ブラック・ブレット【雷の化身】 (ハゲタカ)
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第1話

昔。ガストレアによって街が襲撃されて、そこからすべてが変わった。

鏡に映る自分の体に目をやる。体のほとんどを損傷し、生きていることが不思議だと言われるほどの状態だった自分が今では人とは異なる体を持ち、こうして生きている

 

右目は義眼だが普通に見ればわからないだろう。当然見えているので眼球がおかしな動きをすることもない。静かに左手と右手の調子を確かめる

左手は動かすと確かな筋肉の動きを感じる。人工筋肉繊維だ

右手は左手とは異なる感覚がある。こちらは完全な義手である。と、いってもどちらも義手には変わりないのだが

 

体のほとんどをこの人工筋肉と人工的に作り出された臓器で補っている。これは、過去、ガストレアに襲われた際に説明するのも気が滅入るような被害を被ったためだ

自分に命と体をくれた今は無き恩人に毎朝恒例の礼を捧げ、身支度を整える。これが、霧谷 貴音(きりたに たかね)の一日の始まりだ

 

「あちち・・・」

 

トースターからパンを取り出し、軽く朝食の準備をしていく

何故、人工物のくせにこういった熱を感じたりする感覚があるのか、原理は貴音自身にもわからないのだが、世の中のいわゆる天才というやつはそういったことをやってのけてしまうのだ。

痛覚なども存在するがシャットアウトすることも可能である。しかし、そうしてしまうと色々と不都合があるのだ。一度過去に全ての感覚をシャットアウトした状態で机を動かそうとしたら誤って吹っ飛ばしてしまったのである。これが人工筋肉繊維の怖いところで感覚がなければ力の加減ができないのだ

 

朝食のハムエッグと牛乳を用意してから、一人朝食を済ませる

 

昨日、大阪エリアからここ東京エリアに着いたばかりでアパートの一室はダンボールだらけとなっている。ダンボールの中身は必需品を買い集めたものなのだが夕方時ということもあり集めるのには苦労した

 

思い返せばこのエリア間を移動するのには相当の労力を要したものだ

 

斉武 宗玄の顔を思い出しただけでも頭が痛くなってくる

 

そんな苦労を重ねてまで来た理由がある。室戸菫に会うことだ。恩人、黒羽一彦の残した手紙には何かあったらデータを持って室戸 菫の元へ迎えとあった

居場所は手紙に記されていたのがせめてもの救いだ

 

 

一彦の残した研究資料。つまりは貴音の肉体を構成するもの等などのデータだ

これをカバンに入れたところで溜息を一つつくと、興味本位でとっておいた民警ライセンスも忘れずにしまっておく

 

貴音は目を細めてグッと左腕に力を込める

スパークが発生しバチッと放電する音が鳴り一瞬、青く周りを照らした

 

筋肉が動く時に発生するエネルギーを利用した発電システムだ。また、外から受ける電気を自身のエネルギーに変換することもできる。特定の条件下で義眼にある演算システムなどを利用すれば擬似的な極小規模の落雷を起こす事も可能である。

 

自身の体の具合を確認すると、スーツの調子を整え手紙に記されている場所へと向かった

 

 

 

 

(・・・・)

てっきり研究所かとも思っていたのだが病院の地下死体安置所だとは思わなかった。居心地の悪さを感じながらもここへ訪れたわけを簡単に説明した

 

「そうか・・・彼は亡くなったんだな」

 

事の一部始終を説明すると室戸菫は全てを察したように一度深く目を瞑ると

データへと目を通し始めた

 

それからまだ貴音もしらない色々な話を聞いた

 

黒羽一彦が亡くなった理由は警察から聞いていた。それは、ある強盗事件で子供を庇ったからだという。その子供は呪われた子供の一人だったのだが、その子供が攻撃の目標となった時、周りの人間はそれを良しとしたらしい。しかし、一彦はそれを良しとしなかった。一彦はその街ではいわゆる医者という役目も担っており、人当たりが良かったのもあって街の人々からは尊敬され、親しまれていた。そんな彼が呪われた子供の盾になったことを話をする警察官はあまり良く思っていないようにも見えた

 

【世界からあの子供達を切り離してはいけない。彼女らも立派な人間なのだ】

 

そう、一彦がいつも語っていたのを覚えている。彼は彼女ら呪われた子供たちが将来ガストレアの対抗策になりうることを理解していた。だから、そんな彼女達が犠牲にならないようにと研究を進めていった。その最高傑作が霧谷 貴音である

ガストレア研究のため赴いた先で偶然発見した子供に緊急手術を施し、長い時間をかけて準備していた研究の全てをつぎ込んだという話だ

 

元々はこの実験データを菫に託し、自身が手術を受ける予定だったらしく一彦は自分のしたことが本当に正しいことだったのかと日々苦悩していたという話を菫から聞いた

今があるのは一彦のおかげだ

 

「一彦の夢は俺の夢だ。彼の理想を継いで世界に尽くす。そのためにも力を貸してくれ」

 

「立派だね・・・と、言いたいところだが、それはできないな」

 

彼女の言葉の続きを黙って待つ。こちらが頼んでいる立場である以上、応じるか否かは彼女の自由だ。自分にその決定に反対する権利はない

貴音はそう考えていた。だが、菫の言ったことは思っていたどの言葉とも違ったものだった

 

「キミの夢と彼の夢は同一ではない。キミがなにを願おうが勝手だが彼の夢は彼のものだ。今やっと違和感に気づいたんだがね・・・・そうだ。キミ自身が何かを掴むことができた時私は喜んで手を貸そう」

 

「何か・・・?何かとは一体?」

 

「キミが今から探すんだよ。キミ自身で新しく夢やら希望やらを見つけた時また来るといい」

 

「言っている意味が理解できないな。俺は一彦の理想を実現するために彼から貰い受けたこの体を使う。それの何がいけないんだ」

 

菫は深く溜息をつくとコーヒーを二人分淹れてこちらに差し向ける

 

「まさにソレが問題なんだよ貴音くん。キミはキミの人生を生きなくてはならない、それができなければいつか躓くだろうね。彼もそんなキミの姿を見たいとは思わないだろうな?まったく、こんなことを私の口から言わせないでくれ」

 

がっかりした。とでも言いたげに肩をすくめるとコーヒーに口をつける

自分の人生。思えばそんなことは考えたことも無かった。自分の人生をめちゃくちゃにしたガストレアへの復讐を一彦の夢という建前で行おうとしていたのではないだろうか

 

