ブラフマン・マハーヴァーラタ (いんふる)
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南郷寅次郎の試練
「……ここに、本当に神様がいるってぇのか」
南郷 寅次郎は、幾度も繰り返した疑問をもう一度口にした。
神竜寺を出ておよそ半日。変わらぬ山道を歩き続けている間に出た疑問である。
「寅次郎さんもしつこいっすねぇ。居る、居ないを問われても、本当にいらっしゃるとしか私には答えられないっすよ」
「それがまず信じられないんだよ。歴代の優勝者達は何も言わなかったのかい」
「大抵は、皆さんため息を吐かれて無言になっちゃいますねぇ」
「まぁ、そうだろうよ」
寅次郎も彼らに倣ってため息を吐きたいところだった。
闘神リーグを制して一夜明け。日本への帰国支度をしているところへ神竜寺よりまったが掛かった。
何でも、優勝者には神との謁見が許されるため、帰国をする前に会いに行ってほしいという。
嘘くせぇ、と寅次郎はまず思った。神様がこの世にいるもんかと。
そのまま日本へ帰国することもできたが……寅次郎は神様とやらに会うことにした。
ひとつ、興味を惹く事があったからだ。
……意を放つ。目の前の男を切るという意を。
並大抵の強者なら、寅次郎の放つ意を感じ取り、即座に伐刀するはずだ。そうでなくても、
だが……
目の前の、自分を案内する男。
男にいくら切りかかる意を放っても、ごくごく自然に躱されてしまうのだ。
実際に伐刀しても、同じ結果になるだろうことも寅次郎には分かってしまった。
得体が知れない。寅次郎の観をもってしても、案内者の実力が知れなかった。
寅次郎は強者を求めて闘神リーグに参加した。彼のサムライリョーマこと黒鉄 龍馬のような、強者と刃を切り結ぶことを夢想してはるばる中国の秘境にまで来たのだ。
だが、寅次郎の夢想は現実とはならなかった。確かに参加者たちは素晴らしい実力の持ち主ばかりだったが…寅次郎に匹敵する、あるいは彼を超えるような実力の持ち主は居なかった。
だが、寅次郎は己を超える者と出会うことができたのだ。
「神様んところへ案内するってのは、構わねぇ。だが忘れるなよ……」
「はいはい。お目通しが終わったら、私と一戦交える。もちろん覚えてるっすよー」
本当に分かっているのかいないのか、男は軽い口調で答えた。
「……」
しばらくお互い無言だった。案内男は相変わらず軽い足取りで、寅次郎は気分が現れた多少重い気持ちで。
そうして歩いていて、ふと。寅次郎は疑問を投げかけた。
「そういやお前さん、名前はなんていうんだい」
その疑問に対して、男の反応は鈍かった。
「あー……私に興味がおありで?」
「あるに決まってんだろ。お前ほどの強者だ、名前くらい知ってても罰は当たらんだろ」
「まあそうなんですが……寅次郎さん、あなたかなり出来るっすねぇ」
案内男はしみじみと言葉を吐いた。
「あ?何のことだよ」
「実は私、伐刀絶技使ってたんすよ。私のことをあまり意識できなくなる、という技なんですがね。
……私と闘いたがったり、私の名前を聞いたり。寅次郎さん、あなたには効果が薄そうだ」
男は困ったように頭を掻いた。しかし、なるほど、と寅次郎は思った。なぜ出会った端に、この男の名前を聞く、ということをしなかったのか、己の選択に納得がいった。
「なるほどな、初っ端あんたの名前を聞きそびれたのはそれが原因か。で、どうなんだ。名前くらいは教えてくれよ」
「……今日の主役は寅次郎さんと神様。私はただの小間使い。ですので私ばかり意識してもらっても困るんすけどね」
はぁ、と男は息を吐いた。
「リー、と言います。リー・シャオリー」
「リーか、確かに覚えた」
「そうやって意識しないでほしいんすけどねぇ」と頭を掻くリーに、寅次郎はわずかに笑ったのだった。
「さて、着きましたよ」
しばらく無言で歩いたのち、リーはそういった。寅次郎は改めて目の前の光景を見るも、
「廃寺じゃねぇか……」
人一人住んでなさそうな、寂れた寺院が目の前にあるだけだった。
呆れたように呟く寅次郎に、案内男は大きく首を縦に振った。
「ひどい場所っすよね。私が何度建て替えましょうって言っても、聞いてくださらないんですよ、あの頑固神様」
