ばれちまったいじょう仕事はする。」
「ああ、よろしく頼むアサシン」
そう言ってアサシンは俺の手を握り返す。
これで一応自己紹介はすんだよな、いや、でも、まだ一番大事な事を書き忘れていた。
「アサシン真名はなんだ?さっきの困惑もアサシンの格好で、誰なのか考えていてほったらかしにしちまったんだ。」
ふむ、と口に手を当てて考えているアサシン
そんなに真名を教えることが嫌なのだろうか?
「俺は別にアサシンの真名を聞いてもわからないかもしれないが、過去の事をとやかくいうつもりはないし、それに対して何かをいうこともしない」
だから頼むと再度念を押す。
「いや、マスターの考えている意味で真名を教えるのを渋ったわけじゃないんだ。ただ…」
「『ただ』なんだ?」
「俺は英雄じゃないし、かといって、別に反英雄でもない。そもそも、俺はサーヴァントになるほどの事をしたこともないし、俺自身なぜサーヴァントになっているか分からないんだ。」
アサシンの独白に俺は耳を傾ける。
アサシンの言っている事をそのまま受け取ると彼女はそもそもサーヴァントになり得る存在ではないと言っているが、現に彼女はアサシンとして、限界しており俺とマスター契約を結んでいるのは右手の甲に浮かび上がる赤い模様が指し示している。
何かがおかしい
「つまりだな、俺はマスターみたいにちょっと異能が使えるだけのほぼ一般人だ。それが、何故かサーヴァントになっちまってあんたと契約しちまったわけだ、あんたは有名な英霊が来る事を望んでたと思うが、俺みたいな外れで悪かったな」
それでも、知りたいって言うなら教えるぜと彼女は付け足す。
「…わかった、名前を教えてくれアサシン」
「っおい!!お前話聞いてたのか俺はただの一般人もしくは殺人鬼レベルの存在だって言ったんだ。なら別にあんたが俺の名前を知る必要はないんだぞ」
ああ、確かに彼女が言っていることは驚いた。
英雄なんかが来るもんだと思ってたら、自分が一般人だっていうし、自分で自分のことを外れなんていうのも驚いた。
でも、それだけだ。
「俺は別に有名な奴を召喚しようとしたわけじゃない。そもそも、触媒は親父の知人から貰ったものだったし、初めから誰が来ても話は変わってない。
それにアサシンの言っていることも概ね正しい、だが、俺たちはこれから聖杯戦争って言う命がけの戦争に挑むわけだ、それも俺とお前の2人で、ならパートナーの名前ぐらいは知っておくべきだと思っただけだ。」
俺の発言に多少面を食らったような表情をするアサシン
だから、俺はここでもう一度頼む
これから命を預ける存在に
「ーーーだから、お前の名前を教えてくれアサシン
それに、例外ってことはスペシャルってことだろならきっといいことに決まってる
」
アサシンは呆れたような表情で頭をかいてる
「はぁ、もう色々考えてた俺がバカみてぇじゃないか。外れサーヴァントに相当馬鹿なマスターと来た。これはまた斬りがいのある仕事になりそうだな」
「ーー「両儀式」それが、俺の名だ。よろしく頼むぜ馬鹿なマスター」
誰だこのイケメン
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