【完結】天才科学者と恋の話 (オルトルート)
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篠ノ之束とアイツの話

 


 某日 某所 とある貸し切られた喫茶店の中で

 

 ☆

 

 はろはろー、みんなのアイドル束さんだよー。

 どうしたのちーちゃん。直接会うなんて久しぶりだねー。

 

 

 うんうんうん。そーだね、束さんもそう思うよ。

 

 

 うんうんうん。そーだね。束さんもそう思うよ。

 

 

 うんうんうん。そーだね、束さんもそう思うよ。

 

 

 うんうん。じゃあ、束さんは帰るね。

 

 

 

 ちょっとちーちゃん、袖ひっぱらないで。

 服のびちゃう。 服。

 うん分かった、座る。

 座りますから袖離そう? うん。

 

 

 どっこいしょ、と。

 で、どうしたのさ急に。言っておくけどIS作れってのはナシだよ。

 

 絶対やらない。 うん。 四百個も作れば十分でしょ。

 満足してないんだったら一気に稼働停止させてやるからこっちに連絡してよ。

 軍事利用とか許した覚えはないんだけどね、全く。

 

 

 で、本題は?

 ちーちゃんの事だからいっくん絡みのこと?

 でもいっくんってば中々箒ちゃんにアプローチしないし……。

 

 

 ……は? 別の事? 珍しいね、ちーちゃんが他の事なんて。

 それで、何を聞きたいのかな?

 ……アイツの事を聞かせてほしい?

 急にどうしたのちーちゃん? 頭でも打った?

 

 

 痛ったい! 殴ることないでしょちーちゃん!!

 え? アイツがISを動かした?

 

 

 ……いやいやいや、ちーちゃん大丈夫? まだ寝ぼけてない?

 アイツの性別を思い出してみよ? 男だよ?

 アイツは生物学的にも、精神的にも立派に男だよ?

 で、ISの最大にして最も厄介な特性は何?

 そう! 女の子にしか動かせない!!

 

 

 大せいかーい! というわけで多分ちーちゃんの勘違いだよ。

 というわけで束さんはもう帰るよ。

 これからTUT〇YAの旧作をまとめてみる作業が……

 

 

 は? いっくんはどうなんだって?

 ハァ~~……。 ちーちゃん、君はいっくんの何を見てきたのさ。

 

 

 いい? ちーちゃん、いっくんは誰のことが好きだと思う?

 そう!! 我が妹、箒ちゃんだよ!!!

 箒ちゃんだよ? あの箒ちゃん!!

 キュートでプリチィでハイパーかわいい箒ちゃんだよ!!!!

 

 見てこれ箒ちゃんの最新版の写真!! いっくんとツーショットなんだよ!

 あぁ、箒ちゃんはいつ見てもかわいい…。

 

 

 あーダメ! ちーちゃん!! アイアンクローはダメ!!脳みそつぶれちゃう!!

 束さんの偉大な頭脳が消えちゃう!! ダメ!!

 

 

 はー、痛かった……。 で、いっくんが動かせたわけ?

 そうだね、いっくんが好きなのは箒ちゃんなんだよ。

 だから束さんは考えたんだよ。

 いっくんと箒ちゃんをくっつけて、ハッピーにしてやろうって……!!

 

 え? 回りくどい? ちーちゃんはせっかちだねぇ。 動かせた理由?

 そんなのこの束さんが調整したからに決まってるじゃん。

 逆にそれ以外何かあるとでも? ちーちゃん馬鹿なの?

 

 

 ごめんなさい!! 謝るからソレはダメ!! すっごい痛い!!

 新しいアイデアとんじゃう!! やめて!!

 

 

 ほんとちーちゃんってば物騒だね。 箒ちゃんとは大違い。

 おっと、もうアイアンクローはダメだよ?

 で、アイツがIS動かせた理由だっけ。

 

 

 へぇ、ふーん……。

 ははぁ……、なるほど。

 ちーちゃん、束さんがいっくんと同じくアイツのISに細工したって考えたんだね?

 

 

 全く、ちーちゃんは束さんをなんだと思ってるのさ。

 いいかい? 束さんにとってはアイツは路傍の石ころみたいなものだよ。

 アイツの事なんて全く眼中にないし、アイツを意識なんて全くしてない。

 

 

 そもそも、アイツとは二年十か月と三日も会ってないし。

 アイツの声を聴いたのだって六か月と十二日も前だし。

 アイツの事を考えるのなんて一日に一回だけだよ?

 そんな奴のためにどうしてISの調整なんかするのさ。

 

 

 ちーちゃんは愚かだねぇ、ウププ。

 ま、アイツがISが動かせようと動かせまいと、束さんには関係ないけど。

 ……口元が緩んでる? さぁ、何でだろうねぇ。

 ウププ、かわいいねぇ、ちーちゃん。

 

 

 ん~? ちーちゃん怒った?

 ごめんね~、束さん優秀だけどそういう事分かんないから~。

 ここのデザート奢ってあげるから許して? 一個二百円だよ~?

 

 

 …………え? 何そのノート。 ねぇ、束さんの持ち物によく似てるんだけど。

 ちょっと、もしかして束さんの部屋入った? 勝手に?

 ちーちゃんこっち向いて。 ちーちゃん。

 

 引き出しが開けっ放しだった?

 だからといって持ってくる? ちょっと、ねぇ。

 

 ……中身は見てないよね?

 なんで目そらすのさ。 ちーちゃん?

 中身は見てないよね? うんって言って?

 ちーちゃん。 ねぇ。 こっち向いてって!! ねぇ!!!!

 

 あーダメ!! 朗読はダメだよちーちゃん!!!! 朗読はダメ!!!

 

 困るよちーちゃん朗読はダメ!!

 

 お分かり!!?? 朗読は、ダメ!!

 

 ねぇ聞いてる!??!? 朗読はダメだって!!

 

 ダメって言ってるでしょ!!!!! ねぇダメだって!!

 

 それ渡して!! ほんとに朗読はダメ!! 

 

 あぁ、警備員さん来ちゃう!! ダメだってちーちゃん!

 

 わかった、わかったから早くそれをこっちに渡して!!

 

 はぁ、はぁ、はぁ……。

 ちーちゃん、恐ろしい手段をとってきたね……。

 まぁ、コレを盗み見られたのは痛いけど、なんとか……

 

 

 は? コピーした? 変なこと言ったらばら撒く?

 ……ちーちゃん、マジでこれはダメだよ。

 ううん、冗談じゃなくてマジで。 

 

 

 ……これから全部正直に話すからコピーの場所教えて。

 うん。 全部。 断ったらもう二度とISコア作んない。

 マジだよ。 うん。 はやく教えてよ。

 

 

 なるほど……。まぁ、この処分は後でするとして。

 で、これ見たからアイツの事を聞きに来たわけ?

 そっか、うん、そっかぁ……。

 

 

 一応聞いておくけど、このノートの事誰かに話した?

 ん? そりゃあ聞いた奴はちーちゃん以外生かしておけないから……。

 誰にも話してない? はぁ、良かった。 

 

 

 で、束さんの隠された気持ちを暴いた気分はどう? ちーちゃん。

 満足かい? ふふ、束さんは死んでしまいたいよ……。

 あぁもう、何で鍵かけるの忘れちゃったかなぁ、もう……。

 

 

 ん? どうしたのちーちゃん。 そんな顔して?

 隠せてると思っていたのか?

 

 

 そりゃあちーちゃん、私は篠ノ之束だよ?

 あの世紀の大天才だよ? そんな束さんが気持ちを隠し通せないなんて。

 

 

 え? ばれてた? いつから? 十数年前から?

 ちょっとちーちゃん、どういう事?

 

 

 え? バレバレだった?

 そそそそんな訳ないでしょ!! この束さんが、束さんがだよ!?

 アイツに対しての気持ちを隠し通せてないわけないでしょ!!

 

 

 へぇ、証拠。 なるほど。

 ……小学生の時の写真? また懐かしいものを持ってきたね。

 で、それが何の証拠になるの? 

 

 

 これ? 道場で撮った写真だね。

 そうそう、アイツがこのとき珍しく道場に来てくれてた時。

 

 ……ん? 束さんはたまたまだよ?

 たまたま、『あ、道場に行きたいな』って思ったからやってきただけだよ?

 その時ホントにたまたま、『ちょっといい服着てみよう』って思ったからその服着てるだけで。

 アイツの姿が見えたから道場におめかしして行ったわけじゃないんだよ。

 

 

 次は? 束さんの部屋だね。

 アイツが掃除に来てくれた時のやつ。

 

 

 ……失礼な、束さんだってたまに掃除したりするさ。

 掃除に手がかかっちゃうからアイツを呼んだだけだし。

 それに、たまに自室でもおしゃれしたいときもあるよ。

 全く、ちーちゃんってばデリカシーがないね。

 

 

 最後に? 神社の境内。

 ふむふむ。 ……ん? 神社の境内?

 ちょっと、ちーちゃんコレってさ。 うん、夏祭りのとき。 ほうほう。

 これについては触れないでおこう。 いいね、ちーちゃん。

 

 

 あー! ちーちゃんダメ!! 解説いらない! ノー!!

 やめてって! わかった、認める! 認めます!!

 あーもう、何でこんなの発掘してくるかな!!

 

 

 そうだよ!! 勢いで初キスしたよ!!!!

 ちょっと大人っぽいキスだった!!!! 

 

 

 はぁ、はぁ、はぁ……。

 え? 知らなかった? じゃあ、この写真は?

 ちーちゃんがここ。 いっくんがここ。 箒ちゃんがここで。

 …………。 そうだね、ここらへん。 ここでしてる。

 うん。 ……じゃあ、束さん帰るね。

 

 

 離してちーちゃん!! もう生きていける気がしない!!