愚痴の中で出てきた頑固神様というフレーズに、寅次郎は小さく笑った。件の神様は、どうやらずいぶんと慕われているらしい。
呑気な考え事をしていた寅次郎だが、その余裕は廃寺の敷地に入るまでだった。
「……っ!」
慌ててその場から跳び退る寅次郎。その様子を見て、リーはいつものことだというように頭を振った。
「……おい」
「はい、何でしょう」
「あそこには
そういって廃寺を指さす寅次郎。彼らしくもなく、その指先は震えていた。
……見られたのだ、と。寅次郎には分かった。自分の足のさばき方を。重心の動かし方を。呼吸から心臓の一拍まで、遍くすべて観察された。
警戒する寅次郎に、「だから言ったでしょう」と、リーは答えた。
「あそこには、神様がいるっすよ、て」
そうして。
寅次郎は、
「神様、お連れしてきたっす」
「ご苦労、リー。汝が今年の優勝者か」
目の前の、異形の男。4本の腕を持ち、首に紐のようなものを巻いた肌の青い男。
男を視界に入れた瞬間から、寅次郎は絶句していた。
リーを見た時も驚いたが、この異形の男はその比ではなかった。
存在感。座禅を組んでいる異形の男の、なんと大きく感じることか。男が口を開く、その一挙一動すら神々しく感じられた。
神様なんているか、と寅次郎は考えていた。だから、まさか本当に神のようなモノと会うとは考えもしなかった。
「私は、シヴァ。シヴァ・ブラフマンという。汝、名を何という」
「……南郷、寅次郎」
かろうじて開いた口に、シヴァは困り顔で頭を掻いた。
「そう硬くなるな。私も主らと同じで、一介の伐刀者に過ぎないのだから」
そんなわけあるか!そう、寅次郎は叫びたかった。お前のような一介の伐刀者がいてたまるかと。
だが、口を開く余裕は寅次郎にはなかった。
しばらく顎をしゃくり、こちらを観察していたシヴァと名乗る異形の男は、何かに納得すると立ち上がった。
「ふむ、汝ならばよいだろう。寅次郎よ。 ……汝、我が剣の一振りを見るか」
シヴァが4本腕のうちの一本を振るう。すると、三日月のような形をした……シミターと呼ばれる武器がシヴァの手に現れた。
言葉を返したのは、寅次郎ではなくリーだった。
「え?神様、マジっすか?」
「大マジだ。」
「だって、神様の一振りを見たら
剣の一振りでどうして廃人になるのか、寅次郎には分からなかった。
「お前も乗り越えただろう」
「私も危うく廃人になりかけたんすが……」
「寅次郎ならば大丈夫だと直感したのだ。故に寅次郎、汝に問う」
感じていた神々しさが一層強くなった。寅次郎は、立っているのもやっとであった。
「寅次郎よ。強きを求める求道者よ。汝、わが一振りを見て、さらなる力を手にすることを欲するか」
「……!」
その言葉に。崩れかけていた体に、力が入った。
闘神リーグの優勝。ここが、天辺だと思っていた。ここより上に、強者は居ないと。
勘違いだった。リーがいて、シヴァがいた。自分を超える強者がまだまだいるのだと、寅次郎は悟った。なればこそ、さらなる力を求めるのは寅次郎にとって当たり前だった。
戦いたい。互いの獲物を打ち合わせ、ひりひりする勝負がしたい。身も心も削るような勝負の果てに圧倒的な強者に
……それが、寅次郎の伐刀者として、武芸者としての願いだった。
「……一振りを見るのが、どういうことか、俺には分からねぇがよ。
力が手に入るのなら、是非もない!
お前の言う一振り、俺に見せてみろ!」
「それでこそ、それでこそだ。我が剣の一振り、刮目せよ!」
そうして。
シヴァは流麗に剣を振りかぶりーー
どうすれば強くなれるのだろう。
寅次郎は頭をひねった。独力で技術を作り上げた。何者にも負けない力を身に着けた。だがここから先、どうすれば強くなるのか分からなかった。
うんうんと唸っていると、ふわりと。顔のない男が剣を振るった。その剣はまさに、寅次郎が求めていた
喜び勇んで、寅次郎は顔のない男をまねて剣を振るった。だが、どうにもうまくいかない。
もう一度。顔のない男の剣を観察する。足の運び。筋の動かし方。剣速。どれをとっても、寅次郎の上を言っていた。
寅次郎はあこがれた。あんなふうに剣を振るえる自分を夢想した。顔のない男の振るう剣を何度も見つめて、まねして、見つめてまねしてーー
(ーー違う!)
