ラブライブ!サンシャイン!!輝こうサッカーで! (ルビィちゃんキャンディー)
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序章 「見つけた」

序章

 

高海千歌は考える 何もかもが普通な自分を変えたい。もっと特別な何かをやりたい。何かを全力でやりたい。じゃあ…何をするの?何をしてきたの?

 

 

 

 

 

私は なにができるの???

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー

 

桜の花のつぼみも膨らんできた。冬とは既にお別れし、春がやってくる。春は暖かいだけでなく始まりの季節でもある。

 

そんな中、高海千歌は始まりを探しに幼馴染の渡辺曜と一緒に東京へ来ていた

 

曜「千歌ちゃん!あそこのお店行ってみようよ!」

 

千歌「待ってよ〜曜ちゃーん!」

 

千歌の幼馴染の渡辺曜は運動能力に長けていて、今でも飛び込みを中心に練習している。その飛び込みで優秀な成績をだしていて、強化選手にも選ばれている。そして…

 

曜「うわぁ!制服がたくさんだあ!!」

 

大の制服好きである。

 

千歌「曜ちゃんはホントに制服が大好きだなあー」

 

曜を追いかけているとメイドさんからチラシを貰った

 

メイドさん「お願いしまーす!」

 

辺りを見回すとメイドさんがいっぱい!流石はアキバ…

 

その時、強い風が吹きメイドさんの持っていたチラシの山が吹き飛ばされてしまった

 

千歌「あわわわわわ!大変だあ!!」

 

慌てて拾うのを手伝うと1枚、遠くに飛んでいくチラシがあった。

千歌はそのチラシを追いかけながら考えていた。

 

何かに夢中になりたくて

 

何かを全力でやりたくて

 

脇目も振らずに走りたくて

 

何をやっていいかわからなくて

 

燻っていた私の全てを

 

吹き飛ばす……ようなものと出会えないかと

 

そして…

 

千歌「はぁ、はぁ、はぁ、やっと…捕まえた…………あっ…………」

 

出会ったんだ

 

千歌「………!!!!」

 

千歌「これだ!!」

 

走りきり上を見ると巨大なスクリーンがあり、そこに映像が映し出されていた

 

千歌「サッカーだよ!!見つけた!!」

 

 

 

 

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改めまして、はじめまして。ルビィちゃんキャンディという…まあ露骨な名前ですよね?処女作なのでとんでもなく素人です。誤字脱字、おかしい言葉など多分、盛りだくさんなのでどうぞ暖かくご覧下さい…あと、学生の身なのでホントに申し訳ないのですが更新は亀です。目標は1、2週間にしっかり投稿です。ヘタる気はありません。頑張ります。そのうちにイナ〇マの技のオンパレードになります。いろいろと注意でお願いします。特に後半からμ'sが登場します。苦手な人は回れ右でよろしくお願いします

 



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第1章 "始動編" 〜0からの始まり〜
第1章 1話 「サッカー部、復活しました!」


書き置きしていたのですぐに投稿します。これからは1、2週間感覚になると思います。質問や意見、指摘 お待ちしております。修行の身なので読者様の言葉が1番の教材になります。

ちなみに、ルビィちゃん激推しです


4月!浦の星女学院!!入学式!!!

 

桜満開、絶好の入学式日より。 ここ静岡の浦の星女学院には新一年生が次々と校門をくぐっていた。

校門をくぐった先にはまるで商店街のように部活勧誘の市場ができていた。水泳、陸上、バレー、吹奏楽、放送部、ソフトボールなどなど 部活の種類は豊富

 

そんな中、やけに貧相な部活???があった

 

「サッカー部でえぇぇぇぇぇぇす!!!!」

 

「春から復活ぅぅうサッカー部ぅぅぅよろしくお願いしまーす!!」

 

しかし人は流れていく…しかし高海千歌はめげない

 

「輝けるサッカー選手!!サッカー部ぅぅぅぅ!!」

 

……………ホーホケキョ!

 

「………うぅ…サッカー部でぇすぅ…」

 

「千歌ちゃん……」

 

「今…大人気の…サッカー部でええええす!」

 

――――――――――――――――――

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―――――――――――

――――――――

―――

時は少々さかのぼり 今朝

 

 

ー高海家 「十千万旅館」ー

 

 

ドスン!!!「うあうぅ!」

 

美渡「何!?」

 

志満「千歌ちゃんだと思うけど…」

 

美渡「まさか、まだやってるの??お客様の迷惑だよ…」

 

志満「言ったんだけど(苦笑い)」

 

美渡「お前も言ってやってー!こんな田舎じゃ復活は無理だーって!」

 

しいたけ「ワン!」

 

千歌「いったたたた…」

 

曜「大丈夫?ってか室内でリフティングはするもんじゃないと思うけど…」

 

千歌「へーきへーき!もう一度!」ポーンポーン

 

曜「本当に復活させるつもり?」

 

千歌「うん!新学期始まったら、すぐに部を復活させる!」

 

浦の星女学院サッカー部は数年前までは存在していたが今は既に廃部しているらしい

 

曜「えへへ…他に部員は?」

 

千歌「ううん。まだ、曜ちゃんが水泳部じゃなければ誘ってたんだけど」

 

曜「でも…どうしてサッカー部なの?」

 

千歌「なんで?」

 

曜「今までどの部活にも興味ないって言ってたでしょ?」

 

そう聞かれると千歌ちゃんはニコッと笑った、どういうことだろう???

 

モヤモヤしながら千歌ちゃんの答えを待っているとふと、思い出した。

 

千歌曜「あっ!もうこんな時間!!!!」

 

志満姉にお客様用玄関から出ちゃダメって怒られたけどそうしないと間に合わないよ!ってバスが来てるぅ!待ってえぇぇえぇ!

 

 

朝日が海に反射してキラキラ輝いていた

まるで今の千歌ちゃんみたいだ…綺麗だな…

 

 

 

 

 

ーバスの中ー

 

なんとか間に合った…まさか朝から走るハメになるとは、ん?千歌ちゃん、何かバッグから出してるけどなんだろう?

 

千歌「危うく無駄になるところだったよー」

 

千歌ちゃん、部活勧誘のチラシまで作ったんだ…

 

千歌「早いほうがいいでしょ?はあぁ、楽しみだなぁ…」

 

千歌ちゃん…そこまで本気なんだね…よし!

 

曜「よっしゃ!千歌ちゃんのために一肌脱ぐよ!」

 

―――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

―――

 

そして、今に至る

 

曜「サッカー部でぇす……」

 

ヒューー……風だけが通り過ぎる

 

曜「大人気、サッカー部でぇす」

 

千歌「うぅ………」

 

全然だなぁ…こればかりはどうしようもないなぁ あれ?千歌ちゃんどこ見てるんだろう?

 

千歌たちの前を通ったのは赤髪のツーサイドアップの少女とセミロングの茶髪の垂れ目の少女であった。千歌は気づいた、赤髪の子のバッグにサッカーのユニフォームのキーフォルダーがついていることを、そこからの千歌の行動は早かった

 

千歌「サッカーやりませんか!?」

 

美少女2人の目の前に千歌特製のポスターを差し出した

 

「ずら!?」

 

千歌「ずら?」

 

美少女は不味いと思ったのか言い直す

 

「い、いえ…」

 

千歌「大丈夫!悪いようにはしないから。」

 

曜(その言い方は不味いんじゃ…)

 

千歌「あなた達ならきっと上手くなる!」

 

「でも、マルは…。」

 

そんな中、後ろにいた赤髪の子がポスターをじっと見つめていた。

 

千歌「サッ!サッ!ササッ!」

 

千歌がチラシを動かすとポスターを目で追ってくる。

 

千歌「興味あるの!?」

 

たまらず千歌は聞く。すると

 

「試合とかはあるんですか??」

 

千歌「ううん。これから始めるの!だからあなたみたいなサッカー好きな子にぜひ!」

 

そして千歌は過ちを犯す。赤髪の子に手を触れたのだ…もう後戻りはできない。みるみる顔が青ざめていく

 

「ずら(察し)」

千歌「へ…?」

 

「ピギャアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「うわぁ!」「(爆音波だ…)」

 

「ルビィちゃんは究極の人見知りずら…」

 

そして赤髪の子、ルビィの叫び声で木から少し青っぽい黒髪の頭にお団子をつけた女の子が落ちてきた

 

「うわあぁあ!!!」スタッ

 

「ぴっ!?」「うわぁ!」

 

幸い上手く着地出来たようだ

 

曜「(あの高さから飛び降りて普通に着地出来るなんて…足、鍛えてるのかな?)」

 

「ぐあ!?」バン!!

 

しかしバッグが頭に直撃し悶絶する

 

千歌「ちょ…いろいろ大丈夫??」

 

千歌が落ちてきた子に問いかける、

 

「フッ…ここは…もしかして地上?」

 

4人「ヒッ…………」

 

頭の打ちどころが悪かったのだろう、だがしかし、不気味過ぎて後ずさりしてしまう

 

「善子ちゃん?」

 

だが1人だけ違った。善子と言った子に近づいていき

 

「やっぱり善子ちゃんだ!花丸だよ。幼稚園以来だねー!」

 

善子「うえ!?は・な・ま・るぅ!?」

 

善子「人間風情が何を言って「じゃーんけーん…ポン!!」

 

急にじゃんけんを始めた花丸、善子は花丸につられ変なチョキを出した

 

花丸「このチョキ、やっぱり善子ちゃん!」

 

善子「善子ゆうな!!私はヨハネ!ヨハネなんだからねー!」

 

善子はたまらず逃走、それを追いかけ、花丸とルビィも行ってしまった

 

千歌「……あの子達…後でスカウトに行く!」

 

曜「あははは…」

 

勧誘する子の目星もついた!あとは行動のみ!っと思っていた時だった。2人の後から誰かが話しかけてきた

 

「貴方ですの?このチラシを配っていたのは?」

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 




分量少ないですね…もっと増やせるように頑張ります ここまではほぼ原作通りできました。しかしここからオリジナルが増えていくので…


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第1章 2話 「生徒会長、幼馴染、そして…」

そういえば…まだ千歌ちゃんたち全然ボールに触ってない…


 

「貴方ですの?このチラシを配っていたのは?」

 

2人の背後に黒髪で前髪を揃えた女子生徒が立っていた。

 

「いつ何時サッカー部が浦の星に復活したと?」

 

「サッカー部はもう廃部したのですよ?」

 

千歌「あなたも1年生?」

 

曜の顔が引きつった 不味いこれはホントに不味いと

 

曜「千歌ちゃん、違うよ…あの人は新入生じゃなくて3年生。しかも…ヒソヒソ」

 

曜は目の前にいる3年生の先輩に聞こえないようにヒソヒソと千歌にこの人は誰なのかということを伝えた

流石に千歌も理解したようで自分のやらかしに気づいた

 

千歌「嘘……生徒会長?」

 

生徒会長は不敵な笑みをうかべた

 

あっ…これ生徒会室行き?まさかね?

 

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――――――――――――――

―――――――――

―――

 

 

放課後、内浦湾に浮かぶ淡島と内浦を結ぶ小型の定期船。その中には千歌と曜の2人しか乗っていなかった。

 

千歌「あぁ…失敗しちゃったなぁ。でもどうしてサッカー部復活は駄目ーなんて言うんだろう…」

 

曜「…………嫌い…みたい。クラスの子がこの前、復活させたいって言いに行った時も断られたって…」

 

千歌「えーー!?曜ちゃん知ってたの!?」

 

曜「ごめん!!」

 

千歌「先に言ってよ〜〜」

 

曜「だって…千歌ちゃん夢中だったし、」

 

曜「とにかく、1度廃部になった部活に情けをかけるほど甘くないっぽいね…」

 

千歌「うぅ…」

 

千歌はうなだれながら夕焼け空を眺めた。船はまもなく淡島に到着する。

―――

 

千歌「着いた!」

 

千歌は元気よく船から降りると、そのままダイビングショップに向かった。そこにいるのは、ダイビングスーツを着たポニーテールの大人っぽい女性、松浦果南だった

 

果南「遅かったね。今日は入学式だけでしょ?」

 

曜「うん、それがいろいろと…」

 

千歌「はい!回覧板とお母さんから!」

 

千歌は回覧板とお母さんから預かった差し入れの袋をデッキにいる果南に渡した

 

果南「どうせまたみかんでしょ?」

 

千歌「文句ならお母さんに言ってよ!」

 

千歌は怒ったように果南に訴えるが果南は微笑んでダイビングの片付けに戻った。

千歌たちはデッキにあるパラソルの下にあるイスに座り、片付けが終わるのを待っていた

 

果南「よっと……」

 

曜「それで、果南ちゃんは新学期から学校これそう?」

 

果南「うーん、まだ家の手伝いが結構あってね、父さんの骨折ももう少しかかりそうかな」

 

千歌「そっか…果南ちゃんも誘いたかったなあ…」

 

果南「ん?誘う?」

 

千歌「うん!私ねサッカー部、復活させるんだ!」

 

「キュ……」酸素ボンベを閉めていた果南の手が"サッカー"その単語により一瞬止まった

 

果南「……ふーん。まぁでも、私は千歌たちと違って3年生だしね。」

 

千歌「うーん…果南ちゃん確か、小学生と中学生の時にサッカーやってたよね?」

 

果南「まあ、一応やってたよ?」

 

千歌「だから、サッカー部復活させたら、果南ちゃんは絶対に誘う!って思ってたんだけど…うぐっ!?」

 

果南「はい、お返し!サッカーはちょっと厳しいかな?」

 

千歌「えー?また干物??」

 

果南は千歌の口にお返しの干物を押し付けた。

 

果南「文句ならお母さんに言ってよ!まあ、そういう訳で、もうちょっと休学続くから学校で何かあったら教えて。」

 

千歌「あ…うん。」

 

バババババババ

 

曜「ん?」千歌「なんだろう?」

 

帰ろうとした時に淡島にヘリコプターの、空気を切る音が響いた

 

果南「……小原家でしょ。」

 

果南はそう言うと、ピンク色のヘリをじっと見つめていた。その時、果南は怒っているような、悲しんでいるようなそんな顔をしていた

 

 

 

 

 

 

「2年ぶーりですか…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

―――

 

千歌はバスから降り、1人、十千万前のバス停から十千万へ歩き出した

 

千歌「はぁ、どうにかしなくちゃなぁ…」

 

千歌はため息をつきながら自分のチラシを見ていると

 

他校の制服を着たワインレッド色の髪の少女が船着場の浅橋に立っているのを見つけた 次の瞬間

 

千歌「ん?…へ?」

 

その場で制服を脱ぎ捨てる少女を見て、千歌は足を止める

 

千歌「うそ…まだ4月だよ???」

 

スクール水着になった少女は海へ走り出す。まずい。そう思った頃には千歌は少女を止めていた

 

千歌「待って!死ぬから!!死んじゃうから!!!」

 

「離して!!行かなくちゃいけないの!!」

 

千歌の努力も虚しく2人の体は海の上へ、宙へ浮いた

 

千歌「へ?」

 

「わあああぁぁぁ!!!!!」

 

2人がいた場所に大きな水柱があがった

 

 

 

 

 

 

 

 



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第1章 3話 「桜の少女との出会い」

原作と設定が大きく変わっているところがだんだんと増えてきます

初の必殺技も一瞬出てきます


「クシュッ!」

 

くしゃみの音が砂浜に響き渡る。ぬれている少女に千歌はタオルをかけてあげた

 

千歌「大丈夫?…沖縄じゃないんだから。海に入りたければ、ダイビングショップもあるのに…」

 

「海の音が聞きたいの」

 

千歌の質問に対し、少女は答える。千歌はさらに問う

 

千歌「どうして?」

 

「………………」

 

千歌「……分かった。じゃあもう聞かない………海中の音ってこと??」

 

「ふふっ。私、ピアノを弾いていて、次の曲のテーマが海なの。でも、どうしても海の曲のイメージがうかばなくて」

 

千歌「へー!ピアノを弾くなんて凄いね!!ここら辺の高校?」

 

「…東京。」

 

千歌「東京!?わざわざ?」

 

「わざわざって言うか……」

 

千歌「そうだ!じゃあ誰かサッカー選手知ってる?高校生の!」

 

「高校生の?」

 

千歌「うん!すっごく上手な人!」

 

「……私の通ってた高校のサッカー部は大会でも勝ち進める強豪校なの」

 

千歌「へぇー!高校の名前は?」

 

「…UTX高校」

 

千歌「UTX!!私も知ってるよ!その高校!」

 

「やっぱり有名なの?」

 

千歌「有名なんてもんじゃないよ、UTX高校は勝ち進めるどころか、5年連続で高校女子サッカー大会優勝!日本代表選手のほとんどがUTXサッカー部だって聞くし!」

 

千歌「って、私も詳しくなったのは最近だけど…」

 

「…今のUTXサッカー部には圧倒的な実力を持っている選手が3人いるの。」

 

千歌「綺羅ツバサさん、統堂英玲奈さん、優木あんじゅさんでしょ?」

 

「知ってるのね」

 

千歌「そりゃあ知ってるよ。私の高校でも名前を知らない人がいないくらい超有名なんだよ!」

 

「私は…彼女たちには到底及ばなかった…」

 

千歌「ん…?及ばなかったって、もしかして…サッカー部?」

 

「うん。UTX高校ではサッカーをやっていたの。もう、辞めちゃったけどね。」

 

千歌「そうだったんだ…」

 

「小さい頃から頑張ってきたけど、私にはサッカーの才能なんてないんだなって分かったから……」

 

千歌「でも、すごいと思う。」

 

「え?」

 

千歌「貴方みたいに、ずっとサッカーを頑張ってきたとか、大好きなことに夢中でのめり込んできたとか、将来こんなふうになりたいって、夢があるとか。」

 

千歌は海岸に落ちている石を拾い、海に投げた。石は音をたてながら3回跳ねて沈んでいった

 

千歌「…そんなの、ひとつも無くて。」

 

千歌「…私ね、普通なの。どんなに変わろうとしても、普通なんだって、そんなふうに思ってて。それでも何かあるんじゃないかって、思ってたんだけど、気がついたら高2になっていた」

 

千歌「でもそんな時、出会ったの。」

 

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―――

 

『後半の残り時間もあと僅かです!はたして、どちらの高校が優勝するのか!?』

 

千歌があの時、スクリーンで見たものは全国高校女子サッカー大会の本戦の決勝であった

 

点数は2対2の同点。次にゴールネットを揺らした学校が全国王者となる

 

千歌(…すごい。もう少しで試合、終わっちゃうのに…誰も諦めていない…)

 

『うおおおおぉ!!!』

 

UTXの選手が体格差的に不利な中で、ヘディングで競り勝ち、UTXの得点源、綺羅ツバサへとボールは渡る

 

英玲奈『ラストチャンスだ!!決めろ!ツバサ』

 

ツバサ『みんなの思い…無駄にはしないわ』

 

ー流星ブレード!!!ー

 

まるで流れ星のような、いや、流れ星が相手のゴールに吸い込まれていった。

 

『ゴーーーール!! UTX!3対2で劇的勝利!全国制覇です!!!』

 

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―――

 

千歌「みんな私と同じような、どこにでもいる普通の高校生なのに、それで思ったの。一生懸命特訓して、みんなで心をひとつにしてグラウンドに立つと、こんなにもかっこよくて、感動できて、素敵になれるんだって。サッカーって、こんなにもキラキラ輝けるんだって!!!」

 

千歌「気づいたらサッカーのことたくさん調べてた。毎日動画見て、選手覚えて、そして思ったの。私も仲間と一緒に頑張ってみたい。あの人達が立っていたグラウンドに、私も立ちたい。」

 

千歌「私も、輝きたいって!!!」

 

「…ありがとう。なんか、頑張れって言われた気がする。今の話。」

 

千歌「ほんとに?」

 

「ええ。サッカー選手、なれるといいわね。」

 

千歌「うん!…あ、私、高海千歌。あそこの丘の上にある浦の星女学院っていう高校の2年生。」

 

「同い年ね。私は桜内梨子。高校はさっきも言った通り、UTX高校。」

 

――――――――――――――――――

 

 

 

次の日、バスを降り時、千歌はもう一度提案した。もう一度、部活動設立書を持っていくと。

 

曜「もう一度?」

 

千歌「うん。ダイヤさんのところに行って、もう1回お願いしてみる。」

 

曜「でも…」

 

千歌「諦めちゃダメなんだよ!!!私、目指したいの。あの人達と同じところを」

 

曜「………本気なんだね。」

 

千歌「え?」

 

曜は千歌の右肩をちょんと叩き、千歌が右を向いた時に、左から部活申請書を取った。

 

千歌「ああ!ちょっと!!」

 

曜は千歌の背中に自分の背中を合わせた。

 

曜「私ね、小学校の頃からずっと思ってたんだ。千歌ちゃんと一緒に夢中で何かやりたいなって!だから、水泳部と掛け持ち、だけど!!」

 

曜は千歌の背中を使い、部活申請書に"渡辺曜"と書き加えた

 

曜「えへ!はい。」

 

千歌「曜ちゃん……うぅ、曜ちゃあああん!!!!」

 

曜の名前が書き加えられた部活申請書を千歌は涙ぐみながら受け取り、曜に抱きついていた

 

曜「苦しいよぉ…」

 

千歌「よーし!絶対凄いサッカー選手になろうね!!!」

 

曜「うん!!」

 

曜は千歌に元気よく答えた。その時、目の前をヒラヒラと部活申請書が落ちていった。水溜りの中に

 

千歌、曜「ん?…….….」

 

千歌、曜「「あああぁぁぁあああぁぁぁ!!!!!!!」」

 

――――――――――――――――――

 

 

ダイヤ「よくこれでもう一度持ってこようという気になりましたわね…しかも、1人が2人になっただけですわよ?」

 

ダイヤはクシャクシャになった部活申請書を見ていながら言う

 

千歌「やっぱり、簡単に引き下がってはダメかなって思って。もしかしたら、生徒会長は私の根性を試しているんじゃないかって!」

 

ダイヤ「違いますわ!何度来ても同じとあの時も言ったでしょう!!!」

 

千歌「どうしてですか!!!」

 

千歌とダイヤの言い合いが始まった。曜は見物人である

 

ダイヤ「この学校にはサッカー部は必要ないからです!!!」

 

千歌「なんでです!!!」

 

千歌、ダイヤ「「ぐぬぬぬぬぬぬ…」」

 

曜は2人をなだめ、机から下ろそうとした

 

ダイヤ「貴方にいう必要はありません!!大体、やるにしてもメンバーは揃っていますの?」

 

千歌「あ……」

 

机の上から降りたダイヤは窓際に立ち、問いかけた。千歌はそうだったと言わんばかりにその場で固まっていた

 

曜「確か、高校女子サッカー大会って11人ではなく、9人制でしたよね?」

 

曜の答えに対してダイヤは「その通りですわ」と言い、また更に話し出した

 

ダイヤ「サッカーを始めるのに最初に難関になるポイントですわ。東京の高校ならいざ知らず、うちのような高校だとそんな生徒は残り7人集まるかどうか…」

 

その後、千歌たちが学校中で勧誘している姿が目撃された

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

千歌「1人もいない……」

 

千歌が溜息をつく。田舎の学校ですぐに残り7人が集まるというのはかなり無謀な話である

 

千歌「こうなったら…私が!!何とかして!」

 

千歌の机の中から出てきたのは忍術の教科書?????

 

曜「千歌ちゃん…何?それ?」

 

千歌「私が分身の術で8人になるの!!」

 

流石に無理にも程があると思った曜は言う

 

曜「できる頃には卒業してると思う…」

 

千歌「だよねぇ….」

 

千歌は机に突っ伏してしまった。その時、チャイムと一緒に、担任の先生が入ってきた

 

「はーい、皆さんここで、転校生を紹介します」

 

担任の先生の言葉のあとに、見覚えのあるワインレッド色の髪の少女が入ってきた。千歌はその転校生をじっと見ていた

 

梨子「くしゅっ!!!失礼・・・。東京のUTX高校という学校から転校してきました…くしゅっ!!!桜内梨子です。よろしくお願いします」

 

千歌「!!!!!奇跡だよ!」

 

梨子「!!!あなたは!?」

 

千歌は立ち上がり、梨子に手を差し伸べた。梨子も千歌に気づくと驚いた様子で答える

 

これは運命だ!絶対に!

 

千歌「一緒に、サッカーやりませんか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「ごめんなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




桜内梨子 音ノ木坂学院→UTX高校
理由は梨子ちゃんが音ノ木坂学院にいるとμ'sのメンバーと同じチームになってしまうとのことで、高校を変えさせていただきました。実力で負けたという設定もUTXの方が生きるのでは?という理由もあります

サッカー9人制
11人制だと人数に合わず、ジュニアサッカーの8人制も人数に合わなかったので、この世界では高校女子サッカー大会の人数は9人制とさせていただきます。

流星ブレード
吉良ヒロトの大名刺であるシュートです。こんな感じでキャラにイナズマの技をどんどん使わせますので、この技見たい!というご意見があればよろしくお願いします!

そのほかに質問があればコメ欄に


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第1章 4話 「元サッカー部を捕まえろ!」

どんどん原作からはなれていきます。やっと…サッカーさせてあげられる…

技は募集中です!ちなみにポジションは確定しています


 

 

 

曜「またダメだったの?」

 

曜は千歌に問いかける。

 

千歌「うん。でも、あと一歩、あと一押しって感じかな?」

 

2人は浦女の校庭でサッカーの基礎中の基礎である、インサイドのパス練習をしていた

 

曜「(ホントかなぁ…)」

 

千歌「だって、最初は…"ごめんなさい!!"だったのが最近は、"………ごめんなさい…"になって来たし!」

 

曜「嫌がっているようにしか思えないんだけど…」

 

千歌「大丈夫!いざとなったら、何でもするし」

 

千歌はどこから出したのか、忍術の教科書を目の前に出した。まだそれ、諦めてなかったのか…と曜は呆れている

 

曜「でも…桜内さん、サッカーはもう辞めたんでしょ?辞めたことをまた誘うのは…どうなのかな?」

 

千歌「うーん…私も思ったんだけど、やっぱり経験者がいないと私たち何も出来ないなーって!」

 

そう言うと千歌はパス練習で転がしていたボールを止めた。確かに…このままパス練習だけじゃ、何も出来ない

 

千歌「よーし!挫けているわけにも行かない!!!」

 

千歌は部活申請書を持って校舎へと戻っていく。まさか…また行くんじゃないだろうかと曜は嫌々ながらも千歌のあとに付いて行った

 

――――――――――――――――――

 

 

ダイヤ「お断りしますわ!!!」

 

千歌「こっちも!?」

 

曜「やっぱり……」

 

曜の予想は大当たり。さっそく生徒会長の否決の宣告がだされた

 

ダイヤ「5人必要だと言ったはずです」

 

ダイヤ「それ以前に試合に出れるメンバーは揃ったのですか?9人」

 

千歌「それは、多分…いずれ!きっと!!可能性は無限大!!!」

 

千歌「でも…やりたいんです。アライセのように強くなりたいんです」

 

ーこの時、曜は気づく。ダイヤの机を叩くペースがどんどん早くなっていることをー

 

千歌「知りませんか?2年連続、高校女子サッカー大会優勝校の最強の3人につけられた名前!アライセ!」

 

ダイヤ「………それはもしかして、A‐RISEのことを言っているのではありませんよね?」

 

何かを感じ取った2人は息を呑み、恐る恐る千歌が確認する

 

千歌「あ、もしかして…あれアライズって読むの?」

 

ダイヤ「お黙らっしゃああああああぁぁぁい!!!!!!!!!!」

 

――――――――――――――――――

 

 

千歌「はぁ…前途多難すぎるよ…」

 

あのあと、ダイヤから怒りMAXのお説教をくらった千歌はかなり落ち込んでいた

 

曜「途中から、A‐RISEの必殺技は?とか、質問攻めだったよね」

 

千歌「うぅ、軽い気持ちでサッカーやろうとしてるって言われちゃったし…」

 

曜「あんなにくわしいってことは、ダイヤさん、サッカー好きなのかなぁ?」

 

そんなことを考えていると、千歌が下校している2人の少女に気づいた

 

千歌「おーーい!花丸ちゃーん!」

 

花丸は千歌達に呼ばれると「こんにちは」とすぐに挨拶をした。

 

千歌「ルビィちゃんもいるーー!」

 

ルビィ「ピギィ!!」

 

ルビィは自分の名前が呼ばれたことに驚き、木の裏に隠れてしまった。すると千歌は何故かバッグから棒付き飴を取り出し、ルビィの近くに持ってきた。まさかそんなので捕まえようというのか…

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

オレンジ色カラーをしたバスは沼津に向けて県道を走っていた。乗車しているのは千歌、曜、花丸、ルビィである。なんとあのあと、棒付き飴で千歌はルビィを捕まえてしまったのである

 

花丸「サッカー部?廃部になったって…」

 

千歌「そうなんだけど、また始めようと思うんだ!興味ない?」

 

花丸「あ、いえ、マルは図書委員の仕事があるずら…いや、あるし…」

 

千歌「そっか…ルビィちゃんは?」

 

ルビィ「え?あ、る、ルビィは…その…お姉ちゃんが…」

 

千歌「お姉ちゃん?」

 

花丸「ルビィちゃんはダイヤさんの妹ずら」

 

千歌「え!?あの生徒会長の?」

 

曜「なんでか嫌いみたいだもんね。サッカー」

 

ルビィ「うぅ…はい」

 

ルビィがとても悲しそうな顔をするので3人は心配になる、千歌がとっさに話を変える

 

千歌「花丸ちゃんはどこで降りるの?」

 

花丸「今日は沼津までノートを届けに行くところで」

 

千歌「ノート?」

 

花丸「はい。実は入学式の日、独特な挨拶をして恥ずかしくなったのか、逃げ出した子がいて・・・。それっきり学校に来なくなったずら」

 

曜「そうなんだ…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

千歌「じゃーねー!!!」

 

私はバスに乗っている3人に手を振った

 

千歌「お?桜内さーん!」

 

梨子「はぁ…」

 

私が桜内さんを呼んだら、なんか溜息をついた。まさか、また海に入ろうとしているんじゃ……

 

梨子「してないです!!」

 

千歌「よかったー」

 

梨子「あのねぇ、こんな所まで追いかけてきても、答えは変わらないわよ?」

 

千歌「え?ああ、違う違う、通りかかっただけ」

 

千歌「そういえば、海の音は聞くことは出来た?」

 

…桜内さんは黙ったままだ。多分、聞けてないのだろう。それなら

 

千歌「じゃあ、今度の日曜日空いてる?」

 

梨子「どうして?」

 

千歌「お昼ここに来てよ。海の音、聞けるかもしれないから」

 

梨子「聞けたら、サッカーをまたやれって言うんでしょ?」

 

うぅ…痛いところ突かれたな…桜内さん、微笑んでいるところを見ると、バレバレだったみたい。でもね

 

千歌「だったら嬉しいけど、その前に教えて欲しいの、サッカーをやめた理由」

 

梨子「…私ね、小学生の時からサッカーをやってたって話をしたでしょ?」

 

その時の桜内さんの顔はどこか悔しそうで、悲しそうだった

 

千歌「うん」

 

梨子「小さい頃からずっと続けてたんだけど、UTXでいくら頑張っても周りの子に置いてかれて、やる気も出なくて。だから、もうひとつの得意なことだったピアノに目標を変えたの。それで、ピアノをやるなら環境も変えてみようって。海の音を聞ければ、何か変わるのかなって」

 

千歌「変わるよ。きっと」

 

梨子「簡単に言わないでよ」

 

千歌「分かってるよ。でも、そんな気がする」

 

私は桜内さんの手を取ってそう言った

 

梨子「変な人ね。貴女は。

とにかく、サッカーなんてもう、やってる暇なんてないの。ごめんね」

 

桜内さんは手を離そうとしたが私は掴み直した

 

千歌「わかった。じゃあ海の音だけ聞きに行ってみようよ。サッカー関係無しに」

 

梨子「え?」

 

千歌「ならいいでしょ?」

 

梨子「ホント…変な人」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

そして日曜日、果南ちゃんにお願いしてダイビングで海の音を聞きにいったんだ。そしたら、ほんとに聞こえたんだ!確かに3人で聞いたよ!海の音!!

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

海の音を聞いた次の日の放課後の事だった。

 

千歌「え!?嘘!!」

 

曜「ホントに!?」

 

千歌たちが驚くのは無理もない、あれだけ拒んでいた梨子が「サッカーのことだけど、手伝うことにしたわ。」と2人に言ってきたのだ

 

千歌「ありがとう…ありがとーう!わぁ!!」

 

嬉しくなった千歌は梨子に抱きつこうとした。しかし、梨子は直ぐに避けて、千歌は後ろにいる同級生に抱きつく形になった

 

梨子「待って、勘違いしてない?」

 

千歌「へ?」

 

梨子「私はサッカーを教えるのを手伝うと言ったの。サッカーには復帰しない」

 

千歌「ええー…そっか…」

 

曜「無理は言えないよ」

 

梨子「じゃあサッカーの実力、見せて?」

 

千歌、曜「へ?」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

梨子ちゃんの指示どうりにいろいろなことをした。パス、ドリブル、シュート、1体1 連続でやったからかなり…疲れた…

 

千歌「ふぅ…曜ちゃんやっぱりサッカーも上手だね」

 

曜「そんなことないよ。ただ、ちょっと体育でサッカーやってるだけで」

 

梨子ちゃんは私達のことをずっと見ているだけだった…なんて言われるんだろう

 

梨子「そうね…人並みよりかはできるって感じ?」

 

よかったー…これで下手だとか言われたら立ち直れなかったよ…

 

梨子「でも、もっと基礎をしっかりと習得しないと必殺技を覚えるのは遥か先の話になるからね」

 

曜「必殺技?」

 

千歌「あ!私知ってる!ツバサさんの"流星ブレード"みたいなやつでしょ?」

 

梨子「そうね。特訓すればするほど強力な技ができるようになるわね。あとは、センスも必要かも」

 

曜「センス…」

 

曜ちゃんならともかく…私にセンスなんてあるわけないよ…

 

梨子「でも、どれだけセンスがあっても基礎ができてなければ伸びるものも伸びない。その為には、しっかりと練習メニュー、こなして貰います」

 

千歌「う、お手柔らかに…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ー 2人1組 トラップ練習 ー

 

梨子「ボールを出す方も、相手のことをかんがえてね」

 

ポーン!

 

千歌「あ!ごめん、曜ちゃん。変なところに飛ばしちゃった…」

 

曜「大丈夫、大丈夫。一つ一つ、覚えていこう!」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ーコーンの間を狙うパス練習ー

 

梨子「高海さん!左足、ズレてる!」

 

千歌「う、意識しないとすぐにズレる…」

 

梨子「軸足はしっかりしないと、思ったようにボールに力が加えられないよ!」

 

曜「千歌ちゃん!力みすぎないで。リラックス!」

 

千歌「うん!曜ちゃん」

 

 

――――――――――――

 

 

ーコーン避けドリブル練習ー

 

バコッ!(コーンを蹴る音)

 

千歌「あっ、」

 

梨子「はい、高海さん。最初から」

 

曜「ヨーソロー!」サッサッサッ

 

千歌「曜ちゃん凄い!私も…」

 

 

―――――――――――――――

 

 

梨子「はい、お疲れ様。今日は終了ね」

 

千歌「うぅ…基礎練だけですごく疲れた…」

 

曜「まあ、最初だからね。毎日続ければ身につくよ」

 

梨子「そうね。これから毎日、今日行った練習をやってもらうわ。入浴後は柔軟も忘れずにね」

 

千歌「うぅ…はぁい」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

夜、梨子は自分の部屋で今日の練習のことを考えていた

 

梨子「渡辺さんは覚えるのが早い…しっかりと練習すれば確実に伸びる…」

 

梨子「高海さんは……」

 

梨子は千歌の練習を見て、昔の自分と照らし合わせていた。諦めずにもがき続けてた頃の桜内梨子と

 

梨子「……」

 

千歌『まだまだー!!!』

 

梨子「………」

 

梨子はクローゼットを開けた。確かここに入れておいたはずだと、あるものを探す

 

梨子「…あった」

 

探していたものはー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「ふぅ…いいお湯だった♪」

 

千歌はお風呂からあがり、まだぬれている髪をタオルで拭いていた

 

千歌「さてと…梨子ちゃんから言われた柔軟をやるぞー!」

 

その時、外から何かが跳ねる音がした

 

千歌「ん?外から?誰だろう…こんな時間に」

 

部屋を出て、渡り廊下から道路の方を見ると

 

千歌「……… 梨子ちゃん!!」

 

梨子がボールを手でつきながら砂浜へ向かっていた。いてもたってもいられず、千歌は玄関へと走った

 

 

梨子「………」

 

いつぶりだろうか、ボールを触るのは。あの時、周りに圧倒され、諦めたその日以来。梨子はそう考えながらリフティングを始めた

 

梨子「(まだ感覚は残ってる)」

 

ブランクがあったとはいえ、足で巧みにボールを操る

 

梨子「(まだ、撃てるかな…)」

 

梨子「はっ!」

 

梨子はボールを上に蹴り上げた。シュートフォームに入る。染み付いた練習の、努力の感覚が蘇るーーー

 

ーフォルテシモ!!!ー

 

ボールの周りに楽譜が浮かび上がる。美しい音色を奏で、ボールは壁に直撃した

 

 

千歌「凄いよ!梨子ちゃん!!!」

 

梨子「高海さん?」

 

千歌「梨子ちゃん!!!あの家、梨子ちゃんの家だったんだ!!!」

 

梨子「そっか、引っ越したばかりで全然気づかなくて・・・」

 

千歌は砂浜に降り、梨子に近づく

 

千歌「今の必殺技だよね!!」

 

梨子「え?」

 

千歌「梨子ちゃんシュートしたよね!!」

 

梨子「え?いや、それは…」

 

千歌「とても凄かった!あんな綺麗なシュート、初めてだよ!!」

 

梨子「……高海さん」

 

千歌「へ?」

 

梨子「私…どうしたらいいんだろう…何やっても楽しくなくて、変われなくて…」

 

千歌「梨子ちゃん…やってみない?また、サッカーを」

 

梨子はピアノを諦めきれないと言い、俯いてしまった

 

千歌「やってみて、やりきったと思ったら、変われたら、また弾けばいい。諦める事ないよ」

 

梨子「・・・失礼だよ。本気でやろうとしてる高海さんに・・・」

 

梨子は消えそうな声で答える。今にも涙がこぼれそうだ

 

梨子「そんな気持ちで・・・そんなの・・・失礼だよ・・・」

 

千歌「・・・梨子ちゃんの力になれるなら、私は嬉しい。みんなで笑顔になるのが、サッカーだもん」

 

千歌は手を差し出した。梨子は顔を上げる

 

千歌「それって、とっても素敵なことだよ!!!」

 

その時、梨子の心のなかにある何かが崩れた、自分を攻め続けてつくった壁なのだろうか何かはよくわからないがだだ、

 

 

涙が止まらなかった。

 

 

 

梨子は優しく力強く千歌の手を握り返した

 

 

 

 




はい。梨子ちゃん加入まで来ました。長かったですね、そろそろあのお方が登場するころかなん?バババババババババ


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第1章 5話 「無謀な課題」

4話の梨子ちゃんのシュートを説明し忘れていました

フォルテシモ
神童拓人のシュート技ですね。神童と梨子ちゃんは相性ベストマッチですね。ちなみにシュートチェイン出来るシュートです


 

 

梨子「うん!高海さん、昨日よりも良くなってる!」

 

千歌「ホント!?よーし!この調子だ!」

 

少しずつではあるが確実に上達している千歌と曜。 今、3人は夕陽の照らす砂浜で基礎練習をおこなっている

 

梨子「2人とも、パスは相手のいるところよりも前のスペースにだす!忘れないで。」

 

千歌「うん!」曜「ヨーソロー!」

 

ドリブルをしながらパス、砂浜でこれをやることにより脚も充分鍛えられる。

 

梨子「休憩にしましょ」

 

千歌「はぁ、はぁ、はぁ…疲れだあ…」

 

曜「お疲れ、千歌ちゃん。はい、水」

 

千歌「あ!ありがとう曜ちゃん。」

 

千歌は曜からもらった水をごくごくと豪快に飲む。運動している時に飲む水は、どの水よりも美味しい

 

千歌「ぷはぁー!美味しい♪♪」

 

梨子「あんまり飲みすぎないでね?」

 

曜「梨子ちゃんも飲む?」

 

梨子「ありがとう。いただきます」

 

曜「梨子ちゃん、ありがとう。サッカー部に入ってくれて」

 

曜は改めてお礼を言う。梨子がサッカー部に入ると聞いた時は、本当におろどいていた

 

梨子「ううん。サッカー部に入ったのは私のためでもあるの。1度捨てた夢、もう一度、目指したいの」

 

千歌「夢って?」

 

千歌は気になって梨子に問いかけたその時

 

バババババババババ

何やら見覚えのあるピンクのヘリが3人の上空を飛んでいた

 

梨子「何、あれ・・・。」

 

曜「小原家のヘリだね。」

 

梨子「小原家?」

 

曜「淡島にあるホテル経営してて、新しい理事長もそこの人なんだってさ。」

 

千歌「へえー…」

 

バババババババババ

 

3人「…………」

 

バババババババババ

 

3人「…………?」

 

バババババババババ

 

3人「…………!?」

 

千歌「なんか…近づいてない?」

 

梨子「気のせいよ…」

 

そう言っている間にもヘリはどんどんこちらに近づいてくる

 

曜「でも…」

 

「「「うわあ!!!??」」」

 

ヘリは3人に近づき、その風圧に耐えきれず倒れるようにして地面に座り込む

 

千歌「なになに!?」バババババババババ

 

「Ciaoー!!」バババババババババ

 

ホバリングしてるヘリのドアが開き、中から金髪の女性が現れた。3人はただただ唖然としているしかなかった

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

次の日、3人は浦の星女学院の理事長室に集められていた。理事長のネームプレートが置かれている机の横には、昨日ヘリに乗っていた金髪の女性が立っていた

 

千歌「え?新理事長!?」

 

鞠莉「イェース!!!でも、あまり気にせず、マリーって呼んでほしいの!!!」

 

曜「でも…!」

 

鞠莉「紅茶、飲みたい?」

 

千歌「あの、新理事長」

 

鞠莉「マリィーだよぉー!!」

 

千歌「マ…マリィー…」

 

日頃テンションの高い千歌が鞠莉にテンションで圧倒される

 

千歌「で、その制服は…?」

 

鞠莉「変かなー?ちゃんと3年生のリボンも用意したつもりだけどー」

 

千歌「理事長ですよね・・・?」

 

鞠莉「しかーし、この学校の3年生。生徒兼理事長!カレー牛丼みたいなものねー!!!」

 

梨子「例えがよく分からない・・・。」

 

鞠莉「分からないの!?」

 

ダイヤ「分からないに決まってます!!!」

 

曜「生徒会長!?」

 

ダイヤは鞠莉の正面に立つ。その瞬間、鞠莉は・・・

 

鞠莉「Oh!!!ダイヤ、久しぶりー!!!ずいぶん大きくなってー!」

 

ダイヤ「触らないでいただけます?」

 

鞠莉「胸は相変わらずねぇー…」

 

ダイヤ「やかましい!!!・・・ですわ」

 

鞠莉「It's Joke」

 

ダイヤ「全く・・・1年の時に居なくなったと思えば、こんな時に戻ってくるなんて。一体、どういうつもりですの?」

 

鞠莉「シャイニィー!!!」

 

鞠莉はダイヤの話を聞かずに、バッとカーテンを開く

 

ダイヤ「人の話を聞かない癖は相変わらずのようですわねぇ??」

 

鞠莉「It's Joke」

 

ダイヤが鞠莉のリボンを握り、鞠莉を胸元に近づける

 

ダイヤ「とにかく、高校3年生が理事長なんて…冗談にも程がありますわ!!!」

 

鞠莉「ソッチはJokeじゃないけどね。」

 

ダイヤ「は?」

 

意味がわからないと思っているダイヤに鞠莉はポケットから1枚の紙を出し広げて見せる

 

鞠莉「私のホーム、小原家の学校に対する寄付は相当な額なの」

 

千歌「嘘・・・」

 

ダイヤ「そんな!!!何で!!?」

 

任命状を見たダイヤは信じられないようにして鞠莉を見る。千歌たちも状況を理解しきれていない

 

鞠莉「実は、この浦の星にサッカー部が復活したという噂を聞いてね」

 

ダイヤ「まさかそれで・・・?」

 

鞠莉「そう!!ダイヤに邪魔されたらかわいそうなので、応援しに来たのです!」

 

千歌「ホントですか!?」

 

鞠莉の言葉で千歌は笑顔になる。

 

鞠莉「イェース!!このマリーが来たからには、心配いりません。グラウンドも使用OKだし、

部室もプレゼント! 大会への交通費、部費代も出しマース!!」

 

千歌「本当ですか!?」

 

部員設立時の人数は5人必要という規定があるが、今のサッカー部の人数は3人。特例で部活として承認されるのはとても大きい

 

鞠莉「しかーし!ただで承認するわけにも行きません!」

 

千歌「へ?」

 

鞠莉「1週間!!」

 

千歌「1週間?」

 

鞠莉「Yes!1週間で3人にはそれぞれ必殺技を習得してもらいます!」

 

千歌「必殺技を…」曜「1週間で習得?」

 

キョトンとしている2人とは別に1人、異論を唱えた者がいた

 

梨子「ちょっと待ってください!!1週間で必殺技を習得?そんなの無謀です!」

 

鞠莉「無謀かどうかはやってみないと、わかりませーん。できないならば、廃部になるほかありません」

 

千歌「え?…そんなぁ・・・」

 

鞠莉「嫌なら断っても結構ですけど〜?」

 

鞠莉「どうします?」

 

鞠莉は、ニヤケながら千歌を見る。

 

千歌「……やるしかないよ!他に手があるわけが無いんだし!!!」

 

曜「そうだね!!!」

 

鞠莉「OK?行うって事でいいのね」

 

千歌「はい。必ず、習得してみせます」

 

鞠莉「ん〜♪期待してるわ! あと、帰る時はバス停までの道に工事の鉄骨が沢山あるから気をつけてね〜」

 

 

 

 

 

 

 

理事室をあとにした後、曜は梨子に質問した

 

曜「そういえば、さっき鞠莉さんに必殺技習得は1週間では無謀って言ってたけど、大体どれぐらいかかるの?」

 

梨子「……貴方達のように基礎練習から始めた人は…早くて1ヶ月…」

 

千歌「嘘……」

 

事の重大さを分かった千歌は頭を抱え始めた。

 

曜「まさか鞠莉さん、それをわかって!!」

 

ダイヤ「…………………」

 

 

 

 

 

こうして無謀な挑戦は、1週間という短すぎるタイムミリットの中で始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後から3人は必殺技習得のための特訓を始めた…とは言っても梨子はもう既に習得済みなので、実質2人である

 

梨子「はぁ…昨日は散々な目にあった…」

 

曜「そんなに…苦手なんだね?犬」

 

千歌「あっはは…一応、うちのしいたけは大人しいんだけどね」

 

梨子「それでも無理なものは無理なの!!」

 

昨日の放課後は千歌の家で作戦会議をした。しかし行き着いた結果は……特訓だった

そしてその時、梨子の犬嫌いが判明するのである

 

梨子「はい!時間も無いし、練習、練習!!」

 

千歌「よーし!必殺技習得、頑張るぞー!」

 

千歌、曜「おー!!!」

 

梨子「…………大丈夫かしら???」

 

梨子は不安しかなかった

 

今日は陸上部の部活がなかったため、その空いたスペースで練習している

 

梨子「こうなったら基礎練習をしながら、必殺技を習得するチャンスを伺うしかないわね。」

 

曜「具体的には?」

 

梨子「基礎練習中に、ドリブルが1番得意かもって思ったら、ドリブル技を覚えること中心に練習するとか」

 

千歌「じゃあ一通り基礎練習やってみよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく基礎練習を続けていると、千歌がある2人の人物を見つけた。

 

千歌「あ、花丸ちゃーん!!」

 

花丸「サッカーの練習ですか?」

 

花丸とルビィの方へちかづくと、ルビィは花丸の背中に隠れてしまった

 

千歌「そう。練習してるんだけど…理事長から無謀な条件を出されちゃって」

 

花丸「理事長からですか?」

 

千歌「そう、部活の申請を認めて欲しければ、1週間後までに必殺技を習得しろ!ってね」

 

花丸「必殺技?」

 

ルビィ「必殺技ですか!?」

 

"必殺技"

その一言を聞いたルビィは、花丸の後ろから勢いよく姿を見せた

 

千歌「え?」

 

ルビィ「あ、うりゅぅ・・・」

 

しかし、千歌に声をかけられ、自分自身が急に人前に出たと気づき、花丸の背中にまた顔を埋めてしまった

 

千歌「うーん、もう少し話していたいけど時間もないから…私は練習に戻るね」

 

千歌は練習に戻ろうと走り出した時ルビィに呼び止められた

 

ルビィ「あ、あの!!」

 

千歌「??どうしたの?ルビィちゃん?」

 

ルビィ「あ…う…ち、千歌さんは……」

 

千歌「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ドリブルが1番得意なんじゃないかなと思います……」

 

千歌「へ?」

 

花丸「(ルビィちゃん!?)」

 

梨子「!?」

 

ルビィ「千歌さんのドリブル練習を見ていると、1番、自分の体を生かしきれているように見えて…」

 

千歌「は…はい。頑張ります…」

 

千歌はルビィの急なアドバイスに開いた口が塞がらなかった

 

ルビィ「それと…曜さん…」

 

曜「は…はい!」

 

曜は自分の名前を呼ばれ、反射的に敬礼をする

 

ルビィ「曜さんはシュート技だと思います…」

 

曜「シュートで…ありますか?」

 

ルビィ「さっき曜さんのシュートする姿を見た時に、既に必殺技が完成しそうなのでは?って、思って…」

 

曜「あっはは…実はそうなんだよね。なんかもう少しで何か掴めそうなんだ」

 

千歌「え!?曜ちゃんいつの間に!!」

 

曜「まあ、もう少し、練習が必要みたいだけどね」

 

千歌「ルビィちゃん♪」

 

ルビィ「う…は、はいぃ…」

 

千歌「アドバイスありがとう!」

 

ルビィ「ぴ…ぴぎぃぃぃぃ!!!!!」

 

花丸「ルビィちゃん待ってずらー!!」

 

叫びながら学校の外へ走っていったルビィを、花丸は追いかけていった

 

千歌「曜ちゃん!アドバイス通り、お互いやってみよう!」

 

曜「よーし!全速前進、ヨーソロー!!」

 

梨子「……………………」

 

梨子「(凄い…少し2人の基礎練習を見ただけで、2人の得意な部分を見つけた…)」

 

梨子「(渡辺さんがシュート技のコツを掴めてきたというのは私は気づかなかった)」

 

梨子「ルビィちゃん…貴方はいったい…」

 

ダイヤ「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、3人はバス停に向かっていた

 

千歌「ドリブル技かあ…どんな名前にしようかな」

 

曜「千歌ちゃん、気が早くない?」

 

千歌「早いに越したことはないよ!」

 

梨子「もう…しっかりしてよね?部活の設立がかかってるんだから」

 

そんな雑談をしながら歩いていると、なにかに引っかかり、千歌は転んでしまった

 

千歌「あ、痛!!いててて…」

 

曜「千歌ちゃん…大丈夫?…!!!!千歌ちゃん!!!!!!」

 

梨子「高海さん!避けて!!!!」

 

千歌「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと横を見ると、鉄骨が千歌のもとへ倒れてきていた

 

千歌「(さっき引っかかったのって…これを固定していたロープ???)」

 

焦る2人とは違い、千歌は落ち着いていた。と言うよりかは死を覚悟していた

 

千歌「(ああ…もう少しで、みんなと輝けると思ったんだけどな…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォーーードガン!!!!!ガラガラガラガラ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何が起きたのか、その場の3人には分からなかった…急に鉄骨が何かによって吹き飛ばされたのである

 

 

 

曜「千歌ちゃん!!!!!!!!大丈夫!!??」

 

梨子「どこも怪我してない!!!!???」

 

千歌「私は………大丈夫……いったい何が…」

 

 

 

すると3人のところに最近、よく見るように、触るようになった球が転がってきた

 

 

 

 

 

サッカーボール???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く………だからあれほど気をつけろと言いましたのに………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。なかなか強引に進めました
千歌ちゃん達はどんな技を習得するのか…


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第1章 6話 「ファーストステップ」

自分のクラスがインフルで学級閉鎖になったので更新します

ついに必殺技が完成します!


 

あの鉄骨事故の翌日、千歌達3人は工事業者の人から謝罪をうけ、再び練習に戻っていた

 

曜「でも…本当に良かったね…怪我ひとつなくて」

 

千歌「うん…正直、もうダメかと思った…」

 

千歌達はまだ実感がわかない中、柔軟をしながら話す

 

千歌「誰だったんだろう…あのボールを蹴ったのは」

 

梨子「鉄骨を吹き飛ばすぐらいだから…只者ではない。という事は確かね」

 

曜「……私、少し見えたんだけどさ…」

 

曜の言葉に千歌が反応する

 

千歌「見えたって…何が?」

 

曜「あのボール…炎を纏ってた…」

 

千歌「炎…」

 

梨子「私も見えたわ、どこから蹴ってきたか、までは分からなかったけど…」

 

曜「誰が打ったシュートなのか、分からないのに…とても強い想いを感じたんだ」

 

千歌「想い……」

 

曜「うん。なんかヒントを貰った気がする!」

 

曜は立ち上がり、元気に敬礼をする

 

曜「シュート練習をしてくるであります!」

 

そう言うと、シュート練習しやすいコンクリートの壁の方へ走っていった

 

梨子「高海さんはドリブル練習、やろっか」

 

千歌「よーし!あと、5日! それまでに完成させる!!」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

残り4日

 

 

曜「はあ!!」バシュ!!

 

曜「うーん…なんかこう…もっと体を使いたいなー」

 

 

 

千歌「はぁ、はぁ、はぁ、キツい…」

 

梨子「じゃあ…やめる?」

 

千歌「やめない!!! もう一度!」

 

梨子「(渡辺さんから教えてもらった秘技、使えるわね)」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

残り3日

 

 

曜「う、(あと一息なのに…あとひとつ足りない…)」

 

曜「どうすれば………ん?」

 

曜の視線の先には陸上部の姿があった

 

曜「…………!!!」

 

 

 

千歌「(……今の動き、なんか凄くしっくりきたような…)」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

残り2日

 

 

陸上部員「障害物競走でのコツ?」

 

曜「はい!教えてもらえないでしょうか?」

 

 

 

 

千歌「フッ、フッ、(何かがある!もう少し)」

 

 

 

梨子「この調子で行けば…もしかしたら」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

そして、約束の日の前日となった

 

 

バシュン!!!

 

梨子「!!!!渡辺さん!!」

 

曜「あ、出来た……完成したあ!!」

 

千歌「凄いよ曜ちゃん!今のシュート、凄いアクロバティック!」

 

千歌は曜に駆け寄り、強く抱きしめる。よっぽど嬉しかったようで、曜にも笑みがこぼれる

 

曜「実は、陸上部の人にパルクールについて少し、教えてもらったんだ」

 

千歌「パルクール??」

 

梨子「障害物を利用した運動動作のことよ。ビルの壁や塀を使ってのパフォーマンスとかもあるわ」

 

曜「うん!なんか、体を大きく使ったらできそうな気がして、そんな時に見つけたのがパルクールだったんだ!」

 

千歌「じゃあ…技名は…」

 

曜「パルクールアタック!」

 

千歌「おお!かっこいい!!」

 

梨子「うん。威力もなかなか!さすが渡辺さんね」

 

千歌「よーし!あとは私だけだね!もう少し頑張るぞー!!」

 

曜「頑張って!千歌ちゃん」

 

梨子「高海さんも何か掴んで、もう完成まであと少し。明日には確実に完成できると思う」

 

千歌「(私だって出来るんだ!もう、すぐそこまで来てるんだ!)」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

そして約束の日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「嘘…………」

 

曜「そんな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨は滝のように降り注ぎ、雷までなっている。浦の星のグラウンドは雷雨のために使用不可能に近い状態だった

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「千歌ちゃん……」

 

千歌は今にも泣き出しそうな顔をしていた。2人は直視することができない

 

千歌「せっかくここまで来たのに…あと少しで、届いたのに…曜ちゃんや梨子ちゃんの努力を…無駄に……」

 

そう言いかけた時、曜が叫んだ

 

曜「無駄なんかじゃない!!!!」

 

その叫びは雷雨によって掻き消されることなく、千歌に届く

 

曜「だって、あんなに頑張ってきたんだよ?それが…無駄なわけ、ないじゃん」

 

千歌は俯いたまま立ち上がった。何をしようとしているのか2人には分からなかった

 

梨子「高海さん?急にどうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「完成させる。私の技を」

 

 

千歌は雷雨の中、グラウンドへ走っていった

 

曜「千歌ちゃん!!」

 

梨子「危険よ!今すぐに戻って!」

 

2人は必死に千歌を止めようとするが、千歌は止まらない

 

千歌「やってやる…雨がなんだ。雷がなんだ。関係ない、そんなの知らない!!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の予報は確か曇りだったはずなのに…、そんなことを考えている生徒会長、黒澤ダイヤの目の前に新理事長、小原鞠莉が飛び出してきた

 

鞠莉「ダイヤ!!あの3人の結果を、聞きに行きましょ!」

 

ダイヤ「相変わらず近いですわね。鬱陶しいですわ」

 

正直、そんな結果を聞きに行くほど暇ではないが、生徒会長として部の設立には、携わらなくてはならない

 

ダイヤ「はぁ…仕方ありませんわね、彼女らを校内放送で呼び出しましょう…」

 

その時だった、生徒会長室に教師が飛び込んできた

 

教師「はぁ、はぁ、はぁ、理事長。ここにおられたのですね」

 

鞠莉「ん?どうしたの?」

 

教師の焦りようから見て、ただ事ではないと感じる鞠莉

 

教師「そ、それが…生徒が雷雨の中、校庭で!!」

 

鞠莉「!!!!!!」

 

ダイヤ「あの人達は………」

 

すぐに察した2人はすぐに校舎玄関へと向った

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

何回転んだのだろうか……地面はぬかるんでいて、足もおぼつかない。限界は近い、でも、やめたくない

 

千歌「もう一度!!」

 

もう、すぐそこまで来ていた。あと一歩、いや、あと半歩、届く、絶対に届く

 

千歌「うぐ!??」バシャン!!

 

勢いよく転ぶ、曜達が何かを叫んでいるが聞こえない

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

ある人の声が千歌の耳に突き刺さる

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「いい加減になさい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「ダイヤさん……」

 

ダイヤ「いつまでそんなところで寝てますの?」

 

ダイヤ「いい加減に起き上がったらどうです?高海千歌さん!!!!」

 

千歌は起き上がった。そしてダイヤを見る。その目は紅く燃えていた

 

ダイヤ「貴方は弱い。弱いからこそ、人よりも沢山の壁にぶち当たりますわ!貴方にはその壁を、全て越えていく覚悟はあるのですか!!!!??」

 

千歌「あります!!!!」

 

ダイヤ「!!!」

 

ダイヤは千歌から反論がないと思っていたが、千歌からの反論を聞き少し驚く

 

千歌「でも、見てるだけじゃ、始まらないって。うまく言えないけど、今しかない、瞬間だから・・・」

 

千歌「輝きたい!!!!!!」

 

千歌は叫んだ。今の彼女なら、出来るはずだ。そう確信した時だった

 

ダイヤ「ならば!私を…ドリブルで抜いてごらんなさい!!!!」

 

千歌「!!」

 

曜「ちょ!」

 

梨子「ダイヤさんまで!!」

 

曜と梨子は外へ出ていこうとするダイヤを止めようとした。が、

 

曜「鞠莉さん!何を!?」

 

鞠莉「今は見ててあげて、2人を」

 

鞠莉「(まったく…相変わらず、素直じゃないんだから)」

 

 

ダイヤは千歌の前に立つ、千歌はドリブルを始める

 

千歌「(そうだ…輝くんだ…やっと見つけた、目指したい場所。そこへ行くんだ!絶対に!!)」

 

千歌「はああああぁぁ!!」

 

バシュン!!!!

 

 

ダイヤ「!!!!」

 

曜、梨子、鞠莉「!!!!!!」

 

ー Zスラッシュ!!ー

 

ダイヤの真下の地面にはZの刻印が押されていた

 

 

 

千歌「……やったの?」

 

 

 

曜「……千歌ちゃん、千歌ちゃん!!!」

 

曜はいてもたってもいられず、千歌のもとへ駆け寄る

 

千歌「曜ちゃん…私、出来たよ…」

 

曜「うん!!千歌ちゃん…凄いよ!」

 

ダイヤ「………」

 

ダイヤは何も言わずに校舎へと戻る

 

鞠莉「はい!お疲れ様。タオル」

 

ダイヤ「…全部、分かっていたのですか?」

 

鞠莉「そんなことない。私はただ、後押ししただけ♪♪」

 

そう言うと鞠莉はスキップしながら、理事長へと戻っていった

 

ダイヤ「…ほんとに、変わっていませんわね…」

 

 

 

 

 

気づいたら雨は止んでいた。空を覆っていた灰色の雲の隙間から、青空が、光が見えてきた。それは始まりを知らせる光に見えた

 

 




パルクールアタック
瞬木隼人のシュート技、運動神経の良い曜ちゃんならこの技があっているかなと思いました

Zスラッシュ
松風天馬のドリブル技、千歌ちゃんには最初の技は属性にあまり関係ないような技をつけたかったのでこれを。

やっと…ルビィちゃん達がやってくる……(祝)


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第1章 7話 「ふたりの気持ち・前編」

7話は前編と後編に分かれています

あと数話で物語は大きく変わります


 

 

脚立に乗っている千歌は、曜と梨子に見守られながら"サッカー陪"と書かれたプレートを体育館にある一室の出入口に取り付けた

 

千歌「これでよし!」

 

梨子「それにしても、まさか本当に承認されるなんて」

 

曜「部員、足りてないのにね」

 

千歌「理事長が良いって言うならいいんじゃない?」

 

曜「良いっていうか…ノリノリだったけどね」

 

あの後、鞠莉は「しょーにん!!」と言いながら部活動の承認の欄に印鑑をくれた

 

梨子「でも、どうして理事長は私達の肩を持ってくれるのかしら…」

 

千歌「サッカーが好きなんじゃない?」

 

梨子「それだけじゃないと思うけど・・・」

 

千歌「とにかく入ろうよ!」

 

千歌は、鍵を開け、部室に入ったのだが・・・

 

千歌「うぅ・・・」

 

曜「うわぁー!」

 

驚くのも無理はない…埃は凄いし、汚いし、ただの倉庫とかしている

 

梨子「片付けて使えって言ってたけど・・・」

 

千歌「これ全部ー!?」

 

梨子「文句言ってても、誰もやってくれないわよ?」

 

千歌「もー……ん?何か書いてある?」

 

千歌は汚い部室の中を見回すと、何かが書かれているホワイトボードを見つけた

 

梨子「サッカーの戦術…かな?」

 

曜「どうしてここに?」

 

千歌「もしかして…ここって…」

 

千歌、曜、梨子「元サッカー部室???」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

サッカー部の部室ができたと知ったルビィは、花丸に知らせようと図書室に走っていた。図書室に入ると、今週の週番の花丸がカウンターに座っている。

 

ルビィ「やっぱり部室出来てた!サッカー部承認されたんだよ!!!」

 

花丸「よかったね」

 

ルビィ「うん!ああ…かっこよかったなぁ…先輩達」

 

 

ガララッ

 

 

ルビィ「ピッ!!?」

 

扉が開き、足音が近づいていることに気がついたルビィは、花丸のいるカウンターから飛び跳ねるように扇風機の後ろに隠れる

 

千歌「こんにちはー!!」

 

千歌「あ!花丸ちゃーん」

 

千歌「と…ルビィちゃん!!!」

 

ルビィ「ピギャァ!!?」

 

曜「良くわかったね」

 

千歌「へっへーん!」

 

ルビィ「こ、こんにちは・・・」

 

千歌「可愛い・・・!!」

 

千歌たちは持ってきた本をカウンターに積み上げる

 

梨子「これ、部室にあったんだけど、図書室の本じゃないかな?」

 

花丸「ああ、多分そうです。ありがとうございま…」

 

花丸がお礼を言い切る前に、千歌はルビィと花丸の手を握る

 

花丸「!!!」

 

ルビィ「ピギィ!!?」

 

千歌「サッカー部へようこそ!!!」

 

 

梨子「千歌ちゃん・・・」

 

千歌「復活したし、部にもなったし、絶対悪いようにはしませんよー!2人がサッカーしたら、絶対活躍する!!間違いない!!!」

 

曜は呆れているが、千歌はそんな事も気にせず、ルビィ達を勧誘してきた

 

ルビィ「あ、え…でも…」

 

花丸「お、おら・・・」

 

千歌「おら?」

 

花丸「い、いえ…マル、そういうの苦手っていうか・・・」

 

ルビィ「ええ・・・ルビィも・・・」

 

曜「千歌ちゃん…強引に迫ったら可愛そうだよ」

 

梨子「そうよ。まだ入学したばかりの1年生なんだし」

 

梨子と曜に勧誘を止められた千歌は、やってしまった・・・と、思っているのか頭に右手を添えながらあはは・・・と笑っている

 

曜「千歌ちゃん。そろそろ練習」

 

千歌「あ、そっか。じゃあね」

 

曜の一言で、千歌達は図書室から出ていった。一気に図書室は静かになり、ルビィは少し寂しい気持ちになる

 

ルビィ「サッカーか・・・」

 

花丸「やりたいんじゃないの?」

 

ルビィ「へ?でも・・・」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

花丸「ダイヤさんが・・・?」

 

ルビィがサッカーをやりたくてもできない理由。それはダイヤさんが、サッカーを嫌い、ということだ

 

ルビィ「うん。お姉ちゃん、昔はサッカー好きだったんだけど・・・昔から一緒に、ずっとサッカーしてきた」

 

ルビィ「でも、高校に入ってしばらく経った頃に・・・、

 

 

 

片付けて…それ、見たくない

 

 

 

 

って…」

 

 

花丸「そうなんだ・・・」

 

ルビィ「本当はね、ルビィも嫌いにならなければならないんだけど・・・」

 

花丸「どうして?」

 

ルビィ「お姉ちゃんが見たくないって言うものを、好きでいられないよ・・・それに・・・」

 

花丸「それに?」

 

ルビィ「・・・花丸ちゃんは興味無いの?サッカー」

 

花丸「マル?無い無い!!運動苦手だし、サッカーは絶対に向いてないずら…」

 

ルビィ「じゃあ、ルビィも平気!」

 

花丸「…………」

 

花丸はルビィのこの笑顔を見る度に、胸が締め付けられる

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

淡島のダイビングショップ、お客様を見送った果南は休憩に入ろうと、店内に向かっていた

 

 

果南「!!!!」

 

バシュ!

 

背後から果南に目掛けてボールが飛んできた。ボールはなかなかの威力ーーー

 

が、果南は焦るどころか表情をひとつも変えずに片手でボールをキャッチする

 

 

 

鞠莉「さっすが果南だわ〜♪ 海皇は健在かしら?」

 

果南「って!鞠莉!?」

 

鞠莉「果南ー!シャイニー!!」

 

鞠莉は果南に抱きつき、感動の再開…とは行かずに果南の表情は曇ったままだった

 

果南「どうしたの?いきなり」

 

鞠莉「スカウトに来たの!」

 

果南「スカウト?」

 

鞠莉は果南からボールを取ると、リフティングを始め、そのまま話す

 

鞠莉「休学が終わったら、サッカー始めるのよ!浦の星で!」

 

果南「本気???」

 

鞠莉「貴方の埃かぶった槍をまた、使う時が来たのよ」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ルビィは家の縁側で、昔ダイヤと過ごしたサッカーに明け暮れる日々を思い出していた

 

ルビィ「……お姉ちゃん…」

 

ダイヤ『ルビィ! 必殺シュートですわ!』

 

ルビィ『行くよ!お姉ちゃん!!』

 

ルビィ「………(やっぱり、サッカーを嫌いになんてなれない…)」

 

 

 

ダイヤ「………」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

サッカー部が承認された次の日、花丸とルビィは放課後、誰も居なくなった教室で話をしていた

 

ルビィ「えええ!?サッカー部に!?」

 

花丸「うん」

 

花丸は、今まで興味ないと言っていたサッカー部に入りたいと、ルビィに言い出したのだ

 

ルビィ「どうして?」

 

花丸「どうしてって・・・やってみたいからだけど。駄目?」

 

ルビィ「全然!!ただ、花丸ちゃん興味とかあまり無さそうだったから・・・」

 

花丸「いや、ルビィちゃんと一緒に見ているうちに、いいなーって。だから、ルビィちゃんも一緒にやらない?」

 

ルビィ「ルビィも!?」

 

花丸「やってみたいんでしょ?」

 

ルビィ「それはそうだけど・・・お姉ちゃんが嫌がると思うし…」

 

花丸「そっか。じゃあこうしない?」

 

花丸は、ルビィにある事を耳元でこそこそと話す

 

ルビィ「体験入部?」

 

花丸が提案したのはサッカー部への体験入部だった

 

 

 




アニメ4話のルビィちゃんはマジ天使ずら


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第1章 7話 「ふたりの気持ち・後編」

もう少しでビッグイベント来ます!

うゆゆのゆ


 

 

千歌「本当!?」

 

花丸「はい」

 

ルビィ「よろしくお願いします!!!」

 

図書室に本を届けた次の日、ルビィと花丸は体験入部でサッカー部の部室に来ていた

 

千歌「やった・・・やったぁ・・!やったああ!!!」

 

千歌のテンションは最高潮に達し、体育館の渡り廊下に飛び出した

 

千歌「これで5人だよ!!!大きな前進だ!!」

 

曜と梨子に千歌は抱きつく、しかし曜は呆れて物申す

 

曜「千歌ちゃん、待って。体験入部だよ?」

 

千歌「へ?」

 

梨子「要するに、仮入部っていうか、お試しってこと。それでいけそうだったら入るし、合わないって言うなら辞めるし」

 

千歌「そうなの?」

 

花丸「いや、まあ、色々あって・・・」

 

曜「もしかして、生徒会長?」

 

花丸「あ、はい。だから、ルビィちゃんとここに来た事は内密に・・・」

 

梨子「そっか、じゃあとりあえず、練習やってもらうのが1番だね」

 

梨子は、自作したスケジュール表をホワイトボードに貼り付ける

 

梨子「これは東京の知り合いのサッカー部の人から聞いた練習メニューと、色々なサッカー部のブログを見て作ったスケジュールよ」

 

千歌「東京の知り合いのサッカー部って、UTXのサッカー部?」

 

梨子「うーん、近い場所だけど違う高校。一緒にピアノをやっていたの」

 

千歌「へぇ…なんて名前のこうこ…」

 

ルビィ「あ!あの!!梨子先輩は転校前はUTX高校にいたんですか!!?」

 

千歌が高校名を聞こうとした時に、ルビィが

興奮気味に質問してきた

 

梨子「そ、そうだよ?そう言えば、同じ学年の人にしか前の高校、言ってなかった」

 

ルビィ「という事は、A‐RISEともあったことが!?」

 

梨子「うん。少しだけど、A‐RISEの人と話したことあるよ」

 

ルビィ「本物のA‐RISE…!!」

 

ルビィは手を合わせながら呟いている

 

長くなりそうなので曜が声をかける

 

曜「じゃあ…練習、行こっか」

 

 

 

 

 

 

 

梨子「基本的にグラウンドが使えるのは陸上部とソフト部が休みの日の月曜日と木曜日、それ以外の日は砂浜で基礎練習になっちゃうんだけど…」

 

曜「今、陸上部とソフト部に場所を分けてもらえないか相談中なんだよね」

 

梨子「そうね。できたら学校で練習場所を確保したいわ」

 

花丸「そうなんですか、それにしても日射しが強いですね・・・」

 

千歌「それがいいんだよ!太陽の光をいっぱい浴びて、海の空気を胸いっぱいに吸い込んで・・・暖かい・・・」

 

曜「本当だ」

 

千歌が地面に手をつくと、皆が次々に手を置いていく

 

花丸「んー、気持ちいいずらー♪」

 

千歌「さあ、始めようか」

 

 

 

 

 

練習は必ず基礎練習から始まる。トラップ練習、パス練習、ドリブル練習、校庭が使える日はシュート練習や2対1などもプラスで行う

 

 

 

花丸「いくよ!ルビィちゃん」

 

ルビィ「うん!よっ、うゅ、ゆ!」

 

花丸が投げたボールをルビィがトラップし、ノーバンで返す

 

千歌「ルビィちゃん上手!!」バコッ!

 

千歌「ありゃりゃ…」

 

余所見をした千歌が足でコーンを蹴っていた

 

梨子「千歌ちゃんはやり直し。最初からね?」

 

千歌「うぅ、なんかデジャブ…」

 

ルビィ「あっはは…」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

基礎練習と応用をこなしたあと、5人は淡島に移動していた。今からするのは階段を駆け上がるという、シンプルだが淡島神社に続く階段は長く、かなりきつい練習になる

 

ルビィ「これ、一気に登ってるんですか!?」

 

千歌「もちろん!」

 

曜「いつも途中で休憩しちゃうんだけどねー」

 

千歌「えへへ・・・」

 

梨子「でも、試合中最後まで走り続けるためには、頂上まで駆け上がるスタミナが必要だし」

 

梨子「必殺技にも体力使うから」

 

千歌「じゃあ、頂上目指して、よーい、どーん!!!」

 

千歌の合図でみんなが一斉に、階段を登り始めた

 

ルビィは2年生3人について行く、小中とサッカーをやっていたため、体力には少し自信があった。花丸は4人との差がどんどん広がっていく

 

花丸「やっぱり、マルには・・・」

 

花丸は息が途切れ途切れになりながら階段を上っている。ルビィは、花丸の姿を見つけた時、その場で立ち止まった

 

花丸「ルビィちゃん・・・?」

 

ルビィ「一緒に行こう?」

 

花丸「ダメだよ・・・」

 

ルビィ「え?」

 

花丸「ルビィちゃんは走らなきゃ・・・」

 

ルビィ「花丸ちゃん?」

 

花丸「ルビィちゃんはもっと自分の気持ち、大切にしなきゃ・・・自分に嘘ついて、人に合わせるなんて辛いだけだよ・・・」

 

ルビィ「合わせてる訳じゃ・・・」

 

花丸「ルビィちゃんは、またサッカーをやりたいんでしょ?」

 

ルビィ「・・・」

 

花丸「だったら、前に進まなきゃ」

 

花丸「さあ、行って」

 

ルビィ「は、は・・・でも・・・」

 

ルビィは、花丸の名前を呼ぼうとするが、躊躇していた

 

花丸「さあ」

 

ルビィ「・・・うん!!!」

 

ルビィは走り出した。花丸は笑顔で、そして、少し心残りがありそうな顔でルビィのことを見送っていた

 

 

そのまま花丸は階段を降り、ある人を呼び出していた

 

 

 

 

ダイヤ「なんですの?こんなところに呼び出して?」

 

ダイヤであった。花丸は最初からダイヤを説得、ルビィの後押しをするために体験入部をしたのだった

 

花丸「あの…ルビィちゃんの話を、ルビィちゃんの気持ちを、聞いてあげてください」

 

ダイヤ「ルビィの?あっ、」

 

花丸はそのまま走り去ってしまった。ダイヤは思う、そんなの分かっていると

 

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!!?」

 

ダイヤ「!?ルビィ??」

 

そこにいたのはルビィであった。まさかサッカー部と一緒に練習していたとは、思ってもみなかった

 

千歌「ダイヤさん…なんでここに?」

 

ダイヤ「…これはどういうことですの?」

 

ルビィ「あの、それは、その…」

 

千歌「違うんで…「千歌ちゃん!」

 

ルビィは千歌を止めさせ、ダイヤの前に歩いていく

 

ルビィ「お姉ちゃん…」

 

ルビィ「ルビィ…ルビィね!!」

 

ダイヤ「!!!!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

翌日 生徒会室

 

鞠莉「良かったね。やっと、希望がかなって」

 

ダイヤ「……なんの話ですの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、サッカー部部室ではルビィが入部届を千歌に渡していた

 

ルビィ「よろしくお願いします!!」

 

千歌「よろしくね!」

 

ルビィ「はい!頑張ります」

 

梨子「そういえば国木田さんは?」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「大丈夫。ひとりでも」

 

花丸「バイバイ・・・」

 

花丸は、読んでいたサッカー雑誌を心残りがある様にゆっくりと閉じようとしている。その目の前にはあの引っ込み思案の赤髪の少女が図書室に入ってきて花丸の事を見ていた

 

「ルビィね!!」

 

花丸「っ!!!」

 

花丸「ルビィちゃん?」

 

ルビィ「ルビィね、花丸ちゃんの事見てた!!ルビィに気を使ってサッカーやってるんじゃないかって!!!ルビィのために無理してるんじゃないかって心配だった・・・でも、練習の時も、校庭にいる時も、みんなで話してる時も・・・花丸ちゃん、嬉しそうだった・・・それ見て思った!!!花丸ちゃん好きなんだって!!!ルビィと同じくらい、好きなんだって!!!サッカーが!!!」

 

花丸「!!マルが・・・?まさか・・・」

 

花丸は、そう言いながらまた下を向いた

 

ルビィ「じゃあ、なんでその本そんなに読んでたの?」

 

花丸「それは…」

 

ルビィ「ルビィね、花丸ちゃんと一緒にサッカー出来たらって、ずっと思ってた!!!一緒に頑張れたらって!!」

 

花丸「それでも、オラには無理ずら。体力無いし・・・向いてないよ・・・」

 

その時、図書室のドアから3人が入って来た

 

梨子「でも、好きだった。やってみたいと思った。最初はそれでいいと思うけど?」

 

ルビィ「ルビィ、サッカーがやりたい!!!花丸ちゃんと!!!」

 

花丸「マルに出来るかな・・・」

 

千歌「私だってそうだよ」

 

千歌が花丸に手を出しながら言う

 

千歌「大切なのは出来るかどうかじゃない。やりたいかどうかだよ!!!」

 

花丸が千歌の手に自分の手を合わせる。ほかのみんなも手を合わせた。これでサッカー部は正式に5人となった

 

 

 

 

 

 

 

ー 放課後ー

 

花丸「さあ!ランニング行くずらー!」

 

千歌、曜「おーー!!」

 

3人は勢いよく部室から走り出す。ルビィも負けじと追いかけようとした時だった

 

梨子「ルビィちゃん、ちょっといい?」

 

ルビィ「なんですか?梨子先輩?」

 

梨子「あの…体験入部の時の練習を見てて思ったんだけど…ルビィちゃん、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「周りに合わせて、手加減してない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次からヨハネ勧誘、そして……


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第1章 8話 「堕天使登場!」

 

 

 

ルビィ「…え?」

 

梨子「鳥かごの時とか、みんながボールを取りやすいようにわざと、オーバーな動きをしたり」

 

梨子「2対1ではルビィちゃん、ほぼ自分でシュートしに行ってなかったよね?」

 

ルビィ「…それは…」

 

梨子「決して、責めている訳では無いの。ただ、ルビィちゃんにも全力で、練習をしてもらいたくて…」

 

ルビィ「…ルビィは、」

 

ルビィ「ルビィは、みんなとサッカーがしたいんです。もう、あんな事は…」

 

梨子「あんな事?」

 

 

 

 

 

 

千歌「ルビィちゃん!!梨子ちゃん!!何やってるのー?早く行くよー!!」

 

いつまでたっても来ない2人を千歌が迎えに来た、どうやらこの話はここまでのようだ

 

梨子「何かあるのなら…相談、のるからね」

 

ルビィ「は、はい」

 

 

 

しかし、この問題が解決するのは、当分先の話である

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

曜「お、いいね。花丸ちゃん!その調子」

 

花丸「ずら〜!」

 

 

今日の練習場所は屋上。と言うのも、最初の1時間は5人でミーティングをしていたので、いつもの砂浜まで行ってもあまり練習ができないということで、ボールを浮かばせないという条件のもと、屋上でドリブル練習中である

 

梨子「もしかして…始めた頃の千歌ちゃんよりもできるんじゃ…」

 

千歌「う、そ、そんなことな…」バコッ!

 

梨子「…」

 

千歌「…」

 

梨子「千歌ちゃん♪」

 

千歌「うわーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

花丸「ふう、疲れたずら…」

 

ルビィ「花丸ちゃん。お疲れ様!」

 

花丸「ありがとう。ルビィちゃん」

 

ルビィは花丸に水を渡す。屋上で富士を望みながらの水は格別である

 

曜「そういえば、さっきミーティングの時に話した、ミニゲーム式大会の抽選結果っていつ来るの?」

 

梨子「そうね…少し時間がかかるって書いてあったから、まだ、当分は結果は出ないかな?」

 

ルビィ「試合…」

 

花丸「改めて聞くと、緊張するずら…」

 

5人が行なった1時間のミーティングというのは、主にとある大会に出場するかどうかの話し合いだった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

 

 

4人「東京で大会!!?」

 

梨子「そう。抽選式になってしまうけど、人数的に丁度いい大会を見つけたの」

 

曜「人数的に?5人で出場出来るってこと?」

 

梨子「この大会は5対5のミニゲーム式なの。人数が少ない分、コートも小さくなってるの」

 

梨子は説明するために、パソコンの画面を4人に見せる

 

千歌「うん。これなら私たちでも試合出来るね!」

 

花丸「でも…急に試合をするのは、ちょっと…」

 

梨子「大丈夫よ、花丸ちゃん。この大会の抽選結果が発表されるのは、もう少し時間が経ってからなの。その間に、実戦が出来るまでには上達していると思う」

 

花丸「それなら、頑張って練習しなきゃずらね」

 

梨子「とりあえず、メンバー全員の賛成を得ないといけないから、みんな、大丈夫?」

 

4人「大丈夫!!」

 

こうして浦の星女学院 サッカー部は、大会に参加希望のメールを送ったのである

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

 

 

花丸「おおっ!!!こんなに弘法大師空海の情報が!!」

 

曜「うん。ここで画面、切り替わるからね」

 

花丸「すごいずらー」

 

梨子「もう、休憩終わりよ?」

 

曜が花丸にパソコンの使い方を教えているのを見ている梨子は不満をもらした。何故、花丸はこんなにもパソコンに夢中なのか、それは彼女の家の事情があった

 

 

ルビィ「実は、花丸ちゃんのお家が古いお寺で、電化製品とかほとんど無くて・・・」

 

千歌「そうなんだ…」

 

ルビィ「この前沼津行った時も・・・自動の蛇口で興奮してたり、手を乾かす機械の下にしゃがみこんだりして」

 

 

『未来ずらー!!』

千歌、曜、梨子はなんとなく、花丸がそう叫びながら乾燥機の下でしゃがんでいるように思えた。そんな中、ルビィがなにかに気づく

 

 

ルビィ「…あの子、確か、」

 

ルビィの一言で花丸もルビィと同じほうを向くと、見覚えのある姿を見つけた

 

花丸「善子ちゃん?」

 

善子「!!」

 

曜「あっ、行っちゃった…」

 

梨子「どうしたのかしら?」

 

花丸「あっ、あの!ちょっと見つけに行ってきます!」

 

花丸はそう言うと、善子を探しに校舎の中に降りていった

 

 

 

 

 

 

善子「…いきなり屋上から堕天してしまった」

 

善子は隠れるようにロッカーの中に身を潜めていた。すぐにその扉が開けられることも知らずに

 

花丸「学校来たずらか」

 

善子「うわぁぁぁ!!?」

 

善子はロッカーから飛び出し、花丸と向き合う

 

善子「来たって言うか、たまたま近くを通りかかったからよってみたって言うか・・・」

 

花丸「たまたま?」

 

善子「どうでもいいでしょ!!そんな事!!!それより、クラスのみんななんて言ってる?」

 

花丸「え?」

 

善子「私の事よ!!!"変な子だねー"とか、"ヨハネって何ー?"とか、"リトルデーモンだってーぷぷー笑笑"とか!!!」

 

花丸「はあ・・・」

 

善子「そのリアクション、やっぱり噂になってるのね!!?そうよね、あんな変な事言ったんだもん…終わった、ラグナロクよ」

 

そう言うと善子はさっきいたロッカーに戻っていく

 

善子「まさにデッド・オア・アライブ」

 

そして、大きな音を立て、善子の入った棚の扉が閉められた。すると花丸は、棚の前に座り、誰も気にしていないと言う。善子は、信じられないのか、棚の中から疑問の声を上げる

 

花丸「それより、みんなどうして来ないんだろうとか、何か悪いことしちゃったのかなって心配してて・・・」

 

善子「本当?」

 

花丸「うん」

 

善子「本当ね?天界堕天条例に誓って嘘じゃないわよね??」

 

花丸「ずら!」

 

善子はロッカーを勢いよく開け、叫ぶように「まだやり直せる!!」と飛び出してきたため、花丸はびっくりして尻餅をついていた

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

次の日の放課後、サッカー部部室には善子の悲痛な叫びが響き渡っていた

 

善子「どうして止めてくれなかったのー!!せっかくうまくいってたのにー!!!」

 

花丸「まさかあんな物持ってきてるとは思わなかったずら・・・」

 

善子は花丸に自分が堕天しそうになったら止めてくれとお願いしていた。しかし、急に堕天モードを発動したため、花丸は止めることが出来ず、善子はクラスメイトの前で黒歴史を作ることになってしまったのである

 

梨子「どういう事?」

 

ルビィ「ルビィもさっき聞いたんですけど、善子ちゃん、中学時代、ずっと自分は堕天使だと思い込んでいたらしくて・・・まだその頃の癖が抜けきれてないって・・・」

 

善子「わかってる・・・自分が堕天使なはずは無いって・・・そもそもそんなもん居ないんだし・・・」

 

梨子「だったら、どうしてあんな物学校に持って来たの?」

 

善子「それは・・・まあ、ヨハネのアイデンティティのようなもので、あれが無かったら私は私で居られないっていうか!」

 

善子はそう言うと、またやってしまった…とその場で固まってしまった

 

梨子「なんか、心が複雑な状態にあるということはよくわかった気がする・・・」

 

ルビィ「実際今でもネットで占いやってますし・・・」

 

ルビィはパソコンを使い、善子の堕天チャンネルの動画をみんなに見せた

 

『またヨハネと堕天しましょ』

 

5人は呆れ顔で動画を見ていたが、すぐに善子によって動画は止められる

 

 

曜「そう言えば、善子ちゃんに聞きたいことがあるんだけど…」

 

善子「な、何?聞きたいことって?」

 

曜「善子ちゃんは、前、サッカーやってた?」

 

え?っと呆気にとられる4人とは違い、善子は落ち着いて答える

 

善子「まぁ…一応、昔はやってました…サッカー」

 

千歌、梨子、花丸、ルビィ「えー!!!?」

 

花丸「善子ちゃん、サッカーやってたの?」

 

善子「昔よ!むかし!!」

 

善子「小学校の頃はクラブで、中学ではやってなかったけど、でも…どうして私がサッカーやってるって分かったの?」

 

善子は曜に聞く、曜は思い出すように答える

 

曜「確か…入学式の日、善子ちゃん、木から落ちてきたよね?」

 

善子「う…まぁ、確かに落ちたわね」

 

善子は渋々と答える

 

曜「その時、あの高さから落ちたのに、普通に着地出来るなんて最初はびっくりしたけど」

 

曜「よく考えてみると、脚の筋肉がしっかりあって、日頃から着地するような行動をしていれば、不可能じゃないな。って思ったの」

 

千歌「日頃からって…どんなことを?」

 

流石は今まで、スポーツ漬けの日々を過ごしてきた曜ちゃんだな。と思った千歌は素朴な疑問をぶつけた

 

曜「善子ちゃん、まだサッカーやってるでしょ?」

 

ルビィ「え?」

 

善子「…まぁ、やってないと言ったら嘘になるわね」

 

花丸「善子ちゃん、サッカー続けていたんだね」

 

善子「でも、趣旨が違うというか…今、サッカーをしているのは、堕天使の様なかっこいい技を使ってみたいってことで」

 

千歌「じゃあ、必殺技使えるの?善子ちゃん」

 

善子「まぁ、一応。威力には自信があるわ」

 

千歌「この子、この子だよ!!」

 

曜が千歌が何をしようとするのかが分からなく、千歌に呼びかけたのだが、千歌の耳にはそんなこと届いていなかった。千歌は、善子の乗っかっている机の上に乗り

 

千歌「津島善子ちゃん、いや、堕天使ヨハネちゃん!!!サッカー、やりませんか!?」

 

善子「…何?」

 

 

 

 




ヨハネの必殺技には凄くぴったりなのが多すぎて迷いますね

この物語ではキャラの属性(一応、あるにはあります)と技の属性が一致しないという事が設定上多くなってしまうので、あらかじめご了承ください


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第1章 9話 「ようこそ堕天使ヨハネ」

投稿ペースは亀とか言った自分はどこへ……こんなにもフルスロットルな理由は、書きたいことが後半に盛りだくさんだからです!


 

 

 

次の日、千歌、曜、梨子、花丸は沼津まで来ていた

 

曜「よく良く考えたら私達、ずっとスパイク履かずにサッカーしてたんだね…」

 

梨子「ごめんなさい、早く言ってあげればよかったんだけど…」

 

千歌「ひとまず、スパイクを売っているお店まで来てみたけど、どんなスパイクを買えばいいの?」

 

花丸「未来ずらー…」

 

梨子「普通の靴と同じで、自分に合うのを買えばいいのよ。あと、ソックスとレガースも必要ね」

 

千歌「レガース?」

 

梨子「レガースっていうのは脛につける、防具みたいなものね。つけていないと直接、脛を蹴られるし、大会にもでれないわよ?」

 

花丸「弁慶の泣き所ずらか…考えるだけでも恐ろしいずら」

 

曜「じゃあ、サッカーのソックスってレガースも被せられるほど長いってこと?」

 

千歌「あ!確かにテレビとかで見るサッカー選手達の靴下、長いなーって思ってた!」

 

梨子「そうね。じゃあ3点選んじゃいましょうか」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃 「十千万旅館」

 

 

善子「どうして私達は千歌さんの部屋で裁縫してるの?」

 

ルビィ「それが千歌先輩達、スパイク、レガース、ソックスを持ってないっていうことが分かって…」

 

善子「花丸はともかく、千歌さん達、結構練習してたんでしょ?なんで気づかないのよ…」

 

ルビィ「あはは…」

 

ルビィと善子は千歌の部屋で浦の星サッカー部のユニフォームを作っていた。大会出場するためには必要不可欠である

 

ルビィ「あ!千歌先輩からメール来たよ。もうすぐで着くって!」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

千歌「たっだいまーー!!!!」

 

ルビィ「おかえりなさい!」

 

千歌が扉を勢いよく開け、袋をさげながら帰ってきた

 

善子「その様子じゃ、ちゃんと買えたようね」

 

千歌「うん!じゃじゃーん!これが私のスパイクです!」

 

千歌が袋から箱を取り出し、中からスパイクを取り出す。カラーはオレンジ、そこにホワイトでオレンジのロゴが入っている

 

善子「うん。オレンジね。」

 

千歌「違うよ!みかん!これはみかん色のみかんスパイクなのだ!」

 

どっちも同じなのでは…と思った善子は4人に完成したユニフォームを見せる

 

善子「ひとまず…ユニフォームはこんなところかしら?でも、本当にいいの?」

 

梨子「はあ・・・良いのかなぁ・・・本当に・・・」

 

梨子がため息をつくのは無理もない。そのユニフォームはどちらかというとゴスロリのような。まさに堕天使のようなユニフォームだった

 

ルビィ「なんか恥ずかしい・・・」

 

花丸「落ち着かないずら・・・」

 

梨子「ねえ、本当に大丈夫なの?こんな格好で試合出て・・・」

 

千歌「これでいいんだよ!!フィールド上では堕天使の魅力をみんなで思いっきり振りまくの!!!」

 

善子「堕天使の・・・魅力を・・・?ダメダメ!!!そんなのドン引かれるに決まってるでしょ!!!」

 

千歌「大丈夫だよ。きっと…

 

千歌が想像するのと一緒に善子も想像する

 

『貴方も堕天の力に溺れなさい!ー デスドロップ!! ー』

 

まるで悪魔のような禍々しいボールがゴールネットを揺らし、善子は歓声の嵐の中にいる

 

『私の堕天シュートを止めることは…不可能!!ギラン』

 

 

 

 

善子も最初は堕天使ユニフォームに否定的だったのだが、千歌の一言で善子も直ぐに協力ムードになってしまった

 

梨子「しょうがないわね…」

 

千歌「じゃあ、これで明日、生徒会室で許可を取りに行こう!」

 

曜「本当に大丈夫だよね?」

 

千歌「大丈夫だよ!ダイヤさんもOKを出してくれるって」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「OKを出すわけないでしょう!!!!!!!???」

 

ダイヤの怒号が生徒会室に響き渡る

 

ダイヤ「こういうのは破廉恥と言うのですわ!!!」

 

千歌「いやー・・・そういうユニフォームというか・・・」

 

梨子「だから私は良いの?って言ったのに・・・」

 

ダイヤ「・・・そもそも、私がルビィにサッカーを認めたのは、節度を持って自分の意思でやりたいと言ったからです!!こんな格好をさせて注目を浴びようなんて・・・」

 

ダイヤ「ごめんなさい・・・お姉ちゃん・・・」

 

ルビィが謝ると、ダイヤは少し熱くなりすぎたと怒りの度合いを下げた

 

ダイヤ「とにかく、キャラが立ってないとか、個性がないとか、人気が出ないとか、そういう狙いでサッカーをしているわけではないでしょう?貴方達は」

 

千歌「……はい、」

 

ダイヤ「自分達が何のためにサッカーをしているのか、もう一度考えることですね!!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

その後、反省会ともう一度ユニフォームを作り直すために、浦女前のバス停が面している岬のような場所にみんなで腰掛けていた

 

千歌「失敗したなぁー・・・確かにダイヤさんの言う通りだね・・・私達は上手くなるため、勝つために、サッカーをしているんだよね…」

 

ルビィ「千歌さんが悪いわけじゃないです…」

 

善子「そうよ。いけなかったの、堕天使」

 

千歌「え?」

 

善子「やっぱり高校生になっても通じないよ」

 

千歌「それは・・・!!!」

 

善子「なんかスッキリした。明日から今度こそ普通の高校生になれそう」

 

堕天使を完全に否定する善子に、ルビィはサッカー部には入るのか聞くと善子は

 

善子「うーん・・・やめとく。迷惑かけそうだし・・・じゃあ」

 

と答え、バス停の方向に歩いて行く。そして、何かを思い出したかのように足を止めると、くるっとこっちを向き

 

善子「少しの間だけど、堕天使に付き合ってくれて、ありがとね。楽しかったよ」

 

笑顔でそう言った。5人はただ見ていることしか出来なかった

 

梨子「どうして堕天使だったんだろう…」

 

花丸「マル、わかる気がします。ずっと、普通だったんだと思うんです。私達と同じで、あまり目立たなくて。そういう時、思いませんか?これが本当の自分なのかなって。元々は堕天使みたいにキラキラ輝いていて。何かの弾みで、こうなっちゃってるんじゃないかって。」

 

梨子「確かにそういう気持ち、あった気がする」

 

花丸「・・・幼稚園の頃の善子ちゃん、いつも言ってたんです。"私、本当は天使なの。いつか羽が生えて、天に帰るんだ!!!"って・・・」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

次の日の朝、善子は堕天使グッズをすべて、ごみ収集倉庫に持ってきていた

 

善子「これでよし…」

 

善子が倉庫から出てきた時、誰かによびかけられる

 

千歌「堕天使ヨハネちゃん」

 

「「「サッカー部に入りませんか???」」」

 

千歌達は声を合わせて善子を勧誘すると、善子は、「はあ?」と言いながら首を傾げた

 

千歌「ううん。入ってください!サッカー部に!堕天使ヨハネとして!!!」

 

善子「何言ってるの!?昨日話したでしょ?それに・・・」

 

千歌「良いんだよ!!!堕天使で!!!自分が好きならそれでいいんだよ!!!」

 

善子「……駄目よ」

 

善子は走って逃げ出す。千歌達はすぐに善子を追いかける

 

善子「生徒会長に怒られたでしょ!!!」

 

千歌「うん!それは私達が悪かったんだよ!!善子ちゃんは良いんだよ!!!そのまんまで!!!」

 

善子「どういう意味ー!?」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

善子「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」

 

5人「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」

 

善子は諦めたのか、沼津港大型展望水門びゅうおの北側出入口付近で走るのをやめてしまった

 

千歌「フィールドの上で、自分の好きを迷わず見せて、目指すんだよ、上を!!サッカーは!!!周りにどう思われるとか、人気がどうとかじゃない。自分が一番好きな姿を、輝いている姿を見せることなんだよ。だから善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!!!自分が堕天使を好きな限り!!!」

 

善子「良いの?変な事言うわよ?」

 

曜「良いよ!」

 

善子「時々、儀式とかもするかも?」

 

梨子「そのくらい我慢するわ」

 

善子「リトルデーモンになれって言うかも・・・!!!」

 

千歌「それは・・・でも、ヤダったらヤダって言う。だから!」

 

千歌は善子に近づき、微笑みながら黒い羽を差し出した。善子は、すべてを受け入れてくれたらしく、黒い羽を受け取った

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「鞠莉さん!!!!」

 

鞠莉「どうしたのでーすか?」

 

ダイヤは理事長室に駆け込み、とても焦っているのか机に両手を叩きつける

 

ダイヤ「あのメールはなんですの!!?」

 

鞠莉「何って、書いてあるとおりデース」

 

ダイヤ「そんな…嘘でしょ…」

 

 

 

 

 

 

その頃、サッカー部部室に置いてあるパソコンには一通のメールが届いていた

 

 

 

 




デスドロップ
剣城京介のシュート技です。ヨハネには剣の技がベストマッチすぎますよね!



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第1章 10話 「大会前の出来事」

だんだんと第1章終了も見えてきました。

ペースを上げまくっているので頑張ります





 

 

「「「「統廃合〜!!!!??」」」」

 

ルビィ「そう見たいです…」

 

ルビィからの知らせを聞いた、部室にいるサッカー部のメンバーが騒ぎ始める

 

ルビィ「沼津の私立高校と合併して浦の星女学院は、無くなるかもって・・・」

 

曜「そんなぁ!!!」

 

梨子「いつ?」

 

ルビィ「それは・・・その・・・来年の入学希望者の数を見てどうするか決めるらしいんですけど・・・」

 

千歌「廃校・・・」

 

千歌は俯いたまま呟く、廃校、この学校が無くなるかもしれない

 

千歌「駄目…」

 

5人「!!!!」

 

千歌「駄目だよ!廃校なんて!」

 

千歌「まだ、少ししか経ってないけど、ここにいるみんなと出会えた、大切な場所…そんな思い出の場所を無くさせはしない!!」

 

梨子「千歌ちゃん…」

 

千歌「とにかく、学校の廃校の危機が迫った以上、サッカー部はそれを阻止するため、行動します!!!」

 

曜「で、行動って何するの?」

 

千歌「それはもちろん、優勝だよ」

 

5人「優勝?」

 

千歌「全国高校女子サッカー大会、優勝だよ!!!!!!」

 

「「「え?」」」

 

曜「千歌ちゃん…言いたいことはわかるよ?でも…」

 

千歌「?」

 

善子「全国高校女子サッカー大会って、9人制よね?あと、3人は?」

 

千歌「あ、、」

 

そして、部室中が一瞬だけ沈黙に包まれた

 

梨子「もう、そんな事だろうと思った…」

 

千歌「うわー!!じゃあ、どうすれば…」

 

千歌は頭を抱えて叫ぶ、そんな中で梨子はパソコンを起動させていた

 

梨子「でも、今出来ることなら、あるわよ?」

 

千歌「ほえ?」

 

千歌がパソコンの画面を見ると、するとそこには、前に送ったあのメールの返信が表示されていた

 

 

 

『 ー浦の星女学院 サッカー部様ー

見事、5人ミニゲーム式サッカー大会の

抽選に当選したことをお知らせします 』

 

 

 

千歌「あ、これって…」

 

梨子「さあ、まずはこの大会からよ」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ルビィはダイヤに東京へ行く許可を貰おうとしていた

 

ダイヤ「…東京?」

 

ルビィ「うん、5人制ミニゲーム式で抽選で当選したら、みんなで挑戦しようって」

 

ダイヤ「大会…」

 

ルビィ「うん、あ、ちゃんとした大会で、全国からたくさんの高校が出場するみたい」

 

ルビィ「交通費は鞠莉さんが…出してくれるみたいで」

 

ダイヤ「試合…」

 

ルビィ「やっぱり…駄目?」

 

ダイヤ「交通費を出す、ということは鞠莉さんは…」

 

ルビィ「みんなが良ければ、理事長として許可をだすって」

 

ダイヤ「…」

 

ダイヤは許可を出すどころか、黙ったままだった

 

ルビィ「お姉ちゃんはやっぱり嫌なの?ルビィがサッカーを続けること」

 

ダイヤ「ルビィ。自分の意思でサッカーを、また始めると決めたのですよね?」

 

ルビィ「うん」

 

ダイヤは振り返り、笑顔でルビィに答える

 

ダイヤ「だったら、誰がどう思うか関係ありません。でしょ?」

 

ルビィ「でも…」

 

ダイヤ「ごめんなさい。混乱させてしまってますよね。貴方は気にしなくていいの」

 

ダイヤ「私は、ただ…」

 

ルビィ「ただ?」

 

ダイヤ「いえ、今日はもう遅いから、早く寝なさい」

 

ダイヤは何か言おうとしたまま、部屋に戻っていこうとしたが、立ち止まりルビィの方を向き直した

 

ダイヤ「そういえば、ルビィ。ポジションはもう決まったの?」

 

ルビィ「ううん、これから」

 

ダイヤ「そうですか、誰かと被らなければいいですわね」

 

ルビィ「……多分、被らないと思うよ」

 

ダイヤ「と言うと、ほかにいないんですの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「FW」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

その後、ダイヤは外出し、ホテルオハラに向かい、鞠莉の部屋で鞠莉を待っていた

 

ダイヤ「……ルビィ」

 

 

 

 

 

 

ダイヤ『ほかにいないんですの?FW』

 

ルビィ『……ルビィは、もう、FWはしないの。頼まれたら、するかもしれないけど』

 

ダイヤ『!!?何故です?貴方は才能をもっているはず『お姉ちゃん!!』

 

ダイヤ『!!』

 

ルビィ『ルビィ…みんなとサッカーしたいの。だから気にしないで』

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「まだ、あの時のことを…」

 

 

 

鞠莉「来ると思っていたわ。ダイヤ」

 

ダイヤ「…どういうつもりですの?」

 

鞠莉が部屋に入ってきたので、話すことを本来の目的に切り替える

 

ダイヤ「あの子達を今、大会に出場させることがどういうことか」

 

鞠莉「なら、止めればいいのに」

 

鞠莉はダイヤに近づいていく

 

鞠莉「ダイヤが本気で止めれば、あの子達、諦めるかもしれないよ?」

 

鞠莉「ダイヤも期待しているんじゃない?私達が乗り越えられなかった壁を、乗り越えてくれることを」

 

ダイヤ「もし、越えられなかったら…充分知っているでしょう?」

 

ダイヤ「取り返しのつかないことになるかもしれないのですよ?」

 

鞠莉「だからと言って、避けるわけにはいかないの」

 

ダイヤ「……変わっていませんわね、あの時から」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「みんな、大会は2日後の日曜日よ。土曜日に東京へ行って、1泊して大会に出場するわ」

 

千歌「ついに、明後日」

 

善子「意外と長かったわね。メールが来てから開催まで」

 

当選のメールが来たあと、大会の開催日は2週間後だと分かった。花丸もかなり基礎練習が身についてきていた

 

花丸「始めた頃よりも、だいぶ上手くなって来ていると思うずら!」

 

ルビィ「うん!花丸ちゃん、凄く上手になったよ!」

 

梨子「じゃあ、ポジションの確認しましょうか」

 

梨子はホワイトボードにメンバーの名前が書いてあるパネル磁石を貼り出した

 

梨子「FWは善子ちゃんね。しっかりと得点してね」

 

善子「ヨハネよ!」

 

善子は2週間の練習で、シュート技とドリブル技が使えることが分かった

 

梨子「次、右サイドは曜ちゃんね」

 

曜「ヨーソロー!!」

 

曜はもともと体力があったので、試合中もたくさん動けると判断。攻撃と守備、両方に加わる

 

梨子「左サイドは、千歌ちゃん」

 

千歌「頑張ります!」

 

千歌はシュートよりもディフェンスが得意であると分かったため。守備を中心に参加、持ち前のドリブル技で前線へボールを運ぶ

 

梨子「私はDFね」

 

梨子はシュート以外にもブロック技も持っていたため、DFへ。後から3人への指示も出す

 

梨子「ルビィちゃんは……本当に良かったの?これで、」

 

ルビィ「はい!ルビィはどんなポジションでも頑張ります!」

 

梨子「うん。じゃあ、ルビィちゃんはキーパーよろしくね」

 

キーパーは誰にするか、これには1番悩んでいた。誰もキャッチ技を持っていなかったし、だからと言ってキーパーを無くすわけにもいかない。そんな中で、立候補したのがルビィであった

 

梨子「花丸ちゃんは、最初はベンチだけど必ず出番が来るから、体を冷やさないようにね」

 

花丸「ずら!ちゃんとアップはしておくずら」

 

梨子「戦術は1-2-1。練習通りやれば、絶対に勝てるわ!」

 

梨子「今日は無理な練習はせずに、基礎練習と戦術の確認をして終わりにするわ」

 

梨子「しっかり休んで明後日に備えてね」

 

千歌、曜、善子、ルビィ、花丸「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 東京 ー

 

 

 

 

 

 

「もー!大会出たかったー!!」

 

「まだ言っているのですか?落選してしまったのですから、しょうがないじゃないですか」

 

「う…だってぇ」

 

「でも、もう少しで全国高校女子サッカー大会だよ。それは絶対に出れるから、ね?」

 

「そうよ?本番はそっちなんだから、あなたの実力はそこで見せた方がいいわ」

 

「目指すのは優勝のみよ。みんなずっと喋ってないで練習よ。早くグラウンドに行きなさい!」

 

「「「はーい」」」

 

 

 

 

「はぁ……私が出れば、絶対に優勝するんだけどなぁ…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

そして、大会前日になった

 

 

 

 

 

 

 




はい。ラスボス感がヤバいのがでてきましたね。そして、次回ついにあの二人も…学級閉鎖が終わるまでには、1章を終わりにしたいです


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第1章 11話 「東京!そして、本番!」

東京の街中のくだりはカットが多くなります。

相手高校の名前は適当です




 

 

 

土曜日、電車の中で6人は今日の予定を確認していた

 

梨子「ここが、今日泊まる旅館の場所。あと、みんなと離れちゃった時のために、随時連絡はわすれないでね」

 

「「「「はーい」」」」

 

千歌「はぁ、朝は危なかったね。電車ぎりぎりだったし」

 

梨子「誰のせいだと思ってるのよ…」

 

朝、十千万前に集合した中の千歌、ルビィ、花丸の衣装チェンジにより駅前の集合に少し遅れ、善子のくだりもあったため電車に滑り込む形での乗車になった

 

曜「もう少しで東京駅だね」

 

梨子「そうね。次は山手線に乗るわよ。みんな」

 

ルビィ「山手線…」

 

花丸「丸い緑のずらか?」

 

善子「それは歌詞よ…」

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

千歌「着いたーー!!」

 

善子「ここが魔都、東京!」

 

花丸「未来ずらー…」

 

ルビィ「凄い!お店が沢山…あれ?みんな?」

 

 

 

 

 

千歌と曜は高校サッカーのグッズショップにきていた

 

千歌「かっこいい…あ、缶バッジもこんなに種類がある!!あ、このポスター見るの初めて!」

 

曜はいろいろな高校のユニフォームを物色していた

 

曜「凄い、帝国のユニフォーム、白恋、木戸川まである…」

 

 

 

 

梨子「もう…時間無くなる…ん?」

 

梨子の視線の先には壁クイのポスターとその関連広告が貼ってあるボードがあった

 

梨子「相手FWと味方GKの接触による床ドン!!? ゴクリ…」

 

善子「クックック、魔の力がヨハネを呼んでいるわ」

 

梨子は同人誌店、善子は黒魔術ショップへと吸い込まれていった

 

 

 

 

そして時間は過ぎていき……

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方

 

 

千歌「もう…時間無くなっちゃったよ、せっかくじっくり見ようと思ったのに」

 

千歌「曜ちゃんはどうしたの…その格好」

 

曜はこれから神社に行くということで、何故か巫女服を着ている

 

曜「似合いますでしょうか?」

 

曜は千歌に敬礼するも、それは違うと軽く流されてしまう

 

千歌達は秋葉原のビルや家の合間の路地を歩いていき、ついた場所は明神男坂下だった

 

善子「この階段の上に神社が?」

 

千歌「そうみたい…みんな、登ってみない?」

 

梨子「そうね」

 

千歌「よーし、じゃあ、皆行くよー!!!」

 

千歌は掛け声と一緒に全員で階段を登り始めた

 

 

 

 

男坂の頂上にある神田明神。そこに到着すると、本殿には先客がいた

 

「こんにちは」

 

千歌「こ、こんにちは」

 

急に挨拶されたため、千歌は、少し詰まりながらも挨拶を返した

 

「貴女達は、友達同士で旅行ですか?」

 

千歌「いえ、サッカーの大会に参加をしに」

 

「もしかして・・・明日の大会にいらしたんですか?」

 

千歌「はい・・・」

 

「そうですか、頑張ってください試合」

 

そう言うと謎の少女達は6人の横を通っていった

 

善子「ねぇ…ここ、こんなに寒かったっけ?」

 

ルビィ「確かに寒いような…」

 

花丸「これが都会の冷たさずらか??」

 

ルビィ「東京の女子高生って冷気まで放つの?」

 

善子「あったりまえでしょ!!」

 

ルビィ、花丸、善子の1年生組が勝手に彼女たちを東京の女子高生だと思っているらしい

 

その後、御参りをした6人は予約していた旅館に向かった。既に部屋には荷物が置かれていて、あとは寝るだけであった

 

千歌「(明日はついに試合、絶対に勝ってみせるんだ)」

 

 

千歌は緊張するあまり、なかなか寝付けなかったというのはここだけの秘密

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、天気快晴、絶好のー

 

 

 

花丸「試合日和ずらー!」

 

千歌「しかし、広いねー、ここのグラウンドは」

 

大会会場は人工芝で5人制なのでコートは小さく、フィールドが10、そしてA、Bと2つのブロックに分けられていたので合わせると

 

曜「全部で20コート、あるらしい…」

 

花丸「未来ずらー…」

 

梨子「みんなで一緒に行動するわよ。迷子になって試合出れなくなったら大変よ」

 

ルビィ「ゴクリ」

 

千歌達は開会式に出たあと、自分達が試合を行うコートへと向かった

 

 

千歌「えーっと…Aの5だから…このコートだね!」

 

曜「川山高校さんですか?」

 

川山A「はい!そちらは浦の星女学院さんですね?」

 

千歌「はい。浦の星です!よろしくお願いします」

 

 

 

 

1回戦目の相手は 川山高校

 

 

千歌達は上着を脱ぎ、ユニフォームになる

 

千歌「ルビィちゃん達凄いね!とても綺麗なユニフォームを全員分なんて」

 

ルビィ「曜さんが手伝ってくれたおかげです!」

 

曜「ルビィちゃん、手際良くてびっくりしちゃったよ〜」

 

お互いのユニフォーム姿を見せあっていると、ゲームキャプテンである梨子が集合をかける

 

梨子「みんな、集合して」

 

梨子「今日までにみんなはたくさん練習してきた。落ち着いてプレーすればベストをだせる!」

 

千歌「うん!みんな、頑張ろう!」

 

「「「「おー!!!!」」」」

 

曜「うーん…」

 

千歌「どうしたの?曜ちゃん?」

 

曜「なんか、浦の星サッカー部だけの掛け声が欲しいなって」

 

千歌「私達だけの、掛け声…」

 

善子「堕天降臨☆とか」

 

花丸「それはないずら…」

 

千歌「じゃあさ、サンシャインなんてどう?」

 

梨子「サンシャイン?」

 

千歌「あの、太陽みたいに、私達も輝くぞーって」

 

ルビィ「いいと思います!!」

 

曜「それで行こう!」

 

6人はもう一度、手を合わせる

 

千歌「みんな、行くよ!」

 

千歌「浦の星ー!サーンシャイーン!!!!」

 

 

コート入場の笛が吹かれる

 

 




強引に次ぐ強引、ご了承ください。

ユニフォームはまた今度、詳細を




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第1章 12話 「大会本番」

初めて試合らしい試合を書きました。まだ、5人制ですが9人になったら文量がどうなるか…ある意味、楽しみです

今回もほんのりでます。ラスボス感ある人が





 

 

 

試合のルールは前半10分、休憩5分、後半10分、延長戦あり。交代人数制限なし

 

 

ゲームキャプテンの梨子は川山高校のゲームキャプテンと握手をし、コイントスで先攻か後攻かを決める

 

 

梨子「みんな、私達は後攻よ。最初はディフェンスからだから、気を引き締めて!」

 

「「「「うん!」」」」

 

 

ピーーーー!!!!

 

キックオフの笛がなった。川山高校の選手はドリブルで駆け上がっていく

 

善子「(とれる!!)」

 

善子は相手の足元にあるボールに向かって足を伸ばした

 

川山B「あまい!!」

 

が、相手の絶妙なパスで善子は突破される

 

善子「な!?(パスが上手い、カットは難しいわよ?)」

 

そのまま川山Aが切り込んでいく

 

善子「梨子さん!!」

 

川山A「!!!!」

 

梨子「ーアインザッツー!!」

 

流れる楽譜と一緒にボールを奪う梨子

 

川山A「しまった!速い」

 

千歌「梨子ちゃん、凄い!」

 

梨子「カウンターよ!!千歌ちゃん!」

 

梨子が千歌にボールを渡す。浦の星のカウンターである

 

川山C「行かせない!」

 

千歌「はあ!!」

 

千歌「ーZスラッシュー!!」

 

千歌が相手をかわし、曜にパスを出す

 

千歌「曜ちゃん!決めて!!」

 

曜「任せるであります!」

 

曜は体をスピンさせたりバク転したりと、アクロバティックな動きをする

 

曜「ーパルクールアタックー!!」

 

川山D「止める!ー爆裂パンチー!!」

 

相手のキーパーの渾身のパンチ。しかし、曜シュートの威力には適わなかった

 

ピーーーーーー!!

 

 

曜「やった…」

 

千歌「曜ちゃん、やったね!」

 

梨子「曜ちゃん、ナイスシュートよ!まだ、きをぬかないで。来るわよ!」

 

川山高校が再び攻めてくる。が、今度はパスを出す気配がない

 

善子「これなら、取れるわ!」

 

善子は最初のようにボールを取りに行くが

 

川山B「ーひとりワンツーー!」

 

善子「え!?」

 

ボールが勢いよくスピンし、川山Bの元へと戻る

 

ルビィ「善子ちゃん……」

 

善子「次は取るわよ!!そんな顔するな!」

 

ルビィは哀れむ目で善子を見る

 

川山B「これで、同点だァ!!」バシュ!!

 

川山Bのシュート。キーパーが苦手な位置であるゴールの隅に、ボールは飛んでいく

 

ルビィ「ーーー!!」

 

が、ルビィは足でボールを止めた

 

川山B「な!?」

 

花丸「ナイスずら!ルビィちゃん」

 

ルビィ「善子ちゃん!!」

 

ルビィはロングスローで善子へとボールを出す

 

善子「クックック…さんざんコケにしてくれたわね。喰らいなさい!!」

 

ボールを回転させ、禍々しいオーラを込める。善子はオーバーヘッドの蹴りに入る

 

善子「堕天に溺れろーデスドロップー!!」

 

善子の強烈なシュートは川山のゴールを貫いた

 

曜「善子ちゃん!ナイスシュート!」

 

善子「クックック…この堕天使に不可能などありはしない」

 

 

ここで、前半終了。両チーム休憩にはいる。

 

 

花丸「みんなお疲れずら。水分補給忘れずに。」

 

花丸がクーラーボックスから5人のドリンクを手渡す

 

梨子「ありがとう、花丸ちゃん。」

 

千歌「2対0。これなら行けそうかも!」

 

曜「油断はできないよ?川山高校はパスが上手いから、ディフェンスをしっかりとしないと」

 

梨子「そうね。善子ちゃん、花丸ちゃんと交代ね。曜ちゃんがFWに上がって、花丸ちゃんは右サイドをお願いね?」

 

花丸「はい!」

 

善子「ずら丸、へばるんじゃないわよ」

 

花丸「練習の成果、見せるずら」

 

 

 

 

 

後半戦開始

 

今度は浦の星ボールである。キックオフと同時に、曜がドリブルで上がる

 

曜「ヨーソロー!」

 

川山E「(ドリブルが速いな…ならば)」

 

川山Eはしゃがみこみ、地面に何かを広げる

 

川山E「ー蜘蛛の糸ー」

 

糸が曜の足にへばりつく

 

曜「うわ!?動けない!」

 

そのまま川山Eが川山Bへとパスをだす。ディフェンスに入るのはーー

 

善子「ずら丸!」

 

川山B「また、ひとりワンツーで抜いてやる!」

 

花丸「マルだって…みんなの力になりたい!」

 

するとマルはどこから取り出したのか、きな粉餅を…持って回し始めた。川山Bは驚きのあまり、停止する

 

花丸「ーもちもち黄粉餅ーずら!!」

 

最後にきな粉餅とボールを一緒に頭にのせた

 

善子、川山B「な、なんじゃその技!?」

 

花丸「ふふん、お餅食べたいな〜って思ったら、出来るようになったずら!」

 

千歌「花丸ちゃん!こっち」

 

花丸「千歌さん!」

 

花丸は千歌に呼ばれ、練習通り千歌よりも前のスペースにパスを出す

 

千歌「よーし!必殺シュート見せてやるぞー!」

 

千歌はそのままシュートに入ると思いきや

 

千歌「梨子ちゃんの!」

 

後ろにいた梨子にバックパスを出した

 

梨子「ナイスよ。千歌ちゃん」

 

梨子「ーフォルテシモー!」

 

音符とボールが千歌の横を通り抜け、そのままゴールに入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま試合は3対0で勝利し、初戦を突破した

 

 

 

 

 

千歌「まずは初戦突破!」

 

花丸「やったずらぁ!」

 

ルビィ「花丸ちゃん。必殺技、凄かったね!!」

 

梨子「まさか、ほんとに出すとは思わなくてびっくりしちゃった」

 

花丸は照れながら水を飲む。後半はフル出場であった

 

千歌「さて、2回戦の対戦相手は……」

 

 

 

 

 

後ろから足音が聞こえてきた。次の対戦校だろうか、千歌は次の相手が気になり、後ろを振り向くと、そこには昨日、神田明神で出会った少女2人の姿があった

 

千歌「サッカー部だったんですか…」

 

と、千歌は目を見開いて驚いていた。言ってませんでしたっけ?と言いながら「鹿角聖良」と自己紹介をする

 

 

千歌達は神田明神で感じた、凍てつくオーラをまた、かんじとっていた

 

 

 

 

2回戦目の試合開始となった。浦の星は初戦の前半と同じメンバーにしていた

 

善子「(う……)」

 

善子は今、キックオフしようとしている少女と目が合う。少女は鋭い目で睨んでくる

 

千歌「鹿角聖良さんはディフェンスか…」

 

 

 

ピーーーー!!

 

キックオフとなり、試合が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここにいましたね!!さあ、帰りますよ!」

 

「げ!?なんでここが?」

 

「貴方が行きそうなところぐらい想像つきます!全く、店番をサボってサッカー観戦とは…」

 

「でも、見てよ。あの子、面白いんだよ?」

 

「だれです?」

 

「あの赤い髪の子。なんでキーパーやってるんだろうね?」

 

「確かに、どちらかと言ったら、FW向きですよね?」

 

「あぁ、きになるなぁ…戦ってみたいなぁ」

 

「……はっ!いけません、ペースに乗せられてました、早く帰りますよ!」

 

「うわぁー!もっと見たいのにぃ!?」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

試合終了の笛がなった。勝者は鹿角聖良達、点差は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10対0

 

 

 




アインザッツ
神童拓人のディフェンス技です。確か賭けという意味だったような…違っていたら直します

もちもち黄粉餅
イナイレヒロインの中でもかなりの人気を誇る、菜花黄名子のディフェンス技です。丸と黄名子は見た目が少し似てるなと思ったのと、丸には食べ物の技を覚えさせて上げたいと考えて決めました

ヨハネちゃんのドリブル技はまた今度、


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第1章 12話 おまけ編

おまけと書きましたが、かなり重要なことも書かれています


令和元年5月の12日に修正しました





 

 

千歌達は2回戦で敗退した後、内浦に帰るために秋葉原駅へと向かっていた。その途中、千歌は家族へのお土産を買っていなかったことに気づき、とある和菓子屋によっていた

 

千歌「すみませーん…」

 

千歌は入口の扉を開けると、カウンター席には女性が座っていた

 

「あ!いらっしゃい。何をご注文?」

 

千歌「えーっと、お土産におすすめな和菓子はありますか?」

 

「それなら、うちの名物。ほむまんはどうかしら?試しに食べてみる?」

 

そう言うと、女性はほむまんを1つ小皿に取り、千歌に渡した

 

千歌「あ、ありがとうございます!」

 

千歌「!!!!美味しい!」

 

「そう。良かったわ」

 

千歌「ほむまん、8個入り3箱、お願いします!」

 

「はい!ありがとうございます」

 

女性は小皿を下げ、お会計の準備をしていた

 

「そう言えば、貴方はサッカー部?」

 

女性は千歌のサッカー道具が一式入っているバッグを見ながら聞く

 

千歌「はい。大会帰りなんです」

 

「そうなの、大会はどうだった?」

 

千歌「………」

 

すると千歌は大会の事が頭をよぎる。あのとき、鹿角聖良達から言われた言葉を

 

 

 

 

 

聖良『もし…貴方達が、全国高校女子サッカー大会に出場して、優勝したいと思うなら…いや、静岡代表になるのでさえ、諦めた方がいいと思います』

 

そう言うと聖良は立ち去った。もう1人の少女も口を開く

 

『馬鹿にしないで…サッカーは、遊びじゃない!!!!』

 

 

 

 

 

 

千歌「………」

 

黙っている千歌に女性は話しかける

 

「黙ってるってことは…負けちゃったってことなのかしら?」

 

千歌「…はい」

 

千歌はそれ以上、何も言えなかった

 

「…私の娘もね、サッカーやってるの。今」

 

千歌「え?」

 

「高2でね、部員集めるのに苦労した!って言ってたけど、頑張ってるっぽい」

 

千歌は黙って聞いていた。なんだろう、すごく気になる

 

「高1の頃は部員が6人で試合ができなくて、それから1年間はあまり笑わなくなってたの。でも、今年からやっと9人になって、いつしか、また、笑うようになってた」

 

「何が言いたいかというと!」

 

女性はそう言うと、カウンターから身を乗り出し千歌にほむまんの袋を渡す

 

「サッカー、諦めちゃダメ!その日は…絶対に来るのよ?」

 

千歌「その日………」

 

 

 

 

 

千歌はその後、5人と合流し、内浦へと帰っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの子、どことなく似てたわね…」ガララ!

 

勢いよく扉が開く。少女が2人、お店に入ってきた

 

「…遅くなり、申し訳ございません。連れて帰ってきました」

 

「う、お母さん…」

 

猫のように襟元を捕まれ、大人しくなった少女と、口は笑っているのに目が笑っていない少女だった

 

「貴方…やっぱり行ってたんでしょ?大会会場」

 

「それは…その…」

 

「誤魔化しても無駄です。しっかりと自分の罪を償いなさい!」

 

「う、ごめんなさい…」

 

「まあ、いいわ。明日から店番を増やすとして…さっき、そのサッカー大会に出場した子が来たわよ?」

 

サラッととんでもない事を言ったような気がしたが、そのまま話を聞く

 

「えっと…髪の色はオレンジで、赤い瞳の。会場で見てない?」

 

「もしかして、あの、赤い髪の子がいたチームでは?」

 

「あ!!いた、確かかっこいいドリブル技使ってた!」

 

「という事は見たのね。なんでも、静岡の高校らしいわよ?」

 

「静岡…ですか」

 

「遠いなー、1度戦ってみたいんだけどなぁ」

 

「私も戦ってみたいです。赤髪の子の全力、見てみたいです。それと」

 

「それと?」

 

 

 

 

 

 

「その、オレンジの子とも」

 

「え?なんで?赤い髪の子みたいに、なにか隠してたの?」

 

「いえ、隠しているわけではないと思います。ただ…」

 

「ただ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「乗り越えられるでしょうか…あの、深そうな闇を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ほむまん食べたいです


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第1章 13話 「悔しくないの?」

ダイヤちゃん達の過去を明らかにする時がやって来ました…




 

 

夜、サッカー部のメンバーは沼津駅に到着していた

 

ルビィ「ふぅ、戻ってきた!」

 

花丸「やっとずらって言えるずら!」

 

善子「ずっと言ってたじゃない!!」

 

花丸「ずらー!!?」

 

そんな話をしていると遠くから千歌達を呼ぶ声が聞こえる。千歌達のクラスメイトである

 

千歌「みんな…」

 

千歌達を迎えに来たクラスメイトは「どうだった?」「勝った?」と次々に質問を飛ばす

 

曜「まあ、勝てたには勝てた…けど」

 

梨子「うん!初戦は勝て…た、ね、」

 

10対0で負けたとは誰も言えなかった。その時、もう1人「おかえりなさい」との声が

 

ルビィ「お姉ちゃん…」

 

ダイヤだった。ルビィはお姉ちゃんを見て安心したのか、胸に飛び込み、そのまま泣いてしまった

 

 

 

そして、クラスメイトのみんなと別れ、ダイヤは結果報告などを聴くために場所を移していた

 

ダイヤ「10対0……ですか」

 

梨子「はい・・・・」

 

 

ダイヤ「やっぱり、そういうことになってしまったのですね…今のサッカーの実力では」

 

ダイヤ「あなた達がダメというわけではないのです。サッカー部としてたくさん練習を積み、勝ちにいけるほどのサッカーをしている。でも…」

 

ダイヤ「貴方達のように勝ちにくる、頂点を目指している者は…全国に数え切れません」

 

ダイヤ「弱肉強食。負ければ終わり。強ければ勝つ。シンプルで1番残酷ですわ」

 

ダイヤ「なので…始めたばかりのあなた達が誰かに負けてしまったのも、わたくしたちが負けてしまったのも…ある意味当然だったのかもしれません」

 

千歌「負けた?」

 

ダイヤは自分の、自分達の過去を語る

 

 

 

ダイヤ「2年前、既に浦の星には統合になるかも、という噂がありましてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2年サッカー部『全国高校女子サッカー大会優勝!?』

 

ダイヤ『そうですわ!学校を廃校から救うには優勝しかありません!』

 

果南『先輩達と一緒なら、あの帝女にも勝てます!』

 

2年サッカー部『帝女には…無理だよ、優勝なんて夢のまた夢』

 

鞠莉『そんなことないです!絶対に、』

 

部長『そうだね。やってみようよ!』

 

2年サッカー部『部長!!!!』

 

部長『私達もこの夏で引退。最後に、みんなで見てみたいな、頂点の景色』

 

ダイヤ『部長…』

 

2年サッカー部『部長がそう言うんなら…優勝、狙うしかないっしょ!』

 

『そうだ!』『私達なら行けるよ!』

 

鞠莉『部長…』

 

部長『頑張ろうね。1年生たちも』

 

果南、ダイヤ、鞠莉『はい!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「私達サッカー部の部員は3年生が4人、2年生が2人、1年生が私達の3人と、試合にギリギリ出場出来る人数でした…」

 

ダイヤ「しかし、一人一人の技能は高く、静岡の優勝候補と言われていました」

 

 

 

 

 

 

 

 

果南『ついに来たね…決勝』

 

2年生『まさか、本当にここまで来るとは』

 

部長『ここはまだ通過点!目指すは全国。勝つぞ!!』

 

『『『おー!!!!!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「しかし…負けたのですわ、大差で」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーー!!!!

 

実況『ここで試合終了!優勝は3年連続、帝国女学院だあぁ!』

 

果南『そんな…嘘でしょ、』

 

鞠莉『こんなにも、差が…』

 

2年『だから、無理だって言ったんだ…』

 

ダイヤ『…………』

 

部長『みんな』

 

ダイヤ『部長…』

 

部長『私達のサッカーは、ここで終わりだけど…皆なら、今度こそ…もっと上へ行けるはず!』

 

部長『だから、がんばって、、ね、』

 

部長とほかの3年達は泣きながら、後輩に想いを託していた。ダイヤ達は新しいチームとなった新生浦の星サッカー部で、次こそはと練習を始めようとした、しかし、

 

 

ダイヤ『どうしてですか!?先輩!』

 

果南『そんな…諦めるなんて』

 

2年『私達は先輩達と頂点を取りたかったの…でも、もう、その先輩達はいない』

 

鞠莉『でも、新入生を勧誘して、また始めれば!!』

 

2年『無理だよ』

 

鞠莉『!!』

 

2年『ごめんね…』

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「こうして、浦の星女学院サッカー部は1年生だけになり、私達も辞め、廃部になったのですわ」

 

千歌「…全く、」

 

曜「知らなかった…」

 

ダイヤ「知らないのは無理もないですわ。誰かに話すのはこれが初めてですから」

 

6人はダイヤ達の過去を知り、ダイヤがいままで自分たちの事を反対してきた理由を察する

 

曜「じゃあ、反対してたのは…」

 

ダイヤ「いつかこうなると、思っていたから」

 

千歌「……」

 

ダイヤ「それで、貴方達はどうするのですか?」

 

梨子「え?」

 

ダイヤ「このまま続けるのですか?それとも、やめるのですか?」

 

千歌「!!!!!!」

 

千歌は帰りの電車の中で、曜にも似たようなことを言われていた

 

曜『千歌ちゃん、悔しくないの?』

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の早朝、千歌は浜辺に来ていた

 

千歌 「(私が…下手だっから、足を引っ張ったからだよね)」

 

千歌「(何もできなかった…何かしたかった…強くなりたい)」

 

千歌「もっと、強くなって皆と勝ちたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、千歌の脳内に強い衝撃が加わった

 

千歌「ぐっ!!?うあ…痛い!?」

 

千歌「(殴られたような強い痛み!?何、これ?)」

 

耳鳴りのような立ちくらみのような、ぐわんぐわん、とする。もう、立ってはいられなかった

 

千歌「はぁ…はぁ…うぁ、痛い…」

 

膝をつく、だんだんと目の前が真っ暗になっていく。何か、黒いなにかに支配されるようなーーー

 

 

梨子「千歌ちゃん!!!!」

 

妙な胸騒ぎがした梨子は外に出ていた。すると海岸で膝をつきながら苦しんでいる千歌の姿があった

 

梨子「千歌ちゃん!!大丈夫!?早く救急車を」

 

千歌「梨子ちゃん…」

 

梨子「え?」

 

千歌「もう…大丈夫。治まった」

 

さっきまで確かにあったはずの痛みが、気づいたら消えていた。梨子の声を聞いたからなのか、それは分からない

 

梨子「でも、一応、病院には…」

 

千歌「うん。今日、行ってくるよ」

 

梨子は千歌と一緒に砂浜に座っていた

 

梨子「それで、こんな朝早くに海岸で何をしてたの?」

 

千歌「うん。ここに来れば、何か見えるんじゃないかって」

 

梨子「それで、見えたの?」

 

千歌「ううん、何も。何も見えなかった」

 

梨子「何も?」

 

千歌「うん、だから思った、続けなきゃって」

 

千歌「私、まだ何も見えてないんだって、先にあるものがなんなのか、このまま続けても勝てるのかって」

 

千歌「ここでやめたら、全部わからないままだって」

 

梨子「千歌ちゃん…」

 

千歌「だから私は続けるよ!サッカーだって、まだ勝ってないもん!」

 

千歌「勝ってないもん、途中勝っても、結局負ければ、勝ったものも意味がなくなっちゃう…」

 

千歌「あれだけみんなで練習して、みんなでユニフォーム作って、戦術考えて、必殺技 習得して、頑張って頑張って、みんなで勝とう!って」

 

千歌「サッカー選手として輝きたいって」

 

千歌は手に力が入り、砂浜を殴り始める

 

千歌「なのに負けたんだよ!?悔しいじゃん!!」

 

千歌「差があるとか、昔とは違うとかそんなのどうでもいい!悔しい…」

 

千歌の目から涙がこぼれる。梨子はそんな千歌を後から抱きしめ、やっと素直になれたね。と優しく答える

 

千歌「だって…私が泣いたら、みんな落ち込むでしょ?みんなで頑張って来たのに、せっかくサッカー部に入ったのに…悲しくなっちゃうでしょ?」

 

梨子「バカね。みんな千歌ちゃんのためにサッカーをやっているわけじゃないのよ?」

 

梨子「私も…」

 

千歌「へ?」

 

梨子が後ろを向いたため、千歌も後ろを向くと曜、善子、ルビィ、花丸が駆けつけていた

 

梨子「だから、いいのよ?千歌ちゃんは思ったことを素直にぶつけて、声に出して」

 

曜「千歌ちゃん!!」

 

4人も千歌の元へ駆け寄る

 

梨子「みんなで一緒に歩こう、一緒に」

 

千歌は今まで溜まっていた想いを、吐き出すように声を上げて泣いた

 

 

雲の隙間から光が差す。千歌の心は今、暖かい。心のどこかに潜んでいた何かが少し少なくった気がする

 

 

 

 




千歌ちゃんのやつ、何でしょうかね?
あ、病気で出来なくなるとかそう言うのはないんで、安心してください!


次回からはついに始まります。大会が!



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第1章 14話 「復活 浦の星・前編」

ついにやって来ました。3年生。

???「祝え!新たな浦の星の誕生を!!」




 

 

 

すっかり元気を取り戻したサッカー部員達は、ミーティングをしていた。ついにあの大会が間近にせまったためである

 

曜「次の土曜日からだよね?大会」

 

梨子「ええ、全国高校女子サッカー大会。まずは県予選で県の代表校を決めなければいけない」

 

善子「その県予選では何試合するの?」

 

梨子「決勝も入れると4試合」

 

花丸「静岡県の代表になるのに、4回勝たないと行けないずらか、」

 

ルビィ「そう考えると、辛い戦いになりそう…」

 

善子「それに……戦力が、ね?」

 

千歌「それなんだよなーー!!」

 

千歌はうなだれながら机に突っ伏しる

 

梨子「9人じゃないと試合にならないしね…」

 

千歌達は6人では大会に参加できないため、残り3人確保のために、とある3人と交渉していたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌『お願いします!!どうか、サッカー部に入ってください!』

 

むつ『いや〜私達、サポートは出来るけど』

 

よしみ『実戦は無理だよ…』

 

いつき『ごめんね?』

 

千歌『そんなー!?』

 

梨子『お願いします!少しの間だけでもいいから!』

 

むつ『少しの間?』

 

梨子『残り3人、見つかるまででいいんです!どうか、』

 

6人『『『お願いします!!!!』』』

 

よしみ『…ちょっと、考えさせて?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「それでなんとか、入ってもらったんだよね」

 

千歌「はぁ、目星はついてるんだけどなぁ…」

 

花丸「3年生の人達、ずらか」

 

千歌「そう、でも…果南ちゃん、どうしてサッカーやめちゃったんだろう?」

 

善子「生徒会長が言ってた通り、試合に負けて、2年生の先輩達までやめちゃったからじゃないの?」

 

千歌「うーん…それでやめちゃうような性格じゃないんだけどなあ…」

 

梨子「そうなの?」

 

千歌「1度失敗したぐらいじゃ諦めないよ、果南ちゃんは」

 

ルビィ「とてもそんな風には見えませんけど…」

 

ルビィは自分が先輩に失礼なことを言ったと気づき、ごめんなさいと謝る

 

善子「まさか!天界の眷属が憑依!?」

 

善子の発言は華麗にスルーされる

 

千歌「もう少し、高校でサッカーをやってた時のこと分かればいいんだけど」

 

曜「聞くまで、全然知らなかったもんね」

 

「「「「うーん………ん?」」」」

 

ルビィ「ピギッ!?」

 

5人がルビィを見る。そう言えばルビィちゃんのお姉さんは………

 

千歌「ルビィちゃん、ダイヤさんからなにか聞いてない?」

 

曜「小耳に挟んだとか」

 

梨子「ずっと一緒に家にいるのよね?何かあるはずよ」

 

さらに梨子が少し強めの口調で聞く。それに完全にビビってしまったのか、ルビィはぴぎぃぃぃぃぃと叫びながら逃げ出してしまった

 

のだがすぐに善子に捕まり(堕天竜鳳凰縛)、話をせざるを得ない状況になった

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ルビィ「ルビィが聞いてるのは、大会の決勝で敗れて、先輩達がやめてしまったからってことくらいです。それからはサッカーの話をしなくなったので…」

 

ルビィ「ただ…」

 

5人「ただ?」

 

ルビィ「この前、鞠莉さんが家に来て、お姉ちゃんと二人で話してたんだけど…」

 

ダイヤ『逃げてるわけではありません。だから果南さんのこと、逃げたなんて言わないで』

 

ルビィ「……って」

 

千歌「逃げたわけじゃない…か、」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

果南の朝は早朝のランニングから始まる。朝の心地よい海風の中で走るランニングは最高である。が、そんな彼女のあとを尾行する影が6つ

 

ルビィ「毎日、こんな朝早くから起きてるんですね」

 

 

 

 

 

梨子「それより、こんな大人数で尾行したらバレるわ!」

 

曜「だって、みんな来たいって言うし」

 

 

 

 

 

 

千歌「…っしっかし速いねー!?」

 

 

 

 

 

 

 

善子「いったい…どこまで走るつもり??」

 

 

 

 

 

 

 

曜「もう、かなり走ってるよね?」

 

花丸「まる…もうだめずら……」

 

ルビィ「花丸ちゃん!?」

 

千歌「でも、気持ちよさそうだね!」

 

 

 

 

 

果南は笑顔で海辺の道を走っていく。行き着いた場所は、弁天島。サッカー部の6人は息を切らし、階段でへたり込む形でのゴールとなった

 

「「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」」」

 

千歌「はぁ、はぁ…!!」

 

千歌達が階段を上がり終わる頃には、果南と鞠莉が話をしている最中だった

 

鞠莉「復学届、提出したのね」

 

果南「まあね」

 

鞠莉「やっと逃げるのを諦めた?」

 

果南「勘違いしないでよ。学校を休んでいたのは父さんの怪我が原因。それにもう、サッカーはやらないから」

 

鞠莉「…私の知ってる果南は、どんな失敗をしても、笑顔で次へと走り出していた。成功するまで諦めなかった」

 

果南「…卒業まで、あと一年も無いんだよ?」

 

鞠莉「それだけあれば十分。それに、後輩だっている」

 

果南「なら、千歌達に任せればいい」

 

鞠莉「果南…」

 

ここまで拒絶するのか。鞠莉は果南が何故こんなにも頑ななのか分からなかった

 

果南「どうして戻ってきたの?」

 

果南「私は、戻ってきて欲しくなかった」

 

鞠莉「果南!?…………相変わらず、果南は頑固「もうやめて」

 

鞠莉「…え?」

 

果南「もう…あなたの顔、みたくないの」

 

鞠莉「!!?」

 

鞠莉が絶望に叩き落されたかのような顔をする。果南はそのままこの場を立ち去ろうとするが、その顔はとても悲しそうだった

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

果南が学校に復学したのは大会の前日であった。千歌達は引っかかるものがあるとはいえ、練習を疎かにする訳にもいかなかった。よしみ、いつき、むつを入れたサッカー部9人は、今日は最後のミーティングをしようという事で、部室集合になっていた

 

 

 

千歌「え!?果南ちゃんが?」

 

曜「うん、今日から学校に来るって」

 

千歌、梨子、曜はベランダで果南のことについて話していた

 

千歌「しかし…心配だね」

 

曜「うん、不安しかないよ」

 

梨子「あの二人、会ったらすぐにするんじゃない?」

 

3人「………喧嘩」

 

 

 

 

 

 

 

 

3年生のクラスは、ただならぬ空気によって満たされていた。鞠莉は先代ユニフォームを持って果南を勧誘、果南は鞠莉を睨み、ダイヤは2人を見守ることしか出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

千歌「はぁ、果南ちゃんの様子、見てこようかな……ん?」

 

千歌は気づいた。上から何かが落ちてくるのを……ユニフォーム?

 

その時、何故か曜がベランダから飛び出した

 

曜「ユニフォーム!!!!」

 

千歌、梨子「ダメ!!!!」

 

千歌と梨子は曜の体を必死に掴む。曜はやってしまったであります。とクラスのみんなに回収された

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

千歌達は上の階へと急いだ。廊下に出るとルビィや花丸、ほかの3年の先輩達が心配そうに中の様子を伺っていた

 

千歌達が教室の中を見ると、鞠莉と果南が取っ組み合いをしていた。ダイヤでも収拾がつかない騒ぎになっている

 

誰もこの状況を鎮めるものはいないと思っていた。しかし、一人の少女が3人の前に現れ、果南、鞠莉、ダイヤはその少女に注目する

 

果南「千歌?」

 

千歌「いい加減にぃぃ……しろおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

その後、果南達3年生は、千歌に放課後サッカー部部室に来るようにと言われた。3人は千歌の勢いに逆らえず、はい、と答えるしかなかった。それから当分、千歌は3年生達から「浦の裏ボス」と噂されるのである

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後 部室

 

果南「サッカーは絶対にやらない!!」

 

果南はそう言うと、部室から出ていってしまった。はっきり言って会話はなんの進展も無く、平行線のまま終わってしまった

 

梨子「…ダイヤさん?何か知ってますよね?」

 

ダイヤは一瞬、いや、かなり焦りながら否定する

 

ダイヤ「え!?…私は何も…」

 

梨子「じゃあなんで果南さんの肩を持つんですか?」

 

ダイヤ「…………」

 

 

ダダダダダダダ

 

ダイヤは逃げた。しかし、善子により無事、捕獲される

 

 

ダイヤ「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??」

 

ルビィ「お姉ちゃん…」

 

ルビィは哀れみの目で捕獲され、連れ戻される姉を見る

 

ダイヤ「ルビィ…そんな目で見ないで下さいまし…」

 

梨子「さぁ、話してください。ダイヤさん」

 

ダイヤ「わかりましたわ。しかし、申し訳ありませんが、明日にしてくれませんか?」

 

「「「「え?」」」」

 

梨子「今じゃ、ダメなんですか?」

 

ダイヤ「これから私と鞠莉さんは統廃合についての街の会議に出なければいけません。話を聞くなら、明日にしてください」

 

曜「あの、ダイヤさん。明日は…」

 

ダイヤ「?明日は何かありますの?」

 

鞠莉「全国高校女子サッカー大会 初戦よ?」

 

ダイヤ「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




堕天竜鳳凰縛
善子の必殺技。試合中にやると多分、カードがでる究極の技。

浦の裏ボス
千歌ちゃんの異名


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第1章 14話 「復活 浦の星・後編」

ついにここまで来ました。

ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございます

まだまだ続きますよ!


 

 

 

大会当日、6人は黒澤家に来ていた

 

 

千歌「試合時間は大丈夫なの?」

 

梨子「試合開始は午後だから、時間はまだあるわ。むつちゃん達とは現地集合にしておいたよ」

 

ダイヤ「…よろしいですか?」

 

千歌「あ、はい。お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「留学??」」」」

 

ダイヤ「そうですわ」

 

ルビィ「確かに、鞠莉さんは留学していたって聞いたけど…」

 

花丸「それが、果南さんとどう関係があるずらか?」

 

ダイヤ「鞠莉さん。あなたを心配していたのですわ。留学や転校の話がある度に全部断っていたでしょう?」

 

鞠莉「そんなの当たり前でしょ!!!!?」

 

鞠莉が叫んだ。そんなの余計なお世話だと怒りがこもる

 

ダイヤ「…果南さんは思っていたのですわ、このままでは自分たちのせいで、鞠莉さんの未来の可能性を全部奪ってしまうのではないかと」

 

鞠莉「まさか、それで…!!」

 

鞠莉はそのまま、席を外そうとしたためダイヤがとめる

 

ダイヤ「どこへ行くんですの?」

 

鞠莉「ぶん殴る!!そんなこと、一言も相談せずに!!」

 

ダイヤ「おやめなさい。果南さんはあなたのことを、ずっと見てきたのですわ」

 

ダイヤ「あなたの立場も、あなたの気持ちも、そして、あなたの将来も、誰よりも考えている」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「…全く、行ってしまいましたか」

 

千歌「鞠莉さん、大丈夫なんですか?外は雨ですよ?」

 

ダイヤ「心配ですが、彼女は上手くやりますわ。それよりあなた達こそ、これから会場となる相手の高校へ行くんじゃないんですの?」

 

曜「あ!そうだった…」

 

花丸「雨、結構降ってるずらね」

 

ダイヤ「心配には及びません。沼津駅まで、送っていきますわ」

 

千歌「ありがとうございます!」

 

ダイヤ「それでは、車の手配を致しますので、皆さん準備を」

 

ダイヤは車の準備を頼むために部屋から出る。その時、ルビィに呼び止められる

 

ルビィ「お姉ちゃん!」

 

ダイヤ「ルビィ?どうしたのですか?」

 

ルビィ「…あのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌達は沼津駅まで送ってもらったあと、電車に乗り、対戦相手の高校へと来ていた

 

千歌「ついた…ここが、青藍高校」

 

善子「大きな学校ね…」

 

千歌達が青藍グラウンドに入ると、既に青藍サッカー部がスタンバイしていた

 

しずく「ようこそ!浦の星女学院サッカー部の皆さん。私は青藍高校サッカー部キャプテンの桜坂しずくです。今日はよろしくお願いします」

 

浦の星「「「よろしくお願いします!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

両チームがベンチに入り、最終確認をとる。天候は恵まれず曇りである

 

梨子「それじゃあ、最後にもう一度、フォーメーションの確認ね。

 

センターフォワード 津島善子

右サイドハーフ むつ

左サイドハーフ 渡辺曜

トップ下 高海千歌

ボランチ 桜内梨子

右サイドバック いつき

左サイドバック よしみ

センターバック 国木田花丸

キーパー 黒澤 ルビィ

 

3-2-3

 

 

梨子「焦らずに落ち着いたパスとトラップ、クリアも大事よ。みんな、頑張りましょ!」

 

千歌「よーし!浦の星ーサーンシャイーン!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

青藍ベンチ

 

歩美「浦の星サッカー部って、廃部になったんじゃなかったっけ?」

 

みなみ「私達が1年の時に廃部になったはず…」

 

しずく「復活したとしたら、私達には好都合です。2年前のリベンジです」

 

 

センターフォワード 2年 鳥居 歩美

セカンドトップ 1年 藤城 悠弓

右サイドハーフ 3年 一之瀬 マリカ

左サイドハーフ 1年 篠宮 あきる

センターハーフ 3年 桜坂 しずく

センターハーフ 2年 杉崎 亜矢

センターバック 2年 九条 聖来

センターバック 1年 田中 さち子

キーパー 3年 永山 みなみ

 

2-2-4

 

 

 

両チームがコートに入り、審判が試合開始の笛を吹く。千歌達の全国への挑戦がスタートした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浦の星女学院では鞠莉に呼び出された、果南がサッカー部部室に来ていた

 

果南「何?」

 

鞠莉「いい加減、話をつけようと思って」

 

果南が部室に入ろうとすると、床が濡れていて、鞠莉はボロボロだった。果南は心配し声をかけようとしたが、今は鞠莉の話を聞く

 

鞠莉「どうして言ってくれなかったの?ちゃんと話して、私のことを思うように、私も果南のこと考えてるんだから」

 

鞠莉「将来のことなんて、どうでもいいの。留学?全く興味なかった。だって、果南達と勝てなかったんだよ?放っておけるはずない!」

 

パァン!!

 

部室に果南の頬を叩く音が響く、鞠莉は果南への気持ちを甘く見るなと、涙ながらにうったえる

 

果南「……だったら素直にそう言ってよ!」

 

果南「リベンジとか負けられないとかじゃなくて、ちゃんと言ってよ!!」

 

鞠莉「だよね、だから…」

 

鞠莉は自分の頬を差し出す。自分も悪かった。私もビンタされるべきだ。そう主張するが、果南は

 

 

 

 

 

 

 

果南「ハグ…しよ?」

 

鞠莉には見えた。果南とダイヤと初めてあったあの日の、果南からのハグが、そして今の果南は、その時と同じ顔をしていた

 

鞠莉「!!かなぁぁぁん!!!!」

 

鞠莉は大粒の涙を零しながらハグをする。2人は2年という月日をへて、こうしてまた、ハグをすることが出来た

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「2人とも、良かったですわね」

 

鞠莉「!ダイヤ」

 

果南「ダイヤも…ごめん、今まで」

 

ダイヤ「全く…心配していたのですよ?」

 

鞠莉「ダイヤも、また、やる?サッカー…」

 

ダイヤ「…幼馴染を、放っておけませんわ」

 

果南「ダイヤ…」

 

鞠莉「ありがとう…本当に」

 

果南「それで、千歌達はどこの高校と戦ってるの?」

 

ダイヤ「そう言えば、ルビィから聞いていませんでしたわ。調べますね」

 

ダイヤはケータイで静岡予選の対戦表を調べる。すると、ダイヤの顔がみるみる青ざめていく

 

果南「ダイヤ、どうしたの?」

 

ダイヤ「まずい、ですわね」

 

鞠莉「相手、そんなに強いの?帝女はシードだから、当ってないと思うけど…」

 

ダイヤ「…青藍高校ですわ」

 

果南、鞠莉「!!!!」

 

ダイヤ「静岡の優勝候補、ですわね」

 

鞠莉「そんな!せっかくまた始められるのに!!」

 

果南「もう、試合始まってるよね?」

 

ダイヤ「まだ始まってはないようです!しかし、今から行って間に合うかどうか…」

 

果南「……千歌……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「はぁ、はぁ、はぁ、そんな…」

 

 

前半終了の笛が吹かれ、ハーフタイムに入っていた。浦の星女学院サッカー部はもう既に、敗北の危機に陥っていた

 

梨子「0対2…厳しいわね」

 

ルビィ「ごめんなさい、ルビィが止めないから…」

 

花丸「ルビィちゃんのせいじゃないずら。まるがしっかりディフェンスしなかったから」

 

善子「やめなさいよ!! 空気が悪くなるじゃない!」

 

善子は強い口調で訴えるも、既に空気は最悪であった

 

曜「千歌ちゃん…」

 

千歌「(私が…もっと、点を決めないと…みんなを引っ張っていかないと)」

 

曜「千歌ちゃん?」

 

千歌の心は前に、砂浜で感じたような闇に覆われる感覚に再び囚われようとしていた

 

千歌「(私が、私が、私が、私が「千歌!!」

 

「「「「「!!!!!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「お待たせ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「…果南…ちゃん?」

 

果南「なんとか、後半までには間に合ったね!」

 

千歌達は何が起きているのか、理解出来ていなかった

 

曜「え?だって、果南ちゃん…サッカー、やらないんじゃ?」

 

果南「んー…そう言ったけど、やっぱり諦めたくないしね!」

 

千歌「ははは…果南ちゃんらしいや」

 

「待ってください!果南さん!」

 

遠くから2人、こちらに走ってくる。見覚えのある顔、今までぶつかり合ったり、助けてもらったりした顔だった

 

ルビィ「お姉ちゃん!鞠莉さん!」

 

ダイヤ「果南さん…走るの…速すぎですわ…」

 

鞠莉「果南…頼もしいわよ…ゼェゼェ」

 

曜「大丈夫?2人とも?」

 

果南「あちゃー…試合前のウォーミングアップだと思ったんだけど、キツかったかな?」

 

ダイヤ、鞠莉「キツすぎよ(ですわ)!」

 

千歌達は3年生の会話を聞いていると、さっきまでの疲れが吹き飛んだかのように安心した。来てくれた、来てくれたんだと

 

ダイヤ「皆さん、前半、お疲れ様でした。後半からは私達も出ますわ」

 

ダイヤ達はユニフォーム姿になる。実は千歌達が沼津駅に送っていってもらう前に、ルビィが3人分のユニフォームを渡していたのである

 

善子「ちなみに、ポジションはどこなの?」

 

ダイヤ「私はセンターフォワードですわ!」

 

鞠莉「マリィーはセンターバックデース!」

 

果南「私は…キーパー」

 

 

 

 

 

 

 

こうして、浦の星女学院サッカー部は完全復活を遂げたのである

 

 

 

 

後半戦が始まる

 

 




青藍高校
某リズムゲームの高校。学年とポジションは適当です

ついに9人揃いましたね。次回、3年生達が大活躍します!



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第1章 15話 「青藍戦」

1度登場した技は2回目からは表現が少なくなると思います

オリジナル技も登場します!




 

 

ダイヤ「よしみさん、いつきさん、むつさん、無理をさせてしまって申し訳ありませんでした」

 

むつ「そんな!生徒会長が謝ることでは」

 

よしみ「あとは、お願いします!」

 

いつき「絶対に勝ってください!」

 

鞠莉「off course! 必ずvictoryしてみせるわ!」

 

果南「ルビィちゃんも、ごめんね?キーパーさせちゃって」

 

ルビィ「大丈夫です!果南さんが来てくれたからもう安心です!」

 

果南「そう言ってくれると助かるなぁ」

 

ダイヤ「梨子さん、後半が始まる前にもう一度、フォーメーションの確認をお願いします」

 

梨子「は、はい!」

 

 

センターフォワード 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 桜内梨子

左サイドバック 国木田花丸

右サイドバック 黒澤ルビィ

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

 

 

 

 

 

審判から、まもなく後半戦開始を知らせる笛がなる。両チーム、コートの中に入っていく中、果南はルビィの元へ駆け寄った

 

果南「ルビィちゃん、ちょっと」

 

ルビィ「?どうしたんですか?果南さん」

 

果南「間違ってたら悪いんだけどさ、ルビィちゃんは確か、小学校の時FWだったような…」

 

ルビィ「そんなことないですよ?」

 

果南「そうだっけ?ごめん、変なこと聞いた」

 

ルビィ「大丈夫ですよ!頑張りましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩美「!!浦の星、メンバー3人変えてきた!」

 

聖来「最初、挨拶をした時はいませんでしたよね?」

 

あきる「3年生でしょうか…?」

 

マリカ「?(どこかで見覚えが…)」

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!!

 

後半戦が始まった。スタートは青藍ボール、悠弓がドリブルで上がっていく

 

悠弓「相手が変わろうと、関係ない!」

 

ダイヤ「ドリブル…速いですわね」

 

悠弓は前を走る歩美にパスを出す

 

悠弓「歩美先輩!」

 

歩美「いいよ!ナイスパス」

 

そのまま、ドリブルで行こうとする歩美を梨子が止めに入る、が

 

鞠莉「梨子〜?そこから離れた方がいいわよ?もうまいたから♪」

 

梨子「え?まいた?」

 

梨子が周りを見渡すと確かに何かがある

 

梨子「(なんか…やばそう)」

 

梨子はすぐにその場を離れる

 

歩美「このまま3点目決めてやる!」

 

鞠莉「それは無理よ?残念ながら♪」

 

 

 

鞠莉「ーグラウンドスイーパーー!!」

 

ドガガガガガガーン!!

 

鞠莉の周辺が大爆発し歩美は吹き飛ぶ

 

歩美「うわぁ!?」

 

善子「何よ…あれ?無茶苦茶ね…」

 

花丸「未来ずらー…」

 

ボールをカットした鞠莉は善子へパスを出す

 

善子「クックック、ヨハネのリトルデーモン、召喚する時が来たようね」

 

善子「ーデビルボールー!!」

 

ボールに悪魔の羽が生え、亜矢とさち子をかわしていく

 

善子「生徒会長!!」

 

善子からのパス、ダイヤはゴール前、シュートの構えに入る

 

ダイヤ「とくと御覧なさい。私の華麗な炎を」

 

ダイヤは回転しながら炎の渦をつくる。ボールに込められた力に千歌は見覚えがあった

 

千歌「あの、シュート…」

 

梨子「間違いないわ…」

 

曜「あの熱さ、あの時の!!」

 

 

 

ダイヤ「ーファイアトルネードー!!」

 

ダイヤの放ったシュートはそのままゴールに入った

 

ピーーーーー!

 

ダイヤ「ふぅ、まぁまぁですわね」

 

ルビィ「凄い!お姉ちゃん!」

 

鞠莉「流石ダイヤね!このまま勢いに乗りましょ!」

 

 

 

 

 

 

亜矢「なんですか…あの強烈なシュート」

 

みなみ「ごめんなさい、油断してたわ。でも、あれで思い出したわ」

 

聖来「思い出した?」

 

みなみ「あの3人は、2年前私達を破り、決勝へ進んだ時にいた」

 

マリカ「!!まさか」

 

みなみ「そう、あの頃は静岡でも有名だったわ」

 

みなみ「『炎のストライカー黒澤ダイヤ』、『爆裂のシャイニーガール小原鞠莉』、そして『海皇 松浦果南』」

 

しずく「私も思い出しました。厄介ですね」

 

 

 

ピーーーーー!

 

 

 

試合再開。青藍高校は鞠莉を警戒しながらパスを回す

 

歩美「ースカイウォークー!」

 

花丸「空中じゃ、きな粉餅が届かないずら!?」

 

花丸を突破した歩美はスペースをねらい、中へパスを出す

 

歩美「悠弓!!」

 

悠弓「決めてやる!ー ガンショットー!」

 

弾丸のようなボールがゴールに飛んでいく、そんな中、果南は思う

 

果南「(昔の青藍のシュートの方が手応えありそうだったけどなー)」

 

 

 

果南「ートライデントー!!」

 

悠弓「!!?」

 

千歌「えぇ!?」

 

曜「鷲掴み…した」

 

果南はボールをポセイドンの槍のごとく捉え、地面に叩きつけた

 

果南「梨子ちゃん!カウンター」ブォン!

 

梨子「はい!みんな上がって!」

 

そのままパスは繋がり、千歌の元へ

 

千歌「(果南ちゃんから繋がったボール、途切らせない!)」

 

千歌「ーZスラッシュー」

 

相手をかわし、フリーである曜にパスを出す

 

曜「ーパルクールアタックー!」

 

曜の放ったシュートがゴールに迫る

 

みなみ「もう、入れさせませんー花吹雪ー!!」

 

が、みなみの花吹雪により上空へと舞い挙げられてしまった

 

曜「ごめん!防がれた」

 

善子「任せなさい!」

 

しかし、善子は舞い挙げられてボールのとこで、事前に待ち構えていた

 

善子「あまいわねーデスドロップー!」

 

善子が押し込み、2対2の同点となった

 

ルビィ「やったね!善子ちゃん」

 

善子「ヨハネよ!!」

 

 

 

 

 

 

あきる「まずいです…同点になってしまいました」

 

しずく「諦めてはダメよ!後半も残りわずか、最後まで攻めましょう!」

 

青藍はしずくの言葉により、気合を入れ直す。それは浦の星でも同じであった

 

果南「残り時間はわずか! 集中して!」

 

鞠莉「みんなー!じゃんじゃん私にボール回して!シャイニーなシュート打ってあげるわ!」

 

ダイヤ「あのシュートはシャイニーと言うよりかは野蛮ですわ!!」

 

果南「鞠莉、来る!」

 

鞠莉「OK!また、カットしてあげるわ」

 

マリカ「ここで終わるわけにはいかないんだ!!ー ドッグランー!!」

 

犬のように動き回るボールが、鞠莉を抜き去った

 

鞠莉「あ!やばい、抜かされた」

 

ダイヤ「何をやっているんです!?鞠莉さん!」

 

果南「相変わらずだなぁ…はは、」

 

その時、マリカの横からカットが入る

 

ルビィ「ーイグナイトスティールー」

 

マリカ「しまった!!?」

 

梨子「ルビィちゃん!?」

 

善子「あんなディフェンス技を持ってたの!?」

 

ルビィ「鞠莉さん!合体技を!」

 

鞠莉「Oh!合体技、2年ぶーりですねー!!」

 

鞠莉はそう言うと空中へ飛び、ボールにオーラを込める

 

鞠莉「行くわよー、ダイヤ!ーディザスターブレイクー!」

 

ダイヤ「やるならもっと早く言ってください!まったく…」

 

鞠莉のロングシュート、しかし、そのシュートはゴールへ狙ったものではない

 

地面をえぐるように進んでいたはボールは、ダイヤの前で上へと飛んだ

 

ダイヤ「先程のシュートよりも、強烈ですわよ!」

 

ダイヤ「ーファイアトルネードー!」

 

鞠莉のディザスターブレイクとダイヤのファイアトルネードが合わさり、まるで隕石のようにゴールへと迫る

 

みなみ「(これを止めないと負け!それだけは、防ぐ)ー花吹雪ー!」

 

みなみの花吹雪も強烈だが、ダイヤと鞠莉の合体技にはかなわなかった

 

ピーーーーー!

 

シュートが決まり3対2。それと同時に、試合が終了した

 

 

 

 

 

 

 

千歌「……あ、勝った、やった、勝ったんだ!」

 

曜「千歌ちゃん!勝ったよ!」

 

千歌「曜ちゃん…良かったよー」

 

花丸「なんとか逆転ずらー…」

 

ルビィ「3年生達のおかげだね!」

 

 

 

 

 

 

それぞれ、勝利を喜ぶ浦の星。青藍高校は悔しいがやりきったと、勝利を祝ってくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、みんなでジュースを飲みながら駅に向かっていた

 

千歌「凄かったよねー!合体技!ダイヤさん私にも教えてください。合体技!!」

 

ダイヤ「その前にあなたは、自分のシュート技を覚えるのが先ですわ」

 

千歌「あ、そっか」

 

善子「鞠莉さん!あのディザスターブレイク、すごくかっこよかった!!」

 

鞠莉「Thank you♪善子、あなたのデスドロップも最高にCOOLだったわ!」

 

 

浦の星女学院サッカー部は新たなチームでこの先の幾多の壁を、乗り越えていかなけばならない。そしてあの季節がやってくるー

 

 




グラウンドスイーパー
イナイレGoで登場する、セカンドステージ・チルドレンの技です。敵の周りを大爆発させるという…鞠莉ちゃんには派手な技を覚えさせたかったのでこの技を

ファイアトルネード
我らが永遠のエースストライカー豪炎寺修也の技です。また、ダイヤちゃんはこのシュートで千歌ちゃんを助けました。豪炎寺と同じです!

デビルボール
魔界軍団Zのドリブル技。ヨハネ曰く、リトルデーモンを生み出す技だとか。あながち間違っていませんね

ディザスターブレイク
ザナークのシュート技。野蛮なシュート、ダイヤちゃんからそう言われてましたね。ロングシュート技ではありませんが、ザナークは普通にロングで打ってました…

トライデント
オリジナル技です。由来はポセイドンの槍です。果南ちゃんはボールをとると言うよりも槍(モリ)で仕留める方があってるかなと思い、この技を。 ボールへ自ら飛び込み、槍で突き刺すが如くボールを地面に叩きつけ鷲掴みに、果南ちゃんらしい力強い技です

イグナイトスティール
エイリア学園のプロミネンスのブロック技です。炎のスライディングでボールをカットします。ルビィちゃんは他に何の技を使えるのか……

合体技
雷門中のザ・フェニックス+ファイヤトルネードのようなものだと思ってください。チェイン技出なくても今後も出していきます



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第1章 16話 「合宿」

原作とは設定をちまちま変えています

シャイ煮食べたいです




 

 

千歌「あづい…」

 

花丸「地獄ずら…」

 

善子「天の業火で堕天の翼が…」

 

善子はローブを纏っているため、近づくだけでも熱い。ルビィが「その服はやめた方がいい」と心配する

 

 

曜「どうしたんですか?全員集めて」

 

 

3年生がサッカー部に入ってから2週間がたっていた。浦の星サッカー部は初戦と昨日行われた2回戦目を突破し、次の土曜日に行われる準決勝のため、練習に励んでいた。そんな中、ダイヤが部室に集合と全員に指示を出したのである

 

ダイヤ「ふふっ、今日からいよいよ夏休み!」

 

鞠莉「Summer vacation と言えば??」

 

ダイヤ「はい!答えて!」

 

 

千歌「え!?やっぱり、海だよね?」

 

曜「夏休みはパパが帰ってくるんだ♪♪♪」

 

花丸「マルはおばあちゃん家に」

 

善子「夏コミ!!!!」

 

梨子「練習かな?(私も行かなきゃ、戦支度しないと)」

 

果南「素潜り」

 

 

 

 

ダイヤ「……ぶっぶーですわ!!!」

 

痺れを切らしたダイヤが叫ぶ、「片腹痛い」

と言いながら、ルビィになにかをホワイトボードに貼るように指示を出している

 

ダイヤ「…正解を言いましょう、夏といえば!?はい!ルビィ」

 

ルビィ「夏合宿だよ!お姉ちゃん」

 

ダイヤ「さっすが我が妹!可愛いでちゅね〜よく出来ましたわ〜!」

 

ルビィ「がんばルビィ!」

 

ダイヤがルビィの頭を撫でながら、ベタ褒めをしている。これが前まで対立していた、お堅い生徒会長なのだろうか…

 

善子「何?この姉妹コント…」

 

ダイヤ「コント言うな!夏といえば合宿、泊まり込みで練習し、実力を高める季節なのです!」

 

ダイヤはホワイトボードに貼られている紙を指さす

 

ダイヤ「静岡予選突破を目指して、サッカー部はこの特訓を行います!」

 

ダイヤ「これは、わたくしが独自のルートで手に入れたUTXの合宿のスケジュールですわ!」

 

ルビィ「凄いお姉ちゃん!」

 

花丸「遠泳10キロ!?」

 

善子「ランニング15キロ……」

 

千歌「こんなの無理だよ…」

 

果南「まぁ、何とかなりそうね」

 

果南の一言で、無謀な練習と思っていたメンバー達が衝撃を受ける。体力おばけにも程がある

 

果南「今日の朝も泳いできたしね」

 

「「「(納得)」」」

 

ダイヤ「熱いハートがあれば何でもできますわ!」

 

ルビィ「ふんばルビィ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「熱いハートがあっても…無理なものは…無理…ですわ…」

 

合宿一日目、まずはランニング15キロから始めたのだが、走り終わる頃には果南以外、全員力尽きていた

 

善子「もう、無理…」

 

花丸「誰か助けて…ずら…」

 

ダイヤ「こ、こんな特訓をA‐RISEはやっていたのですか…」

 

ルビィ「す、凄すぎる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「ほら!最後まで走りきる!」

 

次はサーキットトレーニング。スクワットをしてダッシュ、そのまま腕立て伏せをしてダッシュ、そのまま起き上がり腹筋をしてダッシュという、ほぼほぼ罰ゲームだった

 

千歌「私達…軍事施設に合宿しに来たんだっけ?」

 

梨子「そんなわけ、ないでしょ?」

 

曜「きついけどいい練習だね!」

 

千歌「曜ちゃん、なんでそんなに笑顔なの?」

 

果南「喋れるってことは、まだまだ余裕ありそうだね♪」

 

千歌、梨子「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「位置について…よーいドン!」

 

ビーチフラッグ、瞬発力を鍛えるらしい。ちなみにビリから3番目までは遠泳である

 

善子「遠泳は嫌だ、遠泳は嫌だ、遠泳は嫌だ」ダダダダダダ

 

花丸「マルも嫌ずらー!!」ダダダダダダダダ

 

千歌「梨子ちゃんには悪いけど、先に行かせてもらうよ!!」ダダダダダダ

 

梨子「そんなー!?待ってー!」ダダダダダダダダ

 

ダイヤ「遠泳だけは回避を…」ダダダダダイヤ

 

鞠莉「そんな必死になっちゃってー」ダダダダダダダダ

 

ダイヤ「あなたも本気で走ってますよね!?」

 

ルビィ「ぴぎぃぃぃぃぃぃ!?」ダダダダダダダダ

 

曜「うわ!ルビィちゃん速い!」ダダダダダダダダ

 

 

 

 

結果、遠泳をするのはダイヤ、千歌、善子に決まった

 

善子「なんでぇぇぇぇぇ!!??」

 

千歌「善子ちゃん、転ぶからでしょ!?私まで巻き込まれたし!」

 

善子「ヨハネよぉ…」

 

ダイヤ「何故…わたくしが、ワースト3位…」

 

鞠莉「ダイヤ、どんまい☆」

 

ダイヤ「ぬあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ルビィ「お姉ちゃん…」

 

果南「さあ、3人共、遠泳行くよ」

 

千歌、善子、ダイヤ「ぴぎぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして一日目の特訓は幕を閉じた

 

 

ー海の家ー

 

千歌「美渡姉がここ、自由に使っていいって」

 

千歌達は夕食を食べるために、海の家を借りていた。料理係は曜、善子、鞠莉である

 

曜「とりゃあ!はっ!」ジューー

 

曜は手際良く材料を切り、鉄板で焼きそばをつくる。上にオムレツ風に卵焼きを乗っけて完成である

 

曜「ほい!美味しいヨキソバ、ヨーソロー!」

 

ルビィ「凄く美味しい!」

 

千歌「これ、お店でも出せるんじゃない!?」

 

曜「いやー、照れるであります」

 

そんな中、厨房から不気味な笑い声が聞こえてくる

 

善子「クックック…堕天使の涙、可愛い!」

 

鞠莉「ヒッヒッヒ…アンビリーバボー、シャイ煮complete!」

 

 

 

ヨキソバに続いて出てきたのは、ドス黒いたこ焼きと、色々と謎の食材が入っている鍋であった

 

千歌「うわお…」

 

ルビィ「それってどんな味がするんですか?」

 

果南「ちょっと興味あるね」

 

梨子「そうですね」

 

花丸「マルも食べてみたいずら!」

 

鞠莉、善子「いいですわーーー!」

 

鞠莉と善子は人数分に取り分け、それぞれが口に運ぶ

 

千歌「!!シャイ煮美味しい!」

 

花丸「おかわりずら!」

 

シャイ煮はなかなか好評である。一杯10万円と聞いた時は、吹き出しそうになるも我慢する

 

ルビィ「じゃあ、次は堕天使の涙を…」

 

「「「……」」」

 

ダイヤ「ルビィ?」

 

その後、砂浜を顔を真っ赤にしながら走り回るルビィが目撃されたという

 

 

 

 

 

 

 

一通り食べ終わったあと、全員で片付けをして千歌の旅館へ戻ろうとしていた。今日は1泊、千歌の部屋にみんなで泊まることになっている

 

梨子「………」

 

千歌「あれ?梨子ちゃんどうしたの?ぼーっとして」

 

梨子「え、いや、何でもないよ?」

 

千歌「そう?」

 

ダイヤ「千歌さん、もう少しで片付け、終わりますわよ?」

 

千歌「あ、はい!部屋の準備してきますね」

 

千歌は部屋の準備をするために、十千万旅館の玄関へと向かった。そこで、千歌は梨子がピアノコンクールの出場の招待が来ていることを知る

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

みなさん、ヨーソロー!渡辺曜です。今は早朝で、みんなまだぐっすり眠っているんですが、私はどうも早く起きてしまって…昨日たくさん走ったから、みんなまだ起きそうにないな

 

「梨子ちゃーん…梨子ちゃーん」

 

ん?この声は千歌ちゃん?なんでこんな時間に梨子ちゃんを起こしているんだろう…

 

梨子「う、何?」

 

千歌「ちょっと、朝の散歩しない?」

 

千歌ちゃん、朝の散歩って…どうして梨子ちゃんと……きになるなぁ、こっそり見に行くであります!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「本当に…変な人、大好きだよ」

 

千歌「うん」

 

 

………知らなかった、梨子ちゃん、ピアノコンクールに出場するか悩んでたんだ…でも、千歌ちゃんは知ってた。うーん、なんか変な感じだなぁ…

 

 

 

 

鞠莉「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

夏の暑さ、太陽の日差しが容赦なく降り注ぐ沼津駅。サッカー部メンバーは東京へ行く梨子を見送っていた

 

千歌「しっかりね!」

 

梨子「お互いに」

 

ルビィ「梨子ちゃん、がんばルビィ!」

 

ダイヤ「東京に負けてはダメですわよ!」

 

曜「そろそろ時間だよ?」

 

鞠莉「Ciao梨子」

 

果南「気をつけて」

 

梨子は改札を通り、ホームへ向かおうとしたとき、千歌が「次は一緒にグラウンドに立とう!」と言った。梨子は「もちろん!」と返し、走っていった

 

 

ダイヤ「さあ、練習に戻りますわよ!」

 

ダイヤ以外のメンバーも練習に向かうために、出口に歩き出した。しかし、千歌は改札前に佇んでいた

 

曜「千歌ちゃん……」

 

 

 




次回、新展開!そして、桜内梨子、ほんのり暴走




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第1章 17話 「友情ヨーソロー」

ほんのりと梨子ちゃんが暴走するので注意です




 

 

 

ダイヤ「特訓ですわ!!!」

 

ダイヤは部室のホワイトボードにでかでかと「特訓」と書いたが、他のメンバーは呆れている

 

千歌「また…?」

 

花丸「本当にすきずらね…」

 

ルビィ「あ!!」

 

ルビィが声を上げる。パソコンでほかの県の状況を調べていたルビィが、何かを見つけたようだ。他のメンバーも画面を見ると、見覚えのある顔が映っていた

 

千歌「これって、聖良さん達の学校!?」

 

ルビィ「先に行われた、北海道予選を優勝して、北海道代表になったって!」

 

果南「え?これが、千歌達が東京で負けたっていう?」

 

千歌「頑張ってるんだ!」

 

果南「気持ちは分かるけど、大切なのは目の前の県予選!」

 

ダイヤ「その通りですわ!では、早速、練習に行きますわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「あれ?」

 

ここで、千歌達は重大な事に気づく

 

千歌「梨子ちゃんは?」

 

「「「「あ………」」」」

 

果南「そっか、梨子ちゃんいないんだよね」

 

ダイヤ「あら?そうなると…8人しかいませんわよ?」

 

善子「え?ヤバくない?」

 

果南「鞠莉、どうするの?」

 

鞠莉「え?…ヤバくない?」

 

鞠莉も完全に不覚だったと焦っていた。浦の星サッカー部は絶体絶命かと思われたその時だった

 

 

 

 

「ちょっと待ったー!」

「その1人!」

「私達が!」

 

よしみ、むつ、いつき「カバーするよ!!」

 

 

よしみ、むつ、いつきは1回戦の試合のあと、正式にサッカー部のマネージャーとして入部していた。もちろん、合宿のときもずっとサポートをしてくれていた

 

曜「凄くありがたいけど、大丈夫なの?」

 

むつ「うん!1人の空きを3人でカバーするから!」

 

よしみ「交代交代で、頑張るよ」

 

 

 

 

 

ダイヤ「……き、」

 

「「「き?」」」

 

ダイヤ「救世主ですわーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、練習は終了し、3年生3人は生徒会室にいた。山積みになった資料を見ながら、果南達は言う

 

果南「こんなに仕事溜めて…1人で抱え込んでたでしょ?」

 

ダイヤ「違いますわ!これは、ただ…」

 

鞠莉「仕方ないなぁ、これからは私と果南が手伝ってあげまショウ!」

 

鞠莉は書類を整理を始めようとした時、1枚の書類が床に落ちた

 

果南「あれは?」

 

ダイヤ「サッカー部の申請書ですわ。以前、千歌さんが持ってきた」

 

鞠莉は書類を拾うと、あることに気づく

 

鞠莉「あら?最初は千歌っちと曜の2人だったのね。てっきりstartは千歌っちと梨子だと思ってました」

 

ダイヤ「確かにそう見えなくはないですね。今の状況からすると」

 

鞠莉「そうデスね(なるほどね)」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

曜は夕陽に照らされる道を1人で歩いていた。ため息混じりに歩く彼女は、とても寂しそうであった。誰かに胸を鷲掴みにされるまでは

 

鞠莉「oh!これは果南にも劣らな「とおりゃあああああ」

 

曜は鞠莉の腕を掴み綺麗な一本背負いを披露した

 

鞠莉「auti!!」

 

曜「?…ま、鞠莉ちゃん!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉と曜は場所を移し、話をしていた

 

 

曜「千歌ちゃんと?」

 

鞠莉「はい!最近、上手くいってないでしょ?」

 

曜「あ、あぁ、それなら大丈夫。今日の練習も上手くいってたから!」

 

鞠莉「いいえ。プレーではなく。梨子に千歌っちを取られて、ちょっぴり嫉妬ファイヤー(ビブラート)が燃え上がってたんじゃないの?」

 

曜「え!?嫉妬?…まさか、そんなこと…」

 

鞠莉は曜のほっぺたをつねり、「ぶっちゃけトーク!」と本音をはくのを促す

 

曜は隠すのを諦め、語りだす。昔から千歌と一緒で、なにかをやりたいと思っていたこと。しかしそれが叶わぬまま中学、高校へと進んでしまったこと

 

 

曜「だから、千歌ちゃんがサッカーを一緒にやりたいって言ってくれたときは、凄く嬉しくて、これでやっと一緒にできる!って、」

 

 

曜「でも…すぐに梨子ちゃんが入って、気づいたら、みんなも一緒になってて、それで思ったの。千歌ちゃん、私と2人は嫌だったのかなって」

 

鞠莉「Why?なぜ?」

 

曜「私、全然そんなことはないんだけど、何か要領がいいって思われてて、そういう子と一緒にって、やりにくいのかなぁって」

 

鞠莉「・・・・えいっ」チョップ

 

曜「あいた!?」

 

鞠莉「なーに1人で決めつけてるの!要は千歌っちのことが、大好きなのでしょ?なら、本音でぶつかった方がいいよ!」

 

曜「本音…」

 

鞠莉「そ・れ・と! もう1つ!」

 

曜「…へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌、曜「2人で打つシュート!!?」

 

鞠莉「Yes!! 2人なら、すぐに完成すると思うんだけど」

 

曜「…2人のシュート」

 

千歌「凄い!やってみようよ!曜ちゃん」

 

曜「千歌ちゃん…うん!やってみよっか!」

 

それから2人はすぐに、必殺技の練習に取りかかった

 

 

千歌「あ!」

 

曜「うわ!」

 

しかし、2人で打とうとすると、どうしてもタイミングが合わない

 

 

ダイヤ「これで…10回目ですわね」

 

果南「必殺技の型は決まったけど、なかなか上手く合わないね…」

 

曜「私が悪いの、同じところで遅れちゃうから」

 

千歌「ああ、違うよ〜私が曜ちゃんの歩幅に合わせられなくて」

 

果南「まあ、体で覚えるしかないよ。もう少し、頑張ってみよ?」

 

 

 

 

 

 

その後、夕方まで練習したが一回も成功しなかった

 

 

鞠莉「曜…ホンネは?」

 

曜「う、は、話してないです…」

 

鞠莉「もう!そんなの必殺技できなくて当たり前デース!!」

 

曜「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、曜は本音って何を話せばいいのだろかと、悩んでいた。自分の頭の中で色々と「シチュエーション」を妄想する。が、逆に訳が分からなくなってきていた

 

曜「ん?電話?」

 

電話の相手は梨子だった。少し驚くも電話に出る

 

 

曜「もしもし?」

 

梨子「あ、曜ちゃん、今大丈夫?」

 

曜「うん。大丈夫だよ。何かあったの?」

 

梨子「曜ちゃんが千歌ちゃんと必殺技を作ってるって、聞いたから。頑張ってね、2人ならすぐにできるよ」

 

曜「そんなこと…ないよ。梨子ちゃんと千歌ちゃんの方が、すぐに完成する。千歌ちゃんの相手には梨子ちゃんの方があってるよ…」

 

曜「だって、千歌ちゃん、梨子ちゃんといると嬉しそうだし、梨子ちゃんのために頑張るって言ってたし…」

 

自分で言ってて泣けてくる。しかし、事実だ。受け止めるしかないと曜は涙を拭う

 

 

梨子「そんなこと、思ってたんだ……千歌ちゃん、前話してたんだよ?」

 

曜「え?」

 

 

 

 

梨子「ーーー。ーー、ーー」

 

曜「!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「じゃあ、頑張ってね」

 

曜「あ、待って!梨子ちゃん」

 

梨子「?どうしたの?」

 

曜「あのさ…凄く聞き辛いんだけどさ…私が千歌ちゃんを壁ドンして迫るシチュと、千歌ちゃんに私の事好きじゃないよね?って聞くの…変、だよね?」

 

梨子「!!!!!!!!???」

 

曜「こんなこと考える私って、やっぱり、変だよね?」

 

梨子「いや、いやいやいやいやいや、絶対に変じゃない!!」

 

曜「!!梨子ちゃん!?」

 

梨子「最高よ!(私は変じゃないと思うけど?)」

 

曜「梨子ちゃん!?」

 

梨子「(しまった…本音と建前が逆に…しかし、曜ちゃんがそんなことを、曜ちゃんが千歌ちゃんに迫るだなんて、創造だけの話かと思ったけど、どうやら希望はあるようね!!)」脳内早口

 

曜「梨子ちゃん…どうしちゃったんだろう…急に喋らなくなっちゃった「オーイ、ヨウチャーン」

 

曜「ん?」

 

曜は梨子との電話を切り、声の主を探す

 

 

千歌「曜ちゃーん!」

 

曜「千歌ちゃん!」

 

千歌「練習しようと思って!」

 

曜「練習?」

 

千歌「うん!作りたいの、曜ちゃんと心をひとつにした技!曜ちゃんと2人で!」

 

曜「!!」

 

曜はすぐに部屋から飛び出し、千歌の元へ急ぐ。玄関を出ると、千歌に泣いていたことがバレぬよう、後ろ向きで手探りで千歌を探す

 

 

曜「!!汗、びっしょり…どうしたの?」

 

千歌「バス終わってたし、美渡姉達も忙しいっていうし、曜ちゃん、何か、ずっときにしてたぽかったから、いてもたってもいられなくなって…へへ、」

 

曜「…私、バカだ…バカ曜だ」

 

曜はさっきまでの自分の考えが、恥ずかしく思えてくる。それぐらい、自分はバカだっのだと

 

 

曜はたまらず千歌に抱きつく

 

 

千歌「あ!汚れるよー!」

 

曜「いいの!!」

 

千歌「恥ずかしいよー!」

 

曜「いいの!!」

 

 

曜は思う、絶対に完成する。千歌ちゃんとなら…と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

準決勝当日

 




おまけ

梨子「ね、ねぇ曜ちゃん?」

曜「ん?どうしたの?」

梨子「この前の話の続きなんだけど…」

曜「この前?」

梨子「ほら、電話の壁ドンで迫るとかの」

曜「!!?そ、それがどうしたの?」

梨子「もし良かったら、これ、読んでみる?」

『 ようちかてんこ盛り! 私の気持ち届いて!壁ドンヨーソロー』

曜「 」

梨子「興味あるんでしょ?」

曜「い、いやいやいやいやないよ!?興味ないよ?こんな壁ドンとかそう言うのは私には…(千歌ちゃん…)」

梨子「そう、残念だわ」バッグに戻す

曜「………………………待って」

梨子「………….どうしたの?」

曜「………….やっぱり、読みます」

梨子「完全勝利(無理しなくていいのよ?)」

――――――――――――――――――――――――


反省してます。ごめんなさい



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第1章 18話 「準決勝 千歳橋高校」

ここでひとつ、報告です。3話「桜の少女との出会い」で書いた
お話を少し変更しました。
変更点は FFI→全国高校女子サッカー大会です。シナリオ上、変更せざるを得ない感じになってしまったので、誠に勝手ながらよろしくお願いします




準決勝当日

 

浦の星女学院サッカー部は、千歳橋高校へと来ていた。天気は快晴、絶好のサッカー日和

 

花丸「ついたずらーー!」

 

善子「どうしていつも私達が相手の高校に行くはめになるのよ!」

 

果南「まあ、浦の星は駅から遠いからね。しょうがないよ」

 

千歌「あ!相手のキャプテンさんじゃない?」

 

いるか「ようこそ、浦の星さん!私がキャプテンの須田いるかです。今日はよろしくお願いします」

 

「「「「よろしくお願いします!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合がまもなく始まる。浦の星は円陣をくみ、千歌が声掛けをする

 

千歌「さあ、行こう!全国に、私達の第1歩に向けて、今、全力で輝こう!!」

 

「浦の星ーー!!!!」

 

「「「サーンシャイーン!!!!」」」

 

 

 

 

センターフォワード 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 黒澤ルビィ

左サイドバック 国木田花丸

右サイドバック むつ

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

3-2-3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いるか「浦の星は青藍高校を破っている。守りを固めて、隙を見つけていこう!」

 

「「「「はい!!!」」」」

 

 

 

 

 

センタートップ 3年 須田 いるか

右サイドハーフ 3年 佐伯 麗音

左サイドハーフ 1年 下園 咲

ボランチ 2年 菊池 朱美

右サイドバック 3年 森崎 ななか

左サイドバック 1年 多々良 るう

センターバック 2年 西村 文絵

センターバック 1年 白木 凪

キーパー 2年 逢沢 遊字

 

4-1-3

 

 

 

 

 

 

キックオフの笛がなった

 

 

ピーーーー!!

 

 

最初は浦の星ボール、ダイヤはセンターバックの鞠莉にパスを出し、最終ラインを上げるよう指示する

 

 

ダイヤ「鞠莉さん、ラインを上げてください!」

 

鞠莉「OK! マル、むつ、上がるわよ!」

 

浦の星が全体で攻める、対する千歳橋は守りを固めていた

 

 

朱美「最初はディフェンス!しっかり付いて!」

 

善子「くっ、しつこいわね」

 

ダイヤ「(パスコースも塞がれていますわね…)」

 

ダイヤ「鞠莉さん!」

 

鞠莉「はーい?」

 

ダイヤ「そこからで構いませんわ!シュートを!」

 

鞠莉「シャイニー!! 任せなさい!」

 

鞠莉「ーディザスターブレイクー!!」

 

コートの真ん中から打ったシュートが、千歳橋ゴールに迫る

 

 

遊字「!!打ってきた、シュートブロック!」

 

文絵、凪「はい!」

 

センターバックの2人はシュートに飛び込み、ブロック技を発動させる

 

 

「ー ザ・タワー ー!」「ー ザ・ウォール ー」

 

ドガン!!!!

 

ボールは2つの壁にぶつかるも突破。しかし、威力が大きく落ちてしまった

 

 

遊字「これなら、止められます!」

 

遊字「ー ブラックホール ー!」

 

鞠莉のシュートは千歳橋の防御により、止められてしまった

 

 

曜「止められた!?」

 

ダイヤ「これは…なかなか手強いですね」

 

遊字「カウンターよ!」

 

千歳橋のカウンター、浦の星はラインを上げていたため反応が遅れる

 

 

麗音「ー ダッシュアクセル ー!」

 

むつ「!速い」

 

麗音が最終ラインを越え、果南との1体1となる

 

 

果南「…来てみなよ」

 

麗音「くらいなさい!ー ローズスプラッシュー!!」

 

薔薇のシュートが放たれた瞬間、果南が飛び出す

 

 

果南「沈める」バッ!!!!

 

果南「ートライデントー!!」ドガァン!!

 

花丸「相変わらず、豪快な技ずら…」

 

果南「今度は決めてね!ダイヤ」ブン!

 

ダイヤ「分かっていますわ!」

 

ダイヤ「!!」

 

ダイヤがパスをもらった頃には、千歳橋は浦の星の選手にピッタリとマークしていた

 

 

ダイヤ「善子さん、行けますか?」

 

善子「無理!こいつら、しつこい!」

 

シュート技を持っている選手達が徹底的に、封じられている。よく調べてあるし、反応も早い

 

 

ダイヤ「(私が行くしか!)」バッ!

 

ダイヤは敵陣の突破を図るべく、ドリブルを仕掛ける

 

 

朱美、ななか、るう「掛かった!」

 

が、マークについていた選手達が今度はダイヤを囲い始めた

 

 

ダイヤ「な!!?」

 

「「「ーかごめかごめー!」」」

 

3人のスライディング、ダイヤは避けきれずボールを取られる

 

 

ななか「咲!」

 

千歳橋は前線へボールを出す。鞠莉が花丸のカバーに入るが、千歳橋の選手の方が多い

 

 

咲「いるかさん!」

 

鞠莉と花丸の隙間を通るようなパスを出す。が、鞠莉は何とかボールに触り、コートの外へ

 

 

花丸「ありがとうずら、鞠莉ちゃん」

 

鞠莉「大丈夫よ花丸。ボールを見て、足だけで取りに行かないようにね」

 

千歳橋のスローイン。が、取ったのは善子だった

 

 

ダイヤ「!!チャンスですわ!畳み掛けますよ!」

 

善子「曜さん!」

 

善子の逆サイドへのロングパス。曜は上手くトラップし、中へ切り込む

 

 

ルビィ「曜さん!シュートを」

 

曜「ー パルクールアタックー!!」

 

曜のシュート、威力は十分ある。が、千歳橋のブロックに捕まる

 

 

「ーザ・タワー ー!」「ー ザ・ウォールー!」

 

「ーブラックホールー!」

 

曜「うわ!とめられちゃった!」

 

 

 

ピピーッ!!!!

 

ここで前半終了。浦の星はシュートを打ててはいるものの、得点ができず、苦しい状態だった

 

 

鞠莉「相手の守り…厄介ね」

 

花丸「攻めようとすると、今度はカウンターを狙われるから、無理には上がれないずら…」

 

ダイヤ「……」

 

ルビィ「お姉ちゃん?」

 

ダイヤは何かを考えるように黙っていたが、急に歩き出し、ある選手の元へ向かっていた

 

 

ダイヤ「この試合、貴方がキーマンですわ。千歌さん」

 

千歌「え、千歌?」

 

果南「どういうこと?ダイヤ」

 

ダイヤ「千歳橋はこちらのシュート技を使える選手を事前に調べ、徹底的に守備をしていますわ」

 

ダイヤ「しかし、それはデータがあったからこそ。こちらにはデータに無いシュートがありますわ」

 

曜「!まさか、」

 

ダイヤ「曜さんとの、2人シュート技ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いるか「みんな、いいよ!しっかり守備出来てるよ!」

 

文絵「後半もマークを続けて、シュートを増やして行きましょ」

 

朱美「でも、海皇、手強いですね」

 

咲「いくら、海皇でも人間です!いつか限界がきます。それまでシュートを打ちましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーー!

 

 

後半戦開始、右サイドから千歳橋が攻めてくる

 

 

よしみ「(やっぱり、私が技を使えないのがバレてる。調べられてるんだ)」

 

麗音「このまま抜き去るわ!」

 

よしみ「ならば!」バッ!

 

麗音「!! いるか」

 

よしみはドリブルする麗音に突っ込んだ、それに驚いた麗音が無理なパスを出す

 

 

鞠莉「カットデース!」

 

麗音「あ!」

 

ルビィ「鞠莉ちゃん!」

 

鞠莉「ルビィ!」

 

鞠莉がルビィにロングパスを出す。それに気づいた朱美がパスカットに入る

 

 

朱美「ボールはいただき、!?」

 

ルビィは前を、朱美を見ていなかった。が、まるで後に目があるかのように、上手くかわす

 

 

善子「こっちよ!ルビィ」

 

善子が一瞬のすきをつき、スペースに飛び出す。ルビィはすぐにパスを出すが、

 

 

ななか「無駄よ」

 

「「「ーかごめかごめー」」」

 

千歳橋のディフェンスにより、ボールを取られる

 

 

善子「あぁ、もう!」

 

ダイヤ「善子さん戻って!カウンターが来ますわよ!」

 

善子「分かってるわよ!あと、ヨハネ!」

 

 

 

 

 

試合はどちらも譲らず、攻めては防がれの繰り返しだった。時間は刻々と過ぎていき、残り5分となった。ボールは千歳橋のスローインである

 

果南「ダイヤ!時間ない!決めるなら今しかないよ!」

 

ダイヤ「そうですわね。千歌さん!曜さん!」

 

千歌「は、はい!」

 

曜「ヨーソロー!」

 

ダイヤ「頼みましたわよ」

 

千歌、曜「はい!」

 

るうがスローインで凪にボールを出す。凪は前線へボールを繋げる

 

 

鞠莉「曜達が心を通わせるチャンス…無駄にはしまセン!」

 

鞠莉「ー グラウンドスイーパー ー!」ドガァン

 

咲「キャ!!?」

 

いるか「く、爆裂のシャイニーガール!!」

 

鞠莉「千歌!ラストチャンスよ!」

 

千歌にボールが渡る。ドリブルで上がっていくも、千歳橋の守備は逃さない

 

 

ななか「頂きますよ!」

 

「「「ーかごめかごめー!」」」

 

3人のスライディングが千歌に迫る。その時、千歌は考えていた

 

 

千歌「(ここで取られたら、曜ちゃんとの練習、みんなの頑張り、梨子ちゃんの想いが全て、無駄になる!そんなの絶対に嫌だ!!)」

 

千歌「うおぉぉぉ!!」

 

千歳橋3人「!!!!」

 

千歌「ーZスラッシュG2 ー!!」

 

ダイヤ「技が!」

 

ルビィ「進化した!」

 

果南「うん。やるね」

 

千歌は3人のブロックを抜け、センターバックの前までドリブルで攻める

 

 

千歌「曜ちゃん!」

 

曜「千歌ちゃん!」

 

千歌、曜「行こう!想いをひとつに!!」

 

2人は息を合わせて飛び跳ねる。まるで兎のように。そのまま高くジャンプし、千歌が曜の手を握り、餅つきのように曜の足をボールに当てる

 

「「「いっけーーーー!!!!」」」

 

千歌、曜「ーエクストリームラビットー!」

 

ボールは分裂し、一つ一つが生きているかのようにゴールに襲いかかる

 

 

文絵「!!!!」

 

凪「嘘!!?」

 

いるか「2人シュート技!?そんなの今まで打っていなかった!」

 

遊字「止めるしかありません!ーブラックホールー!」

 

分裂したボールは遊字の手の中に吸い込まれていく。だが千歌達は諦めていない

 

 

千歌、曜「行けーー!!!!」

 

遊字「!!?(パワーが増した?)」

 

千歌「これが!!」

 

曜「私達の!!」

 

千歌、曜「友情ヨーソローだぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

ピーーーーー!!!

 

2人のシュートはブラックホールを破り、ゴールネットを揺らす、その瞬間、笛がなり、試合が終了した

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「……はは、本当に大成功だ…」

 

千歌「曜ぢゃん!!」

 

千歌は泣きながら曜に抱きついてきた

 

曜「千歌ちゃん、これじゃあこの前の逆だよー」

 

千歌「いいの!!」

 

曜「みんな見てるよー?」

 

千歌「いいの!!」

 

曜「千歌ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

曜「ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浦の星女学院 静岡予選 決勝進出

 




エクストリームラビット
松風天馬とフェイ・ルーンの2人シュート技です。息を合わせたシュート。まさに友情ヨーソローですね


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第1章 19話 「遠征特訓!」

学級閉鎖も終わり、忙しい日々が戻ってきました。更新ペースはこの通り、ガクンと落ちますが、なるべく早く沢山投稿できるように頑張りますのでよろしくお願いします。

今回はいろいろ詰め込んだので少し長いです



浦の星女学院サッカー部は準決勝を突破し、決勝へと駒を進めた。決勝の相手は毎年、優勝を勝ち取っている「帝国女学院」である。浦の星は打倒帝女のため、部室でミーティングをしていた

 

 

 

ダイヤ「帝女の攻守の切り替えは恐ろしい程に速いですわ。そのスピードについていけないかぎり、わたくし達に勝利はありません」

 

鞠莉「個人プレーもなかなかね。特に要注意人物は、帝女の司令塔"鬼道有美"、エースストライカー"佐久間弥勒"、キング・オブ・ゴールキーパー"源田誠士郎"」

 

果南「誠士郎は強いよ。今の浦の星のシュート技が通用するかどうか…」

 

千歌「うう、」

 

曜「今の状況だと、かなり厳しいんじゃない?」

 

花丸「ここまで来て、負けるのはいやずら…」

 

善子「そうよ!なんか手はないの!?」

 

全員で何か手はないのか考える。しかし、練習時間が刻々と削られていき、ダイヤがイライラし始める

 

 

ダイヤ「考えていても仕方ないですわ!今から特訓して、さらに強い技を覚えればいい話ですわ!」

 

果南「そんなこと急に言われて、すぐに出来るほど簡単じゃないことは、ダイヤが1番分かってるでしょ?」

 

ダイヤ「う…」

 

鞠莉「ホント、ダイヤはお・ば・さ・ん♪」

 

ダイヤ「一文字足りないですわぁ!!」

 

千歌「いる」

 

ダイヤ、鞠莉「…へ?」

 

途中からずっと静かであった千歌が口を開く。その一言で他のメンバーが全員、千歌に注目する

 

 

果南「千歌、いるって?」

 

千歌「いるかもしれない。私達に、決勝までに必殺技とかを教えてくれる人が」

 

ダイヤ「そんな人が、いるのですか?」

 

千歌「ちょっと、電話で聞いてみますね」

 

そう言うと千歌は席を外し、電話をするために部室の外へ出ていった。すると、入れ替わるように、ルビィが走りながらパソコンを持って部室に入ってきた

 

 

ルビィ「ぴぎぃ!これを見てください!」

 

パソコンには、浦の星女学院の試合の映像が流れていた

 

 

曜「これって、大会の公式サイトの?」

 

ルビィ「はい!全国各地の試合を撮影して、大会公式サイトで見ることの出来るページです!浦の星の準決勝の試合の再生回数が!」

 

再生回数の欄を見てみると、浦の星の準決勝の再生回数が凄い勢いで伸びていた

 

 

花丸「マル達の準決勝が!?」

 

曜「凄い再生数!!」

 

ルビィ「それだけじゃなくて、コメントもたくさんついていて!」

 

『 みんな上手!』『 帝女に勝てるかも!?』

『これは、ダークホース 』『必殺技、かっこいい! 』

 

 

曜「良かった。みんな見てくれて」

 

善子「当たり前でしょ?準決勝突破したんだから」

 

ダイヤ「このまま、大会で有名になって浦女を存続させるのですわ!」

 

ルビィ「がんばルビィ!」

 

果南「これは、学校説明会も期待できそうだね」

 

花丸「説明会?」

 

鞠莉「うん。Septemberに行うことにしたの」

 

鞠莉はそう言うと、スマホを開き説明会参加希望生徒数を調べ始めた

 

ダイヤ「きっと、今回の大会で学校の名前もかなり知れ渡ったはず」

 

鞠莉「そうね。試合の閲覧数からすると……………え?」

 

「「「??」」」

 

鞠莉「ゼロ」

 

一同はありえない、という表情で鞠莉を見る。鞠莉も流石に増えているだろうと思っていたので、固まってしまっている

 

ルビィ「え?そんな…」

 

ダイヤ「嘘でしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、練習を終えた千歌、曜は果南の家のダイビングショップのテラスで、かき氷を食べながら、部室で話した事の続きを話していた

 

千歌「また0かぁ…」

 

曜「入学希望となると、別なのかなぁ…」

 

千歌「だって、あれだけ再生されているんだよ?これで生徒が全然増えないんじゃ、やっぱり優勝しかないのかなぁ…」

 

果南「仕方ないんじゃないかな?ここでサッカーをやるっていうことは、それほど大変ってこと」

 

千歌「それは、そうだけど」

 

果南「今日は予約0。東京みたいな都会のように、ほっといても人が集まるところじゃないんだよ?」

 

果南はそう言うと、空気ボンベを片付け、ウェットスーツを脱ぎ、ベンチに腰掛けた

 

千歌「でも…それを言い訳にしたらダメな気がする」

 

果南「千歌…」

 

千歌は立ち上がり、いっきにかき氷を食べ始めた

 

千歌「それがわかった上で、私達はサッカーをやってるんだもん!シャクシャク」

 

曜「千歌ちゃん、1度に全部食べると…」

 

曜が言い終わる前に、かき氷を食べ終え、千歌は船着場へと走っていく

 

千歌「1人でもう少し考えてみるー!」

 

果南「そう言えば千歌! 教えてくれるかもって人はどうなったのー?」

 

果南はテラスから身を乗り出し、千歌を立ち止まらせた

 

 

千歌「まだ連絡待ちだよー……!!?ズキン!」

 

曜「!?千歌ちゃん?」

 

果南「何?どうしたの!?」

 

千歌は、あの頭痛がここ最近、増えてきていることを感じ取っていた。だからこそ、みんなに迷惑をかける訳にはいかないと、すぐに立ち上がる

 

 

千歌「いや〜、かき氷の頭痛が今来たよ〜。キーンってする!」ズキズキ

 

果南「いや、千歌?顔が真っ青だよ?」

 

曜「そうだよ、果南ちゃんの家で休ませてもらったら?」

 

千歌「大丈夫!船がでる時間だから、私行くね!」

 

千歌はこの場から逃げ去るように、船着場へと走っていった

 

 

果南「………曜、どう思う?」

 

曜「何か隠してるよね。千歌ちゃん」

 

果南「私も同じ意見。今度、相談してみよ?」

 

曜「うん。そうしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…痛い…なんなの?この感じ」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、千歌は自分の部屋で希望者を増やす方法を考えていた。あの後、頭痛はすぐに治まり、何事もなかったかのように家へと帰った

 

千歌「優勝か…帝女に勝つためには、やっぱり頼まないとだよね…」

 

ヴー!ヴー!ヴー!

スマホがなる。こんな時間に連絡してくるのはサッカー部のメンバーか、それかまたは

 

 

千歌「!!!!もしもし?」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「東京?」

 

サッカー部メンバーはサッカー部のグループ通話で、千歌の話を聞いていた

 

 

千歌「うん!やっと連絡がついたんだ! 明日と明後日は予定が無いから、練習を見てくれるって。急だけどみんな大丈夫?」

 

果南「いいんじゃない?」

 

善子「要するに、再びあの魔都に降り立つという事ね」

 

梨子「私は、帰るのを2日伸ばせばいいけど…」

 

千歌「けど?」

 

梨子「ううん。何でもない、詳しいことが決まったら教えてね!」

 

梨子はすぐに通話を切る。一刻も早く、この宝の山を片付けなければならない

 

 

梨子「……曜ちゃんの分も選んでたら、買いすぎたわ…(悔いなし)」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

翌日 ー 東京 ー

 

 

千歌達は予定通り、東京駅に到着。待ち合わせ場所の神田明神へ行くため、山手線のホームへと向かっていた

 

 

ダイヤ「皆さん、心を落ち着かせて。負けてはなりませんわ!東京にのまれぬように!!」

 

千歌「ダイヤさん?」

 

ルビィ曰く、昔東京で迷子になったらしく、それからというもの東京を敵対視しているとか。そんな中、一人の少女がコインロッカーと格闘していた

 

 

梨子「うぐぐぐぐぐ…入らない…」グググ

 

千歌「梨子ちゃん?」

 

梨子「うわあああ!?千歌ちゃん!?…みんなも」

 

千歌「何入れてるのー?」

 

曜ならともかく、千歌や他のメンバーにこれを見られるわけにはいかない。梨子は咄嗟に誤魔化す

 

 

梨子「えぇっと…お土産とか、お土産とか…お土産と「うわ!お土産!」

 

千歌が急に近づいてきたため、お宝が床に散乱する。梨子は反射的に腹から声がでる

 

 

千歌「何?」

 

梨子「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!??」

 

梨子は咄嗟に、千歌の両目を塞ぐ、千歌は暴れるが梨子も負けていない。そんな2人を他のメンバーは見守ることしか出来なかった、

 

 

 

 

 

 

梨子「さあ!行きましょうか!」

 

曜「最初はどこに行くの?」

 

梨子は何もなかったかのように振る舞う。みんな気にしたら負けだと思ったため、どこに行くか話し始めた

 

 

鞠莉「タワー?ツリー?ヒルズ?」

 

花丸「まるは美味しい食べ物のお店へ!」

 

ダイヤ「遊びに来たんじゃありませんわ」

 

千歌「そうだよ!最初は集合場所の神社。ある人に私達の事を相談したら、2日間指導してくれるって!」

 

花丸「ある人?誰ずら?」

 

千歌「それは会ってからのお楽しみ♪ただ、教えてもらうには、うってつけの凄い人だよ!」

 

ルビィ「じゃあ…」

 

 

ダイヤ「凄い人…」

 

 

ルビィ、ダイヤ「まさかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

サッカー部一行は、神田明神へと到着した。みんなが誰だろう?と考えている中、黒澤姉妹は「まさか…まさか」とブツブツ呟いていた

 

 

鞠莉「まだ言ってるの?色紙まで持って…」

 

ダイヤ「鞠莉さん!凄い人ですよ?」

 

ルビィ「絶対にあの人だよ!」

 

花丸「誰か分かるずら?ルビィちゃん」

 

ルビィ「それはね…」

 

ダイヤ「あの人ですわ、」

 

善子「貴方達、分かってないでしょ?」

 

千歌「みんなー!神社の前にいるって!」

 

 

全員で神社へと向かう。すると、背中を向けて神社の前に立っている人を見つけた

 

 

梨子「あの人かな?」

 

善子「え?…でも、なんか…」

 

曜「あれ?あの人って…」

 

果南「?なんであの人が?」

 

千歌「おーーーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「お母さーーん!!」

 

 

 

 

 

 

 

「千歌!来たわね♪」

 

 

 

 

「「「「え…えーーー!!!!???」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「嘘…あの人が、千歌ちゃんの」

 

善子「お母さん???」

 

なんか、凄く、違和感があるような。なんと言えばいいのか、それにしても小さい??

 

 

「どうも!私が高海千歌の母、高海美奈です!」

 

曜「美奈さん、お久しぶりです」

 

果南「最初、誰かと思いましたよ」

 

美奈「曜ちゃん、果南ちゃん久しぶりね! 」

 

曜と果南は千歌と幼馴染のため、千歌の母親とも仲が良い。全員で話したいことは沢山あるが、今回はそれが目的ではなく…

 

 

善子「じゃあ、凄い人って千歌のお母さん?」

 

千歌「うん。そうだよ! 高海美奈。名前、聞いたことない?」

 

 

善子「うーん…なんかどこかで…」

 

梨子「聞いたことがあるような…」

 

善子、梨子、花丸はこの人が何者なのか正直、よく分からなかった。他のメンバーは知っているようで、主に幼馴染。そして…

 

 

ダイヤ「善子さん!本当にご存知ないのですか!?」

 

ルビィ「嘘…本物…」

 

善子「え、貴方達も知ってるの?」

 

ダイヤ「知っているも何も」

 

ルビィ「この人は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ、ルビィ「FFI前回大会、元日本代表監督だよ(ですわよ)!!?」

 

 

善子「え…?」

 

梨子「FFIって」

 

千歌「フットボールフロンティアインターナショナル。サッカーの世界大会だよ!」

 

花丸「その大会の…」

 

善子「日本代表監督…」

 

美奈「昔のことよ♪」

 

 

梨子、善子、花丸「ええぇぇぇ!!!!??」

ダイヤ、ルビィ「ぴぎゃああぁああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

その後、千歌達は練習場所のグラウンドへ行くために電車に乗っていた。ダイヤとルビィは美奈からサインを貰い、ご満悦な様子である

 

美奈「ホントにいいの?私なんかのサインで」

 

ダイヤ「美菜さんのサインだからこそですわ!」

 

ルビィ「家宝にしますぅ…!」

 

曜「あはは…」

 

美奈「でも、最初に聞いた時はびっくりしたわ。千歌がサッカーを始めて、しかも曜ちゃん、果南ちゃんと一緒だなんて」

 

果南「確かに、千歌がサッカーをやるなんてね」

 

曜「私は見る方がいいって、千歌ちゃん、いつも言ってたもんね」

 

千歌「うん。でも今は、サッカーをみんなとやりたいんだ!そして、もっと上手くなって、勝ちたい」

 

果南「千歌…」

 

ダイヤ「その為の特訓ですわ!皆さん、美菜さんからたくさんご指導を頂くのですよ!」

 

千歌「ん?」

 

ダイヤ「千歌さん、どうかしたのですか?」

 

千歌「今…皆さんと美奈さんをかけたんじゃ…」

 

ダイヤ「〜〜〜!!違いますわぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

電車を降り、駅から出た先には、大きな川とその川辺に作られたグラウンドがあった

 

 

ルビィ「うわー!広い!」

 

花丸「ここなら思いっきりサッカーできそうずら!」

 

ベンチに荷物を置き、グラウンドに足を踏み入れる。芝生でサッカーをするのは準決勝の試合ぶりである

 

 

ダイヤ「それでは美奈さん。2日間、よろしくお願いします!」

 

「「「よろしくお願いします!!」」」

 

 

こうして高海美奈による浦の星サッカー部強化練習がスタートした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって ーUTX高校ー

 

 

ツバサ「はあ!」バシュ!

 

ツバサのシュートがゴールに吸い込まれる。今の彼女は、静かな炎で燃えているようだった

 

 

あんじゅ「流星ブレード…」

 

英玲奈「相変わらず、強力だな」

 

ツバサ「本大会も近いし、これぐらいはやっておかないと」

 

ツバサは水を飲みながら言う。来月には、全国高校女子サッカー大会の本大会。それもあってか、グラウンドは少しピリピリしている

 

 

あんじゅ「そうね。新しいシュート技も完成したみたいだし、本大会が楽しみだわ」

 

英玲奈「ツバサの2つ目のシュート技か…」

 

ツバサ「うーん、2つ目というか、今回が初かな?オリジナル技は」

 

その言葉で、あんじゅと英玲奈はツバサを見る。初のオリジナル?じゃあ、流星ブレードは? とても気になるため聞き出す

 

 

あんじゅ「え?じゃあ、流星ブレードは?誰かの技だったの?」

 

ツバサ「正確には、ある人のシュート技を真似たの。それが、流星ブレード」

 

英玲奈「真似た…とは、一体、誰のを」

 

ツバサ「ひとつ年下だけど、才能の塊よ。今は何処にいるのか、分からないけど。あのシュートは凄い、まるで爆発。魅了されたわ」

 

ツバサ「その人の名は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー帝国女学院ー

 

ザワザワ、ザワザワ

 

弥勒「静かに!今日から新しいメンバーを紹介する」

 

有美「じゃあ自己紹介、よろしくね」

 

 

「はい!イタリアから日本に戻ってきました!」

 

 

「渡辺月です!ポジションはFW。みんな、よーろしくー♪♪」

 

 

 




高海美奈(みな)
千歌ちゃんのお母さんです。名前は本当に適当で、波を逆に読んで「みな」という…



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第1章 20話 「続・遠征特訓!」

決勝前のお話です。もう少しで決勝なのでもうしばらくお待ちください!

Twitterで必殺技や(募集キャラのみになりますが)感想の募集をしています!どなたでもお気軽にお願いします!
@phHNKL3T9BI9RdA です


千歌「え?」

 

曜「ボールを地面につけちゃダメ??」

 

美奈「そう!今からみんなに攻撃の練習をしてもらうけど、その時、ボールは地面につけちゃダメよ?」

 

ダイヤ「何故、地面に付けてはいけないのですか?」

 

美奈「ふふっ、なんでだと思う?」

 

美奈は微笑みながら聞き直す。まるで、自分達で考えるのよ?と言っているようだ

 

 

美奈「さあ!時間が勿体無いわ。ひとまずやってみましょ!」

 

攻撃練習、ハーフコートで4人が攻めて、別の4人が守る。ボールはディフェンスに取られたら終了。キーパーありなので、事実4対5である

 

 

梨子「善子ちゃん、こっち!」

 

善子「ヨハネよ!」ポン!

 

梨子がスペースに走り込み、善子にパスを求めるが地面を転がせないため、浮いたボールになってしまい、梨子は立ち止まってしまった

 

 

梨子「(スペースに走り込んでも意味が無い…どうすれば、)」

 

ダイヤ「善子さん!遠くに飛ばしすぎですわ!」

 

善子「難しいのよ!ループパスは、あとヨハネ!!」

 

花丸「うう、ボールキープ出来ないずら…」

 

梨子「キープする時は、ずっとリフティングになるわね…」

 

なかなかパスも繋がらず、苦戦する攻撃チーム。その後、何回か攻撃をしたため攻守を入れかえる

 

 

千歌「うーん…ずっとリフティングは余り、良くないよね?」

 

ルビィ「ボールキープは控えた方がいいかも知れません…」

 

鞠莉「そうなると…ダイレクトパス?」

 

千歌「ずっとダイレクトでパス回し…ちょっと厳しいんじゃ…」

 

曜「……!!ちょっと待って!」

 

鞠莉「?どうしたの?曜」

 

曜「私…分かったかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「え!?」

 

善子「速い!」

 

美奈「もう気づくなんて…流石、曜ちゃんね♪」

 

曜達は空中を使いながら、ダイレクトでパスを回していた。ボールはあらゆる方向へと飛んでいき、気づいた時にはゴールの目の前まで来ていた

 

 

鞠莉「シャイニー!」バシュ!

 

果南「おりゃ!」バシッ!

 

鞠莉のシュートは果南に止められるも、素晴らしい連携でシュートまで持って行くことができた。まるで…

 

 

梨子「必殺タクティクス」

 

美奈「正解!梨子ちゃん!そう。これはね、必殺タクティクス、3D・リフレクターの練習だったの」

 

花丸「すりーでぃー……」

 

善子「3Dよ、立体的って言ったら分かるかしら?」

 

曜「要するに、フィールドを空間的に利用するって事ですか?」

 

美奈「そう。フィールドはもっと広く有効的に使うべきよ。パスを空中、縦・横・斜めに出すことにより、パスコースは大きく広がるわ」

 

ダイヤ「なるほど…合点がいきました」

 

 

 

 

 

その後、ボールを空中でダイレクトで繋ぐ必殺タクティクス、「3D・リフレクター」の練習を続けた。一区切りついたところで、個々の必殺技、能力の確認のためにミニゲームをして1日目の練習を終了した

 

 

 

 

 

千歌「ふぅ…疲れたぁ」

 

いつき「みんな、お疲れ様!」

 

むつ「ドリンクはここにあるよ!荷物はまとめてあるから、準備出来次第、宿泊場所に向かおう」

 

ダイヤ「ありがとうございます。頼りになりますわね」

 

 

よしみ、いつき、むつはサッカー部のマネージャーとして、今回の遠征特訓に参加。個々のプレイデータ収集、道具準備などサポートでサッカー部を支えてくれている

 

 

よしみ「宿泊する旅館についたら、今日取ったデータを元にミーティング。今日の練習の課題点も題材にして明日の練習に備えよう!」

 

善子「なんか…凄いわね」

 

花丸「本格的ずら…」

 

 

 

 

 

 

一同は準備を終え、旅館に向けて歩き出す。そんな中、梨子は美奈に呼ばれていた

 

 

梨子「美奈さん?どうしたんですか?」

 

美奈「実はね、梨子ちゃんにもう1つ、必殺技を教えておこうと思ってね♪」

 

梨子「!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽は沈み、空は暗くなり星が光っている。夕食を済ませた一行は、旅館でミーティングをしていた

 

 

むつ「ー。これが今日の練習の映像だよ。この調子で行けば、決勝には完成しそうだね」

 

果南「おー…」

 

ダイヤ「撮影までしていたのですね」

 

よしみ「もちろんです!貴重な練習データですもの」

 

むつ「そして、次はミニゲームの映像」ポチ

 

いつきがTVに動画をながす。ダイヤの"ファイアトルネード"、鞠莉の"ディザスターブレイク"が果南に、ことごとく止められていた

 

 

いつき「昨日、部室で話していたシュート技の威力がやっぱり、課題になるかな…」

 

曜「普通に強いんだけどね、全国と戦うとなると…」

 

果南「技の進化と、新技かな?」

 

ダイヤ「そう簡単に言われましても…」

 

鞠莉「あれ?ダイヤ今日の練習中、新技がどうとか言ってなかった?」

 

ダイヤ「ギクッ」

 

花丸「口でギクッって言う人、初めてみたずら」

 

千歌「え?ダイヤさん、新技できたんですか?」

 

ダイヤ「…はい。明日、お見せしますね」

 

 

ダイヤのファイアトルネードも、強力なシュートだったので期待が高まる。しかし、何故黙っていたのか、気になるところではあるが

 

 

いつき「じゃあ、動画の続きながしますね」

 

 

 

 

 

 

決勝戦まで あと2日

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、遠征特訓 2日目

 

 

ダイヤ「はああ!!」

 

果南「うわっ!重!?」

 

ダイヤのシュートがゴールに決まる。ダイヤは宣言通り、メンバーに新技を披露していた

 

 

梨子「あれが、新シュート技…」

 

ルビィ「凄い!お姉ちゃん!」

 

 

ダイヤは「当たり前ですわ!」と言いながら、ボールと一緒に飛ばされた果南に手を貸し、起き上がらせる

 

 

果南「それで?技の名前はなんて言うの?」

 

ダイヤ「"ダイヤモンドストリーム"ですわ」

 

善子「かっこいい…」

 

花丸「善子ちゃん、新技全部かっこいいって言ってない?」

 

善子「だってホントのことだもん!あと、ヨハネ!!」

 

 

ダイヤの新技を見たところで、今日は様々な連携や新技の考案など、昨日出た課題を消化するべく、練習を始める

 

 

ルビィ「あれ?美菜さんは?」

 

梨子「旅館を出るまでは一緒にいたんだけど…」

 

千歌「あ、お母さんは午前は用事があるから、午後から参加するって」

 

果南「じゃあ、午前はドリブルとディフェンス練習をするメンバーは鞠莉。シュート練習するなら私が相手するよ♪」

 

鞠莉「昨日のミーティングで、ドリブルとディフェンス練習をするって決めたメンバーはこっちよ!」

 

 

 

 

こうしてメンバーは二手に分かれ、個人プレーを伸ばすために練習に励んだ

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

善子「ー デスドロップ ー!!」

 

果南「ー トライデント改 ー」ドガアン!!

 

善子のシュートは果南にねじ伏せられてしまう

 

善子「うう、果南さん強すぎよ…」

 

曜「なんか、技進化してない?」

 

果南「さあ!バンバン打ってきな!」

 

 

 

 

 

 

千歌「梨子ちゃん!」

 

鞠莉「あまいわよ!千歌!」バシッ

 

ドリブル・ディフェンス チームは鳥かごをしていた。ディフェンスの鞠莉は、千歌のパスを上手くカットする

 

千歌「あちゃー、パス弱かったかな?」

 

鞠莉「はい♪千歌っち交代」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

お昼になり、お腹がすいてくる時間帯になった。メンバーは区切りをつけ、お昼休憩に入り、マネージャー達が作ってくれたおにぎりを食べている

 

 

花丸「何個でもいけるずら!!」バクバクバク

 

ダイヤ「花丸さん!? 午後も練習があるのですよ!」

 

果南「ワカメおにぎり美味しいね♪」

 

千歌「みかんおにぎりはないの??」

 

梨子「あるわけないでしょ…」

 

今日も予報では30°を超え、日差しが容赦なくグラウンドに降り注ぐ。一同は日陰で昼食をとっていた

 

 

花丸「しかし…暑すぎずら…」

 

ルビィ「今日も真夏日だって…」

 

むつ「はい!水分補給はしっかりね」

 

ルビィ、花丸「ありがとうございます!」

 

善子「うう…」

 

ダイヤ「…黒い服はやめた方がいいとあれほど…」

 

善子は黒いローブを懲りずに、また羽織っていた。相変わらず、汗だくである

 

 

善子「フッ、黒は堕天使のアイデンティティ。黒がなくては、生きていけない…」

 

ダイヤ「死にそうですが…」

 

 

千歌「よーし!おにぎりも食べ終わったし、そろそろ練習、再開しますか!」

 

果南「待って!その前に…みんな100円出して♪」

 

浦の星サッカー部恒例、じゃんけん大会の開催である。負けた人は…熱地獄の中、全員分のアイスを買ってくるという

 

 

善子「やってきたのですね、本日のアルティメットラグナロク、クックック…未来が時が…見える!!!!」

 

なお、善子は10連敗である

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ

 

規則的な機械音が鳴り響く。都内でも有数の避暑地、コンビニのレジには11連敗の堕天使が立っていた

 

 

善子「なんでいつも負けるのかしら…」

 

店員「445円が1点」ピッ

 

善子「誰よ!!高いアイス頼んだの!」

 

店員「お客様、お買い上げ金額が1000円を超えたため、クジをお願いします!」

 

善子「フッ、狙うのはA賞のみ…」

 

善子が引いたのは、堕天の…

 

店員「D賞です」

 

善子「ガクッ、」

 

善子ががっかりしている間に、店員はお店の奥からD賞の賞品を持ってくる

 

店員「こちらが賞品です!」

 

善子「何…これ?秘伝書……?」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

善子は来た道を急ぐ。買ったアイスが溶ける前にグラウンドへ戻らなくてはならない

 

 

善子「はぁ、はぁ、はぁ、さっきの秘伝書…興味ある…から…ゼェ…あとで、読んでみましょ…ゼェゼェ…ん??」

 

善子は遠くに見覚えのある人がいるように見えた

 

 

善子「あれ?あの人って…あ、ヤバ!アイス溶ける!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様!みんな、決勝どうだった?」

 

「うーん…やっぱり物足りなかったね」

 

「UTXはシードだから、県予選は出てないしね」

 

「もう少ししたら戦えるわ。ひとまず今は、日陰行かない?」

 

「そうよ?みんな大事な試合はまだ続くんだから、体調管理はしっかりね?」

 

「了解です!監督!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「アイス溶ける〜!!」

 

 

 




自分の昼飯はいつもワカメおにぎりです



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第1章 21話 「決勝前!」

さあ、1章も終盤です。遅くなってしまい申し訳ございません。
ちなみに5th先行、落ちました。萎えますね…




 

 

アイスを食べ終わり、午後の練習を始めようとした時に、美菜がやってきた。電車の時間もあるため、練習は終盤に差し掛かっていた

 

 

美奈「みんなごめんね?遅くなっちゃった」

 

千歌「大丈夫だよ。用事はすんだの?」

 

美奈「おかげさまでね♪」

 

美奈はそう言うと、千歌に大きな袋を見せる。中に何が入っているのか、千歌には人目でわかった

 

 

千歌「あ!それ、ほむまんでしょ!」

 

美奈「千歌は知ってたのね。これは私からのお土産!人数分あるから帰る時に持って行ってね」

 

ダイヤ「わざわざ人数分、ありがとうございます」

 

千歌「ダイヤさん!ほむまん、すっごく美味しいんですよ!」

 

千歌は興奮気味にダイヤに迫る。千歌がお土産でほむまんを買った時は、家にいる家族達にも大好評であった。他のメンバーもそんなに美味しいのかと、気になっていた

 

 

果南「千歌、お土産は後でね?今は練習。時間無くなるよ?」

 

千歌「あ、そうだった…じゃあお母さん、よろしくね!」

 

美奈「任せてちょうだい♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、必殺タクティクスや必殺技、戦術などを一通り練習し、気づけば帰りの電車の時間になっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「美奈さん2日間、本当にありがとうございました!」

 

「「「「ありがとうございました!!」」」」

 

全員、帰る準備を終え、美菜にお礼を言う。明後日は決勝、美奈が全員に激励の言葉をかける

 

 

美奈「ついに明後日は決勝ね! 相手は帝国女学院、とても厳しい戦いになるわ。でも、貴方達がひとつになって戦えば、勝機もある!自信を持って、頑張ってね!」

 

 

 

 

 

 

美奈と別れ、サッカー部一行は沼津駅へと向かう電車に乗る。明日は学校で練習予定とマネージャーから連絡を受けた後、みんなそのまま電車の中で寝てしまっていた

 

 

千歌「(誰か起きてないとだよね)」

 

千歌「…」

 

千歌「(今日もみんなの足を引っ張るところあったなぁ…)」

 

千歌「(私はリーダーだもん…私がみんなを引っ張っていかないと……私が…やらないと……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 東京 ー

 

 

美奈「あの子達の成長スピードは早い…正直、ここまでやれるとは思わなかったわ…」

 

美奈「あとは…」

 

美奈「あっちに指導者がいれば、もっと伸びる…」

 

美奈「惜しいわねー…」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、決勝前日 浦の星サッカー部は学校で決勝前最後の練習をしていた。全員、集中した状態を維持できている。このまま行けばもしかしたら……

 

ダイヤ「勝てるとか思っていません??」

 

 

 

善子「…なんで、私に?」

 

ダイヤ「善子さんがそんな顔をしていたからです」

 

善子「ヨハネよ!!」

 

ダイヤ「みなさんも、わたくし達が強くなったからといって帝女に勝てるとは限りません」

 

曜「相手は毎年、県予選優勝していますしね…」

 

ダイヤ「そのためにも、緊張感は必ず持っておくように!いいですね?」

 

確かにダイヤの言う通りである。少しみんな、浮かれていたかもしれない

 

 

果南「まぁ、緊張し過ぎて本番で全力が出なくなるんじゃ、元もこうもないけどね」

 

鞠莉「美菜さんが言ってたように、自信を持ってプレーすればいいのよ。まったく…ダイヤは堅物なんだから♪」

 

ダイヤ「鞠莉さん?」カチン

 

鞠莉「あ、やばっ…」

 

 

 

 

梨子「またやってる…」

 

花丸「底なしの体力ずら…」

 

浦の星サッカー部恒例その2 ダイヤと鞠莉の追いかけっこ。これが始まるとだいたい他のメンバーは休憩に入る

 

 

 

 

千歌「暑い…」

 

善子「霧とかが出る機械とか買えないの?」

 

梨子「統合の話が出ている学校なのに、買えるわけないでしょ?」

 

千歌「そう言えば、学校説明会の参加者って今どうなってるの?」

 

鞠莉「あ、私調べてみるわ!」ダダダダダ

 

ダイヤ「鞠莉さん!お待ちなさい!!」ダダダダダイヤ

 

果南「休憩しないと、あとから来るよー?」

 

鞠莉はダイヤから逃げながら器用にスマホを操作する。千歌達は鞠莉が調べ終わるのを待つ

 

 

鞠莉「今のところ…」ダダダダダダダダ

 

千歌「今のところ…」

 

鞠莉「今のところ…」ダダダダダダダダ

 

ダイヤ「鞠莉さん!いい加減にぃ…」ダダダダダダダダイヤ

 

千歌「今のところ…」ゴクリ

 

鞠莉「ゼローー!!」ダダダダダダダ

 

 

まさか、未だに0とは…千歌達が落胆するのも無理はない。そんなに魅力がないのか…この学校には

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「鞠莉さん…お待ちなさいって……ゼェ…ゼェ……ゼェゼェ…」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ミーティングをして解散となり、千歌は家に帰宅。部屋で明日の準備をしていた

 

 

 

千歌「明日で決まる…全国への切符。廃校を阻止するのも、あの輝けるグラウンドに立てるのも」

 

千歌「明日は…私が点を決めて…必ず」

 

その時、扉をノックする音がする。入ってきたのは志満姉だった

 

 

志満「千歌ちゃん。お母さんから電話があって、明日は応援に来れないかもって…」

 

千歌「ううん、大丈夫。本戦では来てもらうから」

 

志満「勝つ気満々ね」

 

千歌「それぐらいの気持ちがないと、リーダーは務まらないよ」

 

志満「…そうね」

 

千歌「?どうしたの?」

 

志満「千歌ちゃん、今度はやめない?」

 

何を今更、どうせお母さんが仕組んだのだろう。答えはひとつに決まっている

 

 

千歌「うん。やめない」

 

 

決意を新たに、千歌はいつもよりも早くねむりにつくのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決勝当日

 

 

県大会の決勝はスタジアムで行われる。毎年たくさんの観客、高校、サッカー関係者が会場に訪れる

 

 

千歌「え?テレビに出る??」

 

果南「静岡放送だけどね」

 

善子「嘘…でしょ…」

 

花丸「未来ずらー…」

 

決勝は県の放送局を通じて、県内に流される。浦の星にとってはこれ以上の宣伝は無い

 

 

梨子「でも、浦の星を広めるのにうってつけよね?」

 

鞠莉「そうよ梨子!帝女に勝利し、一気に全国デビューデース!!」

 

ダイヤ「気が早いですわよ…」

 

そうこうしてるうちにグラウンド入場時間が迫る。メンバー全員で円陣を組み、気持ちをひとつにする

 

 

千歌「みんな、思い出して。今までやってきたことを」

 

善子「色々あったわね」

 

ルビィ「うん!毎日楽しかった!」

 

花丸「でもやっぱり緊張するずら…」

 

梨子「大丈夫よ。花丸ちゃん、私達ならできるわ」

 

曜「ここはまだゴールじゃないしね!」

 

ダイヤ「そうですわ!通過点に過ぎません!」

 

果南「場の空気に圧倒されないようにね」

 

鞠莉「いつもの私達でシャイニーに行きましょ!!」

 

千歌「さあ行こう!私達の全力をぶつけに!!」

 

 

 

「浦の星ーーー!!!!!!」

 

「「「「サーンシャイーン!!!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

みんなの気持ちがひとつになる。今、全国への切符を手にする挑戦が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の試合、ずっと楽しみにしてたんだ♪浦の星さん」

 

 

 

 

 

通路の奥から集団が近づいてくる。静岡の王者、帝国女学院だ

 

 

 

 

曜「…………え?……」

 

果南「!?」

 

ダイヤ「…な!?」

 

鞠莉「なんで…あなたがここに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「月ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

月「曜ちゃん久しぶり!少し前に帰国したんだー♪」

 

千歌「え?この人、誰?」

 

曜「…私の従姉妹だよ…イタリアに留学してた」

 

梨子「従姉妹!?」

 

千歌「え!?曜ちゃんの従姉妹!?」

 

月「渡辺 月です!みんな、よーろしくー!」

 

ルビィ「……お姉ちゃん?どうしたの?」

 

ルビィは3年生達の顔がみるみる青くなっていくことに気づいた

 

 

 

ダイヤ「何故…こんな時に…しかも、帝女に…?」

 

月「こんな時だからだよ、ダイヤさん♪」

 

花丸「3年生の人達は月さんを知っているずらか?」

 

果南「知っているも何も……」

 

鞠莉「月はね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「かつて、静岡1のエースストライカーになると言われた選手なのよ?」

 

 

 

「「「……え?」」」

 

 

 

 

月「ふふっ、楽しみだなあ!君たちと試合するの。最高の試合にしようね」

 

 

 




次はいよいよ決勝!進化した浦の星VS王者帝国女学院です!




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第1章 22話 「決勝 帝国女学院 その1」

帝国女学院戦です。第1章も残り2、3話になりました。

感想などお気軽にお願いします!Twitterでも感想募集中です。最近、こんな感じで大丈夫なのだろうかと心配になる部分が増えてきたので、何卒




 

歓声が巻き起こる。帝国女学院の応援団と浦の星の応援団、試合は間もなくキックオフである

 

 

 

果南「まさか…月が来るとはね」

 

鞠莉「想定外ね…かなりヤバいわ…」

 

千歌「そんなに凄いんですか?月ちゃんは」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――――

 

 

 

 

 

 

ー 4年前 ー

 

中2ダイヤ「今日は第二中との練習試合ですわね」

 

中2果南「第二中とはあまりやらないよね?試合。どんな選手がいるんですか?先輩」

 

先輩「おいおい…第二中と言ったら…」

 

ダイヤ、果南、鞠莉「??」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピーーーー!! ゴール!!

 

 

 

 

ダイヤ「な!?」

 

果南「……こんな…」

 

先輩「やっぱり…圧倒的だな…"月詠のストライカー"渡辺 月…」

 

 

 

月「うーん…決して弱くないんだけど…なんか足りないんだよなぁ?」

 

 

鞠莉「くっ…」

 

果南「まだまだぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

試合終了 第一中 対 第二中

1 対 8

 

 

 

 

 

ダイヤ「はぁ、はぁ、はぁ、まさか…1人の選手に8点も決められるなんて…」

 

鞠莉「圧倒的過ぎるわ…」

 

月「ダイヤさん、鞠莉さん、果南さんでしたっけ?」

 

果南「え?」

 

月「貴方達のプレー、良かったです。今度また機会があったら、戦いましょう♪♪」

 

 

 

 

 

 

その数日後、月はイタリアにサッカー留学したのである

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

千歌「……そんなことが…」

 

曜「月ちゃんがサッカーが上手いことは知ってたけど、そこまでとは…」

 

果南「正直、月のシュートを止められる自信は…」

 

3年生は月の登場により、戦意を失っていた。そんな3年生に痺れを切らしたメンバーが1名

 

 

善子「ちょっと!3年!何小さくなってんのよ!?」

 

花丸「善子ちゃん!?」

 

善子は3年生達の胸ぐらを掴む勢いで、想いをぶつける

 

 

善子「あんた達がそんな弱気になってどうすんのよ?さっきの威勢は?勝つためにここにいるのよ私達は!!いい加減にして!」

 

ダイヤ「!!善子さん…」

 

鞠莉「善子…」

 

果南「ありがとう、善子。気合い入れ直すわ」

 

善子「まったく…リトルデーモン達を従えるのも、骨が折れるわ」

 

ルビィ「善子ちゃん…凄いね!」

 

善子「……!!ヨハネ!ヨハネよ!!」

 

花丸「今気づいたずらか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼道「…浦の星とは2年前に戦った」

 

佐久間「2年前はそんなに強くなかったが…」

 

鬼道「今の浦の星は2年前以上の実力を持っていると想定される」

 

月「うーん、私も同感」

 

源田「月…」

 

月「油断は出来ないね。あくまでもここは決勝、相手も弱くない」

 

鬼道「私達は相手がどこであろうと手は抜かない。全力の試合をするまで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

センターフォワード 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 桜内梨子

左サイドバック 国木田花丸

右サイドバック 黒澤ルビィ

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

3-2-3

 

 

 

 

 

 

 

 

センターフォワード 渡辺月

センターフォワード 佐久間弥勒

トップ下 咲山

ウィングフォワード 恵那

ウィングフォワード 寺門

ボランチ 鬼道優美

センターバック 大野

センターバック 五条

キーパー 源田誠志郎

 

2-2-4

 

控え選手 大楠、辺見、成神、兵藤

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ、間もなく試合開始です。今年は王者 帝国女学院 対 復活のダークホース 浦の星女学院。実況はわたくしーーがお送りします!』

 

実況の解説が始まる。テレビの前ではたくさんの人が見守っている

 

 

浦の星教職員「頑張って…!」

 

 

 

スパイク屋さん「あの子達か!頑張れ!」

 

 

 

バス運転手「ん?この子達っていつも乗ってくる???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーー!!!!!!

 

試合開始 浦の星ボールで県予選決勝が始まった

 

 

ダイヤ「曜さん!」バシュ

 

帝女はサイドが薄い。その情報をあらかじめ入手していた浦の星は、サイドから崩しにかかる

 

 

曜「(油断はしないけど、ドリブルで!!)」

 

寺門「抜かせるか!」

 

曜「遅い!!」

 

曜「ー ライトニングアクセル ー!!」

 

電光石火のごとく、一瞬で相手を抜き去る。相手は全く反応が出来ていない

 

 

寺門「な!?」

 

鞠莉「みんな!曜のフォロー、クロスの合わせ、急いで!!」

 

 

曜がサイドから上がっているため、他のメンバーは曜のフォローやパスを受けるために走る。パスをもらったのはーー

 

 

善子「ナイスパス。ドンピシャね」

 

 

善子がシュートの構えに入る

 

 

善子「喰らいなさいー デスドロップG2 ー!!」バリバリバリ!

 

善子の進化したデスドロップが帝女ゴールに迫る。対してキーパー源田は

 

 

源田「なかなかの威力…だが」

 

源田が両手にオーラを込め、高く飛び跳ね、拳を地面に叩きつけた

 

 

源田「ー フルパワーシールド ー」ドン!

 

善子「な!?」

 

曜「弾かれた!?」

 

 

源田は無失点記録を何度もたたき出しており、「キング オブ ゴールキーパー」と言われている。帝女のディフェンス層が薄いのは、突破されても源田が止めてくれるからである

 

 

源田「今度はこちらの番だ」

 

 

ボールを拾った帝女は一気に前線へパスを回し、ボールは鬼道へ

 

 

鬼道「ディフェンスが厚いな」

 

梨子「私が行きます!」

 

梨子が一気に鬼道の前へ、そしてディフェンス技でボールをカットする

 

 

梨子「ー アインザッツ ー!」

 

鬼道「フッ」

 

梨子「!!!?」

 

梨子は確かにボールをカットしたはず、だがボールは消え、鬼道がそのまま突破していた

 

 

鬼道「ー イリュージョンボール ー」

 

鞠莉「くっ、どのボールが本物なの…」

 

鬼道の周りをたくさんのボールがただよっている。下手にカットしに行くと、梨子の時のように突破される恐れがある

 

 

鬼道「勘違いしていないか?」

 

鞠莉「え?」

 

鬼道「イリュージョンボールはなにも、ドリブル突破で使う技だけではないのだよ」

 

鞠莉「ドリブル以外…「鞠莉ぃ!!!!!前!!」

 

果南が叫ぶ、鞠莉がそれに反応し前を見るとーー

 

 

 

鞠莉「!!!?」

 

 

 

 

佐久間「ー 皇帝ペンギン2号 ー !!」

 

佐久間を含む3人がシュートを放っていた。イリュージョンボールは突破ではなく、佐久間のシュートの目隠しをしていたのである

 

 

鞠莉「しまった…」

 

花丸「おらが行くずら!! ー もちもちきな粉餅 ー!!」

 

 

花丸のシュートブロック、威力は落ちたものの、強烈な威力には変わりない

 

 

果南「2年前と同じシュート…」

 

 

果南はゴールから飛び出し思い出す。あの屈辱を味わった2年前を

 

 

果南「昔と同じだと思うなあ!!」

 

果南「ー 真トライデント ー!!」トガアン!

 

 

佐久間「止めた!?」

 

鬼道「なかなかやるじゃないか」

 

 

鞠莉「流石、果南ね」

 

果南「千歌!」

 

果南のロングキックから浦の星の攻撃、そして練習の成果を発揮する時が来た

 

 

千歌「みんな行くよ!必殺タクティクス!」

 

鬼道「タクティクスだと!?」

 

「ー 3D・リフレクター ー!!」

 

パスをダイレクトで回す。上、下、斜め、ボールの軌道はまさに3D。すぐにボールは最前線へ

 

 

曜「ダイヤさん、行くであります!!」

 

ダイヤ「いつでも!曜さん!」

 

曜「ー パルクールアタックV2 ー!!」

 

曜のシュートは上空へ、そこにはダイヤが回転しながら構えていた

 

 

ダイヤ「2年前の借りを返しますわ」

 

ダイヤ「ー ダイヤモンドストリーム ー!!」

 

 

源田「シュートチェイン!? だが、止めるまでだ」

 

源田「ー フルパワーシールド ー!」

 

 

源田のシールドがシュートの行く手を阻む。しかし、シュートの威力は落ちず

 

 

源田「くっ…この威力…まずい…」

 

 

ダイヤ、曜「行けぇぇぇぇ!!!!!」

 

千歌「曜ちゃん!!」

 

鞠莉「ダイヤ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

審判の笛が鳴り響く。スタジアム内は静寂という異様な空気になっていた。ゴールネットはボールで揺れ、源田も他の選手も何が起きたのか理解出来ていなかった

 

 

 

 

善子「…決まった?」

 

梨子「…先制…?」

 

 

曜「うおおおおぉ!!!!」

 

 

曜が吠える。それによって全員、今の状況を理解する

 

 

ダイヤ「曜さん!」

 

曜「ダイヤさん!」

 

2人のハイタッチ。浦の星は王者 帝国女学院に先制点を決めた

 

 

 

『なんと浦の星女学院、先制点! これは波乱の展開となったーー!!』

 

 

 

帝女応援団「な…そんなことが…」

 

 

志満「凄い!凄いよ!!!!」

 

美渡「おぉ落ち着けってててててて!?」

 

志満「美渡ちゃんの方が落ち着いて!」

 

 

記者「今年は分からんぞ。王者の椅子は」

 

 

むつ「曜ちゃん!!ダイヤさん!ナイスシュート!!」

 

 

 

 

 

 

源田「まさか…決められるとは…不覚」

 

鬼道「気にするな。あの威力、凄まじいものだ。すぐに取り返す」

 

 

 

 

 

試合再開、ボールは帝国女学院。そして選手はーー

 

 

 

月「やっぱり、思った通りだ! 君たちのプレーは凄いよ!」

 

ダイヤ「来ますわよ! "月詠のストライカー"が!!」

 

月「そんなに気を張らなくてもいいのに…まぁ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

月「無駄なだけだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言うと、月はすでにダイヤを抜きさっていた

 

 

ダイヤ「な!?」

 

千歌「ダイヤさん!」

 

千歌のフォロー。しかし月のドリブルは止まらない

 

 

 

梨子「ー アインザッツ ー」

ルビィ「ー イグナイトスティール ー」

 

梨子とルビィのブロック、それを察知した月は

 

 

月「ー ウルトラムーン ー」

 

 

華麗な回転技で2人をかわす

 

 

善子「4人抜かれた!?」

 

曜「戻らないと!」

 

 

月「無駄だよ、見せてあげる。僕のシュートを」

 

 

月は空中でボールを乱打。乱打乱打乱打乱打乱打乱打乱打乱打 ボールにエネルギーが溜まり、一気に爆発する

 

 

月「ー ザ・エクスプロージョン ー!!」トガアン!

 

 

鞠莉「!?あれは…」

 

千歌「流星ブレードみたい!?」

 

 

月のシュートはゴールへ、果南は飛び出し構えに入る

 

 

果南「うおおおおぉ!!!!!!」

 

果南「ー 真トライデント ー!」

 

 

果南の槍がボールに食らいつくが、ボールはそのままゴールへ

 

果南「うわ!!?」

 

 

ピーーーーーーーー!!

 

 

 

 

『決まったー!ここまで無失点だった松浦のゴールを破り、王者帝国女学院、渡辺月による 進撃の同点ゴールだ!』

 

 

 

ダイヤ「海皇の槍が…負けた」

 

曜「なんなの…月ちゃんのあのシュートの威力」

 

鞠莉「みんな気を引き締めて、このままじゃあの時と同じ…月の…」

 

 

 

 

 

 

無双が始まる

 

 




ライトニングアクセル
緑川リュウジのドリブル技です。まさに電光石火、ホントに速いです

ダイヤモンドストリーム
オリジナル技です。豪炎寺の爆熱スクリューの炎がダイヤモンドになった感じと思ってください

ザ・エクスプロージョン
ゴッドストライカー基山ヒロトのシュート技です。本作品では綺羅ツバサの流星ブレードのモデルになっています

月詠のストライカー
渡辺月の異名です。ゴッドストライカーの技×渡辺月=月の神。月の神は月詠といった感じです


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第1章 23話 「決勝 帝国女学院 その2」

果南ちゃんお誕生日おめでとう!!
遅れてしまうけれど、Birthday特別編でもやろうかなと。





 

 

試合再開、再び浦の星はサイドから攻撃を仕掛けるも…

 

 

曜「くっ…」

 

大野「何度も抜かせるとでも?」

 

 

センターバックがサイドのフォローに入ってきていた。これではサイド突破は難しい

 

 

大野「ー アースクェイク ー」ドン!

 

曜「うわ!!」

 

ダイヤ「曜さん!」

 

曜が大野のブロック技により、吹き飛ばされる。そのままボールはーー

 

鬼道「すぐに逆転するぞ」

 

鬼道の的確な指示によりパスが繋がる。司令塔の指揮が猛威をふるう

 

 

果南「鞠莉!鬼道を止めて!あれがくる!!」

 

鞠莉「分かってる!」

 

鬼道「遅い」

 

鬼道はボールを蹴り上げ、自身も空中へ

 

 

鬼道「デスゾーン開始」ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「く…クソっ…」

 

 

『決まったぁ!帝国女学院、前半終了まであと僅かというところで、逆転です!』

 

 

 

鞠莉「果南…ごめんなさい、もっと早く止めに入っていたら」

 

果南「謝るなら、すぐに取り返す。まだ、前半は終わってないよ」

 

千歌「そうだよ!まだ1点差!まだ行ける!!」

 

ダイヤ「まずは同点。気を引き締めますわよ!!」

 

浦の星はまだ諦めていない。前半も残りわずか、この攻撃で同点にと気合が入る

 

 

 

 

月「ふーん…」

 

 

 

 

 

 

 

月「1点差なら、まだ行けるんだね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

美渡「…ねぇ、これってさ…」

 

志満「うん、嫌な流れね…」

 

美渡「前半でこの差は…」

 

 

 

 

 

 

浦の星女学院 1 - 3 帝国女学院

 

 

 

 

 

 

ー ハーフタイム ー

 

 

ダイヤ「不味いですわね」

 

善子「最後の月の何だったの?あんなの防ぎっこないじゃない…」

 

曜「サイドも守備がかたくなってる…突破は難しいよ?」

 

前半終了間際、月はボールを奪った瞬間に浦の星陣内へ。そして1点目のように2点差となるシュートを放ったのである

 

 

果南「前半の終了に救われたね…後半は、どう月を抑えるか…」

 

鞠莉「月を抑えてもゴールまで行けないんじゃ、意味はないわ…」

 

花丸「でも、ドリブルが出来ないとなると」

 

結論から言うと浦の星は詰んでいた。作戦であるサイド突破は封じられ、必殺タクティクスは連発できるものでは無い…

 

 

善子「厳しすぎない?…」

 

千歌「まだだよ」

 

果南「千歌…」

 

千歌「まだ後半がある。終わるのも、諦めるのもまだ早いよ!ドリブル突破が出来なくても何か方法が…」

 

いつき「方法…確かにセンターバックがサイドのフォローに行くということは、中が少なくなるよね」

 

よしみ「でも、そこまでパスを繋げられるかどうか…」

 

千歌「うーん…」

 

梨子「あ、あの…」

 

曜「梨子ちゃん?」

 

梨子「まだ、未完成だから言ってなかったんだけど…ここでやらないとだよね」

 

ダイヤ「未完成、とは?」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

 

 

梨子「必殺技、ですか?」

 

美奈「そう!梨子ちゃん、ピアノやっているんだよね?」

 

梨子「はい、やってます。でも、それが必殺技とどう関係があるんですか?」

 

美奈「音楽をやっている人は、リズム・タイミングが大切でしょ?スポーツでもタイミングは必要よね」

 

美奈「梨子ちゃんはチームの中でも特に、タイミングやリズムに合わせる力が長けているわ。そこで!」

 

 

 

 

 

 

美奈「あなたがみんなのタイミングを指揮するの!!」

 

梨子「みんなを指揮…」

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――

 

 

 

 

後半戦開始。前半同様、サイドは塞がれ中盤には鬼道、月がパスコースを塞いでいる。そんな中で浦の星はーー

 

 

ダイヤ「それでは、話したとおりに梨子さん、お願いしますわ!」

 

梨子「はい!任せてください」

 

 

 

 

月「!浦の星、なにか仕掛けてくるよ」

 

佐久間「無駄だ。浦の星の攻撃方法は封じられている」

 

鬼道「あぁ、だが…妙だな…」

 

そう、妙である。前半までは前線に集中してボールをまわしていた浦の星だが、今は

 

 

梨子「私から繋ぐ…このボールを!」

 

ボランチの梨子がボールをキープしている

 

 

梨子「千歌ちゃん!」

 

梨子は千歌にパスを出す。しかし千歌には咲山がマークしている

 

 

鬼道「咲山カットだ!」

 

 

 

ボールはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「よし!」

 

繋がった

 

 

 

鬼道「!?咲山!高海千歌のマークはどうした!?」

 

咲山「すまん、鬼道。それが急に動きが変わって…」

 

鬼道「なんだと!?」

 

鬼道はフィールドを見渡す。すると、千歌だけではない。浦の星の選手全員の動きが変化している

 

 

鬼道「どういうことだ…全員、誰がどこに動くか分かっているようだ…」

 

月「鬼道さん、違うよ」

 

鬼道「どういうことだ?月」

 

月「みんな分かっているんじゃない」

 

 

月「指揮されているんだよ。指揮者に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「ー 神のタクト ー!!」

 

 

 

 

梨子はみんなを導く。次のパス、ドリブル、シュートを他のメンバーは梨子を信じ、前へ進む

 

 

 

梨子「千歌ちゃん!ダイヤさんへ」

 

千歌「ダイヤさん!!」

 

梨子「ダイヤさん!指揮にそってドリブルを!!」

 

ダイヤ「わかりました!」

 

 

源田「なんだ…浦の星の支配力が上がり始めている…」

 

 

 

梨子「ダイヤさん!善子ちゃんへ」

 

ダイヤ「頼みましたわよ!」

 

善子はダイヤからパスを受ける。その場所は

 

 

 

 

佐久間「何故…キーパーと1体1になるんだ…???」

 

鬼道「完全にやられたな」

 

 

 

梨子「善子ちゃん!シュートを!」

 

ダイヤ「デスドロップでは源田さんは破れませんよ!?」

 

善子「フッ…堕天使を舐めない方がいいわ…はあぁ!!!!!」

 

善子の背中から黒い炎の翼が生える。まるで本物の…

 

 

ルビィ「堕天使…」

 

善子「見せてあげる♪ヨハネの黒炎の翼と新たな力を!!」

 

 

 

善子「ー デビルバースト ー!!!」

 

 

 

善子の堕天使シュート。威力はデスドロップ以上、漆黒の炎がゴールへと迫る

 

 

 

源田「なんだ!?この威力は?……ぐあぁ!?」

 

 

源田にフルパワーシールドを発動させる暇を与えることなく、ボールはゴールへ

 

 

 

 

 

『後半開始早々、浦の星の津島が得点だー!! 浦の星、1点返しました!』

 

 

 

善子「クックック…キング オブ ゴールキーパーさん? 例え相手が王だとしてもね、真の姿を見せた堕天使には」

 

 

 

 

善子「適わないわよ♪」

 

 

 

 

浦の星女学院 2 - 3 帝国女学院

 

 




神のタクト
神童拓人の指揮する必殺タクティクスです。みんなを導くって難し過ぎません?凄いですよね。神童と梨子ちゃんは

デビルバースト
剣城京介のシュート技です。黒炎の翼って、まさに堕天使!善子(ヨハネ)のための技そのもの!!



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第1章 最終話 「決勝 帝国女学院 その3」

第1章終了です。ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
この小説を4文字で表現するとしたら、「無理矢理」が1番ぴったりですね…第2章からは、なるべく強引な設定は減らしていけるように頑張ります。





 

 

 

花丸「善子ちゃん、凄いずら!あんな強烈なシュートを」

 

ルビィ「いつの間に…」

 

善子「ヨハネよ!まぁ、後で話すけどね(まさか、秘伝書通りに練習したらできるようになったとは…)」

 

 

ダイヤ「梨子さん、まだ行けますか?」

 

梨子「はい、体力的にあと数回は」

 

果南「気合い入れて!!!! 来るよ!」

 

「「「「はい!!!!」」」」

 

 

 

 

後半は完全に浦の星の流れで始まった。点差は1、充分逆転できる状態である

 

 

 

 

 

佐久間「行くぞ!これ以上の得点は阻止、追加得点を狙うぞ!」

 

 

 

帝女の攻撃が始まる。司令塔、鬼道を中心に浦の星陣内へと進撃する。が、浦の星のディフェンスが行く手を阻む。刻々と時間が過ぎる中で、帝女が動く

 

 

鬼道「佐久間!」

 

鬼道は佐久間にディフェンスの隙間を縫うようなパスを出す。が、鞠莉がパスコースを読み、カットしに行く

 

 

 

 

鞠莉「このボールは頂きマー…「貰うね♪♪」

 

 

 

鞠莉「!!?」

 

 

最悪だ。このタイミングで彼女にボールが渡るのは、今彼女がボールを持つことはすなわち……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「月ぃぃぃぃ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

月「そんな怒鳴らなくてもゴールネット、揺らしてあげるよ♪」

 

 

 

 

 

 

 

月はワンツーなどでゴール前へと近づく。そして、海皇の槍を打ち砕いた流星を再び、放つ

 

 

月「ー ザ・エクスプロージョン ー!!」

 

 

 

死を告げる流星がゴールへと落ちてくる。果南は自分のすべての力を込めてぶつける

 

 

「ー 真トライデント ー !!」ドガアン!

 

 

 

ダイヤ「果南さん!!」

 

曜「お願い!止めて!!」

 

善子「いつもの馬鹿力見せなさいよ!!」

 

果南「うぐぐぐ…馬鹿力は…余計……」

 

千歌「果南ちゃん!!!!」

 

 

 

 

押し込まれる。そう諦めかけた時だった

 

 

 

 

 

 

梨子「諦めたら」ガシッ!

 

花丸「ダメずら!!」ガシッ!

 

ルビィ「うゆ!!」ガシッ!

 

 

 

果南「花丸、梨子、ルビィ…」

 

 

果南の後ろから3人が支える。果南は今にも吹き飛ばされそうな体を持ち直し、槍を再び流星へと押し込む

 

 

 

果南「うおおおおぉ!!!!」

 

 

「「「果南(ちゃん、さん)!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「……ははは…ほんとに凄いよ…君たちは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『と…止めたああぁぁぁ!! 浦の星、ゴールを死守! 渡辺月のシュートが初めて、抑えられたぁぁ!!!』

 

 

 

 

 

 

果南「カウンター!!!!」

 

 

果南の合図と同時に浦の星が総攻撃をかける。後半も残り時間が少なくなってきた

 

 

鬼道「戻れ!!同点になるのは避けるんだ!」

 

 

帝女も戻るが、浦の星の方が早い。それもそのはず、何故ならば

 

 

 

梨子「ー 神のタクト ー!!」

 

 

絶対の指揮者が最善の道を作るからである

 

 

 

 

 

梨子「ルビィちゃん! 前線のダイヤさんへ!!」

 

ルビィ「はい!お姉ちゃん」

 

ダイヤ「ナイスですわ!」

 

 

ダイヤが帝女の最終ラインへと迫る。これ以上は行かせないと、五条と大野が決死のディフェンスを仕掛ける

 

 

ダイヤ「勘違いしていませんこと?」

 

五条、大野「??」

 

ダイヤ「わたくしはシュートするなんて、一言も言っていませんわよ?」

 

 

梨子「ダイヤさん!!」

 

ダイヤ「頼みましたわよ!」

 

 

ダイヤは上空へとボールを蹴り上げる。ダイヤの後ろから走ってくる選手が3人

 

 

千歌「行くよ!今ここで、私達のすべてを…ぶつける!!」

 

梨子「練習は死ぬほどしたわ!」

 

曜「恐れるものなんてないよ!」

 

 

梨子と曜が上空のボールのところへ飛び、回転しながらボールを蹴り落とし、下にいる千歌に繋ぐ

 

梨子、曜「千歌ちゃん!!」

 

千歌「これが私達の想いの力だああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

千歌、梨子、曜「ー エボリューション ー!!!!」

 

 

 

 

 

 

源田「ー フルパワーシールド ー !!!!」

 

 

 

源田「(この威力…月のシュートと同等、いや、それ以上!?)」

 

 

千歌、梨子、曜「いっけーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シールドが破られる。源田が吹き飛ぶ。千歌は、パノラマ写真のようにゆっくりと、ボールがゴールに吸い込まれていくのを、その目で、しっかりと、見届けた

 

 

 

 

 

 

 

『なんと!!同点!! 浦の星、3点目だー! なんということでしょう! ここに来て試合は振り出しだぁ!!』

 

 

 

 

 

 

会場『うおおおおおおお!!!!!!』

 

 

 

 

美渡「ぢがぁあぁぁあぁ!!???」

 

志満「もしかして、もしかすると…」

 

 

 

 

 

 

千歌「行ける!」

 

善子「あと1点!!」

 

鞠莉「総攻撃よ!絶対に勝つわよ!」

 

 

 

会場もフィールドも完全に、浦の星の流れになっていた。帝女は完全に圧倒されていたが、1人

 

 

 

 

帝女の中で楽しそうに笑っている者がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

月「凄いよ…凄過ぎるよ…こんな試合、イタリアでもした事ない…」

 

 

月は思った。やはり自分の予想は正しかった。4年前のあの日、彼女たちなら、いつか自分の脅威になるのだと

 

 

 

月「こんな最高な試合をしてくれたんだもん。最高級の敬意を払わないとね」

 

 

 

ホイッスルと同時に帝女前線が月に続き、走り出す

 

 

月「これが最後の攻撃だ! 僕達の全力をぶつけるよ!!」

 

鞠莉「死ぬ気で守って!!決められたら負けよ!!」

 

 

 

両者の覇気がぶつかり合う。ボールは競り、競られ、最終的にキープしたのは

 

 

 

月「僕なんだよね〜♪」

 

 

梨子「!!ルビィちゃんと1体1!」

 

曜「ルビィちゃん!鞠莉ちゃん達が戻るまで何とか月ちゃんを止めて!!」

 

 

月がドリブルで攻め上がる。ルビィを突破すれば、果南との1体1が待っている

 

 

月「さあ! 決めさせてもらうよ!!」

 

 

千歌、梨子、曜、花丸「ルビィちゃん!!」

 

善子、果南、ダイヤ、鞠莉「ルビィ!!」

 

 

 

 

 

ルビィ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ルビィ…あんたとはさ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『つまんない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「え?」

 

 

果南「!?」

 

 

千歌「嘘!?」

 

 

梨子「…え…」

 

 

 

 

 

 

ボールは月の足元から消え、ボールは月の後ろ、ルビィの元にあった。一体何が起きたのか、ルビィ以外誰も理解できなかった

 

 

 

月「なんで…さっきまで前に…」

 

ルビィ「…もう、月さんの攻撃は終了です」

 

ルビィ「鞠莉さん!」

 

鞠莉「…!みんな行くわよ!」

 

 

ルビィは鞠莉にパスを出し、何も無かったかのように走り去っていった

 

 

月「ははは…攻撃終了か、こりゃあ参ったね…」

 

 

 

 

後半も残り僅か、このボールがラストプレイになるかならないかである。浦の星の猛攻、そして死守する帝国女学院。どちらが勝者となるのか、動いたのは

 

 

 

千歌「ー ZスラッシュG2 ー!!」

 

五条「!!!?」

 

 

ダイヤ「千歌さんが突破した!」

 

果南「千歌あぁ!最後だよ!ぶちかませえぇ!!!!!」

 

 

千歌「梨子ちゃん!曜ちゃん!」

 

梨子、曜「うん!!」

 

千歌「私達の想い、届けえぇぇ!!」ドガアン!

 

 

千歌、梨子、曜「ー エボリューションG2 ー!!」

 

 

 

源田「この短期間で進化!?」

 

 

 

 

この試合で1番の高威力シュート。そのシュートは熱く、綺麗に光っている。まさに

 

 

 

 

 

「輝き」

 

 

 

 

 

 

ゴールネットは揺れる。大歓声の中でその音は響く、スタジアム中に響き渡る

 

 

 

 

 

 

『試合、終了!! 4対3、静岡予選優勝は……』

 

 

 

 

 

 

 

『浦の星女学院だああ!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

スタジアムが歓声でゆれる。美渡は過呼吸寸前、浦の星応援団もみんな泣いている。そんな中、千歌は

 

 

千歌「……勝ったの…?」

 

まだ、実感が湧いていないという感じであった。そして千歌はスクリーンを見る。そこには『優勝 浦の星女学院』の表示がされていた

 

 

 

曜「ぢがぢゃん!!」ダキッ

 

曜が、みんなが、涙をこぼし千歌の元へ

 

 

千歌「やった…やったの?夢じゃないよね?」

 

梨子「夢じゃないよ!」

 

千歌「ほんとに…全国だよ…ホントだったら奇跡じゃん!!」

 

梨子「奇跡よ…奇跡を起こしたの私達!」

 

3年生たちにもこみ上げてくるものがある。2年前のリベンジを今、果たしたのだから

 

 

曜「さあ!みんな行くよー!勝利の、全速前進ーー」

 

 

「「「ヨーソロー!!!!」」」

 

 

 

善子「って……なんで月もやってるのよ!!」

 

月「駄目だった?」

 

善子「いや、駄目ってわけじゃ…」

 

月「まぁ、ひとまず。みんな、優勝おめでとう!!」

 

善子「無視するなー!!」

 

月「こんな最高で楽しい試合が出来たのは生まれて初めてだよ!」

 

ダイヤ「負けたのに、やけに清々しいのですね?」

 

月「そりゃあもう!全力でやりましたから!清々しいです。次は負けませんよ!」

 

ダイヤ「はい。またいつかですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして浦の星女学院は全国高校女子サッカー大会 静岡予選を初優勝。全国への切符を手にしたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ…なかなかやるじゃん。さて、ショップに戻るかなん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1章 完

 

 





近日、投稿予定! 新章 1話


エボリューション
天馬、神童、剣城の3人シュート技です。意味は「進化」 今の千歌ちゃん達にはぴったりの技ですね


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第2章 "全国大会編" 〜輝きを探しに〜
第2章 1話 「ネクストステップ」


第2章が始まりました! 今日から数日間は投稿量が増えます。

Twitterで質問箱を設置しました。お気軽に質問などよろしくお願いします! https://peing.net/ja/phhnkl3t9bi9rda?event=7


 

 

 

 

目が覚めると、スタジアムにいた

 

 

 

大歓声…はなく、それ以前に観客は一人もいなかった

 

 

 

「……ちゃん…」

 

 

 

誰かが後ろから私を呼ぶ。私は振り返り、声の主を確認する

 

 

 

曜「千歌…ちゃん…」

 

 

 

千歌「曜ちゃん?」

 

 

 

声の主は曜ちゃんだった。でも、様子が変…?なんか、とても悲しい顔を…している

 

 

 

曜「…けちゃ…よ…」

 

 

 

千歌「え?なんて言ったの?曜ちゃん」

 

 

 

曜「負けちゃったよ」

 

 

 

何に負けたのだろうか、千歌には分からなかった。しかし、曜の目に光はない。希望を、輝きを砕かれたようなーー

 

 

 

曜「ほら、見てよ」

 

 

 

曜が電光掲示板を指さす。そこには

 

 

 

浦の星女学院 2 - 3 帝国女学院

 

 

 

千歌「…え…」

 

 

 

この試合って…前に行われた決勝、だよね?なんで?勝ったはずじゃ…

 

 

 

曜「千歌ちゃんのせいだよ」

 

 

 

千歌「…曜ちゃん?」

 

 

 

曜「千歌ちゃんがミスするからだよ」

 

 

 

千歌「私の…ミス?」

 

 

 

曜「そう。千歌ちゃんの。失敗して、みんなの足を引っ張って、迷惑をかけて…」

 

 

 

千歌の…せい? あれ? 千歌のせいで負けちゃったの? なんか目の前が暗くなってきたなぁ…曜ちゃんが見えなくなっちゃった…曜ちゃん、悲しんでた…千歌の…せいで…

 

 

 

 

 

 

 

曜「 ま け ち ゃ っ た 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「どわあああああ!!!!???」

 

 

 

 

 

千歌「……あれ?」

 

 

 

 

 

そこは朝日さす、見慣れた、自分の部屋だった

 

 

 

 

ここ…私の部屋?あれは夢…だったの?はぁ…なんだ、夢かあ…なんて不吉な夢だったんだろう…それにしてもリアルな夢だったな…「ワン!!!!!!」

 

 

千歌「うわあ!?」

 

 

千歌はしいたけの声に驚き、ベットから転落。ものすごい音と共に、部屋が揺れる

 

 

千歌「いったたた……はぁ…」

 

よりにもよって決勝で負けた夢なんて…みんなに失礼だし、何より

 

 

千歌「見たくなかったなぁ…」

 

 

美渡「千歌ぁ!!」ガララ!

 

千歌「美渡ねえ!?」

 

美渡が勢いよく扉を開け、部屋に入ってくる。かなりご立腹のようだが…

 

 

美渡「あんた、まだ寝てたの!? 完全に遅刻だよ!!!!」

 

 

千歌「ほえ?遅刻?」

 

 

千歌は時計を見る。あれ…いつもよりも時計の短針が進んでいるような……

 

 

 

千歌「あぁぁあぁあ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

本日、浦の星女学院 始業式。浦の星の生徒は体育館で、理事長のありがた〜いお話を聞いていた

 

 

 

鞠莉「Hello!エビバディ!!本日より、セカンドシーズンのSTARTデース!!」

 

曜「セカンドシーズン??」

 

梨子「二学期ってことよ…」

 

曜「…それにしても、千歌ちゃん遅いね…」

 

梨子「これからは1人で起きるからって言ったそばから遅刻…」

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「うおおおおぉ!!!!曜ちゃんからライトニングアクセル教わっておけば良かった!!」ダダダダダダ

 

 

 

 

 

 

 

善子「それより…全国本戦はいつ行われるのよ?」

 

ルビィ「47都道府県の代表が揃わないとだから、もう少し時間がかかるみたい…」

 

花丸「しかも本戦の会場は東京だって聞いたずら」

 

ルビィ「施設で宿泊も可能らしいよ?」

 

善子「未来ずら〜笑」

 

花丸「それ、おらのセリフずら!!!」

 

 

 

 

鞠莉「シャラーーーーーップ!!!!」

 

鞠莉の叫び声により、館内が揺れ、キーーンと甲高い音が鳴り響く

 

 

鞠莉「今からその話をするのよ?善子♪」

 

善子「ヨハネ!!!!」

 

鞠莉「皆さん、ご存知だとは思いますが、浦の星サッカー部が静岡予選を勝ち抜き、全国本戦へと出場することになりました」

 

ダイヤ「これは皆さんの応援のおかげですわ」

 

鞠莉「そして、もうひとつ!」

 

梨子「入学希望者の増加ですね!」

 

鞠莉「YES!!確実に増えているわ!」

 

ダイヤ「それだけではありませんわよ」

 

鞠莉「本日、発表になりました! 全国高校女子サッカー大会 本戦の開催日が」

 

果南「開催日!」

 

ルビィ「ほんと!?」

 

ダイヤ「えぇ!」

 

鞠莉「本戦は3週間後、東京の"アキバスタジアム"!!」

 

 

その時、体育館に蜜柑色の髪の色をした少女が駆け込んできた

 

 

鞠莉「来たわね!千歌!」

 

ダイヤ「大遅刻ですわよ」

 

 

千歌「はぁ、はぁ、全国本戦!」

 

 

梨子「千歌ちゃん!」

 

曜「全国だよ!」

 

果南「今までの相手とは、格が違うよ♪」

 

花丸「まる達は諦めないずら!」

 

ルビィ「うゆ!」

 

善子「堕天使の名において!」

 

 

千歌「行こう!全国へ!頂点を目指して、学校を救って、そしたら!」

 

 

全生徒「「「そしたら!!!!」」」

 

 

浦の星の全生徒が声を合わせる。全員、千歌の言うことが分かるようだ

 

 

千歌「そうしたら、私たちだけの輝きが見つかると思う!!きっと!」

 

 

 

 

 

「「「輝ける!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2章 1話 「ネクストステップ」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽が内浦の海に沈んでいく、今は放課後。浦の星サッカー部は校庭で練習後の柔軟をしていた

 

 

 

 

果南「1、2、3、4…善子ちゃん、相変わらず体が硬いよね、ちゃんと風呂上がりに柔軟してる?」グググググ

 

善子「ううぅ、ヨハネぇ……」

 

果南「そんなんじゃダメダメ!」

 

果南は善子にさらに力を加えて背中を押す。善子の体は…全く曲がっていない…

 

 

善子「痛い痛い痛い!? 待ちなさい!この体は、あくまでかりそめ…堕天使の実態は…「ゴキッ!」

 

 

 

善子「あぁあああああああぁああああ……」

 

 

 

 

 

 

 

曜「そう言えば、47都道府県の代表が集まるっていうことは…かなりの人数だよね」

 

梨子「そうね。宿泊施設の近くにある練習場所、使えればいいんだけど…」

 

ダイヤ「ぶっぶーですわ!その前に一つ、やるべき事がありますわよ!」

 

曜、梨子「え?」

 

ダイヤ「忘れたんですの?入学希望者を増やすのでしょ?」

 

梨子「学校、説明会…」

 

曜「あ、そうだ」

 

鞠莉「オフコース!既に告知済みだよ」

 

ダイヤ「せっかくの機会です。わたくしたちの必殺技や練習を見てもらって、浦の星がサッカー強豪校だということをアピールするのですわ!」

 

千歌「それいい!それ、すっごくいいと思う!」

 

善子「フッ、我がリトルデーモンを増やすチャンス」

 

果南「はい、休まない♪」グググググ

 

善子「あだだだだだだ!?」

 

 

 

 

 

そんな中、鞠莉のスマホに着信がはいってきていた。この着信から浦の星の運命は大きく変わっていくのである

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

むつ「みんなお疲れ様! ビブスを洗濯カゴに出してから帰ってね!」

 

 

マネージャー達が片付けをしている間、千歌達はグラウンド整備をしていた。空を見上げると星が光っている。もうすでに、かなり日が短くなってきていた

 

 

 

花丸「だいぶ日が短くなってきたずらね」

 

ルビィ「もう秋になるもんね」

 

善子「完全に暗くなってきたら、ライトつけるんでしょ?」

 

果南「そうだね。そこら辺は、鞠莉に相談し……あれ?鞠莉は?」

 

 

 

 

そう言えば、鞠莉がいない。柔軟をしている時に着信があって、そのまま姿を見せていない

 

 

 

梨子「何か用事じゃない?理事長だし」

 

曜「そうだよね。先に終わりにしちゃう?」

 

千歌「うーん…あ!鞠莉ちゃん戻ってきた!」

 

 

鞠莉「Sorry! 仕事関連で電話長引いちゃった」

 

ダイヤ「では、全員揃いましたし、終わりにしますか」

 

果南「?」

 

 

全員が解散し、帰路につく。そんな中、果南は鞠莉の様子に違和感を持っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

翌日、放課後

 

 

 

千歌「よーし!今日も練習、頑張るぞー!!」

 

善子、ルビィ、花丸「おーーー!」

 

曜「千歌ちゃん元気だね」

 

千歌「そりゃあもう!元気全開だよ!」

 

梨子「授業中寝てたから、当然でしょうね…」

 

千歌「うぐぐ…それは、まぁ、置いといて…」

 

梨子「置いておきません!!」

 

千歌「う、、」

 

 

梨子が千歌にお説教。まるで千歌の保護者のようだ。その間に、3年生が遅れてグラウンドに入ってくる

 

 

曜「あ、果南ちゃん達、遅かったね?」

 

果南「うん。まぁ、ちょっとね?」

 

善子「もう体操、始めてるわよ」

 

千歌「…果南ちゃん?」

 

千歌は3年生たちの顔が暗いように見え、心配になる。なんだろう、嫌な予感がする

 

 

果南「千歌…みんな、聞いて」

 

 

 

 

 

それは学校説明会の中止という、最悪な内容であった

 

 







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第2章 2話 「監督を見つけろ!」

ここにきて監督登場です。一体誰なんでしょうか…





 

 

 

次の日、鞠莉は理事長として全校生徒に学校説明会中止の報告をした。立場上、報告しなければならないが、心の中は悔しさで、怒りで、溢れかえっていた

 

 

 

 

 

その後、鞠莉が「もう一度説得してみる!」と理事長室に篭ってしまったため、サッカー部は理事長室で結果を待っていた

 

 

 

 

 

千歌「…きっと、なんとかなるよね?」

 

ダイヤ「しかし…決定事項をそう簡単に覆せるとは…」

 

善子「生徒は集まってきているんでしょ?なら、なんで急に…」

 

ダイヤ「生徒が集まってきているのは、事実ですわ。しかしそれでも、その人数では廃校は覆せない。ということなのでしょう…」

 

ルビィ「そんな…あ、鞠莉ちゃん…」

 

 

鞠莉が理事長室から出てきた。全員、不安はあるものの、果南が代表し鞠莉に聞く。「どうだった?」と

 

 

 

鞠莉「残念だけど、どんなに反対意見があっても生徒がいないんじゃって…」

 

梨子「やっぱり、そうよね」

 

鞠莉「だから、言ったの。もし増えたら考えてくれるかって」

 

果南「え?」

 

鞠莉「何人いれば、何人集まれば学校を続けてくれるかって」

 

ダイヤ「それで…なんと?」

 

 

 

 

 

 

鞠莉「100人」

 

 

 

 

 

千歌「100…人」

 

鞠莉「そう。入学説明会後、入学希望者の人数を集計する。その時、100人を超えていれば来年も募集し、入学試験を行うって…」

 

ダイヤ「入学説明会後って…わたくし達が全国大会に出場している間に結果が出る。ということですか?」

 

梨子「いくら何でも早過ぎじゃない…」

 

 

 

 

千歌「でも、可能性は繋がった。終わりじゃない。可能か不可能かは、今はどうでもいい。だって、やるしかないんだから!」

 

果南「まぁ、確かにそれもそうか」

 

ダイヤ「全国大会第1試合が、浦の星の名を広める最後のチャンスですわね」

 

善子「フッ、短期決戦の名にふさわしい…」

 

 

千歌「ありがとう、鞠莉ちゃん!可能性がある限り、信じよう!学校説明会も第1試合も頑張って、最後まで全力で足掻こう!!」

 

 

千歌の声で再び希望の火が灯る。残り時間はあとわずか。全員、いてもたってもいられなくなっていた

 

 

果南「じゃあ、早速練習、行くよ!」

 

 

「「「「おーーーー!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「あ、そうだ。みんなにひとつ提案があるんだ」

 

 

 

ダイヤ「提案?」

 

果南「どんな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「監督!!!!??」」」

 

 

 

 

千歌「そう! 浦の星サッカー部の監督を新たに指導者として招待するの!」

 

梨子「千歌ちゃん、どうして急に監督なんて?」

 

千歌「3日前にお母さんに全国大会へ出場するにあたって、必要なこととか色々聞いたんだ。そしたら…」

 

 

美奈『全国大会までには監督、見つけておいた方がいいわよ?』

 

 

千歌「って」

 

ダイヤ「確かに、今まではわたくし達だけで練習メニューや事務などをやってきましたわよね?」

 

鞠莉「全国の強豪校は監督もスペシャリスト…」

 

曜「私たちだけでやっていくのは限界がある、ってことだよね…」

 

善子「でも…宛はあるの?」

 

 

千歌「ない!!」

 

 

「「「…………」」」

 

 

 

あ、この調子じゃ絶対に見つからない。そう思ったサッカー部員は、全員で監督探しを始めるのである

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

その日から浦の星サッカー部の監督探しは始まった。たくさんの人に聞き込みなどをしながら指導してくれる人を探した…

 

 

 

果南「私達が通ってたJrサッカーの監督は、頼んだけど無理だった…」

 

曜「私のスイミングスクールの人達にも聞いたけど、それっぽい人は知らないって」

 

千歌「ああー!!全然見つからないよー!!」

 

梨子「大きな声出しても、監督なんて見つからないわよ?」

 

千歌「ううぅ、だってぇ…」

 

 

ルビィ「…あ」

 

千歌「ルビィちゃん?」

 

千歌はルビィがなにかに気づいたように誰かを見つめていたので、千歌も同じ方を見てみる。するとそこには、ホテルのご令嬢の姿が…

 

 

千歌「…あ!鞠莉ちゃん!!」

 

花丸「鞠莉ちゃんがどうかしたずらか?」

 

千歌「小原家の力で有名な監督をスカウトすればいいんだよ!」

 

ダイヤ「その手がありましたわ!!」

 

梨子「それなら安心出来るわね」

 

千歌「という事で、鞠莉ちゃん♪♪」

 

鞠莉「Oh!流石千歌っち!その手がありました。すぐにプロの監督を手配して……と言えると思う?」

 

 

 

鞠莉は自分の父に自力で入学希望者を100人集めると言ったため、小原家の力を借りるのは到底不可能であった。また振り出しに戻ったため、既に監督探しは諦めムードになっていた

 

 

 

梨子「やっぱり、自分達だけでやっていくしか…」

 

千歌「ううぅ………ん?」

 

 

千歌のスマホが震える。誰かからの着信のようだ、相手は…

 

 

千歌「お母さん?」

 

ダイヤ「美奈さんですの?」

 

果南「急に電話って何かあったのかな?」

 

千歌「もしもし?どうしたの?」

 

 

千歌は通話中であるため、他のメンバーは練習の準備をするが、

 

 

 

 

 

千歌「えーーーーー!!!!?」

 

曜「!?」

 

梨子「千歌ちゃん!?」

 

 

千歌が急に叫んだため、全員が千歌の方を見る。かなり重要な話なのだろうか…

 

 

果南「ち、千歌?」

 

善子「何があったの?」

 

 

 

千歌「見つかった…」

 

 

ルビィ「見つかった?」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「監督が見つかったよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

「「「「えーーーー!!!!??」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌達はその後、とある場所に向かっていた。美奈から言われたヒント?を頼りに

 

 

 

 

梨子「なんで美奈さんは、その人の名前を言わなかったんだろう…」

 

千歌「多分、最後は自分達で見つけなさいってことだと思う…」

 

善子「でも、こんなヒントだけで、なんでみんな誰だか分かるのよ?」

 

花丸「まるには分からなかったずら」

 

梨子「私も…」

 

ダイヤ「あの方が絶対にそうだとは言い切れません…あくまでも、もしやの話です…」

 

果南「絶対に違う…絶対に違う…絶対に違う…」

 

鞠莉「Oh…果南…」

 

 

果南は小さな声で何度も何度も「違う…絶対に違う」と連呼している。果たしてその人物は何者なのか…

 

 

 

曜「着く前に、もう一度ヒント、読んでみよっか」

 

千歌「そうだね」

 

 

 

 

ー ヒント ー

 

1、海と言えばこの男!

 

2、大好物は牡蠣!

 

3、私の古い友達!

 

4、メンバーの過半数が知っている人じゃないかしら?

 

5、口癖は「海は俺の家」よ♪

 

 

 

 

 

 

 

千歌「……なんかね」

 

曜「うん。分かるんだよね」

 

梨子「誰だか予想がついているのは…千歌ちゃん、曜ちゃん、果南ちゃん、ダイヤさん、鞠莉ちゃん、ルビィちゃん?」

 

ダイヤ「そう見たいですわね」

 

鞠莉「まぁ、もしあの人だったら当然なんだけどね?」

 

そうこうしてるうちに目的地に到着。その場所は

 

 

梨子「え?」

 

善子「なんで?だってここは…」

 

 

果南「……ただいま…」

 

善子、花丸、梨子「ダイビングショップ!?」

 

 

 

梨子「え?何で…ここに、そのヒントが当てはまる人がいるの?」

 

千歌「多分…」

 

曜「今は…休憩中かな?」

 

 

するとショップの中から1人、男の人が出てきた。あれ?誰かに似てるような…

 

 

 

「お?果南、帰ってきたのか。後ろにいるのは…」

 

果南「部活の仲間。知っている人、いっぱいいるでしょ?」

 

「そうだな!千歌、曜、ダイヤ、鞠莉、ルビィ!久しぶりだな!」

 

ダイヤ「お久しぶりですわ」

 

どうやら6人とは知り合いのようだ…取り敢えず例のヒントの答え合わせをしてみる

 

 

曜「あの…少し質問いいですか?」

 

「?あぁ、大丈夫だよ?」

 

曜「好きな食べ物はなんですか?」

 

「牡蠣だな」

 

「「「………」」」

 

曜「じゃあ、高海美奈さんとは、昔からの友人ですか?」

 

「何故それを!?」

 

「「「………」」」

 

曜「では、最後の質問を…海とはなんですか?」

 

「俺の家だ!」

 

「「「………」」」

 

 

鞠莉「決定ね」

 

ダイヤ「やっぱり、この人でしたわね…」

 

果南「え?ほんとに?何かの間違いじゃなくて?」

 

話についていけてない梨子が聞く

 

 

梨子「あの〜…結局、この人は誰なんですか?」

 

 

 

ダイヤ「この人は…」

 

 

果南「……」

 

 

鞠莉「果南の……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉、ダイヤ「お父様よ(ですわ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子、花丸、善子「…え?」

 

 




まさかのオリキャラです。男性キャラ許してください



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第2章 3話 「監督を得るために」

果南パパの名前は美奈さんと同じく適当です。

果たして果南パパが出した条件とは……?





 

 

 

梨子「果南さんの…」

 

善子「お父様?」

 

北也「松浦北也(ほくや)だ。よろしくな」

 

 

松浦北也、淡島でダイビングショップを経営している果南の父親。髪の色、目は果南と同じだが、くせ毛の男らしい渋い顔つきである

 

 

 

梨子「そっか、果南さんと昔から遊んでた人は、果南さんのお父さんのことも知ってるよね」

 

ダイヤ「そういうことですわ」

 

 

千歌「曜ちゃん…いつ見ても果南ちゃんのお父さん、かっこいいよね」コソコソ

 

曜「…うん。でも、私のパパも負けてないよ!」コソコソ

 

鞠莉「ちょっとお二人さん? 話がずれてるわよ?」

 

千歌「あ、そうだった」

 

北也「ん?俺に何かようだったのか?」

 

千歌「はい。実は…」

 

 

 

 

千歌は北也に全国大会があること、美奈に北也のことを紹介されたこと、自分達のサッカーの監督になって欲しいことを伝えた

 

 

 

 

 

北也「なるほど…監督ね、美奈なら確かに俺を紹介するだろうな」

 

ダイヤ「と言いますと?」

 

北也「昔、あいつとはよくサッカーをしたよ…俺もあいつも、高校まではサッカー漬けの毎日だったしな」

 

果南「知らなかった…」

 

ルビィ「高校まで、という事はそれ以降は…」

 

北也「本格的にはやめたよ。でも暇がある時はたまにボールを触ってたな」

 

梨子「何故、サッカーをやめたんですか?」

 

北也「家の店を継ぐって話になってな。美奈からはサッカーを続けろって言われたんだが…俺は海も好きだったから、継ぐことにしたんだ」

 

千歌「そうだったん…ですか」

 

北也「悪いな!俺の昔話ばっかりして」

 

果南「ホントだよ…全く…」

 

果南は北也の前までズカズカと歩いていき、溜息をつく。まだ不機嫌なようだ

 

 

果南「それで、監督の件、どうするの?」

 

北也「うーん……」

 

「「「ゴクリ…」」」

 

 

緊張の瞬間、とは大袈裟かもしれないが、YESかNoで千歌達の運命は大きく変わるかもしれない。そう思うと、北也が悩んでいる時間が…長いように感じる

 

 

 

北也「店もあるしな………」

 

「「「……」」」ドキドキ

 

 

 

 

 

 

 

北也「…よし、じゃあこうしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

ー 休日 ー

 

 

 

 

 

ザッザッザッ 地面を掘り起こす音が響く、季節は秋が近づき、田んぼの稲穂は大きくなっている。そんな稲穂のカーテンに囲まれながら、浦の星サッカー部は…荒れ放題の田んぼを…耕していた…

 

 

 

 

善子「ちょっと!!なんで私達が田んぼの水張りなんてしなきゃいけないの!?」

 

曜「水を張るタイミングもおかしいよね…」

 

北也「いや〜悪い悪い!知り合いに使わない田んぼの手入れを頼まれていたのを、すっかり忘れててな!」

 

果南「それで…なんで私達が…」

 

北也「だから言ったろ?水張りまでやってくれたら、監督を引き受けるって」

 

ダイヤ「しかし、大会まで時間はないのですよ?」

 

北也「時間がないなら手を動かす!俺はダイビングの予約が入ってるから店に戻る、何かあったら連絡くれよ」

 

 

そう言うと北也は車に乗り、ダイビングショップへと戻っていった

 

 

 

梨子「……私達、サッカーを教わりに来てるのよね?」

 

ルビィ「これじゃあ、ただの…農業研修…」

 

千歌「ううぅ…サッカーしたい」

 

ダイヤ「こうなったらすぐに終わらせて、北也さんに監督になってもらうしかありませんわ」

 

果南「ごめんね、みんな…うちのバカのせいで…」

 

 

 

 

 

 

朝から土の掘り起こしを始め、お昼頃には全面の掘り起こしが終わった。次は…

 

 

花丸「水張りずらね。2手に分かれて、片方は水路を繋げて、もう片方は田んぼをならしていこう」

 

ルビィ「は、花丸ちゃん…詳しいね…」

 

花丸「毎年、田植えと稲刈りは手伝わされているずら」

 

 

花丸の的確な指示のおかげで、作業はスムーズに進み、日が暮れる頃には水張りが終了し、終わった頃にはみんなクタクタになっていた

 

 

 

千歌「終わったぁ……」

 

ダイヤ「もう、腕が上がりませんわ…」

 

鞠莉「腰も痛いわ…」

 

 

これで北也さんが監督になってくれる…そう思っていると、北也の運転する車が戻ってきた

 

 

北也「お疲れさん。どれどれ…進行状況は……え!?もう、終わったの!?」

 

ルビィ「花丸ちゃんのおかげです」

 

花丸「ずら!」

 

 

花丸が胸を張って返事をする。正直、花丸の指示、スピーディな行動が無ければ、今日中には終わらなかった

 

 

果南「これで監督、引き受けてくれるでしょ?」

 

北也「あぁ、約束だからな。こんな作業やらせて悪かったな。明日からよろしくな」

 

 

 

 

こうして苦行の田んぼ制作を終えた浦の星サッカー部に、松浦北也監督が加わったのである。これでやっと、サッカーが出来る…

 

 

 

 

 

 

北也「明日の練習はまたここな」

 

 

 

 

 

「「「へ?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

翌日、サッカー部は再び昨日作った田んぼまで来ていた

 

 

 

善子「まさか…今度は田植えをしろとか言うんじゃ…」

 

千歌「え!?話が違うじゃん!」

 

梨子「でも、まだそう決まったわけじゃ」

 

北也「そうだぞー決めつけるのはまだ早いぞー」

 

善子「あ、監督」

 

ダイヤ「ここで今度は、何をするんですか?」

 

北也「今からここで…」

 

 

 

 

北也はボールをひとつ持つと、何を血迷ったのか田んぼに

 

 

 

ボチャン!!

 

 

 

投げ入れた…

 

 

 

 

 

千歌「ほえ?」

 

曜「ボールを田んぼに…」

 

梨子「投げ入れたわね…」

 

 

 

 

北也「君たちはここで」

 

 

 

 

 

北也「サッカーをしてもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「えぇぇぇぇ!!!!???」」」」

 

 




松浦北也(ほくや)
名前は果南が南だから北を入れたという…まぁ、はい。
美奈さんの昔からの友人です。今後の話でさらに過去が語られるかも…




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第2章 4話 「田んぼで特訓!?」

入学説明会も短いですが書いています。こんな雑な扱いでいいのだろうか……




 

 

 

 

北也「ほらほら、足が止まってるぞ。善子ー」

 

善子「ヨハネよぉぉ!!」

 

 

ルビィ「ピギィ!?」バシャーン!

 

花丸「ルビィちゃん大丈夫ずらか?」

 

ルビィ「ううぅ、転んじゃったぁ…泥だらけ…」

 

 

 

浦の星サッカー部は第1試合までの日は、この浦の星特製田んぼで練習することが義務付けられた。地面は泥、ボールは水に浮いているため、やりづらいしすぐ転んでしまう

 

 

 

千歌「うわあ!?」ボチャン!

 

曜「これ…結構、足に来るね…」

 

鞠莉「もう、汚れなんてどうでもいいデース……」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

平日は、北也が仕事で車を出せない時は、砂浜でランニングをしろと言われていた。原則、グラウンドは使用禁止らしい

 

 

ダイヤ「あの合宿の練習が…蘇りそうですわ…」

 

千歌「なんでグラウンド使っちゃダメなのーー!!?」

 

果南「何考えてんだか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

北也の仕事が空いている日は田んぼ。空いていなければ砂浜。という練習を続けて2週間、千歌達は自分達のある変化に気づいていた

 

 

 

千歌「梨子ちゃん!」バシャバシャ

 

梨子「ナイスパスよ!千歌ちゃん」

 

ダイヤ「あともう一周、行きますわよ!」

 

千歌「(そう言えば最近は…)」

 

梨子「(あまり転ばなくなったような…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈みかけ、北也の車が迎えに来ると練習終了である。全員、終了と同時にあぜ道に座り込む

 

 

 

いつき「みんな、お疲れ様!」

 

よしみ「泥がついた服はすぐに洗うから出してくださーい!」

 

 

千歌「ふうぅ…終わったぁ」

 

花丸「今日もハードだったずらね…」

 

ルビィ「でも最近、転ぶ人が少なくなったよね!」

 

曜「確かに!みんな泥に慣れてきたのかな?」

 

果南「足の筋肉も結構ついたね」

 

ダイヤ「しかし、グラウンドで1回も練習しないまま大会3日前になってしまいましたね…」

 

鞠莉「明日は学校説明会…明後日は東京に移動、あれ?今日が最後の練習?」

 

果南「明日は少しなら出来ると思うけど…」

 

 

本当にグラウンドで戦術などの練習をしないで良かったのだろうかと、千歌達は不安になるものの、北也には何かしらの考えがあるのだろう

 

 

 

北也「帰るぞー善子」

 

 

善子「……ヨハネよぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

その夜、果南は北也を店の外に呼び出していた

 

 

北也「なんだ、果南?明日は学校説明会だろ?早く休んだ方が…」

 

果南「質問に答えて」

 

北也「!」

 

 

果南が北也を睨みつける。ここまで目の敵にされるのは…いつ以来か、そんなことを考えていると、果南は続ける

 

 

果南「なんでグラウンドで練習させないの?」

 

 

直球だな。北也はそう返す。しかし、聞かれても当然、何しろ廃校阻止や初戦突破がかかっている大事な試合前。果南には戦術や相手の対策練習などやりたいことは山ほどあった

 

 

北也「田んぼや砂浜の練習の方が、今のお前達に必要だと思ったからだ」

 

果南「なんで?相手への対策は?何を仕掛けてくるか分からないんだよ?」

 

北也「…これは前日のミーティングで話そうと思っていたんだが…」

 

北也は頭を掻きながら渋々答える

 

 

北也「初戦の相手は、普通に守って普通に攻めてくるだけだ」

 

果南「は?」

 

果南には理解ができなかった。普通に攻める?守る?じゃあ、田んぼでやらせた意図は?足腰を鍛えるなら砂浜だけで十分では?? 今の北也の考えていることが全く分からない

 

 

果南「千歌達は父さんのことを信用している」

 

北也「そうか、嬉しい限りだ」

 

果南「だから田んぼでの練習も、最後までやりきったんだよ」

 

北也「…」

 

北也は黙ったままだったが、果南は気にしない。今まで溜まってきた不満が溢れ出る

 

 

果南「でも…私は、信用出来ない」

 

 

そう言うと果南は家の中へと戻っていった。1人残された北也は、海風に吹かれながら再び頭を掻く

 

 

北也「なかなか手厳しいねぇ…果南は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 学校説明会当日 ー

 

 

晴れのち晴れ。絶好のサッカー日和、そして…

 

 

鞠莉「絶好の入学説明会日和デース!」

 

善子「どんな日和よ…」

 

鞠莉「日本晴れ?」

 

善子「私に聞くなーー!!」

 

 

 

 

 

千歌「凄い!たくさん中学生が来てくれた!」

 

ダイヤ「100人よりも多いのでは!?」

 

果南「説明会だからね、あとはこの中から、何人入学希望者が集まるかだね」

 

梨子「それじゃあ、私達は鞠莉さんが説明会をやっている間に、練習の準備をしちゃいましょうか」

 

 

 

 

 

そして、浦の星女学院の入学説明会が始まった。鞠莉は浦の星の魅力を語りながら。浦の星サッカー部のことについても説明する。驚いたことに、殆どの生徒が浦の星サッカー部について知っていた。やはり県予選優勝でも影響力はとても大きいものだった

 

 

 

 

 

 

説明会も終わり、次は部活動見学。中学生らが思い思いの部活を見て回る中、グラウンドには

 

 

 

 

 

ルビィ「ピギィ!? 中学生さん達がいっぱい…」

 

果南「これは…予想以上だね」

 

鞠莉「私がサッカー部のことを話過ぎたかしら♪」

 

千歌「よーし!大会前、最後の練習、行っくぞーー!!」

 

 

「「「「おーーーーー!!!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、静岡の代表はあの方達見たいですよ?」

 

「本当に!? ブロックは?A?」

 

「残念ながらBですね」

 

「そっか…戦えるのは決勝かぁ…」

 

「でもこちらにはUTX高校がいますよ」

 

「そっか! はぁ、早く戦いたいなぁ…待ちきれないよー」

 

「あと、1日の辛抱ですよ。我慢してください」

 

「はーい…」

 

 

 




そう言えば、対戦校はどこなんですかね…




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第2章 5話 「開催! 全国本戦」

ところどころ、ショートカットしている部分がありますが…ついに開催です




 

 

 

全国高校女子サッカー大会 全国本戦を前日に控えた浦の星サッカー部は、北也と共に沼津駅に来ていた

 

 

 

北也「マネージャーさん。日程説明よろしく」

 

むつ「はい!この後、電車に乗って夕方に東京に到着。その後、ホテルにチェックインして、夕食をとったあと、ミーティングルームでミーティングです。詳しい時間は配ったプリントの通りです!」

 

北也「ありがとね。じゃ、行こうか」

 

北也が歩き出そうとした時、善子が呼び止める

 

 

善子「あの、監督」

 

北也「どうした?善子?」

 

善子「ヨハネ!!…あの、お店の方は大丈夫なんですか?」

 

千歌「あ、確かに」

 

曜「長い間、東京にいることになると思うけど…」

 

北也「あぁ、ショップはね…親父と嫁に任せてきた」

 

ダイヤ「果南さんのお爺様と、お母様ですか?」

 

北也「そ。まぁ、約束したしね。ちゃんと監督やるって」

 

千歌「!! 北也さん!」

 

梨子「ちょっと、千歌ちゃん!今は監督でしょ!」

 

梨子に名前呼びを止められるも、北也は気にしない素振りで答える

 

 

北也「いいよ。俺のことは、好きに呼んでくれて」

 

梨子「でも…」

 

梨子はまだ躊躇している様子。逆に躊躇しないメンバーもいるが…

 

 

善子「じゃあ、今からリトルデーモンね!」

 

北也「それは難しいな、善子〜」

 

善子「ヨハネよぉぉ!!!!!」

 

 

駅前が笑い声に包まれる。こうして浦の星の全国への挑戦は笑い声から始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 東京 ー

 

 

千歌「ついたー!!」

 

花丸「また戻ってきたずら…」

 

ダイヤ「相変わらず、ゴチャゴチャしてますわ…」

 

北也「おーい。ホテル施設に移動するからはぐれるなよー?」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

北也「このホテルだな」

 

曜「ここに泊まるの?」

 

梨子「大きいわね…」

 

花丸「未来ずら…」

 

 

アキバスタジアムのすぐ近くにあるホテルは複数あり。どのホテルもサッカー大会出場高校 専用宿泊になっている

 

 

 

善子「宿泊費…やばそう…」

 

鞠莉「ノープロブレム! 大会側が補償してくれているので、安くすみマース!」

 

千歌「ほえーー……」

 

 

 

 

その後、浦の星サッカー部はホテルに入り、チェックインをしていた。すると後から冷気が……

 

 

善子「うぅ、この背筋が凍る感じ…」

 

花丸「あっ!!」

 

 

 

聖良「お久しぶりです」

 

 

千歌「聖良さん、お久しぶりです」

 

 

鹿角聖良率いる、函館聖泉女子高等学院。北海道では歴史ある高校で、サッカーのエリート校である

 

 

聖良「あの5人制サッカー大会以来ですね」

 

千歌「そうですね…」

 

千歌達はあの大敗した試合を思い出していた。圧倒的な実力差、自分達とはステージが違っていた

 

 

聖良「皆さんも頑張ってくださいね。皆さんと準決勝で戦うのは、まだ先ですから」

 

千歌「はい。そのつもりです」

 

曜「そっか、ブロック同じなんだね」

 

 

 

全国高校女子サッカー大会 全国本戦は、県予選と同じく、トーナメント戦である。Aブロック 24校、Bブロック 24校で、前回大会優勝校は県予選に出場する必要が無いので、東京からは2校の出場となる。浦の星と函館聖泉はBブロックである

 

 

 

 

善子「何?もう、準決勝に進んだ気でいるの?」

 

花丸「ものすごい自信ずら…」

 

ルビィ「お二人共、県予選は圧倒的な差で勝ち抜いて来られたし…」

 

果南「もしかして、また叩きのめそうとしてるんじゃないの?」

 

聖良「いいえ、そんなことはありません。それに、皆さんはもう弱くなどありません」

 

ダイヤ「随分と舐められていますわね。わたくし達」

 

聖良「浦の星は格段にレベルアップしました。今では紛れも無い優勝候補ですから」

 

千歌「優勝候補…」

 

聖良「あの帝国女学院を倒したって、かなり有名になってますよ?」

 

梨子「そんなに有名になってたのね…」

 

聖良「あの時は失礼な事を言いました…お詫びします」

 

そう言うと、聖良は頭を下げ謝罪した。そこまでしなくてもいいのに…そう思っていると、

 

 

聖良「最高の準決勝にしましょうね」

 

 

聖良は手を差し出した。千歌はそれに応え、握手を交わす

 

 

千歌「はい!必ず戦いましょう!」

 

 

聖良は握手を交わしたあと、後ろを向き1人の名前を呼ぶ

 

 

聖良「理亞!理亜も挨拶なさい」

 

千歌「理亜?」

 

視線の先には、ツインテールの少女が、浦の星を睨みながら立っていた

 

 

善子「あの時の!」

 

花丸「回転少女ずら!」

 

聖良「私の妹、鹿角理亞です」

 

千歌「妹!?」

 

聖良の妹、少し驚いたがよく見ると聖良と少し似ている

 

 

聖良「理亜!」

 

理亜「……」

 

理亜は黙ったまま、浦の星の方へ近づいてきた。その目は鋭く、冷たい

 

 

理亜「……勘違いしないで」

 

千歌「勘違い?」

 

理亜「私はあんた達が強いなんて思ってない」

 

聖良「理亜!?」

 

理亜「特に…あんた」

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

理亜はルビィに指をさしてさらに続ける

 

 

理亜「あんたは…絶対に倒す…絶対に…」

 

ルビィ「理亜…さん」

 

理亜「……」

 

 

理亜はそのままホテルの奥へと歩いていった

 

 

聖良「あ、理亜!…すみません、失礼します」

 

 

千歌「あ…」

 

曜「行っちゃった、ね」

 

ダイヤ「なかなか言ってくれるじゃありませんか」

 

果南「倒しがいがあるよ…」

 

善子「なんか、燃えてるわね。3年生…」

 

花丸「寒かったから丁度いいずら〜」

 

善子「そういう問題?」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、チェックインを終えた北也と合流。それぞれの部屋に入り、支度を済ませたあとミーティングルームで明日の第1試合のミーティングをしていた

 

 

 

 

よしみ「明日は開会式後にすぐ試合だよ!」

 

北也「明日の第1試合の高校は…千羽山高校」

 

千歌「千羽山高校…」

 

むつ「群馬県の代表校で、鉄壁のディフェンスで有名な高校だね」

 

いつき「県予選は無失点で勝ち抜いてきたらしいよ」

 

善子「無失点!?」

 

花丸「1度も失点していないってことずらか?」

 

北也「そうだ。千羽山は得点力はそんなに高くない。だが、鉄壁のディフェンスと底無しの体力で相手の隙をつくり、そこを攻め込まれる」

 

果南「体力勝負なら負けられないなぁ…」

 

千歌「でも、最近はたくさん走り込みをしたから体力はかなりついたよね!」

 

梨子「あとは、隙を作らないようにしないとね。仲間のフォローをしっかりとやるべきね」

 

北也「それともう一つだけ言っておくぞ」

 

北也「千羽山は普通に守って普通に攻めてくる」

 

ダイヤ「まぁ、それが当たり前ですわよね?」

 

曜「何かあるんですか?」

 

北也「言葉を付け足すぞ。千羽山は『どんな環境でも』普通に守って普通に攻めてくるぞ」

 

善子「どんな…」

 

ルビィ「環境でも?」

 

 

 

 

千羽山はどんな環境でも普通に守って普通に攻める。この「どんな環境」に隠された意味とは何なのか。その答えは、明日の試合で知ることになる

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ー 翌日 アキバスタジアム ー

 

 

 

 

 

 

東京には東京湾を埋め立てて作った、サッカースタジアム施設が存在する。開会式、決勝戦、閉会式はアキバスタジアムで行うが、そのほかの初戦から準決勝までは、そのサッカースタジアム施設の4つのサッカーグラウンドで試合を行う

 

 

 

今まさに全国高校女子サッカー大会の全国本戦が始まろうとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「ううぅ、入場行進ってなんだか緊張するなぁ…」

 

ルビィ「たくさんの人に見られるのは…ちょっと怖いです…」

 

善子「今まで試合でたくさんの人に見られてきたじゃない…」

 

花丸「規模が違うずら…」

 

果南「みんな、そろそろ行くよ」

 

 

 

出口をぬけると、静岡予選の数倍もの歓声が耳に飛び込んできた。グラウンドを見ると、広々とした場所にたくさんの高校生がいた。全員、県予選を勝ち抜いてきた強豪達である

 

 

 

ルビィ「ピギィ!? すごい歓声…」

 

曜「広い会場だね…」

 

千歌「必ず、ここに戻ってくるんだ。勝ち進んで、決勝戦をここで…」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

美渡「しっかし、すごいところだな〜」

 

志満「あ!千歌ちゃん達来たよ!」

 

美渡「お、結構様になってんじゃん!」

 

志満「じゃあ、早速カメラ撮影しちゃうわね」

 

美渡「んじゃあ、私は試合会場の席取りしてくるわ」

 

志満「は〜い。行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

美渡「確か千歌達は第2グラウンドだったよな………ん?」

 

美奈「……」スタスタ

 

美渡「あれ?母さん?」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「…あ! あの子達、入場してきたよ!」

 

「やはり、あの頃よりもかなり成長していますね…」

 

「ふふ、頑張って勝ち上がってきてね♪」

 

 

 

 

 

 

聖良「あ、浦の星ですよ。理亜」

 

理亜「………」

 

 

 

 

 

 

英玲奈「おや?」

 

あんじゅ「どうかした?英玲奈」

 

英玲奈「見覚えのある顔が静岡にいたんだが…」

 

 

ツバサ「……桜内さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、開会式を終えた浦の星はサッカースタジアム施設の第2グラウンドへ移動。廃校阻止、全国の頂点、負ければ両方失ってしまう大一番が今、始まる

 

 




千羽山高校
イナイレの原作では、千羽山中として登場しました。何故、群馬県代表なのかと言うと、千羽山→千羽→千羽鶴→鶴→鶴舞う形の群馬県(上毛かるた) って言うことで群馬にしました!


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第2章 6話 「千羽山戦 その1」

千羽山と言ったらあの技ですよね!バーニングキャ…(違います)





 

 

曜「ついに始まるね…」

 

鞠莉「廃校阻止のかかる大一番」

 

ダイヤ「この試合に勝利し、少しでも入学希望者を増加出来れば…」

 

千歌「…学校は救える…」

 

 

 

 

 

 

 

『さあ、全国高校女子サッカー大会 全国本戦 第1試合、静岡代表 浦の星女学院VS群馬代表 千羽山高校だ! 』

 

 

 

ダイヤ「行きますわよ!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

『浦の星女学院は連続優勝記録をもつ帝国女学院に劇的勝利、今話題の超新星と言っても過言ではありません!』

 

 

 

 

原野「体力勝負で負けるわけにはいかない! 最後まで走るぞ!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

『対する千羽山高校は鉄壁の守りで、無失点で県予選を突破!底無しの体力も備え持っています!浦の星は千羽山の守りをどう崩すのか?』

 

 

 

 

 

 

センターフォワード 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 桜内梨子

左サイドバック 国木田花丸

右サイドバック 黒澤ルビィ

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

3-2-3

 

 

 

 

 

 

センターフォワード 田主丸

トップ下 原野

センターハーフ 大鯉

センターハーフ 育井

右サイドバック 富士

左サイドバック 山根

センターバック 牧谷

センターバック 塩谷

キーパー 綾野

 

4-3-1

 

 

 

 

 

 

 

 

ピ-ーーーーーーー!!!!

 

 

 

試合開始、前半は千羽山高校がキックオフ。田主丸と原野がパスを回しながら、浦の星に攻撃を仕掛ける

 

 

原野「ー たつまきせんぷう ー!」

 

 

千歌「うわ!?」

 

梨子「突風が!!」

 

旋風によって巻き起こった風で、千歌と梨子が吹き飛ぶ。その間に田主丸が攻める

 

 

田主丸「このままシュートだ!」

 

 

花丸「させないずら!」

 

花丸「ー もちもち黄粉餅改 ー!!」

 

 

田主丸「何!?」

 

田主丸がシュートをしようとした瞬間、きな粉餅がボールを絡めとる

 

 

善子「助かったわ!ずら丸」

 

花丸「曜ちゃん!」パス

 

曜「任せるであります!」

 

 

曜はサイドからドリブルで攻め上がる

 

 

曜「(中の守りが厚い…でも、スピードで行けるかも!!)」

 

 

富士「行かせない!」

 

曜「全速前進!」

 

 

曜「ー ライトニングアクセル ー!」

 

富士「な!?速い!」

 

 

鞠莉「曜!そのまま中に切り込んで!」

 

曜「ヨーソロー!」

 

 

曜はそのままドリブルでセンターハーフを突破。ゴールの前まで来ることに成功する

 

 

千歌「行っけー!曜ちゃん!!」

 

曜「先制点は頂くよ!」

 

曜「ー パルクールアタックV2 ー! 」

 

曜のシュートが放たれる。特訓により進化しているため、威力には自信があった

 

 

ダイヤ「!(センターバックの2人がキーパーの横に?)」

 

ダイヤはセンターバックのポジションに違和感を持っていた。シュートブロックをしに行くどころか、キーパーと横に並んでいる

 

 

 

綾野「…行くぞ!」

 

牧谷、塩谷「はい!」

 

 

綾野、牧谷、塩谷「ー 無限の壁 ー!」ドン!!

 

 

ダイヤ「!!?」

 

ルビィ「巨大な…壁!?」

 

 

千羽山ゴールの前に現れたのは、ゴールの枠を覆い尽くす、何枚も重なった壁であった。曜のシュートは壁にぶつかるも、壁はビクともしなかった

 

 

綾野「無駄だ」

 

 

 

『出たー!あれが千羽山の最強の防御、ー 無限の壁 ーだぁ! あの壁を破った高校はまだ現れていません!!』

 

 

 

曜「そんな…」

 

ダイヤ「曜さん、切り替えてください! 相手が攻めてきますわよ!」

 

 

 

 

千羽山の反撃。一人一人の攻撃力は低いものの、膨大な体力とパス回しで、徐々に浦の星ゴールへと近づいてくる

 

 

育井「大鯉!」パス

 

善子「もう!千羽山、走りすぎでしょ!」

 

ルビィ「マークについても、すぐに離されちゃう…」

 

大鯉「田主丸!」パス

 

大鯉のDFの隙間を抜けるパス。その先では田主丸が待っていた

 

 

田主丸「ナイスパス!」

 

 

鞠莉「まずい!抜けられた!」

 

 

田主丸「今度こそシュートだ!」

 

田主丸「ー シャインドライブ ー!」

 

光り輝くシュートが浦の星ゴールに迫る。が、果南の

 

 

果南「ー 真トライデント ー」ドガアン!

 

槍により、ねじ伏せられる

 

 

鞠莉「Thank you!果南」

 

果南「もう…油断しちゃダメだよ?」

 

鞠莉「わかってる!みんな行くわよ!」

 

 

鞠莉の合図に全員が反応する。浦の星が得意とする、速攻の発動である

 

 

「ー 3D・リフレクター ー!!」

 

 

原野「空中でパス回し!?」

 

山根「速すぎる!追いつけない!!」

 

 

 

『この技は、帝国女学院をも崩した必殺タクティクス!そのままボールは最前線の黒澤ダイヤへと渡ったぁ!!』

 

 

 

むつ「行っけー!ダイヤさん!」

 

北也「おぉ…やっぱりすげぇなぁ」

 

北也「…(だが…)」

 

 

 

ダイヤ「このシュートは防げますか?」

 

ダイヤ「ー ダイヤモンドストリーム ー!!」

 

 

ダイヤモンドの嵐が再び千羽山ゴールに迫る。しかし

 

 

綾野「当たり前だ」

 

 

綾野、牧谷、塩谷「ー 無限の壁 ー!」ドン!!

 

 

 

『止めたー! 黒澤ダイヤのシュートも、千羽山の鉄壁には適わなかった!!』

 

 

ダイヤ「な!?」

 

果南「……なかなか厳しいよ…これは」

 

 

 

 

 

 

 

その後、浦の星は何度もシュートチャンスをつくり、千羽山の鉄壁へと挑んだ

 

 

 

善子「ー デビルバースト ー!!」

 

綾野「なかなかの威力だが、無駄だ」

 

 

 

 

鞠莉「ー ディザスターブレイクG2 ー!」

 

綾野「私達は毎日、農作業や力仕事を休みなくしている!」

 

 

綾野「毎日、鍛錬を重ね、作った壁だ!崩せるわけ無い!!」

 

 

北也「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーー!

 

 

 

『ここで前半終了!0-0!浦の星が幾度となく攻撃を仕掛けたものの、やはりそう簡単には千羽山の無限の壁を崩すことが出来ない!』

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「どうすんのよ!あの壁、全くビクともしないんだけど!!」

 

ダイヤ「わたくし達の1人シュート技では、歯が立ちませんでしたね」

 

ルビィ「千歌ちゃん…ここはやっぱり…」

 

千歌「…うん。エボリューションしかないね」

 

梨子「でも、あの技は何回も連発出来るような技じゃないわ!」

 

曜「もし…エボリューションでも、崩せなかったら……」

 

千歌「……でも、やるしかない。勝つためには全力で行かないと!」

 

梨子「千歌ちゃん……」

 

ダイヤ「では、後半に千歌さん、梨子さん、曜さん、頼みましたわよ」

 

千歌、梨子、曜「はい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

北也「多分、無理だと思うぞ」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「え?」

 

善子「監督?」

 

 

 

今まで静かに会話を聞いていた北也が口を開く。第一声が浦の星ベンチの空気を凍らせる

 

 

 

 

果南「無理って…」

 

曜「どういう事ですか?」

 

北也「そのまんまの意味だ。今のままでは、浦の星はどのシュート技でも、無限の壁は破れない」

 

ルビィ「…そんな…」

 

果南「…そんなの、やってみなきゃ分からないでしょ!?」

 

ダイヤ「果南さん!落ち着いてください!」

 

果南が怒ることはなかなか無い。ダイヤがとっさに止めに入る

 

 

果南「父さんに…何がわかるのさ…」

 

鞠莉「果南……」

 

北也「分かるさ、ずっとベンチで相手を観察してたからな」

 

そう言うと、北也はベンチから立ち上がり、千歌達の前に近づいてきた

 

 

千歌「じゃあ…どうすれば…」

 

北也「それじゃあみんな、聞いてくれな。今から……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北也「千羽山の壁を崩す、作戦を説明する」

 

 




浦の星は無限の壁に苦戦しているようですね。ゲームだと瞬殺なんですが……


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第2章 7話 「千羽山戦 その2」

5th 2日目も落選したんですけど……







 

 

 

 

善子「千羽山の壁を……」

 

花丸「崩す作戦…」

 

北也「そうだ。俺は、今のままでは無限の壁は崩せない。と言っただけで、一生適わないとは言ってないだろ?」

 

梨子「じゃあ、どうすれば……」

 

 

 

 

 

 

 

北也「壁をよく見ろ。以上。」

 

 

 

 

 

 

千歌「ほえ?」

 

ルビィ「それだけ…ですか?」

 

北也「あぁ、それだけだ。よく見ろよ?」

 

ダイヤ「あの…それは作戦なのですか?」

 

北也「そうだ」

 

 

果南「……ふざけてるの?」

 

鞠莉「ちょ、果南stop!」

 

北也「怖いなぁ、ふざけてなんかねぇぞ?」

 

 

果南は完全に北也を信じていなかった。2人の雰囲気がどんどん悪くなっていく中、後半開始を呼びかける笛がなった

 

 

 

鞠莉「ほら果南!後半始まるわよ!」

 

果南「…今行く」

 

 

北也「やれやれ…」

 

いつき「あのー…いいんですか?果南さん、」

 

北也「まぁ、こればかりはしょうがねぇな…」

 

 

 

 

 

『さあ、間もなく後半が始まります!勝つのは果たしてどちらか、今、笛が吹かれます!』

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!

 

 

 

 

後半が始まった。浦の星は前半と同じく、スピードを生かして攻める

 

 

千歌「ー ZスラッシュG2 ー!」

 

育井「うわ!?」

 

 

曜「千歌ちゃん!善子ちゃんがフリーだよ!」

 

 

千歌はすぐに善子にパスを出す。善子にボールが渡り、後半最初のシュートが放たれる

 

 

善子「ダイヤ!!」

 

ダイヤ「!」

 

善子「受け取りなさい!! ー デビルバースト ー!」

 

善子のシュートがダイヤの真上に放たれる

 

 

ダイヤ「そういう事ですか。はああ!!」

 

ダイヤが回転しながら放たれたボールへ、ダイヤモンドの嵐をぶつける

 

 

ダイヤ「ー ダイヤモンドストリーム ー!!」

 

 

千歌「シュートチェイン!」

 

曜「これなら…」

 

鞠莉「行ける!!」

 

 

 

 

綾野「何度やっても同じこと!」

 

綾野、牧谷、塩谷「ー 無限の壁 ー!」ドン!!

 

 

ボールが激しく壁にぶつかる

 

 

ダイヤ、善子「行けえぇぇぇ!!!!」

 

 

 

綾野「はあああ!!!」バキッ

 

 

ダイヤ「!?」

 

 

 

 

『と…止めたあぁ!!津島善子と黒澤ダイヤのチェインシュートでも、無限の壁は破れなかったー!!』

 

 

 

善子「嘘でしょ……」

 

 

花丸「善子ちゃんとダイヤさんのシュートを合体させても駄目じゃ……」

 

梨子「エボリューションも…」

 

千歌「そんな…」

 

果南「父さんの言うとおり…」ギリリ

 

 

 

 

 

 

 

後半も攻めては壁に、攻めては壁にの繰り返し。時間と浦の星の体力が減っていくだけであった

 

 

 

 

 

 

 

 

綾野「浦の星はかなり限界が来ているようだな…」

 

綾野「原野!」

 

原野「何?綾野」

 

綾野「あれ、やってみないか?」

 

原野「そうだね。とどめを刺すのにいいかもしれない!」

 

 

 

 

むつ「! 千羽山が、なにか仕掛けてきます!!」

 

北也「やはりか…」

 

 

 

 

「ー 超広大 尾瀬ヶ原 ー!!」

 

 

 

 

善子「な!!?」

 

梨子「必殺タクティクス!?」

 

 

『千羽山、後半になって必殺タクティクスを発動してきた!グラウンドは湿地化していて、動くのは困難か!?』

 

 

鞠莉「嘘でしょ!?」

 

ルビィ「ピギィ!?」バシャーン!

 

 

 

原野「今だ!千羽山、攻め上がるんだ!」

 

「「「おお!!!!!」」」

 

 

千歌「え…」

 

ダイヤ「ちょっと…冗談でしょ?」

 

 

 

『な、な、なんと千羽山、湿地であるにもかかわらず、全員動けているぞ!?』

 

 

 

原野「育井!」パス

 

育井「よし、行ける!」バシャバシャ

 

 

花丸「うわわわ、攻めてきたずら!?」

 

鞠莉「パスが早い!追いつけない」

 

 

育井「田主丸!シュートだ!」

 

田主丸「ー シャインドライブ ー!!」

 

 

光のシュートが放たれる。鞠莉達は追いつけていないため、シュートブロックに行けない

 

 

果南「やば…ー 真トライデント ー!!」

 

果南はボールを叩きつけるも、前半より威力が弱くなっていた

 

 

果南「(沼に足を取られて、踏み込みが甘かった…)」

 

果南「く……うおおおおぉ!!!!」バギィ!!

 

 

田主丸「くそ…しぶといな…」

 

 

 

『松浦果南、渾身のパンチングで何とかコート外へ! しかし、浦の星、全く機能できていません!!』

 

 

 

 

 

よしみ「か、監督! まずいですよ!このままじゃ…」

 

北也「……大丈夫!」

 

よしみ「え?」

 

 

 

 

 

 

鞠莉「果南….助かったわ…」

 

ルビィ「でも、こんな泥じゃ…」

 

花丸「動きにくいずら…」

 

善子「もう!なんで毎日泥だらけにならなきゃいけないの!?」

 

 

 

 

ダイヤ「!! 善子さん、今なんと?」

 

善子「ヨハネ!だから、最近、毎日泥だらけになってたでしょ!田んぼで!」

 

 

 

千歌、曜、梨子「……」

 

 

ダイヤ、鞠莉、果南「………」

 

 

ルビィ、花丸「………」

 

 

 

 

善子「………あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ、千羽山のコーナーキックで試合再開です!』

 

 

 

 

果南「こんのおぉぉ!!」バシッ!

 

 

 

『松浦果南、高くジャンプしボールをキャッチしたぁ!しかし浦の星、ゴールまでたどり着くことが出来るのか!?』

 

 

 

果南「はぁ…そういう事だったのか…」

 

鞠莉「果南、こっちよ!」

 

果南「鞠莉!」ブォン!

 

果南のロングスロー。鞠莉はボールを受け取り…

 

 

鞠莉「行くわよー!ebibadhi!」

 

「「「うん!!!!」」」

 

 

 

 

原野「……あれ?」

 

綾野「……ん?」

 

 

 

『ん?あれ?浦の星?先程とは違い…ドリブル…パスが…出来てる!?』

 

 

 

大鯉「な!!!?」

 

田主丸「なんで浦の星も普通に動けるんだ!?」

 

原野「そんな…想定外だ…」

 

 

 

鞠莉「梨子!」パス

 

梨子「はい!」

 

梨子「(うん。この感じ)」

 

梨子「千歌ちゃん!!」パス

 

千歌「ナイスパス!」

 

千歌「(間違いない!)」

 

 

 

「「「(田んぼの時と同じだ!!!)」」」

 

 

 

 

 

千歌「ダイヤさん!」パス

 

ダイヤ「はい!(もし、予想が正しければ…)」

 

ダイヤは先程と同じく、シュートにはいる

 

 

ダイヤ「ー ダイヤモンドストリーム ー!!」

 

 

 

綾野「くっ、ー 無限の壁 ー!!」バギィ!!

 

 

曜「あぁ!やっぱりダメか…」

 

ダイヤ「(わかりましたわ!北也さん!)」

 

 

 

『浦の星女学院、驚異の適応力で千羽山ゴールに攻め込むも、やはり無限の壁は崩せない!!』

 

 

 

ダイヤ「皆さん!戻りながら聞いてください!!」

 

 

花丸「ダイヤさん?」

 

ルビィ「お姉ちゃん?」

 

千歌「どうしたんですか?」

 

ダイヤ「北也さんの言っていたことの意味がわかりました! 無限の壁、破れるかもしれません!」

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

育井「まさか、浦の星にタクティクスが通用しないなんて…」

 

原野「このままでは私達の体力も減ってしまう!解除しよう!」

 

 

 

『おっと!千羽山、浦の星にタクティクスが通用しないと判断し、尾瀬ヶ原を解除したぞ! 久しぶりにグラウンドが芝生に戻ったぁ!!』

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「…ということですわ」

 

梨子「そういう事だったのね…」

 

善子「じゃあ、そこを狙えば!」

 

ダイヤ「えぇ、可能性が!」

 

 

 

 

 

原野「残り時間は少ないぞ! 足を止めるな!」

 

「「「はい!!!!!」」」

 

 

 

 

千羽山がパスをつなぎ攻め込む。しかし、沼でなくなった今は、

 

 

ルビィ「敵じゃありません。 ー イグナイトスティール ー」

 

 

田主丸「うわぁ!?」

 

 

善子「ナイス、4号!!」

 

ルビィ「鞠莉ちゃん!」パス

 

鞠莉「OK!一気に攻め込むわよ!」

 

 

鞠莉「ー シャイニーフェザー ー!!」

 

果南「え!?いつの間に新技を!」

 

 

鞠莉「ふふっ♪シャイニー♪♪」

 

輝く羽を広げ、鞠莉は上空から前線へパスを出す

 

 

鞠莉「頼むわよ!3人とも!」

 

 

千歌、梨子、曜「はい!!!」

 

 

 

梨子と曜がボールの元へ飛び、そのまま蹴り落とす

 

 

梨子、曜「千歌ちゃん!!」

 

千歌「うおおおおぉ!!」

 

 

千歌、梨子、曜「ー エボリューションG2 ー!!」

 

 

 

綾野「3人技か!だが無限の壁の前では…無意味!!」

 

 

エボリューションが壁の上の方に激突する。しかし、壁を破るどころか威力が落ちていく

 

 

『はやり3人技でも無限の壁には適わないのかー!?』

 

 

 

千歌「大丈夫!!」

 

綾野「!?」

 

千歌「意味はある! 希望はまだあるよ!」

 

綾野「希望?君たちのシュートも無限の壁には…バギッ!!!!!!

 

 

 

綾野「!!!!!?」

 

原野「な!!!?」

 

牧野「おいおい…」

 

塩谷「今の音って……」

 

 

 

 

 

『な…なんと!まさかの事態です!無限の壁の上層部に……ヒビが入りました!!』

 

 

 

 

 

 

綾野「バカな!?そんなことが」

 

 

 

千歌「行ける!」

 

梨子「行ける!!」

 

曜「行ける!!!」

 

 

「「行ける!!!!!!」」

 

 

バキバキバキバキ!!!!ガラララ!!

 

 

 

綾野「そんな………」

 

 

 

 

 

 

『ゴーーール!!なんと浦の星!突破不可能とみられた無限の壁を砕き、1対0!! そして、試合終了だーー!!』

 

 

 

 

 

 

志満「凄い!千歌ちゃん達、勝ったよ!」

 

美渡「ぢがあぁぁぁぁ!!!」

 

志満「美渡ちゃん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…勝った……」

 

梨子「千歌ちゃん!完璧なシュートだったよ!」

 

曜「ダイヤさんの言う通りだったね!」

 

 

花丸「ルビィちゃん!」

 

ルビィ「花丸ちゃん!初戦突破だね!」

 

 

 

 

 

 

 

綾野「くそ…何故…負けたんだ…」

 

 

ダイヤ「あなた達の敗因を、教えてあげますわ」

 

綾野「!…黒澤ダイヤ…」

 

ダイヤ「あなた達、毎日休まず特訓、仕事をしていると言いましたよね?」

 

綾野「あぁ、そうだ」

 

ダイヤ「…壁が砕かれた原因は…疲労の蓄積」

 

綾野「疲労…」

 

ダイヤ「自分たちでは分からなくても、体に疲労は溜まっていくものですわ。その疲労、ダメージが蓄積して、無限の壁にヒビが入ったのですわ」

 

綾野「では…そのヒビを狙って…」

 

ダイヤ「そういう事ですわ」

 

ダイヤは手を出し、綾野を立ち上がらせ両者の健闘をたたえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いですね。あの無限の壁を破りましたよ」

 

「みんな泥だらけにゃー」

 

「まさか上層部に出来た小さなヒビを見つけて、そこを狙うとは……ブツブツ」

 

「うーん…試合終わったし、ラーメン食べに行こ!」

 

「あ!チョットマッテーー!!」

 

 




シャイニーフェザー
イナズマイレブンGo ギャラクシーのドリブル技です。 決め手はシャイニーです

超広大 尾瀬ヶ原
千羽山高校の必殺タクティクスです。詳細は次回、説明します!尾瀬は群馬県の有名な湿地です。


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第2章 8話 「統廃合」

え?統廃合のところが適当?自分もそう思います


今回の話はちょっと注意です。





 

 

 

 

千羽山高校に勝利した日の夜。浦の星サッカー部は、ミーティングルームに集合していた

 

 

 

 

いつき「みんな!初戦突破おめでとう!」

 

むつ「次の試合は明後日、今日はゆっくり休んで、明日は練習をします」

 

 

曜「そっか、次の対戦校は明日の試合で決まるんだね」

 

果南「相手の高校の試合、見てみたいけど練習もしておかないとね」

 

 

よしみ「明日の試合は、私が情報収集してくるよ!千歌達は練習に集中してね!」

 

善子「ほんとに、頼もしいマネージャーよね」

 

花丸「縁の下の力持ちずら」

 

マネージャーには、いつもサポートしてもらっている。明日はよしみが1人で会場へ行き、相手の試合を見てくる予定になっていた。すると、ずっとパソコンを見ていた北也が口を開く

 

 

北也「お、もう今日の試合がニュースになってるぞ」

 

千歌「ニュース?」

 

曜「公式のホームページとかの?」

 

 

ルビィ「ぶっぶーです!! テレビのニュースですよ!」

 

千歌、曜「うわ!?」

 

ルビィが千歌と曜に興奮気味に説明する。それは、ルビィだけではなく……

 

 

ダイヤ「あなた達、事の重大さが分かっていませんわ!!」

 

梨子「ダイヤさんまで…」

 

ダイヤ「いいですか? 全国本戦で勝ち進むと言うことは、全国から注目が集まると言うことですわ!!」

 

ルビィ「ニュースのスポーツコーナーとかで、浦の星の試合が取り上げられているはずです!!」

 

千歌「え?野球の甲子園みたいに?」

 

鞠莉「まぁ、簡単に言えばそういう事ね」

 

 

千歌「……曜ちゃん?」

 

曜「…うん、千歌ちゃん……」

 

 

 

千歌、曜「大変だぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

 

善子「理解するの遅くない??」

 

 

 

むつ「ネットでも、千羽山を破った浦の星って内容で記事になってるよ!」

 

梨子「ニュースの内容はやっぱり、無限の壁と千羽山の必殺タクティクスを破ったのがメインね」

 

花丸「どちらもほんとに厄介だったずら……」

 

鞠莉「でも! 無限の壁を崩して、必殺タクティクスに対応出来たのも!」

 

ダイヤ「北也さんのおかげですわね」

 

北也「まぁ、俺はヒントを言っただけだけどな」

 

 

鞠莉「ね♪果南」

 

果南「………まぁ、今度はもっと早く言ってよね」

 

ダイヤ「まったく…素直じゃないんですから」

 

 

 

千歌「それに、ニュースやネットに出てるって言うことは…」

 

曜「入学希望者も…!!」

 

梨子「これだけの人が見て、応援してくれる人がいる!」

 

千歌「鞠莉ちゃん!今、人数は!?」

 

全員が鞠莉の方を見る。鞠莉は理事長専用のパソコンで今現在の入学希望者の人数を調べていた。誰もが、学校を救える…そう確信していた

 

 

 

 

ダイヤ「………鞠莉さん?」

 

鞠莉「………」

 

善子「え?どうしたのよ?」

 

鞠莉「………」

 

梨子「嘘…」

 

ダイヤ「まさか…」

 

鞠莉「いや、大丈夫よ!パソコン、フリーズしているだけよ!うん…大丈夫よ…」

 

 

果南「鞠莉」

 

鞠莉「…果南」

 

果南「正直に言って。今、何人?」

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「85人。初戦前と…変わってない…」

 

 

 

 

 

 

そんなことがあるのだろうか、全国から注目され、浦の星の名、サッカーの実力は広まっているはず…なのに、何も変わっていない。期限は今日の日付をまたぐまでである

 

 

 

 

千歌「………」

 

曜「千歌ちゃん…」

 

ダイヤ「まだ時間はありますわ。信じて、待ちましょう」

 

 

 

千歌「……ねえ、曜ちゃん」

 

曜「千歌ちゃん?」

 

 

千歌「大丈夫だヨね?……ほンとニ」

 

曜「!!!?」

 

 

今の千歌は完全に様子がおかしい。曜は千歌を落ち着かせるために抱きしめる

 

 

曜「うん、大丈夫だよ…」ギュッ

 

梨子「千歌ちゃん、少し休んだ方が」

 

 

 

 

鞠莉「お願い……あと、15人…」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 0時 ー

 

 

梨子「募集、終了…」

 

 

ダイヤ「時間切れ…ですわ」

 

 

ルビィ「そんな…あと少しなのに」

 

 

善子「もう、どうにもならないの!?」

 

 

鞠莉「今頃もう、統合の手続きに入ってる」

 

 

花丸「じゃあ…」

 

 

梨子「ほんとにもう、ダメってこと?」

 

 

 

全員、やれるだけのことはやった。毎日たくさん練習して、死ぬ気で走り回って、何回も鞠莉のお父さん、街に掛け合って統合を先延ばしにして、県予選優勝して、全国本戦でも、初戦を突破して…それでも

 

 

 

 

 

 

 

千歌「足りなかったのかな…」

 

 

 

果南「千歌?」

 

千歌「もっと、私、頑張れたんだよね?まだ、足りなかったんだよね?ごめんね、私…もう、取り返しが…」ズキッ

 

果南「千歌!!」

 

ルビィ「そんな!千歌さんのせいじゃ」

 

善子「それに、これ以上ないってぐらい、頑張ってきたじゃない!!」

 

 

 

千歌「ははは、もっと私が…頑張ってレば…あはハ…学校、なクな… ズキッ!!!!!!!!

 

 

 

曜「!!!?」

 

梨子「千歌ちゃん!!!?」

 

 

 

 

 

千歌「うあぁ…痛い…いだい……」ズキズキズキ

 

 

千歌は頭を抱え込み、その場に倒れ込んだ。何が起きているのか理解するのに遅れている中、北也が千歌に駆け寄る

 

 

 

 

 

北也「おい、ダイヤ。ホテルの人を呼んでこい!あと、救急車」

 

ダイヤ「あ、わかりましたわ!」

 

 

一気に慌ただしくなるミーティングルーム。曜達が必死に千歌に声をかけるも、千歌の頭痛は治まらない

 

 

 

 

千歌「(痛い…痛い…なんなの…この痛み…もう、嫌だ)」ズキズキズキ

 

 

千歌「(あ、まただ…目の前が真っ暗になっていく…なんか、何かに、支配されるよう…な)」

 

 

 

 

 

そのまま千歌は意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、千歌は診断の結果、試合による疲労、廃校決定による精神的ショックで起きた頭痛だ。という診断を受けた。千歌の事もあったので午前の練習は中止、練習は午後からという事になったのだが…

 

 

 

 

 

 

 

果南「やっぱり、私はちゃんと考えた方がいいと思う。本当に、このまま全国本戦を戦い続けるのか、それとも…」

 

鞠莉「みんな、考えて欲しい。午前、千歌っちが病院から戻ってくる間、今後、どうしたいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?ここはどこ?

 

 

……ここって、県予選のスタジアム?

 

 

 

千歌「また私、ここに来たんだ…」

 

 

千歌は立ち上がりグラウンドを見渡す。前と同じく、誰もいない

 

 

千歌「……廃校か…」

 

 

 

 

 

 

 

「救えなかったね」

 

 

 

千歌「え…」

 

 

 

私は後ろを振り返る。この前は確か、曜ちゃんがいたはず…が、今回は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チカ「学校、救えなかったね♪」

 

 

 

 

私だった

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「え、私?」

 

 

チカ「うん!チカだよ!」

 

 

千歌「なんで…私がもう1人?」

 

 

チカ「なんでって、今はそんなことどうでもいいじゃん!」

 

 

千歌「」

 

 

 

チカ「あぁ…固まっちゃったよ…もう、しょうがないなあ…」

 

 

 

 

私が私に近づいてくる。なんだろう、この千歌は私と同じ姿だけど…なんか、怖い…目が……濁ってる…

 

 

 

チカ「廃校になっちゃったね!」

 

 

…何でそんなに生き生きと言えるの?同じ自分なのに腹が立つ

 

 

チカ「なんでだと思う?」

 

 

千歌「なんで……なんでだろう…」

 

 

なんでか、そんなの私が1番知っている。私がもっと…

 

 

チカ「頑張らなかったから?」

 

 

千歌「……うん」

 

 

流石に同じ自分には誤魔化しきれないか…でも、知ってるならなんで、聞いたんだろう

 

 

 

 

チカ「自分がもっと頑張ってれば、サッカー上手ければ、もっと行動していたら、みんなを引っ張っていってたら」

 

 

知ってる

 

 

チカ「キャプテンなんて、肩書きだけだよね♪♪」

 

 

知ってるから……

 

 

 

チカ「みんな、私のこと、恨んで「やめて!!!!!!!」

 

 

 

チカ「……」

 

 

 

千歌「はぁ、はぁ、はぁ、全部、分かってるから……やめて…」

 

 

全部、分かってるよ…私が1番…

 

 

 

 

チカ「うーん、チカが思うにね」

 

 

チカ「他のメンバーは、全国本戦、諦めないよね♪♪」

 

 

千歌「!!」

 

 

そうだ…みんななら、全国への挑戦を、これまでの努力を、無駄にする訳ない

 

 

 

千歌「うん。最後まで、戦い抜くと思う」

 

 

チカ「そうだよねー。みんななら最後まで諦めないもんねー!でも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チカ「また足引っ張るの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「え…」

 

 

 

 

 

 

 

チカ「だってー、私のせいで廃校決定しちゃったんでしょ?このまま全国本戦に挑んだら、今度は…」

 

 

 

チカ「全国制覇の目標も、消えちゃうよ?」

 

 

 

 

 

そっか…そうだよね。相手もどんどん強くなっていくし、負けたら終わりだもんね。私が引っ張っていかないと、次もまた…

 

 

 

 

チカ「うーん…なやんでいるようだね?千歌ちゃん♪」

 

 

 

千歌「私…どうしたらいいの…」

 

 

 

もう、わかんない…私は果南ちゃんみたいに、みんなをまとめる力は無いし、鞠莉ちゃんみたいに、みんなを盛り上げる力も無いし、ダイヤさんみたいに、圧倒的なシュート力も持ってない

 

 

 

 

 

チカ「じゃあさ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チカ「私が力をあげよっか!」

 

 

 

 

 

 

千歌「力?」

 

 

 

 

 

チカ「そう!これからの試合に勝ち抜いていく力!どう?欲しくない?」

 

 

 

 

 

勝ち抜く…力、それがあれば、みんなを引っ張って行ける…私も力になれるよね

 

 

 

 

 

チカ「どうする?」

 

 

 

 

 

なんだろう。チカの目を見ていると、なんか吸い込まれそうな感覚になる……

 

 

 

 

 

 

 

千歌「うん。お願い。力を、ちょうだい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 病院 ー

 

 

 

 

 

 

「どわあああ!!!!!?」

 

 

「あれ?なんだ…夢か…」

 

 

少女がベッドから飛び起きる。時刻はお昼に近くなっていた

 

 

「それじゃあ、みんなのところに戻るかな?明日は、第二試合か…」

 

 

 

少女はベッドから降りると、病室から出る準備をする。すっかり元気になった少女は鼻歌交じりにスキップしながら、みんなの元へ向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、彼女の目は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チカ「あは♪♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

濁っていた

 

 

 

 




千歌ちゃん、大丈夫なんですかね?
なんか、こんな感じのキャラ、イナイレにもいましたよね。登場時、ほぼほぼ二重人格のあのイケメン君が。千歌ちゃんはそのキャラがモデルです


お知らせ
近いうちに、新しい小説を投稿しようかなと


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第2章 9話 「私達の答え」

お久しぶりです。期末テストがあったため、投稿が遅れてしまいました…3月中には決勝まで行きたいですね…

今回の話もかなり展開がはやいです(反省)




 

 

 

 

 

午後になり、練習開始の時間が近づく。千歌以外のメンバーはホテル近くのグラウンドに集合していた

 

 

 

鞠莉「みんな、思い思いの場所でよく考えられたかしら?」

 

ルビィ「うん!」

 

曜「バッチリであります!」

 

 

梨子「ちなみに、みんなどこに行ってたの?」

 

 

善子「試合会場で試合を見てたわ!」

 

曜「同じく!」

 

ルビィ「ルビィも、花丸ちゃんと!」

 

花丸「ずら!」

 

ダイヤ「わたくしも、むつさん達と」

 

果南「私は鞠莉とだよ?」

 

鞠莉「YES!!!」

 

 

 

 

梨子「え?」

 

ダイヤ「結局…」

 

果南「みんな考えてる事は同じってことかな」

 

花丸「なんかいてもたってもいられなくて…」

 

梨子「うん。私も気づいたら会場に」

 

曜「学校は救えなかったけど」

 

ダイヤ「わたくし達には、やるべき事がありますわね」

 

ルビィ「全国制覇…」

 

果南「それと、千歌達は輝きを見つけるんだよね」

 

曜「うん!私達だけの輝きを」

 

 

むつ「そして、浦の星のみんなの思いも!!」

 

ダイヤ「むつさん!」

 

 

よしみ、いつき、むつの3人はパソコンを持ちながらグラウンドへ。そしてとある映像を全員に見せる

 

 

梨子「これは…」

 

鞠莉「ビデオレターね」

 

花丸「あ!浦の星のみんなずら!」

 

 

そこに映っていたのは浦の星女学院の全校生徒と教職員の姿であった。全員が廃校決定を知っている

 

 

 

『 サッカー部のみんな! 学校を救って! 全国大会で優勝して!!』

 

 

全員「!!!!!!」

 

ダイヤ「みなさん…」

 

 

『 統廃合をなくすことだけが、学校を救うってことじゃないよ!!』

 

『みんなで話したんだ!統合は決まっちゃったけど、残せる!』

 

 

『『『名前を!!!!』』』

 

 

 

善子「名前…」

 

ルビィ「浦の星女学院の名を…」

 

 

『千歌達しかいないの!千歌達にしか出来ないの!!』

 

『浦の星女学院、サッカー部、その名前を大会の歴史に、大会のグラウンドに、永遠に残してほしい!!』

 

『サッカー部と共に、浦の星女学院の名前を!!』

 

『だから!』

 

 

 

 

 

 

『『『輝いて!!!!!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

全員の意見は固まった。戦い続けて、そして、全国の頂点に立って浦の星女学院の名と歴史を残す

 

 

 

鞠莉「でも、やっぱり…惜しいわね…」

 

ダイヤ「こんなに、ひとつになっている学校はなかなかありませんわよ?」

 

果南「だからこそ、優勝しなきゃね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「そうだよ♪ 優勝しなきゃだよね」

 

 

 

 

 

 

梨子「!!」

 

曜「千歌ちゃん!」

 

善子「体調はいいの?無理しないでよ?」

 

千歌「大丈夫!午前中しっかり休んだから!」

 

 

千歌「それよりも、勝つ!相手がどこの誰であろうと関係ない!絶対に優勝だよ!」

 

果南「そうだね」

 

花丸「流石千歌さんずら!」

 

ダイヤ「そうと決まったら」

 

曜「練習だぁぁーー!!」

 

 

「「「おーーー!!!!」」」

 

 

 

全員がグラウンドに入り、練習開始。明日の対戦相手は千歌以外、全員知っているので気合いが入る

 

 

曜「千歌ちゃん、明日の対戦相手はね」

 

千歌「どこなの?」

 

 

 

 

 

 

曜「幻影学園」

 

 

 

 

 

千歌「幻影…学園」

 

 

 

善子「あの高校は凄かったわ!思わず見とれてしまった…」

 

花丸「魔術のような技を使ってたね」

 

梨子「善子ちゃんが好きそうな高校だな〜って思ったわ」

 

善子「ちょっと!どういう意味よ!」

 

梨子「そのままの意味よ。堕天使さん♪」

 

 

善子「うにゃあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

曜「千歌ちゃん、絶対に勝とうね!」

 

千歌「……」

 

曜「?千歌ちゃん?」

 

千歌「う、うん!当たり前だよ〜」

 

 

曜は千歌が少しぼーっとしていたように見えたので少し心配になる。まさか、まだ治りきっていないのでは…

 

 

 

曜「千歌ちゃん?無理だけは、ダメだよ?」

 

千歌「大丈夫!さ、練習だよ!」

 

曜「う、うん…(変だなぁ…)」

 

 

曜「(一瞬、千歌ちゃんじゃない誰かに見えた…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チカ「♪♪♪」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 夜 ミーティングルーム ー

 

 

 

 

北也「みんなわかっていると思うが、次の対戦相手は幻影学園だ」

 

いつき「幻影学園はその名の通り、変幻自在の攻撃を得意とするチームです」

 

むつ「そのあまりのトリッキーな動きから「摩訶不思議、奇術師集団」と呼ばれていて、かなり有名らしいね」

 

 

曜「試合、見てたけど…ボールが消えたり現れたり…」

 

花丸「相手のチームも混乱していたずらね」

 

ダイヤ「あれをどう攻略するか、ですわね」

 

梨子「北也さん、何か方法はありますか?」

 

 

北也に幻影学園の攻略法を聞く。千羽山戦のような、的確な指示をしてくれるはず…

 

 

 

 

北也「うーん…現時点では何も言えないかな?」

 

梨子「え?」

 

ルビィ「そ、そんな…」

 

果南「ちょっとホントに監督?」

 

 

果南達が抗議するとすぐに、マネージャー達が止めに入る

 

 

よしみ「待って、果南さん!北也さんもたくさん考えたんだけど…」

 

むつ「県予選とか過去のデータを片っ端から調べても、有力な攻略情報は出なかったの」

 

果南「え?」

 

北也「幻影学園はな、浦の星と同じく今大会が初出場なんだ。有名な理由は、県予選で今日のような試合したからなんだ」

 

善子「そうだったのね」

 

 

いつき「多分、キーマンはこの選手」ポチッ

 

いつきはリモコンを操作し、プロジェクターに一人の選手を映す

 

 

いつき「幻影学園のキャプテン、真帆呂 麻志詠 (まほろ ましよ)この選手のシュートが1番厄介だと思う」

 

 

千歌「厄介な、シュート……ねぇ…」

 

 

ルビィ「………」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

そして、翌日 全国本戦2回戦目

 

 

 

梨子「千歌ちゃん、体調はどう?」

 

千歌「元気全開!バッチリだよ!」

 

ダイヤ「元気全開はいいですが、試合前にバテないでくださいね?」

 

千歌「うぅ、分かってます…」

 

 

会場へ移動しながらの何気ない会話。メンバーのほとんどが、千歌は大丈夫だと思っているのだが…

 

 

曜「…」

 

果南「曜ちゃん、どうかした?」

 

曜「千歌ちゃん、昨日、私達と合流してからたまに、ぼーっとしている時があるんだ…」

 

果南「ぼーっと…ね」

 

曜「もしかしたら、まだ無理してるんじゃないかなって」

 

果南「…そうだね。試合中に危なそうだったらすぐに交代させよう…」

 

曜「むつちゃん達には私から言っておくよ。やっぱり、選手登録しておいて正解だったね」

 

 

 

 

 

善子「クックック…相手が幻影を使ってこようとも、ヨハネの魔術に適うわけないわ!」

 

ルビィ「でも相手の技、今は攻略法が見つかっていないんでしょ?」

 

善子「そんなの関係ないわよ。全て、我が地獄の業火で焼き払って……ゴスッ!!

 

 

善子の頭に手刀が振り下ろされる。毎度毎度の事なので誰も突っ込まないが…

 

 

花丸「試合中に勝手な事をしたら…浄化ずらよ?」

 

善子「!? ずら丸!!浄化だけは…勘弁…」

 

ルビィ「よ、善子ちゃんを浄化!??」

 

花丸「最近、練習している新しいディフェンスの必殺技ずら!まだ未完成だから善子ちゃんに、付き合ってもらってるんだけど…」

 

善子「あの技を受けると、どんな邪気でも浄化されてしまうわ…危険よ」

 

ルビィ「それは、危険なのかな?」

 

 

 

北也「浄化ねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

『さぁ!全国高校女子サッカー大会 全国本戦の第2回戦は浦の星女学院 対 幻影学園だ!!!!』

 

 

ダイヤ「わたくし達は浦の星の全員の想いも背負っています!ここで負けるわけには行きませんわよ!!」

 

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

千歌「………」

 

 

 

 

『両チームとも今大会が初出場です! 浦の星女学院の適応力かそれとも、幻影学園の魔術ようなトリッキープレイが勝つのか、まもなく試合が始まります!』

 

 

 

 

 

センターフォワード 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 桜内梨子

左サイドバック 国木田花丸

右サイドバック 黒澤ルビィ

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

3-2-3

 

 

 

 

 

幻影学園

 

センターフォワード 不知火 幻子(げんこ)

センターフォワード 不知火 影子(えいこ)

トップ下 真帆呂 麻志詠

ボランチ 銅原

レフトミッドフィールダー 札野

ライトミッドフィールダー 小鳩

センターバック 暮内

センターバック 小津

キーパー 箱野

 

2-4-2

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーー!!!!!!

 

 

 

 

『試合が始まりました!先行は浦の星女学院、得意とする速攻で幻影陣内に攻め込んでいく!!』

 

 

 

梨子「曜ちゃん!」パス

 

曜「よっと、善子ちゃん!」パス

 

善子「ヨハネよ!!」

 

 

『ここで右サイドハーフの津島善子がコートの中心から、左サイドの渡辺曜のパスを受け取った!』

 

 

善子「あとは、センターバックを抜くだけよ!」

 

 

小津「簡単には抜かせないよ」

 

善子「抜いてやる!」

 

 

善子がドリブルで小津を抜きにかかる。上手くボールを操り、善子は小津を抜き去る

 

 

善子「行ける!!」ギラン

 

ルビィ「すごい!善子ちゃん!」

 

花丸「そのままシュートずら!」

 

 

小津「簡単には抜かせないと言ったはず」

 

小津「ー かげぬい ー」

 

 

善子「え……うわぁ!? ビターン!!

 

 

小津から伸びた影が善子の影を掴む。善子は急に足が動かなくなったので、地面に勢いよく倒れ込む

 

 

曜「善子ちゃん!?」

 

ダイヤ「あれは…痛そうですわね…」

 

 

善子「あーー!!なんなの!?」

 

 

『ボールを奪った幻影学園は前線にボールを繋ぐ!今ボールをキープしているのは、ボランチの銅原だぁ!』

 

 

梨子「私が行きます!」

 

梨子がディフェンスに入るも、銅原は動じるどころか、銅原が…二人にわかれる

 

 

梨子「え!?」

 

 

銅原「ー まぼろしドリブル ー」

 

二人に分かれた銅原は梨子の右と左を通過し、梨子を抜き去る

 

 

ダイヤ「ゴールが近いですわね…鞠莉さん!頼みましたわよ!」

 

鞠莉「OK!任せて!」

 

 

鞠莉が必殺技を放とうとした瞬間、小津は後ろへパスを出す。パスの相手は

 

 

真帆呂「……」

 

 

小津「お願いします!真帆呂さん!」

 

 

真帆呂「はあ!」

 

真帆呂の周りに人魂が現れ、その人魂達はボールに集まっていく

 

 

 

いつき「!!鞠莉さん!」

 

鞠莉「いつき!?」

 

いつき「その技を撃たせないで!!!!」

 

果南「鞠莉!真帆呂を止めて!」

 

真帆呂「もう遅い」

 

 

真帆呂「ー マボロシショット ー」

 

 

 

放たれたシュートはまるで大きな人魂のように、青白く光ながら…

 

 

 

 

消えた

 

 

 

 

鞠莉「嘘!?」

 

花丸「ボールはどこずら!?」

 

 

果南「ボールが消えた……!!」

 

 

消えたボールは鞠莉の後方から急に現れる

 

 

果南「な!?」

 

鞠莉「いつの間に!?」

 

 

果南が止めに入るために踏み込む。この威力だったら止められる。そう思っていた

 

 

果南「ー 真トライデント ー!!」

 

 

海皇の槍が人魂に刺さろうとした瞬間

 

 

果南「は?」スカッ

 

 

また、消えた

 

 

 

 

『ゴーール!!幻影学園、先制点だぁ! キャプテン、真帆呂のマボロシショットは浦の星でも止められない!!』

 

 

 

果南「ボールが消えるって、冗談でしょ?」

 

鞠莉「シュートブロックも、難しいわね…」

 

 

 

よしみ「監督、これは…」

 

北也「あぁ、あのシュートを止められない限り、浦の星は勝てないな…」

 

よしみ「そんな…どうしたら」

 

 

 

真帆呂「勝つのは私達。あなた達に私のシュートは止められない」

 

 

 

 

 

 

千歌「……」

 

曜「千歌、ちゃん?」

 

千歌「あ、曜ちゃん。お願いがあるんだけど…」

 

曜「お願い?」

 

千歌「うん。もし前半、無失点で終了したら……」

 

曜「したら?」

 

 

 

 

 

 

チカ「チカをフォワードにして欲しいんだ♪♪♪」

 

 

 

 

 




真帆呂 麻志詠は まぼろし (魔女)まじょ→まほろ ましよ
から来ています。



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第2章 10話 「幻影学園戦 その1」

今更ですが、実況の声のぬしは角馬王将さん、ラブライブの実況のお姉さん、どちらかはご想像にお任せします


チカちゃんが動くのは次になりそうです…




 

 

 

『浦の星ボールで試合再開です!点差は1、幻影学園は勝っているとはいえ、油断できないぞー!!』

 

 

 

 

 

「やはり、マボロシショットが厄介ですね」

 

「うーん…浦の星はどうするんやろ?」

 

「普通に幻影学園よりも多く点を取ればいいんじゃないの?」

 

「そう上手く行きますかね…」

 

「簡単なことだよ!相手に捕まらない速さで走って、バシッと決めるだけにゃ!」

 

「捕まらない速さですか…」

 

「どうやら、同じ考えを持っている子がいるみたいやな」

 

 

 

 

 

曜「ー ライトニングアクセルー !」

 

小津「くっ、かげぬいが追いつかない…」

 

ダイヤ「ナイスですわ!曜さん!」

 

曜「ヨーソロー!!」

 

 

『渡辺曜がセンターバックを突破!シュートチャンスだ!』

 

 

曜「うおぉぉぉ!」

 

曜「ー パルクールアタックV2 ー!!」

 

 

『渡辺曜の必殺シュート!幻影キーパー、箱野に迫る!』

 

 

箱野「ー キルブリッジ ー!」

 

 

曜「な!?」

 

 

『止めたァァァ!箱野のキルブリッジにより、浦の星の1点目とはなりませんでした!!』

 

 

箱野「こんなシュートでは点はあげられないなぁ…」

 

曜「……」

 

 

『再び幻影学園の攻撃になったぞー!浦の星、今度は真帆呂を止めることは出来るのか!?』

 

 

鞠莉「真帆呂をマークして!シュートを撃たせないで!」

 

ルビィ「はい!」

 

真帆呂「くっ!?(この赤髪、小柄なわりに強いな…)」

 

 

『浦の星女学院、真帆呂を完全にマークすることによりシュートを封じる作戦だぁ!しかし、それにより黒澤ルビィのポジションががら空きになっている!』

 

 

幻子「私達、舐められたものね。姉さん!!」

 

影子「行くわよ!」

 

幻子、影子「ー ジョーカーレインズ ー!」

 

 

『出たーー!!不知火姉妹の必殺シュート、ジョーカーレインズ!これは強力なシュートだ!!』

 

 

果南「マル!お願い!!」

 

花丸「任せるずら!」

 

花丸「ー もちもち黄粉餅 改ー!!」

 

 

果南「これなら、行ける!」

 

果南「ー 真トライデントォォ ー!!」ドガァン!!

 

ダイヤ「花丸さん、果南さん、助かりましたわ!」

 

果南「よし、まずは同点だよ!」

 

 

 

 

真帆呂を封じることにより失点を防ぐ浦の星女学院。しかし、魔術のようなディフェンスに阻まれてなかなか得点出来ないまま、前半は終了に近づいていた

 

 

 

札野「ー ディメンションカット ー!」

 

ダイヤ「な!?ボールが…」

 

 

 

影子「ー トリックボール ー」

 

善子「う、嘘でしよ?ちょっと、待って!?イヤァァ!!?……あれ?」

 

影子「ふふふ♪」

 

善子「巨大なボールは???」

 

 

梨子「みんな、幻影学園の技に翻弄されてる…今のままじゃ…」

 

 

影子「真帆呂!」パス

 

 

『おおっと!ここで幻影学園、真帆呂にボールが渡る!真帆呂をマークしていた黒澤ルビィはどうしたんだ!?』

 

 

鞠莉「ルビィ!?」

 

 

ルビィ「くっ…どいて!」

 

幻子「それは無理ね」

銅原「そこでよく見てなさい!」

 

 

鞠莉「な!?ルビィがダブルマーク!?」

 

 

『幻影学園、二人がかりで黒澤ルビィをマーク! 真帆呂をフリーにしたぁ!!』

 

 

 

真帆呂「シュートさえ撃てればこっちのものだ」

 

『真帆呂がシュートの体制に入る!浦の星ディフェンス、シュートを放つ前に止められるか!?』

 

 

鞠莉「ー グラウンドスイーパー ー」バッ!

 

 

真帆呂の前方にグラウンドスイーパーを仕掛ける。鞠莉はシュートを撃たれても、消える前に爆発で仕留めようとしていた

 

 

真帆呂「ー マボロシショット! ー」

 

 

鞠莉「シャイニー!!」

 

 

ドガガガガアァン!!!!

 

 

『これは強力な爆発だ!!マボロシショットは狙い通り、防ぐことが出来たのか!?』

 

 

花丸「……」

 

 

 

 

 

「…すごい爆発ですね」

 

「似たような技、A‐RISEが使ってたにゃ!!」

 

「これならマボロシショットもただではすみませんね」

 

「…うーーん…多分」

 

 

 

 

 

花丸「ダメずら」

 

果南「え?」

 

 

ピーーーーーー!!

 

 

 

『おぉっと!?審判の笛がなったぞー!審判はゴールを指さしている……あ!!ボールはなんと!!』

 

 

 

果南「全く…分からなかった…」

 

鞠莉「…なんで……」

 

 

 

『ゴールだ!!浦の星女学院、2点目もマボロシショットにより決められてしまったー!!マボロシショットは爆発でも止められない!!』

 

 

『ここで前半終了!0-2で浦の星女学院、厳しい戦いになりました!』

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

善子「なんなの!? あのシュート、反則じゃない!!」

 

鞠莉「消える球を取るのは…無理よね?」

 

ルビィ「…ごめんなさい…ルビィが、しっかりマークしていなかったから…」

 

花丸「ルビィちゃん、ダブルマークは仕方ないずら」

 

梨子「しかも、私達は相手のディフェンスに翻弄されてて、シュートまで持っていけてない…」

 

果南「このままじゃ、ヤバイよ」

 

むつ「…監督」

 

 

全員が北也を見る。何か攻略法を、そう目で訴えるが…

 

 

北也「消える球とか冗談だろ」ブツブツ

 

 

頭を抱えて唸っていた

 

 

ダイヤ「あの…ホントに不味いのでは?」

 

善子「こうなったら…ヨハネの勝利への儀式を!!」

 

花丸「こんなところで儀式…呆れるずら…浄化決定ずらね」

 

善子「ちょ、浄化はホントにやめて!あれ、堕天使の全てが浄化されちゃうから…」

 

 

北也「浄化?」

 

 

梨子「北也さん?」

 

 

北也「マボロシ…人魂…花丸…浄化……」バッ!

 

 

北也は急に立ち上がり、花丸の方へ駆け寄る

 

 

曜「うわ!?びっくりした」

 

北也「花丸!!」

 

花丸「ずら!?」

 

北也「もしかして…」

 

 

 

北也「マボロシショット、浄化出来るか!?」

 

 

 

いつき「マボロシショットを…」

 

全員「浄化!?」

 

 

北也「ああ!相手は人魂だ!浄化できないはずは無い!」

 

花丸「え?え…できる保証はないし、まだ、未完成の技だから…」

 

北也「だが、これ以外に方法はないとおもうんだ!」

 

花丸「でも……」

 

 

善子「ずら丸、やるのよ」

 

花丸「!善子ちゃん」

 

善子「アンタの練習、ずっと付き合ってあげたじゃない。何回も浄化されかけて…大変だったのよ?」

 

果南「私からもお願いするよ」

 

花丸「果南ちゃんも?」

 

果南「花丸ちゃんさ、マボロシショット、消えた後どこにあるか、分かるでしょ?」

 

 

ルビィ「え!?」

 

鞠莉「本当なの?花丸?」

 

 

花丸「少しだけ…気配を感じるずら…」

 

 

千歌「流石…」

 

曜「お寺の子、だね」

 

 

果南「花丸ちゃん、ボールが消えても気配で場所が分かっている。花丸ちゃんじゃなければあのシュートは止められない…」

 

ダイヤ「わたくしからもお願いしますわ。花丸さん、必ず逆転しますわ。その為には…貴方の力が」

 

 

花丸「………」

 

ルビィ「花丸ちゃん…」

 

 

花丸「……分かったずら。ダメ元になっちゃうけど…」

 

 

 

 

花丸「マボロシを捕らえるずら」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

『さあ!まもなく後半が始まります!浦の星女学院は2点リードされている状態。マボロシショットを止められない中、どうやって戦うのでしょうか!?』

 

 

 

 

 

 

よしみ「…後半、ですね」

 

いつき「花丸ちゃん、頑張って!」

 

むつ「……」

 

よしみ「むつ、どうしたの?」

 

むつ「いや、千歌のことで…」

 

いつき「…あぁ、千歌か。びっくりしたよね?最初聞いた時は」

 

よしみ「うん…まさか、千歌が急に曜とポジションを変わるなんて言うなんて……」

 

むつ「千歌、少し怖かったね」

 

いつき「確かに」

 

よしみ「今まで、見たこと無かったような?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チカ「ふふふ…」

 





おまけ

曜「北也さんが最初、花丸ちゃんにお願いした浄化って、『破ァァァァ!!』ってやつかと思ったよ」

梨子「漫画の読みすぎよ…花丸ちゃんが寺生まれだからって…」

花丸「できるずらよ?」

曜、梨子「え!?」ギョッ

花丸「曜ちゃん達が毎晩、何事も無くぐっすりと眠れるのは…」


花丸「マルのおかげかも♪♪」


曜「何事も…無く?」ガクガク

梨子「それってどういう?」ガクガク


花丸「ご想像にお任せするずら♪」






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第2章 11話 「幻影学園戦 その2」

チカちゃんが完全に動き出しますね。

ちなみにチカちゃんはシュート技とドリブル技を持っています





 

 

 

 

 

『全国高校女子サッカー大会 全国本戦 浦の星女学院 対 幻影学園の後半戦、間もなく始まります!ここで浦の星女学院はポジションのチェンジがあるようですが……左サイドハーフの渡辺曜と…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「千歌さん、何故曜さんとポジションの交換を?」

 

千歌「実はちょっとやりたいことがあって…」

 

ダイヤ「やりたいこと…とは?」

 

千歌「……」

 

ダイヤ「千歌さん?」

 

千歌「ま、まあ見ててください!そしたら分かると思います!」

 

ダイヤ「はぁ…」

 

 

梨子「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

果南「ディフェンス、気を引き締めて!」

 

 

「「「はい!!!!!」」」

 

 

 

 

 

『後半戦が始まりました!点差は2、浦の星はかなり厳しい戦いになっています!対する幻影学園は不知火姉妹が息の合ったパスで上がっていく!!』

 

 

 

 

 

 

影子「幻子!」パス

 

幻子「このまま突破しよう」

 

 

 

幻子「ー マボロシドリブル ー」

 

 

 

梨子「確率は2分の1ね…」

 

梨子「ー アインザッツ ー!!」

 

 

『桜内梨子がアインザッツでボールを奪いに行く!』

 

 

幻子「残念♪」

 

 

『が、しかし桜内梨子が技を放った不知火幻子はマボロシの方だった!!』

 

 

幻子「このままシュートを「あまいです!」ズザー!

 

 

幻子「!!!?」

 

 

 

 

『おおっと!桜内梨子を突破した一瞬のすきをつき、黒澤ルビィがスライディングでカットだァ!』

 

 

 

梨子「ルビィちゃん!!」

 

鞠莉「助かったわ!」

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!」パス

 

 

 

ルビィのロングキックでいっきに最前線へとボールが渡る。しかし、幻影学園のディフェンスにより、なかなかシュートまで持っていけない

 

 

暮内「ー デーモンカット ー!!」ズバ!

 

ダイヤ「くっ…善子さん!」パス

 

 

ダイヤがデーモンカットをギリギリ避けながら善子にパスを出すも、そのパスは狙われていたため、カットされる

 

 

小津「もらった!」

 

 

ダイヤ「な!?」

 

善子「まずっ!?」

 

 

 

『ここで幻影学園にボールが渡る!浦の星、再びディフェンスだ!』

 

 

 

鞠莉「…!? 誰か!真帆呂を!!」

 

 

真帆呂がフリーでパスを待っていた。このままではまた、マボロシショットを撃たれてしまう

 

 

小津「真帆呂さん!」パス

 

 

真帆呂「…とどめを刺す」

 

 

真帆呂「ー マボロシショット ー」

 

 

 

鞠莉「来たわよ!」

 

 

果南「花丸ちゃん!お願い!!」

 

 

花丸「………」

 

 

 

 

花丸「(集中するんだ…ボールの気配を感じとるんだ…消えるとはいえ、相手は人魂をまとったボール。微かだけど、ボールの雑念が……微かに…)」

 

 

 

 

 

ヒュン

 

 

 

 

 

 

花丸「そこずら!!!!!」バッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「ー ゴートゥーヘブン ー!!」

 

 

 

 

花丸の斜め後ろに光の柱が立つ。それはまさに天の光、その光の中には消えたはずのボールが…

 

 

 

むつ「!!やった!」

 

いつき「成功した!!」

 

 

真帆呂「!!!!!?」

 

幻子「え……」

 

小津「あの、マボロシショットが…」

 

 

善子「浄化できたわね」

 

 

 

 

『な、なんと!? 防御不可能だと思われていたマボロシショットを、国木田花丸の新必殺技が捕らえたああ!!!!』

 

 

 

花丸「やったずら!!」

 

鞠莉「マボロシショット、攻略ね」

 

果南「あとは…」

 

ダイヤ「わたくし達の番ですわね!」

 

 

浦の星女学院の攻撃。そろそろ1点目を決めなければ、時間的にも逆転は厳しくなる

 

 

札野「行かせるか!」ズザー!

 

善子「曜!」パス

 

曜「ナイス!善子ちゃん!」

 

 

『浦の星女学院、パスが繋がっていく!あとはセンターバックを越えれば、ゴールは目の前だ!!』

 

 

曜「あのディフェンスは厄介だよ…」

 

 

暮内「また止めてやる!!」

 

 

曜「一か八か、スピードで…」

 

 

 

 

 

「曜ちゃん。ボールちょうだい♪」

 

 

曜「!!」

 

 

曜は呼ばれた方を見る。すると、そこには幼馴染の姿があった

 

 

曜「千歌ちゃん!!」パス

 

 

「……」

 

 

 

『渡辺曜が高海千歌にボールを渡した!高海千歌はセンターバックを突破することが出来るのか!?』

 

 

「ふふっ…」

 

曜「千歌、ちゃん?」ゾクッ

 

曜「(なんだろう、千歌ちゃんの様子が…おかしい)」

 

「ふ、ふふふっ、ふふふフふフふふふ」

 

 

急に笑い出した幼馴染は、そのまま走り出す

 

 

 

 

 

チカ「さあ、行くよ」バッ

 

 

曜「千歌ちゃん!!」

 

 

チカはDFへと突っ込んでいく

 

 

暮内「ー デーモンカット ー!!」

 

 

衝撃波がチカを襲う。が、

 

 

 

 

 

 

チカ「そんなの……

 

 

 

 

 

 

 

 

効かねえぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」ドガァン!

 

 

 

暮内「うわぁ!!!?」

 

 

曜「!?」

 

梨子「千歌ちゃん!?」

 

 

 

『高海千歌!なんと、暮内のデーモンカットを強引に吹き飛ばし、突破したぁ!!』

 

 

幻子「何!?あの子…」

 

真帆呂「まずいぞ、箱野!」

 

箱野「任せろ」

 

 

 

チカ「その自信、すぐにぶち壊してあげる♪♪」

 

 

チカはゴールの前まで来ると、ボールにオーラを込め始める

 

 

チカ「はぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

善子「え?何あれ…」

 

ルビィ「新必殺技?」

 

よしみ「でも、今までの千歌の技とは、雰囲気が全然違う…」

 

むつ「オーラが…真っ黒…」

 

北也「……まさか…」

 

 

 

 

「!!!!!?」

 

「にゃ!?あれって…」

 

「これは…大変なことになったなぁ…」

 

 

 

 

 

 

チカ「いくよ…止めてみなよ…チカのシュート」

 

 

 

 

 

 

チカ「ー ブラックアッシュ ー!!」ドガァン!

 

 

 

チカが放ったシュートは、誰が見てもわかるほどの巨大な力、そして底なしの闇であった

 

 

 

箱野「な、なんだ!?あのシュートは……ぐあぁぁ!!!」ドゴオォォン!!

 

 

 

『ゴール!!!!高海千歌の新必殺技により、2対1です!しかし、なんて強力なシュートなのでしょうか…私も放送席から見ているのですが、鳥肌がおさまりません!』

 

 

チカ「あれ?止めるんじゃなかったの?チカのシュート」

 

箱野「はぁ、はぁ、はぁ…なん、なんだ?あれは…」

 

チカ「何って、ただのシュートだよ♪ まだまだお見舞いしてあげるから、楽しみにしててね♪」

 

 

 

ダイヤ「なんですの…あのシュート…」

 

果南「とんでもない威力だね」

 

梨子「今はひとまず、千歌ちゃんにパスを集中させて、得点してもらうのがいいかも…」

 

ダイヤ「…そうですわね…しかし…」

 

鞠莉「あれは…本当に、千歌なの?」

 

 

 

 

 

 

 

「想像以上でした…まさか、他にもいたなんて…」

 

「これ、かなりまずくない??」

 

「そうやな。ひとまず他のみんなと監督に伝えなければ」

 

「そうですね。このままでは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「高海千歌の命が危ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからの試合は一方的であった

 

 

 

 

 

真帆呂「ー マボロシショット ー!」

 

 

花丸「ー ゴートゥーヘブン ー!」

 

 

マボロシショットは花丸の新必殺技により、完全に無効化され

 

 

 

 

 

チカ「ー ブラックアッシュ ー!!」ドガァン!

 

 

 

チカがシュートを撃って得点する

 

 

 

 

『決まったああ!!高海千歌、2得点目!これで試合は振り出しに戻ったぞぉ!2対2です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし…私です…はい。大変なことになりました…」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

『ここで試合終了ー!! 後半から高海千歌の快進撃により、浦の星女学院、幻影学園に勝利しました!!!!』

 

 

 

花丸「か、勝ったずら〜…」

 

花丸は試合終了のホイッスルと同時にコートに座り込む。後半から、花丸は何度も新必殺技を放ち、大活躍であった

 

 

善子「未完成って言った割には、調子良かったじゃない」

 

花丸「善子ちゃん…」

 

善子「ナイスディフェンスだったわよ」スッ

 

善子が手を差し伸べて、花丸を起き上がらせる

 

 

花丸「うん!ありがとう、善子ちゃん!」

 

善子「だから、ヨハネだってば!!」

 

 

 

 

 

 

むつ「よかった…勝てた…」

 

いつき「やりましたね!監督!」

 

よしみ「…監督?」

 

北也「………」

 

北也は顔を真っ青にしながら、ベンチに座っていた

 

 

よしみ「ど、どうしたんですか、監督?」

 

北也「…いや、何でもない」

 

北也「(何故……千歌まで…)」

 

 

 

北也と同じく、千歌の異変を感じ取った者はコートの中にもいた

 

 

 

梨子「果南さん…」

 

果南「梨子ちゃん…」

 

梨子「千歌ちゃんのことで…あれって…」

 

果南「うん。明らかに様子が変だったね…」

 

曜「私、あんな千歌ちゃん、見たことないよ…」

 

鞠莉「……」

 

 

 

 

浦の星女学院は不安を背負いながらも、次の戦いへと駒を進めた

 

 

 

 

 

千歌「私が…1番、頑張るんだ…これからも…」

 

 

 

 




ブラックアッシュ
シュウの必殺シュートです。この技にはゲームでもお世話になりました…アッシュは斧って意味らしいです。「黒い斧」かっこいい…

ゴートゥーヘブン
天空の使徒が使う必殺技です。光の柱が出現し、ボールを持っている選手ごとのみこむという…このお話では、シュートブロックも持っていることにしています



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第2章 12話 「未完成のノート その1」

今年も花粉が凄いらしいですね…
家族全員が花粉症で、自分もそうなんですが、自分だけまだ花粉症の症状が出てないんです…いつ来るのか分からないので恐ろしいですね
(花粉蛍光を見た時は生き地獄かと思いました)

やはりどのアニメでもノートの存在はでかいですね




 

 

 

 

幻影学園に勝利した日の夜、浦の星女学院サッカー部は再び、ミーティングルームに集合していた。内容は次の対戦相手になるであろう高校の説明であった

 

 

むつ「明日の試合で、私達が戦う対戦相手が決まります」

 

いつき「でも、対戦相手は決まったのも同然…だよね?」

 

ダイヤ「優勝候補筆頭ですからね…」

 

梨子「優勝候補、という事は…」

 

ダイヤ「去年の全国大会では、準優勝でした…」

 

曜「準優勝…ってことは、全国で2番目に強いってことだよね?」

 

鞠莉「単純に考えれば、そうなるわね」

 

 

 

果南「………"聖堂山高校"……」

 

 

よしみ「聖堂山高校の一番の特徴は、やっぱり『選手全員がエースストライカー』と呼ばれるほどの高い攻撃力」

 

むつ「県予選や本戦の試合のデータを見てみたけど…得点率が凄まじかった…」

 

よしみ「確か、現時点での全国高校女子サッカー大会の得点王は…」

 

いつき「聖堂山高校キャプテン、黒裂真命(くろさきまこと)」

 

 

ダイヤ「黒裂真命…」

 

鞠莉「かなり有名な選手だもんね」

 

善子「…正直言って、勝算はあるの?」

 

むつ「…勝算は……」

 

 

静寂した空気がミーティングルームに漂う。確かに善子の言う通り、優勝候補筆頭のチームに本戦初出場の高校が勝とうなんて、無謀なのかもしれない、が、

 

 

北也「作るんだ」

 

むつ「監督?」

 

鞠莉「作る…とは?」

 

北也「作るんだよ。勝算を。戦略で」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

その後、北也は明日の練習で戦略の詳細は伝えるとのことで、ミーティングは終了した

 

 

 

花丸「ルビィちゃん!ホテルのお店で売っているデザートを食べに行くずら!」

 

ルビィ「デザート!?行こ!花丸ちゃん」

 

善子「ち、ちょっと、私も行くわよ!」

 

 

ダイヤ「寝る前です。食べ過ぎないでくださいね?」

 

 

1年「はーい!!」

 

 

1年生達に続き、メンバーがそれぞれの部屋に戻っていく。残ったのは3年生の3人だけになった

 

 

 

 

ダイヤ「……どう思いますか?鞠莉さん、果南さん」

 

ダイヤは鞠莉と果南に問いかける。北也が例え聖堂山高校に対抗できるほどの戦略を考えたとしても、果たしてそれだけで

 

 

鞠莉「勝てるのかってことね」

 

果南「…相手は全員が優秀な選手、真っ向から立ち向かって行っても、通用するかどうか…」

 

ダイヤ「決して浦の星が弱い訳ではありません。しかし、相手の選手がわたくし達の劣っている部分を見つけ出し、そこを付いてきたら…」

 

鞠莉「完全にやられる…」

 

ダイヤ「はい…」

 

果南「ならどうすれば…このままじゃ、何も手が無くなる…」

 

鞠莉「いえ…」

 

 

 

鞠莉「手ならあるわ」

 

 

ダイヤ「??」

 

果南「?どういうこと?」

 

鞠莉「まだ持っているでしょ?」

 

 

 

 

 

鞠莉「あのノートを」

 

 

 

ダイヤ「あの、ノート?」

 

 

果南「……!!?まさか、あのノートって」

 

鞠莉「YES。未完成のノートよ」

 

ダイヤ「!!?しかし、あれは…」

 

果南「もしあったとしても、まさか、使うなんて言うんじゃないよね?」

 

鞠莉「まさか、使わないなんて言うんじゃないよね?」

 

果南「………」

 

鞠莉「状況は分かっているでしょ?それを使わなければ…浦の星は勝てない」

 

果南「でも…」

 

鞠莉「私、あの頃と気持ち、変わってないよ」

 

ダイヤ「…今回はわたくしも鞠莉さんに賛成ですわ。わたくし達が勝つために、やることは全てやる。それが生徒会長としての義務だと思っていますので」

 

ダイヤ「それに、この試合で負ければそれで終わりですわ」

 

果南「…でも、出来ることじゃない!未完成なんだよ?出来ないから、未完成のノートとして書いたんだよ?」

 

鞠莉「そんなことは無い。あの時も、もう少しだった」

 

ダイヤ「それに、ノートとして残したのは、いつかできるようにするため。それが、今なのではないのですか?」

 

果南「違う! だって、それで未完成のまま無茶して、2年前の県予選決勝で失敗して…それで…」

 

ダイヤ「負けましたわね」

 

鞠莉「でも今回はあの時以上の可能性を秘めているわ!やる価値はある」

 

果南「…ダメ…ダメだよ!!届かないものに手を伸ばそうとして、そのせいで何もかも失って、それを千歌達に押し付けて…」

 

 

 

北也「本当にそう思っているのか?」

 

 

ダイヤ「!北也さん…」

 

北也「3人がミーティングルームから出てこないと思って、様子を見に来たら…未完成のノートか…」

 

鞠莉「これがあれば、聖堂山高校にも対抗できます」

 

北也「…なぁ、果南。お前が2年前、サッカー部をやめた日を覚えているか?」

 

果南「サッカー部をやめた日…」

 

北也「サッカーをやめた日でもあるな」

 

 

―――――――――――――――

―――――――――

―――――

 

 

 

 

ー 2年前 ー

 

 

 

北也「明日の予約はっと…」

 

果南「……」

 

北也「お、果南、帰ってきてたのか。今日は早かったな」

 

果南「…うん」

 

北也「サッカー部も2年と1年だけになったんだろ?練習はいいのか?」

 

果南「…………お父さん」

 

北也「?」

 

果南「……私、サッカーやめたの」

 

北也「!!!!!?」

 

ははは…多分、人生で1番驚かされたかな。小さい頃からやってたサッカー。大好きだったサッカーを呆気なく、終わりにしていたんだからな

 

 

北也「な、なんでだ?理由は?」

 

果南「サッカー部、廃部したの。私もやる気無くなった」

 

北也「果南…」

 

果南「………」

 

北也「本当にやめていいのか?」

 

果南「……もう、無理なの」

 

 

その時の果南の顔はな、初めて見たな。悔しさとか悲しさがごちゃ混ぜになった、なんと言ったらいいか分からない顔をしていたんだ

 

 

―――――――――――――――

―――――――――

――――

 

 

 

北也「だが、果南はまたサッカーを始めた」

 

果南「……」

 

北也「またこの3人で、サッカーをやってるんだろ?いや、今は9人だな」

 

ダイヤ「マネージャーと北也さんを入れて、13人ですわね」

 

北也「…いいこと言ってくれるじゃねぇか」

 

鞠莉「(照れてる……)」

 

北也「果南、否定するな。過去を」

 

果南「!」

 

北也「お前らにとって、とても大切な思い出なんだろ?」

 

ダイヤ「はい」

 

鞠莉「そうね」

 

北也「だからこそ、やり遂げないと。あの時夢見た、浦の星サッカー部を完成させる時じゃないのか?」

 

果南「………」

 

鞠莉「果南」

 

ダイヤ「果南さん」

 

果南「……………」

 

 

 

果南「無理だと判断したら、すぐやめる。いいね?」

 

 

鞠莉「!!!」

 

ダイヤ「果南さん!!」

 

北也「決定だな」

 

 

こうして、果南達が2年前に残した想いを復活させる日がやってきたのである。しかし、その想いを形にするのは、とても難しいものであった

 

 

 

北也「ふむふむ」ペラペラ

 

ノートをめくる北也。ノートの中にはびっちりと必殺技や戦術などが記されていた

 

 

鞠莉「こんなのもあったわね」

 

ダイヤ「どれも懐かしいものばかりですわ」

 

北也「……あった」

 

北也はページをめくっていた手を止める。そのページは…

 

 

『ー 未完成 必殺技 ー』

 

 

ダイヤ「…これです」

 

鞠莉「2年前、完成しなかった技…」

 

果南「今思えばトンデモ技だらけだね」

 

北也「…だが、十分試す価値はある」

 

 

その時、4人しかいない空間にもう1人誰かが入ってきた

 

 

鞠莉「あれ?梨子、どうしたの?」

 

梨子「3年生が帰ってこないから、様子を…」

 

ダイヤ「あぁ、ご心配をお掛けしました…」

 

梨子「あの…何を見ているんですか?」

 

鞠莉「説明するわ」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

梨子「…凄いですね」

 

北也「梨子もそう思うか」

 

梨子「これだけの技…完成すれば確かに、聖堂山高校にも対抗できます。ただ…」

 

梨子「危険ですね」

 

鞠莉「そうね。一歩間違えたら怪我。または、試合中に失敗して、ピンチをまねく恐れもあるわ」

 

梨子「それでもやってみるべきだと思います。みんな想像以上に成長が早いです。明日の練習でなんとか…」

 

ダイヤ「不可能ではありません」

 

果南「さっきも言ったけど、危険だなと思ったらすぐやめるからね?」

 

北也「あぁ、気をつけよう」

 

 

大方意見はまとまった。明日、全員に未完成のノートを話す。そして、未完成の必殺技を習得する人を選び、習得させる

 

 

北也「じゃあ、明日も早いから、もう部屋に戻って寝た方がいい」

 

ダイヤ「そうしますわ」

 

鞠莉「うーん…私も花丸達が食べに行ったデザートを食べに行こうかしら…」

 

果南「こんな夜に?」

 

ダイヤ「太りますわよ?」

 

鞠莉「ノープロブレム…「あの、皆さん!!」

 

 

鞠莉、ダイヤ、果南「?」

 

 

梨子が4人を呼び止める。何かを言いたげな様子であるが

 

 

ダイヤ「梨子さん?どうかしたのですか?」

 

梨子「あの…3年生の皆さんに質問が…」

 

果南「質問?」

 

鞠莉「何?」

 

 

 

 

 

 

梨子「ルビィちゃんのことです」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

ー 数十分後 ー

 

 

 

 

千歌「…うーん、梨子ちゃん遅いなぁ…」

 

千歌「まだ、ミーティングルームにいるのかな?…ん?」

 

千歌がミーティングルームの扉の前に行くと、中から話し声が聞こえてきた

 

 

千歌「(なんだろう、まだ何か打ち合わせでもしているのかな?)」

 

千歌はそっと扉を開け、中を確認すると、千歌の耳に衝撃の言葉が飛び込んできた

 

 

 

 

 

 

「千歌ちゃんにシュートを撃たせないようにしよう…その為には…DFに下げて…」

 

 

 

 

 

 

千歌「え………」

 

 

 

 

 

 




化身を使えない聖堂山は強いのか?いや、強くするんだ

次回、あの子が再び浦の星の前に現れる!!!!




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第2章 13話 「千歌とチカと少女」

13話はいつもよりも長いです。だらだらと書いてしまったので、読むのに疲れてしまうかも知れません。申し訳ないです……

途中でカットしているところは後々で、必ずでます







 

 

 

 

 

 

 

ー 数十分前 ミーティングルーム ー

 

 

 

 

梨子「ルビィちゃんのことです」

 

ダイヤ「…ルビィのことですか?」

 

梨子「はい」

 

鞠莉「………」

 

果南「………」

 

梨子「3人は何か知っているんですよね?ルビィちゃんのことで、例えば……」

 

 

 

梨子「本当のチカラとか」

 

 

3人「!!!」

 

 

3人は少し動揺する。思ってたよりも単刀直入な聞き方をしてきたなと

 

 

梨子「ずっと、気になっていたんです。今までの試合の中で何回か見せた、圧倒的なプレイ、そして、シュートを撃たない理由」

 

ダイヤ「……」

 

梨子「理由は見ただけではわからない、もっと深いところにあるのでは?と、今まではあまり関わらないようにしてきました…でも、」

 

鞠莉「厳しい戦いがこれから続く中、チカラを隠しているのはどうかと。そういう事ね?」

 

梨子「流石です。その通りです」

 

鞠莉「ダイヤ」

 

ダイヤ「…鞠莉さん」

 

鞠莉「ここまで聞いてくるんだから、言ってもいいんじゃない?」

 

ダイヤ「!!しかし…」

 

果南「私も、そろそろ話すべきだと思うよ」

 

ダイヤ「果南さんまで…」

 

梨子「お願いします。同じ仲間として、悩んでいるルビィちゃんを放ってはおけません…」

 

ダイヤ「同じ仲間、ですか」

 

 

ダイヤはため息をつくと、話す決心をしたのか椅子から立ち上がる

 

 

北也「なあ、俺も聞いていいやつ?これ」

 

ダイヤ「北也さんも聞いてください。これは、わたくし達にも責任がある昔話ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、梨子はダイヤ達からルビィの過去を聞いた。話が終わったあと、梨子は涙目になりながら言う

 

 

 

 

梨子「ひどい…ひどすぎます。ルビィちゃんがあまりにもかわいそすぎます…」

 

ダイヤ「わたくし達の責任もありますわ」

 

果南「もっと早く気づいてたらね…」

 

鞠莉「それに、ルビィが途中でサッカーをやめたのは、私達のせい…」

 

梨子「……どうにかして、ルビィちゃんをFWに戻す方法はないんですか?」

 

ダイヤ「今のルビィには無いでしょう…」

 

梨子「…そんな……」

 

ダイヤ「何かきっかけが無い限りは…」

 

梨子「きっかけ、ですか?」

 

ダイヤ「はい。しかし、それはわたくし達では作れないような気がします…」

 

梨子「……」

 

果南「今のルビィちゃんに無理に言うのは避けよう。思った以上にデリケートな問題だからね」

 

梨子「はい」

 

 

 

北也「俺からもいいか?」

 

 

ダイヤ「北也さん?」

 

北也「全く話は違うんだが…」

 

北也「千歌の話を…聞いてほしい」

 

北也が話し始めた内容はルビィでも戦略でもなく、千歌のことであった。確かに今日の試合で少し様子がおかしかったなと、梨子達は思っていた

 

 

ダイヤ「様子がおかしかったこと、ですか?」

 

北也「あぁ、そうだ。あれはな」

 

北也「とても危険なものだ。このまま千歌を放っておくと、命に関わる」

 

梨子「!!!!」

 

3人「!!!!!!」

 

 

果南「命??」

 

鞠莉「冗談を言ってるようには、見えないわね」

 

北也「あぁ、俺は昔、今の千歌と同じ状態になり、二度とサッカーができなくなったやつを知っている」

 

梨子「二度とサッカーを……」

 

北也「誰かは名前を言えば、わかると思う。そいつの名前は…」

 

 

 

北也「高海美奈。千歌の母親で、俺と一緒にサッカーをしていた。そして、今の千歌と同じ状態になって、その結果……」

 

 

北也「二度とサッカーができない体になった」

 

 

 

 

ダイヤ「……!」

 

鞠莉「美奈さんが…サッカーができない体に??」

 

果南「確かに美奈さんがサッカーをしているところを、見たことない…」

 

梨子「じゃあ、今の千歌ちゃんは美奈さんと同じ状態になっているんですか!?」

 

北也「そうだ」

 

果南「じゃあ、どうすればいいの?」

 

北也「いいか?様子がおかしい時の千歌は簡単に言えば……二重人格の2人目の人格だ」

 

ダイヤ「二重人格…」

 

北也「美奈から聞いた。たくさんのプレッシャー、責任、ストレスが積みに積み重なって、いつしか負の感情がもう一人の人格として、現れるらしい…」

 

ダイヤ「責任やプレッシャー…」

 

梨子「千歌ちゃんは、責任やプレッシャーを感じ過ぎてそうなんたんですか?」

 

北也「それは本人に聞いて見なければわからない。だが、それらが要因であることは間違いない」

 

冷静に考えれば、思い当たることが次々と浮かび上がってくる。千歌はよく、自分がもっと頑張らないと、と言っていた。自分は普通だから、とも言っていた

 

 

ダイヤ「本人と直接話すのが1番ですわね」

 

果南「そうだね。千歌が1人で責任を背負ってるとしたら、なおさら早く」

 

北也「千歌を見ている限りでは、千歌がボールを持ち、シュートを撃つときにもう一人の人格が現れている…」

 

梨子「じゃあ、千歌ちゃんにシュートを撃たせないようにしよう…その為には…DFに下げて…」

 

ガタッ!!

 

 

果南「??」

 

ダイヤ「果南さん、どうしたのですか?」

 

果南「ん?何でもないよ?」

 

果南「(さっきそこに誰かいたような気がしたんだけど…)」

 

鞠莉「しかし…千歌が納得するかどうか…」

 

北也「千歌には時間がない…明日にでも言う必要がある…」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

夜とは、昼間とは違う世界を作り出す。昼間は人がたくさんで賑やかな、浦の星の宿泊ホテル近くのグラウンド。しかし、今は人一人いない、なんとも寂しいグラウンドになっていた。

 

そこへ1人、まるで何かから逃げるかのように少女が走ってきた

 

 

 

 

 

千歌「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

千歌は、先程聞いた言葉で頭がいっぱいだった

 

 

 

『千歌ちゃんにシュートを撃たせないようにしよう…その為には…DFに下げて…』

 

 

 

 

千歌「なんで?撃たせない?どういうことなの?」

 

 

千歌はあの場にいるのが耐えきれず、ホテルから飛び出してきたのであった

 

 

千歌「今日の試合だって、あんなに得点したのに…DFに下げる?」

 

千歌「千歌はシュートしちゃダメなの?それとも、千歌は……」

 

 

 

 

千歌「いらないのかな」

 

 

 

考えれば考えるほど滲み出てくる負の感情、ダメだ冷静じゃない。そう思ってても、冷静になんてなれるわけが無い

 

 

千歌「私がいらない?……いや、違う、私がいなくなったら、人数が足りなくなる…なら、」

 

千歌「まだ、実力が足りないってことだよね?」

 

 

 

グラウンドの隅にボールが落ちていた。誰かが忘れていったのだろうか…しかし、今の千歌にはそんなことどうでもいいことであった

 

 

千歌「そうだよ…私がまだまだ頑張れば、FWに戻してくれるよね?私が…1番、がんバレば」

 

 

 

シュート体制にはいる。オーラを込め始めた千歌の目は濁りはじめる。暗くて深い底なし沼のような…

 

 

 

 

チ歌「もっともっと、圧倒的な力を「待って!!!!」

 

 

千歌「!!!?」

 

 

シュートをしようとした瞬間、誰かに背後から呼び止められる。その声が、シュートを止めようとしたのか、チカを止めようとしたのかは分からないが…

 

 

 

千歌「あ、あの…あなたは?」

 

「私、あなたとお話がしたいの!」

 

千歌「え?私と?」

 

「正確には表のあなたと!」

 

千歌「!!表?」

 

多分、千歌のことなのだろう。この少女は私にチカというものが存在していることを知っている

 

 

千歌「何故…それを」

 

「うーん、あなたを見れば分かるよ!黒くてすごく重い負の感情、ビリビリと伝わってくるもん」

 

千歌「黒くて重い、負の感情…」

 

「うん!その事について、ちょっとあなたと話したいな〜って思って」

 

 

「高海千歌ちゃん!」

 

 

千歌「……何故、私の名前を?」

 

「何故って、それは千歌ちゃんが有名人だからだよ〜」

 

千歌「ゆ、有名人!?(名前呼びになってる…)」

 

「そうだよ?帝女を破った浦の星女学院のキャプテン、そして、今日見せた大量得点!かなり話題になってるよ?」

 

そんなに、自分は有名になっていたのか…でも、それでも…

 

 

千歌「足りない」

 

「え?」

 

千歌「いくら有名になったからって、それでも足りないんだよ!!チカラが、みんなをリードする、勝ち上がっていくチカラが!」

 

「……チカラね」

 

千歌「そうだよ。私は普通。平凡な人間。だから、人よりも努力しなければいけない。人よりもチカラを求めなきゃいけないんだよ!!」

 

千歌「しかも、私はリーダーとして、みんなを引っ張っていく立ち位置になってる…まだまだ足りない…みんなを引っ張っていけないで、何がリーダーなんだよ!何が、キャプテンなんだよ……」

 

 

「……チカラだけが、リーダーの持つべきものではない」

 

千歌「!」

 

「足りないよ確かに。今の千歌ちゃんには、確実に足りないものがある」

 

千歌「足りないもの…」

 

「それを今から教えてあげる」

 

 

 

そう言うと、少女はゴールへと歩いていく

 

 

 

千歌「な、何を?」

 

 

少女はゴールの前に立つと、千歌の方へと向き直り、構える

 

 

 

「来なよ」

 

 

千歌「!!」

 

 

「シュート。千歌ちゃんが持っている全力で撃ってきて」

 

 

「見せてよ。千歌ちゃんのチカラ」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「……PK、ですか?」

 

「まあ、そうだね。さ、いつでもどうぞ」

 

私に足りないものを教えるため、PK?

PKなんかで、分かるのだろうか…しかし、やらない事には始まらない

 

 

千歌「行きます…」

 

「…」

 

少女が再び構える。なんだろうこの存在感は、どんなシュートも通さない、巨大な壁の様だ

 

 

千歌「はあぁ!!!」バシュ!

 

ゴールの左上隅に千歌はシュートする。キーパーが1番苦手である場所だが……

 

 

「でりゃあ!!」バシッ!

 

いとも簡単に弾かれてしまった

 

 

千歌「……」

 

「うん!いいシュート!やっぱり上手いなぁ!千歌ちゃんは」

 

千歌「馬鹿にしてます?」

 

「いやいや、ホントにそう思ったからだよ!」

 

千歌「…」

 

チカのチカラを使えば、ゴールなんて簡単なのに…そう思った時だった

 

 

「じゃあ、今度はもう1人の千歌ちゃん。来なよ」

 

千歌「え!?」

 

もう1人、要するにチカのことであろう。少女はチカのシュートを受けると言っていたのであった

 

 

千歌「………」

 

「…」

 

チカ「本当にいいの???」

 

「(来た…)」

 

チカ「チカのシュート、知らないわけじゃないでしょ?」

 

「うん。知ってるよ」

 

チカ「知っててのご指名か〜…ふふふ♪♪」

 

チカはシュートの体制にはいる。今日の試合で、圧倒的な力を見せたあのシュートを、少女にぶつける

 

 

チカ「うおらぁ!!!!!」

 

 

チカ「ー ブラックアッシュ ー!!」

 

 

真っ黒いシュートが少女に迫る

 

 

「確かに強烈なシュートだね」

 

 

少女の目の前に、シュートが迫った瞬間

 

 

 

「!!」バッ!

 

 

 

 

 

 

チカ「は?」

 

 

 

 

「…」シュウウゥ…

 

 

 

ボールは少女の手の中で止まった

 

 

 

 

チカ「え?なんで?チカのシュートは?」

 

「止めた」

 

チカ「は?あの、強力なシュートを?」

 

「うん。止めた」

 

チカ「ど…どうやって…」

 

 

 

 

 

「ー 愛は太陽 ー 私の必殺技」

 

チカ「愛は太陽…」

 

「この技は、私の心、気持ち、想いの強さだよ」

 

チカ「そんな…こと…」

 

「いくらあなたが強いシュートを持ってたとしても、今のあなたじゃ…」

 

 

 

 

「私には勝てない」

 

 

 

 

千歌「……」

 

 

「それを、分かって欲しかった。闇のチカラを借りても、私には勝てない」

 

 

千歌「そんな…じゃあ、どうすれば…」

 

 

「よく考えて、自分の心に聞いてみて。自分はどうして、サッカーを始めたのか」

 

 

千歌「どうして、サッカーを…」

 

 

「それが分かったら、きっと千歌ちゃんは、今よりも強くなるよ♪」

 

 

千歌「……」

 

 

「じゃ、私は行くね」

 

そう言うと少女は、グラウンドから出ていく、少女の言葉には重みがあった

 

 

千歌「わからない…足りないものが…」

 

 

千歌はグラウンドに座り込み、少女を見送った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……思った以上に危険だったなぁ…まだ手、痛いや…」プルルルル

 

「あ、電話だ…」

 

「もしもし?」

 

『私です。終わったのですか?』

 

「うん。終わったよ。補導される前までには戻れるよ」

 

『そうですか…気をつけて帰ってきて下さいね?』

 

「分かってるよ〜」

 

『まったく…それで、高海千歌はどうでした?』

 

「思ったよりも闇が濃かった。もうかなり、危険な状態だと思う」

 

『監督も言ってました。手遅れになれば、高海千歌は二度とサッカーが出来なくなると』

 

「私がやれることはここまで、あとは千歌ちゃん自身だよ」

 

『こればかりは信じるしかありません』

 

「大丈夫だよ!千歌ちゃんなら乗り越えられる!私、信じるよ!」

 

『そうですか…しかし、浦の星女学院の次の対戦相手は聖堂山高校…』

 

「確か、去年の準優勝高校だよね?」

 

『はい。一筋縄では行きませんよ?』

 

「そうだね。明後日の試合は、千歌ちゃんにかかっている」

 

『……』

 

「見に行く?」

 

『はい。そのつもりです』

 

「なんやかんやで1番心配しているもんね♪」

 

『!!違います!それはあなたでしょう!?』

 

「ふふっ♪どうかな〜?」

 

『ぐぬぬ…帰ってきたら覚えておきなさい…』

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「私に足りないもの…って、なんだろう…」




ルビィちゃんのきっかけになることって、なんですかね?

そして千歌ちゃんに足りないものって?

だらだらは本当に申し訳ないです。反省してます



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第2章 14話 「未完成のノート その2」

新技が登場します!

技の説明はダイヤちゃんがしてくれるので、はぶきます

ここでお知らせです
はくたかさんが私のリクエストで、ルビィちゃんのお話を作ってくれました!詳細は面影の方で後日、紹介します。ぜひ、「面影ある人達が来た!」も読んでみてください!








 

 

翌日、グラウンドに集合した浦の星女学院サッカー部。全員集合したところで、昨日決まったことを伝える

 

 

鞠莉「みんなに聞いてほしいことがあるの」

 

善子「聞いてほしいこと?」

 

花丸「なんずら?」

 

鞠莉はノートをみんなの前に出す

 

 

曜「ノート?」

 

千歌「未完成のノート?」

 

ルビィ「!!(あれは……)」

 

 

鞠莉「そう。このノートには私たちが2年前、完成することが出来なかった必殺技が記されています」

 

むつ「必殺技!?」

 

よしみ「未完成、ということはそれほどまでに強力な…」

 

ダイヤ「威力なら充分、聖堂山高校とも戦えますわ」

 

曜「そんなのがあったんだね!」

 

果南「でも、未完成の技を無理してやろうとして失敗。決勝戦の敗北の要因になった…」

 

ダイヤ「技を使う選手の負担も大きいですわ」

 

果南「それでもやる?」

 

 

千歌「やろうよ!」

 

果南「千歌…」

 

千歌「今やらないでいつやるの?最初に約束したよね?精一杯足掻こうって!やれることは全部やるって!」

 

千歌が果南の手を握り、必死に訴える。千歌の言葉には力がある。だが、だからこそ

 

 

果南「(まったく…闇を抱えているように見えない…)」

 

それほどまでに千歌は周りにわからないように、感情を、悩みを、押し殺していたのだろうか……自分一人で抱え込んでいる…表向きではいつもの明るい高海千歌だが

 

 

果南「(これはすぐに手を打たないとね…)」

 

 

果南「分かった。じゃあまず、誰がどの技を覚えるか、決めておきたい」

 

善子「ちなみにいくつあるの?未完成の技は」

 

 

鞠莉「5つよ」

 

曜「5つ…」

 

ダイヤ「1つずつ説明していきますわね」

 

 

 

ダイヤ「1つ目『ラ・フラム』」

 

鞠莉「フランス語で炎よ」

 

善子「(かっこいい)」

 

ダイヤ「その意味の通りですわ。炎の壁を作り、相手をブロックします。欠点は…」

 

ダイヤ「自らの身を焦がすかのごとく、体力を大量に消費しますわ」

 

果南「ダイヤはこの技を数回使って、病院送りになったよね。確か」

 

花丸「ずら!?」

 

善子「病院送り…」ゾッ

 

ダイヤ「あれは…熱中症と重なったのですわ…」

 

 

 

ダイヤ「2つ目、行きますわよ」

 

果南「これは、私限定かな?」

 

千歌「ということは…キーパー技?」

 

ダイヤ「そうですわ。名は『海皇の三叉撃(さんさげき)』」

 

花丸「三叉戟が元になっているずら?」

 

果南「流石、花丸ちゃん。詳しいね」

 

善子「(かっこいい)」

 

ダイヤ「この技は『トライデント』の上位互換ですわ」

 

果南「まぁ、あまりにも体への負担が大きかったから、未完成のまま終わっちゃったんだよね〜」

 

善子「果南さんでも負担が大きな技って…」

 

ルビィ「想像したくないね…」

 

 

ダイヤ「3つ目はシュート技『コワレヤスキ』」

 

鞠莉「3人技。強力だけど、撃つのが難しいのよね」

 

善子「(かっこいい)」ゾクゾク

 

 

ダイヤ「4つ目はドリブル技『スプリントワープ』」

 

曜「名前からして速そうだね」

 

果南「ドリブルしながら、超加速。DFはだいたい置き去りにできるよ。ただ….」

 

ダイヤ「試合後、肉離れしますわ」

 

「「「………」」」

 

善子「ダメじゃん」

 

ダイヤ「だから未完成の技なのです!」

 

果南「いい?未完成の技の欠点をどうにかしない限りは試合では使えない。逆にこちらのピンチになるからね」

 

鞠莉「無理は禁物よ?本当に病院送りとかは勘弁よ?」

 

ダイヤ「それはもうやめてください…」

 

 

 

 

その後、誰がどの技を習得するか相談した結果……

 

 

 

果南「じゃあ、『ラ・フラム』がダイヤね」

 

ダイヤ「ある意味トラウマですわね…」

 

果南「『海皇の三叉撃』は私で…『コワレヤスキ』は…」

 

鞠莉「マリーと梨子、善子でやるわ」

 

梨子「頑張らないと…」

 

善子「(いや、ホントにかっこよすぎる…)」

 

果南「『スプリントワープ』は曜とルビィ」

 

曜「ヨーソロー!」

 

ルビィ「がんばルビィ!」

 

ダイヤ「そして、千歌さんと花丸さんには別にやってもらうことがあります」

 

花丸「は、はい!」

 

千歌「わかりました!」

 

 

こうして、それぞれ未完成の技の習得に取り掛かろうとした時、むつがあることに気づく

 

 

むつ「…あれ?ダイヤさん」

 

ダイヤ「むつさん、何ですか?」

 

むつ「未完成の技って5つですよね?1つ、足りなくなですか?」

 

曜「あ、」

 

花丸「確かに…」

 

ダイヤ「5つめ、ですか」

 

果南「あれは…今は無理だね。危険過ぎる」

 

千歌「説明だけでも…」

 

鞠莉「そうね。5つって言ったし、説明するべきよね」

 

鞠莉とアイコンタクトをとり、果南が説明を始める

 

 

果南「5つ目は…必殺タクティクス」

 

果南「『スリリングワンウェイ』」

 

 

千歌「スリリング、ワンウェイ…」

 

曜「戦慄の一方通行?」

 

善子「(いや、だから、かっこいいって…)」

 

 

ダイヤ「この技は…一歩間違えたらオウンゴール、または怪我をしますわ」

 

花丸「どちらも恐ろしいずら…」

 

果南「しかも、まだ1回も成功してないんだよね」

 

「「「…………」」」

 

善子「ダメじゃん」

 

ダイヤ「だから未完成の技なのです!」

 

 

梨子「なんか、デジャブね…」

 

 

 

 

 

 

こうして午前中、未完成の技を習得するために練習をしたのである。お昼休憩になり、昼食を取りながら午後の予定を説明することになっていた

 

 

 

 

ダイヤ「正直、ここまで出来るとは…皆さん、流石ですわ」

 

善子「何とか形にはなってきたけど…」

 

梨子「もう少し練習が必要ね…」

 

果南「でも、2年前よりもできるペースが早いよ。みんな」

 

鞠莉「この調子で行けば、聖堂山戦に間に合いそうね」

 

果南「…2年前は未完成で終わったけど…今は…」

 

ダイヤ「行けますわ。信じましょう」

 

 

それぞれが手応えを感じ始めていた。約半年前ぐらいの自分らが今の自分達の姿を見たら、絶対に驚くであろう

 

 

むつ「みんな、北也さんから言われた戦略の確認も忘れないようにね!」

 

ルビィ「北也さんの…あ!朝の」

 

花丸「説明してくれたやつずらね!」

 

善子「あれなら、大丈夫よ。みんな完全に習得したから」

 

 

未完成の技の割り振りを決めたあと、北也から聖堂山高校に対抗する戦略の説明を受けた。何回か練習し、問題ないと判断したため、あとは本番で実践することになった

 

 

よしみ「それじゃあ、休憩が終わったら練習の続きだね」

 

鞠莉「みんな、完全習得、頑張るわよ!!」

 

「「「おーーー!!!!」」」

 

 

善子「ってかずら丸」

 

花丸「ずら?」

 

善子「あんた、やってもらうことがあるって…何やってるの?」

 

花丸「ふふん♪明日のお楽しみずら!」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ダイヤ「北也さん、お願いします!」

 

北也「そりゃ!」バシュ

 

北也がダイヤに向かってボールを蹴る

 

 

ダイヤ「はあぁ!!!ー ラ・フラム ー!!」ボオォ!

 

ボールは炎の壁により、ブロックされる

 

 

ダイヤ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

むつ「ダイヤさん、水です!」

 

ダイヤ「ありがとうございます」ゴクゴク

 

北也「うん。だいぶ体力の消費が抑えられてきたように見えるな」

 

ダイヤ「はい。少しずつですが…」

 

北也「まだ時間はある。休憩を挟みながら続けよう」

 

ダイヤ「はい!」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

千歌「行くよー!果南ちゃん」

 

果南「来い!」

 

千歌「はあぁ!」バシュ

 

果南「でりゃあ!!」

 

果南「ー海皇の三叉撃 ー!」ドン!ダァン!ドガァン!

 

千歌「ひゃあ〜すごいね…」

 

果南「ふぅ…」ビリビリ

 

千歌「やっぱり、まだ負担来る?」

 

果南「ちょっとね。もう少しかな?もともと、2年前に型は作ってあったからね」

 

千歌「そっか。でもいいの?千歌、必殺シュート使わなくて…」

 

果南「ん…いいの。まずは普通のシュートで練習したいからね」

 

果南は鞠莉から言われた言葉を思い出す

 

 

鞠莉『果南は千歌に普通のシュートを撃ってもらって。無理に負荷な練習をさせると、闇のチカラが出かねないからね』

 

果南「よし、もう1回!(ホントに、闇持ってるように見えないなぁ)」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

鞠莉「行くわよ!梨子」

 

梨子「はい!」

 

鞠莉、梨子「はあぁ!!」

 

いつき「今だよ!善子ちゃん!」

 

善子「ヨハネよ!」ドガァン!

 

いつき「あ…またズレちゃった…」

 

鞠莉と梨子がオーラを加え、最後に善子が蹴り込む。型は出来てきたのだが、最後のシュートが上手くいかない

 

 

善子「く、また最後ズレた…」

 

鞠莉「微妙なタイミングかしら」

 

梨子「もう少し早くしてみる?」

 

善子「そうね。その方が蹴りやすいわ」

 

いつき「ボール渡すよ!頑張って!」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

曜「肉離れって…シャレにならないよね?」

 

ルビィ「なりませんね…」

 

曜「しかも、加速するのはいいんだけど…たまにボールを置いてきちゃうんだよね…」

 

ルビィ「…曜さん、ちょっと技を見せてもらってもいいですか?」

 

曜「見てくれるの?じゃあ、お願い!」

 

 

 

 

 

 

 

曜「やっぱり、置いてきちゃった…」ハァハァハァ

 

ルビィ「……曜さん」

 

曜「は、はい!」

 

ルビィ「加速する時に、ボールはこうするのがいいかも…」

 

曜「あ、なるほど…」

 

ルビィ「それで、こう!」ビュン!

 

曜「うわ!?ルビィちゃん、もう出来たの!?」

 

ルビィ「は、はい…ついさっき(もともと習得してたとは言えないな…)」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

花丸「ー もちもち黄粉餅 改 ー!」

 

よしみ「からの!」

 

花丸「そりゃあ!ずら!」

 

よしみ「からの!!」

 

花丸「とりゃあぁぁ!」

 

よしみ「からの!!!」

 

花丸「ずらあぁぁ!!」

 

 

 

 

善子「え?何やってるの……」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

日が沈み、空には星が光り始めた。今日の練習はこれで終了。未完成の技は結果的に一応、習得ということになった

 

 

善子「なんとかって感じね」

 

梨子「明日はあまり連発は出来ないわね」

 

ダイヤ「使いすぎは禁物ですわ。あくまでも確実に得点したい時、ボールを奪いたい時、相手を抜き去りたい時に使ってください。皆さん、いいですか?」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

むつ「では、ホテルに戻って今日は終わりです!明日の試合は早いので、早く寝てくださいね!」

 

花丸「だって、善子ちゃん」

 

善子「な、なんで私なのよ!」

 

花丸「いつも夜更かししてるでしょ?」

 

善子「してないわい!(バレてた)」

 

 

 

メンバーそれぞれがホテルに戻っていく、そんな中、果南は千歌に呼び止められていた

 

 

 

 

果南「どうしたの?千歌」

 

千歌「あのね、ちょっと聞きたいことがあって…」

 

果南「聞きたいこと?(明日の試合の相談かな?)」

 

千歌「うん…果南ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チカ「私のこと気づいてるでしょ???」

 

 

 

 

 

果南「………あなたとは、はじめましてかな?(あちゃー、バレてたか…)」

 

 

 

 

都合良いや。真っ向からぶつかってやる。果南はそう決意し、チカと向き合うのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




だんだんと最終回が近づいてまいりました…








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第2章 15話 「聖堂山戦 その1」

ちょっとグダグダし過ぎたので、少し飛ばしていきます

最近、試合がワンパターンになってきていないか不安です…

明日は海未ちゃんのお誕生日!! 特別編は………はい!出します!多分!









 

 

 

 

 

曜「あれ?千歌ちゃんは?」

 

ホテルのロビーに戻った浦の星サッカー部。そんな中、曜は千歌がいなくなっていることに気づいた

 

 

ルビィ「果南さんもいない…」

 

ダイヤ「……」

 

鞠莉「(…まさか、ね?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー グラウンド ー

 

 

 

果南「どうして分かったの?」

 

果南はチカに、自分がチカの存在を知っていることがバレた理由を問う。チカの答えは至って単純で

 

 

チカ「だって、あからさまなんだもん♪」

 

チカ「千歌にわざと必殺技を使わせなかったり、変に気を遣わせたり…バレバレ…」

 

果南「そっか、不覚だったね」

 

チカ「隠すことなの?」

 

果南「変に刺激したくなかったんだよね」

 

果南はまわりくどくは行きたくないと思っていたので、単刀直入に言う

 

 

果南「あなたが生まれたのは、千歌の負の感情が原因なの?」

 

チカ「そうだよ」

 

チカ「千歌ちゃんは自分のことを普通だと思ってる。何をやっても中途半端、頑張っても上手くいかないと思ってた。でも、」

 

果南「サッカーと出会った…」

 

チカ「そう!千歌ちゃんが初めて、普通な自分でも本気でやりたい!っていうこと、サッカーと出会って、千歌ちゃんはどんどん変わっていったよね♪」

 

果南「正直、成長スピードが異常だよ…それに、リーダー的素質もある…」

 

チカ「あるある!千歌ちゃんはリーダーとして、みんなを引っ張ってきたもんね!でも、」

 

 

 

チカ「… そ れ が 原 因 だ よ ? ? ? 」

 

 

果南「!!」

 

先程まで、千歌について笑顔で語っていたチカの雰囲気が一気に変わる。笑顔はそのままであるが、狂気じみたオーラが滲み出る

 

 

チカ「千歌ちゃんはリーダー。みんなを引っ張る存在。先頭に立ち、真っ先に走り出す存在。周りのみんなは千歌ちゃんにはリーダー的、そしてサッカーの才能があると思っている。でも、」

 

チカ「千歌ちゃんは自分を普通の存在としか思ってない」

 

果南「なら、千歌は…」

 

チカ「普通だけど、リーダー。普通だけど、才能あるメンバー達を引っ張らなければ、もっと私が頑張らないと。そう考えるようになってーー」

 

チカ「私にチカラを求めた」

 

 

果南「!!千歌……」

 

 

チカ「私はね、チカラが欲しい?って聞いたの。そしたら、千歌ちゃんが、チカラを頂戴って言ったの♪だから、私はチカラを与える。千歌ちゃんが普通じゃなくなるようにね♪♪」

 

果南「…そっか。大体分かったよ」

 

チカ「ふふっ♪一応、私も警告してるんだよ?」

 

果南「警告?」

 

チカ「私を出し過ぎると、死んじゃうかも♪って」

 

果南「……」

 

果南は握る手に力が入る。死ぬかもしれないと分かっていながらチカラを貸りている…そこまで千歌を1人で追い詰めた自分自身に、腹が立つ。2年前と同じ、周りを見ているようで、見ていなかった

 

 

 

果南「(これじゃあ、幼馴染失格だよね)」

 

 

 

チカ「うーん…じゃあ、そろそろ千歌ちゃんにかわるかな。明日の試合、楽しみにしててね♪必ず相手を…」

 

 

 

チカ「叩 き 潰 し て あ げ る か ら」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日 ー スタジアム ー

 

 

 

 

『さぁ、Aブロックも準決勝まで来ました!今日の試合は今、話題の高校、浦の星女学院 対 前回大会準優勝、聖堂山高校だぁぁ!!!!』

 

 

 

 

「始まるね!」

 

「高海千歌は…」

 

「トップ下で出るみたいやんね」

 

「大丈夫なのでしょうか…話を聞く限り、かなり危険なのでは?」

 

「だからって、出ないわけにも行かないでしょ?ただでさえ浦の星女学院はメンバー9人、ギリギリで戦ってるんだから」

 

「うちらも人のこと言えないしなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「いいですか?昨日も言いましたが、新技の連発は禁物。状況を判断してから使ってください」

 

果南「あと、監督の言ってた作戦も思い出してね」

 

千歌「ここが正念場だよ!行くよ、浦の星ーーー!!!!」

 

「「「サーンシャイーン!!!!」」」

 

 

 

センターフォワード 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 桜内梨子

左サイドバック 国木田花丸

右サイドバック 黒澤ルビィ

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

3-2-3

 

 

 

 

 

 

ー 聖堂山ベンチ ー

 

 

柾木「浦の星は前の試合は、1人の選手の得点だけで勝利しているね」

 

天瀬「誰?その子」

 

黒裂「…高海千歌」

 

天瀬「あぁ、あのオレンジの子ね」

 

宗森「強烈なシュートを撃つようには見えないが…」

 

黒裂「とりあえず、高海千歌には警戒。撃てる時はガンガン撃っていこう」

 

 

 

 

センターフォワード 提美

センターフォワード 恋崎

ウイングフォワード 日向

ウィングフォワード 桶川

トップ下 黒裂真命

ボランチ 天瀬

センターバック 宗森

センターバック 呉井

キーパー 柾木

 

2-2-4

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーー!!!!

 

 

 

『試合が始まりました!前半は浦の星女学院ボール、浦の星は強豪 聖堂山にどのような試合をするのでしょうか!?』

 

 

 

ダイヤ「善子さん!」パス

 

善子「ヨハネよ!」

 

 

『黒澤ダイヤが津島へパスだ!津島は右サイドから上がっていく!』

 

 

宗森「行かせるか!!」

 

善子「先手必勝よ」

 

善子「ー デビルボール ー!」

 

 

善子が蹴ったボールから悪魔の羽がはえ、宗森の周りを飛びわまる。宗森は飛んでいるボールを奪うのは困難だと判断。直接、善子をマークする

 

 

善子「あら、賢いわね」

 

宗森「ボールは戻ってくるはず。そこを奪ってやるさ」

 

善子「あら…」

 

善子「ボールはヨハネに戻ってくるなんて、言ったかしら?」

 

宗森「何!?」

 

善子「リトルデーモン!」パチン!

 

 

善子が指を鳴らし、合図を送る。するとボールは進む向きを変え…

 

 

鞠莉「ナイスよ!ヨハネ!」

 

 

『ここでセンターバックの小原鞠莉がボールを受け取った!! 聖堂山は一気に前線へ上がってきた小原に対し、マーク出来ていない!』

 

 

柾木「来るか……」

 

 

鞠莉「もちろんよ!!」

 

鞠莉「ー ディザスターブレイクG3 ー!!」

 

 

『これは強力なシュートだ!浦の星、開始早々得点なるか!?』

 

 

柾木「それは無理だね」

 

柾木はゴールから飛び出し、ボールを蹴りまくる。目にも留まらぬ速さでボールを蹴り続け、徐々に威力が死んでいく

 

 

柾木「ー シュートブレイク ー!」ダアン!

 

上空に蹴り上げたボールは既に、威力を失っていた

 

 

鞠莉「止められた…」

 

柾木「なかなかいいシュートだったね」

 

 

ダイヤ「なんですか、あの身体能力は…」

 

善子「流石は強豪ね、戻るわよ」

 

 

『浦の星女学院、得意とする速攻でチャンスを作るも、キーパー柾木に阻まれた!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「キックオフからシュートに行くまで、早いですね」

 

「まさか、センターバックが前線まで走ってくるとは思いませんでした…」

 

「でも、聖堂山高校はさらに攻撃的」

 

「浦の星は守りきれるかな…」

 

 

 

 

 

『流石は強豪、聖堂山と言ったところでしょうか!無駄のない連携で、一気に攻め上がっていく!!』

 

 

桶川「堤美!」パス

 

堤美「よっと」

 

梨子「はあぁ!」ザーッ!

 

 

堤美がボールを受け取った瞬間を狙い、梨子がスライディングでカットしに行く。しかし、

 

 

堤美「あまいね!」パス

 

梨子「そんな!?いつの間に!」

 

 

梨子がスライディングをして空いたスペースに、恋崎が走り込んでいた。堤美はそれを見逃さず、恋崎にノールックパスをする

 

 

果南「やっぱり、抜け目ないな…」

 

恋崎「くらえ!!」

 

恋崎「ー バリスタショット ー!!」

 

恋崎の放ったシュートが果南に迫る

 

 

果南「この威力なら…」バッ!

 

果南「うおおおおぉ!!!!」

 

果南「ー 真トライデント ー!」ドガァン!!

 

恋崎「うわ!?」

 

 

『キーパー松浦、トライデントでゴールを防いだ!!海皇の槍はそう簡単には破れない!!』

 

 

柾木「海皇と言うだけはあるね…」

 

 

 

果南「花丸ちゃん!」

 

花丸「ずら!」

 

 

『浦の星女学院は聖堂山高校と同じく、速攻やパス連携を得意とするチームです!初出場ながら、聖堂山相手に見事なパスワークをしているぞ!!』

 

 

むつ「いいぞー!花丸ちゃん!」

 

よしみ「曜が空いてるよ!!」

 

北也「うーん、変だな…」

 

よしみ「?どうしたんですか?監督?」

 

北也「いや…聖堂山のキャプテン、黒裂真命がここまで全くボールに触っていないんだ」

 

いつき「確かに、得点女王がボールを持たないのは変ですよね?」

 

よしみ「ボールを持とうとする、というよりかは……」

 

むつ「あれは…」

 

 

 

 

 

黒裂「さぁ、抜いてみて」

 

千歌「う、」

 

 

『黒裂、高海千歌にマンツーマンディフェンス!前回の試合の高海のプレーを警戒しての作戦なのか!?』

 

 

千歌「そこ!」バッ

 

黒裂「無駄だよ!」

 

千歌「な!?」

 

 

千歌はドリブルで抜こうとするも、黒裂のディフェンスが厳しくなかなか抜けない。パスを出そうにも、ぴったりとマークされているので、ボールを蹴る瞬間にカットされる恐れがある

 

 

千歌「はぁ、はぁ(一か八か…)」

 

黒裂「そこだ!!」バッ

 

 

黒裂が一瞬のすきをつき、足でボールを取りに行く

 

 

千歌「今だ!!」

 

千歌「ー ZスラッシュG2 ー!!」

 

黒裂「!!」

 

 

曜「千歌ちゃん!」

 

ルビィ「凄い、抜いた!」

 

 

『抜いたぁ!!高海千歌、ギリギリまで黒裂を引きつけ、Zスラッシュで足を交わしながらの突破だぁぁ!!』

 

 

千歌「よし!」

 

曜「千歌ちゃん、こっちだよ!」

 

千歌「曜ちゃん!パ…「流石だね高海さん」

 

千歌「!!!!」

 

 

声がする。しかし、先程抜いたはずの黒裂が後ろにいない。では、黒裂は一体どこへーー

 

 

 

黒裂「ー スクリュードライバー ー!」

 

千歌「うわっ!?」

 

曜「千歌ちゃん!!」

 

 

梨子「嘘!?さっき、抜かされたのに…」

 

善子「もう追いついたってこと!?」

 

 

 

『黒裂、上空から炎のドライバーでボールを奪った!! 抜かされてもとりかえす。これがキャプテンの意地でしょうか!?』

 

 

黒裂「松浦果南!」

 

松浦「!」

 

黒裂「君の技は素晴らしい。でも、私のシュート、止められるかな?」

 

 

そう言うと、黒裂は飛ぶ。炎を纏い渦を作りながら、蹴りの体制に入る

 

 

鞠莉「なんて迫力なの…」

 

ダイヤ「わたくしのファイアトルネードよりも、遥かに高威力ですわ…」

 

 

黒裂「行くぞ!!」

 

黒裂「ー 爆熱ストーム ー!!」ドガァン!!

 

 

果南「!!」

 

 

『出たー!!ここで、数えきれない程のゴールを破ってきた、爆熱ストームだぁ!この高威力、海皇の槍は耐えられるのでしょうか!?』

 

 

 

「来た…」

 

「あのシュートは強力やで」

 

「トライデントでは力不足、では?」

 

「松浦、果南……」

 

 

 

 

 

果南「うわっ、すごいなぁ…」

 

果南は近づく炎のシュートを見ながら、思いだす。自分が2年前、必殺技を失敗したあの日を

 

 

果南「あの時は、全部が未熟だった…でも、今は…」

 

 

果南「なんだってやってやるよ」

 

 

果南はゴールから飛び出し、技を使う体制に入る。が、

 

 

黒裂「!?」

 

恋崎「さっきとフォームが違う!!」

 

堤美「別の技!?」

 

 

ダイヤ「早速ですか…」

 

鞠莉「やむを得ないわね」

 

 

果南「くらえ!! 海をも轟かす三連撃!!」

 

 

果南「ー 海皇の三叉撃 ー!!」ダン!ドォン!!

 

 

果南「うおおおおぉ!!!!」ドガァン!!

 

 

 

 

黒裂「なんだと……」

 

 

 

 

「これは、わからんで?」

 

 

 

 

『な、なんと、止めたあぁ!?松浦果南、新技で黒裂真命の必殺シュートを、海の底へと沈めてしまったぁぁ!!!』

 

 

果南「ふぅ……」ビリビリ

 

果南「(やっぱり、連発は厳しそうだな…)」

 

黒裂「まさか、爆熱ストームが止められるとは…」

 

果南「甘く見てもらっちゃあ困るね」

 

果南「私は浦の星、最後の砦。得点女王だかなんだか知らないけど…」

 

 

 

果南「全員、沈めてあげるよ」

 

 

 

 

 

前半の半分が経過。現在得点、0対0

 

 

 

 

 

 




爆熱ストームはGoでは化身技ですが、初期は普通の技だったので、今回採用しました


ちなみに、チカちゃんはですね。千歌ちゃんを支配しようとするような、とんでもない感じではなく、あくまでも千歌ちゃんにチカラを貸しているという存在です





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第2章 16話 「聖堂山戦 その2」

お久しぶりです!ついにオリオンの刻印も世界ですね。ですが、現時点ではこのお話で世界編、要するに第3章を書くかはまだ未定です。ここ最近、とても忙しくなってきたのでどうなることやら…第2章、最後まで応援していただけると嬉しいです!





 

 

 

 

 

 

某サッカー強豪高校の監督は言う。浦の星女学院はここまでよく勝ち上がった。だが聖堂山高校には勝てないと

 

 

ニュース番組のスポーツコーナーでは、既に聖堂山高校が勝ち上がり、UTX高校と戦う時の予想解説がされていた

 

 

試合前の観客達は思う、聖堂山高校は一体、どれほどの素晴らしい試合を見せてくれるのかと

 

 

試合前の聖堂山選手達は考える。決勝の相手はUTXだろうと

 

 

 

 

 

そして現在、聖堂山選手、そしてメディア、観客は言う

 

 

 

 

 

 

浦の星女学院はどうして今まで全国本戦に出てこなかったのか?と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここで前半終了!!!!一体誰が予想したでしょうか!?会場内も騒然としています!!それもそのはず!浦の星女学院、聖堂山高校に対し……』

 

 

 

 

 

 

『2対0のリードだぁぁ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、ここまでとは…」

 

「なんか千羽山の時よりも凄く強くなってるにゃ!!」

 

「短期間で強力な必殺技を習得したようやな…前半の半分を過ぎたぐらいから、圧倒的やったな…」

 

 

 

 

 

 

ー 浦の星ベンチ ー

 

 

北也「流石だな。ここまでは作戦通りだ」

 

善子「まさか、ここまで上手く行くとはね」

 

 

ダイヤ「前半終了が近づいたら、北也さんの合図と同時に総力戦で攻め、必殺技を惜しみなく使い、点差をつける」

 

鞠莉「その作戦に必要だったのが、監督の作戦」

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

 

 

全員『『『総力戦!?』』』

 

北也『そうだ。前半の終了が近づき、行けると判断したら、俺が合図を出す。そしたらキーパー以外の全員で一気に攻めろ』

 

果南『ちょっと、それは危険過ぎない?』

 

梨子『ボールを奪われたら終わりですね』

 

ダイヤ『相手は聖堂山、いくら攻めで有名なチームだとしても、ディフェンスもわたくし達よりも上なのでは??』

 

北也『安心しろ、ただ全員で攻めろとは言わない』

 

北也『止めるんだ。相手の動きを』

 

 

千歌『動きを止める?』

 

曜『ドリブル技で、っていう事ですか?』

 

北也『それでは総力戦の意味がなくなってしまう。要するに、全員でフィールドにいる聖堂山選手を動けなくするような技を、全員で発動するんだ』

 

 

ルビィ『それって…まさか』

 

 

 

北也『相手を圧倒する波をつくれ。全員の息を合わせるんだ。その名は…』

 

 

 

北也『ミラクルウェーブ』

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

 

 

鞠莉「『ミラクルウェーブ』で聖堂山を飲み込み、そのままゴールを決める…」

 

花丸「でも、なんで前半の終了が近づいたら、だったんですか?」

 

北也「聖堂山高校は攻めは全国トップレベルだ。だからガンガン攻めてくるだろ?」

 

北也「だが、浦の星が聖堂山と引けを取らない攻撃力を持っていると知ったら…」

 

ダイヤ「…無闇には攻められない」

 

北也「その通り」

 

千歌「…凄い」

 

曜「この調子なら、後半も行けるんじゃ…」

 

 

北也「だが問題は」

 

 

北也「スタミナ切れ」

 

 

梨子「やっぱり、そうなりますよね」

 

北也「全員、新技は使ったな?」

 

ルビィ「はい。数回だけ…」

 

北也「『ミラクルウェーブ』はそう連発できる技では無い。聖堂山に対し俺達はまだ、穴だらけだ。そこを攻められたら点差もなくなる」

 

果南「穴はスタミナ切れ、新必殺技の連発不可、個人能力が聖堂山に負けているって言うところかな?」

 

北也「あぁ、だがな」

 

果南「?」

 

 

北也「お前達は決して実力で聖堂山に劣ってはいない。自身を持て。逃げ腰では勝てないぞ」

 

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

北也「後半の最初はミラクルウェーブは使わない。無理だけはするな。仲間を頼れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!!!

 

 

 

 

 

『後半開始の笛が鳴りました!聖堂山高校、まさかの2点差!この危機的状況で、どう戦うのでしょうか!?』

 

 

 

 

 

黒裂「くっ…まさか、こんな事になるとは…」

 

恋崎「あれほどの技があるなんて…無闇には攻められないな…」

 

 

黒裂「あぁ…」

 

 

 

後半が開始してからは北也の作戦通り、聖堂山高校が浦の星の攻撃を警戒し、攻めの積極性が無くなっていた。それにより、本来の力を引き出せない聖堂山高校は、攻撃時にスキが生まれる

 

 

 

鞠莉「スキありよ!」バッ!

 

日向「しまった!?」

 

鞠莉「ー グラウンドスイーパー ー!!」ドガガガカァン!

 

『でたぁぁ!!「爆裂のシャイニーガール」小原鞠莉のディフェンスだぁ!この高火力、流石の聖堂山MF 日向でも、突破は困難か!?』

 

 

鞠莉「梨子!」パス

 

梨子「はい!」

 

 

黒裂「聖堂山!ディフェンスをかためろ!」

 

黒裂は浦の星の攻撃を警戒し、メンバーを下げさせる。しかしこの時、黒裂にはひとつの疑問があった

 

 

黒裂「(攻撃パターンが前半の最初に戻った??)」

 

メンバーに指示をし、自分もディフェンスに参加しながら考える。前半終了前の勢いが消えた?あの勢いはどうしたのか、せっかくボールを持ち、得点のチャンスなのに…と

 

 

黒裂「…まさかね」

 

 

この数分で黒裂はある仮説にたどり着く

 

 

黒裂「(あの攻撃力は、長くは持たない???)」

 

 

まだ不確定要素が多い。そのため黒裂はメンバーにとある指示を出す

 

 

黒裂「天瀬!呉井!黒澤ダイヤと高海千歌をマークするんだ!」

 

天瀬、呉井「はい!」

 

 

 

むつ「! 聖堂山キャプテン、動きました!指示は……」

 

いつき「千歌とダイヤさんのマーク??なんで2人を?」

 

北也の顔は険しくなる。まさか、黒裂はもう既に感ずいているのか、と頭を搔く

 

 

北也「気づくの早すぎだわ……」

 

 

 

 

千歌「うわ!?」

 

ダイヤ「くっ…」

 

千歌とダイヤにマークが入る。それにより、2人は自由に動けないが…マンツーマンになるということは、必ずスキが生まれる

 

 

善子「こっちよ!」

 

ダイヤ「!!善子さん!」パス

 

善子「ヨハネ!!」

 

 

『空いたスペースに津島善子が走り込む!ゴールは近い。充分、「コワレヤスキ」の射程範囲内だぞ!!』

 

 

善子「行くわよ!!」

 

黒裂「(もし、これが本当だったら…)」

 

 

善子の近くには、鞠莉と梨子がいる。普通だったらここで「コワレヤスキ」を撃つはず。だが、善子はーー

 

 

善子「ー デビルバースト ー!!」

 

 

黒裂「!!!」

 

 

『津島善子!「デビルバースト」でゴールを狙う!! この技もかなり強力だが!?』

 

 

宗森「ー エアーバレット ー!」

 

宗森がディフェンス技でシュートの威力を落とす。これ以上の失点は防がなくてはならない

 

柾木「ー シュートブレイク ー!」ドガァン!

 

 

『止めたぁぁ!聖堂山、ゴールを死守!これ以上の得点は許さないという気迫が伝わってきます!!』

 

 

そのままボールを受け取った黒裂は、不敵な笑みをうかばせながら口を開く

 

 

黒裂「聖堂山!本来の私達の力を見せるぞ!攻めろ!!」

 

桶川「!?え?」

 

堤美「だが…あちらの技への対応が…」

 

黒裂「安心しろ、浦の星の弱点を見つけた」

 

 

ダイヤ「!!!?」

 

梨子「嘘でしょ!?早すぎるわ!!」

 

果南「後半が始まってまだ、数分…まさか、こんなすぐに穴を見つけるなんて」

 

黒裂は積み上げてきた試合の経験から、浦の星の攻撃の変化を察知、そこからあえて善子、鞠莉、梨子をフリーにすることにより、コワレヤスキを撃つかどうか試したのである

 

 

 

北也「一歩間違えたら失点…黒裂真命、思い切ったことをするな…」

 

よしみ「監督!このままでは…果南さん達が持ちません!!」

 

北也「…まずいな…」

 

 

 

よしみ達の思った通り、果南の限界は近づいていた

 

 

黒裂「ー 爆熱ストーム ー!!」

 

果南「くっ…ー 海皇の三叉撃 ー!」ダン!ドォン!

 

果南「うおぉぉぉぉ!!」ドガァン!!

 

 

『松浦果南、これで5本目のシュートを止めました!!聖堂山の強力なシュートでも、海皇は止まらない!!』

 

 

果南「くっ…うぁ…(そろそろまずいよ…)」ズキッ

 

鞠莉「果南!大丈夫なの!?」

 

果南は見るからに限界が来ていた。これ以上、「海皇の三叉撃」を使わせたら、2年前のようになってしまう

 

 

果南「鞠莉…お願い、これ以上『爆熱ストーム』を撃たせないで…多分、次来たら」

 

鞠莉「分かったわ。何としてでも、阻止するわ」

 

 

だが、戦況は大きく変わりつつあった

 

 

曜「ー ライトニングアクセル ー!」

 

天瀬「なるほどね。君たちはあの強力な技を連発出来ないんだね」

 

天瀬「ー ツインミキサー ー!」

 

曜「うわぁ!!?」

 

曜が2人のディフェンスによって、吹き飛ばされる。完全に動きを読まれていた

 

 

 

日向「そうだと分かったら、攻めるのみ!」

 

日向「ー ラウンドスパーク ー!」

 

花丸「ずら!!!?」

 

徐々に聖堂山がボールをキープし始め、再び黒裂真命にボールが渡る

 

 

黒裂「次は、決めるよ」

 

鞠莉「ルビィ!!黒裂を止めるわよ!」

 

ルビィ「はい!」

 

 

ルビィも次、「爆熱ストーム」を撃たれたらマズいという事は分かっていた。2人で黒裂からボールを奪いに行く…が、

 

 

 

黒裂「必殺タクティクス」

 

鞠莉「!!」

 

ルビィ「タクティクス!?」

 

 

黒裂「ー サウザンドロード ー!!」

 

 

鞠莉「う!?」

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

 

ここで、黒裂は必殺タクティクスを使ってくる。2人の選手が、一瞬で浦の星のペナルティエリア付近まで近づく。その時、あまりにも強烈なドリブルをしたため、鞠莉達は吹き飛ばされる

 

 

梨子「ここでタクティクス!?」

 

ダイヤ「まずいですわよ!」

 

 

果南「はぁ、はぁ、はぁ…やるしかないよね」

 

黒裂「さあ!崩れろ!!」

 

 

黒裂「ー爆熱ストーム ー!!」

 

 

強烈な炎が果南に迫る。果南は再び三叉撃を放つ体制に入る

 

 

果南「海皇の……ガクン!!

 

鞠莉「!!果南!」

 

果南「あれ…チカラが、入んない…」

 

果南の身体はついに限界を迎えた。身体にチカラが入らず、その場で膝をつく

 

 

果南「うわぁ!!?」

 

そのままボールはゴールへと入る

 

 

『ゴール!!ここで聖堂山が一点を返した!松浦は強烈なシュートの受けすぎか、技が出せなかったようだ!』

 

 

果南「はぁ、はぁ…動いてよ…身体」

 

 

梨子「果南さん…」

 

曜「このままじゃ、すぐに逆転されちゃうよ!」

 

 

だからといって再び総力戦をすると、すぐに限界が来る。だが、このままだと逆転されるのも時間の問題。浦の星はすでに聖堂山に追い詰められていた

 

 

黒裂「さあ、すぐに逆転するよ」

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

千歌「………」

 

 

 

 

 

再び闇が動き出す

 

 

 

 

 




海皇の三叉撃
オリジナル技です。オリジナルは分かりにくいので簡単に説明すると、トライデントを3連続で叩き込む、という技です。



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第2章 17話 「聖堂山戦 その3」

やっぱり、文章を書くのが下手くそすぎないかと考える今日この頃……
一応、とある問題が完結する???





 

 

 

 

浦の星女学院の練習メニューの中には、必ずランニングが組み込まれている。体力作りはスポーツの基本であり、サッカーの場合は必殺技を使うのに体力の消費が激しい。千歌達は決して体力が無い訳では無い。毎日苦しい思いをしながら積み上げてきた体力、充分、聖堂山高校のような強豪校にも引けを取らない体力はあるはずなのだ。しかし

 

 

 

 

ダイヤ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」

 

善子「ゼェゼェ…」

 

鞠莉「ごめんなさい…ごめんなさい、果南」

 

 

 

『決まったあぁぁぁ!!ここで聖堂山高校、2対3で逆転だあぁぁぁ!!完全に後半は聖堂山のペース!強豪校の猛攻が浦の星に襲いかかります!!』

 

 

 

果南「ハァハァ…2年前と何も変わってないじゃないか!!!私はぁぁ!!!」

 

 

果南は倒れ込みながら地面を殴る。2年前と変わらない自分に、言うことを聞かない身体に怒りがこみ上げる

 

 

むつ「なんで…みんなもっと体力あるはずなのに…」

 

よしみ「技だって、あの回数なら練習の時は大丈夫だったよね?」

 

 

北也「……緊張だよ」

 

 

むつ「え…?」

 

いつき「緊張、ですか?」

 

 

浦の星は充分、聖堂山高校のような強豪校にも引けを取らない体力はあるはずなのだ。しかし、浦の星には…会場の空気、自分達の立場、プレッシャーに耐え切る精神力が足りていなかった

 

 

北也「あいつら…緊張のし過ぎで練習の時よりも、動きがオーバーになっている。だからだ。すぐに体力が無くなる」

 

むつ「緊張…プレッシャー…」

 

北也「あいつらには背負うものが大きすぎる……それに、たくさんの人が注目している…そんな状況で、緊張するなと言って、緊張しないわけが無い…」

 

よしみ「そんな…どうにかしないと!!」

 

 

 

しかし、相手は待ってくれない。聖堂山は再び浦の星に牙を抜く

 

 

黒裂「ー サウザンドロード ー!」

 

 

善子「速すぎよ!!」

 

曜「このままじゃ…また決められる!」

 

 

黒裂がペナルティエリア付近まで来た時だった

 

 

ルビィ「これ以上は…!」バッ!

 

黒裂「!!」

 

鞠莉「ルビィ!」

 

果南「ルビィちゃん…」

 

 

ルビィは黒裂が現れる場所をあらかじめ予想し、黒裂を迎え撃つ

 

 

黒裂「黒澤ルビィ…君のことは調査済みだよ」

 

ルビィ「くっ…」

 

黒裂「どうやら、この私でも1対1は君には勝てないらしいね」

 

ルビィ「なら…頂戴。ボール」

 

 

ルビィが一瞬のすきをつき、足を出す。ボールに足が触れかけた瞬間にーー

 

 

黒裂「だが、今は周りが見えていないな」パス

 

ルビィ「な!?」

 

 

黒裂は上空にボールを蹴りあげる。そこには、すでに恋崎がシュートの体制に入っていた。いつものルビィだったらパスにも警戒し、すきなど与えないのだが、状況が状況なためパスを許してしまった

 

 

ルビィ「(完全にやらかした!!!)」

 

恋崎「今のお前なら止められないだろ!松浦果南!!」

 

恋崎「ー バリスタショット ー!」

 

 

『恋崎の必殺シュート!! 松浦果南は必殺技を放つことが難しい状態!このまま決められてしまうのか!?』

 

 

鞠莉、善子「果南!!!」

 

ダイヤ、梨子「果南さん!!!」

 

曜、花丸、「果南ちゃん!!!」

 

 

果南「(マズイ…)」

 

果南は三叉撃はもちろん、トライデントさえもできなくなっていた。これが決まってしまったら、すべてが終わる。そう頭では考えていても、身体が動かない

 

 

果南「ごめん…みんな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガァン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「え…」

 

 

 

 

 

 

恋崎「は???」

 

 

鞠莉「!!!!」

 

ダイヤ「まさか……」

 

 

会場全体が静かになる。全員、今起きたことが信じられないと言わんばかりに。それもそのはず、シュートはゴールにきまるどころか……

 

 

 

 

 

「なんてことや……」

 

「やはり、出てきますよね……」

 

 

 

 

 

黒裂「ついに来たか!!」

 

 

 

 

 

黒裂「高海千歌ぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

千歌「…」シュュュ

 

 

千歌は片足でボールを止めていた。その雰囲気からはあの時と同じ、背筋を凍らせる、戦慄のオーラが、溢れ出す

 

 

 

千歌「……」

 

果南「千歌、だよ、ね??」

 

「果南ちゃん、私、言ったよね?」

 

 

 

 

その目にはいつもの輝かしい光どころか

 

 

 

 

 

チカ「必ず、叩き潰すって」

 

 

 

 

色などなかった

 

 

 

 

 

 

『い、いったい何が起きたのか!?高海千歌がシュートをブロック!この危機的状況で、浦の星キャプテンがチームを救ったぁ!!!』

 

 

 

「ねぇ、高海千歌には時間がないんでしょ!?今、闇のチカラ使ったら不味いんじゃ…」

 

「はい、このままチカラを使い続ければ、高海千歌は」

 

「この試合が最後の試合になるでしょう…」

 

「…それって……」

 

 

「彼女たちなら、大丈夫だと思うけどな〜」

 

 

「!!」

 

「あなたは?」

 

 

少女達の上の席から黒髪の少女が話しかける

 

 

月「ヨーソロー♪ 私の名前は渡辺月だよ!」

 

「『月詠のストライカー』渡辺月ですか…お久しぶりです」

 

月「おっ!覚えててくれたんだ!嬉しいな〜久しぶり!戻ってきたんだね」

 

 

 

 

月「海未ちゃん♪」

 

 

 

 

 

 

そのころグラウンドでは…

 

 

果南「ちょっと…千歌、ダメだよ…」

 

チカ「何が?」

 

果南「これ以上、闇のチカラを使ったら、千歌は…千歌は…」

 

チカ「…ふふふ、果南ちゃん。よく聞いて」

 

 

チカは果南に顔を近づけて、一言

 

 

チカ「それでも千歌ちゃんは…やめないよ???やめれないんだよ???」

 

果南「!!!!!」

 

 

チカは黒裂真命と向き合う。向き合った瞬間、再び闇のオーラが溢れる

 

 

チカ「ふふふっ♪♪♪」

 

黒裂「!!」ゾクッ

 

ここまでの気迫…只者ではない。先程までの高海千歌とは別人のようだ。と黒裂は考えながら、一歩後ずさった。

 

 

 

 

 

瞬間だった

 

 

 

 

 

 

チカ「さあ!行くよ!!」

 

 

すでにチカは黒裂を抜き去っていた

 

 

黒裂「なに!?(全く見えなかった…)」

 

 

『速い!!高海千歌、一瞬で黒裂を抜き去った!そのままドリブルで聖堂山陣内へと攻め込む!!』

 

 

梨子「千歌ちゃん!やめて!!」

 

梨子が必死に千歌に呼びかけるも…

 

 

チカ「ハハハハ♪♪♪」

 

今のチカには雑音でしかない

 

 

宗森「これ以上は行かせないよ!」

 

呉井「同時にいくぞ!」

 

宗森、呉井「ー エアーバレット ー!」

 

 

2つの気弾がチカに迫るが

 

 

チカ「邪魔だよ!!」ドガァン!

 

宗森、呉井「うわぁ!!?」

 

 

気弾はチカに打ち返され、2人は吹き飛ばされる

 

 

柾木「…来い」

 

 

チカ「まずは同点!!!!」

 

 

チカは幻影学園戦で見せたシュートの体制に入る

 

 

チカ「ブラック……ズキン!!

 

チカ「アッシュ!!!!!!!!」ドガァン!!!

 

 

 

地面をえぐる、真っ黒なシュートがゴールに迫る

 

 

柾木「な…この威力…とめられ……」

 

 

 

 

ドガァン!!!!

 

 

 

 

『ゴール!!!浦の星!高海千歌の進撃により、再び聖堂山に追いついたぁ!!この試合、どちらが勝つかわからなくなってきました!!!』

 

 

チカ「ハハ♪♪このまま、圧倒的な差で潰してあげるよ♪♪」

 

 

梨子「千歌、ちゃん……」

 

 

高海千歌には時間が無い。タイムリミットは刻々と近づいていた

 

 

 

 

黒裂「まだだ、高海千歌よりも速く動けばいい話だ!!」

 

試合再開。黒裂は再び逆転するために、足に力を入れる

 

 

黒裂「ー サウザンドロード ー!!」

 

 

ダイヤ「くっ…」

 

鞠莉「このままじゃ、また…」

 

 

黒裂は浦の星のDFを全員、吹き飛ばしたのを確認すると必殺タクティクスを解除する

 

黒裂「このままシュートを叩き込んでやる!」

 

 

 

 

だが

 

 

 

 

吹き飛ばしたのはDFだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チカ「あは♪♪」

 

 

 

 

チカは吹き飛ばしていない

 

 

 

 

黒裂「嘘だろ…」

 

 

『なんと、高海千歌!サウザンドロードで高速移動した黒裂よりも先回りし、黒裂の前に立ちはだかったぁ!!!もはや、人間技とは思えません!!』

 

 

 

チカ「さぁ、『ドクン』…ボールを頂戴?」

 

黒裂「誰が渡すものか」

 

両者がにらみ合う。黒裂真命には聖堂山キャプテンとしてのプライドがあるため、ボールを取られるわけには行かない。対してチカは、黒裂の強い心を壊したくて、壊したくて、壊したくてたまらなかった

 

 

黒裂「聖堂山を甘く見るなよ」パス

 

チカ「バックパス?」

 

 

黒裂は後ろ足でバックパス。パスの先には恋崎がいた

 

 

恋崎「ー バリスタショット ー!」

 

チカ「また止めてあげるよ!」

 

 

チカはシュートを足で止めに行こうとしたのだが…

 

 

チカ「!?」

 

 

『ああっと!?恋崎のシュートはゴールに向かうどころか、上空へ蹴り上げてしまった!!!これはミスキックか!?いや、これは!!!』

 

 

恋崎「頼む!真命!!」

 

チカ「あちゃあ…あれは厄介だね」

 

 

上空には炎の渦が。その先では聖堂山キャプテンがボールに足を叩きつけていた。木製の矢は炎の矢へと姿を変え、今、放たれる

 

 

黒裂、恋崎「ー 爆熱ストーム ー!!!」

 

 

『オーバーライドだあぁぁぁ!!!』

 

 

チカ「チッ!!」

 

 

チカはゴールの前で再びシュートを止めようとする。しかし、最初のシュートよりも威力は遥かに上がっている

 

 

果南「千歌!!ダメだよ!!」

 

鞠莉「これ以上やったら、千歌の身体がもたないわよ!!!」

 

 

千歌「それでもやらないと!!!!」

 

ダイヤ「!!」

 

果南「千歌……」

 

千歌「リーダーである私が、浦の星のみんなの想いを背負ってる私が、今一番頑張らなくていつ頑張るの!!!?だから私は!!!!!」

 

 

 

チカ「全 力 で 止 め に 行 く ん だ ぁ ぁ あ ぁ ぁ!!!!!!!!」

 

 

果南「やめてえぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

チカ「うおらああああぁ!!!!」

 

 

 

 

 

ドガァン!!!!!!

 

 

 

 

 

チカ「うぐぐぐ………」ガガガガガガガ!!

 

チカの全力の蹴りが爆熱ストームにぶつかる。しかし、少しずつチカは後ろへと押されていく

 

 

チカ「うぅぅぅ…こんなところでぇえ…」ガガガガ!!!!

 

 

『耐える!耐えます!!高海千歌!!果たして勝つのはシュートか高海千歌か!?』

 

 

チカ「ブラックアッシュで蹴り返してやる!!!!」

 

 

チカはブラックアッシュの力で爆熱ストームを蹴り返そうとする。チカの足に、闇のオーラが集まる

 

 

チカ「ハハハ…これで終わり…『ドクン!』うぐぁ!?」

 

果南「まさか!!」

 

梨子「千歌ちゃん!もう限界よ!!」

 

 

ついに千歌の身体が悲鳴をあげ始めた。チカのパワーは確実に落ち始めている

 

 

チカ「うぐぁ……『ドクン!』うぅ、クソぉ!!」

 

チカ「ハァハァハァ…早く、蹴り返して…」

 

 

チカのブラックアッシュが放たれようとしていた。会場にいる、千歌の闇のことを知ってる者は全員、察する

 

 

 

 

このシュートを撃てば高海千歌は…終わる

 

 

 

 

 

そう考えると同時に身体が動いたものが1人

 

 

 

果南「千歌」

 

 

チカ「ハァハァ…邪魔だよ!!果南ちゃ…『ドクン、ドクン!!』ああぁ!?!」

 

 

果南は苦しんでいる自分の幼馴染を見て、涙を流し言う

 

 

果南「ごめんね…」

 

チカ「うぐ…なんで、果南ちゃんが謝るんだよ…」

 

果南「私達が、千歌を苦しめていたんだよね?」

 

果南「サッカーを始めたばかりの千歌に、才能があるから、頼りになるからって全部押し付けて、千歌に抱え込ませて」

 

千歌「違う!!私に才能なんてない!凡人、普通、平凡!私を頼りにしても何にもならないよ!!私には全てチカラが、足りないんだよ!」

 

果南「千歌。よく思い出して」

 

 

果南「ここにいるメンバー全員、」

 

 

 

 

果南「誰からサッカーに誘われた?」

 

千歌「!…それは……」

 

果南「誰がサッカー部を復活させた?」

 

果南「誰が私達にもう一度、サッカーをするチャンスを…与えてくれたの?」

 

 

千歌「はは…だから、その私が一番頑張らないとって…」

 

 

果南「それが一番頑張る理由にはならないよ!!!!」

 

千歌「!!」

 

果南「千歌、一人で頑張らないで?一人で抱え込まないで?何のために私達がいるのさ…」

 

千歌「……」

 

果南「ねえ、私達にも背負わせてくれない?いろんな重みをさ」

 

千歌「果南…ちゃ…『ドクン!』うぐぁ…」

 

 

チカ「なら勝てるの!!?ここで決められて、試合も残り僅か!負けたら終わり、散々千歌ちゃんに頑張らせて、負けました。じゃシャレにならないんだよ!!??勝てるの!?こっから、聖堂山を、倒せるの!?」

 

 

果南「……」

 

 

果南は涙をぬぐい、ニカッと笑う。こんな状況下で笑うなんて狂ってるわ…チカはそう思いながらも、果南の答えを聞く

 

 

果南「大丈夫!私達が力を合わせれば」

 

 

果南「いくらだって点は入るよ♪」

 

 

 

チカ「ははは…やっぱ適わないや…果南ちゃんには…」

 

 

 

 

 

 

そのままチカはボールと一緒に、ゴールへと押し込まれた

 

 

 

 

 

 

浦の星 3対4 聖堂山

 

 




チカちゃんの登場数は少なかったですね。あくまでもチカちゃんは千歌ちゃんの進化の途中段階と考えでもらって。今後、チカちゃんが登場するかは……ご想像にお任せします!

次回、予定では聖堂山戦決着です!あと、やっと海未ちゃんの名前を出すことが出来ました。出すタイミングを逃してから、いつ名前を出すか悩んでました…

悩みが吹っ切れたキャラは進化する。アニメやマンガではお馴染みですよね。次回をお楽しみに!



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第2章 18話 「聖堂山戦その4」

一気に決着まで書いたら、いつもよりも長くなってしまいました!勢いで話を進めています。あぁ、学習しないなぁ…と自分でも反省しています…それでは勢いに任せた試合をどうぞ!





 

 

 

 

月「ね?言った通りでしょ?」

 

海未「…ギリギリでしたね…本当に危なかったです」

 

月「千歌ちゃんの悪いところは、自分を下に見て自信が持てないというところ。もったいないよね、彼女、才能の塊なのに」

 

海未「抱え込む癖はどこも同じなのですね…私達のリーダーも一時期大変でした…」

 

月「ま、結果オーライ♪こっからだよ、浦の星の試合は」

 

 

 

 

月「聖堂山なんて敵じゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここで聖堂山が再びリードしたあぁ!!!浦の星と聖堂山、激しい点取り合戦を制するのはやはり、聖堂山高校なのでしょうかぁ!?』

 

 

 

 

 

果南「…千歌」

 

千歌「果南、ちゃん…」

 

 

千歌は未だに起き上がれていなかった。身体が動かないからではない。今まで自分が抱え込んできたこと、果南から言われたことを頭の中で思い出していた

 

 

 

『私がリーダー…そっか、じゃあ頑張らなくっちゃね』

 

『千歌ちゃんお願い!』

 

『頼んだよ!千歌!』

 

『貴方にかかっていますわ。千歌さん』

 

『私は普通…少しでも、いや、一番上手くならないと…』

 

『どうして私には出来ないの……』

 

『学校を救って!!』

 

『負けたら…終わり…』

 

『どうするの……』

 

『やめる???』

 

『諦めちゃダメ!』

 

『自分一人で抱え込まないで!』

 

『何のために私達がいるのさ…』

 

『やめて!千歌ちゃん!!』

 

『チカラが欲しい?』

 

『私には勝てない』

 

『千歌ちゃんのせいだよ♪』

 

『ごめんね…千歌』

 

『千歌ちゃん』

 

「千歌」

 

『千歌さん』

 

「千歌…!」

 

『千歌ちゃん』

 

「おーい!千歌」

 

 

 

 

 

 

果南「千歌、試合はまだ終わってないよ」

 

千歌「…あ、果南ちゃん」

 

果南「それ、さっきも聞いた」

 

 

果南は千歌を起き上がらせる。周りを見ると、浦の星のメンバーが千歌と果南の元に集まっていた

 

 

梨子「千歌ちゃん、身体は大丈夫なの?」

 

千歌「大丈夫、だと思う。ごめんね、心配かけちゃって」

 

梨子「ホントだよ…グスッ」

 

善子「リリー…泣いてるの?」

 

梨子「うっさい!堕天使!」

 

善子「ヨハ!?」

 

 

花丸「果南ちゃんから聞いたずら…」

 

曜「たくさんの事を抱え込ませて、無茶までさせてたって…」

 

千歌「そんな…私が勝手に…」

 

梨子「忘れないで千歌ちゃん」

 

善子「私達が9人、こうしてサッカーをしているのはあなたのおかげよ。感謝しきれないわ」

 

千歌「善子ちゃん、梨子ちゃん…」

 

ダイヤ「千歌さん、わたくしは前に千歌さんに、貴方は弱い。全ての壁を越えていく覚悟はあるのか。と言いましたね」

 

千歌「あぁ、あの雷雨の日の…」

 

ダイヤ「あの言葉が千歌さんを苦しめているのかもしれません…ごめんなさい」

 

千歌「いやいや、そんな!事実ですから」

 

ダイヤ「そう言ってもらえると助かりますわ。しかし千歌さん…越えるべき壁とは、今の状態なのではないでしょうか」

 

千歌「一人で抱え込むこと…」

 

ダイヤ「はい。仲間を信じることも覚悟ですわ」

 

千歌「仲間を…信じる」

 

鞠莉「それにね、千歌っちは誰よりも強くなることが目的でサッカーを始めたわけじゃないでしょ?」

 

千歌「サッカーを…始めた理由…」

 

そういえば、夜のグラウンドで少女にも同じことを聞かれたな…と千歌は思い出す

 

 

鞠莉「廃校を救うでもない。強くなるでもない。なら…千歌は」

 

 

 

鞠莉「どうしてサッカーを始めたの?」

 

 

 

 

 

どうして忘れていたのだろうか…何も無かった自分を、何もしてこなかった自分を変えたくて、そんな時サッカーと出会って思ったんだ。この人達のように、グラウンドで、試合で、私も…私も!!!!

 

 

 

千歌「輝きたい……」

 

千歌「そうだよ…私は輝きたいんだよ!!自分だけの輝きを見つけて…私は…輝きたいんだ」

 

果南「やっと、思い出したね」

 

千歌「うん…うん。みんな、ごめんなさい、私、何も見えなくなってた…でも、もう大丈夫!!」

 

千歌は歩き出す。今の千歌には悩みも不安もない。見えるのは、輝くために進む道だけ

 

 

千歌「勝つよ!この試合!!前半で2点もリードしたんだよ!なら逆転は出来る!!」

 

曜「千歌ちゃん!」

 

ダイヤ「完全復活ですわね」

 

千歌「さあ行こう!残り時間、体力とか実力とか関係ない!!最後まで走りきろう!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

千歌「浦の星ーー!!!!」

 

 

「「「サーンシャイーン!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

むつ「千歌…よかった…元の千歌だよ」

 

よしみ「勝負はここからだよ!頑張れーー!!」

 

北也「大丈夫だ。浦の星はまだ、死んでいない」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「(千歌ちゃん…良かった…千歌ちゃんは見失わないで、自分のサッカーを……)」

 

 

花丸「……ルビィちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーー!!

 

 

『さあ、試合再開です!後半も残り僅かとなってきました!ここで浦の星が再び追いつくのか、それとも聖堂山が逃げ切るのか!?』

 

 

ダイヤ「曜さん!」パス

 

曜「はい!(後で後悔しないように、全力でやりきる!!)」

 

桶川「ここから先は行かせないよ!」

 

曜「行くぞ!!」

 

曜「ー スプリントワープ ー!!」ビュン!

 

桶川「な!?」

 

 

『速い!渡辺曜、前半で見せた高速移動を再び発動!! 周りの選手はついていけていません!!』

 

 

曜「遅いであります!!」ビュン!ビュン!ビュン!

 

呉井「は、速すぎる…」

 

曜「梨子ちゃん!」パス

 

 

梨子「ナイスよ!曜ちゃん」

 

梨子「ー 神のタクト ー」

 

 

梨子の指揮により、メンバーの前に光の道ができる

 

 

梨子「鞠莉さん!」パス

 

鞠莉「オーケーよ!」

 

 

『ここで浦の星、パスが繋がりだしたぞ!!桜内梨子からパスをもらった小原鞠莉はドリブルで上がっていく!!』

 

 

黒裂「行かせるか!!」

 

 

鞠莉の前に黒裂が立ちはだかる。鞠莉は梨子の指揮を確認すると…指揮は

 

 

鞠莉「なるほど…そういう事ね!!」

 

鞠莉「ー シャイニーフェザー ー!」バサッ!

 

黒裂「飛んだ!?」

 

鞠莉「梨子の指揮は空に続いていたわ!このままシャイニーよ!」

 

梨子「鞠莉さん!そのまま善子ちゃんへ」

 

鞠莉「善子!」パス

 

善子「ヨハネよ!」

 

 

『ここで津島善子に再びボールが渡った!貴重なシュートチャンス、決めきることが出来るのか!?』

 

 

善子「やってやるわよ!ここはまだ、通過点、ラグナロクはその先よ!」

 

 

善子は空中にボールを蹴りあげる。そこへ梨子と鞠莉が飛び、ボールを挟むようにして蹴り込む

 

 

梨子、鞠莉「善子(ちゃん)!!」

 

善子「ヨハネだって言ってんでしょ!!」

 

 

善子、鞠莉、梨子「ー コワレヤスキ ー!!!」

 

 

鞠莉と梨子が蹴り挟んだボールを善子がかかと落とし。ボールは地面を抉りながらゴールへと迫る

 

 

『でたあぁ!!聖堂山から2点を奪った強力な3人技、コワレヤスキだあぁぁぁ!』

 

 

柾木「ー シュートブレイク ー!!」

 

 

柾木は渾身の連続蹴りでシュートを阻止しようとする…しかし

 

 

柾木「うぐぁ!?」

 

 

コワレヤスキの前では無力

 

 

 

『ゴール!! なんということでしょうか!?試合終了間際、浦の星がなんと…試合を振り出しに戻したーー!!!!!!津島善子はこの試合、ハットトリックです!!』

 

 

善子「よっしゃあぁ!!!」

 

梨子「まだ負けてない!私達は!!」

 

鞠莉「さあ、かかってきなさい!!聖堂山!!」

 

 

 

黒裂「最後の攻撃だ聖堂山!!私達の全てをぶつけて、浦の星に勝つ!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

『さあ!残り時間的にもこれが最後のワンプレイになりそうです!!決着がつかなければ延長戦です!しかし、ここで聖堂山が畳み掛ける!!!!』

 

 

「「「ー サウザンドロード ー!!」」」

 

 

善子「嘘でしょ!?」

 

ルビィ「全員でサウザンドロード!?」

 

 

聖堂山の最後の攻撃は全員で総攻撃であった。2人だけでも強力なタクティクスを8人で行ったため、強烈な衝撃が浦の星を襲う

 

 

曜「うわぁ!!!?」

 

鞠莉「これまでとは、比べ物にならないわ!!」

 

 

黒裂「さあ!終わりだ!!」

 

 

いつき「あぁ!爆熱ストームが来ます!」

 

むつ「果南さん!」

 

北也「果南!!!!」

 

 

黒裂「ー 爆熱ストーム ー!!」ドガァン!

 

 

『これは!今までの爆熱ストームの中でも最高火力のシュートだ!!松浦果南、これを止めなければ浦の星は敗北ですが!?どうなるのか!?』

 

 

果南「どうなるって…止めるしかないじゃん!!」

 

 

しかし、今の果南の体力では技を撃てるのがやっと。最高火力の爆熱ストームを止めるのは到底不可能であった

 

 

果南「何とかして…止めないと」

 

 

 

その時だった

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「任せなさい。果南さん」

 

 

 

 

ダイヤ「ー ラ・フラム ー!!!!」

 

 

 

 

一瞬でゴール前に炎の壁が現れる。爆熱ストームは壁にぶつかり、威力がガクンと落ちる

 

 

日向「なんだと!?」

 

天瀬「あの壁は…黒澤ダイヤの!?」

 

 

果南「ありがとう、ダイヤ…うおらああああ!!!!!!」

 

果南「ー 真トライデント ー!!」ドガァン!

 

 

花丸「やったずらー!!」

 

ルビィ「凄い!お姉ちゃん!果南さん!!」

 

 

『止めたあぁ!松浦果南と黒澤ダイヤのディフェンスにより、聖堂山は得点となりませんでした!!!!』

 

 

果南「カウンター!!!!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

黒裂「全員、戻るんだ!!」

 

 

 

北也「もう遅い」

 

 

戻ろうとする聖堂山を波が飲み込む。浦の星を勝利へと導く奇跡の波が今、発動する

 

 

「「「ー ミラクルウェーブ ー!!!!」」」

 

 

千歌「行こう!熱い熱いジャンプで、勢いで、どこまでも!!!!」

 

 

 

『抜けたーー!!!!高海千歌、ミラクルウェーブの中心でボールをキープしながら、キーパー柾木と1対1だあぁぁぁ!!!』

 

 

 

 

月「行けー!千歌ちゃん!」

 

海未「これはひょっとすると…」

 

「行けるんじゃ…」

 

 

「………いや、」

 

 

 

 

 

黒裂「まだだ!!」ビュン!