 あぁ、なんで余計なことまで言っちゃうかな、ホント……。

 

 

 で、今度こそなに?

 ……アイツがISを動かせたわけ?

 うーん、そうはいっても……。

 …………あ。

 

 

 いやいや、なんでもないよ?

 ちーちゃん、残念ながら束さんには見当もつかない。

 これから帰って色々考えてみようと思うんだ。

 だから今日は一旦解散して……。

 

 

 一日デート?

 ………………。 

 …………その程度で揺らぐほど、束さんは安い女じゃ……。

 ……お泊り込み??

 

 

 えーと、ちーちゃんちょっと。

 うん、こっち来て。

 

 

 …………。

 …………。

 …………。

 

 

 かなー、って思うんだけど……。

 ちーちゃん? ちょっと、顔真っ赤だけど。

 あの、ホントに誰にも言わないでね?

 コレばれたら束さん自殺しちゃうから。

 

 

 はぁ。じゃあ、束さんは今度こそ帰るよ。

 ……ちーちゃん、アイツの予定は確保しておいてね。

 うん、頼んだよ。

 それじゃ、また。

 

 

 ☆

 

 

「というわけで、頑張れ色男」

「マジかよ」

 




登場人物

・束さん
 子供のころに一目ぼれしたオリ主君すきすきウーマン。
 オリ主君のことを考えてるとウププって笑う。
 IS開発したけど割と平和に過ごしてる。多分白騎士事件起こしてない。

・ちーちゃん
 束さんの無自覚ラブアピールに嫌気がさしてきたので追い詰めてみたら面白い話が聞けたウーマン。
 束さんの親友兼ライバルみたいなもの。なお束さんは気づいてない模様。

・オリ主くん
 名無し。多分イケメン。
 束さんとちーちゃんと同い年で幼馴染。
 好きなタイプはおっぱいが大きい人。

・いっくん
・箒ちゃん
 原作主人公と正ヒロインみたいな名前してる。
 出番は少ない。

・いろんな質問
Q.束さん何読まれたの?
A.多分ラブポエム。

Q.束さん指名手配されてなかった?
A.知ら管

Q.この世界だとアラスカ条約どうなってんの?
A.知ら管

Q.この世界だとISってどんな立ち位置なの?
A.第一世代しか普及してない感じ。
 束さんが余計なブレイクスルーをしないので平和です。

Q.IS学園はできるの?
A.できない。 ちーちゃんはIS動かしたい人向けの指導員みたいなことしてる

Q.いっくんとオリ主くんIS動かしてるけどこの先どうなるの?
A.束さんが何とかしてくれる

Q.なんで束さんこんなに甘いの?
A.オリ主くんすきすきの影響でちーちゃんの性格矯正をまともに受けた世界線かも

Q.続きは?
A.気が向いたら


Q.怪文書っぽい
A.Exactly


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篠ノ之束と予定の話

 某日 早朝 織斑家にて

 

 ☆

 

 ちーちゃん起きて!! 朝!!!

 朝だよ!! 朝!! すっごい朝!!

 見て太陽! 太陽すっごい!!

 ほら見てちーちゃん太陽だよ!!!

 寝てないで起きて、ほらほら!!

 

 

 おっとちーちゃん、グーはやめよう。

 うんごめんごめん、ちょっとふざけすぎました。

 

 

 なんでここにいるって、そりゃ玄関から入ったんだよ。

 いっくんが開けてくれたよ?

 いくら束さんでも窓から侵入したりしないよ。

 大丈夫ちーちゃん? 寝すぎて馬鹿になってない?

 

 

 痛ったい!

 

 

 なんの用だって? ちーちゃんがそれを聞く??

 ……え、まさか忘れられてるの?

 グスン、ひどいよちーちゃん。

 束さんの秘密を暴いておいて約束は破るなんて。

 これはちーちゃんも秘密を暴露してもらうしか……

 

 

 え? だから、ほら、あれだよ。

 …………アイツの予定、確保しておくって。

 ねぇそう言ったでしょ!? 言ったでしょちーちゃん!!

 言ったって言えよ!!!

 

 

 痛ったい!! 

 

 

 で、いつが空いてるんだって?

 束さんの予定? ないよそんなの。

 講演会とか全部断ってるし。

 会談とかしたくないし。

 ……それでいいのかって、これでいいんだよ。

 

 

 束さんは一応ISの開発者だけどね。

 ISを兵器に使ってほしくないわけなの。

 それなのにね、あいつらときたら人の理念をぶち壊すことへらへら言いやがってさぁ。

 なにが世界を変える力を作りませんか、だよ。

 束さんはアイツと一緒にいられる今の世界がいいんだよ。

 

 

 そんなんだから、今は予定ゼロ! 入ってもキャンセルできる!

 というわけでアイツの暇な日教えて?

 ……知らない?

 オイオイオイオイちーちゃん、そりゃないでしょ。

 

 

 アイツとその……デ、デートの約束を取り付けてくれるってこの間言ってたでしょ!?

 取り付けた? アイツにそう言っておいただけ!?

 ……うぐぐ、一応妥当な線かぁ。

 それでちーちゃんとアイツがデートしたら終わりだしね。

 

 

 ……え、ちょっとちーちゃん何その顔。

 狙ってたの!??

 束さんの秘密をネタにして!!??

 アイツとのデートを狙ってたの!?

 

 

 ごめんなさい! ふざけすぎたのは謝ります!!

 ヘルプ! ヘルプです!!

 束さんの脳みそがクラッシュ寸前です!!

 ヘルプです!!!

 

 

 なにさちーちゃん、そんなしかめっ面して。

 ……直接聞け、ってことは束さんがアイツに聞けってこと?

 無理だよ。 束さんアイツのアドレス知らないし。

 

 

 いや、逆に何で束さんが知ってると思ってるのさ。

 世間一般じゃ大天才みたいに持ち上げられてる束さんですがね。

 束さんにも知らないことはあるわけですよ。

 だから束さんもこうしてちーちゃんに頼み込んでるわけであって----

 

 

 なんだい、その眼は。 ちーちゃん。

 ハッキングかなんかで知ってると思ってた?

 ………………。 

 ……まぁ、できるできないで言えばできるけど。

 あー、ちーちゃん引かないで!!

 まだ調べてない! まだ調べてない!!

 

 

 はぁ、ちーちゃん、よく聞いてね。

 束さんだって成長してるんです。

 そりゃあ、ちっちゃい頃の束さんならさ。

 『アイツのアドレスどころか現在地まで全部わかっちゃうね☆

 ……みたいなことはやるだろうけどさ。

 

 

 いややってないから。

 聞いて? 聞け。 話を最後まで聞け。

 でもね、今の束さんは考えるわけですよ。

 『アイツのアドレス調べるのにハッキングするとか無駄じゃない?

 ってさ。 ほら! まともな思考回路してるでしょ!

 

 

 ……まぁ、小難しいことを抜きにするとね。

 こっちがアイツのアドレス知ってるのに、アイツはこっちのアドレス知らないっていうのはさ。

 なんていうか、こう。

 ……アイツから見て、束さん重くない?

 

 

 あー、ちーちゃん笑ったね!

 ひどいなぁ、束さんがここまで悩んだのなんて久しぶりなんだよ!?

 具体的にはISコアの製造と同じくらい!

 もう、ちーちゃんってば意地悪しないでよ!!

 

 

 だからこうしてちーちゃんを仲介してアイツの予定を確保しようとしたのに。

 まさかそのちーちゃんが何も知らないなんて思わなかったよ。

 ……え、今までどうしてたんだって?

 アイツに会うとき?

 そんなのアイツの家に直行だけど。

 

 

 アイツに会いに行こうと思えばいつでも会いに行けたし。

 連絡? しないしない。

 連絡しなくても会える時には会えるし。

 ウププ、束さんってばアイツの家に顔パスで行けるんだよ?

 ちーちゃんとは違って何回も行ってるからね!

 

 

 ……え、ちーちゃんも顔パスなの?

 びっくりっていうか、え?

 束さんが顔パスになったの中学生のころだけど。

 ……小学生のころから顔パス?

 お母さまにも挨拶してる?

 

 

 へ、へぇ~。

 ま、まぁ束さんには関係ないけど。

 関係ないよ?

 ……なんで笑ってるのさ。

 ねぇちーちゃん何で笑ってるのさ!

 

 

 ん? どうしたの真剣な表情して?

 家に顔パスで入れるなら直接会って予定確認すればいい?

 …………………。

 ……………。

 しまった、その手があったか!!!

 

 

 いや、でも考えてみてちーちゃん。

 二年も会ってない女がいきなり家に上がり込んできたらどう思う?

 通報? だよね、束さんもそう思う。

 この手は使えないね。

 

 

 えーと、他には何かあるかなー、と。

 ……あ。

 束さんアイツのこと待ち伏せしたことあった。

 いやー、そうだったねそうだったね。

 確かアイツがいつも通る道で----

 

 

 ……え、ちょっと待ってちーちゃん引かないで。

 なんでいつも通る道を知ってたかって?

 別に不思議でもないでしょ。

 アイツの勤務先の近くなんだし。

 何? ちーちゃんは束さんが不正にアイツの場所をつかんでるとでも?

 

 

 ……そこで頷かれるとなかなか心にクるものがあるね。

 でもお生憎さまだねちーちゃん!

 束さんはね、アイツに関わることで不正は一切しないの。

 アイツ、不正とか好きじゃなさそうだし。

 

 

 二年も会ってなかったにしては詳しく知りすぎ?

 …………ちーちゃん、知ってる?