寅次郎は、正気に戻った。他人の剣をただただマネする機械になり下がり、自分の剣を殺すところだった。
(ここは、どこだ)
さきほどまで己の前にはシヴァとリーがいたはずだ。だが、いまは暖色系のあいまいな空間に、寅次郎と顔のない男がいるだけ。
唐突に、殺気を感じた。虚空に剣を振るっていた、顔のない男。その男が、明らかに敵意を持って己に剣を向けていた。
(……ああ、そういうことかい)
寅次郎は理解した。ここを出るためには、顔のない男と戦い、打ち勝つしかないのだと。
先ほど見た剣舞からすれば、寅次郎は顔のない男に勝ちようがない。力も技術も、あちらの方が上なのだ。だから、そのままでは絶対に勝つことはできない。
だから、寅次郎は。
寅次郎は、廃寺の床に倒れていた。
「顔のない男とは、私の修練の記憶の一部だ」
シヴァは静かに語る。
「私の剣は与える剣。長い長い修練の記憶を、欠片にして人型にしたもの。強さは折り紙付きだ」
リーは静かに拝聴していた。
「私の記憶に打ち勝つにはどうすればよいか。真似るだけでは、ただのデッドコピーだ。己が剣を貫き通すにも、
「食らうしかない。私の記憶を食らい、汝の体に合わせる。そのうえで、ひらめきを持って技と体を一致させるしかないのだ。
……よく戻ってきた、寅次郎……!」
「……まったく、無茶苦茶しやがって」
のそりと。寅次郎は起き上がった。その顔は疲労の色が濃いがーー確かに何事かを達成した、晴れやかな笑みを浮かべていた。
夜。丸くかけた月を眺め、シヴァは一人酒をあおっていた。
思い出すのは、試練を乗り越えた寅次郎のこと。寅次郎は、化けた。シヴァが手塩にかけて育てたリーをもってして、互角に戦えたのだ。シヴァの試練は、よほど寅次郎に影響を与えたようだ。
「寅次郎、寅次郎か……」
寅次郎の名前を口にする。どうにも、懐かしい響きがした。なつかしさの正体はつかめなかったが……なぜだか、体に喜びの感情が走った。
ふと、リーのことを考える。リーにはたしか、一人娘がいたはずだ。名前を聞いたときに、寅次郎と同じく懐かしい感情が走ったのを覚えている。
「……ふむ。育ててみるか」
フー・シャオリー。彼女を育ててみれば、懐かしさの正体がつかめるかもしれない。
それに、幼子ながらいかんなく才能を発揮していた彼女を育てるのも面白そうだ。
……いつか、自分に匹敵する剣士になるかもしれない。そんな淡い期待を込めて。
年を取らなくなって幾星霜。シヴァは、人を育てることに幸福を感じていた。
……これは、英雄譚ではない。ただ現人の神が人と戯れる、神話の第一章である。
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比翼の翼の師
世界で一番強い伐刀者は誰か。
子供のような問いかけだが、この問いは世界中の多くの人々を沸かす話題だ。
曰く、年老いたとはいえ闘神リーグを制した南郷寅次郎が最強だ。
曰く、【同盟】【連盟】【解放軍】、各組織のトップが最強だ。
曰く、時を操る力を持つ新宮寺黒乃とそのライバルである西京寧音が最強……
などなど。例を挙げればキリがないほど、その答えは様々だ。
だが、上記で挙げた例を含めて、大半の回答は少数派だ。
大抵のものは、こう答えるだろう。
……曰く、【KOF】世界ランキング一位、比翼のエーデルワイスこそが最強である、と。
少数派の回答者も、エーデルワイスが一番強いという事実を分かったうえで、敢えて自分の好きな伐刀者を推す例が多かった。
最も強く、美しい少女はもはや生きる伝説といっても過言でないほど、世界に名を轟かせていた。
……だが。
先の問いを、エーデルワイス自身に向けると、その趣は異なってくる。
世界で一番強い伐刀者は、誰か。
そう問いかけられた時、エーデルワイスはこう答えた。
「人としては、間違いなく私が一番強いでしょう。しかし……神には、私の剣はまだ届かないことでしょう」
その回答を聞いた者は皆、さしものエーデルワイスも冗談はとびきり下手らしいと察した。
そしてこう考えた。エーデルワイスも世界最強の自覚があるのだと。
この世にエーデルワイスに自分を超える実力の持ち主はいないと、エーデルワイス自身が発言したのだと皆が考えた。
その言を挑発ととらえて顔を赤くした伐刀者がいた。
エーデルワイスなら納得だ、と悟ったような伐刀者もいた。
彼女をよく知る者は、彼女らしくない発言に首をひねった。
……彼らは皆、一様に誤解していた。
エーデルワイスは、自身が最強でないと自覚したうえで、問いに答えたのだ。
だが、誤解した者たちを責めることなどできないだろう。
まさかこの世に、本当に神がいるなど想像できるはずがないのだから。
シヴァは廃寺の庭先にいた。
庭の動く影を丁寧に見やりながら胡坐をかき、湯呑に入った茶を口に含む。
神が飲むにしては安っぽい番茶だが、シヴァはその味を気に入っていた。
「ずいぶん力を抜いておられますね」
そんな彼に背後から透き通るような声がかけられた。