 

 

 

 

「まだ決まっていないみたいやな」

 

 

 

 

千歌「黒裂、真命さん…!」

 

 

『なんと、黒裂真命!サウザンドロードで浦の星ゴール前まで、高速で高海千歌に追いついた!!高海千歌と黒裂真命の1対1!前半では黒裂真命が勝利したが、果たして今回はどちらが勝つのでしょうか!?』

 

 

黒裂「君たちの実力は認める!だが、私達には勝てない!ボールは頂くぞ!!」

 

黒裂「ー スクリュードライバー ー!!」

 

 

千歌からボールを奪った技が、千歌に襲いかかる

 

 

「「「千歌ちゃ…………

 

 

千歌「!!!!」

 

 

 

 

 

急に黒裂の周りの動きがゆっくりになる。いや、時間自体がゆっくりになったようだ。千歌は不思議な感覚にとらわれていた。ふと横を見ると

 

 

 

 

チカ「フフ♪さっきぶり」

 

千歌「え?これ、どういう状況???」

 

チカ「まぁまぁ、そんなことは今は気にしないの!」

 

千歌「えぇ…」

 

 

千歌の身体もゆっくり進んでいて、ほぼ動かせない、いやこれはもう止まってるのでは…

 

 

チカ「でも、本当に良かったの?チカラ、もういらないの??」

 

千歌「うん。もう大丈夫。私には私に足りないものを支えてくれる仲間がいるからね」

 

チカ「ふ〜ん…仲間ね…」

 

チカは退屈そうな顔をしながら言う

 

 

チカ「まぁ、チカラが必要になったらいつでも言ってね♪その時はまた、貸してあげるよ」

 

千歌「うん。ありがとう」

 

チカ「じゃあ、私は行くね……あ!あとひとつ!!」

 

千歌「え、何?」

 

チカ「さっき私さ、黒裂真命にめっちゃムカつくこと言われたんだよね!! だから、千歌ちゃんやり返してね!よろしく♪♪」

 

千歌「えぇ!?ちょっと…やり返す??」

 

 

チカの姿が消えるとすぐに、時が動き出す

 

 

ん!!!!!!」」」

 

 

千歌「(うわっ…みんな動き出した)」

 

 

上を見ると黒裂がスクリュードライバーで、今にも千歌からボールを奪い取りそうな場所まで来ていた。そして、千歌は考える

 

 

やり返す?黒裂さんは、チカちゃんに何を言ったっけ?

 

すると一言。千歌の頭に浮かんでくる一言が

 

 

 

千歌「黒裂さん……」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「周りが見えていませんよ???」

 

 

 

黒裂「え?」

 

 

 

千歌「曜ちゃん!」パス

 

 

千歌は自分の横、誰もいない所へ曜を呼びながらパスを出す。するとーーー

 

 

 

 

 

曜「ヨーソロー!!!!」ビュン!

 

 

 

黒裂「スプリントワープ!!!?」

 

 

『まさかの渡辺曜だあぁぁぁ!!!!!高海千歌が何も無い場所にボールを蹴ったと思いきや、渡辺曜がスプリントワープでボールを受け取ったあぁ!!!』

 

 

千歌「いっけーー!!曜ちゃん!」

 

北也「ぶちかませぇ!曜!!」

 

月「曜ちゃん!シュートだあ!!」

 

 

「「「曜ちゃん!!!!」」」

 

 

 

 

柾木「来い!渡辺曜!君のシュート、パルクールアタックではゴールは破れんぞ!!」

 

 

曜「そんなこと、私が一番知ってるよ!!!!」

 

 

曜はボールに自分の力をすべて込める

 

 

曜「だから、私はキセキを起こすんだ!!行くぞぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

ダイヤ「あれは、まさか!!!!」

 

梨子「新必殺技!?」

 

 

曜の蹴りにより、神風のごとく風が吹き荒れる

 

 

曜「ー ゴッドウインド ー!!」ドガァン!

 

 

柾木「な!?なんだ、この威力は??」

 

 

曜「いっけーーー!!!!!!」

 

 

柾木「ー シュートブレイ……」

 

 

 

 

ドガァン!!!!!!

 

 

 

柾木「うわあああ!!!?」

 

 

神風の威力は絶大。柾木は技を出そうとした瞬間、吹き飛ばされ、そのままボールは

 

 

 

 

ゴールへと飛び込んだ

 

 

 

 

 

『ゴーーール!!!!!最後は渡辺曜の新必殺技で5点目!なんと浦の星女学院、前回大会準優勝の聖堂山高校を破り、準優勝進出です!!!』

 

 

曜「ヨーソロー!!!!」

 

 

 

 

 

 

浦の星と聖堂山の激しい戦い、それを制した浦の星、叫び喜び合う浦の星、それに呼応したように会場がーーー

 

 

 

『うおおおおぉ!!!!!!』

 

 

 

揺れた

 

 

浦の星女学院 5-4 聖堂山高校

 

 

 

 

 




スプリントワープ
イナイレGoのドラゴンリンクが使っていた、ドリブル最強技の一つです。その名の通り、超加速。どの走るスポーツでも無双しそうな技です。


コワレヤスキ
オリジナル技です。すごく大雑把に説明すると、梨子と鞠莉で「キラーフィールズ」のようにボールを挟み、オーラを溜める→そこへ、ヨハネが魔王の斧のようにかかと落としでシュート!です。分かりにくくて申し訳ないです


ラ・フラム
ミキシトランスで得られる、ジャンヌ・ダルクのブロック最強技の一つです。意味はフランス語で「炎」。何故、ジャンヌ・ダルクの技が炎なのか……それを知らずに、天馬達はオーラをもらって自分達の時代に帰るのであった…(その後、ジャンヌは火あぶりで処刑されました)


ゴッドウインド
松風天馬のシュート技です。蹴ったボールは暴れ回るかのように暴風を纏い、ゴールに突進します。めっちゃかっこいいです。


ミラクルウェーブ
浦の星女学院の必殺タクティクスの一つです。モデルはアマゾンリバーウェーブ。奇跡の波をつくって敵を飲み込み、進撃します



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第2章 19話 「圧倒的 王者の試合」

みなさんどうも!花粉で喉を潰されたルビィちゃんキャンディーです!

今回はとある高校の試合です。サブタイトルで察せると思います







 

 

 

 

 

聖堂山高校との激戦を勝ち抜いた浦の星女学院は、記者のインタビューを受けていた。特にインタビューが殺到したのは、ハットトリックを決めた善子と、5点目を決めた曜であった

 

 

記者「聖堂山高校にハットトリックを決めた感想は!!」

 

記者「新技 コワレヤスキの詳細を!!」

 

記者「渡辺選手!あの高速移動、どうやって!?」

 

記者「最後のシュートは元々撃つつもりだったのですか!?」

 

 

善子「あわわわわわ????」

 

曜「はい!その時はですねー、ーー。」

 

 

 

梨子「混乱してるわね、善子ちゃん…」

 

花丸「善子ちゃん、ついに全国デビューずらね」

 

ほかのメンバーは善子をただただ見守るしかなかった…そんな中、観客席へと続く通路から月がこちらへ歩いてきていた

 

 

月「おーい!みんなー」

 

千歌「あ!月ちゃん!」

 

月「ヨーソロー♪準決勝進出おめでとう!凄かったよさっきの試合!」

 

千歌「いや〜それほどでも…」

 

果南「月は試合を見に?それとも応援?」

 

月「どっちもだよ♪君たちのプレーにはとても興味があるし、惹きつけられる!見てて飽きないよ」

 

 

その後、月と浦の星のメンバーは会場の外へ、どうやら浦の星には行きたいところがあるようで……

 

 

月「試合?」

 

ダイヤ「そうですわ!こんなチャンス、もう二度と来ませんわ!」

 

ルビィ「試合会場は隣の第3スタジアム!まもなく始まりますから急いでください!!」

 

善子「どうしてあの姉妹はあんなに元気なの??」ゲッソリ

 

花丸「なんでも…憧れの選手がいる高校の試合だとかなんとか…」オツカレズラ

 

 

黒澤姉妹はスプリントワープのごとく、高速で試合会場へ、それもそのはず。今から試合をする高校は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツバサ「常勝。行くわよ」

 

英玲奈「相手を見くびるなよ?ツバサ」

 

あんじゅ「はぁ…早く決勝に行きたいわぁ…」

 

 

 

 

 

前回大会優勝、連続優勝記録を持つ超強豪高校、UTX高校の試合が始まる

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 第3スタジアム ー

 

 

 

月「そっか。今まで浦の星とUTXの試合時間が同じだったから、試合、見れなかったんだね」

 

ダイヤ「そうですわ!UTX高校の試合が見れるのはこの試合だけです!あとは、決勝戦で戦うのみですわ!」

 

梨子「あのー…私達、まだ準決勝が残っているんですが…」

 

 

現在、浦の星がいるBブロックには3校が残っている。明日、2校が試合をして、勝った方の高校が準決勝で浦の星と戦うことになる

 

 

曜「準決勝、多分、勝ち上がってくるよね…」

 

千歌「聖良さん達…」

 

 

北海道代表の函館聖泉女子高等学院、鉄壁の防御と圧倒的な決定力で勝ち上がってきていた。優勝候補として今、大注目の高校である

 

 

ダイヤ「圧倒的な決定力??」

 

鞠莉「ダイヤ、どうかしたの?」

 

ダイヤ「確かに函館聖泉女子高等学院は鉄壁の守りで有名な高校ですが…攻撃力はあまり目立たない高校だったはずです…」

 

果南「え?ならなんでそんな情報が…」

 

 

むつ「今年からです」

 

ダイヤ「むつさん…今年からとは?」

 

 

むつがダイヤ達の疑問に答える

 

 

むつ「今年から函館聖泉は攻撃でも目立つようになりました。理由は…」

 

 

 

 

むつ「函館聖泉1年、鹿角理亞が加わったからです」

 

 

 

 

 

 

 

『ゴール!!!! 鹿角理亞!この試合でもハットトリック達成!雪原の狼を止められるものはいないのかー!?』

 

 

聖良『理亜、今日も絶好調ですね』

 

理亜『…フン……相手が弱いだけ…』

 

 

理亜『……』

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「今までの試合全てで、大量得点!?」

 

むつ「はい、鹿角理亞の攻撃力は凄まじく、ゴールを喰らうようなプレーから『雪原の狼』」という異名をもっています」

 

善子「雪原の狼…(かっこいい)」

 

月「うーん…私も函館聖泉の試合は見てきたけど…確かに鋭さがあって強そうだった」

 

花丸「そう言えば、理亞さん…ホテルでルビィちゃんを叩き潰すって…」

 

善子「あぁ、そんなこと言ってたわね。ルビィ、あんたなんかしたんじゃない?」

 

ルビィ「……」

 

花丸「…ルビィちゃん?」

 

ダイヤ「善子さん!ルビィがそんな人様の怒りを買うような事をするわけないでしょ!?」

 

 

花丸は最近ルビィの様子がおかしいと感じていたため。声をかけようとしたのだが、ダイヤと善子によって邪魔されてしまった

 

 

善子「ちょ、だから、ヨハネだってばー!!」

 

 

『わあぁぁ!!!!!!』

 

 

善子、ダイヤ「ん??」

 

 

会場全体から歓声が上がる。よく見るともう少しで試合開始となっていた

 

 

鞠莉「ダイヤ、ヨハネ?試合始まるわよ?」

 

ダイヤ「ついに始まりますわね!」ワクワク

 

善子「だから、私は善子よ!!…ん?」

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーー!!!!!!

 

 

 

試合開始の笛がなり、UTXボールでキックオフ。センターフォワードのツバサは、ボランチの英玲奈にパスを出し、試合の流れを作る

 

 

英玲奈「上がれ!ツバサ」

 

ツバサ「もちろんよ!」

 

 

Aブロック、UTX高校の準々決勝の相手は全国本戦常連校、木戸川清修。華麗な戦術で勝利することで有名な高校である

 

 

 

 

曜「凄い!木戸川清修のユニフォームを生で見れるなんて!!」

 

 

曜の制服&ユニフォーム好きの血が騒ぐ。曜は目をキラキラと輝かせながら試合を観戦する

 

 

ダイヤ「曜さん、はしたないですわよ?」キラキラ

 

鞠莉「…ダイヤの目もシャイニーしているのは気のせい??」

 

 

 

 

その間にUTXは木戸川ゴールへと近づいていた

 

 

英玲奈「そこだ!」パス

 

ツバサ「ナイスパスよ!」

 

 

英玲奈のシュートのような鋭いパスが、ツバサに渡る。ペナルティエリア外だが、ツバサには十分な射程距離である

 

 

ツバサ「さあ!食らいなさい!」

 

ツバサ「ー 流星ブレード ー!!」ドガァン!

 

 

 

ダイヤ、ルビィ「来たあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

善子「うわ!?テンションおかしいわよ!?」

 

ダイヤ「まるで流れ星のようなシュートが木戸川ゴールに迫る!!」

 

ルビィ「木戸川キーパー、硬山は止めることが出来るのか!?」

 

善子「ちょっと…実況し始めたわよ??」

 

 

 

 

硬山「綺羅ツバサ!あなたのシュートは私には通用しない!」

 

 

硬山は両手で巨大な円状のノコギリを作り出す。見るからにも切れ味がよさそうである

 

 

硬山「ー サンドカッター ー!」ズバァン!

 

ツバサ「あ、斬られた」

 

英玲奈「…なかなかやるな」

 

 

 

千歌「え!?あの流星ブレードを…斬った」

 

鞠莉「流石に準々決勝まで来ると、とんでもない選手ばかりね…」

 

 

 

硬山「さあ、行け!木戸川清修!今こそ私達の力を見せる時だ!!」

 

「「「はい!!!!!!!」」」

 

 

ツバサ「なにか仕掛けてくるわよ」

 

あんじゅ「ふあぁ〜…」アクビ

 

 

「「「ー ゴッドトライアングル ー!!」」」

 

英玲奈「!!」

 

 

木戸川の選手が前方に1人、後方に2人で並んで走り始める。UTXの選手がボールを取りに行くと、前方の選手が後方のどちらかにバックパス。するとボールをもらった選手の後ろに新たに2人の選手がつき、まるで無限に形成するトライアングルのようになる

 

 

 

よしみ「必殺タクティクス!」

 

いつき「凄い連携…」

 

果南「UTXの選手を次々と交わしていくね」

 

 

 

一人、また一人とUTX選手を交わしていく木戸川清修。残るはセンターバックのあんじゅだけとなった

 

 

英玲奈「あんじゅ!来るぞ!」

 

あんじゅ「分かってまーす」

 

 

あんじゅがディフェンスに入る。しかし木戸川清修はそのまま突破を試みる

 

 

貴志部「無駄だ!私達からボールを奪うのは不可能だ!」

 

あんじゅ「!!速いわね」

 

 

キャプテン、貴志部を中心とした連携でUTX最後の砦、あんじゅを交わす

 

 

 

ダイヤ「あんじゅさんも突破されましたわ!?」

 

ルビィ「このままじゃ決められちゃうよ!?」

 

梨子「……」

 

月「…梨子ちゃん?」

 

 

月は梨子が難しい顔をしていたので声をかける。すると梨子はため息混じりに一言

 

 

 

梨子「相変わらずですね…あんじゅさん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんじゅ「ー ジャッジメント・レイ ー」パチン!

 

 

あんじゅが指を鳴らす。するとあんじゅの上空に不気味な紋章が複数出現。そこから放たれるのはーーー

 

 

あんじゅ「逃がさないわよ♪♪」パチン!

 

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

ドガァン!ドガァン!ドガァン!

 

 

貴志部「うわあ!!?」

 

 

 

レーザービームの雨。まるで戦場であった

 

 

 

 

 

善子「えぇ……めちゃくちゃ…」

 

花丸「鞠莉さんもあんじゅさんも…野蛮ずらね…」

 

鞠莉「え?私?」キョトン

 

 

 

 

レーザーの雨が止む頃には、必殺タクティクスを仕掛けていた木戸川清修の選手全員が吹き飛ばされていた

 

 

河宮「必殺タクティクスが…ディフェンス技で潰されるなんて…」

 

跳決「めっちゃくちゃすぎる…」

 

あんじゅ「あらあら…ちょっとやり過ぎちゃったかしら♪」

 

 

 

UTXは予選からこの試合まで、無失点で勝ち抜いている。それはキーパーが優秀だからではない。もちろんキーパーも全国レベルなのだが……

 

 

 

あんじゅ「私には刺激が足りなすぎるのよ」

 

 

 

 

あんじゅのディフェンスにより、相手のチームがシュートまで行けないのである

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 第3スタジアム前 ー

 

 

 

海未「…遅いですね」

 

 

海未はスタジアムの入口前で待ち合わせをしているのだが…試合が始まっても、一向に待ち合わせている少女がくる気配がない

 

 

海未「どこで油を売っているのですか全く…」

 

「お〜い!海未ちゃん!!」

 

海未「……大遅刻ですが?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海未「穂乃果」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ごめん、ごめん!店番からなかなか抜け出せなくって…怒ってる?」

 

海未「当たり前です!約束した時間を守るのはとうぜんでしょう!?」

 

穂乃果「うぅ…ごめんなさい」

 

海未「はぁ…全く、ひとまず試合が始まっているので話は後で。あなたに合わせたい人もいますし」

 

穂乃果「え?誰?」

 

海未「月詠のストライカー 渡辺月です」

 

穂乃果「月ちゃん!え!?日本に帰ってきてたの!?」

 

海未「私も少し前に知りました。おそらく、呼ばれたのでしょう…」

 

穂乃果「呼ばれた…?ああ〜あれね!確かに月ちゃんなら戻ってくるね」

 

海未「歩きながら話しましょう。試合、終わってしまいます」

 

穂乃果「は〜い」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

千歌「そう言えば梨子ちゃん、元々UTXのサッカー部員だったよね」

 

梨子「うん。レギュラーメンバーには到底及ばなかったけどね…」

 

鞠莉「ふむふむ…なるほど…決勝で戦うであろうUTX高校の情報源としては、もってこいね」

 

むつ「梨子ちゃん!あとで詳しく!!」

 

梨子「あはは……」

 

月「(決勝戦ね…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

英玲奈「ツバサ!流星ブレードは対策されているぞ」

 

ツバサ「そうね。なら、あの技を使う時かしら」

 

英玲奈「あぁ、だがその前に」

 

 

英玲奈やツバサの前には、木戸川清修のDFが立ち塞がっていた

 

 

大磯川「ここから先は行かせません」

 

石川「木戸川清修の名にかけて、あなた達を倒します」

 

ツバサ「ふぅん…言ってくれるじゃない。英玲奈」

 

 

英玲奈「あぁ、だがな…」

 

 

 

 

英玲奈「寝言は寝て言えだ」

 

 

 

 

 

 

 

梨子「あれは!!?」

 

千歌「梨子ちゃん、どうしたの!?」

 

 

梨子が席から急に立ち上がる。英玲奈が何かしようとしているのだろうか、梨子はそのまま続ける

 

 

梨子「来るわ…英玲奈さんが…皇帝が動き出すわ…」

 

 

 

 

 

 

英玲奈「ー エンペラーフィールド ー」

 

 

 

英玲奈は必殺技、「エンペラーフィールド」を発動する。これより、グラウンドは英玲奈の手の中、UTXの選手は英玲奈の駒として忠実に、そして迅速に行動する

 

 

 

大磯川「なんだ!?UTXの選手が…」

 

貴志部「英玲奈を中心に動き始めた!?」

 

 

 

 

英玲奈「行くぞ」

 

 

 

 

 

英玲奈「ー グリッドオメガ Phase1 ー!!」

 

 

 

千歌「うわ!?」

 

果南「なに…あれ…風?」

 

 

UTXの選手が英玲奈の合図と同時に木戸川清修のDFの間を駆け抜ける。すると赤い突風が巻き起こり、木戸川の選手達を飲み込む

 

 

湖沼「う…!?」

 

和泉「うわ!?」

 

 

 

 

英玲奈「Phase2」

 

 

英玲奈の合図と同時に、赤い突風が渦を巻き、竜巻を作り始める。木戸川の選手達は全員、竜巻の餌食になる

 

 

 

大磯川「な、なんだあぁぁ!?」

 

滝「これは…タクティクス、なのか…?」

 

 

 

 

英玲奈「Phase3」

 

 

赤い竜巻は徐々に高さを増し、途中で消滅。空中に飛ばされた木戸川の選手達は地面に叩きつけれる

 

 

 

大磯川「ぐあ!?」ドサッ

 

石川「痛い!?」ドサッ

 

貴志部「うっ!?」ドサッ

 

滝「うわ!?」ドサッ

 

 

 

 

 

善子「なによ…これ…」

 

鞠莉「キーパー以外、立っていないじゃない…」

 

 

 

 

英玲奈が動き出すと、立っている敵はいなくなる。このことから英玲奈は「皇帝」と呼ばれるようになった

 

 

英玲奈「邪魔するものはいなくなったぞ。ツバサ」

 

ツバサ「そうね。じゃあ、早速」

 

 

ツバサ「私の新技、受け取ってもらおうかしら」

 

 

 

UTX高校エースストライカー 綺羅ツバサは、この試合後より「ゴッドストライカー」と呼ばれるようになる

 

 

 




神のタクトとエンペラーフィールドはちょっと違います。神のタクトは「道を示す」、エンペラーフィールドは「味方を操る」という感じです

次回はツバサさんの新技が登場します!




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第2章 20話 「試合を観終えて」

みなさん一日ぶりです。花粉で熱っぽい中、部活をやって来ましたルビィちゃんキャンディーです!今回のお話でまたいくつかの伏線?が立ちます。また、少し複雑な説明もあるので後書きにて詳細を書いています。

いよいよクライマックスに近づいてきました。最後までよろしくお願いします!




 

 

 

 

 

ツバサ「私の新技、受け取ってもらおうかしら」

 

 

木戸川清修はキーパー以外、立っているものは一人もいない。ツバサのシュートは誰にも邪魔をされることはない

 

 

硬山「な、なんてことだ…」

 

ツバサ「あら?怖気づいた?」

 

硬山「誰がそんなこと!新技だろうが全て真っ二つにしてやるさ!」

 

 

 

ツバサ「へえ…」バサッ!!!

 

 

 

 

硬山「…!!!!」

 

 

 

 

これは幻覚なのだろうか…ツバサの背中から羽が生え、宙に浮いているように見える。その姿はまるでーーーー

 

 

 

 

ツバサ「はあああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

『ー 神 ー』

 

 

 

 

 

 

 

 

ツバサ「ー ゴッドノウズ ー!」バリバリバリ!

 

 

 

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

千歌「な、何あれ!?」

 

月「おぉ…凄いね〜」

 

 

 

とてつもないパワーを纏ったボールは、木戸川ゴールへと迫る

 

 

硬山「な、なんだ…この威力は!?と、止められるわけ……」

 

 

 

 

 

神のみぞ知る。そのシュートが止められないということを God knows...

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ー 試合終了後 スタジアム前 ー

 

 

 

 

 

よしみ「……あんなのと戦うの?」

 

いつき「圧倒的…だったね、UTX」

 

 

完全にUTXの力に圧倒されたマネージャー達は、9人のことが心配であった。戦意を削がれ、決勝どころか準決勝にも影響が出たらと考えると……

 

 

むつ「千歌…大丈夫?」

 

千歌「……」

 

 

千歌達は試合が終わってから一言も喋っていなかった。え?これ、本当にまずいんじゃ…マネージャー達が焦り出したのと同時にーー

 

 

千歌「うおおおおぉ!!!!!!」

 

マネージャー「「「うわあ!!!?」」」

 

 

急に叫び出した千歌。すると他のメンバーが笑い出す

 

 

曜「あっははは千歌ちゃん!やっぱり思った?」

 

千歌「うん!思った!!」

 

マネージャー「「「?????」」」

 

 

全く状況を理解出来ていなマネージャー達。急に叫び出した千歌、急に笑い出したメンバー。あぁ、ついにおかしくなったんだな…そう思っていた

 

 

千歌「すごいよやっぱり!A‐RISEは!!UTXは!!!」

 

 

千歌は全員の方へと向き直り、続ける

 

 

千歌「サッカーを始めた時から、憧れだった!手の届かない存在だった!でも、今は!」

 

曜「すぐそこまで来てる!」

 

千歌「うん!」

 

善子「最強なら倒しがいがあるわ!」

 

千歌「ある!」

 

ダイヤ「王者を倒した浦の星女学院、最っ高にクールですわ!!」

 

千歌「もうレジェンドだよ!」

 

 

むつ「え?ちょっとまって?要するに…みんな…」

 

いつき「UTXが圧倒的だったから、燃えてきたってこと????」

 

 

千歌「そうだよ!」

 

 

ははは…さっきまでの私達が馬鹿馬鹿しく思えてきた…とマネージャー達は苦笑い。そうか、これが浦の星女学院サッカー部なんだ。もう既に、浦の星は全国レベルのサッカー部なんだ。もう決して、弱くなどない。そう思っていた

 

 

花丸「なんか、試合を見てたらうずうずしてきたずら!」

 

鞠莉「そうね!準決勝も近いし」

 

果南「まだ、夜まで時間あるよ♪」

 

千歌「よーし!そうと決まったら、練習だぁ!!」

 

 

「「「おーーーーー!!!!!!」」」

 

 

 

全員でグラウンドに向かって走り出そうとした、その時だったーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーバーワークは敗北の元ですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「ほえ?」

 

 

 

誰かが千歌達に声をかける。千歌が後ろを向くと3人、そこに立っていた

 

 

 

 

月「やっほ♪さっきぶりだね」

 

千歌「あれ?月ちゃん、急にいなくなったから心配したんだよ?」

 

 

一人は月。試合が終わると同時に席を外してそのままいなくなっていた

 

 

月「ごめんごめん。ちょっと、人に会ってたんだ」

 

千歌「人って…もしかして」

 

月「そう!この2人!」

 

 

2人の少女、一人は黒髪だが青も混ざっているロングの少女と、オレンジがかった茶髪のサイドテールの少女だった

 

 

月「紹介するよ!園田海未ちゃんと高坂穂乃果ちゃん」

 

穂乃果「よろしくね!」

 

海未「よろしくお願いします」

 

 

 

 

千歌「あれ???」

 

 

千歌は穂乃果に見覚えがあった。忘れるわけが無い。あの時の気迫、オーラを

 

 

千歌「え?あの時の……」

 

穂乃果「また会ったね!千歌ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

一方その頃 東京 秋葉原

 

 

 

 

北也「ここに来るのは…あの時以来か」

 

 

北也は試合が終わったあと、千歌達と別れて一人、神田明神に来ていた

 

 

北也「しかしまぁ、こうして会うのはいつぶりだ??」

 

 

 

 

 

 

 

北也「美奈」

 

 

 

 

 

 

 

美奈「それもあの時以来よ♪北ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー ホテル近くの練習グラウンド ベンチ ー

 

 

 

 

千歌「ありがとうございます。穂乃果さん。私、分かりました。私に足りないもの」

 

穂乃果「うん!良かった。間に合って」

 

ダイヤ「しかし、夜にそんなことがあったのですか…千歌さん」

 

千歌「はい。穂乃果さんがきっかけを作ってくれました」

 

穂乃果「私に出来ることは、あれぐらいしかなかったからね」

 

 

千歌がこうして闇に打ち勝つことが出来たのは穂乃果のきっかけから。穂乃果には感謝してもしきれない、が、

 

 

果南「でも…どうしてあなたがそこまで千歌のことを?」

 

穂乃果「それはね…」

 

 

穂乃果は立ち上がり、空を見ながら続ける

 

 

穂乃果「私も持ってたの。闇」

 

果南「!!」

 

ダイヤ「闇を…」

 

千歌「私と…同じ」

 

海未「…持ってるの間違いでは?穂乃果」

 

 

海未が穂乃果の言葉に対し指摘する。持っていたではなく、持ってる。ということは…

 

 

梨子「まだ、あるんですか?闇が…」

 

 

穂乃果の顔が少し暗くなる。太陽も雲に隠れ、少し周りが暗くなり、風も出てきた

 

 

穂乃果「私の闇ってね、特別というか…特殊、というか…」

 

ダイヤ「特殊、とは?」

 

海未「千歌。あなたの闇のチカラは、自分が望んだ時に出していたのですよね?」

 

千歌「…はい。私が心の中で念じると、チカちゃんが…闇が、出てきました」

 

海未「穂乃果の闇は、念じなくても感情の変化で闇が出てきます」

 

善子「それって…制御のしようがないじゃない…」

 

 

穂乃果の闇のチカラ、それは穂乃果の感情の変化により勝手に出てくるという、かなり特殊なものであった。しかし、闇のチカラ自体、持っている人間が少ないため、特殊というように種類分けができるとは言いきれないのだが…(※後書きで詳しく説明)

 

 

穂乃果「今はだいぶコントロールできるようになってきたから、大丈夫だとは思う」

 

海未「闇のチカラをコントロールするなんて言いだした時は、全力で止めに行きました…馬鹿げていますから」

 

千歌「チカラを、コントロール…」

 

曜「一歩間違えたら…ですよね?」

 

海未「はい。だから止めたんです。私は…」

 

 

海未はため息をつきながら穂乃果を見る。よっぽど苦労したのだろうと、周りは察していた

 

穂乃果「私が千歌ちゃんにここまで干渉した理由はね。同じチカラを持つ者として、何とかしたいと思ったから!」

 

海未「手遅れになったら遅いですからね」

 

果南「そうだったんだ…」

 

 

だとしても、全く見ず知らずの人をここまで心配するのは、なかなか出来ることではない。尚更、感謝の気持ちが強くなる

 

 

曜「穂乃果さん、ありがとう。千歌ちゃんの幼馴染としてもお礼を言わせて」

 

梨子「私からも…千歌ちゃんの異変に気づいていながら、何もすることが出来なかった…」

 

穂乃果「いやいや、そんな…千歌ちゃんが無事でよかった!それでおしまいだよ!」

 

千歌「穂乃果さん…」

 

穂乃果「これからも、自分を見失わないで、ファイトだよ!」

 

千歌「はい!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

穂乃果達を見送ったあと、浦の星サッカー部は練習はせずに(海未に注意されたため)、ホテルで体を休めていた

 

 

 

千歌「闇のチカラを、コントロール、か…」

 

梨子「私もする!なんて言わないでよ?」

 

千歌「いや、しないよ!そんなこと…」

 

 

私には怖くてできないや…と千歌はミカンを食べながら思うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海未「このあと練習ですよ。穂乃果」

 

穂乃果「そっか。じゃあ、このまま学校に行こっか」

 

海未「はい。そうしましょう」

 

穂乃果「(千歌ちゃん、もうすぐ戦えるね)」

 

 

静かに燃える炎が、少しずつ強くなる

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 次の日 練習グラウンド ー

 

 

 

今日は浦の星の準決勝の相手が決まる日。試合会場にはいつきに行ってもらっている。浦の星サッカー部は、課題である技のスタミナの大量消費と身体への負荷の軽減を中心に練習していた

 

 

 

果南「さあ!どんどん撃ってきな!」

 

曜「行くであります!」

 

曜「ー ゴッドウインド ー!」ドガァン!

 

果南「はあああ!!(もっと身体の力を抜いて…)」

 

果南「ー 海皇の三叉撃 ー!!」ドン!ドォン!!ドガァン!!!

 

曜「あちゃあー…止められちゃった…」

 

 

曜の必殺シュートは果南の技によって止められるも…かなり強力なようで

 

 

果南「いや、曜ちゃんのシュート強すぎ!!爆熱ストームぐらいあるって! 手がまだビリビリしてるもん!」

 

 

果南からの言葉で、曜は少し嬉しくなる。ゴッドウインドが完成する前までは、自分のシュートが通用せずに、戦力としてどうなのか悩んでいたため尚更である

 

 

曜「スプリントワープもだいぶ負荷を減らして出来るようになったよ!」

 

果南「流石曜だね。成長が早い」

 

 

自分達は確実に強くなっている。そう実感していた

 

 

 

 

 

 

 

梨子「コワレヤスキはもう、大丈夫そうね」

 

鞠莉「浦の星の得点源ですもの、これからはバンバン使っていきましょ!」

 

善子「フッ…我がリトルデーモン達よ…魔力の使いすぎには気をつけなさい」

 

梨子「いつから私達がリトルデーモンに…」

 

鞠莉「もうそろそろ折れたら?リトルデーモン リリーwww」

 

梨子「わ、我をその名で呼ぶな!! 大魔女マリーよ!!」

 

鞠莉「www」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「ラ・フラムはシュートブロックとしても使えます。使用回数が増えることは避けられないでしょう」

 

千歌「1回でも多く技を出せるように、頑張りましょう!」

 

ダイヤ「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「ルビィちゃん」

 

ルビィ「花丸ちゃん?どうしたの?」

 

花丸「ちょっと気になる事があって…」

 

ルビィ「気になる事?」

 

花丸「ルビィちゃん…」

 

 

 

 

花丸「サッカーをやってて楽しい?」

 

 

 

ルビィ「花丸ちゃん!?」

 

 

花丸からの質問にルビィは戸惑う。少し迷ったが、ルビィは昔自分で決めたことを貫き通すため、心を押し殺し…

 

 

 

 

ルビィ「ルビィは…楽しいよ!サッカー!」

 

 

 

 

嘘をついた

 

 

 

 




千歌ちゃんと穂乃果ちゃんの闇の説明

千歌
闇のチカラは自分の意思で発動。発動後は別の人格になるため闇のチカラのコントロールは不可能に近い

穂乃果
闇のチカラは穂乃果の感情の変化で勝手に発動。発動後の穂乃果の人格はそのまま。なので、コントロールは千歌よりかは難しくない


簡単に説明するとこんな感じです。この他に疑問などがありましたら、質問よろしくお願いします。ネタバレなどにならない程度で答えます



ツバサさんにも異名がつきましたね!流石は「ゴットスt


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第2章 21話 「函館聖泉戦 その1」

お待たせしました…ついに準決勝です。長い戦いになると思います





 

 

 

 

 

夜。ホテルなどのリゾート施設が沢山あるため、道は明るくグラウンドも自由に使える。少女が一人、街灯により明るく照らされた道を走り抜けていた

 

 

 

ルビィ「ハァハァ…」タッタッタッ

 

 

いつもだったらこの時間は、善子や花丸と楽しくおしゃべりやおやつを食べているのだが、今日に限っては…

 

 

ルビィ「(部屋にいても気まずいだけだよ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸『サッカーをやってて、楽しい?』

 

ルビィ『ルビィは…楽しいよ!サッカー!』

 

花丸『本当に?』

 

ルビィ『う、うん…』

 

 

花丸のあの質問…確実に感づき始めている。ルビィが隠していることを、押し殺していることを、でも絶対に言えるわけがない。ルビィが過去にした事を、された事を…

 

 

ルビィ「花丸ちゃん達のサッカーは…奪いたくない……」

 

 

走るペースが速くなる。忘れたい記憶、無くしたいこのモヤモヤを振り払おうとして変に体が力む。気づくといつも練習しているグラウンドまで来ていた

 

 

ルビィ「海未さんに休めって言われたけど…」

 

 

どうも落ち着かない。ルビィはそのままグラウンドに入ろうとしたのだがーー

 

 

ルビィ「あれ?誰か…いる」

 

 

そこにいたのは少女。ルビィはその少女を見て足を止める

 

 

ルビィ「あ…あなたは」

 

「!!……あんた…」

 

 

 

 

 

 

理亞「どうしてアンタがこんなところにいるのよ」

 

 

雪原の狼が鋭い眼差しでルビィを睨んでいた

 

 

 

ルビィ「る…ルビィも明日のために練習を…」

 

理亞「練習?あんたが?」

 

ルビィ「ピ……そ、そうです…」

 

 

完全に人見知りが発動しているルビィは、なかなか喋ることができなかった。しかし、喋ることができない理由は他にもある

 

 

理亞「あんた…練習なんてして意味あるの?」

 

ルビィ「!!」

 

理亞「いい?何度も言うけど、私はあんたのプレーを見てると腹が立つ。必ず、明日叩き潰すから」

 

ルビィ「……」

 

 

理亞「明日戦う者同士、ここで練習するのはどうかと思うけど?」

 

ルビィ「そ、そうだよね…」

 

理亞「まぁ、私はもう戻るからいいけど、あんた達には負けない」

 

 

理亞はルビィの横を通り過ぎながら一言

 

 

理亞「これが…最後だから……」

 

ルビィ「…最後?」

 

 

そのまま理亞はグラウンドの外へと消えていった

 

 

ルビィ「…ルビィのサッカーは腹が立つ……か、ははは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 翌日 ー

 

 

 

 

 

 

『さあ!Bブロックもついに準決勝となりました!対戦する高校をご紹介します!!』

 

 

 

ダイヤ「理亞さんのこと、頼みますわよ」

 

鞠莉「任せて。簡単には抜けさせないわ」

 

花丸「この試合、聖良さん達へのリベンジずらね」

 

善子「あの時の屈辱を…はらす時よ!」

 

梨子「あの時は手も足も出なかった…」

 

曜「でも、今は違う!」

 

千歌「勝とう!!聖良さん達に、進化した私達を見せるんだ!!」

 

千歌「いくよ!浦の星ーー!!」

 

 

「「「サーンシャイーン!!!!!!!!」」」

 

 

『先にコートに入場してきたのは静岡県代表 浦の星女学院だあ!!!ここまで、並み居る強豪校を破り、準決勝まで駒を進めてきました!!』

 

 

ルビィ「……」

 

果南「ルビィ?」

 

 

『浦の星女学院の武器は超攻撃的な速攻と、ダイナミックなプレー!!UTX高校に続く、今大会の優勝候補にまで登り詰めた今大注目の高校です!!!!』

 

 

むつ「確か、Aブロックの準決勝も同時刻に行われるんですよね」

 

北也「あぁ、Aブロックの方には、よしみに言ってもらっている」

 

いつき「まぁ、勝ち上がってくるのはUTX高校ですよね!」

 

北也「……UTXね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー Aブロック準決勝会場 ー

 

 

 

 

よしみ「来た…UTX高校……」

 

 

 

 

選手の入場により歓声が上がる。現れたのは大会最優勝候補、UTX高校。毎回、日本代表のほとんどはUTXから選ばれるという、高校女子サッカー界の超エリート高校である

 

 

ツバサ「まさか、彼女たちと戦うことになるなんてね」

 

英玲奈「相手の実力は未知数…油断ならないな」

 

あんじゅ「問題ないわよ。常勝でしょ?ツバサ」

 

ツバサ「えぇ、そうね……」

 

英玲奈「サッカー部が出来たとは聞いていたが、即席のチームではなさそうだな」

 

 

 

 

 

Aブロック準決勝

『UTX高校 対 音ノ木坂学院』

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

『続いて入場してきたのは、同じく今大会優勝候補、北海道代表 函館聖泉女子高等学院だぁぁ!!』

 

 

聖良「あの聖堂山高校に勝つとは…彼女たちの成長スピードは異常です…気を引き締めましょう」

 

理亞「……」

 

 

『注目選手は攻守で牙をむく鹿角姉妹!!!!「雪の女神」こと、姉の鹿角聖良のブロック率は今大会でもトップクラスです!そして「雪原の狼」こと、妹の鹿角理亞は1年生にしてレギュラーメンバーに!浦の星にも負けない圧倒的な攻撃力で得点を量産しています!』

 

 

 

むつ「現時点での理亞さんは、今大会の得点数第2位を記録しています…」

 

北也「鹿角理亞をどれだけ抑えられるかが鍵だな。そして……」

 

いつき「そして…なんですか?」

 

北也「函館聖泉のディフェンスをどう突破するか」

 

 

 

 

センターフォワード 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌☆

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 桜内梨子

左サイドバック 国木田花丸

右サイドバック 黒澤ルビィ

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

3-4-1

 

 

 

 

 

 

センターフォワード 鹿角理亞

トップ下 白戸屋なえ

右サイドハーフ 氷里

左サイドハーフ 洞爺

ボランチ 木瀧

右サイドバック 伊淘

左サイドバック 北厳

センターバック 鹿角聖良☆

キーパー 白咲

 

3-4-1

 

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!

 

 

『さあ、試合開始です!前半は函館聖泉ボール!鹿角理亞がドリブルで上がっていく!!』

 

 

理亞「……」

 

ダイヤ「行かせませんわよ!」

 

 

ダイヤがすぐに理亞のディフェンスに入る。理亞を抑えることがこの試合を有利に進める条件なのだが

 

 

理亞「お手並み拝見ね」

 

ダイヤ「!?(高速の足元のプレー!?)」

 

 

理亞「!」

 

ダイヤ「!?」

 

理亞「!」

 

ダイヤ「!!」

 

理亞「!!!」

 

ダイヤ「!!?」

 

 

 

理亞「遅い!」バッ

 

ダイヤ「くっ…」

 

 

『早速見せていく鹿角理亞!! 得意とする足元のボールさばきで黒澤ダイヤを見事突破!!』

 

 

果南「あのプレー…ホントに1年生!?」

 

鞠莉「並大抵の努力では出来ないようなプレーね…」

 

 

理亞「無駄よ。あんた達とは実力が違う」

 

 

『鹿角理亞がドリブルで浦の星選手を次々と突破していきます!このままシュートまで行けるのでしょうか!?』

 

 

梨子「ー アインザッツ ー!!」

 

理亞「!!」

 

 

梨子が高速でボールを奪いにいく。高速には高速を。梨子の判断は間違ってはいない。だが

 

 

 

 

理亞「発想が単純すぎ」

 

 

梨子「な!?」

 

 

先程まで理亞がいた場所には既に、理亞はいなかった。一瞬で理亞は梨子の真上へ。そしてボールを両足で挟み、オーラを込めていた

 

 

善子「あの空中回転…」

 

花丸「理亞さん、回転し過ぎずら…」

 

 

理亞「ー ドロップアウト ー」ドガァン!

 

梨子「きゃ!?」

 

 

空中でオーラをためたボールを地面に叩きつける。その衝撃で梨子は吹き飛ばされる

 

 

曜「梨子ちゃん!!」

 

梨子「私のことはいい!早く理亞ちゃんを!!」

 

 

理亞はどんどん浦の星ゴールに近づいている。残るDFは花丸、鞠莉、ルビィとなった

 

 

鞠莉「全力で阻止するわよ!花丸、ルビィ!!」

 

花丸、ルビィ「はい!!」

 

 

『おぉっと!?浦の星、3人で鹿角理亞を取り囲む!!これは鹿角理亞でも突破は困難か!?』

 

 

理亞「……勘違いしないで」

 

鞠莉「勘違い??」

 

理亞「あんた達…私しか見てない」ポン!

 

 

花丸「バックパ…「攻めるのは理亞ちゃんだけじゃないっぺよ!!」

 

花丸、鞠莉、ルビィ「!!!!?」

 

 

理亞の後ろでボールを受け取ったのはーー

 

 

鞠莉「白戸屋なえ!?」

 

なえ「いっくぺよーー!!!!」

 

花丸「は、速いずら!?」

 

 

『おぉっと!!鹿角理亞のバックパスをもらった白戸屋なえ!ものすごい速さでドリブル!浦の星ディフェンスを突破したぁぁ!!!!』

 

 

曜「はや!?」

 

千歌「全く追いつけないよ!?」

 

 

『そのまま白戸屋、シュートを決めることができるのか!?』

 

 

なえ「うちのシュートをくらえ!!」

 

なえ「ー シロウサギダッシュート ー!!」

 

 

果南「は、速い!!」

 

 

自らが蹴ったボールに追いつき、さらに蹴りこむ、スピードを生かした必殺シュート。理亞に気を取られていた果南は反応が遅れる

 

 

果南「(三叉撃は間に合わない…)」

 

果南「ー 真トライデント ー!!」ドガァン!

 

 

海皇の槍がボールに突き刺さる……が、

 

 

 

千歌「果南ちゃん!」

 

善子「うそ!?押されてるわよ!!?」

 

 

徐々に果南は後ろへと押される。果南自身も驚きを隠せない

 

 

果南「ぐぬぬぬぬぬ…速いだけじゃない…おも…いぃ………」ググググ

 

 

むつ「え?やばくないですか!?」

 

いつき「試合開始早々失点!?」

 

北也「………いや」

 

 

北也「まだだ」

 

 

 

 

 

 

『おっと!?松浦果南、ゴールラインぎりぎりでなんとか持ちこたえた!!』

 

 

 

果南「く……まだ…だよ……」ググググ

 

なえ「うそ!?」

 

理亞「…ここに来て持ち堪える…」

 

 

果南「(こんなところで……)」ググググ

 

 

むつ「果南さん、ボールを掴んでいるのとは逆の手を!?」

 

いつき「グーにして……まさか…」

 

 

果南「負けるわけない!!!!」ドガァン!!

 

 

 

なえ「な!?」

 

聖良「!!?」

 

鞠莉「果南!!」

 

曜「あの状況下でボールを……」

 

 

 

 

 

 

『殴り飛ばしたあぁぁぁ!!!!松浦果南!決死のシュートブロック!!白戸屋のシュートはゴールとなりませんでした!!』

 

 

花丸「どこからあんな力が…」

 

鞠莉「流石果南…助かったわ」

 

 

果南「カウンター!!頼むよ!!」

 

果南「(うわ〜…腕痺れるわ…ちょっと無茶しすぎたかな…)」

 

 

 

 

聖良「やはり、一筋縄では行きませんか…しかし、」

 

 

 

 

 

聖良「私達のディフェンスは突破不可能です」

 

 

 

 

 

浦の星女学院 0-0 函館聖泉女子高等学院

 

 

 

 

 

 

 




ドロップアウト
鹿角理亞のドリブル技、オリジナルです。技の流れは「ボールを足で挟み神田明神で見せた空中回転をする→相手選手の真上まできたらオーラをためたボールを相手選手の真下の地面に叩きつける→突破」です

次回は函館聖泉のディフェンスが猛威を振るう!?




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第2章 22話 「函館聖泉戦 その2」

勢いでとーにーかーく自ー分らしさ〜。はい。勢いでゴリ押しました。ルビィちゃんキャンディーです。理亞ちゃんがちょっとセリフがきつくなりますが、近いうちに理由がわかると思います!




 

 

 

 

 

果南の決死のブロックにより失点を回避した浦の星女学院。そのまま得意のカウンターを仕掛けようとしたのだが……

 

 

 

ダイヤ「!!」

 

 

聖良「させませんよ?」

 

 

曜「もう、ディフェンスを固めてる…」

 

梨子「完全に対策されているわね…」

 

 

『函館聖泉が代々引き継いでいるディフェンスの組み立ての速さ!本当に先程まで攻撃していたのでしょうか!?浦の星はカウンターを仕掛けるのは困難か!?』

 

 

善子「いや、まだよ!リリー!!」

 

梨子「その名前で呼ばないで!!」

 

 

梨子「ー 神のタクト ー!」

 

 

聖良「!!必殺タクティクス!」

 

 

函館聖泉の固められたディフェンスの壁にも隙間があるはず。そう考えた浦の星は梨子の指揮で突破口を探す

 

 

梨子「ダイヤさん!曜ちゃんへ!」

 

ダイヤ「曜さん!」パス

 

曜「よし!繋がった!」

 

 

梨子「…行けるわ!」

 

 

『浦の星、函館聖泉のディフェンスに動じず、果敢に攻めます!少しずつですが、ゴールへと…近づいています!!』

 

 

梨子「…これは…サッカーよね……まるで迷路の中にいるみたい……」

 

 

函館聖泉のディフェンスは複雑で突破は困難。梨子の指揮はいつもよりも慎重に…まるで手探りの迷路攻略のような感覚に陥っていた

 

 

聖良「パス回しで徐々に侵略されてますね…」

 

 

千歌「かなりの時間パスを回してるよね」パス

 

ダイヤ「それでも、ゴールにはまだ距離が…」

 

 

梨子「まだよ…みんな…頑張って!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良「じれったいのは嫌いです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「!!?」

 

 

 

 

 

 

 

ガキィィィィン!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

千歌「梨子ちゃん!?」

 

 

 

ボールを持っていた梨子から返事はなかった。先程まで浦の星の攻撃の中心として動いていたはず…しかし、今はまるで…固まっているような……いや、凍っているかのような

 

 

 

 

 

聖良「ー スノーエンジェル ー」

 

 

 

『なんと鹿角聖良!桜内梨子が気づくよりも早く、技を仕掛けていた!!桜内梨子は氷漬け、これが「雪の女神」の力なのか!?』

 

 

ダイヤ「…全く見えませんでした……聖良さんが梨子さんに近づいたところを」

 

善子「あんなのが来たら…防ぎっこないわよ??」

 

 

聖良「さぁ、再び攻めますよ」

 

 

動揺している暇はない。再び理亞にボールが渡る。今度は他の選手にも警戒しながらディフェンスをするも……

 

 

なえ「遅いやっぺ!!」

 

曜「まさか、速さで負けるなんて…」

 

 

『また抜いたぁぁ!!白戸屋なえ、鹿角理亞に負けじとドリブルで攻め上がります!!』

 

 

 

いつき「鹿角姉妹以外にもあれほどのプレイヤーが…」

 

北也「あぁ…想定外だな」

 

 

ベンチでは全く情報がなかった白戸屋なえを、なんとか調べようと模索していた

 

 

むつ「!!あった、白戸屋なえの情報が!!」

 

いつき「どうだった!?むつ」

 

むつ「白戸屋なえは元陸上部、小学生で……短距離の記録保持者だよ」

 

いつき「だからあんなスピードを…」

 

むつ「どうしてサッカーをしているかは分からないけど…完全に脅威だよ……」

 

 

 

 

なえ「理亞ちゃん!」パス

 

理亞「ナイスよ姫」

 

 

なえと理亞の連携でほとんどの浦の星DFは既に突破していた。だが、まだDFはのこっている

 

 

理亞「……」

 

 

ルビィ「……」

 

 

理亞「覚悟はいいわね?」

 

 

ルビィ「………」

 

 

ルビィと理亞の1対1。理亞は敵意剥き出しでルビィの突破を試みる

 

 

理亞「そこよ!」

 

ルビィ「ピ!?」

 

 

理亞のボールさばきでルビィが突破される。しかし、

 

 

ルビィ「くっ…」バッ!

 

理亞「へぇ…追いつくのね」

 

 

ルビィは負けていない

 

 

理亞「無駄な足掻きね」

 

ルビィ「そんなことないよ!」

 

理亞「いや、無駄よ」

 

ルビィ「!!!!」

 

 

『再び突破されたぁ!!やはり、鹿角理亞を止められる選手はいないのか!?』

 

 

ルビィ「何が無駄なの!」ダン!

 

理亞「くっ…自分が一番…分かってるで…しょ!!!!」ダン!!

 

ルビィ「ピギッ!?」

 

 

ルビィと理亞の激しいタックル、制したのは理亞。もうゴールは目の前だ

 

 

理亞「私は負けない!頂点に立つまで…私は負けるわけにはいかないのよ!!!!」

 

 

狼がボールを連続で引き裂くが如く、連撃を加える。その気迫はまさに…獲物を狩る狼

 

 

理亞「ー ウルフレジェンド ー!!!!」

 

 

果南「!!来た…」

 

 

『出たぁぁ!!鹿角理亞の必殺シュート、ウルフレジェンドだぁ!松浦果南は果たして、この強力なシュートを止められるのでしょうか!?』

 

 

果南「今度は行けるよ!!」バッ!

 

 

勢いよく飛び出す果南。パンチング2回、叩きつけ1回の強力な連撃が発動する

 

 

果南「ー 海皇の三叉撃 ー!!」ダン!ドォン!

 

果南「はああああぁぁぁ!!!!」ドガァン!!

 

 

 

理亞「…しぶとい……でも」

 

 

 

 

鞠莉「果南!?」

 

ルビィ「果南ちゃん…どうしたの!?」

 

 

 

 

 

理亞「もう終わりよ」

 

 

 

 

果南の身体に異常事態が発生していた

 

 

 

 

果南「ぐ…そんな……」

 

 

 

 

 

 

 

果南「腕が……凍ってる…!?」

 

 

 

果南の両腕は完全に凍っており、動かすのは不可能になっていた

 

 

鞠莉「まさか…理亞のシュートで?」

 

聖良「理亞のシュートはキーパーを噛み殺す…あとは餌食になるだけですよ?松浦果南さん」

 

果南「くっ…このままじゃキャッチが出来ない…」

 

 

キャッチが出来なくなり、技の威力がガク落ちした果南。ボールを鞠莉に渡し、試合を続けさせる

 

 

鞠莉「腕は大丈夫なの?」

 

果南「何とかする!今は攻めて。どちらにしろ得点しないと勝てないよ」

 

鞠莉「分かった。行くわよ!みんな!!」

 

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

聖良「ふふっ…無駄ですよ。私達には奥の手がありますからね」

 

 

 

『攻める浦の星と守る函館聖泉、まもなく前半の半分が経過します!果たして先制点を奪うのはどちらの高校なのか!?』

 

 

曜「ー ライトニングアクセル ー!」ビュン!

 

北厳「!速いな…だが」

 

 

北厳「残念だったな。聖良さんや姫との練習で、速いのには慣れているんだ」ビュン!

 

曜「え!?」

 

善子「そんなのあり!?」

 

 

曜の高速移動に追いつく、函館聖泉DF 北厳。そのままディフェンス技で曜からボールを奪う

 

 

北厳「ー アイスグラウンド ー!」

 

曜「これじゃ… ガキィィィィン!!!!

 

 

ダイヤ「曜さん!!」

 

 

『渡辺曜がボールをカットされたぁぁ!! なんと浦の星、この試合、シュートをまだ1本も撃てていません!!これが函館聖泉のディフェンス力でしょうか!?』

 

 

鞠莉「果南!腕は…」

 

果南「ごめん…まだ使い物には」

 

鞠莉「シュートを撃たせたら負けね…」

 

 

 

『さあ!再びボールは白戸屋へ!シュート数、支配率、両方で浦の星に勝っている函館聖泉!このまま得点となるのか!?』

 

 

なえ「ここらで先制点、いただくやっペ!!」

 

梨子「え!?まさか!」

 

 

なえ「ー シロウサギダッシュート ー!!」

 

 

善子「は!?」

 

千歌「まだコートの真ん中だよ!?」

 

 

『おぉっと!?白戸屋なえ、コートの中心から超ロングキックだぁ!!しかし、この距離では浦の星のディフェンスに阻まれてしまうが!?』

 

 

なえ「そんなの計算のうち!頼むよ!!」

 

 

 

なえ「理亞ちゃん!!」

 

 

理亞「任せて」

 

 

鞠莉「!!シュートチェイン!?」

 

 

『鹿角理亞が来たあぁぁぁ!!!!白戸屋、最初から狙いはシュートチェインだったようだ!!鹿角理亞が前線でシュートの構えに入っている!!』

 

 

理亞「まずは1点」

 

 

果南「うそ…まだ手が固ま…」

 

 

理亞「ー ウルフレジェンド ー!!!!」ドガァン!

 

 

抗う術を失った獲物に容赦なく襲いかかる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゴーール!!!!先制点は函館聖泉、鹿角理亞だぁぁ!いまだに無双!止まらない進撃!鹿角理亞は誰にも止められないのか!?』

 

 

果南「ハァハァ…どうにかしないと」

 

 

 

 

ダイヤ「これは…最悪の流れですわね」

 

梨子「攻めても防がれて、守ってもシュートを撃たれる…このままだと、崩れるのも時間の問題です」

 

ダイヤ「この流れを崩すためにも…」チラッ

 

 

ダイヤは目で合図を送る。この判断はリスクを伴うため、合図を送った人にどうするべきか助言を求めたのである。対して合図を送られた者はーーー

 

 

 

 

 

北也「存分にやれ。手加減はするなよ」

 

 

 

ダイヤ「最初から手加減はしていません」

 

 

 

 

浦の星の反撃の令を降した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「ふむふむ…前半から浦の星が劣勢か…この試合、キーマンは彼女しかいないね」

 

 

 

 

 

月「ルビィちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合再開です!ここまで思うように攻めきれていない浦の星!果たして追いつくことは出来るのか!?』

 

 

ダイヤ「皆さん…あれ、やりますわよ」

 

千歌「あれって…」

 

花丸「まさか…」

 

 

 

 

理亞「?」

 

なえ「うそ…」

 

聖良「あれは…厄介ですね」

 

 

 

 

 

 

「「「ー ミラクルウェーブ ー!!」」」

 

 

 

『出たあぁぁぁ!!!あの聖堂山高校をも打ち崩した必殺タクティクス、ミラクルウェーブだぁぁ!!函館聖泉の選手が次々と波に飲み込まれていきます!!!!』

 

 

理亞「くっ…動けない」

 

なえ「いや〜!?」

 

 

千歌「行くよ!!どんなに固いディフェンスでも飲み込めば道は出来る!!!!」

 

善子「さっきの仕返しよ!!」

 

曜「ヨーソロー!!」

 

 

完全に勢いに乗った浦の星はそのまま函館聖泉陣内へ。聖良達を容赦なく飲み込もうとしていた

 

 

 

聖良「流石です。浦の星さん!」

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

聖良「でも残念♪」

 

 

 

 

 

函館聖泉の特徴は伝承されるディフェンスの強さ。その大名刺と言えるものがーーー

 

 

 

 

聖良「必殺タクティクス」

 

 

聖良「ー 絶対障壁 ー」

 

 

浦の星の前に巨大な壁がそびえ立つ

 

 

 

善子「何よあれ!?」

 

ダイヤ「巨大な…氷山!?」

 

 

巨大な氷山は簡単には動かすことも砕くことも出来ない…ミラクルウェーブは障壁により、道を塞がれてしまった

 

 

梨子「そんな…ミラクルウェーブが防がれるなんて……」

 

鞠莉「これじゃあ…突破は不可能」

 

 

『まさに難攻不落!!!!函館聖泉のディフェンスは浦の星の奇跡の波さえも通さない!!浦の星は攻める術を失ってしまったのか!?前半、間もなく終了です!』

 

 

聖良「前半が終わる前にもう一点、お願いしますね」

 

理亞「はい。姉様」

 

 

ダイヤ「くっ…今はまず、これ以上の失点を防がなくては」

 

鞠莉「絶対に決めさせない!!」

 

 

再び理亞がドリブルで攻める。ここで2点目を取られてしまうと、戦況は圧倒的に不利になる

 

 

 

鞠莉「ー グラウンドスイーパー ー!!」ドガガガガガァン!!

 

理亞「!!?」

 

 

鞠莉がディフェンス技でどうにか理亞を足止めする

 

 

理亞「ー ドロップアウト ー!!」ドガァン!

 

鞠莉「そんな…」

 

ダイヤ「相殺された!?」

 

 

しかし、ドロップアウトの衝撃波で爆発をかき消す理亞

 

 

理亞「小原鞠莉。あんたの技は強力だけど、対策済み」

 

 

『再び鹿角理亞だぁぁ!!ゴールは目の前!これがラストプレイになりそうです!!』

 

 

果南「くっ…」

 

 

理亞「さあ!これで終わり!!」

 

 

理亞がシュートの体制に入る。が、その時、理亞の前に立ち塞がる少女がーー

 

 

 

 

理亞「……あんたもしつこいわね」

 

 

理亞「ルビィ」

 

 

ルビィ「これ以上は決めさせない!」

 

 

 

『ここで再び、鹿角理亞と黒澤ルビィの1対1だぁぁ!抜かれれば失点、奪えば前半終了!浦の星の運命は黒澤ルビィに託されました!!』

 

 

果南「ルビィ…」

 

 

 

2人の激しいボールの取り合い。何度もぶつかる体と気迫。それと同時に理亞の口を開く

 

 

 

理亞「あんたは…何がしたいの?」

 

ルビィ「え…?」

 

理亞「あんた、何のためにサッカーをしてるの?」

 

ルビィ「…それは……みんなと」

 

理亞「みんなとサッカーをやってるから本気を出さない???」

 

ルビィ「!!…そういうわけでは……」

 

理亞「ふざけないで」ダン!!

 

ルビィ「!!!!」

 

 

理亞の激しいタックル。ルビィは吹き飛ばされそうになるも、なんとか持ちこたえる

 

 

理亞「この期に及んで…まだまわりの顔色をうかがってるの!?」

 

ルビィ「……」

 

理亞「だからイライラするのよ!!あんたのプレーは!!!!」ドガァン!!

 

ルビィ「ピギッ!?……」

 

理亞「この意気地無し、自分を殺す弱虫、下手くそ」

 

ルビィ「………」

 

理亞「あんたは、サッカーをやる資格なんてないのよ!!!!!!」

 

 

ルビィ「」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だからさあ、あんたのせいよルビィ』

 

『調子にのってさ』

 

『何?先輩に媚び売ってるわけ??』

 

『こんな試合するぐらいなら、あんたとなんてサッカー…』

 

 

 

 

『しない方がいいわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「ー ウルフレジェンド ー!!!!」ドガァン!!

 

 

果南「ルビィ!!危ない!?」

 

ダイヤ「ルビィ!!!?」

 

 

理亞のシュートがルビィに迫る。直撃すればただではすまない…しかし、肝心のルビィは

 

 

 

 

ルビィ「」

 

 

果南「何ぼーっとしてるの!?ルビィ!!!!」

 

 

ルビィ「」

 

 

花丸「(ルビィ…ちゃん…??)」

 

 

ルビィはまるで放心状態。目の前にボールが迫っていることに、全く気づいていないようであった

 

 

善子「ちょっ…ルビィ!!!!」

 

梨子「ルビィちゃん!!」

 

 

ルビィ「」

 

 

曜「ルビィちゃん!避けて!!」

 

 

ルビィ「」

 

 

 

 

花丸はこの時、鳴り止まぬ騒音の中で何故か、ある音を鮮明に聞き取っていた

 

 

 

花丸「…何、今の……」

 

 

 

 

 

 

その音はまるでーーー

 

 

 

 

 

 

 

ブチッッッッッッ!!!!!!

 

 

 

何かがブチ切れたような音

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさいんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「は?? ビュン!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

理亞「え………」

 

 

 

 

 

浦の星「!!!!??」

 

函館聖泉「!!!!!!??」

 

観客「!!!!!!??」

 

 

 

 

おかしい、確か私はシュートを撃ったはず。ゴールへと向かうはずのシュートが、なんで…なんでーーーーー

 

 

 

 

 

 

理亞「あれ?なんでボール…」

 

 

 

 

 

 

 

理亞「私の後ろに……あるの???」

 

 

 

 

会場にいる人は誰も、理解出来なかった。だだ、分かることはーーー

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「…………」

 

 

 

 

 

 

ルビィが理亞のシュートを蹴り返したということだけである

 

 

 

 

 

 

 

前半終了

浦の星女学院 0-1 函館聖泉女子高等学院

 

 

 




皆さんだいたいルビィちゃんの過去に何があったかは、察しているかと思いますが、ひとまず次回はルビィちゃんの過去がメインになると思います。え?チートキャラにし過ぎるな???大丈夫です!さじ加減は間違えない程度で…やっていきます…多分



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第2章 23話 「ルビィの過去 その1」

ついにルビィの過去を語る時がやってまいりました…

過去編はセリフ文がほとんどになります。読みにくいかもしれません。文章力不足です。申し訳ないです




 

 

 

 

 

ー 函館聖泉ベンチ ー

 

 

聖良「り、理亞?気にする事は…ないですよ?おそらく、カウンター系の必殺技を使ってきたんですよ」

 

理亞「……」

 

聖良「後半も気を抜かず、リードを維持しましょう」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

理亞「……」

 

 

理亞は驚くのと同時に少しばかりの恐怖を覚えていた。あの時のルビィはまるで別人、もしあれが本気だったのならば自分は…手も足も……

 

 

理亞「(認めない!!…そんなこと…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 浦の星ベンチ ー

 

 

 

むつ「ルビィちゃんは頭を冷やしてくるって…お手洗い場に…」

 

北也「そうか…」

 

 

善子「ちょっと…ルビィのあれは何??完全に様子もおかしかったわよ!?」

 

花丸「…ルビィちゃん、とても苦しそうだったずら……」

 

ダイヤ「………それは…」

 

梨子「……」

 

千歌「…みんな、薄々気づいてたよね」

 

曜「…千歌ちゃん」

 

千歌「帝国女学院戦、聖堂山戦、そして……日常の練習でも」

 

花丸「…そう、ずらね」

 

善子「違和感…は感じていたわ」

 

 

鞠莉「…ダイヤ」

 

ダイヤ「鞠莉さん?」

 

鞠莉「…全員に話すべきじゃない?」

 

ダイヤ「!!しかし、それをルビィは望んでは…」

 

千歌「やっぱり、知ってるんですよね?」

 

ダイヤ「…千歌さん……」

 

曜「話してください。ルビィちゃんのこと」

 

善子「ルビィが悩んでるんでしょ?なら、私達が力にならないと」

 

花丸「…今のルビィちゃんはサッカーを楽しんでいないずら…マルは、ルビィちゃんの悲しい顔を…見たくないずら」

 

果南「でもね?これはかなりデリケートな「わかりました」

 

果南「!!?ダイヤ?」

 

千歌「ダイヤさん……」

 

ダイヤ「…話しましょう。果南さん、鞠莉さん。ルビィの過去を。そして」

 

 

 

ダイヤ「わたくし達の罪を」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

―――――――――――

―――――

 

 

 

 

ー 6年前 ー

 

 

 

小4ルビィ「お姉ちゃん!」パス

 

小6ダイヤ「ルビィ!上手ですわ!」

 

小6果南「小4でレギュラーか〜、凄いね」

 

小6鞠莉「うちのチームの点取り屋ですもの!これから頑張ってもらわないとね♪」

 

 

ルビィはわたくし達と、物心つく前から一緒にサッカーをしていました。毎日一緒にサッカー。年上としていたからこんなに上手なのでしょうと、あの頃はそう思っていました

 

 

ダイヤ「監督からも期待されています。ルビィ、しっかりと練習を積むのですよ?」

 

ルビィ「うん!お姉ちゃん!」

 

 

チームメイト「……」

 

チームメイト「………」

 

 

 

 

しかし、今考えるとルビィのサッカーセンスは……異常でした。もちろん、いい意味で、ですわよ??

 

 

鞠莉「ルビィ!!」パス

 

ルビィ「てりゃあ!」バシュ!

 

 

ピーーー!!

 

 

相手「あの赤髪の子、ボレーシュート撃ったよ!?」

 

相手「これでハットトリック…何者なんだろう…」

 

 

果南「今日も絶好調だね。ルビィ!」

 

ルビィ「うん!まだまだ行けるよ!」

 

 

チームメイト「……」

 

 

 

 

そして、わたくし達が中学へと進学。Jrサッカーチームは引退し、ルビィが5年生になった時でした…

 

 

A「ねえ、ルビィちゃん」

 

ルビィ「なんですか?Aさん」

 

A「ルビィちゃんってさ…」

 

 

 

 

 

A「ダイヤさんの妹で、気に入られてたから試合たくさん出れたってホント?」

 

ルビィ「え……」

 

B「あ!私もその噂聞いたことある!どうなの?ルビィちゃん?」

 

ルビィ「え…そ、そんなこと……」

 

 

 

タチが悪いですわよね。わたくし達がいなくなった途端に、ルビィへの嫉妬から偽りの噂を流す…小学生の間ではよくある問題ではありますが……

 

 

 

ルビィ「……」

 

「ねぇねぇ、聞いた?あの黒澤ダイヤさんの妹、ルビィちゃん、お姉さん達に媚び売って試合、たくさん出てたらしいよ」ヒソヒソ

 

「え!?そうなの…ルビィちゃんってそういう事するんだね」ヒソヒソ

 

ルビィ「…違うもん」ボソッ

 

 

 

 

でっち上げた噂はエスカレートし、ついには学校でもルビィの噂は広まっていきました

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ルビィ「……」パクパク

 

ダイヤ「ルビィ?食欲が無いのですか?」

 

ルビィ「…ううん、大丈夫だよ」パクパク

 

ダイヤ「…ルビィ?」

 

 

 

 

ー 中学校サッカー部部室 ー

 

 

果南「ふぅ…今日も疲れたね」

 

ダイヤ「Jrの頃よりもレベルが上がっていますし…」

 

鞠莉「……」

 

果南「鞠莉、どうしたの?ぼーっとして」

 

鞠莉「…ルビィ、元気かな〜って」

 

ダイヤ「……」

 

果南「え?どうなんだろう…ダイヤ、ルビィちゃんはどう?頑張ってる?」

 

ダイヤ「……それが…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ルビィが最近、元気がない。そう果南さんと鞠莉さんに話しました。その後、果南さんに後輩の繋がりでルビィの事を聞いてもらって……初めて噂のことを知りました…

 

 

 

鞠莉「………」

 

果南「……酷い…」

 

鞠莉「…」スタスタ

 

ダイヤ「鞠莉さん、どこへ?」

 

鞠莉「そいつら、絶対に許さない!!!!見つけ出して、ボコボコにしてやる!!!!」

 

果南「鞠莉!落ち着いて!!」

 

鞠莉「落ち着いていられる分けないでしょ!!!!!!??」

 

ダイヤ「ピ!?」

 

鞠莉「果南とダイヤは怒ってないの!?これは完全にいじめよ!?ルビィは何も悪くない!!あんなにいい子が、なんで……いじめられなきゃ…いけないの???」

 

果南「…鞠莉……」

 

ダイヤ「……」

 

 

わたくしもあの時は、相手の方が憎くて憎くてたまりませんでした。絶対に許すものかと、鞠莉さんと同じことを考えていました。ですが、

 

 

ダイヤ「わたくし達がこの問題に関与したことが発覚すれば、さらにルビィの噂が酷くなりますわ…」

 

鞠莉「だからってルビィを見捨てるっていうの!?」

 

ダイヤ「そうは言っていません!!わたくしが、このあとルビィと話します。それから本人の希望も踏まえて対策をとる。これでよろしいですか?」

 

鞠莉「…私は相手を許さないからね」

 

ダイヤ「…わたくしが相手の方を許すとでも?」

 

果南「2人とも熱くならないでね…」

 

 

 

この判断が間違っていたのでしょうか……まさかルビィに更なる悲劇が起ころうとは…この時は思いもしませんでした

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ー その日の夜 黒澤家 ー

 

 

ルビィ「…お姉ちゃん、お話って?」

 

 

そしてわたくしはルビィに、今知っていることを全て話しました。そして今後どうするか、わたくし達に出来ることはないか、などいろいろ尋ねました。そしてルビィの想いを、聞いたのです

 

 

ルビィ「ルビィはね、悔しいんだ」

 

ダイヤ「悔しい…ですか?」

 

ルビィ「うん。噂の内容は、ルビィがお姉ちゃん達のお気に入りで、試合にたくさん出させてもらっていた。っていう事…これじゃあ…」

 

 

 

ルビィ「お姉ちゃん達が、えこひいきするずるい人って思われてる!!!!」

 

 

ダイヤ「!?ルビィ…噂されているのはルビィなのですよ?わたくし達よりもルビィの事を……「ルビィね。だから、考えたの」

 

ダイヤ「…考えた…とは?」

 

 

 

 

ルビィ「ルビィがね、周りの人達からお姉ちゃん達に媚び売らなくてもいいじゃん、って思われるほど、強くなればいいんだよ」

 

ダイヤ「…ルビィ?それでは何の解決にもなっていませんわ」

 

ルビィ「お姉ちゃん達は噂を流した相手の人達を許さないと思う。ルビィのために。でも、ルビィはね」

 

 

ルビィ「お姉ちゃん達を侮辱した人を絶対に許さない」

 

 

ダイヤ「…ルビィ……」

 

 

ルビィ「待っててね?お姉ちゃん、ルビィ、すっごく強くなって、中学校でサッカー部に入るからね」

 

 

ルビィ「もう二度と、お姉ちゃん達をえこひいきするような人と思わせない…絶対に」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

こうして、ルビィの強さへの執着心が強くなっていきました。わたくし達が中学2年生になる頃には……

 

 

 

「ねぇ、聞いた?私達の町のJrサッカーチームの選手で、とんでもなく強い子がいるんだって!」

 

果南「(ルビィちゃんだよね……)」

 

「そうなの?」

 

「なんでも、海外留学レベルだとか!!」

 

鞠莉「(…ルビィね)」

 

「凄!!確か第二中にも、イタリアへサッカー留学した子がいるって聞いたけど…」

 

ダイヤ「(月さんですわね…すでにイタリアへ行かれたのですね)」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「まだだよ…まだ足りない…もっと強くならないと!!」

 

 

小5メンバー「(ルビィさん…)」

 

小4メンバー「…」

 

 

 

 

 

そして、わたくし達は中学3年生へ進級。ルビィが入学してきました

 

 

 




かなり暗い話になっていますね…次回も過去編ですが、もしかすると、「あれ?ちょっと違くない?」と思う部分が出てくるかもしれません。しかし、それは………はい!続きをお楽しに!!




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第2章 24話 「ルビィの過去 その2」

今回のお話もなんと!ほぼセリフ文だけです………

明日から新学期…投稿がゆっくりになるかもです





 

 

 

 

中3ダイヤ「今日から1年生が練習に加わりますわ」

 

中3果南「ルビィちゃんは……」

 

中3鞠莉「もちろん来るわ。もう部活内では……期待の新入部員よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 放課後 ー

 

 

 

ルビィ「黒澤ルビィです。よろしくお願いします!」

 

 

「あの子がルビィちゃん??」

 

「小さくて可愛いけど、すっごく強いらしいよ?」

 

「期待の新人ね!今年は大会、頑張れそう!」

 

 

わたくし達が通っていた第一中学は、静岡県でもかなりの強豪校でした。大会への意識が高く、ルビィはとても期待されていました

 

 

 

 

 

「じゃあ、ルビィちゃん!ミニゲームに参加してもらってもいいかな?1人足りなくて…」

 

ルビィ「はい!わかりました!」

 

 

果南「ルビィちゃんが敵チームか…どれくらい強くなったんだろう」

 

 

 

わたくしも、その時のミニゲームはルビィとは敵チームでした。ゲームが始まり、久しぶりのルビィとのサッカー。しかし、

 

 

ルビィ「はあぁぁぁ!!!!」ドガァン!!

 

 

果南「うわ!?」

 

 

ピーーー!!!!!

 

 

 

鞠莉「なに…今の?」

 

果南「全く見えなかった……」

 

 

「ルビィちゃんナイスシュート!!」

 

「凄い!これはもうレギュラーかな?」

 

ルビィ「そんな…まだまだです…」

 

 

ダイヤ「(ルビィ…あなたは一体、どれほどの練習を…)」

 

 

 

小学生の頃の面影は無くなっていました…ルビィはもっと強くなるために、まだ足りない。まだ足りない。と、毎日練習を積んでいきました

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「海外留学を蹴った!!??」

 

ルビィ「はい。興味なかったので」

 

果南「興味ない……はは、次元が違うな…」

 

ルビィ「ルビィは果南さん、鞠莉さん達とサッカーをやりたいんです。海外へ行く意味はありません」

 

果南「ルビィ…」

 

ルビィ「今年の大会、勝ちましょう!果南さん!鞠莉さん!そして…」

 

 

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!!」

 

 

 

 

ダイヤ「そうですわね。勝ちましょう。これが中学サッカー、最後の大会ですわ」

 

 

夏の総体、わたくし達の中学校生活最後の大会が近づいてきた頃には、ルビィは完全にレギュラーメンバー。他の3年生方からも、厚く信頼されていました

 

 

3年「ルビィちゃんを中心に戦術を作ろう」

 

3年「でもルビィちゃんの体力のことも考えると…」

 

3年「ここは私達がフォロー。あとは、ルビィちゃんとダイヤちゃんにバシッと決めてもらおう!」

 

 

3年「ルビィちゃん!」

 

3年「ルビィちゃん」

 

3年「ルビィちゃん」

 

「ルビィちゃん」

 

「ルビィちゃん」

 

 

 

 

2年「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夏の大会が始まりました

 

 

 

 

 

 

3年「ルビィちゃんがフリーだよ!!」

 

鞠莉「ルビィ!!」パス

 

ルビィ「!」

 

 

相手「ちょっと!!あの子のマークを外さないでって、あれほど言ったのに!」

 

相手「分かってるけど、スピードに追いつけないよ!!」

 

 

ルビィ「これで終わり!!」

 

ダイヤ「シュートですわ!」

 

ルビィ「はあぁぁぁ!!!!!!」ドガァン!!

 

 

 

 

 

 

見事県優勝……とまでは行きませんでしたが、第一中学サッカー部の最高成績を達成。3年生達は大満足。こうしてわたくし達の中学人生は幕を下ろしました

 

 

 

ルビィ「高校は浦の星女学院?」

 

果南「3人ともね。待ってるよ、ルビィちゃん」

 

ルビィ「絶対に行きます!」

 

鞠莉「今度は噂とか嘘話は出ないと思うけど…何かあったら必ずマリー達を頼ってね?」

 

ルビィ「うん!ありがとう!鞠莉ちゃん」

 

ダイヤ「ルビィ…」

 

ルビィ「お姉ちゃん…?」

 

ダイヤ「頑張ってくださいね?残り2年」

 

ルビィ「うん。がんばルビィ!!」

 

 

 

 

 

しかし、ルビィがあと2年間、サッカーを続けることはありませんでした……

 

 

 

わたくし達のせいで

 

 

 

 

ダイヤ『どうしてですか!?先輩!』

 

果南『そんな…諦めるなんて』

 

2年『私達は先輩達と頂点を取りたかったの…でも、もう、その先輩達はいない』

 

鞠莉『でも、新入生を勧誘して、また始めれば!!』

 

2年『無理だよ』

 

鞠莉『!!』

 

2年『ごめんね…』

 

 

 

 

 

果南『鞠莉に留学の話が来てることは知ってるでしょ』

 

ダイヤ『はい……』

 

果南『鞠莉のためにも…ね?』

 

ダイヤ『やめましょう。サッカーを』

 

 

 

 

 

 

ダイヤ『片付けて…それ、見たくない』

 

ルビィ『…そっか』

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

―――――――――――

――――――

 

 

 

 

 

ダイヤ「これがわたくし達が話せる全てですわ」

 

曜「じゃあ、ルビィちゃんは…」

 

善子「ダイヤ達がサッカーをやめたから、ルビィもやめたっていうこと???」

 

果南「おそらく…そうかもしれない」

 

千歌「他にも理由があるの?」

 

ダイヤ「噂ですが、わたくし達が高校へ進学したあと、ルビィはサッカー部に姿を見せなくなったと…」

 

梨子「ダイヤさん達がいなくなった後、何かが起きた…かも…」

 

善子「…どちらにしろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「ダイヤ達はルビィに謝ったの?」

 

 

ダイヤ「!!」

 

曜「善子ちゃん!?何を…」

 

善子「理由がなんであろうと、ルビィが中学でサッカーをやめたのは、ダイヤ達の問題があったからなんでしょ?」

 

ダイヤ「…その通りです」

 

善子「まさか、また一緒にサッカー出来るからなかったことにしよう、なんて、考えているわけじゃないでしょ??」

 

果南「……」

 

鞠莉「……甘えていたわね。ルビィに」

 

善子「昔みたいにルビィとサッカーできて嬉しいんでしょ?なら……」

 

 

 

 

善子「ケジメをつけなさい」

 

 

 

梨子「…善子ちゃん……」

 

 

北也「話はまとまったかな?」

 

ダイヤ「北也さん…」

 

北也「さ、戻ってきたぜ。ケジメをつけるべき少女が」

 

 

 

ルビィ「………」

 

 

 

ダイヤ「…ルビィ……」

 

 

ルビィ「話したんだね。昔のこと」

 

ダイヤ「は、はい…」

 

ルビィ「いいよ。別に。なんか、みんなに感づかれ始めてたから…」

 

 

花丸「ルビィちゃん…」

 

ルビィ「花丸ちゃん?」

 

花丸「ルビィちゃんはなんで昔みたいに、全力でプレーしないの?」

 

ルビィ「…それは……」

 

曜「やっぱり、中学で何かあったんじゃ…」

 

花丸「理由がなんだろうとマルはね?ルビィちゃん」

 

 

 

花丸「ルビィちゃんに本来の、全力で楽しむサッカーをして欲しいの」

 

 

ルビィ「…全力で楽しむ、サッカー…」

 

 

花丸「マル、前に言ったよね?」

 

花丸「ルビィちゃんはもっと自分の気持ち、大切にしなきゃ・・・自分に嘘ついて、人に合わせるなんて辛いだけだよ・・・って」

 

ルビィ「…」

 

花丸「前に進まないと!ルビィちゃん!」

 

善子「そうよ!私達はルビィの悪口なんて言うわけないでしょ!」

 

千歌「嫉妬なんてない!逆に見てみたいよ〜ルビィちゃんの本気!」

 

曜「お互い助け合い!でありますよ!」

 

梨子「私達を信じて、ね?ルビィちゃん」

 

 

ルビィ「…みんな……」

 

 

ダイヤ「ルビィ」

 

ルビィ「お姉ちゃん…果南ちゃん、鞠莉ちゃん…」

 

果南「辛い思いをさせたね…」

 

鞠莉「私達の問題に巻き込んで…」

 

ダイヤ「あなたの、大好きなサッカーを奪ってしまいました」

 

 

ダイヤ、果南、鞠莉「ごめんなさい!!!!」

 

 

ルビィ「…みんな、やめてよ……ルビィが勝手に……」

 

 

ダイヤ「ルビィ。昔みたいに、全力でプレー、したくありませんか?」

 

ルビィ「……全力」

 

ダイヤ「ごらんなさい。あなたの仲間を」

 

 

ルビィは振り向く。そこには笑顔でルビィを迎え入れようとする、浦の星女学院サッカー部のメンバーがいた

 

 

千歌「ルビィちゃん♪」

 

「「「浦の星女学院サッカー部へようこそ!!!!」」」

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

 

千歌「ルビィちゃんに質問です!ルビィちゃんのポジションはどこですか!!」

 

ルビィ「…ルビィの、ポジションは……」

 

ダイヤ「…ルビィ」

 

花丸「…ルビィちゃん……」

 

 

ルビィ「ルビィのポジションはーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「フォワードです!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半戦が間もなく始まる

 

 




次回から後半戦です!いいか…さじ加減だけは……間違えるなよ………(でもかなりヤバいですね)





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第2章 25話 「函館聖泉戦 その3」

新学期が始まり、桜は満開!!花粉もピークを過ぎて、めっちゃ暖かくなってきましたね!!!!………そして…地獄の四月の雪を体験したルビィちゃんキャンディーです。まじめな話、死ぬかと思いました…寒くてさむくて、部活帰りの夜とかはホントに、ヤバいですね(語彙力) 何人かの友達が気温差で体調を崩してしまいました。皆さんも体調管理には気をつけて……

ちなみにルビィちゃんキャンディーは高校に入学した一週間後にインフルエンザ。いや〜懐かしい。いろいろ終わりました。はい。







 

 

『さあ!間もなく、後半戦が始まります!点差は1、浦の星は十分逆転できる点差ですが、函館聖泉のディフェンスにより、前半、なんと1本もシュートを撃てておりません!!点差1というのは、この試合、かなり厳しい状態だと言えるでしょう!!』

 

 

 

『はい…あ、これですね…えー…今入った情報です。浦の星女学院のフォーメーションが変更されるようです。ポジションチェンジもあるようで……変更する選手は…………え??????』

 

 

 

 

 

聖良「!?どういうことですか??何故、あなたが……」

 

理亞「!?」

 

 

 

ルビィ「本来のポジションに戻っただけです」

 

聖良「ふ、フォワード!?高校のデータにはそんな記録は……」

 

 

善子「ふふっ、函館聖泉の目は節穴だったようね…」

 

梨子「調子に乗らないの!」チョップ

 

善子「あいた!?」

 

 

ルビィのポジションチェンジに、函館聖泉はもちろん、観客席の人達やメディアも動揺していた。それほどまでにルビィは、フォワードとは無縁の存在という認識をされていたのである

 

 

 

 

 

月「お!ルビィちゃんやっと出てきたよ!まったく…準決勝まで焦らすなんてね」

 

「あのコがツキの言っていたコ?確かに…化け物ね」

 

月「僕が本気でやって勝てるかな〜…もしかしたら負けるかも」

 

「ツキが?まさか…」

 

 

 

 

 

 

 

センターフォワード 黒澤ルビィ

セカンドトップ 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌☆

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 桜内梨子

センターバック 国木田花丸

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

2-4-2

 

 

 

 

 

ピーーー!!!!!!

 

 

『後半戦、浦の星ボールでキックオフです!今大会初のフォワードでプレイする黒澤ルビィが、ドリブルで上がっていきます!一体、どのようなプレーを見せてくれるのか!?』

 

 

 

理亞「あんた、正規はフォワードだったの?」

 

ルビィ「うん!そうだよ!おそろいだね」

 

理亞「一緒にしないで」

 

 

理亞がボールを取りに行く。足元での戦いは理亞の方が今のところ勝率が高い。しかし

 

 

理亞「!」

 

ルビィ「!」

 

理亞「!!」

 

ルビィ「!」

 

理亞「!!!」

 

ルビィ「!」

 

理亞「!!!!」

 

ルビィ「!」

 

 

理亞「な、なんなの…いったい…」

 

 

おかしい、どんなにプレッシャーをかけても、スキを作っても、ルビィからボールを

 

 

理亞「奪えない……」ハァハァ

 

 

それだけではない。2人はかなり動き回ったため、理亞は息切れているのだが、ルビィはと言うとーーーー

 

 

ルビィ「♪」

 

 

息切れるどころか、楽しんでいる

 

 

理亞「く…バカにしないで!!」

 

 

理亞は一瞬で足を伸ばす。が

 

 

ルビィ「うーん、発想が単純すぎ?」

 

理亞「!?」

 

 

すでにルビィに突破されていた

 

 

『抜けたあぁぁ!!!!なんと、黒澤ルビィ!前半、あれだけ苦戦していた鹿角理亞をいとも簡単に突破してみせた!!』

 

 

梨子「プレイスタイルが全く違う…」

 

曜「あれが本来のルビィちゃんのサッカー…」

 

鞠莉「………」

 

 

『さあ!黒澤ルビィが函館聖泉のディフェンス陣内へと近づいていく!浦の星、まだ1度もディフェンスを突破出来ていないが!?』

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!」パス

 

ダイヤ「ルビィ、パススペースはあるのですか?」

 

ルビィ「大丈夫!なくても作る」

 

 

函館聖泉のディフェンスの強さ。それはフォワードを除く選手全員が、ディフェンスをし、相手をマンツーマン。パスコースを塞ぎ、ドリブル、シュートをも封じる。チームの連携がとれているからこそ成り立つ、難攻不落のディフェンスなのだが

 

 

木瀧「え?」

 

洞爺「な、なんで!?」

 

聖良「どうしたんですか!?マークは!?」

 

 

聖良達が動揺するのも無理はない。なぜなら、マークしていたはずのルビィが

 

 

 

 

聖良「何故、ルビィさんがフリーなんですか!!??」

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!こっち!」

 

ダイヤ「ルビィ!」パス

 

 

 

これには味方ベンチも驚きを隠せないでいた

 

 

 

むつ「なんでルビィちゃんは、あのディフェンスひしめくフィールド内で、フリーになれたんですか??」

 

北也「おそらくルビィは……」

 

 

 

北也「相手の連携、いや行動をすべて予測している」

 

 

いつき「そんなことが出来るんですか!?」

 

北也「普通ならありえないな…だが、実際、ルビィは相手の動きを予想し、裏をかいている……」

 

むつ「いけーー!!ルビィちゃん!そのままシュートだ!!!!」

 

 

 

 

聖良「くっ…不覚…ですがーーー」ビュン!

 

ルビィ「!」

 

 

梨子「ルビィちゃん、危ない!!!!」

 

 

聖良が高速でルビィに近づく。梨子が気づき警告するも、時すでに遅し

 

 

 

聖良「ー スノーエンジェル ー」

 

 

ガキイィィィィィィン!!!!!!

 

 

 

曜「あぁ!!ルビィちゃんが」

 

 

聖良「私のスピードには勝てなかったようですね」

 

 

『出たあぁぁぁ!!鹿角聖良の必殺技、スノーエンジェルで黒澤ルビィは氷漬けだぁぁ!!目にも留まらぬスピードはさすがの黒澤ルビィも反応出来ませんでした!!!!』

 

 

 

聖良「さぁ、再び攻撃ですよ。函だ…バリッ!!!!!!!!!!

 

 

 

聖良「え…」

 

 

浦の星「!!!!!!?」

 

函館聖泉「!!!!???」

 

 

 

 

 

月「ははは…ヤバすぎでしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「」ギロッ

 

聖良「まさか!?氷にヒビが…」

 

 

氷漬けになったと思われていたルビィは、氷の中から聖良を睨みつける。その瞬間、氷に亀裂が入る

 

 

バキバキバキ!!!!!!

 

 

ルビィ「…ふぅ、反応遅れちゃった」

 

聖良「な…な、なんで……」

 

 

『なんということでしょうか!!!!??黒澤ルビィ、氷漬けになったと思いきや、自力で氷を砕き、何事も無かったかのようにボールをキープしたぁぁぁ!!!!』

 

 

ルビィ「無駄です。聖良さん。ルビィを凍らせるなら、もっと冷たく…もっと強力でないと」

 

聖良「く…まさか、これほどとは」

 

 

 

善子「ねぇ、なんかルビィの性格、変わってない??」

 

千歌「強気になってるよね…多分」

 

鞠莉「昔のルビィは人見知りじゃなかったのよ…あれは本来、というか熱くなったルビィかな?」

 

果南「(確かに、でもいつから人見知りになったんだろう……)」

 

 

 

 

聖良「ルビィさんを止めてください!!!!」

 

聖良が指示を出す。自分達が抜かれれば同点の危機、呼びかけに答えたDFがルビィを止めに入る

 

 

北厳「ここから先は行かせない!」バッ!

 

伊涛「函館聖泉ディフェンスの名にかけて!」バッ!

 

 

ルビィ「…残念ですが」

 

 

ルビィ「ルビィはもう、止められません」グググググ

 

聖良「(何!?あの構えは…)」

 

 

ルビィはしゃがんだ状態で足に力を込める。今にも前に倒れそうなぐらい、前のめりになりながら…いわゆる

 

 

 

"ロケットスタート"

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ー スプリントワープGX ー」ギュン!

 

 

北厳「!!?」

 

伊涛「消えた!?」

 

 

聖良「違います…高速移動です!私でも…この速さは…」

 

 

ギュン!ギュン!ギュン!ギュン!

超加速する音だけがグラウンドに鳴り響く

 

 

曜「私のスプリントワープとは、次元が違う…全く見えない」

 

 

ルビィ「この技…疲れるなぁ」ギュン!!

 

北厳「しまった…抜かれた!!」

 

 

『ついに突破したぁぁぁ!!浦の星女学院、後半で初めて、函館聖泉のディフェンスを突破しました!残すはキーパーのみです!!』

 

 

白咲「ついに来ましたね…いったい、どんなシュートを……」

 

 

花丸「ルビィちゃんのシュート技…」

 

鞠莉「今にわかるわ」

 

 

ルビィ「はぁ!」

 

 

ルビィが後ろ足でボールを蹴りあげる。そのボールを追って、ルビィも飛び上がるのだが

 

 

善子「え!?あれって……」

 

千歌「なんで、ルビィちゃんが!?」

 

 

浦の星のメンバーは全員、見たことがある技であった

 

 

ダイヤ「……あのシュートは元々、ルビィの技です。ルビィの方が何倍も強力ですわ」

 

 

 

 

 

ルビィ「はあぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ー 超ファイアトルネード ー!!」ドガァン!!!!

 

 

炎のシュートが函館聖泉ゴールへと迫る

 

 

 

白咲「な、なんですか…この威力は!?」

 

白咲「(理亞ちゃんのウルフレジェンドと同等…いや、それ以上……)」

 

 

 

 

『決まったあぁぁぁ!!!!黒澤ルビィのファイアトルネードで浦の星、同点に追いついたぁ!!』

 

 

 

花丸「ルビィちゃん!」ハグ

 

ルビィ「ピギィ!?花丸ちゃん!?」

 

花丸「すごいシュートだったよ!マル、感動しちゃった!!」

 

ルビィ「…ありがとう。花丸ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

「赤髪…炎のシュート……あ!あのイタリア留学を蹴ったコ!!」

 

月「やっと思い出した?中学の時、あんなにガッカリしてたのに」

 

「あ〜あのコか〜、そりゃあ強いわけだね」

 

月「この試合、分からなくなってきたよ」

 

 

 

 

 

 

 

聖良「理亞、まだ同点です。最後まで追加点を狙いましょう」

 

理亞「でも…」

 

聖良「大丈夫です!守備は私達が頑張ります。理亞はゴールを奪ってきてください!」

 

理亞「姉様……はい!!」

 

 

 

『さぁ、試合再開です!現在1-1の同点!試合は振り出しに戻りました。はたして、どちらのチームが再び得点するのでしょうか!?』

 

 

理亞「姫!」パス

 

なえ「オッケー!」

 

 

函館聖泉はルビィを正面突破するのは困難だと判断。サイドから攻撃を仕掛ける

 

 

木瀧「ー ホワイトブレード ー!!」

 

善子「ちょっ!痛い痛い!!」

 

 

『木瀧が左サイドから攻め上がる!!前方では鹿角理亞が待っているぞ!!』

 

 

鞠莉「ここよ!」ズサー!

 

鞠莉が木瀧にスライディングを仕掛ける

 

 

木瀧「遅いですよ!」パス

 

しかし、もう一歩のところで理亞にパスが出されてしまった

 

 

鞠莉「今よ!丸!!」

 

花丸「任せるずら!」

 

花丸「ー もちもち黄粉餅 改 ー!!」

 

 

理亞に出されたボールは、花丸の技によりカットされる

 

 

理亞「!!」

 

木瀧「な!?」

 

 

鞠莉「ナイスよ!丸」

 

花丸「鞠莉ちゃんのおかげずら!」

 

 

理亞「……!!」

 

 

 

 

理亞「(どうして…どうして…私は…こんなところで、終わるわけには行かないのよ!!)」

 

理亞「(私が決めないと、勝てない…このままじゃ…姉様との、サッカーが……)」

 

 

理亞「(姉様との…最後のサッカー…こんなところで、負けるわけには!!!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良「ー スノーエンジェル ー!!」

 

 

 

 

花丸「ずら!? ガキイィィィィィィン!!!!

 

鞠莉「しまった!?」

 

 

瞬間。本来、いるはずのない前線で聖良が一瞬のすきをつき、ブロック技をはなつ

 

 

理亞「姉様!?」

 

聖良「理亞、行きますよ!」

 

 

千歌「嘘!?センターバックの聖良さんが、攻撃に加わってる!」

 

 

『おぉっと、これは!?鹿角姉妹の連携プレー!息の合ったパスで浦の星ディフェンスを次々と突破していきます!!!!』

 

 

理亞「姉様、ディフェンスは…」

 

聖良「先程、任せろと言いましたが、この試合状況…あの技を使う時では?」

 

理亞「!!あれを!?」

 

 

理亞には心当たりがあった。前から、聖良がいつか完成させたいと言っていたあの技を。しかし、あの技は2人の息が完全に合わなければ成功しない。まだ、未完成の不安だらけな技であった

 

 

聖良「理亞。私達以上に、息の合った姉妹はいません!絶対に成功させますよ!」

 

理亞「姉様…」

 

 

 

理亞は聖良の言葉で、武者震いが止まらなくなっていた。今ならやれる。姉様とならなんだってできる。そう思った

 

 

 

 

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

 

 

「新必殺技…ですか???」

 

 

 

 

 

 

 

聖良「!?」

 

理亞「!!」

 

 

 

武者震いはすぐ治まることになる。鹿角姉妹の前に、覚醒した紅の少女、そして

 

 

ダイヤ「行かせませんわよ」

 

聖良「そう上手くは行きませんか……!!」

 

 

黒澤姉妹のフォローによるディフェンス参戦。これには流石の鹿角姉妹も足を止める

 

 

理亞「どきなさいよ」

 

ルビィ「どかない」

 

聖良「意地でも通ります」

 

ダイヤ「死ぬ気で止めますわ」

 

 

 

両姉妹の気迫がぶつかり合う。どちらも譲れない、そして二度と出来ないであろう2対2が、始まる

 

 

 

 

どちらかが勝ち、どちらかが負ける

 

 

 

 

終わりの時は近づく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




理亞ちゃんがルビィちゃんにやたら攻撃的な理由が、わかってきたかとおもいます。え?よくわからなかった?ゴチャゴチャしててよく読み取れない?…安心してください、後でしっかりと書きます

次回は姉妹対決&絶対障壁攻略です!お楽しみに!



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第2章 26話 「函館聖泉戦 その4」

さぁ、試合のお話が4話まで行きました…まだもう少し続くと思います

今回はあの少女が……

後書きに挿絵を載せました!





 

木瀧「聖良さん、急に前線に走っていったと思ったら、2対2が始まりましたね…」

 

北厳「前々から聖良が攻撃に加わることは作戦として出ていた。だが…あの黒澤姉妹、突破するのはかなり難しいぞ」

 

 

後半の1/4の時間が経過した。浦の星側ペナルティエリア付近では、一瞬のすきも許されない、壮絶な戦いが繰り広げられていた

 

 

聖良「!!」

 

ルビィ、ダイヤ「!」

 

理亞「!!?」

 

理亞「(まっっっったく隙がない…)」

 

 

ルビィ「まだまだ!!」

 

ダイヤ「行けますわ!!」

 

 

次元は、息の合った連携というレベルをとうに超えていた。ダイヤとルビィはお互いの考えを、動きを、全てを共有し、鹿角姉妹を気合いとプレイの両方で圧倒していた

 

 

理亞「(なんなのよ…ホントに!!)」

 

ルビィ「そこ!」バッ

 

聖良「理亞!!!!」

 

 

理亞「危な!!?」

 

ルビィの足が理亞の持つボールに伸びるも、聖良の声により、理亞はギリギリでルビィを避ける

 

 

理亞「(ルビィがいた場所にスペースが!)」

 

 

理亞はこの一瞬でパススペースを発見。それを察知した聖良はスピードを生かし、そこへ走り込む。鹿角姉妹も黒澤姉妹に負けぬ意思疎通力で連携突破を狙う

 

 

理亞「姉様!」パス

 

理亞のパスが、ルビィとダイヤのあいだに空いたスペースに出される。聖良は理亞に目で合図。そのまま、ワン・ツーパスでダイヤの突破を図る

 

 

聖良「ナイスですよ!」

 

ダイヤ「はぁ!!」バッ!

 

 

聖良がパスをもらう瞬間、ダイヤが聖良のボールを取りに行く。鹿角姉妹がワン・ツーパスを狙っていることを察知したダイヤは、パスが出される前に聖良からボールを奪う、または奪えなくてもパスコースを塞ごうとしていた。しかし

 

 

聖良「理亞!」パス

 

ダイヤ「!!」

 

ボールはダイヤの足先をかすめ、理亞へと出される

 

 

千歌「抜かれた!?」

 

善子「まずいわよ!!」

 

 

北厳「よし!理亞にボールが出された!」

 

氷里「姉妹対決は聖良さん達の勝利だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

理亞「(よし、このままボールをもらえば…)」

 

 

 

 

 

 

 

ここまではすべて

 

 

 

 

 

 

ルビィ「もらうね」バッ

 

 

 

 

 

 

黒澤姉妹の思惑通りであった

 

 

理亞「は!?」

 

聖良「そんな…」

 

 

ルビィ「もらう時、油断しすぎだよ」

 

ルビィは理亞がボールをもらう瞬間、理亞の後ろからボールを奪い取った。理亞はルビィを完全に抜いたと思っていたため、背後を気にしていなかったのである

 

 

ダイヤ「上手く行きましたね、ルビィ」

 

ルビィ「うん!お姉ちゃん!」

 

 

聖良「まさか、すべて予測していて…」

 

 

ルビィが理亞へ飛び込み、スペースを開け、ワン・ツーパスを促し、油断したところを奪いにかかる。全ては、黒澤姉妹の誘導したプレイであった

 

 

ダイヤ「さぁ、攻めますわよ!」

 

ルビィ「うん!」

 

 

 

『ボールを奪い取った黒澤ルビィが、前線へボールを渡す!浦の星の攻撃が再び始まります!!!!』

 

 

理亞「そ…んな…」

 

聖良「完全にやられましたね…」

 

 

 

 

聖良がいなくなった函館聖泉ディフェンスは、バランスを保てなくなり、鉄壁の守りが崩れようとしていた

 

 

梨子「ー 神のタクト ー!」

 

曜「チャンスは今しかない!!」

 

千歌「絶対に突破してみせる!!」

 

 

伊藤「陣形が崩れてます!このままだと…」

 

北厳「間に合わない……」

 

 

梨子の指揮が浦の星の勝利の道を描く。高速のパス、ドリブルで完全に勢いに乗った浦の星は再び

 

 

善子「ルビィ!」パス

 

ルビィ「!」

 

 

函館聖泉を崩す

 

 

『抜けました!!!!浦の星、再び黒澤ルビィにボールが渡り、シュートチャンスです!!このまま逆転となるのでしょうか!?』

 

 

白咲「絶対に止めます!!」

 

 

函館聖泉キーパー、白咲が構える。自分の立場がどれほど重大か、それを自覚している白咲は本気でルビィのシュートを止めようとしていた

 

 

ルビィ「…お姉ちゃん!!」

 

ダイヤ「ルビィ?」

 

ルビィ「あれやらない?」

 

ダイヤ「あれ……!!…いいですわね!」

 

 

しかし、ルビィは先程のシュートとは別の技を放とうとしていた

 

 

善子「何をする気なの…」

 

曜「あれ?あの構えって……」

 

 

黒澤姉妹が技を放つ構えに入る

 

 

ダイヤ「!」

 

ルビィ「!」

 

 

その構えはまるで左右対称。鏡で写したかのように、シンクロする動き

 

 

聖良「あの動き……まさか」

 

理亞「!!!」

 

 

 

ダイヤ「これが!!」

 

ルビィ「ルビィとお姉ちゃんの必殺技!!」

 

 

 

 

ふたつの炎がひとつになる

 

 

 

 

ダイヤ、ルビィ「ーファイアトルネードDD(ダブルドライブ)ー!!!!」ドガァン!!!!

 

 

 

 

二人の炎がゴールへと迫る

 

 

 

白咲「ー クリスタルバリア ー!!」

 

白咲は渾身の必殺技を放つ。しかし、先程のファイアトルネードとは威力が桁違い

 

 

 

白咲「きゃぁ!!?」バリィン!!

 

 

函館聖泉のゴールネットを揺らした

 

 

 

 

『ゴール!!!!黒澤姉妹の新必殺技で、後半でついに、浦の星女学院が2-1で逆転!!函館聖泉はさらに逆転が厳しくなりました!!』

 

 

 

梨子「すごい…ルビィちゃんとダイヤさん」

 

鞠莉「久しぶりね。あの技を見るのは」

 

梨子「これで逆転、でもまだ後半は始まったばかり…油断はできないわね」

 

 

 

 

理亞「……姉様…」

 

聖良「…理亞」

 

理亞「…ごめんなさい、私がボールを奪われなければ…」

 

理亞「ここで負けるなんて嫌だ、これで最後なんて…そんな……」

 

聖良「……」

 

聖良「理亞」

 

理亞「?」

 

聖良「…」ぷにっ

 

理亞「!!!!??(姉様!?)」

 

 

聖良は理亞のほっぺを掴み、横に引っ張る

 

 

理亞「な、なにふるんでふかねえはま(何するんですか姉様)」

 

聖良「理亞?少し力が入りすぎです」

 

理亞「え?」

 

聖良「やっとわかりましたよ。理亞がルビィさんに対して、強くあたっていた理由が」

 

理亞「姉様!?どういう…」

 

 

突然の聖良による理亞へのエスパータイム。理亞は驚きを隠せないまま、聖良の話を聞く。しかし、内容は何となく察していた

 

 

聖良「負ければ終わり。それは、私のサッカー部引退を意味します。つまり…」

 

 

あぁ、やめて姉様。それを言われてしまったら…自分は、この場から逃げ出したくなる…理亞はそう思いながらも耳を傾ける。覚悟はしていた。だが、いざその時になると

 

 

 

聖良「理亞との最後のサッカーということになります」

 

 

 

理亞「……!!」

 

 

 

泣きたくなる。今すぐに逃げ出したい。理亞は聖良と目を合わせられないでいた

 

 

聖良「私との最後のサッカーを敗退で終わらせるわけには行かない。全力でプレイして、優勝を勝ち取ろうとしていた」

 

聖良「そんな中、ルビィさんと出会った」

 

理亞「…」

 

聖良「ルビィさんの本気とは言えないプレイ、それを見た理亞は、自分と同じ立場のはずのルビィさんに腹を立てた。違いますか?」

 

理亞「……」

 

 

理亞は何も言えなかった。聖良の言ったことがすべて合っているからという事もあるが、それ以上に

 

 

理亞「…姉様……」

 

 

 

理亞「私、もっと姉様とサッカーしたい」ポロポロ

 

聖良「!」

 

泣くのは優勝してからって決めていたが、まさかこのタイミングで涙が出てくるのは、理亞本人も驚いていた。このままだと本当に終わってしまう、そう考えるだけで、涙が勝手に溢れてくる

 

 

理亞「かっこわる…」ゴシゴシ

 

聖良「…理亞」

 

聖良「私は理亞を信じています。あなたは強い。誰よりも強いんだと、そう思っています」

 

理亞「……」

 

聖良「確かに、理亞がルビィさんに腹を立てたのも、最後だから負けたくない、という気持ちも分かります」

 

聖良「理亞の勝ちたいという気持ちが、誰よりも強いということも分かります。でも、私は」

 

 

聖良「理亞との最後のサッカーは本気で、死ぬ気で、楽しみたいです!」

 

理亞「…楽しむ」

 

聖良「はい!理亞は楽しいですか?今のサッカーは」

 

理亞「……」

 

聖良「私は今の理亞は楽しんでいるように見えません」

 

聖良「理亞。私達は負けません。最強のチームですよ?しかも最後。楽しまないと損です」

 

理亞「姉様…」

 

聖良「私達は理亞を信じます。理亞が安心できるように、死ぬ気で守ります。だから理亞は全力で……」

 

 

 

聖良「楽しんでください!!」

 

 

理亞「!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーー!!!!

 

 

 

試合再開。理亞がドリブルで攻め上がり、ルビィと再び、1対1になる

 

 

ルビィ「ルビィは抜けないよ」

 

理亞「…」

 

 

 

いつから自分は勝ちに、強さにこだわり、サッカーを楽しむということを忘れていたのだろうか…

 

 

 

ルビィ「貰った…」バッ!

 

理亞「ー」

 

ルビィ「!?」

 

 

 

しまいには他人に八つ当たり。完全に楽しむということを忘れていた

 

 

 

理亞「ーー」

 

ルビィ「(動きが、変わった!?)」

 

 

 

 

姉様は言った。自分を信じると。死ぬ気で守ると、だから楽しめと。私は、

 

 

 

理亞「ーー!!」

 

 

 

 

 

私は

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「ルビィ!?」

 

 

ルビィ「あ、あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

勝つために、楽しむために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「抜かれて…る??」

 

 

 

 

 

 

 

自分を超える

 

 

 

 

 

 

 

鹿角理亞 覚醒

 

 

 

 

 

 

 




次回予告 覚醒の理亞、再び追い込まれる浦の星、動き出す北也、絶対障壁、理亞を函館聖泉を倒し、浦の星は決勝へ行けるのか…

お楽しみに!


ファイアトルネードDD
【挿絵表示】

松風天馬と剣城京介の二人技です。二人で放つファイアトルネード…最初見た時は鳥肌が凄かったです!!


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第2章 27話「函館聖泉戦 その5」

申し訳ないです…絶対障壁攻略まで行きませんでした。

この回は理亞ちゃんが暴れます。超次元サッカーをどうぞ





 

 

 

 

ルビィが抜かれた

 

 

 

 

梨子「え…」

 

曜「そんな!?」

 

果南「はは…嘘でしょ」

 

 

 

 

 

浦の星の選手のみならず

 

 

 

白咲「理亞ちゃん!?」

 

北厳「一体何が!?」

 

 

函館聖泉の選手も同様

 

 

 

驚きを隠せないでいた

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ー!!」グワン

 

 

抜かされてからのルビィは速かった

 

 

鞠莉「またルビィが仕掛けた!!」

 

花丸「さっきよりも速いずら!」

 

 

 

ルビィ「(一体何が…)」

 

理亞「ーー」

 

ルビィ「くっ……」

 

理亞「ーー」

 

ルビィ「なんで…」

 

理亞「ーー!」

 

ルビィ「え…」

 

理亞「ーー」

 

 

 

ルビィ「また抜かれた!??」

 

 

『抜けたぁ!!ここにきて鹿角理亞が再び黒澤ルビィとの1対1を制したぁ!!!!一体何が起きたのでしょうか??鹿角理亞の雰囲気が変わったようにも見えますが??』

 

 

 

 

 

 

月「うっそぉ…あの子、入っちゃってるよ」

 

「まさか、ここに来て見られるなんてね…思ってもみなかった」

 

月「あの雰囲気、間違いない。完全に入ってるね」

 

 

 

 

 

 

月「ゾーンに」

 

 

 

 

ゾーンとは、余計な思考がすべて消え、集中の次元を超えた「極限へと行き着いたものの精神状態」である。ゾーンに入ったものは自分の持てる力をすべて出すことが出来る。理亞の中に眠っていた力は大きく、それをたたき起こすことすなわち……

 

 

 

"覚醒"

 

 

 

 

 

 

 

梨子「ー アインザッツ ー!!」

 

花丸「ー ゴートゥーヘブン ー!!」

 

理亞「遅」ビュン!!!!

 

 

梨子、花丸「!!!??」

 

 

今の理亞に普通の必殺技は通用しない。集中力と体力が持つまで、理亞は暴れまくる

 

 

ダイヤ「なんですか…雰囲気が急に」

 

鞠莉「まずいわね、止めるわよ。ダイヤ」

 

 

鞠莉とダイヤが理亞のディフェンスへ。2対1をしかけ、ボールを奪いに行く

 

 

理亞「…言っておくけどーーーーー

 

 

ダイヤ「な!?はやすーー」

 

鞠莉「動きがみーー」

 

 

理亞「今の私は止められない」ビュン!!!!

 

 

気づいた時には、既に理亞がダイヤと鞠莉を突破していた

 

 

千歌「全員抜かれた…」

 

善子「か、果南…」

 

 

 

果南「えぇ…あのヤバそうなの相手するの??」

 

理亞が浦の星ゴールへと迫り、瞬間。シュート体制に入る

 

 

理亞「ウルフレジェンド…いや、足りない」

 

理亞「G2…G3G4……足りない、今の私には……」

 

 

 

 

理亞「もっと、圧倒的をーーーーー」

 

 

 

 

 

理亞「ー ウルフレジェンドGX ー!!」ドガァン!!

 

 

 

 

むつ「進化を…一瞬で…」

 

北也「化け物だな…才能の域を超えている」

 

 

 

 

『ゴール!!!! 函館聖泉、まだ負けていません!!2-2の同点!再び試合は振り出しに戻りました! ウルフレジェンドはまさかの段階を飛び越し、一気に最終進化へ!今の鹿角理亞は誰にも止められません!!!!』

 

 

 

月「うわ…やっば…理亞ちゃんすごいな…」

 

「彼女も才能を持つ一人…まだゾーンを使えるコがいたのね。知らなかったわ」

 

月「僕もツバサさんと、あと何人かしか知らないよ。ゾーンを使える人」

 

「…浦の星、勝てるのかしらね……」

 

 

 

 

 

 

 

果南「な、なにあれ…シュート全く見えなかった…」

 

鞠莉「ドリブルも抜かれたって実感がないわ」

 

ダイヤ「…もはや、理亞さんを止められるのは…」

 

 

 

 

 

 

理亞「…」

 

ルビィ「…」

 

 

理亞「あんたを倒す。勝つのは私達」バッ!

 

ルビィ「ルビィだって…負けない!」バッ!

 

 

二人の1対1はこの試合、何度目になるだろうか…しかし、これだけは言える。勝負を重ねるたびにどちらもーーー

 

 

ルビィ「ーー!!」

 

理亞「ーー!!」

 

 

確実に進化している

 

 

 

善子「これって…本当にサッカー?」

 

ダイヤ「目で追うのがやっと、ですわね」

 

 

 

 

 

 

足を出す

 

 

 

理亞「ーー」バッ!

 

 

 

かわす

 

 

 

ルビィ「ーー」サッ

 

 

 

足に力を込め…

 

 

 

ルビィ「ーー」ググググググ

 

 

 

消える

 

 

 

ルビィ「」ビュン!!!!!!

 

 

 

追う

 

 

 

理亞「」ビュン!!!!!!!

 

 

 

 

瞬間。グラウンドに激しい衝突音が響く

 

 

 

 

ドオォォン!!!!!!

 

 

 

ルビィ「離して」ググググググ

 

理亞「嫌だ」ググググググ

 

 

理亞とルビィがボールを挟み込んで競り合う

 

 

 

鞠莉「ルビィが捕まった!!?」

 

果南「あとはパワー勝負!!」

 

 

北厳「理亞!せり負けるな!!」

 

聖良「頑張って…」

 

 

 

 

両者譲らず、ここまで互角。意地と意地のぶつかり合い。次第に筋肉が悲鳴をあげはじめる

 

 

ルビィ「う…うゆ…」ググググググ

 

理亞「ぐ…くっ……」ググググググ

 

 

ボールが破裂するのでは…と心配になるほどの激突。そんな中、決着は一瞬の出来事でーーーー

 

 

理亞「ぐ…これでも……」バチバチ

 

ルビィ「!?(足にオーラ…まさか…)」

 

 

 

理亞「ー ドロップアウト ー!!」ドガァン!

 

 

必殺技のパワーをプラスし、ルビィを吹き飛ばす

 

 

ルビィ「ピギィ!?」ドサッ

 

ダイヤ「ルビィ!!」

 

なえ「理亞ちゃんが勝った!!」

 

 

 

そのまま理亞は再び浦の星陣内に進撃する

 

 

 

 

いつき「まずいよ…このままじゃ逆転されちゃうよ」

 

むつ「今の理亞さんを止められるわけ…」

 

北也「いや…まだだ」

 

 

 

 

理亞は足を止める。自分の前に、立ち塞がる者が現れたからである

 

 

 

 

理亞「何のつもり?」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「ここで抜かれたら…負ける、そんな気がする」

 

曜「あの時のリベンジだよ!今度は絶対に負けない!」

 

梨子「ルビィちゃんだけに任せるわけには行かない…私達だって!!」

 

 

 

始まりの3人が覚醒した狼に挑む

 

 

 

 

 

 

むつ「頑張って…千歌達!!」

 

北也「……」

 

いつき「監督?」

 

北也「…鹿角理亞を抑えても、絶対障壁を攻略しないかぎり、浦の星に勝ち目はない」

 

いつき「そんな…何か方法は…」

 

北也「…ミラクルウェーブでも突破不可……どうするか…」

 

北也がベンチで静かに突破策を考える一方、フィールド内では既に、激しい攻防が繰り広げられていた

 

 

 

 

 

理亞「ーーーー」バッ

 

 

曜「梨子ちゃん!そっち行った!!!!」

 

梨子「!!」バッ

 

千歌「フォロー入るよ!」

 

 

理亞「!?…しつこい…」

 

 

 

花丸「すごいずら…理亞ちゃん相手に…」

 

鞠莉「ダイヤとルビィも素晴らしい連携だったけど、千歌っち達の連携はそれ以上…」

 

 

 

 

千歌、梨子、曜は暴れ回る狼に、必死に食らいつく。ルビィの動きとまでは行かないが、その分を3人でカバーし合う

 

 

理亞「ーー」グワン

 

 

千歌「!!(力を抜いて、タイミングをずらして来た!!)」

 

 

理亞「ーーー」ビュン!!

 

 

千歌「来たよ!!」

 

梨子「曜ちゃん!」

 

 

曜「ー スプリントワープ ー!!」ビュン!!

 

 

理亞「!?(追いつかれた!!)」

 

 

理亞の超加速に千歌と梨子がいち早く反応。すぐに曜に呼びかけ、曜はスプリントワープで理亞の突破口を塞ぐ。その間に、千歌と梨子が再び理亞を取り囲む

 

 

理亞「…ただ息が合うメンバー、っていうわけではなさそうね」

 

曜「当たり前だよ!部を作った時は、この3人だけで練習してたんだよ!」

 

梨子「自然と分かるようになるのよね。千歌ちゃんと曜ちゃんが考えていることを」

 

千歌「最初は何もなかった…でも今は!!」

 

 

千歌「こうして理亞ちゃん達と戦える!!!!」

 

 

 

理亞「……」

 

 

理亞「そう…」ビュン!!!!

 

 

3人「!!!!??」

 

 

 

曜「(さっきの超加速よりも速い!?)」

 

梨子「(間に合わない!!)」

 

 

理亞の予想以上のスピード。反応に遅れた曜と梨子の間を電光石火。理亞が通る

 

 

理亞「私の勝ちね」

 

 

梨子「(そんなーーーーー)」

 

曜「(終わっちーーーー)」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

理亞「!!!!???」

 

 

 

梨子「!!!!!!」

 

曜「千歌ちゃん!!!!」

 

 

千歌「間に合った…!!!!」ズサー

 

 

一瞬の出来事であった。理亞が完全に曜と梨子を抜かした瞬間、千歌が高速でドリブルする理亞を捕らえ、足を出しボールを弾いたのだ

 

 

理亞「ボールは…!?」

 

 

千歌がカットしたボールは、理亞と千歌のすぐ横でバウンドしていた。すぐに理亞はボールを取りに行く

 

 

理亞「(油断した)」バッ!

 

 

理亞が再びボールをキープしようとした、その時

 

 

曜「ボールは渡さないよ!!」バッ

 

理亞「!?」

 

 

曜がいち早くボールの元へ。何としてでもボールを奪おうとしていた

 

 

梨子「どっちが先にボールに触る…」

 

 

 

曜「おりゃあぁぁぁぁ!!!!!!」

 

理亞「はあぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

二人が怒鳴る。先程のルビィと理亞の力勝負のようになるだろうと察した理亞と曜は、最初から必殺技のオーラを足に込め、互いにぶつかろうとしていた

 

 

曜「ゴッドーーーーーーー」

 

理亞「ドロップーーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

曜「ウインド!!!!!!!!!!」

理亞「アウト!!!!!!!!!!!!」

 

ドガァァァァァァァァン!!!!!!!!

 

 

 

梨子「きゃ!?」

 

千歌「うわわ…!?」

 

 

激しい衝撃と音により会場が揺れる。再びボールは挟まれる形になったのだが今回はーーー

 

 

むつ「あ、あれ?まさか……」

 

いつき「曜ちゃん…押してない?」

 

 

 

 

曜「ぐぐぐぐ………」ググググググ

 

理亞「くっ……うっ…」グググ…ググ

 

 

曜「あれれ、理亞ちゃん、疲れ…始めた?」ググググググ

 

理亞「うるさい!!」ググググググ

 

曜「無茶…しすぎ、仲間を頼ら…ないと……」ググググググ

 

理亞の体力が減ってきているのも無理はない。ゾーンは自分の持つ力を最大まで引き出すが、その分、体力を大量に消費する。後半の1/4をゾーン状態でプレイしてきた理亞の体力はかなり減少していた

 

 

理亞「ハァハァ……」ググググググ

 

曜「このまま押し切る!!」ググググググ

 

 

千歌「行けー!曜ちゃん!!」

 

梨子「もう少しよ!!」

 

 

徐々に曜に押され始める理亞。限界は近づいている。だが、だからといって負けていい理由にはならない

 

 

理亞「舐めんじゃないわよ…」ググググググ

 

曜「!?(パワーが上がった)」

 

理亞「姉様と約束した…勝つって、楽しむって…こんなところで……」

 

 

 

理亞「負けてられないのよ!!!!!!」

 

 

 

 

ドガァァァァァァァァン!!!!

 

 

 

 

曜「うわ!?」

 

理亞「痛!?」

 

 

理亞の力が上がったことにより、バランスを崩した曜が倒れる。ボールが再び弾かれ、抗うものがなくなったため、理亞も倒れる

 

 

梨子「ボールがまたこぼれた!!」

 

 

しかし、今度はそこからが速かった

 

 

理亞「今度こそ勝ちね」バッ!

 

 

梨子、曜「!!!!!!」

 

 

 

善子「理亞がボールを持ったわよ!?」

 

ダイヤ「このままでは…」

 

 

3人が抜かれれば理亞にシュートを撃たれてしまう。何としてでも抑えなければ…そう思っていた。そんな中

 

 

理亞「残すは一人!!」

 

千歌「!!」

 

 

曜「千歌ちゃん!!」

 

梨子「お願い!理亞ちゃんを一時的でいいから止めて!!」

 

 

 

千歌「(……なんだろう)」

 

 

理亞「終わりよ」

 

理亞「ーーーーー」ビュン!!!!

 

 

曜「速すぎる!?」

 

梨子「全く見えない…」

 

 

理亞は最後の力を使い、千歌の突破を試みる。今までの中でも一番のスピード。曜達には、理亞の動きがまったく捉えられていなかった

 

 

理亞「ーーーー」ビュン!!!!

 

 

千歌「ーー」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「(え…私、どうしたんだろう…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなことがあるのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「え………」

 

 

梨子「…?」

 

曜「あれ…」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「ーーー」

 

 

 

 

理亞が持っていたはずのボールが、コートの外に出ていた

 

 

 

 

曜「あ、あれ?千歌、ちゃん??」

 

梨子「千歌ちゃんが出したの?ボール…」

 

 

千歌「う、うん。でもおかしいんだ…理亞ちゃん、すっごく速かった。今までの中でも一番だった…」

 

 

 

 

 

 

千歌「でも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「私、普通に見えた」

 

 

 

 

 

 

 

新たな覚醒の予感

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゾーン
説明は本文に書いてあるとおりです。要するに、超集中モードですね。ゾーンを使える選手はツバサさん、そして今回、開花させた理亞ちゃん、そして……千歌ちゃんも??月ちゃん曰く、他にも数人、使える選手がいるとか。ゾーンは体力的にも一時的なものです。長くは持たない……はず

そろそろいい加減、試合を進めます






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第2章 28話 「函館聖泉戦 その6」

今更で本当に申し訳ないですが、お気に入りにしてくれた方、毎回読んでくれる方、感想を書いてくれた方、本当に感謝です!ありがとうございます!こんな下手くそな文章ですが、もう少し続きます。最後まで応援よろしくお願いします!

ちなみに、後書きにリクエストを頂いたので、選手達の属性を書きました!




 

 

 

 

曜「普通に見え、た…?」

 

梨子「凄い…私達は全然見えなかった」

 

千歌「…」

 

曜「千歌ちゃん、大丈夫?」

 

千歌「う、うん。ひとまずディフェンスしよう」

 

 

 

 

 

 

月「…うーん、今の動きは…まさかね?」

 

「一瞬だけど、それっぽかったわね。でも、あのコって…」

 

月「千歌ちゃんがサッカーを始めたのは今年の4月から。半年でここまで成長するなんてありえない…」

 

 

月「うーん…血は争えないってことなのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

その頃フィールド内では、函館聖泉にアクシデントが発生していた

 

 

聖良「理亞!!!!」

 

白咲「理亞ちゃん!?」

 

 

理亞「ハァハァ……」ガクッ

 

 

理亞は足を震わせ、地面に手をついていた。メンバーはすぐに理亞のもとへ駆け寄るも…

 

 

氷里「理亞ちゃん…無理だよ…その状態じゃ」

 

理亞「うるさい!!まだ出来る!!動けるわよ!!」

 

木瀧「でも、立つのでもやっと…」

 

理亞「っ…違う…違うわ…」ガクッ

 

なえ「理亞ちゃん…」

 

 

誰が見ても分かることである。理亞は完全に時間切れ。ゾーンも消え、立つことも困難。本人はできると言っているが、聖良の判断は…

 

 

聖良「…理亞」

 

 

聖良「交代です」

 

理亞「………」

 

 

 

 

 

『おぉっと!函館聖泉、鹿角理亞を交代させるようです!鹿角理亞は1人では歩けず、メンバーの肩を借りての交代です!やはり、先程までのプレーが原因なのでしょか??』

 

 

氷里「監督。お願いします!」

 

監督「あとは任せて、氷里さんは試合に」

 

氷里「はい!」

 

 

理亞「嫌だ…終わりたくない…嫌だよぉ…」

 

監督「理亞さん…」

 

 

聖良「監督」

 

監督「聖良さん…どうしたの?」

 

聖良「理亞が落ち着いたら、伝えて欲しいことが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ!函館聖泉のスローインから試合再開です!スローインは交代した雪村がするようです』

 

 

雪村「姫!」

 

なえ「よーし!!理亞ちゃんの分も頑張るっぺよ!!」

 

 

白戸屋なえの高速ドリブル。しかし、ゾーンに入った理亞のドリブルに対抗してきた浦の星ディフェンスはーーー

 

 

花丸「!!」バッ

 

鞠莉「通さないわよ!」バッ

 

 

なえ「あ、あれ?最初は抜けたのに…」

 

 

 

 

 

 

 

「浦の星の武器…かしらね。成長の速さ、適応力、団結力、どれも恐ろしいものだわ」

 

月「僕も戦った時は驚いたよ。本当に出来たばかりのチームなの?って」

 

「鹿角理亞がいなくなった函館聖泉は…厳しくなりそうね」

 

月「そうだね。でもまだ負けてないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

聖良「 ー 絶 対 障 壁 ー 」

 

 

そびえる氷の壁。その壁は難攻不落、破壊は不可能、突破は困難を極める。浦の星はどうしても、障壁を突破できないでいた

 

 

ダイヤ「くっ…いったいどうすれば…」

 

ルビィ「壁さえ越えればゴールは目の前なのに…」

 

梨子「3D・リフレクター、神のタクト、ミラクルウェーブ、どの技を仕掛けても突破できなかった…」

 

鞠莉「時間はそんなに残っていないわ。何とかして突破口を…」

 

 

聖良「無駄です。絶対障壁を破ることは不可能。この試合、勝つのは私達です!!」

 

 

幾度となく仕掛けた攻撃はすべて障壁に阻まれる。浦の星にも疲れが見え始め、徐々に函館聖泉が支配率を上げてきていた

 

 

木瀧「洞爺!」パス

 

ダイヤ「…疲れを知らないのですか…あなた達は」

 

洞爺「私達は毎日死ぬほど走って、走って、走りまくったのよ!そう簡単にバテたりしないわ!」

 

 

洞爺がダイヤを突破し、そのままドリブルをしようとした…が

 

 

善子「堕天!!!!」ズサー!

 

洞爺「うわ!?」

 

 

『おぉっと!!津島善子、スライディングでボールをフィールド外に!浦の星のピンチを救いました!』

 

 

洞爺「ふぅ…油断しました」

 

善子「あんた達だけじゃないのよ。毎日走ってるのは」

 

 

善子のファインプレー。それを見た北也は善子にサインを送る

 

 

北也「善子ナイス」d( '-' )

 

善子「あれだけ目で訴えられたら分かるわよ…」

 

 

むつ「え!?監督、いつの間に善子ちゃんに指示を?」

 

北也「指示というか、目でね?外に出せって念じてた」

 

いつき「それで伝わるの……」

 

むつ「善子ちゃんと監督って…」

 

 

函館聖泉のスローイン。その間に、北也は2人の選手を呼び出した。善子にボールを外に出させたのはこのためであった

 

 

ダイヤ「北也さん、何か作戦が?」

 

ルビィ「うゆ……」

 

北也「あぁ、ひとつだけ。方法がある。だがな」

 

 

 

 

北也「その作戦の成功率は50%だ」

 

 

 

ダイヤ「50%!?」

 

ルビィ「2回に1回しか成功しないんですか?」

 

北也「あぁ、だか現状では障壁の突破率は0%。この作戦の成功率を高いと見るか低いと見るか」

 

ダイヤ「……その作戦とは」

 

北也「簡単に説明する。時間的にチャンスは一度きりだ」

 

 

 

 

 

 

 

『さあ!函館聖泉、シュートチャンス!白戸屋なえがシュートを撃つようだ!!』

 

 

なえ「ー シロウサギダッシュート ー!!」

 

 

なえのシュートがゴールへと迫る。速く重い球、前半は押され気味だった果南だったが、

 

 

果南「ー 海皇の三叉撃 ー!!」ドガァン!!

 

なえ「止められちゃった…」

 

果南「ふぅ…氷も溶けたし、何とかなりそう」

 

 

シュートを止めた果南。ボールを前線に蹴り出そうとしたのだがーー

 

 

ダイヤ「果南さん、ボールを!!」

 

果南「ダイヤ?え、何これ?」

 

 

 

聖良「一体、何を始めようというのですか…」

 

 

誰が見ても思うであろう、浦の星の異様な陣形。その陣形の先端には黒澤姉妹、他のメンバーはその後に続いていた

 

 

ダイヤ「ちょっとした賭けですわね」

 

ルビィ「確かにこれしか方法がないみたい…だし…」

 

 

『な、なんだこれは!?浦の星、両サイドに4人ずつで分かれ、そのまま函館聖泉ディフェンスへと迫っていきます!!!!』

 

 

 

北也「ダイヤは特にこういった運任せは嫌いかもしれない。だがな」

 

 

 

北也「函館聖泉はもっと嫌いなはずだ」

 

 

 

 

 

ダイヤ「必殺タクティクス」

 

 

ルビィ「ー ダブルウイング ー」

 

 

 

左サイドにはルビィ。右サイドにはダイヤが。青い光を放ちながら、浦の星は障壁へと迫っていく

 

 

聖良「な!!?光でどっちがボールを持っているかわからない!?」

 

 

 

 

北也の作戦はこうである

 

 

 

 

 

ダイヤ『選択肢を作る?』

 

北也『そうだ。絶対障壁は強力だが、その場所しかブロックすることは出来ない。普通、ブロックする場所といったら?』

 

ルビィ『ボールを持っている選手…』

 

北也『だよな?なら、ボールを持っている人が誰なのかわからなくすればいい。だからといって全員バラバラはダメだ。あくまでも2択。バラバラにし過ぎると障壁を解除されて、連携ディフェンスに阻まれるからな』

 

ダイヤ『なるほど、だから2択』

 

北也『どちらがボールを持つかは任せる。お前ら姉妹の連携が頼りだ』

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「(このタクティクスは…リスクが大きい)」

 

ルビィ「(でも成功すれば!!)」

 

 

 

聖良に迫るはふたつの羽。一体どちらがボールを持っているのか…聖良は浦の星のデータを頭からたたき起こしていた

 

 

聖良「(…ダイヤさんのシュート技、ダイヤモンドストリーム…強力ですが、白咲さんなら止められます。ですが、ルビィさんのシュートは……)」

 

 

ダイヤに突破されても止められれば問題ない。問題はルビィ。あのシュートを撃たれたら最後…ならば答えは1つ

 

 

 

聖良「……右です」

 

 

聖良の指示により、障壁はルビィ側へと動く。これでルビィ達は完全にブロックされることになる

 

 

むつ「ルビィちゃんの方へ!!」

 

いつき「お願い…成功して…」

 

北也「……」

 

 

 

ドガアァァァァン!!!!

ルビィ達が勢いよく障壁にぶつかる。その衝撃でルビィ達は吹き飛ばされタクティクスは解除される

 

 

ルビィ「ピギィ!?」ドサッ

 

善子「痛!?」ドサッ

 

曜「うわ!!」ドサッ

 

鞠莉「アウチ!?」ドサッ

 

 

聖良達は現れたルビィ達がボールを持っているか確認する。しかし

 

 

 

北厳「な!?ない!ボールが…」

 

木瀧「外れた!!?」

 

聖良「ということは…」

 

 

 

 

ルビィ「いっけーー!!!!お姉ちゃん!!!!!!」

 

善子「最後のチャンスよ!!!!」

 

曜「ダイヤさん!!!!!」

 

鞠莉「ぶちかまして!!!!!!」

 

 

 

 

 

ダイヤ「ルビィ。皆さん。任せなさい」

 

 

 

 

 

北也「よっっっっし!!!!!!」

 

むつ、いつき「ダイヤさん!!!!!」

 

 

 

『突破したぁぁぁぁ!!!!!!ボールを持っていたのは、右サイドの黒澤ダイヤ!!浦の星、試合終了間近でついに、逆転のシュートチャンスだぁぁ!!!!』

 

 

聖良「ダイヤさん!!あなたのシュートでは白咲さんは破れませんよ!」

 

ダイヤ「…そうですわね」

 

白咲「そういうことです。突破したのは素晴らしいですが、ルビィさんのシュートでないのなら、止められます!!」

 

ダイヤ「……」

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「舐められたものですね」

 

 

聖良、白咲「!!?」

 

 

ダイヤ「妹が、ルビィがこんなにも頑張っているのです。姉であるわたくしは、その頑張りに応えるのは…当然でしょう??」

 

ダイヤ「あなたなら分かるはずです。聖良さん」

 

聖良「…!!」

 

ダイヤ「わたくしのシュートが力不足なのは重々承知。ならばそれを」

 

 

ダイヤ「超えるまで」

 

 

 

 

ダイヤはボールを上空へ蹴り上げる。ボールはそのままダイヤモンドのオーラを纏う

 

 

千歌「あれは、ダイヤモンドストリーム??」

 

梨子「シュートモーションが違うわ…あれは…」

 

 

ダイヤ「はああああぁぁぁ!!!!」

 

 

ダイヤは上空のダイヤモンドに炎のオーラを込め、飛ぶ

 

 

果南「赤い…ダイヤモンド」

 

聖良「ま、まさか…そんな…」

 

 

 

 

 

ダイヤ「これが黒澤ダイヤですわ」

 

 

 

 

ダイヤ「ー 紅蓮 ー」ドガァン!!!!

 

 

 

渾身のオーバーヘッド。赤いダイヤモンドから放たれた強力なシュートが白咲へ、函館聖泉へと迫っていく

 

 

白咲「ークリスタルバリア ー!! 」

 

 

白咲「あ、熱い…この威力…ルビィさん以上…」

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!!!!」

 

善子、鞠莉、果南「ダイヤ!!!!」

 

梨子、千歌、曜、花丸「ダイヤさん!!!!」

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「散りなさい」

 

 

 

 

 

『ゴーーール!!!!!!浦の星女学院、函館聖泉に対し追加得点!! 3-2で再びリードしました!!』

 

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!!」ダキッ

 

ダイヤ「る、ルビィ!まだ試合は…」

 

ルビィ「凄かったよお姉ちゃん!!かっこよかった!」

 

ダイヤ「…ルビィ」

 

 

 

 

 

「ここに来て新技…いったい誰が予想出来るのかしらね」

 

月「僕も聖良さんと同じ判断をしていた。今回は浦の星が1枚上手だったね」

 

 

 

花丸「本当にルビィちゃんの言った通りになったずら…」

 

鞠莉「お互いが信頼していたからこその、得点ね」

 

 

 

白咲「くっ…皆さん…申し訳…ないです」

 

「「「………」」」

 

北厳「白咲」

 

白咲「?」

 

北厳「まだ試合は終わっていない」

 

木瀧「そうですよ!まだ負けたわけじゃないです!」

 

なえ「うちらが必ず同点に追いつく!絶対に!」

 

白咲「皆さん……」

 

聖良「それに、戻ってきましたよ」

 

白咲「戻って?………!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

『ここで函館聖泉、選手を交代します!何と!!戻ってきました!!』

 

 

 

 

 

理亞「姉様、みんな…絶対に負けない」

 

 

 

 

 

『雪原の狼が再びフィールドへ!!!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 




ダブルウイング
雷門中の必殺タクティクスです。絶対障壁を突破するにはこれしかないですよね

紅蓮
オリジナル技です。この技はリクエスト技で、リクエストしてくれた方曰く、コードギアス反逆のルルーシュから引用したらしいです。



そしてリクエスト頂きました。メインメンバーの属性紹介です。ですが、このお話では属性はあまり意識しないようにしています。(もちろん理解はしています)それを理解してもらった上で……


浦の星女学院

高海千歌:山(チカ:林)
桜内梨子:林
渡辺曜:風
国木田花丸:山
黒澤ルビィ:火
津島善子:火
松浦果南:風
黒澤ダイヤ:火
小原鞠莉:山


函館聖泉女子高等学院

鹿角聖良:風
鹿角理亞:風


UTX高校

綺羅ツバサ:風
優木あんじゅ:林
統堂英玲奈:林


帝国女学院

渡辺月:林


音ノ木坂学院

高坂穂乃果:火
園田海未:風
南ことり:林
星空凛:山
西木野真姫:火
小泉花陽:林
矢澤にこ:山
東條希:林
絢瀬絵里:風




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第2章 29話 「函館聖泉戦 その7」

やっと決着しました。長かったですね。

明日からまた学校……えぇ……




 

 

 

 

時は理亞がベンチにさがった頃まで遡る

 

 

 

理亞『ハァハァ…嫌だ…』

 

 

聖良との最後のサッカーになるかもしれないこの試合。まさか、自分の体力切れで幕を閉じるとは思ってもみなかった。これで終わり?その事を受け入れられない。受け入れられるわけがない。理亞は自分を責め、現実を責め、タオルの中で泣いた

 

 

監督『り、理亞さん…』

 

理亞『……なんですか』

 

監督『聖良さんから伝言を…』

 

理亞『…姉様から?』

 

 

何だろう…体力がもたなかった自分を軽蔑したのだろうか、それとも私の容態を心配しているのだろうか…しかし、答えはどちらでもなく

 

 

監督『後半ラスト、あなたが行けるなら戻ってきなさい。私達の技、完成させますよ。って』

 

 

理亞『!!!!!!』

 

 

 

ピーーーーーーー!!!!

 

 

その時、主審の笛が鳴り響いた。浦の星が絶対障壁を破り、再びリードしたのである

 

 

監督『2-3…この時間帯で…』

 

理亞『…』スクッ

 

監督『理亞さん?立ち上がって、どうしたの?』

 

理亞『…行かなきゃ、こんなところで…私は終わりたくない』

 

監督『でも、身体の方は…』

 

理亞『その事はあとで考えます。今は…』

 

監督『…わかりました。頑張って、理亞さん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ、函館聖泉、試合終了間近という状態で2-3、これはもう同点で延長戦に持ち込むしかありません!!』

 

 

聖良「理亞、大丈夫ですか?」

 

理亞「うん。ラストワンプレイなら、全力で」

 

聖良「…わかりました。私達の本気、見せてあげましょう」

 

 

『そして、フィールドに戻ってきた雪原の狼。この危機的状況で、点を決めきることができるのでしょうか!?』

 

 

ダイヤ「死守ですわよ!!浦の星!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

月「うっひゃ〜、浦の星、相当気合い入ってるね。これは突破はかなり難しいよ」

 

「函館聖泉はもう、あとがない。全員でぶつかってくるでしょうね」

 

 

 

 

『さぁ、試合再開です!審判は時計を確認しながら走っています。試合終了はすぐそこです!!』

 

 

曜「そこ!!」ズサー!

 

善子「もらった!!」ズサー!

 

 

理亞「姉様!!」パス

 

 

曜、善子「!?」

 

 

2人のスライディングは理亞のバックパスにより交わされる

 

 

聖良「行きますよ!函館聖泉!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

『これは!!なんと激しい攻防だ!!浦の星のディフェンスも素晴らしいですが、それ以上に今大会初めて、函館聖泉が全員攻撃を仕掛けています!!』

 

 

聖良「氷里さん!」パス

 

氷里「ここまで来て終わりなんて絶対に嫌だ!!」

 

 

千歌「っ!!!!」ドン!

 

氷里「くっ…」

 

 

千歌の激しいタックル。氷里はよろけながらも、パスを繋ぐ

 

 

氷里「北厳さん!」パス

 

千歌「ごめん!梨子ちゃん!!」

 

 

北厳の前には梨子が立ち塞がる。しかし、北厳は囮

 

 

北厳「頼んだぞ」サッ!

 

梨子「避けた!?スルーパス!?」

 

 

スルーパスの先には、高速ドリブラーがいた

 

 

なえ「ぜっっっっっったいに繋ぐっぺよ!!!!!!」ビュン!!

 

 

花丸「ずら!?」

 

ダイヤ「この速さ、スプリントワープ!?」

 

 

進化しているのは浦の星だけではない。函館聖泉のメンバーも確実に進化を遂げている

 

 

なえ「理亞ちゃん!!」パス

 

「「「届け!!!!!!!!」」」

 

 

函館聖泉の想いがすべて込められたボールが、今ーーーー

 

 

理亞「!!」

 

 

理亞へと繋がった

 

 

聖良「どうですか?理亞」

 

理亞「姉様…」

 

聖良「みんなとやるサッカーは、全力でやるサッカーは」

 

理亞「…楽しい。最高に楽しい」

 

聖良「そう…良かったです」

 

 

聖良と理亞はついに浦の星ゴール前まで来た。立ち塞がるのは海皇 松浦果南

 

 

果南「これを止めれば終わりだよね」

 

 

聖良「いや、まだ試合は続きます」

 

理亞「私達のサッカーは不滅」

 

 

聖良、理亞「絶対に決める!!!!」

 

 

 

聖良のスノーエンジェルと理亞のウルフレジェンドがひとつになる

 

 

果南「え…新技?」

 

鞠莉「このタイミングで!!?」

 

ルビィ「あれは…二人技」

 

 

その勇敢さ、そして美しいフォーム。それはまるで聖闘士。雪の聖闘士が今、シュートを放つ

 

 

聖良、理亞「はああああぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

聖良、理亞「ー ホワイトダブルインパクト ー!!!!!!」ドガァン!!

 

 

 

 

 

 

千歌「何あれ!?」

 

曜「嘘!!あの威力…」

 

 

函館聖泉のシュート技の中でも、最強クラス。ボールが通過したあとの道が、威力をものがたる

 

 

ダイヤ「果南さん!止められるのですか!?」

 

果南「うーん……」

 

 

 

 

 

 

果南「いやいや、無理」

 

 

 

 

 

ダイヤ「え?」

 

善子「嘘でしょ…」

 

花丸「完全に諦めムードずら…」

 

 

 

 

果南「ははは…この威力はね、海皇の三叉撃でも無理だよ」

 

 

こうしている間にもシュートはゴールに迫っている。このまま決まれば同点で延長戦。この果南の言動からして延長戦は避けられない…と思っていた

 

 

 

 

 

果南「だから、私もやってみようかな」

 

 

 

理亞「やってみる?」

 

聖良「一体何を…」

 

 

 

果南の雰囲気が一瞬で変わる。そのオーラはまるでーー

 

 

むつ「嵐…」

 

北也「まさか…あれをやるのか…」

 

 

果南は上空へ飛び上がる。するとゴール上空にーーーー

 

 

鞠莉「竜巻!!?」

 

梨子「え!?一体、何が起こるの??」

 

 

 

ゴール上空に現れた竜巻、それはまるで龍が暴れるがごとくの迫力であった

 

 

 

果南「悪く思わないでね」

 

 

果南「あなた達の覇気に刺激されて、この技が完成したんだから」

 

 

 

 

竜巻は地面に垂直落下。ボールごと、地面に突き刺さる

 

 

 

 

 

 

果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!!!」ドオォォォン!!!!!!

 

 

 

 

理亞、聖良「ーー」

 

 

浦の星「ーーー」

 

 

果南「!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ボールは果南の手の下に沈んでいた

 

 

 

 

聖良「これが……海皇…」

 

理亞「」

 

 

 

 

『止めたあぁぁぁ!!!!松浦果南!!ここに来て新必殺技で鹿角姉妹の新必殺技、ホワイトダブルインパクトをねじ伏せたぁ!!そしてーーー』

 

 

 

『試合終了です!!!!3-2!勝者は静岡が生んだ奇跡の学校、浦の星女学院だぁぁ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

聖良「はぁ…負けてしまいましたね」

 

理亞「……」

 

聖良「私達はやり切りました。全てを出し切りました」

 

理亞「……」

 

聖良「とっっっても楽しかったでしょ?」

 

理亞「……」

 

聖良「私は理亞と函館聖泉でサッカーが出来て良かった」

 

理亞「……」

 

聖良「だから」

 

理亞「……」

 

聖良「だ…から……」

 

 

 

 

理亞「……」ボロボロ

 

聖良「泣かないで…ください…理亞」ボロボロ

 

理亞「うぅ……ひっく……」ボロボロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「ハァハァ…ハァハァ…勝った」

 

 

千歌は大の字でグラウンドに倒れ込む

 

 

千歌「ついに…ここまで来たんだ」

 

曜「みんな走ったね〜」

 

善子「死ぬかと思ったわよ…」

 

花丸「マル、もう動けないずら…」

 

梨子「まさか、本当に決勝まで行くなんて」

 

ダイヤ「当然ですわ。この最強エースストライカー、ルビィがいるんですもの!!」

 

ルビィ「ピギィ!?お姉ちゃん??」

 

鞠莉「まったく…ダイヤは…」

 

果南「ははは…相変わらずだね」

 

 

大の字で寝る千歌の周りに、メンバーが集まる。0から始まったこの想いはついに、決勝にまで進むほど大きくなったのである

 

 

千歌「ついに戦えるんだ。UTXと」

 

ダイヤ「前までは憧れ。でしたわね」

 

善子「今はライバルよ。負けられないわ」

 

 

そのとき、スタジアムの電光掲示板に、同時に行われていたAブロックの試合結果が表示されていた

 

 

ルビィ「あ!Aブロックの準決勝の結果が出ます!!」

 

梨子「A‐RISE…」

 

曜「会場はアキバドームだね…」

 

 

千歌達は電光掲示板に注目する

 

 

 

 

 

『ただいま行われました試合で、決勝で対戦するチームが決まりました!!!!』

 

 

『まずはBブロック、決勝に進出したのは静岡代表 浦の星女学院!!なんと本戦初出場にして、決勝まで駒を進めた快進撃という名にふさわしい高校です!準決勝は3-2で勝利しました!!』

 

 

果南「UTXも見てるね。この結果」

 

千歌「……来た」

 

 

 

『続きましてAブロック、決勝に進んだのは東京都代表ーーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『音ノ木坂学院です!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 




ホワイトダブルインパクト
吹雪兄弟の二人技です。アニメを見てて思ったのは、エターナルブリザードDDは安直すぎか〜ってことです

海竜の逆鱗槍(げきりんそう)
オリジナル技です。技の動き、流れ自体はゲキリンダンクとほぼ同じですが、威力はハンパないです


そしてついに音ノ木坂学院…やっとですね…



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第2章 30話 「再会、そして前夜」

長かった試合も終わり、箸休めの回です。

あのお方が登場します





 

 

 

 

 

 

スタジアムでの決勝進出高校の発表後

 

 

 

千歌「あ!来た!よしみちゃーん!」

 

よしみ「千歌!」タッタッタッ

 

 

Aブロックの準決勝を見に行っていたよしみと浦の星は、会場のそとで落ちあっていた

 

 

むつ「大変なこと…になったよね」

 

いつき「まさか、王者UTXが負けるなんて…」

 

「「「………」」」

 

 

全員、驚きを隠せないのは当然。誰もが決勝ではUTXと戦うのだろうと考えていたいたからである。それが、蓋を開けてみると…

 

 

 

よしみ「4-1」

 

 

ダイヤ「UTX高校相手に3点差…ですか??」

 

よしみ「はい…前半は両者とも譲らない、拮抗した試合でした…でも、」

 

 

よしみ「後半は…」

 

 

『な、な、なんということでしょう!?音ノ木坂、後半でUTX相手に4点目です!!今までこんなことがあったでしょうか!?』

 

 

 

 

鞠莉「…何者なの?音ノ木坂学院って」

 

むつ「さっき調べたんですが、本戦出場回数は今回を入れて2回だけです。でも1回目は約30年前です…」

 

果南「30年前…かなり昔だね」

 

いつき「今までUTX高校のことしか調べていなかったので、音ノ木坂学院の情報はまったく…」

 

梨子「……」

 

千歌「…梨子ちゃん?」

 

 

よしみ「あ!そういえば千歌」

 

千歌「?どうしたの?」

 

よしみ「音ノ木坂学院のチームに、前会ったあの人たちがいたんだよ!!」

 

曜「あの人たち?」

 

善子「いったい誰よ??」

 

よしみ「それは…ま「私達のことかな??」

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

 

 

聞き覚えのある声、確かに千歌達はあったことがある人の声であった。浦の星メンバーは声のした方を振り返る。するとそこには

 

 

千歌「え…」

 

穂乃果「また会ったね!千歌ちゃん!」

 

千歌「穂乃果…さん」

 

 

千歌を救った太陽の少女がいた

 

 

 

ダイヤ「さ、先程の私達のことかな?とは…」

 

穂乃果「?…そのまんまだよ!そっか、私の自己紹介していなかったよね!」

 

 

 

穂乃果「私、高坂穂乃果!音ノ木坂学院高校2年!サッカー部主将です!よろしくね」

 

曜「え、え〜…」

 

善子「キャプテンだったの…」

 

穂乃果「あ、ちなみに副主将は海未ちゃんだよ!」

 

海未「改めましてよろしくお願いします」

 

果南「あ、ご丁寧に…」

 

 

次々と明かされる衝撃事実に、浦の星は完全に混乱していた

 

 

ルビィ「ゆ、UTXに勝ったんですね…」

 

穂乃果「うん!もちろん」

 

善子「も、もちろん…なのね?」

 

 

穂乃果の言葉に衝撃を受け固まる善子の元に、一人の少女が近づき、話しかける

 

 

「ふふふ〜♪こんにちは!」

 

善子「よは!?こ、ここ、こんにちは?」

 

「よは??はぁぁ〜ん…可愛い♪♪♪」

 

善子「え?え、え??」

 

 

少女はトローんとした顔で、善子のよしこ玉やほっぺたを触り始める

 

 

海未「ことり、善子が混乱しています」

 

ことり「え?ごめんね?つい、可愛くって…」

 

善子「へ?は、はい?大丈夫です…」

 

ことり「じゃあ、自己紹介! 私の名前は南ことり!音ノ木坂学院の2年生です♪♪」

 

花丸「穂乃果さんと海未さんと同い年ずらね」

 

ことり「そうなの!穂乃果ちゃんと海未ちゃんとは昔から一緒にサッカーをしてるんだ♪」

 

鞠莉「…私達見たいね」

 

果南「…まあ、そうだね」

 

 

ことりから開放された善子は、気のせいか少し痩せたように見える

 

 

花丸「善子ちゃん、大丈夫ずらか?」

 

善子「え、えぇ…なんか、ことりさんに近づくのは危険…そんな気がするわ」

 

花丸「??」

 

 

鞠莉「それで?私達にわざわざ会いに来た理由は?」

 

鞠莉が本題に切り込む。決勝で戦う相手に、こうして会いに来たのだ。何か理由があるのだろうと思い、警戒していた

 

 

ことり「やっぱり私達、まだ警戒されてる?」

 

海未「まあ、無理もないですね」

 

 

穂乃果「私達はね!」バッ!

 

千歌「!?」

 

 

気づいた時には穂乃果が千歌の目の前まで来ていた。そのまま穂乃果は続ける

 

 

穂乃果「あなた達のこと、ずっと見てたの!」

 

曜「私達のことを…?」

 

穂乃果「そう!それでね、応援もしてたし、いつか戦いたい!ってずっと思ってた!」

 

千歌「私達と、戦いたい…」

 

 

不思議だ。穂乃果の言葉には一つ一つに力がある。目もキラキラしていて、見るだけでも穂乃果という存在の大きさが伝わってくる

 

 

穂乃果「だから、今日は念願の浦の星との試合が決まって嬉しい!ってことと、お互いに精一杯頑張ろう!っていうことで」サッ

 

 

穂乃果「握手!」

 

千歌「あ、はい…」

 

ギュッ

 

 

 

善子「なんか裏がありそうな話だけど…」

 

梨子「この人が言うことは、信じちゃうのよね」

 

果南「それほどまでに真っ直ぐってことなのかな。穂乃果ちゃんは」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

その後、穂乃果達と別れた浦の星メンバーはホテルへと向かっていた

 

 

果南「ねぇ、ダイヤ」

 

ダイヤ「果南さん、何か?」

 

果南「ことりちゃん?が善子ちゃんに近づいたところ、見た?」

 

ダイヤ「……見てないです」

 

果南「だよね…気づいたら、善子ちゃんの目の前にいた」

 

ダイヤ「……」

 

果南「決勝だから当たり前かもしれないけど…只者じゃないよ。あの子」

 

 

 

 

花丸「善子ちゃんが言ってたずら。ことりさんに近づくのは危険な気がするって」

 

鞠莉「南ことり…一体どんなプレーをしてくるのかしらね」

 

花丸「善子ちゃんとことりさんが当たったら、善子ちゃんに勝ち目はなさそうずら…」

 

 

 

 

 

善子「ねぇ、リリー」

 

梨子「…その名前で呼ばないで…」

 

善子「ルビィとダイヤ達の問題は、これで解決したのよね」

 

梨子「…そうね、ルビィちゃんも全力でサッカーをするようになって、ダイヤさん達のモヤモヤもなくすことができた…」

 

善子「……」

 

梨子「何かまだ引っかかるの?」

 

善子「引っかかるも何も、あの時は試合中だったからアレだけど…今、冷静に考えてみると…」

 

 

 

善子「ルビィはダイヤ達がサッカーをやめたから、ルビィもサッカーをやめたのよね?」

 

梨子「そうだね」

 

善子「でもそれは、ルビィが今まで自分の本当の力を隠していた理由にはならないわ」

 

梨子「!!!!」

 

善子「ねぇ、リリー。もしかして私達」

 

 

 

 

 

 

善子「ルビィのこの問題、まだ根本的に何も解決していないんじゃないの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「はぁ…早く明日にならないかなぁ」

 

ことり「楽しみだね!穂乃果ちゃん♪」

 

海未「2人とも、早くしないと集合時間に遅れますよ」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

その日の夜 ホテル

 

 

 

 

花丸「うぅ…緊張してきたずら…」

 

善子「ちょっと、睡眠不足とかやめてよ?」

 

 

花丸は緊張すると言いながらもお菓子を口の中に放り込む。食べ物が喉を通っているあたり、そこら辺は問題無いと思うが

 

 

梨子「…確か、前にここで試合をした時も、こんな感じだったよね」

 

千歌「…うん。初戦を勝って、そのまま行けるんじゃないかって…でも、実際は……」

 

善子「何今から弱気になってんの?勝ったのよ?函館聖泉に。因縁の」

 

千歌「そうだね。勝ったよ…でも、決勝の相手、音ノ木坂学院。あのUTX高校をも降した高校…私達、本当に勝てるのかな……」

 

曜「…練習する?」

 

 

曜が全員に呼びかける。しかし、答えるものは誰もいなかった。全員、心のどこかで千歌と同じことを考えていた。千歌はただ、それを代表して言っただけ

 

 

鞠莉「大丈夫よ。私達なら」

 

ダイヤ「信じましょう。今までやってきたことを」

 

果南「私はどんなシュートでも止める自信があるよ!」

 

 

強い。1年生と2年生はそう思った。ここまで勝ってこれたのは、3年生達の心の支えがあったからこそ。自分達も不安なはず…それでも3年生は、決して弱音をはかない。思っていても出さない

 

 

千歌「そうだね…」

 

曜「……」

 

 

それでも千歌はまだ不安だった。そんな千歌を見て曜は……

 

 

曜「えい!」

 

千歌「う!?…ふえぇ……」ボフッ

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

 

枕を千歌に投げた

 

 

梨子「な、何やってるの!?」

 

曜「えい!そりゃ!」ビュン!ビュン!

 

鞠莉、果南「ふえぇ…」ボフッ

 

 

曜「みんな!暗くなってないで、もっと元気に行こうよ!」

 

 

鞠莉「やったわね…」

 

果南「海皇の力…見せてあげるよ」

 

 

次々に枕を取り始めるメンバー達。今、ホテルの一室は戦場と化する

 

 

ダイヤ「あなた達、明日は決勝なのですよ!?こんな遊んd ボフッ!!!!!!

 

ダイヤ「……」

 

ルビィ「お姉ちゃん??」

 

果南「ダイヤもしばらくの間に、随分身体が鈍ったんじゃないの?w」

 

ダイヤ「……いいですわ。わたくしの本気、見せてあげますわ」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 時は少し遡り 音ノ木坂学院 ー

 

 

「…全員揃ったわね」

 

海未「はい。始めましょう」

 

 

 

「コホン。じゃあミーティング、始めるわよ」

 

 




質問を頂きました。「何故、凛ちゃんは山属性なのか」ということについて、次回のお話の後書きで説明していこうと思います

次回はまさかの音ノ木坂回です。全員が登場します




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第2章 31話 「前夜 音ノ木坂編」

お知らせです。30話で凛ちゃんの属性説明を31話ですると書きましたが、シナリオの都合上、もう少し先になりました…予告詐欺が多いような気がして本当に申し訳ないです…ですが、必ず書きますのでよろしくお願いします

今回は音ノ木坂メンバーのミーティングです。




 

 

 

 

 

 

「コホン。じゃあミーティング、始めるわよ」

 

「「「よろしくお願いします!!」」」

 

 

ここは音ノ木坂学院サッカー部 部室。決して広いとは言えないが、音ノ木坂サッカー部は部員が少ないため、それほど問題ではない。メンバーの中心で指揮を執っているのは、音ノ木坂サッカー部部長の矢澤にこ。彼女を入れて、マネージャー3人、選手9人のサッカーチームである

 

 

にこ「じゃあ、ヒデコ、フミコ、ミカ。進行よろしく」

 

ヒデコ「は、はい…」

 

ミカ「あ、あの〜…部長」

 

にこ「何?ミカ」

 

ミカ「私の勘違いかもしれませんが…」

 

 

ミカ「3人、足りないような……」

 

 

先程も言った通り、この部室は決して広いとは言えない。なので椅子は人数分しか用意されていない。しかし、椅子の空きが3つ。これを見た海未は、ため息をつきながら言う

 

 

海未「いつもの事です…どうせまた、勝負でもしているのでしょう…」

 

にこ「まったく…明日は決勝だっていうのに」

 

 

部室の窓、そして音ノ木坂グラウンドが、激しい轟音と共に揺れていた

 

 

 

 

 

ー グラウンド ー

 

 

穂乃果「うん。ナイスシュート」

 

 

穂乃果は凛のシュートをねじ伏せていた。決して、凛のシュートは弱いわけではないのだが…

 

 

凛「穂乃果ちゃん、凄い迫力にゃ…」

 

絵里「今日はやけにやる気ね。穂乃果」

 

穂乃果「うん!だって、明日は千歌ちゃん達と戦えるんだよ!もう、身体がうずうずして仕方ないよ!」

 

 

穂乃果が両手を叩き、気合いを入れる。そして凛と絵里に構え、いつでも撃ってこいと合図する

 

 

絵里「そっちがその気なら、とことん付き合うわよ」

 

凛「燃えてきたにゃー!!」

 

 

シュートが来る…そう穂乃果が察知。技の構えに入ろうとしていた時だった

 

 

 

「あら、頑張ってるわね」

 

 

穂乃果「あ!監督!」

 

凛「にゃ!?」

 

絵里「!!もうそんな時間!?」

 

 

「熱くなるのはいいけど、もうミーティング始まってるわよ?」

 

 

穂乃果「うわわ…海未ちゃんに怒られる…」

 

絵里「急ぎましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真姫「もう…穂乃果達がいないと、ミーティングする意味ないんじゃないの?」マキマキ

 

 

赤い髪を指でクルクルとしているのは1年生、西木野真姫。その隣には同じく1年生、小泉花陽。2人とも今年から音ノ木坂サッカー部に入部したわけだが…すでにチームの大切な戦力となっている

 

 

にこ「そうね…海未、呼びに行くわよ」

 

 

にこが席を立ち、海未を連れて穂乃果達を呼びに行こうとしたが、海未が止める

 

 

海未「大丈夫です。シュートの音が止みました。じきに来ます」

 

花陽「確かに、静かになりましたね…」

 

ことり「多分、もうそろそろ来ると…」

 

 

 

穂乃果「ごっめーん!!遅刻しました!」バン!!

 

花陽「ピャッ!?」

 

希「相変わらず元気やなぁ」

 

 

穂乃果が扉を勢いよく開け、部室の中へ。驚いた花陽は謎の声を出し、他のメンバーは呆れ顔である

 

 

凛「いや〜、申し訳ないにゃ」

 

絵里「結構、盛り上がっちゃって」

 

 

続いて残り2人も入ってくる。これで音ノ木坂学院サッカー部が全員揃った訳だが…

 

 

海未「 明 日 決 勝 で す よ ? 」ギロっ

 

3人「!!!!??」

 

海未の鬼のようなオーラ。毎度の事ではあるが、いつ見ても怒っている海未は恐ろしいものである。完全にさっきまでの威勢が消し飛んだ穂乃果達は、メンバーに申し訳なさそうにイスに座る

 

 

にこ「はぁ…これで全員ね。気を取り直して始めるわよ」

 

 

「「「よろしくお願いします!!!!」」」

 

 

 

にこ「じゃあ、ヒデコ、フミコ、ミカ。よろしく」

 

ミカ「はい!」

 

マネージャーがパソコンを操作しながら、プロジェクターに写真や動画をうつしだす

 

 

にこ「まずは浦の星女学院サッカー部…分かってるかもしれないけど、選手は9人よ」

 

希「うちらと同じやな」

 

にこ「ええ。そして浦の星の特徴と言えば、なんと言っても"超攻撃型速攻"」

 

花陽「殲滅力、個人プレイ、チームワークも恐ろしいものです。それに、相手のチームへの順応も速く、これまでの試合、たくさんの戦術を生み出していました…」

 

にこ「あんた達の速攻といい勝負よ。海未、凛」

 

海未「どうでしょうか…速攻は負けませんよ」

 

凛「凛の動きについてこれるかな…」

 

真姫「…油断してるとすぐにやられちゃうわよ?」

 

にこ「そうよ。相手は本戦初出場とはいえ、みんな分かるでしょ?強いわ。舐めてかかるチームではないことぐらい理解しておきなさいよ?」

 

 

絵里「あれ?穂乃果。あなたと海未が言ってた赤髪の子、準決勝でFWやってるわよ?」

 

穂乃果「え!!??」

 

海未「!!!!」

 

 

穂乃果と海未はうつしだされた映像を見る。すると、ルビィのFWでプレイする姿が、そこにはあった

 

 

海未「やっと、ですね」

 

穂乃果「凄い…ますます楽しみになってきた!」

 

 

初めてルビィを見た時から、穂乃果と海未はルビィが秘めている力を察し、戦うことを楽しみにしていた。その願いが、明日叶うのである

 

 

真姫「何者なの?この子、ゾーンに入っている訳でも無いのに…」

 

花陽「ゾーンに入っている鹿角理亞さんと、競合う実力…恐ろしいです」

 

にこ「私もルビィの動きについて行けるかは、正直言って不安ね。止められるの?穂乃果」

 

 

穂乃果「もちろん!止めるよ」

 

 

穂乃果の絶対とも言える自信。その自信はメンバーにも伝染し、自然と全員の気持ちが高ぶっていく

 

 

凛「穂乃果ちゃんが言うんだから間違いないにゃ!」

 

海未「安心して攻められます」

 

ことり「私達も頑張らなきゃね!花陽ちゃん」

 

花陽「は、はい!私も強くなりました!絶対に負けたくないです」

 

 

にこ「そうよ。あんた達、まずは気持ちで負けちゃだめよ。ここまで来たんだから明日は必ず勝つ」

 

穂乃果「そして……」

 

 

 

 

 

 

穂乃果「"音ノ木坂の奇跡"を蘇らせる」

 

 

 

 

ガチャ。扉が開き、一人の女性が入ってくる。先程穂乃果と一緒にいた監督であった

 

 

海未「あ、監督。お疲れ様です」

 

「もう、海未ちゃんそんなに固くならないでっていつも言ってるじゃない。私も名前で呼んでほしいな?」

 

海未「…しかし……」

 

希「ええんやない?名前で呼んでも」

 

海未「…はい。わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海未「美奈さん」

 

 

 

 

 

 

 

美奈「はい!海未ちゃん」

 

 

にこ「美奈監督。あとはお願いします」

 

美奈「分かったわ。あとは私から…」

 

 

 

美奈「千歌達に勝つ作戦。話すわね」

 

 

 

みかん色の髪が静かに揺れていた

 

 

 

 

 

 




今回のお話で新たにポジションが分かったメンバーがいるかもしれませんね。次は浦の星です。あの子も出るかも…




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第2章 32話 「前夜 浦の星編」

浦の星女学院は音ノ木坂学院に勝てるんですかね……

次回からついに試合だと思います




 

 

 

 

北也「……なんで全員、ボロボロなんだ???」

 

 

千歌「あっはは…ちょっと、いろいろありまして」ボロボロ

 

曜「喧嘩ではないのでご安心を」ボロボロ

 

 

果南「ダイヤが1番、張り切ってたね」

 

鞠莉「そうね…というか果南だけピンピンしてるのは…なぜ?」ボロボロ

 

ダイヤ「キーパーですもの。当たり前ですわ…」ボロボロ

 

果南「はっはっは」

 

 

花丸「果南ちゃんの枕、恐ろしく速かったずら…」ボロボロ

 

ルビィ「善子ちゃん、顔に直撃して泡吹いて倒れた時は、びっくりしたよ…」ボロボロ

 

善子「…死ぬかと思ったわ」ボロボロボロボロ

 

 

 

 

北也「まぁ、問題無いのならいいんだけど…ひとまず」

 

北也「簡単ではあるが、ミーティングを始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 1時間後 ホテル外 ー

 

 

ルビィ「ハァハァ…」タッタッタッ

 

 

空はまだ微かに赤いが、街灯は輝き始めていたホテル近くの道。昨日と同様、ルビィはランニングをしていた

 

 

というのも、今回はミーティングが思いのほかはやく終わり、時間が余ったためこうして外に出てきたのだ

 

 

 

ルビィ「ハァハァ…ランニング終わり」

 

 

それなりの距離を走ったため、グラウンドに向かう。昨日は理亜がグラウンドにいたが、今回はーーー

 

 

ルビィ「誰もいないか…」

 

 

グラウンドにはルビィしかいなかった

 

 

ルビィ「ちょっと撃ったら戻ろう…」

 

 

一人で練習しても納得はあまりいかない。そう思うのと同時にルビィは

 

 

ルビィ「…今のルビィにはぴったりだよね」

 

 

そのままシュートを撃とうとした時だった

 

 

 

 

 

 

「また一人で練習?」

 

 

 

 

ルビィ「!!」

 

 

聞き覚えのある声が、この場所、声、完全にデジャブであった。ルビィは背後から聞こえる声に反応して、後ろを振り向く

 

 

ルビィ「理亜…ちゃん?」

 

理亜「…」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

北也「千歌」

 

千歌「なんですか?北也さん」

 

北也「ちょっといいか?」

 

千歌「?…はい」

 

 

 

 

鞠莉「音ノ木坂学院…準決勝でUTX高校相手にどんな戦いをしたの?」

 

鞠莉はミーティング終了後、試合会場にいたよしみに準決勝の詳しい内容を聞いていた

 

 

よしみ「…前半はどうやらUTX高校の必殺タクティクスや、A‐RISEに苦戦していたようです。でも…」

 

果南「でも?」

 

よしみ「後半は、まるで別のチームのようになって…UTXを圧倒して…」

 

ダイヤ「…音ノ木坂の必殺タクティクスでしょうか…」

 

鞠莉「分からないわ。情報が少なすぎる…明日の試合中に私達は、的確な状況判断が求められるわね」

 

 

 

 

善子「あら?ルビィは?」

 

花丸「またランニングずら」

 

善子「こんな時間に?」

 

花丸「そうみたいずら…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

理亜「…」

 

ルビィ「あ、あの…」

 

理亜「通りかかっただけよ」スッ

 

ルビィ「あ…」

 

 

理亜はすぐにグラウンドから出ていこうとする。しかし、ルビィは理亜に言わなければいけないことがあった

 

 

ルビィ「ごめんなさい!!」

 

理亜「…何?」

 

ルビィは理亜の背中に向けて頭を下げる。理亜は少し驚いた様子でルビィの方へと向き直る

 

 

ルビィ「ルビィ、試合中に理亜ちゃんにひどい事言っちゃって…」

 

理亜「うるさいんだよって?」

 

ルビィ「う、うゆ……」

 

理亜はため息をつきながら、再びルビィの元へ近づく

 

 

理亜「あれぐらい気にしてないわよ。誰だって熱くなることはある」

 

ルビィ「理亜ちゃん…」

 

理亜「……それに私だって…」

 

ルビィ「え?」

 

理亜「姉様との最後の大会っていうので、ピリピリしてた…ごめん」

 

 

ルビィは驚きのあまり、声が出なかった。今まであんなに敵意むき出しだった理亜が、こうしてルビィの謝罪を受け入れ、さらに理亜もルビィに謝ってきたのだ。驚くなと言う方が無理な話だ

 

 

理亜「明日、絶対に勝ちなさいよ」

 

ルビィ「うん。ありがとう」

 

 

こうして、理亜から激励のお言葉をもらったルビィは、練習に入ろうとしたのだが、理亜の話はまだ終わっていなかった

 

 

 

理亜「…ルビィ」

 

ルビィ「何?」

 

理亜「あんたに一つ。聞きたいことがあるの」

 

ルビィ「聞きたいこと?」

 

 

風が止み、理亜の声がよく聞こえるようになる。グラウンドは恐ろしいぐらいに静かだ

 

 

理亜「ルビィ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亜「今日の試合、本気だした?」

 

 

 

 

 

ルビィ「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

一方その頃、千歌と北也は二人で話をしていた

 

 

千歌「ゾーン?」

 

北也「あぁ、鹿角理亞が使っていたやつだ」

 

千歌「あの…動きが急に変わったやつ…」

 

北也「そうだ。あれは選ばれた人しか使えない、特別な力なんだ」

 

千歌「それをなんで千歌だけに?」

 

北也「…単刀直入に言う。おそらくだが…千歌」

 

 

北也「お前はゾーンを使える」

 

 

千歌「…え、私がゾーンを?」

 

北也「あぁ、だがゾーンはそう容易く扱えるものではない。ってなわけで」

 

北也「ちょっとグラウンドに来てもらう。そこで、ゾーンを発動する練習をしよう」

 

千歌「発動する練習??一体どんな…」

 

北也「ゾーンは簡単に言えば、超集中モード。要するに強い精神力が必要だ。そこでだ」

 

 

北也の練習内容を聞いた千歌は、一気に青ざめる

 

 

千歌「え…」

 

北也「危険だっていうことは分かっている。だが、音ノ木坂学院に勝つには千歌の力が必要なんだ」

 

千歌「……」

 

 

まさか、こんなにもはやく……

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

その後、千歌と北也は練習グラウンドへと移動していた

 

 

千歌「でも、本当に私が使えるんですか?ゾーンを…」

 

正直、千歌は自分がゾーンを使えるとは思えなかった。ルビィや理亜ならまだしも…

 

北也「…千歌は気になったはずだ。自分の動きを、理亜の動きに反応出来たことを」

 

千歌「…確かに、あの時は理亜ちゃんの姿がはっきりと見えた…」

 

北也「試す価値は十分あるはずだ」

 

 

しかし、本当に大丈夫なのだろうか…千歌は心配しながらも、北也の後について行く。すると、向こうから人が歩いてきた

 

 

北也「あれ?あの子って…」

 

千歌「理亜ちゃん?」

 

 

理亜「……」

 

 

理亜も千歌達に気づいた様子ではあるが、なにか様子が変である

 

 

千歌「あ、こんばんは。理亜ちゃ…」

 

理亜「千歌さんですよね」

 

 

理亜は千歌の目の前まで来ると、すぐに千歌かどうか確認してきた。試合をやった相手だから、どう話せば良いか千歌は分からなかったが、心配はなさそうである

 

 

千歌「う、うん。そうだよ」

 

 

なんだろう、理亜ちゃん、何かあったのだろうか。顔色が悪い

 

 

理亜「…千歌さん、ルビィを」

 

千歌「ルビィちゃんがどうしたの?」

 

 

理亜「……ルビィを」

 

 

 

 

 

理亜「助けて」

 

 

 




このお話の理亜ちゃんは少し素直ですね

北也さんが提案したゾーン発動方法とは……






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第2章 33話 「音ノ木坂戦 "青の弓、しなり、光を放つ"」

ついに決勝戦です。今回からサブタイトルを+‪αしました。だいたい察せるようなタイトルなので、誰のことなのか考えてみてください!





 

 

 

千歌は理亜と会った後にルビィに詳しい話を聞いた。しかし、ルビィの様子はいつもと変わらず、これといって気になるところはなかった

 

 

千歌「…今のままじゃ勝てない、か…」

 

 

理亜が去り際にそう言った。ルビィと喧嘩したわけではなさそうだったが、何か意味があるはず

 

 

千歌「ルビィちゃんを助けるって…」

 

 

ルビィちゃんの問題って、解決したんだよね?

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 翌日 決勝 ー

 

 

 

『いよいよ決勝戦となった、全国高校女子サッカー大会、どちらのチームに栄冠は輝くのかーー!!!!?』

 

 

決勝戦の会場はアキバスタジアム。国際試合も行われるこのスタジアムは、規模が今までとはレベルが違う。浦の星マネージャーは入場解放されてすぐに、観客席の下見に行っていた

 

 

むつ「やっぱすごいね〜」

 

よしみ「本当にここでやるの?」

 

いつき「声援聞こえるかな…」

 

むつ「聞こえるよ!そのくらい大きな声で、みんなには応援してもらわないと!」

 

 

美渡「そうだよ!」

 

 

いつき「!!美渡さん!」

 

 

むつ達のあとに続いて、千歌の姉、美渡と志満が来てくれた。美渡によるとまだまだ来るらしくて…

 

 

いつき「……何人…いるんですか?」

 

 

いつき達は会場の外の駐車場まで行き、人数把握をしようとしたのだが…

 

 

よしみ「な、なんじゃこりゃ…」

 

 

規模が違うのは会場だけではないようだ。指揮を執るのは果南のお母さん、その後ろにはーーー

 

 

果南ママ「はーい!皆さん!宇宙一の応援の準備はバッチリですかー!!?」

 

 

内浦一行「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」」」

 

 

駐車場一面 内浦一行のバス。浦の星女学院サッカー部の大一番に、内浦、そして沼津から大応援団が駆けつけたのである

 

 

美渡「浦の星だけじゃない!」

 

志満「私達も頑張って応援するんだから!」

 

 

後にこの浦の星大応援団が、全国から注目を浴びることになるとは、今は誰も知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「あれ?今日帰るんじゃなかったの?」

 

「決勝を見ないで帰るのは…ね?」

 

月「確かにね」

 

 

 

「隣、いいだろうか」

 

 

月「!!おやおや、こんなところでまた会うなんてね」

 

英玲奈「久しぶりだな。月」

 

あんじゅ「お久〜」

 

「"皇帝"統堂英玲奈と"睡蓮の女神"優木あんじゅ…」

 

月「強かったでしょ。音ノ木坂学院」

 

英玲奈「あぁ、私達の力が全く通用しなかった」

 

あんじゅ「悔しいけど、また見てみたくなるのよね。音ノ木坂の試合を」

 

月「ゴットストライカーさんは?」

 

英玲奈「用事で途中からくる。後半までには間に合うようだ」

 

あんじゅ「ゴッストさんは多忙だからね〜」

 

月「その略し方はなんか不味いような…」

 

「!!来たわよ」

 

 

 

 

会場から歓声が上がる。選手入場。今、全国が注目する日本一を決める戦いが始まる

 

 

 

『さあ!選手が入場してきました!ここまで並み居る強豪校との激戦を勝ち上がってきた両チーム、どちらも日本のサッカー界に衝撃を与えたと言っても過言ではありません!!』

 

 

 

千歌「お母さん!!!!?」

 

浦の星「「「美奈さん!!!!?」」」

 

 

美奈「あ!千歌達、今日はよろしくね」

 

千歌「な、ななな、なんでお母さんが音ノ木坂のベンチにいるの!?」

 

美奈「え?だって私、音ノ木坂サッカー部の監督だし……言ってなかったっけ?」

 

千歌「」

 

善子「これは絶句ね」

 

果南「こんなことがあるの?」

 

 

開いた口が塞がらず、固まっている千歌の元に、穂乃果が駆け寄る

 

 

穂乃果「千歌ちゃん!いい試合にしようね!」

 

千歌「ふぇ!?穂乃果さん、よろしくお願いします」

 

 

千歌は穂乃果の後ろを見る。そこには音ノ木坂学院サッカー部のメンバーが試合の準備をしていた

 

 

千歌「強そう…」

 

穂乃果「私も同じこと考えてた!千歌ちゃん達、強そう!って」

 

 

善子「千歌ー!最後、集まってだって」

 

 

善子が千歌を呼んでいたため、千歌は浦の星ベンチへと向かおうとした。すると善子の背後に、見た事のある影が……

 

 

 

 

ことり「ヨハネちゃん♪♪」

 

善子「うえぁ!!??ことりさん、いつの間に……」

 

ことり「さっき来たんだよ〜、ヨハネちゃん、お互い頑張ろうね♪♪」

 

善子「は、はい……」

 

千歌「あっはは…」

 

 

気を取り直して、ベンチへと向かう。すると後ろから穂乃果が

 

 

穂乃果「千歌ちゃん、ここからは本気の試合だよ」

 

千歌「!!」

 

 

雰囲気が変わった。あの時と同じ、そう。チカちゃんのシュートを止めた時と同じ目をしていた

 

 

穂乃果「私達は負けないよ。全力で勝ちに行く」

 

千歌「私達だって負けません」

 

 

 

両キャプテンはそれぞれのベンチへと別れて行った

 

 

 

 

 

 

北也「いや〜ついに決勝だな!」

 

善子「ってかリトルデーモン、音ノ木坂学院の監督が美奈さんだってこと、知ってたでしょ?」

 

北也「あぁ、知ってた」

 

善子「なんで言わなかったのよ!!」

 

北也「驚かせたいから言うなって、口止めされてた」

 

曜「美奈さんなら言いそうだね…」

 

 

 

 

 

美奈「ポジションはいつものね」

 

凛「海未ちゃん!どっちがたくさん決めるか勝負にゃ!」

 

海未「いいですね。しかし、今回はそう簡単に決められるでしょうか…」

 

絵里「あら、珍しい。海未が弱気なんて、なら私もその勝負、参加しちゃおうかしら」

 

海未「弱気ではありません!少し警戒しているだけです」

 

 

穂乃果「おーい、みんなー!円陣組むよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「行くよ!浦の星ーーーー!!!!」

 

穂乃果「音ノ木坂!!!!」

 

 

「「「サーンシャイーン!!!!!!」」」

「「「ミュージックー…スタート!!!!!」」」

 

 

 

 

 

センターフォワード 黒澤ルビィ

セカンドトップ 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌☆

右サイドハーフ 津島善子

左サイドハーフ 渡辺曜

ボランチ 桜内梨子

センターバック 国木田花丸

センターバック 小原鞠莉

キーパー 松浦果南

 

2-4-2

 

 

 

 

 

 

センターフォワード 園田海未

センターフォワード 星空凛

トップ下 絢瀬絵里

センターハーフ 西木野真姫

センターハーフ 矢澤にこ

右サイドバック 南ことり

左サイドバック 小泉花陽

センターバック 東條希

キーパー 高坂穂乃果☆

 

3-3-2

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ!ついにキックオフの時間となりました!!前半は音ノ木坂ボールからです!』

 

 

穂乃果「海未ちゃん、凛ちゃんお願いねーー!!」

 

海未「任せてください」

 

凛「最初からかっ飛ばすにゃ!」

 

 

ダイヤ「来ますわよルビィ」

 

ルビィ「うん。お姉ちゃん」

 

 

 

ピーーーーー!!!!!!

 

 

『今、笛が吹かれました!!全国高校女子サッカー大会決勝戦、開始です!! キックオフと同時に、園田海未と星空凛が駆け上がります!!』

 

 

 

海未「黒澤姉妹…」

 

ダイヤ「ルビィ!凛さんのマークを!」

 

ルビィ「うん!」

 

海未と凛の連携ドリブルを封じにかかる黒澤姉妹。しかし、海未は動じることは無い

 

 

海未「遅い!!!!」ビュン!

 

ダイヤ「な!?はやー」

 

 

海未「ー START:DASH!! ー」

 

 

突風と同時に、海未がダイヤを突破する

 

 

ルビィ「(見えなかった…)」

 

ダイヤ「すいません!フォローお願いします」

 

梨子「任せてください」

 

 

梨子がすぐに海未の前に立つ。海未のドリブル、ボール捌きにはキレがある。そう考えている間に

 

 

海未「考え事ですか?」

 

梨子「!?(嘘!?もう、横に)」

 

 

 

花丸「梨子ちゃんも抜かれたずら!」

 

鞠莉「通させないわよ!!」

 

 

梨子とダイヤを突破した海未の前に、今度はセンターバックの二人。さすがはDFと言うべきなのか、隙がない。海未は突破の術を失いかけていた

 

 

海未「ふむ…流石ですね。仕方ありません…」

 

 

 

 

 

 

海未「撃ちます」

 

 

 

鞠莉、花丸「!!!!??」

 

 

海未はなんと言った?撃つ?ここはまだコートの中心付近、まさかここからゴールにシュートを撃つ気なのか…

 

 

海未「行きますよ」

 

 

海未はボールと共に上空へ。ボールの周りにはオーラが集まり、鋭く、尖る

 

 

海未「あなたのゴール、撃ち抜きます」

 

 

 

海未「ー ラブアローシュート ー!!」ドガン!

 

 

 

 

果南「!!?(ボールが消えた!!)」

 

鞠莉「果南!!!!!!」

 

果南「(横ーーーで何か動いてーー)」

 

 

 

果南「うおああああああああああ!!」ドガン!

 

 

千歌「弾いた!!」

 

曜「何あのシュート!?蹴った瞬間に果南ちゃんがボールを弾いた!?」

 

海未の必殺シュート、「ラブアローシュート」は高速の矢。相手のキーパーは、シュートを決められたことに気づけないほどの高速スピード。まさに、ボールの瞬間移動。しかし、果南は

 

 

果南「一瞬だけ見えた…何あのスピード」

 

凛「ラブアローシュートに反応出来るの!?」

 

絵里「いやいや…」

 

 

弾いたボールは高く打ち上がり、コートの外へと出ようとしていた

 

 

海未「私のシュートに反応出来る人はなかなかいませんよ。ですが…」

 

 

 

 

海未「どんどん撃ちますから全て弾いてください」ビュン

 

 

果南「は!!?」

 

鞠莉「嘘でしょ」

 

 

意味がわからない。果南が弾いたボールは海未がシュートを撃った場所とはかけ離れた場所に飛んでいったはず…しかし、海未はそのボールに追いつき、再び高速の矢を放とうとしていた

 

 

海未「ラブアロー…….」

 

果南「やるしかない…よね」

 

 

海未の脚はまるで、しなる弓のようであった

 

 

海未「シュー…」グググ

 

 

果南「(右に来ーー)」

 

 

海未「ト!!!!!!」ドガン

果南「うらあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」ドガン

 

 

凛「また弾いたにゃ!?」

 

海未「まだまだ」ビュン

 

 

果南が再び弾いたボールに追いつく海未。今度はオーバーヘッドで矢を放つ

 

 

海未「ラブアロー……」

 

果南「(正面ーー)」

 

 

海未「シュート!!!!」ドガン

果南「うおああああああああああ!!」ドガン

 

 

 

月「なんだこりゃ…めちゃくちゃだよ…」

 

あんじゅ「キーパーが壊れるまで矢を撃ち続ける…あれが"武風神"よ」

 

 

風のように走り、武神のごとく舞う。海未に付けられた異名は「武風神」。今大会、得点ランキング第3位のストライカーである

 

 

海未「シュート!!」ドガン

 

果南「(右上!!!!)」ドガン

 

 

善子「ゴールの右上に撃った!」

 

曜「でも果南ちゃんが飛びついてる!」

 

 

果南「危なっ…」ゴロゴロ

 

果南はゴールの真ん中から、ゴールの右上へと勢いよく飛んだ。そのまま転がりながら衝撃を受け流す。のと同時に…

 

 

果南「あ、ヤバい」

 

果南は自分のおかしたミスに気づいた

 

 

海未「では決めさせていただきます」

 

 

北也「左側ががら空きだぞ!!!!果南!!!!」

 

果南「分かってる!!!!」バッ

 

 

海未はシュートを右端に撃ち、果南を右端に誘導。その後、逆隅にぶち込む。言うならばーーーー

 

 

 

 

海未「狩り」

 

 

海未「ー ラブアローシュート ー!!」ドガン

 

 

放たれた高速シュートは、瞬きを許す暇もなくゴールの前へ。そして、そのボールは…

 

 

果南「やばっ」スカッ

 

 

果南の指を掠めた

 

 

むつ「あ!!!!!」

 

よしみ「間に合わない!?」

 

 

海未「まずは1点目ですね」

 

 

『園田海未のシュートは松浦果南の指をすり抜け、今、ゴールにーーーー』

 

 

 

 

鞠莉「入ってないわよ!!!!」バキッ

 

海未「な!?」

 

果南「!!!!」

 

 

鞠莉が左隅に飛び込み、ボールをラインの外に蹴り出した。浦の星は鞠莉の決死のブロックにより、失点を回避した

 

 

果南「鞠莉…助かった」

 

鞠莉「園田海未…予想以上の化け物ね」

 

 

失点は回避したものの、音ノ木坂の攻撃は終わっていない。スローインをするのは海未。受け取る選手はーーー

 

 

 

凛「次は凛にゃ!!」

 

海未「凛、"海皇"松浦果南はやはり簡単には崩せません。油断しないでくださいね?」

 

凛「もちろん!凛が先制点、頂くにゃ!」

 

 

鞠莉「まだディフェンスは終わってないわよ!!」

 

梨子「今は守りに専念…ですね」

 

 

凛「さあ!凛のスピードについてこられるかな?」

 

 

音ノ木坂学院の猛攻は続く

 

 

 

 

 




START:DASH!!
オリジナルのドリブル技です。原作で言えば、疾風ダッシュをモデルにしています

ラブアローシュート
オリジナルのシュート技です。海未ちゃんと言えばやっぱりこれですよね!!シュートスピードは、おそらく日本一です

睡蓮の女神
優木あんじゅの異名です。何故、睡蓮なのか…睡蓮の花言葉は「滅亡」。滅亡の女神。あんじゅさんにはぴったりですね



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第2章 34話 「音ノ木坂戦 "雷の虎"」

前回は海未ちゃんでしたが、今回は凛ちゃんです!後書きに延期していた「凛ちゃんは何故、山属性なのか?」を書いています。新技もたくさん出ますので、よろしくお願いします





 

 

 

 

凛「さあ!凛のスピードについてこられるかな?」

 

ルビィ「凛さんもスピードに自信があるんですね」

 

 

最初に凛のディフェンスをするのはルビィ。ルビィも速さには自信があった。どんなに速いスピードで突破されそうになったとしても、スプリントワープで対抗できると思っていたからである

 

 

凛「凛、知ってるよ!ルビィちゃんでしょ!」バチバチ

 

ルビィ「!?(何の音…)」

 

 

凛から何かが弾けるような音がする

 

 

凛「ルビィちゃんのシュート、凄くかっこいいにゃ!ファイアトルネード!」

 

 

この音、凛から放たれている光…これは、身近なもので例えるなら…そう

 

 

ルビィ「電気?」

 

 

凛「正解」バリバリバリ!

 

 

ルビィ「!!?」

 

瞬間。凛から大量の電気が溢れ出す。まるで膨大なエネルギー…そして凛のドリブルはまるで、イカヅチのようであった

 

 

凛「ー イナビカリ・ダッシュ ー!」バリバリ

 

ルビィ「消えた!?」

 

 

まさに雷そのものであった。凛は一瞬で姿を消し、残ったのは落雷の時のような電気の線だけであった

 

 

ルビィ「逃がさない」ビュン!!

 

ルビィ「ー スプリントワープGX ー!!」

 

 

しかし、ルビィも負けてはいられない。スプリントワープで超加速。凛にスピード勝負を挑んだ

 

 

凛「お!来たきた!」バチバチ

 

ルビィ「くっ…(なんであんなに余裕なの…)」

 

 

むつ「ルビィちゃんと凛さんの1対1!!」

 

よしみ「どっちが勝つの…」

 

 

電気が走る音と地面を蹴る音がグラウンドに響く。勝負の時間は数秒。勝者はーーー

 

 

ルビィ「ピギィ!?」ドサッ!

 

善子「ルビィが転んだ!?」

 

 

凛「いっえーい!凛の勝ちにゃ!」

 

 

この数秒のあいだに何が起こったのだろうか…ルビィの姿を再び捉えた時には既に、地面に転がっていた

 

 

善子「ちょっと、どうしたのよ!?ルビィ」

 

ルビィ「いててて…ルビィ、凛さんとは相性悪いかも」

 

善子「は?」

 

 

 

 

 

 

あんじゅ「まるで、カーブで曲がりきれずに横転したスポーツカーね」

 

月「そうだね。確かに凛ちゃんの動きから考えると、ルビィちゃんの方が武が悪い」

 

英玲奈「…イナビカリか」

 

 

 

 

 

鞠莉「分かったわ。何故、ルビィは凛の動きについていけなかったのか」

 

花丸「ついていけなかった?」

 

鞠莉「えぇ、凛は言わば雷。雷は時に思いもよらない角度に動くわ」

 

 

 

ルビィ『追い付ける!!』ビュンビュン!

 

凛『(予想よりも速い…でも)』

 

 

 

 

カクンッ

 

 

 

 

 

ルビィ『!!!?』

 

 

凛『さあ、ついてこられる?』

 

ルビィ『(そのスピードで直角に方向転換!?)』

 

 

鞠莉「ルビィは凛の動きについて行こうとして…無理にブレーキをかけた…」

 

 

ルビィ『(はやくしないと…)』ズサー

 

ルビィ『(ピギ!?)』ズルッ

 

 

 

 

ルビィ『ピギィ!?』ドサッ!

 

善子『ルビィが転んだ!?』

 

 

凛『いっえーい!凛の勝ちにゃ!』

 

 

 

 

 

 

花丸「…じゃあ、ルビィちゃんが凛さんについていけない理由って…」

 

鞠莉「雷の予想外な方向転換に対応できない…ということよ」

 

 

 

凛「ルビィちゃん!もう終わり??」

 

ルビィ「……」

 

凛は物足りないという顔でルビィを見る。今だに地面に手をつくルビィには、反撃の意志は無いものの…

 

 

ルビィ「ルビィだけを見るのはどうかと」

 

凛「?」

 

 

 

梨子「ー アインザッツ ー!!」

 

 

凛の背後から、梨子がボールを奪った

 

 

ルビィ「ありがとうございます!梨子ちゃん」

 

梨子「ルビィちゃんが気を引かせてくれたおかげよ!」

 

 

ついに、この試合初となる浦の星ボールになった瞬間であった

 

 

凛「にゃあぁぁぁ!!?油断したにゃ!!」

 

海未「凛!!だからあれほど油断するなと!」

 

 

浦の星はすぐに速攻に入る。守備から一瞬で攻撃へと切り替えるスピードは、今大会でもトップレベルの浦の星。果敢に攻め上がる

 

 

にこ「うわ、速!?これが浦の星の速攻!?」

 

 

千歌「必殺タクティクス!!」

 

「ー ミラクルウェーブ ー!!!」

 

 

浦の星は最初から全力で音ノ木坂に挑む。奇跡の波は、音ノ木坂選手を次々と飲み込んでいく

 

 

真姫「ちょっと!こんなの止められないわよ!?」

 

にこ「ことりー!!お願い!」

 

 

ことり「はーい♪」

 

 

ペナルティエリアまで来たので浦の星は、ミラクルウェーブを解除。音ノ木坂の残るDFはことりのみ、ことりを突破すればゴールは目の前である

 

 

ダイヤ「曜さん、頼みましたわよ!!」パス

 

 

ダイヤは突破力のある曜にボールを渡す。曜はダイヤの考えを察し、それに答えるためにーーー

 

 

曜「行くであります!!」グググ

 

スプリントワープの構えに入った

 

 

千歌「行ける…曜ちゃん!!」

 

梨子「曜ちゃん!頑張って!!」

 

 

 

曜「ー スプリントワープ ー!!」ビュン!

 

ことり「ルビィちゃんと同じ技!」

 

 

ことりは曜のスピードに反応できずに、動けないでいた。しかし、

 

 

ことり「ボールはもらっちゃいます!」

 

ことり「それー♪♪」

 

 

ダイヤ「!?」

 

善子「何よあれ!?」

 

 

ことりの周りの地面に虹色の光が広がる。何かの技であることは確かであるが、曜はそのまま突破を図る

 

 

曜「うおぉぉ!!」ビュンビュン!

 

 

そして、曜が虹色の光に足を踏み入れた瞬間であった

 

 

あんじゅ「あ〜あ、入っちゃった…」

 

 

 

曜「…え?」

 

 

曜は違和感を覚えた。さっき一瞬、ことりが消えたような…そして気づいた時にはーーー

 

 

 

ことり「ボールは頂きました!」

 

 

 

ことりと曜の位置が入れ替わっていた

 

 

 

果南「何今の!!?」

 

鞠莉「曜が消えたと思ったら、ことりと場所が入れ替わった!?」

 

 

ダイヤ「一体何が…」

 

善子「とりあえず、ボールを奪うわよ!」

 

 

ことり「ヨハネちゃん!」

 

 

ことりが持つボールに、ダイヤと善子が迫る。そして後ろからは曜が。3対1。ことりには圧倒的に不利な状況であるが

 

 

ことり「やん!取らないで!」

 

 

ダイヤ「!?」

 

曜「今度は何!?」

 

善子「体が…動かない!??」

 

 

ことりの合図と同時に、3人の動きが止まる

 

 

千歌「曜ちゃん達、どうしたの!?」

 

曜「千歌ちゃん…体が動かない……」

 

梨子「これは…ことりさんの?」

 

 

ことり「そうです!」

 

 

虹色の光はことりを眩しく包んでいた

 

 

 

 

月「相変わらずとんでもないね」

 

月「ー ワンダーゾーン ー」

 

英玲奈「あの技は、私達では攻略できなかった。南ことりは、あの虹色の光の中の空間を支配している」

 

英玲奈「あの中では南ことりが絶対。まさに支配者だ」

 

月「"ルーラ・オブ・スペース"それがことりちゃんの異名だったね」

 

あんじゅ「空間の支配者…」

 

 

 

ことり「動けない?ヨハネちゃん…」

 

善子「くっ…何なのよ…」

 

ことり「ごめんね?ボールを前線にまわしたら、解除してあげるからね?」

 

善子「もう二度とごめんよ…」

 

ことり「そんなぁ…じゃあ、ヨハネちゃんだけ解除してあげない!」

 

善子「な、なんでよ!?」

 

ことり「だって…」

 

 

 

ことり「ヨハネちゃんをおやつにしたいの♪」ジュルリ

 

 

善子「ヒィィィィィ!!!!??」

 

 

善子「(目がガチよ目がガチよ目がガチよ目がガチよ目がガチよ)」

 

 

善子の命に危機が迫っていた

 

 

 

 

そしてボールは再び音ノ木坂ボール。海未がドリブルしながら攻め上がる

 

 

海未「やはりワンダーゾーンは便利ですね」

 

ルビィ「取った…」ズサー

 

 

ルビィがスライディングを仕掛ける。しかし、海未はいち早く察知。パスを出す

 

 

海未「凛、次は無いですよ」パス

 

凛「わかってる。今度は本気で行くにゃ」

 

 

鞠莉「来るわよ!みんな、気をつけて!!」

 

 

鞠莉の声で浦の星DFに緊張が走る。またあの雷ドリブルを仕掛けてくるのだろうか…そう考えている時だった

 

 

凛「今度の凛は、ちょっとヤバいよ?」バチバチ

 

 

再び、凛の体に電気が走り始める。しかし、先程とは何かが違う

 

 

花丸「体が…金色に!?」

 

鞠莉「別の技!!」

 

 

凛「これが凛の本気」

 

 

 

凛「ー ジグザグストライク ー」

 

 

凛は金色に輝く。そして縦横無尽という名にふさわしい動き。あまりの速さに凛の残像が現れ始めた

 

 

果南「な!!?」

 

鞠莉「どれが本物か分からない…」

 

花丸「速すぎずら!?」

 

 

凛のジグザグストライクは本来、高速移動からの高速シュートなのだが、ドリブル単体としても使える。縦横無尽に駆け回った凛は浦の星DFを全員抜かし、ゴールの目の前まで迫っていた

 

 

凛「さあ!行くよ!」

 

果南「…来い」

 

 

凛「凛ってね。ただの猫じゃないんだよ?」

 

 

そう言うと凛は足を踏み込む。地面を鳴らしながら、現れたのはーーー

 

 

果南「虎!?」

 

凛「そう、虎。凛はグラウンドに轟くイカヅチの虎」

 

 

人々は言う。音ノ木坂学院に雷を纏った虎がいると

 

 

凛「タイガー………」

 

 

そして人々は呼ぶ。凛を「雷虎(ライコウ)」と

 

 

凛「ドライブ!!!!」ドガン!

 

 

ガオォォォォ!!!!!!

虎が叫びながらゴールへと突進する。果南は構えるがかなりの威力である

 

 

いつき「果南さん、止められるかな…」

 

むつ「…大丈夫、果南さんなら」

 

 

 

果南「うわ、すごい迫力」

 

 

果南の目の前には突進する虎。今にも噛み付いてきそうだが果南は動じない

 

 

果南「でも掴めるなら話は別」バッ!

 

 

海皇の槍が虎に放たれる

 

 

果南「ー 海皇の三叉撃 ー!!」ダン!ドン!

 

果南「うおらぁぁぁ!!!!」ドガァン!!

 

 

凛「!?止められた…」

 

 

鞠莉「さっすが果南!!」

 

 

『止めたぁぁ!!松浦果南、星空凛のタイガードライブを海皇の槍でねじ伏せました!!これが、浦の星の守護神の力です』

 

 

果南「速いだけじゃ、ゴールは破れないし、迫力があるだけでもゴールは破れないよ」

 

果南「来な。全て沈めてあげる」

 

 

 

 

再び、浦の星の攻撃となった

 

 

 

 

 

 

 

 




「凛ちゃんが何故、山属性なのか」
お待たせしました。質問を頂きましたので書かせていただきます。まず、凛ちゃんはただスプリンターとして速いだけではなく、雷のように電光石火・縦横無尽に走り回って欲しかったので、雷を操る選手として設定しました。そして、凛ちゃんと言えば猫。猫は猫でもゴールに牙をむく虎として書いたので、「雷、虎、凛ちゃんの髪色や雰囲気」ということを参考に、山属性にしました。雷なら林属性なのでは?と思う方もいると思いますが、タイガードライブは山属性ですし、雷は色やキャラ的にも山属性で大丈夫だと判断しました。以上です。他にも質問がある方は遠慮なくお願いします!(ちなみに虎丸君は山属性の技を使うのに林属性という、原作ではちょっと指摘が多いキャラになっております)


イナビカリ・ダッシュ
稲森明日人のドリブル技です。あのスピードは凛ちゃんにぴったりだなと思い、採用しました

ジグザグストライク
我らがゴットスt…吉良ヒロトのシュート&ドリブル技です。ストライクなのでメインはシュートなのだと思いますが、充分、ドリブルとしても強力な技です。原作ではザ・ウォールを普通に飛び越えていましたね…

タイガードライブ
宇都宮虎丸のシュート技です。劇場版のタイガードライブには痺れました。めちゃくちゃかっこいいですよね

ルーラ・オブ・スペース
ことりちゃんの異名です。意味は「空間の支配者」です

ワンダーゾーン
ことりちゃんのオリジナル技です。ちょっと設定が細かいので説明します
・ことりを中心に半径2~7mのフィールドを展開
・ワンダーゾーン内のことりは何でもできる(自強化、拘束、位置操作など)
・ワンダーゾーンは地面にのみ発動できる
・一度発動すると、解除するまで場所固定(ことりがワンダーゾーンの外に出ると、自動で解除)
・ゾーンの広さ、自強化のかけ具合で体力の消費量が変化する


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第2章 35話 「音ノ木坂戦 "風武神攻略"」

タイトルの通りです。海未ちゃんのラブアローシュートはどうすれば止められるんでしょうかね…




 

 

 

 

 

果南「千歌!!」ブォン!

 

凛のシュート、"タイガードライブ"を抑えた果南は、トップ下の千歌へとロングスロー。再び、浦の星の攻撃が始まった

 

 

千歌「!」

 

千歌は確実にボールをトラップ。すると既に、前には海未が後ろには凛が、千歌を挟み込んでいた

 

 

海未「ボールは頂きますよ」

 

凛「逃がさないにゃ!」

 

 

千歌「…(集中…)」

 

 

千歌は2対1という不利な状況でも冷静に、心を落ち着かせていた。いつもの千歌とは別人のようである

 

 

 

希「むむむ…あの子、やけに冷静やな…」

 

花陽「海未ちゃんと凛ちゃんに囲まれているのに…」

 

 

音ノ木坂学院の最終防衛ラインでプレーする東條希は、千歌の様子にいち早く反応していた。明らかに冷静すぎな動きに、不信感を抱く希

 

 

希「うーん、なんか、無理に冷静になろうとしてる…」

 

穂乃果「…(あの感じ…)」

 

 

 

 

海未「そこです!」バッ!

 

千歌「ー!」

 

海未が足を出すも、千歌が避ける

 

 

凛「隙だらけにゃ!」バッ!

 

そして、千歌の体制が崩れたところを凛が刺す

 

しかし、

 

 

千歌「ーー!」クルッ!

 

海未、凛「!!」

 

 

海未「(崩れた体制を利用し…)」

 

凛「(体を回転させて交わした!?)」

 

 

千歌「(行ける!)」

 

 

千歌「ー ZスラッシュG3 ー!!」

 

 

『抜けたぁぁぁ!!!!高海千歌、2対1という不利な状況の中、華麗な身のこなしと必殺技を屈指し、見事、突破していきました!!』

 

 

絵里「あの体制から必殺技を出せるのね」

 

にこ「(今までの高海千歌とは、動きが違うような…)」

 

 

海未と凛を突破した千歌は、前を見る。そしてそのまま前線へと鋭くーーー

 

 

千歌「!!」バシュ!

 

 

蹴った

 

 

 

花陽「誰もいないところにロングキック!?」

 

真姫「ミス??」

 

 

ミスキックなのか?と音ノ木坂選手は考える。が、誰もいないということは敵もいないということ。そこにボールが出されたならばーーー

 

 

曜「取りに行くのみ!!」ビュン!

 

希「!?」

 

花陽「ピャ!!?」

 

 

曜がスプリントワープでボールに追いつき、千歌のパスを受け取った。突然の曜の出現により、音ノ木坂のDFは一瞬凍りつく

 

 

曜「(動きが止まった!!)」

 

曜「ダイヤさん!!」パス!

 

 

その一瞬をつき、曜はDFの隙間を通すパスを出した。受け取ったのはダイヤ。ついに浦の星が、音ノ木坂のDFを突破したのである

 

 

希「あちゃー…やられた」

 

にこ「あの動き、聖堂山で見せたやつ…不覚ね」

 

 

ダイヤ「ナイスパスです!曜さん!」

 

 

パスを受け取ったダイヤは、そのままシュート体制へ。穂乃果との勝負の時

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!!」

 

善子「頼むわよ!!」

 

 

空中に放ったダイヤモンドを、渾身の蹴りで砕く

 

 

ダイヤ「散りなさい!!」

 

ダイヤ「ー 紅蓮 ー!!」ドガァン!

 

 

ダイヤが撃ったシュートはかなりの威力でゴールへと迫る。構えるのは音ノ木坂学院キャプテン、高坂穂乃果。穂乃果は手を強く握りながら"ドン!!!!"と地面に叩きつけた

 

 

穂乃果「いいシュートだね。でも、」

 

 

 

穂乃果「こんなんじゃ足りないよ」

 

 

巨大な手が、炎のシュートをキャッチした

 

 

穂乃果「ー ゴットハンドV ー!!」

 

 

 

ダイヤ「な!!?」

 

曜「止められた!あのシュートを…」

 

 

ダイヤのシュートはかなり強力なはず…しかし、穂乃果は顔色をひとつも変えることもなく。冷静に、静かに、必要最低限の力で、ボールを抑えた

 

 

『浦の星、シュートまで持ち込みましたが決めきれません!! 再び音ノ木坂の攻撃、果たして、どちらが先に点を決めるのでしょうか!?』

 

 

 

北也「…流れが悪いな」

 

北也はベンチで試合の流れを見て、今、この状況を変える方法を考えていた。そして、一人の選手を呼び出していた

 

 

北也「どうだ?動きは良くなったように見えたんだが…」

 

 

千歌「まだダメです。完全に集中しきれてない…かも、」

 

北也「ゾーンに入ると、誰が見ても雰囲気が変わったことが分かるからなぁ…」

 

千歌「…やっぱり、やるしかなんですか?」

 

北也「あぁ、だが今はまだ早い。千歌を呼んだ理由は別にある」

 

千歌「?」

 

 

 

北也「園田海未と星空凛を封じるぞ」

 

 

 

 

その頃、コートの中心付近では、善子と真姫の1対1が繰り広げられていた

 

 

真姫「しつこいディフェンスね」

 

善子「よく言われるわ」

 

 

真姫は、自分はドリブルは得意なほうだと思っていた。人は体を動かす時に毎回、一定のリズムをとっている。そのリズムを読み、裏をかけばDFの突破は造作もないことだと思っていた…のだが

 

 

真姫「(津島善子のリズムがわからない…)」

 

善子「そんなんじゃいつまでたっても抜けないわよ!!」

 

 

善子のリズムは、言うならばデタラメに弾いたピアノ…いや、別々の曲を同時に弾いているのか???

 

真姫「(人格がふたつある?…まさかね)」

 

 

理由は簡単。津島善子はヨハネでもある。ヨハネは津島善子でもある。善子は幾多の戦いの中で、両方の感情を同時にプレーに引き出していたのである

 

 

善子「この堕天使から逃げ切る事は不可能!!」バッ!

 

堕天使ヨハネは"華麗でクールな技を、観客、選手に見せつけたい"という、自信に満ち、好戦的な感情

 

 

善子「絶対にボールを奪ってみせる!!」

 

津島善子は"みんなの力になるために、自分の出来ることを最大限に"という、冷静かつ、挫けない強い感情

 

 

真姫「…めんどくさいわね」

 

要するに、善子は真姫にとって、1番厄介な相手であった

 

 

善子「(これなら、取れる)」

 

善子がそう考え始めた時だった

 

 

真姫「私、力押しっていうのが1番嫌いなの」パチン!

 

善子「!?」

 

真姫が指を鳴らすと、徐々にオーラが真姫のもとへと集まっていく

 

 

真姫「でも、勝つためだったら、私は力押しだってする」

 

真姫は集まったオーラに飛び乗った。そして、オーラは善子に向かって突進。こうなっては真姫を抑えるのは困難であった

 

 

善子「な…何よそれ!?」

 

真姫「ー Cutie Panther ー」

 

 

凛「真姫ちゃんナイス!」

 

絵里「一気に上がるわよ」

 

 

真姫が操るパンサーは疾風迅雷。ボールを口で咥え、全速力で駆け抜ける

 

 

真姫「…この技、一気に体力持ってかれるのが難点ね」パチン

 

善子を突破してすぐに、真姫はCutie Pantherを解除する。試合はまだ始まったばかり。ここで一気に体力を消費するのは良くないと考えたのである

 

 

真姫「頼むわよ。海未」パス

 

真姫はすぐさま海未にパス。ボールを受け取った風武神はーーー

 

 

海未「いい加減決めないとですよねぇ?」ギロッ

 

ゴールを睨み、再び矢を放とうとしていた

 

 

 

果南「来るよ…」ジリッ

 

花丸「でも、本当に上手くいくずらかね…」

 

千歌「北也さんによると、海未さんのシュートを攻略するには、これしかないって」

 

 

善子が真姫を止めていたあいだに、千歌は北也の作戦を果南と花丸に伝えていた。実際に成功するかは不安ではあるが、確かに果南がキャッチできない以上、これしか方法がない

 

 

果南「…じゃあ、頼むよ丸」

 

花丸「ずら!!」

 

 

海未「なにか仕掛ける気ですか?無駄です。心が折れるまで放ってあげます」

 

海未がボールを蹴り上げ、脚をしならせる。まもなく、光速の矢が放たれる

 

 

果南「今!!」

 

 

 

 

花丸「ー もちもち黄粉餅 改 ー!! 」

 

 

花丸は、海未がシュートを撃つ前にきな粉餅を発動した

 

 

海未「タイミングがズレすぎです。目くらましのつもりですか?」

 

果南「…もっと有意義だよ」

 

 

花丸はきな粉餅を目くらましやシュートブロックに使う訳ではない

 

 

海未「ラブアロー…….」ギリギリ

 

 

 

 

海未「シュートォォ!!!!」ドガァン!

 

 

花丸「来たよ!」

 

 

ラブアローシュートは撃たれた瞬間に姿を消し、一瞬で、果南の目の前にーーー

 

 

果南「(真正面!!!!)」

 

 

果南は先程と同様にボールを取りに行った

 

 

海未「さぁ、弾いたボールはどこへ……」

 

果南「……」

 

海未「…?」

 

 

 

果南「サンキュー。丸」

 

海未「!!!!?」

 

 

海未は動けなかった

 

 

ルビィ「え!?」

 

ダイヤ「何ですか…あれは…」

 

 

何故なら、果南がボールをキャッチしていたからである

 

 

海未「な!?何故、ラブアローシュートをキャッチ出来るのですか!?」

 

凛「さっきはキャッチ出来なかったのに…」

 

 

果南「ふふっ、これ。なーんだ?」

 

果南はしてやったりという顔で海未達にグローブを見せる

 

 

海未「!?それは…」

 

花丸「マル特製!」

 

 

果南、花丸「もちもちグローブ!!」

 

 

果南のグローブはきな粉餅でコーティングされていた

 

 

海未「まさか、餅の粘着性でボールをキャッチした……と?」

 

花丸「そうずら!きな粉は控えめで、粘着性をあげてるよ!」

 

 

北也の第1の作戦は大成功。音ノ木坂のFWの一人を封じ込めることに成功したのである

 

 

海未「…!!」

 

絵里「完全に封じられたわね」

 

 

 

美奈「…やるじゃない!北ちゃん」

 

 

北也「次は"雷虎"だ。頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

月「…試合が始まって、未だに0-0…優勢なのは音ノ木坂だね」

 

英玲奈「あぁ、だが徐々に浦の星が音ノ木坂のプレーに対応できるようになっている…」

 

あんじゅ「でも、いくら浦の星が攻めても、あの高坂穂乃果は簡単には破れないわよ」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

聖良「まさか、ダイヤさんの"紅蓮"が止められるなんて…」

 

理亞「……」

 

 

理亞「(ルビィ、何やってんのよ…!!)」

 

 

 

 

 

浦の星女学院 0-0 音ノ木坂学院

 

 




ゴットハンドV
我らがキャプテン、円堂守の必殺技です。ゴットハンドの進化形態で、穂乃果ちゃんは最初の頃はゴットハンドを必殺技として使っていました。火属性ですが…(あまり関係ない)

Cutie Panther
オリジナル技です。カタカナと英語、どちらにしようか迷った挙句、英語にしました。原作にそってカタカナの方がいいという意見がありましたら、後で変更しようかと思います。モデル技は化身「リュカオン」の疾風迅雷です。化身技ですが、円堂守時代の「魔神ザ・バンド」と思っていただければ…



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第2章 36話 「音ノ木坂戦 "動き出す者達"」

お知らせです。たくさんの方から質問がありました、「世界編」についてですが、答えがでました。その答えはこの章の最終話で発表しますが、かなり悩みました。自分勝手ではありますが、続けるか続けないかは、もう決定したのでご理解のほどを…

さて、今回のお話でこれはファウルじゃね?と思うかもしれないシーンが出てきます。しかし、あくまでも超次元サッカー……これのご理解もよろしくお願いします




 

 

 

海未のラブアローシュートを封じた浦の星女学院。その後、果敢に攻め上がり、曜が必殺技「ー ゴットウィンド ー」を放つもーーー

 

 

穂乃果「ー ゴットハンドV ー」

 

 

音ノ木坂の最後の砦、穂乃果によりねじ伏せられてしまった

 

 

善子「ゴットウィンドも止められたわよ!?」

 

ダイヤ「穂乃果さん…流石としか言いようがありませんわね」

 

梨子「よっちゃん…」

 

 

梨子が善子に駆け寄り、「コワレヤスキ」を撃つことを提案する。聖堂山に対し、3点も奪い取ったあのシュートなら、音ノ木坂のゴールも破れるかもしれない…

 

 

善子「分かったわ。次はコワレヤスキを撃ちましょ」

 

ダイヤ「ボールを善子さんに集中させます。頼みましたわよ?」

 

善子「分かってるわよ!あとヨハネ!!」

 

 

その間にも、音ノ木坂は攻め上がる。そして、浦の星は次なる作戦、雷虎封じを実行しようとしていた

 

 

花丸「本当にそれだけで凛さんを止めることが出来るの、ルビィちゃん…?」

 

ルビィ「…北也さんを信じよう。花丸ちゃん」

 

 

凛「海未ちゃん、ボールを渡すにゃ!ラブアローシュートが攻略された今、決められるのは凛だけにゃ!」

 

海未「……不覚ですがその通りです。頼みましたよ。凛」

 

 

海未は渋々ボールを凛に渡す。やる気満々の凛は、早速「イナビカリ・ダッシュ」を発動。一瞬で、ルビィや花丸の目の前まで迫った

 

 

鞠莉「来たわよ!!」

 

ルビィ「うゆ…!」

 

ルビィ「ー スプリントワープGX ー!!」ビュン

 

 

ルビィも凛に対抗するべく、超加速。両チームのFWの1対1の第2ラウンドが始まった

 

 

凛「来たね!ルビィちゃん!でも、また転んじゃうんじゃない?」

 

ルビィ「ルビィを侮らない方がいいよ」

 

 

再び見えなくなる二人、第1ラウンドでは開始数秒後、ルビィの転倒により凛の勝利に終わった。しかし、第2ラウンドはーーー

 

 

凛「(ついてくる!???)」

 

ルビィ「ーー!!」

 

凛「(ならこれは…どう!?)」カクンッ

 

ルビィ「!!」

 

 

凛の武器である、加速中の直角移動。雷だからこそ出来る芸当であるため、誰もついてこれない

 

 

凛「(これで凛のかーーーー」

ルビィ「取った」

 

 

凛「!!??」

 

 

油断…はしていなかった。凛は必殺技を出している間だけは、必ず集中するようにしていた。海未に怪我をすると言われたからということもあるが、それ以上に、高速なため一瞬の状況判断が問われる。自然と集中するのは当たり前なのだが…それでも、

 

 

鞠莉「ルビィが奪った!!」

 

千歌「凄いルビィちゃん!一発で!!」

 

 

凛「え?え??なんで…」

 

海未「……まさか、もうバレたのですか?」

 

 

 

美奈「あら〜もう見つかっちゃったのね。凛ちゃんの弱点」

 

 

凛の弱点…それはーーーー

 

 

 

 

北也「癖だ」

 

むつ「癖…ですか?」

 

北也「あぁ、星空凛は技や動きを出す時に…癖なんだろうな。必ず右足で強く踏み込むんだ」

 

むつ「右足…」

 

 

 

鞠莉「千歌がルビィに伝えたことはそれだけ。あとはルビィなら理解出来る」

 

梨子「右足で強く踏み込むっていうことが、分かっているから、後はそれに合わせてボールを奪うだけ…」

 

鞠莉「えぇ、単純だけど、それに早く気づけたのは大きいわ」

 

 

浦の星の反撃。音ノ木坂のディフェンスは強力だが、そのディフェンスに捕まらないようにパスを繋ぐ。ゴールは目の前、善子を中心に鞠莉と梨子が「コワレヤスキ」を撃つ構えに入っていた

 

 

にこ「!あの三人、確か合体技使ってたわよね?」

 

希「そうやなぁ…」

 

 

希とにこが善子達を追いかけるも、今のままでは間に合いそうにない。「コワレヤスキ」はかなり強力なシュートなため、できるだけ撃たせたくはない

 

 

希「なぁ、にこっち。もうそろそろ頃合やないん?」

 

にこ「…少し早いかもしれないけど、まだ0-0…前半は海未達に任せようって話だったけど、ここはーーーー」

 

 

にこ「私達が動くべきよ。希」

 

希「はーい♪」バシュン!

 

 

善子「行くわよ!コワレ「悪いなぁ、ヨハネちゃん」

 

梨子「え!?」

 

鞠莉「!!!!」

 

 

瞬間、会場全体がどよめく。それもそのはず、善子達がコワレヤスキを撃とうとしたのと同時に、にこの隣にいたはずの希が善子達の目の前まで瞬間移動。同時に希は、善子からボールを奪っていたのである

 

 

希「ー バニシングカット ー ことりちゃんだけやないんよ?瞬間移動出来るのは」

 

梨子「嘘でしょ…このタイミングで…」

 

鞠莉「まだよ!ボールを奪い返せばいい話よ」

 

 

希を囲む善子、梨子、鞠莉。しかし、希は動じることはなく、横にいるにこにボールを渡す

 

希「ウチはドリブルは専門外なんよ。だからにこっち、よろしく〜♪」

 

にこ「全く…とうとうあんたがドリブルを克服出来ないまま、決勝になっちゃったわね」

 

 

にこはそのままリフティングのようにボールを蹴り始める

 

 

にこ「まぁ、希には希の強さがあるから、別にいいんだけどね」ポンポン

 

梨子「(…何?この余裕そうな感じ)」

 

善子「(事実、3対1よ?この状況)」

 

 

絵里「あら、もう動き出してもいいのかしら…」

 

海未「…まだ前半は終わっていませんが…」

 

絵里「おそらく、起爆剤のつもりね。よく見てなさい。海未、凛。私達のサッカーを」

 

 

 

にこ「さあ、どっからでもかかってきなさい。まとめて相手をしてあげるわ」

 

 

音ノ木坂3年生が動き始めるーーーー

 

 

にこ「ほら、最初は誰?」ポンポン

 

善子「リフティングしながらって…随分と余裕…ねっ!!」

 

にこ「!」

 

 

善子が一気に、にこに近づく。にこはリフティング中で隙だらけなため、奪い取るには絶好のチャンスであった

 

 

善子「もらった!!」

 

にこ「何よ?」スカッ

 

善子「(!?空ぶった!?)」

 

にこ「ただ突っ込んできただけじゃない」ポンポン

 

にこは何事も無かったかのようにリフティングを続けていた

 

 

鞠莉「なら競り合いはどう!?」ドン!

 

にこ「くっ…力あるわね…」

 

鞠莉「梨子!」

 

 

鞠莉がにこにぶつかりながら梨子を呼ぶ、体制が崩れたら流石に、避けれるものも避けれなくなるはず

 

 

梨子「(にこさんの体制が崩れている今なら!!)」バッ!

 

にこ「来たわね、もう一人」ググググ

 

鞠莉「さあ、ボールは返してもらうわよ!」ググググ

 

 

 

にこ「あのねぇ?」

 

 

鞠莉「!?」

 

梨子「え!?」スカッ

 

 

梨子の足の目の前にあったはずのボールが消え、善子と同じ、空振りになっていた

 

 

よしみ「な、何あれ!?」

 

いつき「……あの動きって…」

 

 

 

にこ「にこが体制崩したからって、ボールを取れると思った??」

 

 

にこは一瞬で身体を回転させ、片手倒立の状態で足をクロスし、ボールを挟んでいた

 

 

善子「今の状況でリリーのカットを避けたの!?」

 

梨子「何…あのアクロバティックな動きは…」

 

鞠莉「まさか、あれは…」

 

 

 

 

いつき「"フリースタイルフットボール"です」

 

むつ「フリースタイル、フットボール??」

 

いつき「サッカーから派生したスポーツパフォーマンスだよ。サッカーボールでリフティングやドリブルをしながらアクロバティックな技術を披露する…最近、日本でも名が知れ渡ってきているスポーツだよ」

 

いつき「にこさんが使った技は、"クロスオーバー"からの"ソフィアン クラッチ"…しかも、"NT"…あの人、只者じゃない…」

 

むつ「いつき詳しすぎない??あと、NTって…」

 

北也「No Touchの略だ」

 

むつ「監督も知ってるんですか?」

 

北也「あぁ、NTはその名の通り、2つの技の間にワンタッチを挟まない…要するに、別々の技を連続で使っているんだ」

 

 

 

 

 

月「にこちゃん、僕がイタリアに行っているあいだに凄いことになってたんだね」

 

あんじゅ「私達も気になって、彼女を調べてみたの。そしたら……」

 

 

 

 

 

理亞「え…姉様、今なんて…」

 

聖良「フリースタイルフットボールの矢澤にこ…善子さん達はとんでもない方と、勝負をしています…」

 

聖良「矢澤にこさんはーーー」

 

 

 

 

希「日本のフリースタイルフットボールの大会で優勝。今度、世界最大規模のオープン大会に出場確定なんよ」

 

善子「じゃあ、要するに…」

 

梨子「プロ???」

 

 

にこ「日本一のね。さあ、死ぬ気でかかってこないとこのまま試合、終わるわよ?」

 

 

小柄な身体から溢れ出るのは強者の覇気。まるで見えない壁があるかのように、善子達はにこに近づくことができなかった

 

 

花陽「にこちゃん達が動き出しました!」

 

真姫「まぁ、私達が決めきれていないもの…当然ね。今はにこちゃん達のサポートをしましょ」

 

 

 

動き出した3年生達に合わせる真姫達。そして、にこは未だに善子達とボールを取り合っているのだが

 

 

にこ「無理よ〜そんな動きじゃ」スカッ

 

善子「うにゃー!?なんで取れないのよ!」

 

梨子「私達だって、カットの練習はかなりしたはず…なのに」

 

にこ「……」

 

 

梨子の言葉を聞いたにこは、梨子達に向かって、鋭い目付きで言う

 

 

にこ「かなり練習…ねぇ?いい?私はね、あんた達とは努力の次元が違うのよ」

 

善子「努力の…次元」

 

にこ「私は小さい頃からサッカーでも特に、リフティングを毎日、何時間も練習をして来たのよ」

 

 

 

 

『にこはシュートもディフェンスも下手くそだなぁ!』

 

『上達しないんだから練習しても無駄じゃね?』

 

にこ『…にこも、上手くなりたい…』

 

 

 

『何言ってるの!』

 

にこ『!?』

 

『にこちゃん、リフティング上手じゃない!あなたにもサッカーの素質はあるわ!』

 

にこ『上手…リフティング……』

 

 

 

 

 

にこ「足が痛くても、風邪をひいても、忙しくても、ボールがボロボロになるまで、涙が枯れるまでリフティングをした…そんな私がーーーーー」グワン!

 

善子、梨子、鞠莉「!!?」

 

善子「(動きが読めないーーー)」

 

鞠莉「(抜かれーーー)」

 

 

 

にこ「ー アクロバットキープ ー」

 

 

にこはアクロバティックな動きで、3人を一気に突破した

 

 

にこ「あんた達に 負 け る わ け な い の よ」

 

 

『突破したぁぁぁ!!矢澤にこ、ここまで個人プレーで浦の星を翻弄!3対1という不利な状況の中、圧倒的なサッカーセンスで3人の選手を置き去りにしたぁぁ!!』

 

 

絵里「みせるわね。にこ」

 

にこ「今度はあんたの番よ。絵里」パス

 

 

にこからボールをもらった絵里は、前を向く。自分に立ちはだかる浦の星の選手達、自分を見守る音ノ木坂の選手達、全員が絵里には輝いて見えた

 

 

絵里「…いいわぁ!この感じ、最高ね。この景色を見るのに私達は二年を費やした…」

 

 

果南「…!」

 

 

果南は気づいた。絵里の上空に、雲が集まってきていることを

 

 

絵里「最高の仲間と、最高の景色で、最高の試合を…今、私は轟くわ」

 

絵里「この技で」バッ!!

 

 

絵里はボールと一緒に空へ。雲は渦巻き、強風が吹き始める

 

 

千歌「な、何…これ!?」

 

曜「まるで、嵐…」

 

 

空で金色に輝くボール。絵里はさらにオーラを込め続ける

 

 

絵里「はああああぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

月「来るよ。ロシアから来た女王のシュートが」

 

 

 

 

絵里「ー ホワイトハリケーン ー!!!!」ドガァン!

 

 

果南「!!??」

 

ルビィ「な、なんなの…あの威力」

 

 

巨大なハリケーンが浦の星ゴールへと迫っていく。これほどまでの高威力シュートは、果南が見てきたシュートの中でも最強クラスであった

 

 

果南「ねじ伏せれば、こっちのものだよ!」バッ!

 

果南も飛び、ゴール上空に巨大な竜巻を呼び起こす。今、2つの嵐がぶつかり合う

 

 

果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!!!」ドガァン!

 

 

絵里「!!あれは…」

 

花陽「新必殺技!?いつの間に!!」

 

穂乃果「…へぇ……」

 

 

果南の渾身の一撃はボールをとらえた。しかし、

 

 

果南「ぐぬぬぬぬ…(何このシュート、重すぎ!?)」

 

 

絵里の強力なシュートを地面に叩ききることができない果南。徐々に、体制が崩れ始めーーーー

 

 

果南「うわ!?」

 

 

 

どがぁぁぁん!!!!!!

轟音と共にネットが揺れた

 

 

 

 

 

浦の星女学院 0-1 音ノ木坂学院

 

 

 




バニシングカット
イナGOのエンシャントダークの選手や、シュウが使っていた、ブロック最強技のひとつです。幽霊のように消えながらボールを奪うその姿は、まさにスピリチュアルやね。

アクロバットキープ
錦龍馬が使うドリブル技です。その名の通り、めっちゃアクロバティックです。あれを現実で再現したらかなりかっこいいはず……

ホワイトハリケーン
白竜の代名詞とも言えるシュート技です。感覚としては、絵里ちがボールをハリケーンごと蹴ったというのがいいかと思います

フリースタイルフットボール
にこが才能を爆発させたスポーツ。説明は作中で書いたので省略します。ニワカなので、不自然な部分はあるかもしれませんがご了承を。



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第2章 37話 「音ノ木坂戦 "燃ゆる風雷"」

今回のお話は短いです。急いで書いたのでおかしな場所があるかもしれません。もしあったら、後でこっそりと直します

私事ですが、先日、疲労骨折しました()





 

 

 

『決まったああぁぁぁ!!!!先制点を手にしたのは音ノ木坂学院トップ下、"パーフェクトクイーン"こと、絢瀬絵里だぁぁぁ!!!』

 

 

絵里「ハラショー♪完璧ね」

 

 

果南「うわぁ…やられたなぁ……」

 

 

絵里の放ったシュート、ホワイトハリケーンはかなり強力な技であった。果南は決して止められないシュートでは無いと思っていたが、かなり相性の悪いシュートだったようだ

 

 

果南「垂直に行くと身体ごと持っていかれる…のか」

 

 

 

音ノ木坂コートに戻る絵里。その姿、そして先程までの3年生のプレーを見ていた選手達はーーーー

 

 

海未「……」ゴゴゴゴゴ

 

凛「……」ゴゴゴゴゴ

 

 

絵里「あら、燃えてるわね。どう?やる気出た?」

 

海未「愚問ですね」

 

凛「あんなシュート見せられたら、燃えない方がおかしいよ」

 

 

希「ふふっ♪単純やけど、そこがいいんやないんかな」

 

にこ「これであと2、3点は決まるんじゃない?」

 

 

 

美奈「やっぱり、にこちゃん達は頼りになるわね♪」

 

ヒデコ「こうなると海未達も手がつけられなくなるね…」

 

ミカ「…ははは」

 

 

 

 

 

ピーー!!!!

試合再開。攻撃を開始した浦の星は、先程まではなかった熱さを感じ取っていた

 

 

ダイヤ「凛さん達の雰囲気が…」

 

ルビィ「今までとは違う…よね」

 

 

動きや表情も変わっているが、なによりもーーー

 

 

海未「!!」ギロッ

 

 

目の色が違った

 

 

ルビィ「!!?」

 

ダイヤ「な!!?」

 

 

『なんと!?一瞬の出来事!!園田海未が黒澤ルビィからボールを奪い取りました!!先程までとは動きのキレが違うようだ!!』

 

 

千歌「ルビィちゃんが取られた!?」

 

梨子「急に動きが…さっきの絵里さん達のプレーが原因?」

 

ルビィ「っ!!!!」

 

 

一気に攻め上がる海未と凛。止めに入った浦の星選手を次々とかわし、再びゴールの目の前へと迫っていく

 

 

海未「勝負!!」

 

果南「…来い!!」

 

 

果南が構え、シュートに備えようとした時であった

 

 

ドオォォン!!

 

 

海未「!!」

 

果南「!?」

 

 

ボールが足と足に挟まれ、大きな音を会場全体に響かせた。一つは海未の足、もう一つの足はーーー

 

 

ルビィ「これ以上は…」ハァハァ

 

海未「来ましたか。さあ、あなたの力、見せてください」

 

 

果南「ルビィちゃん!!」

 

花丸「…(ルビィちゃん、様子が変ずら?)」

 

 

 

 

聖良「ルビィさんが海未さんに追いついた!」

 

理亞「……」

 

聖良「理亞?まだルビィさんに謝っていなかったのですか?」

 

理亞「謝った。あっちも、謝ってきたわ」

 

聖良「なら、何故ルビィさんを睨むように……」

 

理亞「……」

 

 

理亞「ルビィは…このままじゃ…」

 

 

 

 

ルビィ「!!?」

 

海未「こんなものですか?」

 

ルビィ「っっっ!!!!(何でなの!!??)」バッ!

 

 

 

 

理亞「壊れる」

 

 

 

 

 

 

『また抜いたぁぁぁ!!今の園田海未と星空凛は誰にも止められない!!しかし、黒澤ルビィもまだ負けていない!』

 

 

ルビィ「まだまだ…!!」バッ

 

海未「凛!!」パス

 

ルビィ「くっ…!?!?」ザザザザ!

 

 

凛に出されたボールをルビィが追う。その姿を見た浦の星メンバーは、謎の違和感を感じていた

 

 

ダイヤ「ルビィ?」

 

曜「ルビィちゃん!無理しないで!」

 

鞠莉「ルビィ…動きが変ね…まるで、」

 

鞠莉「苦しんでいるみたい…」

 

 

ルビィ「ハァハァ…」

 

凛「むう…しつこいにゃ!!」パス

 

 

凛が海未にボールを戻そうとした時だった

 

 

ルビィ「(今ここで、取る!!!!)」バッ!

 

 

ルビィがパスコースに飛び出した。しかし、

 

 

 

月「タイミングが全然あってない。ルビィちゃん、急に崩れ始めたね」

 

 

 

ルビィ「ピギィ!?」ドサッ!

 

善子「ルビィ!!」

 

 

凛のパスボールを無理に取りに行こうとしたルビィは、そのまま地面に転倒。パスは通り、再びボールは海未に渡った

 

 

ルビィ「なんで…なんでなの??」

 

善子「ねぇ!ルビィ、どうしたのよ?様子が…」

 

ルビィ「っっっ!!!!」バッ!

 

善子「ちょっ!?ルビィ!!」

 

 

ルビィが再び海未に追いつこうとする。しかし、それを察知した海未はすでにシュートを撃つ体制に入っていた

 

 

海未「もう少し期待していたのですが…」ググ

 

ルビィ「間に合う!!!!」バッ!

 

海未「無駄ですよ。あなたのことは、過大評価していたようです…」

 

ルビィ「嫌だ…」

 

海未「そこでよく見ていなさい。私達の本気を」

 

凛「いいよ。海未ちゃん、いつでも」グググ

 

 

海未の前方には、陸上のクラウチングスタートで構える凛がいた。まるで、飛び出す合図を待っているかのように、前だけを見ている

 

 

ルビィ「!?」

 

果南「何するの……」

 

 

絵里「容赦ないわね…一気に畳み掛ける気よ」

 

希「絵里ちも人のことは言えないなぁ〜」

 

 

 

海未「ラブアロー……」ググググ

 

ルビィ「ダメ!!!!」

 

 

ルビィは咄嗟に手を伸ばした。自分のミスから生まれたこのピンチ、このまま決まれば2点差、逆転は不可能に近い。仲間と目指した目標まであと少し…それなのに、そのあと少しを自分のミスで、潰してしまう…ルビィは必死に海未を追いかけた。しかしーーーー

 

 

 

海未「シュートォォ!!!!」ドガァン!

 

 

無情な矢は、放たれた。のと同時にーー

 

 

凛「ー ジグザグストライク ー」ビュン!!!!

 

 

ーー凛が勢いよく飛び出した

 

 

鞠莉「一体な……まさか!?」

 

果南「うそでしょ…」

 

 

凛「これが!!!!」バリバリ

 

海未「私と凛の!!!!」

 

凛、海未「全力!!!!!!!!」

 

 

 

光速のシュートに気合いで追いついた凛。そしてそのシュートを、イナビカリでーーー

 

 

 

凛「おらあぁぁ!!!!!!!!」ドガァン!!

 

 

 

海未、凛「ー 雷光の矢 ー!!!!」

 

 

雷を纏った矢は音をも置き去りにし、果南が反応するよりもはやくーーー

 

 

果南「なーーーー バシュン!!!!!!

 

 

ゴールに刺さった

 

 

 

果南「」

 

浦の星「」

 

ルビィ「…っっっ」

 

 

凛「ハァハァ…」

 

海未「…凛、あなたは……」

 

 

海未「最高です」

 

 

 

 

 

『ゴーーール!!!!!! 決めたのは"雷虎"星空凛だぁぁぁ!!園田海未のラブアローシュートとジグザグストライクを合体させた新必殺技で、浦の星ゴールを貫いたぁ!!その光速と言える速さには、松浦果南も反応出来ませんでした!!!!』

 

 

 

 

むつ「これで0-2!?まずい…」

 

北也「まさか…ここで新必殺技とはな…」

 

よしみ「点差もまずいけど……ルビィちゃん…」

 

 

 

 

 

ルビィ「ハァ…ハァ……やっちゃった……」

 

 

自分のせいで失点。2点差。逆転。絶望。プレッシャー。エース。決勝。失敗。さまざまな言葉が、頭の中で動き回る。立ちくらみのように気が遠くなってくる。もうこのまま、倒れてやろうか、そう考えた時だった

 

 

 

 

花丸「ルビィちゃん…」

 

善子「ルビィ」

 

 

ルビィ「善子、ちゃん…花丸ちゃん」

 

 

花丸「大事なお話があるずら」

 

善子「今だから必要な話よ。あんたの…」

 

 

 

 

善子「過去についてね」

 

 

 

 

 

浦の星女学院 0-2 音ノ木坂学院

 

 




雷光の矢
オリジナルの2人技です。海未ちゃんのラブアローシュートに凛ちゃんが追いつき、追撃のジグザグストライクを放つというとんでもないシュートです。そのスピードと重さは、2人のシュート技の遥か彼方のレベルで、音ノ木坂学院サッカー部の最強シュートの一つになったはずです


次回はルビィちゃんの過去にもう一度迫ります



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第2章 38話 「音ノ木坂戦 "目覚める力"」

ついに…ついにルビィちゃんの問題完結です。ルビィちゃんは一体、どうなるのか、試合の行方は、ほかのメンバー達は…

始まります





 

 

 

ルビィ「過去って……もう解決「してない」

 

 

ルビィの言葉を遮る善子。私達は誤魔化せない、という目でルビィに問う

 

 

善子「ルビィ、中学でダイヤ達が卒業した後、何かあったでしょ??」

 

ルビィ「…!!!!」

 

梨子「ダイヤさん達がサッカーをやめたことは、ルビィちゃんがサッカーを全力でやらなくなった理由にはならない…」

 

ルビィ「…そ、それは……」

 

花丸「ルビィちゃん、まだ、マル達のこと信じられーー 「違うよ!!!!」

 

花丸「!!?」

 

 

ルビィが大きな声で花丸の言葉をかき消す。ほかのメンバーも驚いた様子で、ルビィを見る

 

 

ルビィ「違う……ルビィは信じてる…みんなと…全力で、楽しみたい…でも、」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

―――――――――――

―――――

 

 

 

 

ー ダイヤ達が部活を引退して数ヵ月後 ー

 

 

 

中1ルビィ「ハァハァ…もう一度」

 

 

ルビィは、お姉ちゃん達が部活を引退してから、練習量を増やして、毎日ボールを蹴り続けました

 

 

ルビィ「…あと少し…かな」

 

 

お姉ちゃん達とは、中学では大会優勝ができなくて、正直、とても悔しかった。だから、目標を決めたんです

 

 

ルビィ「必ず完成してみせる…」

 

 

ルビィが高校生になって、またお姉ちゃん達とサッカーができるようになった時に、今度は優勝できるように、誰にも負けない、全てを凌駕する"究極の技"を考えていたんです

 

 

ルビィ「ピギィ!?」ドサッ!

 

 

特訓はかなりつらかったです。でも、足や手が傷だらけになっても、練習が終わったあとの日も、offの日も毎日…毎日、立ち上がりました

 

 

 

 

そして、春休み中についに…完成したんです

 

 

ルビィ「………よし、できた」

 

 

この技があれば、誰にも負けない。お姉ちゃん達ともっと上へいける…今はこの技を磨いて、高校生になる頃には完全に使いこなせるようにしよう。そう考えていました

 

 

 

 

でもーーーー

 

 

 

 

ーーールビィは間違っていたんです

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「……みんな、どうしたの?」

 

「「…………」」

 

 

同級生と先輩のサッカー部員が、ルビィに話があると、部室に呼び出したんです。最初は新入生への部活紹介の相談かな?と思ってたんだけど、シーン…とする部室を見て、これは違うな。と一瞬で察しました

 

 

先輩1「…ルビィ、毎日残って自主練してるよね」

 

ルビィ「は、はい」

 

先輩2「ただでさえ上手いのに、あの練習量は凄いよ」

 

同級生1「1年からレギュラーで、前回の大会の静岡得点女王…だもんね」

 

ルビィ「……」

 

 

ルビィにもわかる。みんな何かを隠している。ルビィに言いたいことがあるから呼び出して、こうして話す機会を作ったんだけど、言い出せない。そんなに言いずらいことなのだろうか…あの時は、その程度の感覚だった

 

 

ルビィ「何か、ルビィに相談?それとも…他に言いたいことが…ある、のかな?」

 

「「………」」

 

 

そして、また部室が静かになって一言。先輩が言ったんです

 

 

 

 

 

先輩1「つまらないのさ」

 

ルビィ「……つまらない?」

 

先輩1「ルビィとサッカーをするのがさ」

 

ルビィ「…え……」

 

先輩1「最近の試合、ボールに触っているのは、ほぼほぼルビィだけだよね」

 

先輩2「先輩達がいた頃は、先輩達のレベルも高かったから、そんなには気にしていなかったんだけど…」

 

同級生1「こうしてダイヤさん達がいなくなってからも、ルビィ中心の試合をするとさ、どうしても…私達はボールをルビィに渡すだけになって」

 

同級生1「私、何してるんだっけ…って思っちゃうんだよね」

 

ルビィ「」

 

先輩1「でも、私達はルビィを責めたりしないし、仲間はずれにもしない。それに、私達がルビィやダイヤさん達よりもレベルが低いのも原因だし……でも、それでも、貴重な青春のひとときの試合、こんなんじゃ…」

 

 

 

「つまらない」

 

 

 

 

 

ルビィ「」

 

 

 

 

 

部活のみんなは優しかった。ルビィの自分勝手なプレーを責めようとせずに、自分達にも原因がある。と、ルビィを悪者にしなかった。心の中では、ルビィのプレーに嫌気をさしているはずなのに…

 

 

そしてルビィは気づいたんです

 

 

ルビィは、自分のことしか考えていなかった。勝つことだけを考えて、勝つための戦い方、要するに中身を全く考えていなかった…ルビィは、こんなにも優しい仲間のサッカーを…奪っていたんだって

 

 

ルビィ「」フラフラ

 

同級生2「る、ルビィちゃん?大丈夫?」

 

ルビィ「みんな…ごめん、なさい…明日から、よく考えるから……今日は帰るね」

 

 

罪悪感で心が潰れそうでした。胸はとても苦しく、吐き気までしてきて…今は、何も考えたくないと、家のベッドに倒れ込みました

 

 

 

 

 

その後、ルビィは"究極の技"を使えなくなりました

 

 

 

ルビィ「…なんで……」

 

 

原因は分かりきっていました。罪悪感から、本気のプレーをしようとすると、反射的に身体にストップがかかるのだと。それでも、やっぱり、使えないのは悔しいし、それにーー

 

 

ルビィ「お姉ちゃん達に合わせる顔がないや…」

 

 

その頃から、ルビィのサッカーに対する想いは消えたも同然でした

 

 

 

そんな時、あの言葉をお姉ちゃんから言われたんです

 

 

 

ダイヤ「片付けて…それ、見たくない」

 

ルビィ「…」

 

 

理由は何であれ、お姉ちゃんがサッカーを避け始めた。ルビィもサッカーのやる気が無くなっていた。丁度いいや。そう、思ってーー

 

 

ルビィ「…そっか」

 

 

 

ルビィはサッカーをやめたんです

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ダイヤ「…………」

 

鞠莉「………」

 

果南「…………」

 

ルビィ「これが、お姉ちゃん達が引退してからの出来事。そして、ルビィがサッカーを本気でやらなくなった理由」

 

花丸「…自分のサッカーが、仲間のサッカーを奪う…そう、思って…」

 

善子「だから浦の星サッカー部に入っても、全力でプレーをするのを避けていたのね…」

 

梨子「でも、そんな…」

 

ルビィ「分かってます…浦の星女学院サッカー部のみんなは、ルビィの全力を受け入れてくれたって。ルビィもそれに応えなきゃって」

 

曜「え…でも、その究極の技は…」

 

 

 

ルビィ「まだ使えないんです…」

 

曜「!!」

 

ルビィ「みんながルビィを受け入れてくれてから、ルビィは究極の技を使おうと何度も試みたんです…でも、あの時のように使えなくって」

 

鞠莉「じゃあ、さっきまでの無理なプレーは…」

 

ルビィ「…実は函館聖泉との試合で、一瞬だけ、技を発動出来たんです」

 

 

 

 

 

 

理亞『だからイライラするのよ!!あんたのプレーは!!!!』ドガァン!!

 

ルビィ『ピギッ!?……』

 

理亞『この意気地無し、自分を殺す弱虫、下手くそ』

 

ルビィ『………(何も知らないくせに)』

 

理亞『あんたは、サッカーをやる資格なんてないのよ!!!!!!』

 

 

ルビィ『』

 

 

ルビィ『(何も知らないくせに何も知らないくせに何も知らないくせに何も知らないくせに何も知らないくせに何も知らないくせに)』

 

ブチッッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

ルビィ『』ドガァン!!!!

 

 

理亞『……え、』

 

 

聖良『ウルフレジェンドが、蹴り返された…』

 

 

 

ルビィ『(今のって…)』

 

 

 

 

 

 

花丸「あの時の動きは、究極の技を…」

 

ルビィ「うん。あの時の状況から考えて、発動するために必要なのは…"怒り"だと思ったの」

 

善子「怒りで力が増すって言うのは、よく聞くけど…」

 

ルビィ「だから、さっき海未さんにボールを取られた時に、自分に怒りがこみ上げてきて…そして同時に、この状況なら使えるんじゃないか…って思った」

 

鞠莉「だからあんな強引な…」

 

ルビィ「ごめんなさい…」

 

 

千歌「ルビィちゃん」

 

 

一通りルビィの話を聞いていた千歌が口を開く

 

 

千歌「私ね、究極の技を使えるようにするのに必要なのは、怒りじゃないと思う」

 

ルビィ「…怒り、じゃない」

 

ダイヤ「わたくしもそう思いますわ」

 

ルビィ「お姉ちゃんも?」

 

ダイヤ「ルビィ。あなた、全力を出すようになったとはいえ、まだ心のどこかにあるのではないのですか?」

 

ダイヤ「自分のプレーが仲間のサッカーを奪ってしまうのだ、と」

 

ルビィ「!!」

 

ダイヤ「もしあるのなら、わたくしはそれが原因だと思います」

 

果南「怒りで強引に力を引き出したのかもしれないけど、それこそ、チームのピンチに繋がっちゃうよ?」

 

ルビィ「…そうですよね」

 

鞠莉「だから必要なのは、ルビィが私達を信じきること。そして、私達もルビィを完全に信じること!」

 

花丸「ルビィちゃん、大丈夫だよ。マル達も頑張るからね」

 

ルビィ「花丸ちゃん、みんな…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!

試合再開、2点差になったこの試合、前半の残り時間は少なくなってきていた。このまま、音ノ木坂優勢で終わると思われていた。しかし、

 

 

ダイヤ「ルビィ!」パス

 

ルビィ「!」

 

ダイヤ「わたくし達はルビィを信じています!」

 

善子「あんたがミスっても、このヨハネがいるわ!」

 

曜「私も力になるよ!どんどん頼ってね!」

 

ルビィ「みんな…」

 

 

 

海未「!浦の星の動きが変わった…」

 

にこ「ルビィ中心の攻めね。ここでエース頼り?」

 

絵里「あれは…そうとも言いきれないわよ?」

 

 

ルビィを中心に攻め上がる浦の星、誰かが誰かを支え、誰かが誰かを頼る。自然とパスが繋がり、道が開けていく

 

 

ルビィ「(凄い!パスが繋がった)」

 

 

ルビィは手加減などしていない。今の自分の力を最大限に使いながら動いたはず。それにほかのメンバーはついてきていた。こんなこと、3年前ならありえなかった

 

 

善子「決めて!ルビィ!!」

 

ダイヤ「シュートですわ!!」

 

梨子「ルビィちゃん!」

 

 

ルビィ「!!」バッ!

 

 

最初から分かっていた。きっとこのメンバーなら、ルビィを受け入れてくれるのだろうと

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

でも、ルビィは避けていた。怖かった。悲しませたくない、苦しみたくない。沢山あった。嫌な感情が。でも、今はそんなのどうでもいい

 

 

ルビィ「ー 超ファイアトルネード ー!!」ドガァン!!

 

 

みんなとやる、このサッカーが楽しい!!

 

 

 

穂乃果「…凄い威力」

 

花陽「ルビィさんの必殺シュート!?かなり強力です!!」

 

 

『黒澤ルビィのファイアトルネード!!高威力なそのシュートは、果たして音ノ木坂ゴールを破れるのか!?』

 

 

 

穂乃果「私も応えなくちゃね」

 

 

ルビィ「!!」

 

善子「何よあれ!?」

 

千歌「…あれは、まさか」

 

 

 

 

 

穂乃果「ー 愛は太陽 ー」

 

 

穂乃果は片手をボールに向け、巨大な太陽を作って、ボールを取り込んだ。ボールの威力、パワーは徐々に太陽の力により、消滅。そしてーーーー

 

 

穂乃果「いいシュートだったよ!」

 

 

穂乃果の右手に収まった

 

 

 

『止めたぁぁぁ!!!!高坂穂乃果、愛は太陽で黒澤ルビィのシュートを防ぎました!やはり、"太陽の守護神"はそう簡単には破れません!!!!』

 

 

梨子「うそ、何あの技…」

 

曜「ルビィちゃんのシュートが、簡単に…」

 

千歌「……やっぱり、凄い」

 

 

ルビィのシュートが止められたことにより、浦の星の選手達は、果たして穂乃果を破ることが出来るのか。という不安な感情が生まれ始めていた

 

 

穂乃果「絵里ちゃん!!」ブォン!

 

 

ダイヤ「くっ…一体どうすれば…」

 

善子「ルビィのシュートが止められたんじゃ…」

 

 

前半もまもなく終了。そう考えた時だった

 

 

 

 

果南「まだ時間あるぞおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

千歌「うわぁ!?果南ちゃん!」

 

花丸「凄い声ずら…」

 

ルビィ「!!!!!!」

 

 

 

 

中3果南『まだ時間あるぞおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』

 

 

果南「チャンスはまだあるよ!!!!」

中3果南『チャンスはまだある!!!!』

 

 

絵里「確かにチャンスはあるわ。でもね」

 

 

絵里はすでに空へと飛んでいた。再び、あの強力なシュートを放とうとしていたのである

 

 

絵里「私のシュートを止めてから言いなさい」

 

絵里「ー ホワイトハリケーン ー!!」ドガァン

 

 

巨大なハリケーンが浦の星ゴールに迫る

 

 

果南「頼んだよ。鞠莉、ダイヤ」

 

 

鞠莉「ー グラウンドスイーパー ー!!」

ダイヤ「ー ラ・フラム ー!!」

 

 

ダイヤ「決めさせませんわよ!!」

中3ダイヤ『決めさせません!!』

 

鞠莉「こんなところで終わらせない!!」

中3鞠莉『こんなところで終わらないわよ!!』

 

 

ダイヤと鞠莉のシュートブロックにより、威力が半減した絵里のシュート。そこへ、果南が渾身の力で技を放った

 

 

果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!」ドガァン!!

中3果南『ー トライデント ー!!』ドガァン!

 

 

絵里「…やるわね」

 

 

『止めたあぁぁ!浦の星3年生選手達による、決死のブロック!絢瀬絵里、2点目とはなりませんでした!!』

 

 

果南「ルビィィィィィ!!!!!!」ブォン!

 

ルビィ「!!」

 

 

果南の声と一緒に、ボールがルビィの元に飛んできた

 

 

ダイヤ「さあ、行きなさい!!」

 

鞠莉「ルビィなら行けるわよ!!」

 

千歌「ルビィちゃん!」

 

善子「ルビィ!」

 

花丸「ルビィちゃん!」

 

曜「ルビィちゃん!」

 

梨子「ルビィちゃん!」

 

 

 

重なるみんなの声。あの時と同じ、毎日走って、強くなろうと、ダイヤ達とのサッカーを楽しんでいたあの頃の想いがーーー蘇る

 

 

ルビィ「…みんな」

 

 

海未「チャンスなどありませんよ」バッ!

 

凛「油断したね!ボールはもらうよ!」バッ!

 

 

ルビィは完全に海未達を見ていなかった。そのすきをつき、海未と凛がボールを奪いに行く

 

 

海未、凛「取ったぁぁぁ!!!!ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「みんな……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

海未、凛「!!?」スカッ

 

 

海未と凛の足には手応えがなかった。空ぶった?ルビィが避けた?あの状況から……??しかし、そんなことよりもーーーー

 

 

海未「!?ルビィは…」

 

凛「どこにいったの!?」

 

 

二人はルビィを見失っていた。確かに目の前にいたはずーーー

 

 

ルビィ「こっちだよ」

 

 

海未、凛「!!?」

 

 

ルビィは二人の背後にいた。いつの間に移動したのか分からなかったが、それ以上に海未達が気になったのはーーー

 

 

 

 

海未「なんですか……その姿は?」

 

 

 

 

ルビィ「…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

ルビィの髪は揺れ、赤い巨大なオーラを放っていた。目も赤くなっており、先程までのルビィとは明らかに様子が違う

 

 

ルビィ「これがルビィの本気。みんなのおかげで、再び行き着いた究極の力。もう、負ける気がしない」

 

 

3年という時を経て戻ってきたエースストライカー。もう、弱い自分はいない。あとは進むだけ、みんなの想いを力にルビィは覚醒する

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ー Awaken the power ー」

 

 

 

その熱さは日本中に轟くことになる

 

 

 

 

 




果たして、ルビィちゃんの究極の技の力とは…

試合は大きく動きます



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第2章 39話 「音ノ木坂戦 "紅き流星"」

チート技には弱点がつきもの。ルビィちゃんにはこの言葉が一番合っているかもしれません。覚醒したルビィちゃんはいったいどのような力を使うのか…





 

 

 

凛「あ、熱い……!?」

 

 

ルビィから放たれるのは覇気だけではない。激しい熱風が、近づくもの皆焼き焦がさんと吹き荒れる

 

 

海未「まだそんな力を…」

 

 

小さな身体からはありえない熱量。海未は突然のルビィの変化に驚きを隠せないでいた

 

 

ルビィ「じゃあ、いきます」ビュォン!

 

 

海未「はーーー「1人目」

 

凛「はやーーー「2人目」

 

 

言葉を発すことも許さないその速さは、2人を置き去りにする

 

 

絵里「!!?何よーー「3人目」

 

にこ「まっっーー「4人目」

 

真姫「だーー「5人目」

 

花陽「みえーー「6人目」

 

 

絵里、にこ、真姫、花陽「!!!!??」

 

 

 

希「え…もう6人も!??」

 

穂乃果「まっったく見えなかったんだけど…」

 

 

誰の目にも捉えることは出来ない。これがルビィの目指した究極。しかし、観客席からはかろうじて動きを捉えることが出来た。後に人々は言う"紅い流星"を見た。と

 

 

ルビィ「…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

もはや、対抗出来る希望が残っているのは…

 

 

希「瞬間移動ができるウチらしかいない!ことりちゃん、ここで食い止めるで!!」

 

ことり「ワンダーゾーンにさえ入ってくれれば、こっちのもの…」

 

 

ルビィ「あと2人…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

先に仕掛けたのは希。瞬間移動でボールを奪う「バニシングカット」でディフェンスを開始する

 

 

希「(なんや急に…近づくだけで火傷しそう)」ビュン!

 

希がタイミングを伺い、ルビィに接近する。そしてーーー

 

 

希「取った!!!!」ビュン!

 

穂乃果「希ちゃんナイス!」

 

絵里「ハラショー!!」

 

 

希はルビィからボールを奪い取るのに成功。いくら覚醒したところで、瞬間移動には勝てなかったようだーーーーー

 

 

ーーーから、今取るんだよ」

 

 

希「!?(瞬間移動したタイミーーー

 

ルビィ「返してね」ズザー

 

 

希「!!!!??」

 

 

 

 

 

英玲奈「もう…なんでもありだな」

 

月「瞬間移動には適わない。だから、わざと奪われて瞬間移動を終えた時、再びボールを奪い取った…ってこと????」

 

「発想が吹き飛んでるわ…」

 

 

 

 

ここまで、7人が抜かれた。残るは太陽の守護神とルーラ・オブ・スペース。ことりはすぐに「ワンダーゾーン」を展開する

 

 

ことり「絶対に通しません!」

 

ルビィ「ワンダーゾーン…めんどくさいなぁ…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

さすがのルビィも足を止める。ボールを取られるところまではいい。しかし、善子達のように身体の動きを止められたら何も出来ない

 

 

ことり「……」

 

ルビィ「…突破は難しい…なら、」

 

 

ルビィ「撃つ」バッ!

 

ことり「え!?」

 

穂乃果「まさか、そこから!?」

 

 

ルビィがシュートを撃とうとしているのは、ペナルティエリアの外、ゴールまではかなりの距離がある。はっきり言って無謀に近かった

 

 

ルビィ「うおあああああ!!!!」

 

 

ルビィが叫ぶと、オーラが更に膨れ上がる。かなり離れているはずの穂乃果も、熱いと感じるほどである

 

 

穂乃果「いいよ…いいよいいよ!!!凄そうじゃん!!来なよ!ルビィちゃん!最高で全力のシュートを穂乃果に撃ってみなよ!!」

 

 

穂乃果は震えていた。武者震い。いつぶりだろうか、身体が震えるのは、そんなことを考えているあいだに、ルビィのシュートが放たれようとしていた

 

 

ルビィ「これがルビィのシュート!!!!」

 

 

ルビィ「ー Awaken the Fire ー!!!!」ドガァン!!

 

 

穂乃果「うわっ、やっば!!」ビリビリ

 

 

空気が震える。先程のファイアトルネードとは比べ物にならないほどの高火力。穂乃果は確信していた。このシュートは今大会の中でも一番のシュートであると

 

 

穂乃果「ますます燃えてきたよ!」バッ

 

 

右手をかざし、「愛は太陽」の構えに入る。いくら高火力でも遠くから放ったのだ、威力も落ちるし、狙いを定める余裕もある

 

 

穂乃果「でも太陽には適わないよ!そのシュート、焼き払っちゃうからね!」

 

 

 

そう、余裕があった

 

 

 

ビュン!!!!!!!!!!

 

 

 

だからこそ警戒を怠った

 

 

 

穂乃果「な!!?」

 

ルビィ「そんなヘマはしませんよ」ゴゴゴゴゴゴ

 

穂乃果「(なんで、ルビィちゃんが目の前にーーー

 

ルビィ「うおらぁ!!!!」ドガァン!!

 

穂乃果「ぐあ!!??」

 

 

『ゴール!!!!黒澤ルビィ、新必殺技でゴールに押し込んだぁ!!音ノ木坂の選手も驚きを隠せず、ただ立ち尽くしているだけだぁぁ!!』

 

 

 

穂乃果は状況の理解ができず、ボールが入っても、その場から動くことが出来なかった

 

 

穂乃果「ははは…何したの?」

 

ルビィ「遠くから撃ったら威力が落ちるのは当たり前。なら、ボールに追いついて、そのまま押し込んじゃおう。そう思ったんです」

 

穂乃果「ボールに…追いつく???」

 

 

穂乃果は人間と会話しているのか分からなくなってきていた

 

 

穂乃果「後半は負けないからね」

 

ルビィ「?…まだ前半は終わっていませんよ?」

 

穂乃果「…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

観客席へと続く通路を一人の少女が歩いていた。進行方向に見える光、そこへ行けば響き渡る歓声の渦に飲み込まれることになるのだが、少女は歩くスピードを早めていた

 

 

ツバサ「前半、終わっちゃったのかしら」

 

 

少女は光の中へと消えていった

 

 

 

 

 

月「……めちゃくちゃだね」

 

あんじゅ「なんなの…あの子」

 

 

その頃、会場では前半が終了しようとしていた。月達はルビィの変貌に驚愕していた

 

 

ツバサ「前半終わった?」

 

英玲奈「来たかツバサ」

 

あんじゅ「見ての通りよ」

 

ツバサ「?」

 

 

急いできたため、電光掲示板を確認しなかったツバサ。すぐに点差を確認する

 

 

 

 

 

浦の星女学院 2-2 音ノ木坂学院

 

 

 

 

ツバサ「同点…あの音ノ木坂学院に?」

 

月「それだけでもすごいよね。でも、得点の内容が…正直、いかれてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ハァ…ハァ、ハァハァ……!!」

 

ルビィ「同点ですね」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

前半終了間際、ルビィが2点目を決め、そのまま前半終了。穂乃果達は何もすることができずに、ルビィの得点を2度も許してしまった

 

 

穂乃果「こんなこと……」

 

 

穂乃果は悔しさで、立ち上がることがなかなかできなかった

 

 

 

 

 

ー 浦の星ベンチ ー

 

 

 

ダイヤ「あれが、ルビィの究極の技…」

 

善子「このまま行けば勝てるんじゃないの?」

 

 

メンバーが話していると、2点決めたルビィが遅れて浦の星ベンチに戻ってきた

 

 

果南「ルビィ、お疲れ!」

 

花丸「すごいずら!まさか、あんな…」

 

ルビィ「……」

 

花丸「ルビィちゃん?」

 

鞠莉「ルビィ?(顔色が悪い…)」

 

 

 

 

 

ルビィ「」グラッ

 

 

鞠莉「まさか!!??」

 

 

ルビィ「」ドサッ

 

 

ルビィはそのまま地面に倒れ込んだ。メンバーは鞠莉に続いてルビィに駆け寄る

 

 

曜「ルビィちゃん!!?」

 

千歌「しっかりして!!」

 

ルビィ「ハァハァ…」ガクガク

 

ダイヤ「意識はあるようですね…」

 

 

幸い、意識はあるようで、流血もしていない。しかし、倒れたのは事実。鞠莉はルビィを睨みつけながら言う

 

 

鞠莉「ルビィ、あなた無茶したでしょ?」

 

ルビィ「…!」

 

ダイヤ「でしょうね」ハァ…

 

 

ダイヤがため息をつく。あんな強力な技、負荷が無いと言えるわけがない。ルビィはかなり無茶なことをしたのだろう

 

 

ルビィ「久しぶりに使ったから、加減が分からなくて…」ハァハァ

 

鞠莉「そんな危なっかしい技、ずっと使わないの!!!!」

 

ルビィ「ご、ごめんなさいぃ……」

 

ダイヤ「鞠莉さん、そのへんで…」

 

 

珍しく鞠莉が怒り、ダイヤが落ち着かせている。しかし、鞠莉が怒るのも当たり前である。もし、出場不可になれば浦の星は逆転が絶望的になっていた

 

 

梨子「ルビィちゃん、あの技は…」

 

 

全員気になっていたルビィの技。ルビィは起き上がれないため、ダイヤの膝枕の上で説明を始めた

 

 

ルビィ「あの技は"Awaken the power "。自分の力を何十倍にも引き上げる技…です」

 

 

ただでさえレベルが高いルビィの動きを、何十倍にも…確かに音ノ木坂の選手は手も足も出せていなかった…しかし、

 

 

ルビィ「弱点は一気に体力を持っていかれること…最近、ずっと走ってはいたんだけど…」

 

善子「だから夜走ってたのね…」

 

 

未だに起き上がれないルビィを心配するメンバー。鞠莉は後半行けるかルビィに問うと…

 

 

ルビィ「大丈夫、だよ…」フラフラ

 

ダイヤ「ルビィ!無理は…」

 

ルビィ「ピギィ!?」ヨロッ

 

ダイヤ「危ないですわ!」

 

 

転ぶ寸前にダイヤが受け止める。今のままでは後半出れたとしても…

 

 

鞠莉「Awaken the power の使用はやめておきなさい」

 

ルビィ「!」

 

鞠莉「いくら強力な技でも、自滅するなら使わない方がいいわ。ルビィはまだコントロールの感覚を取り戻せていない…」

 

ルビィ「そう、だよね」

 

千歌「でも、ルビィちゃんのおかげで!」

 

梨子「そうよ!試合を振り出しに戻した!」

 

果南「こっからが正念場だよ!みんな」

 

 

「「「はい!!!!!」」」

 

 

 

むつ「後半が始まるまでルビィちゃんは動かないでね」

 

ルビィ「うゆ……」

 

 

 

 

 

 

 

ー 音ノ木坂ベンチ ー

 

 

穂乃果「全く適わなかった…」

 

ことり「穂乃果ちゃん…」

 

 

ここまで絶対守護神であった穂乃果の2失点。それは、音ノ木坂のムードを一気に暗くした理由には十分すぎる内容であった

 

 

海未「試合は振り出し…ですか」

 

にこ「でも、このままじゃまずいわよね」

 

「「「…………」」」

 

 

音ノ木坂の周りを取り巻く悪い空気を生んだのは穂乃果である。しかし、その空気をはらうのもーーー

 

 

穂乃果「燃えてきたよ…」

 

 

ーー穂乃果である

 

 

穂乃果「あんなとんでもプレイをする選手、そしてルビィちゃんに引けを取らない選手達…もう考えるだけでも、最っ高だね!!」

 

海未「はぁ…あなたという人は…」

 

絵里「穂乃果らしいわね…」

 

 

 

 

美奈「……」

 

 

前半、恐ろしい程に静かだった美奈。穂乃果達を見て、いつもの口調でゆっくりと、話し始める

 

 

美奈「あれ、やってみない?」

 

凛「あれ?」

 

真姫「何よ…あれって…」

 

美奈「フォーメーション"音ノ木"」

 

 

「「「!!!!!!??」」」

 

 

花陽「このタイミングでですか!?」

 

希「このタイミングだからこそ…なんかもな」

 

穂乃果「……」

 

海未「穂乃果」

 

ことり「穂乃果ちゃん…」

 

穂乃果「やろう。私達は絶対に負けられない。この試合勝って、"音ノ木坂の奇跡"を蘇らせて…そして…」

 

穂乃果「みんなで、叶えるんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーー!!

後半を始める笛がなる。選手達はポジションにつくために、グラウンドに入る

 

 

善子「ルビィ、大丈夫なの?」

 

ルビィ「ごめんね?善子ちゃん、心配かけちゃって…大丈夫だよ」フラフラ

 

善子「ヨハネよ…(いやいや、フラフラじゃないの)」

 

 

しかし、ここで浦の星に更なる試練が待ち構えていた

 

 

ダイヤ「な、なんであなたが…」

 

果南「こんなことってあるの??」

 

 

ダイヤ達の目の前には、いるはずのない選手が、着るはずのないユニフォームで、フィールドに入場していた

 

 

海未「おや、言っていませんでしたか?」

 

ことり「ふふ♪」

 

穂乃果「……」

 

 

海未「私達の正規ポジションは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

海未「トリプルFWなんですよ」

 

 

 

 

後半開始3分前

 

浦の星女学院 2-2 音ノ木坂学院

 

 




さあ、後半は展開が大きく変わりそうですね!月ちゃんは何でも知ってるんですね…


愛は太陽
オリジナルの穂乃果の最強ゴール技です。手から太陽を作り出し、ボールを取り込んで、シュートのパワーを一気に焼き払うという、かなり無敵に近い技です。

Awaken the powe
ルビィちゃんが目指した究極の技です。自分の力を何倍にも引き上げて暴れ回ります。技の重ねがけもできます。(Awaken the powe状態でスプリントワープとか)弱点は体力を一気に消費してしまうことです。お気づきの方もいるかもしれません、そう、この技を簡単に言うとーー"界王拳"です

Awaken the Fire
Awaken the powe状態の時だけに放つことが出来る、ルビィちゃんのシュート技です。穂乃果ちゃん曰く、このシュートが今大会の現時点では最強シュートらしいです



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第2章 40話 「音ノ木坂戦 "奇跡と太陽"」

後書きにリクエストがありました、キャラの技構成を書きました。誰がどんな技を使っていたか、改めて確認してみてください!




 

 

 

千歌「穂乃果さんがFW!!?」

 

穂乃果「えへへ…驚いた?」

 

千歌「驚きましたよ…それに、ことりさんも…」

 

ことり「正規はFWで〜す♪」

 

善子「……」コソコソ

 

ことり「ヨハネちゃん♪♪」

 

善子「」ビクッ!

 

ことり「ポジション、近くなったね♪」

 

善子「そ、そうでございます…ね」

 

 

突然の音ノ木坂学院の大幅ポジションチェンジ。衝撃の展開続きで、驚いてばかりの浦の星女学院。ただ、今回は驚いているだけでは済まないようで

 

 

ダイヤ「穂乃果さんとことりさんが前線に…」

 

梨子「プレイスタイルが全く想像出来ない、ですね…それに、キーパーは…」

 

 

 

希「♪」

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院 フォーメーション"音ノ木"

 

 

センターフォワード 高坂穂乃果☆

ウィングフォワード 園田海未

ウィングフォワード 南ことり

トップ下 星空凛

ボランチ 矢澤にこ

センターバック 絢瀬絵里

右サイドバック 西木野真姫

左サイドバック 小泉花陽

キーパー 東條希

 

3-2-3

 

 

 

 

 

 

 

 

北也「…ついに動き出したか、美奈が」

 

 

 

美奈「このフォーメーションの方が、みんな生き生きとするのよね〜♪」

 

 

 

 

 

 

英玲奈「高坂穂乃果と南ことりがFW!?」

 

あんじゅ「キーパーがFWって…」

 

月「あ、そっか。知らないんだね、穂乃果ちゃんとことりちゃんの正規ポジションは元々FWなんだよ」

 

英玲奈「そうだったのか」

 

ツバサ「……」

 

あんじゅ「どうしたの?ツバサ」

 

ツバサ「黒澤ルビィ…さん、フラフラしてるけど…」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「(久しぶりだったから全くコントロールできなかった…)」ヨロヨロ

 

 

ルビィは立ち上がれるようにはなったものの、いつものようなプレイをするのは、まだ困難であった

 

 

ダイヤ「ルビィ、今は無理せずに。わたくし達を頼ってくださいね」

 

ルビィ「うん…」

 

ダイヤ「今は体力を回復させることに集中なさい」

 

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!!!

 

『さあ、決勝戦、後半がスタートしました!!音ノ木坂学院、まさかの大幅ポジションチェンジ!いったい、どのようなプレイを見せてくれるのか!?』

 

 

 

ダイヤ「千歌さん!」パス

 

千歌「(ことりさんは危険だよね)」

 

 

千歌は周りを見渡す。前方にはFWの実力未知数の穂乃果とことり、そして武風神が立ちふさがっている。ここはパスを細かく回して、1対1を避けるべき。そう判断した

 

 

千歌「みんな!パスをたくさん繋いで!」パス

 

梨子「分かったわ!行くよ」

 

梨子「ー 神のタクト ー!」

 

 

梨子の指揮で、浦の星は攻撃を開始した

 

 

穂乃果「流石にいい連携だね」

 

海未「はい。スキがありませんね」

 

 

パスを回す浦の星、上手く穂乃果達を突破しながら、音ノ木坂の最終ラインまでボールを持ち込んだ

 

 

ダイヤ「絵里さんがセンターバック…」パス

 

曜「絵里さんは攻めるイメージしかないよ…」パス

 

 

絵里「あんまりディフェンスは好きじゃないんだけどね」

 

 

絢瀬絵里の異名は"パーフェクトクイーン"。FW、MF、DF、全てを完璧にこなすことからその名がつけられた

 

 

絵里「でも、最終ラインを任せられている以上」バッ!

 

ダイヤ、曜「!?」

 

 

絵里は手をダイヤ達の方へと構える

 

 

絵里「仕事はするわ」

 

ダイヤ「!?(いつの間にか、わたくし達の周りに…)」

 

曜「これは…雪!?」

 

 

季節外れの雪がダイヤ達の周りにだけ降っていた。原因は絵里に違いないのだが、いったいどんな技なのか…

 

 

絵里「ー スノーハレーション ー」

 

 

キラキラキラキラキラキラ!!!!

絵里の合図と同時に、雪が強い光を放ち始めた

 

 

ダイヤ「くっ…!」

 

曜「ま、眩しい!?」

 

 

ダイヤ達は目を開けることが出来なかった。眩い光に包まれること数秒、光が収まる頃には、既にボールは奪われていた

 

 

絵里「頼むわよ。花陽」

 

花陽「はい!このボールは必ず繋ぎます!」

 

ダイヤ「しまった…」

 

 

前半、なかなかボールに触ることができなかった花陽。足でまといにはなりたくない!!その一心でドリブルを続ける

 

 

ルビィ「行きます」バッ

 

梨子「ルビィちゃん、無理はしないでね!」

 

 

花陽「!(黒澤ルビィさん…)」

 

 

花陽は千歌達と同じく、今年の四月からサッカーを始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

花陽『凛ちゃん、サッカー部に入るの!?』

 

凛『うん!なんか頑張れそう!』

 

真姫『陸上部はいいの?歓迎されてたけど…』

 

凛『そうだけど…穂乃果先輩達のサッカーを見てると、凛の体がうずうずして…』

 

花陽『……いいと思うよ。凛ちゃん』

 

真姫『……』

 

 

 

 

 

 

真姫『ねえ、花陽はいいの?』

 

花陽『?何を…』

 

真姫『サッカー部、入らなくて』

 

花陽『花陽が!?無理無理…そんな…』

 

真姫『凛がサッカー部に入るって聞いた時、羨ましそうな顔をしてたけど』

 

花陽『……』

 

 

花陽は、小さい頃からサッカーが大好きで、毎日のようにテレビや本で、サッカー選手や必殺技を見ていました

 

小学生の頃は昼休みとかに、サッカーボールで遊んでたりはしてたけど…

 

 

花陽『やっぱり運動音痴で、全く出来なかったの』

 

真姫『…でも、』

 

 

『大好きだったら大丈夫!!』

 

花陽、真姫『!!』

 

穂乃果『花陽ちゃん、だよね?』

 

花陽『は、はい…』

 

穂乃果『サッカーが大好きって気持ちがあれば、不可能なんてない!!』

 

花陽『!!!!』

 

穂乃果『一緒にやらない?サッカー!』

 

 

 

 

 

 

 

花陽「(あれから、毎日たくさん練習をしました!)」

 

 

最初は何も出来なかった花陽。しかし、毎日少しずつ、積み重ねた努力が実を結び、花陽は必殺技を習得した。そして、

 

 

そこから花陽はある目標をもった

 

 

花陽「(手に入れた技は、私だけの武器!誰にも負けないぐらい、本気で極める!!)」

 

 

今までに、この技を何回使ったのかは覚えていない。回数を重ね、技を磨き、進化させ、そしてーーー

 

 

花陽「みんなと勝つんです!!!!」

 

ルビィ「!?」

 

花陽「ー 極 NO EXIT ORION ー!!」

 

 

出口の無いオリオンがルビィを閉じ込めた

 

 

真姫「やるじゃない!!」

 

凛「かよちん、ナイスにゃ!!」

 

花陽「穂乃果ちゃん!」パス

 

 

前線で待つ穂乃果にボールを託す。ボールを受け取った穂乃果は、花陽のプレーや仲間の雰囲気を見て、気持ちが高ぶっていた

 

 

穂乃果「花陽ちゃん、そしてみんな!やっぱりこのチームは最高だよ!」

 

海未「最強でもありますよ。穂乃果」

 

ことり「うん!最強で最高!」

 

穂乃果「このチームだから、ここまで来れたんだ」

 

 

 

鞠莉「!?」

 

花丸「穂乃果さん達が…」

 

 

浦の星選手達は穂乃果達の変化に気づく。徐々に輝き始める穂乃果達、まるで凛の「ジグザグストライク」のような光だが、一人一人で色が違う

 

 

鞠莉「穂乃果がオレンジ…海未が青、花陽が緑…いったい何が…」

 

 

まるで虹。色とりどりなその光は、眩しいだけではない。大きな力も感じた

 

 

穂乃果「行くよ!みんなで叶えよう!!」

 

海未「はい!!」

 

ことり「久しぶりに走っちゃいますよ〜」

 

 

音ノ木坂の選手が全員、走り始める

 

 

 

善子「えーー

 

曜「なにこーー

 

梨子「はやーー

 

 

それはまるで奇跡

 

 

ダイヤ「このまーー

 

鞠莉「くっ…(まさか、全員!?ーー

 

 

 

みんなの想いが導き、ひとつになる心

 

 

穂乃果「必殺タクティクス!!」

 

 

「「「ー KiRa-KiRa Sensation! ー!!」」」

 

 

音ノ木坂の選手が全員、超加速で総攻撃。浦の星のゴールへと、一瞬で近づいた

 

 

千歌「これって、海未さんの"START:DASH!!"!?」

 

海未「察しがいいのですね。この技は通称、"アルティメット・スタートダッシュ"。START:DASH!!の上位互換です」

 

 

浦の星の選手を抜き去った穂乃果達は、果南との1対1

 

 

穂乃果「…」

 

果南「穂乃果ちゃんのシュート…」

 

 

穂乃果はボールを蹴り上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「ねぇ、音ノ木坂サッカー部って、誰がエースストライカーか知ってる?」

 

 

 

 

音ノ木坂学院サッカー部には、最初、エースストライカー候補が5人いた

 

 

一人目。園田海未

 

二人目。南ことり

 

三人目。星空凛

 

四人目。絢瀬絵里

 

 

 

そして、五人目ーーー

 

 

穂乃果「行くよ。果南ちゃん」バッ!

 

果南「!!(オーバーヘッド!?)」

 

 

 

ーー高坂穂乃果

 

 

 

誰がエースストライカーか、口論になった末、エースストライカーをかけた、5人の勝負が行われた

 

 

 

穂乃果「でりゃ!!!!」ドガァン!

 

 

誰がエースストライカーになってもおかしくない。勝負を見守るメンバーはそう思っていた

 

 

 

しかしーーーー

 

 

 

穂乃果「うおぉぉぉぉ!!」ゴゴゴゴゴゴ

 

果南「え…(どこまでパワーをためるの…)」

 

花丸「なんずら!?」

 

鞠莉「地面が…揺れている…」

 

 

 

ーーー1人の選手が圧倒的なシュートで、エースストライカーの座を手に入れた

 

 

 

月「…それこそが」

 

 

 

 

 

穂乃果「ぉぉぉぉぉぉぉぉらあ!!!!」ドガァン!!

 

 

穂乃果「ー ブレイブショット ー!!!!」

 

 

巨大なオーラを纏ったボールが、強風、そして大地を揺らし、ゴールに迫る

 

 

果南「やるしかないよ…」バッ!

 

 

英玲奈「なんだあのシュートは!?」

 

「あれが、高坂穂乃果…」

 

 

海竜が唸りを上げながら、ボールに突進する

 

 

果南「止めてやる!!!!」

 

果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!」ドガァン!

 

 

むつ「果南さんが刺した!!」

 

北也「……っ…」

 

 

美奈「ふふっ♪残念だけど、穂乃果ちゃんのシュートは…」

 

 

果南「(無理だ…この威力…)」

 

 

美奈「天下無双なの♪」

 

 

『決まったあぁぁぁ!!高坂穂乃果、再びリードとなる3点目、超強力なシュートで浦の星女学院から勝ち取ったぁ!!!!』

 

 

にこ「流石、穂乃果!」

 

絵里「やったわね!」

 

穂乃果「うん!絶対に勝とう!!」

 

 

千歌「…凄い……」

 

ルビィ「あれが、穂乃果さんの必殺シュート…」

 

 

穂乃果の存在が、果てしなく大きく見えた

 

 

 

 

浦の星女学院 2-3 音ノ木坂学院

 

 




スノーハレーション
絵里ちのオリジナルのディフェンス技です。敵の周りに眩しく光る雪を仕掛けます。普通にドリブル技でも使えそう…

NO EXIT ORION
オリジナル技です。花陽ちゃんが努力の末、習得したドリブル技になっています。相手選手をオリオン座の中に閉じ込め、突破します。オリオン座って確か、中心に四角形??のような箱型になってたはず……そこに閉じ込めます

KiRa-KiRa Sensation!
音ノ木坂学院の必殺タクティクスです。通称"アルティメット・スタートダッシュ"その名の通り、全員でSTART:DASH!!のように超加速します。その時、メンバーそれぞれがイメージカラーの色に光ります。(ちなみに本文では穂乃果の色をオレンジと書きましたが、公式では山吹色だったはず…)

ブレイブショット
ヒデナカタのシュート技です。多分、一人技ならトップクラスだと思います。原作を見ても、すごくかっこいいです



ー 技構成ー
現時点までに分かっているメンバーの必殺技をまとめました。後に総集編をもう一度出そうと思います(シ→シュート、ド→ドリブル、ブ→ブロック、キ→キャッチ)


高海千歌
・Zスラッシュ(ド)、エボリューション(シ)

チカ
・ブラックアッシュ(シ)

渡辺曜
・パルクールアタック(シ)、ライトニングアクセル(ド)、エクストリームラビット(シ)、スプリントワープ(ド)、ゴットウインド(シ)

桜内梨子
・フォルテシモ(シ)、アインザッツ(デ)、神のタクト

黒澤ダイヤ
・ファイヤトルネード(シ)、ダイヤモンドストリーム(シ)、ラ・フラム(ブ)、紅蓮(シ)、ファイヤトルネードDD(シ)

松浦果南
・トライデント(キ)、海皇の三叉撃(キ)、海竜の逆鱗槍(キ)

小原鞠莉
・グラウンドスイーパー(ブ)、ディザスターブレイク(シ)、シャイニーフェザー(ド)

津島善子
・デスドロップ(シ)、デビルボール(ド)、デビルバースト(シ)、コワレヤスキ(シ)

国木田花丸
・もちもち黄粉餅(ブ)、ゴートゥヘブン(ブ)、もちもちグローブ

黒澤ルビィ
・イグナイトスティール(ブ)、スプリントワープ(ド)、ファイヤトルネード(シ)、ファイヤトルネードDD(シ)、Awaken the power 、Awaken the Fire(シ)


音ノ木坂学院などの選手は次回の後書きで



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第2章 41話 「音ノ木坂戦 "走る浦の星"」

お知らせです。急で本当に申し訳ないのですが、必殺技の募集を打ち切ることにしました。理由は、みんなが見れるコメント欄やTwitterや質問箱で技募集をすると、ネタバレになるのでは?という意見を複数頂いて、自分も確かにその通りだな。と思ったからです。(感想欄だと運営から削除されます)もう一つ理由があって、登場キャラの必殺技が全て決定したのもあります。必殺技を考えてくれた方には大変申し訳ないと思っています


しかし、流石に勝手すぎるので、ハーメルンの個別メッセージや、Twitterのダイレクトメールでは必殺技のご意見を拝見しようと思います。というのも、おまけ編などを考えているので、その時に採用できたらいいな。と思っています。原則、個別メッセージかダイレクトメールだけでお願いします。




 

 

 

 

北也「ここが正念場だ」

 

ダイヤ、梨子「……」

 

 

北也が浦の星の司令塔二人を呼び出していた。なかなか厳しい状況、美奈に対抗して、北也もメンバーに指示を出していた

 

 

北也「今の流れは完全に音ノ木坂学院だ…下手すれば、このまま押し切られるぞ」

 

ダイヤ「分かっています…しかし…」

 

梨子「今の流れを変えるには、どうすれば…」

 

 

千歌はゾーンをまだ発動出来ておらず、ルビィの究極の技は体力切れのため、使用不可。流れを変えるためのアクションは浦の星には残っていないーー

 

 

北也「ーーだからこそ、お前を呼んだんだ。梨子」

 

梨子「わ、私?」

 

北也「梨子。今から作戦を伝えるが、これはお前が…」

 

 

北也「どれほど仲間を信じられるかにかかっている」

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーー!!!!

試合再開。何としてでも追いつきたい浦の星女学院。しかし、DFの層が暑く、簡単には突破はできない

 

 

善子「どうするのよ!!パスを回しているだけじゃ突破は出来ないわよ!」

 

曜「でも、1対1は尚更…」

 

 

"KiRa-KiRa Sensation!"を発動してから、音ノ木坂の動きがさらに良くなった。隙を見せればすぐに取られてしまいそうだ

 

 

梨子「みんな、聞いて!」

 

千歌「梨子ちゃん?」

 

 

梨子が浦の星の選手に呼びかける

 

 

梨子「これから、少しきつくなるかもしれないけど…私を信じて、走ってほしい…」

 

鞠莉「何をいまさらデース!」

 

善子「こちとら毎日走らされたのよ!死ぬまで全力で走ってやるわよ!」

 

 

浦の星女学院はまだ諦めてなどいない。勝つ方法があるならば、例えきつくても、最後まで足掻いてやる。そんな気持ちだった

 

 

梨子「ありがとう…みんな……行きます!!!」

 

 

梨子はいつものように、指揮する構えに入った

 

 

真姫「また神のタクト??」

 

絵里「無駄よ。どんなにパスが繋がっても、私達は抜けないわ」

 

 

梨子「曜ちゃん!」ビッ!

 

 

梨子が指揮で曜を導く。だが、いつものとは何かが違う

 

 

曜「よし!」パス

 

梨子「花丸ちゃん!」ビッ!

 

花丸「ずら!」バッ!

 

 

海未「…なんですか、この違和感は…」

 

 

梨子「これなら…どう!?」ビッ!

 

善子「おりゃあぁぁ!」バッ!

 

 

海未「!?」

 

 

違う…先程までとは圧倒的にーーー

 

 

海未「指揮のスピードが違う!?」

 

 

 

仲間を信じ、進化した神のタクト

 

 

 

梨子「ー 神のタクトFI(ファイヤイリュージョン)ー !!!!」

 

 

 

 

 

 

梨子『スピードが足りない?』

 

北也『あぁ。確かに神のタクトはパスが繋がるし、突破口を作れる。だが、ここまでレベルが高いチーム相手だと…』

 

ダイヤ『神のタクトに対応してしまう』

 

北也『そうだ』

 

梨子『……私の、力不足…ですよね』

 

北也『そうじゃない。梨子はメンバーのレベルを考えて指揮してるだろ?』

 

梨子『…はい』

 

北也『それを変えるんだ』

 

梨子『??』

 

北也『音ノ木坂に対抗できるレベルの指揮を出して、メンバーにはその指揮に付いてきてもらうんだ』

 

ダイヤ『なるほど』

 

梨子『…でも、』

 

北也『大丈夫。あいつらなら、必ず食らいついてくる』

 

 

 

 

梨子「(みんな、頑張って!!)」

 

 

凛「!?浦の星の動き、凄く良くなってるよ!」

 

真姫「指揮も、展開が早くてついて行くのが…」

 

絵里「っ!!まさか、ここで進化させてくるなんて…」

 

 

パス、ドリブルのスピードが一気に上がった浦の星。音ノ木坂の選手がディフェンスに入る前にパス。コースを塞ぐ前に突破。対応に遅れた隙をつき、走って走ってーー

 

 

曜「ー スプリントワープ ー!! 善子ちゃん!」パス!

 

絵里「な!?」

 

善子「ナイスよ!曜!!」

 

 

穂乃果「全員抜かれた!?」

 

 

『抜けたあぁぁ!!浦の星、音ノ木坂のディフェンスを巧みに、全力で突破し、ゴールの目の前まで来ました!!!!』

 

 

美奈「やるわね…浦の星」

 

ヒデコ「津島善子さんのシュートって…」

 

フミコ「コワレヤスキだよね!?」

 

 

 

希「キーパーは久しぶりやなぁ…」

 

 

構える音ノ木坂のもう一人のキーパー、東條希。対するは聖堂山戦でハットトリックを叩き出した堕天使、津島善子。ここで、同点にしてやると闘志を燃やしていた

 

 

善子「行くわよ!リトルデーモン達!!」

 

梨子「いや、リトルデーモンじゃないから!?」

 

鞠莉「ヨハネ!ぶちかましちゃって!!」

 

 

善子が渾身のかかと落としで放つーー

 

 

善子、梨子、鞠莉「ー コワレヤスキ ー!!」ドガァン!

 

 

壊れ物のシュートが、地面をえぐり、音ノ木坂ゴールに迫る

 

 

希「うわ!凄い威力…」

 

善子「さあ、これで同点よ!」

 

 

しかし妙だ…希は変に落ち着いている

 

 

希「でも、ウチには無意味なんよ」

 

梨子「何あれ!?」

 

鞠莉「扉…?」

 

 

すると、希の前に大きな扉が現れーーー

 

 

希「ウチには力は無意味…残念だけど」

 

 

ーーーコワレヤスキは扉の中へと吸い込まれ、扉は閉ざされた

 

 

梨子「え?どうなったの…ボールは?」

 

 

扉の中に消えたボール。すると、次の瞬間ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガアァァァァァァン!!!!!!

 

 

 

善子、梨子、鞠莉「!!!!??」

 

善子「は?なんで…」

 

 

ゴールに向かって飛んでいったはずのボールがーーー

 

 

希「♪」

 

 

鞠莉「上から…落ちてくるのよ……」

 

 

希「ー ユメノトビラ ー」

 

 

『止めたぁぁ!!東條希、津島善子の強力なシュート、コワレヤスキを新必殺技であっさりと止めてしまったあぁ!!』

 

 

希「さあ!みんな頑張ってや」パス!

 

 

絵里にボールを渡し、再び攻撃を始める音ノ木坂。浦の星は希の技を見て、驚きを隠せずにいた

 

 

千歌「何…今の技…」

 

ダイヤ「扉が現れたと思ったら、ボールを吸い込んで消え、今度は…」

 

ダイヤ「希さんの上空に同じ扉がありました」

 

善子「扉が2つあるってこと!?」

 

 

音ノ木坂ゴール前から急いで戻ってきた善子達。2つ目の扉の存在を知らされた梨子達は、あの技の仕組みを考えた

 

 

梨子「まさか…ワームホール??」

 

千歌「反則すぎない!?それ!?」

 

ルビィ「どんなに強力なシュートも、全て飲み込んで、無力化しちゃう…ってこと?」

 

鞠莉「どうするのよ…」

 

善子「……(垂直に落ちてきたわよね…)」

 

 

ユメノトビラの攻略を考えたいところではあるが、今はディフェンスに集中する時。ボールを繋ぐ音ノ木坂

 

 

真姫「ー Cutie Panther ー!」

 

ルビィ「っ!!」

 

真姫「(やっぱり、あの技は使えないのね)」

 

 

音ノ木坂の選手達はルビィが"Awaken the power"を使わない事に不信感をもっていた。そして、徐々に気づき始めた。ルビィは使わないのではない。使えないのだと

 

 

海未「あれだけの高威力です。バテない方がおかしい…」パス

 

ことり「…」

 

 

海未からボールをもらったことりは、ゴールを見る。まだ少し距離はあるが、狙えなくはない

 

 

ことり「!!」キラキラ

 

 

ダイヤ「ワンダーゾーンを発動した!?」

 

鞠莉「…??」

 

 

ことりはワンダーゾーンを発動し、ボールを自分の目の高さのところまで蹴り上げた

 

 

ことり「ことりのシュートは凄いんですよ!」バシュ!

 

 

そう言うと、ことりはボールを蹴った

 

 

果南「ただのキック?」

 

花丸「あれじゃ…ゴールまで届かないんじゃ…」

 

 

 

 

 

しかし、何人かには聞こえた

 

 

 

 

 

月「!!!?」

 

ツバサ「…何今の」

 

ルビィ「あれ、ヤバい…」

 

 

ことりが一瞬でボールを

 

 

千歌「…聞こえた…これってーーー

 

 

何千発も蹴り込んだ音を

 

 

 

ことり「ー ワンダフルラッシュ ー」キュィィィィィィィィィーーー

 

 

千歌「果南ちゃぁん!!!!!!!!」

 

果南「千歌!?ーーーー

 

 

 

 

 

 

ドガアァァァァァン!!!!!!

 

 

 

浦の星「「「!!!!??」」」

 

北也「うお!!?」

 

 

ことりはただボールを蹴ったはず。しかし、放たれたボールは一瞬でオーラをため…

 

 

レーザービームの如く、高威力シュートに変化。ゴールに迫っていた

 

 

 

果南「嘘でしょ!?全く準備できてーー

 

 

 

ドガアン!!!!!!!!!!

 

 

 

果南「!!!!」

 

ことり「っ!!?」

 

千歌「ダイヤさん、鞠莉さん!!!!」

 

 

 

 

鞠莉「ー グラウンドスイーパー ー!!」

ダイヤ「ー ラ・フラム ー!!」

 

 

一瞬の出来事だった。鞠莉とダイヤがシュートコースに飛び込み、ブロック技を使い、シュートブロックを行ったのである。しかし、

 

 

曜「破られた…しかも威力が!!」

 

梨子「弱まって…ない!?」

 

 

威力はそのまま、シュートブロックを突破したボールはゴールへ。だが、ダイヤ達の狙いは他にあった

 

 

ダイヤ「あとは頼みましたよ!果南さん!!」

 

鞠莉「あなたなら分かるはずよ!私達の狙いが!!」

 

果南「…狙い?」

 

 

果南は近づいてくるボールをよく見る。するとあることに気づいた

 

 

果南「そういう事ね!!」バッ!

 

 

千歌「果南ちゃんが飛び出した!?」

 

曜「海竜の逆鱗槍じゃない!?」

 

 

果南は勢いよくボールに向かって走り出す。浦の星のメンバーなら分かる。これは海竜の逆鱗槍ではない。しかし、何回も見たことがある動きだった

 

 

果南「一か八かだよ!うおぉぉぉぉ!!」

 

果南「ー 真トライデント ー!!」ドガァン!

 

 

ことり「え!?」

 

穂乃果「なんでこのタイミングで…」

 

 

果南は敢えてトライデントを使っていた。しかも、いつものトライデントとは少し違う

 

 

花丸「ボールを叩きつけないで…掴んだまま…」

 

 

 

 

 

果南「おりゃ!!」バキッ

 

 

 

 

花丸「え?」

 

ことり「え?」

 

凛「え?」

 

海未「はい?」

 

千歌「受け流した???」

 

 

 

「「「えぇぇぇ!!!!!!??」」」

 

 

善子「ちょっと果南!?何諦めてんのよ!?」

 

 

善子が果南に怒鳴った その時だったーーー

 

 

果南「諦める?違うよ。大成功だよ」

 

 

善子「なにーーガンッッッッ!!!!!!

 

 

善子「!?」

 

「「「!!!!??」」」

 

 

 

月「あ、なるほどね…」

 

英玲奈「すごいな。最初から狙っていたのだな」

 

 

 

ボールはゴールには入らずーーーー

 

 

 

 

 

ーーーークロスバーに激突した

 

 

 

 

 

『惜しい!!南ことりのシュートは、ゴールのクロスバーに直撃、ボールは弾かれ、4点目とはなりませんでした!!!!』

 

 

海未「まさか、狙ってやったのですか…」

 

凛「まさかぁ…まぐれじゃ…」

 

 

ダイヤ「そのまさかですわよ」ダッ!

 

鞠莉「プレイはまだ続いてるわよ?」ダッ!

 

 

海未、凛「!!?」

 

 

 

状況の理解に遅れた音ノ木坂とは違って、浦の星は既に速攻を仕掛けていた。海未達はすぐに追いかけるも、時すでに遅し

 

 

にこ「やられた…!!!!」

 

真姫「ちょっと!!もうボールがFWに渡ってるわよ!?」

 

 

善子「このヨハネに任せなさい!!」

 

 

 

 

北也「さっきの一連の流れは、3年達の連携プレイだな」

 

むつ「どういうことですか??」

 

北也「最初から、果南達はワンダフルラッシュを止めようなんて考えていなかったんだ」

 

むつ「じゃあ、最初からクロスバーに当てるつもりで…」

 

北也「あぁ。3人のそれぞれの技で、ボールの軌道をずらしていたんだ」

 

よしみ「全く分からなかった…」

 

北也「…次の問題はあれだな。"ユメノトビラ"」

 

 

 

 

 

 

善子「威力は関係ない…か」

 

 

善子はドリブルをしながら考える。威力が通じない技…なら、どう攻略する???

 

 

希「また善子ちゃんかな??」

 

善子「ヨハネよ!!」

 

善子「(私も、一か八か…掛け!!)」バッ!

 

希「!」

 

 

善子は飛ぶ。ボールを回転させ、かかとで一回転。善子の始まりのシュートであった

 

 

梨子「ちょっと!それ、"デスドロップ"!?」

 

鞠莉「防がれるわよ!善子!!」

 

善子「ヨハネよ!!いい?見てなさい!堕天使が、今からユメノトビラを無効化して見せる!!」

 

 

そう言うと善子はシュートをはなった

 

 

善子「ー デスドロップ G3 ー!! スペシャルバージョン!!」

 

 

曜「スペシャルバージョン!?」

 

千歌「いや、前と同じじゃないの!?」

 

 

何がスペシャルバージョンなのか、分からないが、希がユメノトビラを出現させ、デスドロップを吸い込んだ

 

 

ルビィ「吸い込まれちゃった…」

 

梨子「ちょっと…せっかくのチャンスを」

 

善子「…黙って見てなさい」

 

 

希の上空に扉が出現。そして扉が開かれて、ボールが勢いよくーー

 

 

ドガアァァァァン!!

 

 

ーー落ちてきた

 

 

 

希「残念♪」

 

ダイヤ「止められましたわね…」

 

鞠莉「ユメノトビラ…いったいどうすれ………ん??」

 

 

希「???」

 

 

善子「まだ、ボールは死んでいないわ」

 

 

 

 

 

 

 

ギュンギュンギュンギュン!!!!!!

 

 

希「これは!?(バックスピン!?まずい!!)」

 

 

善子「行け!!!!」ユビサシ

 

 

善子が指示した瞬間、ボールがゴールに向かって飛んでいく

 

 

希「やられた…」

 

 

 

『ゴール!!!!なんということでしょうか!!?津島善子、バックスピンを利用し、ボールをゴールへと押し込んだぁぁ!!!!こんな発想ができるとは…津島善子、恐るべしです!!』

 

 

 

梨子「うっそぉ……」

 

鞠莉「アンビリーバボー……」

 

善子「フッ…このヨハネに破れないものなんてないのよ」

 

 

北也「はっはっはっ!!!!さっすが善子!!」

 

善子「ヨハネよ!!」

 

北也「お前、最高かよ」グータッチ

 

善子「当たり前でしょ」グータッチ

 

 

 

 

浦の星女学院 3-3 音ノ木坂学院

 

 

 




神のタクトFI(ファイヤイリュージョン)
神童拓人の神のタクトの進化技です。このお話では、神のタクトよりも指揮のスピードが速く、キレが増したという設定にしています。指揮者のより繊細なコントロール。そして、ほかのメンバーの対応力が必要になります

ユメノトビラ
オリジナル技です。言うまでもなく、原作のチート技、ワームホールです

ワンダフルラッシュ
オリジナル技です。ことりちゃんがエースストライカー候補になったのは、このシュート技があったからです。ワンダーゾーンを展開し、自身の自強化をして、一瞬でボールに連続蹴り(自強化)を叩き込んで超強力なシュートを放ちます。浦の星は全く気づいていなかったので、初見殺し、不意打ちにはもってこいの技ですね


ー 技構成 ー

高坂穂乃果
・ゴットハンドV(キ)、愛は太陽(キ)、ブレイブショット(シ)

園田海未
・ラブアローシュート(シ)、START:DASH!!(ド)、雷光の矢(シ)

南ことり
・ワンダーゾーン、ワンダフルラッシュ(シ)

星空凛
・イナビカリ・ダッシュ(ド)、ジグザグストライク(シ)、タイガードライブ(シ)、雷光の矢(シ)

西木野真姫
・Cutie Panther(ド)

小泉花陽
・NO EXIT ORION(ド)

矢澤にこ
・アクロバットキープ(ド)

東條希
・バニシングカット(ブ)、ユメノトビラ(キ)

絢瀬絵里
・ホワイトハリケーン(シ)、スノーハレーション(ブ)


その他の選手は次回で



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第2章 42話 「音ノ木坂戦 "音ノ木坂の奇跡"」

今回はまるまる過去編です。音ノ木坂サッカー部のことが少し分かるかもしれません。

そして報告です。この42話を書くのにあたって、第1章のおまけ編(千歌ちゃんと穂村のお話)の内容を少しだけ変更しました。設定に大きく影響は出ないとは思いますが、ご了承ください




 

 

 

 

音ノ木坂の奇跡って知ってる??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高1穂乃果「…何それ??」

 

中2雪穂「知らないの?友達から、音ノ木坂学院に伝わる、サッカー部のお話って聞いてるんだけど……」

 

穂乃果「聞いたことないなぁ…」

 

雪穂「えぇ…有名だと思って気になってたんだけどなぁ…」

 

穂乃果「音ノ木坂の奇跡…か」

 

 

 

きっかけは……そう。この雪穂との会話からでした

 

 

 

 

ー 翌日 音ノ木坂学院 サッカー部部室 ー

 

 

穂乃果「お疲れ様でーす!!」ガチャ

 

にこ「はーい。お疲れー」

 

 

私こと、高坂穂乃果は高校1年!サッカー、頑張ってます!…とは言っても、音ノ木坂学院サッカー部は総勢……

 

 

にこ「今日も河川敷よ。6人しかいないからね」

 

 

入学してから試合はしてないんだよね…

 

 

 

穂乃果『にこちゃん!おっはよー!!』

 

にこ『穂乃果!!無事に入学できたようね…!』

 

穂乃果『無事にってどういう意味??』

 

にこ『ご、ごほん。気にしなくていいわ』

 

穂乃果『そんなことより、早速部活の練習、参加させてよ!』

 

にこ『……』

 

穂乃果『にこちゃん?』

 

にこ『あ、あの〜…その事なんだけどね?』

 

穂乃果『?』

 

にこ『今ねサッカー部、部員、3人なの』

 

穂乃果『……』

 

 

穂乃果『3人ーーーー!!!!??』

 

 

 

 

穂乃果「(最初聞いた時はびっくりしたなぁ…)」

 

穂乃果「ねえ、にこちゃん」

 

にこ「なに?穂乃果」

 

穂乃果「にこちゃん、知ってる?"音ノ木坂の奇跡"」

 

にこ「……あ〜、あれね」

 

穂乃果「知ってるの!?」

 

にこ「知らないわ」

 

穂乃果「」ガクッ

 

 

いや〜、にこちゃんなら知ってると思ってたんだけどなぁ……

 

 

にこ「約30年前ぐらいの音ノ木坂学院サッカー部が関係している…って事ぐらいしか知らないわ」

 

穂乃果「約30年前…」

 

 

ガチャ!

 

 

海未「お疲れ様です」

 

ことり「お疲れ様です♪」

 

穂乃果「あ!海未ちゃん、ことりちゃん!」

 

 

絵里「あら?私達が最後?」

 

希「ごめんな〜、ちょっと用事があって」

 

にこ「大丈夫よ。これで全員ね」

 

 

6人、揃ったことだし、もう一度聞いてみよっか

 

 

穂乃果「ねぇ、海未ちゃん」

 

海未「はい?」

 

穂乃果「"音ノ木坂の奇跡"って知ってる?」

 

海未「あぁ、あの」

 

穂乃果「知ってるの!?」

 

海未「知りません」

 

穂乃果「」ガクッ

 

 

いや〜、デジャブだね……

 

 

絵里「私達も分からないわ」

 

希「にこっち以上のことは知らんなぁ…」

 

にこ「やっぱり、みんな名前は知ってるけど詳しくは知らないようね…」

 

 

…名前さえ知らなかった穂乃果って……

 

 

海未「しかし、なんでまた…」

 

穂乃果「雪穂に聞かれて、気になって……ほら、一応、サッカー部の先輩達の事だし」

 

希「確かに気になるなぁ」

 

絵里「奇跡って言うんだから凄いことなのよね」

 

「「うーーん……」」

 

 

調べる方法も思いつかないし(ネットでは見つかんなかった)…30年前だからなぁ…

 

 

ことり「新聞部通信…」

 

穂乃果「新聞部、通信?」

 

ことり「ほら、新聞部が毎月発行している通信新聞。図書室に行けば、30年前の記事も保存されてると思う…」

 

絵里「!!すごいことなら、校内新聞に載らないはずはない!」

 

ことり「うん!」

 

にこ「決まりね」

 

 

という事で、急遽予定を変更して、図書室で記事探しが始まりました

 

 

 

ー 図書室 ー

 

 

海未「どうですか?ことり」

 

ことり「これが、30年前とその前後の年の新聞部通信だって」ドサッ!

 

絵里「ケホッ…ケホッ…すごいホコリね」

 

にこ「まぁ、30年も触ってなかったんだし…」

 

穂乃果「よーし!早速探そーう!!」

 

 

という事で、ホコリと格闘しながら新聞をペラペラと…でも、なかなか見つからなくて

 

 

穂乃果「ホントにあるの??」

 

海未「昔の弓道部は強かったのですね…」

 

ことり「海未ちゃん…見るとこズレてるよ…」

 

絵里「かなり探したけど…無いわね」

 

にこ「迷信だったんじゃない?」

 

 

6人全員が諦めかけた時でした

 

 

穂乃果「よいしょっと…見終わった新聞、戻してくるね」

 

海未「よろしくお願いします」

 

 

 

穂乃果「よっこいしょ…っと」

 

 

図書室の倉庫。新聞は、年でひとつにまとめられてて、積み上げるように保存されていました

 

 

穂乃果「これで全部かな」ドスッ!

 

 

グラグラ…

 

 

穂乃果「へ?」

 

 

いや〜、嫌な予感

 

 

ドサドサドサドサ!!!!!!

 

 

穂乃果「うわぁぁあ!!!!???」

 

 

もう、ホント。最悪だよ…新聞の山が倒れてきて…穂乃果はホコリまみれ……

 

 

穂乃果「ゲホッ…ゲホッ……!!!!」

 

 

でも、そのおかげ??で見つかったんだ

 

 

穂乃果「音ノ木坂学院、サッカー部の奇跡……」

 

 

海未「穂乃果!?何か凄い音がしましたが!?」

 

にこ「うわ…何よこれ…ぐちゃぐちゃじゃない…」

 

 

海未ちゃん達が心配して来てくれたけど、今はそれどころじゃない!!

 

 

穂乃果「あった!あったよ!!音ノ木坂の奇跡の新聞!!」

 

海未、にこ「!!!!」

 

 

 

 

 

 

その後、新聞を片付けて、6人でその新聞を読みました

 

 

穂乃果「"音ノ木坂学院、サッカー部の奇跡"」

 

 

 

 

今年、結成されたサッカー部が、全国高校女子サッカー大会本戦に初出場。それだけでも快挙なのだが、それが運の尽きか…本戦、1試合目で連続優勝の記録を持つ、"皇帝学園"と当たってしまった。しかし、激闘の末、なんと音ノ木坂学院が皇帝学園に勝利し、駒を進めたのである

 

 

 

にこ「は……すご」

 

希「多分、部ができて半年ぐらいしか経ってない…」

 

穂乃果「…しかし、」

 

 

 

しかし、2回戦目、音ノ木坂学院サッカー部が会場に姿を現すことは無かった

 

 

海未「!?なぜです…!!」

 

ことり「棄権…」

 

穂乃果「続き、読むね」

 

 

 

理由はメンバーの負傷。皇帝学園戦で、決勝点を決めたエースストライカーが全治不明の怪我を負った。音ノ木坂学院サッカー部は総勢9人しかおらず、惜しまれながらも棄権を余儀なくされた

 

 

 

にこ「……」

 

海未「……」

 

 

 

しかし、音ノ木坂学院サッカー部は真の優勝校として、その名を広げた。人々は言った。"音ノ木坂の奇跡"とーー

 

 

穂乃果「…おしまい」

 

ことり「……」

 

海未「……」

 

絵里「……」

 

希「……」

 

にこ「……」

 

 

そっか。これが、音ノ木坂の奇跡、だったんだね

 

 

海未「…!穂乃果?」

 

穂乃果「…決めた」

 

絵里「決めたって…何を?」

 

穂乃果「…甦らせよう…音ノ木坂の奇跡を」

 

ことり「甦らす!?」

 

にこ「本気、なの?」

 

穂乃果「本気だよ。だって、絶対に悔しかったと思うよ。この先輩達」

 

海未「確かに…そうですね」

 

穂乃果「なら、私達がさ、甦らせようよ!そして叶えようよ!先輩達が目指した頂点を、私達が目指す頂点を!!」

 

海未「穂乃果…」

 

 

穂乃果「絶対に…叶えよう…みんなの…さ」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

…のか……か………穂乃果!!

 

 

穂乃果「うわわ!?海未ちゃん!?」

 

海未「どうしたのですか?穂乃果、ぼーっとして…」

 

穂乃果「ううん。何でもない」

 

海未「なら集中してください。同点です。点を取り返しますよ」

 

穂乃果「うん……海未ちゃん」

 

海未「はい?」

 

穂乃果「……絶対に、勝とうね」

 

海未「……」

 

海未「勝ちましょう。穂乃果」

 

 

試合再開の笛が吹かれた

 

 

 




ー 技構成 ー

鹿角理亞
・ドロップアウト(ド)、ウルフレジェンド(シ)、ホワイトダブルインパクト(シ)

鹿角聖良
・スノーエンジェル(ブ)、ホワイトダブルインパクト(シ)

綺羅ツバサ
・流星ブレード(シ)、ゴットノウズ(シ)

優木あんじゅ
・ジャッジメントレイ(ブ)

統堂英玲奈
・エンペラーフィールド

渡辺月
・ザ・エクスプロージョン(シ)、ウルトラムーン(ド)


次回からはリクエストを頂きました、キャラの利き足を書いていきます



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第2章 43話 「音ノ木坂戦 "太陽との出会い"」

美奈さんと穂乃果ちゃんの出会いを書きました。音ノ木坂の奇跡のことも、少し分かるかも…?





 

 

 

美奈「新しい技を、作戦を出しても、すぐに対抗されちゃうのね…」

 

 

音ノ木坂学院サッカー部監督、高海美奈は日本代表監督からのクセで、コートラインギリギリのところで立ちながら試合を見守っていた

 

 

美奈「まさか、ここまで強くなるなんてね…でも、」

 

美奈「穂乃果ちゃん達は、絶対に勝たせたいの…」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

―――――――――

―――

 

 

 

私が穂乃果ちゃん達と初めて会ったのは…穂乃果ちゃん達が中学二年生の時だった

 

 

私はその頃、日本代表監督のお仕事が忙しくて…でも偶然、中学生のサッカーの試合を観る機会があってーーーー

 

 

ピピーーーー!!!!

 

 

美奈「(…あの子達、すごいわね)」

 

 

ーーそこで、穂乃果ちゃん達と出会った

 

 

 

 

中2海未「穂乃果!」パス!

 

中2穂乃果「いくよ…」

 

 

穂乃果「ー ブレイブショット ー!!!!」ドガァン!

 

 

ピピーー!!

 

 

中3にこ「ナイスよ穂乃果!!」

 

中2ことり「絶好調だね♪」

 

穂乃果「まだまだ…同点か…」

 

 

 

あの頃から穂乃果ちゃんは才能の塊だった。海未ちゃんも、ことりちゃんも、にこちゃんも、レベルは高いけど、穂乃果ちゃんは…異次元??

 

 

穂乃果「あっちのエースストライカー、強すぎ」ハァハァ

 

 

でも、相手のチームも強くて…まぁ、当たり前よね

 

 

月「いや、穂乃果ちゃんヤバすぎ」

 

月「まぁ…僕達が勝つけどね」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

その後、試合は月ちゃん達の学校が勝って、両チームの選手、関係者がグラウンドから出ていった。でも穂乃果ちゃんだけは残っていて、一人でボールを蹴っていた

 

 

穂乃果「ハァ…ハァ…くそっ!!」

 

穂乃果「(負けた……穂乃果のせいだ…)」

 

 

美奈「……」

 

 

私はあの時、なんですぐに帰らなかったのだろうか。彼女を見てるとほっとけない。そんな気がして、体がその場から動かなかった

 

 

美奈「ねえ、」

 

穂乃果「?」

 

美奈「試合見てたわ。上手なのね、サッカー」

 

穂乃果「……」

 

美奈「なんで負けたか分かる?」

 

穂乃果「…私の…せいです」

 

美奈「あなたの?一番走ってたじゃない」

 

穂乃果「…私はサッカーの才能があると言われました。人よりもできる。ずば抜けている。仲間を勝利に導く力があるって」

 

美奈「……」

 

穂乃果「だからこそ、です。今日の試合だって、私はもっと頑張れた」

 

美奈「!!」

 

穂乃果「私が…私が!!もっと、頑張らないと!!」

 

美奈「(まさか、この子…)」

 

 

どこか私に似てるな…って思ってたら、それ以上のとんでもない存在だった。だってーー

 

 

美奈「(闇を…持ってるの!!?)」

 

穂乃果「ハァ…ハァ…」

 

 

早急に何とかしようと思ったわ。闇のチカラで、もう二度と後悔する子が出て欲しくない…その一心だった

 

 

美奈「…ねぇ、よかったら」

 

穂乃果「?」

 

美奈「少しだけプレー、見てあげるわよ?」

 

穂乃果「…え」

 

美奈「これでも、私は日本代表監督よ♪」

 

穂乃果「…あ……」

 

穂乃果「ええぇぇぇ!!!!??」

 

 

 

 

 

 

その後、落ち着いた穂乃果ちゃんのプレースタイルや必殺技を、一通り見せてもらったわ。その結果…

 

 

美奈「(危ない状態ね…)」

 

穂乃果「ハァハァ…くっ…」

 

 

プレーのひとつひとつに闇のチカラの侵食が見えた。かなり危ない。すぐに解決策を見つけようとしたけど…

 

 

案外すぐに見つかったわ

 

 

 

美奈「ねえ、あなた…」

 

 

 

美奈「キーパー、やってみない?」

 

穂乃果「キーパー??」

 

 

 

理由は色々あったわ。一つ目は、キーパーは技を使う回数が少ないっていうこと。直接的に闇のチカラの使用回数を減らそうとしたの。二つ目は、穂乃果ちゃんがキーパーのセンスも抜群だったから。穂乃果ちゃんは、キーパーとしても充分、トップレベルだと確信していたわ

 

 

美奈「キーパーはね、強い必殺技を持っているだけじゃ務まらないの」

 

美奈「フィールドを見渡して、随時、仲間に指示、励まし、盛り上げる。仲間を導こうとするあなたには最適なポジションだと思うわ」

 

穂乃果「みんなを、導く…」

 

美奈「あとは、あなたが決めてちょうだい。いつかまた会えたら…その時は」

 

 

 

 

 

穂乃果「…キーパーか」

 

 

 

 

 

 

 

美奈「あの子、似てたわね…きぃちゃんに…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 3年後 ー

 

 

私はその頃、日本代表監督の仕事も落ち着いて、のんびりとサッカー関連の仕事をしていたわ

 

 

 

美奈「うーん…随分と暇になっちゃったわね」

 

美奈「内浦に戻ろうかしーードン!!

 

「あっ、すいません!!」

 

 

誰かとぶつかっちゃったみたい…ぼーっとしていた私が悪いのに、偉い子ね…

 

 

穂乃果「……あれ?」

 

美奈「……!!」

 

穂乃果「あなたは!!」

 

美奈「あの時の!!」

 

 

3年ぶりの再会、だったわ

 

 

穂乃果「お、お久しぶりです!」

 

美奈「こちらこそ!背が伸びたわね…」

 

穂乃果「あっはは…」

 

 

この時間から見て…部活帰り、かしら…道具から見ると…

 

 

美奈「サッカー、続けてるのね」

 

穂乃果「はい!おかげさまで…」

 

美奈「ポジションは?」

 

穂乃果「キーパーです!!」

 

 

とても嬉しかったわ。こうしてサッカーをやっている少女と再開して、無事を確認出来たことが

 

 

美奈「そう、あれから頑張ったのね」

 

穂乃果「かなり…頑張りました」

 

 

…3年経ったから、今は高校2年生ね。高校はどこへーーー

 

 

穂乃果「私、音ノ木坂学院でサッカーをやってるんです!」

 

美奈「っ!!!!!」

 

 

音ノ木坂学院……忘れるわけが、ないわ。確かにその制服、音ノ木坂学院ね。私は急に変な汗が出てきたわ

 

 

穂乃果「部員は9人でギリギリですが、毎日頑張ってて……そうだ!!!!」バッ!

 

美奈「!?」

 

 

少女が私に近づいて、こう言ったんです

 

 

穂乃果「私達の指導、監督をしてくれませんか!?」

 

美奈「え!!?」

 

穂乃果「急なことで、失礼だとは思いますが、お願いします!!美奈さんのような指導者が私達には必要なんです!!」

 

美奈「……」

 

 

どうして…何が、そこまであなたを熱く…

 

 

美奈「私が必要な理由を詳しく聞いてもいいかしら」

 

穂乃果「私達は今年の4月からチームを結成しました。実力はあるものの、戦術、知識、経験が全く足りません」

 

美奈「……(やっぱり似てる)」

 

穂乃果「それに、目標があるんです」

 

美奈「目標?」

 

 

 

穂乃果「"音ノ木坂の奇跡"を甦らせる」

 

 

美奈「」

 

 

 

一瞬で目の前が真っ白になりました。ドキッとして、胸も苦しくなって、立っているのが辛かった……そして、今でも蘇る…あの記憶がーー

 

 

 

 

 

 

『みっちゃん!無理しないで!!』

 

『止めないできぃちゃん!私は…絶対にやめない!!』

 

『やめるものかあぁぁぁ!!!!』

 

『だめえぇぇぇ!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

美奈「ハァハァ…」

 

穂乃果「…美奈さん?」

 

美奈「!?…うん、大丈夫よ。続けて」

 

穂乃果「私達は先輩達が行けなかった場所へ、目指した場所へ行きたい…」

 

穂乃果「叶えたいんです!!先輩達の、私達の夢を…!!」

 

美奈「…本気、なのね」

 

穂乃果「はい」

 

 

あの時も、こんな感じでサッカー部に誘われたっけ…

 

 

美奈「時間を頂戴。大丈夫。いい答えを返すわ」

 

穂乃果「!!!!じゃあ!」

 

美奈「よろしくね。これから。改めて、私は高海美奈。あなたの名前は?」

 

穂乃果「はい!私の名前はーー」

 

 

私はね。思ったの。運命って絶対にあるんだと

 

 

 

 

 

穂乃果「高坂穂乃果です!」

 

 

美奈「高坂……」

 

 

だって、こんな偶然、ないでしょ???

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

―――――――

 

 

 

 

それから私は穂乃果ちゃん達に、教えられることは全て教えた。まるで、仲間への償いみたいにね……

 

 

 

海未「穂乃果!!」パス!

 

穂乃果「よし…いくよ!!」

 

 

 

彼女たちならやってくれる…そう思った。私達が叶えられなかった夢を、彼女たちなら叶えてくれる。そう思った

 

 

 

美奈「ナイスよ!穂乃果ちゃん!!」

 

 

だから私は、今日もグラウンドに立っている。例え、サッカーが出来ない体になったとしても、立つ。私を導いてくれる彼女たちがいる限りーーーー

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 穂むら ー

 

 

海未ママ「…接戦ですね」

 

穂乃果ママ「そうね」

 

 

ガララ!!

 

穂乃果ママ「いらっしゃ……珍しいわね。あなたがここに来るなんて」

 

 

理事長「会場まで行かなくていいの?」

 

海未ママ「人のこと言えますか…理事長でしょ…」

 

理事長「私もね、遠くから見ている方がいいと思って」

 

穂乃果ママ「みんな考えることは同じってことよ。はい、ほむまん」

 

理事長「あら…わざわざ」

 

穂乃果ママ「いいのよ。こういう時ぐらい」

 

海未ママ「…しかし、最初は驚きました」

 

穂乃果ママ「…みっちゃん?」

 

理事長「ことりや穂乃果ちゃんが、監督に美奈ちゃんを連れてきた時は驚いたわ」

 

穂乃果ママ「…運命ってやつなのかしら…」

 

理事長「……」

 

海未ママ「……」

 

穂乃果ママ「まぁ、とりあえず言えることは」

 

 

 

穂乃果ママ「穂乃果達なら、やってくれるわ。私達の分も」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ふぅ…このままじゃ勝てないな…」

 

海未「穂乃果?」

 

穂乃果「…海未ちゃん、"あれ"、使うね」

 

海未「!!!!!!」

 

ことり「…大丈夫なの?」

 

穂乃果「大丈夫。危なかったらすぐにやめる」

 

 

そう言うと、穂乃果はドリブルをやめ、目を閉じる

 

 

ダイヤ「目を閉じていっーーゾクッッッッ!!

 

梨子「穂乃果さん…何をーーゾクッッッッ!!

 

 

千歌「ーーゾクッッッッ!!!!

 

千歌「…この感じ…まさか…」

 

 

浦の星のメンバー、特に千歌には覚えがあった。この背筋が凍るようなオーラ、呼び覚ましてはいけない。負のエネルギーを持つーーー

 

 

 

ホノカ「……負けナイから」

 

 

 

穂乃果、闇のチカラ解禁

 

 

 

 

 

 




リクエスト頂きました。キャラの利き足です


千歌 右足
梨子 右足
曜 右足
鞠莉 右足
ダイヤ 左足
果南 右足
善子 左足
花丸 右足
ルビィ 両足

穂乃果 両足
ことり 右足
海未 左足
花陽 右足
凛 両足
真姫 右足
にこ 両足
希 右足
絵里 左足



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第2章 44話 「音ノ木坂戦 "役立たずの身体"」

区切りよくしたら、短めになりました。

音ノ木坂戦も終了に近づいてきました。勝つのはどっちなのか…




 

 

 

 

 

いつからだったか…自分が危険なチカラを持っていることに気づいたのは

 

 

 

 

 

 

ホノカ「……」

 

千歌「穂乃果さん…ですよね?」

 

ホノカ「うん。穂乃果だよ。大丈夫」

 

 

チカと同じく、目は底なし沼のようにどす黒い。背筋を凍らせるオーラ。間違いない、穂乃果は闇のチカラを発動している

 

 

千歌「(穂乃果さんの意識はある…やっぱり、チカラをコントロールして…?)」

 

 

そしていつからだろうか…このチカラをーーーー

 

 

 

ホノカ「ーー!」グワン!!

 

千歌「!?」

 

 

ーー自分のものにしてやろうと考え始めたのは

 

 

千歌「(速い!?でも、ついていけなくはーー」バッ

 

ホノカ「ー!」

 

 

海未「チカラを発動した穂乃果について行く気ですか!?」

 

にこ「…無理よ」

 

 

先程までとは動きが全く違う穂乃果。まるで、ゾーン状態の理亞と戦っているようであった

 

 

ホノカ「止める気??」

 

千歌「(速い…遅い…読める…読めない…動きの変化が速すぎる…)」

 

ホノカ「無理だよ。諦めて」ビュン!!

 

千歌「あっ!!!?」

 

 

穂乃果は動きの強弱で千歌を翻弄。ついていけなくなった千歌を、一瞬で抜き去った

 

 

 

聖良「千歌さんが抜かれた!!」

 

理亞「何やってんのよ…!早く止めなさいよ…」

 

 

 

北也「穂乃果を止めろ!!!今決められたら、逆転は出来ないぞ!!」

 

よしみ「お願い…みんな!!」

 

むつ「絶対に決めさせないで!!!!」

 

 

ベンチにも今の穂乃果の危険度はひしひしと伝わってきていた。このまま穂乃果に連続得点を許せば…浦の星は…

 

 

鞠莉「全員で穂乃果を止めるのよ!!これ以上は絶対に…!!」

 

 

そう。全員で止めにかかれば、さすがの穂乃果でも突破は難しい。だが、

 

 

ホノカ「それは、一人で攻めた時の話」パス

 

 

鞠莉「!?(バックパス!)」

 

梨子「(自分で来ないの??)」

 

 

ホノカ「自分勝手なプレーは、穂乃果はしないよ」

 

凛「行っくにゃーー!!」バリバリ!

 

 

ダイヤ「ここで、凛さん…厄介ですわね」

 

 

穂乃果はどんなに自分のチカラが高まろうと、プレーが人より優れてようとも、自分だけの1人プレーはしないと誓っていた

 

 

ホノカ「みんなで叶える…だよ」

 

 

凛の高速ドリブルと闇のチカラを発動した穂乃果を中心にパスを回す音ノ木坂。次々と浦の星の選手を突破していく中、この進撃に終止符を打つために、"紅き流星"が迎え撃つ

 

 

ホノカ「本気の勝負といこうよ。ルビィちゃん」

 

ルビィ「っ……」

 

 

穂乃果とルビィの1対1。両チームのエースの勝負ということもあり、両者に大きな注目が寄せられていた

 

 

ホノカ「あれ?確か、スタミナ切れなんだっけーーーー グワン!!!!

 

ルビィ「(速い…右から仕掛けたと思わせての…)」

 

 

 

ルビィ「左!!!!」バッ!

 

 

穂乃果の裏をかき、ボールカットを仕掛けたルビィ。しかし、

 

 

ホノカ「残念」

 

ルビィ「!!?(なんでその体制で…)」スカッ!!

 

 

ホノカ「正解は後ろでした」バッ!!

 

 

前のめりに飛び出したはずなのに、穂乃果は一瞬で後ろへ引き、ルビィと距離を置いていた。そのため…

 

 

ルビィ「(バランスが…!?)」グラッ

 

ホノカ「穂乃果の勝ち」

 

 

気づくと穂乃果は、視線のすぐ横にいたーーーー

 

 

ルビィ「(立てない…足が)」ガクッ

 

 

ダイヤ「ルビィ!!」

 

善子「無理よルビィ!あんた、まだ全然本調子じゃないでしょ!?」

 

ルビィ「っ…!(悔しい悔しい悔しい)」

 

 

悔しがるルビィ、しかし、穂乃果達は待ってはくれない。ゴールには確実に近づいている。穂乃果や海未なら、既に射程範囲内であろう…この距離、

 

 

ホノカ「さあ、これで穂乃果達の勝ちだよ!」グッ!

 

果南「!!…またあれが来るの…」

 

 

穂乃果は足に力を込める。仲間の期待を背負い、今、渾身の蹴りを放つために、宙へと飛ぼうとしていた

 

 

鞠莉「やばい…!!」

 

千歌「だめ!間に合わない!!」

 

 

穂乃果を止めようと全力で走る千歌達、しかし、ルビィは立ち上がれない

 

 

ルビィ「足が…動かない…よぉ…」ガクガク

 

 

ルビィは悶える。今から飛び出せば間に合う。穂乃果のシュートを止められる。でも、そう考えていても…体が、脚が、いうことをきかない……こんな時に限って、役立たずな…

 

 

ルビィ「嫌だ…終わりたくない…」

 

 

穂乃果の足に、オーラが溜まっていく…

 

 

ルビィ「もう…だめ、なのかな…」

 

 

 

 

 

そう諦めかけた

 

 

 

もう、終わりーー「ルビィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」

 

 

 

 

ルビィ「!!!?」

 

浦の星「!!!!!??」

 

 

月「あれは……」

 

「……」

 

 

 

 

 

聖良「!!?……り、理亞?」

 

 

理亞「いい加減にしなさいよ…」ハァハァ

 

 

ルビィ「理亞ちゃん…?」

 

 

鋭く睨む、というレベルではなかった。あの怒り具合は、近くにいれば殴りかかられるほどのものであろう…

 

 

理亞「あんた、今諦めた?」

 

ルビィ「そ、それは…」

 

理亞「諦めたかって聞いてんのよ!!!?」

 

ルビィ「っ…!!」

 

 

再び怒鳴る理亞。大歓声鳴り響いているはずの会場…なのに、理亞の声しか聞こえなかった。まるで、自分と理亞しかこの場にいないようであった

 

 

理亞「私達に勝っといてなんてザマ!?あと一歩で勝てるのに、なんで立ち上がらないの!?」

 

ルビィ「くっ……」

 

ダイヤ「理亞さん…」

 

理亞「私達に勝ったんでしょ?今、同点なんでしょ?今決められたらまずいってことぐらい、あんたなら分かってるでしょ!!!!」

 

ルビィ「…うぅぅ…!!」ガクッ

 

 

理亞「頑張りなさいよ!!!!アンタが倒れるのは試合に勝ったあとよ!!今は立つの!!」

 

ルビィ「うぅぅぅ!!!!」グググ…

 

 

理亞「動けえぇぇぇぇ!!!!!!」

 

ルビィ「うおああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホノカ「ブレイブーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーショットオォォォ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ドオォン!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体は終わったあとに考える

 

 

 

 

 

 

 

ホノカ「!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

今だけは…この時だけは…役立たずでも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ーー!!」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

 

使い物になれ

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ー Awaken the power ー」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 




理亞ちゃん、鬼だけどそのおかげで穂乃果ちゃんを止められる希望が生まれましたね

次回は…ついに千歌ちゃんが!!!?




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第2章 45話 「音ノ木坂戦 "化け物達"」

空中にいつまでいるの……??いやいやそれが、超次元サッカーです!

今週のオリオンは作者が大好きなアフロディさんが活躍してくれました…(歓喜)、ヘブンズタイム…また見れる日が来るとは、思いませんでした!相変わらずチート技でしたね。(種明かしされた時は少し驚きましたが…)ですが、地雷原はあかんでしょ笑




 

 

 

月「いやいやダメだよルビィちゃん…これ以上その技使っちゃうと……」

 

月「二度とサッカー出来なくなるよ…」

 

英玲奈「今の彼女に二度となんて考えはないのだろうな。今だけのために、この瞬間のためだけに、戦っている」

 

月「そうなると、強いよ。ただでさえヤバいのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「っっっっ!!!!」ゴゴゴゴゴゴ

 

ホノカ「(本当にさっきまでバテてたの!?このパワー…)」グググ…

 

 

穂乃果のブレイブショットはオーバーヘッド。ルビィが穂乃果のシュートを止めたのは、穂乃果がボールを蹴り放とうとした瞬間。要するに…

 

 

果南「空中…しかも逆さまで競り合ってる…」

 

鞠莉「あのシュートを抑えるって…ルビィ」

 

 

下手に抑えに行けば、ルビィは穂乃果のシュートと一緒にゴールに押し込まれてしまう。しかし、ルビィはーーー

 

 

ルビィ「うあああぁぁ!!!!」ゴゴゴゴゴゴ

 

ホノカ「(やばっ!?パワー上がってる!!)」

 

 

海未「体を捨てる覚悟ですか…化け物はどこまで行っても…化け物ですね」

 

 

ルビィ「うあああぁぁ!!!!」ゴゴゴゴゴゴ

ホノカ「うおぉぉぉぉ!!!!」グググ

 

 

徐々に押され始めた穂乃果。例え、今シュートを撃ったとしても、ここまで押された体制からでは、威力は半減…いや、ゴールの枠から出るかもしれない

 

 

 

 

 

 

なら

 

 

 

 

 

 

ホノカ「こんのおぉぉぉぉぉ!!!!!!」バッ

 

ルビィ「!!!!??(左足!?)」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

右足で撃てないなら、今までサボっていた左足を使うまで。穂乃果は空中で、左足にオーラを込め始めた

 

 

梨子「空中で逆足で撃ち直す!?」

 

善子「めちゃくちゃすぎよ!!!」

 

 

ルビィ「っ…(そっちがその気なら…)」ゴゴゴゴゴゴ

 

ルビィ「勝負!!!!!!」バッ

 

 

花陽「ルビィさんも左足を!!?」

 

真姫「あの二人、どんな体してんのよ!!?」

 

 

ルビィは右足で穂乃果のブレイブショットを抑えていた。穂乃果は左足で再び撃ってくる…なら、自分も逆足で、全力でぶつかってやる

 

 

曜「私も理亞ちゃんと似たようなぶつかり合いをした…けど、」

 

曜「今回は規模も次元も違う」

 

 

両選手の全力の一撃。果たしてどちらが制するのか。選手が、会場が、全国が、二人に注目していた

 

 

 

ホノカ「ブレイブーーーーーー

ルビィ「Awaken theーーーーーー

 

 

 

右足の勝負はルビィ優勢の引き分けであった。第2ラウンドは左足の勝負。今、ゴングの衝撃音がーー

 

 

 

 

ホノカ「ショットオォォォォォォ!!!!」

ルビィ「ファイアアァァァァァァ!!!!」

 

ドガアァァァァァン!!!!!!

 

 

 

ーー衝撃波とともにスタジアム全体に響いた

 

 

 

 

ダイヤ「ルビィ!!負けてはなりませんよ!!」

 

善子「根性見せなさい!!リトルデーモン!」

 

理亞「負けたら承知しないから!!!」

 

 

ルビィ「っっっっ!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

ヒデコ「穂乃果!気合い!!!!」

 

フミコ「押し切れえぇ!!!!」

 

ミカ「お願い…穂乃果ちゃん!!」

 

 

ホノカ「くっっっっっ!!!!」グググ…

 

 

 

第2ラウンド。両者とも譲らない幕開けであった。しかし、

 

 

ルビィ「(行ける)」グググ!

 

ホノカ「(ぐっ…いや何!?どっからそんな力が…)」グググ…

 

 

ことり「穂乃果ちゃんが…また押されてる!?」

 

絵里「ルビィはもう動けないんじゃないの…?」

 

 

再び、徐々に押し始めたルビィ。穂乃果は耐えるも、勝負がつくのは時間の問題であった

 

 

ホノカ「(負けるわけには行かない…)」グググ…

 

ホノカ「(危険だけど…やるしかない!!)」

グググ…

 

 

ルビィは押されていた穂乃果の変化に気づいた。そしてもうひとつ、戦況に変化がーーーー

 

 

ルビィ「(うそ!?)」グググ…

 

 

 

善子「は?ここに来て…」

 

理亞「穂乃果さんが押し始めた…」

 

 

月「まさか、穂乃果ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

ホノカ「まだマダあぁァぁぁ!!!!」グググ!!

 

 

穂乃果は闇のチカラを強くすることにより、パワーを上げていたのである。1歩間違えれば自身の身も心も闇に支配されてしまうのだが…

 

 

海未「穂乃果!!それ以上はやめなさい!!」

 

ことり「戻れなくなっちゃう!!」

 

 

ホノカ「たしガに…ゴレ以上は…」グググ!

 

ルビィ「っっっ!!(もう、限界…!!)」グググ!

 

 

穂乃果の制御切れが先か、ルビィの体力切れが先か…誰もがそう考えていた

 

 

 

ドオォン!!!!!!!!

 

 

 

ホノカ「うわ!!!?」

 

ルビィ「ピギィ!!!?」

 

 

激しい衝撃とともに吹き飛ぶルビィと穂乃果。まるで二人の間で本物の爆弾が爆発したような…両者とも地面に叩きつけられれば無事では済まない

 

 

 

海未「穂乃果!!!!」バッ!

凛「穂乃果ちゃん!!!!」バッ!

 

穂乃果「ぐっ!!?」

 

 

吹き飛んだ穂乃果の元へ、海未と凛が飛び込み、身を挺して穂乃果を助ける

 

 

 

花丸「きな粉餅クッションずら!」

 

ルビィ「うわ!?」

 

果南「ルビィ!!!!」ダキッ!

 

 

一方、ルビィは花丸のきな粉餅のクッションで守られながら果南に受け止められた

 

 

 

穂乃果「ボールは!?」

 

ルビィ「どこ!?」

 

 

果たしてボールはどこへ…二人の衝撃に挟まれたボールは天高く…そして、

 

 

 

穂乃果「!?…私達の、上に…」

 

 

かなりの距離を飛んだ穂乃果。なのにボールは穂乃果の真上にある。それ即ちーー

 

 

ルビィ「力勝負は…ルビィの勝ち…」ガクガク

 

花丸「ルビィちゃんの方が僅かに押し切ったから、ボールが音ノ木坂側に飛んでいったんだね…」

 

 

穂乃果「っ…強いなぁ…」

 

海未「穂乃果…」

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「何、ぼーっとしてるの!!!?」

 

音ノ木坂「!!!!」

 

浦の星「!!!!」

 

 

鞠莉は「シャイニーフェザー」で飛び、上空のボールをダイヤへ渡す。そして、全選手を我に返すほどの大きな声で叫んだ

 

 

鞠莉「速攻おおぉ!!!!!!!」

 

 

ダイヤ、善子、曜、千歌、梨子「はい!!!!!!」

 

 

 

にこ「あんた達、早く戻ってきなさい!!」

 

 

海未「穂乃果、無理はしないでください!」バッ

 

凛「少し休むにゃ!」バッ

 

 

穂乃果を置いて、浦の星を追いかけ始めた海未と凛。そして音ノ木坂メンバー

 

 

穂乃果「ははは…面目ないや…でもね、」

 

 

穂乃果は立ち上がる。かなり体力を消費したが、一人だけ休んでいるわけにはいかない

 

 

穂乃果「負けないよ…最高で最強のチームだもん!誰一人欠けない…それが音ノ木坂学院」バッ

 

いつ何時でもみんなを照らし、希望を、勇気を与える。それが太陽。穂乃果は走って海未達に続いた

 

 

 

 

 

果南「ルビィちゃん、大丈夫?」

 

花丸「ルビィちゃん…」

 

ルビィ「ハァハァ…ごめんね、また無理しちゃった…」

 

果南「でも、失点を防げて、今はチャンス。助かったよ。ルビィちゃん」

 

花丸「そうずらよ?立てる?」

 

ルビィ「う、うん……」ガクガク

 

果南「(だいぶガタが来てるね…)」

 

 

果南「頼んだよ。千歌、みんな」

 

 

 

 

 

 

梨子「ー 神のタクトFI ー!!!!」

 

 

絵里「くっ…厄介ね…」

 

真姫「ちょっと!海未達はまだ!?」

 

 

浦の星の武器、速攻。進化した梨子の指揮は、パスを通し、ドリブルを成功させ、そしてーー

 

 

『再び津島善子にボールが渡ったあぁぁ!!浦の星、逆転の一撃となるでしょうか!?』

 

 

ダイヤ「頼みましたわよ!善子さん」

 

善子「ヨハネ!!絶対に逆転してやるんだから!」

 

 

いつもよりもボールを深くえぐり、回転を強化。ユメノトビラを破ったシュートを、解き放つ

 

 

善子「ー デスドロップ G3 ー スペシャルバージョン!!」ドォン!

 

曜「よし!決まった!!」

 

 

回転がかかったシュートは希へと迫る。これが決まれば浦の星は劇的逆転…しかし、

 

 

希「うーん…同じ技かぁ…」

 

 

善子「!?(手を叩いて…何する気?)」

 

 

希は2回、手を叩いてまるで神頼みのような動きをする。すると…

 

 

希「お!きたきた」

 

 

無数の紙切れ?がどこからともなく集まってきていた

 

 

ダイヤ「なんですかあれは??」

 

梨子「ユメノトビラじゃない!?」

 

 

花丸「…あれは、まさか……」

 

 

 

 

 

 

希「ー シキガミラインズ ー♪」

 

 

バラバラバラバラバラバラ!!

無数のシキガミが一列に並び、シュートブロックに入る

 

 

善子「うそ!?威力が…」

 

希「普通のキャッチ技もあるんよ?ヨハネちゃん」

 

 

ここに来て決めきれなかった浦の星、試合は終わりに近づいてきている。千歌達は大きなチャンスを逃した事は事実。動揺を隠せないでいた

 

 

善子「ご、ごめん…みんな、決めきれなかった」

 

ダイヤ「あれは予想外です!今はディフェンス集中ですわ」

 

曜「でも、かなり強力なキャッチ技だったね…」

 

千歌「……」

 

 

すぐにディフェンスに戻るダイヤ達。しかし、千歌は足を止めて音ノ木坂ゴールの方へ向き直る

 

 

曜「千歌ちゃん…?」

 

ダイヤ「にこさん達が来ますわ…早く…」

 

千歌「…凄い」

 

曜「え?」

 

千歌「穂乃果さん達は凄いよ…今の私じゃ、絶対に適わない」

 

ダイヤ「千歌さん、何を…」

 

 

千歌は歩き始める。自分の守る場所へではない。今、目の前まで迫っている大きな存在へ…一歩ずつ、力強くーーーー

 

 

 

 

にこ「戻らなくていいわけ?」

 

千歌「…よくない…です。でも、今の私を超えるためには…」

 

 

千歌「戻っちゃダメだ!!って、そんな気がしたんです」

 

 

 

 

 

次回 千歌VSにこ

 

 

 

 




シキガミラインズ
本来、化身技ですが、どうしても希ちゃんに使って欲しかったので採用しました。タロットにしなかったのは敢えてです…シキガミも希ちゃんに合ってると思ったので

次回は千歌ちゃんとにこちゃんの1対1から始まります!敢えて、守らずに挑戦しに行った千歌ちゃん…はたして、勝負の行方は…



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第2章 46話 「音ノ木坂戦 "輝き"」

にこちゃんが操る、フリースタイルフットボールの技の数々…よくわからないという方がほとんどかもしれません。この機会に、技の動画などを見て、にこちゃんがどれぐらい凄いのか、また、少しでもフリースタイルフットボールやサッカーに興味を持ってもらえると嬉しいです







 

 

 

 

人にはそれぞれ才能がある

 

 

しかし、その才能を見つけたり、出会う事は容易ではない

 

 

自分の持つ才能に、一生気づけない者は数知れず…

 

 

運命に、現実に邪魔をされ、出会えなかった者も数知れず

 

 

そんな中、自分の才能に出会い、努力を続けた少女が一人ーーーー

 

 

 

 

 

にこ「こんなもの!?」バッ!

 

千歌「!!(動きが読めない…)」

 

 

にこはドリブルの"グラウンドムーブ"の高難易度技、"アンクルブレイカー"で千歌を翻弄、いとも簡単に抜き去った

 

 

千歌「(やっぱり、1対1はきついかな…)」

 

 

しかし、千歌はすぐに追いかける。何度も抜かされ、何度も翻弄されても、諦めることは無い

 

 

にこ「しつこいわね〜」ポンポン

 

 

にこには、ボールが奪われるという考えはなかった。絶対に抜ける。絶対に成功する。そんな圧倒的な自信が、自分の最高の力を引き出す

 

 

にこ「かかって来るなら早く来なさい……よっと!!」バババッ!!

 

千歌「うわわ…」

 

 

余裕があるにこは、人間技とは思えないようなテクニックを見せつける

 

 

 

 

 

いつき「な!?……4DEX!!!?」

 

北也「なんだありゃ…空中で…4回まわし??」

 

いつき「はい。通称"ケビン・アラウンド・ザ・ワールド"。フリースタイルフットボールの花形である、ボールを足で跨ぐ大技"エアームーブ"の最高難易度です……」

 

いつき「空中でボールを4回跨ぐという…本当に出来るのか議論の対象にもなったとんでもない技です…」

 

むつ「それを、さっき千歌の前で??」

 

いつき「うん…あれが、矢澤にこさん…」

 

 

 

 

リフティングを続けるにこ。それを距離を置き、見続ける千歌

 

 

にこ「私からボールを奪えるの??」ポンポン

 

千歌「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「無理ですね」

 

 

にこ「??」

 

千歌「私はにこさんには敵いません…レベルが違いすぎます」

 

にこ「じゃあ、あんたは今の自分を越えられないわね」

 

千歌「…越えられない…それは、力だけじゃないんです」

 

にこ「弱い自分を越えたいから、私に挑んだんじゃないの??」

 

千歌「それもあります。でも、もうひとつ、私には越えたいもの…見つけたいものがあるんです」

 

にこ「見つけたいもの?」

 

 

 

千歌「…"輝き"」

 

にこ「……」

 

千歌「私がサッカーを始めた理由は、普通で、何も無かった自分には、何が出来るのか…輝けるのか…それを見つけるためでした」

 

千歌「私達にしかない輝きってなんだろう…何が、輝きなんだろう…それを探しているうちに、ここまで来ました」

 

にこ「それで?その輝きとやらは見つかったの??」

 

千歌「まだです。でも、輝きを見つけられていない自分を超えるため、輝きを見つけるために、にこさんに勝負を挑んたんです」

 

にこ「ふーん…でもそれで…」

 

千歌「??」

 

にこ「輝きを見つけたところで、私達には勝てるの??」

 

千歌「……」

 

にこ「輝きが今の状況を変えるとは限らないわよ」

 

千歌「はい、そうですよね…でも!!」

 

 

にこ「!!!?」

 

 

千歌「私、気づきました!1人じゃ輝きは見つけられないって!!」

 

 

気づくと、にこの周りに曜と梨子が逃げ場を無くすかのように立ちはだかっていた

 

 

にこ「(いつの間に囲まれたの??)」

 

 

千歌「だからみんなで見つけようと思います!!!輝きを!!」バッ!!

 

曜「ヨーソロー!!」バッ!!

 

梨子「行きます!!」バッ!!

 

 

いっせいに飛び込む三人。いつものにこであれば、交わすことは簡単であるが、今回は不意に近い。自然と反応が遅れる

 

 

にこ「(くっ…油断した!!)」

 

 

千歌「行くよ!!曜ちゃん!梨子ちゃん!」

 

梨子、曜「うん!!!!」

 

 

『なんとぉ!?今まで一度もボールを奪われなかった矢澤にこが、ここに来て高海千歌らの連携ディフェンスにより、ついに、ボールを奪われました!!!!』

 

 

真姫「あのにこちゃんが!!!?」

 

穂乃果「うっそぉ……」

 

 

ボールを奪った千歌達は、薄くなったディフェンスを一気に抜ける。音ノ木坂は、メンバーを完全に信じきっていたことがアダとなった

 

 

絵里「希!!」

 

希「任せといて!」

 

 

希が構える。再び、浦の星に逆点のチャンスがやって来た

 

 

千歌「私、少しだけわかったかも、輝き」

 

曜「本当!?」

 

千歌「うん。勝つ事が、強いことが輝きじゃない。もっと、かけがえのないものなんじゃないかって」

 

梨子「抽象的ね…」

 

曜「でも、今はそれでいいんじゃないかな?」

 

梨子「そうね。今はーーーー」

 

 

千歌、梨子、曜「全力でぶつかる!!!!」

 

 

 

三人の想いが、ひとつになる

 

 

千歌、梨子、曜「ー エボリューションGX ー!!!!」ドガァン!

 

 

よしみ「うわ!?威力が上がってる!!」

 

むつ「いっけーーーー!!!!」

 

 

地面をえぐり、風を起こし、ゴールへ迫る三人のシュート。それは、どのシュートにも負けない、熱い、熱い力によるものであった

 

 

希「ー シキガミラインズ ー!!」

 

 

バラバラバラバラバラバラ!!!!

シキガミが列を作り、シュートの威力を落としにかかるも…

 

 

希「(威力が落ちない!?)」

 

 

千歌「これが、私達の力!!」

 

梨子、曜「想いの、力!!!!」

 

 

シキガミは全て散った…しかし、シュートは死ぬことはなくーー

 

 

希「あかん!!」

 

 

 

 

 

ーーゴールへと入っ

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「てないよ!!!!」ドガァン!

 

 

千歌、梨子、曜「!!!!??」

 

 

希「ほ、穂乃果ちゃん!?」

 

 

穂乃果は希の後ろへ回り込み、シュートをゴールラインギリギリで食い止めていた

 

 

海未「穂乃果!!無茶です!」

 

穂乃果「ぐぬぬぬぬ…やってみないと…分からない…よ」ググググググ

 

 

穂乃果はそう言うも、ジリジリとゴールの中へと押し込まれていた

 

 

千歌「行ける!!!!」

 

梨子「行ける!!!!」

 

曜「行ける!!!!」

 

 

「「「行ける!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

穂乃果「負けなあぁぁぁぁぁいぃ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガアァァァァァン!!!!!!

凄まじい音と共に、ゴールが揺れた。いや、会場全体が揺れた。千歌達のシュートは浦の星の全員の想いを乗せ、今、逆点の笛をーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「鳴らさ…ないの?」

 

梨子「ゴールに、決まったのよね?」

 

 

 

 

 

 

 

「何言ってるの?」

 

 

 

 

 

 

千歌「え…」

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ゴール、決まってないよ?」キラキラキラキラ

 

 

穂乃果は足で、ボールを抑えていた。いったい何が起きたのか…千歌達には分からなかったが、ひとつだけ分かることがある

 

 

海未「ふぅ…間に合うましたか…」キラキラキラキラ

 

ことり「ギリギリだったね…」キラキラキラキラ

 

凛「ちょっとにこちゃん!何奪われてるの?」キラキラキラキラ

 

にこ「うっさいわね!凛の方がたくさん奪われてるでしょ!!」キラキラキラキラ

 

 

 

 

千歌「あれは…必殺技、なの??」

 

 

 

 

穂乃果「うん。そうだよ。必殺タクティクス」

 

 

 

 

 

「ー 僕たちはひとつの光 ー」

 

 

それはまるで、輝きだった

 

 

 

 




僕たちはひとつの光
音ノ木坂学院の必殺タクティクスです。詳細は次回、説明しますが、音ノ木坂の究極のタクティクスになります


あれ?千歌ちゃんのゾーンは…??



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第2章 47話 「音ノ木坂戦 "やっと見つけた"」

このお話も残り数話となりました。展開は加速し、一気にクライマックスへ…果たして試合の行方は…




 

 

 

 

 

僕たちはひとつの光

 

 

 

 

 

美奈「一人の選手に、全員の力を集める必殺タクティクス…8人は力を集めるのに集中しなきゃいけないけど、最高で最強の力を得ることが出来る…」

 

 

美奈「これが、音ノ木坂学院よ。千歌」

 

 

 

 

 

 

『止めたぁぁぁ!!!!なんと!あの強力なシュートを高坂穂乃果、足で、そして、必殺タクティクスでねじ伏せました!!』

 

 

 

絵里「流石、穂乃果ね」キラキラキラキラ

 

真姫「まぁ、私達は動けないけどね」キラキラキラキラ

 

花陽「でもおかげで、逆点を阻止できました!」キラキラキラキラ

 

 

 

穂乃果「ありがとう…みんな」キラキラキラ…

 

 

穂乃果は「僕たちはひとつの光」を解除する。完全に決まったと思っていた浦の星。ここに来て、最強の輝きが立ち塞がったのである

 

 

曜「千歌ちゃん、戻ろう!」

 

梨子「攻撃が来るわ!」

 

千歌「う、うん…」

 

 

 

北也「ここに来て必殺タクティクスかぁ〜」

 

 

北也は頭を搔いた。何度攻めても防がれる。あと一点が遠い…試合時間も少なくなってきた。あとは千歌達の根気次第だった…

 

 

北也「あとは、あれか…奇跡」

 

いつき「奇跡…」

 

 

 

しかし、音ノ木坂の猛攻は止まない。一点が遠いのは、音ノ木坂も同じ。浦の星の成長・対応力は自分達以上の力があるとは認めるがーーーー

 

 

 

穂乃果「それでも負けない!!」

 

にこ「誰かが倒れそうなら、8人が支える」

 

花陽「8人が諦めそうな時は、1人が奮起させる」

 

穂乃果「それが!!」

 

 

「「「音ノ木坂学院サッカー部!!!!」」」

 

 

 

千歌は思った。穂乃果達は自分達の"輝き"を持っている…それが何なのかは、穂乃果達は知らないかもしれない…でも、あの人達を超えれば、確実に輝きに近づける。そう思ったのもつかの間ーーーー

 

 

「「「ー KiRa-KiRa Sensation! ー!!」」」

 

 

虹色の光が高速で攻め始めた

 

 

 

鞠莉「畳み掛けて来たわよ!?」

 

ダイヤ「死守です!!絶対にシュートを撃たせてはなりませんーーーー

 

 

ーーーー撃ちますよ。絶対に」ビュン!!

 

 

ダイヤ「(海未さん!?いつの間に!!?)」

 

 

既に音ノ木坂はゴール前まて迫っていた。「KiRa-KiRa Sensation!」前では、どれほど強いチームだとしても対応は不可能。言うならば、死を待つのみ

 

 

 

絵里「決めるわよ!」

 

海未、ことり「はい!!!!」

 

 

絵里、ことり、海未がボール目掛けて勢いよく駆け抜ける。次の瞬間ーー

 

 

ルビィ「炎!?」

 

花丸「3人技!!?」

 

 

炎を纏ったボールは天へと登り、巨大な羽を開く

 

 

絵里「さあ!羽ばたきなさい!!」

 

絵里、ことり、海未「フェニックス!!」

 

 

三人の声に呼応し、不死鳥が生まれる。音ノ木坂の伝統ある必殺技。「ザ・フェニックス」である

 

 

 

 

穂乃果ママ「ザ・フェニックス!?」

 

海未ママ「あの子達…受け継いでいたのですね」

 

理事長「…いえ、まだよ」

 

 

 

 

 

穂乃果「ぶっつけ本番、ってところかな?」

 

 

そういうと、穂乃果はフェニックスのもとへと飛んだ。これは「ザ・フェニックス」ではない。穂乃果達が進化させた、音ノ木坂学院の真の必殺である

 

 

穂乃果「いっくよーーーー!!!!」

 

 

 

「「「ー ファイナルトルネード ー!!!!」」」

 

 

 

果南「4人技!?」

 

梨子「なんて…威力、なの?」

 

 

スタジアムの天井を隠すほどの巨大な炎のシュート。ファイナル…確かに、最後のシュートにはふさわしい威力である

 

 

果南「不死鳥だとしても、捻り潰す!!」

 

 

果南も空へ飛び、海竜を呼び出す。渾身の一撃が、グラウンドに、ボールに、刻まれるーーーー

 

 

 

果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!!!」ドガァン!

 

 

千歌「果南ちゃん!!」

 

「「「果南(ちゃん、さん)!!!!」」」

 

 

果南「ぐっ!!(重すぎ…これが、4人技!?)」

 

 

果南の体が浮かび始める。これが決まれば音ノ木坂のリード。絶対に許してはいけないシュートであった

 

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

果南は悔やんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「っっっっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

自分の非力さに

 

 

 

 

 

 

『ゴール!!!!!!音ノ木坂、再び1点差でリードしましたぁぁ!!!!今大会初の4人技で、松浦果南の必殺技を撃ち破りました!!』

 

 

 

穂乃果「よっっっし!!!!」

 

海未、絵里「穂乃果!」

 

ことり「穂乃果ちゃん!」

 

 

4人は力強く、ハイタッチをした。試合はまだ終わっていないが、この技が、このメンバーで決められたことが、嬉しくて抑えきれなかった

 

 

にこ「あんた達、戻ってきなさい!!そして穂乃果!」

 

穂乃果「にこちゃん?」

 

 

にこが何かを手に持ちながら、穂乃果のもとへと走ってきた。そして、穂乃果に手渡したものは……

 

 

穂乃果「へ?グローブ…」

 

にこ「あんたは最後、キーパーよ」

 

海未「な、何故ですか!?今の流れで行けば!」

 

にこ「…見なさい。浦の星を」

 

穂乃果、海未「?」

 

 

穂乃果達は浦の星を見る。するとそこにはーーーー

 

 

 

 

 

 

 

曜「また、リードされちゃったね」

 

果南「ごめん…私、こんな大事な時に…」

 

鞠莉「何言ってんのよ果南!」

 

ダイヤ「そうですわ!元気をお出しなさい」

 

花丸「まだ試合は終わってないずら!」

 

善子「あと少しだけど、希望はあるわ」

 

ルビィ「最後まで…走れます!!」

 

梨子「ね?千歌ちゃん」

 

 

 

千歌「うん!!まだ負けてない!!勝てるよ!!私達なら!!」

 

 

 

 

 

穂乃果「ははは…まっっったく諦めてないね…」

 

海未「あの雰囲気…一筋縄ではいきませんよ」

 

 

千歌達の燃える気迫に自然と鳥肌が立つ穂乃果達…千歌達はラスト、全力で戦いにくるはず…ならばーー

 

 

穂乃果「ありがとう。にこちゃん」

 

 

穂乃果はグローブを受け取り、

 

 

穂乃果「全力で最後、ぶつかろう」ギュッ!

 

 

守護神として再び君臨した

 

 

 

 

 

『さあ!試合時間も僅かとなって来ました!!ここで音ノ木坂はキーパーを再び高坂穂乃果に戻すようです!!太陽の守護神が、音ノ木坂ゴールに帰ってきました!!』

 

 

 

北也「お前ら!!何か策はあるのか!?」

 

 

「「「無いです!!!!」」」

 

 

むつ「あっははは…」

 

よしみ「千歌達らしいっちゃあ、千歌達らしいね…」

 

 

ボールをセットし、試合を再開させる浦の星。だが…

 

 

いつき「?あれ…?」

 

むつ「どうしたの?いつき…」

 

いつき「あれぇ…?私の目がおかしいのかな??千歌達が……」

 

 

 

いつき「青く見えない??」

 

 

 

 

千歌「行こう!!みんな!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

負けていても希望はまだある。全力で、ぶつかってくる音ノ木坂の選手に対し、千歌達も全力でぶつかる

 

 

 

凛「行かせないにゃ!!!!」ドン!

 

曜「ぐっ…梨子ちゃん!」パス

 

 

例え、激しいタックルでよろけても

 

 

梨子「ナイスよ!曜ちゃん」

 

 

ボールを繋ぐ

 

 

 

真姫「貰った!!」ズサー

 

梨子「きゃっ!?」

 

 

例えスライディングを避けてバランスを崩しても…

 

 

梨子「千歌ちゃん!」パス

 

真姫「うそ!?」

 

 

ボール繋ぐ

 

 

 

千歌「!!(何これ…あたたかい…)」

 

 

ボールを受け取った千歌は感じる。浦の星のみんなの熱い想いを。これは、この試合だけでできた熱さではない…

 

 

千歌「私達が、サッカーを始めた時から…」

 

 

 

いや、もっと前、そう。千歌があの時、秋葉原でサッカーと出会った時から始まった想い………

 

 

 

千歌「そっか。分かったよ」

 

 

 

 

 

 

千歌「私達の輝き」

 

 

 

 

瞬間、千歌達の体が何かに包まれる

 

 

 

穂乃果「何…あれ?」

 

 

 

誰でも見たことがあるそれは、青く透き通り、果てしなく、どこまでも清々しいーー

 

 

 

 

千歌「水だよ」

 

 

曜「私達は水」

 

梨子「一見、全く違うものに見えるけど」

 

花丸「何でも、誰とでもひとつになれる」

 

善子「姿かたちを変え」

 

ダイヤ「時には降り注ぎ」

 

鞠莉「時には海を渡る」

 

ルビィ「この瞬間、重なっては」

 

果南「消えちゃうけど…消えちゃうからこそ」

 

 

 

 

 

千歌「ココロに刻もう!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「「「ー WATER BLUE NEW WORLD ー!!」」」

 

 

 

浦の星の選手達が、いっせいに走り始めた

 

 

にこ「必殺タクティクス!?」

 

花陽「あんな技、見たことがありません!!」

 

 

それもそのはず、「WATER BLUE NEW WORLD」はこの時、初めて発動した新必殺技であった。その力は、まだ誰も知らない

 

 

海未「新必殺タクティクスであろうとーー

 

 

海未「ボールを奪い取れば私達の勝ちです!」

 

 

海未が一気に千歌からボールを奪いに行くーーーー

 

 

千歌「私、分かったんです」バシャァン!

 

海未「!!」スカッ

 

海未「(消えた!?)」

 

 

ーーーー千歌がいた場所には、すでに千歌の姿はなかった。瞬間移動??いや、違う…これは…

 

 

 

 

美奈「水に…なってるの???」

 

 

 

千歌「ダイヤさん!!」パス

 

凛「にゃ!?(急に千歌さんが目の前に!?)」

 

 

凛の前には誰もいなかったはず…しかし、水が飛沫をあげたと思いきや、突然、千歌が姿を現したのである

 

 

ダイヤ「ナイスですわ!」

 

ことり「行かせません!」バッ

 

 

ことりはすぐにダイヤのディフェンスに入る。そして最強の絶対空間「ワンダーゾーン」を発動する

 

 

ことり「ー ワンダーゾーン ー!!」キラキラ

 

ダイヤ「!!」

 

 

ダイヤは迷わずワンダーゾーンの中へ。あとはことりに支配されるだけ…しかし、

 

 

ダイヤ「見えなければ、命令のしようがありませんわよね」バシャァン!

 

ことり「消えた!?」

 

 

まただ…技を放つ前にダイヤが消えた…これでは、支配するどころか下手に動けない

 

 

ダイヤ「鞠莉さん!」パス!

 

 

ことり「抜かされた!!?」

 

 

もはや、抜かされたという認識さえ出来ない…

 

 

鞠莉「あと少しよ!みんな頑張って!!」

 

 

 

 

 

 

むつ「な、なんですか…あの必殺タクティクス…私達も全く知らない技ですよね?」

 

北也「あぁ、おそらく、この状況下で初めて発動したんだろう…あいつら…」

 

いつき「水になる必殺タクティクス…」

 

 

 

ボールを取りに行っても、すぐに水になって消えてしまう浦の星。その姿をゴール下で見ていた穂乃果は思った

 

 

 

穂乃果「見える…まるで、海の上、水平線にいるみたいだよ…」

 

 

一面、果てしなく続く青い海。そして、見れば心が透き通るほど青い空。そこを浦の星は走っている。バシャバシャと、水しぶきをあげながら、裸足で、全員で、キラキラしながら走っていた

 

 

 

曜「この空、この海は、私達の味方!!」

 

梨子「曇ってても、青空は私達を待っている!!」

 

千歌「手に入れるんだ…みんなで!!」

 

 

『抜けたあぁぁぁ!!!!高海千歌、音ノ木坂の選手を全員、突破しましたぁ!!!!残すは太陽の守護神、高坂穂乃果だけです!!』

 

 

穂乃果「綺麗だね。千歌ちゃん」

 

千歌「綺麗?」

 

穂乃果「それが、輝きなんじゃないの?」

 

千歌「……」

 

 

千歌「はい。これが私達の輝きです」

 

千歌「足掻いてあがいて足掻きまくって、やっと分かりました!」

 

千歌「最初からあったんだ…初めて見たあの時から、何もかも、一歩一歩。私達が過ごした時間の全てが…」

 

千歌「輝き」

 

 

 

 

穂乃果「!?」

 

 

北也「千歌!?(あれは…!!)」

 

 

美奈「まさか、このタイミングで!?」

 

 

 

千歌「私達が探していた…輝き」

 

 

千歌は走る。ゴールまであと少し、輝きを見つけた少女は残りあと少しのゴールまで、全力で走った

 

 

千歌「私達の輝きを見てください!!穂乃果さん!!」

 

穂乃果「いいよ…凄いよ千歌ちゃん、輝きを見つけただけじゃない…千歌ちゃんはそれ以上の存在だよ…!!!!」

 

 

走る千歌の目はキラキラしていた。穂乃果や北也、美奈、そして一部の人には見覚えがある。あれは間違いない。このタイミングで発動したのは、偶然か、それともーーーー

 

 

 

 

高海千歌、ゾーン発動

 

 




僕たちはひとつの光
音ノ木坂学院の究極の必殺タクティクスです。8人の力を1人に集め、9人全員の力をひとつにします。力を出す8人はその場から動けませんが、1人は最強の力を得ることができます


ファイナルトルネード
雷門中がゼウス戦で使った技です。本来ならば、「ザ・フェニックス+ファイアトルネード」なのですが、音ノ木坂は炎の技をもつ穂乃果が蹴り込む。という形で発動しています


WATER BLUE NEW WORLD
浦の星女学院が奇跡的に生み出した必殺タクティクスです。自分たちが水になり、姿を消します。ボールも一緒に見えなくなるので、無双状態…浦の星の諦めない心がひとつになったからこそ、誕生した究極の技ですね


輝きを見つけた千歌は、ついに、ゾーンを発動。果たして穂乃果を超えることは出来るのでしょうか…



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第2章 48話 「音ノ木坂戦 "ラストプレイ"」

次で最終話です。ゾーン状態となった千歌は決めきることが出来るのでしょうか…





 

 

 

 

高海千歌は考える 何もかもが普通な自分を変えたい。もっと特別な何かをやりたい。何かを全力でやりたい。じゃあ…何をするの?何をしてきたの?

 

 

 

 

 

私は なにができるの???

 

 

 

 

 

何かに夢中になりたくて

 

何かを全力でやりたくて

 

脇目も振らずに走りたくて

 

何をやっていいかわからなくて

 

燻っていた私の全てを

 

吹き飛ばす……ようなものと出会えないかと

 

そして…

 

 

 

出会ったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「絶対に止める!!!!」

 

千歌「絶対に決めます!!!!」

 

ゾーンを発動した千歌がゴール前まで迫っていた。穂乃果は感じていた。ビリビリ伝わる、千歌の気迫を

 

 

穂乃果「(1人技?でも、千歌ちゃんはそんな技…)」

 

そう。千歌は1人シュート技を持っていなかった。しかし、

 

 

 

今の千歌なら、何でもできる

 

 

 

千歌「はあぁぁぁ!!!!!!」ゴオォォォ!

 

千歌がボールにオーラを込め始める。新必殺技??しかし、浦の星、そして音ノ木坂の選手達には見覚えがあった

 

 

ルビィ「あの構え…ブラックアッシュ!?」

 

善子「動きが同じよね!?」

 

あれはチカの時にしか発動出来ないはず…何故、千歌がーーーー

 

 

千歌「おりゃ!!」バシュ!

 

穂乃果「!?」

 

千歌はブラックアッシュの構えでオーラを溜めたボールを、天高く、打ち上げた。空は曇っているが、千歌には関係ない

 

 

千歌「曜ちゃんと梨子ちゃんが言ってた!曇ってても、空は私達の味方だって!」

 

千歌は上空で足を振り上げる。するとーーーー

 

 

穂乃果「雲が…晴れた」

 

千歌の一振で、雲が晴れ、その隙間から光がこぼれる。ボールは輝き始め、グラウンドを照らす。まるで"太陽"

 

 

千歌「これが輝きの力!!!!」

 

千歌「ー サンシャインアッシュ ー!!」ドガァン!

 

千歌はかかと落としで、太陽を蹴り落とした

 

 

 

花丸「新必殺技ずら!!」

 

果南「凄い威力だよ…」

 

まさに、千歌は太陽を蹴った。と呼ぶのにふさわしいシュート。穂乃果に近づく巨大な太陽は、熱く、眩しい、強力なシュートであった

 

 

穂乃果「最高だよ!千歌ちゃん!でも、私の太陽には適わないよ!!」バッ

 

 

穂乃果「ー 愛は太陽 ー!!」ドン!

 

右手から産み出された太陽が、千歌のシュートを飲み込んだ

 

 

花陽「穂乃果ちゃん、ナイスです!」

 

真姫「これなら安心ね」

 

穂乃果の太陽は全てを焼き尽くす。今まで、愛は太陽が破られたことは一度もなかった

 

 

絵里「…穂乃果?」

 

 

今までは

 

 

 

穂乃果「ぐっっ…ぐぐっ…やばい…」ググググ

 

今回は違う。穂乃果が押されている

 

 

希「まさか…」

 

にこ「穂乃果の太陽が、押されてる…の?」

 

 

穂乃果「ぐっ…(穂乃果の太陽じゃ、焼き尽くせない力ってこと??)」バッ!

 

穂乃果は片手で止めていたのを、両手にする。両手で千歌のシュートを止めに行くが、それでもパワーは衰えていない

 

 

千歌「いっけええええ!!!!!!」

 

穂乃果「ぐっ…うあぁ!?」

 

穂乃果の太陽を、千歌のシュートが貫いた

 

 

 

『ゴール!!!!!!浦の星、追いついたぁぁぁ!!高海千歌の新必殺技で、4-4です!試合は再び振り出し!まだ勝敗は分かりません!!』

 

 

曜「千歌ちゃん!!凄いよ!あのシュート!」

 

梨子「穂乃果さんの太陽に勝ったんだね!」

 

千歌「みんなのおかげだよ…」

 

ダイヤ「まだ同点です!逆転しますわよ!!」

 

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

穂乃果「っっっ!!!!止められなかった…」

 

穂乃果はこの試合で初めて、メンバーに悔しがる姿を見せた。自分のミスから再び振り出しへ…責任は重かった

 

 

海未「穂乃果!」

 

穂乃果「海未ちゃん…」

 

海未「負けているわけではありません。ラスト、私達が決めて終わりにしましょう」

 

穂乃果「負けてない…」

 

希「ウチがキーパーでも、あのシュートは止められない…こっからもう一点や!」

 

絵里「全員でラスト、一斉攻撃ね。勝つのは私達よ」

 

花陽「私も、最後まで頑張って走ります!!」

 

真姫「またボール取られないようにね?にこちゃん…」

 

にこ「だから!ぬぁんでにこだけに言うのよ!?」

 

凛「にこちゃんが油断するからにゃ」

 

ことり「ははは…」

 

 

穂乃果「…!!」

 

千歌が言っていた輝きとは、この事なのだろうか…みんながキラキラしていて、胸の奥が熱くなっていく…

 

 

穂乃果「みんな!!」

 

「「「…???」」」

 

穂乃果「最後!これが本当に最後だよ!私達の全てを出しきって、勝とう!!!!」

 

「「「はい!!!!!」」」

 

 

凛「それでこそ穂乃果ちゃんにゃ!!」

 

にこ「燃えてきたわよ!ガンガン攻めてやるんだから!!」

 

 

 

ここからが勝負。ラストプレイ、泣いても笑っても…最後である

 

 

 

 

ピーーー!!!!!!

試合再開の笛がなる。一気に走り出す音ノ木坂と、それに食いつく浦の星。どちらも譲らない攻防が続くが、音ノ木坂が仕掛ける

 

 

「「「ー KiRa-KiRa Sensation! ー!!」」」

 

 

速さで翻弄する音ノ木坂。あっという間に浦の星陣内へ。ボールは、海未へと渡った

 

 

 

海未「勝つのは私達です!!」バッ!

 

海未がラブアローシュートの構えに入る

 

 

ダイヤ「来ますわよ!!」

 

果南「いつでも」

 

果南はすぐに構える。だが、この状況下でただのラブアローシュートはありえない…来るとしたらーーーー

 

 

穂乃果「行くよ…海未ちゃん!!」バッ!

 

果南「穂乃果ちゃん!?」

 

果南は凛と海未がシュートを放つと予想していた。しかし、予想を上回る事態。まさかの、キーパーが、穂乃果が前線まで走ってきていたのだ

 

 

海未「ラブアロー……」

穂乃果「ブレイブ……」

 

海未が上、穂乃果が下になり、2つの技を同時に放つ

 

 

海未「シュート!!!!!!」

穂乃果「ショット!!!!!!」

ドガアァァァァァアン!!!!!!!!

 

 

2人の渾身の一撃が浦の星ゴールに迫る

 

 

絵里「行けるわよ!!!!」

 

ことり「いっけーーー!!」

 

 

 

 

果南「!?」

 

しかし、浦の星メンバーはただ見ているだけではない

 

 

鞠莉「ー グラウンドスイーパー ー!!」

花丸「ー 真 もちもち黄粉餅 ー!!」

 

鞠莉と花丸がシュートブロックに入る

 

 

海未「無駄です!私達の矢は簡単には折れませんよ!!」

 

穂乃果「そのまま貫いちゃうからね!!」

 

穂乃果達の言う通り、シュートはそのままブロックを突破するーーが、

 

 

ルビィ「っっっ!!!!」ドガァン!

 

海未、凛「!!?」

 

果南「ルビィちゃん!?」

 

ルビィ「ー Awaken the power ー!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

花丸「ルビィちゃん、ダメだよ!!」

 

北也「馬鹿野郎!身体がぶっ壊れるぞ!?」

 

 

 

ルビィ「終わってから考える…今は…」ゴゴゴゴゴ

 

 

バキイィィィィン!!!!!!!!

 

 

ルビィ「死にものぐるいで足掻きたい!!」ドサッ!

 

 

海未「弾かれた!?」

 

凛「2人技を…そんな…」

 

穂乃果と海未の矢は折られ、ルビィは衝撃で吹き飛んだ。鞠莉と花丸のブロックがあったからこその、ルビィのスーパーブロック。ボールはラインをまだ割ってはいない。ボールを持ったのは死守を続けたーーーー

 

 

 

ルビィ「ルビィ達だよ」ハァハァ

 

果南「ルビィちゃん、大丈夫!?」

 

ルビィ「大丈夫です!まだ行けます!」

 

そう言うと、ルビィは走り出した。体はとうに限界なはず…いったい何が、今のルビィを動かしているのか…

 

 

果南「はぁ…そんなこと、分かりきってるけどね」

 

 

 

 

穂乃果達の総攻撃を防いだ浦の星は、これでもかというぐらい走る

 

にこ「これ以上は行かせたらダメよ!!」

 

絵里「えぇ!ここが正念場よ!」

 

 

しかし、浦の星は止まらない

 

 

「「「ー WATER BLUE NEW WORLD ー!!」」」

 

浦の星は水となり、縦横無尽に駆け回る

 

 

希「ー バニシングカット ー!」ビュン!

 

善子「無駄よ!」バシャァン!

 

希「実体が見えないから、ボールが奪えない…」

 

 

にこ「こんのぉ!」バッ

 

曜「絶対に繋ぐよ!!」バシャァン!

 

にこ「ちょっと!まずいわよ!?」

 

ディフェンス技が通用しないとなると、手も足も出せない…徐々に突破される音ノ木坂。確実に追い詰められていた

 

 

曜「梨子ちゃん!」パス

 

梨子「うん!」

 

ボールを受け取った梨子の前に、絵里が立ちはだかった

 

 

絵里「ここから先は絶対に行かせないわ」バッ!

 

すぐに絵里はディフェンス技を発動する。消える前に、それよりも早く…仕留める

 

 

絵里「ー スノーハレーション ー!!」

キラキラキラキラ!!!!!!

 

梨子「うっ!?眩しい…」

 

目を開けていられないほどの強い光が、梨子を襲った。光が収まる頃には、ボールは梨子の元からーーーー

 

 

絵里「ない…??」

 

真姫「え?ボールは?」

 

ない。どこにも。音ノ木坂の選手が奪ったわけでもなく、梨子が突破したわけでもない。しかし、ボールは梨子の元から姿を消していた

 

 

絵里「ボールは、どこ???」

 

 

 

 

「後ろですよ」

 

 

 

 

 

そう。後ろ

 

 

 

 

ルビィ「ボールはここです」ゴゴゴゴゴ

 

絵里「い、いつの間に……」

 

ルビィ「光が放たれる瞬間に、梨子さんからボールをバックパスで受け取って、一瞬で突破したんです」ゴゴゴゴゴ

 

穂乃果「…やられた」

 

 

 

これで、音ノ木坂の選手は全員抜き去った

 

 

ルビィ「千歌さん!」パス

 

千歌「ナイス!ルビィちゃん!」

 

 

あとは穂乃果を超えるだけ

 

 

千歌「今度は私達の番だよ!!!!」

 

穂乃果「今度は止める!!!!絶対に!!」

 

 

 

浦の星女学院 4-4 音ノ木坂学院

 

 




サンシャインアッシュ
ブラックアッシュがチカの技なら、サンシャインアッシュは千歌の技です。闇のチカラではなく、輝きのチカラで渾身のシュートを放ちます。愛は太陽を破ったあたり…かなり強力な技みたいですね


次回、最終話です。今日中には投稿します。最後までよろしくお願いします


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最終話 「これから」

最終話です。勝負の行方は……

作者の後書き(感謝文)も最後まで読んでもらえると嬉しいです!





 

 

 

月「どっちが勝つと思う?」

 

英玲奈「流れ的には浦の星だが…迫力的には…」

 

「……」

 

 

 

 

音ノ木坂ゴールに光が集まっていく、その中心には穂乃果。集まった光はひとつとなり、今、虹色に輝く

 

 

穂乃果「ー 僕たちはひとつの光 ー」キラキラキラ

 

 

千歌「!!」

 

 

穂乃果「これを止めて、私達が勝つ!!」

 

音ノ木坂は全てのチカラを集結させ、穂乃果に希望を託す。今の穂乃果は、立っているだけでも焼き焦げそうな程に熱い、本物の太陽となっていた

 

 

千歌「はあぁぁぁ!!!!」ゴオォォォ!

 

対する千歌は、「愛は太陽」を破った「サンシャインアッシュ」の構えに入る

 

 

花丸「僕たちはひとつの光に、勝てるのかな…」

 

善子「信じましょ…千歌を」

 

最高火力のエボリューションを捻り潰す程のチカラをもつ必殺タクティクス…今の千歌はゾーン状態だとはいえ…破れるかどうか…

 

 

 

千歌「今のままじゃ勝てない…なら!!」

 

ルビィ、ダイヤ「!!」バッ!

 

千歌を挟むように黒澤姉妹が構える

 

 

穂乃果「いったいなにを……」

 

 

千歌「さらに超えていくだけ!!!!」バシュ!

 

千歌は空高くボールを打ち上げる。「サンシャインアッシュ」だけでも強力だが、これはーーーー

 

 

 

ーーーー「サンシャインアッシュ」では無い

 

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!!」バッ!

 

ダイヤ「行きますわよ!!」バッ!

 

千歌に続いて、ダイヤとルビィも飛ぶ。この二人の動き…浦の星のメンバー、そして、函館聖泉の選手には覚えがあった

 

 

聖良「あれは…まさか、」

 

理亞「…!!」

 

 

 

 

千歌「始めは何も出来なかった!!」バッ!

 

千歌は足を振り上げ、かかと落としに入る

 

 

ダイヤ「途中で全てを諦めた!!」バッ!

 

ダイヤは右足に炎のオーラを込める

 

 

ルビィ「心のどこかでみんなを避けていた!!」バッ!

 

ルビィは左足に炎のオーラを…

 

 

 

千歌「でも、今は違う!!!!」

 

ルビィ、ダイヤ「何だって出来る!!!!」

 

 

北也「決めろ!!!!」

 

よしみ、いつき、むつ「行ける!!!!」

 

「「「行けえぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」」」

 

 

 

 

千歌、ダイヤ、ルビィ「ー サンシャイントルネードTC(トリプルクラッシャー)ー!!!!」ドガァン!!

 

次元を超えた炎が放たれた

 

 

穂乃果「うおああああああああああ!!」ガシッ!

 

穂乃果はボールを掴む。みんなの想いが込められたこの力…今にも焼き焦げそうだがそれ以上にーー

 

ーー穂乃果は燃えていた

 

 

 

海未「穂乃果!!」

 

ことり、凛、花陽、希「穂乃果ちゃん!!」

 

絵里、真姫、にこ「穂乃果!!」

 

 

美奈「穂乃果ちゃん!!!!」

 

 

 

 

穂乃果「うおああああああああああ!!!!」ググググ!!

 

 

 

 

 

今までに、こんなに叫んだことは無かった。ここまで色々あった…辛いことや、悲しいことはたくさんあったけど…それでも、それでも!それでも!!

 

 

 

穂乃果「サッカーって、楽しいや!!」ググググ

 

 

 

 

 

 

 

 

スタジアムにはち切れんばかりの大歓声が響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 1ヶ月後 ー

 

 

 

波の音だけが聞こえ、目の前には青い空と海……雲ひとつない…最高の天気…

 

 

千歌「……」

 

 

私は砂浜に一人、海を眺めていた

 

 

千歌「今日も青いなぁ…」

 

 

激戦は終わり、私達の戦いは幕を閉じた。勝ったか負けたかは最後に言うとして…ひとまず、現状報告?

 

 

やっぱり、廃校は確定。今年度の終わりに、閉校式を行うらしい…浦の星の名は全国に知れ渡ったけど、やっぱり学校を守れなかったのは…悔しい

 

 

3年生はこれで部活は引退…だけど、練習は一緒に続けている

 

 

 

千歌『プロを目指す!!?』

 

果南『ここまでやってみるとね、挑戦してみたいんだ♪』

 

鞠莉『そういうこと!』

 

ダイヤ『大学は行きますが…サッカーも頑張りますわよ!』

 

 

果南ちゃんとダイヤさんは日本に、鞠莉さんはイタリアに行くらしい…ちょっと寂しいけど、いや、かなり寂しいけど、プロサッカー選手として活躍する果南ちゃん達を想像すると…今から楽しみです。でも…私はどうしようかな…

 

 

ちなみに、私達は来年から沼津の静真高校に通うことになりました。静真高校は部活の活発な学校で…私達がこの前、挨拶をしに行ったら大歓迎されました…ははは…

 

 

 

 

 

でも、いいことばかりではありませんでした

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ『ルビィ!?』

 

花丸『ルビィちゃん…まさか、』

 

ルビィ『ごめんなさい…みんな、体、動かない…や』

 

 

 

 

ルビィちゃんの体は限界を超えていました。負荷のかかりすぎた体は動かなくなって…今でも、病院で治療、リハビリをする毎日だそうです

 

 

 

千歌「頑張ったから…だもんね」

 

 

 

体の限界を忘れるぐらい、ルビィちゃんは頑張ってくれました。一日でも早く、ルビィちゃんとまたサッカーをしたい…

 

 

 

これで、私達の物語は終わりです。でも、これからもサッカーは続けていくし、浦の星のみんな、そして穂乃果さん達とも関係は続いていく…サッカーは人と人を繋ぐかけがえのないもの…そう思います

 

 

 

バサッ!!!!!!

 

 

 

風がふく。千歌の髪と一緒に揺れるものがーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤に染まった大会の優勝旗であった

 

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 




皆さん、どうも。ルビィちゃんキャンディーです。ここまで、最後まで読んでくださった方々…ほんっっっっっとうに感謝です!!最初は文も下手くそで、展開はワンパターン…読みづらい、つまんないという感想がほとんどだと思います。途中で、何回も辞めようと思いました。しかし、こうして最後まで続けられたのは感想、応援のおかげです!!本当にありがとうございました!!千歌ちゃん達の物語はここで終了ですが、これからもサッカーを、ラブライブをよろしくお願いします!!!!!































千歌「はぁ……終わっちゃったなぁ…」

これで、このお話も終了…あとは練習の毎日…チカァァ……だよ…チカァァ……ん?




「ちかぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」



誰?美渡ねぇ?いくらここが田舎だからって…一応、近所はあるんだから、そんなに大きな声で呼ばなくても……


美渡「いいから!!早く戻ってこい!!早く!!」

千歌「えぇ……」


何?旅館の手伝い?せっかく感傷に浸ってたのに……もう、



ー 十千万旅館 ー


千歌「なに〜?手伝い?」ヒョコッ

志満「あわわわわ……」

千歌「?」

美渡「ち、千歌、早く…テレビ見て…」


テレビ?もう、大会優勝の特番は見飽きたでしょ……




『次はMFです。浦の星女学院、高海千歌ーーーーーー』


ん?何このチャンネル…ライブ中継??



『以上です。この18名が今大会のーーーー』



『ーー日本代表です』





千歌「へ……」






近日より投稿開始

第3章 「世界編」



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第3章 "世界編" 〜新たな挑戦〜
第3章 1話 「対面」


というわけで……お陰様で世界編、開始でございます!

しかし、代表メンバーにはかなり悩みました…悩んだ挙句、ラブライブキャラのみのチームとしました。捉え方は人それぞれだと思います。ですが、このお話では、ラブライブキャラのみという事で、ご理解いただけたらと思います。とは言っても…最初の方は、え?ちょっと盛りあがりが足りなくない?と思うかもしれません。ですが、安心してください!途中から一気に盛り上げていきます!!おそらく、世界編は一、二章以上の展開がたくさん待っていると思います!第3章もよろしくお願いします!

後書きに超重要なお知らせがあります!!!






 

 

 

 

 

この季節になると、やはり日の出は遅い。夏ならばすでに朝日が昇っている時間帯だが、今はまだ薄暗い

 

 

 

千歌「いよいよ…だね」

 

千歌は沼津駅に来ていた。日本代表の招集がかかり、集合場所の東京に向かうためである

 

 

「おーい!千歌ちゃーん!」

 

千歌「あ!曜ちゃん、梨子ちゃん、こんちか!」

 

梨子「まだ朝だけどね…」

 

曜「ヨーソロー!」

 

現れたのは梨子と曜。2人も、千歌と同じ日本代表である

 

 

曜「でも、まさか2年生から3人とも選ばれるとは…」

 

梨子「私は、絶対にないと思っていたわ」

 

千歌「それを言うなら千歌だって…」

 

曜、梨子「いや、それはない」キッパリ

 

誰もいない沼津駅。そこで話している3人のもとに近づく2人の影ーーーー

 

 

 

ダイヤ「朝から元気ですわね…」

 

果南「おっはよー♪」

 

千歌「あ!果南ちゃん、ダイヤさん!」

 

曜「これで全員だね!」

 

3年生のダイヤと果南が合流。これで、浦の星女学院の日本代表メンバーは全員集合である

 

 

果南「でもさ、やっぱ多いよね?千歌…媚びった??」

 

千歌「してないよ!!?いくらお母さんが監督だからって!」

 

ダイヤ「どうだか…」

 

千歌「ダイヤさんまで!?」

 

何がともあれ、無事に全員集合したメンバーは電車に乗り、集合地となる魔都(東京)へと向かった

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 東京駅 ー

 

 

千歌「着いたーー!!!!」

 

曜「やっぱり遠いね、東京…」

 

ダイヤ「果南さん、着きましたわよ!」

 

果南「いや、ホタテ食べ放題…」ムニャムニャ

 

梨子「ははは…」

 

東京に到着した浦の星一行は、集合場所へ案内してくれる代表メンバーと待ち合わせをしていた

 

 

曜「多分…そろそろ来る頃だと思うけど…」

 

ダイヤ「果南さん!いい加減にシャキッとしなさい!」

 

すると、遠くから見たことある人物がこちらに近づいてきた…共に激戦を繰り広げた、あの大和撫子が…

 

 

 

海未「お久しぶりですね。浦の星女学院のみなさん」

 

音ノ木坂学院FW「園田海未」。脅威の身体能力で浦の星女学院を苦しめたストライカー。「武風神」という異名を持つ。好物はほむまん

 

 

ダイヤ「お久しぶりですわ。本日はよろしくお願いします」

 

果南「」zzz

 

 

 

 

 

 

全国高校女子サッカー大会が終了してから約1ヶ月…国際大会の中でも有名な大会、FFI(フットボールフロンティアインターナショナル)が開幕しようとしていた。FFIと言っても、15歳以下の男子女子の大会があったりするのだが、今回開催されるFFIは18歳以下の女子が対象、しかも、千歌達は経験無しの11人制…なんでも、女性のサッカー人口発展を目標にしているとか…

 

そんなわけで、招集された日本代表メンバーが次々と集合場所に集まっていた

 

 

 

海未「…案内しなくても分かるとは思いますが…監督が一応…と」

 

ダイヤ「なるほど、確かにここなら全員分かりますわね」

 

 

集合場所 UTX高校

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

UTX高校に入り、指示された通路を歩いていくと、「日本代表控え室」と記された部屋が見えてきた

 

 

梨子「あそこって…会議室よね…」

 

千歌「あ、そっか。梨子ちゃん、転校してくる前はUTX高校の生徒だもんね」

 

曜「…新しい仲間かぁ…」ワクワク

 

この扉を開ければ、共に世界と戦うメンバーと会える…そう考えると胸の高鳴りが止まらなかった

 

 

ガチャ!

 

 

 

 

穂乃果「あ!!千歌ちゃん!」

 

千歌「穂乃果さん!」

 

扉が開いたのに一番に反応したのは、音ノ木坂学院キャプテン兼エースストライカー、「高坂穂乃果」。あの決勝戦以来、今では毎週通話などをする仲となっていた

 

 

穂乃果「日本代表おめでとう!みんな!」

 

千歌「穂乃果さん達こそ…おめでとうございます!」

 

穂乃果「今日から私達は同じチーム!仲間だよ!一緒に頑張ろうね」

 

千歌「はい!」

 

お互いに握手を交わす。決勝戦前にも、握手はしたが今回の握手は、とても心強かった

 

 

 

「浦の星女学院の高海千歌さんね?」

 

 

千歌「…?………!?」

 

ダイヤ「ぴぎゃ!!??あなたは……」

 

 

ツバサ「はじめまして。綺羅ツバサです。あなた達の試合、観させてもらったわ」

 

UTX高校エースストライカー、「綺羅ツバサ」。「ゴットストライカー」という異名を持っており、そのプレイは才能の塊だとか。ゾーンを使用できるようで、日本が誇る最高プレイヤーの一人

 

 

ダイヤ「ぴ……こ、光栄でしゅわ…」

 

カチコチのダイヤ。無理もない。憧れのサッカー選手が目の前に…しかも、自分達の試合を見ていたと言うのだ…高度10になるのは当たり前…

 

 

ツバサ「素晴らしいサッカーセンスだと思うわ。これからよろしくね」

 

ダイヤ「は、ははは、はい!よろしくお願いします!!」アクシュデスワ

 

あんじゅ「準決勝敗退さんが優勝校様に上から過ぎな〜い?ゴットストライカーさん♪」

 

「睡蓮の女神」「優木あんじゅ」。UTX高校の守りの要であり、その名を知らないサッカープレイヤーはいない。ことりのようにふわふわっとした性格で、考えていることが読みずらい。ディフェンス技は狂気

 

 

ツバサ「別に偉そうにはしてないわ。こんな喋り方になっちゃうのよ…」

 

英玲奈「チームメイトとのコミュニケーションは大切だ。なるべく馴染める会話をした方がいいぞ」

 

ツバサ、あんじゅ「いやいや、それあんた」キッパリ

英玲奈「…」

 

「皇帝」「統堂英玲奈」。UTX高校のキャプテンで、試合中の作戦は全て英玲奈が考えている。走攻守のどれをとっても完璧で、いろいろな意味であんじゅ達からは、アンドロイドと言われているとか…

 

 

ダイヤ「はわわわ…A‐RISEが揃い踏み…」

 

果たして、ダイヤはこのままやっていけるのだろうか…

 

 

 

ガチャ!

 

 

希「あと3人!連れてきたで〜」

 

入ってきたのは音ノ木坂学院3年生、「東條希」。DFが正規だが、GKもできる選手。まだまだ実力が未知数な謎多き選手である。どうやらほかの高校からの代表メンバーの案内をしていたようだ…そして、

 

 

月「おはヨーソロー!!」ヒョコッ!

 

曜「月ちゃん!」

 

月「曜ちゃん!」

 

月曜「いっえーーい!!!!」タッチ

 

 

梨子「なんでそんなに元気なの…」

 

月「ふふっ♪僕、曜ちゃん、そしてみんなとサッカーをするのがずっと楽しみだったんだ!やっとこの時が来た!!って感じ♪」

 

「渡辺月」イタリアから帰国後、浦の星と県予選で激闘を繰り広げた、帝国女学院のエースストライカー。また、渡辺曜の従姉妹である

 

 

穂乃果「いやー、また月ちゃんと一緒にサッカーが出来るなんてね!」

 

月「僕も同じ気持ちだよ。穂乃果ちゃんとサッカーなんて、最高の気分だよ!」

 

 

ガヤガヤガヤガヤ……

 

 

にこ「…一瞬で控え室が賑やかになったわね」

 

ことり「あはは…穂乃果ちゃん、友達がたくさんいるからね」

 

「矢澤にこ」音ノ木坂学院のMF。華麗なボールキープ力は、日本を魅了した。数ヶ月後にフリースタイルフットボールの世界大会を控えているため、フリースタイルの日本代表でもある

 

「南ことり」音ノ木坂学院のDF兼FW。「ルーラ・オブ・スペース」という異名を持っており、ことりの技は全てが超強力。その中でも、ワンダーゾーンは未だに真正面から勝てた者はいない

 

 

にこ「!?急に寒くなったわね…」ブルッ

 

ことり「…エアコン??いや、これは……」

 

 

 

聖良「おはようございます。千歌さん」

 

「鹿角聖良」函館聖泉女子高等学院のキャプテン。「雪の女神」という異名を持ち。鉄壁のディフェンスの司令塔として、浦の星女学院を苦しめた。仲間達からは何故かメロンと言われ、ジーッと見られるとか…

 

 

千歌「おはようございます!理亞ちゃん、もね?」

 

理亞「……」

 

「雪原の狼」「鹿角理亞」。函館聖泉女子高等学院の新生エースストライカーとして、その名を轟かせた。浦の星女学院との戦いでゾーンに目覚め、日本代表のエースストライカー候補と名高い選手である

 

 

理亞「言っておくけど…あんた達はライバル…仲良くなんてしないんだから」

 

聖良「理亞…」

 

 

英玲奈「ふむ…気難しいそうな子だな」

 

あんじゅ「だからね…それ英玲奈」

 

 

 

凛「みんなー!監督がもう少しで来るから、席についてだって!」ヒョコッ

 

部屋に入ってきたのは、音ノ木坂学院1年の「星空凛」。1年生で日本代表の座を手に入れた、サッカーセンス抜群の選手。「雷虎」として、浦の星女学院と戦ったのは記憶に新しい

 

 

聖良「監督…ですか。いったい誰なんでしょうか…」

 

希「あ、そっか。聖良っち達は知らないんやな」

 

千歌「ははは…」

 

 

メンバーがそれぞれ席に着く。それと同時に、千歌達、そして穂乃果達には慣れ親しんだ人物が入室してきた

 

 

 

美奈「はーい!全員いるわね〜♪」

 

 

 

千歌「やっぱりお母さんかぁー……」

 

聖良「えぇ!?お母さん!?」

 

英玲奈「…驚いたな」

 

 

美奈「私が今日から皆さんの監督になります!高海美奈です!よろしくね〜」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 

美奈「皆さんを呼び出したのは他でもありません!日本代表として、これから世界と戦ってもらいます!」

 

千歌「世界…」

 

美奈「今日は、みんなに今後の予定を説明したあとに記者会見!キャプテンにはすでに伝えてあるけど、スピーチがあるからね〜」

 

 

記者会見…ついに日本代表としての実感がわいてきたメンバー達…これから戦う敵は、今まで以上に強大で、規模が違う

 

 

美奈「そして!もう一人!紹介したい人がいます!」

 

海未「もう一人、ですか?」

 

にこ「もったいぶらずに早く教えてくださ〜い。監督ー」

 

美奈「ではでは〜…どうぞー☆」

 

 

美奈の合図で控え室に一人の女性が入ってくる…しかし…??え?この人は……

 

 

千歌「にこさん!?」

 

曜「えぇえ!?にこさんが2人!?」

 

梨子「双子ってこと!?」

 

にこ「違うわよ!!ってぇ、ぬぁんでここにいるのよ!?」

 

 

 

 

 

 

にこ「マ…お母さん!!!!」

 

 

真恋「にこと同い年と思われちゃった♪」

 

美奈「流石、真恋(まこ)ちゃんね〜♪」

 

 

 

 

 

「「「えええぇぇぇぇぇ!!!!????」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





超重要なお知らせです
皆様の力が必要です……日本代表のチーム名が決まっていません!!ということで、詳細は今日中に「活動報告」「Twitter」で説明しますが、日本代表のチーム名、急募します!たくさんのご意見、よろしくお願いします!!!!


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第3章 2話 「日本代表 始動」

一日ぶりです!第3章を開始してからも、たくさんの応援を頂きました!そして、お気に入り登録、急募の多数コメント、読者様に支えられているということを再確認することが出来ました。本当にありがとうございます!

お知らせです。日本代表チーム名の締切は5月26日(日曜日)までとさせていただきます。ですが、とてもいい案が多すぎてひとつに決められるか不安になってきました…




 

 

 

前回の!輝こうサッカーで!

UTX高校に集まった日本代表メンバー。会話が弾む中、日本代表監督、美奈が紹介した人物はにこの母親だった!衝撃の人物に固まるにこ、それを横目で見る凛、驚くメンバー!さあ、記者会見の始まりだ!!!!

 

 

 

 

 

 

にこ「ってか、仕事は!?チビ達は!?どうしたの!??」

 

真恋「仕事は、日本代表だって説明したら、すぐにそっちを優先にしてくれたわ。ここあ達は…」

 

 

穂乃果「はいはーい!私の家で預かりまーす!」

 

にこ「穂乃果の!?」

 

ことり「じゃあ、穂乃果ちゃんは、にこちゃんのお母さんが来ることを知ってたの??」

 

穂乃果「うん!でも、当日まで秘密!って言われてたからね」

 

にこ「はあぁ〜…」

 

千歌「どうしてお母さんって、サプライズが好きなんだろう…」

 

にこ「分かるわよ。千歌、その気持ち…」

 

穂乃果とにこは昔から一緒にサッカーをやっていた仲。自然と親同士も仲良くなるのは当然…であるが、それだけの関係ではないようだ

 

 

にこ「穂乃果のお母さんとウチのお母さんは、昔からの親友だって聞くし…」

 

穂乃果「たまにお店に来てくれるよね!」

 

 

真恋「にこちゃん?そろそろお話していいかしら?」

 

話が盛り上がり始めたが、このあとすぐに記者会見。真恋はすぐに自己紹介を済ませようとした

 

 

真恋「改めまして…矢澤にこの母であり、Jリーグの『海和レッズ』の監督をしています!矢澤真恋(まこ)です!みんなの副監督をやります。よろしくねー!」

 

「「「よろしくお願いします!!!!」」」

 

 

ダイヤ「真恋さん…聞いたことがある方だとは思ってはいましたが…」

 

聖良「まさか、にこさんのお母様があの『海和レッズ』の監督だったなんて…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

日本代表メンバーがUTX高校に集められた理由…それは、「記者会見」。というのも、理由はいろいろあるが、UTX高校には会見会場、機材、場所などがどれも充実しているので、よくほかの記者会見でも使用されている

 

 

 

ぞろぞろぞろぞろ……

 

 

 

報道陣関係者が一気に入場を始める。よくテレビで見る光景…だが、今回は自分達が見られる側…そう考えるとどうしても、

 

 

凛「き、緊張してきたにゃ…」

 

にこ「うっそ…あんな場所で会見すんの!?」

 

梨子「全国放送だし…恥ずかしいわ」

 

緊張で体が固まるメンバー。しかし、穂乃果や何人かは緊張する素振りを見せていない

 

 

穂乃果「みんな。緊張する気持ちは分かるよ。でもね?」

 

穂乃果「大会本番になると、今の規模じゃない。世界が私達のことを見ているんだよ?」

 

千歌「この瞬間から練習は始まってるんだと思って、みんな!リラックスして頑張ろ!」

 

 

「「「はい!!!!!!!」」」

 

 

 

美奈「(人を導く、才能。ね)」

 

 

 

メンバーは美奈のあとに続き、眩しい光が雨のように降り注ぐ部屋へと、入っていった

 

 

 

 

 

 

ー 日本代表 記者会見 ー

 

 

美奈「えー、私の紹介を終えたところで、早速、メンバー紹介に移りたいと思います」

 

カシャカシャと鳴り止まぬシャッター音。ところどころで赤く光るREC…もう、悪いことしていないのに、悪いことをしたような気分であった

 

 

 

 

美奈「まずはGKでキャプテン。『高坂穂乃果』」

 

美奈「GKはもう一人、『松浦果南』」

 

美奈「FW『綺羅ツバサ、渡辺月、黒澤ダイヤ、鹿角理亞、星空凛』」

 

美奈「MF『高海千歌、渡辺曜、桜内梨子、園田海未、統堂英玲奈、矢澤にこ』」

 

美奈「DF『優木あんじゅ、鹿角聖良、南ことり、東條希』」

 

 

 

 

美奈「以上、17人です」

 

 

真恋「はい。では何か質問は…」

 

質問にはたくさんの手が上がった。席についている代表メンバーの中にも、疑問があるメンバーは何人かいた

 

 

穂乃果「(やっぱり…か)」

 

月「(間に合わなかったか…)」

 

ここで、指名された記者が美奈に質問を始めた

 

 

「このチーム選抜…美奈監督らしい選抜だと思います。そこで、選抜方法やその意図の説明をして頂きたいのですが…」

 

美奈は立ち上がり、マイクを使って質問に答え始めた

 

 

美奈「はい。私の選抜方法は自然と同じ学校の選手が増えます。理由は、私が一番サッカーで必要だと思っているものが"絆"だからです 」

 

美奈「個人プレイで実力を持っている選手はたくさんいます。しかし、一人ではどうしても世界と戦う時に限界が来ます。そこで、なるべく私は絆で力を高めあったメンバー達を選抜しています」

 

 

希「(つまり、仲間と協力し合える選手を選んだ…というわけやな)」

 

あんじゅ「(英玲奈が絆…え?)」

 

英玲奈「?」

 

一人目の質問も無事に終了し、二人目が質問を始めた。そして、この質問がメンバー達が気になっていたことを、ズバリ、代弁してくれたのである

 

 

「あの…最初、代表は18人と聞いていたのですが…発表されたのは、17人、ですよね?」

 

美奈「……」

 

 

千歌「(一人、足りない…)」

 

にこ「(恐らく…あの子、よね)」

 

 

美奈「はい。最後の一人は、現在怪我のため、メンバーから離脱しています」

 

 

ザワザワざわざわ…

 

会場からどよめきが起こる

 

 

「その選手とは…」

 

 

美奈「…選手の名は黒澤ルビィ。『紅き流星』と呼ばれた、日本代表のFWです」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

無事に会見を終了した日本代表メンバーは、控え室で美奈達が戻ってくるのを待っていた

 

 

聖良「やっぱり、ルビィさんは間に合わなかったのですね…」

 

ダイヤ「はい…回復が遅いものだとは知らされていました。本人もかなり悔しがっていましたし…」

 

理亞「……」

 

月「かなり痛いよ。世界と戦うのに、ルビィちゃんの力は必要不可欠だからね」

 

ツバサ「その分、私達が頑張らなければね」

 

 

 

 

その後、戻ってきた美奈から今後の説明を聞いた代表達。明日から日本代表キャンプ地で練習。近いうちに練習試合を行うらしい。今日はこれで解散。寝泊まりは用意したホテルで、とのことであった

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

千歌「世界…か」

 

穂乃果「どうしたの?千歌ちゃん、」

 

千歌はすでに日の出をすぎ、青く広がる空を見上げて話し始めた

 

 

千歌「この空の向こうに、私達の次の舞台が、戦う相手がいるんだな…と思って」

 

穂乃果「この空の向こう…」

 

穂乃果も千歌と同じく空を見る。これから戦っていく相手は今何をしているのだろうか、あっちは夜なのか、朝なのか、昼なのか…それは分からないが、ひとつだけ分かることがある

 

 

千歌「私達よりも強い人がたくさん…いますよね」

 

穂乃果「いるね。しかも、たくさんね」

 

考えるだけでもワクワクするが、代表として、少なからず緊張感は持たなければいけない…明日からの練習、今まで以上に努力する必要がありそうだ

 

 

穂乃果「…あ!千歌ちゃん!」

 

千歌「なんですか?」

 

穂乃果「今日はもうフリーだし、暇だよね?」

 

千歌「はい…そうですね」

 

穂乃果「じゃあさ、せっかくだし」

 

 

穂乃果「私の家に来ない?」

 

穂乃果の家…すごく気になるため、行ってみたい!と思った千歌は、穂乃果の家へと向かった。そして千歌は穂乃果の家が、前に立ち寄った和菓子屋だと知るのであった…

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ー 西木野総合病院 ー

 

 

 

「くっ……」ガクガク

 

脚が震える。うまく立てず、すぐに座り込んでしまった…どうしてこんな身体に…分かりきったことを…自分が無茶しすぎた結果だって、何回も自分で言っているではないか

 

 

「もう一度…!」グググ

 

でも、休んでなんかいられないんだよね

 

 

 

 

 

 

 

真姫「いや、休みなさいよ!?」チョップ!

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

真姫「ちょっとルビィ!?今日のリハビリはもう終わったはずよ?無理は絶対にダメだって…」

 

ルビィ「うゆ…」

 

ここは西木野総合病院。東京の某所にある大きな病院で、真姫の父が院長をしている

 

 

真姫「私があなたの身体サポーターになった以上、私の指示に従ってもらうからね??」

 

ルビィはすぐにサッカーができる体に戻すために、リハビリ施設が充実し、そして、いつでも日本代表の試合が見に行けるこの西木野総合病院に移動したのである

 

 

ルビィ「でも、まだ動ける体じゃない…間に合わなかった…」

 

真姫「……」

 

ルビィ「せっかく手に入れた世界への挑戦権を無駄にはしたくないし、みんなと早くサッカーがしたい…だから…」

 

真姫「…気持ちはわかるけど、なら尚更よ。休む時は休みなさい」

 

ルビィ「…うん」

 

真姫「私も、ルビィが一日でも早く代表に復帰できるように、努力するわ」

 

ルビィ「ありがとう、真姫ちゃん!」

 

真姫「…///」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 翌日 ー

 

早朝、ホテルからバスに乗り込んだ代表選手達は、日本代表キャンプ地へと向かっていた

 

 

曜「千歌ちゃん、昨日はどこへ行ってたの?」

 

千歌「えっと…穂乃果さんの家!」

 

曜「穂乃果さんの!じゃあ、UTX高校から近い場所なんだね」

 

千歌「うん!しかも、穂乃果さんのお家、行ったの初めてじゃなかったんだよ〜」

 

ところどころで話が盛り上がるメンバー達。賑やかで何より…と美奈は考えた一方…

 

 

美奈「(グループ形成は防がなくちゃね…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 某所 日本代表キャンプ地 ー

 

 

穂乃果「うーん!空気が美味しい!!」

 

海未「大自然の真ん中にこのようなサッカー施設が…凄いですね」

 

『日本代表キャンプ地』大自然の中に作られたサッカー施設で、広大な面積を誇る、日本でも有数のサッカー合宿施設である。日本代表はアジア予選を突破するまでは、ここに滞在することになる

 

 

聖良「侍ジャパンの方達も、このキャンプ地を利用していたらしいです」

 

梨子「それほどまでにいい環境、ってことですね」

 

 

美奈「はーい、みんな!荷物を置いたらグラウンドに集合してね〜。練習を始めるわよ〜」

 

「「「はい!!!!」」」

 

ついに日本代表として、初めての練習が始まろうとしていた。千歌達は荷物を寮の中に移動させ、すぐにグラウンドに集合した

 

 

 

美奈「はい!それでは記念すべき第1回、日本代表練習、開始でーす♪」

 

「「「よろしくお願いします!!!!」」」

 

真恋「今日やる練習メニューを説明するわね。まずは…」

 

 

凛「ゴクリ…」

 

月「〜♪」

 

千歌「(どんな練習を…)」

 

 

 

 

真恋「試合ね。半分に分かれて」

 

 

千歌「試合?」

 

 

 

こうして日本代表は本格的に始動し始めたのである

 

 




皆さんはイナイレをアニメで見ていましたか?
一人ひとり今でも記憶に残っていたり、今でも好きな曲があるかと思います!ちなみに自分は「地球をキック!」がビビっときました…こんな感じで、Twitterで楽しくお話しています!お気軽に見に来てくださいね。小説の情報もたくさん出しています!

そして次回は、日本代表チームでミニゲーム!?



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第3章 3話 「ミニゲーム」

あんまりダラダラとやってもアレなので、一気にお話を進めようと思います

先に言っておきます…凛ちゃん、ごめんなさい




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

記者会見を終え、完全に始動した日本代表。キャンプ地に移動し、本格的な練習を始めようとしていた。そして、監督と副監督から出された練習内容は………

 

 

 

 

 

 

 

千歌「試合…ですか?」

 

真恋「そうよ!あなた達のサッカーデータは、かなり揃ってるとはいえ、やっぱり私達、そしてあなた達も自分の目で仲間の実力を知る必要があるわ。だから、まずは試合を行います!」

 

美奈「17人だから、一人交代でまずは抜けてもらって、8人1チームで試合をやるわよ!」

 

早速、このメンバーで試合をすることになった。全員、レベルは日本トップクラス。正直、千歌はついていけるのか心配になっていた

 

 

美奈「今からポジションごとにくじ引きをしてもらいます!Aだった人はビブスを着てね」

 

こうしてくじを引き始めたメンバー達。順番は周り、千歌の番がまわってきた

 

 

千歌「(何が出るかな〜)」ゴソゴソ

 

千歌「…Aだね」

 

 

曜「千歌ちゃん、A?」

 

千歌「そうだよ!曜ちゃんは?」

 

曜「私もAだよ!頑張ろうね!」

 

千歌「うん!」

 

聖良「あ、私もAです」

 

ことり「ことりも〜♪」

 

全員くじを引き終わり、チーム分けが完了した。メンバーは以下の通りになった

 

 

 

 

ー Aチーム ー

 

FW 綺羅ツバサ、黒澤ダイヤ

 

MF 高海千歌、渡辺曜、矢澤にこ

 

DF 鹿角聖良、南ことり

 

GK 松浦果南

 

 

 

ー Bチーム ー

 

FW 鹿角理亞、渡辺月

 

MF 桜内梨子、園田海未、統堂英玲奈

 

DF 優木あんじゅ、東條希

 

GK 高坂穂乃果

 

 

 

※ビブスチームの選手の名前の横に〇をつけてあります

 

 

 

凛「凛、くじ運悪いにゃー…」

 

真恋「大丈夫よ凛ちゃん、すぐに交代するから体をほぐしておいてね」

 

美奈「ルールは延長なしの15分間!必殺技はあり!みんな、頑張ってね〜」

 

 

 

 

ピーーーー!!

最初はAチームからキックオフ。ダイヤは千歌にボールを下げ、前線に上がる

 

 

〇千歌「(よし…気合い入れていかないとね)」

 

月「もらった!」ズザー!

 

月の鋭いスライディング。しかし、千歌はそれを上手く交わし、前線にいるツバサにパスを出した

 

 

〇千歌「ツバサさん!」パス

 

月「(上手いなぁ…流石だね)」

 

〇ツバサ「いい動きね。千歌さん」

 

一気に攻め上がるAチーム。DFを抜ければゴールは目の前。しかし、Bチームもそう簡単には譲らない

 

 

希「ー バニシングカット ー!」ビュン!

 

〇ツバサ「!!(瞬間移動…)」

 

あんじゅ「希ちゃんナイス!」

 

ディフェンス技でボールを奪った希は、海未にボールを渡し、攻撃を開始した

 

 

海未「練習とはいえ、全力で行きますよ! 」ダッ!

 

理亞「(負けないんだから…!)」ダッ!

 

一気に加速するBチーム。パスをまわしながらゴール前まで迫った

 

 

美奈「(やっぱり海未ちゃんは中盤も優秀ね)」

 

 

Bチームのシュートチャンス。海未からパスを受け取ったのはーーーー

 

 

 

 

月「果南ちゃん!行くよ!」

 

〇果南「あの頃よりも強くなった私…見せてあげるね」

 

県予選以来の勝負。あの時味わった圧倒的なシュートが、再び放たれる

 

 

月「ー ザ・エクスプロージョン ー!!」ドガァン!!

 

 

穂乃果「月ちゃんの必殺シュート!!」

 

凛「ド派手だにゃー!?」

 

流れる流星。あの頃だったら手も足も出なかった…だが、

 

 

〇果南「今は違うよ!ひと味もふた味も!」バッ!

 

〇果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!」ドガァン!

 

暴れ狂う海竜が流星に食らいつく

 

 

〇果南「ぐっ……」グググ

 

 

〇曜「あの月ちゃんのシュートを!?」

 

梨子「抑えてる!!」

 

月「へぇ…」

 

 

〇果南「うおぉぉぉぉ!!!!」グググ!

 

 

果南が過去の自分を超えた瞬間であった

 

 

〇果南「ふふ♪やったね」

 

月のシュートを抑えた果南。ロングスローでカウンターを仕掛ける

 

 

〇にこ「あのシュートを止めるなんて…やるじゃない。果南」

 

にこのボールさばきは世界レベル。足を出す、タックルをするだけでは、にこのボールは奪えない

 

 

梨子「え!?」スカッ

 

希「にこっちタンマ!!」スカッ

 

 

〇にこ「止まるわけないでしょ!千歌!」パス

 

ドリブルで相手を交わしまくったにこは千歌へパス。千歌はシュート体制に入った

 

 

〇千歌「ありがとうございます!にこさん!」ゴオォォ!

 

〇ツバサ「あのシュートは…」

 

〇ことり「千歌ちゃんの必殺シュート!」

 

 

〇千歌「行きますよ!穂乃果さん!」

 

〇千歌「ー サンシャインアッシュ ー!!」ドガァン!

 

かかと落としで放たれた太陽が、穂乃果へと迫っていく

 

 

穂乃果「来たね。千歌ちゃんの太陽!」

 

穂乃果は右手をボールに向ける。穂乃果の最強キャッチ技、愛は太陽が千歌のシュートを取り込む

 

 

穂乃果「でも、穂乃果もあれから、たくさん練習したんだよ!」

 

〇千歌「!?穂乃果さんの太陽が…」

 

〇果南「前よりも桁違いに…熱い」

 

 

穂乃果「うおぉぉぉぉ!!!!!!」

 

穂乃果「ー 愛は太陽 V3 ー!!」

 

千歌の太陽を穂乃果の太陽が焼き尽くした

 

 

〇千歌「凄い…穂乃果さん!」

 

穂乃果「千歌ちゃんもね!まだまだ行くよ!」

 

 

拮抗する試合。選手全員がレベルアップしているため、決めきるところでなかなか決めきれない

 

 

〇ダイヤ「ー 紅蓮 ー!」ドガァン!

 

穂乃果「ー 愛は太陽 V3 ー!」

 

 

 

理亞「ー ウルフレジェンドGX ー!!」ドガァン!

 

〇果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!」ドガァン!

 

 

 

 

月「なかなか決めきれないね」

 

英玲奈「そうだな。お互い、技を知り尽くしているから…か」

 

果南と穂乃果、ここまで受けたシュートは今までに受け止めてきたシュート。ボールが撃たれるタイミングやスピードは把握している

 

 

 

英玲奈「ならば、これはどうかな。松浦果南」バッ!

 

〇果南「!?(英玲奈さん!?)」

 

英玲奈が手を払う。すると前方にバリアのような壁が出現した

 

 

あんじゅ「あの技は…」

 

〇ツバサ「みんなの前では初めてね」

 

英玲奈「行くぞ」

 

ボールをバリアに叩きつける英玲奈。するとバリアは光を放ちーーーー

 

 

 

英玲奈「ー シェルビットバースト ー!」ドドドド!

 

ーーレーザー光線に分裂し、ゴールに襲いかかった

 

 

〇果南「嘘でしょ!?これ全部…」

 

英玲奈「あぁ、全部シュートだ」

 

 

バシューーーーン!!!!!!!!

分裂したレーザーシュートが、ゴールネットを揺らす。これでBチームが先制。果南は不意な必殺技への対応が遅れ、技を放てなかった

 

 

〇果南「うわ〜…やられた」

 

〇聖良「英玲奈さんがシュート技を…」

 

 

英玲奈「初見のシュートにも対応できるようにな。松浦果南」

 

 

ここで先制したBチームに凛が入る。交代するのは月。試合時間は残り半分となっていた

 

 

 

 

凛「やーっと凛の番が来たにゃ!」

 

月「でも、お話は進むらしいよ?」

 

凛「え…?」

 

凛「そんなのないにゃゃゃゃゃゃーー………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

凛「」ズーン……

 

 

 

にこ「どうしたのよ…凛、」

 

聖良「どうやら、自分がプレーしている時間がカットされちゃったみたいで…」

 

ことり「ははは…」

 

 

凛「カットってなんにゃ…お話が進むってなんにゃ…」ズーン……

 

 

凛が落ち込むのはかなり珍しい。かなり深刻なことでない限り…しかし、いつまでも落ち込んではいられない

 

 

 

「みなさーん!昼食ですよー!」

 

 

穂乃果「お!やったーお昼だー!」

 

曜「うわ〜!おにぎり!美味しそう」

 

今日の昼食は塩むすび。山に積まれたおにぎりは、太陽に照らされ、キラキラと輝いていた

 

 

千歌「凄い!たくさん!」

 

「はい!出来たてですよ!」

 

海未「ありがとうございます…いただ…ん?」

 

千歌「ほえ?」

 

曜「ん?」

 

梨子「?」

 

にこ「?」

 

希「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸、花陽「♪♪♪♪」

 

 

 

「「「花丸ちゃん!!??」」」

「「「花陽ちゃん!!??」」」

 

 

 

美奈「あ、言い忘れてたけど、2人には日本代表マネージャーをやってもらうからね〜♪」

 

 

 

「「「ええぇぇぇぇぇぇ!!!!???」」」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

花丸「浦の星女学院1年、国木田花丸ずら!」

 

花陽「音ノ木坂学院1年、小泉花陽です!」

 

花丸、花陽「よろしくお願いします(ずら)!」

 

 

曜「花丸ちゃん、来るならそう言ってよ〜」

 

海未「驚きましたよ…」

 

花丸「マル達は言おうと思ってたんだけど…美奈さんが驚かせようって…」

 

 

千歌「またお母さんかぁー…」

 

にこ「まったく…」

 

こうして、新たなメンバーが加わった日本代表。そしてここから、物語は大きく動き出す

 

 

 

美奈「おにぎり食べながら聞いてね〜みんな!」

 

ツバサ「?監督…」

 

希「このあとの予定…ですか?」

 

真恋「えぇ!あと、練習試合のね」

 

月「昨日言っていたやつですね」

 

真恋「そうよ。まずは午後の説明…さっきのデータを元に、それぞれに組まれたメニューをやってもらうわよ」

 

凛「凛のデータって…なん、です…か」ズーン

 

花陽「り、凛ちゃん、元気だして!」

 

美奈「そして近日、練習試合がありますよ!場所はアキバスタジアム。大歓声の中で試合をやってもらうからね〜♪」

 

 

あんじゅ「大歓声…本番の空気慣れ、かしら」

 

英玲奈「だろうな。だが、試合相手とは…」

 

美奈「それはその日のお楽しみ!練習試合が終了したら、アジア予選の抽選会があるからね〜」

 

 

千歌「…抽選会」

 

 

練習試合後に抽選会、要するに世界との戦いはすぐそこまで迫っている。ということである。さっきのわいわいムードが一変、緊張感でグラウンドは静かになっていた

 

 

曜「すぐだね…試合」

 

月「そういうもんだよ。今日からひとつ上の練習をしていかないとね」

 

 

美奈「そうよ〜!みんなには頑張ってもらわないとね」

 

 

 

 

美奈「今のままじゃ、予選突破は困難よ?」

 




シェルビットバースト
イナGOで登場するキャラ、サリュー・エヴァンのシュート技です。英玲奈さんには無属性の技がピッタリだと思って、この技を採用しました。じゃあ、ほかの技も無属性??


次回から練習試合に入ります!対戦相手はいったいどこなのか…



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第3章 4話 「盛大!アキバスタジアム」

皆さん、数日ぶりです。ルビィちゃんキャンディーです。今回のお話から、ついに日本代表が本格的に動き出します。練習試合は数話…で終わるかな?そこからアジア予選の1試合目の国が発表されます。お楽しみに!




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

お互いの実力を知るためにミニゲームをした日本代表。そして、昼食を出すために登場した日本代表マネージャーは…花丸と花陽だった!!!!アジア予選抽選会、そして練習試合が迫る中、メンバーは練習に励むのであった

 

 

 

 

 

 

 

ー 練習試合、アジア予選抽選会 当日 ー

 

 

 

『さあ!ついにこの日がやって来ました!!FFI、アジア予選抽選会 当日、そして日本代表の強化練習試合が始まります!!会場のアキバスタジアムには、すでに大歓声が巻き起こっているぅ!!!!』

 

 

 

 

 

曜「決勝戦以来だね。千歌ちゃん!」

 

千歌「うん!まさか、またここでサッカーができる日が来るなんて…」

 

月「アジア予選は会場が変わるから、当分はここで試合が出来なくなるね」

 

日本代表メンバーは控え室で、入場の準備をしていた。あれから、メンバーはそれぞれの課題を見つけ、毎日、きつい練習をこなしてきた

 

 

凛「…よし、」

 

花陽「凛ちゃん、気合い入ってるね!」

 

凛「あのミニゲームでの謎の屈辱をこの試合で晴らすにゃ!暴れに暴れてやるにゃ」

 

花陽「無理はしないでね?」

 

 

美奈「はいはーい!全員いるわね♪今からスタメンを発表するからね〜」

 

 

美奈の言葉で、日本代表メンバーに緊張が走る。スタメン、レギュラー。どうしても出場できる人数は限られる。この試合が、本番前の最後のチャンスになるであろう…

 

 

美奈「じゃあ、発表するわね〜」

 

 

 

 

センターフォワード 星空凛

セカンドトップ 鹿角理亞

右サイドハーフ 渡辺曜

左サイドハーフ 園田海未

トップ下 高海千歌

センターハーフ 桜内梨子

センターハーフ 統堂英玲奈

センターバック 鹿角聖良

右サイドバック 優木あんじゅ

左サイドバック 南ことり

キーパー 高坂穂乃果 ☆

 

 

 

 

 

美奈「以上よ!ベンチスタートのメンバーはアップ、忘れないでね〜」

 

 

凛「凛がスタメンにゃー!!!」

 

花陽「凄いよ凛ちゃん!」

 

 

理亞「…(スタメン!)」

 

聖良「理亞、頑張りましょう!」

 

理亞「はい!姉様」

 

 

梨子「(私がスタメン!?なんで…)」

 

英玲奈「よろしく頼む。梨子」

 

梨子「!!??はい…よろしく、お願いします…」

 

月「(ふむ…)」

 

 

 

 

試合開始まであと少し、選手達の入場の時がやってきた。そしてここで、美奈から選手全員にとある説明がなされた

 

 

海未「!!!!???」

 

千歌「今、なんて…??」

 

 

美奈「入場する時は、一人ひとり、電光掲示板とアナウンスで選手紹介があるから、みんな笑顔で観客へのアピールも忘れないでね〜♪」

 

 

果南「笑顔…アピール??」

 

ダイヤ「あんな大きな会場でわたくしの紹介……」

 

 

海未「むりですぅぅぅ!?はずがじいぃぃ!!」

 

海未は顔を真っ赤にし、部屋の隅にうずくまる。昔から海未は人前が大の苦手である。すかさず穂乃果達が落ち着かせようとするも…

 

 

海未「あなた達はいいですけどね!?私はダメなんですよ!!!!じにまずぅぅぅ!!!!」

 

穂乃果「海未ちゃん、落ち着いて!?」

 

ことり「(試合は大丈夫なのかなぁ…)」

 

 

どんなに嫌でも、その時はやってくる……会場の歓声が大きくなったと思いきや…その歓声を貫くほどの大きな音楽とアナウンスが、会場に鳴り響いた

 

 

穂乃果「ほら、行くよ!海未ちゃん!」

 

海未「嫌あぁぁぁぁぁあ!!!!??」

 

 

 

 

 

『さあ!選手入場です!まずは我らが日本代表キャプテン、熱い心とずば抜けたセンスで仲間を導くGK、「太陽の守護神」、高坂穂乃果ぁぁ!!!!』

 

穂乃果「いっえーーーーい!!!!ファイトだよ!」

 

 

 

『続きまして、今年の全国大会 優勝校、浦の星女学院キャプテン!成長スピード日本一のミカン少女!MF、高海千歌ぁ!!!!』

 

千歌「かんかんみかーーん!!!!」

 

 

 

『3人目はこの選手!!』

 

海未「嫌です!!!!」

希「ほら!行かんと!」

 

 

『驚異の身体能力で放つシュートは光速の矢!走れば風を起こし、一度シュートを撃てば暴れ回る!!』

 

にこ「希!!そっち押さえて!」

海未「離してぇぇ!!!!!!」

 

 

『日本の風神と言えばこの選手!!』

 

にこ、希「がんば」ツキトバシ

海未「(あぁ、私は今日、死ぬのですね…)」

 

 

『MF、園田海未ぃぃぃ!!!!!!』

 

 

海未「」

 

 

希「完全に魂、抜けてるやん…」

 

にこ「海未、大丈夫なの?試合なのに、」

 

 

 

『その技は世界と渡り合えると人々は言ったあぁ!!空間を支配し、攻守ともにその実力はワンダー!!DF、南ことりぃ!!』

 

ことり「ちゅんチュン!ありがとうございます♪♪」

 

 

 

『本当に高2からサッカーを始めたのか!?その運動能力はまさに、天才!!グラウンドを駆け抜けるスプリンター、MF 渡辺曜!!』

 

曜「ヨーソローーー!!!!」

 

 

 

『浦の星女学院の戦術は彼女の指揮から!!仲間を導くその姿は、まさに司令塔!日本代表の勝利も彼女が導いてくれるのか!? MF 桜内梨子ぉ!!』

 

梨子「が、頑張ります…」

 

 

 

『そのドリブルはまさに電光石火!目で追うなんて無謀な考え!雷を纏った虎は、世界にも轟かんと吠えます!!1年生にして日本代表FW 星空凛!!』

 

凛「にゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

『その牙は今度は世界のゴールに向けられた!北海道が生んだ天才FW!!今大会の代表1年はレベルが高いぞ!!FW 鹿角理亞!!』

 

理亞「スタメン…本番でも勝ち取る!」

 

 

 

『同じく北海道から来てくれたぁ!ディフェンス、そして状況判断と指示の優秀さ、どれを見ても完璧!!相手は凍らされたことさえわからない!DF 鹿角聖良!!』

 

聖良「ありがとうございます!頑張ります!」

 

 

 

『そして…来ました!!UTX高校のエースであり、日本サッカーの最高戦力の一人!!全国本戦では新技からゴットストライカーと呼ばれた天才ストライカー、FW 綺羅ツバサ!!』

 

ツバサ「そうよ!私がゴットスt『続いて、皇帝様の登場だあぁ!!』

 

 

『A‐RISEの、そしてUTX高校の頭脳!彼女の目はいったいどこにあるのか!?フィールドの状況判断は日本一!! MF 統堂英玲奈!!』

 

英玲奈「精一杯頑張ろう」

 

 

 

『続いては、全国本戦守備力ナンバーワンのこの方!!睡蓮のように美しく咲くも、そのディフェンスは破壊という名にふさわしい!! DF 優木あんじゅ!!』

 

あんじゅ「頑張るわね〜」

 

 

 

『浦の星女学院の炎のストライカー!!その炎と、まるで舞いのようなプレーで人々を魅了する!!サッカー部で生徒会長、最っ高にクールなFW 黒澤ダイヤ!!』

 

ダイヤ「自分の役割をしっかりと果たしますわ!」

 

 

 

『そして、日本代表のもう一人の守護神の登場だぁ!!この選手の迫力満点な技は大地を、そして我々の心を揺らした!GK 松浦果南!!』

 

果南「ふーん♪今日もだいぶいい感じ♪」

 

 

 

『この選手を知らない人はいない!サッカー日本代表でありながら、フリースタイルフットボールの日本代表でもあります!!世界レベルのキープ力、MF 矢澤にこ!!』

 

にこ「にっこにっこにー♪♪」

 

凛「え?寒…」

 

にこ「ぬぁんでよ!!!!」

 

 

 

『彼女のディフェンスは神出鬼没!?冷静な判断も兼ね備え、GKも優秀なディフェンス特化型スピリチュアルガール! DF 東條希!!』

 

希「希パワーたーっぷり、注入してあげる♪はい!プシュー!!」

 

凛、曜、千歌、にこ「頂きましたぁぁ!!」

 

理亞「」ビクッ

 

 

 

『そして…最後を飾るのはこの選手!!イタリアから帰ってきたスーパーストライカー!そのプレーは、世界にも通用するはず!!ツクヨミと呼ばれたFW 渡辺月!!』

 

月「みんな!よーろしくー!」

 

 

『以上、17人です!会場の皆さん!今一度、大きな声援をよろしくお願いします!!!!』

 

 

わぁぁぁぁ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

ルビィ「…」

 

真姫「始まるわね。試合」

 

ルビィ「うん…」

 

真姫「心配?」

 

ルビィ「みんななら大丈夫…だとは思うけど、」

 

真姫「けど?」

 

ルビィ「…」

 

 

「(黒澤ルビィ…やはりまだ…)」

 

 

 

 

『続きまして、日本代表メンバー全員の紹介を終えたところで、本日の練習試合の相手チームをご紹介します!!』

 

 

聖良「いったいどのチームと試合を…」

 

ことり「あ!あの人達かな?」

 

千歌「…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

黒裂「久しぶりだな。高海千歌」

 

 

千歌「黒裂真命さん!!」

 

千歌達の前に現れたのは、浦の星女学院と本戦準々決勝で、激闘を繰り広げた聖堂山高校の選手達であった

 

 

曜「じゃあ、練習試合の相手って…聖堂山高校さん?」

 

柾木「そうよ。高海監督が私達に練習試合のお願いをしに来たの」

 

黒裂「日本代表の諸君らの強化のために、私達も喜んで協力させてもらうよ」

 

千歌「真命さん…」

 

黒裂「いい試合にしよう。高海千歌」

 

千歌「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 日本代表ベンチ ー

 

 

 

英玲奈「聖堂山高校…私達が去年の全国本戦の決勝で戦ったチームだ」

 

あんじゅ「かなり強かったはずよね?ダイヤちゃん達、よく勝てたわね」

 

ダイヤ「わたくし達も命懸けでしたわ…(ダイヤちゃん…)」

 

果南「誰かさんのおかげでね♪」

 

千歌「あはは…あの時はとんだご迷惑を」

 

 

美奈「みんな?聖堂山高校はあなた達にも引けを取らない素晴らしいチームよ。特に、チームワークでの連携プレーは、今の日本代表よりも上よ。はっきり言ってね」

 

「「「………」」」

 

美奈「だからこそよ。この試合で、連携プレーを聖堂山高校から学んでね!協力できないチームは、一勝もできないわよ?」

 

「「「はい!!!!!」」」

 

美奈「じゃあ、行ってらっしゃ〜い♪」

 

 

 

 

こうして千歌達の物語は大きく動き始めた

 

 

次回 聖堂山高校戦

 

 




という事で、次回から練習試合です!

果たして、作者は何話で練習試合を終えることが出来るのか!?



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第3章 5話 「練習試合 "課題"」

えーっと…一応、今日でチーム名は締切なのですが…どれもいい案過ぎて、なかなか決められないですね…いい加減決めないと…謎のプレッシャーがあるので、ルビィちゃんキャンディーのセンスが問われますね






 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに練習試合当日となった日本代表。お祭りムードの選手紹介も終わり、試合相手は…なんと、聖堂山高校であった!強豪校との試合…代表メンバー達は、気を引き締め、ポジションにつくのであった

 

 

 

 

 

『さあ!日本代表強化練習試合、まもなくキックオフです!前回大会 準優勝高校、聖堂山高校!果たして、日本代表はどのような試合をしてくれるのか!?』

 

 

 

理亞「準備いい?」

 

凛「バッチリにゃ!」

 

 

 

ピーーーーーー!!!!!!

キックオフの笛が鳴り、理亞が司令塔である英玲奈にボールを渡す。そのまま日本代表はいっきにラインを上げる

 

 

英玲奈「(聖堂山は攻撃的なチームか…)」

 

 

英玲奈が聖堂山の分析を始めた。英玲奈は試合中に相手を分析、そしてそのデータを元に戦術を考える

 

 

英玲奈「園田海未!」パス

 

海未「(シュートのような鋭いパス!)」

 

 

英玲奈の高速パスが聖堂山DFのあいだを抜け、海未にボールが渡った

 

 

凛「海未ちゃん!こっちにゃ!」

 

海未「頼みましたよ!」パス

 

 

前方から呼ぶ凛にすかさずパス。パスでいっきに攻めあがった日本代表。早速、シュートチャンスである

 

 

凛「まずは1点にゃ!!」ドン!!!!

 

右足を力強く踏み込む凛。凛の中に潜む虎が、今、解き放たれる

 

 

凛「ー タイガードライブ ー!!」ドガァン!

 

 

ガアオォォォォォ!!!!!!!!

咆哮と同時に突進する虎。かなり強力な技だが…

 

 

 

柾木「頼んだよ二人とも!!」

 

宗森「いつでも!」

呉井「任せて!」

 

 

凛「!?」

 

 

凛のシュートの前で待ち構えるのは、聖堂山のDF 宗森と呉井。いったい何を仕掛けてくるのか…

 

 

柾木「今!!」

 

宗森、呉井「ー エアーバレットV3 ー!!」

 

 

ドガアァァァン!!

二つの気団がシュートに命中。シュートの威力が大きく下がってしまった

 

 

柾木「あとは私に任せて!!」

 

 

柾木「ー シュートブレイクV3 ー!」ドガガガガ

 

ボールを乱打し、威力を叩き殺す。そのままボールを天高く蹴り上げーーーー

 

 

凛「止められた!?」

 

 

『止めたぁぁぁ!! 星空凛の必殺シュートは、聖堂山DFの連携により、防がれてしまいました!!日本代表、得点とはなりませんでした!!』

 

 

 

梨子「やっぱり…凄い連携…」

 

英玲奈「連携もだが、技も強化されている。これは一筋縄ではいかないな」

 

 

英玲奈の言う通り、日本代表は聖堂山の連携プレーに苦戦

 

 

にこ「はや!?」

 

恋崎「足止まってるよ!」バッ!

 

 

桶川「ー ジグザグスパーク ー!」ビリビリ

 

千歌「痛!!?」

 

 

パスが繋がり今度は聖堂山のシュートチャンスとなった

 

 

黒裂「行くぞ!高坂穂乃果!」バッ!

 

 

炎の渦を作り、強力なシュートを撃とうとする黒裂真命。しかし、日本代表のDFも黙って見ているわけには行かない

 

 

聖良「私達もシュートブロックです!」

 

ことり「行きますよ〜!」

 

あんじゅ「じゃあ…」

 

 

 

 

 

 

聖良、ことり、あんじゅ「シュートブロック技もちの方、お願いします!!」

 

 

 

 

聖良、ことり、あんじゅ「…え?」

 

 

 

 

黒裂「ー 爆熱ストームG3 ー!!」ドガアァァン!

 

 

 

 

聖良「え!?誰もいないんですか!?ブロック技…」

 

ことり「ことりのワンダーゾーンは、空中じゃ無理です!!」

 

あんじゅ「私の技も、レーザーに正確性ないから…あくまでも…」

 

 

聖良、ことり、あんじゅ「(ブロック…誰も出来ないの!?)」

 

 

 

穂乃果「うそぉ!?ことりちゃん達、何もしないの!?」

 

 

緊急事態発生。なんと日本代表のDFに、シュートブロックができる選手がいないのである。その事に気づいた聖良達は、何も出来ずにシュートを見送ることになってしまった…

 

 

穂乃果「ひとまず止めないと!」バッ

 

穂乃果「ー 愛は太陽V3 ー!!」ドン!!

 

 

穂乃果が右手から作り出した太陽が、黒裂のシュートを取り込んだ。しかし、かなり重いシュートなのだろう、穂乃果が徐々に押され始めた

 

 

穂乃果「ぐぬぬぬぬ…重い…」ググググ

 

 

海未「穂乃果!」

 

曜「穂乃果さん!」

 

 

穂乃果「負けてたまるかあぁぁ!!」ググググ

 

 

『止めたあぁぁ!!!日本の守護神、高坂穂乃果が黒裂真命の強力なシュート、爆熱ストームをなんとか防ぎきりました!!』

 

 

穂乃果「危なかったぁー…」

 

にこ「ちょっと、ヒヤヒヤさせないでよ…」

 

 

 

 

 

花陽「美奈監督!DFがシュートブロック技を誰も持っていないのは…」

 

花丸「まずい…ずらね」

 

美奈「そうね…大変ねぇ…」

 

美奈「(早く気づいてくれてよかったわ)」

 

 

 

 

英玲奈「日本代表のDFは、シュートブロック技を持っていない…」

 

梨子「このままだと、穂乃果さんの負担が…」

 

英玲奈「あぁ、これは重大な課題だな」

 

 

少しずつ、今のチームの問題点が見つかり始めた。しかし、今すぐに改善できる程、簡単なものではない。ひとまず、今は他の課題を見つけるのが先

 

 

英玲奈「頼むぞ!FW!」パス

 

 

理亞「言われなくても!」

 

 

ボールを受け取った理亞が、いっきに切り込む。凛や海未のような電光石火とは違い、にこや千歌のような、巧みな足さばきで聖堂山DFを交わしていく

 

 

穂乃果「ナイス!理亞ちゃん!」

 

 

花陽「凄いキープ力です!流石は理亞さん…」

 

美奈「(なるほどね…突破力は、申し分無しね)」

 

 

聖堂山DFを突破した理亞。そのまま畳み掛けるかのように、シュートの構えに入る

 

 

理亞「練習試合も…遊びじゃない!決める!」

 

理亞「ー ウルフレジェンドGX ー!!」ドガアァァン!

 

極めたウルフレジェンドが、風を吹き上げてゴールに迫った

 

 

柾木「なかなか強力ね…でも、負けないよ!」

 

柾木「ー シュートブレイクV3 ー!」ドガガガガ

 

理亞のシュートも必殺技で連打する柾木。最後、いっきに上空へ蹴り上げた

 

 

柾木「はあぁ!!!」ドガァン!

 

凛「ウルフレジェンドも防がれたにゃ!?」

 

理亞「……」

 

 

理亞「まだよ」

 

 

ギューーン!!!!!!

上空へ蹴りあげられたボールは、再び威力を取り戻し、ゴールへ向かう。柾木の必殺技は破られたことになる

 

 

柾木「何!?」

 

理亞「まずは1点!!!」

 

柾木「そんなーーーーーー

 

 

 

 

ーーーーでも、残念ですね」

 

 

理亞「!!??」

 

 

宗森、呉井「ー エアーバレットV3 ー!!」

 

 

ドガアァァァン!!!!

理亞の後ろから、再び気団を放った聖堂山DF。上空にあったボールに直撃し、そのままコート外へと飛んでいってしまった

 

 

理亞「な!?」

 

 

『なんと!?シュートブレイク失敗かと思いきや!!上空に打ち上げたあとに、ブロック技で追撃!!鹿角理亞のシュートも、ゴールとはなりませんでした!!!』

 

 

柾木「惜しかったね。鹿角理亞」

 

理亞「くっ……」

 

 

にこ「あのシュートも止めるわけ…」

 

英玲奈「もっと強力な、いっきに押し込むような威力でないと…」

 

 

 

 

 

 

 

美奈「というわけで!!!」

 

 

 

 

『おぉっと!?日本代表、ここで選手交代があるようです!FWの鹿角理亞に変わってーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

月「やーっと僕の出番だね!」

 

 

 

『渡辺月です!交代するのは、"月詠のストライカー"渡辺月だぁぁ!!!』

 

 

美奈「お願いね♪月ちゃん!」

 

月「任せてよ!今の日本代表に足りないこと、僕がみんなに教えてくる!」

 

 

フィールドに入った月は、自信満々の笑みでポジションへと向かった

 

 




いや〜「GGG線上のアリア」良かったですね~。一之瀬達も登場して、次回のオリオンが待ち遠しい!!(チーム名の現実逃避)



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第3章 6話 「練習試合 "少女 空を蹴る"」

最近、異常なほど暑くて体がだるいルビィちゃんキャンディーです…

DFがシュートブロック技を持っていないという、重大な問題に気づいた日本代表…果たして、どうなることやら…

Twitterの伏線回収します

ちなみに、チーム名は次回、発表します

挿絵を後書き載せました!







 

前回の、輝こうサッカーで!

聖堂山高校との練習試合が始まり、徐々に日本代表の課題が見え始めた。特に、シュートブロック技をDFが持っていないのは、大問題…そんな中、理亞と交代で月がフィールドへ!いったいどのようなプレーを見せてくれるのか!?

 

 

 

 

 

理亞「もう交代!?」

 

月「まぁまぁ、理亞ちゃん落ち着いて」

 

理亞「私がFWじゃ、勝てないってこと?」

 

月「違うよ理亞ちゃん。この試合は、勝つのが目的じゃない。知ることだよ」

 

理亞「知る…こと」

 

月「理亞ちゃんのドリブルはとても良かったよ!あとは、何が足りないか…ベンチで僕達のプレーを見て知って欲しいな」

 

理亞「……分かった」

 

 

 

 

 

『さあ、試合再開です!聖堂山GK、柾木のゴールキックが…今、高く蹴られました!』

 

 

 

日向「天瀬!」パス

 

天瀬「!」

 

 

ヘディングで天瀬にボールを渡す日向。天瀬はそのままドリブルで攻め込んできた

 

 

天瀬「黒裂さん!」

 

黒裂「よし…畳み掛けるぞ」

 

 

天瀬が黒裂に呼びかけ、二人がコートの中心で構える

 

 

海未「いったい何を…」

 

曜「!!あれは…」

 

 

黒裂「必殺タクティクス」

 

「ー サウザンドロード ー!!」ビュン!!

 

 

聖堂山の必殺タクティクス。二人の選手が高速で両サイドを駆け抜ける。一瞬で移動するため、強風が巻き起こり、選手達は身動きが取れないでいた

 

 

にこ「何よこれ!?」

 

海未「音ノ木坂の"KiRa-KiRa Sensation!"に似ていますが…」

 

ことり「こんな強風はおきないよ〜!?」

 

 

天瀬「よし!抜けた!」

 

 

サウザンドロードで日本代表のDFまで全員、抜ききった天瀬と黒裂。ボールを持っている天瀬は、黒裂にボールを渡そうとした

 

 

 

天瀬「お願いします!黒さーーーーーーガキィィィィィィィン!!!!

 

黒裂「!?」

 

穂乃果「凍った!?」

 

 

聖良「ー スノーエンジェル ー」

 

 

『出たあぁぁ!!鹿角聖良のディフェンス技、"スノーエンジェル"!!高速接近から繰り出さるその技は、凍らされるまで誰も気づけない!天瀬はゴール前で氷漬けだぁ!』

 

 

聖良「1対1のディフェンスなら負けません」

 

 

果南「さっすが!やっぱ速いね!」

 

ダイヤ「ルビィも反応が遅れる程です…あれを避けるのは…かなり厳しいですわね」

 

 

ボールを奪った聖良は、梨子にパスを出す。司令塔である梨子は、何か戦術を仕掛けなければいけないのだが…

 

 

梨子「(まだ全員のことを知れていない…)」

 

 

梨子が必殺タクティクスや作戦を仕掛けるにあたって、選手それぞれのデータは必須。しかし、まだ結成したチームであるため、梨子はまだ完全にメンバーのことを把握しきれていなかった

 

 

梨子「(神のタクトFIを使いたいけど…)」

 

 

 

 

月「ついてこられるか不安?」

 

梨子「!?月ちゃん!?」

 

 

いつの間にか梨子のとなりにいる月。え…月ちゃん、FWだよね?そう思っていたのもつかの間

 

 

月「完璧な指揮を出したいけど、出せない…って感じかな?」

 

梨子「…」

 

 

月の言う通り、梨子は日本代表として完璧な戦術を求めていた。自分の役目を…自分も力に…そんなことを考えて、未熟である自分の指揮を躊躇っていた

 

 

月「梨子ちゃん。よく考えてみて?」

 

梨子「?」

 

月「何故、美奈さんは司令塔と言われている選手を、二人もフィールドに出しているのか」

 

 

確かに一つのチームに司令塔二人…は珍しい…いや、普通はない?二人の考えは違うから戦術は変わってくるし…どうしても意見の食い違いがおきる…

 

 

月「梨子ちゃんだけだと、完璧な指揮をできない…ならさ、」

 

 

 

 

 

 

 

海未「パスコースがないですね…」

 

穂積「そう簡単には…!」

 

 

一方、ボールを持っている海未は、聖堂山のDFに行く手を阻まれていた

 

 

海未「(ラブアローシュートの射程範囲外ですし…)」

 

 

向こうは海未達のことを調べている…何もさせてもらえずに、苦戦する海未に司令塔が呼びかける

 

 

梨子「海未さん!こっちです!」

 

海未「!…お願いします!!」パス

 

 

後からフォローに入った梨子。そしてその横にはーーーー

 

 

英玲奈「私も不思議に思っていた」

 

梨子「何故、司令塔が二人もいるのか」

 

 

梨子は指揮の構えに入る。フィールドの真ん中で、深呼吸をしながら…そして、

 

 

英玲奈「ー エンペラータイム ー」ポン!

 

 

英玲奈が必殺技である"エンペラータイム"を発動。それと同時に梨子の肩に手をおき、そのオーラを流し込む

 

 

梨子「(本当に来た!!)」

 

英玲奈「私は敵・味方を分析するのは得意だが、味方に指示するのは不得意だ」

 

梨子「私は、分析は無理だけど、みんなを導くことなら…!!」

 

 

梨子「一人でできないなら…」

 

英玲奈「それを補うまで!」

 

 

 

 

 

 

 

梨子、英玲奈「ー 王者のタクト ー!!」

 

 

新たな指揮が生まれた瞬間である

 

 

千歌「王者のタクト!?」

 

月「へぇ!かっこいい技だね!」

 

 

梨子「曜ちゃん!」ビシッ!

 

 

梨子が赤く染まった光を手から放つ

 

 

曜「!(パスが繋がった!)」

 

梨子「凛ちゃん!」ビシッ

 

凛「こっちに走るんだね!」バッ

 

曜「凛ちゃん!」パス

 

凛「凄いにゃ!ピッタリ!」

 

 

明らかに先程よりも動きが良くなっている日本代表。しかし何故、梨子は選手達の指揮ができるようになったのか…

 

 

 

美奈「ポイントは二人の技」

 

花陽「梨子さんと英玲奈さんのですか?」

 

美奈「梨子ちゃんの"神のタクト"は優秀よ。味方の動き、パス、シュート。全てを梨子ちゃんが指揮してくれる…」

 

美奈「でも、それは味方のことを完全に理解しきっているから出来ること。この新メンバーでは、梨子ちゃんだけの指揮なんて不可能」

 

花丸「そこで、英玲奈さんの…」

 

美奈「そう!"エンペラータイム"には、フィールドにいる選手の能力を一瞬で把握する効果もあるからね。それを狙ったの」

 

ツバサ「だから司令塔二人…」

 

希「全ては監督の思惑通りってことやな」

 

 

 

 

 

 

梨子「千歌ちゃん!そのままドリブルを!」ビシッ!

 

千歌「了解!!」バッ!

 

 

黒裂「くっ…このままでは突破される…」

 

 

梨子の指揮で攻撃精度がいっきに上昇した日本代表は、すでに聖堂山の最終ラインにまで迫っていた

 

 

梨子「千歌ちゃん!月ちゃんへ!」ビシッ!

 

千歌「月ちゃん!」パス

 

 

月「よし!チャンスだね」

 

 

月はシュートを撃てる位置まで来た。しかし、聖堂山もそう簡単には譲らない

 

 

宗森「これ以上は!」バッ!

 

月「…!」

 

 

宗森は"エアーバレット"をすでに月に放つ準備を整えていた

 

 

曜「月ちゃん!!」

 

梨子「危ない!避けて!」

 

 

梨子達が咄嗟に警告するも…

 

 

宗森「ー エアーバレットV3 ー!」

 

凛「間に合わないにゃ!?」

 

海未「月…!!」

 

 

 

 

 

 

月「僕を甘く見てもらっちゃ、困るなぁ…」バッ!

 

 

 

宗森「!?」

 

 

月は飛んだ

 

 

 

凛「避けた!?」

 

海未「回転技…」

 

 

まるで体操選手のような…ボールを両足で挟み、気団をギリギリで交わし、空中へーーーー

 

 

 

月「ー ウルトラムーン ー!」

 

 

その姿は、まさに女神そのものであった

 

 

千歌「DFも一緒に飛び越えたよ!」

 

曜「月ちゃん!シュート!」

 

 

月「了解であります!」ブォン!

 

千歌、曜「!?」

 

 

月は曜達に返事をすると、まだ、"ウルトラムーン"の途中…DF 宗森の真上で、両足に挟んでいたボールを勢いよく空に投げた

 

 

曜「"ザ・エクスプロージョン"じゃない!?」

 

 

月「見せてあげる!僕の本当の必殺技を!」バッ!

 

 

地面に着地した月は、再び上空にあるボールの元へと飛んだ

 

 

美奈「みんな。特にFWの子達は、月ちゃんのシュート。よく見ておいてね」

 

理亞「月さんの…」

 

ダイヤ「シュート…」

 

 

 

月「中途半端な重さじゃ、GKに弾かれる」

 

 

月はボールのところまで飛ぶと、回転しながら狙いを定める。そして、

 

 

月「っっっっ!!!!!」ドオォン!!

 

 

月の足がボールにめり込むように入る。すぐに撃つのではない。もっとオーラを、もっと重く、月はパワーをどんどん上げていく

 

 

月「うおおおおぉ!!!!!!」

 

 

月「空よ!!!降り注げ!!!」

 

 

 

 

月「天空落としぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」ドガアァァン!!

 

 

月が蹴り落としたのはボールだけではない。空を、宇宙をまとめて蹴り落としたのである

 

 

穂乃果「あれが月ちゃんの!!」

 

英玲奈「凄まじい威力だ…」

 

 

ドオォォォン!!!!!

轟音と共に、ゴールに迫るボール。柾木は"シュートブレイク"で弾き返そうとするも…

 

 

柾木「(お、重すぎる…ーーーーーー

 

 

 

 

ーーーーうわぁ!!?」

 

 

 

 

『ゴール!!!!日本代表、渡辺月やりました!!超強力な必殺シュートで、聖堂山ゴールを貫きましたぁ!!これで1-0です!』

 

 

月「〜♪やったね!」

 

 

 

 

ツバサ「凄いシュートね。キーパーが取れないほどの…重さ」

 

美奈「そう!月ちゃんのFWとしての強いところは、あの重たいシュート!」

 

理亞「重たい、シュート…私のシュートは、全然…」

 

美奈「気づいた?理亞ちゃんや凛ちゃん。今の日本代表のFWの選手達に足りないのはシュートの重さ。パワータイプの選手や、外国のキーパーだったら、簡単にねじ伏せられちゃうわよ?」

 

理亞「今のシュートじゃ…軽い」

 

美奈「気づけたことが大きな一歩。この試合の意義よ」

 

 

 

FWのシュートの軽さ、司令塔、DFのシュートブロック技…探せば探すほど課題が見つかる日本代表…果たして、試合終了までにいくつの課題が見つかるのだろうか…

 

 

 

日本代表 1-0 聖堂山高校

 

 




王者のタクト
野坂悠馬が使う必殺タクティクスです。このお話では、"エンペラータイム"(一瞬で選手を分析)と"神のタクト"を合体した技として書いています

天空落とし
【挿絵表示】

我らがイケメンストライカー、吉良ヒロト(タツヤ)の必殺シュートです。この技は人気が高く、月ちゃんには絶対に使わせようと考えていました。ちなみに、Twitterを見てくださっている方は、察していただけたでしょうか?


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第3章 7話 「練習試合 "壁、再来"」

中間テストや模試があって精神的にボロボロなルビィちゃんキャンディーです。
では、日本代表のチーム名を発表しようと思います。約1週間、悩みに悩んで行き着いた名前が…

「サニデイジャパン」です!

決定の理由はいろいろありますが、1番の理由は"全員で一緒に"がテーマの"Sunnyday Song"。そして、Sunnyなので"日の丸"とかぶせてあります。たくさんのご意見、本当にありがとうございました!これから"サニデイジャパン"の応援をよろしくお願いします!




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

さまざまな課題が見つかった日本代表。そんな中で、月の助けもあり、梨子と英玲奈が必殺タクティクス"王者のタクト"を完成させた。パスが繋がり始めた日本代表は、月の強力なシュート"天空落とし"で先制点。そのまま前半を1点リードで終了したのであった

 

 

 

 

 

 

ー 日本代表ベンチ ー

 

 

 

果南「月ちゃん、凄いシュートだったね」

 

ダイヤ「あのような強力なシュート…いつから、」

 

月「イタリアに行ってる時に習得したんだ♪」

 

 

……?浦の星女学院の選手達には違和感があった。

…イタリアに行ってる時??

 

 

曜「え…じゃあ、なんで県予選の決勝戦で"天空落とし"を使わなかったの?」

 

千歌「確かに…」

 

 

月が大会で手を抜くとは思えないし、浦の星女学院を勝たせようとしたとも思えない。

ならば、天空落としをあの時使わなかった理由はなんなのか…

 

 

 

 

 

月「撃てなかった」

 

穂乃果「?」

 

海未「撃てなかった、とは?」

 

月「"天空落とし"は確かに威力は充分あるけど、撃つまでに隙が生じる…だから、あの時は撃たせてもらえなかったんだ」

 

梨子「もらえなかった…DFだから、鞠莉さん?」

 

月「いや…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「"天空落とし"…」

 

真姫「ルビィなら撃たせないんじゃないの?あんな隙だらけの…」

 

ルビィ「確かに絶対に撃たせない…でも、」

 

 

隙だらけでも、取られなければいい。

単純な考えだが、そこまで余裕を作るのはかなり難しい。

月のプレーにはまだかなりの余裕がある…

 

 

真姫「あんなの見せられたら、ルビィも黙ってはいられないわね」

 

ルビィ「早く治したい…けど」

 

 

 

 

真姫「間に合わないわよ」

 

ルビィ「…」

 

 

その言葉がどれほど苦痛なのかは、真姫も理解している。

しかし、こうはっきり言わなければルビィは無茶をしかねない

 

 

真姫「この試合観たら、病院に戻るわよ」

 

ルビィ「うん…」

 

 

真姫からは見えないところで、ルビィの手は音をあげるかというぐらい強く、握られていた

 

 

 

 

 

 

一方、日本代表ベンチでは美奈が後半の指示を出していた

 

 

 

美奈「後半は果南ちゃんがGKね!」

 

果南「よし!頑張るよ!」

 

美奈「あんじゅちゃんに変わって希ちゃんがDFね♪」

 

希「やっとウチの出番やな」

 

美奈「あと、ツバサちゃんも出るからね〜」

 

 

 

センターフォワード 綺羅ツバサ

セカンドトップ 渡辺月 ☆

右サイドハーフ 渡辺曜

左サイドハーフ 園田海未

トップ下 高海千歌

センターハーフ 桜内梨子

センターハーフ 統堂英玲奈

センターバック 鹿角聖良

右サイドバック 東條希

左サイドバック 南ことり

キーパー 松浦果南

 

 

 

 

にこ「FW…凄い存在感ね」

 

ダイヤ「ツバサさんと月さん…どちらも日本のトッププレイヤーですものね」

 

 

後半が間もなく始まる。

日本代表選手達はコートに入り、聖堂山の選手達を待つ

 

 

千歌「後半も頑張りましょう!真命さん!」

 

黒裂「あぁ、その事なんだが…」

 

 

黒裂は申し訳なさそうに続ける

 

 

 

黒裂「私達の役目はここまでだ」

 

千歌「え……」

 

 

その時、スタジアムに実況の大きな声と大歓声が鳴り響いた

 

 

『今入った情報です!!なんと、聖堂山高校は前半のみの出場のようで、後半からは……』

 

 

 

 

 

 

 

 

綾野「久しぶりだな。浦の星女学院」

 

ダイヤ「綾野さん!?」

 

 

『千羽山高校が出場するとの事だあぁぁ!!!!!』

 

 

まさかのチームごと交代という衝撃の展開に、日本代表達は驚きを隠せなかった

 

 

凛「全員交代するの!?」

 

理亞「どんなチームなのか、全く分からない…」

 

 

美奈「そうよ♪それが狙いだもの」

 

 

 

 

 

月「なるほどね。相手が変化しても、対応する力…か、」

 

ツバサ「美奈監督…とんでもないことを考えるのね」

 

 

聖堂山の選手達にかわり、千羽山の選手達がポジションにつく。

聖堂山高校が攻撃特化型のチームだとすれば、千羽山高校はディフェンス特化型

 

 

曜「雰囲気が一気に変わったね」

 

梨子「あのDFの厚さ…前よりも強化されてる」

 

 

千羽山の選手達が全員、ポジションについたところで、後半の始まりを知らせる笛がーー

 

 

ピーーーーーー!!!!!

 

 

 

『さあ!千羽山ボールで後半が始まりました!なんとチームごと交代するという、衝撃の展開ではありますが、これは美奈監督に考えがあるのでしょう!千羽山が一気に攻め上がります!!』

 

 

田主丸「私達もたくさん練習したんだから!!」

 

原野「そう簡単にはボールは取らせないよ!」

 

 

原野の言う通り、日本代表は千羽山からなかなかボールを奪えないでいた。

当たり前ではあるが、浦の星が本戦で戦った時よりも動きが違う

 

 

原野「いいよ、みんな!」

 

育井「もっとパスを回して走るんだ!」

 

 

梨子「は、速い…しかも、足を止めていない!」

 

英玲奈「これは、マークにつくのはかなり厳しいぞ…」

 

 

走る千羽山。

千羽山高校がある群馬県には、山道・上り坂がたくさんある

 

学校の裏には箱根駅伝の山道が可愛く見えてくる上り坂があり、千羽山高校サッカー部は毎日そこを走っている。

地面は整備されていないゴツゴツ岩道なので、走るだけで足腰が鍛えられる

 

 

 

月「ただ走っているだけじゃ、あんな筋肉はつかないね」

 

曜「フィジカルも凄いよ。競り合いでボールを奪えるかどうか…」

 

 

千羽山の脅威の運動量に翻弄される日本代表。

このままDFまでも突破され、失点の危機…かと思いきや

 

 

 

ことり「これ以上は行かせません!」バッ

 

田主丸「な!?原野!」パス

 

 

田主丸は自分達の動きに追いついたことりに驚き、パスを出すも…

 

 

希「残念やな!」バッ

 

原野「え…なんで、」

 

 

梨子「DFの選手達が、千羽山の動きについていってる…??」

 

 

千羽山の動きについて行くのはかなり厳しいはず…

しかし、希・ことりは千羽山の選手の前に先回りし、行く手を阻んでいる

 

 

 

真恋「さすが、期待通りね」

 

美奈「あの子の指示でDFの層は鉄壁に変わる…代々受け継がれてきた、あの子の学校の伝統的な特殊司令塔」

 

 

 

 

 

聖良「梨子さんと英玲奈さんもお願いします!これ以上、千羽山の進撃を防ぐためにも…」

 

 

鹿角聖良の通う高校、函館聖泉女子高等学院には伝統的な戦術がある。

それは、"センターバックの司令塔"

 

センターバックの選手が指揮を執り、鉄壁のディフェンスを築く。

聖良はその戦術を完璧に受け継ぎ、今、日本代表の戦術として生かそうとしていた

 

 

聖良「英玲奈さんと曜さんでそこを守ってください!千歌さんはーーーー」

 

 

『おぉっと!?これは!函館聖泉の鉄壁ディフェンスによく似たディフェンスだ!千羽山の選手達は思うように攻められない!』

 

 

原野「このディフェンス…私達以上!?ーーーー「ボールはいただきます!」ズサー!

 

 

ことりがスキをついたスライディングで、原野からついにボールを奪い取った

 

 

聖良「ナイスです!ことりさん!」

 

英玲奈「あとは私達に任せてくれ。聖良」

 

梨子「みんな、行くよ!」

 

 

梨子が構える。英玲奈の"エンペラータイム"で得た千羽山と日本代表の情報を脳内に刻み込み、道を示す

 

 

梨子「ー 王者のタクト ー!!」ビシッ!

 

梨子「月ちゃん、ツバサさん、お願いします!!」ビシッ!

 

 

月とツバサに道が示された。

梨子が浦の星女学院で培ったカウンター。

速さを求める月達には最高の指揮であった

 

 

月「よし!一気に行くよ!」バッ

 

ツバサ「私達の動きにシンクロしているわね」バッ

 

 

月とツバサがワンツーパスでボールを繋ぎながら一気にゴール前へ。

後半初めてのシュートチャンスとなった

 

 

月「ツバサさん!」パス

 

ツバサ「あとは任せて」バサッ!!

 

 

ツバサの背中から巨大な羽が生える。

"ゴットストライカー"という異名はこの技から来ている。

神々しく巨大なオーラ。

見るもの全てを魅了するかの如く、選手達は立ち尽くす

 

 

ツバサ「ー ゴットノウズ改 ー!!」ドガアァァン!

 

 

『出たあぁぁ!!!綺羅ツバサの必殺シュートだあぁぁ!!!!』

 

 

綾野「なんて強力な…」

 

 

バリバリバリと弾けるオーラ。

ボールに収まりきれなかったパワーが溢れ、巨大な塊としてゴールに迫っていた

 

 

凛「これは止められないにゃ!!」

 

あんじゅ「さすがゴッスト!」

 

 

美奈「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガアアァァァァァァン!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

ツバサ「!!!?」

 

凛、あんじゅ「!?」

 

日本代表「!!!?」

 

 

 

 

 

美奈「まぁ、無理よね」

 

 

 

 

 

綾野、牧谷、塩谷「ー 真 無限の壁 ー」ドン!!

 

 

 

『な、なんと!?千羽山の切り札、無限の壁により、綺羅ツバサのシュートが弾かれてしまったぁ!!!』

 

 

ツバサ「止められた…わね」

 

 

綾野「私達の壁は進化した。破れることはない!!!」

 

 

梨子「そんな…ツバサさんのシュートが、止められるなんて」

 

曜「あの時よりも凄く強力になってるよね…」

 

 

進化した無限の壁は難攻不落。

どんなシュートを撃っても弾かれる

 

 

 

英玲奈「ー シェルビットバースト ー!!」ドドドガァン!

 

綾野、牧谷、塩谷「ー 真 無限の壁 ー」ドン!!

 

 

曜「ー ゴットウインド ー!!」ドガアァァン!

 

綾野、牧谷、塩谷「ー 真 無限の壁 ー」ドン!!

 

 

千歌「ー サンシャインアッシュ ー!!」ドガアァァン!

 

綾野、牧谷、塩谷「ー 真 無限の壁 ー」ドン!!

 

 

 

 

『ああっと、高海千歌のシュートも弾かれた!!日本代表、何度もチャンスを作りますが、無限の壁を破れない!!』

 

 

千歌「ハァ、ハァ…硬い…」

 

曜「私達のシュートが、通用しない…」

 

 

 

にこ「どうするのよ…どのシュートも通用しないじゃない…」

 

真恋「そうね。今の日本代表に無限の壁を破る選手はいない…」

 

ダイヤ「では、このまま得点出来ないまま…」

 

 

 

美奈「出来るわ」

 

 

「「「!?」」」

 

 

美奈の一言で、日本代表ベンチはざわつく。

この状況下で美奈にはゴールのビジョンがあるのか…

選手達には全く想像できなかった

 

 

美奈「あの壁を破るキーマンはーーーー」

 

 

 

 

 

 

美奈「ダイヤちゃん。あなたよ」

 

 

ダイヤ「…え」

 

 

 

 

日本代表 1-0 千羽山高校

 

 




感想で次回の技予想を書くのは良くない。という意見をもらったのですが、確かにそうですよね。

自分も期待を破るのがちょっと申し訳ないと思っちゃうので…



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第3章 8話 「練習試合 "砕けぬ壁"」

☆重要なお知らせ☆
前にも書きましたが、改めて書きます!
『考えた必殺技を見てほしい!』『今後の必殺技を予想したから、感想に書きたい…!』『こんな展開、必殺技を期待する!!』時には、TwitterのDMか、ハーメルンのメッセージボックスのみでお願いします。ネタバレ防止なので、皆様のご協力をお願いします!!(今後、ネタバレに繋がる感想には返信出来ないかもです)





 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

まさかのチームごと交代という衝撃の展開になった練習試合。日本代表は動揺するも、聖良の指揮により鉄壁のディフェンスを行い、シュートチャンスを作った!しかし、強化された無限の壁に阻まれ、追加点がなかなか取れないサニデイジャパン…この状況を変える選手とは……

 

 

 

 

 

ダイヤ「わたくし…ですか??」

 

穂乃果「ダイヤ…ちゃん?」

 

 

ダイヤ自身も、なぜ自分が無限の壁を破れるのか分からなかった。

ダイヤの持つ最高のシュート、"紅蓮"では絶対に火力不足…

 

 

ダイヤ「ツバサさんや月さんのような、高威力のシュートはまだ……」

 

美奈「…そう、じゃあヒントをあげるわね♪」

 

 

美奈はそういうとダイヤの元へ近づき…一言

 

 

 

美奈「壁をよく見ろ!以上よ!」

 

ダイヤ「!!」

 

 

凛「え…それだけ?」

 

理亞「ヒントになってない…」

 

 

確かに、一見、ヒントには全くなっていないと思うだろう…

現にベンチメンバーは皆困惑中。

しかし、ダイヤには十分すぎるヒントであった

 

 

ダイヤ「壁を…!」

 

 

前にもある人に同じことを言われ、それにより、チームはあの壁を攻略したのだから…

 

 

 

 

綾野、牧谷、塩谷「ー 真 無限の壁 ー」ドン!!