自覚はなくても深層心理ではそう考えているのではないだろうか

考えるごとに今の自分の在り方に疑問が生まれてくるばかりだ

 

「キミにいいところを紹介する。データの中にキミの書類も混じってたんだが・・・ライセンスを持っているようじゃないか、一度天童民間警備会社というところへ行ってみるといい」

 

そう言うと住所を書き記してある紙をこちらへと差し出し、受け取ると後は興味がないように早く行けと目で言われている。確証は無いが多分合ってるだろう

貴音は一礼し病院の地下死体安置所を後にした

 

 

「まったく。ああいう目をした奴はロクな道を歩かない・・・・今の彼に必要なのは自分探しの旅、だな」

 

来訪者が去っていった一室で菫はそう呟くと。受け渡されたデータへ意識を戻した



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第2話

拙い文章ですが、よろしくお願いします


自身の人生を生きる・・・それは、自分の存在意義を見つけ出すということなのだろうか

 

貴音は天童民間警備会社へと向かう道中。菫と会話をしてからその事が頭から離れずにいた

 

存在意義。果たして一体、どれだけの人間が己の存在意義なんてものを明確にしているのだろうか?中には自分はある使命を全うするために生きていると胸を張って言う者もいるかもしれない。実際はどうだろう?いない。とは言えないが、多くはないと思う

 

俺の生きる理由・・・

 

一彦が願った世界平和・・・理不尽な運命に巻き込まれ傷つけられる〝子供達〟が安心して暮らせる世界を。人々が怯えずに安心して生きていける世界を作る。それが彼の夢だった。そうして生まれた霧谷 貴音という存在はそれに沿い世界平和に従事すべきなのではないか

 

それが彼への恩返しになり、世界への貢献になり。何も悪いことなんてないだろう

 

「夢や希望を探せ・・・・か」

 

家族を失い、唯一の支えとしていた一彦が死んだ

頼れる者は誰ひとりいなくなった

 

ガストレア戦争で家族を失ったのは9歳の時。一彦を失ったのは13歳の時

 

何とか必死にもがいた。悲しみに押しつぶされそうになりながら、一方的な暴力が飛び交う荒れ果てたこの世界で希望という光を探し求めたんだ。でも、ダメだった

自分が見つけられるモノなんてなかったのだ。そんな時、偶然一彦の本に挟まっていた手紙を見つけることができ、今に至る。俺は自分のすべきこと、向かう先が見つけられたことが嬉しかった

 

しかし、現実は甘くない

 

「言われなくてもわかってる・・・でも、わからないんだ。希望なんて見えない・・・・もう、思い出せないんだ。家族の暖かさも・・大切な人を失う悲しみも」

 

貴音は暗い瞳で呟く

 

他人から見ればおかしな話だと笑うだろう。何故、そんな大切なことを忘れるのか。と

 

だが、時間とは残酷なくらいに感情を鈍らせるものだ

 

6年間。貴音は悲しみを背負いながら癒される事のない日常を送っていた

きっかけが無かったのだ。生きていくことに精一杯だった日々。結果的には経済的にも困ることは無くなった。だが、それでも心の穴が埋まることだけはなかった

 

これ以上のダメージを避けるための自己防衛機能とでも言うのだろうか

悲しみを忘れ。生への執着だけを糧に生きてきた6年間は精神的に未熟だった少年を歪ませるには十分だった

 

鬱屈になりつつある思考を現実に引き戻す

気づくとそこには手元にある室戸菫から受け取った説明書きにある通り怪しげなビルに辿り着いた

 

「ハッピー・・・ビルディング」

 

名前に似つかわしくもないモノも混じってるが、その中の三階部分に確かに話に聞いていた事務所の名前がある

 

コンッコンッコンッ

 

三度のノック。少し遅れて中から声が聞こえた

女性の声、それも若い。続いて男性の声が聞こえる。なにを言ってるのかはわからないが恐らく入れ。ということだろう

 

出迎えたのは黒髪ストレートの女性と辛気臭そうな顔をした青年だった

彼女らに菫との話の一部始終を説明する

 

どうやらこの会社の社員は二人だけらしい。中の様子を伺えばわかる程度にはそんな気配がする

 

「博士の紹介でウチを?」

 

辛気臭い顔をした・・・・里見蓮太郎の問いに首を縦に振り肯定する

 

「ああ・・・俺にもよくわからないが。ライセンスの有無を確かめたことを考えると恐らくここで働け・・・と、いうことだろう」

 

「ところで貴方ペアはいるの?」

 

黒髪ストレート。天童木更の問に対して首を横に振り否定する

 

「ライセンスは持ってる。ペアはいない・・・色々あってな。ペア無しで民警として活動していたんだ」

 

天童民間警備会社の二人はお互いに顔を見合わせてウーンと唸る。それも当然。貴音のようなケースは特殊だからだ、必然的にガストレアを仕留めるにはイニシエーターの力を借りたりプロモーターの力を借りたり。と、ペアを組んで活動することが当然の世の中であるからして・・・と、いうより。そもそも〝タダ〟の人間ひとりでやっていくには荷が重すぎる仕事になるため必然的にペアを組むことになる

 

「深くは聞かないけれどIP序列があったのなら聞いておきたいわね」

 

「・・・名前だけだが・・イニシエーター古河 陽菜との序列は774位だったはずだ」

 

それを聞いて両者は唖然としている。序列の数字のせいだろうか

それとも架空のイニシエーターというのが本当だったからだろうか

 

「774位?!それを安月給で雇えるの?!」

 

「安月給??まぁ、気にしないでくれ。俺はここで働ければイイ」

 

「落ち着け!ウチは言っとくが本当にびn」

 

ガーンッと部屋中に響き渡るほどの勢いで頭に拳を受けた蓮太郎はそのまま後ろへとひっくり返る。木更は笑顔で貴音のほうへと様々な書類を丁寧に素早く用意してきた

 

書類へのサインを済ませると「これで生活が楽になる~」とハシャぎながら奥の社長机らしき場所へと向かっていた

 

蓮太郎はというと後悔してもしらないぞ。とでも言いたげな視線を貴音へと投げかけてくる。正直どうでもいい

 

「じゃあ。俺の連絡先はここへ置いておく・・・用があったらいつでも呼んでくれ」

 

メモに自分の連絡先を記し、そう告げると高音は足早にその場を去った

 

 

 

「単独で774位の民警か・・・聞いたことがないな」

 

1000番を切るということはそこそこ名が知れていても良いはずだが・・・

蓮太郎は思考を巡らせる

 

イニシエーター無しの状態で774位ということは霧谷 貴音そのものの力を表している。その時点で既に人外とも呼べるレベルだが何より不思議なのは単独で任務をこなすという特徴的な部分があるにも関わらず噂にすらなっていないこと

 

霧谷貴音・・・もしかしてアイツも・・・?