シヴァは体勢を変えず、口を開いた。
「エーデルワイスか。いつ以来だ、ここへ来るのは」
「さて、大体半年ほどでしょうか。仕事が忙しかったもので」
そう答えつつ、エーデルワイスは両の手に剣を出現させた。
「仕事か。忙しいのなら無理してこちらに来なくても良いだろうに」
「無理なんてしていませんよ。ただ、肉体労働が多いのでしばらく引きこもってやろうかと考えてまして」
ゆっくりと、エーデルワイスは足を運ぶ。シヴァはすでに、彼女の間合いに入っていた。
「世界最強が引きこもりか。口にしてみると面白い言霊だ」
「実際は面白くもなんともないんですけど、ね!」
言いつつ、エーデルワイスは剣を閃かせた。自然体からの、予備動作無しの最高速の一撃。並みの伐刀者では観るどころか見ることもかなわない、神速の一撃。剣先が、シヴァの頸へ吸い込まれ……
……
「相変わらずのじゃじゃ馬っぷり。安心したぞ、エーデ」
いつ出現させたかもわからない
「……
愛称を呼ばれて、エーデルワイスの口元にわずかに笑みが零れた。
「結局お師匠様は、どういう存在なんです?」
「なんだ藪から棒に」
剣を消し、床に腰を下ろしたエーデルワイス。彼女は自らの師匠に言葉をかけた。
「私は師匠から様々なことを学びました。剣の技術。魔力の運用。果ては料理から勉学まで。だけど、師匠自身のことについては知ってることは少ないでしょう」
「誰かに話すようなことでもないだろう」
「自身を育ててくれた恩師のことを、知りたいと思うのは当然ではありませんか?」
「……」
期待を込められたエーデルワイスの視線から、シヴァは顔をそらした。
ガシガシと頭を掻き、あきらめたようにため息をつく。
「お前も大概変な奴だな。こんな一介の伐刀者のことが気になるなんて」
「冗談は存在だけにしてください。あとお前ではなくエーデと呼んでいただけると嬉しいです」
「……毒を吐くようになったな、エーデ」
嫌味を言ったのに、エーデと呼ばれて嬉しそうにしている愛弟子。どこか育て方を間違えたかと、シヴァは少し憂鬱になった。
「しかしな。石器時代に生まれて、人々に火や文明を伝えて。あれやこれやしているうちに神と呼ばれるようになったぐらいしか面白いことなんてないのだが」
「十分トンデモない話じゃないですか」
妙に棒の口調でエーデルワイスがいった。自分の師匠の現実離れっぷりに、一周まわって冷静になったらしい。
「……一応確認しますけど、嘘じゃないですよね?」
「愛弟子に嘘をつくはずがないだろう」
「……テスタメントにかけて?」
「霊装持ち出すほどか」
気軽に自身の霊装を嘘発見器扱いするエーデルワイスの額を、シヴァは小突いた。
「まあ、だいぶ昔の話だ。忘れてしまったことも多い」
「今のお話だけでもお腹いっぱいですよ。……何か思い出されたら、私に話してくれるだけで十分です」
思い出すことが前提の話に、シヴァは苦笑いした。
「ところで、先ほどから気になっていたのですが」
少し姿勢を正して、エーデルワイスが問いかけた。
「あの女の子は、師匠のお子さんですか?」
あの女の子、のところで庭の中央を手で示すエーデルワイス。そこにはある種異様な光景が広がっていた。
そこには幼子がいた。年にすれば7歳ほどだろうか。彼女は物騒な籠手を身に着け、何もない空中を殴り蹴り、あるいはぱっと何かを躱したり。縦横無尽に動き回っていた。
何をしているのか、とはエーデルワイスは聞かなかった。彼女自身も、同じことを修行でやらされたからだ。
シャドーボクシングのようなものだった。違うのは、対戦相手は想像ではなくシヴァであることくらいだった。
驚いたのは、その練度。【KOF】でも通用しそうなその身のこなしに、密かにエーデルワイスは舌を巻いた。
誰にでもわかるほど、少女は才能に満ち溢れ、修行の道に明るかったことが見て取れた。
「いや、私のではなく弟子のだ。リー・シャオリーの」
「なるほど。リーさんの娘でしたか」
エーデルワイスはうなずいた。リー・シャオリー。軽薄そうな見た目の裏に、真摯に修行に打ち込んでいることが分かる身のこなし。10回戦って7回はエーデルワイスが勝てるが、3回は彼に取られてしまうだろう。そんな彼の、娘。
「金の卵ですね」
「あるいは金剛石の原石だ。成長しているのが我がことのように嬉しいな」
自分の子でないのに、シヴァは親馬鹿じみていた。
「最近は日本にも成長の楽しみな子が増えていてな。10年後、弟子たちがどう化けてくれるのかが今からの楽しみだ」
「日本の子にも唾つけてるのですか……」
「エーデ、口が悪い。そもそも、磨けば光ると分かっているのに手を出さない馬鹿はいないだろう」
「余計悪いじゃないですか」
エーデルワイスは半眼で師をにらんだ。
「……まあ、お師匠様の気持ちも分からなくもないので、それはいいです。それよりもう一つ聞きたいことがあります」
あの男の子は誰ですか、と。エーデルワイスが問いかけた。
リーの娘がこぶしを振るっている、その脇で。一人の少年が座して少女を観察していた。