 

ことり「そんな…」

 

海未「ことりの"ワンダフルラッシュ"までもが…」

 

 

フィールドにいる選手は全員シュートを撃った。

しかし、壁に全て弾かれ、ただの壁打ちシュート練習になってしまっていた…

 

 

果南「誰のシュートも、通用しない…」

 

英玲奈「困った事になったな」

 

 

ボールは奪えても、シュートを決められないのなら意味は無い。

日本代表が苦戦する中、千羽山が仕掛ける

 

 

原野「千羽山!あの技を使うぞ!」

 

大鯉「あれね!」

 

育井「よーし!やってやる!」

 

 

希「何か仕掛けてくるようやな…」

 

聖良「いったいどんな技を…」

 

 

千羽山の選手が一列に並んだと思いきや、一斉に地面に手をついた

 

 

原野「必殺タクティクス!!」

 

「「「ー 超広大 尾瀬ヶ原 ー!!」」」ドババババ!

 

 

ツバサ「濁流!?」

 

月「フィールドが湿地になった…」

 

 

千羽山の選手達が手をついた場所から濁流が溢れ出し、フィールドを一瞬で飲み込んだ。

完成したのは動くことも困難な湿地。

浦の星は田んぼの特訓でこの技を攻略した…しかし、

 

 

千歌「前よりも深くなってない!?」

 

曜「動きずらい…」

 

 

湿地の底は足が沈む泥。

こんなところでサッカーはおろか、動けという方が無理な話である

 

 

聖良「ですが、それは千羽山の方も同じです!」

 

希「そうやな。いくら練習しても、物理的に不可能や」

 

 

そう、この湿地をドリブルするのは物理的に不可能

 

 

原野「なら、これならどう?」バッ!

 

 

原野は飛び跳ね、湿地に浮かんでいるボールの上に乗った

 

 

月「あちゃー…そうくるか」

 

ツバサ「考えたわね」

 

 

そのまま玉乗りのようにボールを転がし始めた原野。

ボールは徐々に前進し始め……

 

 

梨子「嘘!?速い!」

 

英玲奈「まずいぞ!この速さは!」

 

 

原野「ー ラン・ボール・ラン ー!!」

 

 

『な、なんと千羽山キャプテン、原野!湿地に浮かぶボールに乗り、まるで玉乗りの如く!猛スピードで進んでいく!!!!』

 

 

海未「追いつけない…!?」

 

ことり「このままじゃ!!」

 

 

原野はすでにゴール前まで来ていた。

事前に全線で準備していた田主丸にボールを渡す

 

 

果南「またこの流れか…」

 

田主丸「行きますよ!松浦果南!」

 

 

田主丸「ー シャインドライブ ー!」

 

 

光り輝くシュートが放たれた。

誰も原野と田主丸に追いつくことができず、あとは果南に任せるしかなかった

 

 

果南「あの時のようにはいかないよ!」バッ!

 

 

果南は飛んだ。

全国大会の時は足を取られ、上手く"トライデント"を使えなかったが、この技は足を取られることは無い

 

 

果南「うおらあぁぁぁぁぁ!!!」

 

果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!」ドガァン!!

 

 

湿地に竜巻が突き刺さった

 

 

田主丸「流石ですね…」

 

果南「いいシュートだったよ」

 

 

『止めたあぁぁ!!松浦果南!強力な必殺技で田主丸のシュートを捕らえました!』

 

 

果南「聖良!」ブォン!

 

聖良「はい!」

 

 

 

 

花陽「果南さんは聖良さんにボールを出しましたね…」

 

花丸「でもどうやって湿地を…」

 

美奈「さぁ…あの子達はどうするのかしら」

 

 

 

 

 

聖良「ことりさん!」パス

 

ことり「はい!梨子ちゃん!」パス

 

 

聖良とことりのプレーで他のメンバーは察した

 

 

月「お!なるほどね」

 

曜「これなら…行ける!」

 

 

選手達がそれぞれ察し、共有した戦術を実行に移す

 

 

梨子「海未さん!」パス

 

海未「千歌!」パス

 

千歌「ツバサさん!」パス

 

ツバサ「月!」パス

 

 

 

 

花丸「ダイレクトでパス!!」

 

花陽「なるほど…!空中でのダイレクトパスなら、湿地のことを気にせずにボールを回すことができます!!」

 

美奈「…」

 

 

 

月「いよっと!」

 

 

『日本代表!空中でのパスで湿地ゾーンを突破!FWの渡辺月にボールが渡ります!この対応力…さすが日本代表です!』

 

 

海未「月の"天空落とし"に掛けるしかありませんね」

 

英玲奈「頼んだぞ…月」

 

 

月「…」

 

 

月のシュート、"天空落とし"は今の日本代表の選手達の中でもトップクラスの威力である。

月ならあの壁を…メンバーはそう期待しながら、月の後ろ姿を見ていた。

しかし、

 

 

月「あの壁は僕達じゃ破れない」バッ!

 

 

空へと飛び、回転しながら狙いを定める

 

 

月「(気づいて…!ダイヤさん!)」

 

 

 

月「天空落としいぃぃぃぃぃ!!!!」ドガァン!!

 

 

放たれた月の空を蹴るシュート。

凄まじい威力を保ちながら、千羽山のゴールへと襲いかかった

 

 

綾野「素晴らしいシュートだ……が…?」

 

 

千歌、曜「!?」

 

「「「!!?」」」

 

 

ダイヤ「…!」

 

 

ボールの軌道はゴールではなく…壁の上。

ゴールの枠に入らず、そのままコート外になってしまった

 

 

『あぁっと!!おしい!渡辺月のシュートはゴールの枠には入らず、そのままゴールキックだぁ!!日本代表、渡辺月は2点目となりませんでした!!』

 

 

梨子「月ちゃんがミスキック…?」

 

海未「あの月がですか…そんなことが」

 

 

 

ダイヤ「(あれは…わざと?)」

 

 

ダイヤは考える。

あの月が、ゴールの枠から外れるようなミスキックを撃つはずがない。

だとしたら、なぜあのようなシュートを…

まるで壁の向こう…そう。

まるで、ゴールの上を狙ったかのような……

 

 

 

ダイヤ「!!!!」バッ!

 

凛「ダイヤさん!?」ビクッ!

 

 

急に立ち上がったダイヤに驚く凛。

それを見た美奈が口を開く

 

 

美奈「何か気づいた?ダイヤちゃん」

 

ダイヤ「……」

 

 

ダイヤ「はい。わかりました。あの壁を超える方法が!」

 

美奈「…!じゃあ、見せてもらおうかしらね♪」

 

 

美奈がベンチメンバーに向かって指示を出した

 

 

美奈「選手交代!ダイヤちゃんとにこちゃん!準備してね♪」

 

 

ダイヤ、にこ「はい!」

 

 

果たして、ダイヤが気づいた、無限の壁を超える方法とは…?

試合終了まであと僅か。

日本代表は追加点を取れるのか…

 

 




リクエストを頂きました。もう一度、日本代表の選手達の技構成を書きたいと思います。先に言っておくと、まだ持っている技を披露していない選手もいます



高海千歌 MF

<シュート技>
エボリューション、サンシャインアッシュ、サンシャイントルネードTC

<ドリブル技>
Zスラッシュ

<その他>
ゾーン、闇のチカラ



高坂穂乃果 FW・GK

<シュート技>
ブレイブショット、ファイナルトルネード

<キャッチ技>
ゴットハンドV、愛は太陽

<その他>
闇のチカラ



園田海未 FW・MF

<シュート技>
ラブアローシュート、雷光の矢

<ドリブル技>
START:DASH!!



南ことり FW・DF

<シュート技>
ワンダフルラッシュ

<その他>
ワンダーゾーン



渡辺曜 FW・MF

<シュート技>
パルクールアタック、エクストリームラビット、ゴットウインド

<ドリブル技>
ライトニングアクセル、スプリントワープ



桜内梨子 MF

<シュート技>
フォルテシモ

<ディフェンス技>
アインザッツ

<その他>
神のタクト、神のタクトFI、王者のタクト



星空凛 FW

<シュート技>
タイガードライブ、ジグザグストライク

<ドリブル技>
イナビカリ・ダッシュ



鹿角理亞 FW

<シュート技>
ウルフレジェンド、ホワイトダブルインパクト

<ドリブル技>
ドロップアウト

<その他>
ゾーン



鹿角聖良 DF

<シュート技>
ホワイトダブルインパクト

<ブロック技>
スノーエンジェル



綺羅ツバサ FW

<シュート技>
ゴットノウズ

<その他>
ゾーン



統堂英玲奈 MF

<シュート技>
シェルビットバースト

<その他>
エンペラータイム



優木あんじゅ DF

<ディフェンス技>
ジャッジメント・レイ



松浦果南 GK

<キャッチ技>
トライデント、海皇の三叉撃、海竜の逆鱗槍



黒澤ダイヤ FW

<シュート技>
ファイアトルネード、ダイヤモンドストリーム、紅蓮、ファイアトルネードDD

<ブロック技>
ラ・フラム



矢澤にこ MF

<ドリブル技>
アクロバットキープ

<その他>
フリースタイルフットボール



東條希 DF・GK

<ブロック技>
バニシングカット

<キャッチ技>
ユメノトビラ、シキガミラインズ



渡辺月 FW

<シュート技>
ザ・エクスプロージョン、天空落とし

<ドリブル技>
ウルトラムーン





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第3章 9話 「練習試合 "ペンギンを継ぐもの"」

皆さん、5thライブはどうでしたか?または、2日目を楽しみにしている方、どうも!ルビィちゃんキャンディーです
え?ルビィちゃんキャンディーはライブに行ったかって?……はい。部活の最後の大会でした。まあ、こればかりはしょうがない…ですね。ただ、友達が凄いライブだったと言っていたので心残りはありますね…

さて、今回で練習試合は終了。ついにアジア予選です




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

いったいどうすればあの壁を攻略出来るのか…ベンチで考えるダイヤ。その間にも千羽山は必殺タクティクスで日本代表を苦しめるも、代表達の咄嗟の判断で湿地化したフィールドを上手く突破する。そして、月のシュートから何かに気づいたダイヤは、満を持してフィールドに入るのであった

 

 

 

 

 

『ここで日本代表、選手を二人交代するようです!!』

 

 

穂乃果「ダイヤちゃん!にこちゃん!頑張ってね」

 

にこ「任せなさい!」

 

ダイヤ「しっかりと役目を果たしてきますわ」

 

 

『交代する選手は渡辺曜と統堂英玲奈のようです!ポジションチェンジもあるようで、おそらく日本代表は無限の壁の突破をまだ諦めてはいないようだ!!!』

 

 

 

センターフォワード 黒澤ダイヤ

セカンドトップ 綺羅ツバサ

右サイドハーフ 渡辺月☆

左サイドハーフ 園田海未

トップ下 高海千歌

センターハーフ 桜内梨子

センターハーフ 矢澤にこ

センターバック 鹿角聖良

右サイドバック 東條希

左サイドバック 南ことり

キーパー 松浦果南

 

 

 

 

 

千羽山のゴールキックから試合再開。

高く蹴られたボールは湿地に落ち、再び千羽山の玉乗りドリブルが始まった

 

 

育井「ー ラン・ボール・ラン ー!!」

 

 

湿地でこのスピードは追いつけない。

日本代表は追いかけようにも上手く走れない

 

 

『さあ!千羽山の猛攻が続きます!いっきにゴール前まで来ました!!』

 

 

先程と同じ流れ。

日本代表は何も出来ずに果南に任せるのか…

 

 

 

 

 

スカッッッ!!!!!!

 

育井「あれ?」ボチャン!

 

原野「ボールが消えた!?」

 

 

なんの予兆もなく消えたボール。

育井はそのまま湿地に倒れ込む形になった

 

 

海未「あの技は…!」

 

千歌「流石です!!」

 

 

希「ー バニシングカット ー」

 

 

走れないのなら、瞬間移動すればいい。

希の強力な必殺技がチームを救った

 

 

希「にこっち!!」パス

 

 

希はにこへとボールを渡す。

にこは日本代表の陣形の中心から、全員に指示を出した

 

 

にこ「よく聞いて!にこがパスを出したらすぐ、にこにボールを戻すこと!いいわね!」

 

 

聖良「にこさんに?」

 

梨子「いったい何を…」

 

海未「何か作戦があるようです…とりあえずやってみましょう」

 

 

にこがパスを出して日本代表の攻撃が始まった。

にこが言った通りに、すぐにボールを戻す代表達

 

 

海未「にこ!」パス!

 

にこ「いいわよ!海未」

 

 

海未はダイレクトでにこにボールを返す。

ボールを受け取ったにこは、周りを見渡し次のパス相手を探す

 

 

にこ「聖良!」パス

 

聖良「はい!にこさん!」パス!

 

にこ「その調子!」

 

 

にこがパスを出し始めて、ベンチのメンバーはあることに気づいた

 

 

 

曜「にこさんの空中の滞空時間が…長い!」

 

あんじゅ「空中であんな余裕のあるプレーが出来るなんて…」

 

花陽「それがにこちゃんの武器です!」

 

穂乃果「それに…あのパス回し…」

 

英玲奈「あぁ、にこの考えが分かってきたぞ」

 

 

 

 

にこのパス回しは、自分が中継点になること

 

 

 

にこ「千歌!」パス

 

千歌「にこさん!」パス!

 

にこ「お次は…月!」パス

 

月「OK!」パス!

 

 

 

美奈「湿地を突破するのに、空中パスは素晴らしい考えよ。でも満点じゃない」

 

理亞「体力の消費…」

 

美奈「そう。あんなプレーを連続で続けていたら体力はすぐに底を突く…」

 

花陽「だから、にこちゃんが中継点になることにより、他の選手が大きく動くことなく、最低限のスタミナ消費ですむ…」

 

英玲奈「さらに、にこのあの余裕のあるプレーでパスも安定する。素晴らしい戦術だな」

 

曜「でも、それじゃにこさんに負担が…」

 

美奈「…」

 

花陽「にこちゃんなら心配はありません!」

 

美奈「にこちゃんは底なしの体力と鍛え上げられたテクニックと体幹がある」

 

 

 

美奈「日本であの子以上に中継で優れた選手はいないわ」

 

 

 

 

にこ「さあ、行ってきなさい!ダイヤ!」パス

 

ダイヤ「はい!」

 

 

『日本代表!矢澤にこが中心となり、安定したパス回しで最前線の黒澤ダイヤにボールが渡ったあぁ!!』

 

 

千歌「ダイヤさん、あの壁をどうやって…」

 

梨子「試合時間もあと少し。一発勝負になるかも…」

 

 

 

 

ダイヤ「(あの技なら可能性がある…!)」

 

 

ダイヤはこの状況下でぶっつけ本番の大勝負に出ようとしていた

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 数日前 ー

 

 

ダイヤは自分のシュートに物足りなさがあった

 

 

ダイヤ「世界には今のわたくしのシュートは通用しない…」

 

 

ツバサ、月、理亞、凛…4人とも自分よりもインパクトあるプレーで必ず戦力になる…

 

 

ダイヤ「…」

 

 

どうにかしなければ…そう考えていた時だった

 

 

月「ダイヤさん」

 

ダイヤ「月さん…」

 

月「聞いてほしいことがあるんだ」

 

ダイヤ「聞いてほしいこと?」

 

月「僕が今プレーしているチーム。"帝国女学院"にはね、伝統があるんだ」

 

ダイヤ「伝統…」

 

月「代々、受け継いできた"ペンギン"」

 

ダイヤ「ペンギン…?あの決勝で放った3人技の?」

 

月「そう!あれは"皇帝ペンギン2号"れっきとした継がれたペンギンだよ!」

 

ダイヤ「そのペンギンが、わたくしとどう関係が…」

 

 

 

 

 

 

月「ダイヤさんには"ペンギン"を受け継いで欲しいんだ」

 

ダイヤ「わ、わたくしがペンギンを?」

 

月「そう。ダイヤさんなら完璧にペンギンを受け継いでくれる」

 

ダイヤ「しかし…それは帝国女学院の」

 

月「これは帝国女学院のメンバー、全員の希望でもあるんだ。大丈夫。絶対に日本代表の力になる」

 

 

月「なんてったって、ペンギンは最強だからね!」

 

ダイヤ「????」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ダイヤ「このボールに帝国女学院の方達の想いものせます!!」バシュ!

 

 

ダイヤはボールを天高く蹴りあげ、自分も飛ぶ。

自分のこの一蹴りには数えきれないほどの期待が込められている

 

 

ダイヤ「さあ!行きますよ!」ピィーー!!

 

 

空中で指笛を吹く。

すると地面からペンギン達が現れた

 

 

穂乃果「ペンギン!?」

 

曜「あれって、帝国女学院の!?」

 

 

バシュシュシューン!!!!!!

地面から勢いよく飛び上がったペンギンは、"皇帝ペンギン2号"と同じペンギン。

しかし、2号と違い、ペンギンは地面から垂直に。

空中にいるダイヤの元へと飛んでいく

 

 

ダイヤ「はあぁぁぁ!!!!」ボオゥ!

 

 

ダイヤは手から炎を作り出し、体を軸に一回り。

ダイヤの周りに、炎の円が出来た

 

 

ビュンビュンビュンビュン!!!!!!

炎に飛び込むペンギン達。

炎から抜けたペンギン達はまるで…

 

 

ツバサ「炎の鳥…フェニックス」

 

月「まさか、あんな技にアレンジしちゃうなんて…」

 

 

フェニックスへと姿を変えたペンギン達と共に、ダイヤがオーバーヘッドでシュートを放った

 

 

 

ダイヤ「ー フェニックスペンギン ー!!」ドガァン!

 

 

『これはぁ!!黒澤ダイヤの新必殺技だぁ!炎を纏ったペンギンが、千羽山のゴールに猛スピードで突っ込んでいきます!!』

 

 

 

綾野「流石だな、黒澤ダイヤ!しかし、あの時のようには行かないぞ!!無限の壁は壊せない!」

 

 

綾野は無限の壁を発動させる。

ダイヤの"フェニックスペンギン"はかなりの威力だが、壁を壊すほどの力は……

 

 

ダイヤ「わたくしは壊すなど一言も言っていません」

 

綾野「何!?」

 

 

間もなく壁に到達するペンギン。

しかしーーーーー

 

 

 

綾野「な!?」

 

「「「!!?」」」

 

穂乃果「壁の上!?」

 

 

ダイヤのシュートは、先程の月のシュートと同様に、壁の上を通っていた。

壁の上ではゴールの枠には入っていない

 

 

綾野「ミスキックか!?」

 

ダイヤ「ここです!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

カクンッ

 

 

 

 

バシューーーーーン!!!!!!!!

 

 

 

 

綾野「…え」

 

 

千羽山「…!?」

 

月「やった…!」

 

美奈「うん!よく出来ました!」

 

 

『ゴオォォォル!!!な、なんと!?黒澤ダイヤの新必殺技は、無限の壁を超えた瞬間に直角に曲がり急降下!!そのままゴールに飛び込んだあぁ!!!!』

 

 

凛「そんなのあり!?」

 

理亞「壁とクロスバーのあいだに、ボール一個分の隙間…あれを狙った!?」

 

英玲奈「並大抵のコントロールでは成功しないな」

 

 

月「"紅蓮"が威力重視なら、"フェニックスペンギン"はコントロール重視…凄いね」

 

 

 

 

 

 

綾野「ま、まさかそんな…」

 

ダイヤ「無限の壁の絶対防御力に任せすぎましたね。壁の後ろに、ボール一個分の隙間があったことに気づかなかった…」

 

綾野「壁の方がゴールよりも高い…直角に曲がらなければいけないぞ…」

 

ダイヤ「はい!成功して良かった」スッ

 

 

ダイヤはあの時のように、綾野に手を差し出す。

綾野の顔にはあの時以上の笑みがあった

 

 

綾野「はは…やはり流石だな」ガシッ

 

 

 

 

 

『ここで試合終了!!!!結果は2-0!!日本代表、練習試合を制し、アジア予選に向けて素晴らしい出だしとなりましたぁ!!』

 

 

花丸「勝ったずら!」

 

花陽「いい雰囲気で終わって良かったです!」

 

 

日本代表は課題が見つかった一方、素晴らしいプレーもたくさん見られた。

チームの連携力や個人技、試合前よりも磨きがかかったという手応えもあった

 

 

 

千歌「真命さん!綾野さん!練習試合、ありがとうございました!」

 

黒裂「こちらこそ。とてもいい試合だった」

 

綾野「世界にも負けるなよ?私達は全力で応援しているぞ高海千歌」

 

千歌「はい!頑張ります!」

 

 

サッカーは人を繋ぐ。

千歌はその言葉を噛み締めていた。

サッカーをしていなければ、真命や綾野とは出会えなかった。

この瞬間はかけがえのないもの、全国大会でそれに気づいた千歌

 

 

穂乃果「ついに発表だね!」

 

千歌「はい!いったいどの国と…」

 

 

スタジアムの大型画面にはアジア予選の抽選生中継が表示されていた。

間もなく、千歌達は今までとは次元の違う戦い。

世界への挑戦が始まるのである

 

 

果南「強い国はどこ?」

 

にこ「要注意は"韓国"、"サウジアラビア"。そして"イラン"、"カタール"ね」

 

花陽「カタールはブラジルとの親善試合で接戦をしたというデータもあります…」

 

穂乃果「そこ!そことやりたい!!」

 

にこ「初戦から有力候補となんて冗談じゃないわよ!!」

 

 

わあぁぁぁ!!!!!!!!!!

スタジアムに歓声が鳴り響く。

ついに、アジア予選の初戦が決まったようだ

 

 

 

千歌「来た…!」

 

曜「いよいよだね!千歌ちゃん」

 

千歌「うん!今度の舞台は…世界!!」

 

 

 

 

 

『発表します!!!!FFIアジア予選、日本代表"サニデイジャパン"の初戦の対戦チームはーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー"アラブの火の獅子"サウジアラビアだあぁぁ!!!!!!』

 

 

 

 

FFIアジア予選 ー第1試合 ー

『日本VSサウジアラビア』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もしもし、私よ。日本の練習試合、終わったわ」

 

「日本は想像以上のレベルよ。私もこれからすぐ戻る。少し長居しすぎたようね」

 

「ツキ?あぁ、元気だったわ。相変わらずだったけどね…」

 

「…確かにツキは強い。他にも私達の脅威となる選手もたくさんいた…でも、」

 

 

 

 

 

「勝つのは私達、"スペイン"よ」

 




フェニックスペンギン
読者様からの考えを参考に作ったオリジナル技です。「ペンギン」と「フェニックス」は両方ともダイヤちゃんにはピッタリだと思います。オーバーヘッドペンギンに似ていますが、フェニックスペンギンはシュートの方向をコントロールできます。精度に特化したダイヤちゃんの新必殺技となっています



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第3章 10話 「アジア予選 始動」

ついにアジア予選が始まりましたね!

10話の前半は伏線を大量にだして、後半からはちょっとおふざけ回にしました。

かなりカオスですので…よろしくお願いします




 

 

 

 

 

アジアでもついに地区予選が始動。

世界各地でもアジアと同様に、世界一を目指し激戦が繰り広げられていた

 

 

 

 

 

 

 

 

ー ??? ー

 

 

「もうここは、あなたがいるステージではないようね」

 

「はい。私の戦うべき相手は、あの空の向こうにいるのですね」

 

 

少女の背後には、まるでスタジアムが切り裂かれたような巨大な裂け目があった

 

 

 

 

 

 

ー ??? ー

 

 

「ついにこの日が来たね!」

 

「えぇ。日本と戦える日は近いわね」

 

「でも、あなたが帰ってきた時は驚いたわ!最高なプレーを見せてね。エリー!」

 

「もちろん。頑張りましょ」

 

 

 

 

 

 

ー ??? ー

 

 

「キャプテン、日本から戻ってくるとよ」

 

「やっとか…いつから日本に?」

 

「多分、日本の全国本戦の準々決勝ぐらいからじゃない?」

 

「どうせツキに誘われたんだろうなぁ…」

 

「キャプテンは日本代表は侮れないと言っていた」

 

「…侮れないというだけであって、私達の敵じゃない」

 

「そうだな。勝者は私達なのだから…」

 

 

 

 

 

 

ー ??? ー

 

 

「果たして、クロサワルビィがいない日本はどこまで行けるのか」

 

「ツキとかツバサ、ホノカがいるじゃない」

 

「あぁ、そしてもう一人…」

 

 

「タカミチカ」

 

 

 

 

 

 

 

ー ??? ー

 

 

「ふぅ…」バッ!!

 

 

向かってくるシュートに構える少女。

右手には"光"を、左手には"闇"のオーラを集め、両手で抑え込む

 

 

「ー ゴットハンド・ゼロ ー!!」ドン!!

 

 

「ゴールは譲らないよ。私がいる限り……なんてね♪」

 

 

 

「流石だね!調子いいんじゃない?」

 

「それはそうだよ!だって強力な助っ人が来てくれたんだもん!」

 

「確かにね♪」

 

「Oh!嬉しいこと言ってくれマースね!」

 

「ついに、私達が世界一になる日が来たんだ…!このチームで!」

 

「…(みんな、待ってるよ)」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 日本代表キャンプ地 ー

 

 

美奈「みんな、わかってると思うけど、サウジアラビアは強いわよ」

 

 

練習試合が終わり、時間は流れ、サウジアラビア戦がすぐそこに迫っていた。

日本代表は練習前にミーティングを行っていた

 

 

にこ「まさか、初戦から強豪国となんて…」

 

ことり「穂乃果ちゃんの望み通りになったね♪」

 

穂乃果「うん!サウジアラビアかぁ、楽しみだなあ!」

 

 

強いチームと戦うことを望んでいた穂乃果は、嬉しくてその場でソワソワしていた。

にこは冗談じゃないと穂乃果に訴えるも…

 

 

海未「血が騒ぎますねぇ…」

 

曜「強いとワクワクするよね!」

 

果南「ま、何とかなりそうだね」

 

 

強豪と戦うのを楽しみにしているのは、穂乃果だけではないようだ

 

 

にこ「くっ…脳筋たちまで…」

 

凛「にこちゃんが一番、脳筋じゃないのwww」

 

にこ「ぬあんですってぇ!?」

 

 

真恋「にこちゃーん、続き話してもいいかしら?」

 

にこ「ま…お母さん、何故、にこだけに…」

 

 

にこ達が話している間にプロジェクターを準備していた真恋。

映し出されていたのは、サウジアラビアの選手達のプレー動画であった

 

 

真恋「中東には強い国が多いからねぇ…」

 

美奈「見て。サウジアラビアの動き」

 

 

美奈に言われ、選手達は動画に注目する。

見てわかる。

今までの試合とはあきらかに違う

 

 

梨子「かなり強引な試合をするんですね」

 

聖良「ファウル覚悟のプレーにも見えます…これは…」

 

 

美奈「サウジアラビアは"獅子"と呼ばれ、敵の弱点を見つけると、そこを執拗に攻めて逃がさない。パワープレイもするから、周りの国からも恐れられているわ」

 

 

なぎ倒される相手選手。

もし、自分も同じ目にあったらと思うと…

 

 

梨子「私、競り合いには自信が…」

 

聖良「潰される可能性もあります。下手に競ることは…」

 

美奈「それでは、あちらの思うツボよ」

 

梨子、聖良「!!」

 

 

自分達が競り合いにビビっていては、すぐにそこを弱点として攻め込まれてしまう…

相手も国の代表として必死なのである。

勝つためには強引な事だってする

 

 

月「こちらもそれなりの覚悟がなければいけないね」

 

ツバサ「潰しは特に要注意よ。これ以上、戦力を失うわけにはいかないわ」

 

 

 

 

こうしてミーティングを終えた日本代表は練習に入る。

練習試合で見つかった課題を中心に、貴重な時間を使った。

しかし、

 

 

日が沈んだ夜、事件は起こった

 

 

 

 

 

 

 

バチン!!!!!!!!

 

 

 

「何!?」

 

「停電…みたいだけど」

 

「真っ暗で何も見えないにゃ!?」

 

 

夜の練習をするためには電気は必須。

しかし、不意に電気が消え、グラウンドは暗闇に包まれた。

聞こえるのは選手達の動揺する声だけであった

 

 

「はわわわ…どうすれば」

 

「いやぁぁぁ!?暗いの無理無理無理無理!!」

 

「ちょ、誰ですの!?危ないです!抱きつかないでください!!」

 

「だ、誰か…助けてください…理亞ぁ…」

 

「え!?ちょ、誰か掴んでく…痛たたたたた!?」

 

 

ところどころで聞こえる悲鳴。

完全に混乱しているこの状況下で、さらに起きてはいけない、最悪の事態が発生しようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワシっっっ!!!!!!

 

 

 

 

 

「ひぃやあぁぁぁぁ!!!!???」

 

 

 

曜「こ、この悲鳴…千歌ちゃん!?」

 

ダイヤ「千歌さん!どうしましたの!?」

 

 

「ふむふむ…これはすごい…でかミカン」ワシワシ

 

 

千歌の悲鳴が聞こえた先からもう一人。

希の声が聞こえた

 

 

穂乃果「な…まさか!!?」

 

にこ「緊急事態よ!全員、身の安全を守りなさい!!かなり危険よ!!」

 

梨子「え?…え?」

 

凛「やばいにゃ…ただの恐怖にゃ…」

 

 

音ノ木坂のメンバー達が警告する。

声は震え、まるで怯えているようだ。

いったいこの暗闇で何が起きているというのか…

 

 

 

「うわあああぁぁぁ!!??」

 

「ほうほう…」ワシワシ

 

 

海未「今度は月が…」

 

穂乃果「まずいよ…早く逃げないと…」

 

聖良「あ、あの…いったい何が起きているんですか?」

 

 

 

にこ「希が闇に紛れて、メンバーをワシワシしてるのよ」

 

 

「「「……え?」」」

 

 

 

 

 

ガシッ!!!!

 

 

 

「な!!!!??」

 

「そういう事や♪」ワシワシ

 

 

理亞「姉様!?」

 

穂乃果「嘘!?聖良さん、近くにいたよね!?」

 

果南「す、すぐそこにいるの!?」

 

 

「お次はだれやぁ〜」ワキワキ

 

 

 

「「「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!??」」」

 

 

 

 

グラウンドは一瞬で地獄と化したのである

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 10分後 ー

 

 

曜「(希さんは…どこ?)」

 

理亞「(ワシワシなんて、冗談じゃないわよ!)」

 

果南「(無理無理無理無理無理無理)」

 

凛「(ワシワシするならにこちゃんの方が最高にゃ…)」

 

にこ「(ちょっと!!なんでこういう時だけそんな事言うのよ!)」

 

あんじゅ「(ゴッストさんはどうしたの?)」

 

英玲奈「(3分ぐらいでやられた…)」

 

 

メンバーは希に気づかれないように小さな声で話す。

しかし、いつ希が迫ってくるのか…

全員、まわりの気配に気を使い、集中し、様子を伺う

 

 

 

 

 

 

サクッ

 

 

 

 

凛「にゃあぁ!?」バッ!

 

希「あちゃー、気づかれた!」スカッ

 

 

希の気配を察した凛は、間一髪。

希の手をすり抜け、難を逃れた

 

 

凛「(足音が聞こえてよかったにゃ…)」

 

 

再び闇に紛れる希。

次は誰が狙われるのか…

 

 

 

曜「…(また静かになった)」

 

 

聞こえるのは虫の音だけ。

全員、息を潜め、この闇の世界で悪魔から逃れんとする

 

 

曜「(目をつぶって…)」

 

 

神経を尖らせる。

耳・肌から、風の、音の変化を…

 

 

グワーッ!!!!!!

 

 

感じ取る

 

 

 

 

 

希「そこや!!」ガバッ!

 

曜「うわ!」スカッ!

 

 

曜も間一髪。

希を交わし、走ってその場から離れた

 

 

希「流石やな…もう対応し始めてる…」

 

 

希は最初よりも確実にワシワシする回数が減っていた

 

 

希「ウチも本気出しちゃお♪」

 

 

悪夢はまだ終わらない

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

穂乃果「うぅ…ワシワシやだよぉ…」

 

 

穂乃果は過去にも何度かワシワシの餌食にされていた。

もう二度と、ワシワシはされない。

そう誓っていた

 

 

穂乃果「(…!足音…)」

 

 

 

サク…サク…サク

グラウンドの芝生を踏む音が徐々に、穂乃果へと近づいてくる

 

 

穂乃果「(逃げよう!)」バッ!

 

 

穂乃果は、その場から走り出そうとしーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーー「逃がさんよ♪」グワーッ!

 

 

穂乃果「ひいぃぃぃ!?追いかけてきた!?」

 

 

なんと、希は走って穂乃果を追いかけてきたのである

 

 

希「捕まえた!」グワーッ!

 

 

希の手が、穂乃果のお山に触れようとした瞬間ーーー

 

 

 

 

希「(な、なんや!?)」ピタッ!!!!

 

 

希は体が動かなくなった。

足元にはキラキラ光る円が。

そうか…まんまと罠にはまったのか…

 

 

ことり「ー ワンダーゾーン ー! これでおしまいです!」

 

穂乃果「ことりちゃん!大成功だね!」

 

 

現れたのはことり。

穂乃果が希を誘導し、ワンダーゾーンで捕らえる。

これで悪夢は終わったのだ

 

 

希「やるなぁ…ことりちゃん」

 

 

 

 

 

そう思っていた

 

 

 

 

 

希「でもな」ガシッ!

 

ことり「ひゃあ!?」

 

穂乃果「!!!!?瞬間移動!?」

 

 

 

 

 

 

希「 ざ ん ぞ う や 」

 

 

 

 

穂乃果、ことり「ひゃああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

美奈「みんな〜…大丈夫?」

 

 

「「「 」」」

 

 

喋る気力は残っていなかった。

神経を張り詰め、暗闇の中での極限状態…多分、普通の練習よりも疲れた

 

 

希「いや〜ちょっとやりすぎたかも♪」

 

 

理亞「鬼…悪魔…」

 

凛「なんとか逃げ切ったにゃ…」

 

 

無事にワシワシから逃れたメンバーもいる。

千歌達は、音ノ木坂学院のメンバーの瞬発力が優れている理由が、少しわかった気がした

 

 

果南「まだ本物の幽霊の方がいいよ…」

 

月「普通に怖かった…」

 

希「ふーん…♪」

 

 

この果南の一言が、日本代表の今夜の予定を決めた

 

 

希「ほな…」

 

 

希「怖い話。しよか♪」

 

 





次回は季節外れの怖い話大会!?

前半のガチムードが一変…後半は大ピンチでしたね…

感想、お待ちしております!





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第3章 11話 「怖い話大会」

梅雨に入ってジメジメが鬱陶しいと感じるルビィちゃんキャンディーです。
今回のお話はちょっと一息回として怖い話をお送りします。
ですが、ルビィちゃんキャンディーは怖い話は専門外なので、全く怖くないかもしれません。そこら辺をご理解の上、読んでいただけたら…

怖い話が苦手な方はこのお話を飛ばしてもシナリオには影響しません




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

サウジアラビア戦が近づく中、停電のハプニングと希のワシワシにより地獄を見た日本代表。その後、果南の一言により深夜、とある会が開かれることになった……

 

 

 

 

 

 

ー 合宿所 一室 ー

 

 

「「「怖い話!?」」」

 

希「そ!美奈監督からも許可をもらったから、みんなで聞いたり話したり!」

 

 

果南「いやいやいやいや無理無理無理無理」

 

 

果南は部屋の隅で小さくなりながら震えていた。

果南は誰よりも怖がりなところがある。

もちろん、怖い話に耐性などない

 

 

希「大丈夫!そんな怖くない」

 

果南「嘘だよ!絶対に怖い!!」

 

月「厳しいんじゃ…果南さん」

 

 

果南は怖い話は不参加…という事にしようとしたが

 

 

希「ええの?一人で」

 

果南「」ピクッ

 

希「何か、出るんやない??一人だと」

 

果南「いやぁぁぁぁぁ!!!!?」ハグ

 

ダイヤ「ちょっ、果南さん!!」

 

 

希は果南を怖がらせ、帰そうとしなかった。

やはり希は悪魔だ…何人かはそう思っていた

 

 

聖良「しかし、もう寝る時間では?」

 

理亞「姉様?」

 

 

聖良が怖い話の中止を主張する。

それに、何か様子が変??

 

 

聖良「け、決して、怖いのが無理無理無理無理とか、そういうわけじゃ…」ガクガクガク

 

千歌「せ、聖良さんも…?」

 

ダイヤ「苦手なのですね…」

 

理亞「姉様、大丈夫。私がいるから…」ヨシヨシ

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

希「よし!準備完了!」

 

 

希は部屋の電気を消し、ロウソク1本のみで雰囲気のある部屋を作った。

全員でロウソクを囲むように座り、全ての準備はととのった

 

 

希「ほな、誰からいく?」

 

にこ「ここは言い出しっぺの希ね」

 

曜「希さんのお話は本当にヤバそう…」

 

希「当たり前や〜ん♪だって今から話すのは…」

 

 

 

 

希「本当にあったヤバいお話やもん」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

去年の夏休み。

私は神社の人のお手伝いで、山奥の神社に行ったことがありました

 

 

一通りの仕事が終わり、帰ろうとしたんだけどバスが終わってて…泊まっていけば車で帰れるんだけど、次の日はサッカーの練習だったからどうしても帰らなければいけなかった

 

 

だから私は、タクシーで帰ることにしました

 

 

 

 

ー タクシー内 ー

 

 

運転手「お嬢ちゃん、こんな時間まで何を?」

 

希「神社のお手伝いをしていて…」

 

運転手「あぁ、なるほどね!」

 

 

運転手のおじさんとの話は盛り上がり、気づいたらかなりの時間が経っていました

 

 

 

 

 

 

なのに

 

 

 

 

 

 

 

希「あれ…?」

 

運転手「…」

 

希「この道、さっきも通りましたよね…?」

 

運転手「…」

 

 

 

 

 

 

運転手「お嬢ちゃん、運が悪かったね…」

 

希「え?」

 

 

 

運転手「どうやら、悪霊に目をつけられたようだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!

 

 

希「ひゃ!?」

 

運転手「反応してはダメだ!」

 

 

突然、窓を強く叩く音が車内に響く。

この車は走行中だ。

普通ならありえない事が今、おきている

 

 

運転手「ここは事故や曰く付きの事件で有名な場所だ。悪霊は完全に私達を狙っている…」

 

希「(そんなのあり!?)」

 

運転手「絶対に反応してはいけないよお嬢ちゃん。それで連れて行かれた人を、私はたくさん知っている…」

 

希「…」コクン

 

 

私は頷き、運転手さんに了解の意を示した。

連れて行かれた…まぁ、ここまで来たら容易に想像出来ることだ

 

 

運転手「悪霊は狙った者の心に漬け込む…気をしっかり持って…」

 

希「…(心に漬け込む…)」

 

 

先程から恐ろしい程に静かだ。

聞こえるのは、同じ道を何度も走る車のエンジン音だけ

 

 

希「(ウチは無事に帰れるんやろか…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「希ちゃん」

 

 

 

 

 

 

希「(!!?)」

 

 

誰かが、後部座席にいる…

確か乗っているのは私と運転手さんだけだ。

とすると…

 

 

希「(悪霊…でも、この声って…)」

 

 

 

 

 

 

「穂乃果、怖いよぉ…希ちゃん、助けて…」

 

 

完全に穂乃果ちゃんの声だった。

心に漬け込むとは、このことか…

確かに、反応する人はしてしまう

 

 

「希ちゃん、穂乃果だよぉ…」

 

 

希「(騙されるもんか!!)」

 

 

私は助手席で前だけを見た。

あ、またあの看板……

これで何度目だっけ…

いったい、いつこのループから抜けられるのか

 

 

 

 

 

「 の ぞ み じ ゃ あ ぁ ぁ ぁ ん 」ヌゥ…

 

 

悪霊の気配が私のすぐ後ろにあった。

振り向けばぶつかるのでは…というぐらいの近さだった

 

 

希「…」ドキドキドキドキ

 

 

心臓の音が直接脳に響く。

汗が止まらない。

怖い。

体が震える

 

 

 

 

コンコンコン。

 

 

希「(今度は窓!?)」

 

 

再び窓が叩かれた。

今度は優しく、ゆっくりと、3回、音がした

 

 

 

「希!助けに来たわ!」

 

 

希「(えりち…)」

 

 

今度はえりちの声が窓の外から聞こえた。

もう一度言うが、車は走行中だ。

窓が叩かれるのはありえない

 

 

「聞いて!その運転手が悪霊なのよ!あなたを死へと導こうとしている!!!」

 

 

希「!!」

 

 

運転手が悪霊?

最初から私は目をつけられた?

そういえば運転手さんはさっきから喋らない

 

 

希「(嘘、嘘、嘘、嘘、嘘…)」ドキドキドキドキ

 

 

今から私はどこに連れて行かれるの?

横を見たら、運転手さんは化け物なの?

 

 

 

 

 

私は…ここで…

 

 

 

 

 

 

 

 

『サッカーか!私もサッカーは好きだなぁ!』

 

 

 

希「…」

 

 

偶然なのかどうなのかは分からないが、この極限状態の中で運転手さんとの会話が脳裏に蘇った

 

 

『お嬢ちゃんは美人さんだからなぁ…グラウンドに咲く花だ!』

 

『ほぅ…頼もしい仲間だね。9人揃って試合に出れるといいね!』

 

 

 

希「(…大丈夫)」

 

 

私は荒くなっていた息を整えた。

あんなに優しく、笑顔で話してくれた運転手さんが悪霊なわけが無い。

私は悪霊に踊らされていただけ。

もう負けない

 

 

希「(大丈夫。大丈夫や)」

 

 

運転手「(頑張ってくれ…お嬢ちゃん)」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

希「あれ…見たことが無い道…?」

 

運転手「どうやら、山は越えたようだね…」

 

 

運転手さんの言葉で安心感と一緒に疲れと涙が溢れだしてきた。

空の向こうは明るくなっている。

一晩中、悪霊に狙われていたのだ

 

 

運転手「怖かったね。お嬢ちゃん、よく頑張った」

 

希「ごめんなさい…ウチ、運転手さんの事、一瞬悪霊かもって…」

 

運転手「いいんだよ。こうして切り抜けられたのは、お嬢ちゃんが私を信じてくれたおかげなんだからね」

 

 

その後、運転手さんから説明されました。

もしもの事があるといけないから、帰ったらお祓いをしてもらうといいと

 

 

 

 

希「ありがとう!運転手さん!」

 

運転手「お嬢ちゃんも、サッカー頑張ってね。応援しているからね」

 

 

 

結局、神田明神まで送ってもらって、そこで運転手さんとはお別れになりました

 

 

運転手「じゃあね」

 

希「はい!」

 

 

徐々に小さくなっていくタクシー。

いつかまた会えるかな…

そう思いながら私は部活に行く支度を始めました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方。

手伝いに行っていた神社の方から電話がありました

 

 

 

かなり心配していたようで…何故か理由を聞いたら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"希ちゃんはなんで呼んだタクシーに乗らなかったの?"

 

 

 

 

 

だって。

じゃあ、私が乗ってきたタクシーは?

あの運転手さんは?

それは私には分からない

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

希「おしまい!」

 

 

果南「」ガクガクガク

聖良「」ガクガクガク

 

 

ダイヤ「果南さ〜ん、終わりましたわよ?」

 

理亞「姉様、ちょっと苦しい」

 

 

震えながらダイヤと理亞に抱きつく果南と聖良。

他のメンバーは怖かったというよりも、興味津々に聞いていた

 

 

海未「希が夏休みの時に遅れてきた理由はそれが原因だったのですね…」

 

ことり「ちょっと怖かったけど、不思議な話」

 

穂乃果「私と絵里ちゃん、悪霊だったね…」

 

 

思い思いに感想を語るメンバー達。

夜はまだこれから。

怖い話大会はまだまだ続く

 

 

希「お次は誰の番かな♪」

 

 





という事で、希ちゃんのお話は終了です。
次回も怖い話大会になるのか、それともアジア予選のお話になるのか、それは今後のルビィちゃんキャンディーの気分次第…





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第3章 12話 「矢澤の朝」


☆お知らせ☆
一年前から温めていた「ラブライブ×ポケモン」を投稿しました!よろしければこちらもよろしくお願いします!!
https://syosetu.org/novel/193947/1.html

今回のお話はにこちゃんの回です。
努力家にこちゃんの朝をどうぞ




 

 

 

 

 

矢澤の朝は早い

 

 

 

 

 

 

 

ー AM5:30 ー

 

 

にこ「…変な夢をみたわ……」

 

 

まだ暗い部屋の中でベッドから起き上がる矢澤にこ。

彼女は誰よりも早く、夢の世界から現実へと戻ってくる

 

 

にこ「花丸と花陽に食べられるかと思った…」

 

 

にこは手探りで服を見つけて着替える。

日の出が遅いと、暗くてどうしても不便である

 

 

にこ「…」スタスタ

 

 

パタン。

部屋の扉を希が起きないように優しく閉めるにこ。

ジャージ姿のにこは、こうして毎朝、自主練へと出かけるのである

 

 

希「……」

 

希「にこっち、努力家やなぁ…」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー グラウンド ー

 

 

…まだ日も出ていない薄暗いグラウンド。

昼間や夜とは別世界のようで、少し寂しく、そして少し広く感じる。

そんな自然に囲まれたグラウンドに、ポーン、ポーン、とボールが弾む音がした

 

 

にこ「ふあぁ〜…」ポンポン

 

 

あくびをしながらリフティングをするにこ。

目をこすってただ立っているように見えるが、足ではボールを蹴り続けている

 

 

にこ「そろそろ新しい必殺技を作ろうかしら…」ポンポン

 

 

ちなみに、にこはこの自主練をーーーー

 

 

 

ーーーー「8年間」、かかさず続けている

 

 

 

 

 

 

ー AM6:00 ー

 

 

にこ「ふぅ…こんなものかしら」

 

 

フリースタイルの技は一通りこなした。

にこはサッカーの日本代表であり、フリースタイルフットボールの日本代表でもある。

練習は疎かにはできない

 

 

にこ「でも、世界で勝つにはさらに磨きをかけないとね」

 

 

気を引き締め、練習に戻ろうとした

 

 

 

「毎朝、関心ね。にこちゃん」

 

にこ「!」

 

 

背後から聞きなれた声が聞こえた

 

 

にこ「ママ…!」

 

真恋「ちょっと、休憩してお話しない?」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

真恋「はい!にこちゃん」

 

にこ「ありがと。ママ」

 

 

真恋はにこに飲み物を手渡す。

近くのベンチに二人で腰掛け、山から見えるオレンジ色の空を眺めていた

 

 

にこ「最初、ママが日本代表の副監督になるって聞いた時は耳を疑ったわ…」

 

真恋「驚いたでしょ♪」

 

にこ「そりゃ、ね…」

 

 

真恋はJリーグの強豪チームの監督。

毎朝早く仕事へ行き、夜遅くに帰ってくるか、帰ってこないか。

家事や妹達の世話は全てにこがやっていた。

そんな忙しい母が、まさか自分達の指導者として登場するとは、思ってもみなかった

 

 

真恋「私は、立場上休めない。選手達を勝利に導くために、私が一番頑張らなければいけない」

 

にこ「じゃあ、なんでママは…」

 

真恋「きっかけは、あなた達の全国本戦の決勝ね」

 

 

 

 

未来の海和レッズの選手を発掘するために、私や関係者は全国本戦の決勝を見に行っていた

 

 

『あの子はどうです?音ノ木坂のFWの…』

 

『GKも欲しいですね…』

 

 

真恋『……』

 

 

あの時は、仕事として。

もちろん、にこちゃんのことを見守りながらも選手のことを真剣に分析していたわ

 

 

 

わああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!

 

 

 

でも、そんな考えは一瞬で塗り替えられた

 

 

 

実況『また抜いたぁぁ!!!音ノ木坂学院、矢澤にこ!これで5人抜きだぁ!止まりません!!この少女は止められません!!』

 

 

真恋『!!!!』

 

『真恋監督の娘さん、素晴らしい才能ですね!?』

 

『いったい、どのような指導を…』

 

 

真恋『……』

 

 

 

 

私は気づかなかった。

にこの努力を、そしてにこのサッカーを

 

 

にこのサッカーをする姿は、ほぼ、初めて見たわ。

昔はよく見ていたけど、中学になってからは1度も見てはいなかった

 

 

私は衝撃でその場から動けなかったわ。

あの子が私の娘…?

あのプレーは何…?

フリースタイルの日本代表…?

 

 

"才能"。そう言わざるを得なかったわ

 

 

早朝から練習していたのはこころ達から聞いていたわ。

でも、ここまでとは…

恐らく、どのチームもにこを欲しがるはず…

 

 

そして同時に、申し訳なくなった

 

 

真恋『(私は、にこの努力に気づいてすらあげられてなかったのね…)』

 

 

私は、なんて馬鹿な母親なのだろう…と。

娘がここまで大きくなったのに、私は手助けを、支えを、何もしてあげられなかった

 

 

 

 

そして決勝戦は終了し、数日後。

美奈から誘われたのよ

 

 

美奈『にこちゃんと、一緒に向き合えるチャンスよ♪』

 

真恋『にこちゃんと…』

 

 

私はこれ以上の機会はないと思った。

今まで一緒にいれなかった分を。

応援してあげられなかった分を。

これからそばで支えなければってね

 

 

 

 

真恋「今までごめんね?にこちゃん」

 

にこ「違うわママ!ママは家族のために、そして選手、サポーターのために毎日頑張っていたんだもの…責任を負うことは…」

 

真恋「それでも、一人の母親としては何もしていないわ」

 

にこ「…」

 

真恋「だから、これからはママのことをたくさん頼ってね!」

 

にこ「うん!ママ!」

 

 

にこは真恋にそっと寄り添う。

今まで出来なかった分の甘え。

照れくさいからみんなの前ではできない。

だからこの時間を…

 

 

にこ「大切に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛「にゃふっwww 面白いものが見れたにゃwww」

 

理亞「にこさん…真恋さんのこと、ママ呼び…w」

 

海未「不覚にも…w ふふっw」

 

 

 

にこの威厳←? が崩れるのも時間の問題であった

 

 

 

 

 

 

 

 

真恋「随分と甘えんぼさんね。にこちゃん」

 

にこ「たまにはいいでしょ〜ママァ〜」

 

真恋「みんなの前でも甘えていいのよ?」

 

にこ「そんな事できないわよ…誰かに見られたら……」

 

 

果南「あれ…にこさん?と真恋さん?」

 

 

にこ「ぬおああああああああぁぁぁ!!!!!!??? 果南!?なんでアンタがここに!!?」

 

果南「なんでって…早朝ランニングだけど」

 

にこ「?」

 

 

にこが起きてきた5時半以降、真恋以外に玄関から外出したメンバーは見ていない…まさか、

 

 

にこ「果南、何時からランニングを…?」

 

果南「うーん…最近は少し早く起きるようにしてるから…」

 

 

果南「5時?」

 

 

にこ「」

 

 

 

にこの起床時間が早くなったのは言うまでもない

 

 

矢澤の朝は早い

 

 





一息回はこれにて終了です。次回からアジア予選が始まります!

え?怖い話?気が向いたら続編を書きます。
やむを得なくR15にしましたが、ほぼ、影響しません。



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第3章 13話 「サウジアラビア戦 "開幕"」


ついにサウジアラビア戦となりました。お話の前半は、今まで登場していなかったあの子がでます!

ここでひとつ注意です。
外国人の選手の名前ですが、ルビィちゃんキャンディーは外国人選手の名前をつけるセンスが全くないので、原作と同じ名前にしてあります。なので、男の名前の選手が入っていますがご了承ください




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

毎朝自主練をするにこ。その姿を見た真恋はにこに自分の想いを語った。お互いの気持ちを再確認したところでにこは練習に戻るのであった

 

 

 

 

 

 

 

ー 帝国女学院 ー

 

 

鬼道「佐久間!上がれ!」

 

佐久間「任せろ!」バッ!

 

 

静岡県の女子サッカー部チームでもトップクラスの実力を持つ帝国女学院は、地区予選で浦の星に敗北して以降、練習はより一層厳しくなっていた

 

 

鬼道「全体的にスピードが遅いぞ!!それでは千歌達には勝てないぞ!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

鬼道の指示がグラウンドに響く。

ボールはすぐに前線へ。

シュートチャンスがやってきた

 

 

佐久間「決めろ!!」バシッ

 

 

 

 

 

 

佐久間「善子!!」

 

 

善子「任せなさい!」

 

 

ボールを受け取った善子は漆黒の羽を生やし、渾身の蹴りを叩き込んだ

 

 

善子「ー デビルバーストGX ー!!」ドガァン!!

 

善子のデビルバーストは完璧なまでに鍛え上げられていた

 

 

源田「ー ハイビーストファング ー!!」ガキィン!

 

しかし、源田も負けてはいない。

進化した源田の必殺技は、巨大な牙で善子のシュートに噛み付いた

 

 

源田「ぐっ…ぐぐ……」

 

善子「…!」

 

 

バシューン!!

ボールがゴールネットを揺らす。

善子のシュートが源田を打ち破り、ゴールに入ったのだ

 

 

源田「はは、流石だな善子」

 

善子「誠志郎さんの技も強力よ。強化されたら多分、止められる」

 

 

点が入ったので一旦休憩。

善子はその足でコーチの元へと向かった

 

 

「どうだ善子。手応えは」

 

善子「デビルバーストじゃ、やっぱり足りないわ。コワレヤスキでも足りるとは思えない」

 

「確実にレベルアップしている。自身を持てよ?善子」

 

鬼道「その通りです」

 

善子「鬼道さん…」

 

鬼道「善子が帝国女学院に編入してから数週間。恐ろしいスピードでチームに馴染んでいる。そのスキルは生かすべきだ」

 

善子「はい、でも今のままじゃ全く足りないんです…」

 

「善子…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『以上です。この18名が今大会の日本代表です』

 

善子『あ、あれ?私の名前は…』

 

善子『…』

 

善子『そっか。私、選ばれなかったのね…』

 

 

知っていたことだ。

自分と同じポジションの選手を見れば一目瞭然。

留学ストライカーにUTX高校の天才、ゾーンを持つ1年生、電光石火で決勝では止められなかった1年生、我らが炎のストライカー。

そして、浦の星の、日本のエースストライカー…

 

 

自分など、戦力になるはずがなかった

 

 

 

 

 

北也『本当にそれでいいのか?善子』

 

善子『…いいわけないでしょ!!』ボロボロ

 

 

気づけば果南の家、北也の元へと行っていた善子。

果南は気を使ってかその場にはいなかった。

その分、北也は父親のように。

そして親友のように、善子に寄り添った

 

 

北也『悔しいよな。善子』

 

善子『ぐ、ぐやじいわよ……』ボロボロ

 

北也『俺もな、すごく悔しいよ善子』

 

善子『!』

 

北也『あんなに頑張ったのにな…支えたのにな…お前の努力は俺が一番知っている』

 

善子『…グズッ…』

 

 

 

北也『だからな。善子』

 

 

 

北也『一緒に世界を目指すぞ』

 

善子『!?』

 

 

今、北也はなんて言った…?

世界を目指す?

しかし、代表はすでに決定している。

今更、変更など…

 

 

北也『代表にはな、枠は少ないが、追加メンバー枠というものがある』

 

善子『!!』

 

北也『お前が、死ぬ気で、そして世界を相手に勝負、優勝したいと思うなら…』

 

 

北也『俺が全力でお前を鍛えてやる』

 

善子『…そう、いいわ。やってやるわよ』

 

 

善子の目に光が戻った。

しかし、その目は前とは比べ物にならないほどギラギラしていて、北也でさえ、鳥肌がたつレベルだった

 

 

善子『きつくて死んでも、すぐに立ち上がってやるわよ!!こんなところで、みんなとのサッカーを終わらせるわけにはいかないのよ!』

 

北也『…よし。流石だな。それじゃあ早速』

 

善子『?』

 

北也『転校だ』

 

 

 

 

 

 

 

佐久間「流石に驚いたぞ。津島善子が帝国に来たのだからな」

 

源田「一時的とはいえ、今の善子は私達の大切なメンバーだ。一緒に強くなろう」

 

善子「えぇ!頑張りましょ」

 

 

自身のサッカーレベルの強化のために、一時的に帝国女学院に編入した善子。

彼女のサッカーへの、そして世界への想いは死んでなどいない

 

 

北也「さあ、練習再開だ善子。その後は全員で観るぞ」

 

善子「日本vsサウジアラビアね」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 西木野総合病院 ー

 

 

真姫「いよいよね」

 

ルビィ「うん…」

 

真姫「大丈夫よ。美奈さんやみんながいるんだもの。勝てるわよ」

 

ルビィ「勝てる、と願いたい。でも、それ以上に心配なことが…」

 

真姫「…?」

 

 

ルビィ「サウジアラビアは潰しで有名だから…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー FFスタジアム ー

 

 

『さあ!!ついにこの日がやって来ました!!FFIアジア予選、第一試合 日本対サウジアラビア!!サニデイジャパンは強豪サウジアラビアに勝利を収めることが出来るのか!?』

 

 

おぉぉぉ!!!!日本ー!!日本!日本!日本!はい!はいはいはいはい!!!

 

 

『日本サポーターはすでに盛り上がっている!!この勢いで日本、前半から飛ばしてほしいところ!』

 

 

 

 

千歌「テレビでしか聞いたことない、日本代表の応援だ…」

 

曜「まさか、私達が応援されているなんてね」

 

真恋「それほどまでに、あなた達は期待されている。ってことよ!みんな、初戦から勝利を手に入れるのよ!」

 

美奈「怖がってはダメ!気持ちを強く持って行きましょ!!」

 

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

センターフォワード 渡辺月

セカンドトップ 黒澤ダイヤ

トップ下 高海千歌

右サイドハーフ 園田海未

左サイドハーフ 渡辺曜

センターハーフ 桜内梨子

センターハーフ 統堂英玲奈

センターバック(右)優木あんじゅ

センターバック(中)鹿角聖良

センターバック(左)東條希

ゴールキーパー 高坂穂乃果☆

 

3-2-3-2

 

 

 

 

 

 

 

コンドル「日本にはレベルの高い選手がいるようだね」

 

アンドレアス「問題ない。全員、潰すだけよ」

 

 

 

FW アンドレアス、コンドル

 

MF ドーガン、ヒソカ

 

MF シルバ、ガダル、ハルク

 

DF ガラ、ベッカ、サミ

 

GK ファルコン

 

3-3-2-2

 

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!!!

 

『さあ、始まりました!日本対サウジアラビア!!前半は日本ボールから!FWの黒澤ダイヤと渡辺月が上がっていく!!』

 

 

月「行くよ!ダイヤさん!」

 

ダイヤ「はい!」

 

 

パス回しは言わずもがな。

二人はサウジアラビアの選手に対して、スルッ。スルッ。と素早いドリブルを仕掛け、上手く突破していく

 

 

ドーガン「くっ…上手いな…」

 

ガダル「中盤!ディフェンスを固めろ!!」

 

 

ダイヤ、月「!!」

 

 

流石は代表。

選手の一声でディフェンスの層が厚くなった。

無理にドリブルをするのは困難だ

 

 

月「海未ちゃん!」パス!

 

海未「はい!」

 

 

日本はサイドでの攻撃を選択。

海未にボールを渡し、一気に突破を図る

 

 

海未「ー START:DASH!! ー!!」ビュン!!

 

シルバ「!!」

 

 

『園田海未!サウジアラビアの選手を一人突破したぞぉ!!』

 

 

海未「これなら…行けます!!」

 

シルバ「…」

 

 

シルバを完全に抜き、そのまま中にボールを送ろうとした…が、

 

 

海未「!!?」

 

 

 

 

ガラ「残念だったね」

 

ベッカ「まんまと罠にハマったぞ」

 

 

月「しまった!!最初のは囮!?」

 

 

海未は、選手を一人突破した瞬間に二人のDFに囲まれていた。

シルバは囮。

海未を端に誘導するための作戦だったのだ

 

 

海未「くっ…もう一度抜くだけです!」バッ!

 

 

海未が"START:DASH!!"を仕掛けようとした。

しかし、

 

 

ベッカ「行かせない!!」ドォン!!

 

ガラ「ほら、弱い弱い!!」ドォン!!

 

海未「うぅっ!?」グラッ

 

 

DF二人の激しいタックル。

足を踏み込まなければ吹き飛ばされていた。

海未は今までにこんな衝撃を受けたことは無かった

 

 

海未「(ぐっ…強い!?)」

 

 

千歌「海未さん!!」

 

梨子「ライン際まで追い詰められているから、パスももらえない…」

 

 

サウジアラビアのフィジカルに圧倒される海未。

そして、その時はやってきた

 

 

海未「っっ!?」ドサッ!

 

ベッカ「もらったぞ」

 

 

『おぉっと!?園田海未!DF二人による激しいディフェンスでボールを奪われてしまったぁ!!』

 

 

千歌「海未さん!大丈夫ですか!?」

 

海未「だ、大丈夫…立てます…」

 

 

海未はそう言うも、吹き飛ばされた衝撃でなかなか立ち上がる事ができなかった。

これが世界のフィジカル。

これが世界の戦いなのだ

 

 

梨子「(これ以上は…!!)」バッ!

 

ベッカ「!」

 

 

梨子が一瞬の隙をつき、ボールを奪いに行った

 

 

梨子「ー アインザッツ ー!!」ビュン!

 

 

ボールに梨子の足が触れた…

あとは、ボールを奪い取るだーーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーー「軽い!!!!」ドォン!!

 

 

 

 

梨子「きゃ!?」ドサッ!

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

『な、なんと!?ボールを奪いに行った桜内梨子!ベッカの足とボールを挟んだ瞬間、ベッカの強力なパワーで吹き飛ばされたぁ!?』

 

 

梨子「い、痛い…」

 

ベッカ「おいおい…日本はこんなに弱っちいのか??」

 

 

 

聖良「な…なんて強引な…!!」

 

希「データ通りやな。ファウルなんて関係無しや…」

 

 

ディフェンスに入っても強引に突破される日本。

そのままボールはキャプテンのアンドレアスに渡り、この試合、最初のシュートチャンスとなった

 

 

アンドレアス「日本…期待以下だったな」バッ!

 

穂乃果「!」

 

 

ゴール前で飛び上がるアンドレアス。

サウジアラビアの代名詞ともいえる、灼熱の技が放たれた

 

 

アンドレアス「ー バーニング・火の鳥 ー!!」ドガァン!

 

 

『これは!アンドレアスの必殺シュートだぁぁ!!日本の守護神、高坂穂乃果は止められるのでしょうか!?』

 

 

穂乃果「絶対に止める!!!!」ドォン!!

 

 

穂乃果はオーラを込めた右手を地面に叩きつける。

地面に現れたVの字は、炎のシュートを受け止めた

 

 

穂乃果「ー 真ゴットハンドV ー!!」ドン!!

 

アンドレアス「何!?」

 

 

『止めたぁぁ!!高坂穂乃果!ゴットハンドVで日本のピンチを救ったあぁ!!』

 

 

あんじゅ「ナイス!!」

 

聖良「助かりました!」

 

 

穂乃果「ゴールはやらせないよ…」

 

 

試合序盤。

サウジアラビアのフィジカルに圧倒される日本代表。

果たして試合の行方は…

 

 

日本 0-0 サウジアラビア

 

 





ちなみにFFI地区予選は、オリオンと同じく、グループリーグ形式にしています。

次回から勝負はヒートアップ!?



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第3章 14話 「サウジアラビア戦 "駆けるファンタジスタ"」

皆さん、どうも!部活を完全に引退したルビィちゃんキャンディーです。ついに…お勉強に本腰を入れる時期が近づいてまいりました…投稿ペースが落ちるのは避けられない…かもです。詳細は後日説明します

さてさて、今回のお話で試合は動くのか…




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに始まったサウジアラビア戦。日本はサウジアラビアの選手のフィジカルに圧倒され、シュートまでの攻撃を許してしまった。シュートは穂乃果が止めるも、相手の激しいプレーは止まらない

 

 

 

 

穂乃果「ふぅ…(重いシュートだった…)」

 

アンドレアス「チッ…」

 

 

すぐにディフェンスに戻るサウジアラビアの選手達。

またあの激しいタックルを仕掛けてくるのだろうか…日本の選手達の足は自然と止まる

 

 

英玲奈「くっ…パスを回そうにも、あの激しいチャージを避けなければ…」

 

千歌「大丈夫?梨子ちゃん」

 

梨子「う、うん。なんとか…」

 

 

なかなか前線にまでボールを繋げられない日本。

そして、そのプレーはサウジアラビアの選手達を苛立たせるには十分な材料だった

 

 

ハルク「いったい、いつになったら攻撃してくるんだ日本は!」

 

ヒソカ「私達のフィジカルにビビったのでしょう…面白くない」

 

 

苛立たせれば、ディフェンスはさらに凶器になる…

日本はそう分かっていても、あのようなプレーを見た以上は…

 

 

海未『っっ!?』ドサッ!!

 

ダイヤ「っ…」パス

 

コンドル「また戻すのか…」

 

 

 

梨子『痛い…!?』ドサッ!!

 

梨子「…!」ジリ…

 

ドーガン「なんだ…来ないのか?」

 

梨子「(一歩が…踏み出せない)」

 

 

日本が恐れていた最悪の状況になっていた。

サウジアラビアがこれを日本の弱点と取るのは時間の問題であった

 

 

花陽「良くない雰囲気ですね…」

 

花丸「美奈さん!このままじゃ…」

 

美奈「……」

 

 

美奈は静かにフィールドを見ている。

その心の中は焦りでいっぱいなのか、それともまだ余裕があるのか…

ベンチのメンバーには分からなかった

 

 

真恋「…美奈」

 

美奈「…やむを得ないわね」クルッ

 

 

美奈がフィールドに背を向けた。

向かったのはベンチ。

何か指示を出すようだ

 

 

美奈「予定を早めるわ。あなたなら行ける…今の状況を変えられる。私はそう思うわ」

 

 

 

美奈「にこちゃん」

 

にこ「当たり前でしょ。私が根性叩き直してやるわよ」

 

 

日本のベンチでは早くも動きがあった。

美奈が投入するのはにこ。

果たして、にこはこの状況を変えることが出来るのか…

 

 

曜「(交代…?にこさん!?)」

 

月「(助かった…正直、そろそろ限界だっんだよね)」

 

 

ここまで恐ろしく静かだった月。

理由はしつこいマークであった。

月に対して二人が密着ディフェンス、もう一人が離れてはいるが、月のマークをしている。

事実上、1対3であった

 

 

ダイヤ「あちらも月さんをかなり警戒していますね…」

 

 

サウジアラビアのプレーに警戒して、なかなか前線にまでボールを回せないがためでもあった。

前線にまでボールが回らないということは、そこを守る選手は暇である。

そのため、月を3人がかりで抑えるのは容易なことであった。

完全なる悪循環…

 

 

千歌「てりゃ!」ズサー!

 

ドーガン「な!?」

 

 

『ここで高海千歌がボールをスライディングでカット!コート外にボールが出たため、スローインになります!』

 

 

 

美奈「頼んだわよ!」

 

にこ「…はい!」

 

 

『おぉっと!?日本、早くも選手交代のようだ!!統堂英玲奈に変わって矢澤にこ!!我らがフリースタイルマスター、矢澤にこが投入されます!!』

 

 

英玲奈「今の状況では相手の分析は必要ない、ということだな」

 

にこ「今の日本にはそれ以上に足りないものがあるわ。にこがそれを教えてあげる」

 

英玲奈「頼んだぞ」

 

にこ「任せて」

 

 

 

『フォーメーションも少し変わるようです!桜内梨子をボランチにして、矢澤にこは高海千歌と二人でトップ下でプレーするようだ!!!』

 

 

千歌「にこさんがトップ下…」

 

にこ「私も攻撃に参加しろ。ってご所望よ」

 

月「助かったよ…にこさん」

 

にこ「任せなさい月。私がコートに入ったからには…」

 

にこ「暇なんて与えないんだから」

 

 

 

ピッ!!!

スローインで試合再開。

ボールを受け取ったコンドルはドリブルでいっきに上がっていく

 

 

コンドル「どきなさい!!」ドォン!!

 

あんじゅ「痛っ!?強引すぎ…よっ!!」ドォン!!

 

 

にこが投入された今、日本はすぐにボールを奪い取る必要があった。

コンドルの激しいタックルに負けじとあんじゅも食らいつく

 

 

コンドル「くっ…勝てると思ってるの??」

 

あんじゅ「だからって、黙って見てるわけには行かないのよーーーー

 

 

ーーーーそうでしょ?聖良」

 

 

コンドル「な!? ガキイィィィィィィン!!!!

 

 

日本「「「!!」」」

 

サウジアラビア「「「!?」」」

 

 

一瞬の出来事だった。

先程までドリブルをしていたコンドルは、今は氷漬け。

そうだ。

日本には頼りになるDF達がいるではないか

 

 

聖良「はい。あんじゅさん。私達が先陣を切らなければ」

 

 

『"スノーエンジェル"です!鹿角聖良の必殺技が決まったあぁ!!!日本、DFの連携により見事、ボールを取り返したぁ!!』

 

 

聖良「にこさん!」パス

 

にこ「ナイスよ。二人とも」

 

 

ベッカ「…来るぞ」

 

ヒソカ「ふん…どうせあの子も潰されて、戦意が無くなるだけ…」

 

 

にこがこの試合、初めてのドリブルを開始した。

しかし、サウジアラビアのDFは強引なプレーをする選手がほとんど。

千歌達はにこに警告する

 

 

千歌「にこさん!気をつけてください!」

 

梨子「ドリブルをするとすぐに囲まれて…」

 

 

梨子の脳裏に浮かぶのは、先程、自分が受けた衝撃。

どうしてもドリブルに躊躇いが生じる…

しかし、にこの足は止まらない

 

 

にこ「さあ、行くわよ!」バッ

 

 

ガダル「!?ドリブルで来たぞ…」

 

ガラ「へぇ…小さい割に度胸はあるのね」

 

 

にこがドリブルを止めないことに驚きつつもディフェンスに入るサウジアラビア。

すぐににこを取り囲む

 

 

にこ「!(4人…)」

 

 

ガダル「度胸だけは認めるよ」

 

ハルク「だが、潰しておしまいだ」

 

シルバ「4人を相手にどこまでもつ?」

 

ガラ「おとなしくボールを渡した方がいいんじゃない?」

 

 

果南「まずい…囲まれてる!!」

 

英玲奈「4人で完全に潰しに行く気だ…」

 

 

時すでに遅しとはまさにこの事。

誰も助けには行けない。

海未の時のように、にこが崩れ落ちるのを見ているしかない…

 

 

ガダル「終わりだぁ!!」バッ

 

「「!!」」バッ

 

 

4人がいっきに、にこに近づいた。

潰される…

千歌達はすぐに助けに行こうとする…

 

 

 

 

 

 

 

凛「心配ないにゃ」

 

果南「え…?」

 

 

にこ「!」グワン

 

ガダル「!?」スカッ!

 

 

 

海未「千歌、忘れたとは言わせませんよ」

 

 

にこ「!!」クイッ!

 

ハルク、シルバ「!?」スカッ!

 

 

 

花陽「相手が何人であっても関係ないです」

 

 

にこ「遅くない?」ババッ!

 

ガラ「!?(なん、なんだ?その動き…)」

 

 

 

希「にこっちはどんな状況でも負けない。熱い気持ちがそのままプレーに伝わる」

 

 

にこ「相手にもならないわね」

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

ことり「どうして?それはにこちゃんが…」

 

 

にこ「ー ファンタスティックキープ ー」

 

 

穂乃果「宇宙一のフリースタイラーだからだよ」

 

 

 

『な、なんてことだあぁぁ!!??矢澤にこ!4人の選手に囲まれながらも、新必殺技で全員を交わしてみせたぁ!!とても、人間技とは思えません!!これが、"日本のファンタジスタ"の力なのか!?』

 

 

花丸「凄い…やっぱり凄いずら!にこさん!」

 

ツバサ「にこさんの存在は、私達の想像を越えた先にある…わね」

 

 

 

サミ「嘘でしょ!?4人が抜かれた!?」

 

ファルコン「まずい…早く守りを固めなければ…」

 

 

しかし、4人でいっきにディフェンスに入ったことが裏目に出た。

残っているDFは二人。

先程、4人が抜かされたばかり。

にこを2人で抑えるのは不可能であった

 

 

ベッカ「調子に乗るな!!」ドォン!!

 

にこ「っ!?」グラッ!

 

 

しかし、ベッカがファウルぎりぎりの激しいタックルを仕掛けた。

海未はこのタックルで吹き飛ばされた。

にこもよろけ、そのまま倒れ…るはずだが、

 

 

ベッカ「!?(何故だ…)」ドォン!!

 

にこ「っ…!」グラッ!

 

ベッカ「(どうして!?)」ドォン!!

 

にこ「!!」グラッ!

 

 

ベッカ「どうして、よろけてもドリブルを続けられるんだ…??」

 

 

にこはベッカにタックルされる度によろけ、転びそうになる。

しかし、ドリブルは止まらない。

どんなに厳しい体制でも、ボールと足は止まらない

 

 

ベッカ「何故だ!!」グワーッ!

 

にこ「教えてあげるわ」バッ!

 

ベッカ「な!?(かわされた…)」スカッ

 

 

にこのボールが吸い付くようなドリブル。

まるで足とボールに磁石が埋め込まれているかのごとく。

まるで足が生きているかのごとく。

そう、

 

 

にこ「私の足は生きているのよ」

 

ベッカ「!?」

 

にこ「どんな状況でも、足はドリブルをするために、そしてボールを繋ぐために勝手に動く…もう考えなくてもできるのよ」

 

 

にこ「"無意識"よ」

 

 

これが努力を重ねた少女の答えだった

 

 

 

 

にこ「月!」

 

月「タイミングバッチリ!」

 

 

にこはボールを高く打ち上げた。

既に空中で構えに入っていた月の足元へ。

にこの熱い気持ちがつまったボールがーーー

 

 

 

月「天空ぅぅぅぅぅ!!」ドガァン!!

 

 

ーーー放たれた

 

 

月「落としいぃぃぃぃぃ!!!!」ゴオォォ!!

 

 

空を落とすシュート。

重く速いそのボールは、止められるわけがない

 

 

ファルコン「ぐあっ!?」ドガァン!

 

 

 

『ゴーール!!!!日本、強豪サウジアラビアに先制点だぁ!!!!矢澤にこの5人抜きと渡辺月の渾身のシュートは、会場のムードをいっきに盛り上げています!!』

 

 

月「にこさん最高!」

 

にこ「あんたのシュートもね!」

 

 

パン!!と2人のハイタッチの音が響く。

この2人のプレーが、試合の流れを一気に変えるものだと、誰もが確信していた

 

 

 

 

ヒソカ「どうします?アンドレアスさん…」

 

アンドレアス「まさか、あんなプレーをする選手がいたとはな…甘く見ていた」

 

 

アンドレアス「よし…本格的に、日本を潰す」

 

 

 

 

 

日本 1-0 サウジアラビア

 

 




ファンタスティックキープ
オリジナル技で、"アクロバットキープ"の進化技です。にこちゃんのプレイスキルを最大限に引き出し、まるでショーを見ているかのようなボールさばきで敵を抜き去ります。ファンタスティックは「凄い」や「幻想」を意味します


次回は別の選手も活躍する…かも?





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第3章 15話 「サウジアラビア戦 "覚悟の共鳴"」

☆お知らせ☆
皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。なんとなんと…!Twitterで、とある方が「幻影学園戦でのチカちゃん」のシーンを漫画にしてくれました!!完成度が高すぎて冗談抜きで涙がでました…!!是非是非、自分のアカウントでその漫画をリツイートしているので見に来てください!本当に凄いです!!!


もう一つお知らせです。
「音楽好きとスクールアイドル」「憧れを追って」でおなじみのはくたかさんが、「輝こうサッカーで!コラボ第二弾」を書いてくれました!!どうやら、第二弾は複数話のようで、後日、続きが投稿されるようです。ルビィちゃんキャンディーよりもキャラが生き生きと書かれています!ぜひ読んでみてください(ルビィちゃんキャンディーの今後の課題)



 

 

 

前回の輝こうサッカーで!

サウジアラビアの強引なプレーにより、攻撃に戸惑っていたサニデイジャパン。しかし、途中出場したにこと、月のファインプレーにより、日本は強豪サウジアラビアから先制点を獲た。前半は間もなく終了…試合の行方は…

 

 

 

 

 

『さあ!!流れに乗った日本!リードしたまま前半を終えることが出来るのでしょうか!?』

 

 

試合再開の笛と同時に、サウジアラビアが攻め上がる。

先程まで、日本は戦意をなくした弱いチームだと思っていたが、交代した選手の圧倒的なテクニックでまさかの失点を許してしまった。

早急に追いつきたいサウジアラビアのプレーは、さらに強引になる

 

 

 

ヒソカ「軽いかるい!!」ドォン!!

 

千歌「っ!(にこさん…こんな強烈な衝撃に…)」グラッ

 

 

よろけながら考える千歌。

この衝撃を受けながらのドリブル…?

ありえない。

立っているだけでもやっとなのに…

 

 

千歌「(あれがにこさんの力…そして想い…!)」グッ!

 

ヒソカ「何!?」

 

 

ガダル「逃げずにぶつかっている…?」

 

シルバ「無駄なあがきだって…わからないのかしら」

 

 

千歌はヒソカに食らいつく。

何度も突き飛ばされても、すぐに追いつき、またぶつかる

 

 

曜「千歌ちゃん…!」

 

海未「…千歌」

 

 

そう。

あの時のように。

全国大会決勝で千歌がにこに何度も抜かされても、立ち向かったように

 

 

にこ「分かってるじゃない…!!千歌」バッ!

 

ヒソカ「!!」

 

 

千歌の勇気あるプレーに応えるように、にこがフォローに入る。

しかし、先に気づいたヒソカはにこを避けるようにパスを出した

 

 

ヒソカ「(あのチビは厄介ですね…)」パス

 

コンドル「!」

 

 

ボールを受け取ったコンドルは持ち前の高速ドリブルで、一気に攻め上がる

 

 

にこ「誰か!頼むわよ!」

 

 

曜「(私が一番近い…!)」

 

 

今の流れでこれ以上、攻め込ませるのはまずい。

そして、にこと千歌のプレー…曜は逃げるわけにはいかなかった

 

 

曜「そうだ…千歌ちゃんが立ち向かったんだ…怖くても、みんなのために!!」バッ!

 

 

『おぉっと!?渡辺曜がディフェンスに入るようだ!!』

 

 

コンドル「また吹き飛ばしてやる!!」

 

 

曜に構わずドリブルを続けるコンドル。

強引に突破して終了。

サウジアラビアの選手達は、そう思っていた

 

 

 

 

 

 

 

ドガアアァァァァァン!!!!!!!!

 

日本「「「!?」」」

 

サウジアラビア「「「!?」」」

 

 

スタジアムに轟音が響き渡る。

上空から、曜の横に何かが落ちてきたのだ。

砂埃でよく分からないが、コンドルは足を止める。

かなり大きな音だった。

油断はできない

 

 

 

 

曜「まだ未完成だけど…」バッ!

 

 

曜は空中に飛んでいた。

砂埃の上から現れた曜の足には……

 

 

コンドル「鎖!!?」

 

ヒソカ「いったい、なんの鎖ですか!?」

 

 

曜「(ぐうっ……重い…!!)」グググ

 

 

曜の足に巻きついている鎖の先は、砂埃の中に続いている。

かなり重いものなのだろうか、曜が声を荒げて叫ぶ

 

 

曜「うおおおおぉぁぁぁぁぁぁ!!!!」グググ

 

月「曜ちゃん…あれって…」

 

アンドレア「…嘘だろ」

 

 

 

曜「でりゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」ブオン!!!!

 

 

曜が鎖を引っ張る勢いで一回転。

鎖の先のものを投げ飛ばしたようだ。

砂埃の中から現れたのは、巨大な。

そして、衝撃的なものだった

 

 

コンドル「船の…錨!?」

 

 

曜「ー スマッシュアンカー ー!!!!」ドガァン!!

 

 

曜が足で投げ飛ばしたのは「船の錨」だった。

錨はコンドルの目の前に突き刺さり、地面にはヒビが入る

 

 

コンドル「地震…!?」

 

曜「全速前進ーーーーー

 

 

 

ーーーーヨーソロー!!!!」

 

 

 

ドガアアァァァァァン!!!!

曜の号令と同時に、コンドルの真下のひび割れた地面が大爆発を起こした。

理由は水。

錨が刺さった場所から水が一気に吹き出し、衝撃でコンドルを吹き飛ばしたのだった

 

 

 

コンドル「うわぁぁ!!?」

 

曜「もらった!」

 

 

『なんというパワー!!!!渡辺曜の新必殺技は、まさに力技!吹き飛ばされたコンドルから奪ったボールを、一気に前線へ運びます!!』

 

 

月「うっひゃあ…凄い技だね」

 

ダイヤ「いつの間にあのような技を…」

 

 

驚く気持ちもわかるが、今は試合に集中する。

ボールを受け取ったダイヤは、月と連携してDFを突破するべく、ドリブルを開始した

 

 

月「僕達も負けてられないよ!」バッ

 

ダイヤ「はい!」バッ

 

 

ベッカ「っ!!」

 

 

流れが徐々に、日本の流れへと変わってきていた。

にこの恐れを知らないドリブルで刺激を受けた選手達が、果敢の守りで再び日本の攻撃へと戦況を変えたのだ

 

 

 

しかし、

 

 

 

ベッカ「ー レッド・ホット・チリ・メテオ ー!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

月「え…」

 

ダイヤ「これは…?」

 

 

月とダイヤは上を見る。

自分たちの周りが暗くなり、上から何かが近づいてくる音がするからである

 

 

千歌「月ちゃん、ダイヤさん!!逃げて!!」

 

 

ベッカ「もう遅い!!!!」

 

 

 

 

ドガアアァァァァァン!!!!

月とダイヤの上から落ちてきたのは…"隕石"だった。

凄まじい衝撃とともに、2人は吹き飛ばされた

 

 

ダイヤ「っ!!」ドサッ!

 

月「うわっ!?」ドサッ!

 

 

海未「月!!ダイヤ!!」

 

 

ボールを奪われた日本。

幸いにも、2人には怪我はないものの、ボールはアンドレアスにへと渡った

 

 

アンドレアス「いい気になるなよ日本。あんた達は、私達に負けるんだよ」

 

 

そう言うと、アンドレアスの合図で一列に並び、走り始めたサウジアラビア。

ルビィが言っていた、"潰し"のプレーが本格的に始まる

 

 

梨子「何、あれ…」

 

聖良「何かの技…でしょうか」

 

 

警戒する日本の選手達。

しかし、これから起こる展開を誰が予想しただろうか

 

 

「「「ー 大砂漠砂嵐 ー!!」」」ズザー!!

 

 

穂乃果「砂嵐…!?」

 

あんじゅ「必殺タクティクスね…」

 

 

サウジアラビアの選手達はスライディングで前進しながら、砂を巻き上げる。

それは巨大な砂嵐。

すぐにフィールドを砂嵐の世界へと変えた

 

 

千歌「っっ…!!目が開けられない…」

 

にこ「うわ!目に入った…」

 

穂乃果「くっ…(何も見えない…)」

 

 

日本の選手達は、砂で目を開けることが出来ず、その場から動けなかった。

サウジアラビアの選手達はどこにいるのか…

ボールは?

戦況は?

状況がまったく把握出来なかった

 

 

 

 

 

そして、砂嵐が収まった頃には…

 

 

 

 

穂乃果「うそ…でしょ」

 

 

『な、なんと!?ボールが日本のゴールの中に入っています!!日本の選手達は誰もシュートに反応できず、前半終了と同時に、同点に追いつかれてしまったあぁぁ!!』

 

 

穂乃果「いったい、いつシュートを…」

 

聖良「砂嵐の中では、対抗出来ませんね…」

 

 

そして、サウジアラビアは日本に牙を抜く

 

 

 

『おぉっと!?日本、選手が倒れているぞ!!アクシデントでしょうか!?』

 

 

穂乃果「!?」

 

 

凛「なんで…!?」

 

果南「っっ…汚すぎる…」

 

ことり「そんな…」

 

 

 

 

月「ゴホッゴホッ…っっ…」

 

ダイヤ「くっ……」

 

 

フィールドには蹲り倒れる月とダイヤの姿があった

 

 

 

前半終了

 

日本 1-1 サウジアラビア

 

 

 

 

 

 

 

 





スマッシュアンカー
曜ちゃんのオリジナルのブロック技です。錨はシュートブロックにも使えるので、曜ちゃんはMFとして、どんどん成長しているように感じますね!


次回、潰しのサウジアラビアに対抗するために美奈が出した指示とは…?

後半もサウジアラビアの猛攻は止まらない



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第3章 16話 「サウジアラビア戦 "若い芽"」

☆お知らせ☆
皆さん、ルビィちゃんキャンディーが新たな挑戦をしました…それは"挿絵"です。Twitterではいくつかイラストをあげたのですが、まだまだ素人…勉強の合間に練習しようと思います。ちなみに、第2章の函館聖泉戦その4の後書きに、挿絵を投稿しました。ぜひ、見てみてくださいね!ご感想お待ちしております

最初に言っておく。俺の絵はかーなーり酷い!!




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

にこのプレーにより、サウジアラビアとぶつかる覚悟を決めた日本代表。しかし、サウジアラビアは日本を完全に潰すために、必殺タクティクスを発動する。それにより、月とダイヤが……

 

 

 

 

 

 

曜「月ちゃん!?」

 

果南「ダイヤ!!」

 

 

砂嵐が収まったグラウンドにうずくまる2人。

月は腹を抱え、ダイヤは足を抑えている…ただ転んだだけではないようだ

 

 

月「ゴホッゴホッ!?っっ…ヤバいね…ちょっと…」

 

ダイヤ「っっ……!」

 

果南「!!!!あいつら…!」

 

 

分かりきったことだ。

サウジアラビアの選手がやったに違いない。

ここまで酷いサッカーを見たのは初めてだった。

果南は怒りで我を忘れ、そのまま掴みかかろうとする

 

 

ダイヤ「やめてください果南さん!出場停止になりますわよ!?」

 

果南「っっ…でも…」

 

ダイヤ「わたくしは大丈夫…今はベンチに戻って、作戦を…」

 

果南「……」

 

 

果南はサウジアラビアの選手を睨み続けるも、怒りを堪えてベンチに戻る。

ルビィの件では一番落ち着いていた果南が、今回は一番冷静ではなかった。

それまでにこの試合は緊迫しているのだ

 

 

 

千歌「ダイヤさんと月ちゃんは…」

 

 

花陽「今、医務室で見てもらっていますが、幸いにも脛とみぞおち…怪我はないようです」

 

聖良「良かったです…これで戦線離脱は最悪な状況でした」

 

 

ひとまず怪我でないのなら安心…しかし、美奈達の顔は晴れない

 

 

真恋「警告…でしょうね」

 

ツバサ「これ以上、対抗するなら容赦しない…ということね」

 

美奈「…」

 

 

後半も、あの必殺タクティクス。

そして潰しを受けたら次は…

再び恐怖心が芽生え始めた選手達。

逃げようにもあの砂嵐では何も出来ない

 

 

穂乃果「あの砂嵐…どうにかならない?」

 

あんじゅ「難しいわね…何も見えないんじゃ、動くことさえ」

 

海未「…」

 

 

何とか作戦を考えたいが、時間は有限。

何も思いつかないまま、後半戦が始まろうとしていた

 

 

真恋「ひとまず、月ちゃん達を交代させましょ」

 

美奈「えぇ。月ちゃんとダイヤちゃんに変わって……」

 

 

美奈「凛ちゃんと理亞ちゃんよ」

 

 

凛、理亞「!!」

 

 

一番驚いたのは、凛と理亞だった。

今の状況下、そして実力的にもツバサとことりが出るものだと思っていたからである

 

 

凛「凛なんかが戦力になるのかな…」

 

理亞「っ…」

 

 

練習試合で思い知らされた。

自分たちよりも実力のある先輩達。

無敵の選手だと思っていた全国大会のころの自分が恥ずかしい…

 

 

穂乃果「大丈夫!」

 

凛、理亞「!」

 

穂乃果「穂乃果知ってるよ!2人が凄い選手だって。絶対にチームの力になる!」

 

凛「穂乃果ちゃん…」

 

理亞「…」

 

穂乃果「信じてる!だから、ファイトだよ!」

 

凛、理亞「はい!!」

 

 

穂乃果の才能のひとつ、仲間を照らし導く。

それは彼女が太陽だからこそできる、高坂穂乃果の力なのである

 

 

真恋「さすが穂乃果ちゃんね…!」

 

美奈「海未ちゃん」

 

海未「はい…?」

 

美奈「ちょっと聞いて」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

『さあ!日本 対 サウジアラビア、後半戦がまもなく始まります!!日本は前半終了時にアクシデント、渡辺月と黒澤ダイヤが医務室で治療を受けているため、鹿角理亞と星空凛が交代するようです!!』

 

 

 

聖良「理亞、頑張りましょう!」

 

理亞「はい…!姉様」

 

 

理亞は全国大会で浦の星に負けた時に、聖良とのサッカーは終わったのだと確信していた。

全ては受け入れきれないものの、聖良がいなくなったあとの函館聖泉を支えるために、精一杯の努力を…

そう心に決めた時だった。

自分が、そして姉様が日本代表に選ばれたのは…

 

 

 

 

『FW 函館聖泉 鹿角理亞』

 

『DF 函館聖泉 鹿角聖良』

 

 

聖良『理亞!!私達、代表ですよ!!』

 

理亞『…う、うそ…』

 

聖良『理亞とのサッカーは、まだ終わっていません!』

 

理亞『姉様…!』

 

 

 

 

 

 

理亞「これが…本当に最後…」

 

 

コートに入った理亞は目の色を変える。

もちろん、聖良とのサッカーのためでもあるが、あの時気づいたサッカーの楽しさを守るために。

サッカーを楽しむために…

 

 

理亞「勝つ」

 

凛「すっごい気合いだにゃ…」

 

 

凛は準備運動をしながら気合いを入れている理亞を見ていた。

陸上部時代のクセで、動き出す前には必ず準備運動をする凛。

体をほぐすというよりかは、ルーティーンに近かった

 

 

 

 

花丸「花陽ちゃん、なんで美奈さんはツバサさんとことりさんを出さなかったの?」

 

花陽「…わかりません。ですが、美奈監督には考えがあるはずです…!」

 

 

ツバサ「…」

 

ツバサ「(私は、まだ出るわけにはいかないのよ)」

 

 

 

 

 

 

ピーーーー!!!!

 

『さあ!!サウジアラビアボールで後半戦のスタートです!!得点は1-1、果たして先に得点するのはどちらの国なのか!?』

 

 

 

アンドレアス「行くぞ!!」

 

 

「「「ー 大砂漠砂嵐 ー!!」」」ズザー!!

 

 

キックオフと同時に、再び砂嵐を発動するサウジアラビア。

先ほどと同様に、身動きが取れない日本の選手達

 

 

理亞「っ…!?(目を開けてられない!)」

 

凛「にゃー!?」

 

 

交代したFW2人も目を閉じる。

砂が大量に目に入ったら洒落にならない。

しかし、目を閉じるということはーーー

 

 

コンドル「潰してくださいって言ってるようなもの!!」ドガァン!

 

理亞「痛っ!!」ドサッ!

 

 

凛「理亞ちゃん!?」

 

 

今の声は理亞ちゃんの…

凛は理亞がサウジアラビアの選手に何かされたのを察し、警戒する

 

 

凛「(目をつぶっているから、何もわかんないよ…)」

 

 

あれ…?この感じ、どこかでーーーーー

 

 

ヒソカ「邪魔です!!」ドカッ!!

 

凛「ぐっ…!?」ドサッ!

 

 

ヒソカに勢いよく突き飛ばされる凛。

急所には当たらなかったが、かなり危険なタックルだった

 

 

凛「痛いにゃ〜…(なんで、サウジアラビアの選手は、砂嵐の中でも凛のいる場所が分かったんだろう…)」

 

 

考える凛。

その間にも、サウジアラビアは日本に猛威を振るう。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

『ゴール!!!!サウジアラビア、逆転だぁぁ!!』

 

 

穂乃果「っ…!?」

 

梨子「前半と同じ…」

 

 

『サウジアラビアがいつシュートを撃ったのか、それ以前にどこにいるのかさえ我々にはわかりません!!日本は、抗うことも出来ずに逆転を許してしまった…!!』

 

 

穂乃果「ボールさえ見えれば…取れるのに…!!」

 

希「…」

 

 

逆転されてしまった日本。

このままではさらに失点を許してしまう…

しかし、攻めないことには始まらない

 

 

理亞「私達が取り返す!」

 

凛「やってやるにゃ!!」

 

 

試合再開。

ドリブルを始めた理亞は、そのままサウジアラビアの選手に突っ込む

 

 

ハルク「吹き飛ばしてあげるわ!!」

 

理亞「!」

 

 

ハルクがディフェンスに入る。

ファウルを気にしないサウジアラビアのディフェンスは凶器。

理亞が受けたらひとたまりもない

 

 

ハルク「喰らえ!!」バッ!

 

 

聖良「理亞!危ない!!」

 

 

 

 

そう。

受けたらの話

 

 

 

 

ハルク「な!?いない…?」

 

 

気づいた時には、理亞はハルクの前からいなくなっていた。

抜かされた訳では無い。

では、いったいどこへ…

 

 

理亞「こっち」

 

ハルク「!?(上…!?)」

 

 

華麗な身のこなしで、ハルクの真上まで飛んでいた理亞。

両足で挟んだボールには、すでにオーラが溜められている

 

 

曜「あの技は…!」

 

梨子「苦しめられた記憶しかない…」

 

 

浦の星のメンバーは忘れるわけがない。

理亞の圧倒的なサッカーセンスから放たれるその技は、相手を敗北という谷底にたたき落とす

 

 

理亞「ー ドロップアウトV3 ー!」ドガァン!

 

ハルク「うわっ!?」

 

 

両足で地面に叩きつけたボールは、オーラを爆発させてハルクを吹き飛ばす。

理亞相手にパワープレイは不利。

華麗に交わされ、敗北を知るだけである

 

 

凛「さっすが!かっ飛ばして行くにゃ!」

 

理亞「凛!」パス

 

 

理亞のプレーでテンションが上がった凛は、いっきに走り出す。

理亞はその動きに呼応し、パスを出す

 

 

シルバ「なに…あのパスは!?」

 

ガダル「繋ぐ気あるの??」

 

 

理亞が凛に出したパスは、パスとは言い難い、俗に言う"キラーパス"であった。

凛がいる場所よりも遥か先。

先にサウジアラビア選手がボールを取ってしまうのでは、というほど離れていた

 

 

ガラ「ミスキックかしら…もらうわね」バッ

 

 

ガラが、自分の前まで転がってきたボールに触ろうとしたーーーーー

 

 

凛「あげないにゃあぁぁぁ!!!!」バリバリ!!

 

ガラ「!!!?」

 

ベッカ「追いついた!?」

 

 

なんと、先程まで自分よりもボールから離れていた日本の選手が、一瞬で目の前に現れたではないか…

ガラは凛の超加速に動揺し、対応に遅れる

 

 

凛「ー ジグザグストライク ー!!」ビュンビュンビュンビュン!!

 

 

電気を纏い、金色に輝く凛はもう誰にも止められない

 

 

シルバ「なんーーー ビュン!

 

サミ「このはやーーー ビュンビュン!

 

ベッカ「おいつかーーー ビュンビュンビュン!

 

 

凛「そんなんじゃ凛には一生追いつけないよ!!」

 

 

『全員、抜いたぁぁ!!矢澤にこに続き、鹿角理亞と星空凛が魅せる!!!!これが日本の期待の新生の力です!!』

 

 

凛「このまま決めるにゃ!!」

 

理亞「シュート!」

 

 

果南「よし…!行ける!」

 

ことり「凄い、凛ちゃん!」

 

花陽「凛ちゃーん!!」

 

 

凛は右足を叩きつける。

ドン!!と大きな音と共に現れたのは、凛の気迫…"虎"

 

 

凛「うおああああああああああ!!!」

 

凛「ー タイガードライブV3 ー!!」

 

 

積み上げた練習で強化されたタイガードライブは、唸りをあげながらゴールへと突進する

 

 

ファルコン「凄い気迫だね…でも、止める!」

 

 

ファルコンのオーラが膨れ上がる。

まるで巨大な炎。

その炎が、凛のシュートをガッチリと掴んだ

 

 

ファルコン「ー ダイナミックコロナ ー!!」ドン!

 

凛「!?」

 

理亞「な…!?」

 

 

『止めたぁぁ!!サウジアラビアGK ファルコン、必殺技で星空凛のシュートを完全に抑えました!!! 日本、得点とはなりませんでした!!』

 

 

凛「そ、そんな…あんなに練習したのに…」

 

理亞「あれでもパワーが足りないっていうの…?」

 

 

凛のあのシュートが止められてしまうということは、自分の"ウルフレジェンド"も…

凛と理亞は、世界の壁を痛感する事となった

 

 

ファルコン「アンドレアス!」ブン!

 

アンドレアス「…」

 

 

アンドレアスにボールが渡る。

それ即ち、悪夢の始まりである

 

 

アンドレアス「突破されたときは焦ったが、心配は無用だったな…行くぞ!!」

 

「「「ー 大砂漠砂嵐 ー!!」」」ズザー!!

 

 

穂乃果「また砂嵐…」

 

聖良「このままでは…また、」

 

 

 

 

海未「…」

 

海未「(やるしかないようですね…)」

 

 

 

海未は決意する。

先程、曜だって成功したではないか。

まだ未完成…それは言い訳にならない。

終わったあとでは遅い。

なら、可能性にかけるのみ

 

 

 

海未「相手にとって不足なし」

 

 

 

 

次回

海未が"START:DASH!!"を進化させた"3つの技"が発動する

 



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第3章 17話 「サウジアラビア戦 "海未、覚悟の新"」


皆さんどうも!!オリオンの刻印を見ている方はわかると思いますが、イケメン小僧丸が放っていた青い炎のようなオーラ、あれ、ルビィちゃんの"Awaken the power"じゃん!!!!と思ったルビィちゃんキャンディーです。これで読者様にも"Awaken the power"がイメージしやすくなったのではないでしょうか?冷静に考えると…あれ、スーパーサイヤ人ゴッ……


お知らせです。
2枚目の挿絵を載せました!第3章6話「少女 空を蹴る」の後書きで見れます。

ご感想お待ちしております!



 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

月とダイヤに変わって出場した凛と理亞。サウジアラビアの必殺タクティクスで逆転されるも、2人の持ち味を活かしシュートまで持ち込む。しかし、サウジアラビアGKのコンドルに惜しくも止められ、再びサウジアラビアの必殺タクティクスが発動する……!!

 

 

 

 

 

 

「「「ー 大砂漠砂嵐 ー!!」」」ズザー!!

 

アンドレアス「これで終わりだ!日本!」

 

 

本日3回目の砂嵐がフィールドを。

そして日本の選手達に襲いかかる。

目を開けることが出来ず、相手がいつ攻撃してくるのかさえ分からない。

ただやられるのを待つだけであった

 

 

千歌「っ…また砂嵐…」

 

曜「どうにかしないと…!!」

 

 

動けないだけならまだいいが、サウジアラビアの牙はいつ自分達に向けられるかわからない。

日本代表は恐怖、そして緊張感でその場から動けなかった

 

 

希「(人は情報がない。という状態を一番恐れる…みんな、気づいて…!)」

 

 

 

 

 

 

理亞「(いつ来るかわからない…)」

 

 

理亞は目を閉じながら考える。

視覚を遮断した世界。

光ない、暗い、不安な世界。

自然と鼓動が早くなる

 

 

理亞「(この感じ…どこかで)」

 

 

この引っかかる感じ…嫌いだ。

自分の心臓の音だけが聞こえる。

あとは、芝生を踏む音…

サクッ、サクッ…と

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。自分は一歩も動いてないのに

 

 

 

 

 

 

 

ドーガン「喰らえ!!」グワーッ!

 

理亞「っっ!!?」

 

 

頭で考えるよりも先に体が動いた。

分かる。

今、紙一重で交わした。

自分の肌を掠めたのは、本来掠めるわけがないもの。

スパイクだった

 

 

ドーガン「外した!?」

 

理亞「(危なかった…!!)」ドキドキ

 

 

一瞬でさらに鼓動が早くなった。

この緊張感…そうだ。

やっと思い出した。

この感じ、あの時味わった修羅場とおなじだ…!!

 

 

理亞「(希さんから逃げる時と同じ…!)」

 

 

1度わかればあとは簡単だ。

あの時も希から逃げ切ったのだ。

理亞は自信満々の顔で耳に神経を集中させた

 

 

 

凛「(そういうことね!)」バッ!

 

ヒソカ「何!?」スカッ!

 

 

このことに気づいたのは理亞だけではない。

凛もその一人。

あの時のように、深呼吸からの集中。

よく聞けば、足音でバレバレだった

 

 

ヒソカ「(ここに来て交わされ始めた!?)」

 

 

予想外の日本の適応力。

そういえば、日本はその試合ですぐに成長する、植物のようだと聞いたことがあった。

これがその成長なのか…?

ヒソカ達は焦り始めた

 

 

コンドル「日本のFWを潰さなければまずいぞ!?」

 

ガダル「だけど、なんか避けられて…」

 

 

 

そしてここから、試合の流れはいっきに変わる

 

 

 

 

ビューーーン!!!!!!

 

 

アンドレアス「な、なんだこれは…!?」

 

シルバ「風!?」

 

 

突如、フィールド全体に強風がふき始めた。

まるで嵐が起きているかのような…

サウジアラビアの選手達も動けなくなる

 

 

聖良「砂嵐がかき混ぜられて…!!」

 

あんじゅ「もう、めちゃくちゃぁ!!」

 

 

まるで砂を入れたミキサーの中にいるようであった。

サウジアラビアの作戦?

しかし、サウジアラビアの選手達も動けていない。

では、いったい誰が…

 

 

穂乃果「この風、まさか…」

 

 

 

 

 

海未「はああああぁぁぁぁ!!!!」ビュンビュン!!!!

 

 

海未は高速で回転していた。

自身が風を作る中心。

"竜巻"として

 

 

海未「(賭けです!!あとは私の根気…!)」

 

 

超加速で回る海未。

本来の使い方とは違うが、状況が状況なため、覚悟を決めた

 

 

海未「(まさかこんな形で使う事になるとは…)」

 

 

 

 

 

全国高校女子サッカー大会終了後。

海未は自分の足りない部分を自覚していた

 

 

"FWとしてのインパクト"

 

 

浦の星との決勝でよく分かった。

自分の単体シュートは全て松浦果南に止められ、絵里や穂乃果、そしてルビィと比べると、FWとして自分は未熟だと…

 

どんなに相手を突破しても、シュートを決めきれないのなら意味は無い。

恐らく、自分は日本代表に選ばれるとしたら、FWではなくMFになるだろうと

 

 

自分は愚かだった

 

 

海未は自分のシュートに絶対の自信があった。

あのスピード、連撃、正確なコントロール。

防げるのは穂乃果だけだと思っていた

 

だからこそ、ショックだった。

自分はあの決勝で、一人では1点も決められなかった。

そんな選手が世界相手に戦力になるわけがなかった

 

 

 

だから

 

 

 

園田海未は自分を超える

 

 

 

 

 

海未「ー スピニングフェンス ー!!」

 

 

にこ「海未の新必殺技!?」

 

 

"スピニングフェンス"

"START:DASH!!"の高速移動を利用し、回転で竜巻を発生させる。

強風で相手は動けないため、竜巻に飲み込まれるのを待つのみである

 

 

アンドレアス「ぐあっ!?」

 

 

アンドレアスは竜巻に飲み込まれる。

ボールを奪った海未。

そしてこの技は、もうひとつ素晴らしい結果を生んだ

 

 

 

梨子「砂嵐が…消えた?」

 

曜「海未さんの竜巻が、砂を吹き飛ばしたんだ…!」

 

 

『な、なんてことだぁぁ!!園田海未の新必殺技はボールを奪うだけではない!!サウジアラビアの必殺タクティクスを無効化する、言わば"サウジアラビアキラー"だったぁぁ!!!!』

 

 

花陽「凄い海未ちゃん!!」

 

花丸「いつの間にあんなディフェンス技を…!」

 

美奈「…それだけじゃないわよ♪」

 

果南「え…?」

 

 

 

 

 

 

 

海未「ー 風神の舞 ー!!」ゴオォォォ!!

 

 

コンドル、ドーガン「うわぁぁ!!?」

 

 

海未は続けて新必殺技を発動。

"START:DASH!!"を進化させた技、その2。

高速移動で敵の周りを、まるで舞を踊るかのように移動。

それにより発生した強風で相手を吹き飛ばす

 

 

ことり「あれなら相手にタックルされる心配もない…!!」

 

ツバサ「この短期間で2つも新必殺技を作るなんてね」

 

 

突然の海未の猛攻に戸惑うサウジアラビア。

砂嵐で完全に油断していたため、陣形はほぼバラバラ。

簡単にボールが繋がる

 

 

海未「梨子!」

 

梨子「はい!ー 神のタクトFI ー!!」ビシッ!

 

 

炎の導きが、日本の道を作る。

こうなってはサウジアラビアはボールを取り返すことは出来ない。

残すはキーパーのみ。

日本の速攻により繋がったボールは、再び、海未に渡った

 

 

凛「海未ちゃん!シュートにゃ!」

 

曜「でも、"ラブアローシュート"ではパワーが足りないよ!?」

 

理亞「どうするの…」

 

 

海未「心配いりません」ゴゴゴゴゴ

 

 

海未はドリブルを止め、右手を空に掲げていた。

空には巨大な雷雲が発生している

 

 

果南「何…あれ?」

 

花丸「あんな技、見たことないずら!?」

 

ツバサ「まさか……"3つ目"…?」

 

 

 

海未の"START:DASH!!"から進化させた新必殺技、その3

 

 

海未「はあぁ!!」バッ!

 

 

海未は空へ飛んだ。

雷雲の中に飛び込み、"スピニングフェンス"のように高速回転を始める。

それにより、

 

 

穂乃果「雷雲が渦を巻き始めたよ!」

 

あんじゅ「いったいどんな練習をすれば、あんなこと出来るのかしら…」

 

希「それが海未ちゃんなんよ♪自分に厳しく、日々精進!にこっちとかにも負けない、努力家さんなんよ?」

 

 

 

海未「覚悟はいいですか」

 

 

バリバリバリ!!と電気を纏ったボール。

雷雲のパワーが加わった足で叩き込んだそのオーラは、天を、地を、震わせる

 

 

 

海未「ー 天地雷鳴 ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

雷雲を纏った竜巻が、ボールと共にゴールに迫った

 

 

ベッカ「なんだ!?あの威力…!」

 

ファルコン「任せて!!」バッ!

 

 

ファルコン「ー ダイナミックコロナ ー!」ドン!!

 

 

凛のシュートをねじ伏せたファルコンの必殺技。

充分強力な技だが、天地震わせる海未のシュートにはーーーーー

 

 

ファルコン「ぐあぁ!?」バキィン!

 

 

及ばない

 

 

 

『ゴール!!!!"武風神"が決めたぁぁ!!新必殺技を連続発動し、放たれたシュートは超強力なパワー!!今の園田海未は、誰にも止められない!!!!』

 

 

穂乃果「すごいよ海未ちゃん!」

 

千歌「新必殺技を3つも…!!」

 

海未「ふぅ…力になれてよかったです!」

 

 

 

 

海未の活躍により同点。

試合も残り僅か。

どちらが勝利を手にするのか…

 

 

 

日本 2-2 サウジアラビア

 

 

 





スピニングフェンス
オリオンの刻印の風丸君のディフェンス技です。ルビィちゃんキャンディーお気に入りの技です。かっこいい(語彙力)

風神の舞
これは、昔の風丸君のドリブル技です。"武風神"には必須レベルの技だと思います。最初見た時かっこよかったなぁ…(語彙力)

天地雷鳴
雨宮太陽君ミキシマックス状態が放つシュートです。劇場版でも登場し、とんでもない作画とインパクトで話題になりました。今の日本代表の中でも、月ちゃんのシュートに次ぐ、超強力シュートです。



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第3章 18話 「サウジアラビア戦 "決着"」


皆さんどうも!朝、玄関を開けたら熊がいてめっちゃ驚いたルビィちゃんキャンディーです!まあ、自分の住んでる場所から考えると、鹿とか猿とか猪とか熊が出てもおかしくないんですが…

さてさて、今回でサウジアラビア戦は決着です!果たして結果は…

ちなみに19話は今日の21時に出しますね





 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

希のワシワシ地獄をヒントに、サウジアラビアのラフプレーを回避したFWたち。そして、海未が"START:DASH!!"を進化させた新必殺技"天地雷鳴"で同点に追いついた。残り時間はあとわずか、果たして勝つのは…?

 

 

 

 

 

 

 

月「僕達がいない間に、凄いことになってるね」

 

果南「月、ダイヤ…!大丈夫なの?」

 

ダイヤ「大事には至りませんでした。ご心配をおかけしました…」

 

 

見るかぎり怪我は本当にないようで、歩くことも出来ている。

ベンチメンバーは安心するのと同時に、今の状況を説明する

 

 

ダイヤ「海未さんが新必殺技を3つも…?」

 

月「うひゃ…強力なシュートだね。"天地雷鳴"」

 

 

花陽が海未のシュートをリプレイ動画で、月とダイヤに見せる。

映像からでも伝わる気迫と振動。

まさに、海未の覚悟の結晶であった

 

 

ダイヤ「得点は2-2…次に点を決めた国が勝利ですわね」

 

花陽「はい…ですが、今はサウジアラビアボール。このまま攻められたら…」

 

月「うーん、大丈夫みたいだよ」

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ー 真ゴットハンドV ー」ドン!!

 

アンドレアス「くそ…!!!」

 

 

『止めたぁぁぁ!!!!日本の守護神、高坂穂乃果!!アンドレアスのシュートを完全に抑えましたぁ!!』

 

 

穂乃果「シュートが見えるなら、絶対に止められるよ!!」

 

にこ「こっちよ!穂乃果」

 

 

サウジアラビアは、今の日本には砂嵐は効かないと判断し、そのまま攻め込んだのだが…

それは穂乃果と真っ向から勝負するということになる

 

 

ガダル「あのキーパー、かなりの実力の持ち主だね…」

 

シルバ「アンドレアスのシュートが簡単に…」

 

 

穂乃果からボールを受け取ったにこは、前半の時のようにドリブルで一気に攻める

 

 

コンドル「くっ…!!」スカッ!

 

ヒソカ「すばしっこい…!」スカッ!

 

にこ「そんなんじゃ一生取れないわよ?」

 

 

焦りが生む、隙だらけなプレー。

にこはボールを奪われるわけがなかった。

必殺技を使うこともなく、穴だらけのディフェンスを駆け抜ける

 

 

にこ「最後よ!走りきりなさい!日本!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

ベッカ「調子に乗るな!!」

 

にこ「…!!」

 

 

にこが日本を奮い立たせた瞬間であった。

上空から轟音とともに落ちてきた隕石。

月とダイヤからボールを奪った、"レッドホットチリ・メテオ"だった

 

 

凛「にこちゃん、危ない!!」

 

にこ「わかってる!」パス

 

 

千歌「!」

 

 

にこは隕石を回避するために千歌にボールを渡した。

しかし、その間にもサウジアラビアの選手達は次々と戻ってきている

 

 

にこ「行きなさい!千歌!」

 

理亞「ディフェンスが固まる前に…!」

 

千歌「よし…!」バッ!

 

 

千歌は走り出す。

みんなの期待を背負い、ラスト、本気でぶつかるために

 

 

サミ、ガラ「行かせない!!」バッ

 

 

向こうからDFがこちらへ近づいてくる…

時間的にも奪われるわけにはいかない。

千歌のドリブルスピードは速くなる

 

 

 

曜「千歌ちゃん…そのままDFに突っ込むの…!?」

 

梨子「様子が…おかしくない?」

 

 

 

千歌「(なんだろう…この感じ、前にも)」

 

 

進化したい。

成長したい。

だから、すぐにできないことをひとつひとつ。

乗り越えてきた

 

 

千歌「もっと速く、速く、速く…走りたい!!!!」バチバチ

 

 

月「…何あれ…」

 

ツバサ「…」

 

 

千歌の体がほのかに光り始める。

バチバチ…と謎の音を放ちながら、どんどん…どんどんどんどん加速していく

 

 

千歌「行kーーーー

 

 

 

 

サミ、ガラ「な!?」

 

アンドレアス「…!???」

 

ファルコン「…消えた??」

 

 

 

ーーーeる!!!!」

 

 

「「「!!!!??」」」

 

 

『抜けたぁぁぁ!!!!高海千歌、一瞬、姿を消したかのように見えたが!?新しい必殺技でしょうか!!』

 

 

 

 

英玲奈「スプリントワープか…?」

 

月「いや違うね。スプリントワープは高速移動。だけど、今の千歌ちゃんの動きは…」

 

ツバサ「希さんの"バニシングカット"のような、瞬間移動に近かったわね」

 

月「DFの前で消えたと思ったら…DFの後ろから急に現れた…ふむ…」

 

 

 

『さあ、高海千歌!!キーパーと1対1だ!ここで決めきることが出来るでしょうか!?』

 

 

千歌「はああああぁぁぁぁ!!!!」ゴオォォォ!!

 

 

千歌はボールにオーラを込める。

近づくだけでも熱い。

まるで太陽。

フィールドを熱く眩しく照らす。

輝きのシュート

 

 

穂乃果「いっけー!!千歌ちゃん!」

 

 

千歌「っっっ!!」

 

千歌「ー サンシャインアッシュ ー!!」ドガアァン!!

 

 

太陽を蹴り落とした千歌。

これがラストシュート。

日本の希望はこのボールに託された

 

 

ファルコン「ー ダイナミックコロナ ー!!」ドン!

 

 

千歌「行けえぇぇ!!!」

 

ファルコン「ぐぅぅぅぅ…!!!!」

 

 

耐えるファルコン。

炎と炎のぶつかり合い。

何とか食らいつくも、千歌の輝きには適わない

 

 

ファルコン「ぐあぁ!?」

 

 

『ゴーール!!!!高海千歌、逆転のシュートを決めましたぁぁ!!3-2!日本、強豪サウジアラビアに勝利し、アジア予選初戦突破です!!!!』

 

 

千歌「勝ったー!!」

 

曜「千歌ちゃん、ナイスシュート!」

 

梨子「やったわね!」

 

 

試合終了の笛がなり、スタジアムは歓声で溢れかえった。

日本の初戦突破。

そして、強豪サウジアラビアを降したという情報は、一気に世界に広がることになる

 

 

美奈「みんなお疲れ様!よく頑張ったわね!」

 

真恋「この勝利は大きいわよ…!」

 

 

日本は本戦への第一歩を踏み出した。

この試合で成長した選手はたくさんいる。

今後の期待を胸に、サニデイジャパンはフィールドを後にした

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー ??? ー

 

 

 

「え!?日本、勝った!?」

 

「!!」

 

 

青のユニフォームに身を包んだチームのある選手が、日本が勝利したという情報を知った瞬間に目の色を変えた

 

 

「言った通りになったね…」

 

「あったり前デース!あの子達が負けるはずないんだから!」

 

「これは…ますます楽しみだよ…ホノカ」

 

 

『得点女王がまた決めたぁぁ!!一体誰が、この選手を止められるのか!?』

 

 

 

「あの時の約束…果たそう」

 

 

 

背中に刻まれた数字は"10"。

黒い髪が揺れ、目は誰よりも輝いていた

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 夜 西木野総合病院 ー

 

 

 

『さあ、サウジアラビアに勝利した日本ですが、今回の試合でカギとなった選手は…』

 

『はい!この選手達ですねーー

 

 

ルビィ「…」

 

 

ルビィはテレビで試合の結果を見ていた。

ひとまず、勝ててよかった…

しかし、安心したのと同時に心にモヤモヤが生まれる

 

 

ルビィ「リハビリしたいなぁ…」

 

 

松葉杖は目の前だ。

今は真姫もいない。

こっそり行けば……

 

 

 

真姫「バレないと思った?」

 

ルビィ「ピギィ!?」

 

 

いつの間に病室に…ルビィは驚きながら真姫を見る。

真姫は怒った顔でルビィに近づき、ほっぺたをつねる

 

 

真姫「何度言ったら分かるのよ〜!?」グググ…

 

ルビィ「ほ、ほめんなはい…まひひゃん…」ウユユユユ…

 

 

毎度の光景。

勝手にリハビリに行こうとするルビィを止める真姫。

看護師達の中では微笑ましいと人気だが、冗談じゃない

 

 

真姫「あんたの今後の体調は私の責任なのよ…!大人しく言うこと聞きなさい…」

 

ルビィ「は、はい…」

 

 

お説教が終わったところでルビィと真姫はテレビを見る。

これで今日は就寝かな…そう思っていた

 

 

真姫「はぁ…しょうがないわね…行くわよ」

 

ルビィ「え…」

 

 

真姫はルビィに立つように指示する。

どこかに行くようだが…

 

 

ルビィ「ま、松葉杖は…」

 

真姫「もう無くても歩けるでしょ?軽めの運動よ。屋上まで行くわよ」

 

 

そう言うと、真姫は松葉杖を取り上げた。

仕方ない…運動できるなら松葉杖が無い方が尚更いい。

ルビィは真姫に支えられながら、病院の屋上へと向かった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 屋上 ー

 

 

 

ルビィ「ハァ、ハァ…」

 

真姫「大丈夫?」

 

ルビィ「な、なんとか…」

 

 

階段…かなりキツかった。

久しぶりにこんなに歩いた気がする。

でも、勝手に運動するなって言ったそばから…なんでこんな……

 

 

 

 

「ルビィ!」

 

ルビィ「!?」

 

 

息を切らして、下を向いていたから前を見ていなかった。

誰かがルビィの名前を呼んだ。

落ち着くこの声。

聞けば安心する、いつも一緒にいてくれた、親愛なる…

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!!」

 

ダイヤ「ルビィ!」

 

 

突然のことでびっくりした。

顔を上げたらそこには大好きなお姉ちゃんがいたのだ。

嬉しくないわけがない

 

 

ルビィ「予選突破おめでとう!!」

 

ダイヤ「ありがとうございます…!」

 

 

ダイヤの笑顔をルビィは久しぶりに見た。

それ以前に最近は忙しかったため、なかなかお見舞いに来れなかったダイヤ。

会えただけでもルビィは嬉しかった

 

 

ルビィ「でも、どうして急に…?」

 

ダイヤ「…」

 

 

 

「ルビィちゃんと、お話したいと思ってね」

 

 

ルビィ「!」

 

 

後ろから別の人の声が聞こえた。

振り返ると、見覚えのある人物だった

 

 

月「やっほ♪」

 

ルビィ「月、さん…」

 

 

穂乃果「穂乃果もいるよー!」

 

ツバサ「あなたとは、はじめましてね」

 

 

さらに2人。

穂乃果とツバサも姿を現した。

ダイヤ、月、穂乃果、ツバサ…

ただお見舞いに来た…だけではないようだ

 

 

ルビィ「月さん、これは…」

 

月「改めて。ルビィちゃんとしっかり話たいと思ったんだ」

 

穂乃果、ツバサ、ダイヤ「…」

 

ルビィ「…」

 

 

 

少し涼しい風が吹いた

 





19話は今日の21時に投稿です!お楽しみに!



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第3章 19話 「お見舞い会議」


本日、2話目の投稿です。まだ18話を読んでいない方は先にそちらを

ルビィちゃんから重大な発表があります






 

 

 

 

 

月「ルビィちゃんと、しっかり話がしたいな。って思って」

 

ルビィ「話…ですか?」

 

穂乃果「うんうん!聞きたいことたくさんあるんだ!」

 

真姫「…」

 

真姫「(渡辺月、綺羅ツバサ、黒澤ダイヤ、そして穂乃果…凄い面子ね)」

 

 

真姫は屋上の隅でルビィ達を見守っていた。

今の真姫の役目はルビィのサポート。

ルビィが無茶をしようとするならば、すぐに止めに入る気でいた

 

 

月「それで…どう?体は」

 

ルビィ「まだ、全然…です」

 

 

ルビィは屋上へ行く時に、足を引きずるようにして歩いていた。

歩けるまでには回復したのだが、右足の治りが遅い。

試合に出られないのは一目瞭然であった

 

 

穂乃果「そっか…じゃあ、次の試合も無理だね」

 

ツバサ「サウジアラビア戦で実感したわ。ルビィさんがいない今の日本は、この先、かなり厳しい戦いになるってね」

 

 

事実。

サウジアラビアにはかなり苦戦した日本。

ルビィが出場していたら、もう少し楽になっていたかもしれない

 

 

ルビィ「そんなことないです…ルビィがいなくても、今の日本は強い」

 

月「…確かに強い。でも、ルビィちゃんも分かってるんじゃない?」

 

 

 

月「今の日本じゃ、イランや韓国には勝てないって」

 

 

ルビィ「…」

 

 

イランと韓国…世界大会本戦の常連国で、今大会のアジア予選突破、最有力候補の国である

 

 

ダイヤ「わたくし達だけでは限界があります…ルビィのような圧倒的な選手が一人、いないだけでも…」

 

真姫「だからって、無理させようとするなら、私が許さないんだからね?」

 

 

真姫が会話を遮る。

復帰の強要。

口にはしていないが、遠回しに訴えているように、真姫は感じた。

念の為に警告。

無理させて、ルビィの体が最悪の事態になることは防がなければならない

 

 

穂乃果「ごめんね、ルビィちゃん。急かすつもりは…」

 

ルビィ「大丈夫です。ルビィも焦ってますから」

 

 

真姫はため息混じりに、目を離すとすぐにリハビリしたがるのよ…と愚痴を吐く。

一番焦っているのはルビィ本人。

日本が試合中の時は、うずうずが止まらなかった

 

 

月「FWのルビィちゃんとは、僕とツバサさんは戦ったことがない。でも、見るかぎりでは…」

 

ツバサ「日本代表の中ではトップクラスね。復帰したら是非、手合わせ願いたいわ」

 

ルビィ「うゆ…喜んで!」

 

 

次第に会話の内容は、ルビィの全国大会の話へと変わっていた

 

 

穂乃果「ルビィちゃんの技、凄かったなぁ…"Awaken the power"。あれには勝てないよ」

 

月「闇の力を使った穂乃果ちゃん以上の力…考えただけでも恐ろしいよ」

 

 

全国高校女子サッカー大会決勝。

闇の力を解き放った穂乃果は、無双しながらシュートを放とうとした。

しかし、ルビィの"Awaken the power"には適わず、そのシュートは完全に防がれてしまったのである

 

 

ダイヤ「ですが、前半終了時に倒れた時には、生きた心地がしませんでしたわ…」

 

ルビィ「あ、あの時は…ごめんなさい」

 

 

2年ぶりに発動した"Awaken the power"をルビィは上手くコントロール出来ていなかった。

前半終了間際で、2点差を同点にまで押し上げる果敢な攻めを魅せたが、そのひとつひとつの無茶が、今のルビィの状態を作ったと言える

 

 

ツバサ「今後の課題…かしら?コントロールは」

 

ルビィ「はい。あの時は久しぶりだったので、30%ぐらいしかコントロール出来ませんでした…」

 

 

 

月「ん?」

 

ダイヤ「…?」

 

穂乃果「30%?」

 

ツバサ「…ルビィさん?30%とは…?」

 

 

ルビィ「…あの時、ルビィは"Awaken the power"の力を30%ぐらいしか、扱えなかった。ということです」

 

 

衝撃に次ぐ衝撃だった。

あの決勝で見せた"Awaken the power"は本来の半分以下の力。

100%は今の次元の遥か先…月達は言葉を失った

 

 

ルビィ「中学生で初めて"Awaken the power"を発動した時は、だいたい50%…その時、コントロールは出来ていたので、そこまで持っていければ、充分、今後も使っていけるはずです」

 

月「驚いたよ…決勝の"Awaken the power"は、ほぼほぼ未完成だったんだね」

 

 

ますます期待が高まるルビィの代表参加。

確実に日本の力になる。

誰もがそう思っていた

 

 

ツバサ「問題としては…ルビィさんが代表に復帰する前に、私達が敗北するという事ね」

 

月「それ。一番最悪な事態だよ…」

 

穂乃果「それは困る!絶対に負けたくない!」

 

 

2回戦目は"オーストラリア"。

本戦への出場経験はないものの、かなりの強豪だと聞いている

 

 

月「例え、勝ち進んだとしても、いつかはイランや韓国と当たる」

 

ツバサ「ルビィさんがそれまでに復帰するとは限らない…わね」

 

ルビィ「…」

 

 

 

 

 

ルビィ「ルビィに考えがあるんです」

 

 

ダイヤ「考え?」

 

月「いったいどんな…?」

 

 

病院の屋上の手すりに腕を乗せ、東京の夜景を眺めるルビィ。

風で揺れるその髪はまるで赤い炎。

そんな少女から語られた考えは、誰も考えもしなかった衝撃的な内容だった

 

 

 

 

 

 

ルビィ「"Awaken the power"を…継承します」

 

 

「「「!!!!!??」」」

 

 

穂乃果「嘘でしょ…ルビィちゃん」

 

ツバサ「そんなことが出来るの?」

 

ルビィ「できます。人は限られますが、不可能ではありません」

 

ダイヤ「その人…とは??」

 

ルビィ「もう伝えてるよ」

 

 

 

 

ルビィ「頑張り屋さんで、才能あるサッカーセンス。成長スピードも、あの時は驚いたよ…絶対に習得してくれる…ルビィはそう信じている」

 

 

 

ルビィ「その人の名前は………」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 日本代表 合宿所 グラウンド ー

 

 

 

「ハァハァ…ハァ、ハァ…」

 

 

少女が一人、練習をしていた。

ルビィから言われた衝撃の言葉。

「"Awaken the power"を習得してもらいたい」

無理難題だと思ったのと同時に…

 

 

「…絶対に後悔させてやるんだから…!」

 

 

ルビィが戻ってきた時に、自分がルビィよりも"Awaken the power"を使いこなしていて、ルビィが継承したことを後悔するぐらい…強くなってやる。

使いこなしてやる!!!!

 

 

「見てなさいルビィ…私がアンタの技…」

 

 

 

 

 

 

理亞「奪ってやるんだから…!!」

 

 

 





ということで、"Awaken the power"を継承します。え?豪炎寺のラストリゾートを真似たのかって?……こっちはこの設定を去年から、オリオンの刻印の前から考えてたんですよ…(言い訳)。まあ、そんなことどうでもいいですよね!ひとまず、2回戦目はオーストラリアです。理亞ちゃんは"Awaken the power"を習得することが出来るのでしょうか…



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第3章 20話 「星の下で語ろう」

さあ、一息回が数話続きます。

日本代表の練習風景が見れるかも?




 

 

 

 

 

 

ー 日本代表 キャンプ地 ー

 

 

 

 

美奈「"Awaken the power"を継承…」

 

月「はい。もう理亞ちゃんには伝えてあるみたいです」

 

 

月たちはキャンプ地に戻ったあと、すぐに美奈の元へと向かった。

ルビィの今の状態、そして継承について詳しく説明をするためであった

 

 

真恋「でも、こんな短期間で習得できるような技とは…」

 

ツバサ「私達もそう思いました。ですが、ルビィさんは言っていました。理亞さんなら絶対にできる、と」

 

美奈「…」

 

ダイヤ「これはルビィの強い希望です。美奈さん…」

 

美奈「…」

 

 

美奈「分かったわ。任せるわね」

 

 

こうして、理亞の"Awaken the power"習得の特訓が始まった。

しかし、道は遠く時間もない。

理亞には今まで以上に厳しい壁が立ち塞がったのである

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 翌日 ー

 

 

 

☆連携攻撃練習☆

 

 

真恋「そこよ!展開早く!!」

 

梨子「はい!」パス

 

 

午前中は普通に全員で練習。

午後からは各自で練習をするため、今は戦術や連携練習に集中する

 

 

曜「でりゃあ!!」バシュッ!

 

穂乃果「っ!!」バシッ!

 

ことり「穂乃果ちゃん、ナイスキャッチ!」

 

穂乃果「まだまだ行くよー!」

 

 

 

 

 

 

☆10分間リフティング☆

 

 

真恋「ボール、落としちゃダメよ〜」

 

千歌「10分…きついよ…」ポンポン

 

穂乃果「疲れた…」ポンポン

 

海未「穂乃果!サボらないでください!」ポンポン

 

にこ「暇ね〜」ポンポン

 

果南「仰向けで寝ながら…足の裏でリフティングしてる…」ポンポン

 

凛「邪魔してやるにゃ!」ポンポン

 

にこ「ちょっ!?やめなさいよ!」サッ!

 

聖良「その体制で避けられるんですね…」ポンポン

 

 

 

 

☆セットプレー練習☆

 

 

月「この距離なら普通に狙えそうだね」

 

曜「普通に狙ったら、練習にならないよ…」

 

 

千歌「…!?希さん…どさくさに紛れて触らないでください!?」

 

希「ええやないかええやないかw」

 

梨子「あっ、希さんずるい(集中してください!)」

 

千歌「梨子ちゃん!?」

 

 

 

 

 

☆しっぽ鬼☆

 

 

真恋「ビブスを尻尾みたいに付けて、取られたら鬼交代ね!」

 

 

にこ(鬼)「待ちなさいよぉ!!」

 

凛「へへーん!鬼さんこちらー!」

 

 

海未(鬼)「狩る」

 

穂乃果「やばい。海未ちゃんガチだ」

 

あんじゅ「一人だけ本物の鬼ね」

 

ツバサ「死にたくないから全力で逃げるわね」

 

ダイヤ「…(これ、鬼ごっこですわよね?)」

 

 

梨子(鬼)「希さん!」

 

希(鬼)「よし来た!」

 

千歌「な、なんで千歌だけ狙うの!?」

 

希(鬼)「もう逃がさへんよ〜」ワキワキ

 

梨子(鬼)「大人しくしてね?千歌ちゃん♪」

 

千歌「…2人とも、目的違うくない?」

 

 

ことり(鬼)「待ってくださーい♪」ビュンビュンビュンビュン

 

月「ことりちゃん!?ワンダーゾーンはずるいよ!?」

 

曜「瞬間移動で追いかけてくる!?」

 

 

 

 

 

 

こうして、午前の練習メニューを一通りこなした千歌達は、お昼休憩を取りながら午後の練習の説明を聞いていた

 

 

美奈「穂乃果ちゃんと果南ちゃんは、シュート練習するメンバーと一緒にお願いね♪」

 

穂乃果「果南ちゃん!どっちがたくさん止められるか勝負しよ!」

 

果南「おっ!いいね。負けないよ♪」

 

 

美奈「DFの4人はシュートブロックの練習ね♪」

 

聖良「課題、ですしね」

 

ことり「頑張ります!」

 

 

美奈「MFのメンバーは、にこちゃんを中心にボールキープの練習をしてね♪」

 

千歌「にこさん直々の指導…」

 

にこ「言っておくけど、キツめに行くからね」

 

曜「よ、ヨーソロー…」

 

 

 

理亞「…」

 

月「理亞ちゃん」

 

理亞「…!月さん」

 

月「美奈監督から許可をもらったから、"Awaken the power"の練習をしよっか」

 

理亞「…はい!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

"Awaken the power"

自身の身体能力を何倍にも向上させる、ルビィの究極の技。

ルビィ曰く、精度を上げれば"Awaken the power"はさらに強力になるらしい。

しかし、この技は代償も大きい

 

 

理亞「ハァ、ハァ…ハァハァ」ガクッ

 

月「すぐに立てなくなっちゃう…ね」

 

 

体力をいっきに消費する"Awaken the power"。

まだ発動出来ていないが、発動しようとするだけで、体力がなくなってしまった

 

 

月「ルビィちゃんによると、出来るかぎり体力の消費を最低限に抑えて、発動する必要があるって」

 

理亞「難しい…ですね」

 

月「最初だからね。休み休み確実にやっていこう」

 

 

 

しかし、この日は理亞の"Awaken the power"習得に、進展はなかった

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 夜 グラウンド ー

 

 

 

理亞「っっっ!!!!!!」グググググ

 

 

理亞は夕食後も一人で練習を続けていた。

オーラを炎のように形作る…これが"Awaken the power"習得の第一歩。

しかし、現状は理亞の髪が微かに揺れるだけ。

オーラは出ているようには見えない

 

 

理亞「ハァハァ…」ドサッ

 

 

体力が持たず、座り込んでしまった。

まだ初日。

出来ないのは当然なのだが、それでも…

 

 

理亞「…悔しい」

 

 

ルビィはこんなに難しい技を、あの決勝で長時間連発…それ以前に、中学生の時にこの技を生み出した…それだけで分かる。

自分よりもルビィの才能、実力は遥か上だと

 

 

理亞「第一、ゾーンを発動してもルビィとの差はそんなに変わらなかった…」

 

 

それほどまでに自分は小さな存在だったのか…

井の中の蛙。

今の、いや、あの時の私にはピッタリな言葉だった

 

 

理亞「…何考えてるの…私」

 

 

いつからこんなに気弱になったのだろうか…

誰にも負けたくない。

その一心でここまでやってきた。

しかし、現実は厳しく、自分よりも才能ある選手達に囲まれて、今にも押しつぶされそうだった。

 

だから、だからこそ…

 

 

理亞「この技は…習得しなくちゃいけない…!!」

 

 

再び立ち上がり、発動の構えに入ろうとした時だった

 

 

 

「どうですか?調子は」

 

理亞「…!」

 

 

聞きなれた声。

理亞は発動を中断し、声の主の方へと振り返る

 

 

理亞「姉様…」

 

聖良「お話、しませんか?」

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

ドリンクを飲みながらベンチに座る理亞。

聖良もその横へ。

理亞の水分補給などが落ち着いたのを確認し、聖良が話し始めた

 

 

聖良「最初、聞いた時は驚きました。ルビィさんのあの技を…」

 

理亞「…」

 

聖良「決勝戦で見た"Awaken the power"。観客席にも伝わる、肌が痺れるほどのパワー。そして、焼き焦げそうな程の熱さ。まさに最強の技…ですね」

 

 

"Awaken the power"について語り始めた聖良。

もちろん、最強の技ということは否定しない。

しかし、他人の技をこうも熱く語られるのは、あまりいい気分ではない

 

 

聖良「そして、"Awaken the power"を目の前で見たからこそ、楽しみなことがあります」

 

理亞「それって…」

 

 

ルビィの復帰とでも言うのだろうか…

確かに、ルビィの復帰は今の日本代表の希望…

でも、胸が締め付けられる。

苦しい

 

 

聖良「それは…」

 

 

 

聖良「理亞があの技を習得して、私達を勝利に導いてくれる…ということです」

 

理亞「…!!」

 

 

顔を上げたくても、上げられなかった。

少しばかりの静寂。

聞こえるのは虫の音と、鼻の奥が痛くなる"ジーン"という音だけであった

 

 

聖良「空、綺麗ですね」

 

理亞「…」

 

 

聖良に言われ、空を見る。

見えるのは数えきれない程の宇宙のイルミネーション。

月・星・星座。

不覚にも目を奪われてしまった

 

 

聖良「あの星々のように、日本代表のメンバーは全員、キラキラしています。そんな中に、私達は選ばれました」

 

聖良「千歌さんの言葉で言うと…"奇跡"。じゃないですか?」

 

理亞「…奇跡」

 

聖良「こんな奇跡、もう二度とあるかどうか…」

 

 

"奇跡"

それは、姉様とのサッカー。

日本代表。

世界への挑戦。

人生経験。

全てに言えることであった

 

 

聖良「焦る気持ちもわかります」

 

理亞「…!」

 

聖良「まわりのメンバーが眩しい。だから自分も、負けないぐらい輝かなければ…わかります。でも、焦りは身を滅ぼします」

 

聖良「大袈裟、ですかね?」

 

理亞「いや…」

 

 

…考えてみると、ルビィを超えるために、少しでもはやく"Awaken the power"を習得しようとしていた。

でも、それは本来の試合に勝つ。

という目的からはズレた考えであった

 

 

聖良「ゆっくりでいいんです。私は信じています。理亞が、キラキラしながらフィールドを走ってくれることを」

 

理亞「姉様…」

 

 

ベンチから立ち上がる聖良。

ニコッと笑うその姿は、まさに女神であった

 

 

聖良「どうしますか?この後、練習を続けますか?」

 

理亞「…」

 

理亞「今日はもうやめる。お風呂に入らないと」

 

聖良「ふふっ、じゃあ私もお風呂に行きますね」

 

 

 

理亞は残ったドリンクを、いっきに飲み干した

 

 




ラブライブ!シリーズ9周年、おめでとうございます!
ルビィちゃんに出会えたのも運命、ラブライブに出会えたのも運命!もう、生きる希望になりつつあるラブライブです!これからも、一生、続きますように…



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第3章 21話 「お部屋をご紹介!」


一息回、タイトルの通りですね。
次回、オーストラリア戦になるのかそれとも一息回が続くのかは…気分次第です

☆お知らせ☆
Twitterの方でアンケートをしています!是非、ご参加よろしくお願いします!



 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ルビィを超えようと必死になる理亞。しかし、焦りからか"Awaken the power"習得はなかなか進歩しなかった。そんな中、聖良の言葉で自分の目的がみんなとズレていたことに気づき、練習を終了した理亞。その上では星々がキラキラと輝いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「っっっ!!!!!!」グググググ!

 

月「おぉ…凄いや…」

 

 

あれから数日、理亞は何度も何度も立ち上がり続けついに、炎のようなオーラを出すことに成功した

 

 

月「まさかこんなに早く…!!」

 

理亞「ハァハァ…もう無理…」ドサッ

 

 

力尽き、倒れる理亞。

オーラとは言っても、ルビィのオーラのような紅いギラギラとしたものではなく。

半透明な、少し風が吹く程度の小さいオーラだった。

しかし、大きな進歩には代わりない

 

 

月「嫉妬しちゃうぐらいのセンスだよ…こんな短期間で」

 

理亞「でも、全然ダメだった…」ハァハァ

 

月「いやいや、本来こんな短期間で習得しようとする技じゃないからね!?」

 

理亞「…」

 

 

理亞自身も手応えを感じていた。

あの聖良との会話の翌日から、胸につっかかっていたものが消え、リラックスした状態で練習をすることが出来た。

オーストラリア戦はすぐそこまで来ている。

だが、焦ることはない

 

 

理亞「今日はこれぐらいで…」

 

月「そうだね。無理してやるのはよくない。しっかり休んで、残り数日頑張ろう!」

 

理亞「はい!」

 

 

今日の練習はここまで。

片付けに入る理亞。

その姿を、遠くから見守るメンバーがいた

 

 

曜「理亞ちゃん、もう少しじゃない!?完成まで!」

 

梨子「でも、あそこからが長いって、月ちゃんが言っていたわ」

 

聖良「ふふっ♪」

 

曜「聖良さん?」

 

聖良「いえ、何でもないです♪(頑張ってください、理亞…)」

 

 

ほかのメンバーも片付けに入る。

オーストラリア戦まであと数日。

ここで疲労を溜めるわけには行かない

 

 

 

穂乃果「お腹空いたー!!」

 

海未「穂乃果!先に汗を洗い流すのが先です!」

 

穂乃果「えぇ〜…着替え、部屋に置いてきちゃった…取りに行くのめんどくさいよぉ…」

 

海未「そうだろうと思って、私が用意しておきました。さあ!行きますよ!」

 

穂乃果「さっすが海未ちゃん!」

 

 

 

 

あんじゅ「…あの二人って、付き合ってるの?」

 

にこ「付き合ってないわ。いつもの穂乃果と海未の会話ね」

 

あんじゅ「夫婦の会話にしか聞こえないんだけど…」

 

ことり「ははは…」

 

梨子「ふむ…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

その後、汗を洗い流したメンバーは夕食を取り、それぞれの部屋へと戻って行った。

本日は…

 

 

各メンバーの部屋割りをご紹介

 

 

 

 

 

ー 1号室 穂乃果&海未 ー

 

すっからかん!

 

どうやら、穂乃果と海未は別の部屋にいるようだ…

 

 

 

 

ー 2号室 ダイヤ&果南 ー

 

ダイヤ「はぁ…ルビィ…」

 

果南「復帰はまだかかりそうなの?」

 

ダイヤ「はい…オーストラリア戦も出れないと…」

 

果南「そっか…じゃあ、ダイヤ達には頑張ってもらわないとね」

 

ダイヤ「ルビィ…」

 

 

 

 

ー 3号室 ことり&凛 ー

 

すっからかん!

 

どうやら、ことりと凛は別の部屋にいるようだ…

 

 

 

 

ー 4号室 千歌&曜 ー

 

曜「…」

 

海未「…」

 

ことり「海未ちゃん!頑張って!」

 

千歌「(いやいやいやいや)」

 

梨子「(顔でバレバレ…)」

 

海未「次こそ勝ちます!!!!」ババヌキデス!

 

 

海未が曜の前に差し出すのは、2つのトランプ。

"ババ抜き"

それは、音ノ木坂学院サッカー部の中では禁止になっているゲームである

 

 

曜「どっちかなー(おそらく…ジョーカーは右だから、右を引くかな…)」

 

海未「曜…?わざと負ける必要はありませんよ?」

 

曜「!?(なんでそれはわかるの!?)」

 

海未「正々堂々…勝負!!」

 

曜「(めんどくさい…)」

 

 

穂乃果「海未ちゃんが眠くなるまで終わらないからね!」

 

千歌「えぇ…」

 

 

 

 

ー 5号室 ツバサ&あんじゅ ー

 

あんじゅ「またゲーム?」

 

ツバサ「新キャラの那由多が欲しいのよ」ギュンギュンギュンシャキーン!

 

 

ツバサがベッドに寝そべりながらやっているスマホゲームは、国内最大級のひっぱりハンティング…

 

 

ツバサ「このヨハネって人、上手いわね…」

 

あんじゅ「飽きないわねぇ…」

 

ツバサ「あんじゅも手伝ってくれない?那由マラ」

 

 

あんじゅは溜息をつきながら、「えぇ〜…」とあからさまに嫌な雰囲気をかもし出した。

しかし、バッグからスマホを取り出し、ひっぱりハンティングを起動させる

 

 

あんじゅ「誰で行けばいいの?」

 

ツバサ「ホームズ、ドロシーとかが強いわね」

 

あんじゅ「ツバサは何で行くの?」

 

ツバサ「ゴッスト」

 

 

 

 

ー 6号室 英玲奈&梨子 ー

 

英玲奈「…ツバサからメッセージが…"那由マラ付き合って"…はぁ…刹那の次は那由多か」

 

 

梨子が千歌と曜の部屋に行っているので、一人でオーストラリアの分析をしていた英玲奈。

とは言っても、オーストラリアは自国の情報やデータを一切公開していない国だと分かったので、調べたところで何も得ることはできなかった

 

 

英玲奈「最近、モンストはやっていないが仕方ない…ツバサの部屋に行くか…ん?」

 

 

英玲奈の足元には梨子の荷物があった。

チャックが開けっ放し…そう思った英玲奈はチャックを閉めようとバッグに手を伸ばした

 

 

英玲奈「まったく…む?これは…?」

 

 

なんだろう、バッグからはみ出した…雑誌?

英玲奈は何故か気になったため、その雑誌らしきものを取り出した

 

 

英玲奈「…本?」

 

『"壁ドンされてピギッちゃえ!〜百合の壁ドンスクール〜"』

 

英玲奈「」

 

 

…皆まで言うな。

これはそう。

タイトルを見ればわかる

 

 

英玲奈「…」

 

英玲奈「…」

 

英玲奈「…」

 

 

英玲奈「…」ペラッ

 

 

 

 

ー 7号室 にこ&希 ー

 

にこ「…」グググ

 

 

にこが部屋で行っていたのは"柔軟"だった。

朝の自主練と同じく、風呂上がりの柔軟をにこは欠かさず続けている

 

 

希「凄いなぁ、にこっち。柔らかい」

 

にこ「当たり前でしょ?毎日やってるんだもの。スポーツをするのに体の柔らかさは必須よ」

 

希「…」

 

 

希は何も言わずににこの隣に座る。

にこは不思議に思いながらも、そのまま柔軟を続けた

 

 

希「…良かったやんね」

 

にこ「…何が?」

 

希「ついに、努力が実を結んだんやから」

 

にこ「…」

 

にこ「まだよ。まだFFIで優勝してないし、フリースタイルでも世界一になっていないわ」

 

希「…」

 

にこ「目指す場所は、まだまだ先よ」

 

希「ホントに凄い…やんな」

 

 

希はそのまま静かににこの柔軟が終わるのを待っていた

 

 

 

 

ー 8号室 聖良&理亞 ー

 

理亞「…」ポチポチ

 

聖良「…」

 

 

キーボードを打つ指が止まらない理亞。

その姿を見ていた聖良は、少し考えた素振りをした後、理亞に話しかける

 

 

聖良「ルビィさんですか?」

 

理亞「な!?ち、違う!!なんでルビィなんかに!!」アタフタ

 

聖良「…」

 

 

我が妹ながらわかりやすい…

慌てた拍子にスマホを落としそうになる理亞。

隠さなくてもいいのに…

聖良はそう思いながらも、この話を終えようとした

 

 

理亞「…」

 

聖良「?」

 

理亞「ルビィに、アドバイスをもらってた…"Awaken the power"の」

 

聖良「!!」

 

 

理亞が話を続けたのにでさえ驚いたのに、さらにその上をゆく衝撃の言葉。

あんなに敵視していたルビィからアドバイスを…???

一体何があったのだろうか、聖良はとても不安になった

 

 

聖良「どうして、アドバイスを…」

 

理亞「…」

 

理亞「姉様と2人で話した時に、私は本来の目的を見失っていたことに気づいた…」

 

聖良「…理亞」

 

理亞「もちろん、ルビィには負けない。絶対にルビィを超えて、私が日本のエースストライカーになる…でも、それよりも、」

 

理亞「勝ちたい。みんなと」

 

聖良「…」

 

理亞「勝つためには、いがみ合っている場合ではない。月さんにも言われた…」

 

理亞「私はルビィと仲良くしようなんて思わない。でも、私が強くなるためには、ルビィの力が必要だから…」

 

聖良「…」

 

理亞「都合よすぎる…よね」

 

聖良「…分かりませんよ?」

 

理亞「え…?」

 

聖良「理亞はルビィさんと仲良くなる気はない。と言いました。ですが…」

 

聖良「スマホでルビィさんと話している時の理亞、すごく嬉しそうでしたよ♪」

 

理亞「なっ!?」

 

聖良「素直になることも必要ですよ♪」

 

理亞「ち、ちちち…違う!!!!!!」

 

 

理亞の顔は、ルビィの髪に負けないぐらい真っ赤であった

 

 

 

 

ー 9号室 月 ー

 

月「…え?僕の部屋?見ても何も無いよ?」

 

月「ルビィちゃんが来るまでの辛抱さ…うん」

 

月「曜ちゃん達の部屋に行こっかな…」

 

 

こうしてババ抜きの被害者は増えるのである

 

 

 

 

ー 10号室 花丸&花陽 ー

 

花陽「やっぱり、夜食のおにぎりは最高です!」モグモグ

 

花丸「のっぽパンも負けてないずら〜」モグモグ

 

凛「かよちんと花丸ちゃん、どんだけ食べるにゃ!?」

 

 

2人の食べっぷりに若干引き気味の凛。

それと同時に、もうひとつ気になることがあった

 

 

凛「食べたものはどこに蓄えられてるん…だ……」

 

花丸「ずら?」ドドン!

 

花陽「?」ドドン!

 

 

凛「(なんにゃ?凛も食えと?)」スン…

 

 

凛が花丸と花陽のどこを見たかは分からないが、何故かテンションが下がったことだけは分かった

 

 

 

 

ー 善子宅 ー

 

善子「この人、上手いわね…」ギュンギュンギュンシャキーン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第3章 22話 「オーストラリア戦 "海の女達"」


皆さんどうも!最近、お勉強が忙しくなってきたルビィちゃんキャンディーです。あぁ…受験やだなぁ、と最近お経のように連呼しています。小説は中断する気はないですが、どうしてもペースは落ちますね…目標としては今年中には第3章を終わらせることです。(多分無理)




 

 

 

 

 

ー オーストラリア戦 当日 ー

 

 

真恋「それじゃあ、全員バスに乗って!FFスタジアムに向かうわよ!」

 

「「「はい!!」」」

 

 

時というのは無情にも速く流れ、気づいた時にはFFIアジア予選2戦目。

オーストラリア戦当日となっていた。

サニデイジャパンのメンバーは、それぞれバスに乗り込み、決戦の地へと向かう

 

 

曜「そう言えば、理亞ちゃんは"Awaken the power"を習得できたの?」

 

海未「…それは、」

 

 

 

月「結果的には、間に合わなかった」

 

曜、海未「月(ちゃん)!」

 

 

結局、理亞は試合当日までに"Awaken the power"を習得することはできなかった。

しかし、それは当然のこと。

この短期間で"Awaken the power"を習得するなど、どんな天才でも不可能である

 

 

月「ルビィちゃんはオーストラリアに勝つためだけに、理亞ちゃんに"Awaken the power"を継承させようとしたわけじゃない」

 

海未「その後の世界との戦いのため…」

 

月「うん。ルビィちゃんが見ているのは、今よりも遥か先の空の向こう。オーストラリア戦に間に合わなくても、その後習得すればいい…」

 

曜「でも、そのためにはこの試合、負けられないね」

 

海未「花咲く前に刈り取られるわけには行きませんし、こんなところで、世界への挑戦を断念するわけにも行きません!」

 

月「うん。絶対に勝とう」

 

 

理亞「…よし、」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ー FFスタジアム ー

 

 

 

『さあ!FFIアジア予選2戦目、日本 対 オーストラリア!!間もなく始まります!』

 

 

真恋「オーストラリアは情報を一切公開していない、ノーデータチームよ。油断しないようにね」

 

美奈「真恋ちゃんの言う通りよ。でも、サウジアラビアに勝ったんですもの!自信を持って行ってらっしゃい!!」

 

穂乃果「よし…みんな、行くよ!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

FW 黒澤ダイヤ、渡辺月

 

MF 渡辺曜、高海千歌、園田海未

 

MF 桜内梨子、統堂英玲奈

 

DF 東條希、鹿角聖良、優木あんじゅ

 

GK 高坂穂乃果☆

 

3-2-3-2

 

 

『サニデイジャパンは、前回の試合と同じスタンディングメンバーで試合に臨むようです!強豪サウジアラビアをくだした日本のサッカーを、再び見せて欲しいところ!!』

 

 

 

 

 

ジョーズ「黒澤ルビィが離脱している今、勝機は私達にある!」

 

ドルフィン「えぇ。でも、聞いたことのある名の選手もいる。警戒は怠らないで」

 

 

 

FW ジョーズ、リーフ

 

MF シュリンプ サーフィン

 

MF アングラー、ドルフィン☆

 

DF ウォーター、ビーチ、タートル、クラーケン

 

GK ジンベイ

 

4-2-2-2

 

 

『対するオーストラリア、"ビッグウェイブス"。情報が一切無いチームですが、選手達を見れば一目瞭然!強豪にも負けない気迫、海の女まさにそのものです!!』

 

 

 

ドルフィン「高坂穂乃果ね」

 

穂乃果「穂乃果のこと知ってるの!?」

 

ドルフィン「えぇ。日本の大会のプレーを見させてもらったの。お互い、ベストを尽くせるように頑張りましょう」

 

穂乃果「うん!よろしくねドルフィン!」

 

 

握手をかわす両チームのキャプテン。

サウジアラビアの時とは違って、最初から本気のサッカーができそうだ…

穂乃果は楽しみでしかたがなかった

 

 

『さあ!試合開始の時間となりました!前半はオーストラリアボールからです!』

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!

 

『試合開始です!!キックオフと同時にオーストラリアの選手達が一気に攻め上がります!!』

 

 

ドルフィン「リーフ!」パス

 

リーフ「はい!ジョーズ!」パス

 

ジョーズ「!」

 

 

ダイレクトでつなぐオーストラリア。

日本の選手がディフェンスに入る前に突破し、一気にゴールに接近する

 

 

英玲奈「パスが速い!?聖良!」

 

聖良「任せてください!」ビュン!

 

 

英玲奈は聖良にディフェンスの指示を出す。

素早い攻撃には素早い守備を。

英玲奈の判断は間違ってはいなかった

 

 

聖良「ー スノーエンジェル ー!」

 

ジョーズ「!!」

 

 

聖良の冷気が込められた右足が、ジョーズに炸裂する…はずだった、

 

 

ジョーズ「あなたの技は対策済みだ」

 

聖良「!?」

 

ジョーズ「ー ウォーターベール ー!!」バシャァン!

 

 

ジョーズは聖良が右足を振り下ろす前に、ボールを地面に埋め込み、その衝撃で水の壁を出現させていた

 

 

聖良「くっ…相殺された!?」

 

ジョーズ「残念だったな」

 

 

『なんと!!鹿角聖良の"スノーエンジェル"がジョーズの必殺技によりブロックされました!!そのままジョーズは鹿角聖良を突破!』

 

 

穂乃果「早速…だね」

 

ジョーズ「止められるかな?高坂穂乃果!」

 

 

前半開始直後。

しかも、日本はまだボールに触れていない状況で相手のシュート…

穂乃果はこのシュートを止め、流れを一気に変える必要があった

 

 

ジョーズ「ー メガロドン ー!!」バシャァン!

 

穂乃果「鮫!?」

 

 

ジョーズの放ったシュートは、巨大な鮫へと姿を変え、フィールドを泳ぐように進んでいる。

かなり強力なシュートであった

 

 

穂乃果「止めるったら止める!!」ドォン!!

 

 

穂乃果は右手を地面に叩きつけ、必殺技の構えに入る。

このシュートを止めて、試合の流れを日本へ…!!

そう思っていた

 

 

穂乃果「ー 真ゴットハンド……」

 

ジョーズ「…」

 

 

 

 

穂乃果「V !!!!」バッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシャン!!

 

 

 

 

 

 

穂乃果「!!!?」

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

ドルフィン「決まったね…!」

 

 

 

『ゴール!!!!な、なんと前半開始2分で、オーストラリア先制だぁ!!!!しかし、今のシュートの動きは……』

 

 

果南「な、なにあれ…」

 

理亞「鮫が穂乃果さんの前で潜った…?」

 

花陽「あれでは穂乃果ちゃんの技が通用しない…!!」

 

美奈「……」

 

 

オーストラリアの選手が持つ必殺シュート。

"メガロドン"

フィールドを自由自在に泳ぎ回るその鮫は、穂乃果の技が放たれようとした瞬間に、地中へ。

要するに海中に身を潜める。

次に現れる時は、穂乃果の背後である

 

 

穂乃果「みんな…ごめん」

 

月「大丈夫。まだ1点…でも、あのシュートは厄介だね」

 

英玲奈「シュートを撃たせないように、マークをしっかりさせよう。ひとまず今は反撃だ」

 

 

ボールをセットする月。

点差は1。

試合はまだ数分しか経っていない。

逆転は十分可能だ

 

 

月「行こう!」

 

 

『さあ!サニデイジャパン、まさかの失点から試合再開です!!まるでオーストラリアの高速パスに対抗するかのように、日本もスピードを生かした攻めを見せます!!!』

 

 

曜「ー スプリントワープ ー!!」ビュンビュン!!

 

ウォーター「速い!追いつけない!?」

 

曜「海未さん!」パス

 

 

海未「ー 風神の舞 ー!」ゴオォォォ!!

 

ビーチ、タートル「うわぁぁぁ!?」

 

 

曜と海未、高速移動を得意とする2人がオーストラリアのディフェンスを翻弄する。

私達が試合を振り出しに…!!

2人の闘志は燃えていた

 

 

海未「ダイヤ!!」パス

 

ダイヤ「ナイスパスですわ!」

 

 

海未が鋭いパスでダイヤへボールを託す。

やられたらやり返す。

ダイヤはどのシュートを撃つか、最初から決めていた

 

 

ダイヤ「コントロールなら負けませんわよ!」ピィィィ!!

 

 

ダイヤの指笛と同時に、地面からペンギンが姿を現す。

練習試合でダイヤが見せた、新必殺技であった

 

 

ダイヤ「ー フェニックスペンギン ー!」ドガアァン!

 

千歌「出た!ダイヤさんのとんでもシュート!!」

 

 

ビュンビュンビュン!!

と風を切る炎のペンギン達。

鮫がキーパーを避けるなら、こちらのペンギンもキーパーを避けてやる。

ダイヤはボールに全神経を注ぎ込む

 

 

 

しかし、

 

 

 

ジンベイ「ー グレートバリアリーフ ー!」バシャァン!!

 

ダイヤ「な!?」

 

月「巨大な水の壁…?」

 

 

ジンベイが手を振りかざすと、ゴール前に"無限の壁"のような巨大な水の壁が姿を現した

 

 

ジンベイ「残念だけど、私にはどんなシュートも通用しない」

 

 

 

ボチャン!!!!

ジュゥゥゥゥゥ………

 

水の壁に突っ込んだ炎のペンギン達は、そのまま燃え尽き、灰になってしまった。

威力が死んだボールはそのままジンベイの手の中に収まり、ダイヤのシュートは得点とはならなかった

 

 

ダイヤ「そんな…」

 

梨子「希さんの技のように、威力が通用しない…」

 

あんじゅ「ちょっと…この状況、まずいんじゃない??」

 

 

 

ドルフィン「まだまだ…私達の力は、こんなものじゃないよ…!!」

 

 

 

日本 0-1 オーストラリア

 

 



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第3章 23話 「オーストラリア戦 "隠れた強豪"」


この小説もついに100話目ですね…そしてUA20000、ありがとうございます。これからも頑張って書いていきます。

Twitterで、「創作は作者の感情や雰囲気が表れる」というツイートを見ました。皆さんは「輝こうサッカーで!」をどんなふうに見ているのでしょうか…暗いのか明るいのか…自分としては、読者様が楽しめるような盛り上がりのあるお話を書きたいと思っています




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

FFIアジア予選、オーストラリアとの戦いが幕を開けた。しかし、試合開始早々、オーストラリアに先制点を許してしまった日本。その後、シュートまで持っていくも、威力が通じないキーパー技、"グレートバリアリーフ"によって止められてしまう…

 

 

 

 

『あぁっと!黒澤ダイヤの必殺シュートは、GKのジンベイに止められてしまったぁ!!』

 

 

曜「そんな…あれじゃ、どのシュートも止められちゃうよ…」

 

月「僕のシュートも恐らく通じない…うん、かなり厄介なキーパーだね」

 

 

どんなに強烈なシュートも、水の中では無意味。

今回の壁は、"無限の壁"以上に攻略が絶望的であった

 

 

ドルフィン「2点目を狙うよ!オーストラリア!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

ボールを繋げるオーストラリア。

もう一度、あのシュートを撃たれれば2失点目の恐れがある…

日本は決死のディフェンスで食らいつく

 

 

英玲奈「これ以上は…!」ズザー!

 

アングラー「サーフィン!」パス

 

英玲奈「(ギリギリで躱された…!)」

 

 

英玲奈はスライディングを仕掛けるも、上手く躱されボールカット失敗。

しかし、出されたパスには隙がある

 

 

千歌「貰った!!」

 

サーフィン「しまった!?」

 

アングラー「パスが弱かった…!」

 

 

『高海千歌!アングラーのパスコースに飛び込み、ボールを奪いました!日本、再び攻撃に入ります!!』

 

 

千歌「(やっぱりそうだ…)」

 

英玲奈「…(千歌も気づいたようだな)」

 

 

日本は、オーストラリアの特徴について、徐々に把握し始めていた。

規格外のシュート技とキーパー技。

連携もしっかり取れている。

しかし、

 

 

千歌「(攻撃に隙が多い…あまり得意じゃないのかもしれない!)」

 

 

そうと分かったら、ガンガン攻めよう。

日本の攻めは積極的になっていた。

取られても、取り返すのに苦でなければ、何度も戦略を立て直せばいい。

余裕のあるプレー。

日本は無意識にそれを実行し始めていた

 

 

 

真恋「いい雰囲気ね」

 

美奈「えぇ。でも…まだ何かある」

 

 

『日本のパスが繋がります!!再びシュートチャンス!渡辺曜が構えに入った!!』

 

 

曜「撃たないことには何も始まらない!」バッ!

 

ダイヤ「お願いします!曜さん!」

 

ドルフィン「…」

 

 

美奈の予想は、すぐに的中することになる

 

 

 

 

曜「え…何これ!?」

 

 

ダイヤ「曜さん!?」

 

海未「あれは、なんですか…??」

 

 

気づいた時には、曜の周りを囲むように、円状に波が立っていた。

渦潮とはまた違う…

巨大な、まるで飲み込むかのような口が

 

 

ドルフィン「必殺タクティクス!!」

 

「ー サックアウト ー!!」ゴオォォォ!!

 

 

曜「うわぁぁぁ!!?」

 

 

渦をまく波に飲み込まれた曜は、そのまま地面に叩きつけられた

 

 

千歌「曜ちゃん!!」

 

月「タクティクスを仕掛ける気配が全くなかった…いつの間に…」

 

 

オーストラリアの必殺タクティクス。

"サックアウト"は神出鬼没の強力なディフェンス技。

気づいた時には渦に囲まれ、後は飲み込まれるのは待つのみ…

これにより、日本は容易にシュートが撃てなくなったのである

 

 

「ー サックアウト ー!!」ゴオォォォ!!

 

月「やばっ!?」

 

 

何度も攻める日本。

しかし、その度に渦の餌食となる

 

 

梨子「いつ現れるかわからないなんて…防げるわけ…」

 

英玲奈「何か方法はないのか…」

 

 

 

攻めては奪われ、奪われては奪う。

両チームともなかなかシュートまで辿り着けずにいた。

しかし、試合は動く

 

 

 

ダイヤ「海未さん!」パス

 

海未「はい!」

 

 

ゴオォォォ…

 

 

海未「!(波が立ち始めている…!!)」

 

海未「千歌!」パス

 

千歌「!!」

 

 

ウォーター「くっ…囲む前に逃げられる…!」

 

 

英玲奈「その調子だ!タクティクスに囲まれる前にパスを出すんだ!!」

 

 

日本の武器、"対応の速さ"。

細かいパスで、飲み込まれる前にボールを繋ぐ…

オーストラリアも日本のこの対応には驚きを隠せなかった

 

 

ビーチ「サックアウトが攻略され始めた…!?」

 

ドルフィン「流石だね、日本…」

 

 

 

ドルフィン「なら、これならどう?」

 

 

 

 

 

 

 

ゴオォォォ…

 

千歌「(サックアウトが来る…!)」

 

 

千歌は渦を察知し、すぐに近くにいる味方にボールを渡そうとした。

しかし、千歌はボールを出すことができなかった

 

 

千歌「そんな…!!」

 

ドルフィン「ふふっ♪」

 

リーフ「逃がさないよ!」

 

 

聖良「囲まれてる!?」

 

梨子「千歌ちゃん…!!」

 

 

千歌は4人の選手に、まるで箱の中に閉じ込められたかのように囲まれていた。

これではドリブル突破もパスも何も出来ない…

その間にも、渦は千歌に迫っていく

 

 

ドルフィン「必殺タクティクス ー ボックスロックディフェンス ー」

 

シュリンプ「この技はサックアウトと掛け合わせることにより、無敵のディフェンス技へと進化する!」

 

リーフ「さあ!波の餌食となりなさい!!」

 

 

千歌「ひゃあぁぁぁ!!??」

 

 

千歌は地面に叩きつけられ、ボールを奪われてしまった。

ここに来て、まだタクティクスを隠していたオーストラリア。

その連携の取れたディフェンスは、日本にとって衝撃以外なんでもなかった

 

 

ツバサ「箱で閉じ込めてから渦で仕留める…攻略がさらに困難になったわね」

 

ことり「日本の戦術が通じない…」

 

花陽「そんな…」

 

 

ベンチのメンバーは焦りから変な汗が出ていた。

強豪国の中には含まれていなかったオーストラリア。

正直、サウジアラビアの時よりも楽に勝てると思っていた。

しかし、その相手を侮った気持ちが…

 

 

ドルフィン「ー メガロドン ー!!」バシャァン!

 

 

日本の絶望を生んだのである

 

 

希「あかん!!穂乃果ちゃん!」

 

穂乃果「今度こそ止めてみせる!!」ドォン!!

 

 

再び放たれてしまったオーストラリアの必殺シュート。

今の状況で2点差はまずい。

穂乃果は全力でシュートを止めに行く

 

 

穂乃果「ゴットハンドV…!!」バッ!

 

 

花丸「穂乃果さんが飛び出した!」

 

果南「そうか…!鮫が姿を消す前に、自分からボールを取りに!!」

 

 

穂乃果が迫ってくるのに気づいた鮫は、すぐに海中に潜ろうとする

 

 

穂乃果「逃がすかあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

取る取る取る取る取る取る取る逃げるな!!!!

 

 

穂乃果の手が、鮫に触れーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーースカッ!!!!

 

 

 

穂乃果「っっっっ!!!!」

 

 

ことり「穂乃果ちゃん…!」

 

理亞「間に合わ、なかった…」

 

 

 

『ゴーール!!!!再び決まってしまったぁ!今度は自らボールを取りに行った高坂穂乃果!しかし、惜しくもボールを掠め、そのまま2点差になってしまいました…!日本、前半で既に厳しい試合となりました!!』

 

 

曜「ハァハァ…これで、0-2」

 

月「…完全に誤算だった」

 

英玲奈「あぁ、認めざるおえないな」

 

 

ドルフィン「この試合、勝つのは私達…!」

 

 

日本の選手達は思った。

"オーストラリアはサウジアラビアよりも強い"

恐らく、韓国やイランとも肩を並べるレベル…

 

 

穂乃果「………」

 

聖良「穂乃果、さん…」

 

 

日本のキャプテン・守護神。

その肩書きを、立場を背負っている穂乃果に、これ以上の屈辱はなかった。

自分が止めていればこの2点差はなかった。

しかし、結果的に止められない、私では、あのシュートは止められない…

 

 

穂乃果「……」

 

 

穂乃果は託す

 

 

穂乃果「…」サッ

 

聖良「!?」

 

 

美奈「…!!」

 

真恋「あれは…!」

 

 

穂乃果は美奈に合図を送った。

手でバツを作り、自分ではこのシュートは止められないと示す

 

 

美奈「…選手交代よ!」

 

美奈「果南ちゃん、行くわよ!!」

 

 

果南「…!!」

 

 

大海の戦士達に挑むのは、日本の"海皇"

 

 

 

日本 0-2 オーストラリア

 

 

 

 

 





松浦果南 代表デビュー!!
砂木沼のような扱いにはさせませんよ…!安心してください!!



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第3章 24話 「オーストラリア戦 "反撃の兆し"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。オリオンの刻印を見た後の投稿です。いや〜、次回はフランスですか…イナイレで本格的に登場するのは初めてですよね。決勝リーグに素晴らしいチームがいれば、輝こうサッカーの作中に登場させようと思います。

Twitterで「輝こうサッカーで!」の裏話や裏説定、オリジナル技の詳細を紹介しています。プロフィールに固定しているので、是非見に来てください!



 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

オーストラリアの必殺タクティクス、"サックアウト"と"ボックスロックディフェンス"により、シュートまでに辿り着くのが困難になってしまったサニデイジャパン。さらに、2点目を決められてしまい、穂乃果は自らキーパー交代を志願した。果たして、果南はオーストラリアのシュートを止めることが出来るのか…

 

 

 

 

花陽「穂乃果ちゃん!どうぞ!」

 

穂乃果「ありがとう、花陽ちゃん」

 

 

穂乃果は長袖のGKユニフォームから、花陽が手渡した普通のユニフォームに着替えていた。

GKからFWへのポジションチェンジ…

まさかこんなにも早く、することになるとは

 

 

花陽「ほ、穂乃果ちゃん…」

 

穂乃果「ん?」

 

花陽「な…何でもないです!頑張ってね!」

 

 

花陽は不安だった。

穂乃果の雰囲気・表情…間違いない。

あの頃と同じ。自分に怒り、責任を感じ、まるでフツフツと煮え滾るマグマのような…

 

 

ホノカ「絶対に取り返す」

 

 

怒りに落ちた者の目

 

 

花陽「…やっぱり、ダメだよ」

 

ホノカ「…?」

 

花陽「約束したよね?怒りに任せて、闇のチカラを使っちゃダメだって」

 

ホノカ「…花陽ちゃん」

 

花陽「自信を持って!穂乃果ちゃんは笑顔が一番です!」

 

ホノカ「…」

 

穂乃果「そうだね。ありがとう、花陽ちゃん」

 

 

『日本、ここで選手交代です!!FWの黒澤ダイヤに代わり、GKの松浦果南が入ります!そして松浦果南と高坂穂乃果のポジションチェンジ…!!!』

 

 

月「(すごい気迫だ…)」

 

聖良「(FWの穂乃果さん…!)」

 

穂乃果「まずは1点、取り返そう」

 

 

千歌達は改めて感じた。

なんて頼もしい存在感…!!

敵として、脅威でしかなかったFWの穂乃果。

しかし、今は共に戦う仲間。

託したくなるその背中。

音ノ木坂のメンバーが、穂乃果をあれほどまでに信頼していた理由がよく分かった

 

 

『我らがサニデイジャパンのキャプテン、高坂穂乃果の正規ポジションはFW!全国大会では圧倒的なサッカーを魅せた高坂穂乃果は、世界の舞台でもあのようなプレーを見せてくれるのか!?』

 

 

穂乃果「行こう!!」

 

 

ピーー!!

2点差を追いかける日本の攻撃が始まった。

ボールを持つのは司令塔の梨子。

フィールド全体を見渡し、フリーな選手を探す

 

 

梨子「千歌ちゃん!」

 

千歌「!」

 

 

コートの真ん中でフリーな千歌。

かなり不自然であり、まるで罠であるかのような不気味なスペースであった…

 

 

案の定

 

 

 

千歌「(波が…)」

 

 

今、この波を避けようとしても、すぐにオーストラリアの選手に囲まれてしまう。

このボールを取るわけにはいかない。

取ったら最後、ボールは確実に奪われる

 

 

千歌「…!」スカッ!

 

 

ドルフィン「パスを避けた!?」

 

クラーケン「諦めたの??」

 

 

千歌はボールを取るわけにはいかない。

今はこの人に託そうと思う

 

 

 

穂乃果「ナイススルーだよ。千歌ちゃん!」

 

ドルフィン「穂乃果…!!」

 

 

『高坂穂乃果がボールを受け取ったぁ!!そのままドリブルで一気に駆け上がります!』

 

 

海未「穂乃果!何か策は…?」

 

穂乃果「策っていうか…ちょっと強引なことはしてみるよ!」

 

海未「…!!」

 

 

2点目を決められてから、穂乃果の様子がおかしくなっていたことは海未も気づいていた。

しかし、ユニフォームを着替え、フィールドに戻ってきた時は、いつもの自信に満ち溢れた頼もしい顔に戻っていた

 

 

海未「無理はしすぎないでくださいね」

 

穂乃果「わかってる」

 

 

 

ドルフィン「穂乃果を仕留める!必殺タクティクス!」

 

穂乃果、海未「…!!」

 

 

たとえ穂乃果が相手であろうと、オーストラリアは一歩も引くことはない。

今のところ、攻略の道が見つかっていない、突破困難な必殺タクティクスが発動する

 

 

穂乃果「海未ちゃんは上がってて。必ず繋ぐから」

 

海未「頼みましたよ」

 

 

海未を先に行かせ、穂乃果は自分のまわりを取り囲む波とオーストラリアの選手と対峙する。

今にも牙をむきそうな波。

そして、パスを出そうなら、すぐに奪ってやると構えるオーストラリア。

穂乃果はこの状況でどう抗うのか

 

 

穂乃果「邪魔な波、だよね」バッ!

 

ウォーター「!?」

 

タートル「飛んだ!?」

 

 

穂乃果は渦巻く波の中心で、波よりも高い位置まで飛んだ。

空中で出来ることはただひとつ。

ボールを蹴るだけ

 

 

ビーチ「上がらせた園田海未にパスを出す気だ!!」

 

ドルフィン「あまいよ穂乃果!私達がパスカットすることを忘れてない!?」

 

穂乃果「忘れてない…よっっっ!!」ドガァン!!

 

「「「!!!?」」」

 

 

オーストラリアの選手のみならず、日本の選手達も目を疑った。

パスを出すものかと思っていた穂乃果の動き。

しかし、穂乃果はパスを出す気はなかった。

穂乃果の一連の動きはーーーーー

 

 

 

穂乃果「ブレイブ……!!!」ゴゴゴゴ!!

 

 

ーーーシュートの構え。オーバーヘッド

 

 

 

ドルフィン「この距離から!?シュート…」

 

穂乃果「ショット!!!!!!」

 

 

 

 

 

ドガアァァァァァン!!!!!!!!

放たれた穂乃果の。

そして日本の最強のオーバーヘッド。

そのボールはゴールに向かうことは無かった

 

 

ウォーター「うわぁ!?」

 

ビーチ「!!!!?」

 

タートル「シュートを地面に撃った!?」

 

ドルフィン「波と私達を、一気に吹き飛ばすため…!?」

 

 

穂乃果は自分の真下。

地面にシュートを撃った。

その衝撃で吹き飛ぶ波とドルフィン達。

穂乃果の言っていた強引なこと、とは誰も予想しなかった、かなりぶっ飛んだ内容であった

 

 

穂乃果「海未ちゃん!」パス

 

海未「無茶しますね…穂乃果」

 

 

『高坂穂乃果がオーストラリアのディフェンスを突破し、前線を走る園田海未にボールを繋げた!!日本、再びシュートチャンスとなりました!!』

 

 

海未「はあぁぁぁ!!!!」ゴゴゴゴ!!

 

 

海未は雷雲を発動し、一気にシュートの構えに入る。

今のサニデイジャパンの中でも、トップクラスの威力を持つ必殺シュート。

"天地雷鳴"を撃たんと海未は飛ぶ

 

 

海未「轟きなさい!!」

 

海未「ー 天地雷鳴 ー!!」ドガアァン!

 

 

渦巻く雷雲がそのままボールと共にゴールへと迫る。

威力なら海未のシュートの方が圧倒的に優位である。が、

 

 

ジンベイ「ー グレートバリアリーフ ー!」バシャァン!

 

海未「…!」

 

 

海未のシュートも水の壁に取り込まれる。

威力は一瞬にして消滅し、水の中をただ流されるボールへと早変わりしてしまったのである

 

 

『止めたぁぁ!!園田海未の新必殺技でも破れないオーストラリアのゴール!いったい、どうすれば日本は得点することが出来るのでしょうか!?』

 

 

月「これは…どうしようもないね」

 

千歌「えぇ!?このままじゃ、1点も取れないまま…」

 

 

前半の残り時間はあと僅か。

未だに"グレートバリアリーフ"の攻略法を見つけられていない日本に、得点という2文字は遠い存在に感じられた。

月や海未のシュートでも破れないのなら、誰のシュートも……

 

 

海未「…いえ、見つけました」

 

月、千歌「!?」

 

穂乃果「海未ちゃんも?実は穂乃果も!」

 

 

これはもう、発想力の問題だな…

月は少しだけ、穂乃果達に嫉妬していた

 

 

月「えぇ…見つけたの??」

 

千歌「じゃあ、これで逆転…!」

 

穂乃果、海未「それは出来ない(ません)」

 

 

穂乃果と海未が見つけた"グレートバリアリーフ"を破る方法…

それは、一度仕掛ければ二度と成功しないであろう方法であった。

よって、穂乃果が1点、海未が1点取っても2-2。

逆転はできないのである

 

 

月「なるほど。3点目の攻略法を考えないとこの試合、勝てないってことだね」

 

穂乃果「うん。それに…」

 

海未「果南ですね…」

 

千歌「果南ちゃん…!」

 

 

 

『オーストラリア!カウンターで日本の薄くなったディフェンス陣を掻い潜る!!』

 

 

サーフィン「リーフ!」パス

 

リーフ「このまま一気に畳み掛ける…!!」

 

 

オーストラリアの選手の半数が、シュート技"メガロドン"を使える。

そのため、一人の選手を徹底的に抑えられないでいた日本は、どうしてもオーストラリアに隙を与えてしまっていた

 

 

聖良「しまった…!?」

 

英玲奈「パスが通った!!まずいぞ!」

 

 

『ジョーズと松浦果南の1対1!!身を隠すシュート、"メガロドン"を松浦果南は止められるのか!!?』

 

 

ジョーズ「3点目だ!ー メガロドン ー!」ドガァン!

 

果南「…来た!!」

 

 

鋭く尖った背鰭が、フィールドを泳ぎ回る。

まるで果南を挑発するかのように、ゆっくりと、今にも身を隠そうとしていた

 

 

果南「(集中するんだ…)」バッ!

 

 

果南は飛んだ。

槍を構え、空中で深呼吸する。

昔似たような体験をした…あれは…

休学中の時。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーー

 

 

 

 

果南『知り合いの手伝い??』

 

北也『あぁ、本当は俺が行くはずだったんだが…こうなってはなぁ…』

 

 

果南の父、北也が骨折し、果南が代わりに仕事をこなしていたある日。

北也の知り合いが、仕事の手伝いを北也に依頼していたようで

 

 

北也『代わりに行ってくれないか?昔からの付き合いなんだ。頼む』

 

果南『…まあ、断る理由もないしね』

 

 

こうして、果南は北也の知り合いの仕事を手伝うことになった。

その仕事の内容とはーーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーーードスッ!!!!

 

 

果南『(これで10匹目…)』

 

 

"モリ突き漁"であった

 

 

果南『(父さん…モリ突きなんてやったことあるのかな…)』

 

 

サクサクと魚を仕留める果南。

港で北也の知り合いの人が、モリ突きのレクチャーをしようとしたのだが、果南は言った

 

 

果南『あ、なんかできそうなんでやってみます』

 

ーーーー

 

 

果南『(必殺トライデント!…なんちゃって』ドスッ!!

 

 

熟練のプロ…と言われてもおかしくないモリさばきで、魚を狩る。

案外、やってみると楽しいモリ突き漁。

これぐらいサッカーも…

 

 

果南『(もっと楽しみたかったなぁ…)』ドスッ!ドスッ!ドスッ!

 

 

 

 

―――――――――――――――

―――――――――

――――

 

 

 

果南「あの時の感覚を…思い出せ!!」

 

 

果南は上空で竜巻を作り、地面に狙いを定める。

仕留めるのは太平洋の南から来た巨大鮫

 

 

果南「(魚影は見える…あとは私のタイミング…!!)」

 

 

すでに海中に身を潜めている鮫。

魚影…とは言っても、ほとんどの人は波の揺れと見分けがつかないほどの微かな黒。

ぶっつけ本番。

果南は一気にーーーーー

 

 

果南「海竜の…!!!!」グワーッ!

 

 

ーーーー狩る

 

 

 

果南「逆鱗槍!!!!!!」バシャァン!!

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

オーストラリア「「「!!!!??」」」

 

 

地面に、海中に突っ込んだ果南。

巨大な水柱。

響く水の音。

誰もが、ゴールに立ち込める煙が消えることを…待ち望む

 

 

ダイヤ「果南さん…」

 

花陽「ボールは…」

 

 

 

 

 

煙の中から立ち上がる果南。

果南が持つのはモリ。

モリが刺すのはーーーー

 

 

 

 

 

果南「鮫をとったって、父さんに自慢しちゃお♪」

 

 

『止めたあぁぁぁ!!!!!!松浦果南!!空中から槍、いや、モリで巨大鮫を…仕留めてみせたぁぁ!!!!』

 

 

 

ジョーズ「うそ…だろ?」

 

リーフ「そんなことが!?」

 

ドルフィン「メガロドンが、止められた…」

 

 

驚きを隠せないオーストラリア。

それと対照的に、日本のボルテージはいっきに高まる

 

 

穂乃果「すごいよ!!果南ちゃん!!」

 

梨子「果南さんがいれば…点はもう決まらない!」

 

 

これで心置き無く攻めることができる!

日本はすぐに攻撃に移ろうとした。

しかし、

 

 

果南「…!!前半が終わっちゃう!」

 

聖良「そんな…盛り上がってきたところで…」

 

 

時間はすでに、前半終了数十秒前になっていた。

今から速攻を仕掛けても間に合わない。

流れを変えるチャンスではあったが、時間がそれを許してくれなかった

 

 

 

 

 

 

 

海未「果南!ボールをください!」

 

果南「海未ちゃん!?」

 

 

海未がボールを貰いにゴール前まで下がってきていた。

とは言っても、もう前半は終了。

なぜそんなに急いでいるのか…

果南は不思議に思うも、ボールを海未に渡した

 

 

果南「どうするの?」

 

海未「すぐにわかります」

 

 

ボールを足で抑え、深呼吸する海未。

ここは日本のフィールド内。

出来ることは限られる。

パス、ドリブル…

シュートは遠すぎるから無し

 

 

 

 

 

その考えが、オーストラリアの弱点

 

 

 

 

海未「っっっ!!!!」ギリギリギリギリ!

 

曜「!?海未さん、いったい何を…」

 

 

足をこれでもかというぐらい後ろに振り上げ、伸ばす海未。

まるで弓のように、ギリギリと音をあげる足。

日本の選手達には、見覚えが、いや、見覚えしかなかった

 

 

希「まさか…」

 

千歌「あれだ!!」

 

 

ドルフィン「!!!!??」

 

ドルフィン「ジンベイ!!今すぐにグレートバリアリーフを…

 

 

 

 

 

 

バシュゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

ジンベイ「…え」

 

オーストラリア「「「!!!!??」」」

 

 

 

月「いや〜…ははは…」

 

英玲奈「どういう体をしているんだ…海未は」

 

穂乃果「うーん…海未ちゃんだからね…」

 

 

 

 

 

海未「ー ラブアローシュート ー」

 

 

 

音を超えた矢は風を切り、時間をおいてけぼりにし、オーストラリアのゴールに突き刺さった

 

 

前半終了

日本 1-2 オーストラリア

 

 




メガロドンは太古の海に生息していた最大級のサメで、クジラぐらいめっちゃ大きかったらしいです。ですが、原作、そして輝こうサッカーでのメガロドンは、あくまでも普通サイズのサメとしてご理解をお願いします。

ちなみに、サックアウトとはサーフィン用語で波が渦巻くチューブに巻き込まれることらしいです

ルビィちゃんキャンディーは心配性なので、ご感想をいただけると安心します…よろしくお願いします



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第3章 25話 「オーストラリア戦 "3点目の掛け"」

海未(海)の日だぁ!いえーーーい!…はい。ルビィちゃんキャンディーです。皆さんは海に行きますか?海(海未)っていいですよね…自分は海風と海水に触れると身体中、蕁麻疹だらけになるので(中2のころ発症)なかなか行けないんですよね…海釣りは大好きなんですが…

意外とすぐに出てきます。あの方が



 

 

前回の、輝こうサッカーで!

FWにポジションチェンジした穂乃果。持ち前のセンスでシュートチャンスを作るも、"グレートバリアリーフ"は越えられなかった。しかし、果南と海未の活躍で1点を返したサニデイジャパン。後半に向けて、ベンチでミーティングを始めようとしていた

 

 

 

 

凛「海未ちゃん!ナイスシュートだったにゃ!!」

 

海未「ありがとうございます。凛」

 

 

千歌「果南ちゃんもかっこよかった!鮫を仕留めちゃうなんて!」

 

果南「ありがと。まあ、成功するかどうか微妙だったけどね」

 

 

前半が終わり、ベンチに集合した日本メンバー。

話の話題は果南と海未のファインプレーでもちきりだった

 

 

ダイヤ「油断…ですか?」

 

海未「はい。グレートバリアリーフは強力な技ですが、それゆえの油断が得点に繋がりました」

 

果南「どういうこと?」

 

 

無敵の盾を持った人間は、全ての攻撃を弾く盾に安心し、戦の中で気を抜く。

そこを矢で狙われ、呆気なくやられるというお話。

グレートバリアリーフという強力な技を過信し、技を出すタイミングが遅れたジンベイ。

海未がシュートを撃った時には時すでに遅し。

簡単に決めることが出来たのである

 

 

にこ「海未がボールを持っているのに油断なんて…よっぽど技に自信があったのね」

 

果南「でも、これで相手は警戒して技を出すタイミングを早めてくるね」

 

海未「はい。しかし、希望はまだあります」

 

 

海未とは別に"グレートバリアリーフ"の攻略法を見つけた穂乃果。

しかし、これもチャンスは一度きり。

日本は3点目を決める作戦を立てる必要があった

 

 

美奈「みんな!ここまで自分達だけで道を見つけるなんて…素晴らしいわ!」

 

千歌「お母さん?」

 

 

突如話し始めた美奈。

ただ自分達を褒めるだけではないようだ…

メンバーは美奈の話しに耳を傾ける

 

 

美奈「3点目…ここまで頑張ってきたみんなへ!私が作戦を提案するわ♪」

 

希「美奈さんが作戦…」

 

にこ「何?明日は雨かしら…」

 

 

音ノ木坂のメンバーは驚かずにはいられなかった。

美奈が作戦を提案…

全国大会で美奈が作戦を提案したのは1回だけ。

フォーメーション"音ノ木"の時だけであった。

そんな美奈の作戦…謎の不気味さをにこ達は感じ取っていた

 

 

英玲奈「作戦、とは…?」

 

美奈「穂乃果ちゃんが決めて同点。そして、残り1点は……」

 

 

 

――――――――

 

 

 

『さあ!間もなく後半戦が始まります!日本の選手達がフィールドに……!?今入った情報です!!日本は、選手とポジションを大幅に変更するようです!これは…高海美奈監督の作戦なのでしょうか……』

 

 

 

 

 

FW……高坂穂乃果、鹿角理亞、綺羅ツバサ

 

MF…星空凛、高海千歌、渡辺月、園田海未

 

MF…………………統堂英玲奈

 

DF………………鹿角聖良、南ことり

 

GK……………………松浦果南

 

2-1-4-3

 

 

『東條希、優木あんじゅ、桜内梨子、渡辺曜をベンチにさげ、投入されるのは南ことり、星空凛、鹿角理亞、そして……!!』

 

 

 

ツバサ「まさか、こんなにも早く出ることになるとはね」

 

 

『"ゴットストライカー"綺羅ツバサだあぁぁぁ!!!!!!』

 

 

会場のボルテージが一瞬で高まった。

観客席からはツバサコールが始まっている。

ツバサの名前が呼ばれただけでこの歓声…

それほどまでにツバサは期待されており、日本を代表するFWなのである

 

 

千歌「す、すごい人気…」

 

海未「当然といえば当然ですね。UTX高校史上最強の、そして日本のエースストライカーと名高い綺羅ツバサ…」

 

月「頼もしいね♪ツバサさんがいると」

 

ツバサ「まぁ、今回はシュートを狙うと言うよりかは、アシストだけどね」

 

 

 

 

美奈が提案した作戦…それは

 

 

 

 

 

"理亞中心の超総攻撃"

 

 

 

 

ピーーーー!!!!

笛と同時に日本の攻撃がスタートした。

前半の時よりも異様なまでの攻守の偏り…

選手のほとんどがFWという、まさに勝負に出た作戦であった

 

 

リーフ「な…ほとんどの選手が前線に…!?」

 

アングラー「ディフェンスを捨てたのか!?日本は」

 

 

ディフェンスを捨てる…その考えに日本の選手達は異議を唱えず、むしろ賛成。

オーストラリアのシュートは果南が止めてくれる。

ボールを奪うのも難しくはない。

ディフェンスをする以上に、日本の選手達にはやるべき事があった

 

 

千歌「月ちゃん!」パス!

 

月「ナイスパスだよ!穂乃果ちゃん!」パス

 

穂乃果「いよっと!ツバサさん!」パス

 

ツバサ「任せて」

 

 

サーフィン「パスが速すぎる…」

 

クラーケン「まったくついていけない…!?」

 

 

それぞれのチームのエースのパス回し。

軽い身のこなしとトップレベルのテクニックでいとも簡単にボールを繋ぐ。

全国大会のころに浦の星女学院が使っていた必殺タクティクス、"3D・リフレクター"。

それをタクティクスとしてではなく、通常のパス回しとして自然に発動している。

これが代表レベルの戦い。

激戦を勝ち進んだ者達のプレーである

 

 

ツバサ「私は止められないわよ♪」パチン

 

 

ツバサが指を鳴らすと、ツバサの周りに複数のオーラが出現。

そのオーラ達は徐々にあるものに形作られ、オーストラリアの選手達を動揺させた

 

 

ツバサ「ー デコイリリース ー」

 

 

ドルフィン「ツバサが増えた!?」

 

ビーチ「ど、どれが本物か…」

 

ツバサ「バーイ♪」バッ!

 

ドルフィン、ビーチ「!?」

 

 

一斉に走り始めたツバサ達。

どのツバサが本物かわからないまま、何も出来ずに突破を許してしまったオーストラリア。

これであとはシュートを撃つのみとなった

 

 

凛「ツバサさんのドリブル技にゃ…!」

 

聖良「これであとはキーパーのみ!」

 

 

ツバサ「…」

 

 

ドリブルでキーパーとの距離を詰めるツバサ。

このままシュートに入る…訳には行かなかった

 

 

ツバサ「頼んだわよ。理亞ちゃん」パス

 

理亞「…!」

 

 

ボールを貰った理亞。

何故、ツバサは自分でシュートをしなかったのだろうか…

そう考えるのが普通である。が、この試合、理亞以外がシュートを撃つことは、穂乃果の一発を除いて見れることはないだろう。

何故なら…

 

 

 

美奈「この試合、勝つにはあなたの力が必要よ…理亞ちゃん…」

 

美奈「完成させてもらうわよ…!"Awaken the power"を」

 

 

 

理亞「っっっっ!!!!」グググググ

 

海未「監督も無茶承知で…」

 

穂乃果「でも、確かにこれしか方法はなさそう」

 

 

集中する理亞。

体の奥深くに眠るオーラを高め、炎のように形作る。

練習の時は髪が揺れるだけだった理亞のオーラ。

しかし、今のオーラは風を起こし、周りの芝生を揺らすほどのものまでに大きくなっていた

 

 

理亞「っっっっ!!!!」グググググ

 

 

花陽「凄いです!!練習の時よりもオーラが増えています!」

 

花丸「完成したずらか…"Awaken the power"は」

 

真恋「……まだよ」

 

花丸「え…」

 

真恋「全然足りないわ…」

 

 

 

 

タートル「もらった!!」ズザー!

 

理亞「あっ!?」

 

 

理亞の横からスライディングでボールを奪ったタートル。

オーストラリアもただ見ているわけにはいかない。

現状、勝っているとはいえ、流れは日本に来ている。

油断はできない

 

 

月「ドンマイ。理亞ちゃん」バッ

 

穂乃果「取り返すよ!」バッ

 

理亞「…ハァハァ」

 

 

理亞以外の選手達がオーストラリアのディフェンスをするために、走って下がっていく。

理亞は必要以上に体力消費をするなと美奈から指示されている。

メンバーからも、理亞はディフェンスに戻らなくていいと言われている

 

 

理亞「…本当に、出来るの…??」

 

 

理亞は一人、フィールドに佇んでいた

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

真姫「もう、後半始まってるじゃない…」

 

ルビィ「うゆ…道が混んでたしね…」

 

真姫「情報だと負けてるっぽいわよ」

 

ルビィ「…まずいね」

 

真姫「えぇ。だからこそ、急がなくちゃ」

 

ルビィ「うん。行こう」

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

『後半戦、日本が優位に試合を進めています!!奪われてもすぐに取り返す!このまま追いつくことは出来るのか!?』

 

 

ドルフィン「これ以上は行かせない!!必殺タクティクス!!」

 

ツバサ「…!」

 

「ー サックアウト&ボックスロックディフェンス ー」

 

 

オーストラリアは必殺タクティクスの二重発動でツバサを仕留めにかかった。

すでに逃げ道は塞がれたため、穂乃果のように必殺シュートを地面に叩きつけるのもありだが、二度も同じことをさせてくれるかどうか…

 

 

ツバサ「ふぅん…」

 

 

果南「ツバサが捕まった!!」

 

聖良「やはり、厄介ですね…」

 

 

ドルフィン「さあ!これで終わりだ!綺羅ツバサ」

 

 

波が膨れ上がり、まるで巨大な口がツバサを飲み込むかのように見えた。

しかし、もうひとつ、千歌達の目に入ったものがあった

 

 

千歌「…あれ、ツバサさんの…目が」

 

凛「キラキラして、るにゃ…」

 

 

 

美奈「あら、まさかこんなにも早く、ツバサちゃんの本気が見れるなんてね」

 

曜「ツバサさんの本気…!」

 

梨子「一体どんな…」

 

美奈「…本気というよりも、才能と言ったほうがいいわね」

 

 

 

ツバサ「悪いけど、時間がないの」バッ!

 

サーフィン「飛んだ!?」

 

ドルフィン「シュートを撃つ気?その前に奪う!!」バッ!

 

 

ツバサの予想通り、シュートを二度も撃たせてはくれないらしい…しかし、最初からツバサはシュートを撃つ気などない

 

 

ツバサ「あなた達に見せてあげるわ。私のサッカーを…!!」

 

サーフィン「何を!!」バッ

 

 

空中にいるツバサが持つボールに足を伸ばすサーフィン。

空中なら何も出来ないはず!!

会場にいる全員が、そう思っていた

 

 

ツバサ「残念」クルッ!

 

サーフィン「(避けられた!?)」

 

 

ツバサは空中で自分の体に捻りをかけ、紙一重でボールカットを躱した

 

 

曜「あの身のこなし、にこさんのプレーに似てる…!!」

 

にこ「えぇ。でもそれだけじゃないわよ…ツバサは」

 

 

立て続けにボールを奪いに行くオーストラリア

 

 

ウォーター「空中でどうしてそんなに動けるの!?」バッ

 

ツバサ「どうしてかしらね」スカッ

 

ウォーター「!?」

 

ドルフィン「私達の動きが、読まれている…」

 

 

空中で2人も躱された…これはもう、動きを読まれているとしか考えられなかった。

それ以前に、ツバサの人を超えたかのような動き…何かの技…?

 

 

月「違う…」

 

千歌「月ちゃん…知ってるの?」

 

月「あれは、ツバサさんがUTXに。そして、日本中に名が知れ渡るようになった理由だよ…」

 

千歌「何かの…必殺技?」

 

月「惜しいね。千歌ちゃんなら分かるはずだよ。ツバサさんの雰囲気で」

 

千歌「……!!!!」

 

月「気づいた?」

 

 

『な、なんということだぁ!!綺羅ツバサ、二つの必殺タクティクスを華麗に回避し、何事も無かったかのようにその場を切り抜けたぁぁ!!!!これが、"ゴットストライカー"の実力です!!』

 

 

ツバサの雰囲気。

目を輝かせ、異常なまでに上昇した身体能力。

伝わってくる。一瞬で増幅した、まるで別生物かのような巨大なオーラ。

千歌には分かる。

あれは、そう。

 

 

 

千歌「ゾーン…」

 

月「正解。でも、ツバサさんのゾーンは…」

 

 

月「"自分の意思"で発動できる…」

 

 

 

ツバサのサッカーは、まさに神のごとく才能…千歌の体は震えた

 




デコイリリース
イナGOのセカンドステージチルドレンの選手達が使っていた技です。無属性技は本当にA‐RISEに合いますね…

ツバサのゾーン
月ちゃんの説明通りです。ツバサさんはゾーンを自分の意思で発動できます。余計な体力消費を抑え、必要な時だけに身体能力を上げることができます。


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第3章 26話 「オーストラリア戦 "目で見たものをぶっつけで"」


皆さんどうも!最近、無理していないか心配されるルビィちゃんキャンディーです!勉強の合間に書いているこの小説…無理していないと言うと嘘になりますが、一応、ちゃんと休んでいるのでご安心を!そんなことよりも、ドッ〇ンバトルのブロリーはよ来てくださいよ…楽しみ過ぎて勉強集中できないから…




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

美奈が提案した3点目を狙う作戦…それは、理亞に"Awaken the power"を発動させるべく、理亞中心の超攻撃型戦法であった。理亞のサポートをする千歌達。そんな中、ツバサが"自分の意思で発動できるゾーン"を発動し、オーストラリアの選手達を圧倒するのであった

 

 

 

 

曜「自由に発動できるゾーン!?」

 

花丸「そんなのめちゃくちゃずら…」

 

花陽「穂乃果ちゃんの闇のチカラみたいです…」

 

真恋「まぁ、ちょと違うけどね。ツバサちゃんのあれは天性の才能。特訓で得れるようなものではないわ」

 

 

『綺羅ツバサがオーストラリアの選手を次々と躱していきます!まるで選手の思考を読んでいるようだ!!』

 

 

ツバサ「ーー!」

 

タートル「ダメだ…ついていけない」

 

 

右から来る…だから右を守ろうとすると、ツバサは左に行く。だからすぐに左に切り替えるのだが、

 

 

ツバサ「残念♪」バッ

 

タートル「(右…なんで…)」

 

 

読まれた…これが日本のトップレベルの選手の動き…正面から勝負もさせてもらえないのか…オーストラリアの選手達はツバサの背中を追うことしか出来なかった

 

 

ツバサ「理亞ちゃん!」パス

 

理亞「!」

 

ツバサ「"Awaken the power"を!」

 

理亞「はい…!」グググググ

 

 

再び、"Awaken the power"の構えに入る理亞。

徐々に風が吹き始め、オーラが膨れ上がる

 

 

理亞「っっっっ!!!」グググググ!

 

 

花丸「さっきよりもオーラが巨大に…!!」

 

花陽「ルビィちゃんの"Awaken the power"と同じ大きさです!これは…!!」

 

美奈「……」

 

 

理亞「はあぁぁぁぁ!!!!」グググググ!

 

 

理亞のオーラは、自分の背丈の倍以上の大きさになっていた。

ついに"Awaken the power"が完成した…!!

誰もが、そう思っていた

 

 

真恋「…まだよ」

 

花陽「え…まだ、」

 

真恋「よく見て。オーラの色を」

 

 

理亞「(ぐっ…これじゃ、ダメ…!)」グググググ

 

 

理亞のオーラは…未だに半透明。

ルビィのようにギラギラとは輝いていない。

熱もない。未完成。

理亞の"Awaken the power"は、"Awaken the power"と呼ぶにはまだ程遠いものであった

 

 

理亞「ハァハァ…」シュゥゥゥン……

 

月「また失敗…当然だよ、無茶だ」

 

 

理亞はオーラの維持が限界に達したため、強制的に"Awaken the power"を解除。

その場に尻餅をつく形となった

 

 

理亞「やっぱり…まだ、」

 

 

美奈「理亞ちゃん…」

 

真恋「美奈、これじゃ難しいわ」

 

美奈「…」

 

 

理亞の"Awaken the power"。

それは本来、オーストラリア戦では使う予定はなかった。

いや、不可能。

ただ時間を無駄に使うだけだ。

口には出さなくとも、真恋は美奈に訴える

 

 

真恋「…美奈」

 

美奈「…」

 

美奈「希望があるとすれば…」

 

 

 

 

 

 

 

 

真姫「負けてる、わね」

 

ルビィ「…理亞ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

美奈「ルビィちゃんしかいない」

 

 

 

 

『おぉっと!?再び鹿角理亞がボールを奪われました!日本はすぐにディフェンスに入ります!!』

 

 

英玲奈「穂乃果!」

 

穂乃果「英玲奈さん…!」

 

英玲奈「時間も残り僅かだ。穂乃果の1点でひとまず同点にしよう」

 

月「僕も賛成かな。理亞ちゃんの"Awaken the power"は多分発動出来ない。先に希望を繋げよう」

 

穂乃果「…うん!分かった」

 

ツバサ「ボールを奪いましょ」

 

 

ディフェンスに参加するFW陣。

しかし、オーストラリアも抵抗し、なんとかボールを繋ぐ。

流石にFWのメンバーは間に合わないようで、オーストラリアがシュートの体勢に入った

 

 

ドルフィン「ー メガロドン ー!」バシャァン!

 

千歌「果南ちゃん!」

 

 

果南「決めさせないよ!」バッ!

 

 

これ以上の追加点。

それは日本の敗北を意味する。

絶対に止めなければいけない。

その事を誰よりも理解している果南は、空中で槍を構え…いっきにーーーーーー

 

 

果南「海竜の!!!!」

 

 

ーーーーー刺す

 

 

果南「逆鱗槍!!!!」グサッ!!

 

 

ドルフィン「何…!?」

 

海未「流石です!」

 

月「よしっ…!」

 

果南「とったぁぁ!!」

 

 

ボールを空に掲げる果南。

「ゴールは任せろ!!」

そんな頼もしい気迫が、日本の選手達にビリビリと伝わってきた

 

 

凛「果南ちゃん!こっちにゃ!」

 

果南「凛!」ブン!

 

 

果南からボールを受け取った凛。

今の自分がやるべき事はひとつ。

穂乃果と理亞にボールを繋ぐこと

 

 

凛「にゃあぁぁ!!!!」バリバリバリ!

 

リーフ「電気!?」

 

凛「止められるもんなら…止めてみるにゃ!!」

 

 

凛「ー ジグザグストライク ー!!」ビュンビュンビュンビュン!!

 

 

ジョーズ「速すぎる!?」

 

シュリンプ「姿が…見えない…」

 

 

凛の姿は捉えられない。

しかし、まるで雷雲の中で走るイカヅチのように、バチッ!バチッ!と電気が走る。

凛は今そこにいるのか…!!

場所は把握できる。

だが、それでも、場所が分かったとしても…追いつけない

 

 

凛「遅い遅い遅い遅い遅い!!!!」ビュンビュンビュンビュン!!

 

穂乃果「穂乃果も行くよ!」バッ!

 

ツバサ「フォローするわ」バッ

 

 

曜「穂乃果さん、ツバサさん、凛ちゃんのパス回し…!!」

 

梨子「パスを…繋げているの?本当に…」

 

 

疑うのも無理はない。

一見、ただ3人が高速で走っているだけのように見える。

しかし、見える人には見える

 

 

 

千歌「凄い…」

 

月「敵だけには絶対にしたくないね」

 

 

ルビィ「…」

 

 

 

凛「穂乃果ちゃん!」パス!

 

ホノカ「凛ちゃん速!?」パス!

 

ツバサ「こぼさないようにね」パス!

 

 

凛の"ジグザグストライク"に、穂乃果は"闇のチカラ"で、ツバサは"ゾーン"で合わせる。

3人の動きは人を超えている。

オーストラリアも日本も、3人に関わることはできない。

一瞬でゴールへ。

凛は穂乃果にボールを渡す。

同点へ。

最悪、希望を繋ぐために。蹴る

 

 

凛「穂乃果ちゃん!」パス

 

ホノカ「ありがとう!凛ちゃん、ツバサさん!」

 

 

穂乃果の2点目。

チャンス1回の挑戦が始まった。

2点目…とずっと言っていたが、穂乃果がこの試合中に思いついた作戦であり、成功するかしないかはまた別の話。

要するに、成功しない可能性もある

 

 

ホノカ「行くよ…!!」バッ

 

 

あんじゅ「"ブレイブショット"を撃つ気…?」

 

希「"グレートバリアリーフ"相手に、どうするんや…」

 

 

ホノカ「っっっ!!!!」ドオォン!!

 

 

まるで破裂音。

まるで山に響く、猟銃の爆音。

穂乃果の蹴りは鋭く突き刺さり、ボールは歪む。

地面を揺らすほどのオーラを、穂乃果はこれでもかというくらいボールに詰め込み、オーバーヘッドで放つのは…

 

 

ホノカ「ー ブレイブショット ー!!!!」ドガアアァン!!

 

 

ドルフィン「穂乃果の必殺シュート!」

 

タートル「ジンベイ!!」

 

 

ジンベイ「ー グレートバリアリーフ ー!」バシャァン!

 

 

水の壁がゴール前に現れた。

日本のシュートをことごとく抑えてきた最強の壁。

飲み込まれたら最後。

威力が死ぬまで、水はボールに襲いかかる

 

 

海未「穂乃果の作戦…」

 

月「一見、普通のシュートにしか見えないけど…」

 

 

ホノカ「…」

 

 

『高坂穂乃果のシュートが、"グレートバリアリーフ"に迫る!!果たして撃ち破ることが出来るのか!?』

 

 

ジンベイ「無駄だよ!」

 

 

ボチャン!!

穂乃果の"ブレイブショット"は、音を立てて水の中に突っ込んだ。

そのままボールは今までと同じく、徐々に動きが弱まり、今にも止まりそうなほどまでになった

 

 

千歌「失敗…」

 

英玲奈「2点目は…取れないのか?」

 

ツバサ「いえ、よく見て。あれは…」

 

 

 

ジンベイ「…?」

 

ドルフィン「どうしたの?ジンベイ?」

 

ジンベイ「い、いや、ボールが…」

 

ドルフィン「?………!!?」

 

 

 

花陽「あれは…!?」

 

曜「どうして、穂乃果さんが…!?」

 

梨子「だってあれは…!」

 

 

敵味方問わず、穂乃果のシュートに驚きを隠すことが出来なかった。

特に日本のメンバーは、前に、とある選手が同じシュートを放ち、そのシュートが意外性の塊で、誰も考えもしなかった技だったため、忘れるわけがなかった

 

 

 

ホノカ「あっ、言い忘れてたね。ー ブレイブショット…」

 

 

 

ギュン!ギュン!ギュン!ギュン!

 

 

 

ホノカ「スペシャルバージョン、だよ」

 

ジンベイ「ボールが回転して…海中を進んでいる!?」

 

 

凄まじい勢いで回転するボール。

海中でも死なないそのスピンは、まるで生きているかのように。

ボールを水の壁の向こう側へ、運ばせる

 

 

ジンベイ「嘘…止められない…」

 

 

月「行ける!」

 

千歌「行っけー!!」

 

 

 

『ゴール!!!!アンビリバボー!!高坂穂乃果のシュートは、海中でも止まることなく!そのまま水の壁を越え、ゴールに飛び込んだぁぁ!!!!』

 

 

穂乃果「…ふぅ、上手くいったね…」

 

 

 

花丸「あ、あれって…善子ちゃんが使ったやつ、だよね?」

 

希「ウチの"ユメノトビラ"を破るために善子ちゃんが放った技、"デスドロップスペシャルバージョン"。あれやな」

 

ダイヤ「穂乃果さんが"ブレイブショット"でアレンジした、わけですの…」

 

 

穂乃果の作戦。

それはスピンを加えたシュートで"グレートバリアリーフ"を突破するという、ぶっつけ本番にはかなり無理があるものであった

 

 

海未「穂乃果…もちろん、特訓したのですよね?」

 

穂乃果「え?してないよ?」

 

月「え!?」

 

 

穂乃果は全国大会の決勝で、善子のシュートを見たあと、いつか自分もやってみたいな…

とは思ってはいたものの、今の今まですっかり忘れていたため、特訓することは無かった。

つまり、あのシュートは…

 

 

月「特訓もしていないことをやったってこと…?」

 

穂乃果「うん!なんか出来そうな気がしたからね!」

 

ことり「穂乃果ちゃん…」

 

 

 

穂乃果のシュートで同点に追いついたサニデイジャパン。しかし、3点目の希望。

"Awaken the power"が完成する可能性が低い…

日本に残された時間は残り僅か

 

 

日本 2-2 オーストラリア

 

 



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第3章 27話 「オーストラリア戦 "吠える狼"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
ついに…ついに、とあるお話に区切りがつきそうです。それでは…どうぞ




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

3点目の作戦、理亞の"Awaken the power"発動がなかなか成功せず、美奈達にも焦りが見え始めていた。そんな中、穂乃果が善子の"回転シュート"をアレンジした"ブレイブショット"で同点に追いつく。試合時間は残り僅か、果たして3点目を決められるのか…

 

 

 

 

 

その後も、理亞は何度も"Awaken the power"発動を試みた。

しかし、完成には程遠いオーラは色がつく気配はない。

体力と時間が吸われていく一方…

だからといって新たな作戦を考える余裕はなかった。

いや、思いつかないのだ。

海未と穂乃果の作戦以外の方法ではあの水の壁は越えられない。

日本の選手達は焦る

 

 

聖良「まずいです…もう時間が…!」

 

月「っっ!どうすれば…」

 

 

ボールを繋げ、理亞に渡す。

そこまではいい。

だが問題はそこから

 

 

理亞「ハァ、ハァ…ハァハァ」ガクガク

 

 

凛「理亞ちゃん…もう限界にゃ!!」

 

ツバサ「無理もないわね。もう数十回は発動しようとした…練習の時だったらすでに立てなくなっているわ」

 

千歌「でも、それじゃ…」

 

英玲奈「"Awaken the power"の発動、逆転は…絶望的だ」

 

「「「……」」」

 

 

英玲奈の言葉で、可能性はゼロにいっきに近づいた。

残り時間もあと数分。

理亞の体力はほぼ残っていない。

新しい作戦もない。

予選での同点は敗北に等しい。

世界への切符はなくなったの当然…

 

 

凛「負け…ちゃうのかな」

 

「「「……」」」

 

 

 

理亞「ふざけないでよ!!!!!!」

 

「「「!!??」」」

 

 

理亞が怒鳴った。

全国大会では何かと怒っていた理亞。

しかし、代表としてはこれが初めてであった。

その睨みつける目は、仲間たちではなく、前を見ている

 

 

理亞「私は…まだ諦めてない!!」

 

聖良「理亞…」

 

理亞「こんなの、私のせいで勝てなかったようなものじゃない!!そんなの絶対に嫌だ!」

 

 

声には力がある。

だが体はもうすでに限界だった。

手をついていないと今にも倒れそうで、立ち上がれない…

何故、それでも諦めないのか

 

 

理亞「非力なのは私が一番知ってる…だからこそ、一番諦めちゃダメ…嫌だ、絶対にやってやる!!」

 

月「理亞ちゃん…」

 

理亞「見てなさい!!これが私の…力よ!」

 

 

気合いで立ち上がった理亞。

フラフラとはしているものの、目は、心はまだ燃えている。

そんな炎のような心に答えるかのように、オーラが理亞から吹き出す

 

 

花陽「あ、あのオーラは…!?」

 

真恋「ま、間違いないわ…あの決勝の時にルビィちゃんが見せたオーラと同レベル…"Awaken the power"のオーラよ!!」

 

美奈「…理亞ちゃん!」

 

 

ベンチにも伝わる巨大なオーラ。

フィールドにいる選手達にはそれ以上に。

ビリビリと肌を刺激する、まるで心臓を直接殴られているかのような衝撃。

鳥肌。

ボールを蹴ることを忘れ、理亞の姿に魅入る

 

 

ことり「でも、どうして急に…?」

 

ツバサ「その答えは…彼女の目よ」

 

ことり「…目?……!!」

 

月「このタイミングで…!」

 

 

理亞「私は、諦めない!!」グググ!

 

 

理亞はこの状況下で"ゾーン"を発動していた。

ゾーンにより、集中力と身体能力を一気に上昇させたことが、"Awaken the power"発動の引き金になったのである

 

 

 

理亞「はあぁぁぁぁ!!!!」グググググ!

 

聖良「理亞!!」

 

月「理亞ちゃん!!」

 

穂乃果「理亞ちゃん!!」

 

千歌「理亞ちゃん!!」

 

 

「「「理亞ちゃん!!!!」」」

 

 

 

理亞「これが…私の"Awaken the poーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーバシュウゥゥゥゥゥンンン………

 

 

 

理亞「」

 

 

曜「何!?」

 

梨子「理亞ちゃん…!?」

 

真恋「そんな、このタイミングで…」

 

美奈「体力、切れ…」

 

 

 

理亞「」ドサッ

 

 

聖良「理亞!!?」

 

 

倒れる理亞。

理亞のもとへと急ぐ聖良。

理亞は確かに"Awaken the power"を発動した。

いや、正確には発動する瞬間であった。

しかし、体力の限界。

燃料がなくなった車は動かない。

それと同じく、空っぽになった理亞のオーラはまわりに飛び散り、そのまま動けなくなってしまっていた。

ゾーンを発動したことが、逆に裏目に出たのである

 

 

千歌「そ、そんな…」

 

月「理亞ちゃん!!」

 

聖良「理亞!!」

 

 

理亞「…う、あ……」ガクガク

 

 

立てそうにない理亞。

日本はすぐに試合を中断しようとした。

やむを得ないが、諦めるしかない。

そう、誰もが考えた…

 

 

 

 

そう。フィールドにいるメンバーは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「理亞ちゃん!!!!!!」

 

 

 

理亞「…!!」

 

「「「!!!!」」」

 

 

聞こえる。

この甘ったるい声は…

甘ったるいのに、誰にも負けないぐらい熱い想いが込められている…

あの時の自分みたいだ…うるさい歓声が聞こえない。

ルビィの声だけが、ルビィしかいない会場で聞こえる。届く

 

 

ルビィ「聞こえてるでしょ。理亞ちゃん」

 

理亞「る、ルビィ……」ガクガク

 

ルビィ「あの時と逆だね。分かるでしょ」

 

理亞「…分かるわよ」ガクガク

 

ルビィ「今、同点だよね?このまま終わったらまずいってことぐらい、理亞ちゃんなら分かってるでしょ?」

 

理亞「…うぅ…!!」ググ…

 

聖良「ルビィさん…」

 

ルビィ「ルビィを超えるんでしょ?世界に行くんでしょ?できないは無しだよ」

 

理亞「ぐっ…うぅぅ……!!!!」ググ!

 

ルビィ「分かってるんでしょ?なら…」

 

理亞「…」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「動けえええぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

理亞「うおあああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

理亞は再び立ち上がった。

叫ぶ。これでもかというくらい叫ぶ。

何故、オーラが溢れ出す?

空っぽになった体から何故、溢れ出す?

どこから出てくるのかわからないそのオーラは、理亞を包み込み、強風を巻き起こし、地面を抉り、轟く

 

 

 

月「いったい何が…!?」

 

海未「あ〜…凛、分かりますか?」

 

凛「分かるにゃ。デジャブしかないにゃ…」

 

千歌「煙で見えないけど…分かる…」

 

 

分かる。

あの時と同じ。

姿は見えなくとも、伝わってくるオーラだけで鳥肌が立つ。

その巨大過ぎるオーラはすべてを圧倒し、勝利に導く

 

 

 

 

 

理亞「"Awaken the power"!!!!」ゴゴゴゴゴゴ!

 

 

 

想いは受け継がれた。

そして、新たな究極の誕生である

 

理亞"覚醒"

 

 





ついに理亞ちゃん"Awaken the power"発動!!!!

次回、究極と化した理亞ちゃんが動き出します



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第3章 28話 「オーストラリア戦 "究極は壁を越える"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。今回も平常運転で頑張って書きました。それではどうぞ、理亞ちゃんの新の力です




 

 

前回の、輝こうサッカーで!

あと一歩のところで体力切れとなった理亞。体が動かず、全員が諦めかけたその時。ルビィが決勝戦の時の理亞と同じく、理亞を奮い立たせ、ついに…ついに理亞が覚醒した。試合時間は残り数分。勝負の行方は、理亞に託された

 

 

 

 

 

理亞「…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

月「…で、出来た…」

 

ツバサ「あれが、理亞ちゃん?まるで別人ね…」

 

聖良「ルビィさんの"Awaken the power"とは…違うような…」

 

 

ルビィの"Awaken the power"は、まるで巨大な炎、火柱のごとく。

近づくだけでも焼き焦げそうなほどのエネルギー。

赤い髪はさらに赤みが増し、目も紅くなる。

それに比べて理亞は…

髪がまるで雪原のように白く…銀髪へと変わり、目はルビィと同じく紅く輝いている。

オーラはまるで吹雪。ブリザード。

近づくだけでも凍りつきそうな…風が痛い。

まるでオーラ自体が狂暴な獣であるかのよう…

 

 

花陽「氷…!?"Awaken the power"は炎のはずでは…」

 

真恋「…"Awaken the power"は発動者の魂そのもの…理亞ちゃんの心は冷たくも熱い…まるで巨大なブリザード。あれが、"理亞ちゃんのAwaken the power"なのよ」

 

ダイヤ「まさに、目覚める力…ですわね」

 

 

 

覚醒した理亞に圧倒される選手達。

しかし、いつまでも見ているわけには行かない。

試合は終了の時間になりつつある。

このまま終わるわけには…そう考えるのは、オーストラリアも同じである

 

 

 

ドルフィン「それがあなたの必殺技?理亞!」

 

理亞「!」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

すでに理亞は囲まれていた。

ボールを奪わなければ、オーストラリアは勝てない。

この瞬間に全力を…!!

ドルフィン達は今回の試合の中でも一番の波を巻き起こす

 

 

ルビィ「見せて。理亞ちゃんの力」

 

 

理亞「…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

理亞は波の中でも焦ることは無かった。

研ぎ澄まされた神経。

溢れ出す力。

それらすべてが、理亞の自信へと繋がる

 

 

「ー サックアウト&ボックスロックディフェンス ー!!」

 

 

波が理亞に襲いかかった。

逃げ道はオーストラリアの選手達が塞いでいる。

波の餌食。

ドルフィン達は確信する。

奪った…!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「邪魔」ギロッ

 

 

 

 

 

 

 

ドルフィン「!?」ゾクッ…!!!!

 

 

 

ガキイィィィィィィン!!!!!!

 

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

オーストラリア「「「!!!!??」」」

 

 

 

理亞のひと睨みで、一瞬にして氷と化した波。

ドルフィン達は、まるで狼に睨まれた小動物になったかのように立ち竦んでいた。

そんな中、理亞は両手を広げ、自分の力を。

感覚を味わう

 

 

 

理亞「凄い…力が溢れ出る。今なら何でもできる…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

理亞が一歩踏み出すーーーーー

 

バリイィィン!!!!!!

 

ーーーー氷が砕ける

 

 

理亞「行ける」バッ

 

 

理亞がもう一歩踏み出すーーーー

 

ドオォン!!!!!!

 

ーーーー爆風でオーストラリアの選手達が吹き飛ばされる

 

 

リーフ「消えた!?」

 

シュリンプ「いや、一瞬で突破したんだ!!」

 

ドルフィン「まずい…!!!!」

 

 

『鹿角理亞が目にも止まらぬ速さでドリブルを開始したぁ!!近づく選手は全員吹き飛ばされ、誰も手を出すことができません!!』

 

 

理亞「ーー!!」ビュン!!

 

ビーチ「な!?」

 

タートル「いつの間に…」

 

理亞「これが"Awaken the power"…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

瞬きする暇も与えない。とは、

まさに今の状況を言うのだろう。

理亞の高速ドリブルはまるで雪原を駆け抜ける狼。

白金の髪を揺らし、雪を巻き上げ、獲物をまっすぐ捉え…走る

 

 

千歌「これがラストプレイ…」

 

聖良「大丈夫です。理亞なら、やってくれます」

 

 

 

理亞「全てを凍りつかせる!!!!」ドン!!

 

 

理亞はかかと落としでボールを地面に叩きつけた。

地面には巨大なクレーターが…そこで理亞は全エネルギーをボールに集める

 

 

理亞「はあああああああああああ!!!!!!!!」ゴオォォォォォォォ!!

 

 

月「っ!?凄い吹雪だ…」

 

ツバサ「まるで本物のブリザードね…」

 

 

理亞は叫ぶ。

喉がはち切れんばかりに叫ぶ。

叫んだぶんエネルギーが集まるのだろうか?

それは理亞しか知らない。

千歌達が分かることと言えば、ひとつだけ

 

 

千歌「ルビィちゃんのシュート以上…!!」

 

海未「これは…もしかすると…」

 

 

シュートの構えに入った理亞。

空中へ飛び、両足にエネルギーを詰め込み、渾身の……ドロップキック!!!!

 

 

理亞「ー Awaken the beast ー!!!!」ドガアァン!!!!

 

 

放たれたボールはまるで猛獣。

それも暴れ狂う、全てを薙ぎ払うシュートであった

 

 

ドルフィン「ジンベイ!!!!」

 

ジンベイ「ー グレートバリアリーフ ー!!」バシャァン!

 

 

迫りくる狼。

ジンベイはすかさず水の壁を出現させる。

これが決まれば敗北…それだけは絶対に避けなければならなかった

 

 

花陽「グレートバリアリーフをどうやって…」

 

花丸「信じるしかないずらね…」

 

 

 

ボチャン!!!

理亞のシュートは水の壁の中に突っ込んだ。

水は容赦なくシュートの威力を殺す。

"Awaken the beast"も例外ではない。

徐々にパワー、回転が減り、ただ海を漂うボールへと……

 

 

月「っっっ!!失敗…」

 

海未「"Awaken the power"状態のシュートさえも…」

 

 

 

 

 

 

理亞「…まだよ」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

ジンベイ「!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

バキバキバキバキバキバキ!!!!!!

 

 

「「「!!!!??」」」

 

 

 

 

真恋「あれは…まさか!!」

 

あんじゅ「水の壁が、凍り始めている?」

 

 

なんと、理亞のシュートはそのオーラで"グレートバリアリーフ"。

つまり水の壁を凍らせていたのである。

水の壁は氷の壁へ。

誰が予想できただろうか…

いや、一人。

白銀に染まった少女が…

 

 

 

理亞「言ったでしょ。全てを凍りつかせるって」ビュン!!

 

ジンベイ「嘘でしょ…」

 

 

千歌「理亞ちゃん、何をする気なの…?」

 

月「…分かったよ」

 

月「決める気だ。あそこから」

 

 

理亞は全力で走る。

これが最後のチャンス!!

ゴールは目の前!!

そびえ立つ氷の壁は分厚く硬い。

関係ない。

今の自分に、越えられない壁などないのだから

 

 

理亞「これで終わりよ!!!!」バッ!

 

ジンベイ「そ、そんな…」

 

理亞「はああああああ!!!!!!」ゴゴゴゴゴゴ!

 

 

 

 

 

ドガアァァァァァァァン!!!!!!!!

 

 

 

 

 

理亞「ー Awaken the beast ー!!!!」

 

 

 

 

そう。壁。

理亞の前にそびえ立っていた、果てしない壁。

自分は本当に越えられるのだろうか…

悩む日々が続いた。

分厚く硬い、並大抵の力では砕けない壁。

 

しかし、理亞はその壁を、今、砕いたのである。

夢見た自分への第一歩。

その一歩を踏み出した理亞の顔は……

 

 

 

"最高の笑顔"であった

 

 

 

『決まったあぁぁぁ!!!!鹿角理亞!氷を砕き、ボールをゴールへと押し込んだあぁ!!これで日本は逆転!オーストラリアに勝利しました!!!!』

 

 

穂乃果「勝ったぁぁ!!!」

 

月「はぁぁ…ヒヤヒヤしたよ…」

 

千歌「本当に勝っちゃった…」

 

 

 

理亞「ハァハァ…ハァハァ」シュゥゥゥン…

 

 

理亞は試合が終わったのと同時に仰向けで地面に倒れた。

倒れた。と言っても、走りきった後にグラウンドに倒れ込むように、清々しい表情をしていた。

そんな理亞の元へと急ぐ聖良。

理亞の様子を見る限り、大事には至ってなさそうだが、念の為

 

 

聖良「理亞!!」

 

理亞「ハァハァ…姉様…」

 

 

理亞「サッカーって…楽しい!」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

ー 観客席 ー

 

 

真姫「勝てたわね。なんとか」

 

ルビィ「…うん」

 

真姫「でも、ルビィが怒鳴った時には驚いたわよ…ルビィ、あんな声出せるのね」

 

ルビィ「…」

 

真姫「浮かない顔ね。何か不満でもあるの?せっかく理亞が"Awaken the power"を発動出来たのに…」

 

ルビィ「…結果的には、ね」

 

真姫「どういうこと?」

 

ルビィ「…理亞ちゃんのあれは、その場繋ぎの力だよ」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「理亞ちゃんの"Awaken the power"は、完成していない」

 

真姫「え…」

 

ルビィ「…ルビィも、いい加減休んでいるわけにはいかないね」

 

 

 

自分の壁を壊すことに成功した理亞。

しかし、壊した壁の先には、新たな壁が立ち塞がっていることを、理亞はすぐに知ることになる

 

 

 

 

 




Awaken the beast
理亞ちゃんのオリジナル技です。ルビィちゃんのAwaken the fireの理亞ちゃんバージョンだと思ってください。技の流れはオーラを込めてからのドロップキック。原作の「モーダルスマッシュ」と動きが似ていますね。いや、ほぼ同じですね

ルビィちゃん曰く、理亞ちゃんの"Awaken the power"は未完成…ということらしいのですが、どうしてなのでしょうか?答えは、27話にほぼほぼ書いてありますが、次回、その事に触れていけたならと思います。

FFIは試合数が多いですが、「輝こうサッカーで!」で書きたい展開を全て入れようとするとですね…試合数が足りないんですよね。だから、話の流れが早いと思うかもしれませんが、最後までお付き合い頂けたらなと思います


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第3章 29話 「それぞれの次へ」


皆さん、おはようございます!ルビィちゃんキャンディーです。
ちょっと寝不足でキツいですがしっかりと投稿します!

最近、ある方のラブライブ×サッカーのssを読ませてもらったのですが、もちろん、内容も素晴らしい中、そのスレの繋がりで「輝こうサッカーで!」についての会話もされていたんです。こうやって、見てくれている方がいるんだな、ととても嬉しくなりました。その方達の言葉も糧にして頑張っていきますね



 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

"Awaken the power"を発動した理亞。その究極と言えるプレーにより、見事日本はオーストラリアに勝利した。理亞の覚醒に喜ぶメンバー。しかし、ルビィによると、あれはその場繋ぎの力に過ぎず、"Awaken the power"は未完成だと言う…どういうことなのか。その答えは、理亞自身が気づくことになる

 

 

 

 

 

 

ー 日本代表キャンプ地 ー

 

 

ツバサ「ー 流星ブレード ー!」ドガアァン!

 

穂乃果「ー 真ゴットハンドV ー!!」ドン!

 

 

ツバサの輝く剣のようなシュートが穂乃果のオーラに突き刺さる。

徐々に後ろへと押される穂乃果。

ツバサのシュートの威力を殺すのが先か、穂乃果が押し切られるのが先か…

 

 

ツバサ「流石ね。穂乃果さん」

 

穂乃果「ふぅ…ツバサさんのシュート重すぎ」

 

 

花陽「穂乃果ちゃんが止めました!!」

 

果南「やっぱ凄いなぁ…私も真正面から技をぶつけられるようになりたいな」

 

ツバサ「果南さんには果南さんの長所があるわ。だからオーストラリアにも勝てたのよ」

 

 

穂乃果のキーパー練習に付き合っていたツバサが果南に話しかける。

自信を持って。

そう果南に言うと、ツバサは練習に戻って行った

 

 

果南「長所…か」

 

花陽「果南さんは穂乃果ちゃんに負けないぐらい凄いキーパーです!」

 

果南「ありがと!花陽ちゃん」

 

 

穂乃果が遠くから果南を呼ぶ。

キーパー練習交代。

果南はグローブを片手に、ゴールへと向かう

 

 

果南「最後の砦として恥じぬように…ね」

 

 

これは北也の言葉。

果南は自分を奮い立たせるおまじないのように、声に出し、ゴールへと走った

 

 

 

 

 

 

 

オーストラリア戦から数日。

サニデイジャパンは2連勝。

このまま勝利を重ねることが出来れば、本戦への切符が手に入る。

しかし、そんな中でちょっとしたアクシデントが発生していた

 

 

 

月「やっぱり、ダメだね…」

 

理亞「…ハァハァ」

 

ダイヤ「まさか、あの試合以降発動出来なくなるとは…」

 

理亞「…」

 

 

理亞はオーストラリア戦で一度だけ"Awaken the power"を発動してから、その後、"Awaken the power"を発動することが出来なくなってしまったのである。

何度も試みた。

しかし、オーラは未完成の時の半透明な状態に戻り、まるであの時の状態がまぼろしだったかのよう思えた

 

 

月「…考えられるとしたら…あれは"一時的な覚醒"」

 

凛「一時的?どういうこと?」

 

月「理亞ちゃんが"Awaken the power"を発動したのはゾーン状態の時だったよね」

 

凛「…確かにそうだったにゃ」

 

月「つまり、ゾーン状態で能力・精神力が上昇したから発動出来た…逆に言うと、」

 

ダイヤ「普通の状態ではまだ発動できない」

 

月「正解」

 

 

つまり、理亞の"Awaken the power"はまだ完成していない。

普通の状態での発動が本当の完成…

既に辿り着いたと思われていた究極。

しかし、現実はそんなに甘くなかった。

理亞がオーストラリア戦で成し遂げたのは、山にかかった霧を払ったことだけ。

それによりあらわになった山の全貌・頂上は、想像以上に険しいものだったのだ

 

 

月「大丈夫。言ったでしょ?"Awaken the power"は本来、世界に向けての技だから、もっと時間をかけて完成させようって」

 

理亞「分かってる。必ず完成させてみせる」

 

ダイヤ「さすがは理亞さんですわね」

 

 

理亞は落ち着いている。

しかし、心の中はフツフツと煮えたぎっている。

自分はまだ未熟…足りないのだ。全てが。

新たな壁を自覚した少女は、再び走り出した

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

ー その日の夜 西木野総合病院 ー

 

 

ルビィ「うん。大丈夫だよ」

 

 

ルビィは屋上である人と通話をしていた。

通話の相手は、慣れ親しんだ人。

大切な仲間。

そう呼べる人であった

 

 

 

鞠莉『やっぱり、回復には時間がかかっているのね』

 

ルビィ「うん…みんなには迷惑をかけちゃって」

 

鞠莉『…』

 

ルビィ「ルビィ、今の日本に必要な存在なのかな…って」

 

鞠莉『…ルビィ、』

 

 

鞠莉には分かる。

電話越しに伝わる、ルビィの感情。

不安、罪悪感、責任。

まるで姉とそっくりだ。

深く考えすぎて、自ら負を抱え込む。

姉妹揃って、悪い癖だ

 

 

鞠莉『あのね、ルビィ。あなたは知らないかもしれないけど…ルビィは今、世界から注目されている選手の一人なのよ?』

 

ルビィ「え…?」

 

鞠莉『全国大会で見せた、"Awaken the power"。あれは日本だけじゃない。世界にも衝撃を走らせたのよ。私達のチームも、ルビィには警戒している』

 

ルビィ「…そんな、」

 

鞠莉『月繋がりっていう事もあるけどね。ルビィは、認められつつあるのよ。世界に』

 

ルビィ「…」

 

鞠莉『そんなルビィを、日本のメンバーが必要としないわけないじゃない』

 

鞠莉『それ以前に、ルビィはかけがえのない大切な仲間よ。私だけじゃない。みんなもそう思っているはずよ』

 

ルビィ「…ありがとう、鞠莉ちゃん」

 

 

ルビィの顔が少しだけ明るくなった。

小さな頃から、悩みがあるとすぐに鞠莉に相談していたルビィ。

今回は鞠莉からの電話だったが、タイミング良く話が出来て良かったと思う。

 

そして、話は変わり、今後の日本のことについて話し始めた

 

 

鞠莉『オーストラリアには意外にも苦戦したようね』

 

ルビィ「うん。正直、ギリギリだったよ…」

 

鞠莉『だから理亞に一時的な発動を?』

 

ルビィ「…」

 

ルビィ「やっぱり分かっちゃう、よね?」

 

鞠莉『だって、普通だったら不可能よ。あんな短期間で"Awaken the power"なんて』

 

ルビィ「…理亞ちゃんには絶対に習得してもらわないと…」

 

鞠莉『どうしてそこまで理亞にこだわるの?』

 

ルビィ「…"Awaken the power"は、」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「一人では完成しない」

 

 

鞠莉『一人では…どういうこと?』

 

ルビィ「"Awaken the power"は力を目覚めさせる技。でも、目覚めさせるためには、"力の共鳴"が必要なんだと思う」

 

鞠莉『力の、共鳴…』

 

ルビィ「真の"Awaken the power"を完成させるには、理亞ちゃんしかいないの…!絶対に…」

 

鞠莉『…なら、ルビィは尚更必要ね』

 

ルビィ「…うん」

 

鞠莉『応援しているわ。次の試合は…確か、』

 

 

 

 

ルビィ「韓国」

 

 

鞠莉『…バリバリの予選突破筆頭じゃない』

 

ルビィ「うん。最悪だよ。今大会の韓国は強いって聞くもん」

 

鞠莉『ルビィは間に合わないの?』

 

ルビィ「分からない。それに、真姫ちゃんが許してくれるとは…」

 

鞠莉『そうね…このままだとオーストラリアの時よりも、苦戦を強いられるわね』

 

ルビィ「負けないよ。日本は」

 

鞠莉『…!』

 

ルビィ「韓国にも、イランにも…そして、鞠莉ちゃん達にも」

 

鞠莉『うん。本当に楽しみだわ♪あなた達が世界に来るのが』

 

ルビィ「…鞠莉ちゃん、」

 

鞠莉『…ルビィ、』

 

 

ルビィ、鞠莉「『健闘を祈る!!』」

 

 

鞠莉『じゃ、ダイヤ達にも宜しくね〜♪』ピッ!

 

 

ルビィ「…」

 

 

鞠莉との通話が終了し、夜景をぼーっと眺めるルビィ。

東京の夜景は好きだ。

でも、何故かずっと見ていると寂しくなる。

ぽっかりと穴が空いたような…

そんなことを考えていると、屋上の扉が開いた

 

 

ルビィ「…!来てくれたんだね」

 

「もう、なんで急に呼び出すのよ」

 

ルビィ「そろそろ、お話しようと思っていたんだ。世界と戦うには…必要なんだ」

 

 

 

 

 

ルビィ「善子ちゃんの力が」

 

善子「…ヨハネよ」

 

 

 

FFIアジア予選 3回戦目 韓国

 

 



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第3章 30話 「僕のきっかけ」

皆さん、どうも!ルビィちゃんキャンディーです。いや〜、暑い。暑いですよ。部活も引退して、今はお勉強。お勉強の休憩時間にサッカーを書いています。ですが、暑い。溶けて死にそうです。体の水分が抜けて、干し芋になっちゃいますよ…皆さんも熱中症には気をつけてくださいね?特に寝不足。人のこと言えませんが、夏休みですがしっかり寝ましょう(マジで)




 

 

 

ことり「月ちゃんは、なんでサッカーを始めたの?」

 

月「唐突だね…」

 

 

夕食を食べ終え、それぞれの部屋に戻ろうとした時だった。

ちょうど、月の隣に座っていたことりが、話しかけてきたのはいいのだが…話題が話題で…

 

 

月「そんな面白い話じゃないよ?」

 

ことり「でも気になるの〜…おねが〜い!」

 

穂乃果「穂乃果も聞きたーい!」

 

千歌「私も!」

 

曜「私もであります!」

 

理亞「……私も、」

 

月「えぇ…ホントに??」

 

 

続々とメンバーが集まってきた。

そんなに気になるのかな…僕の話なんて、

月はそう思いながらも、もう逃げられないと理解したため、話すことにした

 

 

月「あんまり期待しないでね?」

 

「「「…!」」」ワクワク

 

月「きっかけは…」

 

 

 

 

月「曜ちゃん」

 

 

曜「…ん?」

 

 

 

 

―――――――――――――――

―――――――――

――――

 

 

 

小さい頃から、僕はスポーツや運動が好きだった。

休みの日は大体、走り回っていた気がする。

そうするとさ、どうしても人並み以上の運動能力が得られるんだよね。

だから、自然と順位争いとか出てくるわけ。

とくに幼い時はね。小さなことでも

 

 

月『…』

 

 

大体さ、運動能力が優れている子って、クラスでも中心だったり、人気者だったり…ね?

でも、僕はそんなふうにはなれなかった

 

 

月『あ、曜ちゃ…『曜ちゃん!今日も凄かったね!!』

 

月『…』

 

 

曜『いや〜…そうでもないよ…』

 

『本当に凄いよ!曜ちゃんは何をやっても一番!憧れちゃうなぁ…』

 

『私もそう思う!やっぱ天才だよね!』

 

曜『あっはは…』

 

 

月『…』

 

 

さっきはあんなこと言ったけど、別に人気者になりたいわけじゃないんだよね。

僕は、認められて欲しかった…"努力"を。

 

 

 

――――――

 

 

 

月『ハァハァ…!!』バシャバシャ

 

スイミングスクールでは誰よりも早く来て練習していた

 

 

月『っ!』ダムダムダム

 

体育でバスケをやる時は、放課後はずっとバスケをしていた

 

 

月『…!!』タッタッタッ

 

朝だって、太陽よりも早く起きていた

 

 

 

 

それでも

 

 

 

 

月『ハァハァ…なんで…???』

 

 

 

 

勝てないんだよね

 

 

 

 

『凄い!!また一番だね!曜ちゃん!』

 

『また今度応援に行くね!』

 

曜『あ、ありがとう!』

 

 

 

曜ちゃんには。

 

 

 

 

 

『曜ちゃんは凄いわね〜…また一番!月ちゃんも見習いなさい』

 

月『うん。お母さん…』

 

 

 

渡辺家はね、遺伝なのかな?

全員、運動能力に優れた家系だったからね…

順位にはかなり神経質だったんだ。

そんな中で、歴代最高の天才、曜ちゃんが生まれて、一族は歓喜。

全員、曜ちゃんに魅了されていた。

 

 

だからって、曜ちゃんを恨んだりしているわけじゃなくて。

曜ちゃんは大切な従姉妹だし、昔からいつも仲良しだった。

だから、なんだろうね。

曜ちゃんが離れていきそうで、怖かった。

 

遠い存在に思えた。

今までは僕が一番近いところにいた。

でも、今は僕が一番遠いところにいる気がする。

そう考えたら怖かった。

仲良しだった分、怖かった。

 

…焦ったよ、かなり。

小さいながら考えた。

まだ社会の景色も知らない子供が、頭をねじって、絶対に思いつかないことをずっと、考えた。

 

 

そんな時だった。

 

 

 

『今日の体育はサッカーだぞ〜』

 

『『『はーい』』』

 

 

月『…サッカー』

 

 

元々、サッカーは好きだった。

よく曜ちゃんとも遊んだし、その時も、暇があったらボールはよく蹴っていた

 

多分、それがきっかけかな?

 

 

曜『うわっ!?』

 

月『っ!!』

 

『凄いな月!あの曜を抜いたぞ!』

 

 

『月ちゃんかっこいい!サッカーやってるの!?』

 

『月ちゃん!このあと一緒にサッカーしない?』

 

 

曜『えっへへ…月ちゃん、サッカー上手だね!』

 

月『…!!』

 

 

…これしかないと思ったよ。

サッカーなら、僕は曜ちゃんに近づける。

認めてもらえる。

サッカーなら、僕は…

 

そして、僕はすぐに、サッカーのクラブチームに入った。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

ー 数年後 ー

 

 

バシュゥゥゥン!!!!!!

 

 

『…これで、ハットトリック…』

 

月『〜♪』

 

 

自分でも分かったよ。

何年もサッカーを頑張ったからね。

確信した。

開花したんだとね。

サッカーの才能が

 

 

月『中学生…か』

 

 

負ける気がしなかったよ。

先輩にも、強豪校にも。

事実、練習試合でたくさんの学校に勝ったしね

 

 

月『曜ちゃんとは、最近会ってないなぁ…』

 

 

でも、僕には変わったことがあった。

それは、サッカーをする理由だった。

 

 

最初、サッカーは曜ちゃんに近づくため、認めてもらうためにやっていた。

でも、中学生になって、心が成長して…もう一度、自分を見つめ直してみたんだ。

そして、見つけたんだ。

僕はなんで、サッカーをしているのか

 

 

月『…楽しい。楽しいんだよ。サッカーは』

 

 

純粋にボールを追いかける少女になっていた。

良かったよ…でなきゃ今頃、ここにいなかったかも…何故かって?

それは…

 

 

月『海外留学…?』

 

 

僕の実力が認められて、海外でサッカーをしないかという勧誘が来たんだ。

もし、小さい頃の考えがそのままだったら、曜ちゃんから離れるんじゃ意味が無い!!って、断っていたよ。

でもね?

 

 

月『行くよ。僕はサッカーをやりたい』

 

 

その時の僕には、断る理由なんてなかった

 

 

 

 

――――――――――――――

――――――――

―――

 

 

 

 

月「とまぁ、その後イタリアにサッカー留学して、今に至るってわけ!」

 

ことり「そ、そうだったんだ…」

 

千歌「なんか、思っていたよりもかなりデリケートなお話だったね…」

 

曜「月ちゃん…」

 

月「軽蔑した?」

 

曜「そんなこと!月ちゃんは今も昔も大切な従姉妹だよ!」

 

月「嬉しいよ♪」

 

 

月が席を立ち、このお話は終了となった。

月の意外な過去を知ったメンバーは、今後、月への印象が変わる訳では無いが、自分達の過去を見直すきっかけになった

 

 

 

 

 

 

 

月「…」スタスタ

 

 

千歌「曜ちゃん!早く部屋に行こ!」

 

曜「うん!千歌ちゃん!」

 

 

千歌『凄い!!また一番だね!曜ちゃん!』

 

千歌『また今度応援に行くね!』

 

曜『あ、ありがとう!』

 

 

 

月「…変わらないね。2人とも」ボソッ

 

 

 

月は足早に自分の部屋に戻って行った

 

 

 




今回は月ちゃんにスポットを当ててみました。どうだったでしょうか…月ちゃんの心のドロドロは完全に無くなったのでしょうか…?っていうか、渡辺家は悩みを抱え込む一族なんですかね?曜ちゃんと言い、月ちゃんと言い…

次回は明るく行きましょう!Twitterに次回予告あげますね!



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第3章 31話 「海未かな凛の特別メニュー!?」


皆さんどうも!体調があまり良くないルビィちゃんキャンディーです。夏バテでしょうか…勉強で寝不足になったからだとは思いますが…

今回の箸休めは輝こう史上最長です。そして注意です。今回のお話には専門知識の内容がたくさん書かれていますが、ルビィちゃんキャンディーは無知なので、ここは違うだろ…というシーンがあるかもしれませんが、目を瞑ってくれるとありがたいです…では、どうぞ




 

 

 

 

韓国戦まで、残り数日となった。

アジアの中でも1位2位を争う強豪国との勝負…

この試合の結果で、日本の運命は大きく変わる。

そんな理由もあり、サニデイジャパンの練習は一段と気合が入っていた

 

 

 

穂乃果「ハァハァ…」

 

ツバサ「大丈夫?穂乃果さん?」

 

穂乃果「うん、大丈夫…」

 

穂乃果「(今のままじゃ、足りない…)」

 

 

 

月「韓国戦も無理そうだね」

 

理亞「どうしよう…韓国は強いのに…」

 

月「うーん…」

 

 

 

美奈「…」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

ピーー!!!!

笛がなり、練習が一時中断された。

理由は美奈が集合をかけたからだ。

選手達は駆け足で美奈の元へと向かった

 

 

美奈「全員いるわね。これから、韓国戦に向けてのお話をするからね」

 

真恋「韓国代表"ファイアードラゴン"。チーム全体がひとつの生き物のように、呼応して勝利を勝取る…今までの中でも、一番の敵よ」

 

英玲奈「何か韓国の情報はあるんですか?」

 

真恋「おそらく、情報を得ても無駄よ。韓国は、"その国のための戦術"を用意するわ…」

 

曜「え…じゃあ、日本を倒すためだけに、新しい戦術を作ってくるってことですか?」

 

美奈「そうよ。だからあなた達には、その場の判断力が求められるわ」

 

 

オーストラリアとの戦いも、何も情報がない状況で始まった。

しかし、韓国はオーストラリアよりも強い。

ただでさえオーストラリアにも苦戦したのに、さらに強い国に同じ条件で勝たなければならない。

かなり厳しい…選手達の不安はたまる一方だった

 

 

美奈「そこで、韓国戦、すでにスタメンが確定している選手を発表するわね」

 

 

美奈「まず、穂乃果ちゃんFW」

 

穂乃果「!!」

 

梨子「み、美奈さん…何故、穂乃果さんをGKにしないんですか…?」

 

美奈「…この試合、勝利の鍵はFWとGK」

 

美奈「韓国のシュートは威力というよりかはコントロール。…そこで、反射神経…要するに瞬間的判断力が問われるわ。でも、果南ちゃんと穂乃果ちゃんは2人とも判断力は素晴らしいものよ。そこで、」

 

美奈「威力よりも判断力を選んだのよ」

 

穂乃果「???」

 

千歌「???」

 

 

海未「理解できていない人がいるようなので、簡単に説明します」

 

海未「韓国相手に穂乃果をGKにして、守備力を上げるよりも、FWにして攻撃力を上げる…」

 

月「韓国相手に守備力を上げる必要はない。判断力は2人とも優れているから、果南ちゃんをGKにした。ということだね」

 

美奈「さすがね♪いつも助かるわ!」

 

にこ「まったく…それぐらい理解できるようになりなさいよ(やべっ、わかんなかった)」

 

凛「やべっ、わかんなかった」ボソッ

 

にこ「普通に心読むのやめて?」

 

 

美奈「ということで、GKは果南ちゃん。そして…」

 

美奈「凛ちゃんもFWよ」

 

凛「にゃ!?」

 

花陽「凛ちゃん!スタメンだね!」

 

凛「が、頑張るにゃ…」

 

海未「…」

 

 

真恋「以上よ。残りの8人は後で発表するから、気を抜かずに練習してね」

 

「「「はい!!!!」」」

 

美奈「解散〜♪」

 

 

練習に戻る選手達。

しかし、美奈は数人を呼び止めた

 

 

美奈「海未ちゃん、果南ちゃん、凛ちゃん!ちょっといいかしら?」

 

海未「なんですか?」

 

凛、果南「?」

 

 

美奈「あなた達には…特別メニューよ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「………で、なんで私達はこんなところにいるの?」

 

凛「凛に聞かれても…」

 

海未「ついに…ついに!監督も私の練習メニューの素晴らしさに気づいたのです!!」キラキラ

 

 

海未たち3人はとある場所に来ていた。

服装はユニフォームとはかけ離れた、重装備という名に相応しい服装。

靴も、リュックも…

もうこれは、別の部活であった

 

 

海未「さあ!行きますよ!いざ…」

 

 

 

 

 

 

 

海未「富士の山頂へ!!!!」キラキラ

 

 

果南、凛「うっそおぉぉ……」

 

 

『海未かな凛 富士登山』

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

『富士山』

日本国民なら知らぬ人はいない、日本一高い山である。

富士山の魅力は目と体で楽しめること。

芸術と例えられることもあるほど、四季折々で魅せる富士の姿。

そして実際に登ってみて日本を空から眺めるという…

 

 

 

 

 

海未「それが、富士山なんですよ!」

 

凛「そうだけど…これ、サッカーの練習に関係あるの?」

 

果南「うーん…足腰を鍛えるという意味では、いい練習だけどね」

 

海未「他にもありますよ!!果南!!」クワッ!

 

果南「!?」ビクッ

 

海未「いいですか?いくら初心者にも優しい山、富士山と言えども、いつ私達の身に危険が迫るか分かりません!」

 

海未「例えば霧!濃霧で遭難する可能性もあります!険しい道にも警戒しなければ…」

 

海未「そして怖いのは高山病。これだけは絶対に避けたいので、今回は高山病になりにくいルートをチョイスしましたがね…」

 

果南「うっ…凄い知識…でも、それらがどうサッカーの練習に?」

 

海未「次の試合、韓国戦は的確な状況判断が必須…ならば、この富士登山でその状況判断の向上を狙おう、ということです!」

 

果南「な、なるほど…」

 

凛「自販機はないのー?」

 

海未「ほぼありません!!」クワッ!

 

凛「!?」ビクッ

 

海未「いいですか?ここは山です。自販機の中身、要するに商品を運ぶだけでもかなり手間なんです!なので頂上で売られている飲み物はとてつもない金額になるんですよ!」

 

凛「お、おいくらなのかにゃ…?」

 

海未「…凛のお小遣いが消し飛ぶ金額です」

 

凛「にゃあぁあぁあぁ!!??」

 

果南「お、落ち着いて…」

 

海未「脱水症も怖いので、2人には大量の水分の持参を指示したはずです」

 

凛「そ、そうだったんだ…」

 

海未「さあ!富士登山はまだまだ始まったばかりです!どんどん行きますよ!"御殿場ルート"ですからね。のんびりしていると日が暮れますよ!」

 

 

『御殿場ルート』

富士山には大きくわけて4つの登山ルートがある。

登山家・園田がチョイスしたルート、御殿場ルートは利用登山者が少なく、全ルートの中で最も標高差があり、最長のルートである。

しかし、高山病のリスクが最も低いので、試合を控えている海未達には無難な選択と言える。

また、駿河湾で温められた水蒸気により、ホワイトアウトになることがよくある。

しかし、登山家・園田は歩く地図。

道に迷うことは決してないのである

 

 

海未「…分かりましたか?」

 

 

果南「なんかずっと喋ってるね?」ヒソヒソ

 

凛「自分のこと登山家とか言ってるにゃ…」ヒソヒソ

 

海未「聞いていますか?」

 

果南、凛「聞いてます聞いてます!!」

 

 

御殿場ルートは標高1440m、御殿場口新五合目からのスタート。

約2300mしか登らないではないか。と思った方…人間は垂直に歩くことはできない。

なので、御殿場ルートの往復距離は17.5km。

残り3つのルートは、14・8.5・13km。

かなりハードな登山となるのは目に見えていた

 

 

凛「もう疲れたにゃ…」

 

海未「まだ歩き始めて30分しか経っていませんよ?休憩場所までにはあと1時間かかりますからね」

 

果南「普通に足にくる…」

 

 

富士登山を始めて30分。

登山家・園田の先導によりサクサクと進むかな凛。

かなり余裕が出てきたため、会話をしながら歩を進めていた

 

 

海未「あの時は驚きましたよ…まさか"ラブアローシュート"が止められるとは…」

 

凛「ボールは見えたの?」

 

果南「一瞬だけ、横で何かが動いてるなー…って思ったら、ボールだったから弾いたって感じかな」

 

凛「すごいにゃー…!」

 

海未「どんな動体視力ですか…ほんとに」

 

果南「ははは…」

 

 

 

ー 新五合五勺(1920m) 通過 ー

 

 

 

果南「じゃあ、海未の家は由緒ある家なんだね」

 

凛「海未ちゃん、お稽古とかやってるんだよね!」

 

海未「あぁ、全部やめました」

 

凛「にゃ!?」

 

果南「な、なんで…」

 

海未「サッカーに専念したかったので。この意志を伝えたら、お母様は快く受け入れてくれました…」

 

果南「そんな簡単にやめていいの?」ヒソヒソ

 

凛「わかんないけど…伝統を絶やしちゃダメだよね?」ヒソヒソ

 

海未「姉が継ぐと名乗り出てくれたのです」

 

凛「えぇ!!?」

 

果南「海未、お姉さんがいたんだ…!」

 

海未「私は家族に支えられている…恩を返すためにも、私はサッカーを続けるのです」

 

 

 

ー 新六合目(2590m)ー

 

 

 

凛「あっ!!小屋があるにゃ!」

 

海未「新六合目ですね。休憩にしましょう」

 

果南「宝永山が見えるね」

 

海未「よく知っていますね。果南。宝永山は富士山の噴火により出来た山です。南海トラフ地震により、噴火が促されたと言われています」

 

凛「海未ちゃんってサッカー選手なんだよね?」

 

海未「登山家でもあります」ドン!

 

 

 

ー 六合目(2830m)通過 ー

 

 

 

果南「だいぶ日が落ちてきたね」

 

海未「今日登るのは"七合九尺"までです。あと2時間ぐらいですよ」

 

凛「あと少し…がんばルビィにゃ!」

 

果南「おっ!ルビィちゃんの必殺技だね!」

 

凛「あのポーズ可愛いにゃ〜!」

 

 

 

ー 七合目(3040m)通過 ー

 

 

 

凛「穂乃果ちゃん、かなり悩んでたにゃ…」

 

果南「今の必殺技のままじゃ、世界には通用しないって言ってた」

 

海未「…なにかきっかけがあればいいのですが…」

 

果南「考えると…海未、凄いよね。サウジアラビア戦で新必殺技を3つも」

 

凛「全国大会が終わってから、誰よりも練習してたもんね!」

 

海未「はい…日本の力になれて良かったです」

 

果南「私も新必殺技、作りたいなぁ…」

 

凛「り、凛もにゃ!」

 

海未「大丈夫です。2人が努力していることは知っています。必ずできますよ」

 

 

 

ー 七合五勺(3110m)通過 ー

 

 

 

凛「小屋が増えてきたにゃ!」

 

海未「私達が泊まる小屋はあと1時間ぐらいです!頑張ってください!」

 

果南「よーし、あともうひと踏ん張りだね!」

 

 

 

ー七合九尺(3300m)ー

 

海未「到着です!お疲れ様でした」

 

凛「にゃあぁ…疲れたにゃ…」

 

果南「もう無理…今日は動けない」

 

海未「ここから頂上までは100分程です。明日は日が出る前にここを出ますよ。幸いにも天気には恵まれています。この機を逃してはいけません!」

 

 

海未「ー 山頂アタック ーです!」クワッ!

 

 

果南、凛「おぉ〜…」ヘトヘト

 

 

 

こうして、富士の山頂の目の前まで来た海未かな凛。

頂上では何を見ることが出来るのか…それは全て、明日のお楽しみ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「果南さん、大丈夫でしょうか…」

 

穂乃果「大丈夫だよ。海未ちゃんがいるし」

 

ことり「海未ちゃんがいれば安心だね♪」

 

にこ「海未の絶対的信頼感よ」

 

曜「海未さんって、何者なんですか?」

 

 

音ノ木坂メンバー「「「登山家」」」

 

 

 





山頂アタック
海未ちゃんの必殺技です。この技を発動した次の日は、太陽よりも早く起きることになるらしい…



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第3章 32話 「山頂アタック」


皆さんどうも!数日、夏バテでダウンしていたルビィちゃんキャンディーです。体調はなんとかなりそうなので、これからも無理ない程度に頑張ります。

あと、質問があったのでお答えします。ルビィちゃんキャンディーの処女作は「輝こうサッカーで!」です

後書きにもうひとつのリクエストを書きました!







 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

韓国戦のスタメンが発表され、気を引き締めたサニデイジャパン。そんな中、海未・果南・凛は美奈の指示で特別メニュー、富士登山に挑戦していた。現在、海未かな凛は頂上近くの山小屋で休憩中!3人の"山頂アタック"は、すぐそこに迫っていた

 

 

 

 

ー 山小屋 ー

 

 

海未「凛…凛!起きてください!」

 

凛「…まだ…眠い」

 

海未「起きる時間ですよ!」

 

凛「……ZZZ」

 

海未「…」

 

海未「凛のカップヌードル」ボソッ

 

凛「それは黒歴史にゃ!!??」ガバッ!

 

果南「まって。何その一連の流れ」

 

 

現在、午前2時。

登山でどうしても見たいものと言ったら、頂上から見る日の出。

海未達は早めに小屋を出発し、頂上へとアタックしようとしていた

 

 

海未「まぁ、今回は他にも目的がありますが…」

 

果南「え?他にも?」

 

海未「美奈監督からの指示です。その目的は頂上に行ってからのお楽しみということで」

 

果南「そっか。じゃあ、出発しよ!」

 

海未「はい!ー 山頂アタック ー開始です!」クワッ!

 

凛「なんでこの2人は元気なの…?」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

七合九尺から頂上までの平均到達時間は100分。

予定では4時前に到着するつもりである登山家・園田。

まだ日も出ていない暗い世界。

足元に細心の注意をはらいながら一歩ずつ前に進む

 

 

果南「へぇ…音ノ木坂の奇跡…そんなことがあったんだね」

 

海未「はい。私達はその奇跡の復活を一番の目的に、全国大会を戦ってきました」

 

凛「決勝で負けちゃったけど、凛は後悔してないよ!」

 

海未「私もです。果南たちと戦えて良かったと思っています」

 

果南「私たちも海未たちと戦えてとても楽しかったよ!まぁ、あの時は必死だったけどね…」

 

凛「それを言うなら凛たちもそうにゃ」

 

海未「はい…にこ達3年生の動き出しが遅かったら、得点出来ませんでした」

 

果南「こっちも善子たちがルビィの異変に早く気づいてなければ、前半で同点は無理だったね…」

 

海未、果南、凛「……」

 

 

やっぱり頼りになるのは仲間なんだよな…と思う3人であった

 

 

 

 

 

 

 

ー 山頂(3710m)ー

 

 

凛「つ、着いたにゃ……」

 

果南「小屋を出発した時は寒かったけど…歩いたから体が暑いよ…」

 

海未「2人とも、本当によく頑張りましたね!」

 

 

頂上までに歩いた時間、約8時間。

時間はちょうど4時。

登山家・園田の予定通り、大きなアクシデントもなく、富士山登頂に成功したのだった。

太陽はまだ出ていない。

まだ暗闇に包まれている世界。

気を抜くと、その闇に吸い込まれそうな感覚に襲われる

 

 

果南「で、美奈さんの指示って何?神社の参拝?」

 

海未「それもありますが、美奈監督の指示は……」

 

 

美奈『日が出る前の山頂で、宇宙(そら)を見ること!』

 

 

凛「空?」

 

果南「確かに、雲はないけど…」

 

 

3人は宇宙(そら)を見る。

そして、目を見開いた

 

 

海未、果南、凛「「「!!!!!」」」

 

 

 

 

3人が見たのは……輝く宇宙(そら)だった

 

 

 

果南「す、凄い…」

 

凛「足元しか見てなかったから、まったく気づかなかったにゃ…」

 

海未「なんて綺麗なんでしょうか…」

 

 

雲によって遮られることがない宇宙(そら)。ひとつひとつの星が、煌めきで存在を主張する。

しかし、飛び出て目立つことはない。

全ての光が調和し、ひとつの絵のように宇宙(そら)に描かれている

 

 

果南「私達が今見ている星の光ってね、その星の大昔の輝きなんだよ」

 

海未「地球との距離が果てしないからこその時間差…神秘的ですね」

 

凛「あ!流れ星にゃ!」

 

 

3人が顔を下げることはなかった。

その光が、絵が、太陽によって消されるまで、宇宙(そら)に魅入った

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

凛「太陽が出てきたにゃ!!」

 

海未「日の出ですね。綺麗です」

 

 

太陽が宇宙(そら)の絵を消し、大地に色をつけた。

暗闇だった世界は一瞬でカラフルに。

生き物達は目覚め、いっきに世界が騒がしくなった

 

 

果南「もうすぐだね。韓国戦」

 

海未「はい。ここで負けるわけにはいきません。絶対に勝ちましょう」

 

凛「…」

 

果南「不安?」

 

凛「!……うん、」

 

海未「気持ちはわかりますが…例え失敗しても、例え相手が強大でも、自信をなくしてはいけません」

 

果南「そのための仲間なんだから!ね!」

 

凛「……うん!!」

 

海未「全員で頑張りましょう。何があっても、私達は最強、最高なんですから」

 

 

 

こうして、無事に特別メニューを終えた3人。

しかし、遠足は家に帰るまでと言うように、登山は戻るまでが登山である。

試合前。

細心の注意を払いながらの下山が必要である

 

 

 

海未「さ、みんなが待っていますよ。下山しましょう。砂走りが待っていますよ!」

 

凛「砂走り!あれは本当に不思議だにゃ!」

 

果南「うーん…」

 

海未「果南?」

 

凛「何かあったの?」

 

果南「あの麓の街…沼津?」

 

海未、凛「え!?」

 

 

太陽に照らされた3つの影は、徐々に歩いて消えていった

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 日本代表キャンプ施設 ー

 

 

美奈「…韓国ね、」

 

真恋「ファイアードラゴン…確か前は、ファイアータイガーだったわよね?」

 

美奈「その前はファイアーバッファロー。どうしてこんなにも名前を変えるのかしらね」

 

真恋「戦術が変われば名前も変わる、とか?」

 

美奈「…じゃあ、今回の韓国は、」

 

美奈「"龍"」

 

 

 





次回からついに韓国戦が始まります!



☆リクエスト 大会成績☆


サウジアラビア戦 3-2

穂乃果:フル出場(2失点)
高海千歌:フル出場(1得点)
園田海未:フル出場(1得点)
南ことり:ベンチ
渡辺曜:フル出場
桜内梨子:フル出場
星空凛:後半からフル出場
鹿角理亞:後半からフル出場
鹿角聖良:フル出場
綺羅ツバサ:ベンチ
統堂英玲奈:前半の途中交代でベンチ
優木あんじゅ:フル出場
黒澤ダイヤ:負傷の恐れで前半フルでベンチ
松浦果南:ベンチ
矢澤にこ:前半交代で出場
東條希:フル出場
渡辺月:負傷の恐れで前半フルでベンチ(1得点)
黒澤ルビィ:代表離脱



オーストラリア戦 3-2

高坂穂乃果:前半の途中でGKからFWへ(2失点)(1得点)
高海千歌:フル出場
園田海未:フル出場(1得点)
南ことり:後半から出場
渡辺曜:前半フルで交代
桜内梨子:前半フルで交代
星空凛:後半から出場
鹿角理亞:後半から出場(1得点)
鹿角聖良:フル出場
綺羅ツバサ:後半から出場
統堂英玲奈:フル出場
優木あんじゅ:前半フルで交代
黒澤ダイヤ:前半の途中で交代
松浦果南:前半の途中から出場(無失点)
矢澤にこ:ベンチ
東條希:前半フルで交代
渡辺月:フル出場
黒澤ルビィ:代表離脱


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第3章 33話 「韓国戦 "ぶつかる、技術と心理"」


皆さんどうも!梅雨明けで戻ってきた地獄の暑さに悲鳴をあげているルビィちゃんキャンディーです!

ついに韓国戦が始まります!かなり白熱した試合にしますので、ご期待ください!




 

 

 

 

 

ー 韓国戦 当日 ー

 

 

『さあ!!FFIアジア予選、第3試合は日本VS韓国!!アジアの強豪に、サニデイジャパンが挑みます!!』

 

 

 

美奈「韓国戦…相手がどんな作戦で来るかわからない以上、こちらは圧倒的に不利よ」

 

美奈「だからと言って、出方を探りすぎて自滅しないように、攻める時は攻める…悔いが残らないように戦ってきてね!」

 

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

『ここで両チームのスタメンのご紹介です!』

 

 

FW……渡辺月、高坂穂乃果、星空凛

 

MF……渡辺曜、高海千歌、園田海未

 

MF…………桜内梨子、統堂英玲奈

 

DF…………南ことり、鹿角聖良

 

GK…………………松浦果南

 

2-2-3-3

 

 

『日本はなんと守護神・高坂穂乃果をFWで出場させるようだ!!攻撃力を上げるのが狙いでしょうか!?』

 

 

 

 

 

 

ペクヨン「高坂穂乃果がFW…」

 

チャンスウ「問題ない。どちらにしろ、日本は私達には勝てない」

 

 

FW……ジウォン、シウ、ドンヒョク

 

MF……ペクヨン、チャンスウ、ウンヨン

 

DF…ウミャン、ドゥヨン、ミョンホ、ソンファン

 

GK…………………ジョンス

 

4-3-3

 

 

『対する韓国!司令塔、チェ・チャンスウを中心に、この試合はどのような作戦を仕掛けてくるのか!?間もなく試合開始です!!』

 

 

 

 

月「…穂乃果ちゃん」

 

穂乃果「うん。みんな、行くよ!!」

 

 

ピーーー!!!!!!

試合開始の笛が鳴った。

日本ボールから始まったこの試合、日本は躊躇することなく、最初から全力で攻める

 

 

ウンヨン「行かせるか!!」ズザー!

 

穂乃果「千歌ちゃん!」パス

 

千歌「はい!」

 

 

ウンヨンのスライディングを躱し、千歌にボールを渡す穂乃果。

そのままFW3人は最前線へ。

そのため、千歌達MFが韓国陣形を切り裂く

 

 

千歌「まだまだ!」バッ!バッ!

 

ペクヨン「(速い…動きについてーー

 

千歌「ー ZスラッシュG3 ー!!」

 

 

聖良「千歌さんが抜けた!!」

 

英玲奈「素晴らしいコントロールだ!」

 

 

韓国の中盤選手達を越えた千歌。

しかし、まだDFの壁が残っている。

気を抜く暇はない

 

 

千歌「月ちゃん!」パス

 

月「…!」

 

 

千歌は月にパスを出した。

月の前にはDFが立ち塞がっている。

ここからどう仕掛けていくのーーーーー

 

 

 

月「穂乃果ちゃん!」パス!

 

ソンファン「な!?」

 

ミョンホ「ダイレクトで!?」

 

 

『渡辺月!!意表を突くダイレクトパスで、DFの隙間を通し…繋げたのは!!!!』

 

 

穂乃果「ナイスパスだよ!」バッ

 

 

『高坂穂乃果だあぁぁぁ!!!!』

 

 

月の動きをいち早く察知していた穂乃果は、オフサイドラインぎりぎりで月のパスを待っていた。

オフサイドラインぎりぎりで飛び出したため、韓国のDFは穂乃果についていけていない。

このボールを受け取ればシュートチャンス!!

そう穂乃果は確信した

 

 

 

 

 

「でも、それは」バッ

 

 

 

穂乃果、月「!!!?」

 

 

チャンスウ「ボールを貰ったらの話だろ?穂乃果」

 

 

 

しかし、韓国はそう甘くは無い

 

 

『な、なんと!?司令塔、チャンスウが渡辺月と高坂穂乃果のパスコースに飛び込み、ボールを奪った!!考えが読まれていたようだ!!』

 

 

月「まさか、分かってたの?」

 

チャンスウ「あなたたちの動きは把握済みだよ。簡単にはシュートは撃たせないからね」

 

穂乃果「…っ!!」

 

 

最初のチャンスは韓国の司令塔により、潰されてしまった。

だが、いつまでも動揺しているわけにはいかない。

すでに韓国は攻撃を始めている

 

 

チャンスウ「ペクヨン!」パス!

 

ペクヨン「ジウォン!」パス

 

 

曜「!!パスが速い!」

 

梨子「みんな!早くディフェンスに!!」

 

 

薄くなった日本の陣形の中で、どんどんパスを繋げていく韓国。

気づいた時には、FWの選手にボールが渡っていた

 

 

ドンヒョク「たいしたことないね、日本は」

 

ジウォン「えぇ。一気に決めよう」

 

シウ「行くぞ!!」

 

 

「ー 特攻バッファロートレイン ー!!」

 

 

英玲奈「な、バッファロー!?」

 

海未「まさか、突っ込む気ですか…」

 

 

韓国の選手が縦に3人で並ぶ。

すると、3人のオーラが混ざり合い、巨大な荒れ狂うバッファローへと姿を変えた。

バッファローはそのまま突進を続けている

 

 

シウ「どけ!!!」ドン!

 

海未「な!?止められない!」

 

英玲奈「力が強すぎる!」

 

 

『韓国のFW3人が凄まじいパワープレイで日本の選手達をなぎ倒していきます!!このままシュートを撃たれてしまうのか!?』

 

 

シウ「次はあんただ!南ことり!」

 

ことり「!!」

 

 

穂乃果「ことりちゃん、気をつけて!!」

 

海未「ことり!!」

 

 

残された日本のDFは、ことりのみになっていた。

ことりが突破されれば、GKとの1対3が待っている…ここで通すわけには…

 

 

シウ「くらえ!!」バッ

 

 

バッファローが頭を下げ、突進を始めた。

もう、ことりは目の前だ

 

 

聖良「ことりさん!危ない!!」

 

ことり「…」

 

 

バッファローの角が、ことりをとらえーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーピタッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

シウ「な…!?」

 

ドンヒョク「ど、どうしたの!?」

 

ジウォン「体が…動かない!?」

 

 

チャンスウ「なんだ、あれは…」

 

月「…まさか、」

 

千歌「さすがだ…あれは、チートだよ!!」

 

 

 

 

 

ことり「ー ワンダーゾーン ー 危ない牛さんは止まってくださいね♪」

 

 

ことりは片手を目標に向ける。

その手の数センチ先では、バッファローが身動きとれずにいた

 

 

シウ「くっ…」

 

ことり「ボールもいただきます!」ビュン!

 

 

ことりの一言で、ことりと韓国の選手3人の位置が入れ替わる。

まるでもともとことりがボールを持っていたかのように。

全てはことりの絶対空間であるからこそ。

力の上下など意味が無い

 

 

果南「ことりのおかげで助かった…!」

 

 

ことり「海未ちゃん!」パス

 

 

再び日本の攻撃となった。

先程はパスコースを読まれ、ボールを奪われてしまった。

チャンスウは目を光らせて、パスカットのタイミングを狙っている…ならば、

 

 

海未「押し切ります」ビュン!

 

ウミャン「(動きが読めない!?)」

 

 

海未「ー 風神の舞 ー!!!!」

 

ウミャン「うわぁ!!??」

 

 

『ここで園田海未の必殺技が炸裂!!いっきに敵陣に切り込みます!!』

 

 

曜「海未さん!」バッ

 

海未「曜!!」パス

 

 

スペースに走り込む曜。

海未はボールが奪われないように、鋭いパスを出す。

ボールをトラップした曜は前を見る

 

 

曜「(DFが2人…)」

 

 

曜はこの状況下で、自分でも変に思えるぐらい冷静だった。

いつもなら、大事な場面で緊張から動きに力が入ってしまうのだが、今は…

 

 

曜「行ける!!」ビュン!!

 

ミョンホ「消えた!?」

 

 

曜「ー スプリントワープ ー!!」ビュンビュン!!

 

ソンファン「高速移動…!?」

 

穂乃果「よし!抜けた!」

 

 

ついに、日本の最初のシュートチャンスが来た。

曜はシュートの構えに入る

 

 

曜「っ!!!!」バッ!

 

 

曜は考えた。

何故、こんなにも落ち着いてプレーが出来るのか…

一番の理由は穂乃果達だろう。

穂乃果や月、千歌や凛、海未が、全員が支えてくれる…

だから、迷いなくプレー出来るのだと

 

 

曜「うおおおおぉぁぁぁ!!!!」

 

 

本気の一撃を、ゴールに叩き込むために。

勝利のために。

本気をぶつける

 

 

曜「ー ゴッドウインド改 ー!!」ドガァン!

 

 

花丸「曜ちゃんの必殺シュートずら!」

 

花陽「かなりの威力です!!」

 

 

強風を纏い、地面を暴れるように進むボール。

一段と磨きのかかった曜のシュート…

しかし、韓国のGKジョンスは…

 

 

ジョンス「ぬるいな」ボッ!

 

 

動じることは無かった

 

 

ジョンス「ー だいばくはつはりて ー!!」ドガァン!!

 

 

曜「!?」

 

千歌「止められた…!?」

 

穂乃果「……あのキーパー、強いよ」

 

 

ジョンス「なかなかの威力だが、私には通用しないぞ」

 

 

『止めたぁぁぁ!!!韓国キーパー、ジョンスが渡辺曜の強力なシュートを吹き飛ばしました!!日本、先制点は奪えず…!』

 

 

梨子「みんな!戻ってきて!」

 

 

韓国はボールを前線に持っていくスピードが速い。

梨子の呼びかけに答えたメンバーは、すぐにディフェンスに参加する

 

 

月「ドンマイ、曜ちゃん!」バッ

 

千歌「今はディフェンスだね!」バッ

 

曜「(…今のシュートじゃ、足りない…か)」

 

 

 

 

『さあ、韓国は果敢に攻めますが、日本のディフェンスがそれを許しません!』

 

 

 

チャンスウ「(シウにパスを…)」

 

聖良「!」バッ

 

チャンスウ「(読まれている…!)」

 

 

ディフェンスのスペシャリスト、聖良の方が1枚上手であった。

しかし、チャンスウもパスを出す瞬間で踏みとどまった。

技術の戦いだけではない。

心理戦も白熱してきていた

 

 

聖良「ことりさん!英玲奈さん!広がってサイドを潰してください!」

 

ことり「わかりました!」

 

英玲奈「了解だ」

 

チャンスウ「(やはり、鹿角聖良はDFの中心か…)」

 

 

聖良の指示で、チャンスウが狙っていたサイド展開が潰される。

これで、韓国はもう一度、攻め込む作戦を考えなくてはいけないのだが…

 

 

チャンスウ「(強引に行くか…?)」

 

 

 

それは全て、日本の作戦だった

 

 

 

ジウォン「チャンスウ!上だ!」

 

チャンスウ「な!!?」

 

 

凛「油断しすぎにゃ!!」ヒューン!

 

 

凛はチャンスウに気づかれないように、背後から空高くジャンプしていた。

気づいた時にはもう遅い。

凛の特訓の成果が、チャンスウをとらえた

 

 

凛「ー 星空スタンプ ーにゃ!」ドガァン!!

 

チャンスウ「っ!!??」

 

 

凛は上空からいっきに急降下。

両足で思いっきり地面に着地した衝撃で、チャンスウは吹き飛ばされた

 

 

果南「!!新技!いつの間に!」

 

聖良「足への負担が凄そうですが…大丈夫ですか?」

 

凛「平気にゃ!登山で足を鍛えたから、この衝撃にも耐えられるよ!」ピース

 

 

凛の周りには巨大なクレーターが出来ていた。

まるで隕石が落ちたかのような窪み。

その大きさが、足への衝撃と技の威力を物語っていた

 

 

海未「成果が出ましたね!凛」

 

凛「へへん!これで終わると思ったら大間違いにゃ!」

 

海未「と、言いますと?」

 

 

凛「凛があの頂上で得たものは、他にもあるってことにゃ!!」

 

 

 

 

 

ペクヨン「…日本、やはり実力は申し分ないな…」

 

チャンスウ「少し早いけど始めよう。日本は、私達の龍の餌食になる」

 

 

日本 0-0 韓国

 

 

 

 

 

 





星空スタンプ
凛ちゃんのオリジナル技です。原作の"アースクエイク"の動きと同じで、規模と威力を上げた感じです。本来なら、足の骨はバッキバキですが…流石凛ちゃんですね!



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第3章 34話 「韓国戦 "炎の龍"」


皆さん、どうも!ルビィちゃんキャンディーです。暑いですが、頑張って書きますよ!暑いですが…

明日から3日間、更新出来なくなります…申し訳ないです。




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに始まった韓国戦。今までの相手と違って、動きを読まれて苦戦する日本。しかし、それは韓国も同じ。世界レベルのFW達、聖良の鉄壁ディフェンス、ことりの絶対空間、凛の新技…韓国は日本の実力を認めるも、さらなる作戦を仕掛けようとしていた…

 

 

 

『星空凛の高速ドリブルを捕らえることができない韓国!!今日の星空凛は、動きのキレが神がかっています!!』

 

 

凛「ー イナビカリ・ダッシュ ー!」バリバリ

 

ドゥヨン「!?」

 

 

海未「無理し過ぎないでくださいね、凛!」

 

凛「わかってるにゃ!」パス

 

 

海未と凛の高速、そして正確なパス交換が始まった。

こうなれば、2人を止めることは困難。

凛と海未のプレイスタイルには近いものがある。

2人の動きが共鳴し、さらにパスのスピードが上がる

 

 

花陽「凛ちゃんと海未ちゃんの高速ワンツー!!」

 

ダイヤ「あれは…全国大会の時のプレーと同じですわね…」

 

希「凛ちゃんと海未ちゃんは音ノ木坂サッカー部が9人になってから、ずっと2人でFWをやってきたんや」

 

にこ「あの二人のコンビネーションはかなりのモノよ。ダイヤ達は知ってると思うけどね」

 

 

『星空凛のドリブルに園田海未が加わったことにより、さらにコントロール力が上がったように見えます!!音ノ木坂のFWコンビが、韓国の選手を次々と躱していきます!!!!』

 

 

海未「凛!」パス

 

凛「海未ちゃん!」パス

 

海未「まだまだ!」パス

 

凛「行けるにゃ!」パス

 

 

 

バリバリバリバリバリ!!!!!!

ビュゥゥゥゥゥゥンン!!!!!!

 

 

海未「(風神の舞!!!)」

凛「(イナビカリ・ダッシュ!!!)」

 

 

2人の技。

そしてオーラがシンクロする。

それにより生まれるのは…神次元の風雷

 

 

 

 

 

海未、凛「ー 風雷乱舞 ー!!」

 

 

 

 

2人が暴れれば、立っていられる者はいなくなる

 

 

『抜けたぁぁぁ!!!星空凛と園田海未が韓国の最終ラインを突破!!キーパーと2対1だぁぁ!!』

 

 

月「うひゃー…いつ見てもあの2人の動きは人間じゃないよ…」

 

穂乃果「チャンス!行ける!」

 

 

海未と凛はシュートの構えに入る。

今の自分達なら絶対に成功する…!

言葉にしなくても、お互いに同じ事を考えていた

 

 

海未「準備は?」

 

凛「バッチリ」

 

 

曜「凛ちゃんのクラウチングスタート!!」

 

英玲奈「"雷光の矢"か…!!」

 

 

海未の光速シュート、"ラブアローシュート"に凛が"ジグザグストライク"で追いつき、追撃を加える異次元シュート。

あの果南でさえ、反応できないほどのスピード。いや、瞬間移動。

今撃たずしていつ撃つのか?

 

 

海未「はぁあああ!!!!」ギリギリギリ!

 

凛「…」

 

 

海未の足がしなり始めた。

声を出し、気力を高める海未とは違って、恐ろしく静かな凛。

陸上のスタートする瞬間、あの静寂、緊張が最高潮になるあの瞬間をイメージする

 

 

海未「ラブアロー……!!!!」ギリギリギリ!

 

凛「…!」

 

 

 

 

 

今にも海未のシュートが放たれる…という瞬間だった

 

 

 

 

 

 

 

月「2人とも!!気をつけて!!」

 

 

海未、凛「!!??」

 

 

月の警告。

そして、本人達も気づいていた。

凛と海未の周りに…炎が…

 

 

チャンスウ「必殺タクティクス」

 

「ー パーフェクトゾーンプレス ー!!」

 

 

凛「な…!?炎の円?」

 

海未「いえ、違います…私達は取り囲まれているのです……」

 

 

海未「"龍"に…」

 

 

韓国が発動した必殺タクティクス…それは、巨大な炎の龍が獲物を取り囲むかの如く。

"特攻バッファロートレイン"の応用で、全メンバーで一列に並び、オーラを混ぜる。

それにより完成したのが、炎の龍

 

 

真恋「ファイアードラゴン…!!そういうこと…」

 

美奈「想像以上の迫力ね…これは、まずいわね」

 

 

炎の龍は海未と凛を逃がさない。

2人は龍に睨まれたかのように、足が動かなかった

 

 

凛「そんな…どうすれば、」

 

海未「逃げ道がありません…これは…」

 

 

チャンスウ「無駄だよ。あなた達は龍に食われるのを待つだけ…」

 

 

 

ボオォォォ!!!!!!!!

 

 

 

凛「うわっ!?あっついにゃ!!」

 

海未「ボールが…奪われた!?」

 

 

炎が強くなったのと同時に、海未はボールを奪われてしまった。

ここに来て、韓国の強力な必殺タクティクス…

日本は改めて理解する。

これが、アジアトップレベルの戦術

 

 

英玲奈「あれが私達に勝つために作られた必殺タクティクス…」

 

梨子「絶対に逃げられない…捕まったら、終わりですね」

 

 

『さあ!ボールを奪い取った韓国!見事なパス回しで、日本の選手達を突破していきます!!』

 

 

チャンスウ「ボールキープを禁止する!!ダイレクトでボールを繋いで!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

聖良「っっ…指示が間に合わない…」

 

 

聖良の指揮を恐れたチャンスウは、聖良の指示が通るよりも先にボールを繋げ、という指示を出していた。

これにより、先程よりも日本のディフェンスを突破するのは簡単になる

 

 

聖良「しまった…!!」

 

ジウォン「がら空きだよ!」パス

 

 

聖良の指示が遅れ、空いてしまったスペースにパスを出されてしまった。

ゴールは目の前。

韓国FWのペク・シウはシュートを放つ

 

 

シウ「喰らえ!ー レッドブレイク ー!!」ドォン!

 

 

ことり「果南ちゃん!!」

 

果南「任せて!!」バッ

 

 

ゴール上空に発生した竜巻…

龍がいるのは韓国だけではない。

日本にも頼もしい、海の竜が…!!

 

 

果南「ー 海竜の逆鱗槍 ー!!」ドガァン!!

 

 

シウ「何!!?」

 

ドンヒョク「叩き潰された…」

 

 

上空から一気に急降下し、まるで竜がボールを飲み込むかのように、果南の渾身の叩きつけ。

その威力は凄まじく、ボールを叩きつけた衝撃で地面はひび割れ、砕ける

 

 

『止めたぁぁぁ!!!松浦果南!オーストラリア戦に引き続き、やはり頼りになるもう一人の守護神!!日本のピンチをキーパーが救ったぁ!』

 

 

聖良「ありがとうございます!果南さん」

 

果南「うむ!ゴールは任せてね」

 

 

頼もしいキーパーのロングキックで、再び日本の攻撃。

しかし、あの龍をどうにかしない限り、日本に得点のチャンスはない

 

 

月「…どうする?梨子ちゃん、英玲奈さん」

 

英玲奈「分析はした。しかし、突破は不可能に近いという事実が鮮明になっただけで、攻略法は…」

 

梨子「見つかるの、かな…」

 

千歌「見つかるよ」

 

月「…!!」

 

梨子「千歌ちゃん…!」

 

千歌「足掻けば、絶対に道はあるよ!そうやって私達は、いつも不可能を可能にしてきた!」

 

月「確かに、そうだね」

 

千歌「考えよう。でも、その前に今は、全力で足掻いて、示そう。私達は負けないって」

 

梨子「…」

 

 

梨子「ひとつだけ」

 

月「ひとつ?」

 

梨子「ひとつだけ、方法があります」

 

英玲奈「梨子、教えてくれ」

 

梨子「英玲奈さん、あれです」

 

 

梨子「UTX高校の、必殺タクティクス…!」

 

月、英玲奈「!!!!」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

チャンスウ「必殺タクティクス!!」

 

「ー パーフェクトゾーンプレス ー!」

 

 

曜「っ!!捕まっちゃった…」

 

 

一方、日本はまたしても、韓国の龍に行く手を阻まれていた

 

 

チャンスウ「さあ、ボールは返してもらうよ」

 

 

曜「うぅ…!?動けない!!」

 

 

炎が強くなり、曜が動けなくなったところを、韓国の選手がボールを奪う。

やはり、捕まれば最後…

日本の攻撃は呆気なく終了してしまった

 

 

ウンヨン「チャンスウ!こっちよ!」

 

チャンスウ「よし、いっきに攻めるよ」バッ

 

 

日本のメンバーもすぐにディフェンスに入る

 

 

海未「っ…いったいどうすれば…」

 

英玲奈「海未、聞いてくれ」

 

海未「英玲奈!何か作戦を…?」

 

英玲奈「あぁ。その為には、海未の力が必要だ」

 

海未「私の…?」

 

 

 

英玲奈が海未に作戦の説明をしている間に、奪われたボールを取り返そうとする日本

 

 

穂乃果「私達でボールを取り返そう!!」

 

聖良「はい!絶対に行かせません!!」

 

 

穂乃果がディフェンスに加わり、聖良だけでは間に合わない部分を、穂乃果が補う。

それにより、再びパスが通らなくなった韓国

 

 

ペクヨン「くっ…パスが出せない、」

 

ことり「そこです!」ズザー!

 

ペクヨン「な!?」

 

 

パスが通らないことにより、焦りが生まれた。

その焦りが、今度は隙を生んだ。

ことりのスライディングがボールを捕らえ、日本はいっきに畳み掛ける

 

 

穂乃果「ナイス!ことりちゃん!」

 

ことり「このまま作戦を!」パス

 

英玲奈「あぁ!練習はナシだが、これに掛ける!」

 

 

英玲奈がボールを持ち、ドリブルで上がる。

しかし、既に韓国の龍は英玲奈を狙っていた

 

 

チャンスウ「あなたも龍の餌食になりたいの?」

 

英玲奈「!(来た…)」

 

 

韓国の選手が一列に並びながら走り、ひとつの炎。

そして、巨大な龍となってフィールドを駆け回る。

このままでは、英玲奈も取り囲まれてしまう

 

 

英玲奈「行くぞ!梨子!」パス

 

梨子「はい!」

 

 

ジウォン「横にいる選手にパスした…?」

 

チャンスウ「同じ事!狙いを桜内梨子に変えるよ!」

 

 

英玲奈は横にいる梨子に浮いたパスを出した。

それを見た韓国の選手達は、取り囲む標的を梨子に移す

 

 

梨子「来た…!!月ちゃん!」パス!

 

月「任せて!」

 

 

ドンヒョク「また横にパス!?」

 

チャンスウ「袋の鼠だよ。もう逃げられない」

 

 

チャンスウの言う通り、梨子がボールを渡した相手、月のいる場所は、コートの端。

英玲奈や梨子のように、横にパスを出して逃げることはもうできない。

今度こそ、龍に取り囲まれてしまう…そう。

 

 

 

 

 

 

 

………囮とも知らずに

 

 

 

 

 

 

月「でりゃ!」パス!

 

 

チャンスウ「!?」

 

シウ「統堂英玲奈に返した…?」

 

 

月はダイレクトで英玲奈に浮いたボールを蹴った。

韓国は月達のプレーに動揺するも、焦ることは無い。

どんなにボールを逃げるように回しても、横でずうっと回しているなら、いつまでたっても前には行けない…そう思っていた

 

 

英玲奈「その油断を、私達は突く」

 

海未「!!」バッ

 

 

チャンスウ「統堂英玲奈の後ろから、園田海未が!?」

 

 

英玲奈「必殺タクティクス」

 

海未「はぁあああ!!」バシッ!

 

 

 

英玲奈「ー 柔と剛 ー!!」

 

 

 

チャンスウ「しまった!?罠か!!」

 

 

『抜けたぁぁぁ!日本!韓国の必殺タクティクスをパス回しで翻弄し、いっきに前線へロングパスで繋ぎました!!!!』

 

 

花陽「あれは…UTX高校の!?」

 

真恋「横に逃げるようなパス回しで相手をひきつけて、隙ができた瞬間にいっきに前線へ繋ぐ…考えたわね」

 

美奈「最後のパスは鋭さが必要…だから、海未ちゃんが必須だったのね」

 

あんじゅ「…梨子ちゃん、」

 

 

 

『さあ!前線でボールを受け取ったのは…星空凛だ!!!!』

 

 

凛「みんなで作ったチャンス…!!絶対に無駄にしないにゃ!!」

 

ジョンス「…来い!!」

 

 

 

凛は日本代表になってから、まだ一度もシュートを決めきれていなかった

 

 

凛「っっ!!!!」バリバリ!

 

 

千歌「あれって…」

 

曜「"ジグザグストライク"!」

 

 

 

理由は自分のシュートの未熟さだった

 

 

 

凛「でりゃぁ!!」バシュッ!

 

 

にこ「空高く打ち上げた…?」

 

希「いったい何を…」

 

 

怖かった。

自分は日本の力になれていないのではないのか、と。

だから…だから!!

 

 

凛「凛もみんなの力になりたい!!」バッ!

 

 

"ジグザグストライク"のパワーで高く蹴り上げたボールに、凛も高く飛び、追いつく

 

 

果南「あれは…」

 

海未「まさか、」

 

 

凛「これが凛の必殺技!!!!」

 

 

 

凛「ー Hello,星を数えて ー!!!」ドガァン!!

 

 

 

凛が蹴ったシュートはまるで星空。

無数の流れ星となり、ゴールに…降り注ぐ!!

 

 

ジョンス「ー だいばくはつはりて ー!!」

 

 

ジョンスは張り手で降り注ぐ流れ星を弾く。

しかし、

 

 

ジョンス「(数が多すぎる…それに、重い!?)」

 

 

 

 

 

ジョンス「ぐあぁっ!!??」

 

 

 

『ゴール!!!!決めたのは星空凛だぁ!!強力な新必殺技で、韓国のゴールを破りました!!』

 

 

凛「やったにゃー!!」

 

海未、果南「凛!!」

 

凛「!!」

 

 

凛の右手、そして左手で果南と海未とハイタッチ。

凛の成長と共に、日本は勝利へ大きく前進した

 

 

 

 

日本 1-0 韓国

 

 

 





風雷乱舞
海未ちゃんと凛ちゃんの合体技です。2人で"風神の舞"のように暴れ回ります。暴れている間もパスは続けているので…この2人、本当に人間?

柔と剛
オリオンで登場した、日本代表の必殺タクティクスです。シンプルですが、確実に最初の一発は成功しますね

Hello,星を数えて
凛ちゃんの進化した必殺シュートです。技の流れは、原作の"スターゲイザー"を想像してください。あれをもっと明るくキラキラさせた感じです


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第3章 35話 「韓国戦 "もうひとつのタクティクス"」

皆さん!お久しぶりです!ルビィちゃんキャンディーです。いや〜、実は今日まで学習合宿で、頭が腐るぐらい勉強してました…おかげで無機化学は網羅しましたよ…はい、

韓国戦、ダラダラと試合が流れそうな雰囲気ですね…ですが、後々でどうなるか…




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

韓国の日本を倒すために作られた必殺タクティクス、"パーフェクトゾーンプレス"に苦しむ日本。しかし、梨子が提案したUTX高校の必殺タクティクス、"柔と剛"でチャンスを作り、凛が新必殺技"Hello,星を数えて"で得点した。前半の終了時間は近づいている…

 

 

 

 

 

『さあ!前半の残り時間もあとわずかとなりました!リードしているのは日本!このままリードした状態で前半を終えたいところです!!』

 

 

月「凛ちゃん、大丈夫?」

 

凛「?凛は全然大丈夫にゃ!!」

 

月「そっか…」

 

 

晴れない月の顔。

それに気づいた曜が話しかける

 

 

曜「月ちゃん、何か気になることがあるの?」

 

月「うーん、気になるというか…ちょっと不安かな?」

 

曜「?」

 

月「凛ちゃんの足」

 

 

凛の運動神経、そして筋肉は並大抵のものでは無い。

それにより生まれる凛の人を超えたスピード技。

しかし、凛は人だ。

いくら登山で足腰を鍛えたからといって…

 

 

月「あそこまで足に負担がかかる技を連発すると……」

 

曜「いつか、ガタがくる?」

 

月「うん。気をつけないと危ないよ」

 

 

 

 

 

凛「…」ズキズキ

 

 

 

 

 

 

ピーーーー!!!

試合再開。

失点を許してしまった韓国は、焦る気持ちもあるが、冷静なプレーを心がける

 

 

チャンスウ「落ち着いて動けば必ずパスは繋がる!!行くぞ韓国!!」

 

「「「はい!!!!!」」」

 

 

聖良「お願いします!穂乃果さん!」

 

穂乃果「フォローは任せて!このまま前半を終えよう!!」

 

 

どちらも譲らない状態が続く。

聖良の指示と穂乃果のフォロー。

チャンスウの指示と韓国の共鳴。

どちらも互角。

進んでは下がり、下がっては進むの繰り返し。

しかし、転機は必ずやってくる

 

 

 

曜「こんのおぉぉ!!」ブォン!

 

ドンヒョク「!?」

 

 

曜「ー スマッシュアンカー ー!!」

 

 

鎖を足に巻き付け、巨大な錨を投げ飛ばす。

あまりのインパクトにドンヒョクは動けなかった

 

 

ドガアァァァン!!!!

 

 

ドンヒョク「うわぁ!?」

 

曜「よし!もらった!」

 

 

錨を突き刺した場所から水が噴き出し大爆発。

ドンヒョクは吹き飛ばされ、曜はそのままボールを奪い取った

 

 

千歌「曜ちゃん!こっち!」

 

曜「千歌ちゃん!」パス

 

 

『さあ!高海千歌にボールが渡りました!!そのままドリブルで上がっていく!!』

 

 

ペクヨン「行かせない!!ー 地走り火炎 ー」

 

千歌「っ!!」グワン!

 

ペクヨン「!!?」

 

千歌「遅いよ」

 

ペクヨン「(一瞬で動きが変わった!?)」

 

 

ことり「必殺技を躱した!」

 

海未「いいですよ!千歌!」

 

 

 

千歌「ー ZスラッシュG3 ー」

 

 

 

ギュン!ギュン!ギュン!ギュン!

 

 

 

ウミャン、ドゥヨン、ミョンホ「「「!!?」」」

 

 

理亞「今度は3人抜き…!」

 

希「千歌っち飛ばすなぁ…」

 

 

千歌「っっ!!」

 

 

千歌は何としてでも前へ。

前で待つFWのメンバーへ、ボールを繋ぎたかった。

今の千歌の動きのキレは、凛や海未にも負けてはいない

 

 

千歌「穂乃果さん!」パス

 

穂乃果「うん!」

 

 

その強い気持ちがひしひしと伝わるプレー。

しかし、穂乃果は気持ち以外にも、千歌から伝わってくるものを感じ取っていた

 

 

穂乃果「(なんだろう…千歌ちゃんのあの感じ…まさか、闇の…)」

 

ソンファ「もらった!!」バッ!

 

穂乃果「っっ!?しまった!?」

 

 

『あぁっと!?高坂穂乃果、一瞬の隙をつかれてボールを奪われてしまったぞ!?』

 

 

海未「穂乃果らしくないですね…」

 

穂乃果「くっ…!!取り返す!!」バッ!

 

 

すぐにソンファを追いかける穂乃果。

時間がない…そう考えた穂乃果はスイッチをーーーーー

 

 

ホノカ「!!!!」ビュン!

 

 

ーーーーー切り替えた

 

 

 

ホノカ「返して」ズザー!

 

ソンファ「な!?いつの間に!?」

 

 

『高坂穂乃果が取り返した!!まるでギアを一段階上げたように動きが変化し、そのまま前にいる選手にボールを渡します!!』

 

 

穂乃果「凛ちゃん!」パス

 

凛「まかせるにゃ!」バリバリバリ!

 

 

凛「ー ジグザグストライク ー!!」ビュンビュンビュン!

 

 

海未「私達も行きますよ!曜!」ビュン!

 

曜「ヨーソロー!」ビュン!

 

 

海未「ー 風神の舞い ー!」

曜「ー スプリントワープ ー!」

 

 

チャンスウ「だ、誰がボールを…!?」

 

 

曜、海未、凛「私だよ(です)(凛にゃ)!」

 

チャンスウ「!?」

 

 

速すぎて、誰がボールを持っているか判断出来ない韓国。

それにより、"パーフェクトゾーンプレス"の発動が遅れ、日本のチャンスになる

 

 

曜「月ちゃん!」パス

 

月「ヨーソロー!」バッ

 

 

空へ飛ぶ月。

回転しながら標準を合わせて…蹴る

 

 

月「天空落としぃぃぃぃぃ!!!!」ドガァン!

 

 

聖良「月さんのシュート!」

 

果南「行ける!!」

 

 

『出たあぁぁぁ!!渡辺月の強烈シュートが炸裂!!これは決まるか!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオォォォン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

月「!?」

 

日本「「「!!!!??」」」

 

チャンスウ「日本のために作ったタクティクスがひとつだけなんて…言った覚えはないよ?」

 

 

鐘をつくような、轟音が響き渡った

 

 

真恋「な…」

 

美奈「…!」

 

 

ボールは弾かれてしまったのだ

 

 

 

チャンスウ「必殺タクティクス」

 

「ー 龍尾(りゅうび) ー!!」ドン!

 

 

龍の尾によって

 

 

『な、なんと!?弾かれた!弾かれました!!渡辺月のシュートは、韓国の新必殺タクティクスによって…コート外に…!!』

 

 

ピッピーー!!!!

 

 

『ここで前半が終了!日本、2点目なしで前半を終えました!!』

 

 

梨子「何…あの必殺タクティクス」

 

英玲奈「とりあえず、監督のところへ行こう。作戦会議だ」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 日本ベンチ ー

 

 

美奈「みんな、お疲れ様!」

 

ベンチに集合した日本メンバー。

花陽と花丸から渡された水分を取りながら、美奈の話を聞く

 

 

美奈「"柔と剛"はアッパレだったわ!素晴らしい判断だったわよ♪梨子ちゃん」

 

梨子「あ、ありがとうございます」

 

美奈「ほかのみんなも!特に凛ちゃん!この1点は本当に大きいわ!」

 

凛「照れるにゃ〜…!」

 

韓国相手にリード。

それは、アジアのトップレベルチームに通用している、という事になる。

起点に次ぐ起点。

そして、一人ひとりの強い気持ちが、前半の結果を生んだのである

 

 

美奈「じゃあ、後半の話をするわね」

 

美奈「海未ちゃん、凛ちゃんはここで交代。代わりに入るのは、理亞ちゃんとツバサちゃんね!」

 

 

凛「つ、疲れたにゃ…」ヘナヘナ

 

海未「はい…少し飛ばし過ぎましたね」

 

 

花陽「2人とも、いつも以上に走ってたもんね!」

 

花丸「"前半で体力を使い切る気持ちで走れ"って…しれっと鬼のような指示ずらね…」

 

美奈は試合前に、海未と凛に指示を出していた。

内容は花丸が言った通り。

2人は体力のことを気にせずに、前半を本気で走りきったのである

 

 

真恋「あとは…"パーフェクトゾーンプレス"の別の攻略法と、最後のアレね…」

 

梨子「"龍尾"…」

 

英玲奈「"柔と剛"は一度しか通用しないからな…両方、新しい突破口を考えなければ…」

 

 

"龍尾"

今のところ分かっているのは、"パーフェクトゾーンプレス"の時の龍が、ゴール前に出現。

その龍が尻尾でシュートをブロックするという…

そのブロックする力の強さは、月のシュートを止めたことが物語っていた

 

 

にこ「月のシュートが止められたとなると…かなり限られてくるわよ。"龍尾"を破れるシュートは」

 

ダイヤ「やはり、1点を死守するのが一番かと…」

 

美奈「そうね…」

 

理亞「…」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

『さあ!間もなく後半戦が始まります!!』

 

 

美奈「みんな、頑張ってね!」

 

「「「はい!!!!!」」」

 

 

凛「…」

 

真恋「凛ちゃん」

 

凛「にゃ!?真恋さん…?」

 

真恋「痛い時は、痛いって言わなきゃダメよ?」

 

凛「…」

 

凛「……」

 

凛「はい…」ズキズキ

 

花陽「り、凛ちゃん!?」

 

凛は足を押さえて、そのままその場に座り込んでしまった

 

 

真恋「怪我ではないと思うわ。恐らく、かなりの衝撃でダメージが溜まったのね」

 

花陽「大丈夫?立てる?」

 

凛「ごめんなさい…」ズキズキ

 

真恋「みんなにも心配かけちゃうんだから、ね?」

 

凛「はい…」ズキズキ

 

 

花陽の肩を借りて、医務室へと向かった凛。

後半は間もなく始まる。

交代した選手に勝負の行方は託さるた。

果たして、どのような試合になっていくのか…

 

 

日本 1-0 韓国

 

 




龍尾はオリジナルの必殺タクティクスです。

明日、明後日は恐らく連投できます。お楽しみに!



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第3章 36話 「韓国戦 "海皇の意地"」


皆さんどうも!オリオンの刻印でイギリス、エドガーさん達がブラジルに負けたと聞いてめっちゃ落ち込んでいるルビィちゃんキャンディーです…

いやー、ブラジル強いですね。あと、今回のオリオンの刻印は久しぶりにまともな試合だったなー、と思いました。輝こうサッカーも、早く本戦を書きたい!!早く書きたいです!!




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

韓国の"パーフェクトゾーンプレス"に対応し始めた日本。しかし、韓国はもうひとつの必殺タクティクス"龍尾"で月のシュートをブロックしてしまう。1-0で終わった前半。後半もこのままリードし、勝利を手にすることが出来るのか…

 

 

 

 

 

『さあ!後半戦、間もなく開始です!』

 

 

 

FW…綺羅ツバサ、鹿角理亞、高坂穂乃果

 

MF………渡辺曜、高海千歌、渡辺月

 

MF…………桜内梨子、統堂英玲奈

 

DF……………鹿角聖良、南ことり

 

GK…………………松浦果南

 

2-2-3-3

 

 

『日本は前半活躍した園田海未と星空凛に代わって、鹿角理亞と綺羅ツバサを投入するようです!!!』

 

 

ツバサ「頑張りましょ」

 

理亞「…当然!」

 

 

ことり「理亞ちゃん、すごいやる気だね!」

 

聖良「はい!…頑張って、理亞…」

 

 

月「どうする?"龍尾"を破るには…」

 

穂乃果「簡単だよ!強いシュートで吹き飛ばす!」

 

月「そ、そんな上手くいくのかな…?」

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!

 

『日本 対 韓国、後半戦がスタートしました!!最初にボールを持ったのは司令塔、チャンスウだ!!』

 

 

チャンスウ「…」バッ

 

理亞「(ドリブルで来る…)」

 

 

チャンスウ「ジウォン!」パス!

 

理亞「(パス!?切り替えが速い!!)」

 

 

ジウォン「ドンヒョク!」パス!

 

千歌「ダイレクト!?」ズザー!

 

 

ドンヒョク「!」

 

曜「ここだ!」ズザー!

 

ドンヒョク「チャンスウ!」パス

 

曜「な!?」

 

 

英玲奈「パススピードが上がった…!?」

 

梨子「反応速度も…前半より上がっています…」

 

英玲奈「何が起きたんだ…」

 

梨子「…」

 

梨子「韓国は、チーム全体が生き物のような存在…」

 

英玲奈「…まさか、日本に対応し始めている?」

 

 

韓国は、全試合のデータを見ると、前半までは負けている試合が多い

 

 

聖良「ー スノーエンジェル ー」ビュン!

 

チャンスウ「シウ!!」パス

 

聖良「嘘…!?」

 

理亞「姉様の技が躱された!?」

 

 

しかし、後半になると、まるで別のチームになったかのようにパスが通り始める

 

 

「ー 特攻バッファロートレイン ー!!」

 

 

月「あれはヤバい!!」

 

千歌「ことりさん!」

 

 

ことり「うん!ー ワンダーゾーン ー!」

 

 

まるで学習した生き物のように…

効率。

そして弱点を見つけてそこから一気に攻める

 

 

ことり「止まってください!!」

 

シウ「っっ!」ピタッ!!

 

 

にこ「ナイスよ!ことり!」

 

希「"ワンダーゾーン"に突っ込むなんて自殺行為や!!」

 

 

それが韓国。

アジアのトップチームの力である

 

 

シウ「よく考えてみて?二度も考えもしないで"ワンダーゾーン"に突っ込むと思う?」

 

ことり「え…」

 

 

チャンスウ「必殺タクティクス!!」

 

ことり「!!?」

 

果南「ことり!逃げて!!」

 

 

『おぉっと!?"ワンダーゾーン"でボールを奪い取ったと思いきや、韓国の選手達が南ことりを取り囲んでいるぞ!!』

 

 

「ー パーフェクトゾーンプレス ー!!」

 

ことり「きゃ!?」

 

 

月「ヤバい!!ゴールは目の前だよ!?」

 

穂乃果「果南ちゃん!!」

 

果南「来い!!!」

 

 

果南の構えと同時に、シウがシュートを放った。

ここで決められるわけにはいかない。

果南は集中力を極限まで高める

 

 

シウ「ー レッドブレイク ー!!」ドガァン!

 

曜「右上!!」

 

 

シウのシュートはゴールの右上へと放たれた。

シュートのスピードから見て、"海竜の逆鱗槍"では間に合わない。

しかし、

 

 

果南「あまいよ!!」バッ

 

 

千歌「果南ちゃんも飛んだ!!」

 

 

果南「うおあぁぁぁぁ!!!」

 

果南「ー 絶トライデント ー!」ドガァン!!

 

 

果南はシュートを殴り飛ばした

 

 

梨子「"トライデント"でパンチ!?」

 

穂乃果「防いだよ!!」

 

 

ジウォン「まだだ!!」バッ

 

果南「!!!」

 

 

ボールを弾いた先で、ジウォンが待ち構えていた。

ジウォンは既にシュートの構えに入っている

 

 

ジウォン「喰らえ!!」

 

ジウォン「ー レッドブレイク ー!」ドガァン!

 

 

聖良「今度は左隅…!!」

 

梨子「果南さん!!」

 

果南「っっっ!!」

 

 

ジウォンの追撃の"レッドブレイク"が放たれた時、果南は最初の右上シュートを飛び込みながらパンチしたため………

……未だに空中にいた

 

 

チャンスウ「空中では何も出来ないよ!!」

 

果南「くっ…!!」

 

 

横を通り過ぎりボール。

これが決まれば同…点……いや!!

 

 

果南「やらせない!!」バッ

 

 

 

 

 

ドゴオォォォン!!

 

 

 

果南は足を伸ばせるだけ伸ばした。

果南の強い想いが届いたのか、伸ばした左足にボールがギリギリ直撃した

 

 

穂乃果「間に合った!!!」

 

月「でも、左足だけでは押し込まれちゃうよ!?」

 

 

果南「ぐっぐぐ……っっ!!!」グググ

 

チャンスウ「終わりだ!!」

 

 

月の言う通り、果南の体は今にもゴールに押し込まれそうになっていた。

空中で左足だけでシュートを耐えるだけでも、かなりの負荷がかかっているはず…

 

 

果南「(ぐっ…ヤバい、押し込まれ…!!でも、絶対に負けない!!)」グググ

 

 

果南は自覚していた。

穂乃果と自分を比べると、どうしても実力差があると。

もちろん、差別化はある。

現にオーストラリア戦では自分も力になれた。

 

だが、真正面からは?

 

この先、世界では小細工なしの化け物シュートが自分達に襲いかかってくるだろう…

自分は、松浦果南は、それを止められるのか?

日本の力に…私は、本当になれるのだろうか?

自分のせいで日本は負けるのでは?

 

そう考えれば考えるほど…

 

 

 

果南「動けぇぇ!!私の体ぁぁ!!!!」バッ!!

 

ジウォン「!?」

 

チャンスウ「左手にオーラを!?」

 

 

果南は不可能を可能にする

 

 

果南「ボールは目の前…あとは…」グググ

 

 

なぜなら……

 

 

 

 

 

果南「潰すだけえぇぇぇ!!!!」ゴオォォ!!

 

 

 

 

彼女は…『海皇』

 

 

 

 

果南「ー 絶ーーーーーーー

 

 

 

ーーーートライデントォォォォ!!!!」ドガァン!!

 

 

 

ジウォン「!!!?」

 

チャンスウ「!!!?」

 

日本「「「!!!!」」」

 

 

真恋「左手で…」

 

美奈「ねじ伏せた…」

 

 

『アンビリーバボー!!!なんとしぶとい!!松浦果南!!右手でボールを弾き、返ってきたボールを左足で抑え、体を捻じ曲げて左手で地面に叩き潰した!!これが、日本の"海皇"です!!!』

 

 

果南「海未の連撃にくらべたら、こんなの!!」ドン!!

 

千歌「やっぱり果南ちゃんはすごい…!!」

 

ツバサ「なんて頼もしいキーパーなのかしら…」

 

 

果南のスーパーセーブに盛り上がる日本サポーター。

それに呼応し打ち上がる果南のロングキック。

曜が競り勝ち、ヘディングで繋ぐ

 

 

曜「ツバサさん!!」パス

 

ツバサ「ナイスよ」

 

 

チャンスウ「綺羅ツバサを潰すよ!必殺タクティクス発動!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

ツバサ「!」

 

 

韓国はツバサを取り囲む。

しかし、ツバサは動じない

 

 

ツバサ「これならどう?」パチン!

 

韓国「「「!!!?」」」

 

ツバサ「ー デコイリリース ー」

 

 

合図と同時にツバサの分身が大量に出現。

韓国の選手達が、誰が本物か混乱している間に、ツバサはボールを繋げる

 

 

ツバサ「月!」パス

 

月「よっ!」

 

 

『綺羅ツバサが"パーフェクトゾーンプレス"を突破!!そして渡辺月がボールを受け取った!!』

 

 

月「理亞ちゃん!"Awaken the power"を!!」パス

 

理亞「!!」

 

 

月に言われ、理亞はすぐに構える。

オーストラリア戦以降、発動できなくなってしまった"Awaken the power"。

しかし、理亞は…

 

 

理亞「はあぁぁぁぁ!!!!」グググググ!

 

 

花陽「このオーラは、オーストラリア戦の時と同じ!?」

 

花丸「まさか、完成したの…!?」

 

 

巻き起こる強風。

ビリビリと伝わるオーラ。

これはまさに………

 

 

 

 

理亞「ー Awaken the power ー!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

究極 降臨

 

 





次回予告


理亞「そんなんじゃ、一生取れないわよ」ゴゴゴゴゴ

覚醒の狼


穂乃果「うおぉぉぉらあぁ!!!!」ドガァン!

龍に挑む穂乃果


果南「絶対に止める!!!!」

不動の海皇


明日、37話 投稿


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第3章 37話 「韓国戦 "崩れ始めた希望"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
いやー、本当に申し訳ないです。日付変更までに間に合いませんでした…頑張ったんですが…どうしても忙しくて。
なんとか更新しましたので、どうぞ




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

後半戦。韓国は日本の動きに対応し、一段階上のスピードと正確なプレーで日本を苦しめる。しかし、果南が絶体絶命の状況の中でも、自慢の底力でスーパーセーブを魅せる。そして、理亞が失われたはずの"Awaken the power"を!?

 

 

 

 

 

 

 

ー ??? ー

 

 

「マリー!やっぱりここにいた!」

 

鞠莉「…!」

 

「日本?」

 

鞠莉「まぁね〜」

 

「…マリー、いつも見てるよね。日本の試合」

 

鞠莉「えぇ。大切な仲間の試合だもの」

 

「ふむふむ…」

 

鞠莉「…」

 

「うん。負けるね。このままじゃ、」

 

鞠莉「…」

 

「さてさて、どうするのかな?日本は」

 

鞠莉「…(みんな…)」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

理亞「"Awaken the power"!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

曜「ほ、本当に発動しちゃったよ…」

 

千歌「でも、あれでもまだ未完成なんでしょ?」

 

 

"未完成"。千歌はそう言った。

というのも、今理亞が発動している"Awaken the power"はあの時のように完全ではない。

その証拠に…

 

 

穂乃果「髪と目の色が変わってない…」

 

月「うん。それに、オーストラリア戦の時よりもオーラが小さい。あの時のを100%と見ると、これは60%ぐらい…」

 

月「でも、ここまで持ってくるのは…流石に天才すぎる…」

 

 

理亞は確かに、オーストラリア戦以降、"Awaken the power"を使えなくなっていた。

しかし、感覚だけは…あの溢れる感覚だけは…体に染み付くように残っていた。

その感覚を頼りに、この短期間で完成の6割にまでにすることができたのだ

 

 

理亞「!!」バッ!

 

梨子「理亞ちゃんがドリブルを!」

 

英玲奈「畳み掛ける気か…」

 

 

『鹿角理亞がドリブルを開始!!しかし、韓国のDFも黙ってはいません!!』

 

 

ソンファン「行かせないよ!」

 

ミョンホ「ここで止める!!」

 

理亞「!」ゴゴゴゴゴ

 

 

1対2。

普通ならば、理亞にとって不利な状況である。

だが、今は2人でも3人でも関係ない

 

 

ソンファン「ー 地走り火炎 ー!!」

 

聖良「理亞!!」

 

 

ソンファンの回し蹴りがボールに炸裂する

 

 

 

 

 

 

ドオォン!!!!

 

 

 

 

 

理亞「…」ゴゴゴゴゴ

 

 

もう一度言おう

 

 

ソンファン「!!!?」グググ…

 

ソンファン「ボールが、動かない!?」グググ…

 

 

 

今の理亞には関係ない

 

 

 

『動きません!!ボールを奪えない!!鹿角理亞が足で押さえているボールに、確かにソンファンは回し蹴りを直撃させた…今もしていますが、鹿角理亞は表情すら変えず……!!』

 

 

理亞「そんなんじゃ、一生取れない」バッ!!

 

ソンファン「っっ!!」

 

ミョンホ「化け、物…」

 

 

いっきに抜き去る理亞。

もう既にゴールは目の前。

すぐにシュートの構えに入る

 

 

理亞「っっっ!!!」バッ!

 

 

ザシュッ!!ザシュッ!!ザシュッ!!

凶暴な狼の爪でボールを切り裂く。

叫びながら放たれるのは…

理亞が磨き上げてきたシュート

 

 

理亞「ー ウルフレジェンドGX ー!!」ドガァン!!

 

 

海未「"Awaken the power"状態で"ウルフレジェンド"!!」

 

花陽「す、凄い威力です!これなら…!!」

 

 

通常のシュートよりも何倍にも膨れ上がっているパワー。

このまま行けば確実に決まる…!

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

「必殺タクティクス!」

 

 

 

ドゴオォォォン!!!!!!

 

 

理亞「な…」

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

 

「ー 龍尾 ー!!」

 

 

『な、なんと…鹿角理亞の強力なシュートさえも、韓国のシュートブロックに阻まれてしまった…日本、これ以上の得点は難しいのか!?』

 

 

希「理亞ちゃんのシュートでも破れない…」

 

にこ「ちょっと!理亞はなんで"Awaken the beast"を使わなかったの!?」

 

真恋「……使えない、のよ」

 

にこ「え…?」

 

ダイヤ「どういうことですか?」

 

真恋「"Awaken the beast"は、"Awaken the power"状態の時にしか使えない技…確かに、"Awaken the power"は発動出来ているけど、あれは未完成」

 

ダイヤ「"Awaken the beast"も威力が半減する…」

 

真恋「そういうことよ」

 

 

 

理亞「ハァ…ハァ…やっぱり、"Awaken the beast"じゃないと…」ゴゴゴゴゴ

 

月「理亞ちゃん。"Awaken the power"を使いすぎないようにね。まだチャンスはあるから、」

 

理亞「…わかった」シュウゥゥン…

 

 

理亞は"Awaken the power"を解除する。

やはり、まだ慣れていないため、無駄に体力が減っていく…

 

 

理亞「…」

 

 

これを発動すればするほど思い知らされる。

ルビィと自分の距離

 

 

理亞「…やっぱり、悔しい」

 

 

 

その後も、日本は何度もシュートを放った。

しかし、すべて"龍尾"に弾かれてしまう…

そんな中、穂乃果が動く

 

 

穂乃果「うおぉぉぉらあぁ!!!」ドガァン!!

 

穂乃果「ー ブレイブショット ー!!」

 

 

「ー 龍尾 ー!!」ドゴオォォォン!!

 

 

穂乃果「…!!行ける!!」

 

月「"ブレイブショット"が押しているよ!」

 

 

穂乃果は宣言通り、"龍尾"をシュートで吹き飛ばそうとしていた。

龍の尾は徐々に押され…

 

 

チャンスウ「ぐっ!?」

 

花陽「越えた!!」

 

花丸「行けるずら!!」

 

 

あとはゴールに入るだけ…!!

日本の選手達がそう確信した時だった

 

 

ジョンス「ー だいばくはつはりて ー!!」

 

日本「「「!!!!??」」」

 

穂乃果「あちゃー…忘れてた」

 

 

『止めたぁぁ!!!!高坂穂乃果の必殺シュートは、"龍尾"を越えるも、威力が落ちてしまったためGKに防がれてしまった!!』

 

 

月「いやーきついね。龍を越えてもGKがいるんじゃ…」

 

穂乃果「うん。これは本当に1点を死守した方がいいかもしれないね」

 

 

弾かれたボールは韓国に渡った。

日本はなんとか抑えようとするも、徐々に体力の減りが目立ってきていた

 

 

曜「あっ…!?」

 

ペクヨン「足が動いてないよ!!」バッ

 

 

梨子「曜ちゃんが抜かれた…!」ハァハァ

 

聖良「フォローに行かなくては…」ハァハァ

 

 

この時。

聖良はいつもだったら絶対にしないミスをしていた

 

 

ペクヨン「ジウォン!」パス

 

ことり「え!?」

 

聖良「しまっ、た…」

 

 

体力の減りとは…その人の思考能力をも奪う…

 

 

ジウォン「!」

 

 

聖良達DFは、ノーマークの選手を作ってしまっていたのである

 

 

ツバサ「まずい、わね」

 

千歌「果南ちゃん!!」

 

 

果南「任せて!!!」バッ

 

 

ここまで韓国相手に無失点で、きている果南。

果南には自信があった。

今の自分なら絶対に止められる、と

 

 

ジウォン「ー レッドブレイク ー!!」ドガァン!

 

果南「!!(左隅…!)」

 

 

ジウォンはシュートをゴールの左隅へ。

果南はすぐに反応し、右手にオーラを込めながら、飛ぶ

 

 

果南「捻り潰す!!」バッ!

 

 

しかし、韓国はこれだけでは終わらなかった

 

 

海未「果南!!!」

 

果南「!?」

 

 

海未が怒鳴った。

何故怒鳴ったのか?

理由はすぐに分かった

 

 

シウ「ー バイソンホーン ー!!」ドガァン!!

 

果南「うっそでしょ…」

 

聖良「シュートチェイン!?」

 

英玲奈「コースを切り替えたぞ!?」

 

 

左隅に放たれたシュートに、シウが必殺シュートで追撃。

コースを真逆の右隅に変えたのだ。

果南は既に左へ飛んでいる

 

 

果南「こんのおぉぉぉ!!!」ズザザザザ!

 

月「まさか、あのまま飛ぶ気なの…右へ?」

 

 

果南は右足を地面に突き刺すのでは?

というぐらいの勢いでブレーキをかけた。

今、右へ飛べば…間に合う…!!

 

 

果南「うおぉぉぉぁぁ!!!」バッ!!

 

 

チャンスウ「右へ飛んだ!?」

 

千歌、曜「行ける!!」

 

穂乃果、海未「行ける(ます)!!」

 

梨子、聖良「果南さん!!」

 

 

 

 

果南「ー 絶トライデンーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーービギッッ!!!!!!

 

 

 

果南「!!!!????」

 

 

 

凛「!!」

 

 

凛には見えた。

いや、分かった。

自分も先程、同じことを体験したからだ。

あの顔…果南の今にも崩れ落ちそうな顔…何が起きたか理解出来ていない顔…

 

 

そう。あれは

 

 

 

 

 

 

バシュゥゥゥゥン!!!!

 

 

 

 

 

激痛に、耐えられない顔

 

 

『ゴ、ゴール!!決まってしまった!!日本、韓国についに同点を許してしまった!!!!』

 

 

果南「ぐっ…痛、い…….」

 

聖良「果南さん!?」

 

千歌「果南ちゃん!!」

 

月「嘘…でしょ…」

 

穂乃果「……やばい」

 

 

日本は一瞬にして、最悪な状況に叩き落とされたのである

 

 

 

日本 1-1 韓国

 



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第3章 38話 「韓国戦 "奇跡を信じて"」

皆さんどうも!勉強帰りに一番くじに挑戦しようとしたけど、どこもかしこもルビィちゃんが無くなっててショックなルビィちゃんキャンディーです。いやー、ド田舎だから生き残っているとは思ってたんですが…いや〜……

後書きの次回予告も見てね☆




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

穂乃果のシュート、そして理亞の未完成の"Awaken the power"でも破れない韓国のゴール。そして、一瞬の隙から失点を許してしまった日本。果南の体はついに限界を迎え、フィールドに倒れてしまった…

 

 

 

 

聖良「果南さん!!」

 

梨子「大丈夫ですか!?」

 

果南「いったたた……」ズキズキ

 

月「…右足がつってる…この試合中はもう動けないよ」

 

果南「っっ…本当にごめん、」

 

月「大丈夫。僕達が必ずもう一点取るから!」

 

穂乃果「果南ちゃんは休んで!」グッ

 

果南「ありが…いだだ!?」ズキ!

 

 

果南は穂乃果の肩を借りて退場する。

ここまで、日本のゴールを守った健闘をたたえるかのように、日本サポーターから拍手が贈られた

 

 

美奈「キーパーやれる?希ちゃん」

 

希「はーい!でも、まさか日本代表でキーパーをやることになるとは…」

 

 

『日本!負傷した松浦果南に代わって、東條希を投入するようだ!!』

 

 

果南「ごめん…みんな、追いつかれちゃったよ…」

 

にこ「謝る必要は無いわ。あれに反応するだけでも、十分人間超えてるから」

 

希「ゴールはうちに任せとき!」

 

果南「頼んだよ。2人とも…」

 

 

『そして、MFの渡辺曜に代わって矢澤にこが入ります!!日本、後半も徐々に時間がなくなってきた中で、2点目を決めることが出来るのか!?』

 

 

穂乃果「取れるのか、じゃない!取るんだよ!」

 

日本「「「…!!」」」

 

穂乃果「ここまで同点で来れたのは、果南ちゃんの死守のおかげ!!果南ちゃんの、そしてみんなの想いはこんなところで終わらせないよ!!」

 

穂乃果「勝つよ!みんな!!」

 

日本「「「はい!!!!」」」

 

 

気合いを入れ直した日本。

しかし、"龍尾"の壁は硬い…

何か突破口を見つけなければ…

 

 

ツバサ「ひとつだけ。あるんじゃない?」

 

月「…僕もひとつだけしか浮かばなかったよ」

 

 

ツバサと月の考えていることは同じだった。

ほぼほぼ運に頼るようなことかもしれないが…

これ以外に思いつかなかった

 

 

月「"Awaken the power"しかないんだよね…ここまで来たら」

 

千歌「でも、オーストラリア戦の時みたいに上手くいくとは…」

 

理亞「…やる」

 

千歌、月「!!」

 

 

理亞の答えに、千歌達は驚きを隠せなかった。

しかし、かなり無謀な賭けに近い作戦である。

ツバサは理亞に最終確認をとる

 

 

ツバサ「可能性は低いわよ?」

 

理亞「でも、これしか方法がない…なら…」

 

 

理亞「私は、私自身を超える覚悟にかける…!!」

 

 

聖良「理亞…」

 

ツバサ「本気、みたいね」

 

英玲奈「…分かった。すべてのボールを理亞に集めよう。FWは理亞の全フォロー。残りの時間、それに賭ける」

 

 

こうして、日本はオーストラリアの時の"理亞中心の超攻撃戦法"を再びすることに決めた。

既に後半は折り返しを過ぎている…

チャンスはかなり限られている

 

 

 

ツバサ「準備は?」

 

穂乃果「いつでも!」

 

月「本気で行くよ」

 

にこ「ついてきなさいよ?千歌」

 

千歌「頑張ります…!!」

 

梨子「英玲奈さん、私達もフォローしましょう!」

 

英玲奈「あぁ。前衛を支えるのが私達の役目だ」

 

ことり「もう、足は止められないね」

 

聖良「はい。もう、後のことは考えませんよ!」

 

希「絶対に…守る!」

 

 

理亞「みんな…私に、力を貸して!!」

 

 

 

ピーーー!!!!

 

『さあ!試合再開です!日本の選手全員が一斉に走り始めました!!』

 

 

穂乃果「"パーフェクトゾーンプレス"には注意だね」

 

月「囲まれる前にパスだよ!みんな!」

 

 

ドリブルで攻めると、必殺タクティクスに捕まる恐れがある。

しかし、だからと言ってパスだけに集中すると……

 

 

 

チャンスウ「もらった!」パシッ!

 

月「やばっ!?」

 

 

『あぁっと!?渡辺月のパスは読まれていた!韓国のチャンスウがそのまま攻撃を開始します!!』

 

 

チャンスウ「理亞に"Awaken the power"を発動させる隙は与えないよ!!」

 

ツバサ「やっぱり、対策してくるわよね」

 

千歌「取り返します!」バッ!

 

 

『高海千歌が行った!!チャンスウとの1対1だ!!』

 

 

チャンスウ「っ!ボールはあげないよ!」

 

千歌「こっちだって!絶対に通さない!」

 

 

チャンスウは巧みなボールさばきで千歌を抜きにかかる。

しかし、千歌はそれに食らいつく

 

 

チャンスウ「しつこいね…!」バッ!

 

千歌「千歌はそれぐらいしかできない…から!」バッ!

 

 

このままでは時間を無駄に使うだけ…

そう考えたチャンスウは仕掛ける

 

 

チャンスウ「悪いけど。1対1はここまで」バッ

 

千歌「!?」

 

 

チャンスウはボールをかかと落としで地面に叩きつける。

ボールにはスピンがかかっており、今にも千歌の方に飛びついてきそうな勢いであった

 

 

梨子「千歌ちゃん!!避けて!!」

 

千歌「え…」

 

 

チャンスウ「ー ならく落とし ー」

 

 

次の瞬間。

ボールは千歌に向かって飛んだ。

このままでは、千歌がボールによって吹き飛ばされてしまう…

 

 

千歌「(これ…ヤバいやつ!?)」

 

 

穂乃果「千歌ちゃん!!」

 

月「避けて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

まずい…今すぐによけ………

 

 

 

 

 

 

ドオォン!!!!

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

韓国「「「!!!!??」」」

 

 

 

 

 

千歌「…るわけないよ!!!」ガガガガ!

 

チャンスウ「な…!?頭で止めた!?」

 

 

なんと、千歌は避けるどころか、自分に向かってきたボールをヘッドで止めに行ったのだ

 

 

千歌「うぐっ…!?」ガガガガ!

 

梨子「千歌ちゃん!!今すぐに止めて!!」

 

千歌「止めないよ!!」

 

梨子「!?」

 

千歌「だって、ボールが目の前にあるんだよ!?それを避けるなんてできない!!」ガガガガ!

 

梨子「でも、危険よ!!」

 

千歌「それで…!!」

 

梨子「!!」

 

千歌「それで、逃げて負けたら!!!私は一生後悔する!!!」

 

梨子「…千歌ちゃん」

 

千歌「止まれえぇぇぇ!!!!」ガガガガ!

 

 

 

千歌の気迫に負けたボールは、回転を止めた

 

 

月「ほ、本当に止めた…」

 

千歌「ハァ…ハァ…」ズキズキ

 

 

千歌の頭から離れ、地面に落ちるボール。

それを千歌は足で、ドン!!

と踏みつけ、叫んだ

 

 

千歌「こんな痛み…果南ちゃんや凛ちゃんに比べたら!!!」

 

果南、凛「!!」

 

 

ボールによって隠されていた千歌の目は、ギラギラと輝いていた

 

 

千歌「痛くも、痒くもないよ!!!」ドン!!

 

 

『止めたぁぁぁ!!高海千歌、チャンスウの"ならく落とし"を頭で押さえつけました!!吹き飛ばされることはありません!!高海千歌はその強い足と心で、その場に踏みとどまっています!!』

 

 

チャンスウ「まさか、こんな…」

 

千歌「…」

 

千歌「おかげでスイッチ、入っちゃったよ」バッ!

 

 

千歌はそのままチャンスウを突破する。

それを見た日本の選手達も続く。

このボールを…理亞に繋げる!!

そう体に言い聞かせ、前へ。

走る

 

 

 

穂乃果「(あの雰囲気、今度はゾーン…?いや、闇…?)」

 

 

 

ウンヨン「ー 地走り火炎 ー!!」バッ

 

千歌「ーー!!」ザッ!

 

ウンヨン「避けられた…!!」

 

 

ミョンホ「私達も行くよ!」

 

ウミャン「うん!」

 

千歌「(2人…後ろから…)」

 

 

千歌は背後から迫る気配を察知していた

 

 

千歌「この…!!」ビュン!

 

ミョンホ、ウミャン「!!?」

 

千歌「ー ZスラッシュG3 ー!!」ギュンギュン!

 

 

月「後ろにいる選手をノールックで躱した!?」

 

にこ「なによ…やるじゃない!!千歌」

 

 

千歌は一度も背後の2人を見ていなかった。

それ以前に、本来"Zスラッシュ"は前方に発動する技。

しかし、千歌は後方に。

しかも2人の選手に背中を見せて発動したのだ

 

 

名付けるなら…

 

 

ツバサ「"リバースZスラッシュ"ね」

 

英玲奈「あんな技、いつの間に…」

 

 

『素晴らしい動きです!高海千歌!次々と韓国の選手を躱していきます!!』

 

 

千歌「今なら、なんでも出来る気がする!」

 

チャンスウ「素晴らしいね。千歌」

 

千歌「!!」

 

チャンスウ「でも、それももう終わり」

 

 

既に千歌は囲まれていた。

先程の3人は時間稼ぎにすぎなかったのだ

 

 

曜「千歌ちゃんが囲まれた!!」

 

果南「千歌…!!」

 

 

「ー パーフェクトゾーンプレス ー!!」

 

 

千歌「…」

 

千歌「大丈夫」

 

チャンスウ「…?」

 

千歌「道はあるよ」バッ

 

 

千歌は炎の渦の中で構えた。

髪とオーラがタクティクスによる強風で揺れる。

一見、ただの強風に見えるが、実際に受けてみるとそれは熱風だ

 

 

千歌「はあぁぁぁぁぁ!!!!」ゴオォォ!

 

 

しかし、千歌は熱風ごときでは止まらない

 

 

花陽「"サンシャインアッシュ"!?」

 

真恋「あそこから撃つ気…?」

 

 

目を閉じ、オーラを集める。

今の千歌には熱風もただの風。

すべては…"繋げる"ために

 

 

千歌「でりゃ!!」バシッ!

 

 

ボールを空高く打ち上げた千歌。

この後、千歌もボールを追って飛ばなければいけないのだが…

 

 

チャンスウ「逃がさないよ!!」

 

 

ボウッ!!!!!!

 

 

千歌「っっ!!!?」

 

 

韓国は千歌を空へは逃がさない。

炎を強くし、千歌の動きを制限したのだ

 

 

千歌「…大丈夫だって…言ったでしょ?」

 

チャンスウ「まだ何か…」

 

「そうよ」バッ!

 

「「「!!!!!???」」」

 

 

一人の選手が、上空にあるボールに向かって飛んでいた

 

 

千歌「代わりに撃ってもらうから!」

 

チャンスウ「なっ…!?」

 

 

シュートを放ったのはーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ツバサ「ー 流星ブレード ー!!」ドガァン!

 

 

 

ダイヤ「ツバサさん!?」

 

花丸「超ロングシュートずら!!」

 

 

フィールドの中心から放たれたシュート。

韓国の選手達は間に合わないため、"龍尾"は発動出来ないが、どちらにしろキーパーに止められてしまう…

 

 

ジョンス「残念だが、その程度の威力…弾き返してやる!!」

 

ツバサ「どうかしら?」

 

ジョンス「なに!?」

 

千歌「私達の目的は……」

 

 

 

 

 

千歌、ツバサ「理亞ちゃんに繋ぐこと!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「はあぁぁぁぁぁ!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

ペクヨン「鹿角理亞が走っている!?」

 

シウ「ま、まさか…!!」

 

チャンスウ「しまった!!あれはすべて、理亞へのパス!!」

 

 

果南「繋がった!!」

 

凛「行っけー!!理亞ちゃん!!」

 

海未「理亞!!」

 

美奈「…行ける!!」

 

 

理亞の真上を飛ぶ"流星ブレード"。

理亞は追いかける。

自分も白銀の流れ星のようなオーラを放ちながら…走る

 

 

理亞「絶対に負けない!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

理亞は徐々に"Awaken the power"のオーラに包まれる。

姿が完全にオーラで隠れた後。

日本のメンバーは感じ取っていた

 

 

穂乃果「!!理亞ちゃんのオーラが…」

 

月「あのオーラの中で、膨れ上がっている!!」

 

聖良「これは…!!」

 

 

 

そして………

 

 

 

 

理亞「ー Awaken the power ー!!!!」バッ!!

 

 

日本「「「!!!!」」」

 

韓国「「「!!!!??」」」

 

 

手でオーラをなぎ払い、再び見せた理亞の姿は…

 

 

梨子「白銀の髪に赤い目!!!」

 

英玲奈「あれは…間違いないな、」

 

 

 

"Awaken the power"完全発動

 

 

 

聖良「理亞!!」

 

「「「行けえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」

 

 

 

千歌とツバサの流星に加えるのは…

 

 

理亞「っっ!!!」バッ!!

 

 

 

 

 

究極の力

 

 

 

 

理亞「ー Awaken the beast ー!!」ドガァン!

 

 

『これは!!!オーバーライドだあぁ!!高海千歌のオーラと綺羅ツバサのシュートを加えた、鹿角理亞の"Awaken the beast"が、ついに炸裂しました!!!』

 

 

チャンスウ「止めろ!!ジョンス!」

 

ジョンス「あぁ!!ー だいばくはつはりて ー!!」

 

ジョンス「うおおおおぉぉ!!!!」

 

 

 

ドガアァァァァァァァン!!!!!!

 

 

 

 

ジョンス「うわあぁ!!??」バキッ!!

 

 

 

ボールはキーパーを越えた

 

 

理亞「っっ!!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

全てはこの奇跡のために

 

 

千歌、穂乃果「!!」

 

 

例え、無謀な道でも…

 

 

聖良、月「!!」

 

 

不可能だと知っていても…

 

 

果南、凛、海未「!!」

 

 

絶対に…乗り越えられる

 

 

理亞「…決まった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガアァァァァァァァン!!!!!!

 

 

 

 

 

理亞「!!!!??」ゴゴゴゴゴ

 

日本「「「!!!!??」」」

 

韓国「「「!!!!??」」」

 

ジョンス「…な、」

 

 

 

 

 

奇跡とは

 

自分たちだけに起こるわけでは…

 

 

決して、ない

 

 

 

『ゴ、ゴールの、クロスバー……』

 

 

 

月「強引に合わせたから…軌道がずれた…?」

 

穂乃果「いやー、はは…」

 

 

『日本…2点目とは…なりませんでした…!!!!』

 

 

 

 

 

 

理亞「…は?」ゴゴゴゴゴ

 

 

え?ハズした?

今のを?

この場面で?

キーパーは破った。決まったよね?

じゃあ、なんで、なんで?

なんで?なんで?ボールは…

 

 

理亞「ゴールに、入って…ない、の?」バシュゥゥゥゥン……

 

聖良「理亞!!?」

 

 

時間切れ。

オーラが消え去り、膝から崩れ落ちる理亞。

ルビィと同じ。

体力が底を尽き、体が限界を迎えたのである

 

 

月「動いちゃダメだよ!理亞ちゃん!!」

 

聖良「交代お願いします!!」

 

 

騒がしくなる日本ベンチ。

果南や凛に続き理亞までも…

日本の希望が次々と消えていく中、得点のキーマンの交代。

日本の勝利は絶望的になっていた

 

 

理亞「まだ…行ける!!!!うぅ…」ガクガク

 

 

そう言うも、立てない。

足が震える。

貧血の時のような、意識が遠のく感じ。

吐き気も酷い。

心臓は裂けそうだ。

ここで私がいなくなったら…!!

そう思いながらも、体が言うことを聞かなかった。

 

 

そして…

 

 

理亞「わ、私のせいで…負け…嫌だ…嫌……」ガクガク

 

聖良「理亞…!?落ち着いて…」

 

にこ「ちょ…これ、やばくない?」

 

 

これで負けたら自分のせい…

その考えが頭をよぎった瞬間に、足の震えが体全体に感染した。

理亞に駆け寄ったメンバーも動揺を隠せない

 

 

 

 

 

梨子「理亞ちゃんも交代…」

 

英玲奈「私達だけで、残り1点、決めなければ…」

 

梨子「出来るの、かな…」

 

英玲奈「…」

 

 

先程の、"流星ブレード"に追いつきシュートを放つ。

というのは理亞だから、"Awaken the power"だから出来たこと。

要するに、強引な突破はほぼ不可能。

だからと言って、残り数十分で新たな作戦を考え、"パーフェクトゾーンプレス"と"龍尾"を攻略するのは…かなり難しい

 

 

花陽「あと1点、決めないと…世界には…」

 

果南「何か方法はないの…?このままじゃ、」

 

 

時間は刻々と消えていく一方だった

 

 

 

日本 1-1 韓国

 

 




リバースZスラッシュ
千歌ちゃんのオリジナル技です。説明は本文のとおりです。穂乃果ちゃんの言葉、かなり意味深ですね…





――――――――――――――――――――――――









コツン、コツン……
スパイクでコンクリートの上を歩く音が響く。
ここは、薄暗くひんやりとした通路。
目指す先は光。
そして、熱気が支配する世界。
歓声鳴り響く出口



美奈「待ってたわ!本当によく来てくれたわね」

「もう…急に呼び出して…本当はまだダメなのに…」

「…」

美奈「試合時間はあと約10分。勝つためにはあと1点。行けるわね?」

「…行けます。必ず、勝ちます」


少女は光の中へと消えていく。
威風堂々。
小さな体から放たれるものとは思えなほどの存在感。
足取り快調、コンディション完璧。

その背中には…背番号【10】








『今入った情報です!日本、選手を交代するようです!!FWの鹿角理亞に代わって……』










ルビィ「お待たせ。理亞ちゃん」



次回 「復活の流星」



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第3章 39話 「韓国戦 "復活の流星"」

皆さんどうも!未体験があまりにもエモすぎてテンション上がっているルビィちゃんキャンディーです!ついに…ついについについに!!ルビィちゃん復活です!!いや〜、長かった。ここまで来るのに38話…第2章だったらもう、音ノ木坂戦の中盤ですよ!?ですが、まだまだ世界編は終わりません!!推し優遇?少しぐらいいいじゃないですか…!え?少しじゃない…??

☆お知らせ1☆
ハーメルンにも小説を出している乾電池さんが…Twitterに「第2章のルビィちゃん覚醒シーン」を漫画にしてくださいました!!もう、語彙力を失うほどの完成度なので、絶対に見てください!!ルビィちゃんキャンディーのホームにある、Twitterの@からお願いします!!

☆お知らせ2☆
はくたかさんが「輝こうサッカーで!コラボ第3弾」を出しています!!正直、ルビィちゃんキャンディーのキャラよりも生き生きしているので、読んでいてとても楽しめると思います!!

☆お知らせ3☆
Awaken the powerなどを、キャラが発動する以外の時は省略することになりました。Awaken the powerは"ATP"。Awaken the Fireは"ATF"。Awaken the beastは"ATB"です!

☆お知らせ4☆
上記で紹介しました乾電池さんが、イラストを描いてくださいました!!挿絵として後書きに投稿してあります!




前回の、輝こうサッカーで!

日本は奇跡を信じ、奇跡を起こすために走った。しかし、希望である理亞の力は限界を迎え、絶望的状況に陥った。諦めかけたその時……選手交代のアナウンスが鳴り響く

 

 

 

 

 

『日本代表は選手を交代します!!!』

 

 

果南「選手交代…?」

 

ダイヤ「誰が出るんですの?」

 

曜「ダイヤさんじゃないとすると…誰……

 

 

曜、ダイヤ、果南「!!!!!!」

 

 

ルビィ「…」ザッザッザッ

 

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

 

少女は。

そして、その仲間達は言った

 

 

聖良「!!!!」

 

月「う、うそ……」

 

 

どんなに深い谷底に叩き落とされても、彼女は必ず這い上がってくる。

戻ってくる。と、

 

 

穂乃果「…ついに来たね…!!!!」

 

ツバサ「日本のエースの登場かしら」

 

 

もしかすると、ここで負けるんじゃ…いや。

彼女が戻ってくるまでは、絶対に負けるわけにはいかない。

だって、約束したのだから

 

 

真姫「もう…監督も無茶させるんだから」

 

花陽「ピャアァ!?真姫ちゃん!?」

 

凛「いつの間に!!」

 

真姫「さっきよ。ルビィいるところに私あり。身体サポーターとして当然よ」

 

 

約束したのだ。

また一緒に、サッカーをすると

 

 

理亞「あ…る、ルビィ……」ガクガク

 

ルビィ「…理亞ちゃん」

 

 

聖良の助けを借り、ルビィの目の前まで来た理亞。

白線を挟み、2人は向き合った

 

 

ルビィ「お待たせ。理亞ちゃん」

 

理亞「…グズッ…あんだは…いつもいつも…ぐるのが…遅いのよ!!」ボロボロ

 

 

『黒澤ルビィだあぁぁぁ!!!!なんということだ!!!!私達は今、奇跡の瞬間を目撃している!!!!』

 

『怪我により代表離脱を余儀なくされた黒澤ルビィは、アジア予選での復帰は絶望的だと言われていました…しかし!!!!』

 

『こうして、日本のエースストライカーと名高い少女は、我々の前に姿を現しました!!!!』

 

 

 

ワアァァァァァァ!!!!!!!!

 

 

 

ペクヨン「こ、この会場の盛り上がり…」

 

チャンスウ「間違いない…とんでもない化け物が来てしまったね……」

 

 

会場の歓喜という名の嵐に巻き込まれた韓国は、一目でルビィの危険度を察知。

一瞬で彼女らの中に緊張が走った

 

 

理亞「うぅ…グズッ…」ボロボロ

 

ルビィ「…本当にごめんね?理亞ちゃん」

 

理亞「ホントよ!!あんだは…いつも…いつもいつもいつも…ムカ、つく……」ボロボロ

 

 

今にも消えてしまいそうな小さな声。

しかし、目からは大粒の涙

 

 

ルビィ「辛いことばかり押し付けて…本当に…」

 

理亞「でも…わだじ…決められながった……」ボロボロ

 

ルビィ「うん…」

 

理亞「みんなの想いを…無駄に…した…」ボロボロ

 

ルビィ「大丈夫だよ」

 

理亞「…?」

 

ルビィ「誰も理亞ちゃんを責めたりはしない。無駄だなんて、思っていない」

 

理亞「…なんで…分かるのよ…」

 

ルビィ「後ろを見て」

 

理亞「…」クルッ

 

 

理亞は後ろ。

フィールドの方に向き直った。

そこには……

 

 

 

 

千歌「…理亞ちゃん、凄かったよ!!」

 

穂乃果「大丈夫だよ!!」

 

月「あとは任せて!!」

 

ツバサ「本当に素晴らしい動きだったわ!」

 

にこ「あんたの実力、認めるわよ」

 

梨子「しっかり休んでね?」

 

英玲奈「必ず勝つ。見守ってほしい」

 

ことり「ことり、感動しちゃいました!」

 

希「うちの占いでも、理亞ちゃんは最高だって言ってたで?」

 

 

 

理亞「あっ…みんな…」

 

聖良「理亞」

 

理亞「姉様…」

 

聖良「あなたは私の、最高で、最強の妹です。頑張りましたね」

 

理亞「…」

 

理亞「っっ…!!」ボロボロ

 

 

泣きたくなかった。

みんなの前で泣くなんて…

プライドが絶対に許さない…はずなのに…

涙が溢れて、止まらなかった

 

 

ルビィ「理亞ちゃん」

 

理亞「…」

 

ルビィ「理亞ちゃんの想いは、ルビィが受け継ぐ」

 

ルビィ「大丈夫!絶対に勝つから!」

 

ルビィ「だから…」

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「全部、任せて」ギロッ!!

 

 

韓国「「「!!!?」」」

 

 

殺気に近い"圧"だった。

理亞と話していた時の天使のような優しい顔が一変。

目は鋭く尖り、まさに獲物を見据えた獣だった。

彼女は本当に…人間なのか???

 

 

理亞「…ルビィ」

 

ルビィ「!」

 

理亞「………あとは、頼んだわよ」

 

ルビィ「…うん!!」

 

 

こうして、ルビィは白線の中。

理亞は白線の外へ。

1歩踏み出し、それぞれの時が、動き出した

 

 

千歌「ルビィちゃん…!!」

 

ルビィ「皆さん、本当にお待たせしました…」

 

梨子「謝る必要は無いよ、ルビィちゃん。ルビィちゃんには、一言だけ、言ってほしいかな」

 

ルビィ「?」

 

梨子「"ただいま"って」

 

ルビィ「…」

 

 

ルビィ「ただいま!!」

 

「「「おかえりなさい!!ルビィちゃん!!」」」

 

 

 

 

『さあ…試合終了間際…とんでもないことになりました…"紅き流星"黒澤ルビィの代表復帰。これは、日本にとって奇跡としか言いようがありません!!』

 

 

ルビィ「…」グッ、グッ、グッ…

 

 

ダイヤ「はあぁ…ルビィ…足をほぐす姿だけでも目の保養ですわ…」ウルウル

 

果南「そうだね…!もう、鳥肌が止まらないよ!!」

 

曜「…(ダイヤさんと果南ちゃんは昔からルビィちゃんとサッカーをしていた…いろんないざこざがあったけど…)」

 

曜「(こうしてみんなとルビィちゃんがサッカー出来るのは…本当に、本当に…)」

 

曜「奇跡なんだね」

 

 

 

月「待っていたよ。ルビィちゃん」

 

ルビィ「月さん…!」

 

月「まさか、ね…?来てくれるとは、」

 

英玲奈「あぁ。一瞬、目を疑った」

 

穂乃果「…」

 

 

穂乃果「私達はつい最近までは敵だった。頂点を奪い合う、最高のライバルだった」

 

穂乃果「でもね?そんな中でもね?浦の星女学院と戦っている時も…ずうっと思ってたんだ!」

 

穂乃果「ルビィちゃんと一緒に、サッカーがしたいって!!」

 

ルビィ「…穂乃果さん、」

 

穂乃果「その願いが、今叶った!でも、それだけで終わらないよね?」

 

ルビィ「はい。負けるつもりはありません」

 

穂乃果「勝とう。ルビィちゃん」

 

ルビィ「勝ちましょう。穂乃果さん」

 

 

メンバーそれぞれが、自分の持ち場に散る。

ルビィはセンターフォワード。

日本の選手の中でもかなり小柄なルビィ。

しかし…本当に何なのだろうか…この尋常じゃないオーラは、

 

 

チャンスウ「気を引き締めてね…」

 

シウ「…チャンスウ」

 

チャンスウ「気を抜いたら一瞬でやられるよ。ルビィを徹底的にマーク。ゴールは絶対に死守だ」

 

 

 

主審の笛と同時に、GKのジョンスがボールを空高く蹴り上げた。

放物線を描きながら、ボールは鈍い音と共に地面に落下。

韓国の攻撃が始まった

 

 

『さあ!日本、まずはディフェンスです!残り時間も僅かな中で、点差は0、同点!!おそらく、次の1点が決勝点になるでしょう!』

 

 

チャンスウ「ウンヨン!」パス

 

ウンヨン「!」

 

 

チャンスウのパスは鋭くコートを斬る。

いっきにゴールに近づいたボール。

しかし、簡単に日本が譲ると思ったら…

 

 

にこ「行かせないわよ」

 

 

大間違いだ

 

 

ウンヨン「押し通らせてもらうよ!!」バッ

 

にこ「だから行かせないって言ってるでしょ!!」ドン!

 

 

にこがウンヨンに勝負を仕掛けた。

体格差でなら圧倒的にウンヨンの方が上。

しかし、

 

 

ウンヨン「な、なんで競り勝てない…!?」グググ…

 

にこ「あんたは軸がなってないのよ!!」ドン!

 

 

にこのポテンシャルは大柄な大国の選手達にも引けを取らない。

だが、それ以外にも力の源が存在していた

 

 

にこ「(絶対に…渡すのよ!!ルビィに…あの…子に!!)」

 

 

時間が残り僅かな中で、ひとつひとつのプレーの結果が重要になってくることは、身に染みていたにこ。

自分が奪わずして誰が奪う!?

そう体に言い聞かせるだけで、力が何倍にもなる

 

 

にこ「ほらっ!!もらうわよ!」ズザー!

 

ウンヨン「な!?」

 

希「ナイスや!にこっち!!」

 

にこ「月!」パス

 

 

ボールをもらった月も同じことを考えていた。

先程、月はパスを相手に奪われたばっかり。

韓国の戦術を恐れ、自分で勝負から逃げていた

 

 

月「僕も逃げるわけにはいかないね!」キラキラ

 

ペクヨン「な…体が青く光り始めた!?」

 

 

まるで彗星。

その見るもの魅了する美しい輝きは、渡辺月の…決意の光

 

 

月「ー ブルースターダスト ー!!」キラキラ!

 

 

曜「月ちゃんの新必殺技!!」

 

 

『抜けたぁぁ!!渡辺月!新必殺技でペクヨンを見事突破!!ボールはそのまま……』

 

 

月「頼んだよ!!!!」パス

 

 

 

 

 

ルビィ「うん!」

 

 

 

『黒澤ルビィに渡ったあぁぁぁぁ!!!!!!!!』

 

ワアァァァァァァ!!!!!!!!!!

 

 

花丸「す、凄い歓声ずら…」

 

花陽「体がビリビリと…震えます!!」

 

真恋「ボールを持っただけでこの盛り上がり…とんでもないわね」

 

 

 

ルビィ「(足は…なんとか行けるかな)」バッ

 

 

満を持してドリブルを開始したルビィ。

実に、こうしてフィールドでボールを蹴るのは数ヶ月ぶりだった。

しかし、ボールを蹴ることに喜びを噛み締めている暇はない

 

 

チャンスウ「必殺タクティクス!!」

 

ルビィ「…!はや…」

 

 

「ー パーフェクトゾーンプレス ー!!」

 

 

千歌「ルビィちゃんが捕まった!!」

 

ツバサ「ルビィさんはどうするのかしら…」

 

 

ルビィ「…」

 

 

ルビィは炎の渦の中で静かに。

表面では、見た目では、静かに。

その場で…前を見ていた

 

 

ルビィ「…」シュルシュル…

 

 

チャンスウ「髪留めを解いた?」

 

ウミャン「随分と余裕じゃない?」

 

 

熱風によりなびく紅い髪。

その紅は炎よりも濃く、何よりも美しい

 

 

ルビィ「この技を使うとね…」ゴゴゴ…

 

チャンスウ「…!!!?」

 

ウミャン「あのオーラは…」

 

ドゥユン「だってあれは…鹿角理亞の…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「髪留めなんて焼き焦げちゃうからね!!!!!!」ボオォゥ!!

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ー Awaken the power ー!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

韓国「「「!!!!!!??」」」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

『出たあぁぁぁぁ!!!!!!!!』

 

 

天上天下唯我独尊。

ルビィ本人が言った訳では無いが、見たもの誰もがこれ以上に尊い炎…力は無いと。

口にせずとも思う。

それが、究極の力

 

 

穂乃果「いや〜!やっぱりあっついね!!」

 

月「予備動作なしで発動かぁ…相変わらずだね…」

 

 

理亞が"ATP"を発動する際、かなりの時間と構えが必要である。

しかし、ルビィは発動するのに構えも時間も必要ない。

必要なのは…

 

 

…熱い心のみ

 

 

 

ルビィ「パーフェクトゾーンプレス…か…」ゴゴゴゴゴ

 

チャンスウ「どんな怪物でも、この渦からは突破できないよ!!」

 

ルビィ「…どうかな?」ゴゴゴゴゴ

 

チャンスウ「…!?」

 

 

"パーフェクトゾーンプレス"は、韓国選手が相手の周りを円状に走ることにより、炎を発生させている。

走っている選手の姿は炎とスピードにより、捉えることは出来ない。

そんな中で、ルビィがとった行動は……

 

 

ルビィ「…」スッ

 

韓国「「「!!!?」」」

 

 

凛「スタンディングスタートにゃ!」

 

あんじゅ「ルビィちゃんは何をする気なの…?」

 

真恋「……まさか、ね?」

 

 

 

ルビィ「…」ゴゴゴゴゴ

 

 

右足を前に。

左足を後ろに。

誰もが一度はやったことがあるであろう、スタンディングスタート。

渦の中でルビィは真っ直ぐ前を見続ける。

いったい何を、どこを、ルビィは見ているのか

 

 

ルビィ「…!!」ザッ!

 

 

足を踏み込む

 

 

ミョンホ「突っ込む気!?」

 

ソンファン「自殺行為だよ!!炎に突っ込むなん「あのね?」

 

 

ミョンホ、ソンファン「!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィはいるはずのない場所にいた

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ルビィ自身が炎なんだよ?」

 

 

 

 

ルビィは、ミョンホとソンファンのあいだ。

要するに、炎の中にいた

 

 

 

 

ルビィ「じゃあね」ビュン!!

 

 

チャンスウ「!!!?」

 

ミョンホ、ソンファン「!!!?」

 

韓国「「「!!!??」」」

 

 

海未「炎をそのまま…抜けた??」

 

凛「お、おかしいよ…」

 

 

『なんということだぁぁぁ!!!?黒澤ルビィには、炎の渦など関係ないのか!!?既に"パーフェクトゾーンプレス"を突破している!!』

 

 

シウ「おいおい…嘘だろ!?」

 

ジウォン「狂ってるのか!?」

 

チャンスウ「(まさか、炎の渦を作っている選手と選手のあいだを高速で駆け抜けるなんて…!!!)」

 

 

 

チャンスウ「まだだ!!韓国!!黒澤ルビィをもう一度取り囲んで!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

韓国の選手達の次の判断は早かった。

渦の中を抜けたルビィをもう一度取り囲むために、龍のままでルビィを追いかけた

 

 

ルビィ「!!」ゴゴゴゴゴ

 

チャンスウ「逃がさないよ!ルビィ!!」

 

 

『再び黒澤ルビィが囲まれた!!先程よりも渦の回転スピードが上がっている!!今度の突破は難しいか!?』

 

 

ルビィ「…みんなさ、」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「何かおかしいと思わない?」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

チャンスウ「…???」

 

ドンヒョク「いったい何……!?」

 

チャンスウ「な…!?」

 

ルビィ「気づくの遅すぎ」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

韓国「「「ルビィがボールを持っていない!?」」」

 

 

 

必死過ぎて気づかなかった。

いや、ルビィがボールを無くしたところを見ていなかった。

ならボールはどこへ!?

途中でこぼした!?

今ボールは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「急にボールが飛んできてびっくりしたよ!!」バッ

 

 

 

韓国「「「!!!!??」」」

 

 

コートの端で穂乃果がボールを持っていた

 

 

『ボールは高坂穂乃果が持っている!!!!一体いつ黒澤ルビィが高坂穂乃果にパスを出したのか…放送席からは確認できませんでした…』

 

 

ダイヤ「ルビィはいつパスを…」

 

果南「…」

 

 

果南は自慢の動体視力でルビィのパスを一瞬ではあるが捉えていた

 

 

果南「パーフェクトゾーンプレスを抜けた瞬間…」

 

 

 

 

 

ルビィ『じゃあね』ビュン!!

 

韓国『『『!!!!??』』』

 

 

ルビィがスピードを上げて、目では捉えられない速度で炎の渦を突破したのと同時に…

 

 

ルビィ『(穂乃果さん!!)』パス!

 

穂乃果『(ボールが飛んできた!?)』

 

 

 

 

果南「高速移動するのと同時に、穂乃果さんにパスを出したんだよ…」

 

ダイヤ「そして、自分を囮にして、その間にボールを前へ運ばせた…」

 

果南「うん…」

 

真恋「…ちょっと、飛ばしすぎじゃない…?」

 

真姫「……」クルクル

 

 

『さあ!黒澤ルビィを取り囲んでいたため、サイドはがら空きの韓国陣営!!高坂穂乃果がボールを運ぶ!!』

 

 

穂乃果「決めて!!」パス

 

 

ルビィ「はい!」ゴゴゴゴゴ

 

 

『そしてスペースに走り込んだ黒澤ルビィにボールをリリース!!ゴールは目の前だ!!』

 

 

花陽「ルビィちゃんのシュート!!」

 

花丸「"ATF"ずら!!」

 

 

ルビィ「…」ゴゴゴゴゴ

 

 

チャンスウ「絶対に決めさせないよ!!」バッ

 

 

最後の力を振り絞り、ゴール前まで戻った韓国。

ここまでGKと組んで鉄壁を築いている"龍尾"。

越えられても、待っているのは追撃のキーパー技である。

ルビィはどうするのか…

 

 

ルビィ「…」ゴゴゴゴゴ

 

ルビィ「…」ゴゴゴゴゴ

 

ルビィ「…」ゴゴゴゴゴ

 

 

ルビィ「真姫ちゃん!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

海未「真姫を呼びましたよ??」

 

曜「なんで、こんな時に…」

 

真姫「…」

 

真姫「何?ルビィ」

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「"あれ"、使っていい?」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

"あれ"

いったい何のことか、ベンチのメンバー、そしてフィールドのメンバーも理解できなかった。

しかし、真姫は全てを理解している顔で続ける

 

 

真姫「正気?」

 

ルビィ「…!」ゴゴゴゴゴ

 

真姫「ルビィは何も学んでないの??」

 

ルビィ「…分かってる。でも、」ゴゴゴゴゴ

 

ルビィ「あの技じゃないと"龍尾"は越えられないよ」ゴゴゴゴゴ

 

真姫「…」

 

ルビィ「お願い」ゴゴゴゴゴ

 

真姫「…」

 

ルビィ「…」ゴゴゴゴゴ

 

真姫「…」

 

真姫「はぁ…明日は一日クールダウンだからね?」

 

ルビィ「!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

ダイヤ「あの技…とは、」

 

凛「何のことかさっぱりにゃ…」

 

美奈「…」

 

真恋「美奈ちゃんは知ってるの?」

 

美奈「…話では聞いたわ。まさか、本当にやるの???」

 

 

 

 

ルビィ「…とうとうこの時が来た」シュウゥゥゥン…

 

 

ドンヒョク「"ATP"を解除した…?」

 

ウンヨン「体力切れか…??」

 

チャンスウ「…」

 

 

"龍尾"を前にして、突然の"ATP"解除。

ルビィが全力のシュートを撃つなら、"ATP"状態での"ATF"を撃つはず…

やはり、体力切れか…

 

 

理亞「(何をする気なの…ルビィ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁぁ!!!!」バッ!!

 

 

 

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

韓国「「「!!!!??」」」

 

 

『黒澤ルビィが構えた!!しかし、今までのシュートの中では見たことがない構えだ!!』

 

 

そして、異変はすぐに起こった

 

 

 

ゴオォォォォォォ!!!!!!!!!!

 

 

月「な、何これ…!?」

 

英玲奈「風…?いったいどこから…」

 

 

突如、スタジアム内に強風が巻き起こった。

理亞の"ATP"のような凍てつくような強風ではないが、それに引けを取らない力強さがある

 

 

梨子「まさか、ルビィちゃんが…?」

 

千歌「……何、あれ」

 

 

 

ルビィ「っっ!!!!」

 

 

ルビィの真上には、今までに見たこともないような巨大なオーラの塊があった。

そしてその塊は、強風とルビィから溢れるオーラを吸収している

 

 

月「あれは…空気を集めてるんだ…」

 

穂乃果「だからこんな風が…」

 

 

 

周りの空気を集め続けるボール。

そしてそのボールをルビィはーーーー

 

 

ルビィ「っっ!!!!」バシュ!

 

 

両足で抱え込むかのように垂直にボールを落とし、

 

 

ルビィ「はあぁぁ!!!!」ドォン!

 

 

ボールに先回りし、左足でスピンをかける。

その間も、ボールは空気とオーラを集め、エネルギーを高めている

 

 

チャンスウ「韓国!!"龍尾"だ!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

ルビィ「無駄だよ!!!!」

 

 

チャンスウ「!?」

 

 

ルビィ「ー Awaken the power ー!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

オーラと空気を溜めきったルビィは、再び"ATP"を発動。

そしてーーーー

 

 

理亞「(何よ…あれ…!!!!)」

 

 

ルビィ「うおああああああああああ!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

 

 

 

渾身の左足が、フィールドを、大地を、揺らした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ー ラストリゾート ー!!!!」ドガアアァァァン!!!!

 

 

 

韓国「「「!!!!!!???」」」

 

日本「「「!!!!!!???」」」

 

 

『これは!!!!黒澤ルビィの新必殺技だ!!!!』

 

 

 

ドガアン!!ドガアン!!ドガアン!!

ボールは弾むたびに轟音と共に地面を粉々にし、縦横無尽に駆け回る。

周りの地面を巻き込みながら、確実にゴールに迫っている

 

 

シウ「いったいなんなんだ…あのシュートは!?」

 

チャンスウ「怯まないで!!必殺タクティクス!!!!」

 

 

「ー 龍尾 ー!!!!」

 

 

巨大な龍が尾でゴールを塞いだ。

これにより、韓国ゴールの防御率は格段に向上した

 

 

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

バギイィィィィィィン!!!!!!!!

 

 

韓国「「「うわあああぁあ!!??」」」

 

チャンスウ「なんだ!?この技は!?」

 

ジョンス「吹き飛ばされる!?」

 

 

"龍尾"。そしてキーパー。

全てを吹き飛ばしたルビィのシュートは、ゴールに吸い込まれた

 

 

『ゴール!!!!!!黒澤ルビィが決めたぁぁぁ!!!!』

 

 

ルビィ「ハァ…ハァ…ハァハァ」

 

 

ルビィ「勝つのは…日本!!!!」ドン!

 

 

 

紅き流星は完全復活を遂げたのであった

 




ブルースターダスト
一星君のドリブル技です。青い流れ星のような綺麗な必殺技になっています

ラストリゾート
【挿絵表示】

【挿絵表示】

オリオンの刻印を見ている方の中で、知らない人はいないであろう、我らが豪炎寺さんの最強シュートです。詳しいことは次回説明します


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第3章 40話 「私の仲間」


皆さんどうも!39話でかなりエネルギーを消費したルビィちゃんキャンディーです!勉強の合間に執筆、だいぶ慣れてきました。今回のお話は前半は真姫ちゃんのお話。そして、後半からは…




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ルビィの復活。それは、試合の流れをひっくり返すには充分すぎるトリガーであった。いつ見ても別次元の"ATP"。誰も考えもしない発想力。そして…全てを吹き飛ばした"ラストリゾート"。日本は2-1で試合終了間近としていた

 

 

 

 

 

『決まったぁぁぁ!!!!黒澤ルビィの新必殺技、"ラストリゾート"は我々の想像を遥かに超えた威力で、韓国の"龍尾"とGKを…全て吹き飛ばしましたぁぁ!!!!日本、韓国に1点リードです!!』

 

 

 

花丸「ルビィちゃーん!!」ダキッ!

 

ルビィ「ピギッ!?花丸ちゃん!」

 

花丸「凄いシュートだったずら!おら、感動しちゃったよ!!」

 

ルビィ「えへへ…ありがとう、花丸ちゃん」

 

 

日本ベンチ前で喜びを分かち合うサニデイジャパン。

まるで溜まっていたマグマを一気に吹き出した火山のように、歓喜に飛び跳ねるメンバーもいれば、静かに感動に浸るメンバーもいる。

これで日本は1点差でリード。

試合時間はあと数分。

日本の勝利は確実と思われた…が、

 

 

にこ「あんた達ー!!!なーに、勝った気でいるのよ!!」

 

「「「!!!!」」」

 

凛「何?にこちゃん、せっかく盛り上がってたのに…」

 

にこ「まだ試合は終わってないでしょ!!」

 

凛「にゃ…」

 

にこ「いい?こうやって勝った気でいるチームが最後、負けるのよ!!お祭り騒ぎは主審が笛吹いてからにしなさい!!!!」

 

「「「………」」」

 

英玲奈「全くもってその通りだな」

 

月「そうだね。韓国も残り時間、本気で来ると思う」

 

千歌「ラストプレイ、しまっていこー!!」

 

「「「おーー!!!!」」」

 

梨子「千歌ちゃん、それ野球じゃない…?」

 

海未「まさか、あのにこに怒られるとは…」ボソッ

 

にこ「ちょっと!?聞こえてるわよ!海未ぃ!?」

 

凛「ほら、早く持ち場に戻るにゃ」

 

にこ「あんた達、後で覚えておきなさいよ…」

 

聖良「音ノ木坂って、いつもあんな感じなんですか…?」

 

ことり「ははは……」

 

穂乃果「元気でいいよね!!」

 

ツバサ「すごいわね…」

 

 

 

すぐに各ポジションに戻っていくメンバー。

そんな中で、真姫はルビィを呼び止めていた

 

 

 

真姫「分かってるわよね?ルビィ」

 

ルビィ「うん、」

 

果南「…?何の話?」

 

 

気になった果南は真姫に問いかけた。

試合は始まるが、他のベンチメンバーも気になるようで…

真姫はそのことに気づくと渋々話し始めた

 

 

真姫「みんな、ルビィは完全に復活したと思ってるでしょ?」

 

海未「まぁ、あのようなプレーを見せられたら…」

 

凛「え?違うの?」

 

真姫「…」

 

真姫「ルビィの体は…」

 

 

 

真姫「まだ完全には治りきっていないの」

 

 

あんじゅ「え…そうなの?あの動きで?」

 

真姫「…よく考えてみて。ルビィはボールをどの足で蹴ってたの?」

 

曜「うーん、"ラストリゾート"の時以外は左足?」

 

真姫「じゃあ、ルビィの利き足は?」

 

曜「両利き……あ、」

 

ダイヤ「!!」

 

真姫「気づいた?」

 

真姫「ルビィは極力、両利きなのに右足でボールを蹴ってないのよ。要するに…」

 

真姫「ルビィの右足は、まだ完治してないわ」

 

「「「!!!!」」」

 

果南「じゃあ、なんで普通に走れてるの…?」

 

真姫「右足だけに、随時微量だけど"ATP"のオーラを流し込んでいるのよ」

 

海未「そんなことが出来るのですか?」

 

真姫「ルビィならね。あの子の力は異常なのよ。できないこともできるのよ」

 

理亞「……」

 

真姫「それと、さっきの分かってる?っていう意味。あれは、この試合中はもう"ATP"を発動しちゃダメっていうことよ」

 

花丸「ど、どうしてずらか?まだルビィちゃんの体力は残っているように…」

 

真姫「見えるだけよ」

 

花丸「!!」

 

真姫「"ラストリゾート"は、"ATP"の力を大量に使うの。ただでさえ、右足にオーラを送り続けているのに、あんな大技…」

 

果南「右足に送るオーラまで使い切ったらヤバいってこと?」

 

真姫「そうよ。あの子は天才がゆえに無茶するんだから…」

 

ダイヤ「…」

 

真姫「ほら、終わったわよ」

 

 

 

 

ピッピッピーーーー!!!!!!

主審の笛が吹かれ、日本と韓国の戦いに決着がついた。

勝利したのは日本。

こうしてサニデイジャパンは、またひとつ、世界へと駒を進めたのであった

 

 

 

 

 

ルビィ「(ちょっと無茶し過ぎたかな…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

ー ロシア ー

 

 

 

久しぶりだったわ。

私が、テレビに釘付けになったのは

 

 

 

「な…なんだあの技…」

 

「エリー、あれは…」

 

絵里「…私も、初めて見る技よ」

 

 

 

試合終了間近に颯爽と現れたその少女は、一瞬にして会場の。

試合の流れを強制的に変えた。

そして、あのシュートが放たれた…

 

 

 

 

 

ルビィ『ラストリゾートォォォ!!!!』ドガアアァァァン!!!!

 

 

 

韓国『『『うわぁぁぁ!!!!??』』』

 

 

ロシア「「「!!!!」」」

 

 

 

震撼したわ。

あの子にはまだまだ底知れぬ何かがある。と

 

 

 

絵里「…」

 

「エリー、元気ないね?」

 

絵里「大丈夫よ。フロイ」

 

フロイ「日本が恋しくなった?」

 

絵里「私はいつでも日本が恋しいわ。でも、同じぐらいロシアも好きよ?」

 

フロイ「…安心したよ」

 

絵里「!」

 

フロイ「エリーとまた、サッカーが出来て」

 

絵里「そうね。私も」

 

 

私はあの日からずっと、この時が来るのを待っていたのよ

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

14歳フロイ『エリー!決めて!』パス

 

14歳(中3)絵里『任せて!!』バシュッ!

 

 

バシュゥゥゥゥン!!!!

 

 

フロイ『…!!やったねエリー!ハラショーだよ!』

 

絵里『決まった…!!』

 

 

私は、中学まではずっとロシアにいた。

生まれも育ちもロシア。

サッカーを始めたのもロシア。

仲間も全員ロシア。

そう…私にとってロシアは、生活の…そして、私の一部だった

 

 

ユーリー『やっぱりエリーは凄いよ!』

 

ヴィクトール『あぁ!代表入も確定だな!』

 

絵里『や、やめてよ…』テレテレ

 

ユーリー『おっ?照れてるんですか?かしこいかわいいエリーチカw』

 

絵里『ユーリー!!!!』

 

フロイ『ははは!!!』

 

 

毎日が楽しかった。

サッカーのクラブチームのメンバーはほとんどが昔からの顔なじみ。

特に、フロイとは家族ぐるみでの付き合いで、ほぼほぼ姉妹のような関係だった

 

 

フロイ『次の試合も勝とうね!』

 

絵里『もちろんよ!』

 

 

 

 

でも、その時はやってきた

 

 

 

 

絵里『引越し…?どこへ………日本!!??じゃあ、みんなとのサッカーは!!??』

 

絵里『大好きなみんなと、別れろって言うの!!??』

 

 

 

運命とは、どこまでも無情…

私にとって、これ以上の仕打ちはなかったわ。

 

でも、私は絶対に日本に行かなければいかなかった。

何故なら…

 

 

 

亜里沙『もう少しで、お姉ちゃんとまたサッカーが出来るの…?』

 

絵里『…日本に行って、ちゃんとした治療を受ければね』

 

 

 

亜里沙。

私の自慢の妹。

可愛くて、好奇心旺盛で、優しくて、そして…サッカーが天才級に上手かった子。

亜里沙はね、日本で言うルビィみたいな子だったの。

天性の才能。

誰も1対1では適わない。

小学6年生と同じ年齢、11歳にして、クラブチームや代表チームから期待されていた子だったの

 

 

でも、

 

 

 

亜里沙は病気になった。

自分だけでは、立てなくなった。

歩けなくなった。

サッカーは絶望的。

ロシアを代表する亜里沙は、一瞬にして死んでしまったのよ

 

 

亜里沙『ぐずっ…うぅ、亜里沙…お姉ちゃん達とサッカーがしたいよ……』ボロボロ

 

絵里『…亜里沙』

 

亜里沙『前みたいに上手くなくてもいい…パス出来るだけでもいい…お姉ちゃんと、フロイちゃんと…みんなと…』

 

亜里沙『サッカーがしたい』

 

 

日本に行けば、亜里沙の足を治せるかもしれない…

微かな希望だけど、時間もかかるけど…亜里沙のこんな悲しい顔をみたら……

 

 

 

絵里『…分かったわ』

 

 

 

私の気持ちが固まるのは早かったわ

 

 

 

 

 

 

絵里『…』

 

フロイ『そっか、亜里沙ちゃんのためだもん。私達は止めない』

 

ユーリー『私がエリーだったら、同じ判断をしていた。謝ることは無いよ』

 

絵里『…優しいわね。みんな、』

 

ゴラン『だけど、これだけは分かってほしい』

 

絵里『?』

 

ゴラン『エリーがどこにいても、エリーは私達の仲間だっていうことよ』

 

絵里『…そんな、当たり前でしょ?』

 

フロイ『エリーは優しいからね…日本でもたくさん友達が出来ると思う。毎日が楽しくて、ロシアでの思い出が薄れていくかもしれない…だけど!!!』

 

フロイ『私達はいつでもあなたのことを想っている』

 

絵里『…』

 

ユーリー『またいつか、一緒にサッカーしよう!』

 

ヴィクトール『その時は、亜里沙ちゃんも一緒にね』

 

絵里『…えぇ!!』

 

 

 

 

 

 

 

こうして、私達絢瀬家は亜里沙の足を治すために、日本に引っ越した。

フロイの言う通り、私にはすぐに友達ができた

 

 

絵里『あ、絢瀬絵里です!ロシアから来ました。よろしくお願いします!』

 

 

希『…!!にこっち…うち、あの子と絶対に友達になる』

 

にこ『変なことしないでよ?』

 

 

 

ーーーー

 

 

 

絵里『サッカー部?』

 

にこ『そうよ。聞くと絵里って、ロシアでかなり優秀なサッカー選手だったらしいじゃない』

 

絵里『まぁ、』

 

希『というわけで…』

 

にこ、希『お願いします!!!!』

 

絵里『え、え?え?』

 

 

 

ーーーー

 

 

 

まぁ、サッカー部に入ったのはいいんだけどまさか、まさかまさかの部員が私を入れて3人…

 

 

にこ『大丈夫よ…来年にはうちの天才級な後輩達が来るから…』

 

絵里『天才級?』

 

希『本当に凄いらしいんよ。3人ともFWだけど、ここらへんではかなり有名なんや』

 

絵里『へぇ…』

 

 

 

――――

 

 

 

そして高2の春。

にこが言った通り、3人の後輩が入部届を出しに来た

 

 

穂乃果『高坂穂乃果です!よろしくお願いしまーす!!』

 

海未『園田海未です』

 

ことり『南ことりです♪』

 

絵里『よろしくね』

 

 

確かに、穂乃果達は強かった。

個人技はもちろん、連携もかなりのものだったわ。

少し、フロイ達に似てるなーって思ったりもしたわ。

でも、そう考えると寂しくなるから極力考えないようにしたわ

 

 

 

――――

 

 

 

花陽『こ、小泉花陽です…よろしくお願いします!!』

 

凛『星空凛にゃ!』

 

真姫『…西木野真姫よ』

 

穂乃果『これでついに9人…大会に出れる…!!』ウルウル

 

絵里『長かったわね…ここまで』

 

 

 

――――

 

 

 

穂乃果『じゃじゃーん!監督を連れてきました!』

 

『『『監督!?』』』

 

海未『いつの間に…』

 

穂乃果『お願いしまーす!』

 

美奈『皆さん、始めまして!高海美奈です!今日からみんなの監督よ♪』

 

絵里『高海、美奈…』

 

にこ『なーんか、聞いたことがある名前なんだけど…』

 

 

 

――――

 

 

 

穂乃果『ついに決勝だね…』

 

海未『相手は浦の星女学院…まさか、本当に戦えるとは…』

 

絵里『…』

 

穂乃果『絵里ちゃん!』

 

絵里『穂乃果?』

 

穂乃果『楽しもうね!』

(フロイ『楽しもう!』)

 

絵里『穂乃果…』

 

 

 

 

2年という時間は、あっという間に流れた。

次々と押し寄せる日々に、正直私はついていけなかった。

でも、それでも、ついて行きたくなるぐらい楽しかった。

かけがえのない仲間ができた。

親友ができた。

思い出の場所。

全てが、私の宝物

 

 

 

だけど、

 

 

 

 

絵里『代表…』

 

美奈『どちらを選ぶの?』

 

 

日本かロシアか。

どちらも大切な私の国。

どちらにも大切な仲間がいる。

どちらかを選ぶと、どちらかと戦うことになる

 

 

絵里『…』

 

 

そんな時、ふと思い出した

 

 

 

『またいつか、一緒にサッカーしよう!』

 

『私達はいつでもあなたのことを想っている』

 

『ね?エリー!』

 

 

 

絵里『…』

 

 

 

『絵里ちとサッカーできて楽しい!!』

 

『絵里は頼りになります』

 

『絵里ちゃん!』

 

 

 

 

 

私が選んだ道はーーーーーーー

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

ユーリー「エリー、フロイ。ミーティングの時間だって」

 

フロイ「あれっ、もうそんな時間?」

 

絵里「行きましょ。フロイ」

 

 

結局私は、ロシア代表になった。

だからといって、日本代表に魅力を感じなかったわけではない。

でも、見て欲しかったのかも…穂乃果達に、

 

 

ヴィクトール「来たきた。KKE様のご登場だ」

 

絵里「もう、それはもうやめてって…」

 

ユーリー「ちょっとポンコツも出始めたよねw」

 

絵里「ユーリー!!!!」

 

「「「はははははは!!!!」」」

 

 

この最高の仲間を

 

 





ということで、絵里ちゃんのお話でした。
亜里沙ちゃんは原作と同じく、雪穂ちゃんと友達で同じ学校に通っています。車椅子生活ですが、それ以外はほとんど原作と変わりません



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第3章 41話 「理亞とルビィだけの」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
今日はお昼にも投稿したので、まだそっちを読んでいないという方は先に40話を。

ルビィちゃんから重大発表があります。最後らへんで




 

 

 

ー 日本代表キャンプ地 ー

 

 

美奈「それでは!ルビィちゃん帰還を祝って…かんぱーーい♪」

 

「「「かんぱーーい!!!!」」」

 

ルビィ「えへへ…みんなありがとう!」

 

 

韓国に勝利した日の夜。

メンバーの全会一致で歓迎パーティーが開かれた。

それぞれが楽しみながらルビィの復帰を祝い、より一層、メンバーの団結力が深まってように見えた

 

 

千歌「1番!高海千歌、歌いまーす!」

 

穂乃果「いよっ!待ってました!!」

 

月「曲は何かなー?」

 

千歌「"天城越え"」キリッ

 

穂乃果、月「渋」

 

 

 

―――――――――

 

 

 

パーティーは順調に進み、カラオケも2周目に入り始めていた。

そんな中、ルビィは理亞がいないことに気づいた

 

 

ルビィ「どこに行ったんだろう…」

 

 

 

―――

 

 

 

 

理亞「…はぁ……」

 

 

理亞はひとりで外にいた。

どうしてもみんなとパーティーを楽しめることが出来なかった

 

 

理亞「…」

 

 

 

 

 

『ガアァァァァァァァン!!!!!!』

 

『鹿角理亞のシュートはゴールのクロスバー…!!』

 

理亞『う、うそ…』

 

『日本、勝利への1点が届かない!!!!』

 

 

 

理亞「…」

 

 

どうしても頭から染み付いて離れない。

あの金属の鈍い音。

すぐには理解出来なかった状況。

会場、敵、メンバーの視線…

 

 

理亞「…」

 

 

全てが怖かった

 

 

理亞「もし、ルビィが来なかったら…」

 

 

あのまま自分はどうなってい「ルビィのこと呼んだ?」

 

理亞「!!」

 

ルビィ「…探したよ」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

ルビィが理亞の横に座り、少しの間、静寂の時間が流れた。

しかし、以外にも先に口を開いたのは…

 

 

理亞「真姫から聞いた」

 

ルビィ「…!」

 

理亞「ルビィ、右足…まだ治ってないんでしょ?」

 

ルビィ「…うん、」

 

理亞「…なんで治ってないのに来たのよ」

 

ルビィ「…呼ばれたんだ。美奈さんに」

 

 

 

韓国戦の前半までは、病院のテレビで見ていたんだ。

そんな中だった。

美奈さんから電話がかかってきたのは

 

 

ルビィ『美奈さん…!?今試合中じゃ…』

 

美奈『そこに真姫ちゃんもいる?』

 

ルビィ『い、います…』

 

真姫『?』

 

美奈『真姫ちゃんにも伝えてね』

 

美奈『今すぐにスタジアムに来れる?』

 

ルビィ『…来れます』

 

美奈『後半から、理亞ちゃんを出してもう一度"ATP"発動を狙うわ。でも、今の理亞ちゃんはかなり精神的にも肉体的にも不安定…もしかすると、』

 

ルビィ『失敗する?』

 

美奈『あくまでも可能性よ』

 

ルビィ『…』

 

美奈『…』

 

真姫『10分だけよ』

 

美奈、ルビィ『!!』

 

真姫『今のルビィなら、10分なら耐えられる』

 

ルビィ『真姫ちゃん…!』

 

美奈『決定ね。1秒でも早くスタジアムに、』

 

ルビィ『わ、わかりました』

 

真姫『ルビィ急ぐわよ』

 

ルビィ『!』

 

真姫『退院よ』

 

 

 

 

理亞「…じゃあ、美奈監督はこうなるって…」

 

ルビィ「五分五分だって言ってた。できる限り理亞ちゃんを信じたいって」

 

理亞「…」

 

理亞「なら、尚更よ」

 

ルビィ「!」

 

理亞「私は監督の期待に応えられなかった」

 

ルビィ「…」

 

理亞「あれだけみんなに助けてもらって、チャンスを作ってもらって、絶対に決めなきゃいけない一発…」

 

理亞「私は外した」

 

ルビィ「…」

 

理亞「怖いのよ。私のせいで日本が負けて、姉様…みんなが、悲しい思いをするのが…」

 

理亞「"ATP"は、本当に私が扱っていい技なのかって…」

 

ルビィ「…」

 

ルビィ「理亞ちゃんって、前はもっと強くなかった?」

 

理亞「なっ!?」

 

 

ルビィのまさかの一言に思わず声を出してしまった理亞。

今のはどういう意味か…返答次第では…

 

 

ルビィ「そんな、弱気なこと言わなかったよね」

 

理亞「っっ……」

 

ルビィ「ルビィの知ってる理亞ちゃんは、誰よりも強さを求めて、勝ちへの執着心。プライド、サッカーへの想いが強い子だよ」

 

ルビィ「今の理亞ちゃんは…どう?」

 

理亞「どうって…」

 

ルビィ「ルビィより強くなるんじゃなかったの?」

 

理亞「そ、それは…言ったけど…」

 

ルビィ「そんなんじゃ、一生勝てないよ」

 

理亞「っ!!!」

 

 

言ってくれるじゃない…

やっぱり、ルビィの言うことは気に食わない。

でも、今こうして2人だけで話しているのでさえ、前までなら異常だった。

犬猿の仲?だっけ、こういうの。

あの暴れ具合は猿よ。猿

 

 

ルビィ「なんか今ルビィ、悪口言われた気がする…」

 

理亞「気のせいよ」

 

 

かなり話した。

だが、未だにルビィの考えていることが分からなかった。

ただ、自分のことを励ましに来ているとは到底思えない。

いったい何が目的なのか

 

 

ルビィ「…理亞ちゃん、"ATP"難しいでしょ」

 

理亞「難しいとかじゃないわよ。あんなの…」

 

 

本当につくづく思う。

何故、ルビィは"ATP"をあんなにも自由自在に扱えるのか…

 

 

理亞「あの新必殺技も、」

 

ルビィ「"ラストリゾート"?」

 

 

見る限り、ただの強いシュート、というだけではなかった。

ボールの動き、オーラ、韓国の選手の吹き飛び方…自分らのシュートとは、何か別のものを感じていた

 

 

ルビィ「…"ラストリゾート"は、今のルビィが持てる全てを込めた本気のシュート。中学生の時に"ATP"を完成させた時にこの技を編み出したの」

 

理亞「"ATP"と関係あるの?」

 

ルビィ「"ラストリゾート"は"ATF"と同じで、"ATP"の力がないと発動出来ないの」

 

理亞「…??ルビィ、あんた"ラストリゾート"を撃つ時に、一瞬"ATP"を解除してなかった?」

 

 

ルビィ『…とうとうこの時が来た』シュウゥゥゥン…

 

ドンヒョク『"ATP"を解除した…?』

 

ウンヨン『体力切れか…??』

 

 

ルビィ「…そのことは、まず"ラストリゾート"の説明を聞いた方がわかるかも」

 

 

"ラストリゾート"

ルビィ曰く、今もてる最強のシュート。

ボールを"ATP"のオーラと空気の層で何重にも包み込んでコーティングし、放つ。

その2種類の層により、毎回別の方向にバウンドし、そのボールに触れれば、層の圧力で弾かれたかのように吹き飛ばされる…

つまり、「触ってはいけないシュート」

 

 

理亞「何よそれ…」

 

ルビィ「あはは…考えたルビィ自身も、おかしい技だと思うよ」

 

理亞「"ラストリゾート"のオーラが赤と青だったのはそういうこと…」

 

ルビィ「"ATP"を解除したのは、ボールに直接オーラを流し込むため。体に宿すオーラも、全てボールに注ぎ込んだんだ」

 

 

これだけの技を中学生の時に習得していた…?

逆に、今まで名が出てこなかったことが不思議でたまらなかった。

その後に何かあったのだろうか…

そういうことは聞きにくいためスルーするが、

 

 

理亞「ってか、そんな右足で"ラストリゾート"って撃ってよかったの?」

 

ルビィ「…」

 

理亞「…?」

 

ルビィ「正直、かなりやばかった」

 

理亞「っっ!ルビィ、右足が…」

 

 

ルビィの右足は震えていた。

オーラを送っていないとこうなるのか…

想像よりもルビィの右足の状態は良くないように見えた

 

 

ルビィ「あはは…無理しちゃったからね…」

 

理亞「…馬鹿なんじゃないの…」

 

 

ルビィはまた病院に戻りたいのか…

恐れを知らないそのプレーは認めるが、無茶と勇敢は違う

 

 

理亞「あんたは馬鹿よ。ルビィ」

 

ルビィ「うん、ごめんね…」

 

 

ルビィは立ち上がった。

もう戻るのだろうか…

そう思った時だった

 

 

 

ルビィ「だからね、やろうよ」

 

理亞「は?」

 

 

何を?

 

 

ルビィ「ルビィはまだ爆弾を抱えている」

 

ルビィ「理亞ちゃんはまだ自分の力に不安」

 

 

いったい何を……

 

 

ルビィ「ひとりでできないなら、作ろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ルビィと理亞ちゃん、2人の必殺技を」

 

 

理亞「!!!!!」

 

ルビィ「これが、理亞ちゃんに伝えたかったこと」

 

ルビィ「2人でやろうよ!世界に通用する、2人だけの技を!!」

 

 

 

ルビィと理亞。

2人の力がひとつになる時が来た

 

 




ということで、ルビィちゃんからの重大発表とは、ルビィちゃんと理亞ちゃんの合体技を作る。ということでした!

技の予想は自由ですが、感想でネタバレなどになるような内容は控えてもらって…オリジナル技の可能性も十分ありますし、



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第3章 42話 「世界へのきっかけ」


皆さんどうも!雷にビビりまくっているルビィちゃんキャンディーです!

今回のお話で新キャラが登場します。原作を知ってる方は「あっ!!」ってなるかもしれません




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ルビィ日本代表復帰を祝って歓迎会が開かれた。そんな中、理亞は自分の失敗の罪悪感から、ひとり韓国戦を振り返っていた。そこにルビィが現れ、話をしていく中でルビィは理亞に提案した「2人だけの必殺技を作ろう」と。新たな可能性は芽吹き始めている

 

 

 

 

 

翌日、サニデイジャパンのメンバーはグラウンドに集合していた。

練習を始める前に、次の対戦チームの発表があるようだ

 

 

真恋「大変なことになったわね…」

 

美奈「…」

 

にこ「イランが負けた…ですって!?」

 

花陽「あ、ありえないです…」

 

 

イランはアジアの中でもトップレベルのチームのひとつ。

「アジアは韓国とイランの勝負」と言われるぐらい、両国の実力は高かった。

 

そのイランが、とある国に負けたのである。

そのとある国とは……

 

 

 

 

 

真恋「中国」

 

 

月「今までって、中国強かったっけ?」

 

花陽「いえ、アジア予選の決勝まで進んだ記録は今までありません…ですが、イランは負けました…大差で、」

 

月「0-6…未だに信じられないんだけど」

 

真恋「でも、これで決まるのよ」

 

穂乃果「決まる?」

 

千歌「何がですか?」

 

真恋「FFI本戦に出場する国が」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

 

FFIの地区予選はグループリーグ形式で、試合で4勝すれば本戦進出確定となる。

現在、3勝中なのは"日本"と"中国"のみ。

なので、次の試合の勝利国が本戦進出国となるのだ

 

 

千歌「次勝てば…世界」

 

ツバサ「ここに来て、まさか実力未知数のチームと戦うことになるとはね」

 

美奈「えぇ。正直、予想外で何も対策は考えられてないわ。でもイランに大差で勝ったことを考えると…今までの相手の中では一番」

 

美奈「みんなには今日は普通に練習してもらうわ。特別メニューは後で伝えます」

 

真恋「じゃあ、解散!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

こうして通常の練習にーーガシッ!!

 

 

真姫「ルビィ」

 

ルビィ「ピギッ…」

 

真姫「言ったでしょ?今日は一日クールダウンよ」

 

ルビィ「え…そ、そうだけど…」

 

真姫「そんな足で練習する気?」

 

ルビィ「…」

 

理亞「大人しく休みなさいよ」

 

真姫「!」

 

ルビィ「理亞ちゃん…」

 

理亞「ルビィが休んでいるあいだに、私は私のことやってるから」

 

ルビィ「…うん」

 

真姫「何言ってんのよ?」

 

ルビィ、理亞「???」

 

真姫「理亞もよ?」

 

理亞「???」

 

真姫「理亞、韓国戦で自分がどうなったか忘れたの?」

 

理亞「…」

 

理亞「…」

 

理亞「…ぁ、」

 

 

理亞『まだ…行ける!!!!うぅ…』ガクガク

 

 

理亞「…」

 

理亞「…」クルッ

 

真姫「逃げない」ガシッ

 

理亞「いや、私は、」

 

真姫「はぁ…どうしてこう、無茶するメンバーしかいないのかしら…」

 

ルビィ、理亞「…」

 

真姫「はい。2人とも連行よ」ズザザザ

 

ルビィ、理亞「…」

 

 

 

花丸「…!?ルビィちゃんと理亞ちゃんが真姫ちゃんに引きずられていくずら…」

 

凛「す、すごい光景だにゃ…」

 

あんじゅ「あの二人そっくりだもんね〜」

 

 

 

 

 

こうして通常の練習に入ったサニデイジャパン。

中国という不確定要素の塊のようなチームに不安を抱きながらも、それぞれが練習をこなした

 

 

 

月「天空ぅぅ!!!!」ドォン!!

 

穂乃果「…!」

 

月「落としぃぃぃぃぃ!!!!」ドガァン!

 

穂乃果「ー 愛は太陽V3 ー!!」ドン!

 

 

穂乃果「うっ………」ググググ

 

曜「"天空落とし"が押してるよ!!」

 

穂乃果「(やばっ…重…)」

 

 

穂乃果「っっ!?」

 

 

バシュウゥゥゥゥゥン!!!!

 

 

月「決まったね!」

 

穂乃果「いやー、強いなぁ…」

 

 

月のシュートを止められなかった穂乃果は立ち上がる。

しかし、見る先は前ではなく下。

自分の手を見ていた

 

 

穂乃果「…」

 

海未「穂乃果?」

 

穂乃果「足りない」

 

海未「…?」

 

穂乃果「もう、穂乃果の力は通用しないかもしれない」

 

海未「!?」

 

月「な、何を急に…穂乃果ちゃん」

 

穂乃果「"ゴットハンドV"と"愛は太陽"だけじゃ、もう穂乃果は世界に通用しないってことだよ」

 

海未、月「……」

 

曜「じゃあ、新必殺技を作るの…?」

 

穂乃果「作りたいけど、中国戦までに新必殺技を完成させるのはちょっと難しいかな…」

 

穂乃果「だから、今ある技を限界まで極める」バッ

 

 

そう言うと、穂乃果は再びゴール前で構えた。

今の穂乃果は前を見ている

 

 

穂乃果「どんどんお願い。穂乃果は絶対に…強くならなくちゃいけないんだ」

 

海未「穂乃果…」

 

月「…」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

花陽「皆さーん!休憩してください!」

 

 

花陽の声がグラウンドに響いた。

サニデイジャパンお決まりの休憩の合図。

メンバーそれぞれが練習を中断し、体を休める

 

 

曜「あの…海未さん、」

 

海未「?曜、どうしたのですか?」

 

曜「さっきの穂乃果さん、ちょっと様子がおかしかったような…」

 

海未「…」

 

曜「なんだか、焦ってた?ような…」

 

海未「…曜は鋭いですね」

 

曜「!」

 

海未「その通りです。穂乃果は焦っているのでしょう、」

 

月「…あんなこともあったしね」

 

曜「あんなこと…?」

 

海未「はい。穂乃果が今焦っている理由。そして……」

 

 

海未「世界を意識するきっかけになった出来事です」

 

 

 

 

――――――――――――――

――――――――

―――

 

 

 

 

ー 1年前 ー

 

 

音ノ木坂学院サッカー部が9人になり、美奈を監督に迎え入れて数週間。

 

1年生の3人もだいぶ練習についていけるようになり、先輩後輩の仲も順調に深まっていた。

 

そんな、ある日だった

 

 

 

穂乃果「ふぅ…今日も練習、楽しかったなー!」

 

海未「あなたはもっと真面目さが必要です。穂乃果」

 

ことり「まぁまぁ、海未ちゃん」

 

 

いつものように3人で帰宅。

海未とことりは、今日は穂乃果の家に立ち寄る予定だった

 

 

海未「…?穂乃果。あなたの家の前に誰かいますよ?」

 

ことり「お客さんかな?」

 

穂乃果「…高校生?」

 

 

私服のその少女は、瞳の色が宝石のように美しく、顔の形も美形という名に相応しかった

 

 

「…!コンニチハ!」

 

 

穂乃果「!!外人さんだ…!」

 

海未「お上手ですね。日本語」

 

「日本が好きで、よく旅行に行くからね!勉強してるんだ!」

 

 

海未は感心した。

どこぞのキーパーも見習って欲しいと切実に思う

 

 

海未「聞きましたか?穂乃果」

 

穂乃果「な、何を…?」

 

海未「あの方も外国語を勉強して、こう会話出来るのですよ?」

 

穂乃果「日本語は外国語じゃないもーん!」

 

海未「あの方から見たら外国語です!!」

 

ことり「う、海未ちゃん…外人さん困ってるよ??」

 

海未「!?」

 

「…ハハハ……」

 

海未「コホン。それで、どうしてここに?」

 

「秋葉原を観光してたら、気になるお店を見つけてね。立ち寄ろうとしたところだよ!」

 

穂乃果「なるほどなるほど。そういうことなら!」ガラガラ

 

「!」

 

穂乃果「中にどうぞ!私、このお店の人なんだ!」

 

「そうだったんだ」

 

穂乃果「おすすめは、ほむまんだよ!」

 

 

 

―――――

 

 

 

「Buono!!」

 

穂乃果「ボ、ボーノ?」

 

ことり「イタリア語で美味しいだよ♪穂乃果ちゃん!」

 

海未「イタリアに住んでいるのですか?」

 

「えぇ。生まれも育ちもイタリアよ」

 

穂乃果「へぇ〜…」

 

海未「確か今、月はイタリアですよね?」

 

ことり「うーん…そうだと思うよ?」

 

穂乃果「元気かなぁ…」

 

「…ツキ?」

 

ことり「?」

 

「ワタナベツキのこと?」

 

「「「………」」」

 

「「「えぇぇぇぇ!!!!??」」」

 

 

まさかの月を知っている外人少女に驚きを隠せない3人。

こんな偶然があるのだろうか

 

 

穂乃果「月ちゃんを知ってるの!?」

 

「えぇ。チームメイトよ」

 

海未「チームメイト…ということは、」

 

「私もイタリアでサッカーしてるの」

 

ことり「そ、そうだったんだ…」

 

 

こんな綺麗な人がサッカー…

私服だということもあるかもしれないが、全く想像出来なかった。

やはり人は見かけによらない

 

 

穂乃果「私達もサッカーしてるんだ!」

 

「…!あなた達も…」

 

海未「穂乃果がGK。私がFW。ことりがDFです」

 

「へぇ…びっくりしたなぁ…」

 

 

穂乃果、海未、ことりをじっと見つめる少女。

少しの間、誰も喋らない謎の時間が流れる。

何故か緊張し始めた3人。

この少女に見られていると…どうしてか…血が騒ぐ

 

 

穂乃果「あの!お願いが!」

 

「?」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

ー 河川敷グラウンド ー

 

 

海未「シュートを受けてみたい…なんて穂乃果は…」

 

ことり「あはは…あの人も優しいね」

 

 

穂乃果のお願いとは「PKをしてほしい」だった。

月のチームメイト。

イタリアのサッカー選手。

聞くだけでも只者ではないオーラが凄かった

 

 

「…本当にいいの?」

 

穂乃果「…え?」

 

「私、私服だけど…」

 

穂乃果「大丈夫です!お願いします!」バッ

 

 

空は既に赤くなっていた。

少女によると、このあとすぐに空港に向かわなければいけないらしい。

もう少し話しをしていたかったが仕方ない

 

 

穂乃果「(世界のサッカー…!!)」

 

 

穂乃果には自信があった。

中学生の時に月に負けてから、FWからGKへポジション変更。

才能はすぐに開花し、今ではどんなシュートでも止められる…そう思っていた。

まるで、自分が無敵のGKにでもなったかのように…

 

 

 

「動きにくいわね…」ポンポン

 

 

海未、ことり「…」

 

穂乃果「…」

 

 

リフティングでタイミングを整える少女。

この時、穂乃果達は容姿だけではなく、ボールを蹴る姿も綺麗だ…と。

そして、只者ではないと感じていた

 

 

「…」ポン!

 

穂乃果「(来る…!!)」バッ

 

 

 

ボールを蹴り上げ

 

 

 

「…!!」グワーッ!

 

 

穂乃果「(ボレーシュー…バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「え…」

 

 

 

海未、ことり「!!??」

 

 

 

ボールは既に、ゴールの中だった

 

 

 

穂乃果「…な、なんで…」

 

 

全くわからなかった。

ボールが見えなかった。

海未のシュートも速いが、それ以前にボレーシュートのために空へ飛び、ボールを蹴るモーションから見えなかった。

本当に…シュートを、撃ったの??

 

 

「…」

 

穂乃果「今のは…必殺技?」

 

「普通に蹴っただけだよ?」

 

 

海未「…!?あれが、ノーマルシュート…」

 

ことり「ここまで…差が、」

 

 

穂乃果「…」

 

 

 

一発だ。

 

シュート一発で、穂乃果の自信。

そして、海未とことりの自信が。

 

砕け散った

 

 

見えないシュート。

反応できなかった自分に。

ショックを、隠しきれなかった

 

 

 

「じゃ、私はそろそろ…「待ってください!!」

 

「!」

 

 

穂乃果「もう一度、お願いします!!」

 

海未「穂乃果…」

 

 

穂乃果の絶対の自信は砕けた。

だが、それでも、知りたかった。

 

世界の力を

 

 

穂乃果「本気でお願いします」

 

「…」

 

穂乃果「世界の力を、教えてください」

 

「…」

 

「分かった」

 

穂乃果「!!」

 

 

少女の目付きが変わった。

分かる。

来る…

あの人の、本気のシュートが

 

 

「日本の友達、ホノカに敬意を表して」グワーッ!!

 

穂乃果「!!!!」

 

「私の一撃を」

 

 

私服…とかはもう関係なかった。

少女が集めたオーラは風を作り、ボールと少女は赤い夕陽に照らされている

 

 

穂乃果「(私は…"井の中の蛙"だね…)」

 

 

「はぁぁぁぁ!!!!!!」ドガアァァァン!!

 

 

少女のオーラは黄金に美しく。

蹴った瞬間に大剣へと変化。

それだけは分かった。

 

あとは、何もわからなかった

 

 

 

 

 

 

「ー オーディンソード ー!!!!」

 

 

 

 

 

バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

 

 

海未、ことり「!!!!」

 

穂乃果「…」

 

 

これが、世界なのか…

自分には遠すぎる

 

 

果てしなすぎる

 

 

 

 

「私の名前はフィレア。"フィレア・アルデナ"。イタリアクラブチームのキャプテンをしているわ」

 

海未「月のチームのキャプテン…」

 

フィレア「ホノカ、ウミ、コトリ。あなた達には可能性を感じるわ。もし…」

 

フィレア「もし、あなた達が私とまた戦いたいと言うならば…明日から死ぬほど練習して、力を高め…頼もしい仲間を得たならば…」

 

 

 

フィレア「世界でまた会いましょ」

 

 

穂乃果「…!!」

 

 

 

これが、穂乃果が世界を意識するきっかけになった…

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

曜「そ、そんなことが…」

 

月「僕も帰ってきたフィレアから穂乃果ちゃん達の話を聞いて驚いたよ…」

 

月「あの子は凄い。僕では到底適わなかった」

 

ツバサ「月でも、適わない…とは、」

 

月「穂乃果ちゃんが焦る気持ちは、本当によく分かるよ」

 

月「恐らく、今の日本ではフィレア。そしてイタリアには勝てない」

 

「「「!!!!」」」

 

月「ルビィちゃんや理亞ちゃんの"ATP"に頼るだけではダメだ」

 

月「世界の壁は、想像以上に果てしないんだよ」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

ー イタリア ー

 

 

フィレア「…」

 

鞠莉「どうしたのよフィレア…ぼーっとして」

 

フィレア「…」

 

フィレア「あの人達のことを、考えてた」

 

鞠莉「あの人達?」

 

フィレア「…」

 

フィレア「圧倒的な差を思い知らされても、死ぬことのなかった目。立ち向かうその勇気…私は、信じた」

 

フィレア「また会えると。あの人達に…」

 

 

 

フィレア「ホノカ…」

 

 

 

「白い流星」は世界にて待つ

 

 





ということで、フィディオ・アルデナの登場です。
名前は女性っぽく変えてありますが、キャラはフィディオです。



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第3章 43話 「姉失格」


皆さんどうも!オリオンの刻印を見たルビィちゃんキャンディーです!いや〜、ね?次回は波乱の展開になりそうで怖いです…

今回のお話は世界編初?かな?かなりガチめのシリアス回になります。原作をモデルにしたお話なので、わかる方にはわかると思います。




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

穂乃果は自分の力の足りなさに焦りを感じていた。1年前、イタリアのサッカー選手、フィレアと出会い、世界と自分の圧倒的な差をその身で味わった穂乃果。世界を超えるためにはどうすればいいのか…穂乃果は今日も足掻き続ける

 

 

 

 

 

ルビィ「ー 超ファイアトルネード ー!!」ドガァン!

 

理亞「!!」バッ

 

 

ルビィのシュートが理亞の頭上を流れる。

理亞はそのボールに飛びつくように…追撃を、

 

 

理亞「ー ウルフレジェンドGX ー!!」ドガァン!!

 

 

凛「すっごい威力にゃ!!」

 

千歌「でも…あれ??」

 

 

ルビィ、理亞「!!!!」

 

 

威力は十分。

しかし、タイミングが合わず、ボールはゴールの枠を捉えることができなかった

 

 

凛「また失敗だにゃ…」

 

梨子「本当に出来るの?あの2人で合体技なんて…」

 

 

 

理亞「ルビィのタイミングが悪い!!」

 

ルビィ「ルビィが先に撃ってるんだから、タイミングが悪いもないでしょ!!」

 

理亞「なによ、私が下手くそだっていうの!?」

 

ルビィ「そんなこと言ってないよ!!」

 

 

「「「…………」」」

 

 

いや、無理でしょ。

練習が始まってずっとこの調子…

すぐに喧嘩、何かあれば喧嘩…

言ってはいけないと分かっているが、ルビィと理亞以外のメンバーはほぼほぼ無理だと思っていた

 

 

海未「ですが、何故上手くタイミングが合わないのでしょうか…」

 

月「威力は同レベルだから原因は…」

 

 

理亞「ーー!!ー!?」

 

ルビィ「…!!ー!!ーー??」

 

 

月「やっぱり…あれ?」

 

花丸「ルビィちゃんがあんなに言い争っているところ、初めて見たずら…」

 

果南「うーん、やめた方がいいんじゃない?」

 

月「…いや、」

 

 

 

理亞「いい?今度はもっと強めに!!分かった!?」

 

ルビィ「分かったよ!!」

 

 

 

果南「何故か続けるんだよね…」

 

海未「どんなに言い争っても、何故かやめるという考えには行かないんですね…」

 

穂乃果「うん!元気だね!2人とも」

 

花丸「そういう問題ずら…?」

 

 

何がともあれ、2人の合体技が完成すれば、とてつもない戦力になることは分かりきっていた。

なので誰も止めることは無い。

少し遠くから、ヒヤヒヤしながら見守るだけであった

 

 

にこ「…そう言えば、ひとつ気になることがあるんだけど、」

 

穂乃果「気になること?」

 

にこ「あの2人、特にルビィがあんな状態の時って、絶対に止めに入るのがいたわよね…?」

 

果南「…確かに」

 

月「それって…あの人?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「…」ボーッ……

 

 

 

 

「「「…………」」」

 

 

 

ダイヤもダイヤで心配だった。

あのダイヤ。

真面目なダイヤが、ぼーっとしている…

いつもだったら、すぐにルビィと理亞のいい争いを止めに行っているはず…

 

 

果南「だ、ダイヤ?」

 

ダイヤ「…………っ!?果南さん!?」

 

果南「ぼーっとしてどうしたの??」

 

ダイヤ「な、何でもありませんわ!!考え事…そう!考え事をしていました!!」ポリポリ

 

果南「…」

 

ダイヤ「…」ポリポリ

 

果南「…」

 

ダイヤ「…」ポリポリ

 

果南「そっか、」

 

ダイヤ「(ほっ…)」

 

 

ダイヤは安堵した。

何に対して安堵したのかは知らないが、我に返ったダイヤはすぐに走り出す

 

 

ダイヤ「あーなーたーたーちぃぃ!?」

 

ルビィ、理亞「!!!??」

 

 

 

希「ダイヤちゃんは相変わらずやなぁ…」

 

果南「…」

 

聖良「果南さん?」

 

 

せっかくダイヤがいつもの?ダイヤに戻ったのにも関わらず。

果南の顔は晴れていなかった。

それどころか先程よりも暗くなっている

 

 

果南「…ダイヤは何か隠してる」

 

聖良「隠してる?さっきのですか?」

 

果南「ダイヤは嘘つくとホクロをかく癖があるんだよね。あれは完全に何か隠してる」

 

希「何かって…?」

 

果南「分からない。でも、これだけは言える…」

 

 

 

 

 

果南「ダイヤが一人で悩んでいる時は、かなりヤバい時だよ」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

その日の夜。

果南は夕食を終え、自分の部屋に向かっていた。

ダイヤは先に部屋に向かったため、既に着いているはずだ

 

 

果南「明日は花陽と花丸の大食い対決…どっちが勝つのかな…」

 

果南「ん?」

 

 

果南は部屋の前まで来た…のはいいのだが、部屋の中で話し声が聞こえる。

この声は…

 

 

果南「(ダイヤ…?電話かな?)」

 

 

別に盗み聞くつもりはなかった。

だが、昼間のこともあったので、扉の前から動けなかった。

会話の内容は、微かに聞こえる

 

 

 

「ですが…わたくしは、世界に…」

 

果南「(…?)」

 

「約束が違いますわ…大会が終わるまで待つと…」

 

果南「(約束?)」

 

「ルビィが復帰したから…?ですが、」

 

果南「(ルビィのこと…?)」

 

「…学力も問題は無いはずです…それでも、」

 

 

 

 

 

 

 

「わたくしに代表を離脱しろと言うのですか…」

 

 

 

 

 

果南「!!!!???」

 

 

代表…離脱!?

ダイヤは、いったい誰と…何を…「果南ちゃん?」

 

 

果南「!?」

 

千歌「部屋に入らないの?」

 

果南「いや、待って、いま…ガチャっ!!!

 

 

果南「…」

 

 

 

最悪だった

 

 

 

ダイヤ「…聞いてたのですか?」ギロッ

 

果南「…」

 

千歌「???」

 

 

ダイヤの目は、怒りと悲しみが混ざったような…ひとことでは言い表せないような目だった

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

果南「ごめん…悪いと思ってるよ、」

 

ダイヤ「はぁ…もういいですわ」

 

 

あの後、果南とダイヤは外にいた。

どうやら、ほかのメンバーには聞かれたくないらしい…

それもそのはず。

代表離脱なんて言葉を聞いたら、かなり深刻な内容だということは誰でもわかる

 

 

果南「それで、さっきの話は…?」

 

ダイヤ「……」

 

ダイヤ「まず、果南さんには謝らなくてはいけません」

 

果南「…?」

 

ダイヤ「わたくしは、果南さんと同じく、プロサッカー選手の道へは進めませんわ」

 

果南「え…」

 

ダイヤ「そして、日本代表黒澤ダイヤも、中国戦を最後に終了ですわ」

 

果南「な、なんで…理由は?」

 

ダイヤ「…………」

 

 

ダイヤは下唇を噛んでいた。

血が出そうだった。

それだけでも、ダイヤの感情が伝わってくる

 

 

 

ダイヤ「わたくしは、家を継がなくてはいけないのですわ」

 

果南「…黒澤家」

 

ダイヤ「はい。由緒ある家ですので、避けては通れそうにありません…」

 

ダイヤ「黒澤家を継ぐために、それ相応の勉学を身につける必要がある…その為の大学…その為の勉強を、」

 

ダイヤ「世界に行かずに始めろ。ということです」

 

果南「……」

 

 

酷いとは思った。

無情だとも思った。

だが、家の事情…

その4文字が、果南の不満の行き場を迷わせた

 

 

果南「だからって…最後まで戦わせてくれないなんて…」

 

ダイヤ「最初は、世界の戦いが終わるまで…という約束でした…しかし、」

 

ダイヤ「…」

 

 

 

『"紅き流星"黒澤ルビィが止まりません!!!!いったい誰が、彼女の進撃を抑えられるのか!!??』

 

 

 

ダイヤ「ルビィが再び、過去の才能を開花させ、日本にとって、なくてはならない存在になりました…」

 

ダイヤ「お父様は言いました。一人は自由にしていい。と。しかし、それは才能がある方だ。とも言いました」

 

果南「…!!…じゃあ、」

 

ダイヤ「はい。サッカーの才能はルビィの方が圧倒的です。ですので…わたくしが、黒澤家を継ぐことは…「やめて!!!!」

 

ダイヤ「!?」

 

果南「…やめてよ」

 

 

ダイヤには分かった。

何故、今果南が怒鳴ったのか。

やはり果南は優しい…そう思っていた

 

 

果南「ダイヤ。自分に才能がないとか、弱いとか言わないで」

 

ダイヤ「…」

 

果南「ダイヤは、ほんっっっっとうに努力してきたじゃん…日本代表にもなったじゃん…なのに、自分から劣を認めるなんて…悲しいよ」

 

ダイヤ「…果南さん、」

 

果南「どうにかならないの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「…わたくしは、受け入れようと思います」

 

 

 

 

果南「!!??」

 

ダイヤ「わたくしは…「ちょっとまって!?」

 

果南「ダイヤは、そんな簡単に世界への挑戦を捨てちゃっていいの!?今までの、今の、この先の夢を捨てちゃっていいの!?」

 

ダイヤ「…わたくしには、」

 

ダイヤ「夢を追いかける資格などありませんわ」

 

果南「…っ!?」

 

ダイヤ「わたくしは、最低な姉です」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

全国大会が終わり、わたくし達が次に目指す先へと…プロサッカー選手を目指し、日々努力していました…しかし、

 

 

 

ダイヤ父『申し訳ないが、プロサッカー選手を目指すのは諦めてくれ』

 

ダイヤ『…!?何故、ですか?』

 

ダイヤ父『黒澤家を継いでもらわなければならないからだ』

 

ダイヤ『……!!』

 

 

わたくしは何も言えませんでした。

確かに黒澤家を継ぐものは必要。

そうなると、必然的に長女であるわたくしになるはずですわ。

これは、避けられない運命なのだと

 

 

ダイヤ父『…だが、な』

 

ダイヤ『…?』

 

 

そして、次のお父様の言葉が、わたくしの姉失格の感情を生み出しました…

 

 

ダイヤ父『ルビィがこのままサッカーが出来ない体、または、サッカーをやらないと言うのならば…』

 

ダイヤ父『ダイヤ。お前は自由にしていい』

 

ダイヤ『…!!?』

 

ダイヤ父『酷いとは自分でも思う。だが、お前もサッカーがしたいだろ?』

 

ダイヤ『……はい、』

 

ダイヤ父『もし、ルビィがサッカーを続けると言うならば、お前はサッカーをやめるんだ』

 

ダイヤ『…』

 

ダイヤ父『才能ある方を許そう。"黒澤家は常に勝利のみ"。分かるな?』

 

ダイヤ『…はい、』

 

 

 

 

 

 

この時、一瞬だけ。

 

 

 

一瞬だけ。考えてしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィが戻ってくると、わたくしはサッカーが出来なくなる…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ですが、

 

 

 

 

 

 

ワアァァァァァァァァ!!!!!!!!

 

 

ルビィ『理亞ちゃん、おまたせ』

 

 

『黒澤ルビィだぁぁぁぁぁ!!!!!!』

 

 

ダイヤ『………』

 

 

 

ルビィはすぐに戻ってきました。

そして、誰もを力で黙らせる、新必殺技もお土産に……

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

果南「……」

 

ダイヤ「最低でしょう?果南さん、」

 

果南「……」

 

ダイヤ「妹の復帰を、心から祝えない姉…」

 

ダイヤ「才能に嫉妬し、現実から逃げようとする……」

 

ダイヤ「そんな、わたく……わたくし、は…「ダイヤ」

 

 

ダイヤ「!」

 

 

果南「気づいてあげられなくてごめん」

 

ダイヤ「…」

 

ダイヤ「…」ボロボロ

 

ダイヤ「なんで、果南さん、が…謝るのですか…」ボロボロ

 

果南「…私には、これぐらいしかできない」ハグっ

 

ダイヤ「……」ボロボロ

 

ダイヤ「温かい、ですわね」ボロボロ

 

果南「…」ギュッ

 

ダイヤ「わたくし…サッカーをやめだく…ない…」ボロボロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜「…どうするの?」

 

梨子「どうする…と言っても、」

 

千歌「私達じゃ、何も出来ないのかな…?」

 

花丸「…なんだか、千歌ちゃんに呼ばれてついて行ったら衝撃的な事態になってたずらね…」

 

ルビィ「…」

 

花丸「ルビィちゃん?」

 

ルビィ「ルビィの、せい、なのかな?」

 

千歌「…」

 

千歌「ルビィちゃん」

 

ルビィ「?」

 

千歌「その言葉。絶対にダイヤさんに言っちゃダメだよ」

 

ルビィ「え…」

 

千歌「そうしたら、余計ダイヤさんは自分を責める。今度はダイヤさんが、サッカーを…拒絶し始めるよ」

 

ルビィ「…分かった」

 

「「「…………」」」

 

 

千歌「本当に、何も出来ないの???」

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「………………」

 

 

 

 

 

こうして、事態は悪化することも、改善することもなく…

 

中国戦当日となってしまった

 

 





はい。次回から中国戦です。
この件はいったいどうなるのか…すべては、次回後に続きます



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第3章 44話 「中国戦 "蹴球雑技団"」


皆さんどうも!今日はずっと墓掃除をしていたルビィちゃんキャンディーです!

雑草を引っこ抜いたら、アリが大量にゾワゾワァって出てきたので死ぬかと思いました




 

 

 

 

 

ー 中国戦 当日 ー

 

 

結局、千歌達、そして果南はダイヤの代表離脱を止めることはできなかった。

すでにダイヤは全員に離脱を発表し、美奈からも同意を得たという。

そんなことがあり、バスの中には異様な空気が漂っていた

 

 

 

「「「…………」」」

 

 

花陽「…静かだね…」

 

花丸「中国戦の緊張。そして、ダイヤさんの件…両方でみんなの精神が不安定になっているずら…」

 

花陽「だ、大丈夫なのかな…」

 

花丸「ずら…」

 

 

あの穂乃果でさえ、何も話すことはなかった。

由緒ある家…穂乃果は前にも似たようなことを経験したことがある

 

 

海未「やはり、厳しいものがありますね…」

 

穂乃果「うん、伝統…か」

 

 

"海未が稽古をすべてやめたこと"。

それは、海未がサッカーを本気でやるため。

海未自身が願い、家族がそれを受け入れた。

しかし、穂乃果はそのころ悩んだ。

 

海未にサッカーに専念しないか?と提案したのは穂乃果だった。

それにより、今までに積み上げてきた努力を一瞬で。

穂乃果の一言で海未は捨てた。

本当に良かったのかと…

穂乃果は罪悪感で押し潰されそうになった時期があった

 

 

穂乃果「無理に励ますことは…今回はできないよ…」

 

海未「穂乃果…」

 

穂乃果「…」

 

 

このまま最悪の空気で、会場入りするのか…と思っていた時だった

 

 

 

 

 

千歌「聞いてください」

 

 

 

曜「千歌ちゃん?」

 

穂乃果「…?どうしたの?」

 

 

全員が千歌に注目した。

この悪い空気を断ち切るような、強い声。

話の内容は何となく予想できた

 

 

千歌「私は考えました。ダイヤさんとこのまま、一緒にサッカーを続ける道はないのか…って、」

 

ダイヤ「っっ……」

 

千歌「今日までに、たくさん考えました。あの手この手…でも、全部実現不可能だった…」

 

曜、梨子「……」

 

花丸、ルビィ「……」

 

果南「…」

 

千歌「なら、出来ることで最良なことってなんだろう…と、さっきまで考えていました」

 

千歌「私達に出来ることって…なんだろう、って」

 

 

千歌「答えは、ひとつだけ浮かびました」

 

 

 

 

 

 

千歌「…勝ち続けよう。みんな」

 

 

 

「「「!!!!」」」

 

ダイヤ「!!」

 

美奈「…」

 

 

千歌「私達に出来ること。それは、ダイヤさんの意志を。想いを繋いで、世界でも勝ち続けること」

 

千歌「全くの無意味かどうかは分かりません。ダイヤさんのためになるのかも分かりません…」

 

千歌「でも、でも…負けたら…」

 

 

 

 

千歌「ダイヤさんも、みんなも、悲しむよ…」

 

 

果南「千歌…」

 

穂乃果「…」

 

 

千歌「それに、教えてあげようよ!私達が世界一になって、ダイヤさんに。ダイヤさんがいたチームは世界一なんだよって、」

 

千歌「ダイヤさんも、世界一のチームの…大切な仲間なんだって!!」

 

 

 

ダイヤ「…千歌さん、ありがとうございます」

 

 

千歌「…!ダイヤさん、」

 

ダイヤ「あなたの言葉に勇気をもらいましたわ。わたくしからもお願いします」

 

ダイヤ「中国に勝利し、そして、世界を掴んでください」

 

「「「!!!!」」」

 

ダイヤ「わたくしは誇りに思います。このチーム、最高の仲間と、共にサッカーができて…」

 

千歌「ダイヤさん…」

 

ダイヤ「勝ちましょう!皆さん!」

 

 

穂乃果「その為には、こんな暗いモードじゃ、ダメだよね!」

 

海未「穂乃果…あなた、」

 

穂乃果「穂乃果も勇気をもらったよ!千歌ちゃん!みんな、今日勝てばついに世界だよ!!」

 

穂乃果「私達の想像もつかない選手が、穂乃果達を待っているんだ!!」

 

穂乃果「勝とう!絶対に!私達の物語は、こんなところでは終わらせないよ!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

果南「………………」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

ワアァァァァァァァ!!!!!!

『さあ、とうとうこの日がやってまいりましたました!!FFIアジア予選、日本 対 中国!!この試合を制した国が、FFI本戦への切符を手にします!!』

 

 

穂乃果「行くよ、みんな!!!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

『まずポジションについたのは日本、サニデイジャパンです!!サウジアラビアや韓国という、強豪国を薙ぎ倒し、ここまで駒を進めできました!!注目選手はなんと言ってもこの2人!!』

 

 

月「早速だね」

 

ツバサ「えぇ。宜しくね」

 

 

『渡辺月と綺羅ツバサのツートップ!!今や、オフェンスの中心人物と言っても過言ではない両選手。中国相手に、いったいどのような動きを見せてくれるのか!?』

 

 

FW…………渡辺月、綺羅ツバサ

 

MF……星空凛、園田海未、南ことり

 

MF…………矢澤にこ、統堂英玲奈

 

DF……東條希、鹿角聖良、優木あんじゅ

 

GK………………高坂穂乃果☆

 

3-2-3-2

 

 

 

 

 

 

『そして、対するは中国、"蹴球雑技団"です!!!!』

 

 

ハオ「日本はみんな知ってる通り、簡単に倒せる敵じゃない!みんな、全力で行くよ!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

『中国はなんと言ってもプレースタイルが独特!!中国選手ならではの動きなのかもしれません!その実力はイランを降したことが物語っております!!日本と中国、どちらが勝利するのか全く予想がつきません!!』

 

 

FW………シュウ・チュナ、ワン・タンメオ

 

MF……………リ・ハオ、チャウ・シン☆

 

MF…タン・タンミン、チェ・リン、ウー・ロンチ

 

DF…タオ・ルウ、シャオ・ラウ、ミン・インチー

 

GK………………クン・フーチェ

 

3-3-2-2

 

 

 

 

 

 

鞠莉「千歌っちとルビィと理亞を出さない…」

 

フィレア「後半からかな?」

 

鞠莉「うーん…美奈さんのことだし、何かあるわね」

 

 

 

花丸「千歌ちゃんがスタメンじゃないのは…もしかして初めてずら?」

 

花陽「確かに…」

 

千歌「ことりさんがDF以外のポジションをするところを見るのは…久しぶりだよね」

 

花陽「全国大会の決勝戦以来、だね」

 

 

 

 

 

ピーーーーー!!!!

『ついに始まりました!!FFIアジア予選の最終試合!!前半は日本ボールからスタート!渡辺月と綺羅ツバサが上がっていく!!』

 

 

月「まずは出方を伺いたいところだけど…」

 

ツバサ「いっきに決めるのもありね」

 

 

ツバサと月のドリブルはサニデイジャパンの中でもレベルが高い。

いったい中国がどのような作戦、対応をしてくるのかは分からないが、まずはこちらから勝負を仕掛けてみる

 

 

曜「パス交換が速い…!!」

 

千歌「このまま行けば…」

 

 

月「!」パス

 

ツバサ「!」パス

 

 

ハオ「へぇ…!あの2人やるね」

 

シン「えぇ。だけど…」

 

 

ここまで順調な月とツバサ。

なんと、2人だけで中国の選手を全員突破し、早くもゴール前まで来ていた

 

 

フーチェ「さて、どっちが撃ってくるのかしら?」

 

月「それはもちろん!」パス

 

 

月はボールを空高く蹴り上げた。

だが、"天空落とし"ではない。

すでに"ゴットストライカー"が構えている

 

 

ツバサ「はあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

バリバリバリバリ!!!!!!

ボールに入りきらない巨大なオーラが、天で電気のように迸る。

白く神々しいそのオーラは、瞬間。

破壊の一撃

 

 

ツバサ「ー ゴットノウズ ー!!」ドガアァン!!

 

 

花陽「来ました!!ツバサさんの必殺シュート!!」

 

果南「いつ見ても…すごいシュートだね、」

 

 

 

中国ゴールに放たれた神の一撃。

しかし、それを前にGKのクン・フーチェは動じる素振りなど見せない

 

 

フーチェ「なかなかのシュート…だけど、」

 

 

フーチェが両手に持つのは、巨大な扇子。

しかも鉄製

 

 

フーチェ「っっ!!!!」バッ!

 

フーチェ「ー 龍神鉄扇 ー!!」

 

 

鉄扇は舞に呼応し、炎の扇子へと姿を変えた。

フーチェは舞を続ける。

そして、威力が落とされたボールは最後に鉄扇に挟まれ、完全に殺されるのだ

 

 

ツバサ「!!」

 

月「"ゴットノウズ"が止められた!?」

 

 

『止めたぁぁ!!GK、フーチェ!強力な必殺技で"ゴットストライカー"のシュートを防ぎました!!』

 

 

フーチェ「簡単にはゴールはあげないよ」

 

ツバサ「へぇ…面白いわね」

 

 

この試合、初めての中国ボールとなった。

日本は積極的にディフェンスを仕掛ける…が、

 

 

リン「ボールはあげないよ!!」バッ!

 

海未「!?なんですか、その動きは…」スカッ

 

 

ロンチ「奪えるもんなら奪ってみて!」

 

凛「ちょっと動きが怖いにゃ!?」スカッ

 

 

中国の選手達の動きはかなり…独特だった。

逆立ちで歩き、逆立ちでパス。

バク転、側転、宙返りでボールをキープ…

 

 

にこ「まるでサーカスを見てみるみたいね…」

 

英玲奈「テクニックにはにこに近いものを感じるが、タイプが全然違う…」

 

 

 

スルスルと突破される日本。

独特なプレーで翻弄されているが、それだけではない

 

 

ハオ「そらっ!あまいよ!」バッ

 

聖良「…!?」

 

あんじゅ「ちょっと、普通に上手くない!!?」

 

 

梨子「聖良さんとあんじゅさんが同時に突破された…!?」

 

曜「あのリ・ハオって選手…かなりレベルが高いよ」

 

 

ただ独特なプレーをするだけではない。

普通にサッカーをしたとしても、中国の選手達のレベルは並大抵のものでは無い。

DF2人をまとめて抜き去るテクニックとフィジカル。

中国のエース、リ・ハオはもう既にゴール前だ

 

 

穂乃果「来い!!!」

 

 

ハオ「私のこのシュート…止められるかな?」

 

 

ハオはそう言うと、中国の選手達に合図を送る。

すると、中国の選手達はハオのもとへ…

そして始めたのは…組み体操

 

 

ハオ「必殺タクティクス!」

 

「ー 万里の長城 ー!!」

 

 

穂乃果「このタイミングでタクティクス!?」

 

 

シン「行け!!ハオ!」

 

ハオ「えぇ!!」

 

穂乃果「!!」

 

 

中国の選手達は全員の力を利用し、ハオを空高く。

雲よりも高く飛ばしあげた。

そこから放たれるのは、空から地を射る矢

 

 

ハオ「ー 天空隼弾 ー!!」ドォン!

 

 

雲を抜け、一直線にゴールに迫るシュート。

穂乃果の真上。

しかし、穂乃果の技は360°射程範囲内だ

 

 

穂乃果「ー 愛は太陽V3 ー」ドン!!

 

 

自分の真上に発動した穂乃果の太陽。

この太陽に入れば最後、最高火力でボールの威力を焼き殺す。

 

まもなく太陽に突っ込む隼弾。

 

日本の選手全員が確信した。

 

 

止めた。と、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

穂乃果「え、貫い…」

 

 

 

 

バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

『ゴール!!!!先制点は中国だぁ!!』

 

 

 

花陽「"愛は太陽"を突き抜けた…!?」

 

花丸「今のは、いったい…」

 

真恋「…まさか、あのシュート、」

 

 

 

穂乃果「太陽を突き抜けた…??焼き焦がす前に、突き抜けたってこと??」

 

 

リ・ハオのシュート、"天空隼弾"。

上空から垂直に限りなく近い角度で放たれるそのシュートは、落下エネルギーを利用し、重く、そして速く。

穂乃果の太陽がボールの威力を焼き殺す前に、太陽を突き抜けたのだ

 

 

ハオ「シュートって、こういう撃ち方もあるんだよ」

 

穂乃果「…やられたよ」

 

 

日本は改めて理解した。

イランを破った時点で分かってはいたが、中国は…純粋に、普通に、強い。

この試合…勝つか負けるかは、自分達の真っ向勝負の強さにかかっている

 

 

 

日本 0-1 中国

 

 





みんなもお墓参り&掃除はしようね!



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第3章 45話 「中国戦 "弱いのならその次へ"」


皆さんどうも!昨日、ワンピースと天気の子を見てきたルビィちゃんキャンディーです!いや〜、今作のドラゴンボールといい、ワンピースといい、鳥肌レベルの映画ラッシュでもう最高です。天気の子に関しては、大学に合格して東京に行くという想いがめっちゃ強くなりました

さて、今回のお話では強力な必殺技が登場!?

ちなみに今、秋田へ帰省中なので、スーパーこまちの中で執筆しました





 

 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ダイヤの代表離脱が決定し、中国戦がスタートした。ツバサと月が前半開始早々に畳み掛けるも、キーパーにより止められてしまう。その後、技術レベルの高い中国の攻撃に何も出来なかった日本は、中国のエース、リ・ハオのシュートを許してしまった。穂乃果の"愛は太陽"が破られ、日本は早くも失点してしまったのである

 

 

 

 

『前半開始早々、決めたのは中国のリ・ハオだ!!!!日本、高坂穂乃果の必殺技が通用しなかったように見えたが!?』

 

 

穂乃果「…」

 

月「穂乃果ちゃん」

 

穂乃果「!」

 

月「リ・ハオ相手に"愛は太陽"は使っちゃダメだ。落下エネルギーを利用してパワーとスピードを何十倍にもあげているんだ。簡単には止められないよ、」

 

穂乃果「…分かった」

 

 

穂乃果の技が真正面から破られたのは、実は今大会、"天空隼弾"が初めてだった。

サウジアラビア戦では、砂嵐による目くらまし。

オーストラリア戦では、海中に潜るシュート。

両方、技をぶつけることすら許してくれなかった。

しかし、今回は普通に破られた。

それ即ち、穂乃果の技がついに通用しなくなってきている。ということだ

 

 

穂乃果「あれを止めるには…」

 

 

 

 

 

ピーーー!!!!

試合が再開され、月とツバサが再度突破を試みる

 

 

ツバサ「さっきはキーパーに止められちゃったわね」

 

月「なら、今度はもっと強いシュートを撃つのみだよ!」

 

 

月の前に立ち塞がるのは、先程得点したリ・ハオ。

見る限りでは、かなりのテクニックの持ち主だと月は思っていた

 

 

月「(そう簡単には抜けーーー

 

ハオ「止まってるよ!」バッ

 

月「え!?」

 

 

凛「月ちゃんがあんな簡単に!?」

 

海未「まさか、ここまでとは…」

 

 

『リ・ハオが渡辺月からボールを奪った!!再び中国が攻め上がります!』

 

 

ハオ「よっ!」

 

ことり「ー ワンダーゾーン ー!」キラキラ

 

ハオ「!!(あれは…)」

 

 

ことりは、これ以上の進撃を食い止めるために、絶対領域"ワンダーゾーン"を発動した。

この中に入ればことりの意のままに…

あと少しで、リ・ハオが"ワンダーゾーン"の中に入る……

 

 

ハオ「シン!」パス

 

ことり「!!」

 

ハオ「あなたの技の仕組みは分かってるよ!」

 

 

しかし、リ・ハオはゾーンに足を踏み入れる前にパス。

いつもだったら、すぐに反応できずに"ワンダーゾーン"の中に入ってしまう選手がほとんどだが、中国は反射神経が磨き上げられているため、そう簡単には捕まってくれない

 

 

聖良「希さん、あんじゅさん!FWの2人をお願いします!」

 

希、あんじゅ「任せて!!」

 

 

聖良「私がお相手します」

 

シン「少しは手応えがあるのかしら、」

 

 

パスコースを塞いだ日本。

あとは、ドリブルで攻め込まれるのを防ぐだけ…しかし、いくらディフェンスに優れた聖良が相手になったとしても…

 

 

シン「っ!」バッ

 

聖良「速っ…!?」

 

 

ルビィ「聖良さんも抜かされた…」

 

理亞「姉様!!」

 

 

シン「口ほどにも無いね!」

 

聖良「…」

 

シン「さあ、決めて!ハーーー

 

 

 

 

 

ーーーガキィィィィィィィィン!!!!!!

 

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

中国「「「!!!!??」」」

 

 

 

聖良「ー スノーエンジェル ー ふぅ…待っていました。あなたが油断する時を」

 

 

『チャウ・シンを止めたぁぁ!!日本のDFの要、鹿角聖良がピンチを救いました!!』

 

 

タンメオ「まさか、わざと抜かされたフリをして…シンが油断したところを、」

 

ハオ「…!やるじゃん、あのDF!」

 

 

聖良「日本も負けていませんよ!にこさん!」パス

 

にこ「そうよ聖良、あんたのファインプレーは無駄にはしないわ!」

 

 

『おっと!ここで"日本のファンタジスタ"にボールが渡りました!!矢澤にこからはそう簡単にはボールは……』

 

 

にこ「ほらほら!!」バッ

 

チュナ「え!?」スカッ

 

にこ「どうしたのよ!!」グワン!

 

リン「何!?あの動き…」スカッ

 

にこ「さっきまでの威勢は…」グワーッ!!

 

タンミン「動きが読めな…」

 

 

にこ「どこいったのよ!?」

 

にこ「ー ファンタスティックキープ ー!!」

 

 

『奪えない!!奪えません!!矢澤にこの無双が始まった!!いくら中国と言えども、世界レベルのキープ力をもった矢澤にこには、手も足も出せないのか!?』

 

 

ラウ「あの子…想像以上のフィジカルね」

 

ルウ「小柄なわりにはやるじゃない」

 

 

DF2人もにこのディフェンスに加勢する。

これ以上は行かせるわけにはいかない。

しかし、にこのドリブルを止めることに意識し過ぎたために…

 

 

にこ「頼んだわよ」パス

 

海未「はい、ナイスです。にこ」

 

 

ルウ「バックパスで後ろの選手に!?」

 

ラウ「しまった…園田海未は、」

 

 

海未「ー 風神の舞 ー!!」ビュウゥゥゥ!!

 

 

ルウ、ラウ「きゃあぁぁ!?」

 

 

2人は、にこの後ろにいた海未が見えていなかった。

海未の突破には力強さがある。

一瞬の隙をつき、作ったチャンス。

海未はシュートの構えに入った

 

 

海未「これならどうですか?」バッ

 

 

渦巻く雷雲。

震える天地。

海未の渾身と言える一撃が、フィールド中に轟いた

 

 

海未「ー 天地雷鳴 ー!!」ドガアァン!!

 

 

聖良「海未さんの必殺シュート!!」

 

穂乃果「あの威力なら…!」

 

 

海未のシュート、"天地雷鳴"はサニデイジャパンの中でもトップクラス。

どんな強者だとしても、このシュートを真正面から受け止めると言うのならば、ただでは済まない

 

 

だからこそ、

 

 

 

インチー「私に任せて!!」バッ

 

 

中国の守りは硬く。厚い。

 

 

インチー「ー 爆喰獅子 ー!!」ガブリ!

 

海未「シュートブロック!?」

 

にこ「威力ががく落ちしたわよ…!?」

 

 

巨大な獅子が海未のシュートに噛み付いた。

それにより、威力は半分以下に。

渾身のシュートもただのシュートへ。

海未の込めた想いは、全て獅子が喰ってしまったのだ

 

 

フーチェ「ー 龍神鉄扇 ー!!」バッ!

 

 

海未「止められましたか…」

 

ことり「あのシュートブロック…かなり強力な技だね」

 

にこ「あのブロックに捕まらないスピードと、GKを超える威力が必要よ。かなり厳しいわね…」

 

ツバサ「…」

 

 

『さあ、前半の半分が過ぎようとしています。点差は1。日本が追いかける形となっています。日本はシュートを撃てているものの、中国の硬いディフェンスにより決めきることができません!!!!』

 

 

 

チュナ「ハオ!!」パス

 

ハオ「よしっ!」

 

 

希「あかん!またシュートを…」

 

あんじゅ「希ちゃん!瞬間移動行ける!?」

 

希「任せといて!!」ビュン!

 

 

希は"バニシングカット"でディフェンスを試みる。

中国が"万里の長城"でリ・ハオを飛ばすのが先か、希がボールを奪うのが先か…

 

 

 

 

ハオ「(やばっ、間に合わ…

 

希「もーらいっ!!」ビュン!

 

 

穂乃果「希ちゃんが取ったよ!」

 

聖良「流石です!」

 

 

そう。

希はボールを奪い取った。

そして前を見た…そこには、

 

 

 

シン「読めてるよ。あなたの達の考え」

 

 

 

足を伸ばす、チャウ・シンの姿があった

 

 

シン「取った!!」ズザーッ!

 

希「あかん!」

 

 

ルビィ「完全に読まれてる!!」

 

理亞「ルビィが希さんから奪った時と同じ…瞬間移動でボールを奪われたのと同時にボールを奪い返す…」

 

果南「ゴールは目の前だよ…」

 

 

ハオ「助かったよ、シン!」

 

シン「えぇ。さあ、2点目を決めるよ!」

 

 

ゴール前で再び組み体操のように積み上がる中国。

"万里の長城"は言うならば巨大なバネ。

リ・ハオを飛ばすために作り上げられた、中国の必殺タクティクス

 

 

中国「ー 万里の長城 ー!!」

 

シン「行って!ハオ!」

 

ハオ「!!」

 

 

ハオは空高く。

雲を抜け、雲海を望み蹴りを放つ。

空から地を射る矢。

太陽をも貫く、高速強力シュートが…今、

 

 

ハオ「ー 天空隼弾 ー!!」ドガァン!

 

 

にこ「穂乃果!何がなんでも止めなさい!!」

 

穂乃果「にこちゃん…」

 

にこ「あんたがしっかりしないでどうすんのよ!!GKなら足踏ん張って、両手でもなんでもいいから、絶対に抑えるのよ!!!!」

 

穂乃果「…!!」

 

 

隼弾は雲を突き抜け、もうすぐでゴールに到達する。

穂乃果はにこの言葉で覚悟を決めた。

穂乃果は…強くならなくていけない

 

 

穂乃果「("ゴットハンドV"じゃ、あの威力のシュートは止められない…)」

 

穂乃果「なら!!!!」ドン!!

 

 

果南「"ゴットハンドV"…!!」

 

曜「あの威力…止められるのかな…」

 

 

穂乃果は地面を"ドン!!"と殴り、勝利のVを作る。

これが、穂乃果の"ゴットハンドV"

 

 

 

 

穂乃果「はあぁぁ!!!!」ドン!!

 

 

穂乃果は右手で受け止めた。

しかし、本人が一番分かっている。

これだけでは止められない。と、

 

 

穂乃果「だから!!」バッ

 

 

ハオ「左手にもオーラを!?」

 

シン「いったい何を…」

 

 

 

 

『まぁ…僕達が勝つけどね』

 

『あなたの強さには弱さも感じるわ』

 

『世界でまた会いましょ』

 

『穂乃果さん達に勝つ!!』

 

『あなたには止められないよ』

 

 

穂乃果はキャプテン。

穂乃果は要。

穂乃果は代表。

穂乃果は……弱い

 

弱いからこそ。足掻く

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「止められないと分かっているなら、少しぐらい無茶しても……いいよね!!!!」

 

 

 

左手にも"ゴットハンドV"

 

VとVでーーーーーー

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ー ゴットハンドW ー!!!!」

 

 

 

 

中国「「「!!!!!??」」」

 

日本「「「!!!!!!!」」」

 

 

穂乃果「これが…穂乃果の次だよ」

 

 

『止めたぁぁぁぁ!!!!なんと高坂穂乃果、"ゴットハンドV"を両手で発動し、"ゴットハンドW"に進化させたあぁぁ!!!!』

 

 

月「す、すごいや…」

 

英玲奈「あれは、絶対にぶっつけ本番技だな、」

 

にこ「流石は私達のリーダー、穂乃果ね」

 

 

空に向けて発動した"ゴットハンドW"は、“天空隼弾“を完全にキャッチした。

その後、"万里の長城"により薄くなった中国ディフェンスを、穂乃果のロングスローから始まったカウンターで駆け抜ける

 

 

凛「ー イナビカリ・ダッシュ ー!!」バリバリ

 

英玲奈「凛に続け!!このチャンス、絶対に逃してはならない!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

中国の選手はなんとか日本のカウンターを阻止しようとするも、1度スピードに乗った日本を止めることは難しい

 

 

凛「海未ちゃん!」パス

 

海未「はい!」

 

 

ボールを貰った海未は前を見る。

するとそこには、ドフリーの選手がいるではないか

 

 

海未「お願いします!ツバサ」パス

 

ツバサ「任せて」

 

 

『綺羅ツバサにボールが渡った!!先程の"ゴットノウズ"は止められてしまったが、綺羅ツバサはどうするのか!?』

 

 

ツバサ「"ゴットノウズ"が止められてしまう…なら、」バッ

 

ツバサ「これでどう!?」

 

 

ツバサ「ー 流星ブレード ー!!」ドガァン!

 

 

理亞「ここで"流星ブレード"!?」

 

花陽「"ゴットノウズ"よりも、威力は弱いはず…です」

 

 

ツバサが放ったシュートは美しく輝きながら、ゴールへ……

 

 

 

 

 

 

 

月「!?」

 

 

 

 

 

 

向かわなかった

 

 

 

『あぁっと!?これはミスキックか!?綺羅ツバサの"流星ブレード"は、ゴールではなく、渡辺月の元へと向かっている!!!!』

 

 

あんじゅ「ツバサ!?」

 

聖良「いったい何を……」

 

 

月「(へぇ…)」

 

 

月はツバサの"流星ブレード"が迫る中で考えていた。

自分達には、得点する以外にもやることがあるのではないか…と、

 

 

 

月「そういうことね!」バッ

 

 

 

月は"流星ブレード"に向かって飛んだ。

分かったよ…ツバサさんが考えていることを。と、返事の代わりにお返しを…

 

 

月「ー ザ・エクスプロージョン ー!!」ドガァン!!

 

 

千歌「"流星ブレード"をツバサさんに打ち返した!?」

 

梨子「いったい何を……」

 

 

 

ツバサ「流石は月…ねっ!!」ドガァン!

 

 

ツバサは再び"流星ブレード"で打ち返す

 

 

月「一言ぐらい言ってほしい…なっ!!」ドガァン!

 

 

それをまた月が"ザ・エクスプロージョン"で、

 

 

 

ツバサ「さあ、ついてこられるかしら?」ビュン!!

 

月「…上等!!」ビュン!!

 

 

 

海未「なんですか…あの二人は、」

 

凛「人間じゃないにゃ…」

 

にこ「いや、あんたらが言っても説得力」

 

 

ツバサはゾーンを発動しスピードをアップ。

それに追いつくために月は"ブルースターダスト"で加速。

その間も、2人はシュートを撃ち合っている

 

 

ツバサ「っ!!!」ドガァン!

 

月「はあ!!!」ドガァン!

 

ツバサ「もっと飛ばすわよ!!」ドガァン!

 

月「オーケー!!」ドガァン!

 

 

ドガガガガガ!!!!!!

2人の撃ち合いの音の間隔が徐々に狭まっていく。

ボールに溜まったオーラは爆発寸前。

しかし、2人は止まらない

 

 

月、ツバサ「はあぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

理亞「…あれは、まさか」

 

ルビィ「…やってくれる、ね」

 

 

2人の技をひとつに。

それは月とツバサが、ルビィと理亞を奮い立たせるために考えた、自分達が出来ることだった

 

 

 

 

月、ツバサ「ー コズミックブラスター ー!!!!」ドガアァァン!!

 

 

 

英玲奈「合体技!?」

 

あんじゅ「いつの間に…!!」

 

 

『これは!!!!とんでもない威力だぁぁ!!!!渡辺月と綺羅ツバサの必殺シュートはまるで宇宙の嵐!!中国キーパー、クン・フーチェは止められるのか!?』

 

 

フーチェ「ー 龍神鉄扇 ー!!」バッ

 

 

フーチェはどうにかボールを抑えるも、威力が落ちる気配はない

 

 

フーチェ「こ…これほどまで…とは…うわぁ!?」

 

 

 

『ゴール!!!!決めたのは渡辺月と綺羅ツバサ!!サニデイジャパンのダブルフォワードがやってくれました!!新必殺技でゴールを撃ち破り、同点に追いつきました!!』

 

 

月「ふぅ…これは疲れるね、」

 

ツバサ「素晴らしかったわ。月」

 

月「そっちもね」

 

 

 

 

美菜「ここまでされたら、ルビィちゃんと理亞ちゃん…黙ってはいられないわね♪」

 

 

理亞、ルビィ「…」ゴゴゴゴゴ

 

理亞「何よあれ!?私達の技の方が凄いわよ!!」

 

ルビィ「見せてあげようよ理亞ちゃん…ルビィ達の、圧倒的な力を!!」

 

 

花丸「…奮い立つのはいいことずら」

 

花陽「あはは…」

 

 

同点に追いついたサニデイジャパン。

月とツバサの技により、奮い立つルビィと理亞。

日本の攻撃はまだまだ終わらない

 

 

日本 1-1 中国

 

 





ゴットハンドW
円堂は無印で一度発動したことが、そして劇場版でも一度だけ全員で発動したことがある必殺技です。

コズミックブラスター
吉良ヒロトと吉良タツヤの必殺技です。この技はかなり好きな方がいるのではないでしょうか。自分もその1人です。ブラジル戦で久しぶりに見れたので良かったです。


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第3章 46話 「中国戦 "中国の本気"」


皆さんどうも!スクフェスで限定のルビィちゃんをお迎えしてテンション上がっているルビィちゃんキャンディーです!1ヶ月後はルビィちゃんのお誕生日!!盛大に祝おうと思います!

さてさて…今週のオリオンは凄かったですね…野坂君のあの名演技が本当に頭から離れません。そして、ブラジルのGK、オリオンの三国先…ゴホッゴホッ…そして、毒母…うーん…




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

リ・ハオの"天空隼弾"を止めるために、穂乃果は弱い自分の先を行く。"ゴットハンドV"を両手で発動し、"ゴットハンドW"に進化させた。その後、月とツバサはルビィと理亞を奮い立たせるために、合体技"コズミックブラスター"を放ち、同点に追いついた。

 

 

 

 

『ここで前半終了!!日本 対 中国、同点で試合を折り返しました!!』

 

 

 

ー 日本ベンチ ー

 

 

理亞「月さん!ツバサさん!いつの間にあんな技を!?」

 

月「うーん、前々から作ろうっていう話はしていたんだよね」

 

ツバサ「えぇ!成功して良かったわ」

 

 

花陽「"コズミックブラスター"…連発は難しいけど、とてつもない威力でした…」

 

美奈「えぇ!月ちゃんとツバサちゃんには感謝しかないわ。得点したのはもちろん、バトンまでしっかりと繋いでくれたんだから♪」

 

花陽「バトン…?」

 

花丸「あの二人ずらね、」

 

 

 

曜「うわっ!?あっつ!?」

 

ルビィ「むむむ…」ゴゴゴゴゴ

 

千歌「ルビィちゃんが燃えている…」

 

梨子「え…本当に燃えてない?」

 

真姫「本当に"ATP"で燃えない!!」チョップ!

 

ルビィ「ピギッ…」

 

にこ「"ATP"をチョップで解除させる真姫ちゃん…」

 

凛「真姫ちゃんは海未ちゃんぐらい怖いにゃ…」

 

海未「なんて?」ニコッ

 

果南「ストップ!ストップ!」

 

 

ルビィと理亞は"コズミックブラスター"で完全に心の炎を燃やしていた。

自分達が見てない間に合体技なんて…

先取りされたように思えてきて悔しい

 

 

美奈「ルビィちゃん、理亞ちゃん!」

 

ルビィ、理亞「!!」

 

美奈「その悔しさ、どこで晴らす?」

 

ルビィ、理亞「グラウンド!!試合!!」

 

美奈「じゃ、行ってらっしゃい♪」

 

 

 

 

『さあ、間もなく後半戦が始まります!!……今入ってきた情報です!高海美奈監督、ついに…ついに!!後半からあの2人を投入します!!!!』

 

 

 

ルビィ「頑張ろうね!理亞ちゃん」

 

理亞「絶対に決めるんだから」

 

 

『黒澤ルビィと鹿角理亞のツートップだぁぁ!!!!両選手とも、今大会でその圧倒的な力で名を轟かせた、いま大注目の選手だ!!!!』

 

 

 

美奈「梨子ちゃん、さっきも言ったけど、後半…中国は新たな作戦を仕掛けてくるはずよ。しっかり観察してね」

 

梨子「分かりました」

 

美奈「中国の力は…まだまだこんなものじゃないわ」

 

 

 

 

『後半戦、サニデイジャパンは選手を4人変えてきました!かなり攻撃的なフォーメーション。果たして、この作戦が吉と出るか凶と出るか…!!』

 

 

 

FW……………黒澤ルビィ、鹿角理亞

 

MF……星空凛、渡辺曜、高海千歌、園田海未

 

MF………………矢澤にこ、統堂英玲奈

 

DF………………南ことり、鹿角聖良

 

GK……………………高坂穂乃果

 

2-2-4-2

 

 

 

『間もなく後半戦、中国ボールからスタートです!!同点で終わった前半、果たして、後半はどちらが得点するのか!?』

 

 

 

ピーーー!!!!

主審の笛と同時に中国が攻撃を開始した。

美奈曰く、中国は新たな作戦を仕掛けてくるらしいが…

 

 

ハオ「あなたがルビィだね!」

 

ルビィ「ルビィのこと知ってるの?」

 

ハオ「えぇ!中国でもあなたのことは有名だよ!」

 

 

全国大会の決勝、音ノ木坂戦でルビィが初めて試合で"ATP"を発動した。

その時の無双という名にふさわしい力は、サッカー界に一瞬にして知れ渡った。

しかし、その後ルビィは体を壊し、立つことさえ困難だという情報も広がっていた。

 

それにより、"ATP"は体を捨てる禁断の技。

ルビィはアジア予選までは代表を離脱すると、敵味方、誰もが思っていた。

 

しかし、

 

 

 

 

 

「ねぇ、」

 

ハオ「!?(誰かが後ろに…!?)」

 

 

 

理亞「ルビィだけっておかしくない??」

 

シン「ハオ!気をつけて!"ATP"を使えるのはルビィだけじゃない!!」

 

ハオ「!!?」

 

理亞「全部が遅い」ズザーッ!

 

ハオ(いつの間に背後に…!?)」

 

 

オーストラリア戦での鹿角理亞の"ATP"発動。

そして、復帰は絶望的と言われたアジア予選で黒澤ルビィの劇的復活。

 

この2つの情報により、世界は日本を警戒し始めた。

 

日本は禁断の技"ATP"を完全に武器にしつつある。そして、

 

 

ルビィ「理亞ちゃん、飛ばしすぎじゃない?」

 

理亞「最初から全力よ。試合は遊びじゃない」

 

 

 

危機感を抱いた。そして、恐れた

 

 

 

ルビィ「…確かにね」

 

 

 

絶対に2人を一緒にしてはいけない

 

 

 

ルビィ「なら、ルビィも…」

 

 

ルビィ「最初から飛ばすね」

 

 

 

"混ぜるな危険"

 

 

 

 

ルビィ、理亞「ー Awaken the power ー!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

今ここに実現する。

絶対にひとつにしてはいけない、究極の進撃

 

 

シン「鹿角理亞と黒澤ルビィを止めて!!!!」

 

ハオ「ば、化け物……」

 

 

ルビィ、理亞「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

『鹿角理亞と黒澤ルビィが止まらない!!!!この2人に加減という言葉はないのか!!??中国の選手は誰も反応出来ません!!!!』

 

 

真姫「はあぁぁ……あの2人は…」

 

花陽「あはは…真姫ちゃん、何回も言ってたもんね…」

 

 

 

真姫『いい?"ATP"は乱用ダメ。絶対。よ』

 

ルビィ、理亞『はい』

 

真姫『ピンチの時、または絶対に決めきりたい時だけ。無駄な発動は絶対にしないでよ?』

 

ルビィ、理亞『はい』

 

真姫『…(やけに素直ね…)』

 

 

 

 

真姫「……あの2人、本当にあとでお説教ね」

 

花陽「真姫ちゃん、海未ちゃんに似てきたね…」

 

花丸「ずら…でも、理亞ちゃん、"ATP"完成して良かったずら」

 

花陽「ルビィちゃんが戻って来てくれたおかげだね!」

 

 

 

 

 

月『うーん、やっぱり上手くいかないか…』

 

理亞『ハァハァ…』

 

 

ルビィ『…理亞ちゃん』

 

理亞『…?』

 

ルビィ『がんばルビィ!』キャルン

 

理亞『…』イラァ

 

 

理亞『バカにしてるの!!!?』ボォッ!!

 

月『えぇえ!?発動した!?』

 

ルビィ『理亞ちゃん!それをキープ!キープだよ!』

 

理亞『…!!』ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

果南「なんか、すっごい微妙な終わり方だったけどね…」

 

梨子「あはは…あの2人、本当は仲がいいのかなーって…」

 

 

 

 

 

理亞「ルビィのパス遅い!!」ゴゴゴゴゴ

 

ルビィ「相手のタイミングずらしてるんだよ!!」ゴゴゴゴゴ

 

理亞「取れなかったら意味無いでしょ!?」ゴゴゴゴゴ

 

ルビィ「取れてるじゃん!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

梨子、果南「………」

 

梨子「やっぱり私、不安になってきました…」

 

果南「まあ、ね?あの二人はすぐに意見が食い違う……でも、」

 

 

 

ルビィ「まだ行けるでしょ!?」ゴゴゴゴゴ

 

理亞「当然!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

果南「同じ目をしているよ」

 

 

 

『さあ!黒澤ルビィと鹿角理亞は間もなくゴール前!!この快進撃を果たしてGK、フーチェは止められるのか!?』

 

 

ルビィ「いくよ!理亞ちゃん」ゴゴゴゴゴ

 

理亞「…!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

ルビィが後ろ足でボールを蹴りあげる。

そして同時に飛び、作るのは炎の竜巻

 

 

ルビィ「ー 超ファイアトルネード ー!!」ドガァン!!

 

理亞「(タイミング、バッチリ…!!)」ゴゴゴゴゴ

 

 

理亞の頭上を流れる炎のシュート。

練習ではタイミングが合わずに、何度も喧嘩をしたが、ルビィはこの状況下で完璧に合わせてきた

 

 

理亞「私も…決める!!」バッ

 

 

理亞もシュートを……そう思い、飛び跳ねた時…意識などしていないのに、頭をよぎる

 

 

 

 

 

 

『ガアァァァァァァァン!!!!!!』

 

『鹿角理亞のシュートはゴールのクロスバー…!!』

 

理亞『う、うそ…』

 

『日本、勝利への1点が届かない!!!!』

 

 

 

 

 

理亞「!!??」

 

 

ルビィ「!?(理亞ちゃん…)」ゴゴゴゴゴ

 

月「!!(まさか、)」

 

 

 

 

理亞「うおあぁぁぁぁぁ!!!!」ザシュ!ザシュ!ザシュ!

 

理亞「ー ウルフレジェンドGX ー!!」ドガァン!!

 

 

花陽「成功した!?」

 

真恋「……いや、」

 

 

 

フーチェ「!?」

 

 

『おおっと!?黒澤ルビィと鹿角理亞の合体シュートは、ゴールの枠には入らなかった…!!タイミングが合わなかったのでしょうか??』

 

 

理亞「ハァハァ……」ゴゴゴゴゴ

 

理亞「また…外した…」ゴゴゴゴゴ

 

ルビィ「理亞ちゃん…」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

月「まずいね」

 

ツバサ「えぇ」

 

月「理亞ちゃんのトラウマが、ここに来て頭に染み付き始めてる…」

 

ツバサ「恐らく、今のままでは絶対に成功しないわね」

 

ダイヤ「……」

 

 

ルビィと理亞の合体技…あともう少し…あともう少しで道が開けそう…なのだが、

理亞のトラウマが、その道を再び塞ごうとしていた

 

 

理亞「っっ……なんでっっ!!!」

 

ルビィ「…」

 

 

ボールはコート外に出たため、中国のゴールキックからリスタート。

クン・フーチェのキックはそのままエースのリ・ハオに繋がった

 

 

ハオ「いや〜、完全に反応遅れちゃったね」

 

シン「えぇ。でも、だいぶ慣れてきたよ」

 

ハオ「そろそろかな…」

 

シン「よし…始めよう」

 

 

ハオ、シン「中国の本気を」

 

 

 

 

梨子「…!?雰囲気が変わった…」

 

美奈「いよいよね…ここからが本当の勝負よ」

 

 

 

中国の選手達はボールを持つリ・ハオの元へと集まる

 

 

にこ「ちょっと…また何か仕掛けてくるわよ」

 

英玲奈「"万里の長城"…はまだ遠すぎる」

 

 

ハオ「さあ…ついてこられるかな?」

 

ハオ「必殺タクティクス」

 

 

 

千歌「…え!!?」

 

曜「1、2、3……え?…え!?」

 

海未「いったいなんですかこれは…」

 

凛「意味がわかんないにゃ…!?」

 

 

 

「ー 少林寺光速十八陣 ー!!!」

 

 

夢でも見ているのだろうか…

一連の動作を終えた中国の選手が、何故か分身しているように見える

 

 

英玲奈「リ・ハオが3人!?」

 

聖良「ほかの選手も3人に分身しています!!どれが本物なのか…」

 

 

混乱する日本。

しかし、中国は待ってなどくれない。

6人が18人になった状態で、そのまま攻撃を開始する

 

 

理亞「またボールを奪えばいい!!」バッ

 

ハオ1「無理だよ!」パス

 

理亞「!?」

 

ハオ2「1対1は負けるかもしれない」パス

 

ハオ3「でも今は3対1」パス

 

ハオ1.2.3「絶対に負けない!!」

 

理亞「やばっ…」

 

 

『リ・ハオが鹿角理亞を突破!!日本はまったくついていけていません!!』

 

 

ハオ1「シン!」パス

 

シン1「!」

 

 

曜「これ以上は…!!」バッ

 

ハオ2「シン!気をつけて!」

 

曜「ー スマッシュアンカー ー!!」

 

 

曜は巨大な錨をボールを持つチャウ・シンに投げ飛ばす。

この錨が地面に突き刺されば最後。

チャウ・シンは噴き出す水により吹き飛ばされるのだ

 

しかし、

 

 

 

 

ドガアァァァァァン!!!!!!

 

 

シン1「うわっ!?」

 

曜「よし!ボールは…」

 

 

 

シン2「あげないよ!!」バッ

 

曜「え!?」

 

シン3「私達のこと忘れてるでしょ」バッ

 

 

ルビィ「曜さんの必殺技が躱された…」

 

理亞「っっ…なんなのよ!あれ!」

 

 

必殺技で選手の動きを止めても、もう2人がフォローに入っているため、ボールが奪えない。

この最悪な悪循環。

日本の選手の体力がどんどん削られる中、中国はシュートチャンスとなる

 

 

シン「いくよ!ハオ!」

 

ハオ「どんとこい!」

 

シン「必殺タクティクス」

 

 

「ー 万里の長城 ー!!」

 

 

シン達はリ・ハオを雲の上まで投げ飛ばす

 

 

ハオ「ー 天空隼弾 ー!!」ドガァン!!

 

 

そこから放たれるシュートは強力だが、今の穂乃果は負けない

 

 

穂乃果「ー ゴットハンドW ー!!」ドォォン!!

 

 

『止めたぁぁぁ!!!!高坂穂乃果!"天空隼弾"を完全にキャッチし、日本の危機を救ったぁぁ!!!!』

 

 

穂乃果「ハァハァ…」

 

海未「(やはり両手となると体力の消費も激しいですね、)」

 

穂乃果「聖良さん!!」ブォン!

 

聖良「はい!」

 

 

穂乃果は聖良にボールを渡した。

後半はまだ始まったばかり。

落ち着いて攻めようと前を見た時だった

 

 

聖良「…!?」

 

穂乃果「え…!?」

 

英玲奈「どういうことだ…」

 

 

 

中国は"万里の長城"を解除していなかった

 

 

 

聖良「こ、このままでは…壁の向こうへパスもドリブルもできない…」

 

ことり「何か方法は…」

 

 

 

真恋「やられた…!!日本の得意とする速攻も、FWもMFもボールをもらえない!!」

 

梨子「今壁に閉じ込められているのは、DF2人と穂乃果さんだけ…10対2…」

 

 

 

ハオ「袋の鼠だよ!!」バッ

 

聖良「くっ…!?」

 

 

『あぁっと!?中国の選手に囲まれてしまった鹿角聖良がボールを奪われた!!日本、再び失点の危機だぁ!!』

 

 

月「…やばい!!!!」

 

あんじゅ「穂乃果ちゃん…!!」

 

 

穂乃果「来い!!!!」

 

 

穂乃果は構えた。

"天空隼弾"は2度も止めたのだ。

体力と体が持つ限り、点は決めさせない。

そう頭で自分に言い聞かせ、前を見た

 

 

 

ハオ「"天空隼弾"はもう通用しないね」

 

シン「えぇ。なら、あの技を使わない?」

 

ハオ「いいね!やろ!」

 

 

穂乃果「!?」

 

にこ「ちょっと!!"天空隼弾"じゃないわよ!?」

 

千歌「別の技…」

 

 

 

穂乃果という存在。

それは、日本の精神的支柱。

流れが悪くても、空気が悪くても、穂乃果という存在の大きさがいつもチームを救ってきた。

 

穂乃果の顔を見れば元気が出る。

穂乃果のオーラはチームを盛り上げる。

 

しかし、

 

 

 

ハオ、シン「うおあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

穂乃果「っっっ!!!!」

 

 

海未「…穂乃果」

 

 

 

今の穂乃果から伝わってくるのは…

焦りだけだった

 

 

 

ハオ、シン「ー 天崩地裂 ー!!」ドガアァン!!