 

そこまで考えたからそれはないだろうと自身の考えを否定する。仮にそうであるならばより一層騒がれててもおかしくはないはずだ

 

いや、待てよ・・・東京エリア外から来たのなら噂がこちらまで届いていない可能性だってある。正体不明の民警、霧谷貴音

あの室戸菫の推薦なのだからこちらに害を加えたりするつもりもないのだろう。なら、何故ウチの会社なのだろうか・・・

 

「わかんねぇ・・・」

 

溜息をつきながら、頭をかくと蓮太郎は考えても無駄だと判断し。その思考を隅に追いやることに決め今晩の献立を頭の中で考えはじめるのだった

 

 

 




こんなキャラ出してほしい。なんてアイデアがあったらどうぞ

出てくるかもしれません


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第3話

急いで執筆してしまったため、少々手抜き感があるかもしれません

次回からはもう少し内容を濃く、オリジナリティをもっと持っていけたらイイと考えています


あれから数日。とある日の午前9時

 

特に連絡がないまま時間が過ぎていく

何故仕事が少ないのかを聞いてみたところ名が知れていないため仕事がなかなか回ってこないのだそうだ

 

仕事が回ってこないのでは仕方がない。堂々と宣伝して歩きまわるワケにもいかないので貴音は自身の装備の点検を兼ねて暇を潰していた

 

自身が愛用している武器のメンテナンスを行う。どれも研究資料を元に作られた貴音専用の装備と言える。理由として言えるのが〝一部〟を除いてどの装備も〝電力〟が必要とされるからだ

自分自身で電気を生み出すことができる貴音に適した形で作られたソレは強力な攻撃力と軽さを求めて作られた。その一つが高周波ブレードである

これはいわゆる振動剣というやつで、呼んで字のごとく刀身は超高速で振動し、この振動によって物体を切削するなんて代物だ

刃渡り148cmの片刃。形状は日本刀にも似ている

 

もう一つは大型の拳銃。通称デルタ。この名前は銃の形からきている。これは俗に言うレールガンと呼ばれるモノでそれを小型化したものであるが、小型といっても銃身は30cmにもなるのでやはりデカイ

理屈はイマイチわからないが、金属の弾丸であれば特に困ることはなく使用できるらしい

 

残った最後の一つは両手のグローブである。これにはいくつか仕込みをすることが可能で今は5mのワイヤーの先にアンカーが付いたものが片手に3本ずつ仕込まれている。このワイヤーがかなり強靭でガストレアを一本釣りのごとく引っ張り出したのを思い出す。義眼の調整は室戸菫氏が行ってくれるようなので気にしなくてもいいとのことだ

 

これらのメンテナスを終える頃には既に3時間が経過していることに気がついた

 

昼食の準備を整えようと思ったその時だ

 

ピピピッ

 

初期状態特有の呼び出し音が鳴る。貴音は一旦昼食の準備を中断し内容を確認する。呼び出しは電話ではなくメールだった

送り主は天童木更

 

内容はこうだ

件名:天童 木更

 

以下、本文

【ガストレアよ。里見くんが先に向かったから様子を見に行ってもらってもいいかしら】

 

携帯を閉じ、装備を整えると自宅を飛び出し人間とは思えない速度で建物の上を駆けて行く。着地する度にパリッと電気が弾ける音が響き跳んだ後を追うように雷が跳ねる

 

数分走った所で目標は見つかった。丁度蓮太郎のイニシエーターの蹴りがクモ型のガストレアに突き刺さったところである

バラニウム製といえど、ガストレアも一撃でくたばるほど弱くはない。だが、それでもイニシエーターによる傷が軽傷で済むはずもなく満身創痍の状態でガストレアが立ち上がる。ソレを確認すると貴音はブレードを抜き放ち下に構えた。重力に従い跳躍した速度を維持しながらガストレア目掛けて落下していく

刹那。着地の瞬間バリバリッと空気を破るように一瞬の放電

まさに小規模の落雷とも言える速度で落ちてきた貴音にその場にいた人間の目がガストレアから貴音へと移る

 

ブレードを落下の速度に力を上乗せしながら突き刺すと深々とガストレアの背から腹にかけて貫通し不愉快な悲鳴が辺りに響いた

 

貴音はクモでも鳴くのかと僅かに驚いだが、構わずブレードをさらに深く入れる

ブレードによる傷はさらにガストレアを深くえぐり、貴音は着地の勢いを利用してそこから捌くようにブレードを振り抜いた。常人から見ると一瞬とも呼べる攻撃だ

 

ブレードへの電力供給を切り体液を拭き取ると鞘に戻した。蓮太郎の元へと事の流れの説明にむかう

 

貴音は予想していた。と、いうよりも見飽きた表情をまた見ることになる。連太郎は貴音を見て唖然としていた。何に驚いているのかも聞くのが面倒なのであえてソレはスルーし適当に話を進め終えると刑事との話を済ませるように促す

 

すると今度は警戒しつつ近寄ってくる人影が一つ

元気そうな子供だ

 

「お主・・・本当にただの人間か・・?」

 

「人間だよ。ちょっと人と違うだけでな」

 

ツインテールの子供の問に答える。恐らくこれが話に聞いていた蓮太郎のイニシエーターで間違いないだろう。確か名前は藍原延珠だったはずだ

 

延珠は物珍しそうに貴音をくるりと見て回ると、蓮太郎のほうへと駆け寄っていく。興味の惹かれどこはアレだが、やはり子供らしいと言えば子供らしいと思う

 

話の流れを離れて見ている。と、突然延珠からの熱烈なアプローチを受け蓮太郎が刑事に問い詰められている。ブタ箱だのなんだのという怒鳴り声が聞こえる

そんな風景を見て室戸菫の言葉を思いだし貴音はふとつぶやいた

 

「何か・・・か。わからないな、俺には」

 

 




前話でも記述したとおり様々なアイデアを受け付けております
こんなガストレアが見たい、イニシエーターが見たい、プロモーターが見たい。あるいは「こんな話」も見てみたい等等

※「こんな話」について
本編とは別にオマケとして、短編も挟んでいければと考えています」

更新が遅れないよう日々構成を練っておりますが、やむを得ない事情で期間があくこともあるかもしれません。暖かい声援を送っていただければ幸いです


私の妄想であることに変わりはありませんのでソコだけは理解のほどよろしくお願いします。登場人物に関して本編でも採用するかもしれませんが、不遇な結末を迎える可能性があることも考えていただけると嬉しく思います