一挙一動を見逃すまいとする、少年の目。こぶしを振るっている少女の技は、まさしく少年の血肉となっていることだろう。
ああ、と。シヴァは息を吐いた。
「彼の名前は黒鉄一輝。日本で目を付けた少年だが、
こともなげに言う師へ絶句することしばし。
「誘拐してるじゃないですかそれ!」
「いや。家の了承は頂いている。誘拐ではない」
エーデルワイスの絶叫と、シヴァの弁明が空に響いた。
読み返し
キャラ崩壊して
身を恥じて
実力不足で
悩む文才
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黒鉄一輝はかくありき
「どうしようかな、これ……」
破軍学園の寮にて。扉を前に、黒鉄一輝は困っていた。
(部屋割りを間違えたのか……?)
一輝の前の、閉ざされた扉。自分に割り当てられた部屋のドアだが、今扉を開けるわけにはいかなかった。
何せ、部屋の中では皇女が着替えをしている真っ最中なのだから。
部屋番号の書かれた紙と扉を何度見比べても、皇女のいる部屋が一輝の部屋であることに間違いはなかった。部屋番号を割り当てた人が間違えたのか、ステラが部屋を間違えたのか。それともーー
一輝の脳裏に、人の悪そうな笑みを浮かべた理事長の姿が浮かんだ。
頭を掻く。とにかく、事情を説明するしかないだろう。そう思い、
「はい、どうぞ」
気の強そうな感じの声に導かれ、一輝は扉を開けた。
「あら、あなたは?」
そこには先ほど
「お初にお目にかかります、殿下。僕は黒鉄一輝。破軍学園の一年生です」
一輝はまず、当たり障りなくあいさつした。少し深く頭を下げ、礼をした。
「あら、ご丁寧にどうも。知ってるだろうけど、ステラ・ヴァーミリオンよ」
一方のステラは多少警戒が解けたのか、自己紹介を返してくれた。
「それで、一輝だっけ?私に何の用?」
「えぇと、実は……」
一輝はもう一度頭を掻いた。
「……ここ、どうやら僕に割り当てられた部屋みたいなんです」
ぽかん、と口を開けたステラを見て。場違いにも、一輝は可愛いと思ってしまった。
「どういうことですか、理事長!」
ステラと一輝は理事長室にいた。半ば怒鳴り込むようにして乱入した、と言い換えてもいい。
あの後二人は何度も自分の部屋割りを確認したが、何度見てもステラと一輝が同棲しなければならない事実が変わることはなかった。
話し合っていてもらちが明かないと考え、二人は理事長である新宮司黒乃に話を聞きに来たのだ。
「どういうことも何も。君たち二人はルームメイトだ、何も間違えてはないさ」
そうして、笑いをかみ殺しながら黒乃は続けた。
徹底した実力主義。近い実力の者同士をルームメイトにすることで切磋琢磨させる工夫。実力の近いものがいない
「……とまぁ、ここまで説明しておいてなんだが」
黒乃は笑いを引っ込めた。
勝手な理由で男女の同衾をされそうになり、もう一度怒鳴りつけようとしていたステラだが。
「お前なら、一輝についていけるかもしれない。そう思ったからこそ同室にしたんだ、ステラ・ヴァーミリオン」
黒乃の言葉に押され、ステラは口を閉じた。
「……私が、一輝についていく?」
疑問を上げる。隣にいる少年は、ステラからすると吹けば飛ぶような弱弱しい魔力しか感じ取れない。魔力があることも、最初は分からなかったぐらいだ。確かに体は鍛えているかもしれないがーーそれだけだ。
そんな少年を、まるで格上であるかのように言う黒乃を、ステラは理解できなかった。
そんなステラを見て、黒乃は顎に手を乗せ、ふむ、と呟いた。
「私がそう評するのが不服か、ヴァーミリオン」
「不服というか……理解できないです」
「それなら一度、模擬戦をしてみるといい。戦ってみれば、私の言うこともわかるだろう」
「それは……」
ちらりと一輝を見るステラ。彼女の脳裏に弱い者いじめという言葉が浮かんだが。
「かまわないな、一輝?」
「はい、僕は構いません」
きっぱりと、自分と戦うことを了承した少年に、呆気にとられ。
「どんな人が相手でも、僕はただ、勝つだけです」
続いた言葉に、一瞬意識が空白になった。
「……この私を相手にして、勝つ、ね。舐めてるのかしら」
部屋の気温が、急速に上がっていく。
「いいわ、一輝。そこまで言うのなら、相手になってあげる。……
訓練場には20人弱の生徒たちが集まっていた。いずれもステラを見に来た見学者だろう、おおよそ全員が彼女を注視し、あるいはひそひそと話し合っている。逆に、一輝の方に注目する輩は皆無だった。
「……これが最後よ。本当にやるのね、一輝」
「ああ。僕の答えは変わらないよ」
事ここに至るまで、ステラは一輝のことが理解できなかった。彼女からすれば一輝はただの凡人で。自分に勝つつもりでいるのが不思議で仕方なかった。
(……警告したのに無視したのはあなたよ、一輝)
「それではこれより模擬戦を始める。双方、
黒乃の言葉が空に響いた。
(ぶっとばして、目を覚ましてやる!)