 

 

花陽「2人技!?」

 

希「この威力…」

 

 

大地を破壊しながら進む巨大なシュート。

"天空隼弾"が可愛く見える。

そんなシュートに、穂乃果は全力をぶつける

 

 

穂乃果「ー ゴットハンドW ー!!」ドォォン!

 

 

千歌、曜、聖良「穂乃果さん!!!!」

 

ことり、凛「穂乃果ちゃん!!!!」

 

海未、にこ「穂乃果!!!!」

 

 

穂乃果「ぐっ…うおあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

耐える穂乃果。

押すシュート。

両者のぶつかり合いにより発生した強風と迸るオーラが、その力の大きさを物語っていた

 

 

穂乃果「(重い!!?いや、止める!!止めるんだ!!)」

 

穂乃果「(世界を目の前にして…ここで…)」

 

 

穂乃果「終わってたまるかあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

中国「「「!!!!!!??」」」

 

日本「「「!!!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ハァハァ…ハァハァ……」シュウゥゥゥ…

 

 

 

 

 

 

千歌「と、止めた……」

 

曜「やった…」

 

 

海未「……いえ、残念ですが…」

 

 

 

 

 

穂乃果「ごめん…みんな…!!」

 

 

 

 

 

 

『ゴール!!!!高坂穂乃果、ボールは止めましたが、体とボールは既にゴールラインを切っていた…!!日本!ここに来て、痛恨の2点目を許してしまった…!!』

 

 

 

穂乃果「くっ……悔しい…!!っっっ!!」

 

海未「…」

 

 

 

後半は始まったばかり。

しかしそれは、中国の本当の攻撃が始まったばかり。

という意味でもあった

 

 

日本 1-2 中国

 

 



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第3章 47話 「中国戦 "私の役割"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
なんか最近、主人公の千歌ちゃんにまったくスポットがあたってないと言われるのですが、それは自分も重々承知です笑
ですが、世界編は主人公とかはあまり関係なく(いや、あるけど…)、全員で世界と戦っていけたらなと。
ですが、今のところかなーりキャラによって差がありますよね?(個人見解)そういう子たちは、本戦でたくさん触れたらなと思います。
ちなみに早速なのですが、今回のお話に千歌ちゃんの伏線を『4文字』で立たので探してみてくださいね!



 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

後半戦が始まり、最初から"ATP"を発動し攻め込むルビりあコンビ。しかし、理亞はトラウマが頭をよぎり、ルビィとの合体技を失敗させてしまう。そして本気を出してきた中国に圧倒された日本は、中国の勝ち越し点を許してしまったのだ

 

 

 

 

 

聖良「穂乃果さん、ごめんなさい…私がボールを奪われてしまったせいで、」

 

穂乃果「落ち込んじゃダメだよ聖良さん。まだ試合は終わってないから、今は前を向こう」

 

聖良「…はい」

 

 

海未「…」

 

 

穂乃果に励まされた聖良は、気を取り直して持ち場に戻る。

すると、今度は聖良と代わるように海未が穂乃果の元へと走ってきた

 

 

海未「穂乃果」

 

穂乃果「海未ちゃん?あはは…ごめん、止められなかったよ」

 

海未「私はあなたが聖良に言った言葉を、全てあなたに返します」

 

穂乃果「…!」

 

海未「最近の穂乃果は焦りすぎです。落ち込みすぎです。前のように明るくなくなってきています」

 

穂乃果「…」

 

海未「自分の力が足りないから更に強くなった…落ち込む必要なんてないじゃないですか」

 

穂乃果「でも、強くなっても破られたよ?」

 

海未「はあぁ…これでは私が穂乃果みたいじゃないですか」

 

穂乃果「?」

 

海未「強くなって破られたのなら、また強くなればいいじゃないですか」

 

穂乃果「…!!」

 

海未「簡単な話ですよ。穂乃果。いつものあなたなら、絶対にそう言うじゃないですか」

 

穂乃果「…」

 

海未「あなたに落ち込んだ顔なんて似合いません。私達に、元気な笑顔を見せてください」

 

穂乃果「…」

 

穂乃果「ありがとう。海未ちゃん」

 

海未「はい。後半はまだまだこれからですよ」

 

 

まさか、海未からあんなことを言われるとは…

穂乃果は驚くのと同時に、嬉しくなり、情けなくなった

 

 

穂乃果「そっか…穂乃果は、何も見えなくなっていたのか…」

 

 

 

穂乃果は前を見た。

そして、大きく息を吸い、叫ぶ

 

 

 

 

穂乃果「みんなあぁぁ!!!!!!」

 

 

 

千歌「うわわ!?穂乃果さん!?」

 

曜「すごい声…」

 

 

果南「うんうん!いい声だね!」

 

ダイヤ「デジャブですわ…」

 

花丸「ずら…」

 

 

穂乃果「ごめーん!!!私!!焦りすぎちゃった!!!!」

 

 

海未「…穂乃果!」

 

ことり「もう大丈夫だね♪」

 

 

穂乃果「もう1点も決めさせないから!!!!だから!!失敗を恐れず攻めて!!!!」

 

 

凛「さっすが穂乃果ちゃんにゃ!」

 

にこ「やっぱり穂乃果は、こうじゃなくっちゃね!」

 

 

穂乃果「もう穂乃果は…下を見ない!!!!」

 

 

千歌「穂乃果さん…やっぱり穂乃果さんの声を聞くと元気がでる!!」

 

曜「うん!なんか、不安も吹き飛ぶよね!」

 

理亞「はぁ…あの人には、適う気がしない」

 

ルビィ「うん…とっても頼もしい、日本のキャプテン!」

 

 

穂乃果「さあ!いくよ!」

 

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

『日本 対 中国。中国の2点目から始まった後半戦…日本は最低でも残り2点、どう返すのでしょうか!?』

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

理亞「ルビィ、あの分身タクティクスは厄介よ。ルビィの技でいっきに突破して」

 

ルビィ「理亞ちゃん…うん!やってみる!」

 

 

『さあ、まずはFWコンビが攻め上がります!!今回は2人で並ばず黒澤ルビィが少し前に出てドリブルだ!!』

 

 

理亞「今よ!」

 

ルビィ「うん…!」ググググ…

 

 

ルビィ「ー スプリントワープGX ー!!」ビュン!

 

 

ロンチ「うわっ!?見えない…」

 

ハオ「ルビィと理亞は分身ごと全員突破しそうだね…よし、」

 

 

ルビィのしゃがんで前のめりになりながら飛び出す"ロケットスタート"。

この飛び出しが"スプリントワープ"の加速を促している。

"ATP"の加速も速いが、"スプリントワープ"の加速は異次元。

リ・ハオの言う通り、ルビィと理亞は分身など関係なく全員抜きにかかるだろう…

ならば、

 

 

 

シン「必殺タクティクス!!」

 

ルビィ「よしっ!抜けた!」ビュン

 

 

 

ルビィが中国の選手を全員抜ききった

 

 

 

 

ルビィ「!?」

 

ハオ「びっくりした?」

 

 

 

 

 

はずだった

 

 

 

「「「ー みんなでキョンシー ー!!」」」

 

 

 

果南「嘘っ!?ルビィの加速についてきた!?」

 

真恋「ここに来てマンツーマンディフェンス……嫌になるほど厄介ね」

 

美奈「なるほどね…」

 

 

 

"みんなでキョンシー"

簡単に言うと、1対1で徹底的にマークする"マンツーマンディフェンス"。

しかし、ただのマンツーマンディフェンスではない。

まるで相手に張り付いたかのように、どんなに逃げようとしても絶対にピッタリとついてくる

 

 

ルビィ「ちょっ…え!?」バッ

 

ハオ「ダメだよ。ここから先は行かせないよ」

 

 

ハオ「ルビィは動揺してるみたいだね」

 

理亞「いや、邪魔よ!!あんたも!!」

 

 

ルビィだけではない。

日本の選手全員に徹底的に張り付いている。

これではドリブルどころかパスさえ出せない。

 

日本を武器(速攻)を根底から叩き潰す、言うならば一番タチの悪いタクティクスなのである

 

 

千歌「し、しつこい…」

 

タンメオ「ルビィのところへは行かせないよ」

 

 

 

花陽「美奈監督…このままでは日本は何もできません…」

 

美奈「…そうね…今回ばかりは難しいわね」

 

 

美奈はフィールドを見ながら考える。

この状況から日本が逆転するには…

材料は?手順は?

今までの経験から策を引っ張り出し考える

 

 

美奈「…」

 

 

『ボールを奪った中国、再びシュートチャンスだ!!!!』

 

 

花丸「穂乃果さん…」

 

希「大丈夫!今の穂乃果ちゃんは強いで!」

 

 

美奈「(穂乃果ちゃん…か…)」

 

 

 

 

穂乃果「絶対に止めるよ!!!!」バッ

 

 

ハオ「いい目だね!穂乃果!」

 

シン「でも、一度破ったこのシュート…簡単には止められないよ!!」

 

 

 

ハオとシンがシュートの構えに入った。

この時、穂乃果は感じていた

 

 

穂乃果「(穂乃果の技よりも強いシュート…よく考えたら…すごい燃えてくる!!)」

 

 

穂乃果は日本代表になってから、日の丸の重み…責任感から強い敵への好奇心を失っていた。

浦の星女学院との決勝戦まではワクワクしながらサッカーをしていた。

しかし、今はボールを止める。防ぐ。強くなる。負けれない。

という"GKの役目"しか意識できなくなっていた

 

 

 

穂乃果が忘れていたもの

 

 

 

 

穂乃果「すうぅぅぅ……はあぁぁ……」

 

月「目を閉じて深呼吸…?」

 

花陽「…ま、まさか…」

 

 

 

 

それは、

 

 

 

 

ハオ、シン「ー 天崩地裂 ー」ドガアァン!!

 

 

穂乃果「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクッッッッッッ!!!!!!!!

 

日本「「「!!!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

"穂乃果の役目"

 

 

 

 

ホノカ「…」

 

 

千歌「闇の力…」ズキズキ

 

聖良「限りなく殺気に近い、でも純粋なオーラ…」

 

 

 

ホノカ「…!!」バッ!

 

 

ホノカは構える。

先程は惜しくも止めきれなかったシュート。

しかし、今は…

 

 

ホノカ「っっっ!!!!」ゴオォォ!

 

 

止められる気しかしない

 

 

ホノカ「ー ゴットハンドW ー」ドォォン!

 

 

中国「「「!!!!??」」」

 

シン「な、なに!?」

 

ハオ「うそ…止められた…」

 

 

『止めたぁぁぁ!!!!高坂穂乃果!一度敗れたシュート、今度はしっかりとキャッチして見せたぁぁ!!!!これが、日本の守護神!!!!』

 

 

真恋「よしっ!!」

 

果南「本当に止めちゃった…」

 

花丸「ちょっとゾクッとしたけど…さすがは穂乃果さんずら!」

 

美奈「…」

 

真恋「美奈?」

 

 

美奈は立ち上がり、フィールドのラインぎりぎりまで歩いていく。

これは美奈の昔からの癖。

何かを思いついた時は座ってはいられないのだ

 

 

真恋「まさか、何か作戦を…?」

 

美奈「そのまさかよ♪」

 

 

美奈はニコッと笑みを浮かべ、一人の選手の名を読んだ

 

 

美奈「梨子ちゃん。行くわよ」

 

梨子「は、はい!」

 

美奈「この作戦は捨て身。信じること。無茶。勢いよ」

 

梨子「???」

 

美奈「今から説明するわね♪」

 

 

 

一方、フィールドでは中国が再び日本を袋の鼠にしていた

 

 

「ー 万里の長城 ー!!」

 

 

穂乃果「また閉じ込められた…!!」

 

聖良「このままではまた…」

 

 

そんな時、穂乃果はふと日本ベンチを見た。

すると…

 

 

穂乃果「…!」

 

美奈「!」

 

穂乃果「美奈さん…分かりました!」バシュッ!

 

 

聖良「穂乃果さん!?」

 

ことり「外にだした…?」

 

 

穂乃果は美奈からのサインに気づき、ボールを外に出した。

美奈からのサインは「試合を切れ」

 

それは、高海美奈監督が動き始めるサインでもあった

 

 

 

『日本!ここで選手を交代します!MFの矢澤にこに代わり、桜内梨子が入ります!!』

 

 

にこ「頼んだわよ…梨子」ゼェゼェ…

 

梨子「はい!(あのにこさんがこんなにも…それほどまでにキツいマーク…)」

 

 

梨子はフィールドに入るとすぐに穂乃果の元へと向かった。

その道中で何人かも連れながら…

梨子以外は美奈から何も聞いていないし、何も知らない

 

 

穂乃果「梨子ちゃん!待ってたよ」

 

梨子「はい。みんなに集まってもらったのは、まずは1点。同点になるための作戦を説明します」

 

聖良「その作戦に、私達が…?」

 

理亞「いったい何をするの?」

 

ルビィ「…」

 

梨子「この作戦には全員にリスクがかかります。ですが、」

 

穂乃果、聖良、理亞、ルビィ「…」

 

 

 

梨子「中国の"万里の長城"を砕けます」

 

 

 

 

次回 日本、反撃開始

 

 

 

日本 1-2 中国

 





なんかドドんと梨子ちゃんは言い切りましたが、個人的にはかなりシンプルな作戦なので…




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第3章 48話 「中国戦 "混ざり合う力"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
今回は強力な必殺技が登場!後書きには挿絵もあります!




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

海未の言葉で自分の役割を思い出した穂乃果。気持ちを切り替え、闇の力で"天崩地裂"を抑えた。そんな中、新たな必殺タクティクスで日本を根底から叩き潰しに来た中国の"万里の長城"を砕くために、美奈と梨子が動く

 

 

 

 

梨子は"万里の長城"を砕くための作戦の説明を続いていた

 

 

聖良「え!?あれをやるんですか!?」

 

梨子「はい、あれしか方法はありません」

 

聖良「ですが、あれは偶然というか…癖、というか…」

 

ルビィ「聖良さん…!」

 

理亞「姉様…!」

 

聖良「〜〜〜!!」

 

聖良「……」

 

聖良「…分かりました、やれるだけのことはやります」

 

穂乃果「そう来なくっちゃ!」

 

 

作戦会議も終了し、それぞれの持ち場につく梨子と4人。

リスタートは中国のスローインから。

もう既に、美奈が考えた作戦は始まっていた

 

 

 

聖良「…」

 

 

美奈『うーん、ボールは奪ってもいいけど、一番いいのは…シュートを撃たせる事ね』

 

 

聖良「っ!」

 

チュナ「あまいよ!」バッ

 

梨子「(まずはわざと抜かれる)」

 

 

『鹿角聖良が抜かれたぁ!!ゴールは目の前!日本、再び失点の危機だ!!』

 

 

聖良「穂乃果さん!」

 

穂乃果「任せて!」

 

 

チュナ「っ!!」バシュッ!

 

 

穂乃果「(左隅…!!)」バッ

 

 

美奈『ボールを奪われた後って、少しだけ反応に遅れちゃう時があるからね。シュートを撃たせて余裕を作らせて、確実に"万里の長城"を発動させたいの』

 

 

穂乃果「取った!!」ガバッ!

 

チュナ「っ!?やるね…」

 

 

『高坂穂乃果がダイビングキャッチ!!2点目を決められてから、まるでスイッチが入ったかのように、動きが1段階進化したようだ!!』

 

 

穂乃果「聖良さん!!」ブォン!

 

聖良「!」

 

 

美奈『さあ、ここからが本番よ♪』

 

 

ハオ「絶対に逃がさないよ!!」

 

「必殺タクティクス ー 万里の長城 ー!!」

 

 

聖良「来た…」

 

ことり「また囲まれちゃった…どうしよう、聖良ちゃん…」

 

聖良「…」

 

ことり「聖良ちゃん?」

 

聖良「(本当に…出来るのでしょうか…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 数日前 日本代表キャンプ地グラウンド ー

 

 

 

曜『シュート!!』バシュッ!

 

果南『おりゃあ!!』バシッ!

 

千歌『果南ちゃんが弾いた!』

 

聖良『私が行きます!』バッ

 

 

聖良は果南がパンチングしたボールを取りに行く。

ここは上手くボールをトラップし、前へと繋ぎたいところだが…

 

 

聖良『!(ボールは空中…)』

 

理亞『姉様!ボールはもらう!』バッ

 

ルビィ『ルビィもいくよ!』バッ

 

 

敵チームの理亞とルビィもボールを狙っている。

戦力的にも、実力的にも、自分は空中にあるボールをトラップし、前へと繋ぐことはほぼ不可能。

今、自分ができる最善策は……

 

 

 

聖良『はあぁ!!』バシュッ!

 

ルビィ『ボレーで打ち上げた!?』

 

理亞『…クリアね、』

 

 

聖良が選んだのは、いったん落ち着くためのクリアだった。

誰も取れないように、ピンチの状況から作戦を立て直すため。

聖良はボールを思いっきり遠くへと蹴り上げたのだ

 

 

 

真恋『流石は聖良ちゃんね。DFとしての判断力…日本屈指のレベルだわ、』

 

美奈『えぇ!そうね……』

 

真恋『…?美奈、どうしたの?』

 

美奈『聖良ちゃんのクリア…まだ落ちてこないわね』

 

真恋『…え?』

 

 

 

 

 

千歌『ほぇ〜…すごいね…』

 

月『聖良さんのクリア、滞空時間長いね…』

 

聖良『いや、まぁ…必死だったので、』

 

 

聖良のクリアは、たかーく…たかーーく、空へ。

もう既に数十秒は経っている。

しかし、ボールが落ちてくる気配はない

 

 

理亞『姉様、昔からクリアを高く蹴り上げる癖があるの』

 

ツバサ『へぇ…面白い癖ね』

 

曜『あっ、落ちてきた』

 

 

やっと天から落ちてきたボール。

ラインを割ったため、スローインからリスタートとなった

 

 

英玲奈『なるほど、この間に作戦や陣形の整理ができる…』

 

梨子『また新たな選択肢が見つかりましたね』

 

美奈『そうね。でも、それだけではないわ』

 

梨子『?』

 

英玲奈『監督?』

 

美奈『聖良ちゃんのそれ!いつか使えるかも!』

 

聖良『…え?』

 

 

 

 

 

 

 

聖良「(それから、私は何故か海未さんと弓道をやることになりました…)」

 

聖良「(あの時は、まったく意味が分かりませんでしたが、今なら分かります)」

 

 

 

 

聖良「はあぁ!!」ガキィィィン!

 

 

千歌「ボールを氷で固めた!?」

 

海未「いったい何を…」

 

 

 

もし、あの時のクリアが偶然で、癖も生まれつきの偶然だとしたら…

私は、その偶然に感謝します

 

 

聖良「(矢をいるように…しならせて、高く…遠くに!!!!)」

 

 

私のこの偶然が、日本の力になるのなら

 

 

 

 

 

聖良「ー 氷の矢 ー!!」バシュッ!

 

 

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

中国「「「!!!!??」」」

 

 

ハオ「おいおい…嘘でしょ…」

 

シン「"万里の長城"よりも…高い!?」

 

 

 

『抜けたぁぁぁ!!!!なんと!?鹿角聖良が放った新必殺技、"氷の矢"は天高く飛び!!難攻不落かと思われた"万里の長城"を飛び越えた!!!!!!』

 

 

 

梨子「やった!!!!」

 

穂乃果「本当に飛び越えちゃった…」

 

 

 

まさか、"万里の長城"が上から突破されるとは思ってもみなかった中国。

完全に反応が遅れ、"氷の矢"に追いつくことは不可能となっていた

 

 

ことり「誰か、ボールを受け取らないと…!」

 

聖良「大丈夫です!既にGKとの…」

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ、理亞「「うおあぁぁぁぉ!!!!」」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

聖良「2対1です…!!」

 

 

 

『なんと!!!!黒澤ルビィと鹿角理亞が既に走っていた!!"ATP"も発動している!!これは、日本、最大のチャンスだ!!』

 

 

 

美奈「わざと"万里の長城"を発動させて、引きつけたところを聖良ちゃんの矢で一気に突破…その先では既にルビィちゃんと理亞ちゃんが待ち構えている…」

 

美奈「まさか、中国は…1本の矢で城を崩されるとは…思ってもみなかったでしょうね♪」

 

 

 

 

 

ルビィ「理亞ちゃん!準備はいい!?」ゴゴゴゴゴ

 

理亞「いつでも行ける!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

ルビィと理亞の上空を、聖良の矢が飛ぶ。

走りながらボールを追いかけ、ルビィと理亞は考えた

 

 

ルビィ「ルビィ達、間違ってた!!2人の必殺技は、ただお互いの技を重ねただけでは完成しない!!」ゴゴゴゴゴ

 

理亞「お互いの弱点を補うどころか、逆に悪目立ちさせてた!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

ルビィと理亞は"ATP"の力を全開にし、走り続ける

 

 

ルビィ「混ぜるんだよ!!理亞ちゃん!」ゴゴゴゴゴ

 

理亞「えぇ!ただ重ねるだけじゃない!2つの力を…ひとつに!!」

 

 

 

初めて会った時は…最悪だった。

絶対に並んで歩くことはないだろうと、誰もが思った。

 

なのに何故か、頻繁に出会う。

会いたくないのに会う。

 

 

 

理亞「私は、まだ自分の力に自信が持てない…でも、全力を叩き込む!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

ルビィ「ルビィはダメージがまだ不安…だけど、標準を合わせるなら…!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

気づいた時には、お互いに背中を押しあってた。

片方が倒れているなら、片方が叩き起す。

 

今でも喧嘩する。

それに、負けたくないし、自分よりも強いのは気に入らない。

 

 

だけど、

 

 

 

 

 

ルビィ、理亞「うおあぁぁぁぉ!!!!」バッ!

 

 

花丸「ルビィちゃんと理亞ちゃんのオーラがひとつに!!」

 

月「これが、2人の…!!」

 

 

 

 

 

 

 

ふたり一緒なら…強くなれる!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ、理亞「ー クロスファイア ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

中国「「「!!!!!!」」」

 

 

 

『これは!!!!黒澤ルビィと鹿角理亞の合体技だぁぁ!!!』

 

 

シン「フーチェ頼む!!」

 

ラウ「止めて!!」

 

 

フーチェ「任せて! ー 龍神鉄扇 ー!!」バッ

 

 

フーチェは扇子でボールを受け止める。

しかし、

 

 

フーチェ「こ、この力…私では…及ば…うわっ!!?」

 

 

 

バシュウゥゥゥゥゥゥン!!!!

 

 

『ゴール!!!!FWコンビがやりました!!新必殺技"クロスファイア"で、同点に追いついたぁぁ!!!!』

 

 

ルビィ「ハァハァ…」

 

理亞「ルビィ…」スッ

 

ルビィ「…!」

 

 

理亞がルビィに向けたのは拳。

ルビィは迷いなく自分の拳を合わせた。

鈍い音ではあるが最高な音でもある。

 

 

理亞「最高…!」

 

ルビィ「えへへ…」

 

 

この2人の進化は、まだまだ止まらない

 

 

 

 

日本 2-2 中国

 

 




クロスファイア
【挿絵表示】

イナイレのファンならば知らぬ人いないであろう、豪炎寺と吹雪の必殺技です。輝こうでは、"ATF"と"ATB"の合体技として採用しました!

氷の矢
オリオン(アレス)で登場した必殺技です。シュートというよりかは、パスの方に向いてると思います。


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第3章 49話 「中国戦 "度胸試しの作戦"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。実はですね、今回のお話で第3章は49話。第2章は49話で終了したんですよね。そう考えると世界編は本当に長い…!!まだ半分ぐらいなので、皆様、何卒最後までお付き合いよろしくお願いします!




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

美奈が提案した作戦により、聖良の新必殺技、そしてルビィと理亞の新必殺技が生まれ、得点も生まれた。後半もまもなく折り返し。勝ち越し点を奪うのは果たして…

 

 

 

 

 

 

 

フロイ「日本はまたすごい必殺技を出してきたね」

 

絵里「"ATF"と"ATB"の合体技…"クロスファイア"」

 

フロイ「これでまた試合は振り出し…中国は"万里の長城"というカードを失った…でも、」

 

絵里「まだワンツーマンディフェンスが残っているわ」

 

フロイ「エリーならどうする?あのディフェンス」

 

絵里「…そうね、私だったら……」

 

 

 

絵里「中国選手同士で潰れてもらうわ」

 

 

 

 

 

 

『さあ、同点に追いついた日本!!このまま逆転出来るのか!?』

 

 

ハオ「このまま終わるわけには…!」

 

シン「えぇ!絶対に勝つ!」

 

 

中国は残り時間を意識し始めていた。

まさか、"天空隼弾"と"万里の長城"…2つの作戦が潰されるとは思ってもみなかった。

日本を侮ってはいけない…そう考えながら、慎重にそして力強く攻め上がる

 

 

タンメオ「こっち!ハオ」

 

ハオ「タンメオ!」パス

 

 

ボールを受け取ったワン・タンメオ。

しかし、前を向いた時には、既にボールを奪わんとする者が立ち塞がっていた

 

 

海未「残念ですが、これ以上は」ビュオォォォ!!

 

タンメオ「風…!?」

 

 

海未「ー スピニングフェンス ー!!」

 

 

花丸「海未さんの強力な技が決まったずら!」

 

花陽「ここで奪えたのは大きいです!!」

 

 

『園田海未がボールを奪った!!このままカウンターに持っていけるか!?』

 

 

シン「させないよ!必殺タクティクス!!」

 

「「「ー みんなでキョンシー ー!!」」」

 

 

海未「くっ…またマンツーマンですか、」

 

タンメオ「今度はこっちが奪う番だよ!」

 

 

"みんなでキョンシー"…今の日本にとって一番厄介な必殺タクティクス。

この張り付いてくるようなディフェンスを突破しなければ、日本に逆転の道はない

 

 

梨子「では、手筈通りに」

 

英玲奈「あぁ、任せてくれ」

 

 

 

花陽「美奈監督…あのマンツーマンを突破するにはどうしたら…」

 

美奈「それに関しては大丈夫よ。梨子ちゃんが考えてくれた作戦を採用したわ。あの子…なかなかの発想力を持っているわ…!」

 

 

梨子が考えた作戦…それもまた、梨子の偶然と言える出来事から生まれたものだった

 

 

 

英玲奈「まさか、体育の授業からヒントを得るとはな…」

 

英玲奈「始めるぞ。梨子」

 

梨子「はい!」

 

 

英玲奈は手を地面につけ、必殺技を発動する

 

 

 

英玲奈「ー エンペラータイム ー」

 

 

英玲奈の"エンペラータイム"は本来、フィールドの敵味方の選手の情報を一瞬で読み取る技である。

この技で得た情報をすべて梨子に流し込むことにより、

 

 

英玲奈「頼んだぞ」ポン!

 

梨子「!!」

 

 

 

梨子の技は進化する

 

 

 

梨子「敵味方…すべてを支配する指揮!!」バッ

 

梨子「ー 王者のタクト ー!!」

 

 

梨子の手から描かれる勝利への道。

赤い、何者にも屈しない風格を見せるそのオーラは、日本を導く

 

 

梨子「海未さん!!」ビシッ!

 

 

ボールを持っている海未を導く。

赤い線は海未の足元から彼方へと伸びていく

 

 

梨子「線に沿って"START:DASH!!"でドリブルしてください!!」

 

海未「しかし…」

 

梨子「お願いします!」

 

海未「…わかりました!!」ビュン!

 

タンメオ「逃げられないよ!!」

 

 

海未は梨子に言われた通りに"START:DASH!!"を発動する。

まるで風のような高速ドリブル。

しかし、それでも中国の選手はピッタリとついてくる

 

 

梨子「凛ちゃん!」ビシッ!

 

凛「にゃ!?」

 

梨子「凛ちゃんも線に沿って"イナビカリ・ダッシュ"を!!」

 

凛「おまかせにゃ!!」バリバリバリ

 

タンミン「何をする気なんだ…」

 

 

海未と凛、2人が線に従って。

そして相手から逃げるように走る。

それでも、マンツーマンは振り切れていない…

 

 

 

花丸「海未さんと凛ちゃんに、何をさせようとしているずらか…」

 

花陽「……あれ?梨子さんの指示した道が…」

 

 

ここで、花陽は気づいた。

海未と凛、2人に示した別々の道。

しかし、それを辿っていくと……

 

 

花陽「線が重なってる……2人とも、ぶつかっちゃう???」

 

 

 

 

 

海未「!!?凛!!危ないですよ!?」

 

凛「海未ちゃんこそ避けるにゃ!!?」

 

 

花陽の言った通り、海未と凛の走るコースは被っていた。

それに気づいた2人はお互いに警告する。

しかし、

 

 

梨子「そのまま進んで!!」ビシッ!

 

凛、海未「正気(ですか)(にゃ)!?」

 

 

このままだと、本当に2人は正面衝突してしまう。

必殺技でかなりのスピードが出ているため、ただでは済まない…が、そう考えた時、梨子が付け足した

 

 

梨子「まるでぶつかるように、ぎりぎりで掠れるように進んで!!」ビシッ!

 

凛、海未「!!」

 

 

日常生活で梨子が叫ぶようなことは決してない。

おとなしい性格だということも重々承知済みだ。

だから、だからこそ分かる。

そんな梨子の声に、力が込められているから分かる

 

 

 

海未、凛「(本気だ…!!!!)」

 

 

梨子は本気で、自分達に指示している。

ふざけているわけでもない。

狂っているわけでもない。

なら、それを信じずに何を信じるというのだ?

 

 

海未「度胸試しですよ!!」ビュン!

 

凛「やってやるにゃ!!」ビュン!

 

 

2人はあと数歩で重なる。

しかし、恐れも、不安もない。

 

見るのはその先。

 

 

海未「っっ!!!!」

 

凛「っっ!!!!」

 

 

 

 

2人の距離……0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガッッッ!!!!!!!!

 

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

中国「「「!!!!!!」」」

 

 

海未、凛「!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

タンメオ「痛っ!?」

 

タンミン「な、なんで目の前にタンメオが!?」

 

 

 

千歌「2人に張り付いていた中国選手がぶつかった!?」

 

曜「え…どういうこと??」

 

 

 

梨子「今よ!!2人とも!!」

 

海未、凛「!!」

 

 

『おっと!?園田海未と星空凛をマークしていた中国選手同士の接触だ!!それによりマークから外れた2人はフリーだ!!』

 

 

ダイヤ「!!?い、今のは…」

 

ツバサ「とんでもないことを考えるわね…」

 

月「ははは…梨子ちゃんは本当に度胸があるよ、」

 

 

梨子の作戦…その名も、

 

 

 

 

梨子「"サッカー版スクリーン"」

 

 

 

果南「す、スクリーンって…バスケのやつ、だよね?」

 

美奈「そうよ!梨子ちゃんは、そのスクリーンをサッカー版でアレンジしたの!」

 

 

 

"スクリーン"とは、バスケの戦術のひとつ。味方Aの選手をマークする敵Aを、味方Bが体を張って抑える。

これにより、味方Aはフリーになる。

 

しかし、サッカーでこれをすると反則を取られる恐れがあるため…

 

 

真恋「梨子ちゃんは敵同士でスクリーンをしてもらおうって、考えたわけね…」

 

果南「そう言えば梨子達、体育でバスケをやってたね」

 

にこ「そこからヒントを得たのね…でも、」

 

果南「?」

 

にこ「素朴な疑問なんだけど、中国の選手はどうして避けなかったの?」

 

果南「えっ…それは、」

 

美奈「避けられないのよ」

 

にこ、果南「!!」

 

花陽「避けられない、とは?」

 

美奈「…ついて行くのに必死なのよ。中国は、」

 

 

中国の日本殺しのマンツーマンディフェンス…強力ではあるが、欠点があった。

それは、張り付く選手に付いていくために、その選手しか見ていない…ということである。

ただでさえ、高速移動が得意な日本選手…そんな選手相手に、周りを見るような余裕などあるわけが無い

 

 

月「なるほど…中国の選手は日本の選手に付いていくために、マークする選手しか見れないから…」

 

ツバサ「進行方向にいる味方に気づけない…梨子はそれを狙った」

 

美奈「そして、梨子ちゃんはきっかけを作った」

 

 

ハオ「(周りに気をつけないと…)」チラッ

 

ルビィ「…!!」

 

 

ほかの中国選手も一連の流れは見ていた。

要するに、警戒しなくてはならなくなった。

サッカー版スクリーンを仕掛けられては困る…と。だが、

 

 

ルビィ「よそみ?」ビュン!!

 

ハオ「!!?しまった!!」

 

 

目を離せば逃げられる

 

 

 

海未「ルビィ!」パス

 

ルビィ「はい!」

 

 

中国の選手には迷いが生じる。

スクリーンをかけられるのか、逃げられるのか…

 

 

理亞「ルビィ、ドフリーよ!!」

 

凛「よしっ!行ける!!」

 

 

『黒澤ルビィがスペースへ走り込んだ!!園田海未からボールを受け取り、マークも外しています!!これは日本、最大のチャンス!!』

 

 

ハオ「ルビィを止めろ!!!!」

 

シン「だめだ…間に合わない…!!」

 

 

 

ルビィ「"ラストリゾート"で決める!!」バッ

 

 

ルビィは最強の切り札"ラストリゾート"の構えに入る。

これを放てばゴールは確実。

日本の勝利の一撃…ルビィの体から、徐々にオーラが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「あれ…?」

 

理亞「ちょっ、ルビィ!早くオーラを出さないと!!」

 

ルビィ「っ!…やってる…やってる、けど…」

 

理亞「!?」

 

 

 

 

 

花陽「っ!?…まさか、」

 

美奈「………」

 

 

 

真姫「…時間切れよ」

 

 

 

 

 

ルビィ「オーラが、出ない……」

 

ハオ「おりゃっ!!」ズザーッ!

 

ルビィ「!?」

 

 

『あぁっと!?リ・ハオがスライディングで黒澤ルビィのボールをコート外へ!!黒澤ルビィ、惜しくもシュートは撃てませんでした…!!』

 

 

理亞「ルビィ…まさか、」

 

ルビィ「…ごめん、理亞ちゃん…ちょっと肩を貸して」グラッ

 

理亞「あっ、危なっ!?」ガシッ

 

 

『黒澤ルビィにアクシデントでしょうか!?歩くのが難しいようです!復帰したばかりなので非常に心配です…』

 

 

花陽「体の限界…」

 

真姫「当然よ」

 

花陽「真姫ちゃん、」

 

真姫「前に言ったでしょ。10分。ルビィは10分なら全力で動けるって。でも、もうすでに20分以上は経過しているわ」

 

花丸「オーラが底をついたことに、気づかなかった…」

 

真姫「止めようとしたけど、一足遅かったわね…」

 

 

試合終了前、恐れていたことがついに起きてしまったのである。

ルビィは交代を余儀なくされた

 

 

 

千歌「ルビィちゃん、大丈夫!?」

 

ルビィ「ご、ごめんなさい…やっぱりまだ、治りきっていなくて…」

 

曜「ルビィちゃんは本当に頑張ったよ…だから、しっかり休んで?」

 

 

ほかの選手にも充分、決められるチャンスはある。

しかし、ルビィがいなくなったことによる精神的なダメージは、確実にチームの雰囲気を暗くしていた

 

 

シン「ルビィが離脱した…」

 

タンミン「チャンスだ…!!ここでいっきに日本を叩くぞ!!」

 

ハオ「よし…行くよ!!中国!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

美奈「…」

 

花陽「み、美奈監督…」

 

美奈「…ついに、ね」

 

 

美奈「あなたの最後のサッカーをする時が来たようね」

 

 

美奈「ダイヤちゃん」

 

 

 

ダイヤ「……」

 

 

 

 

 

黒澤ダイヤ、最後の出陣

 

 

日本 2-2 中国

 

 



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第3章 50話 「中国戦 "想いの炎"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
ついに…ついに今回のお話でアジア予選は完結です!ひとつの節目ですね。
50話かかりました…第3章、完結するのに何話かかるのか…

ダイヤちゃんの想いに、震えてください




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

梨子が考えた作戦、"サッカー版スクリーン"は中国に効果抜群。中国の戦術を無効化するほどの威力であった。しかし、あと少しのところでルビィの体力が尽き、交代を余儀なくされた。そして…代わりに出場する選手は、

 

 

 

 

 

『今入った情報です!!黒澤ルビィに代わって出場するのは、"炎のストライカー"黒澤ダイヤだぁぁ!!!!』

 

 

 

 

ダイヤ「……」

 

 

 

ルビィの代わり…ですか、

 

 

 

にこ「負けんじゃないわよ!ダイヤ!」

 

月「あと1点!絶対に行けるよ!」

 

真恋「思いっきりにね!」

 

 

 

…皆さん、わたくしに期待してくれていますわね。いや、これは情けでしょうか、同情…かもしれません

 

 

 

理亞「ほら、ルビィ。頑張って」

 

ルビィ「うゆ…」

 

 

 

ルビィが理亞さんの肩を借りて、すぐそこまで…あと少しで、わたくしはルビィと交代ですわね

 

 

 

ルビィ「お姉、ちゃん?」

 

 

 

わたくしはルビィと交代する…

 

 

 

理亞「ダイヤ、さん?」

 

 

 

わたくしは期待に答えなければ…

 

 

 

 

いや、わたくしは…………

 

 

 

 

 

 

ルビィの代わりなど、出来るのでしょうか?

 

 

 

 

 

「ダイヤさん!!!!」

 

 

ダイヤ「!!」

 

 

千歌「大丈夫、ですか?」

 

ダイヤ「千歌さん…申し訳ございません。少し緊張しているようで、」ポリポリ

 

千歌「うそ」

 

ダイヤ「…!」

 

千歌「果南ちゃんから聞きました。ダイヤさんは嘘をつくときホクロをかくって」

 

ダイヤ「…」

 

ルビィ「お姉ちゃん…」

 

ダイヤ「例え嘘だとしても、今は関係ありませんわ。さ、試合ですわ「違います」

 

ダイヤ「…」

 

千歌「私が言いたいのはそういうことではありません」

 

ダイヤ「…?でしたら、何を…」

 

 

どうしてこう、千歌さんの目は真っ直ぐなのでしょうか…

 

 

 

 

千歌「ごめんなさい!!」

 

ダイヤ「!?」

 

ルビィ「ち、千歌ちゃん!?」

 

理亞「…何を……」

 

千歌「私、バスの中で言った言葉…あれ、完全に諦めていました」

 

ダイヤ「…」

 

 

やめてください

 

 

千歌「私、こんな簡単に終わりたくないです」

 

 

やめてください

 

 

千歌「ダイヤさんもそう思いますよね?」

 

 

やめて

 

 

 

 

千歌「まだ、サッカーをやめたくな「やめてください!!!!!!」

 

 

「「「!!!!??」」」

 

 

ダイヤ「……どうしてあなたは…」

 

千歌「…」

 

 

どうして…

 

 

ダイヤ「諦めたいのに…忘れたいのに…あなたは、何故……」

 

千歌「ダイヤさんの目が、諦めたくないと言っているからです」

 

ダイヤ「…!!」

 

千歌「フィールドから見ていました。ダイヤさんの燃えるような目。不滅のような、不死鳥のような、綺麗な目が」

 

ダイヤ「…ですが、わたくしは…」

 

果南「ダイヤ」

 

ダイヤ「…まさか、果南さんまで千歌さんと同じことを考えているわけでは…」

 

果南「そのまさかだよ」

 

ダイヤ「……はあぁ…」

 

果南「私は、ダイヤの代表引退を受け入れる気はないしね」

 

千歌「果南ちゃん…」

 

果南「それにさ、おかしいと思うんだよね」

 

ダイヤ「…おかしい?」

 

果南「ダイヤの父さんの言い分」

 

 

ダイヤ父『才能ある方を許そう。"黒澤家は常に勝利のみ"。分かるな?』

 

 

ダイヤ「あれ、ですか?」

 

果南「おかしいよ。なんで才能だけで決めつけちゃうのか」

 

ダイヤ「…?」

 

 

果南「才能があるっていうだけで、強い弱いは区別出来ない」

 

 

ダイヤ「…意味がわからないです」

 

果南「ダイヤの父さんはさ、才能ある方を選ぶんでしょ?確かに、ルビィちゃんは才能の塊だよ」

 

ルビィ「…うゆ、」

 

果南「でもさ、ダイヤにはルビィちゃんが持っていないものがある」

 

ダイヤ「…わたくしにしか、」

 

果南「強力なディフェンス技、みんなをまとめる力、判断力…そして、挫けない心」

 

ダイヤ「…」

 

果南「どれもさ、今の日本に無くしちゃいけないんだよ。才能だけではわからない、凄い能力があるんだよ」

 

ダイヤ「…」

 

果南「黒澤家に必要なのは勝利のみ…なんでしょ?」

 

果南「才能じゃない。必要なのは、」

 

果南「勝利するためにいなきゃいけない、ダイヤなんだよ」

 

ダイヤ「っっっ!!!!」

 

 

 

ほんっっっとうに…この人たちは…

 

 

 

 

ダイヤ「…わたくしだって、」

 

千歌、果南、ルビィ「!!」

 

 

ダイヤ「もっとサッカーがしたい…!!」ボロボロ

 

ルビィ「…お姉ちゃん、」

 

ダイヤ「大好きで、大好きでたまらないサッカーを…みんなとやるサッカーを…一生、終わらせたくない…」

 

果南「…」

 

ダイヤ「どうしてこんなに大好きなサッカーを、捨てなければならないのですか…」

 

 

果南「…ならさ、」

 

ダイヤ「!!」

 

果南「教えてあげようよ。父さんに」

 

ダイヤ「教え、る…」

 

果南「黒澤ダイヤは、日本代表から無くなってはいけない存在なんだって。才能ではわからない力があるんだって」

 

 

果南「サッカーが本当に大好きなんだって」

 

 

ダイヤ「…」

 

ダイヤ「…」

 

ダイヤ「…」

 

 

 

ルビィ「お姉ちゃん」

 

ダイヤ「…」

 

ルビィ「あとは、お願い」

 

ダイヤ「…」

 

 

 

ダイヤ「任せなさい。ルビィ」

 

 

果南、千歌「!!!!」

 

ルビィ「!!」

 

 

ダイヤ「必ず、世界へ行きますわよ」

 

 

ダイヤはフィールドへと足を踏み入れた。

今はもう、諦めている自分はいない。

もうやめよう。

いつもみたいに、熱く、激しい

 

 

ダイヤ「黒澤ダイヤを」

 

 

見せつけてやる

 

 

 

 

果南「…ダイヤ、」

 

理亞「黒澤姉、やるじゃない」

 

ルビィ「えへへ…」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー ダイヤ家 ー

 

 

ダイヤ母「まあ、珍しい…あなたがテレビで試合を見るなんて」

 

ダイヤ父「たまにはな」

 

ダイヤ母「この前の電話でですか?」

 

ダイヤ父「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ母『はい。黒澤です…あ、果南ちゃん?お久しぶりですね……主人?いますよ。今代わりますね』

 

 

 

ダイヤ父『果南ちゃんか、珍しいな。私に用があるなんて』

 

果南『…ダイヤのことです』

 

ダイヤ父『…話したのか、あの子は』

 

果南『責めないでください。私が勝手に聞いたことです』

 

ダイヤ父『それで、代表離脱を取りやめろと?』

 

果南『違います』

 

 

果南『ダイヤからサッカーを奪わないでください』

 

ダイヤ父『…分かってくれ、果南ちゃん。これは黒澤家に関わる大事なことなんだ』

 

果南『ダイヤの全てを奪ってでもですか?』

 

ダイヤ父『…全て、か。言うね果南ちゃん』

 

果南『お父様は見たことがありますか?ダイヤがサッカーをしている姿を』

 

ダイヤ父『…いや、』

 

果南『ルビィにしか目がないのですか?』

 

ダイヤ父『そんな事は無い』

 

果南『なら、見てあげてください』

 

ダイヤ父『…』

 

果南『ダイヤがどれほどまでにサッカーを愛しているのか、ダイヤから何を奪おうとしているのか』

 

ダイヤ父『…』

 

果南『これは、幼馴染として、親友として、ライバルとして、仲間として…』

 

果南『お願いします』

 

ダイヤ父『…』

 

ダイヤ父『考えは変わらないが、試合は見る』

 

果南『…』

 

ダイヤ父『応援しているよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ父「ダイヤのサッカー、か」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『さあ!残り時間はあと僅かです!!日本と中国、どちらが決勝点を決めるのか!?』

 

 

穂乃果「世界は目の前だよ!!みんな、全てを出し切ろう!!!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

理亞「黒澤姉」

 

ダイヤ「理亞さん…!」

 

理亞「あんたまで必ずボールは繋ぐ。この試合、いや、世界へは黒澤ダイヤが繋ぐ」

 

ダイヤ「!!」

 

理亞「全てを出し切る」

 

ダイヤ「わかりましたわ!」

 

海未「理亞も言うようになりましたね…」シミジミ

 

凛「前まではこんなこと絶対に言わなかったよね!」

 

理亞「なっ!?私だって成長するの!!」

 

 

何も変わらないメンバー。

気を使っているわけではない。

純粋に勝ちたい。そして、楽しみたいんだ。

サッカーを

 

 

ダイヤ「ぶっぶーなのは、わたくしですわね」

 

 

諦めたらそこで試合終了。ですわね

 

 

凛「ちょっと安西先生は寒くないかにゃ?」

 

ダイヤ「…」

 

 

 

 

ピーー!!!!

 

試合再開。

日本のスローインから始まった。

日本は中国の作戦を全て潰したとは言え、元々中国は技術レベルが高い。

正面から勝負されれば…

 

 

ラウ「あまいよ!!」バッ

 

曜「うそっ!?取られた!?」

 

 

勝敗はわからない

 

 

『中国がボールを奪いました!!この時間帯でのカウンターは大きい!!』

 

 

シン「これが最後!」

 

 

英玲奈「これ以上は行かせるな!!全力で止めるんだ!!」

 

 

中国も必死だ。

負けたくないという気持ちがビリビリと伝わってくる。

どちらも気持ちは互角。

実力も互角

 

 

シン「ハオ!」

 

ハオ「ここで決める!!そして勝つんだ、日本に!!」

 

 

シン、ハオ「ー 天崩地裂 ー!!」ドガアァン!!

 

 

気持ちで勝った方が勝者だ。

中国は全てを込めた最高のシュートを日本のゴールに撃ちはなった

 

 

穂乃果「ダイヤちゃんのためにも…違う…みんなのためにも…」

 

 

ホノカ「死ぬ気で止める」

 

 

穂乃果は深呼吸し、再び闇の力を発動。

両手に全オーラを集め、中国の全てを…

 

 

受け止める

 

 

 

ホノカ「ー ゴットハンドW ー!!!!」ドォン!

 

 

花陽「お願い!穂乃果ちゃん!」

 

にこ「穂乃果…!」

 

 

ホノカ「うぐっ…やば…重い……」ググググ…

 

 

ここに来て、穂乃果は中国の全てに押され始めていた。

それほどまでに強い力…

やはり中国は強い。

自分だけでは、絶対に適わない…そう、

 

 

 

 

聖良「さあ!止めますよ!!」ガシッ

 

ことり「このシュートを止めて繋ごう!!」ガシッ

 

英玲奈「ダイヤへ、そして世界へ!!」ガシッ

 

梨子「終わらせてたまるもんか!!」ガシッ

 

 

自分だけでは、

 

 

 

『これは!!!!DFとMFの選手が高坂穂乃果を支えています!!そのおかげか、高坂穂乃果の後退は止まっている!!』

 

 

ホノカ「みんな、ありがとう!!これでもう負けない!!」

 

 

シン「そんな…」

 

ハオ「日本の意地…だね、」

 

 

ホノカ「止まれえぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

 

『……と、と…止めたあぁぁぁ!!!!』

 

 

穂乃果と支えたメンバーは尻餅をついた。

止めたとはいえ、超ぎりぎりのほぼアウトのレベル。

安心というよりかは、腰が抜けていた

 

 

穂乃果「ははは…止まった、」

 

聖良「いや〜、もうダメかと」

 

ことり「ことり、ドキドキしちゃいました…」

 

梨子「泣きそう」

 

英玲奈「腰が抜けているところ悪いが、時間が無い」

 

「「!!!!!!」」

 

 

穂乃果はすぐにボールを渡す。

そして、腰が抜けていたメンバーはすぐに抜けた腰を見つけて立ち上がる。

日本お得意の速攻、そして勝利への導きで攻める

 

 

梨子「ー 王者のタクト ー!!」

 

 

海未「中国の翻弄は任せてください!!」ビュン!

 

凛「最後まで走るにゃ!!」バリバリバリ

 

曜「走れ走れー!!」ビュン!

 

 

『これは!!再び日本が中国にスクリーンを仕掛ける動きだ!!中国は警戒してなかなかマンツーマンディフェンスができません!!』

 

 

曜「千歌ちゃん!!」パス

 

千歌「!」

 

 

ロンチ「私達に背中を見せるとはね!千歌!」

 

リン「ボールは頂くよ!!」

 

 

曜のパスを待つ千歌に迫る選手。

相手選手に背中を見せることは厳禁だが、千歌の場合は例え背中を見せたとしても関係ない

 

 

千歌「っ!!」バッ

 

 

ロンチ「!?(なに!?その動き…)」

 

リン「(全く予測出来ない…)」

 

 

千歌「ー リバースZスラッシュ ー」ギュン!ギュン!ギュン!

 

 

まるで全てが計算どおりだ、というような表情。

前を向けば既に道は示されている

 

 

千歌「お願いします!!」パス

 

 

千歌「ダイヤさん!!」

 

 

ダイヤ「!!」

 

 

『黒澤ダイヤに渡ったぁぁ!!中国のディフェンスは桜内梨子の指揮により穴だらけだ!!これは最大のシュートチャンス!!』

 

 

果南「ダイヤ!!シュート!!」

 

ルビィ「お姉ちゃん!!」

 

 

ダイヤ「いざ尋常に…!!」ピィー!

 

 

ダイヤは指笛でペンギンを呼び出す。

勢いよく飛び出したペンギンたちは、ダイヤが作り出した炎に突っ込む

 

 

ダイヤ「これで最後ですわ!!」

 

 

ダイヤ「ー フェニックスペンギン ー!!」ドガァン!

 

 

『出たあぁぁ!!黒澤ダイヤの必殺シュート!!日本トップクラスのコントロールを持つこのシュート!果たして中国は止められるのか!?』

 

 

フーチェ「ー 龍神鉄扇 ー!!」バッ

 

 

フーチェは扇子を構えて飛び出した。

何としてでもこのシュートは止めなければならない。

その気持ちが、早くボールを触りたいという焦りに繋がったのである

 

 

ダイヤ「…右」

 

 

グワーッ!!!!

 

 

ルウ「シュートが右に曲がった!?」

 

 

『これが"フェニックスペンギン"の恐ろしいところ!!変幻自在に軌道が変わるそのシュートは、まさに狂気!!』

 

 

フーチェ「やらせない!!」バッ

 

 

しかし、フーチェも咄嗟に反応し右へと飛んだ。

扇子で挟んでしまえば勝ちだ。そう、

 

 

 

 

 

ダイヤ「…と見せかけて左」

 

 

挟めればの話

 

 

フーチェ「嘘だろ!?」

 

インチー「右に曲がったボールが今度は左に!!?」

 

ラウ「やばいよ…!!」

 

 

『これは決まったか!?ボールは完全にGKを引き離した!!そのままゴールへ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウ、シン「うおああああああ!!!!」ドガァン!

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

中国「「「!!!!!!!!」」」

 

 

 

シン「分かってたよ!ダイヤ!」

 

ハオ「決着は延長戦だね!!」

 

 

『なんということだぁ!!!!黒澤ダイヤの変幻自在シュートは、中国のチャウ・シンとリ・ハオによりブロックされてしまった!!!!』

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「」

 

 

 

外した

 

あのシュートを

 

 

 

ダイヤ父「…」

 

 

 

このタイミングで

 

 

 

果南「…!!」

 

 

 

世界を目の前にして

 

 

 

ルビィ「…!!」

 

 

 

わたくしの夢、全ては

 

 

 

『ボールはそのままラインを……』

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「黒澤姉えぇぇぇぇぇ!!!!」ズザーッ!

 

 

 

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

中国「「「!!!!??」」」

 

ルビィ「…っっっ、理亞ちゃん!!」

 

 

理亞「繋ぐって言ったでしょ!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

理亞はラインぎりぎりで"ATP"の加速を使って飛び込み、ボールを止めた。

これで希望、世界、夢は全てがまだ繋がっている

 

 

理亞「本当の黒澤ダイヤを見せて!!!!」パス

 

ダイヤ「!!」

 

 

理亞のロングキックは再びダイヤの元へ。

しかし、中国選手もダイヤの元へ。

誰がボールを手にするのか…そんなの決まっている

 

 

ダイヤ「ー ラ・フラム ー!!」ボオォォッ!

 

 

ラウ「炎の壁!?」

 

タンミン「あっつ!?近づけない!!」

 

 

炎の壁を作って中国の選手を足止めするダイヤ。

ボールはダイヤの真上。

今ここに、正真正銘最後のシュートが放たれる

 

 

ダイヤ「わたくしは、サッカーへの夢を捨てることはできません!!」バッ

 

 

月「"フェニックスペンギン"じゃない…!?」

 

 

ダイヤ「生まれて初めての、ワガママを言わせてください!!」

 

ダイヤ「わたくしは、仲間と世界へ…いや、死ぬまでサッカーをしたい!!」

 

 

ダイヤ父「…!!!!」

 

 

聖良「"ラ・フラム"の炎が、ダイヤさんの左足に集まっていく…」

 

穂乃果「熱い…ここまで伝わってくる程のオーラ!!」

 

 

 

 

 

この炎は、サニデイジャパン…そして、全ての人の想いです!!!!

 

 

 

ルビィ「炎の剣……」

 

 

 

迷い、苦しみ、悲しみ、痛み、運命…全て、この大剣で焼き切る!!!!!!

 

 

 

 

 

ダイヤ「うおああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「ー マキシマムファイア ーアァァァァ!!!!」ドガアァン!!!!

 

 

 

 

ダイヤ「行けええぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

『これは!!??黒澤ダイヤの超強力新必殺技だあぁ!!!!』

 

 

フーチェ「ー 龍神鉄扇 ー!!!!」バッ

 

 

炎の扇子で炎を受け止める。

しかし、同じ炎でも次元が違う。

掴み取れる気がしない

 

 

フーチェ「ぐうっっっっ!!!!!!」

 

シン「フーチェ!!」

 

ハオ「頑張って…!!」

 

 

 

バキッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

シン、ハオ「!!??」

 

フーチェ「鉄扇に…ヒビが…」

 

 

ダイヤ「…」クルッ

 

 

ダイヤはシュートがゴールを破る前に、中国ゴールに背を向けた。

止められることは無いという絶対的自信。

そして、最後のシュートを見るのはどうしても悲しくなる…

 

 

全てをボールに込めたダイヤの姿は、

 

 

 

 

バシュウゥゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

 

誰よりも美しかった

 

 

 

日本 3-2 中国

 

 

 

 





次回から世界編も本格的になってきます。
並みいる強豪がうじゃうじゃと…スポットが当たっていないキャラも沢山当てていこうと思います。アジア予選、ここまで読んで頂き、ありがとうございました!これからもよろしくお願いします

マキシマムファイア
我らが豪炎寺の劇場版限定シュートです。ラストリゾートの次に並ぶ、豪炎寺の最強シュートと言われています。誰が見てもかっこいいその技は、日本、そして世界に衝撃を与えたでしょう(ダイヤちゃんのシュート)



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第3章 51話 「世界への挑戦前」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
アジア予選が終了し、ついにFFI本戦。
今回はサニデイジャパンが旅立つ前のお話です!

そして、ダイヤちゃんの件も完結します







 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ父「私が悪かった」

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「…………はい?」

 

ダイヤ父「代表離脱はなしだ。将来のことも、ダイヤの好きにしなさい」

 

ダイヤ「……え?え?」

 

ダイヤ父「跡継ぎは婿に任せても構わないしな」

 

ダイヤ「……え???」

 

 

FFIアジア予選、最終試合・中国戦から数日。

サニデイジャパンは劇的勝利を収め、FFI本戦へと駒を進めた。

ダイヤは美奈と離脱の手続きをするために、黒澤家へと訪れていたのだが…

 

 

美奈「あら♪ダイヤちゃんは世界へ行けるのね!本当に良かったわ♪」

 

ダイヤ「…待ってください」

 

ダイヤ「詳しく……説明してください」

 

ダイヤ「今、わたくしは冷静さを欠こうとしています」

 

美奈「まぁまぁ、ダイヤちゃん!良かったじゃない!」

 

ダイヤ「…ですが、」

 

美奈「ひとまず、今のあなたには行くところがあるんじゃない?」

 

美奈「事務処理は私達大人に任せて!ダイヤちゃんは行ってらっしゃい♪」

 

ダイヤ「………」

 

 

ダイヤは逆に納得出来ない…という表情で部屋を後にした。

ダイヤが行く場所はこの後説明するとして、

 

 

 

ダイヤ父「…」

 

美奈「…」

 

美奈「最初からこうするつもりだったんでしょ」

 

ダイヤ父「…何の話だ」

 

美奈「ルビィちゃんが復帰するのに、自身の実力に不信感を抱いていたダイヤちゃんのために」

 

ダイヤ父「…」

 

ダイヤ父「もしそう考えたとしても、ダイヤを傷つけるようなことは出来るわけないだろ?」

 

美奈「それもそうね♪」

 

ダイヤ父「それを言うなら美奈」

 

美奈「?」

 

ダイヤ父「ここまで全て、お前の計算通りか?」

 

美奈「…何の話?」

 

ダイヤ父「俺がダイヤをサッカーから離そうとしたこと。そして、ルビィをあえて後半の最初から出して、スタミナを底つかせ、ダイヤを最後に出場させた…その時の果南ちゃんらの説得もな」

 

美奈「…」

 

美奈「もしそう考えたとしても、ルビィちゃんを危険な目に合わせるなんて…出来っこないわ♪」

 

ダイヤ父「それもそうだな」

 

 

2人は揃って茶をすすった。

一息つき、話は昔話へと変わっていた

 

 

美奈「……それにしても、相変わらずコウちゃんは堅いわねぇ…」

 

ダイヤ父「…今更だな。昔からだろ」

 

美奈「だから私にもシュート対決負けるのよ」

 

ダイヤ父「それは関係ないだろ。あと、あの時は北也の調子が良かったんだ」

 

美奈「その割には、サエちゃんにデレデレだったのよね…」

 

ダイヤ父「……」

 

ダイヤ父「斬る」カチャッ

 

美奈「冗談!!冗談よ!!ホントに刀はやめて!!あなたに刀はヤバい!!」

 

ダイヤ父「はぁ…美奈と話すと疲れる」

 

 

ダイヤ父は刀を元あった場所に戻す。

この人が刀を持つと冗談には見えなくなる。

昔もよくこれで北也と喧嘩していた

 

 

ダイヤ父「…そう言えば、サエは今は何をしているんだ?」

 

美奈「やっぱりサエちゃん気になるの?」

 

ダイヤ父「…」カチャッ

 

美奈「わかった!!わかった!!私が悪かった!!サエちゃんは真恋ちゃんと同じよ!」

 

ダイヤ父「真恋…サエは監督か、」

 

美奈「今じゃ、監督の中では知らぬ者はいない名監督よ」

 

ダイヤ父「…イタリアか」

 

美奈「ご名答」

 

ダイヤ父「サエの性格上、かなり仕上がっているだろうな」

 

美奈「えぇ。今の日本じゃ、イタリアには適わない」

 

ダイヤ父「…変わったな。サエも」

 

美奈「昔のサエちゃんは…もうどこにもいないのよ。私のせいで」

 

ダイヤ父「……」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ところ変わってダイヤはと言うと…

 

 

 

 

 

ダイヤ「絶対におかしいですわ…こんな上手くできた話、」

 

果南「まぁまぁ、これでダイヤはサッカーを続けられるんだし、」

 

梨子「想いが通じたんですね!」

 

ダイヤ「美奈さんは絶対にこうなるって分かってるようでした…やはり、美奈さんとお父様はグル…」ブツブツ

 

ルビィ「お姉ちゃん…顔が怖いよ」

 

 

日本代表 浦の星女学院メンバーは、乗り慣れたバスの中にいた。

向かう場所はもちろん浦の星女学院。

アジア予選を勝ち抜き、これから世界へと戦いに出るための報告に行くのであった

 

 

曜「はぁ…世界か…緊張するであります」

 

千歌「曜ちゃんが緊張ってなかなかないよね」

 

曜「飛び込みでもこんなには緊張しないよ…」

 

梨子「そうね…数日後には日本を発つから、」

 

「「「…………」」」

 

 

穂乃果が一年前に出会ったイタリアの選手、フィレア。

そのレベルの選手達が頂点を奪い合う本戦…緊張するなという方が無理な話だ。

しかし、

 

 

千歌「緊張はするけど、もう、怖くはないよね」

 

果南「そうだね!ここまで頑張ってきたんだもん。戦っていく自信はあるよ!」

 

花丸「ルビィちゃんも復帰したし、」

 

梨子「ダイヤさんも世界へ行ける!」

 

曜「みんな、一人ひとり強くなった!」

 

千歌「始まるんだね…私達の、世界の頂きへの挑戦が」

 

ルビィ「…挑戦」

 

ダイヤ「その為にもまずは、浦の星女学院の生徒にしっかり決意表明ですわ」

 

梨子「応援してくれているお礼もしなくちゃね」

 

千歌「うん!行こう!!」

 

 

バスが到着し、メンバーはバスを降りた。

向かうのは我らが母校。

自分達を巡り合わせてくれた母校。

その足取りは今までで一番軽かった

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 帝国女学院 ー

 

 

月「みんな!ただいまー!」

 

佐久間「おぉ!月!」

 

鬼道「本戦進出おめでとう…素晴らしい活躍だな」

 

月「いや〜、みんなのおかげだよ!」

 

月「…?そう言えば、善子ちゃんは?浦の星の方に行ったの?」

 

源田「いや、善子は一人でトレーニングルームだ」

 

月「うーん…気を使わなくてもいいんだけどなぁ…」

 

佐久間「善子は善い子だからな」

 

鬼道「あぁ。それに、彼女は変わった」

 

月「変わった?」

 

鬼道「まるで別人だ」

 

 

 

 

 

 

善子「………」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ー 函館聖泉女子高等学院 ー

 

 

北厳「聖良、理亞!アジア予選突破おめでとう!!」

 

「「「おめでとう!!」」」パチパチ!!

 

 

聖良「あ、ありがとうございます!」

 

理亞「……////」

 

 

白咲「まさかウチの高校から代表が二人も…しかも理亞ちゃん!!あの"ATP"を習得しちゃうとは!!」

 

理亞「しっ、白咲さん…抱きつかないで…」

 

なえ「二人は函館聖泉の誇り!世界でも頑張ってね!」

 

理亞「姫…」

 

聖良「頑張ります。皆さんの想いも背負って、必ず頂点へ…!!」

 

白咲「うんうん…!それで、二人はこれからどこか行くの?」

 

聖良「はい、理亞が監督から指令を出されてて…」

 

理亞「ホントに謎」

 

白咲「指令?どこに?」

 

聖良「それは…」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ー UTX高校 ー

 

 

 

ツバサ「梨子のことについてたくさん質問されたわ」

 

英玲奈「元UTX生徒…しかもサッカー部だしな」

 

あんじゅ「今考えると惜しいわよね。梨子ちゃんがいたら音ノ木坂学院との試合、わからなかったかも」

 

英玲奈「いや、梨子は浦の星女学院のメンバーだったからこそ。自身の中に眠っていた才能を開花出来たのかもしれない」

 

ツバサ「もう少し、先輩後輩のコミュニケーション、そして練習や一人ひとりの平等さが必要かもね。今のUTXは、」

 

英玲奈「あぁ。梨子には申し訳ないことをした…」

 

 

 

 

 

高1梨子『ハァハァ…』

 

英玲奈『(桜内梨子…個人技に目立ったものはないが、ほかの選手と見ている場所が違う気がする…)』

 

ツバサ『英玲奈。レギュラーメンバーはミーティングよ』

 

英玲奈『…あぁ、今行く』

 

英玲奈『(今度、桜内梨子と話してみるか…)』

 

 

 

 

 

英玲奈「その数日後、梨子はUTXサッカー部をやめた」

 

あんじゅ「英玲奈は結局、梨子ちゃんと話したの?その後、」

 

英玲奈「…話さなかった。もしあの時話していたら、私達は変わっていたのだろうか…」

 

ツバサ「…まあ、何にせよ。今こうして梨子と一緒にサッカーが出来る。あの時にできなかった分。思いっきりね」

 

英玲奈「あぁ。そのつもりだ」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 音ノ木坂学院 ー

 

 

穂乃果「…」

 

海未「穂乃果、やはりここでしたか」

 

 

屋上で一人、座っている穂乃果。

何か考え事をする時はいつもここにいる

 

 

穂乃果「…私達、行くんだね。あの空へ」

 

穂乃果「見たこともない世界へ…」

 

海未「はい。長かったですね、ここまで」

 

穂乃果「フィレアと出会ってから、毎日、死ぬほど特訓した。頼もしい仲間もいる…」

 

穂乃果「私の力がどこまで通用するか…どこまで世界は強いのか…」

 

穂乃果「楽しみだよ」

 

海未「…私もですよ。穂乃果」

 

 

2人が見上げる空の先。

そこには穂乃果達が戦うであろう選手達の空へと続いている。

日本、サニデイジャパンは世界と戦う。

穂乃果は期待を胸に屋上を後にした

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 数日後 某首都空港 ー

 

 

 

美奈「全員揃っているわね♪」

 

 

ついに日本を発つ時がやって来たサニデイジャパン。

しかし、沖縄への修学旅行とは次元が違う。

今回向かう目的地は……

 

 

 

花陽「ライオコット島です!!!!」

 

曜「うわっ!?びっくりした…」

 

凛「大きな声のかよちんも好きにゃ〜」

 

花陽「ライオコット島はサッカーアイランドと呼ばれる、サッカーのための巨大な島です!!ハワイ諸島のように、赤道に近いので、1年を通して夏のような気候なんです!!」

 

ダイヤ「さらに、対戦形式も変わりますわよ!まずは1次グループリーグを行い、上位2チームがベスト16進出、以降はトーナメント形式で試合を行いますわ!」

 

 

真恋「あはは…2人に言うこと全部言われちゃったわね」

 

美奈「そうね♪でも、さすがの2人でも、これは説明出来ないわよね♪」

 

花陽「な、何でしょうか…」

 

ダイヤ「他に発表が?」

 

 

 

 

 

美奈「そのグループリーグの抽選結果」

 

 

 

「「「!!!!!!??」」」

 

 

 

穂乃果「私達の対戦相手!!」

 

聖良「え…今ここで発表するんですか!?」

 

にこ「お願い優勝候補は来ないで優勝候補は来ないで優勝候補は来ないで」ブツブツ

 

果南「結局最後は戦うことになるんじゃ…」

 

凛「テンション上がるにゃー!!」

 

 

 

美奈「それじゃあ、発表しまーす!!」

 

 

「「「…………」」」ゴクリ

 

 

 

 

 

 

 

美奈「日本と戦う国は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美奈「飛行機が離陸したらちょうど発表で〜す♪」

 

 

「「「!!!?」」」ズコッ

 

 

理亞「まだ発表されてない!?」

 

希「いや〜、美奈監督も悪やなぁ」

 

梨子「完全に信じきってた…」

 

千歌「お母さん…」

 

 

 

まもなく飛行機に搭乗開始。

サニデイジャパンの世界への挑戦が始まる!!

 

 




ご感想、お待ちしております!



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第3章 52話 「運命の抽選会」


皆さんどうも!オリオンの刻印を見ながらの投稿、ルビィちゃんキャンディーです!

今回はついに日本と戦うチームの発表!
いったいどの国と日本は当たるんですかね…






 

 

 

 

 

ー 飛行機機内 ー

 

 

無事に日本を飛び立ったサニデイジャパン。

滅多に乗ることのない飛行機。

はしゃぐメンバーもいれば、落ち着いているメンバーもいる。

だが、共通することは、全員が緊張感を持っている。ということだ

 

 

千歌「どのチームと戦うんだろう…」

 

曜「ブラジル…とかと当たったらやばそうだよね」

 

花陽「ブラジルだけではありません!!!!」クワッ

 

千歌、曜「!?」

 

花陽「いいですか?サッカーは南米だけが強いわけではないんです!ヨーロッパも南米に引けを取らない強さ…そして、何よりも数です!!」

 

にこ「ヨーロッパだけでもたくさんいるわよ。本戦に進んでいるのは。どの国も、ものすごい強さよ」

 

花陽「数が多い…そして、連合国という繋がりもあるので、簡単に国の移動もできます…要するに、国同士で力を高め合うことが出来るんです!!」

 

曜「それって、色々な国の選手が集まって、一緒にサッカーをするってこと?」

 

花陽「簡単に言えばそうですね」

 

月「僕が中学の時にいたチームがそれだよ」

 

穂乃果「フィレアのチーム…」

 

月「本戦に進んだチームの中にたくさんいるよ…僕のチームメイトが」

 

にこ「あぁ…あまり聞きたくなかった情報ね、」

 

千歌「余計、強さがはっきりしちゃいますもんね…」

 

 

美奈「みんなー!抽選が始まるわよ!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

全員テレビに注目する。

この抽選結果が日本の運命を大きく左右するのだ

 

 

ことり「あれ?飛行機ってテレビは…」

 

聖良「最近の飛行機は大丈夫らしいですよ」

 

 

 

 

『さあ!!ついにこの日がやって来ました!!FFI本戦、グループリーグ抽選会が間もなく始まります!!』

 

 

 

にこ「と、とうとう決まってしまう…」

 

希「ウチが占ってみよか?」

 

にこ「やめなさい!!希の占いはマジもんだから危険よ!!」

 

希「にこっちはウチの占いをなんだと思ってるん??」

 

 

果南「うーん、どの国でも大丈夫じゃない?」

 

海未「はい。最後は強い国と戦うわけですから」

 

穂乃果「あ!穂乃果はフィレアの国と戦いたい!!」

 

希「これでフラグは立ったな…にこっち」ニヤッ

 

にこ「もういいわ…」

 

 

 

『まずはAグループ!4チーム中の、1チーム目が発表されます!!』

 

 

 

花丸「トップバッターずらね」

 

花陽「…」ゴクリ

 

 

 

 

 

 

 

 

『出ました!!Aグループの1チーム目は、イタリアの"オルフェウス"です!!』

 

 

 

ツバサ「最初から優勝候補ね」

 

英玲奈「あぁ、今一番戦いたくない相手だな」

 

穂乃果「日本もAグループがいい!!」

 

にこ「穂乃果ぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『続きまして、Aグループの2チーム目は………イギリスの"ナイツオブクイーン"です!!』

 

 

 

 

ダイヤ、花陽、にこ「来たあぁぁぁぁ!!!」

 

梨子「ちょっと、飛行機の中では静かに…」

 

凛「凛はこっちのかよちんとダイヤちゃんも好きにゃ〜」

 

にこ「ちょっと!?にこは!?」

 

 

花陽「イギリスのナイツオブクイーン…"聖剣の騎士"エドガーさんが率いる超攻撃型チーム…」

 

ダイヤ「最強の矛と言われるその戦術…まさか、目の前で見れる日が来ようとは…」

 

あんじゅ「そのまさか。試合で実際に見れるかもね〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『続きましては3チーム目………スペインの"無敵のジャイアント"です!!!ここも強豪だぁ!!』

 

 

 

 

聖良「…地獄絵図ですね、ヨーロッパの3強が揃いましたよ」

 

月「うわ〜、4チーム目の国…可哀想」

 

 

真恋「スペイン…イギリスとはまた別タイプの超攻撃型チーム…」

 

美奈「フィジカルはヨーロッパ1じゃないかしら…?絶対に当たりたくないわね♪」

 

 

理亞「(みんな自分がフラグ立てていることに気づいてないのかな…)」

 

ルビィ「…これ本当にちゃんとクジ混ぜてるのかな…??」

 

 

 

 

『最後です…!Aグループ、ラスト4チーム目の発表です!』

 

 

 

 

にこ「…」

 

凛「にこちゃんが急に静かになったにゃ」

 

希「あれは…全てを察した者の目や。面構えが違う」

 

穂乃果「日本!日本!日本!」

 

千歌「え?この流れって…え?」

 

曜「…そのまさかだよ。千歌ちゃん」

 

 

 

『なんと……!!!!!!』

 

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『日本!日本です!!"サニデイジャパン"は、なんとグループリーグからヨーロッパ3強との戦いとなったぁぁぁ!!!!!!』

 

 

 

 

穂乃果「やったぁぁ!!!!」

 

海未「穂乃果の言った通りになりましたね」

 

ことり「まさか、イタリアと同じグループになるなんて」

 

 

千歌「これ、私達勝てるの??」

 

曜「信じよう!千歌ちゃん!」

 

梨子「ブラジルが来なかったから大丈夫よ!」

 

聖良「全くフォローになってないような…」

 

 

花陽「まさか、ヨーロッパの3強が集結するなんて…」キラキラ

 

ダイヤ「まるでサッカーの宝石箱ですわ…」キラキラ

 

凛「やっぱりこの2人好きにゃ!」

 

 

 

こうして日本の対戦相手が決まった。

良くも悪くも最初から優勝候補…

勝てば自信が。負ければ絶望が。

果たして、このフライトが地獄へと運ぶ死のフライトとなるのだろうか…

 

それは全て、日本の実力次第である

 

 

 

 

Aグループ

 

1回戦 日本VSスペイン

2回戦 日本VSイギリス

3回戦 日本VSイタリア

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 数時間後 ー

 

 

美奈「それでは!みんなにお知らせしたいことが2つありまーす!」

 

千歌「お知らせ?」

 

にこ「また何かとんでもないことを言うつもりね…」

 

希「完全に疑心暗鬼やな…」

 

 

空の旅も間もなく終了…という中での発表だった。

美奈の雰囲気からして、悪いニュースではないようだが…

 

 

 

美奈「1つ目は新メンバー発表ね♪」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

穂乃果「新メンバー!!」

 

海未「追加招集…というやつですね」

 

凛「新しい仲間にゃー!!」

 

理亞「FWだったら絶対に負けない…!」

 

ルビィ「…」

 

 

美奈「新メンバーは2人!今から登場するからね!それでは、よろしく〜♪」

 

 

花丸「いったい誰が…」

 

真姫「知り合いとは限らないわよ」

 

 

新メンバー…日本が本戦を戦っていく中で、必要だと判断された選手…

誰かは全く予想がつかないが、機内の後部から2人、歩いてくる音がする

 

 

千歌「あっ!来た…………へ?」

 

曜「あ、」

 

梨子「!!」

 

ダイヤ「なんと!!!」

 

果南「びっくりした…」

 

ルビィ「…!いよいよだね!」

 

花丸「マルは信じてたずら…!!」

 

 

 

 

 

 

 

善子「みんな久しぶり」

 

 

 

ことり「ヨハネちゃんだぁ〜〜〜♡♡♡」

 

 

美奈「はーい!1人目の追加メンバーは津島善子ちゃんでーす!!」

 

 

 

理亞「確かあの堕天使…FW…」ガルルル!

 

聖良「そ、そんなに威嚇しなくても…」

 

英玲奈「日本のFWは本当に多いな」

 

あんじゅ「多分、半分以上がFW経験ありね」

 

 

曜「…?そう言えば善子ちゃん…」

 

 

 

 

曜「イメチェン?」

 

善子「…」

 

果南「あ、確かに善子玉がない」

 

梨子「いやいや…そこ以上に変わった場所が、」

 

ルビィ「ショートにしたんだね!善子ちゃん」

 

 

善子は長めの髪をバッサリ切り、ショートでスッキリとした姿で登場していた

 

 

善子「まぁ、こっちの方が動きやすいしね」

 

花丸「?」

 

梨子「?」

 

ルビィ「…善子ちゃん?」

 

善子「…なに?」

 

ルビィ「いや、何も……」

 

 

なんだろう…この違和感は…

善子だが善子じゃない。

何か雰囲気が、そう雰囲気が違う。

そして、何かが前とあきらかに違う

 

 

花丸「なんか違和感があるずら…」

 

梨子「髪型ではない…何かが…足りないような、」

 

善子「…そんなことより、もう1人の追加メンバー気にならないの?」

 

月「確かに。でも、どこにいるの?」

 

穂乃果「今、みんなの前に立っているのって、善子ちゃんと千歌ちゃんだけだよね?」

 

千歌「え?」

 

梨子「…!?千歌ちゃん!?いつの間に善子ちゃんの横に??」

 

千歌「え!?千歌はここだよ!?」

 

曜「千歌ちゃんは私の横に座ってるよ?」

 

梨子「え?」

 

曜「え?」

 

千歌「え?」

 

果南「…じゃあ、善子の横にいる千歌は…誰?」

 

 

「〜♪」

 

 

千歌「へ…あれって、千歌?」

 

梨子「千歌ちゃんが2人?」

 

 

「「「えぇえぇえぇ!!!!???」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「そんなわけないでしょ…」

 

千歌「ですよね〜…」

 

「ふふっ♪よく言われるんです!」

 

ダイヤ「声までそっくりですわ…」

 

聖良「違うのは目の色と髪型…ぐらいですね、」

 

「私の名前は葉石晴夏(はいし はるか)!ヨーロッパの方でサッカーをしていました!」

 

ツバサ「月、知ってる?」

 

月「……はじめましてだね」

 

晴夏「皆さんのご活躍は聞いてます!私も日本の力になれるように頑張ります!よろしくお願いします!」

 

 

機内は暖かい拍手に包まれた。

善子の念願の代表入り。

そして、双子レベルで千歌にそっくりな晴夏。

この2人は、後に日本の大きな力となるのだが…

 

 

穂乃果「はーい!質問!!ポジションを教えて!」

 

晴夏「はい!ポジションはDFです!MFもできます!」

 

にこ「DFが少ない日本には救いの選手ね」

 

花丸「善子ちゃんは、みんな知ってるから…大丈夫だよね」

 

善子「いや、私はFWじゃないわよ?」

 

花丸「…ずら?」

 

浦の星「「「え???」」」

 

善子「いや、まあ、確かにFWなんだけど、正確に言うと…」

 

 

善子「FW兼リベロよ」

 

 

花陽「リベロ…ですか!!」

 

凛「ねえ、かよちん。リベロって?」

 

花陽「リベロはね、攻撃にも参加するDFのことだよ。昔のサッカーではかなり定番のポジションで…"攻撃と守備を両方自由にする選手"って感じかな?」

 

凛「そんなこと出来るようになったの!?善子ちゃん!」

 

善子「まあ、死ぬほど特訓したからね」

 

 

ツバサ「へぇ…まさか、リベロと来た」

 

月「…すごいよ。善子ちゃんは、完全に仕上げてきた」

 

 

善子の成長と変化に驚きを隠せないメンバー。

その後、2人が席についてことを確認した美奈は続ける

 

 

 

 

美奈「じゃあ、2つ目のお知らせね♪」

 

にこ「1つ目でこんなに驚かされたんだから、2つ目はもっとすごいはず…」

 

海未「普通に、この後の予定じゃないですか?」

 

美奈「あ!海未ちゃん正解!」

 

海未「え?」

 

にこ「え?」

 

月「この後って、飛行機を降りた後ですか?」

 

美奈「そうよ♪飛行機を降りて、日本の宿に到着したらすぐに向かってもらう場所があるの!」

 

千歌「向かってもらう場所?」

 

穂乃果「早速練習かな?」

 

美奈「いいえ。これ、なーんだ!」ポチッ

 

 

美奈がテレビに映し出したのは何かの文…だった。

そして下の方には…

 

 

花陽「"ナイツオブクイーン"のマークが!!」

 

ダイヤ「え…まさか、イギリスからの?」

 

美奈「そうでーす!お手紙です!」

 

 

「「「えぇえぇえぇえ!!!!??」」」

 

 

ダイヤ「な、何故あのナイツオブクイーンがわたくし達に!?」

 

花陽「まさか、ヨーロッパ3強に楯突こうとする日本に目をつけて…」

 

花丸「消されるずらか!?」

 

穂乃果「ウソ!?まさか、このまま飛行機トラブルが発生して…」

 

海未「漫画の見すぎです」

 

ことり「でも、ちょっと怖いよね…」

 

果南「それで、手紙の内容は?」

 

 

美奈「それがね?同じグループになったので、試合をする前に親睦を深めたいから、パーティーに参加してほしいんだって」

 

千歌「パーティーって…あのパーティー?」

 

曜「どのパーティー??」

 

千歌「食事とかする…」

 

梨子「それ以外にどんなパーティーがあるのよ…」

 

 

花陽「罠ですね」

 

花丸「罠ずら」

 

ダイヤ「罠ですわ」

 

にこ「断った方がいいんじゃない?絶対に何かあるわよ」

 

美奈「でも、イタリアもスペインも招待されているのよ?」

 

花陽「ですが、全員ヨーロッパの方ですし…緊張しちゃうというか…」

 

凛「凛たち浮いちゃうにゃ…」

 

美奈「うーん、残念ね…せっかく鞠莉ちゃんが会場を用意してくれたのに、」

 

「「「え???」」」

 

 

果南「鞠莉ちゃん…て、あの…」

 

ダイヤ「鞠莉さん??」

 

曜「シャイニーな?」

 

美奈「そうよ?主催はイギリスだけど、会場手配はイタリアの鞠莉ちゃんよ?」

 

 

 

いよいよ情報がゴチャゴチャになってきたサニデイジャパンの脳内。

間もなく着陸。

ライオコット島、そして世界との激闘の舞台はすぐそこだ!

 

 

 

 

晴夏「イタリア…」

 

月「……」

 

 





というわけで!グループリーグからガチガチの強豪たちと戦います!新メンバーも登場!ここからさらに展開は加速します!

あ、ちなみに晴夏ちゃんはかなり重要なキャラなので、



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第3章 53話 「開催!親睦パーティー」

皆さんどうも!ジオウの最終話を見てジオウロスになりかけているルビィちゃんキャンディーです!オーマジオウ…あれはもう現時点のライダーの中ではもう最強確定ですね…!変身する時は鳥肌が治まりませんでした…

今回のお話は、本当に登場キャラが多い…情報量が爆発する回が続きますので、分からないことがあったらネタバレにならない程度に答えますので、ご感想、質問、よろしくお願いします!



 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに発表されたグループリーグ組み合わせ。日本はグループリーグ早々、優勝候補のヨーロッパ3強と戦うことに…そんな中、追加メンバーの善子と晴夏の合流。そして、イギリスとイタリアからのパーティーの招待状がメールで送られてきた。間もなくライオコット島へ到着。サニデイジャパンのメンバーは既に、情報多量でパンク寸前だ!!

 

 

 

 

 

ー ライオコット島 国際空港 ー

 

 

千歌「着いたぁぁぁ!!」

 

曜「うわぁ!ザ外国だね!」

 

聖良「たくさんの国の、たくさんのサポーターの方達ですね!日本のサポーターも…!」

 

理亞「あ、暑い…」

 

ことり「南の島…なんだよね?」

 

花陽「はい!ライオコット島は別名、サッカーアイランド。FFI世界大会のために、南の島を丸ごと会場にしてしまったとか!」

 

にこ「南の島を丸ごとって…誰がそんなことを、」

 

真姫「噂だと、世界規模の大企業と金持ちが手を組んだとか…」

 

にこ「はぁ…物好きがいたものね、」

 

 

空港を出ると真夏の太陽の下。

南の島らしい景色。

色とりどりの花、気温、熱気が支配していた。

大きな広場には本戦出場国の旗が設置されている

 

 

花丸「あ!サニデイジャパンの旗が!」

 

ルビィ「ホントだ!」

 

ダイヤ「ルビィ!あちらにブラジルの旗が!」

 

 

英玲奈「サッカーアイランドか…その名にふさわしい島だな」

 

月「ここに集まってくるのは世界各地で選ばれた、最高のプレイヤー達…」

 

 

海未「ついに来ましたね。世界へ」

 

穂乃果「うん。気合い入れなきゃね」

 

 

サニデイジャパンはこの後、日本の宿へと向かい。

準備が出来次第、会場となるイタリアエリアに出発する。

ライオコット島は、出場チームが最大限の力を発揮出来るように、そのチームが滞在するエリアには、母国と同じ街並みを再現している

 

 

果南「まるで世界旅行だね!」

 

善子「まわれる時間はあるのかしら…」

 

 

バスの窓から見るだけでも寄り道したくなる景色。

しかし、優先順位は宿に向かうこと。

一直線にバスはジャパンエリアへと向かうこと数十分……

 

 

 

 

 

ー ジャパンエリア 日本代表宿舎 ー

 

 

花丸「屋根に煙突みたいなのがいっぱいあるずら…!」

 

真姫「温泉とかあるのかしら…」

 

晴夏「後で探してみましょ!真姫さん!」

 

真姫「ヴェェ!?まあ、別にいいけど(名前、覚えるの早いわね…)」

 

 

真恋「はーい!みんな聞いてね!もう既に夕方。パーティーの時間は迫ってきているわ。荷物を置いたらすぐに用意したドレスに着替えてもらうわよ!」

 

 

梨子「ドレス…正装ね」

 

凛「え…凛もドレスを着るの??」

 

花陽「大丈夫だよ凛ちゃん!絶対に似合うから!」

 

 

ことり「みんなのドレス姿…特にヨハネちゃん…楽しみだなぁ…」ニヤニヤ

 

穂乃果「ねえ、なんかことりちゃんが怖いんだけど…」

 

海未「善子が標的です。私達は心配いりません」

 

穂乃果「そういう問題??」

 

 

善子「!?」ゾクッ

 

 

 

(ドレスはお誕生日の特別ドレスを想像してください)

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー イタリアエリア パーティー会場 ー

 

 

にこ「ついに来てしまった…」

 

花陽「敵地です…油断したら消されます!!」

 

曜「そんな身構えなくても…」

 

 

果南「そうだよ。鞠莉のいるチームだし、」

 

ダイヤ「緊張することはないですわよ?」カチコチ

 

鞠莉「もう既に緊張してるじゃない」

 

ダイヤ「し、仕方ないでしょう!?あのヨーロッパ3強ですよ!?あんな偉大な方がたとパーティーなど………ん?」

 

果南「まぁまぁ、そこらへんは鞠莉に任せよ?だからひとまず鞠莉を探して……鞠莉?」

 

 

「「「鞠莉(さん)(ちゃん)!!?」」」

 

 

鞠莉「ふふっ♪チャオ!みんな久しぶりね!」

 

 

"小原鞠莉"

『爆裂のシャイニーガール』という異名を持つイタリア代表のDF。

元は浦の星女学院の理事長兼生徒でサッカー部。

千歌たちとは共に戦い日本一になった

 

 

 

果南「待って?鞠莉、どこから出てきたの??」

 

鞠莉「どこって…普通にパーティー会場から歩いてきたんだけど?」

 

ダイヤ「全く気がつきませんでしたわ…もう少し強者感を出して登場してください…」

 

鞠莉「マリーはマリーだもーんw」

 

ダイヤ「」イラッ

 

 

曜「なんか、感動の再会…にはならなかったね…」

 

千歌「登場の仕方がね…」

 

梨子「あはは…」

 

 

鞠莉の登場により盛り上がる!…と思いきや、意外にもそうでもなく。

浦の星3年組のじゃれあいで終了。

早速鞠莉はサニデイジャパン一行の案内を始めた

 

 

 

月「…優しいね鞠莉さん」

 

鞠莉「何が?」

 

ツバサ「わざとふざけて、みんなの緊張をほぐしたんでしょ?」

 

鞠莉「〜♪何のことかしら♪」

 

 

 

少し歩くとすぐに会場に着いた。

テーブルに並べられた料理はどれも高級品。

しかも上品な…

まるで宝石展に来ているようであった

 

 

 

 

 

「お待ちしておりました。サニデイジャパンの皆さん」

 

 

穂乃果「…?あなたは、」

 

 

エドガー「申し遅れました。私、イギリス代表ナイツオブクイーンのキャプテンをしています。エドガー・バルチナスです。以後お見知りおきを…」

 

花陽「ほ、本物のエドガーさん…!!」

 

ダイヤ「かっこいいですわ…」

 

 

"エドガー・バルチナス"

イギリス代表ナイツオブクイーンのキャプテン。『聖剣の騎士』や『静かなる闘将』と、様々な異名をもつ、世界にも名高いサッカープレイヤー。伝統あるイギリスの代表として、高い誇りを持つ紳士淑女でもある

 

 

エドガー「この度は我々が主催したパーティーに参加してくれたことを大いに感謝します。最後までお楽しみください」

 

美奈「わざわざありがとうございます♪」

 

エドガー「では、私はこれで」

 

 

そう言うと、エドガーはパーティーの中に消えていった。

ただ楽しむだけでなく、まわりを気遣う気配り。

礼儀を忘れない、まさに淑女。であった

 

 

海未「ほんっっっとうに見習って欲しいです…」

 

穂乃果「え?誰のこと?」

 

 

早速パーティーに参加するサニデイジャパン。

並べられている料理はどれも食べ放題

 

 

花丸「これはすごいずら…」ゴクリ

 

花陽「パーティー最高です…」ゴクリ

 

真姫「そう?別に普通じゃない?」

 

凛「金持ちは言うことが怖いにゃ…」

 

 

何から食べようかと悩んでいると…

横で大量の食事を皿に取る少女がいた

 

 

希「肉だけで10皿!?」

 

花丸「マルも負けてはいられないずら!!」

 

花陽「戦闘開始です!!」

 

 

「…!なかなかの食いっぷりね」

 

花丸「ずら?」

 

希「あ、話しかけてきた」

 

「あなた達はサニデイジャパンの選手達だね」

 

凛「凛たちのこと知ってるの!?」

 

「知ってるも何も、私はあなた達のことを注目していたからね」

 

希「あの…失礼やけど、どちら様?」

 

 

自分達と体格はあまり変わらない。

しかし、ただならぬ巨大なオーラを感じるその少女。

一旦皿を置き、少女は名乗る

 

 

クラリア「私の名前はクラリア・オーヴァン。スペイン代表"無敵のジァイアント"のキャプテンをしている」

 

 

花陽「クラリア・オーヴァン!?」

 

凛「スペイン代表のキャプテン…!!」

 

 

"クラリア・オーヴァン"

スペイン代表、無敵のジャイアントのキャプテン。『カタルーニャの巨神』という、いかにも強者を思わせる異名を持つ。正々堂々の勝負を好み。クールだが、熱いサッカーを繰り広げる

 

 

花陽「あ、あの…注目していた、とは?」

 

クラリア「あぁ。キミたちの成長スピードには、私も驚いてな。日本の全国大会は現地で試合を見させてもらったんだ」

 

あんじゅ「あ!あの時の!」

 

 

あんじゅには見覚えがあった。

全国高校女子サッカー大会決勝戦…

月の隣に座っていた謎の少女…まさにその人だった

 

 

英玲奈「いや、あんじゅ知らなかったのか?」

 

あんじゅ「え!?英玲奈分かってたの?だったら言ってよ…」

 

英玲奈「知ってるもんかと…」

 

 

月「久しぶりだね。クラリア」

 

クラリア「あぁ。決勝戦以来だな」

 

 

月とクラリアは中学の頃からの友達…

というのも、クラリアも月やフィレアと同じチームでサッカーをしていた。

実力は折り紙つきだ

 

 

穂乃果「へぇ〜!あの子もすごく強そう!!」

 

「おーい!ホノカー!」

 

穂乃果「…!その声は…!!」

 

 

フィレア「来たね!ホノカ!」

 

穂乃果「フィレア!」

 

 

 

"フィレア・アルデナ"

イタリア代表オルフェウスのキャプテン。『白き流星』と呼ばれる天才プレイヤー。穂乃果とは友達で、穂乃果に世界を意識させるきっかけを作った

 

 

 

穂乃果「私、フィレアにも負けないぐらい強くなったよ!」

 

フィレア「言うねホノカ!試合、楽しみにしているよ!」

 

 

両者、固い握手を交わした。

1年の時を経て再会した2人。

今でもフィレアは目指す選手だが、ライバルでもある。

既に穂乃果は燃えていた

 

 

クラリア「早速火花を散らしているな。日本の少女」

 

穂乃果「クラリア!」

 

エドガー「私も試合が楽しみです。日本の力、決して侮れはしませんからね」

 

穂乃果「エドガーさんも!」

 

フィレア「ホノカは人気者だね!」

 

 

 

にこ「ちょっと…4チームのキャプテンが集結したわよ」

 

聖良「なんでしょう…あそこだけ空気が違いますね」

 

ダイヤ「ぐぬぬぬ…穂乃果さん、そこを譲ってください…」

 

 

 

4チームのキャプテンも顔を合わせ、パーティーは順調に進んだ。

だいぶ時間も経ち、それぞれ選手たちもだいぶ打ち解けて来ていた

 

 

 

 

美奈「〜♪」

 

 

「…いつぶりかしら、あなたとは」

 

 

美奈「…あの時以来ね」

 

「こんなところで会うとは…思いませんでした。いや、必然かもしれない」

 

美奈「…だいぶ仕上がってるわね。あなたのチームは、」

 

「当然。敗北など許されない」

 

美奈「…本当に変わったわね」

 

「人は変わるのです」

 

美奈「…私のせいでね」

 

「……まぁ、あなたが育てた日本の力…見させてもらいます」

 

美奈「えぇ」

 

「……」

 

 

 

 

真恋「社交辞令は済んだかしら?」

 

美奈「社交とはまったく言えなかったわね」

 

真恋「まあ、あなた達ならそうなるか…」

 

美奈「…一度も笑ってなかったわ」

 

真恋「あの頃の笑顔は、もう見れないのかもね」

 

真恋「私たちの仲間だった少女…そして、今やイタリアを率いる大監督」

 

 

 

 

真恋「"小原サエ"」

 

 

 

サエ「……」

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

月「うーん……」

 

善子「どうしたのよ月。難しい顔をして」

 

月「変なんだ」

 

善子「変?」

 

月「今、穂乃果ちゃんはどこにいる?」

 

善子「え?月にも見えるでしょ?穂乃果さんはヨーロッパ3強のキャプテン達と話してる…」

 

月「じゃあ、あっちにいるのは?」サッ

 

善子「あっち?」

 

 

月は穂乃果とは真逆の方を指さした。

善子はその先を見る…すると…

何故だろう。疲れているのだろうか、

 

 

善子「???穂乃果さんがいる?」

 

 

イタリアの選手達と話している穂乃果がいた

 

 

月「キャプテン達と話しているのは?」

 

善子「穂乃果さん」

 

月「反対側でイタリアの選手達と話しているのは?」

 

善子「…穂乃果さん」

 

月「…」

 

善子「…」

 

月「…」

 

善子「…」

 

善子「…え?」

 

 

 

 

 

パーティーはまだまだ続く

 

 




アジア予選が終了したので、ここらで利き足と属性と必殺技をまとめたいと思います。今回は利き足です


千歌 右足
梨子 右足
曜 右足
ダイヤ 左足
果南 右足
善子 左足
ルビィ 両足

穂乃果 両足
ことり 右足
海未 左足
凛 両足
真姫 右足
にこ 両足
希 右足

月 両足
ツバサ 右足
あんじゅ 右足
英玲奈 右足
聖良 右足
理亞 両足
晴夏 右足

鞠莉 右足
絵里 右足
花丸 右足
花陽 右足


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第3章 54話 「予想外の勝負」


皆さんどうも!本日2本目の投稿、ルビィちゃんキャンディーです!パーティーは今回で終わりますが、ちょっとした事件が?

このあとすぐに、第3章の39話の後書きに挿絵を出します!今回の挿絵はとある方が描いてくれました!ルビィちゃんキャンディーの絵よりも遥かに上手です








 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

無事にライオコット島に到着したサニデイジャパン一行。パーティー会場へ着くと鞠莉が。そして、ヨーロッパ3強のキャプテンと出会い、善子と月が見つけたのは…もう1人の穂乃果だった…

 

 

 

 

善子「なんで穂乃果さんが2人!?」

 

月「分からない…でも、髪の色が金髪だし、別人だとは思うけど…」

 

善子「別人じゃなきゃ困るわよ!!」

 

「!」

 

善子、月「!?」

 

月「目が合っちゃった…」

 

 

穂乃果と瓜二つの少女は、月と善子の2人と目が合った瞬間。

2人の方へと近づいてきた。

いったいあの少女は何者なのか…

 

 

「こんばんは!日本の方?」

 

月「そ、そうだよ。僕は渡辺月」

 

善子「私は津島善子よ」

 

「ツキにヨシコ!よろしくね♪」

 

月、善子「…」

 

 

この反応…穂乃果のそっくりさんと見て間違いないようだ。

喋り方から外国人確定。

初対面の対応。

晴夏のこともあり、少し考えすぎていたようだ

 

 

善子「あなたは?」

 

フラム「私はフラム・ソレイユ!イタリア代表のGKなんだ!」

 

月「イタリアの…GK」

 

善子「"炎"と"太陽"…ますます穂乃果さんみたいね」

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「穂乃果のこと呼んだ?」

 

 

善子「うにゃぁぁ!?びっくりした!?」

 

 

突然、背後から穂乃果が話しかけてきた。

ただでさえ穂乃果激似のフラムと話しているのに、同じ顔が後ろから…

心臓に悪すぎる

 

 

月「こ、この人はフラム・ソレイユさん…イタリア代表のGKだよ」

 

穂乃果「ほえ?」

 

フラム「どうも〜♪」

 

穂乃果「…」

 

 

穂乃果「穂乃果じゃん!!」

 

月、善子「だよね!?」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

その後、パーティー会場はちょっとした騒ぎになっていた。

理由は当然……

 

 

 

エドガー「…本当に似てますね」

 

海未「世界というのは狭いのだとよく分かります」

 

 

 

 

穂乃果「穂乃果だ…」

 

フラム「私だ…」

 

千歌「なんで私たちも?」

 

晴夏「そっくりだからじゃないですか?」

 

 

 

希「穂乃果ちゃんと千歌ちゃんの双子レベルのそっくりさん…これはもうスピリチュアルやな」

 

にこ「久しぶりに聞いたわ。それ、」

 

 

穂乃果とフラム。

千歌と晴夏。

世にも珍しい、2組のそっくりさん…

狙ったわけでもなく。

ただただ運命で巡り会った4人。

それは十分、パーティー参加者の注目を集める理由だった

 

 

聖良「こんなことってあるんですね…」

 

ダイヤ「鞠莉さん?もしかしてあなた、フラムさんのこと黙っていたのですか?」

 

鞠莉「黙っていたも何も、ダイヤ達に言う必要はないじゃない。でも、いつかこうなるんじゃないかってワクワクしてたの♪」

 

フィレア「私は言おうと思ったんだけど…マリーがね?」

 

果南「はぁ…鞠莉は相変わらずだね、」

 

 

穂乃果とフラムは先程知り合ったばかりだが、同じポジション、同じ知り合いがいる、ということですぐに意気投合。

その後、徐々にお互いの実力についての話となっていた…のだが、

 

 

 

 

フラム「へぇ!FWもできるの?」

 

穂乃果「うん!シュートには自信があるんだ!」

 

フラム「…自信ね、」

 

穂乃果「フラムちゃんにも負けないよ!」

 

 

 

 

 

 

南の島は雲行きが変わりやすい

 

 

 

 

 

 

フラム「無理だよ」

 

 

 

穂乃果「…え?」

 

 

フラム「私はどんなシュートでも止められる」

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

穂乃果「!」

 

 

にこ「へぇ…言ってくれるじゃない。だけど、穂乃果のシュートは簡単には止められないわよ」

 

フラム「…どうかな」

 

花陽「日本のFWは全員、強力なシュートを持っています!」

 

フラム「だとしても止める。絶対に」

 

穂乃果「…フラムちゃん、」

 

 

一瞬にして雰囲気が変わったフラム。

その雰囲気がまるで伝染するかのように、まわりの空気に緊張を走らせた

 

 

フィレア「こらっ!フラム!せっかくのパーティーなのに…「じゃあ、こういうのはどうかしら?」

 

フィレア、フラム「!」

 

 

ツバサ「日本とイタリアで勝負しない?」

 

フラム「勝負?」

 

ツバサ「ルールは簡単。あなたがそこまで自分の力に自信があるのなら、日本の選手が放つシュートを止めてみなさい」

 

英玲奈「なるほど。一本勝負か」

 

フィレア「え!?でも、パーティーが…」

 

鞠莉「大丈夫デース!!なんか面白そうだし!」

 

エドガー「私は構いませんよ。日本の力。そしてイタリアの力も拝見したい」

 

ツバサ「主催者からも許可が出たけど、どうかしら?フラムさん」

 

 

フラム「いいよ。誰でもいい。私が止めてあげるから」

 

 

 

梨子「え…?なんか大変なことになってない?」

 

ことり「ただのパーティーで、まさかサッカー勝負が始まるなんて…」

 

 

 

ルーサー「クラリア。何の騒ぎだ?」

 

クラリア「日本とイタリアが、サッカーで勝負をするらしい」

 

ルーサー「へぇ、日本がイタリアに噛み付いたってわけか。見に行ってみようぜ!ベルガモ」

 

ベルガモ「あぁ」

 

クラリア「…」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

その後、一行は日本とイタリアの対決を見るために近くのグラウンドに集まった。

フラムは既にイタリアのユニフォームに着替えて待機中

 

 

フラム「それで?日本は誰がシュートを撃つの?」

 

 

英玲奈「あぁ。もう少しで来る」

 

穂乃果「ねえ、やっぱり穂乃果が行かなくて大丈夫かな?」

 

にこ「穂乃果のシュートを、こんなところで分析されるわけにはいかないのよ!」

 

月「分析しても意味が無い程の選手に撃ってもらわないとね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月「ルビィちゃん!」

 

 

 

 

ルビィ「…」

 

 

フラム「!!」

 

 

クラリア「(黒澤ルビィか…)」

 

エドガー「(面白くなってきましたね)」

 

 

 

シュートを撃つ日本の選手はルビィ。

イタリアのGKはフラム。

今ここに、日本とイタリアの勝負が始まる

 

 

 

クラリア「日本はエースストライカーを出してきたか…」

 

ルーサー「あのチビがエースストライカー??」

 

ベルガモ「大丈夫か?日本は」

 

クラリア「…ルビィを甘く見ないほうがいい」

 

 

 

理亞「…私も撃ちたかった」

 

聖良「理亞の気持ちも分かりますが、今回はルビィさんに任せましょう…もう既に、国と国の戦いは始まっています」

 

理亞「…絶対に決めなさいよ」

 

 

 

 

 

 

フラム「…あなたがルビィね」

 

ルビィ「うん」

 

フラム「可愛い見た目とは裏腹に…すごい才能を持ってるらしいじゃん」

 

ルビィ「…だから、なに?」

 

フラム「だからこそ。止めたくなる」ザッ…

 

 

フラムが構える。

いつでも撃ってこい。

そう体で訴える

 

 

ルビィ「…じゃあ、いきますね」バッ!

 

 

果南「ルビィが動いた…!」

 

曜「あの構えは…」

 

 

ボールを後ろ足で蹴り上げ、飛び立つ前にオーラを集める。

ルビィの始まりのシュート。

これ以上無いほどに磨き上げた…

熱く、重いシュート

 

 

 

ルビィ「ー 超ファイアトルネード ー!!」ドガアァン!

 

フラム「!!」

 

 

 

エドガー「ほう…」

 

ルーサー「なかなかの威力だが、な」

 

クラリア「…」

 

 

ルビィのシュートはまっすぐゴールへ。

フラムは構えるが、日本の選手たちは疑問に思った

 

 

 

千歌「構えたまま…動かないよ?」

 

花陽「…まさか、そのまま受け止める気じゃ…」

 

凛「ルビィちゃんのシュートをそのまま受け止めるなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛「え…」

 

花陽「…!!」

 

 

 

ルビィ「!」

 

 

月「な!?」

 

ツバサ「…」

 

穂乃果「うっそぉ…」

 

 

 

 

 

フラム「…」シュゥゥゥゥ…

 

 

 

 

にこ「必殺技を使わないで止めた…ですって?」

 

果南「そんなことできるの?」

 

梨子「でもこれで、イタリアの勝ち…?」

 

 

 

勝負は意外にも呆気なく終わった。

日本のエースストライカーのシュートを、フラムが簡単に止めた。

なんと言えばいいのか…

そんな空気の中、誰も口を開くことは無かった

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

 

フラム「まだだよ」

 

 

 

ルビィ「!」

 

フラム「ルビィ、本気出してないでしょ」

 

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

 

ルビィ「…」

 

フラム「私は全力のルビィのシュートを止めたいの。だから、もう1回」ブォン!

 

 

そう言うと、フラムはルビィにボールを投げ返した。

全力で来い。

フラムの体で訴えるその構えは、変わらなかった

 

 

 

ルビィ「分かった」シュルシュル…

 

 

曜「ルビィちゃんが髪留めを…」

 

月「アレを使う気だ」

 

 

ルビィは髪留めを解き、目を閉じる。

ゴールにボールを叩き込むことだけをイメージし、今、究極の力を解き放つ

 

 

 

 

ルビィ「どうなってもしらないから」

 

 

 

 

 

ルビィ「ー Awaken the power ー!!」ボオッッッッッ!!

 

 

 

 

 

ルーサー「っっ!?なんだあのチビ!?」

 

ベルガモ「パワーが跳ね上がった…」

 

エドガー「あれが、"ATP"…」

 

フィレア「…」

 

 

 

 

ルビィ「うおああああああああああ!!!!」ゴオォォッッッ!!

 

 

ルビィのオーラが膨れ上がり、熱風としてギャラリーに襲いかかった。

気を抜けば吹き飛ばされるほど…

そのオーラは、誰もが冷や汗をかくレベルだった

 

 

フラム「…すごっ」

 

ルビィ「止められるもんならっっ止めてみろっっ!!!!」

 

 

 

 

 

ルビィ「ー Awaken the Fire ー!!」ドガアァン!!

 

 

花丸「ルビィちゃんの必殺シュート!!」

 

理亞「この威力なら、ただではすまない…!」

 

 

グラウンドを焼き焦がしながら進むボール。

さすがのフラムもこのシュートには驚いていた。

エースストライカーを名乗るだけのことはある…

 

 

 

フラム「やっぱ強いや」ボソッ

 

 

月「…?」

 

 

 

フラム「はあぁぁぁ!!!!!!」ゴオォォッッッ!!

 

 

千歌「フラムさんの必殺技!?」

 

穂乃果「…あれって、」

 

海未「まさか…」

 

 

フラムの右手は"光"。

左手は"闇"に包まれる。

表情は変えず、その場で両手を前に向けた

 

 

 

 

 

 

フラム「ー ゴットハンド・ゼロ ー!!」ドォン!!

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

 

ルビィ「!?」

 

曜「ゴットハンド…!?」

 

千歌「なんで、フラムさんが…」

 

穂乃果「穂乃果とはまた違う、ゴットハンド…」

 

 

 

 

 

フラム「…」シュゥゥゥゥ…

 

 

 

 

 

ツバサ「…完全に止められたわね」

 

ダイヤ「ルビィの"ATF"が、こうも簡単に…」

 

 

 

ルビィ「…」

 

フラム「どう?これがイタリアのGKだよ」

 

ルビィ「…強いと思います」

 

フラム「…」

 

ルビィ「でも、勝ちますよ。本番は」

 

フラム「勝つのはイタリアだよ」

 

 

ルビィはフラムに背を向けた。

勝負は終わり、ルビィは着替えに戻る。

去り際に一言、ルビィは言った

 

 

 

ルビィ「本番は"ラストリゾート"で叩く」

 

 

フラム「…」

 

 

 

 

 

 

 

パーティーはその後再開されたが、どうもサニデイジャパンのメンバーの中に生まれたモヤモヤは晴れなかった。

 

 

ゴットハンドを使う穂乃果のそっくりさん。

 

 

実力はルビィのシュートを止めたことではっきりした。

 

 

あのレベルの選手達と連続で戦うのだ。

 

 

 

 

 

明日からの練習は、身が入るだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロイ「…うん!すごいのを見れたね」

 

絵里「ルビィのあのシュートを止めるイタリアのGK…気になるわね」

 

フロイ「でも、ルビィちゃんにはまだ"切り札"があるよ」

 

絵里「"ラストリゾート"…」

 

フロイ「僕だったら絶対に本番で撃つね。だって悔しいもん」

 

絵里「悔しい…ね」

 

 

 

絵里の顔も晴れないまま、フロイと共にイタリアの街中に消えていった

 

 





ゴットハンド・ゼロ
フラムちゃんのオリジナル技です。分かっていることは、右手で光、左手で闇のオーラを集めて、原作の「無頼ハンド」みたいに放つということだけです。



今回は属性です。とは言っても、輝こうではほぼ関係ありません


浦の星女学院

高海千歌:山(チカ:林)
桜内梨子:林
渡辺曜:風
国木田花丸:山
黒澤ルビィ:火
津島善子:火
松浦果南:風
黒澤ダイヤ:火
小原鞠莉:山


函館聖泉女子高等学院

鹿角聖良:風
鹿角理亞:風


UTX高校

綺羅ツバサ:風
優木あんじゅ:林
統堂英玲奈:林


帝国女学院

渡辺月:林


音ノ木坂学院

高坂穂乃果:火
園田海未:風
南ことり:林
星空凛:山
西木野真姫:火
小泉花陽:林
矢澤にこ:山
東條希:林
絢瀬絵里:風



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第3章 55話 「1対1トーナメント」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
今日で夏休みも終わり!いや〜、憂鬱。

それ以外に言うことはありません。現実逃避したいです




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

穂乃果と瓜二つの少女、フラム・ソレイユ。日本とイタリアのシュート対決でその力を見せた。穂乃果と同じくゴットハンドを使うGK…フラムという選手の謎は深まるばかりであった

 

 

 

 

 

ー 翌日 日本代表宿舎グラウンド ー

 

 

 

英玲奈「足を止めるな!休んでいる暇は無いぞ!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

梨子「曜ちゃん!千歌ちゃんへ!」

 

曜「千歌ちゃん!」パス

 

千歌「!」

 

 

 

穂乃果「…」

 

 

フラム・ソレイユ…自分と同じゴットハンドを使うGK…しかも、かなり強かった。

 

ルビィちゃんの"ATF"を止めた時は、まだ余裕そうだったし、本当の力はまだありそう。

 

イタリアに勝つには、さらに強いシュート、そしてGKである穂乃果が更につよ「穂乃果さん!!!!」

 

 

穂乃果「へ?」

 

 

 

 

 

バチィィィン!!!!

 

 

 

 

 

 

千歌「あ…」

 

曜「千歌ちゃんのシュートが…」

 

 

穂乃果「」クラクラ

 

 

月「痛…顔面直撃」

 

 

 

やばっ……油断…し…た………ドサッ!

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

その後、穂乃果はすぐに起き上がるも、念の為に練習を中断して休憩とした。

穂乃果の顔はまだ赤い

 

 

千歌「ごめんなさい…穂乃果さん、私が、」

 

穂乃果「千歌ちゃんは悪くないよ。穂乃果がボーッとしてたから…」

 

海未「そうですよ穂乃果!練習中に油断するなど……と、言いたいところですが、」

 

海未「フラムのことですね?」

 

穂乃果「うん…」

 

ことり「確かに考えちゃうよね。いろいろ」

 

海未「無理はありません。ですが、イタリアよりも先にスペインとイギリスと戦います。このまま不安な気持ちを引きずっていては…」

 

穂乃果「…だよね。うん。気合い入れ直す」

 

海未「穂乃果…」

 

穂乃果「海未ちゃん、"乱舞"お願い。あれが一番気合い入る」

 

海未「任せてください」

 

千歌「ことりさん、あのー…"乱舞"って?」

 

ことり「ふふっ♪"乱舞"はね、海未ちゃんなりの愛情なの!」

 

千歌「あ、愛情?」

 

ことり「ほら!」

 

千歌「…?」

 

 

ことりの視線の先では、穂乃果が海未のシュートを受けていた。

しかし、ただのキーパー練習とは言えなかった。

この鳴り止まぬ衝突音。

そして人間を超えた動き…

 

 

 

穂乃果「っっ!!右っ!!」ドガァン!

 

海未「ー ラブアローシュート ー!!」ドガァン!

 

穂乃果「左!!」ドガァン!

 

海未「シュート!!」ドガァン!

 

穂乃果「でりゃ!!」ドガァン!

 

海未「シュート!!」ドガァン!

 

穂乃果「おらぁっ!!」ドガァン!

 

海未「シューーートォォ!!」ドガァン!

 

 

 

 

 

千歌「……」

 

花丸「またなんか凄いことを始めたずら…」

 

果南「私もあれ決勝で受けたけど、もう二度と受けたくないね…」

 

 

海未と穂乃果の動きに音ノ木坂メンバー以外は若干引き気味だった。

音ノ木坂メンバーの強さの理由が、少しだけ分かった気がした

 

 

にこ「まあ、よくある事ね」

 

希「全国大会の予選であれを試合前にやって、相手チームが戦意喪失した時もあったなぁ…」

 

花陽「あ!ありました!懐かしいですね」

 

 

月「この状況を普通と思えるんだから音ノ木坂は…」

 

善子「強さの根源を見た気がするわ」

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

美奈「はーい!みんな集合!」

 

 

美奈の一声でサニデイジャパンは集合した。

監督の号令は練習の指示である

 

 

真恋「このあとの練習内容を説明するわね。初戦の相手はスペイン。全チームの中でもトップレベルのポテンシャルを持っているわ」

 

美奈「多分、1対1の力比べじゃ歯が立たないわね」

 

花陽「そ、そんな…」

 

凛「じゃあ、勝負にならないってこと?」

 

真恋「そうとも言いきれないわよ。日本には日本のポテンシャルがあるから」

 

凛「日本のポテンシャル?」

 

穂乃果「どういうこと?」

 

善子「…スペインがぶつかり合いや競り合いに強いとするならば、日本は小回りや素早い動き。キープ力が高い…ってことかしら?」

 

美奈「その通りよ♪善子ちゃん」

 

 

 

千歌「…」

 

花丸「…やっぱり何かおかしいずら」

 

ルビィ「違和感があるよね…」

 

 

久しぶりに再会した善子の言動…そして行動。

浦の星のメンバーは、何かわからない違和感で善子を見ていた。

飛行機の中からそうだった。

最初、本当に善子本人か一瞬疑った。

善子なのだが…

 

 

梨子「何かが…足りない」

 

果南「髪?」

 

曜「もっとこう…なんだろう。くだらないこと?違うかな…」

 

千歌「うーん…いつも善子ちゃん、毎回何かを訂正してたような…」

 

 

 

モヤモヤは考えても晴れないが、美奈と真恋の話は続く

 

 

 

美奈「そこでね。スペインに対抗するためには、やっぱり日本のポテンシャルで勝負するしかないの。そこで…」

 

真恋「今から1対1トーナメントを行います!」

 

 

理亞「1対1のトーナメント?」

 

聖良「トーナメントで1対1に強い選手を確認する…ということですか?」

 

美奈「そうよ♪本当はリーグで細かくデータが欲しいんだけど、時間ないし、大雑把だけど把握したいの」

 

真恋「また、これは選手達の刺激にもなります。1試合、1試合、真剣にね」

 

真恋「選手分けはくじ引きで。試合番号が書かれているから、まずは試合順を決めちゃいましょう」

 

 

 

月「…これは、新メンバーの善子ちゃんと晴夏ちゃんの実力を確認することも出来るね」

 

海未「善子がどこまで成長したのか…楽しみです」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

美奈「それでは!試合番号と戦う選手を発表しまーす!」

 

 

 

第1試合 晴夏VS曜

第2試合 英玲奈VS千歌

第3試合 にこVS月

第4試合 聖良VSツバサ

第5試合 海未VS凛

第6試合 ことりVS希

第7試合 ルビィVSあんじゅ

第8試合 ダイヤVS理亞

第9試合 梨子VS善子

第10試合 穂乃果VS果南

 

 

 

月「げっ…最初からにこちゃんと…」

 

にこ「何よ?にことじゃ、嫌だってこと?」

 

月「だって絶対に強いし」

 

にこ「…」

 

にこ「…」テレッ

 

凛「照れたにゃ」

 

海未「照れましたね」

 

理亞「誰得」

 

にこ「あんた達、絶対に後で覚えておきなさいよ!!」

 

 

 

真恋「ルールは簡単。ハーフコートで1対1。点を決めた方が勝ちよ。ディフェンス技はなしで、ドリブル技はひと試合1回まで。シュート技はトドメで使ってね」

 

美奈「ルビィちゃんと理亞ちゃんは"ATP"は使わないでね♪ツバサちゃんと穂乃果ちゃんも、今回は素の力を見たいからゾーンと闇の力も使わないでね♪それでは、第1試合 晴夏ちゃんと曜ちゃん!行くわよー!」

 

 

晴夏、曜「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

月「どっちが勝つと思う?」

 

英玲奈「…どうだろう、晴夏の実力が分からないからな、」

 

 

梨子「まるで千歌ちゃんと曜ちゃんの勝負ね」

 

千歌「…なんか複雑」

 

 

 

晴夏「よろしくお願いします!」

 

曜「よ、よろしくね!」

 

曜「(まるで千歌ちゃんとの勝負だ…)」

 

 

 

花陽「そ、それでは試合を始めます!」

 

 

ピーーー!!!!

 

 

 

 

花陽の吹く笛と同時にボールが空に放たれた。

まずはボールの取り合い。

先に空へと飛んだのは……

 

 

 

曜「ヨーソロー!」バッ

 

 

千歌「曜ちゃん!」

 

梨子「さすがの身のこなしね!」

 

 

ボールを持ったのは曜。

そのまま晴夏を後ろに引き連れて、ドリブルを開始した

 

 

晴夏「素晴らしいボールキープ力です…でも!」バッ

 

曜「うわっ!?」

 

晴夏「ボールは貰いますよ!」

 

 

晴夏は曜の後ろから足を伸ばしてボールをタッチ。

そのままこぼれたボールを晴夏がキープした

 

 

英玲奈「ほぅ…わざとボールを取らせて、背後からボールを奪ったのか」

 

ツバサ「無駄に体力を消費しない、効率のいい判断ね」

 

 

そのままドリブルで駆け上がる晴夏。

ポジション説明でMFも出来ると言っていたので、かなりのテクニックを持っている

 

 

曜「(っっ!!このままじゃ負ける…!)」バッ

 

 

曜は作戦を変更。

まずはボールを奪い返すのが先だと考え、晴夏の前に先回り。

ドリブルコースを塞いだ

 

 

曜「これ以上は行かせないよ!」

 

晴夏「押し通ります!」バッ!

 

曜「な!?」

 

 

しかし、

 

 

海未「…!!あれは、必殺技」

 

凛「すごい動きだけど…千歌ちゃんの技にそっくりにゃ!!」

 

月「……」

 

 

 

 

曜「(この動き…千歌ちゃんのゼット…)」

 

晴夏「はあぁぁぁ!!!!」ギュン!ギュン!ギュン!

 

 

 

晴夏「ー Wロード ー!!!」

 

 

晴夏はジグザグなドリブルで曜を翻弄。

それはまさにWの刻まれた道。

晴夏の横目は完全に曜をとらえていた

 

 

曜「(何それ…本当に千歌ちゃんそっくりだ…)」

 

晴夏「(よし…抜ける!!)」バッ

 

 

 

 

しかし、この勝負。

晴夏には不利な状況であった

 

 

 

 

 

曜「貰った!!」ズザーッ!

 

晴夏「きゃっ!?」

 

 

果南「スライディングで奪った!!」

 

ダイヤ「今の動きを見切ったのですか!?」

 

 

曜「千歌ちゃんの動きと同じなら、私は晴夏ちゃんの動きが予想出来る!!」

 

晴夏「なっ…」

 

曜「今度はこっちの番だ!!」ビュン!!

 

 

曜「ー スプリントワープ ー!!」ビュンビュン!!

 

 

千歌「出た!曜ちゃんの高速ドリブル!」

 

梨子「ゴールは目の前よ!」

 

 

曜「でりゃあ!」バシュッ!

 

 

 

バシュゥゥゥゥン!!!!

 

 

 

花陽「そ、そこまで!第1試合、渡辺曜さんの勝ちです!」

 

 

 

曜「はぁはぁ…危なかった…」

 

晴夏「私の負けです、曜さん。ありがとうございました」

 

曜「こちらこそ!」

 

 

 

第1試合、晴夏の実力の一部分。

そして曜の対応力を再確認することが出来た。

 

その後も試合はサクサクと進み、10試合全てが終了した

 

 

 

美奈「次の試合をまとめたから、みんな確認してね!」

 

 

 

第1試合 曜VS千歌

第2試合 にこVSツバサ

第3試合 海未VSことり

第4試合 ルビィVS理亞

第5試合 善子VS穂乃果

 

 

 

あんじゅ「英玲奈も負けちゃったの?」

 

英玲奈「あぁ。千歌のドリブル力には適わなかった…彼女は本当に今年の4月からサッカーを始めたのか?」

 

あんじゅ「うーん…あの成長スピード…なんか、引っかかるわね」

 

穂乃果「…(千歌ちゃん…)」

 

 

理亞「決着をつけるときが来たわね!ルビィ」

 

ルビィ「うん!絶対に負けないよ!」

 

 

 

美奈「それでは!第1試合、始めるわよー!」

 

千歌、曜「はい!!」

 

 

 

曜はある意味、2連続で千歌との勝負。

果たして、勝つのは高海を知る渡辺か。

普通に強い高海か、

 

 

次回に続く

 




Wロード
千歌ちゃんのZスラッシュの別バージョンだと思ってください。曜ちゃんには見切られていましたが、かなり強力な技です


そして、今回はアジア予選までの必殺技です。



高海千歌 MF

<シュート技>
エボリューション、サンシャインアッシュ、サンシャイントルネードTC

<ドリブル技>
Zスラッシュ、リバースZスラッシュ

<その他>
ゾーン、闇のチカラ



高坂穂乃果 FW・GK

<シュート技>
ブレイブショット、ファイナルトルネード

<キャッチ技>
ゴットハンドV、愛は太陽、ゴットハンドW

<その他>
闇のチカラ



園田海未

<シュート技>
ラブアローシュート、雷光の矢、天地雷鳴

<ドリブル技>
START:DASH!!、風神の舞、風雷演舞

<ディフェンス技>
スピニングフェンス



南ことり

<シュート技>
ワンダフルラッシュ

<その他>
ワンダーゾーン



渡辺曜

<シュート技>
パルクールアタック、エクストリームラビット、ゴットウインド

<ドリブル技>
ライトニングアクセル、スプリントワープ

<ディフェンス技>
スマッシュアンカー



桜内梨子

<シュート技>
フォルテシモ

<ディフェンス技>
アインザッツ

<その他>
神のタクト、神のタクトFI、王者のタクト



星空凛

<シュート技>
タイガードライブ、ジグザグストライク、雷光の矢、Hello,星を数えて

<ドリブル技>
イナビカリ・ダッシュ、風雷演舞



黒澤ルビィ

<シュート技>
ファイアトルネード、ファイアトルネードDD、Awaken the Fire、ラストリゾート、クロスファイア

<ドリブル技>
スプリントワープ

<ディフェンス技>
イグナイトスティール

<その他>
Awaken the power



鹿角理亞

<シュート技>
ウルフレジェンド、ホワイトダブルインパクト、Awaken the beast、クロスファイア

<ドリブル技>
ドロップアウト

<その他>
ゾーン、Awaken the power



鹿角聖良

<シュート技>
ホワイトダブルインパクト

<ブロック技>
スノーエンジェル

<その他>
氷の矢



綺羅ツバサ

<シュート技>
ゴットノウズ、コズミックブラスター

<ドリブル技>
デコイリリース

<その他>
ゾーン



統堂英玲奈

<シュート技>
シェルビットバースト

<その他>
エンペラータイム



優木あんじゅ

<ディフェンス技>
ジャッジメント・レイ



松浦果南

<キャッチ技>
トライデント、海皇の三叉撃、海竜の逆鱗槍



黒澤ダイヤ

<シュート技>
ファイアトルネード、ダイヤモンドストリーム、紅蓮、ファイアトルネードDD、フェニックスペンギン、マキシマムファイア

<ブロック技>
ラ・フラム



矢澤にこ

<ドリブル技>
アクロバットキープ、ファンタスティックキープ

<その他>
フリースタイルフットボール



東條希

<ブロック技>
バニシングカット

<キャッチ技>
ユメノトビラ、シキガミラインズ



渡辺月

<シュート技>
ザ・エクスプロージョン、天空落とし、コズミックブラスター

<ドリブル技>
ウルトラムーン、ブルースターダスト





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第3章 56話 「開幕!FFI本戦」

皆さんお久しぶりです!ルビィちゃんキャンディーです!

学校も始まってなかなか時間が取れない今日この頃…投稿ペースは落ちますが、途絶えはしない…と思います

今回のお話は開会式!たくさんのチームが出ます!




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

突如始まった1対1トーナメント。それぞれの個々能力が試される中、第1試合 曜VS晴夏は晴夏が素晴らしいボールテクニックを見せるも、曜の判断力には適わなかった。試合は進み、次の試合は 千歌VS曜。果たして勝つのは…

 

 

 

 

 

 

花陽「それでは、試合を始めます!!」

 

 

千歌、曜「…」

 

 

ボールが空へと放たれるのを構えながら待つ2人。

千歌と曜。

2人は今の浦の星女学院サッカー部の最初の部員、そして、始まりの2人なのだが。

意外にも1対1はあまりやったことが無かった

 

 

梨子「始めた頃は良くやってたんだけど…ルビィちゃん達が入部してからは、他のメンバーとの練習になっちゃって…」

 

海未「お互いのプレーを知りつつも、実戦経験は薄い…のですね。では尚更、結果は分かりません」

 

 

得意なこと、癖、技、思考。

大体のことはお互いに分かっている。

そうなると、勝負の決め手はやはり…

 

 

月「今までにやってこなかった…"新しいプレー"が必要だね」

 

晴夏「…」

 

 

 

 

ピーーー!!!!

 

 

千歌、曜「!!」

 

 

ボールが空へ放たれたのと同時に2人は飛んだ。

飛び立つタイミングは同じ。

どちらが空中で競り勝つのか…

 

 

 

曜「っ!!」バッ

 

 

果南「曜が触った!」

 

英玲奈「体幹を上手く活かしている…なかなかだな」

 

 

ボールに先に触ったのは曜。

そのままドリブルで千歌を引き離しにかかる。

しかし、千歌も負けてはいられない

 

 

千歌「(そこっ!!)」バッ!

 

曜「あまいよ!」スカッ!

 

千歌「!!?……まだまだ!!」

 

 

千歌は足を出すも、避けられる。

何度も隙を見つけてはカットを試みるも…

 

 

曜「よっ!」

 

千歌「!!」スカッ!

 

曜「でりゃっ!!」

 

千歌「!?」スカッ!

 

 

聖良「あと一歩足りない…」

 

ツバサ「千歌さんと曜さんの実力はほぼ変わらない。だからこそ、千歌さんは曜さんに追いつけない…」

 

果南「このまま曜が逃げ切って勝ち…?」

 

ダイヤ「…そうなると思います」

 

 

 

曜「千歌ちゃん!これで終わりだよ!」

 

千歌「!!」

 

 

曜が"スプリントワープ"の構えに入った。

勝負を決めるため、そして、成長した自分を見せるために…

 

 

曜「ー スプリントワープ ー!!」ビュン!

 

 

梨子「曜ちゃんが引き離した!!」

 

理亞「…決まりね」

 

 

 

誰もが、決着はついたと思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「」ドクン

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"バチバチバチ"!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

聖良「…?何の音ですか?」

 

英玲奈「これは…」

 

 

 

 

 

 

なんだろう、前にも感じた。

 

まるで時間が止まったかのような。

 

誰も動いていない。

 

動いているのは、自分の意識だけ。

 

 

 

 

千歌「」バチバチバチ!!

 

 

 

 

速く走りたいと願い、いつも一歩先を行く幼馴染に追いつきたいと願い。

 

光る風になりたいと。

 

今、自分の前方で固まって動かない幼馴染のところまで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「行く」ビュン!!!!!!!!

 

 

 

 

曜「!!??」

 

 

「「「!!!!???」」」

 

 

穂乃果「(あれは…!!)」

 

 

 

 

千歌は瞬間移動で曜のボールを奪い取ったのだ。

誰も反応出来なかったその速さ。

曜の"スプリントワープ"は、何の意味も成さなかったのである

 

 

曜「ウソ…!?こんな、」

 

千歌「おらぁ!!!!」バシュッ!

 

 

 

バシュゥゥゥゥン!!!!

 

 

花陽「そこまで!第1試合、高海千歌さんの勝ちです!!」

 

 

 

千歌「ハァハァ…」ズキズキ

 

曜「ち、千歌ちゃん…今のは…?」

 

千歌「…ハァハァ……分からない」ズキズキ

 

曜「顔色が悪いよ…ひとまず休もう」

 

 

 

――――――

 

 

 

穂乃果「…」

 

月「…穂乃果ちゃん、千歌ちゃんのあれは?」

 

 

月は穂乃果が何か知っているかのような驚き方をしたのを見逃さなかった

 

 

穂乃果「私が知っている限りでは、全国大会の聖堂山戦、サウジアラビア戦、そして韓国戦でも千歌ちゃんは似たような雰囲気、動きをしていた」

 

穂乃果「それが何なのかは、私にも分からないけど…ひとつだけ。分かることがある」

 

月「それって?」

 

穂乃果「…共通することがあるんだ」

 

 

 

穂乃果「その時の千歌ちゃんの目は、右目と左目で別々に」

 

 

 

 

 

穂乃果「"ゾーン"と"闇の力"を発動していたんだ」

 

月「!?それって…」

 

穂乃果「一瞬だけどね。何にせよ、急がなくちゃ。今の千歌ちゃんはそれに相応しいよ」

 

月「…?」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

その後も試合は進み、5つの試合全てが終了した

 

 

凛「意外だにゃ…2人とも残ると思ってたのに、」

 

月、ツバサ「…」

 

月「まぁ、ね?」

 

ツバサ「こんな日もあるわ」

 

凛「誰に負けたの?」

 

月、ツバサ「矢澤パイセン」

 

凛「納得」

 

 

第2試合 勝者 矢澤にこ

 

 

 

海未「にこ。負けませんよ」

 

にこ「あんたとは技の相性悪いからね…正直不安よ」

 

海未「音の木時代では一度も勝たせてもらえなかったので、私も不安です」

 

 

第3試合 勝者 園田海未

 

 

 

花丸「大丈夫?ルビィちゃん、」

 

ルビィ「あはは…負けちゃった。強いね理亞ちゃん」

 

理亞「…」

 

理亞「ウソ」

 

ルビィ「…!」

 

理亞「右足。まだ治ってないんでしょ」

 

ルビィ「…」

 

ルビィ「ごめんね、理亞ちゃん…試合の途中で足が、」

 

理亞「いい。完全に治ったルビィにも、私は勝つから」

 

ルビィ「うん!」

 

 

第4試合 勝者 鹿角理亞

 

 

 

穂乃果「いや〜、びっくりしたよ!」

 

果南「まさか、ね…?」

 

ダイヤ「本当にどのような練習をしたのでしょうか、」

 

 

善子「…」

 

 

第5試合 勝者 津島善子

 

 

 

こうして出揃った5人のメンバー。

果たして誰が勝ち、誰が負けるのか…

全員が見守る中、次の試合が始まった

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

ー その日の夜 ー

 

 

美奈「やっぱりにこちゃんの無双だったわね」

 

 

結局、優勝は安定のにこ。

千歌はあのあと、謎の技を出すことなく終了。

追加メンバーの善子も新技を出すことなく、全ての試合が終了したのだった

 

 

真恋「ねぇ、今日のあのトーナメント。意味あったの?」

 

美奈「ないわ」

 

真恋「…ないの?」

 

美奈「みんなの前ではああ言ったけど、本当の目的は"気づいてもらうこと"」

 

真恋「何を?」

 

美奈「…千歌ちゃんの異変と、善子ちゃんの変化」

 

真恋「!」

 

美奈「善子ちゃんは、あの技を今回はちょっとしか使わなかったけど、感ずいているメンバーはいるわね」

 

真恋「千歌ちゃんは、あれ?」

 

美奈「まさかあんなことになるとはね…穂乃果ちゃんにも頼んでおかないと…」

 

 

美奈の顔は珍しく暗くなっていた。

まるで何かを思い出しているかのような…

口には出さないが、負の感情だけが部屋を包んでいた

 

 

真恋「…親ありの子ね」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

花丸「…まる、わかったずら」

 

ルビィ「花丸ちゃん?」

 

果南「分かったって、何が?」

 

花丸「善子ちゃんの違和感ずら」

 

 

浦の星メンバー、全員が気になっていた善子の違和感。

確実に何かが減り、何かが変わった善子。

それに気づいた花丸は言う

 

 

花丸「善子ちゃんは…堕天使になっていない」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

曜「確かに…」

 

ダイヤ「善子さんと呼んでも確かに怒られませんでした…」

 

ルビィ「黒い羽も見ないし…」

 

梨子「変なことを言わなくなった…」

 

千歌「ちょっと寂しいね、」

 

果南「善子も成長したんだよ。きっと」

 

 

 

だからと言って、善子との接し方が変わるわけではない。

周りから見れば、善子は心身共に成長し帰ってきたと思うだろう。

もちろん、浦の星のメンバーもそう思っている。

歓迎し迎え入れるのが当然、なのだが…

 

 

 

花丸「…本当に、それだけなのかな……」

 

 

 

雲は晴れなかった

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 数日後 FFIスタジアム ー

 

 

『さあ!全世界が注目するサッカーの祭典、フットボールフロンティアインターナショナル世界大会!!予選を勝ち抜いた強豪チームが、サッカーのために作られたこの聖地、ライオコット島で激突します!!!!』

 

 

A『実況は私、日本の全国高校女子サッカー大会でも実況をしましたーーー(A)。解説は元ヨーロッパリーグMVPストライカー、レヴィン・マードックさんでお送りします!』

 

レヴィン『よろしく』

 

A『それでは、いよいよ選手入場です!!』

 

 

 

スタジアムの上空に映し出されるチームマーク。

トップバッターは知らぬ人いない、サッカー界最強チームだ。

歓声の大きさが、その力を物語る

 

 

A『最初に入場してきたのはブラジル代表チーム、"ザ・キングダム"!!先頭に立つのはマック・ロニージョです!!』

 

レヴィン『またの名を、"キングオブファンタジスタ"。フィジカル、テクニック、さらに冷静な判断力など、今大会、最も完成された選手と言ってもいいでしょう』

 

 

 

A『続いての入場は、イタリア代表チーム"オルフェウス"!!先頭はイタリアの"白い流星"、フィレア・アルデナです!!』

 

レヴィン『ヨーロッパ屈指のストライカーで、華麗なテクニックとそのスピードは、まさに流星と呼ぶに相応しいです』

 

 

「……」

 

「イタリア来たね。もう行くの?」

 

「いや、もう1人見たい選手がいるんだ」

 

「フィレアやマリじゃなくて?」

 

「…えぇ。」

 

 

A『さあ、続いての入場はスペイン代表チーム"無敵のジャイアント"!!先頭は"カタルーニャの巨神"、クラリア・オーヴァンです!』

 

レヴィン『ヨーロッパトップクラスのフィジカルを持つスペインのキャプテン。その力強い突破力はまさに猛牛。強力です』

 

 

 

A『続いての入場はアメリカ代表、"ユニコーン"!!率いるのはキャプテン、マーク・クルーガー!!』

 

レヴィン『予選大会を大量得点で勝ち上がってきましたが、全て、マークを中心とした連携があったからです』

 

 

 

A『さあ!イギリス代表"ナイツオブクイーン"の入場です!!先頭はキャプテンのエドガー・バルチナス!!』

 

レヴィン『"静かなる闘将"…まさに騎士。ヨーロッパ予選で魅せた聖剣は、本戦でも勝利を導くことになるでしょう』

 

 

 

 

 

 

 

美奈「全員いるわね!」

 

穂乃果「はい!」

 

美奈「堂々と胸を張ってね♪」

 

 

穂乃果「よーし!みんな、行くよ!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

穂乃果が持つのはサニデイジャパンの旗。

日本の全ての想い。

ついに、日本が世界の頂点を目指す時がやってきたのだ

 

 

 

A『日本代表"サニデイジャパン"の入場です!!チームを率いるのはキャプテン、高坂穂乃果!』

 

A『このチームは、世界のレベルから見ればまだ経験も浅く、発展途上ですが、粘り強い試合運びで何度も逆転勝者を収め、世界への切符を手にしました』

 

レヴィン『逆に成長途上にあるが故、爆発的な進化の可能性があると言えます。さらに、世界の強豪達から注目されている選手もいます。初戦のスペイン戦、どのような試合になるのか楽しみです』

 

 

「…来たか」

 

「日本??日本に誰か知り合いがいるの?」

 

「昔ね。技を教えた子がいるの」

 

 

 

A『続いて入場して来たのは、ロシア代表"パーフェクトスパーク"!!先頭は"気高き銀狼"、フロイ・ギリカナンです!!』

 

レヴィン『そのボールテクニックはイタリアのフィレア選手と争うほどと言われています。今大会でも、優勝候補筆頭でしょう』

 

 

希「穂乃果ちゃん!」

 

穂乃果「なに?」

 

希「あそこ!見てみ!」

 

穂乃果「?」

 

 

希が視線を送る先には、忘れはしない、金髪の少女がいた

 

 

穂乃果「絵里ちゃん!!」

 

絵里「〜♪」

 

 

ウィンクで返す絵里。

チームは違うがいつか絶対に戦うと信じ、穂乃果たちは絵里を見送った

 

 

 

 

 

A『さあ、いよいよこの強豪チーム達がぶつかります!!世界の頂点に輝くのは、果たしてどのチームなのか!?』

 

 

 

穂乃果「始まるんだ…」

 

千歌「必ず、輝きましょう。頂点で」

 

穂乃果「うん!」

 

 

 

A『フットボールフロンティアインターナショナル世界大会、ここに開幕です!!』

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

「いよいよ始まりますね」

 

「あぁ。この開会式は私の計画の始まりの儀式でもある。せいぜい楽しんでいるといい…」

 

 

「高坂穂乃果、高海千歌…」

 

 

 

 

 

 

次回、スペイン戦

 

 




ご感想、お待ちしております


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第3章 57話 「スペイン戦 "砕かれる太陽"」


皆さんどうも!本日2話目の投稿、ルビィちゃんキャンディーです!明日からまた学校が始まるので執筆はかなり遅くなりますが、ちゃんと書きます!

今回からついにスペイン戦です!




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

1対1トーナメントも終わり、始まったフットボールフロンティアインターナショナル世界大会。並み居る強豪、そして再会を望む仲間。たくさんの選手とこれから戦うサニデイジャパン。まずは初戦スペイン戦。開幕

 

 

 

 

 

ー ウミヘビスタジアム ー

 

 

A『全世界のサッカーファンの皆様、お待たせいたしました!!本日はFFI世界大会グループA、無敵のジャイアント 対 サニデイジャパンの試合を、ここウミヘビスタジアムからお送りします!!』

 

 

 

ワアァァァァァァ!!!!!!

 

 

花陽「か、完全にアウェーです…」

 

凛「スペインのサポーターでいっぱいにゃ…」

 

穂乃果「大丈夫!全部私達への応援だと思えばいいんだよ!まずは初戦、絶対に勝とう!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

クラリア「…高坂穂乃果」

 

穂乃果「クラリア!」

 

クラリア「日本の力、見せてもらうよ」

 

穂乃果「うん!お互いに頑張ろう!」

 

 

 

 

 

A『さあ!両チームがキックオフを待っています!レヴィンさんから見てこの試合、どう予想されますか?』

 

レヴィン『"無敵のジャイアント"は、世界の中でもかなりの強豪です。エースストライカーのクラリア・オーヴァンは超強力な突破力と攻撃力を持つ選手です。ダイナミックなプレーが期待されます』

 

 

ー スペイン ー

 

FW…………ベルガモ、ルーサー

 

MF……ベラスコ、クラリア☆、チコ

 

MF………フェルナンド、エメリコ

 

MF…………………ファビオ

 

DF……………ルフィノ、ドメルゴ

 

GK……………………アロンソ

 

2-1-2-3-2

 

 

 

 

A『なるほど。対するサニデイジャパンはいかがですか?』

 

レヴィン『そうですね…近年、アジアも全体的に実力が上がってきているように見えます。そのアジア予選を突破した日本…今大会ではダークホースになりそうです』

 

 

ー 日本 ー

 

FW……津島善子、綺羅ツバサ、黒澤ダイヤ

 

MF………渡辺月、高海千歌、園田海未

 

MF…………桜内梨子、統堂英玲奈

 

DF……………鹿角聖良、葉石晴夏

 

GK…………………高坂穂乃果☆

 

2-2-3-3

 

 

A『日本はこの試合から追加招集された津島善子と葉石晴夏をスタメン起用!果たしてどのようなプレーを見せてくれるのか!?』

 

レヴィン『日本の注目選手は綺羅ツバサ選手。自分の意思で発動することが出来るゾーンは世界にも通用する武器ですね』

 

レヴィン『ベンチスタートの黒澤ルビィ選手、鹿角理亞選手にも注目です』

 

A『はい!まもなく試合開始です!』

 

 

 

 

ダイヤ「…」

 

ツバサ「緊張してる?」

 

ダイヤ「…はい」

 

ツバサ「…私も」

 

 

 

クラリア「…見せてもらうわ。日本の力を」

 

 

 

 

ピーーー!!!!!!

 

A『さあ、試合開始です!サニデイジャパンボールからスタートしましたこの試合。ボールを受け取った高海千歌がドリブルだ!』

 

 

千歌「(まずはパスで相手の出方を…)」

 

千歌「月ちゃん!」パス

 

月「よし!善子ちゃん!」パス

 

 

クラリア「…」

 

 

A『日本!細かいパスでスペインの出方を伺う作戦か!?』

 

レヴィン『正確なパスですね。たくさんの練習を積んできたんでしょう』

 

 

善子「ツバサさん!」パス

 

ツバサ「(相手も出てこない…ならば、)」バッ!

 

ダイヤ「決めてください!ツバサさん!」

 

 

まだゴールまで距離はあるが、ツバサから見たら射程範囲内。

ボールと共に空へ飛び、輝く剣を放つ

 

 

ツバサ「流星…!!」ゴォーッ!

 

 

理亞「まずは一発」

 

にこ「挨拶がわりね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

ツバサ「っっ…!!?」

 

 

ダイヤ「な!?」

 

善子「!!」

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

 

エメリコ「簡単には撃たせないよ!」グググ

 

 

A『なんと!?スペインMF、エメリコが綺羅ツバサのシュートを直接ブロック!!綺羅ツバサはシュートが放てません!!』

 

 

ツバサ「っっ…なんて重いブロックなの…」

 

 

そのままボールを奪い取ったエメリコは前線へ。

ボールを受け取ったルーサーは余裕のある顔でクラリアを見た

 

 

ルーサー「見せてやれよクラリア。シュートの撃ち方ってやつを」

 

クラリア「…えぇ」

 

 

海未「穂乃果!!来ますよ!!」

 

穂乃果「…うん!!」バッ

 

 

ペナルティエリア外。

しかし、ツバサと同じくクラリアも射程範囲内だと見せつける。

そう。シュートで

 

 

クラリア「っっ!!」バッ!

 

 

ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

 

 

 

千歌「…この音は……」

 

月「クラリアが、ボールを磨き上げているんだ…」

 

 

足で何度も削り、磨き、輝かせる。

そのボールはボールにしてボールではない。

言うならば宝石。

誰も砕くことは出来ない、最強の硬

 

 

 

クラリア「ー ダイヤモンドレイ ー!!」ドガアァァン!!

 

穂乃果「!!??」

 

 

英玲奈「なんだ、あの威力…!?」

 

梨子「今までのシュートとは、次元が…」

 

 

 

穂乃果「はあぁぁぁ!!!!」バッ!

 

 

穂乃果「ー ゴットハンドW ー!!」ドォン!

 

 

穂乃果は両手でシュートを受け止めた。

この技のおかげで日本は中国に勝つことが出来たと言っても過言ではない。

 

穂乃果自身、そして日本のメンバーが、この技が穂乃果が今持てる最高の力なのだと、確信していた

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリイィィィィィィン!!!!

 

 

 

 

穂乃果「」

 

 

 

クラリア「…高坂穂乃果」

 

クラリア「あなたはまだ、私たちのサッカーには通用しない」

 

 

 

 

バシュゥゥゥゥン!!!!!!!!

 

穂乃果「ぐほっ!!??」

 

 

海未「穂乃果ぁ!!」

 

千歌「"ゴットハンドW"が、簡単に…」

 

 

 

A『決まったぁぁ!!!!クラリア・オーヴァン!試合開始早々1点目だぁぁ!!』

 

レヴィン『高坂穂乃果選手、シュートが腹部に直撃しましたが…大丈夫でしょうか』

 

 

 

穂乃果「ゴホッ…っっ…グホッ…」

 

海未「穂乃果!!」

 

聖良「あの強力なシュートが直撃なんて…」

 

 

穂乃果はボールごとゴールに押し込まれ、そのまま倒れ込んでいた。

あまりにも無慈悲、そして純粋なまでの強力なシュート。

穂乃果は肉体的、そして精神的に叩き潰されようとしていた

 

 

A『ここで主審が駆け寄ります!高坂穂乃果選手は続行不可能か?』

 

 

 

 

 

穂乃果「い、いげる……!!」ハァハァ

 

聖良「しかし、あの衝撃を受けて…立ち上がるだけでも…」

 

穂乃果「ただの…みぞおち、だよ…心配しないで…」

 

海未「…無理だったら言ってくださいね」

 

 

 

A『高坂穂乃果選手、このままプレーを続行すようです!』

 

レヴィン『この一発でかなりのダメージが行きましたね…問題は次からですよ』

 

 

 

ピーーー!!!!

 

 

月「まずは同点にしよう!!」

 

ツバサ「えぇ!」

 

 

 

 

 

ー 観客席 ー

 

フロイ「…どう見る?エリー」

 

絵里「日本の勝利のカギは、クラリアのあのシュートを止めること…でも、今の穂乃果じゃ到底適わない」

 

フロイ「…」

 

絵里「今のままでは、日本は確実に負けるわ」

 

 

 

 

 

ドメルゴ「軽い!!」ドン!

 

千歌「うわっ!?」ドサッ!

 

 

チコ「ドメルゴ!こっち!」

 

ドメルゴ「チコ!」パス

 

 

再びボールを奪い取ったスペイン。

シュートを撃つどころか、攻撃さえ許してくれない。

日本にとって最悪な状況の中で、ボールは再びまわってしまう

 

 

クラリア「!」

 

 

A『クラリアがボールを持ちました!日本はどうにかクラリアの進撃を止めようとするが!?』

 

 

 

クラリア「無駄だ!!」ドォン!

 

晴夏「きゃっ!?」

 

聖良「二人がかりでも…!?」

 

 

 

穂乃果「…っっ!!やるしかない!!」

 

 

穂乃果は2度目の失点は許さんと目を閉じる。

あの強力なシュートを止めるにはこれしかない。

背筋が凍る、ドス黒い、底なしのオーラ

 

 

ホノカ「来い!!クラリア!!」

 

 

クラリア「っっ!!」ガキン!ガキン!ガキン!

 

 

クラリアのボールを磨く音が、まるで死へのカウントダウンのように感じる。

しかし、だからと言って逃げるわけには行かない。

これを受け止めて、日本は同点にならなければいけないのだ

 

 

 

クラリア「ー ダイヤモンドレイ ー!!」ドガアァァン!!

 

ホノカ「絶対に止める!!!!」バッ!

 

 

穂乃果の右手から"ゴットハンドV"が放たれた。

すかさず今度は左手にエネルギーを集める。

闇の力を使うことにより膨れ上がったオーラは、巨大な、新のゴットハンドとして…ボールを抑え込む

 

 

ホノカ「ー ゴットハンドW改 ー!!」

 

クラリア「ほう…」

 

 

花陽「"ゴットハンドW"を進化させた!?」

 

果南「これなら…!!」

 

 

 

ホノカ「うおああああああああああ!!!!」

 

 

 

A『耐える!耐えます高坂!!クラリアの"ダイヤモンドレイ"を進化した技で……いや!?』

 

 

 

ビキッ!!ビキッ…ビキッ!!!!

 

 

 

ホノカ「ぐうっ……っっっ!!!!」

 

 

海未「進化した"ゴットハンドW"までもが…」

 

月「砕け、始めた…」

 

 

止めたと思った。

流石だった。

穂乃果はこの土壇場で、習得したばかりの強力な技を進化させた。

闇の力も加えている…が、それでも…

 

 

 

 

 

 

ホノカ「重…すぎ……る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリイィィィィィィン!!!!

 

 

 

 

 

 

ホノカ「ぐあぁぁぁっっ!!??」ドゴォォッ!!

 

 

 

A『ゴール!!スペイン2点目だぁぁ!!何段階もパワーを上げた高坂穂乃果の技も、クラリアのシュートには適いませんでした!!』

 

 

 

海未「穂乃果ぁ!!」

 

梨子「そ、そんな…」

 

 

穂乃果「」ドサッ

 

 

 

A『5分!!5分です!!スペインは5分間で日本から2点を奪いました!!これが、世界の力…!高坂穂乃果立てません!!』

 

レヴィン『これは…スペインの力が圧倒的ですね。日本は全く歯がたっていませんよ…』

 

 

 

穂乃果「ハァハァ…」

 

聖良「穂乃果、さん…」

 

海未「立てますか!?穂乃果!!」

 

穂乃果「…いよ、」

 

海未「え…?」

 

穂乃果「遠いよ…」

 

 

 

 

 

穂乃果「遠すぎるよっっっ…!!!!」

 

 

海未「っっっ…」

 

聖良「…」

 

 

穂乃果「これが世界なんだ…穂乃果はなめてた。甘過ぎた」

 

穂乃果「通用しないよ……ゲホッ…今の全力じゃ…」

 

 

穂乃果「勝てる、気がしないっっっ…」

 

 

 

穂乃果がこんなにも弱音を吐くのは…なかなかない。

世界に通用すると思っていたものが全て、届かなかった。

 

穂乃果はゴール下で仰向けで空を見ていた。

 

今、これほどまでに歓声が、青い空が憎い日はない

 

 

 

美奈「……スペインは潰しに来てるのよ」

 

花丸「潰す…?」

 

美奈「日本の精神的支柱、穂乃果ちゃん。その穂乃果ちゃんの精神を粉々に砕くことにより、日本全体のパフォーマンスが落ちる…」

 

花陽「そ、そんな…」

 

ことり「酷いよ…!!」

 

真恋「それが世界の戦いなのよ。精神の維持も立派な戦い。それが砕かれたとなると…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減に……」

 

 

 

海未「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「しろおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

海未、聖良「!!??」

 

穂乃果「!!!!?」

 

「「「!!!!!!??」」」

 

 

 

 

千歌「ハァハァ……」

 

穂乃果「ち、千歌ちゃん…」

 

千歌「穂乃果さんが!!」ガバッ!

 

穂乃果「うっ!?」

 

海未「千歌!!それ以上は…!」

 

千歌「穂乃果さんがそんなんでどうするんですか!!!!??」

 

 

千歌は強引に穂乃果の服を掴んだ。

海未の静止など意味が無い。

今の千歌は誰にも止められない

 

 

千歌「私が憧れた穂乃果さんは絶対に諦めない!!」

 

穂乃果「…!!」

 

千歌「どんなに、絶望的でも」

 

海未「千歌…」

 

千歌「海未さんもです。なんで前みたいに穂乃果さんに言わないんですか?諦めるなと」

 

海未「…それは、」

 

千歌「クラリアさんのシュートにビビったんですよね?」

 

海未「…」

 

千歌「いいですか?穂乃果さんが諦めない限り、私は、私達は諦めません。絶対に背中を任せられる…私達のキャプテンです」

 

穂乃果「…」

 

千歌「強いなんて当たり前ですよ!!世界の強豪、そんな優しくなんてないですよ!!」

 

千歌「私も前に諦めそうになった時がありました…でも、そんな私を支えてくれたのは…穂乃果さん、そして、みんなが…!!」

 

穂乃果「!!!!!!」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

A『さあ、試合開始早々2点差となりました…!!日本はまず、1点を返すことが出来るのか!?』

 

 

 

聖良「穂乃果さん、大丈夫ですか?」

 

穂乃果「うん!穂乃果はなんか、みんなに怒られてばっかりだね…」

 

穂乃果「でも、もう大丈夫。気合い入れたし、覚悟もできた」

 

 

 

 

海未「千歌、ありがとうございます…本当は私が言わなければなのに、」

 

千歌「誰がとか関係ないですよ。私は、私が出来ることをしただけです。あとは、穂乃果さんに託します」

 

海未「…はい」

 

 

 

 

真恋「千歌ちゃんが穂乃果ちゃんを…」

 

曜「あんなに怒った千歌ちゃん…初めて見た」

 

理亞「千歌さん、あんな声が出るのね」

 

美奈「……」

 

 

 

千歌の説教は、穂乃果や海未だけに向けられたものでは無い。

今のこの空気。

戦意を失った日本の、悪い空気を千歌が変えようとしたのだ。

穂乃果の代わりに

 

 

月「僕達は僕達が出来ることを…!」

 

ダイヤ「はい。このまま負けるわけには行きませんわ!」

 

 

梨子「下を向く暇があるなら作戦を考える…!」

 

英玲奈「あぁ。絶対に道はあるはずだ」

 

 

クラリア「…」

 

 

 

 

 

ピーーーー!!!!!!

 

 

A『さあ!試合が再開しました!!』

 

 

 

日本 0-2 スペイン

 

 





はい。ということで今回の穂乃果ちゃんはわざと、中国戦のように落ち込ませてみました。同じことをやったのには意味があります。それは、穂乃果を支えたのが海未ちゃんから千歌ちゃんに変わったことです。これが今後のお話にすごく関係してきます。

次回もお楽しみに。スペインの猛攻は続きます



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第3章 58話 「スペイン戦 "楽しさゆえの覚悟"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
実はTwitterで輝こうのアンケートを実施して、たくさんの方からご意見をいただきました。簡潔に言うと、やっぱりまだまだお話書くの下手くそだぁな…と。ですが、自身をなくしたわけではなく、頂いたご意見を糧にもっと輝こうサッカーで!を良くしていけたらなと思います。アンケートはまだ実施中です。ぜひ、ご協力のほどよろしくお願いします。




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに始まったFFI世界大会グループA初戦、スペイン戦。しかし、スペインの力は圧倒的で、穂乃果は完膚なきまでに叩き潰された。穂乃果が、誰もが絶望しかけたその時、千歌は檄を飛ばした。日本の希望は、まだ消えていない

 

 

 

 

 

 

 

A『さあ!試合再開です!!!!』

 

 

月「まずはシュートまで持っていこう!!」

 

ベラスコ「そんなひょろひょろな体でシュートまで行けるの?」

 

 

日本は前を再び向いた。

しかし、見えるのはゴールではなくスペインの選手。

簡単には抜くことは出来ない

 

 

 

月「下は見ないって決めたんだ」パス

 

ベラスコ「バックパス!?」

 

海未「はい。行きますよ…!!」グワーッ!

 

 

海未「ー 風神の舞 ー!!」

 

 

A『園田海未が抜けたぁぁ!!日本、この試合初めてとなる必殺技の成功です!!』

 

レヴィン『あの高速移動は、なかなか捕えられませんよ』

 

 

英玲奈「全員上がるんだ!畳み掛けるぞ!!」

 

 

日本は世界の戦いという大事な試合の中。

しかも初めてとなるアウェー状態での試合。

今までにない程に緊張していた。

それがこの点差の原因のひとつ。

 

本来の力が出せない以上、攻め込めないのは当然の話だ。しかし、

 

 

ツバサ「ーー!!」バッ

 

フェルナンド「吹き飛ばしておしまいだ!!」

 

ツバサ「残念!」スカッ

 

フェルナンド「(スピードが上がってる!?)」

 

ツバサ「月!!」パス

 

 

千歌のおかげで緊張がほぐれたサニデイジャパン。

それにより、いつも通りの落ち着いたプレーを取り戻しつつあった

 

 

月「善子ちゃん!!」

 

ドメルゴ「パスは出させないよ!」バッ

 

月「なんちゃって!」バッ

 

ドメルゴ「フェイント!?」

 

 

A『渡辺月がパスと見せかけてドリブルを選択!!それにより、日本はスペインの最終防衛ラインを突破!!この試合初めてのシュートとなるか!?』

 

 

月「日本だってやれば出来るんだ!!」バッ!

 

 

月はボールを空へと蹴り上げ、自分も後を追う。

本来のプレーが出来れば、格上の相手とも戦える!!

月のシュートは、それを確信づける強力な一発となった

 

 

 

月「天空ぅぅ!!!!!!」ドォン!!

 

アロンソ「!!」

 

 

月「落としいぃぃぃぃぃい!!!!!!」ドガァァン!

 

 

花陽「月さんのシュート!!」

 

にこ「よしっ!行けるわよ!!」

 

 

空はスペインのゴールに向かって降り注ぐ。

重いシュート。

クラリアのシュートのように、そう簡単には止められないが…

 

 

アロンソ「ー ザ・ボヨン ー!」

 

月「っ!?」

 

 

ツバサ「あのシュートを止める気?」

 

 

アロンソは自身の体をスライム状に変化させる。

ボールはそのままスライムの中に飛び込み、徐々に…威力が死んでいく

 

 

アロンソ「〜♪」

 

月「まだまだ余裕そうだね…」

 

 

A『止めたぁぁ!!アロンソが渡辺月のシュートを完全にキャッチ!!日本、得点とはなりませんでした!!』

 

レヴィン『ですが、これは大きいですよ。日本はシュートまで持っていけたことにより、相当の自信がついたはずです…あとは、クラリア選手のシュートをどう止めるか…』

 

 

 

クラリア「そういうことだ日本」

 

穂乃果「!!」

 

クラリア「例え得点出来ても、守れなければあなた達は勝てない」

 

穂乃果「…」

 

クラリア「勝つのは私達だ!!」

 

穂乃果「…」

 

 

穂乃果「分からないよ」

 

クラリア「なに?」

 

穂乃果「クラリアは私達、日本のサッカーを見てきたと言った…でも、それだけで私達のサッカーは分析は出来ない」

 

穂乃果「データも、分析も、常識さえも通用しないサッカーが、日本のサッカー!!」

 

 

クラリア「へぇ…ならば」バッ!

 

 

穂乃果「!!(来る!!!!)」

 

 

クラリア「っっ!!」ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

 

 

 

 

 

 

 

 

クラリア「止めてみろ!!高坂穂乃果!!!」

 

 

 

 

クラリア「ー ダイヤモンドレイ ー!!」ドガァァン!!

 

 

穂乃果「っっっ!!!!」

 

 

 

 

 

海未「穂乃果!!」

 

千歌「穂乃果さん!!」

 

「「穂乃果!!」」

 

「「穂乃果さん!!」」

 

「「穂乃果ちゃん!!」」

 

 

重く速い、今までに味わったことのないシュート。

心を砕かされかけた、絶望的な威力。

今の穂乃果では絶対に…止められない

 

 

A『クラリアが3点目を狙った!!!ボールは一直線にゴールへ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「…ふぅ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果は異常なまでに落ち着いていた。

こんな時に余裕で深呼吸など、普通はありえない。

 

いや、前にも同じことをした。

 

大事な戦い。失敗など絶対に許されない試合で、自分は、今みたいに深呼吸していた。

 

あれは…そう。

 

 

 

浦の星女学院との決勝戦

 

 

 

 

 

穂乃果「…」

 

 

ボオォッッッッ!!!!!!!!

 

 

聖良「両手に"愛は太陽"の炎を!?」

 

梨子「"ゴットハンドW"…じゃない、」

 

 

 

 

 

今までの人生のなかで、最高の試合だった。

 

浦の星との戦いは、心の底から楽しむことを望み、そんな盛り上がる気持ちを抑えるために。

 

そして、緊張と暴れそうになる力を抑えるために…

 

そうだ。楽しいんだよ。こういう時ほど、

 

 

 

 

 

穂乃果「…!!」バッ!

 

穂乃果「(クラリアのシュートを止めるには…これしかない!!!!)」

 

 

 

 

美奈「穂乃果ちゃん!?」ガタッ

 

真恋「あれは…まさかやる気なの?」

 

美奈「あれはまだ…ダメよ…」

 

 

 

 

ピンチの時ほど、相手が強い時ほど、サッカーはすごく楽しくなる。

 

会場の。そして代表の重みでそれを忘れていた

 

 

 

穂乃果「っっっ!!!!」バッ!

 

 

 

曜「両手をクロスして飛び出した…!!」

 

理亞「あれって"ゴットハンドW"!?それとも、"愛は太陽"…??」

 

 

 

 

 

楽しい時ほど燃えるんだよ…穂乃果の心と体は…!!!!!!

 

 

 

 

 

 

ずっと封印してきた…穂乃果の…"新の必殺技"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ゴットハンドォォォオ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「エェェェェェェックス!!!!!!」ゴオォォォ!!

 

 

 

 

 

 

ドゴオォォォォォォオン!!!!!!!!

 

 

クラリア「なっ!!??」

 

「「「!!!!!!???」」」

 

 

 

穂乃果「うおああああああああああ!!!!」

 

 

A『なんと!!?ここで高坂穂乃果が新必殺技を発動!!そして、あの強力なクラリアのシュートを…抑えています!!』

 

 

 

フィレア「!?何…あのゴットハンド」

 

フラム「…!!」

 

鞠莉「なんてパワーなの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは奮い立つ…魂の力

 

 

 

 

 

 

穂乃果「…」シュゥゥゥゥ…

 

 

ルーサー「…止めやがった」

 

ベルガモ「クラリアのシュートを…」

 

 

 

心の底から楽しさを望むからこそ、全てを、ひっくり返せる

 

 

 

穂乃果「…止めたよ!!クラリア!!」

 

 

 

これが『太陽の守護神』高坂穂乃果だ

 

 

 

 

A『止めたあぁぁぁぁぁ!!!!高坂穂乃果!!ついに!ついにクラリア・オーヴァンの、"ダイヤモンドレイ"を超えました!!』

 

レヴィン『いや〜、驚きました。穂乃果選手は、恐ろしい程の才能を秘めていますね…』

 

 

 

 

ルビィ「すごい…あのゴットハンド…」

 

果南「あれほどの強力な技を…いつの間に、」

 

 

全員の開いた口が塞がらないでいた。

穂乃果が発動したゴットハンドは、今までの穂乃果の必殺技のどれよりも遥か彼方の威力。

クラリアのシュートを止めたことがそれを物語り、そして、震わせる

 

 

美奈「…」

 

花陽「…」

 

花丸「美奈監督?花陽ちゃん?」

 

 

しかし、全員が喜んでいるわけではなかった。

晴れない顔のメンバー、それは、すぐにまわりの選手にも伝染する

 

 

凛「止めた、けど……」

 

にこ「あのバカ…とうとう発動しちゃったわね」

 

果南「知っているの?あの技を….」

 

にこ「…知ってるも何も」

 

ことり「…」

 

希「…」

 

真姫「…」

 

 

 

にこ「あれは穂乃果の本当の必殺技。そして、」

 

 

にこ「禁断の技よ」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 

フロイ「禁断の技?」

 

絵里「えぇ。あの技は本来、穂乃果が対世界用に作った必殺技なの」

 

絵里「"ゴットハンド"と"愛は太陽"をひとつにした技…その名も"ゴットハンドX"。その力は、見ての通りよ」

 

フロイ「確かに凄い…けど、どこが禁断の技なんだい?」

 

絵里「…穂乃果を見てみて」

 

フロイ「…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ぐっ…」ビリビリビリ

 

 

晴夏「穂乃果さん!?大丈夫ですか…」

 

 

穂乃果の右腕には、赤い電気のようなオーラが走っていた。

その腕を押さえ、痛みをこらえる穂乃果

 

 

 

 

絵里「反動がすごいのよ。体が持たないの」

 

フロイ「そんなに危険な技を…」

 

絵里「あれでも、前よりはマシになったのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

絵里『凄いじゃない!穂乃果!!』

 

ことり『この威力なら、フィレアちゃんのシュートも……穂乃果ちゃん?』

 

 

穂乃果『ぐうぅっ……ぅぅ…!!??』ビリビリビリ

 

 

海未「穂乃果!?」

 

にこ「ちょっ、ヤバくない!?」

 

穂乃果『痛い痛い痛い痛い!!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

にこ「その後、穂乃果の体があの技に耐えられるまでは、発動を禁止したの」

 

果南「それが"ゴットハンドX"…」

 

ことり「…」

 

凛「穂乃果ちゃん、まだ辛そうにゃ…」

 

花陽「やめさせるべきです!!まだ早すぎたんです…」

 

美奈「…」

 

真恋「…美奈」

 

美奈「…」

 

美奈「あの子に、任せてみましょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海未「あなたは最低です」

 

 

 

穂乃果「…」

 

海未「自分の体を捨ててまで勝ちたいのですか?」

 

穂乃果「…」

 

海未「誰も喜びませんよ。私だって…穂乃果が苦しむ姿を見たくありません」

 

穂乃果「…」

 

穂乃果「…ねぇ、海未ちゃん」

 

海未「…」

 

穂乃果「今の穂乃果って、苦しんでいるように見えるの?」

 

海未「…」

 

穂乃果「今ね、穂乃果…最っ高に楽しい」

 

海未「…!!」

 

穂乃果「あの時みたいだよ。千歌ちゃん達と闘った時みたいに。心の底からサッカーを楽しみたいって、今なら無茶だって出来るって」

 

海未「…それでも、」

 

穂乃果「それに、今の穂乃果なら大丈夫。耐えられてるでしょ?まだまだもつよ」

 

海未「…」

 

穂乃果「ねぇ、海未ちゃん。私に…」

 

 

穂乃果「サッカーを楽しませて」

 

 

海未「…」

 

海未「あなたは馬鹿ですよ」クルッ

 

 

海未は穂乃果に背を向けた。

それはもちろん、自分の持ち場に戻るため。

そして、穂乃果の顔を見ていられなかったからである

 

 

海未「…」

 

 

あんなにも楽しそうな顔を見たら…全て許してしまいそうだから…

 

 

 

 

美奈「海未ちゃんからのサインね、」

 

にこ「"言っても無駄です"ね…はぁ…」

 

ことり「確かに楽しそうだけど…」

 

美奈「果南ちゃん、いつでも行けるようにしてね」

 

果南「はい!」

 

美奈「…」

 

美奈「あの子はホントに…」

 

 

 

 

 

 

 

クラリア「勝負はここから」

 

穂乃果「うん。もう負けないよ」

 

 

クラリア、穂乃果「勝つのは…私たち」

 

 

 

 

日本 0-2 スペイン

 

 





ゴットハンドX
リトルギガントのGK、ロココの必殺技です。手をクロスし、赤いゴットハンドをボールに向かって飛び出しながら放ちます。輝こうサッカーでは、「ゴットハンド」と「愛は太陽」の合体技、そしてゴットハンドW<<ゴットハンドXという設定にしました。



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第3章 59話 「スペイン戦 "沈めたはずのチカラ"」


皆さんどうも!ラストリゾート∑に感動しましたルビィちゃんキャンディーです!

お久しぶりです。勉強で忙しいので、かなり間を空けてしまいました。ですが、決して萎えたとかそういうのではないのでご安心を!ただ、時間が無いだけなので…

さて、今回はちょっと急な展開ですがいろいろとお話を進めます。久しぶりの登場ですかね?




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

クラリアのシュートを止めるにはあの技しかない。穂乃果は本当の覚悟を決め、自身の体にダメージが残る新の必殺技、"ゴットハンドX"を発動した。クラリアのシュートを止め、穂乃果は改めてスペインに宣戦布告したのだった

 

 

 

 

 

 

穂乃果「みんな!もうゴールは任せて!!」

 

 

穂乃果は空高くボールを蹴り上げた。

こうして日本ゴール側からボールが返ってくるのはこの試合、初めてだった。

 

日本の太陽が死なない限り、サニデイジャパンは進化を続ける。

ここから勢いに乗り、まずは1点!!

それが日本のいつもの流れだ。

 

しかし、

 

 

 

エメリコ「っっ!!」ドォン!

 

ダイヤ「(なんて重いタックル…!?)」グラッ…

 

ルフィノ「ほらっ!転べ!」ドォン!

 

 

果南「ダイヤが挟まれた…!!」

 

あんじゅ「このままじゃ奪われるわよ!」

 

 

ダイヤ「ぐっ…千歌さん!!」ドサッ!

 

エメリコ、ルフィノ「!!」

 

 

ダイヤは2人に潰される寸前で、転びながらも千歌にボールを繋げた。

 

千歌は前を向く。

 

そこにはダイヤに集中したためにできた、スペインの陣形の穴があった

 

 

千歌「繋げます!このボール!」バッ

 

 

A『高海千歌がドリブルで切り込む!!果たして突破することが出来るのか!?』

 

 

ドメルゴ「これ以上は行かせないよ!!」バッ

 

ファビオ「2人で奪えば楽勝」バッ

 

 

千歌「(2人…捕まれば確実に取られる)」

 

 

パスを出したいが、他のメンバーはスペインの選手にガッチリとマークされている。

自慢のドリブルで突破する以外に道はないが、スペインの選手を2人まとめてとなると…

 

 

ファビオ「っっ!!」バッ!

 

千歌「!?(危なっ!?)」

 

 

ファビオのタックルをギリギリで躱す千歌。

まるで突っ込んでくる牛が、自分のすぐ横を掠れたようだった

 

 

千歌「(右足を踏み直せば使える!!)」

 

ファビオ「!!」

 

 

軸足である右足を地面に踏み込めば、"Zスラッシュ"が使える。

もう一体の牛も、いっきに抜き去ることができるはず…

 

 

 

千歌「ゼット……」

 

 

 

しかし、それは

 

 

 

ドメルゴ「逃がさないって!!」ガッッッ!

 

千歌「!?」

 

 

 

千歌の憶測に過ぎない

 

 

 

月「千歌ちゃん無茶だ…」

 

聖良「このままでは…奪われる」

 

 

 

 

 

千歌「ぐっっっ!?(重…い……)」ググググ

 

ドメルゴ「これでも加減はしてるのよ?」ググググ

 

 

千歌は"Zスラッシュ"を発動しようとした瞬間。

ドメルゴによりボールと足をガッチリと抑え込まれてしまっていた。

ボールを挟み込む千歌とドメルゴの足。

パワーの差は歴然。

ドメルゴに負けるという考えはなかった

 

 

ドメルゴ「ほらっ!!」ドガッ!

 

千歌「っ!?」ドサッ

 

 

善子「千歌!!」

 

穂乃果「ボールと一緒に吹き飛ばされた…」

 

 

千歌は地面に倒れされた。

しかし、ボールはまだ千歌のそばにある。

立ち上がれば可能性はまだ残っている

 

 

千歌「…っっ負けない!!」

 

 

立ちあがる千歌。

力の差はあるが、必ず抜ける。

そう信じて再び前を向く

 

 

ドメルゴ「無理よ」

 

千歌「…」

 

ドメルゴ「あなた達のようなへなちょこに負けるわけないでしょ?」

 

千歌「…!!」ピクッ

 

ドメルゴ「あなた達も練習は積んできたみたいだけど、私たちからみたらそれは無意味」

 

ドメルゴ「あなた達は弱い。世界の強豪と争う力なんて無いのよ。諦めなさい」

 

千歌「…」

 

千歌「…」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「…は?」

 

 

 

 

 

 

ドガッッッッ!!!!!!

 

 

 

ドメルゴ「もう一度吹き飛ばしておしまいだよ!!」ググググ

 

 

月「千歌ちゃん!!無理しないで!」

 

梨子「これ以上は無茶よ…!」

 

 

千歌「…」ググググ

 

 

千歌の足にボールを押し付けるドメルゴ。

先程と同様。

吹き飛ばされて終了。

そう。そのはずなのだが…

 

 

ドメルゴ「…?」ググググ

 

千歌「…」ググググ

 

ドメルゴ「(な、なんで…)」ググググ

 

千歌「…」ググググ

 

ドメルゴ「(吹き飛ば…せない!?)」

 

 

ベラスコ「ドメルゴ!いつま遊んでるつもり!?」

 

ドメルゴ「いや…私は…さっきよりもつよーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーーーーーバキィィィン!!!!

 

 

 

 

 

「「「!!!!!!???」」」

 

美奈「!!!!」

 

 

 

 

 

ドメルゴ「っっ!?」ドサッ!

 

 

ルーサー「おいおい…ドメルゴが吹き飛ばされたぞ」

 

クラリア「…何が起きたの?」

 

 

 

千歌「…」

 

ドメルゴ「あなた…どこからそんな力を…」

 

 

ドメルゴを吹き飛ばした千歌。

誰もが予想しなかった状況。

ドメルゴは驚きのあまり、まだ立ち上がれていないが、千歌はというと……

 

 

 

 

 

千歌「…私たチの練習ガ無意味?」

 

 

ドメルゴ「…!!??」ゾクッッッッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒気がした

 

いや、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌?「 二 度 ト 言 う な 」ギロッ

 

 

 

 

 

 

 

殺気がした

 

 

 

 

 

 

穂乃果「!!!!!!ヤバい!!」

 

 

曜「…!?あれって…」

 

にこ「ちょっと…なんでまた出てきてるのよ!?」

 

 

 

A『高海千歌がドメルゴとの力勝負を制し、キーパーとの1対1だぁぁ!!!!』

 

 

千歌?「…」バッ

 

 

穂乃果「海未ちゃん!!!!」

 

海未「分かっています!!千歌を止めます!」

 

 

千歌のあの様子。

そしてオーラ。

間違いない。

あの時の千歌と同じだ。

要するに危険。

今すぐに千歌を抑える必要があった

 

 

月「ねぇ、千歌ちゃんは完全に抑え込んだんじゃなかったの!?」

 

海未「はい…そのはずです…しかし、あれは…」

 

 

千歌「…」ゴオォォォ!!

 

 

月、海未「!!??」

 

 

A『高海千歌がシュートの構えに入る!!ですが、"サンシャインアッシュ"ではありません…!!』

 

 

花陽「あの構え…オーラ、間違いありません」

 

果南「"ブラックアッシュ"…」

 

 

 

浦の星、そして音ノ木坂のメンバーは忘れもしない。

穂乃果の信頼できる寒気とはまた違う。

理亞の絶対的な魂の冷たさともまた違う。

 

悪夢。

 

その名にふさわしい、凶の冷たさ

 

 

 

千歌?「ブラック……」ゴオォォォ!!!!

 

 

梨子「千歌ちゃんやめて!!」

 

ツバサ「…ダメね、私じゃ間に合わない」

 

 

 

 

 

 

再び始まる絶望

 

 

 

 

 

 

 

「アアアアッッシーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーダイヤ「はあぁぁっ!!!!」ズザーッ!!

 

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

穂乃果「ダイヤさん…!」

 

海未「…ナイスです!!」

 

 

 

千歌の足がボールに触れる瞬間。

ダイヤが決死のスライディングでボールを弾き、コート外へ出した。

一歩間違えれば、千歌の蹴りがダイヤに直撃していた。

ケガでは済まされない、ギリギリの駆け引きだった。

ダイヤはその事をスライディングしてから気づいたため、そして息を整えるために地面に仰向けで倒れていた

 

 

 

千歌「ハァハァ…っっ…ハァハァ」ズキズキ

 

ダイヤ「今は誰?ですの?」ハァハァ

 

千歌「…ハァハァ…高海…千歌、です」ズキズキ

 

ダイヤ「どうしてまた急に…」ハァハァ

 

千歌「…分からない…です、」ズキズキ

 

ダイヤ「…何がともあれ…救えてよかった」ハァハァ

 

 

 

ピーー!!

 

異様な雰囲気に包まれる会場に主審の笛が鳴り響く。

交代を告げるサイン。

電光掲示板。

誰が交代するかは分かりきっていた

 

 

 

 

 

美奈「戻ってきなさい千歌」

 

 

千歌「……」ズキズキ

 

 

A『おおっと!?高海千歌が下がるようです。前半の折り返し、早くも交代となりました!』

 

レヴィン『少し様子がおかしかったようですが、それが原因でしょうか…』

 

 

 

クラリア「…」

 

 

穂乃果「…千歌ちゃん、」

 

千歌「…すいません、穂乃果さん」

 

 

 

千歌は誰とも、目を合わせようとしなかった

 

 

 

梨子「ダイヤさん、大丈夫ですか?」

 

ダイヤ「わたくしは大丈夫です。それよりも…」

 

梨子「…」

 

 

 

 

美奈「分かってるわね」

 

千歌「…うん、」

 

美奈「頭を冷やして来なさい」

 

千歌「…」

 

曜「千歌ちゃん…!!」

 

 

千歌は通路の奥。

暗闇の中へと消えていった。

誰も呼び止めにも答えず、ただ下を向き、驚きと焦り、そしてまるで怯えるかのような表情だった

 

 

美奈「…千歌。まだその時じゃない」

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

にこ「ちょっと、何みんな湿気てるわけ?」

 

日本「「「……」」」

 

 

にこ「にこが来たからには気を抜くプレーなんてさせないからね」

 

海未「にこ…」

 

にこ「千歌のことは…確かに心配だわ。でもね、この雰囲気のまま試合に負けたら、誰が一番責任を感じると思う??」

 

ツバサ「…言わずもがな、ね」

 

にこ「今、私たちがすること…それは"1点を決めること"よ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

聖良「1点、ですか…」

 

にこ「前半にね。日本はスペインのゴールにシュートをぶち込めるという結果を残すの」

 

にこ「1点。これは監督の指示よ」

 

穂乃果「美奈監督の…」

 

にこ「そしてもう2つ。1つは月、ツバサ」

 

にこ「前半で力尽きていいから、中国戦の時のように暴れなさい」

 

月「OK」

 

ツバサ「了解」

 

にこ「そして2つめ…」

 

 

 

にこ「善子、監督からよ」

 

善子「…」

 

にこ「ポジション変更。リベロよ」

 

善子「はい」

 

 

 

 

美奈「さあ、試合はここからよ」

 

 

 

 

FW…………綺羅ツバサ、渡辺月

 

MF……黒澤ダイヤ、矢澤にこ、園田海未

 

MF…………桜内梨子、統堂英玲奈

 

DF……………鹿角聖良、葉石晴夏

 

DF……………………津島善子

 

GK…………………高坂穂乃果☆

 

1-2-2-3-2

 

 

 

A『日本は新たに矢澤にこを投入!!ポジションも大きく変えてきました!』

 

レヴィン『"日本のファンタジスタ"。フリースタイルでも数々の大会で優勝しているにこ選手は、アジア予選でもその才能を存分に生かしていましたね』

 

A『はい!そして今入った情報で、津島善子選手は、ポジションをリベロに変更するとのこと!!』

 

レヴィン『リベロですか…!!今の時代、めずらしいですね』

 

 

 

 

クラリア「矢澤にこか…」

 

ルーサー「またチビか…だが、日本のチビはなめちゃいけないことは知っている」

 

クラリア「えぇ。高海千歌以上の脅威かもしれない」

 

 

 

試合はスペインのスローインからのリスタート。

千歌がフィールドからいなくなり、代わりににこ。

そして善子のリベロ…いったいどのような結果が待っているのか、

 

 

ファビオ「チコ!!」バッ

 

チコ「よしっ!」

 

 

A『さあ、試合再開です!!チコ・アリソンがドリブルで持ち込む!!』

 

 

にこ「行かせないわよ!!」

 

 

にこがすぐにディフェンスに入る。

まずは先陣を切って自分が…!!

そんな想いで立ち塞がる。

しかし、

 

 

 

エメリコ「行って!チコ!」バッ

 

にこ「このっ…!どきなさいよ!」

 

 

A『矢澤にこが押さえつけられた!これではディフェンスに行けないぞ!?』

 

 

ダイヤ「わたくし達も加勢しますわよ」

 

英玲奈「あぁ!」

 

梨子「はい!」

 

 

にこが突破された以上、自分達も黙って見ているわけには行かない。

3人でどうにか攻撃スペースを潰せれば…

 

 

チコ「えいっ!」バシュッ!

 

ダイヤ、英玲奈、梨子「!!??」

 

英玲奈「キラーパス!?」

 

 

A『おおっと、ミスキックか!?チコ選手のパスは、このままでは勢いのあまりラインを割ってしまうが!?』

 

 

梨子「ミス…助かった…」

 

ダイヤ「……!!違いますわ!!」

 

 

 

 

ベルガモ「私たちのこと、パワータイプの鈍足だと思ってるでしょ」バッ!

 

 

英玲奈「速い!!あのボールに追いついた!?」

 

 

侮っていた。

確かに、スペインはレベルの高い選手達で構成されているが、こんなにも高速で走るスピードも持っていたのか…

 

その油断は隙。

日本が作った、隙のスペースだった

 

 

晴夏「嘘でしょ!?」

 

聖良「完全に油断していました…」

 

 

DFの選手達も一歩タイミングが遅れたため、既にベルガモは聖良たちが追いつけない位置にいた。

このままでは確実にシュートを撃たれる…残る頼みの綱は…

 

 

 

善子「私に任せて」

 

 

穂乃果「善子ちゃん…!」

 

聖良「お願いします!時間稼ぎだけでも…!!」

 

 

善子「…時間稼ぎ?」

 

穂乃果、聖良「!?」

 

善子「私は任せろと言ったのよ。リベロとして。DFとして」

 

 

A『さあ!ベルガモと善子の1対1!!津島善子が抜かれれば日本は失点の危機!!果たして勝者は…!?』

 

 

ベルガモ「私も舐められたものね…1人じゃ止められないよ!!」バッ

 

善子「…どうかしら、」

 

 

ベルガモは善子を前にしてもドリブルを止めなかった。

絶対に抜けるという自信。

そして善子のデータ。

善子は本来FW。

そんな選手が自分達のフィジカルに適うわけないと。

ベルガモだけではない。

スペインの選手が全員、そう思っていた

 

 

ベルガモ「どいて!!」バッ!

 

善子「…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子を抜き去るベルガモ

 

 

 

横目でショートの髪を揺らす少女を見る

 

 

 

やはりチョロいな

 

 

 

日本は口だけだ

 

 

 

そう思い、前を見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「ボールを持っていないくせに」

 

 

 

 

 

ベルガモ「…!!?」

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

スペイン「「「!!!!!!??」」」

 

 

善子「どこ見てんのよ」

 

 

A『う、う…奪った!!!!津島善子!!ベルガモ選手との勝負!そして、危機的状況に打ち勝ち、ボールを手にしました!!』

 

レヴィン『善子選手は何をしたんでしょうか…気づいたらボールを持っていましたね…』

 

A『まるで流れるようにボールを奪った津島善子!!これがリベロに生まれ変わった真の姿なのか!?』

 

 

 

ベルガモ「い、今…どうやって、」

 

善子「…悪いけど、一言で説明できるような技じゃないの。この試合、私たちが勝ったあとにゆっくりと教えてあげる」

 

ベルガモ「…っっ!!」

 

善子「でも、ひとつだけ。教えてあげる」

 

 

 

善子の努力。

そして絶望から這い上がるために得た技…その名も…

 

 

 

 

 

 

 

善子「ー Deep Resonance ー」

 

 

 

美奈「さあ、反撃開始よ」

 

 

 

 

日本 0-2 スペイン

 

 






ちなみにですね。「「「!!!!!!」」」はイナイレ(原作)で言う、全員が画面に入って驚くシーンの表現です。今更で申し訳ないです…

ご感想、お待ちしております!


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第3章 60話 「スペイン戦 "あなたの走ってきた道は…"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
台風は大丈夫でしたか?朝から本当に心配でした。自分の県は関東の癖に謎の秘境バリアで守られていたので快晴でした()

さて、今回のお話しは8割回想です。
意外な人がでるかも…?




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

心の奥底へと沈めたはずの闇の力らしきものを発動した千歌。シュートを撃つ寸前にダイヤが試合を中断。千歌はそこで交代となった。代わりに出場するにこ。そして、善子の新たな力が今、発動する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はサウジアラビア戦の翌日まで遡る

 

 

 

 

ー 帝国女学院 ー

 

 

善子『ハァハァ…』

 

佐久間『善子!ボールが行ったぞ!』

 

 

源田『一段と気合い入ってるな。善子は』

 

鬼道『えぇ。あの試合を見た以上はね』

 

 

日本 対 サウジアラビア。

出だしは完全に日本の流れだった。

サウジアラビアのラフプレーに苦戦するも、にこの無双と刺激で他の選手も恐れず積極的に攻めた。

それが、この試合の勝因。

そしてこれが日本代表のレベル

 

 

 

善子『(私じゃ全然、力になれないじゃない!!!)』

 

 

代表に追加招集で呼ばれるなど、微塵も思っていなかった。

 

そんな時だった

 

 

 

北也『善子。今日からお前の指導者が来る』

 

善子『…指導者?』

 

北也『帝女のOGだ。鬼道たちならお世話になっているだろ?』

 

鬼道『!!!!??あの人ですか!?』

 

源田『大丈夫なのか…善子は、』

 

善子『?』

 

 

急にざわつき始めた帝女のメンバー。

若干、顔色が悪いような…?

とりあえず、指導者はいったい…

 

 

 

『みんな〜!久しぶりね〜♪』

 

 

『『『!!!!!!』』』

 

鬼道『お久しぶりです』

 

 

 

 

 

 

鬼道『志満さん』

 

 

 

善子『……え??』

 

 

志満『今日からよろしくね♪善子ちゃん!』

 

 

善子『えぇぇぇぇぇぇぇ!!???』

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

善子『志満さん…帝国女学院の卒業生だったんですか…』

 

志満『私はね。美渡ちゃんは浦の星だけど』

 

 

意外や意外。

高海志満は帝国女学院サッカー部のOG。

それだけでも驚きだが、今日から志満は善子の指導をすると…

この状況、千歌が見たらどう思うのか…

いや、その前に千歌は志満が帝女のOGだということを知っているのかさえ、危うい

 

 

善子『よ、よろしくお願いします』

 

志満『はい!よろしくね』

 

 

ということで、志満のもと、善子は練習を再開しようとした時。

すれ違いざまにメンバーが声を掛ける

 

 

佐久間『死ぬなよ善子』

 

善子『え?』

 

源田『善子と会えてよかった』

 

佐久間『バカ!まだ死んだわけではない!』

 

善子『え?死ぬ?』

 

 

ただの練習…しかも、見るからに優しそうな志満さんの指導…死因さえも予想出来ない

 

 

 

 

 

志満『じゃあ、まずは軽くランニング10キロね♪』

 

善子『…』

 

北也『…』

 

志満『返事?』

 

善子『は、はい??』

 

北也『頑張れ善子』

 

 

鬼道『志満さんは帝女の歴史の中でも、鬼の主将と呼ばれ、今でも伝説だ』

 

佐久間『さながらの軍事施設。善子は生還できるのか…』

 

 

善子『(こえぇぇぇ……)』タッタッタッ

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

善子『ゼェゼェ…ゼェゼェ……』

 

志満『休んでいいって言ったかしら♪』

 

善子『いえ!?申し訳ございません!!隊長!!』

 

志満『ふふっ♪冗談よ。少し休憩でお話ししましょ♪』

 

善子『…』

 

 

いや、決して冗談には聞こえないとは…思っても言えない

 

 

 

志満『じゃあ、善子ちゃんの実力について。私から見た感じで分析したことを話すわね』

 

善子『はい、』

 

志満『善子ちゃん本人が一番分かっていると思うけど、今の善子ちゃんでは日本代表の力にはなれないわ』

 

善子『っ…』

 

 

そうだ。

その悔しさを糧にここまで走ってきたのだ。

実力はかなり伸びた。

しかし、それでも足りない…

 

 

志満『何が原因か分かるかしら?』

 

善子『…日本代表のFW陣との実力差。悪い癖。そもそもの個人レベルが低い…ですかね?』

 

 

この時のサニデイジャパンは、FW登録選手が6人。FW経験者が10人という脅威のFW激戦区であった。

その中でも世界レベルのFW、月やツバサ。

そして敵として戦い自分たちを苦しめた穂乃果や理亞、凛…そして我らが浦の星のストライカー、黒澤姉妹。

 

考えれば考えるほどキリが無いが、自分の力がFW陣たちには適わないことは重々承知。

 

そして、自分には昔からの悪い癖があった。

それは"無駄に足を出してしまう"クセ。

ダメだと分かっているのに、体が勝手に動く…足が伸び、ボールが届くか届かないかのところで抜かれる。

 

正直、この癖には嫌気がさしていた

 

 

 

 

 

志満『そうね…自分のことがしっかりと分かっていると思う』

 

善子『…はい、』

 

志満『でもね?』

 

善子『…?』

 

 

 

 

志満『私は、善子ちゃんの才能…センスはあると思うの』

 

 

 

善子『!!!!』

 

 

北也『…』

 

 

 

志満『私は思ったの。善子ちゃんなら絶対に、日本代表として。サニデイジャパンの一員として活躍できる』

 

善子『…で、でも』

 

志満『私が善子ちゃんに求めるのは覚悟よ』

 

善子『…!!』

 

志満『自分の弱さと向き合う覚悟。そして貫いてきたものを捨てる覚悟』

 

善子『貫いてきたものを…捨てる?』

 

志満『えぇ』

 

 

 

 

 

志満『FWを捨てる覚悟』

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

善子「…」

 

 

ベルガモ「っっ!!必殺技…ならば、また奪えばいいだけ!!」グワーッ!

 

 

善子「…」バッ

 

ベルガモ「!?」スカッ!

 

 

ルーサー「ベルガモのタックルが躱された…?」

 

クラリア「…何が起きているんだ?」

 

 

善子「…」バッ!

 

 

ルーサー、クラリア「!!」

 

 

A『津島善子が動きました!!上手くベルガモ選手を躱し、そのままドリブルを始める!!しかし、行先には屈強なスペインディフェンスが待ち構えます!!』

 

 

花陽「にこちゃんのような動き…?」

 

真恋「あの身のこなしとボール捌きは、確かににこちゃんの動きに近いわ…でも、何かが違う…」

 

美奈「…あれは、」

 

美奈「"Deep Resonance"」

 

 

 

 

 

 

善子『"Deep Resonance"?』

 

志満『えぇ。私が高校生の時に作り上げようとした技。でも、私じゃ完成することはできなかった…』

 

善子『…いったい、どんな?』

 

 

 

 

 

 

クラリア「いっきに奪うわ」

 

ルーサー「えぇ。」

 

 

善子「(2人ね)」

 

 

月「無茶だ…善子ちゃん!!」

 

 

善子「ーー」バッ!

 

 

フェルナンド「あの2人を前にしてドリブルですって?」

 

ベラスコ「アホなのか、よっぽどドリブルに自信があるの…」

 

 

クラリア、ルーサー「!!?」スカッ

 

善子「(ちょろ)」バッ!

 

 

フェルナンド、ベラスコ「!?」

 

ベラスコ「おいおい、嘘でしょ…」

 

 

 

A『また抜いたぁ!!これで3人目!しかも、2人まとめて躱すという離れ技!!津島善子選手が止まりません!!』

 

 

 

 

 

 

志満『相手の動きに共鳴して、体が自然と流れるように動く。相手がドリブルをしているならその動きに合わせて奪う。相手がディフェンスをしているならば、風が通り抜けるように躱す』

 

善子『体が勝手に動く…』

 

 

 

 

 

 

善子「ーー」バッ!

 

 

ベラスコ、フェルナンド「!!?」スカッ

 

 

 

 

 

 

 

善子『痛っ!?』

 

志満『避けるとか考えちゃダメよ。無意識に。体の、細胞全てに意識を広げるの』

 

善子『意識を…広げる…』

 

志満『さあ、続けるわよ』

 

 

 

 

 

 

 

エメリコ「ちょっ…あの子ヤバくない??」

 

ファビオ「クラリアさん達がまとめて抜かされるなんて…」

 

 

善子「!!」バッ!

 

 

エメリコ「速い!?」

 

 

 

 

 

 

善子『どうして志満さんは習得できなかったんですか…?』

 

志満『…私はね、抱え込む体質だったからかな…どうしても無心にはなれなかったの…』

 

善子『…』

 

志満『でも、善子ちゃんのプレーを見て思ったの。あの癖、無意識に出してしまう癖。あれは武器になる。あの無意識ならば、私の過去の想いを、背負ってくれるんじゃないかって』

 

 

 

 

志満『いい?善子ちゃん』

 

 

 

 

善子「っっ!!!!」

 

 

 

志満『今は苦しい。逃げたくなるわ。悲しいわ。心が潰れそうになるわ。でもね、』

 

 

 

ルフィノ「これ以上は…!!」ズザーッ!

 

善子「!!」バッ!

 

ルフィノ「これも避ける!?」

 

 

 

志満『努力は裏切らないわ。絶対に。あなたが走ってきた道は見えなくてもついてくる』

 

 

 

ドメルゴ「私のタックルは躱せないでしょ!!」グワーッ!

 

善子「…」

 

 

 

志満『もし、善子ちゃんが目指す出口。光が見えてきたのなら、一度立ち止まって…』

 

 

 

善子「っっ!!」クルッ!

 

ドメルゴ「ルーレット…」スカッ

 

 

 

 

志満『後ろを振り返ってみて』

 

 

善子「ハァハァ…」クルッ

 

 

 

 

 

後ろで、驚き。

固まり。

誰もがあなたに注目しているその景色が…

 

 

 

あなたの努力の景色

 

 

 

あなたが走ってきた道よ

 

 

 

 

 

A『10人…10人抜きです…会場は、あまりの衝撃の状況に目を疑っています…!』

 

レヴィン『ここまでの才能が日本に…これは、スペインにとって最強の刺客ですよ』

 

 

 

 

善子「…ハァハァ…何よ志満さん…この景色」

 

 

 

善子「最高じゃないの」

 

 

 

 

 

 

志満「私の分もよろしくね。善子ちゃん」

 

 

 





Deep Resonance
善子ちゃんのオリジナル技です。考案者は志満さんですが、習得は善子ちゃんです。「深い共鳴」という名に相応しく、敵のドリブル・ディフェンスに体が勝手に反応します。「身勝手の極意」に近いと考えてください。更なる詳細や弱点はまた次回…



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第3章 61話 「スペイン戦 "本物の成長"」


皆さん、どうも!ルビィちゃんキャンディーです!
先日、ハーメルンのランキングで24位を取ることができました。そして、高評価とお気に入りにしたくださった皆様、重ね重ね、本当にありがとうございます…!!
これからも皆様に楽しく盛り上がるお話を投稿していきます!

今回はかなり長いです




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

善子の新必殺技、"Deep Resonance"には、志満の想いが詰まっていた。体が勝手に反応し動く技…善子が走ってきた道は、誰もが驚愕するとんでもない道であったのだ

 

 

 

 

 

美奈「志満の想いも、全て善子ちゃんに託されたわ」

 

真恋「なるほどね…でも、あの技は…」

 

美奈「えぇ。すぐにはバレないと思うわ」

 

 

 

A『さあ!津島善子がGKと1対1!果たしてどのようなシュートを撃つのか!?』

 

 

善子「ここで決めて、後半まで希望を繋げるのよ!!」

 

 

善子が構えると、背中から青黒い炎の翼が姿を現した。

浦の星メンバーは久しぶりに見る必殺技。

善子が極限にまで磨き上げた技であった

 

 

善子「ー デビルバーストGX ー!!」ドガアァン!

 

 

ダイヤ「GX!!」

 

月「前とは比べ物にならない威力だよ…!」

 

 

善子「(さて、どうかしら?)」

 

 

善子はシュートを真正面からの力勝負ではなく、クロスバーぎりぎりのサイドへと放った。

この威力、スピードならGKも反応できないはず…

 

 

 

アロンソ「サイドね!」

 

 

善子「!!」

 

 

ダイヤ「シュートコースで既に構えている!?」

 

 

本来ならゴールの真ん中で構えているGK。

しかし、アロンソは善子がシュートを撃つよりも少し早くシュートコースに移動していた。

まるで、善子がどこに撃つか分かっているかのように…

 

 

 

アロンソ「ー ザ・ボヨン ー!」

 

善子「…っっ」

 

 

A『止めました!ここはスペインGK、アロンソがナイスセーブ!津島善子の必殺技は惜しくも決まりませんでした!』

 

レヴィン『シュートコースに先回りしているように見えました。逆に先回りしていなければ、決まっていたでしょう』

 

 

 

英玲奈「どういうことだ…あのGKは完全にシュートコースを読んでいた」

 

梨子「何か秘密がありそうですね…調べてみます」

 

英玲奈「あぁ。だが今はディフェンスだ。善子も前線に上がりきっている、私たちでスペインの攻撃を…善子「早く戻りなさいよ」バッ

 

 

英玲奈、梨子「!?」

 

 

A『おおっと!?先程シュートを撃った津島善子は既に日本のゴール前まで戻っている!!なんというスタミナ量!!』

 

レヴィン『10人抜きしたあとです。かなりバテていると思ったのですが…』

 

 

善子「リベロはフィールド全体を走り回る…あのランニングが生きたわね」

 

 

 

 

志満『今、善子ちゃんが自主練で走っている距離は?』

 

善子『…4キロぐらい?(なんでこの人は私が自主練していることを知ってるの??)』

 

志満『じゃあ、その3倍ね』

 

善子『え、』

 

志満『今日から走る距離を3倍。もっと体力をつけてもらわないと』

 

 

帝女メンバー『『……』』コソコソ

 

志満『あなた達もよ♪』

 

帝女メンバー『『!!??』』

 

 

 

 

 

ルーサー「おいおい…バスケの試合か何かと勘違いしてるんじゃないの…?」

 

クラリア「このまま流れを渡すわけにはいかない。善子を抑えるんだ。あとは私が決める」

 

ルーサー「了解」

 

 

A『さあ!再びスペインの攻撃!どうしても力で勝てない日本…!スペインのボールが繋がります!』

 

レヴィン『物理的にスペインは圧倒的に有利…しかも、パスやドリブルのスピードも決して悪くはありません。日本はどうしても防戦から逃れられませんね…』

 

 

 

海未「そこです!!」バッ

 

エメリコ「邪魔だよ!!」ドガッ!

 

海未「っっ…(強い…)」

 

エメリコ「足を出すだけじゃ私たちからボールは奪えないよ!!」

 

 

やはり強い…

金属でできているのだろうか…

まさに猛牛。

突撃されてはただでは済まない

 

 

エメリコ「クラリアさん!!」パス

 

クラリア「!」

 

ルーサー「善子は私たちに任せて行って」

 

クラリア「えぇ。」バッ

 

 

英玲奈「クラリアが来るぞ!!」

 

聖良「絶対に止めます!!」

 

 

クラリアの前に立つ日本の選手。

まさに、暴れ狂う牛を止めようと試みる人間。

しかし、人間の力には限界がある

 

 

梨子「ー アインザッツ ー!!」バッ!

 

クラリア「っっ!!」ドガッ!

 

梨子「きゃっ!?」

 

 

誰でもわかる…というよりも常識である。

牛を人間が止めるなんて…突っ込めばただでは済まないことなんて…

 

 

英玲奈、晴夏「はあぁぁぁ!!」ガッ!

 

クラリア「くっ…!!」

 

 

A『二人がかりでボールを抑えにいった!!』

 

 

クラリア「無駄よ!!」ドガッ!

 

英玲奈「ぐっ!?」

 

晴夏「2人まとめて…!?」

 

 

聖良「英玲奈さん!晴夏さん!避けてください!!」ビュン!

 

 

クラリアの動きが一瞬だけ止まった。

二人まとめてはやはり効いたのか…

何にせよ、今がチャンス

 

 

 

聖良「ー スノーエンジェル改 ー!」ガキイィィィン!

 

 

クラリア「」カチコチ

 

聖良「止まりましたか…」

 

 

理亞「さすが姉様!!」

 

曜「あのスピードならクラリアさんも避けられないね…!!」

 

 

パキパキ…と空気を凍らせる冷気。

聖良の高速接近から繰り出される技は回避不可能。

クラリアは完全に氷漬け。

日本は4人がかりではあるが、暴れ狂う牛をなんと止めてしまったのである

 

 

穂乃果「いいぞー!!4人とも!!」

 

 

梨子「こ、怖かった…」

 

晴夏「跳ね飛ばされたときは死ぬかと…」

 

 

ヘナヘナと座り込む梨子と晴夏。

突進してくる屈強な選手に対し、真正面から突っ込むのはかなりの勇気が必要だ。

梨子はサウジアラビア戦の時とはまるで別人のように、精神的にも成長していた

 

 

英玲奈「あぁ。だがこれで、ボールをーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーバギッッッッッ!!!!

 

 

 

 

英玲奈、梨子、晴夏「「!!!!??」」

 

聖良「…な!!?」

 

穂乃果「…やっぱりとんでもないよ」

 

 

 

クラリア「私はこれだけでは止まらない…!!」

 

 

理亞「……姉様の技が、」

 

ルビィ「…」

 

 

 

A『なんと!?クラリア選手、鹿角聖良の必殺技を何事も無かったかのように突破!!日本は4人がかりでクラリア選手を止めに行きましたが、それでもこの少女は止まらない!!』

 

 

善子「やっぱり私が…!!」バッ

 

ルーサー「おおっと。チビ。これ以上は好きにはさせないよ」

 

善子「!!?ちょっ…」

 

ベルガモ「よく見てるんだな。クラリアの本当の実力を」

 

善子「(本当の実力…!?)」

 

 

 

梨子「善子ちゃんがフォローに行けない…!」

 

聖良「穂乃果さん…お願いします…!!」

 

 

穂乃果「任せて!!"ダイヤモンドレイ"は止めてみせる!!」

 

 

穂乃果は両手を広げ、クラリアに向けた。

今の自分に止められない技はない。

そう体で表現する。

 

そんな穂乃果を見たクラリアは、ドリブルを止め、不敵に笑った

 

 

クラリア「……フッ、流石ね。穂乃果」

 

穂乃果「…!」

 

クラリア「私はね。あなたの進化にすごく期待しているの」

 

穂乃果「進化…」

 

クラリア「浦の星との決勝。あなた達、日本の可能性は無限大なのだと。実感したわ」

 

クラリア「だからこそ。私はあなた達に敬意を払い、この技をプレゼントするわ」バッ!

 

穂乃果「!!(来る…!!)」

 

 

ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

クラリアがボールを削り、磨き始めた。

この巨大で気高いシュートを止めるために、穂乃果は自分の限界に挑戦している。

絶対に決めさせない。

そう誓うだけで、穂乃果の腕にパワーがみなぎる

 

 

クラリア「はあぁぁぁ!!!」ドガアァン!

 

 

希「"ダイヤモンドレイ"やん…!!」

 

凛「穂乃果ちゃん…!!」

 

 

穂乃果「上等だよ!!」バッ!

 

 

クラリアのシュートと同時に飛び出す穂乃果。

その両手には既に赤いオーラが込められている。

"ダイヤモンドレイ"止めた紅の渾身を…

 

 

 

 

穂乃果「ゴットハンド!!!!」

 

 

クラリア「…」

 

 

 

 

 

 

 

ボールは穂乃果の射程範囲内に入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「エェェェッックス!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「…え」

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

 

 

 

 

 

"ダイヤモンドレイ"が…穂乃果の顔の横を流れる

 

 

 

 

 

 

クラリア「それは、ただの"ダイヤモンドレイ"ではない」

 

 

 

 

 

 

 

バシュゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

クラリア「"曲がるダイヤモンドレイ"だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ははは…そんなのあり??」

 

 

 

A『き、決まったぁぁ!!!!3点目、3点目です!!クラリア・オーヴァンがハットトリック…!3点目はなんと、"ダイヤモンドレイ"を曲げてきました!!』

 

 

 

月「"ダイヤモンドレイ"を、曲げた…?」

 

ダイヤ「穂乃果さんの"ゴットハンドX"は、前に飛び出しながらの発動…完全にやられましたわね、」

 

 

 

穂乃果「…」

 

海未「…穂乃果、」

 

 

超えても、相手は更にその上をゆく…

"ゴットハンドX"が、一瞬で攻略されてしまったのだ。

絶対の安心感は儚く砕け。

会場の歓声へと変わった

 

 

穂乃果「…凄いよ。やっぱり。クラリアは、スペインは強い」

 

海未「…」

 

穂乃果「でも、もう下は見ないんだ」

 

海未「…!」

 

穂乃果「千歌ちゃんと約束したからね。まだ試合は終わらないよ」

 

海未「はい!」

 

 

 

A『さあ、前半の残り時間も僅かとなりました。点差は3。スペインのリードとなっています』

 

レヴィン『日本も食らいついていますが、やはり世界の壁は厚いですね…前半で3点差は、かなり厳しいです』

 

A『はい…ですが、これでも諦めないのがサニデイジャパンです!試合終了の笛がなるまで、選手たちには走りきってもらいたいです!!』

 

 

 

月「…どうする?」

 

ツバサ「…残り時間、私はゾーンで走るわ。何としてでも決めて、後半に繋ぐのよ」

 

月「分かった」

 

 

 

ピーー!!

 

 

 

主審の笛と同時に飛び出す月とツバサ。

ツバサはバックパスで後ろにいるにこにボールを預け。

自分は前を向いて走る

 

 

にこ「いい?このボールは絶対にFWに返すのよ!!」

 

海未「任せてください」

 

ダイヤ「了解ですわ」

 

 

にこを中心に細かくパスを回す日本。

流石にスピードは日本の方が有利。

サニデイジャパンがスペインゴールにシュートを放つにはこれしかなかった

 

 

海未「ダイヤ!!」パス

 

ダイヤ「はい!にこさん!」パス

 

にこ「いいわよ!その調子!!」

 

 

A『ここで、MF3人による華麗なパス回し、スペイン陣内に切り込んでいきます!!』

 

 

ルフィノ「ちょこまかと…!!」ズザーッ!

 

にこ「どこ狙ってんのよ」バッ!

 

ルフィノ「!?」

 

 

ルフィノ『スライディングをバク転で躱しますか…素晴らしい身のこなしですね』

 

 

にこ「決めなさいよ…!!」パス!

 

ダイヤ、海未「!!」

 

 

A『おおっと!!矢澤にこがキラーパス!スペインの最終ラインは超えましたが、ボールはそのままコート外へ…!!』

 

 

ルーサー「猿の真似事か?」

 

ベラスコ「あのボールに追いつくなんて…」

 

 

 

月「ー ブルースターダスト ー!!」

 

 

ルーサー、ベラスコ「!!?」

 

 

月「僕のスピード、舐めてもらっちゃ困るね!!」

 

 

A『渡辺月が走っていたぁぁ!!必殺技でボールに追いつき、横には綺羅ツバサもいます…!!これは大チャンス…!!』

 

 

 

ベラスコ「しまった…日本には月がいるのね…」

 

ルーサー「確かに月なら追いつく」

 

 

 

月「決めるよ!」

 

ツバサ「えぇ!」

 

 

 

月とツバサの現、サニデイジャパンの最強技のひとつ。

"コズミックブラスター"の構え。

これならばスペインのゴールも破れるはず…!!

 

 

月「はあぁぁぁ!!」バッ

 

 

月が足を振り上げボールをーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーガッッッ!!!!

 

 

 

ツバサ「!!!!?」

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

 

 

 

月「…やあ。酷いじゃないか、僕のシュートを邪魔するなんて」ググググ…

 

 

 

月「クラリア」ググググ…

 

 

クラリア「"コズミックブラスター"は撃たせない」ググググ…

 

 

 

月とクラリア。

半年前までは同じチームでサッカーをしていた仲間だが。

いま以上に仲間であるクラリアのことを憎く、そして邪魔だと思ったことはなかった。

それはもちろん、クラリアも同じ

 

 

 

クラリア「このままボールは頂く…」ググググ

 

月「やれるもんならっ…(やばっ、重い…)」ググググ

 

 

曜「月ちゃんが捕まった…!!」

 

果南「っっ!!ゴールは目の前なのに…」

 

 

ベンチのメンバーも立ち上がる。

あともう少し…!!と唸りながら下唇を噛むほどのもどかしさ。

 

どこまでも遠いゴール。

 

だからこそ、目の前まで来たからこそ。

 

悔しさが増す

 

 

 

月「っっ!?」ドサッ!

 

 

A『ああっと!?奪われてしまいました!!クラリア選手のゴール前まで戻ってのディフェンス。渡辺月、惜しくもシュートならず…!!』

 

 

クラリア「私にパワーで勝てないと、月が一番分かっているはずよ」

 

月「くっ…」

 

 

地面に手をつく月。

悔しいが、昔から何度もクラリアには戦いを挑んだ。

しかし、力比べで勝てたことは一度もない。

日本には、月には武が悪すぎる

 

 

 

クラリア「悪いけど。これで終わらせる」

 

 

A『クラリア選手はクリアをするつもりなのでしょうか!?そうなると前半は終了となります!!』

 

 

月「っっ!!」

 

クラリア「後半に期待する」

 

 

 

クラリアの蹴りがボールをへこませる。

放たれれば高く放物線を描き。

主審が前半終了の笛を吹く。

それ即ち、日本の目標とする1点取得の未達成。

希望の途絶え。

 

 

 

 

 

ボールにパワーと、鈍い音が加わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴッッッッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

クラリア「なっ!!!?」

 

月「!!!!??」

 

 

 

 

 

 

梨子「っっっっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

英玲奈「梨子!!!!!!」

 

 

 

梨子はクラリアのクリアを、腹で。

直接ブロックしたのだ

 

 

 

 

梨子「ゴホッ…ゴホッ…!!」ドサッ

 

月「あぁ…梨子ちゃん!!」

 

梨子「はやぐ!!ボール!!」

 

月「!!」

 

 

にこ「任せなさい!!」ズザーッ!

 

クラリア「しまった…」

 

 

A『矢澤にこがスライディングでボールを奪った!!桜内梨子の決死のブロックから生まれたラストチャンスです!!!!』

 

 

にこ「しゃんとしなさいよ!!!!」

 

月「っっ!!」

 

月「梨子の、みんなの覚悟を無駄にするな!!!!」

 

 

にこが怒鳴った。

空気を伝い、月の体を震わせる。

 

立ち上がる。そうだ。

 

希望はみんなが、まだ繋いでいるんだ

 

 

ツバサ「にこさん、ボールを私に!!いっきに突破するわ!!」

 

にこ「えぇ!!」パス

 

 

A『綺羅ツバサのドリブル!!電光石火でフィールドを駆け抜けます!!』

 

レヴィン『スペインの選手が一瞬硬直した隙を狙いましたね。今の彼女は止められませんよ』

 

 

 

ツバサ「(まさか、梨子があんなことをするなんてね…)」

 

 

 

ありえなかった。

梨子がUTX高校でサッカーをしている時から、ツバサは梨子のサッカーを見ていたが、絶対に、今のような行動なんて…

 

 

ツバサ「あなたの覚悟。そして成長は本物よ」

 

 

ツバサはゾーンでディフェンスに戻ってきたスペインの選手たちを躱す。

ラストプレイなのだ。

スタミナなど関係ない

 

 

ツバサ「さあ、今度こそ決めるわよ。月」バッ

 

月「もちろん」バッ

 

 

ツバサのドリブルに追いついた月。

今思うと、あの時の梨子ちゃんの目は凄かった。

 

恐怖など一切ない。

 

ただ、ボールを止めるという信念を貫こうとする目

 

 

 

ツバサ「ー 流星ブレード ー!!」ドガアァン!

 

月「ー ブルースターダスト ー!!」キラキラ!

 

 

ツバサのシュートを追いながら月は思う。

やはり、日本は凄い。

瞬間的に進化を続けている。

 

ふんぞり返るほど、自分はもう上手くはない。

 

進化する仲間へ。

全ての希望を背負い、月は、シュートを天へと蹴り返した

 

 

 

月「ー ザ・エクスプロージョン ー!!」ドガアァン!

 

 

ツバサ「死ぬ気でついてきなさい!!」ビュン!

 

月「うおあぁぁぁぁ!!!!」ビュン!

 

 

 

 

ことり「お願い…!!決まって…!!」

 

希「信じるんや…2人を」

 

花陽「絶対に決めます。私たちは信じています」

 

 

 

 

 

轟くのは轟音。

 

吹き荒れるのは嵐。

 

2人の渾身の蹴りが、スペインゴールに放たれた

 

 

 

 

月、ツバサ「ー コズミックブラスター ー!!」ドガアァン!!

 

 

 

A『出たあぁぁぁぁ!!!!サニデイジャパンが誇る最強シュートだぁ!!!!』

 

 

 

 

月、ツバサ「いけえぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

アロンソ「っっ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシュゥゥゥゥゥン!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A『………!!!!』

 

レヴィン『………!!』

 

 

日本「「「…………」」」

 

スペイン「「「「…………」」」」

 

 

 

 

少しばかりの、静寂の時間。

 

誰も口を開かなかった。

 

 

アロンソが伸ばした手を掠ったシュート。

 

ゴールネットに触れ、爽快な音が耳を刺激した。

 

 

それでも、恐ろしい程に静まり返った会場。

 

 

 

 

そんな会場で最初に口を開くのは…

 

 

 

 

 

 

 

梨子「ありがとう…月ちゃん、ツバサさん」

 

 

 

 

日本 1-3 スペイン

 

 

 



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第3章 62話 「スペイン戦 "変化。そして進化。」


皆さんどうも!ルビィちゃんのお誕生日が近づいてきてワクワクしているルビィちゃんキャンディーです!模試もあって心はズタボロですが、何とか書き上げました!

このまま行くと世界編は200話超えちゃうかも…そこまで続くかな…




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

前半終了まであと僅か。そんな中でクラリアは"ダイヤモンドレイ"を曲げ、穂乃果から3点目を奪った。しかし、梨子の体を張ったブロックや日本の決死のパスワークにより、月とツバサの"コズミックブラスター"が炸裂。スペインから1点を手に入れたのである

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い空間に、水が流れる音だけが響く

 

 

 

 

千歌「…!!」

 

 

 

頭から水をかぶる千歌。

汗などとっくに流されているが、それでも、このモヤモヤは洗い流せない

 

 

 

千歌「……なんで、」

 

 

 

水を止めて目の前の鏡を見る。

そこには酷く顔色悪い自分の顔があった

 

 

 

千歌「…今更なんで、」

 

 

 

自分が自分でなくなる。

仲間を傷つけようとした。

二度と出さないと誓った。

 

なのに、なのになんで…

 

 

 

千歌「私は…誰?」

 

 

 

暗いからかもしれない。

だが、鏡に映る自分の目が…真っ黒に見えた

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

A『ここで前半終了!!!!1-3!!日本は総力戦で大きな1点を獲得しました…!!』

 

レヴィン『最初、一方的な試合になるかと思いきや、日本が徐々にスペインのプレーに対応していましたね』

 

A『はい!対応力は日本の武器です!』

 

 

 

 

英玲奈「まったく…無茶してくれるな」

 

梨子「ハァハァ…でも、絶対に繋ぎたかったから」

 

 

梨子は英玲奈の肩を借りてベンチへと戻った。

クラリアのボールと蹴りが腹に直撃したのだ。

立っていることさえ辛いはず…

 

 

英玲奈「あの頃とは別人だな」

 

梨子「私…変われたの、かな?」

 

英玲奈「あぁ。凄いよ梨子は」

 

 

花陽「梨子さん!大丈夫ですか!?」

 

花丸「早く医務室へ…!!」

 

英玲奈「梨子を頼む」

 

 

花陽と花丸が梨子の元へと駆け寄り、英玲奈の肩から引き継がれる。

ひとまず英玲奈はベンチに向かう。

後半からが本当の勝負であるからだ

 

 

 

美奈「とりあえず月ちゃんとツバサちゃん、良くやったわね」

 

ツバサ「ギリギリだったけどね、」

 

月「梨子ちゃんがいなければどうなっていたか…」

 

美奈「後半からは理亞ちゃんと曜ちゃんと凛ちゃん。行くわよ」

 

理亞、曜、凛「はい!!」

 

 

美奈「どうだった?スペインは」

 

穂乃果「…凄かった。私たちの想像を超えた強さだった。進化してもまだ届いてる気がしないよ」

 

海未「パワーだけではありません。スピードもテクニックもレベルが高いです。前半の支配率は圧倒的にスペインが高いはずです」

 

美奈「そうね…スペインは強いわ。でも、ひとつ分かったことがあるでしょ?」

 

穂乃果、海未「点を取れる」

 

美奈「これが一番大きいわ。日本がスペインに対抗できる証拠よ。後半からが勝負よ。大丈夫、諦めるにはまだ早いわ」

 

ダイヤ「ですが、どうしてもスペインがボールを触りがち…この状況を変えなくては…」

 

 

英玲奈「…それについて。作戦がある」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

美奈「教えて?」

 

英玲奈「…梨子が考えた作戦です」

 

 

梨子の作戦。

それは、梨子が英玲奈の肩を借りながらフィールドを後にする時に伝えたものだった。

 

内容は日本だからこそできるものであり。

 

日本の特長を大いに活かし、スペインを翻弄できる…これ以上無い作戦だった

 

 

美奈「分かったわ。それで行きましょう」

 

 

 

英玲奈「…」

 

あんじゅ「英玲奈、どうしたの?」

 

英玲奈「…あぁ。スペインのGKのことで、」

 

ツバサ「シュートコースを読むキーパーね」

 

英玲奈「何故、善子の際どいコースのシュートを止められて、月とツバサのシュートが止められなかったのか…」

 

あんじゅ「威力とは、また別の理由がありそうね」

 

英玲奈「あぁ…それがわからない」

 

 

真恋「…恐らく」

 

英玲奈、あんじゅ「!!!!」

 

英玲奈「知っているのですか?」

 

真恋「あのキーパーは……」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

A『さあ!間もなく後半戦が始まります!!』

 

 

 

穂乃果「ここから逆転だよ!!みんな!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

A『サニデイジャパンは選手を3人入れ替えてきました。FWに鹿角理亞。MFに星空凛と渡辺曜です』

 

レヴィン『鹿角理亞選手が出てきましたね。彼女はアジア予選で見違えるほどの成長を続けていたように思えます』

 

A『はい!なんと言っても、黒澤ルビィから最強の必殺技"ATP"を受け継いだ選手です。活躍すること間違いないでしょう…!!』

 

 

 

FW…………鹿角理亞、黒澤ダイヤ

 

MF………渡辺曜、園田海未、星空凛

 

MF…………矢澤にこ、統堂英玲奈

 

DF……………鹿角聖良、葉石晴夏

 

DF……………………津島善子

 

GK…………………高坂穂乃果☆

 

1-2-2-3-2

 

 

 

 

 

晴夏「穂乃果さん、"曲がるダイヤモンドレイ"…あれを止めなければこの試合…」

 

穂乃果「…そのことだけど、穂乃果に考えがあるの。それをやってみる」

 

晴夏「考え…?」

 

穂乃果「そう!ちょっと無茶するけどね…!」

 

 

晴夏は気づいた。

穂乃果が冷や汗をかいていたのだ。

緊張か、それとも不安なのか…

顔には出さないがその作戦、不安でしかなかった

 

 

 

クラリア「まさか私たちが得点されるとは…」

 

ルーサー「だが、2点差。勝つのは私たちよ」

 

ベルガモ「…後半でもっと点差を離してやる」

 

 

 

 

ピーーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 観客席 ー

 

 

フィレア「2点差ね、日本としてはかなり厳しいんじゃないかな」

 

鞠莉「えぇ。善子のディフェンスで少しは防げるけど、あの技には…決定的な弱点があるわ」

 

フィレア「スペインのことだからすぐに感ずくね、あとは…」

 

鞠莉「クラリアのシュートよ」

 

フラム「…」

 

 

 

 

A『さあ!スペインがドリブルで攻めます!!日本も負けじとディフェンスに入る!!』

 

 

 

曜「ー スマッシュアンカー ー!!」

 

クラリア「!!」

 

 

曜がクラリアに向かって巨大な錨を投げつける。

さすがのクラリアもこの大きさではただでは済まない

 

 

クラリア「厄介ね…」パス

 

 

A『おおっと、ここでクラリア選手が後方へボールを戻しました…!前半、ドリブルで無双を続けていたクラリア選手ですが、渡辺曜の必殺技はそれ以上のパワーなのか!?』

 

 

クラリア「(後半から出場している3人…油断できないわね、ここはいったん様子を…)」

 

 

 

 

 

凛「貰ったにゃー!!!!」ズザーッ!

 

クラリア「なっ!?」

 

ルーサー、ベルガモ「!!?」

 

 

A『なんと!!星空凛がスライディングでパスコースに滑り込みボールをカット!!日本がボールを奪いました!!』

 

レヴィン『早速スピードを活かしてきましたね。日本は前半よりも反応が良くなっていますね』

 

 

クラリア「(動きが読まれた…バカな!?)」

 

ベラスコ「取り返すよ!!」

 

 

突然のパスカットに驚くスペイン。

バスケで言うなら完全にスティール。

前半は一度もパスカットをされなかった…いや、日本は仕掛けにもこなかった…

 

新たな作戦?

だとしても前半とは動きもまるで別のチームだ

 

 

凛「まずは作戦通りにゃ!!」

 

英玲奈「あぁ!だが本番はこれからだぞ…!」

 

 

英玲奈は梨子が考えた作戦を脳裏に浮かばせる

 

 

 

梨子『スペインは…そのフィジカルゆえに、ドリブルテクニックで躱す。というプレーをしません…』

 

英玲奈『確かに、パスを出すか強引に突破するかしか見ていないな…』

 

梨子『それを利用すれば、まずは、日本は簡単にスペインからボールを奪えます』

 

 

 

英玲奈「本来、避けるということをしないチーム。だからパスには大きな隙ができている」

 

 

 

 

ベラスコ「そこまでだよ!!」ズザーッ!

 

凛「海未ちゃん!」パス

 

ベラスコ「なに!?」

 

海未「はい!」

 

フェルナンド「任せてベラスコ!!」

 

海未「ダイヤ!」パス

 

フェルナンド「しまった…!?」

 

 

A『サニデイジャパン…!!パスが繋がります!!前半よりも動きにキレが増したように見えます!』

 

レヴィン『これは…なるほど。日本は考えましたね』

 

 

 

クラリア「何が起きているんだ…」

 

 

日本のパスが…繋がるわ繋がるわ。

パワープレイで奪いに行っても、すぐに別の選手にボールが渡ってしまう…

 

システムはなんだ?いったい何を?

 

日本は…どうしてこんなにも姿を変える…!?

 

 

 

ダイヤ「英玲奈さん!!」パス

 

英玲奈「よし…全て梨子の作戦通りだ」

 

 

 

 

英玲奈『2人…?』

 

梨子『はい。スペインは2人で協力しながらディフェンスをしています。ですが、それよりも多い人数ではディフェンスをしていないんです』

 

英玲奈『確かに…だが、何故…?』

 

梨子『恐らく、1人がパスコース、1人がドリブルを潰しているんだと思います。なので…後半からは…』

 

梨子『日本は3人1組でボールを運んでください』

 

英玲奈『なるほど。それなら必ずフリーの選手ができるな』

 

 

 

美奈「名付けて、"トライアングルパス"…シンプルだけど、それ以上に強力な作戦は無いわ」

 

真恋「梨子ちゃんは前半だけでよく見抜いたわね…」

 

ツバサ「…英玲奈が言ってたわ。梨子はUTX時代からほかの選手と見ている場所が違うって」

 

真恋「…見ている場所ね、」

 

 

 

 

 

 

チコ「っっ!!日本の奴ら、なんで急に動きがよく…」

 

ベルガモ「…恐らく、2人ディフェンスがバレた」

 

チコ「…!!」

 

ベルガモ「私たちはこの戦い方を体に染み込ませてしまった…それを見抜かれたんだ」

 

チコ「そんな…」

 

 

 

A『驚きました…!!後半はなんと、日本がパスを簡単に繋ぎ、既にゴール前まで来ています!!シュートを撃つのは渡辺曜か!?』

 

 

海未「曜!チャンスです!!」

 

曜「よしっ!!」

 

 

梨子がフィールドに残していったもの。

それは試合を流れを変える、とても大きなものだった。

 

前半は手も足も出せなかったスペインに対し、今は対等…いや、それ以上の戦いをしている。

 

この流れを途切らせないためにも…絶対に決める!!

 

曜は全オーラをボールに込めて放つ

 

 

 

曜「ー ゴッドウインド改 ー!!」ドガアァン!

 

 

月「曜ちゃんの技も進化した…!!」

 

ことり「これなら…!」

 

 

A『渡辺曜の強力なシュートが炸裂!!キーパー、アロンソはどうするのか!?』

 

 

 

アロンソ「ー ザ・ボヨン ー!」

 

 

曜「っ!?」

 

 

アロンソは前半と変わらず、ボールを取り込み威力を殺す。

どうしてそこまで余裕なのか…

アロンソの表情もまったく変わっていなかった

 

 

A『ここもGKアロンソのナイスセーブだ…!!日本、チャンスは作るも得点ならず!!』

 

 

ダイヤ「ドンマイですわ。曜さん」

 

曜「悔しいな…あのGK強すぎだよ」

 

海未「威力の大きさは関係ない技なのでしょうか…」

 

英玲奈「…」

 

 

 

 

A『さあ日本!ここは切り替えてディフェンスに入りたいところです』

 

レヴィン『先程、スペインはパスカットされましたからね…今度はかなり警戒しているはずです』

 

 

 

クラリア「あまいパスは出さないで!!今の日本は前半とは違うよ!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

スペインはパスがあまい。

しかしパスを出さなければ、あまいも何も無い。

 

残されたスペインの攻撃方法はパワーによる正面突破。

 

しかし、それだけでは素早い日本の選手に奪われてしまう。

 

だから嫌でもパスは避けられないのだ。日本はそこを狙えばいい

 

 

 

晴夏「ここ…!!」バッ!

 

エメリコ「そんな…このパスも読むの!?」

 

 

A『再び日本がパスカットだ!!現状では日本が形勢逆転か!?スペインの動きを完全に読んでいます!!』

 

 

 

英玲奈「晴夏!前線へ…!」

 

晴夏「はい!ダイヤさん!」パス

 

 

 

完全に優位に試合を進めている日本。

点差を縮めるのも時間の問題なのか……

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「ナイスパスですわ!」

 

 

 

 

 

 

 

いや、

 

 

 

 

 

 

 

 

チコ「いよっ!!」ズザーッ!

 

 

 

 

 

ダイヤ、晴夏「!!!!??」

 

英玲奈「カットされた!?」

 

 

 

 

ヨーロッパの強豪が黙っているわけがない

 

 

 

 

チコ「すばしっこさなら負けないよ!」

 

 

英玲奈「しまった…完全に油断していた」

 

 

チコ「クラリアさん!」パス

 

 

 

日本「「「!!!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

クラリア「…!!」

 

 

 

 

 

 

 

一瞬の隙とは、本当に恐ろしいものだ

 

 

 

 

A『クラリア選手にボールが渡った!!日本、パスカット返しでの一瞬の硬直…隙をつかれ、ロングキックから最大の危機!!』

 

 

 

善子「やばいやばいやばい!!」

 

聖良「間に合わない…まさか、スペインがこちらと同じ手を使ってくるとは…!!」

 

 

 

 

クラリア「私たちも学習はするさ。高坂穂乃果」

 

穂乃果「…!!」

 

クラリア「確かに日本の成長は素晴らしい。前半とは別チームだ。しかし…」

 

クラリア「あなた達は勝てない!!」バッ!

 

 

果南「またあの技が来る!!」

 

月「これ以上の失点は…まずいね」

 

ことり「穂乃果ちゃん…!」

 

 

 

 

ダイヤ「ー 曲がるダイヤモンドレイ ー!!」ドガアァン!!

 

穂乃果「…」

 

 

"ゴットハンドX"では曲がるシュートを受け止めることは出来ない…

しかし、"ゴットハンドX"でないとクラリアのシュートは止められない

 

 

 

穂乃果「…!!」バッ!

 

 

にこ「飛び出した…"ゴットハンドX"!?」

 

ベラスコ「性懲りも無く…」

 

 

 

 

穂乃果「…やってやるよ」

 

 

 

穂乃果はゴール前から飛び出した。

"ゴットハンドX"の動きだ。

しかし、シュートは既にカーブを描いている。

このままでは掠ることさえできない

 

 

 

穂乃果「…っっ!!」

 

 

曜「!!」

 

 

 

その時。

曜は気づいた。

 

穂乃果のあの顔…雰囲気…見覚えがある。

 

この状況でも落ち着いたような顔…そうだ。

あの時だ。

 

音ノ木坂学院との決勝。

まだ、自分たちが音ノ木坂を。

穂乃果をまったく知らなかった頃の…

 

穂乃果の絶対的風格。

佇まい。

オーラ。

同じだ。今の穂乃果は、

 

 

強者の…風格

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオオォォォォォォォオン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラリア「!!!!?」

 

スペイン「「「!!!!!!??」」」

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

 

 

 

 

 

そして強者は…あの頃のように、無敵なのでは?という雰囲気を醸し出し、一言

 

 

 

穂乃果「うん。いいシュート」ビリビリビリ

 

 

ルーサー「…"曲がるダイヤモンドレイ"を…殴り飛ばした???」

 

ベルガモ「でも、あれは…」

 

 

 

穂乃果は殴り飛ばしたのだ。

曲がるダイヤモンドレイを。

 

飛び出し、横を流れるシュートを一発。

ボールには『X』の刻印が刻まれ、轟音と共にコート外へと吹き飛んだのだ

 

 

 

クラリア「高坂穂乃果…」

 

 

穂乃果「ー ゴットパンチX ー 言ったでしょ?もうゴールは決めさせないって」

 

 

 

あの時もそうだった。

今の穂乃果は誰にも負けない。

その静かにも燃える炎は…

 

全てを捻り潰す

 

 

 

日本 1-3 スペイン

 

 

 





ゴットパンチX
"ゴットハンドX"の動き、オーラでパンチングする技です。名前はかなりダサいですが、なるべくゴットハンドと名前が似ているものにしたかったのでこれにしました。
手をクロスして飛び出すのは"ゴットハンドX"と同じです



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第3章 63話 「スペイン戦 "決死に次ぐ決死"」


皆さんどうも!ルビィちゃんのお誕生日前夜!テンション上がってきたルビィちゃんキャンディーです!

☆お知らせ☆
『ダイ果て』の作者であるオト姫さんが輝こうとのコラボを書いてくださっています!今現在、毎日更新中です!自分も毎日楽しみにしています。ぜひ!!



 

 

 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

後半戦が始まり、梨子が残していった作戦で優位を取る日本。しかし、簡単にはスペインのゴールは破れず、クラリアにシュートを撃たせてしまう…だが、穂乃果の鉄拳がクラリアのダイヤモンドを殴り飛ばしたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A『高坂穂乃果が防いだ!!スペインも点を決めきれません!!』

 

 

 

クラリア「…穂乃果」

 

穂乃果「へへっ…どんどん来なよ」ビリビリ

 

クラリア「面白い…!!」

 

 

クラリアが笑った。

前半の時の不敵な笑みとはまた違う。

穂乃果の、日本の可能性に期待し、それに想像以上の力で答えた穂乃果。

 

クラリアは、徐々に日本の進化に胸を踊らせていたのだ

 

 

 

曜「すごい…まるでスイッチを入れたかのような切り替え、」

 

ダイヤ「あそこまで冷静な顔の穂乃果さんは久しぶりですわね」

 

海未「ゾーンに近いですが、あれはただ穂乃果が集中しているだけです。あぁなれば、穂乃果は強いですよ」

 

 

穂乃果のパンチによりボールはコート外へ出たため、スペインのスローイン。

 

スペインが勝っている。

そんな中で穂乃果がクラリアのシュートを2度も止めた。

この事実、ありえない状況がスペインの選手の集中力を欠く

 

 

晴夏「貰った!!」

 

エメリコ「っっ!?」

 

 

A『葉石晴夏がスペインのスローインボールを奪った!!そのまま全線へとボールを送ります!』

 

 

英玲奈「よし…トライアングルパスだ!!」

 

 

日本は再び3対2の状態でスペインのディフェンスを突破する。

スペインは3人で攻める日本に無理に合わせてディフェンスを3枚にすると、陣形が乱れると分かっていたため、手が出せないでいた

 

 

英玲奈「にこ!!」パス

 

フェルナンド「このっっ!!」

 

にこ「曜!!」パス

 

ファビオ「!?」

 

曜「よし…抜けた!!」

 

 

1度攻略法が分かればあとは簡単。

スペースに走り、ボールを貰う日本。

スペインのディフェンスはあと数人で完全に突破だ

 

 

曜「ー スプリントワープ ー!!」ビュンビュン!

 

 

A『渡辺曜がいっきに抜きにかかる!!』

 

 

 

しかし、

 

 

 

クラリア「これ以上は…!!」バッ!

 

曜「!?」

 

 

月「クラリア!?」

 

ツバサ「最終ラインまで戻っていたのね…」

 

 

曜の高速ドリブルを止めるべく。

クラリアは事前にディフェンスに戻ってきていた。

クラリアに捕まればさすがの曜でも回避は不可能。

そのまま突破すれば問題はないのだが…

 

この気迫。

そう簡単には通させてもらえないようだ

 

 

クラリア「そこだ!!」バッ

 

 

クラリアが曜のドリブルコースを予想。

コースに入り、体で直接曜の突破を食い止めに入っていた

 

 

にこ「曜!!避けなさい!!」

 

曜「…!!」

 

 

にこの警告は確かに聞こえた。

しかし、今更避けることは出来ない。

パスを出そうか…いや、高速でドリブルをしているのだ。

正確なパスは期待出来ない…

しかし、ひとつだけ。

この状況を回避する、パスを出す方法がある

 

 

 

 

それは、

 

 

 

 

 

曜「頼んだよ…!」パス

 

 

 

 

 

 

凛「にゃあぁぁぁぁ!!!!」バリバリ!

 

 

 

 

同じスピードで走る選手になら、簡単にパスが出せる

 

 

 

クラリア「なっ!!??」

 

凛「ー イナビカリ・ダッシュ ーにゃ!!」バリバリ!

 

 

A『星空凛が来たあぁぁ!!!!クラリア選手の横を高速通過!!!!』

 

レヴィン『渡辺曜選手のスピードに合わせたんですね…!これならパスも通りますね』

 

 

 

高速選手同士でしかできないパス。

完全に反応が遅れたクラリアはその場から動けなかった

 

 

ルフィノ「高速移動で強引に抜きに来たか…!!アロンソ!!」

 

アロンソ「どんなシュートもカモン♪」

 

 

凛「余裕でいられるのも今のうちだよ!海未ちゃん!!」パス

 

海未「はい…!決めますよ!!」

 

 

"START:DASH!!"で凛に追いついた海未。

あのGKの技がどんな威力のシュートも止めるのならば……

 

 

海未「神速の一矢で刺します」ググググ

 

凛「…」

 

 

 

フラム「あれは…"雷光の矢"!!」

 

鞠莉「あの果南でさえも反応できなかった光速シュート…無理よ。あれは止められないわ」

 

 

 

海未が足をギリギリギリ…!!と音を立てさせ撓らす。

その前方では先程までとはまるで別人。

一言も発さずクラウチングスタートで海未の轟音を待つ凛。

2人の高速が合わさる時。

ボールは次元を超え、目で捉えるという概念をも超える

 

 

 

それが

 

 

 

 

 

海未「凛!!!!!!」ドガアァン!!

 

 

 

"ラブアローシュート"

 

 

 

凛「っっっ!!!!!!」バッ!!

 

 

 

"ジグザグストライク"

 

 

 

 

凛「うおぉぉぉぉぉらあぁ!!!!」ドガアァン!

 

 

 

アロンソ「…!」バッ

 

英玲奈「!!」

 

 

 

 

海未、凛「ー 雷光の矢 ー!!!!」

 

 

 

 

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

スペイン「「「!!!!!!」」」

 

会場「「「!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

言葉を発すなど…不可。

 

 

瞬きするなど…不可。

 

 

気づいたときにはボールは既にゴールに……

 

 

 

 

アロンソ「〜♪」

 

 

 

 

入る、はずなのだ

 

 

 

 

海未、凛「!!?」

 

凛「な、なんで…」

 

海未「撃つ前にシュートコースに、立って…」

 

 

A『止めたあぁぁぁぁ!!な、なんと…!!スペインGKアロンソ!光速シュートをも必殺技でキャッチ!!完全に止められました!!』

 

レヴィン『あれも止める…完全にコースを読まれていましたね…あの速度のシュートをどうやって…』

 

 

 

海未「…」

 

凛「っっ!?なんで反応出来るの!?」

 

理亞「完全に決まったと思った…」

 

にこ「…これじゃ、得点なんてできないじゃない!!」

 

英玲奈「…いや、これで分かった」

 

「「!!!!」」

 

英玲奈「真恋さんの仮説が正しかったよ」

 

にこ「どういうこと?」

 

英玲奈「…簡単な話さ」

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

「「読心術!!?」」

 

英玲奈「あぁ。あのGKは撃つ前に選手の目を見てシュートコースを予測しているんだ」

 

海未「凛。確か撃つ前に…」

 

凛「右を見たよ…」

 

善子「私も撃つ前に端を見たわね、」

 

にこ「じゃあ、あのGKを攻略するのは…」

 

英玲奈「仕組みがわかれば簡単だ」

 

 

 

 

A『さあ、スペインの攻撃です!!日本は後半、流れを掴みつつありますが、未だに点差は2!!』

 

レヴィン『シュートまでは行けるんですが、そこからですね』

 

 

 

ベルガモ「なかなかのシュートだったね。見えなかった」

 

ルーサー「だが、アロンソの前では力も速さも無意味だ。今度は…」

 

ルーサー「私たちが速さで圧倒的する番」

 

ベルガモ「……クラリア」

 

クラリア「…!」

 

ベルガモ「ボールを頂戴」

 

 

A『ここでクラリア選手からボールを受け取ったのはベルガモ選手…!上手くゴールまで持ち込めるのか!?』

 

 

ルーサー「持ち込む…ね」

 

ベルガモ「世界の速攻を見せてやる」

 

 

聖良「…!?何か仕掛けてきますよ!!」

 

晴夏「でも、まだスペインのコートの中。来るとしてもまだ余裕が…」

 

 

 

瞬間。

フィールドは、眩い光に包まれた

 

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

にこ「なに…!?この光!?」

 

英玲奈「必殺タクティクス…!?」

 

 

 

果南「っっっ!!??タクティクスじゃない!!」

 

ルビィ「穂乃果さん!!!!!!」

 

 

穂乃果「!!??」

 

 

 

 

 

 

ルーサー、ベルガモ「ー ツインランサー ー!!」ドガアァン!!

 

 

 

月「超ロングキック!?」

 

ルビィ「しかも…速い!!?」

 

 

 

 

なんと、ベルガモとルーサーは、自軍のコートから必殺シュートを放ったのだ。

"ツインランサー"

2つに分裂させたボールを、眩い光と共に全力で蹴る。

その威力とスピードは、海未と凛の"雷光の矢"にも並ぶほどである。

 

 

 

まさに、

 

 

 

 

 

 

最強最速の速攻

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「(2つ!?2つ!!どうする!?どうすれば2つのシュートを止められる!?)」

 

 

穂乃果は考えた。

与えられた思考時間は数秒。

そんな中で考えた。

2個同時に迫るシュート。

片方を止めても、もう片方は止められない。

 

時間がない!!!!

 

"ゴットハンドW"は!?

ダメだ。

あの威力は受け止めきれない。

 

ならばどうする!?

どうすれば2つまとめて…

 

 

止められる!!!!??

 

 

 

 

 

 

穂乃果の答えは……

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「やるしかないっっ!!!!」バッ

 

 

 

ルーサー「ゴールをがら空きに!?」

 

ベルガモ「諦めたの…??」

 

クラリア「……違う、」

 

 

 

A『おおっと!?高坂穂乃果!!迫り来るシュートを横目に、コーナーの方へと走っていくぞ!?』

 

 

 

真恋「穂乃果ちゃん!?」

 

果南「…まさか」

 

 

 

 

 

光の二槍シュートが、ペナルティエリアを越えた

 

 

 

 

 

穂乃果「耐えてよね…!!穂乃果の右腕!!」ズザザザザ!

 

 

穂乃果は右足で急ブレーキ。

すぐにゴールの方へと向き直し、今にもゴールに飛び込もうとするシュートへと…

 

 

 

 

穂乃果「っっっ!!!!」バッ!

 

 

 

 

 

飛んだ

 

 

 

 

 

穂乃果「吹き飛べえぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

 

 

光に刻むのは『X』の刻印

 

 

 

 

 

穂乃果「ー ゴッドパンチX ー !!!!」

 

 

 

 

 

ドゴオオォォォォォォォオン!!!!!!

 

 

 

 

 

日本、スペイン「「「!!!!!!!!」」」

 

 

ルーサー「横から2つまとめて…」

 

ベルガモ「殴り飛ばした…」

 

 

 

A『止めたあぁぁぁ!!!!日本の守護神、高坂穂乃果!!我々の想像を超えたそのプレーで、再び日本の危機を救った!!』

 

レヴィン『真正面から2つを受け止めるのではなく、横でひとつに重なった瞬間を狙った…驚きました。素晴らしい』

 

 

 

穂乃果「よしっっ!!!止めた!!」ビリビリ

 

 

海未「穂乃果…あなたはなんて無茶で、」

 

にこ「無謀で…最高なのかしら、」

 

 

 

右腕にはかなりのダメージがいってるはずだ。

しかし、穂乃果は笑っていた。

 

この状況を楽しんでいた。

 

止めた安心感、興奮、そして激痛。

 

試合中のアドレナリンの効果か?

そんなことを考える暇はない。

ただ、今の穂乃果は無敵だ

 

 

 

穂乃果「ボールは!?」

 

 

 

穂乃果が殴り飛ばしたボールは、毎回かなりの勢いでコート外へと飛んでいく。

しかし、それではスペインの攻撃が続くだけ…そんな中、聖良が言ったのだ

 

 

 

聖良『私を信じて、私に向かって殴り飛ばしてください』

 

 

 

その言葉の通り、ボールは

 

 

 

 

聖良「ハァハァ……(重すぎ…)」

 

 

 

 

聖良の元にへと、飛んでいた

 

 

 

 

A『鹿角聖良が高坂穂乃果が弾いたボールを体でブロック!!!!ラインを割らせません!!』

 

 

 

聖良「私たちの攻撃です…お願いします…!」パス

 

晴夏「このボール、絶対に繋ぎます!!」

 

 

晴夏は聖良からボールを受け取った。

かなりの衝撃だったため、聖良はすぐには動けずにいた。

ならば自分がやるしかない…!!

晴夏は決死の守りを見せた仲間に答えるため、ドリブルを始めた

 

 

ベラスコ「このっっ!!」バッ

 

晴夏「!!」

 

善子「晴夏!!こっちよ!」

 

晴夏「善子ちゃん!」パス

 

ベラスコ「なっ!?」

 

善子「さあ!行きなさい!」パス

 

 

A『葉石晴夏と津島善子の華麗なワンツー!ボールは再び晴夏選手が持った!』

 

 

ベルガモ「ボールを返しなさい…よっ!!」バッ

 

晴夏「!!」

 

 

素早い動きからのタックル…

だけど…今なら私の方が速い!!!!

 

 

晴夏「ー Wロード ー!!」ギュン!ギュン!

 

 

善子「やるじゃない…!」

 

 

ルーサー「無駄だ!!」バッ

 

善子「(やばっ…スペインは2人ディフェンス!!)」

 

 

 

忘れていた。

スペインは2人で組んでディフェンスをしているのだ。

1人を抜いてもすぐにもう1人が潰しにかかる。

捕まればアウト。

晴夏は必殺技で抜き去った瞬間。

完全に隙だらけだった

 

 

ルーサー「貰った…!!」

 

晴夏「……!」

 

 

 

 

こんな時千歌ちゃんは……

 

 

 

晴夏「っっ!!」クルッ!

 

ルーサー「!?」

 

 

曜「あの動き!?」

 

 

 

 

こんなふうに…避けてた!!!!

 

 

 

 

 

晴夏「ー リバースWロード ー!!」ギュン!ギュン!

 

 

ルーサー「なんなん…だよ」

 

 

 

A『2人抜き!!!葉石晴夏が魅せました!!"Wロード"を進化させ、そのままチャンスを作ります!!』

 

 

晴夏「善子ちゃん!」パス

 

 

善子「晴夏の気持ち、受け取ったわよ」

 

 

善子は前を見た。

既に射程範囲内だ。

英玲奈からあのGKの攻略法は聞いた。

あとは全力で撃つのみ

 

 

善子「はあぁぁ!!!!」チラッ

 

善子「ー デビルバーストGX ー!!」ドガアァン!

 

 

アロンソ「(左…!)」

 

 

A『津島善子のシュート!!これも端を狙った絶妙なシュート!GKアロンソは…既に待ち構えている!?』

 

 

花陽「またコースを!?」

 

花丸「止められちゃうずら…!!」

 

 

 

 

アロンソ「目は正直だよね〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「はい。正直ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

アロンソ「!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にはーーーーー

 

 

 

 

ダイヤ「では、これならどうですか?」

 

 

 

 

ーーーーー大剣を振り上げる、ダイヤがいた

 

 

 

 

アロンソ「(飛び込んで…シュートチェイン!?)」

 

 

 

英玲奈「いけ!!ダイヤ!!」

 

理亞「黒澤姉!!!!」

 

にこ「ぶちかましなさい!!!」

 

 

 

 

ダイヤ「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

振りかぶるのは巨大な炎剣。

 

振れば瞬間。

 

大地を焦がす

 

 

 

ダイヤ「ー マキシマムファイア ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

 

ダイヤは大剣で書き換えた。

 

左端のシュートを

 

 

 

右端へ

 

 

 

 

 

 

バシュウゥゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

 

アロンソ「っっっ!!??」

 

 

クラリア「……!!?」

 

スペイン「……」

 

日本「……」

 

 

 

 

 

ダイヤ「善子さん」

 

善子「ダイヤ」

 

 

ダイヤ、善子「ナイスシュート!!」

 

 

 

 

 

ワアァァァァァ!!!!!!

 

A『決まったぁぁぁ!!!!日本、2点目!!!!強豪スペインに、1点差まで迫りましたぁ!!!!』

 

レヴィン『コースを書き換えるチェインシュート…!!躍動力ある日本の選手だからこそ出来たプレーですね!』

 

 

 

 

月「いつでも魅せてくれるね…君たちは、」

 

 

月にはあのチェインシュート。

重なるものがあった。

 

浦の星VS帝国女学院。

 

帝女が失点を許したのも、浦の星の決死のチェインシュートだった。

 

怪我を恐れず、体全体で飛び込み、すべてをひっくり返す追撃。

 

あれで浦の星は、数々の修羅場を乗り越えてきた

 

 

 

月「これが日本だよ…クラリア」

 

 

 

ダイヤと善子のハイタッチは、すべてを震わせた

 

 

 

日本 2-3 スペイン

 

 





リバースWロード
『Wロード』を後ろ向きで発動します。千歌ちゃんの『リバースZスラッシュ』と同じ感じですね



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第3章 64話 「スペイン戦 "勝利の鍵"」

皆さんどうも!理系なのに文系教科の点だけが上がって発狂しそうなルビィちゃんキャンディーです!

そろそろスペイン戦を終わらせたいのですがもう少しかかりそうですね…

☆お知らせ☆
またまた乾電池さんが輝こうのワンシーンを漫画にしてくれました!!今回は『中国戦のダイヤちゃんの一振』です!もう、ニヤニヤが止まらないレベルの完成度で感動しました!ルビィちゃんキャンディーのTwitterから見れます!是非!!




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

スペインが誇る最強最速の速攻を一撃で粉砕した穂乃果。"雷光の矢"をも止めるGKの仕組みを暴き、浦の星の得意とする決死の飛び込み追撃シュートでダイヤが得点。点差は1。後半は、まもなく折り返しである

 

 

 

 

穂乃果「ダイヤさん!善子ちゃん!すごいシュートだったね!!」

 

海未「さすがは浦の星のFW、ですね」

 

凛「いつ見てもダイヤさんのシュートはかっこいいにゃ!」

 

ダイヤ「ありがとうございます。ですが、あれは皆さんが作ってくれたチャンスがあったからこそ。お礼を言うのはこちらの方ですわ」

 

にこ「そんな硬くならない!」ビシッ

 

ダイヤ「ピギャッ!?」

 

にこ「まだ1点負けてるわ。ここからよ!」

 

ダイヤ「…はい!」

 

 

 

理亞「…黒澤姉もルビィと同じでピギャッて、」

 

聖良「姉妹ですね〜」

 

理亞「…」

 

 

 

A『さあ!日本の追加点で2-3となりました…!サニデイジャパンは負けてるとはいえ、完全に流れを掴んでいます!!』

 

レヴィン『スペインの穴、弱点を次々と見抜き、的確に攻めているのが理由の一つですね。ですが、スペインもこれで終わるとは思えません』

 

 

 

ベルガモ「アロンソの弱点を見抜いたか…」

 

ルーサー「あぁ。だがまだ勝っている。焦りすぎは良くない」

 

 

スペインは徐々に焦り始めていた。

前半は完全に自分たちが圧倒していた。

だが、後半は形勢が逆転しつつある。

信じられないが、目の前で起こっているのだ。

認めざるを得なかった

 

 

クラリア「…みんな聞いてくれ」

 

スペイン「「!!!」」

 

チコ「クラリアさん…?」

 

ベラスコ「何を…?」

 

 

クラリア「全員で、日本をひとつのライバルとして全力で戦おう」

 

 

スペイン「「!!!!」」

 

 

ドメルゴ「日本をライバル…?」

 

ファビオ「…だけど、」

 

クラリア「個人レベルの差で、私たちが勝っているなど、もう言えなくなっている」

 

クラリア「みんなも感じているはず。前半とはまるで別のチーム。私たちと対等以上の戦いをする…こんなチームを、ライバルと呼ばずに何を呼ぶか」

 

エメリコ「…クラリアさん」

 

クラリア「我々も全力で、彼女たちと戦うんだ。それを制した時が、本当の勝利よ」

 

ベルガモ「…ふふっ」

 

ルーサー「確かに。このままいい気になってもらっちゃ、困るよね」

 

スペイン「「……」」

 

 

クラリア「全力で…勝つよ!!!!」

 

スペイン「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

A『さあ、試合再開です!!スペインのキャプテン、クラリア選手がボールを持ち、いっきに攻め上がります!!』

 

 

 

クラリア「試合開始時を思い出すんだ!!」ドガッ!

 

にこ「くっ…(力勝負…さすがにきつい!?)」

 

クラリア「私たちは力で優位!それを最大限に活かすんだ!!」パス

 

ルーサー「分かってるさ」

 

 

凛「ボールは頂くにゃ!!」バッ

 

 

ルーサーが持つボールを、凛が奪わんと取りに行く。

足が届く距離。

凛はすかさず足を出した

 

 

 

ガッッッッッ!!!!!!

 

 

凛「っっ!!?」

 

ルーサー「おっと。ボールはあげないよ」ググググ

 

 

聖良「凛さんがボールを奪えない!?」

 

英玲奈「ボールを足で抑える力が強い…いや、当然か。さすがのフィジカルだな…」

 

 

A『星空凛、奪えません!!ボールに触るも、力で負け突破されます!!』

 

 

ルーサー「ベルガモ!」パス

 

ベルガモ「…!」

 

 

晴夏「私が行きます!!」

 

ベルガモ「落ち着け…私」バッ

 

晴夏「え…!?」スカッ

 

ベルガモ「もう、あなた達の前では気を抜かない」

 

 

A『葉石晴夏を抜いたぁ!!ベルガモ選手、落ち着いた動きで晴夏選手を見切っての突破に見えました…!』

 

レヴィン『力押しの選手…のはずですが、珍しいですね』

 

 

 

聖良「動きが良くなっている…いや、戻っている?」

 

 

試合開始直後のスペインは、その自信から迷いない、いつものパフォーマンスを引き出していた。

そんなスペインに、日本は圧倒されたのだ。

 

しかし、途中から日本が対応し始め、後半が始まってからはまさかの日本が優勢…

格下だと思っていた相手だからこそ、動揺・不安が高まり、スペインの動きには隙が。

躊躇いが生じていた。

 

 

それが…前者に戻ったのだ

 

 

 

ベルガモ「クラリア!」

 

英玲奈「っ!?」

 

 

クラリア「…!」

 

 

 

スペインが本来のスペインに戻り始めたのだ

 

 

 

月「やばい…!!クラリアにボールが!!」

 

希「大丈夫…穂乃果ちゃんなら止めて…」

 

 

 

 

 

穂乃果「ぐっ…!!!?」ビリビリ

 

 

 

日本「「「!!??」」」

 

 

聖良「穂乃果さん…!!」

 

にこ「やばいわよ…とうとう腕が壊れ始めたわ」

 

 

穂乃果の右腕の赤い電気のようなオーラは、治まることなく穂乃果にまとわりついていた。

穂乃果は後半の途中からずっと右腕を押さえている…

限界は目の前だ

 

 

花陽「美奈監督!!これ以上は…!!」

 

美奈「えぇ。果南ちゃん、行くわよ」

 

 

 

 

穂乃果「待ってください!!」

 

 

美奈「!!!!」

 

 

花陽「穂乃果、ちゃん…」

 

 

 

穂乃果「私は…クラリアたちと最後まで戦いたい!!」

 

美奈「その右腕でどう戦うの?」

 

穂乃果「少し休めば…絶対に大丈夫!!この戦い、このまま後半無失点で終わらせる!!」

 

美奈「…」

 

果南「穂乃果さんを信じた方がいいです」

 

美奈「…果南ちゃん」

 

果南「今の私じゃ、クラリアのシュートは止められません」

 

美奈「…」

 

 

 

穂乃果「…ぐっ…ふふっ、クラリア!!いつでもかかってきなよ!!」ビリビリ

 

 

クラリア 「だいぶ限界みたいだけど…容赦はしないよ!!」バッ

 

 

クラリアがボールを蹴り上げ、"ダイヤモンドレイ"の構えに入った。

状態異常でない穂乃果なら、クラリアのシュートを止められるが、今は…わからない

 

 

クラリア「行くぞ!!!!!!」

 

 

 

クラリアがボールを磨きーーーー

 

 

 

 

 

善子「ーDeep Resonance ー 」

 

 

クラリア「!!」

 

日本、スペイン「「「!!!!」」」

 

 

穂乃果「善子ちゃん!!」

 

善子「少しでも休みなさいよ…私に任せて」

 

 

A『津島善子だぁぁ!!!なんと、クラリア選手がボールを磨こうとした瞬間!一瞬の隙!津島善子がボールを奪いました!!』

 

 

 

クラリア「全員で善子を止めろ!!!!」

 

 

ベルガモ、ルーサー「うおぉぉぉ!!」

 

善子「ー Deep Resonance ー」

 

ベルガモ、ルーサー「!!!!」スカッ

 

 

善子の動きに無駄な、余計なものがなかった。

足を踏み込む位置、捻る体、タイミング、ボールのスピン、そしてスピード。

すべてが完璧。

相手と共鳴し、体を動かす

 

 

 

ベラスコ「止まれっ!!!!」ズザーッ

 

善子「無理」

 

ベラスコ「っっ!!」スカッ

 

 

チコ「でりゃっ!!」バッ

 

善子「!!」ビュン!

 

チコ「(スピードで負けた!?)」スカッ

 

 

善子が躱す。

今のところ、善子を止められる気配がない。

前半で魅せた無双。

今の日本にあれをやらせるのは、スペインにとって非常にまずかった

 

 

 

クラリア「(どうすれば…どうすれば善子を止められる!?)」

 

 

クラリアも思考を張り巡らし考えていた。

善子を止めなければ点は決められないし、決められる可能性もある。

 

この試合、勝利の鍵は複数本必要。

 

穂乃果を超えるシュート

 

日本の連携に対応

 

そして、善子の"Deep Resonance"

 

 

今の自分たちにあの技に対抗できる術はないのか…そう思っていた

 

 

 

 

フェルナンド「このっ!!」バッ

 

善子「…無駄よ、全員抜かし……っ!?」ピタッ!

 

 

クラリア「…!!」

 

穂乃果「!!」

 

 

ルビィ「…!」

 

月「…やばい。バレたかもしれない」

 

 

 

一瞬、善子がフリーズした??

 

 

 

善子「ぐっ…!! ー Deep Resonance ー!」

 

フェルナンド「止められないっ…!!」スカッ

 

 

A『津島善子がまた躱す!!誰もこのリベロを止められないのか!?』

 

 

 

クラリア「……」

 

クラリア「…」

 

 

クラリア「分かったぞ、善子の弱点」

 

 

クラリアは得意げに笑った。

良かった、善子も同じ人間だったのだ。

弱点があった。

いや、弱点をつくれる。

彼女を潰す最善の策が

 

 

クラリア「ベルガモ、ルーサー」

 

ベルガモ、ルーサー「!!」

 

クラリア「手伝ってくれ」

 

 

 

A『さあ!日本、ゴールは目の前だ!!誰がシュートを撃つのか!?』

 

 

善子「理亞…!!」パス

 

理亞「決める!」

 

 

A『鹿角理亞だぁぁ!!ここで"雪原の狼"に絶好のシュートチャンス!!』

 

 

理亞「はあぁぁぁぁぁ……」ググググ

 

 

理亞はその場でオーラを高め始めた。

徐々に揺れる髪。

鋭さが増す風。

理亞を中心として、地面が凍りつく!!

 

 

理亞「勝つのは日本…それを教えてあげる!!!!」

 

 

 

究極が爆発する

 

 

 

 

 

理亞「ー Awaken the power ー!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

日本、スペイン「「「!!!!!!」」」

 

 

ルビィ「…理亞ちゃん!!」

 

 

A『出たあぁぁぁ!!!!サニデイジャパンの最終兵器"ATP"!!その使用者の一人、鹿角理亞!!実況席にまで冷気が伝わります!!』

 

レヴィン『世界を震撼させた"ATP"。それを継承した理亞選手。個人の切り札ではなく、日本の切り札として、アジア予選でも素晴らしいプレーをしていたと聞いています』

 

 

 

理亞「覚悟しなさい…!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

白銀の髪に赤い目。

頬や腕、首筋には氷が伝う。

 

溢れ出るオーラが理亞を奮い立たせ、獲物であるゴールを見る

 

 

理亞「はあああああああ!!!!」ゴオォォッ!!

 

 

エメリコ「これは…ルビィの"ATF"!?」

 

ルフィノ「オーラがまったく違う…!!だけど、似たような力…」

 

 

 

込めるのは力。

 

放つのは冷気。

 

 

 

 

 

 

『ガアァァァァァァァン!!!!!!』

 

『鹿角理亞のシュートはゴールのクロスバー…!!』

 

理亞『う、うそ…』

 

『日本、勝利への1点が届かない!!!!』

 

 

 

理亞「(邪魔よっっ!!弱い私!!!!)」

 

 

あの日から理亞は"ATB"を撃つのに躊躇いが生じていた。

しかし、世界に来て実感した。

自分の心の弱さ、1度のミスを引き摺りすぎなのだと

 

 

理亞「終わりたくないの!!!!」

 

 

躊躇って足が動かないなら、強引に動かしてやる!!

いいから黙って私の言うことを聞け体!!

 

両足で、すべてを…蹴り砕く!!!!

 

 

 

理亞「ー Awaken the Beast ー!!」ドガアァン!!

 

 

ツバサ「撃てたじゃない…!!」

 

月「理亞ちゃん…!すごいよ!!」

 

 

A『これはすごい威力だ!!このシュートが決まれば同点!!GKアロンソは止められるのか!?』

 

 

アロンソ「…」

 

 

アロンソは動かなかった。

迫り来るシュート。

決めさせてはいけないシュート。

 

アロンソは反応できずに動けないわけでは……ない

 

 

 

 

クラリア「迷いを捨てた…か、だけど」

 

 

理亞「!?」

 

 

クラリア「これ以上の失点は許さない」

 

ベルガモ、ルーサー「…」

 

 

A『これは!?ゴール前に3人の選手が戻っています!!シュートを防ぐつもりか!?』

 

 

ルーサー「本来この技は、対ラストリゾート用に作られたもの」

 

ベルガモ「だけど、この状況で使わないわけにはいかない…!!」

 

クラリア「やるよ!!」

 

ルーサー、ベルガモ「おう!!」

 

 

3人が構えると、地面から次々と巨大なブロックが姿を現す

 

 

曜「必殺技…!?」

 

にこ「まだ隠し持っていたのね…」

 

 

クラリア、ベルガモ、ルーサー「ー ザ・シェルター ー!!」

 

 

 

 

ドガアァァァァァン!!!!!!

 

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

海未「"ATB"が、防がれた…」

 

英玲奈「なんて防御力だ、」

 

 

A『なんと!?鹿角理亞の必殺シュートは、スペインの鉄壁の必殺技により防がれてしまった!!』

 

 

理亞「っっ…」ゴゴゴゴゴ

 

 

1点がまた遠くなった。

時間は残り僅かとなっている。

 

2点はかなり厳しいところまで来ていた。

 

 

そしてここで、

 

 

 

クラリア「津島善子」

 

善子「…」

 

 

クラリア「私たちから、ボールを奪ってみろ」

 

 

善子「…なに?」

 

 

 

クラリアはなんて言った?

ボールを奪ってみろ?

 

何度も奪ったのにまだ分からないのか。

 

しかも、ボールを持つクラリアの後にはゴールしかない。

自分が奪えば決定的なチャンスだ

 

 

善子「後で後悔しても、知らないからね…」

 

 

クラリア「勝負だ。善子」

 

ルーサー、ベルガモ「…」

 

 

 

 

 

花陽「なぜ、スペインはあんなことを…」

 

ルビィ「…ダメだよ善子ちゃん」

 

花陽「ルビィちゃん…?」

 

ルビィ「乗っちゃダメだよ…あれは、」

 

 

 

ルビィ「罠だよっっ!!」

 

 

 

 

 

日本 2-3 スペイン

 

 

 



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第3章 65話 「スペイン戦 "共鳴の限界"」


皆さんどうも!ナタデココと杏仁豆腐が好きすぎて登校途中で買う度にお金が消え去るルビィちゃんキャンディーです!

いや〜、本戦の試合が長い!!書きたい内容が多すぎて1桁ではまとめきれないですね…少し長すぎますかね?
今回は善子ちゃんがスペインの罠に!?




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

徐々に前半のような自信あるプレーを取り戻してきたスペイン。しかし、善子の"Deep Resonance"には及ばない。無双する善子、力を爆発させる理亞。このまま日本の猛攻は止まらないと思っていたのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「1対3でも関係ないわ…!!」

 

クラリア「そうだろうね」

 

ベルガモ、ルーサー「…」

 

 

睨み合う1人と3人。

ボールを奪われれば、同点に追いつかれる危機。

そのまま抜かせば問題ないのだが…

今のところ、その奪われるという答えしかこの試合は存在していない。

 

なぜなら、善子の"Deep Resonance"から逃げ切ったものは、まだ1人もいないからである

 

 

善子「(いったい何を考えてるのかしら…)」

 

 

3人で行けば勝てるだろう…なんて甘い考えはさすがにしないはず。

 

だが、相手は強豪スペイン…一瞬でも雑念で"Deep Resonance"を切らせば、その時点でやられるだろう…

 

それでも、

 

 

 

善子「やってやろうじゃない…」

 

 

ここで勝たなければ、追加で代表になった意味なんてないのだから

 

 

 

花丸「ルビィちゃん、罠って…」

 

ルビィ「…あの必殺技の、弱点だよ」

 

 

 

 

 

善子「ー Deep Resonance ー!!」

 

クラリア、ベルガモ、ルーサー「(来た…!!)」

 

 

善子がボールを持つクラリアに飛びつくように近づいた。

気を抜けば一瞬で取られる

 

 

クラリア「ベルガモ!」パス

 

ベルガモ「!」

 

善子「ーーー」グワーッ!!!!

 

ベルガモ「(こっちに来た!?)」

 

ベルガモ「クラリア!」パス

 

善子「……」ズザーッ!

 

 

ルーサー「おいおい…今完全にパス狙われてたな」

 

ベルガモ「体が急にこっちに向きを変えた…あれが共鳴…」

 

 

善子の体は、クラリアの体の動き・目線からベルガモにパスを出すことを予測。

クラリアの方へと進むという行動を停止し、ベルガモに飛びつくという行動に切り替えたのである

 

 

クラリア「気を抜かないで…もう少し時間を稼ぐよ」

 

善子「ーーー」グワーッ!!

 

 

 

 

 

花陽「あれではスペインがボールを奪われるのも時間の問題では…?」

 

ルビィ「…奪われていいんだよ、」

 

花陽「…え」

 

ルビィ「奪われてからが、スペインの作戦の始まり」

 

 

 

 

 

善子「取った」バッ

 

ルーサー「くそっ!?動きが人間じゃない!!」

 

 

A『津島善子が奪った!!スペインは3人で抜きにかかっても津島善子には勝てないのか!?』

 

 

クラリア「問題ない!!ここからだ!」

 

ルーサー、ベルガモ「おう!!」

 

 

善子「…!?」

 

 

A『おおっと!?スペインはそのまま3人で津島善子を取り囲みます!ボールを奪い返すつもりか…??』

 

 

善子「今度は抜いてあげるわ」

 

クラリア「…やれるもんなら」

 

 

これで善子は得点への第一ステージ、ボールを取り返すことに成功した。

今度は、悪足掻きするスペインをまとめて抜く。

そうすれば、日本はついに同点となる

 

 

善子「ー Deep Resonance ー!!」バッ

 

 

 

 

 

 

フロイ「ねぇ、エリー。あの技には弱点があるのかい?」

 

絵里「あるわ。決定的なね、スペインはそれに気づいてそこから善子を潰そうとしている」

 

 

 

 

善子「ーー!!」クルッ!

 

ベルガモ「(やばっ!!抜かされ…

 

クラリア「抜かせるか!!!!」

 

善子「ーーー!?」ズザーッ!

 

 

ダイヤ「善子さんが引いた??」

 

英玲奈「体が、今のクラリアのフォローがあっては抜かせないと判断したんだ…」

 

 

善子「(想像以上に手強いわね…)」

 

 

"Deep Resonance"は共鳴。

"ATP"のような自強化とはまた別の技。

 

自身のステータスを上げるわけではない。

体がオートで、相手に…状況に合わせているのだ。

 

 

それが何を意味するのか

 

 

 

善子「ー Deep Resonance ー!!」

 

ルーサー「行かせないよ!!」

 

ベルガモ「コースは塞いだ!!」

 

善子「(なっ…!?)」ズザーッ!

 

クラリア「(やはり…ね、)」

 

 

 

 

ルビィ「…あの技は、善子ちゃんの意思よりもデータ。効率を優先する」

 

ルビィ「だから、」

 

 

 

善子「(なんで抜けないのよ…!!!!)」

 

 

 

ルビィ「相手に逆に利用される」

 

 

 

 

A『おおっと!?津島、また抜けない!!先程までの勢いはどうしたのか!?』

 

レヴィン『クラリア選手を中心としたディフェンス…さすがの善子選手でも突破は難しいのでしょう、』

 

 

 

ルーサー「(クラリアの言った通りだ…完全にドリブルコースを塞げば、善子は動けない…!!)」

 

ベルガモ「(答えのない数学を解いているのと同じ…そのまま体がフリーズしてる!)」

 

 

善子「共鳴では…抜けないって…?」

 

 

 

真恋「ドリブルルートが無いから体が動かないってこと!?」

 

ルビィ「体、細胞は無情です。心ある人間とは違って、機械のように無謀なプレーは避けます」

 

ツバサ「"Deep Resonance"の最大の弱点ね…進みたくても進めないなんて、」

 

ルビィ「もうひとつあります」

 

 

 

 

善子「まだまだこれか…っっ!?」ピタッ!

 

クラリア「!!」

 

善子「(なっ…体が!?)」ガクガク

 

ルーサー「限界か?」

 

善子「!!」

 

ルーサー「そりゃあ、私たちのプレーに前半からあれだけ共鳴…ついてきたんだ。壊れてもおかしくない」

 

 

A『津島善子が膝をついた!?何かアクシデントでしょうか!?』

 

 

 

善子は完全にクラリアたちの手の中だった。

 

条件を満たせば共鳴状態の善子はフリーズすること。

体への負担が激しいこと。

 

当たり前だが、相手の動きに共鳴し、合わせるということは、自分よりも格上の相手ほど体への負担は大きくなる。

 

事実、スペインの過半数の選手の能力は善子よりも上。

そんな中で善子は自分の力以上の動きを続けていたのだ

 

 

 

善子「ぐっ…鍛えたつもりだったんだけど、」

 

ルーサー「いや、ここまでもっただけ充分やばい」

 

クラリア「だが、これで日本の支柱はひとつ崩れた」

 

善子「っっっ……!!!」

 

 

 

 

花丸「でも…ルートが無いって…パスがあるずら!!」

 

月「無理だよ。花丸ちゃん、見て」

 

花丸「…!?」

 

 

 

ダイヤ「くっ…善子さんのフォローが…」

 

エメリコ「ダメだよ!ここで大人しくしてもらうよ!」

 

 

曜「善子ちゃんが…!!」

 

ベラスコ「っ!!」

 

 

海未「どいてください!!」

 

ルフィノ「どかないよ!!」

 

 

 

A『これは!?スペイン、フィジカルを活かしてサニデイジャパンの選手を抑え込んでいる!!善子選手に近づけません!!』

 

レヴィン『これでは善子選手に助けは来ない…完全に潰れるのを待つしか…』

 

 

 

先程言った、"条件を満たせば共鳴状態の善子はフリーズする"。

パスする味方もいない、自分で突破もできない。

善子の体・全細胞は、この状況を回避不可能だと諦めていたのだ

 

 

善子「……体が諦めたからって…私が、諦めるとでも?」

 

クラリア「…」

 

 

手を付き、膝をつく善子。

言葉と行動が一致していない。

 

やはり体は正直だ。

善子の命令に反し、その場から動こうとしない

 

 

善子「ディープ…レ…ぞ、」ドサッ!

 

 

ルビィ「善子ちゃん!!!」

 

ことり「もうやめて!!」

 

 

ついに地面に倒れた善子。

こうなればもうプレーは続行不可能だ。

それ即ち、

 

 

クラリア「善子がいない日本のディフェンスは脆い。点差をつけるなら今しかない」

 

ルーサー「残念だったな善子」

 

善子「くっ…そんなっっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「なんてね」

 

 

クラリア「な…… ビュン!!!!!!!!

 

 

 

クラリア「!!??」

 

ルーサー、ベルガモ「!!!!?」

 

日本、スペイン「「「!!!!!!?」」」

 

 

 

 

 

 

冷たい風が駆け抜けた

 

 

 

 

 

 

理亞「この時を待っていたわ…」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

 

後ろには、ボールを持つ白銀の少女がいた

 

 

 

クラリア「鹿角理亞っっっ!!!!??」

 

 

A『なんと!!!!一瞬の隙!!鹿角理亞が高速スピードでクラリア選手からボールを奪いました!!』

 

 

善子「行きなさい!!理亞!!」

 

理亞「…」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

 

理亞『囮…?』

 

善子『えぇ。もし、私が潰されるようなことがあったら、相手が私を潰した瞬間。油断した時に"ATP"でボールを奪いなさい』

 

理亞『でも、善子は…』

 

善子『最初から覚悟しているわ。共鳴は思ったよりも崩れやすいの。私の技よりも、あなたの技の方が希望があるわ』

 

理亞『…』

 

善子『絶対に決めなさいよ』

 

 

 

 

理亞「っっ!!!!」バッ

 

 

ルーサー「やばい!!油断した!!」

 

ベルガモ「鹿角理亞を今すぐに止めないと!!」

 

 

理亞は走り出した。

 

"身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ"

 

善子はこうなると分かっていたのだ。

そこまでの覚悟。

そこまでして作ったチャンス

 

 

 

理亞「絶対に決めるからそこで見ていなさい!!」ゴゴゴゴゴ

 

クラリア「鹿角理亞を止めろ!!!!」

 

理亞「無駄よ!!うおああああああああああ!!!!」バッ

 

 

理亞は叫びと共にオーラを込め始めた。

ブリザード。

その風は寒いの次元を超えて痛い。

まるで飛び交うガラス。

 

そんな荒々しいオーラを理亞は、両足で。

全力で。叩き込む

 

 

理亞「ー Awaken the Beast ー!!」ドガアァン!!

 

 

A『出たあぁ!!鹿角理亞の必殺シュート!今度はブロックするDFはいないぞ!?』

 

 

アロンソ「真正面…!!」

 

クラリア「アロンソの技を受ける気か…?」

 

 

理亞が放ったシュートは右端でも左端でもない。

ど真ん中一直線だった。

 

シュートチェインする選手はいない。

ボールも曲がる気配はない。

 

ならば必殺技で抑えるまで

 

 

ベラスコ「焦ったけど、アロンソの技なら大丈夫だね、」

 

チコ「アロンソさんは一度も必殺技を破られてないからね!」

 

海未「…理亞、まさか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまさか

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「!!」

 

 

 

 

 

 

 

何人かには見覚えがあった

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ『そんなヘマはしませんよ』ゴゴゴゴゴゴ

 

穂乃果『(なんで、ルビィちゃんが目の前にーーー

 

ルビィ『うおらぁ!!!!』ドガァン!!

 

穂乃果『ぐあ!!??』

 

 

 

 

 

理亞「もう一発」ゴゴゴゴゴ

 

アロンソ「(なんで、鹿角理亞が目の前にーーーーーーーー

 

理亞「うおらあぁぁぁ!!!!」ドガアァン!!

 

アロンソ「っっ!!??」

 

 

 

 

 

バシュウゥゥゥゥン!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

スペイン「「「……………」」」

 

日本「「「…………」」」

 

 

美奈「……」

 

真恋「……」

 

善子「……」

 

 

会場「「「…………」」」

 

 

A『き、決まった……?』

 

 

 

理亞「うおああああああああああ!!!!」

 

 

 

A『決まったあぁぁぁぁぁ!!!!!!なんということでしょうか!!?日本!!日本が、スペインに!!同点です!!!!』

 

レヴィン『こんな展開…誰が予想できたでしょうか…』

 

 

 

聖良「理亞!!」

 

理亞「姉様!!同点!!」

 

凛「理亞ちゃん最高にゃぁぁ!!」

 

にこ「流石すぎるわよ!!」

 

ダイヤ「まさかあそこでボールを奪いに行くとは…!!」

 

善子「…理亞」

 

理亞「善子!!」

 

 

善子はなんとか1人で立っていた。

すぐに英玲奈たちの肩を借りることになるのだが…

 

 

善子「ありがとう、決めてくれて」

 

理亞「あのもう一発は善子の一発よ」

 

 

 

クラリア「不覚だ…私たちは、完全に油断していた」

 

ドメルゴ「クラリアさん…」

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

 

ドメルゴ「なんだ…?交た……!!!!?」

 

クラリア「っ!?ここで…か、」

 

 

 

 

 

絵里「…!!もしかしたらこの試合」

 

フロイ「分からなくなってきたよ…!!」

 

 

 

鞠莉「日本は勝負を決めに来た…王手よ」

 

フラム「……見せてよ。日本のエースストライカー…」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「理亞ちゃんも善子ちゃんも…やってくれるね…!!」

 

 

 

試合時間残り僅か

 

黒澤ルビィ 降臨

 

 

 

日本 3-3 スペイン

 

 

 



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第3章 66話 「スペイン戦 "死に物狂いな少女達"」


皆さんどうも!スクスタでルビィちゃんのURを引き当てて大発狂したルビィちゃんキャンディーです!いや〜、スクスタいいですね!神(語彙力)

さて…予定ではスペイン戦はあと2話です。勝者はどちらか、そして本当に2話で終わるのか!?
7000文字あるので、事実2話分です()





 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

善子の共鳴の弱点に気づき、善子を潰したスペイン。しかし、それはスペインの隙を作る善子の作戦だった。理亞がシュートを叩き込み同点。そして…日本のエースストライカーがフィールドに立つ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

A『さあ、ここで満を持しての登場です!!津島善子選手に代わって、日本のエースストライカー"紅き流星"黒澤ルビィだぁぁ!!』

 

 

ワアァァァァァァァ!!!!!!

 

 

 

 

ルビィ「…」

 

 

花陽「スペインのサポーターがほとんどなのに…」

 

真恋「歓声がすごいわね、」

 

 

会場にいる観客は、勝ち負け関係なく。

スペインに互角の試合をする日本にも声援を送るようになっていた。

そんな中で、日本のエースストライカーの登場。

盛り上がらないわけがなかった

 

 

 

ルビィ「…よしっ、行ける」

 

 

善子「決めてきなさい。ルビィ」

 

ルビィ「うん!任せて」

 

 

A『今、黒澤ルビィがフィールドに入りました!会場からは凄まじい歓声だ!!』

 

レヴィン『黒澤ルビィ選手は、小柄な体からは想像もできない力を持っています。天性の才能と組み合わせて、世界にも通用するレベルの選手の1人と言えるでしょう』

 

A『はい!韓国戦での復活から体調は万全ではありませんが、日本のエースストライカーとして素晴らしいプレーを見せてくれています!』

 

 

 

ルビィ「理亞ちゃん、聞いて」

 

理亞「…何よ?」

 

 

 

 

 

 

アロンソ「申し訳ない…クラリア」

 

ルーサー「…」

 

ベルガモ「同点か、」

 

クラリア「…えぇ。こんな時、本当はいつも以上に真剣にならなければならないのだろうけど、」

 

ベルガモ「…?」

 

クラリア「私は、今すごくサッカーを楽しんでいる!!」

 

「「!!!!」」

 

クラリア「してやられた。追いつかれた。こんなにもドキドキする試合は初めて…もっと、私は日本とのサッカーを楽しみたい」

 

ルーサー「クラリア…」

 

クラリア「この試合、絶対に勝つ!!」

 

「「おう!!!!」」

 

 

 

穂乃果「あと1点だよ!!ここを守りきって、決勝点を取るよ!!!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

ピーー!!!!

 

A『さあ、試合再開です……!?これは!?』

 

 

 

穂乃果「!!!?」

 

 

ルーサー、ベルガモ「はあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

月「キックオフと同時にシュート!?」

 

希「あかん…!!!!」

 

 

眩い金色の光。

タイミングを合わせる2人。

まずい、あのシュートが来る…!!!!

 

 

ルーサー、ベルガモ「ー ツインランサー ー!!」ドガアァン!

 

 

日本「「「!!!!」」」

 

聖良「嘘でしょ…急に!!!?」

 

にこ「ダメ…!!間に合わない!!」

 

 

A『早速撃ってきたあぁ!!ベルガモ選手とルーサー選手の合体必殺技!!光速の槍がゴールめがけて飛んでいく!!』

 

 

ホイッスルと同時だった。

ただでさえ目で追うのも困難なシュート。

反応するなど…無理な話だ

 

 

 

穂乃果「やばっ…間に合うかなっっ!!」バッ

 

 

穂乃果は再び横から、2つに分裂したボールをまとめて殴り飛ばすために走り出した。

 

しかし、DFと同様。

反応が遅れた穂乃果。

間に合うかどうかは正直、微妙だった…

 

 

 

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

 

「本当に撃ってきたわよ…」

 

 

穂乃果「…!!!」

 

 

ルビィ「ね?言ったでしょ」

 

理亞「分かったから、早く止めるわよ」

 

穂乃果「ルビィちゃん!理亞ちゃん!」

 

 

A『なんと!?FWの2人がゴール前まで戻っていた!!シュートをブロックする気か!?』

 

 

ルビィ「気合入れてよっっ!!!!」ゴオォッッ!

 

理亞「ルビィもねっっ!!!!」ゴオォッッ!

 

 

2人同時にオーラを高める。

紅白の炎。

熱と冷。

対極に存在する両者は勝利を手にするために…力を爆発させる

 

 

 

ルビィ、理亞「ー Awaken the power ー !!」ゴゴゴゴゴ

 

 

穂乃果「うわっ!?熱っ…いや、寒っ!?」

 

 

熱いのか寒いのかよく分からなくなってきた。

しかし、その間にもシュートはゴールに迫っている。

ルビィと理亞はそのままボールに向かって…

 

 

 

ルビィ、理亞「はあぁぁぁぁ!!!!!!」バッ

 

 

 

飛び込み、振りかぶる

 

 

 

ルビィ、理亞「Awaken the………」

 

 

 

最強最速VS最高火力

 

 

 

ルビィ「ファイアァァァァァ!!!!」

理亞「ビーストォォァァァァ!!!!」

 

 

 

ドガアァァァァァン!!!!!!!!

 

 

ルビィ「うぐぐぐぐ………!!!!」

 

理亞「重っっっ!!!!!!」

 

 

 

A『耐えます!!必殺技でシュートを押さえ込む!!果たして勝つのは!?』

 

 

穂乃果「ルビィちゃん…!!」

 

聖良「理亞…!!」

 

 

ルビィ「うぅぅぅぅらあっっ!!」バキン!!

 

理亞「っっっっっっ!!!!」バキン!!

 

 

ルーサー「"ツインランサー"が…ブロックされた…!?」

 

曜「2人とも、ナイスブロックだよ!!!」

 

 

ルビィと理亞は弾いた。

下手すれば決まっていたであろうシュート。

2人は衝撃で吹き飛ぶも、怪我はなし。

威力の死んだボールはひとつに戻り、そのまま地面へーーーーーー

 

 

 

 

 

 

クラリア「まだだ!!!!」バッ

 

 

ルビィ「!!??」

 

理亞「なっ!?やばい!!」

 

 

A『クラリア・オーヴァンが飛び出したあぁ!!!!一瞬の出来事!!黒澤ルビィと鹿角理亞が吹き飛び、ボールから離れた瞬間を狙っていた!!』

 

 

理亞「まさか最初から!?」

 

クラリア「そのまさかさ…!!」

 

ルビィ「っっっ!!!!?」

 

 

完全に油断したところを狙われた。

先程の日本のプレーをそのままそっくり返されたのだ。

ピンチからチャンス、そして再びピンチ。

 

日本はなんとかクラリアを抑えようとするも…

 

 

ルビィ「ー イグナイトスティール ー!!」ズザーッ!

 

クラリア「はあぁっ!!」ドガッ

 

ルビィ「!?(重っっっ!?)」

 

 

聖良「ルビィさんが突破された…!!」

 

晴夏「私たちも!!」

 

クラリア「無駄だ!善子がいないDFでは簡単には止められないよ!!」

 

 

クラリアの言う通り、スペインの。

クラリアのボールを真正面から奪えるのは、現時点では善子だけであった。

 

その善子がいなくなった日本DF…脆く、崩れやすいのは分かりきっていた。

 

 

そして…違和感が生まれた

 

 

 

英玲奈「(おかしい…クラリアがシュートを撃たない!?)」

 

 

英玲奈はクラリアの背中を追いながら考えていた。

既にクラリアの射程範囲なはず…

しかし、クラリアがシュートを撃つ気配は無い。

もうすぐでペナルティエリア内。

至近距離からのシュート…

 

 

 

 

 

クラリア「行くよ、穂乃果!!」バキバキバキ!!

 

 

日本「「「!!??」」」

 

理亞「"ダイヤモンドレイ"…じゃない!?」

 

ルビィ「穂乃果さん!!!!」

 

 

クラリアは足にダイヤモンドをコーティング。

先程までのシュートとはあきらかに違う。

そして…気迫も今までとは比べ物にならない

 

 

穂乃果「来い!!」

 

クラリア「はあぁぁぁ!!!!」ガキンガキンガキン

 

 

クラリアは"ダイヤモンドレイ"の時よりもボールを高くあげ、コーティングした足でボールを磨きあげる。

 

ダイヤモンドを極限にまで磨きあげるには、自分の足もそれ相応の硬さがなければいけない…

 

本来、日本との試合では使うつもりはなかった技…しかし、今のクラリアには使う以外の考えはなかった

 

 

 

クラリア「硬く鋭く刺され!!!!」

 

 

クラリア「ー ダイヤモンドエッジ ー!!」ドガアァン!!

 

 

穂乃果「!!!?」

 

 

英玲奈「あの距離で!?」

 

 

クラリアは至近距離からゴールの右上の隅へ新技を放った。

しかし、穂乃果も負けるわけには行かない

 

 

穂乃果「ゴッドパンチ……」バッ!

 

 

右端へと一気に飛び込む穂乃果。

先程と同様に、パンチでシュートブロックに入っーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーカクンッ!!!!!!ギューーーン!!!!!!

 

 

 

穂乃果「!!!!!!??」

 

 

月「直角に曲がった!!??」

 

 

一瞬の出来事だった。

もう少しで、穂乃果のパンチがボールに当たる…かと思いきや、ボールが穂乃果の目の前で光り、直角にコースを変更。

右隅のシュートが、左隅のシュートへと変化したのだ

 

 

凛「あれが…"ダイヤモンドエッジ"!?」

 

海未「穂乃果!!!!」

 

 

穂乃果「わかってる!!!!」ガン!!

 

 

穂乃果はそのままの勢いで、空中で体勢を変える。

両足をゴールの右サイドポストに叩きつけ、一気にーーーー

 

 

 

穂乃果「(やらせないっっっっっ!!)」バッ!

 

 

ーーー左へとんだ

 

 

穂乃果「こんのおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

右手では…"ゴットパンチX"では間に合わない!!!!

 

ならば……足だ!!!!!!

 

 

 

穂乃果「ー ブレイブショット ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

クラリア「な!!!?」

 

 

 

バリイィィィィン!!!!!!

 

 

 

砕けるダイヤモンド。

 

揺れるゴール。

 

ブレイブショットで止めに行ったシュートは、左隅のゴールポストに直撃。

そのままコート外に吹き飛んだ

 

 

花陽「ギリギリで弾いた!?」

 

果南「あの状況で逆側に飛んで"ブレイブショット"でブロック!?」

 

善子「クラリアも"ダイヤモンドレイ"を進化させた…」

 

 

 

クラリア「あの反射神経と身体能力…これほどまでに…」

 

穂乃果「へへっ、もう簡単には点はあげないからね!」

 

クラリア「それでこそ高坂穂乃果!!」

 

 

A『防いだぁぁ!!!!日本の守護神の意地です!!そして両者の全力のぶつかり合いは、会場全体を揺らしています!!』

 

レヴィン『一瞬でも動作が遅れていたら、ゴールに決まっていましたね。クラリア選手のシュートも素晴らしいですが、穂乃果選手のセーブは無敵ですね』

 

 

ベルガモ「惜しかったねクラリア」

 

チコ「まさか、クラリアさんが新必殺技を撃つなんて…」

 

クラリア「日本だからこそ使ったんだ」

 

ベルガモ「…そうだね。それでも穂乃果のゴールは破れなかった」

 

エメリコ「じゃあ、どうすればあと1点…」

 

クラリア「…おそらく、道はひとつ」

 

 

 

 

 

穂乃果「(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっっっ!!!!!!)」

 

聖良「ほ、穂乃果さん大丈夫ですか…!?顔色が…」

 

穂乃果「大丈夫!!ラスト数分!絶対に守るからみんなで1点を…!」

 

聖良「…わかりました」

 

穂乃果「…」ビリビリ

 

 

 

 

クラリア「穂乃果の右腕は限界だ」

 

ルーサー「まさか、もう技は使えないのか?」

 

クラリア「分からない。例えそうだとしても、穂乃果は気合いで技を止めに来るだろう…」

 

ルーサー「なら、道って…」

 

 

クラリア「私が進化するしかない」

 

 

 

A『さあ、スペインのスローインです!試合時間は残り数分!決勝点を決めるのは果たして!?』

 

 

ベラスコ「ベルガモ!」

 

ベルガモ「このボールを、クラリアに繋げれば…!!」

 

 

英玲奈「はあぁっ!!」ズザーッ

 

ベルガモ「(あまい!!)」

 

晴夏「ここです!!」バッ

 

ベルガモ「邪魔だっ!!」

 

 

A『英玲奈選手のスライディングと晴夏選手のチャージをベルガモ選手が突破!!』

 

 

エメリコ「ベルガモ!罠だ!」

 

ベルガモ「っっ!!??」

 

 

 

ドガアァァァン!!!!!!!

 

 

 

凛「ー 星空スタンプ ーにゃ!!」

 

ベルガモ「(前方の選手に注意を惹かせて、上空…死角から攻撃っっっ!?)」

 

曜「凛ちゃんナイス!!」バッ

 

ベルガモ「(しまった!?)」

 

 

A『こぼれたボールを渡辺曜が取った!!そのまま日本のカウンターだ!!』

 

 

 

曜「にこさん!!」パス

 

 

クラリア「これ以上行かせるな!!」

 

 

ベラスコ「っっ!!」

 

チコ「!!」

 

にこ「渡すわけないでしょ!!」バッ!

 

ベラスコ、チコ「!!?」スカッ

 

 

にこ「ー ファンタスティックキープ ー!!」

 

 

クラリア「まずい…矢澤にこは相手が悪い!!」

 

 

A『矢澤にこがいっきに突破!!ゴールは目の前!誰にシュートを託すのか!?』

 

 

にこ「海未!!」パス

 

海未「私に来ると思っていました」バッ

 

 

既に海未は雷雲に向けて手を伸ばしていた。

前半からのフル。

今にも肺が爆発しそうだが、あと1点…!!

 

ここまでの足掻きを無駄にはしたくない。

その一心で全力を叩き込む

 

 

海未「ー 天地雷鳴 ー!!」ドガアァン!!

 

 

果南「海未のシュート!!」

 

花陽「でもあれだけではキーパーに確実に止められます…!!」

 

希「大丈夫みたいんよ…!」

 

 

 

 

理亞「姉様、シュートは久しぶりじゃない?」

 

聖良「はい!ですが、鈍ってはいませんよ!」

 

 

A『これは!?鹿角姉妹が走っている!!』

 

レヴィン『聖良選手がシュートですか…!』

 

 

聖良と理亞の後方から、追いかけるように雷雲シュートが迫る。

息ぴったりなのは黒澤姉妹だけではない。

 

日本屈指の最強姉妹。

その力は会場に、ブリザードを巻き起こす

 

 

 

聖良、理亞「真!!!!」

 

 

聖良、理亞「ー ホワイトダブルインパクト ー!!」ドガアァン!!

 

 

アロンソ「!?」

 

 

タイミング完璧。

威力も十分。

海未の暴れ狂うシュートに鹿角姉妹の凍てつくブリザード。

合わされば強力にならないわけが無い

 

 

 

海未「行ける!!」

 

聖良「さあ、これならどうです!?」

 

理亞「体の芯まで凍りつきなさい!!」

 

 

 

ドメルゴ「させるかぁ!!!!」バッ

 

 

海未、聖良、理亞「!!?」

 

 

ルフィノ「キーパーだけがシュートを守るわけではない!!」バッ

 

ファビオ「スペインDFの意地にかけて…!!」バッ

 

 

「「ー ザ・シェルタ ー!!!!」」

 

 

 

ドガアァァァァン!!!!!!!!

 

 

 

ボールは惜しくもシェルターに跳ね返されてしまった

 

 

 

理亞「あれを止めるの!?」

 

にこ「っっ!!あいつら…しつこいわね!!」

 

 

 

ボールは弾かれ、高く、宙を舞う

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからが早かった

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「っっ!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

エメリコ「ルビィが構えている!?」

 

クラリア「技を解除するな!!堪えるんだ!!」

 

 

ルビィ「ー Awaken the Fire ー!!」ドガアァン!!

 

 

ドガアァァァァン!!!!!!

 

 

ルフィノ「っっ!?重い!!」

 

ファビオ「でも、また防げた…!!」

 

 

 

 

凛「ー ジグザグストライク ー」バリバリバリ!

 

凛「からの…!!!!」

 

 

凛「ー Hello,星を数えて ー!!」ドガアァン!!

 

 

「「「!!!!??」」」

 

 

 

ドガガガガガガガ!!!!!!!!

 

 

 

ドメルゴ「っっ!?何だこのシュート!?」

 

ルフィノ「シェルターがもたないぞ!?」

 

 

"Hello,星を数えて"は無数の流れ星を降らすシュート。

まさに、シュートの雨。

徐々にシェルターにヒビが入り始めた

 

 

凛「砕ききってやるにゃぁぁ!!!!」

 

 

 

A『日本の猛攻だぁぁ!!!!休む暇もなく叩き込まれるシュート!!スペインの壁はどこまで持つのか!?』

 

 

ドメルゴ「耐えるんだ…!!耐えてクラリアさんにボールを繋ぐんだ!!」

 

ルフィノ「言われなくたって…!!」

 

ファビオ「っっっっ!!!!!!」

 

 

 

ドガガガガガガガ!!!!!!

 

 

 

凛「にゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

ドメルゴ、ルフィノ、ファビオ「うおぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

さながらの、総力戦だった。

 

日本は全員で攻め、スペインの最後の壁を強引に、砕き突破しようと。

 

しかし世界屈指の強豪スペインは……

 

 

 

A『と……とめ、ました……』

 

 

 

ルフィノ「ハァハァ…」

 

ファビオ「終わり…?」

 

 

"ザ・シェルター"はボロボロだった。

今にも崩れ落ちそうな。

耐えきっただけでも賞賛に値すると。

誰もがそう思うだろう

 

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

曜「総力戦だって…言ったでしょ」バッ

 

 

ドメルゴ「…はは、意地だね。参ったよ」

 

 

 

 

曜「ー ゴットウインド改 ーっっっ!!!!」ドガアァン!!

 

 

 

ドガアァァァァン!!!!!!!!

 

 

 

エメリコ「"ザ・シェルター"が…破られた!?」

 

ベラスコ「そんな…ヤバイ!!」

 

 

曜のシュートはシェルターを砕き、越えた。

あとはゴール。

一直線にアロンソへと向かっていく

 

 

凛「でも、威力が足りないよ!?」

 

海未「大丈夫です!あと一人、シュートを撃っていないFWがいます!!」

 

 

 

 

 

ダイヤ「これで…最後です!!!!」

 

 

アロンソ「!!?」

 

 

A『黒澤ダイヤが再び飛び込んできたあぁ!!!!オフサイドぎりぎり…!!これはゴール確実か!?』

 

 

美奈「ダイヤちゃん…行けるっっ!!」

 

真恋「ダイヤちゃん!!」

 

花丸、花陽、月「「ダイヤさん!!」」

 

あんじゅ、希「「ダイヤちゃん!!」」

 

善子、ツバサ「「ダイヤ!!」」

 

 

 

 

 

ダイヤ「マキシマムっっっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルガモ、ルーサー「させるかあぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

ダイヤ「!!!!??」

 

 

 

 

ダイヤの大剣は……ボールを掠れた

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

スペイン「「「!!!!!!」」」

 

 

 

僅差でベルガモがボールに触り、ダイヤのシュートを回避。

ダイヤの蹴りが直撃するかもしれない状況。

しかし、ベルガモは飛び込み、ボールに触ったのだ

 

 

ルーサー「クラリアっっ!!!!」パス

 

ベルガモ「決めてくれ!!!!」

 

 

クラリア「!!!!」

 

 

 

 

正直、諦めかけていた。

 

日本の猛攻。

 

破られた"ザ・シェルター"。

 

怒涛のシュートチェイン。

 

スペインがこの危機的状況を回避できる道は…ないと思っていた。

しかし、こうしてボールは、クラリアの元に渡ったのだ

 

 

 

英玲奈「!!??まずい!!」

 

 

月「なんだ…これは、」

 

 

A『な、なんということだ…』

 

 

 

 

 

A『日本のコートに、選手が…誰もいません』

 

 

 

 

英玲奈「(まずいまずいまずいまずい!!!!!!)」

 

 

裏目に出た!?

まさか、あの状況でスペインがボールを奪うとは思わなかった。

だが事実、日本とスペインの選手は全員スペインのコートに密集している…

 

いるのは、クラリアと穂乃果のみ

 

 

チコ「クラリアさん決めてください!!」

 

フェルナンド「DFは誰もいません!!」

 

 

聖良「戻らなければっっ!!」バッ

 

ルビィ「くっ…Awakenーーーーー

 

 

 

 

ーーーー穂乃果「来ないで!!!!」

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

 

 

なんだ…?

穂乃果は今、なんて言った?

 

 

 

穂乃果「全員、そこにいて」

 

英玲奈「何を言うんだ穂乃果!?このまま諦めるのか!?」

 

穂乃果「違う!!」

 

英玲奈「!!?」

 

 

穂乃果「穂乃果が…必ずクラリアのシュートを止めてみせる!!だから、みんなはそこで待ってて!!」

 

クラリア「…穂乃果」

 

 

クラリアはすでに1人で誰もいない日本のフィールドを走っていた。

まもなく、クラリアの射程範囲内に入る

 

 

穂乃果「そして…クラリアとの最後の勝負!!ここで決着をつけよう」

 

クラリア「…最後にこんな場を設けてくれて感謝する」

 

 

海未「…穂乃果っっ」

 

 

 

 

次回、穂乃果VSクラリア

 

スペイン戦完結

 

 

 





後半、地の文が中途半端で申し訳ないです。



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第3章 67話 「スペイン戦 "吠えろ!それぞれの勝利へ!"」


皆さんどうも!スクスタで銀のマカロンが枯渇して苦戦しているルビィちゃんキャンディーです!

ついに、スペイン戦終了です!長かったですね…11話かかりました。このペースで本当に完結出来るのかすごく不安ですが、やれるだけやってみます!感想もモチベーションのひとつなので、ぜひ、よろしくお願いします!本当にお願いします!



 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

クラリアの新必殺技を防ぎ、総攻撃を仕掛けた日本。しかし、スペインの決死のディフェンスでチャンスはピンチへ。クラリアと穂乃果の1対1となった

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

穂乃果にはちゃんとした考えがあった

 

 

 

穂乃果「(止めて…勝つんだ!!)」

 

 

試合時間は残り2、3分。

クラリアの行く手をDFに阻ませては、そしてシュートを止めて自軍から攻撃を始めても…間に合わない。

 

物理的に勝てないのだ。

 

だから、最速でシュートに辿り着く方法を考えた。

それが今の状況だ

 

 

A『とんでもない展開になりました…!!日本のフィールドには穂乃果選手とクラリア選手しかいません!!』

 

レヴィン『シュートを決めるか止めるかの純粋な勝負ですね』

 

 

止めれば、スペインのフィールドで待つ仲間たちにすぐにボールを渡せる。

あとは、みんながすぐにシュートを決めてくれるはずだ。

しかし、もしシュートを止められなかったら…

 

 

クラリア「この1発に私のすべてを込める」

 

穂乃果「…」

 

クラリア「高坂穂乃果」

 

 

 

 

 

 

クラリア「右腕はもう使えないんだな」

 

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

 

月「っっ……穂乃果ちゃん、」

 

花陽「う、腕が…」

 

 

穂乃果の右腕は、まるで魂を失ったかのように。

抜け殻のように脱力し、ブラーン…と垂れていた

 

 

穂乃果「はは…もう限界みたい」

 

 

にこ「そんな…穂乃果」

 

海未「…」

 

 

穂乃果は辛そうだった。

痛いだろう。

ここまでよく頑張った。

そう、仲間たちは穂乃果に訴えた。

しかし、それでも

 

 

クラリア「どうして?」

 

 

それでも、なぜ穂乃果はーーーーーー

 

 

 

クラリア「諦めていない?」

 

穂乃果「…へへっ」

 

 

諦めるどころか、燃えていた。

これが日本の太陽か…

目はギラギラと。

体はボロボロだが、心は生きているようであった

 

 

クラリア「右腕が使えないあなたは、私のシュートを止めることは…」

 

穂乃果「クラリア。忘れてない?」

 

クラリア「…?」

 

 

 

 

 

穂乃果「人間の腕は、いくつでしょう?」

 

 

 

 

 

果南「…!!?まさか、穂乃果!!」

 

真恋「…左腕だけで止める気ね」

 

月「無茶だよ…」

 

 

 

穂乃果「…」サッ

 

 

穂乃果は左腕をクラリアに向けた。

その腕には既に赤いオーラが込められている

 

 

穂乃果「私も、この1発にすべてを込めるよ」

 

クラリア「ふっ…さすがは穂乃果だ」

 

 

最初、クラリアたちは日本を格下。

自分たちは日本の力を見定めるものとして、上から見下ろすようにしていた。

 

しかし、それは大きな間違いだった。

 

日本は格下などではない。

誰もがそう言うだろう。

 

そして、こんなにも熱く楽しい試合をするのは始めてだった。

ドキドキで血が騒ぎ、心の底から楽しさが溢れてくる

 

 

クラリア「行くぞ!!穂乃果!!」バッ

 

穂乃果「来い!!!!」

 

 

 

 

クラリアは思い出す。

日本の、穂乃果と千歌のチームの試合を見た時を。

ぶつかる心と心。

死ぬ気でプレーしながら、同時にサッカーを楽しむ両チーム。

 

スペインにはないものだらけだった。

 

もし、日本に可能性があるのなら、自分たちは大いに警戒しなければならないチームであり、期待もするチームでもあった

 

 

 

クラリア「っっっ!!」ガキン!ガキン!ガキン!

 

 

 

穂乃果は思い出す。

フィレアと出会い、世界のレベルを知った時を。

自分は井の中の蛙以下だった。

身の程を知れとは、あの時の自分にぴったりな言葉だ。

 

しかし、死に物狂いの努力。

そして仲間との出会いが、ここまでサッカーを熱くしてくれた…

 

もちろんその中のひとりにクラリアは入っている

 

 

 

穂乃果「ゴットハンド……」バチバチバチ!!

 

 

 

 

A『さあ!!クラリア選手のシュートが放たれます!!』

 

 

 

 

穂乃果「(気を抜けば腕ごとすべてが潰れる…信じるんだ、自分を)」バチバチバチ

 

 

クラリア「(私は自分の進化を信じる…穂乃果に勝つためには、今までの自分では足りない)」ガキン!ガキン!ガキン!

 

 

 

 

 

 

 

 

会場に空気を揺らす轟音が鳴り響く

 

 

 

 

 

 

 

クラリア「ダイヤモンドレイ……V3!!!!」

 

 

 

ドガアァァァァン!!!!!!!!

 

 

 

海未「いっきに2段階も進化させた!?」

 

理亞「威力が別次元すぎる…」

 

 

 

音、地面の抉り方、スピード、輝き…

すべてが進化していた。

クラリアの持てる全てのシュート。

 

穂乃果は笑いながも、震えていた

 

 

 

穂乃果「行くぞおぉぉぉぉぉ!!!!」バッ!

 

 

そして叫び、飛び出した。

左腕の"ゴットハンドX"…そう言えば、1度も左腕では発動したことがなかった…

両利きだが、基本は右。

だからなんだ。

今は…このシュートを止めるっっ!!!!

 

 

 

穂乃果「エェェェェッックス!!!!!!」

 

 

 

 

ドガアァァァァン!!!!!!

 

再び轟音が鳴り響いた。

しかし、今度は衝撃の方が大きい

 

 

穂乃果「うぐぐぐぐぐっっ!!!!」

 

海未「穂乃果!!!!」

 

 

空気が今までとは比べ物にならないほどに、揺れている。

そしてその衝撃がすべて、穂乃果のダメージに

 

 

ダイヤ「穂乃果さんのユニフォームが…破けて、」

 

穂乃果「(痛いきつい重い負けない熱い冷たい痺れる負けない苦しい負けないっっ!!)」

 

 

赤いオーラと共に左腕の服が破け始めた。

本来、"ゴットハンドX"は右腕でボールを抑え、襲いかかる衝撃を左腕でカバーしている技だ。

そのカバーする片腕が使えない今。

全衝撃が1本の腕に襲いかかっているのだ

 

 

曜「穂乃果さん…もう、」

 

にこ「穂乃果!!踏ん張りなさいよ!!」

 

曜「にこさん…!」

 

にこ「アンタが選んだ道よ…身を捨てて、最後の決着を望んだのが穂乃果の道、なら」

 

にこ「後先考えずにすべて出し切りなさい!!」

 

 

穂乃果「うぐぐぐぐぐっっっ!!!!」

 

 

ベルガモ「穂乃果が、押してる…?」

 

ルーサー「いや、違うな」

 

 

 

 

 

 

 

 

バリッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

穂乃果「っっ!!!!」

 

 

 

A『ああっと!?ここで"ゴットハンドX"にヒビが!?穂乃果選手も押され始めたぞ!?』

 

 

穂乃果「(やばいっっ!!)」

 

クラリア「終わりだな。高坂穂乃果」

 

 

押される…押される穂乃果。

地面には足が擦れた跡。

どんどん広がる亀裂。

 

それはまるで、穂乃果の左腕の限界を表しているようだった

 

 

 

穂乃果「(終わり…なの??)」

 

 

もういつ砕けてもおかしくない。

やはり片腕だけでは無理があったか…

そう思った時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果さん!!!!!!!!」

 

 

 

 

「「「!!!!!!??」」」

 

 

穂乃果「っっ…!!もう大丈夫なの!?」

 

 

 

 

千歌「すいません!!力を抑え込むのに時間がかかりました!!」

 

 

曜「千歌ちゃん!!」

 

 

前半の途中からベンチにも姿を見せていなかった千歌。

思った以上にチカラが出かけた心を落ち着かせるのに手こずった。

戻ってみればこの状況。

 

同点、しかも穂乃果が強力なシュートをギリギリで持ちこたえている

 

 

 

千歌「穂乃果さんなら止められます!!絶対に!!だって、今の穂乃果さん…」

 

 

 

千歌「すごい楽しそうだから!!!」

 

 

穂乃果「!!!」

 

 

必死だったから忘れかけていた。

こんなにも辛く、苦しく、痛いのに…それでも私は楽しそうなのか…

 

自分でも思う。

サッカーバカにも程があると

 

 

穂乃果「へへっ…クラリア」ズン!

 

クラリア「!!」

 

 

聖良「穂乃果さんが1歩、踏み出した…」

 

 

穂乃果「私、クラリアのおかげで…」ズン!

 

穂乃果「すごく強くなった気がする」ズン!

 

クラリア「なぜ、進める…」

 

穂乃果「わかんない…でも、足が動くんだ」ズン!

 

穂乃果「限界はとっくに超えてるのに」ズン!

 

クラリア「穂乃果の…力の源は、なんなんだ」

 

穂乃果「…みんなだよ」ズン!

 

クラリア「…!!」

 

穂乃果「今、みんなが穂乃果を見ている。すべての希望を、私に託してくれている!!」ズン!

 

穂乃果「だから、今止めているのは、穂乃果だけじゃない」ズン!

 

 

クラリアには見えた。

穂乃果の背中を支える、サニデイジャパンのメンバー全員の姿が

 

 

穂乃果「そう考えるだけで力、湧いてこない?」ズン!

 

日本「「「穂乃果(ちゃん)(さん)!!」」」

 

 

 

 

穂乃果「ありがとう、クラリア」

 

 

 

 

 

穂乃果「楽しかった」

 

 

 

 

 

"ゴットハンドX"は砕けた。

しかし、それよりも先にクラリアのシュートは回転することなく。

穂乃果の左手の中で、止まっていた

 

 

 

 

A『と、と…止めたぁぁぁぁぁ!!!!!!』

 

 

 

ワアァァァァァァァ!!!!!!!!!

 

 

 

穂乃果「ハァハァ…ハァハァ」シュウゥゥゥ…

 

クラリア「……」

 

 

ことり「止めた!穂乃果ちゃんが止めたよ!!」

 

月「もう…ヒヤヒヤさせるなぁ…」

 

真恋「でも、これで日本のチャンス!」

 

 

にこ「よしっっ!!よくやったわ穂乃果!!」

 

英玲奈「ボールを蹴ろ穂乃果!!時間が…」

 

にこ「…穂乃果?」

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「っっ……」ビリビリビリ

 

 

 

 

ダイヤ「ほ、穂乃果さん…うずくまって、」

 

凛「早くボールを出さないと時間が…」

 

曜「…まさか、」

 

 

曜「動けないんじゃ…」

 

 

 

A『なんということだ…!!高坂動けません!!その場にうずくまり、激痛に苦しんでいる!!』

 

 

穂乃果「(やっちゃったなぁ…)」ビリビリビリ

 

 

よく考えたら、止めたあとボールをみんなに繋がなければいけない。

でも、その分のエネルギーもすべて使ってしまった。

もう、体は動かない

 

 

美奈「…時間は」

 

花陽「あと60秒です…」

 

 

穂乃果「(ぐぬあぁぁ…あと、少しなんだ…!!)」

 

 

止めたんだ…

希望を繋げたいんだ…

クラリアとの勝負には勝ったのに、みんなで勝ち取る試合には…勝てない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海未「あなたは大馬鹿者です」

 

 

 

穂乃果「!!」

 

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

聖良「海未さん、いつの間に…」

 

 

 

海未「…私は許しませんよ」

 

穂乃果「ぐっ…厳しい、ね…」

 

海未「そこまでボロボロになって…楽しかったですか?」

 

 

凛「海未ちゃん!時間がないにゃー!!」

 

 

穂乃果「…楽しかった!!」

 

海未「…そうですか」

 

 

海未は穂乃果のすぐ横で転がっているボールを取る

 

 

海未「今のあなたはただのバカです。試合に勝てず、ただ自滅しただけの」

 

穂乃果「…」

 

海未「ですが、ひとつだけ。あなたがただのバカで無くなる方法があります」

 

穂乃果「…!」

 

海未「それは、私たちが1点決めて勝つこと」

 

穂乃果「海未ちゃん!!」

 

 

花陽「あと30秒!!」

 

 

A『主審が時計を見た!!!!』

 

 

 

海未「あとは任せなさい!!穂乃果!!」バッ

 

 

クラリア「!?」

 

エメリコ「自分のゴール前からシュート!?」

 

ベラスコ「そんなの、届くわけないだろ」

 

 

海未は足を撓らせた。

いつもよりも力んでる?

多分、穂乃果への怒りが込められているのだろう。

 

海未は優しい。

一番怒ってくれて、一番気遣ってくれる。

 

そんな海未がまだ諦めず、シュートを狙っていた…いや、

 

 

これ、本当にシュート?

 

 

 

 

海未「ー ラブアローシュート ー!!」ドガアァン!

 

 

スペイン「「「!!!!!!」」」

 

クラリア「高速シュートか…!!」

 

 

 

海未の"ラブアローシュート"はスピードに特化したシュート。

目で追うのは困難。

しかも不意をつくシュートだったため、敵味方全員が…

 

 

海未のシュートがどこに行ったのか確認出来なかった

 

 

 

ベルガモ「ボールはどこだ!?」

 

アロンソ「ゴールには来てないよ??」

 

 

ダイヤ「まさか、コート外に…!?」

 

にこ「じゃあ、試合終了!?」

 

理亞「…何言ってんの?」

 

ダイヤ、にこ「!?」

 

ダイヤ「どういうことですか?」

 

理亞「ボール、あるじゃない…あそこに」

 

 

理亞には見えていた。

ボールがどこに行ったかが。

そして全員が気づく

 

 

にこ「…あ、」

 

 

 

 

 

クラリア「……」

 

 

 

クラリアは感じていた。

今、自分は日本のゴールの方を見ている。

その後ろ、背後に……何かが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ボールはここです」

 

 

 

クラリア「!!??」

 

スペイン「「「!!!!!!?」」」

 

日本「「「!!!!!!!!」」」

 

 

クラリア「(最初からシュートではなく…パス…高速は目くらまし…)」

 

 

海未のシュートは最初からゴールを狙っていなかった。

パス。

誰もいないガラ空きのスペースに。

海未は繋げたのだ。

スペインにとって、絶対に繋げてはいけない選手に

 

 

 

ルビィ「終わらせる…はあぁぁぁ!!!!!」

 

 

ゴオォォォォッッ!!!!!!

 

 

強風が吹き始めた。

誰もその場から動けない

 

 

クラリア「やめろっっ!!!!」バッ

 

 

そんな中でクラリアは走った。

ルビィの元へ

 

 

ルビィ「はっっ!!!!」バシュッ!

 

 

両足でボールを包むように地面へ落とす

 

 

ルビィ「でりゃあっっ!!!!」バシュッ!

 

 

そこへ先回りし、左足で回転を強化!!!!

 

クラリアは…間に合わない

 

 

 

フラム「……!?何、あの技!?」

 

鞠莉「…フラムは知らないのよね。いい?よく聞いて。パーティーであなたはルビィの本気のシュートを止めたと…思わされただけよ」

 

フラム「っっ!?」

 

鞠莉「あれがあの子の本当の本気。あなたにはあの場で本気を出すまでもないと…思われていたのよ」

 

 

 

 

海未「決めなさい!!ルビィ!!」

 

 

ルビィ「唸れっっっ!!!!!!」

 

 

 

 

ルビィ「ー ラストリゾート ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

 

 

日本「「「行けえぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」

 

 

 

 

ルーサー「止めてや…ダメだ、強すぎ…」

 

 

ドガアァァァァン!!!!

 

 

ルーサー「ぐわっ!?」

 

スペイン「「うわあああぁぁ!!!!??」」

 

 

 

A『黒澤ルビィのシュートが遮るものをすべて破壊して進む!!これはゴール確実か!?』

 

 

アロンソ「ー ザ・ボヨン ー!!」

 

 

アロンソは迫り来る巨大な化け物を抑え込むために必殺技を発動。

そのままボールを取り込んだ

 

 

鞠莉「…無理よ」

 

 

 

 

アロンソ「っっっ!!!!??」

 

 

 

バシュゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

A『そのまま押し込んだぁぁ!!!!誰も"ラストリゾート"を止められません!!ゴール!!!!』

 

 

 

クラリア「ハァハァ…やられたな、」

 

 

A『ここで試合終了!!!!勝ったのはサニデイジャパン!!歴史上初めてとなる、スペインへの勝利です!!』

 

レヴィン『いや〜、強力なシュートでした。今大会でも指折りのシュートになるでしょう』

 

 

ルビィ「…勝った」ヘナヘナ

 

ダイヤ「ルビィ!!やりましたわね!!」

 

凛「勝ったにゃー!!」

 

曜「もう動けない…」ヘナヘナ

 

理亞「姉様…勝った!!」

 

聖良「はい!全員で勝ち取った勝利です!!」

 

 

花丸「勝った…日本が勝った!!」

 

ツバサ「まさか、スペインに勝つなんてね」

 

月「これは大金星だよ…」

 

 

 

よろこびあう日本。

それと対象にスペインの選手たちは状況が理解出来ずにその場に座り込んでいた

 

 

ドメルゴ「私たちが、負けた…?」

 

ルフィノ「どうして日本なんかに…」

 

ベルガモ「日本だからでしょ、」

 

ルーサー「ベルガモ…」

 

ベルガモ「クラリアがそう言うんだ。間違いない」

 

 

 

 

クラリア「いい試合だった。穂乃果」

 

穂乃果「うん…ごめんね、こんなボロボロで」

 

 

穂乃果はタンカで運ばれ、そのまま病院へ直行する。

クラリアは少しだけ、穂乃果との会話が許されていた

 

 

クラリア「またあなたとサッカーが出来る…よな」

 

穂乃果「うん。必ずやろう」サッ

 

 

穂乃果は震える左手をクラリアに差し出した

 

 

穂乃果「ごめんね…右腕は動かないから…もし、いつか一緒にサッカーができる日が来たら、今度は右手で握手しよ」

 

クラリア「あぁ。約束だ」

 

 

両チームのキャプテンの握手。

それと同時に会場から巻き起こる歓声。

両チームを讃え、これからの試合の健闘を

 

 

海未「穂乃果、」

 

穂乃果「海未ちゃん、ありがとう」

 

 

穂乃果はそのまま運ばれ、フィールドを後にした

 

 

 

 

 

フラム「…」

 

フィレア「ルビィちゃんのシュートを見てから、静かになっちゃったね」

 

鞠莉「でしょうね。あんなシュート見せられたら」

 

フラム「…」

 

 

ルビィはあの時、シュートを撃つ瞬間。

ゴールともう1つ。

別の場所を見ていた

 

私だ

 

 

ルビィ『…』ギロッ!

 

フラム『!?』

 

 

あの時、前に勝負した時とは別人のような目付きで私を睨んだ。

そしてあのシュートを…"私にも"撃ったのだ。

 

これがルビィの本気だよ。って

 

 

 

 

悔しい

 

 

 

フラム「…"ラストリゾート"」

 

 

絶対に止めてみせる

 

 

 

 

 

 

ルビィ「…ちょっと挑発しすぎたよね、」

 

理亞「ルビィ。いつまでいるのよ、戻るわよ」

 

ルビィ「うん」

 

 

 

 

こうして日本は強豪スペインから勝ちをもぎ取った。

この結果は衝撃のニュースとして瞬く間に知れ渡ることになる

 

 

 

エドガー「…これが日本ですか、素晴らしい」

 

 

 

サニデイジャパンの戦いはまだ始まったばかり

 

 

 

 

 

日本 4-3 スペイン

 

 



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第3章 68話 「街外れのラーメン屋」

皆さんどうも!やっぱり銀のマカロンが足りないルビィちゃんキャンディーです!最初、ちょっとヤバめの色をしたマカロンだと思ってて…冷蔵庫の奥に忘れていたマカロン…偶然見つけた時には…既にかb…やめましょう。

さてさて、スペイン戦も終わり、一息回に入ります。
今回はいろいろ書いていこうと思います




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

穂乃果とクラリアの勝負。勝ったのは穂乃果。そして、ルビィの世界への宣戦布告とも言える"ラストリゾート"で決勝点。日本はスペインに勝利した

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

ー スペイン戦から数時間後 ー

 

 

 

穂乃果「えへへ…」

 

梨子「ごめんね?心配かけて、」

 

善子「…」

 

千歌「なんで私まで…?」

 

 

4人が後にしたのはライオコット島にある病院だった。

梨子は腹部への衝撃が大きかったため。

千歌はもしもの事があるため脳の検査。

善子と穂乃果は体のダメージが酷いため。

 

各それぞれ検査、治療が終わり。

迎えに来ていた美奈の元へと合流した。

空は既に薄暗くなっている

 

 

美奈「4人とも入院しなくて良かったわ♪特に穂乃果ちゃん!」

 

穂乃果「でも、とうぶんはサッカー出来ないね…」

 

善子「いつ見ても痛々しいわね、それ」

 

 

穂乃果は右腕をギプス固定し、完全に怪我人という姿でいた。

左腕には湿布のみ

 

 

善子「折れてるの?」

 

穂乃果「折れてはいない。でも肉体にかなりのダメージがいってるらしい」

 

梨子「じゃあ、次の試合は…」

 

穂乃果「出れない」

 

「「!!!!」」

 

 

覚悟はしていた。

スペインとの戦い。

穂乃果の身を捨ててのプレーがなければ絶対に負けていた。

しかし、代償もまた…大きい

 

 

梨子「次の相手はイギリス…スペインと同じぐらい強いわ」

 

千歌「…エドガーさんのチーム」

 

 

パーティー会場で出会ったイギリスのキャプテン、エドガー・バルチナス。

見るだけで伝わってくる強者の風格…

スペイン戦と同様、簡単には勝てない相手だと言わなくても分かる

 

 

美奈「明日はイギリスとイタリアの試合よ。それを見ていろいろ考えるわ。さ、もうすぐで着くわよ♪」

 

 

日本代表のバスは既に日本のエリアに入っていた。

日本ならではの飲食店や居酒屋が並ぶ道。

その真ん中をまっすぐ引かれたコンクリートの道。

自然と意識は窓の外へと向けられた

 

 

穂乃果「千歌ちゃん、後でちょっと付き合ってくれない?」

 

千歌「え…?いいですけど、」

 

 

梨子(ん?付き合うって聞こえたような…)

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 夜 日本エリア街道 ー

 

 

穂乃果「いや〜、海未ちゃんにこっぴどく怒られちゃった!」

 

千歌「怪我が怪我ですもんね…」

 

 

宿舎に戻った穂乃果たち。

その時、玄関で待っていた海未と入ってきた穂乃果の目が合うのと同時に、海未のお説教が始まった。

周りのメンバーは親子みたいだ…と遠くから見守っていたが、穂乃果も疲れているということでお説教はすぐに終了した

 

 

千歌「それで…なんで私たちは外出しているんですか?」

 

穂乃果「ちょっとね!千歌ちゃんと行きたいところがあってね」

 

 

穂乃果は夜の外出許可を貰ってすぐに千歌を連れて日本エリアの街中に来ていた。

何をするのかは全く分からないが、穂乃果のことだ。

何か考えがあるのだろう

 

 

千歌「かなり街の奥まで来ましたね、」

 

穂乃果「確かここらへんに……あっ!あったよ!千歌ちゃん!」

 

千歌「ほえ?」

 

 

穂乃果が指さすのは……賑やかな街道から外れた場所にひっそりと佇む、『屋台』だった

 

 

千歌「ラーメン?」

 

穂乃果「そ!ここでラーメンを食べながらお話ししよ!」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

穂乃果「大将〜!こんばんは〜!」

 

大将「おう!穂乃果ちゃんか、いらっしゃい!隣の嬢ちゃんは…今日の試合に出てたな!」

 

穂乃果「高海千歌ちゃん!私と同じサニデイジャパンの選手だよ!」

 

千歌「は、初めまして…」

 

大将「よっしゃ!千歌ちゃんも座りな!」

 

 

穂乃果によると、凛がランニング中に見つけたお店らしく。

凛曰く、今まで食べてきたラーメンの中でもトップ3に入るほどの美味しさらしい…

 

ちなみに大将は日本人。

日本エリアの出店でライオコット島に来ているとか

 

 

 

穂乃果「千歌ちゃんは何にする?」

 

千歌「えーっと…じゃあ、味噌ラーメンで」

 

大将「はいよ!穂乃果ちゃんは?」

 

穂乃果「豚骨醤油の替え玉あり!トッピングにメンマ山盛りで!」

 

大将「はいよ!」

 

千歌「ほ、穂乃果さん慣れてますね…」

 

穂乃果「音ノ木坂でよく凛ちゃんとラーメンを食べに行ってたからね♪」

 

 

注文を受けた大将は早速、麺を茹で始めた。

蒸気と醤油、味噌が空腹を促す。

トッピングのケースを一度開ければ、その旨みと言える香りが味噌・醤油に負けじと辺りに漂い始めた。

 

そんな中、作業をしながら大将は口を開く

 

 

大将「しかし…穂乃果ちゃんはその腕、大丈夫なんかい?テレビで見ても、かなり痛々しかったが…」

 

穂乃果「あっはは…折れてはいないけど、次の試合は出れないかな…」

 

大将「スペインに勝利とは…大金星だが、イギリスもまた強いな」

 

穂乃果「大丈夫!みんななら必ず勝ってくれる!」

 

千歌「穂乃果さん…」

 

穂乃果「私の分も頑張ってね!」

 

 

……なんだろう、この違和感は。

穂乃果の今の言葉、何か別の意味が込められているような…

 

 

大将「はい!味噌ラーメンと豚骨醤油おまち!」

 

穂乃果、千歌「!!」

 

 

深く考えていた時だった。

自分と穂乃果の目の前に注文したラーメンが置かれた。

 

伸びるといけないし、まずは食べよう

 

 

 

穂乃果、千歌「いただきます!」

 

 

千歌(すごい…見た目だけでも美味しさが伝わってくる…)

 

 

箸で麺をとると、味噌の香りが乗った湯気が顔にかぶさる。

レンゲに麺をおさめ、火傷しないように注意しながら一口……

 

 

千歌「……」ズルズル!

 

千歌「……」

 

千歌「…美味しい…すごい美味しい!」

 

大将「嬉しいね〜!最高の褒め言葉だ!」

 

 

味噌が…ダシと混ざりあって…さらにチャーシューや味玉がそれぞれ味の主張をしながらも味噌ラーメンとマッチする…!!

 

美味しい…こんなラーメン食べたことなかった。

まさに、心惹かれるラーメンだった

 

 

穂乃果「大将替え玉!」

 

大将「はいよ!」

 

千歌「はやっ!?」

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

ラーメンを楽しむこと十数分。

だいぶ量が減ってきた。

ここで千歌は本題に入る

 

 

千歌「それで、穂乃果さん…お話って」

 

穂乃果「…」

 

 

穂乃果はラーメンで高まった気分を落ち着かせるかのように水を飲んだ。

一口。

飲み終わると真っ直ぐな目で…

 

 

穂乃果「千歌ちゃんの闇の力について」

 

千歌「…っっ」ドキッ

 

 

ほんのりと察していた。

みんなの前ではと気づかい、こうして街外れの屋台まで穂乃果は連れてきた。

決していい話ではない。と

 

 

穂乃果「確認だけど…あれは自分の意思で?」

 

千歌「…違います。気づいたら発動していました」

 

 

ここで整理しておこう。

 

穂乃果の闇のチカラは感情の変化。

怒りや悲しみ、緊張で発動する。

二重人格はなし。

穂乃果はチカラをコントロールできる。

 

変わって千歌の闇チカラは簡単に言えば二重人格。

千歌が出てこいと願うと、闇の二重人格が姿を現す。

千歌はチカラをコントロール出来ていない

 

 

穂乃果「穂乃果みたいに感情の変化で闇のチカラが発動しかけた…」

 

千歌「…」

 

千歌「私、あの時、一歩間違えてたらダイヤさんに大怪我を負わせてた…かも」

 

穂乃果「…」

 

千歌「怖くなりました。自分が自分でなくなって。嫌なのにまわりを傷つける…もう、二度と発動しないって誓ったのに…」

 

穂乃果「昔の穂乃果みたいだね」

 

千歌「…え、」

 

穂乃果「まだチカラをコントロール出来ていないころ。気づいたら仲間を怖がらせていた…傷つけそうにもなった…その度に自分を責めて、その感情でまた発動の繰り返し」

 

千歌「…穂乃果さんは、そのチカラをどうやって自分のものにしたんですか?」

 

穂乃果「…」

 

穂乃果「向き合う、ことかな」

 

千歌「向き合う…」

 

穂乃果「闇のチカラは感情の変化。主にネガティブな感情で発動するんだよね」

 

穂乃果「要するに自分の弱さ。チカラをコントロールするっていうことは、感情のコントロールをするっていうことなんだよ」

 

千歌「弱い自分と…向き合う」

 

穂乃果「そう!それを伝えたかったの!」

 

千歌「…私にできるかな」

 

穂乃果「それだよ」

 

千歌「…!」

 

穂乃果「その不安な気持ち。それも弱い自分だよ」

 

穂乃果「私なら絶対に出来るって、自信持たないと!」

 

千歌「…はい!」

 

 

この時、穂乃果が何故いつもポジティブなのか…少し分かった気がした。

穂乃果のような太陽の如く熱い心が、今の自分を変えるキーだとすると…

 

 

千歌「穂乃果さんみたいに、みんなを照らしていけるように頑張ります!」

 

穂乃果「その意気その意気!」

 

 

とりあえず、何故、急に感情の変化で闇のチカラが発動したのかは考えずに。

発動をコントロール、要するに感情のコントロールを意識することにした。

 

その為にはいつでも前を向く。

 

明日からの練習で実践だ

 

 

穂乃果「じゃあ、帰ろっか!」

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

大将「ありがとよ!また来てくれな!」

 

 

穂乃果「今度はメンバーたくさん連れてくるねー!!」

 

千歌「あはは…」

 

 

千歌と穂乃果は帰路についた。

補導前とは言え、だいぶおそい時間だ。

しかし、日本エリアの街の光は消えることはない。

確かに東京もこんな感じだなと思う穂乃果。

そして内浦はこの時間は真っ暗だと思う千歌。

2人の少女は並んで歩く。

 

しかし、1人の少女が立ち止まった

 

 

 

千歌「…穂乃果さん、どうしたんですか?」

 

穂乃果「…」

 

 

なんだろう。

この違和感。

屋台でも感じた。

穂乃果はまだ何か言いたげ?

いや、言うのを躊躇っている?

 

 

穂乃果「…やっぱり、千歌ちゃんには先に言っておくべきだと思う」

 

千歌「…!!」

 

 

いったい何を…

いい知らせでは…ない気がする

 

 

 

 

 

穂乃果「穂乃果ね、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「やめようと思うんだ。ーーーを」

 

 

 

 

 

 

千歌「え…」

 

 

 

 

ここから千歌の運命は大きく変わり始める

 

 

 





穂乃果ちゃんの注文内容がルビィちゃんキャンディーのお気に入りラーメンです。書きながら腹が減りました





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第3章 69話 「サニデイジャパンの休日」


皆さんどうも!スクスタのイベントで銀のマカロンを大量に手に入れて調子に乗っているルビィちゃんキャンディーです!

今回は少しだけイギリスチームのお話です。




 

 

 

 

 

 

 

 

ー 翌日 ウミヘビスタジアム ー

 

 

 

ピッピッピーーーーーー!!!!!!

 

 

A『ここで試合終了!!イギリス対イタリア!結果は1-1の引き分けです!!』

 

 

 

フラム「あぁぁっ!!…エドガーさんのシュート、キツすぎっっ!!!!」

 

フィレア「ハァハァ…やられたね」

 

鞠莉「最後の最後に追いつかれたわね…」

 

フラム「悔しいなぁ…!!」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

ー 日本代表宿舎 ー

 

 

花陽「ということで、イギリスとイタリアの試合結果は同点。これで唯一勝ち点3を取っている日本が現在、グループ首位です」

 

真恋「首位だけど、次のイギリス戦…かなり厳しい戦いになりそうね」

 

美奈「えぇ。何よりもエドガーの"エクスカリバー"。あれはヤバイわよ」

 

穂乃果「…悔しいけど、穂乃果は絶対に止められない」

 

 

エドガー・バルチナスの必殺シュート、"エクスカリバー"。

画面越しにも、その壮絶な破壊力は伝わってきた。

エドガーが足を振りおろせば、地面は割れる。

おそらく、クラリアの"ダイヤモンドレイ"よりも威力は遥かに上だろう。

イタリアは後半のギリギリまでエドガーにシュートを1本も撃たせなかった。

何故か…撃たれたら負けだからである。

3人でエドガーをマークし、何とか逃げ切ろうとしていたのだ。

しかし、

 

 

 

鞠莉『ちょっと!!マークは!?』

 

マルコ『ヤバい!!エドガーがっ!!』

 

 

エドガー『喰らうがいい…我が聖剣を!!』

 

 

エドガー『ー エクスカリバー ー!!』

 

 

 

ドガアァァァァァァァン!!!!!!

 

 

イタリア『うわあああ!!!!??』

 

鞠莉『フラムっっ!!お願い止めて!!』

 

 

フラム『ー ゴットハンドゼロ ー!!』ドォン!

 

エドガー『無駄です。散りなさい』

 

フラム『無理…強すぎ……きゃあぁ!!?』

 

 

A『ゴール!!!!イギリス追いついたあぁぁ!!!!!!』

 

 

 

 

 

梨子「あのフラムちゃんでも、まったく適わなかった…」

 

希「エドガーにシュートを撃たせたらあかんな…これは、」

 

 

エドガーにシュートを撃たせたらいけない。

そのためにはイタリアのように、複数人でエドガーを抑えに行くのが最善だろう。

 

しかし、エドガーはシュートだけではない。

ボールキープや突破力、ディフェンスも世界レベルの選手。

 

先程の試合を見ての通り、後半イタリアの選手の疲れが見えた瞬間を狙われた。

あのスキをついた突破力…日本が抑えられるかどうか

 

 

果南「あのシュートを私が止めるんだよね…頑張んないと」

 

穂乃果「ごめんね?無理させちゃって」

 

果南「大丈夫!穂乃果は腕を治すことに専念してね!」

 

海未「まったくです」

 

穂乃果「うぅ…」

 

 

穂乃果は次のイギリス戦は出場しない。

イタリア戦に間に合うかどうか。

今は果南の言う通り、休んで少しでも早く治すことに集中するべきなのである

 

 

千歌「よーし!イギリス戦に向けて練習だぁぁ!」

 

曜「千歌ちゃん凄いやる気だね!」

 

 

勢いよく椅子から立ち上がった千歌。

いつもに増して元気な少女は今すぐにグラウンドに飛び出そうと構える。

そんな中で美奈が口を開いた

 

 

美奈「じゃあ、早速対策と練習を……と言いたいところだけど」

 

千歌「…え?」

 

 

美奈は何故か花陽と花丸の方を見る。

不思議に思った千歌も花丸たちを見ると…少し照れて下を向いている?

 

 

美奈「今日の練習はお休みよ♪」

 

千歌「え?」

 

穂乃果「え?」

 

「「「え???」」」

 

美奈「花陽ちゃんと花丸ちゃんからの提案なの!」

 

花陽「えへへ、」

 

花丸「ずら!」

 

千歌「2人が提案を?」

 

花丸「すごい試合のあとだから、1日休んだ方がみんな頑張れるかなって」

 

花陽「はい!」

 

凛「かよちん、花丸ちゃん最高にゃー!」

 

梨子「よかった…正直、体調がまだ万全じゃなかったから」

 

 

美奈は1日オフを賛成していた。

スペイン戦でボロボロになった日本。

勝利は勝ち取ったものの、一人ひとりのダメージが大きかった。

世界トップレベルとの連戦…

ここでのオフは大きい。

心の中で確信していた

 

 

真恋「食事を済ませた人から今日一日自由よ!遊びに行くなり寝るなり、練習するなり好きにしてね!」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

 

ー プール ー

 

 

 

 

曜「月ちゃーん!行くよー!」

 

月「いつでもいいよ!」

 

 

ということで。

僕たち日本代表は絶賛休日中!

曜ちゃんと2人で宿舎近くにあるプールに来ているよ。

…なんで海に行かないかって?

 

 

曜「よっ!」バッ

 

 

理由はこれを…見たかったからかな

 

 

 

パシャン!!

 

 

 

曜ちゃんの飛び込み。

うん…!いつ見ても綺麗なフォルムだね。

水泳界からお声がかかるわけだ。

 

今、曜ちゃんが決めた技は『ー 前逆さ宙返り3回半抱え型 ー』。

簡単に説明すると空中で3.5回転。

オリンピック代表選手が使うようなとんでもない技だよ!

 

 

曜「ぷはぁ!」

 

月「やっぱり凄いね!曜ちゃんの飛び込みは」

 

曜「いや〜、照れるであります!」

 

 

久しぶりにサッカー選手じゃない曜ちゃんが見たくなってね。ワガママを聞いてもらったってわけ♪

ちなみに僕は浮き輪に乗りながら片手にジュース!うん。たまにはこんなのも、悪くないね♪

 

 

曜「月ちゃんも泳げばいいのに」バシャバシャ

 

月「僕は今オフ〜」プカプカ

 

曜「そっかー……あ!月ちゃん」

 

月「?」

 

曜「私、月ちゃんのおかげで新必殺技のヒントを見つけた!」

 

月「…え?」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ルビィ「理亞ちゃん!あっちのお店行ってみよ!」

 

理亞「ちょっ…ルビィ待って」

 

 

理亞の手を引くルビィ。

ここは日本エリアの大通り。

サニデイジャパンのメンバーの半数はここでショッピングや観光を楽しんでいた

 

 

聖良「理亞とルビィさん、無事に打ち解けあっているようですね。理亞に言うと怒られますが…」

 

ダイヤ「喧嘩をする時もまだありますが、姉として。ひとまず安心しました」

 

聖良「…そう言えばルビィさん。サッカーをしている時としていない時で、まるで別人のようですね。雰囲気とか」

 

 

聖良の言う通り、今は小動物のような動作、そして笑顔。

ひとつひとつの動作に愛らしさを感じる今のルビィ。

 

しかし、サッカーのことになった瞬間。

雰囲気は真逆へと変わる。

鋭い眼光、口調。

小さな体からは有り得ないほどの気迫。

まるで千歌のように、別の人格になっているようであった

 

 

ダイヤ「自分の中でオンとオフを決めている…のでしょう。昔からそうでした。サッカーで集中している時は誰よりもクールに。プライベートの時は明るく。いったいどちらが本当のルビィなのか…わたくしにもわかりません」

 

聖良「今は特に、精神的にも不安定な時期です。追求はせずに見守るのが一番ですね」

 

ダイヤ「…そうですわね」

 

 

ルビィ「理亞ちゃん!このキーホルダー、ルビィとお揃いの買おうよ!」

 

理亞「お揃い!?……そ、そんなの…いらない!」

 

ダイヤ「ルビィ!ならばわたくしがっ!!」バッ

 

聖良「ええっ!?ダイヤさん!?」

 

 

ルビィとお揃い、というワードに反応して走り出したダイヤ。

うーん、この姉…妹離れはまだまだ先か…

と思う人のことを言えない聖良であった

 

 

 

 

 

ことり「今度はこの服!ヨハネちゃん♪」

 

善子「あの…あと何着着れば…」

 

ことり「うーん…わかんない♪」

 

善子「」

 

穂乃果「ことりちゃん!この服なんてどう?」

 

ことり「可愛い!それも着てもらおっか!」

 

善子「ダレカタスケテ」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ところ変わってここはビーチ

 

 

 

千歌「海だぁぁぁぁ!!!!」

 

海未「海未は私ですが…?」

 

 

梨子「すごい…綺麗な海。私、今水色の風になってるみたい」

 

希「おっ!梨子っちが何か言ってる!」

 

梨子「(嘘っ!?声に出てた!?)」

 

凛「海未ちゃんも似たようなこと、ノートに書いてたにゃ〜。確か…ポエムノー…「それ以上はあかん。消される」

 

 

忘れてはいけないのが、この島は南の島だと言うこと。

気候、気温は夏。

エメラルドに輝く海に白い砂浜。

本州生まれ、本州育ちの彼女らには、魅力が具現化したような海に見えた

 

 

にこ「いい波ね!!さすがは南の島!」

 

 

千歌「え!?にこさんがサーフィンしてる!?」

 

 

先程まで一緒にいたにこがいないと思いきや…少し沖の方で波に乗っていた。

まさかサッカーだけでなくサーフィンも出来るとは…

もしかすると、にこはクールなスポーツはだいたい出来るのでは…と千歌たちは思い始めていた

 

 

海未「はい。にこは他にもスケボーやダンスをやってたりします」

 

梨子「そ、そんなに…?やっぱりにこさんは凄い…」

 

千歌「果南ちゃんが聞いたら、一緒にサーフィンしに行きそう!」

 

希「…そう言えば果南ちゃんは?」

 

千歌「…それが、」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

ー 日本代表練習グラウンド ー

 

 

果南「はあぁっ!!」バシッ!

 

 

ボールをパンチングする果南。

しかし、ボールは次々と飛んでくる

 

 

果南「っっ!!」バシッ!

 

果南「(今度は逆!!)」

 

果南「っっらぁ!!」バシッ!

 

果南「(正面…キャッチ!!)」

 

果南「っっ……!!」ガシッ!

 

 

果南は1人、練習をしていた

 

 

果南「ハァハァ…きっつ…」

 

 

自分も遊びには行きたかったが、今の状況ではそんな暇はなかった。

次の試合、自分は穂乃果の代わりにイギリスと…あのエドガーと戦わなければいけない

 

 

果南「ハァハァ…全然足りないね、」

 

 

穂乃果は言っていた。

自分じゃエドガーのシュートは止められない、と。

穂乃果で無理なら自分も適うわけがない。

自分の弱さで、日本を敗北に導くわけにはいかない。

果南は呼吸を整え、構える

 

 

果南「さあ!まだまだ行くよ!」

 

 

シュートマシーンがボールを放ち始めた

 

 

美奈「…」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

 

 

 

 

 

穂乃果「たっだいまー!!」

 

ことり「戻りました〜♪」

 

 

夕方、空に星が見え始めたころ。

サニデイジャパンのメンバー全員が無事に宿舎に帰ってきていた

 

 

海未「2人はどちらへ?」

 

穂乃果「ことりちゃんと一緒にショッピングだよ!」

 

ことり「お洋服をたくさん買ったの!」

 

 

善子「ことりさんの着せ替え人形にされたわ…」

 

凛「だから凛たちと海に行こうって言ったのに…!」ヒソヒソ

 

 

あんじゅ「姉妹デートかしら?」

 

ルビィ「うん!楽しかったよね!」

 

理亞「…まあ、少しだけ」

 

聖良「あんじゅさんはどこへ?」

 

あんじゅ「買い物だったり、ツバサたちとゲーセン行ったり」

 

英玲奈「有意義な時間だった」

 

ツバサ「クレーンゲームとアーケードしかしてないけどね」

 

 

それぞれが楽しんだ休日。

話が盛り上がる中、シャワールームから1人姿を現したのが…

 

 

果南「おっ!みんないるね」

 

ダイヤ「果南さん。本当に今日一日練習を…?」

 

果南「まあね。ちょっと疲れちゃったよ…ははは、」

 

ダイヤ「…果南さん」

 

美奈「はーい!みんな揃っているかしら?」

 

「「!!!」」

 

 

美奈が奥の部屋から登場する。

よく見ると…服装が観光Tシャツ。

美奈も遊びに行ってたのか…

 

 

美奈「じゃあ、明日から練習開始だけど、今日の夜はちょっと大事なお話があるからね〜」

 

花陽「ミーティングですか?」

 

美奈「そうね。かなり大事よ、なんだって…」

 

穂乃果「…」

 

 

 

美奈「穂乃果ちゃんの今後についてだもん」

 

 

 



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第3章 70話 「太陽、照らすものとして」


皆さんどうも!新しいドラえもんのオープニングがめっちゃ好きなルビィちゃんキャンディーです!

今回は前半、会話文が続きます。数話引っ張っていた穂乃果ちゃんの発表…ですね。いったい何をやめるのか…






 

 

 

 

 

美奈「…全員、座ったかしら」

 

 

消灯前。

サニデイジャパンのメンバーは全員、ミーティングルームに集まっていた。

昼間とは打って変わり、ただならぬ緊張感に支配されている。

 

それもそのはず。

なぜなら、議題は「穂乃果の今後」。

今後…とはどういうことか?

まさか怪我で離脱?入院?

それぞれよくない想像が頭に浮かび上がる。

食事などの時に穂乃果に聞こうとしたが、穂乃果は教えてくれなかった

 

 

美奈「じゃあ、ここからは穂乃果ちゃんが話すからね」

 

穂乃果「…」

 

 

穂乃果が席から立ち上がり、みんなの前に出た。

緊張感により痺れる空気がいっきに濃くなった。

ドクン…と心臓が揺れる。

穂乃果は何を話し、何をするのか…全員が構える。

来たる穂乃果の発言に備え…

 

 

穂乃果「私は、ここまでみんなの太陽として。少しでも、みんなを元気に。照らせるように頑張ってきた」

 

海未、ことり「…」

 

穂乃果「でも、スペイン戦でみんなを不安にさせちゃった…ごめんね?」

 

にこ「何言ってんのよ穂乃果」

 

穂乃果「…」

 

にこ「アンタが頑張ったから勝てたんでしょ?それでいいじゃない。謝る必要はないわ」

 

穂乃果「にこちゃんは優しいね。でも、」

 

穂乃果「今回の試合で、分かった」

 

希「…何が分かったの?」

 

 

 

穂乃果「穂乃果は日本の太陽には相応しくない」

 

 

「「!!!!」」

 

海未「穂乃果、何を…」

 

穂乃果「だからね、決めたの。穂乃果は…」

 

 

 

 

 

穂乃果「日本代表のキャプテンを、やめます」

 

 

 

 

海未「」

 

「「「……」」」

 

 

 

 

 

キャプテンをやめる。

代表離脱ではなかった安心感と、日本の太陽が自ら支柱を捨てるということへの衝撃でゴチャゴチャになる。

 

海未は言葉を詰まらせながらも、なんとか続ける

 

 

 

海未「な、にを…言って」

 

穂乃果「日本のキャプテンは、太陽でなくてはないけない」

 

 

これは音ノ木坂学院サッカー部の頃からの決まりだった。

キャプテンとは、頭がいい司令塔がなるわけではない。

どんなときも仲間を照らし、精神的支柱。

みんなを引っ張っていく存在だと

 

 

穂乃果「太陽は照らすもの。でも、穂乃果は…照らされた」

 

海未「…!!」

 

穂乃果「私が挫けそうになった時、何度も助けてもらった。でなければ、多分スペインには負けていた」

 

穂乃果「その子に日本の太陽を託そうと思う」

 

 

 

 

 

 

穂乃果「高海千歌ちゃんに」

 

 

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

千歌「…」

 

 

 

海未「千歌に…ですか?」

 

曜「千歌、ちゃん」

 

 

にこ「反対よ」

 

穂乃果「!!」

 

 

にこが動揺しざわめく部屋を再び黙らせた

 

 

にこ「穂乃果。1度挫けたからって諦める穂乃果じゃないでしょ?それに…千歌は今、いろいろ不安定なんじゃないの?」

 

千歌「…」

 

穂乃果「確かに千歌ちゃんは、ちょっと危ない状態にある。でも、だからこそ。千歌ちゃんはキャプテンになる必要があるんだよ」

 

海未「…しかし、千歌が不安定では、私たちの精神的支柱も揺らぐことになるのでは?」

 

 

ダイヤ「心配いりませんわ」

 

海未「…!ダイヤ」

 

ダイヤ「海未さん、皆さん。考えてみてください。わたくしたち、浦の星女学院サッカー部のキャプテンは誰ですの?」

 

凛「千歌ちゃんだよ!」

 

ダイヤ「はい。千歌さんには、穂乃果さんにも負けないほどの、人を照らす力があります」

 

果南「そうそう!サッカー部をまた0から復活させたのは、千歌だもんね!」

 

ダイヤ「海未さん。日本のキャプテンは、太陽でなければいけないと。精神的支柱だと」

 

海未「…はい。そうです」

 

ダイヤ「確かに、わたくしたちはキャプテンに照らされています。ですが…浦の星は照らされているだけではありません」

 

海未「…!」

 

ダイヤ「照らす太陽を…輝きを、みんなで支えるのです」

 

梨子「千歌ちゃんは、全国大会の頃から闇のチカラに苦しめられてきました。その度に、私たちは不安になりました」

 

善子「だから、みんなで千歌を支えたのよね」

 

花丸「ずら!一人でみんなを照らすのは大変ずら!」

 

海未「太陽を、支える」

 

曜「任せっきりは、確かに信頼できるかもしれないけど、その分。支柱が崩れた時のダメージが大きくなっちゃう」

 

ルビィ「みんなで不安を共有する。そうすれば太陽はもっと輝き出すよ!」

 

にこ「あんたたち…」

 

穂乃果「…それが、浦の星女学院サッカー部の"輝き"だったんだね」

 

千歌「はい。みんなで過ごしてきた時間、かけがえのない。そしてみんなで支えあって、みんなでサッカーをした。それが輝きです」

 

海未「太陽に照らしてもらう…だけでなく。みんなで太陽を支える、ですか」

 

月「僕は異論はないよ。これが日本一のチームの正体だもん」

 

聖良「私も賛成です。チームは支えあってこそのチームです」

 

英玲奈「私たちも賛成だ」

 

ツバサ「えぇ」

 

あんじゅ「もちろん♪」

 

 

海未「…」

 

穂乃果「海未ちゃん」

 

にこ「…」

 

穂乃果「にこちゃん」

 

 

海未「確かに。私たちは穂乃果を頼りすぎていたかもしれません」

 

穂乃果「!」

 

にこ「それに千歌にはキャプテンになること。要するに私たちの支えが必要なんでしょ?なら…認めるわよ」

 

穂乃果「海未ちゃん、にこちゃん!」

 

 

美奈「決まりみたいね」

 

 

美奈が場の空気を見計らいながら話し始める。

もうすでに全員が納得し、受け入れている

 

 

美奈「では日本代表サニデイジャパンのキャプテンは明日から高海千歌ちゃん!頑張ってね!」

 

千歌「はい…!皆さん、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

ー 翌日 日本代表練習グラウンド ー

 

 

キャプテンが変わったからと言って、練習が変わるわけではない。

今日から気を引き締め直し、イギリス戦に向けての練習が開始された

 

 

真恋「戻りが遅れてるわよ!!」

 

英玲奈「曜!凛!2人でドリブルコースを塞ぐんだ!」

 

曜「合点承知!」バッ

 

理亞「くっ…」

 

凛「これ以上は行かせないよ!」

 

千歌「理亞ちゃん!こっち!」

 

理亞「…!千歌!」パス

 

曜、凛「!?」

 

梨子「千歌ちゃんに続いて!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

こうして高坂穂乃果率いるサニデイジャパンから、高海千歌率いるサニデイジャパンになったわけだが…

 

 

千歌「(浦の星の時とはレベルが違う…!!もっと周りを見ないと…)」

 

にこ「ぼーっとしてるんじゃないわよ!」ズザーッ!

 

千歌「あっ!?(取られた!!)」

 

にこ「考えすぎたらダメよ。周りに気遣うのは大切だけど、自分のプレーを殺したら意味無いわ」

 

千歌「…はい!!」

 

 

 

美奈「ふむふむ…なんやかんやで一番支えてくれそうなのは、にこちゃんね♪」

 

真恋「昔から面倒みがいいからね、にこは」

 

 

千歌「でりゃぁ!」バッ

 

にこ「あまい!」

 

千歌「あれっ?」スカッ

 

千歌「ぶへっ!!」ドサッ

 

月「あちゃー…盛大に転んだね」

 

ツバサ「千歌さん、大丈夫?」

 

千歌「あっはは…大丈夫、大丈夫」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

花陽「皆さん休憩の時間です!」

 

 

花陽の一声で全員の動きが止まる。

休憩。

その言葉を聞いた千歌はその場に座り込んだ

 

 

千歌「ふぅ…きっつい…」

 

月「一段と張り切ってたね。千歌ちゃん」

 

千歌「まあね。穂乃果さんの分も千歌が盛り上げていかないと!」

 

月「僕はいつでも力になるから頼ってね」

 

千歌「うん!」

 

 

 

聖良「…理亞」

 

理亞「なに?姉様」

 

聖良「午後からはポジション練習になりますが、少し手伝って欲しいことが、」

 

理亞「手伝って欲しいこと?」

 

聖良「…今、新必殺技を考えています」

 

理亞「!!」

 

聖良「完成には理亞の力が必要です…」

 

理亞「分かった」

 

 

今日の午後練習は各ポジションに別れての練習。

特にイギリス戦はディフェンスが重要になってくるため、DF陣は集中してと美奈から言われている

 

 

聖良「善子さんはFWとDF、どちらの練習を?」

 

善子「DFがいいわね。共鳴の精度を少しでも上げたいから」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

ー FW&GK組 ー

 

 

ダイヤ「はあぁっ!」バシュッ!

 

果南「っっ!」バシッ

 

穂乃果「受け身をもう少しコンパクトにしてみて!」

 

果南「OK!」バッ

 

 

FWのメンバーはシュート練習。

そのシュートをGKが受ける。

穂乃果は果南にアドバイスしながら練習を見守っていた

 

 

月「穂乃果ちゃんはFWもやってるから最適の指導者だね」

 

穂乃果「最適?いや〜、照れちゃうなぁ…」

 

ルビィ「果南さん!今度はルビィです」

 

果南「よしっ!いつでも撃ってきて!」

 

 

ルビィの前に構える果南。

ルビィは練習でも容赦ない…

気を抜くことは許されない。

どこへ撃たれても反応できるように、全神経を研ぎすませる

 

 

ルビィ「っっ!!」バシッ!

 

果南「(右上!バーに当たる!?)」

 

 

ルビィのシュートはボールの下を蹴ったせいか、ゴールの枠から外れている。

頭に、体に染み付いたゴール枠。

いちいち目で見なくとも、ルビィのシュートが外れることは予測できた

 

 

穂乃果「…!?違う!果南ちゃん!」

 

果南「え…」

 

 

 

バシュウゥゥゥン!!!!

 

 

 

果南「…!?」

 

FWメンバー「「!!!」」

 

 

ルビィのシュートは無回転。

急にエグい勢いで落ちる球だった

 

 

果南「あちゃー…やられたね」

 

凛「クロスバーに当たったと思ったにゃ…」

 

ツバサ「本番でも注意したいわね」

 

果南「うん。気をつけるよ」

 

ダイヤ「…」

 

 

 

 

 

― MF組 ー

 

 

海未「次!」

 

曜、千歌「お願いします!」

 

 

MFのメンバーは1対1の練習。

少しでも世界のボールテクニックに近づくために、ひとつひとつのプレーに気合いが入る

 

 

海未「曜!そこで足を出すと抜かれますよ」

 

曜「はい!」

 

海未「千歌!そこは"リバースZスラッシュ"で抜けるはずです!判断は速く!」

 

千歌「はい!」

 

 

英玲奈「やはり海未は頼りになるな」

 

梨子「はい。音ノ木坂学院の練習メニューも海未さんが作っていたと聞いています」

 

英玲奈「そうか…ではその音ノ木坂学院の練習メニューを取り入れるのも…」

 

梨子「あっ、それはやめた方が…」

 

英玲奈「何故だ?」

 

梨子「遠泳10キロとかあるらしいです」

 

英玲奈「……この話は忘れよう」

 

 

 

 

 

ー DF組 ー

 

 

にこ「そこはもっと速くコースを塞ぎなさい!」

 

晴夏「はい…!」バッ

 

ことり「っっ!」バッ

 

 

DFのメンバーはにこをエドガーに見立ててのディフェンス練習をしていた。

にこの指導を元にドリブルコース、シュートチャンスを潰すDFたち。

にこは簡単には止められないが、複数人で連携すれば必ず抑えられる

 

 

希「でも、ほかの選手のマークが手薄になるのは避けたいね」

 

あんじゅ「そうね…それに、マンツーマンはかなり体力削るわ」

 

希「うーん…その問題もあるから、確か美奈さんが、"もうひとつの作戦"を考えてるって言ってたなぁ…」

 

あんじゅ「もうひとつの作戦?」

 

 

 

 

 

聖良「ハァハァ…理亞、もう一度です」

 

理亞「姉様…確かにその技は強力だけど…姉様への負荷が、」

 

聖良「はい…ですが、この技を完成させなければイギリスには勝てません…!」

 

理亞「姉様…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

夕方。

まもなく太陽は海に沈む。

練習終了の笛がなり、選手たちは流した汗を落としに宿舎へ戻る

 

 

ダイヤ「…?果南さん、戻らないのですか?」

 

果南「…ちょっとね。もう少し練習していくよ」

 

ダイヤ「…そうですか」

 

 

果南は自主練習を浦の星の頃から積極的にしていたが、今はそれ以上に。

毎日自主練習を続けている。

 

夕食後に部屋に戻ると、外からボールを弾く音が聞こえる日もある。

朝は誰よりも早く起き、ランニングへ…

たまに不安になる。

果南は…いつ休んでいるのかと

 

 

ダイヤ「無理、しないでくださいね」

 

果南「…分かってるよ」

 

ダイヤ「…」

 

 

果南の気持ちはよくわかる。

不安なはずだ。

日本のゴールは、果南の力に任されているのだから…

 

 

ダイヤ「…わたくしも残りますわ」

 

果南「え、」

 

ダイヤ「シュート相手がいた方が練習になります」

 

果南「ありがとう。ダイヤ」

 

 

 

こうして、ダイヤと果南の2人だけの練習が始まったのだが…

ダイヤのシュートを何本か受けた果南の顔は少し暗い…

 

 

 

果南「うーん…やっぱダメだなぁ…」

 

ダイヤ「何がですか?」

 

果南「新しい必殺技」

 

ダイヤ「…!!何か考案中なのですか?」

 

果南「考案、って言っても…まだ何も思いつかないけどね」

 

ダイヤ「そうですか…」

 

 

自分が日本のゴールを守るためには、もっと強力な必殺技を。

いろいろ考えた結果、行き着いた答えは結局それだった。

 

だが、簡単に言っても実現はかなり難しい。

世界レベルのシュートを止める技…

まずは技のイメージが浮かばない限り、いつまでたっても新技は完成しない

 

 

果南「イメージも何も浮かばないや、」

 

ダイヤ「凛さんは富士登山をヒントにシュート技とディフェンス技を習得しました。果南さんはそこでは…?」

 

果南「うーん…確かに何かありそうだったけど、私は何も得られなかったな…」

 

ダイヤ「…」

 

 

これはかなり難航しそうだと空を見上げるダイヤ。

自分も手伝うと言ったのだ。

最後まで責任を持って……持っ、て…

 

 

 

 

果南「…?ダイヤ、どうしたの?」

 

ダイヤ「空が、綺麗ですわ」

 

果南「…!ほんとだ」

 

 

日は既に沈んでいた。

暗い夜空に描かれているのは輝く砂。

点々と、散りばめられ、それぞれが優しく光っていた

 

 

果南「富士山の頂上でも見たよ。すごく綺麗だった」

 

ダイヤ「吸い込まれそうです。空は本当に不思議ですわ」

 

 

魅入ってしまった。

練習を忘れ、数分。

果南は星に、星座に詳しかった。

ダイヤに空へと指さし名を示し、楽しそうに宇宙を語った

 

 

ダイヤ「果南さんが一番好きな星座はどれですか?」

 

果南「うーん…いるか座かな?」

 

ダイヤ「いるか座、ですか」

 

果南「イルカが、好きだったからね。小さい時からいるか座を熱心に探してた」

 

ダイヤ「ありますか?いるか座は」

 

果南「探したけど、見つかんないなぁ…多分、宇宙を泳いでるんだよ」

 

ダイヤ「ロマンチックですわね」

 

果南「ははは…練習、戻ろっか」

 

 

長い時間、空を見ていたため少し首が痛い。

果南がゴール前に戻るまでダイヤは首をほぐす。

そして果南の準備が出来たことを確認すると……

 

 

果南「いるか座か…それ。いいね」

 

 

 

何を閃いた子供のように、得意げに笑みをこぼす果南がいた

 

 





おそらく、果南ちゃんの新技はルビィちゃんキャンディーが1番、時間をかけて考えたものになると思います



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第3章 71話 「銀のマカロン」


皆さんどうも!記述模試を終え、受験で使わない国語が一番点が高くて死にそうなルビィちゃんキャンディーです!

台風が明日から上陸ですが皆さん大丈夫ですか?流石に地元の電車も運行停止し、塾も行きません。家でのんびりと勉強します…

今回のお話は世にも奇妙な…?




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

穂乃果のやめたこと、それはキャプテン。太陽の資格だった。太陽は千歌へと受け継がれ、サニデイジャパンは新しいスタートを切った。練習では聖良や果南が新必殺技の特訓中。果たして、完成することが出来るのか?

 

 

 

 

――――――――――――

―――――――

―――

 

 

 

 

……は…ちゃん…

 

 

よ……ねちゃん……

 

 

ヨハ…ちゃん……

 

 

 

 

ことり「ヨハネちゃん!」

 

善子「うーん…ことり、さん?」

 

 

あれ?私、寝てたのよね?

 

 

善子「ことりさん、おはようございます…早いですね」

 

 

ことりさんと私は、ことりさんの熱い希望により同部屋。

たまにことりさんが私のベットに入ってくるのがどうしても慣れないけど…

 

 

ことり「ふふっ♪それはね…これを食べてもらうためです!」

 

善子「…?」

 

 

ことりさんが何かを私に差し出す。

お皿…の上には……

 

 

善子「マカロン??」

 

ことり「そうです♡銀のマカロンです♡」

 

 

ことりさんが作ったマカロン…ことりさんは女子力の塊と言っても良い人だ。

穂乃果さんからも聞いたことがある。

よくみんなにお菓子を作ってくると。

 

…それにしても、銀のマカロン…ね。

なかなか攻めた色をしている…味は、問題ないのだろうけど

 

 

善子「じゃあ、いただきます」

 

ことり「どうぞ♡」

 

 

少し大きめのマカロンを手に持つ。

ここはまだベットの上だ。

マカロンをこぼさないように…

 

 

サクッ

 

 

ひと口

 

 

 

善子「……美味しい」

 

ことり「嬉しい!良かったぁ…」

 

 

銀の色…は着色かな?

普通に美味しい。

味は…何かのフルーツだろうか…

甘い、砂糖の。ジャムのような蕩ける甘さが口に広がる

 

 

ことり「まだまだあるからね♪」

 

 

ことりさんはもっと食べてと言うかのように、マカロンが乗る皿を私に近づけた。

美味しいから、食べてもいいんだけど…

このあと私は朝のランニングに行く。

あまりお腹にはためたくない

 

 

善子「あ、あの…ランニングから帰ってきたら食べるのでもいいですか?」

 

ことり「…?……あ、そっか!ヨハネちゃんは朝、走ってるもんね。ごめんね?気づかなくて」

 

善子「い、いえそんな…帰ってきたら美味しく頂きます」

 

ことり「うん♪」

 

 

ということでジャージに着替え、ランニングの準備に入る。

数ヶ月前から私はランニングを始めた。

共鳴に体が耐えられるように…基礎体力をつけるために…

まぁ、昔の私が見たら驚くでしょうね、

 

 

善子「じゃあ、行ってきます」

 

ことり「行ってらっしゃい♪」

 

 

 

 

ガチャン

 

 

 

 

ことり「……」

 

 

ことり「……ふふっ♪ヨハネちゃんに美味しいって言ってもらえた…ふふっ…ふふふ…」

 

ことり「みんなにボイストレーニングさせた甲斐があったね♪」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

善子「…ことりさん、マカロンなんていつ作ったのかしら」

 

 

いろいろモヤモヤはあるが、今はランニングに専念しよう。

靴を履き、玄関の扉を開ける。

南の島とはいえ、日が出る前の朝の気温は丁度いい

 

 

善子「…!もう誰かいる」

 

 

 

にこ「あら、善子じゃない。おはよ」

 

善子「おはようございます。にこさん」

 

 

玄関を出た先でリフティングをしているにこさん。

聞く話によると、にこさんは小さい時から朝の自主練習を継続しているらしい…

サボった日はないようで…ただの超人か?と。

自分もやり始めたから分かる。

にこさんはヤバい

 

 

にこ「今、にこのことヤバいとか思った?」ポンポン

 

善子「い、いえそんな…!」

 

 

危なっっ!?今、にこさん私の思考読んだわよね!?下手なことは出来ないわね……ん、待てよ?今この思考も読まれている可能性が…

 

 

にこ「思考なんて読んでないわよ」ポンポン

 

善子「そ、そうですか…なら安心」

 

 

……ん?

 

 

 

果南「おっ!善子も朝練?おはよ!」

 

善子「果南…!」

 

 

ちょっと気まずい空気になっていた中で救世主登場…

朝練の超人の一人、果南。

言わずもがな果南は浦の星の時から朝練が日課という…

雰囲気から見るに既にランニングを終えたようだ…

 

…え?今は5時半よ?

果南は何時から走ってるのよ、

 

 

にこ「どう?果南。成果は」

 

果南「うーん、やっぱり1人だとこれぐらいになっちゃうかな」

 

善子「…果南。何それ?」

 

果南「ん?」

 

 

果南が手に持っているのは…金貨?金のメダル?

 

 

にこ「コインよ。いつも集めてるじゃない」

 

善子「??」

 

 

いつも?コインなんて集めた記憶ないんだけど…

 

 

果南「善子もランニング行くならコインよろしくね」

 

善子「え…え?」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

と…まあ、ランニングしてきたんだけど…

 

 

 

 

 

 

善子「何よこれ」ジャラジャラ

 

 

本当にコインが手に入ったんだけど…

 

 

果南「おかえり♪結構手に入ったじゃん!」

 

 

走ってると、急に何も無いところからシュバン!!って。

コインが現れる…

原理は全くわからないし、少し気味が悪い

 

 

にこ「でも、まだ足りないわね。今日の特訓メニューにランニング追加ね」

 

果南「全員でやればかなり集まるね」

 

 

……この2人は平然と会話しているけど、ランニングでコインが手に入るって…かなり異様な光景じゃないの?

違和感仕事して

 

 

にこ「もうすぐ朝食の時間よ。戻りましょ」

 

善子「は、はい…」

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

ルビィ「善子ちゃん!練習行こ!」

 

善子「えぇ」

 

 

朝食も何かあるのでは…と身構えていたけど、何も起きなかったわ。

無駄に疲れた。

いや、疲れたなんて言うにはまだ早いわ…!

これからが練習、気を抜いてなんていられないんだから

 

 

 

 

海未「それでは、今日の練習メニューを発表します」

 

善子「…」

 

 

いつもの光景。

グラウンドに集合して海未さんの指示から練習が始まる。

ホント、音ノ木坂学院の人たちはコーチかってぐらい指導者してる。

FW・GK担当穂乃果さん、MF担当海未さん、DF担当にこさん…

海未さんの練習メニューは信用でき…

 

 

海未「ビラ配りです」

 

善子「…」

 

 

いやいやいやいやいやいやいや!?

 

 

善子「ビラ配り!?」

 

ルビィ「ピギィ!?善子ちゃん!?」

 

海未「よ、善子…何か?」

 

善子「何かって何よ!?ビラ配り??何でそんなことする必要があるの??」

 

 

もう混乱しているのでやけくそになる

 

 

善子「サッカーの練習は!?」

 

理亞「どうしたのよ善子。いつものビラ配りよ?」

 

善子「いつも…?」

 

海未「はい。最近は毎日のように続けているではないですか。経験値はすぐに消費してしまいますからね」

 

善子「け、経験値…?」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

ー 日本エリア街道 ー

 

 

穂乃果「お願いしまーす!」

 

梨子「はぁ…」

 

ルビィ「はぅ…疲れたよぉ…」

 

 

善子「…」

 

 

おかしい。

何故だ。

何故、ビラ配りをするだけで………

 

 

 

シュバン!!

 

 

 

銀のメダルが出る…!?

 

 

 

ダイヤ「皆さん、しっかりビラを配ってくださいね!わたくしたちのレベルアップは、このビラ配りにかかっているのですから!」

 

「「「はい!お願いしまーす!!」」」

 

 

善子「」

 

 

 

 

 

こうしてビラ配りすること1時間。

こんなものでしょう…と袋を担ぐ海未。

中には銀のメダルが入っている

 

 

善子「まるでゲームセンターのメダルを補充する店員ね…」

 

海未「さ、次は戻ってストレッチですよ!」

 

 

良かった…やっとまともな練習が始められそうだ。

浦の星の頃は体が硬く、よく果南にしばかれていた。

だが今は誰よりも柔軟な体である自信がある…!

果南を驚かせてやるわ!

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

…………うん。確かにストレッチね

 

 

 

希「ふぅ…」

 

千歌「ビビっと閃いた!」

 

 

ポン!ポン!ポン!

 

 

善子「メダルの次はマカロン!?」

 

 

ポケットを叩くとビスケットが2つ、とかいう歌があるけど…

ストレッチするだけでマカロンが1つ2つ3つって……意味がわからない。

ってか、千歌。何を思いついたのよ

 

 

海未「特に赤のマカロンが足りません!皆さん頑張ってください!」

 

善子「赤と水色のマカロン…」

 

 

出現するマカロンは2種類。

赤と水色。

たまに3つがセットになって出たりする。

全員が平然とした顔でストレッチを続ける…

 

 

英玲奈「海未。赤も足りないが紫はもう在庫無しだ」

 

海未「ふむ…ではこの後は遠泳にしましょう」

 

 

善子「え…まだやるの??」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

千歌「私についてきて!」バシャバシャ

 

善子「…」バシャバシャ

 

 

ということで、紫のマカロンを手に入れるために遠泳…と、

もう突っ込まないわよ?

流石にこう何度も怪奇現象を体験してしまえば、感覚が麻痺する。

もうトレーニングに集中する。

無心よ、無心……

 

 

 

ルビィ「うゆ〜…」プカプカ

 

 

善子「…」バシャバシャ

 

 

ルビィ「うゆ〜…」プカプカ

 

 

善子「……」バシャバシャ

 

 

 

遠泳に…浮き輪ぁぁぁぁ!!???

 

 

 

善子「ちょっ、ルビィ!?」

 

ルビィ「?」

 

 

なんでルビィは浮き輪なの!?

泳ぐ気ないでしょ!!

海未さんに絶対にしばかれるし、泳いでないのよ?みんなに置いていかれ…

 

 

善子「…」バシャバシャ

 

ルビィ「?」プカプカ

 

 

ぬあんで浮き輪に追いつけないのよ…!?

 

 

善子「おかしい」

 

 

ルビィは足をばたつかせてもいない。

手で犬かきしているわけでもない。

ただプカプカしているだけ…なのに、泳いでいるメンバーにピッタリとくっついてる

 

 

海未「皆さん、もう少しですよ!」

 

 

一番驚いたのは海未公認だということだ。

一見、サボっているようにしか見えないルビィ。

しかし、海未は怒らない。

おかしい。

いつもなら今頃、海(海未)の塵になっているはずだ

 

 

善子「(みんなどうしちゃったのよ…)」

 

 

 

 

 

しかし、本当の地獄はここからだった

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「「「ららら〜〜〜」」」

 

 

善子「」

 

 

 

ボイストレーニング…ねぇ?

 

 

 

海未「善子も声を張ってください!」

 

善子「」

 

 

 

もうサッカーの練習とかそういう問題じゃないわ

 

 

海未「善子ー??」

 

 

みんな必死にトレーニングしてるけど、ボイス??なぜにボイス??

もっとやることがあるでしょ…

 

 

海未「聞いているのですか!?」

 

 

聖良…あなた新必殺技の特訓するんじゃなかったの?

果南も…そんなところで歌ってないで練習を…

 

 

海未「善子!!」

 

善子「うにゃあ!?海未さん!?」

 

海未「先程から呼んでいるのにどうしたのですか!?」

 

善子「ご、ごめんなさい…」

 

海未「あなただけですよ!銀のマカロン×3を出していないのは!」

 

善子「…」

 

 

銀のマカロン×3…どうやらどのマカロンよりも一番貴重なマカロンらしくて…これのためにボイストレーニングをしているとか。

ってこれ、朝ことりさんが食べさせてくれたやつじゃ…

 

 

善子「ららら〜…」

 

 

ポン!

 

 

銀のマカロン×2

 

 

 

善子「ららら〜…」

 

 

ポン!

 

 

銀のマカロン×1

 

 

 

善子「…」

 

 

 

ね?ずっとこの調子。

みんな銀のマカロン×3を出していく中、私だけ未だにひとつも出していない

 

 

海未「出すまで終わらせませんからね」

 

善子「はい…」

 

 

もしこれが運ゲーだとしたら…

私は無理よ。

だって…運ないし

 

 

ポン!!

 

 

 

善子「!!!!!!!!!!」

 

海未「これは…」

 

善子「しゃあぁぁぁ!!!!」

 

 

どうやら考えすぎだったようね!!

銀のマカロン×3出してやったわ!

え?早いって?そんなの関係ないわ!この私の運があれば……

 

 

海未「これは、金のマカロン×3ですね。ダメです」

 

善子「」

 

 

あはは…金のマカロンとか聞いてないわよ…

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ー 1時間後 ー

 

 

 

善子「ゼェゼェ…ゼェゼェ」

 

 

喉が…痛い…何とか出したわ、銀のマカロン×3。

なんでこんなのなんかに命張らなきゃいけないのよ…出現率いかれてるんじゃないの?

 

 

海未「お疲れ様でした」

 

善子「海未、さん…」ゼェゼェ

 

海未「これで今日の練習は終了です」

 

 

終わった…この変な練習もなんとか…

 

 

海未「ですが、善子はまだ終わりません」

 

善子「…………」

 

善子「え?」

 

ことり「今日はヨハネちゃんの番だもんね♡」

 

海未「はい」

 

善子「あの、番って…」

 

海未「特訓です」

 

善子「…あの、十分特訓したんですけど」

 

海未「いえ。今日1日は特訓の素材集めでした」

 

善子「特訓の、素材?」

 

ことり「今日集めたマカロンはぁ〜…全部ヨハネちゃんが食べるの!」

 

善子「…え?全部?」

 

海未「はい。マカロンを1000個。今日中に全て食べてもらいます」

 

善子「」

 

海未「それと花も育ててもらいます。今日中に花を咲かせてください」

 

善子「あ、あの…種しかないんですけど、」

 

海未「気合いで一晩で咲かせるのですよ」

 

 

この人は私を花の妖精かなにかと思っているのだろうか。

頭が回らない、私の横に山のように積み上げられたマカロンがある気がする

 

 

ことり「ヨハネちゃん!はい、あーん♡」

 

善子「…」パクッ

 

 

…普通に美味しいが、これが1000

 

 

海未「さあ、どんどん口に放り込む!」

 

善子「…」パクッパクッパクッ

 

 

なんだろう…もうお腹いっぱいなのに、手が止まらない。

体が…言うことを聞かない。

誰かに、支配されているようだ

 

 

海未「もっとです」

 

ことり「もっと♪」

 

海未「もっと」

 

ことり「もっと」

 

 

食べなきゃ

 

 

海未、ことり「もっともっともっと」

 

 

食べなきゃ

 

 

「もっともっともっともっと」

 

 

強くなれない

 

 

「もっともっともっともっともっともっともっともっと」

 

 

マカロン

 

 

 

 

 

 

 

もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「うにゃあぁぁぁぁ!!!!??」ガバッ!

 

 

善子「ハァハァ…ハァハァ」

 

善子「夢!!?」

 

 

飛び起きた。叫んだ。

ベットの上だった。

空はまだ薄暗い。

…夢だった

 

私はベットに再び倒れる。

安堵、そして鞠のように弾む心臓を落ち着かせる。

 

久しぶりに長い夢を見た。

冷や汗が止まらない。かなり怖かった

 

 

善子「良かったわ…」

 

 

練習をしていないのにもかかわらず、息切れが治まらない。

今考えても、かなり奇妙な夢だった

 

 

ことり「う…ヨハネちゃん?」

 

善子「あ、ことりさん」

 

 

起こしてしまった。

まだ起床時間には早い。

悪いことをしてしまった

 

 

善子「まだ明け方です…ごめんなさい」

 

ことり「しょうなの…?ヨハ、ネ……すぅ…」

 

 

ことりさんは再び眠りについた。

…夢の中のことりさんの目はヤバかった。

光がなかった。

今でも思い出せる。

マカロンを摘み、私の口に運ばせることりさんの姿が

 

 

善子「…まだ少し早いけど、朝練行く……ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー ヨハネちゃんへ♡ ー

マカロン、食べ残しちゃダメだよ♪

 

 

 

 

 

 

 

机の上にメモと銀のマカロンがあった。

 

ことりさんに聞いたが、

 

 

 

 

ことりさんは…そしてサニデイジャパンのメンバーは誰も銀のマカロンを作ってないと。

 

 

 

 

私はマカロンが苦手になりました

 

 






運営の機能改善に感謝。
ですが、少しユーザーたちの欲望を聞き入れ過ぎてないかと。
簡単すぎるRPGになってしまうとこの先が不安です



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第3章 72話 「イギリス戦 "決戦!ナイツオブクイーン"」


皆さん、どうも!ラグビーで高まったテンションのまま72話を書ききったルビィちゃんキャンディーです!日本強すぎませんか!?強敵ぞろいな中全勝!もう感動以外の言葉が見つかりませんでした!

そして台風、皆さん大丈夫でしたか?自分は某ダムがなければワンチャン川の瓦礫になっていました…ダム感謝。濁流に飲み込まれるかと思ったり、土砂崩れで線路が潰れたり大変ですが…

今回からイギリス戦です!もう少し果南ちゃんの練習風景を書きたかったのですが、どうしても時間がなかったので…申し訳ないです。イギリス戦も熱くします。頑張ります




 

 

 

 

 

ー イギリス戦当日 ー

 

 

果南「ハァハァ…くそっ…やっぱりできなかった」

 

ダイヤ「あと少し…なのですが、」

 

果南「くっ……」

 

 

時は早朝、イギリス戦当日。

果南とダイヤはグラウンドにいた。

果南の新必殺技…あれから全力で特訓した。

しかし、間に合わなかった…

 

 

ダイヤ「これ以上は今日の試合に疲労が…」

 

果南「でも、まだ新必殺技が…!!」

 

ダイヤ「果南さん…」

 

果南「!!」

 

 

ダイヤは悲しそうに。

そして静かに怒っているようであった

 

 

ダイヤ「今の日本には、あなたしかいないのですよ」

 

果南「…っっ」

 

 

果南は憎む。

自分の弱さを、足りなさを。

ならその悔しさを試合にぶつけてやろう……ぶつけたところで、イギリスにーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーーー勝てるのだろうか、

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

ー ヤマネコ島 ー

 

 

A『全世界のサッカーファンの皆様、お待たせいたしました!!本日はFFI世界大会グループA、ナイツオブクイーン 対 サニデイジャパンの試合を、ここヤマネコスタジアムからお送りします!!会場は超満員です!!』

 

レヴィン『スペインから劇的勝利を獲た日本。そしてイタリアと互角の勝負を繰り広げたイギリス…初戦よりも試合展開の予想が難しくなっていますね』

 

A『はい!どちらが勝ってもおかしくないこの試合……おっと!!両チームの選手が入場してきました!!』

 

 

 

 

ワアァァァァァァ!!!!!!!!!!

 

 

 

善子「歓声がビリビリ来るわね」

 

果南「これ、どっちの応援?やっぱりイギリス?」

 

月「そうだね…でも、日本のサポーターも沢山いるよ!スペインの時以上の迫力だね」

 

 

千歌「…」

 

穂乃果「大丈夫!」

 

千歌「穂乃果さん…」

 

穂乃果「千歌ちゃんならやれる!私を照らしてくれたんだもん!みんなを照らせるよ!」

 

千歌「…はい!」

 

 

 

 

「少しよろしいですか?」

 

 

 

 

千歌、穂乃果「!!」

 

 

エドガー「改めまして。イギリス代表のキャプテン、エドガー・バルチナスです。今日の試合、お互いにベストを尽くしましょう」

 

穂乃果「エドガーさん!」

 

千歌「こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

エドガー「キャプテンが変わったとは聞いていましたが、あなたが新たな日本の騎士団長ですね」

 

千歌「き、騎士団長??」

 

 

A『ここで新たな情報が入ってきました!日本代表サニデイジャパンは……なんと!キャプテンが高坂穂乃果から高海千歌へと変更されるようです!!』

 

レヴィン『気になりますね…穂乃果選手の負傷が原因でしょうか』

 

A『高海千歌は何を隠そう、日本一のサッカーチーム。浦の星女学院のキャプテンでもあります!これは注目したいところ…!』

 

 

 

エドガー「それでは後ほど…ですが、」

 

千歌「?……!!」

 

 

エドガー「ここからは本気の勝負です。手加減も情けもなしです」ギロッ

 

 

目つきが一瞬で変わった。

まるでルビィや穂乃果がスイッチを切り替えた時のようだ。

敵意…純粋にライバルに向ける威圧だった。

 

エドガーも本気だ。

千歌は不覚にも相手の選手のおかげで気合いを入れ直せたのであった

 

 

 

 

A『さあ!両チームのスターティングメンバーが発表されました!』

 

 

 

サニデイジャパン

 

FW………鹿角理亞、黒澤ルビィ

 

MF……渡辺曜、高海千歌☆、園田海未

 

MF………統堂英玲奈、桜内梨子

 

DF…………南ことり、鹿角聖良

 

DF…………………津島善子

 

GK…………………松浦果南

 

 

1-2-2-3-2

 

 

 

A『日本のこのスタメン、レヴィンさんはどう見ますか?』

 

レヴィン『そうですね…一番はやはり守りですかね。日本がどこまでイギリス、そしてエドガー選手の攻撃を防げるか。そんな中での守護神・高坂穂乃果選手の負傷…これがどう影響するか』

 

A『この試合のGKは浦の星女学院3年、松浦果南が出場しています。彼女もアジア予選で素晴らしいセーブを魅せてくれました!』

 

 

 

フィリップ「…スタメンでルビィと理亞か、」

 

エドガー「日本のFWは強力ですからね。私たちも気を引き締めなくては」

 

 

 

 

ナイツオブクイーン

 

FW……………エドガー☆、フィリップ

 

MF…ピーター……………………………ポール

 

MF………………ケイリー、エリック

 

DF……ジョニー、デービッド、ランス、エッジ

 

GK……………………フレディ

 

 

4-2-2-2

 

 

 

A『対するイギリス。日本も攻撃的なチームですが、それ以上の攻撃力があると言えますね』

 

レヴィン『はい。なんと言ってもエドガー選手でしょう。そして連携攻撃も脅威です。繰り返しになりますが、日本はどこまでイギリスの攻撃を防げるのか…注目です』

 

 

 

 

ー 日本ベンチ ー

 

月「エドガー以外の選手にも注意だよ。僕のチームメイトも何人かいるからね」

 

真恋「この試合に勝てば決勝リーグに王手よ。気を引き締めてね」

 

美奈「じゃあ、みんな行ってらっしゃい♪」

 

 

千歌「よし…絶対に勝とう!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

両チームの選手がポジションについた。

日本は最初からルビィと理亞を起用。

火力で叩く意思がビリビリと伝わってくる。

まさに、短期決戦

 

 

A『ええー、この試合と同時にイタリアとスペインの試合も行われています。果たしてAグループで最初に決勝リーグへと王手をかけるのは果たしてどのチームか!?』

 

 

 

 

ピーーー!!!!!!

 

 

A『さあ、試合が始まりました!前半は日本ボールから、黒澤ルビィと鹿角理亞が上がっていく!!』

 

 

 

ルビィ「最初から飛ばそう…!」

 

理亞「えぇ!」

 

 

ルビィと理亞はお互いがお互いのスピードに合わせる

 

 

ルビィ「っ!!」パス

 

理亞「!!」

 

 

ケイリー「(なんてパス…!?全てに無駄がない!!)」

 

 

理亞「っ!!」パス

 

ルビィ「!!」

 

 

ポール「くっ…!?」

 

 

A『FWコンビの華麗なパスワーク!!イギリス選手を次々と突破していく!!』

 

 

 

パスを出す場所、もらう場所、タイミング

 

 

エッジ「…」

 

 

完璧にシンクロさせてきたその動きに、流石のイギリスも……

 

 

 

ルビィ「理亞ちゃ…」パス

 

エッジ「貰った!!」バッ

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

ルビィ、理亞「!!!!??」

 

ルビィ「なっ!?」

 

理亞「嘘…取られた!?」

 

 

A『ああっと!?奪われました!!これはエッジ選手が完全に読んでいた!』

 

 

凛「あのパスが通らないの…!?」

 

月「っ…手加減なしの2人から奪う、か」

 

美奈「……」

 

 

ルビィと理亞がミスしたわけではない。

逆に調子がいいぐらいだった。

…そのパスが斬られたのだ。

動揺しないわけがない

 

 

エッジ「エリック!」パス

 

 

英玲奈「ディフェンスを固めるんだ!」

 

 

すぐに守りに切り替える日本。

この日のために特訓してきたディフェンス

 

 

梨子「(体のぶつけ方が上手い…!?)」

 

フィリップ「デービッド!」パス

 

 

聖良「パス…!!取った!」バッ

 

 

聖良がパスコースに飛び込む。

このままボールを奪えなくても、すぐにデービッドのディフェンスをすることが…

 

 

デービッド「ふっ…」スカッ

 

聖良「(パスを避けた…スルー!?誰に!?)」

 

 

 

 

 

エドガー「ナイススルーです!!」

 

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

聖良「エドガーさん!!」

 

果南「マークを外してたの!?」

 

 

 

A『エドガーにボールが渡ったあぁぁぁ!!!!完全にフリーでドリブルを開始!!』

 

 

にこ「ちょっと…あれだけエドガーには気をつけろって…!!!」

 

ダイヤ「ここで"エクスカリバー"を撃たれたら…」

 

 

聖良が動いたことにより出来たスペースを使い、攻め込むエドガー。

日本の選手たちの顔が一瞬で真っ青になったのが分かる。

今、あのシュートを撃てば…ゴールに一直線…届く!!

 

 

 

エドガー「まずは1点ですかね」グッ

 

 

英玲奈「まずい…止めろ!!」

 

ルビィ「''ATP"でなんとか…!!」

 

 

 

エドガーが構えに入ーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーーーー「ー Deep Resonance ー」

 

 

 

イギリス「「「!!!!??」」」

 

エドガー「!?(津島善子…!!)」

 

 

エドガーの足に、ボールは無かった

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

曜「善子ちゃん!」

 

ことり「ヨハネちゃん!」

 

 

善子「全員、気を引き締め直しなさい!!こんなところで負けるわけにはいかないのよ!!」

 

 

A『津島善子が奪ったぁぁ!!あのエドガー選手から共鳴でボールを奪いました!日本、津島善子に救われた!』

 

 

英玲奈「善子に続け!!カウンターだ!」

 

 

イギリスはスペインとは全く別のチームだ。

個人技よりもチームプレイ。

巧みな戦術で日本を崩そうとする。

 

エドガーがフリーだったのはそれが理由。

日本が崩された決定的な証拠だった

 

 

善子「千歌!」パス

 

千歌「よしっ…行けるよ!」

 

 

しかし、チーム全体で攻めるということは、カウンターを仕掛けられやすいということだ。

イギリスにはカウンターが効くはず…!!

日本の選手が一斉に走り始めた

 

 

エドガー「…なかなかやりますね」

 

 

千歌「ー ZスラッシュG3 ー!!」ギュンギュン!

 

フィリップ「なっ!?」

 

 

A『高海千歌を中心に攻める日本!電光石火のパス回しで確実にゴールに近づいている!!』

 

 

千歌「海未さん!」パス

 

ジョニー「行かせない…!!」バッ

 

海未「曜!」パス!

 

ジョニー「(ダイレクト…しまった!?)」

 

 

曜「!!」

 

 

パスを貰った曜は前を向く。

残ったDFは1人。

行ける。

曜は考える暇なくいっきに飛び出した

 

 

花丸「曜ちゃん、そのまま突破ずら!」

 

月「…あの選手は、」

 

 

 

ランス「…来い!渡辺曜」

 

 

曜相手に1対1は、いくらスピードが自慢な選手でもついて行くのは厳しい。

急激な速度変化を武器とする曜のドリブル。

サニデイジャパンの中でも強力な武器となっている

 

 

曜「スプリント……!!」ググググ

 

 

ルビィに教えてもらった。

この技はロケットスタートで飛び出すのが一番良いと。

ルビィのあの切れ味のあるドリブルに少しでも追いつくために…

曜は筋肉を。

体の力を解き放つ

 

 

曜「ワープG2!!!!」ビュン!

 

 

海未「進化…!」

 

ルビィ「曜ちゃん…!!」

 

 

ただまっすぐ突っ込むだけではない。

横に揺らしながらDFを翻弄する。

ただでさえ高速な必殺技。

直接捕らえることはほぼ不可能。

しかし、

 

 

ランス「ー ストーンプリズン ー!」

 

曜「!?」ビュン!ビュン!

 

 

英玲奈「なにか仕掛けたぞ!?」

 

晴夏「な、何あれ!?」

 

 

曜の周りを…巨大な石の壁が囲い始めた

 

 

曜「(まずい…閉じ込められる!!)」ビュン!

 

 

徐々に逃げ道が塞がれる。

横と後ろは完全に石の壁だ。

残すは前。

曜は迷わなかった

 

 

ランス「無駄だよ!」

 

曜「ダメだ…間に合わないっっ!!」

 

 

 

トガッッッ!!!!

 

 

 

曜「うわっ!?」ドサッ!

 

 

理亞「曜…!!」

 

ルビィ「石の牢獄…"スプリントワープ"でも逃げきれないなんて、」

 

 

A『出ました…!!ランス選手の必殺技、"ストーンプリズン"!!渡辺曜は石に衝突し、ボールを奪われた!!』

 

レヴィン『イタリアが得点を伸ばせなかった理由があの技ですね。あのフィレア選手でさえ、あの技には苦戦していました』

 

 

曜「っっ…そうだ…イタリアが1点しか決められなかったんだ!」

 

 

ランス「エドガー…!!」パス

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

エドガー「…」

 

 

エドガーにボールが渡った。

先程も言ったが、チーム全体で攻めるということは、カウンターを仕掛けられやすいということだ。

エドガーのディフェンスが薄くなったのを、イギリスの選手たちは見逃さなかった

 

 

 

にこ「エドガーが…ドフリー…」

 

ツバサ「完全に意表を突くロングパス。やられたわね」

 

 

 

エドガー「"選ばれし技"…喰らうがいい!!」ザッ!

 

 

エドガーは地面を両手で払うような構えをとる。

そのひとつひとつの動作が、まるで完成された芸術品だった

 

 

エドガー「!!」バッ

 

 

飛ぶ。そして一回転。

全てを貫き、大地を斬る。

世界最高レベルの必殺の一撃が…今!!!!

 

 

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!!」

 

 

 

ギシャアアアァァァァァァン!!!!!!

 

 

 

A『出たあぁぁぁ!!!!エドガーの"エクスカリバー"だあぁぁ!!!!』

 

 

 

穂乃果「うわっ!?ヤバい…!!」

 

希「果南ちゃん…!!」

 

 

果南「っっ…!!!!」

 

 

大剣が振り下ろされた瞬間。

衝撃で周りの選手は吹き飛び、地が揺れた。

もはや…人間が放つシュートではなかった

 

 

梨子「きゃあぁっ!?」

 

英玲奈「ダメだ…!!衝撃波が…」

 

聖良、ことり「っっ!!!!?」

 

 

 

A『松浦果南は止められるのかぁぁ!!?』

 

 

 

 

日本 0-0 イギリス

 

 





ご感想、お待ちしております!


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第3章 73話 「イギリス戦 "絶対なる聖剣"」


皆さんどうも!明日から学校で発狂寸前のルビィちゃんキャンディーです!ついにですね…受験前の模試ラッシュが始まりました。毎週土曜日は模試。模試模試模試模試模試模試模試模試ぁあぁあぁあ!!??*♪¾,…_Ⅲ→<@:/【√】




 

 

 

 

 

ついに始まったイギリス戦。スペインとは全く違うチームのイギリスは連携攻撃で日本の陣形を崩そうと狙う。そして、新必殺技が完成しなかった果南に向けて、聖剣が振り下ろされたのである

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!!」

 

 

 

ギシャアアアァァァァァァン!!!!!!

 

 

 

A『松浦果南は止められるのかぁぁ!!?』

 

 

 

果南「っっ…!!」

 

果南(凄い威力…ルビィの"ラストリゾート"と同じ次元だ…っ!)

 

 

エドガーの近くにいた日本の選手は全員、吹き飛ばされた。

あの時と同じだ。

イタリア対イギリス。

鞠莉やフラム…吹き飛ばされていた

 

 

果南「だからって逃げていい理由にはならないっっ!!」バッ!

 

 

ダイヤ「果南さん…!!」

 

あんじゅ「果南ちゃんの新必殺技は…間に合わなかったの?」

 

ダイヤ「はい、あと少しなのですが…」

 

 

 

エドガー「受けますか、果南」

 

果南「っっ!!」

 

 

果南はゴールの上空。

荒れ狂う竜の如く、竜巻を作る。

竜巻と垂直に突っ込みボールを全力で叩き潰すその力は…

 

全てを沈める

 

 

果南「ー 真 海竜の逆鱗槍 ー!!」ドガアァン!

 

 

月「真…!!特訓で進化させたんだ!」

 

ダイヤ「…っっ」

 

 

果南「ぐぬぬぬぬ……!!!!」ググググ

 

 

エドガー「ほう…なかなか頑張るではないですか。ですが、」

 

 

果南(何これ…斬られ……

 

 

 

果南は感じた…いや、確かに見た。

 

ーーーシャキィィン!!

 

果南の気迫とも言える、海竜。

竜が…真っ二つに。

金属が空気を切る、透き通った音と共に。

 

斬られた

 

 

 

 

バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

果南「うわあああっっ!!??」

 

 

A『ゴール!!!!イギリス先制点!!!』

 

 

日本「「………」」

 

真恋「っ…」

 

美奈「……」

 

 

 

ワアァァァァァァァ!!!!!!

 

 

A『決めたのはイギリスのエドガー選手だぁぁ!!!!!!』

 

 

果南「ハァハァ…きっつい…」

 

聖良「果南さん…大丈夫ですか?」

 

 

果南は未だに起き上がれず、地面に手をついていた。

格が違う。

目の前の光景がそれを物語っていた。

 

地面に出来た巨大な亀裂。

そして先程、吹き飛ばされた日本の選手たちの動揺を隠せない表情。

スタジアムに響く歓声

 

 

果南「さすがは世界、だね…そう簡単にはいかないよね」

 

聖良「果南さん…」

 

 

千歌「まだ1点だよ」

 

 

果南、聖良「!!」

 

聖良「千歌さん…!」

 

千歌「これでみんな分かったはず。エドガーさんのシュートを止めなければ、私たちは勝てない」

 

海未「実感がわきました。やはり映像で見るのとは迫力が違いましたね」

 

善子「無理なプレーやギャンブルは避けましょ。あっちは必ずそこを付いてくるわ」

 

曜「そうだよね!1点決められただけで、落ち込むには早いよね!」

 

千歌「よしっ!まだまだ行けるよ!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

エドガー「ほぅ、」

 

 

一瞬、心折れたかと思ったがすぐに日本は立ち上がった。

理由…はあの新キャプテンだろう。

高坂穂乃果の跡を継いだことはある…

エドガーは陣地に戻りながら笑みを浮かべた

 

 

穂乃果「いいよ…千歌ちゃん!日本はまだ負けてない!」

 

真姫「はしゃぐのはいいけど、無理しないでよね?」

 

美奈「…ダイヤちゃん。ツバサちゃん。いつでも行けるようにしてね」

 

ダイヤ「…はい!」

 

ツバサ「何かあるんですか…?顔色が…」

 

美奈「…」

 

真恋「…美奈」

 

 

美奈は不安だったり気になることがあると、恐ろしく静かになる。

この血はしっかりと千歌にも受け継がれている訳だが…

 

 

美奈「…試合開始早々、作戦を実行することになるかもね」

 

 

 

―――

 

 

 

英玲奈「あれをやるのか!?」

 

ルビィ「はい。でなければ負けます」

 

理亞「果南の技が完成するまででしょ?なら大丈夫よ」

 

英玲奈「だが…そうすると前線が」

 

ルビィ「大丈夫です」

 

英玲奈「!!」

 

ルビィ「日本の両サイドには、頼れるFW経験者がいますから…!」

 

 

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

A『さあ、試合再開です!1点を追う日本、ここは慎重に行きたいところ!』

 

 

ルビィ「理亞ちゃん、無理はしないでね」パス

 

理亞「分かってるわよ…!」

 

 

エドガー「あの2人を抑えてください!」

 

 

ポール、エリック「はい!」バッ

 

 

早速ディフェンスを仕掛けに来るイギリス。

エドガーの指示を中心にチームが動いている…まるでエドガーが司令塔だ

 

 

理亞「はっ!」バッ

 

ポール、エリック「!?」

 

 

ボールを両足に挟みながら飛ぶ。

イギリスの選手の真上にきた瞬間。

オーラを込めたボールを叩き込む

 

 

理亞「ー ドロップアウトV3 ー!」ドガァン!

 

ポール、エリック「うわっ!?」

 

 

ルビィ「理亞ちゃんナイス!」

 

 

2人抜きで勢いをつけたFWコンビ。

次々とイギリス選手を突破

 

 

ランス「これ以上は行かせないよ!」

 

 

しかし、イギリスDFの要であるランスが立ちはだかる

 

 

理亞「あいつの技は厄介よ」

 

ルビィ「なら…こうしない?」バッ

 

理亞「!!」

 

 

ランス「なっ!?」

 

 

A『おおっと!?ゴールまではまだ距離があるが、黒澤ルビィが飛んだ!!』

 

 

ルビィ「っっ!!」ボオッ!

 

 

回転しながら左足に溜めた炎のオーラ。

ルビィの始まりのシュートーーーー

 

 

 

ルビィ「ー 超ファイアトルネード ー!」ドガアァン!

 

エドガー「!!」

 

ランス「撃ってきた!?」

 

 

A『これは!!黒澤ルビィのロングシュート

だぁぁ!』

 

レヴィン『"ストーンプリズン"に捕まる前にシュートですか…!』

 

 

炎のシュートはランスの上を流れた。

そのまま一直線にゴールへ。

…しかし、遠くから撃った分、威力は落ちるはず

 

 

フレディ「勝ち急いだね!」

 

ルビィ「まだだよ」

 

フレディ「!?」

 

 

理亞「あんたたち、よそ見し過ぎじゃない!?」

 

 

ランス「しまった!?シュートチェインか…!!」

 

 

A『鹿角理亞が走っていた!!最初からこれが目的だったようです!!』

 

 

ルビィのシュートで注意をそらし、理亞はランスを突破しチェインする。

咄嗟に思いついたこの作戦。

理亞がルビィの意図に気づくのが早かったからこその成功である

 

 

穂乃果「行けー!理亞ちゃん!」

 

凛「シュートチェインにゃ!!」

 

 

理亞「はあぁぁぁ!!!!」バッ

 

 

ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!

理亞が気迫でボールを切り裂く。

まさに獲物を狩る狼。

 

炎のシュートに込めるのもまた、磨き上げた努力のシュート

 

 

理亞「ー ウルフレジェンドGX ー!!」ドガアァン!

 

 

A『シュートチェインだぁぁ!!強力なシュートがゴールに迫る!!』

 

 

フレディ「さすがは日本…エドガーさんが言った通りだ…でも!」バッ!

 

ルビィ「なっ!?」

 

理亞「キーパーも剣!?」

 

フレディ「そう簡単にはゴールはあげない!」

 

 

空に手を伸ばす。

すると巨大な大剣が姿を現す。

剣を持つのはエドガーだけではない

 

 

フレディ「ー ガラティーン ー!」

 

 

ズバンッッッ!!!!

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

 

晴夏「ボールが…真っ二つに、」

 

聖良「ルビィさんと理亞のシュートが、なんな簡単に…」

 

 

A『止めたぁぁ!!GKフレディ、強力な必殺技でボールを一刀両断!日本は得点とはなりませんでした!!』

 

 

ルビィ「っっ!やっぱり距離が遠すぎたね、」

 

理亞「ルビィ!早く戻るわよ!」

 

ルビィ「うん…!」

 

 

A『日本、チャンスを作るも得点ならずでイギリスの攻撃。再び切り込むのは…!!』

 

 

エドガー「こっちだ!」

 

ピーター「はい!エドガーさん」パス

 

エドガー「…」

 

 

英玲奈「何としてでも抑える…!」

 

 

 

エドガーには、ひとつ気になることがあった

 

 

エドガー「はあっ!」バッ

 

英玲奈「なっ…その技は!?」

 

 

日本を分析したからこそ。

気になったことだ

 

 

エドガー「ー ウルトラムーン ー!」

 

 

花陽「えぇ!?あれって、月さんの技じゃ…」

 

月「あぁ…実は昔、イギリス出身のチームメイトに…教えてもらった技が"ウルトラムーン"なんだよね」

 

 

先程の黒澤ルビィと鹿角理亞のシュート。

なぜ…使わなかったのだ?

"Awaken the power"を

 

 

エドガー「…」

 

 

フィリップ「エドガーさん!撃ってください!」

 

聖良「くっ…どいてください!!」

 

 

デービッド「ディフェンスには行かせない!」

 

晴夏「…っっ!このままじゃ、また!!」

 

 

A『おおっと!?日本のDFたちがイギリスの選手にガッチリと押さえつけられている!!これでは誰もエドガーを止められない!!』

 

 

使えばもっと火力は出たはずだ…

なのに使わなかった。

中国戦、スペイン戦。

ルビィと理亞は出場するとすぐに"ATP"を発動していた

 

 

エドガー「…不安要素ですね」バッ

 

 

ならばその不安、この聖剣で消し去ってやる。

エドガーは地面を払い、再び剣を抜いた

 

 

海未「2点目…!?まずいです!!」

 

千歌「エドガーさんがシュートを撃ったら……」

 

 

 

 

ーーーーーー負け

 

 

 

 

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!!」

 

 

ギシャアアアァァァァァァン!!!!!!

 

 

 

A『再び来ました"エクスカリバー"!!日本のゴールに迫っていきます!!』

 

 

果南「嘘でしょ…また…」

 

 

ダイヤ「果南さん!!」

 

にこ「果南!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ー Awaken the powerー !!!!」」

 

 

 

果南「ぇ、」

 

エドガー「!!」

 

 

 

ルビィ、理亞「…」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

海未「あの二人!!」

 

 

A『なんと!?FWの黒澤ルビィと鹿角理亞がゴール前まで戻っていた!!しかも…発動しています!日本が誇る最強の"ATP"!!』

 

 

果南「2人とも…まさか!!」

 

ルビィ「行くよ!」バッ

 

理亞「っっ!」バッ

 

 

迫り来る巨大な斬撃に突っ込む2人。

この状況、考えていることはひとつ

 

 

エドガー「そういうことかっっ!!!!」

 

 

ルビィ「はあぁぁぁ!!」ゴゴゴゴゴゴ

 

理亞「っっっっ!!」ゴゴゴゴゴゴ

 

 

2人の全力を聖剣に叩き込むーーーー

 

 

 

 

 

ルビィ、理亞「「ー クロスファイア ー!!」」

 

 

 

 

ーーーードガアァァァァン!!!!

 

 

「「「!!!!??」」」

 

エドガー「くっ…」

 

果南「ルビィ、理亞!!」

 

 

A『なんと!?エドガーの"エクスカリバー"をFWコンビがブロックだぁぁ!!』

 

 

ルビィ「ぐっ…うぅぅぅぅ!!!!」ググググ

 

理亞「何よこれ!?重すぎでしょ!?」ググググ

 

 

"ATF"と"ATB"。

その合体技を全力で叩き込んでも、ボールが止まる気配はない。

それどころか徐々に押され始めた2人

 

 

月「あの2人のシュートブロックでも押される…!?」

 

美奈「…」

 

 

美奈の指示だった。

もし、DFがエドガーをマークし続けるのが難しそうならば。

ルビィと理亞が"エクスカリバー"をブロックしろと

 

 

ルビィ、理亞「ぐぬぬぬぬぬ…!!」ググググ

 

 

A『耐える…耐えます!!しかし、"エクスカリバー"はそれでも死なない!!』

 

 

バキイィィィン!!!!!!

 

 

理亞「っっ!!?」

 

ルビィ「果南さんあとはっっ…!!」

 

 

ルビィと理亞のブロックが破られた。

しかし、それは想定内のことだ

 

 

果南「ありがとう…っっ!2人とも」バッ

 

果南「ー 真 海竜の逆鱗槍 ー」ドガアァン!!

 

 

そう。最初から目的はーーーー

 

 

果南「…」シュウゥゥ…

 

エドガー「っっ…!!」

 

 

ーーー『威力の半減』

 

 

 

A『止めたぁぁぁ!!な、なんと!!エドガーの"エクスカリバー"を止めましたぁぁ!!!!』

 

 

 

 

フィリップ「そ、そんな…"エクスカリバー"が…」

 

ピーター「ブロックがあったからとしても…止められるなんて、」

 

エドガー「……フッ」

 

フィリップ「エドガー、さん?」

 

エドガー「これが日本の戦い方です。やはり素晴らしい」

 

 

日本の戦い方。

それは、1人では出来ないことを2人で。

2人で出来ないことは3人で。

信頼による集団戦。

ずば抜けた個人技と集団戦を掛け合わせることにより生まれた、強豪にも負けない"強さ"

 

それはスペイン戦で確かなものとなった

 

 

 

果南「と、止まった……」

 

ルビィ「果南さん、ナイスセーブです!」

 

理亞「かなり危なかったけどね」

 

果南「2人のおかげだよ、助かったよ」

 

 

レヴィン『なるほど…"クロスファイア"ならば、確かに強力なシュートブロックになりますね』

 

A『黒澤ルビィ、鹿角理亞、松浦果南の連携により…なんと"エクスカリバー"を抑える…!これはこの試合、わからなくなってきました!』

 

 

英玲奈「聞いてくれ。今の日本はエドガーを警戒するあまり、周りへの集中力が低下している」

 

曜「その通りだね」

 

海未「はい、」

 

英玲奈「ルビィと理亞はこれからDF重視でプレーする。得点を取りに行くのはMF。君たちだ」

 

千歌、曜、海未「「!!!!」」

 

善子「私もDFだから、守りは任せてちょうだい。あなた達は攻めることを考えて」

 

千歌「善子ちゃん…」

 

ルビィ「お願いします」

 

理亞「決めなさいよ」

 

千歌、曜、海未「「任せて(ください)!」」

 

 

―――

 

 

A『さあGK松浦果南から日本の攻撃が始まります!』

 

 

 

果南「聖良!」

 

 

聖良「DFの役目…果たします!」

 

フィリップ「いいや、ボールは貰うよ!」バッ

 

聖良「!!」バッ

 

 

聖良は思った。

イギリスはチームプレーが得意だと。

集団で攻める、日本と似ていると。

ならばーーーー

 

 

聖良「っ!!」カキィン!

 

フィリップ「…!?」

 

エドガー「あの技は…!!」

 

 

ーーーーこれがよく効くのでは?

 

 

 

聖良「ー 氷の矢 ー!」バシュッ!

 

 

A『出たぁぁぁ!!鹿角聖良の超ロングパスだぁぁ!!』

 

 

ケイリー「ちょ…GKのロングキックよりも飛ぶよ!?」

 

ジョニー「DFがボールを持ったから油断した…っっ!!」

 

 

氷の矢は空に白銀を描く。

真ん中のラインを越え、まさに敵の城に放たれた1本の矢。

その矢を1人の少女がーーーー

 

 

 

千歌「よしっ!!」

 

 

A『高海千歌が上手くボールを受け取った!!薄くなったDFを突破出来るか!?』

 

 

デービッド「絶対に行かせない!」

 

エッジ「2人がかりで奪う!!」

 

千歌「2人がかり…上等だよ!」

 

 

千歌のドリブルの前では人数など関係ない

 

 

千歌「ー ZスラッシュG3 ー!」ギュンギュン!

 

デービッド「!?」

 

エッジ「隙だらけだよ!貰った!」

 

デービッド「エッジ!罠だ!」

 

 

1人躱してもう1人に背中を見せた?

ならばーーーーーー

 

 

千歌(足を踏み込んでっっ!!)ドン!

 

エッジ「さっきと…動きが逆ーーーー

 

 

ーーーー千歌「ー リバースZスラッシュ ー!!」

 

 

月「よしっっ!!」

 

にこ「いつ見ても綺麗な躱し方ね!!」

 

 

A『高海千歌が2人抜き!!ゴールは目の前!キーパーと1対い……いや!?』

 

 

千歌「!」

 

曜「千歌ちゃん!久しぶりにあれやって見ない?」

 

千歌「…!いいね!」

 

 

A『渡辺曜が走ってきた…!いったい何をする気なのか!?』

 

 

まだ浦の星サッカー部が復活して間もない頃。

曜と千歌のあいだに、すれ違いによる距離が生まれていた

 

 

曜『…私、バカだ…バカ曜だ』

 

千歌『あ!汚れるよー!』

 

曜『いいの!!』

 

千歌『恥ずかしいよー!』

 

曜『いいの!!』

 

 

曜「タイミングは?」

 

千歌「大丈夫!私たちなら合わせられる!」

 

曜「だよね!」

 

 

しかし、手と手を取り合い。

お互いを。

自分を見つめ直した

 

 

千歌、曜「せーのっ!!」バッ

 

 

これは、千歌と曜の2人だけの。

特別で素敵な技

 

 

 

 

千歌、曜「ー 真エクストリームラビット ー!!」ドガァン!

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

スペイン「「「!!!!!!??」」」

 

 

千歌、曜「いっけえぇぇぇ!!!!!!」

 

 

A『こ、これは高海千歌と渡辺曜の合体技!!』

 

 

ボールを放った瞬間。

1つしかないボールは3つへ。

それぞれがウサギのように弾み、コース予測不可能。

敵味方、全員が動揺していた

 

 

 

フレディ「う、動きが読めな…うわっ!?」

 

 

 

バシュゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

 

エドガー「…!!」

 

穂乃果「!!」

 

 

美奈「あの2人…あんな技を使えたのね!」

 

 

 

A『ゴール!!!!日本が追いつきましたぁぁ!!高海千歌と渡辺曜の合体シュートが、強固なイギリスゴールを崩しました!!』

 

 

曜「千歌ちゃん!大成功だよ!」

 

千歌「うん!完璧だった!」

 

 

あの時は浦の星のメンバーしか知らない小さな存在だった2人。

しかし、今はーーーー

 

 

梨子「千歌ちゃん…曜ちゃん!」

 

 

ーーーー世界から注目される大きな存在

 

 

 

 

日本 1-1 イギリス

 

 

 





二度とエクストリームラビット出せないなと思っていたので安心しました



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第3章 74話 「イギリス戦 "越える!ヨーソロードの果てに"」

皆さんどうも!スクスタでまさかのルビィちゃんイベ登場でいろいろと歓喜なルビィちゃんキャンディーです!

模試祭りにルビィちゃんイベとは…スクフェスは定期考査期間にルビィちゃんイベが来ますが、スクスタ…お前もか……

イギリス戦はスペイン戦よりは長くはないと思います。その分、1話の文字数は多いですが…

(2020/05/30 21:46:35)「人殺し」や「無口の居候」などの作品を執筆されている七宮梅雨さんが必殺技絵を描いてくださいました!!
https://syosetu.org/?mode=user&uid=248437






 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

エドガーの"エクスカリバー"を止めるために…ルビィと理亞は威力軽減のシュートブロックに入った。そして攻撃に集中するMF組は、曜と千歌の"エクストリームラビット"により同点に追いついたのであった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『日本、同点です!!得意のカウンターから渡辺曜と高海千歌が決めました!!!』

 

 

 

フレディ「くっ…あんなシュート、情報になかったよ…?まさか新技??」

 

ランス「こんなにも早く追いつかれるなんて、」

 

 

 

 

にこ「…で?あの技はいつ習得したのよ?」

 

千歌「え…えーっと…」

 

曜「実は…この技…」

 

 

"エクストリームラビット"。

全国高校女子サッカー大会、静岡予選準々決勝 千歳橋高校戦で曜と千歌が放った必殺技。

それ以降、発動されることなかったこの技…

 

 

月「予選で1度しか撃ったことがない技…それは僕も分からないわけだ」

 

梨子「その後すぐに"エボリューション"が完成したから、使う機会が無かったのよね、」

 

千歌「いや〜、今の今まですっかり忘れてたよ…!」

 

曜「私は忘れたこと無かったよ!」

 

にこ「曜…?」

 

真恋「さあ!試合が再開するわよ!千歌ちゃんたちはポジションに戻って!」

 

千歌「は、はい!」

 

 

美奈「…1度しか撃ってないのに"真"まで進化しているのね…この2人、」

 

 

 

―――

 

 

 

 

フレディ「ご、ごめんなさい…エドガーさん、」

 

エドガー「大丈夫。まだ試合は始まったばかりです。本当の戦いはここから…」

 

エドガー「日本はまだ、我が聖剣の"真の姿"を知らない…」

 

 

それぞれが各ポジションに戻る。

そんな中で日本の選手たちは感じていた

 

 

英玲奈「エドガーは随分と余裕だな、」

 

梨子「はい。まだ何か隠しているとしか…」

 

 

"エクスカリバー"は止められ、点差も同点となった。

しかし、エドガーの静かな雰囲気は変わらない。

"沈着冷静"

 

深読みしたくなるのは無理もない。

イギリスの力はまだ眠っているのだろうか…

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

A『さあ、試合再開です!同点となりましたこの試合。FFI史上初となるエドガー選手の"エクスカリバー"が防がれた瞬間を、我々は目撃しました…!!』

 

レヴィン『執念が伝わってきますね…ですが、あのブロックはどこまでもつか、』

 

 

 

 

エドガー「受けるがいい!!」バッ!

 

 

英玲奈「来るぞ!!理亞、ルビィ!」

 

ルビィ、理亞「!!」

 

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!!」

 

ギシャアァァァァァァン!!!!!!

 

 

本日3本目の"エクスカリバー"。

ルビィと理亞は既に"ATP"で構えている。

 

迫り来る斬撃はまるで鋼の塊。

足に触れた瞬間、骨が軋む程の衝撃。

耐え切るのは不可能。

あくまでも軽減。

パワーを相殺するように、流すように…

 

 

ルビィ、理亞「ー クロスファイア ー!!」ドガアァン!!

 

 

A『またしてもFWコンビがシュートブロック!!弾かれますが、威力をかなり削ったぞ!?』

 

 

果南「っっ!!」バッ!

 

 

あとは果南が叩き潰すだけ。

斬撃はかなり小さくなった。

それでも十分強力。

強力だが…果南も国を代表するGK、実力者だ。

そう簡単に負けるわけにはいかない

 

 

 

果南「ー 真 海竜の逆鱗槍 ー!!」ドガアァン!!

 

 

エドガー「…ナイスセーブですね」

 

 

果南「よしっ…止めた!!」

 

 

A『止めたぁぁ!!松浦果南、"エクスカリバー"を2度も防ぎました!!イギリスは勝ち越し点ならず…!』

 

 

果南「カウンターだよっ!」ブォン!

 

エドガー「…」

 

 

果南はボールを味方に渡しながらエドガーを見る…

このまま試合が流れてくれればいいが…そう簡単に行くのか??

 

止めてもなお、果南の顔は晴れない

 

 

海未「千歌!」

 

千歌「海未さん!」パス

 

 

その間にもサニデイジャパンは攻める。

前衛MFを中心に攻撃を組み立てる。

海未と曜は久しぶりにFWでプレーしているかのように。

生き生きと前へと走る

 

 

海未「このままDF層を突破しますよ!」

 

曜、千歌「はい!!」

 

 

エドガー「…」

 

 

エドガーの常時冷静な雰囲気ーーーー

 

 

美奈「……!!」

 

真恋「あれは…!!」

 

 

エドガー「さあ、始めましょうか」

 

 

ーーー騎士団長の如く風格

 

 

海未「…!?なんですか、これは」

 

曜「イギリスの選手たちのポジションが…」

 

 

A『おぉっと!?ここでイギリスが仕掛けてきた!!エドガー選手の合図でフォーメーションが変わっていきます!!』

 

 

まるで梨子の"神のタクト"のようであった。

しかし、エドガーが腕を振り続けることは無い。

片手をサッ!と動かすのみ。

それだけで統率されるイギリス陣形

 

 

フィリップ「…!!」バッ

 

海未「(突っ込んできた…?ならば!!)」

 

 

海未「ー 風神の舞 ー!!」ビュオォッ!

 

フィリップ「っっ!?」

 

 

先陣を切り向かってきたフィリップ。

しかし、海未の必殺技には及ばない。

そのまま吹き飛ばし難なく突破ーーーー

 

 

ポール「次は私だよ!!」バッ!

 

海未「もう次のディフェンスが!?」

 

 

ーーーするはずなのだが、

 

 

海未「くっ…!!」バッ

 

ポール「…!」スカッ

 

 

2人目も躱す。

 

そして前を向く

 

 

 

エリック「貰った!!」バッ

 

海未「っっ!?そんな!!」

 

 

千歌「海未さんが取られた!?」

 

曜「何…あのディフェンス、」

 

 

A『イギリスが連携でボールを奪います!さすがの園田海未も躱しきれませんでした!』

 

 

美奈「…厄介ね」

 

ツバサ「まさか、あれは…」

 

 

 

エドガー「…ボールを持った相手に、素早く次々と襲いかかり、攻撃を阻止する」

 

エドガー「これが私たちの必殺タクティクス。ー アブソリュートナイツ ー!!」

 

 

英玲奈「くっ…やはり隠し持っていたか」

 

梨子「ディフェンスが強化されました…攻撃にも力を入れなくちゃ…」

 

 

流れに乗るイギリス。

パスは繋がりゴール前へ。

そこからイギリスの攻撃は続いた

 

 

 

 

フィリップ「ー パラディンストライク ー!!」ドガァン!

 

果南「ー 絶トライデント ー!!」ドガアァン!

 

 

ポール「はあぁっ!!」バシュッ!

 

果南「絶対に止める!!」ガシッ!

 

 

エドガー「っっ!!」バシュッ!

 

果南「負けないって!!」ドガッ!

 

 

A『再び松浦果南が防ぐ!パンチングでエドガーのシュートは弾かれました!』

 

 

果南「ハァハァ…」

 

エドガー「ふふっ…だいぶ疲れてきていますね」

 

 

当たり前だ。

あれから日本は思うように攻撃出来ていない。

すぐに"アブソリュートナイツ"でボールを奪われる。

そして攻め込まれシュート。

日本は完全に防戦一方となっていた

 

 

聖良「何故…"エクスカリバー"を撃たずに、」

 

梨子「疲れさせるのが狙いですね…前半も残り僅か…すぐに仕掛けてくると思います」

 

 

 

 

 

千歌「ハァハァ…どうしたら…」

 

 

どうしたら、あのディフェンス軍を突破出来るのだろうか…

 

 

海未「どうしても抜けきれません…」

 

曜「もっとドリブルが上手ければ…」

 

 

ドリブルテクニックの問題?

ならばもっと早くにこに交代しているはずだ…何故、にこを出さな…いや、

 

 

千歌「違う」

 

 

出さない…わざと出していないんだ

 

 

にこ「…」

 

 

美奈は、監督は、口には出さずとも指示しているのだ。

 

『にこちゃんに頼らずに突破してみなさい』と

 

 

千歌「…だよね。頼りすぎだもん私たち」

 

 

 

こういったピンチの時には、毎回にこのドリブルテクニックに頼ってきた日本。

頼ることは決して悪くはない。

しかし、こんな話がある。

 

 

世界最高レベルのドリブルテクニックを持つ選手がいた。

そして世界大会。

その選手は国の代表として、無双とも言えるレベルで活躍した。

 

優勝候補だった。

しかし、世界大会本戦。

その国はランキング格下の国に…負けたのだ。

敗因は、その選手を頼りすぎたことだった。

 

迷ったらその選手へ。

困ったらその選手へ。

チャンスは全てその選手へ。

まるで、攻撃するのは1人だけ…のようであった。

 

そんなのその選手を徹底的にマークすればすぐに崩れるのは当たり前。

頼りすぎたのだ。

自分たちは観客と同じ観覧者。

自ら動かず、その場の危機を他人に任せる

 

 

 

千歌「…やろう。私たちで」

 

曜「千歌ちゃん?」

 

千歌「私たちの力で"アブソリュートナイツ"を突破するんだよ!目の前にある壁から、目を背けたままではいつまでも勝てない…!」

 

海未「千歌、」

 

英玲奈「千歌の言う通りだな」

 

千歌「英玲奈さん!」

 

英玲奈「協力して突破するんだ。あのディフェンスを」

 

曜「でも、どうやって?」

 

英玲奈「…"あれ"を仕掛けてみるか」

 

 

―――

 

 

A『再びボールはイギリスへ!!日本は前半の途中から全く攻撃出来ていません!!』

 

 

ピーター「エドガーさん!」パス

 

エドガー「…そろそろ決めて…「撃たせないわよ」

 

エドガー「!!」

 

 

善子「…」

 

 

エドガー「相手にとって不足なし、ですね」

 

 

善子の目はまっすぐと。

エドガーだけを見ていた。

 

エドガーもまた、善子をまっすぐと見ながら思い出す。

 

スペイン戦、善子の必殺技は壮絶なものだった。

恐らく、共鳴があれば"アブソリュートナイツ"はすぐに崩されるだろう…しかし。

イギリスの止まらない攻撃に、善子はディフェンスに専念せざるを得ない。

そのため、善子は攻撃に参加出来ていなかった。

センターバックが毎回攻撃参加など、どんなにスタミナお化けでも到底不可能

 

 

エドガー「私に共鳴できるかな!?」バッ

 

善子(来た…!!)

 

 

ディフェンスで精一杯。

だがこれは、エドガーが思うように"エクスカリバー"を撃てていない理由の1つだった

 

 

善子「ー Deep Resonance ー」

 

 

善子は早速共鳴でボールを奪いに行く。

共鳴してみて分かる。

エドガーのテクニックは本当に凄い。

下手するとツバサやにこのレベルだ。

通常の状態では一生取れる気がしない

 

 

エドガー「ー ウルトラムーン ー!!」バッ!

 

善子「!!」

 

 

エドガーは流石の身のこなしで善子を躱そうと試みた。

既に善子の頭上を越え、着地すれば善子の背後に立つことになる

 

 

善子「ーー」バッ

 

 

ルビィ「善子ちゃんも空中へ…!」

 

 

 

だが、

 

 

 

エドガー「予測済みさ!!!」クルン!

 

善子「ーー!!」スカッ

 

 

 

1枚上手はエドガーだった。

空中でも奪いに来るのは想定内。

ならば逆にそれを誘えばいい。

エドガーは善子が足を出すタイミングに合わせ、体を捻らせギリギリで躱したのであった

 

 

エドガー「私の勝ちだ!」

 

善子「ーーー」

 

 

 

 

だが、

 

 

 

善子「ーーー」

 

エドガー(抜けたっっ!!空中では何も…)

 

 

 

今の善子からはーーーーー

 

 

 

善子「残念」グルン!

 

エドガー「!!!!」

 

 

 

 

ーーーーーどう足掻いても逃げられない

 

 

 

 

エドガー(善子も体を捻らせてきた…!?)

 

善子「なめないことね。共鳴の前では才能は無意味よ」

 

 

エドガーは善子のタイミングに合わせて回転した。

そのエドガーに善子はタイミングを合わせて…足をボールに伸ばしたのだ。

人間業では到底不可能だが、共鳴ならば可能

 

 

 

A『1対1、勝ったのは津島善子だぁ!!共鳴にはさすがのエドガーも太刀打ち出来ない!!』

 

レヴィン『共鳴状態の善子選手を抑えるのは厳しいですよ。空中でも予測不可能な動きをしてきますからね』

 

 

 

善子「千歌!」パス

 

千歌「…!!」

 

 

ボールを貰った千歌を中心に早速作戦を実行する

 

 

エドガー「"アブソリュートナイツ"!!」

 

イギリス「「はい!!!」」

 

 

英玲奈「来るぞ!千歌!」

 

 

"アブソリュートナイツ"により、縦に並んだイギリス選手たちが突撃して来る。

さながらの騎士軍隊の突撃。

真っ向から勝負を挑むのは厳しい

 

 

千歌「梨子ちゃん!」パス

 

フィリップ「横にパス…?逃がさない!」

 

梨子「英玲奈さん!」パス

 

ポール「また横に?追い込んでやる!!」

 

 

突破しようとするパスでは無い。

どちらかというと逃げのパス。

横へ横へと、自らの首を絞めるパス。

徐々に逃げ場は無くなる。

しかし、エドガーには覚えのある光景だった

 

 

エドガー「なんだ…まるでわざと逃げているようだ、」

 

 

日本だって馬鹿ではない。

自ら逃げるような戦いをするとは……

 

 

エドガー「…!!まさか、」

 

ジョニー「エドガーさん、これは!!」

 

エドガー「あぁ。日本が予選で発動した作戦…"柔と豪"だ!!」

 

 

イギリスの選手たちは怠らなかった。

ヨーロッパにも引けを取らない実力を持つ日本。

 

情報不足による敗北はよくある話。

日本をアジア予選から全て研究し、その作戦は把握済みだ

 

 

エドガー「"柔と豪"は最後必ず海未が蹴る!!海未を抑えるんだ!」

 

英玲奈「っっ!やはり研究されていたか…!」

 

 

"柔と豪"は敵を引き付けてからの一気に突破。

鋭く突き刺すようなパスをする選手が最後蹴る必要があった。

その選手に該当するのが園田海未。

すなわち、海未が動けなければこの必殺タクティクスは失敗する

 

 

ケイリー「ボールは蹴らせないよ!」

 

ピーター「抑え込む!」

 

海未(さすがはイギリス…ですね…)

 

 

A『おおっと!!?日本、園田海未が抑え込まれる!!必殺タクティクスは失敗か!?』

 

 

エドガー「さあ、これでおわ…「終わりませんよ!!」

 

イギリス「「!!!!??」」

 

 

 

 

 

そこにいたのは本来、いるはずのない選手

 

 

 

 

 

晴夏「お願いします!!」パス

 

 

 

数秒後。エドガーたちは今起きている状況、日本の作戦を改めて把握するだろう…しかしーーーーーー

 

 

 

 

聖良「矢を放てるのは…海未さんだけではありません!!」

 

 

エドガー「聖良…!?海未は囮!?」

 

 

 

ーーーー時すでに 遅し

 

 

 

聖良「ー 氷の矢 ー!!」バシュッ!

 

 

真恋「"柔と豪"と"氷の矢"の合体タクティクス!!」

 

美奈「あの子たち…!」

 

 

A『なんと!?園田海未は囮!!代わりに矢を放ったのは鹿角聖良!超ロングパスが再びイギリス陣形を越えます!!』

 

 

デービッド「しまった…またしてもロングパスに」

 

エッジ「まだだよ!お願いランス!!」

 

 

ランス「任せて。戻って正解だった…!!」

 

 

A『イギリス選手でランス選手が1人ディフェンスに戻っていました!!ボールを貰ったのは渡辺曜!!再びこの2人の1対1だ!!』

 

 

千歌「曜ちゃん、気をつけて!!」

 

曜「うん!!」

 

 

ランス「渡辺曜!この技を越えることは不可能だよ!!」

 

ランス「ー ストーンプリズン ー!」バッ

 

曜(またあの技か…!!)

 

 

左右前後、石の牢獄に閉じ込める技。

曜は1度この必殺技の突破に挑み、完全に敗北している。

スピードで越えるのは不可能だ

 

 

曜「どうする…どうする…!!」

 

ランス「考えても無駄だよ!既にあなたは閉じ込められた!!」

 

 

凛「どうすればあの技を突破出来るの…!?」

 

希「ここまで来て…また振り出し??」

 

月「……いや、」

 

 

 

月「曜ちゃん!!」

 

曜「!!」

 

 

月が叫んだ。

珍しい。

曜の耳には石の壁を越え届く

 

 

月「あの技を使うんだ!あれなら越えられる!!」

 

曜「あの技!!?でも…」

 

月「君ならやれる!!渡辺曜なら!!」

 

曜「!!」

 

 

曜は閉ざされた牢獄の中で。

あの時のことを、イメージした。

今まで心の中に押し込んだ想いを。

苦しさを、

 

 

曜「やるしか…ない!!」バッ

 

ランス「何をしても無駄…」

 

曜(私なら出来る…絶対に、絶対に!!)

 

 

 

 

曜は感じていた。

日本代表の日々の練習、そして試合。

いや、もっと前から。

そう浦の星サッカー部の頃から

 

 

千歌『曜ちゃん凄い!!何でもできるね!!』

 

 

そんなことを言われたのは最初だけ

 

 

果南『千歌。お待たせ』

 

 

すぐに先輩たちの実力に圧倒され

 

 

理亞『ルビィ…あんたは許さない!!』

 

穂乃果『来なよ。私たちに全力をぶつけて』

 

ルビィ『もう…ルビィは止まらないよ』

 

 

自分の才能は天才には程遠いと、大会で思い知らされた。

 

次々と進化していくメンバー。

進化、強化、覚醒。

 

私は…どんどん置いていかれた

 

 

曜『私が…日本代表?』

 

 

正直信じられなかった。

全国大会で伸び代は無いに等しいと思っていた。

そんな私が…選ばれたのだ

 

 

曜『強く、ならなきゃだね』

 

 

私…MFとして選ばれた。

FWはやっぱりダメだったか…

だよね。

あの中じゃ、私は到底及ばないよ

 

そう思うのは、私だけじゃない。でも…

 

 

理亞『Awaken the power!!』

 

善子『Deep Resonance』

 

穂乃果『ゴットハンドX!!!!』

 

 

そんなメンバーが次々と進化していった。

 

 

怖かった。

完全に置いていかれた。

私は…次の試合から出れないのでは…

もう、力にはなれないんじゃないか…って

 

 

 

 

でもね、

 

 

 

 

 

千歌『目の前にある壁から、目を背けたままではいつまでも勝てない…!』

 

 

 

 

曜(この技は昔から…体に叩き込んだ!!嫌でもできる!!)

 

 

 

 

一見使い物にならないような武器でも…

 

努力して作った武器ならいつか、必ず役に立つ

 

 

 

曜「っっ!!」グルグルグルグル!!

 

ランス「回転しながら飛んだ!?」

 

フレディ「あの高さ…壁よりも飛んでいるの!?」

 

 

 

 

だだ埃をかぶっているだけかもしれないよ?

 

試しにその汚れた武器、磨いてみたら?

 

 

 

 

 

曜(前逆さ宙返り3回半抱え型…応用!!)

 

 

 

 

ほら、昔頑張って作った武器が。

光り輝く聖剣かもしれないよ?

 

 

勇気を出して

 

 

 

 

 

曜「振り切れっっっっっっ!!!!」ドギュン!!

 

 

 

曜「Xブラストオォォ!!!!」ドガアァン!!

 

 

【挿絵表示】

 

 

ランス「!!??」

 

日本、イギリス「「「!!!!??」」」

 

月「曜ちゃん!!!!」

 

 

A『これは、渡辺曜の新必殺技!!凄まじい威力!!』

 

 

 

フレディ「壁よりも高い位置からのシュート!?くっ……」

 

フレディ「ー ガラディーン ー!!」

 

 

動揺するだろう。

まるでレーザービームのようなシュートだ。

 

フレディはすぐに天へと伸びる剣を発動。

いっきにーーーーーー

 

 

 

フレディ(真っ二つっっっっ!!!!)

 

 

 

 

 

ーーーガキィィィィィィン!!!!!!

 

 

 

フレディ「っっ!?」

 

フレディ(重すぎる…弾かれ…)

 

 

曜「私は全速前進する女!!止められても…進む!!」

 

 

 

バシュゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

曜「ヨーソロード、だよっ!!」

 

 

A『ゴール!!渡辺曜が決めましたぁぁ!!渡辺曜の2点目ゴールは、逆転となる大きな一撃!!フレディの大剣をも弾く、強力なシュート!!』

 

レヴィン『素晴らしい動きでした…!!渡辺曜選手だからこそ撃てるシュートですね!』

 

 

曜「やった…」

 

千歌「曜ちゃんナイスシュートだよ!」

 

海未「素晴らしかったですよ!!」

 

ルビィ「これで逆転…」

 

果南「曜…すごいよ、」

 

 

真恋「両足の"ゴッドウインド"…あんなことが出来るなんて、」

 

月「曜ちゃんの伸び代がないなんてありえない」

 

ツバサ「月…」

 

月「曜ちゃんは僕の憧れだからね」

 

 

 

A『ここで前半終了…!!またしても日本が強豪相手に優勢です!!渡辺曜の2点のゴールで2-1!!』

 

 

 

 

イギリス監督「…エドガー」

 

エドガー「はい」

 

イギリス監督「後半からは許可する。手加減無しの"進撃"を許可する」

 

エドガー「はい。分かりました」

 

 

 

後半、日本はイギリスの"進撃"を見る

 

 

 

 

日本 2-1 イギリス

 

 




Xブラスト
リトルギガントのロココの必殺シュートです。ロココのXブラストは赤いレーザービームのようなシュートですが、真恋さんのセリフでもありましたが、ゴッドウインドのオーラと同じにしています。風と電気のようなオーラ。ゴッドウインドを両足で放つ、それが渡辺曜のXブラストです。ボールを抱え込んで回転する動きから採用しました!


ストーンプリズンは曜ちゃんの自分の実力に対する不安の象徴的な感じにしてみました。なのでこの壁を越えたということには大きな意味がありますね。




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第3章 75話 「イギリス戦 "騎士の誇り"」


皆さんどうも…昨日の11時過ぎに投稿すると言って完全に寝落ちしてしまったルビィちゃんキャンディーです…机の上で寝てました、Twitterで待っていた方、大変申し訳ございませんでした…

おかげで投稿後にやるはずだった勉強の続きもできないとか…時間返して()




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

"アブソリュートナイツ"を攻略するには…にこの力が必要だ。そう考えた千歌たちは思いとどまる。自分たちの力だけで…今ある壁を越えるんだ。その声に応えたメンバー。"柔と豪"と"氷の矢"を組み合わせた必殺タクティクスでイギリス陣形を突破。最後は曜の新必殺技"Xブラスト"で勝ち越し点を取り、前半を終えたのであった

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

ー ウミヘビスタジアム ー

 

 

クラリア「よく止めたね」

 

フラム「ハァハァ……」シュゥゥ…

 

 

日本とイギリスの前半が終了した同時刻。

スペイン対イタリア。

こちらの試合は未だに続けられていた

 

 

『再び止めましたイタリアGK、フラム・ソレイユ!!しかし確実にダメージは蓄積しているようだ…!』

 

 

 

フラム(こんな重いシュート、高坂穂乃果は何度も…そりゃあ、腕が壊れるわけだよ)ビリビリ

 

 

クラリアのシュートはただ重いだけではない。

放物線を描きながら曲がったり、直角に曲がったり…

神経を張り巡らせながらの必殺技発動は本当に骨が折れる。

 

ここまで3、4本はクラリアのシュートを止めたフラム。

徐々にフラムの腕は石のように重くなっていく

 

 

フラム「…よく勝てたね。日本は、」

 

 

 

そんな時だった

 

 

 

サエ「選手交代よ」

 

フィレア「…!!監督、誰を」

 

サエ「…さあ、行ってきなさい」

 

「はい」

 

 

交代する選手はベンチにはいなかった。

スタジアムの館内から姿を現したその人物…イタリアのメンバーはその顔を見た瞬間ーー

 

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

目を、疑った

 

 

鞠莉「あ、アンビリバボー…」

 

フィレア「嘘でしょ…でも」

 

「久しぶりだね。何年ぶり、かな?」

 

鞠莉「…またあなたと、サッカー出来る日がくるなんてね」

 

 

この試合。

その人物の登場は、FFIに大きな衝撃を走らせるのであった

 

 

クラリア「…何故、あなたが…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー ヤマネコ島 ー

 

 

にこ「あんたたち…やれば出来るじゃない!」

 

穂乃果「曜ちゃんも凄いシュートだったよ!」

 

曜「あ、ありがとう…!練習したかいがあったよ」

 

 

曜はこの試合2点のゴール。

今までの試合でなかなか結果を出せなかったので、努力が身を結んだ大きな前半となった。

 

そして、まさかのイギリスにリード。

スペイン戦に続き、日本がイギリスを完全に捕らえようとしていた

 

 

月「まあ、油断できないけどね。エドガーはまだ何か隠してる」

 

花陽「はい…イギリスは超攻撃型チームのはず…それにしては少し欠ける気が、」

 

真恋「そうなのよね、もっとガツガツ来ると思ったんだけど…」

 

美奈「…とりあえず、後半はそのままのメンバーで行くわ。ポジションは変更するけどね」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

――――――

 

 

A『さあ、まもなく後半戦が始まります!レヴィンさん、前半を見ての感想は…』

 

レヴィン『はい。なんと言っても、日本のブロックの硬さですね。エドガー選手のシュートを抑えているのを見ると、さすがは変幻自在の進化を遂げる日本だと思います』

 

レヴィン『イギリスは恐らく後半、何か仕掛けてくるでしょう。予想外な作戦を考えるのもイギリスの強さですからね』

 

A『ありがとうございます!ここで…後半戦のメンバーの発表です!両チームとも選手の交代はなし。日本がポジション変更をするようです』

 

 

 

FW……………渡辺曜、園田海未

 

MF…………………高海千歌

 

MF…………統堂英玲奈、桜内梨子

 

DF……………南ことり、鹿角聖良

 

DF…黒澤ルビィ、津島善子、鹿角理亞

 

GK…………………松浦果南

 

 

3-2-2-1-2

 

 

 

レヴィン『本格的に固めてきましたね…!FWコンビを完全にDF。これは…3人ともリベロでしょうか??』

 

A『リベロとなると攻撃にも積極的に参加することになります。これは注目です…!』

 

 

 

ルビィ「DFは初めて?」

 

理亞「えぇ。そっか、ルビィは浦の星で」

 

ルビィ「うん!久しぶりにだけどね」

 

善子「あんたたちが両隣りって…頼もしすぎるわよ」

 

 

FWのポジションから下がってシュートブロックするよりも、最初から最終ラインにいる方がいいと判断した美奈。

この判断が吉と出るか凶と出るか…

その答えは始まってみないとーーーー

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

 

ーーーーー分からない

 

 

 

エドガー「あの2人がDF…ですか。ふふ…では、私も挨拶を」バッ

 

 

曜「え!?」

 

海未「っっ!?まさか、そこからシュートを!?」

 

 

まったく予想していなかった事態。

キックオフと同時に…

エドガーは地を払い、空へと飛んだ。

 

日本の選手は全員が身構えた。

挨拶と言っても加減があるだろう加減がーーーーー

 

 

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!」

 

 

ーーーーギシャアァァァァァァン!!

 

 

海未、曜「っっ!!」

 

 

A『これは無謀な…!?エドガー、フィールドの中心からの超ロングシュートだぁ!!』

 

 

すぐ近くにいた海未と曜は吹き飛ばされる。

さすがの威力。

悔しいが今の果南1人ではこのシュートを止めることはできない

 

 

理亞「あの距離なら威力は落ちる…!!」

 

ルビィ「いくよ!理亞ちゃん!!」

 

 

理亞の言う通り。

いくら強力なシュートだとしても、威力の低下…距離には逆らえない。

斬撃が2人のところに到達する頃には、既に2人がシュートブロックでも防げるほどにまでパワーが落ちているだろう

 

 

ルビィ、理亞「ー Awaken the power ー!!」

 

 

いっきに火力を上げ、シュートを打ち返さんと構える2人

 

 

月「よし…!まずはシュートブロックだよ!」

 

美奈「…」

 

 

 

ルビィ、理亞「はあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

左のルビィ。

右の理亞。

2人のオーラが混ざり合う。

赤と白、炎と氷。

一見水と油に見える2つの力…

しかし、いざ混ぜればそれは最強の力

 

 

ルビィ、理亞「クロスっっ!!!!!!」

 

エドガー「……」

 

 

 

2人の力が、ぶつかーーーーー

 

 

 

バキイィィィィィン!!!!!!!!

 

 

 

ーーーー日本「「「!!!!??」」」

 

 

 

どうした

 

 

 

理亞「なっっ!!??」

 

ルビィ「!!??」

 

 

 

どうした

 

 

 

ツバサ「…なんで、」

 

美奈「やっぱり…か」

 

 

 

何故…2人は

 

 

 

ルビィ「重っっ!??」

 

理亞「ちょっ…おかしいでしょ!?」

 

 

 

弾き飛ばされているのだ

 

 

 

果南「…!?なんで威力が上がってるの!?」

 

 

ルビィと理亞のブロックが効いてない!?

それ以前に、"エクスカリバー"の威力が確実に…ありえないが確実に上がっている!?

距離を離したはずなのに…

 

 

果南「くっ…まずは止めないと!!」バッ

 

 

海未「…果南!」

 

エドガー「…無駄ですよ」

 

 

果南「ー 真 海竜の逆鱗り……ちょっ待っーーーーー

 

 

ーーーードガアァァァン!!!!

 

 

果南「うわあっっ!!?」

 

 

 

曜「そ、そんな…」

 

千歌「決まっちゃっ…たの?」

 

 

A『ゴール!!!!驚きました…!!エドガー選手が放ったロングシュートは、日本の強固であったブロックを貫き、そのままゴールへ!!』

 

レヴィン『威力が見るからに上がっていました…いや、まさか…』

 

 

 

美奈「最悪の事態よ」

 

花陽「監督…これは…」

 

 

果南「っっ!!なんなのあのシュート!!?」

 

 

フィールドの真ん中から日本のゴールへ。

真っ直ぐに地面に引かれた斬撃の線。

フィールドを刻んだ張本人…エドガーはゆっくりと口を開く

 

 

エドガー「これが、"エクスカリバー"の本当の姿です」

 

千歌「本当の…姿」

 

エドガー「距離が離れれば離れるほど…」

 

 

 

エドガー「"エクスカリバー"の威力は上がる」

 

 

 

果南「…!!そんな…」

 

ルビィ「は、反則…だよ、」

 

理亞「何よ…それ、」

 

 

前半の"エクスカリバー"は要するに序の口…だったのだ。

今受けたのが世界最高峰と謳われたシュート。

 

あれが、本来日本が止めるべきとされたシュートだったのである

 

 

果南「あれを…止めろって…」

 

善子「ルビィと理亞、すぐに弾かれてたけど…大丈夫なの??」

 

ルビィ「正直、キツい…まさかここまでとは」

 

理亞「悔しい…まったく歯が立たないっっ!!私たちがDFになった意味が無いじゃない!!」

 

 

これで同点。

呆気なかった。

日本のリードはほんの数分。

希望も何も、あの絶剣により切り崩された

 

 

千歌「でも…前を向かないと!!まだ同点だよ!!」

 

海未「千歌の言う通りです…!私たちがまた決めればいいだけ!」

 

 

これで試合は振り出しに戻った。

ここからが本当の勝負。

FWに上がった海未と曜、そしてMFの千歌の攻めなしではここから先の得点は難しいだろう。

 

笛がなって試合は再開するも、イギリスの脅威猛攻は続く。

前半で苦しめられた"アブソリュートナイツ"。

1度は突破して見せたが、"柔と剛"は何度も通じる技では無い。

また新たな作戦を考えなければいけないのだ

 

 

エドガー「ー アブソリュートナイツ ー!!」

 

 

海未「来ますよ…!気を引き締めてください!」

 

千歌、曜「はい!!」

 

 

迫り来る騎士。

相手はまるで、本物のイクサを経験しているかのような統一された動き。

そんな流れの中で、海未はエドガーと対峙していた

 

 

海未「なぜ…前半から本気を…??」

 

エドガー「…あなたたちには申し訳なかった。本当は"真の聖剣"は決勝リーグの時に使うはずだった」

 

海未「隠しの切り札…ということですか」

 

エドガー「だが、日本はやはり想像以上の強さだった。切り札を温存する余裕などないと」

 

海未「…温存してくれてもよかったんですよ」

 

エドガー「それは無理ですね」バッ!

 

海未「!?」

 

 

曜「海未さんが奪われた…!?」

 

 

エドガー「…私たちはイギリス国民の数えきれない夢を託されている…それを裏切ることは出来ない。その夢を背負って戦うのが、代表…私たちの使命!!」

 

千歌「国民…使命、」

 

エドガー「私たちはナイツオブクイーンに選ばれた誇りを胸に戦っている。必要なのは勝利のみ…!!」

 

エドガー「日本の騎士団長、高海千歌」

 

千歌「!!」

 

エドガー「あなたの世界一とは…あなたのサッカーとは何なのか」

 

千歌「私の、サッカー…」

 

エドガー「代表とは、自分の高みだけを目指すものではない。私は、国のために…仲間のために…この試合、絶対に勝利する!!」

 

 

エドガーの魂…気迫が伝わってきた。

沈着冷静で感情を表に出さない人だと思っていた…が、どうやらそれは間違いだったようだ。

忠誠心とも言えるその心意気。

それがサッカーへなのか、国になのかは千歌には分からない。

だが、これだけは分かる

 

 

エドガー「DFも上がれ!!戦術を変える!」

 

DF「「はい!!」」

 

 

立場を明確に。

自分の存在を、役目をはっきりと認識する選手は……強い

 

 

梨子「な、何!?このポジション…」

 

英玲奈「イギリスも変えてきた…だが、何かおかしい」

 

 

イギリスの選手はドリブルをするエドガーの周りに集まり始める。

エドガーがいるのは中心。

サイド、そして守備の選手はほとんど残されていない。

これでは守備を捨てたのと同じことだが…

 

 

ルビィ「中央突破…??それとも、」

 

善子「何にせよ、やばいわよ…」

 

 

 

真姫「あれじゃあ、中盤は中央を意識せざるを得ないわね」

 

にこ「そう見せかけて、サイドから来るのかもしれないわ」

 

美奈「………まさか、」

 

花丸「美奈、さん…?」

 

あんじゅ「…"あれ"をやる気だわ」

 

美奈「みんな!!!中央だけに意識を向けて!!!!」

 

 

フィールドメンバー「「「!!!!??」」」

 

 

聖良「中央だけ…?」

 

ことり「いったい何を…!?」

 

エドガー「よし…今です!!」バッ

 

 

A『おおっと!?後方からエドガー選手についていたDFがサイドに散りました!!』

 

 

聖良「やはりサイド攻撃!?」

 

理亞「でも、監督は中央だけに意識をって…」

 

善子「だからってサイドをがら空きにしろっていうの!?」

 

 

エドガー「さあ…どうする!!」

 

 

中央にはボールを持つエドガー。

そしてそれを取り囲むFWとMF。

サイドにはDFがいる。

前半のような流れでいくと、連携パスで隙ができたサイドから崩される…

日本の意識は、嫌でもサイドに向くはずだ

 

 

ルビィ「取り敢えず、サイドに注意しながらエドガーさんを止める!!」

 

善子「えぇ!!」

 

 

エドガー「かかりましたね…必殺タクティクス!!!!」

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

美奈「っっっっ…!!やられた…!!!!」

 

 

 

エドガー「ー 無敵の槍 ー!!!!」

 

 

英玲奈「な!?やはり中央突破か!?」

 

 

エドガーを中心にオーラを混ぜ合わせ1つに。

そのオーラは鋭く尖り始め、まるで"エクスカリバー"の斬撃のように、日本陣形を貫く

 

 

A『ナイツオブクイーンが中央を突破!!騎士の槍のように、サニデイジャパンを突き破りました!!』

 

レヴィン『中央を意識させ、両サイドを囮にしたんですね…!』

 

 

海未「止めてください…!!」

 

 

聖良「きゃっ!?」ドガッ!

 

ことり「オーラで吹き飛ばされちゃう!?」ドガッ!

 

 

レヴィン『サニデイジャパンはその術中にはまり、隙を作ってしまいましたか…』

 

 

ルビィ「理亞ちゃんっっ!!」

 

理亞「えぇ!!」

 

ルビィ、理亞「ー Awaken the power ー!!」

 

善子「私もやってやる…!」

 

善子「ー Deep Resonance ー!!」

 

 

A『最終ラインの3人が必殺技を発動!!"無敵の槍"に対抗します!!』

 

 

エドガー「ふっ…たとえ最強の"ATP"でも、反則級の共鳴でも、この超攻撃型必殺タクティクスには適わない!!」

 

ルビィ「ピギィっ!?」ドガッ!

 

理亞「っっ…!?"ATP"でも!?」ドガッ!

 

善子「そんなっっ!?」ドガッ!

 

 

 

花陽「全員突破された…!?」

 

ダイヤ「これが、イギリス…ナイツオブクイーンの力、」

 

あんじゅ「……」

 

 

 

エドガー「さあ、松浦果南!!1人で我が聖剣、受けきれますか!?」

 

果南「くっっ…!!」

 

 

A『エドガー選手と果南選手の1対1!!サニデイジャパンは再び失点の危機!!』

 

 

エドガー「喰らえっっ!!」バッ

 

果南(…止めなきゃ、止めなきゃ!!)

 

 

至近距離なため、シュートの威力は上がらない。

だが元々の威力が規格外の"エクスカリバー"。

ルビィたちの助けはない。

果南は1人で、その絶望とも言えるシュートを、受けなければならないのだ

 

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!!」

 

 

キシャアァァァァァァァン!!!!!!

 

 

果南「っっ!!真!!!!」

 

果南「海竜の逆鱗槍!!!!」ドガアァン!!

 

 

果南は叩いた。

巨大な斬撃を…絶望を…

今にも押し切られそうだ…体が持ってかれそうだ。

歯を食いしばるも、世界は無情。

 

竜を斬り、斬撃は進む。

スタジアムを歓声で包み込む、ゴールの音が…今

 

 

果南「うわあっっ!!??」

 

 

バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

A『決まったあぁぁ!!エドガー・バルチナス、ハットトリック達成!!これで3-2、イギリスが再びリードしましたぁ!!!!』

 

 

ルビィ「ハァ…ハァ…あぁ!!悔しい!!」

 

聖良「逆転…こんな短時間で、」

 

果南「これが世界かぁ…強いなぁ…!!」

 

 

エドガー「…勝つのは私たちですよ」

 

千歌「っっ……」

 

 

その圧倒的に日本は震え、果てなさを見た

 

 

 

 

真恋「美奈、どうするの?このままじゃ点差が開く…」

 

美奈「…大丈夫よ」

 

真恋「…??」

 

 

 

 

 

美奈「行くわよ。あんじゅちゃん」

 

あんじゅ「はーい♪やっと出番みたいね」

 

美奈「日本の…もうひとつの"切り札"を、見せてあげなさい」

 

あんじゅ「"無敵の槍"…強力だけど、私が本気を出せば……」

 

 

 

あんじゅ「破壊されるだけよ」

 

 

 

 

"睡蓮の女神"登場

 

 

日本 2-3 イギリス

 

 






ご感想…お待ちしております



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第3章 76話 「イギリス戦 "Wonderful Rush"」

皆さんどうも!模試の勉強の休憩中に投稿しているルビィちゃんキャンディーです!明日から4週連続模試祭りの3週目。頑張ります





 

 

前回の、輝こうサッカーで!

本当のイギリスを知る日本。それはあまりにも強大だった。守りの"アブソリュートナイツ"に攻めの"無敵の槍"。日本は後半を開始してすぐに逆転されてしまう…そんな中で美奈は交代の指示をした

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『ここで日本は選手を変えてきます!!DF、リベロの津島善子に変わって…UTX高校の"睡蓮の女神"優木あんじゅ!!MFの桜内梨子に変わって"ゴッドストライカー"綺羅ツバサの登場です!!!!』

 

 

善子「私が、交代?」

 

ルビィ「美奈監督には何か考えがあるみたいだよ、」

 

理亞「善子、あんた体力消費してるんだから休んだ方がいい」

 

善子「理亞とルビィがそれ言う?まぁいいわ。お先に」

 

 

善子に変わってフィールドに入るあんじゅ。

ポジションはもちろんDF

 

 

あんじゅ「2人ともよろしくね〜♪」

 

ルビィ「よ、よろしくお願いします」

 

理亞「それで?監督の作戦は?」

 

 

単刀直入に聞く理亞。

"無敵の槍"を攻略しなければ日本には勝ち目はない。

あんじゅのこの余裕そうな雰囲気…何かあるはずだ

 

 

あんじゅ「作戦…って言えるのかしら、これは」

 

理亞「?」

 

あんじゅ「その時が来たら合図するわ!」

 

 

 

A『さあ、イギリスがリードして3-2!!日本はここから巻き返しなるか!?』

 

 

曜(つ、ツバサさんとのFWは初めてだよ…!)

 

ツバサ「よろしくね」

 

曜「はい!頑張るであります…!!」

 

 

つい半年前までは憧れだった選手。

今は同じフィールドに…隣に立っている。

曜は改めて噛み締めた。

自分の努力…成果を

 

 

ピーー!!

 

 

曜、ツバサ「!!」バッ

 

 

A『渡辺曜と綺羅ツバサが同時に飛び出しました!!』

 

 

しかし、こんなところで満足するわけにはいかない。

目指す先はまだ遠い頂上、遥か彼方。

今立ち塞がっているのは"騎士軍"。

 

早速、"アブソリュートナイツ"が迫る

 

 

エドガー「再び奪って点差をつけますよ!!」

 

ツバサ「私からはそう簡単には奪えないわよ」

 

 

ツバサとエドガーの1対1。

曜にパスを出して躱すのもアリだが…ここは、

 

 

ツバサ「っっ!!」ギュン!

 

エドガー(速い…!?ゾーンか!?)

 

曜(すごい…一瞬で抜いた…)

 

 

A『素晴らしいコントロールで綺羅ツバサがエドガーを突破!!』

 

レヴィン『コントロール可能なゾーン…さすがはゴッドストライカーですね。やることが神次元です』

 

 

曜「ツバサさん!"アブソリュートナイツ"で次のディフェンスが来ます!!」

 

ツバサ「OK!」パス

 

曜「!?」

 

ツバサ「今度はあなたのサッカーを見せて」

 

 

エリック「私たちで止める!!」

 

ポール「えぇ!!」

 

 

急にボールを貰った曜は一瞬硬直するも、すぐに前を見た。

あのツバサに試されている…言い方は悪いが、先程も言った通りFWで組むのは初めてだ。

あなたのサッカー…今までに積み上げてきたものを見せてと、言われている気がした

 

 

曜「"スプリントワープ"もいいけど…ちょっと試してみるよ…!」バッ

 

 

曜の身体能力はサニデイジャパンの中でもトップクラスである。

それを利用しての必殺技が"Xブラスト"だった。

曜は得意だ。

自分の限界に挑戦し、超えるための足掻きをするのが

 

 

曜「ついてこれますか!ツバサさん!!」バッ!

 

ツバサ「ついて…えっ!?」

 

 

エリック「なっ!?」

 

ポール「は、速い!!」

 

 

曜「ー エクストリームワープ ー!!」

 

 

曜は前々から考えていた

 

 

エッジ「嘘でしょ…速いだけじゃない、」

 

ランス「あれでは技もとどかない…」

 

 

地面を走るから捕まるのだと、

 

 

曜(やばい…これっっ!!思ったよりもキツいっっ!!)ビュンビュン!!

 

ツバサ「…とんでもないことするわね」

 

 

ならば…空中。

ここを走ればそう簡単には捕まらない

 

 

花丸「"スカイウォーク"の"スプリントワープ"バージョン!!」

 

月「ははっ、あんなことが出来るのは曜ちゃんぐらいだよ」

 

 

A『渡辺曜が空中を高速で進みます!!イギリスの選手は誰も手を出せません!!』

 

レヴィン『"スプリントワープ"が平面ならば、"エクストリームワープ"は立体…ですか!素晴らしいです』

 

 

エドガー「あれでは"アブソリュートナイツ"が機能しない…!!!」

 

ルビィ「曜ちゃん!!」

 

 

ルビィには特別な想いがあった。

"スプリントワープ"は浦の星の頃に曜が特訓を重ね、やっとの事で覚えた技。

しかし、その頃にはルビィは"スプリントワープ"をGXにまで極めていた。

 

その事を知った曜はさらに特訓を重ねた。

ルビィに少しでも追いつけるように。を口癖にしながら…

毎日毎日、磨き続けていた

 

 

ツバサ「私でもついて行くのがやっとね…」

 

曜「うおぉぉぉぉぉ!!!!」ビュンビュン!!

 

 

ルビィ「今の曜ちゃんのドリブルは…ルビィなんかよりもすごいよ」

 

理亞「ルビィ、」

 

 

A『さあ、渡辺曜のドリブルでゴール前まで来た日本!!これはまた出るか!?』

 

 

曜「これで同点っっ!!決める!!」

 

 

善子「"Xブラスト"の構え!!」

 

月「ハットトリック決めちゃえ!曜ちゃん!!」

 

 

フレディ「来い!渡辺曜!これ以上は決めさせない!!!」

 

 

曜は地面に着地後、すぐにクラウチングスタートのような構えをとる。

ここから飛び込みを利用した回転、シュートを放つのだ

 

 

曜「はあぁぁぁぁ!!!!!!」グルグルグル!

 

 

"ゴットウインド"のオーラを両足に。

刻む"Xの刻印"は穂乃果のXとは違って水色。

まるで海のような吸い込まれる色。

 

そのシュートを今ーーー!!!!

 

 

 

曜「Xっっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

エドガー「そうはさせない!!!!」バッ

 

 

曜「なっ!!??」

 

日本「「「!!!!!!?」」」

 

 

ボールを足で蹴る前の一瞬の隙で…奪われた!?

 

 

A『なんと!!エドガー自らがディフェンスのために戻っていました!!!』

 

 

エドガー「……」

 

曜「ハァハァ…あと少しだったのに…!!」

 

 

エドガーは自分のゴール前で着地。

ゆっくりと立ち上がり、そして果南と目がーーーーーー

 

 

果南「…ぇ、」

 

エドガー「…」

 

 

ーーーーー合ってしまった

 

 

 

果南「ま、まさか…」

 

エドガー「喰らうがいい!!」バッ!!

 

 

そのまさか。

薄々と察していた。

そして恐れていた事態。

 

絶対に撃たせてはいけない位置。

今起きている光景は、日本に今までにない絶望を与える

 

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!!」

 

ギシャアァァァァァァン!!!!!!

 

 

A『自身のゴール前から撃った!!!!フィールドを最大限に使った最強の"エクスカリバー"だあぁぁぁぁ!!!!!!』

 

 

月「っっ!?最強のシュートの最強!?」

 

にこ「何が何でも止めるのよ!!!!」

 

 

威力は言うまでもない。

抉り、進み、破壊する。

人が止めるようなシュートでは無い。

いや、シュートと呼んでいいのか。

この威力は…

 

 

理亞「止めるっっ!!絶対に……ぐっ!?」

 

ルビィ「理亞ちゃん!?」

 

 

A『ああっと!?鹿角理亞が膝をついた!!体力が限界に近づいているのか!?』

 

 

それもそのはずだ。

1発撃つだけでも大量のエネルギーを消費する"クロスファイア"。

もう既に何回も。

最強の聖剣を受けているのだ。

逆にここまで、よく耐えたと言えるほどだった

 

 

ルビィ「っっ…!!ルビィ1人でも……」ガクッ

 

 

凛「ルビィちゃんも限界だよ!!!」

 

真恋「ここに来て体力切れ…当然よね…無理させたもの」

 

 

エドガー「これで終わりです!!日本!!」

 

 

エドガーの勝利を確信した声が響く。

シュートはキックオフエリアを越えた。威力はまだまだ上がる。

もう既に"クロスファイア"では軽減できないほどのパワーになっている。

果南は覚悟した。日本の、死をーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「諦めちゃダメです!!!!!!」

 

 

 

 

 

果南「!!!!」

 

日本「「「!!!!!!?」」」

 

エドガー「!!!!」

 

 

 

声がした。

果南の前方。迫り来る巨大な斬撃の行路に立つのは、"ルーラ・オブ・スペース"

 

 

ことり「ことりが何とかする!!」

 

 

果南「ことりちゃん!?」

 

 

A『"エクスカリバー"に立ち向かうのは南ことり!!シュートをブロックするつもりでしょうか!?』

 

 

海未「ブロック…シュート…」

 

曜「海未、さん?」

 

海未「まさかっっ!!!!」

 

 

穂乃果「ことりちゃん!!!!ダメだよ!!!」

 

 

海未よりも先に、ベンチの穂乃果が叫んだ。

突然のことに驚くメンバー。注目を集めるも、今の穂乃果にはどうでもよかった

 

 

穂乃果「穂乃果みたいに、取り返しのつかないことになっちゃうよっっ!!!!」

 

美奈「取り返し……!?ことりちゃん、まさか!?」

 

 

ことり「ー ワンダーゾーン ー!!」

 

 

ことりには届かない。いや、届いても止まることは無い。

"エクスカリバー"はもうすぐそこまで来ている。ことりはすぐに"絶対支配領域 ワンダーゾーン"を発動する

 

 

ことり「今、あのシュートを何とか出来るのは私だけ!!」

 

 

千歌「あの構えって…あれ、だよね…」

 

海未「やめてください…ことり…ことり…」

 

 

振りかぶる。"ワンダーゾーン"の虹色のオーラが右足に集まる。

千歌たちにも見覚えがあった。1度だけ、見たことがあった。

鞠莉、ダイヤのシュートブロック。そして果南の必殺技でも止めることができなかったシュート。そうーーーーー

 

 

 

 

 

ことり「ー ワンダフルラッシュ ー」

 

 

 

 

 

ドガアァァァァァァン!!!!!!