 これはアイツが言ってたんだけどね。

 『ばれなきゃ犯罪じゃない』んだってよ?

 

 

 あーストップ! ストップちーちゃん!!

 警察はダメです! ノー!

 またあの母親から口うるさく言われる!!

 それだけは勘弁して!

 

 

 ちーちゃん、いつも通り束さんに対しては遠慮がないね……。

 逆に聞くけどちーちゃんアイツの勤め先とか知らないの?

 知らない? なんで?

 ちーちゃんは束さんより会う機会あったはずだけど。

 

 

 ……あー、はいはい。

 そういえば教習って名目でいろんなとこ巡ってたっけ。

 この間は? ドイツ。

 はぁー、またいろんなとこ回ってるねー。

 束さんは自宅に引きこもってたけど。

 

 

 ま、これでアイツに会う手段は確保できたね。

 なら後は束さんがアイツに会って。

 ……直接予定を聞けばいいんでしょ?

 な、なんてことを言うのさちーちゃん!!

 いくら束さんでもそんなことはしないよ!!!

 

 

 ……まぁ、待ち伏せは仕方なかったし。

 それに、あの時はそんなことしてないよ!

 全く、その顔は全然信じてないね。

 こうなったら----

 

 

 あ! いっくん!

 ちょうどいい所に来てくれたね。

 

 

 よしよし、そこに座って。

 別に取って食うわけじゃないから、そう緊張しないで。

 ちーちゃんもその腕を引っ込めてくれると嬉しいなー。

 で、いっくんにオトコノコとして質問があるだけど。

 

 

 んーと、そうだね、箒ちゃんがいいか。

 いっくんと箒ちゃんが違う学校に通ってるとするね。

 で、箒ちゃんがいっくんに会いに行こうとするわけだよ。

 ……なんのために? そんなことはいいんだよ。

 こら、ちーちゃん笑わないで。

 

 

 で、箒ちゃんはいっくんに会うために、通学路で待ってるわけだよ。

 箒ちゃんは、いっくんに会うと寄っていって、挨拶してくる。

 満面の笑みを浮かべながら、おはようって言ってくるんだよ。

 いっくんはそれに返して、しばらく一緒に歩く。

 

 

 むふー。 で、だね。

 この行為、いっくんはどう思う?

 こうされてオトコノコはどう思うか聞きたいわけだよ。

 

 

 ……別にどうとも思わない?

 ほんとに? 箒ちゃんが待ってるんだよ?

 箒ちゃんが待っててくれてるのに何も感じないの!?

 ちょっといっくん、ホントに何もないの!?

 

 

 ……仲がいいならそれくらい普通?

 ふつう、フツウ、普通。

 そっか、これが普通の事なんだね。

 あーうん、ありがとういっくん。

 大丈夫だよ、束さんはへっちゃらだよ。

 

 

 ……なにさ、ちーちゃん。

 言いたいことがあるなら言っていいよ。

 泣いてないよ。

 別に勇気を振り絞った行動が普通扱いされてショックだったわけじゃないよ。

 だから泣いてないよ。

 泣いてないってば!!!

 

 

 

 ☆

 

「おおおおおう! 久しぶりだね!」

「……束? ずいぶんと久しぶりだな」

「ところで最近暇な日ってあるかな!?」

「なんだいきなり。 ……あー、来週末----」

「おっけい来週末だねそれじゃあ!!!」

 

「……なんだ今の?」




登場人物
・束さん
 恋愛クソザコ天才科学者。
 特技は発明。好きなものは妹。
 この後どこに行くか決めてなくてめちゃくちゃ後悔した。
 その後ちーちゃんに泣きついた。
 
・ちーちゃん
 めっちゃ強いISの教官。
 特技はアイアンクロー。好きなものは弟。
 この後めちゃくちゃプランニングした。

・オリ主くん
 名無し。一人暮らししてる。
 特技は料理。好きなものは宇宙。
 この後めちゃくちゃ困惑した。

・いっくん
 女心が分からない。
 幼馴染が最近弁当を作ってきてくれる。


・いろんな質問
Q.オリ主くんIS動かしたのに普通に過ごしてるみたいだけど?
A.束さんが何とかしてくれました

Q.いっくんも普通に生活してますけど?
A.束さんが何とかしてくれました

Q.オリ主君とか人体実験に連れていかれない?
A.束さんガードがあるから安心!

Q.顔パスっていうかこれ不法侵入じゃん?
A.オリ主「幼馴染が家にいてくれると嬉しいのでオッケーです」



Q.ちなみに束さんがオリ主君の家に押し入ってたらどうなった?
A.束さんは疲れからかオリ主君に押し倒されてしまう。
 そのまま一晩中ぐっすり→やっちゃった!?ルート。
 なお束さんは押し倒された時点で気絶する模様。


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篠ノ之束とデートの話

 


 某日 正午 某喫茶店にて

 

 

 ☆

 

 

 はろはろー!

 こっちだよ、こっち!

 もう来たんだ。

 意外と早かったね。

 

 

 束さん? そんなに待ってないよー。

 ついさっき着いたばっか。

 でも、女の子を待たせるなんて罪な男だね。

 ふふっ、そんなに狼狽えなくてもいいよ。

 別に怒ってるわけじゃないんだし。

 

 

 とりあえず座りなよ。

 うん、こっちに座ってもいいよー。

 はは、冗談だよ冗談。

 束さんの隣はそんなに安くないの。

 キミなら別にいいけど……。

 

 ……なに? どうしたの急に?

 束さんの格好がどうしたのさ。

 言いたいことがあるなら言っていいよ。

 ……変でしょ? 多分。

 …………似合ってる?

 へ、へー、ありがと。

 

 

 ま、まぁそっちも似合ってるよ!

 うん、なかなか似合ってる。

 特にそのネックレスとか、すっごく似合ってる!

 うん、えへへ。

 

 

 ん、ンン!!

 え、えっと……。

 あの、さ。

 な、何か頼む!?

 

 

 いや、行く前に軽く食べておこうかなー、なんて。

 ちょっと歩くかもしれないからね!

 あはは、はは。

 た、束さんはコーヒーとケーキもらおうかな!!

 

 

 キミも一緒のでいい?

 えと、すいません、あの、コーヒー二つお願いします。

 あとケーキ、二つお願いします。

 はい、お願いしまーす。

 ……ふぅ。

 って、ちょっと、何笑ってるのさ。

 

 

 束さんの言葉遣いがそんなに変?

 ……まぁ、慣れないことしてる自覚はあるよ。

 今は周りから浮かないのが第一目標だからね。

 店員に変な態度とったら一発アウトだよ。

 

 

 なんでそんなことしてるのかって?

 ……ちーちゃんがね、お前はまず目立ちすぎるなって。

 二人で出かけるなら、ちゃんと隠れておけって。

 ……束さん、そんなに目立ちやすい?

 あ、はい。 そんなに。

 そっかー、そうだったかー……。

 

 

 …………ふふ、にしてもよかった。

 なにせ、二年も会ってなかったからさ。

 こんなに急に会ったら気まずいと思ってたんだよ。

 でも、キミはやっぱり変わらないね。

 束さんの杞憂だったみたい。

 

 

 そういえば、この二年どうだった?

 ……いつも通り?

 あのねぇ、束さんはそのいつも通りを聞きたいの。

 何か面白いことあったりしなかった?

 ……あ、ISを動かした事は除いていいよ。

 ちーちゃんからもう聞いてるから。

 

 

 なんで動かせたのかって?

 …………。そりゃ、束さんの……。

 …………わかんない。

 えぇい、わかんない! わかりません!

 この世紀の大天才でもわかりません!!

 

 

 というわけでこの話はおしまい!

 あと、一応極秘事項なんだからね、それ。

 あんまり軽々と話さないほうがいいよ。

 ……いっくんもそうだけど、君も考えが甘いというか。

 

 

 とにかく、それ以外だと何かあった?

 例えばほら、……彼女、とか。

 できたんじゃないの?

 …………いない?

 ほんとに?

 

 

 いや疑ってるわけじゃないよ?

 でもそっか、いないんだ。

 いないんだ……。

 んふふ~。

 いやぁ? 束さんはいつも通りですよ?

 

 

 へ? 束さんに彼氏?

 …………いないよ。

 そもそも束さんに釣り合う人がいたと思う?

 ……でしょ?

 ちーちゃんにも彼氏いないし。

 

 

 ふぅ、じゃあ他には?

 ……ないの?

 嘘だぁ、なんかあるはずだよ。

 ほら、なんか衝撃的なこと言ってみて。

 

 

 告白!!???!??!

 え、ちょ、ホントに!?!??

 こ、告白……。

 あはは、ま、マジで……?

 誰かに、告白、したの……?

 

 

 ……された?

 は、ははぁ。

 ……断ったの?

 

 

 は、はぁー。

 びっくりした。

 そっか、告白されることもあるよね。

 するだけが告白じゃないもんね。

 いやー、今世紀で一番驚いたよ。

 

 

 …………え? 驚きすぎだって?

 そりゃ驚くでしょ。

 だって、キミだよ?

 束さんとちーちゃんと色々やってたキミがだよ?

 まさか告白されるなんて……。

 

 

 束さんもちーちゃんもそういうのに縁遠いしね。

 ちーちゃんは世界中飛び回っちゃうし。

 束さんは基本的に人と関わらないし。

 ……見てくれはいい、って微妙に失礼だね。

 後でちーちゃんに報告しておくよ。

 ……でも、束さんの見た目は好きってこと、なのかな……?

 

 ……束さんのほう? 

 何か面白いことあったかって?