「傅きなさい。
「ーー落ちろ。隕鉄」
「よし、では……試合開始!」
両者が幻想形態で武装を展開したのを確認し、黒乃は開戦を宣言した。
「ハァァァァアァ!」
瞬間、ステラはまっすぐに一輝へ駆け出した。一輝が間合いに入った瞬間、容赦なく振り下ろす。
対する一輝。ステラを観るのみ、動こうとしない。
一輝の頭に吸い込まれるように、大剣の一振りが振り下ろされる。すわ一撃で決着かと、観客席が沸きかけた、その時。
ーー唐突に、一輝の姿が掻き消えた。
「なっ!?」
振り下ろした大剣は、止まらず。大地をたたき、轟音を響かせた。
ステラは周囲の観客が騒ぐのを無視し、さっと周囲に目を走らせる。
だが、ステージの上には自分以外影も形もない。
(ーーいない。どこにーー)
いた。
一輝は目の前にいた。
ステラの振り下ろした
ステラは混乱する。どうやって自分の剣を回避したのか。どうして燃え盛る炎の中で苦悶の顔を浮かべないのか。なぜ幻想に足をつけるのか。
ステラには分からない。分からないが。
一瞬後、自分は切られる、ということだけは分かった。
(ーー殺される)
幻想であるはずなのに。自分の首を切られる未来を予感した。
(ーー殺される。殺される。)
死への恐怖で、頭の中がいっぱいになる。
(ーー殺される。殺される殺される殺されーー?)
ふと。一輝の顔が目に移った。
彼は真剣だった。彼は本気で、この試合に臨んでいるのだと、その顔から見て取れた。
(ーーは、)
死への恐怖が急速に引いていく。現れた感情は、怒りだった。他の誰でもない、自分自身への、怒り。
(ーー私は、私は
一輝をぶっ飛ばそうと考えていた。自分に勝つという夢見がちなことを言う彼に、現実を教えようとした。
ーー教えられたのは、ステラの方だった。彼の剣は間違いなく、ステラのそれを凌駕していた。
だが、ステラの憤りはそこではなく。
(一輝は、こんなにも私に剣を魅せてくれてる)
死に際のように、走馬灯のように。周りがスローモーションになる中で、一輝の剣が振るわれんとする。
流麗な剣だった。無駄という無駄を省いた、最低限の動きで振るわれる剣。彼自身の鍛錬を如実に映し出したそれを、ステラは美しいとさえ思った。
対して、ステラは。
(ーー私はまだ、
ステラが見せたのは、怒りに任せて振った剣術と呼ぶのもおこがましい剣、それだけだった。
(ーー動きなさい、私の体)
恐怖は、無くなっていた。
(早く、速く!)
あるのは、一輝へ本当の自分の剣を魅せたいという、小さな願い。
(体がどうなってもいい!今は、今だけは!)
ぎちり、とまるで時が止まっていたかのように微動だにしなかったからだが、動く。
(動け!動け!動けえ!!)