 

鈍くぶつかる音。響く、スタジアムの歓声をも退ける、衝撃波と振動

 

 

 

ことり「うぅぅぅぅ!!!!!!」ググググ

 

エドガー「…!?エクスカリバーを、受け止めた!?」

 

 

A『なんということだ!?南ことりは、シュートブロックで大幅に強化された"エクスカリバー"を抑えています!!!!』

 

レヴィン『あの"クロスファイア"でさえ弾いた威力…それに耐えるとは…』

 

 

 

ことり「っっっっ!!!!!!」ググググ

 

 

穂乃果「ことりちゃん!!やめて!!」

 

にこ「これ以上、"自強化"すんじゃないわよ!!!!」

 

 

ことりのシュート、"ワンダフルラッシュ"。

"ワンダーゾーン"で自身の力を限界まで引き上げて放つシュート。

その威力は、音ノ木坂学院の選手の単体シュートでは穂乃果の次に強力と言われている。が、真実は…そうではない

 

 

希「音ノ木坂学院の最強のシュートは…本当は"ワンダフルラッシュ"なんよ、」

 

善子「え!?だって…」

 

にこ「総合的な能力で選んだのよ。音ノ木坂のエースストライカーは。もちろん、穂乃果のシュートも圧倒的な威力、というのは正しいわ…」

 

希「でも…威力なら"ワンダフルラッシュ"が1番」

 

花丸「なら、なぜ穂乃果さんたちは止めようと…」

 

穂乃果「……"ワンダーゾーン"は自身の力を引き出す技…これ以上、パワーを上げちゃうと………」

 

穂乃果「足が、壊れる」

 

 

 

 

 

ことり「っっっっ!!!!(足が…もう!!)」ググググ

 

 

海未「ことり!!」

 

ことり「海未、ちゃん……」ググググ

 

海未「これ以上はやめてください!!」

 

ことり「ごめんね…っっ…それはできない」

 

海未「!?」

 

ことり「ことりは…大好きだもん…シュートを撃つのがっっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

ことりは、シュートを撃つのが好き。

それが、南ことりがFW"であった"理由。

 

 

昔から。サッカーを始めた頃からそうだった。ことりはシュートが大好き。

穂乃果や海未にも負けない程のシュートへの野心。

ことりの家の近くの壁には、穴が空いている。理由はもちろん、ことりの努力と熱意。

 

中学までは、FWの最前線として。

試合中、1番シュートを撃つ選手として。

サッカーを楽しんでいた

 

 

穂乃果『ことりちゃんはシュートを撃つ時が1番嬉しそう!』

 

ことり『えへへ♪』

 

 

しかし、1つ。

ことりには重大な欠点があった

 

 

中3にこ『今日の相手は手強いわよ。負けられないわ。FWは…穂乃果』

 

ことり『……』

 

穂乃果『…ことりちゃん、FWやる?』

 

ことり『え、』

 

にこ『!?穂乃果…』

 

穂乃果『今日の相手は強いからね、穂乃果はDF頑張るよ。ことりちゃんはバシバシ決めちゃって!』

 

ことり『穂乃果ちゃん…』

 

海未『私もことりを信じます。勝ちましょうことり』

 

ことり『うん!』

 

にこ『はぁ…しょうがないわね』

 

 

その時代、ことりのシュートは無敵だった。

自分のシュート…サッカーに絶対の自信があった。しかし……

 

 

 

 

『0-3』

 

 

ことり『……』

 

海未『強かった、です』

 

穂乃果『ごめん…穂乃果がもう少し頑張ってたら、』

 

ことり『……言ってよ』

 

海未『ことり…?』

 

穂乃果『ことりちゃ…『ことりのせいだって言ってよ!!!!』

 

穂乃果、海未『!!!?』

 

にこ『ことり…』

 

 

穂乃果や海未、にこと違ってことりは……FWに必須な突破力。そう。

 

ドリブルが苦手だったのだ

 

 

 

ことり『みんなのパスも…ことりのせいで全部、取られちゃった…結局1点も決められなかった』

 

 

自分がでしゃばらなければ。大人しくDFをしていれば…

自分の好き…自分勝手がチームの敗北を招いたのだ

 

 

ことり『ごめんなさい』

 

 

 

ことりは、それからFWでのサッカーを避けるようになった

 

 

 

 

 

 

海未「ですが、浦の星との試合でFWとしてサッカーを…!!」

 

ことり「正直、ことりは足でまといだった!!海未ちゃん分かってたでしょ!?」ググググ

 

海未「そんなこと……」

 

ことり「自分1人でシュートを決められなかった…穂乃果ちゃんたちに気を使わせてた…ことり、悔しかったんだよ!!!!」ググググ

 

 

あの時は穂乃果や海未の助けがあったから、トリプルFW。フォーメーション音ノ木としてサッカー出来た。

しかし、そんな中でもことりの背後には『足でまとい』の文字が。

『でしゃばるな』『迷惑だ』と。

心のどこかでざわめく。

 

 

正直、嫌いになっていた。FWを

 

 

 

 

 

 

それでも

 

 

 

穂乃果『ことりちゃん、シュート上手!』

 

 

 

それでも

 

 

 

海未『はい!頼りになります!』

 

 

 

それでも

 

 

 

にこ『ことりのシュートのおかげよ』

 

 

 

それでもーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ことり「シュートは…大好き…なんだよ!!!!!!」ググググ

 

ことり「私の…原点!!始まり!!捨てたくても捨てられない!!!!」ググググ

 

 

A『ああっと!?なんということでしょう!!"エクスカリバー"が、押され始めました!!!!!!』

 

 

 

迷ったら、僕は輝きを信じて

 

 

凛「ことりちゃん!!頑張れーっっ!!」

 

真姫「凛!?」

 

 

遥か遠くの虹だけど

 

 

千歌「ことりさんっっ!!もう少し!!」

 

曜「頑張って!!!!」

 

海未「千歌…曜…」

 

 

そう、きっとつかんで

 

 

にこ「…っっ…ことり!!踏ん張りなさいよ!!」

 

穂乃果「にこちゃん…」

 

にこ「アンタのシュートは信じるって言ったでしょ!!出し切りなさい!!」

 

 

ことり「!!!!」

 

 

新しい世界、探しにいこう

 

 

 

 

 

バキイィィィィィン!!!!!!!!

 

 

 

 

 

いつか笑顔で、シュートを決めれる世界を

 

 

A『南ことりが吹き飛ばされました…!!し、しかし……』

 

 

果南「…!!」

 

エドガー「そんな…まさか、」

 

海未「ことり…っっ!!」

 

 

 

結果として、"エクスカリバー"はそのままことりの"ワンダフルラッシュ"を破り、進撃を続けた。

しかし、ゴールへとたどり着くことは無かった

 

 

ことり「ハァハァ…ハァハァ…」

 

 

A『ボールは…なんと、』

 

 

 

 

地面に刻まれた斬撃の後。

ことりのいた場所から直線は大きくずれ、

 

 

 

 

 

A『コート外へっっ!!!!!!』

 

 

日本の……命を繋ぐブロックとなった

 

 

 

ワアァァァァァァァ!!!!!!!!

 

 

ルビィ「"エクスカリバー"が…逸れちゃった」

 

理亞「あんなこと、出来るなんて…」

 

 

A『南ことりのシュートブロックで、日本は絶体絶命の危機を回避!!!!』

 

レヴィン『まさか"エクスカリバー"と張り合う選手がいるとは…』

 

 

フィリップ「強化された"エクスカリバー"を…一瞬とはいえ、押し返した…」

 

エドガー「…」

 

エドガー「世界は広い。私たちの知らない可能性がこうして、私たちの前に現れる」

 

エドガー「お見事。南ことり」

 

 

 

 

 

 

海未「ほら、行きますよ!!」

 

ことり「痛っ…ごめんね?海未ちゃん」

 

 

海未の肩を借りることり。

見た限りでは折れてはいないようだ。しかし、ダメージを負ったことは確か。

すぐに医務室へと向かうこととなった

 

 

穂乃果「海未ちゃん、あとは任せて」

 

海未「お願いします」

 

 

コート外からは穂乃果が肩を貸す。

海未はことりに怒りたいのは山々だが、今はしょうがない見逃してやろうと

 

 

海未「私は…幼馴染の笑顔に、弱いのですかね」

 

 

ことりは確かに、あの頃のように笑っていた。それが自分への皮肉なのか、シュートが楽しかったからなのかは…

 

後で考えることにしよう。

海未はことりたちに背を向け、フィールドへと戻った

 

 

 

 

日本 2-3 イギリス

 

 

 




エクストリームワープ
曜ちゃんが"スプリントワープ"を進化させた技です。地面だけでなく、空中でも。空を蹴るように高速ドリブルします。ワン〇ースの黒脚のコックさんの"スカイウォーク"を想像してもらえるといいかもしれません。劇場版フィルムZの高速スカイウォーク…あれですね

ことりちゃんには無茶をさせてしまいました…日本、負傷多すぎ()


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第3章 77話 「イギリス戦 "破壊の神々"」


皆さんどうも!寝落ちしてスクフェスのランクをまったく上げられなかったルビィちゃんキャンディーです!

イギリス戦も残り3、4話となりました。果たしてどのような結果になるのか…




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ルビィに近づくのではなく、自分は自分だけの特技を伸ばそうと奮闘する曜。そして、自身のゴール前から放たれた最強の"エクスカリバー"。過去から抱く想いを込めて"ワンダフルラッシュ"をぶつけることり。結果、"エクスカリバー"はゴールに決まることはなかった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『南ことりの"ワンダフルラッシュ"は最強の"エクスカリバー"の進路を大きく逸らし、イギリスのコーナーキックとなります!!』

 

レヴィン「コーナーキックですので、日本のピンチには変わりありませんが、あのブロックが日本の絶体絶命の状態を回避したのは確実でしょう」

 

 

美奈「後半もあと半分よ。頑張って!」

 

にこ、ダイヤ、希「はい!!」

 

 

 

FW………渡辺曜、綺羅ツバサ、黒澤ダイヤ

 

MF……………高海千歌、園田海未

 

MF…………矢澤にこ、統堂英玲奈

 

DF……東條希、優木あんじゅ、鹿角聖良

 

GK……………………松浦果南

 

 

 

A『日本はここで選手をいっきに3人交代するようだ!!南ことりと黒澤ルビィ、鹿角理亞に代わって東條希、矢澤にこ、黒澤ダイヤです!!』

 

レヴィン『ブロック選手を3人失ったのは大きいですね…日本は残り時間、さらに厳しい戦いとなるでしょう』

 

 

 

千歌「にこさん…!!待ってました!」

 

にこ「いい?私だけを頼るだけじゃ勝てないからね!あんたたちも積極的に攻めるのよ!」

 

FW、MF「「はい!!!」」

 

にこ「まあ、出るからには私もガンガン行くけどね…!」

 

英玲奈「にこ…君が来てくれたのは頼もしいが、DF層がいっきに薄くなった…イギリスの攻撃を止めるのはかなり厳しいぞ」

 

にこ「でしょうね。でも…」

 

英玲奈「…?」

 

にこ「あっちもガタがきてるわよ」

 

 

 

 

 

フィリップ「エドガーさん…これ以上は"エクスカリバー"を撃つのを控えてください…!」

 

エドガー「ハァハァ……」

 

 

英玲奈「!?」

 

にこ「まだ、勝機ありよ」

 

 

膝をつくエドガー。

その姿を見た日本の選手たちは察する。

あちらも限界に近づいている、無理もない。同じ人間。いくら最強技とはいえ、あれだけ何発も放てば足へのダメージは計り知れない

 

 

花陽「エドガーさんは地区予選…ひと試合平均、2発しか"エクスカリバー"を撃っていません…」

 

善子「2発!?じゃあ、もう3倍近く多く撃ってることになるじゃない!!」

 

ルビィ「前半からそうだった…目を見れば分かるよ。すました顔をして…最初から全力で戦っていたんだよ。イギリス…そしてエドガーさんは」

 

善子「…ルビィ、」

 

 

本来、"エクスカリバー"は多用するような安い技では無い。

発動自体に意味があるのだ。国の象徴とも言える"エクスカリバー"。

それに選ばれたエドガー・バルチナス。自身が重々承知であろう暗黙のプライド。

それを捨ててまでエドガーは聖剣を何度も放った。泥を塗ろうとも…そして、足が痛もうとも…

 

 

エドガー「私は…最初から勝つ気です。聖剣のプライドよりも、勝利へのプライドを優先する…!!」

 

フィリップ「エドガーさん…」

 

エドガー「それに、敬意でもあります。ここまで全力で答えてくれている日本に…」

 

ピーター「…日本に敬意」

 

 

エドガーはゆっくりと立ち上がる。心配で見守るチームメイトを背に、日本の陣内に踏み込む。

そして、振り返り、騎士団長は言う

 

 

エドガー「我らはナイト!!勝利を国に捧げるために、そして日本に応えるために、残り時間全力で戦う!!!!」

 

「「「はい!!!!!」」」

 

 

 

A『さあ、イギリスのコーナーキック…!!蹴るのはMFのポール選手です!』

 

 

果南「…」

 

果南(なんで…出来ないの…)

 

 

新必殺技…ダイヤと今日の朝ギリギリまで特訓した。しかし、イメージが固まっただけで、形には全くならなかった。

あと一歩…何かきっかけが欲しい…そう考えながら、試合になってしまった

 

 

千歌「果南ちゃん!!」

 

果南「っ!!?」

 

 

フィリップ「決めるっっ!!!!」バッ

 

 

果南(やばっっ!!油断した!!)

 

 

既にボールは蹴られていた。

あと数秒後にはフィリップがボレーシュートを撃ってくるだろう、反応が遅れた果南はいっきに神経を研ぎ澄ませる…しかし、

 

 

フィリップ「ー パラディンストライク ー!」ドガァン!

 

果南(速いっっ!!!)バッ

 

 

A『フィリップ選手が右端を刺した!!松浦果南は間に合うのか!?』

 

 

理亞「間に合わない…!!」

 

梨子「このままじゃ……」

 

 

 

 

ーーーーードガッッッッ!!!!!!

 

 

フィリップ「!?」

 

果南「!!!!!」

 

 

あんじゅ「決めさせないわよ…!!」

 

聖良「意地にかけてでも守ります!!」

 

果南「あんじゅ…聖良!!」

 

 

A『サニデイジャパンのDFが決死のブロック!!!!日本救われました!!』

 

 

にこ「こぼれ球は貰ったわよ!」

 

エドガー「くっ…矢澤にこですか…イギリス!!"アブソリュートナイツ"!!」

 

 

にこのフォローも速かったが、エドガーの指揮はそれにならぶ。

すぐさまボールを奪うべく、陣形を整える

 

 

にこ「あんたたち、足止めるんじゃないわよ!!」

 

FW「はい!!!」

 

にこ「にこが突破口を作るから付いてくるのよ!!」

 

 

A『矢澤にこが"アブソリュートナイツ"に挑みます!!!!』

 

 

にこ「ー ファンタスティックキープ ー!!」

 

 

にこのドリブルテクニックは日本レベルでは収まらず。世界に通用すると言っても過言ではない。

"フリースタイルフットボール"。そして"ストリートサッカー"などの技を応用し、鮮やかに敵を抜く

 

 

ピーター「!?」スカッ

 

ケイリー「ボールどころか、矢澤にこにも触れない!?」スカッ

 

にこ「ほらほら!全員抜いちゃうわよ!」

 

 

ボールを1番、生き物のように魅せるプレー。と言ってもいいだろう。

触れそうで触れない。

取れそうで取れない。

そんな焦れったさだけを残して去るにこ

 

 

ジョニー「2人がかりなら!」

 

デービット「えぇ!!」

 

 

エドガー「!?ダメです!陣形を崩しては…!!」

 

 

にこ「隙ありよ!」パス

 

ジョニー、デービット「!?」

 

 

エドガーの警告は届かず、空いた隙間にボール出すにこ

 

 

にこ「頼んだわよ…!ツバサ!」

 

ツバサ「ナイスパスよ。にこさん」

 

 

A『綺羅ツバサにボールが渡ったぁぁ!!崩れつつあるイギリス陣形の中、いっきに畳み掛けます!』

 

 

エドガー「くっ…フレディ、止めてください!!」

 

フレディ「はい!!絶対に止めます!!」

 

 

綺羅ツバサのゾーンは異常だ。

1つのプレーを終えた次のプレーは、まるで別人の動きのようになる。

目をギラつかせ、クールな笑みの中にサッカーを楽しむ純粋なもう1人の少女がいるかのように

 

 

ツバサ「勝負よ。GKさん」バッ

 

月「あれは…"ゴッドノウズ"!?」

 

 

空中に飛び、オーラで作った巨大な羽を羽ばたかせる。

ボールには神の力に相応しい程のパワーが込められ、入り切らないオーラがバチバチと溢れている

 

 

海未「"ゴッドノウズ"で破れるでしょうか…」

 

英玲奈「……待て。何かが違う」

 

海未「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ツバサ「私の本気のシュート。受けてみたくない?」

 

 

 

 

 

 

バリバリバリバリバリバリ!!!!!!!!

 

 

 

 

フレディ「きゃっ!?(何このオーラ!?)」

 

エドガー「…!!」

 

 

ツバサがゾーンを発動しながらパワーを引き上げる。その表情からは、まるで自分の限界を引き出してる…そのものだった。

ボールから溢れる電気のようなオーラは、何倍にも膨れ上がる

 

 

千歌「すごいオーラ!?」

 

曜「まるで花火…みたい、」

 

 

ツバサ「…はああぁっっっっ!!」

 

 

ツバサは覇気を込めた声を出しながら…オーラを徐々にボールに凝縮させていく。

 

"ゴッドノウズ"の課題。

それは、あまりにも巨大なオーラなため、オーラがボールに入り切れずに逃げていってしまうこと。

ボールの周りで弾けるオーラがそれだ。

あれは漏れてしまったオーラなのだーーーー

 

 

ツバサ「っっ!!…それを無駄なく凝縮させたら…どうなるかしらっっ!!!!」

 

 

ルビィ「すごい…空気が揺れてる」

 

月「あそこまで本気のツバサさんは…なかなか見れないよ」

 

 

『一触即発』

先程までバチバチと弾けていたボールが、恐ろしく静かになっていた。

しかし、少しでも刺激を与えれば破壊の如く、神の力が溢れ出す。

そんなボールにーーーーーーー

 

 

 

ツバサ「喰らいなさい」

 

 

 

ーーーーーーかかと落とし

 

 

 

 

 

 

ツバサ「ー ゴッドブレイク ー」

 

 

 

 

 

ドガアァァァァァァン!!!!!!!!

 

 

 

善子、凛「にゃあぁぁぁ!!!!??」

 

花丸「すごい威力ずらぁぁ!!??」

 

 

ツバサが一撃を加えた瞬間。

ボールがオーラと共に大爆発したかの如く。"ゴッドノウズ"の比ではない巨大で、果てしないシュートが…ゴールに迫っていた

 

 

穂乃果「行っけー!!ツバサさん!!」

 

 

フレディ「ー ガラティーン ー!!真っ二つにしてやる!!!!」

 

 

振り下ろされた大剣。

イギリスの要であるこの技は、何度もイギリスのピンチを救ってきた

 

 

フレディ「ぐぐぐっっ…!!!!!!」

 

ツバサ「ハァハァ…私の全力よ」

 

フレディ「ごめん…なさい…みんなっっ!!」

 

 

ツバサ「最高にクールでしょ」

 

 

 

バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!!!

 

A『ゴール!!!!!!再び日本が追いつきましたぁぁ!!』

 

レヴィン『"ゴッドノウズ"を進化させた"ゴッドブレイク"…まさに、神のシュートですね』

 

 

 

にこ「よしっ!!同点よ!!」

 

千歌「試合も残り僅か!!あと1点取ろう!」

 

ツバサ「そうよ…グループ戦で負けてられないわよ…!」

 

 

流れは再び日本に来ている…!!

勝利の機を逃さんと気持ちを高める

 

 

フレディ「エドガーさん…私…」

 

エドガー「下を向かないでください。騎士ならば、最後まで前を向くのは当然です」

 

フレディ「!!」

 

エドガー「失点は私たち全員の責任。私たちが必ず…もう一点」

 

エリック「もう日本の好きにはさせないから!」

 

エッジ「私たちが必ず逆転する!!!」

 

フレディ「みんな…」

 

エドガー「私たちの攻撃です!!行きますよ!!」

 

 

 

ピーー!!!!

 

A『さあ、試合再開です!イギリスは再びあのタクティクスを仕掛けるつもりか!?』

 

 

エドガー「遠慮などしないぞ日本!!ー 無敵の槍 ー」

 

英玲奈「またあれか…!!厄介だぞ!!」

 

 

すぐさま陣形を中央突破に切り替えて来たイギリス。

先程は全く歯が立たなかった"無敵の槍"。あの"ATP"でさえ、抑えることが出来なかった

 

 

千歌「うわっ!?」ドカッ

 

曜「まずい…また攻め込まれちゃう!!」ドカッ

 

 

A『"無敵の槍"が切り裂きます!!サニデイジャパンは止めに入るも、抑えることはできないか!?』

 

 

聖良「また全員突破されたら…エドガーさんに」

 

希「うちの瞬間移動で何とか…」

 

 

あんじゅ「私にやらせて頂戴」

 

聖良、希「!?」

 

聖良「ですが…1人では…」

 

あんじゅ「お願い」

 

希「……行くよ。聖良ちゃん」

 

聖良「希さん…!!」

 

 

A『おおっと!?サニデイジャパンのDFは、優木あんじゅを除いて全員がサイドに広がっていきます!!』

 

レヴィン『あれではあんじゅ選手1人に任せたようなもの…大丈夫でしょうか?』

 

 

果南「いったい何を…」

 

あんじゅ「〜♪私の技を使う時が来たのよ」

 

果南「使う時…?」

 

あんじゅ「そうよ。切り札、ね」

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

時は全国高校女子サッカー大会準決勝にまで遡る

 

 

 

ー 音ノ木坂学院VSUTX高校 ー

 

 

『再び音ノ木坂学院が攻めます!!!!』

 

 

UTX選手『なっ…なんなのこの子たち!?』

 

あんじゅ『私が止めるわ!!』

 

あんじゅ『ー ジャッジメントレイ ー!!』

 

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

 

UTX史上最強と謳われたあんじゅのディフェンス。その破壊としか言えない技は、相手から恐れられ、あんじゅ自身も無敵だと思っていたーーーーー

 

 

『どっちがたくさん躱せるか勝負にゃ』

 

『望むところです』

 

 

 

そう、

 

 

 

海未『ー START:DASH!! ー』

凛『ー イナビカリ・ダッシュ ー』

 

 

 

ーーー音ノ木坂学院と戦うまでは

 

 

あんじゅ(レーザーを全て躱す!?ありえない!?)

 

凛『こんなの楽勝にゃあぁぁ!!!!』

 

 

衝撃だった。そんな人間が…今まで1度も名を聞かなかった高校が…こんな…

 

 

海未『ー ラブアローシュート ー』

 

UTXキーパー『ぇ、』

 

海未『既にゴールに入ってますよ?しっかりしてくださいよ、』

 

 

『ゴール!!!!音ノ木坂学院、3点目です!!あの王者UTX高校が…こうも簡単に点を許してしまうとは…!!』

 

 

あんじゅ『ハァハァ…なん、で…』

 

海未『あなたは…分かってない』

 

あんじゅ『!?』

 

海未『自分の技の…本当の価値を』

 

あんじゅ『価値?何よそれ…』

 

海未『私たちの監督も言っていました。あなたのその技は、いつか使う時が来る…それまで使わない方がいいですよ??』

 

 

海未『無駄打ちです』

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

あんじゅ「あの頃はへこんだわよ〜、本当に」

 

 

A『"無敵の槍"はすぐそこだあぁぁ!!!』

 

 

考えた。初めて負けて、初めて言われた言葉。考えて考えて…そして、答えを出した

 

 

あんじゅ「…」パチン

 

エドガー「…?何かの技…空中に紋章?」

 

 

自分だけでDFは十分だと、あの頃は思っていた。

邪魔だと。足でまといになるだけだと。何も…分かっていなかった

 

 

理亞「ちょっ…あれって…」

 

花丸「来るずら…あの…野蛮な技ずら!!」

 

 

日本代表になって分かった。

私には出来ないことが多すぎると。そんな私の出来ないことを補ってくれる…助けてくれるのが、DFの仲間たちだった

 

 

希『協力して頑張ろ♪』

 

聖良『一緒にやれば出来ますよ!』

 

ことり『任せてください♪』

 

晴夏『フォローはお任せを!』

 

善子『私が走るわ』

 

 

彼女たちはそれぞれの特技を活かし、それぞれの弱いところを支え合っていた。

私は…ここまで何度もみんなに助けられた

 

 

あんじゅ「さぁ…行くわよ!!!!」

 

 

今度は…私が長所で、仲間を助ける番

 

 

 

あんじゅ「ー ジャッジメントレイ ー!!」

 

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

ドガァン!ドガァン!ドガァン!ドガァン!

 

 

エドガー「なっ!?レーザービーム!?」

 

フィリップ「うわっ!?」

 

ピーター「"無敵の槍"が崩れる!?」

 

 

レヴィン『これは…私は見たことがない技です…』

 

A『この技は優木あんじゅが、UTX高校で破壊の限りを尽くしていた時代に恐れられた"ジャッジメントレイ"です!!その破壊力から、"睡蓮の女神"と呼ばれるようになりました!!』

 

 

真恋「美奈…この技は、」

 

美奈「出すわけにはいかなかったのよ♪」

 

美奈「あんじゅちゃんが"価値"に気づくまで。そして、相手チームに分析されないために」

 

 

 

ダイヤ「"無敵の槍"が…潰された??」

 

ツバサ「相変わらず、無茶苦茶な技ね」

 

 

フィリップ「ぐっ…こんな技、アジア予選のデータには…」

 

エドガー「まさか今まで使ってこなかった技があったとは……」

 

 

あんじゅ「ふふっ♪すごいでしょ。私の技」

 

 

 

あんじゅの技の価値。それは……

 

仲間たちでは抑えられない強力な必殺技、そう。必殺タクティクスを潰すこと。

 

"タクティクスブレイク"。後にあんじゅの技はそう呼ばれることになる

 

 

 

美奈「これでイギリスは"無敵の槍"を使えない。エドガーの足も限界。"アブソリュートナイツ"も攻略。さぁ、」

 

 

美奈「王手よ」

 

 

 

全ては高海美奈の采配通り。

 

 

日本 3-3 イギリス

 

 

 





ゴットブレイク
韓国代表のアフロディさんが使うシュート技です。"ゴットノウズ"と違って、羽やオーラが金色に変化していて、とてもかっこよく強力な技です!

イタリア戦が終わったら、とある方とコラボしますのでよろしくお願いします


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第3章 78話 「イギリス戦 "イルカ座への願い"」


皆さんどうも!昨日のマラソン大会で3年生の衰えをその身で体感したルビィちゃんキャンディーです。本当にキツい。部活引退して体力が無くなって改めて分かります。部活している後輩の体力はすごい。部活って本当に大切だなと思いました

今回のお話は…お待たせしました。果南ちゃんです




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

限界に近づいていたエドガー。そこを畳み掛けるツバサ。"ゴットノウズ"を進化させた新必殺技、"ゴットブレイク"で再び同点に追いついた。ディフェンスでは、自分の技の本当の価値に気づいたあんじゅ。"タクティクスブレイク"として、"最凶"の必殺技を放つのであった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『"無敵の槍"を破壊!!これぞ正しく"睡蓮の女神"!!優木あんじゅの最強ディフェンスが炸裂しました!』

 

 

 

月「相手チームに対策されないために…今まで1度も使わせなかったんだね…」

 

梨子「必殺タクティクスを破壊する必殺技…やっぱりすごい、」

 

 

ボールを奪ったあんじゅはすぐに前へと繋ぐ。

"無敵の槍"はFWとMFの選手で総攻撃するため、カウンターに弱い。日本に立ちはだかるのはイギリスのDFのみ。

今の日本にとって、突破は造作もないことだ

 

 

英玲奈「この機を逃すな!!絶対に決めるぞ!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

A『日本のカウンター!!イギリスは圧倒的に人数が足りません!!』

 

 

エドガー「ぐっ…これ以上の失点は…!!」

 

フィリップ「エドガーさん…!!」

 

 

"ジャッジメント・レイ"のブロックを受けたエドガー。追いかける力は無いに等しかった。

その間にもサニデイジャパンは前へと進む

 

 

ランス「っっ!!ー ストーンプリズン ー!」

 

にこ「!!」

 

 

が、すぐに行く手は塞がれた。

石の壁で作る牢獄。既ににこの退路は消えた。曜のように石の壁よりも高く飛び、放つシュート技があればいいのだが…

にこはシュート技を持っていない

 

 

千歌「にこさんが捕まった!?」

 

曜「何とかしないと…」

 

にこ「そのまま走りなさい!!」

 

千歌、曜「!?」

 

 

石の壁の中からにこの声が聞こえた。

あの状況でどうやって脱出を…???

にこの考えはまったく読めなかったが、千歌たちは言われた通り走り続ける。

なぜなら、にこが言うことだーーーー

 

 

 

千歌、曜(信用できる!!!!)

 

 

あの人なら絶対に何とかしてくれる

 

 

にこ「あんた。相手が悪かったわね」バッ

 

ランス「!?何を…」

 

 

誰も考えないような、できないようなことを平然とこなす

 

 

ツバサ「…!!なるほどね!」

 

ダイヤ「あんなことが可能なのですか!?」

 

 

凛「にこちゃん、すごいにゃ!!」

 

月「あの動きを見ると曜ちゃんの技を思い出すよ…!!」

 

 

曜は見た。にこが何をしているのかを。

曜は思い出した。自分も同じ動きをしたことがあると。

 

曜は思うーーーー

 

 

にこ「曜。これが本当の"パルクール"よ」

 

 

ーーーー次元が違うと

 

 

 

A『な、なんということでしょうか!?矢澤にこは、石の壁の間を…蹴るように登っていく!!壁キックです!!これはまさしくアクロバティックだぁぁ!!』

 

レヴィン『まるで街中の"パルクール"のような美しい動きですね…ボールを蹴り続けながらの壁キック、やろうと思って出来る技ではないですよ』

 

 

時には片足で、時には手を使って。

鍛え上げられた筋肉があるからこそ出来る技。並大抵の体幹では到底不可能だ

 

 

ランス「壁の間を登る!?」

 

にこ「さあ、決めなさい!!」パス

 

曜「!!」

 

 

石の壁を越え、にこはすぐに前を走る曜へと繋いだ。一瞬、にこの動きに圧倒されだが、今の自分にはやるべき事がある。そう、

 

 

曜「絶対に決める!!!」

 

フレディ「イギリスの誇りにかけて…守る!!」

 

 

ボールを足で挟み、飛び込みの回転を応用した動きで空へと飛ぶ。

その間にもエネルギーをため続け、すべての力を両足に込めたら一撃。

両足でXの刻印を放つ

 

 

曜「ー Xブラスト ー!!!!」ドガァン!!

 

フレディ「ー ガラティーン ー!!」

 

 

A『出たあぁぁ!!渡辺曜の必殺シュート!1度敗れているフレディ選手、これで日本は勝ち越し点となるのか!?』

 

 

フレディ「ぐぐぐっっ…!!!!」

 

 

デービット「フレディ…頑張って!!」

 

ジョニー「押されてる…!!」

 

 

曜の新たなシュートは重い。まるで鋼鉄の球を切ろうとしているようだ…

これが決まれば日本が逆転する。時間的にもこれが決勝点になるだろう。

イギリスを背負って戦う1人。既に3点も失点を許してしまっている

 

 

フレディ「ぐぐぐ…負け、ない…!!!!」

 

 

曜「行けえぇぇぇぇ!!!!!!」

 

千歌「曜ちゃん!!!!!!」

 

日本「「「決まれえぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」

 

 

フレディ「…負け……な…!!」

 

 

日本の声援がこれでもかというほどに響いてくる。会場のイギリスへの声援を貫き、直接、頭の中にガツンと届く。

これが日本の力なのか…

 

だが、

 

 

エドガー「フレディ!!諦めたらいけない!!」

 

ポール「まだ行けるよ!!」

 

イギリス「「「フレディ!!!!」」」

 

 

フレディ「…!!」

 

 

何が日本の声援、すごい…だ。

聞こえるじゃないか。仲間たちの熱い声援も。清々しい。応援されるのはなんて気持ちいいんだ

 

 

フレディ「ぐぐぐ……まだだ!!!」

 

曜「!?」

 

 

海未「持ち直した…?」

 

英玲奈「どこからあんな力が…」

 

 

私はイギリス代表、"ナイツオブクイーン"。

イギリス全国民の意思を背負う、最後の砦

 

 

フレディ「ただの…"ガラティーン"じゃない!!」

 

曜「…!!」

 

 

勝利のために、仲間のために…そして自分のために!!!!!!

 

 

フレディ「ー ガラティーンV3 ーだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

私は負けない!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

ズバアァァン!!!!!!!!!!

 

 

 

曜「」

 

日本「「「」」」

 

イギリス「「「」」」

 

エドガー「」

 

 

 

A『と…と…』

 

A『止めたあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

 

 

ワアァァァァァァァァ!!!!!!!!!!

 

 

レヴィン『"Xブラスト"を斬った…!!』

 

A『イギリスの騎士は死なない!!天にも伸びる大剣が、渡辺曜のシュートを真っ二つにしました!!!!』

 

 

曜「と、止められた…」

 

フレディ「ハァハァ…ハァハァ!!」

 

 

完全に止められた。

あの進化は、イギリスのチームの想いが集まったように見えた。

日本だけじゃない。チームで戦い、チームで進化していく…

 

 

曜「次は…絶対に決めるよ!!」

 

 

ドキドキが止まらなかった

 

 

 

千歌「曜ちゃん!もど……ぇ、」

 

曜「千歌、ちゃん?」

 

 

だが、そんな感情も一瞬で消え去る、あることが起きようとしていた

 

 

にこ「嘘でしょあんた……!!?」

 

ツバサ「マークを怠った…」

 

 

 

 

エドガー「フレディ…あなたの想い、無駄にはしない」

 

 

曜「エドガー……さん、」

 

 

 

イギリスのゴール前でボールを持つのは、エドガー

 

 

A『おおっと!?エドガー選手が再びゴール前へ!!これはまさか!!??』

 

 

フィリップ「エドガーさん!!もうシュートは撃てないはず…!!」

 

エドガー「私のシュートは不滅だ!!!!」

 

フィリップ「!!」

 

エドガー「勝利、そして仲間のためなら…この足…捧げるまで!!!!」バッ

 

 

ダイヤ「果南さん!!!!来ますよ!!」

 

果南「!?」

 

ダイヤ「もう、あなたを守ってくれるDFはいません!!!!自分の力で、"エクスカリバー"を…自分を超えてみなさい!!!!」

 

 

エドガー「その通りだ松浦果南!!!!!!」

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!!」

 

 

ギシャアァァァァァァン!!!!!!

 

 

A『エドガー、再びゴール前から"エクスカリバー"を撃ったあぁぁぁ!!日本はシュートブロックする選手は残っていません!!どうする松浦果南!!!!』

 

 

果南「っっっっ!!!!!!」

 

 

最大のチャンスからの最大のピンチ。

そうだ。私はここまで仲間に甘えてきた。

ルビィ…理亞…ことり…全員が、自分の限界を超えるために。ゴールを守るために戦ってくれた

 

 

果南「私は…何をしてる…のっっ…」

 

 

悔しくて…前を向けない

 

 

ダイヤ「果南さん!!」

 

穂乃果「果南ちゃん!!」

 

海未「果南!!」

 

 

斬撃が迫る。これが決まれば日本は負ける。

どうすれば…どうすれば……

 

 

 

 

 

…父さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『果南。下を見るなとは言わない』

 

 

果南「!!!!!!」

 

 

『下を見なきゃ、見えないものがある』

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

かなん『お星様、綺麗だね』

 

 

…小さい頃の記憶

 

 

北也『そうだな……果南。お星様には特別な力があるんだ』

 

かなん『特別な…力?』

 

北也『あぁ。手を伸ばして、お星様を掴んで願うのさ。力を貸してくれって』

 

かなん『うーん…でも、お星様掴めないよ?』

 

北也『果南。下を見てみな』

 

かなん『下を……?』

 

 

…そこには海。海面に映る、宝石たち…星空だった

 

 

かなん『すごい!これならお星様掴めるよ!!』

 

北也『…なあ、果南』

 

かなん『?』

 

北也『いつかな、つまづく時。苦しい時が来たら…無理して前を見ずに、下を見てみるといい』

 

北也『お星様はいつも、果南が頑張っているところを見ている。しっかりとな』

 

北也『だから、必ず貸してくれるさ。特別な力を…だから、』

 

 

 

北也『手を伸ばして願え!!!!果南!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシャアァァン!!!!!!

 

 

果南「!?」

 

 

瞬間。果南は気づく。

足元が…海になっている

 

 

ダイヤ「果南、さん……」

 

にこ「何よ、あれ」

 

 

あの時と同じ。波ひとつ立たず、ただ鏡のように…天を彩る星々を移す。

果南のちょうど真下には…忘れるわけがない。小さい頃から毎日探した「イルカ座」が映っている

 

 

果南「イルカ座…」

 

北也『お星様には、特別な力があるんだ』

 

果南「っっ!!」バッ

 

北也『手を伸ばして、お星様を掴んで願うのさ』

 

 

 

果南「私に……私を超える力を!!!!!!」

 

 

 

果南の手は、海面。

映る『イルカ座』に。

受け入れられたかのように吸い込まれる。

 

静かだった海は次第に渦を巻き始める。

水中に突っ込んだ、果南の腕を中心に

 

 

果南「うおあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

エドガー「終わりだぁぁっっ!!!!!!」

 

 

 

 

ドガアァァァァン!!!!!!

 

 

"エクスカリバー"がゴールに到達した。

砂埃を巻き上げ、フィールド。そしてベンチの選手の視界を遮る

 

 

善子「どうなったのよ!?」

 

ルビィ「…果南さん!!」

 

 

固唾を呑んで見守る。

煙が晴れれば、結果を受け入れなければならない。絶対なる聖剣が日本を貫くのか…またはーーーーーー

 

 

 

エドガー「……!!!!!!」

 

ダイヤ「果南、さん!!!!」

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

 

 

果南「…」シュゥゥゥ…

 

 

 

ーーーー奇跡が起きるのか

 

 

 

フレディ「最強の"エクスカリバー"を…1人で、止めた???」

 

エドガー「……」

 

 

ダイヤ「あれが…果南さんの新必殺技」

 

 

 

 

果南は潰した。

最強のシュートを。『イルカ座』から借りた力で。

ボールは地面に押し込まれていた。

人間が作ったとは思えないほどの、煌びやかな装飾。宝石で出来ているよう。

先は3つに分かれ、右手で握りしめる。

神の武器…そう。"神器"

 

 

 

果南「ー デルフィナス・トリアイナ ー 」

 

 

 

トライデントは生まれ変わる。

星の力を得て、今、海皇の最強の神器として……轟く

 

 

 

日本 3-3 イギリス

 

 

 

 





デルフィナス・トリアイナ
果南ちゃんの新必殺技です。最強の"エクスカリバー"をねじ伏せるほどの力を持っています。詳しい説明は次回書きます。ちなみに、『デルフィナス』は『イルカ座』。『トリアイナ』は『トライデント』の別名です



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第3章 79話 「イギリス戦 "決着。信念の果てに"」


皆さんどうも!殺人的な寒さの中、体育のサッカーは半袖短パンで走り回るルビィちゃんキャンディーです!

はい!ついにイギリス戦決着です!やっとまた一歩前進…ですね。結果はどうなるのか、そして、果南ちゃんの新しい力は…




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

同点。曜の"Xブラスト"を防いだイギリス。エドガーは足を捨てる覚悟で"エクスカリバー"を放った。しかし、果南の新必殺技により完全に止められたシュート。誰もが驚く中、星の力を得たトライデントは、ギラギラと輝いていた

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

果南が"トライデント"を習得したのは中学生のころ

 

 

北也『筋肉が足りないんだ果南』

 

果南『ハァハァ…』

 

北也『毎日朝練。積み重ねろ。それが必ず力になる』

 

果南『…分かった』

 

 

中学生になって、サッカー部に入ると…サッカーのレベルはいっきに上がった。ジュニアの頃のように、簡単にことが進むのは少なくなっていた。

そのひとつとして、必殺技の習得。必殺技が使えるか使えないかで、サッカー部のレベルは大きく変わる

 

 

果南『55…56…57…』

 

『あ!果南がまた筋トレしてるぜ!男みたいだな』

 

『おとこ女だ!おとこ女!』

 

果南『…』

 

 

ダイヤ『あなたたち!!いい加減にしなさい!!』

 

『やべっ…ダイヤだ』

 

『退散退散』

 

 

ダイヤ『…果南さん、』

 

果南『…私、気にしてないよ』

 

 

元々、果南の運動神経は男子にも劣らないレベルだった。死にものぐるいで走るサッカー。どうしても目立ってしまう。

果南の男勝りなプレー

 

 

果南『いつか見返してやるんだ。すごい必殺技を作ってね』

 

ダイヤ『わたくしも相手しますわよ』

 

果南『ありがとう』

 

 

この頃の果南は、見た感じ気にしてないような素振りを見せている。しかし、内面的にはそうとも言えない。

ルビィのいじめ問題があったため、かなりピリピリしていた

 

 

果南『ルビィが中学に来た時、どんと受け止められるキーパーにならなきゃね』

 

ダイヤ『…果南さん』

 

 

ダイヤは思う。果南は男っぽいと言うよりかはイケメンだ。と、

軟弱な男よりも強い心を持っている。だが、こんなこと女子である果南の前で口にするのは言語道断。

果南だって女子である。

絶対に傷つくはずだ

 

 

鞠莉『果南が…イケメン?確かに、サッカーしている時は豪快だけど…果南は試合中も綺麗よ?』

 

ダイヤ『?』

 

 

鞠莉と話をするといつも言われた。

果南はサッカーをしている時も綺麗だと。

最初はお世辞だと思った。下手すぎる。もっと誤魔化した言い方をしても良いのではないかと、しかし、

 

 

鞠莉『果南は確かに豪快で、力強いプレーをする。でも、動きがね…視線が…繊細。綺麗なの』

 

ダイヤ、果南『…』

 

鞠莉『果南の美しさは…荒々しさの中にあるのかも。"嵐の海を泳ぐイルカみたいに"』

 

果南『…ポエムみたい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果南「いよっと」

 

 

 

 

グサッッッッ!!!!!!

 

フィリップ「っっ!?ボールを刺した!?」

 

 

A『またしても松浦果南の三叉戟の餌食!!イギリスは何度もシュートを撃ちますが、全て松浦果南の新必殺技により沈みます!!』

 

 

ゲイリー「あの武器…音、迫力から見て、かなりの重さのはず…」

 

エリック「それを片手で…木の棒みたいに振り回すなんて…」

 

 

果南が召喚した"トリアイナ"。

またの名を"トライデント"。

またの名を"三叉戟"。

果南の身長よりも長いその槍は、確かに片手で…いや、両手で持てるかも分からない重さのはず。

しかし、果南はそれを片手に暴れている

 

 

穂乃果「あれが…果南ちゃんの、」

 

 

息切れひとつ無し。

ただすました顔で、ゴールに迫る獲物…小魚を狩っていく

 

 

果南「はああっっ!!」

 

 

ドゴッッッ!!!!

 

時には刺し、時には突き飛ばし、時には叩き潰す。果南が槍を振れば、風を切り、竜が舞う。

まるでゴールの前に竜巻が出来たようだった

 

 

ダイヤ「ただ、力任せに暴れているだけではありません」

 

海未「ダイヤ…!」

 

 

昔、鞠莉が言ったことを思い出した。

果南は荒々しさの中に、繊細さがあると。

表面的に見れば、暴れ狂う…怪力の最強キーパーに見える。

 

しかし、動き…顔は真逆だった。

ダイヤが身近で例えるならば…舞い。まるで踊っているようだ。

見とれてしまうほど…は言い過ぎか。

何にせよ、今の果南は負けない。

静と動を兼ね備えた果南なら…聖剣だろうと叩き潰してくれる

 

 

フィリップ「ー パラディンストライク ー!」ドガァン!

 

果南「ほっ」

 

 

ドガアァァァァン!!!!!!

 

ーーー軽くひとひねり

 

 

A『地面に埋め込まれたボール!!松浦果南の神器が止まりません!!』

 

レヴィン『"トライデント"の進化形態…素晴らしい力ですね』

 

 

これでゴールはもう心配ない。

あとは勝つだけ。日本の選手たちは覚悟を決めた

 

 

千歌「勝つよ…残り時間、私たちの全てをぶつけよう!!!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

イギリスのディフェンスも強力だ。

しかし、日本は足を止めることはない。キーパーが絶対に止めてくれるという安心感。

これが日本の強さを増幅させるトリガーとなっていた。

 

攻めたプレー。それを積極的に仕掛ける

 

 

千歌「ダイヤさん!!」パス

 

ダイヤ「はい!!」

 

 

A『サニデイジャパンのボールが繋がります!!"アブソリュートナイツ"を完全に攻略していきます!!』

 

 

しかし…果南はなぜ急に新必殺技を発動出来たのか…あんなに悩んでいたのに。

ダイヤは考えるも、すぐに今やるべき事に意識を戻す

 

 

ジョニー「そこ!!」ズザーッ!

 

ダイヤ「っっ!!」バッ

 

ジョニー「躱された!?」

 

 

何にせよ。果南は超えたのだ。自分を。

みんなの期待に応えた松浦果南。

今度は…自分たちが応える番だ

 

 

ダイヤ「お願いします!!ツバサさん!」パス

 

ツバサ「ええ」

 

 

黄金に輝くオーラ。ツバサは羽を広げて天へ。ゾーンでオーラを極限にまでボールに凝縮させる。

そのひとつひとつの動作が破壊へのカウントダウン。後のことは考えない。全てをこの一撃に…込める

 

 

ツバサ「ー ゴットブレイク ー!!」ドガアァン!!

 

フレディ「止める…ー ガラティーンV3 ー!!」

 

 

進化した大剣がボールに振り下ろされた。

ツバサのシュートも強力だが、それに並ぶほどの力

 

 

フレディ「ぐぐぐっっ(進化しても…重い!?)」

 

A『ああっと!?フレディ選手が押され始めた!!』

 

 

イギリスも日本も、固唾を呑んで見守る。

見守ってはいるが、すぐに助けに入りたい。エドガーたちは日本という未知の相手を前に…ついに、崩れた

 

 

フレディ「きゃあっっっ!?」

 

 

バシュウゥゥゥゥン!!!!!!!!

 

 

日本「「「!!!!!!!!」」」

 

ツバサ、美奈「完璧」

 

 

A『ゴール!!!!ついに、ついに日本が勝ち越したあぁぁ!!綺羅ツバサのシュートは進化した大剣を貫き、逆転の4点目です!!』

 

 

エドガー「…」チラッ

 

エドガー(あと数分…)

 

 

 

にこ「あんた達、気を抜くんじゃないわよ!!」

 

英玲奈「死守だ!!絶対に守り抜くぞ!」

 

千歌「勝って行くんだ…決勝トーナメントに!!」

 

 

守りに徹するのは当然。だが、攻撃を怠るという考えはなかった。

誰かが言った。『攻撃は最大の防御である』と。貪欲にゴールを狙うその勢いが、守りにも変わる

 

 

フィリップ「ピーター!!」パス

 

 

イギリスはまさか逆転されるとは思ってもみなかった。だが、試合はまだ終わっていない。

最後まで…笛がなるその時まで、足は止めない

 

 

ピーター「お願い…決めて!!」パス

 

フィリップ「うぅらぁぁ!!」ドガァン!

 

 

A『フィリップ選手の強烈なシュート!!』

 

 

 

 

ドオォォォォン!!!!!!

 

フィリップ「…!!」

 

ピーター「っっ…」

 

 

A『だがしかし!!』

 

 

 

果南「ー デルフィナス・トリアイナ ー」

 

 

 

A『海皇は崩せません!!!!!!!!』

 

 

立場さえも…完全に逆転していた。

果てしなく、越えられない壁のように見える。松浦果南がこれほどまでに…日本のゴールがこれほどまでに…遠いとは、

 

 

エドガー「日本とは…なんなんだ…」

 

果南「世界一のチーム」

 

 

残り時間的にも、これが最後だろうか…

果南はボールを高く蹴り上げた。受け取るのはにこ。そこに立ち塞がるのはイギリス

 

 

エドガー「私たちは…国のために…」

 

エリック「エドガーさん…指揮を!!」

 

 

誇り高きナイト。目的は勝利

 

 

エドガー「日本も、そう、なのか…?」

 

デービット「エドガーさん、攻め込まれます!!」

 

 

身を挺してゴールを守る日本のナイト。

目的はなんだ?勝利?プライド?本当にそれだけなのか?

 

 

エドガー「日本とは…なんなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

果南「だから言ってるでしょ。世界一のチームだって」

 

エドガー「!!」

 

果南「一人ひとりがサッカーの楽しみを追い求める。それが世界一だよ」

 

エドガー「」

 

 

穂乃果『穂乃果は…今、最高に楽しい!!』

 

ことり『シュートが大好きだから…!!』

 

聖良『どうでした?理亞』

 

理亞『……最高!!』

 

千歌『最高の試合にしましょう!!』

 

 

 

 

日本は…それぞれの信念を貫いているのか、

 

 

 

 

 

A『パスが繋がるぞ日本!!リードしても尚、シュートを狙って走ります!!』

 

 

にこ「海未!!」パス

 

海未「はい…!」

 

 

イギリスのディフェンスが機能していない。そこを突くだけで、パスは呆気なく通る。

前半、あれだけ苦戦していたのが嘘のようだ。自分たちが成長したから?イギリスが自滅しているから?

どちらであろうと、どちらでもあろうとも、勝利は目の前

 

 

海未「決める!!!!」バッ

 

 

追撃のシュート。天地が揺れるシュートをーーーー

 

 

海未「ー 天地雷鳴 ー!!!!」ドガアァン!

 

フレディ「くっ……!!」

 

 

A『出たあぁぁ!!園田海未の強烈なシュート!!』

 

レヴィン『いや、待ってください!?』

 

 

海未「タイミングはどうですか?」

 

ダイヤ「完璧です…!!」バッ

 

 

ダイヤが走る。サニデイジャパンではお馴染みの光景になりつつあるが、イギリスにとっては衝撃以外のなんでもなかった。

単体でも強力なシュート。そんなシュートにダイヤは合わせる?"ラ・フラム"を発動して?

それを……止めろと??

 

 

ダイヤ「はああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

演舞のように舞い、"ラ・フラム"の炎を左足に集める。大剣へと生まれ変わりし炎を、ダイヤは渾身ーーー振る

 

 

ダイヤ「ー マキシマムファイア ー!!!!」ドガアァン!

 

海未、ダイヤ「行けえぇぇぇ!!!!!!」

 

 

A『チェインシュートだあぁぁぁ!!!!"天地雷鳴"と"マキシマムファイア"の次元を超えたシュートが放たれた!!これはゴール確実か!?』

 

 

 

 

 

エドガー「っっ…負けるわけにはいかない!!」

 

海未「!?エドガー…」

 

 

日本は…自分たちの信念を貫く……か、

 

 

エドガー「私も、私の信念を貫く!!代表の誇りにかけて!!!!」バッ

 

ダイヤ「ゴール前…あの構え……まさか!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"攻撃が最大の防御"ならば、"防御は最大の攻撃"である

 

 

 

最強の防御は最強の攻撃へと転ずる

 

 

 

 

エドガー「エクスーーーーーー

 

 

フィリップ「ダメだ!!エドガーさん!!」

 

イギリス「「エドガーさん!!!!!!」」

 

 

 

エドガー「カリバー!!!!!!!!」

 

 

 

 

ギシャアァァァァァァァァン!!!!!!!

 

エドガー「ぐっっっ!?あぁあぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 

 

英玲奈「なんだと!!!!??」

 

にこ「嘘でしょ、ちょっと…ここに来て何よそれ!!!!??」

 

 

A『信じられませんっっ!!!!チェインシュートを直接蹴り返しました!!!!』

 

レヴィン『2つのシュートの力も合わさり、凄まじいパワー…これは止められませんよ!!!!』

 

 

真恋「っっ!?果南ちゃん!!」

 

美奈「やられたっっ…!!」

 

 

気を抜いた。最後の最後でやられた。

可能性はあった。エドガーが蹴り返すことは想定済みだった。

しかし、一瞬の緩み。

そこをエドガーは完全に、確実に、抉ってきたのだ

 

 

千歌、曜「うわあっ!?」

 

あんじゅ「どうするのよこれ!?」

 

ツバサ「ちょっ…まずいわよ!?」

 

にこ「果南っっ!!最後の仕事よ!!!!」

 

 

 

果南「任せて!!!!」バシャアァァン!

 

 

果南は海中に腕を突っ込む。

徐々に海は渦を巻き、星の力を得た"トライデント"が姿を現す

 

 

果南「ー デルフィナス・トリアイナ ー!!」

 

 

A『松浦果南も神器を召喚!!果たして勝利の女神は、どちらに微笑むのか!?』

 

 

エドガー「私の全てだ!果南!!」

 

果南「伝わるよ…!!あなたの想い!!」

 

 

レヴィン『果南選手、クロスバーに登って何を…!?』

 

 

果南はゴールの上。クロスバーの上で"エクスカリバー"を待つ。

そのまま全体重を両足に込めーーー

 

 

果南「止めるよ…絶対に!!!!」バッ

 

 

ーーー前のめり。クロスバーを蹴り、シュートへと飛んだ

 

 

 

果南「トライデントぉぉぉぉおお!!!!」

 

 

 

 

ドガアァァァァン!!!!!!!!

 

ぶつかった。この試合1番の空気の震えだった。両チームとも見守ることしか出来ない。

どちらが勝つのか全く予想出来ない極限の戦い

 

 

果南「ぐっっっ!!!!ぐぐぐ……」グググ

 

エドガー「ハァハァ…」ズキズキ

 

 

果南は押される。押され続ける。

地面には足で踏ん張った跡。

聖剣が抉った道。

もうゴールラインはすぐそこ。

果南は満身創痍。叫ぶだけ叫んだ

 

 

果南「私は…みんなが背中を任せてくれる…どんと受け止められるキーパーに…なるんだっっ!!」ググググ

 

果南「最後の砦として恥じぬように!!」

北也『最後の砦として恥じぬように』

 

果南「止まれええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A『と、止めた……』

 

レヴィン『ボールの回転が……』

 

 

果南「ハァ……ハァ…」

 

 

ボールは、神器により地面に埋め込まれていた。果南はその場に倒れる。

全ての力を出し切った

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも

 

 

 

 

 

 

 

エドガー「…ハァハァ」

 

 

 

 

 

 

 

それでも

 

 

 

 

 

果南「ハァハァ……くっ!!!!」

 

 

 

 

 

それでも

 

 

 

 

 

A『ゴールは…………………』

 

 

 

 

 

それでも

 

 

 

 

 

 

果南「あぁぁぁ!!!!くそっっっ!!!!」

 

 

A『破れています!!!!エドガー選手のシュートが、日本のゴールラインを越えています!!!!』

 

 

千歌「果南ちゃん…」

 

穂乃果「……」

 

 

果南「ハァハァ…ゲホッ…あぁっっ…悔しいなぁ……」

 

 

A『松浦果南、シュートを止めるも失点は押さえられず!!!!ここで試合終了!!日本 対 イギリス。4-4の同点です!!!!』

 

 

 

 

勝負に勝ち、試合で勝てなかった果南。

 

サニデイジャパンの戦いは…終わらない

 

 

日本 4-4 イギリス

 

 

 





ご感想、お待ちしております!最近、少なくなってきたのでさみしいですね…



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第3章 80話 「勝利の化身」


皆さんどうも!スクフェスのフレンドがみんなランクをあげていく中、ちょっと置いていかれた感がすごいルビィちゃんキャンディーです!かれこれスクフェスを始めて2年半が経ちますが、一向にウォタブルのルビィちゃんがお迎えできません。ウォタブルのルビィちゃんをお迎えできれば、URルビィちゃんコンプなんですが道は遠そうです

今回のお話は新キャラ登場です!かなりヤバい人かも…



 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

イルカ座の力を得た果南は、エドガーが誇りをかけて放った最後の"エクスカリバー"と全力でぶつかった。無敵だと思われた神器も、"天地雷鳴"と"マキシマムファイア"のパワーを乗せた聖剣には適わず…同点で試合は終了したのであった

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

千歌「やっぱりここにいた…!」

 

果南「…ん」

 

 

イギリス戦から一夜が明け、朝日が昇る時間。空は薄くオレンジに染まり、空気は海風でちょうど良く。

 

千歌がこの時間に外にいるのは珍しい。

朝は苦手なはずだが、こうして果南の横。砂浜に腰を下ろす。

波の音だけが聞こえる砂浜。ぼーっと海を眺める果南

 

 

千歌「果南ちゃん、落ち込んでいる時はいつも海を見るもんね」

 

果南「…」

 

千歌「…どう思う?昨日の試合」

 

 

日本の勝利は確実…だと誰もが思った。

しかし、結果は同点。果南から見れば、最悪なラストであっただろう

 

 

果南「私…勝ちたかった。エドガーとの勝負には勝てたけど…試合にも勝ちたかった」

 

果南「穂乃果ちゃんからゴールを託されて、みんなからも託されて…期待に、応えたかった」

 

千歌「…果南ちゃん」

 

 

しばらく沈黙が続いた。

2人で眺める広い海。内浦でもこうしてよく海を見ていた。

その果てしなさに吸い込まれそうになるも、千歌は果南に言う

 

 

千歌「応えた…と思うよ」

 

果南「…」

 

千歌「みんな不安だった。エドガーさんのシュートを止められるのか、思いっきり攻めていいのか…」

 

千歌「でも、果南ちゃんが頑張ってくれたから。私たちは前を見て走ることが出来た。背中をあずけられた」

 

千歌「果南ちゃんなら受け止めてくれる…そう、安心出来た」

 

果南「…そっか」

 

 

果南『どんと受け止められるキーパーにならなきゃね』

 

 

果南「受け止められる…か」

 

 

千歌「それに、まだ一勝一分け!グループ首位だよ!決勝トーナメントへの道はまだまだあるよ!」

 

果南「そうだね」

 

 

太陽も昇り始めたので、果南は戻ることにした。千歌も一緒に立ち上がり、二人並んで砂浜を歩く。

千歌が来るまでの間に、一人でいろいろ考えられたので良しとした

 

 

千歌「今日は朝からミーティングだって!」

 

果南「確か、昨日のイタリア対スペインの試合について…だよね」

 

 

その話をした時、美奈たちはあまりよろしくない雰囲気であった。昨日の試合…何かがあったのだろう。

そろそろ始まる頃かと思いながら、宿舎に向かっていた果南と千歌

 

 

千歌「…?果南ちゃん、あそこにいるの」

 

果南「あれ…穂乃果ちゃん、だね」

 

千歌「一緒にいるの…誰?」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

果南たちが穂乃果を見つける数分前

 

 

 

ドオォォォォン!!

 

鈍い衝撃音が響く。足を引きずる音。

穂乃果は巨大なタイヤを左手で、受け止めていた

 

 

穂乃果「ハァハァ…」

 

 

タイヤを受ける特訓。

これは昔から練習に取り入れていた。腕を壊しかねない重量。しかし、何年も続けた結果、片手で止められるようになった。

ライオコット島に来て、穂乃果が真っ先に行ったのが巨大なタイヤ探しだった。

南の島ならではのヤシの木、そこにタイヤを吊るし、世界レベルの選手たちのシュートを想定しーーーーー

 

 

ーーーーードオォォォォン!!!!

 

 

穂乃果「ハァハァ…これで…30!!」

 

 

 

「治ったばかり、やり過ぎは良くないんじゃない?」

 

穂乃果「…へ??」

 

 

穂乃果の背後。

聞きなれない声がした。いや、聞きなれてはいるのだが…なんだろう、かなり久しぶりな…

 

 

穂乃果「ぇ……え!?」

 

「久しぶり!小学校以来?」

 

 

穂乃果「みっちゃん!!!!」

 

 

声の主は穂乃果の大切な友人の1人。

黒髪に黒い瞳。日本人であるその少女

 

 

穂乃果「え!?久しぶり!!本当に久しぶり!!」

 

「ちょっ…穂乃果、落ち着いて…」

 

 

主人を見つけた犬のように飛びつく穂乃果。

これでも穂乃果はまだ右腕が治りきっていない。無茶は禁物。

と言っても、左手1本でタイヤを受け止めるのも充分無茶なのだが…

 

 

穂乃果「ごめんごめん…でも、どうしてここに?」

 

「用ができたからね。しばらく滞在するよ」

 

 

穂乃果が"みっちゃん"と呼ぶ少女。

穂乃果の幼馴染であり、小学校までは一緒だったのだが、引越しにより今の今まで会えないでいたのだった

 

 

穂乃果「みっちゃん、旅行好きだもんね」

 

「今は世界中を旅してるよ!」

 

穂乃果「世界中!?」

 

 

旅行の規模が違った。

この子、本当に同じ高校生だよね…?

穂乃果は不安になるも、あの行動力の鬼のみっちゃんのことだ…おかしくはないと、取り敢えず自己解決

 

 

「それで…右腕、どう?」

 

穂乃果「あっはは…次の試合も無理そうかな。キーパーは」

 

「キーパーは?」

 

穂乃果「ギプスを取るのが、イタリア戦に間に合ったらFWで出るつもり!フィレアとの試合…約束を果たさなきゃね」

 

「キーパーじゃないけど、いいの?」

 

穂乃果「私は…フィレアのシュートを止めるという目標もあるけど、もう1つ。頼もしい仲間を得て…戦おうとも言われた。だから、みんなでフィレアのチームに勝ちたいんだ!」

 

「イタリアに勝つ、か」

 

穂乃果「果南ちゃんの新必殺技は強力だし、ゴールは任せられる!!穂乃果はフィールドで、フィレアたちと戦うんだ!」

 

「確かに。松浦果南のあの技、すごい力だった。でも、」

 

「穂乃果。あなたも強くならないと、この先も勝てないよ」

 

穂乃果「え…」

 

 

「"ゴッドハンドX"をダメージ無しで発動出来るようにならないと。穂乃果」

 

穂乃果「あはは…そうなんだよね、」

 

 

右腕が回復していないにも関わらず、タイヤ特訓をしていたのはそれが1番の理由だった。

"ゴッドハンドX"を反動なし。

その為には、まだまだ特訓が足りなかった。この技が世界のスタートラインだとしたら、自分はまだそのラインに立てていないのだと

 

 

穂乃果「だからこそ。休んでなんかいられないんだよね」

 

「まあ、ほどほどにね。頑張れ」

 

穂乃果「…!もう行っちゃうの?」

 

 

少女は既にその場から立ち去ろうとしていた。同じ場所に長くいられない。相変わらずだな…変わらないね。

穂乃果は昔のままの幼馴染に少しだけ安心し、その背中に叫んだ

 

 

穂乃果「また、サッカーしようね!!!」

 

 

「…すぐに出来るよ。穂乃果」ボソッ

 

 

少女は片手を上げて返事する。

穂乃果には聞こえない独り言。それが意味するものは…

 

 

 

千歌「おーい!穂乃果さーん!」

 

穂乃果「あっ!千歌ちゃんに果南ちゃん!」

 

 

少女が去ったのと同時に、海岸の奥から2人。朝日に照らされながら歩いてきていた

 

 

果南「穂乃果ちゃん、今の人…誰?」

 

穂乃果「ふふっ!あの子はね…!」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

ー 日本代表宿舎 ー

 

その頃、宿舎では日本代表のメンバーの数名がミーティングルームに早くも集まっていた

 

 

月「…まさかまさか、だね」

 

美奈「正直、私も想定外過ぎて混乱しているわ。あの子が出てくるんじゃ、話が別だわ」

 

花丸「あ、あの…」

 

月「…?」

 

花丸「昨日のスペイン対イタリア戦…途中出場した選手、そんなにすごい人なんですか?」

 

ツバサ「…そうね。あの人に関しては…正直お手上げよ」

 

 

 

 

 

 

 

「日本か…楽しみだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

花陽「前半途中出場…自身は3点のゴール。アシストで2点。5-0でスペインを降すトリガーとなった選手」

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「私の幼馴染、三浦和葉(かずは)ちゃん!!」

 

花陽「"勝利の化身" カズハ・ミウラ」

 

 

 

 

 

 

花陽「ブラジルのロニージョ選手に並ぶ…世界で最も完成されたサッカー選手です」

 

穂乃果「私に…サッカーを教えてくれた人だよ!」

 

 

 

 

カズハ「旅、中断して来た甲斐があったよ」

 

 

三浦和葉

その正体はイタリア代表オルフェウス、キャプテン。

 

"勝利の化身"

 

 





Aグループ最後の相手のキャプテン…これでイタリアはさらに強力になったわけですが…

ちなみに現時点のグループ首位は勝ち点4の日本とイタリアです



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第3章 81話 「動き出す それぞれが次に」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!

今回のお話は少し短め…ですが、情報量はそれなりにありますので…!




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

特訓中の穂乃果の前に現れたのは、小学校以来会っていなかった幼馴染、三浦和葉だった。彼女は穂乃果に今後のアドバイスをすると、すぐにその場から立ち去ってしまう。そして、和葉の正体は…イタリア代表のキャプテン、"勝利の化身"。カズハ・ミウラだった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

海未「"ブレイブショット"…あれは和葉の技です」

 

 

ミーティングは海未のこの一言から始まった。それだけで、和葉を知らないメンバーも。和葉の実力が相当なものだと理解した

 

 

ダイヤ「わたくしの…"ファイアトルネード"と同じ、ということでしょうか」

 

海未「はい。穂乃果は和葉の技を、必死に練習し習得しました」

 

千歌「だから…"ブレイブショット"だけ技の雰囲気が穂乃果さんのと少し違ったんだ…」

 

 

穂乃果は付け加えた。

小学校の頃、和葉が遠くに引っ越すことが決まり、当分は会えなくなると。

自分が和葉の技を使うことにより、いつでも一緒にサッカーをしているように…忘れないように

 

 

にこ「もう1つだけ言っておくわ。穂乃果のシュートも強力…だけど、ダイヤ」

 

ダイヤ「!」

 

にこ「ルビィの"ファイアトルネード"と自分のを比べて、どう?」

 

ダイヤ「まさか…」

 

穂乃果「うん。みっちゃんの"ブレイブショット"は、穂乃果のなんかとは比べ物にならない」

 

果南「あれよりも、すごいの…」

 

にこ「今の果南なら…止められるかもしれない。でも、"エクスカリバー"と同じく、"撃たれたら終わり"だと思った方がいいわ」

 

美奈「そうね。それにチームの動きも和葉ちゃんがいるかいないかで大きく変わる…現に、和葉ちゃんが入ってから、イタリアが点を決め始めたわ」

 

 

最初は、フィレアのシュートに要注意だと作戦を立てていたサニデイジャパン。

しかし、和葉がいるならば状況はさらに厳しくなる。さらにDFには鞠莉がいる。

今までの試合の中で1番苦しくなるのは目に見えていた

 

 

聖良「鞠莉さん…浦の星の頃から素晴らしいディフェンスでした」

 

海未「……私の"ラブアローシュート"も足で見切れるほどです」

 

果南「確かに…!」

 

 

果南や穂乃果でさえ、技を出す暇もなく。

弾くのがやっとの高速シュート。それを確かに鞠莉はあの決勝戦で足でブロックしていた

 

 

花丸「マルもDFだったから分かるずら…ほとんどの相手の攻撃は、鞠莉ちゃんが抑えていたずら」

 

月「あのエドガーに…シュート1本しか撃たせなかったからね」

 

 

これだけで鞠莉、そしてイタリアのディフェンスの硬さが良くわかる。硬いディフェンスなら何度も攻略してきたサニデイジャパンだが、今回の硬さは史上最強レベル

 

 

美奈「スペイン、イギリス戦以上の全力が求められるわ」

 

 

すぐには、誰も口を開けなかった。

スペインとイギリス。両チームに対しても、自分の限界以上で戦ってきたからこそ。

次の試合への緊張感が高まる。勝てるのか、不安になる

 

 

千歌「なら…特訓、だよね」

 

曜「千歌ちゃん…」

 

千歌「不安なら、少しでも強くなれるように特訓しよう!!」

 

 

勢いよく椅子から立ち上がる日本のキャプテン。それに鼓舞されたかのようにメンバーが続く

 

 

穂乃果「そうだよ!まだ試合まで時間はある!私たちはまだまだ強くなれるよ!」

 

凛「もう座ってなんていられないにゃ!!」

 

千歌「よし…!みんな、練習しよう!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

海未「千歌もだいぶ穂乃果に似てきましたね」

 

月「いい感じ、だね。このまま上手くいくといいんだけど…」

 

晴夏「…」

 

月「…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

イタリア戦に向けて練習を開始したサニデイジャパン。

練習内容はいつもと変わらないが、質はどの練習よりも…濃い

 

 

果南「ディフェンスしっかりー!!」

 

 

にこ「そんなんじゃ奪えないわよ!」

 

海未「っっ…!!」

 

 

音ノ木坂学院の頃からにこと海未は何度も勝負しているが、さすがの海未でも真正面からはにこにはなかなか勝てない

 

 

海未(私もにこぐらい上手く……

 

にこ「考え事!?海未らしくないわね!!」バッ

 

 

聖良「にこさんが来ます…!守りを固め…「私が行くわ」

 

聖良「!!」

 

 

日本は彼女が加わってDFの戦力が格段に向上した。何度もチームの危機を救う共鳴者

 

 

にこ「さすがに、あんたは抜けるかわかんないわね…」

 

善子「勝負よ。にこさん」

 

 

 

ツバサ「にこさんと善子さんの勝負…見ものね。ルビィ…さん?」

 

ルビィ「……」

 

ツバサ(珍しい…わね?)

 

 

ルビィが練習とはいえ、試合中に考え事をしていた。今までこんなことは無かった。

とは言ってもツバサはルビィと練習した回数はまだ少ないのだが、サニデイジャパンの中でもルビィは特に集中する人だ

 

 

ルビィ「……」

 

 

『日本のエースストライカー』

 

『誰だろうと止めるから』

 

 

ルビィ「…」

 

 

『ルビィちゃんなら大丈夫だね』

 

『新必殺技』

 

『私たちは絶対に負けられない…!!』

 

 

ルビィ「っっ…」バッ!

 

ツバサ「え…ちょっ、ルビィさん!?」

 

 

 

 

にこ「ちょっ…共鳴キツい!?」ババッ!

 

善子(キツいって言う割には…ボールをキープするのね)

 

 

希「あのにこっちと対等に戦うなんて…」

 

聖良「やはり共鳴は素晴らしいですね」

 

 

にこ(くっ…思ったよりも強いじゃない…でも!!)パス

 

善子「!?」

 

 

ルビィ「ナイスパスです」

 

 

にこ「個人技もほどほどに、よ」

 

善子「ルビィ…!!」

 

 

後ろからルビィが来ていた。いつルビィを確認したかは知らないが、にこがバックパス。

そのまま超加速で善子を抜き去った

 

 

ルビィ「っっ!!」ゴゴゴゴ

 

善子「ってか"ATP"発動してない!?」

 

 

月「ルビィちゃん、様子おかしくない…?」

 

ダイヤ「は、はい…少し、いやかなり」

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「「「!!??」」」

 

 

果南「え…!?いや、ちょっとあの技って!?」

 

 

ルビィが"ATP"を解除したかと思いきや…

フィールド上の空気がボールに集まり始めた。突然の事で動揺するメンバー。

確かに…全力で練習しようとは話し合ったが、これはーーーーーー

 

 

 

ルビィ「ー ラストリゾート ー!!!!」ドガアァァアン!!

 

果南(全力出しすぎでしょ!?)

 

 

サニデイジャパンの現・最強シュート、"切り札"のひとつ。

空気とATPの層で何重にもコーティングするため、衝撃波は並大抵のものではない

 

 

希「これは無理や…!?」

 

聖良「果南さん!お願いします!!」

 

 

果南「ー デルフィナス・トリアイナ ー!!」バシャアン!

 

 

果南も持てる最強の技で挑む。

正直に言うと、ルビィの"ラストリゾート"に自分はどれほどまでに対抗できるか少し興味があった。

海中からイルカ座の力を持つトライデントを召喚し、一気にーーーーー叩く

 

 

 

果南「うらあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 

 

だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

バキイィィィィィィン!!!!!!!!

 

 

 

果南(お……重すぎ!!!?)

 

 

 

月「神器も…弾かれた」

 

ダイヤ「決まりましたわね」

 

 

 

そのままボールはゴールに吸い込まれた。

"ラストリゾート"は2種類の重層により、キーパーが触った瞬間に弾く。

強力な果南の技も、"触ってはいけないシュート"には流石に武が悪かった

 

 

果南「腕が痺れる…やっぱすごいや、ルビィのシュートは」ビリビリ

 

聖良「はい…ですが」

 

 

 

ルビィ「ハァ……ハァ…ハァ…ハァ」

 

 

『"勝利の化身"…カズハ・ミウラ』

 

『クラリアがハットトリック!!!』

 

『エドガーがハットトリックだあぁ!!』

 

『これは"10番"に期待ですよ!!』

 

『次の相手はイタリア』

 

『おおっと!?黒澤ルビィも体力切れか!?』

 

 

ルビィ「…邪魔だなぁ…この気持ち」

 

にこ「ルビィまでどうしたのよ…何をそんなに…」

 

 

ルビィのシュートを撃つ時の顔は、日常で見られる癒しの笑顔とは程遠いものだった。

集中とはまた違う、まるで血走った目。

 

取り乱し、力んだそのプレーから息切れが激しい

 

 

花丸「ちょっと、怖かったずら…」

 

花陽「そうだね…心配、だね」

 

 

 

ダイヤ「大丈夫ですか?ルビィ、」

 

ルビィ「ごめんなさい、お姉ちゃん。ちょっと熱くなっちゃった」

 

 

理亞「……」

 

 

得点が決まったので練習はそのまま中断。休憩に入った。

メンバーはルビィのことを心配するも、体調に問題は無いとルビィは申し訳なさそうに説明した。

休憩後は各自のフリーな練習。

穂乃果もFWとして、練習に参加する

 

 

穂乃果「ルビィちゃん、この後大丈夫?」

 

ルビィ「は、はい…何か?」

 

穂乃果「協力して欲しいことがあるんだよね」

 

 

 

理亞「姉様、もう少し!!」

 

聖良「ハァハァ…はい!!もう一度お願いします!」

 

 

善子(ラストリゾート……か)

 

 

果南「うーん…弾かれちゃうシュートは…どうすればいいんだろう」

 

 

それぞれが自分の課題を消化する。

主に必殺技の特訓や新必殺技の練習。こうしている間にも、新たな日本の可能性は芽吹き始めている

 

 

千歌「ハァハァ…」

 

曜「千歌ちゃん、大丈夫?」

 

梨子「無理しすぎじゃ…」

 

千歌「大丈夫…!!まだまだ行けるよ!」

 

 

イタリア戦までに自分たちはどこまで力を伸ばせられるのか。それは誰にもわからない。伸ばしたところで及ばないかもしれない。既に及んでいるかもしれない。

だが、後者の考えを持つ者は誰もいない。

ヨーロッパ3強と当たった時点で覚悟していた。私たちは挑戦者。

 

グループの中で首位なのは実力でもあり奇跡でもある。一歩間違えれば、まだまだ敗退の可能性は十分ありえる

 

 

千歌「次の試合…絶対に勝つ」

 

 

サニデイジャパンのメンバーの緊張感は"ラストリゾート"にも負けない程に、空気を震わせていた

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー イタリアエリア ー

 

 

鞠莉「気合十分ね。フィレア」

 

フィレア「有り余るぐらいだよ…!」

 

 

一方、イタリアエリアのイタリア代表練習グラウンドでは、イタリア代表が日本と同様に、試合に向けての練習に取り組んでいた

 

 

フィレア「一年前の約束を…穂乃果は忘れていなかった。私は嬉しいよ」

 

鞠莉「…」

 

フィレア「穂乃果のほかにも戦いたい選手はたくさんいる。今から楽しみでたまらないよ」

 

鞠莉「マリーもよ。ダイヤや果南と戦える日が来るなんて…サプライズにも程があるわ」

 

 

ドオォォォォオオン!!!!!!!!

 

 

フィレア、鞠莉「!!!!」

 

鞠莉「Oh!どうやら完成したみたいね!」

 

 

 

フラム「…」

 

カズハ「完璧だね。どう?今の感想は」

 

フラム「…最高。これなら…ルビィに、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フラム「"ラストリゾート"に勝てる」

 

 

 

 

 

 

イタリアも確実に力を高めていた

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

ー ??? ー

 

 

「…本戦での発動は何回だ?」

 

「高坂穂乃果がスペイン戦で1回…高海千歌も片鱗をスペイン戦で1回…ですね」

 

「…頃合か。彼女たちの情報はまだまだ必要だ。私の計画のためにも、絶対に2人をこの島から逃がすな」

 

 

「仰せのままに……様」

 

「高海美奈…血は争えん。恨むなら自分の才を恨むんだな」

 

 

ーー電話がなる

 

 

「…?なんだ?」

 

「どうやら到着したようです」

 

「おぉ!我がビジネスパートナーか!通せ」

 

 

男の指示で1人の女性が部屋に通される。

ヒールの音が徐々に近づき現れたのは……赤いコートと金色の髪をもつ…

 

 

サエ「久しぶりね」

 

「サエ・オハラ!待っていた」

 

 

現れたイタリアの監督。

その顔に、笑顔はなかった

 

 





ご感想、お待ちしております!


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第3章 82話 「ついに決戦!運命の試合」


皆さんどうも!寒さにめっぽう弱いルビィちゃんキャンディーです!

一息回が少なくて本当に申し訳ないです…それぞれのキャラの一息回は書きたいのですがなかなか時間が無くて…ひとまず試合を進めようと思います。いつか完結したら81話と82話の間に一息回をぶち込むとかしてみたいですね




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

イタリア戦に向けて特訓を開始したサニデイジャパン。焦りを見せるルビィ。空気もいつもに増してピリピリしていた。そんな中でイタリアも動き出す。その影で動く者達も…

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 日本代表宿舎ミーティングルーム ー

 

 

花陽「いよいよ明日は、予選リーグ最後の試合。オルフェウス戦です」

 

 

イタリア戦を控えたこの日。

練習前にミーティングを行っていたサニデイジャパン。マネージャーの説明に耳を傾け、自分たちの現状を真剣に確認する

 

 

花陽「グループAから決勝トーナメントに行けるのは上位2チームです。これが、現時点での順位表になります」

 

 

プロジェクターに写し出される順位表。

サニデイジャパンを含めた4チーム。それぞれの試合が記号で結果を表していた

 

 

花陽「全チーム、残り1試合ずつ残しています。明日は、サニデイジャパン対オルフェウス。明後日がグループ最終試合、ナイツオブクイーン対無敵のジャイアント」

 

花陽「その中で、1位は2チーム。1勝1引き分け勝ち点4のイタリアと日本。3位は2引き分け勝ち点2のイギリス。4位は勝ち点0のスペインです」

 

 

真恋「スペイン戦の勝利が大きいわね…」

 

穂乃果「これって…日本1位だから負けなければ決勝トーナメントに行けるの?」

 

真姫「そうとも限らないわよ」

 

穂乃果「!!」

 

真姫「もし、明日の試合引き分ければ…日本の勝ち点は5。イギリスがスペインに勝てば、同じ勝ち点5で並ぶわ」

 

曜「全試合やって、勝ち点が同じだったらどうなるの?」

 

真姫「得失点差…になるでしょうね。でも、同じ勝ち点5のイタリアはスペイン戦で+5点取っているから、決勝トーナメント進出は確定」

 

真姫「そうなると、日本とイギリスの得失点差争いになるんだけど…にこちゃん」

 

にこ「!?」

 

真姫「問題よ。日本とイギリスの得失点差争いになったら、どうなると思う?算数よ」

 

にこ「!?」

 

にこ「えっと…日本がスペインに同点で1点差…イギリスは同点だから…イギリスが勝つと2……あれ?」

 

真恋「いや、嘘でしょにこちゃん…」

 

希「ちょっと真姫ちゃん!にこっちをいじめんといて…」

 

真姫「別にいじめてなんか無いわよ…」

 

 

真姫はため息混じりに続ける

 

 

真姫「イギリスは2試合とも同点だから、得失点差は0。もし、イギリスがスペインに2点差で勝つと…得失点差1の日本はイギリスに逆転負けよ」

 

梨子「イギリスが1点差でスペインに勝ったら?日本とイギリスの得失点差も並ぶことになるけど…」

 

真恋「その場合はカードの枚数よ。でも、日本もイギリスも反則カードを貰ってないから…ファウルの回数とかになってくるかも…」

 

善子「そこまで細かくなるのね…明日の試合はファウルに注意しないとよ」

 

千歌「でもイタリアに勝てば、勝ち点も得失点差も関係ないんでしょ?」

 

月「言うね…千歌ちゃん」

 

千歌「同点とか、負けとか、そういうことよりも明日の試合…絶対に勝つ、勝つ方法をイメージした方がいいよ」

 

花丸「でも、和葉さんが加わったイタリアはさらに強くなって…マルは不安ずら」

 

千歌「確かに、厳しい戦いになると思う。だからこそ。だからこそ今日1日、残った時間を大切にしよう」

 

梨子「千歌ちゃん…」

 

穂乃果「そうだね…!よしっ、練習行こっか」

 

海未「穂乃果、」

 

穂乃果「私たちもぐずぐずしてられないよ!フィレア、みっちゃんたちも今頃練習しているはず!!」

 

理亞「ルビィもそうでしょ」

 

ルビィ「…うん」

 

理亞「フラムに勝つんでしょ。試合で」

 

ルビィ「勝つよ。負けるわけにはいかないもん」

 

千歌「みんな…!イタリアに勝つために特訓だよ!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

1位 日本、イタリア 勝ち点4

3位 イギリス 勝ち点2

4位 スペイン 勝ち点0

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

真恋「ついに明日…なのね」

 

美奈「…」

 

 

その後、グラウンドで練習を開始したサニデイジャパン。その練習風景を見ながら真恋は話し始めた

 

 

真恋「でも、驚いたわよ。あのサエが今や一国の代表監督なんて」

 

美奈「それを言うなら私たちもでしょ?」

 

真恋「…本当に変わったわね。サエは、」

 

 

サエの仲間だったからこそ感じる変化。

数年ぶりにこの島で再会を果たした時には、まるで別人だった。

鋭く睨む目。冷たい態度。大人になったからという理由もあるかもしれないが、それでも親友たちの衝撃は大きかった

 

 

美奈「あの頃は鞠莉ちゃんとそっくりだったのにね。いや、鞠莉ちゃんがサエちゃんに似たのよね」

 

真恋「好奇心旺盛でムードメーカー。ちょっと抜けたところがあるけど、頼もしいみんなのお姉さん…」

 

真恋「寂しいわね…」

 

美奈「えぇ」

 

 

サエが変わってしまったのには理由がある。

いや、心当たりがあった。

自分たちが千歌たちと同じく、部活でボールを追いかけていた頃。最高の仲間に恵まれ、勝つことは不可能だと言われた相手を打ち倒した。

 

そこから自分たちのサッカーは続いていくんだと…そう思っていた

 

 

真恋『美奈…』

 

サエ『そんな…嘘…嫌よ』

 

真恋『サエちゃん、落ち着いて…』

 

サエ『美奈とサッカーが出来ないなんて嫌よ!!!!!!』

 

 

 

あの時から私たちの時間は止まった。

今も動いているように見えるが、完全に止まっている。

そこからメンバーはバラバラになった。もちろん。きぃちゃんや真恋ちゃんたちとは今でも友達のままだ。

だが、後悔という名の壁は無意識に私たちのあいだにそびえる。

誰も踏み込めない。もう一歩。あの時の悔しさ、悲しさを知っているからこそ

 

 

美奈『私の…せいだ』

 

 

逃げるように内浦に帰った。

私は縁あって音ノ木坂学院に入学していたから、高校を卒業したと同時にすぐに。

結婚もした。子供もできた。

忘れよう、忘れようと毎日を忙しく過ごした

 

 

でも、

 

 

 

サッカーへの熱意は消えなかった

 

 

 

 

美奈『結局、子供たち全員サッカーしているのね』

 

穂乃果母『えぇ。やっぱり私ってダメね…私が出来なかったことを子供にさせようとしている』

 

美奈『子供に…』

 

ことり母『私はいいと思うわ。私たちの希望を託す、という意味で。最後まで見守っていきたい』

 

美奈『…』

 

海未母『お稽古をやめてサッカーに専念したいと海未さんから言われた時は…少しだけ嬉しくなりました。昔の私と似ていて…変に期待してしまうんですよね』

 

 

サッカーの監督がそうだろう。

サッカーが出来なくなっても、サッカーから離れず、指導側、見守る側としてサッカーを続けた。

だからこそ、今の私があるのだが…

 

 

真恋「美奈」

 

美奈「…」

 

真恋「どんなにすれ違って、離れ離れになっても…私たちのサッカーへの想いは変わらない」

 

真恋「それはサエも同じはず。私たちみたいにイタリア代表にサエは想いを託してきているはずよ」

 

美奈「…そうなると、余計強いわね」

 

真恋「えぇ」

 

 

千歌「お母さーん!!ちょっと相談!!」

 

真恋「美奈お母さん、呼ばれてるわよ」

 

 

遠くから自分を呼ぶ娘。

その姿は…全てが昔の自分にそっくりだった。美奈は歩を進めるが、少し怖かった。

まるで過去の自分に歩み寄るようで怖かった

 

 

真恋「本当にあなたは変わらないわね」

 

 

美奈の容姿は高校から変わってないと同級生たちからは話題だ。一時期、美魔女と呼ばれ、その若さをくれと懇願されたこともあった。

 

だが、容姿以外。

その怖がりなところもまったく変わってないと。自分の影に怯えるかのごとく。

いつ何時も背中に罪悪感を背負い、心に硬く閉ざしたサッカープレイヤーとしての気迫。

 

真恋は寂しかった。サエが変わってしまったこと。そしてもう一つ。美奈が心を閉ざして生きていること

 

 

真恋「千歌ちゃんには…同じ思いをさせない。そうでしょ。美奈」

 

 

千歌と会話する美奈の顔は、やはり似ていて、似ていなかった

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 翌日 クジャクスタジアム ー

 

 

A『さあ!FFI予選リーグもいよいよ大詰め!グループAも残り2試合となりました!!』

 

A『本日、ここクジャクスタジアムでイタリア代表・オルフェウス対日本代表・サニデイジャパンの試合が。そして明日、ウミネコスタジアムでイギリス代表・ナイツオブクイーン対スペイン代表・無敵のジャイアントの試合が行われます!!』

 

レヴィン『決勝トーナメントに進むには、両チームとも負けられない試合。どのような1戦になるのか楽しみですね』

 

 

 

ー 観客席 ー

 

フロイ「エリーは本当に日本が大好きなんだね」

 

絵里「もう…何よそれ?」

 

ユーリー「日本の試合を生で見るのは初めてだなぁ!楽しみだよ!」

 

 

観客席は少しだけざわついていた。

ロシア代表チームがチーム全員で試合を見に来ていたのだ。未来の対戦相手をその目で見届けるために。

ちなみにロシアは既に決勝トーナメントへの出場を決めている

 

 

絵里「イタリアは強いわ。日本もだけど、今までの相手とは格が違う」

 

フロイ「カズハもいるからね。日本はどうあの"クイーン"に抗うのか…楽しみだよ」

 

絵里「そうね……ん?」

 

フロイ「エリー?」

 

絵里「いや、何でもないわ」

 

絵里(あのフードを被った人…どこかで会ったような…)

 

 

 

ー 日本代表控え室 ー

 

 

千歌「みんな。準備はいい?」

 

曜「バッチリであります!!」

 

理亞「いつでも」

 

穂乃果「ドンと来いだよ!!」

 

千歌「ここまで来たら、あとはやるだけ!私たちの全部をぶつければ必ず勝てる!!」

 

千歌「それじゃ…行こう!!!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

A『さあ!両チームの選手が入場してきました…!!』

 

 

向かい合って並ぶ日本とイタリア。

目の前にはあの日から目標となった少女。幼馴染、共に戦った親友。自分にサッカーを教えてくれた少女が…

 

 

フィレア「負けないよ…!穂乃果!」

 

カズハ「いい試合にね。穂乃果」

 

穂乃果「うん!こっちだって負けない!全力で頑張るよ!!」

 

 

マリ「ダイヤ。果南。宜しくね♪」

 

ダイヤ「なんですか改まって…」

 

果南「たとえ鞠莉でも手加減はしないからね…!!」

 

マリ「もちろん!全力よ!」

 

 

 

 

A『まもなく試合開始です!!!!』

 

 

 

勝っても、引き分けても、負けても。

 

物語は大きく動き出す

 

 

 





次回から本格的にイタリア戦!!



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第3章 83話 「イタリア戦 "待ち望んだ、この時を"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!今日の寒さは本当に頭おかしかった…風がやばい。明日はもっと寒い…それだけで学校に行きたくなくなります。
クラスの仲間が指定校推薦で進学を決めていく中…センター2ヶ月前になりました。発狂しそうです。まあ、ほどほど頑張ります

さて!気を取り直してイタリア戦です!激アツな戦いになるように頑張って書いていきます!




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに始まる予選リーグ最後の試合、イタリア戦。決勝トーナメントへ確実に進出するためにはこの試合、勝利が必要となる。今までの相手の中でも1番の強さ…日本は果たして勝つことが出来るのか…

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー 日本ベンチ ー

 

 

美奈「スターティングメンバーを発表するわ」

 

美奈「FW。穂乃果、理亞、ルビィ」

 

美奈「MF。ツバサ、千歌、月」

 

美奈「ボランチ。にこ」

 

美奈「DF。希、聖良、晴夏」

 

美奈「GK。果南」

 

 

美奈「以上よ。ベンチメンバーもアップは継続。交代は確実にするからそのつもりで」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

ー イタリアベンチ ー

 

 

サエ「私たちに必要なのは勝利だけ。練習を思い出して、そうすれば必ず勝てます」

 

サエ「楽しむのもいいけど、ほどほどにね。カズハ」

 

カズハ「え!?ち、ちゃんとやりますよ?」ギクッ

 

ラファエレ「顔でバレバレだよ…」

 

サエ「始まるわ。行ってきなさい」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

 

A『さあ!両チーム、ポジションにつきました!!』

 

 

 

サニデイジャパン

 

FW……鹿角理亞、高坂穂乃果、黒澤ルビィ

 

MF………渡辺月、高海千歌☆、綺羅ツバサ

 

MF……………………矢澤にこ

 

DF…………東條希、鹿角聖良、葉石晴夏

 

GK……………………松浦果南

 

3-1-3-3

 

 

レヴィン『日本は攻撃陣を固めてきましたね…!!黒澤ルビィ、鹿角理亞、高坂穂乃果、渡辺月、綺羅ツバサ…半数の選手がFWですよ!』

 

A『イタリアの個人テクニックに真っ向からぶつかる作戦か!?非常に楽しみです!!』

 

 

 

オルフェウス

 

FW…………フィレア、ラファエレ

 

MF……アンジェロ、カズハ☆、ダンテ

 

DF…………アリーチェ、マルコ

 

DF…………エルマ、マリ、ディアナ

 

GK……………………フラム

 

3-2-3-2

 

 

レヴィン『イタリア代表は、スペイン戦から衝撃の代表参加となったカズハ選手。そしてイタリアの得点女王フィレア選手に注目ですね…!!』

 

A『DFの層が厚いように見えますが、攻撃も超強力なチーム!!日本には頑張ってもらいたいです!まもなく試合開始です!!』

 

 

 

 

穂乃果「……」

 

 

1年前のあの日は…今でも脳裏に染み付く夕焼けの風景

 

 

『ー オーディンソード ー!!』ドガアァン!!

 

 

何かを得ようとしたのに、凄すぎて何もわからなかったフィレアのシュート。

自身の未熟さを痛感し、世界を意識するきっかけとなった。そして、今、

 

 

穂乃果(やっと…やっとここまで来た)

 

 

力を高め、仲間に出会い、そして幾多の戦いに勝ち抜き実現したイタリアとの試合。分かっている。決死の戦いになることは、辛く、苦しい時間が来ることも分かっている。

だがそれでも、穂乃果の不安な気持ちはワクワクが押し潰す。

血が騒ぐ、緊張する。

穂乃果の心臓は誰よりも早く強くーーー

 

 

 

 

ピーー!!!!!!

 

 

 

A『さあ!イタリアボールから試合開始です!!日本は早速"白き流星"と対峙します!』

 

 

フィレア「勝負だ!!穂乃果」

 

穂乃果「望むところ…!!」

 

 

穂乃果とフィレアの1対1。

この時を待ち望んでいたのは2人だけではない。海未やことりもまた、穂乃果の努力を知っているからこそ、楽しみだった。

あれだけの差がどれほど埋まったのか…どこまで戦えるのか…

 

 

フィレア(さすがに上手い…!!)

 

穂乃果「…!!」

 

 

花陽「あのフィレアさんと対等に戦っている…!!」

 

海未「いいですよ!穂乃果!」

 

ことり「そのまま奪っちゃえ!!」

 

 

ベンチからの声援は穂乃果の耳に届いていた。みんなが自分を応援する。希望ある声だ。生き生きしている。

対等…そうか。みんなからは互角に見えるのか…

 

 

 

 

 

 

穂乃果「ハァハァ…ハァハァ!!!」

 

 

 

フィレアは…全然本気じゃない!!!!!!

 

 

 

フィレア「いいね。穂乃果…あの頃とは別人だよ。でも…」バッ!

 

穂乃果(はやっっーーーーーー

 

 

フィレア「私にはまだ勝てないよ」

 

 

 

A『フィレアが高坂穂乃果を抜いたぁぁ!!鮮やかでありながら力強いそのドリブル…!これが白き流星の力なのか!?』

 

 

ツバサ「あれって…まさか、」

 

月「そのまさかだよ」

 

 

穂乃果(一瞬見えた…フィレアもそうなの!?)

 

 

希望は一瞬にして絶望に変わる。

穂乃果はあの数秒の1対1でそれを実感した

 

 

ラファエレ「早速飛ばすね…!フィレア」

 

フィレア「えぇ!まだまだ行くよ!」

 

 

絵里「あの動き…瞳…」

 

フロイ「そうだね、フィレアもそうだった」

 

 

神に与えられた才能。

その才能は人々を魅了した。希望でもあり絶望でもあるその才…

 

 

月「フィレアは…ツバサさんと同じ…自分の意思でゾーンを発動できる…!!!!」

 

 

フィレア「勝負だ!!日本!!」

 

 

穂乃果が抜かれたことにより、日本の選手たちは警戒レベルをMAXに引き上げた。簡単には奪えない。いや、奪えるのか??

不安と緊張でごっちゃ混ぜになる中、2人の少女が動く

 

 

ルビィ「止めるよ」バッ

 

理亞「えぇ」バッ

 

フィレア「来たね…!ルビィに理亞!!」

 

 

すぐにフィレアに追いついたFWコンビ。

穂乃果があっさり抜かされたのは衝撃だっだが、黙って通すわけにはいかない

 

 

理亞「ゾーンが何よ。関係ないわ」

 

フィレア「強気だね。いいじゃん…でも、」パス

 

ルビィ(バックパス…?)

 

 

 

カズハ「周りを見ようね!!2人とも!!」バッ

 

ルビィ、理亞「!!??」

 

理亞「和葉!?」

 

ルビィ「くっ…!!」

 

 

A『なんと!!この勝負にカズハ選手が参戦!!一瞬で2対2の対決へ!!!!』

 

 

ルビィ(世界最強レベルの選手が2人!!)

 

理亞(上等よ…!!)

 

 

気を抜かなくても突破される。そんなこと知っている。だからといって逃げるわけにもいかないし、逃げるなんてとんでもない。

負けるわけにはいかないんだ

 

 

理亞「っっ!!」バッ

 

カズハ「!」パス

 

理亞(フィレアに…パス!!)

 

 

 

ルビィ「貰ったっっっっ!!!!」ゴゴゴゴゴ

 

カズハ、フィレア「!!??」

 

カズハ「!?(ATP!?そういうことか!)」

 

 

パスを出した瞬間ーーー爆音が響いたと思いきや、ルビィが"ATP"を発動していた。

理亞が発動しなかったのは、ボールを出した瞬間。その瞬間に奪うため。

急なことでカズハは対処出来ない。よく見たら理亞は既に走り始めていた

 

 

カズハ(理亞は囮…最初からそのつもりか、)

 

フィレア(想像以上だね…!!)

 

 

ルビィ「ありがとう!!理亞ちゃん!」

 

理亞「私を囮に使ったこと、覚えておきなさいよ!?」

 

 

A『なんと!?あのカズハ選手からボールを奪いました!!』

 

レヴィン『今のルビィ選手の動きは誰も予想していなかったでしょう。"紅き流星"を甘く見てはいけませんよ!!』

 

 

月「うっそぉ…和葉さんからボールを、」

 

にこ「さすがすぎるわよ…!私たちも上がるわよ!!」

 

 

ルビィと理亞に続いて駆け上がる日本。切り替えが速いのは日本の武器だ。それはイタリアも重々承知。すぐに守りへと切り替える

 

 

穂乃果「ルビィちゃん、理亞ちゃん助かったよ…!」

 

理亞「次は頼むわよ。穂乃果」

 

ルビィ「このままいっきに突破します!!」

 

 

アリーチェ「あの2人からボールを…!?」

 

鞠莉「さあ、ここから気を引き締めてね…!あの子たちは簡単には止められないわよ!」

 

 

鞠莉から日本のFWの恐ろしさはよく聞かされていた。自強化や共鳴、特殊な能力などの工夫を凝らし、世界にも引けを取らないレベルに仕上げてきていると。

本当に最近結成されたチームなのかと疑うほどの連携プレー。そして信頼度。

いくら強豪であるイタリアでも、これ以上の脅威はなかった

 

 

月「ルビィちゃんたち、ATPはほどほどに…!まだ試合は始まったばかりだからね」

 

にこ「私たち全員で攻めるのよ…!必ず突破口を見つけるわ!」

 

千歌「鞠莉ちゃんには注意して!広範囲の爆発技を持っているよ!」

 

 

声をかけ合い、パスを繋ぎ

 

 

月「理亞ちゃん!」パス

 

エルマ「行かせない…」バッ

 

理亞「ルビィ」パス

 

エルマ(ヒールパス!?)

 

ルビィ「千歌さん!」パス

 

 

崩すイタリアのディフェンス

 

 

A『細かいパスでイタリア陣内を動き回るサニデイジャパン!!ボールが繋がります!!』

 

レヴィン『言葉を交わさなくとも、お互いが分かりあっているからこそ。予想できない場所にパスが出される…これは厄介ですよ』

 

 

ツバサ「ー デコイ・リリース ー」パチン!

 

アリーチェ(分身!?)

 

鞠莉「アリーチェ、どいて!!」バッ

 

 

ツバサが分身を発動し、いっきに突破を試みた。この技を抑えるには分身ごと全てを抑えるしかない。

鞠莉はアリーチェに指示し、"爆弾"を設置する

 

 

ツバサ「あの技は…」

 

鞠莉「吹き飛びなさーい!!」

 

鞠莉「ー グラウンドスイーパーGX ー!!」

 

 

ドガガガガガアァァン!!!!!!

 

 

分身した大量のツバサは大爆発に巻き込まれた。鞠莉の強力なディフェンス技。

浦の星女学院のメンバーは、この技に何度も助けられた……しかし、

 

 

ツバサ「ふふっ、充分引き付けたわよ」

 

鞠莉「引きつ…!?」

 

 

 

ルビィ「抜けた…!!」ゴゴゴゴゴ

 

 

鞠莉「ルビィ…!!!!!!」

 

 

A『爆発の中から現れたのは"紅き流星"だあぁぁ!!!!あのイギリスでも突破困難だったイタリアDFを、前半開始早々突破してみせた!!!!』

 

 

フラム「…来なよ。ルビィ」

 

ルビィ(フラム・ソレイユ…!!!!)ゴゴゴゴゴ

 

 

最近のルビィの焦りの根源のひとつは…フラムの存在だった。あのパーティ会場での、余裕のある素振り、実力、プライド…全てがルビィへの"宣戦布告"だった。

 

ルビィはプライドを刺激され、そんな中で落ち着いたような素振りで不安な感情を抑えたのは記憶に新しいルビィ。

絶対に勝たなければいけない。というプライドがルビィの緊張を増幅させていたのだ

 

 

ルビィ「うおあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

海未「早速撃ちますか…!」

 

曜「ルビィちゃん…!」

 

 

あの日の勝負の続き。

 

 

ルビィ「ー Awaken the Fire ー!!」

ドガアァン!!

 

フラム「うらあぁぁぁっっ!!!!」バッ

 

フラム「ー ゴッドハンド・ゼロ ー!!」ドォン!

 

 

フラムのゴッドハンドは片手片手で別々のオーラを宿す。光と闇。その2つのオーラを混ぜた神の手はーーーーー

 

 

フラム「…」シュウゥゥ…

 

 

ーーー並大抵の強度ではない

 

 

A『止めたあぁ!!黒澤ルビィの強力なシュートを、フラム・ソレイユががっしりとキャッチ!!』

 

レヴィン『まさか、日本が先にシュートを撃つとは…そしてルビィ選手のシュートを止めるフラム選手…この試合、高レベルな次元になることは間違いないでしょう』

 

 

フラム「ルビィのシュート、全て止めて私たちが勝つ」

 

ルビィ「そのプライド…試合が終わるまでに砕いてあげます」

 

 

火花が散り、刃物のように尖った空気

 

 

カズハ「いや〜、やられたね!まさかあんな高速カウンターを仕掛けてくるとは!」

 

フィレア「ちょっとカズハ…油断しないでって監督が…」

 

カズハ「大丈夫、大丈夫!あれはATPのタイミングに慣れてなかったから奪われたけど…1度見たし動きは覚えた!」

 

フィレア「もう…しっかりしてよね?」

 

 

聖良(あの余裕…次は簡単にはいかなそうですね…)

 

 

戦犯であるはずの和葉。日本のカウンターをその目で初めて見た興奮から、フィレアと会話を続けていた。

日本から見たら異様な光景。この死闘ともいえるフィールド上で、あの2人は日常の練習グラウンドにいるかのように…そしてそれを受け流すイタリアチーム

 

 

アンジェロ「お二人さん!ボール来るよ!」

 

カズハ「おっ!今度は負けないよ!」

 

フィレア「ははっ…相変わらずだな、」

 

 

A『さあ、ボールは再びイタリアに!マリ選手が繋ぎ………いや!?これは!?』

 

 

フィレア「…!!??」

 

ラファエレ「な…何あれ!!??」

 

カズハ「へえ…そんなことまでするんだ!日本は」

 

 

 

 

 

鞠莉「Oh…これは予想外デース」

 

 

ルビィ、理亞「……」

 

穂乃果「へへっ…びっくりしたでしょ」

 

月「悪いけど、ボールは返してもらうよ」

 

ツバサ「パスもドリブルも封じたわ」

 

千歌「さすがの鞠莉さんでもこの人数…!!」

 

にこ「観念しなさい。逃がさないわよ」

 

 

A『これは!!??センターバックのマリ・オハラがボールを持った瞬間!!サニデイジャパンの攻撃陣が一斉にマリ選手を包囲!!ディフェンスを捨て、いっきに勝負を決めるつもりか!?』

 

レヴィン『パス、ドリブル…全てを封じて人数で圧倒する…まさかこんな作戦を使ってくるとは、』

 

 

フラムにも戻せない。DFの選手、フィレア、カズハもフォローに行けない。

日本の持てるすべての戦力を使い、四方八方。獲物を取り囲み、撃つ

 

 

名付けるならばーーーーーーー

 

 

 

美奈「ー 四面楚歌の獄 ー」

 

 

 

 

イタリアの目に映るのは……絶体絶命

 

 

日本 0-0 イタリア

 

 

 





四面楚歌の獄
オリジナルの必殺タクティクスです。DFの3人を残し、ほかのFWとMFのメンバーで1人の選手を包囲します。パス、ドリブル、ほかの選手のフォローを封じる…まさに四面楚歌。かなりギャンブルな必殺タクティクスとなっています

ご感想、お待ちしております!!





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第3章 84話 「イタリア戦 "炸裂!世界に轟く一撃"」

皆さんどうも!スクフェスのスクフェスACセットを買おうか悩んでいるルビィちゃんキャンディーです!バイト禁止の学生にはちょっと高めのお値段…本当はもっと課金したいんですが難しいですね…笑

さて、イタリア戦が始まったばかりですが、イタリア戦が終了後。コラボ?とある方が登場しますのでお楽しみに!センター試験までにイタリア戦が終わるか微妙ですが、





 

前回の、輝こうサッカーで!

始まったイタリア戦。世界屈指の実力者であるフィレアとカズハの不意をついたルビりあ。そのままシュートまで持っていく予想外の展開を見せた。そして、日本の新たな必殺タクティクス『四面楚歌の獄』が発動され…鞠莉は1人、日本の選手たちに囲まれてしまう

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『マリ選手はどうするのか!?逃げる手段は残されていないが!?』

 

 

鞠莉「……」

 

フラム「マリさん…私がパスを出したから…」

 

鞠莉「大丈夫よフラム。何とかするわ」

 

フラム「何とかって…」

 

 

見る限り奪われる以外の道はなさそうに見える。ゾーン、闇の力、ATPと…自分たちにも引けを取らない選手たちが取り囲む最悪の状態。

鞠莉は何とかすると言った。だが、それは強がりなのかもしれない…または、

 

 

鞠莉「考えたわね、千歌っち」

 

千歌「鞠莉さんのブロック技は、自分も巻き込んでしまう危険性がある技…だから今の状態では使えない」

 

鞠莉「確かに巻き込むわ」

 

理亞「空へ逃げるなら私たちが捕まえる」

 

ルビィ「ATPの速さなら可能だよ」

 

にこ「観念してボールを渡したら?」

 

鞠莉「…」

 

千歌「…」

 

鞠莉「ふふっ…」

 

千歌「…?」

 

鞠莉「ふふっ…あははっ!最高よあなた達!」

 

 

笑っている。余裕だ。何故こんな状況でも笑えるんだ…この人はいつも。底知れぬ余裕が、全てを見透かされているような感覚に陥る

 

 

鞠莉「確かに完璧だわ!逃げ道を完全に封じた。現に私の仲間はみんな動揺しているわ!」

 

月「そうだね…だから、「でも」

 

月「!!」

 

鞠莉「もし、私が完璧のその上を行くならば…」

 

 

鞠莉「あなた達の作戦の主軸、私は自分の爆発に巻き込まれ…ない技を持っていたら」

 

「「「!!!!!!?」」」

 

ツバサ「な…まさか、」

 

ルビィ「新必殺技!?」

 

鞠莉「残念ね…私の方が完璧みたい」

 

 

鞠莉の強力なブロック技、『グラウンドスイーパー』。空気中に爆発するオーラを設置する技なのだが…これを鞠莉はーーーー

 

 

千歌「ぇ、」

 

穂乃果「吸収、してる?」

 

 

あろうことか、鞠莉は爆発する危険なオーラを体に吸収し始めたのだ。鞠莉の体はバチバチを音を出し始め、まるで…自身が爆弾になったかのように…

 

 

果南「鞠莉…何やってんの!?」

 

 

鞠莉「さあ…日本のサッカープレイヤーたち!!耐えられるもんなら耐えてみなさい!!」

 

 

月「千歌ちゃん、逃げるよ!!」

 

千歌「え!?ちょっ、月ちゃん!?」

 

ツバサ「まずいわね…」

 

にこ「ちょっと待ちなさいよ!?」

 

 

言うならば、第2の『タクティクスブレイク』

 

 

 

鞠莉「ー グラウンド・ゼロ ー」

 

 

次の瞬間、鞠莉は爆発した。粉塵を巻き上げ、空気を殴りつけるような衝撃波で日本の選手を吹き飛ばし。

炎は天高く上がる。日本の選手たちの鞠莉の身を心配するほどの威力…だが、

 

 

ダイヤ「無傷…ですの?」

 

善子「なんであの自爆で無傷なのよ…」

 

 

鞠莉は爆発により作られたクレーターの中で。してやったりの顔で仁王立ちしていた。

あれほどの自爆ならば、重症は避けられないと思っていたのだが…

 

 

鞠莉「マリーは無敵なのデース!」

 

アリーチェ「マリさん!こっちです!」

 

 

月「やばっ!?カウンター来るよ!?」

 

 

A『マリ選手の強力な必殺技で日本の必殺タクティクスを強引に突破!!そのままカウンターに入ります!!』

 

 

アリーチェ「エルマ!」パス

 

エルマ「ダンテ!」パス

 

ダンテ「フィレア!」パス

 

 

にこ「っっ…パスが速すぎる!?」

 

ツバサ「当然と言えば当然ね、」

 

 

A『ダイレクトで瞬く間にボールは日本陣内!!フィレア選手にボールが渡ります!』

 

 

フィレア「まさかこんなにも早く、マリさんの"切り札"を使うことになるとは…」

 

聖良「取ったーーー

 

フィレア「いよっと」バッ

 

聖良「なっ!?」スカッ

 

理亞「姉様のディフェンスが、あんな簡単に!?」

 

 

その華麗な身のこなしは、確かにゾーンを扱う選手の動きそのものだった。

ボールを足に吸いつかせ、自身はダンスを踊っているかのような激しいアクションで躱す。その輝く目から芸術作品と言ってもいいだろう

 

 

フィレア「今度はこっちの番だよ…!」

 

果南「来い…!絶対に止めるから!!」

 

 

後ろから追いかける穂乃果には見覚えがあった。あの構え。右足を上げ、金色のオーラを一点に集めるあの気迫…

1年前、手も足も出せなかった世界のシュート。

今は分かる。強くなったからこそ、余計に伝わる……あのシュートのヤバさ

 

 

フィレア「ー オーディンソード ー!!」ドガアァン!!

 

 

A『出たあぁぁ!!フィレア選手の必殺シュート!!』

 

 

果南「星々よ…私に力を!!!!」バシャァン!

 

果南「ー デルフィナス・トリアイナ ー!!」

 

 

果南の神器の召喚は、会場のボルテージをいっきにはね上がらせるには充分すぎるほどのものだった。

海中から取り出した三叉戟は装飾による神々しさが宿り、果南からは静かだが炎のような覇気を感じる

 

 

果南(叩きつける……!!!)

 

 

果南は両手で三叉戟を振り上げた。

そのまま振り下ろす勢いでボールを地面へ…海中深くとの叩き込もうとする……

 

 

穂乃果「…!!?」

 

ルビィ「!!!!」

 

 

果南「なっ!?」

 

 

………だが、

 

 

 

ガキイィィィィィィン!!!!!!!!

 

果南「ぐっっっっっ!!!!」

 

 

曜「果南ちゃんがボールを捕らえたよ…!」

 

凛「でも、あれって…」

 

英玲奈「果南らしく…ないな」

 

 

 

果南(タイミングが…遅れた!!??)

 

 

果南が三叉戟を振り下ろそうとした…時には既にボールは目の前まで迫っていた。

予想以上に、視覚で捉えた以上に、ボールは速く"伸びてきていた"。

タイミングをずらすシュート、と言えばいいのだろうか。それにより、果南は十分な力を三叉戟に加えることが出来ていない

 

 

果南(やばっ!?押し切られる…!!)ググググ…

 

穂乃果「果南ちゃん…!!踏ん張って!!」

 

鞠莉(果南…)

 

果南「ぐぬぬぬぬぬぬっっ!!!!」

 

 

似たようなことで…失点したことがある。

絢瀬絵里の"ホワイトハリケーン"…あのシュートもタイミングに失敗し、押し切られた

 

 

絵里「……」

 

 

そこからの流れは完全に相手に奪われ、敗北の寸前にまで追い詰められたことは…忘れたことがない。

自分の力不足、だった

 

 

果南「ぐっっっっっ!!!!!!」

 

フィレア「1点目。だね」

 

 

先程まで地面につくかつかないかの場所にあった三叉戟。しかし、今は果南の胸元まで押し上げられている。

歯を食いしばるが重い。

力が入りきらず歯痒い

 

 

ダイヤ「果南さん!!」

 

穂乃果「果南ちゃん!!」

 

海未「果南!!」

 

 

ーーーーだけど!!!!!!!!

 

 

 

果南「このっっっ!!!!!!」

 

フィレア「なっ!?」

 

アンジェロ「フィレアのシュートが…」

 

カズハ(パワーが、上がってる!?)

 

 

A『松浦果南、持ち直した!!厳しい体勢ではありますが、まだまだ負けていません!!!!』

 

 

ーーーー確かに。日本の守護神は穂乃果だ

 

 

理亞「押し返してる…」

 

 

私は、言うならばサブキーパーだ

 

 

ことり「あのフィレアちゃんのシュートを…」

 

海未「果南…あなたの力は本物です」

 

 

サブキーパーだから、負けてもいいのか?

自分の弱さを責め、逃げてもいいのか?

 

 

 

 

ーーーーーー否

 

 

 

 

ドゴオォォォオオン!!!!!!!!

 

 

フィレア「」

 

鞠莉「」

 

絵里「」

 

日本「「「」」」

 

果南「!!!!!!!!!!」

 

 

A『押し…潰した』

 

 

 

今は私が、日本のゴールキーパーだ。

みんなの背中は……私が守る!!!!!!

 

 

 

ワアァァァァァァァァ!!!!!!!!

 

A『止めたあぁぁぁぁ!!!!松浦果南!!"白き流星"の強力なシュートを、不利な状況から抑えて見せたぁ!!!!』

 

 

果南「ハァハァ…ハァハァ…止めた…」

 

 

レヴィン『果南選手の意地、ですね。力を入れずらい体勢からよく持ち直しました』

 

 

にこ「よおーしっっ!!完璧よ果南!!」

 

月「あのシュートを止めるか止めないかで…状況は大きく変わっていたよ!」

 

にこ「えぇ!救われたわ!」

 

 

カズハ「ドンマイ。フィレア…それにしても、日本のGKは穂乃果だけじゃないね」

 

フィレア「えぇ。あの子の技、下手すると、穂乃果の"ゴッドハンドX"以上の力…これは一筋縄ではいかないわね」

 

 

鞠莉「流石は果南ね…"オーディンソード"を止めちゃうなんて」

 

フラム「悔しいけど、果南の力は本物だよ。マリさん、私たちも…!」

 

鞠莉「えぇ。全力でいかなきゃね」

 

 

再びボールは日本に渡った。

両チームともシュートまでの攻撃を見せ、お互いがお互いの攻撃パターンを把握したと言える。

野球で、ふた周り目からが打たれやすい・打ちやすいというのと同じく。ピッチャーの球を目で見て、肌で感じ、2回目の打席で捕らえる。

 

パスカット、ディフェンス。

ドリブル、パス、シュート。

初見よりも今は反応、対応するスピードは格段に速い。時間と共に試合のキレが増す

 

 

理亞「千歌!」パス

 

マルコ「もらった!!」バッ

 

千歌、理亞「!?」

 

理亞(パスがあまかった…)

 

 

ルビィ「ー イグナイトスティール ー!!」ズザーッ!

 

マルコ「なっ!?」

 

 

ルビィ「ドンマイ、理亞ちゃん!」

 

理亞「うるさいわね…」

 

ルビィ「ツバサさん!」パス

 

月「ツバサさん、こっち!」

 

ツバサ「月!」パス

 

 

A『日本、パスは繋がりますがなかなか攻め込めません!!マリ選手率いるイタリアのディフェンスは硬い!!』

 

レヴィン『日本は強力なFW選手を多数起用していますからね、それでも突破出来ないのは、日本にしては少し厳しいかも知れません』

 

 

そう。これが今の日本における、最高火力の編成だった

 

 

曜「今までの試合とは、レベルが全然違うよ…」

 

凛「今、凛が行っても足でまといになるだけにゃ…」

 

真恋「だからこそ。あなた達はベンチでこの試合のレベルを、目で見て対応しなければいけないの。よく観察して、自分らが交代した時についていけるように」

 

ダイヤ「そうですわね、視覚だけでも慣れないといけませんわ」

 

 

ーーーワアァァァァァァァァ!!!!

 

 

ベンチ「「「!!!!??」」」

 

 

 

ルビィ「そんな!!?」

 

カズハ「もーらいっ!」

 

 

A『カズハ選手が黒澤ルビィからボールを奪った!!』

 

 

穂乃果「ルビィちゃん、"スプリントワープ"使ってたよね!?」

 

理亞「何取られてるのよ…!!」

 

 

フィレア「みんな!!上がって!!」

 

カズハ「さあ!そろそろ決めようか!」

 

 

この2人が攻めてくる以上に辛い攻撃はない。圧倒的な個人技と連携で日本と違って簡単に。

日本のディフェンスを崩す

 

 

ダンテ「カズハ!!」パス

 

希「もらった…!!」バッ

 

カズハ「♪」スカッ

 

希(スルー!?あかん…このコース!!!)

 

 

フィレア「ナイスだよ!!」

 

 

A『再びフィレア選手がボールを持った!!目の前はがら空き!これはチャンスだ!!』

 

 

穂乃果「フィレア!!」バッ

 

フィレア「来たね…穂乃果」

 

 

すぐに追いついた穂乃果。

時間稼ぎかそのまま奪うか。

穂乃果の考えはひとつ。後者のみ

 

 

穂乃果「もう負けないよ…!!」

 

フィレア「言ったでしょ!私にはまだ勝てないっーーーてね!!!!」ギュン!

 

穂乃果(はやっーーーでも!!!!!!)

 

 

 

 

 

フィレア「」ゾクッッッ!!

 

ホノカ「負けないったら負けない」

 

 

聖良「穂乃果さんが奪った!?」

 

希「力を…発動しているんや」

 

 

フィレア(これが…マリさんが言ってた闇の力!?)

 

 

A『高坂穂乃果が奪い返した!!!試合開始早々で1度敗北しているフィレア選手との1対1…!今度は高坂穂乃果の勝利だ!!』

 

 

ホノカ「よし…このまま…「すごいや穂乃果」

 

ホノカ「!!?」

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

カズハ「今度は私に勝ってみなよ」

 

 

海未「和葉…!!」

 

英玲奈「闇の力を発動している穂乃果からも奪うのか!?」

 

 

A『カズハ選手は抜けない!!いや、高坂穂乃果がカズハ選手を認識する前に奪ったのか!?』

 

レヴィン『そのようですね。だとしても、穂乃果選手から簡単にボールを奪うとは…』

 

 

カズハ「穂乃果」

 

ホノカ「ハァハァ…」

 

カズハ「懐かしいね。この感じ」

 

 

にこ「油断したわね!!」ズザーッ

 

千歌「ボールはもらった…!!」バッ

 

カズハ「いつもこうして1対1したよね」バッ

 

にこ、千歌「!?」スカッ

 

にこ(にこたちのこと見てないのに…)

 

千歌(なんで躱せるの…!?)

 

 

にこと千歌を躱した和葉。

そのままボールを空へと蹴り上げ、和葉も飛ぶ

 

 

カズハ「さあ…これも止めてよ」

 

ホノカ「あれは……果南ちゃん!!!!」

 

 

果南「!?」

 

ホノカ「今すぐに技を!!!!!!」

 

 

 

ドオォォォォン!!!!!!

 

瞬間。聞き覚えのある轟音が会場に響いた

 

 

 

絵里「来るわよ。世界最強のシュートが」

 

ユーリー「でも…あれって、」

 

 

曜「海未さんが言っていた、和葉さんの!?」

 

海未「はい…あれは、忘れもしません」

 

 

空気が震え、地が震え。

ボールに込められるオーラは穂乃果のシュートの何倍にものぼる。

同じ技だが、同じ技ではないレベル。

これが世界屈指のプレイヤーの必殺シュート

 

 

 

 

カズハ「ー ブレイブショット ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

果南「な…!!?」

 

 

理亞「何よこの威力!?」

 

ルビィ「……!!」

 

ツバサ「穂乃果さんの"ブレイブショット"とは…次元が、」

 

 

果南は穂乃果の"ブレイブショット"を初めて受けた時。威力の壮絶さに圧倒され、果てしない強さを実感した。

そして今。再び果南は果てしない強さを実感していた

 

 

果南「これが…真の"ブレイブショット"…!!」バシャァン!

 

果南「ー デルフィナス・トリアイナ ー!!」

 

 

果南はすぐに神器を召喚する。

今自分が持てるすべての力をぶつけて挑む。

世界最強の選手による、最強のシュート

 

 

果南「うおおおおぉぉぉぉぉーーー

 

 

先程と同じく、天高く振り上げ

 

 

果南「ーーーーーらあぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

下ろす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキイィィィィィィン!!!!!!

 

 

 

果南「っっっっ!!!!??」ビリビリ

 

日本「「「!!!!!!!!」」」

 

 

果南(これって……)

 

 

 

同じだ

 

 

 

ルビィ『ー ラストリゾート ー!!!!』

 

『ガキイィィィィィィン!!!!!!』

 

 

 

果南(弾かれ……た!!!!?)

 

 

 

 

同じだ

 

 

 

 

触れない。勝負さえ、させてくれないシュート

 

 

 

 

バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

 

A『ゴール!!!!先制点はイタリア!!"勝利の化身"、カズハ・ミウラが決めたあぁぁ!!!!』

 

 

ワアァァァァァァァァ!!!!!!

 

 

 

果南「ハァハァ…くそっ!!手が…まだ痺れる…」

 

 

穂乃果「やっぱり…みっちゃんのシュートはすごいや…」

 

千歌「あの感じ…ルビィちゃんのシュートと似ている…」

 

 

理亞「あれじゃまるで、"ラストリゾート"じゃない!?」

 

ツバサ「触れないシュート…確かにそっくりね。でも、カズハさんは空気の層とかじゃなく。純粋に巨大なオーラだけで果南さんの技を弾いた」

 

理亞「何よ、それ…」

 

にこ「強すぎるってことよ」

 

 

 

鞠莉「ナイスゴールよ!カズハ!」

 

フィレア「やっぱり頼りになる!」

 

カズハ「ふふ♪ちょっと脅かしすぎたかな?」

 

 

圧倒的な差。格の違い。

それを1発のシュートで思い知らされた。

 

日本は抗っている。しかし、それがいつまでも続くとはーーー誰も、思っていない

 

 

 

日本 0-1 イタリア

 

 

 




グラウンド・ゼロ
鞠莉ちゃんの新必殺技でオリジナル技です!「グラウンドスイーパー」の進化技だと思ってください。簡単に言えば自爆。ですが、何故か鞠莉ちゃんには傷ひとつつきません…その全てを吹き飛ばす威力から、『第2のタクティクスブレイク』と呼ばれることは確実でしょう。ちなみに技の意味は『爆心地』です

和葉のブレイブショット
『ブレイブショットは和葉の技』海未ちゃんがそう言っていましたが、それ相応の威力でしたね。穂乃果ちゃんの技よりも数倍強力で、日本の選手曰く、『ラストリゾート』のように強すぎる力ゆえにキーパーは触れないようです


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第3章 85話 「イタリア戦"完全敗北"」


皆さんどうも!期末テストも終わって一安心のルビィちゃんキャンディーです!

今回のお話は…輝こう史上の中ではトップクラスの事件が起きます。いや、衝撃の展開でしょうか…




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

タクティクスをも破壊する鞠莉の新必殺技。そして、世界最強が誇るシュート『ブレイブショット』で日本のゴールをこじ開けた。果南はそのシュートにひとつ先の次元を感じ、手を震わせていた

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

フロイ「あれが、カズハさんの必殺技…」

 

絵里「最強格のひとつとして、既に知っている人も多いわ。これで…3つかしら、」

 

 

メディアやネットでは、どのゲーム・スポーツでも"最強"という言葉に目が無い。

それはサッカーでも同じ。FFI世界ランキング、得点ランキング、人気選手ランキング…そしてーーーーー

 

 

 

ーーーー"最強必殺技ランキング"

 

 

 

 

サエ「今のところの、今大会で確認されている規格外必殺シュートが3つ」

 

サエ「イギリス代表キャプテン"静かなる闘将 エドガー・バルチナス"の『エクスカリバー』」

 

サエ「そして、日本代表エースストライカー"紅き流星 黒澤ルビィ"の『ラストリゾート』」

 

サエ「最後に、イタリア代表"勝利の化身 カズハ・ミウラ"の『ブレイブショット』」

 

 

 

 

美奈「もちろん。強力なシュートを持っているだけでは意味が無いわ。使う選手がその技をどれほど上手く扱って…そしてほかの能力を伸ばすか」

 

美奈「ドリブル、ディフェンス、パス、思考判断、指揮力…それらで補って来た猛者が、今この大会で蹴りを放てるのよ」

 

 

 

そんな破格のシュートを持つ選手…そして、全世界の中でも完璧に近い技術を持つのがーーーーー

 

 

A『人々は呼びました…!!"クイーン カズ"と!!』

 

ワアァァァァァァァァ!!!!!!

 

A『今から数年前、イタリアに忽然と現れ、その"人を惹きつける"才能で瞬く間に最強へと上り詰めた!!』

 

 

果南「ハァハァ…」ビリビリ

 

 

A『今はイタリアから…チームから離れ、世界を旅していたと聞いていましたが否!!彼女はこのフィールドに立っています!!!』

 

 

ルビィ「強い…世界って広いね。理亞ちゃん」

 

理亞「なによ…怖気付いたわけ?」

 

ルビィ「理亞ちゃんも、顔引きつってるよ」

 

理亞「……うるさい」

 

 

A『再び戻ってきたイタリアのチームへ!!彼女たちは世界の頂きに手を伸ばしています!!』

 

ワアァァァァァァァァ!!!!!!

 

 

 

善子「ってか実況、和葉のこと推しすぎじゃない!?」

 

花丸「無理もないずら…あそこまで凄い選手なら、」

 

 

 

 

彼女の目的は楽しむことだ

 

 

カズハ「〜♪」

 

フラム「楽しそうですね」

 

カズハ「当たり前だよ!私は楽しむためにサッカーしてるんだもん!」

 

 

どんな辛いこともポジティブに。その先に楽しいことが待っていると信じて足を止めない。そんな選手が強くないわけがない

 

 

穂乃果「みっちゃん…」

 

カズハ「まだ行けるでしょ…!穂乃果!千歌ちゃんもね」

 

千歌「!!」

 

 

不思議だ。和葉の言葉には魔法がかけられているようだ。

和葉に声をかけられると気持ちが高まる。まだまだ…!と、心の炎が燃え上がる。

 

千歌…そして穂乃果は感じた。

そうだ。自分たちが目指しているサッカー選手はーーーーー

 

 

 

カズハ「もっともっと…サッカーしよう!!」

 

 

 

ーーーこんな選手だ

 

 

 

真恋「どうするの?完全に優勢なのはイタリアよ。日本がこの流れを変えるには…」

 

美奈「…手札ならある。でも、相手はあの"鬼監督"よ」

 

 

サエ「……」

 

 

美奈「見透かされているに決まっているわ」

 

 

 

A『さあ、0-1で試合再開です!!』

 

ピーー!!!!

 

 

穂乃果「まずは1点…!!」

 

ルビィ「はい!!」

 

理亞「必ずあのゴール、こじ開ける!!」

 

 

まだまだ負けてないサニデイジャパン。

1対1で勝てないのなら2人で…3人で勝つ。そんな根性滲む、諦めないプレー

 

 

ラファエレ「もらった…」

 

穂乃果「にこちゃん!」パス

 

ラファエレ「!!」

 

にこ「強行突破よ…」バッ

 

ダンテ「矢澤にこが来た…!!」

 

 

A『矢澤にこが攻撃に加わります!!』

 

レヴィン『カズハ選手が止めに入りますね。どうなるのでしょうか』

 

 

カズハ「にこちゃん、久しぶりだね!」

 

にこ「小学生の頃は…互角、だったかしら」

 

 

にこもまた、三浦和葉の小学時代からの仲だった。毎日自主練を続けるにこに刺激を受けた和葉は、穂乃果たちとよくにこの練習に付き合っていた。

 

その分。人よりもよく、穂乃果たちよりもよく

 

 

カズハ(動きをーーー読める!!!!)

 

 

にこの視線。体の傾き。動きのパターン。

読める。長年練習を共にしたから分かる。にこの動きが…次来る、勝利へのチャンスがーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

にこ「残念」バッバッ!

 

カズハ「」スカッ

 

 

カズハ(あの頃とは…違う動き、スピードも…テクニックも!!!!)

 

 

イタリア「「「!!!!!!」」」

 

サエ「!!」

 

 

A『抜いたあぁぁぁ!!!!矢澤にこは"クイーン カズ"相手でも止まらない!!この世界に、彼女を止められる選手はいるのでしょうか!?』

 

レヴィン『カズハ選手も動きは読んでいました…しかし、それさえもにこ選手は読んでいた…恐ろしいですね』

 

 

 

千歌「今だ…一気に畳み掛けよう!!」

 

フィレア「しまった!?ディフェンス!」

 

 

カズハが抜かされたことにより動揺したイタリア。その一瞬の隙、日本は待ってましたと言わんばかりに刺す。

鉄壁のディフェンスだとしても、ひび割れがあるのならば脆く崩れやすい薄壁と同じ

 

 

月「ー ブルースターダスト ー!!」キラキラ!

 

アリーチェ「きゃっ!?」

 

月「理亞ちゃん!」

 

エルマ「させない!!」バッ

 

ディアナ「パスカットよ!」バッ

 

 

A『DF2人が動いた!!』

 

 

鞠莉「!!エルマ、ディアナ!!罠よ!」

 

エルマ、ディアナ「!?」

 

理亞「もう遅いわ」

 

 

理亞「ー ドロップアウトV4 ー!!」ドガアァン

 

エルマ「まずい!?」

 

ディアナ「突破される…!?」

 

鞠莉「っっ!!まさかノーチャージで撃ってくるとは…!」

 

 

理亞の"ドロップアウト"。

両足でボールを挟み、空中でオーラを溜め、地面に勢いよくボールを叩きつけるドリブル技。

鞠莉の記憶・そしてデータでは、このオーラを溜めるのには少し時間がかかる。

だから理亞はボールを取られにくい空中へ飛ぶのだ。しかし、

 

 

理亞「練習の成果…できた!」

 

 

ボールを挟み、オーラを溜めることなく。

月のパスをダイレクトでそのまま叩きつけたのだ

 

 

梨子「ずっと練習していた"溜めナシ"のドロップアウト!!」

 

曜「前!!空いてるよ!!!」

 

 

理亞「穂乃果あぁ!!!」パス

 

 

穂乃果「よしっ!!来た!!」

 

 

A『高坂穂乃果に渡った!!なんと、日本!!前半で再びイタリアの鉄壁ディフェンスを突破して見せた!!!』

 

 

真恋「シュートよ穂乃果ちゃん!!」

 

海未「決めてください!!」

 

ことり「穂乃果ちゃん…!!」

 

 

穂乃果「決めるっっっっ!!!!」バッ

 

 

ボールを宙へ。自分も続き宙へ。足でかけたスピンが勢いを増す

 

 

アンジェロ「あれって…カズハさんの!?」

 

フィレア「あの技は、穂乃果の技でもあるんだよ…!」

 

 

穂乃果「でりゃああぁぁぁぁぁ!!!」ドォン!!

 

 

そう。和葉の技であり、穂乃果の技でもある。今の穂乃果を作り上げた、FWとしての穂乃果を作り上げた…地を揺らす一撃

 

 

穂乃果「ー ブレイブショット ー!!」

 

 

A『高坂穂乃果も"ブレイブショット"を放ったぁぁ!!こちらも強力!!』

 

 

アリーチェ「フラムちゃん!!」

 

フラム「分かってます!!はああぁぁぁ!!」

 

フラム(カズハさんのシュートと比べるなっっ!!どちらも強い!!)

 

 

フラムは感じていた。威力は和葉の方が上とはいえ、穂乃果のシュートも恐ろしいパワーを持っている。

オーラによる大気の震え、轟音。それらが全て刃物として肌に刺さる。

痺れる。凄い。フラムは全力で、その一撃を受け止めた

 

 

フラム「ー ゴットハンド・ゼロ ー!!」

 

フラム「ぐっっ!!(弾かれなかったけど…重い!?)」ググググ

 

 

善子「フラムが押されてるわよ!!」

 

凛「穂乃果ちゃん!!押し切るにゃ!!」

 

 

フラム「ぐぬぬぬぬぬぬ…!!!!」ググググ

 

 

フラムは言った。どんなシュートでも止めると

 

 

エルマ「フラムが…あのフラムが押され、」

 

フィレア「まだ負けてないっ!!フラム!!」

 

カズハ「…」

 

 

言ったのに……そう言ったのに……

 

 

 

 

 

バリイィィィィン!!!!!!

 

 

フラム「きゃあぁっ!!?」

 

 

穂乃果「!!」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

穂乃果なら痛いほどわかるだろう。

このガラスが割れるような音。そう、ゴットハンドが割れる音だ

 

 

A『高坂穂乃果のシュートがゴットハンドを貫き、今、ゴーーー

 

 

 

鞠莉「まだよ!!!!」ドガッ!

 

 

穂乃果「なっ!?」

 

ルビィ「ちょっ…鞠莉ちゃん」

 

にこ「往生際が悪いわね…!!」

 

 

フラム「鞠莉さん!?」

 

鞠莉「長くは持たないわ…カモン!!フィレア!!」

 

フィレア「ナイスすぎるよ鞠莉さん!!!」

 

 

A『これは!?フィレア選手がゴール前へ!!シュートをぎりぎりで抑えるマリ選手の元へと行くのか!?』

 

 

穂乃果「まさか…あのまま!?」

 

フィレア「悪いね穂乃果。私たちも負けられないの」ゴオォォッ!

 

鞠莉「このままでいい!!やって!!」

 

 

シュートを抑える鞠莉。

飛び込むフィレア。

その姿はまるで…日本の泥臭いサッカーのようであった

 

 

フィレア「ー オーディンソード ー!!」

 

 

ドガアァァァン!!!!!!

 

 

日本、イタリア「「「!!!!!!!」」」

 

千歌「穂乃果さんのシュートを…弾いた」

 

月「惜しいなぁ…悔しいね」

 

 

A『なんてことだ!?マリ選手のブロックは最初から時間稼ぎ!!その間に追いついたフィレア選手が、必殺技でクリアしました!!』

 

レヴィン『マリ選手が得意とする流れですね。日本の、特に浦の星女学院のメンバーはあのプレーに何度も助けられたはずです』

 

 

フラム(あのシュート…クラリアの"ダイヤモンドレイ"レベルの重さだった…)ビリビリ

 

 

穂乃果「ハァハァ…くっ…やっぱり遠いね、」

 

ルビィ「…」

 

にこ「ルビィ、いつまでゴールを睨んで…」

 

ルビィ「次のボール。ルビィに撃たせてください」

 

FW「「!!!!」」

 

月「…使うの?」

 

ルビィ「穂乃果さんのシュートが止められた今。あのゴールを砕き割るには"あれ"しかありません」

 

ツバサ「そうね。それに、フラムさんに教えてあげなきゃね」

 

 

"紅き流星"の本当の全力をーーー

 

 

 

 

A『さあ、日本のコーナーキックから試合再開!蹴るのは高海千歌!!』

 

 

千歌「……」

 

 

鞠莉「来るわよ!マーク外さないで!」

 

 

ディフェンスの中心である鞠莉は、相変わらず的確な指示で日本の選手を完全マークしていた。ゴール前にいるFW陣は、果たしてボールに触れるのか…いや、

 

 

千歌「でりゃ!」バシッ

 

鞠莉(ショートコーナー!?)

 

 

A『高海千歌はショートコーナーを選択!ボールはそのままコートの中心付近へ……いや!?これは!?』

 

 

鞠莉「!!!!」

 

ルビィ「……」シュルル…

 

 

髪留めを外すルビィ。

 

 

月「よし…!」バッ

 

にこ「1発ぶちかましなさいルビィ」バッ

 

穂乃果「頼んだよ…」バッ

 

 

サイドに散る日本選手

 

 

ルビィ「…」ギロッ

 

 

"あの時"と同じ。鋭く睨む目

 

 

 

 

鞠莉「まさかっっっっ!!!!??」

 

 

ルビィ「はああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

イタリア「「「!!!!!!??」」」

 

日本「「「!!!!!!!」」」

 

会場「「「!!!!!!!!」」」

 

 

フィレア「来たね…紅き流星の本気!!!」

 

鞠莉「気を引き締めなさいフラム!!」

 

フラム(ヤバい…迫力が違う…)ビリビリ

 

 

ルビィ「ふっっっ!!!!」バッ

 

両足でボールを地面へ

 

 

ルビィ「でりゃあぁぁっっ!!」バッ

 

高速でボールの落下地点に先回り。左足でボールに空気をコーティング

 

 

空気とATPを混ぜ合わせたオーラ。

それは世界を震撼させた激動の一撃。

このシュートはルビィの全て。日本の切り札

 

 

ルビィ「ー Awaken the power ー」

 

ルビィ「喰らえ」ビュン!!

 

 

 

 

ルビィ「ーラストリゾート ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

A『出たあぁぁぁぁぁ!!!!黒澤ルビィの最強シュート!!』

 

 

ドガアァン!!ドガアァン!!ドガアァン!!ドガアァン!!

"ラストリゾート"はその強力過ぎる力ゆえに、地面に弾むたびに動きを変える。

また、地面を抉り、まるで自身の体の一部にしたかのように纏う

 

 

マルコ「うわあああ!?」

 

ディアナ「吹き飛ばされ…!?」

 

アリーチェ「きゃあぁっ!!?」

 

鞠莉「っっ!!??」

 

 

A『イタリアの選手が木葉のように吹き飛ばされます!!ボールはそのままゴールへ!!フラム選手は果たして止められるのか!?』

 

 

フラム「…認めるよ。強い、凄い…怖いくらいだよ」

 

ルビィ「…ハァハァ」

 

フラム「でも、」

 

 

フラム「これを止められるって…本当に最高すぎ!!!!」

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

ルビィ「何を言って…」

 

理亞「まだ抗う気でいるの?」

 

 

"ラストリゾート"の壮絶な威力を見たフラムは…イカれてしまったのだと、理亞たちは思った。しかし、この考えはすぐに覆されることになる

 

 

フラム「私は…ルビィの"ラストリゾート"に勝つために死ぬ気で特訓した!!!!」バチバチ

 

ツバサ「"ゴットハンド・ゼロ"のオーラ??」

 

フラム「ついに完成したのよ!!!世界に…いや、ルビィに勝つための技がね!!!!」

 

 

フラムは地面を殴った。

穂乃果の"ゴットハンドV"に似た動き。しかし、オーラはまた別の。

姿かたちを変え、ルビィたちの目に映った

 

 

聖良「巨大な…バリア!?」

 

千歌「何あれ……何か変だよ…!?」

 

 

 

 

 

フラム「ー イジゲンザハンド ー」

 

 

 

 

 

その後、何が起きたのか。

 

 

 

ルビィ「!!!!??」

 

 

 

世界が認めた、止めることが出来ないと言われた"ラストリゾート"

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

美奈「!!」

 

 

 

触ることが出来ないのならば、どうすれば止められるのか

 

 

 

 

 

そんなの簡単だ

 

 

 

 

 

 

月「はず…された……」

 

ルビィ「な…ぁ……ぇ???」

 

にこ「うそ…でしょ……」

 

 

 

 

ボールは、フラムのバリアに誘導され。

流されるように。逆らうことなく。ただただ川の流れに従う水のように

 

 

ドガアァァァァァン!!!!!!

 

ゴールの裏へ。流れていった。

ボールは壁に激突。恐ろしい程に音が響いた

 

 

 

 

ルビィ「ぇ……ぇ、え…え???」

 

 

 

 

それが何を意味するのか

 

 

 

 

善子「ルビィが…負けた」

 

 

 

 

紅き流星 黒澤ルビィ 『完全敗北』

 

 

 

A『外れた!?いや、外させたと言うべきでしょうか!?フラム選手の新必殺技が、なんと、あの黒澤ルビィの最強シュートを防ぎました!!!!』

 

レヴィン『これは……驚異的と言うしか、』

 

 

 

ワアァァァァァァァァ!!!!!!

 

フィレア「フラム!!やったじゃないか!!」

 

カズハ「練習したかいがあったね…!」

 

フラム「ハァハァ…やった…やったよ!!」

 

 

イタリアの選手たちは喜びを分かち合う。まるで勝利したかのように。

いや、勝ったのだ。試合とは別の、もう1つの勝負に

 

 

ことり「そんな……」

 

英玲奈「こんなことが有り得るのか…??本当に、こんな……」

 

真姫「ルビィ…あの子、」

 

 

 

 

ルビィ「ぅ……ぁぁ……」

 

 

ルビィはその場に崩れ落ちていた。

体は震え、目は絶望により潤んでいる。

大げさか?たかが1本外したぐらいでーーーいや、あの1本。ルビィは全てを込めた

 

 

ルビィ「とめ……られ、ぇ…そんな、」

 

 

意味のある一撃だった。自他共に確信していた、止められないシュート。言うならばルビィがここまで精神状態を維持できる柱だった

 

 

バキッ

 

 

それが今。鈍く、砕けた

 

 

 

ルビィ「うわあああぁぁぁぁぁ!!!!??」

 

 

 

 

 

最強の黒澤ルビィは死んだのだろうか?

 

 

日本 0-1 イタリア

 

 

 





ということで、ついに"ラストリゾート"が止められてしまいました。ルビィちゃんは何故、こんなにも精神状態が不安定なのか…それは次回、書きたいと思います。



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第3章 86話 「イタリア戦 "勝利の呪縛"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!

今回は…なんとまたルビィちゃんの回想に入ります。主人公は千歌ちゃんだよね…?はい、一応千歌ちゃんです。もう、ルビィちゃん準主人公の1人にしてもいいですよね笑
文章が未だに未熟なルビィちゃんキャンディー…分かりにくい内容になるかもしれないので、後書きにまとめました。よくわからなかった方はそちらを…




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

和葉と奮闘するにこ。フラムの技を破る穂乃果。惜しくもフィレアに阻止されるも、日本の力は確実に通用していた……と思っていたのだが、日本の切り札"ラストリゾート"がフラムの新必殺技により敗れてしまう

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

時は韓国戦の日まで遡る。

都心を走るタクシー。その後部座席には赤髪の少女が2人

 

 

真姫「はい」

 

ルビィ「え…これって、」

 

 

少女の1人、西木野真姫。

"ATP"の過度な使用により、体を壊してしまったルビィのリハビリの専属の付き添い人として。今日から急遽、日本代表チームに合流することになっていた。

そんな真姫から手渡されたのは、背中にルビィの名前がローマ字で刻まれた日本代表ユニフォームであった

 

 

ルビィ「10番…」

 

真姫「エースストライカー。美奈監督直々のご指名よ」

 

ルビィ「…」

 

真姫「意外。もっと喜ぶと思ったんだけど」

 

ルビィ「嬉しいよ、嬉しい…でもね?それ以上に……怖い」

 

真姫「怖い?」

 

 

受け取ったユニフォームを持つ手の力が強くなっている…いったい何が怖いのか。

怪我が治りきっていないこと?無理して勝手にリハビリを始める人が怖いと思うとは考えられない。

人の目?ルビィは重度の人見知りだとダイヤから聞いていた。だが、それと同時にルビィはサッカーをする時は性格が一変し、人見知りは問題ない…とも言っていた。

なら…何を?答えはすぐにルビィが話してくれた

 

 

ルビィ「エースストライカーの責任、かな」

 

真姫「責任?」

 

ルビィ「中学生の時。サッカー部で仲間たちから期待されて…そして浦の星女学院で全国大会に出場して分かった」

 

ルビィ「エースストライカーは、絶対に負けてはいけない」

 

真姫「ルビィ…」

 

ルビィ「全国大会でこれほどの責任があった。絶対に決めるっていうね。でも、今回は規模が違う…次元が違う。日本のエースストライカーの責任なんて、計り知れないよ」

 

真姫「そこまで責任を負うことはないわよ」

 

ルビィ「あるよ。いつか分かるよ。いや、分かっちゃダメなんだけど…エースストライカーが負ける…ということの意味が」

 

ルビィ「それが…怖い。ルビィのせいでみんなが絶望しちゃうなんて…嫌だよ」

 

真姫「あ…あのね?ルビィ、あなたには"切り札"のシュートがあるのよ?いくら世界といってもあのシュートを止められるとは…」

 

ルビィ「ルビィもそう願いたい。あの技は、ルビィの"最後の柱"だからね」

 

真姫「最後の柱…」

 

 

真姫は『最後の柱』という言葉が何故か心に引っかかった。最後?いったい何の最後なのか…この時はあまり深くは考えなかったが…

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

そして、今

 

 

にこ「ちょ!?ルビィ、大丈夫なの!?」

 

ルビィ「ハァ…ハァ……うぅぅ……」

 

月「どこか痛むの?まさか、まだ右足が…」

 

ルビィ「ち、違う…大丈夫、大丈夫だよ」

 

にこ「顔が真っ青じゃない!!大丈夫じゃないわよ!!」

 

 

ATPで体力を消耗した時よりも酷い顔だった。体は震え、まるで目の前にいる怖い存在に怯えているようだった

 

 

ルビィ「決められなかった…決められなかったよ……」

 

 

真姫「…ルビィ、」

 

ダイヤ「心当たりが?真姫さん」

 

真姫「…ダイヤ」

 

 

ベンチで心配そうに見守る真姫に。同じく不安げな表情のダイヤが話しかけた。どうやら顔に出ていたようだ。

真姫は隠すことないとあの日、タクシーの中での会話を全て話した

 

 

善子「ルビィがそんなことを…?」

 

海未「最後の柱…責任、ですか」

 

ダイヤ「…それは恐らく、黒澤家の家訓に原因があると思います」

 

曜「家訓って、あの?」

 

ダイヤ「はい」

 

 

『黒澤家に必要なのは常に勝利のみ』

 

ルビィとダイヤは、幼少期から何事にも勝利を意識しろと。教育されてきた

 

 

ダイヤ「ルビィは話した通り、昔からサッカーの才能がずば抜けていました。そして…その才能を伸ばしたきっかけ…意識の中にあったのが、この家訓です」

 

 

両親はルビィの才能を伸ばすために。全力でルビィに『勝利』の価値を教えた。

勝たなければ意味が無い。

手に入れるのは勝利。

お前は勝利をものにする才能があると

 

 

ダイヤ「ルビィがサッカーにおいて。負けず嫌い…そして性格が一変するのはそのためです」

 

梨子「別人、みたいよね」

 

英玲奈「勝利への執着心…か。その勝利のハードルが、日本のエースストライカーという立場でさらに高くなったんだな」

 

ダイヤ「その通りです」

 

 

エースストライカーは絶対に点を決めなければいけない。これは誰も言ったことはないが、ルビィはそう解釈した。

エースストライカーとして、日本に、仲間に勝利を届けるため。負けられない戦いが続き、そのプレッシャーは果てしないものになっていた。

 

そして、

 

 

 

ダイヤ「ルビィはフラムさんとの勝負に。全力を出して負けた」

 

日本ベンチ「「………」」

 

ダイヤ「ルビィは勝利を得られなかった。エースストライカーとしての役目を果たせなかった…そして、もう1つ」

 

 

 

 

日本代表に決定的な事実を叩きつけた

 

 

 

 

美奈「今の日本では、"イジゲンザハンド"を破ることは出来ない」

 

曜「…美奈さん」

 

真恋「日本の切り札でも破れない…ならばどの技も通用しない。ルビィちゃんが負けるということは、そういう意味なのよ」

 

曜「そんな…!ルビィちゃんにそんな大きな責任を!?」

 

真恋「代表になる、ということはそれぐらいの覚悟が必要なのよ。ルビィちゃんは、それを受け入れて10番のユニフォームを着た」

 

曜「…っっ!!」

 

善子「だとしても、1人で抱え込みすぎよ…」

 

ことり「うん…ことりたちにも出来ることがあったかも、」

 

真姫「……私のせいよ」

 

凛「真姫ちゃん何を言うにゃ!?」

 

 

あの時、僅かに…ほんの少しだけルビィが自分に弱いところを見せた。あの時のあれは、ルビィのSOSだったのかもしれない。だとしたら、追求せず、何もしなかった自分が悪い。唯一ルビィの精神的不安を知っていた真姫。

何が身体サポーターだ。体のケアだけで、心のケアは全く出来ていなかった。薄っぺらだけを見ていた自分…ルビィにも、みんなにも申し訳なかった

 

 

ダイヤ「やめてください。真姫さん」

 

真姫「でも、」

 

ダイヤ「ここにいる全員、真姫さんが悪いなど思っていませんわ。ルビィの異変に気づいていなかったのは…全員ですわ」

 

真姫「…」

 

海未「だとしても、疑問があります」

 

ダイヤ「…!」

 

海未「ルビィは負けず嫌い。それは全員が知っていること、なら尚更…今のルビィの状態は…少し疑問が残ります」

 

 

落ち込みすぎだ。と海未は言いたいのだろう。確かに大事な場面。切り札を決めきれなかったルビィだが、ならば、次は絶対に決める。別の作戦で決める。と勝利のために次のことを考えるはず…

しかし、あの絶望しきったルビィにその闘志は無いように見える。

おかしい、あそこまですぐに崩れるルビィではないと

 

 

真姫「"最後の柱"…この言葉が気になるわ」

 

海未「最後…"ラストリゾート"は最後の柱」

 

花陽「気持ちを維持できる最強の切り札…ってことじゃないかな?」

 

善子「…もっと、」

 

花陽「!」

 

善子「もっと深い意味な気がするわ。前にも、似たようなことがあったけど…私たちが思っていた以上に、深い問題だった」

 

ことり「ヨハネちゃん…」

 

 

そんな中、ベンチメンバー全員の意識をフィールドに戻す怒号がーーーー

 

 

理亞「ルビィ!!!!!!!!」

 

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

 

ルビィ「理亞、ちゃん…」

 

理亞「あんた…毎回毎回なんなのよ…」ワナワナ

 

聖良「り、理亞!落ち着いてください…」

 

理亞「こんな弱いエースストライカーに、私は負けたつもりはない!!!!」

 

ルビィ「…!」

 

理亞「ハァハァ……」

 

 

凛「今、エースストライカー…負けたって」

 

海未「あの理亞が負けを認めた?」

 

 

理亞「いい!?ルビィは勝っても負けても、うちのエースストライカーなの!!そんな弱々しくしてると、チームの雰囲気が最悪になるのよ!!日本は弱く見られるのよ!!!」ガシッ

 

ルビィ「うぐっ」

 

 

ルビィの服をつかみ、自分の怒りをぶつける理亞

 

 

理亞「ルビィは…私の目標なのよ。いつか私が日本のエースストライカーになる。そんな目標が…こんなへなちょこだなんて…笑っちゃうわ」

 

ルビィ「ハァハァ…へなちょこ、ね」

 

理亞「すぐに立ちなさいよチビ。へなちょこ。負けたんなら勝つまで何度も撃ち続けなさいよ」

 

ルビィ「……」

 

理亞「強いままでいなさいよ…私の目標」

 

ルビィ「ハァハァ……」

 

ルビィ「……」

 

 

ルビィは立ち上がった。顔は真っ青のまま。そのままプレー続行は不安でしかないが…

 

 

ルビィ「…理亞ちゃんだってチビじゃん」ボソッ

 

理亞「なあっ!?うるさいわね!!あんたの方がチビよ!チービ!」

 

ルビィ「」カチン

 

 

穂乃果「うわわ…また始まったよ」

 

にこ「ま、ルビィが立ち上がったしいいんじゃない?とりあえず、私たちは今ある壁のことを考えないと」

 

ツバサ「そうね…どうしましょうか」

 

千歌「"ラストリゾート"を止める技、それを破るシュート。それを使わなきゃ、私たちは勝てない」

 

 

 

今まで、こんな絶望的な壁は見たことがないかった。切り札をも防ぐフラムの技。

あれを崩すことが、この試合の勝利の鍵

 

 

理亞「ーー!!ー!?……!!!!」

 

ルビィ「!!?ーーー!?ーー!!!!」

 

 

ルビィの様子には不安が残るが、何とか先に繋いでくれた理亞。形がどうあれ感謝だ。

日本の命はまだ繋がっている

 

 

理亞、ルビィ「チーーービ!!!!!!」

 

 

日本が負けたかどうかは、まだまだ分からない

 

日本 0-1 イタリア

 

 

 





86話のまとめ

・黒澤家家訓により『勝利』を人一倍に意識するルビィ
・日本代表のエースストライカーになることで『勝利』のハードルが上がる
・代表のエースストライカーの『勝利』はシュートを絶対に決めると考えるルビィ。そんなルビィの最強シュートがついに負ける
・『勝利』を得られなかった。そして"ラストリゾート"でも決められないのなら、ほかのシュートでも決められないという、メンバーに絶望感を味あわせてしまった。この2つの責任でルビィの精神が不安定に
・しかし、あの負けず嫌いのルビィがそう簡単に落ち込むのか?海未は疑問に思う
・ラストリゾートは『最後の柱』という言葉に深い意味があるのでは?
・メンバーは『最後の柱』の本当の意味を理解していない


こんな感じでしょうか?まだ分かりにくい点がありましたら、感想でガンガン質問してもらって!もう、ルビィちゃんは準主人公にしましょう…


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第3章 87話 「イタリア戦 "想いは溢れ、尖る"」


皆さんどうも!深夜の投稿ルビィちゃんキャンディーです!ご感想をたくさん貰えてモチベが上がりまくったので書き上がりました!

今回のお話で前半は終了です。かなり濃い内容なので心して!




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ルビィの『勝利』への執着心、それがルビィを苦しめていたことを知った日本代表メンバー。しかし、代表になった時点でその苦しさからは避けられない。『最後の柱』など、気になる部分はあるも、試合は続く

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『イタリアのゴールキックから試合再開です!!』

 

 

ルビィ「…」

 

 

初めて止められた。"ラストリゾート"を

 

 

ルビィ「イジゲンザハンド、か」

 

 

切り札を初めて止められ、動揺しすぎた。

胃が締め付けられる感覚。吐き気。目眩で立つことは愚か、意識を保つことさえ難しかったが…

理亞が檄を飛ばしてくれたことにより、少し楽になった。何もしてくれなかったらどうなっていたか…

 

 

ルビィ(落ち着け…まだ負けていない。試合終了まで勝負は続くんだ。それまでに攻略法を見つければいい)

 

 

ルビィは心の中で呪文のように独り言を続ける。こうしていないと落ち着かない。今にも精神が崩れそうだ…だが、まだ試合どころか前半さえも終わっていない

 

 

千歌「…」

 

千歌(ルビィちゃん、あの時と同じ顔をしてる…)

 

 

全国大会で"ATP"を発動できず、焦りから自分を見失っていた頃の。あの頃のルビィと同じ顔だ。悪い予感しかしない

 

 

善子「そもそも。"ラストリゾート"が外させられるっておかしくない?」

 

海未「…確かに」

 

 

"ラストリゾート"は触れたものを強力な衝撃で吹き飛ばす、『触ってはいけない技』として名を広めていた。

"イジゲンザハンド"のバリアも、ボールが触れた瞬間に衝撃で破壊されるものだと思っていた。しかし、結果はこの通り。破壊どころかヒビさえ入らなかった

 

 

海未「ボールはバリアに触れていました…破壊されないほどの強度?」

 

真恋「…衝撃も流したのよ」

 

ダイヤ「流す?」

 

真恋「あのバリア…球体が回転するようにオーラを流動させて、"ラストリゾート"の衝撃やパワーをも全て逃がしてしまっているのよ」

 

海未「だから普通にぶつかっても、いつもの衝撃を与えられない…」

 

凛「そんなの反則にゃ!!」

 

真恋「考えたわね…ただのバリアじゃ、簡単に破壊されるわ。でも衝撃共々受け流してしまえば無敵よ」

 

花陽「そんな…」

 

曜「みんな、どうやってあの技を攻略するだろう…」

 

 

ピーー!!!!

 

 

ベンチメンバー「「!!!!」」

 

 

A『おおっと!!これは矢澤にこのナイスプレー!』

 

にこ「ふふん♪コーナー貰い!」

 

穂乃果「ナイスだよにこちゃん!」

 

千歌「すごい…3人に囲まれながらもチャンスを!!」

 

 

相手からボールを奪うも、イタリアのDFに追い込まれ潰されそうになったにこ。

咄嗟の判断でボールを相手に当て、コーナーキックのチャンスを作ったのである

 

 

英玲奈「話すのはいいが試合は見た方がいい。今のにこのプレーは素晴らしかったぞ」

 

凛「またなんかすごい動きしてチャンス作ったんでしょ?」

 

曜「適当だね…」

 

 

 

A『さあ、このチャンスでコーナーを蹴るのは!?』

 

 

ツバサ「行くわよ」

 

 

A『綺羅ツバサ選手!!いったい誰を狙ってくるのか!?』

 

 

ピーー!!!!

 

A『さあ!どこに蹴る!?』

 

 

ツバサ「…」

 

 

コーナーキックとは、言うならばサッカーで得点数の一番多いセットプレーである。

味方選手は相手ゴール前で今か今かと待ち構え、来たる得点の大チャンスをその頭で押し込む

 

 

ツバサ「っっ!!」バッ

 

アリーチェ「あの構えって…」

 

ツバサ「はあぁぁっ!!!!」バシュッ

 

イタリア「「「!!!!!!」」」

 

 

A『おおっと!?綺羅ツバサのキックはゴール前から大きく逸れてしまったぞ!?これはミスキックか??』

 

 

フィレア「ツバサがミスキック…?そんなことが?」

 

鞠莉(ボールにオーラが込められている?)

 

 

ツバサが蹴ったボールには、彗星の如く水色のオーラが…見覚えのある…確かあれは、流星ブレー……

 

 

レヴィン『いや、これはミスキックではないですよ!?』

 

 

 

月「作戦通りだね…!!」バッ

 

フィレア「月!?」

 

アンジェロ「いったい何を!?」

 

月「ー ザ・エクスプロージョン ー!!」ドガアァン!

 

 

A『これは!?誰もいなかったスペースに渡辺月!!シュートで綺羅ツバサに送り返します!!』

 

レヴィン『最初からこうするつもりだったんですね』

 

 

イタリアはツバサが蹴る、という時点で月を抑えるべきだった。いや、それ以前にまさかコーナーキックから必殺技を開始するとは…

絶対に邪魔されない、イタリアの盲点。そして日本のチャンス

 

 

ツバサ、月「ー コズミックブラスター ー!!」

 

 

A『出たあぁぁ!!!!綺羅ツバサと渡辺月の超高火力シュート!!』

 

 

ツバサ「このシュートは外せられるかしら?」

 

フラム「あなたたちの切り札を止めた。言うまでもないわ」

 

フラム「ー イジゲンザハンド ー!!」

 

 

再び発動したドーム状のバリア。

ボールはその表面に抗うことなく、滑るようにゴールの裏へと飛んでいく

 

 

月「っっ…やっぱりダメか…!!」

 

 

A『またしてもゴールを阻止!!"ラストリゾート"に続き、"コズミックブラスター"をも外させました!!』

 

 

にこ「どうするの…?前半もそんなに時間はないわよ」

 

理亞「…」

 

 

鞠莉「フラム!こっちよ!」

 

 

にこ「…!!ひとまず戻るわよ」

 

 

A『イタリアのゴールキックからリスタート。日本は矢澤にこの指示ですぐに戻ります!!』

 

 

鞠莉「ー シャイニーフェザー ー!!」

 

千歌「鞠莉ちゃんのドリブル技…!!」

 

 

オーラで作った羽を広げ、空へと飛び立った鞠莉。かなりの高さ。そう簡単には手は出せない

 

 

鞠莉「畳み掛けるのよ!!」パス

 

フィレア「了解!」

 

 

果南「フィレアたちが来るよ!ディフェンスしっかり!」

 

希「ウチに任せといて!」ビュン

 

 

A『ここでDF 東條希が仕掛けます!!得意の瞬間移動ディフェンスか!?』

 

 

フィレア(あれが噂の…)

 

希「ー バニシングカット ー」ビュン

 

フィレア「速い!?」

 

 

千歌「希さんが奪った!!」

 

月「ナイスだよ!そのまま前へ!!」

 

希「分かっt…「貰うね」

 

希「!!」

 

 

カズハ「油断大敵だよ」

 

 

A『カズハ選手が来ていたぁぁ!!フィレア選手の後ろで様子を伺っていたように見えましたが、一瞬の隙でボールを取り返します!』

 

 

希「っっ!!抜いても奪っても狙われる…」

 

晴夏「まずいです…!!突破されます!」

 

 

和葉を直接抜かさなければ、確実にパスやドリブルを狙われるこの試合。1人抜いてもその次のディフェンスがすぐに…まるでイギリスのディフェンスを相手しているようであった

 

 

カズハ「前半終わる前に…2点目をもらおうかな!!」

 

にこ「私に任せなさい…!!」

 

カズハ「!」

 

果南「にこ…!!」

 

 

何とか間に合ったにこ。希が足止めしていなかったら絶対に間に合わなかった。

すぐに息を整えようとするにこ。それをまるで待っているかのような和葉。何故?理由は簡単だ

 

 

カズハ「最高の状態のにこちゃんを抜く」

 

にこ「言ってくれるじゃない…やってみなさいよ」

 

 

会場にいる全ての人が、この1対1に。

今から始まろうとしている1戦に注目していた。両者とも異次元の実力をもつプレイヤー。先程はにこの勝利だったが今度は分からない

 

 

先に動いたのはーーー

 

 

 

カズハ「っっ!!」バッ

 

にこ(和葉から来た…!!)

 

 

最も完成されたプレイヤー…言うだけのことはある。にこは和葉のドリブルコントロールを見て思った

 

 

にこ(だけど取れるっっ!!!!)

 

 

だが、負けるかどうかは別の話。

にこは完全に和葉の動きを捉えていた

 

 

曜「読んでる…行ける!!」

 

真姫「またにこちゃんの勝ちね!」

 

 

 

 

 

動きを完全に、捉えていた

 

 

 

カズハ「と、思わせるのもテクニックのひとつ」ギュン!

 

にこ「」スカッ

 

にこ「!!」

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

にこが抜かされた?すれ違う2人。にこの足はボールを捕らえることなく。

急加速した和葉がそのまま突き進む

 

 

にこ(スピードがいっきに上がった…!?まだまだ全力じゃなかったの!?でも、)

 

にこ「まだよ!!」グワーッ!

 

カズハ「まだ来る!?」

 

 

足を出し、何とかボールに触ろうとする。奪えなくても時間を稼ぐ。つま先でも触れば、さすがの和葉もバランスを……

 

 

カズハ「おりゃっ!」バッ

 

にこ「ぐぬっ!!?」スカッ

 

にこ(ヒールリフトですって!!??)

 

 

咄嗟に使う技じゃないだろ!?にこは心の中で叫んだ

 

 

A『抜いたぁぁ!!今度は矢澤にこをカズハ選手が突破!!さっきの仕返しと言わんばかりに、テクニックで見せつけます!!』

 

レヴィン『ヒールリフトでボールを空中へ…このまま来るんじゃないですか?』

 

 

カズハ「もう一度行くよっっ!!」グワーッ!

 

にこ「やばっ!?撃たれる!!」

 

 

ヒールリフトは踵で自分の背後からボールを浮かすテクニック技のひとつ。先程も言ったが、咄嗟に使うような技では無い。

まるで、にこが相手だからこそ使ったかのような。和葉の挑戦的感情が伝わってきた。

そして、ボールを空中に上げたということは…そう、

 

 

カズハ「でりゃあぁっっ!!」ドガアァン!

 

 

王者の一撃が、再び

 

 

カズハ「ー ブレイブショット ー!!」

 

 

穂乃果「果南ちゃんっっ!!!!」

 

果南「やばっ!?あれはまだ止められない!!!!」

 

 

和葉の"ブレイブショット"もまた、"ラストリゾート"と同じく。その壮絶な衝撃により、触るとすぐに弾かれてしまう。

果南は現時点ではそのようなシュートに手だしできないでいた

 

 

晴夏「ここで2点目はヤバイよ!?」

 

ルビィ「今から間に合うかな…」

 

 

 

 

 

聖良「私に任せてください!!!」

 

 

 

 

日本「「「!!!!!!??」」」

 

 

和葉「!!」

 

理亞「姉様!?」

 

果南「聖良!!危ないよ!?」

 

 

A『おおっと!?シュートコースに鹿角聖良が立ちはだかります!!あのシュートを止めるつもりなのか!?』

 

 

聖良「試すにはもってこいの威力です…!!」

 

果南「試す……?聖良、まさか!?」

 

 

パキパキパキパキ!!!!

 

カズハ「!!」

 

 

和葉はすぐに気づいた。聖良のただならぬオーラの高まりを。並大抵のモノでは無い…そう。火力で言うならば"ATP"と同等だ。

 

聖良の肌には氷が伝う。そして広がっていく冷気。周りの気温はドンドン下がり続ける

 

 

聖良「今の"スノーエンジェル"では威力不足です…ですが、これは違う」

 

 

理亞に手伝ってもらいながら、何とか完成させた必殺技。火力にだけ意識を向けた聖良自身、今持てる最高火力

 

 

聖良「威力、そのもの。全てを凍らせます」パキパキ!

 

 

 

 

 

聖良「ー アイスエイジ ー」

 

 

ガキイィィィィィィイン!!!!!!!!

 

 

 

イタリア、日本「「「!!!!??」」」

 

サエ「!!」

 

ラファエレ「うっそぉ……」

 

フィレア「ブレイブショットを…止めた、いや、凍らせた??」

 

カズハ「マジで??」

 

 

聖良「ハァハァ…キツい…です、ね」ガクッ

 

 

A『なんということでしょうか!?鹿角聖良の新必殺技が、あの"ブレイブショット"を完全に凍らせてしまいました!!!信じられません!!』

 

レヴィン『聖良選手の全冷気をボールにぶつけることにより、完全に芯まで凍らせましたね…』

 

 

聖良「まだ…1回が限度、ハァハァ…ですが、止めました」

 

果南「…聖良、助かったよ」

 

 

その威力、言うまでもないだろう。聖良が使った渾身の技。日本のピンチを回避するために、DFとしての役目を果たした聖良。

まだ立つことは出来ないが、このプレーが日本のこの後を大きく左右するのは、確実であった

 

 

ルビィ「話には聞いてたけど…すごい威力だね、」

 

理亞「…あれは体力を根こそぎ持っていくの。"ATP"とかの比じゃない。姉様は、それだけの覚悟を持って…」

 

 

A『さあ、おそらく記録上初めてとなる"ブレイブショット"が止められた瞬間!!そのままボールを前へ送り、日本ボールになります!』

 

レヴィン『前半も残り僅かです。日本は決めきりたいところ』

 

 

鞠莉「このまま守りきる!点は取らせないわよ!!」

 

フラム「撃ってきたとしても私が全て止めてあげるわ!!かかってきなさい!」

 

 

千歌「っっ…どうすれば"イジゲンザハンド"を破れるの…?」

 

月「イタリアが守りの体制に入った…かなり厳しいよ」

 

 

奪って攻めても、越えられない。未だに突破口が思いつかない"イジゲンザハンド"。

どんなシュートも流されるのではお手上げだ。時間が足りない、足りなすぎる。

そう日本の選手が思い始めた時だった

 

 

聖良「理亞」

 

理亞「姉様!?動いて大丈夫なの!?」

 

聖良「私は大丈夫です。それよりも、"イジゲンザハンド"。…あの技なら破れるかもしれません」

 

穂乃果「あの技?何それ?」

 

理亞「!!?あれは…ダメ!!だって、姉様さっき"アイスエイジ"を使ったばかり…そんなの無謀すぎる!!」

 

聖良「無謀でもやらなければ勝てません!!お願いします…理亞」

 

理亞「ダメ」

 

聖良「理亞、お願いします」

 

 

聖良が引き下がらない。

ここまで感情的になるのは珍しい。それほどまでに可能性がある技。それは、断固拒否する理亞にも分かっていた

 

 

理亞「……危険だと思ったら、すぐにやめる」

 

聖良「…はい!!」

 

千歌「あ、あの〜聖良さん?あの技って?」

 

 

一番気になっていたこと。二人の会話の中にあったワード。『イジゲンザハンドを破れるかもしれない』今、日本が一番欲していた言葉だった

 

 

聖良「ひとつだけ…イジゲンザハンドを破る策があります」

 

「「!!!!!!」」

 

聖良「ですが、少しだけ時間。隙ができます…皆さんの協力が必要です」

 

穂乃果「それなら任せて!!」

 

聖良「穂乃果さん…!」

 

にこ「私たちでイタリアを抑えるわ。その間に聖良と理亞は"その技"を使いなさい」

 

ツバサ「出来る限りの援護をするわ。残り時間、あなたたちに掛ける」

 

聖良「理亞」

 

理亞「…姉様」

 

聖良、理亞「やりましょう(やろう)!!」

 

 

A『さあ、日本がボールをイタリア陣内に持ち込む…ん!?DFの鹿角聖良が攻撃に加わっています!!』

 

 

ディアナ「勝ち急いだわね!!」ズザーッ

 

にこ「こっちよ!」

 

聖良「にこさん!」パス

 

ディアナ「!?」

 

 

鞠莉(日本の動きが変わった…?)

 

鞠莉「ディフェンス入って!!」

 

 

月「悪いけど行かせないよ」

アリーチェ「っっ!!どいてください!」

 

鞠莉「!?」

 

千歌「あと少し…」

マルコ「鞠莉さん!ディフェンスに行けません!!」

 

鞠莉(FW選手が援護!?)

 

エルマ「貰ったーー

にこ「頼んだわよっっ!!」パス

 

 

聖良「ありがとうございます!!」

 

 

A『鹿角聖良が止まらない!!ゴールは確実に近づいている!!』

 

 

サエ「フィレア、カズハ!!止めなさい!!」

 

 

フィレア「ゾーンで間に合わせ…」

ツバサ「残念。ここまでよ」

フィレア「なっ!?」

 

 

カズハ「…何をするつもり?」

ルビィ「見てればわかります」

穂乃果「みっちゃんは私たちが止める」

 

 

レヴィン『イタリアの選手たちが完全に抑えられていますね。ボールを持ち込むのは鹿角姉妹??』

 

A『前半終了間際、サニデイジャパンの怒涛の展開!!いったい何を狙っているのか!?』

 

 

フラム「来い…!!止めてあげるよ!!」

 

聖良「…どうでしょうか」

 

フラム「!?」

 

理亞「この技は、普通の技とは違う」

 

 

この技は姉妹の想いを込めるだけ込めたもの

 

 

 

聖良「うぅぅるあぁぁぁぁ!!!!」パキパキ!!

 

日本、イタリア「「「!!!!??」」」

 

 

フロイ「"アイスエイジ"を発動したよ!?」

 

絵里「聖良が、ボールを凍らせたわね」

 

 

 

連続で発動は無茶に近い。そんな"アイスエイジ"を発動させた聖良。上空でボールを冷気で包み、氷山の如く、周りごと全てを凍らせる

 

 

聖良「ハァハァ…ぐっっ!?いぎまずよ!!理亞っっ!!!!」バッ

 

理亞「来い!!!!」

 

聖良「はあぁぁぁっっ!!!!」ドガアァン!

 

 

ダイヤ「あの状態でボールを蹴る!?」

 

花陽「すごいパワーです!!」

 

 

聖良は満身創痍。

気絶するかしないかの境目でも気合いで。ボールを蹴った。クールで冷静な聖良とはまるで別人。覇気で体を動かす鬼に近かった

 

 

理亞「ー Awaken the power ー!!」

 

 

横を流れる聖良のシュートに加速で追いつく理亞。このボールには姉様の全てが込められている。冷たいが熱い。想いが熱気として伝わってくる

 

 

理亞「姉様の想いっっ!!!!」バッ

 

 

"ドロップアウト"の赤黒いオーラを足に込め、一撃。ボールに蹴り込む。

そこから生まれるのは最強の矛

 

 

理亞「受け取ったあぁぁぁっっ!!!!」ドガアァン!

 

 

 

 

 

放て。冷たくも熱い、神のごとく槍を

 

 

 

 

 

聖良、理亞「ー 氷結のグングニル ー!!!!」

 

 

 

日本、イタリア「「「!!!!!!」」」

 

フラム「!!?確かに…あの威力ヤバい!!」

 

鞠莉「フラム!!絶対に止めるのよ!!」

 

 

選手全員が見た瞬間に確かに感じた。

……あのシュートは何かが違う

 

 

フラム「ー イジゲンザハンド ー!!」

 

 

 

 

その違和感の正体はーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーバリイィィィィィィン!!!!

 

 

 

フラム「」

 

鞠莉「」

 

イタリア「「「」」」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

なす術なく。ゴールに突き刺さり、揺れる

 

 

 

ワアァァァァァァァ!!!!!!

 

 

 

砕けた槍はまるで雪のように。結晶のように。

イタリアゴールを舞った

 

 

 

日本 1-1 イタリア

 

 

 





アイスエイジ
聖良さんの新必殺技でオリジナル技です!某海賊マンガの元大将の技を想像してもらえるとわかりやすいと思います!作中でもあったように、体力をいっきに消費するので連発するような技ではありません。言うならば、ディフェンスの切り札です

氷結のグングニル
かなり人気の高い技、吹雪兄弟の合体技です。聖良さんの『アイスエイジ』理亞ちゃんの『ATP』と『ドロップアウト』を混ぜたトンデモシュート技になっています。何故、ラストリゾートでも壊せなかったイジゲンザハンドを瞬殺出来たのか…それはまた次回



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第3章 88話 「イタリア戦 "カテナチオ"」

皆さんどうも!三者面談終わってげっそり疲れたルビィちゃんキャンディーです!センターまであと1ヶ月…後悔しない程度に頑張りたいですね…

今回は原作でも有名な必殺技の登場です!




 

 

前回の、輝こうサッカーで!

"ラストリゾート"に続き"コズミックブラスター"までもが、"イジゲンザハンド"に適わず苦戦する日本。そんな中で失点の危機を回避したのは聖良。シュートを放ったのも聖良、そして理亞だった。2人の新必殺技『氷結のグングニル』はバリアをいとも簡単に破壊。イタリアゴールに突き刺さったのであった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

A『ここで前半終了!!鹿角姉妹の劇的ゴールで1-1の同点です!』

 

 

ー 日本控え室 ー

 

美奈「聖良ちゃん。本当によくやってくれたわ。ゆっくり休んでね」

 

聖良「ことりさん。あとはお願いします」

 

ことり「聖良さんの分も頑張ります!」

 

美奈「後半はツーバックで行くわ。その後ろに交代で善子ちゃん」

 

善子「任せて。なんとか止めてみるわ」

 

にこ「気を引き締めなさいよ…引き締めていても抜かれるんだから、」

 

善子「にこさんが抜かれた時は…ちょっと信じられませんでした」

 

 

ーーとここで。美奈から前半の感想が

 

美奈「イタリア相手に同点とは…恐れ入ったわ……」

 

穂乃果「やったね!千歌ちゃん!」

 

千歌「はい!!」

 

美奈「………と、言いたいところだけど」

 

千歌、穂乃果「??」

 

美奈「本当の勝負は後半からよ」

 

「「「!!!!」」」

 

ツバサ「どういうことですか?」

 

 

美奈は説明する。小原サエがどのような監督なのかを

 

 

美奈「ヨーロッパのプロリーグでも、"指揮官"と呼ばれるぐらい、指示を大量に出す監督で有名よ」

 

果南「え…?でも、前半は…」

 

美奈「そう。ほとんど指示を出していないの」

 

真恋「予定では、司令塔である梨子ちゃんと英玲奈ちゃんが前半でイタリアの戦術をベンチから分析する…つもりだったんだけど、」

 

美奈「見破られたわね」

 

梨子「そ、そんな…」

 

英玲奈「だから前半で分析されないように戦術を使ってこなかったのか…」

 

 

後半でいっきに勝負を仕掛けに来ると。

美奈たちはそう考えていた。あのスペインを大差で破ったのだ。そこらへんのチームとは格が違うことは目に見えていた

 

 

美奈「ルビィちゃんと理亞ちゃんは…まだ行ける?」

 

理亞「行けます」

 

ルビィ「決めるまで下がる気はないです」

 

美奈「分かったわ。じゃあ、海未ちゃん。様子を見て交代するからアップよろしくね」

 

海未「分かりました」

 

美奈「…みんな。決勝トーナメントは目の前まで来ているわ。あともう少し、頑張って」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

 

ー イタリア控え室 ー

 

カズハ「ふぅ…思ったよりもタフだね。日本は」

 

フラム「うぅ…ごめんなさい、決められちゃいました…」

 

鞠莉「大丈夫よフラム。おそらく、"氷結のグングニル"は後半は撃ってこない。落ち着いてプレーすればいいの」

 

フラム「マリさん…」

 

サエ「鞠莉の言う通りデス」

 

カズハ「監督!」

 

サエ「まさか、"イジゲンザハンド"のオーラの流動そのものを凍らせるとは…さすがに想定外でした」

 

 

サエは見抜いていた。"氷結のグングニル"が"イジゲンザハンド"を破った理由を。

オーラを流れるように動かし、ボール・衝撃そのものを流してしまうフラムの"イジゲンザハンド"。ただのバリアならば簡単に破られてしまうが…今回、そこを付かれた

 

 

フィレア「"イジゲンザハンド"を、凍らせたんだよ。一瞬で」

 

アンジェロ「"アイスエイジ"!!」

 

フィレア「そう。キャプテンのシュートをも凍らせるあのブロック技…そのオーラが込められた槍。さすがの"イジゲンザハンド"も耐えられなかったみたい」

 

 

流れるオーラが凍らされたバリアはただのバリアへ。そこへ突き刺さるグングニル。先程も言ったが、ただのバリアならば簡単に破られてしまう

 

 

サエ「狙ったかどうかは分かりませんが、アッパレでした。しかし、ただそれだけのこと」

 

イタリア「「……」」

 

サエ「後半は予定通り全力で。戦術フル活用で日本を倒しなさい。日本はしぶといですから、そう簡単には折れませんよ」

 

イタリア「「「はい!!」」」

 

サエ「優勝するのは私たちです。そのためにも勝利。それ以外は認めません」

 

 

 

 

 

ー 観客席 ー

 

フロイ「面白い試合だね。エリー」

 

絵里「えぇ。問題は後半、ギアチェンジしたイタリアに日本がついていけるかどうか…」

 

フロイ「ついていけたとしても。"氷結のグングニル"のような特殊なシュートを日本は持っていない。追加点は厳しいよ」

 

絵里「そこね…」

 

絵里(ルビィちゃんはどうするのかしら…)

 

 

 

 

 

A『ハーフタイム終了!!まもなく後半戦が始まります!!』

 

A『サニデイジャパンの流れが続くのか!?それともオルフェウスが巻き返すのか!?』

 

レヴィン『…引き分けでは、サニデイジャパンは自力で決勝トーナメントへは進むことができません。全力で勝ちに来るでしょう』

 

A『勝負の行方は、まだまだ分かりません!!』

 

 

サニデイジャパン

 

FW……鹿角理亞、高坂穂乃果、黒澤ルビィ

 

MF………渡辺月、高海千歌☆、綺羅ツバサ

 

MF……………………矢澤にこ

 

DF……………東條希…………南ことり

 

DF……………………津島善子

 

GK……………………松浦果南

 

1-2-1-3-3

 

 

A『日本はDFに南ことりと津島善子を投入するようです!』

 

レヴィン『カズハ選手やフィレア選手の動きに共鳴しきれるか…善子選手楽しみですね』

 

 

 

千歌「…」

 

穂乃果「…千歌ちゃん、大丈夫?顔色がよくないけど…」

 

千歌「だ、大丈夫です!緊張してるのかな…ははは…」

 

穂乃果「そっか、」

 

千歌「…」ズキズキ

 

 

 

A『両チーム、ポジションにつきました!後半戦、サニデイジャパンボールから開始です!』

 

 

ピーー!!!!

 

穂乃果「にこちゃん!」パス

 

 

A『矢澤にこにボールを渡します!イタリアはボールを奪うのは難しいか!?』

 

 

にこ「ガンガン攻めるわよ…!」

 

 

ドリブルなどのボール運びで絶対の信頼を得ているにこ。躊躇うことないそのドリブルは、日本の選手たちの攻めの積極性を促す

 

 

にこ「勝負よ!フィレア!」

 

フィレア「…」

 

にこ(ディフェンスに来ない…?前半と動きが違う)

 

 

このことに気づいたのは、にこだけではなかった

 

 

穂乃果「ポジショニングも変わってる…」

 

ツバサ「気になるわね。なにか仕掛けてくるのかも」

 

にこ(迷っていても仕方ないわね)

 

にこ「ルビィ!」パス

 

 

A『鋭いパスが出ました!ボールはエースストライカー、黒澤ルビィの元へ!!』

 

 

フィレア「今だ…!!」バッ

 

ルビィ「!?」

 

にこ「フィレアがルビィを!?」

 

 

先程までにこのディフェンスを躊躇っていたフィレア。しかし、ボールがルビィに渡った瞬間。打って変わって1対1の激しいディフェンスを繰り広げていた

 

 

ルビィ「しつこい…!!」

 

フィレア「まだまだ!」

 

 

A『素晴らしい戦いです!!両者とも1歩も譲りません!!』

 

レヴィン『…妙ですね』

 

A『レヴィンさん?』

 

レヴィン『フィレア選手の動きが…いつもと違いますね、』

 

 

ルビィ(何なの…この動き!?)

 

フィレア「!!」

 

 

不意をつかれるターン、体をぶつけずにディフェンスするポジショニング。

違う。明らかにフィレアは前半とプレイスタイルを変えている。まるでボールを奪う以外の…別の何かを気にしているようだ

 

 

理亞「いつまで苦戦してるの!?パス出して!」

 

ルビィ「うん、理亞ちゃーー「させないよ!!」

 

ルビィ「!?」

 

 

理亞「ちょっ!?」

 

ダンテ「!!」

 

 

理亞を抑えるダンテ。

理亞だけではない、ルビィのフォローに行こうとした選手は、全員抑えられている

 

 

曜「何あれ!?ルビィちゃんが一瞬で囲まれた!?」

 

英玲奈「ルビィが反応出来ないなんて…そんなディフェンスが?」

 

 

ボールを持つルビィを抑えるフィレア。

そのフィレアを中心にイタリアはディフェンスを構成していた。

パスを出すことも、ドリブルで突破することも不可能。捕まれば最後、奪われるだけの戦術

 

 

サエ「ー カテナチオカウンター ー」

 

 

フィレア「取った…!!」バッ

 

ルビィ「なっっ!?」

 

月「まずい!?今取られたら…」

 

 

フィレア「ラファエラ!!」パス

 

日本「「「!!!!??」」」

 

 

にこ「一瞬で攻撃に転じたわよ!?」

 

穂乃果「早く戻らないとっっ!!」

 

 

A『なんて素早いカウンターでしょうか!?ボールは既に日本のゴール前です!!』

 

レヴィン『これは…絶好のチャンスですよ』

 

 

千歌「これが…イタリアの本当の力」

 

 

先程のフィレアの動き…ルビィがまったく反応出来ていなかった。

動きが変わった、というのもあるが。それでも前半とはギアがまるで違う

 

 

果南「来る…!!」

 

ラファエレ「ー フリーズショット ー!!」

 

 

A『ラファエレ選手の必殺シュート!!氷を纏ったボールは簡単には捕えられないぞ!?』

 

 

果南「ー デルフィナス・トリアイナ ー」

 

ラファエレ「氷を纏ってる!!止めようとしても滑るからね…!」

 

果南「氷か…なら、」

 

 

ドゴオォォオン!!!!!!

 

ラファエレ「!?」

 

イタリア「「「!!!!」」」

 

 

果南「何度も受けてきたから慣れてるよ」シュウゥゥ…

 

 

A『止めました!!松浦果南、氷を纏ったシュートを取りこぼすことなく、確実に捕らえました!!』

 

レヴィン『おそらく、理亞選手のシュートを何度も受け止めてきたからこそ。氷のシュートには慣れているのかもしれません』

 

 

穂乃果「た、助かった…」

 

月「でも…今の流れは前半とはレベルがまったく違う。本気で対策していかないと、いつかやられるよ」

 

穂乃果「そうだね…それにあの、"カテナチオカウンター"。あれは厄介だよ」

 

 

"カテナチオカウンター"

鍵を意味する、イタリアの古い戦術である。

1対1の勝負をしていたはずが、気づけば完全に囲まれている。そこから炸裂するカウンターは超強力。

このタクティクスは中心の選手の指示やポジショニングが命となるため、精度の高いプレーが求められる

 

 

にこ「それを簡単に仕掛けてくるんだから…」

 

 

A『再び矢澤にこがボールを持った!!』

 

 

フィレア「"カテナチオカウンター"だ!!」

 

イタリア「「おう!!!!」」

 

にこ「速い!?」

 

 

A『囲まれた!!矢澤にこは完全に追い詰められたか!?』

 

 

フィレア「ボールは貰う!!」バッ

 

にこ「くっ…(確かに、動きが変わってるわね)」

 

 

にことフィレア。1対1の能力的には互角に近いが、急激に変化するフィレアのディフェンスに、さすがのにこも対応が遅れる

 

 

千歌「あのにこさんでも抜けない…!?」

 

 

にこ「なめんじゃ…ないわよっっ!!」バッ

 

フィレア「!?」

 

イタリア「「!!!」」

 

 

抜いた。完全に抜いた。

苦戦はしたものの、なんとかカテナチオの軸を躱してみせたにこ

 

 

にこ「このままとっーーバシッ!

 

にこ「!?」

 

 

フィレア「さすがに強いね…でも、」

 

カズハ「1人抜いただけじゃカテナチオは突破できないよ」

 

にこ(フィレアの後ろに…和葉!?)

 

 

A『またしても奪った!!フィレア選手とカズハ選手の連携には、さすがの矢澤にこも対処しきれないか!?』

 

 

カズハ「ラファエレ!!」パス

 

 

カウンター炸裂。

ロングパスは前で待つラファエレの元へ

 

 

ラファエレ「今度こそ決める!!!」

 

善子「させないわよ」

 

ラファエレ「!!(津島善子…)」

 

 

A『カウンターを予想してか、津島善子が1人戻っていました!!ラファエレ選手との1対1

!!』

 

 

アンジェロ「津島善子って…確かに共鳴を使う…」

 

フィレア「ちょっと厄介だね、私たちもフォローに…」

 

 

ワアァァァァァァァ!!!!

 

アンジェロ、フィレア「!?」

 

 

善子「ー Deep Resonance ー」

 

ラファエレ「くそっ…!!」

 

 

曜「凄い!!いっきに奪ったよ!!」

 

海未「カウンターを仕掛けても奪い返せればまだ希望はあります!!」

 

 

"カテナチオカウンター"の中心には、フィレアやカズハがいなければいけない。

逆に言うと2人はカウンターで攻めることが出来ない。善子は飛んできたボールに対応すればいい。イタリアの戦術にしては、かなり穴が空いたような質であった

 

 

聖良「ディフェンスとしては強力なタクティクスですが、カウンターとしては攻撃力に欠ける…」

 

真恋「守りに徹するならまだしも…同点でそんなことするのは…ちょっと気になるわね」

 

美奈(サエちゃん、何を企んでるの…)

 

 

善子「カテナチオのせいで上がりきれないんでしょ!2人とも!!」

 

フィレア「言うね…まぁ、その通りなんだけど」

 

善子「千歌!」パス

 

千歌「!」

 

フィレア「"カテナチオカウンター"!!」

 

 

A『さあ、今度は高海千歌が餌食となるのか!?既に囲まれ逃げ道はありません!!』

 

 

フィレア「でりゃ!!」バッ

 

千歌(来た…!!)

 

 

千歌が持つボールを奪おうとするフィレア。

自分にはにこのようなずば抜けたドリブルセンスはない…だが、このタイミングで善子がボールを託した意図。

千歌は読み取っていた

 

 

千歌「っっ!!」クルン!

 

フィレア(ボールを奪えない!?)

 

 

"カテナチオカウンター"の時だけのためだけに使うフィレアの動き。しかし、千歌はそれに対応するかのように。ボールをキープする

 

 

フィレア「この動き…まさか、」

 

千歌「ここっっ!!!!」

 

千歌「ー ZスラッシュGX ー!!」ギュン!ギュン!

 

フィレア「っっーーー」

 

 

またしても抜かれた。そうか、あの動きは高海千歌の必殺技の動きだったのか…ルビィやにこと違うわけだ。

だが、

 

 

カズハ(必殺技の発動後は隙だらけ…!!)バッ

 

 

抜かれたとしても、それもまた作戦。

和葉はボールに足を伸ばす。絶対無敵のカテナチオ。攻略されることは決してーーー

 

 

 

ーーーギュン!!ギュン!!

 

カズハ「ぇ、」

 

イタリア「「!!!!」」

 

サエ「!!」

 

 

善子「…悪いけど、果南が氷のシュートに慣れているように」

 

 

千歌「っっ!!!!」

 

カズハ(まるでさっきの必殺技の逆再生!?)

 

 

善子「千歌も慣れてるのよ。2人以上の突破に」

 

 

千歌「ー リバースZスラッシュG2 ー!!」

 

 

A『抜いたあぁぁ!!なんと!?"カテナチオカウンター"を早くも攻略したのは、サニデイジャパンキャプテン、高海千歌!!』

 

レヴィン『フィレア選手とカズハ選手をまとめて抜き去るとは…恐れ入りました』

 

 

梨子「千歌ちゃん!すごいよ!!」

 

曜「チャンスだよ!!」

 

 

"カテナチオカウンター"で薄くなったイタリアディフェンス。人数は日本の方が多い

 

 

穂乃果「千歌ちゃん!ツバサさん!練習した"あれ"やるよ!!」

 

千歌「はい!」

 

ツバサ「任せて!」

 

 

フィレア「何をする気なんだ…」

 

カズハ「あの動き…」

 

 

穂乃果、千歌、ツバサ。3人が並ぶように走る。真ん中でボールを持つ千歌にタイミングを合わせ…3人が同時にーーー

 

 

千歌、穂乃果、ツバサ「っっ!!!!」ズバッ!

 

 

ーーー駆け抜ける

 

 

 

フロイ「!!あれって…エリーが前に話してた、」

 

絵里「えぇ。驚いたわ…」

 

 

 

千歌「行くよ!!フェニックス!!」

 

3人が駆け抜けた場所から炎が上がる。

その炎は空で膨らみ、巨大な不死鳥として生まれ変わる

 

 

A『これは!?音ノ木坂学院サッカー部が代々受け継いできた必殺技、"ザ・フェニックス"!!』

 

レヴィン『いや、待ってください!?』

 

 

ルビィ「っっ!!!!」バッ

 

 

A『黒澤ルビィがシュートの構えに入った!!これはまさか!?』

 

 

ツバサ「タイミング完璧ね…!」

 

千歌「いっけールビィちゃん!!」

 

穂乃果「これが、音ノ木坂学院サッカー部の最強シュート!!」

 

 

ルビィ「ファイナル!!!!!!」

 

千歌、穂乃果、ツバサ、ルビィ「トルネード!!!!!!」ドガアァン!!

 

 

イタリア「「「!!!!!!」」」

 

フラム「4人技…!!!」

 

 

スタジアムの空を覆い尽くす不死鳥。

イタリアゴールに迫るその炎は、強力という次元を超えていた

 

 

日本 1-1 イタリア

 

 

 




にこちゃんやルビィちゃんでも破れなかった『カテナチオカウンター』を1人で破る千歌ちゃんは…もう普通怪獣の跡影なしですね笑
地味に、千歌ちゃんなら突破できると判断した善子ちゃんも評価して欲しいポイントです。ってか共鳴でも突破できるんじゃ…



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第3章 89話 「イタリア戦 "無双の嵐"」


皆さんお久しぶりです!ルビィちゃんキャンディーです!センター試験まで残り1ヶ月。勉強漬けでちょっと病んできましたが、あと少し頑張ります!イタリア戦は年内に終わらせたいですが…どうですかね、

今回もそれなりの内容です。伏線回収なのでちょっぴり長めかと




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

後半になり、イタリアは必殺タクティクス『カテナチオカウンター』を発動してきた。しかし、日本は早くもカテナチオを攻略し、音ノ木坂学院サッカー部の最強シュートである『ファイナルトルネード』を放った

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

千歌、穂乃果、ツバサ、ルビィ「ー ファイナルトルネード ー!!」

 

フラム「4人技…!!!!」

 

 

4人で発動する必殺シュートは初めて見たフラム。見かけだけではない。威力も…伝わってくる炎の熱さでよくわかる

 

 

フラム「ー イジゲンザハンド ー!!」

 

 

ーーーだが、どんな強力なシュートでも流れるオーラには逆らえない。『氷結のグングニル』は予想外だったが、このシュートではオーラは凍らない

 

 

千歌「そんな…」

 

ツバサ「やっぱりダメね…」

 

 

A『"ファイナルトルネード"でも決まらず…!!日本に追加点を奪う道はないのか!?』

 

 

穂乃果「単純に火力が足りない…とか?」

 

ツバサ「"ファイナルトルネード"で火力が足りないのならば…今の日本ではあの技を破ることは不可能よ」

 

千歌「…まだ、何か手があるはずだよ」

 

穂乃果「千歌ちゃん…」

 

千歌「私は絶対に諦めない…!!何かあるはずなんだ…今までだって、足掻いてあがいて足掻きまくった末の勝利だもん」

 

千歌「何かある…あの技にも弱点が…」

 

ルビィ「…」

 

 

A『さあ、日本のシュートを抑えたフラム選手!ゴールキックでいっきにイタリアのチャンスへ!!』

 

 

マルコ「アンジェロ!」パス

 

アンジェロ「うん!」

 

フィレア「こっちだ!アンジェロ!」

 

理亞「フィレア・アルデナ…!」

 

フィレア「!!」

 

 

A『鹿角理亞がすかさずディフェンスに入ります!!フィレア選手はどうするのか!?』

 

 

フィレア「貴方とは…この試合がはじめましてだね」

 

理亞「勝負よ。"白き流星"」

 

 

鋭い目つきでフィレアを睨む理亞。

日本の選手たちは知っている。理亞がこのような目になる時は…本気で"狩り"にいく時だと

 

 

理亞「はあぁぁぁぁっっ!!」ググググ

 

フィレア「!!」

 

理亞「ー Awaken the power ー!!」ゴゴゴゴ

 

 

普通の状態でヨーロッパ屈指の選手に勝てるほど、自分は今強くないことは理亞自身、痛感していた。ルビィと手を組まなければこの人たちとは対等に戦えない。いや、すでに見切られているかもしれない

 

 

フィレア「なるほどね…全力の1対1か、」

 

理亞「!!」ゴゴゴゴ

 

 

雰囲気が変わった…

フィレアの目が輝き始め、周りの空気が痺れ始めた。まるで身体中に電気を浴びせられているようだ。

"ゾーン"

自分もその資質を持つ者だから分かる。この人は…本当にとんでもない

 

 

理亞「穂乃果が強いって言うことはある」ゴゴゴゴ

 

フィレア「貴方もね。鞠莉が強いって言うことはあるよ」

 

 

 

 

あんじゅ「理亞ちゃんが仕掛けたわね…」

 

花陽「勝ってほしい…けど、相手はあの"白き流星"」

 

聖良「大丈夫です…!理亞なら…」

 

 

理亞とフィレアの覇気のぶつかり合いは、試合を見守るベンチを恐ろしいほどまでに黙らせた。誰もが固唾を呑んで見守る…先に動いたのはーー

 

 

フィレア「!!」バッ!

 

理亞(来た…!!)

 

 

フィレアが突っ込んでくる。

標的はボールただ一つ。相手の動きを読み、対応し、一瞬をつく。それに限る

 

 

フィレア(反応出来るんだ…!)

 

理亞(右足、伸ばせば取れる!!!)

 

 

隙だらけじゃないか。今なら確実に届く。フィレアの足元のボール目掛けてーー足をーーー

 

 

フィレア「ーー!!」ギロッ

 

理亞(っっ!?ダメっっ!!!!)ズザーッ!

 

 

理亞は反射に近い動きで後ろへと下がる

 

 

凛「え!?なんで今取らなかったの…?絶好のチャンスだったのに…」

 

ダイヤ「…あともう少し、下がるタイミングが遅れていたら…確実に抜かれていました」

 

凛「え…」

 

 

 

理亞「ハァ…ハァ、ハァハァ」ゴゴゴゴ

 

フィレア「いい判断だね。罠って気づいた?」

 

理亞「ハァハァ…足を伸ばした瞬間、」

 

 

フィレア『ーー!!』ギロッ!

理亞『!!??』

 

隙を見せて…いや、あの状況ならばミスに近いことをしているのにも関わらず、フィレアの目は…自分と同じ、狩るものを見る目をしていた。

体が反応した。反応してくれた。もし、あれ以上前へでていたら……

 

 

フィレア「やっぱり日本はすごいよ。私たちに引けを取らない"才能"を持つ選手で溢れてるよ!」

 

理亞「ハァハァ…」ゴゴゴゴ

 

フィレア「でも、足りない」

 

理亞「足りない?」ゴゴゴゴ

 

フィレア「"才能"と"実力"は別物だよ?現にさ、ほら」

 

理亞「ハァハァ…」ゴゴゴゴ

 

フィレア「この一瞬で疲れてる。世界の頂点を争うなら、まだまだ…実力不足だよ」

 

理亞「っっ…!!」

 

 

理亞はあの一瞬で、全神経をすり減らしたと言ってもいいレベルの動きをしたのだ。それが良くも悪くも、無駄に体力を消費させてしていたのだ。

こんなキツいことを平然と…!?理亞は目の前の選手の果てしなさをその身で感じ、そして、

 

 

理亞「実力不足なのは、私が一番知ってる…!!」

 

 

自分の弱さを…痛感する

 

 

フィレア「…前半は"ATP"の速さに対応出来なかったけど、今度はそうはいかないよ」

 

フィレア「ーーー!!」グワーッ!

 

理亞(さっきよりも速いっっ!!?)

 

 

今さっき、"白き流星"との差を実感したばかりなのに…その上。まだ上があった

 

 

フィレア「どうだ!!!!」グルン!

 

理亞「っっ!?」ズルッ

 

 

フィレアのテクニックについていけなかった理亞は左足から滑り、崩れた。

だんだんと視界が斜めになる。

そうか、私、転ぶのか。

フィレアに転ばされたと言ってもいい。相手に…ならなかった。

悔しい。横目でフィレアを見る。既に抜き去る瞬間だった。

周りには動揺する日本の選手が。数秒後、地面に倒れた私の醜態は、全世界に晒されることになる。惨めったらありゃしない

 

 

しかし、

 

 

理亞「」

 

 

動揺するどころか、変わらぬ表情の選手が1人

 

 

聖良(理亞っっっっ!!!!)

 

理亞(ねえ…さ……)

 

聖良(思い出してください!!あの練習を!!あなたの努力を!!)

 

理亞「っっ!!!!」

 

 

 

 

――――――――――――――

―――――――――

――――

 

 

 

白咲『うんうん…!それで、二人はこれからどこか行くの?』

 

 

中国戦が終わり、サニデイジャパンがFFI本戦に駒を進めた翌日。メンバーはそれぞれの高校に戻り、決意表明…そして激励を受けていた

 

 

聖良『はい、理亞が監督から指令を出されてて…』

 

理亞『ホントに謎』

 

 

日本を発つまで残り1週間。監督からは休むもよし、練習するのもよし、遊びに行くのもよしと言われていた。要するに自由行動。

しかし、私たち鹿角姉妹、主に鹿角理亞に関しては例外。美奈監督からこの1週間の過ごし方について、指示を出されていたのだった

 

 

白咲『指令?どこに?』

 

聖良『それは…』

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

それから数時間後。私たちはとある場所に来ていた

 

 

聖良『理亞。そちらにある棒を持ってください』

 

理亞『……姉様、なんで私たちこんなことを?』

 

聖良『…私には何とも、』

 

 

2人で"あるもの"を組み立てる。これがないと1週間、生きていくのは不可能だ

 

 

理亞『……熊が出たらどうするの?』

 

聖良『…監督、その事について…何も言っていませんでしたね』

 

理亞『姉様帰ろう。危ない。帰ろう』

 

 

2人がいるのは「キャンプ場」。

ここで1週間、泊まり込みで練習をしろというのが、美奈の指令であった

 

 

聖良『ふぅ…なんとか完成しましたね』

 

理亞『…日没ギリギリだった』

 

 

試行錯誤の末、なんとか完成した鹿角姉妹のテント。既に日は落ちかけているので、練習は明日から。今日は夕食を食べて寝ることにした

 

 

聖良『夕食は…無難なカレーですよね!』

 

理亞『姉様、楽しんでない?』

 

 

こんな山の中、いつ熊に襲われるかも分からない中。姉様はキャンプを楽しんでいる。変なところでは度胸あるくせに…お化けは苦手なんだからまったくおかしい話だ。

あと余談ではあるが、姉様は「ブロッコリー」が苦手。なんでも昔、ブロッコリー頭のキーパーにシュートを止められて、それからトラウマ?になったらしい

 

 

聖良『理亞ー!手伝ってください!』

 

 

姉様が私を呼ぶ。

取り敢えず私もお腹も空いたので、すぐに調理に取り掛かる。

明日から…どんな練習をしようか、

 

 

 

―――

 

 

翌日、北海道の朝は寒い。だがそれはいいことだ。何かと練習になるのが寒い日だ

 

 

聖良『さっそく練習しましょう』

 

理亞『具体的には何をするの?』

 

 

ここは森の中。サッカーのグラウンドなどあるわけが無い。地面は砂利、茂み、木の根が張る、サッカーには適さない。

こんなところでサッカーの何を練習すればいいのか

 

 

聖良『監督からの指示には…』

 

 

姉様が聞いた監督からの練習内容。

聞くと…意外にも納得してしまった

 

 

聖良『練習中は常に"ATP"を維持。過酷な環境でドリブル。突破力と実力を鍛えろ…と』

 

理亞『"ATP"維持…』

 

 

この時はまだ、"ATP"の力を上手くコントロールできないでいた。発動にもかなりの時間を必要とした。隙だらけ。

世界との戦いの中では、この隙がチームの危機を招く。それは韓国戦、中国戦で痛感した私の課題だった。

どう練習すれば伸びるのか、課題を克服出来るのか…悩んでいる時の指令だった。

監督は気づいていた。だから手助けをしてくれていると思った。ならば、その期待に応えなければならない

 

 

理亞『ひとまずやってみる』

 

聖良『頑張ってください!私はここにいますので、あまり遠くには行かないでくださいね』

 

 

私はボールを用意し、"ATP"を発動した。やっぱりまだまだ時間がかかる。ルビィは一瞬で発動していた…差があることが明確になる。

だが負けるわけにはいかないのだ。私は意を決して、森の中へとドリブルで進んでいった

 

 

――――――

 

 

ーードリブルを開始して数分後。さっそく分かったことがある

 

理亞『(芝生よりも……キツい!!)』ハァハァ

 

当たり前だが地面が整備されていないため、障害物を避けたり、登ったり、降りたり、無駄に体力がすり減っていく

 

理亞『ハァハァ…大きな段差…!』

 

目の前に1mほどの段差があった。こちらが上。ここから飛び降りて先に進む

 

 

ーーーズンッッッ!!!!

 

理亞『!!!!???』チカチカチカ!!

 

 

が、飛び降りて地面に着地した瞬間。

落下の圧と"ATP"の負荷がいっきに襲いかかり、一瞬目眩がした。立ちくらみ。"ATP"の使いすぎで体力が底をついた時の感覚にそっくりだった

 

理亞『ハァハァ…くっ……』

 

だが、足を止めてはいけない。試合中だって疲れたからと言って止まることはありえない。悲鳴をあげる体にムチを打ち、私は地獄のドリブルを再開した。

 

 

ーーー数十分後

 

理亞『ハァハァ…ハァハァ…もう、無理』

 

結局。"ATP"を維持しながらのドリブルは30分も持たなかった。これでも結構伸びたはずなんだが…まだまだ足りない。

私は汚れることなど関係なく、森の中で仰向けに。息を切らしながら空を見た。

木と木の隙間から雲が見える。鳥たちの囀り、草木の擦れる音。そして私の呼吸音。この1週間で呼吸音をどれだけ減らすことが出来るのか。それは自分以外、誰にもわからない

 

理亞『ハァハァ…やってやる』

 

日はまだ昇り続けている。

夕方まではまだまだ時間がある。ある程度休めた私はドリブルを再開する。迷わないように注意しながら森の奥へ、まるでこの先に自分の"次"があるかのように。先へ先へと、引き込まれていった

 

 

 

ーー2日後

 

昨日、ガムシャラに走り回って学んだ。

それにより私の動きには少し変化があった

 

理亞『(段差…!!)』ゴゴゴゴ

 

段差を飛び降りた後のダメージは凄まじまかった。無駄に体力を消費する、ではどうすれば無駄がなくなるのか。簡単な話だ

 

理亞『っっ!!』ゴロゴロ

 

"受け身"。足で着地するのではなく、転がりながら衝撃を受け流す。これで体力の消費はかなり軽減された

 

理亞『よし…段差を抜け…きゃっ!?』ドサッ!

 

気を抜いてしまった私は、足元から生える木の根に気づかなかった。そのまま盛大に転び、せっかく高めた集中力が音を立てて切れる

 

理亞『あぁっっもう!!邪魔!!』

 

 

 

ーー3日後

 

理亞『(木の根、段差、石、段差)』ゴゴゴゴ

 

3日目になると、自然と周りに気を使うようになっていた。要するに"ATP"発動に集中しなくても、自在にコントロールできるようになってきた。ということ

 

理亞『(木を相手に見立てて…)』ゴゴゴゴ

 

不規則にそびえる樹木。

まるで私の行く手を阻む相手DFに見えた。ならば全て躱すのみ。私はドリブルや足元のテクニックで次々と樹木を抜き去る

 

理亞『(よし…これで最後の木…)』

 

 

ーーードガッ!!!!

 

理亞『っっ!?』

 

が、不規則ならではの課題が生まれる

 

理亞『(最後だと思ってた木の死角から…もう一本!?)』

 

受け身はとった。それでも地面を転がる私。また集中力が切れてしまった。再び気持ちを高めるのにはどうしても時間がかかるから余計心が重くなる

 

理亞『ハァハァ…もう1回っっ!!』

 

土で汚れた手。足。もう顔を拭う躊躇いもない。顔も同じく汚れ、汗で余計目立つ。

人ひとりいないこの森の中。私のワガママのようなプライドは1人、自分を見つめ直すことにより、より現実的に。具体的なものへと形を完成させていた

 

理亞『ルビィに…世界に勝つには…こんなところで負けてられない!!』

 

この日は、ただひたすらに。木のあいだを走り続けた。

 

ただひたすらに。今よりも先に行くために。

 

勝ちたい。その一心で何度も、何度も倒れながらもーーー

 

 

 

 

 

 

 

理亞「待ちなさいよ」

 

 

ーーー立ち上がる

 

 

フィレア「!?」

 

フィレア(立ってる!?さっき転びかけてたのに…どうやって起き「どこ見てんのよ」

 

 

おかしい。今。本当に今、理亞は自分の後方でバランスを崩し、地面に倒れる寸前だった。だが、気づいた時には立ち上がっており、瞬きしているあいだにーーー

 

 

理亞「…」ゴゴゴゴ

 

フィレア「なんで、私の前に…」

 

 

ツバサ「今の、見えた?」

 

ルビィ「…見えませんでした。いつ立ち上がって、いつ先回りしたのか…まったく」

 

 

これにはさすがのフィレアも驚きを隠せなかった。理亞が倒れかける前…その時よりもオーラの、覇気の鋭さがまるで違う

 

 

フィレア「もう一度抜くだけだよっっ!!」バッ

 

理亞「ーーー!」ゴゴゴゴ

 

 

先程抜いたように、スピードで翻弄し、罠を仕掛け、テクニックでボールを動かす。

理亞はそれについていけず、フィレアに突破を許してしまったのだが…

 

 

フィレア「っっ!!」バッ

 

理亞「ーー!」バッ

 

フィレア「くっ…!!」グルン!

 

理亞「ーー!!」バッ

 

フィレア「これなら…!!」バッ!

 

 

"さっきと同じターンからの突破"ーーー

 

 

理亞「もういい?」ギュン!!

 

フィレア「ぇ、」

 

日本、イタリア「「!!!!!!??」」

 

 

フロイ「奪った…あんな簡単に、」

 

絵里「何よ…あれ、」

 

 

A『これは!?いったい何がおきたのか!?』

 

 

フィレア「くっっ…!!(落ち着け…まだ取り返せる!!!)」

 

フィレア「"カテナチオカウンター"だ!!」

 

理亞「!」ゴゴゴゴ

 

 

今起きた状況を把握するよりも先に。

理亞からボールを奪うこと。それが最優先事項のイタリア。さすがは優勝候補と呼ばれるだけのことはある。フィレアが指示をする前から既に、必殺タクティクスを発動する準備をしていた

 

 

月「まったく状況が理解出来ていないんだけど…理亞ちゃんの"あれ"」

 

ツバサ「…彼女はとんでもないことをしているわ」

 

千歌「…!!」

 

ツバサ「千歌さんなら分かるんじゃないかしら」

 

 

フィレア「もう一度勝負!!」

 

理亞「…」ゴゴゴゴ

 

 

囲まれた理亞。"ATP"を発動しながら、フィレアの動きを見切り、刺すように伸ばす足を躱し、白い息を吐きながら…抜き去る

 

 

フィレア(抜かれた…でもまだ!!)

 

カズハ「任せて。取る」

 

 

死角から。世界最強レベルがもう1人。

フィレアが突破されても、それは誘導。隙だらけの突破後を、カズハが刺す。

先程、千歌に突破されたが2度はない

 

 

カズハ「とったーーーー

 

 

理亞「ーーーーー

 

 

 

 

 

 

今の理亞には、あの日の、木に見える

 

 

理亞「ーー」バッバッ!!

 

カズハ(不意打ちを躱す!?でもまだいける!!)

 

 

"カテナチオカウンター"。囲む選手たち、"白き流星"、"勝利の化身"、全員ーーー"木"

 

 

カズハ「なあっっ!!?」スカッ!

 

理亞「ーー」

 

フィレア(カズハをも抜くなんて…)

 

フィレア「でも……」

 

 

 

 

鞠莉「イタリアの誇りにかけて…負けられないのよ」

 

 

果南「っっ…鞠莉!!!!」

 

ダイヤ「罠を三重に仕掛けていた…!?」

 

 

フィレアの背後から和葉。

その和葉の背後から鞠莉。

DFまでもを総動員するイタリア。本気で取りに来ていた。おそらく、突破した千歌でも、ドリブルの天才にこでも、この3人の突破は不可能であろう。まさに、世界最強のディフェンス

 

 

しかし、

 

 

理亞「邪魔ーーー

 

鞠莉(右ね…!!逃がさなーーー

 

 

カズハ「鞠莉!!違うっっ!!!!」

 

鞠莉「!!??」

 

 

理亞は右に動いていた。なのに、

 

 

鞠莉(なん、で……左にいるのよ……)

 

理亞「じゃあね」

 

 

A『ぬ、抜いたぁぁ!!!!鹿角理亞がイタリアの"カテナチオカウンター"を崩しました!!なんという個人技!なんという無双!!』

 

レヴィン『あれは…間違いないですよ、』

 

 

 

抜かれた選手は感じる

 

 

鞠莉「」

 

 

特に。鞠莉

 

 

鞠莉(函館聖泉と戦った時と、同じ雰囲気…)

 

まるで本物の獣。目の前の獲物を狩ることだけに意識を集めたような目。

一瞬で冷や汗が吹き出した。正直怖かった。こんな感情、久しぶりにいだいた

 

 

A『これは絶好のシュートチャンスだ!!!』

 

 

選ばれた者にしか宿らない力。

それを任意に発動出来るかできないかはともかく。今この時、このタイミングでそれを発動出来たのは…運命か、それとも理亞の意思か、

 

 

千歌「分かるよ…あれは、」

 

千歌、フィレア、カズハ、鞠莉「「ゾーン」」

 

絵里「今あの子は、世界の頂上を見ているわ」

 

 

理亞「ハァハァ…!!」ゴゴゴゴ

 

 

ゾーンとATPの二重発動。

オーストラリア戦のような、"ATP"発動のためのゾーンではない。

それぞれを最大限に引き出す。お互いに刺激し合わし、共鳴させ。

それが雪のように一瞬で消える儚い力だと分かっていても、だからこそ今、本気で走る

 

 

ルビィ「理亞ちゃん…ついにやったんだね、」

 

にこ「…ルビィ?」

 

 

フラム「凄い力だね…!!でもあなたのシュートでは私の技は、」

 

理亞「…そうね」ゴゴゴゴ

 

理亞「…」ゴゴゴゴ

 

理亞「なら」バッ!!

 

フラム「!?("ウルフレジェンド"でも、"ATB"でもない!?)」

 

 

その動きに、日本のサッカーを…そして、"ある少女の技"を知っている者は、皆、震撼する

 

 

 

 

 

理亞「はああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

日本、イタリア「「「!!!!??」」」

 

フラム「え…なんで…」

 

ルビィ「!!!!」

 

善子「ちょっ、あれって…なんで理亞が!?」

 

 

海未「聖良!!あれはどういうことですか!?」

 

聖良「私も、知りませんでした…理亞が"あの技"を、」

 

 

 

理亞「ぐっっ!!!!(今決める!!絶対に成功させる!!!!)」

 

 

轟音が響き、理亞の頭上に"空気"と"ATP"のオーラが集まる。その巨大すぎるオーラを足で磨きあげるその姿…まさに、

 

"紅き流星"そのもの

 

 

理亞「っっっっ!!!!」ドガァン!

 

 

唸る風。嵐。竜巻。

それ以上、並外れたその力を両足で。

理亞の大名刺ドロップキックで放つ

 

 

 

 

理亞「ー オーバーサイクロン ー」

 

 

ここから試合は大きく動き出す

 

日本 1-1 イタリア

 

 





オーバーサイクロン
オリオンの刻印で登場の小僧丸君の必殺技です。"ラストリゾート"の下位互換のような必殺技ですが、輝こうではどうでしょうか…詳細は次回ですが、原作のような残念技にはしたくないですね。



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第3章 90話 「イタリア戦 "オーバーサイクロン"」

皆さんどうも!日本VS韓国のE1を見ながらの投稿、ルビィちゃんキャンディーです!!

いつもたくさんのご感想をもらえて、本当に嬉しいです!このお話をここまで書いてこれたのは皆様のご感想のおかげです。
そんな皆様にお願いです。ハーメルンの感想では必殺技リクエストや提案などは書かないようによろしくお願いします。運営からの削除対象にもなりますし、自分もたくさんの方が読む中でどう返信すればいいのか分からないのでご協力よろしくお願いします!

個別メッセージやTwitterのDMならばリクエストは全然大丈夫です!いつでもお待ちしてます






 

 

前回の、輝こうサッカーで!

理亞が"ATP"をコントロール出来るようになったのには、監督の指令による努力があったからこそ。記憶の中から溢れ出した勝利への執念。それがATP×ゾーンとして理亞に力を与えた。"カテナチオカウンター"を突破し、放ったのは"ラストリゾート"に似た必殺技『オーバーサイクロン』だった

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ーーー4日目。鹿を見た

 

理亞『……』

 

3日目、4日目と木のあいだを駆け抜けるドリブルに苦戦していた理亞。どうしてもつまずく場所があると、途方に暮れていた時のことだった

 

理亞『なんであんな簡単に、駆け抜けれるの…?』

 

理亞が鹿を見たのはほんの数秒だった。

止まることなく、木の隙間を走り去っていくその鹿の動きはまるで、自分の理想とする動きそのものだった

 

理亞『……』

 

 

ーーー狐を見た

 

理亞『狩りね』

 

自分よりもひと回り小さい動物を狩っている最中だった。忍び寄り、いっきに飛びかかるその姿は動物の本能、静から動への切り返しの鬼だと思った。おそらく、集中力ならば人間は野生の動物には勝てないであろう

 

 

ーーーワシを見た

 

上空から急降下するその動き、そして急旋回。同じ動物として魅力を感じた。風を最大限に使っている。まるで風を自分の体の一部にしているかのようだった

 

 

 

そして

 

 

 

理亞『ぇ…』

 

『……』

 

ーーー熊に出会った。5日目のことだった

 

 

理亞『(嘘嘘嘘嘘!?どうすれば…どう逃げれば…)』

 

『…』ジリッ

 

理亞『!?』

 

恐れていた最悪の事態。熊が距離を詰めてきたのだ。生まれて初めて、死の感覚がリアルに伝わってきた

 

理亞『ひとまず…逃げる』バッ!!

 

『……!!』バッ

 

理亞『(追いかけてくる!?!?)』

 

理由は分からなかったが、確実に追ってきていた。捕まれば最後。自分はあの熊の胃の中であろう。死にたくない。その一心で理亞は走った

 

理亞『(右、左、段差、左、根っこ、段差)』ゴゴゴゴ

 

『…!』

 

理亞『(スピードが落ちた…!?しめた、狭い場所なら…!!)』バッ

 

何故だろう。この時、理亞は異常なまでに冷静だった。熊に鉢会う寸前まで行っていたドリブルを、ここぞとばかりに使い始めたのだ

 

理亞『("ATP"の負荷に強弱をつけながら…次来る木を体で感じる…!!)』バッバッ!

 

段差、木の根、岩、木。

体の全神経を研ぎ澄ませ、全てを躱し、まるで川を流れる水の如く。流れ流れ、前へと走る

 

理亞『(行ける…!!今の私なら全て躱せる!!)』

 

自分の動きが信じられなかった。

先程まで苦戦していた動きを完璧に。死から逃れようとする本能が力を引き出しているのだろうか?この時、理亞本人でさえ知らなかった

 

理亞『あと少し…!!!!』バッバッバッ!!

 

ーーー自分が"ATP"と"ゾーン"を同時に発動していることを

 

理亞『最後の木ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ーーー抜けたぁぁ!!!!』

 

 

聖良『理亞!?』ビクッ

 

理亞『!?!?!?姉様!?』

 

抜けた先はまさかの聖良が待つキャンプ場だった。一瞬安堵に包まれるも、すぐに我に返る

 

理亞『姉様!!逃げて!!熊が、熊がすぐそこに!!』

 

聖良『熊…?どこに、ですか?』

 

理亞『………ぇ?』

 

振り向くとそこに熊の姿はなかった。

振り切れたのだろうか?撒いた…?何にせよ、死の危機から逃れた理亞は安心と疲労でその場に膝をついた

 

聖良『り、理亞!?大丈夫ですか!?』

 

理亞『ハァハァ………姉様、』

 

聖良『??』

 

理亞『私、強くなった気がする』

 

聖良『本当ですか…!』

 

理亞『何か…ヒントをもらった気がするの』

 

聖良『?』

 

 

森の生き物、森の障害物…そして、あの熊からも

 

 

 

 

 

 

理亞「ー オーバーサイクロン ー」

 

 

海未「なんですか…あれは、"ラストリゾート"にそっくりな、」

 

英玲奈「威力も申し分ない…!」

 

 

理亞「っっっっ!!!!!!」

 

鹿のように筋肉を最大限に引き出し放つ。

狐のような反射神経でボールに次々と蹴りを加える。

ワシのように風を力に変え、自身の武器としてボールに纏わせる。

そして…熊のように全てをなぎ倒すパワー。

 

これが、頂上へと近づくための新たな必殺技

 

 

A『鹿角理亞の新必殺技!!!凄まじい威力だぁぁ!!』

 

 

フラム「凄いパワーだね…!!この鳥肌が立つ感じ、"ラストリゾート"に近いものを感じるよ!!」

 

フラム「でもそのシュート、近いってだけで"ラストリゾート"にはまだ及ばないよ!!」

 

理亞「…」ゴゴゴゴ

 

フラム「それつまり、私にも及ばないってこと!!」バッ

 

フラム「ー イジゲンザハンド ー!!」

 

 

日本が誇るシュートを何度も防いできた、数字上、最強のキーパー技。ルビィのシュートも、音ノ木坂のシュートも、流れるバリアには勝てなかった。ならばこのシュートは勝てるのか?

 

ーーードガアァン!!

 

シュートがバリアに激突する。例えラストリゾート相手でも割れることは無いそのバリア。理亞のシュートもそのまま流され、ゴールの裏へーーー

 

 

フラム「!?」

 

理亞「…!」ゴゴゴゴ

 

月「!?あれは、」

 

 

フラムは気づく。ありえないことが起きていると

 

 

フラム(ボールが…流れていかない!?)

 

ーーガガガガガガッッ!!!!

 

フラム(この音…ボール…まさか!?逆回転でバリアの流れに逆らっている!?)

 

 

"オーバーサイクロン"を縦の逆回転、要するにバックスピンで放った理亞。

いつまでも流れていかないのはボールが抗うから。こうなると無敵のバリアも話が別になってくる

 

 

千歌「ボールがその場に留まってるよ!?」

 

月「僕に任せて!!」バッ

 

千歌「月ちゃん!?」

 

 

フラム(渡辺月がこっちに走ってくる!?)

 

 

この時、月が何をしようとしているのか。フラムは分かっていなかった。だがすぐに、"イジゲンザハンド"の決定的な弱点に気づかされることになる

 

 

月「そのバリア…砕いてあげるよっっ!!」グルグル

 

フラム「な、何を…」

 

 

ーー空中で回転し狙いを定める。月の鍛え上げられた足から放たれる、空を蹴る一撃

 

 

月「ー 天空落とし ー!!」ドガアァン!!

 

 

イタリア「「「!!!!!!」」」

 

サエ、美奈「!!!!」

 

カズハ「やべっ、バレた」

 

 

A『これは!?渡辺月が追撃の必殺シュート!!バリアを直接破壊するつもりか!?』

 

レヴィン『なるほど…上から抑え込めばボールは流れていきませんし、そのままバリアも突破できますね』

 

 

バリッ…バリッ!!!!

 

フラム「!!!」

 

月「ヒビ、入ったねっっっっ!!!!」ググググ

 

 

"天空落とし"で押し込む月。

流せぬバリアはただのバリア。理亞のシュートのパワーも加わり、ついにヒビが入った"イジゲンザハンド"

 

 

にこ「うそ…行けるんじゃない!?」

 

千歌「月ちゃん!!押し込めぇぇ!!!」

 

 

月(あと…少しっっ!!!!)ググググ

 

 

ガラスのように見えるバリアだが、想像以上に硬い。まるで石を砕こうとしているような感覚だった。月はありったけの力を込めて、砕けろ。砕けろ。と心の中で連呼する

 

 

フラム「凄い…凄いよ。そんな破り方があったんだね…」グッ!

 

月(右手を握って…何を…)

 

 

一つ気になることがあった。この状況で、追い詰められた状況でフラムは焦るような顔をしていなかったのだ。あれだけ破れないと言っていたものが、今こうして破れようとしているのに…

 

 

フラム「でも、まだ足りないね」グワーッ!

 

月(バリアの中で…何をする気なんだ!?)

 

 

フラムは"イジゲンザハンド"を左手で発動している。今までずっと使ってこなかった右手。

しかし、その右手にオーラを込め、何かを仕掛けようとしていた。

その何か、月は察した

 

 

フラム「ー 正義の鉄拳GX ー!!!」ドガアァン!

 

月「うわっっ!!?」

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

穂乃果「バリアの内側からボールを…殴り飛ばした!?」

 

果南「そんなのあり!?」

 

理亞「ハァハァ…ハァハァ」ゴゴゴゴ

 

 

A『な、なんということでしょう!?フラム選手、"イジゲンザハンド"が破られかけた瞬間、別の必殺技でバリアの内側からパンチング!!!!』

 

レヴィン『GKが2つの必殺技を同時発動するとは…とんでもないキーパーですね』

 

 

月はそのまま吹き飛ばされ、ボールも宙を舞う。理亞の"オーバーサイクロン"と月の"天空落とし"を実質止めたことになるフラム

 

 

フラム「私はイタリアのGK…"イジゲンザハンド"を破ったぐらいで勝てると思わない事ね」

 

フィレア「…ちょっとヒヤヒヤしたよ」

 

鞠莉「バリアの流動がなければ"正義の鉄拳"でもあのシュートには勝てなかったわ…理亞、どこまで持つのかしら」

 

 

理亞「ハァハァ…」ゴゴゴゴ

 

ツバサ「理亞さん、それはコントロール出来てるの?」

 

理亞「力の加減は…でも解除は出来ない。体力が切れるまで発動し続ける」ゴゴゴゴ

 

ツバサ「そう、なら急がないとね」

 

 

日本の収穫は"イジゲンザハンド"の攻略法を見つけたこと。しかし、その代償はあまりにも大きかった。

新たな必殺技"正義の鉄拳"。バリアを破ってもあのパンチングがあっては突破出来ない。もっと強力な必殺技を叩き込む必要があるのだが…

 

 

梨子「みんな疲れ始めてる…」

 

美奈「そうね、このままじゃまずいわ。交代よ。ダイヤちゃん、海未ちゃん」

 

ダイヤ「はい!!」

 

海未「誰と交代ですか?」

 

美奈「海未ちゃんは月ちゃんと。ダイヤちゃんは……」

 

 

美奈「理亞ちゃんとよ」

 

ベンチ「「!!??」」

 

英玲奈「今、最高の状態の理亞を下げるのですか?」

 

海未「もう少し様子を見た方が…」

 

真恋「様子?理亞ちゃんはとっくに限界よ」

 

 

 

理亞「ハァハァ…くっ…ハァハァ」ゴゴゴゴ

 

理亞(頭がガンガンしてきた…)

 

 

2重の強化はオーバーワーク以上の負荷を発動者である理亞に与えていた。足が震え始めた。おそらく、監督らには見抜かれているだろう

 

 

理亞「これが、最後のプレーね」ゴゴゴゴ

 

善子「ちょっと、理亞。無理しすぎ」

 

理亞「…」ゴゴゴゴ

 

善子「私たちも頼ってよね」

 

理亞「分かった。来るよ」ゴゴゴゴ

 

善子「えぇ」

 

 

A『さあ、ボールを持ったのはカズハ選手!!日本陣内に切り込んでいきます!!』

 

 

カズハ「理亞ちゃんのあのシュート…やっぱり、あの子はまだまだ伸びる」

 

和葉は確信する。今はまだでも理亞、そして日本の実力は今後さらに爆発的に開花する。

このままお互いに決勝トーナメントに進んで、再戦した時には勝てるかどうか分からない。だからこそ、

 

カズハ「この試合で確実に勝つ」

 

 

ラファエレ「カズハ、こっち!」

 

カズハ「!」パス

 

カズハ(決定打が欲しい)

 

 

それはどちらのチームも考えていたこと。

次の1点が試合の流れを変えることは確実だった。その為に必要なのは…

 

 

ラファエレ「くっ…!?」

 

理亞「ハァハァ…」ゴゴゴゴ

 

 

A『ラファエレ選手が鹿角理亞に捕まった!!このまま奪われてしまうのか!?』

 

 

カズハ「…(理亞ちゃんは満身創痍、何かきっかけがあれば一瞬で崩れる…ここは、)」

 

カズハ「ラファエレ!フィレアに戻すんだ!」

 

ラファエレ「お願い…!!」パス

 

フィレア「!」

 

 

和葉はフィレアに目で伝える。

「あなたがやるんだ。」

和葉がスペイン戦までチームを離れていた理由。それはイタリアが和葉を頼りすぎていたから。仲間を頼ることしか脳が無いチームは強くならない。しかし、チームは変わった

 

 

理亞「ハァハァ…フィレア…」ゴゴゴゴ

 

フィレア「私が相手だ…!!」バッ

 

 

フィレアと鞠莉を中心に。

そして監督である小原サエのおかげで、見違える程に強くなった。一人ひとりが勝つ意識を強く持っていた。『カテナチオカウンター』はその結果だ

 

 

フィレア「ふっ!!」バッバッ!

 

理亞「ハァハァ…!!」バッバッ!

 

フィレア(まだこんなに動けるの…)

 

 

震える足、止まらない息切れ、血走った目。

それでも抜ける気がしない。逆に奪われそうだ。まるで野生の獣と戦っているようだった

 

 

善子「理亞…!これ以上は、」

 

理亞「ハァハァ…!!ハァハァ!!」

 

善子(聞こえてない…)

 

 

だが、耐えて抗えば必ず隙は出来る。

普通の人は隙とは思えない僅かなズレも、この次元まで来れば大地に割れ入る大きなヒビと同じ

 

 

理亞「ハァハァ…っっ!?」

 

ーーピタッ

 

フラム(一瞬、動きが止まっーーー

 

 

 

ギュンギュン!ギュンギュン!ギュンギュン!

 

 

理亞「!?」

 

 

善子「フィレアが消えた!?」

 

希「あれは…高速ドリブルや」

 

 

まさかこの技を使うことになるとは…やはり日本は凄い。本来、使うはずだったロシア…ブラジルに分析される?

 

関係ない

 

 

フィレア「ー 逃走…迷走っっ!!!!」

 

理亞(動きが読めーーー

 

 

フィレア「メビウスループ ー!!!!」

 

 

善子「!!」

 

ルビィ「!!」

 

日本「「「!!!!」」」

 

理亞「」

 

 

フィレア「楽しかったよ!!」

 

 

A『抜けたあぁぁ!!メビウスの帯を型どる高速ドリブル!!さすがの鹿角理亞も反応出来ませんでした!!』

 

レヴィン『フィレア選手もゾーンを発動していたとはいえ、今の理亞選手を抜き去るのはさすがは"白き流星"ですね』

 

 

鞠莉「フィレアに続いて!!畳み掛けるわよ!!」

 

イタリア「「はい!!」」

 

 

ここぞとばかりにギアを上げるイタリア。

このまま波に飲まれるわけには行かない

 

 

ことり「ー ワンダーゾーン ー!!」キラキラ

 

フィレア(絶対支配領域!!)

 

フィレア「アンジェロ!」パス

 

アンジェロ「はい!ラファエレ!」パス

 

ことり(パスが速い…!!)

 

 

月「ことりちゃんも突破された…!!」

 

ルビィ「っっ…フィレアさん、完全にスイッチ入ってるよ」

 

 

フィレア「こっち!」

 

ラファエレ「フィレア!」パス

 

 

希「善子ちゃん、2人で!!」バッ

 

善子「えぇ!!」バッ

 

 

フィレアの死角から狙う

 

 

フィレア「ー 逃走迷走……」ギュンギュン!!

 

善子「!?」

 

希(あかん…!!引きつける罠ーーー

 

 

フィレア「メビウスループ ー!!!!」

 

 

善子、希「っっ!!!!」

 

 

A『またしてもフィレア選手!!鹿角理亞との1戦後、動きに磨きがかかったように見えます!!』

 

レヴィン『まるでスロースタートのスポーツカーのようですね…これはチャンスですよ』

 

 

果南「来い…!!止める…止めてみせる!!」

 

フィレア「私のシュートもいいけど…」バシッ

 

果南(ボールを蹴り上げた…??)

 

 

カズハ「っっっっ!!!!!!」グワーッ!!

 

 

果南「!!!??」

 

穂乃果「みっちゃん…!!」

 

フィレア「王のシュートを味わってよ…!」

 

 

カズハ「ー ブレイブショット ー!!」ドガアァン!

 

 

果南「"ラストリゾート"と同じ…弾かれるシュート…」バシャアァン!

 

果南(重いシュートには重い技を…!!)

 

果南「ー デルフィナス・トリアイナ ー!!」

 

 

穂乃果のシュートも強力だが、和葉の『ブレイブショット』は果南の受けてきたシュートのどのシュートよりも"痛かった"。重すぎた

 

 

果南「うおあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

『ラストリゾート』はすぐに弾かれるため、痛いという感覚はあまり無かったが、『ブレイブショット』は違う。

まるで突進してくる巨大な何かを受け止めようとしているかのような…

 

 

ーーーガキィィィィィン!!!!!!

 

 

果南「ぐあっっ!?!?(重っっ!?)」

 

 

自分は何を止めようとしているのか。

牛?サイ?トラック?違う。

 

 

バシュウゥゥゥゥンーーーー

 

 

同じ人間の。人間の放ったシュートだ

 

 

 

A『ゴール!!!!"クイーン カズ"が2点目!!イタリアが再びリードしましたぁぁ!!』

 

 

果南「ハァハァ…強すぎ…」

 

理亞「ハァ、ハァハァ…」

 

穂乃果、千歌「ハァハァ……」

 

月「キツいね…」

 

ルビィ「ハァハァ…!!」

 

 

フィレア「ナイスシュート!カズハ!」

 

カズハ「…さあ、もっと走ろう」

 

 

 

流れを手に入れたのは、イタリア

 

 

日本 2-1 イタリア

 

 

 




正義の鉄拳
原作の主人公、円堂キャプテンの必殺技です。オーラを込めたパンチングでボールを殴り飛ばします。フラムはこの技をGXで発動していたので、かなり鍛え上げられた必殺技と言えます

逃走迷走メビウスループ
オリジナル技です。フィレア・アルデナのドリブル技になっています。ゾーン×ATP状態の理亞ちゃんでもついていけない程の高速技。メビウスの帯状に走り、相手を翻弄します

ご感想を頂けると本当にモチベが上がります。よろしくお願いします



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第3章 91話 「イタリア戦 "闇の選択"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
オト姫さんの『2つの世界のサッカー』の続きのためにも頑張って年内にはイタリア戦、終わらせたいです




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

理亞の『オーバーサイクロン』は『イジゲンザハンド』を破る道しるべになってくれた。しかし、その後イタリアの猛攻に耐えきれなかった日本は2点目を許してしまう。日本の限界は近づいている

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

A『ここでサニデイジャパンは選手を交代します!鹿角理亞に変わって黒澤ダイヤ、渡辺月に変わって園田海未が入ります!!』

 

 

月「理亞ちゃんが交代する時、いつもボロボロだよね…」

 

理亞「ハァハァ…」

 

 

理亞はこの試合で得点以上の活躍を見せた。これは日本だけでなく、世界にも大きなアピールになったはず。

試合前と後で見ると成長速度が著しいことが良くわかる

 

 

穂乃果「ダイヤさん、海未ちゃん、あのバリアはチェインで割れると思うけど、その後の追撃が厄介だよ」

 

ダイヤ「GXですし、かなり鍛え上げられた技なのでしょう…それを破るとなると…」

 

海未「…あの技はどうでしょう」

 

穂乃果「あの技?」

 

海未「"サンシャイントルネードTC"」

 

ダイヤ、穂乃果「!!」

 

穂乃果「"僕たちはひとつの光"を破った技…!!行けるかもしれない!」

 

ダイヤ「分かりました。その作戦で行きます」

 

 

ダイヤはすぐにルビィと千歌に作戦を伝えた。今、イタリアのゴールを破るにはこの技しかない。2人も異論はなかった

 

 

ダイヤ「では、次のシュートで」

 

ルビィ、千歌「了解(です)」

 

 

A『さあ、後半も折り返し!ここでイタリアがリードしましたが、サニデイジャパンはまだ諦めていません!!』

 

レヴィン『日本も"イジゲンザハンド"を攻略しつつありますので、まだまだ分かりませんよ』

 

 

ピーーー!!

 

 

ルビィ「にこさん…!」パス

 

にこ「気を引き締めてよ!!負けるわけにはいかないんだからね!!」

 

 

にこはFWたちの後ろから鼓舞して盛り上げる。司令塔2人、英玲奈と梨子が出れない今。自分が中心で日本のサッカーを組み立てるのだと自覚していた。

 

司令塔たちは本来ならば、前半でイタリア戦術を分析。後半で指揮、対応するというものだった。しかし、

 

 

ーーー試合前

 

フィレア『…え、指示を出さない??』

 

サエ『えぇ。日本は司令塔が2人いるわ。おそらく、あちらの監督は前半であなたたちの戦術を分析しようとする』

 

鞠莉『そうなると厄介ね…』

 

サエ『なので試合の指示はあらかじめ伝えておきます。非常事態の時以外は私は何も言いません』

 

カズハ『うーん、やむを得ないね』

 

フィレア『(ということは日本戦、監督が指示を出している時は…)』

 

 

ーーー非常事態

 

フィレア(つまり、今はまだ監督の想定内)

 

試合終了まではまだ時間がある。日本がどんな作戦をこれから仕掛けてくるのか、予想つかないところではあるが、現状リードしているのはイタリア。落ち着いてプレーすれば確実に勝てる

 

 

フィレア「ラファエレ!2人でにこを…!」

 

ラファエレ「えぇ!そのつもりよ!」

 

 

数の有利。それは勝負の勝敗を大きく左右するものである。さすがのにこも試合の折り返し、序盤は余裕であった複数人のまとめ抜きも今は厳しいはず

 

 

にこ「あーもう…!!しつこいわね!!」

 

フィレア「もらった…!!」バッ

 

にこ(やばっ…!?)

 

 

A『ああっと!?矢澤にこがボールを奪われた!!スタミナ的にもかなり厳しいか!?』

 

 

にこ「ゼェ…ゼェ…」

 

 

美奈「…梨子ちゃん。準備して」

 

梨子「は、はい!」

 

美奈(にこちゃんには無理させてきた…なのにここまでスタミナが持ったのは、流石としか言えないわね)

 

 

サニデイジャパンのベンチの動きを確認したイタリアベンチ

 

サエ(矢澤にこが代わる…また1つ、支柱を崩せましたね)

 

試合前、選手たちに出した指示の1つ。

『矢澤にこには積極的に勝負しろ』

サニデイジャパンの精神的、戦術的支柱。両方を担っているにこ。さすがの体力お化けでも前半から迫っていけば必ず折れる時が来る。にこがいるかいないかで、日本の戦力が大きく変わることを知っていたサエは確信する

 

サエ(日本が崩れるのも…時間の問題)

 

 

にこ「ごめん…!!フォローお願い!!」

 

善子「無茶しすぎなのよ…みんな」バッ

 

フィレア(津島善子…!!)

 

 

イタリアはにこ以外にも。

特にDFでは善子に警戒していた。スペイン戦で初めて見せたあの『共鳴』。スペインも、イギリスも、自分たちのサッカーが出来ないほどに苦しめられていたと、イタリアは分析していた

 

 

フィレア(この技で抜けるかーーー

 

善子「!!(あの構え…!!)」

 

フィレア「ー 逃走…迷走っっ!!」ギュンギュン!

 

 

超高速移動ーーーいっきにーー抜かされーー

 

 

フィレア「メビウスループ ー!!!!」

 

 

あまりの速さに砂埃が巻き上がる。

遮断される視界。

これも相手がフィレアを追えない理由のひとつ。

 

しかし、

 

 

フィレア「…!?(誰かが前にいる!?)」

 

「ハァハァ……」

 

 

それはフィレアも同じ

 

 

フィレア(チート技すぎ…でしょ、)

 

善子「ー Deep Resonance ー」

 

 

逃げられない。まるで磁石のように。

フィレアの動きを予想出来なくても、ついていけなくても。体が強引について行かせる

 

 

アリーチェ「フィレアさんの必殺技に追いついた…!?」

 

鞠莉「"共鳴"…残念だけど、私たちでもあの技には勝てないわ」

 

アンジェロ「そ、そんな…」

 

鞠莉「大丈夫よ」

 

アンジェロ、アリーチェ「??」

 

 

善子「ハァハァ……!?」ガクッ

 

フィレア「焦ったよ…本当についてきちゃうんだもん、」

 

善子(この一瞬で体力が消えた!?!?)ハァハァ

 

フィレア「驚いているけど、当然だよ」バッ

 

善子「っっ!?」

 

 

A『津島善子も抜かれた!!イタリアの攻撃が止まりません!!!!』

 

 

海未「善子には…まだ早すぎたのです。フィレアの技に共鳴するのは、」

 

ダイヤ「では、共鳴でもフィレアさんには…」

 

海未「あのドリブル技…もしかすると、日本にとって最悪の相性かもしれません」

 

 

ラファエレ「フィレア!シュート撃てる!」

 

フィレア「えぇ!!」

 

 

善子が抜かれたことにより、シュートをゴールまで刺せる道が開けた。絶好。

フィレアはオーラを込めた右足で振り切る

 

 

フィレア「ー オーディンソード ー!!」ドガアァン!

 

果南「っっ…!!」

 

 

迫り来る強力なシュート。

これ以上の失点はありえない。果南が神器を召喚しようとした…その時だった

 

 

ことり「果南ちゃん…!!」バッ

 

果南「ことり…何を!?」

 

ことり「私に任せて!! ー ワンダーゾーン ー!」

 

 

アンジェロ「あれは…絶対支配領域!?」

 

マルコ「まさか、シュートを打ち返す気!?」

 

 

敵味方共に、見覚えがあった。

ちょっとした事件になっていたあの出来事。

"エクスカリバー"が、シュート技によってブロックされたという、信じ難い試合。

日本VSイギリス。誰もが目を疑ったその瞬間。完全には蹴り返してはいないものの、確かに。聖剣に近い力を感じた"あのシュート"

 

 

ことり「ー ワンダフルラッシュ ー」

 

 

今度はイタリアに…牙をむく

 

 

 

ーーードガアァァァァン!!!!!!

 

果南「うわっ!?」

 

フィレア「……!!!!」

 

ことり「っっっっ!!!!」ググググ

 

 

衝撃に揺れるスタジアム。

間近でその姿を見た果南は思う。南ことり…見た目とは裏腹に、その心の強さは誰にも負けない程のものがある。と、

 

 

ことり「もう…少しっっ!!!!」ググググ

 

フィレア「うそ…押し返し…」

 

ことり「いっけええええ!!!!」ドガアァン!

 

 

日本、イタリア「「「!!!!??」」」

 

カズハ「蹴り返した!?」

 

鞠莉「まずいわ!?カウンターになる!!」

 

 

A『なんと!?南ことり、フィレア選手の"オーディンソード"を蹴り返したぁ!?』

 

レヴィン『まるでイギリス代表のエドガー選手のようです…これは日本のチャンスに変わりますよ』

 

 

穂乃果「ことりちゃん…ありがとう!!」

 

海未「穂乃果!私がボールを受けます!あなたは前へ!!」

 

穂乃果「分かった!!」

 

 

穂乃果に"あの技"を使わせるためにも…!!

ことりの打ち返したボールに、少し高さが欲しい。海未は穂乃果にボールを繋ぐため、追撃のシュートを放つ

 

 

海未(強すぎず…弱すぎず…あくまでもコース調整!!)

 

海未「ー ラブアローシュート ー!!」ドガアァン!

 

 

カズハ「…コースが変わった?」

 

 

穂乃果(タイミング、位置、完璧だよ!!)

 

 

海未がコースを変えたボールを行先には、穂乃果がいた。既に準備は整っている。あとは、自分の持てる全力を叩き込むのみ

 

 

穂乃果「はあっっ!!」ドガッッ!

 

穂乃果「っっ!!」ドガッッ!

 

穂乃果「でりゃっ!!」ドガッッ!

 

 

花陽「空中での連撃…あれは!?」

 

理亞「最近…海未さんと何か練習してると思っていたけど、あれだったのね」

 

 

海未「行けますよ…穂乃果!!」

 

 

自分のシュート技が欲しい。

穂乃果は海未に相談していた。『ブレイブショット』はあくまでも和葉の技。自分はまだ和葉の力に縋っている…

同じ技なのに差がある。穂乃果は練習中にそう呟いていた。そんな時、海未は言った

 

海未『一発に差があるのならば、何発も打ち込めばいいじゃないですか』

 

この一言で見つけた。穂乃果の、穂乃果だけの技を

 

 

穂乃果「うぅぅりゃぁっっ!!」ドガアァン!!

 

フラム「太陽のような…赤く、熱いシュート…!?」

 

穂乃果「ー サンライズブリッツ ー!!」

 

 

A『これは!?高坂穂乃果の新必殺技!!』

 

レヴィン『凄まじいパワーです!!実況席にまで熱気が伝わってきますね!』

 

 

ことり「穂乃果ちゃん…!」

 

海未「穂乃果!」

 

果南「す、凄い…」

 

 

一部始終をその目で見た果南は、味方ながらに一連のプレーに衝撃を受けた。

先程まではピンチだったはずなのに、気づいた時には大チャンスに変わっていた。

流れるようなチームワーク。お互いがお互いを完全に信用していないと出来ない芸当。いっさいのズレ、失敗も許されない。

しかし、それを完璧に成功させてきた

 

 

果南「幼馴染の力…かな」

 

 

果南はその力を少し、羨ましく思った

 

 

鞠莉「フラム!!」

 

フラム「任せて… ー イジゲンザハンド ー!!」

 

 

しかし、穂乃果のシュートだけでは"イジゲンザハンド"は破れない

 

 

穂乃果「今!!!!!!」

 

フラム「!?!?!?」

 

 

 

 

ルビィ、千歌、ダイヤ「っっ!!!!!!」

 

 

 

フラムが顔を上げた時には既に、蹴りこまれる瞬間だったーーーー

 

 

 

ルビィ、千歌、ダイヤ「ー サンシャイントルネードTC ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

イタリア「「!!!!」」

 

フィレア「オーバーライドっっ!?」

 

カズハ「最初からこれが狙い…!!」

 

 

A『追撃は浦の星女学院が日本一を決めたシュート、"サンシャイントルネードTC"だあぁ!!!!』

 

レヴィン『なるほど…オーバーライド!穂乃果選手の太陽のシュートは、この技を使うためだったんですね』

 

 

フラム(このパワー…イジゲンザハンドだけじゃ持たない…!!)

 

フラム「ー 正義のっっ!!!!」

 

ルビィ、千歌、ダイヤ「「!!!」」

 

フラム「鉄拳 ー!!!!」ドガアァン!!

 

 

サエ(フラムが2度も追い込まれた…)

 

 

サエにとって、"正義の鉄拳"を発動させた時点で想定外だった状況。日本は侮れないとは分かってはいたが、戦ってみて感じる。

想像以上のチームだと。

そして蘇る、いや、重なる記憶

 

 

『マジン・ザ・ハンド!!!!』

 

『私たちは絶対に…負けない!!!!』

 

 

サエ「………」

 

 

A『さあ、再びサニデイジャパンがオルフェウスを追い込んだ!!!このままシュートが決まるのか!?それとも止めるのか!?』

 

 

フラム「ぐぬぬぬぬぬっっ…!!!!」

 

ルビィ、ダイヤ「っっっっ!!!!」

 

千歌「うおぉぉぉぁぁぁ!!!!」

 

 

バリアには既に亀裂。あと一歩、あと一歩で届く。遠かったゴール。

あと数回もないチャンス。後先など考えず、ただゴールを、ただ目の前にある1点のために。すべてを出し切ろうと押し込む

 

 

海未「千歌、ダイヤ、ルビィ!!」

 

ことり「あと少し…!!お願い!!」

 

穂乃果「……」

 

 

フラム「ぐっっ…負けて…たまるかあぁっっ!!!!」

 

ダイヤ「…!!(足りないっっ!!)」

 

ルビィ「…っっ(足りないよ…!!)」

 

 

しかし、ここまで来て足りない。あと一歩

 

 

A『耐える…耐えます!!フラム選手!!』

 

 

ゴールは目の前まで来ている。あと半歩、いや、足を数センチ動かせばゴールのところまで来ている。だが、その数センチが足りない

 

 

ダイヤ(わたくしにもっと力があればっっ!!)

 

ルビィ("ATP"を使いすぎたっっ!!)

 

 

悔やむ、悔やむ、悔やむ。

全力でぶつかっても足りない…これ以上の道がない。ダイヤとルビィは思う。

 

だが、

 

 

千歌「……」ズキズキ

 

 

高海千歌は違った

 

 

千歌(全力を…出したい)ズキズキ

 

 

出せない。千歌はこの状況で、自分の持てる力を出せずにいた。理由は明白

 

 

千歌(今…全力を出すと…)ズキズキ

 

 

闇に飲まれる。最悪のタイミングだった

 

 

穂乃果「…まさか、千歌ちゃん」

 

ツバサ「千歌さんがどうしたの?」

 

 

穂乃果は気づいた。今、千歌は自分の中で葛藤していると、究極の選択を強いられていると

 

『このまま得点を諦める』『闇の力で押し切る』

 

違和感があった。頭痛。イギリス戦では無かったため大丈夫だと思った。しかし、時間が経つにつれて酷くなる痛み。

頭の中から殴られるような衝撃。まるで、自分の中から何かが出たがっているような…

 

千歌(どうしよう…どうしよう…どうしよう…)

 

嫌だ。もう誓ったんだ。

仲間を悲しませたくない。この力にはいい事なんて何一つもない。ただ辛いだけだ。

使えばたくさんのモノを失う気がする。千歌の心は完全に恐怖に支配されていた

 

ルビィ(千歌ちゃん…!?)

 

そして千歌の異変に気づいたルビィ。後半が始まる時もそうだった。顔が真っ青、恐怖に怯える目。何度か記憶にある。それ全て、いい記憶では無い

 

千歌(嫌だ。でもそうしなきゃ勝てない。嫌だ。勝てない。嫌だ。勝てない)

 

勝っても負けても、みんな悲しむ

 

でも、

 

穂乃果『力の、コントロールだよ』

にこ『私は千歌を信じるわ』

 

 

千歌「…………」

 

 

そうだ。そうだった。簡単な話じゃないか

 

 

ダイヤ「!?!?」ゾクッッッ!!

 

ルビィ「!?!?」ゾクッッッ!!

 

 

そうだよ。ははっ、はは、はははははは

 

 

フラム「!?」ゾクッッッ!!

 

フラム(何…寒気??この、感じ…)

 

 

千歌が扱えればいいんだよ。使い方を間違えなければいいんだよ。そうすれば誰も悲しまない

 

 

曜「この感じ…千歌ちゃんっっ!!」

 

にこ「…あのバカ、また」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

チカ「いいの?チカは全然構わないんだけど〜」

 

千歌「…お願い。勝つためにはこれしかない」

 

チカ「チカをコントロールできなかったらどうする気?」

 

千歌「…サッカーをやめるよ」

 

チカ「そっかぁ!いいんだね?いいんだね?いいんだね!?!?」

 

 

 

 

ごめん、みんな

 

 

 

 

 

 

「ブラックっっっっ!!!!!!」

 

フラム「!?!?!?」

 

 

チカ「アァァァッッシュ!!!!」ドガアァン!!

 

フラム「きゃっっ!?」

 

ルビィ、ダイヤ「!!!!」

 

 

ーーバシュゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

A『ゴール!!!日本、押し込んだぁぁ!!再び追いつく!!これが日本の底力です!!』

 

レヴィン『千歌選手が別の技を使っていたように見えましたが…』

 

 

 

結果的にはゴール

 

 

ダイヤ「ハァハァ……ま、また…」

 

ルビィ「ど、どうしよう…お姉ちゃん…」

 

 

しかし、代償はあまりにも残酷

 

 

フラム「ハァハァ…何…今の??」

 

チカ「…ふふっ…ふふふ♪久しぶりだねぇ!ダイヤちゃん!ルビィちゃん!」

 

穂乃果「…まだ早かった」

 

チカ「やっぱりシャバはいいね〜♪♪最高だよ」

 

鞠莉「こ、こんな時に出てくるなんて…」

 

 

一見、何も変わってないように見える千歌。

違う。その目は酷く濁り、まるで底なし沼。人間とは思えない雰囲気

 

 

チカ「千歌ちゃん、チカをコントロールできなかったらサッカーやめるって〜!」

 

穂乃果「…」

 

チカ「さぁて、千歌ちゃんが私をコントロールするのが先か。チカがイタリアのGKを叩き潰すのが先か……」

 

フラム「叩き、潰す…?」

 

 

チカ「覚悟しろよ♪♪♪」

 

 

日本 2-2 イタリア

 

 





サンライズブリッツ
稲森明日人の必殺技です。この技は千歌ちゃんが使うと思った方もいるかもしれません。穂乃果ちゃんが渾身の蹴りを何発もぶち込むことにより、『ブレイブショット』を超えた威力を出します



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第3章 92話 「イタリア戦 "光と闇の勇気"」


皆さんどうも!先程ド〇カンバトルで年末Wフェスの2体が発表されて鳥肌立ちまくりのルビィちゃんキャンディーです!いやー、かっこいい…かっこ良すぎて財力があったらつぎ込めるだけつぎ込めたいです(切実)

今回のお話でイタリア戦は終了です。強引な終わり方になりますが、たまにはこんな感じのもいいかなと。




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ことりのシュートブロック。海未のコース調整。穂乃果の新必殺技。そして、浦の星女学院が誇る『サンシャイントルネードTC』を放つ。しかし、もう一歩が足りない中、千歌は禁断の決断を求められ、それに答える。その名も『闇の力』

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

「…!高海千歌がチカラを発動しました」

 

「いよいよだな。データ分析の準備を」

 

「かしこまりました」

 

「…ふふふ、高海千歌には感謝せねばな。己の命を犠牲にし、我々の計画に協力してくれているのだからな」

 

 

 

――――――

 

 

 

A『なんとしぶとい…!!さすがは日本代表サニデイジャパン!!2度も離され、また追いつく!スタジアムが歓声により揺れています!』

 

レヴィン『"ラストリゾート"が決まらなかった後の、日本の切り替えが今の結果を生んでいるのかもしれません』

 

 

 

ーーーこれを知るのは一部の人のみ

 

日本「「……」」

 

鞠莉「……」

 

絵里「……」

 

チカ「〜♪」

 

千歌の未来を奪いかねない状況。

本人は平然としているが刻一刻、命が削られている

 

 

穂乃果「コントロールできるなら問題ないよ…でも、出来ないのならば話は別」

 

美奈「暴走する力は肉体、精神を削る」

 

 

A『ここでサニデイジャパンは選手を交代します!矢澤にこに代わり、桜内梨子が入ります!!』

 

 

梨子「ち、千歌ちゃん!!今すぐにやめて…」

 

チカ「やめる?やだなぁ〜梨子ちゃん、それを決めるのは私じゃなくて…もう1人の千歌!」

 

チカ「でも、今その千歌ちゃんはやめる気はないみたい♪」

 

梨子「そんな…」

 

チカ「大丈夫!本気で死にそうになったらやめるから!」

 

 

声はいつもの千歌と同じ。

しかし、この口調…喋り方には少し挑発味を感じる。余裕を見せるその態度、果たした本当に信用していいのか。

いや、信用など出来るわけがない。千歌の命を危険に晒した力だ。『死にそうになったらやめる』という言葉も信用出来ない。

 

しかし、美奈は違った

 

 

美奈「今は交代はしないわ」

 

真恋「…正気?」

 

美奈「数ヶ月前程の…力の暴走は感じられないわ。それに、あの頃よりも千歌の体は鍛え上げられている…死に直結するには試合時間も足りない」

 

真恋「本当にそれでいいの?監督として、母親として」

 

美奈「……私は、信じたいのよ」

 

 

千歌は言った。闇の力を我が物にしてやると。そのために日本のキャプテンとして、みんなに支えられながらここまでやってきた。

我が子が自分でさえ成し遂げられなかった"先"を目指している。純粋に信じたい。不安しかないが

 

 

フィレア「雰囲気が変わったね…」

 

カズハ「油断しないで。なんかヤバいよ、あれ」

 

 

残り時間15分。試合終了の笛がなる時、高海千歌はどんな気持ちでフィールドに立っているのか

 

ピーー!!!

 

 

フィレア「キャプテン!」パス

 

 

A『さあ、2-2になりましたこの試合、残り時間も少なくなってきました…!ここでボールを持ったのはカズハ選手だ!!』

 

 

カズハ(さっきのシュートを見る限り…パワーが跳ね上がった…)

 

チカ「ふふふ♪」バッ

 

カズハ「ダンテ」パス

 

チカ「ふーん…(勝負しないんだ)」

 

カズハ(危ない橋は渡りたくない時間だしね)

 

 

和葉の判断は千歌を避けること。

残り時間僅かな中で、興味本位に何らかの変化が起きた選手に突っかかるのは良くない。

今やるべきことは点を取ること。まさか、2点も取られるとは思わなかったのだが…

 

 

穂乃果「これ以上は…!!」バッ

 

ダンテ「!」

 

 

A『高坂穂乃果のチェック!!前進させません!!』

 

 

アリーチェ「ダンテさん、こっち!」

 

ダンテ「アリーチェ!」パス

 

アリーチェ「このまま持ち込んで…「悪いけど」

 

アリーチェ「!?」

 

ツバサ「行かせないわよ」

 

 

A『綺羅ツバサもディフェンス!!素晴らしい対応でイタリアに隙を与えません!』

 

レヴィン『監督の指示でしょうか…サニデイジャパンは守り重視になっている気がします』

 

 

その変化。フィレアたちも気づいていた

 

フィレア(同点で何故…守りに入ってる??)

 

 

勝っているならまだしも、2-2。日本はこの試合、勝利が絶対に欲しいはず。なのに攻めの気配が無くなってきている。

諦めた?そんなのありえない。他に何か理由があるはずだ

 

ーーーフィレア…!!!!」

 

フィレア「!?!?」

 

 

海未「油断ですか。あなたらしくない」

 

フィレア(しまった…園田海未、)

 

 

目の前には既に技を発動している"武風神"がいた。次の瞬間、身動きが取れないほどの強力な暴風がフィレアを襲う

 

 

海未「ー スピニングフェンス ー!!」

 

フィレア「っっっっ!!!!」

 

 

A『園田海未が必殺技でボールをカット!!』

 

 

海未「千歌っっ!!」パス

 

チカ「!!」

 

海未「私たちも貴方を信じます!!超えてみなさい!!自分を」

 

 

海未は千歌にボールを渡した。

危険なことだとは分かっている

 

 

梨子「海未さん…!?今の千歌ちゃんは危険…」

 

海未「梨子。忘れたのですか?あなた達が言った言葉を」

 

梨子「え…」

 

希「太陽を…輝きをみんなで支える。浦の星女学院のルールやないん?」

 

梨子「希さん…」

 

ことり「千歌ちゃんも今頑張ってるんだよね?私たちが力にならないと!」

 

ツバサ「出来ることは援護ぐらい。だけど、私たちも信じるわ」

 

梨子「…!!」

 

 

梨子は察する。何故、日本の選手たちがディフェンスに集中するようになったのか。

千歌のためだ。少しでも千歌にボールを渡せるように、少しでも千歌の負担を減らせるように

 

 

穂乃果「千歌ちゃんならやれる!絶対にできる!!私たちはその助けを、最大限のことをしようよ!!」

 

ダイヤ「…これでは立場が真逆ですわね、」

 

 

あの日のミーティング。浦の星女学院のメンバーが頼んだことを、今はほかのメンバーが実行しようとしている。あれだけ誇らしげに浦の星のサッカーを語ったのに情けない…だが、今からでも遅くはない

 

 

善子「やるんなら今しかないんでしょ。どちらにせよ、勝てなければ闇の力も何も無いわ」

 

ルビィ「そうだよ…!ルビィたちのサッカーはここで終わらせない!!」

 

 

チカ「…ってみんな言ってるけど、千歌ちゃん」

 

チカは心の中で足掻く千歌に話しかける

 

 

フィレア「っっ…まだまだ!!」バッ

 

チカ(!…囲まれたね…)

 

フィレア「必殺タクティクス ー カテナチオカウンター ー!!」

 

 

A『イタリアが高海千歌を包囲!!一度突破はされましたが、今度はどうでしょうか!?』

 

 

チカ「あーもう、邪魔だなあぁ…」ググググ

 

フィレア(…!?ドリブルで来ない!?)

 

チカ「ー ストームゾーン ー!!!!」ゴオォッ!

 

 

イタリア「「!!??」」

 

チカ「うらあぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 

カテナチオの中心でオーラを溜め、爆発させるチカ。まるで台風を発生させたかのような爆風。立っていられるものは皆無

 

 

ディアナ「きゃっっ!?」

 

エルマ「吹き飛ばされるっっ!!」

 

チカ「全員消えろおぉぉ!!!!」

 

 

見る限りではまったくコントロール出来ているように見えない。逆に力を暴発させているように見える技。

しかし、

 

 

鞠莉「千歌っちっっ!!」

 

チカ「!!(この爆風の中で!?)」

 

鞠莉「ー グラウンド・ゼロ ー!!」

 

 

ーードガアァァァァン!!!!

鞠莉は嵐に、爆発をぶつけ相殺。

イタリアのピンチを回避するのもあるが、それ以上に、千歌を思っての対処だった

 

 

鞠莉「ハァハァ…しっかりしなさい!!」

 

チカ「ハァハァ」ズキズキ

 

鞠莉「あなたキャプテンでしょ!!輝きを追い求めた高海千歌でしょ!!!」

 

チカ「!!!!」

 

 

 

ーーーー

 

 

 

鞠莉の声は届いているのか

 

 

 

千歌「ハァハァ…暗い…苦しい…」

 

否。千歌は底なし沼の中を掻き分け、無我夢中に足掻いていた。光などない。上に行こうとすればするほど、引きずり込まれている気がする

 

千歌「ハァハァ…嫌だ!!早く這い上がりたい!!」

 

手にまとわりつくだけではない。まるで無数の手のように、泥が千歌を掴み、足掻くため泥を飲み、意識が遠のく

 

千歌「私が力を使うって決めたのに…責任取らなきゃ…勝たなきゃ…嫌だ!!負けたくない!!」

 

前に穂乃果に言われた。『闇の力は負の感情』とは、こういうことなのではないか。

嫌な気持ちになる、そんな時と同じ感じがする。この泥は。

心をズキズキと刺し、気持ち悪くなる。考えれば考えるほど引きずり込まれる

 

千歌「嫌だ…嫌だ…」

 

そんな時だった。聞こえたのは

 

 

…チ…チャ

 

…チカ…ャン

 

…チカチャン

 

 

千歌(!!!!)

 

 

上。遥か上から、微かに聞こえる

 

 

…千歌ちゃん!!

 

 

千歌(みんなの、声)

 

 

千歌ちゃん!!!!

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

日本「「「千歌ちゃんっっ!!!!」」」

 

 

チカ「ぐっっ!!??」

 

鞠莉「!!」

 

チカ「ハァハァ…ぐあぁっ!?」ズキズキ

 

鞠莉「ちょっと!!千歌っち!?」

 

 

急に頭を抱え、唸り始めた千歌。

みんなの声に反応したのか?とても苦しそうだ

 

 

チカ「ハァハァ…本当に、やる気なの…っっ!!ぐあぁっ!?!?」ズキズキ

 

チカ「私を、コント…ロール…ハァハァ…するなんて…ハァハァ!!」ズキズキ

 

 

戦っている。千歌は自分の心の中で、追い求めていた輝きの時のように。足掻いて、足掻いて、足掻きまくっている

 

 

曜「千歌ちゃんっっ!!」

 

にこ「千歌!!早く戻ってきなさい!!」

 

理亞「千歌っっ!!」

 

チカ「ハァハァ…!!」ズキズキ

 

果南「千歌!!」

 

梨子「千歌ちゃんっっ!!」

 

穂乃果「大丈夫…出来るよ!!千歌ちゃん!」

 

チカ「ハァハァ…!!」ズキズキ

 

 

私は私だよ

 

チカ「…」ズキズ…

 

みんなの手が伸びてきていた。私も伸ばせば届く

 

チカ「…」

 

もう、弱い自分とはさよならしたい

 

チカ「……違う」

 

鞠莉「!!」

 

闇の力…もう1人の千歌だって、同じ千歌なんだ。

負の感情は私の感情。さよならじゃない。

邪魔なものじゃない、余計なものじゃない

 

 

輝きのその先へ行きたい

 

 

その為にも私は…自分の負を、闇をーーー

 

 

 

チカ「受け入れる」

 

鞠莉「ち、千歌…なの??」

 

チカ「うん。千歌だよ。大丈夫」

 

鞠莉「千歌…その目は」

 

チカ「?」

 

 

千歌には自覚がなかった。

それ以前に、何故、こんなにも早く闇の力をコントロール出来ているのか、理由を考えていなかった

 

 

チカ「…"ゾーン"かも」

 

日本、イタリア「「「!!!!」」」

 

 

闇の力をコントロールするための…"ゾーン"

 

 

チカ「ゾーンを発動したから…こんなにも早くコントロールできた…?」

 

 

ならば、千歌の"ゾーン"とは何なのか

 

 

チカ「…闇の力と真逆。だと思うよ」

 

鞠莉「真逆…?」

 

チカ「闇の力が『負の感情』なら、ゾーンは『勇気』」

 

 

まるで光と影のような力。

片方を扱うにはもう片方の力も必要。それぞれの力をひとつにすることにより可能にした、闇を受け入れることにより得た、不可能を可能にする力

 

 

チカ「ー Braveheart ー これが輝きの先だよ」

 

鞠莉「ゾーンで闇の力を…面白いわね!!」

 

 

理亞のゾーン×ATPとはわけが違う。

闇の力とゾーン、真逆の存在である両方をひとつにすることにより、新たな力として覚醒させた。それが『Braveheart』

 

 

チカ「…ふう、」

 

 

鞠莉「でも、ここからさーー

 

ーー「ー ZスラッシュGX ー」ギュン!!

 

鞠莉「っっ!?」

 

鞠莉(え…見えなかった…)

 

 

A『抜いたあぁぁ!!目にも止まらぬ速さで繰り出す必殺技はまさに電光石火!!』

 

レヴィン『フィレア選手のドリブル技にも並ぶ速さですよ!!』

 

 

サエ「…カズハ」

 

カズハ「!(監督に呼ばれた…?)」

 

 

穂乃果「千歌ちゃん、すごい!!本当にやっちゃったよ!!」

 

善子「危ない橋渡りすぎ…でも、大成功よね」

 

穂乃果「それ以上だよ…!!」

 

 

フィレア「っっ…千歌の技、何あれ…」

 

ラファエレ「目が、オッドアイになってる」

 

 

チカ「ーーーリバース!!!!」ズン!

 

アリーチェ、マルコ「!?!?」

 

チカ「ZスラッシュG2!!!!」ギュン!!

 

 

止められない。イタリア選手も千歌自身も。

溢れる力、まるで水が吹き出すかのような爽やかさと勢い。

先程までとは大違い。清々しくなるこの力。

左目の闇と右目の光がその力の強力さを物語る

 

 

チカ「この試合だからこそ…だったのかもしれない」

 

 

千歌は思う。この状況で"ゾーン"を発動出来たのはタイミングが良すぎると。

だが、理亞・ツバサ・フィレアと、何人もの選手が自分の目の前でゾーンを発動していた。それに刺激されたのかもしれないと。そして、みんなの声のおかげだと、あの声がなければ『Braveheart』発動は不可能だった

 

 

チカ「みんな…ありがとう!!絶対に決める!!」

 

フラム「…来い!!」

 

 

フラムは構えた。

今の千歌は、何かとんでもないシュートを撃ってくる。そう本能が訴えていた。

死守しなければいけないゴール、残りの全ての力をーーーー

 

 

 

 

「ごめん、フラム」

 

フラム「!?」

 

チカ「!!」

 

 

A『ああっと!?この選手が戻っていました!!』

 

 

カズハ「……」

 

 

A『"クイーン カズ"!!高海千歌の前に立ちはだかるのは、イタリアのキャプテンだ!!』

 

 

ルビィ「千歌ちゃん!今の千歌ちゃんならいけるよ!!!」

 

ダイヤ「輝きのその先を、和葉さんに見せてあげてください!!」

 

チカ「うん!!」

 

 

カズハ「…」

 

フラム「…?」

 

 

この状況、イタリアからすれば和葉は救世主。キャプテン同士の最終対決、頼もしい以外の言葉がなかった

 

フラムを除いて

 

 

フラム「カズハ…さん?」

 

フラム(なんだろう…様子が、おかしい)

 

カズハ「…ふぅ、」

 

チカ「勝負!!!!」

 

 

いつもはこんなに、深呼吸しない。

 

いつもはこんなに、ピリピリしていない。

 

 

いつもは…こんなに、

 

 

 

カズハ「っっっっ!!!!!!」ギロッ!!

 

チカ「!!!?!?!?」

 

 

怖い顔、していない

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ー イギリスエリア ー

 

 

エドガー「…そろそろ決着がついた頃でしょうか…」

 

フィリップ「え、エドガーさん!!エドガーさん!!!!」

 

エドガー「!?フィリップ…どうしたのですか、そんなに慌てて」

 

フィリップ「ハァハァ…大変…です」

 

エドガー「何があったのですか…」

 

フィリップ「日本 対 イタリア…」

 

エドガー「決着がついたんですね!」

 

 

 

フィリップ「日本が2-4で…敗れました!!!!」

 

 

 

日本 2-4 イタリア

 

 

 





ストームゾーン
ゲームではシュウや、セカンドステージチルドレンの選手が使っていた技です。最強クラスのドリブル技で、『ブラックアッシュ』と同様に闇の力の暴走状態限定技です。自身の周りに嵐を発生させて相手を吹き飛ばします

Braveheart
闇の力を受け入れ、ゾーンとひとつにすることにより手に入れた千歌ちゃんの新必殺技です。『勇気・勇敢な心』という意味に相応しく、強い決意の心がなければ発動出来ません。パワータイプの闇の力と、スピードタイプのゾーンを融合したため、特殊技の中では最強部類に入ります

イタリアはあのあと2点、どうやって決めたのか…



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第3章 93話 「運命の行方」

皆さんどうも!林檎を死ぬほど食べましたルビィちゃんキャンディーです!久しぶりの三日連続投稿、頑張りました…

今回は和葉さんが何をしたのか、決勝トーナメントへの行方、『2つの世界のサッカー』の伏線などなど!たくさん詰まったお話です!
そして最後には大切なお知らせが…?




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

闇の力が暴走する千歌。しかし、仲間たち呼び掛けにより、『勇気のゾーン』と『負の闇の力』をひとつにした『Braveheart』を完成させた。圧倒的な力で逆転…と思われていたが、

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ピッピッピーーーー!!!!!!

 

A『ここで…試合終了っっ!!!!』

 

 

 

果南「ハァハァ……」

 

ルビィ「っっ!!(なんで…なんでっっ!!)」

 

善子「…まったく適わなかったわ」

 

千歌「ハァハァ…」

 

 

日本の選手たちは全員。

疲労と脱力からその場に倒れ込んでいた

 

 

A『勝ったのは、イタリア代表オルフェウス!!』

 

 

カズハ「ハァハァ…」

 

カズハ「悪いね。勝たせてもらったよ」

 

 

A『なんと圧倒的な…2点だったか!!』

 

 

花陽「こんなことって…あるんですか…」

 

美奈「……」

 

理亞「負けた…の、私たち」

 

 

なんで負けたのか。

理由が非力以外、思いつかなかった

 

 

穂乃果「私たちは頑張ったよ…」

 

海未「穂乃果、」

 

穂乃果「でも、"あの技"には…確かに勝てないよ」

 

 

 

―――――――――

 

 

ーー試合終了前

 

 

カズハ『っっっっ!!!!!!』ギロッ!!

 

チカ『!!!?!?』

 

チカ『(目付きが変わった!?早く決めないとっっ!!)』

 

 

カズハの変化。それをいち早く察知した千歌はシュート体勢に入る。

 

が、

 

 

カズハ『っっ!!』ガッ!

 

チカ『(足で抑えられた!?)』

 

カズハ『最後まで楽しみたかったけど…監督の指示だし、私も勝ちたいから。ここからは…』

 

カズハ『勝つためのサッカーをするよ』

 

 

そこから。

何が起きたのか情報を処理するよりも先に

 

 

ーーーバシュウゥゥゥン!!!!!!

 

 

果南『…ぇ、』

 

 

3点目

 

 

善子『ウソ…急にどうしたのよ!?』

 

ことり『スピードがまるで違うよ…』

 

 

誰も追えぬ、対応できぬ。

ただ流されるままに

 

 

フィレア『キャプテンに続け!!!!』

 

イタリア『『うおああああああ!!!!』』

 

 

イタリアの圧倒に飲まれ

 

 

ー 2-4 ー

 

 

試合は終わった

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

カズハ「"G戦場のシンデレラ"」

 

千歌「!!」

 

カズハ「これが、イタリアの真の必殺タクティクスだよ」

 

千歌「必殺、タクティクス…」

 

 

答えだけ教えてくれた

 

 

カズハ「立てる?」

 

千歌「う、うん…」

 

 

和葉の手を借りる千歌。

『Braveheart』の発動で足に上手く力が入らない。だが…それを上回る動きをしていたはずの和葉は、平然とその場に立っている

 

 

カズハ「千歌。あなたの力、才能を感じたよ。まだまだ伸びる、強くなる」

 

千歌「…」

 

カズハ「でも、あなたたちの実力はここまでだよ」

 

 

馬鹿にされている、とは思わなかった。

事実であると受け止め、例えそれが心を貫く厳しい現実だったとしても。千歌は最後まで話を聞く

 

 

カズハ「試合残り15分までは互角…いや、そっちの方が優勢だった。でも、それだけじゃ決勝トーナメントは勝てないよ」

 

カズハ「日本は可能性の塊。それはまだ原石に近い。それをどこまで磨きあげられるか…」

 

千歌「…!和葉さん…」

 

カズハ「楽しみにしてる」

 

 

そう言い終わると、和葉は一足先にフィールドを後にした。

まだ日本が決勝トーナメントに行けるのかさえ分からない。だが、千歌はまだ諦めるなと、和葉から言われたような気がした

 

 

 

穂乃果「"G戦場のシンデレラ"??」

 

フィレア「ある意味、イタリアの切り札だね」

 

 

一方、和葉とは変わり、フィレアは隠さず穂乃果に必殺タクティクスの説明をしていた

 

 

フィレア「力を借りるの。未来の自分から」

 

穂乃果「み、未来の…自分??」

 

フィレア「簡単に言うと…"G戦場"を発動すると能力が何倍にも跳ね上がるの」

 

穂乃果「だから…みんなの動きが、」

 

フィレア「でも、使える時間は15分ぐらいが限界かな?その後は反動で15分間動けなくなる…」

 

 

言われてみると、イタリアの選手たちの披露も激しかった。"未来の自分から力を借りる"とは、そういう意味かと穂乃果は理解する

 

 

穂乃果「でも、そんな簡単に話ちゃっていいの?」

 

フィレア「私は…穂乃果、日本にもっと強くなってもらいたいの」

 

穂乃果「!!」

 

フィレア「その為にも、何が起こったから分からないまま終わるのは嫌でしょ?」

 

穂乃果「た、確かに…」

 

 

だがそれは、切り札がバレても問題ないという、イタリアの余裕の現れでもあると…穂乃果は少しだけ、いや、かなり悔しくなった

 

 

フィレア「結果はまだ分からないけど明日、イギリスとスペインの試合を見届けよう」

 

穂乃果「うん…!」

 

 

 

 

ダイヤ「鞠莉さん…決勝トーナメント進出おめでとうございます」

 

鞠莉「あら、そんな改まらないでよ…」

 

果南「完敗だよ…手も足も出せなかった」

 

鞠莉「ふむ…」

 

 

鞠莉は少しだけ考える素振りをし、こう言い放った

 

 

鞠莉「これでも私たち、一瞬負けると思ったのよ?」

 

ダイヤ、果南「…」

 

 

皮肉、にしか聞こえなかった

 

 

果南「でも2点差で勝ってるじゃん」

 

鞠莉「そう。ラスト本気を出させてね。つまり、今の日本には私たちを追い込むだけの力がある」

 

ダイヤ「…」

 

鞠莉「それ以前に、フラムが"正義の鉄拳"を使った時点で…かなり想定外だったんだから」

 

ダイヤ「想定外、だけの話です」

 

鞠莉「なら次は勝てるぐらい強くならないと」

 

ダイヤ、果南「!!」

 

鞠莉「私たちの"G戦場"、越えられる?」

 

 

相変わらず腹立つことしか言わない。

だが、目標を明確にしてくれたのも鞠莉。そう考えると、怒るにも怒れなくなる。

そしてそのまま、ダイヤと果南はその背を見送った

 

 

鞠莉「GOOD LUCKよ〜♪♪」

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

ー 観客席 ー

 

 

フロイ「"G戦場のシンデレラ"…イタリアは本当にチート集団だね」

 

絵里「えぇ。でも日本には感謝しないと…かなりの情報収…集…に、」

 

フロイ「…エリー?」

 

 

絵里の見る先はフィールドではなかった。

観客席を去るフードの少女。絵里は何故か引っかかる。

そう思った時には、既に足と口が動いていた

 

 

絵里「待って」

 

「…!」

 

絵里「あなた、私たちの試合も見に来ていたわよね?」

 

「…」

 

絵里「どうも…前に何度もあった事がある気がするのよ。どうなのかしら?」

 

 

そう絵里が話しかけると、フードの少女は絵里の方に振り向き、口を開いた

 

 

「気のせいじゃないかなぁ…私はあなたとは、はじめましてだよ?」

 

絵里「そう…」

 

 

フードの少女はそのまま会場を後にした。

はじめましてと言われた。しかし、絵里はまったく納得していなかった

 

 

フロイ「誰だと思ったの?」

 

絵里「…今この観客席に、いてはいけない人よ」

 

フロイ「??」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

そして翌日。日本代表は宿舎にて、自分たちの運命を決める試合、

イギリス対スペインを見届けていた

 

 

ことり「これで…ことりたち終わっちゃうのかな…」

 

花陽「ま、まだ分かりませんよ…!引き分け…またはスペインが勝利すれば…」

 

あんじゅ「でも、ほかのチームの勝ち負けを期待するのは…ちょっと、ね?」

 

「「………」」

 

花陽「ご、ごめんなさい…」

 

 

敵とはいえ共に試合でぶつかった、いわゆる戦友。それぞれのチームが、それぞれの思いを胸にサッカーを、本気のサッカーをしていた。負けろ、勝て、など言えるわけがなかった。

そして同時にこの試合結果によっては、日本のサッカーはここで終了となる

 

複雑な気持ちが混ざり合う中、1人の少女が口を開いた

 

 

千歌「胸を張ろう…みんな」

 

「「…!!」」

 

梨子「千歌ちゃん…」

 

千歌「私たち、課題が沢山あった…実力も足りなかった…でも、やるべき事は全てやった」

 

千歌「まだまだ強くなれる。そうじゃない?」

 

海未「千歌の言う通りです。私たちには可能性があります。実力も、決勝トーナメントへの切符も。信じて待ちましょう」

 

千歌「うん!進めたら想いを背負って、イギリスが進んだら託して…!」

 

 

こうして、サニデイジャパンの気持ちが固まっていく間にも、運命の試合は終盤を迎える

 

 

 

――――――

 

 

 

ー ヤマネコスタジアム ー

 

 

A『鉄壁を誇るスペインのディフェンスを、崩すことが出来るのかイギリス!!』

 

 

エドガー「ー 無敵の槍 ー!!」

 

 

A『おおっと!?ここで畳み掛けてきたぞ!!イギリスが必殺タクティクスを発動!!』

 

レヴィン『既に、日本 対 イタリア戦はイタリアの勝利で終了しています。グループAの決勝トーナメント進出は、イタリアが1位で決めていますが、あともう1チーム』

 

 

日本「「……」」

 

イタリア「「……」」

 

 

レヴィン『勝ち点によって、日本となるかイギリスとなるか…この試合は、自力進出の無くなったサニデイジャパンにとっても、大事な試合になるでしょう』

 

 

フィリップ「エドガーさんっっ!!お願いします!!」

 

エドガー「任せなさい!!」

 

エドガー「ー パラディンストライク ー!!」ドガアァン!

 

 

A『エドガー選手の渾身の必殺技!!スペインゴールに迫ります!!』

 

 

果南「絶好のチャンスなのに…なんで"エクスカリバー"を撃たないの!?」

 

月「……まさか、」

 

 

 

 

エドガー(ぐっ!?!?)ズキズキ!!

 

 

イギリスにとって、これは非常事態だった。

日本戦でダメージを負い過ぎたエドガーの足。"エクスカリバー"を撃つには回復が間に合わなかったのだ

 

 

「「「ー ザ・シェルター!!!!」」」

 

 

ドガアァァァン!!!!!!

 

これはスペインにとって勝機。イギリスの要塞にぽっかりと空いた穴。ここを攻めずしてどこを攻めるのか

 

 

A『やはり"無敵のジャイアント"が食い止めたあぁぁ!!!!』

 

 

エドガー「ハァハァ…っっ!!」

 

 

A『"ナイツオブクイーン"は果敢に攻めますが、もうひとつ力が足りないか…!!』

 

レヴィン『エドガー選手の足の不調が、大きく響いているようですね』

 

 

ベルガモ「不調でも強いな…イギリスは」

 

ルーサー「あぁ…この全力と日本は引き分けたのかよ、まったく…」

 

 

『無敵の槍』はカウンターに弱い。

イギリスの決死の特攻を何とか防いだスペインは猛攻を仕掛ける

 

 

エドガー「まずい…!!」

 

 

A『残り時間もあと僅か!!これが最後の攻撃か!?』

 

レヴィン『現在は1-1の同点。イギリスはもう1点が欲しいですね…』

 

 

エドガー「なんとしてでも勝つんだ…!!」バッ

 

フィリップ「エドガーさん!?」

 

 

 

にこ「…エドガーが全速力で戻ってるわよ」

 

善子「…なんか、すごく嫌な予感がするんだけど」

 

 

 

ルーサー「クラリア…!!」パス

 

 

A『ここでルーサー選手のロングパス!!クラリア選手に繋がります!!』

 

 

クラリア「これで最後だ…」ガキンガキンガキン!

 

 

クラリアはボールを磨き上げる。

穂乃果を絶体絶命にまで追い込んだ、果てしなく重いシュート

 

 

クラリア「ー ダイヤモンドレイV3 ー!!」ドガアァン!!

 

イギリス「「!!!!」」

 

 

A『強力なシュートが放たれましたっっ!!イギリス絶体絶命か!?』

 

 

エドガー「まだだ!!」ズザザザ!

 

フレディ「エドガーさん!?」

 

クラリア「…ゴール前まで戻っていただと!?」

 

 

 

にこ「ねぇ…本気でやるつもりなんじゃないの!?」

 

聖良「その時は蹴り返されて…イギリスが2点目を…」

 

海未「足を…捨てる気ですかエドガー」

 

 

 

背負わされた宿命。

エドガーのそれは、あまりにも大きかった。

しかし、

 

 

エドガー(悪くない、気分です…!!)

 

 

日本との試合と同様に1点。

全てをひっくり返す一撃を放てるなら本望

 

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!!」

 

 

1人の騎士の覚悟が、衝撃としてスタジアムに響き渡った

 

 

クラリア「打ち返されるっっ!!!?」

 

ベルガモ「そんなことしたら…」

 

 

エドガー「うぐぐぐっっ!!!!!!」

 

 

A『エドガーの聖剣か!!クラリアのダイヤモンドか!!勝つのは果たして!?!?』

 

 

 

 

 

 

エドガー「っっっっ!!!(痛みで…力が出せない…)」

 

 

エドガー「無念……!!!!」

 

 

 

バキイィィッッッ!!!!!!

 

 

スペイン「「「!!!!!!」」」

 

イギリス「「「!!!!!!」」」

 

 

 

聖剣がーーー折れた

 

 

 

エドガー、フレディ「うわあぁっっ!?」

 

 

ーーーバシュウゥゥゥン!!!!!!

 

 

A『ゴール!!!!クラリア・オーヴァンが"エクスカリバー"を破り2点目!!』

 

A『ここで試合終了!!勝ったのはスペイン代表 無敵のジャイアント!!これでイギリスは、決勝トーナメント進出が無くなりました!!』

 

 

エドガー「ハァハァ…ぐっ…くそっっ!!」

 

 

 

―――

 

 

 

 

凛「ナイツオブクイーン…負けちゃったにゃ…」

 

花陽「ということは…イギリスに勝ち点がつかない!!」

 

 

だが、喜びを顔に出すものはいなかった。

これでまた1つ、世界への夢を絶たれたチームが増えたのだ。自分たちは進まされたのだ

 

 

海未「…私たちは前に進みます。敗れたチームの想いも受けて、進み続けるだけです。そうですよね。千歌」

 

千歌「……うん」

 

 

罪悪感に落ち込む目はしていなかった。

ただ、前に進む覚悟を。テレビの向こうで悔しがる選手たちに向けて。ただ、静かに見続けた

 

 

A『さあ、これでFFIグループAの全日程が終了しました!』

 

 

カズハ「…決まったか、」

 

フィレア(次私たちが戦うのは、決勝だよ。穂乃果)

 

 

 

――――――

 

 

 

エドガー「イギリス代表失格ですね…私は」

 

 

仰向けで倒れるエドガー。

そんな彼女のもとに、チームメイトが駆け寄る

 

 

フィリップ「エドガーさん…!あなたは私たちの誇りです!!!」

 

エドガー「…フィリップ、」

 

ポール「私たちはエドガーさんがいたから、ここまで来れました…感謝しかありません」

 

ランス「今のイギリスはエドガーさんに頼りすぎ…敗因はそれだと思います」

 

フレディ「だから、もっともっと強くなって…エドガーさんを支えられるような選手になりたい!!」

 

エドガー「皆さん…」

 

 

クラリア「いいチームだな。エドガー・バルチナス」

 

エドガー「…クラリア・オーヴァン」

 

クラリア「仲間のために自らの足を向けるその姿。見事だった」

 

エドガー「…ふっ、次は全力で。私の聖剣をお見舞いしますよ」

 

クラリア「望むところだ」

 

 

両チームキャプテン、握手にて試合に幕を閉じた。それと同時に世界への挑戦にも。

しかし、両チームとも清々しい笑顔。

やりきった、頑張ったと、心から叫んでいるようだった

 

 

 

――――――

 

 

 

穂乃果「よし…これで決勝トーナメントに進出だよ!エドガー、クラリアたちと戦ってきたみんなの想いも一緒に、全力の上にも全力でいこう!!」

 

日本「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

ルビィ「…」

 

理亞「…」

 

 

 

 

 

FFIグループA最終順位

 

1位:オルフェウス 勝ち点7

2位:サニデイジャパン 勝ち点4

3位:無敵のジャイアント 勝ち点3

4位:ナイツオブクイーン 勝ち点2

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

『ーー以上でスポーツ速報でした。次の時間もサッカー女子日本代表サニデイジャパンのーー』

 

 

美渡「いや〜…ヒヤヒヤしたなぁ…」

 

志満「何がともあれ、千歌ちゃんたち決勝トーナメント進出ね!」

 

美奈「この後もサニデイジャパンの特集やるっぽいね。あんたはどう思う?」

 

 

 

 

梅雨「…え?いや、あの…」

 

 

志満「もう、お客様を困らせないでよ?」

 

 

 

次回、十千万のお客様

 

 

 




G戦場のシンデレラ
線上ではありません。戦場です。戦場に咲く花の如く、まるで魔法をかけられたシンデレラの如く。自らの能力を引き上げます。これは必殺タクティクスなので11人全員が発動できます。フィレア曰く、15分が今の限界。その後発動した分の反動が帰ってくる。まさに、『未来の自分の力を借りる』ですね


ということで次回はあの…七宮梅雨さんが登場します。お楽しみに!





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第3章 94話 「十千万のお客様」


皆さんどうも!Wドッカンフェス大勝利したルビィちゃんキャンディーです!雪降って寒いです。積もるのだけはご勘弁

今回のお話は前々から予告していました七宮梅雨さんの登場回です。口調やキャラ構成はルビィちゃんキャンディーの独断なのでただのサッカー好きになってしまいましたが…ひとまずここまでのFFIをいっきに振り返ります!



 

 

 

 

 

ーーー時は遡ること数分前。

私はとある旅館に宿泊。チェックアウトしようとしていた時だった

 

「…あの、次のバスは何時に?」

 

「えっと…次の時間は、」

 

旅館の女将さん…まだ若い女将さんだった。

その人にバスの時間を聞いた。これから沼津に向かい、目的地を目指すことになっていた。

しかし、

 

「1時間後ですね」

 

「うそぉ…」

 

私の名前は七宮梅雨。

どうやら、当分はバスには乗れそうにない

 

 

 

――――――

 

 

 

「この後もサニデイジャパンの特集やるっぽいね。あんたはどう思う?」

 

「…え?いや、あの…」

 

「もう、お客様を困らせないでよ?」

 

そして今に至る、どうしてこうなった。

理由を説明しよう。簡単な話だ

 

私が途方に暮れていた時、親切にも『十千万旅館』の若女将、高海志満さんが茶間で待っててくださいと。私を助けてくださった。

この時期は何かと冷える。外で1時間は考えられなかったので、まさに神の救いだった

 

「そんな気を張らずにさ、ゆっくりしてってよ」

 

「ありがとうございます…」

 

そして高海志満さんの妹、高海美渡さん。

お姉さんと違ってこの人は、ノリのいい先輩オーラを醸し出していた。ちょっと動揺はしたものの、普通にいい人だ。

私はお言葉に甘えて早速くつろぐことにした。とは言っても先程までこの旅館の一室でくつろいたばっかりなのだが…

 

「知ってる?サニデイジャパン。FFIっていうサッカーの世界大会ですごく話題だけど」

 

…知ってるも何も。私は何を隠そうサニデイジャパンの大ファンである。

実は、美渡さんがテレビでサニデイジャパンの特集を見てる時から、この話題が振られるのを今か今かと待ちわびていたのだ。

…とは本人には言えないが

 

「あら、そうなの?実はねこの旅館、サニデイジャパンのキャプテン、高海千歌ちゃんの家でもあるのよ!」

 

「え!?そうなんですか!?」

 

志満さんからとんでもないことを聞いてしまった…よく考えると同じ苗字"高海"。目の色も同じ赤でそっくりだ。驚いた…本当にそっくりだーーー

 

「ーーー千歌ちゃんのお母さんですか?」

 

「」ピキッ

 

「!?!?あ、あんた…違う違う違う…千歌は私たちの妹!!」

 

…私、たち?

 

「そうです〜。私は高海千歌の姉です〜。老けててごめんなさいね〜」ピキピキ

 

声がワントーン高くなった。素人でも分かる。殺気を放っていた。

美渡さんの顔も真っ青だ。私はそこでとんでもない過ちを犯したのだなと理解した。

ってか志満さんの顔がマジでヤバイ。なんかナ〇ト疾風伝で見たことがある。今現在はナ〇トの奥さんのさ、ほら、

 

「なんか違うこと考えてないー???」

 

その後、私は全力で土下座した

 

 

 

――――――

 

 

 

『さあ、激闘を繰り広げているサニデイジャパン!ここで今注目の選手たちをご紹介!』

 

あの後、なんとか許してもらった私。

今は3人でサニデイジャパンの特集を視聴中。話に花が咲いていた。

…ってか母親がサニデイジャパンの監督の高海美奈って反則でしょ、いろいろと。

そう、いろいろと。どうやってあの小さな体から3人も産んだの??パワフル??何、伊達に日本の監督はやってないって?(関係ない)

 

「へぇー!梅雨は鹿角姉妹が一番好きなんだ」

 

「あの姉妹以上の姉妹はいません」

 

言い切る。先に謝っておくが黒澤姉妹推しの方々、世界一の姉妹は鹿角姉妹なのでそこのところよろしく

 

「イタリア戦のシュート凄かったよな…"氷結のグングニル"」

 

「2人の全てが込められたシュートって感じがしたわ。本当に凄かった」

 

おふたりからも絶賛の"氷結のグングニル"。

日本VSイタリア。日本に立ちはだかった、経験史上最強の相手フラム・ソレイユ。

あの無敵かと思われた『ラストリゾート』をも無力化する『イジゲンザハンド』。

それを最初にぶち破ったのがグングニルだった。

鹿角聖良が危険覚悟で連続発動した最強ブロック技『アイス・エイジ』に鹿角理亞がオーバヘッドで合わせる。

氷結のはずなのに、勝ちたいという想いから放たれる熱さが私にも伝わってきた

 

「試合には負けてしまったけど、全力で最後まで戦っていたと思います」

 

「そうね。イギリスやスペインの選手の想いも背負って戦って欲しいわ」

 

サニデイジャパンの特集番組がFFIの回想を始めた。私はサニデイジャパンの全試合をテレビで観戦。記憶が次から次へと蘇る

 

 

 

まずはFFIアジア予選。

サニデイジャパンの、日本の選手たちのそれぞれの新たなる挑戦となった世界の頂き争奪戦。その第1試合、日本VSサウジアラビア

 

「初戦から予選の突破候補だったもんな…」

 

美渡さんの言う通り、サウジアラビアはアジアの中でも3本の指に入るほどのチームだった。

砂嵐で視界を遮り、そこから仕掛けるラフプレー。まだお互いを理解し合えていなかったサニデイジャパンはかなり苦戦した。

そんな中で途中交代で出場した矢澤にこのドリブルでの無双。そこから日本は流れを掴み、極めつけは園田海未の新必殺技3連続。あれは本当に人間の域を超えていたと思う

 

「矢澤にこちゃんのドリブルはいつ見てもすごいわよね。日本だけじゃなくて、どのチームもあの子には勝てないんじゃないかしら」

 

「必殺技を使われるとどうしても限界はありますが、必殺技なしの個の力ではにこさんが圧倒的ですね」

 

 

そして第2試合、日本VSオーストラリア。

"海中に潜るシュート"に勝てないと判断した穂乃果は果南とGKを交代。果南が期待に応え、見事サメを討ち取ったのは記憶に新しい。

また、オーストラリアの必殺タクティクスやGKの『グレートバリアリーフ』に苦しめられた日本、しかし機転を利かせて同点にまで追いつき、最後はまさかの理亞がルビィの『Awaken the power』を発動。

力の差を見せつけて、劇的勝利を手にした

 

「理亞が"ATP"を発動した時は驚いたなぁ」

 

「選手インタビューで言ってたんですが、前々からルビィちゃんの"ATP"を継承する話が出てたらしいです」

 

「そっか。確かあの頃はまだルビィちゃんが怪我で代表離脱していたのよね」

 

 

そう。そしてアジアだけでなく、世界中が注目した試合が第3試合、日本VS韓国。

予選突破最有力候補であった韓国。連携から放たれる強力な必殺タクティクスにより、日本は思うように攻撃ができず、徐々に体力を削られていった。

その証拠に運動能力がずば抜けている星空凛や、松浦果南が疲労が原因での負傷で交代。

鹿角理亞は再び"ATP"を発動するも、重度の負荷で再起不能。絶体絶命と思われた…

 

「私、あの時テレビの前で思わず涙が出たわ」

 

「地区予選では出場不可能だと言われてましたからね」

 

 

そう。本来はいるはずのない選手。

『紅き流星』黒澤ルビィがフィールドに現れたのである。

圧倒的な力は健在。世界に轟く一撃、触ってはいけないシュート『ラストリゾート』を放ち、強引に試合の流れを変えたのは爽快だった

 

「でも、あの時はまだルビィちゃんは不調だったらしいの。右足が治りきってなくて」

 

「そんな状態でも出たんだからすごいよな」

 

 

黒澤ルビィも合流し、地区予選は残り1試合。

ダークホース同士の対決となった第4試合、日本VS中国。

蹴球雑技団。その名の通りまるで曲芸のような動き、予測不可能なプレーに日本は苦戦していた。そんな中で目立っていたのは日本の新必殺技だった。

綺羅ツバサと渡辺月の『コズミックブラスター』、黒澤ルビィと鹿角理亞の『クロスファイア』など強力なシュートが中国のゴールを貫き、鹿角聖良の『氷の矢』、高坂穂乃果の『ゴッドハンドW』もあり、試合は押されながらも拮抗。

世界への切符を掴んだ決め手となったのは…

 

「「「マキシマムファイア」」」

 

先程テレビでも『サニデイジャパンのスーパープレイ集』に選ばれていた黒澤ダイヤの一閃。

様々な想いと覚悟を背負ったその目には、世界が映っていたのだろうか。

その頃は黒澤ダイヤ代表離脱の噂もあったので、無事にそのまま世界に行けて本当に良かったと思う

 

 

 

「アジア予選もいろいろあったわね〜」

 

志満さんはテレビの特集がアジア予選を一通り紹介し終えると同時にしみじみと。

私も何度もサニデイジャパンの国内の試合は現地で観てきたが、選手たちの気迫がまるで刃物のように観客席にまで放たれていたのは未だに覚えている

 

「梅雨ちゃんはサッカーやってるのかしら?」

 

「私は…見る専ですね」

 

「おっ!私も見る専だよ。うちはサッカー1家だから、肩身が狭かったんだよね…」

 

意外にも美渡さんはサッカーをやったことがないらしい。聞くと志満さんは静岡の強豪校の選手で、お父さんも地元でサッカーをしていたらしい。確かに狭い

 

「なんでサッカーをしなかったんですか?」

 

「だって…火を出したり高く飛んだり、高速移動したり…怖いじゃん?」

 

「……」

 

そんなメタ?な話を聞いているあいだに、次のコーナーが始まっていた

 

「…!来た、来たわ!FFI本戦!」

 

 

志満さんが急にはしゃぎ始めた。

突然のことで驚いたが、美渡さんが理由を教えてくれた

 

「…志満曰く、最愛の弟子のデビュー戦なんだってさ」

 

「弟子…?デビュー戦?」

 

本戦で初出場…思い当たる選手は1人しかいなかった

 

「同じ地元の…津島善子?」

 

「大正解♪♪♪」

 

 

志満さんのお弟子さんデビュー戦。

FFI本戦グループA第1試合、日本VSスペイン。

アジア予選の時とは次元の違う強さ。

果てしない差のフィジカル。そして、スペインキャプテンのクラリア・オーヴァンのシュートは高坂穂乃果のアジア予選までの技を瞬殺するという絶望的な強さだった。

この時はさすがに私も焦った。今までが調子良かった分、ショックが大きかった。

だがしかし。禁断の『ゴッドハンドX』でスペインに食らいつく穂乃果。

津島善子の『共鳴』による無双。

日本の選手たちが自分たちの限界以上のサッカーをした結果…なんと逆転勝利

 

「今考えると、スペインから勝ち点3を取ったことが大きかったな」

 

「日本はヨーロッパ3強とどんな試合を繰り広げるか、世界から注目されていましたが…まさかスペイン、イギリスを差し置いて決勝トーナメントに進出するとは…」

 

「信じてはいたけど、本当にびっくりね」

 

 

そして第2試合、日本VSイギリス。

止めること不可能と言われた"エクスカリバー"をシュートブロックによって抑える。

高海美奈監督の采配が日本に勝ち点をもたらしたのだと私は思う。

相手が強力なシュート技を使ってきたので、日本は守りでたくさんの覚悟を見せていた気がする。南ことり、ATPコンビのシュートブロック、松浦果南の新必殺技。

最後はシュートを蹴り返すという、エドガーの人間越えの技によって惜しくも同点になってしまったが、この時はグループ首位で最前線を走っていた

 

「そしてイタリア戦に至る…」

 

「頑張ったんだけどね…惜しかったわ」

 

 

イタリア戦は純粋に力不足だった。

新必殺技もたくさん発動し、日本は瞬間的に進化を重ねながら世界最強の一角に挑んでいた。

だが、結果は敗北。決勝トーナメントへは進めたものの、本人達はすごく悔しいと思う

 

「日本はまだまだ強くなります。敗北を知るチームは強いってよく聞きますもんね」

 

「そうそう!サウジアラビア戦からイタリア戦までのあいだにも、あいつらは見違えるほどに強くなったからな」

 

美渡さんは得意げに語った。

確かに自分の妹がこうも注目されていると、姉として誇らしいだろう。

よく喧嘩する、バカ千歌、と美渡さんは言うが本当は一番千歌ちゃんを心配・応援しているのだと、なんとなく感じた

 

「梅雨ちゃんは今のサニデイジャパンに思うところはある?」

 

「そうですね…」

 

個人技…では世界に通用する選手が少なからずいると思う。

ドリブルでは矢澤にこ、攻撃面ではATPコンビやゾーンを扱うメンバー。

守備面では共鳴の津島善子、ちゃっかり『ブレイブショット』を止めた鹿角聖良に『エクスカリバー』をブロックした南ことり。

そして、GK2人の成長は著しい。

まだまだ発展途上ではあるが、何度も世界の選手たちを苦しめていた。

 

でもだんだんとスタメンがはっきりしてきたと思う。スポーツでは当然といえば当然なのだが、ここから先。

世界でもさらに選りすぐりのチームの戦う中、控えで待つ選手の強化も重要な課題だ

 

「そうね…個が強くても限界があるわ」

 

そしてチームプレー。

これはイタリア戦で課題としてはっきりしたと思う

 

「イタリアの必殺タクティクス…代表チームとは思えないほどの連携だったよな。イギリスのタクティクスも」

 

日本もチームワークなら負けてはいないが、チームプレー、要するに必殺タクティクスに弱みを感じる

 

「これといった強力なタクティクスが日本代表にはないからね。各学校の時は目立っていたんだけど」

 

「梅雨ちゃんはどの学校の必殺タクティクスを知ってる?」

 

「やっぱり函館聖泉の『絶対障壁』。あとはUTX高校の『グリッドオメガ』。音ノ木坂学院は『KiRa-KiRa Sensation!』、『僕たちはひとつの光』など無双を誇るタクティクス。浦の星女学院は『ミラクルウェーブ』や『WATER BLUE NEW WORLD』など…ずば抜けていると言われているのはこれらだと思います」

 

「だけどこれを代表チームで扱うのが…難しいのよね」

 

代表は言うならば選抜メンバー。

初めましてのメンバーもいる中で、心を通わせて共に戦ったチームの必殺タクティクスを代表チームでも発動しろというのは本当に難しい。

特に強力になればなるほど。

現に先程のタクティクスはどれも強力だが、日本代表ではひとつも使われていない。いや、使えないのだと思う

 

「今のサニデイジャパンには必殺タクティクスが必要…そうなると必然的にチーム全体の強化が必要になるわね」

 

「それはもう練習しかないな。次の試合までにどこまで課題を完成させられるか」

 

ちなみに。先程テレビで発表があったが、決勝トーナメントの第1試合のチームは、『アメリカ代表 ユニコーン』。

大量得点を叩き出すチームとしてかなり有名である

 

「いや〜、梅雨は本当にFFI詳しいよね」

 

「伊達に応援はしてないです!」

 

専門家か何かなのかというぐらい語った。

美渡さんと志満さんには会えて本当に良かった。こうやって高まる熱い想いを共有するとこの先が膨らむ。

日本はこれからどこまで強くなるのか。

どんな新必殺技が登場するのか。

そして…優勝できるのかと

 

「大丈夫よ。あの子たちなら絶対に優勝する」

 

「そうそう!毎回ギリギリの試合でヒヤヒヤするけど、あいつらは諦めることをしないから」

 

私もサニデイジャパンならやってくれると思う。まだまだ試合は残っている。

今この時も日本代表は練習に励んでいるのだろう。そう思うと早く応援に行きたくなる

 

「…応援?じゃあ、梅雨のこの次の目的地は?」

 

「このままライオコット島に行きます!現地で日本を応援してきます!」

 

「そうなの?それは楽しみね!」

 

 

話も一区切りしたところで時計を見る。

丁度1時間。そろそろバスが来てもいい頃だが…

 

「…あ、来た」

 

「バスの音!梅雨ちゃん、急いで!」

 

油断していたところでバスが来た。

私はすぐに荷物をまとめ、お2人にお礼を言って十千万旅館から飛び出した

 

「千歌たちに会ったら宜しくね〜!」

 

見送ってくれた2人に手を振りながら。

私は次なる目的地を目指し、バスに乗り込んだ

 

 

 

「…ふぅ、もう少し話してたかったけど」

 

「こんなに話したのは久しぶりだわ。また会えるといいわね」

 

2人は落ち着いたところで茶間に戻る。

そのまま美渡はケータイを取り出し、何かを読み始めた

 

「…?美渡ちゃん、何読んでるの?」

 

「最近小説にハマってるんだよね。そんな時に面白いのを見つけてさ!」

 

「なんて名前なの?」

 

「『Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』』ってタイトルなんだけどさ〜」

 

「私も読んでみよっかな。作者さんの名前は?」

 

「えーっと…七宮梅雨」

 

「………」

 

「………」

 

 

気づいた時には時すでに遅し☆

 

 





七宮さんはライオコット島に向かうようです。続くか続かないかは…お楽しみに



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第3章 95話 「国境を越えて」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!

今回のお話から物語はまた新たな方向に動き出します。脱線と言うのでしょうか、FFIから少し離れます




 

 

 

 

イタリア戦の日から数日が経とうとしていた。サニデイジャパンは毎日日が暮れるまで練習し、自分の限界と向き合っていた

 

 

海未「果南!もう一発行きますよ!」

 

果南「来い!!!」

 

海未「はあぁっ!!」バシュッ!

 

果南「くっっ!!」

 

果南はシュートを止めるも、満足することは無い。自分は和葉のシュートを1度も止めることができなかった。とてつもなく重いシュートを相手にすると弾かれてしまう、それは自分の力が足りないからだ

 

 

果南「まだまだ…!!」

 

 

そして、

 

 

 

 

穂乃果「ー ゴッドハンドX ー!!」ドォン!

 

FW「「「!!!!」」」

 

曜「穂乃果さん完全復活!!」

 

穂乃果「いっててて…うん!もう大丈夫だよ!」ビリビリ

 

月「でも反動はまだ残っているみたいだね」

 

しかし、明らかにスペイン戦の時よりも赤い電気が減っている。

穂乃果がここ最近、巨大タイヤにての特訓をしていることは全員知っていたが、こうも早く成果が現れるとは…

 

 

理亞「私も負けてられない」

 

ルビィ「理亞ちゃん…」

 

理亞「続きよ。早く練習に戻るわよ」

 

理亞「"ラストリゾート"を少しでも早く習得しないとなんだから」

 

理亞の目標。

それは日本代表のエースストライカーになること、その為にもまずは現エースストライカーのルビィの最強技"ラストリゾート"を習得し、同レベルにまで成長しようと考えたのだ

 

 

ルビィ「もう少し…左足を早くボールに当てて」

 

理亞「くっっ…」

 

理亞(分かってはいたけど…難し過ぎる…)

 

 

 

善子「…(理亞がラストリゾートか、)」

 

花丸「…善子ちゃん」

 

善子「ん?」

 

花丸「…」

 

マネージャーとして、テーピングなどの買出しに行っていた花丸。

戻ってきて、すぐに善子の元へと来たと思いきや、あるものを善子に渡そうとしていた

 

 

善子「腕輪…?」

 

花丸「買出しの時に見つけたずら。黒く光ってて…堕天使にぴったりずら。マルとは色違いのお揃い」

 

善子「堕天使…ね」

 

善子はせっかくだからと受け取るも、堕天使という言葉にはまったく反応しない

 

 

花丸「…善子ちゃん。なんで堕天使やめちゃったの?」

 

善子「………邪魔だったからよ」

 

花丸「え…邪魔?」

 

善子「そうよ」

 

善子は前々から聞かれると分かっていたかのように、すぐに話し始めた

 

 

善子「共鳴を発動するのに、余計な感情は邪魔でしかないの。堕天使ヨハネにいつも私は気を取られて…どうしても上手くいかなかった」

 

花丸「だからって…」

 

善子「今考えると私が代表に選ばれなかったのも、周りよりも弱いのも、浮いてるのも…全部堕天使のせいじゃない」

 

花丸「やめるずら」

 

善子「私は強くなるために堕天使を捨てたの。そのおかげで今は最高よ。あんな弱いやつは捨てて清々したわ」

 

花丸「…本当にそう思ってるの?」

 

善子「えぇ」

 

違う。善子ちゃんは嘘をついている

 

 

花丸「今の善子ちゃん、全然笑ってないよ」

 

善子「…」

 

なんなのよ…花丸は、知ったような口して

 

 

善子「ずら丸、これ以上私の「まぁまぁまぁ!」

 

善子、花丸「!」

 

ことり「今は練習中だから…いい雰囲気で頑張ろ?」

 

ことりが止めに入っていた。

正直なところ、ことりも善子が堕天使をしなくなったことにはすごく気になっていたが、思った以上に複雑な事情があることを察した。

今は大事な時期、刺激するのは良くないと思った時には既に体が動いていたのだった

 

 

花丸「ごめんなさい…ことりさん、」

 

ことり「大丈夫だよ。ことりも気になっていたから盗み聞きしちゃった…でも、今は大事な時期だからね」

 

花丸「はい」

 

花丸と善子の腕輪がキラリと光る。

まさか、このあとこの腕輪のせいであんな事件に巻き込まれるとは…この時、まだ誰も知らない

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

英玲奈「前!空いてるぞ!!」

 

にこ「凛!!」パス

 

ふわりと浮かべたボール。

取る相手のことを考えたパスだ

 

 

凛「このままシュー「させませんよ!」聖良

 

凛「にゃ!?」

 

にこ「あちゃー…聖良にはそのパスは通用しないわね」

 

また1つ、また1つと成長していく。

そんな練習を続けている時だった

 

 

花陽「…あれ?え?え???」

 

真姫「花陽、どうしたのよ?」

 

花陽「あ、あそこにいるのって…」

 

真姫「?」

 

花陽の見る先…グラウンドの外でこちらを見る少女が1人

 

 

 

 

フィレア「やってるね…!」

 

 

花陽「イタリアの"白い流星"、フィレアさん!?」

 

穂乃果「フィレア!!」

 

フィレア「穂乃果!!」

 

練習を一時中断し、突然現れたフィレアに注目するサニデイジャパン。

敵情視察なのか…?と疑うメンバーもいるが、穂乃果にそんな考えはなかった

 

 

穂乃果「突然どうしたの!?びっくりしたよ…!そうだ!一緒に練習しようよ!」

 

フィレア「いいね!ボール頂戴!」

 

穂乃果「でりゃっ!!」バシュッ!

 

穂乃果がボールを高く蹴り上げ、フィレアにボールを渡す。

それに反応したフィレアは空へ

 

 

フィレア「えいっ!」パス

 

穂乃果(誰もいないところに…パス?)

 

 

 

ボールを受け取ったのは巨神と呼ばれる少女。日本のメンバーと体格に大きな差はない。だが、底無しのパワーは世界トップクラス

 

クラリア「久しぶりだな。穂乃果」

 

穂乃果「クラリア…!!」

 

クラリア「っっ!!」パス

 

果南「…あ!?」

 

 

 

金髪が揺れる。

いち早く反応したのは果南とダイヤだった。

放ってはおけないその少女、かつては仲間。今はライバル

 

鞠莉「チャオー♪♪」

 

ダイヤ「鞠莉さん!?」

 

果南「いつも急に出てくるんだから…」

 

鞠莉「Hey!パスよエリー!」パス

 

 

 

鞠莉が呼ぶ名に一同。特に音ノ木坂学院のメンバーは目を見開いた。

すらっと伸び、引き締まった体。

今やロシア代表の主力選手

 

絵里「ナイスパスね」

 

穂乃果「ぅ絵里ちゃん!!」

 

希「えりち…!」

 

絵里「開会式以来ね。みんな!」パス

 

 

 

ボールを受け取った少女はただでは取らない。空中で高度なテクニックを見せつけ、日本の選手たちにプレーで挨拶する

 

和葉「行くよ!決めちゃって!!」パス

 

千歌「和葉さんも…!!」

 

にこ「ちょっ…和葉がパス出したのって…」

 

 

 

天に伸びる巨大な聖剣。

空のように青く透き通った髪。

紳士淑女。それは彼女のためにある言葉とも言える

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!」

 

 

ギシャアァァァァァン!!!!!!!!

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

穂乃果「エドガーも…!よーし!!」

 

挨拶がわりだ。と言わんばかりのシュート。

地面を抉りながら穂乃果に迫る

 

 

穂乃果「はああぁぁぁっっっ!!!!」バッ

 

穂乃果は応える。両腕をクロスし、太陽を宿した右腕で聖剣を捕らえる

 

 

穂乃果「ー ゴッドハンドX ー!!!」ドォン!

 

エドガー「!」

 

赤い炎は青の斬撃を沈める

 

 

穂乃果「うん!いいシュート!」シュゥゥゥ…

 

エドガー「見事です」

 

 

――――――

 

 

 

突然現れたグループAの各チーム選手、そしてロシア代表選手。

サニデイジャパンのメンバーは1度集まり、フィレアたちの話を聞くことにした

 

 

フィレア「千歌。彼女らはジャパンのみんなに言いたいことがあるそうだよ」

 

千歌「言いたいこと?」

 

エドガー「まずは、サニデイジャパンの決勝トーナメント進出を祝って、イギリスを代表してエールを送りたい。おめでとう」

 

千歌「エドガーさん…ありがとう!!」

 

クラリア「私も日本の戦士たちに想いを託したい。ヨーロッパ、アジア、国境など関係ない。私たちは日本を全力で応援する」

 

千歌「クラリアさん…!!」

 

和葉「どうやら穂乃果も怪我は完治したらしいね」

 

穂乃果「おかげさまでね…」

 

フィレア「穂乃果、次は決勝で勝負だよ!」

 

穂乃果「うん!今度はキーパーとして戦うよ!」

 

絵里「あら、同じ決勝トーナメントに進んだロシアもいるんだけど」

 

にこ「あんた…ほんとなんで来たのよ」

 

イタリアとの決勝戦、日本からすればリベンジマッチとなるわけだが。

その前にロシアと、順調に進めば日本は準決勝でロシアと戦うことになる

 

 

にこ「悪いけど負ける気は無いからね」

 

絵里「あら。言ってくれるわね。でも私たちは手強いわよ?」

 

クラリア「ロシア代表のエリ・アヤセか…」

 

希「ウチらと同じ学校だったんよ」

 

和葉「そうか…それで」

 

固い握手を交わすも火花を散らす選手たち。

そんな中、穂乃果から提案が

 

 

穂乃果「これだけのメンバーが揃ったんだから、一緒に練習やろうよ!」

 

クラリア「それはいい考えだ。だが、エドガー。足は大丈夫なのか?」

 

エドガー「あれから私は療養していましたから、今は完治しています。ですので体が鈍ってしまって…是非参加したい」

 

絵里「いっそ2チームに分かれて、ゲームをするのはどうかしら」

 

ということで。

急遽決定した合同練習。

チーム分けはヨーロッパ3強を眼の前に興奮した花陽が秒で作ったくじ引きで

 

 

絵里「白ね」

 

穂乃果「絵里ちゃん!穂乃果も白だよ!」

 

鞠莉「果南と同じチームは久しぶりデース!」

 

果南「もう…ちゃんとやってよね?」

 

ルビィ、理亞「…」バチバチ

 

ダイヤ「あの2人はどうしたのですか…」

 

フィレア「なんか、別々のチームになったとわかった瞬間…睨み合い始めて…」

 

にこ「あぁ、気にしないで。いつもの事だから」

 

理亞「今日こそ勝つ」

 

ルビィ「今日も勝つ」

 

 

花陽「そ、それでは白と赤でポジションについてください!!」

 

 

 

ー 赤チーム ー

 

FW…………クラリア、黒澤ダイヤ

 

MF……フィレア、高海千歌、渡辺月

 

MF……………矢澤にこ、統堂英玲奈

 

DF………鹿角聖良、小原鞠莉、東條希

 

GK……………………松浦果南

 

 

ー 白チーム ー

 

FW……綺羅ツバサ、三浦和葉、星空凛

 

MF………………園田海未、渡辺曜

 

MF……………桜内梨子、エドガー

 

DF……南ことり、綾瀬絵里、津島善子

 

GK…………………高坂穂乃果

 

 

 

 

ルビィ「…待って」

 

理亞「私たちはどうしたのよ」

 

あんじゅ「しょうがないわよ。私たちはベンチじゃんけんで負けた者。ここで交代を待つのよ」

 

ルビィ、理亞「「……」」

 

 

 

花陽「では、今日は監督が用事でいないため、私が主審を務めさせていただきます!キックオフは白チームからです!」

 

 

穂乃果「白チーム!勝つぞおぉぉ!!!!」

 

和葉「はは、相変わらずだね…」

 

海未「元気だけは世界一なんですから…」

 

 

ピーー!!!!!

 

 

和葉「海未!」パス

 

白チームからのキックオフで始まった紅白戦。和葉からのパスなんて何年ぶりか…海未は考えるも油断はしない

 

 

クラリア「簡単には行かせないぞ!」

 

海未(やはり厳しいディフェンスですね…ですが、)

 

海未「エドガー!」パス

 

クラリア「バックパス…!」

 

エドガー「いい判断ですね!」バッ

 

クラリアを突破するエドガー。

すぐに千歌がチェックに入る

 

 

千歌「っっ!!」

 

エドガー「私から奪えますか!」バッバッ

 

千歌「体、鈍ってるんじゃなかったんですか!?」

 

エドガー「あまい!!」

 

千歌「!!」

 

エドガーが千歌を抜く。

鈍っているとはいえ、ヨーロッパでもトップクラスの実力を持つ選手。

油断していい相手なわけが無い

 

 

曜「エドガーさん…!」

 

エドガー「!!」パス

 

エドガーが前線にロングパスを出す。

しかし、

 

 

鞠莉「ー シャイニーフェザー ー!!」

 

エドガー、曜「!!」

 

鞠莉の射程範囲内だ

 

 

凛「あのロングパスを取るの!?」

 

和葉「鞠莉なら確かに取っちゃうね…戻ろう!」

 

白チーム優勢かと思われたが、赤チームも負けていない。試合は拮抗するも、先にシュートを仕掛けたのは…

 

 

フィレア「勝負だ!穂乃果!!」

 

穂乃果「来い!フィレア!!」

 

ついに実現した穂乃果とフィレアの勝負。

この1年で積み重ねた努力を見せてくれと、フィレアはシュートの構えに入った

 

 

フィレア「ー オーディンっっ!!!!」

 

 

 

 

 

ガララララドシャアアァァァン!!!!!!

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

フィレア「なんだ…!?雷…?」

 

ツバサ「結構近かったわね…」

 

雨や風ならまだしも、雷は強行するには危険だ。南の島は天気が変わりやすい。

予報では晴れでも、こういった天候の変化はよくあることだ

 

 

絵里「どうするの穂乃果?続ける?」

 

穂乃果「うーん……」

 

またとない機会の勝負、しかしもしもの事があったら…果南は試合中断を懇願。

ルビィと理亞は継続を希望。

穂乃果は悩む。だが、

 

 

ことり「善子ちゃん…それ、」

 

善子「な、何よこれ???」

 

試合は中断せざるを得ない状況へと動く

 

 

真姫「善子の腕輪が…光ってる!?」

 

花丸「ずら!?」

 

真姫「は、花丸の腕輪も!?」

 

晴夏「どうなってるの…?」

 

どうやらただ事ではないと察するメンバー。

不気味に光る2つの腕輪。

 

そして、それは現れる

 

 

果南「穂乃果っっ!!上!!」

 

穂乃果「…ぇ、」

 

 

 

 

「………人間」

 

穂乃果「!!!!」

 

 

見たこともない服を着る、人がいた。

ゴールのクロスバーの上に

 

 

英玲奈「何者なんだ…」

 

フィレア「いったいどこから…いつからあそこに」

 

月「随分と妙な格好をしてるね…」

 

白を基調とした服。

手や足には兵士を思わせるような模様の装飾。中でも、妙な格好…それを決定づけるのが背中の『羽』だった

 

 

にこ「何よ…どっかの宗教?」

 

千歌「でも、あの羽動いてない?」

 

 

 

「下等な」バッ

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

 

ーーードガアァァァァン!!!!

 

一瞬何が起きたのか。

何もわからないまま全員が謎の衝撃波により吹き飛ばされる

 

 

梨子「きゃあっっ!?」

 

エドガー「なんだ…!?これは!?」

 

クラリア「あいつ…ボールを蹴っていた」

 

エドガー「まさか、ね」

 

そのまさか。クロスバーに乗る謎の少女はボールを、ボールを蹴り、全員を吹き飛ばしたのである。

威力は見ての通り。地面を深く抉るパワーから見て、並の必殺技とは比べ物にならないと良くわかる

 

 

花丸「…いったい何が…え、」

 

「…迎えに来た」

 

花丸「!?」

 

花丸(一瞬で眼の前に!?!?)

 

善子「ちょっとあんた…ずら丸に何するのよ!!!!」

 

 

 

ーーーガシッ

 

 

善子「ぇ、」

 

「…お前もだ」

 

善子(もう…1人…?)

 

急に現れた。分からなかった。

白い服の少女ではない別の人。

全身黒、禍々しい模様が浮かぶ服。

背中には歪な形の羽…まるで『悪魔』だった

 

 

善子「ちょっ…離して!!」

 

花丸「やめるずら!!」

 

2人は抵抗する。しかし一向に離そうとしない少女2人。

この状況…ただ事ではないと動いた少女も2人

 

 

ルビィ、理亞「ー Awaken the power ー」

 

善子、花丸「「!!」」

 

 

千歌「2人とも何を!?」

 

フィレア「取り押さえる気…だね」

 

善子と花丸のすぐ近くにいたルビィと理亞。

咄嗟にATPを発動し、高速で謎の少女らの背後に回る。

なぜATPを発動したのか…それは本能が、体が警告を発していたからである

 

 

あれは、ただの人間ではないと

 

 

 

ーーーードゴッッッッ!!!!!!

 

ルビィ「うごっっ!?」

 

 

ーーーードガッッッッ!!!!!!

 

理亞「っっっっ!?」

 

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

「人間如きが…邪魔をするな」

 

「だが、活きのいい人間は嫌いじゃねえ」

 

 

海未「ルビィ!!理亞!!」

 

ルビィ「ゲホッ…ゲホッ!!?」

 

理亞「ハァハァ…ゴホッ!?」

 

 

フィレア「…見えた?」

 

和葉「いや、ボールを蹴る動きが…まったく見えなかった」

 

ルビィと理亞は高速移動で謎の少女らの背後を取った。しかし、気づいた時にはルビィと理亞は遠くへと吹き飛ばされていた。

ボールを、ATPよりも速く。2人の腹に撃ち込んだのだ。いよいよとんでもないことになってきた

 

 

「…失せろ。ここはお前達のような邪悪な者共の来るところではない」

 

「偉そうに言ってんじゃないよ。お前こそ消えな!!世界は魔王と"魔界軍団Z"が支配するって、決まってんだよ!!」

 

 

にこ「ちょっと今…魔界って言ったわよ」

 

ツバサ「魔界…ありえないわ」

 

 

「笑止!世界を統べるは天の輝きのみ。"天空の使徒"が、今ここでお前を成敗してくれよう」

 

 

ダイヤ「天空の…使徒」

 

曜「天使と悪魔…?でも、そんなの実在するはず…」

 

 

「うるせぇんだよ!!人間共っっ!!!!ガタガタぬかすとお前らの魂も食っちまうぞ!!!!」

 

ドガアァァァァン!!!!

 

自分を魔界の使者と呼ぶ少女が怒鳴る。

同時に落雷、まるで天が怒りを見せているかのようだった。その場にいる全員が圧倒され、口を開けなくなる

 

 

「…黙れ不浄の者」

 

「フッ…今に見てろ。地獄を見せてやる」

 

 

次の瞬間。

再び落雷の轟音と光がその場を包んだ。目を開けた時には、善子・花丸と謎の少女らはいなくなっていた

 

 

花陽「い、いない…!?」

 

真姫「消えた…わね」

 

 

 

南の島は天候が変わりやすい。

 

先程までサッカーを楽しんでいたグラウンドが、今は緊迫の状況へと変化していた。

 

善子と花丸はどこへ連れ去られたのか。

あの少女らは本当に天使と悪魔なのか。

 

 

これはライオコット島で起きた、誰も知ることのない天と地を揺るがす大事件である

 

 

次回より 天界&魔界編

 

 





ということでね。頑張って書きます


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第3章 96話 「天と地の生贄」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!

始まりました天空&魔界編。原作とは少し変わった設定でちょっと危機感ある雰囲気にしています。最後まで楽しんでいただけたら、

後半は試合です




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

FFIグループAを共に戦った仲間、そしてロシア代表の絵里がサニデイジャパンの元に現れた。そのまま合同練習を開始するも、突然現れた謎の少女らによって、善子と花丸が連れ去られてしまった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

「「ライオコット島に伝わる魔王伝説!?」」

 

希「確かや。調べたからね」

 

外国メンバーを含めた全員が、ある場所へと向かう中。その場に向かうことを提案した張本人、希が理由を話し始めていた

 

 

希「魔王封印後、天界の民と魔界の民はライオコット島の中央にある"マグニード山"に住み着いたと言われているんや」

 

にこ「だから今私たちはマグニード山に向かっているのね」

 

真姫「でも、あの人たちが本当に天界とか魔界とか…確証がないのよ?それに、そんなおとぎ話…」

 

希「ウチもさっきまでそう思ってた。調べ物もあくまでも興味本位だったからね」

 

希「でも、調べるにつれて…マグニード山に昔から住む先住民の少女たちの中には、天界や魔界の力を操ることが出来る人がいるとも、分かってきたんや」

 

ツバサ「不思議な力ね…」

 

希「それで、この島にはその伝説についての壁画や書も残されていて…それを思い出して確信したんや」

 

曜「何を…ですか?」

 

 

希「連れ去られた2人。腕輪をしてたやろ?」

 

ことり「してたよ…?急に光り始めたよね」

 

希「あれ、壁画や書に書かれている"伝承の鍵"にそっくりなんよ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

海未「伝承の鍵とは…いったい」

 

希「"ある人間"がつける腕輪らしい。その輝きで天界と魔界の民は導かれる」

 

海未「…ある人間とは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

希「生贄」

 

 

 

 

花陽「ひっ!?」

 

梨子「そ、そんな…冗談ですよね?」

 

希「冗談だったら良かったんやけど…そしたら今頃目的地が警察署になってる頃や」

 

和葉「……最悪だけど、今のお話がすべて辻褄が合うね」

 

果南「じゃあ、あの2人は天界と魔界の民の生贄になるの!?!?」

 

千歌「させないよ!!!!」

 

「「!!!!」」

 

今まで静かに希の話を聞いていた千歌が叫びに近い声を出す。その声には怒りが込められているようだった

 

 

千歌「生贄なんて…絶対にさせない。私はその伝説信じるよ。だってあんなすごい力を持った人間が、ただの人間なわけないもん」

 

ルビィ、理亞「……」

 

ルビィと理亞は先程の痛みが疼くような感情に囚われていた。

千歌の言う通り、人間離れのスピード・パワー・オーラ。嫌でも希の仮説が当てはまる

 

 

千歌「ならこのままマグニード山を目指そう。善子ちゃんと花丸ちゃんを必ず取り戻す。いいよね、みんな」

 

こうして目的地が完全に固まった日本&外国メンバー。少なからず、争いは避けられないであろうこの状況。

試合以上の緊張が周りに、心に張り巡らされる中、一行はマグニード山に到着する

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

ー マグニード山 ー

 

 

エドガー「分かれ道…ですね」

 

晴夏「どっちが正しい道なんでしょうか…」

 

聖良「……これは私の感ですが」

 

理亞「姉様?」

 

聖良「どちらかの道が魔界の民で、もう片方が天界の民の場所へ続くのではないでしょうか…」

 

絵里「ハラショー…聖良賢いわね」

 

 

 

「ご名答だ娘さん」

 

 

「「「!!!!???」」」

 

全員の背筋が震えたのは無理もない。

先程まで誰もいなかった場所から声。しかも不気味な格好をした老人がいるのだ

 

 

果南「だだだだだだ誰!?!?」

 

鞠莉「果南、ビビりすぎ」

 

「…どうやらあの娘さんたちを取り戻しに来たようじゃのう」

 

ルビィ「…善子ちゃんと花丸ちゃんを知ってるの?」

 

「あぁ。知ってるとも」

 

理亞「2人はどこにいるのよ」

 

老人は説明を始める。

天空の使徒が住まうは『ヘブンズガーデン』

魔界軍団Zが蠢くは『デモンズゲート』

 

 

海未「いかにもな名前ですね」

 

にこ「たとえ地獄の底だとしても、天国だとしても2人は必ず助け出すわ」

 

老人は続ける。

右の道、上へと向かうのが天界の道。

左の道、下へと向かうのが魔界の道。

不気味に笑うその雰囲気…信じるのも疑わしい部分はあるが、

 

 

フィレア「あなたたちは、いったい何者なんです!?」

 

聞かれてもただ笑うだけ

 

 

クラリア「…気に入らないな。まるで楽しんでいるようだ」

 

「楽しんでいるさ。新たな千年期の始まりになり得るかもしれぬ…」

 

「さあ行け!!この儀式を盛大に、執り行うとしよう!!!!」

 

そう言うと、老人は暗がりへと消えていった。まるで幻だったかのように気配が消え、最後まで不気味さが残る老人だった

 

 

曜「千歌ちゃん。今の話からすると、花丸ちゃんは天界。善子ちゃんは魔界に連れて行かれた…ということになるよね」

 

千歌「…そうだね。穂乃果さん」

 

穂乃果「!」

 

千歌「ここからは二手に別れましょう」

 

絵里「私も行くわよ穂乃果」

 

和葉「同じチームになったんだ。力貸すよ!白チーム全員で天界に乗り込んでやろう!」

 

曜「よーし!やっちゃうよ!!」

 

千歌「赤チームはデモンズゲート!!魔界の民から善子ちゃんを取り戻そう!!」

 

「「「おう!!!!!!」」」

 

 

 

 

ことり「ダイヤちゃん、果南さん、鞠莉さん」

 

ダイヤ「何か?ことりさん、」

 

果南、鞠莉「?」

 

ことり「善子ちゃんのことで…」

 

こうして、天界と魔界でそれぞれ決戦に向かった紅白。

どちらも無事に戻れる保証はない。

恐怖をも超える覚悟を持ち、両メンバーが道を急いだ

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ところ変わって、一面色とりどりの花が狂い咲く地『ヘブンズガーデン』。

そこに佇む神殿のような建物…天空の使徒が住む、神聖な場所である

 

 

「…」

 

その神殿の内部、巨大な壁画がある部屋が存在する。そこで壁画を見続ける少女が1人

 

 

「…ここにいたのね、セイン」

 

セイン「…ウイネル」

 

ウイネル「とうとう魔王が復活するのね」

 

セインは頷き、再び壁画を見る。

ウイネルにはその理由が分かっていたが、セインは語る

 

 

セイン「…何故我らが先祖たちは、サッカーで決着をつけたのだろうか」

 

ウイネル「何故って…それはサッカーが人間たちの使う力の優劣を決める手段だったから…」

 

セイン「…」

 

ウイネル「そろそろ時間よ」

 

セイン「あぁ。儀式を始めよう」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

ちょうどその頃、白チームは濃い霧の中を走っていた

 

 

曜「結構走ったよね…」

 

梨子「多分、もう少しだと思うけど…あ!」

 

霧が晴れる、それと同時に眼の前に現れたのは"ヘブンズガーデン"。白チームが目指さしていた、花丸が捕らわれているであろう場所だった

 

 

ことり「あれがヘブンズガーデン…本当に天使が住んでいるみたい」

 

海未「関心してる場合ではないですよ。行きましょう」

 

希が言っていた『生贄』。

嫌な考えが頭をよぎる。一刻も早く花丸の無事を確認したい。その一心でメンバーは残りの道を急いだ

 

 

 

 

 

セイン「…空気が乱れている」

 

 

 

 

穂乃果率いる白チームがヘブンズガーデンに辿り着き、建物の前までやってきた。

しかしそこは花丸を連れ去った敵の根城。

何も起きないはずもなく…

 

 

穂乃果「…!あなたは」

 

セイン「何をしに来た?ここは下界の人間が来るべきところではない。すぐに立ち去るがいい」

 

下界の人間…と呼ぶように、建物の上から穂乃果たちを見下すように見るセイン。

しかし、穂乃果たちは引き下がるわけには行かない

 

 

理亞「何がすぐに立ち去れよ!!仲間を取られてこのまま黙って帰るわけないでしょ!?」

 

海未「理亞が…仲間のためにこんなに感情的に…!!」

 

曜「いやいや…そこ突っ込む!?」

 

梨子「花丸ちゃんはどこ!?早く返して!」

 

セイン「それは出来ない。あの方は既にお前達の知る人間ではない」

 

梨子「…どういうこと??」

 

セイン「一足遅かったな」

 

 

 

 

花丸「……」

 

「「「!!!!!!」」」

 

穂乃果「花丸ちゃん!!」

 

ツバサ「良かった…どうやらまだ無事みたいね」

 

建物の中から出てきたのは、誰もが求める少女の姿。国木田花丸だった。

安堵、自分たちは間に合ったのだと安心するのと同時に感じる違和感。

『一足遅かったな』という少女の一言

 

 

絵里「花丸ちゃん、大丈夫?何かされてない?」

 

花丸「……」

 

絵里「花丸ちゃん?」

 

エドガー「様子が変ですよ…」

 

曜「それに、なんで…」

 

 

 

 

 

天空の使徒「「「………」」」

 

 

 

曜「天空の使徒の人たちが…花丸ちゃんに膝まづいているの???」

 

その光景はあまりにも不可解。

全てが衝撃と疑問に包まれていた。

花丸の様子はおかしく、生贄のはずの花丸に頭を下げる天空の使徒。

しかし、それはすぐに分かることになる

 

 

 

 

花丸「我が名は"フラエル"。天より来たりし神だ。下界の人間よ」

 

「「「!?!?!?」」」

 

和葉「ジョーク…じゃ、ないよね?」

 

理亞「花丸…!!どうしたのよ花丸!!!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

そして、同じ衝撃を受けたのは赤チームも

 

 

ルビィ「そんな…善子ちゃん…」

 

ダイヤ「なんですか、あの禍々しい目は…」

 

 

「お前らぁ!!!!運がいいな…先程、"魔王様"が復活なされたぞ!!!!!!」

 

 

善子をさらった少女が現れたと思いきや、『生贄』になるはずの少女に膝まづき『魔王』と呼ぶ。

おかしい。何故なら魔王と呼ぶ少女は自分たちと同じ人間。なのに、なのに…

 

 

 

善子「どれも美味そうな魂だぁ…デスタよ。全員食ってもいいんだろ???なぁ?」

 

デスタ「はい。存分に!!」

 

血のように赤く染まった目。

それはまさに…悪魔そのものだった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

理亞「フラエルって何よ!?ふざけてるの!?」

 

セイン「黙れ!!こちらに居られる方は天より我らを導く女神…フラエル様だ!!」

 

混乱するメンバー。

姿、声は完全に花丸だ。しかし本人と天空の使徒は否定している

 

 

曜「だって…花丸ちゃんは生贄って…」

 

フラエル(花丸)「生贄…?確かに生贄ですね。私はこの人間の体に憑依した…体は人間でもあなたたちの知る人間ではありません」

 

「「「!?!?!?」」」

 

和葉「生贄…憑依…命を捧げる生贄ではなく、宿る体を捧げる生贄か…!」

 

穂乃果「何のためにそんなことを!?」

 

セイン「千年祭にて復活せし魔王。その魔王を再び封じ込めることが出来るのは神の力のみ。人間の体に宿り、自らその役目を果たしてくださる方こそ。フラエル様だ」

 

梨子「魔王を封じる…宿主…まさか、善子ちゃんが魔界の民に連れていかれたのは!?」

 

フラエル「魔王の憑依…宿主となる生贄だろう」

 

状況は徐々に整理されて来ている。

しかし、それにつれことの大きさの理解も深まっていく。

魔王が善子に憑依する…そしてその魔王を封印するために花丸に憑依した女神

 

 

穂乃果「…あなたはこれから魔王を封印しに行くんですか?」

 

フラエル(花丸)「そうだ」

 

穂乃果「もし、封印が成功したら宿主は…善子ちゃんはどうなるんですか?」

 

 

 

フラエル(花丸)「魔王と共にその体も封印され、眠りにつくだろう」

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

凛「善子ちゃんも…封印される??」

 

梨子「ダメよ!!そんなの絶対にダメ!!」

 

セイン「人間っっ!!無礼だぞ!!下界に叩き落とし…「セイン」

 

セイン「フラエル様!?」

 

フラエルがセインを止める。

穂乃果たち、そして天空の使徒も驚きを隠せない。フラエルはそのまま続けた

 

 

フラエル「人間が哀れなのは無知ゆえ。我らの力を知らぬが故の愚か。ならば力を見せてあげればいいのだ」

 

セイン「フラエル様…まさか、」

 

穂乃果「…?」

 

フラエル「サッカー。人間たちが力の優劣を決めるサッカーで。我らの力を知らしめるのみ」

 

 

 

――――――

 

 

 

ー ヘブンズガーデン サッカースタジアム ー

 

 

曜「なんか…意外な方向になってきたね」

 

海未「まさか神様とサッカーをすることになるとは…」

 

穂乃果「…みんな」

 

海未「穂乃果?」

 

穂乃果「絶対に勝とう。勝って花丸ちゃんを取り戻そう!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

「ならば主審はワシが」

 

穂乃果「うわっ!?また出た!?」

 

和葉「ホント…あなた何者なの??」

 

 

 

FW…綺羅ツバサ、三浦和葉、星空凛

 

MF……………園田海未、渡辺曜

 

MF……………桜内梨子、エドガー

 

DF……南ことり、綾瀬絵里、葉石晴夏

 

GK…………………高坂穂乃果

 

3-2-2-3

 

 

 

FW………………フラエル、セイン

 

MF…サキネル、ウイネル、アイエル、エヌエル

 

DF…ネネル、ゲネル、エカデル、エルフェル

 

GK……………………エノレル

 

4-4-2

 

 

 

 

 

和葉「…あの神様もそうだけど、花丸をさらったセインって子も多分、すごく強い」

 

ツバサ「油断出来ないわね。最初から飛ばしていきましょ」

 

 

ピーー!!!!!!

 

前半は人間チームからのキックオフ。

笛と同時にFW3人が飛び出した

 

 

和葉「凛!!」パス

 

凛「よーし!暴れるにゃ!!」

 

海未「凛!控えの選手はいますから最初から全力で行ってください!!」

 

凛「合点承知っっ!!」バチバチ

 

瞬間。凛の体は電気に包まれる。

縦横無尽、瞬きでさえ凛にとってもは隙だらけの瞬間。

どこで曲がるかわからない。どこで加速するかわからない

 

 

凛「ー イナビカリ・ダッシュ ー!!」

 

ウイネル「!!」

 

エルフェル「あの人間…結構速いね」

 

 

和葉「うおっ!?速っ!?」

 

海未「置いてかれないでくださいね和葉」

 

次々と相手を抜き去る凛。

その後ろから続く白チーム

 

 

凛「まだまだぁぁ!!!!」バチバチ!

 

エカデル「くっ…!?」

 

エドガー「速い…もう最終ラインを突破しましたよ」

 

梨子「凛ちゃん!シュート撃てる!!」

 

ボールを空へ蹴り、自分も共に飛ぶ。

まるで輝く星のように眩く光るボールを一撃。するとボールは無数の流れ星へ

 

 

凛「ー Hello,星を数えて ー!!」ドガガガガガ!

 

エノレル「無数のシュートですか…」

 

凛「まずは1点にゃ!!!」

 

"Hello,星を数えて"は刺さるか刺さらないかがはっきりと分かれるシュート。

広範囲に広がるシュートなため、一点集中技、要するに穂乃果の"ゴッドハンド"系のような技にはかなり有利である。

しかし、

 

 

エノレル「ー ホーリーゾーン ー!!」

 

凛「にゃっ!?」

 

ことり「!!」

 

ツバサ「止められたわね…」

 

広範囲をカバーする必殺技には逆に弱い。

エノレルの必殺技…地面を殴り、謎の空間を作り出す。その空間に入ったシュートはまるで威力を吸い取られるかのように。

気づいた時にはボールはエノレルの手の中で止まっていた

 

 

絵里「…ことり。あの技って、」

 

ことり「…うん、"ワンダーゾーン"とそっくり。でも、あっちの技の方が強力だよ」

 

"ワンダーゾーン"は強力な技である。

しかし、その発動条件は極めて厳しいものであった

 

 

海未「"ワンダーゾーン"はそのゾーンを踏むもの。要するに地面に触れているものしか効果を与えられないんです」

 

曜「地面を歩く選手や、地を駆けるシュートとか…ですか?」

 

海未「はい。なので、シュートの殆どは空中にありますので"ワンダーゾーン"では止められません」

 

ことり「でも…あの技は違う。ゾーンの上を通るシュートにも効果を与えていた…」

 

空間。3Dを完全に支配する"ワンダーゾーン"。まさに、ことりの技の上位互換技であった

 

 

エルフェル「…へぇ。シュートまで持っていけるんだ。ちょっとはやるじゃん…でもあの程度のシュートじゃ、"ホーリーゾーン"は破れないけどね」

 

フラエル「…エノレル」

 

エノレル「!!」

 

フラエル「ボールを私に」

 

エノレル「仰せのままに…!」バシュッ!

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

花丸…いや、フラエルがボールを持った。

その瞬間、穂乃果たちの中に緊張が走る。体は人間と言えども神がどんな力を使ってくるのか

 

 

フラエル「…」スッ

 

和葉(なんだ…?片手を空に?)

 

フラエル「これが神の力だ」

 

 

 

 

 

ーーーパチン!!!!

 

 

 

 

 

和葉「ぇ…」

 

ツバサ「!?」

 

 

フラエル「ー ヘブンズタイム ー」

 

 

和葉(いつ抜いた…瞬間移動!?)

 

ツバサ「今の技…って!?!?」

 

和葉「ぐっっ!?!?」

 

フラエルが先程まで"いたはず"の場所から強風が発生

 

 

ツバサ、和葉「うわぁぁっっっ!?!?」

 

「「「!?!?!?」」」

 

ツバサと和葉はそのまま吹き飛ばされる

 

 

曜「何あれ…!?瞬間移動に竜巻!?」

 

海未「原理がまだわからない以上、ゆだーーパチン!!

 

 

曜、海未「!!!!」

 

 

フラエル「ー ヘブンズタイム ー」

 

 

海未(しまった…)

 

海未、曜「うわぁぁぁっっっ!?!?」

 

 

梨子「あぁ…曜ちゃん、海未さんまで…!!」

 

エドガー「梨子、落ち着くんだ!!動揺しては相手の思うツボ…!!」

 

フラエル「…」

 

フラエル「…」スッ

 

エドガー「またあの技…させない!!」バッ

 

フラエルが指を鳴らした瞬間。

抜かされ、自分らは発生した爆風により吹き飛ばされる。

ならばあの指鳴らしをする前に奪えばいい。エドガーは決死で足を伸ばした…だが、

 

 

エドガー(間に合え…間に合え…間に合え!!)

 

フラエル「無駄だ」パチン!!

 

エドガー「ぐっっ!!!!」

 

エドガー、梨子「きゃあぁっ!?!?」

 

これでーーー6人

 

 

絵里「ことり、晴夏、下がりなさい!!今の私たちでは太刀打ち出来ないわ!!」

 

フラエル「引くか…ならば、天空の裁きを受けるがいい…」ググググ

 

絵里「!?(シュート!?)」

 

フラエルが構えると、世界が神々しい光に包まれ始める。

どこからともなく羽が舞い、雲の隙間から光がこぼれる

 

 

フラエル「っっっ!!!!」ドオオォン!!

 

フラエル「ー ヘブンドライブ ー!!!!」

 

蹴られたボールは空の彼方へ。

雲が浮く空へと消えていった…

 

 

 

 

 

次の瞬間

 

 

 

 

 

ドオオォォォォォン!!!!!!!!

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

和葉「雲が…消えた」

 

ツバサ「あれは本当に、シュート、なの?」

 

 

空の彼方へ消えたボールは激しい光と衝撃で、空を覆い隠していた雲を消し飛ばしたのだ。

ボールに入りきれなかったオーラがまるで巨大な隕石のように纏い、穂乃果の、ゴールの上に降ってくる

 

 

穂乃果「やるしか…ないっっ!!!!」

 

 

 

迫り来る神の一撃に穂乃果はXを構えた

 

 

人間チーム 0-0 天空の使徒

 

 





花丸ちゃん→女神フラエルが憑依
善子ちゃん→魔王が憑依

フラエル様強すぎぃぃぃ!!!!!!



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第3章 97話 「天空の使徒戦 "先の見えぬゴール"」


皆さんどうも!あけましておめでとうございます!ルビィちゃんキャンディーです!今年も下手くそな文章ですが、どうか御付き合いのほどよろしくお願いします!

今回のお話しは天空の使徒戦です。神に抗う人間たちをどうぞ




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

花丸と善子を取り戻すため、天空と魔界の民の元へと急ぐ日本&海外チーム。『ヘブンズガーデン』にたどり着いた白チームは花丸と再開するも、女神フラエルが憑依する状態になっていた。力を知らしめるための試合、そこで見たのは"神"の圧倒的力だった

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

バリイィィィィィィィイン!!!!!!

 

 

穂乃果「!!」

 

まるで脆く薄いガラスが砕けたように。

穂乃果の"ゴッドハンドX"は木っ端微塵。神の一撃の前にーーー砕けた

 

 

ピーー!!

 

 

穂乃果「ハァハァ…何あれ、」

 

絵里「…止めるとか、止められないとかの次元じゃないわよ」

 

これまで穂乃果は自分の力の格上のシュート、世界レベルのシュートを何度も味わってきた。

敗れ、砕け、倒され、それでも穂乃果は立ち上がり続けた。同じ人間、特訓を重ねればいつか届くと信じて。

しかし、それは全て人間たちの中だけの話

 

 

セイン「さすがはフラエル様」

 

フラエル「…この体はいい。気に入った」

 

神に抗う。聞こえはいいが、その圧倒的な力を見せつけられると思う

 

 

穂乃果(勝てるの…今のを…止めるの!?)

 

全ては神が予想した通りにーーーー

 

 

 

 

穂乃果「違う!!!!!!」

 

フラエル「!」

 

穂乃果「違う違う違う違う違う!!神でも何でも勝つって言ったのは穂乃果!!言ったからには…絶対に勝つ!!」

 

フラエル「…これ以上やっても結果は見えている」

 

穂乃果「見えてない!!」

 

フラエル「…」

 

穂乃果「女神様は私たちの力をまだ知らない…本当の戦いはこれからだよ!!」

 

 

何も言わずにポジションに戻るフラエル。

花丸の姿をした女神は何を思い、穂乃果をどう見たのか。

苦し紛れの発言なのかもしれない。だが、それにさえも答えてくれるのが仲間。穂乃果はそう信じていた

 

 

和葉「…シュートは撃てる。あとは威力」

 

海未「和葉のシュートならばいけるのでは」

 

和葉「やってみる価値はあるね…!」

 

 

ピーー!!!!

 

0-1、早速追いかける形となった白チーム。

パスを回し、ドリブルを仕掛けること数分。和葉は気づく

 

 

和葉(確かに…力の差はある)

 

 

凛「海未ちゃん!!」パス

 

海未「はい…!」

 

アイエル「行かせません!!」

 

海未「凛!行けますか!?」ゴオォォッ!

 

凛「行けるよ!!」バチバチ!

 

アイエルは気づく。

凛と海未が何かを仕掛けてくると

 

 

海未、凛「ー 風雷演舞 ー!!!!」

 

アイエル「きゃあっっ!?」

 

エルフェル「風と雷の合体技…!」

 

『風神の舞』と『イナビカリ・ダッシュ』を混ぜ、荒れ狂う嵐で駆け抜ける技。

和葉の考えは刻刻と形になっていく

 

 

和葉(でも…化け物なのはあの女神様だけ)

 

 

海未「ツバサ!!」パス

 

 

和葉(それ以外…天空の使徒たちとは闘える…!!食らいつける!!)

 

 

ツバサ「ナメてると痛い目見るわよ…!」バッ

 

エカデル「この人間…急にスピードが!?」グラッ

 

ツバサ(バランスが崩れた…!!)

 

エカデル「しまった…」

 

ツバサ「和葉…!!」パス

 

ツバサがサイドからのクロス。

脳内で相手の情報を整理しながらも、"勝利の化身"は作ってもらったチャンスを逃さない

 

 

和葉「はああぁぁっっ!!!」ドオオォン!

 

穂乃果「行けー!!みっちゃん!!」

 

和葉「ー ブレイブショット ー!!」

 

和葉のシュートは地だけでなく天をも揺らす。その重すぎる強力なシュートから、『ラストリゾート』と同様に触ることを許さない

 

 

セイン「先程のシュートよりも強力!?」

 

フラエル「…ほう、」

 

 

エノレル「ー ホーリーゾーン ー!!」

 

 

それでも

 

 

和葉「!!!!」

 

エノレル「…」シュウゥゥ…

 

凛「うそ…あの"ブレイブショット"だよ!?」

 

 

反則級の技には及ばない

 

 

海未「止められた…和葉のシュートさえも、」

 

曜「もっと強力なシュートじゃないと…あの技は、」

 

エドガー「私が行きましょう」

 

海未「エドガー…!」

 

曜「そうだよ…!エドガーさんのシュートなら!」

 

まだ希望は残っている。

エドガーの聖剣に不可能など無い。それはグループAの選手たちならばよく知っている

 

 

穂乃果「まずはディフェンス!しっかり!!」

 

 

エノレル「ネネル!!」パス

 

ネネル「っ!ウイネル!」パス

 

曜「ダイレクト…ここで貰う!!」バッ

 

ウイネル「!?」

 

曜はウイネルにボールが渡った瞬間を狙う。

巨大な鎖を足に巻き付け、渾身のパワーで錨を叩きつける

 

 

曜「ー スマッシュアンカー ー!!」ドガアァン!

 

ウイネル「っっ!セイン!」パス

 

曜「なっ!?強引に!?」

 

 

パワーはあるが隙だらけの力技。

ウイネルはそれを見抜き、ブロックされないようなコースでセインに繋ぐ

 

 

セイン「フラエル様!!」パス

 

曜「やばっ!?またあの技が!!」

 

フラエル「……」

 

神にボールが渡る。

それは裁きを下されるのと同じ。天から破壊の一撃を受ける

 

 

フラエル「2点目…」ググググ

 

穂乃果「今度こそ…!!」

 

穂乃果が構えた瞬間だった。

フラエルは自分の周りで起きている異変に気づく

 

 

フラエル「…なんだ、雪?」

 

穂乃果(あの技は…!!)

 

穂乃果「みんな!!目を閉じて!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

フラエルの周りだけに降り続ける雪。

穂乃果は一瞬で把握した。誰の技なのかどんな技なのか

 

 

 

絵里「ー スノーハレーション ー」

 

フラエル「!?(光り出した!?)」

 

 

キラキラキラキラ!!!!!

包む雪は光へと姿を変える。

いくら神でもこの光の強さには耐えられない。まるで太陽を直接見たかのような感覚。

突然のことに神の動きが止まる

 

 

絵里「エドガー」パス

 

エドガー「!」

 

そのままボールをエドガーに。

完全に隙だらけの天使チーム、エドガーは足を振り上げた

 

 

エドガー「食らうがいい…!!」バッ

 

エドガー「ー エクスカリバー ー!!!」

 

 

 

ギシャアァァァァァァン!!!!!!

 

 

ウイネル「ロングシュート…!!」

 

エカデル「無謀な…我々のゴールに到達する頃には、威力が半減しています」

 

天空たちは知らない。

摩擦や抵抗、この世の理を無視した最強の剣が存在すると

 

 

エドガー「…」

 

絵里「飛距離充分」

 

人間たちの余裕のある顔。

そしてすぐに変化が現れ始めたシュート。

天使たちは流石に驚きを隠せなかった

 

 

エルフェル「…あのシュートさ、」

 

エカデル「そんな…ありえない!!」

 

 

ガガガガガガガガ!!!!!!

 

 

天使「「「シュートの威力が上がってる!?」」」

 

フラエル「!!」

 

エドガー「もう遅い」

 

シュートは既にGKとの1対1となっていた。

ロングシュートだと油断したのが仇となり、強化された聖剣が天使たちのゴールへと迫る

 

 

エノレル「そんなシュートがあるのですか…」

 

エノレル「ー ホーリーゾーン ー!!」

 

驚きながらも必殺技を発動するエノレル。

驚いた、とは言っても冷や汗など垂らしていない。なぜなら、

 

 

エドガー「な!?」

 

絵里「…止めるのね」

 

エノレル「ですが人間の技。止めますよ」シュウゥゥ…

 

止めるという絶対的自信。

それは嘘でも冗談でもない。

天空の力は人間の最高峰の技をも捻り潰すのだ

 

 

曜「エクス…カリバー、までも…」

 

梨子「エクスカリバーよりも強力な技…そんなの…」

 

エドガー「くっ……」

 

 

 

――――――

 

 

 

その後も日本&海外チームは"ホーリーゾーン"に勝負を挑み続けた。

しかし、"エクスカリバー"でも勝てないという事実が頭を過ぎり、結局、前半で得点を決めることはできなかった

 

 

エドガー「すまない…決めきれなかった」

 

穂乃果「エドガーのせいじゃないよ。"ホーリーゾーン"、悔しいけどあれは人間が使うような技じゃない」

 

和葉「今の私たちに、長距離からのエクスカリバー以上のパワーを持つ技はない。これは参ったね…」

 

食らいつける。だが差は縮まらない。

まるで逃げるゴールを走って追いかけているような、途方もない戦い。

そして自分たちの今の限界をみた。

士気が下がっていくのは無理もなかった

 

 

穂乃果「でも、私たちしか花丸ちゃんは救えない。花丸ちゃんも信じているはずだよ。私たちが試合に勝つって」

 

和葉「穂乃果…」

 

ことり「…」

 

絵里「ことり?」

 

絵里は気づいた。

ことりが何か言いたげにその場で戸惑っていることを。この試合、可能性は低くても少しでも考えが欲しい。

絵里はすぐにことりに話しかけた

 

 

ことり「うん…厳しいのはわかってる。でも、」

 

絵里「?」

 

穂乃果「ことりちゃん?」

 

 

 

ことり「あの技なら、"ホーリーゾーン"を破れるかもしれない」

 

「「「!!!!!!」」」

 

エドガー「そんな技が!?」

 

海未「ことり…まさかとは思いますが」

 

 

ことり「そうだよ。"ザ・フェニックス"を進化させた"ファイナルトルネード"」

 

ことり「それを"さらに進化させた技"なら…あのゴール、焼き尽くせるよ」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

運命の後半戦まで残り数分。

前線で体力を消耗しすぎたツバサに変わり、理亞がウイングフォワードに入った

 

 

凛「曜ちゃん…凛、ことりちゃんが言ってた技、全然知らなかったんだけど…曜ちゃん知ってた?」

 

曜「私も初耳だよ。確かに、"ファイナルトルネード"じゃもう力不足かもって話しはしてたけど…新必殺技を練習しているところは見なかった」

 

晴夏「もしかして…」

 

晴夏「まったく練習してないんじゃ…」

 

 

メンバーの不安は増す一方。

海未と穂乃果はことりとギリギリまで話をしていた

 

 

海未「賭けですよ。これは」

 

穂乃果「そうだね…」

 

海未「まだほとんど練習していない、脳内での、形だけ完成した技じゃないですか」

 

凛たちの不安は的中。

まだイメージだけの段階の技。

練習はなし、成功はほとんど不可能に近かった。しかし、

 

 

ことり「3人がイメージ出来るなら大丈夫だよ。ぶっつけ本番。私たち得意でしょ?」

 

海未「それはそうですが…」

 

穂乃果「…やろうよ」

 

海未、ことり「!!」

 

穂乃果「これしか勝つ道がないんなら掛けてみようよ。絶対に成功させる。そう思えば上手くいくよ!!」

 

ことり「穂乃果ちゃん!」

 

海未「…穂乃果が言うならば仕方ありません」

 

伊達に幼馴染はやっていない。3人はその幼馴染だからこその強さに掛けた。

到底不可能。しかし、神を相手に人間はそれ以上の力を出さずして勝てるはずがあるのだろうか。

答えは否。

今を超えることに勝利への狭い道がある。

穂乃果たちは覚悟を決めた

 

 

穂乃果「やるった…やる」

 

 

 

ピーー!!!!!

 

 

セイン「人間…己の非力を思い知れ」

 

和葉「まずはディフェンス!!気を抜かないで!!」

 

天空の使徒ボール。

女神 フラエルにボールが渡り、白チームに緊張・そして前半の光景が蘇る

 

 

フラエル「ー ヘブンズタイム ー」パチン!

 

和葉、凛「!!」

 

和葉、凛「うわあぁぁぁ!?!?」

 

暴風により吹き飛ばされる和葉と凛。

こうなっては人間では手も足も出せない

 

 

フラエル「!」

 

海未、理亞「っっ!!」バッ

 

しかし、人間は諦めが悪い

 

 

フラエル(技発動後を狙ってきた…)

 

海未「ー スピニングフェンス ー!!」

 

理亞「ー Awaken the power ー!!」

 

フラエル「だが甘い」

 

フラエル「セイン」パス

 

海未、理亞「!!!!」

 

フラエルに囚われすぎていた。

無双する必殺技。仲間にパスをする必要などないと思っていた。

しかし女神はパスを出した。思い込みによる視野の収縮、ポジショニングの崩れが隙を作ったのだ

 

 

アイエル「持ち込める!セイン!」

 

セイン「えぇ!!」

 

エドガー「っっ…これ以上は!!」バッ

 

エドガーのディフェンス。

攻守共にトップレベルの選手であるが…

 

 

セイン「ー エンジェルボール ー!」

 

エドガー「な!?」

 

梨子「ドリブル技…!!」

 

エドガーを突破。

まだゴールまでは距離があるが射程範囲内。

迷わずセインはシュートを狙った

 

 

セイン「はあぁっっ!!」ドガアァン!

 

穂乃果「あの時と同じ…強力なシュート!!」

 

日本代表練習グラウンドで見せたセインの強力な一撃。地をえぐり、衝撃で吹き飛ぶ仲間を見て、彼女たちが只者ではないと確信した

 

 

穂乃果「止める!!!!」バッ!

 

穂乃果「ー ゴッドハンドX ー!!」ドォン!

 

赤いオーラ。

灼熱の炎が込められたその技は太陽のように熱い。

受け止めたボールの威力を焦がし、灼熱を刻み込む

 

 

穂乃果「…」シュウゥゥ…

 

セイン「止められた…」

 

ここは危機を回避した白チーム。

だが、穂乃果の体は長くは持たない

 

 

穂乃果「ぐっっ!?」ビリビリビリ!

 

絵里「穂乃果…!まだ反動が…」

 

穂乃果「大丈夫!!かなり少なくなってるから…!!今は攻めて!!」

 

絵里「…分かったわ」

 

今すぐにでも止めたいところだが、あいにくそれは不可能な状況にある。

絵里は穂乃果の覚悟を受け止め、ボールを受け取った

 

 

海未「ナイスです絵里!!そのままパスを!」

 

絵里「曜!!」パス

 

カウンターを狙う絵里。

少しでも速く前線へ、そう思うのは曜も同じ

 

 

曜「ー エクストリームワープV2 ー!!」

 

ウイネル「空を高速移動!?」

 

和葉「うわっ!?何あれやばっ!?」

 

凛「あんなの凛にもできないにゃ!!」

 

曜が努力を重ね編み出した必殺技、"エクストリームワープ"。

"スプリントワープ"を超えた移動範囲、空中を飛ぶように駆け抜ける

 

 

曜(足が…キツいっっ!!)

 

当然といえば当然。

足への負荷は"スプリントワープ"以上。

特訓で技を進化、筋肉を強化してるものの、その声に出したくなるほどの苦しさは健在

 

 

梨子「あのスピードなら突破出来る!!」

 

曜「理亞ちゃん!お願い!!」

 

曜の瞬間突破によりチャンスが生まれる。

これでボールが理亞に渡ればシュートチャンス

 

 

 

フラエル「無駄だ」

 

 

 

理亞に渡れば

 

 

 

フラエル「ー ゴートゥーヘブン ー」

 

 

曜「っっ!?(あの技って…!!)」

 

 

花丸『ー ゴートゥーヘブン ー!!』

 

 

曜「うわあぁぁぁ!?!?」

 

「「「!!!!!」」」

 

梨子「曜ちゃんっっ!!」

 

フラエルが放った光の柱。

それが見事に曜に直撃。光の柱に飲み込まれた曜はそのまま地面に叩きつけられる

 

 

曜「ぐっっ…ゴホッ!!うぅ……」

 

花丸の必殺技。

知っている者は少なくない。

花丸が試合で1度だけ発動した技。

強力なため、忘れるわけがなかった

 

 

フラエル「この技は使えるな」

 

 

 

しかし

 

 

 

 

「………なに…やってんのよ」

 

フラエル「…?」

 

 

このフラエルの一連の行動が、1人の少女の怒りを爆発させた

 

 

理亞「ふざけないでよ…」ゴゴゴゴ

 

フラエル(なんだ…この人間のオーラは、)

 

フラエルは神。

人間よりも全てが上にある存在…なはず、そんな神が、目の前にいる少女の変貌に1歩後ずさったのだ。これだけでも、使徒たちから見れば衝撃の状況なのである

 

 

エドガー「理亞はどうしたんだ…急に」

 

梨子「多分…花丸ちゃんの、」

 

 

 

―――――――――――――――

―――――――――

――――

 

 

 

理亞『発動したくない…?』

 

花丸『うん』

 

前に理亞は花丸に聞いていた。

幻影学園戦で発動した花丸の必殺技『ゴートゥーヘブン』。

あれはDF技の中でもすごく強力。函館聖泉はかなり警戒していたと。

なのに花丸は幻影学園戦で初めて使ってからその技を1度も発動しなかった。何故なのか。

理由は花丸の優しい心からだった

 

花丸『幻影学園との試合の後に、練習中に善子ちゃんを止めるために使ってみたんだ』

 

 

善子『…ゲホッ…ゲホッ!!ハァハァ…』

 

 

花丸『善子ちゃん…すごく苦しそうだった。痛そうだった。辛そうだった』

 

理亞『…』

 

花丸『マル、胸が苦しくなって…相手に辛い思いさせて勝っても…マルは全然嬉しくない』

 

理亞『花丸…』

 

花丸『だから、あの技は使わないって決めたずら!もう…あんな苦しそうな顔は見たくないな…』

 

考えたこともなかった。

理亞は頂点を目指すため、今よりもさらに強力な技を求めて練習をしていた。

だからこそ忘れていた。自分のせいで相手に辛い思いをさせる可能性があることを。

花丸は優しい、花丸だからこそ、その事に誰よりも早く気づき、誰よりも辛い決断をしたのだ

 

 

 

 

 

理亞「その想いを踏みにじったっっ!!」ゴゴゴゴ

 

フラエル「…」

 

理亞は初めてだった。

聖良以外の誰かのために……怒るのは

 

 

理亞「もうあんたは許さない!!絶対に許さない!!神だろうとなんだろうと叩き潰す!!!!」ゴゴゴゴ

 

和葉「…あれは、まさか」

 

ATPのオーラがさらに何倍にも膨れ上がった。和葉には覚えがあった。

まるで野生の獣と戦っているような感覚。

自分は狩られるのだと錯覚したあの瞬間

 

 

理亞「もう…後悔しても遅いわよ」ゴゴゴゴ

 

 

 

次回、ATP×ゾーンVS神

 

怒りは神を超えられるのか

 

 

日本&海外チーム 0-1 天空の使徒

 

 

 





理亞ちゃんの怒り大爆発!ATP×ゾーン、早くも解禁!

ご感想よろしくお願いします。もっと頑張ります



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第3章 98話 「天空の使徒戦 "決着の代償"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!

今回のお話で天空の使徒戦は終了です。2.5話という短い試合は第2章以来なのではないでしょうか?ですが、そんな短い中に内容を詰め込めるだけ詰め込みましたので展開が変わるわ変わるわ…
なんと輝こうサッカーの世界編の五本の指に入る威力の技も登場しますのでお楽しみに!




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

和葉やエドガーのシュートをも止める"ホーリーゾーン"。破るには"ファイナルトルネード"を進化させるしかない。そんな中で女神フラエルに怒りを露わにする理亞。ATP×ゾーンVS神の戦いが今、始まる

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

理亞「……」ゴゴゴゴ

 

 

アイエル「なんなの…あの人間」

 

セイン「…オーラが跳ね上がった、だと?」

 

理亞の変化は炎に近かった。

まるで油を火に注いだような、爆発に近い変わりよう。

油を注いだ張本人であるフラエルは思う。自分は目覚めさせてはいけない獣をーーー目覚めさせてしまったのだと

 

 

理亞「返しなさいよ」ビュン!!

 

フラエル(速い!?!?)

 

人間が来る。

だが体が動かない。意識では来るとわかっていても、体の反応が間に合わない。

神である私が人間にスピードで勝てない…?

ありえない。

だが、現実にボールは再び人間に渡る

 

 

理亞「ーーーっっ!!」ビュン!

 

 

ネネル「フラエル様が奪われた…!?」

 

ゲネル「そんなこと…」

 

 

フラエル「ありえないっっ!!!!」バッ

 

 

ありえないと一番理解しているのはフラエル本人。人間が神を超えるなどありえないのだ。

フラエルは動揺を隠せないまま、理亞のボールを奪いにかかる

 

 

理亞「ーーー!!」

 

フラエル(右か…左か!?)

 

高速移動。慣れれば動きが見える、読める。

予想通り右から抜きにかかる理亞

 

 

フラエル「っっっ!!!!」

 

理亞「ーーー」

 

このまま足を伸ばせばボールに触れる。

左へのフェイントももう間に合わない。

勝った。神は勝利を確信しーーー

 

 

ーーービュン!!!!!!

 

フラエル「」スカッ

 

フラエル「!?!?(消えた!?)」

 

瞬間移動系の技…「こっちよ」

 

 

フラエル「!!」

 

声が聞こえたのはーーー神の頭上

 

 

理亞「……」バチバチ!

 

理亞は両足でボールを挟み、赤黒いオーラを溜めていた。

目が合う。理亞は勝利を確信しーーー

 

 

理亞「ー ドロップアウトVーーーガッッ!!!

 

理亞「っっ!?」

 

フラエル「…それで私に勝ったとでも?」グググ

 

理亞(足で抑えられた!!??)

 

理亞が上空からボールを叩きつけようとした瞬間。フラエルはV字バランスの如く、両足を垂直に立て、ボールを抑え込んだのだ

 

 

理亞「ぐっっ…(重い…動かない!!)」

 

フラエル「捕まえたぞ」ググググ

 

空中で抑えられた。

ボールを奪われるのは時間の問題。

そんな時だった

 

 

 

「理亞ちゃん!!!」

 

理亞「!!」ゴゴゴゴ

 

理亞を呼ぶ声。本来、そこにいるはずのない声

 

 

穂乃果「こっち!!」

 

理亞「穂乃果…っっらあ!!」パス!

 

フラエル「何!?」

 

フラエルに抑えられる中。

理亞は空中で強引に体を捻り、穂乃果にボールを託す

 

 

ウイネル「キーパーが攻撃に!?」

 

エルフェル「おいおい…何するつもりなの??」

 

ボールを受け取った穂乃果。

理亞のおかげでシュートの道は開けている。

チャンスは今しかない。それは海未とことりも同じ考えだった

 

 

海未「思い出しますね…!"ザ・フェニックス"を完成させた時を」

 

ことり「今回も絶対に成功させよう!!」

 

穂乃果「うん!!行くよ、2人とも!!」

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果『行くよ、2人とも!!』

 

穂乃果、海未、ことり『ー ザ・フェニックス ー!!』

 

あれは、音ノ木坂学院に入学したばかりの頃。部長であるにこから提案された技、『ザ・フェニックス』。

音ノ木坂学院サッカー部の伝統ある技で、代々引き継がれてきた技だという

 

 

海未『…また失敗ですね』

 

ことり『ハァハァ…全然上手くいかないよ…』

 

練習は困難を極めた。

3人がタイミングを完全に合わせた状態で初めて成功するシュート。

その難しさに、にこたちの学年の代では引き継げなかったと言う

 

 

穂乃果『どうして…出来ないんだろう』

 

海未『何か理由があるはずです』

 

何度も挑戦し、何度も繰り返した。

その度に見つかる反省点。

何度も喧嘩した、何度も仲直りした。

そして行き着いた…不死鳥の完成。

 

そしてーーー

 

 

 

穂乃果(穂乃果はタイミングが速すぎ!!)

 

海未(私は力みすぎ!!)

 

ことり(ことりは2人を気にかけすぎ!!)

 

 

あの頃の自分らの失敗が蘇る。

それぞれの課題が、克服しようとしたあの日々が、蘇る。

 

 

穂乃果の爆発するような炎

 

海未の鋭く刺さるようなオーラ

 

ことりの全てをなぎ倒すパワー

 

 

穂乃果、海未、ことり「っっっっ!!!!」ドオォン!!

 

 

全ては初代サッカー部、音ノ木坂の奇跡。小さな火花から始まった。

それが時を重ね、幾人もの想いと努力を糧とし燃え盛りーー今では、

 

 

 

 

海未「グランド!!!!」

 

ことり「ファイア!!!!」

 

穂乃果「イグニッション!!!!!!」

 

 

ドガアァァァァァァン!!!!!!!!!!

 

天地焦がす、灼熱へと成る

 

 

日本&海外チーム「「「!!!!!!」」」

 

天空の使徒「「「!!!!??」」」

 

 

穂乃果、海未、ことり「「行けえぇぇ!!!」」

 

 

フラエル「な…この威力は…」

 

セイン「エノレル!!!!」

 

 

エノレル「ー ホーリーゾーン ー!!」

 

ここまで無失点のエノレル。

確かに人間にしては凄まじいパワーのシュートを何度も受けてきたが、全てねじ伏せてきたのがここまでだった。

しかし、

 

 

エノレル「!!??(威力が落ちない!?)」

 

 

"グランドファイア"の恐ろしい特徴。

不死鳥の如く、どんなに離れた場所から放っても、どんなに威力を殺す技をぶつけられても

 

 

エノレル「ぐあっっ!?!?」

 

 

威力がーーー落ちることはない

 

 

バシュウゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!!

 

 

 

フラエル「……!!」

 

 

ピーー!!!!

 

 

穂乃果「やったあぁぁぁぁ!!!!!!」

 

海未「ハァハァ…とんでもない技が出来ましたね…!」

 

ことり「これで同点…!戦える!!」

 

穂乃果、海未、ことりの新必殺技。

それを見て驚いたのは天空の使徒だけではなかった

 

 

和葉「…威力が落ちないシュートだって?」

 

エドガー「"ホーリーゾーン"のような威力を殺す技は相性最悪…サニデイジャパン…とんでもない技を使ってきましたね」

 

 

エルフェル「…信じられないや。私たちから点を取るなんて…」

 

エノレル「あのシュートは止められない。そう本能が感じた…」

 

フラエル「…少々侮りすぎたようだな」

 

エノレル「フラエル様…!」

 

試合も後半、時間はあまり残されていない。

天空の使徒として、神として、人間に負けることはあってはならない。

この1点が、穂乃果たちの灼熱が、天空の使徒チームの本気のサッカーに火をつけてしまったのだ

 

 

穂乃果「1-1、同点!!あと1点取るよ!!」

 

「「「おう!!!!」」」

 

 

フラエル「…行くぞ」

 

セイン「はい」

 

 

ピーー!!!!

 

 

勢いに乗りたい日本&海外チーム。

果敢にもボールを奪いに行くのは「白銀の狼」

 

 

理亞「貰った!!」バッ

 

セイン「ーーーっっ!!」ギュン!

 

理亞「なっ!?(躱された!?速くなってる!?)」

 

しかし、先程までとはスピードが全く違う

 

 

和葉「ちょっと…まだ速くなるの??」

 

凛「凛に任せるにゃ!!」バッ

 

ボールを持つセインの元へと飛ぶ凛。

空から星が降るように、星空凛が地へと着く

 

 

凛「ー 星空スタンプ ー!!」ドガアァン!

 

セイン「甘い!!ウイネル上がれ!!」パス

 

凛「にゃ!?」

 

 

曜「凛ちゃんたちがあんな簡単に!?」

 

海未「くっ…私たちもディフェンスを…」

 

ウイネル「ー エンジェルボール ー!!」

 

曜、海未「!!」

 

隙を与えぬ必殺技。

羽を生やし、曜たちの周りを飛び交うボール。

突然のギアアップに白チームはついていけてなかった

 

 

絵里(このままではDFが破られるのも時間の問題…!!何としてでも2点目を入れなくちゃ!!)バッ!

 

ドリブルで迫るウイネルに拳を向ける。

視覚を遮断するほどの光を放つ雪を降らせる構えである

 

 

ウイネル(あの技は…)

 

ウイネル「フラエル様!!」パス

 

絵里「!!??」

 

日本&海外チーム「「!!!!」」

 

絵里の技は既に見切られている。

ボールを持ったのは静かに怒る神。

今、裁きの一撃を

 

 

フラエル「我が一撃に沈めっっ!!!!」

 

フラエル「ー ヘブンドライブ ー!!」ドガアァン!!

 

 

和葉「まずい…!!穂乃果っっ!!」

 

穂乃果「…止める!絶対に!!」

 

雲を消し飛ばし、轟音と共に振り迫る神の一撃。穂乃果の技だけでは到底適わない

 

 

絵里「少しでも威力を…!!」バッ

 

穂乃果「絵里ちゃん!?」

 

絵里の金色に輝くオーラが風となって膨れ上がる。そのまま空へと飛び、神の一撃にその足をぶつける

 

 

絵里「ー ホワイトハリケーンGX ー!!」ドガアァン!

 

絵里「ぐっっ…!!!!」ググググ

 

フラエル「無駄だ」

 

絵里「きゃあっっ!!!」バキン!

 

弾き返される絵里。

威力は落ちているのであろう、だがまだ止められるような領域までには下がっていない

 

 

ことり「ー ワンダフルラッシュ ー!!」ドガアァン!!

 

絵里「ことり…!!」

 

絵里が弾かれてすぐに援護に入ることり。

ことりのシュートも強力だが、神の一撃はこれだけでは止まらない

 

 

ことり「和葉ちゃん…お願い!!」バキン!

 

フラエル「何…?」

 

 

和葉「任された…!!ありがとう絵里、ことり!!」

 

ゴール前まで戻っていた和葉。

最初からこれを狙って時間を稼いでいた絵里とことり。

和葉は穂乃果の前まで来ると、ある事を提案し始めた

 

 

和葉「穂乃果…2人で"ブレイブショット"だ!!私と穂乃果なら威力の落ちたあのシュートを止められる!!」

 

穂乃果「みっちゃん…!」

 

和葉「シュートが来る!!行くよ!!」

 

穂乃果「うん!!」

 

2人で同時に飛び出す。

神の一撃を前にして、2人は昔を懐かしむ感覚に囚われていた。

小さな頃に遊びで考えた2人の必殺技。

まさか、それがこんなところで現実になるとはーーー

 

 

穂乃果、和葉「ー ブレイブショット ー!!」

 

フラエル「!!!!」

 

空気を殴るような轟音。

衝撃波がフィールドに広がり、神の一撃がその場で止まる

 

 

穂乃果「ぐぬぬぬぬぬ…!!!!」ググググ

 

和葉「威力が落ちて…このパワー!!」ググググ

 

 

海未「穂乃果!!和葉!!」

 

梨子「お願い…耐えて!!」

 

 

穂乃果「みっちゃん!これを防いで…いっきに逆転だよっっ!!!!」ググググ

 

和葉「奇遇だね…穂乃果!!同じこと考えてたっっ!!!!」ググググ

 

少しでも気を抜けば穂乃果と和葉はゴールに押し込まれる。だが不思議とそうなる気がしなかった。

お互いがお互いの力を高めあっているかのように、力が溢れてくる

 

 

穂乃果、和葉「うおあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

ーーーバギイィィィィィン!!!!!!

 

 

天空の使徒「「「!!!!!!」」」

 

フラエル「な…なんだと!?」

 

防いだ。確かに防いだ。

穂乃果と和葉はそのまま吹き飛ばされるも、ボールの威力は死に、宙を舞っている

 

 

穂乃果「誰か!!前へ!!」

 

晴夏「はい!理亞ちゃん!!」パス

 

 

フラエル「し、しまった…!?」

 

時間的に最後のカウンター。

畳み掛けてきた天空の使徒のディフェンスはまだ固められていない。いっきに突破するには今しかない

 

 

理亞「全員抜いてやる…!!」

 

エカデル「行かせません!ー ゴートゥーヘブン ー!!」

 

理亞「!!」

 

理亞の真下の地面が輝き始める。

あと数秒後には光の柱に捕らわれているだろう。だが、あと数秒あるのならば今の理亞には十分すぎる時間

 

 

理亞「遅いわよ」ギュン!

 

エカデル「馬鹿な!?」

 

アイエル「"ゴートゥーヘブン"発動よりも速い!?」

 

必殺技が通じないと分かり、動揺する天空の使徒DFを横目に、瞬く間にゴールに迫る理亞

 

 

理亞「これで…逆転っっ!!」バッ!

 

爆発するような桁外れの嵐。

理亞の渾身の両足がゴールに放たれる

 

 

理亞「ー オーバーサイクロン ー!!」ドガアァン!

 

凛「理亞ちゃんのシュート!!」

 

理亞「まだよ!海未!!」

 

理亞が海未を呼ぶ。

既に雷雲の中で理亞のシュートを待ち構えている

 

 

海未「はあぁぁぁぁ!!!!」

 

迸るイカヅチ。

吹き荒れる嵐。

それ全てを蹴り放つシュートはまさに、『天変地異』

 

 

海未「ー 天地雷鳴 改 ー!!」ドガアァン!

 

エドガー「シュートチェイン…!」

 

"オーバーサイクロン"だけではゴールは破れないことは分かっていた。

だが、チェインならばどうか。

2つのシュートが混ざり合い、フィールド上を暴れながらゴールへと向かう

 

 

エノレル「ー ホーリーゾーン ー!!」

 

絶対領域に似ているとは言ったが、絶対ではないと"グランドファイア"が証明してくれた。

回転止まらずボールは進み続ける

 

 

エノレル「そ、そんな!!?」

 

海未、理亞「!!!!」

 

エノレルの手からボールが離れた。

"ホーリーゾーン"突破。

日本&海外チームの決死のカウンターから生まれた決定的なゴール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーバギイィィィィィン!!!!

 

 

「「「!!!!????」」」

 

 

それを神は

 

 

フラエル「…ハァハァ」

 

 

捻り潰した

 

 

海未「シュート…ブロック??」

 

理亞「ハァハァ…あれを止める…」

 

全ての力を出し切った。

勝利を確信し、喜びを爆発させようとした時のことだった。

それらが反動し、その場に崩れるメンバー。

それでも神は止まらなかった

 

 

フラエル「人間…まさかここまでやるとはな」

 

 

穂乃果「まずい…立たないと…」

 

和葉「ハァハァ…やばっ、動けない」

 

 

フラエル「そこまでこの人間が大事か。しかし、魔王を封印するのにやむを得ない犠牲」

 

フラエル「下界に落ちてもらう」グワーッ!

 

女神が足を振り上げた。

あれが放たれれば今度こそ終わりだろう。

しかし、そう分かっていても足が動かない。

先程のブロック&カウンターで体力を使ってしまったのだ

 

 

フラエル「ー ヘブンドライブ ー!!」

 

 

ドガアァァァァァァン!!!!!!

空で3度目の爆発。

地鳴りが大きなる。だが、穂乃果はまだ立てていない。止めなければいけないと分かっているのに、上を……向けない

 

 

 

 

 

 

 

 

エドガー「私に任せろ!!!!」バッ

 

「「「!!!!!!??」」」

 

 

それでも、"静かなる闘将"は諦めなかった

 

 

海未「エドガー…なにを!?」

 

エドガー(エクスカリバーは…距離が離れれば離れるほどパワーが上がる…)

 

 

 

 

 

 

エドガー(そこに"ヘブンドライブ"のパワーを加えれば!!!!)

 

 

 

絵里「あのシュートを打ち返す気!?」

 

穂乃果「ちょっとまってよエドガーさん…!!そんなことしたら、エドガーさんの足がっっ!!」

 

エドガー「友を守るために"潰れる"のならば、この足も本望だ!!!!」

 

穂乃果「ダメだよ…やめて!!エドガーさん!!!!!!」

 

 

 

 

"潰れる"。エドガーも分かっているのだろう。日本VSイギリスの時のダメージだけでは済まない、まさに捧げる。

『生贄』を救うため、自らの足を『生贄』にするのだと

 

 

エドガー「っっ!!!!」バッ!

 

 

手で地を払い、髪が揺れる姿はまさに"美"

 

 

エドガー「!!!!」グルン!

 

 

空へ飛び一回転。神にも恐れない姿はまさに"勇"

 

 

エドガー「エクスーーーーーー

 

 

迷わぬ一閃。その姿はまさに…"誇り"

 

 

 

 

 

 

ーーーーーカリバー!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ギシャアァァァァァァァァァン!!!!!!

 

エドガー「ぐうああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

天空の使徒「「「!?!?!?」」」

 

フラエル「何!?打ち返しただと!?!?」

 

音、衝撃波、パワー、どれを見ても次元を超えていた。

人間、天使共々声も出せず。

ただ、その新次元の破壊の行先を見届けた

 

 

エノレル「ー ホーリーゾーン ー!!」

 

 

ーーーシャキイィィィィィン!!!!

 

 

エノレル「!!!!」

 

エノレルには聞こえた。

「切られた」

"ホーリーゾーン"が、技ごと、空も地も、両断された音を

 

 

 

エノレル「ぐあっっ!?!?」

 

 

バシュウゥゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

ピーー!!!!

 

 

天空の使徒「「「」」」

 

フラエル「」

 

 

凛「入った…にゃ」

 

得点を見る。2-1。

試合時間を測る砂時計は既に流れ終わっている

 

 

凛「試合…終了?」

 

曜「じゃあ、私たち…勝ったの?」

 

晴夏「これで花丸ちゃんを取り戻せる!!」

 

 

しかし、代償は大きかった

 

 

エドガー「っっ……!!」

 

穂乃果「エドガーさん…しっかり!!」

 

和葉「……折れてるね」

 

見るのも辛い。

エドガーの足は覚悟の通り、代わりの生贄として。地に立ちボールを蹴るという役目を担えなくなった。

その苦しみながらも後悔のない顔を見るとどうしても、穂乃果たちの後悔の念は強くなっていく

 

 

エドガー「だが…ハァハァ…守れた」

 

「「………」」

 

 

そんな中だった

 

 

フラエル「傷を見せろ」

 

エドガー「!」

 

絵里「あなた…なにを!?」

 

警戒されるのは無理もない。それでも構わず女神はエドガーの足を見た

 

 

フラエル「…その足、治してやる」

 

そう言うと女神はエドガーの足に手をかざす。忘れてはいけないのが、今花丸に憑依している者が人智を超えた神であること。

すぐに変化は表れる

 

 

梨子「腫れが…消えてく!?」

 

エドガー「…!!」

 

数秒後、先程までの激痛が嘘だったかのように。エドガーはその場で立ち上がった。

驚きのあまり声を出せない穂乃果たち。

そんな中でフラエルは続けた

 

 

フラエル「痛みはもう無いな」

 

エドガー「え、えぇ。感謝します」

 

フラエル「そうか…」

 

女神の目に、人間を見下すような色は無かった。ただ起きたことを。

こうなった全ての原因を女神は知りたかった

 

 

フラエル「力では圧倒的に上回っていたはずだ。なのに何故、私たちは負けたんだ」

 

神は知りたかった。

神を超える人間はどう答えるのかを

 

 

穂乃果「それはね、サッカーは手段なんかじゃないってことだよ」

 

フラエル「手段…じゃない?」

 

穂乃果「サッカーは魂と魂のぶつかり合い!どっちが上か下かなんて…そんなの関係ないよ!」

 

フラエル「魂と魂の…ぶつかり合い」

 

女神は見た。

人間たちの瞳の中で強く輝く光を。

その決意と強さを表した光は、女神である自分にも眩しく感じた

 

 

セイン「!!」

 

ウイネル「セイン…どうしたの?」

 

セイン「人間たちの言葉を聞いて分かった。あの壁画の意味が」

 

ウイネル「!」

 

 

フラエル「どうやら貴方たちには礼を言う必要がありそうだな」

 

穂乃果「え…?」

 

フラエル「魔王は倒せず、封印しか出来なかった私の力の足りなさの原因はなんなのか。私は長い間悩んでいた」

 

フラエル「そして分かった。私には貴方たちのような魂の強さが足りなかった。生贄を頼り、使徒を頼り、自分の覚悟の足りなさを見失っていた」

 

ウイネル「セイン…あの壁画って」

 

セイン「何故、先祖はサッカーを私たちに伝えようとしたのか。それは、サッカーが魂と魂をぶつけ合い、高めるための最高の方法だということを、伝えたかったんだ」

 

 

フラエル「穂乃果、と呼んでもいいかな」

 

穂乃果「もちろん…!!」

 

フラエル「貴方たちのおかげで私の覚悟は決まった」

 

フラエル「魂をぶつけて、魔王とサッカーで決着をつける。その為に、協力して欲しい」

 

穂乃果「協力…?」

 

 

 

フラエル「魔王に憑依された人間を助け出す方法がある。我らと共に、魔界に乗り込んでもらいたい」

 

 

次回、魔界軍団Z戦

 

 

 





グランドファイア
原作技最強クラスと謳われる技です。豪炎寺、虎丸、ヒロトの3人で放つシュート技で、かっこよさも威力もトップレベル。
輝こうでは"ザ・フェニックス"を進化させた"ファイナルトルネード"をさらに進化させた技として、『威力が落ちないシュート』として書きました。力でねじ伏せない限り止められないです。さすがの"ホーリーゾーン"も相性が悪かったようです。恐らく千歌ちゃんたちを苦しめた"無限の壁"は瞬殺です

ご感想、よろしくお願いします!



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第3章 99話 「魔界軍団Z戦 "悪魔とのサッカー"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!

必殺技の囲みをー ーから【】にしてみました。おそらく、こっちの方が見やすいのではないかと。今回から魔界軍団Zと戦います




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

穂乃果、海未、ことりの"グランドファイア"。そしてエドガーの"エクスカリバー"により天空の使徒に勝利した白チーム。女神フラエルが持ち掛けた提案、それは魔王から善子を救い出す内容だった

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

ー デモンズゲート ー

 

 

千歌「善子ちゃん…だよ、ね?」

 

魔王(善子)「善子?あぁ、この人間のことか。この人間の体は俺の体として使わせてもらう!!」

 

声と姿は善子そのものだった。

しかし口調と禍々しい目。

赤黒く濁った目は血走っており、まさに悪魔そのもの。洗脳などの生ぬるいものではない、それだけは分かった

 

 

フィレア「魔王…体…まさか、生贄って憑依する体の!?」

 

デスタ「そうだ!地の底に封じられし魔王。伝承の鍵に導かれし生贄の体に宿る…そして我らが主、魔王様は復活した!!」

 

アラクネス「世界は破滅の炎に包まれ、文明は崩壊する。そしてこれより千年!!世界は魔王と魔界軍団Z、悪が支配する世界となるのよ!!」

 

 

鞠莉「…魔界の住人気取りかと思っていましたが…冗談ではないようデスね」

 

果南「善子のあの様子ヤバいよ…目を合わせるだけで寒気が止まらなくなる」

 

だが、引き下がることなどありえない。

千歌たちはどんなに恐怖で圧倒されようとしても、その場から動くことはなかった

 

 

デスタ「ふん!!大切な魔王様の生贄…人間如きに渡すと思うのか?」

 

ダイヤ「ならば力ずくでも奪い返しますわ」

 

ルビィ「お姉ちゃん…!」

 

ダイヤ「わたくしは怒っています。善子さんを巻き込み、こんな仕打ちを…!!」

 

 

 

 

「人間が魔界の民と魔王に挑むか?」

 

 

「「「!?!?」」」

 

 

洞窟の中。

声が反響し奥まで伝わる。聞き覚えのある声。不気味に楽しむような憎たらしい声

 

 

フィレア「あの時の…」

 

「魔界の者に戦いを挑むならば、いにしえの掟に従わなければならぬ。即ち!!」

 

今までデモンズゲートには濃いきりが立ち込めていた。

しかし、老人の声に答えるかのように。霧が一斉に晴れ、現れたのは

 

 

ルビィ「サッカーコート…」

 

「サッカーで戦い、勝者を決めるべし」

 

 

 

――――――

 

 

 

ー 日本&海外チーム ー

 

FW…………黒澤ルビィ、黒澤ダイヤ

 

MF……フィレア、高海千歌、クラリア

 

MF……………矢澤にこ、統堂英玲奈

 

DF………鹿角聖良、小原鞠莉、東條希

 

GK……………………松浦果南

 

3-2-3-2 ベンチ…渡辺月、優木あんじゅ

 

 

 

ー 魔界軍団Z ー

 

FW…………………魔王、デスタ

 

MF…メフィスト、バルバトス、アラクネス

 

DF…ベルゼブ、クラーシャ、ベリアル

 

DF…………アビゴール、ヘビーモス

 

GK…………………アスタロス

 

2-3-3-2

 

 

 

 

デスタ「くっくっく…強き魂が集まれば集まるほど…魔王様に集まる力は強くなる。お前らの魂を全て取り込ませてもらう…生贄としてな!!」

 

 

ピーー!!!!

 

 

ダイヤ「まずはボールを奪いますわよ!」

 

ルビィ「うん!」

 

姉妹でのダブルFWは久しぶり。

しかし、楽しむ暇などなく、ボールを持ちこちらへと迫る善子を迎え撃つ

 

 

ルビィ(心は魔王でも体は善子ちゃん…人間の体!!ついていけるはず!!)

 

ルビィの考えも一理ある。

しかし、魔王は人間の想像を遥かに超える

 

 

魔王「必殺タクティクス【ブラックサンダー 】!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピーー!!!!

 

 

果南「…ぇ、」

 

試合開始の笛が吹かれ、その後すぐに再び吹かれる笛。しかし、反則や中断の笛ではない

 

 

クラリア「なに!?」

 

英玲奈「何が起きたんだ!?」

 

ボールは既にゴールの中。

突然魔王が姿を消したかと思いきや、気づいた時には果南の横。ゴール前に立っていたのだ

 

 

希「瞬間移動…いや、距離が長すぎる」

 

にこ「ちょっと、何も分からないまま得点ってなんなのよ!?」

 

混乱し、動揺を隠しきれない日本&海外チーム。魔王たちは恐怖しろと言うが、不覚にもその通りの展開になってきている

 

 

魔王「このまま点差をつけて終わらせる」

 

デスタ「仰せのままに」

 

キックオフと同時に発動した必殺タクティクス…あれに何か仕掛けがあることは分かっている。

しかし、それ以外、回避も対策も何もわからない。このままでは戦わせてさえくれない可能性もある

 

 

ルビィ「お姉ちゃん…今のって…」

 

ダイヤ「っっ…分かりません」

 

自分たちが何も出来ない間に全てが終わっている。このまま終わってしまうのか?

 

 

月「…」

 

しかし、ここまでの一部始終を目撃した人間が2人

 

 

あんじゅ「タクティクス発動後に、みんなの動きが止まった…?」

 

月「みんなが混乱しているのは恐らく、相手が瞬間移動しているように"見えた"からだよ」

 

月「違う」

 

ベンチで控えている2人。

フィールド外の2人はタクティクスの影響を受けていなかったのである。

魔王は瞬間移動したのではなく、人間チームのメンバーの動きが停止したため。

そう見えているだけ、つまり人間チームの動きを止める必殺タクティクス

 

 

月「でも仕組みがわからない…!!このままじゃ、」

 

あんじゅ「よく観察するのよ。2人いるんだもの、次であのタクティクスを見極めるわよ」

 

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

ダイヤ「ルビィ!」

 

ルビィ「うん…!」パス

 

中盤のにこへとボールを渡す。

今は魔界軍団Zの戦術がわかないため、無闇に攻めるのは危険である。そのためパスを回し、相手のサッカーを見極めようとしていた

 

 

にこ「様子をうかがうと言っても、攻めの心を忘れるんじゃないわよ!!」

 

クラリア「その通りだ矢澤にこ!!」

 

にこ「クラリア!」パス

 

守るだけではサッカーは小さくなる。

相手にプレッシャーで追い詰められて自滅する時間稼ぎに過ぎない。

だからこそ、守りたいのなら本気で攻める

 

 

メフィスト「調子に乗るな!!」ドォン!

 

クラリア「くっ…まだまだ!!」ドォン!

 

メフィスト「なっ…(この人間、パワーが!?)」

 

 

聖良「流石は世界屈指のフィジカル…!!負けてないです!」

 

鞠莉「聖良、希!マリーたちも上がるわよ!」

 

クラリアが強引に切り込むことにより、魔界陣営にズレが生じる

 

 

クラリア「高海千歌!」パス

 

千歌「!」

 

フィレア「千歌!シュートだ!!」

 

千歌はすぐに構える。

クラリアが恐怖に屈することなく作ったチャンス。無駄にするわけにはいかない

 

 

千歌「【サンシャインアッシュV2】!!」

 

果南「V2!!進化してる!」

 

特訓により進化した太陽。

パワー、そして輝きが高まり。そのまま魔界ゴールへとーーー

 

 

アスタロス「【ジ・エンド】」ググググ

 

 

 

ーーーグシャッ

 

 

千歌「!?」

 

フィレア「ボールが…空間ごと握りつぶされた!?」

 

魔界軍団ZのGKの必殺技『ジ・エンド』。

手から禍々しいオーラを放ち、ボールを空間ごとねじ曲げて潰す

 

 

アスタロス「この程度か?」

 

 

千歌「…全く手応えがない!」

 

フィレア「落ち着いて千歌。まだ試合は始まったばかりだよ」

 

そう。まだ時間はたくさん残っている。

今は1点差、もっとパワーのあるシュートを2回押し込めばいいのだ

 

 

魔王「行くぞ!!必殺タクティクス!!」

 

 

「「「!!!!」」」

 

果南「またあれが来る…!」

 

しかしそれは、この先1点も失点しなければの話

 

 

月「今度こそ…」

 

あんじゅ「……」

 

 

魔王「【ブラックサンダー】!!」

 

 

 

ーーーバリバリバリ!!

 

月、あんじゅ「!!」

 

そして再び、フィールドの選手たちの時が止まった。誰も瞬きさえしない、異様な光景

 

 

月「今の音…」

 

あんじゅ「私、見ちゃったわよ。あの技の仕組み」

 

 

 

魔王「はあぁぁぁぁ!!!!!!」

 

月、あんじゅ「!?」

 

必殺タクティクスの仕組みを暴いた2人の意識をフィールドに引き戻したのは魔王。

今まさに、何も出来ず、無抵抗なゴールに向かって放つ

 

 

魔王「【ダークマター】!!」ドガアァン!

 

月「果南ちゃんっっ!!」

 

 

ーーードガッッッッ!!!!!!

 

果南に強力なシュートが直撃する。

それと同時に解除される拘束。

急に襲いかかる衝撃と痛み。果南はそのままゴールに叩きつけられた

 

 

果南「ぐあぁっっ!?!?」

 

鞠莉「果南!!!!」

 

 

ピピーー!!!!

 

 

千歌「これで0-2…」

 

ルビィ「ルビィたち、何も出来てないよ…」

 

果南の元へと駆け寄る鞠莉。

鞠莉自身、状況を理解出来ていないがまずは果南のことを最優先する

 

 

鞠莉「果南、大丈夫!?」

 

果南「ゲホッ!!ゲホッ…なん、とかね」

 

こんなことを繰り返していては試合が終わる前に果南の体が持たない。

最悪自分が盾に…そう鞠莉が考えた時だった。

状況が早くも変わることになるのは

 

 

英玲奈「みんな聞いてくれ…!!あの必殺タクティクスの仕組みが分かったぞ!」

 

「「「!!!!」」」

 

にこ「なんですって!?」

 

希「どうして分かったんや?」

 

英玲奈「ベンチにいる月とあんじゅには必殺タクティクスの影響が出ていなかったんだ。それであの2人から教えてもらった」

 

仕組みが分かれば簡単。英玲奈はすぐに説明を始めた

 

 

英玲奈「…雷だ」

 

クラリア「雷?」

 

英玲奈「タクティクス発動と同時に、私たちに"黒い雷"が落ちる。その雷にあたると、私たちは動けなくなる」

 

聖良「相手が瞬間移動しているのではなく、私たちが固められていたんですね」

 

だがそれでも脅威には変わらなかった。

あたれば最後、解除されるまで心も体も動かなくなる。それに雷を避けながらサッカーをするなど、人間以上の力をもつ者相手に不利以外の何でもなかった

 

 

ルビィ「不利…関係ないよ」

 

ダイヤ「ルビィ!」

 

ルビィ「ルビィに1点任せて。必ずあのゴールを揺らす」

 

フィレア「分かった。人間でも戦えるってこと、教えてあげよう」

 

 

0-2。前半は折り返しを越え、前半終了まであと十数分となっていた

 

 

ルビィ「…」

 

ダイヤ(スイッチが入りましたわね)

 

先程まで魔界、そして魔王に怯えていたルビィ。

いつもの試合のように、圧倒的なサッカー。要するに全力のサッカーが出来ないでいた。

しかし、善子の悲惨な姿。自分たちが今いる状況。そして、FWとしての責任を感じ、徐々にその心の炎を高め始めていた

 

 

クラリア(あの鋭い目。間違いない。試合中のエースストライカーの顔だな)

 

その変化はクラリアも感じていた。

このタイミングでの変化は頼もしい。

前は敵でも味方になると頼もしくなるとはよく言うが、まさにこれがそうだと。

"紅き流星"の小さくも大きな背中を見て思う

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

ダイヤ「ルビィ」

 

ルビィ「…行くよ」シュルル…

 

 

魔王「随分と余裕だな」

 

何も知らずにボールを狩りに来る魔王。

だが、人間たちは近寄ることさえしない。してはいけないと身を持って知ったからである

 

 

ルビィ「っっっっ!!!!」ゴオォォォ!

 

魔王「なんだ…??」

 

そして、何も知らぬ魔王もその変化に気づく。

先程まで怯えに怯え、1番美味そうな魂だと品定めしていた赤髪の少女。

しかし、髪留めを解き、オーラを高め始めたと思いきやどうか。

まるで殺気。オーラ自体が本物の炎のよう

 

 

ルビィ「【Awaken the power】!!」ドォン!

 

魔王「!!」

 

アラクネス「炎を纏った!?」

 

ルビィから吹き出す熱エネルギーは魔王の足を止める。《こいつ…ただの人間じゃないな》

魔王がそう考えた時にはーーーー

 

 

 

ルビィ「【スプリントワープGX】」ギュン!!

 

魔王「ーー!!」

 

 

ーーー時すでに遅し

 

 

バルバトス「速い!?」

 

メフィスト「人間が出せる速さじゃない…!!」

 

そのドリブルを目で捉えるのは困難を極める。唯一得られる情報は、地面を蹴る一瞬の音のみ

 

 

フィレア「私も負けてられないね!」バッ

 

ルビィ「!」

 

そんなルビィの高速ドリブルに対応出来るのは人知を超えた悪魔ではなく…"白い流星"

 

 

ルビィ「フィレアさん」パス

 

フィレア「私が突破する…!ルビィは前へ」

 

ルビィ「うん」バッ

 

ベルゼブ「突破なんてさせるか!!」

 

ベリアル「2人で潰してやる!!」

 

ボールを受け取るのと同時に迫る悪魔。

1対1でも人間は圧倒的に不利。無防備な人間ならば呆気なくやられてしまうだろう。

しかし、

 

 

フィレア「遅いっっ!!」ギュン!!

 

ベルゼブ、ベリアル「!?!?」

 

人間は非力。全てにおいて下等。

そんな人間たちが悪魔に唯一対抗出来るのが圧倒的技術。すなわち、必殺技

 

 

フィレア「逃走っっ迷走!!!!」ギュンギュン!

 

ベリアル(動きが読めないっっ!?)

 

人間が試行錯誤の末に得た力は人外にも届く。そうして目指すのは、頑なに閉ざされたゴール

 

 

フィレア「メビウスループ!!!!」

 

ベルゼブ「2人…纏めて…」

 

 

鞠莉「Excellent!!完全に抜いたわよ!!」

 

にこ「前!どフリーよ!!」

 

 

フィレア「ルビィ!!」パス

 

ついに渡った。渡ってしまった。

下等だろうが弱かろうが関係ない、力でねじ伏せる最強のシュート

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁ!!!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

地の底にて、轟き始めた

 

 

ルビィ「ふん!!!!」バシッ!

 

魔王(なんなんだ…これは、)

 

そして魔王が感じた違和感

 

 

ルビィ「でりゃあっっ!!」バシッ!

 

魔王(あの人間の技を見た途端に…体が??)

 

違和感。それは魔王が憑依する体の違和感。

体が震え、上手く動かせない。

まるで本能が抗っているようだった。

原因はあの現在進行形で放とうとしているシュートだろう。

巨大なオーラが憑依する人間にまで届き、支配する我に抵抗している

 

 

魔王「小癪なぁ…人間如きがあぁ…!!!!」

 

全てが、目に映る人間が、怒りを駆り立てる

 

 

 

ルビィ「【ラストリゾート】!!!」ドガアァン!!

 

放たれたシュートは異常。

『触ってはいけない』

 

 

ベヒーモス「こんなシュート、ブロックしてーーー

 

 

バキイィィィィン!!!!!!

 

 

ーーーうわあぁぁ!?!?」

 

クラーシャ「ベヒーモスが吹き飛ばされた!?」

 

 

アスタロス「【ジ・エンド】」ググググ

 

アスタロスは必殺技を発動。

触らなければ弾かれるも何もない。

勝利を確信するもそれは一瞬でーーー

 

 

 

アスタロス「ぐあぁっっ!?」バギッ

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

ーーー崩れ去った

 

アスタロス(重すぎて…握り潰せ、ない)

 

 

 

バシュウゥゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

ピピーー!!!!

 

 

千歌「よーし!1点返した!!」

 

クラリア「流石だな…!紅き流星!」

 

 

ルビィ「…善子ちゃんは返してもらうからね」

 

 

紅い瞳で悪魔たちを睨む少女。

まさかこれ程までの人間がいるとは…

魔界の民は皆驚愕し、統べる主はーー

 

 

魔王「……」

 

 

ーー怒りに満ちていた

 

 

デスタ(ま、魔王様から殺気が…)

 

魔王「デスタ」

 

デスタ「はい…!」

 

魔王「あの人間を潰す。いい餌を見つけた」

 

魔王が殺意を向けるのは赤髪。

そして餌と確信したのは、その少女が真っ先に駆け寄っていったもう1人の人間

 

 

ルビィ「このまま畳み掛けよう。お姉ちゃん」

 

ダイヤ「…はい」

 

ルビィ「?」

 

 

その人間とはーーー姉、黒澤ダイヤ

 

 

 

日本&海外チーム 1-2 魔界軍団Z

 

 

 





次回、誰かが死す。ゲームスタンバイ


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第3章 100話 「魔界軍団Z戦 "地の底へと落とす技"」


皆さんお久しぶりです。ルビィちゃんキャンディーです!
受験期間中なのに、何故投稿したのか…それは『輝こうサッカーで!』が1周年を迎えたからです!
今日ぐらいいいかなと思って更新しました。この作品が処女作になりますが、ここまで皆様お付き合い本当にありがとうございます!これからも輝こうは続きますのでよろしくお願いします


前書きは明るい内容ですが、試合は暗いです




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

魔界軍団Zとの試合が始まった。開始早々、必殺タクティクスで2点を決められるも、ベンチで一部始終を見ていた月とあんじゅにより、その仕組みを見破る。一気に火がついたルビィは『ラストリゾート』で魔界軍団ゴールをこじ開けた。1点を返すが、そのあいだにも魔王の怒りは高まっている

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ピーー!!!!

 

 

 

英玲奈「全員、黒い雷に気をつけろ!!」

 

月とあんじゅから教えてもらった『ブラックサンダー』の仕組み。名前の通り黒い雷、それにあたると動きが止められてしまう

 

 

魔王「必殺タクティクス【ブラックサンダー】!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

そしてタクティクス発動が魔王により指示される。

頭上に注意を払うと…確かに

 

 

ーーーバリバリバリ!!

 

 

にこ「ほ、ホントに落ちてきたわよ!?」

 

希「にこっち避けるんや!!」ビュン!!

 

にこ「あっ!?瞬間移動ずるいわよ!!」

 

あたらないためには避けるしかない。

雷を避けるのは不可能かと思われたが、自分たちを狙って落ちてくるため、タイミングを見計らえばなんとか避けれている

 

 

月「おぉ〜!すごいよみんな!」

 

あんじゅ「器用ね…」

 

無事に『ブラックサンダー』を回避した人間チーム。これならば正々堂々真正面から戦える。

一方、魔界軍団チームはまさかのタクティクス不発に驚きを隠せないでいた

 

 

アラクネス「『ブラックサンダー』が見破られた!?」

 

デスタ「ちっ…小賢しいまねを…!」

 

不発と分かると、攻撃を開始する魔界軍団チーム。

改めてチームのサッカーを分析すると、特徴はパスや連携攻撃よりもドリブル。パワープレイで攻めてくる。スペイン代表の戦い方に近いものがある。

そうと分かれば…

 

 

にこ「いよっと!」ズザーッ

 

デスタ「なにっ!?」

 

にこ「にこたちはもっとフィジカルの強いチームと戦ってるのよ!あんたたちの動きは見切ってるわ!!」

 

パワープレイ中心のチームにとって、テクニックや躱すプレーを得意とするにこは天敵そのもの。一瞬にしてボールを奪い取ったにこは前線へと繋ぐ

 

 

にこ「ダイヤ!!」パス

 

ダイヤ「はい…!」

 

ベリアル「行かせるか!!」バッ

 

ダイヤ「っっ!!」

 

ルビィ「お姉ちゃんこっち!」

 

ダイヤ「ルビィ!」パス

 

 

魔王(…やはり、な)

 

 

先程1点を決めたルビィ。このまま持ち込んで2点目を前半が終わるまでに叩き込みたいが、相手もそう簡単には道を開けない

 

 

クラリア「くっ…マークが厳しいな!」

 

フィレア「ルビィ!こっちは無理だ!」

 

フィレアとクラリア。

先程までのチャンスは2人から作られたため、マークが厳しくなっている。

ルビィが1人で攻めるのもアリだが、パワープレイチームにはパスなどの連携が有効

 

 

ルビィ「千歌ちゃん!」パス

 

千歌「!」

 

千歌のドリブルとパスの精度ならばDFを抜けることが出来る。

そう考えたルビィは千歌にバックパス。

しかし、

 

 

バルバトス「うぉー!!」ズザーッ

 

千歌(スライディング!?)

 

千歌「ダイヤさん!」パス

 

ルビィ「!!」

 

すぐにプレスをかけてくる相手チーム。

この動き、そして先程から何か違和感がある魔界軍団チームの動き。

まるで…

 

 

ルビィ(わざとパスを出させたような…)

 

 

そして。ダイヤにボールが渡った時だった

 

 

 

 

魔王「喰らえ!!!!」

 

「「「!!!!??」」」

 

ダイヤ「な!?」

 

魔王が動いた。

待ってましたと言わんばかりに足を振り上げ、何かを仕掛けようとしている

 

 

ルビィ(罠!?いったいなに……ぇ、

 

 

 

 

ダイヤの上空に。

 

魔王がオーラで作った巨大な塊。

 

まるで岩のようなものが、ダイヤ目掛けて一直線

 

 

 

ルビィ(あれはヤバいっっ!!あれはヤバい!!あれはヤバいっっ!!!!)

 

本能がそう感じた。

あのオーラを叩きつけられたら、ダイヤは、ただでは済まない。

本人も分かってはいるはずだ。しかし突然のことでダイヤは動けていない

 

 

千歌「ダイヤさん!避けて!!!!」

 

千歌の叫びが届くも、既にオーラの塊は振り下ろされている。間に合わな。

今からダイヤが反応しても逃げられない

 

 

日本&海外チーム「「「ダイヤ!!!!」」」

 

ダイヤ「」

 

 

 

 

 

 

魔王「【ゴートゥーヘル】!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーードゴッッッッッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

鈍い音が、広がっていく

 

 

 

 

ダイヤ「」

 

千歌「」

 

フィレア、クラリア「」

 

鞠莉、果南「」

 

 

ダイヤは背中に衝撃を感じた。

それと同時に視界と感覚が動き、それを理解した時には既に1・2m横に飛ばされていた。

衝撃と言っても岩が直撃したような死を感じる痛みではなく、痛みの中に優しさがあるような。ダイヤが痛いと感じないような最低限の力で押されたような。

 

 

 

そう、誰かに押されたような。突き飛ばされたような

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ごふっっ!?!?!?」

 

 

ダイヤ「ルビィぃぃぃぃ!!!!??」

 

 

 

姉、黒澤ダイヤが一番見たくなかった姿。

背後にいて欲しくなかった姿

 

 

魔王「まんまと掛かったな…脆く、弱き人間」

 

 

魔王は笑っていた。

善子の顔をしながらも、その目には別のものが宿り、地に倒れるルビィを。

恐怖・後悔・怒りに震えるダイヤを見ていた

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

そのまま前半は終了となった。

ルビィはすぐにフィールドの外へと運ばれ容態を見る。

見たところ外傷はないように見えるが意識が無い。それに音。聞くだけで背筋が凍る鈍い音だった。

まるで鈍器で硬いものを砕いたような…考えたくもない想像がメンバーの頭をよぎる

 

 

月「骨は…おそらく折れてない…いや、分からない。もしかしたら深いところにある骨が…」

 

にこ「早く病院に連れていった方がいいんじゃないの!?」

 

果南「でも、ここから病院なんて時間がかかりすぎる!!それにアイツらが試合を中断させてくれるなんて思えない!!」

 

どの道を選んでも正解がないような選択肢。

当然だが、チーム内の空気はどんどん悪くなっていく。

ルビィにもしもの事があったら。

それを考えるだけで色々な負の感情が頭をよぎる。

そんな中、

 

 

魔王「その人間、骨は折れてない」

 

「「「!!!!!!」」」

 

誰が予想したか。

人外の者が全員が知りたがっていたことを口にしたのだった

 

 

果南「誰がアンタの言うことを信じるのさ!!」

 

魔王「ならば同じ人間の言うことは信じるか?なぁ、金の髪の娘」

 

鞠莉「っっ!!」

 

果南「鞠莉…??」

 

何故か、魔王の言葉に動揺する鞠莉。

果南が鞠莉の顔を見ると、いっきに青ざめていくのがわかった

 

 

魔王「赤髪の娘。我がオーラが直撃する瞬間に炎を纏って受け身をとったのだ。やはり、非凡な人間はやることが違う」

 

フィレア「炎を纏った…"ATP"のことか!?」

 

聖良「受け身をとった…鞠莉さんは見たんですか??」

 

鞠莉「…確信がなかったから言えなかったの。でも、視力には自信があったから…ちょっとだけ見えたの」

 

ルビィが身を捻り、体への衝撃を人間を超えた動きで受け流す姿。

地面に叩きつけられ気絶はしたものの、脈呼吸共に安定していること。

一通り説明を聞いた果南は言う。

昔ルビィがやっていた、習い事の中の武術。それが体に染み付いていたのでは、と

 

 

鞠莉「…どうして?私が"見えてた"って分かったの?」

 

魔王「我は人間の心の変化を見ることが出来る」

 

 

魔王曰く、人間の心は炎のようだと。

感情の変化により大きさ、そして色が変わる。その力で鞠莉の心を読み取っていたのだ

 

 

フィレア「…ねぇ、これは反則とかの域ではないと思うんだけど」

 

被害者が誰であろうと、そんな危険な技を魔王はダイヤにぶつけようとしていた。

これはハッキリとした危険行為。

だが、それを否定したのも…

 

 

鞠莉「…反則には、ならないわ」

 

誰が予想したか

 

 

クラリア「鞠莉!?どういうことだ!?」

 

鞠莉「あの技…ダイヤを狙ったんじゃない」

 

 

 

鞠莉「ディフェンス技。最初からボールを狙っていた。そうでしょ?」

 

魔王「あぁ」

 

 

あの技、『ゴートゥーヘル』は人ではなくボールにオーラを衝突させ、その衝撃で相手を吹き飛ばす技。

しかし、それをダイヤを狙っていると勘違いしたルビィは自ら自爆。

要するに、自らの被弾。ファウルにはならないというのだ

 

 

果南「そんな無茶苦茶な話…!!」

 

にこ「それに、なんで鞠莉はあんなの庇うのよ!?」

 

鞠莉「…善子のためよ」

 

果南、にこ「!!」

 

忘れてはならない。

この試合の目的は善子を助け出すこと、このまま反則で相手を刺激すると、無事に善子が帰ってくる可能性が低くなる。

それだけは絶対に避けなければならない。

今は、後半戦を始めさせ試合に勝つ。それが最大の目的なのだ

 

 

にこ「だからって…」

 

魔王「そして、赤髪の娘をこんな目に合わせたのは何を隠そう、姉だ」

 

ダイヤ「…!!」

 

魔王「お前も分かっているのだろう?赤髪の娘がずっと自分のことを気にしていたのを」

 

千歌「どういうこと?ダイヤさん」

 

ダイヤ「…」

 

ダイヤはゆっくりと話し始めた。

世界レベルの選手たちが囲んでいる今のチーム。ルビィやクラリア、フィレア、千歌などの前線組と共に戦うには実力が足りないと自覚していたダイヤ。

そしてその考えを感じ取り、気にかけていたルビィ。

試合中、いつでもダイヤのフォローに行けるように、手助けできるようにルビィはポジションを取っていたのだ。

人間ではない者との戦い。それも重なり、ルビィはかなりダイヤの身の安全を警戒していた。

姉の身は絶対に守ると。そして、そんな決意が空回りすることになるとは…

 

 

魔王「その全てを狙っていた!!お前は責任を感じ、怯え、自分の弱さに震える!!それだけ魂は美味くなる…まさに魂の調理だ!!」

 

にこ「急に口数が多くなったと思ったらなんなのよ!!そんなことでダイヤは挫けるようなやつじゃないわよ!!」

 

ダイヤ「にこさん…ごめんなさい。全てはわたくしのせいです」

 

にこ「ちょっ、ダイヤ!?」

 

ダイヤ「わたくしが弱いばかりに、ルビィ、そして皆さんを危険に晒している…わたくしにサッカーの才能はありません…それな「ふざけないでよ!!!!」

 

ダイヤ、にこ「!?!?」

 

鞠莉「ダイヤ!!おかしいわよ!?」

 

ダイヤ「鞠莉、さん…」

 

鞠莉「悔しいと思わないの!?」

 

ダイヤ「悔しい…?」

 

鞠莉「ルビィになめられたのよ!?ダイヤは助けてもらえないと戦えないと思われたのよ!!悔しい、見返したいと思わないの!?」

 

 

希「すごいなぁ…浦の星は」

 

にこ「しーっ!アンタは黙ってなさい!」

 

 

鞠莉「違うでしょ!ダイヤは誰よりも負けず嫌いな、誰にも負けないぐらいサッカーが大好きな黒澤ダイヤ!!ルビィに守られなくたって、自分で自分のサッカーが出来る!!」

 

ダイヤ「鞠莉、さん」

 

鞠莉「ルビィの目が覚めた時に言ってやりなさい。ルビィの助けがなくても、自分は自分のサッカーが出来るって」

 

ダイヤ「……」

 

鞠莉「分かったら黙って後半!!いいわね?」

 

ダイヤ「分かりましたわ」

 

魔王の思惑通り、ルビィを罠にはめ。

ダイヤの心がへし折れるかと思いきや、鞠莉のダイヤの心を叩くような激。

『自分のサッカーは自分でやれ』

それは才能に劣り、自らを悲観していたダイヤには十分すぎる刺激になる言葉だった

 

 

魔王「後半までその強い心が持つかな??恐怖に怯える魂の完成はすぐそこだ…!!」

 

 

にこ「あいつ…ホントに気持ち悪いわね」

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

後半戦。ルビィとあんじゅを交代、月はルビィの容態を見ることになった

 

 

FW…………クラリア、黒澤ダイヤ

 

MF……フィレア、高海千歌、矢澤にこ

 

MF…………優木あんじゅ、統堂英玲奈

 

DF………鹿角聖良、小原鞠莉、東條希

 

GK……………………松浦果南

 

3-2-3-2 ベンチ…渡辺月、黒澤ルビィ

 

 

 

 

クラリア「ダイヤ。私たちは貴方には才能ないとは言って欲しくない」

 

ダイヤ「クラリアさん…」

 

フィレア「ダイヤのことは全員信じているし期待している!まずは自分のサッカーを信じるんだ!そうすれば必ず道は開けるよ!」

 

ダイヤ「自分のサッカーを信じる、ですか」

 

仲間たちに背中を押され、前を向くことの大切さを再認識したダイヤ。

自分を守るために負傷を負ったルビィ。そして自分のサッカーを見失っていたダイヤ

 

 

フィレア(ってか鞠莉ってあんなふうに怒鳴るんだ…和葉に教えてあげよ)

 

クラリア(日本の全国大会でも、ルビィが理亞に怒鳴られていたな…血は争えないということか)

 

泣いても笑ってもこれで勝負が決まる。

ルビィの交代により戦力は下がってしまったが、それをひっくり返すほどの力で逆転することを今の千歌たちは求められている

 

 

千歌「……許さない」

 

 

ピーー!!!!

 

 

日本&海外チームのボールからスタート。

FWとなったクラリアがにこへとボールを渡し、試合を組み立てる

 

 

英玲奈「黒い雷と落下するオーラに気をつけろ!両方あたったらタダじゃ済まないぞ!!」

 

にこ「分かってるわよ!千歌!」パス

 

ボールをもらった千歌。

しかし、どこか様子がおかしいように見える

 

 

鞠莉「…千歌っち、どうしたの?」

 

千歌「私怒ってる。こんなサッカー初めてだよ。いや、本当のサッカーじゃないよ。これは、」

 

鞠莉「!!」

 

サッカーはこんな悲しい思いをするはずがない。千歌は言う。

その言葉には確かに怒りが込められていた

 

 

千歌「この試合、絶対に勝たなきゃ。私たちのサッカーを守れるのは、私たちだけだもん」

 

そう言うと千歌は目を閉じて深呼吸。

怒りに燃えながらも、その炎を落ち着かせながら力を高めていく。

怒りに任せてはいけない。

正と負。両方をコントロールする。

自分を操り、自分を引き出す

 

 

鞠莉「っっ!?」ゾクッッッ!

 

クラリア「これは…!?」ゾクッッッ!

 

フィレア「…また出たね。あのとんでも技」

 

 

 

 

 

 

チカ「【Braveheart】」

 

 

 

デスタ「あの人間も何か変わった…?」

 

アラクネス「すぐ人間って変化したくなるのね」

 

 

悪魔たちはまだ知らない。

怒りをも制御し、光と闇を受け入れ混ぜ合わせたものがどれほどの力を持つのかを。

『ゾーン』×『闇の力』

2つの力をひとつにすることにより発動を可能にした千歌の新しい技

 

 

魔王「【ゴートゥー!!!!!!」

 

チカ「ーーー!」

 

 

魔王「ヘル】!!!!!!」

 

チカ「遅っ」ギュンギュンギュン!!

 

魔王「!?!?」

 

 

 

チカ「【ZスラッシュGX】」

 

ボールにオーラの塊が落ちる前に駆け抜ける千歌。雷もオーラも躱せる。

千歌はそう分かると止まることは無かった

 

 

魔王「…!!あの人間を止めろ!!」

 

 

メフィスト、ベルゼブ「うおぉぉぉ!!!!」

 

チカ「ーーー邪魔」

 

 

チカ「【ストームゾーン】!!」ゴオォォォ!!

 

メフィスト、ベルゼブ「ぐあぁっっ!?!?」

 

闇の力発動時のみに発動可能な技、『ストームゾーン』。力でねじ伏せる技を象徴するかのような破壊力。

悪魔たちでさえ、木の葉のように吹き飛ばされる

 

 

鞠莉「あの雰囲気…千歌とチカが混ざってない??」

 

果南「性格絶対に変わってるよね…」

 

チカを、闇の力を受け入れることにより強化された千歌はいつもよりも好戦的に。

今は怒りに燃えているという理由もあるが、

いつもの優しい千歌はそこにいない

 

 

デスタ「【ゴートゥーヘル】!!!!」

 

チカ「【ブラックアッシュG2】!!」ドガアァン!

 

デスタ(相殺された…!?!?)

 

チカ「無駄だって分からないの??」

 

パワーで潰しに来る技に対し、パワーをぶつけて回避する。"黒い斧"は悪魔の力に引けを取らない程の深い闇を感じさせる。

そのまま敵陣を強引に切り抜いた千歌はキーパーと直接対決

 

 

チカ「これで同点」ゴオォォォ!

 

フィレア「チャンスだ!撃てるよ!!」

 

闇のオーラをボールに集める。

そこから放たれるシュートは黒に染まり、真っ直ぐに。黒の道を作り上げる

 

 

チカ「【ブラックアッシュG2】!!」ドガアァン!

 

 

英玲奈「あの威力ならば行けるぞ!!」

 

にこ「よーし!これで同点よ!!」

 

 

しかし、

 

 

アスタロス「【ジ・エンドV2】」ググググ

 

にこ「V2!?」

 

クラリア「技を進化させたというのか…」

 

 

ーーーグシャッ!!

 

ボールはそのまま空間ごと握りつぶされる

 

 

「「「!!!!」」」

 

チカ「っっ!?」

 

鞠莉「あの"ブラックアッシュ"を止める…」

 

果南「これは突破がさらに難しくなったね」

 

 

 

チカ「ハァ…ハァ……まさか止めるなんてね」

 

千歌は"Braveheart"により闇の力を制御しているものの、その体力消耗は変わらず激しいものだった。

ここまでほぼ1人で攻めあがった。

闇の心が侵食しているため、いつもよりも血の気が多いことは千歌自身理解していた。

だからこそ。2本もシュートを止められたことが気に食わなかった。

大事な場面で決めきれなかった自分に腹が立った

 

 

魔王「魔界軍団Z!!命令だ!人間たちを殲滅しろ!!!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

そして、千歌が1人で攻めたことによる変化はもう1つ。

魔王がついに本格的に千歌たちを潰しに来たのだ

 

 

デスタ「おらっ!!」ドガアァン!

 

フィレア「ぐっ!?」

 

 

鞠莉「フィレアっっ!!」

 

アラクネス「人の心配している場合!?」バッ

 

鞠莉(!!…油断した)

 

アラクネス「ふんっ!!」ドガッ!

 

鞠莉「っっ!?!?」

 

ねじ伏せるサッカーで次々と倒れていく仲間。枷が外れた悪魔たちは止まることを知らない。

目に入った人間を手当り次第に叩く

 

 

チカ「止めろおぉぉぉ!!!!」ドガッ!

 

アラクネス「ぐっ!?」

 

鞠莉「ゲホッ…千歌っっ…!!」

 

無情なサッカーに千歌は真っ向からぶつかる。アラクネスから強引にボールを奪い取り、これ以上の被害を出すわけにはと動いた。しかし、

 

 

魔王「全部思い通りに動いてくれる」

 

チカ「ーーー!!」

 

 

振り向いた時には既に。

怒りの根源がオーラを放っていた

 

 

 

 

魔王「【ゴートゥーヘル】!!!!」

 

 

ーーードゴッッッッッ!!!!

 

 

チカ「ぐはっっっ!?!?」

 

 

果南「千歌っっ!!!!!!」

 

 

人間たちが立てなくなったのは、そう時間はかからなかったという

 

 

日本&海外チーム 1-2魔界軍団Z

 

 





魔王様…あなた喋りすぎですよ。
違和感アリですが、見逃してください


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第3章 101話 「魔界軍団Z戦 "消えた堕天使"」


投稿は1話だけとは誰も言っていない。

というわけで本日2話目です。まだ100話を読んでいない方は先にそちらを




 

 

 

 

 

 

やめて…

 

 

 

何も無い真っ暗な世界。

そのどこからか聞こえる、今にも消えそうな、小さな。小さな声

 

 

 

千歌「ハァハァ…!!ゲホッゲホッ!!」

 

デスタ「おいおい…さっきまでの威勢はどこいったんだよ!?」ドガッ!

 

千歌「ぐっ!?」

 

 

 

やめてよ…

 

 

 

どんなに叫んでも届かない。

ただ、仲間が苦しめられている光景を、拷問のように見せられる

 

 

 

もう嫌!!!!やめて!!!!

 

 

 

何も無い場所で叫ぶのは津島善子。

空っぽ。

あるのは心に突き刺さる痛みと流れる涙だけ

 

 

魔王『やめて?お前は昔から望んでいたではないか。堕天使。自分は特別な存在になりたいと』

 

違う

 

魔王『叶えてやったのだぞ?悪魔の力を使える、魔界の民を従える、世界を滅ぼせる。お前が望んだ特別な存在だ』

 

違う違う違う違う

 

魔王『今のお前はまさに、"堕天使ヨハネ"だ!!!!!!』

 

 

違う!!!!!!

 

私は堕天使を捨てたのよ!!

津島ヨハネを自らの手で殺したのよ!!

邪魔だったから、余計だったから、私の汚れだったから!!!!

 

 

魔王『堕天使ヨハネを捨てたお前に何が残る?選ばれなかったお前に何が残る?あるのは深く空いた心の溝だけ。違うか???』

 

 

違う…!!嫌だ…嫌!!!!!!

これ以上、私の心の中を覗かないでぇぇぇ!!!!!!

 

 

 

 

―――――――――――――――

――――――

―――

 

 

 

 

いつからだろうか。私が私を堕天使と呼ぶようになったのは、

 

 

先生『皆さんの得意なことを発表してくださーい!』

 

『『『はーい!!』』』

 

よしこ『…』

 

これといって、特技。

人に自慢できることがなかった

 

 

『よしこちゃんはどんなことが得意?』

 

よしこ『…えっと……』

 

私は、そんな自分が大っ嫌いだった。

周りのクラスメイトは皆個性を持っていて、日が暮れるまで、親が迎えに来るまで、その個性を最大限に主張していた。

私は、ただ見ているだけ。流されるだけ。

そんな時だった。偶然。

ごっこ遊びをしている時だっただろうか、

 

 

『よしこちゃんカッコイイね』

 

よしこ『…え、』

 

『本物の堕天使みたいだった!マンガのキャラみたい!』

 

よしこ『…』

 

 

初めてだった。友達に、褒められたのは

 

 

よしこ『(堕天使…私は堕天使が個性)』

 

 

多分、その時に堕天使ヨハネが生まれたのだと思う。

 

時は流れ、堕天使ヨハネとして過ごしていく中で、私はその特殊な。そして異質な個性を隠すことなく。まるで遊びしか知らない子供のように、一足先に大人になった同級生たちに主張し続けたのであった

 

 

『あの子ヤバくない?』

 

『中二病?痛いわ〜…』

 

善子『…』

 

 

知ってた。何もかも、狂っているのは知っていた。でも止めることも戻ることもできなかった。

この堕天使(個性)を捨てたら、私は空っぽ。何も無い、ただ生きているだけの動物と同じになってしまう。

そんなのはただの生き地獄だ

 

 

善子『我が名は…堕天使ヨハネ!!』ギラリ

 

 

 

そんな私にも友達が出来た

 

 

 

千歌『フィールドの上で、自分の好きを迷わず見せて、目指すんだよ、上を!!サッカーは!!!周りにどう思われるとか、人気がどうとかじゃない。自分が一番好きな姿を、輝いている姿を見せることなんだよ。だから善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!!!自分が堕天使を好きな限り!!!』

 

善子『…!!』

 

あの時、千歌に2回も勧誘されて。

私の心は動いた。

1度断った時、あの時はかなり覚悟したんだけどね。だって、堕天使をやめる宣言したってことは、空っぽな自分を受け入れるってことだし。

 

でも、その寸前で千歌たちは私を引き戻してくれた

 

 

梨子『ちょっと善子ちゃん!サボっちゃ駄目よ!!』

 

ルビィ『善子ちゃん♪ルビィとアイス食べよ!』

 

花丸『マルもアイス食べるずら〜!』

 

 

堕天使ヨハネとして、居場所を作ってくれた

 

 

曜『よーしこー!!』

 

鞠莉『Oh!ヨハネ!今日も必殺技の特訓よ!』

 

果南『ビシバシ行くからね!』

 

ダイヤ『期待していますわよ』

 

 

私は仲間を、そして巡り合わせてくれたサッカーを、大好きになっていた。

 

なのに、

 

 

 

『以上です。この18名が今大会の日本代表です』

 

善子『』

 

仲間が遠くへ行ってしまった。

あの時、私はテレビの前でそう確信した。

唯一、私の人間としての個性 堕天使を認めてくれた仲間が、私の行けない場所へと行ってしまった。

私は怖かった。また1人になるのか。また孤独に生きなければならないのか

 

 

善子『浦の星女学院から転校してきました。津島善子です。よろしくお願いします』

 

 

そこからの行動は早かった。

帝国女学院に転校。より充実した練習環境でサッカーの技術を高めるためだ。

もちろん、サッカーが純粋に上手くなりたいから。自分も日本代表として世界と大好きなサッカーをしたいから。という気持ちもあった。

 

それでも、

 

 

善子『ハァハァ…ハァハァ!!!!』

 

 

受け入れてくれた、仲間たちから離れるのが怖かった。まるで何かから逃げるかのように、私は毎日練習を積んだ。

そんな中、

 

 

志満『よろしくね〜♪♪』

 

善子『えぇえぇえぇ!?!?』

 

 

千歌の姉、高海志満さんが私の運命を変えた

 

 

善子『"Deep Resonance"?』

 

志満『そうよ。私じゃ完成することはできなかった…でも、善子ちゃんなら…!!』

 

これで強くなって、私を"生きている人間"として受け入れてくれる仲間たちの元へ行ける!

…そう、思っていた

 

 

善子『ゼェ……ゼェ…』

 

志満『…足りない、わね』

 

善子『……足りない』

 

あと一歩。志満さんが登りつめたところまで来た時だった。

挫けたのだ。そこから全く進歩がなくなったのである。

これでは完全に共鳴を使いこなすなど、不可能であった

 

 

志満『足りない…いえ、違うわ。何が邪魔しているのよ』

 

善子『邪魔?』

 

志満『共鳴は何も考えないで、全細胞に意識を広げる技。でも、何かがその集中を邪魔してる』

 

善子『…邪魔』

 

 

無心になりたくても離れない。

いつまでも付き纏うもの。

心の中に張り付き、自らそこに縛り付けている邪魔な存在

 

 

 

 

善子『……ぁ、』

 

 

 

 

 

 

 

堕天使ヨハネだった

 

 

 

 

善子『…堕天使のせいで、共鳴が使えない』

 

 

共鳴が使えなければ、私は日本代表にはなれない。仲間たちの元へと行けない。

だが堕天使がなければ、私には何も残らない。空っぽな、何故生きているのかわからないような人間。生き地獄になってしまう。

 

私はどちらが正解なのか。

どちらを選べばいいのか。

悩んで、悩んで、悩みまくっまた

 

 

その結果ーーー

 

 

 

 

 

ーーージョキッ!!

 

 

善子『…』

 

 

ジョキッ!!

 

 

私はーーー堕天使を捨てたのだ

 

 

ジョキッ!!

 

 

堕天使を捨て、サッカー選手を選べば、サッカーが私の個性として。

新しい私の個性をみんなが受け入れてくれる

 

 

ジョキッ!!

 

 

もう、その頃は強くなることだけ。

堕天使ヨハネは邪魔でしかなかった

 

 

善子『…善子玉』

 

 

 

 

ヨハネ『嫌だ!私、死にたくないよ!!』

 

善子『…私はサッカーに出会って、サッカーが本気で好きになったの。もう貴方はいらないわ』

 

ヨハネ『なら、ヨハネもサッカーも両方選べばいいじゃない!?』

 

善子『アンタは邪魔なのよっっ!!!!!』

 

ヨハネ『ひっ……』

 

善子『アンタがいる限り、共鳴は完成しない。 人から哀れみの目を向けられる』

 

ヨハネ『嫌、嫌、嫌』

 

善子『もういいわ。貴方はいらない』

 

 

私はヨハネに刃を向け

 

 

 

ジョキッ!!!!

 

 

 

殺したのよ。サッカーを選んで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「善子……ちゃん……」

 

果南「善子…!?」

 

 

魔王「…なんだ?これは?」ボロボロ

 

魔王の目からーーー溢れんばかりの涙。

赤く澱んだ目から滝のように流れる涙

 

 

鞠莉「善子よ…善子が泣いているのよ」

 

聖良「ゲホッ…善子さんは今も尚苦しんでいる…私たちがこうしている間にも!!」

 

必死の叫びに見えた。抗い、藻掻く善子。

何度も力で倒され、起き上がるのも厳しいメンバー。そんな中だった。魔王の動きが止まり、目から滝が流れ出したのは

 

 

果南「ハァ…ハァ……善子は前から苦しんでいたっっ!!気にかけるべきだった…ヨハネって言わなくなったことを…!」

 

ダイヤ「ことりさんから聞きました…善子さんは堕天使を捨てたのだと。その歪に濁った感情は…魔王が入り込む隙となってしまった…」

 

善子の違和感。

そして不審な変化。

それらは全て善子の過去、善子(ヨハネ)そのものを否定し得た力だったのだ。

それに気づけなかった自分たちはなんなのだ。口だけの仲間だったのか?

自分たちの非力に怒りが混み上がる

 

 

果南「もう1点も決めさせない…善子の心の傷は、私たちが受け止める!!!!」

 

魔王「黙れっっ人間!!!!!!」バッ

 

まるで弱みを握られたかのように果南の口を遮る魔王。

ボールに回転を加え、魔王の力を注ぎ込む

 

 

魔王「非力な人間が!!!この娘を救うことなんて出来るわけないだろ!!」

 

魔王「【ダークマター】!!」ドガアァン!

 

「「「果南!!!!!!」」」

 

全員が果南を呼んだ。

これが決まれば逆転は不可能。

善子奪還の失敗、そして自分たちは儚く散ることになる

 

 

果南「【デルフィナス・トリアイナ】」

 

果南は神器を召喚する。

強力な槍。その圧倒的パワーで並み居るシュートを叩き潰してきたわけだが…

 

 

果南(それでも…足りないっっ!!)

 

『ラストリゾート』『ブレイブショット』を受けて感じた。まだまだ重さ、力が足りないと。

軽いから弾かれる。非力だから届かない

 

 

果南(どうする…どうする!?!?)

 

 

果南の焦り、溢れ出る感情が神器に届いた時だった

 

 

 

 

 

 

『強く願え』

 

果南(!?!?!?)

 

 

果南の頭に直接響く声

 

 

果南(誰…!?強く願えって…)

 

『想いをイルカ座に届けろ。さすれば力を貸す』

 

果南『イルカ座…貸す…まさか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーバキイィィィィィィィィイン!!!!

 

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

魔王「!?」

 

 

地面を、大地を砕く音。

 

それだけではない。

ゴールの位置から地面を伸びるのは裂け目。

地面のヒビ

 

 

デスタ「魔王様の…シュートが…」

 

メフィスト「人間如きに!?ありえない!!」

 

 

果南「………」シュウゥゥ

 

ボールは矛の下、地中に埋め込まれ、その活動を停止していた

 

 

フィレア「『ダークマター』を止めた…」

 

果南「うん。止めれた」

 

果南は矛をその手で持ち上げる。

気のせいか、先程よりも、いつもよりも神器の迫力がーーーー違う??

 

 

果南「【形状変化"アトランティス"】」

 

「「「!!!!!!」」」

 

鞠莉「形状変化…!!」

 

希「確かに…神器の形が変わってるやん!」

 

果南に言われて気がついた。

『デルフィナス・トリアイナ』の形が変わっている。正確には、"大きくなっている"。

より迫力を増し、威圧感だけでも圧倒するその槍。果南は言った、形状変化と

 

 

果南「【デルフィナス・トリアイナ ー "アトランティス"】。通常よりもパワー、重さに特化した形状。重いシュート相手にはこれぐらいなくちゃね」

 

"ラストリゾート"や"ブレイブショット"。

その重さから弾かれ、勝負さえさせてくれない技たちに対抗するために。

果南はまたひとつ世界の壁を登り始めたのだ

 

 

果南「私たちの…善子への気持ちを甘く見ないで!!!!」

 

魔王「なっ…!?」

 

千歌(今…相手が怯んでる!)

 

果南「千歌!!」パス

 

魔王「!?」

 

千歌の考えを瞬時に察し、ロングスローで渡す果南。

善子への強い想いが果南の神器を進化させた。より重く、より強固に

 

 

フィレア「千歌っっ!!」

 

千歌「!」

 

千歌がドリブルで飛び出したのと同時だった。両サイドから海外勢2人が千歌に呼びかける

 

 

クラリア「1人での突破はダメージを負った体では無理だ!!私たちが援護する!隙を見つけてそこを狙え!!」

 

フィレア「頼んだよ!!」

 

千歌「分かった!」

 

魔界軍団による強引なプレーで物理的にもダメージが溜まっている人間チーム。

先程のような力による突破は防がれる可能性がある。だからこそ。それを察したからこそ。

3つの国の代表が手を組んだのだ

 

 

ベリアル「くらえっっ!!」ズザーッ

 

千歌「フィレアさん!」パス

 

フィレア(この技を発動出来るのもあと1、2回…!!)

 

前方でディフェンスを固める魔界軍団のDF。

あれだけの力を持つ選手たちから隙を作るためには、それ相応の強力な必殺技が必要になる

 

 

フィレア「【逃走迷走メビウスループ】!!」

 

「「!!!!」」

 

速さで翻弄する。

視覚で捉えるのは困難を極めるその技。

しかし、ダメージの影響か、スピードは明らかに落ちている

 

 

クラーシャ「そこだっ!!」バッ

 

フィレア「うわっ!?」

 

ベルゼブ「これで終わりだ!!」

 

スピードが落ちたことにより軌道を読まれた。間一髪で躱したものの、あと数秒後にはボールは奪われてしまうだろう。

だが、それでいい。引き付けられたのならばそれでいい

 

 

フィレア「クラリア!!」パス

 

クラーシャ、ベルゼブ「「!?」」

 

ベルゼブ(崩れた体勢からパスを…!?)

 

国の代表をなめるな。

フィレアは鍛え上げてきたものを全て出し切る気持ちで、クラリアにボールを繋げた

 

 

クラリア「このボール…無駄にはしない!!」バッ

 

鞠莉「あの長距離からシュート!?」

 

クラリアはすぐに飛び、ボールを磨き始めた。まだフィールドの中心付近。ここからでは威力がかなり落ちてしまうが…

 

 

クラリア「はあぁぁぁ!!!!」ガキンガキンガキン!

 

空中で放つ、刺すシュート

 

クラリア「【ダイヤモンドエッジ】!!」ドガアァン!!

 

アスタロス「馬鹿め…あの距離から」

 

クラリアのシュートは強力だ。

穂乃果の腕を壊すほどのパワー。そしてスピード。しかし、いくら強力なシュートでも距離があるとなると話は変わってくる

 

 

ベヒーモス「ブロックしてやる…!!」バッ

 

その分、ブロックしに行く余裕もある。

あの人間は勝ち急いだ。チャンスを無駄にしたのだ。そう確信し、ボールに足をーーー

 

 

 

 

ーーーカクンッ!!ギューーン!!!!

 

ベヒーモス「なっ!?!?」

 

「「「!!??」」」

 

デスタ「ボールが直角に曲がった!?」

 

ベヒーモスの足がボールに触れかけた瞬間。

ボールは輝き、コースを急激に変更。

反応など出来るはずがなかった。ボールはそのまま吸い込まれるようにーーー

 

 

 

千歌「でりゃああっっ!!!!」

 

 

ーーー渡る。高海千歌へと

 

 

アラクネス「さ、最初からパスのつもりで…」

 

にこ「行ける…!!そのまま突っ切りなさい!!」

 

果南「千歌!!!!」

 

 

千歌(凄い…凄いよ…!!これが世界レベルのサッカーなんだ!!)

 

千歌は危機的、そして決定的な瞬間の中で。

世界レベルのサッカーをその目で見た。

 

最初から囮のつもりで捕まることも計算に入れたフィレア。

シュートと見せかけ、応用でパスに切り替え、千歌が取りやすいように絶妙な加減で放ったクラリア。

 

これを全て、アイコンタクト。そしてお互いにその場で対応したのだ。

例え別々のチームだとしても、ボールを繋ぐという考えは同じ。それだけで、これだけのプレーが出来るのだ

 

 

 

 

不覚にも、感動してしまった

 

 

 

 

チカ「【Braveheart】!!ぐおああぁぁぁ!!!!!!」

 

雄叫びと共に解き放つチカラ。

体は限界。しかし、気持ちが足を止めることを許さなかった。

今の千歌はゴールしか見えていない。

あの中にボールを叩き込む。決める。

暴れ狂うオーラは抑えることなどしない。怒りと気合いに任せ、技の構えに入る

 

 

 

チカ「これで…終わりっっ!!!!」

 

 

ーーーゴオォォォォ!!

ボールが太陽のように輝き、灼熱に包まれ、炎が空気を燃やす音が響く

 

『サンシャインアッシュ』

千歌がゾーン。輝きの力により得た太陽

 

 

 

チカ「っっっっ!!!!!!」ドォン!!

 

「「「!!!!」」」

 

英玲奈「"サンシャインアッシュ"じゃない!?」

 

 

太陽を纏ったボールを全力で踏みつける。

梨子たちが違和感に気づいた時には既にーーー太陽は黒へと変わっていた

 

『ブラックアッシュ』

千歌が闇の力。漆黒の力により得た闇

 

 

太陽と闇。2つをひとつにする。

サンシャインよりも熱く、ブラックよりも禍々しく。混ざり、燃え、歪む

 

 

チカ「っっっっ!!!!」ドガアァン!!

 

 

 

太陽に焼かれ、闇に呑まれる

 

 

アスタロス「【ジ・エンドV2】!!」

 

闇のような暗く重い力なら負けていない。

アスタロスは進化した自身の必殺技を千歌のシュートに発動。

ボールは徐々にねじ曲がり、空間ごと潰されようとしている

 

 

あんじゅ「あれは…"サンシャインアッシュ"?それとも…"ブラックアッシュ"??」

 

果南「分からない…でも、今までのシュートとは何かが違う」

 

 

その違和感はキーパーも感じていた

 

 

アスタロス(な…なんだ!?)

 

デスタ「アスタロス…!?」

 

ボールを握り潰そうとする手が…圧力が…少しずつ押し返されている??

 

 

アスタロス(パワーが上がるシュート!?いや、何かおかしい!!)

 

別の違和感。

まるで寒い時に手に力が入らないかのような。悪寒が走る。そして熱い。

力を入れたくても入らない??

まるでーーーー

 

 

 

バキイィィィィン!!!!!!

 

 

アスタロス「ぐあっ!?!?」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

 

ーーーー力を、吸い取られているようだった

 

 

チカ「【エクリプス・サン】。闇が力を奪って、太陽が力を高めるシュート…」

 

チカ「人間をなめないで。私たちは何でもできるんだから」

 

 

千歌のゴールにより同点。

試合は残り僅か、果たした千歌たちは勝利することが出来るのか??

 

日本&海外チーム 2-2 魔界軍団Z

 

 

 





デルフィナス・トリアイナ "形状変化・アトランティス"
神器の新形態です。重さに特化した戟で、弾かれ触れないシュートなどに対応出来るようになっています。パワータイプなので超強力です。果南ちゃんもどんどん強くなりますね

エクリプス・サン
千歌ちゃんの新必殺技です。太陽のように燃える『サンシャインアッシュ』と闇の力で破壊する『ブラックアッシュ』をひとつにしたシュートになっています。その力はエクリプス(奪うなど)の意味から取り、相手の力を奪って弱体化させ、シュート自体の威力も増加させるという、まさに、相手のエネルギーを自分のものにする強力な一撃となっています



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第3章 102話 「魔界軍団Z戦 "燃ゆる血、舞いに応える"」


皆さんお久しぶりです。ルビィちゃんキャンディーです。

受験も折り返しなので息抜きに1話だけ更新します。
天界戦が2.5話だったのに対し、魔界戦が4話…こればかりはお話の都合上仕方なし、という感じですね。

今回のお話は恐らく、輝こう史上最長。感想とか応援頂けたら、モチベ爆発して近いうちにまた更新したいです




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

善子が堕天使を捨てた理由、それはサッカーをする善子にとって邪魔な存在であり、必要がなくなったからであった。

魔王に乗っ取られながらも悲しみを訴える善子。そこからフィレア、クラリアの世界レベルのサッカー。そして千歌の新必殺技「相手の力を奪い、シュートの威力を高める」『エクリプス・サン』で同点とした。

試合は残り僅か。満身創痍の日本&海外チーム、果たした勝つことは出来るのか??

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ピピーー!!!!!!

 

 

笛が魔界に鳴り響く

 

 

 

千歌「ハァハァ…」

 

決めた。新必殺技で決めた。

三度目の正直とはよく言ったものだが、この1点は大きい。

時間的にも次のゴールが決勝点になるだろう。今の流れで行けば必ず勝てる。そう、

 

 

ダイヤ「千歌さん…大丈夫ですか!?」

 

千歌「ハァハァ…ぐっっ!」

 

ダイヤ(喋れないほどの疲労…)

 

それは今の流れで行ければの話。

 

先程までの威勢は消え去り、それどころか立っているのもやっとのように見える。

それは決して、千歌だけではない

 

 

フィレア「やばい…ちょっと無茶した」ガクッ

 

にこ「ゼェ…ゼェ…キツいわね」

 

全員が既に限界だった。

膝をつき、前を向けず、疲労とあと一点の果てしなさにより、下を見るのはそう難しくはなかった。

 

気持ちでは勝負がつき始めていた。

それはダイヤにとって、これ以上の絶望はなかった

 

 

ダイヤ(どうすれば…動けるのはわたくしだけ…)

 

ダイヤは見た。

世界トップクラスの疾風のようなサッカー。

それに怖気付くことなく食らいついた千歌。自分とは真逆に、その強い心…センスで希望を繋げたのだ。

 

その間、自分は何をしていたのか?

ぼーっと見ていたのか。ただ、世界レベルに圧倒され、自分は足でまといだと、無駄に足を止めていたのか??

 

いくら自分が、才能がないからってーーー「ルビィちゃんダメだよ!!!!」

 

ダイヤ「!?」

 

 

ダイヤを現実に引き戻したのは、フィールド外から聞こえる月の声。そして、

 

 

 

 

 

ルビィ「選手…交代だよ……」

 

 

 

痛みに耐える、最愛の妹

 

 

 

ダイヤ「ルビィ…」

 

月「ちょっ、ダメだって…ルビィちゃん動いちゃダメだよ…!」

 

ルビィ「ルビィが気絶しているあいだに…こんな…っっ!!」

 

月の静止を振り切り、フィールドに戻ろうとルビィは歩を進めていた。

しかし、その動きはぎこちなく。見るからに痛みに苦しみ、プレーは不可能。

怒りに燃える雰囲気からは想像出来ないほどの弱々しさだった

 

 

希「ルビィちゃん…その体じゃ、プレーは不可能や。自分が1番分かってるやろ?」

 

ルビィ「こんなの…ATP使えば騙せる」

 

鞠莉「無茶よ…絶対にダメよ」

 

希も、鞠莉も、みんな辛いはずだ。

それでも交代はするなと、ルビィをフィールドに入れようとはしなかった。

 

そしてルビィも。

体に刺さる激痛。誰よりも苦しいだろう。

それでも交代すると、自分の使命を貫こうとしていた

 

 

ダイヤ「……」

 

 

それをも全て見ているだけのわたくし、黒澤ダイヤ。

 

なんと情けなく、見苦しいのか

 

 

わたくしは、

 

 

ダイヤ「ルビィ」

 

ルビィ「…!」

 

 

自分に、怒りに、燃えた

 

 

ダイヤ「貴方が出る必要はありませんわ」

 

ルビィ「お姉ちゃん、それじゃ勝てないよ」

 

ダイヤ「わたくしが決めます」

 

「「「!!!!!!」」」

 

ルビィ「………」

 

 

根拠など無い。

ただ、自分への怒りから飛び出した言葉なのか、ルビィを守るためのその場しのぎなのか。

 

先程まで自分の全てを悲観していた、それがこのセリフである

 

 

ルビィ「お姉ちゃんに決められるの??」

 

 

ルビィも黙ってはいないだろう

 

 

果南「ルビィ…!!ダイヤになんて事を」

 

ダイヤ「大丈夫です。果南さん」

 

果南を止めるダイヤ。

本来ならばダイヤが激を飛ばすはずのルビィの一言。

しかし、ダイヤは分かっていた。ルビィは、こんな事を言う子ではない。

この一言を言わせるまでに、自分はルビィを追い詰めていたのだと

 

 

ダイヤ「善子さんを想うならば当然ですわ」

 

ルビィ「…」

 

ダイヤ「ルビィ、わたくしも日本代表ですわ」

 

 

ダイヤ「戦わせてください」

 

 

ルビィ「お姉ちゃん…」

 

にこ「ダイヤ…」

 

クラリア「…」

 

自分には才能が足りないと。

力になれないと戦いから避けていたダイヤが、今、戦う意思を見せた。

それはルビィを、ここにいるチーム全員を納得させるには十分すぎるものだった

 

 

ルビィ「お姉ちゃんはルビィの憧れだよ」

 

ダイヤ「…!」

 

ルビィ「善子ちゃんを助けて」

 

ダイヤ「はい」

 

 

何の根拠もなかった。

戦意させ、ついさっきまでは無いに等しかった。それが、ダイヤが再びポジションに戻る頃には真逆。

自分が決める。勝つ。助ける。

まるで希望の炎、そのものだった

 

 

クラリア「よく言った。ダイヤ」

 

ダイヤ「クラリアさん」

 

クラリア「才能よりも必要なのは、誰でも持つことが出来る、心の強さだ」

 

千歌「前に言いましたよね?ダイヤさんにしか出来ないことがあるって。誰一人、欠けちゃ駄目なんです」

 

クラリアも、千歌も、強い。

ダイヤが足りないものを彼女たちは持っている。そしてそれを必死に伝えようと。

ダイヤに何度も訴えている

 

 

にこ「正直…体は限界だわ。でも、ダイヤがやる気なら最後、あんたにボールを繋げるわ」

 

果南「ゴールは任せてよ。絶対に守るから。ダイヤは走って」

 

 

 

 

ピーーー!!!!

 

 

 

わたくしを見捨てる人は誰一人、いなかった

 

 

千歌「絶対に通さない!!!!」

 

 

それどころか、自分から仲間を避けていた

 

 

魔王「…喜べ人間」

 

千歌「…!?」

 

魔王「ーーー」ギュン!!

 

千歌(はやーーーこのスピードっっ!?)

 

魔王「確実に死ねるぞ」

 

 

魔王は使う。善子の今の全てを

 

 

にこ「"Deep Resonance"!?」

 

あんじゅ「善子ちゃんの技を使ってきた…」

 

体は限界。善子の共鳴に抗うことは不可能。

ダイヤの決意とは関係なく、魔王は共鳴でボールを奪いに来る人間たちを受け流す

 

 

聖良「やはり敵としての共鳴は厄介…ですが、止めなくては…!!」バッ

 

魔王「邪魔だっっ!!」ドガッ!

 

聖良「!?!?」

 

フィレア「ダメだ…ボディバランスのある聖良でも、ダメージには勝てない…!」

 

DFとして優秀な聖良。

体の使い方、ポジショニング。どれも世界の選手たちに負けないほどだ。

しかし、この限界の状況でその力を引き出すのはーーー不可能に近い

 

 

魔王「終わりだ…これで!!!!」バッ

 

 

鞠莉「果南っっ!!!!」

 

果南「来い!!!!」

 

魔王が回転させたボールはその禍々しいオーラにより、白と黒、色が変わる。

放たれるのは石より重く、人の域を超えたシュート

 

 

魔王「【真ダークマター】!!!!」ドガアァン!

 

 

希「進化!?」

 

あんじゅ「果南ちゃん!!!!」

 

 

果南「うおあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」バシャァン!

 

進化した魔王のシュートを止める。

止めてダイヤへとボールを繋ぐ。

ダイヤは自分で自分のサッカーを縛っているんだ、そんなサッカーをして欲しくない

 

 

果南「【デルフィナス・トリアイナ】!!」

 

海中から神器を召喚する。

そのまま想いとともに戟を強く握る

 

 

果南「形状っっ……変化!!!!」

 

果南「【アトランティス】!!」

 

迫り来る魔王のシュート。

対するは大地をも割る力を得た海の神の矛。

体の全筋肉を叩き起し、岩のような神器をその身で振りかぶる

 

 

果南「っっっ!!!!!!」ドオォン!

 

頭の上から振り下ろし、斧のようにボールを叩いた。

その激しい衝撃により地面はボールを中心に窪み、亀裂が走る

 

 

果南「ぐっっ!!!!」ググググ

 

 

ルビィ「あと少し…足りない」

 

月「ダメージのせいで力が落ちてるんだ…このままだと、」

 

最後のひと押し、あと少しでもボールに圧を加えられれば確実に抑えられる。

だが、そのあと少しがもう残っていない。

 

しかし、

 

 

鞠莉「ディザスターっっ!!!!」

 

果南「鞠莉!!」

 

鞠莉「ブレイクGX!!!!」ドガアァン!!

 

果南の槍の上から。

さらに叩きつけるようにシュート技。

鞠莉と果南が強引にねじ込むことにより…

 

 

魔王「と、止めた…」

 

果南「ハァハァ…サンキュー。鞠莉」

 

鞠莉「黙って見てるわけないでしょ?」

 

果南と鞠莉によって止められたボール。

それ即ちーーーー

 

 

 

果南「ダイヤ!!!!!!」

 

 

 

ーーー日本&海外チームの最後の攻撃

 

 

 

魔王「あの人間を止めろ!!!!」

 

 

デスタ「喰らえっっ!!」ズザーッ

 

ダイヤ(スライディング!?)

 

にこ「ダイヤこっち!!」

 

ダイヤの斜め後ろから声がした。

その声を信じてノールックでボールを預ける。そして声の主は続ける

 

 

にこ「千歌や海外メンバーはもう限界よ…!!にこがフォローするから、アンタが決めてきなさい!!ダイヤ!!」

 

ダイヤ(にこさん…)

 

何を言ってるんだ…"にこも"限界なはずなのに…先程まで足が棒のように動かなくなっていたのに…

 

 

にこ「さあ!かかってきなさい!!」

 

 

矢澤にこ…どこまでこの人は天才な「ダイヤ!!」

 

ダイヤ「!?」

 

にこ「アンタ、また天才がどうとか考えてたでしょ!?」

 

にこ「いい!?天才っていうのは2種類いるのよ!!1つは天性、与えられた力が最初から使える人間よ!!」

 

にこ「もう1つはね…努力しないと天才も何も無い、開花できない人間!!」

 

ダイヤ「!」

 

にこ自身そうだった。

シュートが苦手、そして体格のこともあり、自分にはサッカーは向かないと思っていた。

そう思いながらもサッカーは大好きだった。その想いを信じて自分が唯一得意だったリフティングを極めた。極限まで

 

 

にこ「やれることはすべてやったわよ。筋トレ、ランニング、食事管理、生活習慣」

 

ベリアル「喋ってばかりでよそ見!?」バッ

 

にこ「その努力すべてで今の自分がいるのよ!!!!」バババッ!

 

ベリアル(ノールックで躱された!?)

 

にこ「ダイヤ!!」パス

 

ダイヤ「!」

 

にこ「アンタにも必ず…絶対に自分の知らない可能性があるはずなのよ!!監督はそうでなきゃダイヤを代表には選んでない!!!!」

 

にこ「才能がない?違うわ。才能を開花させるまで努力していない!!それだけよ」

 

天性の選手とともに戦いたいのなら努力しかない。

誰かが言った。"天才が努力すること、以上に恐ろしいものはない"と。

ダイヤはドリブルを始めた。

何の特長も個性もないドリブルだが、その動きには確かに。熱意は込められていた

 

 

デスタ「【ゴートゥーヘル】!!!!」

 

千歌「ダイヤさん避けてっっ!!」

 

ダイヤ「っ!?」

 

まるで転がるように。

食らいつくようにボールを離さず、オーラの塊を躱す。休んでいる暇はない。

すぐに立ち上がり、再び前を向くダイヤ

 

 

ダイヤ(行ける…)

 

 

そう、頭に過ぎったのはダイヤだけではなかった

 

 

フィレア(行ける…ダイヤ!!)

 

クラリア(DFは薄い、行けるぞ!!)

 

千歌(ダイヤさん…!!)

 

ルビィ(お姉ちゃん…!)

 

今のダイヤならば、DFの1人や2人…ディフェンス技など躱せる。

行ける。この3文字、過ぎり、確信に変わろうとしていた―――――

 

 

魔王「【ブラックサンダー】」

 

「「「【ゴートゥーヘル】!!!!!!」」」

 

ダイヤ「!?!?」

 

「「「!!!!!!???」」」

 

 

――――――しかし、悪魔たちはそれを許さなかった

 

 

魔王「もういい。これで終わりだ」

 

ダイヤ(雷に…オーラの塊が多数……)

 

「ゴートゥーヘル」を1つ躱すなど、今のダイヤには造作もない。しかし、なんだ、これは。

雷とオーラが、まるで自分を包み込むカーテンのように。雨が降る中で、雨にあたるなと言われているかのように。

ダイヤの体は硬直。ただ、その無慈悲な雨を見ることしかできなかった。

 

無理だ。これは躱せない…

 

そして、世界が徐々にゆっくりと流れ始め察する。

 

 

死が、見えた

 

 

「「「ダイヤっっ!!!!!!」」」

 

 

 

ダイヤ「――――――――――――」

 

 

 

死を覚悟したかのように。

頭の中で記憶が膨らみ溢れる

 

 

 

『約束なんだ。ダイヤ』

 

ダイヤ「――――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は幼いことからよく、「何でもできる子」と言われてきた。

 

何故、このタイミングでそんな事を脳裏に浮かべたのかは…自分でも分からない

 

 

『ダイヤちゃんは優秀ね〜』

『流石は黒澤家の娘ね』

『勉強、習い事、お行儀、どれも完璧なのね』

 

 

当たり前じゃないか

 

 

『ダイヤさん違います!!』

 

ダイヤ『…!?』

 

『最初からやり直しです。これでは黒澤の名など継げませんよ!!』

 

ダイヤ『(まだ…足りない…まだ…完璧じゃない…)』

 

 

"完璧に見えるようにしている"、だけなのだから

 

 

 

黒澤家は伝統ある家だ。

もちろん、代々受け継がれてきたものを長女である自分が継いでいくために。

私は『完璧』を求められた

 

 

ルビィ『お姉ちゃん…大丈夫?』

 

ダイヤ『………ルビィ。今は1人にしてください』

 

 

心配してくれる妹の行動、言動も…少なからず嫌な感情を持っていたのは確か。

理由は嫉妬?自分よりもサッカーの才能がある妹に…それだけで?違う

 

あなたたちは何も分かってない

 

 

ルビィが習い事をしていない本当の理由、それは

 

 

 

 

ダイヤ父『もう…必要ないな』

 

ルビィ『うん』

 

ダイヤ『』

 

 

中学生の頃に全て。

習い事、またの名を…『わたくし(長女)が継ぐもの』をほとんど習得してしまったのだ

 

 

複雑な気持ちを持つのも、無理もないでしょう?

 

 

ですが、わたくしは長女として。

ルビィよりも劣っているとしても完璧に、継がなくてはならない。

大好きなサッカーも、ルビィに届かなくても足でまといにならないように、仲間の力にならなくてはならない。

 

それでも…怖い。

継げなかった時、足でまといになった時。

自分のせいで人が悲しむのは嫌だ。怖い。

そんな不安要素を何故、皆さんは捨てたりしないのか。

 

皆さんは決まって似たようなことを言う。

 

 

『お姉ちゃんはルビィの憧れだよ』

 

『ダイヤさんがいなきゃダメなんです』

 

『ダイヤのことは全員信じているし、期待している!』

 

『才能がなきゃ監督はダイヤを選ばない!!』

 

 

 

そして…

 

 

ダイヤ父『お前なら出来る』

 

 

お父様も。

 

 

 

ダイヤ父『黒澤家が…何故、地域を取りまとめるようになったのか』

 

ダイヤ『…』

 

それは幼い頃に聞いた話。

 

ダイヤ父『漁の安全・成功を願って、私たちは舞を披露するんだ』

 

ダイヤ『それがお稽古の舞?』

 

ダイヤ父『そうだ。そしてこの舞は黒澤の血を引くものでしか完成しないんだ』

 

ダイヤ父『ダイヤ。お前は努力を重ねる素晴らしい子だ。私、そして家族はダイヤを信じている』

 

ダイヤ父『その想いに応えて、黒澤の血も…炎の如く。目覚め、燃え盛る』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ父『今がその時だろ!!!!ダイヤ!!!!!!』

 

ダイヤ父『お前の全てを燃やせ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ボオォォッッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

魔王「!?!?!?」

 

「「「!!!!???」」」

 

 

 

黒い雷・雨は全て地面に降り注いだ

 

 

 

千歌「!!!!」

 

クラリア、フィレア「!!!!」

 

 

 

あたるはずだった少女には1つもあたらずに。

ただ、地面が衝撃に抉れ、風が吹き荒れる

 

 

 

にこ「―――なっ!?」

 

果南「だ…ダイヤ…」

 

鞠莉「何よ…あれ、」

 

 

魔王(これは……炎???)