※原作とのズレが生じる場合も否めませんのでスミマセン。なんとか頑張ります


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第4話

いつもより少し遅めに起床し、毎朝の日課となっている体の具合のチェックを行い恩人への礼を捧げる

 

遅めの朝食の準備を整えて窓から見える雲の流れをボーッと見ているとトースターの調理完了の音が心地よく部屋に揺れた。二枚のパンを取り出し皿にのせ牛乳をコップに注いでいき携帯で今日のスケジュールを確認しようと開いたと同時のタイミングで携帯が鳴り出し危うく落としそうになる危機を回避すると送られてきたメールに目を通す

 

送ってきた主は天童 木更。現在、貴音が務めている民間警備会社の社長だ

内容はこうだ

 

件名:おはよう

以下、本文

防衛省に行くから駅に来て

 

 

溜息を一つつく

 

 

「どこの駅なんだ・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

列車の発射ベルが鳴って、列車が動き出した

 

 

「そういえば蓮太郎。延殊はどうしたんだ?」

 

「なんでもアイツには退屈な話になるだろうから連れて来ないほうがいいんだってよ。ま、それには俺も賛成だな」

 

蓮太郎は苦笑すると、少し考える素振りを見せ木更との話に戻る。貴音は今回の件が恐らく前回仕留めたガストレアに何らかの形で関係するものだろうと考えていた。しかし、それにしては納得のいかない部分もある。なぜ、報告書だけでは駄目なのか

 

(・・・東京エリアでは少し仕様が異なるのか・・・?)

 

そこまで考えてから、携帯が震えていることに気づき画面を見る

 

差出人は大阪エリアにいた頃の知人だ。こんな自分に付き合ってくれる数少ない友人と呼べる存在であろう

 

差出人:萩原コウタ

件名:やばいかも!

以下、本文

お前が出てったあとさ、何か怪しい臭いをプンプンさせてる奴らがお前のことを嗅ぎまわってるみたいなんだ

一応、一般的には公開されてないから居場所の特定ってのはされづらいだろうけど気をつけてな!

 

何だか危ないんだよ。とにかくやばそうな感じだ!!

 

 

自分を追ってくる者たちがいる?心当たりがないことが何よりマズイ状況と言える。とにかく、自分との関係や居場所を聞かれた際にはおとなしく答えるようにと返信を送る。自分と関わったことで相手にまで迷惑をかけるのはいささか気分が悪い

 

最前の列車には人が全く乗っていなかったことを思いだし、木更に断りをいれて移動した

 

貴音を追うもの。現在考えられる可能性

貴音の行いに何らかの恨みを持つ者。もしくは、持ち去った一彦のデータを狙っている者

可能性として後者のほうが高いと言える。そもそも、貴音と関わった人物であればコウタがあのようなメールを送ってくるはずがない。一人きりの空間で考えを巡らせていく

 

しかし、どれも納得の結果には至らない

 

泥沼状態になりつつある思考を一旦切り離し別の事を考える。室戸菫の言葉

そこから今の状態。天童民間警備会社の面々のことを考える

 

里見蓮太郎。藍原延殊。天童木更

 

皆、今を生きている。彼らの夢は何なのだろうか

 

少し湧き出た興味を首を振って振り払う

 

やめよう。他人のコトに関心を持っている場合じゃない。今は自分のことだけを考えなければ

 

 

今だ登録されていなかった連絡先を携帯に登録していく。何故、自分はこの現状に置かれたのか。今はまだ、室戸菫の言葉の意味を見いだせない。でも、いずれは見つけなくてはならない

 

答えの見えない道を回っているだけではダメだ。一度見方を変えなければ

 

「今は今できることに専念しよう」

 

貴音はいつもと少し違う気持ちを胸に感じながら窓から見える景色に目を向けた

 

 

 




久々の投稿です!

これからはある一定の速度で投稿できそうなので暖かい目で見守ってやってください


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第5話

ちょっと長くなりました・・・見直しはしましたが、修正箇所があれば報告願います

すみません


現在、貴音は東京エリア防衛省へとやってきている。入口で名前を告げると居心地の悪そうな堅苦しい雰囲気を持った建物の中へと案内される

エレベーターに乗り、第一会議室と書かれた部屋の前まで来ると案内人は去っていった

蓮太郎が扉を開ける。その小さな扉からは想像もできないほどの大きさの空間が広がっていた。中央には細い楕円形の卓があり、奥には巨大なELパネルが埋め込まれている

そして円卓には、きっちりとスーツを着込んでいる面々がそれぞれ指定された席へと着いておりその後ろにはそれぞれバラニウム合金製の武器を持った連中が立っている

 

(俺たち以外にもこれだけの人数を集めていたのか・・・)

 

貴音達が部屋へと足を踏み入れた瞬間。それまで交わされていた雑談はピタリと止まり。かわりに殺気のこもった視線が突き刺さる。貴音はそれを無いものと同然に受け止めそれぞれの顔を見渡す。その中には何かで見たことのあるような顔もあったが正直どうでも良かったため覚えていない

 

「おいおい、最近の民警の質はどうなってんだよ。ガキまで民警ごっこかよ。部屋ぁ間違ってるんじゃないのか?社会科見学なら黙って回れ右しろや」

 

プロモーターらしき人間の一人が、こちらへと歩いてくる。こういった威圧的な態度を取るものは珍しいものではない。木更を庇うように前でた蓮太郎の態度が男は気にいらなかったらしく、バンダナで顔を半分隠していてもわかるくらい明らかに不機嫌そうな表情を見せる

 

「あぁ?」

 

その状況を見かねた貴音は溜息を一つつくと木更と蓮太郎に席へと行くよう促す

 

「よくいるタイプだ。こういう奴とのトラブルは話じゃまとまらない、相手にするな」

 

貴音のその言葉がきっと男を怒らせたのだろう。木更の方へと目をやり、男へと視線を戻した直後に強烈な頭突をくらった・・・・ハズだった

しかし、倒れていたのは頭突きをしたはずの男で貴音は平然とその場に立っている

 

「なっ?!」

 

倒れていた男は今更状況を理解したらしく、すぐに飛び起きると貴音から数歩分の距離をとった

 

「テメェ・・!!」

 

すぐにでも背中にあるバスターソードを抜かんばかりの勢いで貴音を睨む男の視線を意に介した様子もなく貴音は木更から半歩下がった所で待機する。それほどまでに、この男と貴音の実力の差は明確だった