しかし、それは本当に微々たるもので。
--次の一瞬。剣が、閃いた。
「ーーっ!」
ステラは、がばりと身を起こした。
全身が汗だくだった。荒く息をし、落ち着こうと自身の体を抱きしめる。
しばらくして、顔を上げる。ふと、ベッド脇の小さな鏡が目に留まった。
いつもより余裕のない表情。汗。そしてーー首筋の赤い線が見て取れた。
「……くぅっ!」
体が、心が覚えていた。幻想なれど真に迫り、自分を殺した一輝。そのことを思う度、無力な自分に対する怒りが沸いてくる。
「ーー起きたか、ヴァーミリオン」
声がかかった。目を向けると、黒乃が煙草をふかしていた。
「理事長先生……」
大きく息を吐き、ステラは口を開いた。
「……彼は、何者なんですか」
「……何者と言われてもな。Fランクが妥当な騎士だよ、彼は」
「そんなことは聞いてません!」
ステラは叫ぶように言った。
「そうは言ってものな、伐刀者としてはFランクだとか、幼いころ留学の経験があるとか。その程度のことしか話せないぞ、私は」
「……そんな……」
うつむくステラ。そんな彼女に「だが」と、黒乃は続けた。
「あいつのことを知りたいのなら、あいつ自身に聞けばいいだろう。これからルームメイトになるんだから」
「あっ……」
そうだ。ステラはまだ生きてる。ならば、彼と話す機会はある。
「……ありがとう、理事長先生。あいつに、出会わせてくれて」
そういうと、黒乃はにやりと笑った。
「どうだ。日本に来た
「はい!」
(待ってて、一輝。必ずーーあなたに、追いついてみせる!)
願わくば、その先の一輝との再戦を予期し。
ステラは、決意に打ち震えた。
『ほう。中々愉快なことになっているな。』
「……僕はちっとも愉快じゃありません」
夜更け。一輝はタブレットを耳に当てて自らの
師は、その気になれば携帯機器などなくても、遠く離れた一輝と会話することが可能だという。
ならなぜ携帯を使うのか尋ねると、たまには
師匠のどこが文明人なのだろう。幼き頃からの、一輝の疑問だった。
閑話休題。
『それで、件の少女はどうだった』
「可愛らしい女の子でした。性格も……とっつきやすい方でしたし」
きついと言われる部類の性格なのは確かだろうが、一輝にとっては話しやすい方だった。
だが、師匠の聞きたいことは、そんなことではないのだろう。焦れるような雰囲気に、一輝はしぶしぶ口を開いた。
「実力の方は……よく分かりませんでした」
『嘘をつけ』
一瞬で看破されてしまう。
『お前が実力を把握できないわけがないだろう。他の誰でもない、お前が』
「……」
一輝は沈黙した。
『……まあいい。試合はどうだった』
「どうもこうも……感情任せに剣をたたきつけた彼女に、カウンターを取って、お終いです」
『ふぅむ』
師の唸るような声が聞こえた。一輝としては、それ以外に説明のしようがなかった。他に何かあるとすればーー
「……あっ」
『む?どうした』
「いえ……最後の最後、僕が剣を振るうまで……彼女の目、死んでなかったなって」
思い返すは、彼女の目。絶望的な状況だろうに、何かをなさんと決意した瞳。
とてもきれいだ、と思った。
『……そうか』
師は、短く返すのみだった。
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指導と再会
「はあぁぁあ!」
日も登りきらぬ早朝。ステラは自らの霊装を振るっていた。
自分の国に伝わる皇室剣技。それがいかんなく発揮された技は、一流の域に到達しているといっても過言ではない。
ただし、相手もさるものだった。
「
日本刀型の霊装を構えた黒髪の少女が、ステラの攻撃を受け止める。もう何合も打ち合っているが、いまだにステラは有効打を出せないでいる。力も魔力も上回っているはずなのに、押し切れない。じりじりとした鍔迫り合いが続き……ふっと。手ごたえが軽くなると同時に、目の前にいた少女の姿が掻き消えた。
「しまっーー!」
「貰い!」
焦ったときにはすでに遅く。
ステラは、首を獲られていた。
「じゃあ、反省会をしようか」
一試合終えて、二人の体力が回復をした後。一輝は口を開いた。
「まずはステラ。体の動かし方も、力の乗せ方もだいぶ良くなったと思うよ。だけどまだ、相手の観察が出来ていない」
「むぅ……」
唸るステラだが、文句は言わなかった。一輝に指摘されたことは自分自身でもわかっていたからだ。
「次に綾瀬。だいぶ動きが良くなったね。ステラ相手に一本取るとは思わなかった」
「うん、ボクも勝てるとは思わなかった」
綾瀬と呼ばれた少女は本当に驚いたように言った。
綾辻綾瀬。それが少女の名前だった。
なんでも彼女は元一輝の同級生で、二人は今日のような訓練を一年間続けていたそうだ。
それを聞いた時、ステラは少し不機嫌になった。
「これがボクに秘められた真の力……」