 ………………。

 ……うーん。

 

 

 強いて言えば……そうだねぇ……。

 あ、束さん最近料理はじめたんだよ。

 意外と面白いね、アレ。

 はじめはめんどくさいと思ってたんだけど。

 最近は楽しくなってきてるよ。

 

 

 そのうち食べさせてあげようか?

 まだ練習中だからあんまりおいしくないから。

 もし上手くなったら、だけどね。

 …………すぐにでも食べたい?

 いいの? おいしくないかもしれないんだよ?

 

 

 ……えへ、えへへ。

 いやー全くしょうがないなぁ。

 そこまで言うなら後で食べさせてあげる――――

 といいたいところだけど、やっぱりまた今度ね。

 いや、なんていうか、こう、ね。

 中途半端なものを出したくない、というか……。

 どうせなら美味しいって言ってもらいたいし。

 

 とにかく!

 キミに今度とっても美味しい束さんお手製料理をご馳走してあげる。

 覚悟しててね?

 ふふ。

 

 

 あ、そんなこんなしてるうちに来たね。

 おー、結構おいしそう。

 さすがちーちゃんオススメのスポットなだけあるね。

 ……ん? 

 その口ぶりからするに、前にここ来たことあるの?

 

 

 ……え。

 子どものころに?

 束さんもちーちゃんと一緒に?

 ここに来たことがあるの?

 

 

 嘘、ホントに?

 えっと、何歳くらいの時?

 ……七歳か八歳。

 ってことは、出会ってすぐのころ?

 

 

 うわ~~。 ……あの頃かぁ。

 束さんすっごいムスーっとしてた時でしょ?

 そうそう、あのかわいげのない感じで。

 あ~、なんか思い出してきた。

 ここアレでしょ。

 仲直りした喫茶店。

 

 

 うわー、やっぱり。

 確かあの時はちーちゃんとキミがそっちに座ってて。

 そうそう、あの母親が束さんの隣だった。

 で、三人で裏山で喧嘩したって言ったらここに連れてこられて。

 三人でケーキ食べてごめんなさいしたね。

 

 

 ふふ、懐かしいねぇ。

 ……というか、ちーちゃんもそのこと言ってくれればいいのに。

 あれかな、ちーちゃんの中だとアレは黒歴史ってやつなのかな。

 ははは、そうそう、一番無双してたのちーちゃんだった!

 束さんもキミもげんこつ食らってたねー。

 

 

 ……というか、よく覚えてたね。

 もう十年以上前の話なのにねぇ。

 そんなに印象的だった?

 あー、やっぱり。

 あの母親凄い圧出してたしね。

 

 

 たまに夢に見る?

 あー、それは……。

 なんていうんだろ、ご愁傷様?

 あそこまでガチで怒ったのはあれだけだしね。

 

 

 ……ん? そっちじゃない?

 じゃあなんなのさ。

 

 

 ……束さんの事?

 ほうほうほうほうほう。

 束さんの事をたまに夢で見ちゃうと。

 ……あー、でもあの時の束さんの事を?

 なんだろ、素直に喜べないというか……。

 

 

 ちなみに、今振り返って当時の束さんのことどう思う?

 ……ず、随分バッサリ言うね。

 でもそっか、「生意気なヤツ」かぁ。

 ……ふふ、「生意気」ねぇ。

 多分世界中探してもそういうのはキミだけだろうね。

 

 

 そうだよ。 少なくても束さんは違うし。

 あの頃の束さんはねー。

 「生意気」じゃなくて「クソ生意気」だったんだよ。

 んふふ、ちょっと納得したでしょ?

 むー、素直じゃないねぇ。

 ちっちゃかった頃のキミは素直だったのに。

 

 

 でもそっか、もう十数年経ったんだ。

 キミと出会って、色々あって。

 みんな大人になって。

 束さんの夢がようやく叶うところまで来た。

 ふふ、時間がたつのは早いねぇ。

 

 

 おっとっと、コーヒーが冷めちゃう。

 ……あ。 そういえばあの時、キミだけコーヒー飲んでたよね?

 だよね、やけにおいしそうに飲んでた。

 君のをちょっと飲ませてもらったけど苦くて苦くて。

 なんか敗けたみたいな感じだったからよく覚えてるよ。

 

 

 でも今はこうしてキミと同じものが飲めてる。

 苦いものだって克服したんだよ。

 これでキミに並んだわけだ。

 ふふん、束さんも少しは成長するのさ。

 

 

 …………成長、かぁ。

 いや、昔の束さんだったらなんて言うかなーって。

 ほら、あの頃の束さんってもっとサバサバしてたでしょ?

 あの頃思ってた未来とは全然違うカタチになったけど。

 あの頃の束さんなら、後悔したりするのかなー、って。

 

 

 ……今の束さんなら?

 そりゃ、後悔なんてしないよ。

 でも、不安にはなるんだ。

 この選択は正しかったのか。   

 この未来は望んでいたものか。  

 そんなことばっかり考えちゃうんだ。

 

 

 キミはどう?

 今もあの頃と同じミライを夢見てる?

 今みたいな時代になってよかったと思う?

 …………そう。 

 うん、君がそう思うなら、束さんも嬉しい。

 

 

 ……って、なんか恥ずかしい話してるね。

 あ、あはは。

 け、ケーキ! ケーキ食べちゃお!

 交換とかしちゃおう、うん!!

 そっちもちょっとくれると嬉しいな!

 あはは! あはははは!! 

 

 

 ☆

 

 

「じゃあ、今日はありがとね!!」

「おう。 ……なんだ、またな」

「……うん、またね!!!」

 

 

「って感じだったの! 羨ましいでしょちーちゃん!!」

「なんだ束、お前お泊りせずに帰ってきたのか」

「あっ」




登場人物
・束さん
 ちーちゃん経由でオリ主くんを呼び出してデートしてきた。
 お泊りの事はすっかり頭から抜け落ちてた。
 オリ主くんの前だとふふ、って笑う。
 

・オリ主くん
 ちーちゃん経由で束さんに呼び出されてデートしてきた。
 お泊りあるって聞いてたけどさっさと帰ったから用事でもできたのかと思ってた。
 


・いろんな質問
Q.オリ主くん女の子を家に上げることに抵抗ないの?
A.束さんとかよく上がり込んでくるから慣れてる。

Q.オリ主くん女の子を家に泊めることに何とも思わないの?
A.束さんとかよく泊まり込んでたから慣れてる。

Q.オリ主くんモテるの?
A.そこそこモテる。ただ告白されたのは今回が初めて。

Q.この後どこ行ったの?
A.どこにも行かず喫茶店で駄弁ってた。
 ちーちゃんのプランニングは犠牲になった。

Q.オリ主くんは束さんの事どう思ってるの?
A.仲のいい女友達(ちょっと気になってる)
 


Q.もしオリ主くんが冗談みたく彼女いるって言ってたらどうしたの?
A.そっか、おめでと、みたいなことを言って。
 そのあと帰って一人でえんえん泣いて。
 それでもずっとオリ主くんのことを想い続ける。

Q.愛がクッソ重たいなこの兎。
A.束さんも自覚してる。


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篠ノ之束とお酒の話

 
 ――――篠ノ之束にとって。
 変化とは忌避するべきものだった。

 篠ノ之束は、赤子の時点で『完成』していた。
 周りの子が何も分からぬ赤子の時点で、篠ノ之束は世のほとんどの事柄を理解していた。
 名も知らぬ学者が唸っていた問題も、見れば瞬く間に回答を導き出せた。
 人々は彼女を“天才”と呼び、その頭脳を称賛した。
 しかし、篠ノ之束にとって、そんなものはどうでもよかった。

 篠ノ之束も人間である。
 知ったことを自慢したいし、知らないことを知りたい欲求もある。
 しかし、彼女の周りの環境はそれを許さなかった。
 知らないことは何もない。 なんでも理解できてしまうから。
 知ったことは自慢できない。 誰にも理解されないから。

 篠ノ之束が、周りに見切りをつけるのにそう時間はかからなかった。
 次第に、彼女は自分と同じ“天才”を探すことに力を入れ始める。
 一方で、“凡人”には見向きもしなくなった。
 “凡人”は理解しないからだ。
 どんなことを言っても、“才能”の一言で片づけられてしまう世界。
 才能を褒め称え、篠ノ之束を見ようともしない存在。

 そんな存在と、“天才”が同一であるはずがない。
 故に、篠ノ之束は変化を忌避した。
 『完成』している自分は、これ以上変化する必要はないからだ。
 変化して、“凡人”になることを恐れたのだ。

 ある日、彼女は求めていた“天才”を見つけた。
 その“天才”の名は、織斑千冬。
 彼女は、篠ノ之束が予想していた通り、篠ノ之束のよき理解者となった。
 彼女にとっての運命的な出会いといってもいいだろう。

 そして、またある日。
 篠ノ之束は再び運命的な出会いを果たす。
 彼は、忌避していた“凡人”だった。
 彼は、求めていた“天才”でなかった。
 ――――けれど。 
 彼の存在は、“篠ノ之束”という存在を確かに変えた。


 篠ノ之束にとって、変化とは忌避すべきものであった。
 だけど、彼がもたらした変化だけは、素直に受け止めようと思えた。
 生まれたこの気持ちだけは、“天才”でも理解できなかったから。 
 


 某日 夕刻 織斑千冬宅にて

 

 ☆

 

 んん~っ、美味しい!!

 やっぱりこういう変な銘柄ついてるのはいいねぇ。

 一山何百円の缶とは大違い。

 じゃあもう一口……、と。

 

 

 やっほぅ、こんばんはちーちゃん。

 お邪魔させてもらってるよー。

 いやー、ちーちゃんってお酒のセンスいいよね。

 こればっかりはちーちゃんに負けるよ。

 

 

 ……何、その顔は。

 このお酒?