 

 

魔王は見た。

先程まで人間がいた場所から、炎の線。

1本の伸びた線がまるで流れるように、そこにある。

それは雷やオーラを避けるように流れており、魔王の後ろまで続いていた

 

 

魔王(後ろ…何かが…いる)

 

 

それは分かっていた。しかし、何故か。

後ろをすぐには振り向けなかった。本能的に体が固まった…恐怖した?この私が???

魔王は自分の行動、思考に怒りを覚えた。

その怒りのままに、見る事を拒んだ背後、炎が流れ続く後ろを――――――

 

 

 

―――――――ダイヤ「っっっ!!!!」ボオォォッ!

 

 

黒澤ダイヤが、駆けていた

 

 

 

ルビィ「あ…あれって……」

 

月「え、ルビィちゃん何か知って…って、え!?」

 

ルビィ「っっ…」ボロボロ

 

月は状況を整理することが出来ないでいた。

ダイヤの謎の動きを見た瞬間、ルビィの目から滝のように涙が溢れ出たのだ

 

 

ルビィ「お姉ちゃん…お姉ちゃんお姉ちゃん!!!!ついに…やったんだよ!!!!」

 

ダイヤ「ぐうぅっっっ!!!!」ボオォォッ!

 

 

黒澤家に伝わるもの。

それは炎。それは血。

厳しい修業・鍛錬を積み、どんな絶望にも負けない圧倒的な火力の如くの心。

それらが呼応し、血が炎のように爆発することにより、その者は"炎そのもの"になる

 

 

 

 

ダイヤ「【ヒノカミ神楽】!!!!」

 

 

 

ルビィ「……あの技は、ルビィには発動できなかった…もう負けないよ」

 

ルビィ「ルビィたちの勝ちだよ」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「ダイヤ。もう私のことはいいから…」

 

ダイヤ「駄目ですわ」

 

 

ダイヤは善子の心の中で。

暗闇で小さく怯える善子の前にいた

 

 

ダイヤ「約束したのです。必ず善子さんを助け出すと」

 

善子「でも…そのせいでみんなを、」

 

ダイヤ「よく見ていなさい」

 

善子「!!」

 

ダイヤ「この閉ざされた心の中にまで届く灼熱で、善子さんを…必ず」

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

ダイヤ「【ヒノカミ神楽】!!!!!!」

 

ダイヤは燃えていた。

火の粉が散り、周りには陽炎が浮かぶ

 

 

魔王(あのスピード…熱さっっ…あの人間!!??)

 

魔王「【Deep Resonance】!!」ビュン!

 

ダイヤ「!!」

 

ダイヤは『ブラックサンダー』と『ゴートゥーヘル』の雨を躱すのと同時に、魔王を流れるように突破していた。

スピードがまるで別人、動きもまるで別人。

抜かされた魔王は感じた、この技は…ヤバいと

 

 

ダイヤ(体が熱い!?!?痛い!?!?)

 

一方のダイヤ。

突如として開花した技。いったいこれがなんなのか、ダイヤは理解しているが理解しているからこそ。この技の危険度をその身で感じ取っていた

 

 

ダイヤ(無理やり開花させた"黒澤の血"…!!!!今止まれば、全ての跳ね返りがわたくしに襲いかかるっっ!!!!)

 

ダイヤ「はあぁぁぁっっ!!」ボオォォッ!

 

魔王「なあっ!?」

 

 

聖良「魔王を…"Deep Resonance"をも…圧倒している…」

 

あんじゅ「ATP…??でも、オーラが違う」

 

鞠莉「もしかすると…」

 

あんじゅ「もしかすると…何?」

 

 

 

魔王(馬鹿な!?2度も、2度も抜かされた!?)

 

共鳴を発動しているのにも関わらず、ダイヤに2度も抜かされた魔王。

ボールを奪おうとしても、体でぶつかろうとしても、まるで流れるように躱される

 

 

ルビィ「あれは"ヒノカミ神楽"。黒澤の血を持つ…そしてその中でも選ばれた人のみが発動出来る技だよ」

 

鞠莉「黒澤の血は特殊なのよ。条件が揃うと爆発したかのように、沸騰したかのように"血が暴れる"の。その条件が舞いよ」

 

 

高温となった血液、そして加速する血流。

舞うことにより血は共鳴し、身体能力が極限まで高まり、ダイヤの体が限界だと判断するまでその変化は加速する。

 

 

それすなわち

 

 

 

ルビィ、鞠莉「「舞えば舞うほど強くなる」」

 

 

 

千歌「…!!!!」

 

 

千歌は、ダイヤのひとつひとつの動きに、見覚えがあった。

それはまだ、ダイヤたち3年生がサッカー部に再入部する前

 

 

ダイヤ『……』

 

千歌『(綺麗…)』

 

ダイヤが1人、体育館のステージで踊っているのを見た。

繊細された動き、指の先、視線、足取り。

全てが蝶のように風のように流れて綺麗で、千歌は用事を忘れ、ただただ、ダイヤの舞いにみとれていた。

 

そしてそれは――――――

 

 

千歌(このためだったんだ…ダイヤさんは、あの時も…!!)

 

 

――――――サッカー部はやめても、努力はやめていなかった

 

 

 

魔王「【ブラックサンダー】【ゴートゥーヘル】!!!!!!」

 

千歌が意識を試合に戻すと、最後の悪足掻きと呼ぶにふさわしく、魔王が再び雷とオーラを降らせていた。

逃げ場などないように見えるが、それも全て無駄。

逆に、ダイヤを舞いさせる状況を作っているとも知らずに

 

 

ダイヤ「―――っっ!!」ボオォォッ!!

 

飛び、回り、捻り、極限の状況の中でも、ダイヤは舞う。

体に染み付く一連の流れ、何度やり直したか。何度間違いを指摘されたか

 

 

ダイヤ「―――見える」グルン!!

 

ダイヤ「はあぁぁぁっっ!!!!」バッ!

 

 

スピードとキレが確実に増している。

これが黒澤の血、これが父の言っていた"継ぐもの"。

魔王が何度共鳴を発動し、何度ブロック技を放ったか。それ全て「舞い払う」ため、記憶になどない。

 

勘に近い感覚で殺人級の技を躱している。

だが、勘は勘でも、当たる気がしなかった

 

 

 

 

魔王「撃たせるかあぁぁぁ!!!!」

 

ダイヤ「―――っっ!!!!」

 

 

魔王をゴール前まで追い詰めた。

雨のように降る技も全て躱した。

 

 

あとは――――――斬るのみ

 

 

 

――――――ガキイィィィイン!!!!

 

魔王「!?!?」

 

 

ダイヤのシュートを足でブロックする魔王、ぶつかった瞬間の音に違和感を感じた時には

 

 

ダイヤ「【炎・マキシマムファイア】」

 

 

斬られる瞬間だった

 

 

ダイヤ「善子さんの想いはっっ!!!!!!」

 

魔王(そんな!?!?)

 

ダイヤ「誰にも…っっっっっ――――――

 

魔王(負け――――――る―――

 

 

 

 

―――――引き裂けない!!!!!!」

 

 

 

ズバアァァァァァァン!!!!!!!!

 

 

魔王「ぐあぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 

振り切ったダイヤ。

そのまま魔王はボールとともに、ゴールへと押し込まれた

 

 

ピピーーー!!!!!!

 

 

千歌「………決まった…」

 

英玲奈「勝ったの、か?」

 

時間を知らせる砂時計は既に流れきっていた。3-2。審判である老人は試合終了の笛を吹き、人間チームの勝利を知らせた

 

 

果南「勝った…悪魔に勝った…」ヘナヘナ

 

希「これで、善子ちゃんを取り戻せる!」

 

 

ダイヤ「…ハァ……ハァ」

 

ルビィ「お姉ちゃんっっ!!」

 

ルビィは真っ先にダイヤの元へ。

ダイヤが倒れる寸前で受け止める。痛みに響くが今はそんなこと関係ない

 

 

ルビィ「お姉ちゃん…やったよ…!!"ヒノカミ神楽"…出来たんだよ!!」ボロボロ

 

ダイヤ「ルビィ…本当に、わたくし…が?」

 

ルビィ「そうだよ!!お姉ちゃんが頑張ってきたこと全てが、今、報われて…ルビィ…嬉しくて」ボロボロ

 

ルビィ「お稽古を全てこなしたけど、ルビィは選ばれなかった…でも、お姉ちゃんが発動して…良かったよぉ…」ボロボロ

 

ダイヤ「ルビィ…ルビィ!!」ギュッ

 

姉が妹を心配するのと同様に、妹も姉を心配していた。努力を重ねた先で、ダイヤは報われるのか。自分のように血に選ばれず、絶望により先を見失ってしまうのでは、と。

 

しかしそんな考えは杞憂に過ぎなかった。

ダイヤは開花させた。黒澤の血を、今までの全てを糧とし、自分だけではなく、仲間全てを救ったのだ

 

 

ルビィ「やっぱり…お姉ちゃんはルビィの憧れだよ」

 

ダイヤ「ありがとう…ありがとう、ルビィ」

 

姉妹が喜びを分かち合う中、ゴールに叩き込まれた魔王は考えられない事態に動けずにいた

 

 

魔王「何故……ゲホッ…共鳴はしていた…なのに何故奪えなかった…」

 

ダイヤ「…それは、あなたが善子さんを完全に支配できていなかったからですわ」

 

魔王「!?」

 

ダイヤ「分かっているのでしょう?善子さんが心の中で抗っていることを。それによって"Deep Resonance"も完璧に発動できなかった。動きも鈍くなっていた」

 

ダイヤ「人の心の勝ちです」

 

魔王「……」

 

言い返せなかった。力も、能力も劣っている人間に負けたこと。

それは魔王にとって屈辱。そして―――――――――

 

 

 

 

 

 

フラエル「魔王。千年ぶりですね」

 

穂乃果「善子ちゃんを…取り戻しに来たよ」

 

 

 

千年の時を超え、女神と魔王が接触する

 

 

 

 





ヒノカミ神楽
皆さんお馴染みの某少年誌から。パクリと言われたら何も言えません笑 黒澤の血を持つ者で、その中でも選ばれた人のみが発動できるという必殺技。黒澤の特殊な血はダイヤの舞に呼応していくため、ダイヤが舞えば舞うほどスピードやパワーが高まっていきます。身体能力も格段に上がるため、条件次第ではATPやゾーンを遥かに超えてきます。めっちゃくちゃわかりやすく言うと『ギア2』です

炎・マキシマムファイア
『ヒノカミ神楽』で自身の身体能力を高めながら放つダイヤの技は進化します。本来の技に『炎』がつくため、『炎・ラ・フラム』とかもできます



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第3章 103話「千年の答え」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
私事ですが、大学受験 第二志望の大学に合格しました。第一志望はまだですが、一応進路は確保したということで報告します。気を抜かずに第一志望に受かるように頑張ります。

さて…魔界と天界との勝負にも決着がつき、あとは花丸ちゃんと善子ちゃんを助けてめでたしめでたしですね




 

前回の、輝こうサッカーで!

ルビィの才能に圧倒され、自分の努力が目指す先を見失いかけていたダイヤ。しかし、仲間の鼓舞するプレー、そして死に直面する瞬間に脳裏を過ぎった記憶により、"黒澤の血を覚醒させる"技「ヒノカミ神楽」を発動する。

そのまま魔王ごとゴールに押し込み勝利、白チームと女神フラエルも合流し、魔王を完全に追い詰めていた

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ルビィ「ピギッ!?」

 

フラエル「じっとしていろ」

 

魔王率いる魔界軍団チームに勝利した赤チーム。そこに畳み掛けるかのように現れたのが天界へと向かった白チームと女神が憑依した花丸であった

 

 

果南「本当に憑依…されてるの?」

 

エドガー「はい。私の折れた足も女神様の力で治して貰いました」

 

にこ「足が折れたぁ!?!?」

 

身の毛もよだつとんでもない言葉。

エドガーは経緯を全て説明するも、赤チームからは感謝されるだけではなかった

 

 

希「自分の体は大切にしよ?」

 

にこ「無茶し過ぎよ…そういう場面だったとはいえ、エドガーにもこの先があるんだから」

 

エドガー「肝に銘じます」

 

果南(…後半が始まったぐらいの時に地鳴りがしたけど…あれってエドガーの"エクスカリバー"の……まさかね?)

 

エドガーの足を治した女神の力。

それにより負傷を負ったルビィの体は元気全開へと回復していた

 

 

ルビィ「っっ!!!!」ドン!!

 

ルビィはATPを発動し体の状態を確かめる。

試合前の…ピーク時の状態に戻っている、半信半疑ではあったものの、その恩恵は計り知れないものであった

 

 

理亞「どう?」

 

ルビィ「大丈夫。もう痛くないよ」ゴゴゴゴ

 

理亞「そう…」

 

鞠莉「…!」

 

鞠莉「理亞〜?もしかして今、"よかった"って考えた??」

 

理亞「!?」

 

ルビィ「!」

 

鞠莉「前まではツンツンしてたのに、ルビィのこと大好きになったのね♪」

 

聖良「それは朗報ですね」

 

ダイヤ「あらあらまぁまぁ」

 

理亞「ち…ち…違ああぁぁぁぁぅ!!!!」

 

否定はするものの顔をゆでダコのように真っ赤にする理亞。説得力無し。

第一、嫌いな人と合流して真っ先に怪我の様子を心配する人などほとんどいない。

理亞に自覚があるのかないのかは分からないが、少なからず行動に出ている。それだけでも鞠莉の標的にされるのには十分すぎる

 

 

絵里「…さて、フラエルさん。そろそろ魔王を」

 

フラエル「そうだな」

 

千歌「魔王を…どうするの?」

 

千歌たち赤チームはフラエルの言う「善子を助け出す方法」を知らなかった。

わざわざ天界の民が魔界へと乗り込んできたのだ。魔王と接触することだけは分かっていたが…

 

 

フラエル「今まででは魔王を封印するだけだった。封印だと宿主である人間も封印される。だが、」

 

フラエル「魔王を完全に消滅させれば、人間の体は残る」

 

「「「!!!!!!」」」

 

にこ「魔王を消滅??そんなこと出来るの?」

 

フラエル「本来なら不可能だ。だが、あなたたちが魔王を弱らせてくれたおかげで、それが可能だ」

 

クラリア「魔王ならゴール前で気絶している。やるなら今だな」

 

魔王「」

 

ゴール前で倒れ、ピクリとも動かない善子。姿は善子でも今は魔王。ダイヤの一閃によりゴールに叩きつけられ、共鳴の疲労とダメージにより意識を失ったのだが…体は善子なため、気絶した時には冷や汗が出た。

心の広いフラエルならば恐らく善子のダメージも消してくれるはず…

 

 

デスタ「黙ってやらせると思うか!?」

 

フラエル「…」

 

しかし、魔界の民も主が消滅するのを黙って見過ごすわけがなかった。荒い口調で女神の前に立つが、今はなんの意味も持たない

 

 

セイン「魔界の民。我々は人間に敗北したんだ。勝ったものの望みに従う、それが掟だ」

 

デスタ「…!」

 

フラエル「人間たちは生贄の返還を望んでいる。それ即ち魔王の消滅。お前たちが邪魔をする権利はないんだ」

 

魔界軍団「「…!!!」」

 

誰も何も言えなかった。

主である魔王は助けてくれない、女神にも適うとは到底思えない。自分たちはただ呆然と主を失えと言うのか!?

しかし、それが今現に進行しているのだ

 

 

フラエル「終わりだな魔王」

 

これで善子、そして花丸も帰ってくる。

みんなで帰れるんだ…誰一人欠けることなく、サッカーが出来るんだ…

 

 

「ゲホッ…!?ゲホッ…!!」

 

フラエル「!」

 

「「「!!!!」」」

 

善子「…ハァハァ……ここ、どこ?」

 

「「「善子(ちゃん)!!!!」」」

 

魔王が目を覚ましたのかと思いきや、目も血のような赤黒い色ではなく、本来の優しい赤色に戻っていた。

口調も声の質も、善子のものであった

 

 

穂乃果「すごい!魔王が消滅した!」

 

絵里「本当に成功したのね…」

 

 

フラエル「……??」

 

善子「あなた、誰?」

 

 

フラエルは混乱していた。

魔王を消滅?自分はまだ何もやっていない。

これから消滅させようとしたのだが、人間の状態で意識が戻った…それ即ち、魔王が勝手に消滅した…?

 

 

フラエル「いや、私はまだ―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ドスッッッッッ!!!!!!

 

 

 

千歌「…ぇ」

 

穂乃果「!!?」

 

「「「!!!!???」」」

 

 

 

 

 

フラエル「ゴフッ!?!?」

 

 

 

 

セイン「ふ…フラエル様ぁぁ!!!!!!」

 

 

 

フラエルの心臓がある場所に。

善子の手が、突き刺さっていた

 

 

ルビィ「は、花丸ちゃんが…花丸ちゃんが!!!!」

 

にこ「善子!!いや…あんた善子じゃないわね!?」

 

 

フラエルの体で善子の姿は見えない。

しかし、不気味に笑うその声に善子の雰囲気は――――――

 

 

善子「……くくっ、くくくく」

 

 

 

 

魔王「千年待ったのは、お前だけじゃないんだぞ。フラエル」

 

 

――――――いっさい、感じられなかった

 

 

月「最初から騙していたんだ…魔王は消滅なんてしてなかった!」

 

ダイヤ「花丸さん…フラエルさん…」

 

 

 

フラエル「ゴホッ!?ま、魔王…貴様っっ!!!!」

 

フラエルは油断したことを遅くも後悔した。

声も雰囲気も人間だった…穂乃果たちと約束した魔王消滅と善子の奪還。しかし、その救うべく人間の声を聞いて一瞬、気を緩めてしまった。

その後、瞬きに近いあいだに、自分の胸に人間…いや、魔王の手が突き刺さっていた

 

 

魔王「姿…声を変えることなど造作もないんだよ」

 

フラエル「ぐあぁっっ!?!?」

 

魔王「お前らがなぁ…邪魔で邪魔で仕方なかったんだよ…どうすればお前らを消すことが出来るか」

 

フラエル(なんだ……何かが、流れ込んでくる………)

 

魔王「千年考えた。そして分かったんだ。消すようなことなんてする必要などない。"邪魔しないようにすればいい"んだとな!!!!」

 

フラエル(まずい……意識、が………)

 

魔王はフラエルを殺すために心臓を刺したのではない。もっと絶望的な、卑怯で、狡猾な

 

 

フラエル「………」

 

穂乃果「ふ、フラエル…さん?」

 

 

 

 

 

―――――――――ドゴッッッッ!!!!

 

 

穂乃果「うわっっ!!??」

 

海未「穂乃果!!!!」

 

ツバサ「フラエルさん…何を!?」

 

フラエルのシュートが穂乃果に直撃する。

突然のことに反応できずに吹き飛ばされる穂乃果、それを見たメンバーはフラエルを見る。しかし…

 

 

フラエル「くくくく…お前達の魂…よこすがいい」

 

「「「!!??」」」

 

まるで魔王と同じ目…いや、魔王そのものだった

 

 

穂乃果「っっ…サッカーはそんなことのために使うんじゃない!!フラエルさん!!あなたは私たちと試合してサッカーの楽しさを分かってくれたんじゃないの!?」

 

フラエル「知らん」

 

穂乃果「!!!!」

 

まるで別人じゃないか…原因はひとつしかない。魔王があの時、フラエルに何かをしたのだ

 

 

和葉「…女神様は魔王に支配されたのかも」

 

にこ「あの魔王…どこまで汚いの」

 

魔王「女神が魔界に堕ちたことにより、我らは天界と魔界を超えた。"ダークエンジェル"の誕生だぁ!!!!」

 

フラエル「くくくく……っっ!?」

 

セイン「!!!!」

 

フラエル「ぐあっ…あ、悪魔に…意識を支配されるとは…っっ!!」

 

セイン「フラエル様!!」

 

突如、再び苦しみ始めた女神。

その目・動きは魔王の力に抗っているように見える。まだ完全には支配されていないのだ。そうと分かったことで、ほかのメンバーもフラエルに呼びかける

 

 

千歌「フラエルさん…!!」

 

曜「お願い!!魔王に負けないで!!」

 

フラエル「ぐっ!?私は…もうダメだ……止めてくれっっ!!!!私の手が…汚れぬ…うち………………」

 

 

 

セイン「…フラエル、さ」

 

フラエル「黙れえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

「「「!?!?」」」

 

魔界に響く女神の声。

その声から伝わる殺意により、千歌たち、そして天空の使徒たちでさえ凍りつく。

神々しく、包むような温かさは感じられない。血走った目を見ると、恐怖で体が震える

 

 

フラエル「人間がぁ…今すぐに昇天させ、魂を食らってやる…サッカーでな」

 

穂乃果「さ、サッカー??」

 

魔王「お前達の魂は素晴らしい。よって、我々がより完璧な魔王になるための、生贄にしてやる」

 

つまり、次のサッカーの試合で負ければ今度こそ自分たちの魂は食われる。

そしてフラエル、善子、花丸を助けることさえも…

 

 

穂乃果「セイン。一緒に戦って、フラエルさんを助けよう」

 

セイン「穂乃果…」

 

千歌「女神様も戦ってるんだよね…なら私たちも仲間を助けるためにもう1試合、何がなんでも!!」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

ー ダークエンジェル ー

 

FW………………魔王、フラエル

 

MF…メフィスト、デスタ、アラクネス

 

DF…ベルゼブ、クラーシャ、ベリアル

 

DF…………アビゴール、ヘビーモス

 

GK…………………アスタロス

 

2-3-3-2

 

 

 

 

ー 日本&海外チーム ー

 

FW…………鹿角理亞、黒澤ルビィ

 

MF……高海千歌、エドガー、セイン

 

MF…………桜内梨子、三浦和葉

 

DF……絢瀬絵里、鹿角聖良、小原鞠莉

 

GK…………………高坂穂乃果

 

3-2-3-2

 

 

 

「これより、儀式を執り行う」

 

ピーー!!!!

老人の吹く笛により試合開始。

天空の使徒からセインを加え、日本&海外チームは堕ちた女神と魔王と戦うこととなった

 

 

魔王「ダークエンジェルの力」バッ

 

フラエル「思い知るがいい」バッ

 

 

穂乃果「みんな!来るよ!!!!」

 

ルビィ「ルビィたちに任せて」

 

理亞「最初から飛ばすわよ」

 

背中からの穂乃果の声に応えるように飛び出したルビィと理亞。

まっすぐ向かってくる魔王と女神に手加減などしない、FWも全力で止めに行く

 

 

ルビィ、理亞「Awake―――

 

魔王、フラエル「っっ―――ギュン!!!!

 

理亞「なっ!?」

 

ルビィ「速くなってる!?」

 

ATPを発動するよりも早く、ルビィと理亞を突破する魔王と女神。

ワンツーでいとも簡単に。一度も足を止めることなく人間チームの陣形を切り開いていく

 

 

エドガー「パワーアップしているのか…!!」

 

千歌「うそ…もうDFラインまで!?」

 

 

聖良「なっ!?」

 

鞠莉「対応する暇が…っっ!!」

 

絵里「まずいわ…全員抜かされたわよ!?」

 

梨子「穂乃果さん!!!!」

 

 

早くもピンチ。穂乃果はどちらがシュートを撃ってくるのか構えながら考えた。

フラエルのシュートは異次元だったが、魔王のシュートも強力だと聞く

 

 

魔王「恐怖しろ!!!!」

 

フラエル「そして魂に還るがいい!!!!」

 

 

穂乃果(撃ってくる…!!)バッ

 

 

 

ボールを持ったのは魔王

 

 

魔王「ははっ!!」グルングルン

 

果南「気を付けて!!"ダークマター"は進化してる!!」

 

動きは違うが魔王がボールを両足で挟み、空中で回転しながら魔界のオーラをボールに込めている……が、動きが、違う??

 

 

魔王「フラエル!!」

 

果南「なっ!?!?」

 

鞠莉「うそ…でしょ!?」

 

 

フラエル「ぬうぅぅぅぅらあぁぁ!!!!」ドガアァン!!

 

 

魔王、フラエル「【シャドウ・レイ】!!!」

 

フラエルがオーバーヘッドで合わせてきた。

"ダークマター"と"ヘブンドライブ"の合体技、光も含まれているのに…どこか狂気的な輝きを感じる

 

 

穂乃果「はあぁぁぁぁ!!!!」バッ

 

穂乃果は両手に太陽とゴットハンドのオーラを発動し混ぜる。

灼熱の手で堕ちた神と魔王に挑む

 

 

穂乃果「【ゴットハンドX】!!!!」ドォン!

 

穂乃果「ぐぬぬぬぬぬぬっっ!!!!!!」

 

穂乃果の"ゴットハンドX"は超強力。

しかし、圧倒的な神の力により――――――

 

 

 

――――――バリイィィィィィン!!!!

 

 

穂乃果「うわあっっ!?!?」

 

ピピーッ!!!!

 

 

 

ことり「…あっという間に1点」

 

クラリア「なんなんだ…こいつらは」

 

 

和葉「このスピード、破壊力…これがダークエンジェルの力なのか」

 

何も出来ず、その圧倒的な力を見せつけられた日本&海外チーム。

動揺を隠せないその顔を見た魔王は言う

 

 

魔王「いいぞその顔。恐怖を味わうほど魂は上手くなる…!!」

 

フラエル「もっと恐怖しろ…震えろ!!」

 

穂乃果「…フラエルさん」

 

それぞれの試合でも満身創痍だった。

それが今度は魔王と女神をまとめて相手しなければならない…

人間チームの空気はどんどん悪くなる。それを見かねた激がベンチから入る

 

 

にこ「ぬぁにぼーっとしてんのアンタたち!!取られたら取り返す、それがサッカーってもんでしょ!?」

 

「「…!!」」

 

にこ「和葉も怖気付いた?にこが代わるわよ!?」

 

和葉「ふふっ、言うねにこ。でも、私は代わる気はないよ」

 

にこ「なら、早く同点にしちゃいなさい。生意気言うのはそれからよ」

 

和葉「了解」

 

にこによりチームの雰囲気の悪化に歯止めがかかる。日本からして見ればいつもの頼もしい光景だが、一目置くメンバーもいた

 

 

鞠莉「キャプテンにあんな事言える人はなかなかいないデース…」

 

絵里「にこだから出来るのよ。さすにこね」

 

聖良「さ、さすにこ?」

 

 

 

その後、日本&海外チームボールで試合再開。魔界軍団のプレーは千歌たちが事前に話していたため、天空の使徒と戦った和葉たちにも情報は共有されていた

 

 

和葉「セイン、こっち!」

 

セイン「!」パス

 

和葉(パワープレイで押してくるって言ってたな…)

 

デスタ「【ゴートゥーヘル】!!!!」

 

和葉(ならばスピードで勝負!!)

 

和葉の真上からオーラの塊が落ちてくる。

ボール目掛けての技だが、その破壊力は並大抵のものではない

 

 

和葉「千歌!」パス

 

デスタ「何っ!?」

 

和葉「千歌、ルビィ、理亞!!ドリブルと小回りが効くあなた達なら、魔界軍団のDFを突破出来る!!」

 

千歌、ルビィ、理亞「「!!」」

 

イタリア戦で日本が魅せたテクニックの数々、和葉たちのプレーやタクティクスは何度仕掛けてもその度に躱されてきた

 

 

和葉(私が決めることは無い…今は結果論。勝つことが最優先だ!!)

 

梨子「……」

 

鞠莉「…梨子?」

 

 

千歌「ルビィちゃん、理亞ちゃん、行くよ!!」

 

ベルゼブ「これ以上行かせるかっっ!!」

 

千歌「…!」

 

魔界軍団のDFが早速向かってくる。

千歌は与えられ、託されたチャンス。逃すわけにはいかないと自覚していた

 

 

千歌「【ZスラッシュGX】!!!!」ギュンギュン!

 

ベルゼブ「!!」

 

千歌「ルビィちゃん!」パス

 

 

ルビィ「よっと、」

 

空中で千歌のボールを受け取るルビィ。

地面に着地した瞬間が最大の隙になることは魔界軍団も把握している。

 

そして、

 

 

ルビィ「理亞ちゃん!」パス

 

「「!?!?」」

 

ベリアル「空中でパス!?」

 

アビゴール「しまった…1人フリーだぞ!!」

 

ルビィもまた、悪魔たちが考えることを把握していた

 

 

理亞「マンツーマンじゃなきゃ、突破なんてちょろいわ!!」

 

ルビィ「理亞ちゃん、2人で撃つよ!!」

 

突破した理亞に気を取られる悪魔。

そのためルビィは簡単に理亞に追いつき横に並ぶ。

全ての条件は揃った。

あとはあのゴールに叩き込むだけ

 

 

エドガー「流石の連携ですね…!!」

 

和葉「期待以上だよ」

 

 

ルビィ、理亞「「はあぁぁぁぁ!!!!!!」」

 

2人同時にATPを発動。

炎と氷、対極である2つの力も源は心の炎。

混ぜ合わせ、ひとつにすることによりその炎は爆発的に膨れ上がる

 

 

ルビィ、理亞「「【クロスファイア改】!!」」ドガアァン!!

 

 

晴夏「進化してる…!!」

 

凛「そのままゴールにゃー!!」

 

 

 

吹き荒れ、燃え上がるシュート。

魔界軍団Zの試合ならば、ゴール確実の強力シュート

 

 

 

アスタロト「【ジ・エンドV3】!!」ググググ

 

「「「!!!!??」」」

 

 

にこ「V3…!?また進化したわよ!?」

 

月「魔王の力で…パワーアップしてるのかも」

 

 

 

 

――――――ぐしゃっ

 

 

ルビィ、理亞「「!!!!」」

 

理亞「あれを止める…」

 

ルビィ「っっ……」

 

余裕のある表情でボールを握りつぶした魔界軍団キーパー。

今のシュートがあれほどまでに簡単に止められたとなると…決めきれる可能性のあるシュートはかなり限られてくる

 

 

絵里「相手の方がうわてね」

 

鞠莉「えぇ。厳しい戦いになるわ」

 

鞠莉(そして…この試合、勝利に必要不可欠なのは)

 

 

梨子「……みんな、」

 

 

鞠莉「あなたよ…梨子」

 

 

 

日本&海外チーム 0-1 ダークエンジェル

 

 




ご感想&アンケート、よろしくお願いします!!


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第3章 104話 「ダークエンジェル戦 "噫無情"」


皆さん、お久しぶりです。ルビィちゃんキャンディーです。
受験が完全終了しました。ということで今日から本格的に更新を再開していこうと思います。

夏までには世界編を終わらせる目標で書きまくるびぃ




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

魔界軍団Zに勝利し、フラエルは魔王消滅の為に穂乃果たちと共に魔界へと乗り込んだ。しかし、魔王の罠によりフラエルは洗脳。魔王は"ダークエンジェル"として、千歌たちに儀式という名の試合を仕掛けたのである。

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ルビィと理亞の必殺技「クロスファイア」が止められその後、人間チームは守る事しか出来なくなっていた

 

 

フラエル、魔王「【シャドウ・レイ】!!」ドガアァン!!

 

鞠莉「【グラウンドスイーパーGX】!!」

絵里「【ホワイトハリケーンGX】!!」

 

鞠莉と絵里のシュートブロック。

どちらも強力な技であるが、それでも神のシュートは止まらない

 

 

穂乃果「【ゴットハンドX】!!」

 

穂乃果が両腕をクロスし飛び出した。

ほとばしる赤いオーラと吹き出す熱気。

穂乃果の魂とも呼べるその一撃で―――――――――

 

 

――――――ドゴオォォン!!!!

 

 

 

穂乃果「ハァ…ハァ…ハァハァ、」ビリビリ

 

ぎりぎりではあるが、ボールを受け止めた

 

 

フラエル「よく止めた」

 

魔王「だが、それもいつまでもつかな?ハハハハッ!!」

 

穂乃果「くっ…!!」

 

 

鞠莉「そろそろキツい…わね」

 

絵里「えぇ。防戦一方じゃ崩れるのも時間の問題よ」

 

あれから何本もシュートを撃たれ、その度にDFのシュートブロック。穂乃果の全力の一撃で首の皮一枚繋げている状態。

鞠莉と絵里は技の消費はそれほど激しくないが、聖良は別

 

 

聖良「ハァハァ……」ガクッ

 

理亞「姉様!!」

 

エドガー「聖良の"アイスエイジ"の体力消費はとてつもない…既に数回発動している、無理もない」

 

理亞「…っっ!!」

 

シュートブロックには聖良も参加していた。

和葉の「ブレイブショット」を完全に凍らせた必殺技「アイスエイジ」。

神のシュートにもその冷気は通用し、失点を防いではいたのだが…

 

 

和葉(女神と魔王の力は本物…点を取るのは簡単じゃない…)

 

梨子「……」

 

和葉(まずは1点…そして梨子か、)

 

和葉「ルビィ、エドガー」

 

ルビィ、エドガー「!」

 

和葉「無理難題。押し付けるけどやってほしい」

 

 

 

穂乃果のロングパスで人間チームの攻撃。

防戦一方の1番の理由は体力、披露だった。

最初は相手と張り合えていたのにも関わらず、途中からある事に気づいた

 

 

千歌「…っっ!抜けない…!!」

 

メフィスト「最初のキレが落ちてるわよ?」

 

魔界軍団チームの…動きが、変わらないのだ

 

 

千歌「セインさん!!」パス

 

セイン「あぁ!」

 

理由はセインが教えてくれた。

恐らく、エドガー、そしてルビィや赤チームのメンバーの傷を治した女神の力。

あれで随時体力を回復させているのだと

 

 

ベルゼブ「天空の民…消えろ!!」ドン!

 

セイン「ぐっっ!?」

 

例え技術で勝っていても、人間に限界がある以上差は確実に離れ続けている。

それが今の防戦一方の試合状況である

 

 

和葉「セイン、後ろ」

 

セイン「!」パス

 

ベルゼブ「!?」

 

バックパスでボールを受け取った和葉は一気に突破を試みる。

つい先程考えた一つの案、それを前半終了の笛がなる前。そして人間チームが崩れる前に実行しなければならない

 

 

ベリアル「【ゴートゥーヘル】!!」

 

和葉(遅いっっ!!)バッ

 

和葉の頭上から落ちてくるオーラの塊を躱す。だいぶ受け身や躱し方を覚えて来た。世界最高レベルのプレイヤーだからこその順応スピードであった。

 

しかし、

 

 

魔王「うらあっっ!!!!」ドガッ!!

 

和葉「っっ!?!?」

 

フィレア「キャプテン!!!!」

 

穂乃果「みっちゃん!!!!」

 

魔王の激しいタックルに膝をつく。

サニデイジャパンと試合した時に善子と競り合ったことはあるが、その時とはまるで違う。人の温もり、熱さが感じられない

 

 

和葉「……ふぅ…なかなか手厳しいね」

 

魔王「お前の魂はこの中でも特に美味そうだ」

 

フラエル「今すぐに喰らってしまいたいぐらいだな」

 

和葉「……」

 

和葉は喋らない。

俯き、突破しようとする意思が…感じられない、そして…

 

 

和葉「ねぇ…私嫌なんだよ」

 

魔王「!?」

 

フラエル(雰囲気が…)

 

 

和葉の発した一言。

それを聞いたこの場にいる全員の動きが、一瞬だけ停止した

 

 

 

 

クラリア「…なんだ…カズハの様子が」

 

フィレア「……」

 

 

鞠莉「……やるのかもしれない」

 

千歌「…あの感じ、」

 

千歌の記憶に残る、まだ新しい記憶。

イタリア戦の終盤で見せた、和葉の"本気"

 

 

 

和葉「私はね、楽しめないことが大っ嫌いなんだよ。勝つために?未来のため?生きるために?」

 

和葉「私から楽しみを奪う奴は神であろうと容赦しないよ」

 

サニデイジャパンのメンバーは何度も見てきた。雰囲気を変え、ギアを何段階も変化させて自らを鼓舞する選手を。

 

必殺技、特殊技、ゾーン、自強化。

それぞれが試行錯誤、そして才能を最大限に引き出した結果。それが今、この南の島の大舞台でボールを蹴れる要因となっている。

 

どの選手の力も目を引くものばかり。

ならば、

 

 

和葉「………」

 

魔王、フラエル「「……」」

 

人間最高峰である三浦和葉はどうなのか。

自分たちは和葉に到底適わないとは自覚している。だから、だからこそ知りたい。

 

三浦和葉のサッカーを

 

 

和葉「…作戦があったんだけど、ちょっと気が変わったからワガママさせてね」

 

千歌たちは思い出す。

イタリアの選手や鞠莉の母親である小原サエが言っていた「遊びすぎるな」という警告

 

 

魔王「人間が…魔王に勝てるとでも思っているのか!?!?」バッ!

 

絵里「またタックル!!」

 

和葉「…」

 

"遊ぶ"?試合中に?

 

 

和葉「―――!!」クルン!

 

魔王「!!」スカッ

 

魔王(身体を回転させて躱したか…だが)

 

和葉「―――!?」

 

フラエル「【ゴートゥーヘブン】」

 

和葉が躱すことは想定内。

女神はその後に和葉が通るであろう場所に必殺技を仕掛けるだけ

 

 

和葉(あのディフェンス技か…)

 

和葉「っっ!!」バッ!

 

フラエル「…!」

 

光の柱が出現する地面は光り輝く。

その場所に侵入するよりも早く和葉は足でブレーキ。ダメージを増やさない為にそのままバク転で必殺技を回避する

 

 

フラエル「なかなかやるな」バッ

 

和葉(今度は接近戦か…)

 

必殺技が通用しないと分かった途端。

フラエルは直接ボールを奪いに和葉へと近づいた

 

 

ルビィ「無茶だよ…ルビィたちもフォローに」

 

エドガー「ルビィ。和葉の言った作戦がある」

 

ルビィ「でも…」

 

エドガー「安心してください。あのクイーン カズ、今に魅せてくれますよ」

 

ルビィ「…」

 

 

和葉が魔王と女神との1対2を始めて数十秒が経過しようとしていた

 

 

 

フラエル「くっ…何故だ!?」

 

魔王「小癪な…!!なんなんだ!?」

 

確実に魔王と女神の顔と動きに焦りが見え始めていた。それもそのはず

 

 

和葉「どうしたの?神の力はこれっぽっち?」

 

 

接近戦に持ちかけてから、和葉の持つボールに一度も触れていないのだ

 

 

魔王「思い上がるなっっ!!!!」バッ

 

和葉「―――」グワン!

 

魔王「」スカッ

 

触れない。取れそうなのに、取れないのだ

 

 

理亞「…なんで、疲労はないんでしょ?まったく触れてないじゃない」

 

千歌「魔王たちがボールに触ったと思ったのに触っていない…なんで??」

 

千歌たちの目でも、ボールに魔王が触った!!女神が触った!!と捉えたはずなのに、まるでボールが透けたかのように。

ボールに実体がないかのように、触れられないのだ

 

 

にこ「…嫌になるわね」

 

希「にこっち…なにが?」

 

にこが和葉のその奇妙なプレーを見て、何故か悔しそうな表情を浮かべていた。それもそのはず

 

 

にこ「和葉…にこでもまだ完璧じゃない"アイソレーション"を極めてる」

 

凛「アイソレーション??」

 

希「アイソレーションって、あの??」

 

 

「アイソレーション」

ブレイクダンスやパントマイムなどで、体の一部を単独で動かす技術。

これを高速で、さらに緩急をつけて行うことにより、残像を残し相手に自分の位置を探らせない。

野生では"擬態"の一種とされ、視覚を惑わせる技となっている

 

 

ツバサ「私のゾーンの動きも、アイソレーションを利用しているのよ」

 

曜「ツバサさんも…!?」

 

フィレア「ツバサの動きはちょっと読みずらいとは思っていたけど、そういうことか」

 

ツバサが"ゾーン"で相手を躱すシーンは何度も見てきた。

確かに、ツバサの動きには緩急がある。高速で迫ってきたかと思いきや、次の瞬間にはタイミングを崩されるほどのスロースピードになっていたりする。

ボールを取れそうなのに取れないというじれったさ。日本、ツバサと戦った外国チームのメンバーには記憶に新しいものだった

 

 

ツバサ「だけど、和葉のは異常」

 

 

異常過ぎる精度により、ボールが幻覚となり、魔王らはその幻覚を奪おうと必死になっている。必殺技など関係なしに。和葉はアイソレーションを普通のプレーとして、女神と魔王を圧倒しているのだ

 

 

ダイヤ「幻覚、分身などの必殺技はたくさん見てきましたが…それも和葉さんにとっては普通の動き」

 

フィレア「…私たちもキャプテンの"勝つためのサッカー"は、ほとんど見たことがない」

 

果南「ねぇ、さっきから言う"勝つためのサッカー"って何?和葉の本気ってなんなの?」

 

フィレア「……」

 

勝負をするにおいて、必ず意識するものは"勝ち"という結果である。

特にFFIのような代表としての、勝ちに大きな注目が寄せられる場においてそれは必須。

勝つためには辛いこと、厳しいことを乗り越えなければいけない。それは誰もが理解し、覚悟している事だ。

 

しかし、三浦和葉という少女は少し違った

 

 

フィレア「キャプテンがサッカーをするのは楽しむため。楽しめないのならば、その勝利には価値はないと思っている」

 

果南「楽しむ…」

 

フィレア「今のサッカーに楽しみの欠片さえない…キャプテンが最も嫌うサッカーだね」

 

"楽しむために勝つサッカー"と"勝つためだけのサッカー"は違う。

勝つためだけならば、手段などどうでもいい。仲間とも必ず協力する必要もない、ただただ強い力で圧倒すればいいだけ。

そんなサッカーは誰も良くは思わない、その感情が和葉は人一倍に強いのだ。

 

試合中に和葉が本気を出すと言っても、個人技よりも仲間との連携や指示・コントロールの面での本気。1人で無双しても何も楽しくないと考える。

 

 

逆に言うと

 

 

 

 

和葉「早く取ってみてよ。神様さ」

 

 

 

 

その気になれば無双できるということ

 

 

 

 

果南「日本対イタリアで…和葉が最後に見せた個人技の本気。あれが和葉の"勝つためだけのサッカー"?」

 

フィレア「そう。あのサッカーがキャプテンが最も嫌うサッカー。あの時は負けそうだったし、監督の指示だったからしょうがなくだったけど、」

 

 

 

今の和葉に楽しいという感情はない

 

 

魔王「我らが2人でも…取れない??」

 

フラエル「なんなんだ、この人間」

 

サッカーを儀式とほざき、ただただねじ伏せようとしてくるダークエンジェル。

仲間たちは苦しい思いをし、それでも花丸と善子を助けようと必死に走る。

その光景は正しく勝つためだけのサッカー。

和葉は一刻も早くこの試合を終わらせたかった。楽しくなく、怒りさえ込み上げるこの時間を

 

 

和葉「だいぶ引きつけたね」

 

フラエル「何!?」

 

 

鞠莉「…最初からこれが狙いだったのね」

 

穂乃果「作戦…そういうこと!!」

 

最初。和葉と魔王らが1対2を始めたのはダークエンジェルコート。

しかし、和葉のボールが取れないまま気づくと場所は変わり――――――

 

 

 

和葉「今更気づいても遅いけどね」

 

 

 

――――――人間チームのコート内。数十メートルは動いたことになる

 

 

和葉「ルビィ!!」パス

 

フラエル「ロングパス!?」

 

この作戦には大きな隙が生じる。

和葉は魔王と女神をできるだけ自分たちのコートまで引きつける必要があった

 

 

ルビィ「来た…エドガーさん!!」

 

エドガー「いつでも来い!!」

 

ルビィがボールを受け取ったのはダークエンジェルコート。近くには邪魔する相手もいない。これなら全力で―――――撃てる

 

 

 

ルビィ「はああぁぁぁぁぁっっ!!!!」バッ!

 

「「「!!!!」」」

 

ルビィの上空に巨大なオーラが出現する。

日本の切り札にして、世界最強レベルのシュート

 

 

ルビィ「ふっっ!!」

 

――――――両足で抱え込みながら落とし

 

 

ルビィ「でりゃっ!!」

 

――――――左足で更に回転をかける

 

 

 

理亞「……!!」

 

理亞は近くで見て思う。

自分がこの領域にいくのは、まだまだ先の話になるのだと。自分も同じ技を習得しようとしているから分かる。伝わってくる。

 

巨大なオーラなのにも関わらず、脆く崩れやすいシャボン玉のような繊細。

寸分の狂いも許さない力加減とタイミング。

それらを簡単にこなしてしまうルビィ。

 

そして―――――――――

 

 

 

 

ルビィ「今!!!!」

 

ルビィが誰かに合図を送った。

よく見ると後ろで誰かが構えてい――――――構えている???

 

 

エドガー「喰らうがいい!我らが聖剣!!」バッ

 

 

手で地を払い、髪を揺らし、"ラストリゾート"のオーラへと飛んだのはエドガー。

それを見た者は皆、撃つ前にして衝撃に包まれた。

 

撃つのか、撃ってしまうのか。

その2つの技を合体させてしまうのか

 

 

 

 

地を砕き斬り、破壊する

 

 

 

 

 

ルビィ、エドガー「【ラスト・エクスカリバー】!!!!」

 

 

ギシャアァァァァァァァン!!!!!!

 

 

 

人間チーム「「「!!!!??」」」

 

ダークエンジェル「「「!!???」」」

 

 

月「【ラストリゾート】と【エクスカリバー】の合体技!?」

 

英玲奈「あれが和葉の言っていた作戦!!」

 

「ラストリゾート」、「エクスカリバー」

どちらも単体の威力が次元を超えているシュート。その2つが1つになった。

オーラ、衝撃波、パワー。全てが止まることを知らなかった

 

 

アビゴール「止めら…うわぁっっ!?」

 

ベヒーモス「ぐあぁっ!?」

 

アスタロス「くっ…【ジ・エンドV…う、嘘だろ止まらな――――――

 

 

 

――――――バシュウゥゥゥン!!!!

 

ピピーッ!!

"力で圧倒する"を象徴するかのような進撃。

相手のDF、GKは何も出来ず。

ボールはゴールへと叩き込まれた

 

 

穂乃果「やったあ!!同点だ!!」

 

梨子「す、すごいシュートだった…」

 

絵里(どちらのシュートも簡単に扱えるシュートじゃない…それを合体させるなんて…)

 

 

ここで前半終了の笛がなった。

人間チームは必死の守備のおかげで失点1、同点で終えることができた

 

 

 

 

― 人間チームベンチ ー

 

 

和葉「いや〜無理難題を普通に成功させるあたり、流石としか言えないなぁ」

 

エドガー「クイーンからのお褒めの言葉、光栄です」

 

ルビィ「和葉さんが隙を作ってくれたおかげです」

 

点数的には食らいついている人間チームだが、これで隙のある「ラスト・エクスカリバー」は使えなくなったため、更に厳しい戦いになる。

後半は新たな作戦・戦術で得点。そして失点を防がなくてはならない

 

 

海未「ルビィとエドガーと聖良は交代した方が…ダメージも大きいはずです」

 

エドガー「そうさせてもらう」

 

ルビィ「うん」

 

聖良「はい、お願いします」

 

「アイスエイジ」の発動で体力を大幅に削られた聖良に代わってことり。

「ATP」で疲労がかなり溜まっているルビィに代わってクラリア。

「ラストリゾート」というオーラの爆弾を蹴り、前線で走り回っていたエドガーに代わってフィレアが入ることになった

 

 

和葉「うーん。私も下がるかな」

 

「「「!!??」」」

 

フィレア「キャプテン、どこか怪我を!?」

 

和葉「いや、怪我はないけど私は交代するべきだよ」

 

千歌「和葉さん理由を説明…」

 

和葉(鞠莉)

 

鞠莉「!」

 

和葉は鞠莉にアイコンタクトで合図する。

和葉の考えを察した鞠莉はすかさずフォローに入る

 

 

鞠莉「千歌、フィレア。和葉は交代よ」

 

千歌「どうして…」

 

鞠莉「和葉には考えがあるのよ。信じて」

 

千歌「…はい」

 

和葉「じゃ、海未ちゃんよろしく〜」

 

海未「わかりました」

 

和葉はそのまま休憩に入ろうとする途中で、梨子の横を通りながら口を開いた

 

 

和葉「ここからは、君が仕切るんだ。梨子ちゃん」

 

梨子「…!」

 

 

 

その頃、ダークエンジェルベンチでは魔王が怒りをむき出しにしていた

 

 

魔王「くそっ!!無敵の力を手に入れたはず…それなのに失点を!!」

 

人間たちの前半最後のシュート、自分たちの「シャドウ・レイ」以上の力を感じた。

だが、だとしても無敵の魔王が1点しか取れないのは理解し難い内容だった

 

 

穂乃果「1人1人の力が強いから勝つんじゃない。全員の力と想いがひとつになるから勝つ…だからサッカーは面白いんだよ」

 

フラエル「面白い?我らのサッカーに面白いさなど必要ない。憎い相手を叩き潰す手段でしかないのだ」

 

フラエルの目の淀みが濃くなっている。

魔王が強引に与えた力が増幅し、フラエルを蝕んでいるのだ

 

 

フラエル「お前達をぶっ潰す…魂も残らないほどになぁ…!!」

 

 

日本&海外チーム 1-1 ダークエンジェル

 





アイソレーション
作中で説明した通りです。相手が奪おうとしているボールはあくまでも幻覚。そんなの取れっこないですよね。簡単に言うと「究極のタイミングずらし」でしょうか。日本代表では和葉ほどではありませんが、ツバサさんやにこちゃんなどが使っているようです

ラスト・エクスカリバー
ついに出してしまったチート技。「ラストリゾート」を「エクスカリバー」で蹴り放つという…止められるわけ



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第3章 105話 「ダークエンジェル戦 "Wake up,Challenger"」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
再開したからにはガンガン投稿していきます。

天空&魔界の民編は人外との勝負なので、情報量がたくさんでゴチャゴチャになっているとは思いますが…お付き合いただけたら嬉しいです。

今後のモチベなどは感想によって増えますので是非よろしくお願いします



 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

フラエルを洗脳した魔王が"ダークエンジェル"として、最後の試合が始まった。神の圧倒的な力に千歌たちは防戦一方を強いられるも、和葉の囮、そしてルビィとエドガーの合体技「ラスト・エクスカリバー」で同点とした。間もなく後半戦が始まる

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 日本&海外チーム ー

 

FW…………クラリア、鹿角理亞

 

MF……園田海未、高海千歌、セイン

 

MF…………桜内梨子、フィレア

 

DF……絢瀬絵里、小原鞠莉、南ことり

 

GK…………………高坂穂乃果

 

3-2-3-2

 

 

 

 

和葉「さて…後半は更に厳しくなるよ」

 

英玲奈「和葉。先程、梨子に何を伝えていたんだ?」

 

和葉「バトンタッチ」

 

英玲奈「バトンタッチ?」

 

 

 

ピーーー!!

後半開始の笛が吹かれた。

人間チームからのボール

 

 

理亞「フィレア!」パス

 

フィレア「逆転するよ!!上がって!」

 

フィレアはイタリア代表の司令塔の1人として、ここまで勝ち進んできた。

今はその力を存分に発揮するのみ

 

 

梨子「…」

 

フィレア「梨子!2人でゲームを組み立てるよ!」

 

梨子「…!は、はい」

 

 

和葉(…ふむふむ)

 

 

梨子「【神のタクトFI】!!」

 

梨子の指揮から繰り出される必殺タクティクス。道は示され、より効率的に確実に。敵陣へと迫っていく。

 

しかし、

 

 

アラクネス「遅いわね!」バッ

 

海未「!?」

 

梨子「っっ!?」

 

簡単に破られてしまった"神のタクト"。

原因は海未の動きがあっていなかったからでは無い

 

 

梨子(私の…指揮が甘すぎたんだ…)

 

フィレア「梨子!!来るよ!!」

 

梨子「え――――――「邪魔だぁ!!」魔王

 

ボールを受け取った魔王は既に人間チーム陣内へと迫ってきていた。

パワーもそうだが、スピードも並外れている。隙を見せた梨子では対処しきれない

 

 

鞠莉「絵里、ことり!私たちで食い止めるわよ!」

 

絵里「えぇ!」

 

ことり「はい!」

 

穂乃果は言った。「全員の力と想いがひとつになるから勝つ」と。

1人では魔王を止められなくとも、力を合わせれば…

 

 

鞠莉「止まりなさい!!」バッ

 

魔王「!(あの動きは…)」

 

鞠莉はジャンプし、自分の周りに"何か"をまき始めた。よく見ると光りながら浮いている…次の瞬間には鞠莉の合図と同時に―――

 

 

鞠莉「【グラウンドスイーパーGX】!!」

 

 

―――ドガガガガガアァン!!!!

光るオーラが大爆発。

衝撃波と熱風が辺りに広がる。

巻き込まれた魔王はただでは済まないはず…

 

 

 

 

魔王「その技は見切っている」

 

鞠莉「!!」

 

爆煙から現れたのは禍々しい笑みを浮かべた魔王の姿。

シュートブロックで技を見せ過ぎた。このままでは確実に突破されるであろう

 

 

鞠莉「知ってたわ」

 

魔王「なに?」

 

魔王「!?(まだ光が消えていない!?)」

 

魔王は気づいた。

光るオーラは爆発したはずだ。

なのにも関わらず、自分の周りには未だに光が漂っている。前半ではこのような事は―――いや、これは

 

 

絵里「【スノーハレーション】」

 

 

キラキラキラキラキラ!!!!!!

 

 

魔王「ぐっっ!?別の必殺技!?」

 

爆煙で雪を隠し、隙を見せたところで発動する…策にハマった魔王は強すぎる光に足を止める。だが、これで止まると思ったら大間違い。強引にその場を切り抜けようとする

 

 

魔王「目くらましだけで止まると―――ガクン!!

 

魔王「なっ!?」

 

足が動かない。

まるで地面に貼り付けられたかのように。1歩も、何も出来ない

 

 

千歌「あの足元…!!」

 

魔王が踏む地面は虹色に輝く

 

ことり「【ワンダーゾーン】あなたには止まってもらいます」

 

"絶対支配領域"に入るもの、蜘蛛の巣にかかった蝶と同じ

 

 

魔王「最初からこのためにっっ!!」

 

ことり「場所をチェンジ」

 

魔王「!?」

 

ことりの合図と同時に魔王との位置が入れ替わる。それによりボールはことりの元へと渡った

 

 

絵里「ナイスよことり!」

 

ことり「千歌ちゃん!」パス

 

 

千歌「はい!」

 

ことりのロングパスで一気にカウンターを仕掛ける。魔王は「ワンダーゾーン」で抑えられている。畳み掛けるのは今しか―――

 

 

フラエル「残念だったな」

 

千歌、ことり「!!」

 

「「「!!!!??」」」

 

 

フィレア「しまった…読まれてた!?」

 

ロングパスをフラエルがカット。

もともと天空の使徒戦でも冷静な判断と視野を持っていた女神

 

 

フラエル「言っただろう、叩き潰すと」スッ

 

千歌「もう一度取る!!」バッ

 

鞠莉「マリーも行くわよ!」バッ

 

フィレア「2人とも近づいちゃダメだ!!!」

 

 

 

 

フラエル「【ヘブンズタイム】」パチン

 

 

千歌「え…消えたっ―――て!?!?」

 

鞠莉「―――風が!?!?」

 

千歌、鞠莉「うわぁっっ!?!?」

 

女神が"いたはず"の場所から強風が発生。千歌と鞠莉は木の葉のように吹き飛ばされる

 

 

クラリア「なんだ…あれは!?」

 

理亞「あいつの必殺技よ。瞬間移動からの突風…発動されたら何も出来ない!!」

 

近づくと吹き飛ばされる。

それによりフィレアたちは容易にはディフェンスで近づけなくなっていた。

しかし、それは女神にとって好都合

 

 

フラエル「来ないのか…ならば消してやる」グワーッ!!

 

フラエル「【ヘブンドライブ】!!!!」

 

蹴られたボールは高く上がり、

 

 

 

 

 

次の瞬間

 

 

 

 

 

ドオオォォォォォン!!!!!!!!

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

 

ツバサ「またあのシュート…」

 

晴夏「穂乃果さん!!!!」

 

 

穂乃果は迫り来る神の一撃に向かって飛び出した。

腕をクロスし、赤い灼熱の手で迎え撃つ

 

 

穂乃果「【ゴットハンドX】!!!」ドオン!

 

穂乃果「ぐぬぬぬぬぬぬっっ!!!!!!」

 

 

耐える。踏ん張る。

しかし、赤いオーラは無情にも砕け散る

 

 

―――バリイィィィィィン!!!!

 

穂乃果「ぐあっっ!?」

 

 

ピピーッ!!!!

 

 

フラエル「ふん、口ほどにもないな」

 

 

千歌「穂乃果さんの"ゴットハンドX"が…あんな簡単に…」

 

海未「フラエルのシュート、あれは今の穂乃果や果南では…」

 

 

 

魔王、そして堕ちた女神の怒りを買ったのが運の尽きか。

その後も防戦一方。

力でねじ伏せられるサッカーが続いた

 

 

フラエル「【ヘブンズタイム】」

 

セイン、海未「「うわぁっっ!?!?」」

 

 

魔王「でりゃあっ!!」ドガッ!

 

クラリア「っっ!?」

 

 

デスタ「はああっっ!!」ドガッ!

 

千歌「痛っ!!」

 

絵里「ハァハァ…このままじゃ押し切られ…」

 

アラクネス「終わりよ!!」ドガッ!

 

絵里「!!!!」

 

徐々に立てなくなるメンバー。

それでも魔界軍団の攻撃は止まない

 

 

魔王「喚け!叫べ!!恐怖しろ!!!」ドガァン!

 

穂乃果「っっ!!」バシッ

 

穂乃果は魔王のシュートをギリギリでパンチング。しかし、こぼれ球をフォローするDFは全員倒されている

 

 

フラエル「ふん」ドガァン!

 

穂乃果「まだだ!!!!」バシッ

 

魔王「しぶといやつだ」ドガァン!

 

穂乃果「こんなの…!!」バシッ

 

フラエル「…」ドガァン!

 

穂乃果「こんな…!」バシッ

 

魔王「さっさと…」ドガァン!

 

穂乃果「こん…な…」バシッ

 

 

魔王「倒れろぉぉ!!!!!!」

 

魔王「【真ダークマター】!!」ドガァン!!

 

穂乃果は立って入るものの、構える力は残っていない。

そんな穂乃果にボールは直撃

 

 

穂乃果「っっ!?!?」ドガッ!

 

 

―――バシュウゥゥゥン!!!!

 

ピピーッ!!

 

 

曜「……1-3」

 

希「こんなことって…」

 

ベンチで試合を見ていたメンバーは言葉を失っていた。

無慈悲に倒される仲間。立ち上がりたくても立てず、穂乃果が破られるところをただ見ているしかなかった

 

 

フラエル「どうやらここまでのようなだな」

 

魔王「我らに歯向かった結果がこれだ」

 

穂乃果「違う…」

 

フラエル、魔王「「!!」」

 

フラエル(まだ立つのか…)

 

穂乃果「あなたたちがやっているのは…本当のサッカーじゃない!!」

 

魔王「まだ我らの力を認めないのか…だが、そんなボロボロの体で何が出来る!!!」

 

穂乃果「くっ…」

 

 

 

曜「和葉さん、私たち交代します!!」

 

凛「このまま黙って見ているなんて出来ないにゃ!!」

 

和葉「…そうだね、でも。その前にやることがある」

 

和葉「梨子ちゃん」

 

梨子「…!」

 

和葉「いつまで周りに気を使ってるの?」

 

和葉の言葉に戸惑いを隠せない梨子。

ほかのメンバーもそうだが、和葉は続ける

 

 

和葉「私に言われないと言えないの?自分の"神のタクト"は、もう使えないって」

 

「「「!!??」」」

 

千歌「え、」

 

穂乃果「ハァハァ…みっちゃん…それってどういう、」

 

鞠莉「……」

 

梨子は俯きながら、震えながら。

和葉の言葉の続き―――

 

 

梨子「……"神のタクト"は、私がみんなを導く必殺タクティクス。でも、」

 

梨子「発動しても…意味がないんです…」

 

 

梨子は言う。

最初は日本代表のメンバー、1人1人のプレーや特徴を理解すれば、「神のタクト」は必ず役に立つと。

しかし、自分が仲間を理解する頃には仲間もそれぞれ理解し合っていた。それにより何が起きたのか

 

 

 

梨子『海未さん!そのまま―――『はい!パスですね!』

 

梨子『!?』

 

 

梨子『ダイヤさん、理亞ちゃん!2人で―――『突破!!』『フォローにも入りますわ!!』

 

梨子『え…』

 

 

 

梨子の指揮よりも、仲間たちが速く。

判断し行動するようになったのだ

 

 

 

梨子「私の指揮は…あってないようなもの…和葉さんのような判断力は持ってないし、私はフォローにまわろうと、」

 

フィレア「だからキャプテンは交代したのか…」

 

和葉「でも、今度はフィレアに任せると…」

 

梨子「……」

 

和葉「それじゃあ、日本代表 桜内梨子は死んでるよ」

 

曜「ち、ちょっと待って和葉さん…」

 

果南「梨子は何度も日本の危機を救って、チャンスを作って来たんだよ…死んでるなんてそんな、」

 

にこ「勿体無いのよ」

 

曜、果南「!!」

 

梨子「にこさん…」

 

にこ「自分の最大の長所、武器、才能を殺しているのよ?和葉は本当はもっといろいろ言いたいはずよ」

 

 

だが、その才能が日本の戦力として成り立たなくなってきていることも事実。

自信がなくなることも無理はない。それでも、

 

 

英玲奈「梨子。前にも言ったが、君は私たちとは見ている場所が違うんだ」

 

あんじゅ「あの時それに気づいてればね〜、転校引き止めてたんだけど」

 

しかし、梨子を受け入れ、その才能を開花させたのは浦の星女学院のメンバー。

結果的に浦の星が日本一になり、浦の星女学院2年生 桜内梨子として日本代表に選ばれている。これは紛れも無い事実

 

 

ツバサ「私たちよりも見る目のあるあなたが、私たちを指揮出来ないはずがないの。"見る目"…これはひとつとは限らないわ」

 

梨子「見る目…」

 

英玲奈「非力?不必要?違う。梨子の指揮はそんな簡単に折れたりはしないだろう」

 

英玲奈「だから、浦の星女学院でもサッカーを続けたんじゃないのか?」

 

梨子「!!」

 

 

そうだ。そうだった。

あの時も自分の非力を痛感し、サッカーを諦め内浦に引っ越してきた…はずなのに。

千歌と出会い、曜、花丸、ルビィ、善子、ダイヤ、鞠莉、果南。

マネージャーや北也と出会って…またサッカーを始めた。0から。

見つけてもらったし、見つけた。私の特技

 

 

千歌「梨子ちゃん」

 

梨子「…!」

 

 

梨子『私…どうしたらいいんだろう…何やっても楽しくなくて、変われなくて…』

 

千歌『梨子ちゃん…やってみない?また、サッカーを』

 

 

千歌「梨子ちゃんはあの時、またサッカーを始めて…変われたよね」

 

梨子「うん」

 

千歌「ならさ、今の自分も変われるんじゃないかな」

 

 

千歌『・・・梨子ちゃんの力になれるなら、私は嬉しい。みんなで笑顔になるのが、サッカーだもん。』

 

千歌「千歌は…みんなは、何回でも梨子ちゃんの力になるよ!」

 

 

梨子の脳裏に蘇る。

あの日、千歌に導かれて再びサッカーボールに触れた、あの時のあの瞬間を

 

 

 

 

千歌『それって、とっても素敵なことだよ!!!』

千歌「それも、とっても素敵なことだよね」

 

 

梨子「!!!!」

 

 

 

あぁ、私、バカ梨子だ

 

 

曜(あれ…なんかデジャブ)

 

 

梨子「そうだよ…指揮出来なくなったなら、出来るように変わればいいんだよね」

 

千歌「うんうん!」

 

梨子は立ち上がる。

仲間から支えられている。それを再確認できた。それだけで力が溢れ出てくるようだ。

その姿は、仲間を呼応するのには充分過ぎるもの

 

 

穂乃果「うがー!!まだまだ負けてないぞ!!」

 

鞠莉「2点差なんてマリーたちにかかればあっという間デース!!」

 

海未「ビシバシ指示してくださいね梨子。私たちはそれに応えます」

 

梨子「みんな…ありがとう」

 

 

 

 

ピーーー!!!!

 

 

理亞「まずは1点…!!」

 

クラリア「あぁ。必ず勝つ!!」

 

折れかけていた人間チームの心はお互いを支え合うことで保たれ、戦うことが出来る

 

 

メフィスト「懲りない奴らね!!」ドガッ

 

クラリア「くっ…負けるかぁ!!」ドガッ!

 

メフィスト「なっ!?(パワーが上がった!?)」

 

セイン「こっちだ!」

 

クラリア「セイン!」パス

 

セイン「私もフラエル様を助けたい!!そして先祖たちが伝えようとした魂のサッカーを…フラエル様にぶつける!!」

 

魔王「小癪な!!!!」ドガッ

 

セイン「魔王…貴様なんかに魂はやれない!!」

 

魔王「くっ…【ゴートゥー「理亞!!」パス

 

魔王「なっ!?」

 

確実に人間たちの士気が上がっている…フラエルは今すぐに止めに入ろうとする、が

 

 

フラエル(なんだ…体が反応している…あの、天空の使徒の言葉が)

 

セイン『魂のサッカーを…!!』

 

フラエル(魂の、サッカー…)

 

 

理亞「フルパワー、出し切ってやる!!!!」

 

理亞は「Awaken the power」を発動。

体力消費など考えずに全オーラを解き放つ

 

 

理亞「クラリア、合わせる。全力で撃って」ゴゴゴゴ

 

クラリア「外すなよ!行くぞ!!」

 

ガキンガキンガキンガキン!!

クラリアがボールを磨き始める。

重く、鋭く、伸びるシュート。大気を殴るかのような轟音と共に放たれる

 

 

クラリア「【ダイヤモンドレイV3】!!ドガアァン!!

 

理亞「っっっっ!!!!」

 

そのシュートに飛びつくように走り出す理亞。ATPを全開で発動していなければ、追いつくことさえ不可能なスピード。

そして触れれば弾かれそうなパワー

 

 

理亞「Awaken the――――――

 

 

両足で飛び蹴り。

岩のように硬いボールに一撃。

理亞の全てを乗せる

 

 

――――――Beast!!!!」ドガアァン!!

 

 

クラリアと理亞のチェインシュート。

強力な2つのシュートが合わさり、ダークエンジェルゴールに迫る

 

 

アスタロス「【ジ・エンドZ】」ググググ

 

 

理亞「Z!?」

 

クラリア「最終進化…だと、」

 

しかし、相手のしぶとさも負けていなかった。魔王の力が加えられているとはいえ、ここに来て必殺技を一気に最終進化へと強化させたのだ

 

 

――――――ぐしゃっ

 

 

セイン「手強いな…あと少しだったが」

 

千歌「でもシュートまで持っていける!まだまだチャンスはあるよ!」

 

お互いに声をかけ合い、次へと繋ごうとする人間チーム。それをも踏みにじろうとする魔王

 

 

梨子「…(どうしたら…みんなを導けるの?)」

 

 

そして梨子は考える。

持てる知識と感覚を張り巡らせ、今自分に出来ることは何か。

私の目は何を見ることが出来るのか

 

 

梨子(中国戦の時みたいに…気づけ…私!!!!)

 

 

これはただの試合では無い。

善子、花丸…そして仲間の運命がかかっている戦い。

自分の握るタクトが異常な程に重く感じる

 

 

魔王「邪魔だ邪魔だあぁぁ!!」

 

フィレア「やばっ!?強引に来た!!」

 

海未「フォローお願いします…!!」

 

 

梨子「……」

 

 

 

あれ?

 

 

 

理亞「取った!!!!」ズザーッ

 

魔王「フラエル」パス

 

理亞「っっ!?」

 

クラリア「フラエルがフリーだぞ!!」

 

 

 

なんだろう…

 

 

 

鞠莉「ハァハァ…止めるわよ、絵里」

 

絵里「えぇ…フォローよろしく」

 

 

 

 

チームが――――――崩れてる

 

 

梨子(単純な話なんだ…小さな違和感…正体はこれだったんだ)

 

 

梨子の目が捉えたのはチームのズレ。

本来なら起きるはずのないミス。

 

先程のクラリアと理亞のシュートからそうだった。あれだけの高威力シュートが何故決まらなかったのか…相手のGKが進化したから、それもあるが理由は他にもある。

 

理亞はクラリアのシュートに合わせると言った。確かにタイミングは合っていた。だが、寸分の誤差なく完璧だとするならば話は変わってくる

 

 

梨子(ほかのみんなのポジショニングもそうなんだ…チームによって戦術は違う。完璧に連携しているように見えても、お互いの意識のズレで隙が生まれてるんだ)

 

あの海未とフィレアが簡単に突破されるなど…絵里や鞠莉がフラエルをフリーにするなど…ありえないが、今目の前で起きていることだ。

 

 

 

 

梨子「……」

 

 

 

 

 

ゾクゾク

 

 

 

 

 

 

この時。梨子自身、信じられないような…考えたこともないような感情が生まれた。

 

もし…今のズレだらけのチーム。

私の指揮で完璧になった時――――――

 

 

梨子「どんな旋律を奏でるんだろう…」ゾクゾク

 

 

欲求のような感情が溢れだしてきた。

背中がゾワゾワする。止まってなんていられない

 

 

梨子「私がこのチームを…完璧にしたい」ゾクゾク

 

和葉(…来るかな、梨子ちゃんが自らを解放する時が)

 

 

 

梨子「…」スッ

 

千歌「…!梨子ちゃん!」

 

梨子の動きで察する千歌。

手首を曲げ、構えをとるその姿はまさに指揮者

 

 

梨子「【神のタクトFI】」ビシッ!

 

「「「!!!!!!」」」

 

梨子が再び"神のタクト"を発動した。

炎の線が伸び始め、仲間を先へと導く

 

 

梨子「海未さん、ことりさん、絵里さん、回り込んで潰してください」ビシッ!!

 

海未、ことり、絵里「「「!!」」」

 

ディフェンスで神のタクトを発動するのは経験上多くない。しかし、梨子は躊躇うことなく指示を飛ばす

 

 

絵里「へぇ…なかなか鋭い指示ね」バッ

 

ことり「が、頑張って走ります!!」バッ

 

 

梨子「鞠莉さんはポジション維持。千歌ちゃんとフィレアさんはサイド塞いで」ビシッ!!

 

 

千歌「わ、分かった…!!」

 

フィレア(すごいな…急に的確になった)

 

効果はすぐに現れる

 

 

鞠莉「取ったっっ!!」ズザーッ

 

アラクネス「!?」

 

穂乃果「鞠莉ちゃんナイス!!」

 

鞠莉(ウソ…こんな簡単に取れるの??)

 

先程まであれだけ苦戦していたのに…梨子の指揮でこんな簡単に??

 

そのまま梨子の指揮は続く。

鞠莉の足から伸びる炎は前の味方へと続いている

 

 

鞠莉「クラリア!」パス

 

ベリアル「行かせ「セイン!」パス

 

ベリアル(ダイレクト!?)

 

セイン「フィレア」パス

 

パスが繋がる。ドリブルが通る

 

 

フィレア「逃走―――迷走―――!!!!」

 

フィレア「メビウスループ!!!!」

 

 

完成しつつある

 

 

フィレア「ここまでとは…」

 

 

梨子の指揮による完成が

 

 

 

 

 

ツバサ「…梨子の指揮の精度が急激に高まったわね」

 

和葉「やっぱりね。私が睨んだとおり」

 

和葉「梨子ちゃんには資格があるんだよ」

 

曜「資格…?」

 

 

和葉「司令塔としての究極の想像力と洞察力。瞬時の判断にサッカーIQ」

 

 

 

 

 

和葉は眠っていたものを目覚めさせただけ

 

 

 

 

 

和葉「梨子ちゃんは"ゾーン"を使ってる」

 

曜「…え」

 

 

 

 

梨子「まだよ…まだまだ私の指揮は止まらない!!!!!!」

 

 

未来、梨子の指揮は旋律と呼ばれ―――"戦慄"とも呼ばれるのは、まだ先の話である

 

 

 

 

日本&海外チーム 1-3 ダークエンジェル

 

 

 





ちなみに。このお話の梨子ちゃんのセリフや地の文はAqoursの「Wake up,Challenger!!」をイメージしてるんです。歌詞を読むとゾーンのきっかけになった部分も見つかるかもです



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第3章 106話 「ダークエンジェル戦 "導きの快進撃"」

皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。

花粉がひどくなってきました




 

 

前回の、輝こうサッカーで!

梨子は自分の指揮に自信が持てなくなっていた。そんな中で点差は離れていく…そんな状況を見かねた和葉は梨子に指摘する。「日本代表 桜内梨子は死んでいる」と。

その後、梨子は日本&海外チームの僅かなプレーの差を発見。それを無くし完璧にしたいという欲求から「神のタクト」に磨きがかかる。和葉は言った。梨子はゾーンを発動していると

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

和葉「…ん?待てよ??私もしかして、ライバルのチーム強化させちゃった?」

 

「「「今更!?!?!?」」」

 

 

エドガー「…それ覚悟の上で言ってたのかと」

 

あんじゅ「和葉って意外と……天然?」

 

英玲奈「…まさか、」

 

和葉「うーん、まぁ、いっか。次戦う時も勝てばいいし、それに――――――

 

 

――――――梨子ちゃんのゾーン、かなり気になってたし」

 

 

 

 

梨子の指揮により状況は一変した

 

 

デスタ「こ、こいつら…急に動きが」

 

ベルゼブ「我々が追いつけない、だと?」

 

 

即席チームのあいだに生じていた僅かなズレ。それを梨子は自分の導きにより完璧に埋めてきていた。急激な変化にダークエンジェル、そしてメンバーでさえ驚きを隠せずそして

 

疑問に思う

 

 

 

先程まで自分の力不足を痛感していた梨子が何故、隙を指摘し埋められるのか。

言っていることとやっていることが真逆ではないか。

答えは和葉が教えてくれた

 

 

和葉『梨子ちゃんは"ゾーン"を使ってる』

 

 

梨子がゾーンを使っている。

その答えにより急激な変化に辻褄が合う。

だが何故急に?和葉は何故すべてを分かっていたように語るのか。

その答えは生物の本能として単純

 

 

和葉「きっかけが欲しかったんだ」

 

 

梨子(頭に―――情報が波のように流れ込んでくる―――)

 

 

和葉は見抜いていた。

梨子にゾーンの力が眠っていることを。

そして、梨子には司令塔としての才能はあるが、自身の力不足を恨み、そして和葉もまた、この試合に勝つためにも梨子の力不足には頭を抱えていた。

 

ならばその力不足、どうすれば短期間で埋められるのか。答えは簡単。

眠る力を解き放つことによりそれを可能にする。

そして状況が功を奏した。

勝ち負けの次元を超えた、自分らの運命を掛けた試合。その中で人間は命の危機回避のために自分の限界以上の力を出そうとする。

 

 

 

"命の危険を感じ、本能的にゾーンを発動させることを狙った"

 

 

 

クラリア「抜けた!!!!」バッ

 

 

曜「クラリアさんが最終ラインを突破したよ!」

 

にこ「シュート、撃てる!!」

 

 

だが、先程クラリアと理亞のシュートが止められたことが頭をよぎる。

それ以上の強力なシュートを放たなければいけないのだが、この状況でどう動くか

 

 

梨子「なら―――こうよ」ビシッ!ビシッ!

 

クラリア、鞠莉、セイン「「「!!!」」」

 

梨子の指揮が3人に伸びる。

三本の線は複雑に絡み合い、ゴールまで真っ直ぐに示されていた

 

 

鞠莉「なるほどね…OK!!クラリア、セイン、やるわよ!!」

 

クラリア、セイン「「あぁ!!」」

 

複雑な指揮だが、3人にはそのビジョンがはっきりと見えた。

自分らはそれに従うだけ

 

 

鞠莉「でりゃっ!!」ドガッ!

 

クラリア「っっ!!」ドガッ!

 

セイン「はああっっ!!」ドガッ!

 

3人はそれぞれのオーラを混ぜ合わせ、順に一撃を叩き込んでいく。

オーラの込められたボールは輝きを放ち、まるで大剣のようにゴールに刃を向けた。

 

 

一撃×3。そしてもう一度3人でラスト一撃

 

 

 

クラリア、鞠莉、セイン「「【ペルセウスオーブ】!!」」ドガアァン!!

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

魔王「なっ…合体技!?」

 

フラエル「いつの間にっっ!!」

 

 

アスタロス「【ジ・エンドZ】!!」ググググ

 

アスタロスは怯むことなく悪魔の力で空間ごとボールを捻じ曲げる。

何段階も強化された力で圧を加えるも――――――

 

 

アスタロス「ぐっっ…!?お、重い!!?」

 

アスタロス「うわあっっ!?」

 

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

 

ピピーッ!!

 

 

蒼に燃える大剣はダークエンジェルゴールに突き刺さる。

梨子の指揮により洗礼された新必殺技は超強力。人間たちの希望のゴールとなった

 

 

千歌「やったあ!!ゴールだ!!」

 

海未「素晴らしいシュートと指揮、でした…これがゾーンを発動した梨子の力ですか」

 

 

梨子のゾーンは少し特殊。

千歌や理亞、ツバサやフィレアのように身体能力を爆発的に上げる力とはまた別。

 

視野、思考能力、想像力を極限まで引き上げる力である

 

 

ツバサ「体を動かすスポーツだけにゾーンが存在するとは限らないわ」

 

月「将棋や演奏、製作…集中力を要するものにもゾーンは存在するよね」

 

和葉「梨子ちゃんのゾーンはそれに限りなく近い。身体能力を上げるゾーンではなく、技術を高めるゾーン。梨子ちゃんなら持っていても不思議じゃないさ」

 

 

 

梨子「ハァハァ…ハァハァ…」

 

梨子(目に入るものが…世界が、まったく違って見える…頭が、ガンガンする…)

 

理亞「梨子。ゾーンは体にすごい負荷をかける」

 

梨子「ハァハァ…理亞、ちゃん」

 

理亞「すぐに勝負をつけた方がいい」

 

梨子「分かった、やれるだけのことをやるわ」

 

 

梨子の体力、そして試合時間も限られている。そのことはメンバー全員が理解していたこと

 

 

穂乃果「よーし!!逆転するよ!!!」

 

「「「おーー!!!!」」」

 

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

魔王「……小癪な…人間如きが!!!!」

 

魔王「必殺タクティクス【ブラックサンダー】!!」

 

魔王が上空から黒に染まった落雷を放つ。

魔界軍団との戦いで経験し、回避出来るメンバーもいるが、初見のため回避は厳しいメンバーも少なくない

 

 

にこ「…!!あのタクティクスはヤバイわよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

梨子「【神のタクトFI】」

 

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

魔王「またそれか…!!!!」

 

 

 

 

 

梨子「私たちは前を向くだけでいいの」

 

 

 

神速の速さで伸びる炎の線。

フィールドメンバー、一人ひとりに指示が供給され、その効果は絶大だった

 

 

ことり「…指揮に従えば雷に当たらない!!」

 

フィレア「これなら"ブラックサンダー"も怖くないね」

 

"ブラックサンダー"にとって梨子の指揮は最悪の相性だったのである

 

 

海未「隙だらけですよ!!」バッ

 

魔王「くっ…フラエル、"ヘブンズタイム"を―――「遅いっっ!!」ビュン!ビュン!

 

 

海未「【スピニングフェンス】!!」

 

分身し、大量の竜巻を発生させて魔王を飲み込む。さすがの魔王も暴風には耐えきれず、ボールは海未に渡った

 

 

フラエル「この…【ヘブンズ「【風神の―――「なっ!?!?」

 

――――――舞】!!!!」

 

 

果南「よーしっっ!海未の2人抜き!!」

 

にこ「魔王だか女神だか知らないけど、海未は武風神なのよ!!相手が悪かったわね!!」

 

 

梨子「海未さん、そのまま千歌ちゃんと畳み掛けてください」ビシッ!ビシッ!

 

海未「はい!千歌!」パス

 

千歌「絶対に…絶対にやってやるんだ…」

 

梨子と海未の瞬時の判断によりダークエンジェルチームはタイミングが1歩遅れている。

梨子の指示通りカウンターが最適であろう。そして、

 

 

アビゴール、ベヒーモス「「うぉぉぉ!!」」

 

 

相手は―――冷静さを失っている

 

 

千歌「……」

 

チカ「【Braveheart】」

 

アビゴール(しまっ、た――――――

ベヒーモス(無闇に突っ込んだら―――――

 

 

チカ「【ストームゾーン】!!!!」ゴオォォッ!

 

アビゴール、ベヒーモス「「うわあっっ!?」」

 

闇の力を発動時にのみ使うことの出来る技「ストームゾーン」。闇のオーラを嵐のように解き放つことにより威力を強力なものにしているわけだが――――――

 

 

フラエル「何度もやらせるか」バッ

魔王「叩き潰してやる」バッ

 

チカ「!!!」

 

魔王と女神はあえて強引に奪いに来た。

自分らは人間よりも圧倒的なのだ、ということを見せしめるため。そして、怒りに身を任せて千歌を潰すため。

 

 

 

だがそれも

 

 

 

チカ「でりゃあああっっ!!!!」ゴオォォッ!!

 

 

魔王、フラエル「「!?」」

 

魔王(暴風を上空まで伸ばした!?)

 

 

 

梨子の指揮の通りである

 

 

 

 

チカ「お願いします!!絵里さん!!」

 

絵里「えぇ。最高のタイミングよ」

 

千歌は「ストームゾーン」のオーラをフルパワーで放出し、まるで竜巻のように縦に長く伸ばしたのである。

その上空では絵里が待つ。

ボールを千歌の暴風オーラごと蹴り込むために

 

 

絵里「はあああああっっっっ!!!!」

 

闇のオーラと光のオーラ。

2種類の猛獣が混ざり合うような暴れ狂う力。本来ならば蹴ることは不可能だったであろう、しかし、今は梨子の指揮により高度なシュートも発動可能

 

 

絵里「吹き暴れなさい!!!!」

 

絵里「【ホワイトストームハリケーン】!!」ドガアァン!!

 

 

ルビィ「また新必殺技…!!」

 

希「千歌ちゃんと絵里ちの必殺技を合体させたんや…!」

 

巨大な竜巻はゴールに迫る。

これが決まれば再び同点。その事実が考えるよりも先にデスタの口を開かせた

 

 

デスタ「止めろ!!!!アスタロス!!」

 

アスタロス「【ジ・エンドZ】!!」ググググ

 

この試合、最大のパワーで。本気でボールを潰しにいくアスタロス。

しかし、前に経験したあの感覚が、再び襲いかかることとなった

 

 

アスタロス「なっ…!?力が…まさか!!!」

 

 

チカ「言い忘れてたけど」

 

チカ「力を奪う【エクリプス・サン】のオーラも乗せてるから」

 

 

アスタロス「こ…こんな……こん、な……!!!!」

 

アスタロス「ぐあああっっ!?!?」

 

 

――――――バシュウゥゥゥゥン!!!!

 

ピピーッ!!!!

 

 

英玲奈「同点…いいぞ、このままラストだ!!」

 

にこ「気を引き締めなさいよ!!!!」

 

ルビィ「……」

 

和葉「…ふむ」

 

 

前半とは真逆。

完全に人間チームの勢いに飲まれたダークエンジェルチーム。強力な必殺タクティクスも、「ヘブンズタイム」も、シュートも、発動できなければ全くもって無意味である。

 

例え、発動したとしても

 

 

魔王、フラエル「「【シャドウ・レイ】!!」」ドガアァン!!

 

 

梨子「お願いします!!」ビシッ!

 

 

鞠莉「【グラウンドスイーパーGX】!!」ドガガガァン!

 

ことり「【ワンダフルラッシュ】」ドガアァン!

 

鞠莉、ことり「「穂乃果(ちゃん)!!」」

 

 

 

穂乃果「ゴットハンド――――――

 

 

 

 

 

―――エェェェェックス!!!!!!」

 

 

ドオォォォォオオン!!!!!!

 

 

 

鉄壁に変わったディフェンスに、逆に、捻り潰されるのみ

 

 

穂乃果「…よし、」シュゥゥゥ…

 

鞠莉「穂乃果!前よ!!」

 

穂乃果「お願い!!」パス

 

全員が全力疾走。

梨子の指揮に呼応し、ダークエンジェルチームが追いつけないスピードでカウンター。

勢いでもっと先へ、もっと遠くへと。

走る―――走る走る走る走る

 

 

セイン「理亞っっ!!」パス

 

理亞「!」

 

理亞がボールを受け取ったのは最終ラインを越えた先。すなわち、絶好のシュートチャンス

 

 

ルビィ「………行ける」

 

 

理亞「フィレア!!海未!!」

 

フィレア、海未「「!!」」

 

理亞はスピードに特化した2人を呼んだ。

それぞれがスピードについてこれるならば、シュートの威力は何倍にも上げることが出来るはず

 

 

理亞「っっ!!」ドガッ

 

フィレア「でりゃっ!!」ドガッ

 

海未「はああっっ!!」ドガッ

 

理亞「まだまだ!!」ドガッ

 

フィレア「行くよ!!」ドガッ

 

海未「はい!!」ドガッ

 

理亞、フィレア、海未「「「はあああああっっ!!!!」」」ドガッドガッドガッドガッ!

 

 

数え切れないほどの連撃。

マシンガンのように撃ち込まれた蹴りはボールに確実にオーラとして溜め込まれ、高速かつ、強力なシュートへと変化を遂げる

 

 

理亞、フィレア、海未「「「【ソードオブダルタニアン】!!」」」

 

 

ラスト―――3人で同時に放つ

 

 

「「「いけえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」

 

理亞、フィレア、海未「「「はあああああっっ!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュゥゥゥゥン―――………

 

 

 

 

 

 

 

 

理亞「ぇ、」

 

フィレア「!!」

 

海未「なっ、」

 

 

3人が蹴りこもうとした瞬間だった

 

 

和葉「…やばいね」

 

ルビィ「……」

 

 

それまでこの快進撃を生み出していた、チームを導いていた―――炎の導きが―――

 

 

 

――――――消えた

 

 

 

フラエル「【ヘブンズタイム】」パチン

 

理亞「やば――――――

 

 

その一瞬を、女神は見逃さなかった

 

 

理亞、フィレア、海未「「「うわあっっ!?」」」

 

「「「!!!!!!??」」」

 

 

炎が消えた原因。

それは、余りにも残酷なタイミングでやってきた

 

 

梨子「ハァー…ハァー…」ガクガク

 

 

果南「梨子がもう限界っっ!!!!」

 

希「あかん!みんな気をつけて!!!」

 

梨子の体力が限界を迎え、ゾーンが強制的に解除されていた。それと同時に「神のタクト」も。それにより人間チームは動揺、一瞬の硬直で再び隙を作ってしまった

 

 

魔王「限界のようだな人間…!!」

 

フラエル「我々は無限の体力だが、哀れだな。足掻いた結果が敗北か」

 

 

理亞「と、止めないと…」

 

フィレア「やばい…間に合わ、ない」

 

決めたと思った瞬間の一変。

先程まで限界以上の力を出していたメンバーは反応に遅れ、魔王と女神のスピードについていけていなかった

 

 

魔王「これでトドメを刺してやる」

 

フラエル「完全に消え去ってしまうがいい」

 

穂乃果「ハァハァ…くっ…」

 

魔王がオーラを込め始めた。

シュートブロックしてくれる仲間は間に合わない。自分1人で、あの化け物シュートを止めなければならない

 

 

魔王「【シャドウ――――――

 

 

このまま、終わるわけには……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 花 丸 ち ゃ ん !!!!!!!!!!」

 

 

 

 

フラエル「!!!!!!!!」

 

 

 

 

『やりたいんでしょ?サッカー』『花丸ちゃんと一緒にやりたい!』『認めてあげてください』『よく出来てる!』『またずらって言ってるわよ』『そんなに買うの!?』『花丸ちゃんなら出来るよ!!』『やったね花丸ちゃん』『頑張ったんじゃない?』『悔しいよ』『お疲れ様』『花丸にしかできないんだ』『フォローするわよ!』『丸にもできる』『勝てるよ』『まだまだいけるずら!』『奮い立つことはいいことずら』『今日からよろしくね』『これが最後』『死守するわよ』『堕天使は捨てたの』『善子ちゃん…』『花丸ちゃん見てて!』『美味しいずら!』『ねぇ!花丸ちゃん』『花丸ちゃん』『花丸ちゃん』『花丸ちゃん』『花丸ちゃん』

 

 

『『『『花丸ちゃん!!!!!!』』』』

 

 

 

 

 

フラエル「ぐあああっっ!?!?」バキィィィィン!!

 

 

穂乃果「!?」

 

「「「!?!?!?」」」

 

魔王「…!!!!」

 

 

女神の咆哮とともに、地面が揺れ、衝撃波が放たれた

 

 

穂乃果「……地面に、撃った」

 

 

信じられない光景だった。耳を刺すような、花丸を呼ぶ声と同時だった。そして――――――

 

 

 

 

 

 

 

フラエル「……ぐぁっ!?……ハァハァ……もう、やめて…………

 

 

 

 

 

 

 

………ずら」

 

 

 

 

 

聞きたかった。その言葉

 

 

 

 

日本&海外チーム 3-3 ダークエンジェル

 

 

 




ペルセウスオーブ
アレオリで灰崎&クラリア&一之瀬が発動した必殺シュートです。3人で一撃一撃強力な蹴りを叩き込み、まるで武神が切り込むかのようなシュートを放ちます(クラリア&鞠莉&セイン)

ホワイトストームハリケーン
オリジナル技です。チカちゃんの「ストームゾーン」の暴れるオーラを絵里ちゃんの「ホワイトハリケーン」に加えて放つ技となっています。チカちゃんが「ストームゾーン」を竜巻のように空に伸ばしたらあとは「ホワイトハリケーン」のモーションで放つのみです。千歌ちゃん曰く、「エクリプス・サン」のオーラも加えているとの事なので『GKの力を奪う暴れ狂う暴風竜巻』となります。意味がわかりません

ソードオブダルタニアン
アレオリのシュート技で、ロシア代表ルース、マリク、中国代表リ・ハオが放っています。輝こうでは不発になってしまいましたが、強力な乱撃となっています(理亞&フィレア&海未)





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第3章 107話 「ダークエンジェル戦 "内なる想い"」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
今回でダークエンジェル戦は決着です




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

命の危険を感じることにより、眠っていたゾーンを本能的に発動することに成功した梨子。その力は強力で一瞬にして不利だった戦況を一変してしまった。国の壁を越えた必殺技ラッシュで同点にし、あと一息のところまで来た時だった。梨子の体力が底を尽き、ゾーンが途切れピンチを招く。しかし、花丸を呼ぶ声に反応したフラエルはシュートを地面に叩きつけ、苦しみながら現れたのは…

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

覚悟していたことだった

 

 

 

花陽『花丸ちゃん、本当にいいの?』

 

花丸『ずら!マルもマネージャーとして頑張るよ』

 

 

みんなとサッカー出来る時間は限られている、ことを。

 

マルはもともと運動は苦手。

ルビィちゃんに誘われるまではサッカーは…正直考えたこともなかった。

でも、いざやってみると世界は変わった。

成長していく自分、かけがえのない仲間。楽しかった、マルにはもったいないぐらい、楽しかった。

 

 

でも、そんな楽しい日々の中でも感じていたみんなとの壁

 

 

曜『善子ちゃん、サッカーやってた?』

 

善子『えぇ。やってたわ』

 

花丸『…!!』

 

 

千歌『ルビィちゃんのポジションはどこですか!!』

 

ルビィ『フォワードです!!!』

 

花丸『……』

 

 

一緒に、何も無い場所から始めたと思っていた同級生は…マルには想像も出来ない場所にいた。だからって、嫌いになるわけでもなく、嫉妬するわけでもなく…少しでも追いつけるように努力した。

 

 

 

 

 

 

その時までは

 

 

 

 

 

 

『以上です。この18名が今大会の日本代表です』

 

 

花丸『…』

 

潔く諦めていた。

テレビで見る必要も無いと思っていた。でも―――なんでだろうなぁ…あの日、マルはテレビの前で呆然としていた

 

 

花丸『…何をいまさら』

 

自分の行動に不信感を抱きながらも、もう一つ。マルには気になることがあった

 

 

花丸『善子ちゃん、』

 

 

代表に選ばれなかった善子ちゃん。

善子ちゃんは野心家だから…ショックも大きい筈だ。マルはいてもたってもいられなくて、善子ちゃんの家に急いだ

 

 

花丸『……出かけた?』

 

善子母『善子、泣きながら飛び出していったのよ…バス停の方へ行ったから、多分バスでどこかへ』

 

花丸『…』

 

この状況で思い当たる場所はひとつしかなかった。マルはそのまま善子ちゃんが向かった場所へと行き先を変えた。でも、

 

 

諦めた自分に―――何が出来るのか

 

 

嫌な感情が心を覆いながらも、果南ちゃんの家へ歩を進めた

 

 

 

 

花丸『善子ちゃん』

 

善子『……』

 

ひどい顔だった。

赤く腫れ、子供のように泣きじゃくった跡がある。

虚ろな目には何も考えられない絶望の感情―――あぁ、そうか、善子ちゃんも諦めて『私ね、転校するかも』

 

 

――――――え、

 

 

 

花丸『…善子、ちゃん?』

 

善子『私は諦められないの。分かっていたけど、私は代表としてサッカーをしたい』

 

花丸『…ぇ、よ、善子…ちゃん?』

 

善子『北也さんが帝国女学院に転校してレベルの高い特訓をすれば、まだ可能性があるって言ってた。私は死んでもチャンスに食いつくわ』

 

花丸『……!……!!』

 

 

諦めて―――ない?

絶望に叩き落とされてもなお、善子ちゃんは抗おうと…這い上がろうとするのか

 

 

善子『悪いけど、しばらく会えなくなるわね』

 

花丸『………』

 

 

往生際が悪い、と思ってしまった自分が嫌いになりそうだった。

 

そして数日後、マルは自分が完全に孤立していたことに気づいた

 

 

ルビィ『ルビィは諦めてないよ』

 

花丸『………』

 

電話でルビィちゃんの容態を確かめていた時だった。

代表には選ばれたが、怪我が酷いため離脱は逃れられないと。

それと同時に言われた一言

 

 

ルビィ『何がなんでも治して、必ず世界一になる』

 

花丸『ルビィ、ちゃん…も』

 

ルビィ『その為にも、今からリハビリに『ルビィ!!!!また勝手にリハビリに行こうとしたでしょ!?!?』

ルビィ『ピギィィィィ!?!?』

 

花丸『……』

 

 

真の孤独を、マルは体感していた。

あの頃とはまた違う。図書室で1人、本の世界に入っていた時とは違う。

目的を無くし、ただその場にいるような屍と同じく、マルはただ、呆然と、別の世界へと消えてしまった仲間を遠目に見ていた。

 

そんな状態で本など、読めるはずもなかった。

 

そんな時にマルの元へと来た誘いが、日本代表のマネージャーだった。

希望するならば美奈さんが正式に採用してくれるという内容だった。

それ即ち、完全にサッカーをするチャンスを捨て、仲間を支えることを選ぶという…ある意味の覚悟だった。

 

大切な仲間を支えたい気持ちは勿論あった。でも、サッカーは諦めたくない。でも、諦める以外に道はなかった。ならば即決

 

 

美奈『あ、言い忘れてたけど、2人には日本代表マネージャーをやってもらうからね〜♪』

 

『『『ええぇぇぇぇぇぇ!!!??』』』

 

 

日本代表のサッカーを1番近い場所で見ているようで、1番遠い場所で見ていた。

仲間がどんどん進化していく中で、マルはただただただ、見ているしかなかった。

 

そして、ついにその日はやってきた

 

 

ルビィ『お待たせ。理亞ちゃん』

善子『みんな、久しぶり』

 

 

マル以外の浦の星女学院メンバーが、全員、国の代表としてサッカーをすることとなった。

 

―――最初から分かりきっていた。いつかはこうなると。人生、嫌なことでも必ず乗り越えなければいけない苦難がやってくる、それと同じだと。

 

 

 

 

 

 

 

なら

 

 

 

 

 

なら、なぜ

 

 

 

 

 

 

ルビィ「 花 丸 ち ゃ ん!!!!!!」

 

 

フィレア「ぐあああっっ!?!?!?」

 

 

 

なんで、なんで、なんでなんでなんでなんで

 

 

 

フラエル「私…ま、わ…マル…は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてでもサッカーをしている時間が―――楽しく思えてしまうのか??

 

 

 

最低だ。そして、マルも往生際が悪い

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「………ねぇ」

 

和葉「…」

 

ルビィ「この試合、公式じゃないし、1度下がった選手ももう一度出てもいいよね?」

 

「「「!!!!」」」

 

ダイヤ「ルビィ、まさか」

 

ルビィ「もう、あんな顔の花丸ちゃんは見たくない」

 

ルビィの言葉、行動にはメンバーから止めが入ることは明らかだった。

しかし、未だに、歩を進めるルビィを止める者は現れなかった。

ダイヤ、月、英玲奈、和葉…止めようとしたメンバーもそれを躊躇ってしまった

 

 

理亞「ハァハァ…ルビィ!?」

 

ルビィ「代わって。理亞ちゃん」

 

怒りに燃える炎に焼かれる。

そう気づくと声が出ない、反論出来ない

 

 

穂乃果「…果南ちゃん」

 

果南「!!」

 

穂乃果「交代お願い。ここからは前で戦うよ」

 

 

理亞は勿論、ATPをフルパワーで発動していたため、交代にはなんの異議もとなえなかった訳だが、それ以上にルビィの怒り。

あれは恐らく花丸の、だろう。

自分も天空の使徒との試合でフラエルにブチ切れたのは記憶に新しい

 

 

 

FW…………高坂穂乃果、黒澤ルビィ

 

MF……園田海未、高海千歌、黒澤ダイヤ

 

MF…………矢澤にこ、フィレア

 

DF……絢瀬絵里、小原鞠莉、南ことり

 

GK…………………松浦果南

 

3-2-3-2

 

 

ダイヤ「にこさん、先程の試合の疲労は…大丈夫なのですか?」

 

にこ「ダイヤも人のこと言えないでしょ。いくら女神様が回復させたからって、100%戻ってるわけじゃないんだから」

 

にこ「ま、今はそんなこと関係ないけどね」

 

ダイヤ「はい。その通りですわ」

 

 

 

フラエルの心が不安定になり始めた

 

 

ルビィ「…穂乃果さん」

 

穂乃果「!」

 

ルビィ「ルビィは花丸ちゃんにマンツーマンでマークします。攻撃にはほとんど参加出来ないと思います」

 

穂乃果「そうだね。これはルビィちゃんにしか出来ないことだと思う。お願いね」

 

 

フラエルがボールをフィールド外に出したので人間チームボールで試合再開。

試合時間は残り僅か。梨子の指揮が無くなった今、自分たちの力だけで残り1点を勝ち取らなければいけない

 

 

ことり「にこちゃん!」

 

にこ「よーし、全員死ぬ気で走りなさい!!」

 

にこ(頼んだわよ…ルビィ)

 

フラエルと魔王の精神が不安になっている今しかチャンスはない。

にこが入ったことによりある程度の連携精度は約束される。

 

そして、

 

 

 

フラエル「ハァ…ハァ……人間が、まだ精神を保っていたか」

 

 

 

ルビィ「ルビィね」

 

フラエル「!」

 

ルビィ「花丸ちゃんのこと、サッカー始めてからもずっと見てた」

 

フラエル「……」

 

ルビィ「やっぱり、花丸ちゃんはルビィぐらい大好きなんだなって。サッカーが」

 

 

あの日、あの時もそうだった。

図書室で本の世界に戻ろうとしたあの時。

ルビィちゃんの声が聞こえた

 

 

ルビィ「ルビィね、花丸ちゃんと一緒に世界で戦えたらなって、ずっと思ってた。一緒に頑張れたらって」

 

 

無理だよ。マルには…みんなには届かないし、それに、もう、諦めていた…から

 

 

ルビィ「不安だったんだ。花丸ちゃん、優しいから誰にも心配かけないように、1人で諦めちゃうんじゃないかって」

 

フラエル「…黙れ」

 

ルビィ「でも、諦めるなんて絶対にして欲しくない」

 

フラエル「黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!!!」

 

 

 

フィレア「ルビィ!!!ボールがフラエルに!!」

 

ルビィ「…!」

 

奪われたボールがフラエルに渡る。

心を揺さぶられている女神は今やまともでは無い。苦し紛れにルビィを威嚇する

 

 

フラエル「お前の言葉はとても不快だ!!!!心を殴られたような感覚…虫唾が走る…絶対に許さんぞ!!!!」グググググ

 

絵里「ちょっと…シュート撃つ気!?」

 

フラエル「【ヘブンドライブ】!!」

 

 

――――――ドガアァァァァァン!!!!

 

 

穂乃果「まずいよ…あのシュートは」

 

海未「ここで1点を失うのは…」

 

 

 

 

果南「大丈夫」

 

「「「!!!!!!」」」

 

ゴールに立つのは松浦果南。

神の一撃に恐れることはせず、堂々と待ち構える

 

 

果南「私が絶対に止めて前に繋ぐ。花丸と善子を救えるのは…私たちだけ!!!!」

 

果南「【デルフィナス・トリアイナ】」

 

渦巻く海中から神器を召喚。

そのまま強く握りしめ、槍に意思を送る。

それに呼応した神器は姿を変え、より巨大に、より重く成る

 

 

果南「【形状変化"アトランティス"】!!」

 

果南「でりゃあぁぁぁぁ!!!!!!」

 

神の一撃と神器がぶつかった。

実際に「ヘブンドライブ」を受けると分かる。このシュートは止められるような次元にはいないと

 

 

果南「ぐっ…!!ぐぬぬぬぬぬ…!!!!」

 

聖良「押されています…」

 

理亞「やっぱり、ヘブンドライブには」

 

果南(やばっ…このシュート…止められ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「もう、また1人で抱え込んで」ガシッ

 

 

 

果南「鞠莉!?」

 

 

 

 

ダイヤ「全くですわ。しょうがない人です」ガシッ

 

 

 

果南「ダイヤ…」

 

鞠莉「1人で止められなくても3人なら出来るわよ」

 

ダイヤ「そういう事です」

 

果南の後ろから支える鞠莉とダイヤ。

確かに頼もしいがそれでもまだパワーが足りない…そう思っていた時だった

 

 

果南「…え、な、なにこれ!?体が光ってる!?」

 

ダイヤ「この光…見覚えがあります」

 

鞠莉「そう。これは必殺タクティクス【G戦場のシンデレラ】」

 

果南、ダイヤ「「!?」」

 

イタリアの必殺タクティクス。

『G戦場のシンデレラ』

未来の自分の力を前借りする必殺技で、発動時には自強化になるが、解除後にその分の反動がくるという"諸刃の剣"に相応しい技となっている

 

 

果南「なんでイタリアの技が!?」

 

鞠莉「ふふ♪この技はね、発動者が仲間に触れれば…伝染するのよ」

 

ダイヤ「そんなことが!!」

 

鞠莉「さあ、果南!!ダイヤ!!この力でシュートを止めるわよ!!!!」

 

果南、ダイヤ「「もちろん!!」」

 

果南、鞠莉、ダイヤ「「「はあぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」

 

光に包まれた3人は劣勢だった力を逆転し、徐々に、神の一撃を押し始めていた

 

 

フラエル「ば、馬鹿な!?!?」

 

千歌「すごい…あの『ヘブンドライブ』を!!」

 

フィレア「あの3人…」

 

 

 

 

離れていても決して切れることの無い絆

 

 

 

 

 

 

果南『話しておこうと思ってね』

 

鞠莉『…え?』

 

ダイヤ『実は私も、東京の大学に行こうと思っていますの。サッカー部も強豪ですし』

 

果南『私は海外でサッカーの修行かな。あとはダイビングの資格をちゃんと取ったり』

 

鞠莉『じゃあ…』

 

果南『うん、卒業したら3人バラバラ』

 

ダイヤ『ここには誰にも残らず、簡単には会えなくなりますわね』

 

果南『一応、言っておこうと思って』

 

 

 

果南、ダイヤ、鞠莉。

3人とも分かっていた

 

 

果南「もう少しっっ…!!!!」

 

ダイヤ「鞠莉さん…疲れてるのでは!!!!」

 

鞠莉「ダイヤこそっっ!!!!」

 

 

 

 

この試合が、

 

3人で出来る最後のサッカー

 

になるのでは。と

 

 

果南とダイヤと出会い、鞠莉はたくさんのことを教わった。

世界が広いこと。友達といると、時間が経つのも忘れるほど楽しいこと。

喧嘩の仕方に、仲直りの仕方。

2人が外に連れ出さなければ3人の未来は全く違っていたであろう。

 

あの日から3人一緒なら何でも出来るって。今の気持ちがあれば大丈夫だって。

 

離れているから何だ。会えないから何だ

 

 

 

果南、鞠莉、ダイヤ「「「【デルフィナス・トリアイナ】!!!!!!」」」

 

 

 

この最強の絆はどんな力でも切れない

 

 

 

 

 

 

月「………止めたよ」

 

和葉「あのシュートを止めた」

 

 

果南、鞠莉、ダイヤ「「「………」」」シュゥゥゥ…

 

神の一撃は絆の前に沈んだ。

果南はそのまま腕に全エネルギーを込め、

 

 

果南「ルビィ!!!!!!」ブォン!

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「花丸ちゃん。諦めるなんて言わないで」

 

ルビィは花丸から目を外さない。

ボールを目で見ずにトラップし、その緑に輝く目で花丸と向き合う

 

 

フラエル「ハァー…ハァー…」

 

ルビィ「花丸ちゃん言ったよね。自分の気持ちに正直にって」

 

ルビィ「諦める優しさじゃ、誰も嬉しくなんてなれないよ。ルビィはこれからも一緒にサッカーがやりたい」

 

 

ルビィ「花丸ちゃんと」

 

フラエル、花丸「「!!!!!!!!」」

 

 

瞬間。紅い爆風がフィールドに広がった

 

 

ルビィ「【Awaken the power】だから、今助けるね」

 

フラエル「ぐあああっっ!!!!!!」

 

向かってくるフラエル。

構えるルビィ。

また一緒にサッカーやろうよと、ルビィは一言。そして――――――

 

 

 

ルビィ「――――――!!!!」ギュン!

フラエル「」

 

 

フラエルを―――抜き去った

 

 

穂乃果「ルビィちゃん!!」

 

ルビィ「穂乃果さん!」パス

 

ロングパスで穂乃果に渡る。

既にシュートの動きには入っている

 

 

穂乃果「決めるよ」

 

ことり、海未「「うん(はい)!!」」

 

穂乃果、ことり、海未「「「【グランドファイア】!!」」」

 

―――ドガアァァァァァン!!!!!!

 

 

「「「!!!!!!???」」」

 

 

月「な、何あのシュート!?!?」

 

曜「『ファイナルトルネード』を進化させた…不死のシュート『グランドファイア』だよ!!」

 

地面を抉り、焦がし、突き進む。

どこから撃っても威力が落ちることは無い「グランドファイア」

 

 

アスタロス「【ジ・エンドZ】!!」ググググ

 

不死鳥の如く燃え盛る炎は進む

 

 

アスタロス「止められ…ぐあっ!?」

 

穂乃果「よしっ!!決まっ「「まだだ!!!!」」

 

穂乃果、ことり、海未「「「!?」」」

 

魔王と女神は足掻く

 

 

魔王、フラエル「「【シャドウ・レイ】!!」」

 

 

ゴール前で「グランドファイア」を抑える。

決めれば勝利、決められなければ―――

 

 

 

――――――バキイィィィィン!!!!

 

 

穂乃果、ことり、海未「「「!!!!!!」」」

 

穂乃果(上へ…弾かれた!!)

 

最後の力で魔王と女神はシュートを上空へと蹴り上げた。これで得点ならず。勝利は―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――サンシャイントルネード!!!!!」

 

魔王「なっ!?!?」

 

フラエル「!!!!」

 

 

千歌、ダイヤ、ルビィ「「「トリプルクラッシャー!!」」」ドガアァン!

 

 

海未「千歌…ダイヤ、ルビィ!!」

 

ことり「行ける!!」

 

穂乃果「決まれぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

フラエル「」

 

 

フラエル(なんなんだ。この熱さは。これが―――人間たちが言う――――――

 

 

ドガアァァァァァン!!

 

 

フラエル「ぐあああっっ!?!?」

 

 

――――――バシュウゥゥゥゥン!!!!

 

ピピーッ!!!!

 

 

 

 

ルビィ「…」

 

 

ルビィちゃん、ありがとうずら

 

 

ルビィ「…うん」

 

 

マルもまだ、サッカー、諦めなくてもいいのかな?

 

 

ルビィ「うん。やろうよ。これから先も」

 

 

マル、頑張るよ。信じるよ。だってサッカーもみんなも―――大好き、だもん

 

 

 

 

試合終了

 

日本&海外チーム4-3で勝利

 

 

 






にこ「ルビィ!獣神化おめでとう!」

ルビィ「にこさんも新限定おめでとうございます!」

曜「ふ、2人とも何の話?」

英玲奈「ルビィは友情ブーストに砲撃型…そこに友撃をつければ強力だな」

あんじゅ「戦型の書で超砲撃型にすればSSのカウンターが通常と同威力だからかなりヤバイわよ」

ツバサ「にこさんは水属性のマナ…これは当てに行くしかないわね」

曜(全然わからないから…ツッコミでさばけない)



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第3章 108話 「最後の柱」


皆さんどうも!最近、ハーメルンでの感想が少なくなってきて寂しいなと感じるルビィちゃんキャンディーです。

今回のお話は天界&魔界編のまとめ、そして決勝トーナメントの始まりです




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

花丸は誰にも迷惑をかけないように1人で悩み、1人でサッカーを諦めていた。しかし、それは違うと言うルビィの言葉を聞き、フラエルもまた、気持ちが揺らいでいく。

そんな中で浦の星3年生の連携セーブ、音ノ木坂2年生の「グランドファイア」にラスト、「サンシャイントルネードTC」で押し込むことより人間チームは勝利を収めたのだった

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

儀式は失敗に終わった

 

 

 

 

千歌「やったあぁぁぁ!!勝ったぁぁ!!!」

 

 

魔王の力、影響力は全て失われ、消完全に滅することになる。そして、

 

 

フラエル「…体に満ちていた魔王の力が消えていく」

 

セイン「フラエル様っっ!!」

 

穂乃果「戻れたんだ…フラエルさん!」

 

魔王の囚われの身となっていた女神も元に戻り、魔王が消滅するこにより、花丸と善子の無事は約束される

 

 

フラエル「本当に、済まなかったな」

 

にこ「全くよ…でも、みんな無事で何よりね」

 

希「にこっちいいこと言うやん!」

 

絵里「さすがね。にこ」

 

フラエルは改めて考える。

自分が何故、魔王に支配されてしまったのか。それは簡単な話

 

 

フラエル「…私の中にある憎しみの心。そのせいで私は魔王に支配されてしまった」

 

フラエル「使命を全うしようとするあまり、サッカーの本当の目的を忘れてしまっていたようだ」

 

穂乃果「サッカーは楽しむもの。魂と魂のぶつかり合い!楽しい楽しくないだけでも、サッカーは大きく変わってくるよ!」

 

フラエル「…フッ、穂乃果が言うんだ。間違いないな」

 

静かに笑う女神。

そしてその姿は徐々に光に包まれていく

 

 

セイン「…お別れですね」

 

フラエル「私の役目は終わった。約束だからな、天界に戻るとするよ」

 

穂乃果「フラエルさん…」

 

フラエル「穂乃果。私も感じたよ。サッカーの楽しさを、そして、人間たちの魂の強さを」

 

千歌「また…一緒にサッカー出来ますか?」

 

フラエル「…どうだろう。分からないが、出来る気がする。それだけ言っておこう」

 

光は細かく砕け、風に乗り。

フラエルの魂は完全に花丸の体から抜けていく

 

 

フラエル「さらばだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

息苦しいマグニード山から脱出する頃には夕方となっていた。

セインたち、天空の使徒と別れを告げ、千歌たちは麓のバス停に来ていた

 

 

千歌「本当にありがとうございました。皆さん」

 

クラリア「千歌。和葉。決勝トーナメントでの活躍を期待している」

 

千歌「はい!」

 

和葉「…千歌ちゃん。私たちが次に戦えるのは決勝だよ。前にも言ったけど、日本はまだまだ強くなる。戦う時を楽しみにしてるよ」

 

鞠莉「その前に、日本はロシアと戦わなきゃね♪」

 

日本は順調に勝ち進めば準決勝でロシア代表チームと戦うことになる。

優勝候補チームなだけに、改めて気を引き締める必要がある

 

 

絵里「あなたたちが強いことは今回の試合ではっきりしたわ。でも…ロシアも手強いことは、承知しておいてね」

 

穂乃果「うん!お互いに準決勝でいい試合にしよう!」

 

絵里「えぇ!」

 

絵里と穂乃果が会話を終えた時だった。

砂利道を走る車の音。別れを告げるバスの到着。海外チームとはここで解散する

 

 

フィレア「穂乃果。またね!」

 

エドガー「また会いましょう」

 

穂乃果「うん!みんな気をつけてねー!」

 

海外チームを乗せたバスが見えなくなるまで、サニデイジャパンのメンバーは手を振り続けた。

ライバル同士だった相手がいつの間にか共に戦う友へ。夕方ということもあり、寂しさが増すこの時間。暗くなる前に戻ろうと、メンバーそれぞれ宿舎へと歩を進めるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、監督たちは―――

 

 

真恋「…美奈、これって」

 

美奈「考えたくないわね」

 

真恋「ありえないわ…絶対に」

 

美奈「でも、これしか考えられない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美奈「イタリア戦前に、イタリアに…情報を流していたメンバーがいる」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

― 翌日 ー

 

 

善子「……ん、」

 

花丸「…!善子ちゃん、目が覚めたんだね」

 

善子「ずら、まる?」

 

花丸「善子ちゃん。魔王に乗り移られて…大変だったんだよ?覚えてる?」

 

善子「……」

 

不思議な感覚だった。

まるで先程までの光景が全て夢だったかのように。目が覚めたらベットに横になっていて、共にさらわれたはずの花丸が看病している。

記憶を呼び起こすと、断片的だが昨日の出来事が次々と蘇ってきた

 

 

善子「…私、悩んでた。堕天使を捨てたこと」

 

花丸「…」

 

善子「堕天使を捨てなきゃ、みんなのところにはいけない。でも、堕天使を捨てた私を…みんなは受け入れてくれるのか」

 

花丸「善子ちゃん、」

 

善子「そんな中途半端な心だったから…魔王に憑依されたのかもね」

 

花丸「それを言うなら…マルも、」

 

善子「知ってた」

 

花丸「!!」

 

善子「花丸も1人で悩んでたんでしょ?このままサッカーを続けるのか」

 

花丸「…うん」

 

善子「今ならルビィやダイヤ、鞠莉、果南の気持ちが良くわかるわ。1人で悩むって、こんなに辛いのね」

 

花丸「…マルは、」

 

善子「ゆっくりでいいと思うわ」

 

花丸「ゆっくり…」

 

善子「いきなりじゃなくても、まだ遅くはないわ。今からでも向き合ってみたら?」

 

花丸「…ありがとう、善子ちゃん」

 

 

 

善子「ヨハネよ」

 

 

 

天空の使徒。そして魔界軍団Zとの試合から一夜明け、今日は全員体を休めることが指示された。

ボロボロで宿舎に帰ってきた時は何事!?と監督らから心配されたが、何とか事情を説明することに成功。

フラエルにもう一度回復してもらえば良かったなと考えるメンバーは少なくなかった。

 

 

美奈「…ダイヤちゃんが『ヒノカミ神楽』を」

 

ダイヤ「美奈さんはご存知なのですか?」

 

美奈「えぇ。昔、あなたのお父さんから聞いたの。黒澤の血を持つ、選ばれた者のみが発動可能な力」

 

ダイヤ「はい」

 

美奈「諦めなくて良かったわね」

 

ダイヤ「…はい!」

 

天界と魔界の民との戦いで日本の選手たちは確実に進化を遂げていた。

それも異常な程に。目まぐるしい変化を見せたメンバーもいる

 

 

真恋「不死のシュート『グランドファイア』に…梨子ちゃんがゾーンを…果南ちゃんが神器を進化させて、千歌ちゃんが新必殺技」

 

美奈「すごい収穫ね♪」

 

真恋「新必殺技のバーゲンセールよ…これは」

 

梨子「私のゾーンは…自分では発動出来ないので、ほとんど戦力にはならないと思いますが…」

 

美奈「でも、自分はここまで出来るんだって、イメージができたでしょ?」

 

梨子「は、はい…」

 

美奈「なら、特訓を続ければそこまで行けるかもしれないのよ」

 

梨子「あの指揮を…あの、世界を」

 

 

現在、サニデイジャパンは全員ミーティングルームに集合との指示が出されている。

待つ間にダイヤや梨子たちと新必殺技や能力の話をしていたのだが…

これらの力は決勝トーナメントを勝ち進むにおいて、必ずと言ってもいいレベルで戦力になる。

美奈は捨て置くはずがなかった

 

 

美奈「果南ちゃんも確実に世界に通用してきている…千歌ちゃんも。これはいい流れよ」

 

 

美奈が情報の整理をしているあいだにメンバー全員が到着。ミーティングが始められる状態となった

 

 

海未「時間内にちゃんと来れましたね。穂乃果」

 

穂乃果「もうっ…穂乃果もちゃんと時間は守るよ?」

 

海未「どうでしょうか、」

 

穂乃果「酷い!?」

 

 

美奈「全員揃ったかしら?ミーティング始めるけど、内容はみんな察していると思うわ」

 

そう言うと、美奈はテレビをつけ映像を流し始める。

どこかのチームの試合の映像、そのチームを見た瞬間。選手たちの目が変わった

 

 

海未「…これは」

 

穂乃果「アメリカ代表"ユニコーン"」

 

FFI本戦、決勝トーナメント。

サニデイジャパンの第1回戦目の相手がこのチームである。

黙々と試合を見続けると思う。やはり…強い

 

 

果南「パスワーク速いね。連携がとれてる」

 

花陽「日本と戦い方が近いように見えます…これなら、弱点も見つけやすいかも?」

 

美奈「そうね。でも簡単にはいかないわよ」

 

花陽「…え?」

 

 

月「"一之瀬 神奈(かんな)"だね」

 

 

 

ユニコーンの司令塔は日本人である。

しかし、アメリカの最強兵器として幾多の試合で勝利を収めてきた。

「フィールドの魔術師」と呼ばれる彼女、映像で見ている試合でもその存在感は計り知れない。

日本と戦い方が似ているということは、あちらも弱点を見つけやすいということ。

さらに、魔術師ならばこちらよりも大胆不敵な作戦を作ってくる可能性がある。

 

さらに

 

 

にこ「神奈は個人プレーも圧倒的よ。まぁ、アメリカ代表のほかの選手も手強いけど、あの子はずば抜けてる」

 

凛「え、にこちゃん知ってるの?」

 

にこ「知ってるも何も、アメリカ代表の過半数は知り合いよ…ちょっといろいろあってね」

 

ことり「にこちゃんは顔も広いからね」

 

にこ(………今、"顔も"って言わなかった??他にどこが広)

 

美奈「あとは地区予選、そしてグループリーグでの大量得点をたたき出している『ディラン・キース』。キャプテンで一之瀬選手にも近いレベルを持つ『マーク・クルーガー』。そしてもう1人、日本人でアメリカ代表の『アスカ・ドモン』」

 

美奈「みんなも見れば分かると思うけど、」

 

 

 

美奈「一之瀬選手やマーク選手のドリブル、ディフェンス力はにこちゃんやフィレア選手、和葉ちゃん、エドガー選手レベルよ」

 

「「「!!」」」

 

真恋「攻撃陣をどうやって抑えるかが勝利の鍵よ。初戦から厳しい戦いになりそうね、」

 

個人の力。そしてチームの力で完成されているユニコーン。

試合は数日後。既にグループリーグで篩にかけられたチームが揃っている決勝トーナメント。イタリア戦レベルの激しい攻防が繰り広げられることは目に見えていた

 

 

美奈「アメリカ戦に向けての練習は明日から。今日は休んで、体力を回復しておいてね」

 

美奈「解散!」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

1日休んだとはいえ、人外との激戦を味わった疲れは簡単には取れない。

そのため、ほとんどの選手がすぐに眠りにつき、夜がふける頃には皆完全に熟睡していた

 

 

理亞「……起きちゃった」

 

 

そんな夜中に1人。

目が覚めてしまった鹿角理亞。早い時間から寝てしまったから目覚めたのか、それとも―――

 

 

理亞「…ルビィ?」

 

姿が見当たらないルームメイト。

理亞はすぐにベッドから起き上がった

 

 

 

―――

 

 

 

一方その頃。ルビィは外にいた

 

 

ルビィ「でりゃっ!」バシッ

 

後ろ足でボールを上空に蹴り上げ、炎のオーラを纏いながら自分も飛ぶ

 

 

ルビィ「【超ファイアトルネード】」ドガアァン!

 

左足でシュートを放つ。

ここは日本代表宿舎から少し離れた森の中。

木が生い茂り、高度な練習に適している隠れ練習場所の1つとなっていた

 

 

――――――ドゴォン!!

 

そんな森に生える1本の木にシュートが直撃。鈍い音と共に木が揺れた後、太い幹の力でボールは弾き返された

 

 

ルビィ「―――!」

 

ルビィはそのボールに飛びつくように再び空へ飛んだ。今度は右足にオーラを込め、もう一度「超ファイアトルネード」を放つ

 

 

―――ドゴォン!!

 

ルビィ「【Awaken the power】!!」ギュン

 

2度弾かれたボールを、今度はATPで追う。

フル加速でボールの軌道上に飛び込み、強化された左足でシュートを放つ

 

 

ルビィ「【Awaken the Fire】!!」ドガアァン!

 

ここまで3連続でシュートを放っているルビィ。だが、手を休める…いや、足を休めることはない。今度は飛び込まずに、その場でオーラ放出に集中するため、足を踏み込む

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

手を広げながら頭上にATPのオーラと空気を集める。それを洗礼された動きで2回、捌きあげる―――そして―――

 

 

 

ルビィ「【ラストリゾート】!!」ドガアァン!!

 

 

触れば2種類のオーラの層の圧で弾き飛ばされ、衝撃波と突風、粉塵で遮るものを捻り潰す。日本代表の切り札と呼べるシュート、「ラストリゾート」

 

 

――――――ドゴオォォォォオン!!!!

 

 

ルビィ「ハァハァ……ハァハァ…」

 

狙われた木は1番の揺れを見せた

 

 

 

 

「練習場所、壊さないでよ?」

 

ルビィ「!!」

 

 

理亞「…何時に練習してるのよ」

 

ルビィ「理亞ちゃん」

 

ルビィが驚いたのも無理はない。

街灯があるとはいえ、まだ空が薄明るくなってきたほどで、まだ暗い。練習にはまだ不向きな時間である。

そんな中で外出するのは自分以外誰もいないと思っていたため、余計気を抜いていた

 

 

ルビィ「起こしちゃった?」

 

理亞「私も起きちゃったのよ」

 

ルビィ「そっか、」

 

こうして見ると数ヶ月の光景が蘇ってくる。

全国高校女子サッカー大会本戦、浦の星女学院と函館聖泉女子高等学院の試合の前夜、そして決勝前の前夜。

ルビィと理亞は今と同じように2人で会って話をしていた

 

 

理亞「相変わらず強力ね『ラストリゾート』は」

 

ルビィ「うん」

 

理亞「あんなに難しい技…よく失敗しないわね」

 

ルビィ「中学生の時に頑張ったからね」

 

理亞「…」

 

中学生、そう。中学生で。

ルビィは中学生、しかも中学1年で「ATP」そして「ラストリゾート」を完成させた。1人で。

それを最初聞かされた時は心が折れそうになったが、今はそんなことで折れるほど心は弱くない。何度も圧倒的なプレーを見てしまえば、当然慣れてしまうのも無理はない

 

 

ルビィ「でも、理亞ちゃんもすごいよ」

 

ルビィ「短期間でATPを習得して、『ラストリゾート』に近い必殺技まで扱うようになった…」

 

理亞「威力は全然違うけどね」

 

ルビィ「それでもだよ。理亞ちゃんの成長スピードは日本代表の中でもトップクラス…今はまだ実力不足でも…」

 

 

ルビィ「一瞬だけ見たでしょ?世界の頂点」

 

理亞「…」

 

 

「ゾーン×ATP」。ルビィはこれが言いたいのだろう

 

 

ルビィ「あの力は諸刃の剣だけど、圧倒出来る力だっていうことは確か。流石にルビィでもあれには勝てるかどうか分からないよ」

 

理亞「…」

 

 

変だ。

 

 

ルビィ「『ラストリゾート』習得も時間の問題かもね」

 

 

ルビィって…こんなに…自分を低く見てたっけ、

 

 

―――聞くのは今しかないと思った。

 

 

理亞「ルビィ」

 

理亞「真姫から聞いた。ラストリゾートが『最後の柱』って、どういう意味?」

 

ルビィ「…聞いたんだね」

 

先程まで暗かったからルビィの表情はよく分からなかった。

でも、聞き終わった瞬間。海の果てから光の波が溢れ出したのが分かった。

 

その光がルビィの顔を照らしてわかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ルビィはもう成長出来ないの」

 

 

 

理亞「…は?」

 

 

 

代表になってからは見ることがなくなった

 

 

 

ルビィ「『ラストリゾート』以上の必殺技は…ルビィには作れない。中学生の時点で、ルビィは限界までいっちゃったから…」

 

 

 

あの弱虫の。見るだけでも腹立つ顔に。なっていた

 

 

理亞「じゃあ、最後の柱って…」

 

ルビィ「ルビィが持てる最高の力ってことだよ。それが通用しなくなればルビィはエースストライカーとして、代表として失格」

 

ルビィ「理亞ちゃんが10番になる日も近いかもね」

 

理亞「な、によ……それ」

 

 

私はこの言葉を、ただの自虐だとしかこの時は聞き取れなかった。ルビィもそうだったのかもしれない。

 

でも、この言葉が―――

 

 

 

 

サニデイジャパンの運命を左右する言葉だと知るのは…もう少し先の話

 

 

 

「自分の限界に世界で1番早く到達してしまったストライカー」

 

 

 

 





ルビィちゃんのATPやラストリゾートは新必殺技のように第2章、第3章では演出されていましたが、よく考えてみるとルビィちゃんの必殺技は全て中学生の時に習得したもの。高校生では新必殺技が出てないんです。理由はルビィちゃんは成長出来ないから。中学生で成長しきってしまったから。これが、日本のエースストライカーの正体です。

自分の限界に世界で1番早く到達してしまったストライカー



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第3章 109話 「あの技の真実」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回から第1章、第2章の伏線であった「音ノ木坂の奇跡」やあの必殺技についてのお話が始まります。




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

魔界軍団、そしてダークエンジェルとの戦いも終わり、サニデイジャパンは決勝トーナメントに向けての日々に戻ろうとしていた。

アメリカ代表ユニコーンの司令塔「一之瀬神奈」。ルビィの「最後の柱」の真相。千歌たちの運命は刻刻と進んでいく

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

雲ひとつない快晴。

サッカー日和となった今日からアメリカ代表戦に向けての練習が開始されることになっている

 

 

 

花丸「善子ちゃん。おはようずら」

 

善子「ヨハネよ」

 

「「「!!!!」」」

 

 

果南「善子…今ヨハネって!!」

 

曜「善子ちゃんの堕天使が復活した!!」

 

梨子「よっちゃん…!」

 

善子「善子善子って…ヨハネって言ってるでしょ!!」

 

変わったことがあった。

いや、戻ったこと。善子がヨハネを再び名乗るようになったのである

 

 

ことり「ヨハネちゃん…やっぱり可愛い…」

 

凛「あれはおやつを見つけた時の目にゃ」ヒソヒソ

 

希「触らぬミナリンスキーに祟なしや」ヒソヒソ

 

ことりからの視線を感じながらも、善子…ヨハネはそのまま続ける

 

 

善子「ヨハネは魔力回復の時にのみ、姿を現すことにしたわ。我が共鳴はヨハネとは対なす存在…その時だけはもう1つの感情に任せるわ」

 

「「「???」」」

 

ダイヤ「この感覚懐かしいですが、相変わらず理解不能ですわ」

 

千歌「あっはは…」

 

ことり「ヨハネちゃんの時はその感情が共鳴発動を邪魔しちゃうからサッカーをしている時は善子ちゃんでいる。それ以外ではヨハネちゃんで過ごすことにした」

 

梨子「ダイヤさんは分からなかったんですか?」

 

ダイヤ「いや、逆に梨子さんたちは分かったのですか!?」

 

凛「ヨハネちゃんガチ勢は凄いにゃ〜」

 

一部のメンバーは善子の言葉を理解出来るようだ。理由はともかく、呪文のような言葉にも困ることはないだろう

 

 

月「さあ、そろそろ練習だよ。ヨハネは善子に戻ってね〜」

 

善子「ルビィみたいにすぐに切り替えできるように頑張るわ」

 

ルビィ「え…?ルビィが切り替え?」

 

善子「…小動物からクールルビィ。あなたサッカーしてる時は別人よ」

 

ルビィ「そ、そんなこと…ないと思うけど、」

 

「「「(いやいやいやいやいやいや)」」」

 

ルビィの無自覚に心の中でツッコミを入れたサニデイジャパン。

今日は監督が新しい練習メニューを出すらしい。そのままグラウンドに集合。アメリカ戦への特訓が今日も始まる

 

 

 

理亞「…」

 

聖良「理亞?ぼーっとして、大丈夫ですか?」

 

理亞「だ、大丈夫…」

 

聖良「ならいいのですが…」

 

理亞は未だに数時間前の出来事で頭がいっぱいだった

 

 

理亞(ルビィはこれ以上、新必殺技を作れない…そんなこと…)

 

見る限りそうには見えないルビィの練習風景。

理亞の不安は深まるばかりであった

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

美奈「はーい♪みんな揃ってるわね」

 

日本代表サニデイジャパン監督、高海美奈。

策士として名が知られている彼女。

今日は新メニューの発表。いったいどんなことをするのか…メンバーは少し緊張しながらも話を聞いた

 

 

美奈「持久走よ」

 

「「「持久走??」」」

 

果南「あの走るやつ?」

 

ダイヤ「それ以外に何があるのですか…」

 

海未「しかし、何故持久走が新メニューなのですか?」

 

もう一度、全員の体力を知っておきたい。

美奈はそう続けた。善子のように、代表になる前と後で体力に大きな変化があったメンバーがいる可能性がある。

そして、もう1つの理由

 

 

美奈「とある戦術を使うのに、体力の把握は必要不可欠なのよね」

 

英玲奈「とある戦術…?」

 

真恋「それの説明は後!先に持久走でたくさん走ってもらうわよ」

 

日本代表練習グラウンドからスタートし、10キロの道のりを走る。

この説明をされた時は流石に空気が凍りついた

 

 

穂乃果「痛たたた…腕の調子が」

 

海未「穂乃果!!サボリは許しません!!」

 

逃げられないと察した穂乃果は諦めたのか素直に受け入れる。

10キロは簡単には走りきれるような距離では無い。しかし、持久走。レギュラー争いになるかもしれないこの練習。

手を抜く、サボるという道は自然と走る前に消えていった

 

 

美奈「勝負だからね〜♪みんな頑張って!」

 

真恋「では、持久走開始!」

 

「「「!!!!!!」」」バッ

 

真恋の合図と共に一斉にスタートする。

全員サッカー選手であるため、体力は充分持っているはずだが、その中でも順位は存在する

 

 

美奈「誰が1番かしらね〜♪」

 

美奈は小さくなる背中を見送りながら言った

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

それから時間は流れ、日本代表練習グラウンドに1着の選手が走り込んできた。

誰が1番か予想はしていたが、当然といえば当然

 

 

果南「ふぅ…こんなもんかなん」

 

花陽「駅伝部ですか?」

 

 

1位:松浦果南

 

 

タイムは花陽の言う通り、高校生の駅伝部にも負けないほどのものだった。

昔からマラソンは日課だという果南。

10キロはルーティーン。この言葉は将来、松浦果南の名言として語られることになる

 

 

にこ「ゼェゼェ…果南早すぎよ」

 

果南「さすにこ」

 

にこ「果南…どこでその言葉」

 

果南「絵里がにこに言ってみてって」

 

にこ「あのロシア…」

 

 

2位:矢澤にこ

 

 

数分遅れてゴールしたのは我らが矢澤。

離されていたとはいえ、にこもとんでもない程の体力の持ち主だった。

とは言っても、にこも果南と同じ朝練のマラソンは日課なので当然といえば当然なのだが

 

 

花陽「流石2人とも…凄い体力」

 

花丸「…!誰か戻ってきたずら!」

 

果南とにこの走りに圧倒される中、3人目の体力お化けがグラウンドへと戻ってきた。

おそらく、サニデイジャパンの中で一番変わった彼女。常識を超えた努力が、結果として表れていた

 

 

善子「ハァ…ハァ…私もまだまだね」

 

 

3位:津島善子

 

 

花丸「善子ちゃん…本当に凄いずら」

 

花陽「いったい、どんな練習をしていたんだろう…」

 

 

その後も、続々とゴールしていくメンバー

 

 

海未「…あの3人にはついていけませんでしたね、」

 

聖良「私たちもまだまだのようです」

 

 

4位:園田海未、5位:鹿角聖良

 

 

ルビィ「ルビィが先にゴールした!!」

 

理亞「違う!!私よ!!」

 

ルビィ「ルビィ!!!!」

理亞「私!!!!」

 

真姫「もう…すぐ喧嘩するんだから…同時よ同時」

 

 

6位:黒澤ルビィ&鹿角理亞

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

それからさらに時間は経ち、全員が走り終えたところで持久走のデータが美奈に渡された

 

 

美奈「はーい!みんなお疲れ様。流石にみんな体力あるわね」

 

真恋「順位を見ると…なんか凄いわね」

 

 

1位:松浦果南

2位:矢澤にこ

3位:津島善子

4位:園田海未

5位:鹿角聖良

6位:黒澤ルビィ、鹿角理亞

8位:渡辺曜

9位:高海千歌

10位:黒澤ダイヤ

11位:桜内梨子

 

 

聖良「ほとんど浦の星女学院のメンバー…」

 

月「梨子ちゃんや千歌ちゃんが序盤から飛ばしてたから心配してたけど…要らない心配みたいだったね…」

 

海未「素晴らしいです…音ノ木坂も来年からもっと走りましょう」

 

音ノ木坂「「え、」」

 

浦の星女学院のメンバーの予想外の走りっぷりに衝撃を受けるサニデイジャパン。

海未は千歌にどのような練習をしていたのか興味津々に聞く。

一方の千歌、及び浦の星メンバーの数人は遠い目をしながら言う

 

 

千歌「あはは…正直、10キロなんて…」

 

梨子「軽いわよね…あはは」

 

 

 

―――――――――

―――――

―――

 

 

これはまだ、浦の星女学院が全国制覇を目指していた頃の話

 

 

北也『お前ら〜。エンドレスリレーって知ってるか?』

 

善子『何よ…その聞くからにヤバそうな…』

 

ダイヤ『永遠に続くリレーですか?』

 

北也『あぁ。お前らの体力を全国レベルに引き上げるために、今日から毎日やるぞ』

 

『『『え!?』』』

 

突如、果南の父親であり浦の星女学院サッカー部の監督である松浦北也が指示した「エンドレスリレー」。

ここから、浦の星の地獄の体力作りが始まったのである。

 

 

そのエンドレスリレーは突然やってくる

 

 

善子『ゼェゼェ…ゲホッ』ドサッ

 

ルビィ『もう……無理』ドサッ

 

 

北也『よーし、善子とルビィが戻ってきたな。次は果南と花丸』

 

果南『ほら♪行こ花丸!』

 

花丸『ぎいゃぁぁぁ!?止めるずらあぁぁ!!!!行きたくなあぁぁい!?!?』

 

果南『ハグ♪』

 

 

暴れる花丸をハグしながら連行する果南。

 

まず初めに2人が外周でマラソンをスタートする。残りの7人はグラウンドで普通に練習をしながら、2人が戻ってくるのを待つ。

2人が戻ってくると次の2人がスタート。これを永遠に繰り返すのだ

 

 

ダイヤ『果南さんとペアとは…花丸さんも運がないですわね』

 

千歌『果南ちゃん…容赦なく飛ばすからね…』

 

鞠莉『2人とも生きてる?』

 

ルビィ、善子『』

 

 

外周とはいえ、そんなに長距離ではないのでは?――――――よく考えて欲しい。

この練習を考えたのは誰か。

誰の親か。その子供は。

どちらも…体力の感覚がネジ1本外れている

 

 

果南『10キロを何回も走るのは爽快だね』

 

花丸『南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏』

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

海未「素晴らしいです!!!!」

 

穂乃果「 い や お か し い よ 」

 

凛「ただの拷問にゃ」

 

ツバサ「そんなに走ってよく生きてるわね…」

 

浦の星の数人の目が遠くなった理由…察し、同情する。そして私たちは絶対にそんな練習しないと心の中で誓った音ノ木坂の数人

 

 

穂乃果「う、海未ちゃん?練習メニューはみんなで話し合って決めようね?」

 

凛「そうにゃ!(多数決でやらない側の勝ちにゃ)」

 

海未「多数決で勝ち。とか思ってます?」

 

穂乃果、凛「!?」

 

曜「大丈夫だよ穂乃果ちゃん」ニコニコ

 

ダイヤ「最初は逃げたくなりますが、途中から楽しくなりますわよ」ニコニコ

 

穂乃果、凛「ひっ!?」

 

梨子「逆に走らないと落ち着かない体に…」ニコニコ

 

千歌「走るのは楽しい…マラソンは休憩時間…あはは…」

 

 

果南「うんうん♪みんなに走る楽しさを教えた甲斐があったよ!」

 

海未「果南。その指導方法を詳しく」

 

希「終わったなぁ…音ノ木坂」

 

花陽「まだ死にたくないです…」

 

 

こうして。浦の星の地獄の体力作りは音ノ木坂に輸入されることとなった。

そしてこのデータを元に、美奈はとある戦術を考えているのだとか、

 

 

英玲奈「監督。例の戦術とは」

 

美奈「そうね。説明しようかしら」

 

 

 

海未「何故、2人組なんですか?」

 

果南「サボらないように監視。あと片方がサボったら連帯責任でサボれなくなるでしょ?」

 

海未「天才ですか」

 

にこ「そこの2人っっ!!いつまでも危険な話をしてるんじゃないわよ!?」

 

希「にこっちは卒業するからええやん」

 

穂乃果「あ、確かに」

 

凛「でも…卒業出来るの?」

 

にこ「当たり前でしょ!!!!」

 

真恋「にこちゃんたち…?話したいんだけど、」

 

よっぽど地獄の体力作りが嫌なようで。

必死に抗うも無駄な抵抗となった。

真恋によって話は戦術に戻される。ここまである意味盛り上がっていたサニデイジャパン、しかし、美奈の一言で一部のメンバーは一瞬にして凍りつくことになる

 

 

 

 

 

 

 

美奈「"スリリングワンウェイ"」

 

 

 

ダイヤ、果南「!!!!!!!!」

 

千歌、曜、梨子「!!!!!!!!」

 

善子、ルビィ、花丸「!!!!!!!!」

 

 

"スリリングワンウェイ"

 

 

果南「え…なんで、美奈さんがそれを」

 

ダイヤ「わたくしたち、言った記憶が…」

 

あんじゅ「…?浦の星女学院のメンバーは知ってるの?」

 

 

浦の星女学院のメンバーの共通の認識では、「スリリングワンウェイ」はダイヤ・果南・鞠莉が過去に実現不可能とお蔵入りさせた必殺技たちをまとめたノート、「未完成のノート」に書き記した必殺タクティクス。

 

それを私たちは発動出来ないのかと千歌が果南に聞いたところ、絶対に無理だ。危険だ。と一瞬で却下された技となっていた

 

 

晴夏「それを…私たちで習得する?」

 

曜「そ、その前になんで美奈さんが"スリリングワンウェイ"を知っているんですか??」

 

ルビィ「あの技は…お姉ちゃんたちが考えた技で、口外していないはずです…」

 

美奈「…」

 

あのノートを浦の星女学院のメンバー以外が見たことはない筈だ。

美奈が知っていたことに対し疑問に思う、だが美奈がこれから説明する内容は、想像以上のものだった

 

 

美奈「果南ちゃん。"スリリングワンウェイ"、誰からヒントを貰ったの?」

 

果南「え…」

 

美奈「考えたのは果南ちゃんたち。でもその考えるきっかけを作ってくれた人がいるでしょ?」

 

ダイヤ「…果南さん」

 

果南「うん」

 

果南は過去の記憶を思い出すかのように少し考え、美奈の指摘通り、その人の名を出す

 

 

 

果南「父さんだよ」

 

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

 

先程、地獄の体力作りで名がでた浦の星女学院サッカー部の監督、松浦北也。

北也が果南らに"スリリングワンウェイ"を作り出すきっかけを与えたのだと言う

 

 

曜「どういうことなの?」

 

果南「…父さんが昔言ったんだ。『高校時代に見たあの必殺技。あれ以上の強さを持つ技は無い』って」

 

月「高校時代に見た必殺技…」

 

ツバサ「あれ以上の強さを持つ技は無い…ふむ」

 

ダイヤ「その話から私たちは必殺タクティクスを考えました。とは言っても、到底実現不可能なものでしたが…」

 

ここで1つ。可能性が繋がった

 

 

果南「父さんから聞いたの?美奈さんは」

 

美奈「そうよ。果南ちゃんたちが"スリリングワンウェイ"という必殺タクティクスを考えている、という話をね」

 

 

これで謎は晴れた。

美奈は北也から実現不可能と言われた必殺タクティクスを聞き、それを日本代表サニデイジャパンのチームで完成させようとしているのだと。

 

そう、それだけだと…思っていた

 

 

真恋「でも、少し付け足すとね」

 

果南「?」

 

真恋「"スリリングワンウェイ"。北也は高校時代に見た、と言ったのよね?」

 

果南「そう、です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美奈「私たちよ。"スリリングワンウェイ"の元となる必殺技を使っていたのは」

 

「「「!!!!!!???」」」

 

 

にこ「ママたちが…"最強の必殺技"を!?」

 

海未「美奈監督、真恋監督の高校時代…」

 

ことり「知らなかった…」

 

音ノ木坂学院サッカー部の監督でもある高海美奈。彼女の高校時代、美奈と真恋が穂乃果たちと同じサッカー選手としてサッカーをしていた時の必殺技。

それを見た北也は果南らに伝えてた、ということになる。

 

しかし、穂乃果たち音ノ木坂のメンバー。そして家族である千歌やにこでさえ。

美奈や真恋の高校時代を知らない。

どこの高校で?どんな仲間と?どんなサッカーを??

冷静に考えてみると、自分たちは監督らを知らなさ過ぎた

 

 

穂乃果「美奈さん、真恋さん…その高校時代って…」

 

美奈「……」

 

真恋「美奈。これから来るメンバーのことを考えると、言わなくても分かっちゃうわよ」

 

美奈「そうね…いい加減、話す時が来たみたいね」

 

美奈は覚悟したのか閉ざしていた口を開き……出た言葉は――――――――――――

 

 

 

 

 

 

美奈「私たちの高校は音ノ木坂学院よ。そこでサッカーをしていたの」

 

 

穂乃果「………ぇ」

 

千歌「お母さんと真恋さんが…音ノ木坂学院サッカー部??」

 

にこ「初めて、聞いたわ」

 

美奈「少しだけ…言いづらい理由があったのよ」

 

どういった過去があったかはもちろん知らない。だが、表情から伺うに、良い理由では無さそうだ。

自分の監督、そして母親が音ノ木坂学院のサッカー部だったということで、驚きを抑えられないメンバーがいる中でも話は続く

 

 

美奈「私たちが作り出した"スリリングワンウェイ"の元となる必殺技があってね。最強のシュート技だった、止めることは不可能。止まらないのよ」

 

ツバサ「必殺タクティクスってシュートだったのね…」

 

千歌「"スリリングワンウェイ"…シュート技」

 

美奈「そして。この技を完成させるために、私たちの仲間を呼んだの。時期に来ると思うわ」

 

最強の必殺タクティクスの正体はシュート技だと言う美奈。

そして隠された過去である音ノ木坂学院サッカー部の先輩だという事実。

今まで隠していた理由、そしてまだ詳しく語らない理由、それらが全て分かるのは…まだ先の話

 

 

真恋「…来たわね」

 

美奈「さあ、ここから騒がしくなるわよ」

 

 

 

 

「ヨーソロー!!!!!!」

 

「夜ちゃん…大きな声ではしたないですよ?」

 

「まぁまぁ、今日ぐらいいいじゃない!」

 

 

月「…………」

 

海未「………」

 

曜「………??」

 

グラウンドに現れた2人の大人の女性。

何故、何故この人たちがここにいるのだろうか。まったく理解が出来ていない。

ただ、考える暇もなく海未が言葉を放った

 

 

 

海未「お母様…!?」

 

 

千歌「……え?」

 

「「「えぇえぇえぇえぇえ!?!?!?!?」」」

 

 

 

「曜ちゃ〜ん♪♪会いたかったわ〜!!」ダキッ

 

曜「ひゃあぁぁ!?!?」

 

海未のお母様とは別の女性が目が合うなり曜に抱きつく。突然のことに曜の顔は茹で蛸のように真っ赤っか。

黒髪のこの人…曜から引き剥がそうと1人の少女が曜ぐらい顔を真っ赤にしながら…

 

 

月「母さん…やめて…恥ずかしい」

 

曜「夜…さん…恥ずかしい」

 

 

穂乃果「月ちゃんの、お母さん?」

 

「「「えぇえぇえぇえぇえ!?!?!?!?」」」

 

 

 

美奈「…変わらないわねぇ、」

 

真恋「あのハグ魔、相変わらず酷いわね」

 

 

衝撃に次ぐ衝撃に次ぐ衝撃!

急展開についていけないサニデイジャパン!

余りの衝撃に固まる園田娘!

茹で蛸のように動揺する渡辺娘とその従姉妹!

 

この調子で日本は決勝トーナメントを勝ち進めるのか??千歌たちの戦いはまだまだ続く!!

 

 





園田母と渡辺母登場!そしてスリリングワンウェイ!

ご感想、お待ちしております



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第3章 110話 「新たな指導者」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
ちょっと展開が深夜テンションだったので何回か書き直したのですが、どうも上手くできてない気が…今回も練習回です




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

とある戦術のために持久走を行ったサニデイジャパン。その後、「スリリングワンウェイ」の正体は美奈たち元音ノ木坂学院サッカー部が生み出した最強シュート技だったことが明らかになる。そしてそのタクティクス習得のために呼ばれたのが…海未と月の…

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

「改めまして。園田海未の母、"園田弥生(やよい)"です。海未さんがいつもお世話になっております」

 

海未と違って髪を後ろで縛り、柔らかい笑顔が印象的な園田母。

落ち着きのある声、口調。海未の母だということは言われなくても伝わってくる

 

 

「私は"渡辺夜"!月ちゃんのお母さんで曜ちゃんのお母さんでもあるよ!!」

 

月「誤解招くから嘘言わないの!!」

 

曜「曜にもママはちゃんといるであります…」

 

月ちゃんママのテンションは謎に高い。

人にちょっかいを出すのが楽しいようで、溺愛する曜と月にはいつもこんな感じ。

なーんか、金髪に似たようなのがいたなと。浦の星のメンバーの脳裏に浮かぶ

 

 

弥生「ほら、夜ちゃん。今日は遊びにきたわけでは…」

 

夜「うーん…名残惜しいけど仕方無し」

 

曜(た、助かった…)

 

海未(さすがはお母様です)

 

園田家の大黒柱を支える園田弥生は海未の手本であり園田家の手本である。

場の雰囲気を一瞬で把握し、収める力を持つ。海未が尊敬す―――「穂乃果さん」

 

 

穂乃果「?」

 

海未「?」

 

弥生「ラブアローシュート」イケボ

 

穂乃果「!」

 

弥生「バーン!」

 

穂乃果「うっ…」ドサッ

 

 

海未「」

 

ことり「…」

 

月「…」

 

「「「………」」」

 

 

弥生「あなたのハート、撃ち抜きます♪」

 

海未「何をしてくれてるんですかあぁぁ!?!?!?」

 

ことり「海未ちゃん!ステイ!!」

 

希「アカンよ!海未ちゃん、ウチら状況を全く理解できてない!!」

 

海未のシュート技「ラブアローシュート」。

それを突然いい声と共に撃ち放った弥生。穂乃果は何かを察し、その矢に撃たれたわけだが…

 

 

弥生「穂乃果さんはやっぱりノリがいいですね♪」

 

穂乃果「もー!急に撃ってこないでくださいよ!」

 

 

千歌「あのー、穂乃果さん?今のは…」

 

穂乃果「今のはね、弥生さんがたまにやってくるやつで…撃たれたら倒れなきゃいけないの!」

 

ダイヤ「なんですかそのコントは…」

 

弥生「コントではありませんよ!」

 

ダイヤ「!?」

 

弥生「これは海未さんが出来ないことを、私が代わりにやっているのです」

 

ダイヤ「出来ないこと?」

 

弥生「海未さんはたまに自室で今のように鏡に向かって"あなたのハー「うわああああああ!!!!!!」

 

ことり「海未ちゃん!暴れない!」

 

にこ「あー…何となく、察したわ」

 

ルビィ「海未さんも疲れてるんですね」

 

善子「それ、一番心抉るやつよ」

 

前言撤回。爆弾落とすとんでもない母親だった。海未は自分の羞恥、公開処刑を発狂にてかき消そうとその場で暴れまくったのであった…

 

そして、地獄の練習メニューを組もうとしたバチが当たったんだにゃ…と思うメンバーがいたりいなかったり

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

美奈「はい!気を取り直して特訓に話を戻すわよ」

 

海未「…戻りませんよ……私の処刑は」

 

穂乃果「海未ちゃーん…よしよし」

 

美奈の今までの言葉から推測するに、弥生と夜も音ノ木坂学院サッカー部だったことになる

 

 

夜「そうよ。私たちも美奈とはチームメイト。弥生が音ノ木坂っていうのは知っている子もいたんじゃない?」

 

ことり「私と…穂乃果ちゃんと海未ちゃんは」

 

穂乃果「うん。穂乃果のお母さんとことりちゃん、海未ちゃんのお母さんは音ノ木坂学院だったって…」

 

果南「…あれ?ということは?」

 

弥生「きいちゃんとヒナちゃんもサッカー部でしたね…懐かしいです」

 

穂乃果「きいちゃん?ヒナちゃん?」

 

弥生「穂乃果さんとことりさんのお母様です」

 

ダイヤ「…もう、驚きませんわよ」

 

次から次へと明かされる新事実。

穂乃果、ことり、海未、にこ、月、千歌の母親が全員音ノ木坂学院サッカー部だったという…偶然には決して思えない光景。

しかし、ただ同じチームメイトだったということだけでこれ以上の追求をする必要はない。千歌で言う"奇跡"で終わるのだが…

 

それだけでは終われない、気になること

 

 

花陽「…」

 

 

穂乃果「それなら、お母さんとことりちゃんのお母さんも来ると思ったけど…」

 

ことり「お店と、理事長、だからね」

 

 

 

―――

 

 

 

穂乃果母『どうしても?』

 

穂乃果父『』ミセガアルカラダメダ

 

穂乃果母『ここあちゃんたちも預かってるしね…』

 

穂乃果父『』ソウソウ

 

穂乃果母『断りの連絡しないと』

 

 

 

理事長『今度の週ま『理事長?ダメですよ?』

 

理事長『うっ…』

 

 

 

―――

 

 

 

穂乃果「まぁ、そんなとこだろうね」

 

月「それを言うなら…母さんだって仕事は…」

 

夜「私は曜ちゃんと月ちゃんのためなら仕事なんて有給で!!」

 

月「僕たちのために仕事して。お願い」

 

 

 

弥生「取り敢えず。私たちが呼ばれたのは"スリリングワンウェイ"の完成…そのための指導ですね」

 

夜「出来るだけのことはするよ。なんたって、"スリリングワンウェイ"の元となった必殺シュートを撃ったのは美奈と私とあと一人だからね」

 

千歌「あと1人って誰ですか?」

 

夜「秘密♪」

 

千歌「秘密??」

 

夜「それはまた今度!そろそろ練習始めないと…あなたのお母さんに怒られちゃうから」

 

千歌「あっ…あはは…」

 

冷静に考えると…ここにいる大人たちは最強クラスのシュートを放つレベルのチームだということ。

ふざけている時には感じなかったが、練習に入ろうとした瞬間。4人の雰囲気が一変したことはほとんどのメンバーが気づいた

 

 

弥生「皆さんの持久走の結果を見せてもらいました。全員体力的に問題はなさそうです。しかし、技の難易度が高いため完成には時間がかかりますね」

 

英玲奈「だが、アメリカ戦まで時間がない。アメリカ戦に向けての戦術も考えなければ…」

 

美奈「その事については心配ないわ」

 

英玲奈「?」

 

美奈「"スリリングワンウェイ"を完成させるために、段階に分けることにしたの。全部で3段階。アメリカ戦では第2段階の必殺技で戦ってもらうわ」

 

英玲奈「第1段階は…?」

 

美奈「既に完成しているわ」

 

詳しい説明でサニデイジャパンは全員理解した。

イタリア戦で新しく習得した必殺タクティクス、「四面楚歌の獄」。あれが「スリリングワンウェイ」完成の第1段階だったのである。

美奈はグループリーグの時点で「スリリングワンウェイ」発動を視野に入れていたことになる

 

 

弥生「アメリカ戦での戦術となる第2段階の必殺タクティクスは更に強固なものとなります…しかし、完璧にタイミングを合わせなければ成功はしません」

 

「「「………」」」

 

真恋「時間も無いし、始めちゃいましょ」

 

これから弥生、夜を中心に第2段階目の必殺タクティクスを特訓する。

海未と月の親だけあり、指示を出すのが非常に得意であった。美奈がこの2人を呼んだのも、学生時代の指揮力を見てのことだろう。

そして、これを習得すればアメリカに一泡吹かせることが出来る…サニデイジャパンは気を緩めることなく、先輩の説明に耳を傾けていた

 

 

花陽「…美奈監督」

 

美奈「どうしたの?花陽ちゃん♪」

 

花陽「あ、あの…」

 

そんな中、花陽は緊張のあまりしどろもどろになっていた。

理由は今から美奈に聞こうとしていることが、音ノ木坂学院サッカー部のメンバーにとって重大なことになり得るからである

 

 

花陽(聞くんだ…私。確信はない、でも)

 

 

辻褄が合いすぎる。

音ノ木坂学院サッカー部、最強のシュート技、監督の怪我、棄権―――

 

 

―――音ノ木坂の奇跡

 

 

花陽「美奈監督は…あの音ノ木坂の「花陽ちゃーん!!」

 

花陽「ぴゃっ!?」

 

グラウンドから花陽を呼ぶ声。

マネージャーの助けが必要なようで、花陽の緊張はその声によりどこかへと消え去ってしまった

 

 

花陽「あ、行かないと…美奈監督ごめんなさい!またあとで!」

 

美奈「はーい。頑張ってねー♪」

 

駆け足でみんなの元へと向かう花陽。

その背を見る美奈

 

 

美奈「…まだ、言えないのよ。花陽ちゃん」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

海未「穂乃果!遅れてますよ!」

 

弥生「真ん中は少しタイミングがズレ始めてますよ!」

 

 

穂乃果「ひぇ〜、海未ちゃんが増えたみたいだよ…」

 

千歌「こうして見ると…本当に親子ですね」

 

選手の1人ひとりに目を光らせる園田親子。

弥生の方はそう簡単には怒らないが、規律を乱すものを感じ取るセンサーはずば抜けて優秀

 

 

弥生「いいですよ。そのままを維持してください」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

アメリカ戦&スリリングワンウェイの特訓は日が暮れるまで続いた。

長い時間走らされたので、特訓しただけで体力トレーニングをしたような感覚になっていた。中にはケロッとしているメンバーもいたため、明日はもう少し行けますね。と呟く弥生の言葉を聞き、逃げようと思ったメンバーもいたとかいないとか。

 

日が沈んだ後はミーティングルームで渡辺夜による映像を使った確認が行われた。

より高度に、より完璧にするため、助っ人2人の指導は熱く厳しいものとなったが、その分の結果は必ずついてくる

 

 

 

― 数日後 ー

 

弥生「はい。だいぶ良くなりましたね」

 

梨子「ハァハァ…もう、走れない」

 

凛「クタクタにゃ…」

 

体力があるサニデイジャパンも倒れるほどのハードメニュー。しかし、誰一人欠けることなく食らいついてきたことが実を結び、無事に完成に近いレベルにまで持ってくることが出来た

 

 

美奈「明日からは個人練習の時間を増やすわ。アメリカ戦は明後日。今日はこのままミーティングするからね〜」

 

「「「はい!!」」」

 

この数日間でサニデイジャパンのメンバーは弥生と夜との仲を深めていた。

娘のチームメイトということもあり、積極的な会話が毎日のように行われていた結果。

その中でも興味深かった話が2人のサッカーについてだった

 

 

弥生「私はDFでプレーしていました。美奈ちゃんは千歌さんと同じトップ下。真恋ちゃんはボランチ。夜ちゃんは……トップよね確か」

 

夜「なんで私のだけあやふやなのかしら?」

 

穂乃果「穂乃果のお母さんは!?」

 

ことり「私のお母さんはどこのポジションだったんですか?」

 

千歌「はいはーい!お母さんはどんなプレーしていたんですか?」

 

 

美奈「あらあら。弥生ちゃんと夜ちゃん、随分なつかれたわね」

 

真恋「2人は行かなくていいの?」

 

曜「私は…夜さんに抱きつかれるから」

 

月「ホント、僕の母さんが申し訳ない」

 

真恋「月ちゃんはお母さんのこと、どう思ってるの?」

 

月「うーん…ウチはスポーツ一家だったからね…優秀なスポーツ選手になるように教育されて、今があるから感謝はあるかな」

 

月「まぁ、あの性格は何とかしてほしいけどね」

 

曜「ははは…」

 

真恋「夜はね…落ち着きを知って欲しい」

 

夜「真恋ー!?呼んだー!?」

 

真恋「うるさいわね〜…今夜中よ?」

 

美奈「真恋…今、夜と夜中をかけて…」

 

真恋「かけてない。絶対にかけてない」

 

真恋さんは音ノ木坂学院時代…大変だったんだろうな、と察する渡辺たちであった

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

翌日。アメリカ戦前日となった今日は戦術練習を簡単に終え、個人練習に早速取り組んでいた

 

 

夜「おー、なかなかすごい技だね」

 

ルビィ「"Awaken the power"です」ゴゴゴゴ

 

夜「なんかどこかで見たことがあるんだよね〜…」

 

ルビィ「……」ゴゴゴゴ

 

夜「……」

 

ルビィ「……」ゴゴゴゴ

 

夜「界王け「Awaken the powerです」

 

 

―――

 

 

弥生「ダイヤさんの"ヒノカミ神楽"…舞いに呼応するとは面白いですね」

 

ダイヤ「はい。ですので、舞いの練習も欠かせないんです」

 

弥生「ふむ…では私が舞いを見てみましょう。園田流ではありますが、通じるものがあると思います」

 

ダイヤ「…!はい!」

 

弥生「海未さんもいらっしゃい。久しぶりに舞いを見てみましょう」

 

海未「は、はい」

 

 

―――

 

 

にこ「アイツらと戦うのよね…」

 

ツバサ「にこさんは面識があるのよね」

 

にこ「まぁ、ね?明日…嫌な予感しかしないわ」

 

ツバサ「??」

 

 

英玲奈「梨子。指揮の調子はどうだ?」

 

梨子「弥生さんにフィールドの見方や司令塔としての指導を受けたので順調かな…と」

 

英玲奈「そうか。何かあったら言ってくれ」

 

梨子「は、はい!では…早速なんですが」

 

英玲奈「??」

 

梨子「凛ちゃんのことで…相談が」

 

 

―――

 

 

理亞「はあぁぁぁっっ!!!!」

 

理亞は声を張り上げ、全オーラを頭上に集中させる。空気とATPが混ざり合い、破裂寸前までエネルギーを高めるのだが…

 

 

月「うーん、足りないね?」

 

理亞「ハァハァ……まだ、足りない?」

 

月「ルビィちゃんの"ラストリゾート"のオーラはこんなもんじゃないね」

 

理亞は似たような必殺技「オーバーサイクロン」を発動できるが、あれはただの強力なシュート。「ラストリゾート」のような爆弾シュートを放つには、まだまだ力不足だということ

 

 

月「ATPの習得は早かったけど、この技はそう簡単にはいかないよ」

 

理亞「ハァハァ……(こんな技を中学生で、)」

 

 

―――

 

 

その日の夜。

アメリカ戦に備え、早めの就寝となったサニデイジャパン。眠りについた宿舎の中に一つ、明かりが灯る部屋があった。

日本代表監督の部屋である

 

 

美奈「さすがは音ノ木坂の司令塔ね。アメリカ戦までに2段階目まで仕上げちゃうなんて」

 

弥生「選手たちの取り組みが良かったからです」

 

夜「みんないい子だからね〜」

 

美奈は真恋、弥生、夜を集め最後の打ち合わせをしていた。

練習の時の真剣な雰囲気ほどではないものの、代表を取り仕切る者としての自覚の元、黙々とそれぞれの作業。そして打ち合わせを進めていた。

そんな打ち合わせもあらかた終了し、昔話が始まっている

 

 

弥生「きいちゃんとヒナちゃんも来たがっていましたが…私が止めました」

 

夜「そりゃあ、仕事があるんだもん」

 

弥生「人の事言える立場ですかあなたは…」

 

夜「私はいいんだよ。有給は労働者の切り札だしね」

 

美奈「…2人とも、子供にはサッカーを勧めた?」

 

弥生「…また話を変えてきましたね」

 

夜「月には直接は勧めなかったかな?いろんなスポーツやらせて、好きなものを見つけたらそれに専念してもらおうってね」

 

夜「まぁ、月ちゃんがサッカーをやる!って言った時は血は争えないと思ったね」

 

弥生「私は…実は海未さんが幼い時からボールを触るようにしていました」

 

夜「おっ、意外。園田家継がせる稽古だけかと思ってた」

 

弥生「私たちが成しえなかったことを…子供に期待していたのかもしれません」

 

夜、真恋、美奈「「「……」」」

 

弥生「お稽古も全てサッカーにとってメリットになるように…旦那に内密で内容を変えたりしていました」

 

真恋「あれ?本当に意外とやってるわね」

 

美奈「千歌は完全に千歌自身で始めたわ。あの子、中途半端な子だったから最初聞いた時は深くは考えなかったけど……」

 

夜「今じゃ、日本代表のキャプテン。高海さんも血は争えませんな」

 

弥生「子が子なら、親も親です」

 

美奈「…そうね」

 

真恋「……」

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー 翌日 ー

 

 

日本代表はFFIにおいて決勝トーナメントに進出した経験はない。

 

しかし、それは今、過去の話となった

 

 

A『さあ、いよいよFFIも決勝トーナメント!決勝トーナメント第一試合はグループBを2位で通過したアメリカ代表「ユニコーン」対ヨーロッパ3強が犇めくグループAを2位通過した日本代表「サニデイジャパン」の対戦です!!』

 

A『果たしてこの試合に勝利し、準々決勝へと駒を進めるのはどちらのチームなのか!?』

 

 

ほかのグループならまだしも、今大会の最強グループと言われていたAグループ。

その中で日本はイギリスとスペインを退けてアメリカと戦おうとしている。この光景だけでも、充分各国に衝撃を与えるものとなっている

 

 

 

 

 

千歌「ついに決勝トーナメント…」

 

穂乃果「優勝候補チームとの連戦だね…燃えてきたよ」

 

海未「穂乃果。熱くなりすぎて冷静を欠いてはいけませんよ」

 

穂乃果「分かってるって」

 

にこ「……」ソワソワ

 

千歌「…にこさん?」

 

いつもになく落ち着きのないにこ。

試合前に緊張が態度に現れないことを知っている千歌たちから見れば、かなり不審な光景だった

 

 

にこ「本当にあの時のメンバーばっかりじゃない…」

 

千歌「あ、あの時?」

 

 

 

 

 

 

 

「あー!!いたよ、みんな!!」

 

 

千歌「!?」

 

穂乃果「えっ!?」

 

海未「な、なぜここに…」

 

梨子「ここ、日本代表の控え室…」

 

 

その答えはすぐ分かることになる。

いま現在、日本代表の控え室に入ってきた少女たちのおかげで。にこにとってはこの少女たちのせいで

 

 

マーク「久しぶりだね!ニコ!!」

 

花陽「あ、アメリカ代表キャプテン…マーク・クルーガー!?!?」

 

ディラン「ミーはテンションギンギンだよ!!ニコと試合だからね!!」

 

ダイヤ「北中米地区予選得点女王、ディラン・キースさん…」

 

ディラン「矢澤アニキー!!!!」ハグッ

 

にこ「ちょっ!!それやめなさいって!!」

 

 

 

凛「にゃ?」

 

理亞「アニキ?」

 

果南「矢澤…アニキ?」

 

花陽「にこちゃんが…アニキ?」

 

千歌「アニキ?え?アニキ?」

 

 

マーク「そうさ!ニコは私たちのフレンド、そして――――――

 

 

アメリカ代表「「「矢澤アニキー!!!!!」」」

 

にこ「」

 

 

 

次回より「アメリカ戦」開幕

 

 

 





園田弥生
海未ちゃんをもっと大人っぽく。怒らなくした人。好物はほむまん

渡辺夜
月ちゃんのようなコミュ力を持つ。ジョーク好き。曜ちゃんと月ちゃんが大好き

穂乃果の父
無言を貫く。何故か高坂家は父の思考を読める




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第3章 111話 「アメリカ戦 "アニキを目指して"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回からアメリカ戦スタートです

リクエストでアメリカ戦の解説がレヴィンさんから原作のとある方に変わっていますが、本編への影響はありませんのでよろしくお願いします。




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

最強の必殺タクティクス「スリリングワンウェイ」を習得するために、海未と月の母親である園田弥生と渡辺夜が練習に参加。第二段階目となるタクティクスを完成させてアメリカ戦となった。そんな中、日本代表控え室に現れたのはアメリカ代表!?そして、にこをアニキと呼ぶその理由は……

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

A『本日の解説はヨーロッパリーグで活躍中の剣城京介さんです。よろしくお願いします!』

 

剣城『お願いします』

 

A『剣城京介さんはシュート成功率10割の記録を持つストライカーですが、両チームで注目の選手はいますか?』

 

剣城『はい。アメリカ代表の中ではカンナ・イチノセ選手ですね。"フィールドの魔術師"という2つ名に相応しい魔法のようなプレー…そして圧倒的なテクニックを持ちます。サニデイジャパンの矢澤にこ選手にも引けを取らないレベルだと思います』

 

A『サニデイジャパンではどうでしょうか?』

 

剣城『やはり、黒澤ルビィ選手ですね。世界を驚かせた「ラストリゾート」…あの技は私のチームメイトも注目するようになりました。触れないシュート、充分、世界に通用するシュートですし個人能力も高いですからね』

 

A『ありがとうございます!両チームともグループ2位通過ですが、1位のチームにも負けていない力を持っています!勝つのは果たしてどちらか?まもなくキックオフです!!』

 

 

 

 

ー 日本代表ベンチ ー

 

美奈「では、スタメンを発表しまーす!」

 

美奈「DF 南ことり、鹿角聖良。リベロで津島善子」

 

ことり、聖良、善子「「「はい!!」」」

 

美奈「MF 統堂英玲奈、桜内梨子、矢澤にこ、高海千歌」

 

英玲奈、梨子、にこ、千歌「「「はい!!」」」

 

美奈「FW 星空凛、渡辺月、黒澤ルビィ」

 

凛、月、ルビィ「「「はい!!」」」

 

美奈「GK 高坂穂乃果」

 

穂乃果「はーい!!」

 

美奈「以上です♪何回も言ったけど、あの必殺タクティクスはたくさん走るから交代する可能性が高い。準備はしておいてね」

 

「「「はい!!」」」

 

 

FW……渡辺月、黒澤ルビィ、星空凛

 

MF…………矢澤にこ、高海千歌☆

 

MF…………桜内梨子、統堂英玲奈

 

DF………南ことり………………鹿角聖良

 

DF……………………津島善子

 

GK…………………高坂穂乃果

 

1-2-2-2-3

 

 

 

真姫「それで、さっきのはどういうこと?」

 

にこ「いろいろあったのよ…」

 

希「にこっちがフリースタイルの大会に出場するためにアメリカに行った時があったやろ?」

 

穂乃果「あった!あった!」

 

希「その時に同じ大会に出るアメリカ代表の選手とその応援に来ていたほかのアメリカ代表のメンバーが不良に絡まれていたんや」

 

ことり「不良に!?」

 

善子「それって大丈夫だったの?」

 

希「そこで現れたのがにこっちや」

 

 

 

 

にこ『ちょっとアンタたち。何やってんのよ』

 

『ああ?このかわい子ちゃんたちと遊ぼうと思ってな』

 

にこ『これから大会なんだからやめなさい』

 

『…生意気だな。アジア人が』

 

マーク『ダメ!あなたまで巻き込まれたら…』

 

にこ『勝負しましょ』

 

『…!』

 

そして、にこっちはなるべく悪い方に騒ぎを起こしたくなかったから条件付きの勝負を申し込んだんや。

『にこっちが負けたら有り金全部渡す。そのまま彼女たちも連れてっていい』ってね

 

 

にこ『勝負内容は"ストリートダンス"なんてどう?』

 

『残念だったな。俺はストリートダンスは得意なんだよ』

 

どちらが多くの観客を引き寄せるかで勝負が始まった…アメリカ代表たちはただただ祈ることしかできなかった。

 

結果は―――

 

 

希「にこっちの圧勝で終わるんや」

 

梨子「圧勝…」

 

希「ほとんどの観客がにこっちのダンスで盛り上がってて…不良さんは渋々立ち去るしかなかったんよ」

 

ツバサ「そこまでされちゃ…惚れるのも無理はないわね」

 

 

マーク『す、すごい…』

 

ディラン『センキュー!あなたはチームの恩人だよ!!』

 

にこ『恩人……ふん!礼なんていらないわ』

 

マーク『だけど…』

 

にこ『礼ならパフォーマンスで返しなさい。あなたも大会出るんでしょ?お互いに頑張りましょ』

 

アメリカ代表『『『………』』』

 

『これが…ジャパニーズ"流儀"』

 

『ブシドーじゃなかった?』

 

ディラン『NO…彼女は"アニキ"だ』

 

アメリカ代表『『『アニキ??』』』

 

ディラン『ジャパンではその心の広さで全てを守るリーダーがいるらしい。部下や同胞はそんなリーダーに嫌でもついて行きたくなる…それがアニキだ』

 

アメリカ代表『『『アニキ!!』』』

 

にこ『ちょっ!?それは男の『『『矢澤アニキ!!!!』』』

 

 

 

 

 

 

希「というわけや」

 

「「「…………」」」

 

にこ「……」

 

月「何ともまぁ…」

 

ダイヤ「にこさんらしいというか…」

 

にこ「私は何度も言ったのよ!?アニキは男に使う言葉で…女の人には…」

 

真姫「でも嬉しかったんでしょ?」

 

にこ「………」

 

なぜ、アメリカ代表にアニキと呼ばれるのか…その理由が分かったところで試合の時間となった。

決勝トーナメント初戦、こんな雰囲気で始めていいのか?と考えるのはしないお約束

 

 

千歌「ということで!全然締まりませんが決勝トーナメント初戦!!」

 

曜「千歌ちゃん…」

 

千歌「私たちはもう日本だけの代表じゃない!スペイン、イギリス…アジアの、みんなの代表になってる!!」

 

千歌「最後まで全力で行こう!!!!」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

ー アメリカ代表ベンチ ー

 

 

FW……………ディラン、ミケーレ

 

MF…スティーブ…………………ショーン

 

MF……………イチノセ、マーク

 

DF…チッド、トニー、ダイク、ドモン

 

GK……………………キッド

 

4-2-2-2

 

 

 

イチノセ「日本はあのヨーロッパ3強と競り合ったチーム…もう、アジアのダークホースとは考えない方がいい」

 

マーク「そうね。ジャパンは前半からエースストライカーを出してきてる…アニキもいるし、厳しいスタートになりそうだね」

 

ディラン「なら逆に」

 

イチノセ、マーク「「!」」

 

ディラン「前半でサプライズじゃない?」

 

 

両チームがポジションにつき、会場のムードはさらに高まっていく。

名のある選手が多く揃うアメリカ…いったいどのようなサッカーをしてくるのか

 

 

 

 

ピーーー!!!!

 

A『ユニコーンのキックオフで試合開始です!』

 

 

ディラン「魅せてやれ!カンナ!!」パス

 

イチノセ「!」

 

バックパスで神奈にボールに渡った。

アメリカ屈指のテクニック、そして…圧倒的なフィジカル

 

 

凛「凛が相手にゃ!!」

 

イチノセ「―――!」

 

凛「貰っ―――スカッ

 

凛「!?(ウソ…もう抜かされ)」

 

 

月「速い!?」

 

ルビィ「月さん、2人で」

 

月「よし…!」

 

凛が一瞬で抜かされたことにより、ルビィと月、そして日本の選手たちが共通の考えを持った。

一之瀬神奈。もしかするとこの選手、

 

 

ルビィ(行ける―――

月(取った――――――

 

2人同時にボールを奪いにかかる。

何度も世界の選手と戦ってきたから分かる。このまま行けば神奈からボールを――――――スカッ

 

 

ルビィ、月「「!?」」

 

イチノセ「へへっ!」

 

A『イチノセ選手の華麗なドリブル!!サニデイジャパンのFW3人が簡単に抜かれた!!!』

 

 

千歌「でりゃー!!」ズザーッ

 

イチノセ「―――!」バッ

 

千歌「嘘っ!?バク転!?」

 

千歌の不意打ちのスライディングを躱し

 

 

聖良「【スノーエンジェル改】」ビュン!

 

聖良得意の高速接近からのディフェンス技も―――

 

イチノセ「―――っっ!!」グルン!

 

聖良「なっ!?」

 

A『イチノセ選手のルーレットが決まったぁぁ!!鹿角聖良の必殺技は空振り!残りは高坂穂乃果ただ1人だ!!!』

 

 

海未「全員でも止められない!?」

 

花陽「穂乃果ちゃん!!」

 

 

穂乃果「来い!!」

 

まさか、こんなにも早く自分の出番が来るとは…穂乃果は来たるフィールドの魔術師を前に、炎のオーラを高め始めた

 

 

イチノセ「これが私の必殺技!!」バッ

 

両足でボールを挟み、空中で一回転。

そこから蹴り放たれるシュートは美しく、羽ばたく強力な一撃

 

 

イチノセ「【ペガサスショット】!!」ドガアァン!

 

穂乃果「シュートまで撃つの…はぁぁぁぁ!!!!」

 

炎の両腕をクロスしペガサスに向かって飛び込む。左腕のオーラを全て右腕に込め、巨大な灼熱の手で迎え撃つ

 

 

穂乃果「【ゴットハンドX】!!」ドォン!

 

両者の必殺技が激しくぶつかる。

それを固唾を飲み見守るサニデイジャパン、そしてアメリカ。押し合い、押し続け、押され続け――――――

 

 

穂乃果「……」シュゥゥゥ…

 

A『止めました!!高坂穂乃果、3試合ぶりに日本の守護神として劇的復活だぁ!!!』

 

剣城『スペイン戦で両腕を負傷した高坂選手…その原因となった必殺技、"ゴットハンドX"がさらにパワーアップしているように見えました』

 

 

ことり「あ、危なかった…」

 

英玲奈「危うく失点するところだったな」

 

しかし、これではっきりした。

一之瀬神奈。彼女のドリブルはまるでダンス。その多彩に繰り出されるボールの動きについていくのは不可能に近い。

必殺技を仕掛けても簡単に避けられ、パワープレイ、人数有利も関係ない

 

 

日本代表「「「(にこのプレーとそっくりだ)」」」

 

 

しかし、ただにこにそっくりなだけでなく

 

 

日本代表「「「(シュートまで出来る矢澤にこ…)」」」

 

 

これが日本代表メンバー全員に与えた一之瀬神奈の印象であった

 

 

にこ「……シュートまで出来るなんてね」

 

穂乃果「にこちゃん!」パス

 

 

A『おおっと!?前半開始早々始まるのか!?』

 

 

イチノセ「矢澤にこ…あなたと戦いたかった」

 

にこ「あの大会のリベンジかしら?」

 

両チームのファンタジスタが向かい合う。

サッカーとはチームで戦うスポーツであるが、この時ばかりは誰も近づこうとしない。

どちらが勝ち、どちらが負けるのか。

それを今、この場で知りたいと思う。

 

それがこの異様な光景を生み出している。

広いフィールド、歓声の中で動いているのはにこと神奈のみ。

しかし、それを待っていましたと言わんばかりの声援

 

 

にこ「―――っっ!!」バッ

 

イチノセ(来る!!!!)

 

先に動いたのはにこ。

距離を詰め、至近距離で持ち前のテクニックにより翻弄しようと考えていた。しかし、

 

 

にこ(…ふーん、動かないのね)

 

イチノセ「……」

 

神奈は敢えて動かなかった。

距離を詰められたら距離を離し、射程範囲内から逃れるのが普通だが、この場合。

距離を離そうとした瞬間ににこが抜きにかかってくることを神奈は察していた。

ならば、待ってやろう。

わざわざ―――相手が攻撃範囲内に飛び込んできてくれるのだから

 

 

イチノセ「っっ!!!!」バッ

 

にこ「!?」

 

にこが神奈との距離を詰めた時だった。

突然、神奈はその場で激しいダンスを踊り始めたのだ

 

 

月「ダメだにこさん!それ以上は…!!」

 

月が咄嗟に叫んだ時にはもう時すでに遅し。

神奈のダンスは炎のように燃え盛り、溢れ出たオーラがにこを取り囲んでいたのだ

 

 

イチノセ「【フレイムダンス】」

 

にこ「ディフェンス、技…」

 

シュート技だけでなく、ディフェンス技まで持っているのか…自分とはまるで違う。

ドリブル技しか持たない自分とは、まるで、広さが違う。サッカーの可能性の

 

 

イチノセ「私の勝ちだね!!!!」

 

にこ「――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズババババババッッ!!!!!!

 

 

A『なっ!?』

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

アメリカ「「「!!!!??」」」

 

 

 

イチノセ(空気を―――斬るような音――)

 

 

ひとつだけ言っておく。

サッカーの可能性は神奈の方が広いが、この勝負にこが負けるとは――――――

 

 

にこ「【ファンタスティックキープ】」

 

 

――――――誰も言っていない

 

 

A『ぬ、抜けたぁぁ!!矢澤にこ、"フレイムダンス"を完全に躱しイチノセ選手を突破!!』

 

剣城『今の動き…瞬間的な判断で出来るものではないですよ…』

 

 

イチノセ「―――」

 

 

完全にやられた

 

 

にこ「神奈もやったでしょ?必殺技を躱すの」

 

だが、次元が違った。

フレイムダンスの炎を、全て、躱された。

どこから炎が襲いかかるのか最初から分かっていたかのように。

先をゆく動き。不覚にも躱されたのに―――魅せられてしまった

 

 

にこ「前線!!上がりなさい!!」

 

マーク「くっ…アメリカ!守りを固めて!」

 

 

あの時もそうだった。

矢澤にこと出会った時も。

 

『優勝はニコーーーヤザワーー!!!!』

ワアァァァァァ!!!!!!

 

大会前に不良から助けてもらった…その時から、格の違いを思い知らされた。

洗礼された動き、完璧なキレ、観客を魅力するオーラ。全てが…負けていた。

私たちはフリースタイルフットボールの大会に来ているのに、ストリートダンスで差を知った?違う。フリースタイルでもだ。

 

矢澤にこの優勝で幕を閉じたフリースタイルの大会後、私は矢澤にこに追いつこうと死に物狂いで特訓した。

それからだよ。私が"フィールドの魔術師"と呼ばれるようになったのは。

ただ純粋に、勝ちたかった。

あの時魅せられた感情を、にこにも魅せてやりたい。悔しかった。いつまでも矢澤にこの下にいるのは嫌なんだ

 

 

千歌「ルビィちゃん、決めて!!」パス

 

ルビィ「うん!はぁぁぁぁ!!!!」

 

 

A『炎がボールに集まる!!これは黒澤ルビィの挨拶がわりのシュートでしょうか!?』

 

 

ルビィ「【Awaken the Fire】!!」ドガアァン!

 

グラウンドを焦がし、真っ直ぐ一直線に突き進むシュート。

この威力ならば充分、ゴールは狙えるが、そんなシュートを遮る壁が現れる

 

 

ドモン「【ボルケイノカットV2】!!」

 

ルビィ「!!」

 

月「威力を落としてきた…」

 

マグマ吹き出す壁により威力が落ちてしまったシュート。ゴールに辿り着くも、その時には既に消えかかったロウソクの炎と同じ

 

 

キッド「【フラッシュアッパー】!!」ドン!

 

ルビィ「止められちゃった…」

 

 

A『GK キッド選手止めたぁぁ!!サニデイジャパンも得点ならず!!』

 

剣城『ドモンがいい仕事をしましたね』

 

 

ドモン「…絶対に負けられないの」

 

ルビィ「ルビィたちだってそうだよ。勝つから」

 

アメリカ代表の試合記録の中で目立つのは得点の多さ、そしてシュートブロックである。

一之瀬神奈と同じ、日本人である土門飛鳥。

ほとんどのシュートにブロッカーとして関与し、失点を最小限に抑えてきた。

一見、ディフェンス層が目立たないアメリカではあるが、隠れた伏兵がいた事がはっきりとした

 

 

ディラン「ドモンもヒートアップしてきてるね…!ミーたちもガンガン行こう!!」

 

マーク「ええ!勝利は私たちが掴む!」

 

 

穂乃果「…すごいな、やっぱり決勝トーナメントはレベルが高い」

 

アメリカの攻撃、とても強力なものだった。しかしアメリカの攻撃と言っても選手1人に攻め込まれての状況。

もし、アメリカがチームで攻撃を仕掛けてきたら…その予想はすぐに現実となる

 

 

イチノセ「マーク、こっち!」

 

英玲奈「ボールは渡さない!」

 

マーク「ミケーレ!」パス

 

英玲奈(なっ、最初から囮のつもりで…!)

 

マークの反応、体の向きは完全に神奈へとパスを出す動きだった。しかし、マークがボールを渡したのは別の選手

 

 

ミケーレ「カンナ!」パス

 

イチノセ「よしっ!」

 

 

A『ミケーレ選手がダイレクトで繋ぎます!ボールはそのままイチノセ選手へ!!』

 

 

ことり「【ワンダーゾーン】」

 

イチノセ「!!」

 

 

A『おおっと!?イチノセ選手の前に立ちはだかるのは南ことり!!』

 

剣城『絶対支配領域を発動していますからね…このままボールを貰ったら飛び込んでしまいますよ』

 

ミケーレから出されたボールはまだ神奈には渡っていない。しかし、ことりがいち早く神奈の進行方向へ、"ワンダーゾーン"を仕掛けることにより神奈を確実に仕留める

 

 

イチノセ「分かってたよ…!"ワンダーゾーン"が来るの!」

 

ことり「え、」

 

神奈はミケーレのボールを躱す

 

 

A『イチノセ選手がパスをスルー!!その奥で走るのは!!!』

 

 

ディラン「ナイスパス!!」

 

 

A『北中米地区予選得点女王、ディラン・キースだぁぁ!!』

 

 

ことり「そんな…!?」

 

千歌「全部、読まれてた…」

 

ユニコーンのパス攻撃に翻弄されるサニデイジャパン。神奈を警戒するあまり、ほかの選手への注意が散漫する―――それは全て、アメリカの戦術

 

 

マーク「ディラン!シュート撃てる!」

 

ディラン「喰らえ!!」ドォン!

 

穂乃果「!!(右斜め…)」

 

ゴールの右上目掛けてシュートが放たれた。

今から飛べば間に合う。

そう考えた時には既に、穂乃果の右手はボールを殴っていた

 

 

穂乃果「っっっっ!!」ドガッ!

 

 

A『高坂穂乃果のパンチングが決まった…いや!?』

 

 

穂乃果「!!!!」

 

 

 

 

 

イチノセ「【ペガサスショット】!!」ドガアァン!

 

 

A『イチノセ選手の追撃!!!!これは強力だぞ!?!?』

 

 

ディラン「いけ!!カンナ!!」

 

マーク「そのままゴールだ!!」

 

 

先程殴り飛ばしたボールが―――すぐに自分の横を通り過ぎたのが分かった。

これがフィールドの魔術師…まるで魔法のように、ボールが動いて―――ゴールに飛び込もうとする―――

 

 

千歌(穂乃果さんっっ!!)

 

ことり(穂乃果ちゃん…!)

 

月(穂乃果ちゃん!)

 

 

 

 

――――――だが、

 

 

 

 

 

ドゴッッッッッッ!!!!!!!!

 

 

イチノセ「!?!?」

 

マーク、ディラン「「!!!!」」

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

 

 

魔法にも負けない…気持ちでっっ!!!!

 

 

 

穂乃果「ゴットパンチっっっっっっ―――

 

 

 

勝つ!!!!絶対に勝つ!!!!!!

 

 

 

――――――エェェェェックス!!!!!」メキメキメキ!!

 

 

メキメキメキ!!!!とボールが悲鳴をあげる。

穂乃果の渾身のパンチがボールを曲げ潰し、同時に、Xの刻印をボールに刻む

 

 

 

穂乃果「ぬうぅぅぅぅりゃあああ!!!!」バキィィン!!

 

 

マーク「く、空中で必殺技を…」

 

イチノセ「高坂穂乃果…これが、太陽の守護神…!!」

 

 

A『高坂穂乃果防いだ!!!!完全に決まったと思われたシュートでさえ、空中でさえ、高坂穂乃果には関係ないのか!?!?』

 

剣城『空中であれだけのことができるGKは…なかなかいませんよ。確実にパワーアップしていますね』

 

 

イチノセ「ハァハァ…さすがだね」

 

穂乃果「守るったら守る。勝つったら勝つ…だよ」ビリビリ

 

 

 

両チームの心がぶつかり合う

 

 

日本 0-0 アメリカ

 

 





なんやかんやで公式戦で穂乃果ちゃんはGK久しぶりですね

ご感想、よろしくお願いします。お気に入り登録してくれた方ありがとうございます!!



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第3章 112話 「アメリカ戦 "信頼して、まっすぐ"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。

ここで少しお願いがあります。ラブライブとイナイレのクロスオーバー、好きな方。苦手な方。どちらもいることは重々承知。苦手だという方の意見も理解しているつもりです。ですが、このお話は輝こうサッカーで!を楽しんで読んでもらう方へと書いていますので、そんな方たちが見たり書いたりする感想欄には「ラブライブとイナイレのクロスをよく思わない」ような感想は書かないようにお願いします。
ですが、批判的な感想もちゃんと受け入れるつもりですので、そう言った感想はTwitterのDM(作者のページにアドレスあり)、またはハーメルンの個人メールでお伝えください。決して、送ってくるなとは言っていません。楽しんでいる方に見てもらいたくないので…ということですので、これ以降、そのような感想がハーメルンの感想欄に来た場合には削除する可能性があります。ご理解とご協力をよろしくお願いします。




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに始まった決勝トーナメント初戦、アメリカ代表ユニコーンとの試合。にことアメリカ代表との過去。そして一之瀬神奈の負けられない想い。

ユニコーンの連携攻撃に翻弄されるサニデイジャパン。しかし、穂乃果のスーパセーブが失点を許さず、前半は未だに両チームとも得点出来ていなかった

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

理亞「あいつら…かなり強い」

 

果南「うん、ほんの一瞬の隙も許さずにゴールに襲いかかってくる」

 

美奈「やっぱりチームの中心は神奈ちゃんね。あの子の動きは敵味方、どちらにも影響を与えるわ」

 

真恋「彼女を封じることが勝利のカギね」

 

美奈「そのための特訓だからね…さ、梨子ちゃんたちはいつ仕掛けるのかしら」

 

 

 

A『さあ、ユニコーンのスローインで試合再開です!!』

 

 

ショーン「マーク!」

 

にこ「させっっない!!」ズザーッ!

 

マーク「何っ!?」

 

 

A『矢澤にこが死角からスローインボールを奪う!これは回避できません!!』

 

 

イチノセ「マーク、私が行く!」

 

マーク「お願い!!」

 

この試合、にこはマンツーマンディフェンスを受けている。その相手が神奈。

にこの攻撃には神奈による制限がかけられるのだが、それでも恐ろしいことがある

 

 

にこ「千歌!梨子!2人も上がりなさい!!」

 

千歌、梨子「「はい!!」」

 

イチノセ(なぜ……にこは私にマークされているのに、こんなにも余裕で――――――

 

 

にこ「よそ見!?甘いわよ!!」パス

 

イチノセ「し、しまった!!」

 

 

A『矢澤にこがイチノセ選手を引き付けパス!!受け取ったのは雷虎!!』

 

 

凛「【イナビカリ・ダッシュ】!!」バチバチ!

 

にこは自慢の膨大な体力と絶対の自信で落ち着き、周囲の状況を把握。

例えアメリカの魔術師がマンツーマンで来ようともやることは同じ。

だが、そんな簡単なことを出来る選手は数少ない。やろうとしても出来ない選手がほとんど。そんなプレッシャーの中でも、にこのプレーは変わらないのだ

 

 

イチノセ(これが…私が越えようとしていた選手…)

 

 

凛「遅い!遅い!!遅い!!!」ビュンビュン!

 

 

A『星空凛の電光石火!!誰も止められず、最終ラインが突破されるのも時間の問題か!?』

 

 

ドモン「私に任せて!」

 

凛「無駄にゃ!凛のスピードにはついてこれないよ!」バチバチ!

 

ドモン「…いつ私があなたについて行くって?」

 

凛「―――え」

 

目の前に―――壁が――――――

 

 

 

――――――ドガッッ!!!!!

 

凛「!?!?」ドサッ

 

 

海未「凛!!」

 

あんじゅ「凛ちゃんが止められた…?」

 

 

A『再びドモン選手のナイスディフェンス!星空凛を間一髪で抑えました!!』

 

剣城『完全にドリブルコースを読んでましたね』

 

 

凛「ハァハァ……なん、で」

 

一番驚いたのは凛本人だった。

雷が落ちるような超高速ドリブルが売りの凛のプレー。しかし、コースを読まれ、ボールを奪われてしまった。

何故、ピンポイントでドリブルルート上に技を放つことが出来たのか…

 

 

ドモン「へへっ、動きが分かりやすすぎなんだよ!」

 

 

動きが―――分かりやすすぎ―――そうか

 

 

月「凛ちゃん大丈夫!?」

 

凛「凛が…足を引っ張って、」

 

月「凛ちゃんっっ!!」

 

凛「!?」

 

目が覚めた。今は試合中だ下を見ている暇などない

 

 

凛「ご、ごめんにゃ」

 

月「とりあえず。ドモンには要注意だね」

 

ここまでサニデイジャパンはシュート本数1。思っていた以上にゴールまでが遠い。

にこのドリブルがいかに強力だとしても、日本が守りの時はどうしても劣勢は避けられない

 

 

にこ「流石に…神奈相手にマンツーマンディフェンスは厳しいわね…英玲奈」

 

英玲奈「!」

 

にこ「交代を申し込むわ」

 

 

A『さあ、ユニコーンが一気に攻め上がる!!』

 

 

マーク「スティーブ、回せ!」

 

スティーブ「カンナ!」パス

 

ここに来てにこが自分にマンツーマンでついてこなくなったことに気づいた神奈。

何かの作戦か?それとも攻撃のためのスタミナ温存?どちらだとしてもこのま「にこさんに代わって」

 

イチノセ「!!!」

 

マーク「!!…ついに来たか」

 

 

A『イチノセ選手のディフェンスに入ったのは今、FFIで注目されている選手と言っても過言ではない!!!』

 

 

善子「私が相手よ」

 

イチノセ「くっ…手強いのが来たね…」

 

 

A『サニデイジャパンの最強リベロ!津島善子だぁぁ!!!』

 

剣城『津島選手の共鳴は実力の差関係なく、相手と勝負できるのが最大の武器ですね…イチノセ選手はどう出るか、』

 

 

善子の共鳴は"相手の動きに体が自動で反応し、対応する"というもの。

相手がどんなに速く、どんなに多く、どんなにテクニシャンだとしても。

善子…共鳴の前では無意味

 

 

マーク「カンナ!善子相手だ、無理はしないで!」

 

イチノセ「その方が良さそう、」パス

 

共鳴との相性はかなり悪い。

神奈は迷わずバックパスで戻し、連携によりDFを崩そうと―――

 

 

善子「【Deep Resonance】」ギュン!!

 

イチノセ「!!!?」

 

マーク「なっ!?いつの間、に」

 

それさえも。共鳴されてしまう。

バックパスを高速で奪い取った善子。

共鳴を警戒しての動きだったが、予想を上回る動きでアメリカを困惑させる

 

 

穂乃果「ナイスだよ善子ちゃん!!」

 

 

A『速い!!津島善子がインターセプト!!』

 

剣城『まさか今のバックパスが奪われるとは…ユニコーンは思ってもみなかったでしょう』

 

 

ディラン「アニキといい…善子といい…ジャパンはカンナキラーが多すぎ!!」

 

イチノセ「くっ…今のは完全に私のミス!取り返す!!」バッ

 

善子がそのままオーバーラップで攻撃に参加。サニデイジャパンは先制点を得るために一気に畳み掛ける

 

 

千歌「【ZスラッシュGX】!!」ギュンギュン!

 

チッド「追いつけないっっ…」

 

梨子「千歌ちゃん!こっちよ」

 

千歌「梨子ちゃん!」パス

 

梨子は考えた。どうすればドモンのシュートブロック無しでシュートを撃てるのか…

毎回シュートに絡むというデータから考えて、ドモンを直接抜かすか…遠くまで引きつけるか…

 

 

梨子「凛ちゃん!」パス

 

凛「!!」

 

ドモン「ま、まずい…今ドリブルを仕掛けられたら」

 

梨子は前者を選択した。

ロングキックによるサイドチェンジでドモンがポジションを整える前に。

凛のスピードで抜き去る作戦に出た

 

 

梨子(行ける…!凛ちゃん!!)

 

ルビィ(イナビカリなら抜ける…)

 

 

凛「……!!」

 

 

『それを直さない限り…今後は…』

 

 

 

凛「―――あっ!?」

 

梨子「!!」

 

月「凛ちゃん!?」

 

 

A『ああっと惜しい!星空凛、上手くボールをキープできず、ライン外へ!!』

 

剣城『星空選手らしくないミスですね』

 

 

凛「ハァハァ…」

 

 

ドモン「ふぅ…助かった」

 

 

花陽「り、凛ちゃん…」

 

海未「凛…どうしたというのですか」

 

美奈「………」

 

 

頭に染み付いて離れない

 

 

凛「……ハァハァ」

 

 

現実

 

 

月「凛ちゃん、やっぱり調子が悪いね…」

 

 

どうしよう…このままじゃ本当に凛は…

 

 

 

――――――

 

 

凛『…癖?』

 

美奈『そう。凛ちゃんは必殺技を出したり、"イナビカリ・ダッシュ"で直角に曲がる時に右足を強く踏み込んでるの』

 

海未『"タイガードライブ"はともかく…イナビカリもですか?』

 

絵里『気づかなかったけど…』

 

美奈『一瞬だけだからね。分からないのも無理はないわ』

 

凛『分からないなら大丈夫にゃ!』

 

美奈『今はね』

 

凛『…?』

 

美奈監督の言葉の意味を理解したのは…浦の星女学院との決勝

 

 

ルビィ『取った』

 

凛『』

 

あのUTX高校でさえ、凛のスピードにはついてこれず、癖も分かっていなかった。

なのに…浦の星女学院は前半で凛の癖を発見し、イナビカリは呆気なくルビィちゃんに負けた。

 

それから日本代表に選ばれて、癖を直すために頑張って特訓した。

世界の代表たちならば、凛の癖を一瞬で見つけてしまうのでは。力になれないのではと、怖かった。

 

日本代表になってから、凛の成績は大きく下がった。悪い予感が的中し、自分自身、かなり焦っていた。

 

そんな中での言葉だった

 

 

美奈『凛ちゃん、その癖を直さない限り今後の試合、戦っていくのは厳しいわ』

 

 

知ってた。

 

だからアメリカ戦、この試合で結果を出して…チームの戦力になろうと…

でも、緊張で空回りして、ミスを…

 

 

凛「ご、ごめんにゃ…今度は失敗しない」

 

梨子「…」

 

英玲奈「梨子」

 

梨子「はい。凛ちゃん」

 

凛「!!」

 

梨子「私たちに考えがあるの」

 

 

A『さあ、ユニコーンのスローイン!今度は成功させたいところ…!』

 

 

ショーン「ミケーレ!」

 

ミケーレ「よしっ…マーク!」

 

神奈には善子がマークしているため、簡単にはパスが出せなくなった。

しかし、アメリカには頼れる中心メンバーが残っている。その1人であるマークにボールを預け、日本陣形を崩そうと狙う

 

 

マーク「どうやって崩すか…」

 

イチノセ「マーク!!日本が何か仕掛けてる!!」

 

マーク「!?」

 

 

A『こ、これは!?マーク選手が日本の選手に囲まれています!!!』

 

剣城『相手選手が気づけないほどのスピードで完全包囲…あれは、』

 

 

マーク「『四面楚歌の獄』か!?」

 

日本がイタリア戦で初めて発動した必殺タクティクス「四面楚歌の獄」。

1人の選手を円状に包囲することにより、逃げ場をなくすディフェンス技となっている

 

 

聖良「残念ですが、"四面楚歌の獄"ではありません」

 

英玲奈「いくぞ…練習の成果だ」

 

 

A『こ、これは!?マーク選手を取り囲む日本の選手が走り始めました!!!』

 

 

ただの囲みではない。

まるで今にも襲いかかってくる敵がいるような。

敵意をむき出しにした風がマークを中心に渦巻いている。

 

気づくと円は3重に分裂していた。

3人で1組の円を作り、1番中と外が右回り。真ん中が左回りで走り続けていた

 

 

ディラン「マークが捕まった!ボールを奪われるよ!?」

 

イチノセ「…いや、まだだよ」

 

ディラン「??」

 

神奈と同じことを、マークは考えていた

 

 

マーク(この技は未完成だ…3重に囲んでいるのに穴がある)

 

一見、完璧な3重の牢屋に見えるが、1箇所だけボールを外に蹴り出せるルートを見つけた。

おそらく、「四面楚歌の獄」がイタリアの選手に破られ、その後改良したのだろうが…まだまだ洗礼されていないようだ

 

 

イチノセ「マーク!こっちだ!」

 

マーク「ええ!カンナも分かっていたようね!」パス

 

タイミングを合わせ、3重の円の穴が重なった瞬間。マークはボールを蹴り放つ。

ボールはそのまま穴を通り抜け、アメリカの最高のカウンターとして、繋が「貰ったにゃぁぁ!!!」

 

 

マーク「!!!」

 

イチノセ「なっ!?!?」

 

アメリカ「「「!!!!!?」」」

 

 

英玲奈「必殺タクティクス」

 

「「「【奇門遁甲の陣】」」」

 

 

A『なんと!?ボールを取ったのはイチノセ選手ではなく星空凛!!!サニデイジャパンは最初からこれが狙いだったのか!?』

 

剣城『完全に包囲した中で、1箇所だけ逃げ道を作ることにより…相手の油断を誘った…素晴らしい必殺タクティクスですね』

 

 

イチノセ「ま、まずい!?戻るんだ!!」

 

梨子「凛ちゃん!!そのまま走って!!」

 

マークのパスが繋がるのだと確信していたユニコーンの陣形はバラバラ。

凛のスピードならば1人で全員抜きさることも可能。しかし、

 

 

ドモン「私が止める…!」バッ

 

ディラン「ナイス!頼むよアスカ!」

 

先程、凛の高速ドリブルを抑えたドモンが立ちはだかる。

日本のカウンターといっても1対1。やることは何も変わらない。凛の癖とタイミングを合わせ、ディフェンス技を放つのみ

 

 

凛(やるんだ…信じるんだ…!!)バチバチ

 

凛「【イナビカリ・ダッシュ】!!」

 

 

A『星空凛が再びドモン選手に挑んだ!!』

 

 

ドモン「もう一度奪っちゃうよ!」

 

数十メートルと離れていた凛とドモン。

瞬きするころには既に目と鼻の先まで来ているであろうイナビカリ。

そんな凛の動きを、足を、癖を

 

 

ドモン「――――――」

 

凛「―――っっ!!」バチバチ!

 

ドモン(左に曲がる―――

 

 

見抜いて

 

 

 

ドモン「【ボルケイノカッ―――スカッ

 

ドモン「!!!?!?」

 

アメリカ「「「!?!?!?」」」

 

ディラン「What's!?」

 

イチノセ「……抜いた??」

 

 

凛「抜いてやったにゃぁぁぁぁ!!!!」

 

 

A『ほ、星空凛が抜いたぁぁ!!!!得意の直角に曲がるドリブルでドモン選手の逆をつくドリブル!!!!』

 

剣城『先程は上手く捕らえていたドモン選手でしたが、今回は星空選手にやられましたね』

 

 

ドモン「―――っっ!?」

 

ありえない。

ドモンは自分が抜かされたことを会場の歓声の高まりにより理解した。

確かに星空凛の右足は左に曲がる時の向きに踏み込んでいたはず…なのに、彼女は真逆の右に曲がり呆気なく抜かされた。

 

そして、ドモンが1番納得いかなかったことがある

 

 

ドモン(目を……瞑って走ってたよ彼女!?)

 

 

 

A『さあ、星空凛とGK キッドの1対1です!』

 

 

凛(出来た…本当に出来た…!!!)

 

 

 

―――

 

 

 

凛『目を…閉じて??』

 

梨子『ええ。そうすればドモンさんを躱すことが出来ると思う』

 

凛『ち、ちょっと待って?目を開けなきゃいつドモンさんが技を仕掛けてくるか…』

 

英玲奈『その事だが、私に任せてほしい』

 

凛『??』

 

英玲奈『凛は私を信じてイナビカリで、本気で走ってくれればいい』

 

 

英玲奈『あとは私に任せろ』

 

 

 

―――

 

 

 

英玲奈「【ブリクストファイア】。私が凛を操作し、ドモンを抜かしたというわけだ」

 

にこ「操作って…あんたいつそんなに技を、」

 

英玲奈「これは私の【エンペラータイム】の力のひとつだ」

 

にこ「エンペラータイムって…まさか、」

 

UTX高校の必殺タクティクス、「グリッドオメガ」。

強力な突風から竜巻を発生させ、相手チームを一定時間戦闘不能にするタクティクスだが、この技は全員が寸分の狂いもなくタイミングを合わせる必要があった。

 

その為に英玲奈の「エンペラータイム」を利用する。

エンペラータイムの能力2つ。

1つ目は"フィールドにいる選手の身体能力を一瞬で把握する能力"。

2つ目は"仲間を思いのままに操る能力"。

 

グリッドオメガはこの2つ目の能力で味方全員の動きを完璧にコントロールしていたのだ。

そしてその能力で凛を動かし、ドモンの逆をつく

 

 

イチノセ「やられたね…完璧に」

 

アメリカの選手たちは凛を追いかけながらもキーパーに希望を託した。

大丈夫…あなたなら、絶対に止められると

 

 

凛「凛の…シュート!!!」ドオン!

 

地面を強く鳴らし、眠れる虎を呼び起こす。

その地鳴りはまるで咆哮。

体全体を使って蹴り放つ、一撃

 

 

凛「【タイガードライブV3】!!」ドガァン!

 

 

ドモン「キッドっっ!!止めてくれ!」

 

キッド「任せて…【フラッシュアッパー】!!」ドン!

 

ユニコーンもサニデイジャパンと同じ。

国の代表であり、それぞれの想いを胸に戦っている。そんな強固を約束したGK、キッド。そうやすやすとはゴールをやるわけにはいかない

 

 

キッド「はああっっ!!」バキィン!

 

凛「!!!!」

 

 

A『防ぎましたGKキッド!!日本、決定的なチャンスでしたが、ゴールは…

 

剣城『いや、待ってください!?』

 

A『!!!!』

 

 

月「天空っっっっっ―――――――

 

 

A『月詠のストライカー、渡辺月が来たあぁぁぁぁ!!!!!!!!』

 

 

穂乃果「行けー!!月ちゃん!!!」

 

にこ「一発決めてやりなさい!!!!」

 

 

キッド「うそ、でしょ……」

 

 

 

――――落としぃぃぃ!!!!」ドガァン!

 

キッドの必殺技、「フラッシュアッパー」はその名の通り、一度ボールを上空へと打ち上げる。それを待っていましたと言わんばかりに狙っていた月。

空が落ちてくる。

キッドは技を出す暇もなく、落ちてくる空が横を通り過ぎるのをただ、呆然と見ていた

 

 

――――――バシュウゥゥゥン!!!!

 

ピピーッ!!

 

 

A『決まった!!ゴールです!!先制点はサニデイジャパン、渡辺月!決定的なチャンスをモノにし、日本が前半でリードしました!!』

 

 

 

美奈「それでいいのよ。凛ちゃん」

 

花陽「美奈監督…」

 

美奈「1人では限界なことも、仲間とならその先へ行ける。1人のプレーだけでこの先、世界と戦っていくのは厳しいけど、」

 

美奈「あれなら、まだまだ行けるわ」

 

 

 

 

にこ「どう?これが日本のサッカーよ」

 

マーク「そのチームワーク…流石だね。面白くなってきたよ!」

 

 

作戦に次ぐ作戦により日本先制。

しかし、試合はまだまだ終わらない

 

 

日本 1-0アメリカ

 

 





奇門遁甲の陣
イナズマイレブンGOのクロノストーン編で登場した必殺タクティクスです。発動者はミキシトランスした雨宮太陽君で、説明は作中にあった通りです。

ブリクストファイア
英玲奈さんが凛ちゃんを「エンペラータイム」で操り、癖とは逆をつくドリブルで相手を躱す必殺技となっています。凛ちゃんの癖を見抜いた敵に対し、強力な力を発揮してくれます。ちゃっかり全てを見抜いた梨子ちゃん、やっぱりやばい



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第3章 113話 「アメリカ戦 "走りきった先"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回は短めですが許さてください


 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

凛は自分の癖を見抜かれ、自分の実力不足に焦りを感じていた。そんな中で梨子と英玲奈が提案した必殺技「ブリクストファイア」。

特訓を続け、ついに発動した必殺タクティクス「奇門遁甲の陣」に続き、凛が英玲奈を完全に信じることにより必殺技を成功させる。

そのまま月が押し込み、日本が先制点を獲得したのである

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

月「凛ちゃん、最初から止められること知ってたでしょ?」

 

凛「うん、凛はまだまだ力不足だから…でも月ちゃんなら絶対に決めてくれると思ってたにゃ!」

 

月「凛ちゃん…」

 

凛「でも、凛はもっともっと練習して…いつかシュートとドリブルも完璧にしてみせるにゃ!!」

 

月「うん。凛ちゃんなら出来るよ」

 

月もまた、美奈と同じく確信していた。

凛は今よりもさらに強くなる。時間はかかるかもしれないが、それでも。

もし、凛が今の自分の技を完璧にコントロールし…進化することが出来れば…

 

自分たちの後輩、次の世代は確実に芽吹き始めている。

ルビィ、理亞、善子、凛…そして今の中学生たちも。彼女たちは自分たちとはまた別の挑戦をすることになるだろう…

 

 

月「それはまた別の話だけどね♪」

 

千歌「つ、月ちゃん?」

 

月「何でもないよ!さ、戻ろう」

 

 

A『さあ、サニデイジャパンが1点リードしましたが、剣城さんはどう見ますか?』

 

剣城『そうですね…渡辺選手が押し込めることが出来たのは、必殺タクティクス…そして星空選手の高速カウンターがあったからです。カウンターでなければ押し込むことは難しかったでしょう』

 

A『ユニコーンもこのまま黙って前半を終えるとは思えないこの試合。間もなく試合が再開します!!』

 

 

 

ー 観客席 ー

 

夜「さっすが我が娘!!目の前のチャンスを逃さない!あっぱれよ!!」

 

弥生「"奇門遁甲の陣"も成功させましたね…これで第二段階目クリアですか」

 

夜「このままリード出来ればいいけど、そう簡単には行かないよね」

 

弥生「今は神奈選手を善子さん、にこさんが抑えていますが…さあ、どこまでもつか」

 

 

 

 

美奈「……ツバサちゃん。曜ちゃん。準備しておいてね」

 

曜「は、はい!」

 

ツバサ「…誰とですか?」

 

美奈「凛ちゃんと英玲奈ちゃんよ」

 

あんじゅ「でしょうね。あの2人飛ばしすぎだもん」

 

美奈が前半で交代の準備を始めた。

理由はフィールドを見れば歴然

 

 

英玲奈(ふぅ…やはり体力が無くなってきたな)

 

凛(ちょっと…キツいにゃ)

 

英玲奈の"エンペラータイム"は強力な必殺技だが、その分、体力の燃費が悪い。

試合中発動出来るのは最大2回。また、操る選手が高速ドリブルをしていたため、消費する体力もそれに比例していた。

そしてさらに追い打ちをかけたのが"奇門遁甲の陣"。

凛は緊張による無駄な動きにタクティクスの披露がプラスされ、いつもよりも早くバテてしまっていた。

 

しかし、"奇門遁甲の陣"の発動でバテてしまう危険性があるのはこの2人のみならず。

 

フィールドにいる全員がその可能性を持っているのだ

 

 

マーク「ディラン!善子には近づかないでよ!」パス

 

ディラン「OK!」

 

神奈は未だに善子のマンツーマンディフェンスを受けている。

神奈を警戒するのは当然の事だが、マークたちは思う。確かに日本はディフェンスも手強いものだ。しかし、自分たちが警戒しているのは善子とにこ

 

 

ディラン「勝負だ!ワンダーガール!」

 

ことり「!!」

 

善子が神奈を抑えるということは―――神奈が善子を抑えるということ

 

 

ことり「【ワンダーゾーン】!!」

 

 

A『出ました!!南ことりの"絶対支配領域"!それをディラン選手は…』

 

 

ディラン「スティーブ!」パス

 

ことり「えっ!?」

 

 

A『パスで躱します!南ことりをギリギリまで引きつけてのパス、これは奪えない!!』

 

 

ディラン「Sorry!あなたとの勝負は勝ち目無さそうだからね」

 

ことり「(このままじゃ突破される…)聖良さん!!」

 

善子は神奈から離れるわけにはいかない。

ここは聖良の助けを借り、アメリカのこれ以上の侵入を食い止めなければならない。

聖良はすぐにスティーブのディフェンスに入る

 

 

スティーブ「でりゃっ!」バシッ

 

聖良(打ち上げた!?)

 

聖良が迫ったため接近戦を避けた?

上へと逃げるつもりなのか?ならばスティーブよりも先に―――

 

 

にこ「穂乃果っっ!!構えなさい!!」

 

穂乃果「!?!?」

 

 

ディラン、マーク

「「【ユニコーンブースト】!!」」ドガアァン!

 

 

聖良「そんな!?シュート!?」

 

ことり「あれは逃げたんじゃなくて…センタリング!!」

 

 

A『ディラン選手とマーク選手のシュートだぁぁ!!高坂穂乃果はすでに飛び出している!!』

 

 

穂乃果「【ゴットハンドX】!!」ドォン!

 

にこがいち早く知らせてくれたことにより、"ゴットハンドX"発動を間に合わせることが出来た穂乃果

 

 

穂乃果「っっっっ!!!!」ググググ

 

天界、魔界との試合で確実にレベルを上げた今なら…世界の強烈なシュートとも―――

 

 

穂乃果「!?!?」

 

―――戦えると、確信した時だった。

ボールに…手応えに変化が

 

穂乃果(待って!?ヤバい…スピンが強い!?)

 

ギュルギュルギュル!!とグローブと擦れる音。まるでそのまま削り進もうとしているかのような回転。

穂乃果は気づいた。最初から…このシュートは決めに来ていない!!

 

 

穂乃果「あっ!?」バチン!

 

 

A『シュートが自ら弾かれ上空へ!!高坂穂乃果、シュートを防いだか!?』

 

 

ディラン「まだだよ!」ドガァン!

 

穂乃果(間に合わ―――

 

体勢を崩してしまった。

"ユニコーンブースト"は最初から穂乃果のバランスを崩すために、威力を捨ててスピンを強くしてきたのだ。

そこに追撃をかけるディラン。

やられたなぁ…穂乃果の横を通り過ぎるボールは―――ゴールへ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"バチッ"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが聞こえた

 

 

 

 

梨子(今の―――音って―――)

 

 

 

 

何かが弾けたような、散ったような。

すぐ横で。

何かが、走り抜けたような

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――「たあああっっ!!!!」バキィン!

 

 

ディラン「なにっっ!?!?」

 

マーク「!!!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

穂乃果「―――!!」

 

穂乃果のすぐ後ろに。

気づいた時には選手が1人。

地面に倒れ込むことも顧みずに、本来、そこにいるはずのない選手が―――

 

 

穂乃果「凛…ちゃん…!!」

 

凛「っっ!!」ドサッ

 

 

A『星空凛が防いだぁぁ!!!!なんということでしょう!!先程まで前線で待機していたFWが、今まさに失点してしまう瞬間、ボールを外へと蹴りだしました!!』

 

剣城『どう考えても…前線から走ってきたとしか』

 

 

マーク「そ、そんな…どうやって??」

 

凛「ハァハァ…にこちゃんが叫んでくれなかったら、反応できなかった…」

 

アメリカの攻撃を一部始終見ていた凛。

マークとディランがシュートを放とうとした時、にこが叫び。

何かあると感じた凛は「イナビカリ・ダッシュ」で穂乃果の元へと急いだ

 

 

凛「ディランさんが…シュート撃った後にまだ走っているのが気になって…走って正解だったにゃ…」

 

穂乃果「た、助かったよ……」

 

 

ピーーーッ!!

 

 

A『ここでサニデイジャパン、選手の交代をするようです!!先程、日本のゴールを死守した星空凛に代わり綺羅ツバサ。司令塔 統堂英玲奈に代わって渡辺曜が入ります!!』

 

剣城『"ゴッドストライカー"が出てきましたね…驚異的な突破力とシュートに注目です』

 

 

花陽「凛ちゃん…!凄かったよ!」

 

真恋「あのプレーが無ければ確実に失点してたわね」

 

凛「ハァ…ハァ…」

 

凛はベンチで冷静に考える。

もしあと1秒でも、あと0.1秒でも遅れていれば同点だったかもしれない…

そう考えるほど、先程までの自分の行動が信じられなかった。

ほとんど、無意識に体を動かしていた

 

 

英玲奈「あとは梨子に任せる」

 

梨子「任せてください」

 

 

 

ディラン「ゴッドストライカーが来たよ!?」

 

マーク「さらに厳しくなったね…カンナ!どうする?」

 

イチノセ「…使うかもしれないね」

 

ツバサの実力が相当なものだということはアメリカ代表たちも理解している。

まだまだ経験不足の1年生からエリート選手に代わるだけでも状況は大きく変わる

 

 

月「頑張ろうね!曜ちゃん、ツバサさん!」

 

曜「ヨーソロー!」

 

ツバサ「ええ。狙うは2点目よ」

 

 

FW……渡辺月、黒澤ルビィ、綺羅ツバサ

 

MF……………渡辺曜、高海千歌☆

 

MF……………桜内梨子、矢澤にこ

 

DF………南ことり………………鹿角聖良

 

DF……………………津島善子

 

GK…………………高坂穂乃果

 

1-2-2-2-3

 

 

 

A『ユニコーンのコーナーキックから試合再開です!!』

 

 

蹴るのはマーク。

確実に何か仕掛けてくる…しかし、先程の"ユニコーンブースト"はマークがいないため撃ってはこないだろう

 

 

穂乃果「マンツーマンしっかりー!」

 

善子「逃がさないわよ」

 

イチノセ「……」

 

 

マーク「行くよ!」

 

 

A『さあ、マーク選手は誰に蹴るのか!?』

 

 

直角に区切られたラインから蹴られたボールは流れるように選手たちが密集するペナルティエリア内へ

 

 

ショーン「行って!!カンナ!」ガシッ

 

スティーブ「善子は私たちが!!」ガシッ

 

善子「ちょっ、離しなさいよ!?」

 

それと同時にアメリカは動いた。

神奈につく善子を選手2人で強引に抑え込む。その間にボールに飛び込む神奈

 

 

にこ「ちょっ、あんな至近距離で撃たれたら…!!」

 

イチノセ「はあぁぁぁっっ!!!!」

 

 

―――バキィィィィン!!!!

 

 

イチノセ「なっ!?」

 

穂乃果「―――知ってた!!!!」

 

ボールに飛び込んでいたのは神奈と―――穂乃果

 

 

A『高坂穂乃果がイチノセ選手よりも先にボールを触った!!パンチングで弾きます!!』

 

 

千歌「ボールは渡さないっっ!!」

 

ディラン「せっかくのチャンスが…!」

 

千歌とディランが競り合い、ボールを勝ち取ったのは千歌。

にこに鍛え上げられたボールキープでカウンターに持っていこうとする

 

 

マーク「まずい!!ジャパンはカウンターが得意だ!!」

 

千歌「ルビィちゃんっっ!!」パス

 

 

A『高海千歌のロングキック!一気にチャンスはサニデイジャパンへ!!受け取ったのは"紅き流星"黒澤ルビィだぁぁ!!』

 

 

ルビィ「次は抜いてから撃つ」

 

前線でいつボールが来ても攻撃できるように構えていたため、すでにドリブルを始めていたルビィ。

行く手を阻むのはアメリカのDF4人

 

 

ルビィ「ついて来れないよ」ググググ

 

前のめりにしゃがみこみ、極限までパワーを溜めてのロケットスタート

 

 

ルビィ「【スプリントワープGX】」ギュン!

 

トニー(速い!?!?)

 

ダイク(イナビカリよりもスピードが…)

 

聞こえるのは地面を蹴る音だけ。

ボールとルビィは駆け抜ける風のように。追うどころか、動くことさえ許さないスピード

 

 

ルビィ「あと2人」

 

 

A『黒澤ルビィのドリブルを捕らえるのは不可能に近い…!しかし彼女は黙っていません!!』

 

 

ルビィ「……どいてください」

 

イチノセ「そういうわけにもいかないね」

 

ルビィの目の前にいるのは"フィールドの魔術師"。その目に迷いはなく、ただボールを取り返すために立ち塞がる。

ルビィは最初に抜かされた時に感じた威圧感を忘れていなかった

 

 

イチノセ「!!」バッ

 

何度も向けられてきた純粋な敵意。

勝ちたい、負けたくない、という気持ちのぶつけ合い。

過去に後悔したからこそ、今は―――この瞬間だけは―――

 

 

 

 

ボオォォォッッッ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

―――後悔したくない

 

ルビィ「【Awaken the power】」ゴゴゴゴゴ

 

イチノセ「!?!?」

 

イチノセ(黒澤ルビィの…本気)

 

 

 

目覚めるパワー。膨らむオーラ。

 

 

 

ルビィ「勝つ。それだけだよ」ゴゴゴゴゴ

 

 

 

ー灼熱が動き出すー

 

 

日本 1-0 アメリカ

 

 





矢澤パイセンレベルの選手を抜かせるのかルビィちゃん


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第3章 114話 「アメリカ戦 "フィールドの魔術師"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回は前半終了でハーフタイムまで行きます。セリフ文が増えます




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

先制点を奪い、ギリギリながらもアメリカの攻撃を抑える日本。凛と英玲奈を交代し、ツバサと曜を投入。

カウンターを仕掛けるルビィ、立ち塞がる神奈。後悔したくない気持ちが…ルビィの心を熱くする

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

本当に焼かれると、錯覚してしまうほど

 

 

ルビィ「………」ゴゴゴゴゴ

 

 

炎に限りなく近いオーラ。

 

映像では何度も見た。世界の名のある選手たちと対等、それ以上の戦いを見せていた。

見た目小さくか弱い少女だと舐めてかかってはいけない―――止まらないんだ

 

 

イチノセ「…!!!!」

 

 

 

震えが、止まらない

 

 

ルビィ「勝つ。それだけだよ」ゴゴゴゴゴ

 

武者震いであって欲しいが、それだけで済むほど事態は甘くないようだ。

自分が積み上げてきたもの全てをぶつけ、黒澤ルビィを…今ここで止めなければならない

 

 

イチノセ「【フレイムダンス】!!」バッ

 

先程、DF2人を一瞬で抜き去った「スプリントワープ」。発動されればひとたまりもないが、その前に。動かれる前に動く。

激しいダンスにより生み出された炎のオーラ。それがルビィに襲いかかり、ボールをうば――――――

 

 

ルビィ「っっっっ!!!!」ボオォォォッッッ!!!!

 

イチノセ「」

 

アメリカ「「「!?!?」」」

 

 

今のは―――何が起きた??

 

 

マーク「……カンナの炎が」

 

ディラン「…消された?」

 

消された。「フレイムダンス」の炎が、ルビィの炎により…吹き飛ばされ、掻き消され…

 

 

ルビィ「そんな炎じゃルビィからは奪えませんよ」ゴゴゴゴゴ

 

イチノセ(ATPのオーラを高めた…時の爆風で、)

 

空気を取り込んだ炎。

ガソリンを得た炎のように、自身のATPのオーラを瞬間的に高めることにより。

その衝撃と熱で「フレイムダンス」をかき消したルビィ。

1歩も動くことなく、魔術師相手に魔法のような力で。神奈がボールを奪う術を失わせつつあった

 

 

イチノセ(でも…私が抜かれれば後はない…!!ここでルビィを止めなきゃ…)

 

イチノセ「【フレイムダンス】!!」バッ

 

 

A『イチノセ選手、再び必殺技を発動!!まだまだ諦めてはいません!!!!』

 

 

ルビィ「……」ゴゴゴゴゴ

 

奪えないと分かって時間稼ぎを始めたのか…ルビィは再びATPのオーラを高めようとするのと同時に、「スプリントワープ」で抜き去る準備を始めた。

せっかくのカウンターを無駄にするわけにはいかない。

エースストライカーとして、代表として、圧倒的なシュートで「ルビィちゃん!!!!」

 

ルビィ「!?」

 

 

A『こ、これは!?!?』

 

 

月の声でやっと気づいた

 

 

ドモン「よそ見しすぎじゃない?」

 

ルビィ「―――」

 

ルビィ(フレイムダンスは囮…視界を…)

 

しかし、気づいた時には手遅れ。

ドモンがスライディングでボールを奪う瞬間だった

 

 

A『う、奪いました!!イチノセ選手とドモン選手の連携により、ボールはユニコーンの元へ!!!!』

 

 

ルビィ「っっ!?!?」バッ

 

「フレイムダンス」のオーラで出来た死角からドモンが飛び込んできた…全く気配を感じず、神奈を見てもそのような意思を伝えたようには見えなかった。伝えていたなら気づいていたはずだ。

取られたボールを取り返すため、ルビィはすぐにドモンとイチノセに接近するも、

 

 

ドモン「あとは任せた!!」

 

イチノセ「ええ!」スカッ

 

ルビィ「」

 

ルビィ(ATPでも…奪えない…)

 

 

イチノセ「そんなディフェンスじゃ私からは奪えないよ」

 

 

 

理亞「ルビィのやつ…!!調子に乗って油断するから!!!!」

 

ダイヤ「それもありますが…何よりもあの連携」

 

美奈「そうね。なんの会話も、アイコンタクトも無しであれだけの連携プレーが出来るのはそう簡単じゃないわよ」

 

善子のマンツーマンが始まってから、神奈のドリブルはほとんど封じられたのに近かった。

しかし、神奈が自分からボールを奪い取ることにより、今こうして。

フィールドの魔術師の力を存分に発揮することが出来る

 

 

にこ「ルビィを抜くなんてね…やるじゃない」

 

イチノセ「次はあなただよ!!」バッ

 

ドリブルではにこが勝利しても異論を唱えるものは多くない。

それほどまでに矢澤にこのキープ力は凄まじく、瞬間的な判断力がある訳だが、それは

 

 

イチノセ「っっ!!!!」シュババッ!

 

にこ(こいつっっ!?!?)

 

 

ドリブルの時の話

 

 

にこ("ダブルタッチ"と見せかけての"高速シザース"!!!!)

 

にこ(にこでもキツい技をあっさりと!!)

 

 

A『あの矢澤にこも躱します!!!!巧みなボール捌きに、さすがのにこ選手も引っかかるしかないのか!?』

 

剣城『今のイチノセ選手はフェイント技Aと見せかけて、フェイント技Bを使っていましたね。あれは誰でも騙されます』

 

 

にこ「あんたたち!!必殺技を躊躇わずに使って止めなさい!!でなきゃ神奈からは奪えないわよ!!!!」

 

日本「「「!!!!」」」

 

その言葉は良くも悪くも、にこが呆気なく抜かされたことにより信ぴょう性を高めた。

神奈を止めるには必殺技しかない

 

 

チカ「【Braveheart】」

 

イチノセ「あれが…闇のチカラとゾーンの」ゾクッ!!

 

神奈たちアメリカが知る「Braveheart」のデータは日本VSイタリア戦のラスト。

高海千歌が闇の力とゾーンを混ぜ合わせ、発動させた力。あのイタリアディフェンスを圧倒した時には冷や汗が出た。

しかし、

 

 

イチノセ「―――!!」トトン

 

チカ(あの足の動き…股抜きされ―――

 

にこ(違う!!!!!!)

 

 

イチノセ「3人目」

 

チカ「ぇ、」スカッ

 

にこ("プルバックダブルタッチ"…さっきのフェイントの上位互換…)

 

ルビィ、にこ、千歌を抜くのに使用したフェイントはどれもにこたちのようなプロから見れば初級に近いテクニックではある。

しかし、技の精度がはっきり言って違う。

 

初級のテクニックが、まるで上級の難易度の動きに見えてしまう

 

 

チカ(これが、魔術師……)

 

イチノセ「まだまだっっ!!!!」

 

 

マーク「カンナに続いて!!畳み掛けるよ!!」

 

神奈がパスを出すことなく、1人で相手と勝負することにより。ほかのアメリカの選手はその間に攻め、陣形を整える

 

 

イチノセ「このっっ!!」シュババッ!

 

曜「うわっ!?」スカッ

 

イチノセ「スティーブ!」

 

梨子「パスは出させ―――

 

イチノセ「なんてね」バッ

 

梨子(なっ…"クライフターン"!?)

 

ディラン「パスフェイクもキレッキレだね!!」

 

まるで自分たちの動きが全て読まれているかのように。裏をかかれ、騙され、躱され。

気づけばサニデイジャパンはピンチに陥っていた

 

 

イチノセ「行くよ」バッ

 

穂乃果(シュートが来る!!)

 

イチノセ「【ペガサスショット】!!」ドガァン!

 

勢いよく放たれたシュート。

強力ではあるが穂乃果ならば止められないシュートではない。しかし、

 

 

マーク、ディラン

「【ユニコーンブースト】!!」ドガアァン!

 

穂乃果「!!」

 

 

ルビィ「シュートチェイン…」

 

月「まずいね、あの威力」

 

 

穂乃果「―――!!」バッ!

 

この試合1番の威力であることは間違いない。

しかし、日本優勢の勢いを止めたくはない。穂乃果は怯むことなく飛び出し、巨大なオーラで迎え撃つ

 

 

穂乃果「【ゴットハンドX】!!」ドォン!

 

ぶつかった瞬間。

サニデイジャパンの選手たちは確信した。

止められる、と。

これまでに何度も砕かれてきたゴットハンド。その度に強度を高め、進化し、チームの危機を救ってきた。

穂乃果はスペイン戦の時とは見違えるほどに強くなっている。

このシュートも強力だが、今の穂乃果ならば確実に止められる。今の調子ならば…絶対に、

 

 

 

―――ビリビリ!!!!

 

穂乃果「ぐあっっ!?」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

真恋「…!!穂乃果ちゃん、まさか…」

 

美奈「…まずいわね」

 

 

A『おおっと!?高坂穂乃果が押され始めた!!』

 

剣城『パワーが落ちているようにも見えますね』

 

 

最悪のタイミングで、それはやってきた

 

 

ツバサ「…"ゴットハンドX"の反動」

 

にこ「穂乃果…!!完璧じゃないのに連発するから!!」

 

確かに。穂乃果はパワーアップしている。

「ゴットハンドX」の反動も前に比べると少なくはなって来ている。

しかし、小さな反動でも蓄積すれば雷に撃たれたような激痛となり襲いかかる

 

 

穂乃果(やばいやばいやばい痛いやばい!!)ビリビリビリ

 

空中で発動するなど、通常よりも負荷のかかる発動の仕方も原因の1つ。

どちらにしろ、

 

 

 

―――バリイィィィィィン!!!!!!

 

穂乃果「うわあああ!?」

 

 

ピピーッ!!!!

 

振り出しに戻ったことになる

 

 

A『ゴール!!!!アメリカ追いつきました!イチノセ選手のドリブルからの一斉攻撃でチャンスを作り、最後はチェインシュート!ディラン選手とマーク選手のゴールです!』

 

A『ここで前半終了!!1-1、どちらも譲らない展開となりました!!!』

 

 

 

ー アメリカベンチ ー

 

マーク「同点か…サニデイジャパン。分かってはいたけど手強いね」

 

ディラン「なーに!ミーたちにはサプライズがあるからね。前半はジャパンのタクティクスのせいで邪魔されちゃったけど、後半はギンギンに攻めるよ!ね、カンナ!」

 

イチノセ「ええ。攻撃に関しては、私たちも充分戦える。後半で必ず…逆転する」

 

イチノセ「そして…にこに勝つんだ」

 

 

 

 

ー 日本ベンチ ー

 

穂乃果「ごめん…みんな」

 

ルビィ「る、ルビィも…」

 

理亞「穂乃果の反動はともかく。ルビィ!!なーに、油断して奪われてるのよ!?」

 

ルビィ「ぴぎぃ…」

 

果南「まぁまぁ、理亞。落ち着いて」

 

このまま前半リードで終えれば良い雰囲気のままだったのだが、決勝トーナメント、そう簡単にはいかないようだ

 

 

月「神奈ちゃん、どうするの?」

 

曜「にこさんでも止められないとなると…」

 

にこ「狼狽えるんじゃないわよ。あんたたちには必殺技があるんだから。可能性は残っているわ」

 

美奈「そうね。神奈ちゃんにボールを渡さないだけじゃなく、ボールを奪われないことにも意識しないとね」

 

理亞「ルビィ…」ギロッ

 

ルビィ「うゆ、」

 

美奈「善子ちゃんはリベロだけど攻撃参加は控えめに。積極的に神奈ちゃんのディフェンスをしてね」

 

善子「了解」

 

美奈「ディフェンス技がない千歌ちゃんや梨子ちゃんはサイドの選手に注意してね。隙があればそこから攻められるわよ」

 

千歌、梨子「「はい!!」」

 

美奈「…さて、穂乃果ちゃんは交た「後半も出させてください!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

穂乃果「お願いします!!」

 

交代を拒否したのは自分でも反動の自覚があるであろう穂乃果だった。

もちろん、批判的な意見が返ってくる

 

 

海未「…穂乃果。分かっているはずです。反動で本来の力を出せないあなたは…」

 

穂乃果「それですぐに引き下がるなんて…穂乃果は悔しすぎるよ」

 

海未「…」

 

穂乃果「言い訳なんてしたくない。確かに無茶だってことは分かってる…でも、でも!!」

 

穂乃果「守れた……1点だった…」

 

サッカーにおいて、1点の重みは果てしないものである。結果が、経緯がどうであれ、最後の砦が抑えられなかったことは確か。

自分の力不足がチームの危機を招いている…そんな状況にしたまま穂乃果はベンチに下がる訳にはいかなかった

 

 

美奈「…自分が招いたピンチを、自分で何とかするってわけね」

 

穂乃果「はい」

 

美奈「………」

 

美奈「いいわよ」

 

海未「監督!?ですが、」

 

美奈「しかーし!私が危険だと判断したらすぐに交代するからね?」

 

穂乃果「はい!!ありがとうございます!」

 

真恋「ということで、果南ちゃんはいつでも行けるようにね」

 

果南「分かりました」

 

 

美奈「みんな!神奈ちゃんは想像以上にやばかったわ!!」

 

月「そんなハッキリと…」

 

曜「あはは…」

 

美奈「神奈ちゃんの気迫がユニコーン全体の気持ちを高めているのも確か。止められるか不安かもしれない…でも、気迫には気迫よ!!」

 

「「「!!」」」

 

美奈「気持ちでまずは負けない!!全ての勝負はそこからよ!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

―――

 

 

 

A『さあ、まもなく後半開始です。両チームとも交代は無し。どちらが勝利を手にするのか!?』

 

 

弥生「…同点ですか」

 

夜「うーん、アメリカって攻撃的なチームって聞いていたから…もっと苦戦すると思ってたんだけど」

 

弥生「1つぐらいはあると思っていましたが…」

 

夜「1つ?何が?」

 

弥生「チームワークがあり、攻撃的なチームだったら1つぐらい持っているはずなのです」

 

 

弥生「強力な必殺タクティクスを」

 

 

 

日本 1-1 アメリカ

 

 

 





ダブルタッチ、シザース、プルバックダブルタッチなど専門的な名前を出してみました。第2章でも書きましたが、文章で見るよりも、実際に動画などで見てみるとにこちゃんや神奈ちゃんのプレーが鮮明にイメージ出来ると思います。



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第3章 115話 「アメリカ戦 "ローリングサンダー"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回は少し長く書けました。アメリカ戦も折り返しです




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ユニコーンのチームワーク。そして一之瀬神奈の圧倒的なテクニックを見せつけられたサニデイジャパン。"ゴットハンドX"の反動により同点とされるが、穂乃果はそのまま後半も戦うことを希望。勝負の行方は後半にかかっている

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『さあ!サニデイジャパンのボールで後半戦開始です!!』

 

ピーーッ!!

 

 

ツバサ「ルビィさん」パス

 

ルビィ「…一気に攻めます」

 

前半終了間際。

ルビィは油断からボールを奪われ、失点となるきっかけを作ってしまった。

後悔したくないと言った。口だけにしたくない

 

 

A『黒澤ルビィが駆け上がる!!その後ろに続くのは渡辺月と綺羅ツバサ!!!』

 

剣城『サニデイジャパンは前線に高火力選手を揃えてきましたね。これは注目ですよ』

 

 

マーク「3人を抑えて!!まずはボールを奪うよ!」

 

ルビィ「ゴールするまでボールは渡さない」

 

月「梨子ちゃん、お願い!!」

 

アメリカは日本と戦い方が近い。

個人プレーと連携を組みあせた攻撃と守備を仕掛けてくる。それ即ち、相手の出方を予想しやすいということ

 

 

梨子「【神のタクトFI】!!」

 

ゾーンを発動した時のような指揮は出来ないが、今日までに弥生や夜から司令塔としての知識や視野を叩き込まれた。

自信が無かったあの時とは違う。自分の指揮で仲間たちを勝利に導くんだと、梨子の示す道は複雑に伸び続ける

 

 

A『出ました…!桜内梨子が発動する必殺タクティクス"神のタクト"!!ユニコーンはこの猛攻を抑えることが出来るのか!?』

 

 

梨子「千歌ちゃん!曜ちゃん!」ビシッビシッ!

 

ルビィを中央、月とツバサをサイドに散らせ、千歌と曜もサイドへ。

アメリカの選手がルビィに集中しないように、サイドへと注意をそらせ、ルビィの突破を促す

 

 

ドモン「サイドに広げてきたな…私がルビィを止める!!カンナ、援護頼むよ!!」

 

イチノセ「分かった!!」

 

 

A『おおっと!?再びドモン選手とイチノセ選手が2人で黒澤ルビィを抑えに行った!!』

 

剣城『ルビィ選手も今度はドモン選手をかなり警戒するでしょうね』

 

 

ルビィ(スプリントワープを使っても追いつかれる可能性がある…)

 

ドモンは凛のイナビカリを止めるディフェンス力を持っている。無駄に体力も使いたくない。さて、どうするか…

 

 

イチノセ「【フレイムダンス】!!」バッ

 

再び炎のオーラでルビィの視界を遮る。

隠された死角からドモンがいつ襲いかかってくるかはルビィ1人では決して分からない。しかし、

 

 

ドモン「そこだっっ!!」ズザーッ

 

ルビィ「…」パス

 

ドモン(バックパス!?)

 

イチノセ「な、なんで見えないのに躱せられた…まさか!?」

 

ツバサ「【デコイリリース】」パチン

 

ドモン、イチノセ「「!?」」

 

「フレイムダンス」の影に上手く隠れていたのはドモンだけではなかった。

ルビィのバックパスを受け取ったのと同時に死角から飛び出したのはツバサ。

これにはドモンもカンナも驚きを隠せなかった。なぜなら…現れたのが何十人ものツバサだったからだ

 

 

A『死角を逆に利用し分身で錯乱!!イチノセ選手、ドモン選手は反応出来ません!!』

 

 

イチノセ「やはり…全て桜内梨子の指揮かっっ!!」

 

ドモン「厄介だな…」

 

ドモンとカンナさえ抜きさればゴールは目の前。巧みなパス交換、ドリブルでユニコーンDFを崩していく

 

 

ルビィ「―――!」

 

テッド「ルビィにシュートを撃たせないで!!」

 

ダイク「止める!!」

 

ルビィ「曜ちゃん!」パス

 

テッド「!?」

 

ダイク「しまった…」

 

A『これは渡辺曜大チャンス!!GK構えます!決めきることが出来るか!?』

 

 

曜「狙うはゴール!全速前進!!」バッ

 

ボールを両足で挟み、飛び込みの回転のように上空へ。体に染み付いたその動きで両足にオーラを集め、ボールに刻む。

FWの選手たちにも引けを取らないそのシュート

 

 

曜「【Xブラスト】!!」ドガアァン!

 

 

A『出たぁぁ!!渡辺曜のレーザーシュート!!一直線にゴールへ!!』

 

 

キッド「【フラッシュアッパー】!!」ドォン!

 

曜が厳しい特訓で完成させたシュートは重く速い。

なんとかキッドは打ち上げようとするが、どんなに力を加えても…打ち上がる…気がしない

 

 

キッド「ぐっっ!?ぬぬぬぬぬぬ……」

 

キッド「うわあああ!?!?」

 

 

日本「「「!!!!」」」

 

曜「よしっっ!!これでゴー「「ユニコーン――――――

 

 

 

 

―――ブースト!!!!」」ドガアァン!

 

曜「!?」

 

ツバサ「!」

 

ルビィ「!!」

 

月「なっ!?」

 

千歌「!」

 

梨子「…」

 

 

ディラン「そう簡単にはあげられないね…2点目は!!!!」ググググ

 

マーク「このまま押し切るよ!!」ググググ

 

ディラン「OK!」ググググ

 

 

―――バギイィィィィン!!!!!!

 

 

A『ユニコーンブーストが得点を許さない!!!!サニデイジャパン、決定的なチャンスでしたが決めきれず!!』

 

 

曜「そ、そんな…」

 

にこ「曜!!戻りなさい!来るわよ!!」

 

曜「ぇ―――

 

 

イチノセ「―――!!」バッ

 

曜(神奈さん!?もうドリブルを!?)

 

「ユニコーンブースト」により弾かれたボールを神奈はすぐにキープしカウンターを仕掛ける。日本は決まったと確信していたため、ディフェンスへの切り替えが遅れている

 

 

マーク「畳み掛けるなら今だね」

 

イチノセ「マーク!」

 

マーク「逆転される前に突き放す…でしょ?」

 

イチノセ「ええ。やろう、"ローリングサンダー"を」

 

ディラン「OK!ギンギンに攻めちゃうよ!!」

 

ドモン「でも、あれはあなたたちにかかる負担が大きいよ…」

 

イチノセ「出し惜しみをして勝てるほど…サニデイジャパンは甘くない!!!」

 

マーク、ディラン、ドモン「「「!!!」」」

 

イチノセ「勝つよ!!絶対に!!」

 

マーク、ディラン、ドモン「「「ええ!!」」」

 

まずは神奈がドリブルで日本陣内に切り込む。ユニコーンの動きの変化を梨子はいち早く感じ取っていた

 

 

マーク「ミケーレ!ディラン!GO!!」

 

梨子「何を…する気なの??」

 

 

A『な、なんだこれは!?イチノセ選手がボールを持ったままペナルティエリア内へ!!あっという間にユニコーンの前線の選手たちが続き、ペナルティエリアを囲んでいます!!』

 

 

穂乃果「聖良さん!善子ちゃん!気をつけて!!」

 

聖良「は、はい…!!」

 

善子「2対4なんて…なかなかな事してくるわね」

 

ペナルティエリアの左側にはディラン。

右側ではミケーレが構えている。

真正面には2人、マークと神奈。

4人がまるで善子と聖良をペナルティエリア内に閉じ込めたかのように。

一瞬も油断はできない。どこからシュートが放たれるのか、

 

 

イチノセ「いくよ!必殺タクティクス!!」

 

イチノセ「でりゃっ!」ドガン!

 

神奈がシュートを放つ。

これが決まれば逆転されてしまう…阻止するためにも聖良は足を伸ばした

 

 

聖良「させません!!」ドガッ!

 

足でブロックしなんとか防ぐ。

しかし、こぼれたボールを拾ったのは―――

 

 

イチノセ「マーク!」

 

マーク「はあぁぁっ!」ドォン!

 

善子「無駄よ!!」ドガッ!

 

今度は善子が防ぐ。

しかし、力のこもったシュートをトラップすることはできず…

 

 

イチノセ「ディラン!」

 

ディラン「っっ!」ドォン!

 

聖良「たあぁっ!!」ドガッ!

 

 

イチノセ「ミケーレ!」

 

ミケーレ「でりゃっ!」ドォン!

 

善子「くっっ!?」ドガッ!

 

 

A『サニデイジャパンのDFがクリアした先には必ずユニコーンの選手がいて、間髪入れずにシュートを連打!!!』

 

剣城『ほかの選手は包囲網の中に入れませんね…実に巧みなガードです』

 

 

体を上手く使い、聖良と善子のフォローに行けないように抑え込むアメリカ。

助けに行きたくても行けず、日本の焦りは増していくばかり

 

 

イチノセ「…圧倒的スピードで相手チームよりも数的有利の状況を作り、雷鳴が轟くように激しく攻撃する…!!」

 

イチノセ「それが【ローリングサンダー】だ!!」

 

 

ミケーレ「でりゃっ!」ドォン!

 

善子(このままじゃ埒が明かないっっ!!Deepれ―――「善子さん!?」

 

善子「!?」

 

―――ドガッッッ!!!!

 

善子「痛い!?」ドサッ

 

聖良「くっっ!?」ドサッ

 

 

A『なんと!?ゴール前はがら空きだぁぁ!!!!』

 

 

穂乃果「善子ちゃん、聖良さん!?」

 

善子「穂乃果っっ!!来るわよ!!!!」

 

穂乃果「!!」

 

 

イチノセ「ディラン!マーク!!」

 

マーク「いくよ!!!」

 

ディラン「ビックサプライズだ!!!」

 

邪魔するDFは潰した。助けも来ない。

隙だらけ、しかし決まれば超強力な一撃をお見舞いすることが出来る大技。

 

3人のオーラが混ざり合い、まるで高野をかける狼の姿をした怪物のように遠吠えをあげる。

それは攻撃開始の合図か、マークが蹴り出したボールにイチノセとディランが合わせ、空へと打ち上げる。

タイミング完璧にマークへと繋ぎ、ラスト一蹴りを必殺技の名とともに撃ち放った

 

 

イチノセ、ディラン、マーク

「「「【グランフェンリル】!!!」」」ドガアァン!

 

 

穂乃果「っっ!!!!」バッ

 

それと同時に飛び出した穂乃果。

当然だが、今まで受けてきたユニコーンのシュートの中でも最高クラスの必殺技。

ボールが放つ巨大なオーラが穂乃果の肌を刺し、震え上がらせた

 

 

穂乃果「【ゴットハンドX】!!」ドォン!

 

まるでフェンリルが自分に体当たりしてきたかのような衝撃

 

 

穂乃果「ぐあっっ!?!?」ビリビリ

 

その衝撃を完全に受け止めきれなかったことが引き金となり、反動が追い討ちのように穂乃果の腕を襲った

 

 

穂乃果「まだだっっ…!!止められ…」ググググ

 

―――バリィィィィィィン!!!!

 

穂乃果「うわあああ!?!?」

 

 

ピピーッ!!!!

 

A『ゴール!!2-1!ユニコーンが勝利を引き寄せる1点を決めましたぁぁ!!!!』

 

 

イチノセ「やった…!!」

 

穂乃果「ハァハァ……くっっ…」

 

 

花陽「"ローリングサンダー"…DF殺しの必殺タクティクス…」

 

真姫「それにあのシュート技。今の穂乃果じゃ耐えられないわよ」

 

海未「穂乃果…」

 

美奈「うーん…」

 

希「……」

 

 

 

その後もユニコーンの「ローリングサンダー」を止めることは出来ず

 

 

ミケーレ「でりゃっ!」ドォン!

 

聖良「はあぁぁっ!!」ドガッ!

 

 

ディラン「ふっっ!」ドォン!

 

善子「たあぁっ!!」ドガッ!

 

善子(キリがないっっ!!)

 

 

A『ユニコーンの必殺タクティクス、ローリングサンダーが猛威を振るう!!』

 

A『サニデイジャパンのゴールが絶え間ないシュートにより翻弄されています!!』

 

 

聖良「ハァハァ…」

 

善子「きっつ……」

 

 

理亞「善子と姉様…かなり疲れてる」

 

果南「これだけたくさん狙われたら…体力がどんなにあっても足りないよ」

 

美奈「うーん……」

 

花陽「監督?」

 

美奈「聖良ちゃんたちの体力が底を突くのは時間の問題…DFを交代したいところだけど」

 

花陽「な、何か問題が?」

 

美奈「希ちゃんが出ればこれ以上の失点は無くなるわ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

凛「えぇ!?なんで希ちゃんを最初から出さなかったの!?」

 

あんじゅ「今すぐに交代した方がいいんじゃない?」

 

希「でもなぁ…いいん?ウチが出たらこの先、今までみたいに対策されるで?」

 

「「「………」」」

 

美奈「負けるよりはマシだと、考えた方がいいかもね〜」

 

希「…分かりました。ウチ、代わります」

 

 

A『……今入った情報です!現在、ユニコーンのローリングサンダーに苦しめられている鹿角聖良に代わって東條希が入るようです!!』

 

 

聖良「ハァハァ…(希さんと交代…)」

 

交代に関しては異論などなかった。

「ローリングサンダー」に振り回され、自慢の体力も無くなりかけている。

しかし、自分がこの試合で貢献出来たことは少ない。一之瀬神奈に弄ばれ、DFの中心選手としての役目を果たしきれなかった。

プライドが許さなかった…このまま引き下がるわけには―――

 

 

イチノセ「今だ!マーク、ディラン!!」

 

隙だらけとなったサニデイジャパンディフェンス。充分、シュートを放てる余裕があると判断したイチノセは2人に呼びかけ―――再び必殺シュートを放つ

 

 

イチノセ、マーク、ディラン

「「「【グランフェンリル】!!!」」」ドガアァン!

 

穂乃果「…止める!!」

 

まだ反動のダメージは抜けきっていないが、自分が何とかすると言ったのだ。

絶対に止め―――「私に任せてください」

 

穂乃果「!?」

 

 

聖良「あとは…頼みます」

 

善子「ちょっ、聖良何を??」

 

聖良「はあぁぁっっっ!!!!」ゴオォォォ!

 

穂乃果、善子「「!?!?」」

 

肩で息をする聖良。

立ち上がるのもやっとに見える彼女は無謀にもシュートの前に立ち塞がった。

いつもの彼女からは想像も出来ないような覇気を叫びと共に解き放ち、今持つ全てのオーラを放出している

 

 

穂乃果「聖良さん…まさか!?」

 

聖良「シュートの威力っっ!!そのもの、全てを凍てつかせるっっ!!!!」ゴオォォォ!

 

 

 

―――ガキィィィィィィン!!!!

 

 

イチノセ「―――」

 

ディラン「!?!?」

 

マーク「っっ!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

聖良「【アイスエイジ】」パキパキ!

 

聖良の全オーラをぶつけられたシュートは完全に凍りつく。

さながらの生物を大量絶滅に追い込んだ―――氷河期のような『絶対零度』

 

 

A『止めたぁぁ!!ユニコーンの切り札、グランフェンリルは絶対零度の前に沈みました!!!!』

 

剣城『あの三浦和葉選手のシュートをも凍らせるほどです。防御力では右に出る技はないレベルでしょう』

 

 

聖良「善子さんっっ!!」

 

善子「任せなさい」バッ

 

「アイスエイジ」は強力だが、発動すればシュートはその場で凍りつき、大きすぎる負荷に聖良自身耐えられない。

つまり―――仲間の助けがあって初めて危機を回避したことになる

 

 

ディラン「4対1!流石の善子でも厳しいんじゃないかな?」

 

善子「ゼェ…ゼェ…そうね、」

 

 

A『シュートは止めましたが、包囲網から脱出したわけでありません!!体力が残り僅かな津島善子はどこまで耐えられるのか!?』

 

 

善子「耐える…?」

 

イチノセ「!!」

 

 

善子「 全 員 抜 く の よ 」ギロッ

 

「「「「!!!!!!」」」」

 

どんなに不利な状況でも―――津島善子の目は死ぬ事は無い。

フラフラだとしても力強く地を踏み、フィールドの向こう側、アメリカゴールを見据えている

 

 

善子「【Deep Resonance】」バッ

 

イチノセ「気をつけて!!!!」

 

津島善子の共鳴の恐ろしさはその身で1度知った。戦えば負け、逃げようにも逃げられない。そんな相手とどう戦えばいいのか

 

 

善子「っっ!!!!」ギュン

 

ミケーレ(緩急のあるドリブル!?)

 

ディラン「貰った!」ズザーッ!

 

善子「―――!!」グルン!

 

ディラン「What's !?何故見てないのに…!!」

 

マーク(まずい…共鳴相手は不利すぎる)

 

しかし、

 

 

善子「―――!?」ガクッ!

 

「「「!!!!」」」

 

幸運なことに、善子は既に限界

 

 

マーク「スタミナ切れか!!」

 

イチノセ「取った…!」バッ

 

善子「ま、まずっ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 ル ビ ィ も 混 ぜ て よ 」ゴゴゴゴ

 

 

 

マーク「!!」

 

ミケーレ「!!」

 

ディラン「!!」

 

善子「ゼェゼェ……助かったわ」

 

イチノセ「紅き流星っっ!!!!」

 

 

 

ルビィ「4対1は流石にずるいよ」ゴゴゴゴ

 

 

 

A『黒澤ルビィが来たあぁぁぁ!!!!ユニコーンの厳しいブロックを掻い潜り、この戦いに加勢!!』

 

剣城『星空選手といい、日本の1年生選手は走りますね…』

 

 

ルビィ「善子ちゃん、まだ行ける?」ゴゴゴゴ

 

善子「ゼェゼェ…まさか、ルビィとこうしてサッカーが出来るなんてね」

 

ルビィ「ついてきてよ」バッ

 

善子「分かってるわよっっ!!」バッ

 

 

A『同時に飛び出した!!人数では不利ですがそれをも気にしないこの迫力!!!!』

 

 

善子「【Deep Resonance】!!」

ルビィ「【Awaken the power】!!」

 

どうすれば止められるか。

ルビィと善子の動きを見てから考えるのでは遅い。

思考するあいだに躱される。

距離があればその時間は与えられるだろうが、今は1mもない。

少しでも判断を間違えれば日本のカウンターとなる

 

 

善子「―――!!」パス

 

ディランの股を通すパス

 

ルビィ「―――っっ!!」バババッ!

 

受け取ったボールをフェイントを交えながら操り、マークとミケーレを抜き去る

 

 

イチノセ「―――」

 

考えてみれば簡単な話だった。

サニデイジャパンの一つ前の対戦国はイタリア。優勝候補と名高い、飛び抜けて優秀なチームだ。

そんなチームと互角、そして異次元の戦いをしてきたのだ

 

 

ルビィ、善子「「―――!!!!」」ギュン!

 

 

真正面から戦えるわけが―――無かった

 

 

A『抜けたぁぁ!!!黒澤ルビィと津島善子がローリングサンダーの包囲網を完全突破!!』

 

剣城『これは…最高の形のカウンターですよ』

 

 

ルビィ「千歌ちゃん!」パス

 

千歌「うん!」

 

「ローリングサンダー」は自分たちの守備を捨て、確実にゴール出来るようなフォーメーションを取る。

しかし、タクティクスが破られれば決壊したダムと同じ

 

 

千歌「はあぁぁっ!!」ゴオォォォ!

 

太陽の輝くオーラをボールに込め、天高く打ち上げる。

まるで本物の太陽のように燃えるそのボールを千歌は放つ

 

 

千歌「【サンシャインアッシ「させない!!」

 

千歌「!!!!」

 

 

―――バギッッッ!!

 

ドモン「黙って見てるわけにはっっ!!」

 

千歌「ぐっっ!?」

 

 

A『これは!?高海千歌がシュートを蹴ろうとした同時にドモン選手が足でブロック!!空中で競り合います!!!!』

 

 

曜「千歌ちゃん!!!」

 

梨子「千歌ちゃん…!」

 

にこ「根性見せなさいよ!!!!」

 

 

千歌「ぐぐぐぐぐっっ!!!!」

 

空中では上手く力を伝えられない。

このままでは仲間が作った決死のチャンスを無駄にしてしまう

 

 

「そんなのはっっっっ!!!!」

 

ドモン「―――!?」ゾクッッッ!

 

チカ「絶対に嫌だ!!!!!!」

 

「Braveheart」のパワーで押し切る。

闇の力の強引な部分を持つこの必殺技ならば―――

 

 

ドモン「ま、まずい!?押し切られ…」

 

チカ「でりゃあああああぁぁぁ!!!!」

 

―――バギイィィィィン!!!!

 

ドモン「うわあああ!?」

 

 

A『高海千歌がシュートを放ちました!!威力は落ちていません!!!!』

 

 

キッド「くっ…フラッシュ…ん!?」

 

 

 

―――ガアァァァァン!!!!!!

 

 

チカ「!!!!」

 

ドモン「!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

A『ち、直撃!!クロスバーです!!!』

 

 

チカ「そ、そんな!?!?」

 

ドモン「へへっ、コースを変えさせてもらったよ!」

 

 

A『ユニコーン危機一髪で失点を回避!サニデイジャパンはカウンターからのチャンスをものに出来ませんでしたっっ!!』

 

剣城『今のはドモン選手のファインプレーですね。ですが、コーナーキックですのでユニコーンのピンチは続きますよ』

 

 

ピーーッ!!

 

A『ここでサニデイジャパンはDFを変えます!先程素晴らしいディフェンスを見せてくれました鹿角聖良、津島善子に代わって東條希と葉石晴夏が入ります!!』

 

 

 

千歌「ハァハァ…そんな…せっかくのチャンスを…」

 

希「まだや千歌ちゃん」

 

千歌「希さん…」

 

希「まだチャンスを無駄にしたとは決まってないよ。コーナーキック、千歌ちゃんが蹴るんや」

 

千歌「!!」

 

希「美奈監督、とんでもない作戦を考えてきたで」

 

 

美奈が考えたとんでもない作戦とは??

次回、日本のコーナーキックからスタート

 

日本 1-2 アメリカ

 

 





サニデイこそこそ話
『サニデイジャパンのコーナーキックのキッカーは千歌、海未などMFの選手が多いです。海未のパスは鋭いため敵だけでなく、仲間からも怖がられているとか。』



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第3章 116話 「アメリカ戦 "悲願のシュート"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
雪がたくさん降りましたが桜に積もって不思議な気持ちになりました




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

後半戦が始まり、ルビィたちFWは果敢に攻めるもアメリカの必殺タクティクス「ローリングサンダー」により逆転を許してしまう。

しかし、聖良と善子、ルビィの決死のディフェンスによりカウンターへと繋ぎ、試合はコーナーキックから再開される

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『サニデイジャパン、コーナーキックのチャンスです!!』

 

 

何としてでも追いつきたい日本は数人が集まって作戦の相談をしていた。

それぞれが持つ情報、知識を出し合うも、作戦決定は難航していた

 

 

ツバサ「コーナーキックのキッカーは誰にも邪魔されないという利点があるわ。やっぱり私と月で"コズミックブラスター"をすべきじゃない?」

 

月「…多分、アメリカは日本のサッカーを研究してきているから、合体技を持つ選手は徹底的にマークされるよ」

 

梨子「そうですね。合体技を持つ選手、そして強力なシュートを持つ選手も封じられると思います。ルビィちゃんの"ラストリゾート"は特に」

 

ルビィ「撃たせる隙は貰えないと思います」

 

にこ「……やっぱり競り合って押し込むしか」

 

 

 

希「千歌ちゃんが蹴るんよ」

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

にこ「希。そう断言するってことはそれなりの案があるんでしょうね?」

 

希「ウチの案も何も、美奈監督直々の作戦指示や」

 

梨子「美奈さんの!?」

 

ツバサ「監督の作戦なら間違いなさそうね」

 

にこ「それで?早く教えなさいよ」

 

希「ふふ♪この作戦はなぁ、ウチらの悲願でもあるんよ?」

 

 

 

 

A『コーナーキックを蹴る選手はキャプテン高海千歌!!先程のリベンジを果たせるのでしょうか!?』

 

剣城『サニデイジャパンはコーナーキックからの攻撃を得意としていますからね。ユニコーンは要注意ですよ』

 

 

 

ディラン「高海千歌か…綺羅ツバサが蹴ってくると思ったけど」

 

マーク「カンナ。確か高海千歌は渡辺曜との合体シュートを」

 

イチノセ「ええ。"エクストリームラビット"。でもあのシュート技は千歌と曜が同時に放つシュートだから、コーナーキックからじゃ必殺技は発動出来ない」

 

ドモン「恐らく、イタリア戦の時のようなショートコーナーからの黒澤ルビィじゃない?」

 

マーク「それは私も考えていた。ジャパンのコーナーキックはどのチームよりも脅威だ。マンツーマンを徹底するよ!!!」

 

アメリカゴール前には密集する両チームの選手。アメリカ選手は合体技、そして強力なシュートを警戒し張り付くようなディフェンスを行う

 

 

イチノセ(黒澤ルビィ、綺羅ツバサ、渡辺月…強力なシュートを持つ選手は封じた)

 

しかし、何故だろうか。

心に残る違和感が消えないのだ

 

 

マーク(何か…何かを見落としている気がする)

 

ドモン(私たちがマンツーマンで日本の攻撃を封じているのに…なんで、)

 

 

 

 

サニデイジャパンの選手はこんなにも落ち着いているのだろうか

 

 

 

ルビィ「…」

 

月「…」

 

ツバサ「…」

 

曜「…」

 

にこ「…」

 

梨子「…」

 

焦りのひとつぐらい見せて欲しいぐらいだ。

思いつく作戦、考えそうな行動、今までのデータから、日本が仕掛けてくるであろう作戦を全て潰した…筈なのだ

 

 

千歌「…ここで決めないとみんなのカウンターが本当に無駄になる」

 

千歌「絶対に成功させる」

 

 

穂乃果「…頼むよ。千歌ちゃん」

 

千歌がボールをセットし、後ろに数歩下がったことにより。

コート内の緊張感は更に高まった。

張り詰める空気、ひしめく選手たち。

ここから数秒後に映る世界、笑っているのは日本か。それともアメリカか

 

 

A『さあ、高海千歌!!いったい誰に合わせてくるのか!?』

 

ピーーッ!!

 

 

千歌「………行くよ」

 

チカ「【Braveheart】」

 

 

アメリカ「「「!!!!」」」ゾクッッッ!

 

高海千歌が能力を発動した。

瞬間、背筋が凍るような感覚。

先程のシュートを見る限りステータスを引き上げる自強化技だと見た。すなわち

 

 

イチノセ(必殺技が来るっっ!!!!)

 

 

チカ「はああああっっっ!!!!!!」

 

「Braveheart」により闇の力をコントロールすることが可能になった。

それによりリスクは伴うが、闇の力発動時限定の必殺技を放てるようになっていた千歌

 

 

チカ「【ブラックアッシュG2】」ドガアァン!

 

黒一色の、何よりも深く、何よりも暗い色の線が伸びる。

カラフルに彩られた会場の色を塗りつぶすかのように放たれたシュートが向かう先は―――

 

 

A『サニデイジャパン側のコートに蹴った!!!!』

 

 

ディラン「Why!?」

 

マーク「強力なキッカーたちはいないよ!?」

 

まるでキーパーに戻すかのようなキックだった。まもなくセンターラインを越える。

このまま行けば日本のゴールキックと変わらず―――「違うっっ!!!!!!」

 

 

アメリカ「「「!!??」」」

 

怒鳴ったのは―――何かに気づき走り出した――― 一之瀬神奈だった

 

 

イチノセ(最悪だっっ!!一番見落としてはいけない選手を、見落としていたっっ!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことり「【ワンダーゾーン】」

 

 

 

 

 

スティーブ「……ま、まさかね?」

 

ショーン「南ことりは…確か、」

 

 

時すでに遅し。

 

 

ことり「―――!!」バッ

 

 

ことりは既に蹴り込む体勢に入っている

 

 

 

 

―――メキッッッッッッ!!!!!!

 

ことり「っっっっ!!!!!!」

 

 

A『高海千歌が狙っていたのは南ことりのあのシュートか!?』

 

 

誰が、予想したか。

コーナーキックから放たれたボールをセンターバックが打ち返すと。

本来、シュートとは無縁のこのポジション。南ことりは更に言うとFWだとしても1人でのシュートは撃てることは無かっただろう

 

 

ことり『私が、シュートを…』

 

希『まさかコーナーキックの攻撃に参加しないセンターバックが撃ってくるとは…誰も思わんやろ?』

 

月『でも、打ち返せるの?千歌ちゃんのシュートを確実に』

 

ことり『…』

 

にこ『大丈夫よ。あんたたち忘れたわけ?ことりはあの"エクスカリバー"と競り合った程よ』

 

にこ『サニデイジャパンの中で、キック力ならこれ以上信頼出来る選手はいないわ』

 

ことり『にこちゃん…』

 

にこ『大好きなんでしょ?シュート。決めたいんでしょ?』

 

ことり『うん!!』

 

 

 

ことりは言った。いつか、シュートを決めれるようになりたいと。

エドガーの"エクスカリバー"と戦ってその想いは強くなった

 

 

ことり「―――っっ!!!!」メキメキ!

 

ドリブルが苦手という致命的な才能の不足。

一度は消えたこの想い。しかし、今この瞬間、運命は確実に変わる

 

 

ことり「ワンダフルっっっっ――――――

 

 

穂乃果「ことりちゃん!!」

 

海未「ことり!!」

 

凛、花陽、真姫「「「ことり(ちゃん)!!」」」

 

にこ、希「「ことり(ちゃん)!!」」

 

 

 

 

絵里「…ことり」

 

 

 

 

 

 

絶対に叶えてみせるんだ!!!!!!!!

 

 

 

 

―――ラアァァッッシュ!!!!!!」

 

 

ドガアァァァァァァン!!!!!!

 

 

A『ダイレクトが放たれたぁぁ!!レーザービームは一直線にアメリカゴールへ!!!』

 

 

イチノセ「やはりダイレク…うわっ!?」

 

ディラン「は、速いし…止めらっっ!?」

 

そのパワー、エネルギーは遮るもの全てを貫く。

真っ直ぐに伸びる光の線は美しくも、ユニコーンゴールを破壊する死の光線

 

 

キッド「なんて威力っっ!?!?」

 

 

 

――――バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

止められるはずが、ない

 

ピピーーッ!!

 

 

ことり「ハァハァ…や、やった…」

 

穂乃果「凄いよことりちゃん!!!」

 

曜「ほ、本当に決めちゃった…」

 

千歌「なんか複雑…?」

 

 

A『ゴール!!南ことりが強力なカウンターシュートをゴールに叩き込みました!!!』

 

A『2-2!サニデイジャパン再び同点です!』

 

 

真姫「センターバックが普通、シュートを打つなんてありえない。普通ならね」

 

花陽「ことりちゃん…ついに、やったんだね!!」

 

真恋「FWに向かない選手、ならばFWじゃなくても撃てるような場面を作ればいい…そういうことね」

 

美奈「ふふ♪音ノ木坂学院サッカー部、みんなが願っていた1点だからね」

 

 

 

ドモン「同点か…さすがに今のは防ぎきれないね」

 

イチノセ「いや、あれは私の判断ミスだった…何とか取り返すよ」

 

マーク「まだ負けたわけじゃない。それに有利なのは変わらず私たちだよ」

 

イチノセ「ええ。残り時間、全力で叩くよ!!!!」

 

一見、流れを戻したように見える日本だがそれは違う。その逆。

優勢な状況なのはアメリカだということを忘れてはいけない

 

 

A『サニデイジャパン、同点に追いつきましたがここからは再びユニコーンの攻撃です』

 

剣城『DFの中心選手である津島選手と聖良選手が下がってしまいましたからね…ユニコーンの猛攻に耐えられるかどうか』

 

 

にこ「時間は無いわよ…!!ディフェンス集中!」

 

梨子「…」

 

梨子(にこさん、前半から神奈さんのディフェンスをして体力は限界に近いはず…)

 

梨子「にこさん、無理はしないでくだ「大丈夫よ」

 

梨子「で、でも…」

 

にこ「ゼェゼェ…神奈は私と勝負したいって言ってるのよ…私はその気持ちに応える」

 

梨子「…」

 

にこ「言ったでしょ?時間無いって。梨子は梨子の仕事をしなさい」

 

梨子と話していたにこはすぐに前を向き直す。アメリカはすぐそこまで迫ってきている

 

 

イチノセ「勝負!!」

 

にこ「今度は抜かせないわよ!!」

 

体力はにこの方が上だが、運動量が明らかに違う。神奈はチームを上手く動かし、必要最低限の動き、プレーをするが、にこは攻撃もフォローもディフェンスも全て走る。

決して悪いプレーでは無いのだが、どうしても後半から体力の差が生まれてしまう

 

 

イチノセ「―――っっ!!」バババッ

 

にこ(フェイントね、1回でも引っかかれば一瞬で抜かれる)

 

にこの優秀なドリブル、ディフェンスの源の一つとして積み上げてきた経験がある。

何千何万と見てきたプロたちの動き、身近に感じる選手たちの動き、それらを頭に染み込ませることによりにこは反射に近いスピードで相手の動きを読むことが可能になっている

 

 

にこ「取った!!」バッ

 

イチノセ「っっ!?」

 

 

A『ああっと惜しい!矢澤にこの足がイチノセ選手のボールにかすります!!』

 

剣城『イチノセ選手は咄嗟に回避しましたが…危なかったですね』

 

 

イチノセ「…さすがだよ、にこ。でも」

 

にこ「ゼェゼェ…」

 

イチノセ「限界みたいだね」

 

もちろん。反射に近いスピードでも体力は確実に削る。

肺が酸素を求めて唸る。

体が悲鳴をあげ始めた

 

 

イチノセ「足が止まって―――るっっ!!」バッ

 

にこ(ヤバっ、コースを塞がな―――スカッ

 

にこ「!!」

 

イチノセ「ルーレット。前半までのアニキなら簡単に奪えたね」

 

 

A『抜いたあぁぁ!!矢澤にこ限界か!?簡単に突破されてしまったぁ!!』

 

 

イチノセ「必殺タクティクス【ローリングサンダー】!!」

 

シュートを止める聖良、共鳴の善子がいない今、このタクティクスは危険すぎる。

しかしDFの司令塔を無くした日本ディフェンスは薄く脆い。

一瞬にして囲まれてしまう

 

 

晴夏「の、希さん!!このままじゃ…」

 

希「うーん…よし!ウチに任せとき!」

 

 

花丸「美奈監督!このままじゃまたやられちゃうずら…」

 

美奈「大丈夫!」

 

花丸「??」

 

情けなどない。

マークたち4人はタクティクスによる攻撃を始めた

 

 

ディラン「でりゃっ!」ドガッ

 

晴夏「うわっ!?」

 

 

マーク「っっ!」ドガッ

 

希「ほっ!」

 

 

A『耐える…耐えます!東條希と葉石晴夏!!次々と襲いかかるシュートをブロックし続けます!!』

 

 

晴夏「ハァハァ…このままじゃ、」

 

希(…そろそろかな)

 

本来ならば希と晴夏がダウンするまで続けるのだが、残り時間僅かという焦りからシュートを急ぐマークたち。

希たちはボールを奪いに来れないと判断した瞬間、行動に移すのは早かった

 

 

マーク「行くよ!カンナ、ディラン!」ドォン

 

マークがボールを蹴り放ち、神奈とディランがそのボールに追いつきながら打ち上げる

 

 

―――ビュン!!!!

 

 

マーク、ディラン、イチノセ「「「!!!!」」」

 

晴夏「!?」

 

穂乃果「!!」

 

 

希「【バニシングカット】」

 

その時に生まれる大きな隙。

そこで奪い取ればいい

 

 

A『これは驚きです!!空中で"グランフェンリル"を防ぎました!!!!』

 

 

穂乃果「凄いよ希ちゃん!」

 

マーク「まだだ!!」

 

穂乃果「!?」

 

マークたちは知ってる。知っていたからこそすぐに冷静さを取り戻せた

 

 

マーク「東條希の"バニシングカット"は強力だが、連続で発動出来ない!!」

 

希「!」

 

ディラン「瞬間移動後に奪い取ればOK!」

 

希「…調べられてんやね」

 

更に希がいるのは空中。

上手くマークたちを躱すのは難しい。

希の最大の弱点であった。自身も悩み、何度も挫けそうになりながらも、自身の可能性を探した。

 

そして、

 

 

希「でも、ウチもまだあるんよ?」パキパキ

 

イチノセ(…!?体に、ヒビが!?)

 

逃げ道などないはずなのに…余裕な表情の希。その顔諸共全て、細かく亀裂が走り

 

 

―――パリィィィン!!

 

砕け散った

 

 

ディラン「ウソ、だろ!?」

 

マーク「体が粉々に!?」

 

イチノセ「これは―――"硝子"…」

 

『正解♪』

 

イチノセ「!!」

 

姿は見えない。しかし希の声は聞こえる。

まるで耳の中から直接話しかけられているかのよう。

神奈たちの周りには砕け散り、散乱した硝子。まるで色とりどりに咲き誇る花々のように、虹色に反射し眩しく光る

 

 

『【硝子の花園】。ウチのとっておきの技や』

 

ディラン「ど、どこから声が…」

 

『ウチの体は硝子。砕けて散らばって、あなたたちの惑わせる』

 

マーク「体を硝子に…」

 

希「"グランフェンリル"でボールを奪えば、あなたたちはウチからボールを取り返そうとすることは分かってたで」

 

マーク「!?」

 

マークの背後にいたのは体を硝子にしたはずの希。

体を硝子にできるということは、硝子になり砕け散った体を元に戻すことも可能。

そして、希がいる場所は―――包囲網の外

 

 

希「"ローリングサンダー"。あなたたちはボールの跳ね返りを計算して蹴っていた。蹴り方を見れば一目瞭然やね」

 

マーク(見抜かれている…)

 

希「次からはタクティクスは効かんよ。跳ね返り場所に先回りすればボールは簡単に奪える」

 

イチノセ「くっ…」

 

希「そしてこの技は」

 

 

 

希「カウンターに弱い」

 

マーク、ディラン、イチノセ「「「!!!」」」

 

全てを見抜かれ、分析したと思っていた選手は1枚上手。

日本に勝つための切り札であるタクティクスが攻略されたとなると―――

 

 

ツバサ「希さん!!」

 

希「頼むで!」パス

 

 

A『綺羅ツバサがアメリカゴールに迫ります!!日本、カウンターによるビッグチャンスです!!』

 

 

ツバサ「行くわよ。月」

 

月「いつでもね!!」

 

先程、空中での動きは制限されると言ったが、ツバサと月は違う。

フィールドを立体的に使いお互いの必殺シュートをぶつけ合う。両者ともに高レベル、そしてシンクロしなければ完成しない大技

 

 

ツバサ、月

「「【コズミックブラスター】!!」」ドガアァン!

 

キッド「【フラッシュアッ―――ぐっ!?

 

キッド「重すぎ……きゃっ!?」

 

 

―――バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

ピピーッ!!

 

 

A『決まったぁぁぁ!!!!サニデイジャパン逆転!!"ゴットストライカー"と"月詠のストライカー"のコンビの必殺技が炸裂!!』

 

 

月「ナイスシュート」

 

ツバサ「あなたもね」

 

 

イチノセ「ハァハァ…く、くそっっ…」

 

神奈は日本のフィールド内で膝を着いていた。疲労もあるが、自分たちのサッカーが通用しなくなってきていることに気づいてきたことが一番大きかった

 

 

マーク「カンナ」

 

イチノセ「……負けたくない。絶対に」

 

マーク「分かってる。みんな同じ気持ちだよ」

 

ドモン「勝とうよ!!」

 

ディラン「Yes!!必ず勝つ!!」

 

だが、諦めた訳ではない。

一之瀬神奈の熱く燃える目はこの試合のその先を据えている。

仲間たちの気持ちに応え、"フィールドの魔術師"は不死がごとく立ち上がる

 

 

イチノセ「私たちは負けない!!ニコ!!」

 

にこ「かかって来なさい!あんたとの勝負…決着をつけるわよ!!」

 

 

 

 

ピーーッ!

 

 

A『ここでサニデイジャパン選手交代!MF、園田海未が入ります!交代する選手は―――

 

 

 

審判が掲げる選手の背番号

 

 

イチノセ「!!??」

 

にこ「…!!」

 

 

 

それはにこと神奈の勝負に

 

 

 

A『矢澤にこです!!!!』

 

 

終止符を打つものとなった

 

 

次回、アメリカ戦決着

 

日本 3-2 アメリカ

 

 

 





硝子の花園
希ちゃんの新必殺技でドリブル技となっています。実体を硝子に変化させ、細かく砕けることにより相手を突破する反則級の技となっています。ですが、希ちゃんと美奈監督はまだ使いたくないようなことを言っていましたが…何か理由でもあるのか…


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第3章 117話 「アメリカ戦 "勝負の行方"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回でアメリカ戦決着。話はどんどん進んでいきます





 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

千歌がコーナーキックから放ったシュートを『ワンダフルラッシュ』で蹴り返し、同点の一撃を叩き込んだことり。

ディフェンスでは希が『グランフェンリル』と『ローリングサンダー』を封じ、カウンターで逆転とした。

残り時間、にこと神奈の戦いがクライマックスを迎えるとおもわれたのだが……

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

A『交代する選手は―――矢澤にこ!!』

 

 

にこ「…!!」

 

イチノセ「そ、そんな…」

 

 

マーク「何故…アニキを下げるんだ」

 

梨子(スタミナは確かに無くなりかけていた。でも、にこさんがいなくなることによる精神的なズレは無視できない…)

 

ルビィ「ここで下げるって、美奈さんまさか」

 

アメリカだけではなく、日本の選手たちもこの交代には動揺を隠せなかった。

どんなに苦しくてもにこは神奈との戦いを最後まで貫き通すのだと。必ず応えのだと。

しかし、それは監督が許さなかった

 

 

海未「……監督。私が言うのもなんですが、どうしてにこを、」

 

美奈「忘れてはいけないわ」

 

美奈「次の試合。私たちはどこのチームと戦うのかを」

 

海未「次の…対戦相手??」

 

 

 

 

 

 

 

にこ「ブラジル代表『ザ・キングダム』よ」

 

 

海未「…!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

花陽「FFIランキング1位…優勝回数、得点女王排出ランキング…全てにおいて1位の、ブラジル…」

 

美奈「あなたにこれ以上。ダメージを与える訳にはいかないの」

 

にこ「…分かってるわよ」

 

にこはそのままゆっくりとフィールドを後にする。しかし、白線から踏み出したのと同時に。背中に刺さる声がひとつ

 

 

イチノセ「勝負から逃げるの!?にこ!!」

 

にこ「……」

 

にこ「違うわよ。あなたとの勝負はこの試合では決着がつかない」

 

イチノセ「…!!」

 

にこ「勝負の続きは、全てが始まった場所で…そこまでお預けよ。今は仲間との試合に集中しなさい」

 

イチノセ「……にこ、」

 

 

A『さあ!タイムアップが迫ってきました!!勝利を手にするのはアメリカ代表 ユニコーンか、日本代表 サニデイジャパンか!?』

 

 

確かに―――その通りだ

 

 

イチノセ「マーク!」パス

 

マーク「全員で攻めるんだ!!」

 

今はフリースタイルで憧れた矢澤にこに勝つ勝負では無い。仲間と共に、サッカーの勝負に勝つ…

いつまでも1対1にこだわる理由はサッカーに置いては優先的では無いかもしれない。

だが―――だけど―――

 

 

イチノセ「……」

 

それでも――――――

 

 

イチノセ(くっっっっ!!!!!!)

 

 

この試合で勝負をつけたかった

 

 

マーク「必殺タクティクス【ローリングサンダー】!!」

 

マーク「でりゃっ!」ドガッ

 

希「無駄やん。晴夏ちゃん!」

 

晴夏「はい!!」ズザーッ

 

穂乃果「晴夏ちゃん、私に戻して!」

 

マーク「なっ!?」

 

 

A『これはどうしたのでしょう!?"ローリングサンダー"が不発です!!』

 

 

希「言ったやろ?跳ね返りのコースが予想出来れば奪い取るのは簡単やって」

 

マーク「…まさかここまでとはね」

 

穂乃果「前線!走って!!」パス

 

にこが下げられた理由がもう1つあるとすれば、希のディフェンスである。

希が確実に『グランフェンリル』と『ローリングサンダー』を封じることにより、守備の不安要素をカバーできる。

それに気づいた日本の選手たちはにこの交代に反対することはなかった

 

 

イチノセ(私は…何をしているんだ)

 

月「【ブルースターダスト】!!」

 

イチノセ「―――っっ!?」

 

あの日から、自分の目標であった矢澤にことの勝負に囚われすぎていることは理解している。

気持ちから落ち着けようとしても、体が震え、足が思うように動かなかった。

あと少しで届く念願だったからこそ、ここまで大袈裟になれるのだ。

努力してきたからこそ、悔しいんだ

 

 

A『渡辺月の流れるようなドリブルがユニコーン陣内を駆け抜ける!!その前を走るのは―――

 

 

月「ルビィちゃん!!」パス

 

ルビィ「―――!」

 

 

―――"紅き流星"黒澤ルビィだぁぁ!!』

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁっっ!!!!」

 

 

 

黒澤ルビィが吠え、燃えている姿が見えた

 

マーク「――!!―――!?」

 

キャプテンが必死に走って叫んでいる

 

日本「「「―――!!!!」」」

 

サニデイジャパンの選手たちが声を合わせ、ルビィに何かを叫ぶ

 

 

イチノセ「……」

 

 

私はその全てを―――呆然と眺めていた

 

 

ルビィ「【ラストリゾート】!!」ドガアァン!

 

キッド「この威力…本当に1人技なの??」

 

迫り来るシュートは地をえぐり、仲間を吹き飛ばし、轟音を響かせる。

それはまるで3人技、暴れ狂う龍。

空気を伝わり届くオーラだけでも鳥肌が立つ

 

 

キッド「【フラッシュアッ―――バキイィィィィィィン!!!!

 

キッド「!?!?」

 

 

イチノセ(あれが…"触れないシュート")

 

マーク(これが、ヨーロッパの強豪たちと争ってきたチームのエースストライカー…)

 

 

 

―――バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

美しく輝き、私たちを魅了する"それ"もひとたび牙を剥けば、全てを破壊する死の鉄槌。

それは流れ星。それは流星。

 

今、私たちの前で牙を剥いた少女こそ―――『紅き流星』

 

 

ピッピッピーーー!!!!

 

A『ここで試合終了ー!!サニデイジャパンがアメリカ代表 ユニコーンを破りました!!』

 

剣城『白熱するシーソーゲーム。そして矢澤選手とイチノセ選手の対決…なんとも素晴らしい試合でした』

 

 

イチノセ「……ごめん、みんな」

 

イチノセ「ニコとの勝負に囚われすぎて…」

 

ディラン「いいんだカンナ」

 

マーク「アニキに勝つことは私たちの願いでもあった。カンナの気持ちはよくわかる」

 

ドモン「さあ、アニキが待ってるぜ」

 

 

にこ「……」

 

イチノセ「…ニコ」

 

にこ「自分で分かっていると思うからとやかくは言わないわ」

 

にこ「今の私は仲間たちとサッカーで戦ってるの。あんたとの決着はあの大会…」

 

イチノセ「フリースタイルフットボール世界大会」

 

にこ「そこでは私も全力であんたに勝ちに行く。それまでは私たちが…アメリカ代表の想いと一緒に世界一になるわ」

 

イチノセ「…ありがとう、ニコ」

 

 

日本 4-2 アメリカ

 

 

準々決勝 対戦相手『ブラジル』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にこ「あっ、」

 

希「どうしたん?にこっち」

 

にこ「マークたちにアニキって言うのを止めるように言い忘れた」

 

希「ええやん」

 

にこ「良くないわよ!?」

 

理亞「うるさいわよアニキ」

 

ルビィ「途中でへばってたね。アニキ」

 

にこ「ぐぬぬぬぬ…神奈ぁ、覚えておきなさいよ…」

 

その後、くしゃみする一之瀬神奈を心配するアメリカ代表のメンバーらが目撃されたとかされないとか…

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

その日の夜、「日本代表宿舎」

 

 

美奈「はーい!みんなお疲れ様♪」

 

真恋「ユニコーンの攻撃を完全に封じ込められたし、素晴らしい形で勝てたわね」

 

前半、個人プレーを混ぜて流れを引き寄せ、「奇門遁甲の陣」も完璧に発動することが出来た。

後半はアメリカの必死タクティクスに苦しめられるも、希の投入によりシーソーゲームに終止符を打つことが出来た

 

 

美奈「でも、今日のミーティングは試合の反省だけでは終わらないわよ♪」

 

そう言うと美奈はテレビのスイッチをつけ、とある映像を流し始めた

 

 

英玲奈「…これは!!」

 

美奈「そう。あなたたちの準々決勝の対戦相手、ブラジル代表 ザ・キングダムの試合よ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

黄色いユニフォームに身を包んだブラジル代表の選手たち。

そのプレーを見た瞬間。サニデイジャパンの選手たち全員に衝撃が走った

 

 

千歌「なに、これ…」

 

 

『『『【アマゾンリバーウェーブ』!!』』

 

サッカーコートは大量の水に沈み、相手チームの選手たちはただ流されるまま…

うねり、暴れ、激流が襲うその流れの中でも平然とサッカーをするのが―――「ザ・キングダム」である。

 

 

『ロニージョ!!』パス

 

 

鋭いパスが出され、それに続くのは1人の少女。

激流を我がものとし、まるで空中で踊るかのようにボールを捉え――――――

 

 

『でりゃあっっ!!』ドガアァン!

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

穂乃果「オーバーヘッド!?」

 

海未「あの体勢から撃てるのですか…」

 

 

ピピーッ!!

 

『ゴール!!マック・ロニージョ、またもハットトリック達成!!蝶のように舞い、黒豹のように襲う…華麗で強烈な攻撃!!』

 

『さすが「クイーン・オブ・ファンタジスタ」。ブラジル史上最高の選手だけありますよ』

 

『ロニージョは今日も3得点を加え、得点女王のトップを独走しています!!!』

 

 

美奈「…ザ・キングダムは予選リーグを全勝で突破。間違いなく、世界最高レベルのチームよ」

 

美奈「特に、『アマゾンリバーウェーブ』はこれまで対戦してきた必殺タクティクスを遥かに凌駕するわ。破るのは厳しいわよ」

 

梨子「あの破壊力では…私たちの必殺技をぶつけても全て飲み込まれてしまいます」

 

千歌「じゃあ、『アマゾンリバーウェーブ』を発動させなければ…」

 

月「そう簡単にはいかないよ」

 

ブラジルの強さの理由、それは個人プレー。圧倒的なテクニックがある。

全員の動きが人並外れており、その恐ろしさは1人の選手の一言によりハッキリとした

 

 

にこ「私や神奈でも…ロニージョたちには適わないわ」

 

「「「!!!!??」」」

 

善子「じ、冗談が過ぎない??」

 

あんじゅ「にこたちでも勝てないなんて、ね?」

 

にこ「にこは何回か外国で開かれたU18のフリースタイルの大会に出場したけど…優勝したことは数回しかないわ」

 

にこ「ほとんどの大会はロニージョの総取り。1対1とかもやってみたけど…アイツはヤバいわ」

 

善子「……何よそれ」

 

曜「千歌ちゃんのドリブルならワンチャン…」

 

千歌「無理無理無理!!千歌じゃ相手にさえして貰えないよ」

 

理亞「…どう思う?」

 

ルビィ「にこさんよりも強いんじゃ…」

 

月「だよね、」

 

 

 

にこ「でも、にこは負けないわよ」

 

「「「!!!!」」」

 

にこ「確かに、適わないと言ったわ。でもそれは今までの話。神奈と同じく、私も超えたい人がいて…その人を超えるために今まで死ぬ気で特訓してきた」

 

凛「じゃあ、にこちゃんの目標って…」

 

にこ「ロニージョに勝つ。いや今は、ブラジルに勝つよ」

 

穂乃果「世界一だよ…にこちゃん」

 

にこ「穂乃果?」

 

穂乃果「ブラジルは世界最強なんだよ!!勝てば世界一は目の前まで来てるんだよ!!」

 

海未「穂乃果…」

 

穂乃果「にこちゃんの言う通り、格上の相手だとしても穂乃果は諦めたくない!!」

 

 

夜「よく言ったわ!穂乃果ちゃん!!」

 

月「母さん!?」

 

夜「諦めたら既に敗北確定!!試合は始まってみないと分からないわ!!」

 

弥生「私たちも全力でサポートします。王者を打ち取れるよう、頑張りましょう」

 

「「「はい!!!!」」」

 

サニデイジャパン全員の気持ちがひとつになったところでミーティングは終了した。

適わないと感じたのなら、適うと感じるまで特訓する!!それがサニデイジャパンである

 

 

美奈「明日の練習は午前、軽い運動をして終了にするわ。午後は自由にしてね〜」

 

ことり「だってヨハネちゃん!午後一緒にお出かけしよ??」

 

善子「よ、ヨハネはゲームを…」

 

ことり「お願〜〜い♡♡」

 

善子「うぐっ」

 

 

理亞「明日は当然」

 

ルビィ「特訓だよね」

 

真姫「無理しないように監視するから」ギロッ

 

理亞、ルビィ「「……」」

 

 

美奈「希ちゃん、月ちゃん。ちょっといいかしら?」

 

希、月「「??」」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

翌日。南の島というだけのことはあり、寒いと感じることが最近無くなってしまった。

日本にいる時までは何故か、鹿角姉妹のそばにいると寒気がするという噂があったが、ライオコット島に来てからそのような話は一度も聞いていない

 

 

にこ「ふぅ…今日もいい朝ね」

 

早朝。矢澤にこの1日は朝の自主練から始まる。まだ日が昇りきっていない時間。

またいつものような練習の日々が始まるのだと思っていた――――――

 

 

「ニコ」

 

にこ「…?……!?!?」

 

 

 

しかし、どうやら今日は

 

 

 

にこ「な…なんであんたが」

 

ロニージョ「久しぶりだね」

 

 

 

いつもとは違う日になりそうだ

 

 

 





ブラジルは現実でも創作でもチート定期



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第3章 118話 「ガチャポン」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回のお話は第2弾「津島善子の世にも奇妙な物語」です。第1章などの伏線も回収されるかも??原作ネタも登場します!




 

 

 

 

 

私の名前は津島善子。

 

 

 

女子サッカー日本代表サニデイジャパンのメンバーで、ポジションはリベロをやっているわ。

……リベロってどんなポジションかって?

簡単に言うと、攻撃に積極的に参加するセンターバックかしら。

……疲れないのかって?

だからこうして走ってるのよ。

 

今は朝の5時半。サニデイジャパンの起床時間は6時半だからまだまだ時間はある。私はいつもこうして早起きしてランニングをしてるの。これも全て必殺技の精度を維持するため、私の必殺技は人以上に体力を必要とするのよ…

 

先輩に2人、松浦果南と矢澤にこっていう体力お化けがいるんだけど…今日はまだ見かけていない。

今の目標はあの二人と体力を並べることかな…前に持久走をした時に、あの二人との差を実感した…私の努力はまだまだ足りていないようだ。

 

 

とまあ、話しているあいだにジャパンエリアの街に入った。この時間帯、飲食店が並ぶこの道からは朝食の温かい香りが私の鼻、そしてお腹を刺激する。

そうなったら最後、走るスピードが上がるのは避けられない。どんなに練習を積んでも、空腹には勝てないのが人なのよ…

 

 

「……あれ?」

 

 

そんな中、私は気になるものを見つけたため、足を止めてしまった。何度もこの道を通らなければ分からない、気づいても普通なら無視するような些細な変化。

 

 

「こんなところに…ガチャポンなんてあったかしら?」

 

 

お店とお店の隙間にひっそりと設置されたガチャポンがあった。なんで足を止めてしまったのか…自分でも分からなかった。ガチャポンマニアとかでも無いし、好きな景品があるわけでもない…

誰一人いないこの道。一人息を切らしながら、まるで吸い寄せられるかのように私はガチャポンに近づいていった。

 

 

「…いくらか書いてないわね。景品も、何が出るのか分からないし」

 

 

だいいち、お金なんて持ってるはずもなく。

少し不気味なガチャポンだなと自己解釈し、私は再び走り出そうと駆け出し―――ヂャリン

 

 

 

 

ヂャリン?

 

 

「……え?」

 

 

何か、硬いものがぶつかり合うような音がした。その音がした場所―――私の服のポケットの中。

何も入れた記憶はない。貰ってもいない。しかし、現にポケットの中から音がした。

私は恐る恐る手を入れてみると―――

 

 

「…コイン??」

 

 

全く知らないコインが数枚入っていた。

ゲームセンターにあるような、本当によく分からない…何故今まで気づかなかったのか…

私はさらに不気味に思えてきたが、ここで脳裏に浮かんだことがあった。

 

このコイン…使えないのかと。

 

 

私は恐る恐る、興味本位、物は試しでポケットに入っていた謎のメダルをガチャに入れた。そして、ゆっくりと掴み、回していく。

 

 

ガチャガチャ!!

 

「!!」

 

 

回った。本当に回った。この回す度に来る手応え、中でかき混ぜられる景品。

この時私はランニングの事などすっかり忘れ、ガチャポンの事しか考えていなかった。

 

 

《金のカプセルが出てきた!中身はなんだろう…?》

 

…何か私の頭上に浮かび上がった気がしたが気のせいだろう。カプセルの色は金。当たりだろうか…中身を開けて確かめる。

 

 

《『ゴットハンドV』の秘伝書を手に入れた!》

 

 

「………」

 

「…」

 

「…………え?」

 

 

秘伝書?え?ゴットハンドV?穂乃果さんの?

 

 

「何よこれ…」

 

 

秘伝書…というものを私は知っていた。

というのも秘伝書を参考に必殺技を習得したことが過去にあったからだ。

問題はそこじゃない。書かれている技の方だ。

 

 

「なんで穂乃果さんの必殺技が秘伝書になってるのよ…」

 

 

秘伝書に、必殺技に著作権みたいな権利はあるのだろうか…いや、ルビィのATPを理亞が使っている時点でそれは無いな。

となると…誰かが勝手に秘伝書化して景品にした…?

 

まぁ、どっかのアイドルは秋葉原とかで勝手にグッズ化されてるって言うし…うーん、いいのかしら?

 

 

「…まだ引けるわね」

 

 

ガチャガチャ!!

 

《青色のカプセルが出てきた!中身はなんだろう…?》

 

「…青。さっきよりはハズレっぽい」

 

 

私は迷わずカプセルを開けた

 

 

《『プチサンド』を手に入れた!》

 

 

「………」

 

 

いやいやいやいや、ガチャポンの景品にしちゃいかんでしょ。食品は。

絶対に食品衛生法とかに引っかかりそうだし、いつ作られたのかも分からないし…なんでサンドイッチを景品にするのよ…

サンドイッチはたまにリリーが作ってくれるし、それで充分よ…

 

 

「…まだ引けるわね」

 

 

ガチャガチャ!!

 

《オレンジ色のカプセルが出てきた!中身はなんだろう…?》

 

「オレンジ色。千歌が聞いたらミカン色って怒られそうね」

 

 

私は迷わずカプセルを開けた

 

 

《『ファイアトルネード』の秘伝書を手に入れた!》

 

 

……突然だけど「ファイアトルネード」ってかっこいいわよね。

ダイヤが始めて発動した時でも凄かったのに、ルビィが「超ファイアトルネード」を出した時は…反則よね。あれ。

極めつけは姉妹の「ファイアトルネードDD」。仲良すぎかって…当たり前よね。

 

 

 

それから、私はあるだけのコインで取り憑かれたようにガチャを回し続けた。

 

ガチャガチャ!!

ガチャガチャ!!

 

一番の大当たりは何なのか。

他にどんな景品があるのか。

 

ガチャガチャ!!

ガチャガチャ!!

 

 

《『ごくじょうのおでん』を手に入れた!》

《『スクールアイドルの輝き』を手に入れた!》

《『しっぷうのグローブ』を手に入れた!》

《『花陽のおにぎり』を手に入れた!》

 

 

違う。

 

ガチャガチャ!!

ガチャガチャ!!

 

違う。

 

ガチャガチャ!!

ガチャガチャ!!

ガチャガチャ!!

 

私が求めている景品は―――もっと、

 

 

 

「!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

《虹色のカプセルが出てきた!中身はなんだろう…?》

 

 

 

「来たあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

おっと、思わず街中で叫んでしまった。

だがしかし。ついに来たのでは!?長年積んできたゲーマーとしての血が騒ぐこの感じ。

おそらく、このガチャの一番の大当たりに違いない。

いったいこの中にはどんなものが、秘伝書ならばどんな技が、私を驚かしてくれるのか。

私はワクワクしながらカプセルを開けた。

 

 

《『闇のチカラ』の秘伝書を手に入れた!》

 

 

「―――」

 

……予想の斜め上を行くものが出てきた。

出た時は、このヨハネに相応しい物だなんたらかんたらと考えていたが、開けてから気づく。

………私はとんでもないものを手に入れてしまったのかもしれない。

秘伝書があれば、そこに記されている技を覚えやすくなる。もし、この秘伝書が…闇のチカラが別のチームの元へと渡ったら…

考えただけでも恐ろしい。下手すれば戦争になるのでは?

 

急にこのガチャポンが怖くなってきた。

 

 

「あと、コインは1枚」

 

 

残り1枚使ったらすぐに帰ろう。

横には山積みになった景品。どうやって持ち帰ろうか考えるよりも、今すぐにこの気味の悪いガチャから離れたかった。

その為にも早くラスト1枚を……

 

 

ガチャガチャ!!

 

 

 

 

 

 

 

《黒色のカプセルだ。》

 

 

 

「…黒」

 

某妖怪ゲームでは一番の大当たりである漆黒に染まりし封印玉(黒いカプセル)。

先程まで引いてきたカプセルとは何かが違う、ということは何故か感じ取ることが出来た。

 

そして…私はカプセルを開けるのと同時に、頭を殴られたような衝撃が走ったのだった

 

 

「!?」

 

 

 

《『銀のマカロン』を手に入れた》

 

 

 

「銀、の…マカロン??」

 

見た目、怪しい色をしたマカロン。

記憶に無いのにどこかで…食べた気がする。

食べ物ならばいい思い出なはずなのに、このマカロンを見ていると震えが止まらなかった

 

 

「か、帰ろう…」

 

今すぐにこの場から立ち去りたくなった。

このマカロンは何かヤバい気がしてならない。そう思いすぐに後ろを―――

 

 

「ヨハネちゃん♡」

 

 

―――ことりさんが、いた

 

 

「ことりさん…いつからそこに??」

 

「ダメだよヨハネちゃん、残しちゃダメって言ったでしょ?」

 

「残しちゃ…?」

 

 

残す…?何を?マカロン…??

 

 

「沢山食べて、強くなろうね♪」

 

 

沢山……マカロン…強く…あ、

 

 

「思い、出し…ひっ!?!?」

 

「マカロン食べてマカロン食べてマカロン食べて」

 

「嘘でしょ、ちょっ、いや……」

 

 

銀のマカロンはあの時の――――――

 

 

 

「 死 ぬ ま で 食 べ て ね 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「のわあぁぁぁぁ!?!?」

 

ことり「ピィィ!?」

 

無理無理無理嫌だ嫌だ嫌だマカロン無理無理無理!!!!!!

 

 

ことり「ヨハネちゃん!?どうしたの!?」

 

善子「マカロン無理マカロン無理マカロン嫌」

 

ことり「マカロン…??マカロンはここにはないよ??」

 

善子「いやいやいやい……へ??」

 

ことりさんの目が…違う。

千歌や穂乃果さんのような濁った目ではなく、私を心配してか少し潤んだように瞳を輝かせていた。

そして、

 

 

善子「バス…?」

 

ことり「怖い夢を…見たの、かな?」

 

善子「………」

 

だんだんと。自分の状況を理解してきた。

私は今日、午後の休みを利用してことりさんと街に遊びに来ていた……のだった。

私は疲れからバスに乗り不覚にも眠ってしまい……つまり、

 

 

善子「夢、かぁぁ……」

 

ことり「ヨハネちゃんがうなされてて…ことり心配で」

 

どうやら、かなり不安にさせていたようだ。

今にもことりさんは泣き出しそうになっていた。これは私の失態だ

 

 

ことり「ヨハネちゃん、疲れているのにことりが無理させたから…」

 

善子「ち、違うわ。前にも見た悪夢。ヨハネが天界から追放された時に掛けられた呪いによるものなの」

 

善子「つまり」

 

ことり「つまり?」

 

善子「リトルデーモンは悪くないわ…ヨハネだって、その…出掛けるの楽しみだったんだから」

 

ことり「…ヨハネちゃん」

 

嘘は言ってない。ことりさんの前では何故か堕天使としての自分をなかなか出せない津島ヨハネではあるが…何とか最後まで言い切ることが出来た。

 

でも何故、私の夢に出てくることりさんは毎回めちゃくちゃ怖いのか。

まさか心のどこかでことりさんを"あのような"存在に考えてしまっているのか。

だとしたら私は最低だ。何故って?

 

 

ことり「嬉しい…ことり嬉しいよ」

 

 

こんなにも優しくて、可愛いリトルデーモン…なかなかいないからね

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

ことり「ヨハネちゃん。そこってどんなお店なの?」

 

その後、私たちはジャパンエリアの街でショッピングを楽しんだ。

ほとんどことりさんの行きたい店だったが、その代わりということでは無いが、私の行きたいお店に向かうこととなった。

私はことりさんが行きたい場所だけでいいと言ったら普通に怒られた

 

 

善子「それが…私にもよく分からないの」

 

ことり「??」

 

そのお店は賑わう中心地から少し外れた寂しい通りに佇む。

アメリカ戦の帰り、バスの中から外を何も考えずに眺めていた時、偶然見つけた店だ

 

 

善子「ここよ」

 

ことり「……"秘宝堂"?」

 

屋根は瓦に覆われ、木材の壁。

いかにも日本の古き良き建築構造。

ことりは最初、堕天使を取り扱うお店へと向かうと思っていたのだが、

 

 

ことり「何のお店なの?」

 

善子「…秘伝書よ」

 

 

 

――――――

 

 

 

店内は静まり返っており、店員は会計するなら呼んでくれと奥へ引っ込んでしまった。

 

商品として並ぶ物はほとんどが巻物や書物。

まるで日本文化系のお土産屋のよう。しかし、そこに記されている内容は古文内容ではなく…なんとも現代的な

 

 

ことり「『スピニングショット』の秘伝書…」

 

善子「シュート技の秘伝書らしいわね」

 

古文系のお土産ならば蹴鞠だが、カタカナで書かれた必殺技を記した書。

ことりは改めて問う、このお店は、秘伝書とは何なのか

 

 

善子「…私にもよく分からないの」

 

善子は自分が「デビルバースト」を習得した経緯を全て説明した。

偶然「秘伝書」なるものを手に入れ、それを参考に新たなシュート技を習得したこと。

 

善子は知りたい。秘伝書は何故存在するのか、何故コンビニのクジの景品にあったのか、何故みんな存在を知らないのか

 

 

善子「それが分かると思ってここに来たのよ」

 

ことり「そっか、それじゃあ…」

 

 

 

 

 

「なるほど。だからあなたがあの技を使えたのデスね」

 

 

善子、ことり「「!?!?」」

 

背後からの声が私たちに向けられていたことはすぐに気づいた。

そして、この店には確実に縁はないであろうこの人。赤に染めた服、金色に光る髪

 

 

 

善子「小原……サエ、」

 

サエ「呼び捨てとは…随分となめられたものデス」

 

 

イタリア代表の監督が、そこにいた

 

 

 





メダルガチャは「イナイレgo」のゲーム、要するに3DSから導入されました。ゲームコインで引けるガチャでした。



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第3章 119話 「秘伝書の秘密」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回は前々から質問されていた秘伝書についてです。ほとんど説明回にはなってしまいますが、輝こうオリジナル設定の秘伝書です






 

 

 

 

善子「小原……サエ、」

 

サエ「呼び捨てとは…随分となめられたものデス」

 

気不味いとかのレベルじゃない。

先輩の母親、敵チームの監督、外人…だよね?何にせよこの空間で出会うことがあるのか?

ここはジャパンエリア。この人がこの場にいる理由が全く予想出来ない―――

 

 

サエ「オハラグループが経営する店に私がいて、何がおかしいのデスか?」

 

ことり「…オハラ、グループ?」

 

善子「ここ、小原家のお店だったのね」

 

ひとまず小原サエ降臨の理由は分かった。

しかし、聞きたいことはまだある

 

 

善子「『だからあなたがあの技を使えた』って、どういう意味?」

 

サエ「…」

 

サエ「その前に、秘伝書について知った方が話がわかると思うわ」

 

善子、ことり「「!!」」

 

善子の本当の目的は「秘伝書」について知ること。そのためにこのお店へと足を運んだのだ。善子はその目的を果たすため、サエの説明を聞くことにした

 

 

サエ「秘伝書、あなたたちの目にはどう見えた?魔法の書?チートアイテム?」

 

善子「どんな技でも秘伝書に出来れば…そう見えるわよね」

 

サエ「違うわ。秘伝書というのはあくまでも自分の必殺技の会得を促すための道具…日本に出回るようになるのはもう少し先」

 

サエ「試験段階を全て終え、こうして秘伝書を販売する第1号店をオープンした…というわけ。外国のプレーヤーたちからの認知度はかなり広がり始めていマス」

 

ことり「試験段階…それじゃあ、秘伝書は」

 

サエ「オハラグループが開発したものデス」

 

小原ならやりかねないなぁ…

善子は今までの鞠莉の行動を思い出す。どれも庶民から見ればぶっ飛んだ内容ではあった

 

 

ことり「必殺技の会得を促すため…ってどういうことなんですか?」

 

サエ「先程。善子さんが言いましたが、どんな技でも秘伝書に出来たら……それは出来ません」

 

善子、ことり「「!!」」

 

サエ「理由は2つ。1つ目はコスト的に厳しいこと、高難易度・高レベルの必殺技ほどその制作技術・費用がかかる…それ以前に現代技術では製作不可能な必殺技がたくさんありますが、」

 

サエ「2つ目は…正式にサッカー協会から制限がかかりました」

 

善子「制限?」

 

もし、高レベルの必殺技が秘伝書により誰でも会得出来るようになれば…

人によっては心身への影響が予測出来ない。

そして秘伝書の使用目的も根底から変わってしまう

 

 

サエ「私たちが秘伝書を作った目的は『オリジナルの必殺技を習得するための手助け』をするため」

 

サエ「例えば、ドリブル技の秘伝書でその技を覚え、そのドリブル技を参考に自分のドリブル技を完成させる…」

 

サエ「もし『秘伝書で勝つ』ために使用されれば、努力してきた者たちへの侮辱。何よりもサッカープレーヤー全体の技術向上への意識低下が予測出来る」

 

サエ「私は努力し足掻く者たちの手助けをしたいのデス。秘伝書もそのひとつ。監督もその願いのひとつ」

 

善子、ことり「「……」」

 

こんなことも教えてくれた。

サッカー協会が新たに定めた秘伝書を製作できる必殺技のランク。

つまり、必殺技が威力や便利さによってランク付けされている…ということ

 

 

サエ「世界大会に通用する必殺技を『SS』。その中でも極めて強力な必殺技を『SSS』」

 

善子「…なんかゲームみたいね」

 

サエ「サッカー協会が定めた秘伝書製作ランクは『C』。代表レベルの選手が習得しても使えるような必殺技はないわ」

 

私は興味本位で必殺技のランクを聞いてみた。勝負の裏で必殺技に格付けされていたと知って心に残らないと言えば嘘になる

 

 

サエ「現在。1人技で『SSS』ランクに指定されている必殺技は10」

 

イタリア代表 三浦和葉『ブレイブショット』

イタリア代表 フラム『イジゲンザハンド』

イタリア代表 フィレア『逃走迷走メビウスループ』

イギリス代表 エドガー『エクスカリバー』

ブラジル代表 ロニージョ『スーパーエラシコ』

アルゼンチン代表 テレス『アイアンウォール』

日本代表 黒澤ルビィ『ラストリゾート』

日本代表 黒澤ルビィ『Awaken the power』

日本代表 鹿角聖良『アイスエイジ』

日本代表 津島善子『Deep Resonance』

 

 

善子「って、ほとんど日本とイタリアじゃない!?」

 

サエ「格付けが始まったのがつい最近…大会が終わる頃には更に増えてるはず。そしてわかるでしょ?あなたたち日本は、偶然などではなく実力で。地獄と言われたグループAを勝ち抜き、決勝トーナメントへと進出したのよ」

 

善子、ことり「「……」」

 

サエ「とは言っても、このランク付け…私は意味無いと思いマスがね」

 

『S』や『SS』ランクの必殺技でも"V"や"G"と進化させれば『SSS』ランクの必殺技を超えることも十分有り得る。

技の相性も存在するのだ。

ランクを付けて必殺技を比べるのは性格上あまり好きではないとイタリアの大監督は語る

 

 

サエ「善子さんがシュート技としてもつ『デビルバースト』。あれは本来代表レベルでは使い物にならないはず…しかし、現にあなたはGXにまで極め、ここまで戦ってきた…」

 

善子「『デビルバースト』で決めれてないけどね」

 

サエ「当然。言ったはず、秘伝書の技では世界の戦いには通用しない」

 

善子「……」

 

サエ「あなたはその技を参考に新たな。自分だけの必殺技を作る必要がある…そして、」

 

 

 

サエ「あなたにはその才能がある」

 

善子「…才能?」

 

サエ「何故、敵であるあなたたちにここまで説明したのか…」

 

ゆっくりと善子の元へと近づくサエ。

取り出したのは1枚の紙、いや名刺だった

 

 

サエ「津島善子さん、私はあなたをスカウトしマス」

 

善子「!!??」

 

ことり「す、スカウト!?」

 

善子「イタリア代表に寝返ろって…?」

 

サエ「そんなことはしません。私がスカウトするのはその後、ヨーロッパクラブのユース」

 

善子「ヨーロッパクラブ…」

 

ことり「確か、小原サエさんはヨーロッパのプロチームの監督って…」

 

サエ「黒澤ルビィ、矢澤にこ、綺羅ツバサ…魅力的な選手は多い。しかし、全員伸び代で魅力に欠ける…特に黒澤ルビィは殆ど」

 

サエ「しかし、あなたは違う。この短期間でまるで別人のように…日本の即戦力となるまでに成長した。私はあなたを更に育てたい」

 

善子(……私が、プロユース)

 

 

 

 

――――――

 

 

 

その後、目的を果たした善子とことりは秘宝堂を後にした。

空は既に赤くなり、まもなく夜がやってくる

 

 

ことり「ヨハネちゃんが遠くに行っちゃうと…やっぱり寂しいね」

 

善子「……」

 

ことり「どうするの?」

 

善子は迷っていた。

一見、善子の努力が実を結んだ最高の形でのサプライズ。しかし、

 

 

善子「高二になったらすぐに留学か…」

 

ことり「急には、決められないよね」

 

すごく嬉しかった。サッカーが大好きな自分が、一体どこまでその強さ、大好きを追求できるのか…

それと同時に仲間とのサッカーを、少しでも長く続けたいという気持ちもあった

 

 

善子「まぁ、大会が終わるまでには答えを出すわ。ひとまず今は…」

 

善子「時間的にもう一軒、ショッピングしましょ」

 

ことり「うん!」

 

2人は明かりが灯り始めた街へと消えていく。

今はFFIの試合に集中せねば…

善子はすぐに気持ちを切り替えるのと同時に、少し気になることがあった

 

 

 

善子『秘伝書の技って、どうやって選んでるんですか?』

 

サエ『秘伝書の候補に選ばれた技を持つ選手に申請するのデス』

 

ことり『じゃあ、ヨハネちゃんの『デビルバースト』も…』

 

善子『誰かの…技…』

 

 

 

 

 

善子(誰の技だったのかしら…)

 

 

 

 

 

サエ「……津島善子、やはり魅力的デスね」

 

 

 

サエ(私でもあの技をGXにするのに…かなり苦労した筈なのデスが…)

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

その後、2人は帰路に就いていた

 

 

ことり「たくさんお買い物出来たね♪」

 

善子「こんなにたくさんの荷物…どうやって日本に持って帰るのよ」

 

善子が両手に持つ大量の袋…9割ことりの荷物だと言うことは置いておいて、明日からより一層気を引き締めて練習に取り組まなくてはならない。

何故か、日本が次挑もうとしているチームは世界の絶対的王者だからである

 

 

善子「……あれ?」

 

ことり「え?」

 

 

 

千歌「おーい!ことりさん、善子ちゃん!」

 

善子「ヨハネよ」

 

ことり「どうしたの千歌ちゃん、もう少しで門限だけど…」

 

にこ「2人に頼みがあるわ。監督たちに説教は覚悟の上で外出するって伝えて」

 

善子「はい?」

 

果南「頼んだよ。善子」

 

英玲奈「任せたぞ」

 

千歌、にこ、果南、英玲奈。

怒られると知って外出するほど、馬鹿ではないメンバーもいる…それでも外出しなければいけない理由は何なのか、

 

 

 

それを知るには数時間、遡る必要がある

 

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――

―――

 

 

 

日本代表の起床時間よりも前。

自主練でランニングを始めようとしたにこの前に現れたのは…ブラジル代表キャプテン、ロニージョであった

 

 

ロニージョ「久しぶりだね」

 

にこ「…あんた、どうしてここにいるのよ」

 

ロニージョ「そう警戒しないでよ…私とニコの仲じゃん」

 

にこ「なら連絡ぐらい入れなさいよ!親しき仲にも礼儀ありよ」

 

ロニージョ「ジャパニーズ『KOTOWAZA』だね。気をつけるよ」

 

にこ「はぁ……で、なんの用?」

 

一之瀬神奈と同じく、フリースタイルフットボールの世界で親しくなったにことロニージョ。お互いに実力を認め合うライバルでもあり、サッカーを楽しむ友人でもある

 

 

ロニージョ「高海千歌に会わせてくれない?」

 

にこ「…千歌に?」

 

だからこそ。

にこはロニージョの様子がおかしい事にすぐに気がついたのだ

 

 

 

― 数分後 ー

 

 

にこ「…連れてきたわよ」

 

千歌「むにゃむにゃ…」

 

ロニージョ「……」

 

にこ「悪いわね。ウチのキャプテンはこの時間はまだ睡眠時間なの。ガッカリした?」

 

ロニージョ「全然。私たちのチームもこんな感じだよ」

 

千歌「むにゃむにゃ……ん?ん??」

 

ロニージョ「会うのは初めてだね。高海千歌」

 

千歌「ろ、ろろろろロニージョさん!?!?」

 

にこ「今更!?!?」

 

ロニージョが場所を移したいと言ってきたため、少し離れた砂浜に移動していた。

朝方ということもあり、聞こえるのは波の音だけだ

 

 

ロニージョ「話しておきたかったの。準々決勝を戦うキャプテン同士でね」

 

千歌「そ、それは、エールの交換とかですか??よろしくお願いします!!」

 

ロニージョ「よろしくね。サニデイジャパンはガッツと粘りのある強いチームだね。決して楽ではないグループAで戦いながら、その強さを身につけてきた……」

 

千歌「はい!私たちは"ザ・キングダム"にも全力でぶつかっていくつもりです!!」

 

ロニージョ「…ファイティングガール、高海千歌。あなたは大会中にもどんどん進化している…あなたとの対決、楽しみだったけど」

 

千歌「…だった、けど?」

 

にこ「ロニージョ…?」

 

先程まで強者を漂わせる表情をしていたロニージョの雰囲気が、一気に変わった。

嫌な、風が流れた

 

 

ロニージョ「……高海千歌」

 

ロニージョ「私たち、"ザ・キングダム"と"サニデイジャパン"の準々決勝……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ロニージョ「負けて…くれないかな」

 

 

千歌「……ぇ、」

 

にこ「―――!」

 

 

 

南の島は天候が変わりやすい。

 

また新たな、嵐がやってくる

 

 

 




ちゃっかり。サニデイジャパン誰1人として見抜けなかった「ルビィちゃんが成長出来ない」ということをサエさんは見抜いていますね。さすが

ご感想、よろしくお願いします!


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第3章 120話 「王者たちの影」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
原作を見たことがある方は記憶にあるシーンになります




 

 

 

 

 

英玲奈「これがザ・キングダムの予選データだ」

 

サニデイジャパンの司令塔、そしてデータ分析も兼任する英玲奈。

数日後に控えたブラジル戦のために、ほとんどの選手のデータは揃えてある。

そんな彼女にブラジル代表の情報を教えて欲しいと頼みに来たメンバーが3人

 

 

千歌「パ、パス成功率93%!?!?」

 

果南「ボール保持率は72%もあるよ…」

 

英玲奈「セカンドボールはほとんど奪っている。どの試合も圧倒的な攻撃展開だ」

 

果南「各選手の運動量も物凄く多いね」

 

にこ「はぁ…ここまで来ると笑えるわね」

 

しかし、こんな高レベルのチームのキャプテンが、八百長を頼みに来たのは事実。

ロニージョの真意が分からない。怒りよりも、不審感の方が大きかった

 

 

英玲奈「いくら負けたくないからと言って、無敗で勝ち上がったチームのキャプテンが八百長を持ち掛ける理由が見当たらない」

 

千歌「こんな気持ちじゃ戦えないよ…」

 

にこ「……」

 

 

 

―――

 

 

 

ロニージョ『負けて…くれないかな』

 

千歌『……ぇ、』

 

にこ『―――!!』

 

千歌『あなたみたいな強い人が…ど、どうして…』

 

ロニージョ『っっ…今のままじゃ、みんなボロボロに…』

 

にこ『…ボロボロ?どういうこと?』

 

ロニージョ『………』

 

にこ『ねぇ、どういうことなの!?あいつらに…何かが起きたの!?』

 

辛い、耐えられない。そんな表情をしたロニージョに対し、にこは口調を強くし問い直した。しかし、弱々しい表情からうって変わり、顔を不敵な笑みに変え、ロニージョが口を開く

 

 

ロニージョ『……ふふっ』

 

ロニージョ『つまり、サニデイジャパンは私たちには勝てない。必死に戦ってボロボロになるような、無駄な事はしない方がいいと。忠告しに来たのよ』

 

にこ『……本気で言ってるの?』

 

ロニージョ『もちろん』

 

にこが怒っている事はすぐに分かった。

千歌自身も未だに状況を飲み込めていない

 

 

にこ『…まさか、今までの試合も同じように『それは違う!!決勝トーナメント進出はみんなの力で勝ち取ったのよ!!』

 

千歌『…だったら、私たちサニデイジャパンはザ・キングダムに全力で勝ちに行きます』

 

ロニージョ『…!!』

 

にこ『千歌、』

 

千歌『そして、私たちが勝利を掴みます』

 

ロニージョ『…せっかく忠告しに来たのに、馬鹿だね』

 

千歌『……』

 

そう言い捨て、ロニージョが立ち去ろうとする。なんだろう、このまま行かせたくない。体が…気持ちが…いてもたってもいられず、

 

 

千歌『ロニージョさん!!』

 

ロニージョ『!』

 

 

 

―――

 

 

 

果南「私がランニングから戻ってきたら、ちょうど千歌たちが砂浜にいたってわけ」

 

英玲奈「千歌はその後、ロニージョになんて言ったんだ?」

 

千歌「…シュートを蹴ってもらった」

 

ボールを渡し、千歌に撃ってこいと。

ロニージョを前に千歌は構えた。

一方のロニージョは最初は迷うも、千歌を見据えると巧みなボール捌きから一撃を放った。

結果、

 

 

千歌「凄かった。ロニージョさんのシュートは…重さ、回転、スピード、どれも圧倒的だった」

 

にこ「千歌、闇の力使って弾いたでしょ」

 

英玲奈「それほどまでに強力だったのか!?」

 

千歌「…はい」

 

果南「穂乃果と私…止められるかな、それ」

 

ロニージョのシュートを受け、分かったことは実力の他にもあった。

千歌は言う、ロニージョは本気でシュートを撃ってきた。全力で真正面から戦う気持ちが無ければ、そんなことはしない

 

 

英玲奈「ならば、尚更分からないな…何故、ロニージョは八百長を…」

 

「「「…………」」」

 

にこ「ザ・キングダムに…何かあったのかもね」

 

果南「何か…??」

 

ロニージョが最初見せた弱々しい顔、そして「ボロボロになる」という言葉。

にこはどうしても、その言葉に引っかかるという

 

 

千歌「…ならさ、行こうよ」

 

果南「行こうって、どこに?」

 

 

千歌「ロニージョさんに会いにだよ」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ライオコット島は本戦出場チームの最高のパフォーマンス発揮を狙い、その国そのままの街・土地を再現している。

千歌たちが休日を使って訪れたのはブラジルエリア。目的はロニージョに会うことである

 

 

果南「やっぱりジャパンエリアとは雰囲気が違うね」

 

千歌「ロニージョさん、どこにいるんだろう」

 

にこ「ブラジル代表の練習グランドに行ってみましょ。練習してると思うわ」

 

目的地を決め、大通りを歩き始めた時だった。頭上のモニターからインタビュー動画が流れ始めたのだ。

賑わっていた繁華街にもその音声は響き渡り、そこにいる人たちの視線はモニターに集中した

 

 

『ガルシルド監督、決勝トーナメント進出を果たしたお気持ちは?』

 

ガルシルド『責任を感じていますよ』

 

『と、言われますと?』

 

ガルシルド『このFFI世界大会は私の愛するサッカーを通じ世界平和を目指して開いたもの』

 

ガルシルド『そのメッセージを全人類に伝えるために、ひとつでも多く勝ち進むことが我がチーム、ザ・キングダムの使命でありますからな』

 

『なるほど。ありがとうございました!』

 

 

英玲奈「…世界平和を目指してか、」

 

果南「うん、そんなチームなら間違っても八百長を頼んじゃダメだよ…」

 

千歌「ガルシルドさんって確か…」

 

FFI大会委員長であるガルシルド。

ライオコット島をサッカーアイランドに改造した大富豪の1人である

 

 

にこ「1人って、ガルシルドだけでライオコット島を作ったんじゃないの?」

 

英玲奈「実はライオコット島、とある2人の代表によって改造された島なんだ」

 

英玲奈「1人はガルシルド」

 

英玲奈「そしてもう1人は…」

 

 

 

英玲奈「オハラグループ代表、小原鞠莉の父親だ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

千歌「鞠莉ちゃんの…」

 

果南「まさか、鞠莉の親とガルシルドがこの島を作ったなんて…」

 

今考えると、グループAの歓迎パーティーはイタリア代表の鞠莉が用意したと言っていた。

場所、料理の確保。会場の用意がとてつもなく早かったのは恐らく、オハラグループが関係していたのだろう

 

 

にこ「あの浦の星の暑苦しいやつ……ん?」

 

『日本代表の"太陽の跡目" 高海千歌さんですがーー』

 

千歌「…にこさん?」

 

にこ「千歌。あんた2つ名出来てるわよ」

 

千歌「えぇ!?」

 

先程、ブラジル代表監督インタビューが放送されていたモニター。

ブラジルエリアで日本代表の映像が流れているのは恐らく、次の対戦相手だから。

そこで耳に飛び込んできたのは千歌の2つ名と思われる名前。

当の本人も知らない、英玲奈はすぐに検索をかけた

 

 

英玲奈「…!浦の星女学院のメンバーを中心に、代表メンバーに2つ名がついてるな」

 

果南「あの千歌が2つ名……」

 

千歌「それどういう意味?果南ちゃん」

 

にこ「千歌は"太陽の跡目"って呼ばれてたわね」

 

千歌「…跡目って何?」

 

果南「もう、そんなことも分からないの?跡目って言うのはね…………何だっけ?」

 

にこ「分かんないんかい!!!」

 

英玲奈「"跡目"とは後継者という意味だ」

 

千歌「後継者…?」

 

果南「日本の太陽、キャプテン、受け継いだ千歌にピッタリな名前じゃん」

 

千歌「穂乃果さんの…後継者」

 

にこ「しかしまぁ…誰が考えてるのかしら。2つ名なんて」

 

果南「ねぇ、聖良の2つ名変わってない?」

 

千歌「善子ちゃんの名前カッコイイ…!!」

 

英玲奈「……ロニージョを探さないのか、」

 

 

2つ名で盛り上がる一行。

しかし肝心のロニージョは見つからない。それどころかブラジル代表の選手さえ、いそうな場所は全て探したが見つからず。

こっちへフラフラあっちへフラフラ。

美味しい食べ物屋に誘われ、サニデイジャパンのサポーターからは話しかけられ。

探し疲れた果南が海に逃げようとし。

にこはストリートサッカーに乱入する始末。

 

 

気づけば日が傾き始めていた

 

 

 

千歌「日が暮れるぅぅぅ!!!!」

 

にこ「誰のせいだと思ってるのよ!!!!」

 

英玲奈「お前たちだろ…」

 

目的を忘れかけていたのは不覚。

しかし、見つからないのだ。

身を隠すわけも無い。なのに何故か1人として見つからない…今日は引き上げるかと考えていた―――その時だった。

路地裏に人の気配を感じた

 

 

「親父にも仕事をやめてもらうからな」

 

「そんな…!!それでは私たち家族が生きていけない!!」

 

 

果南「…なんかあるみたいだね」

 

にこ(この声…)

 

 

「これはガルシルド様が与えたものだ。もうお前に使う権利はない」

 

「そ、そんな!?」

 

「恨むなら試合でミスしたお前の姉を恨め!!」

 

男性の強めの口調と共に路地裏から飛び出してきたのはサッカーボールだった。

それに続き、子供の泣き声が聞こえてくる。

どうやらただ事では無いらしい

 

 

「お願いしますっっ…次の試合、必ず期待に応えて見せます!!だからもう一度…もう一度チャンスをっっ!!」

 

「チャンスか…お前たちのミッション成功率は常にチェックしている」

 

「はい!!もう二度とミスはしません!!」

 

 

果南「ちょっと、何もめてんの?」ギロッ

 

「「「!!!!」」」

 

「あ、あなたたちは…」

 

にこ「大丈夫。もう泣かないのよ」

 

子供に声をかけるにこ。

その前に守るように立ち塞がるのは我らが松浦果南。

場が悪いと感じたのか、黒服の男たちは足早にその場を立ち去っていった。

このまま問い詰めても良かったのだが、今はこの少女たちを落ち着かせるのが最優先だ

 

 

にこ「ボールは探してあげるから、ね?」

 

「ぐすっ…ガルシルドめ…」

 

「…サニデイジャパン」

 

にこ「久しぶりね。ラガルート」

 

運がいいのか悪いのか。

ブラジル代表の選手を見つけたのは良いが、どうもこのまま引き下がれるような状況にはならないような流れへとなってきていた

 

 

 

ー ブラジルエリア 公園 ー

 

千歌「はい!ボール」

 

妹「ありがとう!お姉ちゃんたち!」

 

場所を移し、ブラジル代表メンバーのラガルートが落ち着いたところで話を聞く事にした。

英玲奈は単刀直入に聞く

 

 

英玲奈「ガルシルドめ、と言っていたな」

 

ラガルート「…」

 

英玲奈「自分たちの監督をそのように言うのは変だ」

 

千歌「…ロニージョさんが負けてくれって言いに来たのと、何か関係があるのかな…」

 

ラガルート「…!?ロニージョの奴…」

 

にこ「知らなかった、みたいね」

 

妹「…ガルシルドが悪いんだ」

 

妹「姉ちゃんたちがこんな辛い思いをしているのは、全部ガルシルドのせいなんだ!!」

 

そこから、昼間の放送で見たガルシルドのイメージとは掛け離れたガルシルドの本性を知ることとなった。

ラガルートの妹は言う。「みんな騙されたんだ」と。

最初は、貧しかった今の代表メンバーたちにガルシルドがサッカーをするための場所やお金を提供し、家族にも仕事を与えてくれた。

最初は感謝していたものの、時間が経つにつれ、ガルシルドの裏の顔を知った

 

 

ラガルート「あいつの命令に逆らったり、試合でミスをすると…厳しい罰を受けるようになった。私たちの家族にまで」

 

果南「家族にも…罰」

 

ラガルート「ガルシルドは自分の作戦通りに、完璧に勝つことを要求してきた。ミスは一切許さない…だから、」

 

英玲奈「選手への負担がすごく大きいんだな」

 

ラガルート「既に2人…オーバーワークで動けなくなっちゃった…このままじゃ、二度とサッカーが出来なくなる子も出てくる」

 

これで、ロニージョが言っていた「ボロボロ」の意味が分かった。

想像以上に最低で残酷な答えに、千歌たちの怒りはフツフツと煮え初めていた

 

 

ラガルート「ロニージョは…あなたたちが強いチームだと認めたからこそ、負けてくれと頼んだんだ…確実に勝ってチームメイトや家族を守るために、ブライドを捨てて」

 

にこ「家族にも…」

 

ラガルート「罰は家族にもって言ったでしょ?もし試合に負けてしまったら…私たちも家族もどうなるか、」

 

「「「!!!!」」」

 

果南「そんな…それじゃまるで人質と同じだよ!?」

 

ラガルート「くっ……」

 

英玲奈「…自分のチームにそんなことを」

 

何とか出来ないいのか。

そう聞くが現実はあまりにも無情だった

 

 

ラガルート「私たちには…どうすることも出来ない。ガルシルドの言うことを聞くしかないの」

 

にこ「それで、本当にいいの?」

 

ラガルート「いいんだ。ニコ、前に話してくれたよね?妹たちがいるんでしょ?」

 

にこ「…ええ」

 

ラガルート「わかるでしょ?守るのは当然だって」

 

そう言うとラガルートは妹を連れて立ち去った。にこは何も言い返せなかった。

綺麗事ならいくらでも言える。しかし、それが彼女たちを苦しめるのは分かりきっていた。悔しい、自分たちは何も出来ないのか

 

 

千歌「……」

 

にこ「千歌。抑えなさいよ。こんなところで力なんて出すんじゃないわよ」

 

千歌「…これが、サッカーなのかな?」

 

千歌の声は震えていた。

怒りをこらえ、滲み出る負の感情をギリギリで抑え込む。

しかし、耐えきれないのは全員同じだった

 

 

千歌「このまま準々決勝を戦うなんて無理だよ」

 

果南「うん、あの2人の辛そうな姿を見たらほっとけないよ…何とか出来ないかな?」

 

千歌「ザ・キングダムを、ガルシルドの手から解放するんだよ」

 

にこ「それしかないわね」

 

 

 

 

「あなたたちに何ができると言うの?」

 

 

「「「!!!!」」」

 

決意を固めようとした時だった。

背後から刺すような声が聞こえ、何故この場にいるのか?状況を整理できないままその人が近づいてくるのをただ呆然と待った

 

 

果南「鞠莉の母親、小原サエ」

 

サエ「どうして鞠莉のフレンドは私を呼び捨てで呼ぶのでしょうか…」

 

金髪の髪を伸ばした大人の女性。

明るい鞠莉とは真逆、クールで全てを見透かしているようなその雰囲気。

鞠莉も見透かすような雰囲気は持つが、サエのそれは得体がしれない

 

 

英玲奈「聞いていたのか、話を」

 

サエ「ええ。ですが、あなたたちには疑問を持ちました」

 

千歌「私たちに何が出来るのか、」

 

サエ「あなたたちは所詮、一般家庭のごく普通の日本人。権力も地位も圧倒的に上なガルシルドにどう抗うと言うのですか?」

 

果南「でも…やってみないと分からない!!」

 

サエ「責任は取れるのですか?」

 

果南「責任…」

 

サエ「あなたたちが下手に動けば、罰を受けるのはブラジルの選手たち。最悪の場合あの人たちは全てを失いますよ」

 

果南「……」

 

サエ「権力も覚悟もない人が、人を救うなんてほざくな」

 

千歌「……?」

 

サエ「あなたたちはただでさえ、王者と戦おうとしているのに…敵の心配する暇があるなら今すぐに戻ることデス」

 

サエ「死ぬまで特訓し、強くなってからほざきなさい」

 

「「「…………」」」

 

大人はずるい。

正しいことをしたいだけなのに。

それさえも大人の持つ力でねじ伏せる。

千歌たちは黙って帰路につくことしか出来なかった

 

 

果南「…私たちには力がない、か」

 

にこ「……」

 

小原サエの言うことは全て正しい。

間違っているのは自分たちだって分かっている。だからこそ、だからこそ、

 

 

 

千歌「…悔しいよ」

 

千歌「目の前に、悲しんでいる人たちがいるのに。サッカーを楽しみたいはずなのに」

 

千歌「みんな、不幸になってる」

 

英玲奈「…千歌」

 

まもなく日本代表の宿舎。

そんな時、千歌の足が止まった

 

 

にこ「…帰るのよ。千歌」

 

千歌「にこさんはそれでいいんですか?」

 

にこ「……」

 

千歌「ブラジル代表とは、友達なんですよね?友達が…あんなにも悲しんでいるんですよ?」

 

果南「なら、何が出来るって言うの?」

 

千歌「……」

 

 

 

千歌「ガルシルドの闇を、引きずり下ろす」

 

 





千歌ちゃんの2つ名は「太陽の跡目」です。
その他の選手はまた今度



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第3章 121話 「潜入!ガルシルド邸」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回のお話は短めです




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ブラジル代表キャプテン、ロニージョから八百長を頼まれた千歌。その言葉に違和感を覚えた一行はロニージョに会うためにブラジルエリアへと向かった。

しかし、そこで分かったのはガルシルドの裏の顔。千歌たちはロニージョたちを救うため、立ち上がる

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

果南「千歌、とんでもないこと考えるね」

 

4人は帰路から外れ、再びブラジルエリアに戻ってきていた。

向かう場所はただ1つ。「ガルシルドの屋敷」

 

 

千歌「黒服の人たちは選手のデータをチェックしているって言ってた」

 

英玲奈「ガルシルドの屋敷ならば…そのデータがある。家族を人質にし、選手に限界以上のプレーをさせていた事が公になれば、」

 

にこ「ガルシルドを大会から引き摺り下ろせるってわけね」

 

日は既に沈んでいる。

ガルシルドの屋敷があるのはブラジル街から外れた森の中。それは千歌たちにとって好都合。

闇に紛れ、草木に身を潜める以上に、侵入に適した環境は無い。

 

壁の外側で身を潜め、全員で目標を確認し合う

 

 

英玲奈「証拠を見つけるんだ。だが、壁の向こうにはガルシルドの手下がそこかしこに配置されているはずだ」

 

にこ「…英玲奈。あんたの"エンペラータイム"で範囲内の人間の位置を把握出来ない?」

 

英玲奈「…!その手があったな。やってみよう」

 

早速、英玲奈は地面に手をつけ、必殺技を発動し相手の人数、位置などの情報分析を始めた

 

 

千歌「……」

 

果南「怖い?」

 

千歌「怖い。相手は手段を選ばないって事が分かってるから尚更…」

 

果南「じゃあ、やめる?」

 

千歌「やめない」

 

緊張、恐怖に体は重くなる。

それでも千歌の目は死なない。

ロニージョたちのサッカーを取り戻すため。サッカーを本気で楽しんでもらうため

 

 

英玲奈「…分析完了だ」

 

英玲奈「敷地内に5人。屋敷内に10人だ。門番は2人。門からの侵入は不可能。隙を見てここから侵入するしかないな」

 

にこ「便利ね…あんたの技」

 

転機はすぐに訪れた。

敷地内を巡回する警備員が屋敷内に戻っていくのだ。英玲奈は必殺技を発動しながら言う

 

 

英玲奈「…巡回の交代だな。行くなら今しかないぞ」

 

果南「じゃ、あの木を使お」

 

果南が指さすのは太い枝が伸びた木だった。

あの枝を利用すれば壁を簡単に越えられる。

怖気付いてなどいられない。千歌たちは覚悟を決め、作戦を実行に移す

 

 

千歌「うわ…ホントに警備員がいない」

 

英玲奈「見つからないように急ぐぞ」

 

壁を越えたら屋敷へと走る。

英玲奈が走る先には1つの窓があった。

この部屋が警備員が集まる部屋から1番離れているのだという。

早速屋敷への侵入を図る…が、

 

 

千歌「ぐぬぬぬぬ……開かな…い!!!!」

 

にこ「当然、鍵はかかっているでしょうね」

 

果南「………」

 

英玲奈「どうするか」

 

千歌「並大抵の力じゃ開けられないよね」

 

果南「………」

 

にこ「くっっ…私たちにそんな怪力…」

 

果南「………」

 

千歌、英玲奈、にこ「「「………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

『侵入者ですっっ!!!!!!』

 

 

にこ「でしょうね!?!?」

 

果南「てへ♪」

 

英玲奈「開け方が強引過ぎたな…」

 

防犯ブザーのような不快な音が屋敷内に響き渡る。形はどうであれ侵入成功。いや、成功なのか?

警備員はすぐにこの部屋へと向かってくるであろう

 

 

英玲奈「走るぞ。早くデータベースに繋がるコンピュータを探そう」

 

迷わず部屋を飛び出し、屋敷の廊下を駆け回る4人。

しかし、相手は大人。すぐに見つかり捕捉しようと追いかけてくる

 

 

「待ちなさいっっ!!」

 

にこ「ちょっと…このままじゃ捕まるわよ!?」

 

英玲奈「…真正面からでは勝てないな」

 

大人。しかも雇われた警備員。

いくら自分たちが代表選手だとしても、体格差で不利な部分がある。

力で勝てないのならばーーー戦術

 

 

英玲奈「私は現在進行形で"エンペラータイム"を発動している。警備員の動きや内部構造はゲームのように把握している」

 

「「「!!!!」」」

 

英玲奈「よく聞いてくれ。私の指示通りに全員散ってくれ。スピードと力では劣るが、体力と連携なら私たちが有利だ」

 

果南「体力なら負けないね」

 

にこ「試合みたいに応えてみせるわ」

 

千歌「英玲奈さん!!指示を!!」

 

距離は確実に縮めている。

このまま追いかけ続ければ確実に侵入者を仕留められる…警備員たちがそう考えた時だった

 

 

英玲奈「今だ!!」

 

「4方向に散った!?」

 

捕まると分かって別れるつもりなのか。

結局最期は全員捕まるのに無駄な足掻きを。

警備員たちも4方向に別れ、1人も残さず追いかけた

 

 

千歌「ハァハァ…!!」バツ

 

警備員「オレンジ色のガキっっ!今すぐに止まれ!!」

 

千歌「ミカン!!!!!!」

 

 

果南「ーーー!」バツ

 

警備員(左右に曲がって逃げ切る気か…させない!!)

 

 

にこ「ーーー!」バッ

 

警備員(チビの癖にタフだな…)

 

走り始めて数分が経過した。

捕らえた人数は未だに0。

さすがの警備員たちも違和感を抱き始めていた

 

 

警備員((追いつけない!?!?))

 

 

千歌たちが変わったのではない。警備員たちの体力が減る一方、千歌たち4人はこの程度ではバテたりなどしない。

疲労が溜まれば冷静な判断が出来なくなる。その答えはこのあとすぐに分かることとなる

 

 

千歌「曲がり角!!」カクン!

 

警備員「くそ!!」

 

 

にこ「こっちよ!」カクン!

 

警備員「舐めやがっ…」

 

警備員「「!?!?」」

 

死角からーーぶつかーーー

 

ドガッッッッ!!!!!!

 

全力疾走で激突した警備員らのダメージは計り知れない。身動きが取れないことを確認した千歌とにこはその場からすぐに走り去った

 

 

千歌「大成功!!」

 

にこ「果南と英玲奈と合流するわよ」

 

一方、果南と英玲奈も同じく警備員の撃退に成功。

走り回っている間に怪しい部屋を見つけたというのでそこへと向かった。

鍵がかかっていたが、そんなこと関係ない

 

 

 

ーーードガッッッッ!!!!

 

果南「なんか不本意だなぁ…」

 

英玲奈「…ビンゴだ。情報室だ」

 

巨大な機械に何台ものパソコン。

情報があるとしたらここしか無かった

 

 

「情報室…まさか!?」

 

千歌「英玲奈さん!!近づいてきます!」

 

果南「私に任せて」

 

にこ「果南の力なら扉を抑えられるわ!」

 

英玲奈「…もっといい方法がある」

 

 

 

 

 

「くっ…向こうから固定されたかっっ!!」ガチャガチャ

 

ガルシルド邸の扉は全て押したり引いたりするものである。ドアノブではなく、掴む取っ手があるもの…その扉の場合、力を使わずに簡単に固定できる方法がある

 

 

果南「デルフィナス・トリアイナをドア固定に使うなんて……」

 

にこ「これでヤツらは入って来れないわね。英玲奈!」

 

英玲奈「あぁ」カチャカチャ

 

固定したとは言え、増援を呼ばれては敵わない。英玲奈はすぐにデータのコピー作業に取り掛かる。余裕は決してない

 

 

千歌「どうやって脱出するの?」

 

果南「強行突破しかないよ…」

 

にこ「強行突破なら、千歌の出番よ」

 

英玲奈の高速かつ正確な操作によってコピーはすぐに終了。

あとは脱出するのみだが…

 

 

「逃げられませんよ。開けなさい!」

 

 

ーーガチャ

 

 

千歌「……」

 

部屋から現れたのは千歌1人。

不思議にも千歌の足取りは軽く逃げようとする気配もない。

観念したのかーーーそれともーーー

 

 

 

チカ「 邪 魔 だ か ら 」

 

「(このオーラ…まさか闇のーーー

 

 

チカ「【ストームゾーン】!!」ゴオォォ!

 

「「「ぐわあぁぁぁぁ!?!?!?」」」

 

闇の力で巻き起こす暴風。

大人でもこのパワーには耐えられない。

残りの3人が隠れていたのは巻き添えを喰らうのを避けるためだったのだ

 

 

果南「うわー…派手にやったね」

 

英玲奈「急ぐぞ」

 

このまま進めば出口に直行できる。

追っ手もまだ立ち上がれていない。これでロニージョたちは救われる!!

 

残りの力全てを出し切る気持ちで走る4人。

勝利を確信し十字路を突っ切ろうとしたーーー

 

 

 

サエ「あなたたち…」

 

 

 

千歌「ーーぇ、」

 

にこ「!?」

 

果南「は??」

 

英玲奈「!!!!」

 

 

小原……サエ??何故、ここに??

 

 

にこ「な、なんであんたが…」

 

果南「ガルシルド…小原…まさか!?」

 

最悪の考えが頭をよぎった。

この島を作ったのはガルシルドと小原グループ。ガルシルドに裏の顔があるならば、繋がっている小原家はーーーー

 

 

にこ「まさか…あんたも関わって!!!!」

 

千歌「それしか、ないよ」

 

サエ「……」

 

捕まえようとする気配は無い。

しかし、この場にいるということは敵には変わりない。英玲奈の指示で全員が我に返る

 

 

英玲奈「急げ!逃げられなくなるぞ!!」

 

 

千歌「……これが、」

 

千歌「あなたのサッカーなんですか?」

 

サエ「………」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

敷地内まで逃げ出した4人。

警備員が近づけば千歌の必殺技で吹き飛ばし、英玲奈の必殺技で状況を把握。

侵入した壁まで戻ってきたのはいいのだが…

 

 

果南「ダメだね、完全に撒いてないよ」

 

英玲奈「このまま自動車を使われたら追いつかれるな…」

 

千歌「じゃあ、森に逃げ込んで「その必要はないぞ!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

壁の外側から声がした。

よく見ると1台の車が止まっている。

声は男性、まさか先回りされたのか…

万事休すかと思われたが…千歌だけは違った

 

 

千歌「……ん?あれ!?」

 

にこ「千歌…?」

 

千歌「あ、あなたは!!」

 

「早く乗りな!追いつかれるぞ!!」

 

 

 

 

千歌「ラーメン屋の大将!?!?」

 

果南、にこ、英玲奈「「「ええぇぇ!?!?」」」

 

大将「へへっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガルシルド「…!?データを盗まれた!?」

 

「RHプログラムの方は無事だったのですが…例のデータが、」

 

ガルシルド「むぅ……」

 

 

 

――――――

 

 

 

大将の車でブラジルエリアを脱出した4人。

追っ手が来る気配は無く、完全に逃げ切ったと分かった途端。心臓が爆発するように動き始めていた

 

 

千歌「…い、今になってドキドキしてきた」

 

大将「嬢ちゃんたち無茶するなぁ…」

 

英玲奈「だが、何故あなたはあの場所に?」

 

大将「…嬢ちゃんたちがブラジルエリアに向かうところを見てな。様子がおかしかったから追いかけてきたんだ」

 

千歌「え、じゃあお店は??」

 

大将「大丈夫!店番を残してきたからな!」

 

英玲奈(…本当にそれだけか?)

 

間もなく日本代表の宿舎へと到着する。

このデータがあれば、ロニージョたちを支配する魔の手を払うことができる

 

 

大将「嬢ちゃんたちは…もしかするととんでもないことに首を突っ込んでしまったかもしれないなぁ…」

 

 

 

 

 

ー 日本代表宿舎 ー

 

 

美奈「これで、分かったわね」

 

希「はい」

 

月「うーん…やっぱりね」

 

希「情報を漏らした裏切り者は―――

 

 

 

 

――――――あんたやね」

 

 

 

 





次回は前に立てましたフラグ、裏切り者の回です



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第3章 122話 「影で支える使命」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回は輝こう史上初の推理回です。裏切り者が誰なのか、考えながら読んでいただけたら




 

 

 

 

全ては偶然から始まった

 

 

真恋「…あれ?」

 

将来、自分たちを焼き付くしかねない巨大な炎に変わる前の。小さな、小さな火種

 

 

真恋「この履歴…」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

天空の使徒、魔界軍団Zとの戦いを終え、無事に宿舎へと戻った日の夜。

とある選手らが美奈に呼び出されていた

 

 

希「失礼しまーす」

 

月「僕たち2人だけ?」

 

ミーティングルームには呼び出された2人と美奈と真恋のみ。

練習は明日からでミーティングも今日は行わないとつい先程指示があったばかりだ。

別の要件で呼ばれたのだと、2人はこの場に来るまでの間に察していた

 

 

美奈「2人ともありがとう♪すぐに来てくれて」

 

月「それで、何故僕たちを?」

 

美奈「そうね。回りくどいのは無しで単刀直入に言うわ」

 

 

美奈「サニデイジャパンの中にイタリア代表へと情報を流した人がいるかもなの」

 

希、月「「!?」」

 

希「それって…イタリア代表のスパイ??」

 

真恋「確定では無いけど…その可能性が高いわね」

 

月「…詳しく聞かせてくれないかな?」

 

この疑惑が浮上したのは偶然。

真恋がミーティングルームに置いてある誰でも利用できるパソコンを使っていた時だった。

そのパソコンには選手たち、そして日本代表の情報を守るために普通のパソコンには無い、データ履歴を保存できる機能をつけていた。

普通なら見ることも無いその履歴。

真恋が開いた時には目を疑った

 

真恋『なに、これ?』

 

そこにはイタリア代表へと送られたであろうファイルが複数見つかった。

パソコン本体の方は完全にファイルのデータ、送信履歴が全て消されていたが、この機能には気づかず、足跡を残していったのだと考えられた

 

 

真恋「ファイル送信の時期は〇月〇日から〇月✕日」

 

月「スペイン戦の次の日からイタリア戦の数日前まで…だね。そこからは?」

 

真恋「イタリア戦数日前を最後に送信履歴は確認出来なかったわ。ファイルの中身は見れないし…送信されたという事実しか残ってないわ」

 

希「ふむふむ」

 

イタリア戦前までイタリア代表へと送られたファイル。

選手の情報を送られたという可能性から目をそらす事は出来ない。

月と希はそのスパイの特定のために呼び出されたのであった。

何故この2人なのか、理由はいくつかあるが、1番の理由は――――――

 

 

美奈「推理とか得意そうだし、2人とも♪」

 

希「そ、そんな理由でウチらを?」

 

月「ははは、」

 

美奈「でも信頼しているのは確かよ。2人には誰にも気づかれないように、特定を急いで欲しいの」

 

真恋「イタリアとは決勝で再び戦う可能性が高いわ。その時は両チーム共に不安要素無しで戦ってもらいたいの」

 

希、月「「……」」

 

月「じゃあ、やりますか」

 

希「そうやね」

 

こうして、月&希によるスパイ特定はサニデイジャパンの努力の日々の裏で始まっていた。

望むならば何かの間違いであって欲しい。

しかし、それと同時に何も知らないであろう仲間たちのためでもある。

犯人には情けをかけるつもりは無かった

 

 

ー 翌日 (109話)ー

 

月「何から始める?」

 

希「そうやね…まずは、気になったことから言ってもええ?」

 

月「ああ、僕もあったんだ。気になったこと」

 

 

"何故、情報の送信はスペイン戦後からスタートしたのか"

 

イタリアに日本代表のデータを送るならば、期間限定の情報では無く出来る限り全試合のデータが欲しいはずだ。それはどこの国も同じ。

全試合のデータをまとめて送った可能性もあるが、それは低いだろうと考えていた

 

 

希「あのファイルの量から見て全試合分の送信は不可能や。スペイン戦からのデータと見て間違いないと思う」

 

月「本戦以降のデータが欲しかったのかな…いや、予選にしかないデータもあるからなぁ…」

 

希「うーん、それに…」

 

 

"何故、あのパソコンだったのか"

 

 

月「リスクがありすぎるよね。全員が使えるパソコンでなんて」

 

希「しかもミーティングルームや。誰かに見られたら終わり…つまり、それほどまでに余裕がなかった…?」

 

月「危険を冒すぐらい?」

 

ここまでの分析により1つ。

仮説に近い考えが思い浮かんだ

 

 

希「スペイン戦からデータ送信を始めたんじゃなくて、あのパソコンの利用をスペイン戦から始めたんかもな」

 

月「…なるほど」

 

スペイン戦の前からデータ送信は続けられていた。しかし、なにかの理由でその送信が出来なくなった。

止むを得ずにスパイは日本代表兼用のパソコンで送信を続けた。まさか、履歴を消しても別の場所に保存されているとも知らずに

 

 

月「その理由が分からないんじゃなぁ…何も出来ないんだよね…」

 

希「スペイン戦、FFI本戦スタート、ライオコット島に移動…環境が変わってからやね」

 

月「じゃあ、会場の変化がその理由に関係している…?」

 

今は練習前。サニデイジャパンのメンバー全員がコートに出て準備を始めている。

そんな中で希は2人の選手に視線を向けていた。

津島善子と葉石晴夏だった

 

 

希「本戦から合流した2人」

 

月「まぁ、そうなるよね」

 

予選リーグまでは日本代表メンバーたちとは合流せず、簡単にデータを送ることが出来ただろう。

しかし、本戦でメンバーと合流してからはどうしても行動に制限がかかる。

何かがきっかけでパソコンを使うことになった可能性もある

 

 

月「また"何か"なんだよなぁ……」

 

希「先は長そうやな」

 

 

 

 

 

千歌「ねえねえ、希さん、月ちゃん。さっきから2人で何の話をしてるの?」

 

 

 

月「ん?いや、今日の練習何かなーって」

 

希「そうそう。またワシワシゲームかもよ♪」

 

千歌「げっ…あれはもうやりたくないよ…2人とも真剣な顔で話してたからちょっと気になっちゃった」

 

月「朝に弱いからね…まだ眠いからかな?」

 

希「そんな時はワシワシで…」ワキワキ

 

月「えぇ!?」

 

千歌「逃げよ」

 

 

「………」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

ー その日の夜(110話)ー

 

今日の練習の間、善子と晴夏の行動を観察したが、これといって目立つ動きは確認出来なかった。

しかし、ほかのメンバーとの会話の中で気になる情報を得ることが出来た

 

 

希「梨子ちゃんと英玲奈っちが?」

 

月「うん。結構なメンバーが見たって」

 

深夜。ミーティングルームへと向かう梨子と英玲奈を見たという会話が耳に入った。

何人かが2人に質問していたが、「相手チームの分析」としか教えてくれなかった。

怪しい。疑うなという方が無理なレベルで怪しかった

 

 

希「深夜に相手チームの分析…いろいろツッコミどころ満載やな」

 

月「どう?問い詰めてみる価値はあると思うけど」

 

希「そうやな…黒であれ白であれ。何か面白いことになりそうやなぁ」ニヤッ

 

月「!?」ゾワッ

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

英玲奈「大変申し訳ございません」

 

梨子「殺してください」

 

 

月「え、えぇ……??」

 

英玲奈と梨子の部屋に家宅捜索に入った希と月。最初、何のことかとぼけていた2人だったが、希の一言により2人は完全に白旗をあげることとなった

 

希『ミーティングルームのパソコンな、履歴消せないんや』

 

梨子、英玲奈『『!?!?』』

 

そこからが早かった。

まるでルビィの"スプリントワープ"。

まるで凛の"イナビカリダッシュ"が如く。

2人は地に足を付き、なんと土下座をするのだから驚いた。月は言葉を失い、希は笑いこらえている

 

 

英玲奈「どうかこの事は口外しないでくれ…」

 

梨子「死にたい」

 

月「あ、あの…まずは訳を教えて?」

 

顔を真っ赤にした梨子が説明を始めた。ん?顔を赤く?

その内容は…月が思っていたのとは全くの別の答え―――

 

 

月「百合同人誌を…調べてた??」

 

希「そんなことやろうと思ったwww」

 

聞くと…梨子はそっちの内容が大好きで、浦の星女学院のメンバーにも隠しながら趣味を堪能していたらしい…

そんな時。英玲奈が偶然、梨子のカバンからお宝本が飛び出しているのを発見。

梨子はミイラ取りをミイラにすべく、英玲奈に"その"魅力を浸るように語ったのだとか…

結果。2人で趣味を語り合う仲になったのだが…

 

 

梨子「速度制限でスマホじゃ見れなくなって…」

 

英玲奈「私のパソコンは何故かフィルターで見れなくて…」

 

月「あぁ…確かにこの宿舎、ネット環境が良くないもんね」

 

希「それで見つからないように夜な夜なミーティングルームでw」

 

梨子「いやあぁぁぁ!!!」

 

英玲奈「くっ…無念、一思いに殺せ!!」

 

月「いやいや武士じゃないんだから」

 

希「うーん…貸しつきなら誰にもいわんよ?」

 

月(確信犯だな…最初からこれ狙いだったのか)

 

捜査は空振りで終わった…と、思ったが思わぬ収穫があった。

善子のアリバイだった。

 

英玲奈は深夜、ミーティングルームに行った日以外のその時間帯はツバサとあんじゅとゲームのマルチで遊んでいたらしい。

そのメンバーの中にライオコット島から加わったのが善子だった。

もともと、ネットで「ヨハネ」というプレイヤーとはマルチで知り合いだったらしく、それが善子だと分かった途端。ゲーム仲間は4人へとなった

 

 

希「じゃあ、英玲奈っちがミーティングルームに行かなかった日はほとんどそのメンバーでゲームしてたんやな」

 

月(どんだけゲームしてたんだ…?)

 

英玲奈「梨子もゲームを観戦していたから信ぴょう性はあるはずだ」

 

希「ふむふむ、なるほどなぁ」

 

梨子「何故、そんなことを?」

 

希「何となく気になったんや〜」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

月「とまぁ。振り出しと」

 

希「でもヨハネちゃんのアリバイは証明されたし、一歩前進やない?」

 

英玲奈にミーティングルームにいる時にほかのメンバーが部屋に入ってきたか聞いたが、答えはNO。

パソコンの履歴にはイタリアへと送られたファイルはどれも深夜。

タイミングが重なってないことを考えると……

 

 

希「英玲奈っちたちがミーティングルームに行かないこと…要するに4人がゲームをいつしてるか分かるメンバー?」

 

月「聞き込み…行きますか」

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

ことり「ことりはいつもヨハネちゃんと一緒にいるよ♪♪」

 

善子「基本はヨハネはゲームしてるわね」

 

あくまでも練習の相談としてことりと善子の部屋へと訪れた。

もしスパイがいるのだとしたら、悟られる訳には行かない。言葉を慎重に選び、得たい情報を聞き出す。

それによって分かったことは、善子とことりは夜中はほとんど部屋から出ない。という事だった。これで善子とことりの無実は証明されたことになる

 

 

希「ヨハネちゃんたちはいつも何のゲームをしてるの?」

 

善子「モン〇トよ。コラボが毎月のように来るから周回が忙しいのよ」

 

希「フレンド機能でマルチしてるん?」

 

希が訪ねると善子はフレンドリストを見せてくれた。ほとんどのプレイヤーが高ランクのユーザー。その中でも目に止まる名前が、

 

 

希「"ゴットストライカー"…」

 

善子「それはツバサさんのね」

 

希「"完全にフルハウス"…」

 

善子「あんじゅさん」

 

希「"皇帝@運極300"…」

 

善子「運極作りの鬼、英玲奈さん」

 

月(やっぱゲームやりすぎでしょ…)

 

希「あれ?"ミナリンスキー"って…」

 

ことり「ヨハネちゃんに勧められて始めたの♪」

 

…このままだと自分たちもゲームに染められそうだったためひとまず退散する。

その後、ツバサとあんじゅの部屋へと同じく向かったが、再びひっぱりハンティングの勧誘を受け本日の捜査を終了した―――

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

その後も月と希のアリバイ、そして手がかり探しは続くも情報の少なさから難航。

 

捜査開始から数日が経過しようとしていた。

 

希たちは徐々に焦りを感じていた

 

 

美奈「アリバイ証明以外は収穫無し…ね」

 

月「面目ない、さすがに情報が少なすぎるね…」

 

美奈「……かくなる上は」

 

月「かくなる上?」

 

美奈「いや、なんでもないわ。あなたたちには引き続きアリバイ証明を…」

 

希「…ダメやね。それじゃスパイの思うつぼや」

 

「「「!!!」」」

 

希は焦りはしているものの、手がかり探しを諦めた訳ではなかった。

自分に任された使命、仲間を裏から守るという重要な役割。中途半端では終わらせたくなかった

 

 

希「想像の範囲を広げるしかないね」

 

真恋「想像?」

 

希「ずっと考えてたんよ。この数日間、スパイは何故リスクを冒してミーティングルームのパソコンを使ったのか」

 

考えもしなかったアクシデントが起きたのか。逆に今まで、パソコンの前は何を使って情報を送っていたのか?

 

何を使えば一番安全で簡単か

 

 

希「スマホを使うのが…一番妥当やね」

 

月「それが、何かの拍子に故障。止むを得ずパソコンを使った…」

 

希「これは全てウチの想像や。スマホも、パソコンを止むを得ず使ったのも…でも、これぐらい視野を広げないと裏切り者には勝てない」

 

月「…希さん」

 

次なる捜査内容は―――『スマホの故障』

 

 

月「今日までにスマホが故障したっていうメンバーは…」

 

希「ウチは2人知ってる」

 

月「…やっぱり?」

 

美奈、真恋「「………」」

 

 

 

 

 

希「花陽ちゃんと……ルビィちゃんや」

 

 




善子良かったな!完璧なアリバイだね!!

梨子ちゃんと英玲奈さん推しの人にはごめんなさい
百合同人誌はちょっと直接過ぎたなぁ…反省



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第3章 123話 「スパイとの決着」


皆さん、どうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回は記念すべき輝こう200話なんですが、なんとも暗い内容…タイミングぐらい考えてくれよ…





 

 

 

 

月「花陽ちゃんとルビィちゃん、ね」

 

月は自分のスマホを片手に2人の名前を呟いた。

確かにリスクを少なくするならばスマホでの情報送信が一番であろう。

しかし、スパイがスマホを使用していたのかはハッキリとは言えない。全て希の想像であり、それだけで花陽とルビィを怪しむのには無理があった

 

 

希「無理があるのは分かってる。でも不思議なんよ」

 

真恋「不思議?」

 

希「ルビィちゃんにスマホが壊れた理由を既に聞いたんやけど…教えてくれないんや」

 

 

 

――――――

 

 

 

翌日。

希と月はルビィの行動の観察、そしてスマホが故障した原因を探るため動く事にした

 

 

美奈「プレスかけてー!奪えるわよ!」

 

ルビィ「【イグナイトスティール】」ズザーッ

 

善子「ヤバっ!?取られた!!」

 

いつものように練習に取り組むルビィ。

善子からスライディングで奪い取ったボールをそのままドリブルでカウンターに移している。

 

サッカーの技術で見ると改めて思う。

黒澤ルビィのサッカーセンス。FWでありながら、ディフェンスの技術も高く、小柄な少女からは想像も出来ないような動きと力を魅せる。小柄だからと油断しその炎に焼かれ、返り討ちにあった選手はたくさん見てきた。

しかし何故、ここまで黒澤ルビィという少女は強いのか

 

 

真姫「気になってる…って顔ね」

 

月「真姫ちゃん」

 

ルビィを目で追っていたことに気づいた真姫が話しかけてきた。

動揺することは無い。同じポジションとして、エースストライカーのプレーを観察していたと言えば不審なことは何も無い。

多少、その事も意識しながらルビィを見てはいたのだが、

 

 

真姫「ルビィの体…筋肉を触ったことはある?」

 

希「ウチはワシワシで」

 

真姫「希は黙ってて」

 

希「…」

 

真姫「あの子の筋肉…目で見る限りではあまり目立ってないように見えるわ。でも、皮膚の裏に隠された真実に…私は正直言葉を失ったわ」

 

―――ルビィのリハビリを全国大会後からサポートしていた真姫。何度も筋肉や能力に触れる機会があった。

そこで分かったことは、ルビィの足は鞭のようにしならせ、銃のように一点にパワーを凝縮させる、その両方に長けていることだった

 

 

真姫「海未の得意とする正確無比なシュート、そして高速移動は柔軟な筋肉、鞭のように伸びる足によるものよ」

 

真姫「パワーは果南ね。特定の筋肉…果南なら腕にエネルギーを集めることにより、より最高のパフォーマンスを発揮することが出来る」

 

月「体の使い方の違いだね。それによって自分の特技を伸ばすことが出来る」

 

 

真姫「その両方に長けているのがルビィよ」

 

 

"ラストリゾート"はそれゆえルビィの真骨頂と言える。

繊細な爆弾オーラを足で捌きあげる柔軟な技術。そしてそれを蹴り放つ圧倒的なパワー。

全てが揃わなければあのシュートは撃てるはずが無い。

だからこそ。疑問に持つのだ。

 

ルビィの"才能"。とだけで見ていいのかと

 

 

月「もちろん、才能があってもにこさんや穂乃果ちゃんみたいに努力しないと意味は無いよ」

 

真姫「そう。だから気になるのよ。あの才能、どれほどの努力であそこまで高めたのか…」

 

希「…並大抵では無い事は、確かやね」

 

以前、浦の星女学院のメンバーにルビィの自主練について聞いたことがあった。

それぞれがいろいろな話を聞かせてくれだが、全員が共通して口にしたことがある

 

 

月「"ルビィちゃんの努力は尋常じゃない"」

 

 

あの『Awaken the power』を中学生の時点で完成させていたと聞いた時は耳を疑った。

誰の助けも無く、強くなろうとする執念のみで究極へと登り詰めた程の努力…ならば、今はどうなのか?

 

真姫「あれほどの技術を維持するにはかなりの練習が必要よ。自主練をしなきゃ絶対に足りないわ」

 

 

ルビィは早朝に自主練を行っているという。

真姫は自主練をしなければ足りないと言ったが、ルビィは日本代表メンバーの中でも練習を特に本気でこなす選手である。

濃い内容を毎日サボらずにやり遂げるため、人一倍の練習効果があるはずだ。

しかし、ここで問題になってくることがある

 

真姫「朝の自主練+全体練習は今の実力維持…考えてみて。ルビィが実力維持のためだけに練習すると思う?」

 

月「いや、さらに強くなるためにそれ+‪αで練習するね」

 

真姫「そうなのよ…要するに、影で隠れて練習してるんじゃないかって」

 

真姫が心配しているのはルビィのオーバーワークだった。朝の自主練+全体練習にさらに練習を付け加えたら流石にやり過ぎにも程がある。

真姫は無茶はやめろと何度も警告したが、ルビィの性格上やらないはずがなかった

 

 

希「じゃあ、月ちゃんはルビィちゃんを任せちゃおっかな。ウチは花陽ちゃんに聞いてみるわ」

 

月「それが良さそうだね」

 

真姫「何の話?」

 

月「練習の打ち合わせだよ」

 

一旦解散し、練習を再開することにした月と希。しかし、月には1つ疑問が残った

 

 

月(真姫ちゃんは実力維持って言ったけど…あれぐらい自分を追い詰めた練習するルビィちゃんだもん、朝の自主練+全体練習で実力は上がっていいはずなんだ…)

 

月(なのに何でだろう…ルビィちゃんの目立った進化を見た記憶が無い…気がする)

 

 

 

 

――――――

 

 

 

その日の夜。

消灯時間は既に経過した今現在、月はとある理由から外へと出ていた。

 

きっかけは廊下から聞こえた物音だった。

扉が閉まるような低い音。この時間に部屋から出るということは…何かがある。

月はすぐに部屋から出たであろう影を追った

 

 

月「裏の林の方に行ったのかな…」

 

グラウンドにはいない…人の声は宿舎の裏から聞こえる。

誰なのかはだいたい見当はつくが、一応念の為に正体を突き止めることにした

 

 

 

 

ルビィ「月…さん?」

 

月「ルビィちゃん。こんな時間まで練習?」

 

 

そこには予想通り、黒澤ルビィの姿が。そして―――

 

 

理亞「なんで月がいるのよ…」

 

月「うーん、君たちの担当医師に頼まれて…かな」

 

目的はルビィのスマホの故障原因を突き止めること、そして過度な自主練を控えさせること。

何故そこまで自分に負荷をかけるのか…ルビィからは予想もしなかった答えが返ってきた

 

 

月「進化…出来ない??」

 

ルビィ「…うん」

 

その話は耳を疑う内容だった。

中学生時代に強さを求め続けたルビィ。その結果、誰にも負けない究極の力を手に入れた…おそらく、「Awaken the power」であろう。

しかし、それを最後に新たな必殺技。更なる高みへと繋がる力を得ることが出来なくなった。誰よりも早く、自分の限界へと辿り着いてしまったのだ

 

 

月「中学時代までは最強だった…でも、時間が経つにつれてほかの選手との差がどんどん縮まってきて…」

 

理亞「いつか自分の限界、『ラストリゾート』をも追い越されるんじゃないかって」

 

月「それで"最後の柱"か…」

 

日本のエースストライカーは「ラストリゾート」以上の必殺技を作れない。

勝利に人並み以上のこだわりを持つルビィからしてみれば、自分の最悪な弱点にして、汚点である

 

 

ルビィ「でも、諦めきれなくて…こうして夜に練習してるんです」

 

月「でも無理したら元も子もな……ん?」

 

偶然、視界の中に入った四角い物体。

月の真の目的であるスマホがそこにあった。

だがルビィのスマホは壊れているはず…理亞のスマホでもない。では誰の…

 

 

ルビィ「お姉ちゃんのスマホを借りてるんです。自分のプレーの撮影用で」

 

理亞「この前みたいに潰さないように気をつけなさいよ?」

 

月「潰す?」

 

理亞「ルビィ。ラストリゾートで木を倒したと時にスマホを下敷きにしちゃったのよ」

 

月「スマホを下敷き!?」

 

ルビィ「お姉ちゃんとかに壊れた理由を聞かれたけど…夜の自主練がバレて怒られると思って…」

 

月「だから壊れた理由を話すのを躊躇ってたのか」

 

「ラストリゾート」で木を倒すとかは置いておいて、今の話でスマホの故障は全て辻褄が合う。

つまりルビィは白。

思わぬ形でエースストライカーの悩み(かなりの大問題)を聞けたが、その事に関しては自分もサポートするから過度な自主練は止めてくれ。ということで話は終わった

 

 

月「そう言えば、理亞ちゃんは何でこの時間に?」

 

理亞「私も理由は同じよ。自分の限界を超えるためよ」

 

理亞らしいといえば理亞らしいが、ひとまずサニデイジャパンの戦力2人をオーバーワークによる自滅で失う訳にはいかない。

真姫に言わない、ほかのメンバーにも言わないという条件で夜の自主練を禁止とすることが出来た

 

 

月「まぁ、ラストリゾート以上の必殺技は作る必要はあまり無いと思うけどなぁ…」

 

 

それもまた、ルビィのプライドが許さないのだろう。月は夜深まる空を見ながらそう呟いた

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

その後も、決定的な証拠を掴めないままアメリカ戦が始まった。

結果は4-2と無事に勝利。たくさんの収穫もあり、次のブラジル戦、万全の状態で挑めると思っていた…

 

 

美奈「希ちゃん、月ちゃん。ちょっといいかしら?」

 

希、月「「??」」

 

美奈に呼び出されるということはまた新たな指示が定期報告のどちらかである。

今回はおそらく前者。状況が乏しいことは美奈自身も理解しているはずだ。

しかし、今回の指示は今までとは全く違う内容であった

 

 

美奈「これ以上の捜査はあなたたちの負担を積み上げるばかりよ。調べてきてもらった事を踏まえて判断した結果、これを使うことにするわ」

 

真恋「パソコンにある機能を加えるわ。消去した履歴を再生するもの…」

 

月「さ、再生!?」

 

真恋「…と見せかけたダミープログラム」

 

希「ダミーなんやね、」

 

それをパソコンにわざと目立つように組み込む。そしてそのダミープログラムを2種類用意する。何故、2種類なのか

 

 

真恋「ここまでスパイが特定出来ないとなると…外部からのハッキングも有り得るわ」

 

外部から偽の履歴を日本代表のパソコンに残す。そうすることによりサニデイジャパンは内部崩壊を始める…ということだ。

美奈が捜査をこれで終了したいという理由として、これが一番大きかった

 

 

真恋「明日、このプログラムが消されていれば外部からのハッキングと見て間違いないわ」

 

月「なるほどね。ダミープログラムが消えているか消えていないかで犯人を特定するんだね」

 

希「じゃあ、なんで2種類?」

 

美奈「同じことをあの子にもするのよ」

 

希、月「「!!!」」

 

あの子。2人が捜査していく中でアリバイを証明できず、最もスパイの疑いをかけている少女がいた。

その少女とは葉石晴夏だった。

実は月は晴夏のことを追加代表合流時から気になり詳しく調べていたのだという。

そこからわかったことは…

 

 

月「…なかった」

 

希「なかった…?」

 

月「経歴が不明なんだよ。ヨーロッパの方にいたった言ってたけど…晴夏ちゃんのことは僕は全く知らなかった…代表になるぐらいの選手を知らないはずが無いんだ」

 

美奈「…あの子はサッカー協会から追加代表として合流させろという指示があったの。実力は充分だったから私は快く受け入れたけど…」

 

希「…怪しい、ね」

 

月「過去のこと不明。スペイン戦から合流。やってみる価値はあるんじゃないかな」

 

以上により、2つ目のダミープログラムの消去有無で晴夏の正体を見極める。

ダミープログラムAが消されれば外部からの。

ダミープログラムBが消されれば晴夏の。

これで全ての準備は整った

 

 

希「晴夏ちゃんにはウチが言っとくわ」

 

真恋「感ずかれないようにね。希ちゃんなら大丈夫だと思うけど」

 

美奈「明日の夜にもう一度このパソコンを確認するわ。そこで、結果は分かると思うわ」

 

 

例えどんな結果であろうと答えは出る。

この作戦に踏み切ったのは月と希の陰ながらの奮闘があってこそ。

無実の仲間を疑うわけにはいかない。そしてサニデイジャパンのメンバーには何の不安もなくサッカーをしてもらいたい。

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日の夜がやってきた

 

 

 

 

 

美奈「これで、分かったわね」

 

希「はい」

 

月「うーん…やっぱりね」

 

 

 

 

結果。ダミープログラムが消されていたのは

 

 

 

 

 

 

 

外部から分かるように設置したAだった

 

 

 

 

月「外部か…それはそれで面倒だけどね」

 

希「そうやね。でもよかったわ…これではっきりとした。情報を漏らした裏切り者は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――あんたや」

 

 

そう、言い放った。

パソコンに向かってでは無い。

希が見る先には1人の少女、その少女を希は…睨みつけていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

希「月ちゃん」

 

 

 

 

月「……ん?え??」

 

希「……」

 

月「ははっ、希ちゃん冗談言わないでよ〜びっくりしたじゃん!ははは!」

 

月「ははは…はは、は……」

 

月「…………」

 

 

 

希「……」

 

美奈、真恋「「………」」

 

 

 

 

月「…………ふう、」

 

 

 

 

 

月「 な ん で 分 か っ た の ? 」

 

 

 





最後の月ちゃん絶対悪い顔してるやん…



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第3章 124話 「月詠」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
前回はスパイが分かったところで終わりましたが、一応豆知識を。

スパイの子の2つ名に注目してください。とある神話ではこの名は「汝悪しき神なり」と呼ばれていました。つまりこの2つ名の時点でスパイ確定だったんですねー。

それでは本編始まります





 

 

 

 

 

いつものように笑う少女。

だが、それは顔の一部分の話。

 

今までに見たことも無いような不気味な目と圧力により、希は突然冷や汗が滲み出るような感覚に囚われていた

 

 

月「あーあ、上手くやってたと思ったんだけどなぁ…」

 

希「……(雰囲気がまるで違う)」

 

月「いつから疑ってたの?」

 

希「最初からや」

 

希と月。2人だけが美奈に呼び出され、裏切り者を探し出して欲しいと言われた時。

希は既に確信していた。

 

美奈は…私に月がスパイだと証明してくれと。

 

少し調べればほかのメンバーのアリバイなどすぐに分かる。英玲奈や海未など、戦力となるメンバーを捜査に誘わなかったのは、月がスパイだと希に強く強調するため。

希はその意図を完璧に理解していた

 

 

月「なら最初からダミープログラムで僕をはめればよかったのに」

 

希「最初からやってたら月ちゃんのことや。確実に感ずくやろ?」

 

月「そうだね。じゃあ、今までの捜査は…」

 

希「スパイの証拠探しと気を逸らすためや」

 

希がスパイでないメンバーを手当り次第に調べていけば、希はスパイが月だということが分かっていないのだと。

そういう認識を月に埋め込んだ。

さらに調べ続けスパイ疑惑のメンバーを絞り込めば、ダミープログラムを仕掛けても何も違和感は無い

 

 

希「スパイがスマホを使っていた…という考えは最初から持っていたんや」

 

希「でも、それも感ずかれたくなかったから途中まで月ちゃんには黙ってたんや」

 

月「…じゃあ、」

 

 

希『ヨハネちゃんたちはいつも何のゲームをしてるの?』

 

善子『モン〇トよ。コラボが毎月のように来るから周回が忙しいのよ』

 

希『フレンド機能でマルチしてるん?』

 

 

月「あの会話も…わざとか」

 

希「月ちゃん、モン〇トやってるよね?」

 

あの時、最大の疑問であった「スパイはどうやって英玲奈たちとミーティングルームへ行くタイミングをずらしていたのか」。

それは全て善子のゲームが教えてくれた

 

 

希「フレンドリストの中にもう1人、気になる名前があってな。"Pān"というユーザーや」

 

月「……」

 

希「普通のユーザーに見えるんやけど、どうしても気になってね。だってPānは古代ギリシャ語で"パーン"。羊飼いと羊の群れを監視する神やな」

 

希「そしてフレンドに設定しているキャラは『アルカディア』」

 

希「もう自分から答えを言ってるようなもんやない?」

 

月「まさかそれだけで分かっちゃうなんてね」

 

希「パーンは女神に魅力されて理想郷アルカディアに連れていかれた…その女神の名は」

 

 

希「セレーネ。月の女神やね」

 

月「それで僕がモン〇トをやっていると」

 

希「楽しむためにやるよりも…大事な事があったんやろ?」

 

希「フレンドのログイン時間を監視するという」

 

モン〇トの機能として、フレンドのログインした時間を表示するというものがある。

現在進行形でログインしているユーザーは「0分前」と表示される。

月はそれで善子や英玲奈のログイン時間を把握。「0分前」の時にミーティングルームへと向かい、パソコンを利用していたのだった

 

 

希「全く関係ない名前にすれば気づかれなかったのに…完全に失敗やったね」

 

月「……」

 

希「ウチがスマホの話を出した時もそうやった。月ちゃんはまるで自分を真っ先に選択肢から外すかのようにスマホを見せつけてきた」

 

希「だからウチは花陽ちゃんを調べたんや」

 

 

 

 

 

花陽『スマホ…ですか?』

 

希『そうや。マネージャーと連絡を取り合う時に大丈夫かなって心配になって』

 

花陽『そ、そうですよね…ごめんなさい、私の不注意で』

 

希『…そう言えば、スマホに保存されていた写真は無事だったの?』

 

 

 

 

月「…写真?」

 

希「花陽ちゃんはマネージャーとしてウチらの毎日をたくさんの写真に収めてたんや。その中に、月ちゃんをスマホ故障リストに加える決定的な証拠があったんや」

 

そう言うと希は2枚の写真を月に見せた。

1枚はアジア予選の時…まだ日本にいた時の写真。

もう1枚はイタリア戦後の写真

 

 

希「月ちゃんのスマホ。変わってるよね」

 

月「極力見せないようにしてたんだけどね…まさか、写真とは」

 

誰にも気付かれずに月のスマホは変わっていた。これだけでもスパイがリスクを冒してミーティングルームのパソコンを使う理由が証明出来る。

アジア予選まではスマホを使用していたが、何らかの理由でスマホが故障。止むを得ずパソコンを使用し、新たなスマホを手に入れたところで使用を中止した

 

 

希「これで月ちゃんの行動は全て丸裸ということや」

 

しかし、これだけでは偶然ということで話が終わってしまう可能性もあった。

何か決定的な、その場で誰が見ても犯人だと分かるような何かが欲しかった

 

 

月「それでこのダミープログラムか」

 

希「外部からのハッキングはAというのは嘘や。Bも晴夏ちゃんには教えてない」

 

月「…つまり、僕がAを選んだ時点でゲームオーバーだったってわけか…」

 

最初から月は自分がスパイである証拠集めを手伝わされていた。そう考えると笑ってしまうのも無理は無かった。

まるで答え合わせをするかのように淡々と語った希。目の前で笑う裏切り者は何を思い、何をしてきたのか…

 

 

希「本題や。月ちゃんはいつから情報をイタリアに流していたんや?」

 

月「僕が日本に戻ってきてからだよ」

 

希「何の情報を流したんや?」

 

月「…」

 

希「なんで…スパイなんてやって…」

 

月「……」

 

 

 

月「千歌ちゃんを守るためだよ」

 

 

 

 

 

千歌「私を…守る…」

 

「「「!!!!」」」

 

 

美奈「千歌…!」

 

真恋「ちょっと千歌ちゃん!?今までどこに…」

 

千歌「なんですか…スパイって」

 

扉の前にいたのは門限を過ぎても戻ってこない高海千歌だった。

突然の帰宅に驚いたが、それ以上に耳を疑わなければならないのが…月の言葉だった

 

 

月「そのまんまさ。僕はイタリア代表のスパイ。日本代表の情報をあっちに送ってた」

 

千歌「そんな…なんで、」

 

希「さっきのはどういうことや?千歌ちゃんを守るって…」

 

月「それら全てを知りたいのなら先に、千歌ちゃんたちが持って帰ってきた情報を…知るべきだと思うよ」

 

千歌「!!!!」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

サニデイジャパンのメンバー全員がミーティングルームに集められた。

議題はブラジル戦に向けてでは無い。その裏に隠れていた闇。

千歌たちが持ち帰った情報を全員で共有することとなった

 

 

英玲奈「…」カチャカチャ

 

英玲奈はパソコンでガルシルド邸から持ち帰ったデータをモニターに写す

 

 

真恋「これって…!?美奈……」

 

美奈「……あなたたち、とんでもないデータを取ってきてしまったみたいね」

 

千歌「とんでもないデータ??」

 

美奈「ええ。ここにあるのはガルシルドが世界征服を企んでいる証拠よ」

 

千歌「……え?」

 

「「「!!!!???」」」

 

果南「世界、征服??」

 

善子「そんな漫画みたいな…」

 

ダイヤ「どういうことなんですか?美奈さん」

 

美奈「…油田よ」

 

油田とは石油の元となる原油を掘る場所のこと。

FFIを主催し、大会委員長でもあるガルシルドはブラジル代表 ザ・キングダムの監督だけではなく、世界にいくつもの油田を持つオイルカンパニー社の社長でもある

 

 

美奈「飛行機や自動車、石油は現代社会には欠かせないエネルギーよ」

 

 

穂乃果「なんか授業みたいだよ…」

 

海未「最後まで聞くんですよ!」

 

 

美奈「ガルシルドはその原油をおさえることで今まで世界に大きな影響力を与えてきた。でも、その油田が枯れかけているの」

 

聖良「枯れかけている!?」

 

真恋がパソコンであるデータを映し出した。

ガルシルドの油田から産出される原油量の推移を示したものである

 

 

ツバサ「…凄い勢いで減っているわね」

 

善子「ピーク時の1/4もないわよ?大丈夫なのこれ…」

 

美奈「原油が取れなくなるのは時間の問題。そしてこれが…」

 

 

「「「!!!!??」」」

 

花陽「な…これって…」

 

にこ「何よ、これ」

 

美奈「最近買収した軍事関連企業の兵器の生産計画。どの兵器も製造数が5倍に引き上げられているわ」

 

曜「そんなに兵器を作って…どうするんですか?」

 

果南「戦争とか始めちゃうとか」

 

ダイヤ「果南さん…冗談でもそれは…」

 

美奈「その通りよ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

ガルシルドは戦争を引き起こそうとしている。戦争をするのに石油は欠かせない。

もし今戦争が起これば、どの国も限られた量の油田を奪い合い、石油の価格は一気に高騰。枯れかけた油田も莫大な利益を得ることが出来る。

さらに、兵器を自らが供給すれば世界を征服したのも同然

 

 

美奈「…ガルシルドがFFIを開催したのは参加各国を互いにいがみ合わせるため。その証拠も揃っているわ」

 

海未「まさか、FFIの裏にそんな事情があったとは…」

 

果南「何が私の愛するサッカーで世界を救うだよ…全く反対じゃん!!」

 

理亞「ガルシルドって大犯罪者ね」

 

 

にこ「…ねえ、ガルシルドがこの計画を企んでいるのよね」

 

英玲奈「そうなるな。私たちあの屋敷…っ!?」

 

にこ「英玲奈も気づいた?」

 

千歌、果南、にこ、英玲奈。

この4人がガルシルド邸に潜入した時。

その場で会うとは考えも見なかった人物がいたという事実

 

 

にこ「ガルシルド邸にイタリア代表監督、小原サエがいたの」

 

「「「!!!!」」」

 

美奈、真恋「「!!!!」」

 

月「…」

 

FFIを開催したのはガルシルドとオハラグループ。ガルシルド邸にサエがいたことと考えると…裏で繋がっている可能性は充分考えられる

 

 

善子「ち、ちょっと待ちなさいよ。あの人がそんな…世界征服なんて」

 

にこ「なんで大犯罪者の可能性がある人なんかに肩入れするのよ?善子」

 

善子はつい先ほどサエと会ったばかり。

その時のサエからはサッカーを利用した犯罪を企むような人間には見えなかった。

不安はもちろんあるが、サエを信じたいという気持ちも捨てきれない善子がいた

 

 

ことり「サッカーが、大好きな人だと思う。そんな人がこんな…」

 

美奈「……」

 

にこ「ならそれも全て喋って貰いましょ。イタリアのスパイに」

 

「「「スパイ!?」」」

 

月はイタリア代表のスパイだった。

突然の事実に理解できないメンバーがほとんど。

そしてそんな不安定な中でも考えてしまう最悪な予想。

 

月もオハラグループと、ガルシルドと繋がっているのではと

 

 

ツバサ「サニデイジャパンのデータがガルシルドにも渡ってたら…ブラジル戦、私たちには勝ち目ないでしょうね」

 

梨子「そんな…!!まだ月ちゃんがガルシルドと繋がっていると決まったわけじゃ…」

 

 

 

千歌「…私は、信じたいかな」

 

梨子「千歌ちゃん…」

 

ツバサ「何故?何か理由はあるのかしら?」

 

千歌「月ちゃんが言ったんだ。私を守るためだって」

 

聖良「千歌さんを守る…?」

 

その言葉に、嘘は感じられなかった。

それ以前に月はサニデイジャパンのメンバーとして。ここまでたくさんのチャンスを作り、たくさんの貢献をしてくれた

 

 

千歌「曜ちゃん、月ちゃんが言ってたよね?私たちとサッカーがしたかったんだって」

 

曜「うん。代表初招集の時に」

 

千歌「理亞ちゃん。月ちゃんのサポートが無ければ、ATPは完成しなかったと思うんだ」

 

理亞「……そうよ。月がいなきゃ成長なんて出来なかった」

 

千歌「ツバサさんも。コズミックブラスターで月ちゃんの本気、感じましたよね?」

 

ツバサ「そうね。執念が伝わってきたわ」

 

 

千歌「今までやってきた事に…嘘なんて無いんだよ!!」

 

月「…!」

 

千歌「私たちを騙しながらのサッカーじゃ、あんなサッカーは出来ないよ!!」

 

千歌「…みんなで信じようよ。仲間なら、同じ、サニデイジャパンなら」

 

「「「…………」」」

 

 

月「ありがとう。千歌ちゃん、君は本当に太陽だよ」

 

千歌「月ちゃん…」

 

月「確かに、僕が影でやっていた事はみんなのことを裏切る事だと思う。だけど、これだけは言わせて欲しい」

 

 

月「僕は…このチームが大好きなんだ」

 

 

そこから、月は聞かれた質問に答えることとなった

 

 

月「…僕がイタリアに流していた情報は千歌ちゃん、そして穂乃果ちゃんの"闇の力"についてだよ」

 

穂乃果「闇の力!?」

 

月「観察報告…と言った方がいいかな。だから日本の選手のデータや戦術は何も送っていないんだ」

 

英玲奈「何故、闇の力の観察報告など…」

 

月「………ごめん、それはまだ言えないんだ」

 

英玲奈「言えない?」

 

希「誰かに口止めされてるんやな」

 

月「…サエさんに、言われているんだ」

 

サエの指示は「高坂穂乃果と高海千歌の闇の力の観察報告をすること」。

しかし、その理由はまだ話せないという。

ただ言えることは月はサニデイジャパンのFFI敗退を狙っている訳では無いといこと

 

 

月「僕は試合に出れなくてもいい。だけど信じて欲しいんだ。サエさんは…そんなことをする人じゃないって」

 

美奈「…それに関しては私も同感よ」

 

にこ「監督!?」

 

海未「美奈監督もオハラ監督を信じるのですか?」

 

真恋「そうね。サエを信じてあげられるのは…私たちぐらいしかいないもの」

 

千歌「私、たち?」

 

美奈「……」

 

美奈「サエは、私たちと同じ。音ノ木坂学院サッカー部だった」

 

「「「!!!!!!」」」

 

美奈「あの子は人一倍にサッカーへの想いが強くて…正義感もある。ガルシルドの野望とは真逆の思想を持つのよ」

 

千歌「…サッカーへの、想い」

 

美奈「私からのお願いです。月ちゃんと、サエちゃんを信じてあげて」

 

 

オハラグループ…小原サエとガルシルドは繋がっているのか。

月はサニデイジャパンを落とすために動いていた訳では無いと言う。果たして真実なのか。

そして千歌を守るという言葉の真意は?

ガルシルドの野望は?

ブラジル代表たちの運命は?

 

 

サニデイジャパンに選択が迫られている

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

翌日。

まずはガルシルドを逮捕するため、そしてブラジル代表を救うため。

手に入れたデータを警察に届け出る事にした。

それらは真恋に任せ、選手たちはブラジル戦に向けて練習を開始することとなった。

 

月は昨日のミーティングの最後に一言。

「千歌ちゃんと穂乃果ちゃんはガルシルドに狙われている」と言った。

その理由までは語ることは無かったが、月が言う守るためとはその事なのだろうと理解した。

 

そしてミーティングで決定したこと。

それは月とサエを信じる。ということだった。

決定づけたのが昨日のデータ。

兵器、石油、戦争など野蛮な内容が詰まったデータではあったが、それらにオハラグループが関与しているという内容が一切記されていなかったのだ

 

 

千歌「穂乃果さん!パース!」

 

穂乃果「でりゃっ!」パス

 

それが救いとなり。

そして千歌の言葉によりサニデイジャパン内でのチーム崩壊は防ぐことが出来た

 

 

千歌「月ちゃん!」パス

 

月「―――!」

 

良くも悪くもチームの結束力をさらに高めることとなった今回の事件。

しかし、これでガルシルドの野望は砕け散る

 

 

千歌「……あ、そうだ」

 

千歌「ロニージョさんたちに会いに行こう」

 

 

ブラジル代表との戦いまで残り数日

 

 

 





超超超簡単にまとめると『月ちゃんはスパイだったけど、かけがいのない仲間だから信じたい!だから今はガルシルドを潰そう!』です。

完全に悪者のスパイを期待した方もいるかもしれませんが、月ちゃんもメンバーですからね。酷い扱いは抵抗があったのでこのような感じに書かせていただきました。ちなみに、何故月ちゃんをスパイにしたのか?それは原作のラブライブサンシャインの映画で途中まで月ちゃんを鞠莉の母親のスパイだと思ってたからです笑



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第3章 125話 「消えぬ魔の手」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
グダグダといきます




 

 

 

ここ数話分の、輝こうサッカーで!

イタリア代表のスパイは月だった。サエがガルシルドと繋がっている可能性もある中で、善子や千歌といった信じるメンバーも少なからず存在した。

どちらにせよ世界征服を企んでいたガルシルドは日本代表が持つデータによりFFIから追放することが出来る。そのことを伝えるため、千歌は再びロニージョの元へと向かった

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『これは…"RHプログラム"!!』

 

ロニージョは反射的に口から飛び出したその言葉を…覚悟して呼び出しに応えた筈なのだが、いざ実物を目の前にして、その足はピタリと止まった

 

 

ガルシルド『マック・ロニージョ。君には失望したよ。せっかく私が鍛えて上げたというのに…あの程度のチームに勝つ自信が無いとは』

 

ロニージョ『…え、』

 

『知らないとでも思っているのですか?君がサニデイジャパンに負けてほしいと頼みに行ったことを』

 

ロニージョ『!?』

 

ガルシルド『まさか、"クイーン・オブ・ファンタジスタ"の君がそんなことをするとは…』

 

ガルシルド『だが心配はいらない。本当の"クイーン・オブ・ファンタジスタ"にしてやろう』

 

ロニージョ『が、ガルシルド監督……』

 

 

 

 

 

ロニージョ……ネェ…ロニージョ!!

 

 

ロニージョ(私が…あんな事をしたばかりに…!!みんなが…!!)

 

 

ロニージョ!!…キイテルノ!?……ロニージョ!!

 

 

ロニージョ「!!?」

 

レオナルド「やっと反応してくれたよ」

 

ロニージョ「れ、レオナルド…ごめん、」

 

レオナルド「あなたらしくない…そんなことより、お客さんだよ」

 

ロニージョ「え…あ、あなた達…!」

 

 

千歌「お久しぶり…です!」

 

にこ「これ、差し入れよ」

 

希「ウチは初めましてかな?」

 

過度な練習により崩壊寸前だったザ・キングダム。千歌たちにより、彼女たちの運命は大きく変わろうとしていた

 

 

―――

 

 

ロニージョ「え…??ガルシルドの家からデータを??」

 

千歌「はい!もしかしたらガルシルドのやっている事の証拠が掴めると思って」

 

ラガルート「え…ま、まさかあなた達、私の話を聞いて!?」

 

ロニージョ「話?」

 

ラガルート「あ…ごめん。実はあなたがサニデイジャパンに負けてくれって頼みに行ったの聞いて…どうしても我慢できなくて」

 

ロニージョ「そうだったの…」

 

ロニージョ「でも、もし捕まってたらどんな目に遭っていたか分からないのに…どうして?」

 

千歌「どうしてって、私、サッカーが好きだから!」

 

ロニージョ「好き?」

 

千歌「はい!私はサッカーが大好きだから、ガルシルドがやっている事…許せなくて」

 

千歌「それに、ロニージョさんたちとは本気でサッカーがやりたかったから!」

 

ロニージョ「!!」

 

千歌「余計な事は考えないで、思いっきりサッカーがしたかったから!」

 

ロニージョ「…オレンジガール」

 

にこ「まあ、あれよ!パソコンにはしっかりと情報が入ってたから、ガルシルドが捕まるのは時間の問題ね!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

ガト「ということは…私たち好きにできるってこと?ガルシルドの言う通りにしなくていいってこと??」

 

にこ「そういうことよ」

 

夢だと諦めていたことだった。

そう心に言い聞かせていたからこそ、ブラジル代表のメンバーたちには信じられない言葉だった。

これは夢なのかもしれないと。

お互い確かめ合い、そして喜びを爆発させる。それでも覚めないこの夢は、夢のような現実。

まるで砂漠の中でオアシスを見つけたかのように、ブラジル代表らの目は潤いを取り戻していた

 

 

ラガルート「ロニージョ…!!」

 

ロニージョ「…まさか、決勝トーナメントで私たちのサッカーができるなんて」

 

 

希「良かったね。千歌ちゃん」

 

千歌「うん…本当に、本当に良かった」

 

ロニージョ「オレンジガール。数日後の試合、お互いに全力を出し切ろう」

 

千歌「はい!最高の試合にしましょう!」

 

 

 

 

 

千歌「あ、あとオレンジガールではなく、ミカンガールと呼んでください」

 

ロニージョ「お、OK。ミカンガール」

 

ラガルート「…そういえば千歌。少し気になることがあるんだけど、」

 

千歌「??」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

善子「千歌とにこと希はどこ行ったの?」

 

聖良「ザ・キングダムのメンバーに会いに行って来ると言ってました」

 

曜「え、3人だけ?」

 

善子「3人でしょ。他に誰かいるの?」

 

曜「月ちゃんもいないんだけど…」

 

 

 

――――――

 

 

 

千歌「希さん…急にどうしたんですか!?」

 

希「あかんなぁ、まずい事態やで」

 

千歌たちは帰路へとついていた。

ただ希の様子がおかしく、足早に、まるで逃げるかのように歩く。

その後ろを千歌とにこは必死についていくことしか出来なかった

 

 

希「月ちゃんのあの言葉、"千歌ちゃんを守る"の意味が分かったんや!!」

 

にこ「ちょっと、どういう事よ!?」

 

 

全てが繋がったのは、ラガルートと千歌の会話からだった。

 

『ガルシルドは千歌や穂乃果の"闇の力"に興味を持っている』

 

これを聞いた時、今まで塞がれていた道が全て繋がったかのような爽快感を覚え、その後すぐに、体が一瞬で冷たくなったのは…分かってしまったからだ。

何を分かってしまったのか、

 

 

希「ガルシルドは恐らく、千歌ちゃんと穂乃果ちゃんを狙ってる」

 

千歌、にこ「「!?!?」」

 

希「月ちゃんが闇の力を監視して…それと同時に千歌ちゃんたちを守るって言った。それに対してガルシルドは闇の力に興味を持っている…これらがもし、繋がっているとしたら」

 

にこ「月は…ガルシルドから千歌たちを守るため――――――

 

 

―――「そこまでですよ」

 

千歌、にこ、希「「「!!!!」」」

 

一人の女性、そして黒服の男たちが3人を取り囲んでいた。

見覚えがある。全員、ガルシルドの屋敷にいた人たちであった。

希の予想は最悪にも的中。

逃げられる場所はなかった

 

 

「ガルシルド様の御屋敷ではやってくれましたね…」

 

希「早速お出ましみたいやな…」

 

にこ「千歌。狙いはあんたよ。油断しないで」

 

千歌「は、はい…!」

 

恐らく、目的は2つ。

あのデータを取り返す事と千歌を捕らえる事。どちらも防ぐことに失敗すればアウト。

ガルシルドらは手段を選ばないだろう、

 

 

「さあ!大人しく捕まってくださいね!!」

 

 

 

――――――ドガアァァァン!!!!!!

 

 

「!!??」

 

黒服「な!?爆発!?」

 

 

にこ「何よ急に!!」

 

上空から何かが地面に一直線。

叩きつけられたのと同時に身動きが取れないほどの爆風が襲った。

目を開けることさえ困難。しかし、そんな中でも聞こえる仲間の声がひとつ

 

 

「やっぱりついてきて正解だったね」

 

千歌、にこ、希「「「!!!!」」」

 

千歌「月ちゃん!!」

 

 

月「早くこっちへ。路地裏から逃げるよ」

 

煙の中から現れたのは月だった。

すぐに千歌の手を取ると、希とにこも連れ走り出す。

 

それと同時に煙は消え去り、数秒もすればガルシルドの手下たちの追跡が始まるだろう。

しかし、

 

 

黒服「いたぞ!!あの路地裏だ!!」

 

「必ず捕まえなさい!データと闇の力を逃がすのは許されませんよ!」

 

 

にこ「え…あいつら、全く逆方向の路地裏へ…」

 

月(ありがとう…みんな、)

 

 

ガルシルドの手下たちは路地裏へと逃げ込んだ影を追う。

全員、フードを被りカモフラージュをするが、追跡が止むことはない

 

 

和葉(よしよし。ついてきてるね)

 

和葉「ここからは別れる。2人とも上手く撒いてね」

 

フィレア、鞠莉「「了解」」

 

無駄の無い動き、完璧な作戦によりガルシルドの手下たちは惑わされる。

この日、誰一人と捕まることは無かった

 

 

――――――

 

 

その後、無事に宿舎へと戻り、ことの全てを美奈らに話した。

希の予想は正しく、月は千歌と穂乃果の闇の力を狙うガルシルドの手から2人を守る。という目的で動いていたのであった。

 

昨日まで話せなかったのは、そのことを知れば千歌たちが狙われる可能性が高くなると、サエから口止めされていたため。

 

アジア予選までは普通にスマホで観察報告をしていたのだが、スペイン戦後にガルシルドによってスマホのデータに侵入されていたことに気づき、換えのスマホが手に入るまではミーティングルームのパソコンを使っていた…これが、真実だった

 

 

美奈「サエちゃんも回りくどいことするわね」

 

月「でも、これが日本に一番影響を与えないやり方…サエさんはそう言っていたよ」

 

千歌「私たちのために…」

 

月「でも、僕もサエさんがガルシルドとコンタクトを取っていた…ということは初耳だった。信じたいけど…みんな疑うのは無理も無いよ」

 

にこ「でもガルシルドは捕まるでしょ?そうなれば千歌たちが狙われる心配はないわ」

 

月「そうだと、願いたいね」

 

千歌「…ねえ、月ちゃん」

 

月「?」

 

千歌「なんでガルシルドは闇の力を持つ私たちを狙ってるの…?」

 

月「…それは僕にもわからない。だけど良い使い方では無いことは確か、だね」

 

 

 

 

ブラジルエリアで狙われた高海千歌。

その後も周囲に警戒しながらの練習は続き数日。

ザ・キングダムと本気の勝負が出来ると知ったメンバーはさらに気を引き締め練習に励み、来る王者との決戦に備えた

 

 

弥生「"スリリングワンウェイ"はブラジル戦までには完成しません」

 

「「「!!!!」」」

 

弥生「今のあなたたちの力だけで勝負をすることになります」

 

"スリリングワンウェイ"の特訓はここに来て難航していた。

第2段階の技である"奇門遁甲の陣"の次のステップ、どうしてもピースが揃わない。

足りないのだ

 

 

夜「何かが足りないのよね〜…ホントにあと一歩なんだけど」

 

曜「美奈さんと夜さんでも何かは分からないんですか?」

 

夜「うーん…あの子なら分かると思うんだけど、」

 

千歌「あの子?」

 

美奈「"スリリングワンウェイ"の元となるシュート技を撃ったうちの一人よ」

 

ブラジル代表が自分たちの全力のサッカーをしてくる。嬉しい反面、それ以上の恐怖はないという事実。

作戦は考えた、練習も積んだ。それでも…緊張するものは緊張する。

このドキドキは楽しみだからなのか緊張からなのか、考えている間に日は暮れ、気づけば決戦当日

 

 

"ブラジル戦"

 

 

 

 

A『さあ、FFIも準々決勝!!会場は超満員で盛り上がっております!!!』

 

A『この試合、グループBをトップ通過したブラジル代表 ザ・キングダム対グループAのヨーロッパ3強との激戦を勝ち抜いた日本代表 サニデイジャパンの対戦となります!!』

 

A『果たしてこの試合に勝利し、準決勝へと進むのはどちらのチームなのか!?』

 

レヴィン『サニデイジャパンがザ・キングダムのサッカーについていけるのか、そこがこの試合のポイントですね』

 

 

A『ところで…ザ・キングダムの監督がまだ来ていないようですが、何か問題でもあったのでしょうか?』

 

 

ラガルート「見せてあげよう!私たちのサッカーを」

 

ロニージョ「ええ!!」

 

 

 

 

「何を見せるのかな?」

 

ロニージョ、ラガルート「「!!??」」

 

ブラジル「「「!!!!」」」

 

 

果南「ちょっ、なんであいつがここにいるのよ!?警察に捕まったんじゃ!?」

 

千歌「…ガルシルド、」

 

 

A『ここでザ・キングダムのガルシルド監督が登場!!スタジアムから歓声!!さすがはブラジル代表の監督と言ったところでしょうか!?』

 

 

美奈「はい…そうですか」

 

美奈はガルシルド登場により、すぐに警察へと連絡をとった。しかし、返ってきた返事は無情にも…

 

 

美奈「警察ではそのような証拠は受け取っていないそうよ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

穂乃果「受け取ってない!?」

 

月「…警察にまで手を回していたのか、どこまでも卑怯だね」

 

美奈「ガルシルド…どこまでもあなたは…」

 

千歌「お母さん…?」

 

 

ゆっくりとした足取りでブラジル代表ベンチへと近づくガルシルド。

両チームとも開いた口が塞がらず、ブラジル代表にいたっては絶望までもを顔に浮かべるほど。

まるで何事も無かったかのように、あくの元凶は口を開いた

 

 

ガルシルド「お前たち、準備は出来ているか?」

 

「「「………!」」」

 

「返事は!?ガルシルド様が準備は出来ているかと、お聞きになっているのですよ!?」

 

ロニージョ「っっ…はい、ガルシルド監督」

 

ガルシルド「よろしい。では見せてあげようではないか。ザ・キングダムの"本当のサッカー"を」

 

ロニージョ「っっ…!!」

 

ラガルート(やっぱり逃げられないの…ガルシルドからは、)

 

 

次回より、ブラジル戦開始

 

 

 





早くガルシルドを叩き潰したいです



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第3章 126話 「ブラジル戦 "蝕む闇"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
ブラジル戦が始まります




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ガルシルドに狙われる千歌。狙いは闇の力だと言うが、ガルシルドは逮捕される…そう思いながら迎えたブラジル戦。

逮捕されたはずのガルシルドが登場、全てを支配する魔の手からはブラジル代表たちを救えないのだろうか??

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

英玲奈「まずいな、ガルシルドがいるとなると、私たちが勝つとロニージョたちの家族は…」

 

ことり「そんなこと出来ないよ…!」

 

千歌「……」

 

ロニージョたちから伝わってくる苦しみ、それだけで胸が締め付けられる。

ここまで死ぬ気で特訓をしてきたが、それはブラジル代表と全力のサッカーが出来ると思ったからこそ。

しかし、このままでは自分たちのプレー次第でロニージョたちの未来が…

 

 

千歌「………この試合、勝とう」

 

「「「!!!!!!」」」

 

曜「ち、千歌ちゃん!でもそしたらロニージョさんたちの家族が行き場を失って…!」

 

千歌「分かってる…でも、勝たなきゃいけないんだよ!これ以上、ガルシルドの好きにさせないためにも…!」

 

海未「千歌…」

 

美奈「……」

 

千歌「これは、私たちとガルシルドの戦い。サッカーを戦争の道具に使おうとする…卑劣な人との」

 

穂乃果「千歌ちゃんの言う通り!!」

 

千歌「!」

 

穂乃果「あの人たちの好きにはさせられないよ」

 

英玲奈「だがな…」

 

ツバサ「英玲奈。もう決まったみたいよ」

 

英玲奈「ツバサ…!」

 

ツバサ「キャプテンが勝つって言ったのよ?だったら私たちも全力で行くまでよ」

 

千歌の言葉は大きかった。

先程まで勝利への意識が崩れかけ、バラバラだったチームが一瞬でひとつになった。

もちろんロニージョたちへの不安があるが、千歌の言葉に奮い立たないものがいるはずもなく

 

 

美奈「みんなの答えは出たからしら?」

 

千歌「…うん。勝つ気で行くよ」

 

美奈「どんなに辛い戦いになっても、最後まで諦めてはダメよ。みんなにその決意があるのなら、スタメン。発表するわね」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

 

 

ー サニデイジャパン ー

 

FW…………鹿角理亞、黒澤ルビィ

 

MF…綺羅ツバサ、高海千歌☆、渡辺曜

 

MF……………統堂英玲奈、矢澤にこ

 

DF……南ことり、鹿角聖良、優木あんじゅ

 

GK…………………高坂穂乃果

 

3-2-3-2

 

 

 

ー ザ・キングダム ー

 

FW………レオナルド、ロニージョ☆、ガト

 

MF……………プレザ、ボルボレタ、コルジア

 

DF…ラガルート、バーグレ、フォルミガ、モンストロ

 

GK………………………ファルカオ

 

4-3-3

 

 

 

A『さあ、両チームがポジションにつきました!!まもなく試合開始です!!』

 

 

千歌(…これで、本当にいいんだよね)

 

ロニージョ(みんなは私が守る。RHプログラムなんかに負けはしない)

 

日本とブラジル。

かけ離れた両国の国境を越えた試合。

それが全力をぶつけた真剣勝負になるかならないかは…

 

 

ガルシルド「………」

 

美奈「………」

 

 

ピーーーッ!!!!

 

 

フィールド上に立つ、選手次第である

 

 

ロニージョ「!?――――――」

 

日本「「「!?!?」」」ゾクッッ!!

 

ブラジル「「「!!!!」」」ゾクッッ!!

 

 

千歌「…え、今のって―――ビュン!!

 

ルビィ「っっ!?」

 

理亞「え!?ちょっ!?」

 

千歌「!!!!」

 

 

今横を通り過ぎたのは…ロニージョ??

 

 

A『なんと!?サニデイジャパンのキックオフからスタートしたこの試合、ロニージョが一瞬でボールを奪ったぁぁ!!!』

 

 

ロニージョ「………」

 

ラガルート「ロニージョ…!?」

 

 

ガルシルド「…ふふっ」

 

ルビィたちがロニージョを認識するよりも速く、想像以上に強引な。

クイーン・オブ・ファンタジスタが攻め込んでくる

 

 

ロニージョ「…いくよ。ガール」

 

ガルシルド「……これが、ザ・キングダムの本当のサッカー。私に楯突くとどうなるか…思い知らせてやる」

 

 

穂乃果「ロニージョ…」

 

にこ「昨日までとは…いや、あんなロニージョ見たことないわ!!」

 

 

バーグレ「私たちもあんなロニージョは知らない!!」

 

ラガルート「ええ…私たちの前を走っているのはロニージョであってロニージョじゃない!!何があったの!?」

 

 

ガルシルド「…ヘンクタッカー君。記録はしているな?」

 

ヘンクタッカー「無論でございます。活動開始時間、心拍数、呼吸数、筋肉・骨格の反応抜かりなく」

 

美奈(…ガルシルド、)

 

 

曜「私がいくよ!!」バッ

 

FWコンビ、千歌が一瞬で抜かれすぐにチェックに入るのは渡辺曜。

ロニージョ相手を想定したにことのマンツーマンの練習は沢山してきた。

そう簡単に抜かれ―――スカッ

 

 

曜「なっ!?」

 

ロニージョ「………」

 

 

英玲奈「ツバサ。2人で」

 

ツバサ「ええ」

 

ロニージョ「………」

 

ロニージョ「―――!!」ギュンギュンギュン!!

 

英玲奈、ツバサ「「!!??」」スカッ

 

 

A『続け様に3人を抜き去る!!今日のロニージョは一味違うぞ!!』

 

レヴィン『これまでの試合でも華麗なプレーを見せてくれましたが、今日はさらにレベルアップしていますね』

 

 

にこ「ロニージョっっ!!!!」バッ

 

レオナルド「ニコだ!気をつけろロニージョ!」

 

 

A『ここで両チームのファンタジスタが対面する!!矢澤にこはロニージョを抑えることが出来るのか!?』

 

 

にこ(なんなの!?どうしたのよ!?)バッ

 

ロニージョ「―――!」ギュンギュンギュン!

 

にこ(なんで…ロニージョが"使えるの―――ビュンビュン!!

 

にこ「ヤバっ!?」

 

サニデイジャパンは前回の試合、アメリカ戦で一之瀬神奈1人を相手に全員が突破されるという、ブラジル戦前に大きな課題があった。

ブラジルは個人プレーでは世界トップクラスを確実としたチーム。

アメリカとの試合後、日本は1対1のディフェンスを徹底的に強化。ブラジルに真っ向から勝負しようとしたのだが―――

 

 

穂乃果「にこちゃんが…あんな簡単に」

 

 

ロニージョの両隣を走るのはブラジルのウイングフォワード。

いつでもロニージョのフォローができる位置で走っているため、すぐにパスを要求するのだが、

 

 

ロニージョ「………」バッ

 

ガト「ちょっと!待ってよ!?」

 

レオナルド「なんなのあいつ!!」

 

ロニージョは仲間に目もくれず、まるでロニージョ対日本の試合をしているかのように一人で切り込んでいく。

これにはさすがのブラジルも驚きを隠せなかった

 

 

レヴィン『ザ・キングダムの強さは華麗な個人プレーからの連携攻撃だと思っていたのですが、今日に限ってはロニージョの独壇場ですね』

 

 

善子「みんなあんなに1対1の練習をしたのに…簡単に抜かれすぎじゃない??」

 

花陽「ですが、ザ・キングダムも様子が変です。チームワークがなっていません」

 

 

聖良「囲い込んでください!!!!」

 

ことり、あんじゅ「「―――!!」」バッ

 

DFの司令塔、聖良の指示でロニージョを一瞬で包囲するDFたち。

1対1で勝てないのなら人数差が無ければ勝負になどなりはしない。

練習した連携でロニージョに挑む

 

 

聖良「【真スノーエンジェル】」ビュン!

 

ロニージョ「―――!!」ギュン!

 

聖良の高速接近からの必殺技をタイミングを合わせ回避し、

 

 

ことり「【ワンダーゾーン】!!」

 

ロニージョ「……」バッ!

 

回避した場所で捕らえようとしたが、バク転などの空中技で絶対支配領域までも突破

 

 

あんじゅ「【ジャッジメント・レイ】」パチン!

 

タクティクスブレイクとしてイギリスを苦しめたあんじゅの最凶の必殺技。

広範囲に降り注ぐ雨のようなレーザー、しかしこの技には最大の欠点がある

 

 

ロニージョ「―――!!」ギュンギュンギュン!!

 

あんじゅ「っっ…やっぱり全部躱されちゃうわね」

 

海未や凛などのようにスピードと瞬時の判断力を持つ選手はレーザーの隙間をかいくぐり、最凶の必殺技を突破していく。

一個人に対しては相性が悪い「ジャッジメント・レイ」。ブラジルならば尚更。

ロニージョにはかすり傷さえつかない

 

 

A『ロニージョ、優木あんじゅも突破!!まさに神業!!!』

 

 

穂乃果「撃ってくる!!」

 

ロニージョが空中でシュートの構えに入った。動画で見た変幻自在のシュートフォーム、どんな場所・体勢・角度からでも強烈なシュートを放つ…

予測出来ないシュートだからこそ、集中を切らせてはいけない。

穂乃果の気迫に対しロニージョは、

 

 

ロニージョ「っっ!!!」ドガアァン!

 

穂乃果「左っっ…え!?」

 

ロニージョ「!!」

 

 

A『おっと外した!?ゴールの遥か上を飛び越えてしまった!!』

 

 

ロニージョ「ハァハァ…」

 

にこ「ロニージョ!!なんでチームメイトにボールを渡さないの!?仲間を信用してないわけ!?」

 

にこ「今までガルシルドに屈してでも、ザ・キングダムのサッカーは守ってきたでしょ!?みんなのために頑張って来たんじゃないの??」

 

レオナルド「…ニコ」

 

ロニージョ「……」

 

にこ「ちょっと!何か言いなさいよ!!」

 

にこの言葉もロニージョには届かず、自分の持ち場に戻っていくロニージョ。

にこの知る彼女はあんな一人だけのサッカーはしない。それはブラジル代表たちも同じ気持ちだった。

そして、もう1つ信じられないことが、

 

 

穂乃果「ねえ、にこちゃん。ロニージョは…」

 

にこ「ええ。あの背筋が凍る感じのオーラ、強引なプレー…まるで、"闇の力"ね」

 

 

花丸「はぁ…びっくりしたずら」

 

真姫「ホント、序盤から飛ばしてきたわね」

 

美奈「………」

 

 

ヘンクタッカー「どうもまだ力のコントロールが上手くいっていないようです」

 

ガルシルド「…今はそれでいい。所詮は実験用だ」

 

ヘンクタッカー「左様で」

 

ガルシルド「むしろ、ロニージョのあのプレーがジャパンへのプレッシャーになればいい。この私を怒らせるとどうなるか、思い知る事になる」

 

ヘンクタッカー「そのプレッシャーはザ・キングダムの連中にも十分伝わっていくことでしょう」

 

その言葉はすぐに現実となる。

ロニージョの異変を察し声をかけたのはにこのみならず、チームメイトと同じく。

しかしロニージョからの答えは無い。

それによりブラジル代表の空気はさらに悪化。その空気は相手チームである日本にまで伝わってきた

 

 

花陽「FWの2人、MFの3人、ぴったりマークされています…」

 

真姫「それより、ブラジルの様子おかしくない?」

 

希「試合の緊張感とは、また別の意味でピリピリしてるなぁ」

 

試合は日本のゴールキックからスタート。

日本はこの試合、未だに攻めることが出来ていないため、ここでひとつ道を切り開きたいところ

 

 

ピーーーッ!!

 

 

ロニージョ「!?――――――」

 

日本「「「!?!?」」」ゾクッッ!!

 

ブラジル「「「!!!!」」」ゾクッッ!!

 

 

再び悪寒。

ロニージョの急変。そして自分らの立場。

考えから導き出される答えは1つ

 

 

ラガルート「……まさか!!」

 

 

ラガルートが見る先では、ガルシルドが笑みを浮かべていた

 

 

穂乃果「いくよーっっ!!」バシュッ!

 

穂乃果のロングキック。

しかし、前線は厳しいマークにより抑えられている

 

 

聖良「―――にこさん!」パス

 

センターバックの聖良からパスをスタート。

徐々にボールを上げていき、攻撃を組み立てていく。

いくら個人プレーのレベルが高いブラジルとはいえ、細かいパスを出されては追いつきたくとも追いつけない

 

 

A『GK高坂穂乃果から鹿角聖良へ!そして矢澤にこ、高海千歌、鹿角理亞!!パスで着実に攻め込みますサニデイジャパン!!』

 

 

理亞(前にDFがいない!!持ち込める!!)

 

曜「…!?理亞ちゃん来てる!!!」

 

 

ラガルート「【ローリングスライド】!!」ドガッ

 

理亞「ーーー!?!?」

 

前方にDFはいなかったはず―――なのに気づくと前からーーースライディング!?!?

 

 

千歌「な、何いまの動き!?」

 

にこ「"ローリングスライド"。相手の背後から回転技で高速接近、そのまま飛び越えて死角から不意打ちのスライディングをかます…厄介な技よ」

 

ツバサ「躱すのはかなり厳しいわね」

 

 

ラガルート「よし!繋ぐよ!!」

 

ガト「こっち空いてる!」

 

ラガルートはすぐに攻撃を組み立てるためスペースへと走り込むガトへとパスを試みる。

周りに日本の選手はいない。

このまま一気にたたみ―――ドガッ!!

 

 

ラガルート「ぐあっ!?」

 

ブラジル「「「!!!!!!」」」

 

ロニージョ「………」ズザーッ!

 

 

A『ラガルートのボールをロニージョがカットした!?』

 

 

穂乃果「どうして…!?」

 

そして始まるのはロニージョの無双劇。

敵味方関係なく躱し、突き進む

 

 

にこ「ロニージョ!!!!」ズザーッ

 

ロニージョ「―――!」バッ

 

スライディングを飛びながら躱す。

しかし、この動きをにこは読んでいた

 

 

にこ(かかったわねっっ!!)バッ

 

にこの真上を飛ぶロニージョ。

つまり、ボールは目と鼻の先にある。

かなり危険なプレーではあるが、倒れた体を上体起こしのように持ち上げ、頭で目の前のボールを奪いに行く

 

 

英玲奈「にこ!?危な―――」

 

ロニージョ「!!」グルン!!

 

英玲奈、にこ「「!?」」

 

にこ「これも躱すの!?」

 

 

A『ああっと!?矢澤にこの頭を空中で体を捻ることにより接触を回避!!ロニージョにできないことは無いのか!?』

 

 

ロニージョ「っっ!!!!」ドガアァン!!

 

 

A『ロニージョ再びシュート!!』

 

 

にこを躱したのは空中。

そしてそのまま地面に足をつけることなくシュート。穂乃果は反応に遅れるも、シュートは再び枠外へと逸れ―――

 

 

A『だが、またも決まらず…!!』

 

 

シュートミスに胸を撫で下ろすサニデイジャパン。

しかし、やはりロニージョのプレーに不信感は高まる一方である。そしてここでザ・キングダムの怒りを堰き止めていたダムが決壊し始めていたことを知る

 

 

ガト「ねえ、さっきのあれ何!!?」ガシッ

 

ロニージョの服を掴み怒りを見せるガト。

ボールを持つ仲間を攻撃したのだから、当然といえば当然。しかし、

 

 

ラガルート「やめて!監督が見てる…!」

 

レオナルド「サニデイジャパンや観客もね」

 

ガト「…!」

 

仲間の言葉により冷静さを取り戻したガト。

ここでロニージョを責めることは仲間のためにも良くない。

ラガルートの私は大丈夫。という言葉を聞くことで、掴みかかっていた手を離したガト。

 

なんとか内部崩壊を防いだかに思えたブラジル。しかし、ここでラガルートがチーム内に衝撃を走らせる言葉を口にする

 

 

ラガルート「…あなた、監督にRHプログラムをされたんじゃないの?」

 

ガト、レオナルド「「!!??」」

 

ブラジル「「「!!!!!!」」」

 

ロニージョ「………」

 

バーグレ「…RHプログラムって、そんな」

 

レオナルド「本当、なの?ロニージョ、」

 

先程までの険悪なムードからは一変。

"RHプログラム"という言葉を耳にしたブラジルメンバーはすぐにロニージョの元へと駆け寄る。

そして問う。「RHプログラムをうけたのだな!?」と、

 

 

ロニージョ「……!!っっ!!」

 

ラガルート「答えて…ロニージョ!」

 

そして、ダムが決壊するのは仲間よりも先に、ロニージョになることになる

 

 

ロニージョ「……仕方なかったんだ!!!!」

 

ガト「…!!」

 

その悲痛とも呼べる叫びに近い声は仲間たちに届く。これ以上、ロニージョを刺激しないためにも優しく尋ねる

 

 

ガト「……いつ?」

 

ロニージョ「…数日前。発動は、この試合が初めて」

 

レオナルド「だから、だね。プログラムが体に馴染んでないんだよ。その疲れ方異常だよ…」

 

ラガルート「力の使い方が加減出来ないから、シュートも決まらないんだね」

 

ロニージョ「このゲームの間に、力をコントロールしてみせる!!」

 

ロニージョ「私たちは負けられないでしょ!?私が実験を受ければ仲間には手は出さない!!奴はそう約束してくれた!!家族だって無事でいられる!!」

 

ロニージョ「仲間を守るために、ほかに手が無かったんだ!!!!」

 

ロニージョが仲間想いだということは全員知っている。

そして、仲間もまた、ロニージョをおもっていることは…誰もが知っている

 

 

レオナルド「…自分一人で抱え込まないで」

 

ガト「みずくさいんじゃない?ロニージョ」

 

ロニージョ「…!!だけど、私!!」

 

自分でも分かっているのだろう。

この力は簡単にはコントロール出来ない。現に先程までは暴走状態に近かった。

自分で出来ないことが、仲間に出来るなんて…

 

 

レオナルド「こうするのよ!」ピーーッ!

 

プレザ、ボルボレタ、コルジア「「「!!!」」」

 

レオナルドの指笛に反応したのはサニデイジャパンの前線選手をマークする3人

 

 

ルビィ「…??」

 

理亞「は?」

 

ツバサ「…あら」

 

 

A『おや?ザ・キングダムはサニデイジャパンの前線選手からマークを外しました!そして…新たにマークについたのは……』

 

 

A『ロニージョ??』

 

 

日本「「「!!!!??」」」

 

観客「「「!!!!??」」」

 

 

真恋「…ええ??」

 

美奈「とんでもないことをするわね」

 

 

A『な、なんと!?ザ・キングダム、キャプテンのロニージョをがっちりとマーク!!』

 

レヴィン『1人飛び出しているロニージョを、抑えようということでしょうか…』

 

 

 

 

千歌「…ロニージョさん、」ズキズキ

 

穂乃果「………」ズキズキ

 

 

 

日本 0-0 ブラジル

 

 

 





ブラジル代表のレオナルドはイケメン



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第3章 127話 「ブラジル戦 "最強の波"」


みなさんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
区切り良くしたら短めになりました。





 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ガルシルドから逃れられないまま始まったブラジル戦。ブラジルの連携プレーが脅威かと思われたが、ロニージョはRHプログラムを上手くコントロール出来ず、徐々に心身共に追い詰められていく。そんな中、ザ・キングダムのメンバーがとった行動は…誰も予想もしない作戦であった

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

曜『千歌ちゃん、大丈夫?』

 

千歌『…うん』ズキズキ

 

千歌が闇の力のを初めて発動してから、すでに数ヶ月は経過していた。

しかし、"あること"に気づいたのはここ最近

 

 

梨子『体調が悪いの?顔色が…』

 

千歌『ちょっと、頭痛がね』ズキズキ

 

善子『頭痛って…闇の力のやつじゃないの?』

 

闇の力が無意識に高まると頭痛が始まる。

これは千歌以外のメンバーも知ることであり、暴走させないためにも必要な目印。変化だった

 

 

曜『さっき、穂乃果さんも発動してたよね』

 

そして、何度も千歌の様子を見てきた事により。憶測ではあるが気づいたことがあった

 

 

善子『闇の力って…ほかの発動者が発動すれば…共鳴し合うんじゃないの?』

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

A『な、なんと!?ザ・キングダム、キャプテンのロニージョをがっちりとマーク!!』

 

レヴィン『1人飛び出しているロニージョを、抑えようということでしょうか…』

 

 

 

 

 

まただ

 

 

千歌「……」ズキズキ

 

穂乃果「…」ズキズキ

 

 

頭が―――痛い

 

 

穂乃果「どう思う?」

 

英玲奈「分からない…ただ、ここまでのザ・キングダムとは空気が変わったことは確かだ」

 

気持ちを少しでも試合に戻すために英玲奈に声をかけたが、どうやら無駄なようだ。

頭の中を消えない痛みが蠢く。

千歌、穂乃果、どちらも力は発動していない。だとするとやはり…

 

 

千歌「ロニージョさんは…闇の力を」

 

曜「千歌ちゃん、もしかして…」

 

千歌「うん。闇の力かもしれない」

 

どちらにせよ、ルビィたちのマークが外れた今がチャンス。

再び穂乃果のゴールキックからスタート、サニデイジャパンの考えは皆同じ。

すぐに前へと繋ぐこと

 

 

ピーーーッ!!!!

 

 

ロニージョ「!?――――――」

 

 

A『さあ、試合再開です!!』

 

 

穂乃果から今度は最初から中盤のにこへとボールを繋ぐ。

本来ならばここでロニージョが飛びついてくるのだが、

 

 

ロニージョ「……」

 

ラガルート「出ないでロニージョ!」ガシッ

 

ガト「あなたの出番はまだよ!!」ガシッ

 

 

A『ザ・キングダム、ロニージョを抑えた真意は何か!?その間にサニデイジャパンが上がっていく!!!!』

 

 

にこ「曜!ツバサ!援護しなさい!!」パス

 

曜、ツバサ「「了解!!」」

 

ボールを最前線のFWコンビに繋ぎ、いつでもサポートできるようにMF2人を配置。

ブラジルの陣形が崩れていることもあるが、日本の的確な動きにより確実に攻め上がっている

 

 

果南「繋がってる!流れを変えたんじゃない!?」

 

花丸「そのまま行くずらー!!」

 

 

ラガルート「っっ!!」バッバッバッバッ!!

 

 

日本ベンチ「「「!!!」」」

 

晴夏「あ、あのヤバい動きは…」

 

果南「ディフェンスが来てる!!!!」

 

先程ボールを奪ったディフェンス技でラガルートが高速接近。

背後からの死角攻撃なため、タイミングを合わせての回避は困難。普通ならば、

 

 

ルビィ(…足音、僅かだけど分かる)

 

しかし、相手が悪かった。

今ボールを持つのはルビィ。このような繊細な見極めや瞬間的判断はずば抜けている。

急にDFが現れても―――

 

 

ラガルート「【ローリングスラーースカッ

 

ラガルート「!!??」

 

ブラジル「「「!!!!」」」

 

 

ルビィ「分かれば簡単です」

 

不意打ちのスライディングを回避。

1度理亞から奪うシーンを見たことも大きかった。まさかの必殺技失敗に驚くブラジル。

そして、

 

 

バーグレ「【ローリングスライド】!!」ズザーッ

 

ルビィ「―――え!?」ドガッ

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

ルビィ(2人―――!?気づかなかった)

 

バーグレ「分かれば簡単なんじゃないの?」

 

 

A『"ローリングスライド"を連続で仕掛けることにより黒澤ルビィからボールを奪い取る!!ボールはバーグレが取った!!』

 

 

バーグレ「レオナルド!」パス

 

そのまま前を走る選手にボールを出す。

するとここでブラジルのフォーメーションに大きな変化があることに気づいた。

 

全員が横に一列で並び、タイミングを合わせて隣を走る選手と交互に前へ出たり下がったりを繰り返す

 

 

A『ああっと!?このフォーメーションは!!』

 

 

レオナルド「ザ・キングダム必殺タクティクス!!」

 

「「「【アマゾンリバーウェーブ】!!!!」」」

 

フィールドを丸ごと飲み込む巨大な波。

そして絶えず流れ続けるまさに川。

サニデイジャパンの選手たちは次々と飲み込まれていく

 

 

千歌、曜、英玲奈「「「うわあぁぁぁ!?」」」

 

ルビィ「ぴぎぃぃぃぃ!?!?」

 

にこ「流され―――無理…ゴボゴボゴボ……」

 

理亞「何よこれ!?!?」

 

 

ことり「【ワンダーゾーン】!!」

 

 

―――ザバアァァァァン!!!!!!

 

 

ことり「!?(水量が多すぎ!!!!)」

 

絶対支配領域で食い止めようとするも、あまりの広範囲にその効果は期待できない。

ことりやDFもアマゾンの波に飲まれる

 

 

レオナルド「ロニージョ!」パス

 

そしてここでロニージョへのパスが出された。ザ・キングダムの選手たちはこの暴れ狂う川の中でも自在に行動・パスすることが出来る。

言わば、ブラジル代表のみに行動を許された領域なのである

 

 

レオナルド「プログラムなんかに負けないで!!」

 

ガト「今だ!ロニージョ!」

 

ロニージョ「―――!!」バッ

 

ボールを追ってロニージョが飛んだ。

あの時と同じだ。波の中から現れ、まるでサーフィンをするかのように川を操りながら放つ、強烈なスーパーシュート

 

 

ロニージョ「はあぁぁっっ!!」ドガアァン!

 

穂乃果(パンチングでっっ!!)バッ

 

刺すようなシュートはゴールの端へ。

穂乃果はコースに飛び込み、自慢の一撃でボールを捕らえる。しかし、

 

 

穂乃果(ぐうっっ!?重い!!!!)バキィン!

 

なんとか弾いた。

しかし、あの重さ。まるで…やはり闇の力と同じパワーを感じた。

ここまで条件は揃っているのだ。ロニージョは闇の力を―――「穂乃果さん!!」

 

 

穂乃果「―――ぇ、」

 

 

バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

穂乃果「―――!!」

 

日本「「「!!!!」」」

 

弾いたはずのボールが。

穂乃果の後ろでネットを揺らしていた。

ボールが飛んできた場所にはロニージョ。

何故そんな体勢から撃てる!?という衝撃と存在感でスタジアムは歓声に揺れた

 

 

A『ゴーール!!高坂穂乃果止めきれず!!こぼれ球を押し込まれましたっっ!!!!』

 

 

穂乃果「っっ…まさかあの体勢から打ち返してくるなんて…」

 

ことり「…穂乃果ちゃん、大丈夫?」

 

穂乃果「うん…でもどうすれば、」

 

穂乃果(普通のシュートであの重さ…もし、必殺技が来たら…)

 

"アマゾンリバーウェーブ"の威力は絶大だった。飲み込まれたサニデイジャパンの選手たちは一気に体力を持っていかれてしまった。

ただ突破するだけでなく、相手に確実にダメージを与える…これがザ・キングダムの必殺タクティクス

 

 

ヘンクタッカー「…アマゾンリバーウェーブとRHプログラムを受けたロニージョの合わせ技とは…考えましたな」

 

ガルシルド「面白いではないか。ロニージョの反応と共に、実に有効なサンプルだ」

 

ヘンクタッカー「おっしゃる通りで」

 

日本ボールからの再スタートとなるが、削られた体力で先程までと同じ動きをするのは難しい。

すぐにブラジルのディフェンスに捕まってしまう

 

 

千歌「っっ…【Zスラッ―――「遅い!!」バッ

 

千歌「あっ!?」

 

ボルボレタ「プレザ!」パス

 

プレザ「レオナルド!」パス

 

にこ「ヤバっ…またあれが来るわよ!?」

 

 

レオナルド「必殺タクティクス!!」

 

「「「【アマゾンリバーウェーブ】!!!!」」」

 

畳み掛けるブラジル。

回避不可能な波は容赦なく日本選手たちを飲み込んでいくであろう

 

 

理亞「ハァハァ…このまま、黙って飲み込まれるわけにはいかない!!」バッ

 

ルビィ「理亞ちゃん…!」

 

曜「無茶だよ!?」

 

 

A『鹿角理亞がアマゾンリバーウェーブに挑みます!!!!』

 

 

理亞(動きを見切れば…奪える!!)

 

ブラジルの選手たちが川の激流に飲まれないということは、自分たちだって不可能では無いはず。

このままブラジルの好きにさせれば2点目は確実。体力も完全に底を突くだろう

 

 

レオナルド「タクティクスに飛び込んで来た!?」

 

理亞「そこよ!!」ズザーッ!

 

このまま行けば奪える。

だが、理亞が1つ考え忘れていたことがある

 

 

――――――スカッ

 

理亞「!?!?」

 

レオナルド「まだまだだね!」

 

理亞(タクティクスのタイミングが…ズレた、)

 

今相手しているのは世界の王者。

このまま…などという言葉が通用するほど、彼女たちは甘くなどない

 

 

ザバアァァァァン!!!!!!

 

理亞「っっ!?」

 

 

あんじゅ「ちょっ、理亞ちゃん飲まれちゃったわよ!?」

 

英玲奈「私たちもこのままでは…」

 

巨大な波が、口を開けて飲み込むかのように迫る。

スケール、パワー…どれも太刀打ち出来る範囲内を超えている。逃げることも、突破することも不可能―――

 

 

 

「【 ア イ ス エ イ ジ 】」

 

 

ガキイィィィィィィン!!!!!!

 

 

ブラジル「「「!?!?」」」

 

日本「「「!!!!」」」

 

 

穂乃果「聖良さん…!!」

 

聖良「ふぅ…そう何度も発動されては困ります」パキパキ

 

 

A『な、なんと!?アマゾンリバーウェーブを止めたのは…"絶対零度の氷帝"、鹿角聖良!!!!』

 

レヴィン『あれだけの規模の技も止めますか…さすがですね』

 

 

波は巻いたまま、川はうねった状態をそのままに。

聖良の全冷気をぶつけられたものの運命は皆同じく、芯まで全て凍りつく。

会場の熱も全て奪いさり、南の島にいることを忘れるほどの寒さが選手たちを襲った。

 

もちろん反動は大きいがそれ相応の効果はある

 

 

聖良「これで当分はタクティクスを使えませんね」

 

レオナルド「…確かにすごい技。でもタクティクス無しでも突破することは…造作もないよ?」

 

聖良「どうでしょうか?」

 

ガト「どういう意味!?」

 

聖良「…理亞。いつまでそこにいるんですか、早く出てきなさい」

 

 

―――ドゴオォォン!!バキバキバキ!!

 

 

ブラジル「「「!!!!」」」

 

凍らされた川のある場所から爆発が…いや、何かが氷を突き破ってくる音がした。

まるで氷塊の封印から解き放たれた猛獣が放つような刃物に近いオーラ。そのオーラは一瞬でブラジル選手、そして聖良の目の前へ。

 

冷気なのに炎のように燃え盛るその姿

 

 

理亞「真正面なら、私が勝つ」ゴゴゴゴ

 

 

"Awaken the power"

銀に輝く髪、そして鋭く睨む赤い目。

いくら王者と言えどもこの姿となった狼に対し、気を許してはいけない。

 

足元をすくわれるだけでは済まない。その剥き出しの牙で―――王だろうとなんだろうと、喰らう

 

 

 

日本 0-1 ブラジル

 





アマゾンリバーウェーブに肉食魚いたら怖くないですか?


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第3章128話 「ブラジル戦 "仕組まれた暴走"」

みなさんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回で前半は終了です

(2020/05/30 22:50:45)ポリゴン佐藤さんが挿絵を描いてくださいました!
https://syosetu.org/?mode=user&uid=220514

挿絵は後書きにあります!





 

 

前回の、輝こうサッカーで!

暴走するロニージョに対しアマゾンリバーウェーブによって上手く合わせるブラジル代表。ロニージョのセンスあるシュートにより日本は1点リードされてしまう。

このまま2点目かと思われたが、流れが大きく変わろうとしていた

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

理亞「……」ゴゴゴゴ

 

"アマゾンリバーウェーブ"を止めることは出来た。しかし、ブラジルの選手たちを止めたわけではなく、ある意味ではここからが勝負になる。

 

自強化の最強クラスと言えるATPでも、油断をすれば確実に抜かれる。

王者を前にして手を抜く、余裕を見せるなど言語道断。逆に敬意を払わなければならない

 

 

理亞「―――っっ!!」ドォン!!

 

ブラジル「「「!!!!」」」

 

理亞「これが…フルパワーよ」ゴゴゴゴ

 

空気を殴る振動と同時に、理亞のATPのオーラがさらに高まった。

ATPは倍率上げのようにオーラを調整することが出来る。もちろん電池切れを加速させるのは避けられないが、ブラジル相手ならばこのレベルまで引き上げなければ―――

 

 

―――勝てない

 

 

理亞「っっ!!!!」ギュン!!

 

レオナルド「――!」

 

ボールを持つレオナルドに高速で近づく。

パスを出そうものなら一瞬で奪ってやる…理亞はボールを見据え、突き刺すように足を―――スカッ

 

 

理亞「――――――え、」

 

レオナルド「……」

 

 

ルビィ「…!!」

 

曜「なんで…!?抜かされた!?」

 

 

理亞(ボールに触れなかったっっ…)ズザザ!

 

急ブレーキをしながら状況を整理する。

必殺技は使ってない、油断もしていない。

ただただシンプルに。真正面から抜かされた

 

 

理亞「まだっっ!!」バッ

 

レオナルド「……」パス

 

理亞(パスを出した!!取れ―――スカッ

 

また―――空ぶった

 

 

A『鹿角理亞、再びカット失敗!!ATPとはいえザ・キングダム相手には厳しいのか!?』

 

 

理亞「ハァハァ、な…なんで、」ゴゴゴゴ

 

ガト「分からない?」

 

理亞「!!」ゴゴゴゴ

 

 

ルビィ(…理亞ちゃん、)

 

 

ガト「あなた、さっきフルパワーって言ったよね?」バッ

 

理亞「っっ!?」スカッ

 

ガト「それが…今持てる全力だと」パス

 

理亞「そうよ…!!だから負けな…

 

レオナルド「違うね」

 

理亞「…!!」ゴゴゴゴ

 

レオナルド「今のあなたは…フルパワーを出せるほど体力は残ってない」

 

レオナルド「その技、発動した時から分かってたよ。あぁ、すぐに燃え尽きるなって」

 

理亞「……」ゴゴゴゴ

 

ガト「確かにフルパワーだったら結果は違ってたかも。でも、アマゾンリバーウェーブに2回も飲まれて私たちに勝つなんて…」

 

 

ガト「舐めすぎじゃない??」

 

 

理亞「……!!」ゴゴゴゴ

 

1歩。後ろへ引きそうなってしまった。

ザ・キングダムの威圧…自分が想像していた格上よりも、さらに上。

勝てる、と威張るように立ち塞がり、自分の体の状態を把握も出来ないくせに噛み付く…

 

それが今の私の限界?

 

 

理亞「…違う」ゴゴゴゴ

 

レオナルド、ガト「「!!」」

 

理亞「確かに。私の力はまだ付け焼き刃。足りないこと、及ばないことだらけ…でも、だからってっっ…」ゴゴゴゴ

 

理亞「この勝負、逃げ出す理由にはならない!!!!」ゴゴゴゴ

 

ロニージョ「…!!」

 

私は、私たちは、勝つために今ここに立っているんだ。

ロニージョたちのために負けるためじゃない。ガルシルドの実験台になるためでもない。

 

無茶無謀して当然。それがここまでの戦い方だ。

格上だから舐めるな?燃え尽きる?

言っただろう、猛獣は食らいつくんだ

 

 

理亞「っっ!!!!」バッ

 

レオナルド(仕掛けてくる…!)

 

理亞は飛び、空中で縦に回転を始めた。

サニデイジャパンの情報は得ているが、これは見たことも無い動きだった

 

 

ラガルート「レオナルド!気をつけて!!」

 

レオナルド(は、早くボールを回し―――

 

 

 

 

――――――ザシュッッ!!!!

 

 

レオナルド「きゃっ!?!?」

 

理亞「―――!!!!」ゴゴゴゴ

 

「「「!!!!!!」」」

 

レオナルド(は、速い……!!)

 

理亞が―――何かを飛ばしてきた。

その何かにより吹き飛ばされ、レオナルドはボールを手放してしまった

 

 

理亞「【ビーストクロー】」ゴゴゴゴ

 

レオナルドが先程まで立っていた場所には爪で引き裂かれたようなあとがあった。

回転からの遠心力による衝撃……強烈なディフェンス技だった

 

 

A『奪ったぁぁぁ!!鹿角理亞が新必殺技を発動しボールを取り返しました!!なんという高速技でしょうか!?』

 

 

英玲奈「そのまま上がれ!理亞!!」

 

穂乃果「ナイスだよ理亞ちゃん!!」

 

レオナルド「……!」

 

ボールを奪われた。

そうなった場合、次にやるべきことは理亞からボールを取り返すのは当然。

しかし、レオナルドは動けなかった

 

 

レオナルド(全く…見えなかった)

 

先程の新必殺技と思われる理亞のディフェンス技…回転しているところまでは確認出来ていたが、衝撃波を飛ばすところは…

回転する理亞を警戒しパスを出そうとした次の瞬間、気づくと自分は吹き飛ばされていた。

さらに、地面を抉る音は1回だけだった。

なのに地面には抉り跡が三本。

 

体力が無くなりかけている選手があのような次元の技を??

 

 

レオナルド「鹿角、理亞…」

 

 

 

A『さあ、サニデイジャパンのカウンター!!前半も残り僅かだが、決めきれるのか!?』

 

 

ルビィ「理亞ちゃんこっち」

 

理亞「……!」ゴゴゴゴ

 

ルビィが理亞を呼んだ。

まだブラジルの守備が固まらないうちに自分の力で突破したいが、体力的にかなり厳しいのが現実だった。

そして何よりも気になったことが…

 

 

理亞(ルビィは…疲れて、ないの??)パス

 

ルビィの動き、表情を見るに体力はまだまだ残っているように見えた。

何故?アマゾンリバーウェーブに飲まれ、ブラジル相手に走り回っているのに…どうしてこんなにも差が出るのか?

 

その理由は極めてシンプル

 

 

にこ「自分の体を上手く使いこなしてるのよ」

 

理亞「…!」

 

にこ「ルビィと理亞、体力は同じレベルかもしれない。でも体の動かし方、燃費、筋肉…どれもルビィは上を行ってるのよ」

 

理亞「分かってる…それでも、」

 

にこ「まあ、にこも迷惑してるんだけどね」

 

理亞「!?」

 

ルビィ「……」

 

 

A『おっと!?ここで黒澤ルビィのディフェンスに入るのはロニージョ選手だぁぁ!!!』

 

 

にこ「あんたたちFWが暴れるから、にこたちの出番がどんどん無くなってくる…」

 

ルビィ「……」パス

 

にこ「ルビィと理亞だけじゃないのよ。ブラジル相手に噛み付けるのは」

 

ロニージョ「……」

 

にこ「よく見ておきなさい」バッ

 

ルビィからボールを貰ったにこ。

そろそろ私たちにも戦わせろ。にこの気迫から伝わってくるのはそういった熱い感情であった

 

 

A『矢澤にことロニージョ選手の1対1!!』

 

 

あのにこでさえ、ロニージョとの勝負に勝てたことは少ないと語っていた。

それが、最も完成されたプレイヤーの実力であり、日本人の限界でもあった。

しかし、それをも超えようとしたのがにこだった

 

 

にこ「―――っっ、」バッバッ!!

 

ロニージョ「……」バッバッ

 

練習をサボった日はない。

では、にこは何のために毎日練習を積むのか。

世界レベルのテクニックを得ながらも、何故貪欲に更なる強さを求めるのか。

それ全て、この時のため―――

 

 

 

ズバババババババッッッ!!!!!!!!

 

 

ロニージョ「―――」スカッ

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

にこ「【ファンタスティックキープ改】」

 

にこ「世界一を目指す前に。ロニージョ、そしてブラジルに勝つ」

 

にこ「そのために今までがあるのよ」

 

 

A『抜いたぁぁ!!!!あのロニージョ選手を必殺技で華麗に抜き去ったのは、"日本のファンタジスタ"矢澤にこ!!』

 

レヴィン『ダンス、ストリート、サッカー…武器になるテクニックを全て詰め込んだあの動き。矢澤にこは本気で勝ちに行ってますね』

 

 

美奈「…にこちゃん本気ね」

 

希「ずうっとこの日のために頑張ってきた…と言っても過言ではないなぁ」

 

海未「今までの試合、手加減をしていた訳では無いですが…あの動き、あの気迫…今までのにことは、」

 

 

 

ズバババババババッッッ!!!!

 

バーグレ「なっ!?」

 

 

ズバババババババッッッ!!!!

 

フォルミガ「速い!?」

 

 

にこ「―――ふぅ…」

 

目指していた場所だった。

過去、敵わないと誰からも言われたブラジル代表への勝利。ましてや1対1のテクニックや能力などもってのほか。

そんなチームとの長年叶っての大勝負となれば、自分の力の限界以上の力を発揮していてもおかしくは無い

 

 

プレザ「ニコ…数年前よりもめちゃくちゃ上手くなってるよ!?」

 

ラガルート「当然かもね…周りの人たちがアジア人という概念に取り憑かれすぎなんだ」

 

ラガルート「にこの能力はアジアを超えてるんだよ。元から」

 

 

A『さあ、矢澤にこがブラジル陣内に切り込みチャンスをつくります!!』

 

 

モンストロ「させない!!」ズザーッ

 

にこ「千歌!!」パス

 

モンストロ「しまった!?」

 

にこに意識を向けすぎていた故のスペース。

千歌が空間に走り込んでいたのをにこは見逃さなかった。

すでに崩されたブラジル陣内ならばシュートチャンスも十分ある

 

 

千歌「っっ!!!!」グッ!

 

「「「!!!!!!」」」ゾクッッ!!

 

千歌の雰囲気が一瞬にして変化する。

ロニージョと同じく、寒気を与えるオーラを放出し、まるで底なし沼のようなどこまでも黒いエネルギーが溢れ出す。

しかしその目は片方、光り輝くまるで太陽。

黒いオーラを照らすように光る目と混ざり合うその力は―――

 

 

チカ「【Braveheart】!!」

 

 

ヘンクタッカー「あれは…!」

 

ガルシルド「…闇の力か!」

 

凶暴な"闇の力"を"ゾーン"により制御する。

すると2つの能力は混ざり合い、更なる輝きを持つ能力「Braveheart」が生まれる。

眩しくもあり暗くもある。

仲間を照らし、隠す。陽と陰の両方を持つからこそどんな状況でも立ち上がる

 

 

チカ「光と―――闇っっ!!」ゴオォォ!!

 

"サンシャインアッシュ"。そして"ブラックアッシュ"。

2つのシュートが混ざり合う。

熱く眩しく黒に染まる、千歌の繊細なコントロールとチカの圧倒的パワー

 

 

チカ「【エクリプス・サン】!!」ドガアァン!!

 

 

A『高海千歌の新必殺シュート!!』

 

 

"エクリプス・サン"は魔界軍団戦の時に初めて発動した技だが、FFIの試合ではこれが初めて。

新必殺技と聞いて警戒するのは当然だが、千歌がすでに持つ2つのシュート技。あれらと威力はあまり変わっていない。

それにより止められる前提で挑むGKが今後、続出するのは目に見えていた

 

 

ファルカオ「【カポエィラスナッチ】!!」ババッ

 

鍛え上げられた体幹と柔軟性を利用したファルカオの必殺技。

どんな強力なシュートも両足で挟み、スピンを利用しながら打ち上げて威力を殺す。

飛び抜けたパワーが無ければ成功しないこの技――――――

 

 

ファルカオ「っっ!?ぐあっ!?」グググ

 

ブラジル「「「!!!!」」」

 

ラガルート「どうしたの、ファルカオ!?」

 

ファルカオ「力が…抜けるっっ!!!!」

 

"エクリプス・サン"に触れた瞬間。

体の力が奪われていくことに気づいた。

まるで生き物のように絶えず力を奪い、逆立ちを支える手、ボールを挟む足、どれもが限界に近づいていた

 

 

ファルカオ「きゃっ!?」ドガッ

 

 

―――バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

A『サニデイジャパン、前半終了間際に追いついたぁぁ!!』

 

 

チカ「……ふう」

 

曜「千歌ちゃんナイスシュート!」

 

にこ「ブラジルに同点よ!まだまだ行けるわ!」

 

ブラジル相手に前半で追いついて見せたサニデイジャパン。

ザ・キングダムの陣形、雰囲気が崩れていたこともあるが、それでもこの1点は大きかった。日本にも、ブラジルにも…そして、

 

 

 

ガルシルド「…ヘンクタッカー君」

 

ヘンクタッカー「はい」

 

ガルシルド「"純粋な闇の力"…実験材料としてこの機会を逃す訳にはいかない。そう思わないかね?」

 

ヘンクタッカー「おっしゃる通りで」

 

ガルシルド「RHプログラムの数値を高海千歌と高坂穂乃果に合わせ、限界以上に引き上げるんだ」

 

ヘンクタッカー「…なるほど」

 

 

 

A『さあ、残り時間も数分となりました!このまま同点で終わるのか!?』

 

 

 

ピーーーッ!!!!

 

 

ロニージョ「!?――――――」

 

穂乃果、千歌「「!?!?」」

 

この時、日本とブラジル…誰も予想もしていかっただろう。

ガルシルドの魔の手が日本にも向けられるなどと、

 

 

―――ドクン!!!!

 

 

 

千歌「ぇ…え、ぇ???」ズギズギ

 

穂乃果「……ハァハァ、」ズギズギ

 

 

海未「…!?千歌と穂乃果の様子が!?」

 

美奈「……まさか、」

 

 

2人を襲ったのは、頭を割られたかのような激痛だった

 

 

千歌「うわあああっっ!?!?!?」

 

曜「千歌ちゃん!!!!」

 

にこ「急にどうしたのよ!?」

 

 

穂乃果「痛い痛い痛いヤバいヤバいっっ!?!?」

 

聖良「闇の力の副作用…!?」

 

ことり「穂乃果ちゃん!!しっかりして!!」

 

立っていられることも困難。

今できることは痛みに共鳴するかのように叫ぶことだけ。

まるで闇の力が制御出来ていない頃のように負のオーラが溢れ出てくる。

制御出来る量を越えていた。

分かる、引き込まれていく。闇に、沈んでいく

 

 

レオナルド「サニデイジャパンの選手が!?」

 

ガト「ただ事じゃないよ…試合を一旦切―――ドガッ!!

 

ガト「なっ!?待ってロニージョ!!!」

 

ガトからボールを奪い、苦しむ千歌たちには目もくれず走り出したロニージョ。

彼女もまた、闇の力の暴走により自我をほとんど失っている

 

 

チカ「ハァー…ハァー…ま、マテヨ」ギロッ

 

ロニージョ「―――!!」

 

そんなロニージョに牙をむいたのは…同じく暴走状態に足を踏み入れた、千歌だった

 

 

チカ「消えろっっっっ!!!!!!」バッ

 

―――ゴオオォォォォッッ!!!!

"ストームゾーン"を発動させ、周りにいる敵味方を全て吹き飛ばす。

闇の力を嵐のように放出するこの技、溢れ出す量が尋常ではなかった。今まで見てきた"ストームゾーン"の数倍はある

 

 

ルビィ「闇の力の暴走!?」

 

理亞「ちょっと!?コントロールできるようになったんじゃないの!?」

 

ロニージョも例外ではなかった。

闇の力では千歌の方が格上。無差別に放たれた暴風に吹き飛ばされ、ボールは爆心地で暴れ狂う千歌に渡った

 

 

梨子「千歌…ちゃん…」

 

果南「全国大会の時でも、あそこまで暴れるような暴走じゃなかった…」

 

月「……ここまでやるのか、ガルシルドは」

 

 

ガルシルド「素晴らしい力だな。やはり血は争えん」

 

ヘンクタッカー「高海千歌は完全に自我を失っていますが、高坂穂乃果はまだ抗っているようですね」

 

ガルシルド「ほう、」

 

 

 

ホノカ「ぐあっ!?ハァハァ…ぐっ!?」

 

穂乃果は千歌と違い、ゾーン無しで自分の力のみで闇の力をコントロールしている。

暴走を食い止める能力は穂乃果の方が優れているとはいえ、闇に染まるのは時間の問題であった

 

 

ホノカ「ハァハァ…ご、コとリ…ちゃん」

 

ことり「どうしたの!?穂乃果ちゃん!!」

 

ホノカ「に…ゲテ、く……くる」

 

ことり「来る…」

 

穂乃果が睨むその先では、こちらにボールを構える少女が1人

 

 

 

 

チカ「あははっ…はははは」ゴオォォ!!

 

 

 

 

千歌は、日本のゴールを狙っていた

 

 

 

あんじゅ「嘘でしょ…正気じゃないわよ」

 

聖良「千歌さんが…」

 

ホノカ「どいて…はやぐっっ!!!!」

 

「「!!!!」」

 

 

まさか、止める気なのか?その状態で

 

 

チカ「【ブラックアッシュG2】!!」ドガアァン!!

 

 

考えられるとすれば、自我を失った千歌がその状態で狙うとすれば同じオーラを放っている穂乃果。

つまり、ゴールに決めるためでなく潰すために狙ったということになる

 

 

ホノカ(ゴット…ハン、ドXを…ダメだ…間に合わ)

 

ホノカ「―――」プツン

 

対する穂乃果。

自我を保っている状態で千歌のシュートを止めようとしたが、静かに闇へと沈んだ。

千歌とは対照的に、ロニージョと同じく死んだように立ち上がり、生気を感じさせないその体から―――足元から、

 

 

大量の闇の力が溢れ出す

 

 

 

海未「!!!!あの技は…」

 

凛「こ、怖いにゃ…」

 

穂乃果の足元から広がる闇。

その闇から無数の影のような手が現れ、いっせいにボールに襲いかかった

 

 

海未「…穂乃果が、まだ闇の力をコントロール出来ていない時に発動していた技…」

 

 

 

ホノカ「【ブラックシールド】」

 

 

千歌と穂乃果を暴走状態へと沈めた前半。

穂乃果の闇の必殺技により終了の笛が吹かれることとなった

 

 

日本 1-1 ブラジル

 

 





【挿絵表示】
闇チカちゃん

ビーストクロー
理亞ちゃんのディフェンス技でオリジナル技です。空中で縦回転をし、その遠心力で足から衝撃波を放ちます。
地面に猛獣が爪で抉ったような跡が残る威力で、スピードもブラジルの選手が認識できないほど。「ウルフレジェンド」の引っ掻きのモーションからヒントを得ました

ブラックシールド
アレオリのラスボスチーム、シャドウオブオリオンのGKが放つ技です。足元から無数の腕を出現させ、「ムゲン・ザ・ハンド」のようにボールを抑えます。輝こうでは穂乃果ちゃんの闇の力発動時の限定技として採用しました。

後半は作者的にも納得がいかないような勢いで終わらせたような展開ですが、後半頑張ります



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第3章129話 「ブラジル戦 "突きつけの真実"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今更で本当に申し訳ないのですが、高評価を押してくれた方々…お気に入りにしてくれた方々…感想を書いてくださる方々に感謝を込めて。
ついに…このお話を書く時が来ました。短めで、セリフ文がお決まりですが増えますのでご了承を




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

体力が限界に近づく理亞、しかし才能の片鱗を思わせる新必殺技によりボールを奪い返す。千歌の"エクリプス・サン"で得点するも、ガルシルドの魔の手により千歌と穂乃果の闇の力が暴走してしまう。

千歌のシュートを穂乃果は何とか止めるも、両チームここからどう動いていくのか…

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

A『前半終了!!ザ・キングダム相手に同点としたサニデイジャパン!後半をどう戦うか注目されます!!!』

 

 

にこ「ロニージョ」

 

ロニージョ「…!」

 

にこ「初めの方、ずいぶんとめちゃくちゃなサッカーをしてくれたわね」

 

ロニージョ「ハァハァ…私の勝手よ。放っておいて」

 

にこ「放っておけるわけないでしょ!?納得いかないのよ…あんた、あんな簡単に抜かれるようなやつじゃないでしょ!?」

 

ロニージョ「!!」

 

英玲奈「にこ。戻るぞ」

 

にこ「っっ…だけど、」

 

今はサッカーをしに来ているのだ。

勝たなければならないのはどちらも同じ。

にこが納得出来ない気持ちもわかるが、

 

 

英玲奈「彼女たちの事情が分かっているからこそ、なかなかそうもいかないがな」

 

にこ「じゃあ、負けられるって言うの?」

 

英玲奈「いや…ただ苦しいだけだ」

 

その頃、闇の力が暴走した千歌と穂乃果は意識が朦朧とする中。何とかその歩を進めていた

 

 

穂乃果「ハァハァ…ロニージョは、無理をしてる…その無理をチーム全体で何とかしようとしてる……ゴールからはそれがよく見えるよ…」

 

聖良「穂乃果さん、今は喋らない方が…」

 

あんじゅ「やっぱり、ガルシルドがロニージョたちを苦しめてるのね」

 

ツバサ「それが分かったとして…私たちに何ができるの?ガルシルドは堂々とここへ来たのよ?私たちの無力、ロニージョたちの無力を笑いに来たのよ」

 

穂乃果「どうにも…ならないのかな…」

 

 

 

 

―――

 

 

 

私情を挟む前に、ここは勝負の場である。

そのことを一番に理解している美奈は通常通りサッカーのミーティングを始めた。

前半、日本から、美奈からしてみれば上出来であったという

 

 

美奈「同点…攻撃、守備。両方頑張ってくれたわ」

 

美奈「試合前にも言ったけど、ブラジルの本領が発揮されるとすれば後半。みんなも分かっていると思うけど、前半のような雰囲気が無くなった場合よ」

 

「「「………」」」

 

美奈「まあ、ブラジルが変わっても変わらなくても…私たち日本は後半から仕掛けるわよ」

 

 

前半、体力を大きく消耗した理亞に代わってダイヤ。

"アイスエイジ"発動と守備の中心をこなした聖良に代わって善子。

司令塔交換で英玲奈に代わって梨子が入る

 

 

海未「美奈監督。千歌と穂乃果のダメージを考えると…2人は、」

 

美奈「悪いけど、穂乃果ちゃんは交代しないわよ」

 

海未「な…!?何故ですか!?」

 

美奈「ここまで引っ張ってきたけど…もうそれも限界が来たのよ」

 

 

美奈「この試合、穂乃果ちゃんは"ゴットハンドX"を完成させなければ勝てない」

 

「「「!!!!!!」」」

 

穂乃果の対世界用に作られた必殺技、「ゴットハンドX」。

強力な技ではあるが、まだ未完成だという問題がサニデイジャパンには存在していた。

自分の体を蝕む反動。そして100%の力が引き出せていない…つまり、完成させれば穂乃果は更に強くなる。

今完成させないで、いつ完成させるのか

 

 

穂乃果「穂乃果は…大丈夫。休めばなんとかなるよ」

 

海未「ですが、あの技を発動した体で…」

 

穂乃果「穂乃果の心配よりも、問題は千歌ちゃんの方じゃない?」

 

海未「……」

 

闇の力の暴走。

穂乃果が軽傷で済んだのは自分の力だけで闇の力をコントロールしていたから。

しかし、千歌はゾーンで闇の力を制御していた…では、ゾーン無しで闇の力が暴走したらどうなるのか…

 

 

 

チカ「ん〜♪チカも元気全開DAY!DAY!DAY!だよ♪♪」

 

善子「何よ…DAY!DAY!DAY!って…」

 

果南「まさか、またあんたが出てくるなんてね」

 

チカ「酷いな〜果南ちゃん。チカも一応、千歌ちゃんなんだからね??」

 

千歌の闇の力は少し特殊。

力を制御出来ない時に発動すると別の人格が出てくるというもの。

好戦的でどこか不気味さを感じさせるその雰囲気から、メンバーたちは不用意に近づくことは無い

 

 

梨子「早くいつもの千歌ちゃんに戻って…」

 

チカ「うーん、それがね?」

 

 

 

 

 

 

「「「戻れなくなった!?!?」」」

 

 

チカ「てへぺろ♪」

 

曜「いやてへぺろ♪じゃないでしょ!?」

 

原因はどう考えてもあの暴走。

しかし、このチカを長く発動させる訳にはいかない。何故なら、闇の力を暴走させると命が危うくなるからである

 

 

チカ「……その事についてはあまり心配ないと思うよ?」

 

果南「…どういう意味?」

 

チカ「そもそも、闇の力の暴走で命が危なくなるって…理由分かってる?」

 

チカは続けた。

闇の力の暴走で命が危うくなるのは何故か。

それは、暴走状態に体が耐えられないからである。シンプルと言えばシンプルだが、納得のいく部分もある。

 

全国大会の時、すでに穂乃果は力をコントロール出来ていた。それは細かな経緯を置いておいて、長年にわたっての鍛え上げられた体・精神力が理由であると考えられる。

変わって千歌はその頃はまだサッカーを始めたばかり。穂乃果のように力をコントロール出来るほど体は完成していなかった。

 

つまり、チカが心配ないと言う理由は…

 

 

チカ「千歌ちゃんの体は暴走でも耐えられる体になってる。でなきゃ今頃死んでるよ」

 

確かに、あれほどの大量の闇の力を吹き出しても千歌の体はボロボロになっていない。

ゾーンに頼りすぎて精神力的に耐えられなかったことは未熟となってしまうが、体はそうでも無かった

 

 

チカ「精神力が弱っちゃったから出て来れないのかもね〜。ま、その間チカが暴れさせてもらうけど♪」

 

果南「いいんですか?監督、千歌をこのまま出して…」

 

美奈「出し惜しみするほど、ブラジルは甘くないわ」

 

曜「大丈夫かなぁ…」

 

チカ「……そんなことより、さっきから気に入らない事があるんだけどさ」ギロッ

 

チカが睨む先は日本ベンチではなかった。

ブラジルベンチの中で、選手たちを見下すように居座る男

 

 

ヘンクタッカー「ロニージョは相当消耗が激しいようです」

 

ガルシルド「だがまだ使える。限界を超えた時、RHプログラムがどう作用するのか見てみたい」

 

ヘンクタッカー「なるほど。しかしせっかくのエースストライカー…壊れてしまっては、」

 

ガルシルド「実験台ならいくらでもいる」

 

 

 

「その実験台に、私たちもされたってわけか♪」

 

ガルシルド「!!」

 

チカ「ふふ♪やっぱりそうなんだね」

 

果南「ちょっ、千歌!!早速やりすぎだって!!」

 

海未「果南…千歌を連れて帰りますよ」

 

 

 

チカ「…いい加減にしてくれないかなぁ?」

 

果南、海未「「!!」」ゾクッッッ!!