 

「やめたまえ将監!」

 

その制止の声は卓についている、男の雇い主と思わしき人物から発せられた

 

「チッ・・おい、オマエ。何て名前だ」

 

「霧谷貴音。今の俺は天童民間警備会社の人間だ、用があるなら後にしろ」

 

霧谷貴音。その名が部屋の中に充満していた殺伐とした雰囲気を壊し、代わりに卓に着いていた人間達に困惑や驚きの色が広がっていく

 

「聞いたことあるぞ・・・アイツが霧谷貴音か」

 

「あの将監をああも軽くあしらうとは、噂は本当だったか」

 

貴音はまた一つ小さく溜息をついた

 

木更は用意されていた末端の席に着き、蓮太郎と貴音も傍に着く

伊熊将監。確かIP序列、千番台の民警だったはずだ。正直今の今まで忘れいたが素行の悪さから噂になっていたのを聞いたことがある。そして彼を制止させた男。三ケ島ロイヤルガーター代表取締役 三ケ島影似。大手の中の大手といえる民警の一つだ

 

(とにかく。面倒なコトになりそうだな・・・)

 

一人内心でぼやいていると、携帯が震え誰かから連絡が来たことを伝える。振動パターンで送り主がわかるように設定されており、すぐにコウタだとわかった。本題に入るまで少しの間があるようなので貴音は送られてきたメールに目を通す

 

差出人:荻原コウタ

件名:わかったことがある!

以下、本文

お前を探してる奴らを少し調べてみたんだけど、どうやら何かしらの組織みたいなんだ

これは仕込んだ盗聴器からさっき聞こえてきたものなんだけど羽が3枚だの4枚だの1枚だのー・・・って言ってたが正直意味がサッパリわからん!多分だけど枚数が階級に比例してんのかな。なんとなく、そんな雰囲気だったよ

羽で階級が分けられてるってのも変な感じだよな。そうそう、噂程度の話なんだけどガストレアを人の命令に従わさせるとか、逆に人間にガストレアの力を後天的に与えるとか・・・最近物騒な話が絶えなくてな。その噂を裏付けるような不自然な感染者の出現だったり・・・それほど件数は報告されてないけど、やっぱ可笑しい気がする

俺はもう少し調べてみるわ。進展がアレばまた送る!

 

貴音は深入りはしないようにと忠告のメールをうち。溜息をまたこぼす

 

貴音は正直、今ある状況よりもコウタからのメールに完全に意識が向いていた。噂だ。一体何が目的なのか・・・

木更に額を小突かれた時、始めてモニターに映し出されている聖天子の姿に気がついた。聖天子は特に気にした様子もなく内容について話し始める

 

今回の集められた内容を簡潔にまとめるとこうだ。政府からの依頼である。内容は、感染源ガストレアの体内にあると思われるケースの回収。しかも、何やらワケありとのことで詳しい話は聞かせてもらえないらしい。この人数で捜索するからにはそれなりのリスクを伴う物がケースに入っていると見ていいだろう

 

そこで背筋に走る悪寒を感じ貴音はその方向を見ずに声を上げた

 

「誰だ」

 

突如部屋にけたたましいほどの笑い声が響き渡る

 

「私だ」

 

奇妙な仮面にシルクハット。ふざけたような格好の男に対し貴音はホルスターから抜いた大口径の拳銃「デルタ」を向けて構える

仮面の男は卓の上に土足であがり聖天子に相対する

 

「私は蛭子、蛭子影胤という。お初にお目にかかるね、無能な国家元首殿。端的に言うと私は君たちの敵だ」

 

貴音は銃を構えたまま、男に問う

 

「ここのセキュリティもザルじゃない。どうやって侵入した?」

 

「正面から、堂々と・・・・と、答えるのが正しいだろうね。もっとも、小うるさいハエが何匹か突っかかってきたから何匹か殺させたけどね。丁度いい機会だ、私のイニシエーターを紹介しよう。小比奈、おいで」

 

「はい、パパ」

 

蓮太郎と木更のあいだを少女が歩き去っていく

ウェーブ状の短髪、フリル付きの黒いワンピース。腰の後ろには交差するように二本の小太刀が差されている

 

「目的は何だ」

 

少女の小太刀から垂れている赤い液体に視線を向けて視線を戻すと静かに影胤に問う

 

「今日は私もこのレースにエントリーするということを伝えておきたくてね」

 

「エントリー・・・?」

 

「七星の遺産は我々が頂く」

 

七星の遺産。ここにきて聞き覚えの無い単語が出てくる

 

「七星の遺産?何だそれは」

 

「おやおや、君たちは本当に何も知らされずに依頼を受けさせられようとしていたんだね。可哀想に。君らが言うジェラルミンケースの中身だよ」

 

七星の遺産。その言葉に聖天子が一瞬の反応を見せたのを貴音は見逃さなかった。おそらく七星の遺産というのはそれ自体、公にはなってはならないほどの危険物。今の荒れ果てたこの時代における危険。いくつかあるだろうが、自然に導き出される答えが一つある

 

ガストレアだ

 

しかし、そのケースがガストレアとの関係性を示すのには少し難しい。そこで貴音は先ほどのメールを思い出した

 

ガストレアのコントロール

 

しかし、それができるならそもそもモノリスなんていらないだろう。ソレがガストレアを遠ざける力があるのだから。なら、その逆は?モノリスという結界があるにも関わらず政府が死に物狂いで取り戻そうとするもの。モノリスを突破できるガストレアなんてもう限られている

 

(ステージVか・・!!!)