 ちーちゃんの部屋にあったやつ。

 そうそう、なんか箱に入ってた。

 いやー、おいしそうだなーと思ってね。

 ついつい手を出しちゃったんだよ。

 

 

 おっと、ちーちゃん何でそんな呆れ顔?

 プレゼントだったの? 誰への?

 ……束さんへの?

 へー、ありがとねちーちゃん。

 初めて飲んだけど、束さんこのお酒好きだよ。

 

 

 にしても量多いね。

 軽く二人分くらいはあるんじゃないの?

 え、二人用だったの?

 ならちーちゃんと分け合えば解決だね。

 

 

 ……にしても、これなんのプレゼント?

 束さんの誕生日はまだまだ先だし。

 今日は特別なことがあった日でもないよね。

 それなのにわざわざプレゼントなんて。

 何かあったの?

 

 

 …………束さんとアイツ用に?

 二人で酒でも飲めばいいと思って?

 ……え、ちょっと待って。

 これもう開けちゃったんだけど。

 

 

 束さんそんなこと聞いてないよ!!!

 もう、そういうことは早く言ってくれないと……。

 もしくはちゃんとラッピングしておくとか!

 そもそもちゃんとしまっておくとか!

 

 

 机の下に箱のまんまドーンと置いてあったらさぁ。

 普通プレゼントとは思わないでしょ?

 こーんなごみの山の中にストンと置いてあったら!

 ちーちゃんの秘蔵のお酒かなんかだと思って二、三本……

 

 

 ちょっと待ってちーちゃんストップ!

 大丈夫ですこれが一本目!!

 他の二本にはまだ手ぇ付けてません!!

 ほんとですこれが証拠!!

 束さん嘘つきません!!

 

 

 おぉ、お、おぉぉ……。

 怖かった……。

 ちーちゃんのそんな怒った姿久々に見たよ……。

 でもちーちゃんそんなにお酒好きだったっけ?

 少なくても一年前は全然飲めなかったはずだけど。

 

 

 ……アイツと?

 たまに会って飲んでた?

 …………え、なにそれ羨ましい。

 ちょっと、束さんも呼んでよ!!

 なんで誘ってくれなかったのさ!

 

 

 誘っても来なかった……?

 束さんが?

 ちょっと待ってね、えと、えと。

 ちーちゃんと飲みに行こうとしてキャンセルしたのは……。

 ひい、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ……。

 

 

 数えてみたけどここ一年だと十数回、かな?

 ……束さん結構ドタキャンしてたね。 ゴメン。

 でも、そのうち何回くらいアイツと飲んでたの?

 ちーちゃんがお酒に強くなるくらいだから……。

 うん、五回くらいと見たね!

 

 

 全部!!?!?!???!?!

 うっそ、え、全部!!??!??

 束さんがいない時はずっとアイツと二人で飲んでたの!!?? 

 ずるいよちーちゃん!!

 それ知ってたら束さんスクランブルしてたのに!!

 

 

 うぅ~、ずるい、ずるいよぉ……。

 ちーちゃんってばずるいよぉ……。

 なんだかんだ束さんよりアイツと一緒にいるじゃん……。

 うぅ、下手な慰めなんかいらないよ。

 今度アイツと飲むときに誘ってくれればいいよ……。

 

 

 ……返事してよ。

 ちょっと、なんでこっち向いてくれないのさ。

 何かやましい事でもしたの?

 ねぇ、こっち向いてよ。

 ねぇってば!!

 

 

 また二人でこそこそ飲む約束とかしてるの?

 してない。

 ならいいでしょ!?

 束さんも誘ってよぉ……。

 

 

 アイツが来るかわからない?

 ……ちーちゃんが来るなら来るでしょ。

 アイツってば、なんだかんだちーちゃんとはよく会ってるみたいだし。

 ……束さんにはちっとも会わないけど。

 束さんには! ちっとも会いに来てくれないけど!!

 

 

 ……やっぱりアイツ、束さんの事苦手なのかな。

 ほら、アイツと……その……。

 キスとか、しちゃってさ。

 そう、あの、小六くらいの時の、あの時。

 とっても気まずくなったんだけど。

 ……あの時と同じくらい会えてない気がする……。

 

 

 ……え、アイツは会いたがってた?

 ほんとに?

 ……? このお酒が?

 ……へー。

 アイツが束さんに飲ませたいって?

 自分が好きな味だから。

 そっか、アイツもこのお酒、好きなんだ。

 

 

 えへへ、えへ、えへへへへ。

 そっかー、ふーん。

 あー、なんだかいい気分!

 ねぇ、なんでだと思う?

 なんでだと思うよちーちゃん!!

 

 

 えへへ、なんかさ、こう、さ。

 アイツと一緒のお酒が好きだって思うとさ。

 ねぇ?

 えへへへへへへへへ。

 

 

 ……ねぇちょっと、冗談、冗談だよ。

 だからその目を何とかしてよ。

 ドン引きしてるでしょ。

 ホントに冗談だから!!

 そんな目で束さんを見ないでよぉ!!

 

 

 ……なにさちーちゃん。

 言っておくけどもうこれは飲まないよ。

 あげない。 あとはアイツと一緒に飲む。

 で、何さ。

 

 

 ISのこと? いや、だからコアは作らないって。

 違う? じゃあ何?

 ……いっくんの話?

 だからそれは束さんがちょこっと細工しただけで。

 別にそれ以外はなんでもない事なんだから。

 

 

 ……へぇ。

 あー、やっぱりばれちゃってた?

 ちーちゃんに隠し事は通じないかぁ。

 ん、おおむねその通りだよ。

 いっくんがISを動かしても、別に束さんの目的は達成されないってね。

 

 

 おう、ステイステイ。

 ちーちゃんその手を手首から離して。

 変な音鳴ってる。

 お分かり? ねぇちょっと。

 今から説明するからその手を離して痛ったいなぁもう!!

 

 

 箒ちゃんといっくんをくっつけたいのはホント。

 ISをいっくん用にカスタマイズしたのもホント。

 ……でも、それで二人がくっつくか、っていうとそうじゃないよね。

 ん? いっくんをどうするか、って?

 だいじょぶだいじょぶ、安心して。

 いっくんの安全は、この束さんがちゃーんと保証しますとも。

 

 

 ホントホント。

 束さんは友人には嘘をつかないんだよ?

 だからちーちゃん、束さんを信じて。

 ……ありがと。

 うん、誓って変なことはしないよ。

 

 

 で、お話っていうのはこれだけかな?

 うんうん、ならいいよ。

 じゃあここからはお堅い話抜きでいこうよ。

 ちーちゃんこのお酒空けていい?

 ありがとー。

 

 

 ん~、やっぱりおいしい。

 えーとこの……、うーんと。

 この変な銘柄のお酒、やっぱり好きー。

 アイツもこんな甘ったるい味が好きなんだねー。

 ちーちゃんのほうもちょっとちょーだい。

 

 

 …………渋いね。

 なんていうか、こう、渋いね。

 束さんはあんまり好きじゃないかも。

 ……そうですよ、どうせ束さんはお子様舌ですよ。

 

 

 ところでちーちゃんって彼氏つくらないの?

 うわっ、びっくりした。

 もー、汚いなぁ。

 いきなりむせてどうしたのさ。

 

 

 いや、単純に気になって。

 束さんたちってそろそろ二十ウン歳になるわけだけどさ。

 いまだに浮いた話がないっていうのも、ねぇ。

 ……親父臭いとは失礼だね。

 というか、この間あの母親に言われたんだよ。

 

 

 そうそう、彼氏はできたのかー、って。

 いちいち煩い奴だよね、ホント。

 だからついでにちーちゃんに聞いてみようと思って。

 ねね、どうなの?

 気になるやつとかいないの?

 

 

 …………いない?

 ちぇー、残念。

 いたら面白そうだったのに。

 

 

 …………ほぇ? 束さんのほう?

 こ、告、白?

 し、しないのか、ってそりゃあ……。

 …………するよ。

 いつかは決めてないけど!!

 

 

 あーもう、なんでそういうこと言うのさぁ……。

 意識しちゃうじゃんかー、もう!

 あああああ!!!

 さてはちーちゃん、束さんの反応見て楽しんでるね!?

 

 

 ……デートのこと?

 ……露骨に話題変えてきたね、ちーちゃん。

 ふふん、聞いて驚け、次は束さんの家でデートだよ!!

 いやー、今度アイツに料理ふるまうことになってね~。

 もうこれから毎日練習しなきゃな―って思ってね!

 えへへ、えへへへへへ。

 

 

 ……おいちょっと、なに、その顔は?

 まさか束さんが料理もできないダメ人間だとでも?

 ……言ってくれるじゃないのちーちゃん。

 でも残念ながら料理ができるのはホントだよ。

 料理のさしすせそ? ……馬鹿にしてる?

 

 

 あのねぇ、束さんをなんだと思ってるのさ。

 そんな怪しい薬を料理に使ったりするわけないでしょ。

 妙な調味料も論外。

 ちゃんとした素材と調味料だけで、きちんとした料理を作れます。

 それもこれも箒ちゃんとの特訓のおかげですよ、ふふん。

 

 

 ところでちーちゃんって料理はできるの?

 ……あっ、うん。

 ……きっ、気にしなくていいよちーちゃん!

 今の時代、男の人が料理することも多いって聞くし!!

 

 

 まぁ、作れたほうがいいとは聞くけど……。

 あーちょっとちーちゃんそれ束さんのお酒!!

 なに勝手に飲もうとしてるのさぁ!!

 やけ酒なら他のお酒でやってくれないかな!?

 離して!! その手を離して……!

 離してってばぁ!!