 

チカは冗談で言ってない。

殺気に近いオーラで分かった。止めなければとも分かっているのに、その場から1歩も動けなかった

 

 

チカ「あんたたちの腐ったような目がチカたちのことををずうっと見てたの…知ってたし、闇の力を持つチカたちを狙ってたのも知ってる。だって、そこにいる太っちょがこの前襲ってきたし」

 

ヘンクタッカー「ふ、太っちょ!?」

 

チカ「それに…ロニージョの暴走」

 

ロニージョ「…!!」

 

チカ「あれ、闇の力?」

 

ガルシルド「いかにも。ロニージョが持つ才能で―――「嘘だね」

 

チカ「…ロニージョの体、いじった?」

 

「「「!!!!!!」」」

 

果南「どういう意味??いじったって…」

 

闇の力を発動するとまず確認できるのは真っ黒いオーラ。必殺技や瞳も、オーラと同じく黒く染る。

そして周辺の温度が一気に下げられたかのような寒気が襲い、発動者にリスクと引き換えに圧倒的なパワーをもたらす。

 

しかし、ロニージョの闇の力には足りないものがあるのだ

 

 

凛「……あ!ロニージョさん、黒いオーラ出てなかった!!」

 

梨子「言われてみれば…闇の力と同じ、寒気が起きただけで…」

 

チカ「ねえ?実験とか言って、ロニージョの体を改造してたんじゃないの?」

 

ロニージョ「……」

 

ガルシルド「………」

 

ガルシルド「サッカーをする人間の能力を限界まで引き出すための強化人間プログラムと、言って欲しいものだな」

 

「「「!!!!!!」」」

 

にこ「強化人間ですって!?!?」

 

チカ「見なよ。ロニージョの体を。あんたの実験のせいでボロボロじゃん」

 

ロニージョ「……千歌、仕方なかったんだ」

 

チカ「……」

 

ロニージョ「家族やチームのことを考えれば…私がこうするしかっっ!!」

 

海未「…っっ、酷いじゃないですか!!」

 

ルビィ「こんなことしなくても、ロニージョさんたちは十分に強い選手なのに…」

 

ガルシルド「…ふん、力を与えてやったのに、非難される言われは無いわ。ロニージョは納得してプログラムを受けたんだ」

 

にこ「家族を人質にして…何が納得よ!!!」

 

チカ「…やっぱり、救いようがないクズだね」

 

ガルシルド「だからなんだというのかね?」

 

チカが笑みを消した。

どんな時でも笑顔を崩さなかったはずのチカが。まるで、この場でガルシルドを―――

 

 

チカ「チカがここで潰して、警察に叩き込んであげるよ」

 

曜「…!?千歌ちゃん、ダメだよ!!!!」

 

 

 

 

―――ガチャッ!!

 

 

 

チカ「……」

 

曜「…え、」

 

にこ「ちょっと…なんであんたが、」

 

月「そんな…」

 

美奈「………」

 

 

 

 

 

 

サエ「調子に乗りすぎデス。美奈の娘」

 

チカ「…小原サエ」

 

チカとガルシルドの間に入ったのはイタリア代表監督の小原サエだった。

その手には日本人には縁もゆかりも無いような野蛮な武器、拳銃が構えられていた

 

 

ガルシルド「遅かったではないか。小原サエ」

 

サエ「ええ。少し野暮用で」

 

ガルシルドとの会話から、最悪の事態を想像してしまう。月を信じてありえないと答えを出した疑惑…

 

 

ツバサ「…どうやら、黒みたいね」

 

月「そんな…サエさん、だって」

 

サエ「黙ってたことは悪かったと思っているわ。月」

 

月「…!?」

 

この状況で小原サエがこちら側の味方だと思う者はいないであろう。

全て、ここまでガルシルドの。小原サエの計画だったと言うのか??

 

 

ガルシルド「驚いたかね?小原サエは昔からのビジネスパートナーなのだよ」

 

サエ「…そういうこと」

 

チカ「いや〜…鞠莉ちゃんがクラウディーになっちゃうよ?サエさん」

 

サエ「……」

 

ガルシルド「君たちの持つ闇の力は貴重な能力。身体能力を強化させ、超人的なパフォーマンスを見せてくれる。これを、利用しないことはないだろう?」

 

月「そのための実験か…」

 

ガルシルド「闇の力のデータを元にし、RHプログラムとしてロニージョに発動させた力こそ…"人工闇の力"」

 

聖良「闇の力を…擬似的に発動させる!?」

 

ガルシルド「そのために君たちのような純粋な闇の力を持つ者が欲しかったのだよ。とは言っても、君たちが実験サンプルの第1号では無いがな」

 

穂乃果「私たちが最初じゃ、ない?」

 

チカ「へぇ…ほかに誰がいるって言うのさ」

 

美奈「……やめて」

 

ガルシルド「すぐそこにいるではないか」

 

美奈「やめなさい!!ガルシルド!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ガルシルド「音ノ木坂の奇跡のエースストライカー、高海美奈だ」

 

 

日本「「「!?!?!?」」」

 

チカ「……!?」

 

穂乃果「……美奈さん、が…」

 

真恋「ガルシルド…なんてことをっっ!!」

 

 

 

高海美奈が…音ノ木坂の奇跡のメンバー…ということは、

 

 

にこ「ねえ、ママ…ママもなの??」

 

真恋「……っっ…」

 

同じチームだと言っていたにこの、穂乃果の海未のことりの月の…そして鞠莉の母親が、皆―――

 

 

穂乃果「私たちが目指した…音ノ木坂の奇跡」

 

海未「…」

 

ことり「…」

 

凛「…」

 

花陽「…」

 

真姫「…」

 

希「…」

 

にこ「…」

 

 

ガルシルド「そして高海美奈。君に復讐を誓ったのが、小原サエだ」

 

サエ「……」

 

美奈「…っっ」

 

ガルシルド「自分の娘たちに聞かせてあげるといい。伝説と金塗られた過去の…真実をな」

 

 

 

 

――――――――――――――――

―――――――――

―――

 

 

 

ー 3✕年前 音ノ木坂学院 ー

 

 

 

高校時代、青春を過ごした。

 

 

「まずいわ〜…初日から遅刻とかヤバい」

 

 

将来語れば、羨ましがられるような日々だったかもしれない。

そう―――思ってたでしょ?

 

 

「音ノ木坂学院に…ついに来たあぁぁ!!」

 

 

私の名前は日宮美奈。(ひのみや)

これから語るのは―――私の過去と犯した罪

 

 





音ノ木坂の奇跡、過去編に入ります。



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第3章 130話 「過去編 "大好きだから"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
久しぶりに深夜投稿。ついに過去編です




 

 

 

 

 

 

私の名前は日宮美奈。

この春から音ノ木坂学院に通う高校1年よ。

 

今、桜咲き誇る街路を全力疾走。

学校は見えてるんだけどこの桜道が長いわ長いわ…

理由は聞かないでくれると助かるわ。多分、すぐに分かるとは思うんだけど、

 

 

美奈「このまま走れば間に合うわね」

 

「あれ??美奈?」

 

美奈「……え?鈴香ちゃん?」

 

走る私の隣から、声が離れないということは同じスピードで動いているということ。

つまり、隣の少女も走っているのだ

 

 

鈴香「美奈も遅刻?マジでウケるわ笑」

 

美奈「いやいや…まだ遅刻と決まったわけじゃ」

 

私と並んで走ってる子は響木鈴香。

中学からの友達で、家がラーメン屋をやっている。私も何回あのラーメンを食べたかは忘れたが、あの美味さだけは…絶対に忘れられない

 

 

鈴香「入学初日から遅刻とかダサいよ…!学校まで競走。負けた方ラーメン奢りね」

 

美奈「乗ったわ」

 

鈴香、美奈「「っっ!!」」バッ

 

鈴香ちゃん家のラーメンが報酬となるのなら…私は全力で行かせてもらうわ。

え?さっきから全力疾走って言ってたって?違う違う。さっきまでが100%なら、今は120%だから

 

 

「うわっ!?あの女子高生たち速っ…」

 

「陸上選手か…?」

 

 

まあ、そんなわけで。

私の高校ライフの始まりってわけ。

よく聞く話が高校生になったら何がしたいかとか、よくある目標?私が立てるとしたら、

 

 

美奈「音ノ木坂学院に…ついに来たあぁぁ!!」

 

 

サッカーで全国制覇、かしら?

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

皆さんはじめまして…梨本乃々子(なしもとののこ)、音ノ木坂学院1年です。

今日からこの学校で新たな生活が始まるんですが…初日から不安なことがあります

 

 

乃々子「……美奈ちゃん、」

 

私の友達が、まだ来ていないんです。

日宮美奈ちゃんという子で…私とは幼馴染なんです。一緒に同じ高校に進学して、これからも毎日一緒に登校できるね!って話してたのに…

 

初日から遅刻?いやいや……やりかねないわね

 

 

 

「のんちゃんっっ!!!!」

 

乃々子「ひっ!?」

 

美奈「ゼェ…ゼェ…間に…合った」

 

鈴香「くっそ…負けた…ゼェゼェ」

 

乃々子「………」

 

美奈ちゃんに、そして中学からの友達の鈴香ちゃん。何となく察したので2人の状況に関してはスルーしますね。

酷い?ふふふ、こんな流れを何年間も繰り返せば…あなたもきっと慣れますよ。ふふふ

 

 

鈴香「ゼェゼェ…乃々子、顔怖くなってるよ…」

 

美奈「そっとしておきましょ、」

 

どちらにしろ、遅刻しなかっただけでも今回は大目に見ることにします。

今はそんなことよりも、美奈ちゃんたちに言わなければいけないことがひとつ

 

 

乃々子「美奈ちゃん、落ち着いて聞いてね?」

 

美奈「…ゼェゼェ、ほえ?」

 

乃々子「この学校…サッカー部、無いわよ」

 

美奈「……ゼェゼェ」

 

乃々子「………」

 

美奈「………」

 

乃々子「…………」

 

美奈「…ゑ?」

 

 

 

 

 

ー 放課後 ー

 

 

まぁ…オープンスクールとかでサッカー部の有無をチェックしなかった私たちが悪いとはいえ…この仕打ちはあんまりじゃないかしら?

 

美奈「そう思わない??」

 

乃々子「思うけど…」

 

無いなら作るっっ!!

…のも簡単ではなく、音ノ木坂学院で部活を新たに作るには5人以上の部員が必要で…予算や練習場所を提供するにも部活としてそれなりに活動しなければならないらしく…

極めつけは―――

 

 

鈴香『だが断る』

 

美奈『えっ!?』

 

鈴香『美奈ぁ…忘れたわけじゃないでしょ?あんたは店の手伝いとかあるじゃん。これは神様からのお告げだと思うけど』

 

美奈『そ、それは…どっちも頑張るし、』

 

鈴香『それに、私は別にサッカーじゃなくても楽しければ陸上とかバスケとかでもいいし』

 

乃々子『そんな…鈴香ちゃん、』

 

鈴香『んじゃ、私は店の手伝いあるんで今日は帰りま〜す』

 

鈴香ちゃんの言葉が―――頭から離れなかった。

私の家はとある事情で母子家庭。しかも母親の体はそんなに強くなく、それなのに無茶をする困った人なのだ。

私も鈴香ちゃんのように、学校が終わったら一直線に帰らなければいけないはず…なのに、私は未だに学校の敷地内をウロウロとしている

 

 

乃々子「優花ちゃんとかも誘ってみたらどうかな?」

 

美奈「…あの子はサッカーはしないでしょ」

 

乃々子「そうだよね……あれ?」

 

美奈「…のんちゃん?」

 

のんちゃんの視線の先。

私は突然立ち止まった彼女を不思議に思いながらもその場所を探した。

するとそこには…衝撃的な、私たちをそこへと引き込むような…光景があった

 

 

 

「サッカー部作りまーす!!」

 

「お願いします♪」

 

「お願いします」

 

 

美奈「……!!」

 

乃々子「美奈ちゃん!あれ!」

 

どうやら考えていることは同じみたい。

下校時間、生徒の通りが増えるこの道で。数人の生徒が部活勧誘をしていたのだ。しかも、私たちが無いと諦めかけた、サッカー部の。

そこからの行動は早かった

 

 

美奈「あ、あの…」

 

「…!なになに??もしかして!!」

 

乃々子「私たちもサッカー部に…入りたいなって」

 

「「「!!!!!!」」」

 

結果的に想像の斜め上の勢いで喜ばれた。

聞くと部員がなかなか集まらなく、現状3人で頑張って勧誘をしていたらしい。

でもこれで部員は5人。サッカー部を立ち上げることができるし、部室を自分たちで確保して活動を始めれば部費も手に入る。

とにかく元気な子、1年ながら大人のような子、静かな大和なでしこ。それがこの3人の、私から見た第一印象だった

 

 

「名前を聞いてもいい?」

 

美奈「私は日宮美奈」

 

乃々子「梨本乃々子です」

 

「美奈ちゃん…乃々子ちゃん…あれ?どこかで聞いた気が…」

 

「〇△中学のサッカー部ですよ。忘れたのですか?」

 

「……あ!!あのチームの!」

 

青髪の大和なでしこに言われて私も思い出した。中学の時に他校と試合した時にこの子たちとも勝負をした。

今まで忘れてたけど…確か、かなり強かったような??

 

 

「私…高坂光穂!そして私の幼馴染、園田弥生ちゃんと乙坂雛(おとざかひな)ちゃん!」

 

弥生「日宮さん。梨本さん。よろしくお願いします」

 

雛「よろしくね〜♪」

 

入学初日で部活始動、そして友達を増やすなんて…さすが私ね。

今日は下校時間になるので部活申請は明日行うらしい。そう言うと高坂さんは1枚の紙を私たちに見せた

 

 

光穂「この紙に名前よろしくね!」

 

乃々子「は、はい!」

 

すでに3人の名前が入っていたため、これが申請書なのだろう。つまり、ここに私たちが名前を書けば音ノ木坂学院サッカー部が結成される。

のんちゃんに続いて私も名前―――

 

 

 

『ゴホッゴホッ…美奈ちゃん。頑張って!』

 

 

 

―――「っっ!!!!!!」

 

 

光穂「…あれ?」

 

乃々子「…美奈、ちゃん?」

 

美奈「ごめん…ちょっと考えさせて」

 

「「「!!??」」」

 

驚かれるのも無理はない。

サッカー経験者で、サッカー部入部希望だった人が急に今になって考えさせて、と言い始めたのだ。

私のこの行動ひとつひとつにサッカー部の今後がかかってくる…分かっては、いるけど

 

 

美奈「明日までは答えをだすわ。じゃあね!」

 

弥生「日宮さん!?」

 

乃々子「あっ、美奈ちゃん!」

 

私は走って今すぐにでも家へと駆け込みたかった。朝のように全力疾走で通学路を駆ける。

桜の雨など気にせずに、眩しく沈んでいく夕日など見向きもせず。

私は、逃げるように…音ノ木坂学院の校門を飛び出した

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

全力疾走をすること数十分。

都心から少し外れた住宅街の中に、私の家はある。

家にたどり着くためには3方向全て上り坂のどれかの道を通らなくてはならない。つまり全方向上り坂のT字路。丘の上。

言い方は自由だがどれもあまり良くは聞こえない。

なぜこんな場所に家を…それ以前に、

 

 

美奈「ただいま〜」

 

母「美奈…!おかえりなさい」

 

美奈「あぁ、あぁ…お母さん、無理しないでよ」

 

 

飲食店を作ろうと思ったのか

 

 

客「やっぱり私たちは帰った方が…」

 

美奈「ああ、大丈夫ですよ!私があとはやるんでゆっくりしてってください!」

 

母「美奈。私も手伝うわ…」

 

美奈「お母さん。最近は体調が良くないって、自分が一番分かってるよね?」

 

この街の丘の上にある飲食店「波の屋」。

昔からあるこの店は常連客に親しまれていて、懐かしさ残る普通のお店だ。

そこで切り盛りするのが私とお母さん。なんだけど、見ての通りお母さんは病弱。

…なはずなのにこうして私がいない間は厨房で無茶をする。

私が入部を躊躇った理由。分かって貰えたかな?

 

 

美奈「えーっと、お客さんは"花丸定食"でしたよね?」

 

客「あと"北のでかメロンプリン"も頼めるかな」

 

美奈「ありがとうございます!」

 

とりあえず仕事に集中します。

小さい頃から鍛えられた(無理やり)私ならすぐに終わらせられる。

慣れた手つきで包丁を捌き、火を操り、手順をイメージする。

お母さんの行動に目を光らせながら調理を進めていると…遅れてのんちゃんがご帰宅のようです

 

 

乃々子「こんにちはです」

 

母「乃々子ちゃんおかえりなさい。高校はどうだった?」

 

乃々子「はい!みんな優しくて楽しかったです…あ、私も手伝います」

 

ご帰宅とは言ったけど、もちろんのんちゃんはこの家には住んでない。

正確に言うと隣の弁当屋さんの娘なんだよね。でも家族のような付き合いだし、お互いの家に自由に出入りできるし…

そんなわけでのんちゃんにはよくお店の手伝いをしてもらっている。私とお母さん、のんちゃんの家族には頭が上がらない

 

 

乃々子「美奈ちゃん。3番テーブルさんで"全速前進炒め"だって」

 

美奈「了解!」

 

客「乃々子ちゃん!帰りにお弁当買っていくね〜」

 

乃々子「あ、ありがとうございます!」

 

こんな感じで私はたくさんの人に支えられている。ほとんどが救いの手だ。

優しい、心が温まる。

お店の手伝いは確かに大変だけど…それ以上にこの温もりを失いたくない。

だからこそ…

 

 

美奈「……」

 

乃々子(美奈ちゃん…)

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

美奈、乃々子「「ありがとうございました!」」

 

今日も無事に営業終了。

まだ夜は始まったばかりかな…うちの店は閉店時間が早いからね。理由は何度も言うけど家庭の事情、だよね。

私は最後まで手伝ってくれたのんちゃんに夕食を作る。

のんちゃんは片付け。お母さんは……うん、ちゃんと座ってるね。でかメロン食っててでかメロン

 

 

母「それで、部活はどうするの?」

 

美奈「…!」ピタッ

 

美奈の調理の手が止まる。

表情ではなんとか平然を保っているが、乃々子や母親からはバレバレである

 

 

母「…まさか、私に気を使って部活やらないとか言わないわよね?」

 

美奈「…お母さん。私は大好きなものを失いたくないの。波の屋、常連さん、この時間…あとお母さんもね?」

 

乃々子「……」

 

美奈「鈴香ちゃんにも言われたんだ。神様からのお告げだって、店の手伝いしろって。その通り、その通りなんだよ…」

 

母「美奈。あなた、一番大好きなものを自分から失おうとしているのよ?」

 

母「サッカー。私は、あなたに続けて欲しいと思ってる」

 

美奈「…でも、でもね?お母さん、」

 

母「こういうのはどう?」

 

美奈「…?」

 

おばあちゃんやお母さんはよく知恵をくれるって…よく言うけど。うちのお母さんもその中に該当する。

何度も母の言葉には助けられたが今回も―――

 

 

母「大好きなもの、全部守り遂げる。サッカーもお店も、時間も」

 

美奈「………」

 

乃々子「………」

 

母「って…自分の娘に全てを押し付けたような言い方…母親失格ね」

 

美奈「ふふっ」

 

乃々子「ふふふ…!」

 

美奈、乃々子「「ははははっ!」」

 

母「ちょっと…!笑いすぎ!」

 

そうだよ。

私はこんな時間が好きなの。

笑って、話して、食べて。

小さいけどこれが良いの。

 

私言ったよね?好きなもの守りたいって。

だから、お母さんが笑うのに必要なら……私は――――――

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

翌日。事件は突然に起こった

 

 

 

光穂「あ、ははは…はは、」

 

「………」

 

サッカー部発足人である高坂光穂はとある人物により窮地に追い込まれていた。

もちろん幼馴染の2人もいるが、どうも止められるような状況では無い

 

 

「サッカー部、ね?」

 

光穂「部が決定してないのに勧誘活動をしていたのは謝ります…でも、」

 

「それ以前の問題よ。サッカーって、何人でやるゲームかしら?」

 

日本の高校女子サッカー大会は9人制ルール。大会に出場するには最低でも試合ができる9人が必要…つまり、

 

 

「9人も集められないサッカー部の申請を、認めろって言うの?」

 

雛「そんな…でも、決まりでは5人で」

 

弥生「ですが雛。部を作っても確かに試合が出来ないのでは…」

 

光穂「……」

 

「まぁ、大会に出れたとしても音ノ木坂学院サッカー部は一勝できるかどうか」

 

光穂、弥生、雛「「「!!!!」」」

 

「知らないわけじゃないでしょ?ここ最近、日本の女子サッカーの実力は上がってきているわ。東京なんて次元が違う」

 

「あなたたちがそれ相手に戦っていけるのか…私は、可能性は低いと思うわ」

 

光穂「…そ、そんな……でも!!!!」

 

 

 

 

 

「じゃあ、証明すればいいのかしら?」

 

 

「…!!」

 

光穂、弥生、雛「「「!!!!!!」」」

 

光穂「ひ、日宮さん…」

 

 

美奈「音ノ木坂学院サッカー部が弱い…へえ、まだ結成もしてないのに分かるのかしら?」

 

「…あなたは部員なの?」

 

美奈「ええ。私は1年、日宮美奈」

 

 

 

 

「サッカーで全国制覇するつもりよ」

 

 

 





少年漫画みたいな展開!!!!



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第3章 131話 「過去編 "日宮美奈のサッカー"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
設定難産で投稿遅れました。申し訳ないです。






 

 

 

小さい時から、サッカーをやっていた私はよく尋ねられた。

あなたの目標は何?って。具体的、現実的なことをまだ考えられないぐらいの過去、私は口癖のように言っていたらしい。

 

 

一番のサッカー選手になるって

 

 

 

「日宮、美奈…」

 

美奈「そうよ」

 

リボンの色から上級生だと分かった。

だが今は1人のサッカー選手として目の前の少女に向き合うことにした。

経緯がどうであれ、サッカーをやろうとしている人間の芽を摘むところを黙って見ているわけにはいかない。

 

私は金髪の先輩の前に立つ。

相手は1歩も引かない。私だって引く気は無い

 

 

「どこかで聞いた名ですね。それより…先程の言葉、どういう意味ですか?」

 

美奈「証明?」

 

サッカーのレベルが低いと言われたら、やることは1つだろう。

もう誰が止めようとしても無駄。サッカーという言葉に血が反応して、体中が騒ぎ出すこの感じ…あぁ、やっぱり私はサッカーはやめられないや―――

 

 

「ちょっと〜?サエちゃん、気持ちは分かるけどやりすぎよ??」

 

「「「!!!!」」」

 

私が口を開こうとした時、金髪の先輩の横から現れたのは赤い髪の大人びた先輩だった。

誰だか知らないがサエと呼ばれた先輩を止めている…?これはもしかして証明しなくても状況終了するパターン??

 

 

弥生「せ、生徒会長…」

 

美奈「え?」

 

弥生「忘れたのですか!?昨日、入学式で生徒代表挨拶を担当した生徒会長 牧上姫佳先輩ですよ!!」

 

美奈「そ、そうだったね…はは」

 

まずいわね…入学式はサッカー部が無いショックでほとんどの時間放心状態だったわ、

 

 

姫佳「ごめんなさいね?この子は生徒会副会長の小原サエちゃん。確かに部活は5人以上で申請できるから私が処理しておくわね」

 

サエ「……」

 

雛「え、あ、ありがとうございます」

 

光穂「ありがとうございます!」

 

とまあ、こんな感じで雰囲気も行動も大人な生徒会長が丸く収めて終了―――と、思ったんだけど、

 

 

サエ「…日宮美奈」

 

美奈「ほえ?」

 

サエ「あなたの実力。私に見せてください」

 

「「「!!??」」」

 

姫佳「あら〜」

 

薄々とは察していましたが…副会長。売られた喧嘩、私は買いますよ。

地位や上下関係ではこの人には絶対に敵わない。生徒会長でも止められないだろう…

ならば私の実力をその金色に輝く目に刻み込む。そして自分にも言い聞かせる。

覚悟を、決める。

 

 

私はサッカーを本気で続けると

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

「ちょっと真恋ちゃん!校庭で面白いこと起きてるよ!」

 

音ノ木坂学院2学年の教室。

黒髪の少女は子供のようにはしゃぎながら同じく2年生、月城真恋の元へ。

対する机の主は山積みの教科書を退けて話迫る少女を睨む

 

 

真恋「…ちょっと夜。私勉強忙しいんだけど、」

 

夜「ええ〜?見なきゃ損だと思うなぁ。だって新入生VS副会長のサッカー対決だよ?」

 

真恋「……サッカー?」

 

彼女の会話では机おろか、ノートからも目を離さなかった少女であるが、サッカーという言葉を聞いた瞬間。

夜と呼ぶ少女よりも先に教室のベランダへと飛び出していた。

 

確かに、グラウンドには金髪の生徒会副会長。そして小柄なオレンジ色の髪の少女が向かい合うようにして立っていた

 

 

真恋「…ぬぁにやってんのよ、」

 

 

 

 

 

美奈、サエ「「……」」

 

勢いに任せてグラウンドに来てみたのはいいけど…なんか人が集まってきてる気がする。

見せ物のつもりは無いけど、サッカー部の始動…そして宣伝にはもってこいじゃないかしら?

 

 

姫佳「日宮さ〜ん。サエちゃんは一応、サッカー経験者だから気をつけてね〜?」

 

雛「…副会長がサッカーを、」

 

弥生「確かに、覇気がありますね」

 

何となくだけど、副会長がスポーツ経験者だということは感じ取っていたわ。

それがサッカーだとは思わなかったけど、なら尚更教えたくなるわね…私のサッカーを

 

 

サエ「あなたのポジションは?」

 

美奈「FW、センターフォワード」

 

サエ「…なら私にシュートを「あ、撃ってきてください」

 

サエ「??」

 

美奈「私にシュートを撃ってきてください」

 

 

 

弥生「何故…?FWの実力を証明するのならシュートを撃つのが一番…」

 

乃々子「美奈ちゃんの実力は…ちょっと型破りなんです」

 

光穂「型破り…?」

 

 

 

私はゴールの前。ペナルティキックを蹴る位置でシュートを待つ。

FWならシュートを撃てばいいじゃない、シュートブロック?何故DFの仕事を??

私はそんな常識だけのサッカーは好きじゃないの。ほら、早く撃ってきてくださいよ。副会長さん

 

 

サエ「…」

 

副会長はボールを足で触り始める。

それと同時にザワザワとしていたグラウンドは静寂へと変わり、緊張感が変わって支配し始めた。

高坂さんたちも静かに見守ってくれている。大量の視線はちょっと気になるけど、大会に出ればこの比じゃないからね。

今は集中モードに切り替えて、自分のこれからの動きをイメージする。

そんなことを考えていた時だった

 

 

サエ「…!!」ギロッ

 

 

目付きが変わった。来る

 

 

サエ「っっ!!」バッ

 

副会長は宙へ。

オーバーヘッドのように頭を下へ、足を上に。見てわかるわ…磨き上げられている。

そのままボールを両足で挟みながら回転させてオーラを込め続ける。

放たれるのは恐らく地面に着地した時。仕掛けるのは…その時よ

 

 

 

サエ「【バイシクルソード】」

 

 

瞬間。オーラは剣状に変化。

真っ直ぐに私へと放たれた

 

 

夜「あのスピードとパワー…やばくない?」

 

真恋「…避けないと危ないわ」

 

 

弥生「…!?あの威力のシュートは!!」

 

光穂「日宮さん危ない!!!」

 

 

美奈「……」

 

美奈には当然、警告する声は届いていた。

だがそれでも避けようとしない彼女は…

 

 

美奈「!!」バッ

 

足を振り上げ、迫る剣が自分の射程範囲内に入るのを待つ。はたから見れば異常。

無謀な足掻きにしか見えないその動き―――

 

 

―――ドゴッッッ!!!!!!

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

鈍い破裂音が空気を殴り、反響し、響き渡る

 

 

 

美奈「…!!」メキメキ!!

 

 

光穂「このままじゃ…日宮さんの足が…!!」

 

弥生「手遅れになる前に止めますよ!」

 

乃々子「大丈夫です」

 

弥生「…しかし!!」

 

乃々子「美奈ちゃんは…すごいんです」

 

 

日宮美奈。彼女には特異と呼ばれる才がある。

筋肉は強靭なバネのように伸び、しなやかにうねる。骨は鉄のように固く、下手な衝撃では傷つかない

 

 

美奈「…ぐぬぬぬっっ!!!!」メキメキ!!

 

サエ「………まさか、蹴り返す」

 

それにより普通の人間以上のパフォーマンスが生まれる。小柄な外見からは想像もつかない、巨大で底知れぬパワー。

大胆不敵、予想もつかないようなプレー。

日宮美奈はそれらを全て可能にする

 

 

美奈「【ランス・オブ・カウンター】!!」

 

 

―――ドガアァァァン!!!!!!

 

 

サエ「―――!!!!」

 

光穂、弥生、雛「「「!!!!!!」」」

 

夜、真恋「「!!!!」」

 

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

 

サエ「」

 

小原サエの横をボールが通過し数秒後、真反対のゴールネットが揺れる音が響いた。

誰もが目を疑い、そしてその場で固まる

 

 

夜「…あのシュートを打ち返すなんてね」

 

真恋「何者なの?あの子、」

 

 

 

美奈「これが、私のサッカーです」シュウゥゥ…

 

サエ「…めちゃくちゃね」

 

日宮美奈の先程のカウンターシュート。

あれはシュート専用のカウンター技であり、それ以外にも妨害技のカウンター、物理系・接触系のカウンターも使いこなす

 

 

美奈「不可能も私なら跳ね返せます。いや、私たちならね」

 

サエ「…あなたの実力はよく分かりました」

 

そう言うと副会長がグラウンドから撤退していく。これでサッカー部は認められたも同然。あとは…

 

 

美奈「副会長!一緒にサッカーやりませんか!?」

 

サエ「……」

 

あのレベルのシュートを簡単に撃ってくる選手をこのまま逃す訳にはいかないでしょ?

それに試合するにはまだメンバーが足りない。なら尚更よ!これで戦力がさらに「お断りです」

 

美奈「…ゑ?」

 

 

雛「あっさり…」

 

乃々子「フラれたわね…」

 

 

落ち着いた態度で断って、何事も無かったかのように去っていく…なるほど。なるほどね。私も一応スポーツ選手だし?

副会長の本心がこれでもかっていうぐらい読めるわ。そう、

 

 

美奈「悔しいんじゃないですか?」

 

サエ「」ピクッ

 

美奈「いや〜、私だったら自分のシュートを打ち返されたらすごい頭にきますけど…副会長、ですよね?ははは、」

 

サエ「…わよ」

 

美奈「…ほえ?」

 

サエ「私が負けるわけないでしょ!?」

 

美奈「!?!?」

 

 

夜「あちゃー…」

 

真恋「…アホなの?」

 

 

サエ「1発打ち返したからって調子に乗らないでください!!私ならもっと強力なシュートだって撃てマス!センターフォワードなら私の方が最適デス!!」

 

サエ「必ず…あなたのカウンターを破りますからね」

 

美奈「…ぇ、あ、はい」

 

 

今のは…サッカー部に入るの?入らないの?

めちゃくちゃ悔しがってんじゃん……

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

美奈「…ってことなんだよ」

 

鈴香「それ、美奈が絶対に悪いよ」

 

現在放課後、私は寄り道して鈴香ちゃんのお家へ。要するにラーメンを食べに来ています。

「雷雷軒」という名のラーメン屋で、中学生の時に鈴香ちゃんと仲良くなってからよく行くようになったわ

 

 

美奈「上手くいくと思ったんだけどなぁ…」

 

鈴香「ま、そんな調子じゃ副会長勧誘は夢の話ね」

 

美奈「それどういう意味よ…」

 

鈴香「はい!味噌ラーメンお待ち!」

 

タイミング良くラーメン登場。

なんか上手く話を逸らされた気がしたけど、今はとりあえずこのラーメンを頂くことにする。

あ、ちなみにこのラーメンは昨日の鈴香ちゃんとの勝負の報酬だからお代は無し!最高!!

 

 

美奈「味も最高ね〜」

 

鈴香「ちょっと、"も"ってどういう意味よ…」

 

「また何かやらかしたのか。美奈」

 

厨房の奥からこのお店の店長であり、鈴香ちゃんのお爺さんである響木さんが姿を見せた。

ちょっと心外だなと思いながらも今日起きたことを全て説明した。そして返ってきた言葉は…

 

 

響木「それは美奈が悪いな」

 

鈴香「ほらー!」

 

美奈「まじかぁ…」

 

先輩相手にちょっと生意気過ぎたかな…そういえば副会長のリボンの色、確か2年生の色だったような…2年生で生徒会副会長??

まぁ、そんなことは置いといて。2年生であのキック力を持つなら…やっぱり必要な選手だよ

 

 

響木「…そんなに強力なシュートだったのか?」

 

美奈「みんなには…言わなかったんだけど、」

 

副会長のシュートを蹴り返した時。私は久しぶりに"痛み"を感じていた。

人よりも筋肉や骨が強靭である私の体。中学時代では蹴り返したほとんどのシュートに手応えを感じることは無かった。しかし、副会長のシュートは違った。

数メートル後ろへ下げられ、足もビリビリ来るようなパワーを感じ、長い時間足にその感覚が残っていた

 

 

響木「…美奈のカウンターに抗うストライカーか」

 

鈴香「そんな人が音ノ木坂にいたんかぁ…」

 

美奈「ビリビリ来たよ。あのシュート。絶対に私たちの力になってくれる!」

 

今日は「波の屋」の定休日だったから寄り道出来たけど、あまり長居するわけにも行かない。

話すこと話したし、食べるものも食べた!

私は帰宅するために席を立つ

 

 

美奈「あ、そうだ鈴香ちゃん!」

 

鈴香「ん?」

 

美奈「サッカー部に入ってよ!部も出来たしさ、鈴香ちゃんも絶対に必要だよ!」

 

鈴香「あーね、」

 

美奈「うんうん!」

 

鈴香「ごめん。無理」

 

美奈「……」

 

鈴香「……」

 

美奈「……」

 

 

美奈「ゑ?」

 

 

 




バイシクルソード
イナズマイレブンGOギャラクシーでの剣城京介のシュート技です。デスソードの進化技のようでカッコイイですね。輝こうでは小原サエさんの必殺技になっています

ランス・オブ・カウンター
日宮美奈さんのオリジナル技です。美奈さんはカウンター系の技を得意としていて、シュートカウンターはその1つのようです。他にも別タイプのカウンター技があるので、楽しみにしていただけたら


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第3章 132話 「過去編 "メンバーを知ろう!"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
短いですが過去編なんで許してください。




 

 

 

 

 

鈴香ちゃんにも勧誘を断られた次の日。

生徒会長の言った通り、音ノ木坂学院にサッカー部が誕生した。

結局、副会長をもう一度勧誘したがものすごい剣幕で断られ、部員は変わらず5人

 

 

乃々子「鈴香ちゃん、なんでサッカーをやりたくないって…」

 

美奈「うーん、本当に飽きたのかな」

 

入学式の日に勧誘した時は、陸上でもバスケでもいいと言っていた。

楽しいスポーツなら…確かに鈴香ちゃんはなんでもいいのかもしれない。でも、それでも

 

 

美奈「必要だよ。全国制覇するためにもあのドリブルが」

 

乃々子「あんまりしつこ過ぎると嫌われるからね?」

 

とりあえず。今日から練習が始まる訳だが、部員5ということもあり。

音ノ木坂学院の校庭を使うことは出来ない。ならどこで練習するのか?簡単な話よ

 

 

光穂「やっぱりここだよね!」

 

雛「5人で使うにはちょっと贅沢だね」

 

河川敷のグラウンド。

この街の周辺でサッカーをやっている人なら1度は使ったことがあるであろう場所。

部活申請を練習場所確保で悩まずに即決できたのはここが使えると思ったから。

 

川、空がオレンジに染まってまるで絵画のような世界になっている、けど私たちはその絵にみとれている時間はない

 

 

光穂「ではでは!自己紹介は前に済ませたから今日はポジションや特技の紹介だね!」

 

乃々子「練習の前にお互いの理解ですね」

 

 

高坂光穂。

音ノ木坂学院の近くに店を構える「ほむら」の看板娘。美奈たちとは別の中学校出身でポジションはGK。

仲間を鼓舞し、指揮する力はトップクラス…そして実力も―――

 

 

光穂「【絶ゴットハンド】!!」ドォン!!

 

美奈、乃々子「「!!」」

 

美奈「完璧に鍛えてあるわね」

 

光穂「必殺技にはちょっと自信があるんだ!」

 

 

園田弥生。

日舞や弓道で古い歴史を持つ園田家の娘。

冷静な判断力とメンバーを気遣う優しい性格でチームを支える。

実力も高く、スピードのある動きで攻撃と守備を両方こなす

 

 

弥生「中学校の時はDFでプレーしていました。皆さんの状況に応じて私がポジションを変えますのでよろしくお願いします」

 

美奈「すごい…オールラウンダーだよ、」

 

 

乙坂雛。

音ノ木坂学院理事長の娘で光穂と弥生とは幼馴染。

高校1年にして大人の雰囲気を持つ彼女は生徒会長さんのようなオーラを放っている。

DFの能力が恐ろしいほど高く、競り合い・ポジショニング・ブロック・カットなどプロフェッショナルの域に達している

 

 

美奈「高坂さんたちの学校には…確か負けた気がするわ」

 

乃々子「守りが固くて美奈ちゃんの攻撃も封じられてたもんね」

 

光穂「試合したこと私も忘れてたけど、昨日のカウンターシュートで思い出したよ」

 

 

梨本乃々子。

美奈の幼馴染。音楽関連でとある才能を持つ。

その才能を巧みに使い翻弄・幻惑系の必殺技を得意としている。そのためポジションはMF

 

 

日宮美奈。

カウンターを中心にプレーする珍しいタイプの選手。シュートだけでなく、特定のドリブル・ディフェンス技や物理攻撃もカウンターで反撃することが出来る。

生まれつき筋肉や骨が人並み以上に発達しており、柔軟性や強度でずば抜けている

 

 

弥生「日宮さん…試合をした時以外で聞いたことがある名だとは思いましたが、もしかして―――

 

 

 

「ジュニアユースのメンバーだよ」

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

5人とはまた違う声。

歩道となる堤防の上で夕陽に照らされている少女がいた。

こちらへと近づきながら話しかけてきた少女の姿がはっきりすると…その服装は見覚えのあるものだった

 

 

乃々子「音ノ木坂学院の、制服」

 

弥生「先輩ですね…」

 

先輩という事もあり、緊張感が自然と高まる。しかし相手側は一切の迷いもなく歩を進めてくる

 

 

「日宮美奈、ジュニアユース第1地区メンバーで全ての攻撃を弾き返すことから"カウンターマスター"と呼ばれた選手」

 

美奈「…こんなことを知っているのは、あなたしかいないわよね。夜」

 

夜「久しぶりだね〜。まさか美奈が音ノ木坂学院に来るなんて」

 

音ノ木坂学院の生徒の正体は美奈のジュニアユース時代を知る三船夜であった。

理由は当然、夜も美奈と同じジュニアユースのメンバーだったから。そして、弥生たちの記憶にも微かに残っていたのは"カウンターマスター"の噂が当時流れてきたから。しかし、

 

 

夜「プロたちからも注目されて…ジュニアユース代表も見えてきた時。美奈はチームから消えた」

 

光穂「え…なんで!?」

 

美奈「…その頃からお母さんの体調が悪くなっちゃてね、」

 

美奈の家の事情は光穂たちも聞いていた。

美奈がジュニアユース、プロサッカーへの夢を捨てたのが早かったため、美奈の名前が広くひろがることは無かったのだった。

しかし、美奈がこうして再びサッカーを始め、全国制覇を宣言したことで分かることがある

 

 

夜「美奈はユースの力無しでプロを目指してる」

 

美奈「……」

 

夜「ほかのメンバーの能力も見させてもらったけど…君たちもただもんじゃないね」

 

美奈のカウンターを抑える鉄壁。3人いるが、全員がそれぞれ飛び抜けた能力を持っている。

乃々子は"ある才能"からメンバーからも一目置かれる存在となっていた。何故、これ程の選手たちがジュニアユースにいなかったのか

 

 

夜「まぁ…あのチームのスカウトマンはちょっと見る目がなかったからね、しょうがないか」

 

美奈「…昔話をしに来たわけじゃないでしょ?」

 

わざわざ美奈の過去を話すためだけに自分たちを探し出したわけではないことは当然。

しかし、本題がこれ以上にシンプルだということに、逆に驚かされることになる

 

 

夜「私もサッカー部に入れてよ」

 

美奈「…!」

 

「「「!!!!」」」

 

夜「美奈の昨日のカウンターシュート見たらさ、なんかうずうずしてきちゃって!サッカーは中学までって決めてたけど、もう少し頑張ってみたいなって」

 

光穂「…だ、大歓迎だよ!!!」

 

 

早くも。音ノ木坂学院サッカー部に新メンバーが追加されることとなった。

 

三船夜。

音ノ木坂学院2年生で、美奈と同じジュニアユースの経験を持つストライカー。

個の能力のバランスが良いのが特徴で、コントロールなどのテクニックで差をつける。

ウイングフォワードやトップ下など、センターのサポートにも長けたプレーを見せる

 

 

夜「…でも1つ。条件いいかな?」

 

雛「条件??」

 

夜「…スカウトしてほしい生徒がいるんだ」

 

美奈「夜がスカウトしてほしいなんて…そんなプレイヤーが音ノ木坂学院にいるの?」

 

夜「美奈も名前を聞けば分かるよ」

 

 

かつて。そのずば抜けたサッカーIQで"天才ゲームメーカー"と呼ばれた少女。

相手チームの動きを把握し、仲間をも把握し、試合の主導権を全て我がものとする

 

 

美奈「…まさか、」

 

夜「月城真恋。ガリ勉人間に落ちた彼女を、また天才ゲームメーカーに戻して欲しいんだ」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

弥生(……ガリ勉は…いいのでは?)

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

校舎は昼間とはまるで別世界のように静か。

外から微かに聞こえる部活動に励む選手の掛け声。そして扉を開く音

 

 

真恋「……」

 

放課後、図書室で自習に取り組むのが月城真恋の日課。

彼女の学校生活のほとんどは勉強。勉強で始まり勉強で終わる。そんな生活を始めて1年が経過しようとしていた

 

 

サエ「……」

 

真恋「……」

 

廊下をすれ違う2人。

今、この空間には2人しかない。その条件が合う時のみ、真恋は口を開く

 

 

真恋「何のつもりなの?」

 

サエ「……」

 

真恋「あんた、サッカーはもうやらないって言わなかったかしら?」

 

サエ「……あなたには関係ありません」

 

真恋「……」

 

会話は数秒だった。しかしこの数秒でも、真恋の気分は大きく変化していた

 

 

真恋「いまさら…なんなのよ、」

 

 

足早に下駄箱へと向かう。

早くこの空間から逃げ出したかった

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

ー 波の屋 ー

 

 

今日はお客が少ない波の屋。

美奈1人でも十分切り盛りできたため、乃々子をカウンターに座らせて厨房で手を動かす

 

 

美奈「うーん……真恋さんかぁ、」

 

乃々子「月城先輩もジュニアユースで?」

 

美奈「うん。チームの中でもかなりずば抜けてたんだよね。何よりも頭がいいの」

 

 

「美奈ちゃん!ご飯山盛りおかわりお願い!」

 

美奈「はーい」

 

美奈「サッカーへの熱意も人一倍だったからプロ行くと思ったんだけどなぁ…」

 

 

「美奈ちゃん!もう一杯おかわりお願い!」

 

美奈「はいはい」

 

美奈「真恋さんが1年の時…何かあったのかな」

 

乃々子「それしかないと思うな」

 

美奈「だよねぇ…」

 

 

「美奈ちゃん!おかわりおねg「ちょっと!?食べるの早すぎじゃない!?優花!!!!」

 

優花「え?」

 

美奈「え?じゃないわよ!!数秒でおかわりお願いとかどんな食い方してんの!?」

 

人を超えた速度でご飯を貪る少女…小町優花。私、そしてのんちゃんの昔からの友達でもあります。

まぁ、見ての通り。ご飯を食うのがホントに速い。わんこそばの次元じゃない。

優花ちゃんのお腹のすき具合によっては店の米全て消えるからね?

うち、定食とかも出してるから米が無くなるのはマジで営業にならないよ

 

 

乃々子「優花ちゃん、そんなに食べたら…」

 

ありがとう…我が親友のんちゃん。

うちの在庫という意味でも、優花の摂取カロリー的な意味でも…

 

 

優花「そうだね…前みたいにならないようにしないとね。あとは家のご飯を食べますね!」

 

美奈、乃々子「「」」

 

まぁね?みんな違ってみんないいのよ?

でもこの胃袋の違いはさすがに異常すぎない??

 

 

優花「あ!帰りに乃々子ちゃん家のお弁当買っていきますね!」

 

乃々子「……あ、はい。ありがとう、ございました」

 

のんちゃん完全に引いてるじゃん…

一番不思議なのはこんなに食べても優花ちゃんのお腹に変化がないことなんだよね。

あれだけの米がどこに収まり、いったいどこへと消えていくのか……

 

 

優花「そう言えば美奈ちゃん、サッカー部始動したんだね!」

 

美奈「急に話が戻っ…うん。まだ6人だけどね」

 

優花「私も入部していい?」

 

美奈「………」

 

乃々子「………?」

 

美奈「………」

 

優花「………?」

 

 

美奈、乃々子、優花「「「???」」」

 

 

 

 





着々とメンバーが集まってますね。

初公開のキャラが誰の親なのか、関係者なのか…



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第3章 133話 「過去編 "消えかけた熱"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
後書きに過去編の登場人物をまとめてます




 

 

 

 

美奈「優花が…サッカー??」

 

あまりの衝撃に包丁落としそうになったわ。

何故かって…優花はスポーツを今まで1度もやったことがないからだ。

運動会のかけっこではビリ候補だし、マラソン大会では死んだ目になることは当然。

これらを知っているからこそ、私とのんちゃんは驚きを隠せなかったのだ

 

 

優花「あ、も、もちろん私はサッカーをするためじゃなくて…マネージャーとして入部したいなって…」

 

美奈、乃々子「「……」」

 

ですよねー。はい。分かってました。

あんなこと言ったけど私は優花がマネージャー志望だということは把握してました!

一応、入部理由を聞いてみることにする

 

 

優花「私…美奈ちゃんや乃々子ちゃんとは仲良くしてもらってるけど…いつも2人がサッカーをするところを見ていることしか出来なくて、」

 

優花「だから、サッカーが出来ない私でも2人の力になれたらって!!」

 

乃々子「優花ちゃん…」

 

優花はとても優しい子だ。

毎日のように私たちの練習を見に来て、応援して、支えてくれた。

それだけでも大きな力になったが、優花本人は足りないという思いから私たちのサポートを志願したのだ。

断る理由などあるはずが無かった

 

 

美奈「ありがとう優花!きっとみんな歓迎してくれるよ」

 

優花「うん!」

 

 

選手部員6人、マネージャー1人となった音ノ木坂学院サッカー部。

全国大会に出場するには最低9人。残り3人が必要である

 

 

美奈「候補も…ちょうど3人」

 

乃々子「3人とも、勧誘は厳しいわよ?」

 

理由は分からないがサッカー部入部を拒否した響木鈴香。

ガリ勉人間へと落ちた知将、月城真恋。

なんか当たりの厳しい生徒会副会長、小原サエ。

ほかに部員を探そうとしても、このレベル以上の選手は見つからないだろう

 

 

優花「何故、音ノ木坂学院にはこうも実力者が揃っているのかな…」

 

美奈「うーん、運命とか?」

 

乃々子「そんな大袈裟な、」

 

 

 

 

―――

 

 

 

翌日、生徒会室

 

 

美奈「ということで副会長!!サッカー部に入ってください!!」

 

サエ「…何度言わせれば分かってくれるのですか?」

 

迷っていても始まらないということで。当たって砕けろ精神で生徒会室に特攻した美奈。

相変わらず小原サエは睨み続けるだけ。

しかし、それで引き下がる美奈でもない

 

 

姫佳「サエちゃん、入部してあげればいいのに〜」

 

美奈「ですよね!生徒会長!」

 

サエ「……」

 

生徒会長も味方についたのならば勝ちは目の前。証拠に小原サエが考えるように静かになっている。

おそらく心の中で気持ちの葛藤があるのだろう。ここは私が背中を押すべきだと判断する美奈

 

 

美奈「私たちと…日本一になりましょう!!」

 

サエ「…!!」

 

 

 

『お前にそこまでの才能はない』

 

 

 

 

 

サエ「……やめなさい」

 

美奈「…副会長?」

 

サエ「私に二度と話しかけないでください」ギロッ

 

美奈がその言葉に反応するよりも先に、小原サエは生徒会室から出ていってしまった

 

 

美奈「……」

 

姫佳「あらあら」

 

どうやら、先程の自分の言葉に原因があるらしい。また余計な事を言ったのかと振り返ってみたが、普通ならばただの勧誘言葉になるはず。つまり、

 

 

美奈「前に…何かあったわね」

 

姫佳「聞きたい?」

 

美奈「…!!」

 

姫佳「私もサエちゃんにはサッカーをやっててもらいたいの」

 

この部屋には私と生徒会長、2人しかいない。この時を待っていたと言わんばかりに生徒会長が口を開き、私はあれほどまでにサッカーを拒絶する副会長の過去が気になって仕方なかった

 

 

姫佳「1年前ね…彼女が入学して来て、あの頃は別人のようだったわ」

 

 

 

 

 

 

サエ『チャオ〜。サッカー部の部室ってどこにありますか?』

 

姫佳『…音ノ木坂学院にサッカー部は無いわよ?』

 

サエ『!?』

 

初対面…最初からフレンドリーな子って言うのかしら。

あなたみたいにサッカー部を探して、無いって言えばすぐに設立のために動いた。

その行動力を見て、その後に私が生徒会に誘うんだけどね?

 

 

そこで私と同じく、彼女の魅力に惹かれたのが月城真恋ちゃんよ

 

 

真恋『乗ったわ』

 

サエ『??』

 

真恋『あなた面白いわね。私ももう一度サッカー、始めてみようかしら』

 

月城真恋ちゃんはほかの学校からも名が知られているサッカー選手だったの。

でも、家庭の事情からサッカーはやめてたんだけど…やっぱり血が騒いじゃったのね。サエちゃんと共に部員集めを始めたわ

 

 

夜『私、高校ではサッカーは…』

 

三船夜ちゃんもそうだったわ。

彼女は最初からサッカーは中学までって決めてたみたい。

でも元々チームメイトだった真恋ちゃんがもう一度って言うのを聞いて気が変わったみたい。

 

この3人が校門前で部活勧誘をしていたのは、生徒会室からよく見えたわ。

 

でも、あなたたちのように勧誘は簡単じゃなかったみたい

 

 

夜『うーん…全然いないね』

 

真恋『当然と言えば当然よ』

 

校門前で勧誘を始めて1週間。

元々、音ノ木坂学院にはサッカー部が無いのだからサッカーがしたい高校生が進学する可能性はほとんど無かったわ。

変わらずメンバーは3人。今よりも状況は厳しく…さらに追い討ちをかけたのが、

 

 

サエ『サッカーを…やめろ?』

 

サエ父『サエ。お前を音ノ木坂学院に入学させた理由…分かっているな?』

 

サエ『……』

 

サエ父『お前は小原グループの次期社長。そして結婚すれば社長は旦那に代わるが、それでもお前は社長と同じ地位に立つ』

 

サエ父『社長として従う部下たちのことを理解するために、お前を普通の高校に入学させたんだ』

 

サエ父『だが、お前の今の生活はどうだ?サッカー部を作るために遅くまで勧誘行動、勉強の時間を割いてまで練習をしているではないか』

 

サエ『でも…パパは高校を卒業するまでって、』

 

サエ父『それは学力を維持出来たらの話だ。知っているんだ。お前の成績がすでに落ち始めているのを』

 

サエ『…でも、まだ!!』

 

サエ父『入学してすぐだから持ち直すことは難しくないだろう。だがな、今のお前にとってサッカーは不安要素でしかないんだよ』

 

サエ『…!!』

 

サエ父『例え部を作っても大会はそんなに甘くない。前に言ってたな、全国大会優勝すると…悪いが、』

 

サエ父『サッカーにおいて、お前にそこまでの才能はない』

 

 

 

その言葉が響いたのね。サエちゃんはサッカーを諦めることにしたの。

私たちから見れば酷い父親だと思うかもしれない。でもサエちゃんの将来を考えて、わざと厳しい言葉を使ったんだと思うわ。

 

それから…2人はサエちゃんを何とか説得しようと頑張った。

でもすでにサエちゃんのサッカーへの想いは消えかけていた…それが伝染するかのように、2人のサッカーへの熱を奪っていったのよ

 

 

 

 

美奈「……なんで、生徒会長は知ってたんですか?」

 

姫佳「真恋ちゃんから聞いたのよ。笑い話にしてくれって。それに、ここの窓からもよく分かったしね」

 

美奈「…笑い話で終わらせちゃダメですよ」

 

副会長は自分の大好きなサッカーを諦めたんだ。現実を突きつけられて…諦めざるを得なかったんだ。

でも、それで終わらせるなんて絶対に間違ってる。副会長は…正しい選択をしたとしてもこの先絶対に笑うことが出来ない

 

 

美奈「私…副会長を何とか」

 

姫佳「待って。今の話の流れだと先に勧誘すべき人がいるわ」

 

姫佳「月城真恋ちゃんよ。あの子がいなきゃ、サエちゃんは再び振り返ることはないわよ」

 

美奈「…は、はい!ありがとうございます!」

 

美奈はお辞儀をするとすぐに生徒会室から飛び出して行った。真恋の居場所を教えるのを忘れてしまったが彼女のことだ。すぐに見つけるだろう

 

 

姫佳「また…この窓から見れるかしら」

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

真恋「やらないわよ」

 

月城先輩の居場所はすぐに分かった。

ガリ勉人間ということは選択肢がかなり絞られる。あとは手当り次第。

そして見つけたのが図書室だった

 

 

美奈「お願いします…私たちには、副会長には先輩の力が必要なんです!!」

 

真恋「…副会長って、なんでサエなの?」

 

悪いとは思ったが生徒会長から副会長の過去を聞いたことを月城先輩に説明した。

副会長を再びサッカーの世界に戻すためには私たちだけじゃなくて先輩たちの力も必要。

誰一人欠けても、音ノ木坂学院サッカー部は全国大会に出場することは許されない

 

 

真恋「…牧上先輩、やってくれたわね」

 

美奈「真恋さん…」

 

真恋「美奈には言ったでしょ?私の家は私がいないと厳しい生活なのよ。サッカーをやる時間は無いし、勉強して家族を楽させてあげないと」

 

美奈「それは、」

 

真恋「美奈。あなたの店も大丈夫なの?お母さん1人だけなんでしょ?」

 

美奈「…確かに、私もサッカーを続けることを迷った日がありました。でも、そんな時お母さんに言われたんです」

 

美奈「サッカーを、続けてほしいって」

 

真恋「……」

 

美奈「真恋さんが家族を想っているように、家族も真恋さんのことを想ってます。サッカーをする姿を見たいって」

 

美奈「……」

 

真恋「……美奈、あなたは分かってくれると思っていたわ」

 

美奈「…!!」

 

真恋さんが私の横を通り過ぎた。

このまま行かせればおそらく勧誘の希望は無くなる。今、この瞬間しかチャンスがない。

それと同時に私の口は開いていた

 

 

美奈「見に来てください!!」

 

真恋「……」

 

美奈「いつもの河川敷で練習してます!私たちの本気を真恋さんに伝えます!!絶対に…絶対に全国制覇します!!」

 

真恋「……」

 

廊下の中を響き渡る声。

嫌になるほど耳に刺さる。心に刺さる。

家族がそう思っていたとしても私が自分自身を許せないんだよ!!

真恋はまた逃げる。振り向きたい自分の意思から目を背くため。自分の気持ちを押し殺すため

 

 

美奈「……練習行くか」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

私の家は裕福では無い。

 

 

真恋「……」

 

父を早くに亡くし、母さんと頑張って家族を支えている。そんな中でも中学までサッカーをやらせてくれたのは本当に感謝しているし、迷惑かけたとも思っている

 

 

真恋「ただいま」

 

美奈の言ったことは理解はしている。

だが、家族がそう思っていたとしても私はサッカーよりも今の生活を選ぶ。

 

中学で燃え尽きたのだと思う。確かにサエに誘われた時は再び火がついたように感じたが、消えるのも早かった。

多分、昔ほどの熱意はなかったのだろう

 

 

真恋「母さんは今夜も遅いから私が夕飯作るからね」

 

サッカーへの興味が薄れかけている私が、無理に昔へと戻る必要はない。

勉学を積めば将来幸せになれるんだ。だったら気にすることなどない

 

 

真恋「……」

 

なのに、何故なのか

 

 

 

美奈『絶対に…絶対に全国制覇します!!』

 

 

 

何故、あの言葉が頭から離れないのか。

 

何故、美奈たちから逃げてしまうのか。

 

 

私は…本当はどうしたいのか?

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

真恋母「真恋?こんな時間に?」

 

真恋「ちょっとコンビニ」

 

夕飯を済ませ、母さんが帰宅し、家事が落ち着いたところで私は外出していた。

目的地は先程も言ったがコンビニ。美奈たちの練習は最初から行く気などなかった。すでに練習は終わっているだろう、

 

 

真恋「……」

 

夜中であってもこの街は賑やかだ。

街灯が無くても店や車の光で昼間のように照らされる。

そんな道を歩くこと数分。家から一番近いコンビニの前まで来た

 

 

真恋「……河川敷」

 

―――はずなのに。

自分でも今の行動は理解に苦しむ。

コンビニを通り過ぎ、向かうは真っ直ぐに河川敷。

とっくに練習は終わってるはずなのに、誰も残ってはいないはずなのに。

 

私の足は止まることなく美奈に言われた通り

 

 

美奈『いつもの河川敷で練習してます!私たちの本気を真恋さんに伝えます!!絶対に…絶対に全国制覇します!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

河川敷手前の土手を登りきった先には

 

 

 

 

 

 

光穂「日宮さんもう一本!!」

 

美奈「よおぉぉし!行くよ!!」

 

 

 

真恋「―――」

 

 

全員が練習を続けていた

 

 

真恋「夜の…9時よ?あいつら…」

 

その光景に真恋はただただ立ち尽くすしか無かった。一見、ただの無茶する集団。だが全員があの頃のようにボールを追いかけ、汗を流し、目を輝かせている

 

 

真恋「……」

 

その姿が失いかけていた炎を揺らす

 

 

真恋「…ホント、全員サッカー馬鹿しかいないのかしら」

 

サッカーはもう充分だと思っていた月城真恋。しかし、消えた火は何度もつけられてしまう。そう考えると笑ってしまう自分がいた。

そして、

 

 

弥生「ハァハァ…ここのタイミング…難しいですね」

 

夜「カバーを入れたいけどそうすると…」

 

 

 

真恋「ちがーーう!!!!」

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

美奈「真恋さん…!」

 

夜「…!!」

 

真恋「あんた名前は!?」

 

弥生「!?…そ、園田弥生です」

 

真恋「弥生が相手を外に追い出すDFをするの!!そこに夜と美奈が入ればいいでしょ!!」

 

美奈「た、確かに…」

 

真恋「あんたたち、私がいないとぬぁにも出来ないわね…私が来たからには厳しくいくからね!!」

 

「「「よろしくお願いします!!!」」」

 

 

 

ま、一番のサッカー馬鹿は私だと思うけどね

 

 

 

 

 

月城真恋がメンバーに加わり、音ノ木坂学院サッカー部は7人+マネージャー1人となった

 

 

鈴香「……」

 

 

サエ「………」

 

 

彼女たちの運命は確実に動き始めている

 

 





日宮美奈:千歌の母親。"カウンターマスター"と呼ばれた元ジュニアユース選手。

梨本乃々子:弁当屋の娘。音楽でとある才能あり。

高坂光穂:穂乃果の母親。

園田弥生:海未の母親。

乙坂雛:ことりの母親。

月城真恋:にこの母親。"天才ゲームメーカー"。元ジュニアユース

三船夜:月の母親。元ジュニアユース

小原サエ:鞠莉の母親。生徒会副会長

響木鈴香:美奈の中学からの友達。

小町優花:めっちゃ食べる子。

牧上姫佳:生徒会長。






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第3章 134話 「過去編 "一緒に走る"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
更新遅れて申し訳ないです…!それと今回のお話はめちゃくちゃショートカット回…先に言っておきますがめちゃくちゃショートカットします




 

 

 

 

 

 

響木「いつまで燻ってるつもりだ?」

 

いつものように店の手伝いをしている時に突然言われた

 

 

鈴香「何の話?」

 

響木「とぼけても無駄だぞ」

 

まるでお客さんがいなくなるのを待っていたかのように喋りだす。ムカつく。

分かっていることに限って大人は口を出すんだ

 

 

鈴香「言ったじゃん。私はもうサッカーは飽きたかな〜って、」

 

響木「ならばほかの部活に入らないのはどうしてだ?」

 

鈴香「……」

 

響木「美奈のことだ。すぐに仲間を増やしてチームを作る。お前も早くしないと置いていかれるぞ」

 

 

 

―――正直私はどうするべきなのか分からなくなっていた。

運動神経に恵まれ、スポーツで選択肢が無数にある中でサッカーを選んだきっかけは美奈。そして今、サッカーを続けることを躊躇っている理由も美奈。

 

友のせいにする自分は最低だと思う。でもこれしか理由が見つからない。これは、私が少し運動が出来るからといって調子に乗った罰なのかもしれない。

 

 

放課後。美奈たちサッカー部は足早に校舎を後にする

 

 

光穂「河川敷まで競走よ!!」

 

美奈「臨むところ!」

 

雛「荷物は持とうね♪」

 

練習場所が無いだけでは美奈たちは止められない。最初、美奈と乃々子のふたりだけだったのがじいちゃんの言った通り8人に増えていた

 

 

真恋「戻るの遅いわよー!!光穂は迷わず飛び出す!」

 

夜「スピードには感覚でついていけるようにね」

 

先輩が2人。聞くとどちらもジュニアユース選手だったらしい。美奈もメンバーだったのは初耳だった。

知将月城真恋先輩に万能ストライカー三船夜先輩。

中学生の時に試合をして勝てなかったチームの高坂光穂に園田弥生、乙坂雛。

 

どんどんどんどんじいちゃんの言う通り。

 

でも、すでに差は果てしないとは…言えるわけが無かった。

 

中学生の時、美奈と知り合いサッカーを始めた。最初はぐんぐん上達する自分に自信を持ち、このまま行けば…エースも夢じゃ、

 

 

美奈『"ランス・オブ・カウンター"!!』

 

鈴香『―――!』

 

そんな考えも、美奈の実力の前に砕け散った。私のセンス・練習・気持ちは全てカウンターで弾かれ、それを平然とやってのける美奈。

 

嫉妬、そして自分の無力さで震えたのは記憶に新しい。

 

 

 

 

そんなこんなで色々考えて、私は音ノ木坂学院サッカー部に必要な存在なのか。

例え必要だとしてもまた嫉妬で自分を見失うんじゃないかって…要するにビビってる。

 

 

美奈「こんにちはー!」ガラガラ!

 

鈴香「あれ?練習は?」

 

そして今日もまた美奈がやって来る

 

 

美奈「少し時間があるからラーメン食べに来たの。小腹空いちゃって」

 

鈴香「部活前に…?まぁ、いいわ。ラーメンはいつものね」

 

勧誘のために来店したのか、それとも普通にラーメンを食べに来たのか。

嫌な感情で作業はしたくない。それでも考えてしまう。

だから、思わず聞いてしまうんだ

 

 

鈴香「…今のサッカー楽しい?」

 

美奈「今の?楽しいよ!」

 

美奈「中学まではライバルだったメンバーとのサッカー。ユースの先輩たち、すごい充実してるよ!」

 

鈴香「……」

 

美奈「でも…」

 

 

美奈「やっぱり鈴香がいるサッカーが一番楽しいんだよなぁ、」

 

鈴香「………」

 

美奈「もちろん、戦力的な部分でも鈴香ちゃんはサッカー部に来て欲しいけど…それ以上に、楽しいんだよね」

 

美奈「入学式の日に一緒に走ったように、やんちゃするのでも真剣にやるのでも。鈴香ちゃんと何かをやるとどんなことでも全力になれるんだよね」

 

ラーメンをすすりながら話す美奈。

本心…なんだろう。本人は深い意味はなく言った言葉。それでも、私の心には強く突き刺さった

 

 

鈴香「あんたの目標は全国制覇なんでしょ?勝つためにも私と楽しむよりも…」

 

美奈「楽しくないサッカーはサッカーじゃないよ」

 

鈴香「…!!」

 

美奈「多分、全国制覇しても楽しい試合じゃなければ嬉しくないと思うなぁ。でも今はそれ以前の問題だけどね!メンバー足りないし」

 

美奈は立ち上がる。

荷物をまとめて代金を用意、このまますぐに練習へと向かうのだろう

 

 

美奈「じゃ、鈴香ちゃんも部活頑張ってねー!ごちそうさまでした!」ガラガラ!

 

鈴香「……」

 

一気に静かになった店内。

テレビの音が横から流れてくるだけ。それともうひとつ、自分の心臓の音だった

 

 

響木「最後のチャンスだ」

 

鈴香「…!!」

 

響木「美奈はもう、お前を勧誘することは無いだろう。練習も本格的になってくる」

 

鈴香「…じいちゃん、私…」

 

響木「道具は玄関にある。あとはお前の自由だ」

 

鈴香「……」

 

 

あれだけ、躊躇いを感じていたサッカーに。美奈の背中を―――追いかけるように。

私は玄関を飛び出していた

 

 

鈴香「ハァハァ…!!美奈っっ!!」

 

美奈には追いつけない。そして嫉妬から自分を見失う…私は、そもそも楽しむためにサッカーをやっていたのではなく、勝つために。実力のためだけにサッカーをしていた

 

 

鈴香「ハァハァ…ハァハァ!!」

 

でも美奈は―――まるで私と一緒に走っているかのように。私が追いつこうとしているのを横から応援するかのように、

 

 

 

鈴香「美奈っっ!!!!」

 

美奈「―――鈴香ちゃん??」

 

鈴香「練習っっ!!まぜて!!」

 

美奈「……!!」

 

 

私が実力的に低い高いなど、美奈にとっては二の次なんだろう。

でなければ、今、こんな笑顔にはなっていないはずだ

 

 

美奈「その言葉…待ってた」

 

鈴香「また楽しくやろうぜ。美奈」

 

 

 

 

響木鈴香 入部。現在選手8人

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

音ノ木坂学院サッカー部の練習は河川敷。しかし、月城真恋は校舎にいた

 

 

真恋「…」

 

サエ「いいご身分ですね」

 

サエ「私には咎めるような言い方をしたはずですが…あなたは再びサッカーを始めた」

 

真恋「私の勝手じゃないかしら?」

 

サエ「ええ。あなたの勝手です。ですが、何故2度も無謀な挑戦に協力するのですか?」

 

真恋「…私はね、ちょろいのよ。喧嘩売られればすぐに買うし、間違ったもの見つけると直したくなるし…熱いやつを見れば協力したくなる」

 

サエ「…」

 

真恋「あんたの時もそうよ。サエが本気でサッカーをやっていたから私も本気になった。逆に、」

 

真恋「サエが今でもサッカーを本気でやる気なら…私はなんでも協力するつもりよ。指導でも、父親の説得でもね」

 

サエ「……無理な話です」

 

真恋「本当にそれでいいの?」

 

サエ「……」

 

サエの背は小さくなっていく。

彼女の火は完全に消えてしまったのか?

それとも、自分と同じく葛藤の中をいるのか?

 

 

真恋「…こういう時に限って勉強は役に立たないんだから、」

 

 

 

 

小原サエの勧誘が上手くいかないまま、音ノ木坂学院サッカー部は選手8人、マネージャー1人で活動を続けた

 

 

美奈「今日は監督を連れてきましたー!」

 

「「「監督!?」」」

 

響木「よろしくな」

 

鈴香「じい、ちゃん……かよ」

 

中学の時から美奈は響木の指導をよく受けていた。今のカウンターの精度は響木の指導無しでは実現していなかっただろう

 

 

響木「とは言っても、お前たちに教えることは少ない。全員レベルが高いからな」

 

おかしいほどに少数精鋭な音ノ木坂学院サッカー部。県予選ならば今のままでも十分に突破できる力があるという。

 

そしてその言葉通りなることになる。時間は進み梅雨の季節を越え、夏休みも迫ってきたその日

 

 

 

ー全国高校女子サッカー大会東京都予選ー

 

 

美奈「とうとう始まったね…!!」

 

音ノ木坂学院はこの大会初出場だった。

出場するメンバーは総勢9人。小原サエが入部しないままこの日を迎えたチームの最後の一人はというと…

 

 

優花「…やっぱり無理だよ」

 

夜「大丈夫!パス、ドリブル、トラップ。基礎はこの3ヶ月で優花ちゃんにもマスターしてもらったから十分プレーできると思うよ」

 

真恋「とは言っても誰か1人でも欠ければそこで終わりと考えていいわ。無茶は禁物よ…特に美奈と鈴香!!」

 

美奈、鈴香「「はーい」」

 

東京都予選突破は難しくない。

この言葉を覚えているだろうか?優花を除く全員がその言葉を深く考えることなく、そして当然のように練習してきた。

しかし、対戦チームリストを見てこの言葉を言えるのは…おそらく両手で数える程である

 

 

第1試合 前回大会東京都予選ベスト8

『慈藻愛学園』

 

FW1「相手は今年初出場の学校らしい」

 

FW2「練習相手にはちょうどいいんじゃない?」

 

GK「ラッキーラッキー!楽しんでいこ!」

 

 

―――そして試合開始。

慈藻愛学園の選手たちは思った。情報が間違っていると

 

 

鈴香「美奈!」パス

 

GK「(あんなキラーパス、取れるわけ…)」

 

美奈「ぬうぅぅりゃあぁっっ!!」ドガァン!!

 

「「「!?!?!?」」」

 

―――バシュウゥゥン!!!!

ピピーッ!!

 

 

空中へと放たれた、シュートのようなボールをボレーシュートでゴールへと叩きつける。

そのスピードにDFとGKは反応できず、頬を掠めた選手はそのパワーに震えが止まらなくなった

 

 

MF1「な…なに、ものなの?」

 

FW1「レベルが…違いすぎる」

 

 

音ノ木坂学院 10-0 慈藻愛学園

 

 

 

 

 

 

第2試合 前回大会東京都予選ベスト8

『川獺高校』

 

DF「慈藻愛学園を10点差で降したっていう高校か…」

 

FW「センターフォワードの小柄な選手がヤバいらしいわ。その子を徹底的にマークよ」

 

 

 

 

夜、真恋「「遅い遅い!」」ビュンビュン!!

 

MF「「!?!?」」スカッ

 

DF「「!?!?」」スカッ

 

GK「ちょっと!?ほかの選手たちも強s―――バシュウゥゥン!!

 

ピピーッ!!

 

 

音ノ木坂学院 7-0 川獺高校

 

 

 

 

第3試合…第4試合…第5試合と勝ち進む音ノ木坂学院サッカー部。

試合数が増える度に噂は広がり、その分相手チームから警戒される。さすがにここまで勝ち進めば強豪校とも試合になる

 

 

『試合終了ー!!なんということでしょうか!?前回大会東京都予選準優勝の大蜜柑工業高校が3-0で敗北!!!!』

 

『決勝へと駒を進めたのは今大会から現れた最強のダークホース高校、音ノ木坂学院です!!』

 

 

美奈(なんだろう…頭痛が治まらないな)

 

 

ここまでは順調だった音ノ木坂学院。

しかし決勝の対戦相手は今までのようなヤワな相手では無かった

 

 

乃々子「うーん、去年よりも強くなってますよね?"帝国学園"」

 

弥生「連続本戦出場記録を持つ高校ですからね。今までよりも厳しい戦いになるでしょう」

 

美奈「……」

 

乃々子「美奈ちゃん大丈夫?顔色が…」

 

美奈「大丈夫…ちょっと頭痛がね」

 

真恋「もしも美奈の体調が優れないとなると…やっぱりあの子が必要よね」

 

美奈「…副会長」

 

小原サエを始めて勧誘してから3ヶ月が経とうとしていた。

その間に何度勧誘したかはもう数えてはいない。しかし、返ってくる返事は変わらずNO

 

 

光穂「私ここまでかなり暇だから強いのは大歓迎だけど」

 

雛「光穂ちゃん…」

 

 

 

そして、誰も気づくことは無い。

確実に何かが…美奈の体を蝕んでいることを

 

 

美奈(病院は…大切な時期だし後でいっか、)

 

 

運命のカウントダウンが止まることは無い

 

 





東京都予選をめちゃくちゃショートカットしましたが、いつか外伝みたいなので書きたいなと思ったのでカットしました。決勝と本戦はしっかりと書くのでよろしくお願いします。



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第3章 135話 「過去編 "止まらせない"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
キリよくしたら短めになりました。




 

 

 

 

 

 

 

日宮美奈の体に異変が現れ始めたのは予選の途中から。

 

 

 

 

 

 

美奈『【ランス・オブ・カウンター】っっ!!』ドガァン!!

 

最初はただの違和感だった。

激しい動きをしたあとに来る頭痛、その程度の痛みだった。それだけならば誰にでも起きる普通のこと。

 

頻繁に痛みが出るようになったことを除いて

 

 

 

弥生『日宮さん、あの…』

 

美奈『ハァハァ…どうしたの?』

 

弥生『必殺技の変化が気になって、』

 

そして目に見える違和感も。

試合を重ねるごとに美奈の必殺技が…少しずつ黒くなっていってる気がした。

最初は必殺技の進化だと思っていた。しかし、その黒みが増す度に今まで頼もしいと思っていた美奈が―――少しだけ怖く感じた。

 

 

 

そして東京都予選決勝前日。

明日の試合に備えて早めの解散となった音ノ木坂学院サッカー部。ほかの部の協力もあり、予選が始まったあたりから校舎のグラウンドは利用できるようになっていた

 

 

美奈「ハァハァ…っっ!!(おかしい…)」

 

日が沈みかけているグラウンド。

そこで美奈は1人、自分の体の違和感と不安をなぎ払おうとゴールにシュートを放ち続けていた

 

 

美奈「最初はあの日…かと思ったけど、サッカーしてる時だけに起きる頭痛なんて…」

 

疲労とも考えた。次の日によく休んだ。

それでも治まらない痛みに徐々に恐怖を覚え、今では完全なる不安要素。

練習にも集中しずらく、メンバーにも迷惑をかけた

 

 

美奈「もう少しで全国なんだ…私が始めて…みんなが信じてついてきてくれる…」ズキズキ

 

美奈「だから…私がこんなところで欠けるわけには…」ズキズキ

 

 

 

 

サエ「サッカー部の下校時間はすぎていマス」

 

美奈「!!」

 

サエ「いつまで練習しているつもりなんですか」

 

美奈「…副会長」

 

下校途中の副会長。

無理をして明日の試合に支障をきたさないためにも警告してくれたのだ

 

 

サエ「最近のあなたは様子がおかしい。そこまでの強さがありながら、何故無茶を?」

 

美奈「……」ズキズキ

 

頭痛の不安を忘れるため…と言ったら笑ってくれるだろうか。それともキツイ言葉で叱ってくるのだろうか。

どちらにしろ、この痛みと共に明日は戦うことになりそうだ

 

 

美奈「…熱中しすぎました。帰ります」

 

サエ「……」

 

副会長のサッカーへの壁は真恋さんでも崩すことが出来なかった。

しつこいぐらいに勧誘し、何度も怒られ、乙坂さんのお母さんでもある理事長にもほどほどにと注意を受けた。

 

それでも―――副会長が振り向くことは無く、事務的な会話以外、副会長が話しかけてくることは無かった。

そんな、副会長が尋ねてきた

 

 

サエ「例えあなたが強くても」

 

美奈「……」

 

サエ「ほかのメンバーがあなたについてこれなければ意味はない。それでも…あなたは今のままで全国大会優勝を目指すつもりなのですか?」

 

美奈「…私は、例えそうだとしても仲間を信じたい」

 

美奈「仲間の悩みも自分の悩みとして全力で何とかする…今の、このチームじゃなきゃ絶対にダメなんです!!」

 

荷物をまとめる美奈。

足早に立ち去ろうと足を動かすのと同時に一言

 

 

 

美奈「仲間のためなら何でもする覚悟です」

 

サエ「……!!」ゾクッッッ!!

 

 

 

サエは一瞬だけ、美奈の言葉と雰囲気に何かわからない不気味さを感じた。

そしてお互いどちらも心晴れることなく、

 

 

 

 

全国高校女子サッカー大会東京都予選決勝

『音ノ木坂学院VS帝国学園』

 

 

会場はアキバスタジアム。

休日ということもあり、注目の決勝ということもあり。会場は超満員。

音ノ木坂学院は当然、生徒総動員で応援に駆けつけていた。

 

 

―――とある2人を除いては

 

 

姫佳「いいの?会場に行かなくて」

 

サエ「…仕事があります」

 

姫佳「……」

 

生徒会長と副会長の仕事が無くなることはない。誰もいない校舎の一室で慣れた手つきで書類を捌いていく。

結局この子は振り向くことは無かったか、と姫佳はせめてものつもりで自分のスマホでラジオを流し始めた

 

 

サエ「生徒会室でそんな、」

 

姫佳「bgmよbgm〜」

 

サエ「……」

 

 

 

―――

 

 

 

『試合は両チーム譲らない攻防っっ!!』

 

 

光穂「でりゃあっ!!」バキッ!

 

雛「フォロー行きます!」

 

ここまで音ノ木坂学院は無失点で勝ち進んでいる。どんな強豪校、ストライカーでも鉄壁の防御を破ることは出来なかった。

GK高坂光穂とDF乙坂雛の防御率はこの大会でも群を抜いている

 

 

真恋「スペース潰さない!!」

 

弥生「私がカバーに」

 

乃々子「優花ちゃんは私についてきて」

 

そして中盤。オーバーラップで攻撃に参加するDFの園田弥生、そして司令塔 月城真恋、中継役の梨本乃々子。

優花のいる場所を集中的に攻めてくる帝国学園に対し、知将らは真っ向からぶつかり対処する

 

 

鈴香「パスパス!こっち!」

 

乃々子「鈴香ちゃん!」パス

 

 

『梨本からのキラーパス!!これはさすがの響木選手も―――

 

 

鈴香「なんのこれしきっっ」ギュン!!

 

鈴香「だあぁっっ!!」バシュッ!

 

 

『さらに加速しボールを蹴った!?シュートのつもりか!?』

 

 

夜、美奈「「―――!!」」バッ

 

 

『前方で三船選手と日宮選手が走っています!!まさかこれはパスなのか!?』

 

 

横へは出さず、縦へと貫くようなパスでボールを繋ぐ音ノ木坂学院サッカー部の強烈なカウンター。

それを可能にしているのはMFとFW選手のコントロールと呼応。

相手から見ればシュートチェインをしているよう。まさに、ブーストするパス

 

 

帝国MF1「あれが音ノ木坂の必殺タクティクス…"チェインカウンター"っっ!!」

 

帝国MF2「だめ…!!あのスピードは追いつけない!!」

 

 

夜「決めてっっ!!美奈!!」バシュッ!

 

美奈と共に飛び出した夜もタクティクスに加わった。あとはラスト1人、音ノ木坂のエースストライカーがゴールに叩き込むのみ

 

 

美奈「"リベンジカウンター"っっ!!」メキメキ!!

 

強力なパワーによりボールがメキメキと悲鳴を上げる。それでも美奈が技をやめる気配はない

 

 

美奈「!?!?!?」ズギッ!

 

美奈「ぐっ…でえぇぇりゃあぁっっ!!」バギィン!

 

 

『出たぁぁ!!日宮選手の"リベンジカウンター"!!これは決まったか!?』

 

 

美奈の体に蓄積したダメージ、疲労を全てパワーへと変換させる強力な必殺技。

相手が強くなればなるほどこのシュートの脅威度は跳ね上がる

 

 

帝国GK「フルパワー…だ、だめ…きゃ!?」

 

 

―――バシュウゥゥゥン!!!!

ピピーッ!!

 

 

『ゴール!!!!先制は音ノ木坂学院!!やはりエースが圧倒的なシュートで帝国ゴールをこじ開けたぁぁ!!』

 

 

美奈「ハァハァ…」

 

夜「ふぅ…美奈ナイス」

 

鈴香「やっぱ派手ね!美奈のシュートは」

 

美奈「……ハァハァ、」ズキズキ

 

夜「美奈?」

 

鈴香「?」

 

 

 

 

姫佳「1点決めたみたいね〜」

 

サエ「……」

 

 

 

 

美奈「…ハァハァ、」ズキズキ

 

 

 

 

サエ「…」

 

 

 

 

美奈「ハァ…ハァ」ズキズキ

 

 

 

 

 

サエ「…」

 

 

 

 

 

美奈「ハァ……」ズキズキ

 

 

美奈「……」ズキズキ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラジオから聞こえる声の雰囲気が変わったのが、すぐにわかった

 

 

 

『ああっと!?どうしたのでしょうか!?音ノ木坂学院のエースストライカー、日宮美奈選手が倒れ込んだ!!』

 

 

姫佳「―――!!」

 

サエ「!?」

 

 

 

乃々子「美奈ちゃん…美奈ちゃん!!」

 

美奈「ハァハァ…いだっ…いだだ…」ズキズキ

 

光穂「例の発作…」

 

弥生「やはり無理を…」

 

美奈の頭痛は限界をすでに越えていた。

頭を鈍器で殴られたような衝撃、割れたような痛み。その場で倒れ、ただただ呻くことしか出来なかった

 

 

サエ「…日宮、美奈」

 

姫佳「まずいわね。このままじゃ音ノ木坂学院は…負けるわ」

 

 

全国高校女子サッカー大会のルールに記されている1文。

"重大な危険行為、または試合中や出場選手が9人に満たなくなった場合、そこで失格とみなす"

 

 

サエ「………」

 

姫佳「美奈ちゃんがこのまま動けなかったら…その場で失格負け」

 

サエ「………」

 

姫佳「……見えるわよね。サエ」

 

姫佳は生徒会室の窓を開けた。

そこから見えるのは音ノ木坂の校門、そして葉桜の道。そして―――アキバスタジアム

 

 

姫佳「校門からスタジアムまで信号は9。全て青なら間に合うかもしれないわね」

 

姫佳「これが…あなたの人生の最だ…

 

 

姫佳「……」

 

姫佳「…よかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だかは―――分からなかった

 

 

サエ「っっ!!」

 

 

気づいたら全力で校門を飛び出していた。

階段を飛び降り、一生縁がないと思っていた道路横断。車のことなど考えもしなかった。

 

信号が赤で立ち止まったらそれで終わりにしよう。そう思っていた。なのに、

 

サエ(青)

 

なのに、

 

サエ(また…青)

 

なのに、

 

サエ(青…その先も…)

 

 

 

スタジアムまで続く道が、立ち止まることを許さないかのような。

 

 

 

サエ(なんで…私は…走ってるのっっ!!)

 

 

頭をよぎるあの言葉。

『お前にそこまでの才能はない』

サッカーを、無理やり拒絶し始めたのはそこからだった。

自分が無能だという現実を受け入れ、どんなに手を差し伸べられても払って、避けて、逃げた

 

 

サエ「最後の…信号」

 

 

だが最近。もう1人の言葉が頭から離れなくなったのだ。

 

『…私は、例えそうだとしても仲間を信じたい」 』

 

『仲間の悩みも自分の悩みとして全力で何とかする…今の、このチームじゃなきゃ絶対にダメなんです!!』

 

 

 

何故そこまで言っておきながら、信じるとか、何とかするとか、綺麗事並べて起きながら…

 

サエ「あなたがここで倒れちゃ…ダメ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『音ノ木坂学院は選手を交代するようです!!』

 

 

 

 

美奈「……ぇ、」

 

乃々子、鈴香、優花「「「!!!!」」」

 

光穂、弥生、雛「「「!!!!」」」

 

 

夜「ははは、遅刻しすぎでしょ」

 

真恋「寝坊かしら」

 

 

 

 

サエ「ユニフォームを渡して」

 

 

 

 

小原サエ 入部。現在選手9人

 

 

 





チェインカウンター
過去の音ノ木坂学院の必殺タクティクスです。チート集団だからできた技。チェインシュートを連続で放つように縦パスの高速カウンターを仕掛けます

リベンジカウンター
ダメージを全て力に変えます。強すぎ



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第3章 136話 「過去編 "No brand girls"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
相変わらず文字はめちゃくちゃ少ないですが、過去編なんで許してください。

評価、お気に入り、感想、本当にありがとうございます!!!!





 

 

 

 

 

 

日宮美奈はあの日。

小原サエと出会った日のあの感覚を、忘れたことは無かった

 

 

美奈「ハァハァっっ…ふ、副会長…」ズキズキ

 

サエ「口ほどにもないですね」

 

カウンターで打ち返そうとしても尚、威力そのままで自分の足に抉りこまれていくあのシュート。足から伝わってくる重み。

そして思った。

小原サエと、サッカーがやりたいと

 

 

サエ「あのようなことを言っておきながら…」

 

優花「で、でも…美奈ちゃんは体調が…!」

 

サエ「私がなんのために来たと思っているのですか?」

 

「「「!!!!!!」」」

 

サエ「日宮美奈の代わりに私がセンターフォワードに入ります」

 

 

『さあ、先程得点しました日宮美奈選手に代わって入るのは音ノ木坂学院生徒会副会長である小原サエ選手!!果たしてどんなプレーを見せてくれるのか!?!?』

 

 

帝国FW1「帝国学園の誇りにかけて逆転するよ!!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

サエ「……」

 

この場所に立ってみて分かった。

やっぱり自分は逃げてただけだったんだ

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

本当は全部見ていた。

日頃のサッカー部の練習。河川敷で走る彼女たちの動きを1人1人、

 

 

雛「これ以上は行かせないわよ!」

 

帝国FW2「っっ…誰かパスを」

 

帝国MF1「こっち!」

 

帝国FW2「お願い!!」パス

 

 

だから、自分もどうすればいいか分かる。

 

 

サエ「―――!!」ズザーッ!

 

帝国「「!?!?」」

 

 

『おおっと!?小原選手がスライディングで早速ボールをカット!!!』

 

 

サエが前を向いた時にはほかのメンバーがすでに全力で走り始めていた。

実際に目の前で見るとさすがにレベルが高い。しかし、それさえもサエは分かっている

 

 

乃々子「副会長!」

 

サエ「―――!!」パス

 

予選の初戦から今まで、全ての試合を気づいた時には見届けていた。

だから、どの選手がどんな技・能力を持っているかも…それにより迷わずボールを渡せる

 

 

帝国MF3「【キラースライド】!!」ズザーッ!

 

乃々子「―――」

 

帝国MF3「」スカッ

 

 

『梨本選手が必殺技を躱して持ち込む!!』

 

 

帝国DF3「また躱された!?」

 

帝国MF3「不意をついたはずなのに…」

 

必殺技の回避、そしてボールの保持率で一人飛び抜けているであろう乃々子。

彼女には誰にも負けない武器がある。味方、敵、環境。全てが脳内で曲に変換させる。

そう、

 

 

"絶対音感"

 

 

乃々子「三船先輩!!」パス

 

ピアノのように次来るであろうメロディーを予想し、その洞察力で針穴のようなスペースをボールで貫く。

味方からは最高なサポート。相手からは予想できない最悪な繋げ役

 

 

夜「めちゃくちゃ撃ちやすいボール!」バッ!

 

アシストを受けた夜はシュートの構えに入る。自分のオーラを一気に凝縮させ、重く強力な一撃を放つ

 

 

夜「【アストロゲートV3】!!」ドガァン!

 

放たれたボールは地面を抉りながら進む。

対する帝国学園のGKも必殺技で対抗

 

 

帝国GK「【フルパワーシールド】!!」

 

―――バキィィン!!!!

 

 

音ノ木坂学院「「「!!!!!!」」」

 

 

『止めたぁぁ!!三船選手のシュートはシールドに弾かれた!!音ノ木坂学院2点目とはなりませんでした!!』

 

 

真恋「…美奈のシュートが強すぎて感覚狂ってたけど、あのGKの技強力なのよね」

 

夜「どうするー?美奈みたいな強力なシュート…」

 

真恋「いるじゃない」

 

夜「!!そうだよね…!」

 

ボールを得た帝国学園は得意とする連携攻撃で確実に攻め込んでいく。

さすがの雛や真恋でもディフェンス指示に手こずるレベル。しかし、それでも音ノ木坂学院には絶対に安心出来る要がいた

 

 

帝国FW1「決めるよ!!」ピィーッ!

 

帝国FW「「はい!!」」バッ

 

 

『この動きは帝国学園のあの必殺技か!?』

 

 

帝国FW「「「【皇帝ペンギン2号】!!」」」ドガァン!

 

帝国学園が代々引き継ぐ必殺技シリーズ、「皇帝ペンギン」。

そのうちの一つである2号は3人のオーラを混ぜ込むことで巨大なパワーを生み出す。

 

 

それに対する高坂光穂

 

 

光穂「………」グッ

 

目を閉じ、胸に手を当てて全オーラを心臓に集結させる。炎のように高まっていくオーラを解き放ち、全力の一撃で皇帝ペンギンを迎え撃つ

 

 

光穂「はあぁぁぁぁっっ!!!!」

 

光穂「【マジン・ザ・ハンド】!!」ドォン!!

 

「「「!!!!!!」」」

 

帝国学園の選手3人で作り出した皇帝ペンギンのオーラよりも巨大な魔人。

高坂光穂1人でこの圧倒的な存在感

 

 

光穂「……うん。いいシュート」シュゥゥゥ…

 

 

『と、止めたぁぁ!!!!今大会無失点記録を伸ばし続ける音ノ木坂守護神 高坂光穂!!皇帝ペンギンを持ってしてもゴールをこじ開けることは出来ないのか!?』

 

 

光穂「弥生ちゃん!」パス

 

真恋「弥生、オーバーラップ行ける!?」

 

弥生「任せてください」

 

これ以上の少数精鋭があるのだろうか。

サッカー部がないにもかかわらず、こうして揃ったメンバー。

半数が日宮美奈無しでは自分と同じく今走っていることは無かっただろう

 

 

弥生「【疾風ダッシュ】!!」ビュン!

 

帝国DF1(加速…!!でも奪え―――ビュンビュン!!

 

帝国DF1「え…さらに速く…」

 

弥生「緩急は基本ですよ」

 

 

『センターバックの園田選手が切り込む!!前では前線選手が待っています!!』

 

 

園田「小原先輩!!」パス

 

サエ「…!」

 

自分の頭上に―――ボール

 

 

サエ「―――っっ!」バッ

 

 

私、言いましたよね?

 

 

サエ「【バイシクルソード】」ギュン!

 

 

必ずあなたのカウンターを破ると

 

 

サエ「貫く。これで終わりデス」

 

―――ギュウゥゥゥン!!!!!!

 

 

帝国「「「!?!?!?」」」

 

帝国FW1「あの威力…ヤバい!?」

 

帝国GK「ふ、【フルパワーシールド】!!」

 

黒い刃がシールドに突き刺さる。

私もまだ未熟。発展途上だということは認めましょう

 

 

帝国GK「ぐ…ぐぐぐぐっっ!!!!」

 

 

ですが。

 

 

 

―――バリィィィィィン!!!!!!

 

帝国GK「―――」

 

帝国「「「」」」

 

 

サエ「私のシュートを止められるのは、日宮美奈だけです」

 

 

『ゴーーール!!!!小原サエ選手がシールドを再びこじ開けたぁぁ!!』

 

『そ、そしてここで試合終了!!2-0で…なんと、初出場の音ノ木坂学院が全国高校女子サッカー大会本戦に出場が決定となりました!!!』

 

 

 

美奈「……副会長」

 

サエ「サエよ」

 

美奈「!」

 

サエ「今日からライバル。私のことはサエって呼んでください」

 

美奈「は、はい!」

 

光穂「美奈ちゃーん!私たち全国行くよー!」

 

 

この後。サエの両親との直談判が待っているのだが、それはまた別の話。

音ノ木坂学院本戦出場。これはまだ"音ノ木坂の奇跡"と呼ばれる以前の話。

 

奇跡はここから始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日宮美奈、か…」

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

全国高校女子サッカー大会東京都予選決勝から1ヶ月が経とうとしていた

 

 

美奈「あ、あづい……」

 

季節は夏。夏休み。

高校生ならば誰もが青春を謳歌するこの時期。音ノ木坂学院サッカー部はもちろん、毎日サッカー漬け

 

 

弥生「水分補給はしっかりしてくださいね」

 

美奈「すました顔で言うけどさ…弥生ちゃん汗かいて無くない?」

 

光穂「弥生ちゃんは昔からそうなんだよ〜」

 

元々個のレベルが極めて高い音ノ木坂学院サッカー部だが、響木の指導の元。

連携のレベルも全国レベルに仕上げてきていた

 

 

真恋「でもねぇ…やっぱり実戦が欲しいわよね」

 

今の音ノ木坂学院サッカー部が求めていたのは対人。練習試合だった。

東京都内では敵無しだからこそ。練習試合での収穫がどうしても少なくなることが悩みだった。

帝国学園との練習試合も行ったが、何度も出来るような余裕はあちらもない

 

 

乃々子「うーん…県外?」

 

光穂「県外!!私行きたい!!」

 

鈴香「いいじゃん県外!!」

 

サエ「目的は遊びじゃないですからね」

 

県外の高校との練習試合。

確かに、自分たちと同じレベルのチームと戦えるかもしれない。

しかしそんなチームが本戦に出場しないわけが無い。この大事な時期にデータを漏らすようなことは両チームとも躊躇うのは無理もなかった

 

 

美奈「県外…本戦に出ない…うーん、」

 

美奈「……あ、」

 

「「「??」」」

 

美奈「あーーー!!!!!!」

 

「「「!?!?!?」」」

 

乃々子「どうしたの急に!?」

 

美奈「いた!県外で本戦に絶対に出場しない、すごく強いチーム!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

夜「まじか」

 

真恋「本当なの!?どんなチームなの!?」

 

美奈「ちょっと今から電話してみる!」

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

こちらも灼熱照らすグラウンド。

休憩を利用し涼むため、海風が吹く海岸道りで1人、海を眺める少年がいた

 

 

「…ん?電話……美奈??」

 

「どうした。お前からなんて珍しいな」

 

少年の頭の中は海のことで埋め尽くされていた。暑くてどうにかなりそうなこの体を海で早く冷やしたい。溶けたい。

そんなことを考えていたがすぐに、

 

 

「!!!!」

 

 

そんな考えも吹き飛ぶことになる

 

 

「音ノ木坂学院と練習試合…お前らが来るのか??まじかよ」

 

「ああ!待ってるぜ。絶対に負けねぇから」

 

 

少年の目は、海よりの眩しく輝いていた

 

 

 

 

北也「この松浦北也が全部止めてやるよ!」

 

 

 

 

 

次回、音ノ木坂学院サッカー部 沼津遠征

 

 

 

 





絶対音感
梨本乃々子ちゃんが持っている音楽の才能です。敵味方の動きをメロディーとして捉えることにより、その動きや展開を予想出来るらしいです。すごいですね

アストロゲート
緑川リュウジの必殺シュートです。エイリア時代の"アストロブレイク"の上位互換で、輝こうでは三船夜さんの必殺技になっています

疾風ダッシュ
皆さんおなじみの風丸さんのドリブル技です。海未ちゃんの"START:DASH!!"は弥生さんのこの技を参考にしたのかもしれません

マジン・ザ・ハンド
「原点にして頂点」。円堂守の必殺技です。穂乃果ちゃんがゴットハンド系の技に対し、光穂さんはマジン系の技が中心となっています


次回は沼津へ遠征です。北也さん以外にも…?



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第3章 137話 「過去編 "沼津遠征"」

皆さんどうも!3日前誕生日だったルビィちゃんキャンディーです。
更新遅れてすみません。過去編もあと2、3話になりました。グダグダとお付き合いいただきありがとうございます…






 

 

 

 

焼き炙ろうとする太陽は遠征だとしても逃がさない。

音ノ木坂学院サッカー部は東京から離れ、向かった先は静岡県沼津市

 

 

美奈「ついたけど…暑いっっ!!!!」

 

煮えたぎったコンクリート。

試合でもこんな殺人級の熱技を受けたことは無い。

いつもなら鍛錬と涼しい顔で言い切る弥生でさえも今日は汗を流している。

人間として当然といえば当然なのだが…今の彼女たちにそんなツッコミを入れるほどの気力は残されていない

 

 

真恋「でもまさか…練習試合の相手が男子チームなんてね」

 

雛「ちょっと心配かな、」

 

美奈「大丈夫大丈夫!みんないい人だから!」

 

美奈の母親の実家が沼津の南にある内浦。

毎年帰省するため、地元の同い歳のメンバーとは幼馴染。

男子と共に遊ぶ美奈はイメージしやすいが、まさか男子チームと練習試合をすることになるとは…

 

沼津駅からバスに揺られて十数分。

到着したのは目の前が海の高校。

バスを降りてまず驚いたのは海からの恵み、海風だった。青く光り果てしなく広がるその景色に、音ノ木坂のメンバーは目を奪われていた

 

 

光穂「綺麗…」

 

弥生「私に子供ができたら、この海のように綺麗な名前にしたいですね」

 

乃々子「私は将来、こんな場所に住んでみたいわ」

 

真恋「高校生が話す内容じゃないでしょ…」

 

 

 

 

「音ノ木坂学院サッカー部の方たちですか?」

 

「「「!!!!」」」

 

校舎を背にして海に気を取られていたため気づかなかった。

話しかけてきたのは赤く燃えるような髪を揺らした青年

 

 

紅牙「俺は星浦高校サッカー部主将、黒澤紅牙(こうが)。遠いところからお越しいただきありがとうございます」

 

光穂「お、音ノ木坂学院サッカー部主将、高坂光穂です!数日間よろしくお願いします!」

 

音ノ木坂学院サッカー部の主将は創設者である高坂光穂が受け持っている。

創設者だからという理由だけではなく、才能ともいえるリーダーシップは仲間の精神的支えとなっている。主将を決める時に異論は誰からもなかった

 

 

美奈「久しぶりね。コウちゃん」

 

紅牙「…美奈。北也はグラウンドにいる」

 

その言葉を聞き、美奈はすぐにグラウンドへと向かった。幼馴染メンバーの中でも美奈と北也は兄妹のような関係。

紅牙の言葉からほかのメンバーにもそのことがよく分かった

 

 

夜「…部長さん」

 

紅牙「三船夜さん…何か?」

 

夜「ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

今の北也に暑さなど関係なかった

 

 

北也「っっらあ!!」バキッ

 

北也「っっ!!!!」ガバッ

 

北也「まだまだ!!」ドン

 

 

「ひゃぁ…松浦先輩めっちゃ本気じゃん」

 

「今回の試合相手って…あの、」

 

仲間が撃ってくるボールを殴り、抑え、掴み、自分の気持ちを高めていく。

あいつと戦うと考えるだけでも血が騒ぐ。動いてなければどうにかなりそうだ

 

 

北也「よーし!もっと撃ってこい!!」

 

 

 

―――ドガアァァァン!!!!!!

 

「「「!?!?!?」」」

 

北也「!!!!」

 

仲間たちの背後から轟音。

それと同時に横を通り過ぎたのは真っ直ぐに突き進むボールだった

 

 

北也(このシュート…!!)

 

北也「っっ!!」ガシッ!

 

「松浦先輩!!」

 

ボールを掴むも後ろへと引きづられる。

男子にも負けないこのパワー。そして何度もぶつかってきたこの感覚

 

 

北也「……」シュゥゥゥ

 

北也「久しぶりだなぁ、美奈。相変わらずのシュートだな」

 

美奈「そっちこそ。馬鹿力増してんじゃない?」

 

「…あ、あの人が東京都代表 音ノ木坂学院サッカー部エースストライカー、日宮美奈」

 

「すごい音したよな…」

 

2人に言葉の挨拶など要らない。

ここから数日間、何度もぶつかりお互いを高めていくことになる

 

 

"県外遠征 練習試合 星浦高校"

 

 

 

 

「それでは練習試合を始めます」

 

「「「よろしくお願いします!!」」」

 

 

 

音ノ木坂学院

 

FW……小原サエ、日宮美奈、三船夜

 

MF…梨本乃々子、月城真恋、響木鈴香

 

DF………………乙坂雛、園田弥生

 

GK…………………高坂光穂

 

2-3-3

 

 

星浦高校

 

FW…………黒澤、渡辺

 

MF……磯田、田島、国木田

 

DF………飛鷹、高海、浜風

 

GK………………松浦

 

3-2-2

 

 

 

 

「お姉ちゃーん!!」

 

音ノ木坂「「「……?」」」

 

グラウンドに向けられた声

 

 

夜「………」

 

相手は男子チーム。つまり、

 

 

真恋「……あの子が、夜の言ってた妹??」

 

夜「ははは、可愛い可愛い妹だよ」

 

星浦高校ベンチから手を振るのは三船夜の妹、三船空。

彼女は水泳の強豪校でもあるこの星浦高校で寮生活をしている。つまり、彼女は水泳選手。なのにサッカー部のベンチにいる。

理由は姉との再会、そして応援…もあるが一番は―――

 

 

空「と…智和君も頑張って///」

 

渡辺「お、おう///」

 

 

真恋「あぁ…….なるほどねぇ、」

 

夜「私の可愛い妹を奪ったあいつ…絶対に許さない」

 

サッカーで勝つとはまた別の問題でやる気に満ち溢れる夜。

確かに妹を溺愛してると分かるぐらい学校では語られたなと思う真恋。触らぬ姉に祟りなし。試合に集中することにした

 

 

美奈(見かけない顔ね…)

 

高海「……」

 

 

ピーーッ!!!!

 

音ノ木坂ボールで試合開始。

男子と女子の力の差はどうしても存在してしまうのがサッカー。

プロの女子日本代表よりも高校男子チームの方が強いと言う人もいる。しかし、

 

 

美奈、サエ、夜「「「―――っっ!!」」」バッ!

 

渡辺「速っ!?」

 

黒澤「FWがいっせいに走り…「必殺タクティクス!!!!」

 

中盤の真恋がボールを持ち、そこから電光石火の縦パスを繋ぐ。

まるでシュートを連続チェインするようなスピードとパワー。繋ぐたびにボールにエネルギーが込められていく

 

 

「「「【チェインカウンター】!!!」」」

 

国木田「音ノ木坂の必殺タクティクス…!!」

 

浜風「松浦先輩…!」

 

 

北也「早速か…任せろ」

 

すでに5人がダイレクトで繋いだ。

残りはラスト1人、日宮美奈がゴール前へと飛び込み、すでに足をボールにめり込ませていた

 

 

美奈「でりゃあっっ!!」ドガァン!!

 

北也「止めてやるぞ美奈!!!」バッ

 

北也の目の前に大量の海水が集まる。

まるで渦潮のように暴れるそのオーラは巨大な手へ。熱さも全て掴み取る松浦北也の必殺技

 

 

北也「【真ウズマキ・ザ・ハンド】!!」ドン!

 

「「「!!!!!!」」」

 

激流に逆らえなくなったボールは渦潮へと飲み込まれる。そのまま行き着く場所は北也の手の中

 

 

美奈「へぇ…かなり鍛えたわね」

 

サエ「なかなかの必殺技デス」

 

早速ピンチを作ってしまった星浦高校は男子としてのプライドがもちろん存在する。

挨拶代わりはいらない。最初から全力で行け。そんな意思が込められたボールが最前線の―――

 

 

黒澤「今度は俺たちの番だ」

 

雛「ディフェンス集中よ!!」

 

選手のデータも実力も未知数。

分かることは自分らよりもフィジカルが上だということ

 

 

鈴香「もらった!!」バッ

 

黒澤「―――っっ!」グルン!

 

鈴香が伸ばした足を回転しながら躱す

 

 

鈴香「何あの動き!?」

 

乃々子「私が!!」ズザーッ

 

黒澤「―――っっ!!」ギュンギュン!

 

鈴香、乃々子「「!?!?」」

 

美奈(あの動き…まさか、)

 

2人のディフェンスを躱す時のまるで舞っているかのような動き。

回数を重ねる度にそのキレは増し、より美しく、より強力となる

 

 

黒澤「【ヒノカミ神楽】」

 

 

夜「…なんかヤバそうな技だね」

 

美奈「黒澤家の人間には特殊な血が流れてる」

 

夜「!」

 

黒澤家が内浦の海を支配した所以でもあり、血を持つものに莫大な恩恵を与える

 

 

美奈「舞い踊ることによって血が共鳴して、マグマのように煮えたぎった体は身体能力が跳ね上がる…」

 

美奈「黒澤家でも数年代に1人出るか出ないかと言われた能力よ…コウちゃんが…それを」

 

 

黒澤紅牙が1人で音ノ木坂のDF陣に突っ込んでも突破は困難。

しかし、それは通常状態での話

 

 

黒澤「―――っっ!!」バッ

 

光穂(来る!!!)

 

黒澤「【煉獄・鬼丸国綱】!!」ズバッッ!

 

自強化した彼ならば1人での進撃は造作でもない。そこから放たれるシュートも同様。

右足を炎で纏い、刀のように振り上げて一閃

 

 

光穂「はあぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

光穂「【真マジン・ザ・ハンド】!!」ドォン!

 

対する光穂は引かなかった。

自分の仕事はゴールを死守すること。そのためにもこの鬼斬の剣、止めなければならない

 

 

光穂「ぐっ…!!ぐぐぐぐ……」

 

 

北也「あいつ…なんてパワー、」

 

飛鷹「黒澤さんのシュートが…抑え、」

 

 

 

光穂「はぁはぁ…はぁ…」シュゥゥゥ…

 

数メートルは押された。

スパイクはゴールラインに乗っている。ギリギリだが光穂の勝利。東京都最強のGKは伊達ではない

 

 

光穂(手がビリビリするよ…すごい人だ)

 

黒澤「……」

 

 

北也「未完成とはいえ、あのGKやるな」

 

美奈「未完成?」

 

北也「あぁ。紅牙が言うにはあの"ヒノカミ神楽"では全然ダメらしい」

 

『中途半端な神楽』。

紅牙は当主である祖父からそう言われた。

本来ならば自分の体が炎へと変わるはずの能力。しかし、目でわかる体の変化はない。

紅牙の血が才能に恵まれなかったのか、または鍛錬が足りないのか

 

 

渡辺「紅牙…!大丈夫か!?」

 

黒澤「はぁはぁ…個人戦では勝てないな。ここからはチームで崩すぞ」

 

渡辺「あぁ。分かった」

 

 

真恋「怖気付かずに攻めなさい!!シュートは光穂が全部止めてくれるわ!」

 

光穂「ドンと来い!!」

 

美奈「星浦のゴールは私が破る!!」

 

サエ「ちょっと陣形崩さないで!?」

 

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

練習は夕方まで行われた

 

 

美奈「明日は絶対に勝つわ…!!」

 

北也「はははっ。それはどうかな」

 

練習試合は星浦高校の勝利に終わった。

最初は優勢だった音ノ木坂学院も、最後までフルスロットルを維持することは不可能。

しかし限界を伸ばすことは可能。音ノ木坂の課題は決まり、明日に備え宿へと向かった

 

 

美奈「うーん…」

 

乃々子「美奈ちゃん、どうしたの?」

 

美奈「なんか気になる選手がいたんだよね」

 

夜「高海ってDFでしょ?」

 

美奈「え!?なんで分かったの!?」

 

彼女ら、そして彼らの運命がこれからも交わるのかどうかは誰にも分からない。

しかし、

 

 

サエ「今向かってる旅館…確か苗字が高海だったような…」

 

美奈「ゑ?」

 

確実に―――動き始めている

 

 

 

北也「そう言えば高海…お前いつもに増して無口だったよな」

 

高海「……」

 

北也「え?なに……はぁ!?気になるやつがいた!?」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

その後も合同練習、試合は回数を重ね。

両チームが確実なレベルアップを見せて迎えた最終日の夜。

朝には東京へと戻る音ノ木坂学院一行は旅館で荷物の整理をしていた

 

 

美奈「今日の響木監督のラーメン美味しかったね」

 

鈴香「まさか家庭科室を借りて昼飯にラーメンとか…よくやるよじいちゃんは」

 

弥生「飛鷹さんが響木さんに弟子入りしたがってましたね」

 

鈴香「物好きもいるってことさ」

 

美奈「ははは……あ、私ちょっと出かけてくる」

 

乃々子「こんな時間に?」

 

美奈「ちょっと…ね。いつもの場所で」

 

 

"いつもの場所"。

それは毎年帰省する時に北也たちと集まる思い出の場所。

最終日ぐらいそこで話そうということになったため夜中ではあるが外出。

そんなに遠くない場所の浜辺。向かうとすでにメンバーは揃っていた

 

 

北也「遅刻だぞー」

 

美奈「ごめんごめん」

 

紅牙「高海と話してて遅れたとかじゃね?」

 

智和「それだな」

 

美奈「ちょっと!?そんなんじゃないからね!?」

 

黒澤紅牙、渡辺智和、松浦北也。

美奈以外の全員が2年生だが4人にはそんなこと関係なかった。

たわいもない話で盛り上がり、思い出を語る。それだけでもこの空間は充実したものへと変わる

 

 

美奈「結局、夜とは仲良くなれないまま終わっちゃったね」

 

智和「うーん…目の敵にされてたからなぁ、」

 

北也「紅牙も1人ぐらいいただろ。気になった子」

 

紅牙「俺は恋愛はしないんだ。親が決めるからな」

 

美奈「とか言いながらサエちゃん相手に緊張してたくせに」

 

北也「まじか」

 

紅牙「美奈。後で斬るからな」

 

美奈「嘘嘘嘘嘘冗談よ冗談!イッツジョーク!」

 

ここまでは笑いあっていた4人だったが、この後話が変わるのと同時に美奈たちの周りを静寂が支配することになる

 

 

北也「そう言えば美奈。初日から思ってたんだが試合の途中でいつも…体調悪くなるのか?」

 

美奈「…!」

 

北也「熱中症とかだったら怖いからよ…」

 

美奈「そのことで…話があるの」

 

美奈はあの頭痛について。3人に話し始めた。

カウンター系の必殺技を使うと頭痛が酷くなること。日に日に痛みが増していること。病院に行ってみたが異常がなかったこと

 

 

智和「予選決勝で倒れたのはそれが原因か」

 

紅牙「必殺技の反動じゃないのか?」

 

美奈の必殺技はどれも規格外の威力を持つ。

例え体が丈夫だとしても反動がないとは言いにくい。しかし、それだけでは納得できない理由があった

 

 

 

紅牙「黒いオーラ?」

 

美奈「弥生ちゃんに言われて気づいたの。必殺技を発動する時、オーラがだんだん黒くなってきてるって」

 

北也「頭痛が始まってからか?」

 

美奈「多分…それと、もう1つ」

 

試合中。必殺技を連発しオーラを放出し続けると突然、自分が自分で無くなるような感覚に陥るのだという。

エキサイトした時の興奮状態ではないかと考えた。しかし、心の中からドロドロしたような感覚が溢れ、寒気が止まらなくなるのはまるでエキサイトの逆。

 

何かに呪われているようであった

 

 

紅牙「頭痛、黒いオーラ、寒気…」

 

智和「美奈の体に何かが起きてる…のか?まるで必殺技がよくない恩恵を、」

 

美奈「そう。だから私はこの呪いをこう呼ぶことにしたの」

 

黒いオーラを纏った必殺技を放てば反動。そして自分を失うかのような寒気。

まるで禁断の呪い。これらを称し、美奈は呼ぶ

 

 

美奈「"闇の力"。メンバーには全部説明してある。極力必殺技の使用は控えろって言われたわ」

 

北也「控えろって…美奈、お前分かってるんだよな??」

 

美奈「……」

 

北也「お前たちの本戦初戦は"皇帝学園"だぞ!?」

 

全国高校女子サッカー大会では現在、連続優勝の記録を持ち、今もその記録を伸ばしている学校がある。その名も「皇帝学園」。

他を寄せつけない強さ。戦ったチームはその果てしない強さに圧倒され、負けたとしても誰も異論を持つ者はいないという、

 

 

美奈「分かってる。でも初戦で潰れたらその先勝てないよ、」

 

紅牙「…厳しい選択だな」

 

美奈「もし、闇の力が本物だったら今までのような戦いは出来ない。ここまで来て…エースストライカーの私がこんな…」

 

「「「………」」」

 

波の音だけが聞こえる。

嫌になるほどの静寂に耐えきれない。しかしだからこそ口を開けない。

そんな空気を壊したのは―――松浦北也

 

 

北也「らしくねぇな」

 

美奈「…!」

 

北也「お前ならこんな時もなんとかするって、がむしゃらに足掻くところだろ」

 

北也「闇の力、皇帝学園。どちらを選んでもいい結果は望めない…でもなんとかする。それが日宮美奈。俺たちはそれしか言えない」

 

美奈「…北ちゃん、」

 

北也「いいかよく聞けよ」

 

紅牙「……」

 

智和「……」

 

北也「悔いなくだ。悔いのない決断をしろ。お前はそれに関しては天才だ」

 

紅牙「どんな選択をしても俺たちは責めない」

 

智和「全力で応援してやるよ。だからお前は自分のやりたいように戦え」

 

美奈「……」

 

北也「頑張れよ。美奈」

 

 

 

 

 

 

次回 全国高校女子サッカー大会本戦

第1試合「皇帝学園」戦

 

 

 




ウズマキ・ザ・ハンド
原作アレオリの必殺技です。この技発動したらめっちゃ涼しそう。原作よりも強いです

煉獄・鬼丸国綱
黒澤紅牙のオリジナルシュート技です。ダイヤちゃんのマキシマムファイア枠の技で、鬼丸国綱とは日本の有名な刀ですね

☆新キャラ☆
・松浦北也:我らが浦の星女学院の監督。果南の未来の父親
・黒澤紅牙(こうが):あのチート姉妹の未来の父親。才能に恵まれず、未完成のままヒノカミ神楽を継承する
・渡辺智和(ともかず):渡辺曜の未来の父親。夜さんに恨まれてる
・三船空:夜の妹。溺愛されてる。渡辺曜の未来の母親
・高海:無口な少年。高海千歌の未来の…



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第3章 138話 「過去編 "奇跡の代償"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
長かった過去編も強引ではありますが終了です。グダグダとお待たせしました…




 

 

 

 

全国高校女子サッカー大会本戦

ー第1試合「皇帝学園」当日ー

 

 

 

控え室で準備を進める選手たち。

アキバスタジアムでの試合は初めてではない。しかしここまで歓声がビリビリと伝わってくるのは異様。おそらくほとんどが皇帝学園サポーター。

東京都予選、リラックスした状態で勝ち抜いてきた音ノ木坂学院サッカー部。そんなチームでさえも緊張により、張り詰めた空気の中にいる

 

 

夜「実質上決勝戦だね」

 

弥生「皇帝学園以上の強さを持つチームはいない…この試合に勝てば頂点は確実に見えてきます」

 

真恋「ただ、その皇帝学園が異次元すぎるわ。私たちでも勝てるかどうか…」

 

美奈「弱気じゃダメだよ」

 

「「「…!!」」」

 

椅子に座り下を向き、集中力を高めていた美奈が口を開いた。

その力ある声に仲間は鼓舞される。美奈の目はこんな状況でも死ぬことは無い

 

 

響木「お前たちはこの数ヶ月間よくやった。だが、ここで終わるお前たちでも無い」

 

鈴香「じいちゃん…」

 

サエ「皇帝学園に勝つ」

 

美奈「…!」

 

サエ「私たちに必要な言葉はそれだけです」

 

美奈「うん…みんな、絶対に勝つよ」

 

日宮美奈、そして音ノ木坂学院サッカー部の挑戦が始まる。

完全無名のチームが王を崩すのか、それとも王が蹴散らすのか。それはまだ誰も分からない

 

 

スタッフ「日宮美奈さんいますか?」

 

美奈「は、はい!」

 

スタッフ「お電話が入ってます」

 

美奈「分かりました…!」

 

サエ「……?」

 

 

―――

 

 

『さあ、まもなく試合が始まります!!全国高校女子サッカー大会本戦、第1試合は音ノ木坂学院VS皇帝学園!!!!』

 

 

ー 星浦高校 ー

 

智和「試合始まるぞー」

 

紅牙「美奈たちは勝てるのか…」

 

北也「あいつらなら勝てる。"切り札"もあるしな」

 

 

 

ー 波の屋 ー

 

美奈母「美奈…頑張って」

 

お客「緊張してきたな…」

 

お客「あぁ。勝ってくれよ…」

 

 

 

ー ??? ー

 

「準備を始めろ」

 

「…承知しました」

 

 

 

 

『東京都予選を圧倒的な強さで勝ち進んだ音ノ木坂学院!!彼女たちの実力は本物!!対する皇帝学園、連続優勝のかかる大事な試合…負けられないでしょう!!!』

 

 

両チームがポジションにつき、笛を待つこの空気―――1番嫌いな時間。

緊張で早くも身体が固まりそうだった。

それでも絶対に止めない。

勝つまでは足を止めることは無い

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

 

――――――

―――

 

 

 

 

 

試合は白熱した

 

 

サエ「【デビルバーストGX】!!」ドガァン!

 

夜「【アストロゲートV4】!!」ドガァン!

 

皇帝学園、そして試合を見るものたちは驚いただろう。最強のチームに…ここまで対等に争うチームが存在するのかと

 

 

皇帝GK「……」シュゥゥゥ…

 

鈴香「夜さんとサエさんのシュートを…」

 

真恋「これは一筋縄じゃいかないわね、」

 

それでも王者は牙をむく。容赦なく。

積み上げた数字を簡単に砕く

 

 

光穂「【真マジン・ザ・ハンっっ―――きゃっっ!?!?」

 

―――バシュゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

音ノ木坂「「「!!!!!!」」」

 

弥生「光穂の"マジン・ザ・ハンド"が負けた…」

 

雛「ハァハァ…強いわね、あのシュート」

 

 

皇帝学園の規格外の強さを恐れるものは誰もいない。しかし、音ノ木坂学院の強さに言葉を失う人は数知れず。

劣勢なはずなのに、

 

 

真恋「足止めるんじゃないわよ!!走りなさい!!!」

 

乃々子「私のドリブルは簡単には止められないわよ…!」

 

 

無名高校のはずなのに、

 

 

鈴香、夜、サエ

「「「【チェインカウンター】!!!!」」」

 

美奈「でりゃあぁっっ!!」ドガァン!!

 

 

足は傷だらけ。

体力も限界。

足がもつれてもすぐに立ち上がり、抜かされてもすぐに追いつく

 

 

光穂、雛、弥生

「「「【ザ・フェニックス】!!!」」」ドガァン!

 

 

どこからそんな力が湧いてくるのか??

それは本人たちにも分からない。

ただ、

 

 

光穂「ぐぬぬぬぬっっ!!!!」

 

 

『高坂選手が押されます!!これが決まってしまうと音ノ木坂学院の勝利は絶望的!!』

 

 

ただ、おかしいぐらいに

 

 

光穂「終わらないのよっっ…私たちは…」

 

光穂「一体で足りないなら…もう一体!!!」

 

光穂「【風神・雷神】!!」ドォン!

 

 

まるで無限のように力が湧いてくる

 

 

『と、止めたぁぁ!!魔人が2体!!皇帝学園エースストライカーのシュートをねじ伏せました!!!!』

 

 

美奈「夜、サエちゃん」

 

夜、サエ「「!!」」

 

美奈「"あの技"。やろう」

 

そして将来、サニデイジャパンの試練となる"スリリングワンウェイ"の元となる必殺技

 

 

美奈、夜、サエ「「「はあぁぁぁっっ!!!」」」

 

音ノ木坂学院の全てが込められたこのシュートはまさに最強。

止まらない。止められない。

スタジアムに風穴を開けてもおかしくないほどのパワーとダイナミックさ

 

 

―――バシュゥゥゥゥン!!!!

 

 

試合は佳境を迎えていた

 

 

『ゴーール!!!!なんという…破壊力っっ!!4-4、音ノ木坂学院がここで再び追いつきました!!!!』

 

 

美奈「ハァハァ…ゲホッ…ハァハァ」ズキズキ

 

美奈(頭痛……技を使いすぎた、)

 

美奈が必殺技を発動すると呪いのように反動の痛みが襲いかかる。

これを知ったメンバーは極力必殺技を使うなと美奈に言ったのはいいものの、皇帝学園との試合中に必殺技の使用を指摘するほどの余裕はない

 

 

美奈「あと…1点」

 

残り時間もあと僅か。仲間たちの体力も限界に近かった。

先ほどの攻撃でほとんどのエネルギーを消費してしまった。体は動くのか?

皇帝学園の攻撃を防ぎきれるのか?

このボロボロの体で…ダメージが蓄積した……

 

 

美奈「……」

 

美奈「ダメージ」ボソッ

 

乃々子「…ハァ、ハァ…美奈ちゃん?」

 

やっぱり…やるしかないのだろうか?

勝つためにはこれしかない。

でも約束した。危険な道は歩かない。無茶もしないと。私が壊れれば次の試合の勝利は厳しくなる

 

 

『もしこの試合に勝てたら…』

 

美奈「……」

 

 

違う。私はみんなを信じてる。

必殺技はこれ以上使わない。

なんとかして勝つ。

そう自分に言い聞かせてふと、視界に入った1人の少女

 

 

サエ「……ふう、」

 

その時。サエのあの言葉が、突然呼び起こさる―――サエの父親に直談判をしに行った後の言葉

 

 

サエ『全国大会優勝。サッカーをやる条件だと言われました』

 

『『『………』』』

 

美奈『なら…大丈夫。私たちの目標はそこだから。絶対に条件は守れるよ』

 

サエ『ふふ。期待してます』

 

 

 

 

美奈(この試合…絶対に勝たなきゃ、サエちゃんは多分、一生サッカーが出来なく…)

 

体温が一気に下がったのが分かった。

当然のように言ったあの言葉は、サエちゃんだけじゃない。みんなのこれからを…私が背負ってる…負けたら、全部砕けるんだ、

 

 

美奈「仲間も、仲間の未来も、サッカーも、みんな…」ズキズキ

 

真恋「美奈!!来るわよ!!」

 

鈴香ちゃんをしつこく誘ったのも、勉強してた真恋さんを誘ったのも、自分の人生をかけてくれてるサエちゃんを誘ったのも…私だ。

痛みにびびって、ここで終わる訳には―――

 

 

 

『音ノ木坂学院失点の危機!!皇帝学園のエースストライカーが構えます!!!!』

 

 

光穂「とめな…きゃ…ハァハァ!!」ガクッ

 

 

夜「ヤバっ!?光穂ちゃんが限界!!」

 

鈴香「今からじゃ間に合わ…」

 

皇帝学園のエースストライカーがシュートを放った。光穂ちゃんの必殺技を何度も破ってきた強力な技だ。

私は、センターフォワードとして前線にいなければいけない

 

 

鈴香「……え、」

 

夜「……!?」

 

 

それが何故か、気づいたら体が勝手に動いてて

 

 

弥生「美奈!?」

 

光穂「ハァハァ…み、美奈ちゃん??」

 

 

美奈「………」

 

 

ゴールの目の前に立ってた

 

 

真恋「美奈…あんた….まさか、」

 

乃々子「ダメ…ダメだよ美奈ちゃん!?」

 

みんなも薄々察していたのだろう。

今現在、痛みが私の体を蝕んでいることを。

多分…今の私は血走った目で、冷静さをかいていて、無謀で、バカで

 

 

響木「…あのシュートを打ち返すのはまずい」

 

優花「美奈ちゃん…!!危ないよ!!!」

 

 

美奈「私には責任があるっっ!!!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

美奈「この試合に勝って…みんなの未来を繋げる!!!!途切れさせない!!諦めさせない!!」

 

光穂「みっちゃん!無理しないで!!」

 

美奈「止めないで光穂ちゃん!私は…絶対にやめない!!」

 

美奈「やめるものかあぁぁぁ!!!!」

 

光穂「だめえぇぇぇ!!!!!!!!」

 

 

 

迫り来るシュートに狙いを定め、蹴り込む

 

 

美奈「っっっっ!!!!」ドゴォン!!

 

 

蓄積していたダメージを可能な限り全てパワーに変える。『リベンジカウンター』だ。

そのパワーを利用しオーラを放出させる

 

 

雛「美奈ちゃんから黒いオーラが吹き出してる…!?」

 

サエ「……!!」

 

足が悲鳴を上げていた。

頭痛と身体中の痛みが一斉に襲いかかり、汗という汗。涙が溢れ出す。

それでも私は撃たなければいけない

 

 

美奈「―――ぐあっっ!!ら、ランス…オブ…」メキメキ!

 

 

仲間たちの未来を繋ぐ。

今の私にできることはそれしかない。

絶対に勝つって言った

 

 

美奈「カウンターァァァァ!!!!!!」

 

 

楽しかった。この数ヶ月間。

このメンバーでの練習の毎日。退屈という言葉を忘れ、ただひたすらに笑う。

 

―――バシュゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

感謝してもしきれない。この時間が一生続けばいいと。思い続けた。

 

だから、だから私は―――

 

 

『試合終了!!!!!!』

 

 

 

 

ボロボロになった足を見て、声を出して泣いた

 

 

 

 

 

――――――――――――

――――――

―――

 

 

 

 

 

美奈「……」

 

音ノ木坂「「「………」」」

 

病院のベットで痛々しく固定される足を見て、誰も喋らず、全員が下を向いている。

私も口を開けずに、ただただ時間が過ぎていくのを感じていた

 

 

真恋「…足は?」

 

恐る恐る、真恋さんが尋ねた。

全員が気になっていたであろう、私の足。

もう隠すことも無い。私は正直に話した

 

 

美奈「二度と、サッカーは出来ない」

 

「「「!?!?」」」

 

乃々子「そんな……冗談、」

 

鈴香「…なんでよ、だから…ダメだって」

 

美奈「……」

 

みんなの顔が見れなかった。怒っているのか、泣いているのか、呆れているのか。

なんにせよ私は罪悪感で押し潰されそうだった。そして、1番聞きたくなかった言葉を…聞くことになる

 

 

真恋「音ノ木坂学院は棄権するわ」

 

美奈「……」

 

真恋「あなただけじゃない。みんな…今日の試合でボロボロ。誰がまた欠けるか分からない状況よ」

 

皇帝学園との試合が初戦だったことが運の尽きだったのか。

予選までは私がカウンターで暴れてたからみんなの負担も少なかった。しかし、私が必殺技の使用を抑えた為他のみんなの負担が増えた。

みんながボロボロなのも、私のせいだ。

 

何かが欠けていく音がした

 

 

サエ「こんなこと…許さない」

 

夜「ちょ、サエちゃん落ち着いて…」

 

サエ「これで終わりなの!?日宮美奈!!」

 

美奈「…!!」

 

サエ「1度サッカーを捨てた私…戻る資格なんて無かった私を再びこの世界に戻して…最初は全然楽しくなんてなかった…なのに、」

 

サエ「すごく、楽しいって思えるようになったのに…これで…終わり?」

 

美奈「……さ、サエちゃ、」

 

サエ「楽しい時間は終わったのよ」

 

出口へと向かうサエちゃん。

今の私に彼女を止める資格は無い。なのに、嫌だ。これで終わりなんて――――――

 

 

 

サエ「さよなら」

 

 

 

 

 

その後、音ノ木坂学院サッカー部はエースストライカーの負傷とチームのダメージを理由に大会を棄権。

小原サエは音ノ木坂学院から海外留学を理由に転校。そして、

 

 

音ノ木坂学院サッカー部は解散

 

 

 

 

私の行いによる代償はあまりにも大きく。

罪を償うにも、もう一生元には戻らないあの日々

 

 

 

 

――――――――――――

――――――

―――

 

 

 

 

 

美奈「…これが、音ノ木坂の奇跡の真実」

 

日本「「「………」」」

 

真恋「……」

 

サエ「……」

 

漫画のような奇跡の物語などでは無い。

不運、そして代償。

ぐちゃぐちゃに引き裂かれた過去の繋がりが、今こうして強引に再び繋ぎ止められようとしている。

復讐という形で

 

 

サエ「私はこの時を待ち続けた」

 

美奈「…そうね。あなたには復讐の権利があるわ」

 

チャンスをもらった。美奈を信じて再び夢を追いかけた。

しかし、信じた者に未来を潰され、楽しかった時間をも永遠に失った。

美奈に構える拳銃はその象徴。美奈の罪の償い

 

 

ガルシルド「私もその事件の真実を知り、小原サエに提案したのだよ。復讐のチャンスをな」

 

サエ「そういうことデス」

 

拳銃を構えるその目に迷いなどなかった。

月には申し訳ないが、サエをこうも変えてしまったのも自分のせい。

ガルシルドという悪についてしまったのも私のせい

 

 

サエ「…ずっと許せなかった。初めて、あんなに楽しいと思えた時間。それが一瞬で失われた」

 

美奈「……」

 

サエ「私は30年間、この復讐のために生きてきたのよ」

 

引き金に手をかけ。サエはそのままの体勢で―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サエ「ガルシルドっっ!!!!」バッ

 

 

美奈「!?!?」

 

真恋「!?!?」

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

美奈に向けられていた銃は―――ガルシルドへ。誰も状況を理解出来ていない

 

 

ガルシルド「……なんのつもりだ?」

 

サエ「言ったでしょ?復讐するためって。美奈へ?ふざけないでください。私が許さないのはあなた」

 

サエ「あの事件の黒幕はガルシルド。あなたよ」

 

 

 




美奈さんがあの場で自分の身を犠牲にするような行動をしたのは…闇の力による精神の異常があったのかもしれません。



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第3章 139話 「さようならへさよなら!」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
過去編も終わってついにブラジル戦後半!

(2020/05/30 21:51:50)『Saint Snowと無口の居候』を執筆されている七宮梅雨さんが小原サエさんを描いてくださいました!
https://syosetu.org/?mode=user&uid=248437

いつもいつもありがとうございます(土下座)




 

 

過去編の、輝こうサッカーで!

日宮美奈は音ノ木坂学院サッカー部で全国大会を優勝するために仲間を集め、少数精鋭で東京都予選を突破する。

しかし、初戦で皇帝学園との対戦となってしまい、メンバーの体はボロボロ。美奈は二度とサッカーが出来ない体になってしまった。

そして時は流れ、復讐を宣言した小原サエが銃を向けたのは美奈ではなく……

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ガルシルド「…なんのつもりだ?」

 

サエ「………」

 

 

【挿絵表示】

 

 

美奈へと向けられていた銃は変わってガルシルドへ。全員が状況を理解出来ず、サエだけの独壇場となっていた

 

 

サエ「言ったでしょ?復讐するためって。美奈へ?ふざけないでください。私が許さないのはあなた」

 

サエ「あの事件の黒幕はガルシルド。あなたよ」

 

「「「!!!!??」」」

 

美奈の皇帝学園戦での行動がガルシルドによるもの??

サエの言葉からは迷いが感じられない

 

 

サエ「美奈はあの時。自分の体がダメージに耐えられないことは分かっていたはず。自分のやろうとしていることは間違っている…私たちを信じて必殺技を使わなかったはず」

 

サエ「なのに美奈は自分を捨てた。理由はひとつしかない。やりざるを得なかった」

 

美奈「…!!」

 

サエ「私は…真実を知るために日本を出た」

 

美奈は1人で何を背負っていたのか。あの輝かしい日々の裏で何が起こっていたのか。

それらを知るためには何もかもが足りなかった。

小原家の協力…それは考えなかった。自分の力で仲間を救うため。しかし、それでは能力も権力も無い

 

 

サエ『権力も覚悟も足りない私が…美奈を救うなんて出来ない…!!』

 

 

 

サエ『権力も覚悟もない人が、人を救うなんてほざくな』

 

チカ(ふーん…あの時の言葉の意図、繋がったね)

 

 

サエ「地位を得るまでに10年。真実を知るのに10年。あなたに近づくのに10年かかったわ」

 

ガルシルド「私とその真実に何の関係があるのかね?」

 

サエ「……」

 

 

 

ー 皇帝学園戦前 ー

 

 

美奈『は、はい。日宮美奈です』

 

『私の名前はガルシルド。聞いたことないかね?』

 

美奈『最近ニュースで…原油の会社を設立したという…』

 

『そうだ。私はね、サッカーがすごく大好きでね。たくさんの国で子供たちの支援をしているのだよ』

 

美奈『はぁ…』

 

『日宮美奈君。君の才能はダイヤの原石以上だ』

 

美奈『…!!』

 

『そんな選手がのびのびとした環境でサッカーをする…つまり、君を支援したい』

 

美奈『支援…?』

 

『お店の経営、厳しいのではないのかね?』

 

美奈『っっ!!』

 

仲間にも、幼馴染にさえも話さなかった悩みだった。大好きな"波の屋"。

その経営ができるかできないかの瀬戸際まで追い詰められていたのだった。

このままでは安心してサッカーも出来ない。生活費も無くなる。そんな時の話だった

 

 

『皇帝学園との試合に勝利できれば支援しよう。そして音ノ木坂学院サッカー部の選手たちにもな』

 

美奈『みんな…にも、』

 

『プロへの交渉。就職。出来ることならなんでも構わない』

 

美奈『……』

 

前に1度、みんなで将来のことについて語ったことがあった。そこでプロサッカーを夢見るメンバーは、少なくなかった

 

 

美奈『……私は、みんなを信じてます』

 

『……』

 

美奈『支援がなくてもみんなならやってくれる…私は最後まで信じたい。でも、』

 

美奈『その時が来たら……よろしく、お願いします』

 

『…よかろう』

 

 

 

 

 

サエ「…ガルシルドは美奈に支援を条件に、闇の力を発動せざるを得ない状況に追い込んだ」

 

真恋「そんな…美奈、本当に??」

 

美奈「……」

 

サエ「最初から目的は、闇の力のデータだった」

 

筋肉や骨が生まれつき発達していた美奈。そしてその才能の根源にある闇の力。

兵器にも手を伸ばしていたガルシルドが注目しないわけがなかった。

ここまで辿り着くのに―――20年

 

 

ガルシルド「その復讐のために30年も費やしたと?」

 

サエ「それだけではないことはあなたが一番分かっているはず。先ほど自ら喋っていましたし」

 

ロニージョへのRHプログラムによる闇の力の人工的発動。

千歌と穂乃果も実験に巻き込み、ブラジル代表を自分の道具のように扱う。

どれを指摘してもガルシルドはタダでは済まない。さらに、

 

 

サエ「私たちはもう全てを知っている。あなたが戦争で巨万の富を得ようと目論んでいることを。RHプログラムも、サッカーをするためでなく戦争をするために作り出されたもの」

 

ガルシルド「…ふん。ロニージョ、そして高坂穂乃果と高海千歌は素晴らしいサンプル。そして、ここは私にとって実に意義のある実験場になった」

 

ガルシルド「だが小原サエ。裏切りは許されないと思え」

 

サエ「……裏切り?」

 

ガルシルドが、小原サエの何かの線を切ったのが分かった

 

 

サエ「人間を物のように扱い…私の大切な時間を、仲間を実験という理由で粉々にした…そんな人間に協力するわけが無い…っっ!!」

 

 

月「…やばい。撃つ気だ」

 

美奈「……」

 

怒りで声が震えていた。

冷静だった表情も崩れかけ、30年にも及ぶさまざまな感情が噴き出そうとしている。

止めなければ恐らく…小原サエは道を踏み外す

 

 

ヘンクタッカー「撃つな!!小原サエ!!」

 

サエ「…これで、終わりよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――ガシッ

 

 

 

ミナ「 や め な さ い 」メキメキ!!!

 

 

「「「!!!!!!」」」ゾクッッッ!!

 

サエ「!!!!」ゾクッッッ!!

 

銃を掴み握る美奈。

怒りからかその表情、そしてオーラに禍々しさが混じる。寒気が止まらない。

銃は断末魔のように音をあげる

 

 

穂乃果「これが…美奈さんの闇の力…」ズキズキ

 

チカ「……」ズキズキ

 

闇の力が共鳴し頭痛が始まる。

美奈の闇の力を初めて見たメンバーはその場から動くことが出来ない。

穂乃果や千歌以上の圧倒的な闇。過去に反則級の実力を持っていたのも納得できるほど

 

 

ミナ「……」バキッバキッ!

 

サエ「……」

 

 

花陽「じ、銃を握りつぶした……」

 

果南「うそぉ…」

 

 

美奈「今のあなたは…1人じゃないでしょ?」

 

サエ「…!!」

 

美奈「イタリア代表監督。プロチーム監督。あなたには選手たちを育てる義務がある」

 

美奈「こんなところで…道を間違えないで」

 

銃を握りつぶした時とはまるで別人。

悲しさを堪えながら訴えるその顔にサエは何も言い返せなかった

 

 

月「サエさん…!!」

 

サエ「…月」

 

月「サエさんは優しい。だから僕が危険な目に遭わないように…わざとガルシルドに近づいていたこと言わなかったんですよね??」

 

サエ「……ええ」

 

月「でもサエさん、1人じゃ絶対に苦しいよ。抱え込むなんて…それじゃあ、美奈さんが1人でなんとかしようとしたのと同じじゃないか!!」

 

サエ「……」

 

少しの沈黙から、溜まっていたもの吐き出すかのようなため息をするサエ。

もう銃でガルシルドを撃つことは出来ない。ならば、やることは1つしかない

 

 

サエ「我を忘れてたいたわ。感謝します。美奈、月」

 

サエ「ガルシルド。私はあなたを逮捕します」

 

ガルシルド「君に私を逮捕できる力はあるのかね?警察は私の支配下だ」

 

サエ「いいえ」

 

ガルシルド「??」

 

サエはポケットから1枚のカードを取り出し、ガルシルドに見せつけた。

その瞬間、ガルシルドが青ざめたのはすぐにわかった。ただの身分証などでは無い

 

 

聖良「え…ま、まさか…」

 

理亞「姉様…どうしたの??」

 

聖良「小原サエさんのあのカード…あのマーク…間違いないです!!小原サエさんは…!!」

 

 

 

 

 

 

サエ「私。国際警察デスから」

 

 

理亞「……え?」

 

「「「えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」」」

 

 

花陽「コクサイケイサツダッタノォ!?」

 

にこ「なんでも…ありね、」

 

サエが求めた地位とは―――自らガルシルドの陰謀を止めることができる、国際警察。

表ではヨーロッパのサッカー界の大監督。その裏で数十年とガルシルドの悪事を追っていたのだった

 

 

サエ「同僚のおかげで簡単に潜入できました」

 

サエの視線の先ではブラジルベンチで医療チームによって治療を受けているロニージョの姿があった。

医者によるとRHプログラムにはスイッチのような起動道具が必要。その道具とは―――

 

 

サエ「ロニージョ。主審が使用していたこのホイッスルの音。これがスイッチデスね」

 

ロニージョ「……はい」

 

治療完了の合図を見たサエは一言

 

 

サエ「さあ、これで自由よ」

 

ロニージョ「…あ、ありがとう!!」

 

ロニージョの顔からこの試合初めて、本当の笑みがこぼれていた。

殺伐とした空気から一変。千歌たちとはまた別の物語に決着がつこうとしていた

 

 

サエ「連れていきなさい」

 

警察により連行されるガルシルド。

後半からのブラジルの監督はどうするのか?それはサエが教えてくれた

 

 

サエ「前任のブラジル代表の監督…レオン・サムス。ガルシルドに監督の座を奪われ、監禁されていたところを救出しました。後半からは彼が監督になってくれるでしょう」

 

レオナルド「レオン監督が…!!」

 

ロニージョ「助けてくれたんですね…」

 

サエ「当然。それが私の役目デス」

 

私の役目は終わったと言わんばかりに、その場から立ち去ろうとするサエ。

そんなサエを呼び止めたのは、最後まで彼女を信じ続けていた月だった

 

 

月「サエさん…!!」

 

サエ「…あなたたちのおかげで、ガルシルドとその一味を一網打尽にできマス。4人が奪ってきたデータも役にたちました」

 

英玲奈「あの資料にロニージョのプログラムのことまで??」

 

サエ「いえ、RHプログラムや監督の件は私が直接手に入れマシた。あなたたち4人と同じタイミングで」

 

果南「え…じゃあ、あの時ガルシルドの屋敷にいた理由って、」

 

にこ「ブラジル街で私たちを止めたのも、にこたちのためだったのね」

 

 

サエ「……美奈」

 

美奈「…」

 

サエ「あの時間はもう戻ってこない。ですが、あなたに分かって欲しかった」

 

サエ「30年経っても、あなたたちへの気持ちは消えることは無い」

 

美奈「…サエ、ちゃん」

 

サエ「さよならは…今度は言わない。試合、頑張ってください」

 

その言葉を最期に、サエは警察たちの後を追って出口へと消えていった。

その背中には刺すようなオーラはもう存在しない。親友たち見送るその先へ、小原サエは歩を進めていった

 

 

穂乃果「良かったね…!ロニージョさん、これで全力でサッカーできる!!」

 

ロニージョ「本当に…ありがとう!!」

 

にこ「ロニージョ。お互い本気のプレーで家族の想いに応えましょ」

 

ロニージョ「えぇ!!」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

スタジアムの外へと通じる通路を歩くガルシルドと警察。

その一行の足を止める、大きな声が響き渡った

 

 

ロニージョ「ガルシルドっっ!!」

 

ガルシルド「……」

 

ロニージョ「最期に言いたいことがある!!」

 

ロニージョ「この試合、何故必殺技を撃たなかったか…わかる?」

 

ガルシルド「…それがどうした?」

 

ロニージョ「例えプログラムでお前に支配されようと、私の心はずっと家族のもの。仲間のもの。私のもの!!」

 

ロニージョ「だから必殺技は撃たなかった。私は完全に負けてないと、お前に伝えるためにっっ!!」

 

その言葉に迷いはなかった。

しかし、彼女たちは忘れている

 

 

ガルシルド「……気は済んだか?」

 

ロニージョ「!?」

 

ガルシルド「私が去った後、ぬるい玉遊びに興じるがいい。だが忘れるな。私が逮捕されれば、お前たちの家族はどうなるかを」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

消えても尚、ガルシルドは蝕み続ける

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

A『FFI準々決勝、サニデイジャパン対ザ・キングダムは前半を終えて1-1の同点!!』

 

A『果たして後半はどのような展開になるのでしょうか!?』

 

 

 

ー サニデイジャパン ー

 

FW…………黒澤ダイヤ、黒澤ルビィ

 

MF…綺羅ツバサ、高海千歌☆、渡辺曜

 

MF……………桜内梨子、矢澤にこ

 

DF……南ことり、津島善子、優木あんじゅ

 

GK…………………高坂穂乃果

 

3-2-3-2

 

 

 

ー ザ・キングダム ー

 

FW………レオナルド、ロニージョ☆、ガト

 

MF……………プレザ、ボルボレタ、コルジア

 

DF…ラガルート、バーグレ、フォルミガ、モンストロ

 

GK………………………ファルカオ

 

4-3-3

 

 

 

レヴィン『監督、ガルシルド・ベイハンの連行がザ・キングダムの選手たちにどのような影響を与えたかが気になりますね』

 

レヴィン『同時に復帰したレオン・サムス監督の指揮にも注目したいところです』

 

A『審判が変わり、サニデイジャパンにも選手交代があります!』

 

 

ルビィ「お姉ちゃん。頑張ろうね」

 

ダイヤ「はい。全力で行きますわよ」

 

 

A『鹿角理亞に代わって"炎のストライカー"黒澤ダイヤ。統堂英玲奈に代わって"旋律の指揮者"桜内梨子。鹿角聖良に代わって"共鳴の堕天使"津島善子が入ります!!』

 

レヴィン『点を取る為に攻撃のリズムを変えようという狙いでしょう。津島選手はフィジカルのあるブラジル選手への要…アメリカ戦からのトーナメント。負けたらそこでおしまいですからね』

 

 

チカ「ふふ♪はやくロニージョさんたちの本当のサッカーが見たいなぁ!」

 

穂乃果「……」

 

 

 

A『さあ!ザ・キングダムのキックオフで後半戦開始です!!』

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

にこ「勝負よロニージョ!!!」バッ

 

笛と同時に詰めるにこ。

ザ・キングダム。そしてロニージョ。

目指していた相手とついに本気で戦える。

全身全霊をぶつけ、そして…か―――パス

 

 

にこ「────え、」

 

ロニージョ「……」

 

1対1の勝負はなく、バックパスで後ろへと下げるロニージョ

 

 

ルビィ(勝負しないの…?)

 

ツバサ(ロニージョらしくないわね)

 

不審に思うも迷わずボールを持つガトにプレスをかける。しかし、

 

 

ガト「…!」パス

 

ダイヤ「またバックパスですの??」

 

ブラジルは攻めるパスしかしないチーム。

しかし、後半のこれはなんだ??

自分たちの陣内でパスを回し続けるブラジル。

まるで…攻める気がないような光景だった

 

 

にこ「なんで…ガルシルドは連行されたのに、」

 

 

A『ザ・キングダム、後半は守りに徹します!!終盤で一気に勝負を仕掛けるつもりなのか!?』

 

 

穂乃果「これが…ブラジルのサッカー…?」

 

チカ「……」

 

 

 

日本 1-1 ブラジル

 

 

 

 




銃を握りつぶすとか美奈さん…流石の果南でも青ざめレベル



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第3章 140話 「ブラジル戦 "本当のサッカー"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
本格的にブラジル戦、頑張ります




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ガルシルドを30年という年月をかけて追い詰めた小原サエ。これでブラジル代表の選手たちは自由…と思われたが後半戦、ブラジル選手のプレーに違和感を覚えた

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

果南「どうして…?もうロニージョたちに強制する人はいないのに、」

 

花丸「それになんだか、前半より動きが悪いような気が」

 

 

妹「なんでそんな顔をするの…姉ちゃん、」

 

 

自分たちの陣内でボールを回し続けるブラジル代表。時間稼ぎをしているのは明確だった。ガルシルドがいない今、彼女たちは自分の意思で行動している。

しかしその顔からはサッカーへの楽しさは伝わってこない

 

 

にこ「がっかりよっっ!!!!」

 

ブラジル「「「!!!!」」」

 

そんなチームに、痺れを切らしたのが────────矢澤にこ

 

 

にこ「ガルシルドから解放されて、ザ・キングダムの本気のサッカーと戦えると思ってたのに…何よこれは」

 

ロニージョ「…にこ、」

 

梨子、ツバサ「「!!」」バッ

 

ロニージョ(後ろから!?)

 

ロニージョはザ・キングダムの最前線。

前に味方はいない。つまりパスは後ろへしか出せないのだが、その後ろからサニデイジャパンの選手が2人。

集中出来ていないのが明確。簡単に挟み込まれてしまったのだ

 

 

にこ「もらった!!」ズザーッ!

 

ロニージョ「!?」

 

 

A『矢澤にこ、ロニージョから簡単にボールを奪い取った!!!!』

 

 

にこ「これがサニデイジャパンのサッカーよ!!」バッ

 

 

A『ボールを奪った矢澤にこがドリブルで、ザ・キングダム陣内へと攻め込んでいく!!』

 

 

ラガルート「っっ!」

 

にこ「邪魔よっっ!!」ズババババッ!

 

にこ「【ファンタスティックキープ改】!!」

 

優秀なDF、ラガルートでさえも今のにこには敵わない。プレーに繊細さが無いに等しい状態では…

 

 

妹「サッカーは楽しい、だから笑顔になる。笑顔がいいプレーを生むって言ってたじゃん…姉ちゃん」

 

 

にこ「ルビィ!!」パス

 

ブラジル陣内の中央を走るにこ。その前方では紅き流星が走っている

 

 

ラガルート「黒澤ルビィにシュートを撃たせないで!!!!」

 

ルビィ「……」バチッ!

 

ブラジルDF「「!?」」

 

にこから出されたロングパスをルビィは足で止めようとするも、弾かれたボールは上空へ。

トラップミスに救われたブラジル。

だがあの黒澤ルビィがそんな初歩的なミスをするとは…「違う!!!!」

 

ブラジルDF「「!!」」

 

曜「ナイスだよルビィちゃん!!」グルグルグル!

 

ルビィが上空へと弾いたボール。

そこには縦回転で飛ぶ曜

 

 

バーグレ「最初からパスのつもりで…!?」

 

ルビィ「お願いします」

 

 

曜「振り切れっっ!!!!!!」

 

曜「【Xブラスト】ォォォォ!!」ドガァン!

 

両足から放たれるレーザービーム。

一直線に向かうはブラジルゴール

 

 

ファルカオ「止める…【カポエィラスナッ────ドガッッ!!!!

 

ファルカオ「きゃっ!?!?」

 

曜のシュートへの反応が遅れたため、ボールを足で挟む前に突破される

 

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!

 

 

A『サニデイジャパン、後半開始早々逆転っっ!!!!王者ブラジル相手に2-1!!』

 

レヴィン『"フィールドのマーメイド"と呼ばれる選手だけのことはありますね。フィールドを自由自在に利用する…素晴らしいです』

 

 

花丸「逆転ずらーー!!」

 

果南「あの二人、すごい息のあった連携だったね…!」

 

月「曜ちゃんナイスシュートだよ!」

 

これで逆転。

日本は流れを掴み、このままの勢いで押し切るのがここからの戦いだが、穂乃果たちは違った

 

 

穂乃果「ロニージョさん、どうしたの?前半よりプレーにキレが無くなってる」

 

梨子「ガルシルドはサエさんが必ず逮捕するって約束してくれました…もうあなたたちを脅かしたり、命令する人はいないんです」

 

ロニージョ「…違うの」

 

穂乃果「…え、」

 

確かにガルシルドはブラジル代表たちの目の前で連行された。

しかし、それだけでは何も解決したことにはならない

 

 

ダイヤ「どういう意味ですの?」

 

ラガルート「私たちの家族は、ガルシルドのグループ企業から仕事を貰っていたの」

 

もし、ガルシルドが逮捕されればロニージョたちの家族は仕事を失う。

サッカーで優秀な成績を収めるにより、家族の生活を楽にしようとした。が、逆に家族を苦しめることになってしまった

 

 

ロニージョ「サッカーの自由は手に入れたのかもしれない…でも、これで本当に良かったのか」

 

ガルシルドの言うことを聞いていれば家族は…そう、考えてしまう自分がいる

 

 

にこ「あなたたちは何も分かってないわ」

 

ロニージョ「あなたに何がわかるの!?恵まれた環境で生活してきたあなたに…私たちの何が分かるっていうの!!?」

 

にこ「…家族の想いよ」

 

ロニージョ「………家族の、」

 

にこ「私にも兄弟がいるわ。1番上の私が世界大会に出ている間、チビたちは寂しい思いをしているはずよ」

 

にこ「でも、それでもチビたちは私を世界大会に送り出してくれた。なぜだかわかる?」

 

ロニージョ「………」

 

にこ「自分たちのことよりも、私がサッカーで活躍する姿を見たいからよ。兄妹のその想いがあるから、私は頑張れる」

 

きっとあなたたちの家族もそう。

にこはそう言い切った。

ロニージョに、ブラジル代表のそれぞれの選手にサッカーをさせてやりたい。活躍が見たい。だからこそ、家族は大会へと送り出したはずなのだと

 

 

妹「しっかりしろー!姉ちゃん!!」

 

ブラジル「「「!!!」」」

 

妹「私は…かっこいい姉ちゃんが見たいんだ!!!」

 

ラガルート「…!」

 

ロニージョ「ラガルートの…」

 

観客席から飛ばす声。そして想い。

確かに、にこが言った通りだった。

今テレビで自分たちの試合を見ている家族はどう思っているのだろうか。どうして、今までサッカーを続けることを許してくれたのか

 

 

ロニージョ「……私たちは勘違いしてたみたい」

 

あの日、家族が自分たちを送り出してくれたのはサッカーで輝く自分たちを見たかったから。

楽しんで欲しい。勝って欲しい。

先程まで気にしていたことが嘘のように、血が騒ぐ。希望が湧いてくる

 

 

ロニージョ「やろう!私たちザ・キングダムの本当のサッカーを!!!!」

 

ブラジル「「「おーー!!!!」」」

 

 

 

 

にこ「…私たち、余計なことしたかしら」

 

梨子「そんなことないと思います。ただ…」

 

ツバサ「ディフェンス。忙しくなるわね」

 

善子「望むところよ。どんと来なさい」

 

穂乃果「よーし!サニデイジャパンも気合い入れていくよー!!!」

 

日本「「「おーー!!!!」」」

 

 

 

 

―――

 

 

 

A『さあ、逆転されましたザ・キングダムの攻撃で試合再開です!!』

 

 

ピーーッ!!

 

 

美奈「……動き出すわね。最強が」

 

 

 

 

ロニージョ「へへっ!」

 

穂乃果「…??」

 

ボールを受け取ったロニージョ。

その顔には迷いなど一切ない。

楽しい!そんな感情が溢れだしている。今にも踊り出しそうな…いや、

 

 

ロニージョ「〜♪」

 

日本「「「!?!?」」」

 

既に、踊り始めていた

 

 

A『ロニージョ、軽快なステップで踊り出した!?』

 

 

ルビィ「…!」バッ

 

ふざけているわけではない。

それが分かったからこそ、ルビィはロニージョからいち早くボールを奪いに近づいた。

私は今楽しんでいる。もっと楽しませろ。

ロニージョからは…そんなオーラが溢れだしている

 

 

ロニージョ「これならどう♪♪」

 

ルビィ「!?」

 

にこ「あれは…!?」

 

 

A『おおっとこれは!?まるでボールが踊っているようだ!!!』

 

 

ボールが足にから離れない。

どこかへと飛んでいきそうな蹴り方をしているはずなのに、ボールが自らその場に留まろうと動いている

 

 

ルビィ(足をだせばっっ!!)バッ

 

ロニージョ「〜〜♪」

 

ルビィ「」スカッ

 

まるでボールが自ら避けるかのように

 

 

ロニージョ「!!」パス

 

ルビィ(完全に…遊ばれた!?)

 

 

レオナルド「〜〜♪♪」ポンポン!

 

お次はリフティング。

リズムに乗りながらボールを体で弾ませ、踊る

 

 

ツバサ「もらったわ!」バッ

 

レオナルド「〜〜♪」クルッ

 

ツバサ「」スカッ

 

背中、足、頭。

様々なポーズや動きと組み合わせボールを動かす。ボールは転がり続けている。

だがそこは地面では無い。人間の、体の上で

 

 

ツバサ「まさか…私が遊ばれるとはね」

 

レオナルド「〜♪」ポンポン!

 

 

A『なんと!?ザ・キングダムのプレーが明らかに変わった!!!』

 

レヴィン『前半の規律の整ったチームプレーでなく、個人技で相手のディフェンスを突破していく…これこそがザ・キングダム本来のサッカーでしょう』

 

 

レオナルド「パスよ!」パス

 

ツバサ「っっ!!」

 

ザ・キングダムのFW、ガトにボールが渡る。対するは闇の人格のままの千歌

 

 

チカ「やっとやる気になってくれたよ…」バッ

 

闇の人格ということは闇の力を随時発動しているということ。千歌の体は闇の力に耐えられるようになり、身体能力も爆発的に上昇する

 

 

ガト「―――!」バッ

 

チカ「空中かぁ…たたき落としちゃうよ♪」

 

ガト「どうかな?」

 

チカ「は──────バッバッバッ!!

 

チカ「!!!!」

 

ガト「【スーパーエラシコ】」

 

チカ(空中で高速のエラシコ…!?!?)

 

あのチカでさえ反応出来なかった"スーパーエラシコ"。

エラシコとは足先でアウトにかけた瞬間にインサイドに切り返すフェイントを意味する。

魔法のフェイントと呼ばれる高度な技だが、それを…軽く空中でやってのける

 

 

チカ「ちっ…まだまだ!!!」バッ

 

ガト「ロニージョ!」パス

 

DFの隙間をボールが刺す。

パスを受けたのはクイーンオブファンタジスタ。いつでも対応できるように穂乃果はすでに構えている。

それでも…安心することは無い、ロニージョの圧倒的な存在感

 

 

穂乃果「来い!!ロニージョさん!」

 

足で巧みにボールに回転をかけていく。

踊るロニージョに呼応するボールはまるで魂が吹き込まれたかのように自ら踊り暴れる。

 

────数え切れないほどのゴールを破ってきた王者のシュート

 

 

ロニージョ「【ストライクサンバV2】!!」ドガァン!

 

穂乃果「【ゴットハンド───────

 

──────X】っっ!!!!」ドォン!

 

炎のゴットハンドでがっちりと受け止めたボール。しかし、異変は直ぐに起きた

 

 

穂乃果「!?!?(ボールが…!!)」

 

穂乃果の手の中で暴れるボール。

受け止めても威力が落ちる気配がない。まるで生き物が暴れているかのように、跳ね除けて先へと進もうとする勢いとパワー

 

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!

 

 

穂乃果「くっっ…!!」

 

 

ピピーッ!!!

 

A『ザ・キングダム、サニデイジャパンに追いついたぁぁ!!!!』

 

 

理亞「…"ストライクサンバ"が進化した、」

 

聖良「心を覆っていた霧が晴れたことで、新たな力を生み出すきっかけになったのでは…」

 

ザ・キングダムの圧倒的なサッカーに言葉を失う日本ベンチ。

相手のチームの力を引き出してしまうのは穂乃果たちらしいが、世界で一番目覚めさせてはいけない猛獣を目覚めさせたのと同じ

 

 

穂乃果「…"ゴットハンドX"が完璧に破られた。これが本当の力…」

 

大会得点女王も伊達じゃない。

強い。ものすごく強いが尚更。ロニージョのシュートを止めたい気持ちが高まっていく

 

 

ロニージョ「本気になった私たちを止めることは出来ないよガール!」

 

穂乃果「私たちだって負けない!」

 

 

ここで穂乃果の脳内に美奈の言葉が呼び起こされた。

 

美奈『この試合、穂乃果ちゃんは"ゴットハンドX"を完成させなければ勝てない』

 

穂乃果「………」

 

その理由がこれでハッキリとわかった。

あの暴れるようなシュートを止めるにはもっと強力なパワーが必要なのだと。

そのためにも"ゴットハンドX"の完成…しかし、

 

 

穂乃果「どうすれば…いいの」

 

 

 

 

 

ピーーッ!!!

 

試合は振り出しに戻った。

しかし、ブラジル代表の勢いが収まることは無い。

普通に真正面から勝負をしたのでは日本が圧倒的に不利だ。しかし、日本はその"普通"を変える力を持っている

 

 

にこ「これよ…!これが私が目指したあなたたちのサッカー!!」バッ

 

プレザ「行かせない!!」

 

矢澤にこの持てる力。

それ全てをこの試合で出し切る覚悟

 

 

にこ「―――っっ!!」ババッ!

 

プレザ「なっ!?」

 

 

A『なんという動き!!矢澤にこがザ・キングダムに対抗しパフォーマンスで翻弄します!!』

 

レヴィン『NT(ノータッチ)で高難易度のフリースタイル技を組み合わせる…"日本のファンタジスタ"も素晴らしいです』

 

 

にこ(ウォーク、レビオダ、フェアーを全部混ぜ込んだ!!これなら─────バチッ!

 

にこ「っっ!!?」

 

ボールが―――にこの足から離れていく

 

 

プレザ「ロニージョの相手してれば簡単に取れる」

 

にこ(マジ………で??)

 

 

A『しかしプレザ選手がボールをカット!!矢澤にこのテクニックが不発です!』

 

A『零れたボールを拾ったのは高海千歌!!』

 

 

チカ「しゃんとしろ!矢澤っっ!!!」

 

にこ「!!」

 

チカ「自分を超えているチームだってことは分かってんでしょ!?」

 

にこ「…分かってるわよ!」バッ

 

チカの強引なドリブルがこの試合では武器になりそうだ。にこも後に続いてブラジル陣内へと攻め込む

 

 

チカ「【ストームゾーン】!!」ゴオォォ!!

 

ボルボレタ「くっ…なんてデタラメな技!?」

 

コルジア「吹き飛ばされる!!」

 

チカ「走れ走れ!!」パス

 

コートの中心で暴れていたチカ。

自分にブラジル選手を引き寄せ、薄くなったサイドにキラーパスを放つ

 

 

ツバサ「私なら―――取れるっ!!」バッ

 

 

A『厳しいパスでしたが綺羅ツバサが追いついた!!そのままサイドから駆け上がります!!』

 

 

ラガルート「っっ!!」バッバッバッバッ!!

 

梨子「ツバサさん!後ろから来てます!!」

 

ツバサ「な────「【ローリングスライド】!!」ドガッ!

 

ツバサ「くっっ!?!?」

 

ラガルートの必殺技は回避困難。

ルビィは一度タイミングを掴んだため回避出来たが、初めて受けるツバサは対応できず、

 

 

ツバサ「油断したわ…!」

 

曜「あの必殺技の避けるのは難しいよ…」

 

 

ルビィ「…やっぱりルビィが」

 

ダイヤ「ルビィ」

 

ルビィ「お姉ちゃん…?」

 

ダイヤ「わたくしに任せてください」

 

 

 

A『さあ、ボールを奪ったラガルート選手、パスでボールを繋ぎます!!』

 

 

ラガルート「レオナルド!」パス

 

レオナルド「よし…!」

 

ブラジル選手の動きにまだ対応できない日本。このまま逆転されるのも時間の問題…そんな中で1人の少女が立ち塞がる

 

 

レオナルド「黒澤ダイヤだね…!」

 

ダイヤ「わたくしをご存知ですのね」

 

 

A『"炎のストライカー"黒澤ダイヤが挑みます!!!』

 

レヴィン『ですが、彼女はディフェンスが得意、というわけではありません。ブラジル選手相手にどう戦うか…』

 

 

ダイヤ「はああっっ!」バッ

 

リフティングを始めたレオナルドに迷わず突っ込むダイヤ。当選、簡単に躱されてしまう

 

 

ダイヤ「」スカッ

 

ダイヤ「まだまだ!」バッ

 

レオナルド「そんなんじゃ私からは奪えないよ」ポンポン

 

ダイヤにしては珍しく、ガムシャラに同じことを繰り返す。突っ込んでは躱され、足を出して躱され、ボールを追い、何度も。何度も何度も

 

 

果南「…ダイヤらしくないね」

 

花丸「……ずら?」

 

果南「どうしたの?」

 

花丸「ダイヤさん…動きが速くなってるような…」

 

 

 

花丸が感じた違和感。レオナルドも感じ取っていた

 

 

レオナルド(ボールに食らいつくようになってる…??)ポンポン

 

ダイヤ「―――!!」バッバッ

 

最初、ただ闇雲に突っ込んでいるのだと思っていた。しかしこの動き…まるで自分のダンスについてきているようだ。

ダイヤも踊っているように見える。そして少しずつ…リフティングに余裕が無くなって…焦りを見せた…時には───────

 

 

 

ダイヤ「貰いましたわ」

 

レオナルド「なっ!?」

 

ブラジル「「「!?!?!?」」」

 

 

A『な、なんと!?あのレオナルド選手からボールを奪った!!!』

 

レヴィン『黒澤ダイヤは何をしたんでしょうか…一瞬で加速したように見えましたが、』

 

 

ロニージョ「…!?」

 

ルビィ「……さすがお姉ちゃん」

 

 

幻覚なのだろうか??

黒澤ダイヤが熱を放ち始めている。

先程まで余裕で回避できたダイヤのディフェンス。それが徐々に余裕が無くなっていき、気づいた時には足からボールが消えていた

 

 

ダイヤ「踊りならば…わたくしも負けませんわよ」

 

レオナルド「踊り…?」

 

踊りは踊りでも可憐な舞。

風に溶け込み落ち葉のように揺れる、しかしその内に秘めた炎は舞えば舞うほど強くなる

 

 

ダイヤ「【ヒノカミ神楽】熱く行きますわよ」

 

 

 

ー 炎舞の快進撃が始まる ー

 

 

日本 2-2 ブラジル

 

 

 

 





2つ名の選手が増えたのでまとめてみました。
誰の2つ名が好きですか?ルビィちゃんキャンディーは当然『紅き流星』

高坂穂乃果『太陽の守護神』
高海千歌『太陽の跡目』
園田海未『武風神』
南ことり『ルーラ・オブ・スペース』
桜内梨子『旋律の指揮者』
渡辺曜『フィールドのマーメイド』
鹿角聖良『絶対零度の氷帝』
鹿角理亞『雪原の狼』
黒澤ルビィ『紅き流星』
津島善子『共鳴の堕天使』
黒澤ダイヤ『炎のストライカー』
松浦果南『海皇』
矢澤にこ『日本のファンタジスタ』
星空凛『雷虎』
綺羅ツバサ『ゴットストライカー』
優木あんじゅ『睡蓮の女神』
統堂英玲奈『皇帝』
渡辺月『月詠のストライカー』




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第3章 141話 「ブラジル戦 "赤い太陽のドレスで踊る"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
『タイガ・ザ・ライブ!〜虹の向こう側〜』を執筆されている蒼人さんが穂乃果ちゃんを描いてくださいました!!
https://syosetu.org/?mode=user&uid=138849


【挿絵表示】


第3章の74話と128話と139話にも新たに挿絵を出しました!




 

 

前回の、輝こうサッカーで!

家族の生活のことを考えてしまい、プレーに集中できないブラジル代表。しかし家族の本当の願いはロニージョたちの本気のサッカーだということが分かった。

そこから圧倒的な強さを見せるザ・キングダム。対するサニデイジャパンは炎舞の使い黒澤ダイヤが先陣を切る

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

"ヒノカミ神楽"

 

 

 

 

黒澤家の血は舞いに共鳴し、発動者に爆発的な身体能力を与える。しかしその黒澤家の中でも選ばれた者のみに与えられる力。

2代続けて完璧な発動者が現れなかった黒澤家。

しかし、2代の時を超え、黒澤ダイヤが炎炎に。世界の頂点をかけたこの場で―――

 

 

ダイヤ「"舞い"ります」ボオッッッ!!

 

レオナルド「速っ!?」スカッ

 

 

A『これは新たな必殺技か!?黒澤ダイヤが炎を纏いながらレオナルド選手を躱します!!!』

 

 

先程までのダイヤとは明らかに違う。

ブラジルの選手たちは身構えるもすでに手遅れ

 

 

コルシア「行かせな──「っっ!!」ボオッッッ!

 

プレザ「まずい!?止められ───「!!」ボオッッッ!

 

あまりの速さに零れた炎だけしかその目で捉えることができない。

"熱"がすぐ横を通り過ぎ、それがボールを持つダイヤだと抜かされてから気づく

 

 

バーグレ「ちょっと…どんどん速くなっていくよ!?」

 

ラガルート「引いちゃダメ!!DF全員で抑えれば──────

 

 

──────ボオッッッ!!!!!!

 

 

フォルミカ「あ、熱い!?!?」

 

モンストロ「ダメだ!!黒澤ダイヤの姿が見えない!!!」

 

ラガルート「まさか…"陽炎"!?」

 

陽炎とは局所的に密度の異なる大気が混ざり合うことで光が屈折し、起こる現象。"蜃気楼"とも呼ばれる。

ダイヤは自信の放つ熱で周囲の大気の密度を変化させ、姿をもやもやとゆらめきさせる。

 

つまり、相手の視覚を惑わす

 

 

ダイヤ「【炎・陽炎の幻惑】」

 

園田弥生との特訓の成果だった。

"ヒノカミ神楽"の精度を高める道中で得た副産物。"その場にいるようでいない"。"まだ抜かされていないようで抜かされている"。

連発は厳しいがそれをもカバーできるほどの技だった

 

 

レヴィン『幻惑を見せて突破する…黒澤ダイヤの得意とする技ですね』

 

A『ザ・キングダムは誰も反応できない!!最終ラインを越え、黒澤ダイヤがGKと1対1!!!!』

 

 

ダイヤ「ふぅ────っっ!!決めます!!」

 

 

海未「撃てる…ダイヤ!!」

 

果南「ぶちかませっっ!!!!」

 

舞いの炎を左足に集め、大剣を精製。

自身の身長の何倍もあるであろうその剣を一閃。全力で振り切る

 

 

ダイヤ「【炎・マキシマムファイ―――

 

 

―――ストライクサンバV2】」バキィィン!!

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

ダイヤ「なっ!?!?」

 

 

A『ロニージョが来たあぁぁぁ!!!クイーンが譲らない!!!!!!』

 

 

ダイヤと同時にボールに蹴りを入れたのはクイーン・オブ・ファンタジスタ。

彼女が何故ボールを抑えることができたのか。理由は簡単だが、行動したと考えると血の気が引いた

 

 

ロニージョ「いくら幻惑でもっっ…シュートを撃つ瞬間は実体じゃなきゃね!!!」グググ…

 

ダイヤ("陽炎の幻惑"の弱点をこの数秒間で…!?)グググ

 

ロニージョ「頼むファルカオ!!」バキィィン!

 

しかし、いくらロニージョでも自強化を重ねたダイヤのシュートには勝てなかった。

それでもシュートの威力を削るという役目は大いに果たしたと言える。その証拠に、

 

 

ファルカオ「【カポエィラスナッチ】!!」バッ!

 

ボールはGKの頭の上

 

 

A『止めたぁぁ!!これはロニージョ選手のナイスブロック!!サニデイジャパンは決めきれません!』

 

 

穂乃果「おしい…!!」

 

善子「…やっぱり一筋縄じゃいかないわよね」

 

 

ルビィ「……」

 

ルビィ「っっ!!!!」ドォン!!

 

ロニージョ「…!!」

 

ルビィは"Awaken the power"を発動。

ボールを持つロニージョの元へ、ゆっくりと歩を進めていく。

対するロニージョは受けて立つと言わんばかりにその場で待つ

 

 

ルビィ「………」ググググ!!

 

曜(あの構え…!)

 

ルビィの強力な必殺技の1つ、"スプリントワープ"。高速移動による突破だけでなく、翻弄からのボール強奪も可能なその技

 

 

ルビィ「【スプリントワープGX】!!」ビュン!!

 

 

A『"紅き流星"が仕掛けた!!!』

 

 

星が流れるようなスピード。

紅く燃えるそれはまさに紅き流星。

勝負をしようとしたロニージョも一瞬躊躇ったほどの速さ

 

 

ロニージョ(黒澤ダイヤよりも速い…)

 

速いからこそ、疑問に思った。

何故すぐに奪いにこないのか?来たら躱すまでだが、先程から自分の周りを翻弄するように駆け回っているだけ

 

 

ルビィ「―――!!」ビュンビュン!!!

 

ロニージョ「……」

 

─────まるで何かを待っているかのような

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「【ヒノカミ神楽】」ボオッッッ!!

 

ロニージョ「!!!!」

 

それを理解した時には―――もう遅かった

 

 

ガト「ロニージョが囲まれた!?」

 

レオナルド「ルビィは最初から時間稼ぎを…!」

 

 

ルビィ「行くよ。お姉ちゃん」ゴゴゴゴ

 

ダイヤ「ボールは返してもらいますわ」

 

 

A『炎の黒澤姉妹がロニージョ選手を完全包囲っっ!!!!』

 

レヴィン『姉妹ならではの連携…これはフィジカルで優位なザ・キングダムの選手でも突破は厳しいですよ…!』

 

 

 

にこ以上のテクニック、フィジカルを持つザ・キングダム。真正面から戦うのは得策とは言えない。

 

 

それが1対1の場合なら、

 

 

 

梨子「やることはスペイン戦の時と同じです。相手よりも枚数を増やせばいいだけ」

 

ツバサ「ブラジルは究極の個人サッカー…2人で組めば数的優位は完成するのね」

 

ダイヤのシュートがブロックされた時、梨子は"神のタクト"でその指示を全員に出していた。

指示を受け取ったルビィは数的優位を作るためにダイヤが追いつくまで時間稼ぎ。

いくら最強のブラジルとはいえ、自強化した選手2人相手では―――

 

 

ダイヤ「【炎・ラ・フラム】!!」ボオッッッ!

 

ロニージョ「炎の壁っっ!?」

 

ルビィ(動きが止まった―――

―――イグナイトスティール】!!」ズザーッ!

 

ロニージョ「ぐっ!?しまった…」

 

 

A『炎の黒澤姉妹が奪ったぁぁ!!!!ロニージョ選手を踊らせる隙さえ与えないディフェンス!!』

 

レヴィン『ゴールはすぐそこ。チャンスですよ!』

 

 

にこ「よーし!!奪ったわよ!!」

 

梨子「撃てます!ルビィちゃん、ダイヤさん!」

 

シュートを撃てる場所まで来た。

先に動いたのは―――ダイヤ

 

 

ダイヤ「ルビィっっ!!!!」ボオッッッ!!

 

 

A『黒澤ダイヤが"ラ・フラム"を発動!!"マキシマムファイア"か!?』

 

 

ルビィ「うん…!はああああっっ!!!!」バッ

 

ダイヤの"ラ・フラム"の炎。

そして自身のATPのオーラをボールに流し込む。灼熱のオーラによりボールは太陽のように熱く輝き、2人は同時に空高く飛んだ

 

 

理亞「ちょっ!?何よあの技!?」

 

聖良「私たちの"氷結のグングニル"を見て、自分たちも新必殺技をと言っていました…まさか完成させていたとは」

 

理亞「新必殺技…!!」

 

 

ダイヤとルビィはボール目掛けて急降下する

 

 

ダイヤ「タイミングは同時ですわよ!!」

 

ルビィ「ルビィたちなら出来る!!」

 

目指すは灼熱のボール。

少しでもタイミングがズレればこの技は成功しない。だが…何故だろう。失敗する気がしない

 

 

ダイヤ、ルビィ「「はああああっっ!!!!」」

 

過去から今まで、近づいたり離れたりを繰り返したルビィとダイヤ。

何度絶望し、諦め、逃げ出したのか。

でも、もう怖くない。何もかもが

 

 

 

 

 

──────ズバッッッッ!!!!!!

 

蹴りこんだのは2人。

しかし、空気を切り裂いたような音は一度のみ

 

 

ルビィ、ダイヤ「「……」」

 

地面に着地した2人はゆっくりと立ち上がる。ボールは遅れて放たれる。

今にも破裂しそうな────赤い─────赤い太陽の───────

 

 

ルビィ、ダイヤ「「【インフェルノフェニックス】」」

 

 

 

─────ドガアァァァァァン!!!!!!

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

ブラジル「「「!!!!!!」」」

 

 

A『これは…!?凄まじいシュートだぁぁ!!』

 

 

ファルカオ「くっ…【カポエィラスナッ―――きゃっ!?!?

 

 

―――バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

ピピーッ!!!!

 

 

A『ゴール!!!!再び日本がリード!!なんて素晴らしいシュート!!!』

 

レヴィン『鹿角姉妹の"氷結のグングニル"に近いパワーを感じました。まさに、氷の姉妹、炎の姉妹の必殺技。と言ったところでしょうか』

 

 

ダイヤ「ハァハァ…る、ルビィ…!」

 

ルビィ「お姉ちゃん…やったね!!」

 

 

ロニージョ「ごめん、完全に油断した」

 

ラガルート「いや。日本が急にディフェンスの枚数を増やした。作戦に引っかかった私たちも悪い」

 

レオナルド「でもこれで、私たちも黙ってはいられなくなったね」

 

ロニージョ「…私たちも勝ちたい。その気持ちは絶対に負けないんだ!!」

 

 

 

A『さあ、追加点を加えたサニデイジャパン!!ザ・キングダムはどう動くのか!?』

 

 

ピーーッ!!!!

 

日本がブラジル相手に3点。

アジアの、今まで無名に近かったチームがこれほどまでのサッカーを??

 

 

ガト「行くよ。ロニージョ」

 

ロニージョ「ええ!」

 

だが、認めなければならない。

今このチーム以上に自分たちの驚異となる存在はいないのだと

 

 

にこ「ディフェンス!!」

 

曜、チカ「「!!」」バッ

 

ならば──────────

 

 

 

 

ズババババババッッ!!!!!!!!

 

 

曜「―――!?」

 

チカ「なっ!?!?」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

─────その全力に、全力を持って応えん

 

 

英玲奈「スピードがさらに上がった!?」

 

聖良「このままでは…ディフェンス!!すぐに入って!!!!」

 

ザ・キングダムの変化に聖良は叫んだ。

もちろん異変を察知した日本の選手たちは数的優位の状況を作るために走る。しかし、

 

 

ロニージョ「―――!」パス

 

ツバサ「―――!?速くなってる!?」

 

梨子「2人が囲む前に!?」

 

個人プレーもそうだが、パス・ドリブルのテンポが明らかに上がった。

日本の選手たちが判断・行動する前にブラジルは動いている

 

 

ガト「【スーパーエラシコ】!!」バッバッバッ!

 

あんじゅ「まずっ…速っ!?」

 

ことり「間に合わないよぉ!?」

 

日本の最終ラインが数秒で突破されようとしていた。だが、残す一人はDFの要

 

 

善子「勝負よ!!ロニージョ!!!」

 

 

A『津島善子がロニージョ選手に挑みます!!果たして共鳴は"クイーン・オブ・ファンタジスタ"を抑えることができるのか!?』

 

 

プレザ「ロニージョ!!」パス

 

ロニージョ「―――!」

 

善子とロニージョの1対1。

今までに善子の共鳴は幾多の強豪を打ち破ってきた。

相手の動きに反応し自身の体を動かす。どんなに完成された選手でも…この共鳴に打ち勝つことは、

 

 

善子「【Deep Resonance】!!」バッ

 

ロニージョ「………」バッ

 

同時に飛び出す。

善子が足を伸ばしロニージョの回避の誘う。どんなにキレのある動きをしても―――

 

 

ロニージョ「―――!」バッバッバッ!!

 

善子「………?」バッバッ!

 

 

しても―――

 

 

ロニージョ「―――!!」バッバッバッ!!

 

善子「あれ、追いつけn―――スカッ

 

 

善子の足が空を蹴る

 

 

善子「―――は??」

 

日本「「「!?!?!?」」」

 

にこ「あの、"Deep Resonance"が…」

 

 

会場に―――どよめきが起こった

 

 

A『津島善子の共鳴で…奪えない!?!?』

 

レヴィン『…これは、』

 

 

善子「う、嘘よ!!【Deep Resonance】!」

 

ロニージョ「…確かにすごいよ。あなたのその技。でも」

 

 

レヴィン『共鳴で反応されても…ロニージョ選手は対応できる技術を持っている、としか』

 

 

ロニージョ「 私 の 方 が す ご い 」

 

善子「!?!?……なっ!?」

 

共鳴はATPやゾーンのような自強化では無い。あくまでも体が反応し対処するだけ。

人を超えたようなスピードを出すことはおろか、パワーも増やすことはできない

 

 

A『ロニージョ、高坂穂乃果と1対1!!!』

 

 

ロニージョが共鳴に勝てる理由。

それは善子が足をボールにまで伸ばすのに1秒、物理的にかかるとする。

対してロニージョは1秒未満、0.5秒で本能的に判断し行動、回避することが出来る。

つまり、

 

 

ロニージョ「【ストライクサンバV2】!!」ドガアァン!!

 

物理的に善子を超えた存在。

それがロニージョ。最も完成されたプレイヤーの正体

 

 

穂乃果「【ゴットハンド───────

────────X】っっ!!」ドォン!!

 

善子の共鳴より、人間の能力的に速いのだ。

共鳴を超える人間…津島善子の限界だった

 

 

穂乃果「うわっっっ!?!?」バリィィン!!

 

 

―――バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

A『ロニージョ、ハットトリック達成っっ!!一方が攻めればもう一方が攻め返す熱い攻防!!!!』

 

 

穂乃果「ハァハァ…!!やっぱりすごいや…ロニージョさん!!」

 

善子「ご、ごめんなさい…穂乃果さん」

 

穂乃果「大丈夫!試合はまだまだ終わらないよ!」

 

何とかチームを盛り上げようとする穂乃果。

しかし、この中で一番焦りを感じていたのは穂乃果自身だった

 

 

穂乃果(このまま"ゴットハンドX"が完成しなければ…負ける)

 

手探り状態だった。

特訓はたくさん重ね、方法もかんがえた。それでもあと一歩、何かが足りない。

そんな穂乃果が先程3点目を決められた時、少し違和感を覚えていたのだった

 

 

穂乃果「…"ブラックシールド"に、何かヒントがある気がする」

 

 

 

ブラジルの本気のサッカーを相手に同点としている日本。しかし、流れはほぼブラジルと言っても良い

 

 

美奈「…ブラジルは急いでいるわ」

 

希「何をですか?」

 

美奈「日本は今までの試合、ずば抜けた対応力で危機を乗り越えてきた…ブラジルも危険視しているはずよ」

 

希「じゃあ、日本がブラジルに対応する前に…」

 

美奈「ええ。勝負をつけに来るわね」

 

 

 

 

ブラジル「「「【アマゾンリバーウェーブ】!!」」」

 

ロニージョ「これが本当の必殺タクティクスよ!!!」

 

チームが一つになった"アマゾンリバーウェーブ"は前半とは威力が別次元。

日本の選手は為す術なく飲み込まれ、ブラジル代表の独壇場となる

 

 

ロニージョ「レオナルド!!」パス

 

 

A『レオナルド、日本のDF陣も抜き去り高坂穂乃果と1対1だぁぁぁ!!!!』

 

 

レオナルド「ガト、行ける!?」

 

ガト「いつでも!!」

 

強力なシュートを放てるのはロニージョだけでは無い。同じブラジル代表のFWとして、ロニージョ、仲間から託されたボールに全力の一撃を―――

 

 

レオナルド、ガト「「【デスサンバ】!!」」ドガアァン!

 

 

穂乃果「……やるしかない」

 

前半の時にガルシルドの手によって暴走状態に陥った穂乃果。

その際に過去、まだ闇の力をコントロール出来ていない時に使用していた闇の必殺技を咄嗟に発動していた

 

 

ホノカ「…【ブラックシールド】!!」

 

闇の力を限界まで溢れさせ、無数の闇の手でボールを包み込む。

完全に握り潰せたかと思いきや、ロニージョのシュートにも負けないぐらいのパワー

 

 

ホノカ「ぐっ…ぐぐぐ……」

 

この技に何か…見落としている何かがあるはずなんだ。

沼の中から出口の鍵を見つけ出そうとしているような無謀感。

穂乃果はそんなマイナスな感情を捨て去ろうと声を出しボールに立ち向かう

 

 

ホノカ(何か…!!何かっっ!!何かっっ!!!!何かっっ!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

『私みたいに頑丈なら、全然大丈夫なんだけどね』

 

 

 

ホノカ「……ぇ、」

 

 

 

 

『私みたいに頑丈なら、全然大丈夫なんだけどね』

 

 

 

ホノカ(誰……だっけ、)

 

 

 

『私みたいに頑丈なら、全然大丈夫なんだけどね』

 

 

 

 

ホノカ「―――これって……うわっっっ!?

 

 

 

―――バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

ピピーッ!!!!

 

 

日本「「「………!!」」」

 

 

A『ザ・キングダム…逆転!!!!これが王者のサッカーなのか!?勢いが止まりません!!!!』

 

 

花陽「……あっという間に逆転、」

 

凛「強、過ぎるにゃ…」

 

花陽「ブラジルには…やっぱり、」

 

美奈「まだよ」

 

「「「!!!!」」」

 

真恋「美奈…?」

 

美奈「どうやら…見つけたみたいね」

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果「……これだ」

 

 

 

 

日本 3-4 ブラジル

 

 

 




「陽炎の幻惑」
黒澤ダイヤちゃんのオリジナルドリブル技です。自身の幻惑を見せて相手を混乱させる技となっています。

「インフェルノフェニックス」
ルビィちゃんとダイヤちゃんの合体必殺技です。鹿角姉妹の『氷結のグングニル』から刺激を受け、新たな2人シュート技を完成させました。技の流れは地の文を参考に。いつか絵で分かりやすく描きたいな



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第3章 142話 「ブラジル戦 "仲間のおかげで"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
千歌は今のところずっと闇チカちゃんですのでご注意を。

「タイガ・ザ・ライブ!〜虹の向こう側〜」を執筆されている蒼人さんが穂乃果ちゃんの挿絵を再び描いてくださいました!!

https://syosetu.org/?mode=user&uid=138849

{


 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ダイヤのヒノカミ神楽。ルビィのAwaken the power。そして新たな2人の必殺シュート「インフェルノフェニックス」で逆転したサニデイジャパン。しかし、ザ・キングダムの圧倒的なサッカーにより、一瞬にして流れがブラジルへ。状況は変わりブラジルがリードすることとなった。そんな中、穂乃果がゴットハンドX完成の手がかりを見つける…?

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

歓声が響き渡るスタジアムで高坂穂乃果は1人、試合から意識を離していた。

記憶の片隅の―――ほとんど忘れたような会話。それが突然頭の中で意識を支配するまでに膨れ上がり…今はそのことしか考えられなかった

 

 

穂乃果「分かった。私に足りないもの、必要なもの」

 

しかし、必要なものに気付いたとしても。

それが成功する確証は無い。それどころか練習無しで成功させようとする事自体、無謀

 

 

穂乃果「…ことりちゃん」

 

ことり「??」

 

穂乃果「お願いがあるの」

 

 

 

 

A『さあ、後半も折り返し!!ザ・キングダムがリードしていますが白熱したシーソーゲーム!!!』

 

レヴィン『しかしブラジルが優勢ですね。今の流れのままでは日本の逆転は…厳しいでしょう』

 

 

にこ「ゼェゼェ…やっぱり強いわね」

 

梨子「……」

 

3点目と4点目。その失点の責任を、梨子は強く感じていた。

スペイン戦の時と同じ数的優位戦法を仲間に指示し、ブラジルを抑えようとしたが甘かった。自分の指揮が間に合わず、数的優位が完成する前に突破される…

それは選手たちの動きが遅いのではなく自分の指示が遅いから

 

 

ツバサ「梨子。今落ち込んではダメ。ブラジル相手への指揮には限界があるわ。私たちもできる限りサポートする」

 

梨子「…はい」

 

そんな悪い空気の中だった。

ことりが自分のポジションから外れ、梨子たちの元へと走ってきていた

 

 

ことり「梨子ちゃん、にこちゃん…!」

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

にこ「全員、集まったわね」

 

その後すぐににこはフィールドにいる日本の選手たちを全員集合させた。

試合再開まで時間もない。単刀直入に話し始める

 

 

にこ「ここから穂乃果が"ゴットハンドX"を完成させる」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

にこ「でもそのためには時間がかかるらしいの。だから私たちはそれまで―――ディフェンスに徹底するわ」

 

曜「ち、ちょっと待って!?私たちが負けてるのに守りって…」

 

ルビィ「それってさっきまでのブラジルと同じことじゃないの??全力で戦わなきゃ、言ったこととやってることが矛盾しちゃうんじゃ…?」

 

にこ「分かってるわ。消極的な試合にはしないわ。ルビィ、ダイヤ。あなた達はそのまま攻撃を続けて」

 

にこ「攻撃型MF3人。あなた達は守備よ」

 

攻撃に参加するのはFWのルビィとダイヤのみ。残りの6人はゴールを死守する。

確かにブラジルには全力のサッカーを訴えた。だが、日本の全力のサッカーとは全員で攻め、暴れ、走るだけでなくその状況に応じて戦い方を無限に変化させる。

 

それが日本のサッカー

 

 

あんじゅ「穂乃果ちゃんが"ゴットハンドX"を完成させれば…後は攻撃に全力を注げるわね」

 

善子「やってやるわ…どちらにしろ無理しなきゃこの試合勝てないもの」

 

にこ「行くわよ…!!ここから失点なし!!穂乃果を信じて、ゴールを死守するわよ!!!」

 

日本「「「はい!!!!!!」」」

 

 

チカ「……」

 

 

 

A『さあ、まもなく試合再開です!!!!』

 

 

ピーーッ!!

 

―――笛と同時に、穂乃果が動いた

 

 

ホノカ「はああっっ!!!」

 

ブラジル「「「!?!?」」」

 

 

A『おおっと!?高坂穂乃果、笛と同時に漆黒のオーラを放ち始めた!!!』

 

レヴィン『日本の攻撃中にオーラを…?気になりますね』

 

 

海未「穂乃果…何を!?」

 

美奈「……」

 

"ブラックシールド"発動時と同様に、可能な限り闇のオーラを放出させる穂乃果。

目を閉じて意識を全て力のコントロールに向ける。その行動から日本のゴールは、

 

 

ー完全無防備ー

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!」パス

 

ラガルート「今ボールを奪えばゴールが隙だらけだよ!!!!」

 

ブラジルも穂乃果の異変にはすぐに気づいていた。そして、それが自分たちにとって勝利を決定づける最高のチャンスであることも

 

 

コルジア「貰った!!」ズザーッ!

 

ダイヤ「ハァハァ…【ヒノカミ神楽】っっ!!」

 

コルジア「なっ!?」スカッ

 

 

A『黒澤ダイヤがコルジア選手を躱す!!』

 

 

 

ルビィ「…」

 

ルビィ("ヒノカミ神楽"は燃費が悪すぎる…)

 

強力な技だが早くも疲れを見せているダイヤ。このまま"ヒノカミ神楽"を発動し続ければ試合終了まで体力が持たない。

 

FW2人だけで攻め続ける。

これが吉と出るか凶と出るか

 

 

ラガルート「―――!!」バッバッバッ!

 

ルビィ「お姉ちゃん!!避けてっっ!!」

 

ダイヤ「ハァハァっっ…!?―――――

 

 

――――ローリングスライド】!!」ズザーッ!

 

ダイヤ「くっ!?」

 

 

A『ラガルート選手がボールを奪ったあぁ!!そのまま前線へパスが出される!!』

 

 

ラガルート(やっぱりあの技は出だしに弱い…!!)

 

ラガルートは気づいていた。

"ヒノカミ神楽"が特定の動きを重ねれば重ねるほど身体能力が向上することを。

ならば身体能力が上がりきっていない最初で仕留めればいい。"ヒノカミ神楽"最大の弱点だった

 

 

ロニージョ「このまま一気に……」

 

曜「行かせない!!」

 

ツバサ「…!」

 

ロニージョ「!?」

 

ロニージョ(MFの選手が下がってきている??)

 

 

A『サイドハーフの渡辺曜と綺羅ツバサがディフェンスに入ります!!!!』

 

レヴィン『…妙ですね』

 

A『何か気になることが…?』

 

レヴィン『日本の選手の戻りがいつもよりも速く感じました…いや、最初から守備に備えていたような…』

 

 

ブラジル代表の選手たちもまた、日本の選手の動きの変化に気づいていた

 

 

レオナルド「プレザ!こっち!」

 

プレザ「レオナ―――「たあぁぁっっ!!」バッ

 

プレザ、レオナルド「「!?!?」」

 

 

A『プレザ選手のパスを矢澤にこがカット!!』

 

 

プレザ(急にディフェンスが厳しくなった…?)

 

レオナルド(作戦なのかな…)

 

パスコースは潰され、ドリブルは数的優位戦法により思うように出来ない

 

 

レオナルド「ガト!撃てる!!」

 

ガト「でりゃあっっ!」ドガァン!!

 

動こうとしない穂乃果。

ボールはゴールへと吸い込まれる…はずが、

 

 

あんじゅ「っっ!!」バギッ!

 

ガト「な!?」

 

 

A『優木あんじゅがシュートをブロック!!日本、ピンチを凌ぎます!!!』

 

 

シュートをブロックするDF。

守備に加わるMF。

日本は負けている状態で守りを固めてきた??

しかし、自分たちのように本気から逃げるためのサッカーをしているようには見えなかった。ならば何故?動かない高坂穂乃果と関係があるのか?

 

 

ロニージョ「…強引に突破しよう」

 

相手が守備を強化したのならば、それを上回る火力の技で越えればいい。

巨大な激流を巻き起こし、サニデイジャパンの選手たちを飲み込んでいく

 

 

「「「【アマゾンリバーウェーブ】!!!!」」」

 

 

にこ「やばっ!?曜、止めるわよ!!」バッ

 

曜「はい!!!」バッ

 

タイミングを見計らい、自ら波へと向かっていくにこと曜。

今、このタクティクスで攻め込まれれば完全に突破される。穂乃果はまだ動けない。

ザ・キングダムの動きを見切ればボールは奪えるかもしれない

 

 

曜(タイミング……ここだっっ!!)

 

にこ(もらった!!!)

 

このまま突っ込めばボールに触れる。

しかし、ザ・キングダムのタクティクスに抜かりはない。タイミングをずらすことなど―――造作もないこと

 

 

―――ザバァァァァァン!!!!!!

 

にこ、曜「「!?!?」」

 

 

A『矢澤にこと渡辺曜も突破される!!日本、再び大ピンチか!?!?』

 

 

1人飛び出したロニージョが構える。

これ以上の失点は許されない。しかし、"アマゾンリバーウェーブ"によって崩された日本陣営ではロニージョを止めることは出来ない

 

 

ロニージョ「【ストライクサンバV2】!!」ドガァン!

 

シュートが放たれた瞬間。

ボールの目の前に飛び込んだ選手がいた

 

―――バキイィィィン!!!!

 

何かが砕けるような音が響く。

しかしそれは強烈な衝撃同士がぶつかり合う音。

砕けるのでは無い。

砕く気持ちでシュートにぶつかる

 

 

ことり「【ワンダフルラッシュ】!!」ググググ

 

海未「ことり…!!」

 

希「ナイスや…!ブロック行ける!!」

 

ことりはイギリス代表エドガーの"エクスカリバー"と競り合ったほどのキック力を持つ。

サニデイジャパンの中でもトップクラスであろうそのパワー。

ことり自身、フルパワーならば何とかなるのではと考えていた。

しかし、

 

 

ことり(ボールが…暴れるっっ!?)

 

ことりの蹴りに負けじとボールが押してくる。完全に抑えることが出来ない。

今までの経験の中でこんなシュートを受けたのは初めてだった。

更に言うとロニージョのシュートは強烈なブレ球。肉眼でもはっきりと分かる軌道のズレにより、ことりの蹴りはボールにミート出来ていなかった

 

 

ことり「あっ!!」ガッッ!

 

日本「「「!!!!!」」」

 

結果、ボールはことりのブロックを逃げるような形で押し切ることとなった。

今穂乃果が構えても間に合わない。絶体絶命。日本の選手たちが、そう覚悟した

 

 

 

 

 

―――ドゴッッッッッ!!!!!!

 

 

チカ「まだまだぁぁぁっっ!!!!」ガガガ!!

 

「「「!!!!!!」」」

 

ホノカ「千歌ちゃん…!?」

 

 

A『高海千歌がブロックに入ったぁぁ!!ゴールギリギリで耐えます!!!!!』

 

 

チカ「いつまで突っ立ってるつもりなのっっ!?」

 

ホノカ「!!」

 

チカ「今はブラジルとの試合っっ!!!!そんなの試合前にやることだろ!!!!!!」

 

チカ「とっとと完成させなきゃ絶対に勝てない!!早くしないとチームが壊れるっっ!!!」

 

チカのブロックによりシュートの勢いは収まり始めている。

そして同時にチカの言葉が穂乃果に鋭く突き刺さっていた。全てその通りだった。

グループ戦の時には既に三浦和葉から警告を受けていた。"ゴットハンドX"を完成させる必要があると。

しかし、完成への道がわからずにただ闇雲に特訓するだけ。

 

今思いついたからと言って、それはチームに負担をかけていることを自覚しろ。

千歌は今の状況を、一番に理解していた

 

 

チカ「ハァハァ…ハァハァ…バケモン、シュートめ、」シュウゥゥゥ…

 

数メートルは押されたが何とか抑え切ったチカ。しかし、それだけでは終わらない

 

 

チカ「チカはやりたいようにやらせてもらうから♪」

 

ホノカ「…え」

 

チカ「守りなんかやってられないよ♪」バッ

 

 

A『高海千歌がドリブルで持ち込み始めます!!!!』

 

レヴィン『シュートブロックした後すぐに攻撃ですか…とてつもない体力ですね』

 

 

善子「ちょっ!?千歌!!作戦は!?」

 

チカ「〜〜♪」

 

善子「聞きなさいよっっ!」

 

FWの2人以外は守備。

それを無視しブラジル陣内へと突っ込んでいく千歌

 

 

にこ「あいつ…どうしようもないわね」

 

梨子「……違う」

 

にこ「え?」

 

 

チカ「おりゃあっっ!!」ドガッ!!

 

バーグレ「ぐっ!?なかなかいいタックルね…!!」

 

 

ダイヤ「ハァハァ…ルビィ、」

 

ルビィ「うん。千歌さんは…」

 

ボールを奪いに来るブラジル選手に自ら勝負を挑む。力でごり押し、仲間を無視しての全力疾走。そう周りからは見えるだろう

 

 

ラガルート「悪いけどボールは貰うよ!」バッバッバッ!

 

ラガルート「【ローリングスラ―――【ストームゾーン】!!」

 

ラガルート「なっ!?」

 

闇の力の嵐でラガルートを吹き飛ばす。

その爆心地の真ん中で闇の少女は笑みを浮かべていた

 

 

チカ「ブラジルの力はこんなものじゃないでしょ?どんどんかかってきなよ♪」

 

ラガルート「言うね…」

 

これら全て、チカの暴走…では無い。

その強引なプレーから逆によく分かる

 

 

梨子「わざと1人で攻撃して…私たちの負担を減らしているんです」

 

にこ「チカが…」

 

口では絶対に言わないだろう。

しかし、日本の選手たちの疲労が溜まっていることは事実。

千歌はそれをいち早く察知し行動した。

自分が無茶をすることにより

 

 

ダイヤ「水臭いですわよ千歌さん」

 

チカ「…!!」

 

ルビィ「ルビィたちも頼ってください。無茶なら得意です」

 

チカ「ふふ♪足引っ張んないでね♪」

 

ダイヤとルビィも加勢しブラジル陣内を突き進む。チカの強引なパスが逆に繋がるきっかとなっている。

いつもの千歌でも、例えチカだとしても人を奮い立たせる才能は変わらない。

気づけば、ゴールは目の前まで来ていた

 

 

チカ「はああっっ!!!」ゴオォォォ!

 

ダイヤ、ルビィ「「!!」」バッ

 

チカが太陽のオーラを込め、ルビィとダイヤは同時に空へ飛ぶ。

さすがとしか言えない、完璧なタイミング。ルビィとダイヤは鏡に映っているかのようにシンクロ。チカはその2人が蹴る瞬間を狙って打ち上げる

 

 

チカ「【真――――――

 

チカ、ルビィ、ダイヤ

―――サンシャイントルネードTC】!!」」」ドガァン!!

 

 

英玲奈「真…!進化したのか!!」

 

聖良「すごいです…!」

 

3人のシュートは格段にレベルアップしている

 

 

ファルカオ「【カポエィラスナッチV2】!!」ババッ!

 

ルビィ「進化…!?」

 

しかし、相手も負けていなかった。

この試合中にも進化を続けている。

先程までよりもキレの増した動き、そして高まったパワーで

 

 

ファルカオ「でりゃあっっ!!」バッ

 

チカ、ダイヤ、ルビィ「「「!!」」」

 

ボールを上空へと打ち上げた

 

 

ダイヤ「進化した"サンシャイントルネードTC"が…」

 

チカ「まだだ!!!!」

 

ルビィ、ダイヤ「「!!」」

 

チカの声と同時に―――ボオッッッ!!!!

ボールに炎が蘇る

 

 

ファルカオ「そんな!?止めたはず…」

 

チカ「不滅の太陽を喰らえっっ!!!!」

 

 

―――バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

A『ゴール!!!!日本、再び同点に追いついたあぁぁ!!!浦の星女学院の3人による渾身のシュートだぁぁ!!』

 

レヴィン『素晴らしいシュートでしたね…!このシーソーゲーム、どちらの勝利になるかわからなくなってきました』

 

 

チカ「同点かぁ…ハァハァ、」

 

ロニージョ「すごい気迫だね。オレンジガール!」

 

チカ「ふふ♪負けられないからねぇ」

 

ロニージョ「だけど、私たちも同じ気持ち。勝負はここから!!」

 

 

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

 

花陽「すごい試合…」

 

花丸「でも、みんな楽しそうずら…!」

 

英玲奈「だが時間がない…あと1点…取れて2点だぞ」

 

 

 

その1点が遠かった

 

 

チカ「やばっ…バテてきた」

 

ガト「【スーパーエラシコ】!!」バッバッバッ!

 

チカ「!?」

 

ブラジルの方も確かに疲れは見え始めている。しかし、日本と比べれば差は歴然。

ディフェンスに集中している日本陣内をボール飛び交っている

 

 

果南「美奈監督…!みんな限界だよ!」

 

海未「このままでは押し切られます…」

 

美奈「……」

 

 

ロニージョ「勝つんだ…私たちが勝つんだ!!」

 

 

A『ロニージョ選手がドリブル!!日本の選手たちはディフェンスが間に合わないか!?』

 

 

にこのテクニック、そして善子の共鳴をも突破し突き進むファンタジスタ。

やはり…ブラジルは強い。圧倒的だ

 

 

ロニージョ「【ストライクサンバV3】!!」ドガァン!!

 

 

花陽「また進化した!?!?」

 

果南「まずい…穂乃果っっ!!!!」

 

 

ホノカ「……」

 

 

シュートが迫ってくる

 

 

ホノカ「………」

 

 

音が聞こえる

 

 

ホノカ「………」

 

 

歓声、シュート、仲間の声。

そして、自分の中でふつふつと煮えたぎるマグマの音

 

 

ホノカ「……」

 

 

仲間がここまで頑張ってくれた。

私は…みんなのおかげでこうして。

答えをみつけ、辿り着いた

 

 

ホノカ「―――!!!!」バッ

 

閉じていた目を見開き、同時に飛び出す。

動きは全て今までと同じしかし―――

 

 

 

 

――――――どおおおおおん!!!!!!

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

ブラジル「「「!!!!!!」」」

 

ロニージョ「…!!」

 

 

美奈「……!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

気迫が―――まるで、別人だった

 

 

ホノカ「【ゴットハンドX】」シュウゥゥゥ…

 

"ゴットハンドX"の完成。

それは穂乃果の長く夢路を辿っていたサッカーセンスを、彼女自身が思うよりもずっと。

 

覚醒させていくことになる。

 

 

ホノカ「ありがとう。みんな」

 

 

"高坂穂乃果"。

遅れてやってくる『ゴールデンエイジ』であった

 

 

 

次回 「Xの完成」

 

日本 4-4 ブラジル

 

 

 




"ゴットハンドX"の完成理由は次回!
ブラジル戦はあと1..2話かな



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第3章 143話 「ブラジル戦 "奇跡の波"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回でブラジル戦は決着です




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

穂乃果の"ゴットハンドX"完成まで守備に徹底するサニデイジャパン。そんな中でもチカ、ルビィ、ダイヤはブラジルから1点を奪い取り同点。

そしてついに、穂乃果のXは覚醒する

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

まだ穂乃果が──────闇の力をコントロール出来ていなかった頃

 

 

穂乃果『ハァハァっっ!だ、だめだ……』

 

美奈『急がなくても大丈夫よ。時間をかけて完成させましょ』

 

美奈の指導の元、闇の力を暴走なく自在に扱うために穂乃果の特訓は続いていた。

しかしその道のりは厳しく、まったく進歩がない時間を過ごした時期もあった。

今もそう。この数日間、成長がまったく感じられなかった

 

 

穂乃果『必ずコントロール出来るようにしないと…みんなに心配はかけたくないよ』

 

穂乃果『"ブラックシールド"が必要無くなるまで…頑張るよ』

 

美奈『…必要無い技はないわ』

 

穂乃果『…!!』

 

今ある必殺技も、昔使っていた技を進化させて来たから発動出来ているのだ。

"ゴットハンド"1つで、木の枝のように無限の進化の可能性を秘めている。それは闇の力、"ブラックシールド"も同じ

 

 

美奈『積み重ねてきたものがあるから今があるの。使えないなら、使える時が来るまで取っておきなさい♪』

 

穂乃果『使える時…まで』

 

美奈『穂乃果ちゃんの"ゴットハンドX"も、その日が絶対に来る』

 

美奈『私みたいに頑丈なら、全然大丈夫なんだけどね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホノカ「【ゴットハンドX】」シュウゥゥゥ…

 

ロニージョ「…!!」

 

 

A『と、止めたぁぁ!!なんと高坂穂乃果!!連続で進化した"ストライクサンバ"をがっちりと受け止めましたっっ!!』

 

レヴィン『凄まじいパワーでしたね…"ゴットハンドX"も進化したのでしょうか』

 

 

あの日の─────練習中の会話。

今思い出したのは偶然なのだろうか。

それとも…いや、どちらにしろ確かなことがある

 

 

ホノカ「…出来た!!!!」

 

シュートを止めたこの結果は─────偶然じゃない!!

 

 

真恋「"ゴットハンドX"がボールにぶつかった瞬間……空気が揺れたわね」

 

美奈「あれが穂乃果ちゃん本来の力よ。今まで見てきた穂乃果ちゃんと…今の穂乃果ちゃんはもう別人」

 

しかし、どうやって"ゴットハンドX"を完成させたのか。

その答えは穂乃果の腕が教えてくれた

 

 

ことり「穂乃果ちゃん…その腕、」

 

ホノカ「【ブラックアーマー】だよ。"ブラックシールド"を腕に纏わせてみた」

 

黒く染った腕。

闇の力が肌に同化し、鎧のようになっていた。"ブラックシールド"の無数の手のような闇のオーラを自分の腕に纏わせ、シールドの名に相応しく腕を守る。

それは外からの攻撃だけでは無い

 

 

ホノカ「"ブラックアーマー"を纏えば筋肉・骨も鉄のように固くなる…そうすれば反動にも耐えられるし、シュートの衝撃にも抗える」

 

美奈の生まれつきの骨と筋肉の発達。そこからヒントを得たという穂乃果。

そして同時に分かった事があった

 

 

ホノカ「美奈監督の骨と筋肉の発達も…闇の力の影響だったんだ」

 

生まれつき闇の力が体に影響を与えていた。それだけでも天性の才能レベルなのだが、これで美奈の強さの理由がハッキリとした。

そして、

 

 

ホノカ「この力は…穂乃果が繋ぐ!!!美奈監督の分も!!闇の力も!!!」

 

 

美奈「……穂乃果ちゃん」

 

 

ホノカ「みんな!!本当にごめん!!シュートは全部止めるから思いっきり攻めて!!!」

 

 

曜「穂乃果さん…!」

 

にこ「たく…ヒヤヒヤさせるんだから」

 

チカ「遅いぐらいだけど、任せて大丈夫だね♪」

 

ルビィ「燃えてきた」ゴゴゴゴ

 

ダイヤ「もう既に燃えてますわよ…」

 

穂乃果の心は日本の心と言える。

落ち込めばその分チームの雰囲気は悪くなるが、その逆に希望に満ちる熱い心を持てば─────

 

 

ホノカ「行けぇぇっ!!」バシッ!

 

サニデイジャパンは燃え上がるように走り出す

 

 

A『後半も残り僅か!!!現在同点のシーソーゲーム、次の1点が決勝点か!?!?』

 

 

ロニージョ「日本は強い!!ここからが勝負だ!行くよ!!!!」

 

ブラジル「「「おう!!!」」」

 

先程まで体力が限界に来ていたチームとは思えない動きだった。

それどころが前半、後半のスタートよりもチームとして強くなっている

 

 

にこ「ロニージョっっ!!」

 

ロニージョ「勝負だにこ!!」

 

これが─────ブラジルが恐れ、いくつもの国が敗れた理由。

サニデイジャパンの異次元の進化スピード

 

 

にこ「ハァハァ…これならっっ!!」

 

ロニージョ「その動き!?」

 

 

 

─────バッバッバッバッ!!!!!!

 

 

 

にこ「【スーパーエラシコ】っっ!!!」

 

空気を斬る足。宙を翔るボール。

それはブラジル代表が技術を極め、ドリブルの限界に辿り着いた時に得た必殺技だった。

しかしその技を発動したのはザ・キングダムの選手ではない

 

 

英玲奈「にこがブラジル代表の技を!?」

 

月「…凄すぎるね!」

 

 

A『なんと!?矢澤にこがロニージョ選手突破に使った技は"スーパーエラシコ"!!!』

 

レヴィン『矢澤選手なら出来てもおかしくは無いでしょう…!流石は"日本のファンタジスタ"ですね』

 

 

ブラジル代表、そしてロニージョを目標に努力を積んできたにこ。

ブラジル代表の選手の動き・必殺技を分析し…毎日自分と照らし合わせながら特訓を続けた結果──────その動きは、自分の武器へと変わろうとしていた

 

 

にこ("スーパーエラシコ"…このタイミングで完成した!!)

 

ラガルート「止める!!」バッ

 

モンストロ「ええ!」バッ

 

にこ「…!」

 

ブラジル代表のDFが2人がかり。

ロニージョを突破したのが原因だろう。

流石のにこでも2人同時の突破は骨が折れる

 

 

 

───────矢澤!!しゃがめっっ!!」

 

にこ「!!」

 

チカ「【ストームゾーン】!!」ゴオォォォ!

 

ラガルート、モンストロ「「!?!?」」

 

にこの背後からチカが飛び込み嵐を巻き起こす。不意打ちで放たれた技により相手は吹き飛ばされ、突破口が開かれる

 

 

チカ「今!!」

 

にこ「曜!」パス

 

 

A『矢澤にこの前を走るのは"フィールドのマーメイド"!!既に構えに入っている!!』

 

 

曜「全速前進っっ!!」グルグルグルグル!

 

曜「振り切れっっ──────ズバッッ!!

 

曜「【Xブラスト】ォォォ!!!」ドガァン!

 

レーザービームがゴールに放たれる。

しかし、ブラジル代表もただ見てるだけでは無かった

 

 

バーグレ「やらせない!!」ドガッッ!

フォルミカ「っっ!!」ドガッッ!

 

ファルカオ

「っっ!―――【カポエィラスナッチV2】!!」バッ!

 

DF2人のブロックにより威力が落ちた曜のシュート。最後はキーパーの技によりゴール前で沈んだ。

 

 

 

片方が攻めればもう片方が攻め返す

 

 

ガト、レオナルド「「【デスサンバ】!!」」ドガァン!

 

ホノカ「【ゴットハンドX】っっ!!」ドォン!

 

 

―――

 

 

ロニージョ「【ストライクサンバV3】!!」ドガァン!

 

ホノカ「右─────ゴットパンチ─────

 

─────エェェッックス!!!」ドゴッッ!

 

 

―――

 

 

ツバサ「【ゴットブレイク】!!」ドガァン!

 

ロニージョ「【ストライクサンバV3】!」ドガァン!

 

ファルカオ「【カポエィラスナッチV2】」バッ!

 

失点はしないものの、得点も出来ていなかった。日本のシュートは必ずブロックされる。

ブラジル代表の攻守の切り替えは厄介だった

 

 

ツバサ「ハァハァ…またブロックされたわね」

 

梨子「ディフェンスへの戻りが早い…このままでは同じことの繰り返しです」

 

にこ「"ラストリゾート"は?」

 

ルビィ「がっちりとマークされてるので厳しいです…」

 

にこ「とりあえず今は戻るわよ!守ってそこから──────「必殺タクティクス!!」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

ブラジル

「「「【アマゾンリバーウェーブ】!!」」」

 

 

ザバアァァァァァァン!!!!!!

守備に切り替えようとした瞬間だった。

背後から追うように激流が日本陣内へと迫ってきていた

 

 

ダイヤ「あれはどうしようもないですわよ!?」

 

梨子「…!待ってください!」

 

ここで梨子があることに気付いた。

そもそも"アマゾンリバーウェーブ"。選手全員で一世攻撃を行う超攻撃型タクティクス…つまり、

 

 

梨子「今ならブロックする選手もいない!」

 

日本「「「!!!!」」」

 

善子「でもどうやってあのタクティクスの中からボールを奪うのよ!?最強のタクティクスなのよ!?」

 

こうしている間にもブラジルは近づいてきている。

確かに今ボールを奪うのが最大のチャンス。しかしそれは絶対に奪われないという事実があるから、ブラジルも隙を作ることが出来るのだ。

このまま何も出来ずに…そう、思っていた

 

 

 

 

 

チカ「あるよ♪方法が」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

善子「無茶言わないでよ…あのタクティクスを攻略できる技なん「攻略じゃない」

 

チカ「ぶつかるんだよ。真正面から」

 

ことり「真正面…?」

 

チカ「あれを越えるために回りくどいことをする必要なんてない。チカたちはチカたちの波を起こせる」

 

梨子「波を……まさか!?」

 

チカ「"奇跡を起こす"んだよ♪」

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

初めてだった

 

 

 

ロニージョ「…!?」

 

 

 

確かに、最初はどこのチームも"アマゾンリバーウェーブ"に挑んでくる。

しかし、無駄だと分かるとそれからは守り重視で最初から勝負捨てていく。それが一番利口だ。いや、そうせざるを得ないのだ。

 

しかし、サニデイジャパンは違った

 

 

チカ「タイミングずらさないでよ!!」

 

にこ「あんたが一番ずらしそうじゃない!?」

 

何度日本の選手を飲み込んだか覚えていない。それでも、彼女たちは目の前から真っ直ぐに。自分たちに向かって走ってくる―――

 

 

 

――――――巨大な波を連れて

 

 

 

チカ「必殺タクティクス!!!!」

 

日本「「「【ミラクルウェーブ】!!」」」

 

 

A『これは!?!?全国大会で浦の星女学院が使っていた必殺タクティクス、"ミラクルウェーブ"です!!!!』

 

レヴィン『"アマゾンリバーウェーブ"とそっくりですね…!このまま波をぶつけようという作戦なのでしょう』

 

 

これにはブラジル代表も驚いていた。

まさか日本も似たようなタクティクスを持っていたとは…しかし、似た技でも威力はブラジルの方が上。

 

ザバアァァァァァァン!!!!

 

激しい水飛沫と轟音。

2つの波がぶつかり合う。しかし、

 

 

日本(((重いっっ!!!!)))

 

真正面からぶつかって改めて思う。

ザ・キングダムのタクティクスの力。フィジカル。気迫。

自分たちも前方に激流を送り込んでいるはず…しかし、その流れがブラジルの流れに負け、逆流してきている

 

 

にこ(ダメっっ…流れに…負ける!!)

 

ロニージョ(家族のため…応援してくれるみんなのため…そして、自分たちのために!!)

 

ブラジル(((負けられない!!!!)))

 

激流に乗ってブラジルの選手たちの気迫が伝わってきた。

彼女たちはどんどん前進してくる。しかし、自分たちはその場に留まることで精一杯

 

 

梨子(私が…もっと、導けたら…)

 

このタクティクスの完成度も変わっていたかもしれない。浦の星女学院以外のメンバーもいる。100%のパフォーマンスは恐らく出せていない。

やりたくても出来ない自分の力不足に涙が出る。しかし、その涙も逆流する水に流れされていく

 

 

梨子(…負けたくないっっ!!)

 

 

 

 

 

 

 

『梨子ちゃん!!!!!!』

 

 

 

 

 

梨子(!?!?)

 

 

 

 

声が聞こえた

 

 

 

 

『下を向いちゃダメだよ!!!!』

 

 

聞きなれた声だった。

耳からではない。頭の中に直接、優しくも力のある声が響き渡る

 

 

梨子(千歌…ちゃん??)

 

『うん千歌だよ!!まだ諦めちゃダメ!!』

 

千歌は今自分の心の中で眠っているはず…

それがなぜ、声が聞こえてくるかは分からなかった。それでも信じられる。

千歌の言うことならば―――信じる

 

 

『水の中…覚えてない??目を閉じて。思い出して。梨子ちゃんなら、絶対にできるよ』

 

梨子(…目を)

 

視界を閉ざす。水が身体中を擦り、流れていく音が聞こえる。そしてもうひとつ。

どこか懐かしい…過去の…記憶。

心地いい音色だ。そしてどこか寂しくもある…この、記憶の欠片は―――

 

 

 

 

 

梨子(海の──────音)

 

 

 

 

 

 

 

 

ズババババババババババッッ!!!!!!

 

 

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

ブラジル「「「!?!?!?」」」

 

 

ブラジルの選手たちの足が止まった

 

 

ガト(な、何が起きてるの!?)

 

レオナルド(前へ…進めない!?)

 

 

代わりに、日本の選手たちが少しづつ

 

 

ルビィ(流れが変わった!!)

 

ダイヤ(この感覚…まさか!?)

 

 

 

 

 

梨子(【神のタクトWI(ウォーターイリュージョン)】)

 

"旋律の指揮者"、ゾーンの指揮だった

 

 

ロニージョ(このタイミングでゾーン!?)

 

ラガルート(まずいぞロニージョ!!このままじゃ…)

 

―――ザバアァァァァァァン!!!!

 

ロニージョ、ラガルート「「!?!?」」

 

目の前で2つの波がぶつかったことによる渦潮が発生していた。

だが、何か動きが変だ。そう思った瞬間

 

 

 

「【Deep Resonance】」

 

ロニージョ「─────!?」

 

善子(さっきのお返しよ)

 

ロニージョ("共鳴の堕天使"っっ!?)

 

中から善子が現れ、ボールを奪い取った。

この掻き混ぜ状態の中でも────彼女は、共鳴したというのか!?

 

 

善子「行けっっ!!千歌ぁぁぁ!!!!」パス

 

梨子の指揮で水中から飛び出した善子は持てる力を全て出し切りパスを出す。

ブラジルの波は越えた。誰もいない。

 

いるのは全力でゴールへと走る。

ミカン色の少女

 

 

チカ「来たぁぁぁ!!!!」

 

 

A『抜けたぁぁ!!!!!!サニデイジャパンが"アマゾンリバーウェーブ"を越えました!!なんということでしょう!!GKとの直接対決だ!!!!』

 

 

果南「"アマゾンリバーウェーブ"を…!!」

 

理亞「千歌ぁぁ!そのまま走れ!!」

 

聖良「千歌さん…!!」

 

ブラジルの選手たちも千歌を追う。

だが間に合う距離ではない

 

 

チカ「2人とも合わせてよっっ!!」

 

曜、梨子「「うん!!」」

 

チカの後ろを走るのは曜と梨子。

チカがオーラを溜めるのと同時に、2人は空高く飛んだ

 

 

チカ「でりゃああっっ!!」ドガァン!

 

 

梨子「曜ちゃん───お願い!!」ズババババッッ

 

曜「【エクストリームワープV2】!!!!」

 

打ち上げたボールを曜が空中の高速移動で連打する。確実に、可能な限りオーラを込めるため、梨子が指揮で曜の移動ルートを導く

 

 

曜、梨子「「千歌ちゃん!!!!」」ドガァン!!

 

そのまま地面へかかと落とし。

これだけでも十分強力なシュートだが、少女は全速前進で走り、垂直に落ちてくるボールを────────

 

 

チカ「っっっっ!!!!」メキッッッ!!

 

チカ「ぐぬぬぬぬぬぬぬっっ!!!!!!」

 

ありったけのパワーを右足に込める―――しかし、

 

 

花陽「千歌ちゃんの様子…変じゃないですか!?」

 

月「……撃てないんだ」

 

花陽「え、」

 

今の千歌の体…"チカだけ"ではこのシュートは撃てない。

強すぎるが故に力不足となってしまっていたのだ。このままでは―――

 

 

チカ「うぐっっ!?(足が…)」メキッッッ!

 

チカ「千歌ぁぁぁ!!!!いつまで寝てるの!?!?早く戻ってこい!!!!」

 

チカは眠る千歌へと必死に呼びかける

 

 

チカ「千歌がいなきゃこの技は撃てない!!!!今すぐに起きて、奇跡をっっ起こして見ろぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

 

梨子「千歌ちゃん!!」

 

曜「千歌ちゃん!!」

 

善子「千歌!!」

 

ルビィ「千歌ちゃん!!」

 

ダイヤ「千歌さん!!」

 

花丸「千歌さん!!」

 

果南「千歌!!」

 

 

日本「「「千歌(ちゃん)(さん)!!」」」

 

 

 

 

 

美奈「…千歌…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブレイブ────────

 

 

千歌「ハートっっ!!!!!!」メキッッッ!

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

千歌「みんなの声が届いた!!絶対に奇跡…起こしてみせる!!!!」

 

千歌が目覚めたことにより"Braveheart"発動。今の千歌は誰にも止められない。

出来るのか?違う、出来る!!!!

叫ぶ心。奮い立つ体。

全てを込めた奇跡の───────

 

 

千歌、曜、梨子

「【オーバー・ザ・エボリューション】っっ!!」

 

 

―――ドガアァァァァァァァン!!!!!!

 

 

日本「「「行けぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」

 

 

ファルカオ「【カポエィラスナッチV3】!!」

 

ブラジル「「「止めろっっ!!!!!!」」」

 

 

奇跡のシュートに全力で挑む

 

 

ファルカオ「ぐぬぬぬぬっっ!!!!」

 

 

みんなを思う強さ―――仲間、サッカーへの想い。誰にも負けない自信があった

 

 

ファルカオ「ぐっっ…この、パワーっっ!!」

 

 

だが、サニデイジャパンと戦って…自分たちにも負けない想いを持つ少女たちがいることを知った

 

 

ファルカオ「きゃっ!?!?」

 

 

日本「「「───────!!」」」

 

ブラジル「「「──────」」」

 

 

───バシュウゥゥゥゥゥィン!!!!!!

 

 

 

千歌「……」

 

千歌「………やった、」

 

 

自分たちのゴールに吸い込まれるボールを見ると、悔しさが込み上げる。

それと同時に、

 

 

ピッピッピーーッ!!!!

 

 

日本の少女たちが、輝いて見えた

 

 

 

 

日本 5-4 ブラジル

 

 

 





サニデイジャパンが"ミラクルウェーブ"を発動したところから『MIRACLEWAVE』の曲を脳内で流しながらイメージするのが作者のおすすめです。


「ブラックアーマー」
穂乃果ちゃんのオリジナル技です。"ブラックシールド"を腕に纏うことにより、骨や筋肉を強化。反動に耐えられるという技になってます。要するに武装色の覇気ですね

「スーパーエラシコ」
ブラジル代表の技ですが、特訓を重ねたにこちゃんも習得しました。空中で繰り出す高速エラシコ。矢澤がさらに強くなってしまった…

「神のタクトWI(ウォーターイリュージョン)」
神のタクトFIの水バージョンです。水の指揮なので、水系の技と相性がいいです。

「オーバー・ザ・エボリューション」
千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんの"エボリューション"の進化技となっています。3人の必殺技を掛け合わせ、奇跡のシュートとしてブラジルのゴールを破りました



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第3章 144話 「日本とロシア」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
ブラジル戦で体力を使い切っていたので1週間休憩していました。申し訳ない。今日からまた頑張りますね




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

"奇跡を起こす"。その言葉通り、サニデイジャパンはブラジル戦で勝利を収めた。穂乃果の"ブラックアーマー"による"ゴットハンドX"の完成。ブラジル選手に追いついたにこ。過去に聞いた"海の音"により覚醒する梨子。そして―――"ミラクルウェーブ"。

ラストは奇跡のシュート「オーバー・ザ・エボリューション」で決勝点を決めた千歌。サニデイジャパンは、確実に進化している

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『試合終了っっ!!!!サニデイジャパン逆転勝利!!準決勝進出を決めました!!!!』

 

 

千歌「ハァハァ…ハァハァ…か、勝った…!」

 

穂乃果「千歌ちゃん!!やったね!」

 

千歌「はい!!」

 

喜びを爆発させるサニデイジャパン。

日本がグループ戦を突破するだけでも快挙だったのだが、彼女たちはさらにその上。

世界王者を撃ち破る偉業を遂げたのである

 

 

ロニージョ「ミカンガール。いや、千歌!おめでとう!あなたたちサニデイジャパンこそ、準決勝に行くのに相応しいチーム!」

 

千歌「ありがとうございます…!」

 

ロニージョ「いや、礼を言うのは私たちの方。準々決勝の相手があなたたちで良かった」

 

ロニージョ「にこ!あなたの言葉が響いた。この先どんな苦しいことが起きても、私は私のサッカーを貫き通す!その決意が出来た!」

 

にこ「それでこそロニージョよ。この大会が終わったらアメリカで…決着をつけるわよ」

 

ロニージョ「ええ!」

 

FFIが終わればにこ、ロニージョ、そしてアメリカ代表の一之瀬神奈はアメリカでフリースタイルフットボールの世界大会に出場することになる。

しかし、今はブラジル代表の意志を継ぎ、サニデイジャパンとして次の戦いへと進む

 

 

A『ここで速報です!!同時刻に行われました決勝トーナメント第2準々決勝、ロシア対ベルギー…先程試合終了したという情報が入りました!!』

 

 

日本、ブラジル「「「!!!!!!」」」

 

花陽「ロシアも…ベルギーも…FFIランキング1桁のチームです」

 

レオナルド「次のジャパンの対戦チームだね」

 

 

A『5-2!!ロシア代表"パーフェクトスパーク"がベルギーを破って準決勝…日本代表"サニデイジャパン"と戦います!!!!』

 

 

 

―――――――――

 

 

 

日本とブラジルの試合と同様に。

歓声鳴り止まぬスタジアムがもうひとつ

 

 

 

『素晴らしい連携でした!!ロシア代表"パーフェクトスパーク"が流れを渡さずに準決勝進出を決めました!!!』

 

 

"気高き銀狼"フロイ・ギリカナンが日本とブラジルの試合結果をモニターで確認していた。

最初から結果が分かっていたかのように、その表情に変化は無い。

それはデータ分析もそうだがそれ以上に。データ以上に信頼出来る根拠があったから

 

 

絵里「ね?勝ったでしょ」

 

フロイ「あのブラジルに勝つなんてね…やっぱり日本の強さは本物だよ。でも、」

 

絵里「ええ。勝つのは私たち」

 

絵里「やっとこの時が来たわね。みんな」

 

空を見上げ、日本との試合に胸躍らせる絵里。彼女の目と同じく、空は青く澄み渡っている。

日本との試合…この空以上に清々しい戦いになるだろう。そう確信していた

 

 

 

―――

 

 

 

空の玄関口。

さまざまな国の掛橋となっているこの空港に、2人の少女の姿があった。

ちょうど少女らの行先、"ライオコット島"行きの飛行機が搭乗開始に切り替わっている

 

 

「そろそろ出発するからねー」

 

1人の少女が声をかけ、ワンテンポずらして車椅子を動かし始める。行き交う人たちが手に持つのはショルダーケースやお土産だが、その両手は少女の移動のために使う

 

 

「ついにお姉ちゃんたちの試合だね!」

 

「まさか準決勝まで行っちゃうとは…」

 

「当然だよ!海未さんたち凄く強いもん!」

 

車椅子に座る少女が語り出すと止まらない。

いつもなら話を逸らしてなんとか暴走を食い止めるのだが、今回は長旅になりそうだ。

暴走を止める必要は無さそうである

 

 

「その話は飛行機に乗ってからね…」

 

「ハラショーな空の旅〜!」

 

目指すはライオコット島。

かけがえのない、仲間たちの元へ

 

 

 

―――

 

 

 

 

終始鳴り止まぬ歓声。

映像に映されているのはつい先ほど行われた日本とブラジルの準々決勝。

 

ロシア代表の選手たちは食い入るように、次戦う相手のサッカーを見た

 

 

「シーソーゲームが続いた試合でしたが、日本のGK、"太陽の守護神"高坂穂乃果がロニージョのシュートを止めてから流れが変わったと思われます」

 

「エリーさん」

 

絵里「……」

 

終始、一言も喋ることなかった絵里にマネージャーは問う。

その鋭い目から放たれる視線は全てを凍らすかのようなオーラを持つ。

今の絵里は、それほどまでに勝ちたいという気持ちを持っている。それはほかのメンバーにも言えることだ

 

 

絵里「…穂乃果の"ゴットハンドX"は完成していなかった。日本とスペインの試合の時に話したと思うけど」

 

日本の半数以上の選手たちと知り合い、またはチームメイトであった絵里はこれ以上にない情報源である。

絵里もまた、日本に勝つために躊躇いはしなかった

 

 

ユーリー「その技が完成したのか…厄介だね」

 

「日本の武器は進化の速さ。ブラジル戦だけでも、新必殺技を8種類使用しています」

 

 

鹿角理亞の『ビーストクロー』

黒澤ダイヤの『ヒノカミ神楽』に『陽炎の幻惑』。そして黒澤ルビィとの『インフェルノフェニックス』

高坂穂乃果の『ブラックシールド』

矢澤にこの『スーパーエラシコ』

桜内梨子の『神のタクトWI』

高海千歌の『オーバー・ザ・エボリューション』

 

後半開始直後からブラジルのサッカーに手も足も出なかった日本だが、終盤に差し掛かかる頃には互角の勝負をしていた

 

 

ヴィクトール「日本は特殊技を持つ選手も多いね。出されたら厳しい戦いになりそう」

 

日本が世界の国々と争える理由の1つに能力の強化があった。

ありとあらゆる工夫を重ね、力や実力では及ばずともそれを補うほどの強力な必殺技の数々。

しかし、今では普通の状態でも日本の実力は世界レベルに足を踏み入れている状態。

そんな中で強化技を使われれば…自分たちもただでは済まされないだろう

 

 

「特に要注意な選手はFWは"紅き流星"、日本のエースストライカー黒澤ルビィ。そして"雪原の狼"、鹿角理亞。2人ともATPの使用者です」

 

フロイ「黒澤ダイヤの"ヒノカミ"は発動したらすぐにプレッシャーをかければなんとかなりそうだね」

 

「MFは"太陽の跡目"、サニデイジャパンキャプテン高海千歌。そして…矢澤にこです」

 

フロイ「問題は矢澤にこだなぁ…私でも抑えられるかどうか」

 

絵里「にこはシンプルな勝負には強いわ。でも必殺技で対応すれば可能性はある」

 

ラビ「DFの私たちが頑張らなきゃね〜」

 

アレクセイ「あのブラジル代表と同レベルの実力…今から楽しみだね」

 

「DFは"絶対零度の氷帝"、強力なシュートブロック技を持つ鹿角聖良。"共鳴の堕天使"、SSS級の必殺技を持つ津島善子です」

 

絵里「聖良はDFの司令塔。日本は司令塔を毎回2、3人出して試合をコントロールさせているわ。ロングパスは主ににこの役目」

 

絵里の説明を聞けば聞くほど、日本のサッカーが集団戦の中でも限りなく完成された形だとよく分かる。

恐らく自分たちとの試合でも新必殺技を使ってくる選手は必ず現れるだろう。

日本が対応する前に勝負をつけようとしたブラジルでさえ、日本の進化を抑えきることは出来なかった

 

 

フロイ「私は楽しみにしてた。エリーの日本の仲間たちは…いったいどんなサッカーをするのか」

 

ロシア「「「……」」」

 

絵里「……」

 

フロイ「強い。なら燃えてくるよ…!みんなで最高に楽しいサッカーをしよう」

 

仲間だからこそ。

試合を全力で挑まなければならない。

日本が想像以上のサッカーをしてくるのだとしたら、自分たちはその期待に応えられるほどのサッカーを。

 

準々決勝まで―――あと数日

 

 

 

――――――

 

 

 

一方。

サニデイジャパンの選手たちはミーティングルームに集合していた。

内容は当然、ロシア戦について

 

 

花陽「ロシア代表"パーフェクトスパーク"。現在のFFIランキングは4位。優勝候補の有力チームです」

 

マネージャー、そして司令塔の英玲奈と梨子が調べたロシア代表のデータが次々と説明されていく。

"パーフェクトスパーク"の武器の1つは個々の選手の能力

 

 

英玲奈「ロシア代表選手全員が全ポジションでプレー可能。戦術の予想は難しい」

 

にこ「全ポジション…器用なチームね、」

 

千歌「だから絵里さんも"パーフェクトクイーン"なんだ」

 

そして、そんな個人能力が高いチームが得意とする試合展開は…

 

 

花陽「チームプレーです。ポジション予想困難に加え、そこから展開される戦術は厄介です」

 

花丸「警戒選手は…全員だけど、特にロシア代表エースストライカーの"フロイ・ギリカナン"さんとキャプテンの"絢瀬絵里"さんずら」

 

海未「絵里ですね…」

 

穂乃果「絵里ちゃんかぁ…」

 

にこ「絵里ね…」

 

希「絵里ち…」

 

音ノ木坂学院のメンバー全員が絵里の名を呟く

 

 

曜「え…なんでそんなに嫌そうな顔を?」

 

穂乃果「うーん、ほら、穂乃果が言うのはあれだけどさ。絵里ちゃん…凄い負けず嫌いだから」

 

凛「日本の選手たちの情報を話せるだけ話してるはずにゃ」

 

「「「………」」」

 

梨子「圧倒的…不利」

 

ダイヤ「仕方のないことですわ。あちらも勝つために情報を共有しているのです」

 

月「魔界と天界に乗り込んだ時もいたからね…最近の情報も抜かれているだろうね」

 

情報量では日本が不利。

しかし、負けたとはいえあのイタリアと接戦。そして王者ブラジルを撃ち破った事実は変わらない。

実力ならば十分勝負できるはず、そうイメージし、サニデイジャパンは明日から特訓を開始する

 

 

美奈「技術、必殺技の課題は明日の練習で細かく確認するわ。今日のミーティングはこれで終わり…にする前に」

 

美奈は選手たちの前に立つと、いつものように明るい笑顔とはまた違う。

無理に作ったような笑顔でその場にいた

 

 

美奈「あなたたちには…ちゃんと謝っておかなきゃね」

 

美奈「私たちが"音ノ木坂の奇跡"のメンバーだったことを黙っていたのは…本当に申し訳ないと思っているわ」

 

偉そうに語る資格などないと、美奈は続けた。

仲間1人を犠牲にし掴んだ勝利は、心を締め付ける呪縛以外の何でもなかった。

もう二度と、あの日々は帰ってこない。

サエとの別れもあり、自分たちが遂げた偉業は無価値に等しい。

自分の子供たちに語るなど、もってのほかだった

 

 

穂乃果「監督。それは違います」

 

美奈「…」

 

穂乃果「私たちは"音ノ木坂の奇跡"という明確な目標があったから強くなれたんです」

 

千歌「お母さんたちの日々が…今は私たちの中で生き続けてる。確かに…失ったものもある。でも、今、この瞬間があるためにも…」

 

千歌「何一つ、今までのことが欠けちゃダメなんだよ」

 

これは皮肉というのだろうか。

あの日々が欠けたからこそ、美奈たちは今の家族と出会い、それぞれ別の道ながらこうして新たな可能性を生み出した。

それは紛れもない運命。奇跡。

それを─────"意志を受け継ぐ"と呼び、責める者はいるのだろうか

 

 

穂乃果「私たちのサッカーは…美奈監督の意志でもある。全てが詰まってると思う。穂乃果自身…このチームで、絶対に、絶対に優勝したいもん…!!」

 

真恋「…すごいわね。今の子は」

 

美奈「ええ。ホントに。誰に似たんだか」

 

千歌「よーし…!明日から特訓、頑張るぞー!!!」

 

「「「おーー!!!!!」」」

 

今に必要ない過去など無い。

美奈たちが出来なかったことがある。ならばそれを私たちが。

サニデイジャパンの決意は固く、そして熱く眩しい。その事を再確認し、今日のミーティングを解散とした。

 

 

 

 

 

 

 

その数時間後。

 

 

 

 

「あ!もしもし?私だけど予定通りだよ。ガルシルドの排除に月さんの件、その他もろもろね♪」

 

「…え?大丈夫だよ。バレてないって♪そっちはフラムちゃんに任せるね♪もしもの時は…」

 

 

 

 

 

 

「日本を止めないとね」

 

 

 

月夜。

海は静かに眠っている。

 

いや、まだ終わらぬ。

序章に過ぎなかった嵐とは比べ物にならない、嵐…それが来るのを恐れ―――怯えてるようだった

 

 

 

――――――

 

 

 

高海千歌が起床時間前に起きることは滅多にない。

静かに海から登る朝日を眺め、昨日までの出来事。そして"これから"を自分なりに考えていた。

波の音しか聞こえなかった砂浜に、砂を踏む音が加わる。千歌はそのまま海を見ながら、近づく者の名を呼ぶ

 

 

千歌「お母さん」

 

美奈「千歌ちゃんから呼び出すなんてね」

 

千歌「……ちょっとね」

 

薄暗かった世界に光の線が伸びる。

千歌の体も朝日の温もりを感じ、数秒間を置いて美奈の方へと向き直る。

母の顔はいつもと変わらず穏やかだ。なんだか少し恥ずかしい

 

 

千歌「お母さんのこと、何も知らなかった。一番身近な人が…一番遠い選手だった」

 

美奈「……」

 

千歌「穂乃果さんは…それを知った瞬間。すぐに動いた」

 

"ブラックアーマー"。

美奈の天性の才を限りなく再現、近づいた技。穂乃果は言った。自分が"日宮美奈"のサッカーを繋ぐと。

そして―――

 

 

千歌「千歌も…繋ぎたい」

 

美奈「……」

 

千歌「お願いがある。お母さ…いや、日宮美奈さん」

 

 

 

 

千歌「"カウンターマスター"を千歌に…継承させてください」

 

 

 





次回は茶番を入れよう



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第3章 145話 「善子とことり」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
前回予告したとおりいきます





 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

日本とロシア。それぞれのチームが来る決戦に向けて準備を進める中。新たな嵐、始動、そして―――高海千歌の新たな可能性が生まれようとしていた

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

窓から差し込む光で意識は現実へと戻された。

つい先ほどまで寝る前だったはずの世界は早朝。熟睡していたようだ。

昨日はブラジルとの激戦。疲労が溜まっていたのは無理も無いが、もう少し包み込むようなこのベッドで休んでいたかった。

 

まだ意識が朦朧としているが、自分の横で寝息を立てる少女の姿ははっきりとわかった。

この生活にも慣れてしまった自分が恐ろしい。

少女、南ことりはライオコット島に来てから1度も自分のベッドで寝ていない。

もちろん、最初は断っていた。だが朝起きれば彼女は自分のすぐ横で眠っている。

 

その時、初めて私は彼女の顔を近くで見ることとなった。

整った顔、艶のある唇、手入れが施された髪。

そして彼女の香りはとても甘い。アロマキャンドルをつけて寝ていたかのようだった。

私がリラックスして就寝できるのは、少なからずこの香りのおかげだろう。

 

なぜ、私はこの生活を受け入れるようになったのか。

南ことり…初めて会った時は一番苦手なタイプの人だった。

全てを見透かされてるかのように、遊ばれ、楽しまれ、まるで手の中に立たされているような感覚だった。

私自身、人と関わるのが得意ではないという理由もあったが…

 

しかし、こうして彼女と共に生活し、同じチームとしてサッカーをしていくことでたくさんのことが分かった。

何度も彼女は私の夢に出てきた。最初は不気味な内容が多かった気がするが、今はそうでも無いということは絶対に言える。

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

「………」

 

私にとって南ことりとはどんな存在なのか。

南ことりにとって津島善子とは?

まだ、よく自分の気持ちがよく分からない。

だがそれでも、過去の印象とは大きく変わっていることは確かだ。

 

 

善子「……電話?」

 

部屋に着信音が鳴り響いた。

目覚ましとは違う音。それ以前に目覚ましをセットした時間にはまだ早い。

 

私は誘惑の塊から手を伸ばし、枕元に置いたスマホを掴む。

この時の私は、まだ冷静な判断が出来ていない

 

 

善子「もしもし…津島です」

 

 

 

『あら…津島さん…?こちらの番号、ことりので合ってるかしら…』

 

 

『私、ことりの母ですが…』

 

善子「………」

 

善子「…」

 

善子「……………」

 

『ことりに代わってくれるかしら…?』

 

 

なーるほど。これはやらかした

 

 

善子「こ、ここここことりさんのお母様ですか!?ま、まっまま間違えて出ちゃいまして!?!?」

 

私はすぐにことりの肩を叩く。

この寝顔を見れなくなるのは惜しいが…ん?何言ってるんだ…私は?

 

 

『ふふ♪ことりのことよろしくね♪』

 

一体何をよろしくなのかよく分からないがことりの肩を叩き続ける。

お願い。早く起きて。早く

 

 

ことり「うぅ…ヨハネちゃん、なぁに…?」

 

善子「ことりのお母さんから電話…!」

 

電話で聞き取られないような声でことりに説明する。

なんとか状況を理解させ、ことりは母親との会話を始めた。

 

せっかく休んだ筈なのに無駄に疲れた。

私は混乱状態の頭を落ち着かせるため、窓へと向かう。

私たちの部屋からは海が見える。

さすがは南の島だけのことはあり、エメラルドビーチが朝日により宝石のように輝いている。

 

そんな宝石の海を前にした浜辺に…

善子の目に映ったのは、高海千歌と母親である高海美奈の姿だった

 

 

善子「千歌…何を話して…」

 

ことり「え?ヨハネちゃんと?一緒に寝るぐらい仲良しになれたよ♪」

 

善子「うにゃぁぁぁ!?言うなあぁぁ!!!」

 

 

こうして津島善子の1日は、騒がしくもスタートしたのであった

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

善子が千歌に朝の件を尋ねたのはそれからすぐだった

 

 

善子「千歌、監督と浜辺で何話してたの?」

 

千歌「ほえ?」

 

サニデイジャパンは練習前に全員で準備体操をする。

善子は千歌の隣で海未の掛け声に合わせ体操を続けながら、千歌に尋ねていた

 

 

善子「……"カウンターマスター"の技を、」

 

千歌「…うん」

 

千歌の答えに善子は驚きを隠せなかった。

美奈の体は人並み以上の強度を持つ。だからどんな技もカウンターで弾き返すことが出来たのだ。

自分たちには無縁に近い話…そう思っていたからこそ、継承するという発想が頭に無かった

 

 

千歌「穂乃果さんの"ブラックアーマー"を見て思ったんたんだ。闇の力を使えば、同じ強度を得られるんじゃないかって」

 

善子「それで…どうだったのよ?」

 

千歌「………」

 

 

 

千歌『…え、』

 

美奈『千歌。あの技たちはダメよ』

 

千歌『でも…"ブラックアーマー"があれば、』

 

美奈『あって私はこんな体になった』

 

千歌『…!!』

 

美奈『鋼鉄の強度を持ったとしても、カウンターの反動には耐えられなかった。穂乃果ちゃんや、千歌にそんな技を使わせる訳には行かない』

 

千歌『……』

 

 

 

 

善子「…じゃあ、ダメだったの?」

 

千歌「私もそう思った。でもお母さんは最後にこう言ったの」

 

 

美奈『あの技たちを扱うなら、私を繋ぐんじゃなく、越えていきなさい』

 

 

千歌「…って」

 

美奈が言いたいことは理解していた。

だが肝心の方法については全く考えが出てこない。

現時点で美奈に近づく、繋ぐことが限界なのにそれ以上?

 

 

千歌「もーーっ!!分かんないよー!!」

 

叫びたくなる気持ちはよく分かる。

しかし、

 

 

善子「ちょっ、今は―――「千歌っっ!!集中してください!!!」

 

海未の怒りの喝がグラウンドに響き渡る。

音ノ木坂のメンバーは察したかのように千歌を見守る。

これから千歌の身に何が起きるかを…まるで知っているようであった

 

 

理亞「高海千歌……」

 

ルビィ「あはは…」

 

穂乃果「ルビィちゃん」

 

ルビィ「穂乃果さん…?」

 

穂乃果「この後…いいかな?」

 

ルビィ「……」

 

 

 

――――――

 

 

 

準備体操も終わり、ロシア戦へと向け本格的な練習に入ろうとした時だった。

ゴール前で向かい合う、穂乃果とルビィの姿がそこにはあった

 

 

ツバサ「あら、何か始まりそうね」

 

海未「穂乃果…練習の準備をせずに何を…」

 

月「待って海未ちゃん」

 

海未「…?」

 

月「…あの感じ、なんかやばそうだよ」

 

一見、練習の準備をせずにサボっているように見える2人。

しかし、その顔は試合にも引けを取らない真剣そのものだった。

ただ事では無いと察したメンバーたちは作業の手を止め、2人の動きに注目する。

先に動いたのは―――

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁっっっ!!!」バッ!!

 

「「「!!!!」」」

 

両腕を開き、お腹から出す声と同時に溢れ出す異次元のエネルギー

 

 

ルビィ「――――――っっ!!」バッ!

 

その爆弾のようなオーラをルビィはいとも簡単に扱う。

両足で抱え込み、左足で逆回転をかけ、効率よく。そして限界異常にオーラを高める

 

 

ルビィ「【ラストリゾート】!!!!」ドガアァン!!

 

その一撃はルビィの───日本の切り札

 

 

曜「"ラストリゾート"を撃ったよ!?」

 

海未「まさか…あのシュートを…」

 

ルビィが放った先はゴール。

そしてゴール前では穂乃果が構えている。

穂乃果がやろうとしていることは分かる。だが同時に、今相手にしようとしている技が一体どんな技なのか―――分からないはずがない

 

 

ホノカ「―――!!」バッ!

 

それでも穂乃果は迷わず飛び出した。

闇の力を発動し、暴れ迫る爆弾に向けて―――灼熱の腕を構える

 

 

ホノカ「【ゴットハンド────────

 

穂乃果は"ブラックアーマー"を習得する前までは、反動により本能的に"ゴットハンドX"の力をセーブしていた。

だが、今は違う

 

 

───────X】っっ!!!!」

 

 

 

 

―――ドゴオッッッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

"ラストリゾート"は触れるもの全てをその巨大なパワーで弾き返す。

だが、その音とは何かが────違う

 

 

ホノカ「ぐうぅぅぅっっっ!!!!」ググググ!

 

「「「!?!?!?」」」

 

美奈「…!!」

 

ルビィ「!!」

 

"ラストリゾート"という切り札の概念を。

高坂穂乃果は覆そうとしていた

 

 

聖良「"ラストリゾート"を…掴んだ!?」

 

月「"ラストリゾート"の重さに、穂乃果ちゃんの重さが追いついたんだ…!!」

 

 

ホノカ「ぐっっ…!?お、押され……うわっ!?」

 

―――バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

結果的に"ラストリゾート"を数秒間抑えただけだった。

しかし、その数秒間がサニデイジャパンのどれほどの希望となったか。

暗赤に染まった腕はその数秒間を実現した努力を物語っていた

 

 

穂乃果「あっはは…触れただけで喜ぶのもあれだけどね…」

 

ルビィ「びっくりです。穂乃果さん」

 

地面に座っている穂乃果に駆け寄るルビィ。

手を貸すとその手は震えていた

 

 

ルビィ「穂乃果さん…手が、」

 

穂乃果「まだ"ラストリゾート"の重さには勝てないね…手が痺れちゃったよ。花丸ちゃんたちにテーピングしてもらわないと」

 

ルビィ「花丸ちゃん……あれ?」

 

マネージャーの花丸はベンチで道具の準備や練習の撮影を担当している。

しかし、彼女の姿はそこにはおろか、グラウンドのどこを見渡しても見当たらない

 

 

理亞「花丸は買い出し。あとテーピング」

 

穂乃果「ありがとう、理亞ちゃん」

 

理亞「無茶し過ぎ。でも"ラストリゾート"を触った選手第一号じゃない?」

 

ルビィ「これが穂乃果さんの全力…」

 

穂乃果「いつか止められるようになりたいな」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

花丸「空腹は夏の通り雨のように突然やってくるずら〜」

 

一方、サニデイジャパンマネージャー、国木田花丸はジャパンエリアで食べ物片手に帰還途中であった。

足りなくなった道具の買い出しを花丸は毎回買って出る。

その理由はもちろん道中で食べ歩きをするため。時間に余裕がある時は海外エリアまで足を運ぶ

 

 

花丸「マルのお小遣いで買ってるからいいずらよね〜♪」

 

買い出しの袋片手に帰路を急ぐ。

そろそろ本格的な練習が始まる頃だ。自分がやる仕事もたくさんある。

頭の中でスケジュールを整理しながら、ジャパンエリアの外れまで来た時だった

 

 

花丸「だからえーがおーで……ずら??」

 

サエ「……」

 

花丸「…ずら!?」

 

驚いておやつを落としそうになってしまった。

イタリア代表監督 小原サエ。なぜ彼女がジャパンエリアへ…??

気まずさから横へ目を逸らすとそこには善子が以前話していた小原グループが経営している"秘宝堂"があった

 

 

花丸「お、お疲れ様です…ずら」

 

サエ「昨日は迷惑をかけましたね」

 

花丸「そんなこと…」

 

サエ「早く戻りなさい。あなたと私は敵同士デス。話すことはないはず」

 

花丸「そうですよね。じゃあ、失礼―――

 

その時、花丸の携帯に着信が入った。

早く帰ってこいという催促の電話だろうか、ひとまずサエに断りを入れて電話に出る

 

 

花丸「はい。花丸です…あ、花陽ちゃん…今戻…え、」

 

サエ「……」

 

 

花丸「ガルシルドの手下が…!?」

 

サエ「…!!!」

 

花丸「す、すぐ戻るずら!!!」

 

焦りながら通話を切る花丸。

内容からしてサニデイジャパンのグラウンドで何かが起こったのだろう。

サエへの挨拶を忘れ走り出す花丸

 

 

サエ「……待ちなさい」

 

そんな彼女を―――呼び止める

 

 

花丸「あ…!!サエさん、し、失礼し「早く乗りなさい」

 

花丸「……ずら?」

 

サエ「宿舎まで飛ばします。早く乗りなさい」

 

助手席が開けられた外車。

花丸は覚悟した。

この流れは、自分の知る未来を越えると。

 

この後の数分間、花丸は三途の川を数回渡ることになる

 

 

 





えー?ロシア戦は??
大丈夫です。すぐに終わるんでもう少しだけ書かせてください

穂乃果ちゃん強いっすね。感想お願いします



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第3章 146話 「チーム・ガルシルド戦 "強化人間"」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
最近更新遅れて申し訳ないです。早くロシア戦に出来るように頑張ります




 

 

 

 

 

舗装された海沿いの道路を駆け抜ける車。

唸りながら風を切り裂くその姿は、まるで何かの生き物のよう

 

 

花丸「み、未来ずら〜〜!?」

 

車の右座席に座る経験も初めてな花丸。

何度も通った道なのに感覚が違う。

小原サエの車に乗るという緊張感と未体験からの好奇心が混ざり合い、なんとも言い難い感覚を味わっていた

 

 

サエ「あの後、ガルシルドを拘束しましたがその手下たちの行方を見失っていました。恐らく目的は…」

 

花丸「復讐…ですか」

 

サエ「その可能性が高いデスね」

 

ふと、サエがサニデイジャパンの宿舎までの距離を確認しようと目を逸らした時だった。

花丸の荷物に目が止まる

 

 

サエ「…道具の買い出しデスか」

 

花丸「は、はい。テーピングや湿布、スプレーを」

 

サエ「随分と…買い込みマスね」

 

花丸の手には道具2.3個は入れきれない程の大きな袋。

そして車の揺れで擦れる金属音。

相当な量だということが予想できた

 

 

花丸「なんか…テーピングやスプレーの消耗が激しいみたいで。すぐに無くなっちゃうんです」

 

サエ「………チームの一監督として言いますが、嫌な予感がします」

 

花丸「…??」

 

サエ「救急道具は特に。練習中はマネージャーたちの目の届く場所にあるのが普通です」

 

花丸「はい…」

 

サエ「しかし、気づいたら減っている。それはつまり、」

 

サエ「誰かが見えないところで、大量に消費している」

 

花丸「!!!」

 

サエ「誰か…身体的に限界が近づいている選手がいるのかもしれません」

 

アクセル音がさらに高まった。

小原サエの焦りからなのか、それとも爽快な一本道だからだろうか。

花丸が見たことも無い速度を示し、車は海岸通りを走る。

 

一方──────────

 

 

 

 

 

サニデイジャパン練習グラウンド。

砂埃が異様に巻き上がり、今起きてることの異常さを物語っていた。

練習中突然の急襲に日本代表のメンバーは状況を理解出来ていない。

 

そんな中、粉塵の中から現れたのはアラブ系の衣装を纏った集団だった

 

 

千歌「あなたたちは…ガルシルドの!?」

 

ヘンク「ご挨拶が遅れましたね。私の名前は"ラボック・ヘンクタッカー"」

 

ヘンク「そして我々はガルシルド様の私設サッカーチーム…"チーム・ガルシルド"!!」

 

果南「チーム・ガルシルド…ガルシルドのためだけに作られたサッカーチームってこと?」

 

フォクス「高海美奈…そしてサニデイジャパンの選手諸君。ガルシルド様の命令により、あなたたちを利用させてもらう」

 

千歌「利用…!?」

 

ヘンク「ガルシルド様が拘束されている今、解放するためにはあなたたちを人質にするのが一番都合がいい」

 

果南「そこまでしてガルシルドを…」

 

英玲奈「なぜ、ガルシルドに従うんだ…ヤツの悪事のことはお前たちも分かっているだろう??」

 

ヘンク「ええ。分かっていますよ。分かった上で協力させていただいているのです」

 

チーム・ガルシルドのメンバーはサッカー選手の端くれ。

サッカーを悪事に使うことが良い事とは思わないと言うヘンクタッカー。

 

しかし、光あるところに闇があるように。

大きな望みを叶えるためには悪いことも必要。

ヘンクタッカーたちが生まれた国はとても貧しく、争いが絶えない小国だったという。

 

すさんだ生活をおくる日々。

そんな時にガルシルドと出会い、救いの手と呼べる言葉をかけられた。

『自分が世界を支配すれば、お前たちの国を救ってやる』と

 

 

フォクス「そのためならどんな命令でも聞きます。平和な国で生きてきたあなたたちには分かりませんよ」

 

曜「そ、そんな…でも…」

 

美奈「…そう。でもそれは無関係な子たちを巻き込む理由にはならないわ」

 

美奈「サッカーは人を傷つける道具じゃ無い」

 

千歌「…お母さん、」

 

ヘンク「…やれやれ、あなたがたとは分かり合えそうにないですね」

 

黙って人質になる人がいるはずなど無い。

それはヘンクタッカーたちも把握している。

だからこそ、日本代表に条件を提示した

『試合をして日本代表が勝ったら大人しく引き下がる。チーム・ガルシルドが勝ったら人質になってもらう』と

 

 

美奈「拒否権は無いみたいね…」

 

 

千歌「試合、受けて立とう」

 

「「「!!!!」」」

 

千歌「これは…サッカーを守る戦いだよ。この試合に勝って、本当の決着をつけるんだよ…!」

 

 

 

サエ「その通りデース」

 

日本「「「!?!?!?」」」

 

続けてフィールドに現れたのは小原サエ。

まだ警察には連絡していない。

なのになぜ彼女がこの場にいるのか

 

 

ルビィ「は、花丸ちゃん!?」

 

花丸「ルビィちゃん!!大丈夫ずらか!?」

 

偶然花丸への連絡を聞いていたというサエ。

しかし、これでチーム・ガルシルドの逃げ場は無くなったことになる。

逆に自分らが負ければ小原サエは人質の取引に応じなければならなくなる

 

 

千歌「みんな…絶対に勝とう!!!!」

 

「「「おーっ!!!!」」」

 

 

 

―――

 

 

 

美奈「…じゃあ、スタメンを発表するわね」

 

美奈「FW 渡辺月、星空凛、綺羅ツバサ」

 

月、ツバサ「「はい!」」

 

凛「…!」

 

美奈「MF 統堂英玲奈、高海千歌、矢澤にこ、園田海未」

 

英玲奈、千歌、にこ、海未「「「はい!!」」」

 

美奈「DF 鹿角聖良、津島善子、葉石晴夏」

 

聖良、善子、晴夏「「「はい!!」」」

 

美奈「そしてGK…松浦果南」

 

果南「はい!」

 

 

ー サニデイジャパン ー

 

FW……渡辺月、星空凛、綺羅ツバサ

 

MF…………園田海未、高海千歌☆

 

MF…………統堂英玲奈、矢澤にこ

 

DF……………鹿角聖良、葉石晴夏

 

DF……………………津島善子

 

GK…………………松浦果南

 

1-2-2-2-3

 

 

 

ー チーム・ガルシルド ー

 

FW……………コヨーテ、スコーピオ

 

MF…オウル、ヘッジ、マンティス、クロウ

 

DF…ジャッカル、ヘンク、バファロ、ディンゴ

 

GK……………………フォクス

 

 

 

ヘンク(高坂穂乃果、黒澤ルビィをベンチですか…舐められたものですね)

 

果南「…よしっ!気合い入れてくよ」

 

凛「……(凛がセンターフォワード…)」

 

絶対に勝たなければいけない試合。

日本代表監督 高海美奈ともう1人、イタリア代表監督 小原サエもベンチに座った。

ベンチからとてつもない威圧を感じるが、今目の前にいる敵に集中する

 

 

ヘンク「ガルシルド様のために!!」

 

「「「ガルシルド様のために!!!!」」」

 

前半はサニデイジャパンボールからスタート。笛が吹かれ、日本の選手たちが同時に走り出す

 

 

凛「ツバサさん!」パス

 

ツバサ「―――!」

 

まずはツバサが相手と1対1の勝負に挑む

 

 

マンティス「―――!」

 

ツバサ「……」バッ!

 

足元でボールを動かしながら相手の動きを探る。今のところ相手に目立った変化はない。

ならば自分の得意なプレーで…

 

 

マンティス「もらっ────スカッ

 

マンティス「!?」

 

ボールの幻覚を利用した"アイソレーション"に相手がつられ、バランスが崩れる。

それをツバサは見逃さなかった

 

 

ツバサ「っっ!!」バッ

 

月「ナイス、ツバサさん!」

 

まずは1人目を突破。

ツバサの華麗なドリブルにベンチからはどよめきが起こる。

UTX高校史上最高のストライカー。

その実力は本物である。しかし、

 

 

ツバサ「―――月!」パス

 

月「よし…このまま─────ギュン!!!

 

ツバサ、月「「!?!?」」

 

甘いパスでは無かった。

相手選手が取れないことも想定した。

そんなパスが―――DFブファロに簡単に奪われる

 

 

凛「にゃ!?」

 

千歌「え…速い!?」

 

ツバサのボールを奪ってからのスピードが異常だった。

まるで全力疾走を続けているかのようなドリブル

 

 

バファロ「ヘッジ!」パス

 

パスで前線にボールを送るチーム・ガルシルド。

サニデイジャパンの選手はディフェンスに入るも、その異常な身体能力から仕掛けられるドリブルを止めることが出来ない

 

 

梨子「なんなの…あのスピード」

 

美奈「……」

 

サエ「……」

 

 

善子「これ以上は行かせないわよ!!」バッ

 

サニデイジャパンの最終ライン、津島善子が止めに入る。

どんなに速いスピードで来たとしても、共鳴ならば抗えることが出来るはずだ。しかし、

 

 

コヨーテ「―――!!」バッ!

 

善子「なっ!?」

 

FW コヨーテは共鳴の射程範囲内に入る直前で高くジャンプ。

空中でシュートの構え。今から共鳴を発動しても物理的に間に合わない

 

 

コヨーテ「喰らえ!【ガンショット】!!」

 

果南「……止める!!」バシャアァン!

 

果南は自身の真下に広がる海から巨大な槍を取り出す。

いるか座のオーラが込められた神器。

『デルフィナス・トリアイナ』である。

そしてその槍を──────全力で握る

 

 

果南「形状変化──【アトランティス】!!」

 

超パワータイプへと変化した三叉戟で果南は迫るシュートを待ち構える。

この槍により、一体何本のシュートが海の底へと沈んでいったのか…それは、果南本人でさえ

 

 

──────ドゴッッッッッッ!!!!!!

 

 

コヨーテ「!!」

 

チームガルシルド「「「!!!!」」」

 

 

 

───数えきれないほどである

 

 

コヨーテ「…少しはやるようだな」

 

果南「甘く見てもらっちゃ困るね。力には自信あるんだ」

 

ピンチを凌いだ日本。

しかし、日本の守備がこうも簡単に破られるのには少々違和感があった。

 

身体能力が高いチーム・ガルシルドの選手たち。それだけならまだしも、この止まらない寒気。何度も経験した感覚だった

 

 

千歌「…あの人たち、闇の力使ってます」ズキズキ

 

英玲奈「痛むのか?」

 

千歌「はい」ズキズキ

 

英玲奈「…まさか、RHプログラムか??」

 

ヘンク「ご名答!」

 

千歌、英玲奈「「!!!」」

 

『RHプログラム』。闇の力を擬似的に身体に宿らせる強化人間プログラムである。

純粋な闇の力のように、闇のオーラや闇の必殺技は使えないが、身体能力が爆発的に向上する

 

千歌「…なんでそんなことを、そんな体でサッカーをしたら、体がボロボロに」

 

ヘンク「ふふ、何も分かっていないようですね」

 

千歌「!?」

 

ヘンク「私たちがロニージョと同じだと思っているのですか?ザ・キングダムのロニージョ。彼女はただの実験台でしか無かったのです」

 

にこ「実験台…!!」

 

ヘンク「そう!強化人間プログラムを完成させるための必要なデータを摂るためにね」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

ヘンク「彼女は十分役目を果たしてくれました。自らの体を犠牲にしてね。もちろん、高海千歌、高坂穂乃果。そして…日宮美奈、あなたがたも」

 

呼び起こされる悲劇の数々。

自分の好きなものを守るため、その身を犠牲にしたロニージョ、そして美奈。

精神を蝕むほどのダメージを負わされた穂乃果と千歌。

人間を道具としか見ないガルシルドの呪縛は過去から今まで、途切れずに繋がっていた

 

 

ヘンク「そして完成したのが私たち…!究極の強化人間プレイヤーなのです!!」

 

果南「…許せない!ロニージョや千歌たちを…実験台に使うなんて!!」

 

ヘンク「全てはガルシルド様が支配する理想の世界を作るため!」

 

果南「サッカーは支配するための手段じゃない!!」バシッ!

 

ヘンク「!!」

 

果南はボールを高く蹴りあげた。

この試合、絶対に勝たなくてはならない。

これ以上、サッカーをする者の未来を失わせないためにも、自分たちのためにも

 

 

海未「ナイスパスですよ果南」

 

ディンゴ、ジャッカル「「行かせない!!」」バッ

 

海未「……力には────力です」ゴォォッ!

 

ディンゴ、ジャッカル「「!?」」

 

海未「【風神の舞】っっ!!!」

 

例え身体能力が高い選手だとしても、海未のスピードと必殺技に手出しは出来ない。

切り裂くようなドリブルで相手陣内を突き進む

 

 

海未「はあぁぁっっ!!!!」

 

ゴールが射程範囲内に入ったため雷雲召喚。

自身のスピードを最大限に引き出した雷神の一撃

 

 

海未「【天地雷鳴 改】!!!!」ドガアァン!!

 

大地を削りながら進む雷雲の嵐。

威力は相当なものだが、GKフォクスは迫るシュートを前に、不気味な笑みを崩すことは無かった

 

 

フォクス「【ビッグスパイダーV2】!!」ズン!

 

海未「…!!」

 

巨大なクモの足が海未のシュートを捕らえる。

まるで巣に誘い込まれた虫のように、徐々に包まれ吸い込まれ、気づけばボールはフォクスの手の中で止まっていた

 

 

フォクス「ふふ…こんなものですか?」

 

 

千歌「海未さんのシュートが…」

 

海未「やはり、一筋縄ではいきませんか」

 

悔しいが、強化人間の力は本物。

異常なスピードとパワーでサニデイジャパンを追い込んでいく。

さらに、今まで戦ってきた世界のチームとは決定的に違うことがあった

 

 

クロウ、マンティス

「「【ジャッジスルー3】!!」」ドガン!ドガン!

 

善子「ちょっ!?痛っ!?」ドガッ!

 

果南「善子!!!」

 

力をぶつけることに──躊躇いがなかった。

ボールを日本の選手に叩きつけ、突き飛ばし、危険なプレーも容赦ない。

 

魔界の民と戦った時のような気持ちだった。

今のサッカーは…楽しいとは別の世界にある

 

 

英玲奈「果南…!集中しろ!!」

 

果南「!!」

 

果南が意識を試合に戻すと、十数メートル先で突破した選手がシュートを撃つ体勢に入っていた。

だが、どんなに力があったとしてもこの槍で全部沈める。

 

神々しく光る三叉戟を構え、来たるシュートへ――――バシュゥゥゥン!!!!

 

 

果南「……え、」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

ヘンク「ふふ」

 

果南の背後からボールが転がってきた。

自分の後ろにはゴールしかないはず……決められた、のか?

しかし、果南が集中した時にはボールは確かに相手選手の足の下にあったはずだ

 

 

ルビィ「…見えた?」

 

理亞「………見えなかった」

 

サエ「厄介ですね」

 

果南の動体視力はサニデイジャパンの中でもずば抜けて優秀だ。

もし、相手選手が果南が反応出来ないほどのスピードのシュートを蹴れるのだとしたら

 

 

ヘンク「あなたたちに勝ち目はありません」

 

果南「…!!」

 

 

花陽「果南さんが反応出来ないスピード…」

 

穂乃果「悔しいけど、穂乃果も全く見えなかった。このままじゃ…」

 

美奈「…大丈夫よ。果南ちゃんなら」

 

「「「!!!」」」

 

花陽「何か作戦が!?」

 

美奈「作戦も何も、果南ちゃんに任せるの。この試合…果南ちゃんには大きな刺激になる」

 

果南の表情には悔しいさと戸惑いが混ざっている。しかし、美奈の目に迷いは一切感じられない

 

 

美奈「先に言っておくわ。次の試合…ロシア戦のGKは―――果南ちゃんよ」

 

 

 

サニデイジャパン 0-1 チーム・ガルシルド

 

 





チーム・ガルシルドよ…果南ちゃんの進化素材になってくれ



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第3章 147話 「チームガルシルド戦 "反撃開始"」


皆さんどうも、ルビィちゃんキャンディーです。
最近忙しくてどうしても更新遅れますね…あと暑い





 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ガルシルドを解放するためにサニデイジャパンへと襲いかかるチーム・ガルシルド。対する日本は試合で勝利しようとするも、高速シュートにより1点を失うこととなった

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

真恋「これで…日本は追いかける展開になったわね」

 

ダイヤ「ですが、果南さんは本当にあの高速シュートを…」

 

サエ「私が日本代表監督だったら同じくハグゥを起用しています」

 

「「「!!」」」

 

ことり「あ、あの…ハグゥって?」ヒソヒソ

 

ダイヤ「果南さんのことですわ」ヒソヒソ

 

サエ「松浦果南…あの北也の子なら尚更」

 

美奈「…」

 

 

チーム・ガルシルドのラフプレー、そして異常な身体能力により上手く機能しないサニデイジャパンサッカー。

フィールドで走る選手たちは焦っていた

 

 

にこ「…勝てなくはない。でもラフプレーね」

 

英玲奈「あぁ、準決勝を前に怪我は怖いからな。全員動きが悪い」

 

気を引き締めなければ厄介な相手だとは理解している。だがそれを相手が許さない。

完全に悪循環と化しているこの試合、ここからどう立て直すか

 

 

月「凛ちゃん、上がって!!」パス

 

凛「────!」

 

月のボールが凛へと放たれる。

センターフォワードとして今、私は得点するという大事な役目を任されている。

その期待とプレッシャーに抗いながら、星空凛…"雷虎"は駆け抜ける

 

 

凛「【イナビカリ・ダッシュ改】!!」バチバチ!

 

海未やルビィのドリブルにも引けを取らないスピードが凛の武器だった。

しかし、まだ未熟な部分が目立っていた彼女は代表戦以降スランプに陥り、思うように結果を出せずにいた

 

 

にこ「改…!!やるじゃない凛!!」

 

英玲奈「キレが増してるな。特訓の成果だ」

 

それでも諦めなかった。

同世代、1年生のメンバーたちにも負けないように。自信はそのまま、慢心を捨てた

 

 

ヘンク「…!速いですね」

 

凛(このまま突っ切るにゃっっ!!)バチバチ!

 

凛の姿は雷速により薄れる。

数メートル間隔で雷音が鳴り、まるで空間を飛び越えているかのよう。

 

全国大会で見た、自信に満ち溢れる虎が片鱗ではあるものの───戻りつつあった

 

 

凛「【ジグザグストライク】っっ!!」ドガアァン!

 

シュートとドリブル、両方を合わせ持つ必殺技『ジグザグストライク』。

目で捉えるのも困難なスピードから放たれるシュートはまさに電光石火

 

 

フォクス「【ビッグスパイダV2】!!」

 

しかし、闇の力は厄介である

 

 

凛「―――!!」

 

フォクス「軽い…軽いですよ」シュゥゥ…

 

どんなに速くても。

そのシュートが軽く、反応されてしまうのであればスピードの意味は無い

 

 

花陽「凛ちゃんのシュートも…」

 

真姫「あのキーパー、守備範囲も広いわ…力で押し切るしかないわね」

 

攻めてもあと一歩、越えることが出来ずに時間が過ぎ、疲労が溜まっていく。

果南でさえ反応出来ないシュートを撃たれれば失点は避けられない。

なんとかシュートを撃たせまいとディフェンスするもそれも限界がある

 

 

スコーピオ「コヨーテ!!」パス

 

聖良「…!?善子さん!」

 

善子「くっ…間に合わっっ!!」ズザーッ!

 

聖良が不意打ちのパスをカットするように指示するも間に合わない。

FW コヨーテと果南の1対1。

次こそは止めると、再びゴール前で構える

 

 

果南(集中しろ…集中……軌道を、音を)

 

コヨーテ「喰らえっっ──────

 

 

 

 

右───────バキッッ!!!!

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

サエ「!!」

 

美奈「…!」

 

コヨーテ「!!」

 

 

──────バシュゥゥゥン!!!!

 

果南(っっ!!触ったのに…!!!)

 

果南の右手は確かにボールを捕らえていた。

しかし、軌道が変わってもゴールの枠内は変わらず、ボールは勢いよくネットを揺らした。

 

そしてここで前半終了。

果南は笛が吹かれてもしばらくの間、悔しさで顔を上げることが出来なかった

 

 

果南「ハァハァ…くそっ…!」

 

果南(あともう少しで…何か見えそうなのに)

 

ヘンク「松浦果南では勝負にならないようですね…高坂穂乃果!!後半はあなたが出てきた方がチームのためですよ!」

 

 

穂乃果「…果南ちゃんを甘く見ない方がいいよ」

 

 

ヘンク「……」

 

確かに。

最初は反応出来なかった松浦果南が2回目で完璧にボールに触れ、軌道を変えていた。

彼女の生物的能力には油断出来ないものがある。しかし、

 

 

ヘンク「点差は2。このままでは逆転も難しいでしょうね」

 

 

 

―――

 

 

 

2失点という悪状況からベンチへと戻ってきたサニデイジャパン。

しかし、美奈が焦っている様子は無かった。

ここまで全て想定内だと言わんばかりの雰囲気を醸し出し、監督は口を開く

 

 

美奈「後半は英玲奈ちゃんに代わって梨子ちゃんよろしくね」

 

梨子「は、はい!」

 

美奈「みんな。負けてはいるけどチャンスと考えて。あのスピード、連携への対応はロシア戦へのいい練習になるわ」

 

海未「練習……ですが、負ければ私たちは…」

 

サエ「負けるのデスか?」

 

海未「…!」

 

サエ「サニデイジャパンは作り物のチームに負けるのデスか。その程度ではイタリアに…その前にロシアにも勝てない」

 

サエ「勝つことだけを考えなさい」

 

小原サエの言葉には美奈とはまた別の力があった。

真っ直ぐに。勝利という道の上で当然のように歩き続ける彼女は、まさに一国の大監督だった。

 

美奈と真恋から細かい指示を受け、始まる後半戦。日本は最低でも3点は奪わなくてはならない

 

 

ルビィ「…凛ちゃん」

 

凛「!!」

 

ルビィ「練習の成果…発揮すれば絶対に勝てるよ」

 

凛「任せるにゃ。勝負はここから…!」

 

 

チーム・ガルシルドボールで後半戦が始まった。

前半は強化人間のスピードとパワーに翻弄され、いつも通りの試合が出来ないでいたサニデイジャパン。しかし、

 

 

梨子「英玲奈さんのデータ…使わせてもらいます!!」バッ

 

梨子「【神のタクトFI】!!」

 

前半で英玲奈が情報を分析し、後半から梨子がそのデータを元にチームを導く。

これにより日本のパフォーマンスは見違えたかのように磨きがかかる

 

 

梨子「DF3人は上がってください!!カットは海未さんとにこさんお願いします!!」ビシッ

 

にこ「合点承知よ…!!」バッ

 

オウル「くっ…全員まとめて抜き去るまで!」

 

にこと海未はドリブルを一番に得意としている選手。ボールを繋ぐ中継役、そして狙える時はゴールを狙う。攻撃で万能な役目を担っている。

しかし、2人の恐ろしいところはさらに+‪αでディフェンスの強さ

 

 

海未「隙だらけです」ビュウゥゥ!!

 

クロウ「や、やばっ───【スピニングフェンス】!!」

 

海未の高速移動から発動される竜巻は回避困難。まるで彼女自身が風の刃になったかのように、鋭く―――速く―――翔ける

 

 

にこ「ナイスよ海未!」

 

海未「にこの誘導のおかげです…いえ、それもありますが1番は―――

 

 

 

サエ「桜内梨子…やはり彼女の指揮で流れは変わりますか」

 

美奈「ゾーンへの覚醒があの子の成長を加速させてる。ここまで本当によく仕上げてくれたわ」

 

真恋「…"神のタクト"はもともと彼女の母親、"梨本乃々子"の技だったわね」

 

美奈「梨子ちゃんなら絶対に使いこなせる。そう信じて私は…"神のタクト"を教えたのよ」

 

 

サニデイジャパンの変化にヘンクたちは戸惑いを隠せない。

そしてそれが隙となり、桜内梨子の指揮による侵略がよりスムーズに進んでいく

 

 

梨子「次っっ!!」ビシッ!

 

千歌「凛ちゃん!」パス

 

相手の最終ラインを縦に越えるボールが放たれた。

それと同時に飛び出したのは明るい茶髪の少女。DFが彼女を追いかけるがその差はどんどん広がっていく。

ほとんどの選手が焦っていたが1人、余裕の笑みを作りながら走る選手。ヘンクは口を開く

 

 

ヘンク「星空凛のシュートは軽い…!撃たせても問題ありません!!」

 

フォクス「ふふ…何度撃っても無駄ですよ」

 

凛「どうかな?」

 

フォクス「!?」

 

凛は一言、言い放つと同時にまるで刃のような電気を放出。

トゲトゲしく弾けるそのオーラは、まさに地を駆け唸る虎

 

 

凛「────っっ!!!」ドォン!

 

足で地面を揺らす。

それにより凛の中で眠る虎は目を覚ます。

体を大きく捻り、足だけでなく全身でボールを叩くシュート

 

 

凛「【タイガードライブV3】!!!」ドガアァン!

 

フォクス「やはり軽いですね!!【ビッグスパイダーV2】!」

 

凛のシュートを必殺技で受け止める。

確かに進化している技のようだがそれでも軽い。先ほどのシュートと全く同じ威力…

 

 

フォクス「―――!!?」グググ

 

ヘンク「…どうしたのですか!!」

 

 

…小さい、はずなのに

 

 

フォクス「ぐっっ!?」

 

 

…押されてる?

 

 

フォクス(見た目は軽いシュートと変わっていないはず…な……

 

フォクス「ぐあぁっっ!?」ドガッ!

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

チーム・ガルシルド「「「!?!?」」」

 

 

―――バシュゥゥゥン!!!!!!

 

サニデイジャパンの最初の得点は、センターフォワードが役目を果たす形となった。

虎は巨大な蜘蛛をなぎ倒し、ゴールに飛び込んでいく

 

 

花陽「やった…!凛ちゃんナイスシュートだよ!」

 

理亞「やるじゃない。凛」

 

ルビィ「うん」

 

凛の得点によりサニデイジャパンのベンチ、そして陣内が湧き上がった。

それに対し、チーム・ガルシルドの選手たちは、軽いはずの星空凛のシュートがゴールを破った理由が分からず困惑していた

 

 

フォクス「な、なぜ…重かった…まるで別のシュートだ」

 

凛「特別に教えてあげるにゃ」

 

フォクス「!!」

 

凛「凛はね…連続で蹴ったんだよ。シュートを」

 

欠点だった軽いシュート。ただ速いだけのシュート。考えに考えた末…凛が辿り着いた答えは―――連撃だった。

 

自分の自慢のスピードを活かし、"タイガードライブ"をあの一瞬で連続で蹴りこむ。

どんなに軽くても威力を倍増し続ければ、鉄の壁をも破壊する砲台になりうる

 

 

凛「…10連"タイガードライブ"」

 

フォクス「あの一瞬で…10回…!?」

 

星空凛が自身の殻をまた一つ、破った瞬間だった。

 

―――そのままサニデイジャパンの流れは続いた

 

 

 

コヨーテ「でりゃっ!!」ドガッ!

 

果南「──────左っっ!!」バギッ!!

 

コヨーテ「な、何故!?」

 

果南は味方への指示をMFとDFの司令塔 梨子と聖良に任せ、高速シュートを止めることだけに集中した。

結果…反射に近いスピードでシュートを食い止めていく。目で見ることを省き、視野の中で、ぼんやりと。ここにあるのだろうと、感覚で捉えた場所へ腕を伸ばす

 

 

ヘッジ「あ、あのキーパー…本当に人間なの!?」

 

クロウ「日本のサブキーパーがこの強さ…なら高坂穂乃果は、」

 

善子「果南はサブキーパーじゃないわ」

 

ヘッジ、クロウ「「!!」」

 

高坂穂乃果、松浦果南。

2人はそれぞれ別の武器を持ち、お互いに出来ること、出来ないことが存在する。

彼女たちが自分の力を最大限に発揮できる場で、高海美奈はGKの選手を指名する。

その2人の間にメイン、サブなどというものは存在しない。

あるのは…その時その時でゴールを任せられる信頼のみ

 

 

果南「こぼれ球!!晴夏!!」

 

晴夏「はい…!」

 

果南がサイドに弾いたボールを拾う晴夏。

梨子からはドリブルで持ち込めの指示

 

 

マンティス「2人で奪う」バッ

 

スコーピオ「えぇ!!」バッ

 

晴夏「…!」

 

しかし、相手のプレスも速かった。

1対2の突破はさすがに厳しいかと、梨子が日本の選手にフォローの指示をしようとした時だった

 

 

 

晴夏「 邪 魔 」ギロッ!!

 

マンティス、スコーピオ「「!?!?」」ゾクッ!

 

一瞬、硬直する相手2人。

その隙を―――晴夏は逃さず高速で駆け抜ける

 

 

晴夏「【Wロード】!!」ズバッズバッ!

 

 

曜「よし…抜けた!そのまま持ち込める!」

 

英玲奈「…?」

 

穂乃果(……今のって、)ズキズキ

 

 

ボールはそのまま前線まで繋がる。

前半…チーム・ガルシルドの選手らの身体能力には苦戦したものの、今や日本の武器である対応力で対等…いや、それ以上のサッカーを繰り広げている

 

 

ツバサ「はあぁぁぁっっっ!!!!」

 

上空でゾーンの力を利用し、全オーラをボールに凝縮させるツバサ

 

 

ツバサ「弾けなさい。【ゴッドブレイク】」

 

少しでも衝撃を加えればオーラが溢れ出すボールをツバサは全力で蹴り落とす。

空気を殴るような爆発音と同時に、金色に輝く神のごとく巨大なオーラが迫る

 

 

フォクス「くっ…【ビッグスパイダーV2】!!」

 

私たちは強化人間のはず…なのに、何故、普通の人間のシュートが止められないんだ?

ガルシルド様は言った。私たちを最強のサッカープレイヤーにすると。なのに…なのに…なの―――

 

 

 

―――バシュゥゥゥン!!!!!!

 

 

理亞「…私たちの出番はないみたい。ルビィ」

 

ルビィ「そうだね」

 

 

──────不安は伝染する。

サニデイジャパンが対応しているのもあるが、同時にチーム・ガルシルドの選手たちの自信は焦りに変わる。

集中力が切れ、自分たちは本当に強くなったのだろうかと不安に駆られる。その悪循環が────チームの連携を崩していく

 

 

凛「【星空スタンプ】っっ!!」ドガアァン!

 

にこ「ナイス凛!!」バッ

 

凛が上空からの落下速度を利用し、地面着地の衝撃で相手を吹き飛ばす。

そのままボールを持ったのはにこ。

彼女のドリブルは絶対に信頼できる。日本の選手たちは同時に走り出した

 

 

にこ「【スーパーエラシコ】!!」バッバッバッ!

 

ディンゴ「ぶ、ブラジル代表の!?」

 

月「にこちゃん!こっち!」

 

にこ「月!!」パス

 

にこがドリブルで通過するであろうルートを予測し、フリーのスペースに走り込んでいた月。

ゴールは目の前。十分、撃てる位置である。しかし、

 

 

ヘンク「させません!!」ズザーッ!

 

にこ「月…!!危ない!!」

 

DFのスライディング。

にこの警告が無ければ接触は避けられなかった。

月はチャンスを無駄にしないためにも、このスライディングを回避しながら中へ攻め込むため、右足を強く踏み切った

 

 

月「あまいね────ズギッ!!

 

月「ぐっ…!?」

 

 

美奈「…!!」

 

サエ「!!」

 

花丸「!!」

 

 

月「千歌ちゃんっっ!」パス

 

しかし、躱した時に体勢を崩してしまった月は、近くを走る千歌へとボールを蹴った。

だがそのボールは千歌に渡ることは無く、軌道がそれ、フィールド外に出るパスミスとなってしまった

 

 

千歌「月ちゃん大丈夫??」

 

月「あっはは…ごめん。躓いちゃって咄嗟にパス出しちゃった」

 

笑いながら起き上がる月。

どこか様子が変だと、千歌が気になったのと同時に、ベンチから月を呼ぶ声がした

 

 

 

 

サエ「………月。来なさい」

 

 

月「!!」

 

千歌「…サエ、さん??」

 

サエの顔を見た瞬間、千歌は自分の血の気が引いていくのを感じ取っていた。

ガルシルドを追い詰めた時とは違い、落ち着いた声と表情だが、その目からは怒りの感情がハッキリと伝わってきていた。

 

名を呼ばれ、すぐにサエの元へと向かう月。

彼女の顔も真っ青だ。

まるで、隠し事が親にバレた子供のように、その足取りは悪い

 

 

サエ「右足。スパイクを脱ぎなさい」

 

月「…はは、やっぱりバレちゃうか」

 

言われた通りスパイク、そしてソックスをその場で脱ぎ始めた月。

そこから現れたのは、肌色の鍛え上げられた皮膚ではなく、白いテーピングでガチガチに巻かれた足であった

 

 

ことり「ひ、酷い…この足って」

 

月「理亞ちゃんたちに言える立場じゃないね…練習で無茶したんだ。少しでも、力になろうと思って」

 

サエ「はぁ…怪我をするまで無茶をしろと、私は教えた記憶はないはずデスが?月」

 

月「…」

 

サエ「その行為は自分の才能を捨てているどころか、チームの負担になる。ベンチで治療を受け、頭を冷やしなさい」

 

月がイタリアに留学している時は、サエが指導者としてサッカーを教えていた。そんな私が見逃すわけないと、言っているようであった。

選手のことを第一に考える。小原サエの指導者としてのプライドであり、願いでもある

 

 

真恋「美奈。交代する選手を」

 

美奈「えぇ。月ちゃんに代わって…「理亞ちゃんがいいと思います」

 

理亞「!!」

 

「「「!!!!」」」

 

理亞の交代を提案したのはルビィ。

ベンチは騒然とするも、彼女の考えが揺らぐことは無い。そして、理亞に語りかけるようなゆっくりと説明する

 

 

ルビィ「凛ちゃんが練習の成果を見せた…なら、理亞ちゃんもじゃない?完成が近いんでしょ」

 

理亞「…!!」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「この試合で見せて。"ラストリゾート"を」

 

 

 





トドメだ!!理亞!!!!




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第3章 148話 「チーム・ガルシルド戦 "切り札の完成!?"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
ドッカンバトルやスクスタ…スクフェスを楽しみながら投稿します。後半は急いで書いたので少し雑かも…




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

チーム・ガルシルドの不気味なプレイに圧倒され、本来の力が出せずにいた前半。

しかし、後半から桜内梨子の投入により流れはサニデイジャパンへ。それぞれの選手が活躍を見せ、ルビィの提案により理亞が登場する

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

月「理亞ちゃんが"ラストリゾート"か…痛ててっっ…ついにここまで来たって感じだね」

 

ベンチで右足の治療をうける月は、痛みに耐えながら理亞の交代を見送っていた。

ゾーンや特殊能力技を使わずにここまで戦ってきた彼女が無茶をしていた気持ちも理解できなくはない。しかし、酷く腫れた右足を見るといい選択だったとは言えないことは確か

 

真姫「もう…ここまで悪化させるなんて、」

 

月「いや〜面目ない」

 

だが、この月の交代はきっかけにすぎない。

フィールドの中で敵味方、1人の少女の姿を目で追う。その少女はただならぬオーラを放ち、ゆっくりと、自分のポジションへと向かう

 

 

海未「ここで理亞ですか…何か考えがありそうですね」

 

善子「…あの雰囲気、まさか…ね?」

 

理亞はセンターフォワード。凛はウイングで月の代わりに理亞のサポート&攻撃をする

 

 

理亞「やればできるじゃん。凛」

 

凛「でしょ!凛、頑張ったもん」

 

理亞「…今度は私の番ね」

 

理亞の余裕を醸し出すその態度。そしてそのほかのサニデイジャパンの選手たちも、自分たちのサッカーができることにより本来のパフォーマンスを取り戻しつつあった。

チーム・ガルシルドから見れば、これ以上に腹ただしいものは無い

 

 

ヘンク「何故…ラフプレーを仕掛けても潰れない??ダメージは確実に負っているはず!!」

 

ツバサ「ラフプレー…?あら、あれがあなたたちのラフプレーなのね」

 

ヘンク「…どういう意味でしょう」

 

ツバサ「私たちはこの試合よりももっと激しい戦いを勝ち抜いてきた。この程度でラフと言うのなら、闇の力と言っても…所詮は作り物なのね」

 

ヘンク「…!!黙りなさい!!」バッ

 

ボールを持つヘンクがツバサへ向かって走り出す。完全にツバサを狙う目をしている。

対するツバサはその場で動くことなく、動揺することも無く。

ただ横を流れ過ぎていく風のように

 

 

ツバサ「─────貰っていくわ」

 

ヘンク(は、速い!?!?)

 

 

曜「すごい…一瞬で!!」

 

英玲奈「冷静さを欠かせ、ゾーンの加速で一気に奪い去る…ツバサらしいプレーだな」

 

 

ツバサは常に冷静だ。白熱する試合の中でも、1人静かに戦況を見る。

そんな彼女の動きは思考とは真逆で加速する。鍛え上げられた筋肉と洞察力。

まるで、スローモーションの世界で最善のプレーを考え出すよう

 

 

ジャッカル「この…!調子に──スカッ

 

ツバサ「残念」

 

ジャッカル(背後から近づいたのに…!?)

 

 

ディンゴ「ここだっっ!!」ズザーッ!

 

ツバサがジャッカルのディフェンスを回避したのと同時に、スライディングを仕掛ける─────が

 

 

ツバサ「────!!」バッ

 

ディンゴ(避けられた!?)

 

ツバサ「理亞!!」パス

 

ゾーンを発動しているのもあるが、ツバサの元々のステータスはサニデイジャパンの中でもトップクラスで高い。

シュート、ドリブル、ディフェンス。そして判断力やテクニック。どれも尖った才能ではなく、バランス良く優れ、その能力をゾーンにより爆発させる。

 

神という2つ名は…決して間違ってはいない

 

 

 

理亞「―――!」

 

そしてボールを受け取ったのは"雪原の狼"。

その名にふさわしく、鋭い眼光でゴールを見据え、躊躇うことなく自身の力を発動させる

 

 

理亞「はああああっっっっ!!!!」

 

理亞「【Awaken the power】!!」ドォン!

 

溢れ出すオーラにより、理亞の髪は凍てつくような銀色に。目は獣のように紅く光る。

今の彼女に近づくだけでも、冷気を纏った風により全身が冷痛の悲鳴を上げる

 

 

理亞「まずは肩慣らしよ…っっ!!」バッ!

 

頭上に冷気と空気を集中させ、まるで竜巻のようなオーラを両足で捌いていく。

"ラストリゾート"に限りなく近い必殺技と呼ばれた─────鹿角理亞の一撃

 

 

理亞「【オーバーサイクロン】!!」ドガアァン!!

 

 

フォクス「【ビッグスパイダーV2】!!」ズン!

 

フォクス「!?!?」

 

理亞のシュートを掴んですぐ、フォクスは"オーバーサイクロン"の重みにより、一瞬だけ背中を仰け反らせた。

まるで何か巨大な…像や車がぶつかってきたかのような衝撃。"ラストリゾート"のように弾かれることは無いが…確かに、"それ"に限りなく近い重み―――オーラ―――

 

 

フォクス「ぐあぁっっ!?」

 

―――バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

チーム・ガルシルド「「「!!!!」」」

 

理亞「…大したことないわね」ゴゴゴゴ

 

交代から数分。逆転の一撃をゴールに叩き込んだ理亞。その圧倒的なパワーは、闇に堕ちた戦士たちを黙らせるには十分すぎるほど

 

 

千歌「すごい…"オーバーサイクロン"。威力が上がってる」

 

梨子「イタリア戦のあとから…ずっと練習してたもんね…これなら、"あのシュート"も」

 

"ラストリゾート"の完成。

それは即ち、日本の切り札が新たに加わるということ。準決勝と決勝、日本の勝利にとって必要不可欠なのは確実。そのためサニデイジャパンのほとんどの選手が、理亞に期待を寄せていた。

 

 

数人を除いて

 

 

 

美奈「……」

 

サエ「…………」

 

 

 

 

 

 

サニデイジャパンが逆転し、試合も残りわずかとなった

 

 

善子「果南!シュート来る!!」

 

果南「───────はっ!!!」バギッ!!

 

前半は全く反応出来なかった高速シュート。

しかし、サニデイジャパンの中で見ても異常なまでの対応力を見せる果南は全て弾く。あまりにも反応が速すぎるため、相方選手がシュートを撃つ前から動いているように見えてしまう

 

 

聖良「まるで未来を予想しているみたいですね…」

 

ツバサ「………」

 

 

果南「ふぅ…!!まだまだ!!」

 

果南(この感覚……なんだろう、)

 

 

弾かれたこぼれ球をサニデイジャパンのDFが全て拾えるとは限らない。

しかし、例え再びチーム・ガルシルドの選手にボールが渡ったとしても、鉄壁と化した最終ラインを突破するのは困難

 

 

マンティス、クロウ

「「【ジャッジスルー3】!!」」ドガン!ドガン!

 

善子「…【Deep Resonance】」バッ

 

マンティス、クロウ「「!?」」

 

善子は共鳴を発動し、殺意が込められたボールへと自分から飛び込んでいく。そして次の瞬間────

 

──────ドガガガガッッッ!!!!

 

自分に向かって放たれた複数のボールを、全て蹴り返したのである

 

 

マンティス「なっ!?」ドガッ!

 

クロウ「そんな…!?」ドガッ!

 

 

 

 

桜内梨子、"旋律の指揮者"の仕掛けるタクティクス

 

 

梨子「必殺タクティクス…!!」

 

梨子「【奇門遁甲の陣】!!」

 

 

サエ「…!あの技は……」

 

 

 

 

RHプログラム…闇の力をも超える能力を持つ選手たち

 

 

チカ「【Braveheart】」

 

にこ「【ファンタスティックキープ改】!!」

 

 

チーム・ガルシルドは確実に―――追い詰められている

 

 

ヘンク「わ、私たちは…強化人間なのです…誰にも、負けな―――【ドロップっっ!!

 

ヘンク「!!!」

 

理亞「──アウトV4】!!」ドガァン!

 

ここで鹿角理亞が再び─────最終ラインを突破する。彼女本人も分かっているのだろう、あの技を…ここで、今、この場で…完成させるのだと

 

 

月「…来るね」

 

ルビィ「…うん」

 

 

思えば、ここまでルビィと同じ時間を過ごしたのは初めてだった

 

 

理亞「………」シュゥゥゥ…

 

 

海未「"ATP"を解除…?」

 

聖良「理亞………まさか!?」

 

 

理亞「はああああっっっっ!!!!」バッ!

 

 

"Awaken the power"はルビィの技だが、理亞は彼女とほとんどその時は会うことなく。自分の才能で"ATP"を完成させた。しかし、

 

 

理亞「──────っっ!!」バッ!

 

 

この技は…更にその遥か上をゆく世界。

自分の力だけでは到達出来ない。そう気づいた時には、ルビィと、毎日のように練習していた

 

 

理亞「───────ぜいっっ!!」

 

 

初めて会った時は…ただただ憎い存在。顔を見るだけでも怒りが湧いてきた。

それが今では、ルビィの顔を見ない日は無い。ルビィが…私の生活の一部に溶け込んでいる。仲がいいと言われる。が、正直よく分からない。

 

だが、これだけは言える

 

 

理亞「"Awaken the power"!!唸れっっ!!!!」

 

 

ルビィがいなければ、今の私はいない

 

 

 

 

理亞「【ラストリゾート】!!!!」ドガアァン!!

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

チーム・ガルシルド「「「!!!!!!」」」

 

相手だけでは無い。味方も含め全員が、理亞のその一撃に目を疑い、硬直する。

その覇気、パワー。地面を抉りながらゴールへと突き進むその破壊力。間違いない。世界に届く切り札を―――鹿角理亞は―――

 

 

 

 

―――ボゴオォォォォン!!!!!!

 

 

理亞「!?!?」ゴゴゴゴ

 

ルビィ「!!!!」

 

今までの"ラストリゾート"の放つ音の中からは…聞き覚えの無い音が、空気を揺らす。

その原因を選手たちは目撃していた

 

 

穂乃果「"ラストリゾート"が…破裂した??」

 

ルビィ「…………失敗です」

 

ルビィは言葉を詰まらせながら、一言。破裂の原因を口にした。

完全に完成したと思われたシュートはボロボロと崩れ、圧力に耐えきれなくなったボールはゴール枠の外、フィールド外へと消えた

 

 

理亞「ハァ…ハァ……し、失敗……」

 

 

美奈「まだ早かったみたいね」

 

ルビィ「…はい」

 

そしてここで日本の運命を賭けた試合に終了の笛が吹かれた。結果はサニデイジャパンの勝利。

まさかの結果に、チーム・ガルシルドの選手たちはその場で呆然と立ち尽くしていた

 

 

ヘンク「ぐっ…!ハァハァ…私たちは最強の力を手にしたはずでは無かったのか…??」

 

ヘッジ「後半……何も出来なかった」

 

にこ「当然よ。私たちは自分の力で本気のサッカーをしてるの。偽物なんかに負けはしないわ」

 

穂乃果「あなたたちも…実力のあるサッカープレイヤーだった。強化人間とかじゃなくて、普通にサッカーがしたいよ」

 

果南「…まあ、これでガルシルドの手下たちもお縄だね。後は…「まだです」

 

ヘンクタッカーが睨む先には小原サエ。試合が終了し、油断したところをヘンクは見逃してはいなかった

 

 

ヘンク「小原サエだけでも…道連れに!!」ドガアァン!

 

月「サエさんっっ!!!!」

 

サエ「──────!」

 

月が叫んだ時には―――サエのすぐ目の前まで、殺意が込められたシュートが迫っていた。

ここからでは防御も、回避も出来ない。そんな時だった

 

 

 

 

 

─────メキッッッッッ!!!!!!!!

 

サエの顔の目の前で、突然人の足が現れたと思った次の瞬間。右足がボールにめり込まれ、そのまま地面へと叩き込んだ

 

 

穂乃果「あのシュート…!」

 

 

 

 

和葉「【ブレイブショット】」

 

 

穂乃果「みっちゃん…!」

 

ヘンク「イタリア代表キャプテン…カズハ・ミウラ!?!?」

 

「ハーイ♪もう逃げられないわよ」

 

ヘンク「!!」

 

鞠莉「フィールド一帯に"グラウンドスイーパー"を仕掛けたから、大人しくArrestされた方がいいわよ♪」

 

ダイヤ「鞠莉さん!?」

 

オルフェウスの選手2人、三浦和葉と小原鞠莉が突然現れた。彼女らの登場はサニデイジャパンにとって救い。

まるで最初から和葉が助けることを分かっていたかのように、サエはいつもと変わらぬ足取りでヘンクたちの元へと近づいた

 

 

サエ「悪足掻きも程々にしていた方が身のためデス。甘く見ないことね」

 

ヘンク「………ふふ」

 

サエ「……」

 

ここまで追い詰められても、ガルシルドの下僕たちは笑みを失っていない。まだ何か、この状況でも牙をむこうとしているのか。

そしてヘンクは、衝撃の事実を口にする

 

 

ヘンク「甘いのはあなた方です…この試合の間にあなたたちの宿舎に、爆弾を仕掛けさせてもらいました」

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

英玲奈「ば、爆弾…正気か!?」

 

ヘンク「今爆発すればグラウンドにいるあなたたちもタダでは済みません!!これで…全員を道連れに…「爆弾ってこれのことかい?」

 

ヘンク「…え、」

 

男性が1人、黒い箱状の塊を片手に近づいてきた。少し渋めのその顔を見た途端、声を出しながら驚く少女が数人

 

 

凛「にゃーー!?」

 

千歌「え…え??」

 

穂乃果「ラーメン屋の大将!?!?」

 

大将「よっ!嬢ちゃんたち。頑張ってるみたいだな」

 

現れたのは千歌や穂乃果がジャパンエリアの町外れで外食に訪れたラーメン屋の大将。

そして、ガルシルド邸では手下に追われる果南たちを助けた人物でもある。

そんな大将が持つ謎の物体…

 

 

大将「あぁ。これが爆弾」

 

「「「えぇえぇえぇえぇ!?!?」」」

 

にこ「ちょっと!?ぬぁんてもの持ってきてるのよ!!!」

 

大将「大丈夫大丈夫。もう解除してある」

 

笑いながら安全を伝える大将。

だが、何故この人がこの場で爆弾を、状況を、全て知っているようなのか。

その理由はサエが教えてくれた

 

 

サエ「この人は私と同じインターポールの人間。今まで張り込み、ご苦労だったわ」

 

穂乃果「ら、ラーメン屋の大将が…国際警察の人…??」

 

大将「騙すつもりは無かったんだがな。あの場所でガルシルドの行動をずっと監視していたんだ」

 

大将のラーメン屋がある場所はジャパンエリアの町外れ。そして、ブラジルエリアを繋ぐ道の近くでもある。

これらの事を考えると、あの場に屋台を作り、そして大将がガルシルド邸で千歌たちを助けた理由がハッキリとする

 

 

ヘンク「全てはお見通し…ですか、」

 

 

 

 

―――

 

 

 

チーム・ガルシルドの選手たち、そして手下たちは警察に連行され、事件に終止符が打たれた

 

 

穂乃果「でも…なんでみっちゃんたちがここに?」

 

和葉「サエさんに呼ばれてね。後半の始まりぐらいから様子を伺ってたのさ」

 

果南「鞠莉までいるなんてね」

 

鞠莉「だって〜!果南たちに会いたかったんだもん♪♪」

 

相変わらずの鞠莉。頼れる和葉。

会話は弾み、気づけば試合の話になっていた

 

 

和葉「ふぅ、ところで理亞ちゃん」

 

理亞「!!」

 

和葉「まさか"ラストリゾート"をあそこまで仕上げていたとはね。正直、天才だよ」

 

理亞「…でも失敗した、私には…」

 

和葉「何かが足りない。だよね?」

 

理亞「……」

 

ルビィ「理亞ちゃん、」

 

"ラストリゾート"が途中で崩れる原因が理亞、そしてルビィでさえも分かっていなかった。形、パワーは充分ある。しかし、何かが欠けている

 

 

和葉「まぁ、ライバルにとやかく言うつもりは無いよ。でも、これだけは言っておく」

 

和葉「理亞ちゃんは理亞ちゃんを突き進んで」

 

理亞「私を…突き進む」

 

 

 

サエ「…次会う時は決勝デス」

 

美奈「いろいろ迷惑かけちゃったわね」

 

サエ「この一件の処理は私の役目。あなたが責任を感じる必要はありません」

 

真恋「…2人とも、素直になりなさいよ」

 

サエ「……そういえば、サニデイジャパンが発動していたタクティクス…あれは、」

 

美奈「私たちの"あのシュート"を甦らすの。その途中段階」

 

サエ「やはり…」

 

 

 

大将「凛ちゃん凛ちゃん!」

 

凛「にゃ!?大将!」

 

大将「鈴香さんは元気か?」

 

凛「鈴香……な、なんでお母さんの名前を?」

 

大将「昔、凛ちゃんのお母さんと曾お祖父さんには世話になってな。今度伝えてくれないかい?」

 

大将「飛鷹は元気にラーメン作ってるってな!」

 

 

まるで収束していくかのように、それぞれの物語に終わりが見え始めていた。

世界の頂上まで残り"2試合"。サニデイジャパンはどこまで登り、どのような景色を見るのか。

 

数日後のロシア戦、また新たな決戦が始まる

 

 

 

 

 

 

千歌「あれ…大将?お店は留守にして大丈夫なんですか?」

 

大将「あぁ、大丈夫大丈夫。優秀な店番を見つけたからな!」

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

グツグツと沸騰する鍋の中に手際よく麺をほおりこむ

 

 

「醤油ラーメン1つ」

 

「は、はい!」

 

また1つラーメンの注文が入った。言っておくが、私は先程までは観光客だったはず…なのに、何故か今ラーメン屋の屋台で湯切りをしている。

何がどうなってこうなったか…理解が追いついていないため、今はラーメン作りに集中することにする。

なのでこの話は次回にしてくれないかな?今ちょっと忙しいから。

 

とりあえず名前だけ言っておくね。私の名前は七宮梅雨。観光客だった人です

 

 

 





後半は後で地の文とかしっかり付け加えようと思います。
次回はコラボ第2弾です。再びFFIを振り返ります。

感想お願いします(土下座



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第3章 149話 「ライオコット島での出会い」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
今回は七宮さんの登場回第2弾。よろしくお願いします




 

 

 

 

 

 

まとわりつくような暑さが消えることは無い。南の島、ライオコット島は太陽が支配する地だ。道を歩いているだけでも汗が止まらない。

 

私、七宮梅雨はとある場所を目指し街道を1人歩いていた。先程まで…何故かラーメン屋で店員をしていたのだが、状況を理解出来ないまま接客し、バイト代を貰って屋台を後にした。

小腹が空いたため立ち寄ったラーメン屋…大将が急用ができたと言ってレシピを残し、走ってどこかへと消えていったのだ。

ラーメンなど絶対に無理だと思ったいたが、レシピが思った以上に分かりやすく。まぁ、私自身、バイトの経験は何度もあるが…とりあえず。大将が戻ってくるまでは店番をすることが出来た

 

 

『あれ…お店閉めちゃうんですか?』

 

『悪ぃな。急用で島を出ることになったんだ。サニデイジャパンは決勝まで応援したかったが…』

 

戻ってきた大将はそう言った。

手早く道具を片付けながら、悔しさと寂しさが顔から伝わってくるのがよく分かる。これはお礼だと多めにバイト代を貰い、私がお金を財布をしまった頃にはすでに、大将は立ち去る瞬間だった

 

 

『俺の分も応援頼むわ!いつかまたどこかで会ったら、ラーメンご馳走するからな!』

 

 

 

短い時間の出会いだったが、なんだか心に小さな穴が空いたような寂しさを覚えた。

だが、今は沈んだ気持ちになっている暇はない。

 

小走りで私は今朝確認したルートを頭に呼び起こす。今現在の目的地はスペインエリアのとある屋台。

ライオコット島グルメガイドに掲載されていた、スペイン王道の料理『クロケッタ』の数量限定販売だ

 

 

「うわ…凄い列」

 

スペインエリアに入り、目的地に到着した時にはすでに長蛇の列。今から並べば何とかなりそうだが、この人数が求める『クロケッタ』…やはり味には期待できそうだ。

 

────だが、それは自分の番を目の前にして起こった。

 

 

「クロケッタ50個頼むわ」

 

七宮(……!?50!?!?)

 

私の前の客が…クロケッタを50個も注文していた。ちなみにクロケッタとはスペイン風のコロッケ。数個でお腹に溜まってくる物を…50??いや、もしかしたら団体を代表しての買い出しかもしれない。

 

そんなことを考えながら、絶品と評判のクロケッタ…私が注文する番がやってきた

 

 

店員「申し訳ございません。クロケッタは先程のお客様の分で売り切れです」

 

七宮「………」

 

私の番が…やってくるはずだった、のだ。

実際にはしていないが、私は頭の中でその場で倒れ込む自分をイメージしていた。魂が抜けたかのように無になり、呆然と立ち尽くす自分…

そんな私の背後で…誰かが呼んでいたことに気づくのは、それから少しばかり時が流れてからだった

 

 

「すいません」

 

七宮「…は、はい?」

 

「もしかして、私が買い占めたせいでクロケッタが買えなかったのでは…?」

 

七宮「あ…あの、」

 

背後から話しかけできたのは少女。先程、クロケッタを50個買った少女だった。

確かに彼女のせいではあるが…そうハッキリと言うことは出来ない。そんな時だった

 

 

「申し訳ない。もし良かったら、一緒に食べないか?クロケッタ」

 

七宮「…え!?」

 

「申し遅れたな。私はクラリア・オーヴァン。スペイン代表でサッカーをしている」

 

七宮「…か、カタルーニャの巨神」

 

 

 

 

近くのベンチに座り、私はクラリア選手からクロケッタを頂くことにした。今はちょうど正午。今日のお昼はこれになりそうだ

 

 

七宮「…!!」

 

そして念願のクロケッタを口に運ぶ。

やはり…美味い。美味すぎる。スペイン風コロッケの名の通り、外はカリカリであるが、中のこれは…ソーセージ?チーズも入っているだろうか?

クロケッタはお店独自の作り方をするため、味が大きく変わったりする。ベシャメルソースを加え、サクサクと音をたてながら味わう。

スペイン人が美味しいレストランやバルを見分けたい時には、まずクロケッタを頼むとよく聞く。シンプルで普遍的な料理なだけに、料理人の腕が強く反映されるということなのだろう

 

 

クラリア「気に入ってもらえたようだな」

 

七宮「ありがとうございます。クラリアさん。ご馳走になってしまって、」

 

クラリア「いや、私もあの数は良くなかったな。日頃、食べる時とは違って数量限定だからな…」

 

…日頃?日頃から50個もクロケッタを食べているのだろうか。クラリア選手はテレビで試合を見た時から思っていたが、そんなに大柄というわけでもない。そんな大量に食べれるとは…いや、人は見かけによらないものだ。

 

サニデイジャパンの選手たちと身長は変わらないクラリア選手だが、試合では圧倒的なフィジカルで日本の選手たちを苦しめていた

 

 

クラリア「七宮は日本代表のサポーターだな」

 

七宮「そうですね。ロシア戦の応援に」

 

素晴らしい戦士たちだった。クラリアはサニデイジャパンの選手たちをそう呼んだ。

 

日本のサポーターたち、そしてメディアもヨーロッパ3強との戦いで日本が勝利を勝ち取るのは厳しいと…考えていた。

予想通り、前半はスペインの一方的な試合となり…勝ち点は絶望的かと思われた

 

 

クラリア「だが、彼女たちは諦めなかった。その場で…秒単位の進化を続け、私たちのサッカーを完全に封じてみせた」

 

"ダイヤモンドレイ"。そして1度も使ったことがない必殺技、"ダイヤモンドエッジ"が止められた時にはさすがに信じられなかったと語るクラリア

 

 

クラリア「彼女たちには無限の可能性がある。ひょっとすると、このまま世界の頂点へ…と期待してしまうんだ」

 

七宮「クラリアさん、」

 

 

 

「ジャパンの可能性。私も同意見です」

 

クラリア、七宮「「!!」」

 

クラリアの声とは別の方向から、自分たちに話しかけてくる声がする。

顔を上げるとそこには、この島の空のように明るく澄んだ水色の髪の少女が立っていた。整った顔に品のあるその姿は―――まさに、紳士淑女

 

 

クラリア「久しぶりだな。エドガー」

 

エドガー「あなたが珍しいですね。観光客の方とお話しとは」

 

イタリア代表"ナイツ・オブ・クイーン"のキャプテン、エドガー・バルチナス。

聖剣"エクスカリバー"で何度も日本のゴールを叩き割り、日本を追い詰めた選手

 

 

クラリア「エドガーもクロケッタを?」

 

エドガー「いえ。私のお目当てはガスパッチョ。ここの味付けは絶品なんです」

 

そういえば、雑誌の中にガスパッチョを紹介するコーナーがあったのを思い出した。

スペイン料理の簡単に言えば、風味の強いトマトスープ。日本でいえば味噌汁クラスの需要があるスープなのだとか。

私もあとで飲んでみよう

 

 

エドガー「私にとってサニデイジャパンの選手たちは友と呼べる存在です」

 

意外だった。話を聞くと、Aグループの4チームは今でも交流があるぐらに仲が良いという。歓迎パーティーなどもあったというが、それだけでここまでの繋がりになるのだろうか。

少し疑問に思いながらも選手たちの話を聞き、私は次なる目的地へと向かうことにした

 

 

クラリア「イタリアの公開練習か」

 

エドガー「でしたらすぐそこのバス停から、バスで向かうのが早いですね」

 

 

スペインとイギリス。両チームの選手との素晴らしい時間を過ごした私は言われたバスへと乗り込んだ。

車内はクーラーにより快適な温度が保たれており、空いている席に座り、私は財布からとあるチケットを取り出した。

 

"公開練習入場券"と書かれたそのチケット。本日行われる、イタリア代表の公開練習を観戦するためのものだ。

代表選手たちの練習を間近で観る…それは日本にいた時には夢の話。テレビで見るだけのことだと、その時は思っていた

 

 

「Youのそれ、イタリア代表のチケットじゃない?」

 

七宮「!?」

 

しかし、私は今この島にいる。

テレビで応援していた選手たちと…海を越え、同じ空気を感じ、暑さに汗を流している。

そして…また1人、いや3人。新たな出会いが生まれた

 

 

「Sorry。あなたが同じチケットを持ってたから、ディランが話しかけたようだ」

 

ディラン「そうさ!矢澤アニキのサポーターはミーのフレンドでもあるからね!」

 

七宮「や、矢澤アニキ…?」

 

金の髪を揺らし、イケメンスマイルを炸裂させるこの少女…アメリカ代表キャプテン"マーク・クルーガー"。

彼女の話によると、矢澤アニキとはあのサニデイジャパンの矢澤にこ…だが、何故にアニキなのか?私は女性はアネキだとマークさんたちに教えようとしたが、

 

 

「アニキはにこ公認なんだ」

 

七宮「そ、そうなんですか?」

 

イチノセ「だからそのままにしてあげて♪(嘘だけど。アニキの方が面白いし)」

 

日本人であるがアメリカ代表。そして"日本のファンタジスタ"矢澤にこと接戦を繰り広げた選手…一之瀬神奈選手がそれを止めた。

 

どうやら彼女たちもイタリア代表の公開練習を見に行くようで、日本代表の話をしながら、私たちは目的地へと向かった

 

 

―――

 

 

ディラン「さすがイタリア…!!凄い動きだ!」

 

練習を見ている間、ディランは子供のように目を輝かせ、その場でハイなテンションではしゃいでた。

私もそうなる気持ちはよく分かる。イタリア代表オルフェウス…まさに、限りなく完成されたチームワーク。優勝候補筆頭。

戦場とまで言われたグループAで圧倒的な力を見せ、サニデイジャパンも…オルフェウスとの試合で敗北している

 

 

マーク「あのGKがフラム・ソレイユか…あの"ラストリゾート"を防いだ」

 

イチノセ「私たちは完膚なきまでに叩きのめされちゃったからね」

 

サニデイジャパンのエースストライカー、黒澤ルビィの最強の切り札"ラストリゾート"。

その触れないシュートは、止めることは不可能だと言われていた時期があった。しかし、

 

 

七宮「ボールを止めるという常識を捨てて…受け流すことで最強に抗ったフラム選手、」

 

数十メートル先でボールに食らいついている少女は、容姿が高坂穂乃果に似ているだけでなく。

燃えるような目と覇気…熱血という言葉が相応しいその姿に、自然と日本の太陽を照らし合わせてしまう

 

 

イチノセ「そういえば、和葉と鞠莉の姿が見えないね」

 

七宮「……あれ?確かに、」

 

フィールドを見渡しても2人の姿はどこにもない。主要メンバーであるはずの選手が何故…?理由は予想もしなかった人物が教えてくれた

 

 

フィレア「2人は監督に呼ばれてどこかに出かけちゃった」

 

七宮「!?!?」

 

イチノセ「フィレア…!久しぶり!」

 

フィレア「元気そうだねカンナ。まさかあなたたちが来てるなんて」

 

マーク「イタリア代表のサッカーは素晴らしいレベルだからな。見学だ」

 

七宮(アメリカ代表の選手たちは"白き流星"と知り合いだったんだ…)

 

観客席で練習を見ていた私たちに近づいてきたのはフィレア・アルデナ選手。

国を越えた関係に私は心を躍らせながら、少女たちの会話に耳を傾ける。小原鞠莉と三浦和葉が見れなかったのは残念だが、それ以上に濃い時間を彼女たちのおかげで過ごすことが出来た

 

 

フィレア「それで…そちらの方は?」

 

ディラン「ジャパンサポーターの七宮!ミーたちの友でもあるよ!」

 

フィレア「なるほどね。日本の」

 

私が日本のサポーターだと気づいた瞬間、フィレアの優しかった笑みは一変。試合中に見せるような、熱く燃える選手の表情をしていた

 

 

フィレア「日本は強い…グループ戦の時よりも成長してる…今や私たちよりも強いかもしれない。でも、」

 

フィレア「私たちも負けるつもりは微塵もないよ」

 

イタリアが日本と再戦するのは決勝。泣いても笑っても、日本のリベンジはその1試合しか存在しない。

フィレアの勝ちへの意思が伝わってきた。だが私もそれ以上に日本の勝利を願っている

 

 

七宮「絶対にいい試合になると思います。だがら、準決勝…頑張ってください!」

 

フィレア「ありがとう。日本もね」

 

 

ディラン「勝敗もいいけど、やっぱりジャパンとのサッカーは楽しいよね!」

 

マーク「あぁ。心の底から楽しめる」

 

フィレア「日本に救われたチームもいるみたいだしね」

 

七宮「日本に…救われた?」

 

私が尋ねると一之瀬神奈が1枚の紙を渡してきた。そこに書かれていたものは、目を疑うもの

 

 

イチノセ「良かったら直接聞きに行ってみて。にこ繋がりで、私もあの子とは知り合いなんだ」

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

ロニージョ「ジャパンは…私たちの恩人さ!」

 

紹介された人物とは"クイーン・オブ・ファンタジスタ"。ブラジル代表、ロニージョ選手のことだった。

前監督、ガルシルド・ベイハンによる人体実験や人質にされた家族。それらの闇から解放してくれたのが…サニデイジャパンだったという

 

 

ロニージョ「私たちにサッカーを楽しむことを思い出させてくれた…あんなに本気になれた試合は久しぶりだったよ」

 

七宮「でも、ガルシルドが逮捕された今…家族の仕事は…」

 

ロニージョ「それがね?イタリア代表監督のサエ・オハラが、家族に仕事を提供するって約束してくれたんだ…!」

 

小原鞠莉の母親である小原サエ…確かにオハラグループほどの規模の企業ならば、南アメリカにも会社を持っていてもおかしくない

 

 

七宮「じゃあ、これからもサッカーを」

 

ロニージョ「続けていくさ…!それに、にこと約束したんだ。フリースタイルフットボールの世界大会で…決着をつけるってね」

 

一之瀬神奈や矢澤にこもそうだが、サッカーとフリースタイル、どちらの代表選手にも選ばれている彼女たちには驚かされる。

FFIが終わればアメリカで大会があると教えてもらった。彼女たちの戦いは、まだまだ終わっていないのだろう

 

 

ロニージョ「……もう夕方か、そろそろ戻る時間かな」

 

七宮「…あ、肝心なところに行くの忘れてた」

 

気づくと太陽は赤く燃えていた。つまり、まもなく日が沈む。

私は日本代表サポーターとして、一番行かなければならない場所…サニデイジャパンの練習場所へと、行き忘れていたのだ

 

 

ロニージョ「今日はジャパンの公開練習でもあったね。まだ間に合うんじゃない?」

 

ロニージョ選手にジャパンエリアへの最短距離で行ける道を教えてもらい、私は昼間のように急ぎ足で。日本代表の元へと向かった。

 

言われた通りの道を行くと、ブラジルエリアとジャパンエリアを繋ぐ橋があり。そこを渡るとなんと、あのラーメン屋のあった場所に戻ってきたのである。

つまり、私は今日1日でライオコット島を一周したことになる

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

私がサニデイジャパンの練習グラウンドに着いた時には、すでに練習が終了していた

 

 

七宮「間に合わなかったか…」

 

だがその分、今日1日だけでたくさんの国の選手たちと出会った。日本代表が戦ってきた国の代表選手、全員がサッカーを心から楽しんでいるようだった。

一生の思い出になるのと同時に、日本代表への想いがよりいっそう強「どうかされましたか?」

 

 

七宮「…??」

 

聞き覚えのある声がした。

私のすぐ後ろで、大人のように落ち着いた雰囲気が混じるこの声は―――

 

 

聖良「応援の方、ですか?」

 

私の一番好きな選手の1人、鹿角聖良さんだった

 

 

七宮「あ、はい。そうです」

 

聖良「申し訳ないです…練習はもう終わりで、私しかもう残っていなくて」

 

間に合わなかったのは残念だったが、聖良さんが目の前にいた時には、一瞬何が起きたのか分からなかった。

函館聖泉時代から、理亞ちゃんと聖良さんのファンだということを伝え、私はこの場から引き上げることにした

 

 

七宮「ロシア戦…応援してます!頑張ってください!」

 

聖良「ありがとうございます。理亞にも伝えておきますね」

 

優しく微笑む少女をさらに輝かせるように、夕日が明るく、そして空には幻想的な夜空が広がっている。

今日という思い出を忘れないように、私は夜でも賑やかなジャパンエリアの街へと向かうことにした。

 

そして数日後、日本はロシアと…FFIの歴史に残る激戦を繰り広げることになるのだが…それはまた、別の話

 

 

 





スペインエリアの屋台にはトマトスープ目当てで真姫ちゃんも並んでそう。



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第3章 150話 「ロシア戦 "アイス・ブルーの瞬間"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回の後半からついにロシア戦です。短めですがよろしくお願いします




 

 

 

 

 

ロシア戦 前日

 

 

 

理亞「【ラストリゾート】っっ!!」ドガアァン!!

 

ホノカ「【ゴットハ───ボゴッッ!!!!

 

穂乃果が飛び出そうとしたのと同時に破裂する"ラストリゾート"。チーム・ガルシルドとの試合から数日が経つが、一向に進展の気配がない

 

 

理亞「ハァ…ハァ…また、失敗…」

 

聖良「理亞、もう今日は"ラストリゾート"を撃つのは…ダメージが、」

 

理亞「まだ…!完成させるまでやめない!!」

 

穂乃果「穂乃果は最後まで付き合うよ」

 

理亞「…!」

 

穂乃果「時間も残ってないからね。悔いなくやろう」

 

自分の体を追い詰めているのは理亞だけでは無い。限界を超えるため、今よりも進化するため、選手たちの特訓に熱が入る

 

 

凛、海未「「【雷光の矢】!!」」ドガアァン!!

 

果南「は、速っ!?────バシュウゥゥン!!

 

 

月「…"雷光の矢"。速くなってるね」

 

ツバサ「凛の連撃が大きいわね。それに…私は果南が気になるわ」

 

月「果南ちゃんが?確かに、あのシュートに反応できるのは流石だけど」

 

ツバサ「…………」

 

 

果南「うーん……」

 

海未「果南。難しい顔をして何か悩み事が?」

 

果南「……私、病気かもしれない」

 

海未「!?」

 

凛「にゃー!?果南ちゃん、どこか悪いの??」

 

果南「なんか…たまにおかしな見え方になるんだよね。"世界"が」

 

海未、凛「「??」」

 

 

コートの外ではシュート練習の順番待ちをする千歌と曜が筋トレを行っていた

 

 

千歌「…ふぅ、ふぅ、ふぅ」

 

曜「185…186…千歌ちゃん。サッカー始めた時よりも腹筋の回数すごく増えたね」

 

千歌「毎日…ふぅ、やったからね…ふぅ、まだまだいけるよ」

 

曜「じゃあ、300回ヨーソロー!」

 

千歌「うおぉぉ!!みかんパワー!!!!」

 

 

善子「千歌たち……やるじゃない…」グッグッグッ

 

花丸「善子ちゃん…やっぱりマル降りるよ?」

 

善子「このまま続ける…!!」グッグッグッ

 

一方、善子は花丸を背中に乗せて腕立て伏せをしていた。1セット行うだけで溢れ出る汗。効率を追求した善子はそのままの体勢で水分補給できるように、ストロー付きのスクイズを用意

 

 

善子「20…!!ぐうっっ…21!!!」

 

これが、高海志満の教えを受けたものの姿

 

 

英玲奈「……浦の星は陸軍部か何かか?」

 

梨子「あはは、私も正直引いてます…」

 

梨子も十分、人のこと言えないだろうと思いながらも話を続ける英玲奈。フィールド全体、そして選手一人ひとりの様子を確認し、対ロシアへの作戦を練っていた

 

 

英玲奈「理亞の"ラストリゾート"がロシア戦までに完成するかは分からない。火力はルビィ、メインが妥当だな」

 

梨子「完成出来なかったらを考えると…そうなりますね。監督から何人かスタメンの指示がありました。それで考えてみます」

 

英玲奈「……梨子」

 

梨子「…?」

 

英玲奈「変わったな」

 

梨子「…私もそう思います」

 

英玲奈「たまに考えるんだ。もし、私たちがチーム全体をもっと見ていたら…音ノ木坂にも勝っていたのだろうかと」

 

梨子「…それは、」

 

 

あんじゅ「浦の星女学院の桜内梨子だから、今や国の代表なのよ」

 

英玲奈「…!」

 

梨子「あんじゅさん、」

 

あんじゅ「過去を後悔するよりも、日本代表としての梨子ちゃんとのサッカーを…また後悔しないように、全力を尽くすのがクールじゃないかしら」

 

ツバサ「全てはそう。奇跡っていうのかしら」

 

英玲奈「ツバサ、」

 

ツバサ「梨子が浦の星女学院に行ってなければ…私たちはここまで来れなかった。私たちも、仲間の大切さに気づくことが出来なかった」

 

梨子「私が目標を見失っていたのも原因です。あの時は…サッカーを楽しめていなかった。でも、」

 

梨子「今はツバサさん、英玲奈さん、あんじゅさんとサッカー出来て…本当に楽しいです」

 

ツバサ、英玲奈、あんじゅ「「「………」」」

 

あんじゅ「そ、そそう?私はまぁまぁ、いいんじゃじゃないか、しら?完全にフルハ「隠しきれてないぞ。あんじゅ」

 

ツバサ「……梨子」

 

梨子「は、はい」

 

ツバサ「それで、監督からはほかにどんな指示を受けているのかしら」

 

ツバサからの突然の質問に梨子の表情は真剣なものへと戻っていた。そして、司令塔から語られたのは…あのタクティクス

 

 

梨子「……"スリリングワンウェイ"の完成です」

 

英玲奈、あんじゅ「「!!!」」

 

英玲奈「遂に来たか…だが成功率は高くないぞ?」

 

梨子「試合中に何とか完成させてみせます。そのためにも英玲奈さん。よろしくお願いします」

 

英玲奈「ああ。やれるだけのことはやる」

 

ツバサ「………」

 

あんじゅ「ツバサは何かあるのかしら?難しい顔をして」

 

ツバサ「…そうね、気になることがね」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ー ロシア戦 当日 ー

 

A『さあ…!!フットボールフロンティアインターナショナルもいよいよ準決勝!!世界一を争う4チームの、本日、第1試合が行われます!!!!』

 

A『第1試合は、ここまで目まぐるしい進化を遂げ、強豪たちを打ち破ってきた今や優勝候補の一角!!日本代表"サニデイシャパン"!!!そして、圧倒的なチームプレーと個人技!イタリア、ブラジルに次ぐFFIの実力派チーム!!"ロシア代表"パーフェクトスパーク"の試合が行われます!!!!』

 

 

 

ー 日本代表 控え室 ー

 

 

美奈「スタメンを発表するわよー!」

 

美奈「FW 鹿角理亞、綺羅ツバサ」

 

理亞、ツバサ「「はい!!」」

 

美奈「MF 高海千歌、園田海未、渡辺曜、矢澤にこ、統堂英玲奈」

 

千歌、海未、曜、にこ、英玲奈「「「はい!!」」」

 

美奈「DF 鹿角聖良、優木あんじゅ」

 

聖良、あんじゅ「「はい!」」

 

美奈「リベロ 津島善子」

 

善子「はい」

 

美奈「GK 松浦果南」

 

果南「…はい!!」

 

 

美奈「みんなも知っての通り、ロシアの選手たちは全ポジションでプレーするスキルを持っているわ」

 

真恋「キックオフ前になって初めて、ロシア代表のスタメンが分かることになる…あなたたちに求められるのは、今まで以上の対応力よ」

 

美奈「前半で力尽きる気持ちでね。本気をぶつけて…勝つわよ。この試合」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

A『おっと!ここでスタメンの情報が入ってきました!!』

 

 

ー サニデイシャパン ー

 

FW…………鹿角理亞、綺羅ツバサ

 

MF………渡辺曜、高海千歌☆、園田海未

 

MF……………矢澤にこ、統堂英玲奈

 

DF……………鹿角聖良、優木あんじゅ

 

DF……………………津島善子

 

GK……………………松浦果南

 

1-2-2-3-2

 

 

レヴィン『高坂穂乃果選手と黒澤ルビィ選手がいませんね。中心選手をスタメンに起用しない…これは高海監督の狙いでしょうか』

 

A『FWには"ゴットストライカー"綺羅ツバサと"雪原の狼"鹿角理亞。ブラジル戦でも活躍した両選手ですが、この起用が試合にどのような影響をもたらすのか!?』

 

 

 

"パーフェクトスパーク"

 

FW……………………ユーリー、エリ

 

MF…………………………フロイ☆

 

MF…シモン、ヴィクトール、シャミール、ルース

 

DF…………アレクセイ、ラビ、グエンナディ

 

GK…………………………ゴラン

 

3-4-1-2

 

 

 

希「えりちがFW…」

 

美奈「しかもセンター…厄介ね。いつでも行けるようにしておいてね」

 

希「はい」

 

 

 

 

絵里「にこ、海未。久しぶりね」

 

にこ「あんたがセンターFWで出て来たのは意外だわ。それでも、にこたちは負けないわよ」

 

海未「成長した私たちを見せます」

 

絵里「ふふ。楽しみだわ」

 

 

 

ー 観客席 ー

 

フラム「和葉さん。なんで日本は高坂穂乃果と黒澤ルビィをスタメンにしなかったんですか?」

 

和葉「…そうだね、多分すぐに分かると思うよ」

 

鞠莉「…果南」

 

 

 

A『さあ、間もなくキックオフです!!!』

 

 

 

スタジアムが歓声で盛り上がる中、フィールドに立つ選手。そしてベンチは恐ろしいほど静か。全神経を集中させ、数秒後の自分がどう動いているか、相手がどう仕掛けてくるかイメージする。

前半はロシアボールでキックオフ。

いつでも来い。そう体全体で訴えたのと同時に、準決勝の始まりを告げる笛が────

 

 

 

────ピーーッ!!!!

 

 

ユーリー「見せてあげて。エリー」ポン

 

絵里「ええ」

 

FWのユーリー・ロディナが絵里にボールを渡した。日本の選手たちは構える。音ノ木坂学院…同じチームメイトの時から、絵里の実力には飛び抜けたものがあると…

 

 

絵里「────っっ!」バッ

 

海未(振りかぶった──────

 

果南「あれ…しゅ─────

 

 

 

 

―――バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

少し強めの風が、音の次に流れていく

 

 

果南「」

 

 

音…?なぜ自分の後ろから、ボールが擦れるような音が聞こえるのか?

 

 

ルビィ「……え、ヤバ」

 

美奈「まさか…ここまでとは」

 

 

果南は足元に、ボールが転がっていることに気づいた。そして…フィールドの中心で足を突き出していたのが──────

 

 

絵里「【アイス・ブルーモーメント】」

 

絵里「海未…成長してるのは、あなたたちだけじゃないのよ?」

 

 

A『き、決まったぁぁぁ!!!!ロシア代表、試合開始から僅か数秒で先制!!会場全体が…どよめきに包まれています!!』

 

 

果南「今……決められた??」

 

善子「絵里がボールを蹴ろうとして…気づいたらゴールに入ってた…」

 

未だに決められた実感が湧いていない果南。そしてサニデイシャパンの選手たち。

まるで…ボールの瞬間移動。絵里のその蹴りは、ネットだけでなく、日本の選手の心までも大きく揺さぶる一撃となった

 

 

英玲奈「誰か…目で追えた者はいるか?」

 

にこ「人間が捉えられる速さなの…?」

 

揺らされる心は波のように徐々に大きく。周りへと次から次へと伝わっていく。

つまり、日本は試合開始早々で精神的に劣勢に立たされたのだ。不安が高まり、これでは…まるで、

 

 

千歌「あの試合と同じだよ!!!!」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

曜「千歌、ちゃん…?」

 

千歌「チーム・ガルシルドとの試合…あの時も強化人間とラフプレーの勢いに圧倒されて、自分たちのサッカーが全然出来なかった!!」

 

千歌「あの時のように後半からの切り返しじゃ、ロシアには絶対に勝てないよっっ!!!」

 

新たな波が、千歌の声により選手たちの心の中に生まれていく。その波が不安や焦りの波に抗い、そして…飲む混むように波は勢いよく広がっていく

 

 

海未「反則級のスピードを持つシュートだとしたら…撃たせなければいいんです」

 

千歌「海未さん…!」

 

海未「千歌、ありがとうございます。おかげで気を引き締め直せそうです」

 

理亞「ふん…!これぐらいでビビるなんて私はしない!でも…おかげで全力でやれそうよ」

 

千歌「うん…!そうだよ!試合はまだ始まったばかり。ここからが勝負だよ!!」

 

 

フロイ「エリーの言った通りだ。これだけでは日本の心は折れないね」

 

絵里「流石でしょ?でも…勝って決勝へと進むのは私たち」

 

 

絵里「千歌…もっと楽しませて…!!」

 

 

 

日本 0-1 ロシア

 

 

 





「アイス・ブルーモーメント」シュート、絢瀬絵里
オリジナル技です。モデルはもちろん"アイス・ブルーの瞬間"から。ただただ速いシュートなのでしょうか?詳細は次回以降語られると思います。



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第3章 151話 「ロシア戦 "戦略の先に"」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
グダグダしないように頑張ります




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに始まった準決勝ロシア戦。しかし、試合開始早々 絵里の新必殺シュート『アイス・ブルーモーメント』により失点を許してしまったサニデイシャパン。

動揺を隠せない日本の選手たちを千歌は鼓舞する。まだ負けていない。試合はこれからだ。と

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

美奈監督が何故、準決勝で自分を起用したのかが分かった

 

 

果南(絵里が……あの高速シュートを撃ってくることを予想していたんだ…!!)

 

考えれば高海美奈は代表監督になる前は音ノ木坂学院サッカー部監督だ。絵里の能力や未来の可能性を把握していてもおかしくは無い。

だが、監督の意図が分かったところで……あの異次元シュートを止める理由にはならない

 

 

果南「……どうしたら、」

 

英玲奈「果南。チーム・ガルシルド戦とこの試合…高速シュートに対応できるため、監督が起用したと考えているな」

 

果南「それしかないね。でもチーム・ガルシルドのシュートよりも、絵里のシュートの方が異次元レベルだけど」

 

英玲奈「断言するのはまだ早い」

 

果南「!?」

 

絵里のシュートは速すぎる。速すぎるが故に、英玲奈は絵里のシュートに2つの憶測を立てていた

 

 

英玲奈「1つ目はシンプルに速い。それならば、果南も対応できる可能性は十分ある。だが…問題は2つ目だ」

 

英玲奈「瞬間移動シュート」

 

果南「瞬間……移動、」

 

絵里がボールに触れた瞬間にゴールの中へとワープするシュート。もし、こちらの方が正しいとするとGKは止めること不可能。

GK以外の選手たちがシュートを撃たせる前にブロックする必要がある

 

 

英玲奈「高速か瞬間移動…どちらなのかを見極めるためにも、多少のリスクは必要だと考えた」

 

果南「一発わざと撃たせる?」

 

英玲奈「そうだ」

 

 

 

 

「お姉ちゃん凄い…!もう1点決めちゃった!」

 

「わ、私はちょっと複雑だな…」

 

 

 

 

―――ピーーッ!!

 

 

A『さあ、前半開始早々リードを許したサニデイシャパン!ここからどう巻き返すのか!?』

 

 

理亞「手加減はしないから」

 

絵里「函館聖泉の鹿角理亞ね」

 

ボールを持った理亞が目の前で待つ絵里に突っ込んでいく。宣言通り、そのスピードと気迫に一切の緩みが感じられない

 

 

理亞「─────っっ!!」バッ!バッ!

 

絵里(あの時よりもキレとスピードが…)

 

足元で巧みに捌く。天界と魔界との戦いの時と比べても、レベルが何段階も上がっている。この短期間でここまで仕上げてきたとは…その才能に少し嫉妬する。

しかし、

 

 

絵里「私ばっかり意識し過ぎるのも…かしこくないわ」

 

理亞「何を─────「そういうこと♪」バッ!

 

理亞(速い!?奪われた!?)

 

フロイ「私たちも楽しませてよ」

 

 

A『"気高き銀狼"がボールを奪ったぁぁ!!』

 

レヴィン『無駄のない動きからのボール奪還…さすがはフロイ選手、と言ったところでしょうか』

 

 

千歌「理亞ちゃんから簡単に…!?」

 

曜「一筋縄じゃいかなそう…行こう!千歌ちゃん!!」

 

千歌「うん…!」

 

理亞がボールを奪われた。しかし、すぐに距離を詰めに行くのは千歌と曜の2人。

そんな日本のMF2人に対し…"銀狼の狼"は、

 

 

フロイ「─────!!」ギュン!

 

曜(速っっ!?突破される!!)

 

シンプルに正面突破を狙っていた。

数メートルの距離が瞬きの間に詰められ、既に曜の真横まで来ている

 

 

曜「でりゃっ!!」バッ

 

フロイ「甘いね!」バッ!

 

曜は自慢の反射神経と運動能力でフロイの足元で転がるボールに足を伸ばした。しかし、全て読まれているかのように、そのカットは簡単に躱されてしまう。

 

完璧に抜いた。

そう確信し、顔を上げた時だった

 

 

 

─────ズザーッ!!!

 

フロイ「―――!?」

 

芝生を滑るような音が、自分の足元から聞こえてきた。上げた顔を再び下に向け直す。そこには─────

 

千歌「取った」

 

────ボールに足で触る、高海千歌の姿があった

 

 

A『"太陽の跡目"、高海千歌がボールを奪い返す!!!!素晴らしい連携です!!』

 

レヴィン『なるほど。渡辺選手がフロイ選手の回避行動を誘い、そこを高海選手が狙う…あの一瞬であれだけの連携ができるのは流石ですね』

 

 

曜「千歌ちゃんナイス!!」

 

千歌「曜ちゃんがすぐに反応してくれたおかげだよ!」

 

 

フロイ「へぇ…!やるじゃん。あの2人」

 

ボールを奪い返した千歌はそのままドリブルで持ち込む。しかし、流石はロシア代表というのだろうか。数メートルも走らない間にディフェンスが─────

 

 

ユーリー「返して…!」バッ

 

千歌「たあっっ!!」ズバッ!ズバッ!

 

千歌「【ZスラッシュGX】!!」

 

ユーリー(は、速い!?)

 

そんな相手に対し、千歌は手加減を知らない

 

 

千歌「っっ───【リバースZスラッシュG2】!!」

 

ヴィクトール(逆の動き!?だが…)

 

日本のサッカー…高海千歌のサッカーは研究している。今までの試合の中でZからリバースへの連続発動はあったが、リバースからZへの連続は無かった。つまり、

 

 

シャミール(今が真の隙だらけ…!!)バッ

 

シモン(奪える!!)バッ

 

そこを逃さず、ロシアの選手たちは高海千歌との距離を詰める。対する高海千歌…迫る相手選手を前にしてその赤い目を…

 

 

ギュン!!ギュン!!ギュン!!

 

 

シャミール、シモン「「!?!?」」

 

ロシア「「「!!!!!!」」」

 

 

千歌「【リバース&Zスラッシュ】」

 

 

地面に刻むZの刻印と共に輝かせていた

 

 

フィレア「リバースからのZ…!!!!」

 

和葉「ダメだよ。千歌ちゃんを舐めちゃ。あの子のできることは無限だから」

 

 

A『よ、4人抜きっっ!!!まるで流れる風のようにロシア代表を次々と躱していく!!』

 

レヴィン『"Zスラッシュ"からの"リバースZスラッシュ"…そこから更に"Zスラッシュ"を発動。かなりの負担だと思うのですが、高海選手…顔色一つ変えていませんね』

 

 

海未「千歌…!センタリングです!!」

 

千歌「理亞ちゃん!!」パス

 

千歌がロシア陣内へと飛び込んだことにより、前線への突破口がパスで切り開かれた。

FWとして走る理亞の頭上へと近づくボール。トラップする必要などない。このまま―――全力を叩き込む

 

 

理亞「はあぁぁぁぁっっ!!!!」バッ!

 

ロシア「「「!?!?」」」

 

 

A『ああっと!?このオーラはまさか!?』

 

 

空気とATPが1つになり、まるで巨大な爆弾のようなエネルギーを放つその塊。

そしてそれを両足で捌きあげる理亞。ロシア代表、そして会場にいる者全員が驚きを隠せなかった。なぜなら、本来それは鹿角理亞が放つ技ではない。究極の──────

 

 

理亞「【ラストリゾート】!!」ドガアァン!!

 

 

A『なんと!!!鹿角理亞が"ラストリゾート"でゴールを狙ったぁぁ!!!!』

 

 

ヴィクトール「ちょっと…!?なんで彼女が!?」

 

フロイ「いや…あのシュートは、」

 

 

 

―――ボゴオォォォォン!!!!!!

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

理亞「!!!!」

 

巨大な破裂音が衝撃として、選手たちにズン!!と重く伝わった。

数日前の試合よりも距離は伸びたものの、ゴールに到達する前に破裂した理亞の"ラストリゾート"。

ロシア代表から見れば救い。日本代表から見れば…決定的なチャンスの消失だった

 

 

花陽「お、惜しい…あと少しなのに、」

 

ルビィ「何かが、足りない」

 

 

理亞「ハァ…ハァ…今度は絶対に行けると思ったのに!!」

 

 

和葉「…今、理亞ちゃんが"ラストリゾート"を撃ったのは失敗だったかもね」

 

フラム「失敗…?」

 

和葉が見る先には、理亞のシュートを見て集まるロシア代表の姿があった

 

 

ユーリー「まさか鹿角理亞が未完成とはいえ、"ラストリゾート"を撃つなんて…」

 

フロイ「本当ならルビィに使うはずだった作戦を理亞にも使おう。この試合中に完成させられたらまずい」

 

ルビィに使うはずだった作戦。それは自由を封じる徹底的マークのことである。ルビィ1人に対し、2人の選手でマンツーマンディフェンス。"ラストリゾート"を止める作戦ではなく、撃たせない作戦で勝負に出たロシア。

それを、新たな危険人物である理亞に仕掛けようというのだ

 

 

フィレア「なるほど。だからルビィをスタメンで出さなかったのか…マンツーマンディフェンスでルビィは封じられ、体力も減らされて後半の頃には多分バテちゃうね」

 

フラム「じゃあ、鹿角理亞は自分で自分の首を絞めたことになるね」

 

フィレア「うーん…でも、多分あれは高海美奈監督の作戦だと思うよ?」

 

 

 

 

英玲奈「監督の言う通りだったな。相手はマンツーマンで理亞を封じに来た」

 

にこ「つまり、その分薄くなったディフェンスを私たちで突破するわけね」

 

美奈は大胆にも、理亞を囮にした攻撃を作戦として選手たちに指示していた。

"ラストリゾート"相手ならば見逃すわけにもいかない。ロシアは確実にマンツーマンディフェンスを仕掛ける。日本にはその確信があった

 

 

海未「【スピニングフェンス】!!」ビュオオッ!

 

アレクセイ「ま、まずい…ボールが!?」

 

そして海未の鋭いディフェンスが日本の攻撃開始の合図となった。理亞をそのまま前線まで走らせ、ほかのメンバーも一斉にロシア陣内に攻め入る

 

 

海未「にこ!」パス

 

にこ「いいボールよ!ツバサ!」パス

 

 

A『日本代表がロシア陣内でボールを繋ぎます!!』

 

レヴィン『ところどころでロシア選手のディフェンスが間に合っていませんね。理亞選手を気にしているのかもしれません』

 

 

曜「【スプリントワープG2】!!」ビュンビュン!

 

空いた隙間を一気に駆け抜ける。フィールドと仲間を上手く利用し、先程よりもスピーディに、簡単にシュートチャンスへと持ち込む

 

 

曜「撃てる…!!」バッ

 

ボールを足に挟みながら飛び上がる。宙で回転し、オーラを可能な限りボールへと流し込む

 

 

曜「振り切れっっ!!!!!!」ズバッ!

 

曜「【Xブラスト】ォォォォ!!」ドガァン!

 

両足から放たれるレーザービーム。

一直線に向かうはロシアゴール

 

 

ユーリー「ゴラン!」

 

ゴラン「【ツーマンデ・ゴラン】!!」バッ

 

対するロシア代表GK ゴラン・ヴェシリア。自身のオーラを巨大な手へと変化させ、迫るボールを全力で──────

 

 

ゴラン「はあぁっっ!!」メキッッ!!

 

────握り潰す

 

 

曜「と…止められた、」

 

ツバサ「あのGK…なかなかパワーあるわね」

 

 

A『渡辺曜、シュートするもゴールならず!!ロシアがリードしたままです!!』

 

 

ゴラン「エリー!」パス

 

得点は出来なかったものの、チャンスと時間はまだまだたっぷりとある。今は気持ちを切り替えディフェンスに専念する。

 

作戦通り、絵里のシュートが高速なのか瞬間移動なのかを見極める。絵里にわざとシュートを撃たせ、その際にシュートコースに日本の選手たちが足や体でボールをブロックしに行く。

そこで選手たちにぶつかれば高速。ぶつからなければ瞬間い―――

 

 

絵里「って、考えてるでしょ?」

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

英玲奈「わ…分かっていた…のか?」

 

善子「ちょっと…バレてるじゃない!」

 

絵里「日本の…あなたたちの考えることはだいたい予想つくわ。ブロック出来るかどうかで判断するつもりね。させないから」

 

 

美奈「……まずいわね」

 

梨子「美奈監督。このままだと」

 

美奈「ええ…今すぐに指示を、」

 

しかし、この時既に。

ロシア代表は動いていた

 

 

フロイ「必殺タクティクス」

 

ロシア「「「【オーロラヴェール】」」」バッバッ!!

 

ロシア代表の選手たちが息を合わせ、まるで踊っているかのような動きをし始めた。

それと同時に選手たちのオーラが混ぜ合わさり、巨大なカーテン…いや、巨大なオーロラが日本の選手たちを包み込んだ

 

 

にこ「え…ちょっと!?何にも見えないんだけど!?」

 

聖良「視界を遮るタクティクス…!?これではシュートブロックが…」

 

360度。どこを見渡してもオーロラが視界に入ってくる。まるで濃霧の中にいるような状態。そんな中でも、絵里の声は自分たちの耳に届く

 

 

絵里「これでまた勝負できるわよ。果南」

 

果南「…そうみたいだね」

 

 

A『フィールドの中央で再び絢瀬絵里が構える!!松浦果南止められるか!?』

 

 

絵里「───────っっ!!」バッ

 

果南「………」

 

 

この時、果南は不思議な感覚にとらわれていた

 

 

果南(またこの感覚だ…懐かしいような)

 

 

具体的にはよく分からない。だが、オーロラの効果では無いことは確かだ。

果南はよく分からないまま、懐かしい感覚に溺れていくかのように…ゆっくりと、戦場のド真ん中で目を閉じる

 

 

絵里「勝負を捨てたのかし───

 

日本「「「───────

 

ロシア「「「───────

 

 

果南が再び目を開けた時

 

 

果南(………何、これ??)

 

 

有り得なかった。絵里、日本の選手、ロシアの選手、観客、空…全てが

 

 

 

 

 

止まっていた

 

 

 

 

 

果南(私も…動けない)

 

 

自分の体も全く動かない。まるで石になったようだ。

よく見ると、数メートル前方に絵里が蹴ったと思われるボールがあった。ボールは空中で停止している。

この全てが止まった世界、時の―――体の動かし方が全く分からない。

 

そんな中でも、果南の心の中で宿り続ける「懐かしさ」が、消える気配が全くない。逆に、更に増しつつある

 

 

果南(全てが止まった世界…私だけの世界……これって──────

 

 

 

 

 

 

─────海の、中??)

 

 

 

 

 

―――バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

ピピーッ!!!!

 

 

果南「…!!」

 

 

絵里「【アイス・ブルーモーメント】」

 

 

A『絢瀬絵里、2点を決めたぁぁ!!!!サニデイシャパン、抗うことが出来ないまま差が拡がっていきます…!!』

 

 

気づいた時には―――時は動き出していた

 

 

聖良「ごめんなさい…果南さん。私たちがタクティクスの効果で…「いや、聖良大丈夫だよ」

 

聖良「…え?」

 

果南「私…多分、次のあのシュート止めると思う」

 

 

 

 

日本 0-2 ロシア

 

 

 





???「時は再び動き出す」

感想が減ってしまった()





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第3章 152話 「ロシア戦 "Shocking Party"」

皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。

作者から少しだけ今後の報告を。
輝こうサッカーで!世界編は間もなく終了します。その後は、別小説で輝こうの続編『虹ヶ咲学園×イナズマイレブンGO』の小説を投稿する予定です。輝こうを連載し始める前から書くことは決めていたので、頑張ってやっていこうと思います。更に詳しい情報は輝こうの最終話の時に




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

理亞の"ラストリゾート"が不発に続く中、日本とロシアの戦略の攻防は勢いを増す。

そんな中、果南は時が止まったかのような視界を経験。絵里のシュートを止める確信を得るのであったら

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

フロイ「エリー。ナイスシュート」

 

絵里「ありがとうフロイ。みんなのタクティクスのおかげよ」

 

ロシア代表の必殺タクティクス、"オーロラヴェール"。相手選手の視界を遮ることにより、絵里のシュートがブロックされることを防いだ。

これで点差は2。まだ前半も始まったばかりだが、既に差は開き始めていた

 

 

真恋「…これ以上、点差が広がるようだと厳しいわよ」

 

美奈「ええ。ルビィちゃんを…出す必要があるわ「待ってください!!」

 

美奈「…!」

 

梨子「……時間をください」

 

ベンチから美奈を引き止めたのは梨子だった。その熱意が込められた声を聞き、美奈は代表になってからの梨子の精神的成長の速さに驚きを隠せなかった

 

 

梨子「私に時間をください…絶対に、"私たち"で流れを変えます」

 

真恋「私たち?誰と何を…」

 

 

 

梨子「A‐RISEの究極のサッカーを完成させます」

 

 

ベンチに動きがあることは、フィールドに立つ選手たちも気がついていた

 

 

海未「誰か交代でしょうか」

 

にこ「ふぅ…にこは絶対に交代しないわよ。絵里をぎゃふんと言わせるまではね」

 

英玲奈「……いや、あれは交代ではないな」

 

海未、にこ「「??」」

 

あんじゅ「え…?今やるの?あれはだって、」

 

ツバサ「未完成はお決まりの言葉よ。梨子はそれ覚悟で私たちに掛けてる」

 

英玲奈「負けるぐらいなら足掻こうじゃないか。あんじゅ」

 

あんじゅ「はぁ、しょうがないわね」

 

UTX高校サッカー部、歴代最高の才能を持つ3人のプレイヤー。人々はその3人を"A‐RISE"と呼んだ。

敵無しと称えられたA‐RISE。しかし、彼女たちだけではその完璧には程遠かった

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

理亞「ツバサさん」パス

 

ツバサ「理亞。少し離れてて」

 

足りない。A‐RISEだけではたどり着けなかったサッカーが────今、始まる

 

 

英玲奈「ツバサ、あんじゅ。いくぞ」

 

ツバサ、あんじゅ「「いつでも」」

 

英玲奈「っっ!!」ズバッ!

 

 

日本、ロシア「「「!!!!!!」」」

 

 

A『統堂英玲奈が動いた!!!!』

 

 

英玲奈が地面に手をつく。"エンペラータイム"の動きだ。しかし、手から地面を伸びるのは光の線。

英玲奈の動きでもその技はまるで……梨子の"神のタクト"

 

 

梨子「問題は…ここから」

 

 

あんじゅ(来たわね…!!)

 

ツバサ「!!」

 

英玲奈が放つ光の線はあんじゅとツバサを包み込む。まるで1本の線が3人を繋ぐかのように。その光が途切れる気配は無い

 

 

和葉「うわ〜…やっぱり梨子ちゃんは天才だよ」

 

フィレア「キャプテン、あの技はいったい…」

 

和葉「あれは…言うなら、"UTXの切り札"」

 

 

 

包み込んでいた光の中から、ツバサが姿を現した。彼女の姿は見たところ変わった部分は無く、雰囲気もいつもと同じ

 

 

ツバサ「……なるほどね」

 

理亞「つ、ツバサさん??」

 

 

しかし、今のツバサは──────

 

 

ツバサ「完成したみたいね」

 

ツバサ「【Shocking Party】が」

 

 

───オーラが、別人のように溢れていた

 

 

梨子「やった…!!!完成した…やった…やったよ…!!」

 

ダイヤ「梨子さん…今の技はいったい、」

 

ダイヤの質問に梨子が答えようとしたのと同時だった。ツバサが1人、ロシア陣内へと飛び出したのだ

 

 

ユーリー「1人で攻めてきた!?」

 

絵里「落ち着いて。さすがの綺羅ツバサでも、私たちのディフェンスがあれ―――ギュン!!

 

ユーリー、絵里「「!?!?」」

 

ツバサ「私たちのディフェンスが…何?」

 

絵里(嘘でしょ…??この距離を一瞬で!?)

 

 

A『は、速い!!綺羅ツバサのドリブルはまさに電光石火!!!ロシア代表の選手が反応出来ていません!!』

 

 

フロイ「私が行く。援護よろしくね」

 

ヴィクトール「任せて」

 

シャミール「頼んだわよ…!」

 

"気高き銀狼"がツバサの前に立つ。世界的にも名が知られているほどの実力を持つ彼女は、シュート・ドリブル・ブロック。どれをとっても完璧。弱点が存在しない選手である

 

 

ツバサ「―――」バッバッ!

 

フロイ(……スピードが上がってるね)

 

そんなフロイとツバサが勝負をして────優勢なのがどちらの選手なのかは、多くの人々がフロイと答えるだろう。

しかし、

 

 

フロイ「取った!!」バッ!

 

ツバサ「―――!」スカッ

 

フロイ(と見せかけての──────

 

─────左っっ!!!!」バッ!

 

ツバサ「―――!!」ズバッ!

 

フロイ(フェイント…!!ダメだ、対応でき…

 

ツバサ「今の私から奪うのは…不可能よ」

 

フロイの足を伸ばしたボールカットを回避したツバサ。その動きを誘導し、左に体勢を移した瞬間を狙おうとしたフロイだったが…

その後のフェイントのラッシュに揺さぶられ、銀狼は地面に倒れることとなった

 

 

月「あのフロイ選手が…倒された、」

 

梨子「これがUTX高校の追い求めたサッカー。ツバサさん、英玲奈さん、あんじゅさんは今…自分たちのために全力で戦っています」

 

 

――――――――――――

――――――

―――

 

 

 

それはまだ、アジア予選も始まる前。

日本代表サニデイシャパンが初招集されてから、数日が経った時まで遡る

 

 

梨子『主力メンバーから降りた…??』

 

ツバサ『ええ。相応しいのは私じゃないわ』

 

チーム戦の競技では特定の選手を中心に試合を進めることが多い。サッカーならば、センターFWの選手にボールを集めたり、周りの選手が援護したりなど、その役目に現時点で相応しいのは綺羅ツバサだった。

しかし、彼女はその重要な役目を辞退したというのだ

 

 

梨子『ツバサさんの技術とゾーン…これをメインにしなければ世界と戦うことは、』

 

ツバサ『今はいいわ。でも、この先はどうなの?』

 

梨子『この、先…?』

 

ツバサ『私は高校3年。この大会でUTXサッカー部、綺羅ツバサは引退。でも…あなたたちにはまだ時間があるわ』

 

ツバサ『今の1年生、2年生の選手を中心にチームを組み立てた方がいいわ』

 

梨子『でも…それで、いいんですか?ツバサさんも全力のサッカーを…』

 

ツバサ『私は常に全力よ?ただ、軸とならないだけで戦力には必ずなる。あんじゅと英玲奈も…監督に同じ事を伝えたらしいわ』

 

梨子『……』

 

ツバサ『梨子。これからの日本を動かしていくのは……あなたたちなのよ』

 

その言葉の通り、ツバサはアジア予選で理亞のATP習得のサポートに全力を注ぎ、センターFWもほとんどをルビィや理亞に譲った。

英玲奈はあくまでも梨子のサポート。自分は戦況やデータ分析をし、梨子に司令塔の軸を託していた。

あんじゅもディフェンスのプロではあるが、ことりや善子にポジションを譲ることがほとんどだった。

 

同じ代表ではあるものの、試合出場への意欲がほかのメンバーと違う場所にあった3人。

あくまでも自分たちはサポート。ピンチの時のヘルプ。託すことが役目だと言っているかのようなUTX高校サッカー部 A‐RISE。

 

 

 

 

そんな3人がロシア代表との試合の中で

 

 

A『綺羅ツバサが止まらない!!!!!』

 

 

本来、サッカー選手なら誰もが抱く感情―――私が試合で活躍したい。

という想いを剥き出しに…覚醒したのだ

 

 

ツバサ「【ジャッジメント・レイ】」パチン!パチン!

 

ドリブルしながらの指パッチン。上空からレーザーの雨が降り注ぎ、ロシア選手たちの動きを封じる

 

 

月「あれって…あんじゅさんの技じゃ!?」

 

梨子「…"Shocking Party"。英玲奈さんとあんじゅさんの全ての能力を、ツバサさんに注ぎ込ませる技です。私がUTX高校にいた時からこの技は開発されていた…でも、出来ずに終わったと聞きました」

 

ツバサ、英玲奈、あんじゅ。この3人に足りないものはただ1つ。3人を強く結び付ける線、"絆"だった。

選手たちの絆が大きな力に変わると気づいたのは全国大会が終了してから。そして、お互いが近い関係のようで距離が存在した中…梨子がその距離を縮めた。繋いだのだ

 

 

ツバサ「【デコイ・リリース】」バッバッバッ!!

 

ラビ「爆煙に紛れて分身を…!?」

 

アレクセイ「これじゃあ、どれが本物か区別が…!!」

 

英玲奈とあんじゅは"Shocking Party"を発動している間、その場から動くことは出来ない。解除、または体力が尽きるまで、絆による覚醒は消えることは無い

 

 

A『綺羅ツバサが構えたっっ!!』

 

 

英玲奈「決めろ…!ツバサ!!」

 

あんじゅ「私たちの分も!!」

 

ボールを蹴り、ロシア陣内で暴れているのはツバサ1人だけ。しかし、今のツバサは英玲奈でもあり、あんじゅでもある。

3人がひとつになって放つシュート

 

 

ツバサ「【流星ブレードV3】!!」ドガアァン!!

 

ゴラン「その技は研究済みだよ…!!」

 

ゴラン「【ツーマンデ・ゴラン】!!」

 

オーラで作り上げた巨大な手でシュートを受け止める。しかし、

 

 

ゴラン「!?(お、重い!?!?)」

 

ツバサ「……」

 

ゴラン(威力がまるで別の技…これは―――きゃっ!?」

 

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

ピピーッ!!!!

 

 

A『ゴール!!!!日本、ついにロシアから1点を奪いました!!綺羅ツバサの素晴らしいプレーで1点差です!!』

 

レヴィン『まるで綺羅選手、統堂選手、優木選手の3人がプレーをしているかのような動きでした。これが"ゴットストライカー"の真の実力なのでしょうか』

 

 

美奈「さすがね。すごい技を作ってくれたわ」

 

美奈「次は…果南ちゃんね」

 

 

絵里「その技、全国大会で使っていたら…私たちも勝てたかどうか分からなかったわね」

 

ツバサ「それは夢の話よ。梨子がいなければ完成しなかった技…でも、この試合は夢では無いから気を引き締めた方がいいわ」

 

絵里「言うわね。でも怒らないでよ?」バッ

 

ツバサ「!」

 

笛が吹かれたのと同時に絵里が飛んだ

 

 

理亞「シュート撃たれる…間に合わない!!」

 

ツバサ「……」

 

絵里「ワンパターンだけど許してちょうだい?あなたのスタミナが尽きるまで…私はゴールを決め続けるわ」

 

このまま絵里が決め続ければ、ツバサのスタミナが尽きるまで点差が変わることは無い。

自信に満ち溢れているからこそ、絵里はキックオフと同時にゴールを狙えるのだ

 

 

千歌「果南ちゃ──────

 

絵里「【アイス・ブルーモーメント】!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――グサッッッッッッ!!!!!!!!

 

 

「…ねえ、どうして決める前提なの?」

 

 

絵里「…な、」

 

ロシア「「「!?!?!?」」」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

絵里の足がボールに触れたのと同時に、日本のゴールから突き刺すような鋭い音が響いた。選手全員がフィールドの中心からゴールに視線を移すとそこには―――

 

 

果南「……止められるよ。もう」

 

槍でボールを突き刺す、海皇の姿があった

 

 

A『止めたぁぁ!!松浦果南!!!3本目でついに…"アイス・ブルーモーメント"を止めました!!!!』

 

 

絵里「な…私のシュートが……何で、」

 

フロイ「エリー。見て、松浦果南の槍…」

 

 

果南「【形状変化"スサノオ"】」

 

"デルフィナス・トリアイナ"が細長く形状変化していた。果南の槍の新たな姿、"スサノオ"

 

 

果南「もう"見える"。この"目"があれば…ゴールはもう譲らないよ」

 

絵里「目…?」

 

果南の言葉を追求しようとした時だった。

全身に鳥肌が立つような感覚。果南に気を取られて気づくのが遅れたが、自分の目の前で…オーラが跳ね上がった選手が1人

 

 

ツバサ「…"Shocking Party"の完成と果南の進化…ここまで監督のシナリオ通りね」

 

綺羅ツバサが────"ゾーン"を発動していた

 

 

理亞(これが…ツバサさんの、"A‐RISE"の全力…!)

 

理亞もゾーンの素質を持つ者だから分かる。

"Shocking Party"という覚醒状態でのゾーン発動は…全てを凌駕する力を持っている。

ATP×ゾーンで勝負しても勝てるかどうか分からない。見た目に変化はなくとも、内在的な力はもはや別人だ

 

 

ツバサ「流石の"Shocking Party"でもこの状態は長く持たないわね…理亞」

 

理亞「…!」

 

ツバサ「今から私は2点目を狙うわ。ワガママで自分勝手なサッカーになるかもしれない…それでも「今更何言ってるの?」

 

理亞「私はいつも自分勝手にサッカーをしてた…ツバサさんたちが支えてくれなきゃ、自分のサッカーなんて出来なかった」

 

千歌「理亞ちゃんだけじゃないよ!」

 

千歌「私もみんなもツバサさん、英玲奈さん、あんじゅさんには支えられてた!今度は私たちがツバサさんたちのサッカーを支える番だよ!」

 

ツバサ「……嬉しいわ」

 

綺羅ツバサはロシア陣内へと向き直った。ここまで…自分のサッカーをしたい。自分で勝ちに行きたいと思ったのは初めてだった。

A‐RISEを繋ぐこの光の線。短い時間ではあるが、悔いがないように。全てをぶつけよう

 

 

ツバサ「悪いけど。こうなったら自分でもオーラを制御出来ないから」

 

ツバサ「さあ、パーティーの始まりよ」

 

 

 

日本 1-2 ロシア

 

 

 




Shocking Party 綺羅ツバサ/統堂英玲奈/優木あんじゅ
A‐RISE、そして梨子によって完成された必殺技。梨子の神のタクトをヒントに英玲奈がツバサとあんじゅを繋ぐ。そしてツバサに2人の能力を全て流し込むことにより、全能の選手が完成する。
技発動中は英玲奈とあんじゅはその場から動けない。



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第3章 153話 「ロシア戦 "深淵の瞳"」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
スクスタの新イベ ルビィちゃん可愛すぎ。好き




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

A‐RISEが目指した究極の必殺技"Shocking Party"。英玲奈とあんじゅの全能力をツバサに預けるという、信頼の塊とも言える技であった。

さらに果南が"アイス・ブルーモーメント"を攻略。サニデイシャパンの反撃が始まろうとしていた

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

その不思議な感覚が────日常の一部になっていた。だから思い出せなかったのだろう

 

 

果南(この感覚は…海の中と同じだ)

 

幼い頃から海は体の一部だと思っていた。全身が水に包まれ、溶けていくような感覚。

海中で水面を見ると、ゆらゆらと揺れながら太陽が自分と青い世界を輝かせている。

 

身体だけでなく、意識も海に溶け、まさに時間という概念が存在しない世界。

このまま海の底へ、深く暗い、宇宙のような世界へと消えていくのだろうか。

 

そんな世界を────果南はフィールドの上で見ることとなった

 

 

果南『【深淵の開眼】』

 

時を止める技では無い。時が止まった世界を見ることが出来る果南の技、能力の開花。

 

そのため自身も動くことは出来ない。あくまでもこの技は今現在ボールがどこにあるのかの把握。つまり、"深淵の開眼"を解除し、タイミング良くシュートを抑えなければならない

 

 

果南(通常の形態では重くて間に合わない…なら、もっと鋭く伸びる…突き抜ける槍)

 

暴風雨の神"スサノオ"をイメージする。スサノオの"スサ"は「進む」と同根。勢いに乗り、嵐を貫き、天にも穴を開けるその槍は―――

 

 

果南『…"深淵の開眼"、解除』

 

時は再び動き出す。同時に、"デルフィナス・トリアイナ"にイメージを注ぎ込む

 

 

果南『形状変化─────────

 

 

 

 

グサッッッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

─────【スサノオ】」

 

 

 

―――――――――

―――――

――

 

 

 

 

真恋「あの一瞬で2つの新技を…」

 

美奈「北ちゃんも言ってたわ。果南ちゃんは動体視力を超えた才能を持ってるって」

 

美奈「果南ちゃんの開眼。そしてA‐RISEの覚醒…これで準備は整ったわ。梨子ちゃん、ことりちゃん」

 

梨子、ことり「「!!」」

 

美奈「準備してね♪」

 

 

 

A『さあ!松浦果南がこの試合初めてとなるシュートの阻止!素晴らしいセービングでした!』

 

レヴィン『あの僅かな時間で"デルフィナス・トリアイナ"を新たな形状へ変化させ、武器である動体視力で刺した…松浦果南、海皇の名に恥じないプレーでしたね』

 

 

果南「善子!頼んだよ!」パス

 

善子「ナイスだったわ。果南」

 

ボールを受け取った善子はドリブルを始める。あんじゅが動けない今、自分はオーバーラップせず、聖良と守備に徹底する必要がある

 

 

聖良「善子さん…!あまり長く持たないでくださいね!」

 

善子「分かってるわ────よっ!!」グルン!

 

ユーリー「なっ…躱した!?」スカッ

 

聖良「…!!」

 

聖良との会話で余所見をしていた善子。

ユーリーが背後からボールを奪いに来ていることに聖良が気づいたのは、足がボールに触れようとしていた時だった。

しかし、まるで分かっていたかのように"共鳴の堕天使"は回避してみせた。

 

そう、共鳴したのだ

 

 

善子「【Deep Resonance】」

 

こうなってしまっては、ロシアの選手たちは善子に迂闊に近づくことは出来ない

 

 

善子「ツバサ!!」パス

 

その一瞬の迷いを突き、善子は陣地を跨ぐロングパスを放った。名を呼ばれた少女はすでにスタートを切っており、共鳴を利用した正確無比なパスがツバサの足元に落ちる

 

 

ツバサ「すごい正確なパスね」

 

絵里「ホント。善子の共鳴は厄介だわ」

 

ツバサ「!」

 

絵里「……」バッ!

 

すでに絵里は必殺技を放っていた。ツバサの周辺では雪が舞っている。そして自分へと向けられた片腕。数秒後の閃光により視界が奪われ、仲間が作ったチャンスを無駄にしてしまう。

しかし、

 

 

ツバサ「……」スッ

 

絵里「…??」

 

動揺せず、パスを出して回避することもせず、落ち着いた表情で地面に手をつくツバサ。

何を仕掛けるか分からないが、先に技を発動すれば自分の勝ちだ

 

 

絵里「【スノーハレーション】!!」

 

―――キラキラキラ!!!!

ツバサが眩しい光に包まれる。タイミングを計ってボールを奪おうとした絵里だったが、閃光の中で───ツバサが何か一言、呟いた気がした

 

 

 

 

 

 

ツバサ「【エンペラータイム】」

 

 

 

 

 

光が消えた時には───絵里は抜かされていた

 

 

絵里「…!?」

 

 

A『絢瀬絵里の必殺技でも綺羅ツバサからはボールを奪えません!!!!』

 

レヴィン『"エンペラータイム"は統堂選手の技ですよね』

 

 

敵味方選手の位置・情報を瞬時に把握する英玲奈の必殺技、"エンペラータイム"。

それをツバサが発動し、絵里の位置を把握することにより、目を閉じながらのドリブルで、"スノーハレーション"を破ったのである

 

 

和葉「3人の選手が1つになってると言える今のツバサ…私たちでも止めるのは厳しくなりそうだね」

 

フィレア、鞠莉、フラム「「「………」」」

 

 

 

ツバサ「理亞!」パス

 

アレクセイ「な…!?自分で行かないの!?」

 

自分で決めに来ると思って構えていたことが裏目に出た。守備が薄くなった理亞にボールが渡る。ゴールまでの間に遮る選手はいない

 

 

理亞「今度こそ…っっ!!!!」ゴオォォォ!!

 

チャンスは限られている。これ以上、失敗するわけにはいかない。ツバサから託されたこのボール…絶対に──────

 

 

理亞「決めるっっ!!」メキッッッ!!!

 

理亞「【ラストリゾート】!!!」ドガアァン!!

 

ドカァン!ドガァン!ドガァン!

バウンドする度に地面を抉り、轟音と衝撃を放ちながらゴールに迫っていく。

1回目で失敗した距離はすでに越えている。行ける―――そう、思った時だった

 

 

 

―――ボゴオォォォォン!!!!!!

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

理亞「!!!!」

 

"ラストリゾート"の破裂。失敗

 

 

A『ああっと!?またしても不発になってしまった!!!』

 

レヴィン『これ以上続けると、チームの流れを止めてしまう可能性がありますね。理亞選手にはまだ早かったのでしょう』

 

 

理亞「ハァ…ハァ……くっっ、なんで…」

 

理由が分からない。何故、成功しないのか。自分の"ラストリゾート"には何が足りないのか。悔しさと怒りで、理亞はその場から立ち上がることが出来ないでいた

 

 

ルビィ(今の理亞ちゃんは"ラストリゾート"のことしか頭に無い…本来のプレーが出来てないもん)

 

 

ツバサ「………」

 

ツバサ(先に同点にした方が良さそうね)

 

 

ゴラン「フロイ!」パス

 

 

あんじゅ「ハァハァ……」

 

善子「ちょっ、大丈夫なの??顔色が真っ青じゃない!?」

 

あんじゅ「なんのこれしき…よ。まだ私たちの全力を終わらせるにはいかない!!」

 

息切れが酷く、今にも途切れそうな光の線。限界が近づいているのは英玲奈も同じだ。

A‐RISEの3人の時間は残されていない。そんな中でのディフェンス

 

 

にこ「フロイ!!にこと勝負しなさい!」

 

フロイ「悪いね」パス

 

ヴィクトール「―――!」パス

 

にこ「ちょっ!?ワンツー!?」

 

フロイ「あなたとの勝負は今はお預けかな♪」

 

今のワンツーパスを見てもそうだ。にこが対応できないほどの正確さとスピード。

まるでコンピュータのように完成された連携。準決勝まで勝ち上がる強豪だけのことはある

 

 

フロイ「勝負だ!松浦果南」

 

気高き銀狼がシュートの構えに入った。

彼女のオーラがステンドグラスのように輝き、そのまま足に纏い始める。

そして蹴り上げたボールはクリスタルへと変化

 

 

フロイ「【イノセントドライブ】!!」

 

上空へと飛んだフロイは、クリスタルのボールをオーラで強化した足で蹴り放つ。

シュートと共にクリスタルの破片がきらびやかに舞い、宝石のような美しさがそのシュートにはあった。しかし、

 

 

果南「形状変化──【アトランティス】!!」

 

この宝石を―――松浦果南は全力で砕く

 

 

果南「──────はあぁっっ!!!!」

 

 

―――ガキィィィィン!!!!!!

果南の腕に衝撃が走った。そしてこの音。本物の金属を相手にしているかのような硬さ。

パワータイプの形状を選んで正解だった。硬すぎて刺せないこのシュート…このまま押し切られるところだった

 

 

果南「!!!!」

 

 

ヴィクトール「槍が弾かれた…!!ゴールだ!」

 

絵里「……まだよ」

 

確かに。果南の必殺技は宝石シュートにより弾かれてしまった。しかし、果南は弾かれた動きに抗うことなく

 

 

果南「―――っっ!!!!」グルン!!

 

フロイ「弾かれた遠心力を!?」

 

果南「刺せないなら打ち返すっっ!!!!」

 

果南「でりゃあぁぁぁっっ!!!!」ガキィィン!!

 

一回転からのフルスイング。

火花を散らしながら、宝石は砕け、ゴールとは真逆の方向へとボールは飛んだ

 

 

にこ「こぼれ球は任せなさい!!」

 

 

A『止めたぁぁ!!松浦果南、神器の重さを利用し、フロイ選手のシュートを打ち返した!!!!』

 

 

にこ「【スーパーエラシコ】!!」バッ!バッ!バッ!

 

ロシア代表の選手たちが、ディフェンスに切り替える前に突破する。

連続で技を発動し、相手が対応に遅れたところを―――

 

 

にこ「遅いっっ!!」ギュン!

 

ルース「なっ!?」スカッ

 

にこ「足が止まってるわよ!!」スババッ!

 

シャミール(なんなの…このフェイント!?)

 

例え、2.3人がかりでディフェンスをしたとしても。矢澤にこのドリブルの前では無意味になるだろう。人数差を超えるテクニック…それと対等に争わない限り、この少女からはボールは一生奪えない

 

 

にこ「千歌!!」パス

 

千歌「はい!ツバサさん!」パス

 

 

A『ダイレクトパスで高海千歌が綺羅ツバサへとボールを蹴った!!このボールが渡ればサニデイシャパンは大チャンスです!!』

 

 

ツバサ「任せ────「シュートは撃たせないわ」バッ!

 

ツバサ「!!」

 

千歌のパスがツバサの頭上まで来た時だった。自分とすれ違うように飛び出していったのは、金色に髪を輝かせる、絢瀬絵里だった

 

 

A『ああっと!?絢瀬絵里がパスをカット!突然のことに、日本の選手たちは反応出来ていません!!!』

 

 

絵里「─────っっ!!」バッ!

 

 

善子「!!…絵里、シュート撃つ気よ!?」

 

果南「嘘!?まだ手が痺れてるから形状変化は―――

 

 

絵里「【アイス・ブルーモーメ─────

 

 

──────バキィィィィン!!!!

 

絵里「!?!?」

 

日本、ロシア「「「!!!!!!」」」

 

絵里がシュートを撃とうとするのと同時だった。誰かがボールが絵里の足と挟まれる形になるように足を出し、シュートをブロック

 

 

絵里「くっっ…!!いつの間に!?」

 

ツバサ「あなたのシュートも…撃たせないわよ」

 

 

A『綺羅ツバサ間に合ったっっ!!両足を使ってのシュートブロック!!!なんという執念でしょうか!?』

 

 

絵里「もう一度奪って─────スカッ

 

絵里(ボールがすり抜けた!?)

 

 

にこ「…!!"アイソレーション"!」

 

三浦和葉や綺羅ツバサが得意とする技術。

高速の動きと緩急を利用し、"ボールがその場にあるように"見せかける…幻覚ドリブルである

 

 

ツバサ「まとめて相手してあげるわ」

 

その言葉通り、次々と迫るロシアDFを躱していくツバサ。その動きはまさに人間を超えた領域。

真の"ゴットストライカー"の絶技を、千歌たちは目撃している。そう、思わせるほど

 

 

ラビ「はあぁっっ!!」ズザーッ!

 

ツバサ「理亞!」パス

 

ラビ「…!!」

 

先程と同じパターンだ。自分で攻め込むと見せかけての理亞へのパス。ギリギリまで気づけなかったのは、これも"アイソレーション"による幻覚によるものだったのだ。

しかし、

 

 

ラビ「グエンナディ!今だよ!!」

 

ツバサ「!!」

 

理亞へのパスは予測されていた。

このままでは、理亞がシュートを撃つ前にボールを奪われてしまう。フォローに入る必要があると、ツバサが引き返そうとした時だった

 

 

グエンナディ(あ…あれ…?)

 

理亞「―――!」バッ

 

 

数秒前まで、シュートの構えをしていた理亞が…

 

 

絵里「違う…!!グエン!!」

 

 

ボールを─────蹴り返していた

 

 

ツバサ「最初から…ワンツーパスのつもりで、」

 

理亞「決めて…!!ツバサさん!!」

 

敵味方、理亞がシュートを撃つと思っていたからこそ。ツバサとGKの1対1の状況が生まれた

 

 

ツバサ「…ありがとう。理亞、そしてみんな」

 

ツバサは魔法陣を自身の目の前に発動させる

 

 

ツバサ「一気に決めるわ。あとは…頼んだわよ」

 

あんじゅの"ジャッジメント・レイ"。そして英玲奈の"シェルビットバースト"を合わせた必殺シュート。

破壊のレーザー砲が、唸りをあげる

 

 

ツバサ「【ジャッジメント・バースト】!!」

 

魔法陣にボールを打ち付け、時間差でチャージされたエネルギーを一気に放出する。

破壊力の高いディフェンス技をシュートに利用する…これが、A‐RISEの長所を組み合わせた結果

 

 

ゴラン「【ツーマンデ・ゴラン】っっ!!」

 

 

後輩たちに見せる、自分たちの全力

 

 

ゴラン「ぐっっ……お、重……っっ!?!?」

 

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

喜びを爆発させ、拳を天へと突き上げるその姿は────純粋にサッカーを楽しむ少女そのものだった

 

 

A『ご、ゴール!!!!サニデイシャパン同点です!!綺羅ツバサのゴール、A‐RISEの活躍により、試合は振り出し!!!!』

 

 

ツバサ「ハァ…ハァ……時間切れ、みたいね」

 

日本陣内を見ると、自分と同じように英玲奈とあんじゅもその場で座り込んでいた。

2人には無茶をさせた。それと同時に…本当に楽しかったと思う

 

 

理亞「今回は私が肩を貸す」

 

ツバサ「…!」

 

理亞「いつも私、人の肩を借りてばっかりだから」

 

ツバサ「ふふ。ありがと」

 

綺羅ツバサ、統堂英玲奈、優木あんじゅがフィールド外へ。日本のために全力をぶつけた先輩3人の勇姿を称え、そして託されたメンバーとしての自覚を胸に。

それは―――交代する選手たちも同じだ

 

 

あんじゅ「ことりちゃん、DF…頼んだわ」

 

ことり「はい…!頑張ります!」

 

英玲奈「梨子。本当に感謝している。そしてここからは…託すぞ」

 

梨子「英玲奈さんの分も必ず…!」

 

 

 

そして────綺羅ツバサも託すことになる

 

 

 

ツバサ「好きなだけ暴れて。"紅き流星"さん」

 

ルビィ「はい。あとは任せてください」

 

 

サニデイシャパン第2陣

 

日本の真の猛威は────ここから始まる

 

 

日本 2-2 ロシア

 

 





『深淵の開眼』 特殊技/松浦果南
果南のずば抜けた動体視力の行き着いた境地。"時が止まった世界"を見ることが出来ます。時間を止めたわけではないので、自分も動くことは出来ません。高速シュートなどの普通の視力では捉えることが出来ないものを見る時に発動します。高速シュート以外にも使える可能性が…

『形状変化"スサノオ"』 キーパー技/松浦果南
"デルフィナス・トリアイナ"の新たな形状です。スピード、貫通力に特化しており、高速シュートなどに最適な形状となっています。スサノオ神の名の由来には諸説ありますが、輝こうでは本文の設定で。

『ジャッジメント・バースト』
シュート技/Shocking Party状態の綺羅ツバサ
英玲奈の"シェルビットバースト"。あんじゅの"ジャッジメント・レイ"を合わせた必殺技です。技の流れは"シェルビットバースト"と同じですが、あんじゅの魔法陣のオーラで破壊力が増しています。


次回で前半は終了です。




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第3章 154話 「ロシア戦 "真の強者"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
今回で前半は終了です




 

 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

果南の開眼、A‐RISEの覚醒により同点に追いついたサニデイシャパン。想いは託され、日本の戦力はより強力なものへとなっていく。

流れを変えつつある日本…反撃はまだまだ始まったばかりである

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

FW…………鹿角理亞、黒澤ルビィ

 

MF………渡辺曜、高海千歌☆、園田海未

 

MF……………矢澤にこ、桜内梨子

 

DF……………鹿角聖良、南ことり

 

DF……………………津島善子

 

GK……………………松浦果南

 

1-2-2-3-2

 

 

 

A『サニデイシャパンは選手を交代するようです。優木あんじゅに代わって南ことり。統堂英玲奈に代わって桜内梨子…そしてもう1人、来ましたねレヴィンさん』

 

レヴィン『はい。"紅き流星"黒澤ルビィ。ブラジル戦では厳しいマークで自由にプレーはさせてもらえませんでした。ですが、この時間からの投入は、監督の判断が素晴らしかったと言えます』

 

 

 

フロイ「ふぅ…ここでルビィちゃんか、」

 

ユーリー「まだ本調子じゃないの?」

 

フロイ「ええ。もう少し時間がかかりそう」

 

絵里「……」

 

絵里(フロイのエンジンはかかりにくい。その前に、全員の体力が減ってる中でのエース…)

 

ツバサに翻弄され、予想以上に体力を減らしてしまったロシア代表。フロイがこの後、本調子になったとしても、このまま日本が強引に押し切ってくることが目に見えていた。

 

一方、日本陣内では交代したルビィが理亞に監督の伝言を伝えていた

 

 

理亞「…分かった。この試合ではもう撃たない」

 

伝言の内容は、この試合での"ラストリゾート"の完成の中止。つまり、これ以上撃つな。という指示であった

 

 

ルビィ「日本に流れが来ている今、一気に逆転しないと後半は分からないから…」

 

理亞「ルビィ。あんたは相手に一番警戒される。簡単にはシュート出来ないわよ」

 

ルビィ「大丈夫だよ」

 

理亞「…!」

 

ルビィ「絶対に撃つから」

 

どこからそこまでの自信が湧いてくるのだろうか。いつもそうだ。根拠とか、そんな次元を超えたことをルビィはいつもやってのける

 

 

A『さあ、前半で既にヒートアップしているこの試合もまもなく終盤!流れはサニデイシャパンに来ていますが、果たして!?』

 

 

和葉「…ロシアはルビィちゃんが出てきてどんな戦いをするのか…それで勝敗は決まる」

 

鞠莉「……」

 

 

絵里「フロイ…!」パス

 

フロイ「―――!」

 

 

和葉「得点源を失ったから、今度はどう決めようか…違う。今はそんなこと考える前に、どのように自分たちのゴールを守り抜くか。それが最優先だよ」

 

 

聖良「【真スノーエンジェル】!!」ビュン!

 

フロイ「―――っっ!!」バッ!

 

聖良の高速接近を躱すフロイ。冷静な判断力を駆使し、一瞬のことでも対応するが…

 

 

聖良「今です…!!」

 

フロイ「!?」

 

善子「抜いた後、隙だらけよ」

 

死角からの不意打ちへの対応には―――限界がある

 

 

善子「【Deep Resonance】 」

 

フロイが硬直したタイミングに合わせる

 

 

フロイ(っっ…!!今から回避を…

 

善子「無駄よ!!!!」ズザーッ!

 

フロイ「!!」

 

 

A『津島善子が奪ったぁぁ!!!!』

 

レヴィン『まさに、向かうところ敵無し。FFI屈指のDFは伊達ではないですね』

 

 

絵里「ディフェンス…!!しっかり!」

 

ヴィクトール「やはり、共鳴は厄介だな…」

 

ロシアの選手たちが守備の体勢を整える。

エースストライカーのルビィにはDF2枚。シュートを撃たせない作戦で勝負を仕掛けていた

 

 

和葉「……」

 

フィレア「キャプテン、この守備は…」

 

和葉「日本が強いことはどのチームも知っている。今までの成績を見れば一目瞭然。でも、やっぱり心のどこかで思っちゃうんだよね」

 

和葉「自分たちは…日本に勝てるんじゃない?って、」

 

エースストライカーや核となる選手を完全に封じれば、ほかの選手は大したことないのでは?アジアの、今まで無名に近かったチーム。大国の力には及ばない。

そんな心から消えない慢心を、三浦和葉は一番に恐れていた。

 

和葉はイタリアと日本の試合、特定の選手に戦力を集中させるなと指示を出していた。

特定の選手だけに気をつけるなどという考えは甘すぎる。逆に日本の思うつぼ。

 

ロシアは日本の作戦にはまってしまった。

全てはツバサの覚醒から始まり、連鎖的にロシアを追い詰めて行った

 

 

和葉「……自分たちの方が強豪のはずなのに。違う。日本の進化はもはや必殺技の域」

 

当たり前のように試合中に新技を完成させ、別人のように生まれ変わる。

その飛躍は一瞬にして相手の実力の先を行く

 

 

 

和葉「今の日本は…ロシアよりも強いよ」

 

 

A『高海千歌が抜けたぁぁ!!!!』

 

 

イタリア「「「!!!!!!」」」

 

 

千歌「ハァハァ…!!」

 

細かいパスと積極的なドリブル。

ルビィに気を取られたロシアDFは日本の攻撃を抑えることが出来なかった。すでに、千歌は最終ラインを突破している

 

 

千歌「決めるよ…!曜ちゃん、梨子ちゃん!」

 

曜、梨子「「うん!!」」

 

千歌の背後から空へと飛ぶ2人。その後を追わせるように、オーラを纏わせたボールを蹴りあげる

 

 

梨子「【神のタクトFI】!!曜ちゃん!」ビシッ!

 

曜「【エクストリームワープV2】!!!」

 

梨子の指揮。そして曜の空中連撃。

3人のオーラがひとつになり、溢れ、奇跡と呼ぶに相応しいシュートが完成される

 

 

曜、梨子「「千歌ちゃんっっ!!」」ドガァン!!

 

2人で同時にボールを垂直に蹴り落とす。

常人ならば地面に落下する前に、ボールに辿り着くことは不可能。しかし、千歌ならば絶対に届く。そう信じることができるから、全力でこのボールを託すことが出来る

 

 

千歌「ブレイブ──────────

 

チカ「──────ハートっっ!!!!」バッ!!

 

"ゾーン"×"闇の力"。

光り輝く目、漆黒に染まる目、オッドアイの少女は────空から落ちてくるボールに追いつくために加速する

 

 

チカ「っっっっ!!!!」メキッッッッ!!!

 

千歌だけで蹴ることは出来ない。千歌とチカ、2人がひとつになり、全身全霊。

虹色に染まる、奇跡のシュートの名を叫ぶ

 

 

チカ、曜、梨子

「「【オーバー・ザ・エボリューション】!!!」」

 

その迫力がシュートの威力を物語る。ゴランは必殺技"ツーマンデ・ゴラン"を発動するが、力の差が―――大きすぎる

 

 

ゴラン「な…なんてパワー…きゃっっ!?」

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

ピピーッ!!!!

 

 

A『ゴール!!!日本、逆転です!!浦の星女学院2年生の3人が決めました!!!!』

 

 

アレクセイ「何なの…あの威力、」

 

ラビ「ハァハァ……ルビィさん以外にもあれほどのシュートを、」

 

自分たちの脅威は黒澤ルビィだけでは無い。

その事実を3点目の失点により理解したロシア代表。サニデイシャパンの全選手が自分たちの脅威だ。守備を片寄らせるなど自殺行為だったのだ

 

 

 

和葉「だけど、それが分かったところでもう遅い」

 

 

 

梨子「必殺タクティクス」

 

ユーリー「!!」

 

パスのキレが無くなったところを一瞬で取り囲む日本。梨子の指揮に従うことにより、そのスピードと正確性は完璧に近いものとなる

 

 

梨子「【奇門遁甲の陣】!!」

 

作られたタクティクスには1箇所。ボールが通れるほどの空間が存在する。

しかし、そこからボールを蹴り出せば日本の思うツボ。それが分かっているため、ユーリーはその場で動くことが出来なくなっていた

 

 

にこ「貰ったっっ!!」ズザーッ!

 

ユーリー「えっ!?」

 

 

フィレア「あのタクティクス…!誘導だけでなく、内部でもボールを奪えるのね」

 

鞠莉「前までは難しかったはずよ。あのタイミングを合わせながらの高速移動中…突然飛び出してボールを奪うなんて、」

 

ロシアの選手たちも同じ考えを持っていた。だからこそ、"奇門遁甲の陣"の中心でボールを奪われることに驚きを隠せなかった。

そして、

 

 

にこ「頼んだわよ!ルビィ!!」パス

 

"紅き流星"にボールが渡った

 

 

絵里「…!!フロイ!!!」

 

フロイ「ええ。ルビィを止めよう」

 

彼女にボールを持たせることがどれほど危険か。嫌という程理解し、そして対策をして来た。

食い止めるためにも距離を縮め、彼女に接近する。が、

 

 

ルビィ「──────っっ!!!!」グッ!!

 

絵里(あの構え、ロケットスタ―――

フロイ(まずい…そう来た―――

 

 

―――ギュン!!!!!!

何かが絵里とフロイの間を駆け抜けた。それは燃えるように熱く。足を出すとか、体をぶつけるとか、反射反応でも止めることはおそらく不可能だろう

 

 

ルビィ「【Awaken the power】」ゴゴゴゴ

 

 

A『出たぁぁ!!紅き流星の"ATP"だぁぁ!!!』

 

レヴィン『ロシアは対応しなければまずいですよ。彼女はおそらく…決めに来ます』

 

 

善子「カウンターよルビィ!!暴れて来なさい!!」

 

 

ルビィ「っっ!!!!」ギュン!!ギュン!!

 

前半終了間際。両チーム共に疲労が目立ち始めていた中、黒澤ルビィは炎を纏いながらロシア陣内へと飛び込んだ。

本来ならば連携の取れたディフェンスで、なんとか対応できるはずのロシアDFだが…

 

 

ヴィクトール「このっっ!!」バッ

 

グエン「止める!!!」バッ

 

ルビィ「無理だよっっ!!」ギュン!!

 

ヴィクトール、グエン「「!?!?」」

 

 

シモン「はああっっ!」ズザーッ

 

ルビィ「―――っっ!!」グルン!

 

シモン(嘘!?速すぎ…!!)

 

 

A『ロシア代表、誰一人として黒澤ルビィを止めることが出来ません!!!』

 

 

理亞「……」

 

理亞はその目に焼きつける。

そのエネルギーはどこから溢れ、相手の先を行くドリブル、テクニックとパワー

 

 

ルビィ「………」シュウゥゥゥ…

 

 

自分とルビィは──────何が違うのか

 

 

ルビィ「はああああっっっっ!!!!」ゴオォォッ!

 

ロシア「「「!!!!!!」」」

 

 

A『ああっと!?この構えは!!!』

 

レヴィン『来ますよ。世界屈指のシュートが』

 

 

空気とATPのオーラが混ざった繊細なボールを―――両足で抱え込み、蹴り落とす

 

 

ルビィ「っっ───!!!!」

 

そして滑り込むように左足。オーラの回転とは逆方向に蹴りを加え、層を何重にも構築させる。その繊細な技術と衝撃に耐えるパワー

 

 

ルビィ「"ATP"っっ!!でえぇりゃあぁぁ!!!」

 

ボールに最後の蹴りが加えられた時の衝撃とは別に、理亞の心を揺らすものがあった

 

 

ルビィ「【ラストリゾート】っっ!!!!」

 

 

ユーリー「お願いゴラン…!!止めて!!」

 

ゴラン「任せろ…はあぁっっ!!!!」

 

ドガァン!ドガァン!ドガァン!

地面に弾むたびに地鳴りと轟音。そんな異次元シュートを前に、ゴランは自身のエネルギーを高めていく

 

 

ゴラン「【ツーマンデ・ゴラン】!!」

 

オーラで作った巨大な手でこのゴールを何としてでも守る。その覚悟を胸に、迫るシュートを全力で───────

 

 

 

────バギイィィィィィィィン!!!!

 

ゴラン「―――」

 

ロシア「「「!!!!!!」」」

 

ゴラン(これが…"触れない"シュート、)

 

そんな覚悟を一瞬で砕いたルビィのシュート。

遮るものを全て弾き飛ばし、まるで帰るべき場所のように。ゴールへと吸い込まれていった

 

 

ルビィ「……所詮、その程度だよ」

 

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

ピピーッ!!!!

 

 

A『ゴール!!!そして、ホイッスルが鳴りました!前半戦終了です!蓋を開けば4-2…!!日本優勢の試合となりました!』

 

 

ルビィ「ふぅ……」

 

理亞「ルビィ、ナイス」

 

ルビィ「ありがと」

 

 

A『やはり黒澤ルビィの"ラストリゾート"は止められなかったロシア代表。後半はどのような試合を見せてくれるのか!?』

 

レヴィン『途中、A‐RISEの必殺技から流れが一気に変わりましたね』

 

 

「……よしっ、行ってくるね!」

 

「…本当にいいの?」

 

 

レヴィン『サニデイシャパンは、もはやダークホースとは呼べないチームでしょう。攻撃・守備…どれを見てもロシア代表を超えています』

 

 

「最後だもん。私は…後悔しない道を選ぶ」

 

「車椅子は…」

 

「大丈夫!もう要らないよ!」

 

 

レヴィン『ロシア代表が後半でチームを変える"何か"をしない限り…勝利は日本の手の中でしょう』

 

 

 

 

――――――

 

 

 

美奈「うんうん♪みんな凄いわ!」

 

日本ベンチでのミーティング。前半は高海美奈監督の作戦通り、ほぼ完璧な試合となっていた

 

 

ツバサ「私たちがロシア代表をかき乱しているあいだに果南が新技を完成させる」

 

果南「そして理亞とルビィに守備を集中させて…千歌たちが逆転」

 

月「最後にルビィちゃんでトドメ…はは、本当に容赦ないね。美奈監督は、」

 

ロシアの選手ほどではないが、日本の選手たちも疲労は確実に溜まっている。後半、ギアをあげるであろうロシアの攻撃を受け切り、再びバテたところを叩く。

同じ事の繰り返しだが、ロシアはこれしか選択肢が無いのだ

 

 

理亞「ルビィ…私には、何が足りないの?」

 

ルビィ「……ルビィにも分からない」

 

想定の範囲内ではあったが、理亞の"ラストリゾート"は完成しないまま、この試合では発動を控えるように指示されてしまった。

完成しない原因が分からず、途方もない道を歩かされている感覚に陥っていた理亞

 

 

千歌「和葉さんの言葉は…何だったんだろう、」

 

理亞「…」

 

 

和葉『理亞ちゃんは理亞ちゃんを突き進んで』

 

 

理亞「私は私を……」

 

だが、答えが分からない以上、気にし過ぎることはプレーへの支障になる。

今の実力でも十分戦力になる。そう自分に訴え、気持ちを切り替える理亞

 

 

美奈「とりあえずスタートはこのまま。善子ちゃんはオーバーラップ無しで。にこちゃんは梨子ちゃんと一緒に軸をお願いね」

 

善子「承知」

 

にこ「りょーかーい」

 

 

曜「千歌ちゃん…!成功して良かったね!」

 

千歌「うん!たくさん練習したもん!」

 

梨子「ふふ♪後半もその調子でね」

 

 

ハーフタイムも終わりに近づいた時だった。

先程、美奈が提出した後半のメンバーとロシア代表のメンバーが発表されていた

 

 

A『ロシア代表に交代があるようです!』

 

 

海未「おや…?交代ですか」

 

ことり「誰とだろうね…」

 

 

A『MFのシャミールに代わり、この試合から代表合流となりました―――

 

 

 

―――絢瀬亜里沙選手を出すようです!』

 

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

果南「絢瀬…?絢瀬って、」

 

希「絵里ちの…妹さんや」

 

穂乃果「え…な、なんで?なんで亜里沙ちゃんが??」

 

亜里沙の名が出た瞬間、困惑する音ノ木坂学院のメンバーたち。ほかの選手たちにはその理由が分からず、謎の不安感に控え室は支配されようとしていた

 

 

千歌「あ、あの…にこさん?なんで亜里沙さんが出るのがそんなに…」

 

にこ「……亜里沙はね、病気だったのよ」

 

千歌「病気?」

 

にこ「足のね。数ヶ月前までは…車椅子だった」

 

「「「!!!!!!」」」

 

善子「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?車椅子だった人が数ヶ月で代表って…」

 

海未「だからです。私たちは信じられないんです。あの亜里沙が…立ってる姿さえ、見たことないんですから」

 

 

 

どのチームにも試合を流れを。チームを変える程の選手がいるとするならば。

ロシア代表は彼女がそれに相応しい

 

 

A『さあ、まもなく後半戦が始まります!!』

 

 

世界に轟く才能は、どこで生まれ、どこで育つのか…それは誰にも分からない

 

 

亜里沙「頑張ろうね!みんな!」

 

 

だが才能がどこに現れるのか―――それは決まって、勝負の場。

彼女の名前は絢瀬亜里沙。絢瀬絵里の妹であり、"ヘーミテオス"と呼ばれた―――

 

 

神に祝福されし少女である

 

 

 

 

日本 4-2 ロシア

 

 

 





ヘーミテオス、意味を調べるとかなりヤバそうな2つ名です。

ラストスパート…感想お願いします



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第3章 155話 「ロシア戦 "絢瀬亜里沙 衝撃の能力"」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
やっと亜里沙ちゃんを出せました。執筆開始前から出す予定だった子だったので嬉しいです。




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

サニデイシャパンの勢いに飲まれ、逆転を許してしまったロシア代表。"オーバー・ザ・エボリューション"と"ラストリゾート"により4-2で前半を終え、後半戦へと準備を進めていた時だった。ロシア代表の交代選手に絢瀬亜里沙の名が呼ばれたのだった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

ー サニデイシャパンー

 

FW…………鹿角理亞、黒澤ルビィ

 

MF………渡辺曜、高海千歌☆、園田海未

 

MF……………矢澤にこ、桜内梨子

 

DF……………鹿角聖良、南ことり

 

DF……………………津島善子

 

GK……………………松浦果南

 

1-2-2-3-2

 

 

 

ー パーフェクトスパーク ー

 

FW…………………ユーリー、絵里

 

MF……………………亜里沙、フロイ☆

 

MF…………シモン、ヴィクトール、ルース

 

DF…………アレクセイ、ラビ、グエンナディ

 

GK……………………………ゴラン

 

3-3-2-2

 

 

 

A『さあ、今大会初出場となる絢瀬亜里沙選手ですが、レヴィンさん』

 

レヴィン『はい。絢瀬絵里選手の妹であり、まだ中学3年だと聞きました。FFIの最年少選手である彼女の実績は…なかなか興味深いですね』

 

A『と、言いますと?』

 

 

 

 

絵里「なんとか…間に合ったわね」

 

フロイ「未だに信じられないよ…アリサが立っているなんて…」

 

絵里「無理も無いわ。私も亜里沙から連絡をもらった時、言葉を失ったもの…」

 

後半戦が始まる数十分前。ロシア代表の控え室に入ってきた少女に…選手たちは衝撃のあまり、動くことが出来なかった

 

 

絵里『亜里沙…!!』

 

亜里沙『お姉ちゃん久しぶり!』

 

姉である絵里が真っ先に少女の元へと駆け寄った。1人で立ち上がれるようになっていた亜里沙はパーフェクトスパークのユニフォームを纏い、3年前と同じ、自信に満ち溢れた目をしている

 

 

亜里沙『黙ってて本当にごめんなさい。でも、間に合って良かった…亜里沙はサニデイシャパンに勝つために後半戦から出るよ』

 

ユーリー『ちょ、ちょっと…まだ理解が追いついていないよ。アリサ、あなた、本当に大丈夫なの??』

 

亜里沙『………』

 

ユーリー『あなたの足は…完治したの??』

 

ロシア『『『…………』』』

 

静まり返る控え室。その中で亜里沙は一言、

 

 

亜里沙『したよ』

 

ユーリー『……』

 

亜里沙『私の心配はもう必要ない。みんなで…またサッカーしよ!』

 

 

 

 

フロイ「エリーが最後にアリサを見たのは、」

 

絵里「日本を発つ前。約2ヶ月前よ」

 

フロイ「怪我が完治したとして…代表レベルのサッカーが本当にできるのかな、」

 

自分たちのすぐ後ろでは亜里沙が体をほぐしている最中だった。やはり信じられない。まるで、誰か別人を見ているような感覚だった

 

 

レヴィン『小学6年でU16の代表選手に選ばれ、名門のクラブチームからも声が掛かるほどの選手でした…しかし、足の難病を患い、日本で3年間、治療の日々を送っていたようです』

 

A『なるほど…では、それほどまでの実力を持つ選手。大いに期待出来ますね…!』

 

 

フィレア「キャプテン。絢瀬亜里沙という選手、聞いた事ありますか?」

 

和葉「……昔、風の噂で聞いたことがある」

 

和葉「亜里沙のサッカーは邪道…そういう人もいるらしい」

 

フィレア「邪道……」

 

 

一方、言葉では言い表せない不安感を、サニデイシャパンの選手たちは抱いていた

 

 

ルビィ「…絢瀬亜里沙」

 

理亞「中3で代表…ってことは、それだけ強いってことなんじゃない?」

 

にこ「だとしてもよ。私たちは亜里沙のサッカーを知らないわ。どんなプレー、技、能力なのか…」

 

だが、現在4-2で日本がリードしている。ここで警戒し過ぎて受け身になれば、流れはすぐに変えられてしまうだろう。

ここは前半と同じく勢いで攻めていくのが最善。日本の選手たちの考えは同じだった

 

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

理亞「行くわよ…ルビィ!」

 

ルビィ「うん!」

 

 

A『さあ、後半戦開始です!!絢瀬亜里沙選手は、いったいどんなプレーを見せてくれるのか!?』

 

 

絵里「……!」バッ

 

 

ルビィ「"スノーハレーション"来るよ!!」

 

理亞「分かってるっっ!!」

 

足を止める必要は無い。絵里が技を発動するよりも速く駆け抜ける、それだけ

 

 

ルビィ「【スプリント──────」グググ!!

 

──────ワープGX】っっ!!」ギュン!

 

その場でしゃがみ、地面を抉る勢いで飛び出したルビィ。理亞はそれと同時に縦へのキラーパスを放つ

 

 

A『鹿角理亞のシュートのようなパスが黒澤ルビィに繋がります!!絢瀬絵里は対応出来ない!!』

 

 

絵里「…っっ!!フロイ!」

 

フロイ「任せて。私が時間を「亜里沙が行きます」

 

絵里、フロイ「「!!」」

 

フォローに行こうとしたフロイよりも先に亜里沙が前へ出た。ドリブルで近づくルビィ相手に、亜里沙はどう対応するのか

 

 

亜里沙「亜里沙が大丈夫だってことを、プレーで証明する」

 

 

A『おおっと!!ここで絢瀬亜里沙が黒澤ルビィの行く手を阻みます!!!』

 

 

ルビィ「病み上がりでも容赦しないよ」ギュン!!

 

亜里沙「……」

 

数十メートルはあるであろう距離を一瞬で詰めるルビィ。目で捉えるのも困難なそのスピード

 

 

ルビィ(抜けたっっ─────────

 

亜里沙は反応出来ていない。すぐ横を駆け抜け、また1人、圧倒て―――"ズルッ"

 

 

 

─────────え」ドサッ!

 

 

日本「「「!?!?!?」」」

 

 

フィレア「な…!?」

 

和葉「………」

 

 

ロシアのゴールを見据えていたはずの目が、気づいた時には―――空を見ていた。

背中には地面の感覚。そして遅れてやってくる衝撃。何が起こったか理解するのに数秒。

 

ルビィは地面に、倒されていた

 

 

理亞「ちょっ…今の何よ??」

 

千歌「抜いたはずなのに…取られた??」

 

状況が理解できないサニデイシャパンの選手たちに対し、ルビィは悔しいという感情よりも先に。今までにも何度か味わったような、謎のデジャブを感じていた

 

 

ルビィ「あの…動きって、善子ちゃん…の?」

 

 

A『ボールを奪った絢瀬亜里沙がドリブルで持ち込みます!!!』

 

 

にこ「…!ヤバっ!!ディフェンス、切り替えよ!!!」

 

ルビィからボールを奪うその実力。只者ではないことがハッキリとした中、真っ先に亜里沙へと勝負を挑んだのは―――

 

 

曜「勝負!!」

 

亜里沙「…渡辺曜さん」

 

自慢の運動神経を活かし、亜里沙がどんなプレーをしてきても対応してみせる。

そんな心意気で立ち塞がった"フィールドのマーメイド"

 

 

亜里沙「―――!!」バッ

 

曜(来た…!!)

 

スピードでの強引な突破ではなく、テクニックで攻めてきた亜里沙。巧みなボールコントロールで曜が釣られるのを誘っている

 

 

曜(にこさんやブラジルの選手たちのプレーに近い…凄い技術だ…)

 

だがにことの実戦的な1対1は何度も積み重ねてきた。どんなフェイントやテクニックがあるかは…対策済み

 

 

曜「貰ったっっ!!」バッ!

 

左足でボールを左外に流すと見せかけての股抜き。にこが何度も曜に仕掛けたプレーだった。全く同じ動き。一度、大きく体を左へ動かすタイミングに合わせ飛びこ―――

 

 

 

───────ギュン!!!!

 

曜「え!?」

 

亜里沙「―――!!」

 

曜(急に―――スピードでっっ!?)

 

突然動きが変わった。惑わせるフェイントドリブルから、スピードで差をつける高速ドリブルへ。

曜は着いていけず、突破を許してしまった

 

 

曜「あ、あの飛び出し…ルビィちゃんみたいだった…」

 

 

その後も、日本の選手たちを次々と躱していく亜里沙

 

 

海未「くっ…なかなかパワーがありますね…亜里沙!」グググ

 

にこ「ちょっ!?ドリブル速!?」

 

まるで選手ごとにプレーを使い分けているようだった。誰も止めることができず、残りのDFは善子のみとなった

 

 

ことり「ヨハネちゃん…!フォローに行くからそれまで耐えて!!」

 

善子「必要無いわ。私がボールを取り返す!」

 

善子「【Deep Resonance】!!」

 

 

A『来ました…!津島善子の共鳴!!』

 

レヴィン『サニデイシャパンの中でも特に厄介な選手です。そう簡単には抜けませんよ』

 

 

相手の動きに共鳴し、突破・回避・守備を仕掛ける善子の切り札。

どんなに相手が天才だったとしても。この技の前では無力だ

 

 

亜里沙「―――!」

 

善子(スピードで来るわね…無駄よ)

 

目で捉え、神経を通り脳を経由、運動神経へと指示を送るその時間は無駄。骨髄反射も誤差が生じる。

共鳴はそれよりも速く、ほとんど相手と同タイミングに近いレベルで相手の動きに合わせる

 

 

亜里沙「―――っっ!!」グッ!

 

前のめりにしゃがみ、クラウチングスタートの要領でスピードを引き出す。ルビィが得意とする動きであり、亜里沙も同じく得意としているようだ。

 

地面を蹴るのと同時に亜里沙は消えた。スピードによる目眩し、だが善子は彼女がどこにいるかは手に取るように分かる。そしてすでに体が対応するために動いている

 

 

善子「上ね…!バレバ─────

 

左右ではなく頭上からの突破。無駄だ。今からでもボールを奪うことは可能。

そう確信しながら、善子が頭上へと顔を上げた時だった

 

 

梨子「……善子ちゃん、違う!!」

 

 

亜里沙「【ドロップアウト】」バチバチ!!

 

善子「──────は?」

 

頭上では、両足でボールを挟み、オーラを迸らせる亜里沙の姿があった。スピードによる突破では無い。最初から…技による強引な、

 

 

―――ドガアァン!!!!

 

善子「きゃっ!?」

 

 

A『絢瀬亜里沙が必殺技を発動…!!"共鳴の堕天使"が敗れました!』

 

 

理亞「なっ…!?なんで私の技を亜里沙が使ってるのよ!?」

 

梨子「技だけじゃない…スピードで翻弄、相手の視界から外れたところを必殺技で突破。プレースタイルも理亞ちゃんとそっくりだった…」

 

理亞「プレースタイルも…」

 

梨子「…亜里沙ちゃんの能力、考えられるのは」

 

 

 

 

 

 

 

和葉「コピーだよ」

 

フラム「コピー!?」

 

和葉「絢瀬亜里沙…相手のプレースタイル、 必殺技をコピーして自分の物にする。まさに、反則級の能力だね」

 

フラム「は、反則にも程があるよ…」

 

 

 

にこ「くっ…コピーって何よ…だからプレースタイルがコロコロと変わってたのね」

 

千歌「果南ちゃん!!気をつけて!!」

 

善子が突破されたことにより、果南と亜里沙の1対1が始まった。

果南は集中する。コピーならば誰かのスタイルと同じシュートを撃ってくるはずだ。対策が出来ない、その場での一瞬の判断が求められる

 

 

亜里沙「―――!!」バッ

 

そして、対する亜里沙は敢えてシンプルな技を選択した

 

 

月「…!!あの技は、」

 

穂乃果「……やばい、果南ちゃん!!!」

 

 

高速、トリッキー、そんなシュートを撃つ必要はない

 

 

亜里沙「っっ!!!!」メキッ!!!

 

 

松浦果南の真正面に放つ。それは絶対に決められるという自信の表れ。そして、

 

 

亜里沙「はあああぁぁっっ!!!!」ドガアァン!!

 

 

日本に"再び"、絶望を与える一撃となった

 

 

 

亜里沙「【ブレイブショット】っっ!!」

 

果南「う、嘘でしょ!?!?」

 

穂乃果の、そして三浦和葉の超強力なシュートをコピーした亜里沙。果南はすぐに神器を召喚するも―――

 

 

果南(こ、このシュートは…)

 

果南「形状変化"アトランティス"!!!!」

 

パワータイプの形状へと変化させ、迫るシュートへと立ち向かう。

もし、三浦和葉の"ブレイブショット"と同じだとすれば、

 

 

果南「はああああっっ!!!!」

 

 

 

 

 

―――ガギイィィィィィィィン!!!!!!

 

 

果南「ぐあぁっ!?」ビリビリ!!

 

日本、イタリア「「「!!!!!!」」」

 

 

松浦果南に────勝ち目はない

 

 

果南(また…弾かれたっっ!!!!)

 

 

 

―――バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

 

A『ゴール!!!なんということでしょう!高坂穂乃果、そして三浦和葉の"ブレイブショット"を放ち、サニデイシャパンのゴールを破りましたぁぁ!!!!』

 

 

ユーリー「凄い…あの頃と同じだよ」

 

ヴィクトール「本当に完治したんだね」

 

絵里「亜里沙…!」

 

 

 

果南「ハァハァ…くそっ…!!あの時と同じだ…!」

 

 

和葉『【ブレイブショット】』ドガアァン!!

 

果南『と、止められ…!?』ガギィィン!!

 

 

イタリア戦、三浦和葉に完膚なきまでに叩きのめされ、手も足も出せなかった果南。

重いシュート、触れないシュートに抗うため…ルビィ相手に特訓を積んできたが、やはりまだ自分には遥か先の世界だったようだ。

 

あの時の絶望感を、まさかイタリア戦以外で再び味わうことになるとは

 

 

亜里沙「"カミウツシ"」

 

果南「…!!」

 

亜里沙「それが私の技です。目で見たものを…映すようにコピーします」

 

果南「カミ…ウツシ、」

 

 

絵里「亜里沙は3年前、"ヘーミテオス"…"半神"と呼ばれた選手。神の瞳は全てを映す」

 

フロイ「…あの時のアリサだね」

 

絵里「ルビィや三浦和葉を超える天才。勝負はまだまだこれからよ」

 

 

 

日本 4-3 ロシア

 

 

 

 





『カミウツシ』特殊技/絢瀬亜里沙
ヘーミテオス(半神)の2つ名の由来となった必殺技です。神の瞳で見たプレー、必殺技をコピーします。詳しいことは次回以降、明らかになっていくと思いますが取り敢えず、新たなチートキャラの爆誕です。




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第3章 156話 「ロシア戦 "神をも穿つ氷結"」


みなさんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
ロシア戦もあと少しとなりました。ついにゴールが見えてきましたね。




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

亜里沙の能力は選手たちのプレー・必殺技のコピー、"カミウツシ"だった。反則級の技に為す術もなく抜かされる日本の選手たち。イタリア戦の記憶が蘇る"触れないシュート"。才能に圧倒されるまま、点差は1となった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

私が亜里沙の才能に気づいたのは、あの子がジュニアクラブチームでサッカーを始めた時だった。

ジュニアとはいえ、選手の何人かはすでに必殺技を習得していた。私もその1人。かなりの時間を使って習得したから…苦労したことを覚えているわ。

 

でも、亜里沙はサッカーを始めてから数日で、メンバー全員の必殺技を覚えてみせた

 

 

ありさ『お姉ちゃんの技は…こんな感じ!』

 

えり『は、ハラショー……』

 

昔から母の料理の作り方をすぐに覚えたり、自転車に簡単に乗れたり、勉強が出来たり。

凄いな、と思うことは多々あった。だが、ここまで露骨に人とは別次元の光景を見せられれば、戸惑う人たちも現れるのは当然。

 

亜里沙の能力には賛否両論あったわ。

他人の努力を盗む、台無しにする。そもそもサッカーが面白いのか?

ほとんどは嫉妬からの意見だったが、亜里沙はよく悩んでいたわ。その度に、私やフロイ、ユーリー、ヴィクトール…仲間たちで亜里沙を支えた

 

 

 

フロイ「アリサ。ナイスシュート!」

 

亜里沙「ありがとうございます!フロイさん!」

 

神は亜里沙に才能を与えたのと同時に、いくつもの試練を与えたんだと思っている。

しかし、今までの試練。そして足の病気をも克服してみせた。

 

ただ与えられただけの才能では無いのだ。自分の力で才を守り抜き、今、この場に立つ彼女はまるで、数々の試練を乗り越えた英雄・ヘラクレス。

 

その才能・努力から私たちは亜里沙を"半神"と呼んだ

 

 

A『凄い選手が現れたぁぁぁ!!!!"カミウツシ"を発動する絢瀬亜里沙はまさに、1人で全世界のプレイヤーの可能性を持つ選手!!』

 

レヴィン『まさに"神写し"。サニデイシャパンの選手たちは、自分たちを相手にするような感覚なのでしょう』

 

 

ダイヤ「幼い頃から飛び出た才能…ですか」

 

英玲奈「ダイヤ…」

 

 

 

鞠莉「まるでルビィみたいね。でも、私たちは絵里たちのようにルビィを支えることが出来なかった」

 

フィレア「それは違うよ。鞠莉」

 

鞠莉「…!」

 

 

 

英玲奈「亜里沙にとっての試練が嫉妬と病気ならば、ルビィの試練は孤立…だったのだろう。だが今はどうだ?全国大会、日本代表」

 

ダイヤ「…!」

 

英玲奈「亜里沙もルビィも、お前たちがいたから今、あの場に立って……」

 

 

 

 

 

ルビィ「やってくれたね…」

 

亜里沙「まだまだ…こんなものじゃないですよ!」

 

ルビィと亜里沙。会うのは始めてだが、似たような境遇を経験した彼女たちは、お互いに共感を覚えたのと同時に―――だからこそ、絶対に負けたくないと心を燃やしていた

 

 

千歌「ど、どうしよう…亜里沙ちゃんを特に警戒しないとこのまま…」

 

梨子「待って千歌ちゃん。それだと私たちが前半のロシアと同じ状況になるわ」

 

亜里沙に意識を向けすぎることにより、ほかの選手への守備が薄くなる。そうなればあちらも容赦しないだろう。

反則級の選手が出てきたからこそ、守備に全体的な視野を持つ必要があるのだ

 

 

 

ピーーッ!!

 

ルビィ「千歌ちゃん…!」パス

 

後半戦開始から数分で2度目のスタートとなったサニデイシャパン。一方、ベンチでは美奈が新たな動きを見せようとしていた

 

 

美奈「希ちゃん」

 

希「はーい」

 

美奈「行くわよ」

 

千歌「まずは…ボールを繋げなきゃ、曜ちゃん!」パス

 

ボールをもらった曜。すぐにチェックに入るのはパーフェクトスパークのキャプテン

 

 

フロイ「ふぅ…アリサが来たからには負けられないね」

 

曜「通させてもらうでありますよ…!!」グッ!

 

"スプリントワープ"の構えに入った曜。

自分が世界トップクラスの選手相手にどこまで戦えるのか…分からないが、やれることを全力で

 

 

理亞「……!?曜っっ!!待って!」

 

曜「【スプリントワ────

 

必殺技の名、そして理亞の声が届くよりも先に。フロイがボールを奪い取っていた

 

 

曜「え…!?」

 

フロイ「だいぶ体が温まってきたよ…!」

 

 

A『フロイ選手、ボールを奪ったぁぁ!!動きに無駄がありません…!』

 

レヴィン『前半とは違って気持ちを切り替えてプレー出来ていますね。亜里沙選手の得点もあるとは思いますが、流石は"気高き銀狼"と呼ばれた選手ですね』

 

 

海未「フロイのあのスピード…突然跳ね上がったように見えましたよ、」

 

千歌「海未さん…フロイさんは多分、"ゾーン"を発動してます」

 

海未「ゾーンをですか…納得です」

 

フロイほどの実力を持つ選手ならば、持っていてもおかしくは無い。だが、発動されて厄介なことには変わりない

 

 

絵里「フロイはスイッチが入るのが相変わらず遅いわね…」

 

亜里沙「フロイさんらしくて亜里沙は好きだよ!」バッ!

 

絵里の横を亜里沙が駆け抜けていく。一方、ゾーンを発動したフロイは"日本のファンタジスタ"との1対1を繰り広げていた

 

 

フロイ「ふぅ─────っっ!!」バッ!!

 

にこ(速っっ…なかなかやるじゃない!!)

 

ドリブルだけでなく、ディフェンスも優秀なにこが防戦一方となっていた。

フロイを突破させない動きをするだけで、隙をつきボールを奪い取るまでの余裕が作れない。それほどまでのステータスの上昇。

 

しかし、防戦一方でも抗える状況の時点で、フロイは驚きを隠せていなかった

 

 

フロイ「ゾーンの私に着いてくるって―――あなた何者??」

 

にこ「宇宙No1プレイヤー、矢澤にこよ!!」ズザーッ!!

 

フロイ「危なっっ!?」バッ!

 

スライディングをすることにより、足の届く範囲を伸ばしてきたにこ。

しかし、流石の反射神経でそのカットを回避したフロイは絶好のチャンス。

 

スライディングをしたということは再び立ち上がり、自分の前に立ち塞がるまでに時間がいる。つまり大きな隙を作ってしまったのだ

 

 

フロイ(このまま突破だ!!)

 

 

しかし、矢澤にこはここで終わらない

 

 

にこ「逃がさないわ―――よっっ!!」ブォン!

 

スライディングの体勢で手を軸にしながら、自分の体を時計の針のように回転。足で突破しようとするフロイのボールを狙った

 

 

フロイ「!?」

 

まさか狙ってくるとは思わず、ドリブルのリズムを崩してしまったフロイ。

そこをすかさず攻めるにこ。ゾーン状況の選手からボールを奪うためには、ここまで揺さぶらなければならないのだ

 

 

フロイ「ふぅ…流石だね。あのブラジル代表と近い実力を持つことはある」

 

にこ「ハァハァ…あんたこそ、すばしっこいわね」

 

戦えてはいるが、ジリ貧の勝負になれば最終的にはスタミナ切れで負ける。

そんな考えが頭をよぎった時、フロイのすぐ横から別の選手の声がした

 

 

亜里沙「フロイさん―――ください」

 

にこ、フロイ「「!!!」」

 

にこ(ちょっ…2人相手は無理よ…!?)

 

亜里沙のフォローだった。

この勝負は諦めて、DFたちのところまで退くべきか…そう考えたのと同時だった

 

 

にこ(…!!このオーラ、)

 

自分の背後から高速でこちらに迫ってくる気配がした。この離れても伝わってくる熱気と刺すようなオーラ、間違いない

 

 

にこ「…助かったわ。ルビィ」

 

 

亜里沙「!?!?」

 

ルビィ「──────っっ!!!!」ギュン!!

 

真っ直ぐ飛び込んでくる赤髪の少女。

目を紅く染め、いや、燃え上がらせ、足に―――オーラを込めている

 

 

亜里沙「ルビィさんっっ!!」バッ

 

ルビィ「亜里沙っっ!!」ゴゴゴゴ!!

 

 

―――ドオン!!!!!!!!

空気を揺らす、太鼓を叩く時のような力強い音が響いた。シュートに近い蹴りでボールを介し、ぶつかる少女2人

 

 

ルビィ「はあぁぁっっ!!!!」メキメキ!!

 

亜里沙(ぐっ…!?つ、強い!?!?)

 

自分と同じぐらいの体格の炎の少女。

間接的だが、彼女の蹴りとぶつかって真っ先に思ったことは―――重い。とてつもなく重い

 

 

亜里沙(力比べじゃ勝負にならない…!!)

 

亜里沙「【カミウツシ】!」バッ

 

ルビィ「───────!!」

 

このまま強引に押し切ろうとした時だった。亜里沙が"カミウツシ"の名を発したのと同時に、2人の周りに"雪"が舞い始めた

 

 

ルビィ「…これって!?」ググググ!

 

亜里沙「【スノーハレーション】!!」キラキラ!

 

ルビィ「ぴぎっ!?」

 

 

A『おおっと!!これは絢瀬絵里

のドリブル技、"スノーハレーション"!!』

 

 

絵里の時のように身構えていなかったため、フラッシュにより視覚を奪われたルビィ。

その隙に突破する亜里沙。自分の近くには日本の選手はいない。シュートを…撃てる

 

 

にこ「ルビィ!!亜里沙が撃つ!!!」

 

ルビィ「!?」ゴゴゴゴ

 

 

亜里沙「これで同点──────です!」バッ

 

ボールと共に飛ぶ。大気を揺らすその巨大なオーラは、シュートの危険度を物語る

 

 

ルビィ「理亞ちゃん!!来て!!」ゴゴゴゴ

 

理亞「!!」

 

数秒後にシュートが放たれる。そうなれば果南は再び、自分が越えられなかった壁に挑むことになる

 

果南「…っっ、やっぱりやるしかないよね」

 

 

亜里沙「【ブレイブショッ────

 

────ドゴッッッッ!!!!!!

 

 

亜里沙「!?!?」

 

果南「!!!!」

 

日本、ロシア「「「!!!!!!」」」

 

 

ルビィ、理亞「「【真クロスファイア】!!」」

 

炎を纏った少女と冷気を纏った少女。

亜里沙の足がボールに撃ち込まれたのと同時に、2人の蹴りがブロックとして立ちはだかった

 

 

A『黒澤ルビィと鹿角理亞のシュートブロック…!!絢瀬亜里沙はこのまま撃つことが出来るのか!?』

 

 

ルビィ「理亞ちゃんっっ!!もっと力入れて!!」ググググ!

 

理亞「入れてるっっ!!」ググググ!

 

"絢瀬亜里沙"との力勝負なら勝てる。先ほどの競り合いでルビィはそう確信していた。

しかし、"ブレイブショット"との力勝負となると…話が変わってくる

 

 

理亞(重っっ!?これが…"ブレイブショット"のオーラ!!)ググググ

 

今にも弾き飛ばされそうなパワー。右足にATPのオーラを流し込み、なんとか抗う理亞

 

 

亜里沙「────!」バッ

 

そんな競り合いの中、亜里沙の逆足が動く

 

 

ルビィ(左足で何を??)ググググ

 

 

逆足で追撃?いや、角度が違う

 

 

亜里沙「お姉ちゃん!!」バキッ!

 

ルビィ、理亞「「!!!!」」

 

理亞(オーバーヘッドの体勢から…)

 

ルビィ(体を捻じ曲げてパス…!!)

 

これ以上の競り合いは負荷がかかりすぎると判断した亜里沙。左足で強引にボールを打ち上げ、上空で待つ絵里へと繋ぐ

 

 

絵里「ナイスよ亜里沙…はあぁぁっっ!!!」

 

金色に染まった風がボールを集まる。そして溢れ出るオーラは絵里を中心に渦を巻き、巨大なハリケーンとして生まれ変わる

 

 

絵里「【ホワイトハリケーンGX】!!」ドガアァン!

 

果南「…!!」

 

全国大会で止められなかった絵里のシュート。自分もあの時より強くなっているが、それは絵里も同じ。極められたそのシュートを前に、果南は冷や汗を流す―――が、

 

 

 

聖良「【アイスエイジ】」

 

 

────ガキィィィィィン!!!!!!

 

絵里「…!」

 

果南「聖良…!!」

 

その冷や汗も絶対零度を前にし、凍りつく

 

 

聖良「ハァハァ…私たちDFを…甘く見ないでくださいね」

 

全オーラを凝縮し、シュートの芯まで凍らせる。まさに、絶対零度の必殺。

空中で凍りつくハリケーンは、今にもゴールを飲み込まんとする巨大な口に見えた

 

 

果南「助かった…ありがとう。聖良」

 

聖良「ゴールを守るのは私たちの役目でもあります…止められて良かったです」

 

しかし、この技は聖良の体力を根こそぎ奪っていく。残り時間が少なくなっていることは…聖良自身、感じ取っていた

 

 

聖良「時間も無いです…善子さん」

 

善子「…!」

 

聖良「一気に決めます」

 

 

 

ボールはサニデイシャパンの手に渡り、ドリブルで持ち込むのは矢澤にこ。

先ほどとは逆の展開。フロイ守備、にこ攻撃の1対1が繰り広げられていた

 

 

フロイ(な、なんなの…このドリブル!?)

 

にこ「こっちが攻撃ならにこの土俵よ!!」

 

にこが自分のディフェンスをしていた時でさえ、その実力に驚いたはずだったのだが…ドリブルは更にその上。

ゾーンを発動している自分が振り回されるなど、生まれて初めての経験だった

 

 

にこ「にこはゾーン状態のツバサ相手に毎日特訓してんのよ…!!相手が悪かったわねっっ!!」

 

フロイ(まずい…!!抜かれ―――

 

にこ「【ファンタスティックキープ改】!!」

 

ブレイクダンス、フリースタイル、フットサル。にこの強さはその手数とテクニック。次の動きが予想出来ず、考えてる間に抜かされる

 

 

にこ「善子…!」パス

 

フロイ「…DFの善子がオーバーラップ!!」

 

にこがボールを渡したのはセンターバックの善子。リベロとしてプレーする彼女は、共鳴を発動しながら強引にロシア陣内へと攻め込んでいく

 

 

ユーリー「ルビィと理亞へのパスコースを塞いで…!!」

 

だが、善子はFWの選手たちのような強力なシュートを撃つことが出来ない。最後に必ずFWの選手にボールを渡すはずだ

 

 

ヴィクトール「このっっ!!」ズザーッ!

 

善子「─────!!」ギュン!

 

 

ラビ「これ以上は…!!」

 

善子「───────っっ!!」ギュン!

 

 

A『素晴らしいドリブルです…!矢澤にこにも引けを取らない動きで1人攻め上がります!!』

 

レヴィン『しかし…ディフェンスが厳しくパスは出せそうにありませんね。津島選手自ら決めに行くことになりそうです』

 

 

フロイ「…なぜ進むんだ」

 

善子のその迷いの無いドリブルに、フロイは逆に不安を抱いた。

まさか、自分のシュートで決められる自信があるのか?情報に無い技…新必殺技があるのか?

 

 

善子「…!」クルッ

 

 

それら予想を―――善子は全て裏切った

 

 

善子「聖良!!」パス

 

ロシア「「「!!!!!!」」」

 

 

A『おおっと!?津島善子がDFの鹿角聖良へと長い距離のバックパス!!!』

 

 

突然、ロシアゴールに背を向けたかと思いきや、せっかく切り開いたロシア陣内を戻るロングパス。

フィールドの中心付近に立つ日本の最終ライン、聖良にボールは渡り…一見、攻撃を立て直すように見える動きだが、

 

 

アレクセイ「ヤバい…!!」

 

ユーリー「鹿角聖良が…どフリー!!」

 

やっと日本の狙いが分かった。だが、流石に気づくのが遅すぎた。

パスが通ったのと同時に、日本の選手たちがいっせいに動き始めた

 

 

梨子「今…!!曜ちゃん、海未さん!!!」

 

曜「【スマッシュアンカー】!!」ドガアァン!

海未「【スピニングフェンス】!!」ビュオォ!

 

絵里「ちょっ!?動けない!?」

 

梨子の指揮に従い、右サイドと左サイドにいた曜と海未が必殺技を発動。絵里の足止めをする。その絵里がマークしていた選手は―――

 

 

理亞「姉様!!来いっっ!!」

 

フロイ「これを…全て狙っていたのか!?」

 

 

聖良「うぅぅるあぁっっ!!!!」パキパキパキ!!

 

善子がオーバーラップしたことにより、聖良の周りにロシアの選手はいない。理亞をフリーにもした。誰にも邪魔されない。撃てる

 

 

聖良「ぐっっ…!!理亞っっ!!!!」ドガァン!

 

"アイスエイジ"。聖良の絶対零度エネルギーをボールに込める。溢れ出たエネルギーは周辺の空気、地表を凍らせ、氷結の世界を作り出す

 

 

フラム「うわぁ…あのシュートだ…」

 

和葉「"触れないシュート"とはまた違う…でも反則級。"触ってはいけないシュート"。捨て身だけど、それだけの価値がある」

 

満身創痍な状態でオーラごと蹴り放つ。

フリーになった理亞の横を流れる聖良のシュート。"Awaken the power"を纏い、最後の一撃を決めるため―――飛ぶ

 

 

理亞「姉様の想いは私が繋ぐっっ!!!」グルグル!

 

理亞「でえぇぇぇりゃぁぁぁ!!!!」ドガアァン!

 

 

理亞、聖良「「【氷結のグングニル】!!!」」

 

雪の結晶が空に咲く。同時に生成されるのは絶対零度を纏った、神の如く最強の槍

 

 

亜里沙「【カミウツシ】…!!」バッ

 

亜里沙「【ラ・フラム】!!」ボオォッ!!

 

 

────ガキィィィィィン!!!!

 

亜里沙「なっ!?」

 

絵里「炎が…凍った、」

 

その槍に触れるもの―――火であろうと、マグマであろうと、芯まで全てを凍らせ、貫く

 

 

ゴラン「【ツーマンデ・ゴラン】!!」

 

 

───ガキィィィィィン!!!!

 

ゴラン「腕が…!?」

 

理亞「…無駄。そのシュートは私と姉様の絆」

 

 

────バシュウゥゥゥゥン!!!!

 

理亞「絶対に…砕けることはないんだから」

 

氷結の欠片が空を舞い、降り注ぐ。

自分たちが止めようとしていたのは…ダイヤモンドよりも硬く、そして美しく輝く、鹿角聖良と鹿角理亞の絆だったのだ

 

 

日本 5-3 ロシア

 

 

 





"氷結のグングニル"強すぎ…触ってはいけないシュートは代償は大きいですが、やはり強力ですね



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第3章 157話 「ロシア戦 "深淵の神殺し"」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
大学のテスト期間で忙しく、週一更新になっています。来週から夏休みなのでそれまではよろしくお願いします。




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

亜里沙の神次元の能力、フロイのゾーンにより、流れは再びロシアに変わると思われた。しかし日本が強引に追加点を決め、それを許さなかった。点差は再び2。後半もまもなく終盤へと差し掛かる

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『さあ、5-3となりましたこの試合。先程、得点に貢献したDF 鹿角聖良に代わり、東條希が入ります』

 

レヴィン『FFI準決勝…サニデイジャパンが想像以上の力を発揮しています。あのロシアから5点を奪うチームは…FFI初めてですからね』

 

 

 

聖良「理亞…あとはお願いします」

 

理亞「うん…!絶対に勝つから」

 

聖良「最後まで、諦めないでくださいね」

 

理亞「…!」

 

その言葉は、今現在勝っている自分たちに対して言う言葉にしては…少し違和感を感じるものだった。

負けているけど諦めないで。ならば違和感など感じない…いや、本当は分かっているんだ

 

 

理亞「"ラストリゾート"…」

 

最後まで諦めるな、聖良の言葉は"ラストリゾート"へ向けられたものだった。

だがすでにこの試合で何度も失敗した。これ以上チームに迷惑はかけられないし、監督…そしてルビィからも、この試合では完成は諦めろという指示が出ていた。

だからこその"氷結のグングニル"での得点だった

 

 

理亞「動き…筋肉…オーラ…全て条件は揃ってる…」

 

和葉『理亞ちゃんは理亞ちゃんを突き進んで』

 

理亞(私に足りないのは…私??)

 

その"足りない私"がなんなのかが…分からない。後はそれだけなのだ。

自分なりにアレンジしろという事なのだろうか。しかし、繊細な技である"ラストリゾート"はあの形でしか成り立たない。アレンジは不可能だ

 

 

ルビィ「理亞ちゃんナイスシュート。次だよ」

 

理亞「わ、分かってる…!」

 

やはり…この試合では無理なのだろうか

 

 

 

亜里沙「2点…2点かぁ…」

 

一方、ロシア代表。

得点が表示されている電光掲示板を見ながら息を切らしている選手がほとんど。

亜里沙が帰還したにもかかわらず、サニデイジャパンは前半と同じく、流れを自分たちに譲らせようしない

 

 

ヴィクトール「厳しくなってきたな…」

 

ユーリー「まだ諦めないで!アリサが戻ってきたんだ…覚えてるでしょ?3年前の約束を」

 

ヴィクトール「またみんなでサッカーしよう…か。ああ、こんなところで約束を終わらせるわけにはいかないな」

 

ロシア代表の選手の多くは亜里沙と絵里の幼馴染。亜里沙の足の病気、日本へ行くことも全て知っている。

だからこそ、こうして2人と共にサッカーができることが夢であり、喜びでもあるのだ

 

 

絵里「時間も少なくなってきたわ。一気に勝負をつける必要があるわ」

 

フロイ「…何か作戦があるみたいだね」

 

絵里「松浦果南を…引きずり下ろすわ」

 

 

 

ピーーッ!!!!

 

試合再開の笛が吹かれた。同時にロシア代表は動き出す

 

 

フロイ「必殺タクティクス!!」

 

ロシア「「「【オーロラヴェール】!!!」」」

 

ロシア代表の選手たちが踊るようにしてオーラが混ぜ合わせる。それにより作られた巨大なオーロラが、日本の選手たちを包み視界を奪う

 

 

千歌「うわっ!?またこの技…!!」

 

 

A『ロシア代表の必殺タクティクスが発動!!そして絢瀬絵里が構えますっっ!!』

 

 

穂乃果「果南ちゃん!来るよ!!」

 

果南「……止める!!」

 

日本の選手たちの行動を封じた今、絵里はシュートを簡単に撃つことができる。

しかし、問題は最後の砦 松浦果南

 

 

絵里「【アイス・ブルーモーメント】」メキッ!

 

果南「【深淵の開眼】!!」

 

絵里がシュートを放ったのと同時に開眼。

全ての時が止まった世界でボールの位置を把握。タイミングを計り──────

 

 

─────グサッッッッ!!!!!!

 

果南「形状変化【スサノオ】」

 

空気をも切る神器で―――刺す

 

 

A『止めたぁぁ!!松浦果南の人間の域を超えた動体視力…素晴らしい力です!!』

 

レヴィン『槍をボールに刺すタイミングも完璧。一瞬の誤差も許されないプレーの中、松浦選手、落ち着いていますね』

 

 

果南「ふぅ…開始と同時に撃ってくるんだから―――ズキッ―――??」

 

 

その後もロシア代表はチャンスを作り、その度に絵里のシュートでゴールを狙い続けた

 

 

絵里「【アイス・ブルーモーメント】!!」

 

果南「はあぁっっ!!!」グサッ!

 

 

絵里「っっ!!」ドガアァン!

 

果南「せいっっ!!!」グサッ!

 

何度撃たれても、何度撃っても日本のゴールが揺れることは無かった。

果南が高速シュートに食らいつき、ロシアの追加点を許さない。

日本のDFたちは果南の負担を減らしたい気持ちはあるものの、絵里が長距離からシュートを放つため、ディフェンスする前に撃たれてしまう

 

 

A『松浦果南譲らない…!!もう既に何本のシュートを止めたのでしょうか!?』

 

 

善子「焦れったいわね…もっと攻めてきなさいよ!!」

 

希「善子ちゃん落ち着き。冷静さを失わせて、上がってきたDFの隙をつこうとしてるのかもしれんよ?」

 

善子「た、確かにそうね…」

 

にこ「でも…同じシュートを何回も…絵里にしては賢くないプレーね」

 

 

 

フラム「和葉さん。絢瀬絵里が何度も同じシュートを撃っている理由って、」

 

和葉「賭けに近いけど…松浦果南を崩すための準備だよ」

 

フラム「準備??」

 

和葉「そろそろ…答えが出るよ」

 

 

 

曜「あっ…!?」

 

フロイ「─────!!」ズザーッ!

 

 

A『フロイ選手がボールを奪った!!サニデイジャパンはロシアの厳しいディフェンスにより、シュートまでたどり着けません!』

 

レヴィン『フロイ選手や亜里沙選手が攻撃では無く守備に集中し…ボールを全て絵里選手に渡していますね』

 

 

フロイ「エリー!」パス

 

絵里「──────っっ!!」グワーッ!

 

一度止めて蹴る必要は無い。絵里はボールが自分の元へと飛んで来る間にシュートの構えに入る

 

 

梨子「果南さん…!ダイレクト来ます!!」

 

果南「任せて。このシュートも止める」

 

タイミングをずらしてきたことを警告されるも、果南には止められる自信があった。

もう既に高速シュートを何十本も止め、開眼も簡単に、より繊細にコントロールできるようになっている。

このまま同じことを繰り返せば―――試合終了まで、

 

 

絵里「【アイス・ブルー──────

 

果南「【深淵の開が──────

 

 

 

─────ズギッッッ!!!!!!

 

果南「いだっっ!?!?!?」

 

日本「「「!?!?!?」」」

 

 

穂乃果「果南ちゃん…!?」

 

美奈「……まずいわね」

 

 

それは―――突然襲いかかった

 

 

果南(目が…痛い!?いや、その前にシュート!!)

 

果南「【深淵の開眼】っっ!!!!」

 

謎の激痛を堪え、強引に開眼する果南。

目に映る全てが停止しており、ボールも例外ではなく。そのまま解除のタイミングに合わせ、槍で突き刺す

 

 

果南「でりゃあぁぁぁっっ!!!!」グサッ!!

 

叫ぶことにより、痛みを気合いでかき消す。

シュートは止めることが出来たが、果南の異常事態を察した日本の選手たちは果南の元へと向かう

 

 

善子「か、果南…痛いってどうしたのよ??」

 

果南「ハァハァ…善子…ごめん、ちょっと目が」

 

善子は目にゴミが入ったのだろうかと最初は考えていたが、そんな些細なことではないとすぐに分かることになる。

手で激痛が走る目を抑えていた果南だったが、その手を退かしたのと同時に…選手たちは言葉を失った

 

 

善子「果南……その目……」

 

果南の目は誰が見ても分かるほどに、酷く充血していた

 

 

にこ「ちょっ…これってヤバいんじゃないの!?」

 

 

A『おおっと?サニデイジャパンにアクシデントでしょうか…松浦果南の元に主審が駆け寄ります』

 

レヴィン『目を押さえていますね。目に…何か異常があったのがかもしれません』

 

 

鞠莉「果南……無茶し過ぎよ…」

 

フラム「あれが、和葉さんの言っていた…」

 

和葉「…恐らく"深淵の開眼"は動体視力を極限まで引き上げる技。そんな技を何十発も発動し続ければ…目への負荷は計り知れない」

 

フラム「目が悲鳴をあげたんですね」

 

和葉「…これ以上は危険だ。果南」

 

 

 

 

ダイヤ「監督…!果南さんを交代させるべきです!!」

 

美奈「………」

 

穂乃果「ダイヤちゃん…でも、」

 

果南を下げるとどうなるのか。そもそも、果南をロシア戦のGKに選んだ理由は対"アイス・ブルーモーメント"。

高速シュートを止められるのは果南だけ。もし穂乃果に交代すれば、高速シュートに穂乃果が対応できず、一気に戦況が変わる可能性が高いのだ

 

 

ダイヤ「しかし…このままでは果南さんの「大丈夫っっ!!」

 

ダイヤ「…!果南さん……」

 

フィールドから果南の声が聞こえた。

赤く充血した目、冷や汗が止まらない顔…そんな厳しい状態でも、果南の声には力が込められていた

 

 

果南「みんなが決めてくれた得点…私が…私が守らなきゃ!!!」

 

 

真姫「勝つなら尚更、穂乃果に変えた方がいいわ。あのままプレーを続けさせたら…」

 

美奈「………穂乃果ちゃん。準備して」

 

穂乃果「美奈監督…!!」

 

美奈「分かってるわ。穂乃果ちゃんを出すのは…相手の思う壺。でも、果南ちゃんにこれ以上無茶をさせるわけにはいかない」

 

美奈「最悪、果南ちゃんの将来に関わるわ」

 

 

ボールは果南が持っている。サニデイジャパンの攻撃だが、亜里沙とフロイを中心に強化されたディフェンス陣を突破するのはかなり厳しい。

何度もボールを奪われ、結果的に絵里にシュートを何発も撃たせてしまい、果南を追い詰める形になってしまった

 

 

梨子「亜里沙ちゃん温存も理由の1つかも…」

 

にこ「"ブレイブショット"も連発できるような技じゃないからね…あの子をどうにかしないと、すぐに追いつかれるわよ」

 

ルビィ「亜里沙はルビィに任せてください」

 

梨子、にこ「「…!!」」

 

ルビィ「絶対に抑えます」

 

そこにか弱い小動物の姿は無かった。

ただ勝つために、マグマのような血を煮えたぎらせ、目をギラギラと輝かせるその姿はまさに猛獣。

サッカーをする時にしか見ることが出来ない黒澤ルビィ。エースストライカーの威圧であった

 

 

にこ「まあ、ルビィに任せておけば問題は無いわね」

 

梨子「私たちは前線にボールを繋げないと…希さん!こっちです!」

 

ボールを貰った梨子は"神のタクトFI"を発動する。強化されたディフェンスを突破するためには、梨子の指揮が必要不可欠

 

 

梨子「善子ちゃん!オーバーラップで千歌ちゃんたちのフォローを!」ビシッ

 

善子「承知…!」

 

梨子「曜ちゃんと海未さんもコートの中心へ!細かいパスで崩してください!!」

 

曜、海未「「はい!!」」

 

 

A『さあ…!サニデイジャパンのパスが繋がり始めました!!』

 

レヴィン『"旋律の指揮者"桜内選手の指揮により、チームとしてのステータスが高まっていますね。日本とスペインの試合の時もそうでしたが、チームが1つの生き物のように…こうなったら手強いですよ』

 

 

シモン「ここだ!!」バッ

 

海未「善子…!」パス

 

ユーリー「貰った…!」バッ

 

善子「インターセプトばればれよ。千歌!」パス

 

ユーリー(ダイレクト…!?)

 

 

 

フィレア「スペイン戦で見せたトライアングルパスか…」

 

和葉「果南にこれ以上の負担をかけたくないという強い意志が、サニデイジャパンの気持ちをより強固にしているね」

 

 

A『ボールを持つ高海千歌の前には日本のFWコンビ、鹿角理亞と黒澤ルビィがいます!!果たしてどちらに繋げるのか!?』

 

 

千歌「………」

 

千歌「どっちも!」パス

 

ルビィ、理亞「「!!」」

 

横に並んで走るルビィと理亞の間の上空を飛ぶようにボールを蹴った千歌。

狙いを瞬時に把握したダブルストライカーは同時に飛ぶ

 

 

ルビィ「"Awaken the Fire"」

 

理亞「"Awaken the Beast"」

 

 

2つを────────ひとつに

 

 

ルビィ、理亞「「【真クロスファイア】!!」」

 

メキメキメキッッ!!!!

進化を重ねた2人の蹴りはボールを歪め、悲鳴が迸るオーラへと変わる。

歯をくいしばり、全エネルギーをルビィは左足に。理亞は右足に集める。それが―――

 

 

理亞「…!!」

 

―――理亞の探していた答えを見つけるきっかけとなった

 

 

ルビィ、理亞「「でえりゃあぁぁぁ!!!」」ドガアァン!

 

 

A『出たあぁぁぁ!!!黒澤ルビィと鹿角理亞の"クロスファイア"!!!炎と氷のシュートがロシアゴールに迫ります!!!』

 

 

絵里「ゴラン…!」

 

ゴラン「アリサのためにも…チームのためにも…これ以上の失点は許されないのよ!!!」

 

"ツーマンデ・ゴラン"の巨大なオーラを右腕に集める。オーラがバチバチ!!と音を立てながら溢れ出す。大きく広がる力を1箇所に集めるとどうなるのか―――

 

 

ゴラン「【ギガインパクト】っっ!!!!」

 

―――メキッッッッッッ!!!!!!

圧倒的な瞬間火力が生まれる

 

 

ルビィ「!?」

 

日本、ロシア「「「!!!!!!」」」

 

 

果南「あの…"クロスファイア"を、」

 

穂乃果「殴り飛ばした…!?」

 

 

A『止めたぁぁ!!ゴラン選手の新必殺技"ギガインパクト"は凄まじい破壊力…!あの"クロスファイア"をワンパンチだあぁ!!!!』

 

 

亜里沙「ゴランさん…!」

 

ゴラン「アリサまで繋いで!!」

 

咄嗟の判断で新たな…しかも強力な必殺技を完成させるとは。一部始終を見ていた亜里沙は思う。なんて強いんだ…なんて頼れる仲間たちなんだ、と

 

 

千歌「ハァハァ…新必殺技なんて聞いてないよ…理亞ちゃん、戻ろう!」

 

理亞「………」

 

千歌「理亞、ちゃん?」

 

理亞「分かった」

 

千歌「え?」

 

理亞「分かった…私に足りないもの…!」

 

 

─────その時だった。

歓声が何倍も跳ね上がり、空気を揺らし始めたのだ。

 

そして、その歓声の原因は間違いなく

 

 

千歌「る、ルビィちゃん…」

 

 

 

 

 

 

ルビィ「………」ゴゴゴゴ

 

亜里沙「………」

 

 

ルビィと亜里沙の対決だった

 

 

ルビィ「亜里沙……ルビィは絶対に勝つ」ゴゴゴゴ

 

亜里沙(このオーラ…さっきよりも何倍も…)

 

ルビィ「覚悟してよ…歯止めはもう…とっくに忘れたからね!!!」ゴゴゴゴ

 

 

 

日本 5-3 ロシア

 

 

 

 





ロシア戦、もう少しお付き合いください。



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第3章 158話 「ロシア戦 "ルビィVS亜里沙"」

皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
今回は少し短めです




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

サニデイジャパンから点を得るためにも、果南をゴールから引きずり下ろそうと考えたロシア代表。

絵里が"アイス・ブルーモーメント"を連発し、結果的に果南の目がオーバーヒート。確実に追い詰めていく。

対する日本は今までの試合の戦いを再現し攻めるも、GKゴランの新必殺技に阻まれる。

そして始まったルビィと亜里沙の1対1。両チームのエースストライカーがぶつかる

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『"紅き流星"黒澤ルビィ…!!"ヘーミテオス"綾瀬亜里沙…!!激しい戦いが続いています!!!!』

 

 

ルビィ「───────っっ!!!!」

 

亜里沙「────────!!!!」

 

"カミウツシ"でさまざまな技を繰り出す亜里沙に対し、ルビィはシンプルに速く避け・追いつき・薙ぎ払い、そして仕掛ける

 

 

亜里沙「【ファンタスティックキープ】!!」

 

 

A『これは…!!矢澤にこの反則級ドリブル!!それを黒澤ルビィは―――

 

 

ルビィ「────!」バッバッバッ!

 

亜里沙(嘘でしょ!?)

 

 

A『全て受けきっていますっっ!!綾瀬亜里沙は抜かすことが出来ません!!!矢澤にこのようなパフォーマンスが引き出せないのか!?』

 

 

亜里沙「これなら…どうですか!?」ギュン!

 

ルビィ「消えた「【ドロップ―――

 

頭上から声が聞こえた。見上げた時にはすでに亜里沙がオーラを溜めきり、地面にボールを叩きつけようとしていた

 

 

―――アウト】っっ!!」ブォン!!

 

ルビィ「っっ!!」バギィン!

 

亜里沙(足でブロック!?)

 

どんな反射神経をしているのか?亜里沙は片足を垂直に伸ばし、ボールを足の裏で受け止めるルビィを見て思う。

見上げたのとほぼ同時に足を上げてきた。まるでそう来ると分かっていたようだ

 

 

亜里沙「やっぱり簡単には勝てませんね…」

 

亜里沙「【風神の舞】!!」ビュオォオ!!

 

ルビィを暴風の中に閉じ込め、そのまま吹き飛ばす海未のドリブル技。

高速移動で翻弄し、ルビィが自分の姿を見失ったところを―――

 

 

亜里沙(いない!?)

 

先ほどまでルビィがいた場所には、誰もいなかった。立っているだけで精一杯なはずのこの暴風の中…どこへ「こっちだよ」

 

亜里沙(後ろ!?!?)ギュン!!

 

背後を確認する前に逃げた。

その首を動かす間でボールを奪われると思ったからだ。

 

このようにルビィを突破出来ない状況が数分続いてる。時間が無い中で次第に焦りが見え始め、自分が追い詰められていることを実感していた

 

 

亜里沙「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

ルビィ「………」ゴゴゴゴ

 

 

フィレア「…ルビィ、すごい迫力だね」

 

和葉「我を忘れたプレーではなく、完璧に力と負荷をコントロールしてるね。その証拠に、ルビィは全く息切れをしていない」

 

 

汗を拭う亜里沙。そして、ルビィを何故抜くことが出来ないか考える。

"カミウツシ"で相手選手が一番苦手とする動きをコピーし、流れを自分の物にする。それが亜里沙の戦い方だ。

にこにはスピードで圧倒する海未のプレー。

海未には力押しのスペイン代表のプレー。

理亞やルビィには共鳴による善子のプレー。

 

サニデイジャパンを研究したからこそ、選手一人ひとりの弱点が分かる。

それなのに、ルビィの弱点である共鳴を仕掛けても、優勢にはなるが抜ける気がしなかった。完璧に食らいついてくるのだ

 

 

和葉「……亜里沙の"カミウツシ"は、要するに飲み込みの速さだよ」

 

フラム「飲み込み?」

 

和葉「物覚えが早い人間はいくらでもいる。亜里沙はその中でも…極めて優秀なんだ」

 

鞠莉「ルビィはそこから…弱点に気づいたってわけね」

 

飲み込みが異常に早いのが"カミウツシ"。コピーの正体。だからこそ―――鮮明に浮かび上がってくる弱点

 

 

ルビィ「"カミウツシ"には限界がある」ゴゴゴゴ

 

亜里沙「……」

 

ルビィ「自強化技じゃないことは、最初抜かされた時に分かった。善子ちゃんの共鳴と同じタイプの技だからね」ゴゴゴゴ

 

ルビィ「"自分の実力以上の技はコピーできない"。違う?」ゴゴゴゴ

 

亜里沙「……その通りです」

 

"ブレイブショット"や"Deep Resonance"をコピーできる時点で、亜里沙の実力が世界レベルであることには変わりない。

しかし、全力のルビィに勝つためには亜里沙も同じステージへと進まなければならない。つまり、"ATP"をコピーしなければ亜里沙には勝ち目がないのだ。

 

しかし、今の亜里沙に"ATP"をコピーするほどの力は無い

 

 

ルビィ「ルビィが完治していない状態で勝負したら…負けていたかもしれない…逆に、」ゴゴゴゴ

 

ルビィ「亜里沙が完治していれば、もっと厳しい勝負になっていたよ」ゴゴゴゴ

 

 

亜里沙「…!!」

 

ロシア「「「!?!?」」」

 

ルビィの言葉に耳を疑った。

"亜里沙が完治していれば"と、まるで今の彼女の足は、病気が治りきっていない状態だと言っているように聞こえた

 

 

絵里「何を言っているの…ルビィ、亜里沙は完治したって、」

 

ルビィ「ルビィには分かります。同じ経験をしてきたから、足を気にしている動きがバレバレ」ゴゴゴゴ

 

亜里沙は思い出す。

全国高校女子サッカー大会の決勝戦。半暴走状態の"ATP"を発動し、結果代表離脱を余儀なくされたルビィの姿。

そして代表に合流した後も、完治していない右足を庇い、自分の本来の力を出し切れていないルビィの姿。

 

 

まるで────自分と同じだった

 

 

 

ルビィ「でも…勝負の世界に情けはないよ」ボオッッ!!

 

亜里沙「…!!(オーラが更に上がった…)」

 

炎の勢いが高まる音が響く。まだ上があるのか…ここまで強豪たちを薙ぎ倒し、激進を続けてきたサニデイジャパンの―――エースストライカーの力は自分の想像を遥かに超え―――

 

 

ルビィ「【イグナイトスティール】」

 

亜里沙「―――」

 

私は…他を圧倒するような救世主などでは無い

 

 

A『黒澤ルビィがボールを取り返したっっ!!ロシアは再び失点の危機だぁ!!』

 

 

梨子「ルビィちゃん…!そのまま強引に!!」

 

ルビィ「そのつもりですっっ!!」ゴゴゴゴ

 

 

フロイ「アリサ、話は後!!今はルビィを…!!」

 

亜里沙「は…はい!」

 

ルビィに"ラストリゾート"を撃たせることは即ち、死を意味する。

3点差は時間的にも敗北は確実。シュートは撃たせてもいい。"ラストリゾート"でなければゴランが絶対に止めてくれる

 

 

ルビィ「―――っっ!!」ギュンギュン!

 

ラビ「は、速すぎる…!?」

 

ルビィ「―――!!」ズバッ!

 

アレクセイ(フェイント!?)ズルッ

 

 

A『速い!!そして上手い!!ロシア代表は誰も黒澤ルビィを止めることが出来ない!!』

 

レヴィン『これがルビィ選手の本来の全力だとすれば…世界屈指のプレイヤーと言っても過言ではありません。彼女の炎を見ていると…こちらまで熱くなってきますね』

 

 

ルビィ(マンツーマンで来なくなった…?)

 

数人の選手を抜かしたところで、ロシア代表の動きに変化があった。

すぐにルビィとの距離を詰めずに、一定の距離を保ちながら守りを固める

 

 

ルビィ「"ラストリゾート"を撃たせない気か……なら」バッ!

 

左足に"ATP"のオーラを集めながらドリブルを再開する

 

 

ユーリー「それ以上行かせちゃダメっっ!!至近距離でシュートを撃つつもりよ!!」

 

ロシア「「「!!!!」」」

 

その場でオーラを集めてシュートを放つのでは無く。ドリブルし、同時にオーラを集め、ゴールに近づいたところで撃ち放つ。

 

自分たちの作戦は、ルビィには全くの無意味だったということが―――ハッキリとした

 

 

海未「ルビィ、1人で突っ込むのは無茶です!」

 

にこ「好きにやらせなさい」

 

海未「にこ…!しかし…」

 

にこ「少しでも体力回復しなさい海未。あんたかなりバテてきてるわよ」

 

海未「…!!」

 

にこ「それに、今のルビィを止めることは…私たちでも出来ないわ」

 

 

 

理亞「ルビィ…!!私にシュートを撃たせて!」

 

ルビィ「…!」ゴゴゴゴ

 

ドリブルを続けるルビィの横を走る理亞。

限られた時間の中で理亞は必死に訴える

 

 

理亞「私に足りないものを見つけた…!!"ラストリゾート"をもう1度「理亞ちゃん」

 

理亞「…!!」

 

ルビィ「言ったよね。この試合中は諦めてって」ゴゴゴゴ

 

理亞「でも絶対に…」

 

ルビィ「今は勝つことが目標だよ。邪魔しないで」ビュン!!

 

理亞「ルビィっっ!!」

 

 

A『黒澤ルビィがロシアディフェンス陣に飛び込んでいく!!!』

 

 

―――ルビィの態度に理亞は違和感を覚えた。あの勝利への執着…まるで初めて会った頃のようだ。

焦っている?足掻いている?

 

 

ルビィ『ルビィが持てる最高の力ってことだよ。それが通用しなくなればルビィはエースストライカーとして、代表として失格』

 

ルビィ『理亞ちゃんが10番になる日も近いかもね』

 

ルビィは自身の限界を感じ、私に"ラストリゾート"を託そうとしていた。それが今になって何故…何故再びこだわるのか、弱気になっていた人が何故そこまで強気になれるのか

 

 

理亞(前のルビィに…戻ってるの??)

 

 

 

ルビィ「まだまだぁぁっっ!!!!」ギュンギュン!

 

絵里「ハァハァ…っっ!!」

 

スピードで翻弄するだけでは無い。パワープレー、テクニック。持てる全てのサッカーで相手を圧倒する

 

 

絵里(この勢い…全国大会の時の…!?)

 

ルビィ「ここっ!!」ギュン!

 

絵里「ちょっ!?」

 

 

A『これで8人目…!!!もうゴールは目の前です!!』

 

レヴィン『言葉に出来ませんね。これが黒澤ルビィ選手の本来の実力ですか…』

 

 

ルビィ「――――――っっ!!」バッ

 

ドリブル中に溜め切ったオーラ。

そのままシュートの構えに入り、ペナルティエリア内で蹴り放つ

 

 

ルビィ「【Awaken the Fire】っっ!!」

 

ルビィ「でぇぇぇえりゃあぁ―――バギッッ!!

 

ルビィ「!!!!」

 

亜里沙「ハァハァ…【カミウツシ】」ググググ

 

亜里沙「【マキシマムファイア】!!」

 

 

A『綾瀬亜里沙が追い付いたぁぁ!!黒澤ダイヤのシュートをコピーし、"ATF"とぶつかります!!!!』

 

 

ルビィ「コピーしても無駄っっ!!!」ググググ!

 

亜里沙(お、重い…!?!?)ズンッ!!

 

ルビィ「勝つのは───ルビィだあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

―――ドガアァァン!!!!

 

亜里沙「きゃっ!?!?」

 

強引に押し切ったルビィ。亜里沙を吹き飛ばし、ボールはゴールへと向かう。しかし、

 

 

ゴラン「助かった…亜里沙!!」

 

ゴラン「───────っっ!!!」ズンッッ!!

 

亜里沙がルビィのシュートをブロックしている間に全オーラを右腕に集中させていたゴラン。

"ラストリゾート"でないのならば、天に風穴を開けるがの如く、強力な一撃で勝負できる

 

 

ゴラン「【ギガインパクト】!!!!」ドガアァン!