 

そこまで思考が至ったところで一時中断されることになる

伊熊将監が蛭子影胤に斬りかかったのだ。しかし、見えない何かに阻まれてバスターソードは凄まじい勢いで弾かれる

 

「下がれ将監!」

 

三ケ島の一喝で、その意図を察した伊熊は舌打ちと共に後退する

そして間髪いれずに轟音が鳴り響く。部屋にいる人間が一斉に影胤へ向けて銃を発泡した。そして、それ自体が間違いだったのだと貴音は気づく。

危険を察知した貴音は、迫り来る何かを避けるため体をひねりながら飛ぶと先ほどまでいた場所を弾丸が通過した

 

打ち出した弾丸が一斉に返ってくる。蛭子影胤を覆っていたのはドーム状のバリアだった。こういう類の特殊な能力には覚えがある。間違いない、機械化兵士だ

霧谷貴音にはわかる。形は違えど自分もそうなのだから

 

「斥力フィールド。私は『イマジナリー・ギミック』と呼んでいる」

 

「・・・バリア、だと?お前、本当に人間なのか?」

 

蓮太郎の絞り出した言葉に影胤はクスクスと笑いながら答える

 

「人間だとも。ただこれを発生させるために内蔵の殆どを摘出してバラニウムの機械に詰め替えているがね」

 

「機械・・?」

 

「名乗ろう里見くん。私は元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊『新人類想像計画』蛭子影胤だ」

 

ガストレア戦争が生んだ、対ガストレア用特殊部隊。この目で自分以外の人間を見るのは始めてだったが今の状況で納得せずにはいられまい。貴音は黙って影胤を見据える

影胤はコチラを見た時に興味深そうに目を細めると、今度は蓮太郎の方へと向かって歩き出す

マジックショーさながらに白い布から箱を取り出すと影胤は悠然と窓まで歩いていき姿を消した。民警たちは皆黙ってその場から動くことはできなかった。そんな中先に口を開いたのは、天童木更である

 

「中に入っているものがどういうものなのか、説明していただけますよね?」

 

聖天子は目をつぶり唇を小さく噛んだ

 

「いいでしょう、ケースの中に入っているのは七星の遺産。邪悪な人間が悪用すればモノリスの結界を破壊し東京エリアに〝大絶滅〟を引き起こす封印指定物です」

 

 

 

大絶滅。貴音は気づかぬうちに呟いていた

同時に一彦のことが頭をよぎる

 

「ダメだ。それだけは、ダメだ」

 

思考が一点に絞られていく

 

障害の排除。貴音は蛭子影胤を抹殺することでコレを回避できると判断したのだ

自分でも驚くほどすんなりと頭の中に目的が入ってくる

 

「奴を排除する」

 

そう口にした貴音の右目には赤い光が灯っていた




表現力、文章力などなど勉強不足が目立ち読みづらいかもしれませんが暖かい目で見てください
筆者も少しずつ精進したいと思います


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*ビデオレター*

室戸菫は貴音から渡されていたデータの整理をしていた。彼の義眼は菫の開発したモノとは異なり相手ではなく空間の把握に長けているモノで基本的には失った視力を補う程度のモノでしかない。しかし、彼はほぼ全身の改造を施した言わば本当の意味での機械化兵士と呼べる存在である。空間の把握に特化させるだけで人という枠組みから外れている彼の反射速度は予知にも近い回避能力を得る事を可能としている

特徴的とも言えるのは発電能力とそれを応用した様々な武器。ブレードと狙撃銃。大型拳銃デルタ、どれをとっても強力すぎるモノの数々

体内に溜め込んだ電力をバーストさせるコトによって発動させるオーバードライブシステム。使用後は活動を停止せざるを得ない状況に追い込まれるが一時的に爆発的な力を得る。四賢人とは違う視点から世界を救うためにその身を捧げた天才科学者、黒羽一彦。彼の人生最初で最後の最高傑作。霧谷貴音

 

「まったく、キミも厄介なモノを預けてくれたね」

 

菫の手には今よりも幼く見える貴音と今は亡き一彦が笑顔で写っている。今とは違い貴音の顔も活き活きとして見える。フッ。と息を吐き菫はコーヒーの入ったカップに手をかけてふと違和感を覚える

 

その違和感の正体に気がついた時、菫は思わず声を上げて笑った

一彦の映る写真に特殊なライトを当てるとうっすらと様々な文字が浮かび上がる。一彦は昔からこういった暗号文を何かに隠してメッセージを送るコトが好きだった。さらに暗号部がこれまた厄介なまでに難解なのだ。ただの秀才程度の人間にとっては・・・だが。菫はそれを容易くそれを解き終える

翻訳するとこうだ

 

〝私に依存的になりつつある彼を助けてやってくれ。私にはできそうにない、代わりに頼む。最後にこれを〟

 

菫は盛大に溜息をつく。指示された場所をみると一彦のものだったと思われる本の表紙から一枚のディスクが出てきた

 

ディスクを再生デバイスに入れボタンを押す。少し映像が乱れ落ち着いたあと一彦が画面に映った

 

『これを見ているということは私はもうこの世界にはいないのだろうな。やはり、貴音は私のコトを中心に物事を考えているのだろうか。兆候はあった・・・私が彼を助け育てるようになってから彼は私のことをどこか神格化している節がある。それを私の手で矯正することは難しかったよ。君には彼を助けて欲しい・・・・いや、ちょっと違うな。彼に人生を与えてやってくれ。頼む』

 

最後に一彦は微笑む。そこで一彦の映像は途切れた

 

「私も専門外だよ・・・・だが、まぁ。友人の頼みを無下にはできないし・・・」

 

最後に写真を机の上に置き背を向けると手を振りながら部屋の奥へと消えた

 

 




すみません。過密スケジュールにて執筆がキツくなっています。。。。


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第6話

貴音はブレードに力を流し込む。刃から強力な振動が発生し近くにあったガラスが砕け散った。自宅へと戻った貴音はすぐさま用意を始めていた。蛭子影胤、それは貴音が遂げなければならない理想にとって最も忌むべき存在だ。この世界を混乱に落としれたガストレア同様世界にとっての毒でしかない

 

 

「障害は排除する・・・」

 

 

暗闇の中で一人呟きながら虚空を睨む。それでも手際よく装備を整えていた

デルタには特殊な加工を施したバラニウムの弾丸が込められる。両腕には強力なワイヤーが仕込まれ、ここへ引っ越すときに持ってきた荷物の中から特殊なバイザーを取り出し、専用の戦闘用スーツを着込んでいく。全身を黒く覆い、最後にバイザーをつけると不気味に青く光りはじめる。さながら暗殺者のような風貌になった貴音は蛭子影胤の顔をしっかりと脳裏に焼き付けて他の思考を排除していく。ふと、自身の端末に一通のメールが入っているのに気がついた

 

差出人:司馬未織

件名:フゥー

以下内容

 

この前頼まていたもの、完成間近や。楽しみにしといてな

 

 

(・・・・・)

 

 

彼女には狙撃銃を一丁依頼している。元々、貴音は狙撃の方を得意としているため丁度欲していたところだった。かといって近接戦闘を苦手としているわけでもないためとりわけ苦労しているというわけでもないのだが・・・

 

そこで金髪の少女の顔が思い出された。一緒にいた時間はとても短かったし顔もハッキリと覚えているわけではない。が、唯一自分の技術を教えた相手でもある。あの頃はただ生きるのに必死でなんでもやっていた。戦闘術を教えるだけで多額の報酬が貰えるということで依頼には即答したものだ。