 

 

 ☆

 

 

「ふぁ~、千冬姉おはよ、ってうわぁ!? な、なんだこれ!? 」

「……すまない一夏、非力な私を許してくれ……」

「千冬姉!!?? 」

 

「そういえば、箒ちゃんってどうしてそんなに料理が上手なの? 」

「はぁ、一夏に毎日作ってやってますから、その、自然と。」

「……えっ、そこまで進んでるの? 」




登場人物
・束さん
 料理もできる天才科学者。メシマズではない。
 お酒は適当に選んで飲むタイプ。
 舌がお子様なので甘いのが好き。

・ちーちゃん
 料理が微塵もできない束さんの親友。
 お酒はこだわったものを飲むタイプ。
 世界を回っているからかいろんなお酒を持っている。

・オリ主くん
 ちーちゃんが一人で居酒屋に入ると高確率で遭遇する。
 お酒は好きなものを延々と飲み続けるタイプ。
 なお束さんがいると出現率ががくっと下がる。

・いっくん
 料理が上手な台所番。
 彼のおかげでちーちゃんの朝食は守られた。

・箒ちゃん
 料理が上手な高校生。
 毎日いっくんに弁当を作ってあげている。


・いろんな質問
Q.束さん酔ってる?
A.酔ってないけど雰囲気で口が軽くなってる。

Q.ちーちゃんの部屋にお酒ってどのくらいあるの?
A.軽く五十はある。
 なおごちゃごちゃしすぎてどこに何があるのかは不明。

Q.束さんなんでドタキャンしちゃったん?
A.いろんな国からISの事せっつかれてた。

Q.箒ちゃんといっくんの恋路はいかに!?
A.いっくんが箒ちゃんの好意に気づいた瞬間にハッピーエンドです。




Q.オリ主くんってちーちゃんと束さんのどっちが好みなの?
A.どっちも同じくらい好み。
 先に告白してきたほうが勝者になる。


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篠ノ之束と告白の話

 某日 夕刻 篠ノ之神社にて

 

 ☆

 

 ……今日はありがとね。

 どうだった? 束さんの料理は。

 おいしかった?

 ならよかった。

 ふふ、キミを満足させられる料理を作れた、っていうのは大きいよ。

 

 

 何せ、人にふるまうのなんて初めてだったから。

 キミの舌に合うか不安だったんだけど……。

 うん、満足してくれたなら、嬉しい。

 

 

 変、って何が?

 束さんが?

 ……そうだね、緊張してるからかも。

 なんで、って?

 ふふ、後でのお楽しみ~。

 

 

 まぁ、それはそれとして。

 ここ、覚えてる?

 ……だよね、そりゃ覚えてるよね。

 そ、キミと束さんが出会った場所。

 ちょうど小学生になりたての、あの頃に。

 

 

 ここでちょっと、キミとお話したくてね。

 ちょっと一緒に来てもらったんだ。

 ……何を話すつもり、ってそれはイロイロだよ。

 思い出でも語ろうかな、なんて。

 

 

 ちょっとそんな気分になっちゃったんだよ。

 だから、付き合ってくれると嬉しいな。

 ……うん、ありがと。

 ふふ、なんだかんだ面倒見がいいのは変わらないよね。

 

 

 ――――まず、聞かせてもらうね。

 キミは、今の世界をどう思ってるのかな。

 素直に答えて。

 なんでもいいよ。

 キミの思うまま、感じるままを聞かせてほしいな。

 

 

 ――――そっか、ありがと。

 うん、関係あるんだ。

 束さんってさ、ISの開発者なわけだよ。

 だから、誰よりもISについて知ってるわけで。

 ……誰よりも、こんな世の中になることを知っていた人間なんだ。

 

 

 ISは、宇宙開発のために――――束さんの夢のために開発したんだ。

 だから、初めて学会で発表して、凡人どもに笑われたときね。

 とっても、悲しかったんだ。

 なんでわかってくれないんだ、って。

 あの宇宙にはばたく翼が目の前にあるのに、何でつかもうとしないんだ、って。

 

 

 ……今にして思えば、アイツらは認めたくなかったんだろうね。

 自分より年若い小娘に、こんな発明ができるはずがない、って。

 だから束さんの翼を否定した。

 ――――でも、さ。

 キミとちーちゃんだけは別だった。

 

 

 キミは応援してくれた。

 ちーちゃんはISを動かせたけど、キミはそもそも男だったし。

 キミは束さんやちーちゃんみたいに、天才じゃない。

 だから、束さんにISの事を教えられても、全然わかってなかったでしょ?

 ……ばれてないと思ってた?

 

 

 でも、キミは笑わなかった。

 凡人なりに、束さんの事を理解しようとしてくれた。

 宇宙を目指す束さんの背中を押して、頑張れって言ってくれた。

 束さんが学校休んだ時は、いっつも束さんのところに来てた。

 サボったって言ったら、笑って一緒に遊んだ。

 たまに一緒にサボって、宇宙について語って、それでちーちゃんに怒られた。

 ……君があの時、束さんの話を全然理解できてなかったのはわかってる。

 でも、キミはいっつも来てくれた。

 それだけで、束さんはうれしかったんだ。

 

 

 学会から戻ってきた、あの時も、そう。

 キミに向かって、すごく怒った。

 束さんの抱える気持ちを、全部キミに吐き出した。

 キミは何にも悪くなくて、ただ身近にいる凡人ってだけで、八つ当たりして。

 ひたすら怒って、悔しくて、情けなくて。

 最後はキミに向かって泣き続けて。

 それでもキミは、束さんのそばにいてくれた。

 

 

 ――――正直に言うとね。

 あの時、束さんはキミの事を遠ざけようとしたんだ。

 わざと嫌われてやろう、って。

 そうすれば、キミはこんな女と関わらなくて済む。

 身勝手な天才に関わらずに済む。

 ……キミは、そうしたほうが幸せだと思ったんだ。

 

 

 でも、そんな思惑なんか知ったことか、って感じにさ。

 キミが抱きしめてくれて。

 何も言わずに頭をなでてくれて。

 ……正直、嬉しかった。

 束さんの思い通りにならなかったって言うのに。

 あの時、キミが嫌ってくれなかったことが、なんだか嬉しかった。

 

 

 それから、束さんは考えたんだ。

 ISは、どうあるべきか、って。

 ……ISは束さんの夢のために作った、ってさっき言ったでしょ?

 だから、考えてみたんだ。

 その夢はどうすれば叶うか、って。

 その夢のために、ISはどうできるか、って。

 

 

 ――――それで思いついたのが、『白騎士計画』。

 ISの武力を世界中に示し、それでISの優位性を知らしめる計画。

 そうすれば、最終的に束さんの夢は叶うはずだったんだ。

 ……まぁ、ちーちゃんにぶっ叩かれて阻止されたけど。

 でも、そうやって考えてる中でさ。

 思っちゃったんだ。

 

 

 ――――もし、この計画を発動してしまえば。

 ――――二度とアイツと一緒にいることができなくなる。

 

 

 って。

 さっき、ちーちゃんにぶっ叩かれて止められたって言ったけどね。

 究極的に言えば、ちーちゃんがいなくてもこの計画は実行できたんだ。

 でも、できなかった。

 我ながらオトメらしい理由だよね。

 キミといる世界が心地よくてさ。

 壊すのが惜しくなっちゃったんだ。

 

 

 結局、『白騎士計画』は頓挫。

 なんだか投げやりになってたら、キミが会いに来てさ。

 いきなり頬をぶっ叩かれたからびっくりして。

 ……今さら謝っても遅いよ。

 とにかく、あの時は本当に驚いて。

 もしかして絶交宣言でもされるかな、とも思ったけどさ。

 

 

 宇宙に行くんじゃねぇのか、って言ってくれたよね。

 ふふ、あの時の事はよーく覚えてるんだ。

 なんていったって「篠ノ之束」の再出発地点なんだから。

 恥ずかしいって言ったってずーっと覚えてるよ。

 何があっても忘れてあげないんだから。

 

 

 ――――うん、あの時の言葉は忘れない。

 君が思い出させてくれたんだ。

 初めて星を見た時の喜びを。

 初めて宇宙を知った時の驚きを。

 ……全部、全部、キミがくれたものだよ。

 

 

 だから、束さんは束さんの夢を再定義したんだ。

 ISは、束さんの夢のための翼だった。

 夢のための翼は――――壊すことには使わない。

 ただ、夢を繋げる翼にしたいと思ったんだ。

 

 

 でも、世界はそう簡単に言ってくれなくて。

 ちーちゃんが、世界を飛び回って教習してるのは知ってるよね。

 アレ、国から直々に要請が来てるんだよ。

 現状、世界でISを一番に乗りこなせてるのはちーちゃん。

 だから、ちーちゃんに教えを乞うて、ISの搭乗者を鍛えてるんだ。

 

 

 ……さぁ、何を考えてるのかは、束さんにはわからない。

 でも、世界はISを「夢を繋げる翼」とは考えてない。

 ISは強大な兵器、ってことは理解してるだろうね。

 だから、強大な兵器をぜひとも手にしたい、ってことなのかな。

 

 

 ……うん、長々としゃべっちゃってごめんね。

 思い出話はここでおしまい。

 あ、ついでに一個、キミに聞いておきたいんだ。

 ――――もし、さ。

 こんな風に世界を変えちゃって。

 世界を壊そうと画策したこともあって。

 それでも今ある世界をどうにかしようとしてる人がさ。

 

 

 ――――普通の女の子みたいに、恋をしてもいいと思う?

 

 

 ――――なっ。

 ちょっと、今笑うところじゃないよ!