 

ルビィ「…!!!」

 

 

A『止めたぁぁ!!綾瀬亜里沙のシュートブロックとゴラン選手の必殺技により、黒澤ルビィのシュートは決まりません!!!!』

 

 

曜「"Awaken the Fire"でも破れないなんて…」

 

梨子「曜ちゃん…!相手の攻撃が来るよ!」

 

曜「う、うん!」

 

 

ルビィ「ハァハァ……」

 

理亞「ルビィ、あんた…少し落ちつ「戻るよ」

 

理亞「……」

 

目を合わせてさえくれない。やはり、今のルビィは勝利に囚われている

 

 

善子(……ルビィのやつ、)

 

 

 

 

一方、亜里沙はロシアの攻撃であるにもかかわらず、倒れた状態からなかなか起き上がれずにいた

 

 

亜里沙「…ハァハァ、」

 

それは完治していない足が痛むのが原因では無く、自分を見下ろすGK ゴランの視線。見上げた瞬間、目が合った瞬間に何を言われるのか。

 

怒鳴られるだろうか。飽きられるだろうか。軽蔑されるだろうか。

自分の病気の完治を偽り、まるで遅れてやってきたヒーロー気取り。チームを、仲間を騙していたのだ

 

 

亜里沙「………」

 

ゴラン「………」

 

 

そんな私の──────

 

 

ゴラン「アリサ」

 

ゴラン「エリーたちが苦戦している。すぐに攻撃に参加するんだ」

 

亜里沙「…!!」

 

 

─────背中を、それでも押し続ける

 

 

亜里沙「…お、怒らないんですか?」

 

ゴラン「多分、怒っている」

 

亜里沙「…!」

 

ゴラン「チーム全員がアリサに怒っている。それはアリサを身を心配しての怒りだ。そこまで無茶をするとは…相変わらずだ」

 

亜里沙「……」

 

ゴラン「だが、それ以上に理解している。そんな状態でも…アリサが私たちの前に戻って来た覚悟を」

 

亜里沙「…!!」

 

亜里沙が完治していないのにも関わらず、この試合に出場した理由──────それは、別れだった

 

 

ゴラン「私たちは3年生。お前たちと高校でサッカーができるのは…これが最初で最後だ」

 

ゴラン「だからアリサは無茶をしてでも試合に出たかった。この意志を…覚悟を、私たちは全力で支える」

 

亜里沙「ゴラン…さん」

 

ゴラン「行け…!アリサ。私たちとのサッカーを終わらせるのは、この試合じゃない!!」

 

亜里沙「はい!!」

 

 

A『綾瀬亜里沙が立ち上がりました!!ロシア代表、このまま攻め込むことができるのか!?』

 

 

ーどうして、ここまで優しいのだろう。

 

 

にこ「さあ…!抜けるもんなら抜いてみなさい!!」

 

ユーリー「…ハァハァ、」

 

 

―どうして、時間はこれほどまでに残酷なのだろう。

 

 

千歌「私たちも守備をしよう…!」

 

善子「頼むわよ。ここを抑えれば勝利は目の前」

 

 

―どうして、こんなにも、泣きそうなのだろうか

 

 

絵里『引越し…?どこへ………日本!!??じゃあ、みんなとのサッカーは!!??』

 

絵里『大好きなみんなと、別れろって言うの!!??』

 

全部知ってた。私がお姉ちゃんを大切な仲間たちから引き離してしまったこと。

私のワガママを全て聞いてもらっていた

 

 

A『さあ…!!綾瀬絵里、追い詰められた!』

 

 

絵里「完全に囲まれたわね…「お姉ちゃん!!」

 

絵里「…!亜里沙!!」パス

 

どんなに私がワガママでも。お姉ちゃんたちは信じて私を支え、助けてくれる。

これが最後の試合になるかもしれない。そんな中でも…3年前のキラキラしていた、あの頃のサッカーが蘇る。鮮明に。色褪せることなく

 

 

 

 

─────────プチン

 

 

 

そして、何かが切れたような音がした

 

 

和葉「……あのオーラ、」

 

フィレア「このタイミングで来ますか??」

 

 

私の目の前には"紅き流星"

 

 

ルビィ「……」

 

亜里沙「…今度の私は、ちょっと強いですよ?」

 

絶対に負けられない。

仲間との絆がこの力を呼び覚ました

 

 

 

亜里沙─────"ゾーン"発動。

 

次回、破壊の牙

 

 

 

日本 5-3 ロシア

 

 

 




"ゾーン"のバーゲンセール…いや、世界の代表選手たちですから。"ゾーン"を持つ選手はたくさんいますね。

あと1、2話で決着予定です



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第3章 159話 「ロシア戦 "破壊の牙"」

皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
暑くてヤバいですね☆




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

亜里沙の限界を見抜き、実力で圧倒するルビィ。しかし、その勝利に執着した言動・行動にサニデイジャパンの選手たちは違和感を抱いていた。

一方、亜里沙は隠していた病気の未完治が発覚。仲間たちの反応に動揺を隠せなかったが、ロシア代表は亜里沙の覚悟を受け入れる。そして、さまざまな想いが爆発。亜里沙はゾーンを発動したのである

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

ー ロシア戦 前日 ー

 

 

 

ルビィ「…お客さん?」

 

暑さのピークを過ぎた夕方前のことだった。

突然プレーを中断させられ、要件を聞いてそのままその言葉をルビィは繰り返していた

 

 

真姫「ルビィの知り合いらしいの。どうしても話したいことがあるみたいだから、行ってきなさい」

 

ルビィ「……」

 

 

午前中から休憩時間以外は足を動かし続けていたルビィ。ちょうど少し休もうかと思っていたところだった。

 

真姫に言うルビィの知り合いが待つ場所はすぐ近く。エメラルドに光り輝く海の見える砂浜だった。

その場所にたどり着くと、1人の少女が海を背に、自分のことを静かに待っていた

 

 

ルビィ「…待った?」

 

「い、いえ…大事な時期にお時間をありがとうございます…」

 

 

「黒澤先輩」

 

ルビィのことを先輩と呼ぶその少女。

黒澤ルビィがジュニアチームでサッカーをしていた時の後輩だった

 

 

ルビィ「最後に会ったのは…ルビィが小6。4年ぶりだね」

 

後輩「はい…中学でもサッカー部に入ったのですが、その時には黒澤先輩はすでに」

 

ルビィ「……」

 

小学生時代、天性の才能とも呼べるルビィのプレーに上級生・同級生は嫉妬した。

まとわりつき、日に日にエスカレートした嫌がらせはジュニアチームだけに収まらず。ルビィの通う小学校でもそれは日常的に行われていた

 

 

後輩「本当は…私は先輩に会う資格などないんです…」

 

ルビィが受けていた虐めに気づいたダイヤ、果南、鞠莉はルビィを助けようと行動する。

しかしルビィはそこから次第に強くなることに目的を集中し、勝利に依存していくようになった。

 

そして、中学へと入学したルビィは孤独に高めた圧倒的なサッカーでその名を広げた。もう弱い自分はいない。ダイヤたちの通う浦の星女学院へ自分も行き、共に最強を目指すんだ…そう、思っていた

 

 

後輩「でも…ずっとずっと、謝りたかったんです。私たち怖くて…あの時、何も出来なくて」

 

 

ルビィ『まだだよ…まだ足りない…もっと強くならないと!!』

 

同級生『ねぇねぇ、聞いた?あの黒澤ダイヤさんの妹、ルビィちゃん、お姉さん達に媚び売って試合にたくさん出てたらしいよ』ヒソヒソ

 

同級生『え!?そうなの…ルビィちゃんってそういう事するんだね』ヒソヒソ

 

 

後輩『(ルビィさん…ごめんなさい)』

 

 

上級生や同級生とは違い、後輩たちからはルビィは憧れの存在だった。しかし、それを本人に伝えることは無く。気づいた時には黒澤ルビィはサッカーをやめていた

 

 

後輩「今年の全国大会、廃部になったはずの浦の星女学院サッカー部が本戦に出場したと聞き、私はテレビで試合を観戦しました」

 

 

そこで言葉を失った。サッカー界から去ったはずの先輩、黒澤ルビィが出場していたのだから

 

 

後輩「それから…毎試合、先輩の姿を目に焼き付けるように観戦しました。"ATP"を発動した時は、噂としてしか聞いたことが無かった技だったので…とても、驚きました」

 

驚いたのと同時に、罪悪感で押し潰れそうになったと続けた。

ルビィのイジメを見て見ぬふりし、全国大会決勝戦での負傷・代表離脱も3年間のブランクがあったから。そのブランク期間を作ったのは…あの時の自分たち

 

 

後輩「ごめんなさいっっ!!」

 

ルビィ「………」

 

2人しかいない浜辺が夕陽の色に染まり始める

 

 

後輩「今更…許してもらおうなんて思っていません。ただ、私たち後輩は黒澤先輩を応援しています…」

 

ルビィ「…うん」

 

後輩「それを…伝えたかったんです」

 

ルビィ「……あのね」

 

少し考えるように俯き、数秒間、沈黙が流れる砂浜に再びルビィの声が聞こえ始めた

 

 

ルビィ「あの時のルビィは弱かったの」

 

後輩「そ、そんなこと…」

 

ルビィ「後輩たちの本当の気持ちに気づけなかったのも、途中でサッカーを諦めたのも…ルビィが弱かったから」

 

ルビィ「でも、もう弱いなんて言ってられない。日本代表のエースストライカーとして、もう誰にも負けない」

 

後輩「先輩…」

 

ルビィ「約束するね。もうルビィは絶対に負けないよ」

 

 

 

――――――――――――

――――――

――

 

 

 

A『黒澤ルビィが綾瀬亜里沙に押されています!!』

 

 

ルビィ「このっっっ─────!?」ギュン!!

 

亜里沙「──────」ギュンギュン!!!

 

先ほどまでとはスピードが段違い。守ることしか出来ていない

 

 

英玲奈「絢瀬絵里の妹のゾーン…強力だな」

 

ツバサ「ルビィ…無茶し過ぎよ」

 

 

 

鞠莉「和葉の話から考えると、ゾーン発動によって亜里沙の実力が上がった…」

 

フラム「じゃあ…コピー出来なかった技もコピー出来るようになったってこと??"ATP"とか!?」

 

和葉「いや、亜里沙は"ATP"はコピーしないよ」

 

「「「!!!!」」」

 

フラム「な、なんで…強力な技なのに?」

 

和葉「強力すぎるが故に…リスクが大きすぎるんだ」

 

"カミウツシ"は確かにさまざまな必殺技、プレースタイルをコピー出来る技だ。

しかし、強力な技であればあるほど、負担が大きくなるのは当然

 

 

和葉「"ATP"はスタミナの消費が激しすぎる。現にさっきまでとは…状況がまるで逆だ」

 

フィールドでは肩で息をするルビィと、息切れひとつ無い亜里沙が1対1を繰り広げていた。明らかにルビィの動きが悪くなっている

 

 

和葉「"ブレイブショット"を連発しないのもスタミナの温存。とりあえず、形勢が逆転した今…サニデイジャパンはピンチだよ」

 

 

 

ルビィ「うおあぁぁぁぁ!!!!」

 

ルビィ「【イグナイトスティール】!!」

 

亜里沙「【イナビカリ・ダッシュ】」バチッ!!

 

ルビィ「!?」

 

 

A『ああっと!!黒澤ルビィ、スライディングで隙を与えてしまったか!?』

 

レヴィン『冷静さが無くなってきていますね…』

 

 

花陽「る、ルビィちゃん…!落ち着いて!」

 

ダイヤ「ルビィ…!」

 

 

ルビィ(勝たなきゃ…絶対に…勝たなきゃ!!)

 

すぐに立ち上がるも、亜里沙との距離は既に開いている。心の中でフツフツと感情が煮えたぎり、上手くいかないことに腹が立つ

 

 

ユーリー「アリサ…!日本のDFに捕まる前にボールを回して!!」

 

亜里沙「はい!お姉ちゃん…!」パス

 

果南の目に限界が来てから、日本は絵里にシュートを1本も撃たせていなかった。明らかに異常な目の痛み、充血。最悪な結果を回避するため、穂乃果への交代が急がれるが―――

 

 

梨子「絵里さんにシュートを撃たせないで!!」

 

善子、ことり「「!!」」バッ

 

梨子の指示でDFたちが動く。例え目では捉えられない高速シュートが相手でも、撃つ瞬間にシュートブロック。または撃たせなければいいのだ。

そのことに意識を置き、足を伸ばせばボールに届くところまで近づいた善子とことり。しかし、

 

 

絵里「お願いね」スカッ

 

善子、ことり「「!?」」

 

善子(スルーした!?)

 

ことり(誰に…「ナイスだよエリー」

 

ゾーンを発動した気高き銀狼が全力疾走で駆け抜けていた。すでに最終ラインを越えている

 

 

A『ボールを持ったフロイ選手がサニデイジャパンゴールに迫ります!!!!』

 

 

善子「果南っっ!!」

 

果南「大丈夫…!開眼しなければ絶対に…」

 

フロイ「しなければ、止められるのかい?」バッ

 

果南「!?」

 

フロイの動きが今までと違う。これは…新技!?

 

 

フロイ「更に硬く…気高く…吠えろっっ!!」

 

空中でオーラをボールに集める。まるで白い宝石のように光りだしたそのオーラは、ただ美しいだけでなく、凶暴な狼が果南を睨みつけるように覇気を放っている

 

 

フロイ「はあぁぁぁっっ!!!!」

 

フロイ「【ファング・オブ・プラチナ】!!」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

A『これは!?フロイ選手の新しい必殺技だぁぁ!!』

 

 

果南「上等…!!【デルフィナス・トリアイナ】」

 

"深淵の開眼"を使わなければ戦える!!

果南はいるか座の力を宿した神の槍を海中から召喚する。

流れがロシアに変わりつつある。その原因はチームのメンバーに心配されるような状態になった自分に責任がある。

最後の砦である自分が───────

 

 

果南「形状変化【アトランティス】!!」

 

果南「うおあぁぁぁぁ!!!!!!」

 

ガギィィィィィィン!!!!

神器がボールに振り下ろされる。サッカーの試合で聞こえるはずの無い金属音が、スタジアム全体に鳴り響いた

 

 

果南(弾かれないっっ!!行ける!!!)

 

硬いシュートではある。だが、自分の方が重く、強い!!力だけでなく気持ちでもぶつかっていく。

 

そんな果南に不安を抱かせる―――

 

 

 

 

─────ピシッ

 

 

果南「??」ググググ

 

 

小さな違和感

 

 

果南(今…何かが割れる音??)

 

気のせいかもしれない。フロイのシュートが砕ける音かもしれない。だが、何か嫌な予感がする。そしてその予感が―――最悪の状況に

 

 

────ピシッピシッ!!バリッッ!!!

 

果南「!?!?」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

果南(デルフィナス・トリアイナに…ヒビ!?)

 

 

鞠莉「果南…!!!」

 

フラム「あの松浦果南の神器にひび割れ!?」

 

 

A『なんと!!松浦果南の神器にひび割れが発生!!!止まることなく広がっていきます!!』

 

 

果南「ぐっっ…な、なんで…???」ググググ

 

フロイ「"ファング・オブ・プラチナ"」

 

果南「…!!」ググググ

 

フロイ「鋼鉄をも噛み砕く白金の牙…名付けるなら、"武器破壊"」

 

果南「武器…破壊!?」ググググ

 

高速シュート"アイス・ブルーモーメント"のために作られた技が"深淵の開眼"だとすれば、"デルフィナス・トリアイナ"を破るために作られた技がこの"ファング・オブ・プラチナ"。

オーラがまるで神器に食らいつく狼のよう。白く光沢する牙で深くまで抉り、ひび割れを広げていく

 

 

果南「ハァハァ…やばい…!!砕ける!!!」

 

 

────バリィィィィン!!!!!!

 

果南「―――」

 

神器が真っ二つに─────折れた。

それは初めての経験であり、屈辱であり、そして

 

 

果南「っっ!!」ガシッ

 

 

 

果南の底無しの抵抗力を引き出すきっかけとなる

 

 

 

凛「砕けた槍を両手で掴んだにゃ!!」

 

穂乃果「果南ちゃんは諦めてない」

 

 

果南「まだだあぁっっ!!!!」ガギィィン!!

 

フロイ「!?!?」

 

折れて2本になった神器を両手で掴み、シュートを抑える果南。だが、再び武器破壊が進む

 

 

果南「でぇりゃあぁぁぁ!!!!」ドゴッッ!!

 

日本、ロシア「「「!?!?」」」

 

 

A『頭でも抑えにいったぁぁぁ!!!!これが、海皇 松浦果南の底力か!?!?』

 

 

果南「っっっっ!!!!」ググググ!!

 

2本の神器、そして頭を押し付け、何がなんでも…全てをぶつけてでも止める。

そんな鬼神のごとくぶつかる果南に、スタジアムからはち切れんばかりの歓声が響いた

 

 

鞠莉「果南っっ!!あと少しよ!!!!」

 

フラム「今ここで馬鹿力出さないでどうすんの!?」

 

 

穂乃果「果南ちゃん…!!」

 

ダイヤ「果南さん!!」

 

 

にこ「あんたなら行ける…!!正念場よ!!」

 

千歌、曜「「頑張れー!!果南ちゃん!!」」

 

 

果南「ハァハァ…ハァハァ…っっ!!!」ググググ

 

神器はすでにボロボロだ。だが、果南の心には傷一つ付いていない。

フロイのオーラと果南のオーラがぶつかり合う。歓声が耳に入る度に、無限に力が湧いてくるようだ。だが、

 

 

果南「まだ負けな────ガクッ

 

果南「ハァハァ……え、」

 

心には無くとも、体は神器と同様にボロボロだった。そのことが頭の中に入った瞬間

 

 

────バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

果南の体と神器はフロイの牙により砕かれた

 

 

果南(悔しい…悔しいよ……ごめん、みんな)

 

 

A『ゴール!!!再び1点差!!フロイ選手の新必殺シュートは、なんと松浦果南の神器を破壊!!松浦果南、立てません!!!』

 

 

穂乃果「…………」

 

美奈「穂乃果ちゃん。行くわよ」

 

穂乃果「……はい」

 

 

A『そしてここで選手交代です!GK松浦果南に代わり、ついに出てきました!!日本の"太陽の守護神"高坂穂乃果が入ります!!!!』

 

 

果南「ハァハァ……ごめん、あとは頼んだよ」

 

穂乃果「任せて絶対に止め────

 

 

────パアァン!!!!

 

果南、穂乃果「「!?」」

 

日本「「「!?!?」」」

 

 

何かが勢いよく叩かれるような音がした。

そして、

 

 

善子「ふざけんじゃないわよっっ!!!!」

 

ルビィ「………」

 

 

続くように善子の怒号が、ルビィに向けられていた

 

 

 

日本 5-4 ロシア

 

 

 




『ファング・オブ・プラチナ』シュート/フロイ
白金の牙を意味するオリジナル技です。果南の神器を噛み砕く硬さを持っています。"武器破壊"シュートでとても強力な技となっています。

次回、160話。ロシア戦決着です



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第3章 160話 「ロシア戦 "クロスする絆"」

皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
(2020/08/25 16:55:59)に160話を再投稿しています。話の展開を一部分変更していますので、最後まで読んでもらえると嬉しいです。

作者の都合で書き直したため、本当に申し訳なく思ってます。
それでは、ロシア戦、真の決着です。




 

前回の、輝こうサッカーで!

ルビィの勝利への執念が再び高まった原因はロシア戦前日、小学校時代の後輩との再会だった。

そしてフロイの新必殺技"ファング・オブ・プラチナ"の前に散った果南。穂乃果の満を持しての交代。痺れを切らした善子。

ロシア代表との戦いはまもなく終わりを迎える

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

──────パアァン!!!!

 

何かが弾かれたような。打ち鳴らされたような音が響いた

 

 

ルビィ「―――」

 

善子「……」

 

そしてその音が、自分の頬が痛むことにより、平手打ちされた事によるものだと。ルビィは遅れて理解した

 

 

ルビィ「……痛」

 

善子「ふざけんじゃないわよ…」ガシッ

 

ルビィに喋る暇を与えずに掴みかかる。

善子がここまでキレることはほとんど無いに等しい。そのため、全員が驚きのあまり、その場から動けないでいた

 

 

善子「ルビィ……あなた、また同じ事を繰り返すつもり!?」

 

善子「その強さ、勝利を求めすぎた独りよがりなプレーが…仲間との関係をグチャグチャにするのよっっ!!」

 

ルビィ「…!!」

 

すぐに掴む手を振り放そうとしたルビィ。しかし、善子の言葉によりその手が止まる

 

 

善子「それで一度、ルビィはサッカーを捨てた。違う!?」

 

ルビィ「なら、善子ちゃんは背負えるの!?国の代表だよ!?部活動の時とは次元が違う、ルビィには点を決める使命がある!!それが…エースの使命で、ルビィがこの場に存在する意義だよ!!」

 

善子「…違う」

 

掴んでいた手をゆっくりと離す善子。

口調もそれに合わせるように、落ち着いて、ゆっくりと口を開く

 

 

善子「ルビィがこの場にいるのは────サッカーをするためよ」

 

ルビィ「…!」

 

善子「サッカーは1対11でなんて出来ない。1人で攻め込むなとは言ってない。問題はルビィの意識の中に"仲間"がいるかどうかよ」

 

ルビィ「……ルビィの意識」

 

善子「今のあなたには勝利以外何も映ってない。センターFW、前には仲間の姿はいないのは分かっているわ。でも、」

 

善子「あなたの後ろには、頼れる仲間がたくさんいる」

 

ルビィ「………」

 

善子「…私は最初、日本代表には選ばれなかった」

 

 

それから1人で泣いて、悩んで、追い詰めて、そんな私を支えてくれたのが…仲間たちよ。

 

北也さん、師匠の志満さん、帝国女学院のメンバー。誰か1人でも欠けていたら、今の私はいない。"共鳴の堕天使"津島善子は存在していないのよ。

 

魔王に心と体を乗っ取られた時も…日本代表のメンバーだけじゃない。ライバルだったチームの選手たちも私を助け出してくれた。

 

今…私がこの場に立つことができるのは、これまで全ての仲間たちの力があってこそよ

 

 

善子「それはルビィも同じ」

 

善子「あなたの"ATP"の圧倒的な炎だって、ダイヤたちを想う気持ちから生まれたもの。それを忘れて、勝つことだけしか見えなくなっているあなたの炎では…絶対に勝てない!!」

 

ルビィ「…!!」

 

善子の言葉が強く心に刺さった。

そして少しずつ冷えてきた頭で考える。が、やはりエースとしての責任感が消えることは難しい。勝利への呪縛が分かっていても離れることが無いのだ。

そんな葛藤の中、自分の背から名を呼ぶ声がする

 

 

理亞「ルビィ。私も…最初はあんたに勝つためにサッカーをしてた」

 

ルビィ「理亞ちゃん、」

 

理亞「でも今は違う。みんなとサッカーをするのが楽しいの。私はチームのために強くなるって決めた」

 

理亞「ルビィがエースの責任で苦しんでるなら、私もエースになって同じ責任を共有する」

 

理亞「それなら、あんたの負担も減るでしょ?」

 

ルビィ「…………」

 

 

初めてだった。そもそも、自分と同じ実力の域まで来る選手がいることに驚きだったのに、その代償ともいえる責任・呪縛を自ら背負うと言われたのだ。

驚き、言葉を失い、そして…

 

 

ルビィ「…みんなは強いよ」

 

 

紅き流星は笑う

 

 

ルビィ「理亞ちゃん。生半可な覚悟じゃダメだからね」

 

理亞「上等よ」

 

その言葉を最後に、ルビィと理亞は自分たちのポジションへと戻って行った。

そして2人の背中を見ながら善子は思う

 

 

善子「まったく…世話が焼けるエースね」

 

希「善子ちゃんは本当にええ子やな」

 

善子「…うっさい」

 

3人の会話を聞いていた希は優しい笑顔のまま、スイッチを切り替える

 

 

希「うちも…本気でやらんとね」

 

善子「…希、さん?」

 

希の言葉に違和感を覚えた善子は問いかけようとするも、その違和感は、とある選手の放つオーラにより掻き消されてしまう

 

 

善子「…!?!?」ゾクッッッ!!

 

この背筋が凍る様な巨大な覇気。自分の背後にいる選手から放たれている。

善子のポジションはセンターバック。つまり、後ろに立つ選手は1人しかいない

 

 

穂乃果「………」

 

善子(穂乃果さんの…闇の力!?)

 

穂乃果「勝負だからしょうがないんだよ」

 

善子「…!?」

 

穂乃果「相手の選手を崩すのも作戦。果南ちゃんがああなったのも…勝負で生まれた結果」

 

穂乃果「でもね?やっぱり」

 

 

 

ホノカ「仲間がボロボロになるのは…頭にくるよねっっ!!!!」

 

仲間を想う怒りが────闇の力のオーラへとなっていた。誰かへと向けられた怒りでは無い。

標的があって噴き出されるマグマが存在しないように、この怒りを抱いている時の対戦相手がロシア代表だっただけのこと

 

 

ホノカ「このゴールは絶対に守る。果南ちゃんの意思は無駄にはしないよ」

 

 

A『さあ、試合時間も残り僅かとなりました!サニデイジャパンが1点リードしていますが、まだどちらが勝つかは分かりません!!』

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

フラム「ふん…!ルビィもまだまだ未熟だね」

 

和葉「でも少し嬉しそうだね。フラム」

 

フラム「う、嬉しくなんかないよ…!?私の今の標的は鹿角理亞!!"イジゲン・ザ・ハンド"を真正面から破ったのは、あのシュートだけだもん」

 

和葉「そうだね…でも、ロシアは理亞の"ラストリゾート"をどう止めるのか」

 

「「「!?!?」」」

 

鞠莉「理亞の…?和葉、この試合ではあの子は、」

 

和葉「いや、撃つよ。あの目…あのギラギラ輝かせた目は絶対に撃つはずだ」

 

 

 

フロイ「もらったっっ!!」ズザーッ!

 

海未「なっ!?」

 

 

A『ああっと!!園田海未、ここでボールを奪われます!!!!』

 

レヴィン『流石の園田選手もこの試合、ここまでフル出場ですからね。かなり体力を消耗しているようです』

 

 

海未「ハァハァ…ふ、不覚です」

 

 

千歌(海未さんたちはもう限界…千歌が「千歌ちゃん…!私に任せて!」

 

千歌「!!」

 

声の主はGK高坂穂乃果だった。つまり、私が止めるからみんなは手を出すなということ。

それは選手たちの無駄な体力消耗を防ぐため、そして…

 

 

フロイ「へぇ…ずいぶんと自信があるんだね。なら、」バッ

 

高坂穂乃果の実力をロシア、そしてイタリアの選手たちに見せるため。

 

迷うことなく空へと飛んだフロイ。果南の神器をも噛み砕いた、銀狼のシュートが放たれる

 

 

フロイ「受けてみて…私のシュートを!!」

 

フロイ「【ファング・オブ・プラチナ】!!」

 

 

A『出たあぁぁ!!フロイ選手の武器破壊シュート!!!再び日本ゴールに迫っていく!!』

 

 

ホノカ「────【ブラックアーマー】」

 

穂乃果は"ブラックシールド"のオーラを左腕に集中させ、黒い鎧を完成させる

 

 

英玲奈「……変だな」

 

あんじゅ「何が変なの?英玲奈」

 

英玲奈「穂乃果は"ゴットハンドX"をいつも…右手で発動するはずだが、」

 

違和感が残るまま穂乃果の動きを見守る。

が、次の瞬間―――

 

 

ホノカ「……来い」バッ

 

日本、ロシア「「「!!!!!!」」」

 

イタリア「「「!!!!!!」」」

 

フラム「は!?ちょっ、何やってんの!?」

 

 

A『なんと!?巨大な狼の牙を前に…高坂穂乃果、左腕を差し出す構え!!!!』

 

レヴィン『左腕に噛み付けと言っているようなものです…武器破壊のシュート相手には危険ですよ!?』

 

 

狼の姿をしたオーラは穂乃果の左腕目掛けて迫ってくる。鋭利で巨大な牙は、見るだけでも恐怖を感じさせるほどの迫力。

しかし、対する穂乃果は表情ひとつ変えない。

 

 

そして──────

 

 

 

 

─────ガブッッッ!!!!!!

勢い良く穂乃果の黒腕へと食らいついた。直視できる光景では無い。金属をも砕くその牙、人間の体はタダでは―――ピシッピシッ!!

 

 

フロイ「…そ、そんな!?」

 

「「「!!!!!!」」」

 

全員が異変に気づくことが出来たのは、フロイが驚きの声を上げたからだった。

それは、穂乃果の腕が砕けたことによる悲痛な叫びか──────それとも、

 

 

ホノカ「……穂乃果の今の腕は、鉄よりも硬い」

 

銀狼の牙が砕けたことによる、予想外への反応か

 

 

絵里「鉄をも砕く牙が……」

 

ユーリー「砕けた…」

 

両チームの選手たちが驚きを隠せない中、穂乃果は右腕にも"ブラックアーマー"を纏う

 

 

ホノカ「果南ちゃんの仇だよ」

 

 

──────ドオォォォォォン!!!!

そして、全力の一撃を銀狼に叩き込んだ。まさに、鬼神を表現するならば今の穂乃果が相応しいだろう。

溢れ出る怒りとオーラは全て右腕へ。

そのまま地面へと押し込み、必殺の名を叫ぶ

 

 

ホノカ「【ゴットパンチX】っっ!!!!」

 

巨大なクレーター。衝撃波。轟音。

まるで隕石が落下したかのような迫力。まさに、神の殴り―――ゴットパンチだった

 

 

A『止めたぁぁぁ!!!高坂穂乃果、"ファング・オブ・プラチナ"を捻り潰し、圧倒的な力を見せつけたぁぁ!!!!』

 

 

フィレア「あれが穂乃果の本来の力…!!」

 

和葉「ビリビリ来るね…まさかここまで強力とは、」

 

 

A『高坂穂乃果からボールを受け取ったのは矢澤にこ!!』

 

 

にこ「梨子!"スリリングワンウェイ"はどうするの!?」

 

すぐに司令塔の梨子に問う。

試合前に美奈監督から指示された"スリリングワンウェイ"の完成。しかし、

 

 

梨子「まだ…まだ足りないんです」

 

にこ「…!」

 

"スリリングワンウェイ"はまだ未完成。その状態から新たな発見・進歩が無い中で無理矢理の発動はリスクを伴う。

梨子は自分に与えられた仕事を達成できなかった悔しさで言葉を詰まらせていた

 

 

にこ「いい判断だと思うわ」

 

梨子「にこさん…」

 

にこ「今は確実に勝つ―――よっっ!!」バシッ

 

梨子「!!」

 

ロシア「「「!!!!」」」

 

 

A『矢澤にこの鋭いパスが出された!!』

 

レヴィン『ロシア陣内を越えますね…!ボールの落下地点には走ってますよ!』

 

 

ルビィ「来た」

 

理亞「さすにこ先輩ね」

 

オフサイドラインのギリギリ、にこのパスと同時に飛び出したFWコンビ。

シュートのようなパスはロシアの選手たちのあいだを突き抜け、吸い込まれるようにルビィの足元へ─────「【カミウツシ】」

 

ルビィ、理亞「「!!!!」」

 

亜里沙「【スプリントワープ】」ギュン!!

 

しかし、覚醒した半神は簡単には譲らない

 

 

A『絢瀬亜里沙がボールをカット!!』

 

レヴィン『あのパスが通っていれば絶好のチャンスでしたが…そう簡単には行きませんね』

 

 

亜里沙「ハァハァ…(時間が無い…!!)」

 

このまま持ち込んでシュートを撃とうと考えていた亜里沙。しかし、その横から絵里が声をかける

 

 

絵里「亜里沙…!足は?」

 

亜里沙「まだ行けるよ!」

 

絵里「穂乃果は"アイス・ブルーモーメント"を止められないわ!この距離なら狙える!」

 

亜里沙「…!」

 

果南をゴールから引きずり下ろした今、高速シュートを止められるGKはいなくなったのと同義。

すぐに亜里沙は"カミウツシ"を発動する。この試合中に見た絵里の動きを寸分の狂いもなくコピーし、高速シュートを放つ

 

 

亜里沙「【アイス・ブルー──────

 

 

ことり「穂乃果ちゃん…!!高速シュートが、」

 

ホノカ「!!!!」

 

 

 

 

─────ドゴッッッ!!!!!!

 

 

ホノカ、ことり「「!!!!」」

 

亜里沙、絵里「「!!!!!」」

 

 

突然、ゴール前に1人の選手が飛び出してきた。そして、何も無かった場所からボールが出現。選手のみぞおちの部分には何かがぶつかったような跡が残されていた

 

 

善子「【Deep Resonance】っっ!!」

 

ことり「よ、ヨハネちゃん…!!」

 

 

A『なんと!?目では捉えられないほどのスピードを持つシュートを、津島善子が体を張った決死のブロック!!!!』

 

 

善子「ゲホッ…き、共鳴してやったわよ…高速シュート!!!!」

 

足などでブロックしなかったのは、それだと間に合わないからが一番の理由。

手段は何でもいい。止めるために動け。これが善子の共鳴であり、意思であった

 

 

ユーリー「エリー!!ボールこぼれてる!」

 

シュートブロックした日本であったが、ボールはまだロシアの元にある。

何度も高速シュートを撃ち、善子の体力を削って潰す。果南の時と同じ作戦を考えていた

 

 

希「残念やけど絵里ち、通さないよ」

 

 

しかし、

 

 

絵里「…希」

 

 

A『こぼれ球を拾った絢瀬絵里のディフェンスに入ったのは…東條希!!!!』

 

 

亜里沙(希さんの実力………)

 

絢瀬亜里沙と絢瀬絵里。3年間、日本で生活し、日本で出来た新たな仲間とのサッカーを続けたからこそ、サニデイジャパンのほとんどの選手の能力を把握している。

しかし、

 

 

亜里沙(希さんの全力を…私はまだ見たことない)

 

その不安は姉である絵里も感じ取っていた。音ノ木坂学院で共にサッカーをしていた時は頼れる仲間。

しかし、敵として向かい合った時のこの底知れぬ緊張感はなんだ?今までの希とは…まるで、

 

 

希「 別 人 み た い ? 」

 

絵里「────────え、」

 

気づくと、絵里は不思議な感覚に囚われていた。

自分の頭上に地面。足元が空になっている。しかし、頭から地面に落下せず―――

 

 

―――空に、足から落ちていく感覚

 

 

絵里「空に落ちて…き、きゃあぁ!?」

 

まるで底の見えない谷へと落ちていくような。体が浮いている。いやな感覚。冷静さを欠き、頭が真っ白にな────ドサッ!

 

 

絵里「……ぇ、」

 

 

A『ああっと!?どうしたのでしょうか!?絢瀬絵里が突然、何も無い場所で転倒してしまいました!!』

 

 

絵里「今…確かに、私、落ちてって……ボールは!?」

 

混乱する中、ボールがどこにあるか確認するも、すでに希が奪い取っていた

 

 

希「……【まさかさま】。試合で使うのは初めてやね」

 

絵里「まさか、さま…」

 

希「隠す気は無かったんや。ただ、この技は強すぎるんよ」

 

そのままボールを前で待つ選手に渡す希。何事も無かったかのように走り去っていくが、亜里沙はその一部始終を把握し、そして驚きのあまり言葉を失っていた

 

 

亜里沙("まさかさま"って言ってたあの技……やばい…)

 

亜里沙が相手の実力や必殺技の強さを把握するために利用している方法がある。

それは"カミウツシ"でコピー出来ないものは規格外の強さを持つ。という方法だった。

そして希の"まさかさま"は―――

 

 

亜里沙("カミウツシ"でもコピー出来ない…!!"ATP"や"ブレイブショット"以上の技…!?)

 

本当の底の見えない谷は…希さんの実力なのかもしれない。亜里沙はボールを追いかけながら見えぬ不安に震えた

 

 

 

A『さあ!!試合時間も残り数分!!サニデイジャパンがボールを繋ぎますが、あくまでも追加点を取りに行くつもりのようです!!』

 

 

にこ「梨子!!最後ガッツ見せなさいよ!!」

 

梨子「はい!【神のタクトFI】!!」ビシッ!

 

全能力が高いロシア代表のディフェンス陣を突破するためには梨子の指揮が必要不可欠。

そして選手1人ひとりの指揮への対応力と、残りの体力を絞り出して引き出す力

 

 

千歌「【ZスラッシュGX】っっ!!」ギュンギュン!

 

善子「【Deep Resonance】!」

 

にこ「【スーパーエラシコ】!!」バッバッバッ!!

 

 

そして、それらが1つの道となり…切り開かれる

 

 

月「……あ、抜けた」

 

 

千歌「でりゃあぁぁっっ!!」ズバババッ!

 

亜里沙「っっ!?」

 

 

A『高海千歌、再び躱したぁぁ!!そして最終ラインを越えるロングキック!!!!』

 

 

ルビィ「…ナイスだよ千歌ちゃん」

 

 

A『黒澤ルビィが走っています!!!!!』

 

 

亜里沙「ハァハァ…絶対に…負けられ…ズキッ!!

 

亜里沙「痛っ…まだだよ…まだ私は戦える!!」

 

 

亜里沙「【スプリントワープ】!!」

 

 

一方、会場のボルテージは一気に高まっていた。もう一度、日本のあの異次元シュートを見ることが出来るからだ。

それは観客だけで無く、日本の選手たちにとっても同じ期待。ルビィ自身も、最後に決めきる気で走っていた

 

 

理亞「ルビィ!!!!」

 

ルビィ「…!」

 

理亞「私に…"ラストリゾート"を継承させて!!」

 

ルビィ「………」

 

理亞「絶対に失敗させない…!!成功させて、みんなと一緒に世界一になる!!ルビィも…同じ気持ちでしょ!?」

 

ルビィ「………」

 

ルビィ「………分かった」

 

理亞「…!!!!」

 

ルビィ「理亞ちゃんの想いに…賭ける!!」バッ

 

 

A『ああっと!?黒澤ルビィがパスボールを避け、鹿角理亞が代わりに受け取りました!』

 

レヴィン『理亞選手が撃つようですね…!』

 

 

理亞「やった……絶対に決める!!」

 

理亞の目に迷いは無かった。完成までの、成功までの全てが見えているようだった。そして、あの言葉を思い出す

 

和葉『理亞ちゃんは理亞ちゃんを突き進んで』

 

 

理亞「これが…私の答えっっ!!」バッ

 

理亞「はあぁぁぁぁっっ!!!!」ゴオォォッ!!

 

空気と"Awaken the power"のオーラを混ぜ合わせる。一見、今までと変わらないように見えるが、

 

 

ルビィ「…!!」

 

 

果南「何が変わったの…??」

 

月「変わったも何も…逆なんだ!!!!」

 

果南「逆??」

 

月「ルビィちゃんの"ラストリゾート"とオーラの流れが全て…逆だ!!!」

 

 

 

理亞「───────っっ!!」バシッ!

 

両足で抱えるようにボールを地面に垂直に落とす。そのまま先回りし、左足ではなく――

 

 

理亞「でりゃあぁっっ!!」バシッ!

 

"右足"での回転。

理亞に足りないもの、それは理亞自身の"得意"。武器だった

 

 

理亞(私は両利き…でも、得意な足は右足!!)

 

ルビィの動きに依存しすぎたことにより、自分の武器を見失っていた理亞。

ルビィの動き、オーラの流れ、全てを鏡に撮したように逆にすれば、右足で撃つことができる。

自分の本来の100%の力をボールをぶつけるために、理亞は自分自身を突き進む

 

 

理亞「【Awaken the power】」ドォン!!

 

 

ルビィ「理亞ちゃんっっ!!行ける!!!」

 

聖良「理亞…!!!」

 

日本「「「理亞!!!!」」」

 

 

フラム、鞠莉「「ぶちかませえぇぇ!!!!」」

 

 

 

 

ありがとう…みんな……そして、ルビィ

 

 

 

 

理亞「【ラストリゾート】!!!!!!」

 

 

─────ドガアァァァァン!!!!!!

地面を弾む度に破壊するパワー。鳴り止まぬ轟音。ほとばしるオーラ。

誰も文句なしだった。ルビィに続く、世界最強の切り札の──────誕生だった

 

 

和葉「文句なし…完璧だ」

 

 

ゴラン「くっ…絶対に止め…アリサ!?」

 

日本、ロシア「「「!!!!」」」

 

理亞が"ラストリゾート"を放つ間にゴール前へと戻っていた亜里沙。

"触れないシュート"を前にしても、亜里沙は怖気付くことなく立ち塞がる

 

 

亜里沙「みんなとのサッカーは…絶対に終わらせないっっ!!」バッ

 

 

理亞「…!?あの構え…」

 

亜里沙の動きに覚えがあったのは理亞だけでは無かった。手で地を払い、髪を揺らし、上空で芸術とも言える一回転

 

 

亜里沙「【カミウツシ】」

 

 

世界最強の一角。日本の勝利をその一刀で叩き割った、"聖剣"

 

 

亜里沙「【エクスカリバー】っっ!!!!

 

 

────ギシャアァァァァァァン!!!!

 

 

フラム「えぇ!?そんなのあり!?!?」

 

和葉「おいおいおい…」

 

 

A『なんということだぁぁ!?!?あの"ラストリゾート"を蹴り返しましたぁぁ!!!!』

 

 

理亞「ハァハァ…失敗…??」

 

ルビィ「いや、理亞ちゃんの"ラストリゾート"は完璧だった…!!」

 

ルビィ(やられた…!!まさか"エクスカリバー"をコピーするなんてっっ…)

 

魔界軍団との戦いでルビィの"ラストリゾート"を蹴り放ったエドガーのシュート。

"エクスカリバー"ほどの重みと圧倒的破壊力があれば弾かれることなく、蹴り返すことは実質可能だ。しかし、問題は

 

 

月「あの足で蹴り返す!?普通!?」

 

過去のルビィもそうだったが、亜里沙はそれ以上の無茶苦茶をして見せた。エドガー自身も足を壊すほどの危険な技

 

 

レヴィン『"エクスカリバー"は距離が離れれば離れるほど威力が増していきます…これは、さすがの高坂選手でも…』

 

A『いや、彼女は諦めていません!!!!』

 

 

ホノカ「…イギリスとの戦いの時と同じだね」

 

迫り来る巨大なシュートを前に、穂乃果は両腕を紅く染め上げる

 

 

ホノカ「止めるったら…止めるんだ!!!」バッ

 

手をクロスするのと同時に飛び出す。そのまま全オーラを右腕、右手に集中させ、挑む。世界最強のシュートに―――

 

 

ホノカ「【ゴットハンドX】!!!!!!」

 

 

────ドオォォォォン!!!!

ボールと穂乃果の腕。ぶつかったのと同時に衝撃で周辺の地面は抉れる。

近くにいた日本のDFたちも立つことは出来ない。そんなとてつもない衝撃の中で、

 

 

ホノカ「ぐっっ…!!ぐぬぬぬぬっっ!!!」

 

 

A『た、耐えています!!高坂穂乃果、"ラストリゾート"と"エクスカリバー"のシュートに吹き飛ばされることなく、がっちりとボールを掴んでいます!!!!』

 

 

絵里「弾かれない…!?」

 

フロイ「あのシュートを抑える…だって?」

 

 

フィレア「あれがキャプテンが言っていた穂乃果の本来の"ゴットハンドX"…!!」

 

和葉「理亞の"ラストリゾート"はまだルビィほどのパワーは無い。それでも、人類で"ラストリゾート"に触れた人間第1号には変わりない」

 

フラム「………」

 

 

ホノカ「ぐぬぬぬぬぬっっ!!!!」ググググ

 

"ラストエクスカリバー"を相手にしているのと変わらない状況で、完成した穂乃果の"ゴットハンド"は抗い続ける。しかし、

 

 

―――バリッッ!!!!

 

ホノカ「!?やばっ…!?」

 

 

A『ああっと!?"ゴットハンドX"にヒビが入りました!!!徐々に高坂穂乃果も押されています!!!!』

 

 

数メートルは離れていたゴールラインも、今では穂乃果の足の上まで来ていた。亀裂は止まることなく、穂乃果の"ゴットハンド"を抉り続ける

 

 

理亞「…そんな、」

 

ルビィ「………まだだよ」

 

理亞「ルビィ…!」

 

ルビィ「穂乃果さんは、ルビィの"ラストリゾート"を掴んでから、毎日のように特訓してた」

 

 

ホノカ「……へへ、亜里沙ちゃん強いね」グググ

 

亜里沙(笑ってる…!?)

 

ホノカ「でも穂乃果の方が強いっっ!!」バチバチ

 

亜里沙「左手にもオーラ…まさか、」

 

ホノカ「その―――まさかっっ!!!!」ドォン!

 

 

日本、ロシア「「「!!!!!!!!」」」

 

 

ホノカ「【ゴットハンド・ダブルX】!!!

 

ゴールよりも、"ラストエクスカリバー"よりも巨大な"ゴットハンド"。

両腕で放つその紅い炎は―――

 

 

ホノカ「…………」シュウゥゥゥ

 

聖剣だろうと、爆弾だろうと、焼き尽くす

 

 

A『と、止めたぁぁ!!!!両手で放つ"ゴットハンドX"により、絢瀬亜里沙のシュートを抑えてみせた!!!!』

 

 

果南「両手で…"ゴットハンドX"…」

 

美奈「あのシンプルでデタラメな技…!!血は争えないわね…!」

 

 

光穂『一体で足りないなら…もう一体!!!』

 

光穂『【風神・雷神】!!』ドォン!

 

 

真恋「どっかのサッカーバカみたいね」

 

美奈「ええ。ほんとに」

 

 

亜里沙の捨て身の一撃を抑えた穂乃果。これで試合終了、そう、考えた時だった

 

 

穂乃果「理亞ちゃん…!!」

 

理亞「…!」

 

穂乃果「まさか、これで終わりなんて言わないよね!?」

 

理亞「…え」

 

再び理亞の元へと戻ってきたボール。穂乃果の言葉に続き、隣でルビィが続けた

 

 

ルビィ「理亞ちゃん。エースストライカーの重み、一緒に背負ってくれるんだよね」

 

理亞「………」

 

ルビィ「なら、一緒に世界を驚かせてみない?」

 

理亞「!!」

 

 

 

フロイ「まだ終わってない!!ボールを奪って────

 

 

 

──────ドオォォン!!!!

 

「「「!!!!!!」」」

 

地面が揺れた。穂乃果の技の時とはまた別の衝撃だった。衝撃が来た場所を見てみると、そこでは―――ルビィと理亞が息を合わせ、足で地面を揺らし、お互いのオーラを混ぜ合わせていた

 

 

理亞「───────っっ!!」バッ!

 

飛んだのは理亞。2人のオーラが混ざりあったボールを、両足で抱えるように落とす

 

 

ルビィ「───────ぜいっ!!」ギュン!

 

そのボールが地面に落下する前に、滑り込むように足を伸ばすルビィ。

左足で回転を加速させ、オーラを混ぜ合わせ、超強力な空気爆弾を完成させる

 

 

ルビィ「理亞ちゃん!!!」

 

理亞「ルビィ!!!」

 

ルビィ、理亞

「「【Awaken the power】!!!」」

 

 

日本の切り札は進化する。3年間、そこ(ラストリゾート)から先へと進むことはなかった領域。

 

 

"今の自分を越える者"と"過去の自分を越える者"

 

 

ルビィ、理亞「「っっ!!!!」」メキッッ!!

 

 

お互いが共鳴し合い、今、放たれる

 

 

 

ルビィ、理亞

「「【ラストリゾート・クロス】!!!!」」

 

 

―――ドガアァァァァン!!!!!!

"ラストリゾート"の時とはまるで別次元。地面にバウンドする時だけで無く、常時巨大な衝撃波で周囲の選手を吹き飛ばす

 

 

フロイ「エリー!!」

 

絵里「これ以上…亜里沙に無茶はさせないわ」

 

フロイ「【ファング・オブ・ビースト】!!」

絵里「【ホワイトハリケーンGX】!!」

 

 

―――バギイィィィィィン!!!!

 

フロイ、絵里「「!?!?」」

 

 

A『蹴りがボールまで届きません!!!』

 

 

亜里沙「ハァハァ…お姉ちゃん…ズキッ…痛!?」

 

理亞の"ラストリゾート"を蹴り返した時にすでに足の限界を迎えていた亜里沙。

それ以前に、"エクスカリバー"でもこのシュートを打ち返すことは―――

 

 

亜里沙「きゃっ!?」

 

DFの選手たちと共に吹き飛ばされる亜里沙。残すはGKただ一人

 

 

フロイ「ゴラン!!お願い、止めてくれ!!」

 

 

ゴラン「負けられない…みんなの、亜里沙のためにも…負けられないんだ!!」

 

ゴラン「【ギガインパクト】っっ!!!!」

 

 

 

────バギイィィィィィン!!!!!!

 

 

ゴラン「―――」

 

 

フロイ「―――!」

 

絵里「―――!」

 

亜里沙「―――っっ!」

 

 

 

ゴランの頭をよぎるのは"触れないシュート"

 

 

ゴラン「ごめん……みんなっっ…」

 

ゴランの言葉は、亜里沙の耳にしっかりと。届いていた

 

 

亜里沙「これで…終わりなの?」

 

 

 

―――バシュウゥゥゥゥゥン!!!!!!

ピピーッ!!!!

 

 

A『ゴール!!!!そしてホイッスルです!!試合終了!!サニデイジャパンがロシア代表に勝利し、決勝へと駒を進めました!!!!』

 

 

和葉「……」

 

フィレア「キャプテン?どこへ?」

 

和葉「みんな。戻って練習だよ」

 

イタリア「「「!!!!!!」」」

 

和葉「今のを見て分かったよね。日本が私たちの最後の敵だよ」

 

 

和葉「今度は私たちの番。決着をつけるよ」

 

 

会場を後にするイタリア代表。

その後ろのグラウンドでは、お互いに勝利の拳を突き上げるルビィと理亞の姿があった

 

 

 

試合終了

日本 6-4 ロシア

 

 

決勝戦

日本VS???

 

 

 




『まさかさま』ドリブル、ディフェンス技/東條希
希ちゃんの持つ必殺技でオリジナルです。絵里ちゃんが"地面が頭上にあり、空へと落ちていくような感覚"と言っていたので、どうやら"平衡感覚"を狂わせる必殺技のようです。亜里沙ちゃんでもコピー出来ない技らしいので、かなりとんでもない技だと分かります。ここに来て希ちゃんのチート技(遅くない?)ちなみに、モデルは『るてしキスキしてる』です。

『ゴットハンド・ダブルX』GK技/高坂穂乃果
両手で"ゴットハンドX"を発動します。威力は作中の通り、"ラストリゾート"を打ち返した"エクスカリバー"を止めるほどです。穂乃果ちゃんの余裕のあるセリフから、どうやら隠し技として完成させていたようです。

『ラストリゾート・クロス』
シュート/黒澤ルビィ・鹿角理亞
"過去の自分を越えるため"、"今の自分を越えるため"。そんな2人の想いがひとつになったシュートです。"クロスファイア"と"ラストリゾート"を合体させた技とも見ることが出来ます

ついに残すところ決勝戦だけとなりました。感想お願いします


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第3章 161話 「もう1つの準決勝」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
今回の後書きは必ず読んでください





 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

試合終了間際、亜里沙が最後の一撃として"ラストリゾート"を"エクスカリバー"で蹴り返す。しかし、穂乃果の新必殺技を破ることは出来ず、ルビィと理亞の新たな切り札"ラストリゾート・クロス"の前に沈んだ。

結果は6-4。サニデイジャパンが決勝戦へと駒を進めたのであった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

U18サッカー女子FFI世界大会において、日本代表がロシア代表を破り、決勝へと進出したという情報は速報として全世界に拡散された。

 

日本がダークホースと呼ばれたのは…もはや過去の話。ブラジル代表とロシア代表を破ったことにより、チーム全体の実力は本物だと。世界の頂点に通用し得ると。世界から騒がれた

 

 

亜里沙「はぁ…負けちゃったか…強いですね。ルビィさん」

 

ルビィ「…本当に強いのはみんなだよ」

 

ルビィ「足は大丈夫?」

 

亜里沙「ちょっと…無茶しちゃいました…えへへ、また車椅子かな」

 

ルビィ「…今度は完璧に治して戦おう」

 

亜里沙「はい…!!」

 

更に、ニュースの一面は日本代表の決勝進出だけでなく、鹿角理亞が"ラストリゾート"を完成させたことも大きく報じられていた

 

 

月「理亞ちゃん…とうとう完成したんだね」

 

理亞「……ありがとう。月」

 

月「…!」

 

理亞「ATP継承の時も…一番にサポートしてくれたのは月だった。は、早く怪我を治して、決勝戦…一緒にサッカーするんだからね!?」

 

月「理亞ちゃん……うん、任せてよ!!」

 

世界最強クラスのシュートを放つ選手が2人。更に、この試合で注目を集めたのはGKのファインプレーだった。

松浦果南は失点したものの、逆に4点しかロシアの得点を許さなかった。絢瀬絵里の新必殺技、絢瀬亜里沙の途中参戦があった中、果南は自分の実力と才能を十分発揮して見せた

 

 

亜里沙「お姉ちゃん…私、」

 

絵里「……本当に楽しかったわ。亜里沙との久しぶりのサッカーは」

 

亜里沙「…!」

 

フロイ「でもね、ちょっと勘違いしていることがあるね」

 

亜里沙「勘違い…?」

 

フロイ「私たちとのサッカーはこれで最後…違うね。サッカーを辞めるなんて誰も言ってない」

 

亜里沙「それって…どういう」

 

フロイ「私は高校卒業後、プロチームに入団するんだ」

 

亜里沙「…!!」

 

絵里「亜里沙。私たちは先に進むだけ、でも、あなたは絶対に追いついてくるでしょ?」

 

亜里沙「うん!亜里沙もプロサッカー選手になって、お姉ちゃんたちとまた一緒にサッカーする!!」

 

 

 

にこ(プロ…か、)

 

ユーリー「決勝進出おめでとう。にこ」

 

にこ「ユーリーだったわね。ありがとう」

 

ユーリー「日本は強かった…本当に強かったよ。私たちは立てなくなるぐらい全力で走ったのに…」

 

ユーリー「日本の選手はみんなケロッとしてるんだから…ここまで差が出るとはね」

 

にこ「まあね。勝ちたいって意思の…賜物よ」

 

この試合の後日、日本の決勝戦の対戦相手が決まる、もう1つの準決勝が行われる。

イタリア代表"オルフェウス"。そして…

 

 

花丸「花陽ちゃん、イタリア代表の対戦相手って…どのチームずら?」

 

花陽「…コトアール共和国代表です!日本代表に代わって、今一番のダークホースと言われているチームです!」

 

花丸「コトアール共和国…?」

 

花丸(そんな国…あったかな…?)

 

 

 

―――――――――

 

 

 

その後、準決勝第2試合はサニデイジャパン全員で観に行くことが決まった。

それまでは各自自主練という形になり、選手たちそれぞれが刻刻と近づく決勝戦へ備えた

 

 

理亞「【ラストリゾート】!!!!」ドガアァン!

 

ホノカ「【ゴットハンド・ダブルX】!!」

 

理亞は"ラストリゾート"を完成させたものの、ルビィの一撃にはまだ及ばない。

現にそのシュートを受け止めた穂乃果は――

 

 

ホノカ「………」シュゥゥゥ

 

理亞「…完全に止められた」

 

ルビィ「技術はかなり完璧に近いと思う…あとは、巨大なオーラを扱う筋肉かな」

 

理亞「筋肉か…真姫!トレーニングルームに付き合って!」

 

真姫「もう…しょうがないわね」

 

 

グラウンドの隅のベンチでは、月が靴紐を縛りながら練習を始める準備をしていた

 

 

曜「月ちゃん、もう足は大丈夫なの?」

 

月「おかげさまでね。決勝戦までには体力も戻せそう」

 

曜「良かった…」

 

月「僕も普通に自主練かな。梨子ちゃんたちに相談があったんだけど、今は忙しそうだもんね」

 

サニデイジャパンの司令塔である梨子と英玲奈は、自主練では無く"スリリングワンウェイ"完成の方法を考えていた。

ロシア戦で完成させるはずだったタクティクス。しかし、結果的に完成させることは出来ず、決勝戦に備え、完成が急がれていた

 

 

月「理亞ちゃんみたいに足りないことがすぐに思いつけばいいけどね…」

 

曜「最後のヒントはサエさんが持っているって監督たちは言ってたけど…決勝戦の対戦相手の監督だから、難しそうだね」

 

月「うーん……そういえば、千歌ちゃんが見当たらないけど?」

 

曜「あれ…?どこに行っちゃったんだろう、」

 

 

千歌の姿は宿舎近くの砂浜にあった

 

 

千歌「──────っっ!!」ズンッ!

 

波の音ともう1つ、重い物にぶつかるような衝撃音が響いていた。

その正体は木に吊るされた巨大なタイヤ。穂乃果がGK練習をする時に毎回使っていた物だ。それを千歌は足で蹴る―――が、

 

 

千歌「うわっ!?」ドサッ!!

 

振り子のように重量と運動エネルギーにより押し負けてしまう。

そのまま地面に倒れ込み、揺れ続けるタイヤを見上げて呟いた

 

 

千歌「いてて…やっぱり上手くいかないな」

 

再び立ち上がり、今度は深呼吸を挟む。そして、

 

 

チカ「【Braveheart】」

 

"ゾーン"と"闇の力"をひとつにした技を発動させる。そのまま足を後ろへ引き、こちらへと揺れながら戻ってくるタイヤへ―――

 

 

───────メキッッッ!!!!

 

チカ「───────っっっ!!!」

 

その蹴りは、先ほどまでとは見違えるほど。

跳ね上がったパワーでタイヤを蹴り返す。だが、これだけでは終わらない。振り子と同じだ。再び戻ってきたタイヤを今度は―――

 

 

チカ「───────!!!」ズンッ!!

 

"回し蹴り"。しかし、あまりにも大きな衝撃だったため、そのまま後ろへ数メートル押し下げられてしまった。

倒れなかったものの、千歌の顔から不満を持っていることがよく分かった

 

 

千歌「はぁはぁ…やっぱり、"カウンター"を習得するにはパワーが足りないなぁ」

 

千歌「決勝戦までに習得できれば…もっとチームの力になれる。頑張らないと」

 

気づけば夕方がやって来ていた。

場所は違えど、サッカーに出会ってから毎日、この空を汗をぬぐいながら見上げている。

明日も頑張ろう。寂しさを抱く心にそう言い聞かせ、千歌は宿舎へと戻って行った。

 

 

そして、

 

 

ー FFI準決勝第2試合 イタリアVSコトアール ー

 

 

『全世界のサッカーファンの皆様!FFI準決勝の第2試合がまもなく始まります!!!』

 

 

和葉「勝つよ」

 

イタリア「「「はい!!!」」」

 

FFI世界ランキング2位。

ブラジルに次ぐ世界屈指のパーフェクトチーム、イタリア代表"オルフェウス"。

日本が唯一敗北したチームであり、攻守ともに圧倒的な実力を持つ

 

 

千歌「始まりますね」

 

穂乃果「うん。大丈夫、みっちゃんたちは必ず勝つよ」

 

 

あんじゅ「コトアール共和国代表…なんか不気味なチームじゃない?」

 

ツバサ「ええ、少し気になるわね」

 

 

 

───ピーッ!!!

 

 

日本「「「!!!!」」」

 

A『さあ、試合開始です!!イタリア代表が果敢に攻め上がっていきます!!!』

 

 

ラファエレ「フィレア…!!」パス

 

フィレア「よし…みんな上がるんだ!」

 

フィレアの指示でイタリア代表が一斉に攻撃を始めた。千歌たちは一人ひとりの動きをその目で追い、そして…確信した

 

 

千歌「速い…私たちと試合した時よりもレベルアップしてる…」

 

梨子「攻撃はフィレアさん、中盤は和葉さん…そして守備は鞠莉さん。3人がそれぞれ主軸になることによって、完璧なチームを完成させてる…」

 

英玲奈「厄介だな。あれでは分析する前に叩き潰される可能性もあるぞ」

 

 

『素晴らしい攻撃です!!コトアール代表はディフェンスする隙が見つからないのか!?その場から動けていません!!!』

 

 

和葉「決めて…!フィレア!」パス

 

動かない相手に対し、和葉は手を緩めることは決して無い。DFの間を貫く鋭いパス。それに反応し走り込んでいるのは"白い流星"

 

 

フィレア「勝って、穂乃果たちと戦うんだ!!はあぁぁっっ!!!」ギュィーン!

 

フィレア「【オーディンソード改】!!」ドガアァン!

 

金色に輝くボールを全力で振り抜くフィレア。オーラにより生成された剣は、ゴールへ真っ直ぐ伸びていく

 

 

フィレア「進化した"オーディンソード"だ…!!どうだ!?」

 

「………」

 

対するコトアール代表のGK。

閉じていた目をゆっくりと開き、片手を迫るシュートへと向けた。そしてそのまま―――

 

 

──────ズンッッ!!!!!!

 

フィレア「!?!?」

 

イタリア「「「!!!!!!」」」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

「………」シュゥゥゥ…

 

表情一つ変えることなく、フィレアのシュートを抑えてしまった

 

 

ラファエレ「片手で…止めた?」

 

アンジェロ「必殺技も使わないで…」

 

どよめきが起こるスタジアム。ヨーロッパ予選で得点女王の記録を持つフィレアのシュートが簡単に止められたのだ。動揺するなという方が無理な話である。

 

そして、ここからイタリア代表、そして日本代表は知ることとなる

 

 

「Phase1 スタート」

 

 

フィレア「な───────

 

イタリア「「「────────

 

 

 

 

圧倒的な"敵"の力を

 

 

 

 

―――――――――

―――

 

 

 

『おおぉ…な、なんということでしょう!?FFI準決勝、イタリア対コトアールの一戦は……信じられない展開になってしまったっっ!!!!』

 

 

日本「「「………!!!!」」」

 

ことり「ひ、酷い…酷いよ!!」

 

聖良「なんなんですか…これは、」

 

晴夏「………」

 

穂乃果「フィレア…みっちゃん…」

 

千歌「……」

 

 

 

グラウンドは抉り取られ、何か壮絶な力によりゴールは吹き飛ばされ、跡形もなく潰されていた。

黒く有害な煙が天へと伸びており、それらは全てグラウンドが燃えたことにより発生したもの。その中でイタリア代表の選手たちはボロボロの状態で気を失っていた

 

 

鞠莉「……か、果南…ダイヤ……ごめん、なさ」

 

最後まで立っていた鞠莉も倒れた。残すは1人、"勝利の化身"と言われた三浦和葉だけだった。

彼女も身体中傷だらけの状態。試合開始直前までの姿が嘘のようだった

 

 

和葉「……こんなこと…初めてだよ。あなたたちは神かなんかかい?」

 

「私たちは鬼だ。神をも喰らう鬼だ」

 

静かに殺気を放ち続ける1人の少女。

そのオーラに和葉は恐怖を感じながら、仲間のあとを追うように意識を手放した

 

 

「"チーム・オーガ"。Phase1 コンプリート」

 

 

 

イタリア 0-36 コトアール

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

準決勝終了後、サニデイジャパンはすぐに宿舎へと戻りミーティングを開始した。

しかし、想像もしなかった結果により、冷静さを保てているメンバーはほとんどいなかった

 

 

にこ「あいつら……決勝で戦うって言ってたくせに…なんなのよ!?」

 

海未「にこ、落ち着いてください」

 

にこ「落ち着いてなんかいられないわよ!!海未はどうなのよ!?あのイタリアが、全員重症で救急搬送なんて「私だって無理です!!!」

 

にこ「…!!」

 

海未「震えが…止まりません。ですが、これ以上は私たちが壊れてしまいます」

 

「「「…………」」」

 

にこ「………ごめん」

 

このようなやり取りが数十分続けられていた。ミーティングと言っても、選手たちは美奈監督が入室してくるのを待っている。

 

そして、通路から会話が聞こえ、それが監督の声だと分かると、選手たちはすぐに席に着く

 

 

千歌「お母さん!!イタリア代表のみんなは!?」

 

美奈「…全員、命に別状は無いわ」

 

美奈の答えに安堵するメンバー。

しかし、コトアール代表への不安感、恐怖心が消えたわけではなかった

 

 

美奈「私たちの決勝の対戦相手は…あのチームよ」

 

「「「………」」」

 

コトアール代表のサッカーは、自分たちの知るサッカーの次元を超えていた。

あのイタリアの力が何も通じなかったのだ。そんなチームと…今度は自分たちが戦う。

 

想像も実感も湧かなかった。

そして、疑問も浮かんだ

 

 

善子「コトアール代表…開会式の時にそんなチームいたかしら?」

 

花陽「記憶にないです…全チームをチェックしたはずなのに…」

 

 

「彼女たちは"オーガ"」

 

「「「!!!!!!」」」

 

1人の少女が席から立ち、"オーガ"と口にした。メンバー全員が声の主の方へと振り向くと、その少女は部屋の奥から歩を進め、自ら前へと出てきていた

 

 

晴夏「歴史を変えるために、未来から送り込まれた日本軍の特殊部隊です」

 

千歌「晴夏…ちゃん??」

 

晴夏「私も……私たちのサッカーを守るために未来から来ました」

 

晴夏「これから話すことは…全て真実です」

 

 

 

FFI決勝戦

 

日本VSコトアール(オーガ)

 

 

 





ということで、決勝戦の対戦相手は"オーガ"です。
次回はこれまでの伏線回収などを行う予定ですが、普通の試合の決勝戦も読みたかった。という意見があるかと思います。作者自身もイタリアとの決勝戦も書きたかった気持ちもあります。

ですので、先の報告にはなりますが、世界編終了後に虹ヶ咲学園×イナズマイレブンGOのお話と同時進行で『輝こうサッカー外伝』を執筆します。そこで『日本VSイタリア』の決勝戦を書こうと思っています。詳しいことは最終話で説明します。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです。



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第3章 162話 「"歴史の修正"」

皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
今回は辻褄合わせをしていきます。





 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

決勝で戦うはずだったイタリア代表が大差で散った。日本代表の対戦相手はコトアール代表…しかし、何か様子がおかしいチーム。

そして、謎の少女だった葉石晴夏が衝撃の告白をし始めるのであった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

晴夏「私も……私たちのサッカーを守るために未来から来ました」

 

晴夏「これから話すことは…全て真実です」

 

ツバサ「待って」

 

言葉を遮るように口を開いたツバサ。それは突然の展開に困惑し、理解が追いついていないメンバーたちを代表した行動だった

 

 

ツバサ「突然、未来とか言われてもほとんどの人が信用出来ないと思うわ。何か証明出来るものはあるのかしら?」

 

晴夏「……証明、ですか」

 

予想していたとはい、やはり受け入れてもらうのは難しかったかと言葉を詰まらす晴夏。

しかし、そんな彼女を庇おうとする者が1人

 

 

希「うちは本当やと思うよ」

 

晴夏「…!」

 

「「「!!!!」」」

 

全員が驚く中、希は続けた

 

 

希「実はね、ブラジル戦前のスパイ探しの一件の時…月ちゃんと同時に晴夏ちゃんの事も調べてたんや」

 

月「晴夏ちゃんは関係無いんじゃなかった…?」

 

希「そう思ってたけど、偶然にしては少し気になる共通点があったんや」

 

ツバサ「共通点?」

 

希「晴夏ちゃんが外出している時に、サニデイジャパンのメンバーの誰かが事件に巻き込まれていた」

 

日本代表の宿舎は選手が外出する時は名簿欄に記入、門限の時間に点呼をとるというのが決まりだった。

その外出日と数々の事件を照らし合わせた結果…

 

 

希「ガルシルド邸に潜入した時間、ガルシルドの手下に襲われた時間、晴夏ちゃんはちょうど外出してたんや」

 

善子「でも、それは晴夏をスパイだって疑う証拠になっちゃうんじゃないの?」

 

希「違うんや。晴夏ちゃんは逆」

 

 

 

希『ラーメン屋の大将さん』

 

大将『…?どうした?嬢ちゃん』

 

希『千歌ちゃんたちがガルシルド邸に向かったことが分かった本当の理由ってなんですか?』

 

大将『……ありゃりゃ、バレてたか』

 

大将『葉石晴夏って子が教えてくれたんさ』

 

 

英玲奈「晴夏は私たちがガルシルド邸に向かったことを把握していた…?」

 

希「花丸ちゃん。ガルシルドの手下と試合したあの日、誰から買い出しを頼まれた?」

 

花丸「晴夏ちゃんずら。買うものが多くて…いつもより時間がかかって…」

 

希「そして偶然にも、ガルシルドの事件を担当しているサエさんの耳に入った…」

 

希「でも本当に偶然なんやろうか?」

 

にこ「希の考えすぎでしょ?」

 

希「……全部、こうなるって分かっていたら、辻褄が合うんや」

 

偶然かもしれない。だが、数々の晴夏の行動が無ければ、選手たちはもっと危険な目にあっていたかもしれない。

それは晴夏が未来から来たからこそ、全て把握していての行動だったのか。希の推理、そして晴夏への問い。これらは偶然か必然か

 

 

晴夏「……私のこれまでの行動は全て、1つの目的のためです」

 

希の話しを聞いたメンバーたちは、まだ疑ってはいるものの、晴夏の話しを最後まで聞くことにした

 

 

晴夏「ガルシルドの野望を食い止めること。それが目的です」

 

晴夏「そもそも、正しい歴史ではガルシルドが逮捕されることはありませんでした」

 

「「「!!!!」」」

 

晴夏「皆さんも分かっているように…ガルシルドは"闇の力"を兵器として利用し…戦争を起こそうとしていました。私たちの世界では、現に今でも戦争中です」

 

千歌「戦争……」

 

月「じゃあ、晴夏ちゃんは過去に戻って歴史を修正。ガルシルドが戦争を起こさなかった未来を作ろうとした…ってことかな?」

 

晴夏「はい。でも…ダメだったんです」

 

千歌「ダメ?」

 

晴夏「歴史は…変わりませんでした」

 

闇の力を狙っているのは、ガルシルド1人だけでは無かった。また新たな存在が戦争を引き起こし、結果として未来での戦争は変わらない。

"闇の力"が存在する限り、戦争の未来は避けられないのだ

 

 

晴夏「だから…国は強硬手段に出ました。それがあの"オーガ"です」

 

晴夏「"オーガ"は歴史修正・戦争兵…両方の専門部隊です。狙いは千歌さんと穂乃果さん。戦争の根源を殲滅し、強制的に歴史を修正しようとしています」

 

「「「!!!!!!」」」

 

穂乃果「狙いは…私たち」

 

千歌「歴史を変えるために…闇の力を持つ私たちを…」

 

晴夏「私はそれを防ぎたいんです!!!!」

 

穂乃果、千歌「「!!」」

 

晴夏「千歌さんたちのサッカーを…その輝きを…絶対に失わせるわけにはいかないんです!!それは…血を引く私たちの使命でもあります、」

 

千歌「…血を引く?」

 

 

 

晴夏「私は高海千歌さんの曾孫にあたります」

 

 

千歌「……ゑ?」

 

「「「えぇえぇえぇえぇ!?!?」」」

 

千歌「わ、わわ私がひいお婆ちゃん!?!?」

 

曜「千歌ちゃん落ち着いて!?」

 

梨子「た、確かに…千歌ちゃんに似ている理由にも説明がつくわ…」

 

晴夏「ひいお婆ちゃんのサッカーを守るためにも…私が日本代表のメンバーに混ざり、一番近くで守る必要がありました」

 

晴夏「でも、オーガが活動を開始した今、皆さんの力を借りなければサッカーは守れません」

 

深々と頭を下げる晴夏。お願いしますと一言、日本代表の選手たちの答えを待った

 

 

穂乃果「答えは1つだよ!オーガに勝つ!」

 

晴夏「…!」

 

穂乃果「私たちのサッカーは私たちが守らないと。それに、歴史は必ず穂乃果たちが変えてみせる!!」

 

穂乃果「そうでしょ?千歌ちゃん」

 

千歌「はい。世界一がかかった決勝でもあります。全力のサッカーで私たちは戦います!」

 

千歌と穂乃果の考えに異議を唱えるものはいなかった。この2人が信じるならば迷いは無い。

それは、チームの信頼の証であり、強さの根源。サニデイジャパンの姿だった

 

 

美奈「話はまとまったみたいね」

 

穂乃果「監督…!」

 

美奈「千歌ちゃんの言う通り、次の試合は相手が誰であろうと決勝戦よ。世界一が決まるわ。それはここにいる全員に共通して言えること」

 

美奈「私たちも全力でサポートするわ。絶対に勝ちましょ♪」

 

「「「はい!!!!!!」」」

 

 

千歌(あれ…?千歌が曾祖母なら、お母さんは高祖母だよね、)

 

千歌(凄い変な感じだな…はは、)

 

 

晴夏のことを受け入れたサニデイジャパンは、そのまま決勝戦に備えてのミーティングを開始した。

対戦相手は"チーム・オーガ"。データがイタリアとの準決勝以外存在しないため、晴夏の説明も含め、分析を開始した

 

 

花陽「イタリアとの準決勝…36-0で勝利しています…必殺技の使用はありませんでした」

 

晴夏「彼女たちのサッカーはサッカーではありません…兵士として訓練されているため、手段は選ばないと思います」

 

果南「チーム・ガルシルドよりもタチ悪いね。勝算はあるの?」

 

必殺技などが見れなかった以上、細かな作戦を考えることは出来ない。

1つ言えることは、"オーガ"が自分たちの想像をはるかに凌駕する実力を持っているということ。

明日からの練習は今よりも強くなるため。自分たちにはそれしか出来ないが、それが最善の選択だった

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「流石だな。サッカーにおいても、オーガの戦闘能力は凄まじい」

 

「だが…やはり恐ろしい奴らだ。高海千歌、高坂穂乃果の呪文に取り込まれた日本代表を、確実に潰さなければならない」

 

未来の世界。議会室でオーガの報告を受けた特殊部隊司令部では"オペレーション オーガ"のPhase2への移行の準備が進められていた

 

 

「提督。歴史修正のために、先に過去へと向かった2人の少女は…?」

 

「彼女らはもう必要無い。元々我々の軍の一員では無いのだ。オーガの殲滅対象だ」

 

「なるほど。聞いたな。"バタップ・スリード"」

 

バタップ『はい』

 

画面に映るチーム・オーガのリーダー、バタップ。

特殊部隊の中でもずば抜けた戦闘能力を持つ彼女は、戦場でいくつもの死闘を切り抜けてきている

 

 

「イタリア代表は見せしめ。お前たちの使命は歴史の修正だ。手段は選ばん」

 

バタップ『了解』

 

提督と呼ばれていた男が立ち上がる。その目には憎悪と怒りが溢れ、声にも力が入っている

 

 

「諸君!!我らは忌むべきサッカーを持って歴史を変える!!!未来のため、歴史に新たな真実を刻むのだっっ!!!」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

時は戻って過去の世界。

 

その日の夜、ミーティングを終えた千歌と穂乃果は砂浜へと来ていた。

2人で話す時間が欲しい。千歌からの提案だった

 

 

穂乃果「いや〜…まさかフラムちゃんがね、」

 

千歌「穂乃果さんの曾孫さんだったなんて…」

 

 

千歌『あ、そういえば晴夏ちゃん』

 

晴夏『何ですか?ひいお婆ちゃん』

 

千歌『ひ、ひいお婆ちゃんはちょっと止めて欲しいかな…あはは、』

 

晴夏『はい!千歌ちゃん、何ですか?』

 

千歌『さっき、血を引く私"たち"って…』

 

晴夏『あちゃぁ…口が滑っちゃって』

 

千歌『ほかにも日本代表のメンバーの曾孫の人がいるってこと…なの?』

 

晴夏『イタリア代表に穂乃果さんそっくりなGKいましたよね』

 

千歌『あぁ、いましたね………ゑ?』

 

晴夏『その子です』

 

 

 

穂乃果「何十年たっても、世代が変わっても、千歌ちゃんとのサッカーは続いてるんだね!」

 

千歌「そう考えると…なんか嬉しいです」

 

木に吊るされているタイヤのところまで行くと、千歌は吸い寄せられるようにタイヤの元へ。

そしてそのまま足でタイヤを蹴り始めた

 

 

千歌「…私、まだ実感がわかないんです」

 

穂乃果「晴夏ちゃんのこと?」

 

千歌「それもあります。でも、本来の私たちの目標…世界一へのための戦いも、あと1試合だということが、決勝戦だということが…」

 

穂乃果「確かにね」

 

千歌「私はまだサッカーを始めたばかり…新しいことの連続で、一瞬一瞬が楽しくて…」

 

穂乃果「楽しいことはあっという間…このチームでサッカー出来るのもあと僅か」

 

あの日、UTX高校に集められた別々のチームの選手たち。最初はバラバラで、個人でも課題だらけ。しかし、気づいた時には世界一まであと一歩のチームまで成長していた

 

 

穂乃果「だけど、記憶には一生残るよ。今だけじゃない。この先も楽しいことは沢山ある!」

 

千歌「穂乃果さん…」

 

穂乃果「そのためにも…私たちの未来のためにも…決勝戦、絶対に勝とう」

 

千歌「はい…!」

 

 

夜空が映る海、その向こう、水平線の遥か彼方から次の朝が近づいてきている。

思い出と同時に決意を胸に―――

 

 

 

―――決勝戦、当日がやってきた

 

 

 




結論、ガルシルドが戦犯すぎ



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第3章 163話 「運命の決勝戦」

皆さんどうも。『コットンキャンディーえいえいおー』で歓喜の舞のルビィちゃんキャンディーです。
今回は短めです。




 

 

 

 

決勝戦当日、寝坊常習犯であるはずの私は、珍しく早く起きていた。

不思議と二度寝する気が無く、今すぐに体を動かしたい衝動に駆られていた。

 

ふと横を見ると、私と同じ部屋のメンバー、高坂穂乃果さんの姿はベッドに無かった。

 

すぐに寝間着から着替え、朝日出る前の少し涼しい世界へと飛び出した。向かうのは穂乃果さんがいつもいる場所

 

 

―――

 

 

穂乃果「いや〜、私も眠れなかったよ!」

 

笑顔で答える穂乃果さん。

まだそこまで汗をかいていないところを見ると、私と起きた時間はそこまで変わらなかったのだろう。

巨大タイヤを何度も受け止め、高ぶる気持ちを何とか抑えようとする。考えるよりも先にまずは動く精神は…本当に尊敬してしまう

 

 

穂乃果「昨日は凄かったよね!まさか本当にみんなと練習出来ちゃうなんて!」

 

穂乃果さんの言う"みんなとの練習"とは、昨日イタリア代表のメンバーのお見舞いに行った時の鞠莉ちゃんからの提案だった

 

 

千歌『世界中のチームと!?』

 

鞠莉『イエース♪ただの決勝戦じゃないってことはよく分かりました。そこで!マリーが各チームに連絡しておいたので〜♪』

 

ダイヤ『また勝手に…』

 

梨子『で、でも…とても頼もしいかも』

 

晴夏ちゃんのこと、オーガのこと、歴史修正のこと、鞠莉ちゃんたちはすぐに受け入れてくれた。

怪我が酷くない人は参加するとも言ってくれた。鞠莉ちゃんは……ダイヤさんと果南ちゃん、ルビィちゃんに本気で止められてたけどね

 

 

 

理亞『あ、あいつら…本当に来たわよ?』

 

花陽『ぴ、ぴゃぁぁ!?!?』

 

花陽ちゃんが気絶しかけるほどの豪華メンバーだった。私も…正直鳥肌が治まらなかった

 

 

絵里『みんな、また一緒にサッカー出来て嬉しいわ!』

 

フロイ『エリーの仲間は私たちの仲間!喜んで力になるよ』

 

 

神奈『久しぶりだねロニージョ』

 

ロニージョ『ええ!カンナも元気そうだね』

 

にこ『あんたたち…今日は私たちの練習相手なんだからね?』

 

 

エドガー『友のためならば、微力ながら御相手しましょう』

 

ディラン『友達なんでしょ!そんな固くならずに、もっとギンギンに行こうぜ!』

 

凛『そうにゃ!テンション上げてくにゃー!』

 

 

クラリア『高坂穂乃果。今日はよろしく頼む』

 

穂乃果『こちらこそ!クラリア!』

 

 

スペイン代表、イギリス代表、イタリア代表、アメリカ代表、ブラジル代表、ロシア代表…本戦前の歓迎パーティ以上の盛り上がりになって…嬉しさと楽しさが溢れて…

でも、驚くのはまだ早かった

 

 

和葉『千歌ちゃん。アジアから頼もしい助っ人たちだよ』

 

千歌『…!!』

 

アジア予選で戦ったチームのキャプテンたちも、チームを代表して練習に参加しに来てくれたのだ。

 

サウジアラビア代表、オーストラリア代表、韓国代表、中国代表。どのチームともお互いに全力でぶつかり合い、試合が終わる頃には、サッカーで繋がったかけがえのない仲間になっていた。

 

練習が始まってからも…その時は国境も人種もチームも関係無く、全員でただひたすらにボールを追いかける。

そして、ふとグラウンドを見渡して思った。

 

ああ、輝いているなって。

あの時見つけた私たちの輝きは、今もより強くなって…大きくなって…穂乃果さんの言ってた一生に残る思い出

 

 

千歌『【ZスラッシュGX】!!』

 

和葉『…!!やるね!』

 

私がサッカーに出会ったことは奇跡。

輝きの中で────私はサッカーをしていた

 

 

 

 

穂乃果「千歌ちゃんが探していた"輝き"…とっても良いね」

 

私がタイヤを蹴り始めてから少し時間が流れたあとだった。水平線から顔を出す太陽を見ながら、穂乃果さんがゆっくりと口を開いた

 

 

穂乃果「あの太陽みたいに眩しくて…温かくて…よりサッカーが好きになった。サッカーが無ければ、この繋がりも生まれなかったかもしれないからね」

 

穂乃果さんの言葉を聞いて、私はサッカーと出会ったあの時の光景を思い出していた。

 

まるで私をどこかへ導くように風に飛ばされるチラシ。辿り着いた先には巨大なスクリーンに映し出されたサッカーの試合。

あそこから全てが始まり、0から1へ。1から10へ。10から100へ。

 

今に至るまでの輝き、全てを感じ取った…

その時だった

 

 

千歌「────────あ、」

 

穂乃果「……やったね。千歌ちゃん」

 

木に吊るされていたはずのタイヤが―――数十メートル先にまで吹き飛ばされていた。

私が蹴ったのだ。蹴り返したのだ。足には…今までに無い感覚があった

 

 

千歌「お母さんの…力」

 

穂乃果「千歌ちゃんも繋いでいくんでしょ?」

 

お母さんに止められていることは穂乃果さんも分かっていた。でも同時に、私がそれでも諦めずに継承するのだということも分かっていた。

だから、私はそれに答えるために一言

 

 

千歌「はい!」

 

 

私たちはそのまま砂浜を後にした。次ここに戻ってくる時には────世界一だ

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『全世界のサッカーファンの皆さま!ついに…ついにこの日がやってまいりました!』

 

A『FFI世界大会決勝戦!サニデイジャパンVSチーム・オーガ、世紀の一戦です!!』

 

A『両チームとも今大会までは無名!まったくの未知数からスタートしたチームでした!そのチームが、強豪国との激戦を勝ち上がり、決勝戦へと進出したのです!!』

 

 

フィレア「いよいよだね…」

 

フラム「……オーガと知って戦うなんて…晴夏は無茶苦茶よ」

 

フラムはブラジル戦の日の夜、晴夏と連絡を取っていた。共に未来を変え、オーガの出撃を阻止する事が目的。晴夏ももしもの時は日本を止めなければ…と言っていたのだが、

 

 

フラム「昨日電話したらやっぱり戦うって…あれはもうサッカーバカだよ、」

 

和葉「いいんじゃない?結局、サッカーはバカになった方が楽しいし、めちゃくちゃ強い」

 

 

「その言葉、大いに共感できるな」

 

和葉「…!クラリア、遅かったね!」

 

クラリア「外の売店の料理がどれも魅力的でな」

 

山のような料理を抱えながら現れたスペイン代表キャプテン、クラリア・オーヴァン。

そしてイタリア代表の座る席の周辺は、サニデイジャパンの勇姿を見届けるべく、戦友たちが集まっていた

 

 

マーク「ジャパンのスタメン発表はまだか、」

 

神奈「最初から戦力は固めるだろうね。相手の力が未知数すぎるもん」

 

 

レオナルド「楽しんでよ…!日本!」

 

ロニージョ「大丈夫!彼女たちなら…!」

 

 

フロイ「聖騎士長様はどっちが勝つと思う?」

 

エドガー「ふっ…愚問ですね」

 

 

A『この試合、どちらが勝ってもおかしくは無いと思われますが、どうですか?レヴィンさん』

 

レヴィン『そうですね…サニデイジャパンはここまで持ち前の粘り強さで確実にレベルアップを重ねてきました』

 

レヴィン『ですが、コトアール代表は今までの試合で必殺技を使用してきていませんでした。彼女らが必殺技を使用した時、どんな力を見せてくれるのか非常に気になるところですね』

 

A『なるほど!どちらのチームが世界の頂点に立つのか!まもなく新たな歴史が刻まれます!!』

 

 

 

美奈「……最後の、スタメン発表ね」

 

「「「…………」」」

 

美奈「高海千歌、高坂穂乃果、園田海未、南ことり、渡辺曜、桜内梨子、黒澤ルビィ、津島善子、星空凛、鹿角理亞、鹿角聖良、綺羅ツバサ、統堂英玲奈、優木あんじゅ、黒澤ダイヤ、松浦果南、矢澤にこ、東條希、渡辺月、葉石晴夏」

 

美奈「今のあなたたちは…私たちの願った存在でもあるわ」

 

真恋「……」

 

美奈「でも、細かいことは気にしないで?今は…全力のサッカーをする時間よ!!」

 

「「「はい!!!!」」」

 

 

美奈「FW 黒澤ルビィ、黒澤ダイヤ、渡辺月」

 

ルビィ、ダイヤ、月「「「はい!」」」

 

美奈「MF 高海千歌、園田海未、星空凛、統堂英玲奈」

 

千歌、海未、凛、英玲奈「「「はい!」」」

 

美奈「DF 津島善子、鹿角聖良、東條希」

 

善子、聖良、希「「「はい!」」」

 

美奈「GK 高坂穂乃果」

 

穂乃果「はい!」

 

美奈「そして…キャプテンは千歌ちゃん」

 

 

 

FW………渡辺月、黒澤ルビィ、黒澤ダイヤ

 

MF…………星空凛、高海千歌☆、園田海未

 

MF……………………統堂英玲奈

 

DF…………津島善子、鹿角聖良、東條希

 

GK……………………高坂穂乃果

 

3-1-3-3

 

 

サニデイジャパンの選手たちはその場で円になり、手をひとつに重ねる。

運命の決勝戦、最後の気合い入れである

 

 

千歌「みんな…!ここまで本当にありがとう!!」

 

にこ「ちょっと?それ終わった後に言うんじゃないの?」

 

希「ええやん。千歌ちゃんらしい!」

 

千歌「決勝戦…絶対に勝とう!日本ーー!!」

 

「「「サーンシャイーン!!!!!!」」」

 

 

 

─────ドシャアァァァン!!!!

 

「「「!?!?!?」」」

 

突然、轟音と共にグラウンドに雷が落ちた。

空を見ると、少し前まで晴れていた空が分厚い雲により隠され、何やら禍々しいオーラを放っている

 

 

晴夏「……来た」

 

晴夏の声と同時に、殺気がグラウンドから放たれ始めた。見るとそこには…軍服を身にまとった未来の兵士"オーガ"の姿があった

 

 

千歌「……」

 

サニデイジャパンの選手たちも続いてポジションにつく。

千歌はチームを代表し、オーガのキャプテンであるバタップへと近づいた

 

 

千歌「…私、日本代表キャプテン「高海千歌」

 

千歌「…!」

 

バタップ「そして…高坂穂乃果」

 

穂乃果「…」

 

バタップ「バタップ・スリードだ」

 

千歌「いい…試合にしましょう。よろしくお願いします」

 

バタップ「……くだらない」

 

千歌、穂乃果「「!!」」

 

バタップ「戦場で敵と馴れ合おうとは…」

 

バタップの赤い瞳がギラりと光ったのが分かった。

やはり、ただ純粋なサッカーの試合をするのは厳しいようだ

 

 

バタップ「総員先頭配置…散開せよ」

 

オーガ「「「!!」」」バッ

 

 

穂乃果「千歌ちゃん。私たちもポジションに」

 

千歌「はい…」

 

 

運命を賭けた決勝戦が─────今始まる

 

 

 




ー おまけ ー

晴夏「そういえば千歌ちゃん」
千歌「?」
晴夏「私の苗字、実は偽名なんです」
千歌「え?そうなの?」
晴夏「葉石(はいし)を分けて『はい』と『し』」
千歌「うんうん」
晴夏「ハイとシーは英語で?」
千歌「ハイ…highは…"高い"…シーは"海"……あ、」
晴夏「高いと海で高海晴夏でしたー!」
千歌「凄い!天才!天才だよー!!」

月「血は争えない…みたいだね」
曜「あはは…」



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第3章 164話 「オーガ戦 "不気味な開戦"」

皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
今回からオーガとの決勝戦です。よろしくお願いします




 

 

 

日本のとある場所に店を構えるラーメン屋。

女性店長が切り盛りするこの店に、今日は珍しい客がたくさん訪れていた

 

 

「はい!いらっしゃい!」

 

夜「時間休で来ましたヨーソロー!!」

 

弥生「夜さん…ここお店です」

 

方引き戸をガラガラと鳴らしながら来店するのは、ライオコット島から帰国した園田弥生と渡辺夜だった。

夜のハイテンションに動じることなく、店の大将は奥の座敷へと2人を通した

 

 

弥生「…光穂?お店はいいのですか?」

 

光穂「旦那に任せてるから大丈夫よ!それより、ほむまん持ってきたから食べて!」

 

弥生「………いただきます」

 

ひな「相変わらず、園田家はほむまんが大好きね」

 

先に座っていたのは、"過去の音ノ木坂学院サッカー部キャプテン"高坂光穂と"現音ノ木坂学院理事長"南ひなだった

 

 

夜「まだ来てないのは…あと2人?」

 

ひな「美奈、真恋、サエは現地だからそうなるわね。鈴香は大丈夫なの?試合見なくて」

 

鈴香「大丈夫よ〜。私は料理しながら見るから。なんたって娘がスタメンだもの!見ないわけにはいかないわ!」

 

ひな「凛ちゃん、ますますあなたに似てきたわね」

 

店内のテレビで選手たちが入場を始めた時だった。再び扉が開き、最後の2人が来店した

 

 

光穂「乃々子!久しぶりね…!」

 

乃々子「皆さんもご無沙汰してます」

 

弥生「沼津からお疲れ様です…優花さんもありがとうございます、」

 

優花「全然!私の家が一番駅から近いから…!」

 

県外に住んでいる乃々子を駅まで迎えに行っていた優花。久しぶりの再開に盛り上がる店内。

そして、変わらぬ雰囲気に対し、抗えぬ時の流れ。化粧でも隠しきれない皺に寂しさを感じてしまう

 

 

夜「ますます謎だよね。美奈の美魔女レベル」

 

乃々子「あの人…見た目が高校生の時から変わった気がしないのよね、」

 

テレビでちょうど日本代表の監督が映されている。

自分たちの意志を美奈へと繋ぎ、そして美奈が新たな世代へと繋いでいった。その繋がりの終着地が―――この試合で見れるかもしれない。叶うかもしれない

 

 

光穂「さ!試合が始まるわ。応援するわよ!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

A『さあ…!試合が始まります!!』

 

 

 

ー サニデイジャパン ー

 

FW………渡辺月、黒澤ルビィ、黒澤ダイヤ

 

MF…………星空凛、高海千歌☆、園田海未

 

MF……………………統堂英玲奈

 

DF…………津島善子、鹿角聖良、東條希

 

GK……………………高坂穂乃果

 

3-1-3-3

 

 

ー オーガ ー

 

FW……………エスカバ、ミストレ

 

MF……サンダユウ、バダップ☆、ドラッヘ

 

DF………ダイッコ、イッカス、ジニスキー

 

DF…………………ブボー、ゲボー

 

GK………………………ザゴメル

 

2-3-3-2

 

 

 

提督『いよいよだ…高海千歌、高坂穂乃果はこの戦闘でサッカーを自ら否定することになる』

 

『サッカーがいかに愚かなことか思い知らせろ!!危険思想を一掃するのだ!!!』

 

 

オーガの選手たちの無線に"戦闘開始"の司令が出された。それと同時に軍服からユニフォームへと服装が変化する

 

 

バダップ「了解。Phase2スタート」

 

日本代表の選手たちがオーガの不気味な雰囲気に戸惑いながらも、試合の笛が今―――

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

ルビィ「行くよ…お姉ちゃん」

 

ダイヤ「ええ…!」

 

 

A『サニデイジャパンが勢いよく上がっていく!!』

 

 

世界各国の代表選手、そして仲間たちが固唾を呑んで見守る中でスタートした試合。

序盤から全員で攻撃するために上がっていくのだが…

 

 

ルビィ「……?」パス

 

違和感を感じたルビィはヒールでバックパス。千歌がボールを持ち、辺りを見回すも…

 

 

千歌「なんで…?」

 

 

A『おや?どうしたことかチーム・オーガ、全く動きません!!サニデイジャパン、ブロックされることなく一気にゴール前だ!!』

 

 

千歌「だったら…月ちゃん!!」パス

 

相手がどんなに強いチームだったとしても、攻撃すれば勝てる可能性は必ず存在する。

千歌は遠慮なく行こうと気持ちを切り替え、前を走る月へ鋭いパスを出す

 

 

ダイヤ「決めてください!月───ギュン!!

 

ダイヤ「!?!?」

 

 

月「まずは1発!!」

 

ゴールと自分の間に遮るものは何も無い。

足を後ろへ大きく引き、ゴールに狙いを定め、シュートを─────ギュン!!

 

 

月「え!?」

 

日本「「「!!!!」」」

 

 

サンダユウ「……」ズザーッ

 

風が自分の前を流れたと思いきや、ボールが足元から消えていた。その数秒後に離れた場所で何かが擦れる音。見るとMFのサンダユウがボールを持ちながら減速を行っていた

 

 

A『おっと、渡辺月シュートならず!!サンダユウが素早くカット!!』

 

 

サンダユウ「……」パス

 

ダイヤ(今の…スピードは…)

 

ダイヤは自分が早くも冷や汗を流していたのが分かった。

先ほどダイヤは右サイド寄りに走っていた。そしてすぐ隣では動かず棒立ちしていたMFのサンダユウ…しかし、気づいた時には…

 

 

ダイヤ「一瞬で左サイドの月さんのボールを…『園田海未がオーガからボールを奪ったぁ!!』

 

ダイヤ「!!」

 

海未「ダイヤ…!ぼーっとしている暇は無いですよ!」

 

先ほど、素早いディフェンスを見せたサンダユウのパスボールを奪った海未。

再び日本の攻撃、ドリブルで持ち込むも、やはりオーガの選手たちの様子がおかしい

 

 

海未「……??」

 

オーガの選手は全員がキックオフ時から…つまり、所定の位置から一歩も動かないのだ。

前を向き続け、ボールや選手には目もくれない

 

 

晴夏「おかしい…イタリアの時とはまるで違う」

 

にこ「やる気あるの…?あいつら、」

 

ことり「ボールを取られたのに、なんで奪いに来ないんだろう…」

 

不信感は増すばかり。しかし、そんな中でも穂乃果の声は大きく響き渡っていた

 

 

穂乃果「気にしないで、攻め込んでいけー!!」

 

海未「はい…!ルビィ!!」パス

 

畳み掛けるように最前線を走るエースストライカーへとパスを出す。

スピード、位置、両方が完璧なこのパス。ルビィも走るスピードを落とすことなく、ボールをキープしようとしていた

 

 

千歌「行ける─────ギュン!!

 

千歌「え…今の『ああっと!?ドラッヘがカット!!』

 

千歌「!!」

 

一瞬だけ目を離した間に日本の攻撃は終わっていた。驚くルビィとボールを奪ったMFのドラッヘ。その選手は…数秒前まで自分のすぐ近くにいたはずだ。ルビィとの距離はかなりあるのだが…どうやって、

 

 

曜「またカット!?」

 

理亞「絶好のチャンスだったのに…」

 

梨子「……でも、何か変じゃない?」

 

 

その後も日本の一方的な攻撃が続いた。

しかし、両チームともシュートの本数は0。相手は何もしていないのに、全くもってシュートまで辿り着けないのだ

 

 

千歌「【ZスラッシュGX】!!」ズババッ!

 

千歌「─────!?ボールが無い!?」

 

バダップ「……」

 

完璧に抜いたはずなのにボールが奪われ、

 

 

海未「【風神の舞】!!」ビュオォォ!

 

吹き飛ばそうとしてもびくともしない

 

 

A『園田海未が"風神の舞"で突破を狙いますが、ボールはミストレに奪われたぁ!!』

 

 

海未「ハァハァ…抜けない…!」

 

英玲奈「イタリアの時のように攻めてくると思ったが…守備だけの時間稼ぎか…??」

 

すでに前半の折り返しを過ぎようとしていた。予想していた展開と全く異なる試合。

オーガの狙いは何なのか?それは、観客席から見届けていた選手たちからはよく分かった

 

 

フィレア「日本の選手たちが…攻めきれないことに苛立っている…」

 

和葉「それが狙いだね。本来の日本代表なら、すぐに気づくことだけど、」

 

 

エドガー「……不安感、苛立ち、焦り。日本代表は周りが見えなくなっていますね」

 

フィリップ「そんな…何とかしないと」

 

エドガー「…今こそ、あなたの出番です。高海千歌」

 

 

息を切らしながらフィールドを見渡す千歌。

攻めてこないことに不安感を抱く守備陣。パスが通らず、シュートが撃てず、苛立ち焦る攻撃陣。

チームが…バラバラになっていることが分かった。何故ここまで気づかなかったのか?決勝戦への…運命を賭けたプレッシャー?

ならば、自分にできることは―――

 

 

千歌「みんな!!しっかりして!!!」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

千歌「みんなの気持ちもよく分かる!!今は確かにサッカーをしている気がしない!!私だって…上手くは言えない、でも、」

 

千歌「今までやってきたサッカーを…見失っちゃダメだよ!この空気に負けてたら…試合には勝てないよ!!」

 

穂乃果「千歌ちゃん…」

 

背中を叩かれた気分だった。しっかりしろ。そう、強く訴えるエネルギーが日本の選手たちの心を刺激した

 

 

聖良「千歌さんの言う通りです。私たちなりに冷静に、作戦を立てましょう」

 

穂乃果「気合いも忘れちゃダメだよ…!強引にでも前へ行くイメージで!」

 

英玲奈「冷静に…強引に…か、なるほどな」

 

千歌の言葉により再び気持ちを1つに集めたサニデイジャパン。幸いにもボールは簡単に奪える。司令塔の英玲奈がボールを持ち、作戦をスタートした

 

 

レヴィン『…!日本代表に動きがありましたね!』

 

A『おおっと!!ここで出てきました!!』

 

 

英玲奈「頼んだぞ…善子!!」パス

 

 

A『津島善子がオーバーラップ!センターバックから一気に攻撃に加わります!!』

 

 

善子がボールを持ったのと同時刻。

十千万旅館では美渡の大きな声が茶の間から

 

 

美渡「志満ー!善子ちゃんがボール持った!」

 

そして仕事中の若女将がすぐに飛んできていた

 

 

志満「…!善子ちゃん」

 

美渡「前半折り返し…やっと来たな!」

 

 

───そして、別の場所でももう1人

 

 

北也「善子…見せてやれ」

 

 

 

善子「私たちを舐めるのもいい加減にしなさいよ」

 

代表に選ばれなかった悔しさを糧に、チーム屈指の体力を得た善子。リベロとして、守備も攻撃も積極的に行う選手へと生まれ変わった。

そして、オーガのプレーを見る限り…

 

 

善子(絶対に上手くいくわ…)

 

サンダユウ「──────ギュン!!!!

 

センターバックでフィールド全体の流れは全て見てきた。オーガの動きは規則的だ。法則、タイミングさえ掴めれば―――

 

 

英玲奈「今だ!!!」

 

 

 

 

───────スカッ

 

 

 

サンダユウ「──────!」

 

善子「……共鳴、してやったわ」

 

善子「【Deep Resonance】」

 

高速接近からのボールカット。それを躱す善子。

そして、この試合初めて、オーガの選手の足が空を切ったのだ

 

 

A『抜けたぁぁ!!!津島善子がサンダユウを躱しました!!素晴らしい反応です!!』

 

 

ディラン「Yes!!ついに突破したよ!!」

 

神奈「津島善子の共鳴は…オーガの動きに対応出来る数少ない技。これはチャンスだよ」

 

善子が突破口を切り開き、畳み掛けるように選手たちが続く。

それを見た善子はチャンスを逃さんとばかりに、ボールを空へと蹴り上げた

 

 

善子「月!決めて!」パス

 

月「任せ──────てっっ!!」バッ

 

ボールに続いて月も飛ぶ。

回転しながらゴールに狙いを定め、空ごと叩きつけるイメージで―――蹴り放つ

 

 

月「【天空落としV2】っっ!!!」ドガアァン!!

 

 

A『ついにサニデイジャパン、シュートを放ったぁぁ!!!津島善子がオーガの選手を引き付けての、強烈な一撃!!!!』

 

 

ザゴメル「……」バチバチ!

 

対するGKザゴメル。

右手に電気のようなオーラを集中させ、自ら迫り来るシュートへと飛び込んでいく

 

 

ザゴメル「【ニードルハンマー】」

 

──ドガガガガガガガガガ!!!!!!!!

ボールを殴った瞬間、強烈なスパーク。

吹き出るように火花が飛び散り、強力なオーラを纏ったボールを腕が貫いた

 

 

月「そ…そんな!?」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

A『チーム・オーガのGKザゴメル、見事に止めたぁぁ!』

 

 

月「くそっ…チャンスを無駄にした、」

 

ザゴメル「っっ!!」ブォン!

 

月「!?みんな気をつけて!!!」

 

空中でシュートを止め、地面に着地してすぐにロングスロー。一呼吸も与えぬパスに、サニデイジャパンの攻撃陣は反応が遅れる

 

 

善子「ちょっ、ここに来てカウンター!?」

 

英玲奈「全員戻るんだ!!」

 

 

バダップ「……」

 

ロングパスの落下点ではバダップが走っている。このままボールが繋がれば、ついにオーガの攻撃が始まる。

しかし、善子が上がっており、薄くなったDF層で守りきることが───────

 

 

 

───────グラッッ!

 

バダップ「!?」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

亜里沙「あ…あれって!?」

 

絵里「…相変わらず、とんでもない技ね」

 

 

 

希「【まさかさま】」

 

 

この技がひとたび発動されれば、標的となった者が地面に立っていることは不可能。

平衡感覚を狂わせ、まるで"空へと落ちていく"ような感覚を与える

 

 

バダップ「………」グラグラ

 

希「立てないやろ?うちが技を解除するまでは、あなたの神経はイカれたまま」

 

地面に膝をついたまま立てないバダップ。

会場全体が驚きに包まれる中、希1人は笑みを浮かべていた。目だけを除いて

 

 

希「カウンター返しや。世界最強の技を喰らい」

 

そう言い放つと希はバックパス。

背後からは冷気が発生している。次の瞬間

 

 

聖良「【氷の矢】!!」バシュッ!

 

希の背後から放たれた氷結の矢。

聖良の得意とする超ロングパス。サニデイジャパンの陣内からオーガの陣内へと跨ぎ、落下場所にはそこに落ちることが分かっていたかのように、1人の選手が立っていた

 

 

和葉「来たね…」

 

鞠莉「ニードルだかハンマーだか知らないけど、その子のシュートは触れまセーン!!」

 

 

彼女はすでに────"髪留めを解いている"

 

 

理亞「決めてよ…ルビィ!!!」

 

 

 

ルビィ「任せてっっ…はあぁぁぁ!!!!」

 

 

A『黒澤ルビィが構えたぁぁ!!!!世界にその名を広めた最強の切り札が…今、放たれるのか!?!?』

 

レヴィン『触れないシュートですよ…!これはザゴメル選手もひとたまりないでしょう!』

 

 

ルビィ「──────っっ!!」バシュッ!

 

巨大な爆弾オーラを包み込み、磨きあげる"技術"

 

 

ルビィ「ぜいっっ!!」バシュッ!

 

そして、重さのあるオーラを自在に扱う"パワー"

 

 

ルビィ「【Awaken the power】!!」

 

紅き流星の爆発するようなエネルギー。

これらが全て揃うことにより、世界に轟く"切り札"が完成する

 

 

ルビィ「【ラストリゾート】っっ!!!!」

 

────ドガアァァァァン!!!!

爆発に近い衝撃波が選手たちの体を揺らした。地面をバウンドしながらゴールに確実に迫っていく。

対するザゴメルは─────再び"ニードルハンマー"の構え

 

 

善子「弾かれて終わりよ!!」

 

ルビィ「……」

 

 

ザゴメル「ふん…」バチバチ!

 

ザゴメル「【ニードルハンマー】」

 

────ドガガガガガガガガガ!!!!

 

 

ルビィ「!!」

 

善子「!?」

 

「「「!?!?!?」」」

 

 

A『ああっと!?ザゴメル選手、"ラストリゾート"に弾かれていませんっっ!!!!』

 

 

ザゴメル「少しは────効いたわっっ!!」

 

────ズバンッッ!!!

ザゴメルの腕がボールを貫いた。

最強の切り札はオーガのゴール前で沈んだ

 

 

A『な…なんということでしょう、"ラストリゾート"が…止められてしまいました!!』

 

 

ルビィ「ハァハァ…」

 

ザゴメル「なかなかいいシュートね。でも…私のゴールは破れないわ」

 

 

まさに"鬼が如く"、圧倒的な力だった

 

 

日本 0-0 オーガ

 

 




『ニードルハンマー』GK技/ザゴメル
釘パンチ。ラストリゾートをも止めるチート技です。



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第3章 165話 「オーガ戦 "全員サッカー"」

皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
区切り良くしたら少し短くなってしまいました。




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

ついに始まった決勝戦。しかし、試合が始まっても攻撃をしようとしないオーガの選手たちに違和感を持つサニデイジャパン。

なんとかシュートを放つも、オーガのGKの強力な必殺技により防がれてしまう。あの"ラストリゾート"さえも…

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

善子「ハァハァ…"ラストリゾート"を止めるって…そんなこと出来るの!?」

 

ルビィ「…あの技、厄介だよ」

 

 

クラリア「…"ニードルハンマー"か、なるほど」

 

"触れない"シュートに触れることが出来たオーガのGK。その一部始終を見ていたクラリアは、ルビィと同じくその理由を見抜いていた

 

 

クラリア「あれは…連射型のネイルガンのようなものだ」

 

ベルガモ「連射型?」

 

クラリア「"ラストリゾート"は確かにあのGKの技を弾いた…だが、弾かれる度に何度もボールに釘状のオーラを打ち続ける」

 

ルーサー「弾いても弾いても…刺すようなパンチが次々と襲いかかる…そういうことか」

 

クラリア「まさに"ラストリゾートキラー"。日本の戦士たち…あのGKをどう崩す」

 

 

オーガの攻撃は希と聖良が抑えてくれている。しかし、肝心の攻撃・シュートはあのGKにより、全て捻り潰されてしまう

 

 

A『"ラストリゾート"が止められてしまったが、サニデイジャパンはどう戦うのか!?』

 

 

千歌「……まだ、諦める時間じゃない」

 

月「千歌ちゃん、」

 

千歌「英玲奈さん、私に考えがあります。全員に指示として伝えてもらってもいいですか?」

 

英玲奈「ふっ、無論だな」

 

月「一泡吹かせてあげよう」

 

希のディフェンスは素晴らしかった。

善子が攻撃に参加し、薄くなったDF層でも強力な必殺技により、オーガの進行を食い止めていた

 

 

A『またしても東條希がボールを奪ったぁ!!チーム・オーガは、この技を破る術は無いのでしょうか!?』

 

レヴィン『射程範囲、回避方法が一切不明な必殺技ですからね…その不思議な技の数々で相手を翻弄する、"スピリチュアルフラワー"東條希…素晴らしい選手です』

 

 

司令塔の英玲奈がボールを受け取り、日本の攻撃が始まった。

英玲奈の最も得意としていることは"情報分析"。試合中に相手のデータ、そして仲間たちのコンディションを把握し、"指揮"を武器とする梨子へと繋ぐ。それが日本の司令塔の一連の流れだった。しかし、

 

英玲奈(梨子に頼ってばかりではダメだ…!)

 

 

梨子と英玲奈の指揮力には差が目立っていた。

事実、梨子が途中交代してからの日本のチーム力は大きく上昇する。それも英玲奈が得た情報あってこそのプレーだが、それを言い訳に自分の指揮力の低さを見て見ぬふりするわけにはいかない。

 

自分は今、任されているのだ。

日本代表の指揮を

 

 

英玲奈「凛、海未!お前たちの協力が必要だ!」

 

凛「お任せにゃ!!」

 

海未「私たちに出来ることならなんでも…!」

 

善子を何度もオーバーラップで無理させるわけにはいかない。オーガの機械化されたプレーに対抗するためには、善子に後半もフィールドに立っていてもらう必要がある。

 

そこで英玲奈は千歌を信じ、作戦を立てた

 

 

英玲奈「ルビィ!!」パス

 

地面スレスレの鋭いパス。今までの試合ならば完璧に繋がるボールだが、オーガのディフェンスはその完璧をも覆す

 

 

ドラッヘ「────────ギュン!!!

 

ルビィ(来た…)

 

ルビィはフィールドへの意識を向ける範囲を広げていた。"広く浅く"。どこからオーガの選手が飛んでくるか分からない中、まるで魚群探知機に映った魚影のように。テリトリーに侵入した時に反応するセンサーのように。

 

誰がどんな動きをしているかを全て"知る"。

オーガの選手が自分の死角からパスコースに飛び込むのを把握し、そして―――

 

 

凛「このボールは取らせないにゃ!!」バチバチ!

 

ドラッヘ「──────!」

 

―――仲間の動きも全て予測する

 

 

A『おっと!?星空凛がドラッヘ選手の行く手を阻んだ!!そのまま黒澤ルビィにボールが渡ります!!!』

 

 

ダイッコ「……」グッ

 

ルビィ「4番」

 

海未「はいっっ!!」ギュン!

 

ダイッコ「!」

 

 

フラム「あのオーガがルビィからボールを奪えない!?」

 

和葉「そうか…考えたね日本は!」

 

千歌の作戦は、選手たちの特技を最大限に活かす内容だった

 

 

美奈「…ルビィちゃんは全国大会の頃から"周囲を見る"力が人よりも優れていたわ」

 

理亞「…!」

 

聖良『何故、ルビィさんがフリーなんですか!?!?』

 

理亞はルビィと初めて戦った、浦の星女学院との試合を思い出していた。

鉄壁のディフェンスを武器とする函館聖泉の陣内を縦横無尽に走り回り、集中的にマークしていたはずなのに毎回フリーでボールを待つ。

それはルビィが随時フィールド全体の状況を把握していたから。まるで空間をその目で写す猛禽類のように。彼女の目は全てを見ている

 

 

美奈「そのルビィちゃんがオーガの選手の誰がどこから来るかを把握して合図」

 

真恋「スピード自慢の風雷コンビに止めてもらうってわけね」

 

しかし、ルビィ中心の攻めだけでは無かった

 

 

ルビィ「千歌ちゃん!」パス

 

 

フラム「せっかくルビィがボールキープ出来てるのに…なんでパスを、」

 

和葉「あれだけ気を張って精神削れば、ルビィちゃんの体力はすぐに無くなっちゃう。分かった…千歌ちゃんの考えは誰かが中心とかじゃない」

 

 

英玲奈「希!聖良!2人も攻撃に参加してくれ!」

 

希、聖良「「!!」」

 

 

 

千歌、和葉「「全員サッカーだよ」」

 

 

レヴィン『これは…DFの選手も攻撃に加わっての全員攻撃ですね…!』

 

A『サニデイジャパンの勢いは止まらず、一丸となってゴールへと突き進む全員サッカーだぁ!!』

 

 

神奈「…さっきまでとは動きが全然違う」

 

マーク「まるで、選手と選手がひとつに繋がっているようだ」

 

 

鞠莉「同じ全員サッカーでも、私たちの"カテナチオカウンター"とは全然違うわね」

 

フィレア(…見える。千歌を中心とした大きな円が。また1つ進化したのか…サニデイジャパンは!!)

 

 

千歌「善子ちゃん!」パス

 

 

A『サニデイジャパンがひとつの円となり、チーム・オーガを確実に突破していく!!』

 

 

1人の選手に頼る必要など無い。善子に無理をさせ過ぎないために、ほかのメンバーが無理をする必要も無い。

全員で負担を支え合い、よりお互いを信じ合い、強大な敵にも負けない(サッカー)を全員で作り上げる

 

 

ルビィ、聖良「「善子ちゃん(さん)!!」」

 

善子「ナイス指示よっっ!!」バッ

 

ミストレ「──────!」スカッ

 

善子「ダイヤ!」パス

 

 

フィレア(私たちオルフェウスのサッカーは、歴史と経験を持つ完成されたサッカー。でもサニデイジャパンのサッカーは…未完成)

 

フィレア(だからこそ彼女らは1試合ごとに変わっていける。必死にボールに食らいつき、いつしかサッカーそのものが劇的に進化を遂げている)

 

フィレア「私たちと戦った…あの試合も!」

 

フラム「進化し続けるサニデイジャパンなら…あのオーガにも、」

 

 

ルビィ「お姉ちゃん!2人来てるっっ!!」

 

ダイヤ「【ヒノカミ神楽】!!」ボオォッ!!

 

ダイヤの身体を包み込むように炎が燃え盛る。迫る相手も流れる風だと受け流し、舞って舞って舞い踊る。

飛び散る火の粉、揺れる髪、燃える瞳。

その姿は会場にいる人々を魅了する

 

 

ダイヤ「どんな相手でも、立ち向かう勇気があれば―――っっ!!」パス

 

月「僕たちは―――進んでいける!!」

 

ゴールへの道が開けた。

そんな考えが頭をよぎった時だった

 

 

────────ドゴッッ!!

 

月「ぐあっ!?」

 

日本「「「!!!!」」」

 

 

A『イッカス選手が渡辺月に強烈なタックル!!!!』

 

 

月(やばい…痛っ…吹き飛ばされ……)

 

突然の衝撃に脳の理解が追いついていなかった。意識が朦朧とする中、吹き飛ばされないためにその場で踏ん張ることしか出来ず。

ボールは誰もいない場所へと1人で転がっていく

 

 

A『全員でボールを繋いできたサニデイジャパンの攻撃もここまでか!?!?』

 

 

月(……また、なのか??)

 

 

希「あかん…!月ちゃんが捕まった!」

 

凛「今からじゃ間に合わないよ…!?」

 

 

僕は…最後の最後までみんなに迷惑をかけるのか?

成長もほとんどせず、仲間を守るとはいえ、スパイとしてみんなに嘘をついていた。

チャンスも…たくさん無駄にした。痛みと衝撃で上手く頭が回らないが、みんなで繋いだボールが遠くへと転がっていくのが見える。

 

みんな、ごめ────「月ちゃんっっ!!」

 

 

月「!!!!」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

 

 

意識の中に溜まったモヤを払う、大きな声

 

 

 

穂乃果「諦めちゃダメっっ!!!!」

 

 

A『なんと!?GKの高坂穂乃果、ここまで上がってきていた!!!!』

 

 

穂乃果「みんなで守る…みんなで攻める!!私たちはみんなで、世界一になるんだ!!!」

 

月「!!!!」

 

穂乃果がボールを高く蹴り上げた。

先ほどまでの意識のモヤが嘘のように消え、あるのは絶対に勝つという最強の気持ち

 

 

月「うおぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」

 

それが声と一緒に溢れ出た。

僕は痛みなど忘れ、空へと飛んだ

 

 

月(違う!!成長出来ない人間なんていないんだ!!僕は渡辺月っっ…日本代表のストライカーだっっ!!!)

 

持てる力全てを右足に込める。

空を落とすだけでは足りない。宇宙を、星々をこの足で全て蹴り落としてやる

 

 

月「【銀河ぁぁぁぁ─────────

 

──────落とし】ぃぃぃぃぃ!!!!

 

 

ザゴメル「【ニードルハンマー】」

 

────ドガガガガガガガガガ!!!!!!

絶え間ない連射音とスパーク。貫通するのも時間の問題か…そう、思った時だった

 

 

ザゴメル(押され…てる?)

 

明らかに。月のシュートが自身に迫ってきていることが分かった。原因はここまでのザゴメルのプレーにあった

 

 

ザゴメル(赤髪のチビのシュート…あのシュートを止めた時のダメージが??)

 

ザゴメル「だとしても…この威力───!?

 

ザゴメル「ぐあぁっ!?」

 

 

月「!!!!」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

 

────バシュウゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

月「や……やった!!!!」

 

 

A『ゴ…ゴール!!!!サニデイジャパン、全員攻撃でなんと先制点!!日本代表初試合で先制点を決めた渡辺月が、決勝の舞台で先制点を決めましたぁぁ!!!!』

 

 

花陽「星降る銀河の希望の一撃…まさに、"銀河落とし"!!!」

 

 

フィレア「すごい試合だ…何が起こるか全く予想出来ない!」

 

和葉「月も自身の殻を破ったね…やるじゃん」

 

 

サニデイジャパンの全員攻撃、そしてゴールを所定の位置から見ていたバダップは未来の世界へと連絡をとっていた

 

 

バダップ「0-1です。続けますか?」

 

『"Phase2"を続行だ。こちらが指示するまで敵の自由にさせろ』

 

バダップ「了解」

 

サニデイジャパンの選手たちが喜びを爆発させる中、バダップの表情は変わらず落ち着いたままだった。

 

それとは裏腹に…骨の髄まで溶かす灼熱のマグマが煮えたぎっていることも知らずに

 

 

 

日本 1-0 オーガ

 

 

 




『銀河落とし』シュート/渡辺月
"天空落とし"の上位互換となる必殺技です。動きやモーションはほとんど同じですが、より重く強力な一撃となっています。"ラストリゾート"を受け止めた時のダメージがあったとはいえ、"ニードルハンマー"を1人で破ったのは流石と言えます。
1人シュート技ならば上位に入るシュートです。


ことりちゃんお誕生日おめでとうございます!!!!



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第3章 166話 「オーガ戦 "進化する皇帝ペンギン"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
まずは梨子ちゃんお誕生日おめでとう!そして…ついにルビィちゃんのお誕生日が…ついに…ついに




 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

善子の共鳴を中心に攻めていたサニデイジャパン。しかし、善子だけに無理をさせるわけにはいかないと考えた千歌は、DF・GKをも含めた全員で攻撃することを提案する。

作戦は上手く進み、日本のサッカーは目まぐるしく進化。最後は月が自身の殻を破る新必殺技"銀河落とし"で先制点を得たのだった

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

A『サニデイジャパンの勢いが止まりません!』

 

 

先制点を得たことにより、更に日本のプレーに熱さと磨きがかかり始めた。

ボールを長くキープせず、奪われても深追いしない。カバーすることにより、1人が負担のかかる技を使う必要が無い。

全員サッカーが1つの円として、チームを完成させつつあった

 

 

凛「希ちゃん!こっちにゃ!」

 

スペースへと走り込みながらパスを求める凛。迷うことなく希はボールを渡し、改めてチーム全体の動きを確認する

 

 

希(梨子ちゃんの指揮無しでこの動き…いや、これが英玲奈っちの全力。そして千歌ちゃんの才能…)

 

ベンチで戦況を見守る梨子も感じていた。

そもそも、日本屈指の強豪校の司令塔である英玲奈の指揮能力が低いわけが無いのだ。

後輩である私を育てるために本来の能力をセーブして?それもあるだろうが、この仲間とのサッカーが全てを変えたのだろう

 

 

凛「【ジグザグストライク】!!」バチバチ!

 

 

A『星空凛が高速ドリブルでDFの突破を試みます!!』

 

レヴィン『いや…あの動きは、』

 

 

凛「でりゃっ!!」パス

 

「「「!!!!」」」

 

凛はドリブルではなく、オーラを込めてシュートに近いパスを放った。

オーガの選手たちも反応が遅れるほどのスピード

 

 

A『なんとパスです!!目で追うのも困難なスピードですが、ボールが向かった先には』

 

 

チカ「ナイス―――パスっっ!!」バッ!

 

 

A『高海千歌!ボールが繋がったぁぁ!!』

 

レヴィン『"ジグザグストライク"は本来シュート技…なるほど。キラーパスですか』

 

 

オーラが込められたキラーパスを足で受け止める。普通の状態では厳しいと判断した千歌は"ゾーン×闇の力"を発動させていた。

身体能力を爆発的に引き上げ、高速パスに追いつくスピード、正確に見極める視力、受け止めるパワーを実現していた

 

 

月「シュート撃てる!!」

 

ダイヤ「今のうちに…!!」

 

声のする方を見ると、ダイヤが炎の壁…"ラ・フラム"で相手の足止めをしていた。

迷うことは無い。千歌は2つの力を限界まで引き上げる。

 

輝きを生む太陽、輝きを奪う闇。

対極し合うオーラをボールに込め、寒気・鳥肌が立つほどの覇気と共に蹴り放った

 

 

チカ「【エクリプス・サン】!!」ドガアァン!

 

 

クラリア「高海千歌がゴールを狙った…!」

 

レオナルド「あのシュートは相手の力を奪う…"ニードルハンマー"の強力なパワーがあれば!!」

 

日本代表と戦ってきた者たちは口を揃えて言う。

「高海千歌のあのシュートは厄介だ」と、そして応援する側になって改めて思う。厄介だが、味方として見ればどれほどまでに頼もしい必殺技かと。しかし、

 

 

────バチバチバチバチ!!!!!

 

千歌「!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

ザゴメルがボールに触れる前に、空中でボールがスパークした。

焼かれるような音が数秒。そのまま千歌のシュートはオーラが焼き払われ焼失。

決まることなく、ゴールの前に沈んだ

 

 

ザゴメル「【エレキトラップ】」

 

 

A『と、止めたぁぁ!!GKザゴメル、新必殺技で高海千歌のシュートを防ぎました!!』

 

 

チカ「…なんで、何も無い場所で触らずに」

 

ルビィ「千歌ちゃんよく見て」

 

目を凝らしながらゴール、そしてその周辺をよく見ると…青白く光る線が張り巡らされていることが分かった

 

 

月「"エレキトラップ"って言ってたね。多分…その名の通り高圧電線だと思うよ」

 

ルビィ「あの線に触れたら一瞬で焼かれちゃう…」

 

"ニードルハンマー"との相性は良くても、"エレキトラップ"のような触れる必要の無い技相手では突破は更に困難になる。

 

その後も、日本代表はオーガのゴールに何度もシュートを撃ち込んだ

 

 

月「うおぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」

 

月「【銀河落とし】ぃぃぃ!!!」ドガアァン!

 

しかし、課題をすぐに修正する精密なコンピューターのように

 

 

ザゴメル「【ニードルハンマー】」バチバチ!

 

月「なっ…左腕で!?」

 

通用したシュートもすぐに対応されてしまった。

右腕が万全な状態に回復するまで、左腕で戦い始めたザゴメル。月のシュートは確かに強力だが腕はボールを無慈悲にも貫通

 

 

ダイヤ「凛さん。私が合わせます」

 

凛「合点承知にゃ!!」ドォン!

 

次のシュートチャンス、ボールを持ちながら構えたのは凛。

地面を力強く踏み鳴らし、猛虎の気迫でシュートを放つ

 

 

凛「10連撃っっ【タイガードライブV3】!!」

 

特訓により、凛は連続で必殺技を撃ち込むことを可能にした。いつもと同じシュートに見えても、実際には見えない速さで10回シュートを撃ち込んでいる。

 

そのシュートの先で走る─────炎のストライカー

 

 

A『これは…黒澤ダイヤのシュートチェインか!?』

 

 

ダイヤはすでに"舞っていた"。あの高圧電線を破るには…更に熱く、更に強く

 

 

凛「ダイヤさん!!」

 

凛の合図と同時に大剣を振りかざし、猛虎に炎を纏わせた。ダイヤは技の名を叫ぶ

 

 

ダイヤ「【炎・マキシマムファイア】!!」

 

ダイヤ「行けえぇぇぇ!!!!」

 

ダイヤの全力の声は虎の咆哮へと変わった。

対するザゴメルは"エレキトラップ"を発動。張り巡らさた電線が青白く光る。触れれば一瞬で丸焦げになる…そんな電線を、

 

 

凛「炎の虎は…!!」

 

ダイヤ「その牙で…全てを焼き千切る!!」

 

 

────ガギィン!!

2人の言葉通り、炎の牙で電線を次々と噛みちぎっていく虎

 

 

A『なんと!!"タイガードライブ"と"マキシマムファイア"の合体シュートは、"エレキトラップ"を強引に突破しながら進んでいきます!!』

 

 

フィレア「すごい…これなら!」

 

フラム「いや、まだです」

 

ガギィン!!ガギィン!!ガギィン!!

金属が千切る音がオーガのゴールへと近づいていた。しかし、ザゴメルは動揺することなく

 

 

ザゴメル「【ニードルハンマー】」バチバチ!

 

左腕で炎のシュートに殴りかかった。

連射音が続く中、固唾を飲んで勝負の決着を待つダイヤと凛。しかし、

 

 

ザゴメル「重い…が、無駄っっ!!」ズバッッ!!

 

ダイヤ、凛「「!!!!」」

 

 

A『ああっと!?ザゴメル選手の腕がボールを貫いたぁぁ!!!日本、惜しくもゴールならず!!』

 

レヴィン『万全な状態ならば"ラストリゾート"をも止めるパワー。ダイヤ選手と星空選手はあとひと息でしたね』

 

 

ダイヤ「ハァハァ…あれも止めますか、」

 

凛「絶対に決まったと思ったのに…!!」

 

相手のGKが2つの技を使い分け始めたことにより、ゴールが果てしなく遠くなった。

全員サッカーで負担を減らしているとはいえ、体力は有限。徐々に疲れが見え始めていた

 

 

英玲奈「後半のことも考えると突破方法を見つけたい…!だが、」

 

聖良「隙がありませんね…何か良い方法は、」

 

 

善子「1つだけ」

 

英玲奈、聖良「「!!」」

 

善子「私に考えがあるわ」

 

善子の考えを聞いた英玲奈はそれをすぐに実行に移したかった。しかし、それを実現するためにはオーガからボールを奪い、自分たちの攻撃に持っていく必要がある。

 

その願いをこの試合、何度も引き受けてくれた選手が1人。強力な防御力でオーガのシュートをここまで0本に抑えることが出来ているのは、その選手の活躍と言っても過言ではない

 

 

希「【まさかさま】」

 

 

A『東條希がボールを奪った!!素晴らしいディフェンスです!チーム・オーガにシュートチャンスを与えません!!』

 

 

神奈「あのオーガの攻撃が…東條希に全て無効化されている」

 

フィレア「あの技を破ることは不可能だよ。日本は…攻撃のチャンスを失うことは無い」

 

 

善子「希さん!ダイヤへパスを!」

 

希「ダイヤちゃん!」パス

 

すでにオーバーラップで準備していた善子が指示を出した。そしてボールを受け取ったダイヤを挟むように走る善子と月

 

 

月「すごく面白そうな作戦じゃん!」

 

ダイヤ「帝女の意志を次ぐ私たちならば、絶対に成功出来ますわ」

 

善子「頼んだわよ…月、ダイヤ!」

 

月、ダイヤ「「うん(はい)!!」」

 

オーガの陣内に入ったところで、ダイヤがドリブルを止め立ち止まった。しかし、善子と月は迷わず全速力で走り続ける。

 

残されたダイヤは指笛を響かせ、"あの生き物"を呼び出す

 

 

ダイヤ「【皇帝ペンギン─────!!!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

蹴り放ったボールを追うように飛び出したのは"ペンギン"だった。

突然のペンギンの登場に驚きを隠せない観客、そして各代表の選手たち。しかし、日本代表の選手たちの反応は違った。

 

言葉では表せない鳥肌感。

自分たちを苦しめた帝国女学院の。数々の活躍を見せたあの技の。その意志が今ここで、決勝の舞台で解き放たれる

 

 

月、善子「「─────2号】!!」」ドガアァン!!

 

 

レヴィン『これは!?新しい必殺技でしょうか!?』

 

A『いえ!あの技は静岡県の強豪校"帝国女学院"の伝統ある必殺技"皇帝ペンギン2号"です!!そのペンギンは…なんと日本代表に受け継がれていたぁぁ!!!!』

 

 

水中を泳ぐように高速でゴールへと向かっていくペンギンたち。

それに対しザゴメルは"エレキトラップ"を発動。空飛ぶペンギンの行く手を阻むも───

 

 

─────ビュンビュンビュン!!!

 

ザゴメル「!?」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

A『あ、当たりません!!"エレキトラップ"をペンギンたちが避けていきます!!』

 

 

ダイヤ「作戦通りですわ…!」

 

月「よし…このまま────────

 

 

────バチバチバチ!!!!

しかし、そう簡単には行かなかった。ゴールに近づけは近づくほど、電線の量は多くなっていた。避けきれなくなったペンギンたちはもう少しのところで電線に衝突。

そのまま焼き鳥になってしまっていた

 

 

月「惜しい…!あとひと息か、」

 

ダイヤ「やはり…正面突破は不可能なのでしょうか」

 

いい作戦だと思った。成功したと思った。

だが結果は相手の方が上手。期待していた分、気分が落ち込むのは避けられなかった

 

 

善子(皇帝ペンギン2号じゃ届かない…考えろ…考えろ津島善子っっ!!)

 

この作戦は絶対に成功させたかった。ペンギンを継ぐものとして…帝国女学院の元で共にサッカーをした者として。

 

恩返しの意もあった。

今の津島善子がいるのは、数えきれないほどの支えがあったからだ。

自分を追い込む、知識を総動員する、何か方法は…?出来るのか…?

 

周りが見えなくなり始めた時、1人の少女の声が耳に入った

 

 

千歌「なんで…2号なの?」

 

 

善子「──────!」

 

 

千歌「もともと1号があったの?」

 

月「あぁ、僕も少し聞いただけなんだけどね。1号は身体を破壊する禁断の技らしくて…安全に改良したのが2号らしいんだ」

 

 

――――――――――――

――――――

―――

 

 

 

善子『皇帝ペンギン1号?』

 

 

過去に、善子も同じ話を聞いていた

 

 

北也『身体を破壊する禁断の技…志満のやつ、その技でバカをしやがって…』

 

善子『……』

 

それ以上、北也が志満の過去の話をすることは無かった。自分も何故、師匠がサッカーを続けていなかったのか気になっていた。

 

だが、その話しをすると志満はとても悲しそうな顔をした。いつもの笑顔で隠そうとしていたが、丸わかりだった

 

 

善子『じゃあ、皇帝ペンギン2号は?』

 

北也『1号を安全に撃つために改良した技だ。1号よりは劣るが…威力は申し分無い』

 

何となく善子は察していた。

1号の使用禁止、そして改良の2号。師匠の"バカ"とサッカーをしていない理由があったからなのだろう…と

 

 

北也『だが、帝国のペンギンは絶えない。継がれて…進化していく。だから月やダイヤに託したんだ。皇帝ペンギンを』

 

善子『進化…』

 

 

────────"進化"

 

 

 

 

 

 

 

善子「そうよ…進化だわ」

 

月「善子ちゃん??」

 

ダイヤ「善子さん、守備ですわよ」

 

 

今で足りないのなら…足りるようにすればいい

 

 

善子「2号を進化させるわ」

 

月、ダイヤ「「!?」」

 

月「いや…善子ちゃん、急には無理だよ?」

 

善子「2号に足りないのは高さよ」

 

月「!」

 

善子「月の"銀河落とし"のように立体的に、より強力に、より効率的にオーラを集めるのよ」

 

冗談で言っていないことは月とダイヤもすぐに分かった。だが、口で言うことと行動に移すのでは、難易度に大きな違いがあることを忘れてはいけない。

 

一つ一つのプレーが勝敗を分ける決勝戦。

そのプレッシャーが、善子への協力の歯止めになっていた

 

 

善子「後悔してからじゃ遅いのよ…!!月もダイヤも、よく分かってるでしょ?やらない後悔が…どれだけ辛いか」

 

だが、それでも善子の言葉が心に刺さる。

今やらなければチャンスは二度と無い。これが最後の試合なのだから

 

 

ダイヤ「…当てずっぽうは無しですわ」

 

善子「!」

 

ダイヤ「しっかりとした作戦ならば、協力しますわ」

 

月「合図は善子ちゃんに任せていいかな?僕たちも全力で合わせる。やるからには成功だ」

 

善子は迷うことなく首を縦に振った。

その目は自信に満ち溢れているようであった

 

 

A『さあ、チーム・オーガの攻撃!!キャプテンのバダップが持ち込みます!!!』

 

 

バダップ「……」

 

サイドにボールを散らせようとすれば聖良に。正面突破ならば希に狙われる。

サニデイジャパンの鉄壁のディフェンスがオーガの攻撃を封じている中…バダップは離れた場所から──────

 

 

バダップ「―――」バッ

 

 

────ボレーシュートを試みた

 

 

希(シュート!?)

 

穂乃果(来る…!!!!)

 

離れていても伝わる威圧感に反応するように、穂乃果が構えたのと同時だった

 

 

─────ドゴッッッッ!!!!!!

ボールが何かにぶつかる音。

ビリビリと衝撃波が伝わってきたことから、それが大きな力の衝突であることが分かった

 

 

穂乃果「ち、千歌ちゃん…!!」

 

思わず声が出た。みかん色の髪を揺らし、バダップの目の前に飛び込んだキャプテン

 

 

チカ「─────っっ!!」メキッッ!

 

足が軋む音。

千歌は両膝飛び蹴りのような体勢でシュートをブロックしている。空中にいるため、そのまま一回転し衝撃を逃がす

 

 

チカ(よし…弾いた!!いける!!)

 

よろけたバダップを確認するのと同時に、千歌は前へとボールを送った

 

 

A『高海千歌の素晴らしいシュートブロック!!これは勇気が無ければ飛び込めないタイミングでした…!!』

 

レヴィン『受け身も落ち着いていましたね。集中出来ている証拠です』

 

A『そしてボールは再び津島善子!!後半も残り僅か!2点目は狙えるのか!?』

 

 

善子「私に合わせなさい…!絶対に成功させる!!」

 

すでに善子の脳内ではイメージが完成されていた。

見える。進化した皇帝ペンギンが、死の電線を越えていくボールが、そして…自分たちの姿が

 

 

善子「─────今っっ!!!!」

 

ダイヤ、月「「!!」」バッ

 

善子に続いて空へと飛ぶ月とダイヤ。

そして間を置く暇もなく、指笛でペンギンを呼びだす。

 

どこからともなく飛んできたペンギンたちは、今までの技では見たことの無い"紫色"だった

 

 

善子「三次元…これが新たな──────

 

 

善子、月、ダイヤ

「「「【皇帝ペンギン3号】!!!」」」ドガアァン!!

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

A『出たあぁぁ!新たな必殺シュート!!』

 

 

ペンギンたちが纏うオーラ、そしてスピードが2号とは桁違いだった。赤い瞳を光らせ、一直線にゴールへと迫っていく

 

 

ザゴメル「【エレキトラップ】」

 

すぐに電線を張り巡らせるザゴメル。

しかし、進化したペンギンたちはいとも簡単に、電線の隙間を通過していく

 

 

凛「すごいにゃ!これなら…!」

 

海未「いえ…まだGKが残っています」

 

 

ザゴメル「………」バチバチ!

 

海未の言う通り、すでにザゴメルは腕にオーラを集め、シュートを待ち構えていた。

"エレキトラップ"を突破する機動力はあっても、"ニードルハンマー"を超えるパワーを持つことは不可能に近かった。

 

まるで希望を打ち砕くかのように、ザゴメルが勢いよく。ボールへと飛びつい─────

 

 

 

ザゴメル「【ニードルハン―――

 

 

 

─────ギュンッッ!!!!!!

 

 

ザゴメル「―――」スカッ!!

 

ザゴメル「!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

電気を帯びた腕は、空を切った。

"急旋回"。ペンギンたちはザゴメルの腕を回避し、ゴールへと飛び込んでいった

 

 

────バシュウゥゥゥン!!!!!!

 

 

善子「……ダイヤの"フェニックスペンギン"」

 

善子「そして"共鳴"のオーラを纏わせたのよ。戦闘機にも引けを取らない機動力…」

 

善子「これが"皇帝ペンギン"よ」

 

 

A『決めたぁぁ!!日本、なんと前半で2点目をチーム・オーガから奪いました!!!!』

 

レヴィン『素晴らしいシュートでした…!高い技術力を必要とする技の…頂点とも言える技ですね!』

 

 

月「はは、すごいや…皇帝ペンギン3号か」

 

ダイヤ「回避に超特価したシュート…まさに、コントロールの極みですわね」

 

 

 

千歌「やったね…善子ちゃん」

 

一部始終を日本側のグラウンドで見ていた千歌はそう呟いた。

しかし、千歌はボールを善子に出してから、とある理由でその場にしゃがむようにして動いていなかった。

 

その姿を見て心配した穂乃果はすぐに千歌へと駆け寄った

 

 

穂乃果「大丈夫、千歌ちゃん??まさか…さっきのブロックで…」

 

千歌「い、いえ。ちょっとびっくりしちゃって」

 

穂乃果「びっくり?」

 

ゆっくりと立ち上がる千歌の視線の先には、表情ひとつ変えずに試合再開を待つ、バダップの姿

 

 

千歌「ただのシュートが…あまりにも強力で。一瞬、骨が折れたかと思いました」

 

穂乃果「すごい音と衝撃だったよ」

 

千歌「…私、思うんです。オーガの選手たちは…まだ本気じゃない」

 

 

 

千歌の予想は───────

 

 

バダップ「………了解」

 

バダップ「"Phase3"スタート」

 

 

───最悪な形で的中することになる

 

 

日本 2-0 オーガ

 

 

 





『皇帝ペンギン2号』シュート/善子、月、ダイヤ
原作では帝国学園、本作品では帝国女学院の3人シュート技です。ダイヤと善子はペンギンを継ぐものとして、帝国とも繋がりが深いメンバーでシュートを放っています。

『皇帝ペンギン3号』シュート/善子、月、ダイヤ
原作ではイナズマジャパンの強力な3人シュート技であり、本作品でも素晴らしい力を発揮した技です。"フェニックスペンギン"の機動力、"共鳴"の対応・反応力を持ったペンギンが縦横無尽にゴールを目指します



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第3章 167話 「オーガ戦 "降り注ぐ、絶望の雨"」


皆さんお久しぶりです。ルビィちゃんキャンディーです。
大学の対面授業開始を理由に上京。生活が落ち着くまでなかなか執筆に取り掛かれなかったことをお詫びします。

また投稿を再開しますのでよろしくお願いします。残り数話です




 

 

 

 

前回の、輝こうサッカーで!

オーガのGKの新たな必殺技『エレキトラップ』は、千歌の闇のオーラをも焼き焦がす強力な技だった。

対する日本は善子の機転から突破を試みる。帝国から受け継いだ『皇帝ペンギン2号』。それを更に進化させ『皇帝ペンギン3号』へ。見事『エレキトラップ』を突破し2点目を叩き出したのだった

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

バダップ「"Phase3"スタート」

 

千歌「…?」

 

穂乃果が心配する中、暴れるように鼓動する心臓をなんとか抑え込み、落ち着いた千歌。

そして耳に入ったのは──────オーガのキャプテン、バダップの気になる言葉だった

 

 

千歌(Phase3…何だろう、嫌な予感がする)

 

イタリア代表の時とは違うオーガのプレー。

もしかすると…まだ本当の実力を私たちには出していないのではないか?私たちがオーガを抑えているのではない。抑えられてるフリを…しているだけなのでは。

 

嫌な考え、憶測が飛び交う

 

 

穂乃果「前半も残り数分…でも、笛が吹かれるまで気を引き締めよう」

 

千歌「……穂乃果さん」

 

穂乃果「?」

 

千歌「気をつけてください。オーガは…多分何か仕掛けてきます」

 

この底知れぬ不安感を、誰かに早く知らせたかった。

ボールをコートの中心にセットし、構えるサニデイジャパンの選手たち。そして変わらずポジションで動かないオーガの選手。

 

何の変化も無い。だからこそ逆に不気味。

まもなく主審が笛を吹く

 

 

月「勢い来てるね…僕たち」

 

ダイヤ「このまま3点目もいきますわよ!」

 

 

ピーーッ!!

笛が鳴った。それと同時に、ボールへと向かおうとするFWの選手たち。

 

しかし、

 

 

ルビィ「……あれ?」

 

ダイヤ「ボールを持っていた選手が、」

 

月「消え…た?」

 

人間の瞬きによる視界の遮断はおよそ0.1秒。

その間にまるで幽霊のように消えたバダップ。何が起きたのか、起きているのか、理解出来ていない日本代表の選手たち

 

 

千歌「………ぇ」

 

 

そんな中で1人の少女の脇腹に

 

 

─────メキメキメキッッ!!!!!!

本人が気づくよりも先に、ボールと足がめり込んでいた。遅れて腹から吐かれる声

 

 

千歌「う───────ぐぁっっ

 

そして誰もいなかった場所で自分の脇腹にシュートを回し蹴りで撃ち込むバダップ。

千歌はそれさえも認識する前に、フィールド外に蹴り飛ばされた。

 

唯一、分かったことはバダップの言葉

 

 

バダップ「─────────消えろ」

 

 

─────ドゴオォォン!!!!

 

「「「!?!?!?」」」

 

曜「千歌ちゃんっっ!?!?」

 

千歌が吹き飛ばされた場所からは砂煙が立ち込めていた。千歌の安否は確認出来ない。

 

しかし、すぐに選手たちの視線と意識はフィールドへと戻されることになる

 

 

にこ「穂乃果ぁぁ!!!構えなさい!!」

 

穂乃果「!?」

 

千歌を蹴り飛ばしたボールが地面に落ちるよりも先に、バダップはそのままゴールを狙っていた。

再びボレーシュート。すぐに穂乃果は構え、意識を集中させる。

今はゴールを守る…絶対に止める。

 

だが、そんな意識とまるで真逆な

 

 

晴夏「避けてっっ!!!!!!」

 

穂乃果「─────────え、」

 

 

 

────ズバンッッッッ!!!!!!!!

 

 

声と同時に、ボールがゴールへと飛び込んだ。

 

しかしそれは…ただのシュートでは無かった

 

 

クラリア「な…なんなんだ…あれは、」

 

フィレア「ゴールを…貫いた??」

 

 

A『ご、ゴール…!!なんという威力のシュートでしょうか!?!?ボールはゴールネットを貫通し、後ろの壁へと激突…!!』

 

レヴィン『高坂選手は…大丈夫なのでしょうか?』

 

 

その速さと威力により、ボールが通過した地面は抉れ、砂煙を巻き起こしていた。

穂乃果があのボールを止めようとしてどうなったのか…選手、そして観客らは確認出来ないでいた

 

 

フィレア「穂乃果…!!」

 

和葉「……見て」

 

 

穂乃果「ハァ…ハァ……」

 

砂煙がはれ、ゴールの前では穂乃果が尻もちをつく形で地面に倒れていた。

穂乃果は無事。しかし、そのすぐ横では消え去った緑の芝生とゴールネット

 

 

月「……あ、あのシュートを…避けて無かったら」

 

ダイヤ「…千歌さんは…千歌さんは無事ですの!?」

 

穂乃果ともう1人、安否が分からない選手がフィールドの外にいた。ちょうど日本代表ベンチの裏まで吹き飛ばされた千歌。

しかし、

 

 

「痛たた…いや〜…やってくれたね」

 

梨子「あ、あなたは…」

 

チカ「チカが出てきてガードしてなかったら…ちょっとヤバかったね♪」

 

吸い込まれるような黒い瞳、寒気が止まらなくなるようなオーラ。

高海千歌であって高海千歌では無いその少女は、何事も無かったかのように砂煙の中から姿を現したのであった

 

 

A『高海千歌も負傷はしていないようだ!!あれだけの攻撃を受け、それでも立ち上がる素晴らしい精神力です!!』

 

 

美奈「本当に大丈夫なのね?」

 

チカ「大丈夫大丈夫。まだ行けるから」

 

チカ(痛てて…闇で硬質化してこのダメージか)

 

意識では追いついていなくても、千歌の生き物としての反射的刺激が闇の力に共鳴していた。

千歌の判断無しに飛び出したチカはバダップの蹴りを闇の力でガード。

超人的な防御力を完成させていた

 

 

チカ「やっと本領発揮ってことかな?」

 

バダップ「…」

 

見下すように"千歌"を蹴り飛ばした少女を睨むチカ。対するバダップも闇に染まった少女を睨み返している

 

 

和葉「……晴夏ちゃんがあの場で穂乃果に警告して無かったら…無事では済まなかったかもしれない」

 

鞠莉「私たちの時と同じ…気をつけて、みんな」

 

とっさに"飛び出した"チカはすぐに意識を千歌へと返そうと心の中で声をかけた

 

 

チカ(大丈夫だったかな♪千歌ちゃん)

 

千歌(あ…ありがとう、私)

 

チカ(うーん…あの化け物を相手にするには、千歌ちゃんはもう少しがんばルビィしなきゃね)

 

千歌(が、がんばルビィ…??)

 

チカ("Braveheart"の真の力、そして"あの必殺技"を出す時が来たんだよ♪)

 

 

 

ピーーッ!!

笛が吹かれて試合再開。日本の選手たちは突然のオーガの動きの変化に動揺はしたものの、そこからの気持ちの切り替えが早かった

 

 

ダイヤ(イタリア代表の準決勝…)

 

月(あの試合が…僕たちに教えてくれたんだ!)

 

先ほどまでのオーガは本気など出していない。イタリア代表との準決勝でそれははっきりしていた。

不意打ちと身構えでは精神的に大きな差が生まれる。分かっていたからこそ、日本はとある対策を立てていた。

 

 

本気のオーガと戦う戦略を

 

 

海未「凛…今こそ特訓の成果を!!」

 

凛「合点承知にゃ!!」

 

次の瞬間、フィールドを包み込む強い光。

目を開けていることは困難。しかし、そんな状況でも迷わずボールへと飛び込む選手が2人

 

 

穂乃果「こ…この光は…!!」

 

 

それは決勝戦前日の出来事。

海外選手たちとの合同練習の時だった

 

 

海未『あの技を…』

 

凛『凛たちが?』

 

ベルガモ『お前たちのシュートは…私たちの技に近いものがある』

 

ルーサー『やるかどうか自由…でも、役に立つと思うよ』

 

 

 

海未「はあぁぁぁぁぁっっ!!!!」

凛「にゃあぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

 

海未、凛「「【ツインランサー】!!」」ドガアァン!!

 

「「「!!!!!!!」」」

 

 

エメリコ「あれ、うちのチームのシュートじゃん!?」

 

ドメルゴ「あの子たち…いつの間に!!」

 

光り輝くボールは2つに分裂。

そのボールたちに高速で追いつき、全力の蹴りで撃ち放つ"世界最強の速攻"

 

 

レヴィン『スペイン代表のFWの選手2人が放つ必殺シュートですね…!!』

 

A『高速の槍がゴールへと一直線だぁぁ!』

 

 

美奈「…まだよ」

 

監督の声、そして視線はシュートの先。

その先では全て分かっていたかのように、必殺技の動きで待ち構える選手がまた2人

 

 

ルビィ「お姉ちゃん…!」バッ

 

ダイヤ「ルビィ!!」バッ

 

 

A『黒澤姉妹がシュートチェインか!?すでにどちらの足にも…炎のオーラが!!!』

 

 

─────監督の指示だった。

オーガが本来の力で戦い始めた時、最初の攻撃は分よりも短い秒で決めきれと。

 

相手に流れを書き換えられる前に前半を逃げ切る。その作戦の元、2つに分裂したボールを

 

 

ルビィ「【Awaken the───────

ダイヤ「【マキシマム────────

 

 

─────ファイア】ァァ!!!!」」

 

 

 

バダップ「…ミストレ、エスカバ」

 

 

ミストレ、エスカバ「「……」」ガギィン!!!

 

黒澤姉妹の目の前に突然現れたFW2人。

ここまでほとんど動くことが無かった選手が、バダップの指示で豹変

 

 

ルビィ、ダイヤ「「!?!?」」

 

必殺技無しでシュートブロックに飛び込んできたのだ。なんとか押し切ろうとするも…

 

 

ダイヤ(う…動かない…!?)

 

ルビィ「っっ…!!今からでもATPを…」

 

────バギッッッ!!!!

ルビィがオーラを引き上げようとするのが分かっていたかのように、エスカバとミストレは姉妹を強引に弾き飛ばした

 

 

聖良「ルビィさん、ダイヤさん…!!」

 

善子「速攻でも…まるで歯が立ってないわよ…」

 

流石のサニデイジャパン、そして各国の選手たちも動揺を隠せ無かった。言葉を失い、冷や汗が流れ続ける。

 

その中に高海千歌も例外なく含まれていた。そしてその背後から、1人の少女の声がする

 

 

バダップ「これは最終警告だ。高海千歌」

 

千歌「…!」

 

バダップ「サッカーを捨てろ」

 

殺意を帯びた声。千歌はその声の主の方へと振り向くことが出来なかった。

サッカーを捨てろ?そんなこと…「はい」と言えるわけが無い。だが、オーガの選手たちの視線が集まる中、「いいえ」とも言えることが出来ない自分がいる

 

 

千歌「…そ、そんな…」

 

 

それではダメだ。言うんだ高海千歌

 

 

バダップ「………」

 

千歌「そんなこと…」

 

 

 

言うんだ

 

 

 

千歌「そんなこと…!!」

 

千歌「出来るわけないっっ!!!!」

 

 

バダップ「─────やれ」

 

 

エスカバ「うらあぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

善子「ちょっ、急に叫んで…きゃっ!?」ドサッ

 

何かにつまづいた善子は転倒。

痛みに耐えながらも、自分が何につまづいたかを確認するべく、うつ伏せのまま顔を上げた。そしてそこには─────

 

 

エスカバ「【デスレイン】!!!!」

 

横一線、まるで血に染ったかのような赤黒い砲台が出現。

迸るオーラをボールに込め、エスカバの蹴りと同時に一斉射撃。

サニデイジャパン陣内の上空へと放たれた

 

 

ダイヤ「ルビィ!!危ないっっ!!」ドガッ!

 

ルビィ「お姉ちゃ─────

 

ドガドガドガドガドガ!!!!!!

死の雨が降り注ぐ。

大地を砕き、衝撃波が襲い、サッカーフィールドが一瞬で戦場へと変える

 

 

「「「うわあああっっ!?!?」」」

 

日本の選手たちの声、そして無慈悲な爆発音だけが響き渡っていた

 

 

穂乃果「っっ…このおぉぉっっ!!!!」

 

もちろん、シュートはゴールにも向かってきていた。

大声と共に闇の力を発動させる穂乃果。そのまま飛び出し、炎の腕で死のシュートとぶつかる

 

 

ホノカ「【ゴッドハンドX】!!!!」

 

 

しかし、ぶつかった瞬間分かった。

シュートの重さ、エネルギーの差が…

 

 

ホノカ(ち、違いすぎるっっ!?!?)

 

ダブルにする間もなく、"ゴットハンドX"は打ち破られ、穂乃果はボールと共にゴールへと叩きこまれた

 

────バシュウゥゥゥゥゥン!!!!

 

ホノカ「っっ…ぐはっ…!?!?」

 

 

A『ゴール!!!凄まじい威力のシュートが日本のゴールを破りました!!』

 

 

フラム「ひ、酷い……」

 

フィレア「私たちの時と…同じだ、」

 

 

A『あまりにも広範囲、高威力の技を受けたサニデイジャパン…立てない選手もいるようです!!』

 

 

爆発の煙が晴れ、現れた日本のフィールドは見るにも無惨。

ボロボロになった地面と倒れている選手たち。言葉を失うベンチと観客。

まさに────地獄だった

 

 

千歌「ゲホッ…ゲホッ!!ハァ…ハァ…」

 

千歌(直撃は避けた…けど、)

 

うつ伏せの状態から、起き上がることが出来なかった。震えが…止まらない

 

 

バダップ「鬼は抗うもの全てを喰らう」

 

千歌「…!」

 

バダップ「お前たちが勝つのは不可能だ」

 

 

オーガとの決勝戦。

試合開始からここまで、徐々に自分たちの実力を引き出し、先ほどは全力に近いところまでギアチェンジをしたつもりだった。

 

だが、オーガは───何も変わっていなかった。

焦りも、疲労も苛立ちもなく。全て想定内、自分たちの敵ではないと言わんばかりに

 

 

 

───ピッピー!!!!

そして前半終了の笛が吹かれた。

それは不幸中の幸いか、ボロボロになったサニデイジャパンの選手たちは、何とか自分たちのベンチへと戻ることとなった

 

 

 

 

――――――

 

 

 

美奈「状況は…かなり厳しいわね」

 

怪我やダメージを負った選手たちの応急処置が急がれる中、高海美奈監督はそう呟いた。

 

前半終了直前のオーガのFWエスカバの"デスレイン"は、日本代表に深刻なダメージを与えていた

 

 

英玲奈「っっ…!」

 

真姫「まだ動かないで。悪化するわよ」

 

英玲奈「どうやら…この試合はもう無理みたいだな」

 

英玲奈と同じく後半出場が絶望的となったのはダイヤ、月、凛、希、聖良。

流れが生まれた中での6人同時交代、後半は厳しいスタートになることは目に見えていた

 

 

穂乃果「…悔しい」

 

ベンチに座り、タオルを頭からかぶりながらごちゃごちゃになった心を落ち着かせようとする穂乃果。

シュートを一度受けただけだが、その手はまだ震え、汗も滝のように流れている

 

 

海未「穂乃果…」

 

穂乃果「オーガのシュート…私たちの知るサッカーのシュートじゃ無かった。強い、強すぎる…」

 

海未「……」

 

穂乃果「でも─────

 

 

千歌「うおおおおぉぉ!!!!!!!!」

 

穂乃果、海未「「!?!?」」

 

「「「!?!?!?」」」

 

曜「ちょっ、千歌ちゃん…!?」

 

善子「ついに…イカれたの??」

 

穂乃果と同じくベンチで下を向いていた千歌。しかし突然立ち上がり、空気をビリビリと揺らすような大声。

突然すぎる事に選手全員の開いた口が塞がらない中、高海千歌は構わず語り出す

 

 

千歌「今までの私だったら…私のせいでみんなに苦しい思いをさせたって、自分を責めてた」

 

千歌「でも、それは私じゃなく…仲間を追い詰める感情だって、気づいた」

 

梨子「千歌ちゃん…」

 

美奈「……」

 

千歌「私がすべき事は自分を責める事じゃない。チームを…照らし支えること…!!」

 

穂乃果「…ふふ。先に言われちゃった」

 

千歌「…!」

 

穂乃果「悔しい。でも、それでも…勝ちたいって気持ちの方が穂乃果は強い。後悔している暇なんて無いよ。だって、試合はまだまだこれからじゃん」

 

千歌「穂乃果さん、」

 

 

美奈「最後の試合。やりきれずに交代する気持ち、私はまだ戦える、まだ終わりたくない。そんな気持ちを…後半からあなたたちは背負うことになるわ」

 

千歌、穂乃果「「………」」

 

美奈「それを力、またはプレッシャー。どちらに変えるか…決めるのもあなたたちよ」

 

美奈「日本代表のサッカーはまだ終わっていない。真の後悔は…敗北よ。一生悔いることになる」

 

真恋(美奈……)

 

 

美奈『二度と、サッカーは出来ない』

 

『『『!?!?!?』』』

 

乃々子『そんな……冗談、』

 

鈴香『…なんでよ、だから…ダメだって』

 

美奈『……』

 

 

美奈「サッカーで…輝くんでしょ?」

 

千歌「うん。私たちは輝くよ。終わりなんて、後悔なんて言わせない…絶対に」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

A『さあ…!後半戦、間もなく開始です!!』

 

 

────再びフィールドに立って分かる。

前半とオーガは、何も変わっていないと

 

 

千歌「………」

 

それでも高海千歌…そして日本代表は戦う。勝利、輝きを得るため。

逃げない。本気をぶつけ手に入れる

 

 

ルビィ「………」

 

理亞「ルビィ?」

 

ルビィ「理亞ちゃん、ルビィ…やってみるよ」

 

 

 

 

ルビィ「自分の限界を…超えてみたくなった」

 

 

 

次回より、最終戦後半

 

日本 2-2 オーガ

 

 

 





『ツインランサー』シュート/海未&凛
スペイン代表、ルーサー&ベルガモの必殺シュートです。2人から提案を受け、海未と凛が継承しました。眩しい光と共に分裂したボールを全力でシュート。そのスピードはまさに最強の速攻です。

『デスレイン』シュート/エスカバ
原作でもインパクトのあるオーガの必殺シュートです。砲台で転ぶドモン役は善子を選びました。ごめんよ善子



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第3章 168話 「オーガ戦 "限界突破"」


皆さん、お久しぶりです。ルビィちゃんキャンディーです。
更新遅れて遅れて…もう冬ですね。夏休みに終わるとか言ってた過去の自分は罪深いです




 

 

 

 

A『さあ…!泣いても笑っても最後となる45分間が、間もなく始まります!!』

 

A『日本代表はなんと6人の選手交代をするようで、前半とはまるで別のチームとなっています』

 

 

ー サニデイジャパン ー

 

FW……………鹿角理亞、黒澤ルビィ

 

MF……綺羅ツバサ、高海千歌☆、園田海未

 

MF………………桜内梨子、矢澤にこ

 

DF………津島善子、優木あんじゅ、南ことり

 

GK……………………高坂穂乃果

 

 

レヴィン『来ましたね…数々の強豪国も恐れる天才選手たち、通称"ゾーン組"』

 

レヴィン『ゾーン保持者を全員後半に投入し…なんとかオーガに対抗しようという高海美奈監督の考えが伝わってきますね』

 

 

エドガー「統堂英玲奈から桜内梨子に無事、指揮権を継承出来たのは大きいですね。私たち含め、桜内梨子の指揮に崩され敗北したチームがほとんどです」

 

フィリップ「ですがエドガーさん…彼女が消えたのは厳しいですよ、」

 

エドガー「……そうですね」

 

 

後半からの出場選手は、自分のポジションで最後の準備運動を行いながら呼吸を整えていた。

 

センターFWで出場の"雪原の狼"鹿角理亞。

前半はベンチで一部始終全てを見ていた。今は体を温めながら、隣に立つルビィ、そして敵であるオーガを順に確認。

 

敵に対し不安は無かったが一つだけ、理亞の心に引っかかるものがあった

 

 

理亞(……姉様、)

 

 

 

聖良『すみません…理亞』

 

ベンチに座り治療を受ける姉、そしてそれを静かに見守る妹。いや、何をどう言えばいいのか分からず、ただその場に立ち尽くしていた…というのが正しい表現か。

 

まさか姉との最後の試合が決勝戦では無く、準決勝になるとは…受け入れ難く、そして出処の分からない怒り。

 

決勝への戦意が押し消されていく…が、

 

 

聖良『ですが、今の理亞のサッカーは、私とのサッカーだけではないはずです』

 

聖良『あなたの仲間…そして相棒…彼女たちとのサッカーは大切な時間になっているはずです』

 

理亞『相棒…?』

 

聖良『もう、分かってるんじゃないですか?』

 

 

姉様はそこまでしか言わなかったが、私はその時、1人の少女…ムカつくあいつの顔が頭に浮かんだ。

でも実際、本当にあいつをどう思っているかはまだ分からない。今まで…何度もぶつかっては嫉妬し、圧倒され、その度に涙を流した

 

 

ルビィ「…理亞ちゃん」

 

理亞「……」

 

ただ、ロシア戦でのルビィとの新たな必殺技……悪くないって、少しだけ思った

 

 

ルビィ「頑張ろうね」

 

理亞「当然よ」

 

差し出された拳に自分の拳を合わせる。

今も変わらずライバルだが、ルビィの隣に立つこの瞬間が…何故か一番血が騒ぐ気がする。

 

こんな気持ちには、姉様とサッカーをする時しかならなかったはずなんだ

 

 

 

 

穂乃果「にこちゃん…」

 

にこ「……」

 

矢澤にこは黙ったまま、ホイッスルが吹かれるのを待っていた。

先ほどまで負傷した選手たちの姿を見ながら怒りをあらわにしていた彼女だったが、今は恐ろしいほどまでに静か

 

 

千歌「にこさん…」

 

しかし、にこを心配する選手たちの目に映る矢澤にこの顔は…何か決意を固めた顔。

一切の隙がない、それどころかゾーンにも近い覇気を放っている

 

 

にこ「私も…希や英玲奈、あいつらともう少しサッカーをしたかったわ」

 

にこ「でも、こうなる事は分かっていた。違う?」

 

「「「…………」」」

 

にこ「私たちが今すべきことは…勝つことよ。全員、死んでも走り続けなさい」

 

にこの言葉で選手たちの集中力はより高まった。それぞれの想いが1つに集まり、勝利という共通の目標へ

 

 

にこ(希…絵里…見てなさい。絶対に勝ってみせる…!!)

 

 

希「にこっち…」

 

絵里「………」

 

 

 

ピーーッ!!!!

 

 

A『さあ、運命の後半戦開始です!!!!』

 

 

バダップ「殲滅だ」

 

エスカバ、ミストレ「「了解」」バッ

 

オーガボールでスタートした後半戦。

前半とはまるで逆、FWの選手2人が飛び出し、バダップがドリブルで攻撃を仕掛けてきた

 

 

ルビィ「来るよ…理亞ちゃん」

 

理亞「分かって…「あとさ、」

 

理亞「ルビィ?」

 

ルビィ「理亞ちゃん、ルビィ…やってみるよ」

 

その時は、ルビィが何のことを言っているのか理解出来なかった理亞。

しかし、その次の言葉を聞いた瞬間

 

 

 

ルビィ「自分の限界を…超えてみたくなった」

 

 

鳥肌が立ったのが―――分かった

 

 

ルビィ「【Awaken the power】っっ!!」

 

エスカバ、ミストレ「「!!」」

 

ドン!!という爆発音と同時にルビィが紅く燃え上がる。オーガのFW2人は炎を前に足を止め、様子を伺っているようだった

 

 

A『さあ…!後半開始早々、"紅き流星"が必殺技を発動!!凄まじいエネルギーだぁ!!』

 

 

海未「いいんですか!?最初から全開で??」

 

梨子「……ルビィちゃんに任せます。私たちはまだ、オーガの選手を全く知らない…ここで、オーガの力を見極めます」

 

海未「…気をつけてください、ルビィ」

 

 

注目の一戦だった。

世界最強レベルの選手と鬼のリーダー。どちらが勝つのか…いや、黒澤ルビィはどこまで戦えるのか

 

 

ルビィ「………」ゴゴゴゴ

 

バダップ「………」

 

 

睨み合う両者。沈黙の時間。

 

 

 

──────先に動いたのは、ルビィ

 

 

 

ルビィ「っっ!!!!」ギュン!!

 

バダップ「………」ギュン!

 

迷いなくバダップの懐へと飛び込んだ。

しかし、バダップは後退しながらもルビィが伸ばす足、突き出す体を全て躱していく

 

 

ルビィ「だりゃあぁぁぁっっ!!!!」バババッ!!

 

それでもルビィは攻め続けた。バダップがドリブルで突破する隙は与えない。スピードで勝つ。ただ、そのために一心不乱に―――

 

 

────ドゴッッッッ!!!!!!

 

ルビィ「ぐあっ!?!?」

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

 

突然、ルビィが後方に勢いよく吹き飛ばされた。何が起きたのか本人、そして周りの選手も理解出来ないまま、十数メートル飛んだルビィを―――ドゴッッッッ!!!!

 

 

ルビィ(またっっ…衝撃波!?!?)

 

2度目の衝撃で空高く打ち上げられる。

そして3度目は―――ドゴッッッッ!!!!

 

空からの衝撃波。打ち上げられた次は、地面へと叩きつけられるルビィ

 

 

ルビィ(速い…見えない…痛いっっ!!この攻撃…壊れるまで続けるつもりだな!?!?)

 

4…5…6…何度も上から鈍器で殴られているような感覚。衝撃で割れた地面が広がっていくのが横目から映る。

冷や汗が衝撃の度に吹き出ていた

 

 

ルビィ「まだだっっ!!!!」ゴォォッッ!!

 

バダップ「……!」

 

 

月「更にオーラが跳ね上がった…」

 

目に見えないバダップの謎の攻撃、まるで突然壁に激突したかのような衝撃。

それが連続で襲いかかる中、黒澤ルビィの答えは―――

 

ルビィ「っっっっ!!!!」ギュン!!

 

 

―――強行突破だった

 

 

果南「だ、ダメだ…突っ込むなんて無茶過ぎだよ」

 

曜「ルビィちゃんは本気だ…もし、それでも適わなかったら…「まだずら」

 

曜「…!」

 

曜の言葉を遮ったのは花丸だった。

そして、同じ会話が観客席でも…

 

 

絵里「ルビィはまだ…奥の手を隠してる」

 

フロイ「奥の…手―――ドゴッッッッ!!!!

 

絵里、フロイ「「!!!」」

 

 

ルビィ「ぐはっ!?!?」

 

フィールドに目を戻すと、再び吹き飛ばされているルビィがいた。

バダップは動いていない。だが、明らかに彼女の攻撃だと思われる衝撃波が、絶え間無くルビィに襲いかかっていた

 

 

ルビィ(このままじゃ…意識…とb ―――ドゴッッッッ!!!!

 

地面に強く叩きつけられ、巨大なクレーターと粉塵が紅き流星の姿を隠していた。

だが、先ほどまでとは違ってすぐに飛び出してこない

 

 

花丸「ルビィちゃんは完成させたんだよ…本当の"Awaken the power"を」

 

月「本当の…ATP…」

 

"そのATP"を知るものはフィールドにも数人いた。その1人、鹿角理亞は立ち込める粉塵から目を離さずその技のことを考えていた

 

 

理亞(私でも…まだ"その域"には行けない。でも、今のルビィなら…)

 

千歌「…煙が晴れるよ!」

 

徐々に薄くなる煙。

そして姿を現した黒澤ルビィ。しかし、選手たちは違和感を感じた

 

 

梨子「…"解除"してる…?」

 

 

A『おおっと??さすがにダメージが響いたのか?黒澤ルビィの炎が消えています!』

 

 

まるで火を失い、白煙の線を伸ばした蝋燭のように静まり返ったルビィの姿。

微動だにしない。動けないほどにダメージを負ってしまったのか…ほとんどの選手、観客がそう考えていた

 

 

ルビィ「………」

 

 

しかし、

 

 

理亞「解除…?違う。見て分からない?」

 

梨子「…え、」

 

 

フィレア「外見の炎が消えても…熱量、そう、熱さが消えるどころか高まってる…!!!」

 

和葉「とうとう…その域まで来たか、」

 

 

ルビィの目は"紅"のまま燃えていた

 

 

美奈「ルビィちゃんの"ATP"発動時の吹き出していた炎…あれは言うなら溢れ出たオーラ。全てのオーラを扱えずに、自身の容量を超えた分、体外へ溢れてしまっていた」

 

美奈「その溢れ出ていたオーラをも、全て体内に収め、完全なる、100%の"ATP"を力に変える」

 

美奈「それこそが―――

 

 

 

ルビィ「【Awaken the "Full" power】」

 

バダップ「……」

 

これ以上、進化することは無いと覚悟していたルビィ。しかし、それは覚悟ではなく、ただの言い訳に過ぎなかったのだと、仲間たちのサッカーを見てきて気づいた。

 

私は弱い。脆く崩れやすい。

そんな自分を超えるため、ルビィは"炎"を完全に我がものとしたのだ

 

 

ルビィ「ここからだよ…勝負は」ギュン!!!

 

バダップ「―――!!」

 

先ほどと同じく懐へと飛び込んだルビィ。

しかし、同じにも関わらず、バダップの動きに大きな変化があった

 

 

A『な、なんと黒澤ルビィのボールカットに対し、バダップ選手は構えを取っています!!』

 

レヴィン『ただ躱すだけでなく、体を使っての防御や受け身も取っています…つまり、そうしなければボールを奪われてしまう…と』

 

 

受け流し、回避するだけだったバダップのボールキープ。それが今では防戦一方。

躱しきれないルビィの伸びた足、体をブロックしながらボールを奪われないように逃げ続けるオーガのリーダー

 

 

ツバサ「流石…としか言いようがないわね」

 

理亞「……ルビィ」

 

 

ルビィ「―――ここ」ズバッ!!

 

バダップ「…くっ、」

 

刀を突き出されたかのような感覚に囚われる。思わず口から焦りの声が漏れた。

それでも紙一重で伸びた足を躱すバダップ。

ただ、その時には既に別の攻撃

 

 

ルビィ「―――っっ!!」ズンッッ!!

 

強烈なタックル。

さっきのお返しと言わんばかりの勢いだった

 

 

ルビィ(バランス崩した…取れる!!)

 

バダップ「―――!!」ギロッ!

 

ルビィ「!?」

 

睨まれた。そう頭で認識した時にはすでに、ルビィは再び十数メートル後方へと吹き飛ばされていた

 

 

ルビィ(相変わらず無茶苦茶…でも、だいぶ目が慣れてきた)

 

100%状態のルビィはただ吹き飛ばされたわけでは無く、寸前に受け身状態でガード。

衝撃を逃がし、インターバルを短縮していた

 

 

バダップ「……黒澤ルビィ」

 

ルビィ「…!!」

 

バダップ「武術を扱えるのか」

 

ルビィ「だから―――なにっっ!?」ギュン!

 

口を開くバダップに対し、ルビィは焦っていた

 

 

神奈「……まずいね」

 

マーク「ええ。確かにルビィのATPは進化した…私たちの次元を超えた強さ、それでも…」

 

マーク「相手のボールに…1度も触れてない」

 

 

ルビィ(悔しいっっ!!ここまでやってもまだ敵わないなんて…一人での無茶も、そろそろ終わりが―――「少しだけ本気を出した」

 

ルビィ「――――――やば、」

 

 

口よりも先に受け身の構えを取る、が

 

 

バダップ「諦めろ。どんなに進化したところで、私には敵わない」

 

―――ドゴッッッッ!!!!

鋭い眼光と同時にお決まりになりつつあった衝撃波。何度目か数え切れないほどの、ルビィの後退、吹き飛ばされだった

 

 

ダイヤ「ルビィ…!!」

 

真恋「……100%、完全なる域に達したルビィでも勝てないとなると美奈…どうするの?」

 

美奈「………」

 

 

ルビィ「ハァハァ…い、痛た……」

 

理亞「まだ生きてる?」

 

ルビィ「……なんとかね」

 

膝をつくルビィの横には、冷静さを保ったままの理亞がいた。吹き飛ばされ続け、気づけば自分の元いた場所まで戻されていたのだ

 

 

ルビィ「少しだけ見えた。オーラを盾みたいに変化させて、ルビィにぶつけてきた」

 

理亞「突破法は?」

 

ルビィ「今のままじゃ厳しい」

 

理亞「今…の「そこまで分かったんなら大収穫よ」

 

理亞「…!」

 

背後からの声に気づき、辺りを見回すとFWコンビを囲むように選手たちがオーガの前に立ち塞がっていた。

 

ここからは私たちも戦うという意思の表れ。

それは、ルビィと理亞にもしっかりと伝わっていた

 

 

善子「ルビィ、全く相手にされなかったわけじゃないでしょ?戦える。私たちがチームワークと個人技を屈指すれば」

 

梨子「よっちゃんの言う通り、相手のエースに"本気"の言葉を出させたのは大きいわ」

 

千歌「諦めるには…まだまだ惜しいぐらい可能性がある…!!」

 

仲間たちは士気を失うどころか、その魂を奮い立たせ、可能性を信じ前を向いていた

 

 

美奈「勝利への可能性、自分たちへの可能性。あの子たちの原動力として、それらが複雑に絡み合って共鳴している」

 

真恋「個人技を独りよがりな行動と否定せず、チームの1つの可能性として受け入れる…それがあの子たちの答えなのね」

 

美奈「個人技を生かすも殺すも周りの実力次第よ。でも、私は信じているわ」

 

 

日本代表の10番、黒澤ルビィの圧倒的個人技からスタートしたFFI世界大会決勝後半戦。

 

相手の実力を部分的にも知ることで、可能性として自分たちのプレーに影響させる。

 

そしてここからは、日本代表の全てを相手にぶつけることになる。個人技、そしてチームプレー。それらが複雑に絡み合う、太陽の輝きのような眩しいサッカー。

 

"サニデイジャパン"のサッカーである

 

 

 

 

穂乃果「………」

 

穂乃果(千歌ちゃんでも…晴夏ちゃんでもないよね…じゃあ、誰の…)

 

日本代表全員の背中を見ながら、守護神 高坂穂乃果はとある"痛み"に焦りを隠せないでいた

 

 

穂乃果("頭痛"…まさか、まさか…ね?)

 

 

 

運命の後半戦、まだまだ始まったばかりである

 

 

 

日本 2-2 オーガ





『Awaken the Full power』特殊/黒澤ルビィ
"Awaken the power"の漏れ出してしまっていたオーラをも完全に体内へと引き込み、100%オーラを力へと変えた技となっています。
見た目は目が赤くなっているだけですが、バダップと互角に近い能力を発揮します。

感想お願いします。スクスタ20章はイナイレ



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第3章 169話 「オーガ戦 "真の力、解放"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。



 

 

 

 

にこ「来るわよっっ!気合い入れなさい!!」

 

矢澤にこの声がフィールドに響く。

選手たち一人ひとりがそれに応え、迫るオーガへディフェンスの構えを取っていた

 

 

A『エスカバがドリブルで持ち込みます!』

 

レヴィン『日本代表は守備を固め、これ以上の失点を阻止する必要がありますね』

 

 

海未「これ以上は…」バッ

 

エスカバ「………」

 

迷うことなくドリブルコースに飛び込み、得意の高速プレーでボール奪還を試みる海未

 

 

海未「【スピニングフェンス】っっ!!」

 

ルビィと同じく、日々鍛えてきた身体。

強靭な筋肉は身体能力を爆発させ、超人的なスピードプレーを可能としている

 

 

海未(この暴風…耐えられ「こんなそよ風」

 

―――ドンッッッ!!!!!!

しかし、海未の自信は巨大な衝撃音により、暴風ごと掻き消されてしまうのだった

 

 

エスカバ「目障りなだけだ」ギロッ

 

海未「!?!?」

 

地面を踏みつけた衝撃で技が破られた??

何かの間違いでは?相手の必殺技なのでは?海未は未だに現実を受け入れることが出来ないでいた

 

 

海未(私の技が通用しな…いや、まだです)

 

海未「【スピニングフェンス】っっ!!」

 

 

A『おおっと園田海未、再び"スピニングフェンス"を発動したぁ!!』

 

 

エスカバ「ちっ…目障りだって…」

 

海未(私の技が通用しない…ですが、)

 

再びエスカバが右足を地面に叩きつけようとした…その時だった。

何かが、自分へと突っ込んできたのだ

 

 

ツバサ「棒立ち…はさすがに舐め過ぎよ」

 

エスカバ(綺羅ツバサ!?)

 

海未「目くらましには十分なりますよ…!!」

 

 

A『奪ったぁぁ!!園田海未の"スピニングフェンス"は綺羅ツバサの姿を隠すためのダミー!!』

 

レヴィン『あの暴風の中で動けるとは…綺羅選手も流石としか言いようがないですね』

 

 

ツバサ「ありがとう海未」

 

そのままドリブルでボールを持ち込む。

しかし、相手選手は長い余裕は与えない。すぐにコースに飛び込んできていた

 

 

A『"ゴッドストライカー"綺羅ツバサとサンダユウ選手の1対1!!』

 

 

ツバサ「―――!」

 

前半、ベンチでオーガの選手の機械的、そして完成されたディフェンスを目に焼き付けたツバサ。

確かに隙がない。ドリブルも、パスも、必殺技も出させないと…鋭い目が訴えてきていた

 

 

ツバサ(面白いわ…)

 

 

しかし、

 

 

ツバサ「それでこそ倒しがいがある」

 

 

綺羅ツバサは笑っていた。

―――ギュンギュンギュン!!!!

 

 

サンダユウ(…緩急のあるドリブル)

 

綺羅ツバサのスピードが突然上がった。

いや、スピードだけでは無い。ボールコントロール、視線、恐らく意識も……

 

 

バダップ「援護しろ。ドラッヘ」

 

ドラッヘ「了解」ギュン!!

 

 

梨子「援護…!?ツバサさんっっ!!」

 

ツバサ「ええ。任せて」

 

初めて見た指示だった。

ツバサを選手1人で止めることは厳しいと判断したのだろうか?

何にせよ、梨子のマークについていたドラッヘがツバサの元へと高速接近。それを―――

 

 

ツバサ「―――!!」グワン!

 

サンダユウ(タイミングが掴めない!?)

 

 

まず1人。完璧に抜かす。そして、

 

 

ドラッヘ「そこだっっ!!」バッ!

 

足を伸ばしてきたもう1人。

あと数センチでボールに触れる…そんな緊迫した瞬間も綺羅ツバサは―――笑っていた

 

 

ドラッヘ「―――!?」スカッ!

 

ドラッヘ(触れたはずのボールが…すり抜けた!?)

 

オーガ「「「!!」」」

 

"アイソレーション"。極め上げた技術はゾーンと共鳴し合い、反則級の幻影で相手を惑わす。それは神を喰らう鬼にも例外では無い。

 

鬼は当然のこと、仲間たちも目を疑った。

だが確かにその目で見た。綺羅ツバサの天性の才能、神の名に相応しく輝く目

 

 

A『"ゴッドストライカー"っっ!!素晴らしいドリブルだぁぁ!!!!』

 

 

そうだ。日本屈指の強豪校のエースストライカーであり、その学校でも異次元と言われた選手。

そんな選手が横を通り過ぎていくのを、ただ見てられずに飛び出した少女がいた

 

 

理亞「ツバサ!」

 

ツバサ「…!理亞」パス

 

あんなサッカーを見せられたら、自分もドリブルで思いっきり勝負したくなるじゃないか。

理亞は奮い立っていた。このままボールを収め、切り込みたい、走りたい―――が、

 

 

理亞「行っけーーっっ!!」パス!!

 

「「「!!!!」」」

 

 

その気持ちを逆に、利用させてもらおう

 

 

A『鹿角理亞の不意をつくダイレクトパス!オーガの選手は反応が遅れたか!?』

 

レヴィン『今のはドリブルで持ち込むと完全に思わされましたね…!!』

 

 

普通のロングパスは全て読まれてカットされるだろう。しかし、誰も予想していなければ話は別。

理亞たちの前を走る、2人の選手にボールは繋がった。その瞬間、会場からは歓声があがる

 

 

ルビィ「行くよ…千歌ちゃん」

 

千歌「うん!」

 

どちらも強力なシュートを持つ選手。

強力なパワーを持つオーガのGKも、どちらの技も喰らえばひとたまりもないだろう。

 

しかし、

 

 

 

理亞「ルビィ、千歌!!」

 

ルビィ、千歌「「!!」」

 

 

バダップ「……」

 

 

"撃たせない"。それを行動で示した結果だった

 

 

A『バダップがディフェンスに戻っていた!!黒澤ルビィと高海千歌は突破できるのか!?』

 

 

ルビィ「……千歌ちゃん、ルビィがあの人を止めるからその間に」

 

千歌「え!?」

 

予想外だった。

2人で協力しようとか…そういった数的優位での提案が来ると思っていた。

しかし、ルビィは考える間もなく自分を犠牲にすることを選んだ。やはりそれほどまでの実力者ということなのだろうか

 

 

ルビィ「早く!!行ってっっ!!」

 

ルビィ「【Awaken the ───────

 

───────Full power】!!!!」

 

千歌「!!!!」ビリビリ!!

 

100%全力解放を最初から発動、身体中に強力な電気を流されたような感覚・鳥肌。

ビリビリくる…熱いし、火傷や感電だけでは済まないような覇気だった。

 

そんな彼女の本気を無駄には出来ない。

そう千歌は覚悟を決め、ドリブルで勢いよく飛び出し───────

 

 

 

──────グワーッ!!!!

 

千歌「!?!?」ゾクッッ!!

 

既に、バダップは自分の目の前まで迫ってきていた。不味い、反応出来ない。

身体が…動か─────バギッッッ!!!

 

そして、私が動けない世界でバダップが視界から消えた。代わりに現れたのは…

 

 

ルビィ「邪魔は…させないっっ!!!」

 

タックルで相手を吹き飛ばす、赤眼のルビィだった。

私は…2人をそのまま目で追うことなく、ドリブルで先へと進む

 

 

梨子「善子ちゃん、理亞ちゃん!!2人も今のうちに攻めて!!」

 

すぐに千歌の両脇を並ぶように走る理亞と善子。前からはオーガのDFが近づいてきていた

 

 

善子「私と理亞が援護する…千歌、あなたはシュートまで行くのよ」

 

理亞「絶対に決めなさいよ!!」

 

善子の"Deep Resonance"と理亞の"Awaken the power"。相手のDFとの激しいぶつかり合いが始まった。

しかしこの援護がいつまで持つかは分からない。相手は今までとは次元が違うのだ。

 

1点を…確実に決めなければ。

高海千歌はゴールを目指す。

前を向いて、一直線に走る。

 

…だからこそ、気づかなかった

 

 

 

理亞「ぐっっ!?」ドゴッッ!!

 

善子「かはっ!?」ドゴッッ!!

 

自分の後ろで起こっている状況を。

人外を…想像を超える圧倒的を

 

 

 

 

───────「止まれ」

 

千歌「……ぇ、」

 

赤眼の少女、バダップが目の前に立っていた

 

 

千歌(み…みんなは…??)

 

 

ルビィ、理亞、善子「「「」」」

 

ルビィ、理亞、善子…みんなが足止めをしていたはずだ。

長い距離。自分も全力で走っていた。なのに…こんなすぐに…追いつかれるなど、

 

 

バダップ「お前たちは…旧人類」

 

 

穂乃果「ち、千歌ちゃんっっ!!」

 

千歌「!?―――ドゴッッッッ!!!!

 

穂乃果の声と同時に、自分が後方に吹き飛ばされたことに…千歌は遅れて気づいた。

 

動揺するも、衝撃の痛みが良くも悪くも冷静さを取り戻すきっかけとなった。

そのまま千歌は状況を把握する

 

 

千歌(あれがルビィちゃんの言っていたバダップさんのオーラ…見えない盾…壁みたいな―――ドゴッッッッ!!!!

 

千歌「っっ!?!?」

 

千歌(また吹き飛ばされたっっ…!!)

 

やっぱり見えないし、考える暇を与えてくれない。

千歌は腕でガード、同時に受身を取りながら地面を転がる

 

 

千歌(このオーラに弾かれながらも戦っていたルビィちゃんは本当に凄い…そう言えば、ルビィちゃんたちは大丈夫…なの?)

 

そして周囲を見回すと、そこには先程まで自分の援護をしていた3人が地面に倒れていた。

 

全員…バダップに倒されたのか?

フルパワーのルビィちゃんも一瞬で?

理解出来ない状況の中、再び穂乃果の声が千歌に届いた

 

 

穂乃果「千歌ちゃん…!バダップは"闇の力"が使える!!3人を倒したパワー、見えない盾、全部その力によるものだよ…!!」

 

千歌「……!!」

 

バダップ「…………」

 

 

フラム「…は!?嘘でしょ!?」

 

和葉「闇の力を持つ人間を殲滅するために…闇の力を持つ人間を使うなんてね。やるね、未来人は」

 

鞠莉「日本に"毒を以て毒を制す"という言葉があるわ…まさにそれね」

 

 

しばしの沈黙。その間、千歌は目の前の少女が自分と同じ力を持つことに驚き、そして新たな疑問が生まれた

 

 

千歌「あなたは…どうして闇の力を使うの…?この力を殲滅するのが目的なんだよね??」

 

バダップ「……この力は呪いだ」

 

千歌「…呪い?」

 

バダップ「そして新たな人類となるであろうこの力、私たちの時代では"呪い"と呼んでいる」

 

バダップ「さまざまな能力を持った人間…これは進化。そして破壊の根源となった」

 

千歌「……戦争」

 

バダップ「それが分かっていて何故抗う?お前の力が世界の滅亡の原因…私たちの目的を理解してもなお…何故だ?」

 

千歌「……私は…私はっっ!!」バッ

 

バダップ「…!ちっ…」

 

会話の途中だったが、千歌は飛び出した。

いてもたってもいられなかった。

対するバダップは闇の力で作った壁で千歌を潰そうとする。が、少女は止まらなかった

 

 

千歌「それでも…勝ちたいんだよ!!」ギュン!!

 

バダップ(躱した?目には見えないはず…)

 

続けてオーラを千歌に向かって放ち続ける。

しかし、全て紙一重で躱しながら、確実に距離を詰めて来ている

 

 

千歌「私の力の問題に…みんなを巻き込むのは間違ってるよ!!」ギュン!

 

千歌「私は絶対に逃げないし、この力とも向き合う!!そうすれば、未来だって変えられるよ!!」ギュンギュン!

 

しかし、バダップらに出された司令は高海千歌・高坂穂乃果を殲滅すること。

彼女らの心身を砕くには仲間に手を出すのが一番…そのような判断だった。

 

命令、未来のためならばこの呪いを利用し尽くす。関係ない人間を潰すことも迷わない。

 

そんな―――覚悟だからこそ、千歌の言葉に

 

 

バダップ「虫唾がっっ走る!!!!」

 

千歌「…!!!!」

 

千歌はバダップの攻撃が闇の力によるものだと分かり、そこから目で見えなくともオーラを感じ取ることにより回避を可能にしていた。

 

そして残り数メートルまで近づいた時だった。オーラの範囲が急激に広がったのである

 

 

千歌(か、囲まれてる…回避出来ない…)

 

怒りの感情がオーラ越しに伝わってきた。

完全に潰しに来ている。絶望的な状況、四方八方からオーラが放たれていた

 

 

美奈「千歌…危ない!!」

 

晴夏「殲滅……される、」

 

 

 

千歌「――――――」

 

そんな危機的状況の中、千歌は不思議な感覚に囚われていた。世界がゆっくりと、ほぼ止まっているように見えるのだ

 

 

千歌(この感覚…どこかで、)

 

チカ『聖堂山高校との試合…で思い出せるかな?』

 

千歌(…!)

 

謎の時間停止空間。そこでチカとの会話を経験したことがあるため、今の状況をなんとか受け入れることが出来た。

 

そして、チカは続ける

 

 

チカ『時間が無いから本題ね。チカが言ったあの言葉…覚えてるよね?』

 

千歌『あの言葉…』

 

("Braveheart"の真の力、そして"あの必殺技"を出す時が来たんだよ♪)

 

チカ『今の千歌ちゃんなら絶対に出来るから、まずは…ゆっくり深呼吸して♪』

 

 

 

千歌「すぅーーーー………」

 

 

心を落ち着かせたらイメージして?

今あなたはジェットコースターに乗ってるの♪

 

どんどん上っていくコースター。パワーが溜まっていくよ♪ドキドキだよね♪あと少しだよ♪

 

 

千歌「……………」

 

 

落ちる、真っ逆さま、猛スピード…1秒前♪

ために溜めたパワーを────────

 

 

千歌「………っっっっ!!!!!!」

 

チカ『爆発しろおぉぉぉ!!!!!!!』

 

 

 

―――バリィィィィィィィン!!!!!!

 

 

バダップ「」

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

晴夏「!!」

 

美奈「!!」

 

 

何も無い場所から突然、ガラスが砕けるような音。

そしてその中心で闇のオーラを放つ高海千歌の姿があった。何が起きたのか、周りの選手たちは理解出来ていなかったが、1つだけ分かることがある

 

 

チカ「"Braveheart"【フルカウンター】」

 

 

闇のオーラがこれまでに無いぐらい―――跳ね上がっていた

 

 

穂乃果「あの…壁を全て破壊した…違う、跳ね返した??」

 

 

真恋「美奈…今のって!?」

 

美奈「……とうとう、習得してしまったわね」

 

日宮美奈の必殺技シリーズであった"カウンター"。闇の力の能力の1つである、筋肉と骨の硬質化。それにより強大な負荷にも耐え、さまざまな反撃へと転ずる。

 

千歌の今の技は、それそのものだった

 

 

バダップ(攻撃を全て打ち返す"フルカウンター"!?闇の力がさらに覚醒したのか!?)

 

千歌「ハァハァ…!!」

 

バダップ「やはり、お前は危険な存在だ高海千歌っっ!!」

 

先程の技の反動だろうか、千歌はまだ起き上がれない。すぐに体制を整えなければ、再びバダップの攻撃が―――そんな状況で、千歌の前に1人の選手が現れた

 

 

千歌「ハァ、ハァ…る、ルビィちゃん…」

 

ルビィ「大丈夫ですか?千歌ちゃん」

 

バダップに倒されたはずのルビィが2人の間へ。千歌はルビィの身も心配しようとするも、先に口を開いたのはルビィだった

 

 

ルビィ「今、あの壁を無効化出来たんですね?」

 

千歌「…う、うん」

 

ルビィ「かなりの負荷がかかっているように見えます。まだ発動出来ますか?」

 

千歌「……"フルカウンター"」

 

オーラ系の攻撃を全て打ち返す強力なカウンター。しかし、強力すぎるが故に発動に大量のエネルギーが必要になる。

 

そこで、"Braveheart"の真の力…ジェットコースターのように、上がっている時と下がる時でパワーの比率を変える力を利用したのだ

 

 

ルビィ「ジェットコースター…?」

 

千歌「ジェットコースターは上がる時と下がる時で…力の加わり具合が違うよね」

 

ルビィ「つまり…一定時間パワーを爆発的に上げる代わりに…その分のインターバルが必要」

 

千歌「さっきは…力加減が分からなくて500%の力で発動しちゃった…だから、」

 

ルビィ「…回復時間は?」

 

千歌「……3分」

 

ルビィ「3分」

 

現状、バダップのオーラを破れるのは千歌しかいない。ルビィが執拗に拘るのはそれが理由だった。

この試合、バダップをどれだけ封じるかが勝負の鍵になる。そう確信していた

 

 

梨子「千歌ちゃんはバダップさんと戦える…私たちに残された数少ない突破口」

 

にこ「じゃあ…まさかルビィは、」

 

 

ルビィ「3分…時間を稼ぎます。それまでに回復…いや、能力のコントロールを可能にしてください」

 

そう言うと、ルビィはバダップの方へと歩を進めた。ほかの選手…理亞や善子はまだ回復するには時間がかかる。

ならば…私がやるしかないのだ

 

 

バダップ「…何度やっても結果は見えている。黒澤ルビィ。お前は私には勝てない」

 

ルビィ「……」

 

 

理亞(ルビィ…どうするのよ、)

 

 

"Awaken the Full power"。100%、ルビィの全力でもバダップには勝てなかった。

しかし、そんな中でも彼女は落ち着いていた

 

 

ルビィ「…千歌ちゃんの覚悟。それを見たら、いてもたってもいられなくなった。サッカーを本気で…勝利への気持ち…凄く伝わってきた」

 

ルビィ「…だから、ルビィも覚悟を決める」

 

バダップ「……」

 

 

フロイ「ルビィは…何を言って、」

 

絵里「ねぇ…ちょっと待って。まさか、まだ…あるって言うんじゃないわよね?」

 

 

ルビィ「…ATPの完成系、フルパワー。それを超えたAwaken the power」

 

ルビィ「これから見せるのが本当の究極だよ」

 

 

次回、限界を超える超覚醒

 

 

 

日本 2-2 オーガ

 

 





『フルカウンター』特殊/高海千歌
シュートを打ち返すのは"ランス・オブ・カウンター"。ならば、オーラのような攻撃は?それがフルカウンターです。ポケモンの物理攻撃、特殊攻撃、どちらを打ち返すかの違いのようなものです。

しかし、フルカウンターを発動するには大量のエネルギーが必要です。そこで"Braveheart"の真の力を利用します。一定時間、100%以上の力を解放するのでフルカウンターが発動できます。しかし代わりにその分の回復時間が必要となるので、かなりリスクを伴う技となっています。

次回はまたルビィちゃんですか?はい!もちろん!



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第3章 170話 「オーガ戦 "覚醒の連鎖"」


皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです!
年内決着目標で頑張ります。




 

 

 

 

 

"Awaken the power"が黒澤ルビィの限界。

 

誰が決めたのか?それは紛れもない本人であり、自分で自分の限界を作ってしまっていたことに…気づくことなく数年の時を過ごした

 

 

ルビィ『ATPの進化?』

 

時を遡ること数日前。

練習に励んでいた黒澤ルビィは、突然の質問に反射するように答えていた

 

 

理亞『私たちの必殺技が"改・真"、"V2・V3"、"G2・GX"って進化していくように…"ATP"にも進化は無いのかなって思って』

 

ルビィ『……あるよ』

 

 

それが、"Awaken the Full power"だった。

 

 

理亞『"Full"…それがATPの進化によって加わる名前なのね』

 

ルビィ『だから、1人での新必殺技と呼べる技はあの時から完成していない。中学生…"ATP"と"ラストリゾート"を完成させてから…』

 

理亞『………』

 

そう言ってもなお、ルビィが特訓を続けるのは、心のどこかではまだ希望を持っているのではないのかと…理亞は感じていた。

 

弱いところ、ワガママなところ、それらを見せるルビィには、人間味があって少しだけ好感をもっていた。

しかし、それだけでなくルビィが自分の次のステージを見据え始めた時、理亞の心の中には嫉妬など存在していなかった

 

 

理亞『ルビィなら、出来るんじゃないの?』

 

もうその時には分かっていたのかもしれない。ルビィが自分にとってどのような存在なのか。

見るだけで腹が立つような奴?追いつけない敵?

 

違う。もう…認めよう。

 

 

 

理亞「ルビィ…私の相棒…ルビィなら絶対に超えられる。今の…過去の自分を」

 

 

 

 

バダップ「"ATP"を超えた"ATP"?」

 

ルビィ「そう。今からやってみようと思って」

 

千歌の体力が戻るまでの時間稼ぎ、それがルビィの自分へと挑戦するチャンスだった。

今の"Awaken the power"では歯が立たない。そして勝つためには千歌の闇の力による"カウンター"が必要

 

 

ルビィ「まず…これが"Awaken the power"」

 

ドォン!!と爆発音と共に体から炎が吹き出した。これだけでも十分世界レベルだが、オーガの選手相手ではまだ足りない

 

 

ルビィ「そして…"Awaken the Full power"」

 

100%、オーラを自身のエネルギーに変えるため、漏れていたオーラが消え、一見技を解除したかのように見えるATPの進化形態。

変化が分かるのは赤眼のみ。そしてここまでが…黒澤ルビィの限界だと、誰もが思っていた

 

 

ルビィ「そして…これが」バッ

 

 

理亞「………る、ルビィのやつ」

 

 

ルビィ「さらにっっ…"ATP"を超えたっっ!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

感じる。ルビィのオーラがスタジアムにいる者全員に、嫌でも感じとれる。

"Full power"よりもどんどん高まっている。

身体中の鳥肌が止まらない。一体何が始まろうと言うのだろうか

 

 

和葉「……止めろルビィ。それを使うと残された時間が無くなる。まだ試合は続くんだ」

 

和葉「あなたには時間が限られているんだよ…」

 

 

次第に、膨らみ続けるオーラはスタジアムの外にいる者のところまで伝わっていた。

 

 

ー ライオコット島 病院 ー

 

亜里沙「ここまでオーラが…ルビィさん、一体何を」

 

 

ー ヘブンズガーデン ー

 

セイン「このオーラは…あの人間、黒澤ルビィのものか…下界で何が起きようとしているんだ」

 

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁっっっ!!!!!」ゴゴゴ!!

 

紅く燃える少女を前に、バダップがドリブルを始めることは無かった。

例えさらに強くなろうと、私の鬼の力には敵わない。強化したところで…叩き潰すのみ。

 

しかし、この考えは後悔へと変わることとなる

 

 

ルビィ「はあぁぁぁぁっっっ!!!!!」ゴゴゴ!!

 

ルビィから放出されるオーラと覇気。

その逆に辺り一帯の空気が彼女の元へと集まっていた。次第に紅いオーラの周りが青白く変色し始める。その変化に…選手たちは見覚えがあった

 

 

A『か、会場全体が揺れています…!!』

 

レヴィン『これが…1人の人間が放つオーラなのでしょうか、』

 

 

理亞(ルビィ…!!!)

 

日本の選手たちは試合であることを少し忘れ、目の前で変わろうとしている1人のサッカー選手を固唾を呑んで見守っていた。

 

成功するか否かの緊張感、新たな力を知ることになるかもしれない興奮。

その"炎"の行く末を…この目で見届けたい。

 

 

そう、思っていた時だった

 

 

ルビィ「………」シュウゥゥン…

 

日本「「「!!」」」

 

「「「!!」」」

 

バダップ「…!」

 

せっかく高めていたオーラを、ルビィは解除してしまったのだ。

瞳を閉じたまま、紅髪の少女は動かない

 

 

バダップ(………違う。オーラが消えたどころか…これは、まさか────────

 

 

黒澤ルビィの瞳、そして口が開かれた瞬間

 

 

ルビィ「【Awaken the Last resort】!!!」

 

 

―――ドオォォォォォン!!!!!!

 

 

バダップ「…なっ!?」

 

「「「!?!?!?」」」

 

"Awaken the power"の時とは比べ物にならないほどの巨大な、そして近づけぬほどのオーラ。熱いとかの次元では無い。

 

黒澤ルビィの"紅色"は全て"青色"へと変化していた。髪、瞳、オーラ。

激しく燃え、宝石のように輝くその姿はまさに…"サファイア"だった

 

 

ルビィ「出来た…"Awake the power"の力に"ラストリゾート"の上乗せ!!!」ゴゴゴ!!

 

ルビィ「ちょっとでもさじ加減を間違えたら…オーラが暴走して体が破裂するところだったよ…でも、どうやら完璧にコントロール出来たみたい」ゴゴゴ!!

 

ルビィ「"Awaken the Last resort"…これがルビィの奥の手だよっっ!!!」ゴゴゴ!!

 

この試合初めて…いや、戦場でも経験したことがないほどの衝撃だった。

人間が…ただの人間が、闇の力を持たない旧人類である人間がこれほどまでのオーラを放つとは…バダップだけでは無い。オーガの選手たち全員が目を見開き、青く燃える少女を見た

 

 

ルビィ「技名長いし、"ルビィサファイア"とでも呼んでよ。パワー、スピード…あらゆる身体能力が今までの比じゃないよ?」ゴゴゴ!!

 

ザッ────と地面を踏み込む音がした。

対するバダップは構える…が、さらに衝撃の展開は続いた

 

 

ルビィ「いくよ────────ギュン!!!!

 

バダップ(は、速い!?)

 

棒立ちでボールを奪われるのは…これが初めてだった。すぐに振り向く…が、

 

 

バダップ「…いない、だと「こっちだよ」

 

バダップ「!?」

 

ルビィ「………」ゴゴゴ!!!

 

ボールを奪ったということは自分の背後にいることになる。しかし、ルビィの声は前から聞こえた。そしてその姿も。

奪って、自分が気づかない間に再び前へと回り込んだ?見えなかった。分からなかった

 

 

エスカバ「今度は青髪か…また随分と派手になったな」

 

ミストレ「出し惜しみするほどの力なのか?」

 

理亞「……」

 

"ラストリゾート"を知らないからそんなことが言えるんだ…!!理亞は心の中で冷静に分析した

 

 

理亞("ラストリゾート"は…その圧倒的パワー、反則級の圧力、それらと引き換えに体力をごっそりと持っていく技…)

 

美奈「そんな技をオーラとして纏う?そんなの命を捨てるようなものよ。考えたとしても絶対にやりたくないし、出来っこない」

 

 

ルビィ「…でも出来るんじゃないかって、千歌ちゃんのサッカーを見て思った。諦めずに、僅かな可能性でも全力でぶつかっていく…」

 

ルビィ「これは…それのルビィなりの答え」

 

 

青く燃える炎…ルビィサファイア。

一度は諦めたこの姿で、目の前で驚く鬼をなぎ倒し…勝つ。ルビィはすぐさま飛び出した

 

 

バダップ「…いいだろう。こちらも全力で相手する」

 

イッカス、ジニスキー「「!!」」バッ

 

ルビィ1人に対し3人でディフェンスするオーガ。その動きから、ルビィサファイアの実力がどれほどまでに高いのかが分かった

 

 

A『新たな姿へと変化した黒澤ルビィに対し、オーガは3人がかりでディフェンス!』

 

 

英玲奈「…ツバサの"Shocking Party"×"ゾーン"と同等、いや…それ以上のオーラだぞ、」

 

希「ATPを超えたATPが…これほどまでの力とはなぁ…でも、」

 

 

 

 

バダップ「…"何秒"もつ?」

 

ルビィ「……」ゴゴゴ!!

 

バダップ「エネルギーは有限だ」

 

 

―――バリィィィィィィィン!!!!!!

 

 

イッカス、ジニスキー「「!?」」

 

ルビィ「だから何?それまでに倒す」ゴゴゴ!!

 

バダップは闇の力で作った壁で攻撃するも、全て一瞬で破壊されてしまっていた。

2人の会話が続いている間も、ガラスが割れるような音は絶えず鳴り続けていた。

 

見えない壁を壊しながら、オーガの兵士3人のディフェンスを躱し続けるのは流石は新形態だと言っていいだろう…しかし、

 

 

バダップ(なんだ…この違和感は)

 

こちらも全力を出しているのにも関わらず…奪えるどころか、ボールに触ることさえ出来ない。

まるで動きを…思考を読まれているかのようなルビィの動き。明らかに先程までとは違う

 

 

ズババババババババババッッ!!!!!!

 

 

バダップ(……この音は)

 

空気を切り裂くような音が、ルビィとの勝負の中で耳の中に入ってきた。

一切の隙も許されない中でこの余所見は許されないことだったが、それでもバダップは視線をルビィの背後へと移した。

 

ルビィのオーラに隠れて気づくのが遅れたが、何か…誰かのオーラが膨れ上がった。

そして…バダップの違和感の答えは、紛れも無く"それ"であった

 

 

梨子「【神のタクトWI】」ズバババッッ!!

 

梨子「私も戦うよ。ルビィちゃん」

 

 

バダップ(桜内梨子…このタイミングでゾーンを発動させただと!?!?)

 

ルビィの動きの変化は梨子の指揮によるものだった。自分たちの動きが読まれているのも全て辻褄が合う。覚醒した桜内梨子ならば…全てが…可能なのだ…!!!!

 

 

鞠莉「梨子が"ゾーン"を…!!なんてナイスタイミングなのかしら!!」

 

和葉「千歌ちゃん…やってくれたね!!」

 

鞠莉「??何故、千歌っちが?」

 

 

そもそも、自分で自分の限界を作っていた黒澤ルビィが、何故このタイミングで新たな力の発動を試みたのか。

そして、同タイミングでの梨子の覚醒。

 

偶然?誰もがそう思う中、三浦和葉は本当の答えを見抜いていた

 

 

和葉「千歌ちゃんの瞬間的なオーラの爆発。あれが選手たちの秘めていた力を刺激したんだよ」

 

鞠莉「"フルカウンター"の時の…!」

 

和葉「そう。正確には"Braveheart"の真の力かな。あれが試合の流れを一気に変えた」

 

技の加減が上手くいかなかった事が逆に救いとなっていた。千歌の持つ全てのエネルギーを代償に、次々と選手たちが覚醒を始めていた。

それは…当然ルビィや梨子だけでは無く、

 

 

理亞「ぐあああぁぁぁっっ!!!!」ドォン!!

 

「「「!!!!!!」」」

 

突然、咆哮と同時に理亞の姿が自身のオーラにより隠された。

そして数秒後、数倍にも膨れ上がったオーラと共に、白銀の髪を揺らす理亞が姿を現した

 

 

理亞「【Awaken the power】!!」ゴゴゴ

 

理亞「私は…私のやり方で限界を超える!!そして…あんたたちを倒すっっ!!!!」ゴゴゴ

 

紅くギラギラと輝かせたその目は、理亞が自身の殻を破ったことを物語っていた。

"Awaken the power"×"ゾーン"。ルビィとはまた違った、ATPを超える圧倒的な力。それを我が身に集約させていた

 

 

理亞「これが…私の全て!!!!」ゴゴゴ!!

 

 

にこ「乗ってきたわねゾーン組…!!にこたちも負けてられないわよ!!」

 

もちろん、特殊技を持たない選手たちにも十分過ぎるほどの刺激となっていた。今、流れは完全に自分たちに来ている。これを逃せば勝利は絶望的…ならば、自分たちも黙って見ている訳にはいかないだろう

 

 

にこ「善子!私たちも攻撃に参か…ちょっ、善子!?」

 

 

しかし、そんな中で善子だけは違っていた

 

 

善子「ハァ…ハァ…な、何よこれ???」

 

片目を押え、その場で立てなくなっていた。

体は凍えているかのように震えており、ただ事では無いとすぐに分かった。すぐににこは善子の元へと駆け寄る

 

 

にこ「なっ…!?これって……」

 

 

一方、前線ではルビィを筆頭に日本の選手たちが猛攻を繰り広げていた。勢いは止まることなく―――増すばかりである

 

 

ルビィ「【スプリントワープGX】っっ!!」

 

ギュン!ギュン!!ギュン!!!

加速音の間隔が秒単位で狭まっていた。

既にバダップ以外のオーガの選手たちでは対処出来ない次元。

だが、

 

 

バダップ「──────っっ!!」

 

バダップは闇の力を全開にすることにより、ルビィの異次元のスピードに対応しようとしていた。そう簡単には行かいないとは思ってはいたが…まさか、ここまで来て状況(ルビィVSバダップ)が全く変わっていないとは……いや、

 

 

ルビィ「今のルビィには─────」パス

 

バダップ(パス……だと?)

 

すぐ横では―――覚醒した理亞が走っていた

 

 

ルビィ「───仲間がいる」ゴゴゴ!!

 

理亞「ルビィだけ見てんじゃないわよ」ゴゴゴ!!

 

 

A『鹿角理亞が攻撃に加わりこれで2対1…!!』

 

レヴィン『バダップ選手がここまで焦っている姿は…今大会初めてですね』

 

 

バダップ(今の鹿角理亞も厄介…私が2人をまとめ―――ツバサさんっっ!!」パス

 

バダップ「なっ!?」

 

ツバサ「2人だけを見てるだけじゃダメよ?」

 

 

A『綺羅ツバサも来たあぁぁ!!ついにバダップ選手を完全突破!!』

 

 

梨子の指揮により日本のサッカーは完成されていた。

相手がどんなに人間離れしていたとしても、チームで戦うサッカーはそれをも凌駕する可能性を持つ。

1人ひとりが同じ場所を目指し走る。そして、そこまで進むには無限にも近い方法がある

 

 

ツバサ「私たちのサッカー…見せてあげましょ!!」

 

ルビィ、理亞「はいっっ!!」

 

シュートを狙える距離まで来た。撃つならば…今しかない。

そう考えたのと同時に、ツバサは巨大な羽を広げ、オーラを限界までボールを込め始めた

 

 

ツバサ「はああああっっ!!」バッ!!

 

 

フィリップ「あれは…綺羅ツバサの"ゴッドブレイク"!!」

 

エドガー「……違う。あれはただのシュートではない!!」

 

 

ルビィ、理亞「「っっ!!」」バッ!

 

気づいた時には、FWコンビがツバサの作った巨大なオーラの真上へと飛び込んでいた。ルビィは左足、理亞は右足に、それぞれオーラを纏い、シュートの構えに入っている

 

 

ツバサ「これが…神をも超える混沌のシュートっっ!!」

 

3人の蹴りが混ざり合い、爆発する!!!!

 

 

ツバサ、ルビィ、理亞

「「「【カオスブレイク】っっ!!」」」ドガアァァン!!!

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

A『出たあぁぁ!!新必殺技だぁぁ!!!!』

 

 

花陽「ご、"ゴッドブレイク"と"クロスファイア"の合体技…凄まじい威力です!!!!」

 

 

炎と氷、そして神の如く最強のゾーンが融合したシュート。

まるで1つの芸術作品のように、3色の尾を伸ばしながらゴールへと迫っていく。

しかし、会場全体がどよめく中、1人、表情を変えずにシュートを待つ選手がいた

 

 

ザゴメル「………」

 

"ニードルハンマー"、"エレキトラップ"、彼女の技をどちらも破ることが出来るほどの威力は持っている。

それは彼女自身も理解しているだろう…が、

 

 

ザゴメル「ゲボー、ブボー、いつまで寝てるの?出番よ」

 

何も無い地面に話しかけるオーガのGK。

―――次の瞬間、

 

 

A『ああっと!?地中からオーガの選手が2人姿を現した!?』

 

 

ツバサ、ルビィ、理亞「「「!?」」」

 

不気味な姿の小柄な選手。

今考えると…オーガの選手はここまで9人で試合をしていた。

そんな中、ザゴメルが呼び出した理由は至ってシンプル

 

 

ザゴメル「【ハイボルテージ】っっ!!」

 

 

―――バチバチバチバチッッ!!!!!!

ゲボー、ブボーを両手に乗せ、今までのザゴメルの電気オーラとは比べ物にならないほどの巨大な電撃を発動。

覚醒状態の3人のシュートを一瞬で丸焦げにしたのである

 

 

A『な、なんだあの技は!?そして凄まじい威力…!!綺羅ツバサ、黒澤ルビィ、鹿角理亞の新必殺技は惜しくも止められてしまった!!』

 

 

ザゴメル「ふっ…この技を使わせるとはね」

 

 

理亞「ハァハァ…あのシュートが…決まらない!?」

 

ツバサ「まだ技を隠してたのね……」

 

ルビィ「ハァ…ハァ…」

 

"カオスブレイク"を放ったことにより、体力が大幅に減ってしまった3人。その中でも特に燃費の悪いルビィは深刻だった

 

 

ルビィ「ハァ…ハァ…あ、あれ?」ガクッ

 

理亞(ルビィ…もうガス欠…!?)

 

"Awaken the Last resort"の強力が故の代償、理亞はそれを知ることとなった。このままではせっかくの流れがすぐに潰されてしまう。その前に何とか…いや、すでに手遅れに近かった

 

 

ザゴメル「バダップ。任務を忘れるな」

 

バダップ「………」

 

ザゴメル「殲滅だ。感情など必要ない」

 

バダップ「……分かっている。黒澤ルビィはもう終わりだ。ここから高海千歌、高坂穂乃果…日本代表を潰す」

 

 

 

美奈「………曜ちゃん」

 

曜「は、はい!」

 

美奈「交代よ。準備して」

 

曜「だ、誰とですか?」

 

美奈「……………」

 

 

美奈「ルビィちゃんとよ」

 

 

 

日本 2-2 オーガ

 

 

 

 





『Awaken the Last resort』特殊/黒澤ルビィ
ATPを超えたATP、黒澤ルビィが自分を完全に超えた必殺技となっています。"ラストリゾート"をオーラとして纏うことにより、圧倒的な力を得ます。その分、代償は大きいですが、ルビィちゃんの新たなステージとして相応しい技なのではないでしょうか。
ちなみに、姿は青髪の青眼。ルビィちゃん曰く、技名が長いので"ルビィサファイア"と呼んで欲しいらしいです。サファイアと炎のファイアを掛けてみました。

『カオスブレイク』シュート/ツバサ、ルビィ、理亞
原作の中でもトップクラスでかっこいい技、アフロディ・バーン・ガゼルの必殺技です。ここで無理に新必殺技を出す必要は無いかな…と迷ったのですが、せっかくなので採用しました。FWのトップ選手3人が撃つシュートですから…とんでもない威力のはずです。

『ハイボルテージ』キーパー/ザゴメル・ブボー・ゲボー
めちゃくちゃチート技。大体のシュートは止める


善子どした?




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第3章 171話 「オーガ戦 "最終局面"」

皆さん、メリークリスマス!ルビィちゃんキャンディーです。
世界編もついに残り3話です。よろしくお願いします





 

 

南国、ライオコット島で世界の頂点を決める激戦が繰り広げられている中、選手たちが知らない場所では―――新たな可能性が芽吹き始めていた

 

 

「…ゆうちゃん、何見てるの?」

 

「サッカーの世界大会!この人たち凄いんだよ!」

 

「サッカー…?」

 

まだ幼い少女たちは、テレビに映るその試合の決着がつくまで…目を離すことは無かった。

全く知らない人たち、スポーツ、難しい単語の嵐。

それでも何故か、何故だろう。

鳥肌が止まらない

 

 

「頑張って…サニデイジャパン…!」

 

この2人の少女だけではない。

大樹の枝先に芽吹く蕾のように、数え切れないほどの可能性が今この瞬間も生まれている。

 

 

 

そして、ライオコット島─────

 

 

 

曜「ルビィちゃんと…交代ですか?」

 

美奈「ええ。あの技は…まだ早すぎたのよ」

 

ルビィとの交代を指示された曜はまだ実感が湧いていないようであった。

不安になる気持ちも分かる。しかし、高海美奈は敢えて、ここで曜を呼んだのである

 

 

美奈「曜ちゃんにしか出来ないことがある。今から…私からの最後の指示を伝えるわ」

 

曜「…!」

 

 

 

A『あぁっと!?黒澤ルビィが膝をついた!試合終盤、疲労が見え始めてきたか!?』

 

 

ルビィ「ゼェ…ゼェ…」ゴゴゴ!!

 

理亞(ルビィが限界…!!3分は経ってない…千歌さんの回復にはまだ時間がかかる)

 

現在、バダップに太刀打ちできる日本の選手は千歌とルビィのみ。

その2人が機能しなくなれば、すぐに日本代表の流れは変えられてしまうだろう。梨子のゾーンもいつまで持つか分からない。

もちろん…自分の今の状態(ATP×ゾーン)

 

 

バダップ「試合終了も近い。ここで終わらせてもらう」パス

 

理亞(パス…誰に…っっ!?)

 

日本「「「!!!!!!」」」

 

日本代表の全員が察した。

バダップが何を考え、その選手にボールを渡したのか。これから何が起きるのか。

絶対に…撃たせてはいけなかったシュート

 

 

エスカバ「うらあぁぁぁぁっっ!!!!」

 

エスカバ「【デスレイン】!!!!」

 

砲台から放たれるシュート。

空から降り注ぐ光景はまさに"死の雨"だった。

この技で前半、日本代表の半数のメンバーが負傷した。残されたメンバーも限られている。絶体絶命、そう、覚悟した時だった

 

 

「撃ってきたわね。ここは私に任せてもらえる?」

 

1人、自ら死の雨の落下地点へと歩を進める選手がいた。

誰もが絶望的だと確信する状況の中、彼女は恐ろしいほどまでに静かに、クールに、絶体絶命に抗おうとしていた

 

 

あんじゅ「【ジャッジメント・レイ】」パチン!

 

 

フィリップ「"睡蓮の女神"優木あんじゅ…!?」

 

エドガー「いったい何を…」

 

空中に魔法陣を出現させ、そこから絶対火力の無差別攻撃を放つあんじゅの最強の必殺技。しかし、その魔法陣を空中では無く地面に錬成

 

 

あんじゅ「撃ち落とすわよ…!」パチンパチン!!

 

空に向けて放たれる無数のレーザー。

降り注ぐ死の雨に次々と命中し、大量の爆発が空を覆った

 

 

A『なんと!?あの"デスレイン"をシュートブロック!!破壊の名に相応しいディフェンスは…世界の場でも健在!!!』

 

 

エスカバ「な、なに!?」

 

ツバサ「流石ね…あんじゅ」

 

しかし、全てのシュートを防ぎ切る事は出来なかった。

数本は地面に落下するが、そこは誰もいない場所。

あんじゅは選手たちが立っている場所だけは完璧に死守していた。1本、例外を除いて

 

 

レヴィン『1本のシュートがゴールに向かっていますね』

 

A『さすがの優木あんじゅも全ては止めきれなかったか!?ゴールに迫るシュート、高坂穂乃果は止めることが出来るか!?』

 

 

美奈「…わざと撃ち落とさなかったわね」

 

英玲奈「まったく…こんな大事な時に、」

 

せっかく温めた身体が冷えちゃうでしょ♪

と言わんばかりのあんじゅに呆れる英玲奈たち。

そして…燃え上がる太陽

 

 

ホノカ「ありがとうあんじゅさん…絶対に止める!!」

 

闇の力で身体を強化。両腕にオーラを集め、赤黒く燃える炎で迫るシュートを―――がっちりと掴み取る

 

 

ホノカ「【ゴットハンド・ダブルX】っっ!!!」

 

オーガ「「「!!!!!!」」」

 

ゴールよりも巨大な炎の手。

ルビィのATPとはまた違った熱さだ。オーラではなく、高坂穂乃果の存在自体が炎…いや、太陽のような灼熱。

その覇気に押され、死のボールは徐々に威力を失い─────

 

 

ホノカ「……よし!!」シュゥゥゥ…

 

 

フラム「あの"デスレイン"を…止めた…」

 

 

A『止めたぁぁ!!高坂穂乃果、自身の持つ最強の必殺技でエスカバ選手の"デスレイン"を見事に止めましたぁ!!!』

 

レヴィン『何もかも言うこと無しでしたね…!なんて頼りになるGKでしょうか…』

 

 

ホノカ「反撃だよ…にこちゃん!!」パス

 

にこ「任せなさいっっ!」

 

 

A『そしてボールを持ったのは"日本のファンタジスタ"矢澤にこ!!彼女にボールを持たせれば、それだけで脅威!!!』

 

 

にこ(千歌はまだ動けない…ルビィも限界…)

 

ミストレ「もらう―――っっ!」バッ

 

にこ(なら─────────

 

 

────ズババババババッッッ!!!!!!

強風がミストレの横を流れる。

突然のことに、反応が遅れるどころか全く出来なかった

 

 

ミストレ「―――!?」

 

人間がドリブルをしただけでこの切り裂くようなスピード?

不規則な動きが自分の状況判断能力を迷子にし、横を過ぎ去る少女をただ呆然と見ることしか出来ない。動けない。彼女は…いったい何者なのだ?

 

 

にこ「【真ファンタスティックキープ】」

 

にこ「銀河一のサッカープレイヤー矢澤にこよ。覚えておきなさい」

 

 

A『ドリブルで躱した!!…いや、まだ持ち込みます!!』

 

 

ダイッコ「馬鹿な…自強化技も無しに」バッ

 

イッカス「その華奢な体…吹き飛ばしてあげますよ!!」バッ

 

にこ「………」

 

にこ「──────っっ!!」

 

小柄な体から生まれる圧倒的な技術。

そして、想像も出来ないほどのフィジカル。

────ズババババババッッッ!!!!!!

 

針目を縫うような際どいドリブル。それを迷いなく連発し、全てミスなく完璧に、まるで1つの芸術作品のような

 

 

にこ「まだまだっっ─────!!」ズババッ!

 

その極められたサッカーを見た者たちは声を揃えて言うだろう。矢澤にこはただ才能を持つだけの選手では無いと

 

 

にこ「負けらんないっっのよ!!!!」

 

"努力する天才"。

その存在そのものが、人々を魅了する

 

 

にこ「【スーパーエラシコ】っっ!!」バッバッバ!!

 

 

A『矢澤にこが止まりません!!!!!!』

 

アメリカ「「「矢澤アニキー!!!!!!」」」

 

オーガ陣内に切り込んだにこは大きく空いたスペースへとボールを蹴り上げた。その場には1人の選手が走り込んでいた。

にこはその少女の名をはち切れんばかりの声で叫んだ

 

 

にこ「理亞っっ!!決めなさい!!」

 

理亞「はあぁぁ―――っっ!!!」

 

頭上のボールにATP、そして大量の空気が集まっていく。

紅と青のオーラがひとつの生き物のように渦を巻き、今か今かと爆発の時を待つ

 

 

理亞「―――ふっ!!」バシッ

 

両足で抱え込むようにボールを地面へ。

先回りし右足で2つのオーラを混ぜ合わせる。

そして…完成した"爆弾"を大気をも揺らすほどのパワーで放つ

 

 

理亞「【ラストリゾート】っっ!!」ドガアァン!!

 

 

A『出たあぁぁ!!!黒澤ルビィから継承した、日本代表の最強シュート!!!!』

 

 

ドガァン!ドガァン!ドガァン!

何度も地面を砕きながらバウンド。まるで巨大な竜が突進するかの如くの轟音だった。"ATP"×"ゾーン"状態であるため、威力も跳ね上がっている。

そんなシュートを前にしても、オーガのGKが怯むことはなかった。

 

―――この時までは

 

 

ザゴメル「……【ニードルハンマー】」バチバチ!

 

ルビィの"ラストリゾート"を沈めた必殺技。

何度もパンチを打ち付けるため、触れないシュートが弾き続けたとしてもジリ貧の敗北となってしまう

 

 

ザゴメル「――――――ふっ!!」

 

────ドガガガガガガガガガ!!!!

しかし、理亞のシュートはそれだけでは終わらなかった。

バチィン!!と音を立て、ザゴメルが後方へと吹き飛んだのである。同じくシュートも弾かれたが、勝敗が変わった。引き分けである

 

 

ザゴメル(重い…貫通しきれなかったか!?)

 

 

理亞「…まだ、動けるでしょ?」

 

弾かれたボールを理亞は追おうとはしなかった。

次は…絶対にあいつが撃つ。分かっているからこそ、信じているからこそ、ボールの行く末を見届けける。

 

そして、その"あいつ"も全て分かっていた

 

 

ルビィ「ハァ…ハァ…お姉ちゃんが、助けてくれた」

 

消える寸前の蝋燭のように弱まった青い炎。

なんとか立ち上がり、絞り出すように呟くのは…フィールドで見た、姉の最後のプレーだった

 

 

ダイヤ『ルビィ!!危ないっっ!!』ドガッ!

 

ルビィ『お姉ちゃ─────

 

前半終了間際、"デスレイン"が放たれた時、姉のダイヤがルビィを庇うことにより、ルビィは無傷でベンチへと戻ることとなった。

姉はこの試合、いや、もう一緒にはサッカーが出来ないと言うのに…躊躇うことないどころか「今度は…守れましたね」と言ってきた

 

 

ルビィ「ここで…限界…?」

 

魔界軍団Zとの戦いでルビィがダイヤを庇ったこと…

ダイヤは姉として、自分の無力さに怒りを忘れた日は無かった。そして、決勝でのダイヤの負傷交代。ここで終わり?黒澤ダイヤとのサッカーは…これで……

 

 

ルビィ「ふざけるなぁぁぁっっ!!!!!!」

 

────ボオオオォォッッッッ!!!!!!

まるで破裂した水道管、溢れ出るマグマ、それを一言で言い表すと…噴火だった

 

 

サンダユウ「まだ…これほどの力が!?」

 

ダイッコ「黒澤ルビィの体力は…無くなったんじゃないのか!?」

 

本人でさえ出処が分からない大量のオーラ。

心做しか発動時よりも強力になっている気がした

 

 

ルビィ「お姉ちゃんのサッカーは…終わらない、終わらせないっっ!!ルビィがこの場に立っている限り、絶対に消えない!!!」バッ

 

そのままルビィはボールに飛びついた。

自身から溢れ出るオーラを全てボールに込め、にこが、理亞が、みんなが作ったチャンスをこの一撃で繋ぐ

 

 

ルビィ「これが…正真正銘最後の…っっ!!」

 

ルビィ「【ラストリゾート】っっ!!!」ドガアァン!!

 

残った全ての力を出し切り放った"切り札"は、地面を砕きながらゴールへと迫る。

対するザゴメルは理亞のシュートによりダメージを負った右腕とは逆の腕で再び立ち塞がった

 

 

ザゴメル「【ニードルハンマー】!!」ドガガガガ!!

 

"ニードルハンマー"以外のザゴメルの技は発動するのに時間が必要だと、ここまでのプレーでよく分かった。

ならば隙を与えずに両腕を潰して一気に叩く。

感覚と経験で状況を判断し、それを周囲の選手たちも共鳴したかのように合わせ続ける。まるで大きな波のように

 

 

ザゴメル「ぐっっ!?」バギッ!

 

ザゴメル(両腕が潰れた…!!!)

 

 

梨子(新形態のルビィちゃんのボールも止めた…でも!!)

 

 

A『さあ!!サニデイジャパンは一世一代の大チャンス!!ボールは再び弾かれ、走り込んでいるのは…またこの選手!!!!』

 

 

穂乃果「これで…終わりにするっっ!!」

 

グローブをつけ、長袖のGK用ユニフォームでボールの落下地点へと走る日本の守護神。

その姿を見た観客たちの歓声が何倍にも膨れ上がった。しかし、走る穂乃果、そして選手たちには聞こえていない。

ただひたすらに、全力以上の力を出しながら走る

 

 

バダップ「高坂穂乃果を止めろっっ!!」

 

穂乃果「──────!?」

 

あと数メートルでボールに届くところで、オーガのDFたちが穂乃果の前に立ち塞がる。

走ることに意識を向けすぎたことが失敗だった。

今の穂乃果に自分の目の前に立つ相手選手たちを全員抜き去ることは不可能だ。体力的…能力的…時間的にも、全てが足りない。

本能が────そう叫んでいた

 

 

 

────バリバリ!!!!

 

そんな状況だったからだろうか。

変に冷静になってしまったからこそ、自分の横を駆け抜けた"何か"。そして聞き覚えのある"雷音"が鼓膜を刺激した

 

 

穂乃果「─────ぇ、」

 

 

バダップ「!?」

 

ミストレ「なんだ…!?何が起きた!?」

 

皮膚と音でその異常を察知するよりも先に、穂乃果を含め全員が"目"に飛び込んできた光景に衝撃を隠しきれなかった。

オーガのDF全員がその場で石のように固まり、動かなくなっていたのである

 

 

月「あの技ってまさか……」

 

花丸「そうずら…こんなことが出来るのは、1人しかいないずら」

 

 

オーガ陣内から離れた日本代表のゴール前。

1人の選手が満身創痍な中、"とある技"により今の光景を作り上げていた。

片目をこれでもかというぐらいに押さえつけ、呻きに近い声を発しながら、片腕を穂乃果の元へと向けていた。

 

その腕には黒紫色の禍々しいオーラが…電気のようにバチバチと弾けていた。

それは忘れもしない。最悪の根源、"魔王"のオーラ

 

 

善子「行きなさいっっ!!穂乃果っっ!!!!」

 

そして、オーガの選手たちの動きを止めたのは魔王の技、"ブラックサンダー"だった。

何故、消滅したはずの魔王の技を善子が使えるのかは分からない。だが、その前に穂乃果たちにはやるべきことがある

 

 

穂乃果「このボールを…ゴールに叩き込む」

 

海未、ことり「「【グランドファイア】────

 

穂乃果「─────イグニッションっっ!!」

 

─────ドオオオォォォォン!!!!!!

巨大な炎がフィールドに広がり、地を焼き払いながらゴールへと迫っていく。

"ファイナルトルネード"を進化させた不死のシュート"グランドファイア"だった。その破壊力は、オーガの選手たちでさえ立っていられないほど

 

 

A『こ、この技はいったい!?サニデイジャパンの怒涛のシュートラッシュのラストを飾るのは…この最強火力と言っても過言ではない"グランドファイア"となるのでしょうか!?!?』

 

 

和葉「行ける…!!」

 

フィレア、鞠莉「「行ける!!」」

 

「「「行ける!!!!」」」

 

 

ザゴメル「【ハイボルテージ】っっ!!」

 

穂乃果「これが…私たちのサッカー!!!!」

 

強引に発動を間に合わせたザゴメル。

しかし、それにより洗礼さは失われており、徐々に"穂乃果たちの炎"が電撃波を押し始めていた

 

 

ザゴメル「ぐあっっ…こ、この力は!?」

 

穂乃果「そのまま行けぇぇぇぇ!!!!」

 

もうすでにゴールは目の前。

ザゴメルの体が止まることは無い。

決まった。私たちの全力が…ゴールに届い…

 

 

ザゴメル「………ふ、ふふふ」

 

追い詰められた中で笑うオーガのGK。

何か様子がおかしい。そう、穂乃果たちが思った時だった

 

 

ザゴメル「ははは…流石だぁ…旧人類史上最強と言われたチームだけのことはある」

 

穂乃果「──────!!」

 

この時、ザゴメルだけでなく、ブボーとゲボーのオーラが急激に高まったことを…穂乃果を含め、数人の選手たちは見逃さなかった。

まさか────────

 

 

ザゴメル「【ハイボルテージGX】っっ!!!」

 

バチバチバチバチッッッ!!!!!!

─────更なる圧倒的…絶望的な実力を知ることになるとは

 

 

ことり「……嘘、"グランドファイア"が、」

 

海未「まだ…力を隠していたのですか…」

 

"無印"など生ぬるかったのだ。

オーガのGKの全力は数段飛び越えた"GX"の世界。

ついに底を見た。だが、その底に辿り着くことは不可能であるということも、同時に分かってしまっていた。

 

日本代表の出せる破壊力は全てぶつけた。

それでもオーガのゴールは越えられなかった

 

 

穂乃果「ハァハァ……や、やばい、ゴールが」

 

 

フラム「穂乃果!!早くゴールに戻って!!」

 

がら空きのゴール。

しかし、穂乃果が戻る間、オーガの選手がシュートを撃つことは無かった。

その代わりに、体力を激しく消耗した日本代表の選手たちに矛先を向け始めたのである

 

 

ドラッヘ「─────!!」ドゴッ!

 

ルビィ、理亞「「っっ!?」」

 

 

エスカバ「───だりゃっ!!」ドゴッ!

 

あんじゅ「きゃ!?」

梨子「痛っっ!?」

 

 

A『オーガの反撃…!!試合終盤、壮絶な試合展開だぁぁ!!!』

 

 

人に向ける威力を超えたボールが、日本代表の選手たちの心身を粉々に砕こうとしていた。

穂乃果がゴールに戻った時には、すでに立っていられる選手はほとんど残っていなかった。イタリア代表の時と同じ光景を…穂乃果は見た。自分も体力はほとんど残っていない。今度は…自分の番だ

 

 

千歌「ぐはっ!?」

 

バダップ「…情けないな。高海千歌」

 

バダップ「仲間が必死に戦う中、自分は見ていることしか出来ない。そしてそんな仲間たちも傷だらけだ」

 

千歌「ハァ…ハァ…」

 

バダップ「これが、お前の言うサッカーか?」

 

朦朧とする意識の中、千歌は"自分のサッカー"が何だったのかを、必死に思い出していた。

確かに…今自分たちがやっていることは、サッカーの次元を超えすぎている。

何故、私は今ここにいるんだろう?何をしているんだろう?何故、こんなにも苦しいのだろう

 

 

バダップ「捨てさせる。お前からサッカーを…全てを。歴史を修正するためにも、貴様は邪魔なのだっっ!!高海千歌ぁ!!!!」

 

空高くボールを蹴りあげたバダップ。

剥き出しの殺意がオーラと共にボールへと集まっていく。そのボールを両足で挟み、濁った血液のような赤黒いドリル状のシュートを放つ

 

 

バダップ「【デススピアー】!!!」

 

────キュイィィィィィィィィン

不快な音と絶望的なまでに巨大で強力なシュート。

そのオーラはまるでスポットライトのように穂乃果を赤黒く照らしていた。それでも、絶対に止めなければならない

 

 

穂乃果「私は…絶対に諦めないっっ!!」

 

紅く燃える炎のオーラを両手に集め、迫るシュートを受け止める。

だが、シュートが手に触れた瞬間、身体が砕けたかと思うほどの衝撃が穂乃果を襲った。先ほどの"デスレイン"とは威力がまるで違う。

強い…強すぎる

 

 

ホノカ「【ゴットハンド・ダブルX】っっ!!!」

 

闇の力、穂乃果自身のオーラ、全力以上の力で出し切っているはずなのに…地面をスパイクで抉る線が伸び続けて止まらない。

ドリル状に回転するシュートが徐々に"ゴットハンド"を削り、砕き、ヒビ割れがどんどん広がっていく

 

 

ホノカ「負けるっっもんかあぁぁぁっっ!!!」

 

叫ぶ。状況は何も変わっていない。

それでも高坂穂乃果は叫ぶことを止めなかった。

目を閉じ、耐えることだけに集中する。

 

だからだろう、気づくのに遅れたのは。

 

 

 

────キイィィィン

 

視覚を遮断した世界で聞こえてきたのは…まるで金属音。何かが空を切ったような、軽く突き抜けた音。

その後、1秒も経たないうちに───────

 

 

ホノカ「え……うわっ!?」ドサッ!

 

「「「!!!!!!」」」

 

突然、手をついていた壁が消えたかのように。

力を加える場所を見失った体は、勢いよく前方へと投げ出され、そのまま地面へと倒れることとなった

 

 

ホノカ「シュートが…消えた??」

 

何が起きたか全く理解出来ていない穂乃果はすぐに目を開く。そして目の前に映る光景に、全身の鳥肌が震え立ったのが分かった。

 

紅く輝く瞳。みかん色の髪、そして水色に包まれたユニフォームは彼女が放った技の衝撃により激しく揺れている。

そして…衝撃は髪とユニフォームを揺らすだけでなく

 

 

チカ「【フルカウンター】」

 

"デススピアー"のオーラ全て、跡形もなく消し飛ばしていた

 

 

バダップ「高海千歌…!?何故動けて!?」

 

チカ「あなたたちのおかげだよ…たくさんダメージを与えてくれたから、それらが全て私の力に変わった」

 

バダップ「ま、まさか…」

 

チカ「【リベンジカウンター】。疲労、ダメージを全て自身の力へと変換させる。習得したばかりで…時間はかかったけど」

 

それは忘れることは無い。

カウンターの先駆者、日宮美奈の必殺技の1つ。

その無茶苦茶な力は、どんな不利な状況でも天地真っ逆さまにひっくり返す

 

 

チカ「…確かにあなたの言う通りだよ」

 

バダップ「……」

 

チカ「私は…私のサッカーを使命感から見失っていたんだと思う。こんなの…確かに楽しくないよね」

 

高海千歌は"輝き"をサッカーで見つけた。

そして…今度は"輝こう"としている

 

 

チカ「だから…"輝こうサッカーで"。私たちのサッカーで…あなたたちに勝つ」

 

チカ「決着をつけよう。私たちのサッカーは…私たちが守る」

 

 

 

ー 次回、オーガ戦決着 ー

 

 

日本 2-2 オーガ

 

 




『ブラックサンダー』ドリブル/津島善子
天界&魔界編で登場した魔王の必殺タクティクスです。何故、善子がその技を使えたかどうかはまだ深堀はしていませんが、相手を石のように固め、動きを封じる技となっています。



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第3章 172話 「オーガ戦 "私たちのサッカー!"」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
ついにオーガ戦決着です。頑張れ日本。




 

 

渡辺曜の心の中にあるのは出場出来ることへの歓喜では無く、白線を隔てた外と中の世界の異様なまでの違いに対する困惑だった。

 

外では歓声の雨がゲリラ豪雨のように降り注ぎ、ベンチに座る仲間たちも声を荒げて応援している。

 

対する中…フィールドの中はまるで別の世界ではないか。

ボロボロになりながらその場で倒れている日本代表の選手たち、何事も無かったかのように持ち場で静かに立つオーガの選手。

そして…もはやサッカーの次元を超え、殺意をぶつけ合う"バダップ"と"高海千歌"。

 

まるで…戦場だった。

今から私はここへと足を踏み入れるのか?入った瞬間に機関銃で蜂の巣にされないだろうか?地雷がそこらじゅうに埋められていて、数秒で身体が弾け飛ぶのではないか?

 

それほどまでにフィールド内の空気は刃物のように、鋭く危険なものだった。

私は…サッカーに対する以上の緊張感から、アップで温まっているはずの体が、凍ったように震えてしまっていた

 

 

美奈「晴夏ちゃんも頼むわね」

 

晴夏「はい!任せてください」

 

交代するのは私だけでは無い。

心身共に限界を迎えた善子ちゃんと晴夏ちゃんは交代する。

監督から指示を受け、明るく返事を返す彼女に…私は羨ましさと同時に疑問を持った

 

 

曜(なんで…そんなに明るくいられるの?)

 

目の前で繰り広げた光景は見てきたはず。

なのに、ずっと待ってましたと言わんばかりに、今か今かと交代の時を待つ…

 

未来の世界で戦争を知っているから、こんな状況には慣れてしまっているのだろうか。

でも…私は正直怖い。怖くて、その場から動ける気がしない。

 

 

そんなことを考えている間に、ルビィは曜の目の前までたどり着いていた

 

 

ルビィ「曜ちゃん」

 

すでに"Awaken the Last resort"を解除していたルビィの髪は元の赤色へと戻っていた。

フラフラで足元がおぼつかない中でも、声はフィールドで暴れ回ってた時と同じく…とても強いものだった

 

 

ルビィ「あとはお願いします」

 

曜「ルビィ…ちゃん」

 

気持ちの整理がつかないまま、曜がフィールド内へと入る時間がやってきた。

だが、やはり足が動かない。

そんな曜を見てか、一番近くにいた海未がすぐに駆け寄る

 

 

海未「曜、何をしているのですか?」

 

曜「あ…あはは…ちょっと緊張しちゃって」

 

海未「怖いのですか?」

 

曜「………」

 

沈黙は肯定だと捉えられることは分かっている。

だが、それ以外の理由が思いつかない。思いついたとしても海未ならば自分の態度ですぐに見破ってしまうだろう。現に瞬殺だった

 

 

海未「…曜。あなたの気持ちはよく分かります。だからこそ、あなたには千歌の話しを聞いて欲しいです」

 

曜「千歌ちゃんの…?」

 

それ以上考える暇を与えずに海未は曜の手を引いた。ついにフィールドへと足を踏み入れた曜。

そして海未が目指す先では、日本代表の選手たち全員が集まっていた

 

 

千歌「…みんなに聞いて欲しい」

 

一人ひとりと順に目を合わせ、それから千歌は口を開いた。バダップと睨み合っていた時のような殺伐とした雰囲気は無く、いつもと同じ、優しく力のある声だった

 

 

千歌「私たちは元々別のチームで…育った場所、学校も違う。考えも、プレースタイルも違う。何もかも違う…でも、今こうして一緒にサッカーをしている」

 

千歌「気づいたら…なんの違和感もなく私たちは同じチームで、近くにいて当たり前な存在になってる。それって…本当にすごいことだと思う」

 

千歌「チームの無限の可能性は…私が浦の星女学院のみんなとサッカーをした時によく分かった。だから、同じ"チーム"である私たち、サニデイジャパンもなんでも出来る」

 

 

千歌の提案は究極なまでにシンプル。

 

 

千歌「楽しく…勝とう!!!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

 

千歌「私たちのサッカーは…本来はそうだった。どうせなら楽しくやって最後終わろうよ!!」

 

千歌「こんな大舞台だよ…!世界一が目の前なんだよ…!確かに私たちのサッカーを掛けた戦いだけど…その前に、私たちがしていることは……」

 

千歌「サッカー。やろうよサッカー」

 

いつだったか、イタリア代表キャプテン"三浦和葉"が言っていた。

「私は楽しむためにサッカーをしている」と。当然のように思えることだが、勝負の世界では見失いがちなこの気持ち。

 

そして三浦和葉が世界で最も優れたプレイヤーと呼ばれる理由…それは、いかなる時もこの考えを持っていることが一番だった

 

 

晴夏「ふぅ…結局全部言われちゃいましたね」

 

千歌「え…?」

 

晴夏「私、監督から作戦とは別に伝言を預かってきているんです」

 

 

美奈『千歌ちゃんたち〜?みんな顔がひきつってるわよ??ベンチから丸見え♪』

 

美奈『もっとリラックスして…よく聞いて?私からの"最後の指示"よ』

 

 

 

美奈『あなたたちの思ったようにやりなさい!』

 

 

「「「!!!!!!」」」

 

全員がベンチの方へと向き直す。

そこには千歌と同じく、全ての希望を込めたように輝く目をした美奈が立っていた

 

 

美奈「思いっきり楽しんできて。本当のサッカーをね!」

 

穂乃果「監督…!!」

 

「「「はい!!!!!」」」

 

 

サニデイジャパンのサッカーは試合の中で常に進化し続けてきた。それは時に、相手チームにとって自分たちのイメージを崩し、試合を覆す脅威となった。

 

例え…全てが完成されたオーガとはいえ、日本代表のそんな底力まで見抜き切れてはいない。

 

しかし、サニデイジャパンの選手たちならば知っている。全てを知っている

 

 

美奈「…難しいことは考えないで。あなたたちが何故ここに立っているのか…思い出せばいいのよ」

 

 

A『さあ、まもなくオーガのスローインで試合再開です…!なんと、エースストライカーの黒澤ルビィに代わって渡辺曜。攻守ともに活躍した津島善子に代わって葉石晴夏が入ります…!!』

 

レヴィン『ここでエースストライカーを失ったのは痛いですね…しかし、曜選手も優秀なプレイヤーです。頑張ってもらいたい』

 

 

ー サニデイジャパン ー

 

FW……………鹿角理亞、綺羅ツバサ

 

MF………渡辺曜、高海千歌☆、園田海未

 

MF………………桜内梨子、矢澤にこ

 

DF………葉石晴夏、優木あんじゅ、南ことり

 

GK……………………高坂穂乃果

 

 

 

ツバサ「…あんじゅ。勝てると思う?」

 

あんじゅ「ふふ♪あなたがそんな初歩的な質問をしてくるなんてね」

 

梨子「この中には1人もいないと思います」

 

にこ「勝てないなんて…思ってるやつはね!」

 

ツバサ「ええ…そうだったわね!」

 

 

千歌「さあ!みんなー!」

 

千歌「世界一になるぞぉーっ!!」

 

「「「おおーっ!!!」」」

 

千歌が空高く伸ばした右手、そして世界一を示す人差し指。それに応えたサニデイジャパンの選手たちの顔に"痛み"や"恐怖"は無かった。

 

ピーーッ!!

そして試合再開の笛が吹かれ、スローインでオーガの攻撃が始まった。

ボールを持ち込むのはFWの2人、エスカバとミストレである

 

 

エスカバ「邪魔だぁぁ!!」ビュオォッ!

 

ターンするだけで突風が巻き起こる。

ボールを奪おうとしても、この強力な風の中で身動きが取れる選手はいない

 

 

にこ「──でも、負けないけどね!!」ズザーッ!

 

エスカバ「なっ!?」

 

────矢澤にこを除いて

 

 

凛「にこちゃんナイスーー!!!」

 

希「やるやんにこっち!!」

 

 

ロニージョ「ニコ…!」

 

神奈「まだまだ行けるよね…!」

 

強風にも耐えるフィジカルをにこは持っている。そのまま得意なドリブルでオーガの選手を躱しまくる。

その姿はまさにフィールドで踊る"ファンタジスタ"だった

 

 

梨子「私は…私に出来ることを!!」

 

梨子「【神のタクトWI】!!」ズババババッ!

 

ゾーンで思考判断力が強化された梨子は青く輝く指揮でチームを導く。

これにより、日本のサッカーはチームとしてより完璧に進化を遂げる。

 

パスとドリブルが全て上手く繋がり、オーガのディフェンスはいとも簡単に崩されていく

 

 

にこ「頼むわよ…理亞!!」パス

 

理亞「─────はあぁっっ!!」

 

理亞(なんなのよ…ここまで来て交代なんて…っっ!!)

 

ボールにエネルギーを加えながら悔しさで唇を噛む理亞。最後の試合だというのに…何故あれほどまでの無茶な技を??結局途中で自爆したではないか。

ベンチで座りながら彼女は何を思っているのか、悔しい?もっと活躍したかった?私にエースの座を奪われないか心配か?

 

いや、

 

 

ルビィ「頑張れーっっ!!理亞ちゃん!!!」

 

理亞「ルビィは、バカみたいに私を応援してるに決まってる!!!」

 

理亞「【真オーバーサイクロン】!!!」

 

両足で放つ、進化した激風シュート。

"ラストリゾート"にも引けを取らないその破壊力は、まさに今の理亞の熱い心そのものだった

 

 

理亞「ツバサさん…!こいつでシュートチェインを!!」

 

声に反応したツバサは最初から来ることが分かっていたかのように飛び出していた。"ゾーン"で強力したオーラをボールに込め、美しく空へ、そこから一気に急降下で畳み掛ける

 

 

ツバサ「【ゴットブレイク】!!」

 

ツバサ「はああぁぁぁぁっっ!!」ドガァン!

 

 

A『"オーバーサイクロン"と"ゴットブレイク"の合体シュート!!ザゴメル選手は止められるか!?』

 

 

ザゴメル「【ハイボルテージGX】っっ!!」

 

しかし、どこまで日本代表のチーム力が上がったとしても、最後の砦であるGKの必殺技を破るのは至難の技。

理亞とツバサのシュートも跡形もなく焼き焦がされてしまった

 

 

バダップ「牙をもがれた人間が…」

 

ザゴメルからボールを貰ったバダップは再びシュートのために空へと飛んだ。流れが完全に日本代表のものになる前にここで潰す。

今からなら高海千歌のカウンターも間に合わないだろう。そう確信し、赤黒い死のシュートを放った

 

 

バダップ「【デススピアー】!!」

 

────キュイィィィィィィィィン

不快な音と絶望的なまでに巨大で強力なシュート。

しかし、先ほどまでとは違うことがある

 

 

理亞「準備はいい!?」

 

梨子「私が指揮でカバーするわ…!」

 

日本代表のゴール前では選手たちが集まっていた。

鹿角理亞を中心にまるでディフェンスの壁を組むように…

 

 

理亞「姉様たちの想いも…私が繋ぐ!!」

 

理亞「必殺タクティクス!!」

 

「「「【絶対障壁】!!!!」」」

 

 

聖良「……あの技は!!」

 

函館聖泉の伝統ある技"絶対障壁"だった。

姉である鹿角聖良の最も得意とするディフェンス戦術の要であり、チームの全てが込められた必殺技でもある。それを、理亞は継承していた。

 

その硬さは申し分無し。

あの"デススピアー"を受け止め、威力を半分以下にまで落としていた。これだけの威力では、高坂穂乃果のゴールを破ることは不可能

 

 

ホノカ「【ゴットハンドX】っっ!!」

 

赤く燃える手で死のシュートを受け止める。

穂乃果が止めるだけでも、会場の盛り上がりは最高潮にまで達する。もちろん、仲間たちの気持ちにも火が灯る

 

 

穂乃果「よーし!反撃だぁ!!」

 

 

バダップ「どういうことだ…」

 

バダップが理解できないこと。

それは日本のボールが再び繋がりだしたことでも、自分のシュートが止められたことでも無かった

 

 

バダップ(奴ら…先ほどまで立つことでさえ精一杯だったはず…なのに何故走れる!?)

 

まるで時を戻されたかのように、日本の選手たちの動きがボロボロになる前に戻っている。

混乱する中、ふと地面を見た時だった。

 

微かだが…地面が光っているように見えた

 

 

バダップ「光…?いったい何の…?」

 

瞬時に日本代表のデータを頭の中に叩き出す。そして…この謎の光とデータが一致する選手が1人

 

 

ことり「【ワンダーゾーン】」

 

バダップ「絶対支配領域……」

 

選手たちの謎の回復。

そして南ことりの"ワンダーゾーン"。

全てが繋がった。

 

南ことりは"ワンダーゾーン"を、誰も気づかないほど"広く"。そう、このグラウンドよりも巨大な領域を発動していた。

選手がどこにいても領域の中に入れるように

 

 

ことり「"ワンダーゾーンの中にいる千歌ちゃん以外の日本代表選手の体力を回復"…上手くいったね。晴夏ちゃん」

 

晴夏「はい…!流石はことりさんです!」

 

"ワンダーゾーン"は絵の具のように広げれば広げるほど色が薄くなっていく。

そして効果量も減少していく技。

今回はそれを逆手に取り、バダップたちが気づくのを遅らせたのである

 

 

ことり「相手を好き勝手できる力は出せないけど…みんなを回復させるのは時間さえあれば可能です」

 

晴夏「でも、何故今の今まで気づけなかったのか…それは私の闇の技"ブラックアウト"の効果だよ」

 

葉石晴夏改め、高海晴夏の闇のオーラを使用した必殺技"ブラックアウト"。

効果を与えたものの存在を隠すことができる技。

これでことりの存在を隠し、回復に集中させたのである

 

 

バダップ「……っっ!!」

 

晴夏「まだまだ、これだけでは終わらないよ…!」

 

晴夏の言葉の意味、バダップはすぐに分かることとなる。そしてその答えはすでに、日本代表のプレーにより出ている

 

 

千歌「必殺タクティクス!!」

 

「「「【ミラクルウェーブ】!!!」」」

 

 

A『出たぁぁ!!ブラジル代表の"アマゾンリバーウェーブ"をも破った、日本代表の奇跡の波!!!』

 

 

巨大な波がオーガの選手を次々と飲み込んでいく。しかし、"ミラクルウェーブ"がセンターラインを越えた時だった

 

 

イッカス「【デスクラック】っっ!!」

 

──ドオォォン!!

DFのイッカスが足を地面に叩きつける。

そこから巨大な地割れが発生。"ミラクルウェーブ"の波はその裂け目へと流れ込むように消えていく

 

 

A『巨大な地割れが"ミラクルウェーブ"を飲み込んでいく!?』

 

レヴィン『タクティクスブレイクの必殺技ですか…!相手も対策してきていますね』

 

 

イッカス「残念でしたね…!!」

 

梨子「まだです。全て想定内」ズババババッ!

 

地割れはフィールドの中心から日本のフィールドに向けて直径40mほどの長さ。

中心なため、両サイドにはスペースがあり、梨子の指揮はその両方へと導かれていた

 

 

梨子「必殺タクティクス…!!」

 

「「「【ダブルウイング】!!!」」」

 

イッカス「な、波が分裂した!?!?」

 

地割れは新たなタクティクスへと繋げるために利用されていた。

両サイドで走るオーラで作った2つの翼。

どちらの翼がボールを持っているかは、中の様子が見れないため分からない。

 

ならば────────

 

 

イッカス「両方潰しなさいっっ!!!!」

 

ダイッコ、ジニスキー「「────っっ!!」」

 

高速で"ダブルウイング"に突進し、強引に中で走る選手を吹き飛ばしたオーガのDFたち。

必殺タクティクスは解除され、選手たちの姿を隠していたオーラが消え去るも…

 

 

ダイッコ「!?」

 

ジニスキー「ボールはどこ!?」

 

どちらの翼にもボールを持つ選手はいなかった。

ならばボールはどこに?

地割れの底へと落ちたのか?

 

 

晴夏「"ブラックアウト"…解除」

 

 

最初からボールを持つ者は────

 

 

千歌「ありがとう…みんな!!!!」

 

イッカス、ダイッコ、ジニスキー「「「!?」」」

 

 

────真ん中を真っ直ぐに、走っていた

 

 

A『な、なんと!?オーガフィールドの中心に高海千歌が現れた!!!!』

 

レヴィン『"ミラクルウェーブ"と"ダブルウイング"は全て囮!?全ては高海選手をフリーにするために!!』

 

 

千歌「ブレイブ──────────

 

チカ「──────ハートっっ!!!!」バッ!!

 

"ゾーン"×"闇の力"。

光り輝く目、漆黒に染まる目、オッドアイの少女は可能な限りのオーラをボールに込める。

全員が作ったこのチャンス。絶対に無駄にはしないと決意を胸に、光と闇のシュートを放った

 

 

チカ「【エクリプス・サン】っっ!!」ドガァン!

 

これだけでも強力なシュート。

しかし、そのシュートを挟んで走る2人の少女がいた。呼応するかのように2人はボールの元へと飛ぶ

 

 

海未「曜…行きますよ!!!!」バッ

 

曜「はい!!!!」バッ

 

意識よりも先に体が反応していた。

気づいたら飛び出しており、今は千歌のシュートの目の前にいる。そしてゴールは…すぐそこだ。

 

蹴り込もうとした瞬間。

千歌のシュート、曜と海未のオーラだけでなく、たくさんの選手たちのオーラが集まり光輝いていた。

なんて綺麗で暖かいんだろう。それはまるで、自分たちのサッカーに対する熱い気持ちの結晶であった

 

 

海未、曜「「【プライムレジェンド】!!」」ドガァン!!

 

「「「行けえぇぇぇぇ!!!!!!」」」

 

青く輝くシュートはゴールへ一直線。

待ち構えていたザゴメルは一気に焼き払うため、最高火力でシュートにぶつかった

 

 

ザゴメル「【ハイボルテージGX】っっ!!」

 

ザゴメルには絶対の自信があった。

日本代表の切り札級のシュートを後半、全て止めてきた。今回のシュートも最高火力ならば自分の敵では…そう、思っていた

 

 

ザゴメル(…な、なんだ…と??)グクグ…

 

 

有り得なかった。だが、しかし、

 

 

マーク「シュートが押してる…!!」

 

神奈「そのまま行けぇー!!!」

 

 

フィレア「決めろ…ここで決めるんだ!!」

 

フロイ「行ける…行けるよ…!!」

 

 

クラリア「威力が…増大していくぞ!?」

 

和葉「あのオーラ…まさか、」

 

ザゴメルを押し続けるシュート。

まるで徐々に威力が増しているようだった。その変化に覚えのある和葉。それもそのはず、"プライムレジェンド"は──────

 

 

海未「"僕たちはひとつの光"と同じオーラです」

 

曜「みんなの力を集めながらエネルギーに変える…それが"プライムレジェンド"!!!」

 

ザゴメル「ぐぐっっ…こ、こんなもの…」

 

観客、選手、全員がひとつになっていた。

そして途切れることなくエネルギーは増え続ける。まるで無限に成長、進化していくかのように

 

 

千歌「これが私たちの──────

 

──────サッカーだ!!!!!!」」」

 

 

ザゴメル「ぐっ!?ぐぅぅぅうああ!?!?」

 

ザゴメル、そしてブボーとゲボーが吹き飛ばされた。シュートはそのままゴールへと突っ込んでいく。決まった。逆転だ。

勝利を確信した。だからこそ──────

 

 

バダップ「─────っっ!!」メキッッ!!

 

「「「!?!?!?」」」

 

 

その光景に、目を疑った

 

 

バダップ「エスカバ、ミストレ、来い」

 

エスカバ、ミストレ「「──っっらあ!!」」メキッッ!!

 

バダップとFWの2人がシュートブロック。

しかし、ブロックにしては様子がおかしいと気づくことになる

 

 

ツバサ「…シュートのオーラが変わっていく、」

 

青く輝いていた"プライムレジェンド"。しかし、徐々にオーガの選手たちのシュートと同じく、赤黒いオーラに染まっていく。

寒気が止まらない。ここまで禍々しいオーラは魔王の時以来だった。いや、それ以上の迫力である。

 

 

────ドゴオォォン!!!!

そして全員の想いが込められたシュートは捻り潰された。地面に叩きつけられ、完全に"プライムレジェンド"のオーラは消え去っていた

 

 

理亞「は…?なんで…あんなに強力なシュートが…」

 

晴夏「……"イロージョン(侵食)"です」

 

理亞「"イロージョン"?」

 

 

フラム「"デスイロージョン"。闇の力の技…ボールに込められたオーラを侵食して破壊する…あの技のせいでキャプテンの"ブレイブショット"もゴールを破ることは出来なかった…」

 

和葉「…恐れてはいた。だけどまさかこのタイミングで使ってくるとはね」

 

完全に決まったと思ったシュートだった。

突然のことに状況が整理出来ていない中、怒りの声がスタジアムを激しく揺らした

 

 

バダップ「高海千歌ぁぁっっ!!」

 

千歌「─────!?」

 

怒りからだろうか。

闇の力が溢れ出し、声も震えている。

目も完全に自分のことを敵としか認識していない。

 

そして次の瞬間、3人はボールと共に上空へ。

再び赤黒いオーラを込め始めた

 

 

バダップ「我々は…負けることなど…許されないのだ!!!!」

 

バダップ、エスカバ、ミストレ

「「「【デスブレイク】!!」」」メキッッ!!!

 

バダップ「サッカーを捨てろぉぉ!!!!」

 

この試合の中でも一番の破壊力を持っているシュートだということは嫌でもわかる。そして…自分たちがブロックしても意味が無いレベルだということも。

しかし、シュートが待つことは無い。

センターラインを越え、日本フィールドを突き進み、穂乃果が待つ日本ゴールの目の前へと迫っていた

 

 

千歌「あのシュート…"フルカウンター"でも止められない」

 

曜「じゃあ…あのシュートは止められ…」

 

にこ「なーに諦めてんのよ」

 

千歌、曜「「!!」」

 

にこ「穂乃果を…信じるのよ」

 

自分たちは見届けることしか出来ない。

しかし、穂乃果の目は任せろと言わんばかりに、ギラギラと輝いているようであった。

無理かどうかはやってみなければ分からない

 

 

ホノカ「【ゴットハンド・ダブルX】っっ!!」

 

"デスブレイク"に挑む穂乃果。

しかし、シュートの進むスピードを遅くしただけで止まる気配は無い。必殺技としての格が違う。それが穂乃果がこのシュートに抱いた第一印象だった。そして…

 

 

ホノカ(なんて…悲しいシュートなんだろう)

 

楽しさからはかけ離れた感情が込められている。バダップたちの境遇は理解しているつもりだが、だからこそ、私たちのサッカーを知らないからこそ、この試合…負けられないのである

 

 

ホノカ「"ラストリゾート"も"グランドファイア"も…みんなのシュートチェインも止められた…負けられないっっ!!」

 

ホノカ「バダップさん…私はサッカーを捨てない!!サッカーが大好きな仲間がいる限り、私は絶対に諦めない!!!」

 

────穂乃果の心の炎が溢れていく。

胸の中心が赤く光だし、飛び出したオーラが"デスブレイク"をも抑えるほどの巨大な手を作り出す

 

 

ホノカ「【タマシイ・ザ・ハンド】ぉぉ!!!」

 

バダップ、エスカバ、ミストレ「「「!?!?」」」

 

文字通り、"魂の必殺技"だった

 

 

A『止めたぁぁ!!穂乃果、新しい必殺技で止めましたぁぁ!!!!』

 

 

ホノカ「私たちのサッカーは…負けない!!」

 

穂乃果の新必殺技により失点を回避したサニデイジャパン。しかし、このままでは同点で試合の決着がつかない。

自分たちの持てるシュートは全て止められてしまう…ならば、この試合どうすれば勝てるのか

 

 

千歌「……もう、答えは1つしかないよ」

 

千歌「"スリリングワンウェイ"。今ここで完成させる」

 

 

――――――――――――

――――――

―――

 

 

曜『"スリリングワンウェイ"に足りないのは…パワー』

 

『『『………』』』

 

曜は美奈の言葉をあの集合のタイミングで伝えていた。完成に足りなかった残り1ピース。

それはとても単純なものだった

 

 

曜『タイミングも…オーラの量も…配置も完璧。でも肝心の技を放つ力が足りないんだよ…』

 

曜『でも、千歌ちゃんのあの技があれは…!!』

 

美奈が最後の足りない1ピースをここまで言わなかった理由…それは千歌がカウンターを継承することに反対していたからだろう。

カウンター無しで"スリリングワンウェイ"を完成させることを目標にしていた…だが、今は違う

 

 

 

千歌「お母さんが…みんなが…私を信じてくれている!!なら、私はそれに全力で応える!!!!」

 

 

A『おぉっと!?日本代表の選手たちがボールを中心に円状に走り始めました…!!』

 

レヴィン『"奇門遁甲の陣"の動きに似ています…が、あれはディフェンス技です…何を狙っているのでしょうか』

 

 

走り続ける選手たち、徐々に風の流れが生まれ、巨大な竜巻が形成されていく。

竜巻にはオーラも込められている。

そして…その竜巻の中に3人の選手が飛び込む

 

 

千歌、曜、穂乃果「「「っっ!!」」」バッ

 

"奇門遁甲の陣"のスペース、覚えているだろうか。

そこへとボールを誘い込み、奪い取るというタクティクスなのだが…そのスペースの真の目的。それは竜巻の中に入るための"通路"

 

 

曜(私と穂乃果さんはシュートコースを調整!!)

 

穂乃果(蹴るのは千歌ちゃん…!!)

 

選手たちがオーラで作る竜巻。

これを千歌は"フルカウンター"で全てシュートとして撃ち放つ。まるで山を蹴っているかのようにビクともしないボール。

千歌は"リベンジカウンター"の出力をMAXまで引き上げ、肉体の限界を超えた力でぶつかる

 

 

美奈「……私たちが完成させた究極のシュート"ジェットストリーム"。それをタクティクスとして撃つ技…」

 

チカ「これがっっ!!!!!!」

 

 

「「「【スリリングワンウェイ】!!!!!」」」

 

オーガ「「「!?!?!?」」」

 

真上に放ったシュートは曜と穂乃果のコース調整により、カーブを描きながらゴールへ。

今までのシュートの比ではないことは分かっていたザゴメル。すぐに必殺技を放つ…が、

 

 

ザゴメル「【ハイボルテー…ぐあぁっ!?

 

その凄まじい威力に吹き飛ばされる。

すぐにバダップがブロックに入り、必殺技を発動する

 

 

バダップ「【デスイロージョン】っっ…!?何故だ…シュートのオーラが破壊出来ない!?」

 

バダップ「くそっ…ぐあああぁっっ!!!」

 

なんて熱いシュートなのだろう。様々な人間の前へと突き進むための感情がこれでもかというぐらい込められている。

憎たらしく、邪魔でしかないはずの存在なのに…自分たちの世界を地獄へと変えた感情なのに…

 

 

バダップ「どうしてこんなに…綺麗なんだ」

 

 

―――バシュウウゥゥゥゥン!!!!!!

ネットが揺れ、同時に笛が吹かれる

 

 

千歌「…ハァハァ」

 

何故か、状況を理解するのに時間がかかった。

会場も恐ろしいぐらいに静寂に包まれている。そんな異様な空間に終止符を打つのもまた─────

 

 

ピッピッピーッ!!!

 

笛の音、試合終了の笛だった。

 

 

千歌「……やった」

 

なんだろう…おかしいな?

突然生暖かい水が胸から溢れ出すような感覚がしてさ…?こう、鼻の奥もツーンってするんだよね

 

 

千歌「やった…やった……」

 

あぁ、私の今の顔、めっちゃくちゃ恥ずかしいぐらいボロボロなんだろうなぁ

 

 

千歌「やったぞおおおーーっっ!!!!」

 

残った体力は無いけど、叫ぶ体力は無限にあるように感じる。現に、声が止められない

 

 

千歌「うおおおおーーっっっっ!!!!!!」

 

千歌「勝ったぞおおおっっ!!!!!!」

 

 

高海千歌たちのサッカーを守る戦い。

そして世界一をかけた戦い。

それに勝利したサニデイジャパンを…世界中全ての人が祝福した。日本は"世界一"になったのである

 

 

日本 3-2 オーガ

 

 

ー 次回 最終話 『輝こうサッカーで!』ー

 

 

 

 




『ブラックアウト』特殊/高海晴夏
高海晴夏が持つ闇の力の必殺技です。
効果を与えた選手の存在を隠すことができます。一見地味な技ですが、本編のような使い方によっては強力なサポートとなります。

『デスクラック』ディフェンス/イッカス
オリジナルのオーガの必殺技です。
クラックの訳は"割れ目"で、その名の通りフィールドに巨大な地割れを発動します。
輝こうサッカーの3つめとなる"タクティクスブレク"で、強力な必殺技となっています。

『デスイロージョン』特殊/バダップ
オリジナルのオーガの必殺技です。
イロージョンの訳は"侵食"で、オーラに侵食しそのオーラを破壊する技となっています。
これを使えばオーラを使った技はほとんど破壊出来ます。最初から使っていれば普通に勝てたかもしれないのに…

『プライムレジェンド』シュート/渡辺曜、園田海未
原作の中でもホントにかっこいい必殺技の1つとして名が上がるシュートです。この技に言えることはめちゃくちゃかっこいい。あとシュートチェインしやすそう。です。
何故、曜ちゃんと海未ちゃんを選んだかは…作者の感覚です。

『タマシイ・ザ・ハンド』キャッチ/高坂穂乃果
リトルギガントのGKロココが"ビックバン"を止め、敵としてはほとんど前例の無い"敵で勝利のbgm"を使わせた必殺技です。あのシーンに震えた人は少なくはないでしょう。
そして…穂乃果ちゃんのたどり着いた新たな境地でもあります。

『スリリングワンウェイ』タクティクス
引っ張って引っ張って引っ張りまくった必殺タクティクスです。その正体は原作最強技の1つ"ジェットストリーム"をタクティクスとして改良したシュートとなっています。
日宮美奈、そして高海千歌のカウンターがなければ完成しなかったこの技。過去と今が全て繋がったことにより成功したと言えます。


次回 最終話 本日夜更新予定です!




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第3章 最終話 「輝こうサッカーで!」

皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
世界編完結っっ!!!!
ご愛読ありがとうございました!!




 

 

世界一となったサニデイジャパン。

彼女たちへの祝福は彼女たちが想像している以上にたくさんで、大きく、広かった

 

 

乃々子「やった…あの子たち優勝したわ!!」

 

鈴香「しゃああ!!今夜は宴よ!!!」

 

夜「待ってましたー!!」

 

光穂「穂乃果…みんな、おめでとう。あなたたちのチームは最高よ」

 

東京都心から少し外れた一件のラーメン屋。

今夜はそこの電気が消えることは無いだろう

 

 

北也「ついにやったなぁ…あいつら」

 

志満「なんだか…遠くに行っちゃって寂しいです」

 

北也「…俺もだよ」

 

 

もちろん、会場であるライオコット島の盛り上がりは日本の比ではない

 

 

真恋(美奈…今日は人生最良の日ね…私にとっても…美奈にとっても…!)

 

 

理亞「本当になったのね。私たち」

 

ルビィ「うん。世界一にね!」

 

理亞「……ルビィ。あんたなんで途中で交代なんてしたのよ」

 

ルビィ「…もう、大丈夫かなって」

 

理亞「?」

 

ルビィ「ルビィがいなきゃ戦力が…とかじゃなく、理亞ちゃんたちなら絶対に大丈夫って」

 

理亞「はぁ…最後までカッコつけるんだから」

 

理亞「……ありがと。応援、聞こえてた」

 

ルビィ「うん!」

 

 

ツバサ「感無量ね」

 

英玲奈「ツバサ、あんじゅ。お疲れ様だ」

 

あんじゅ「何よ…?あなたも頑張ったじゃない」

 

ツバサ「そうよ。もっと誇りなさい?世界一よ」

 

英玲奈「…ふふ、そうさせてもらう」

 

 

選手たちがお互いに喜びを分かちう。

そこへ歩を進める美奈。自分の子供たちが、自分たちが目指した世界以上の景色を見せてくれた…それだけでも、まるで夢のようだった

 

 

穂乃果「監督…!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

美奈「私に言わせれば、まだまだ欠陥だらけのチームだけど…あなたたちは今、世界で一番マシなプレーが出来るチームになった…要するに、」

 

美奈「おめでとう!本当によく頑張ったわね!」

 

千歌「…お母さ「監督ーっっ!!」

 

千歌「えぇ!?」

 

穂乃果を筆頭としたみんなでハグ大会。

身動きが取れないぐらいみんなのハグが力強く、今の感情がよく伝わってきた。温かい。本当に温かい

 

 

サエ「……さて、私は行きマスか…」

 

サエ「……おめでとう。美奈」

 

 

 

バダップ「………」

 

指揮官からミッション失敗、そして帰還命令が下されたオーガは準備が整うのを待っていた。

その顔にあるのは絶望だった。

まるで降伏宣言により敗北した兵士。何も得られない。残ったのはボロボロになった体と心の違和感だった

 

 

千歌「バダップさん…!」

 

バダップ「……」

 

そんな中、彼女たちの元へと話しかけてきたのはミカン色の髪をした少女。最初は真剣な顔で近づいた千歌だったが、すぐにその顔は笑顔に変わっていた

 

 

千歌「すごい試合でしたね!」

 

バダップ「…!!」

 

千歌「あなたたちと一緒に試合できて良かったです。だからまた、サッカーをやりましょ」

 

バダップ「…その呪いを私たちにもかけるのか」

 

千歌「…勝負が終われば、みんな仲間です」

 

バダップ「お前たちがこのままサッカーを続ければ…必ず世界は滅ぶ!!だから私たちは未来を変えようとしたんだっっ!!」

 

オーガの選手たちも自分たちの世界を守るために戦った…それはここまでの中でよく分かった。

だからこそ、千歌は言わなければならない

 

 

千歌「…なら、私たちを信じてくれない?」

 

バダップ「…信じる?」

 

千歌「私たちは私たちのサッカーを守った!なら、私たちの未来も私たちの力で守れると思う!」

 

千歌「サッカーはね、世界を繋ぐ、ほんっっっとうに楽しいスポーツなんだよ!あなたたちなら、絶対に楽しいサッカーが出来る!!」

 

バダップ「楽しい…だと?」

 

千歌「そう。それだけで世界は変えられる。仲間と勇気があって…本当に楽しいと思った時、世界は変わってるよ」

 

バダップ「仲間と勇気…か」

 

バダップがそう言いかけた時だった。

空から謎の光がオーガの選手たちを飲み込む。別れの時間がやってきた

 

 

バダップ「私たちも…そんなサッカーがしたかったのかもしれないな」

 

千歌「…バダップさん、」

 

バダップ「高海千歌。私たちを倒したところで、お前たちの呪いの危険性が変わっていないことを忘れるな」

 

バダップ「さらばだ」

 

光に飲み込まれ、気づけばバダップたちの姿は消えていた。だが、不思議と嫌な気持ちがしなかった。

去り際、バダップたちの顔が晴れた気がした。未来に戻っても彼女たちなら大丈夫。そんな気がした

 

 

千歌「ありがとう…みんな」

 

 

 

 

 

高海千歌とその仲間たち。

「サニデイジャパン」の熱い伝説は、多くのサッカープレイヤーに勇気を与えました。

 

きっと彼女はこれからも、サッカーでたくさんの輝きを繋げていくことでしょう。

 

これからも…そして、未来へと…

 

 

 

「……すごかった」

 

「ゆうちゃん…?大丈夫?」

 

「サッカー…!!本当にすごいよ!!」

 

「私、すっっっごくときめいちゃった!」

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

ー 数ヶ月後 ー

 

「こらぁぁっっ!!バカ千歌起きろっっ!!」

 

「!?!?!?」

 

早朝、朝日が海を輝かせる一日がまた始まった。

そしてここ十千万旅館では1人の少女のドタバタ音が鳴り響いている。数分後、制服姿で玄関を飛び出した高海千歌は、いつものようにバスに飛び込んだ。

 

 

皆さん。おはようございます!高海千歌です。

何とか今日もバスに間に合ったところで…あれからのお話しをしていこうと思います。

 

 

和葉『じゃ、また会う日まで』

 

大会終了後、それぞれのチームが自分たちの国へと帰国していきました。お別れは本当に寂しかったけど…それ以上にたくさんの仲間ができてとても嬉しかった。

 

私たちサニデイジャパンも、帰国してからチームは解散となりました。

仲間だったみんなも今ではまたライバル。今年も全国高校女子サッカー大会で戦うことになります。

 

 

そして…やっぱり学校は閉校。

最後まで守りきれなかったことが本当に悔しいです。でも、いいこともあったんです。

 

鞠莉ちゃんが世界中に掛け合ってくれて、閉校祭に世界中の仲間たちが来てくれたんです…!

試合もたくさんして…本当に夢のような時間を過しました。

 

今は沼津にある静真高等学校に通っています。部活動が盛んな高校なので、私たちが神様みたいな扱いされた時は本当に困っちゃったよ…あはは、

 

 

3年生のみんなは卒業後、それぞれの進路に向かって進んでいきました。鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤさん、頼もしい先輩がいなくなって不安があるのは事実。

新しくなったチームで全国とどう戦っていくか…

 

 

穂乃果『また…全国大会で戦おうね!!』

 

穂乃果さん率いる音ノ木坂学院。

お母さんが監督なのは変わらずに、新入部員の一年生を加えてさらに強くなっていっているようです。

 

一番驚いたのは…理亞ちゃんのいる函館聖泉かな…

なんと、新キャプテンは理亞ちゃんで…

もっと驚いたのは理亞ちゃん、今はDFで頑張っていることかな。ルビィちゃん、何度も電話して本当か確かめてたんだ

 

 

理亞『チームのレベルアップのためにも私が得たことをみんなに伝えるの。そのためには姉様のいたポジションが一番よ』

 

 

なんかすごい大人だな…って。

私もしっかりとしないとだよね。

 

UTX高校はA‐RISEの3人が卒業して新たなチームとして再出発したようです。

組織としてはもちろん、コミュニケーションの部分も強化させるって、ツバサさんたちは張り切っていました。

 

 

「次は〜静真高校前、静真高校前です」

 

「あ、降りまーす」

 

この他にも海外に行ったこと、私たちの新たなチームの話、にこさんのフリースタイル世界大会の話…まだまだ話したいことはたくさんあるけど…もう少しで部室に到着。

今日も朝から練習頑張ります!

 

 

終わりは新たな始まりってよく言うけど、そんな出会いと別れがこれからもたくさん待っていると思うんだ。

 

今はとりあえず毎日が本当に楽しい!

私…サッカーに出会えて…良かった。

 

 

千歌「おっはよー!!みんな!!」

 

 

奇跡だよ。私の全てが。

そしてこれからも―――

 

 

輝こう。サッカーで

 

 

 

 




皆さんどうも!ルビィちゃんキャンディーです。
ついに…長かった世界編が終了し、全250話、無事に書ききることが出来ました。ここまで着いてきてくださった皆様、本当にありがとうございます。途中からチート技だったり能力だったり、作者の趣味全開な部分はありましたが、創作として好きなように書かせてもらいました。
是非…是非是非最後に感想を書いていただけると嬉しいです。「お疲れ様」の一言でもいいのでよろしくお願いします。

ここからはルビィちゃんキャンディーの今後についての報告です。

1、予告通り『虹ヶ咲学園×サッカー』の小説を新たに連載開始します。開始日はまだ未定ですが、年明けからを予定しています。Twitterでの情報を確認お願いします。

2、『輝こうサッカーで!外伝!』を新たに連載します。輝こうの小説では語られなかったお話しやパラレル回を書いていこうと思います。
例えば『続・2つの世界のサッカー』『矢澤にこフリースタイル世界大会編』『エピソード・オブ・ルビィ』などなど。
パラレル回は、輝こうの"もしも"の話しを書きます。『もしも決勝戦がイタリアだったら…』『もしも輝こうのルビィちゃんがスクールアイドルの世界に迷い込んだら』などなど、たくさん書いていこうと思います。
他にもこんな話しを書いて欲しいなどはリクエストに募集しますので、"後日、リクエスト専用の活動報告にコメントをして頂いた方のものを書いていこう"と思います。感想にリクエストを書くと、消されてしまうので注意してください。感想にリクエストを書くと、消されてしまうので注意してください。大事な事なので2回書きました。

3、ヤンデレ小説などを連載されているジャガピーさんと共同で小説を連載します。タイトルは『深海』です。お楽しみに!

4、『ラブライブ×ポケモン』をリメイクしてまた新たに連載を開始します!

5、




千歌「おっはよー!!みんな!!」

部室の扉を開け、元気に挨拶するところから高海千歌の学校での一日が始まる。
そしてすでにほとんどのメンバーが準備を終え、千歌の登場を待っていた


梨子「もう…また寝坊したわね?」

千歌「あっはは…ごめんごめん」

学校が近くなった曜や善子が羨ましい…
だが、そんなことをいつまでも考えている暇は無い。時間は有限だ


千歌「さあ!今日もサッカーするぞー!!」

カバンの中からスパイクとシューズを取り出し、早速練習着に「なんでサッカー?」


千歌「……え?」

梨子「もう…サッカーで遊んでいる暇ないでしょ?早く準備してね?私たち先に屋上に言ってるから」

千歌「ち、ちょっと待って?なんで屋上?グラウンドには行かないの?」

善子「なんで私たちがグラウンドで練習するのよ…」

みんなの言葉に違和感を持つ千歌。
よく見ると全員スパイクなどのサッカーの道具を何も持っていない。部室も変だ…何かが違う、何かが…


曜「千歌ちゃん…大丈夫?」

千歌「よ、曜ちゃん…私たち…何部だっけ?」


何かが…いや、全部だ。


曜「嫌だなぁ〜千歌ちゃん。私たち、」


みんなから―――消えたんだ―――




曜「スクールアイドル部、でしょ?」



サッカーが消えた




輝こうサッカーで!最終章
『クロノストーン編』



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最終章"クロノストーン編"
最終章 1話 「消えたサッカー」



お久しぶりです。ルビィちゃんキャンディーです。
長期休載となりましたが、輝こうの最終章の開幕です。

最終章は熱血スポーツ小説というよりかは、時空を超えた戦い、いわゆる戦争に近いテーマで書いていこうと思っています。
戦闘シーンも増えるかもしれませんが、サッカーという主軸からは外れないように書いていきます。




 

 

 

気がつくと私は走っていた。

グラウンドの上をただひたすらと、無意識のうちにボールを蹴っていたようだ。

別に驚くことではなく、常日頃から自分の生活の一部のようにドリブルを行っていることは自覚していて、チームメイトからは、ボールと友達?と若干引かれるほど、暇さえあればボールを触っていたほどだ。

ただ不思議なことに、今走っているグラウンドはいつまでたっても、目指す場所であるゴールが見えてこない。

一体どれだけ走ったかは記憶が曖昧で覚えていないし、まず、何故ドリブルをしているのかも分からない状態だ。

だから今はとりあえず走り続けよう、息は切れてきているが、足がまだ動いており、集中力もそれなりに保てていると思っていたが、突然頭の中に"ノイズ"が入り込んでくる。

 

"なんでサッカー…?"

 

誰の言葉かは分からないが、深く心に突き刺さる言葉だったのだろう、若干ドリブルのリズムが乱れた。

それと同時に、何となくではあるが、ゴールが少しだけ遠くなった気がした。

その間もノイズは絶え間なく続いており、どれもこれも誰の言葉かは覚えがないが、実に不快で、耳を塞いでいたかった。

だがそれを体が許さず、ひたすらにドリブルを続けており、私は若干この状況に恐怖を覚え始めていた──────

 

"私たちの世界では、現に今でも戦争中です"

 

ここで、私はついにドリブルを止めることができた。

いや、止まってしまったが正しいのかもしれない。

今までの言葉の中でも一番の大ボリュームであり、まるで鼓膜の内側から爆音を叩きつけられたかのように、体がビクつき停止した。

何だろう、冷や汗が溢れてきた。

 

恐怖が自分の中で膨れ上がるのを感じていると、グラウンドだったはずの場所は荒廃した世界へと変わっていた。

誰もいない、ただ壊れた、ただ崩れ落ちた世界が一面に広がっており、言葉が出なかった。

何故か、理由は分からないが、それが全て自分の責任のように感じ、心身共に震えが止まらない。

そしてもう一度、鼓膜の内側から爆音が脳みそを殴った。

 

 

 

 

"これも全て…お前のせいだ高海千歌!!!!"

 

 

 

 

「うわあぁぁぁぁぁっっ!?」

 

自分の声が室内に響き渡った。

また場所が変わったと思ったが、今度は自室のベッドの上、先程までは無かった温もりと、窓から流れ込む新鮮な空気、過呼吸気味の身体を落ち着かせながら情報を整理するが、最初から答えは出てた。

 

また夢か、千歌は顔を手で押さえながらそう呟いた。

 

夢の中では自分が何故こんなことをしているのかも分からずに、半無意識的に行動し、"映像"みたいなものを淡々と見せられることがほとんどで、今回もそれが該当する。

なので夢から覚めると忘れていた現実の情報がどっと脳内に溢れ出し、気づいた時には夢の記憶はすっかり忘れているものだ。

だが、ここ最近は忘れるどころか、鮮明に記憶されたままだった。

よりにもよって悪夢を。

 

夢の内容だからバカバカしいと気にしなければ勝ちなのだが、最近の夢はどうもそれだけで終わらせるには違和感が残るものばかり。

だが大量の汗でパジャマはびしょ濡れ、目覚めもスッキリしないし最悪なのだが、いつまでたっても気になって仕方ない。

 

そんな高海千歌を毎朝リセットするのは、スーツを着た出勤前の姉の仕事だ。

 

「千歌ぁ!!いつまで寝てんの毎朝毎朝!!って、また部屋散らかってんじゃん!?なんなのこれ!?」

 

良くも悪くも、姉の騒がしい声が彼女を現実へと戻してくれるのは確かだ。

千歌は一呼吸おき、ベッドから降りると、汗を流すため風呂場へと向かう準備を始めた。

こうして、高海千歌の一日はスタートする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また部屋が勝手に散らかってたの?」

 

エンジン音が車内に響く中、少女2人は奥の座席でいつも通りの会話を続けていた。

窓から見える海を横目に、ため息混じりに高海千歌は今朝の出来事を少女に報告する。

 

 

「ここ毎日…起きたら足の踏み場もないぐらい物が散らかっている現象…おかしいよね。やっぱり」

 

「おかしい…わね」

 

「千歌はしいたけの仕業だと思うんだけど…」

 

しいたけ、とは高海家の家族の一員である犬の名前であり、寝ている間に悪さ…すなわち部屋荒らしの犯人ではないかと疑いがかけられている。

しかし、しいたけがそんなことをする犬ではないといことは、千歌自身もよく理解している。

 

だがそれ以外に理由が見つからず、?マークを浮かべながらの毎日毎日部屋の片付けの繰り返し。

もちろん、スーツを着た姉のうるさいモーニングコール付きで。

 

 

「はぁ…おかげで朝から疲れ気味だよ」

 

「しっかりしてよね?朝練もあるんだから」

 

千歌の気の抜け具合に呆れる少女、桜内梨子の口からため息が出るのは時間の問題だった。

 

桜内梨子、"旋律の指揮者"と呼ばれた天才ゲームメーカーであり、その指揮は数々の強豪国を打ち倒す"魔法の杖"となった。

 

 

なっていた……はずだった。

 

 

バスは目的地に到着する。

降りた場所は去年まで通っていた学校ではないが、確かに私たちの学び舎である。

名は清真高校。

青のブレザーと赤いチェックの白スカート、リボンを胸元に付けた少女たちが校門に吸い込まれていく。

浦の星女学院にいた時には考えられない光景であり、未だにこの登校には慣れていない。

 

そして…今の自分の生活にも慣れていない、いや、慣れることが出来ない。

横から聞こえる梨子の言葉に、千歌は恐怖で立ち止まる。

 

 

 

スクールアイドルの練習、遅れるよ?

 

 

 

───今の私たちは、サッカー部ではない。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

FFI世界大会を終え、帰国してからすぐにその知らせは来た。

 

『世界でサッカーを続けないか?』

 

つまり、海外留学だった。

渡辺月が育ち、黒澤ルビィが蹴ったその挑戦。

世界から認められた高海千歌の実力、国内だけに留まる実力ではないことは…本人も薄々自覚していた。

考えに考えた末、千歌は留学の道を選び、最初の短期留学として数ヶ月日本を発った。

善子はルビィと同じく海外留学の件は蹴ったらしく、千歌の背中を力強く押してくれた。

 

それからの日々は目眩しく、ハイレベルを超えるハイレベルなサッカー生活を過ごした。

最初は不安だったイタリア語も気づけば簡単な会話ができるほどまでに上達し、日本の高校の授業が英語ではなくイタリア語だったらと、何度悔しがったことか。

日本に戻ったらプレーだけでなく、イタリア語の会話でも驚かせてやるんだと、戻る日が近づくにつれ、まるで遠足を待つ小学生のようになかなか寝付けなかったのを覚えている。

 

 

しかし、それらで仲間たちを驚かせることは無かった。

逆に自分が驚かされてしまった。

帰ってきたら自分の周りからサッカーが消えていたのだ。

跡形もなく、私以外のみんなからきれいさっぱりと。

 

最初は何の冗談だと笑っているだけだったが、自分が置かれている状況、現実を理解した瞬間、一気に血の気が引いた感覚は…未だに体に染み付いている。

冗談では無く、サプライズでもない、全てをリセットしたかのように"サッカー"に関わるものが全て消えたのだ。

 

代わりに、サッカーが消えたことによりできた穴に埋め込まれた、"自分には無い記憶"…スクールアイドル。

学校でアイドル活動をするという、泥臭く走り回っていた自分からして見れば、まるで真逆な世界へと放り込まれた気分だった。

 

最初は原因を突き止めようと奮闘したのだが、異様な目で見られたり、不審がられることから、次第にこの世界に染まりつつあった。

 

いや、諦めかけている…と言った方が正しいか。

 

練習はグラウンドではなく屋上で、必殺技の特訓ではなく作詞を梨子から急かされたりもした。

変わらないことといえば、体力作りのマラソンぐらいだった。

みんなとサッカーをしている時と同じ光景に、私はその時だけ元の世界に戻ったような安心感を得ていた。

張り切りながら走り出し、誰かと競走でもしようかと後ろを振り向いた時だった。

 

 

「ち、千歌ちゃん速すぎるよ〜!?」

 

「…………」

 

 

多分、その言葉が決め手になったんだと思う。

仲間たちの走りを見て、私が思ったことは一言、"遅い"だった。

サッカーをしていた時の彼女たちとは別人なんだと、それでハッキリしたのと同時に、私はひとりぼっちなのだと気づいた。

サッカー選手高海千歌はこの世界に存在しない。

みんなの目にはスクールアイドル高海千歌が映っている。

耐えられなくて、何度逃げ出そうとしたか。

怖かった。

私の目の前にいる"仲間とそっくりな人"たちは、"私の知らない私"を知り尽くしている。

 

そんな中でこの世界の高海千歌を演じるなど、私には出来なかった。

気づいた時には仮病で練習をサボることが多くなり、休日もぼーっと1日を過ごすようになっていた。

なるべく、みんなの前ではいつも通り明るく振る舞おうと努力していたが、それもそろそろ限界のようだ。

 

 

今日の私は部活には参加せず、帰宅するために校門へと向かっていた。

罪悪感で押しつぶされそうだったが、足早に校舎から離れていくと、私は嫌なことを思い出してしまった。

 

「今日のバス…確か次は30分後」

 

こういう時の街のバスは頼りない。

お世辞にも人が多いとは言えない地域に住んでいる自分が悪いのだが…走って帰ろうか、そう考えていると、どこからか懐かしい声が聞こえてきた。

 

サッカー部か

 

気づいた時にはバス停から離れ、グラウンドへと向かっていた自分には驚いた。

だが、理由は分かっている。

この孤独感から逃れるため、少しでもサッカーに触れていたかった。

 

飢えている。

肺がはち切れるぐらい走って、全力でぶつかり合って、叫びたい、暴れたい。

 

 

 

グラウンドへと着くと、見慣れた光景だった。

今は試合形式の練習をしているようで、本番さながらの熱いゲームが繰り広げられている。

 

レベルもかなり高い。

その度に清真高校が部活に力を入れている学校であったことを思い出す。

浦の星女学院の時に戦ってみたかったと、本来なら私もあの場で走っているはずだと、嫌な考えしか浮かんでこない。

 

来るべきではなかったと、引き返そうと背を向けた時だった。

 

 

「すいませんー!ボール危ないです!」

 

 

背中から声がした。

遅れて足に何かがぶつかったような小さな衝撃。

先程までサッカー部たちが蹴りあっていたボールが、自分の足元へと転がってきていた。

 

向こうから部員の1人が走ってくる。

クリアボールか何かが自分の方へ飛んできたのだろう、浦の星でサッカーをしていたころは、それでよく陸上部の人たちに迷惑をかけた。

 

「はい。どうぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

元気な声、汗だくの体にキラキラした目。

私から見れば世界のどんな宝石よりも価値のある輝きを放っていた。

 

「シュートがブロックされちゃって、こぼれ球だったんです。いや〜チェックが厳しくて」

 

「どこからシュート撃ったの?」

 

思わず尋ねてしまった。

 

「えっと…あそこらへんです。DF2人が壁になってましたが…あはは、」

 

右サイドのペナルティーエリア角すみ、シュートを撃つには十分な距離だ…だが。

 

「私だったらあの壁2人を抜いてシュート撃つ」

 

「え…2人を抜いて?」

 

「あ…いえ、なんでもないです。練習頑張ってください」

 

まさか口に出していたとは気づかず、変に怪しまれてしまっただろうか。

 

 

ああ…すごく嫌だ。イライラする。

 

 

私は足早に彼女から離れた…いや、逃げた。

これ以上あの場所にいたら、あの子と話していたら、どうにかなってしまいそうだった。

 

私はただ今までのようにサッカーをしていたいだけなのに、この世界はそれを許さない。

だが、それ以上に不快に思ったことがあった。

それは、自分が一瞬だけ、サッカーを楽しむ彼女に怒りを覚えたことだった。

 

 

頭を冷やそう。

嫉妬など最悪すぎる。

 

 

千歌は丁度来たバスに乗り込み、自宅への帰路についた。

その間、千歌の近くに座れないほど、彼女がピリピリとした空気を放っていたことを、本人は知る由もなかった。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

バスを降りたあと、家には帰らず砂浜で海に沈んでいく夕陽を眺めていた。

先程までの自分の行動を思い起こし、急に恥ずかしくなり、頭を抱える…これをもう何回も繰り返していた。

 

「急に部外者が私だったらこうする…なんて言ってたら強がり自慢にしか聞こえないよね…はあ、カッコ悪すぎる」

 

今更になって、あの時グラウンドに行ったことを後悔し始めた。

あのようになると分かっていて何故行ったのか…その理由は分かっている癖に、自問自答を続ける。

 

「私の…サッカーが……消えた」

 

もう何度この言葉を口にしたか。

しかし、これで現状を変えられるわけもなく、残酷にもこの世界は永遠に続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、思っていた。

 

 

 

 

「ノー、サッカーは消えていない」

 

 

 

 

誰かの声がした。

自分だけの空間に入り込まれたような感覚に、思わず反応が遅れてしまった。

 

 

「サッカーの消去は不完全だ」

 

 

声のする方へ振り向くと、見たことも無いような服装を身にまとった少女が立っていた。

どこか不気味な雰囲気をまとっており、発言も意味がわからない。

 

 

「高海千歌。残る痕跡はお前だけだ」

 

「この苦痛な世界から解放しよう。歴史の修正によってな」

 

 

少女が近づいてくるのが分かる。

だが、千歌はその場から動こうとしなかった。

今は負の感情でいっぱいいっぱいなため、判断力が低下し、無防備で何も出来ない。

 

それ構わず、少女は千歌の目の前まで来た。

 

 

「受け入れろ。高海千歌」

 

 

彼女は"苦痛な世界から解放する"と言った。

この世界で生き続けると思っていたが、この少女が解放してくれると言った。

こんなに嬉しいことは無い。

早く…受け入れ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ると、思った?」

 

「!?」

 

千歌は少女の手首を掴んだ。

少女は振り払おうとするが、全くビクともしない。

それどころか、先程までと千歌の雰囲気が全く違うことに気づく。

だが、もう手遅れだ。

 

「ずうーっと待ってた。いつか絶対に現れると思ってた。あなただよね?みんなをおかしくしたのは?」

 

どんどん握る力が強くなる。

やっと目が合ったとき、その怒りに染まった目から、少女は気づく。

 

 

「返してよ……私たちのサッカー」

 

 

こうなると、高海千歌は全て分かっていたのだ…と。

ここから、千歌と仲間たちの運命は、さらに大きく揺れ動いていくことになる。

 

 

 

 

輝こうサッカーで!

最終章 クロノストーン編

 

 

 





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最終章 2話 「強襲」

ルビィちゃんキャンディーです。
後書きに世界編のアンケートがあるので是非回答をよろしくお願いします。




 

 

そう結論づけたのはあの日の夜だった。

帰国し、楽しみを胸にサッカー部部室へと飛び込んだあの日、誰からも"サッカー"という言葉を聞くことはできなかったあの日。

 

私は考えた。

サッカーのこと以外は決して宜しくないその頭で懸命に考えた。

だがやはり、答えはひとつしか出なかった。

普通の人ならばその答えで結論づけるのは不可能だが、私ならその答えで十分すぎた。

 

 

過去を操作された。これ以外に答えはない。

 

 

そこからは持久戦だった。

おそらく、自分だけ歴史が修正されていないのはあちらも気づいている。

ならばいつ自分の前に現れるのか…それは抵抗の意思を示さなくなった時だろう、そう私は予想した。

だから待った。

絶望し、恐怖し、気力を無くしたように見せかける。

いつか必ず絶対に現れる。

我慢しろ高海千歌、耐えろ高海千歌。

 

そう自分に言い聞かせなければ、もし現れなかった時に精神を保てる自信がなかった。

だが…"彼女"は現れた。

 

 

「…こちらの存在に気づいていたということか」

 

 

あぁ、逃がさないよ。

数週間この地獄で耐え抜いたんだ。

彼女だけがこの地獄から垂れた蜘蛛の糸、掴んで絶対に離さない。

そんな気持ちから、掴む力がどうしても強くなってしまう…それでも、少女の表情は1ミリも変わっていなかった。

 

「私はアルファ。我が使命はサッカーの消去」

 

「サッカーの…消去」

 

「残る痕跡は高海千歌、お前だけだ…」

 

「!!」

 

一瞬、目の前にいる少女が化け物のように見えた。

私は咄嗟に掴んでいた手を離し、距離を取る。

怒りと嬉しさで高まっていた感情は恐怖により掻き消され、今は底の見えない少女のオーラに圧倒されている。

 

「痕跡…じゃあ、みんなを変なふうにしたのは、あなたのせいなんだね」

 

「そうだ」

 

なんなんだ、彼女は本当に人間なのか?

その瞳はまるで人形のように沈んだ黒い色をしている。

まるで感情がないようで、不気味で、恐怖心が背中から溢れてきている。

 

だが、彼女以外にこの世界をどうにかできる人はいないのだ。

私は負けじと、恐怖に抗うように口を開いた。

 

「サッカーを消すなんて絶対に許さないよ。早く、今すぐに、私たちにサッカーを返して」

 

「ノー。我々の行うべきはその逆、サッカーの完全消去」

 

「そんなこと…させると思う?」

 

仕掛けてくるなら来い。

私はオーラを高め、いつでも対応できるように構えた…しかし、

 

 

 

「拒否はできない」

 

「!?」

 

 

突然、赤い光に包まれた。

光源は少女が足で踏んでいるサッカーボールのような物であり、《タイムワープモード》と機械音も聞こえてきた。

 

光が強すぎる…

 

目を開けていることは出来なかった。

その間に攻撃を…?

しかし、感じられるのは強烈な光のみ。

 

千歌は何も出来ないまま、少女と共に光の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

嘘…なんで?

 

千歌はそれしか言葉を見つけることは出来なかった。

光に包まれること数秒、目を開けるとそこは記憶にしか存在しない場所、閉校前の浦の星女学院だった。

 

雑草一つない、整備されたグラウンド。

人の出入りの痕跡がある校門。

生活感のある教室の数々…1年前まで、自分たちが通っていた浦の星そのものであり、今ではもう、存在しないはずだ。

 

記憶をほじくられたようで寒気が止まらないが、先程の少女が見当たらない。

周辺を探したが、千歌1人、過去の世界に置き去りにされていた。

 

「こんなところに連れてきて…何を、」

 

手段が分からない以上、警戒を怠ることは出来ない。

地雷原を歩くように、慎重に、全神経を研ぎ澄ませながら通り慣れた道を歩いた。

すると、聞きなれた声が耳に入ってきた。

 

 

「千歌ちゃん、気が早くない?」

 

幼なじみの声だった。

声のする方を見ると、浦の星の制服を身にまとった自分を含め3人。

 

「早いに越したことはないよ!」

 

「もう…しっかりしてよね?部活の設立がかかってるんだから」

 

 

あの会話…そうか、ここは─────

 

 

「理解しなくともよい。受け止めろ。目の前で起こる現実を」

 

「!?!?」

 

全身から汗が吹き出た。

気づかない間にあの謎の少女が自分の背後に立っていたのだ。

すぐに振り返るが、心臓がバクバクと暴れており、骨と皮膚を突き破って今にも飛び出してきそうな勢いだ。

落ち着こうにも、呼吸が乱れてすぐには落ち着かない。

 

「これより、お前にとってのサッカーは消滅する」

 

そう少女が言ったのと同時だった。

背後から自分と同じ声の異変を感じ取った。

 

「あ、痛!!いててて…」

 

「千歌ちゃん…大丈夫?…!!!!千歌ちゃん!!!!!!」

 

「高海さん!避けて!!!!」

 

 

道に落ちてたロープに引っかかり躓く自分、その拍子に倒れてくる鉄骨、そうだ…この場所でダイヤさんに助けられたんだ。

だから今も私はサッカーを続けられており、ダイヤさんたちの気持ちに気づくきっかけになったんだ…

 

 

 

「修正開始」

 

 

 

それを…

 

 

 

《ストライクモード》

 

 

 

たった一蹴りで…

 

 

 

 

 

 

───ガラガラガシャアァァン!!ゴン!!!

 

「ち、千歌ちゃんっっ!!!!」

 

「嫌あぁぁぁ!!!」

 

 

 

無きものにされた。

 

ダイヤが撃ったボールを少女は撃ち落とした…それにより、鉄骨は無慈悲にも私を潰し倒すこととなり、曜と梨子の悲鳴だけがこの空間に鳴り響くこととなった。

私はそれらをただ見ていることしかできず、少女は口の横に装着している機械でどこかに状況を報告している。

一歩も動けない、私は、いったいどうなる?

 

 

「心配は無用だ。死んではいない。全治3ヶ月…二度とサッカーが出来ない体になっただけだ」

 

「これで、お前にとってのサッカーは…消えた」

 

 

ズキッ…!!!!

 

 

「う、うあああっっ!?!?!?」

 

少女の声に続き、頭を割るような痛みが千歌を襲った。

それだけでは無い、頭が上手く働かなくなり、今自分が何をしているのか、今まで何をしてきたのかも分からなくなっていた。

 

「サッカーって…私…何……うわあああ!?!?」

 

過去を変えたことによる"今の修正"、それが現在進行形で行われている。

立っていることができず、その場に踞る。

頭をミキサーで掻き混ぜられているような感覚に、吐き気と痛みが止まらない。

もう何も考えることができず、ただ断末魔をあげるだけの生き物と化していた。

 

そんな高海千歌を見ても、少女の表情は何一つ変わらない。

 

 

「任務完了」

 

 

だが──────

 

 

「………待てよ」

 

 

高海千歌の本能は──────

 

 

「いい加減に…しろよ…サッカーを…返せって!!」

 

「!?!?」

 

 

────それを、許そうとしなかった。

 

 

 

 

 

「これはどういうことだ??」

 

薄暗い部屋の中心で光るモニター、その中には血走った目で少女を睨みつける高海千歌の姿があった。

それを囲むように座る老人たち、全員が漏れなく動揺を隠しきれず、一人が堪らず口を開いていた。

 

「…高海千歌はインターラプトの修正によっても変化しない」

 

「彼女の意志…いや、本能は修正された現実と戦っている」

 

「まさか…そんなことがあり得るのですか!?」

 

「面白いではないか。もう少し…監視を続けよう」

 

不敵に笑う一人の老人。

議長と書かれた名札の前に座るその姿からは、今の状況に余裕を感じているようであった。

 

 

 

 

 

 

 

「……イエス。ではそのように」

 

「ハァハァ……返してよ…っっ!!」

 

なんとか自我を保つ千歌、一方、少女は老人たちから新たな指令を受けていた。

 

「この事態を解決する新しい方法が提案された」

 

《ルームモード》

また少女がボールらしきものを操作する。

今度は青い光に包まれ、再び目を開くと浦の星女学院のグラウンドへと移動していた。

 

ワープした…?あのボールのような機械で、タイムスリップやワープをしているのだろうか。

しかし、少女は考える暇を与える気は無いようで、千歌の目の前に現れる。

 

 

「喜べ。ここからは、お前の好きなサッカーの時間となる」

 

 

だが、現れたのは少女1人だけでは無かった。

同じ服装を身にまとった、仲間と思われる少女たちが新たに10人、千歌を囲むように立っていた。

千歌の好きなサッカーの時間とは言っていたが、どうやら歓迎ムードではないようだ。

 

「あなたたちはサッカープレイヤーなの…?」

 

「そんな次元の低い存在ではない。我々は時間に介入することを許された"ルートエージェント"」

 

「タイムルートの補正…サッカーというものがこの世から消えていくルートを生み出すのが我らの使命」

 

「サッカーが…この世界から消えるルート!?」

 

次の瞬間、千歌は構えを取っていた。

ボールが《ストライクモード》と発したのと同時に少女…アルファが蹴りの体勢入っていたのだ。

 

―――メキッッッ!!!!!

 

放たれたボールをギリギリのところで足で受け止めようとする千歌、しかし…

 

(お、重い…!?何このパワー!?!?)

 

蹴り返すどころか、勢いを抑えることも出来ず、逆に徐々に千歌の方が押されている。

足のダメージもこのままでは酷くなる一方、なんとかボールを受け流すことに成功するが…

 

(あのボールを蹴り返してきた…!?)

 

背後にいた別の少女があの重いシュートを蹴り返してきたのだ。

予想もしてなかった状況に構えが遅れる千歌、その結果、シュートは腹部に直撃することとなってしまった。

 

「ぐあぁっっ!?ぐっ…ゲホッ!!」

 

地面に倒れるも、千歌はすぐに起き上がろうと体にムチを打つ。

相手は手段を選ばないとここまでのことでよく理解出来た。

上手く呼吸は出来ないが、先程のシュートの衝撃で割るような頭痛は吹き飛んでいた…ならば、こちらも足掻けるだけ足掻く。

 

本来の目的はサッカーを取り返すことであり、そのためには今取り囲んでいる11人全員を倒す必要がある。

 

 

「ハァハァ…やるしか…ないか」

 

「「「!!!」」」ゾクッッッ!!

 

 

11人、全員の表情が一瞬だけ揺らいだ。

千歌は"闇の力"を発動し、アルファよりも更に深く、淀んだ目を見開いて周囲を見渡す。

 

グラウンド、そして周辺には誰もいない。

これならば手加減せずに本気で暴れられる。

 

 

「続けろ。ネタン」

 

「了k────ドゴオォォォォン!!!!!

 

「「「!?!?」」」

 

ネタンがボールを蹴り放った瞬間、千歌はネタンの目の前へ一瞬で移動。

千歌に向かって飛んでいったはずのボールは、ネタンの腹部でめり込んでおり、同時に勢いよくその体はボールと共に吹き飛んだ。

 

 

───────まず、1人目」

 

雰囲気だけでなく、スピードとパワーも数倍に膨れ上がっていることを、アルファたちは今の一撃で感じ取っていた。

この中で千歌の動きに反応できた者は半分もいないだろう。

それは千歌自身が確信していた。

 

「【ストームゾーン】っっ!!!」

 

闇の力で周囲のもの全て消し飛ばす力技、まずは完全包囲の絶対不利状況を崩す。

それから一人ひとりを相手していけばいい、先程の感覚で何となく分かったが、確かに身体能力はかなり高い。

しかしそれでも、私がその上を行ける。

私の方が強い。

 

「逃がすな。作戦通り高海千歌を戦闘不能にしろ」

 

「「「了解」」」

 

要はサッカーと同じで、相手チームの動きを把握し、予測、自分の行動判断の糧とする。

前からの攻撃だけとは限らないし、先程自分がやったような不意打ちも頭に置かなければならならない。

 

「【ZスラッシュGX】」ズババババッ!!

 

「「!?」」

 

だが生憎、それらは今までのサッカーで実践済みだし、逆に自分の得意分野の域でもある。

前後で挟み撃ちしてきた少女2人を磨きあげられた必殺技で躱し、そこを闇の力で一気に叩く。

 

「2人目、3人目」

 

次に別の少女がパワープレーを仕掛けてきた。

千歌と少女の足がボールにぶつかり、お互いに力いっぱい押し合う。

かなり体格のいい人で、世界の選手たちとサッカーをした時もここまで大きい人はいなかった。

だが──────

 

「ぐっっ……!?嘘でしょ…??」

 

「力勝負でも負ける自信はないよ」

 

余程力に自信があったのか、千歌が押し始めると少女は驚きを隠せずにいた。

その後も、千歌は10人を相手に一歩も引かず、それどころか優位に暴れ回る姿を見せていた。

 

 

これが…闇の力を持つ者の強さなのか。

 

 

アルファは目の前のみかん色の髪を揺らした少女から放たれる殺気に近いオーラを肌身に感じながら、そう呟いた。

 

そして、不可解な点が1つ、自分たちが知るデータの中では高海千歌は"闇の力単体では発動出来ないはず"であった。

しかし、今の高海千歌は闇の力のみを発動して我々に対抗しており、データと食い違う。

イタリアに留学している間にこれ程までに、能力のコントロールを可能にしたのだろうか。

 

 

ならば決着を急がなければならない。

 

 

「!?」

 

千歌は足を止めた。

アルファがまた何かを仕掛けてくると感じ取ったからである。

 

「そろそろ行く」

 

「存分にお暴れください」

 

アルファは考えていることが読めず、身体能力もほかのメンバーの更に上を行く。

闇の力を使っているとはいえ、油断すれば勝敗はあちらに上がるかもしれない。

しかし───────

 

 

 

 

「【天空の支配者 鳳凰 "アームド"】!!!」

 

 

「…よ、鎧をまとった……」

 

 

 

────戦況は一瞬で傾くこととなった。

 

アルファの背中から現れた人型のオーラが、彼女の体に鎧として変化し合体したのだ。

見た目だけではない、オーラも爆発的に膨れ上がっており、認めたくはないが、今の自分よりも上回っている。

出し惜しみする状況ではなくなった千歌はすぐに、ゾーン×闇の力【Braveheart】を発動しようとする。

 

───どこを見ている」

 

しかし、彼女は千歌を圧倒していた。

千歌が反応するよりも先に背後を取っており、その瞬間、千歌の中で"敗北"の文字がよぎる。

すぐに"Braveheart"を発動しようとオーラを高めようとする―――が、

 

「あ…あれっ…?」ガクッ

 

突然、体の力が抜け、闇の力も解除されてしまった。

わけも分からず地面に膝を着いていると、近づいてきたアルファが口を開いた。

 

「忘れたか。お前は修正しようとする歴史に抗った。その時に消費した体力は計り知れない…ここまで動けただけでも異常だ」

 

「ハァ…ハァ……」

 

(ま、まずいよ…体…頭も働かない…)

 

「一撃で終わらせる。これで終わりだ」

 

こんな呆気なく終わるものなのか、何もかも奪われたまま、いいようにされて消えるのか。

ボールにオーラを込めるアルファを見ながら、千歌は自分の無力さを責め───────

 

 

 

 

 

────まだ諦めちゃダメだよ!!」

 

「!?」

 

「「「!?」」」

 

 

新たな謎の少女が、アルファのボールを蹴り放つ寸前で奪い取った。

エメラルド色の宝石のような髪と瞳、そして明るい表情をする人は久しぶりに見た。

 

「諦めちゃダメ。諦めなければ奇跡は起こる。これはあなたの言葉だよ。千歌!」

 

「え…」

 

「何者だ」

 

こんな状況でもアルファの感情が揺れることはなく、謎の少女に質問する。

 

「私の名前は"フェイ・ムーン"。千歌と同じ…サッカーを必要としている者さ!」

 

外国人だろうか、それにしては日本語が上手すぎるし、本当に味方かどうかもまだ信じられない。

しかし、彼女に助けられたのは事実であり、あの状況で一瞬でボールを奪い取る技術もある。

相当な実力者であることは確かだ。

 

「これだけいて1人をいたぶって楽しい?だったら勝負しようよ。サッカーでさ」

 

「……いいだろう。ならば……待て」

 

フェイの提案を受けようとしたアルファだったが、先に連絡の対応をする素振りを見せた。

すると、予定していなかった連絡のようで、事実ですか?と確認を取っていた。

そして連絡を終えた彼女は、

 

「…イエス。ご指示のままに」

 

「どうしました?」

 

「先程行った、高海千歌のインタラプト修正が無効化された」

 

「え!?誰がそのような」

 

「おそらく奴らだ。本来の流れを維持しようとする時の流れの自然治癒力。それにより再び正しい流れになった歴史は変えにくくなる」

 

「撤退だ」

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

その後、アルファたちは呆気なくその場から姿を消した。

謎の少女、フェイ・ムーンは千歌の味方だと言い、千歌たちの周りに何が起こったのかを話し始めた。

 

千歌を襲った集団はサッカー自体を消すことを目的とし、200年後の未来から時を越え、千歌たちのサッカーに関わる重要な出来事に影響を与えたのだという。

その結果、パラレルワールドとして高海千歌たちがスクールアイドルとして生きる世界が生まれた…

 

「なんで…サッカーを消す必要があるの?」

 

「それについても説明したい…けど今は先に千歌たちのサッカーを取り戻すのを急いだ方がいい。修正された歴史が安定してしまったら、それを再び修正するのが難しくなってしまうからね」

 

「取り戻す…でも、どうやって?」

 

「千歌たちのサッカーの始まりの場所へ行くのさ」

 

「始まりの…場所」

 

 

 

「3X年前の音ノ木坂学院…日宮美奈たちが"音ノ木坂の奇跡"として結成された世界に」

 

 

 

 

向かう先は奇跡の始まり

 

 

 




アルファの仲間≦アルファ<千歌≦アルファ(アームド)

化身と化身アームドを出すか迷いましたが、世界編までで味方が強くなりすぎたので出すことにしました。パワーバランスなどは上手く調整します。

感想よろしくお願いします。



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最終章 3話 「プロトコル・オメガ戦 "奇跡との共闘"」


皆さんどうも。ルビィちゃんキャンディーです。
輝こうサッカーでは重要なチーム、"音ノ木坂の奇跡"の時代へと千歌ちゃんたちは向かいます。作者自身も楽しみながら書きました。




 

 

 

 

「申し訳ありません、議長」

 

画面の向こうから深々と頭を下げるアルファ。

そしてその姿を鋭い目で睨みつける老人たち、その中の一人、議長のトウドウが口を開く。

 

「失敗は許されん。サッカーを消さねば世界は滅ぶかもしれない。分かっておろう、アルファ」

 

「今、世界では戦争が起こっているのだ。敵は恐るべき少女たち、"セカンドステージ・チルドレン"…」

 

彼女らの能力はあらゆる面で高いスペックを持っており、我々を下等な存在とみなし支配しようとしていると語る老人。

彼女らの組織"フェーダ"は人類の脅威であり、我々は速やかに彼女らを排除する必要があると力説する。

 

「そして、彼女らの遺伝子の原点は日宮美奈であり、そこからサッカーが更なる進化を促した」

 

「だからこそサッカーの発展を阻止し、人類のあやまった進化を止めなければならん。分かるな…」

 

全て理解していますと答えるアルファ、そしてすでに次の手を打っていると断言した。

だが老人たちの気が休まることは無い、それほどまでに事態は深刻なのだと…訴えているようであった。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

「これが…タイムマシーンなの??」

 

千歌とフェイはバスに揺られていた。

しかし、窓の外は見たことも無い景色であり、まるで虹色に光るトンネルの中を進んでいるようであった。

フェイの説明によると、正確には"時空間転移装置"であり、ワームホールを通過し、別の時間・別の場所に移動できるのだとか。

某国民的ネコ型ロボットアニメで見た事のある世界だが、まさか自分がそれを体験することとなるとは…実感がわかないというのが正直な感想だった。

 

「外観は君たち内浦の生徒が利用するバスを参考にワタシが作ったのだ!!」

 

「あ…あの、フェイさん?さっきから気になってたんだけど……」

 

このタイムマシーンを作ったと胸を張りながら運転席で操縦を続ける青いクマのぬいぐるみ。

聞いたら負けだと思っていたが、あまりにも人間味溢れる存在だったため、たまらずフェイに尋ねてしまっていた。

 

「私の名前はクラーク・ワンダバット!天下の大監督であり、君の協力者でもある!!」

 

彼は協力者として、千歌の運命の別れ道である鉄骨事故を千歌が戦っている間に元通りにしたらしい。

確かに今は頭を割るような激痛や記憶の不安定化も起きていない。

 

ワンダバットによると、歴史の変更は定着するまで時間がかかるものであり、変えられた直後であればあるほど元に戻りやすいのだとか。

そして、タイムジャンプするための条件もおしえてくれた。

 

 

「道しるべ?」

 

 

その時間、その場所にいた者の強い想いが詰まったもの、"道しるべ"…またの名をアーティファクトが必要であり、それがなければワームホールの出口は検出できず、タイムジャンプは失敗するのだとか。

そして…音ノ木坂の奇跡の時代にタイムジャンプするのにあたってフェイたちが用意した道しるべが─────

 

「音ノ木坂学院の校内新聞さ」

 

「どこで手に入れたの…?それ、」

 

運転席の隣に設置された丸い装置、その上にアーティファクトとなる"校内新聞"はセットされていた。

入手方法は夜の音ノ木坂にこっそりと…と何やら犯罪臭がしたため、それ以上は追求しなかった。

だが、それだけでなく決定的な情報もフェイたちは掴んでいた。

 

「3X年前の音ノ木坂学院サッカー部は、正しい歴史だと全国大会本戦第1回戦まで出場していた…」

 

「穂乃果さんからもそう聞いています」

 

「でも、僕たちが新聞を探した時は、"第1回戦を棄権した"という記事しか見つからなかった」

 

「…!?それって、」

 

「うむ。ヤツらが歴史をいじったと考えていいだろう」

 

そのため、時間の範囲指定もスムーズに行うことが出来た。

あと数分で到着するとワンダバットから報告が入り、徐々に緊張感も高まり始めていた。

 

「そういえば、あの状態でアルファ相手に戦うなんて…さすがは"太陽の跡目"だね」

 

あの状態…とは、歴史の修正により受けた心身のダメージのことだろう。

全力で戦う前に体力切れで追い詰められるとは…今思い出しても自分に腹が立つ。

だが全力を出したとしても、あの"アームド"という技相手に勝てるかどうか、正直今でも分からないでいた。

 

「アームドに勝つとしたら"Braveheart"…それか、完成した"新たな必殺技"なら……」

 

「新たな必殺技…?」

 

千歌が話しを続けようとしたところで、バスは音ノ木坂の奇跡の時代に到着したため、ワームホールを抜けた。

このまま説明してもいいが、聞くよりも実際に見た方が早いと千歌はフェイに伝えた。

 

「行こう。お母さんたちの邪魔はさせないよ」

 

 

サッカーを取り戻す戦いが…始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ……くっ…なんなの、この威力、」

 

ゴール前に倒れ込む1人の少女。

GKであるその少女はとある選手のシュートを止めることができず、ゴールに叩きつけられるかたちで失点を許してしまっていた。

仲間の選手たちも相手の圧倒的なサッカーに戦意を失いつつあった。

 

突然、目の前に謎の少女が現れたと思いきや、「お前たちはまもなくサッカーが嫌いになる」と言い放ち、気づいた時には無人のアキバスタジアムへと移動していた。

状況が理解出来ていない中で謎の少女はサッカーの試合を申し込んできた。

もちろん、受け入れる義務は無いと思っていたのだが…

 

「試合をしなければ二度とサッカーが出来ない体にするって脅しておきながら…今まさにする気マンマンじゃない」

 

肩で息をしながら月城真恋はこの試合の異常さを訴えた。

しかし、謎の少女が聞く耳を持つことは無く、加減する気が無いことは分かりきっていた。

 

「大事な本戦前だっていうのに…いい加減にしてよ」

 

だがそれでも日宮美奈は少女を睨みつけた。

誰だかわからない少女に自分たちの夢を壊されてたまるかと、怒りでブーストされた精神力でなんとか持ちこたえていた。

だが、そんな精神力をも少女はうち砕こうとしていた。

 

「本戦前だからこそ、お前たちを再起不能にする。完膚無きまで打ちのめし、心と体に傷をつけることにより、サッカーを自ら拒むことになる」

 

「…諦めないよ。そんなことで私たちは絶対に諦めない」

 

「耐えることは不可能だ───「不可能じゃない!!」

 

「!!」

 

「「「!?!?」」」

 

誰かの大きな声がスタジアムに響き渡る。

声のする方を見ると、フィールドの外からこちらへと向かって歩いてくる少女が2人、1人はエメラルド色の髪を揺らし、もう1人はオレンジ色の髪に赤い瞳…それはまるで、

 

「え…私??」

 

「みっちゃんにそっくりな子…?」

 

日宮美奈の幼馴染である梨本乃々子も同じ反応で千歌と対面することとなった。

分かってはいたが、自分のことをどう説明したらよいか千歌は迷っていた。

あなたの娘ですと言うわけにもいかず、下手に誤魔化すと余計怪しまれる…そこで千歌が出した答えは、

 

「美奈さん。その人たちはサッカーを消そうとしています!!」

 

 

勢いで貫き通す、だった。

 

 

「えーっと、あなたは…?」

 

「私は千歌といいます。大好きなサッカーを守るためにここに来ました…!このままじゃ大変なことになるんです。信じてください!!」

 

強引だが、伝えることは伝え、自分が味方であることを主張する。

なんとか信じてもらえるように祈るが、

 

「……分かったわ!」

 

一瞬で信じてもらえた。

 

「!!信じてくれるんですか…!?」

 

「ええ。サッカーが好きって言える人の言うことは信じるわ。大好きなものにはウソをつけないしね!」

 

自分で祈っておきながら、母の疑うことを知らない返答に戸惑いを隠せなかった。

そして浮かび上がってくるのはガルシルドの不気味は顔、この性格につけ込み、母たちの人生を狂わせたのだと…千歌は周りに見えないように唇を噛んでいた。

 

一方、千歌が美奈たちに状況を説明している間、フェイはアルファたちの行動を観察していた。

 

(やっぱり…彼女たちは僕たちを知らないみたいだ)

 

奴らは何者だ、情報を確認する、など自分たちを初めて見るような会話をしている。

おそらく、彼女たちは別のパラレルワールドの存在であり、時間軸的には"高海千歌に接触する前の彼女たち"だ。

 

つまり、あの戦闘はデータのみであり、実戦での感覚的な情報は彼女たちには存在しない。

勝機は十分…フェイはそう分析した。

 

あちらも、高海千歌と日宮美奈を同時に処分できることも考え、手加減はしてこないだろう。

 

「千歌。油断せずに全力で試合をしよう」

 

「うん。あの人たちの身体能力から、只者じゃないってよく分かるよ」

 

 

千歌とフェイを加えて11人制の試合に切り替えることとなり、数分間のミーティングをとることとなった。

チームの頭脳である真恋と弥生から話しを聞き、こちらも情報を提供する。

 

「現在の得点は0-2…まもなく前半の折り返しとなります」

 

悔しさで顔を下げながら答える弥生。

千歌とフェイにはMFに入ってもらい、あとのことは戦況を見ながら判断するとの事となった。

 

 

A『さあ!中断されていた試合もまもなく再開するようです!!実況はここまできたらお約束の実況者Aがお送りします!!!』

 

千歌「え…この人って、」

 

アルファ「…両チームの選手のデータはインプットしてある。試合の実況をやってもらう」

 

アルファ「実況はサッカーに不可欠なものだと聞いている…」

 

どこかズレているような気がしなくもないが、全国大会…世界大会とこの人にはお世話になった。

どこか運命的な何かを感じる…

 

アルファ「我々は"プロトコル・オメガ"というチーム名で登録した。お前たちはそのまま音ノ木坂学院で続けるか?」

 

やっぱりズレている気がする。

だが、チーム名は大切だし、答えもすでに決まっている。

 

千歌「続けるよ。私たちは音ノ木坂学院として…あなたたちと戦う」

 

 

 

音ノ木坂学院

 

FW………小原サエ、日宮美奈、三船夜

 

MF…フェイ・ムーン、高海千歌、響木鈴香

 

MF……………梨本乃々子、月城真恋

 

DF………………乙坂雛、園田弥生

 

GK……………………高坂光穂☆

 

 

プロトコルオメガ1.0

 

FW…………アルファ☆、レイザ、エイナム

 

MF……ネイラ、ジーニー、ネタン、クオース

 

DF………………ガウラ、メダム、クオル

 

GK…………………………ザノウ

 

 

 

───ピーッ!!!

主審の笛がスタジアムに響き渡り、音ノ木坂学院ボールで試合は再開した。

 

千歌は試合に加わりながら、まずは今の美奈たちがどれほどまでの実力なのか見極めることにした。

場合によっては攻守で自分の参戦する割合が変わってくる…が、

 

 

千歌(これが…今のお母さんたちの実力!?)

 

 

実力を疑うなど意味の無いことだとすぐに分かった。

一人ひとりの動き、技術、チームワークが日本のサッカーレベルを超えていた。

確実に、自分の時代の全国大会なら優勝しているほどだと確信し、母たちのサッカーの存在感に鳥肌が止まらなかった。

 

それでも、

 

 

夜「────うわっ!?」

 

 

A『クオース選手、鋭いスライディングでボールを奪った!!』

 

 

夜「ごめん!フォローお願い!!」

 

夜の声に反応した鈴香と真恋が止めに入るが、相手の正確無比なパスと強引なプレーで簡単に突破されてしまう。

音ノ木坂の選手たちのレベルは高く、逆に高すぎるはずなのだが…プロトコル・オメガは更にその上をいっていた。

 

 

弥生「光穂…!!シュートが来ます!!!」

 

光穂「今度こそ…止めてみせる!!」

 

穂乃果の母、高坂光穂は構えた。

その雰囲気は千歌の知る日本の太陽、高坂穂乃果に引けを取らないものであり、確かな実力があると肌で感じられるほどであった。

 

そんなGKを前に、アルファは足に風を纏って空へ跳び、その風とオーラを込めたシュートを放った。

 

 

アルファ「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」ドガァン!!

 

光穂「…っっ!!」

 

目を閉じ、胸に手を当てて全オーラを心臓に集結させる。

炎のように高まっていくオーラを解き放ち、全力の一撃でシュートにぶつかった。

 

 

光穂「はあぁぁぁぁっっ!!!!」

 

光穂「【真マジン・ザ・ハンド】!!」ドォン!!

 

千歌、フェイ「「!!!!!!」」

 

光穂の背中から現れた巨大な魔人がボールを受けとめている。

高坂光穂1人でこの圧倒的な存在感。

しかし、数秒踏ん張ったところで魔人と共に光穂はゴールへと叩き込まれた。

 

 

A『ゴール!!プロトコル・オメガ、3点目!!音ノ木坂学院は完全に勢いに飲まれてしまっている!!!』

 

 

光穂「ハァハァ…くっ…」

 

雛「光穂ちゃん…!大丈夫!?」

 

今のアルファのシュートを見て分かった。

プロトコル・オメガはただ戦闘能力が高い集団というわけではなく、サッカーの技術も極めて高い。

それも、世界の代表にも引けを取らないレベル…千歌はともかく、今の音ノ木坂学院では厳しい相手だ。

 

このまま一方的に進んではまずい。

そう考えた時には、すでに口が開いていた。

 

 

千歌「フェイさん。攻撃の方は任せてもいい?」

 

フェイ「分かった」

 

あのシュートを止める選手がこのチームには必要であると判断し、千歌は自らのプレーで流れを変えることを選んだ。

 

その後も、音ノ木坂の選手はなんとかプロトコル・オメガの守備を突破しようと試みるも、あと少しのところで届かず、気づけば再び失点の危機となっていた。

 

 

サエ「くっ…このままではもう1点失いマスよ」

 

真恋「光穂ー!!死ぬ気で止めなさいっ!!」

 

当然、光穂は諦めることなくゴールの前で両手を広げ、構えていた。

しかし、身体的には限界が近づいており、最高のパフォーマンスを出すにはもう手遅れに近かった。

それでも、アルファは容赦なく強烈なシュートを光穂に向けて蹴りはなった。

 

 

アルファ「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」ドガァン!!

 

光穂「ハァハァ…!!くっ…マ、マジン─────

 

 

 

 

 

────ゾクッッッッ!!!!!

 

「「「!!!!!!!」」」

 

会場を包み込むような寒気、敵味方含め、全員から強制的に冷や汗が垂れるほどのものだった。

そして、このオーラに覚えがある者が多数。

リスクを伴う代わりに、爆発的なチカラを手に入れるその能力―――発動者は、高坂光穂の目の前にいた。

 

チカ「【フルカウンター】」

 

───シャキィィィィン!!

金属を削るような高音が鳴ったのと同時に、竜巻をそのまま放ったような威力のアルファのシュートは、跡形もなく吹き飛んだ。

 

 

アルファ「な、なにっ…」

 

 

美奈「あれって…闇の力…!?」

 

サエ「あの子も美奈と同じチカラを…!」

 

千歌も美奈と同様、闇の力を宿す選手だったことに驚く音ノ木坂メンバー、しかし、それ以上に高海千歌の技の圧倒的な練度・威力に戸惑いを隠せないでいた。

光穂の強力な必殺技でも太刀打ち出来なかったシュートを、片腕を払っただけで消し飛ばし、尚且つ、その雰囲気から闇の力を代償無しにコントロールしている。

 

彼女は何者なのか、どうしてそこまで存在感があるのか、追求したいことが山ほどあるが…それ以上に。

 

 

美奈「すごく…かっこいい」

 

 

いちサッカー選手として、惚れていた。

 

 

チカ「カウンター!!」パス

 

「「「!!!!!!」」」

 

しかし、千歌の声ですぐに試合へと意識は戻された。

それと同時に自分たちは何を求められているのか、千歌は私たちの武器を理解しており、その一言で十分すぎるほどの指示だ。

 

千歌から放たれたパスを最も近くにいた弥生が繋ぐ。

ダイレクトで前にいる真恋へ、次は乃々子、鈴香、夜、サエとシュートチェインに近いパスで前へ前へ、縦にボールを繋いでいく。

 

相手が反応するよりも先に飛び出し、一瞬のズレも許さない、連携を極めた超高速必殺タクティクス─────

 

 

「「「【チェインカウンター】!!!!」」」

 

 

サエ「決めなさい―――美奈っっ!!」

 

残る音ノ木坂の選手は美奈のみ。

サエが放ったボールには音ノ木坂選手たちのパワーが込められており、威力は並のシュート技を超えている。

そんなボールを蹴り放つため、美奈も千歌と同じく、チカラを解放する。

 

 

美奈「【リベンジカウンター】っっ!!!」

 

自身の疲労やダメージをパワーに変換する日宮美奈のカウンターシリーズの1つ。

だが、この時の美奈は闇の力を完全にはコントロールできておらず、頭を割るような頭痛が襲っていた。

 

 

ミナ「がっ…!?」ズギズギ!!!

 

ミナ「ぐっ…でりゃああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

気合いで痛みをかき消し、全力の一撃を放った。

その威力はアルファのシュートにも引けを取らない…いや、越えている、千歌はそう確信した。

 

 

ザノウ「【キーパーコマンド03"ドーンシャウト"】」

 

プロトコル・オメガのキーパーは自身の強大な気迫でシュートを止めようとしていた。

千歌とフェイが参戦するまでに、音ノ木坂のシュートはことごとくこの必殺技により防がれてきた…しかし、

 

 

ザノウ「バカな…押され…ぐあぁっっ!?」

 

「「「!!!!」」」

 

美奈のシュートはザノウの必殺技を突き破り、ゴールへと吸い込まれた。

それと同時に得点を知らせるホイッスルが吹かれ、自分たちが1点返したことを示していた。

 

 

A『ゴール!!!前半終了間際、音ノ木坂学院、超高速カウンターから1点を返しました!!日宮美奈も素晴らしいシュート!!』

 

 

鈴香「よっしゃー!!決めたな美奈!!」

 

サエ「なんとか1点…デスね」

 

まだ負けてるとはいえ、自分たちも戦えると分かったことに少しだけ安堵する音ノ木坂の選手たちがそこにはいた。

彼女たちならばその気持ちを慢心にではなく、闘争心に変えてくれるだろう。

 

美奈も立ち上がっており、体調に深刻な問題は無さそうである。

そう考えながら息を整えていると、フェイが自分の元へと歩いてくるのが見えた。

 

 

フェイ「まさかアルファのシュートを跳ね返すなんて…あなたはめちゃくちゃなことをするね」

 

ごもっともなことを言われ、千歌はハハハ…と笑うことしか出来なかった。

だが先程のシュートを跳ね返して分かった。

イタリアでの特訓により、世界大会時よりも闇の力の精度が更に上がっている。

このままディフェンスに集中し、母とフェイたちに攻撃を任せ、逆転を狙うのが一番現実的だ。

 

 

真恋「前半は残り数分よ。ここを守りきって後半に繋げるわよ…!」

 

真恋の声で千歌はもう一度気合いを入れ直し、前で立つ母の姿を見た。

あれほどまでの強力な闇の力を扱うとは…余程の……余程、の、

 

 

しまった。

 

 

千歌の脳裏に浮かぶその一言。

何が一番現実的だ、逆だ、私たちは絶望的なまでに追い詰められている。

 

確かに美奈のシュートは強力で、様子を見るにまだ発動も可能だろう。

しかし、そもそもその強力なシュートの源は日宮美奈のダメージ…前半丸々蓄積したダメージがあったからこその威力だ。

つまり、同じ威力のシュートは後半にあともう一度しか撃てない。

ほかのメンバーのシュートは、キーパーに止められてしまったと聞いている。

千歌が決めに行くために前へと出ると失点のリスクが高まる…しかしそうしなければ逆転出来ない。

 

 

フェイ「千歌!!アルファが来るよ!!」

 

はっと前を向くと、すぐ近くまでアルファが迫っていた。

千歌が守備のために構えると、アルファは蹴りの体勢に入っていた。

 

そこまで強く踏み込んでいない。

シュートではなくパスのような…いや、これは宙へ打ち上げる構え…!!

 

千歌(させないよ…!)

 

アルファはシュートを放とうとしていると読んだ千歌は"フルカウンター"を発動するために構え直す。

このシュートを防げば前半は終了、作戦を立て直すことができる…そう考えた瞬間、千歌の腹部に何かがぶつかった。

 

それはシュートじゃない!!!

 

美奈の声がしたが、すでに手遅れだった。

 

 

アルファ「【オフェンスコマンド04"スピニングアッパー"】」

 

千歌「な…ドリブル……技…!?」

 

腹部にあったのはボール。

超強力な回転がかけられたボールに抗うことは出来ず、千歌はアルファの背後へと思いっきり吹き飛ばされた。

アルファはシュート技のモーションと動きを被せることにより、千歌の油断を誘ったのである。

 

 

夜「まずい…千歌さんが突破された!!」

 

真恋「今の光穂じゃ、あのシュートは…」

 

光穂はアルファのシュートを一度も止めることが出来ていない。

しかし、光穂はそれでも屈することなくゴール前で両手を構えている。

 

 

光穂「大丈夫…今度こそ…今度こそ!」

 

アルファ「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」ドガァン!!

 

光穂「【真マジン・ザ・ハンド】!!」ドォン!!

 

分かっていたことだが、徐々に押される光穂。

強い心があったとしても、圧倒的な力の前では適わないのか…そう、諦めかけた時だった。

 

 

光穂「今度こそ…今度こそ……」

 

アルファ「…!」

 

最初に気づいたのはアルファだった。

高坂光穂のオーラが…どんどん膨れ上がっている。

 

 

光穂「負けるもんか…サッカーが滅んでたまるかぁぁぁ!!!!!!」

 

「「「!!!!!!」」」

 

光穂「一体でダメなら…もう一体っっ!!!!」

 

光穂「【風神・雷神】!!!!」

 

溢れ出たオーラはもう一体の魔人を作り出し、先程までとは比べ物にならないほどのパワーでシュートにぶつかった。

 

 

千歌「まさか…ここで!?」

 

フェイ「パラレルワールドの共鳴現象だ…!」

 

二体の魔人がシュートを押し返す。

その姿はまさに音ノ木坂学院の守護神。

その気迫に千歌は覚えがあった。

何度もチームの危機を救った高坂穂乃果そのものであり、その原点は…母親の高坂光穂のサッカーだったのだ。

 

 

穂乃果『VとVで"ゴットハンドW"!!』

 

光穂「両手だぁぁ止まれぇぇぇ!!!!!!」

 

その気迫に応えたかのように、ボールの勢いは徐々に弱まり、光穂の手の中で完全に停止した。

 

 

光穂「ハァハァ…ハァハァ…や、やった…!!」

 

 

A『止めたぁぁぁ!!!!高坂光穂、魔人を二体発動し、アルファのシュートを完全に抑え切ったぁぁ!!』

 

A『そしてここで前半終了…!!1-3とプロトコル・オメガのリードですが、音ノ木坂の流れへと変わりつつあった前半となりました!!』

 

 

アルファ「……」

 

自分のシュートが止められたこと、その理由が本来ありえない状況によるものだということもあり、アルファは戸惑いを隠せないでいた。

そのタイミングに合わせるように、アルファの連絡機器から反応があった。

 

 

アルファ「…私です」

 

『"時空の共鳴現象"だ。異なったパラレルワールド上に複数の高坂光穂が生まれ、互いに干渉しあって力が高まっている』

 

『注意せよ。この高坂光穂はこれまでのデータに存在しない…"超覚醒状態"だ』

 

 

 

 

前半が終了し、音ノ木坂学院チームのベンチは光穂の新必殺技の話しで持ち切りだった。

本来ならば全国本戦の初戦、皇帝学園との戦いの中で完成するはずだった必殺技。

 

 

千歌(やっぱり…お母さんたちは凄い。成長のスピードが早すぎる)

 

このまま行けば、光穂だけではなく、ほかのメンバーも…そう考えている時だった。

スタジアムのどこからか声がする。

 

 

ち―――ゃーん―――

 

 

千歌「…?」

 

 

千歌ちゃーん!

 

 

千歌「…え?」

 

 

初めて聞く声では無い。

その声の主は観客席の一番上で自分の名前を呼んでいた。

 

 

「この試合、私も入れてもらってもいいかしらー?」

 

そう言うと、声の主は階段を駆け下りながらこちらへと近づいてくる。

そして徐々に姿がはっきりとしてくるのだが…ありえない。

 

 

千歌「…なんで……」

 

 

ありえないのだ。

 

慣れたように観客席の柵を飛び越え、数メートルの高さから勢いよく着地する。

私の知っている彼女は─────そんなことできる足を持っていないはずだ。

 

 

「頑張っているわね。千歌ちゃん」

 

千歌「なんで……そんなに走れるの??」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「志満姉…」

 

 

サッカーを失ったはずの姉が───そこにはいた

 

 

 





Q:志満さんはどんな人ですか?

善子:とりあえず絶対に怒らせてはいけない人よ。



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最終章 4話 「プロトコルオメガ戦 "可能性、爆発"」

お待たせしました。
最近はラブライブから離れていので執筆を進めるのに時間がかかってしまいました。
また自分の作品を1から読み直してみようかな。




 

志満姉が高校時代にサッカーをしていたことは、善子ちゃんから教えてもらった。

いろいろと思うところはあるが、最初に私がやったことは志満姉を問い詰めることだった。

 

何故教えてくれなかったのか。

 

姉からの返答は想像していた以上に反応に困るものだった。

 

 

"千歌ちゃんが知る必要は無い、出来ることなら…知って欲しくない記憶だったの。"

 

 

まるで過去の自分を遠ざけるような言葉。

これ以上の追求は姉の心を傷付けかねないと察してはいたが、後日、善子ちゃんとの会話で好奇心が上回ることとなってしまった。

 

『師匠は"共鳴"を完成させることは出来なかった。でも逆にそれ以外は完璧だったと私は思うの』

 

『美奈監督の娘で、千歌の姉なら当然の才能ではあるけど…一度でもいいから見てみたかったわ』

 

帝国女学院で志満姉の特訓を受ける中で、潜在的な力を感じたのだろう。

私も善子ちゃんと同じ気持ちだった。

志満姉がどんなサッカーをして、その目でどんな景色を、その足でどんな世界をかけてきたのか。

だが、この想いは一生叶わぬ夢なのだと、心の奥底に閉まっておこうと、私は誓っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

───そう誓ったからこそ、今目の前で起きていることは夢だと考えてしまう。

 

千歌「志満姉…」

 

志満「私は千歌ちゃんの知っている高海志満ではないの」

 

千歌「私の…知っている??」

 

志満「話はあとにしましょ。今は彼女たちと戦うわよ」

 

千歌「う、うん…!」

 

声も姿も千歌の知る高海志満だったことに少しだけ安堵する。

とても不思議な感覚ではあるが、彼女には信頼してボールを託すことが出来る。

 

光穂「もう1人の助っ人さんかな…?」

 

フェイ「あの人は志満さん。パラレルワールドから来た強い味方だよ」

 

乃々子「あの人も…何処と無くみっちゃんに似ている気がするわ」

 

美奈「ははは…なんか変な感じね」

 

後半からはフェイに代わって志満が出場することとなった。

彼女のプレーは全く予想できない分、期待が高まる。

 

 

音ノ木坂学院

 

FW………小原サエ、日宮美奈、三船夜

 

MF………高海志満、高海千歌、響木鈴香

 

MF……………梨本乃々子、月城真恋

 

DF………………乙坂雛、園田弥生

 

GK……………………高坂光穂☆

 

 

アルファ「…あの女の正体が判明。津島善子のインタラプト修正によって生じたエラーだ」

 

レイザ「新たな流れを生み出す存在ということですか」

 

エイナム「エラーならば正すまでです」

 

どうやらプロトコル・オメガの選手たちも情報を掴んだようで、チーム内で情報を共有していた。

だが、彼女たちの様子からは志満への警戒心がそこまで無いように感じる。

全く無いというわけではないが、自分たちの処理範囲内だと言わんばかりの余裕…

 

 

A『ここで、音ノ木坂学院は志満選手をチームに加え、後半戦に挑む!これは見逃せない戦いになりそうだーっ!!』

 

 

笛が吹かれ、試合が開始された。

音ノ木坂学院ボールからスタートした後半戦、千歌は前半と同じく後方で守備寄りのポジションへ、志満は前線で積極的に攻撃に参加する。

 

夜「お願いします!」パス

 

そのため、志満がボールを受け取る時はすぐにやってきた。

ついに姉のサッカーを見ることができる。

千歌は念願の光景を前に、試合だということを忘れ、姉の背中だけを見ていた。

 

対するプロトコル・オメガの選手も黙ってはいない。

すぐに2人の選手がディフェンスに入る。

 

志満「任せて───────ね!!」

 

しかし、志満は不敵な笑みを浮かべ、迷うことなく相手選手に向かって飛び込んだ。

プロトコル・オメガの選手たちの身体能力はかなり高く、そう簡単には突破できないと思っていた。

しかし、次の瞬間──────

 

 

夜「は、速っ!?」

 

千歌「!!」

 

「「「!!!!」」」

 

いとも簡単に、全てを撫で切るように、志満は相手選手たちを突破していた。

これには思わず声が漏れる。

 

す、すごい…

 

語彙力が無くなるほどだった。

世界と戦い、そして留学し、様々なサッカーを、レベルを見てきたが、姉のサッカーはシンプルに…シンプルに上手かった。

才能や力で圧倒するサッカーとはまた違う、それ以上にひとつひとつのプレーが洗礼されている。

 

 

A『素晴らしい突破を見せる志満選手!!まるで全て分かりきっているかのように迷いがありません!!!』

 

 

"いるように"では無い、"分かりきっている"んだ。

彼女のサッカーは経験から生まれる"プロ"の動き、違和感無く安心して任せられる…ベテランと言うべき領域にいた。

 

 

フェイ「…やっぱり強いね。彼女」

 

ワンダバ「当然だろう…!高海志満はサッカーを続けていればJリーグで活躍し、数年後には海外からオファーが来る。つまり、」

 

 

 

ワンダバ「海外で活躍するプロ選手なのだ!!」

 

 

 

志満「一気に決めるわよ」ピィーッ!!

 

意識を志満へと戻すと、何かに合図を送るかのように指笛を鳴らしていた。

千歌には覚えのある動き、あれは"皇帝ペンギン"を発動する時に共通するものだ。

 

すると地面から真っ赤なペンギンたちが姿を見せ、勢いよく空へと飛び立った。

あれは見たことがない皇帝ペンギンだ。

そう思った時だった。

 

 

千歌「赤い…ペンギン…」

 

見たことは無い、だが私はあのペンギンを知っている。

善子の話にあった"皇帝ペンギン1号"。

 

 

 

 

善子『皇帝ペンギン1号?』

 

北也『身体を破壊する禁断の技…志満のやつ、その技でバカをしやがって…』

 

 

善子から聞いた通りだった。

2号や3号と違って、血走った目で半暴走状態のように飛び回る赤いペンギン。

高エネルギーをその身に宿したペンギンたちは、発動者の足に刺さるように噛みつき、直接体内にエネルギーを送り込む。

そのため、発動者は高純度のエネルギーに耐えられず、身体を破壊する道を進むことになる。

 

志満は学生時代にその技を使用し、サッカーを続ける道を諦めた…しかし、そんな技を彼女は迷いなく発動しようとしていた。

 

止めようと千歌が口を開こうとした時だった。

ペンギンたちの動きに変化が───────

 

 

志満「骨が折れるわね…暴れ鳥ちゃんたち!!」

 

 

ペンギンたちは志満の足ではなく、彼女の前方で円を作るように飛び続ける。

次第に円の内側に高エネルギーの膜が形成され始め、そこへ勢いよくボールを叩き込んだ。

 

 

志満「【皇帝ペンギン・シン1号】」

 

 

彼女は自身の運命を────超えていた。

 

破壊光線のように放たれたシュート、それを追うように赤いペンギンもゴールへ。

相手のキーパーは必殺技を発動するも、まるで関係なしに貫くように、ボールとペンギンはゴールへと突っ込んでいった。

 

 

A『ゴ、ゴール!!なんというシュートだぁぁ!!後半開始早々、志満選手が攻撃力全振りのシュートでゴールネットを揺らしました!!』

 

 

光穂「す、すごいシュート…すぎる」

 

弥生「まるで銃弾…いえ、ミサイルのようなパワーとスピードを持つシュートでした。あんなシュート、見たことありません」

 

これで1点差まで追いつくことができた音ノ木坂。

志満の圧倒的な一撃は確実に試合の流れを変え、選手たちの心に強い刺激を与えていた。

それは、高海千歌も例外なく…

 

千歌(世界で…サッカーを見てきたからわかる)

 

高海志満の存在感。

名のある選手とは出会い尽くした気でいた…だが、こんな近くにまだ見ぬ選手(せかい)があったとは。

 

そんなことを考えている間に、攻め込んでくる相手選手が視界に入る。

だが、千歌よりも先に飛び出したのは────

 

 

美奈「たあぁっ!!」

 

千歌、志満「「おか…美奈さん!?」」

 

飛び込むようなスライディングで相手のバランスを崩す。

そこへ更に追撃をかけるのは風を纏った───

 

 

弥生「【疾風ダッシュ】!!」ギュン!!

 

美奈「ナイス弥生ちゃん!」

 

 

A『早くも音ノ木坂の高海美奈と園田弥生がボールを奪った!!素晴らしい連携です!!』

 

 

千歌(あれは…海未さんの…)

 

地面を強く踏み込み、風を纏いながら高速でフィールドを駆け抜ける海未のドリブル技"START:DASH!!"そのものだった。

まるで海未がそこにいるかのような動き…もし、彼女ならこの後すぐに…

 

 

弥生「鈴香!」パス

 

千歌(凛ちゃんへの…パス…!)

 

 

A『ボールを受け取った響鈴香、自慢の高速ドリブルでどんどん攻め込んでいく…!!!』

 

 

相手が守備を固める前にスピードを武器とする凛で攻め込ませるのが海未の動き…

それが、今まさに目の前で再現されている。

 

ならば…

 

そう考えるのと同時に、千歌は飛び出していた。

 

 

鈴香「助っ人さんたちに任せっきりにするわけには行かないよっ…!!」バッ

 

ボールに電気のようなオーラを集め、相手に向けて蹴り放つ鈴香。

襲いかかるようにボールは相手を感電させる。

 

 

鈴香「【ラウンドスパーク】!!」

 

美奈「鈴香!?いつの間にそんな技を!?」

 

鈴香「へへーん!今思いついた!!」

 

"パラレルワールドの共鳴現象"。

ベンチで一連の流れを見ていたフェイはそう呟いた。

高坂光穂1人だけではなく、音ノ木坂の選手全員が共鳴現象の対象ならば…この試合、勝機はある。

 

 

鈴香「まだまだ攻めるよーっ!!」

 

さらに加速する鈴香。

しかし、その行く手を遮る相手DFが現われる。

 

 

ガウラ「ちっ…調子に…」

 

鈴香「なんちゃって☆」パス

 

ガウラ「!?しまった…!!」

 

ドリブルの動きに入ってのパス。

初見では反応できないであろうフェイントに、翻弄しフィールドを掻き乱す凛の姿が見えた。

そしてボールの飛ぶ先には、全てを予想したかのように走り込む選手が1人。

 

 

夜「シュートチャンスじゃない?──────

 

黒髪を揺らし、自分とボールの重なるタイミングを完璧に合わせてくる。

彼女とGKの間を遮る者は誰もいない。

迷うことは無い、これ以上ないシュートチャンス…だが、

 

 

千歌(この場面…あの人……あの人なら…!)

 

夜「────頼んだわよ!!」

 

相手DF((ここで…スルー!?!?))

 

来たっっ…!!!!

思わず千歌は叫んだ。

渡辺月ならば…わざとゴールをフリーにして、シュートを撃つ瞬間に奪いに来ようとする相手DFに気づいて、自分にボールを渡すはずだ。

だが彼女は三船夜、言うならば別人。

どこにもそうなる確証は無い。

 

それでも、千歌には絶対の自信があった。

 

 

千歌「サエさん!!」パス

 

サエ「…!」

 

 

A『おぉっと!?千歌選手が逆サイドへ鋭いパスを出す!!そこには…なんと小原サエが走り込んでいた!!!』

 

 

サエ(よく…私が裏を取ることを見抜きマシたねっっ!!)バッ!

 

背中から高く跳び、オーバーヘッドの構え。

青黒いオーラを集め、全力でボールを蹴り放つ。

 

 

サエ「【バイシクルソード】!!」

 

かなり高威力の必殺技。

美奈に数年ぶりに"痛みを受けた"と言わせたほどのシュート…しかし、それでも相手のGKは軽々とねじ伏せてしまうだろう。

それは、シュートを撃った本人も分かっていた。

だからこそ────────託す。

 

 

サエ「頼んだわよ。美奈」

 

美奈「はあぁぁぁっっ!!!!!」

 

 

A『これは!?高海美奈が走っています!!シュートチェインをするつもりか!?』

 

 

闇のオーラを放ちながら全力で走る"母"の姿がそこにはあった。

真っ直ぐにボールを追いかけ、誰もが彼女を信じ、最後の一押しを期待している。

あの人(お母さん)なら、絶対に応えるだろう。

 

 

美奈「もっと…もっと…重いシュートを…!!」

 

 

彼女は高海美奈────"奇跡を作った人"

 

 

美奈「【ブラックドーン】っっ!!!!!」

 

────ズンッッッッ!!!!!!

空気を殴るような重音がスタジアムに響く。

肌で感じるレベルのこの"重さ"!!

間違いない。

彼女、高海美奈の新たな"闇の必殺技"!!!

 

 

ザノウ「【キーパーコマンド03"ドーンシャウト"】」

 

ザノウ(な…なんだ…このシュートは!?)

 

シュートを受け止めた瞬間、黒よりも更に深い闇に染まったボールに吸い込まれるような感覚に陥った。

まるで光をも飲み込むブラックホールだ。

重すぎて…今にも潰されそうなオーラ、抗うこともできず、ザノウの技は破られ、ゴールネットは再び揺れることとなった。

 

 

A『ゴール!!音ノ木坂追加点!!これで3-3とし、同点まで迫ってきたぞ!!!』

 

 

サエ「ナイスシュートでした。美奈」

 

美奈「そっちこそ…!」

 

これが音ノ木坂の奇跡、お母さんたちのサッカー…私たちが受け継ぐこととなる、可能性の原点。

千歌の目は憧れの選手を見る子供そのものだった。

この勢いと爆発的な進化が続けば…勝て───

 

 

 

「【天空の支配者 鳳凰 "アームド"】」

 

「「「…!!!!!!」」」

 

瞬間、全員の体が震え上がった。

先程の美奈のシュートとはまた別の次元の刺激を肌で感じている。

確実に"声の主"のオーラが膨れ上がった。

それも数倍とかの規模ではなく、まるで…人間を超えたレベルの…

 

 

千歌「化身…アームド…」

 

アルファ「遊びは終わりだ」

 

 

 

残酷に輝く鎧を纏う姿は───まるで神だった

 




「皇帝ペンギン・シン1号」シュート/高海志満
皇帝ペンギン1号の進化技を作ってみました。あのシュートは自身の体にペンギン刺すから悪いのでは?と思って、ペンギンを砲台として利用。1号に改良技があるということは…?

「疾風ダッシュ」ドリブル/園田弥生
風丸一郎太の原点にして頂点な必殺技です。
海未ちゃんの技にそっくり

「ブラックドーン」シュート/高海美奈
瞬木隼人のシュート技です。あの技、めちゃくちゃかっこいいですよね。


化身アームドにどうやって勝つの?


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最終章 5話 「プロトコル・オメガ戦 "最強の完成"」

昔は執筆しかやることない人生でしたが、いろいろと変わるもんですね。目まぐるしい人生を過ごしています。それでも執筆はやめません。




 

 

 

相手の子の1人が、背中から光穂と似た魔神を出したと思った次の瞬間…彼女はその魔神を鎧のように体へと纏った。

宝石のように輝くその姿に見とれる暇はなく、オーラの圧で私たちは滝のように冷や汗を流し、呼吸も乱れ始めていた。

 

"オーラに押し殺される"

 

本能的に感じた。

できることなら今すぐに逃げ出したい。

それほどまでに彼女は圧倒的な存在となっていた。

 

 

千歌「化身アームド……」

 

志満「あらら…あれは厄介ね」

 

 

助っ人の千歌さんと志満さんの表情も明るくなかった。

千歌さんに関しては無意識に受け身の体勢をとっている…過去にも戦ったことがあるのだろうか。

詳しいことは分からないが、今現状、敵は千歌さんたちでも勝てるかどうか分からない…これだけは察した。

 

だが、今の流れは確実に自分たちのものだ。

守備を今よりも固め、相手のゴールを破ったシュートたちであと1点を────────

 

 

A『さあ、プロトコル・オメガボールで試合再開です!!』

 

 

────そんな考えはおめでたいものだと、すぐに知ることとなった。

 

アルファ「ミッションスタート」

 

鎧を纏った選手がそう口を開いた瞬間、私たちの視界から少女の姿が消えた。

何が起こったのか理解できないまま、数秒経過したところで光穂の声がスタジアム内に響いた。

 

 

───────"上にいる"と

 

 

アルファ「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」

 

見上げるとそこには少女が1人、すでにシュートを蹴り放とうとしていた。

ボールへの蹴り込みとシュートを放つので計2回、空気が殴られたように揺れ、ドッッドン!!と轟音も鳴り響いた。

千歌さんたちはシュートブロックしようと走っているが、確実に間に合わない。

そんな中、光穂は完成したばかりの新必殺技でシュートを止めようと構えていた。

2体の魔神が巨大な手を広げ、ボールを受け止める。

 

 

光穂「【風神・雷神】!!!!」

 

しかし、シュートは勢いよく魔神を貫き、ゴールへと突き刺さった。

 

 

光穂「っっ!?!?(さっきのシュートとは…別次元…!!)」

 

 

A『決まったぁぁぁ!!!プロトコル・オメガ、追加点を決め再び音ノ木坂学院を引き離す!!!』

 

 

光穂「ハァハァ…」

 

シュートの勢いで吹き飛ばされた光穂はまだ立てずにいた。当然だ…離れた場所にいた私たちでさえ、シュートの衝撃波で震えが止まらないのだ。それを一瞬でも受け止めた光穂は…

 

 

フェイ「…あれは、持ってあと数回だね」

 

ベンチでフェイさんがそう呟いた。

 

美奈「数回…?」

 

フェイ「あと数回、あのシュートを受ければ身体が持たない…ということさ」

 

雛「そんな…!!」

 

フェイさんの言葉で、私たちは断崖絶壁に追い込まれていることを…ようやく自覚した。

この戦いを諦めたくない、諦めてはいけないことは分かっている。しかし、状況が最悪すぎた。

 

 

志満「みんなー!集合よー!」

 

「「「!!!!」」」

 

そう、弱音を吐こうとした時だった。

フィールドの真ん中で私たちを呼ぶ声がした。

吸い寄せられるかのように、私たちは駆け足で彼女のもとへと集まった。

全員が集まったのを見計らい、彼女はゆっくりとした口調で説明を始めた。

 

 

志満「みんなも分かっていると思うけど、あの変身…"化身アームド"は人を超えた力を得たものと考えていいわ」

 

志満「私たちが挑んでも勝負にならないわ…なので、」

 

志満「私たちはあの子に関与しないで行くわ」

 

「「「!?!?!?」」」

 

敵わない。なら無視して戦おう…ということができるほど、この試合は甘くないと分かっているはず。

私たちが困惑していると、彼女は続けた。

 

 

志満「私たちは全力でゴールを決めにいく」

 

志満「彼女は…千歌ちゃんが相手するわ」

 

あの化け物を…千歌さん一人で??

私は無謀な作戦だと声を上げた。

 

 

千歌「これが一番勝利に近い作戦なんです」

 

 

しかし、千歌さんの言葉が私の抗議の声をかき消し、満場一致にせざるを得ないことを言ってきた。

ずるいではないか、そんなことを言われたら…何がなんでもゴールを決めなければならなくなる。

 

 

サエ「光穂、千歌、ゴールはお願いします」

 

サエ「あと2点取りますよ」

 

サエが真っ直ぐ私の目を見る。

どうやら考えていることは同じようだ。他のみんなも頷いている…ならば、

 

 

美奈「その作戦…乗ったわ」

 

 

今できることを全力でやり抜く。

 

 

 

A『さあ、再びリードしたプロトコル・オメガ!!試合の残り時間も少なくなってきたが、音ノ木坂学院はどうするのか!?』

 

 

笛が吹かれ、美奈たちは一気に飛び出した。

チームの連携ならば自分たちも負けてはいない。

巧みなパス回しとドリブルがフィールド内で駆ける。この時、共鳴現象の影響から、音ノ木坂学院のチームの連携は、サニデイジャパンにも引けを取らないレベルになっていた。

 

夜「走って!真恋!!」パス

 

今ならどんなパスも思い通りに繋がる気がする。夜は前を走る真恋の名を呼び、足を全力で振り抜いてボールを前に出す─────が、

 

アルファ「……」ズザーッ!!

 

夜「!?!?」

 

真恋「は!?あのボールを奪うの!?」

 

私たちの完璧を彼女は簡単に超えてくる。

今のパスも出ると分かっていても奪えるスピードでは無かったはず…距離もそうだ、彼女は何メートル走ってきた??

規格外が人間の形をしているようであった。

 

 

A『おおっと!!アルファ選手がボールを奪ったあ!!そのままドリブルで持ち込む!!!』

 

 

なんとか止めようとディフェンスに入るが、化身アームドの力は強力だった。

彼女が走るだけで暴風が吹き荒れ、瞬きひとつで抜かされる…まるで常に必殺技を発動してるような状態だった。

 

美奈「まずい…またシュート打たれる…!」

 

この時間帯、そして光穂の身体的にも絶対にシュートを打たせてはならない。

そう自分に言い聞かせ、自分の陣地へ走って戻っていた時だった。

 

 

──────ズン!!!!!!

 

「「「!!!!!!」」」

 

ボールに2人の選手の蹴りがぶつかり合った時の音がした。

音のする先では─────先程、自分たちをいとも簡単に抜き去った少女。そして…

 

チカ「これ以上は好きにさせない…!!」

 

 

ドス黒い闇のオーラを放つ少女がいた。

 

 

フェイ「千歌…!頑張れ!!」

 

ワンダバ「時間は限られている。短期決戦だぞ」

 

千歌はギリギリのところでアルファの必殺技発動を阻止していた。

今のアルファのサッカーに真正面からぶつかれるのは…千歌のみ。闇の力を限界まで引き出し、死にものぐるいで食らいつく。

 

チカ「──────っ!!」

 

アルファ「──────!」

 

蹴らせない、抜かせない、繋がせない。

アルファの行動手札・範囲を倍以上の運動量で減らす千歌。それでも、化身アームドのパワーは計り知れない。

 

アルファ「邪魔だ…高海千歌」

 

アルファが口を開いたのと同時に、ズン!!と重い衝撃が走る。

なんだ?何をされた?体が動かない?上手く思考が働かない。

自分が吹き飛ばされたことを自覚したのは、1秒にも満たない時間であったが。

 

アルファ「終わらせる」バッ

 

───彼女がシュートの構えに入るには、十分な時間。

 

 

 

アルファ「【シュートコマンド0 ─────

 

─────バギッッッ!!!!!!

 

 

チカ「させないって…言ってんだろっっ!!!」

 

 

ギリギリ間に合った千歌が足でブロック。

そのままアルファごと─────吹き飛ばす。

 

 

チカ「【フルカウンター】!!!!!!」

 

アルファ「!?」

 

 

A『おおっと!?高海千歌がアルファ選手のシュートを阻止!!なんて高レベルな戦い!!誰も加勢することが出来ないぞ!!!』

 

 

チカ「まだまだ!!!!」

 

どんなに力で圧倒しても、スピードで引き離しても、高海千歌は食らいついてきた。

長すぎる1対1、嫌気がさしてもなお終わらない。

 

チカ「ハァハァ…ハァ…!!」

 

アルファ(高海千歌…何を狙っている)

 

このペースではすぐにスタミナが底を突く。

このまま自分がボールをキープし続ければ、高海千歌は終わりだ…が、それはあちらも分かっているはず。

それでも向かってくる理由が分からない。

何故こんなにも真っ直ぐに─────ぶつかってくる?

 

鈴香「す、すごい…あの二人、レベルが違う」

 

美奈「千歌さん…どんどんスピードが上がって……え、」

 

 

 

美奈「速く…なってる??」

 

 

 

 

なんだ…??

 

 

 

 

チカ「ハァハァ…ハァハァ…!!」

 

 

 

 

何が…起きている??

 

 

 

 

ワンダバ「フェイ。高海千歌は何故、"Braveheart"を使わないんだ?ゾーンと闇の力を掛け合わせた方が…戦えるはずでは」

 

フェイ「…その"掛け合わせ"が問題なんだ」

 

 

 

チカ「ハァハァ…!」

 

 

全く…抜けなくなった。

私のステータスが落ちたのか??

 

 

チカ「ハァ…ハァ…」

 

 

……違う

 

 

チカ「ハァ……」

 

チカ「…………」

 

 

これは…高海千歌が─────ギュン!!!!

 

 

アルファ「!?!?」

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

 

チカ「─────」

 

 

アルファとは逆方向に風がつきぬけた。

その彼女の足元にあったはずのボールは無く、それは一瞬の出来事。

反撃の─────兆しだった。

 

 

アルファ(ボールを……奪われた???)

 

 

 

 

フェイ「"Braveheart"。あれは作り物にすぎないんだよ」

 

千歌はゾーンを意識的に発動できない。

闇の力で強引にゾーンに近い状態を作り上げ、結果的にゾーンと闇の力が混ざったような雰囲気を作り出す…これが"Braveheart"の正体。

 

"Braveheart"で発動したゾーンは本来の60%にも満たないレベルしか引き出せない。

闇の力も同様、"中途半端な覚醒"と言えるだろう。

 

フェイ「なら…さ、100%。無意識的に、自然にゾーンが発動したらどうなると思う?」

 

 

 

アルファ「高海千歌…まさか…」

 

チカ「…うん」

 

 

 

フェイ「化身アームドをも超える、人類最強のサッカー選手の完成だよ」

 

 

 

チカ「最っ高っっに…ノってきた!!!!」

 

 

 

 

高海千歌─────ゾーン発動。

 

次回 プロトコル・オメガ戦 クライマックス

 




文字数が少ないことに一番驚いているルビィちゃんキャンディーです。
試合の展開がくどい…気がしなくもない??
次で終わらせて、お話しを進めます。
世界大会で優勝するチームのキャプテンですからね。チートですよ。



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最終章 6話 「プロトコル・オメガ戦"超覚醒"」


お久しぶりです。
かなりの期間更新していなかったことをお詫びします。






 

 

 

 

千歌『本当のゾーンを発動?』

 

音ノ木坂学院の選手たちを集めて作戦会議をする前、志満は千歌にアルファに勝つための方法を伝えていた。

 

志満『お母さんたちがパラレルワールドの共鳴現象で、本来の実力を超えた領域に足を踏み入れている…』

 

志満『千歌ちゃんも今なら簡単なはずよ。ゾーンの発動が』

 

千歌『…!!』

 

ここがパラレルワールドであることを利用した案だった。本来ならば発動できる可能性は、"特別な条件"を除いてはかなり低い、ゾーン。

千歌自身も気づいていた。ゾーンと闇の力を個々で完璧に発動し、100%×100%で戦う必要があると。

 

千歌『今まで私が"Braveheart"として発動していたゾーンは…作り物に近い…未熟な力だった』

 

千歌『でも…イタリア戦で発動したゾーンは、本物だった。"Braveheart"としてではなく、純粋に眠っていた力を呼び覚ました感覚だった』

 

FFIの日本代表とイタリア代表の試合、そこで千歌の覚醒を目撃した人々は口々に語った。

 

"流れる水のようだった"と。

 

 

千歌『あの感覚はまだ残っている。もし、この試合で覚醒(それ)ができるのなら…』

 

 

 

 

 

チカ「負ける気は───────しない」

 

 

A『高海千歌がボールを奪った!!!一瞬の出来事でした…!アルファ選手は全く反応できていなかったように見えたが!?』

 

 

アルファ(バ、バカな??)

 

化身アームドは人を超えた力をその身に宿す技…それでも今の高海千歌の動きは見えなかった。

最初はスピードによるディフェンスだと思った。しかし、アルファは違和感を持った。

今のは"本当に速すぎて見えなかった"のか、それとは別の何か要因があるように思える。

 

アルファ(エラーは即修正する…!)

 

近くにいた仲間に合図を送り、人数を増やして高海千歌からボールを奪い返す。

"不安要素は徹底的に排除"

それは任務遂行のため、そして、自身が安心するため──────

 

 

 

 

チカ「【ミリオンスラッシュ】!!!」

 

アルファ(この動きは───────

 

 

──────スババババババッ!!!!!

 

レイザ、エイナム「「!?!?」」

 

アルファ「!!!!!」

 

 

だが、アルファの足は一歩も動くことは無かった。

 

アルファ(Zでも…リバースでも無い…まったく別次元のドリブル!?)

 

 

A『素晴らしいテクニックだぁぁ!!高海千歌、あのアルファ選手を二度も!!そして複数人を相手に圧倒だぁ!!!』

 

 

志満(凄いわ…凄いわ千歌ちゃん!自分の潜在能力をこの短時間で一気に引き出してみせた!)

 

志満「こっちよ!千歌ちゃん!」

 

千歌からボールを受け取った志満は震えていた。

 

志満(底が見えない実力…だからこそ、無限に成長し続けることが出来るのね…最高だわ)

 

高ぶる気持ちが指笛をいつもより強く吹かせる。

フィールドにペンギンを呼び出し、必殺シュートの構えに入る。

 

 

A『おおっと!!また出るのか!?"皇帝ペンギン・シン1号"が!!!!』

 

 

とてつもない破壊力を持つシュート、撃たせるわけにはいかないと、相手選手たちはシュートの阻止のため飛び込む。

しかし遅い。全てが遅い。そう言わんばかりに、高海志満はボールをオーラの中に蹴り込んだ。

 

志満「【皇帝ペンギン・シン1号】!!」

 

夜「よし…!これで───────

 

誰もがゴールを確信した時だった。

何かが、高速で相手のゴール前へと飛び込んでいくのが見えた。

 

 

 

「これ以上好きには───────

 

 

──────ズン!!!!

 

 

「「「!!!!!」」」

 

ボールは、轟音と共に地面に叩きつけられていた。

 

 

アルファ「……させない」

 

 

A『な、なんと!?アルファ選手がシュートブロック!!あの距離を一瞬で追いつき、一撃でシュートを仕留めてみせました…!!』

 

 

なんてしぶといんだ。

空いた口を塞ごうにも、今目の前で起きた出来事はもう人間には理解できる次元をとうに超えていた。

あの高海志満の強力なシュートでさえ、捻り潰された。なら、音ノ木坂の選手のシュートは…適うと、考えるほど余裕のある者はいなかった。

 

アルファ「"皇帝ペンギン・シン1号"は放つまでの貯め時間が掛かる。ここからは、私もディフェンスに入り、確実に勝利する」

 

志満「なるほどね…それは厄介だわ」

 

試合終了時間は迫ってきている。

アルファのこの選択は非常に正しい判断だ。千歌の覚醒で冷静さを欠けば、あのプレー、判断は出来なかったはず。

万事休すか、高海志満の頭に、それが過った時だった。

 

 

チカ、美奈「「まだだよ」」

 

志満「…!」

 

チカ「まだ…」

 

美奈「終わってない」

 

 

彼女たちの目は───まだ生きている。

 

 

美奈「終わりの笛が吹かれるまで…諦めてたまるもんか」

 

チカ「何度だってボールは奪ってみせる」

 

この2人は本当に…。

込み上げてくる感情を抑える志満。

この親子以上に無限の可能性を感じたくなるものはいないだろう。

化け物を目の前にしても屈するどころか立ち向かう背中、広すぎる。あまりにも広すぎる。

 

 

『アルファ。これ以上、高海千歌と日宮美奈を自由にさせるな。力で捻り潰すのだ』

 

アルファ「…イエス」

 

一方のアルファは、通信機器で議長らから命令を受けていた。

彼らの口調から焦りを感じる。無理もない。

化身アームドを力を駆使しても彼女ら、特に高海千歌は何度も食らいついてきた。

これまでの分析データで、化身アームドに適う敵は、過去の世界には存在しないと言われていた。

だが、それが今この瞬間に覆されている。

 

アルファは勢いよく飛び出した。

守るのではない。命令に従い、彼女らを潰す。

 

 

チカ「美奈さん、来ます!!」

 

美奈「!!」

 

まるで飛びつくように2人との距離を詰めるアルファ、そして空中でかかと落としの構え。

 

アルファ「はあぁぁぁっっ!!」

 

次の瞬間、アルファは足を地面に叩きつけ、千歌の"ストームゾーン"にも引けを取らない衝撃波を発生させる。

千歌と美奈は吹き飛ばされないように、その場で耐えきることで精一杯。

 

アルファ「─────────!」ドガァン!!

 

その隙を、アルファは一瞬で突く。

 

 

チカ「うぐっ!?」

 

美奈「しまった…!!千歌ちゃん!」

 

衝撃波で視界が遮られている中、まるで突き抜けるように、アルファのシュートが千歌の腹部に直撃した。

化身アームド状態のシュートをモロに受けたら…美奈は千歌の安否を確認する─────が、

 

 

チカ「【ブラックアーマー】」

 

アルファ「!!」

 

美奈「良かった…!」

 

千歌は間一髪、左足でシュートをブロックしていた。ただのブロックでは無い、足をオーラでコーティングし、鋼鉄を超えた強度でシュートを受け止めていた。

 

フェイ「"ブラックアーマー"!?何故、千歌があの技を!?」

 

驚くのも無理は無かった。

あれは高坂穂乃果の必殺技だったはず。それを千歌が発動している。

 

チカ「ギリギリ!!」

 

受けていたシュートは強烈だった。さすがの闇の鎧でも威力は完全には殺せず、ボールは千歌の足から弾かれる。

そこをアルファは見逃さなかった。

 

アルファ「─────────っ!」ドガァン!!

 

再びシュートで高海千歌を狙う。

先程ボールを弾いたことにより、バランスを崩している。

これなら当た───────

 

 

──────────ドガァン!!

 

アルファ「!!」

 

美奈「!!」

 

「「「!!!!」」」

 

A『おおっと!?これはどういうことだ!?』

 

 

完全に千歌を捕らえたと思われたシュート。

しかし、ボールは千歌ではなく、地面に撃ち込まれた。

 

ワンダバ「一瞬だが、高海千歌が消えたように見えたぞ!?高速で避けたのか!?」

 

フェイ「…違う。あれは、」

 

 

チカ「ハァハァ…(やっぱり、できた)」

 

チカ("ブラックアウト"…!!)

 

千歌の子孫である高海晴夏が使用していた、自分の気配や姿を隠す闇の力の必殺技。

それを千歌は一瞬だけ発動し、アルファの狙いを僅かにズラすことにより、何とか回避していたのだ。

 

そして…千歌はひとつの結論に辿り着く。

 

チカ(真の"Braveheart"を発動している今なら…みんなの闇の力の技を使うことができる…!!)

 

溢れ出て止まらないオーラと、高まった身体能力があるからこその芸当だった。

まだ穂乃果や晴夏には及ばないが、過去の経験が今に生かされている。

それでも、それでも────────

 

チカ「ギリッギリなんだよ…!!」

 

アルファ「─────────!」

 

ここまで力を引き出してもなお…まだ互角に近いレベル。

 

アルファ「確かに化身アームドに匹敵する…脅威的な力だ。だが─────ズン!!

 

チカ「!?(厳しいタックルっ…)」

 

アルファ「諦めろ。お前の技は見切った。"透明化"だな」

 

チカ(…バレてるかそりゃ)

 

真の"Braveheart"を発動し、アルファたちをドリブルで突破した時、そして先程のシュート回避…そのふたつだけで"ブラックアウト"を見破られてしまった。

 

アルファ「スピードとはまた違ったドリブルの違和感。あれは一瞬の透明化が原因だな」

 

チカ「ハァ…ハァ」

 

アルファ「言ったはずだ」

 

 

 

アルファ「 エ ラ ー は 即 修 正 す る と 」

 

チカ「ハァハァ…く、くそっ…」

 

まだ相手は疲れた顔のひとつも見せていない。

このままではこちらの体力が尽きて────

 

 

─────そこだあぁっ!!」

 

アルファ「!?」

 

チカ「!!」

 

アルファが千歌を抜かしかけた次の瞬間、一人の少女が気迫の声と共に飛び込んできた。

伸びた足は惜しくもボールを掠めたが、奪うことまではできなかった。

 

チカ「ハァハァ…美奈さん…!」

 

美奈「千歌ちゃんだけに頑張らせるなんて、もう我慢できないわ」

 

美奈「私たちだって戦えるってこと…証明する!」

 

アルファ「……その証明はできない」ギュン!!

 

スピードで抜かしに来るアルファ、そのコースを塞ぐように千歌が入り込み、美奈が再びボールカットを狙う───────── が、

 

チカ「このっ!」スカッ

 

チカ(バックパス!?)

 

アルファ「やれ」

 

アルファの背後で選手が控えていることに気づかず、必殺技をモロに食らう。

 

エイナム「【ディフェンスコマンド03"コイルアッパー"】」

 

ボールを磁石のようなオーラで纏い、高速回転させることにより千歌と美奈を吹き飛ばす。

 

エイナム「アルファ様!」パス

 

 

夜「ディフェンス技で突破された!?」

 

志満「あの距離じゃ間に合わない…」

 

 

アルファ「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」

 

無慈悲なシュートが放たれた。

ここで点差がつけば勝ちは絶望的、絶対に撃たせてはいけないシュートだった。

 

弥生「光穂…!危険です…避け──────

 

光穂「避けない!!」

 

「「「!!!!」」」

 

化身アームドのシュートを前に、高坂光穂はその場から逃げるどころか、構えを崩すことをしなかった。

常識的に考えて、止める止めないという次元を越えているということは、GKである本人が1番よくわかっているはずだ。

 

光穂「私が…私が守らなきゃいけないゴールを、みんなに守ってもらってる……そんなの、」

 

 

光穂の両腕からオーラが迸る。

 

 

光穂「絶対に嫌だ!!!」

 

光穂「【風神・雷神】!!!!」

 

気迫と共に両手をボールにぶつける。

二体の魔神と共にシュートに挑むその姿・実力は、日本でも指折りのキーパーだと言えるだろう。

 

光穂「ぐっ…!」

 

それでも、

 

光穂(次元が…違いすぎる…)

 

 

フェイ「ダメだ!このままじゃ危険すぎる!」

 

ワンダバ「高坂光穂!!そのシュートは人間が止められるシュートでは無い!!君の体が壊れるぞ!!」

 

光穂「上等っっ!!」

 

フェイ、ワンダバ「「!?!?」」

 

魔神、光穂の体、全てがボロボロだった。

いつ吹き飛ばされてもおかしくない、いつ壊れてもおかしくない。

そこまで追い詰められているのにも関わらず、光穂の目は──────燃えていた。

 

光穂「私は…音ノ木坂学院サッカー部GK、高坂光穂…!!この身体が壊れても、どんなに強力なシュートでも、このゴールを守り抜く義務がある!!!」

 

 

チカ「ハァハァ…光穂さんの、オーラが高まってる…これって、」

 

美奈「みっちゃんは最強なんだ!!」

 

チカ「!」

 

美奈「どんなシュートでも、何故かみっちゃんなら止めてくれるって…そう思える!」

 

弥生「ええ。そう思わせてくれる彼女は、最強のキーパーです!」

 

雛「頼れる守護神よ…!」

 

 

アルファ「最強では無い」

 

 

アルファは一蹴する。

 

 

アルファ「私のシュートを止めることは不可能。その時点でその理論は破綻している。諦めて─────っ!?」

 

その時、アルファは気づいた。

高坂光穂のオーラが、今までにないくらい高まっていることに。

そして、

 

 

A『あぁっと!?二体の魔神の様子が!?』

 

 

風神の如く荒々しい力、雷神の如く弾けるような力が─────ひとつになる。

 

 

─────バギッッッ!!!!

 

「「「!?!?」」」

 

なんと次の瞬間、両手で弾いたのだ。

先程まで次元が違うと言っていたシュートを。

周りの選手たちが何が起こったのか理解できていない中、続けて光穂は構え直す。

 

 

腰をさらに落とせ!!!

 

胸は大きく広げ堂々と構えろ!!!

 

全ての力を右手に込めろ!!!

 

 

光穂「これが…諦めることを知らない私の─────全力っっ!!!!」

 

光穂「【グレイト・ザ・ハンド】!!!

 

 

魔神は新たな姿となって、再びシュートにぶつかる。

 

 

光穂「うおおおおぉぉぉ!!!!!」

 

アルファ「な、なんだ…このパワーは、」

 

彼女の気迫とパワー、もはや先程までとは別人と化していた。

止めることは不可能と思われていたアルファの化身アームドシュート、それを巨大な魔神は─────

 

 

光穂「っっっっ!!!!」ドオォォン!!

 

 

─────地面に捩じ伏せた。

 

 

A『止めたぁぁぁ!!!なんということだ!?あの化身アームドシュートを、高坂光穂、この試合二度目となる必殺技の進化で、止めて見せたぁぁ!!!』

 

 

光穂「ハァハァ…!ハァハァ…よしっ!!」

 

時空の共鳴現象による"超覚醒"。

それはあったかもしれない未来を、今へと連れてくる。

あの"グレイト・ザ・ハンド"のパワーとオーラ、穂乃果の完成された"ゴットハンドX"と…いや、それ以上の力を持っていた。

 

チカ「す…凄い…」

 

何故、高坂穂乃果が日本を代表とする守護神となり得たのか…その源流を見た気がした。

 

 

アルファ「こんなこと…ありえん」

 

美奈「ね?言ったでしょ?私たちだって戦える」

 

動揺を隠しきれていないアルファに美奈は近づく。

 

美奈「私たちは必ず日本一になる。ここで終わるわけにはいかない」

 

そして、千歌は見ることとなる。

 

 

美奈「あなたを完膚なきまでに崩して、この試合終わらせる」

 

 

"カウンターマスター"と呼ばれた、反撃の真髄を。

 

 

音ノ木坂学院 3-4 プロトコル・オメガ

 

次回、決着

 





「真のBraveheart」特殊/高海千歌
闇の力で強引にゾーンを発動するのではなく、純粋にゾーンを発動させ、100%ゾーン×100%闇の力をする技となっています。強引ではないので、抗うものは何も無く、流れる水のようにオーラと力が溢れだします。

「ブラックアーマー」特殊/高海千歌
穂乃果が体を硬質化する際に発動する技です。それを千歌は"真のBraveheart"発動時に使用可能となるようです。これでアルファの強力なパワープレイに対抗しています。

「ブラックアウト」特殊/高海千歌
千歌の子孫、高海晴香が発動する姿を消す技です。それを千歌は"真のBraveheart"発動時に使用可能となるようです。これでアルファの強力なパワープレイに対抗しています。まだコントロールが難しく、一瞬しか発動できないようです。

「グレイト・ザ・ハンド」キーパー/高坂光穂
円堂守の化身技です。輝こうの世界では、穂乃果の母である高坂光穂の必殺技となっています。風神と雷神をひとつの魔神として更に進化させ、凄まじいパワーでアルファの化身アームドシュートを止めています。その技は穂乃果の完成された"ゴットハンドX"を越えていると言われるほど。

感想を是非お願いします。



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最終章 7話 「プロトコル・オメガ戦 "カウンターマスター"」


今年もよろしくお願いします。
目標は去年よりもたくさん投稿する、です。




 

 

 

 

"あなたを完膚なきまでに崩して、この試合終わらせる"

 

美奈の口から出た言葉はあまりにも挑発的だった。

ゾーン×闇の力を持ってしても、そんなこと実現不可能だと千歌は確信していた。

それほどまでに"化身アームド"は強力な必殺技であるはずなのだ。

 

チカ(それを…どうやって、)

 

加勢しに行こうとした。

しかし、美奈の並々ならぬ雰囲気に、千歌の足はその場から動こうとしなかった。

 

 

アルファ「……どういう意味だ日宮美奈」

 

美奈「そのまんまの意味よ」

 

それ以上は語らず、美奈はアルファに向かってドリブルを開始した。

ダメだ、純粋なドリブルでは、今のアルファを抜くことはできない。

アルファが超スピードでボールを奪いにかかる、が、

 

 

─────バチィン!!

 

 

アルファ「!!」

 

チカ「!?」

 

次の瞬間、アルファは見えない壁にぶつかったように突然弾かれたのだ。

全員が状況を理解しきれていない中、アルファが再びボールを奪いに行く。

 

美奈「無駄よ」

 

─────バチィン!!

 

しかし、再びアルファの足は何者かによって弾かれた。

 

 

フェイ「あれは…まさか、」

 

ワンダバ「フェイ。日宮美奈のあれは何なんだ」

 

フェイ「……とんでもない選手だよ。彼女は」

 

 

 

美奈「【フルカウンター】」

 

美奈の口から発せられた技名、それは先程までシュートを吹き飛ばしていたあの技だった。

 

アルファ「それはありえない」

 

アルファの言う通り、"フルカウンター"は必殺技を跳ね返す技、アルファは必殺技を発動していない。

さらに、燃費が悪い必殺技でもある。

そう何度も連発できる技では─────

 

─────バチィン!!バチィン!!

バチィン!!バチィン!!バチィン!!

 

アルファ「なっ…!?」

 

 

志満「"フルカウンター"を…連発してる」

 

アルファが何度もボールを奪いに来るが、その度にカウンターで弾かれ、体を仰け反らしている。

美奈の動きは、まるで武術の達人が全ての攻撃を華麗に受け流しているかのようであった。

 

美奈「あなたのそれ、"化身アームド"だっけ?オーラを鎧みたいにして、体に纏っているんでしょ?」

 

チカ「…!!そうか!!」

 

千歌は気づいた。

だが、それでも─────

 

美奈「それを纏ってるかぎり、私はあなたを弾き続けるわ」

 

─────やろうとしてできる技術ではない。

美奈は自分の100%の力で"フルカウンター"を発動するのではなく、アルファの攻撃を弾ける必要最低限の力…10%程だろうか。

それを連続で発動している。

 

チカ「そんなこと…今の私にはできない」

 

だが、それを成功させるためにはかなりの技術を要する。

今の千歌でさえ困難なレベルだ。

 

 

A『なんてことだ!?アルファ選手のディフェンスが全て無効化されている!!』

 

 

レイザ「あれが日宮美奈の"超覚醒"!?」

 

エイナム「だとしても…アルファ様の化身アームドが負けるなど…ありえない」

 

プロトコル・オメガの選手たちに動揺が広がる。

人智を超えた力が手に入る"化身アームド"、そのスピードは風を切り、そのパワーは海をも割る。

どの時空でも適うものなど現れない、そうデータでは結論づけられていた…が、目の前でその結論が崩されようとしている。

 

アルファ「だが、このまま弾き続ければタイムアップでお前たちの負けだ」

 

アルファのスピードが更に上がる。

このまま攻撃を弾かせることだけに集中していれば、確かに試合は終わる…だが、

 

美奈「分かってるっっわよ!!」バチィン!!

 

アルファ「!!」

 

美奈が勢いよく"フルカウンター"をぶつける。

その衝撃によりアルファは大きく仰け反る。

その体勢は─────隙だらけだ。

 

美奈「私の100%の…全力の"フルカウンター"でもあなたの鎧には通用しない」

 

美奈「でも、」

 

美奈は構えた。

今のアルファには、"どんな技"でも叩き込める。

 

 

アルファ「─────!?!?」ゾクッッ!!

 

アルファ(なんだ…!?急にオーラが!?)

 

目の前で構える少女のオーラが、爆発的に膨れ上がった。

何をする気だ、何が起こるんだ。

このオーラの量、私や高海千歌を超え────

 

 

 

 

─────キィィィィィン

 

 

日宮美奈の腕が空を切った。

ただ腕を縦に振っただけに見えるその動き。

しかし、それは突然始まった。

 

 

ピシッ…ピシッ!!バギッ…バギギッ!!

 

 

アルファ「……!!!」

 

 

ただ見ていることしかできなかった。

鳴ってはならない音をたて、どんどん崩壊していく…鎧。

 

美奈「私の全オーラを一気にぶつける必殺技」

 

ありえない。

こんなこと─────あってはならない

 

 

 

美奈「【リベンジフルカウンター】」

 

 

─────バリイィィィィィン!!!!

化身アームドは硝子のように音を立てて砕けた。

美奈の高純度、高火力の技により、人間を超えた力は人間によって破壊されたのである。

 

 

フェイ「あの化身アームドを…」

 

チカ「砕いた……"リベンジフルカウンター"…!!」

 

 

これが高海…いや、日宮美奈のカウンター技術。

変幻自在の反撃で全てをひっくり返す……。

"カウンターマスター"

 

 

美奈「今よみんな!!速攻よ!!」

 

「「「!!!」」」

 

美奈から鋭いパスと指示が飛んだ。

同時に全員が飛び出す。

光穂と美奈が作ったチャンス、これが最後だ。

絶対に、確実にゴールへぶち込む。

 

弥生「鈴香、スピードでかく乱しましょう!」

 

鈴香「合点承知っ!!」

 

2人がフィールドを駆け回ることにより、相手の守備に隙が生じる。

 

真恋「見えた…そこよ!!」

 

その一瞬の隙を逃さずパスを出す音ノ木坂学院サッカー部の司令塔。

相手DFがパスカットを狙う?

 

クオル「奪え─────ズン!!!

 

クオル「!?!?」

 

雛「邪魔はさせませんよ」

 

音ノ木坂(うち)のDFがそれを許さない。

彼女がマークにつけば、そこから一歩たりともボールに近づくことは出来ない。

 

 

アルファ「エラー発生…体が…」

 

一方、アルファは化身アームドを破壊されてから、その場から一歩も動くことが出来なくなっていた。

化身アームドは自身のオーラを纏う技、それが破壊されたということは、一気に大量のオーラを失うということになる。

 

アルファ「こんな事態…許されない…」

 

徐々に選手たちの声が遠ざかっていく。

自分たちが攻め込まれているのが、見なくてもよく分かる。

それでも、そんな状況でも、アルファは何もすることができない。

 

 

乃々子「サエさん、夜さん、お願いします!」

 

そして前線では、乃々子がFW2人にボールを繋げようとパスを出していた。

 

ガウラ、メダム「「ここで止める!!」」

 

手段を選んでいられない相手DFは、サエと夜を抑えてでもボールを奪いにかかる。

しかし、ボールは彼女らの頭上を越え────

 

 

志満「ナイスパス…!!」

 

ガウラ、メダム「「!?!?」」

 

夜「最後は私たちがバシッと決めたいところだけど」

 

サエ「私たちを囮にしたんです。必ず決めてください」

 

乃々子はその耳で聞き分けていた。

最初よりも荒々しい足音、相手DFは必ずサエと夜を狙う。

そしてサエと夜は気づいていた。

乃々子の目は、私たちよりも前を見ていると。

 

志満「合わせて。千歌ちゃん」ピィーッ!!

 

指笛で赤いペンギンを呼び出す。

あの技は撃つまでに時間がかかる。

ならば、私がすることは────

 

チカ「【ストームゾーン】!!!」

 

シュートブロックの全力阻止。

向かってくる相手選手を全員オーラの嵐で吹き飛ばす。

 

ありがとう。千歌ちゃん。

 

そう背後から聞こえた時には、すでにペンギンが作った円の内側に、高エネルギーの膜が形成され、志満がそこへ勢いよくボールを叩き込んでいた。

 

 

志満「【皇帝ペンギン・シン1号】!!!」

 

こうなれば、確定演出だ。

強烈なレーザー砲がゴールへと発射された。

 

ザノウ「【キーパーコマンド03"ドーンシャウ────ぐああっっ!?」

 

相手のGKは必殺技を発動するが、完全に勝負はついていた。

レーザー砲は必殺技を貫き、ゴールへと突き刺さった。そして────

 

 

A『ここで試合終了のホイッスル!!音ノ木坂学院 対 プロトコル・オメガの試合は、なんと引き分けだぁ!!!』

 

 

優花「ひ、引き分け…?」

 

フェイ「勝ってはいないが、負けてもいない」

 

プロトコル・オメガの目的は音ノ木坂学院の選手たちを、完膚無きまでに叩き潰すこと。

しかし、キャプテンのアルファはオーラが底を尽き、ほかの選手たちも満身創痍。

 

 

美奈「ハァハァ…延長戦、やれるよ…!!」

 

体はボロボロでも、心はまだ死んでいない。やれる。

そう訴えるかのように、美奈は立ち上がった。

対するアルファは、もう立ち上がることができず、その場で俯いたままだった。

そんな彼女の通信機から、声が漏れる。

 

 

『アルファ。無様だな』

 

アルファ「……議長」

 

『撤退だ』

 

アルファ「…イエス」

 

これ以上の得点は不可能。

そう判断した議長は試合終了、そして撤退を命じた。

仲間に支えられながら、アルファは光の中に消えていき、スタジアムには静寂が戻った。

 

音ノ木坂の選手たちは何が起きたのか分からず、全員がその場で固まっている中、静寂を切ったのは、ベンチから走ってきたフェイだった。

 

 

フェイ「守ったんだ…音ノ木坂の奇跡の流れを、私たちは守ったんだよ。千歌!!」

 

千歌「てことは……全部、元通り…?」

 

全てを理解した瞬間、集中力(ゾーン)の線が切れ、力が抜けたかのように、その場に座り込んでしまった。

全力以上の力を出した。

そして守った。取り戻した。

私たちのサッカーを。

 

千歌「へへ…勝てたのは志満ねぇのおかげだね」

 

自然と笑顔がこぼれる。

自分の目の前には、同じく笑顔の高海志満の姿が。

優しく包まれそうな笑顔ではあるが、その雰囲気は、自分の知っている志満からは感じたことのない、覇気が混じっていた。

 

志満「…千歌ちゃん。この戦い、私にも手伝わせて」

 

千歌「志満ねぇも…!?」

 

志満「善子ちゃんのためにもね」

 

 

志満の顔からは笑顔が消えていた。

 

 

 

 





「リベンジフルカウンター」特殊/日宮美奈
リベンジカウンターとフルカウンターを掛け合わせた超絶威力を誇るカウンター技。その威力はアルファの化身アームドを破壊するほど。カウンターマスターである美奈だからこそ発動可能な必殺技となっている。原理としては疲労やダメージを全てフルカウンターのパワーに変換するというもの。一見シンプルではあるが、千歌も引くほどの難易度。



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最終章 8話 「帰還」


もうすでに今年の目標「去年より投稿する」を達成しそうです。




 

 

 

 

「どうだった?あなたのお母さんたち」

 

隣の座席でフェイはそう聞いてきた。

正直、まだ実感が湧いていないのは事実、だが思ったことを私は伝える。

 

「寂しいなって」

 

「寂しい?」

 

お母さんの怪我が無かったら、何か違っていたら、あのまま彼女たちはサッカーを続けていただろう。

そしてパラレルワールドの共鳴現象による"超覚醒"の力を、自分の力で習得し…いや、

 

そんな世界は存在してはいけない。

私は自分にそう言い聞かせる。

 

 

「あの光景を…私の知るお母さんたちは知らない」

 

「…そうだね」

 

ゆっくりと頷き、フェイは続けた。

 

「でも、あの光景を知らないからこそ、手に入れた思い出もあるんじゃない?」

 

「それって、」

 

「君たちの世界大会優勝だよ」

 

「…!」

 

美奈の挫折があったからこそ、穂乃果と千歌の闇の力のコントロールが可能となった。

もし怪我無く選手として活躍していたら、指導者として専念できず、監督にも選ばれていないかもしれない。

サエはガルシルドを追うことなく、そのまま戦争が始まっていたかもしれない。

 

この世界に完璧なんて存在しない。

何かを失うから何かを得る、フェイはそう言った。

 

「本当の時間軸の高海…いや、日宮美奈が得たもの。千歌が大切にしていくんだ」

 

「うん」

 

それに、あの世界軸からも得るものがあった。

それは元の時代に戻る少し前のこと、日宮美奈たちと最後の会話をしていた時だ。

 

 

『よくわかんなかったけど…みんな、サッカーを守るためにあの人たちと戦っているのよね』

 

『そうです!』

 

『それ、私も戦いたい!!』

 

突然の申し出に驚いたが、月城真恋が止めに入る。

 

『あんたがやらなきゃいけないことは、サッカーで全国制覇でしょ。それが、サッカーを守るってことになるんじゃない?』

 

このまま歴史通りに進み、私たちにサッカーを繋げる。

やることとすれば正しい…だが、彼女たちは知らない。

 

後日行われる全国大会本戦初戦、ガルシルドにより、音ノ木坂学院のチームは崩壊することを。

 

だが、そんなこと言えない。

 

『そうね。なら、私たちは私たちにできることをやるまでね』

 

お母さん…日宮美奈さんは笑顔でこう言った。

 

『次会う時は日本一よ。その時はあなたたちのチームとサッカーしましょ』

 

『…!』

 

『約束。だからあなたたちも、サッカーを守って』

 

 

 

約束。私は託されたんだ。

サッカーを取り戻す、守ることを。

 

「そのためにも早く確認しなくちゃね」

 

「確認?」

 

突然の話に私は聞き返す。

フェイによると、お母さんたちの時代の危機を未然に防いだことで、後の時代がどう変化しているのかを、確認する必要があるのだという。

 

なら、今のうちに話しておかないとね。

 

後部座席で志満ねえが話し始めた。

志満ねえはこのまま戦いに参加してくれるらしい。

それは心強いが、理由は…善子ちゃんだと言う。

 

「千歌ちゃん。あなたの知る私の歴史は…」

 

「私が高校生の時に試合中の事故が原因で、私がサッカーをできなくなってしまった…ということよね」

 

「うん」

 

「あの事故は起こらなかったわ」

 

「…!」

 

高海志満は帝国女学院に入学し、そこで松浦北也と出会うこととなる。

それが善子と志満が出会うきっかけとなるのだが、今ここにいる高海志満の入学先は、清真高校となっているという。

だからこそ、志満は善子と出会うことなく、善子はあの技を習得することができなかったのだ。

 

"Deep Resonance"を。

 

「北也さんは私を知らない。会ったこともない。当然ね、私は清真高校サッカー部なんだから」

 

それにより、善子は代表の実力に届かず、追加選手として選ばれることなく、世界大会は終了した。

実力不足、無力感、そして気まずさから、善子はサッカーから離れていってしまった。

 

「…それは浦の星の津島善子からサッカーを奪うために、エルドラドが仕掛けた…ということですよね」

 

フェイの鋭い指摘が入る。

それに対しての志満の答えはイエス。しかし、

 

「それは成功したのでしょうけど、彼女らは私の前に現れた。私からサッカーを奪おうとしてね」

 

「志満ねえも襲われた…!?」

 

驚き席を立つ千歌。

だが新たな時空の中で高海志満は、多くのサッカー選手に大きな影響を及ぼした。

狙われるのは当然だった。

 

しかし、とある人物に助けられたことにより、高海志満はサッカーができ、時空を超えることができた。

 

「名前は言わなかったわ…でも、『あなたたちのようなサッカーを愛する者たちを、私は支援している』と言っていたわ」

 

「サッカーを愛する者を支援している…?」

 

「その人は私を助けてくれただけじゃなく、この"タイムブレスレット"を渡したの」

 

"タイムブレスレット"を使うことにより、時空を移動することができる。

その支援者を信用するには疑問が残るが、その人のおかげでここまで戻ってくることができた。

 

話がひと通り終わったところで、まもなく元の時代に到着すると、ワンダバからアナウンスが入った。

千歌の緊張が高まる。

本当に歴史は元に戻ったのか…それは、着いてみなければ分からない。

 

 

 

 

夜のアキバスタジアム。

ボロボロの姿でフィールドに座り込んでいた高坂光穂は口を開いた。

 

「まだ夢を見てるみたい」

 

同じく座り込んでいる日宮美奈。

"リベンジフルカウンター"で体力を使い切り、立てる力も残っていなかったが、その目は輝いたまま、千歌たちが消えていった空へと、向けられていた。

 

「千歌ちゃん、きっとまた会える。そんな気がする」

 

 

 

──────────

 

 

無事に現代の清真高校へと戻ってきた千歌。

早速、部室へと向かい、時代が元に戻っているかどうか確認しなければならない。

しかし、どうしても足が重くなる。

 

「もし…まだみんながスクールアイドルだったら、、」

 

「その時はすぐにタイムジャンプして問題を解決しなきゃ。ほら、行こう」

 

急かすフェイ。

だが、スポーツ一筋でやってきた人が、急にフリフリの衣装を着ながら笑顔で歌う身にもなってもらいたい。

毎日歌詞の提出で梨子には怒られるし。

もちろん、今も白紙だ。

 

「……そう言えば、お母さんたち、覚えるはずの無かった技を覚えちゃったけど、歴史は大丈夫なの?」

 

道中、ふとした疑問をフェイに投げかけた。

情け程度の現実逃避である。

 

「大丈夫さ。パラレルワールドがもたらす時空の変化は、あなたが思う以上に不思議で面白いものなんだ」

 

「え、どういうこと?」

 

「一時的な超覚醒だからね。おそらく使えなくなってるよ」

 

更にややこしくなってしまったが仕方ない。

しばらく歩くと見えてきた…サッカー部部室のある扉が。

ここを開けた先にいるみんなはサッカー選手なのか、それともスクールアイドルなのか、千歌は覚悟を決め、扉を開けて入室する。

 

 

 

 

「あれ、千歌ちゃん?もう練習始まっちゃうよ?」

 

最初に話しかけてきたのは梨子。

千歌は反射的にスクールアイドル前提の返事をしてしまう。

 

「梨子ちゃん!?練習って…その前に、あの…歌詞なんですけどまだ……」

 

「歌詞?なんの事?早く着替えてスパイク履いて」

 

「スパイク…って、サッカーの?」

 

「もう、それ以外に何があるのよ」

 

「サッカー部!!?元に戻ってる!!やったあぁぁぁぁ!!!」

 

あまりの嬉しさにその場で飛び跳ねる。

海外での短期留学から今日まで"サッカー部"の梨子たちとは会えていなかった。

数ヶ月ぶりの再開と言える。

何が何だか分からないメンバーたちは、その場で千歌のことを見守るしか無かった。

 

「こんにちわ〜。お邪魔するわね」

 

そこへ現れた高海志満。

彼女の姿を見たメンバーの表情は、いっきに明るくなった。

 

「お久しぶりです!志満先輩!」

 

「高海先輩、今日こそは勝ちます」

 

曜は志満"さん"ではなく"先輩"と呼び、ルビィは何度も勝負を挑んでいるようだ。

会話から自分の知る世界とはまだ少し違っているのだと、千歌は感じた。

 

だが、一番の違いは別にあった。

 

「善子ちゃんは…?」

 

そう尋ねた瞬間、場の雰囲気が暗くなったのを千歌は見逃さなかった。

そうか…まだ元通りでは無いのか。

そう心の中で呟く。

 

「じゃあ、みんなに説明しなくちゃね」

 

志満も状況を察し、メンバーに今起こっていることの全てを説明をし始めた。

途中、フェイとワンダバも説明に参加し、少し騒ぎとなったのはまた別の話。

 

パラレルワールドのこと、高海志満のこと、そして善子のこと。

一通り説明し終わったところで、最初に口を開いたのは花丸とルビィだった。

 

「なんだか、自分が自分じゃないみたいで、なんか嫌な感じずら…」

 

「それに…善子ちゃんのサッカーが奪われたままなんて、絶対に嫌だよ」

 

同級生ということもあり、善子を心配する気持ちはいっそう強いのだろう。

 

「今話したように、この私は『偽りの時間』の中に生きているわ。千歌ちゃんの知っている私が、本当の私よ」

 

「だから、本当の私を取り戻して、善子ちゃんにサッカーを返してあげたいの」

 

それは千歌たち清真高校サッカー部が、本来の清真高校サッカー部になることを意味する。

善子を取り戻すために気合いを入れるメンバー、これ以上に頼もしい仲間はいない。

 

だが、ひとつだけ気になることがある。

善子を取り戻すのは当然、歴史を修正するのも絶対だ。

 

だが、

 

 

 

 

「志満ねえは…消えちゃうんじゃ…」

 

 

「千歌ちゃん?」

 

無意識に口に出ていたようだ。

咄嗟に誤魔化すが、千歌の迷いは晴れない。

善子を取り戻せば、この時空の高海志満は消えてしまう、本当にそれでいいのか。

 

 

「よしっ。まずは今日の練習を終わらせてから作戦を考えましょ」

 

志満の声でメンバーはいっせいに準備を始めた。

千歌も準備を始めようとするが、なかなか手が動かない。

そんな中、1人の少女が志満に話しかける。

 

 

「志満さん。そのプロトコル・オメガの選手たちと、戦うかもしれないんですよね」

 

その少女は覇気を放っていた。

 

「じゃあ、ルビィがその人たちに通用するかどうか、確かめてください」

 

「勝負です。志満さん」

 

 

紅く燃える少女が、高海志満に挑む。

 

 

 

 





高海志満/MF/海外プロチーム
必殺技:皇帝ペンギン・シン1号
高海志満が怪我をしなかった世界線では、プロサッカー選手として世界で活躍しています。高校は清真高校と本来の世界線とは違っており、松浦北也や善子とは出会っていない。
現在は海外に住んでいるため、旅館は美渡が切り盛りしている。



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最終章 9話 「志満とルビィ」


今年の目標達成です。
どっちが勝つと思うか、予想して是非読んでみてください。




 

 

 

 

「何が…始まるんですか?」

 

校舎外のあちこちから部活の声が響く中、サッカー部のメンバーはグラウンドに入らず、ベンチでルビィたちを見守っていた。

 

初めてのことに戸惑いながらも質問をしたのは、清真高校に元々入学していたメンバーであった。

 

「ルビィちゃんと志満先輩は、ああやって1対1の勝負をよくするんだ」

 

答えたのは曜だった。

今の時間軸では、千歌たちが浦の星女学院サッカー部であったころから、2人はよく勝負をしていたことになる。

 

「いつからか、恒例行事みたいになってるんだよね。ルビィちゃんは昔から勝負を挑んでたみたいだし」

 

「どっちが…たくさん勝ってるんですか?」

 

「…志満さんが49戦49勝。ルビィちゃんは、一度も勝ったことがないよ」

 

 

一方、グラウンドに立つ2人は既に準備を終え、勝負開始の合図を待っていた。

どちらも並々ならぬ存在感を放っており、まるで公式試合がこの場で行われているような空気。

 

ボールを持つのは志満。

異様なまでに静まったグラウンドに開始の笛が、

 

ピーッ!!

 

鳴った。

 

 

「さて…どう来r───【イグナイトスティール】!!」

 

「「「!!!」」」

 

笛と同時にルビィが消えたと思った瞬間だった。

別方向から炎のスライディング、突然のことに志満の反応が遅れる、と思われだが。

 

「死角から行ったんだけど…!」

 

「予想の範囲内よ。ルビィちゃん」

 

難なく躱す志満。

その表情からまだ余裕が見える。

 

("スプリントワープ"で私の視界から外れて、見失ったところを急襲…いい判断ね)

 

 

「ボールを持つ志満さんからボールを奪って、ゴールに決めればルビィちゃんの勝ち。制限時間5分内にゴールされなければ、志満さんの勝ちよ」

 

「ゴールすれば勝ち…ということは、」

 

「ルビィ先輩は49戦全てでゴールすることが出来ていない…ってことですか??」

 

驚くのも無理は無かった。

元々清真高校の生徒たちの間でも、浦の星女学院の黒澤ルビィの話題は絶えなかった。

高校一年生で日本代表のエースとなり、その期待に応える活躍を見せた化け物。

そんな選手が、一度も勝ったことが無い選手?

 

 

「あの不意打ちで無理なら、もうここからは全力」

 

「…!」

 

「【Awaken the power】!!!」

 

全身を炎で纏うルビィ。

その紅く変化した目は、真っ直ぐに志満を見ていた。

 

「でりゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

「いいわね…!そうこなくっちゃ!」

 

ルビィは勝つ気だ。

気迫こもるプレーがそれを観戦者たちに伝える。

自慢のスピードでボールに食らいつき、なんとかボールの強奪を図る───しかし、

 

 

「ぐっっ…」

 

志満のボールキープ力は異常。

あのルビィがぶつかってもビクともせず、ボールに近づけさせない。

時間だけが流れ、焦れったさが溜まっていく。

 

「さあ、どうする?自慢のスピードも、強化したパワーも、私には通じないわよ!」

 

「まだです」

 

「…!!」

 

志満はルビィの変化を感じ取っていた。

ワンプレーを重ねていく度に、スピード、パワーが徐々に…少しずつ上がっている?

 

ルビィは"全力を出す"と言った。

 

その全力が、"Awaken the power"ではないとしたら───────

 

 

「【Awaken the Full power】」

 

 

──────気づいた時には遅かった。

 

「まずいわn ───────ギュン!!!!

 

 

志満がブロックするよりも先に、ルビィが強引に身体を捩じ込んだ。

ルビィの足がボールに触れる。

志満はなんとか体勢を立て直そうとするも、その時には既にボールはルビィの元へ。

 

 

「「「!!!」」」

 

 

全員の脳内に"チャンス"の文字が過った。

 

 

「ルビィちゃんのスピードなら…行ける…」

 

千歌は思わずそう口にした。

その期待に答えるかのように、地面が抉れるほどの勢いで飛び出したルビィ。

ゴールまで全力の"スプリントワープ"を連発し、一気に勝負を決めるつもりでいた。

 

 

「止まるなっっ…迷うなっっ…走れ…走れ…」ギュン!!

 

ピィーーーッ!!!!!

 

 

「!?」

 

「「「!!!」」」

 

背後から指笛が聞こえる。

志満がペンギンを呼び出した??

だがあれはシュート技で─────ギュン!!

 

「…嘘でしょ」

 

思わず口から漏れる動揺。

それもそのはず、全速力で走るルビィの横を悠々と追い越していったのは、ペンギン。

異次元の速さで空を飛ぶペンギンだった。

 

 

「【皇帝ペンギン・シン2号】」

 

 

「2号!?シュート技をディフェンス技として進化させたってこと!?」

 

「止まらないでルビィちゃん!!志満先輩に追いつかれる!!」

 

ルビィが"皇帝ペンギン・シン2号"を発動させたのはこれが初めてだった。

複数体呼び出されたペンギンは、一羽一羽が凄まじい速さ、そして変則的に襲いかかる。

 

しかし、それらをルビィは全て躱す。

 

 

「…!」

 

さすがの志満もこれには驚いた。

初見の技をこうも対応されるとは、世界のプロプレイヤーも苦戦する技なのだが…いや、

 

逆だ。

 

ルビィはこの技を熟知している。

苦戦はしているのだろう、だが、技を完璧に分析し尽くしている動きだ。

 

「ハァハァ…!!(志満さんが海外でプレーする映像を…何万回見たと思ってるの!!)」

 

ルビィは努力家だ。

"Awaken the power"そして、"ラストリゾート"を一人で完成させたほどだ。

そんな彼女が志満のサッカーを、研究し尽くしていないわけが無い。

ボールの触り方から視線、オフ・ザ・ボール、そして、必殺技。

 

ペンギンの軌道は把握済み。

そして"Awaken the Full power"のスピードがあれば、脳内のイメージだけでなく、現実でも回避が可能。

 

ゴールに一筋の光が───────見えた。

 

 

─────と思うあたり、まだ甘いわ」

 

「「「!!!!」」」

 

声のする方から伸びてくる足。

あと1秒にも満たないうちにボールが奪われる。

そう判断するよりも先に、ルビィは脊髄反射で志満との距離を離した。

 

「危ない…!!もう少しで奪われるところだった!」

 

「ルビィ先輩が…あんな簡単に追いつかれるなんて、」

 

 

「ハァハァ…ハァハァ…」

 

「いい動きね。"シン2号"を使ってなければ分からなかったわ」

 

ルビィは息を切らしながら全力で思考する。

志満が声を発するまで、すぐ隣まで迫っていたことに気づけなかった。

 

"皇帝ペンギン・シン2号"はペンギンたちがボールを奪ったり、相手選手に攻撃する技であるが、志満は別の使い方もしていた。

 

 

「ハァハァ…視界の遮断…」

 

「正解よ」

 

ペンギンたちにより隠された死角からボールを奪う。

多くの選手たちが苦戦していたのを覚えている。

だが、それが分かっていても衝撃だった。

 

 

("Awaken the Full power"のスピードでも…勝てない…)

 

ペンギンに邪魔されたロスがあったとは言え、自慢のスピードが通用しなかった。

ここまで絶望感を味わったのは、いつぶりだろうか。

 

「うーん、いい動きと分析なんだけど…もったいないわね。その燃費の悪さ」

 

「……ハァハァ、」

 

「プロとして頑張っていくために必要なのは、パフォーマンスの持続よ。そのためにも精度、体力、健康、いろいろあげられるけど…」

 

「必殺技の燃費は最も重要よ」

 

プロはシーズンの間にたくさんの試合を行う。

その中でパフォーマンスの落差がある選手は、長期の活躍は難しい。

どれほどまでに怪我を防止しながら、自分の全力を長く維持できるのか。

 

その観点で見ると、ルビィの足りない部分は明確だった。

 

 

「志満ねえが善子ちゃんに過酷なトレーニングをさせていたのも…」

 

千歌は志満の発言に覚えがあった。

代表合流後の善子の自主練は、まるで自衛隊の訓練のようであった。

体力作りの質と時間が人の倍、就寝も誰よりも早かった。

話を聞くと、師匠…志満ねえが徹底しろと言っていたことだったらしい。

 

その理由を、今聞かされた気がした。

 

 

「ハァハァ…確かにルビィの技は課題だらけ。すぐに体力無くなって、使い物にならなくなる」

 

「それでも、今、勝つことに意味がある!!」

 

「…!」

 

ルビィが飛んだ。

空中で回転し、足にオーラを溜めている。

 

 

「【Awaken the Fire】!!!」ドガァン!!

 

(シュートを地面に…!?)

 

放たれたシュートは地面を砕き、衝撃と砂が志満の視界を塞いだ。

この隙にまた"スプリントワープ"で抜け出されれば少し厄介であるため、志満は数メートル後ろへ下がる。

 

 

────これが、この勝負初めての志満のミスとなる。

 

「…あちゃぁ〜、ルビィちゃんのこと舐めてたわ」

 

志満にこれを言わせるほどだった。

それもそのはず、ルビィは強引に突破すると思わせて、"その場から動いていなかった"。

この技は─────撃つのに時間が必要だ。

 

 

「これで……勝ちっっ!!!」バッ!!

 

煙が晴れた時には既に"完成されていた"。

空気とATPのオーラを混ぜ合わせたその塊は、今か今かと待ちわびている。

 

ゴールに喰らいつける時を。

 

 

「【ラストリゾ───────

 

──────────バギイィィィン!!!

 

 

「!?!?!?」

 

「「「!?!?!?」」」

 

今までに経験したことのない音、そして状況が、目の前で起きていた。

全員が衝撃のあまり、その場で硬直する。

 

 

「なんで…なんで、なんで!?!?」

 

志満は─────"ラストリゾート"が放たれるのと同時に、足で直接ブロックしていた。

 

「ぐっっっ!!はあぁぁぁぁ!!!!」

 

"ラストリゾート"に触れていることは今は考えず、このシュートを放つことだけに、全力を出す。

しかし、志満のブロックが硬すぎるため、シュートを放てない。

 

 

(このままじゃ…押し切られ…)

 

「これがっっっ!!!!」

 

「やば──────────

 

 

 

「世界よ!!!!!」

 

 

 

────ドガァァァン!!!!

轟音と共にルビィの"ラストリゾート"はブロックされ、ルビィは勢いよく吹き飛ばされた。

 

 

「ぐっ!?」

 

まさか"ラストリゾート"に弾かれる衝撃を自分が味わうことになるとは。

起こったことが理解できず、なかなか立てない。

 

そしてフィールドに終了の笛が鳴り響いた。

 

 

 

 





『皇帝ペンギン・シン2号』ディフェンス/高海志満
皇帝ペンギン2号を進化させた必殺技です。呼び出したペンギンたちでシュートするのではなく、ディフェンスをします。
ペンギンでボールを奪う、ペンギンで相手に攻撃する、ペンギンで視界を限定させて死角からボールを奪う、など、さまざまな応用ができます。

感想よろしくお願いします。



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最終章 10話 「導かれていく者たち」


筆がのりました。短めです。




 

 

 

身体中が痛みを訴えていたこともあり、ルビィは転がったまま起き上がろうとしなかった。

視界に広がるのは青い空と流れる雲、聞こえるのは激しく脈打つ鼓動と、終了を知らせる笛だった。

 

「ルビィちゃん大丈夫ずらかー!?」

 

終了した瞬間、すぐにルビィの元へと走ったのは花丸だった。

フィールドの外から見ていても、震えるほどの激しい試合、最後のあの吹き飛ばされ方は、誰もが怪我を想像するほどだった。

 

 

「ハァ…ハァ…花丸ちゃん、ルビィは大丈夫」

 

「ほ、本当ずらか!?」

 

「身体中痛いけど…受け身取ったし、ただの打撲だよ。それより、」

 

ルビィはまだ空を見ていた。

高く遠くを流れる雲を、静かに見ていた。

 

「…弱いね。ルビィは」

 

「そんなことないずら!だって、志満さんからボール奪って、シュートだって…もう少しで…」

 

「やっぱり優しいね。花丸ちゃんは…でも、絶望してるとか、怒ってるとかはないよ」

 

ゆっくりと起き上がる。

そして、今度は志満の姿を、静かに見る。

 

「まだまだルビィは強くなれる。そう思ったら、血が騒いで…震えが止まらない」

 

「ルビィちゃん…」

 

「課題あり、成長もあり、良かったわよ。ルビィちゃん」

 

ルビィを降した張本人である志満が口を開いた。

それを合図に、他のメンバーも一斉に彼女の元へと集まる。

 

「あの"ラストリゾート"前の視界を遮断する判断…とても良かったわ。"ラストリゾート"も発動までの溜め時間がかなり減っていた…練習している証拠ね」

 

「…まさか"触られる"とは、思ってなかった。初めてです」

 

ルビィの"ラストリゾート"は空気とATPのオーラを、高圧力で何重にも重ねて放つシュート。

そのシュートに触れれば、強力な圧力に弾かれてしまうことから、"触れないシュート"として、世界の強豪たちを苦しめた。

 

だが、"ラストリゾート"の圧力に負けないパワーでぶつかれば、触ることは可能。

千歌の記憶では、そのようなシーンが何度かあった。

つまり、志満もそれほどまでのパワーを持つ1人となる。

 

 

「あれはね、私もギリギリだったから、間に合うかどうか際どいところだった」

 

そのまま、志満の公表は続く。

 

「そして課題ね。燃費に関してはもう喋ったから、もう1つ。これは全員に聞いてほしいわ」

 

「ゾーンについて、あなたたちはどう考えてる?」

 

全員に緊張が走った中、思いもよらない質問が出された。

何故急にゾーンの話を…意図は分からないが、メンバーが次々と答え始める。

 

選ばれた人のみが持つ特別な力。

 

身体能力が爆発的に高まる。

 

中には自分の意思で発動可能な人もいる。

 

だが、志満の答えは違った。

 

 

「ゾーンは才能ある…選ばれた人のみが持っている力…違うわ。ゾーンは誰もが持っている。ただ、」

 

「"発動できるかどうか"が才能なのよ。ほとんどの人は、自分の持つ潜在能力を引き出せずに終わる」

 

「「「!!!」」」

 

志満は続ける。

 

「私は試合の中で、ゾーンを発動した人と何度も戦った。そして、私は何度も負けたわ」

 

「志満先輩が…勝てない!?」

 

「それほどまでにゾーンは強力なのよ。そして…その人たちには共通点があった」

 

志満は話しながら思い出す。

海外のあのスタジアム、あの試合、あの瞬間。

自分が完膚無きまでに、敗北を叩きつけられた事実を、鮮明に。

 

「全員、目が赤黒く光っていた。宝石とか、綺麗な輝きじゃない。闇の力よりも…もっと荒々しい目をしていた」

 

息をすることも忘れそうだった。

志満の言葉ひとつひとつに相当な重みがある。

それ故に、説明されたイメージが鮮明に浮かび上がる。

 

「私は選手の目を見れば、どれぐらいサッカーに対して自分の力を引き出せているか…集中しているかが分かる。だから、あの目を見た時思ったの。ああ、この人には勝てないってね」

 

誰も口を開けなかった。

志満から聞かされたのはプロの世界の、才能の現実。

ルビィをも圧倒する高海志満の心を折るような選手が、この世界には存在するんだ。

自分たちはなんて小さい存在なんだ。

 

絶望にも近い感情が渦巻く中、1人の少女が口を開く。

 

 

「つまり、ルビィちゃんもゾーンを発動できるかもしれないってこと?」

 

千歌だった。

蜜柑色の髪を揺らした少女は、まっすぐ志満を見ていた。

 

「ええ。私が言いたいのはそういうこと」

 

「全員にチャンスがあるの。ゾーン…自分の限界のその先を引き出すチャンスが」

 

「「「!!」」」

 

 

 

―――――――――

 

 

 

その後、練習を開始した清真高校サッカー部。

もう間もなく全国高校女子サッカー大会の静岡予選が始まることもあり、いつにも増して選手たちの気合いがぶつかり合っていた。

 

そんな中、千歌は今ひとつ集中できないままでいた。

体調面で心配されたが、精神的な問題であったため、そのままモヤモヤが晴れることなく、練習は終了となった。

 

 

「はぁ…」

 

「千歌、大丈夫?」

 

千歌は帰宅してから、家の前の砂浜でため息を繰り返していた。

心配になったフェイが隣に座る。

赤く染まった空に海、2人が静かにそれらを眺めていると、千歌はゆっくりと口を開いた。

 

 

「…思った以上に改変されていたね」

 

「あぁ、浦の星のメンバー…」

 

ルビィと志満の勝負の後のルビィの発言で、千歌には気になることがあった。

ルビィは"ラストリゾート"が触られるのは初めてだと言っていた…本来なら、彼女がそんなこと言うわけが無い。

 

穂乃果が完成した"ゴットハンドX"で触れたこと。

 

亜里沙がコピーした"エクスカリバー"で蹴り返したこと。

 

オーガ戦でキャッチされたこと。

 

全て忘れて…違う。

無かったことにされていた。

 

 

「善子がいないことにより、本戦Aブロックで1勝もできずに敗退…聞いた時は驚いたけど、調べてみたら確かにそうなっていたね」

 

「ルビィちゃんが"Awaken the Last resort"を発動しないあたりで違和感を持った。今のルビィちゃんは…その技の存在も知らないんだ」

 

サッカーは戻ってきた。

だが、自分の知るみんなは戻ってきていない。

そう考えると、まだ戦いは終わっていないと嫌でも理解してしまう。

 

戦わなければ、取り戻さなければ。

みんなとの時間を失うわけにはいかない。

 

いかない、のだが。

 

 

「志満ねえからさ…奪いたくないよ……」

 

 

あんなに生き生きとした志満を初めて見た。

誰からも尊敬され、挑む相手にはそれ相応の実力とアドバイスで応える…プレイヤーとしても、指導者としても完璧だ。

 

「でもそれはさ…たくさんの努力をしてきたからってさ、私には分かる。だって志満ねえは、そんなサッカーをしてる…」

 

「だが、どちらかを選ばなきゃならない!正しい歴史か、プレイヤー高海志満か!」

 

ワンダバの言うことは正しい。

この場合、正しい歴史を選ぶ以外に選択肢しかないことは分かっている。

 

分かっていても、考えてしまう。

 

「正しい歴史、志満ねえ、両方選ぶって道はさ…無いのかな…って考えちゃうよ」

 

俯く千歌。

フェイとワンダバは何も言えなかった。

これ以上の説得は酷だ。

もう少し時間を、そう考えた時だった。

 

 

「随分と落ち込んでるわね」

 

「……志満ねえ」

 

千歌の頭にふわっとした感覚が生まれた。

昔からそうだった。志満は妹たちの心に寄り添う時は、このように手を優しく頭に置く。

 

だが、だからこそ、千歌は頭を上げられなかった。

 

「フェイちゃんも言ってたでしょ?『この世界に完璧なんて存在しない。何かを失うから何かを得る』って」

 

「私がサッカーを続けなかったから、善子ちゃんのサッカー、そして、世界大会優勝があるの」

 

分かっている。全て分かっている。

だが、千歌は黙っていられなかった。

 

「だからって…志満ねえの、これまでの、積み重ねてきたものが…全部無くなっちゃうんだよ?悔しくないの?」

 

「うーん、悔しいか」

 

志満は立ち上がり、波が行き来する場所まで歩く。

靴が波に飲み込まれるが、彼女は気にせずに続けた。

 

「もちろん、やりたいことはまだあった。部活の時間に話した、ゾーンの子とのリベンジもしたかったし。得点王争いとか、ロマンあるわよね」

 

「でも、大丈夫」

 

その時の高海志満の顔を、フェイとワンダバは一生忘れることは無いだろう。

自分の存在が消えると分かっていて、彼女の顔は、背中で赤く燃える空よりも───────

 

 

「後悔だけは絶対に無い。断言するわ」

 

 

───────明るく輝いていた。

 

 

「なんで…なんでそんなに…」

 

千歌はまだ顔を上げられない。

波が来ない場所であるにも関わらず、砂が濡れていることがバレてしまうから。

 

 

結局、千歌が顔を上げたのは日が沈み、薄暗くなってからであった。

その間、志満は千歌の隣に座り、自分の昔話を静かに語っていた。

 

「ふぅ、ありがとう千歌ちゃん。いっぱいお話聞いてくれて」

 

「うん」

 

「私の昔話を聞いてくれたお礼に、千歌ちゃんに特別に教えてあげるわ。ゾーンの話よ」

 

「……ゾーンの?」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

その後、静かになった砂浜に、志満は1人残っていた。

右手にはスマホが握られており、通知の反応で画面が眩しく光っていた。

 

「…これは、最後のワガママね」

 

送られてきたメッセージを見た志満は、砂浜を後にする。

その歩幅は、いつもよりも広くなっていた。

 

 

「今行くわ。善子ちゃん」

 

 

足跡が波に消されるのに、そこまで時間はかからなかった。

 

 

 

 

 





・ゾーンは選ばれた者のみが持つ力→✖
・ゾーンは誰でも持つ力→〇

しかし、発動するにはそれ相応のセンス(才能)が求められる。
これがこの世界のゾーンの結論です。いろいろな選手に更なる可能性が広がりましたね。こう考えると、自分の意思で発動可能なツバサさんは本当に化け物だったのだなと実感します。

次回ぐらいから試合に入りたいです。



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最終章 11話 「決戦前夜」


暑くなってきました。
このお話もどんどん熱い展開にしていきたい。




 

 

 

気づけば夜になっていた。

学校から帰ったところまでは記憶があるが、今日も日が沈むまで何もせずに終わってしまった。

 

この生活になってからもう少しで半年経つ。

最初の頃は気まずさと無力感でどうにかなってしまいそうだったが、人間慣れればどうってことはない。

私は、所詮その程度の人間なのだ。

 

 

───私はあの日、日本代表選に選ばれなかった。

 

実力が足りないことは分かっていた。

だからみんなに追いつこうと死ぬ気で練習した。

だが、限界だった。

私は1人じゃ何も出来ない。

 

練習を重ねても成長を感じない。

そんな中、毎日のようにテレビに映る仲間たち。

 

あ、そんな技覚えたんだ。

 

そのプレー見たことない。新しいやつか。

 

つい口に漏らしていた。

その時、全てがどうでも良くなった。

進めない私、進んでいくみんな、距離が離れていくのを嫌でも感じ、そして、思った。

疲れたな、と。

 

「最悪だわ」

 

嫌なことを思い出した。

こんな日は早く二度寝したいが、なかなか寝付けない。

そんな中だった。

 

「……なんでこの人から?」

 

私は…迷った結果、その人にメッセージを送った。

 

 

 

 

──────

 

 

 

「来てくれてありがとう。善子ちゃん」

 

「…どういうつもりですか?」

 

呼び出された自宅近くの公園へ向かうと、そこにはすでに、高海志満の姿があった。

 

「ちょっとね。お願いがあって」

 

浦の星女学院でサッカーをしていた時、この人が練習に顔を出した時が何度かあった。

その際に連絡先を交換していたのを思い出す。

 

だが、自分とこの人にそこまでの接点は無い。

 

「お願い…?」

 

「そう。お願い」

 

だが、何故だろう?

 

「私と…サッカーをして欲しいの」

 

この人と接点が無いように思えない。

体が勝手にソワソワする。

 

「サッカーはもう辞めました。清真高校ではもう、」

 

もうやらない。そう言いかけた時だった。

志満から鋭いパスが飛んでくる。

 

「っ!?」

 

「あら、いい反応ね♪大丈夫。あなたをサッカー部に連れ戻しに来たんじゃない」

 

「ここで、2人でサッカーをやりましょ」

 

「………」

 

どんな要件でも、断るつもりだった。

だが彼女の顔を見た途端、口を開くことが出来なかった。

 

分からない。何故そんな寂しそうな顔をするんだ。

 

足元でボールを転がすだけの時間が流れる。

そして善子の我慢は限界を迎えた。

気まづさと焦れったさを、全てボールにぶつける。

 

「…!!善子ちゃん!」

 

そしてそのボールは、志満の元へ。

 

「……あれからやってないんで、下手ですよ」

 

「下手かどうかは関係ないわ」

 

 

 

それからどれぐらいの時間走っただろうか。

 

 

「ハァハァ…ハァハァ…」

 

膝に手をつき、肩から息をする。

頬から流れる汗、疲労を感じる足、どれも久しぶりだ。

悪い気はしない。

 

「凄いわ善子ちゃん。本当に半年振り?」

 

ただ気に食わないのは、志満が息切れのひとつもしていないこと。

当然だが、彼女の実力は異次元だ。

自分じゃ練習相手にも…「下を見ないで」

 

「…!」

 

「自分なんかじゃ…とか思わないで。自分を1番に信じられるのは、自分自身よ」

 

この人の言葉ひとつひとつが、心を揺さぶってくる。

 

「さあ、私からボールを奪ってみて」

 

そんな無茶なと思いながらも、勢いよく走り出している自分がいる。

諦めたはずのサッカー、もう二度とやらないと誓ったサッカー。

 

「──────っ!」ギュン!

 

(速っ!?反応できない!?)

 

では、自分は今何をしている?

何故そこまでして食らいつく?

 

「反応…できない?」

 

 

津島善子。本当は分かっているのだろう?

 

 

(善子ちゃんの…オーラが、)

 

 

日本代表に選ばれなかった自分。

逃げ出した自分。

そして、高海志満の足元にも及ばない自分。

 

全部、全部、全部、

 

 

「舐めんじゃ…ないわよっっ!!」ギュン!!

 

 

悔しいんだ。

 

 

(速い!?だけど躱せる…!)

 

突っ込んできた善子に対し、志満は冷静だった。

先程のようにスピードで押せ──「そこっ!!」

 

「!?」

 

間一髪、善子の足がボールを掠める。

志満の想定よりも速い、いや、"動きを読まれていた?"

 

「ハァハァ…私だって…」

 

まさか、これがそうなのか。

 

「もっと…もっともっともっと!!!」

 

自分(高海志満)が行き着けなかった、これが、

 

「サッカーをやりたいわよ!!!」

 

「──────!」

 

足元を確認しなくても分かる。

ボールは善子の元にある。

不意打ちや、有利不利は関係無く、純粋に奪われた。

 

やはり、津島善子は私を超える存在だ。

 

 

「ハァハァ…ハァハァ…」

 

善子は何が起きたのか理解できていなかった。

不思議な感覚が体を支配し、気づいた時には体が動き、足元には志満が持っていたはずのボールがあった。

そして、肺が破けそうなぐらい痛い。

 

疲労で意識が朦朧としている中であったが、志満の声ははっきりと聞こえた。

 

 

ありがとう。と

 

 

「ありがとう…?なんで…」

 

「善子ちゃんは気にしなくていい。明日には…決着をつけるわ」

 

志満の目に、覚悟の炎が宿った。

そしてその炎が、善子に受け継がれることを祈りながら、公園を後にした。

 

 

───────

 

 

一方、同時刻。

清真高校のグラウンドでは、未だにゴールネットが揺れる音が響いていた。

 

「ハァ…ハァ…」

 

彼女の周りには数十個のボールが転がっている。

あれから蹴り続けて、自分に足りないことは何かを考えていた。

 

「どうして…あんなに強いんだろう」

 

「ルビィは、志満さんに勝てないまま…」

 

答えは───簡単には見つかる気がしなかった。

 

 

───────

 

 

翌日の放課後、サッカー部のメンバーは部室に集まっていた。

これから歴史修正のため、過去へと移動する。

 

「これを使って。これが私のアーティファクトよ」

 

志満がフェイに渡したのは、ボロボロのスパイクだった。

高校生の時に使い込んだ、思い入れのあるものだと言う。

 

「よーし!では、これを使って過去へと行くぞ!準備しろ諸君!」

 

「でも、本当にいいの?この試合は危険だ。ただのゲームじゃないんだ」

 

フェイが改めて警告する。

相手は歴史を修正する集団、どんな手を使ってくるのかも分からない。

だが、首を横に振る者はいなかった。

 

「私たちのサッカーも一度奪われてたんだよね?なら黙って見ているわけにはいかないであります!ね、梨子ちゃん!」

 

「ええ。私たちもやれることをやります」

 

止めても無駄だね。フェイは心の中でそう呟いた。

同時に頼もしかった。彼女たちの実力は申し分ない。

プロトコル・オメガとも、十分戦える。

そう確信していた。

 

「じゃあ…行こうか。場所は○年前の沼津」

 

「高海志満を洗脳し、帝国女学院ではなく、清真高校へと入学させたプロトコル・オメガたちを止めるよ」

 

 

千歌たちを乗せたタイムマシンは空へと消えた。

変わらず、清真高校の校庭では部活の声が響き続けている。

だが、千歌たちの運命は、確実に変わる。

 

 

 

 

 

「ねえ、志満は高校どうすんの?」

 

女子生徒たちの会話が帰路に響き渡る。

そしてその中に、彼女はいた。

 

「うーん…私は帝国女が───────

 

先程まで賑やかであった道が、一瞬にして静寂に包まれる。

正確には、静寂に"させられていた"。

 

「これより、修正を開始する」

 

未来の技術で作られたサッカーボールで、一時的に時を停止させたアルファ。

ここから《マインドコントロールモード》によって、志満の入学先候補から帝国女学院を消すのだ。

 

清真高校に入学することにより、志満は選手生命に関わる怪我をすることはなくなる。

それにより、今の善子が生まれ、サイデイジャパンたちの運命が大きく崩れる。

全てが計画通り───────ギュンギュンギュン!!!

 

「!?」

 

「間に合った…わね!!」

 

背後から何かが迫ってくるのを感じ取ったアルファは、その場から弾けるように距離を取った。

そして彼女が見たのは、先程まで自分が立っていた場所に高速で飛び込んできた"ペンギン"。

そして、高海志満であった。

 

「…エラー発生。高海志満が2人…いや、理解した。未来から来たな」

 

「理解が早くて助かるわ。そのままお帰り願いたいのだけど」

 

「それはできない」

 

当然だ。戦うことは避けられない。

それ相応の覚悟を持ってここへ来た。

 

「理解できない」

 

「…?」

 

突然、アルファが問いかけた。

 

「お前はこのままだと二度とサッカーができない身体となる。高海志満の選手としての才能を捨ててまで、選ぶ道とは到底思えない」

 

分かってない。分かってないな。

 

「何故、自分の輝かしい未来を拒否する?」

 

「何が輝かしい未来かは、私が決めるわ」

 

アルファが《ルームモード》を発動する。

それと同時に千歌たちも合流する。

さあ、試合開始だ。

 

「"私たち"のサッカー、返してもらうわよ」

 





試合は2、3話で終わらせたい。

やっぱり善子はサッカーやるべきだよ




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最終章 12話「プロトコル・オメガ第2戦 "新たな力"」

就活、卒論に追われてました。




 

 

 

清真高校

 

FW……………………黒澤ルビィ

 

MF………高海志満、高海千歌☆、渡辺曜

 

MF………………桜内梨子、マント

 

DF………フェイ・ムーン、国木田花丸

 

GK……………………立向居夢希(たちむかいゆき)

 

 

プロトコルオメガ1.0

 

FW………………アルファ☆、レイザ

 

MF…………ネイラ、エイナム、クオース

 

DF………………ガウラ、メダム、クオル

 

GK…………………………ザノウ

 

 

9人制サッカーのメリットは、自分のプレーの自由範囲が広がることである。

 

A『さあ、試合開始です。まずボールを持って上がっていくのは、清真高校のセンターフォワード、黒澤ルビィ!』

 

フィールド内の選手が少ない分、スペースや隙が増える。

自分のサッカーに自信があるプレイヤーには、暴れてくれと言わんばかりの状況。

 

 

「【スプリントワープGX】!!」

 

プロトコル・オメガ「「「!!!」」」

 

 

もちろん、ルビィはその例外ではない。

 

 

A『速い!速い!!超高速ドリブルでプロトコル・オメガの選手を次々と抜き去っていく!!』

 

「さすがは紅き流星、飛ばすねー!」

 

「やっぱり凄い…黒澤先輩…!」

 

相手は清真高校の選手のデータを全てインプットしていると、フェイは言っていた。

だが、実際のプレーデータを取られたのは千歌、志満、フェイのみ。

 

そのため存在する、一瞬の動きのズレ。

 

 

(躱せる)

 

一人、また一人とスピードを活かして突破する。

そして、疾風の如く、プロトコル・オメガのセンターディフェンスに迫った時だった。

 

DFの3人+もう1人。

 

 

A『おっと!ここでFWのアルファ選手がディフェンスに参加!!』

 

 

「あの距離をルビィちゃんよりも速く!?」

 

アルファのことは千歌たちから聞いていた。

パラレルワールドの"超覚醒(共鳴現象)"を得て、やっと互角に戦えたという、アルファの異次元の強さ。

 

自分の"Awaken the power"でも太刀打ちできるかどうか、際どいラインだった。

だからこそ、ルビィはアルファの動きの意図を瞬時に察した。

 

 

(やはりデータのみでは、黒澤ルビィの動きに対し遅れが生じる)

 

(全員が黒澤ルビィのスピードに対応できるようになるまで──────

 

 

「時間を稼ぐ」

「時間は稼がせない!!」

 

 

A『ここで黒澤ルビィの鋭いシュート!!』

 

 

「…!」

 

いくら時間をかけたくないとは言え、ペナルティエリア外からのシュート。

不意をついたつもりなのか…

その無策とも言える脳死シュートを、アルファは触らず、GKに任せ──────いや、まて。

 

ガッ!!

 

次の瞬間、思考とは真逆の動きをしていた。

足を可能な限り伸ばし、ルビィのシュートをブロック。

それと同時だった。

 

ギュンギュンギュン!!!

 

「…やはりペンギンか」

 

 

数匹のペンギンがボールの飛ぶ先へと突っ込んで行った。

あのままシュートを放置すれば、ペンギンがボールの軌道を変え、シュートでは無くパスへ。

予想される軌道の変更先は─────

 

 

「あちゃー、バレちゃうのね」

 

フリーな場所で待つ高海志満だった。

 

 

「ルビィが限界までDFとアルファを引き付け、志満が本命のシュートを放つ…これが決まらないとは想定外だな」

 

「ここで1点決めて、あとは守備重視で行く気だったけど…」

 

「うん。厳しくなった」

 

歴史を操作されたことにより、本来の歴史よりもルビィたちのステータスは、かなり下がってしまっている。

世界大会優勝時点の能力ならばまだ戦えたが、

 

 

A『今度はプロトコル・オメガの攻撃!!清真高校の選手たちはなんとか食らいつくが、なかなかボールが奪えない!!』

 

 

「は、速いずら〜!?」

 

「このままじゃ突破される…!」

 

 

更に、代表選手たちのパフォーマンス以外にも問題はあった。

 

A『さあ、まだペナルティエリアからは距離があるが、アルファ選手が飛んだ!!』

 

(く…来る!!)

 

清真高校の1年GK、立向居夢希。

正ゴールキーパーは清真の3年がいるのだが、今回の戦いは浦の星メンバーのみで挑もうとしていた。

そんな中、彼女は自ら志願していた。

 

 

『GKがいないなら…わ、私も連れていってください!』

 

『これはただのサッカーじゃないんだよ?その覚悟はある?』

 

千歌たちは彼女がルビィの昔からの後輩だと聞いていた。

ルビィに憧れ、清真高校に入学してきたという。

 

 

(私も…ルビィ先輩のような選し────

 

─────ボゴオォォン!!!

 

「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」

 

 

だが、現実は無慈悲である。

 

「─────ぇ、」

 

20mは離れていた。

しかし、ボールは一瞬で目の前を、夢希の横を通り過ぎる。

 

 

A『ゴール!!プロトコル・オメガが先制点!!カウンターが見事に決まったぁぁ!』

 

 

反応出来なかった。

技を出すどころか、動くことさえ許されなかった。

前半早々の失点、これは痛かった。

夢希はあまりの圧倒差と絶望感で、その場に崩れ落ちる。

 

私が、私がGKに志願したから。

 

 

そう、口に出そうとした時だった。

 

 

「立って。夢希ちゃん」

 

「ルビィ…先輩」

 

見上げるとそこにはルビィが立っていた。

最初、責められると覚悟して反応したが、彼女の目を見てそれは間違いだと気づいた。

 

「まずはリラックス。大丈夫、ルビィたちが2点取る」

 

全然、諦めてなどない、強い人の目だった。

私は何をしているんだ。

そう自分を鼓舞し、勢いよく立ち上がる。

覚悟を決めろ。

遥か彼方の存在を目標としたのは、自分自身。

こんなところで挫けてなどいられない。

 

だが、失点したのは事実。

 

「さて…どうしましょうか。さすがにちょっと厳しいかも」

 

「私がまた守備に参加する。アルファのシュートを止められるのは…今は私が適任かも」

 

千歌の提案が現時点の最適解…かと思われたが、これに異を唱える選手がいた。

 

「千歌。私に任せて」

 

「フェイ…!?」

 

「何か作戦があるずらか!?」

 

ほかのメンバーもその真意が気になった。

フェイによると、"あともう少し"で準備が整うと言う。

なんの事だかさっぱりであったが、ここでベンチが動いた。

 

「フェイー!!いつでも行けるぞー!!!」

 

スタジアムに響き渡るのはワンダバの声だった。

謎の巨大なリュックを背負い、何かの合図をフェイに送っていた。

 

「頼んでたやつ、取ってきてくれたんだね!」

 

「もちろんだ!このクラーク・ワンダバット様に不可能は無い!!」

 

そう言うと、ワンダバは巨大なリュックから二本の拳銃のようなものを取り出した。

片方には+、もう片方には-の印が付けられている。

 

「しかし…命懸けだったんだぞ?感謝しろよ?」

 

そして-の方の銃からオーラのようなものを発射する。

フィールドに現れたのは、この時代には存在しないもの。

 

「き、恐竜!?」

 

「アンキロサウルスだ!!」

 

巨大な岩のような塊を背負った恐竜だった。

今にも襲いかかってきそうな迫力。

そんな巨大な怪物を見て、フェイは目を輝かせる。

 

「フェイ!ミキシマックスだ!」

 

「OK!」

 

そしてもう片方、+の銃から光線が射出され、フェイに撃ち込まれる。

 

「ひゃぁぁ!?撃たれたずら!?!?」

 

「大丈夫なの!?」

 

そして、フェイの体は光に包まれていく。

同時に感じる、オーラの変化。

まるで、先程までフィールドに君臨していた、巨大な恐竜とそのまま…ひとつになるような。

 

「ミキシマックスコンプリート!!」

 

「「「!!!」」」

 

再びフェイの声を聞いた時、彼女の姿は別人のようになっていた。

髪は緑色から紫色へ、瞳の色もそうだ。

そして何より、オーラの質、量が桁違いに高い。

 

「これが…ミキシマックスによって手に入る、古代の力…!」

 

「な、何が起きたの…??」

 

完全に置いていかれている選手たち。

そんな中に、ワンダバの説明が入る。

 

「"ミキシマックス・ガン"によって、フェイの個性とアンキロサウルスの個性が合わさったのだ!それがこの姿!!」

 

「千歌。守備は私に任せて。あいつのシュートは全て潰す」

 

「な、なんか雰囲気が変わった…?」

 

とにかく、フェイが強化されたことは感じ取れる。

ここは彼女らの言うことに従い、自分たちは得点を目指す。

 

 

A『さあ、試合再開です。清真高校は追いつくことができるのか!?』

 

 

しかし、戦況は変わっていない。

千歌たちは果敢に攻めるも、プロトコル・オメガの守備にどうしても阻まれる。

 

「だ、ダメだ…やっぱり、ゾーンを発動しなきゃ」

 

あの時のゾーン×闇の力があれば、その考えが千歌のプレーをぎこちなくさせていた。

ルビィや曜、梨子も志満と上手く噛み合わない。

歴史修正により、彼女らの実力は正史の数段下がった状態となっている。

 

純粋に、世界レベルのサッカーに着いていけていない。

 

「ハァハァ…悔しい」

 

それはルビィも例外では無かった。

既に息がれが始まり、守備への切り替えも確実に遅くなっている。

まだ、ATPで食らいついてはいるが、

 

「遅い!!」

 

「あっ!?」

 

 

A『ここで黒澤ルビィ、ボールを奪われたぁぁ!!これは痛恨か!?プロトコル・オメガが一気にカウンターを仕掛ける!!』

 

 

得点を狙うどころか、逆に失点の危機。

清真高校とは打って変わり、正確且つ高速のパスが繋がり、再びアルファの元へとチャンスボール。

 

夢希ちゃん!来る!!

 

志満の声と同時に両手を構える。

次こそは、絶対。絶対に止める。

 

 

「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」

 

必殺技を放とうとした、その時だった。

 

「言ったでしょ!?」

 

シュートコースにフェイが飛び込んだ。

そして一気にオーラを高める。

 

 

「【古代の盾】!!!」

 

「「「!!!」」」

 

フェイのオーラが前方に集まり、巨大なシールドを展開。

アルファのシュートを完璧に防ぎきった。

 

 

「なんだと…」

 

「君のシュートは…全て潰す」

 

 

アンキロサウルス─────その姿は、装甲化した戦車のようだと、人々は言った。

 





立向居 夢希/清真高校/1年/GK
黒澤ルビィに憧れる新入生。

古代の盾/ディフェンス
原作は牙ですが、盾です。めちゃくちゃ硬いです。




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最終章 13話「プロトコル・オメガ第2戦"ミキシマックスの力"」


今月の目標は3話更新←もう厳しそう


 

 

 

「【古代の盾】!!!」

 

アルファのシュートはフェイの必殺技によりブロックされた。

ミキシマックスは能力が上がるだけでなく、新たな必殺技も発動できるようだ。

 

「…データに無い必殺技だ」

 

アルファも当然、見るのは初めてだった。

まさか自分のシュートがあそこまで簡単にブロックされるとは、思ってもいなかった。

 

 

守備は任せて!

フェイの声とともにパスが出された。

受け取ったのは曜。言われた通り、これで攻撃に全力を出せる。

そう自分に言い聞かせ、脚に力を込める。

 

「【スプリントワープ】!!」

 

サイドから一気に駆け上がる。

それに呼応し、清真選手たちも走り出す。

 

(無闇にクロスを出してもダメだ…何か、)

 

ドリブルしながら考える。

プロトコル・オメガの選手たちに半端なプレーは通用しない。

この試合、クロスは全て弾かれた。

何か別の仕掛け方を──────

 

「!!」

 

「ルビィちゃん!」

 

曜の選択した仕掛けはパスだった。

クロスでは無く、ペナルティエリア外から中に入れる横パス。

せっかくのドリブル突破チャンスを捨て、ルビィにボールを渡していた。

 

それをプロトコル・オメガのDFたちが逃すはずがなかった。

ルビィがパスを受け取るであろう場所に飛び込み、ドリブル阻止を狙う。

ルビィの体の向き、足の位置からドリブルを狙っていることは確実。

このままボールを奪ってアルファへ───── 志満さん!」

 

「「!?」」

 

(パスだと!?完全にドリブルを構えを、)

 

そして流れるようにボールは志満へ。

不意は突かれたが、シュート阻止には間に合う。

そう思考を巡らせた時には既に─────

 

 

「【皇帝ペンギン・シン1号】」

 

 

────志満の足はボールにめり込んでいた。

 

A『ゴール!!早くも清真高校、同点に追いついたぁぁ!!!』

 

 

「だ、ダイレクトシュート…!?」

 

プロトコル・オメガの選手たちが困惑するのも無理は無い。

志満のシュートの弱点は溜めの長さ。

その間にシュートブロックすれば十分阻止できるはずだった。はずだったのだが、

 

「ダイレクトで強引に弱点を潰してきただと…」

 

「馬鹿な!やりたくても出来る難易度じゃないだろ!?」

 

「…試合を再開する」

 

「「!!」」

 

アルファが困惑する選手たちに圧をかける。

ここで連携が乱れれば、いっきに崩れる。

が、確かにあの連携スピードは妙だ。

 

(理解した。"彼女"か)

 

アルファの視線の先には、清真高校の選手がひとり立っていた。

桜内梨子、彼女の"神のタクト"による指示、それが連携の正体。

指揮により最初から分かっていたのだ。曜のパスが最終的に自分の元へと来ると。

 

「だからって…オーダー通りすぎるわ」

 

以外にも、シュートを決めた本人、志満も驚いていた。

梨子から指揮で作戦が送られてきた時は、正直厳しいと思っていた。

ルビィが志満のシュートのミート場所にピンポイントでパスを出す…?オーダーの難易度が高すぎる。相当のパスセンスが問われていた、が、ルビィは一発でやってのけた。

ルビィだけでは無い。そもそも梨子のルビィたちへの信頼度、曜の指示の理解からの行動開始の速さ、どれも並大抵のレベルでは無かった。

 

どうやら、まだ私は彼女らを過小評価していたようだ。

 

そう呟きながら、ポジションに戻ろうとした時だった。

 

 

「【天空の支配者 鳳凰 "アームド"】」

 

「「「!!!」」」

 

いよいよあちらも本気を出してきたようだ。

いつ見ても恐怖さえ覚えるその姿。

強すぎるオーラが、清真高校の選手たちを震え上がらせた。

 

「あ、あれが、"アームド"…!?」

 

曜たちは話には聞いていたとはいえ、実際に見て、その圧倒的な力に驚きを隠せないでいた。

 

「ルビィより…強い」

 

あのルビィでさえ、このセリフ。

そんな鬼神ともいえる姿となったアルファが、笛と同時に飛び出した。

 

───今すぐに守りを固めて!

 

梨子の指示は早かった。

だが、それよりもアルファの方が"速い"。

ルビィがATPを発動するよりも、曜と千歌と志満がコースを塞ぐよりも。

すでに清真高校の最終ラインに迫っていた。

 

フェイが足止めを…と思っていたが、意外にもアルファの前に立ったのは。

 

「や、やってやるずら…まるだって…!」

 

「花丸ちゃん!?」

 

『ここでディフェンスに入ったのは国木田花丸!!果たしてどうなる!?』

 

「【真もちもち黄粉餅】!!」

 

巨大な黄粉餅をアルファに投げつける。

餅は広範囲に広がっており、足止めとしては効果的面────普通の人間相手ならば。

 

 

「悪くない技だ」

 

「ずらっ!?(いつの間に…抜かして、)」

 

広範囲といっても、一瞬ならば抜け目は存在する。

そこから確実に突破し、すでに花丸の横を過ぎ去ろうとしていた。

更に、アルファはすでにシュートの構えに入っている。

 

「これで逆転」

 

シュートがボールに触れようとした────

 

──────ナイスだ!!花丸!!」

 

 

誰かの足が、アルファよりも先にボールに触れた。

 

 

「【古代の鞭】!!!」

 

「!!」

 

「「「!!!」」」

 

 

フェイのミキシマックス相手である"アンキロサウルス"の最大の武器は、全身を覆う装甲ではない。

ハンマーのように振り回し、全てを薙ぎ倒す尻尾である。

 

『これはスーパーブロックだぁぁ!!フェイ・ムーンがギリギリのところで先にボールにタッチ!!シュートを阻止した!!』

 

「言ったでしょ。君のシュートは全て潰すって」

 

弾かれ、吹き飛んでいくボールを横目に、アルファはフェイのプレーを改めて分析する。

鞭のように脚をしならせる技…自分が対応するよりも先にボールを弾かれた。

更に、少し脚が伸びたようにも感じた。リーチが想像を越えていた。

 

「まるが拾うずら!」

 

「ナイスだよ花丸ちゃん!」

 

そして、国木田花丸のあの技も効果的だった。

広範囲に広げた黄粉餅、あれがフェイの接近をギリギリまで隠していた。

 

「千歌ちゃん!」

 

やはり、手加減はできない。

そう呟くのと同時に飛び出し、失ったボールを取り戻すべく千歌へと向かっていく。

 

アルファが来た!と周りから声がする。

 

千歌もその声で受け身の体勢を取っている。

真っ向勝負をする気なようだ。

勢いよく飛び込んでくるアルファ。

"Braveheart"を発動し、足にオーラを込める千歌。

 

────2人の足が勢いよくぶつかった。

 

 

『これは凄まじい衝撃だぁぁ!!両チームのキャプテンが1対1でぶつかります!!』

 

 

自分の全オーラを右足に込めている。

が、アルファの澄んだ表情は変わっていない。

それどころか徐々に押され始めている。

 

「やっぱり…完璧なゾーンじゃないと…!!」

 

一旦距離を置き、改めて考える。

"Braveheart"ではゾーンは完全に発動できない。

アルファに勝つためには、自然に発動した純度100%のゾーンでなくてはならない。

しかし、

 

「どうした?データよりも動きが鈍い」

 

「ハァハァ…!!」

 

あの時それを発動できたのは偶然。

"超覚醒(共鳴現象)"のおかげだった。

だが今回は発動できる気がしない。おそらく、"今回は"そういう流れではないのだろう。

 

ならばどう勝つのか。

 

「でりゃあぁぁぁぁ!!」

 

今あるフルパワーで戦うしかない。

が──────────

 

 

「それでは私には勝てない」

 

 

─────届かない。

 

『アルファ選手が再びボールを奪った!!これは、シュートには十分な距離か!?』

 

 

「まずい…!!」

 

フェイがいち早く気づくも、すでにアルファは脚を振り切っていた。

 

「【シュートコマンド01"スピニングトランザム"】」

 

「【古代の盾】!!」

 

なんとかギリギリで必殺技を発動する。

だが十分に技のためのオーラを集めることが出来なかった。

次第に盾にヒビが入り、広がり始める。

 

「ぐっっ!?夢希!!構えて!!!」

 

「!!」

 

フェイがそう叫んだのと同時だった。

ガラスが砕けるような音が響き、盾が貫かれた。

シュートの勢いはかなり落ちているが、それでもとてつもない威力。

 

(さっきみたいな失敗はしない!!)

 

夢希は右手に全オーラを込める。

最初の失点の際は何も出来なかった。

このままではただの足でまといだ。

 

「でりゃあぁぁぁぁ!!」

 

憧れのルビィ先輩にこれ以上惨めな姿は───

 

 

「【絶ゴットハンド】!!」

 

 

────見せたくない。

 

『止めたぁぁ!!なんとかギリギリで耐えた立向居夢希!!チームの危機を救った!!』

 

 

「ハァハァ…(と、止めたの??)」

 

ふと足下を見ると、あと数センチでゴールラインを完全に越えていた。

数メートルは押されたことになる。

手の感覚も無い。ブロックされてこの威力。

もう当分は必殺技を出せない、が。

 

「やるじゃん」

 

清真高校の先陣で待つルビィがニヤリと笑った。

もうそれだけで痛みなどどうでもよかった。

 

まだ私はやれる。

ボールを前へ送らなければ。

そう体へ鞭を打ち、振りかぶったところで

 

 

「夢希ちゃん!!前半終わったから!!!」

 

 

梨子が必死に自分を止めていることに気づいた。

 

 

 

────

 

 

前半は1対1のままで終了した。

だが、互角とは到底言えた状況ではない。

 

「アルファをどうにかしないと」

 

今はフェイの好プレーでなんとか凌いでいるものの、あれほどの威力のシュートやドリブルを、試合終了まで完封できるかと言われれば───

 

できると言いたいけど、難しい。

 

これが結論だった。

どうしても我慢比べで確実に負ける。

 

その前に───

 

「その前に」

 

「志満ねぇ…?」

 

───決着をつけなければ。

 

 

「ワンダバさん。お願いがあるんだけど」

 

「お願いだと?」

 

 

今の状況を変えるため、志満は越えなければならない。

 

 

 

「私と"善子ちゃん"をミキシマックスして欲しいの」

 

 

今の志満(自分)を。

 





感想よろしくお願いします。



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最終章 14話「プロトコル・オメガ第2戦"あなたが走っていく道は…"」


気づけば就職。




 

 

 

天才。周りからよくそう言われた。

 

だけど、私は自分のことを天才だと思ったことは無い。

真の天才は、センスでどんなことも簡単にやってのける。

 

 

私は昔からそれが出来なかった。

だから、ただ人一倍に努力しただけ。

器用だったから、上手く環境にも適応できた。

 

当たり前だけど、勝つと楽しい。

プロになってよく分かったけど、この"勝つ"ということがどれだけ難しいことか。

私は環境や仲間に恵まれ、少しだけ、人よりも多く"勝つ"ことができた。

たくさんの人から賞賛され、私自身、毎日世界が輝いて見えた。

 

 

だけど─────

 

 

『ハァ…ハァ…』

 

 

─────勝てなかった。

 

 

『どうしたシマ!?今までそいつに負けたこと無かったろ!?』

 

『ハァハァ…』

 

『いったい…どうしたってんだよ……』

 

 

 

 

 

真の天才には勝てなかった。

 

 

 

最終章第14話"あなたが走っていく道は…"

 

 

 

「ミキシマックスコンプリート…!」

 

フェイと同じく、高海志満のミキシマックスが行われた。

結果は成功。姿や雰囲気も善子にそっくりとなっており、最初、善子が現れたのかと間違うほどだった。

 

明らかに、今までの志満とは違う。

 

「どう…?志満ねえ」

 

「これなら、行けるわ」

 

千歌の問いに、志満は表情ひとつ変えることなく答えた。

静かだ…とても落ち着いている。

不気味な程に。

 

間もなく後半戦が始まる。

攻撃時は志満にボールを集め、力で押し切ることで作戦はまとまった。

 

 

(まだ……震えてる)

 

一方、前半終了間際にチームを救うスーパーセーブを決めた立向居夢希。

彼女の手は、未だに震えていた。

素手で車を受け止めたら、あのような衝撃なのだろう。

シュートを受けてから数分は、そのダメージにより交代を勧められたが、彼女は強引に断った。

 

(止められると分かった…なら、最後まで、倒れるまで足掻いてみせる…!!)

 

決意を新たにしたのと同時だった。

後半開始の笛が鳴る。

 

「まずはマイボールにするわ!ディフェンス集中!」

 

梨子の指示が飛ぶ。

プロトコル・オメガボールでスタートした後半戦、早くも相手は細かいパスから、攻撃を展開してきていた。

 

 

(パスのスピード、精度、貰い方…どれもハイレベル。そう簡単には先輩たちも捕まえられない)

 

(だけど…明確な弱手がある!!)

 

立向居は最後方からフィールド全体を見ていた。

そして、今現在、ボールは早くも最終ラインを突破しようとしていた。

 

「しまった!?」

 

「技は脅威だが、それでも限界はある!」

 

ミキシマックスしたフェイは、自身がアルファを止める存在であることを自覚しすぎていた。

他の選手への視野が狭まっていたのだ。

死角からボールを貰ったレイザは、長くボールを持たず、そのまま流すように─────

 

 

─────アルファへ。

「でりゃあぁぁぁぁ!!!」

 

「!?」

「「「!!!」」」

 

ペナルティエリアよりも外、しかし、スライディングでパスカットしたのは立向居だった。

 

 

「GKがペナルティエリア外へ飛び出して!?」

 

「1つの失点も許されないこの状況で??」

 

これにはプロトコル・オメガの選手たちも動揺を隠せないでいた。

一瞬でもタイミングが早くても、遅くてもアウトだった場面。

並大抵の度胸では無い。

 

「こぼれ球、お願いします!!」

 

「任され…たっ!」

 

上手く拾ったのは曜。

そして繋げるのは─────

 

 

 

「全員で高海志満を止めろ」

 

アルファ以外の全員が、志満へと飛びかかる。

一方の志満は、まだ動かない。

一番近い相手選手は、もう1mの距離にいる。

 

なるほどね。

 

そう呟いた。

まだ動かない。

下を向き、目を閉じ、何かを"感じている"。

 

 

そして、

 

 

「これが」

 

 

「あなたのサッカー(才能)なのね」

 

 

動き出す。"共鳴"が。

 

 

「【Deep Resonance】」

 

 

────相手選手の足が空を切った。

つい先程まで、その場に立っていたはずの標的の姿はどこにも…

 

「は……消えた??」

 

「違う!!下だ!!」

 

…いないと錯覚するほど、超低位置まで体を下げていた志満。

まるで地面に吸い付いているようだった。

それと同時に────飛び出す。

 

 

『躱したぁ!!蹴りの軌道よりもさらに低く身を屈めるという荒業!!』

 

 

「このっ…調子に!!」

 

次々とディフェンスに入る相手選手たち。

しかし、まるで相手がどう来るか全て分かっているかのように、志満は軽々と躱した続ける。

 

「な、なにあれ!?」

 

「相手の守備が全部…当たってない…」

 

この時空の清真高校の選手たちも、見るのは初めてだった。

 

「身体の全細胞が相手に共鳴する、ドリブル、ディフェンス…サッカーにおける対人において最強の必殺技」

 

「"Deep Resonance"だよ」

 

「千歌ちゃんはあの技を知ってるの?」

 

「……あれは、本来は善子ちゃんの技」

 

善子ちゃんと共鳴がいたから、私たちは世界一になることが出来た。

千歌はそう続けた。

 

 

「無駄だ。高海志満」

 

「………」

 

一方、7人全員を抜き去った志満はアルファと対峙していた。

 

「その技は発動者の能力を上げるものでは無い。分析では、私のアームドの方がステータスは上だ」

 

「ええ。そうね」

 

ブラジル戦でもそうだった。

善子の足がボールに触るよりも先に触ればよい。

邪魔なら吹き飛ばせばよい。

究極の脳筋勝負では、共鳴は不利だ。

だが、

 

「それでも私は、あなたに勝てると思う」

 

言い放ったのは────宣戦布告。

同時にアルファがボールを奪いにかかる。

 

『なんて激しい奪い合いだ!!アルファ選手がやや優勢…いや、高海志満も負けてないぞ!!』

 

「なに!?────「一瞬の隙」

 

「!!!?」

 

志満が急加速。

一気にアルファを抜き去る。

 

上手い!!!

 

フィールド内の複数人の選手から、同時にこの言葉が放たれた。

志満はミキシマックスしても、確かにアームドしたアルファに、力では及ばないかもしれない。

しかし、上手い。

とにかく上手いのだ。

 

「身体の入れ方…ボールの位置とタッチ…フェイントや勝負のタイミング。どれも、全部上手すぎるよ」

 

「これは…ミキシマックスで得られるものじゃない。常人では理解できないレベルの努力から得た技術だ」

 

 

高海志満は自分を天才だと思ったことは無い。

だからこそ、彼女は人一倍に努力した。

 

「まだだ」

 

「!」

 

『高海志満がシュートの構え!!しかし、アルファ選手が懸命に足を伸ばす!!届くか!?』

 

朝練習はグラウンドに一番乗り。

日が暮れても砂浜を走る。

タイヤを背負いながら筋トレ。

部屋では海外のプロの試合を分析。

 

 

「想定内っっ!!」

 

(なんだと!?)

 

そして、無限リフティング。

これはその応用。

 

(シュートフェイント…!!)

 

志満の足はボールを掠めた。

アルファにとって想定外のフェイントであったため、アルファの足は空振りに終わる。

おそらく、自分の足が間に合わなければ確実にシュートを放っていた。

瞬間的にプレーを変化させる柔軟性…

 

これが…

 

 

「はあぁぁぁぁぁ!!!」

 

「"Deep Resonance"か!!」

 

 

『ゴール!!清真高校が逆転!!高海志満のスーパーシュートがゴールに突き刺さったぁぁ!』

 

 

志満が放ったシュートは今までとは違ったシュートだった。

スピードとパワーが"皇帝ペンギン・シン1号"よりも上回っており、極めつけは。

 

「タメがない??」

 

「シュートフェイントをした後、回し蹴りですぐにシュートを撃っていた…シン1号とは別の技…」

 

 

シュートを決めた志満はゆっくりとその技の名前を口にした。

この技が、高海志満の運命の分岐のトリガーと言っても過言ではない。

それほどまでに強力で────

 

 

 

────禁断の技だった。

 

 

 

本来の歴史では、帝国女学院で禁断の技である"皇帝ペンギン1号"を放ち、二度とサッカーをすることが出来ない身体となった。

 

「それは間違い」

 

「「「!?!?」」」

 

全員に衝撃が走った。

善子から、北也、そしてフェイから聞いていた情報と違う。

 

「高校時代の私は既に完全させていたわ。"シン1号"を」

 

つまり、負担を軽減させるシュートが開発済みであった…のならば。

なぜ、サッカーが出来ない身体になったのか。

 

「それがこの技…」

 

 

 

全ては"皇帝ペンギン"を作り出した理由が関係していた。

高海志満は高校入学時、すでに壁にぶつかっていた。

 

『ハァハァ…さ、さすがに…強いわね…』

 

一年生で一軍でサッカーをしている時点で十分、能力が高いことを示していた。

しかし、中学校の時と比べて、一気にサッカーのレベルが跳ね上がった。

自分のサッカーが通用しない時もあった。

 

まだ自分には技術、スピード、パワー、スタミナ、どれもこれも足りていなかった。

どうにかして強くなりたい。

そう考えた志満はある技を開発した。

 

『なにそれ…ペンギン??』

 

『ただのペンギンじゃないわよ』

 

自分のオーラを詰め込んだペンギンを作り出し、シュート時にペンギンと同時に蹴り込むことにより、数倍の威力のシュートを得ることに成功した。

しかし、

 

『ぐっっ!?』

 

反動は大きかった。

脚にペンギンのエネルギーを直接注入する"皇帝ペンギン1号"は、ダメージの量が尋常ではなかった。

 

ペンギンのオーラを直接脚に注入してはいけない。

そこから技は派生し、"シン1号"と"2号"が生まれた。

 

それでも、

 

 

『さあ、試合終了まで残り数分!帝国女学院、あと1点で県大会優勝も見えてくるが厳しいか!?』

 

適わなかった。

志満のシュートは全て止められた。

相手のキーパーが土壇場でゾーンを発動したのだ。

そこから1点も決められなくなっていた。

 

『ハァハァ…』

 

『高海!!もう時間がない!!』

 

『ハァハァ……』

 

『ここまで…来たのに…』

 

『…………』

 

私は天才じゃない。

だから、結局天才に全てひっくり返される。

どんなに努力しても、私はその領域に踏み入ることは…

 

 

『…違う』

 

 

そこで私は────────

 

 

『そんなの…絶対に嫌だ』

 

 

────天才を超えてみることにした。

 

皇帝ペンギンは、オーラで作り出したペンギン。

体内のオーラを一時的に体外でペンギンとして貯めておく。

これを応用した。応用だけは、得意だった。

 

 

『でえぇぇぇりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

オーラを体外ではなく、体内の1ヶ所に全て凝縮させてみた。

右脚に、ペンギン経由無しで、本来の数十倍のオーラを詰め込んだ。

 

"皇帝ペンギン1号"のダメージの量が尋常でないのならば、この技は"破壊的"だ。

 

ペンギンを出さずに撃つが、皮肉も込めて、この名前を付けた。

 

 

「【皇帝ペンギン0号】」

 

 

見ると、志満の右足はボロボロになっていた。

まるでショートした機械のように、煙が立っている。

 

「な、なんでそんな危ない技を使ったのさ!?」

 

たまらず千歌が口を開いた。

二度とサッカーが出来ない身体になるような技を躊躇わず発動するなんて、まるで…

 

「あっ、」

 

分かってしまった。

そして思い出してしまった。

 

「もう、これで最後だから。サッカーをするの」

 

高海志満の覚悟だった。

だが、その言葉を聞いて、千歌は今にも泣き出しそうになっていた。

まだ試合は終わっていないのに。

 

「最後ぐらい、悔いなくやりたいじゃない。天才に勝つなんて、なかなか出来ない体験なんだから」

 

その言葉に迷いはなかった。

これが、もうすぐ消える人の目なのか。

 

「本来の私は、この技を撃つ運命なの。これが、」

 

「私の走っていく道なのよ」

 

 

なんでこんなに、キラキラしているんだろう。

 

 

 




皇帝ペンギン0号/シュート/高海志満
高海志満がサッカーが出来ない身体になった本当のシュートです。皇帝ペンギン1号との明確な違いは「火力」と「スピード」。皇帝ペンギンを発動する時間をも短縮し、かつ、破壊的なシュートとなっている。
シュートを放つ際、脚は高濃度のオーラを詰め込むため、まるでオーバーヒートしたかのように、発動後は脚が焼き焦げる。

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