「必死でやった稽古が実を結んだってことだろ。自分の努力を隠すのはためにならないぞ」
「う。ごめんなさい」
一輝につっこまれてシュンとなる綾瀬。二人の距離はどう見てもただの生徒同士ではないように見えた。
「……二人は、付き合ってるの?」
「うぇえええぇえええ!?」
ぽつりとつぶやかれたステラの疑問に、綾瀬は盛大に吹き出した。
「と、突然何を言い出すの、ステラさん!?付き合うだなんて、いやでもよく考えたら付き合ってるようなそうでもないようないやでも広義の意味では付き合ってると言えるような……」
突然故障した綾瀬に目を丸くステラ。一輝はため息をつくと、目を回す綾瀬の目の前で手を叩いた。
いわゆる猫だましである。
「ひゃっ!?」
「綾瀬、そろそろ準備しないと始業式に間に合わないよ」
驚いた綾瀬に、一輝は素早く言葉を割り込ませた。
「あれ、もうそんな時間!?ごめん一輝、ステラさん、続きはまたあとで!」
いうや否やあっという間に駆け出していく綾瀬。
「……なんというか、面白い先輩ね……」
「まぁ、一緒にいて退屈はしない人だよ。さ、僕たちも行こう」
そうして、二人は部屋へと戻った。
「念のために聞くけど、二人は付き合っていないのよね?」
ステラは結構食い下がった。
「何がそんなに気になるのかわからないけど……うん、付き合っていないよ」
「なら良し」
ぐ、とガッツポーズをとるステラ。そんな彼女を、一輝は不思議そうな顔で眺めていた。
『ステラは僕と同じようにはできないと思う』
ステラが一輝へ、いわゆる弟子入りを志願した時、一輝は断りとして言った。
『僕とステラでは、目指すべき方向が正反対なんだ』
だから僕が指導しても、ステラは才能を十全に生かせない、と。
正反対だと言われても、ステラにはピンとこなかった。首をかしげていると、一輝は儚げに笑った。
『僕には、魔導騎士として活動するに準ずる魔力がない。つまり、才能がないんだ』
その言葉は、ステラに少なくない衝撃を与えた。あれほど自分を圧倒した一輝が才能がないなど、いったい何の冗談なのか。
『ちょっとした裏技みたいなものを使って、一時的にブーストしてたりはするけどね。素の魔力は全然ダメなんだ。……だから、僕に弟子入りしたとしても、僕は剣術しか教えることができない』
それでもいいかい?と、一輝はステラの目をまっすぐ見ていった。
『……ええ、構わない。一輝の言う、目指すべき方向というのはまだピンとこないけど……あなたの剣術が学べるなら、それは絶対に価値のあることだわ』
ステラは、そう答えた。
「……でも、私以外にも指導を受ける子がいたなんて、聞いてないわよ……」
「あはは……綾瀬に関しては、去年ちょっとした縁があってね」
道すがら、ステラは愚痴をこぼすように言い、一輝は困ったように笑う。
そう、ステラにとっては予想外であることに、一輝はすでに弟子を取っていたのだ。それも、ステラから見ても唸るほどに可愛い女の子とくれば、落ち着けるわけがない。
過ごした時間も短い今は、剣士としても乙女としても負けている。だがいつかは逆転してやろうと、ステラは闘志を燃やすのだった。
「へぇ、妹さんがいるの?」
「そう、今年入学してくるみたいなんだ」
話題は一輝の家族へと移った。一輝は嬉しそうに、妹のことを話す。
「最後に会ったのは4年前かな。僕は家に帰っちゃいけないことになっているから、こっそりと会いに行ったのだけど。クラスの男子にモテそうなくらい、美しくなってた」
シスコントークをまるで当たり前であるかのように話す一輝に、ステラの方が少し恥ずかしくなった。それと同時に、家に帰っちゃいけないといった、一輝のさびしそうな顔が忘れられなかった。
「……ちょっとびっくりしちゃった。元気そうに話してたのに、いきなり吐血するなんて」
「僕も去年は本当に驚いたよ。どうも、すごい病弱みたいなんだ」
ホームルームが終わった後、ステラはけだるげに話した。ここ最近、ステラは驚きっぱなしで疲れが出てきたのだ。
「……それで?噂の美少女ちゃんはどこよ」
「美少女ちゃん……って、妹のことか。ステラ、ノリがおっさん臭い……」
「……お兄様」
声が、掛けられた。一輝が顔を向けると、一回り小さな影が一輝の胸に飛び込んできた。
「お兄様、お兄様、お兄様……!」
「……珠雫」
まるでうわ言のように。一輝のシャツを握りしめ、涙ながらに彼のことを呼び続ける珠雫。ステラやからもうとしていた同級生は、呆然とその様子を眺めていた。
「心配……して、おりました。心が、割れてしまうんじゃないかと、思うくらい……!」
「……うん」
雫と呼ばれた少女の頭を撫で、一輝は言った。
「ただいま、珠雫」
「……!」
眦に涙をためつつも、珠雫は満面の笑みを浮かべた。
「はい!おかえりなさいませ、お兄様!」
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