 もー、人がせっかく真剣に相談してるっていうのに。

 ちゃんと、真面目に答えてくれないと。

 

 

 …………。

 ……そっか。

 そうなんだ。

 うん、ありがと。

 大丈夫、キミの答えだけが重要なんだから。

 

 

 うん。

 ここまで聞いてくれてありがとう。

 もう少し、時間ある?

 まだちょっと、伝えたいことがあるんだ。

 

 

 

 ――――そうだよ。

 束さんにとって、一番重要なことなんだ。

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、――――

 

 

 名前を呼ぶ。

 呼び方を変えるだけで、こんなにも胸が高鳴るのか。

 そんな単純なことに、驚く自分がいる。

 そんな単純なことも、嬉しく思う自分がいる。

 見れば、アイツはこちらを見たまま固まっている。

 目と目が合い、気恥ずかしさでどうにかなりそうなのをこらえて、言葉を絞り出す。

 

 

これから、キミに伝えたいことがあります。

 

 

 ここに来る前から、決めていたことだった。

 あの日、織斑千冬に、好きな人がいるか聞いたときに。

 言葉では否定していたけれど。

 あの時、彼女は誰か、好きな人がいる顔をしていた。

 その相手が誰だか、何となく分かってしまって。

 ――――同じ相手を想っていると、気づいてしまって。

 

 

多分、気づいているだろうけどさ

 

 

 でも、この気持ちを諦めたくなかった。

 汚いと思われようと、なんと言われようと。

 初めて抱いた思いを、誰かに譲りたくなかった。

 たとえそれが、自分の一番の親友であっても。

 

 

 だから、決意した。

 もし、許されるのであれば。

 ――――篠ノ之束(大罪人)でも、恋をしてよいというのであれば。

 今日この日、この場所で。

 織斑千冬よりも早く、誰よりも早く。

 ――――初めて出会った、この場所で。

 ――――彼との初めての思い出の地で。

 きちんと想いを伝えよう、と。

 

 

ちゃんと、改めて、私の口から言わせてもらうね

 

 

 胸に灯るのは、暖かくも激しい炎。

 初めてあった時、彼が灯してくれた光。

 ずっと、胸の奥で感じていた未知の感情。

 寝ても覚めても、ずっと知りたいと思っていたこの感情。

 名前をつけるとするなら、これは――――

 

 

私、篠ノ之束は、キミのことが大好きです。

 

 

 言葉にして伝える行為が、こんなに難しいと思わなかった。

 伝えようとする心が、こんなに抑えられないと思わなかった。

 心臓の鼓動が、こんなに速く刻まれるなんて思わなかった。

 篠ノ之束は、人生の中で一番の未知の中にいた。

 かつての篠ノ之束であれば、この感情を否定したであろう。

 自分が変わることを恐れていた、あの頃の自分であれば。

 けれど。

 

 

もし、この気持ちを受け入れてくれるなら

 

 

 言葉を紡ぐたびに胸が高鳴っていく。

 未知であるからこそ――――知りたいと思えた。

 すべてを理解できる頭脳をもってしても、なお。

 “知りたい”が溢れて、止まらなくて。

 自分自身でも止められなくて。

 

 

 だから、この感情を知るために、今。

 最後の言葉を、口にする。

 

 

 

わたしの恋人になってくれないかな? 」

 

 

 

 その時、そんな顔をしていたかは、自分でも分からない。

 けれど、間違いなく笑顔だったと確信を持てる。

 だって、こんなにもまっすぐに向き合って。

 愛しい人に、想いを伝えることができて。

 それが幸せじゃないなんて、言えるはずがない。

 

 

 

 

 そうしてから、どれほどの時間が経ったか。

 時の流れと共に、黄昏が沈みゆく。

 夕焼けが落ち、夜の帳が落ち始める合図。

 輝く時間が過ぎ、闇が世界を覆う一歩手前。

 その刹那、すべてが黄金色に輝く世界の中で。

 

 

 ――――の頷く動作だけが、はっきりと見えた。

 

 




 ハッピーバレンタイン。

登場人物
・束さん
 恋愛クソザコヤンデレ天才科学者でメインヒロイン。
 ちーちゃんに取られる前に取ってしまえと行動して勝利した。
 なお後述するけど勘違いの模様。

・オリ主君
 名無し。子どものころからイケメン。
 頭はよくなかったけど束さんたちと一緒にいたおかげでそこそこ知識はある。
 お、告白か? とちょっと期待してたらホントに告白された。


いろんな質問
Q.ちーちゃんもオリ主君のこと好きだったの?
A.この√だと異性としての好きじゃなくて家族的な好きを抱いてる。
 束さんはちーちゃんも“異性として”オリ主くんが好きだと勘違いした。

Q.ちーちゃんが告白する可能性は?
A.束さんの部屋に入って謎のノートを見つけた時点でない。

Q.今のちーちゃんに異性的な意味で好きな人はいるの?
A.いない。

Q.でもオリ主くんは二人とも好みだって言ってなかった?
A.好感度が高くても、二人とも美人だし他に好きな人でもいるんじゃないだろうかとも思ってた。
 だから告白されなきゃ付き合おうとは思わなかった。

Q.なんでオリ主くんこんなに卑屈なの?
A.女性経験が乏しいから。




Q.これにて恋の物語はおしまい?
A.もうちょっとだけ続きます。


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篠ノ之束と妹の話

 某日 夕刻 篠ノ之束宅にて

 

 ☆

 

 今日も教えてくれてありがとねー。

 はい、これお駄賃。

 ……とと、そうだったそうだった。

 箒ちゃんちょっと時間ある?

 あるならちょっとそこに座ってくれると嬉しいな。

 

 

 さて、よいしょっと。

 …………箒ちゃん。

 実は、重大な報告があります。

 いや、真面目な話。

 ふざけてないよ、信用ないなぁ。

 

 

 えーと、コホン。

 実は、ね。

 束さん、男の人とお付き合いすることになりました。

 ……? 箒ちゃん?

 どうしたのそんなに頬っぺたつねって?

 虫歯?

 ダメだよちゃんと歯磨きしないと。

 

 

 ……まさかとは思うけど、信じられてない?

 ……あー、やっぱり、冗談だと思う?

 でもね、本当なんだよ。

 えへへへへへへ。

 ちゃんとね、男の人に告白して、オッケーもらったんだよ。

 えへへへへへへへへ。

 

 

 うわっびっくりした!?

 どうしたの箒ちゃんそんないきなり。

 箒ちゃんも女の子なんだから、顔は大事にしないと。

 ほら、そんな叩いちゃだめだよ。

 

 

 痛ったい!?

 え、なんで今束さんぶたれたの!?

 そんなに気にくわなかったのかな!?

 ……偽物って箒ちゃん……。

 さすがに束さんの偽物でもこんな嘘はつかないと思うよ……?

 

 

 夢じゃないよ、現実です。

 ……そんなに束さんが誰かの恋人になることが信じられない?

 ちーちゃんに言ったらそうかそうか、みたいに軽く流されたけど。

 ちーちゃんも驚いてなかったし、箒ちゃんも驚かないだろうと思ったんだけど……。

 十分びっくり? あ、そうだったの。

 

 

 ……クスリ?

 使ってないよ!

 いや、洗脳とかもしてません!!

 ホントに! ちゃんと、告白して!

 オッケーもらったの!!

 

 

 ちょっと箒ちゃん、なんで信じてくれないの!? 

 束さんどんだけ信用ないの!?

 ……箒ちゃんにそこまで信用されてなかったなんて……。

 グスン、束さんは悲しいよ。

 

 

 お相手?

 むふー、よくぞ聞いてくれたね!

 アイツだよ、ア・イ・ツ。

 あれ? 箒ちゃんは会ったことないっけ?

 ほら、よく家に来てたでしょ?

 黒髪の、ちーちゃんと束さんとよく一緒にいた。

 ……分かんない?

 

 

 あー、そういえばそうか。

 箒ちゃんアイツの事怖がって近づいてこなかったもんね。

 お、思い出した?

 そうそう、あの背の高い。

 うん。

 かっこいいでしょ?

 えへへへへ。

 

 

 ……で、なんで話したかだっけ。

 えっとね、箒ちゃんにも一応知っておいてもらうべきかな、って。

 ……? なんで、ってそりゃそうでしょ。

 箒ちゃんの将来の義兄(あに)になるからね。

 

 

 …………箒ちゃん?

 どうしたのそんなに固まって。

 おーい、箒ちゃーん。

 

 

 ……えっと、なにかおかしなこと言った?

 義理の兄になるっていう事?

 何がおかしいの?

 束さんとアイツが結婚するってことだよ?

 お付き合いしたんだから当然でしょ。

 

 

 気が早い、って箒ちゃん……。

 もうお付き合いしてひと月は経ったんだよ?

 普通はそろそろ結婚に向けていろいろやっていくべきじゃないかなー、って。

 …………えっちなことはまだだけど。

 ……それに、そろそろ政府からの圧力を辞めさせたいし。

 

 

 全くなんなんだよアイツらはー!

 人の気持ちを全く考えずに見合い写真なんか送ってきて!

 無視したらしたで延々と訪ねてきやがって!

 挙句「我々としても貴方の幸せを願っている」とかぬかしやがって!

 アイツより好きな人間なんてこの世にいないんだよバーカ!!

 

 

 ん? どうしたのそんなに顔を真っ赤にして。

 束さんが大好きっていうのがそんなに意外?