そこで訓練を受けに来たのが確か呪われた子供だった

 

彼女は自分の身を守る術として貴音の技を教えて欲しいと言ってきたのだ。もちろん全てを伝えたわけではないが、それでも大まかなモノは伝授した

実に飲み込みがよく訓練中は何度も驚かされたものだ。ワイヤーの扱いや狙撃銃の扱いを聞かれた時はどうか迷ったが報酬欲しさに教えてしまった

 

人間は追い込まれるとここまで惨めになるのだなと、過去を振り返り苦笑を浮かべる

 

 

 

背中にブレードを装備しホルスターに銃を入れる。バイザーを機動させ戦闘準備を終え、貴音の瞳に赤い光が灯る。深く息を吸い込み自分にも言い聞かせるように今回の為すべきことを呟く

 

 

「蛭子影胤を排除する」

 

 

今の貴音を表すなら『機械人形』

「世界」を乱す『悪』を滅ぼすために動く人形。平和という理想の実現のためだけに忠実に動く人形。ある意味ではそれが機械化兵士としてのあるべき姿なのかもしれない

 

今、貴音を動かしているのは誰の意思なのか

菫の言葉が頭に響く

 

「俺の夢・・・」

 

自分の夢。考えれば考えるほどわからなくなる

夢なんてものはない。そんなものはとうの昔に捨てたハズだ。否、そうでもしなければ生き残れない世界だと昔に知ったはずだ

 

天童民間警備会社の面々を思い出す

暖かな日常を見てどこか懐かしい気持ちを感じることもあった。だが、今はソレについて考えている状況ではない

 

思考を無理矢理、停止させて自身のやらなければならないことの一点に集中する

しかし、それもまた中断されるコトになった

 

『もしもし霧谷くん?!』

 

焦ったように、切り出したのは天童民間警備会社社長の天童木更だ

 

「はい。霧谷です」

 

『今から急いで里見くんの応援に行って!ガストレアを見つけたらしいの。蛭子影胤と遭遇しないとも限らないわ。場所はこっちから送るから』

 

電話が切れると同時に位置データが送られてくる。

 

「遠いな・・・・」

 

両脚から一段と激しく炸裂する電気の音と共に目的地へと向かった

 




遅れてすみませんでした。今回は筆者としても流石に焦りを隠しきれない出来になってしまいました。少しずつ調子を取り戻せたらと思います

誤字や脱字。そのほか意見、感想ありましたら遠慮なく書き込みをお願いします

今回も読んでいただいた方々ありがとうございました


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第7話

皆さんお久しぶりです

誤字などあれば、報告を。では、拙い文章ですがお楽しみ頂けれいいと思います


ちょうど木々が鬱蒼とした景色に変わり始めた頃。正面から凄まじい速度で迫ってくる影が見えた敵かとも思ったがすぐにそうではないことに気がついた。相手もこちらに気がつき影が近づいてくる

 

「蓮太郎のイニシエーター・・・何があった」

 

涙を流しながら藍原延珠が貴音の腰にしがみつく

 

「蓮太郎を助けてくれ!」

 

少女の叫び声で貴音の中に何か懐かしいモノが込み上げてくる。きっと蓮太郎との生活彼女にとってかけがえの無いもののハズだ。それを失った時に彼女が見せるであろう顔を見たくない。幼い子供の姿が昔の自分と重なって見える。きっとそのせいでもあるのだろう。失いつつあった感情に火が灯る

 

「やれるだけやってみよう」

 

延珠を離すと今まで以上のスパークが発生する。貴音の体に組み込まれている機構、強制開放【リミットブレイク】。オーバードライブとは異なる。文字通り強制的なものになるため反動もでかい。実際どのような副作用が出るのか貴音自身も知らない。一彦から名前だけは聞いたことがある未知の力だ。今まで使ったことが無かったのはそこまでして何かをしようと思ったことが無いからだ

 

最近は調子が狂ってばかりだ。普段ならこんあ無駄にリスクを背負うこともしないのに。貴音は今まで以上の速度で駆け出す

 

すると、目的は直ぐに見つけることができた

 

「蛭子・・!!」

 

背中からブレードを抜き一閃。神速とも言える速度で放たれた斬撃は影胤の首を薄くかすめて通り過ぎる

 

「また、あの厄介なフィールドか。でも届いたな・・・突破口は見えた」

 

貴音はブレードを両手に構えると、先ほどの薙ぎ払う形とは異なる突きの姿勢をとる。影胤はというと焦るどころか逆に嬉々とした様子で自身の首にできた傷を触る

 

「素晴らしい!キミの刃は私に届いた!君は思っていた以上の人材だ、やはりあの時に感じたモノは正しかった。里見クンとは違ってね・・」

 

「蓮太郎はどこだ・・3秒で答えなければ貴様を殺す」

 

ブレードにより強力な力が流し込まれ激しくスパークし唸りを上げる

 

「さあね。今頃魚の餌にでもなっている頃だろうか・・・彼にはガッカリしたよ。もし、探しに行くなら私は止めない。欲しいものは手に入れたからね」

 

「・・・」

 

影胤はアッチだと言うように指をさしてケラケラと笑っている。貴音の中で答えは出ていた。影胤から一瞬で距離をとると指を差している方向へ駆け出した

 

ほどなくして川にぶつかる。影胤の言葉から推測すればここに落ちたと見て間違いないだろう。貴音は義眼を発動させる。義眼を通して地形の情報が流れ込んでくる。川の様子を見ながら下流に向かって走り出す

延珠の顔を思いだし、奥歯を強く噛み締める

 

川の流れを追って走るうちに体に異変が起こった。突如力が入らなくなり膝から崩れる

 

「まさか・・・これが反動?!もう来たのか・・!!」

 

震える足を力いっぱい殴ると自分を奮い立たせる

 

「約束・・・守らなければ・・・!」

 

力強く足を踏みしめ再び駆け出す。そこで、丁度川辺にある枝に何かが引っかっているのを見つけ川に飛び込む。義眼を通して出てきた情報には人であるという可能性が出ている。ならば確かめるしかない

枝に引っかかっていたモノを掴むと最後の力を振り絞り川辺まで運び上げる

 

 

「溺れる恐怖を味わったのは・・・これが始めてだ・・」

 

息を切らしながら引き上げたモノ。蓮太郎が生きていることを確認すると安堵の溜息をつく。影胤を逃したことで蓮太郎を助けた。東京エリアの代わりに人を一人助けた。最初に家を出てきた時は世界のためにと影胤を追ってきたが、不思議と目標を逃したことよりも蓮太郎を助けたことと延珠との約束を果たせたことが良かったと思える

 

「ごめん。一彦・・・・俺は・・」

 

貴音の意識が暗い闇の中に沈んでいく。電力が切れ体を動かす最低限の力しかない状態では並の人以下程度の力しかない。その状態で人を一人救出することがどれだけ困難なことか。平和よりも一つの命を優先した。それでも何とも言い難い気持ちに満たされながら貴音は眠りについた

 



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第8話

目を開けると一面の白が目に映った

 

「ああ、病院か・・」

 

過去にも何度か経験したことがある。まだ、鮮明にならない頭を何とか働かせて恐らくあの後に自分は救助隊が何かに助けられたのだろうと整理する

体のほうは良好なようで、戦闘も行える程度には回復していた

 

同じ病室向かい側のベッドには里見蓮太郎が寝ている。誰かが見舞いに来たであろう痕跡もある。恐らく天童木更だ

 

次第に思考がハッキリとしだして自分が影胤を取り逃がしたことについて考える。あそこで蓮太郎を助けたことはこの東京エリアよりも同僚の命を優先したことに他ならない。あの時影胤を捉えていればこの東京エリアの危機は去っていたハズだ

暗い気持ちが湧いてくる。これで東京エリアが危険にさらされ万が一のことになれば自分一人では背負いきれないほどの責任を負うことになるだろう

 

貴音が顔を伏せると、少し控えめに病室の扉が開かれ人影が入ってくる。ベッドのうえで上体を起こしていた貴音はゆっくり扉の方に目を向けると同時に強い衝撃と同時に何かが自分のところに飛び込んでくる

 

「蓮太郎を助けてくれて、ありがとう」

 

腕の中にある少女の笑顔を見て先ほどまでの気持ちは消え去り暖かいものが満ちていく。世界的に見れば今回の行動は間違えていたかもしれない、でもこれで良かったのだという確証を得ることができた。一つの笑顔を守ることができたのだ

 

「無事・・・とは言い難いが助かったみたいで良かった」

 

延珠は蓮太郎の横まで行くと心配そうな表情で椅子に座る。彼女の居場所はきっとあそこなのだ。今回もし蓮太郎を助けられなければ途方に暮れていただろう、人一人を救うことの大きさをこうして感じることができた。その難しさも

 

影胤を放って置くわけにはいかない。ヤツは確実に仕留めなければ先ほどの笑顔も失われるだろう。それはあってはならないことだ

自分の手で必ず仕留める。相打ってでも

 

退院の手続きをしなければと、思い立ち上がろうとしたところで次の来客が現れる。天童木更だ

 

「目を覚ましたのね。体は大丈夫?里見くんのことは私からもお礼を言わせてもらうわ、本当にありがとう」

 

真っ向から礼をされることに軽く照れくさい気持ちになる。これは嬉しいのだろうか

 

「天童木更。俺に蛭子影胤の情報をくれ、アイツは俺が確実に消してみせる」

 

先ほどとは変わり冷酷な色を瞳に浮かべる。文字通り蛭子影胤を殺すつもりなのだろう。木更は少し躊躇した素振りを見せると先ほど手に入ったばかりの情報を貴音に送信する

 

「今送ったデータに影胤が潜伏していると思われる場所も記されているわ」

 

「助かる」

 

一言そう残すと貴音は病室を出て行く

 

 

 

 

 

 

少女。千寿夏世は考える。今回、政府から直接受けたこの依頼は手練の民警集団によって行われる。普通に考えれば心配する余地もないほどの戦力だ

だが、あの時姿を現した仮面の男。その力はその戦力をもってしても敵わないのではないかと思わせるほど常軌を逸したものだった。気になっていることは他にもある

 

伊熊将監を容易くあしらった男。恐らく今回急遽呼ばれたであろう人物。霧谷貴音

イニシエーターである夏世にはあの青年が人間では不可能なレベルの速さで動いていたことを目で捉えていた。そして一瞬の放電現象も

蛭子影胤に酷似したモノを感じさせる力だ。きっと今回の鍵は彼になるだろうと予想していた

 

現在、蛭子影胤の位置が判明し各々が準備を進めている中少しの自由時間を将監からもらって街を適当に歩いているところである。戦いが始まるまでの暇つぶし程度に店を見て回るがその行動にほとんど意味はない。普通の子供と同様の生活は呪われた子供たちにはできないのだから

溜息をつくと、雑貨屋らしき場所から服屋の方へと移動する。やはり、呪われた子供たちも立派な少女だ。オシャレをしたいという気持ちもあるだろう。服を見るときは少し胸が高鳴るものだ

そこで夏世は一度店に入ろうとしたとこで足を止める。ガラスに反射して映った霧谷貴音が見えたのだ

 

振り返ると歩いていく貴音の姿が見える。夏世は貴音の方へと走りだした

何故追いかけているのかもわからないまま、貴音に追いつくと服の袖を引っ張る。もしかしたら好奇心なのかもしれない、また別の何かがあるのか

 

青年は不思議そうな面持ちで振り返ると困ったような表情を浮かべた後に迷子か。と尋ねる。もちろん少女はいいえと答えた。青年は不思議そうな表情を浮かべた後に頭の上に疑問符を浮かべ始める

 

「私は伊熊将監のイニシエーター千寿夏世といいます。あの時は失礼しました」

 

「あー・・・頭突きの。気にしてない・・・その、何か用か?」

 

「次の作戦には参加するのですか?」

 

「作戦?蛭子影胤の件か・・・当然だ」

 

「少し安心しました。あなたがいるなら勝率も一気に上がるでしょうから」

 

「蛭子影胤は必ず仕留めるさ・・・・こんな子供が戦わなくても良い世界であればいいのにな」

 

苦笑いを浮かべて少女の頭を軽く撫でると青年は去っていった。夏世は始めて撫でられたことに驚きつつ少しの間その手の感触に浸っていた

貴音の残した言葉が思い浮かぶ

 

「そんなものは夢物語に過ぎません。でも、そうであればいいのにと思うのは仕方のないことなのかもしれませんね、私も・・・」

 




お久しぶりです

遅くなってすみません。それにしてもなかなか話が纏まりませんね・・・・
原作を読んでいるとついつい親しい間柄の人と二人きりになったら堅い口調が崩れる夏世を想像しては一人で盛り上がっています

感想などありましたら随時募集しております
よろしくお願いします


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