 フフフ、愛は直球勝負だよぉ、箒ちゃん。

 ……まぁ、束さんは伝えるのがだいぶ遅れたんだけど。

 そのせいでちーちゃんにも揶揄われたし。

 

 

 恥ずかしい、っていうのももちろんあるよ。

 あんまり聞かせたくない、っていう気持ちだってあるよ。

 でも、それでアイツが他の誰かのものになるのは嫌だったし。

 自分の気持ちを伝えられないのはもっと嫌だった。

 とにかくね、男の子を自分のものにしたかったらちゃんとアピールしなきゃだめだよ。

 ……えっちなことは除いてね。

 

 

 だから、箒ちゃんもちゃんといっくんにアピールしておいたほうが……。

 ……箒ちゃん?

 いっくんにアピールしてないの?

 もしかして、いっくんのこと嫌いになっちゃった?

 それなら新しい恋を応援するけど……。

 違う。 あーよかった。

 それじゃあ何でやらないのかな?

 

 

 え、いっくんそんなに人気なの。

 はぁ、イギリスの貴族様。

 フランスの社長令嬢、ドイツの留学生。

 友人の妹に中国の幼馴染、と。

 ふむふむ。

 ……すごいモテモテだね、いっくんって。

 

 

 ……でも、箒ちゃんはいっくんに毎日お弁当作ってあげてたよね?

 一緒にご飯も食べてるんだよね?

 それでも恋愛関係に発展しないっぽいの?

 …………。

 いっくん、もしかして女の子に興味ないのかな……?

 

 

 あー泣かないで箒ちゃん!

 大丈夫、箒ちゃんはちゃんと魅力的な女の子だよ!

 束さんが保証するよ!

 

 

 

 とにかく、いっくんにどうやってアピールするかだよね。

 まずは一日一回「大好き」っていう事から……。

 ダメ。 だよね、束さんもそう思う。

 じゃあそうだね、うーんと……。

 あ、思い切ってデートしてみるとか?

 

 

 できない。 はぁ。

 ……え、いっくんとデートしたことないの?

 いっくんも女の子と二人で出かけたことがない。

 ……あれ、でもいっくんって結構モテモテなんだよね。

 誰か誘ったりしなかったの?

 一緒に買い物行きましょー、とか。

 

 

 箒ちゃんも誘っちゃえばいいのに。

 はぁ。 はぁ。 

 えぇ、乱入って……。

 なに、その子たちもそんなに飢えてるの?

 

 

 でも、そんなにいっくんにアピールしてるならさ。

 いっくんもそろそろ好意に気づいたりするんじゃないの?

 アイツですら束さんの告白はちょっと感づいてたみたいだし。

 いっくんもそういう好意は感じるんじゃない?

 

 

 ……はぁ、照れ隠しにイロイロと。

 …………………えっと。

 …………ちょ、っと……。

 えぇ……それはないでしょ、箒ちゃん……。

 

 

 そりゃあ引くよ! ドン引きだよ!

 いくら好きだからって照れ隠しに暴力はダメだよ!!

 姉としてちょっと嫌だよ、それは。

 はい、束さんと約束しましょう。

 箒ちゃんは絶対にいっくんに暴力を振るわないこと。

 いい?

 守らなかったら多分いっくんはその辺の女の子と結ばれるよ。

 

 

 ホントホント、まじで。

 いっくんの事だから「俺嫌われてるのかも……」とか思ってるかもよ?

 で、嫌われてるからって言って他の女の子と遊ぶようになって。

 次第に疎遠になる箒ちゃんたちとは違い、どんどん親密になっていって。

 それで二人は惹かれあって……。

 そんなの嫌でしょ!?

 束さんも嫌だよ!!

 嫌だからね!!!

 

 

 いっくんと箒ちゃんにはちゃんと結ばれてほしいの!!

 そのスタートラインにまずは立たないと!

 そのためにもまずはいっくんに好かれないと。

 その手助けは束さんも協力するよ。

 もちろん、かわいい箒ちゃんの頼みなんだから。

 

 

 具体案か、そうだねぇ。

 ……ISの試験運転がてら、ちょっと箒ちゃんと二人きりにしてみようかな?

 おぉっと、照れない照れない。

 二人っきりになったからといって告白をするわけじゃないしー。

 箒ちゃんが(やさ)ーしく操縦を教えてあげればいいんだよー。

 それで一気に二人の仲は急接近!

 他の邪魔が入る心配もなし!

 よしよしよしこれでいこうじゃないか。

 

 

 ……え、ちょっと箒ちゃん、何想像したのさ。

 密室で二人っきりだからってその……。

 え、えっちなこと、はダメだよ?

 えっと、その……。

 キス、とかは、遠慮してね?

 あはは……。

 

 

 …………お、おっと、どうしたの、箒ちゃん。

 なにか言いたいことでもあるのかな?

 ん? 質問かい箒ちゃん。

 いいですとも、この束さんがばっちり答えてあげましょう。

 さぁ、来て来て~。

 

 

 …………えっちなことの線引き?

 …………………。

 ………よし、いったん落ち着こうか。

 箒ちゃんもまず息を吸って落ち着いてねー。

 はぁー、ふぅ。

 

 

 さて、えっちなことの線引きだけどね。

 ……手を握るくらいなら、まぁ。

 キス…………は、ちょっと、ねぇ。

 それ以外だと、抱き合うくらいなら――――

 それ以上!!?!?!?

 え、それ以上の事想像してたの!!??!?

 それ以上……それ以上……。

 

 

 ダダダダメだよ箒ちゃん!

 箒ちゃんといっくんにはまだ早いです!

 早すぎです!!

 お姉ちゃん、そんなことは認めませんことよ!

 箒ちゃんといっくんが、あわわ、わわ……。

 

 

 うわぁああーーっ!!!!!

 

 

 

 ☆

 

 

「……束? いきなり来てどうしたんだ」

「………………」

「束さん? おーい?」

「……最近の高校生って、進んでる……!! 」




登場人物
・束さん
 オリ主くんと付き合ってる天才科学者。
 付き合い始めてひと月経ったけど進展がなくてモヤモヤしてる。
 えっちなことをよく言及したのはそのため。

・オリ主くん
 束さんと付き合ってる一般宇宙開発事業員。
 束さんとはゆっくり仲を深めている状態。
 黒髪で身長は高い。

・箒ちゃん
 束さんの妹。
 まさか姉に先を越されるとは思わなくてショックを受けてる。
 肉食系。

・いっくん
 ちーちゃんの弟。
 女の子をみんな友達だと思ってる。
 ド直球に告白すれば付き合える。

・中国の幼馴染
 両親は別れてないと思う。

・イギリスの貴族様
 多少性格がキツい。

・フランスの社長令嬢
 ボーイッシュ。愛人の子と噂される。

・ドイツの留学生
 ファッションの一環で眼帯をつけてる。


いろいろな質問
Q.箒ちゃん姉が付き合ってるの知らなかったの……?
A.箒ちゃん「ここのところ姉が嬉しそうだな、とは感じていた。
      たぶん変な悪だくみしていると思っていた。」

Q.なんで政府は束さんにお見合い写真なんか送ってるの?
A.とりあえず取り入ろうとする精神。

Q.束さん性知識なさすぎるんじゃない?
A.妹が二人っきりになったら弟分と「それ以上」をしようとしていたら誰だって驚く。

Q.束さんの高校生の恋愛の認識って?
A.キスして、抱き合って、それ以降は大人になってから。



Q.束さんってオリ主くんとえっちなことしたの?
A.(して)ないです。


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篠ノ之束とヒトの話

 ちょっとシリアス強めかもです。


 某日 篠ノ之神社 にて

 

 ☆

 

 やっほ、よく来たね。

 急に呼び出してごめんね。

 

 

 うん、今日呼び出したのはさ。

 ほら、分かる? あれ。

 今日は夏祭りなんだよ。

 だから、せっかくだし一緒に回ろうかなー、と思って。

 …………ダメ?

 

 

 ……いいの?

 ホントにいいの? 

 

 

 あ、あとね!

 手を繋ぎたいんだ。

 せ、せっかくその、お付き合いしてるんだし。

 いいでしょ?

 

 

 そ、それじゃ失礼して……。

 ――――お、おぉお……。

 いや、なんかびっくりしちゃって。

 久々につないだけど、やっぱりおっきい手だね。

 

 

 む、そうだよ、ぜんぜん繋いでないんだよ。

 まぁ、束さんとお出かけする機会がなかったっていうのもあるけど……。

 とにかく! 今日はずっと手を繋いでてね。

 ふふふ、さぁレッツゴー!

 

 

 ★

 

 

 よっこいしょっと。

 いやー、回った回った。

 あの屋台の親父、束さんのこと見て相当驚いてたよね。

 まぁ、あの束さんが男を連れてこんなところにいるとは思わないか。

 

 

 それにしても。

 いやー、なかなか侮れないもんだね、この夏祭りっていうのも。

 昔はうるさいし人が多いしで大嫌いなイベントだったんだけどねぇ。

 ほら、ちょうど箒ちゃんが生まれる前の年さ。

 ちーちゃんと三人で祭り荒らししようとしたじゃん。

 そうそう、型抜きとかの景品全部総取りしちゃおーって。

 ……結局、ちーちゃんを騙しきれずに未遂に終わったけど。

 

 

 あれもこんな祭りは大嫌いだ! っていう意思表示だったのかも。

 束さんってばあの頃人嫌いだったし。

 ついでに言うとカミサマってのも大嫌いだったんだ。

 ふふ、仮にも神社の娘が言う事じゃないね、これ。

 

 

 ――――ねぇ

 ちょっと聞いてほしい話があるんだけど、いいかな。

 ……別れる、なんて話じゃないから、安心して。

 うん、大事な話。

 少なくても、束さんにとっては。

 ……ありがと。

 そこに座ってもらっていいよ。

 

 

 ――――さて、と。

 さっき言ってた、箒ちゃんが生まれた頃の話なんだけど。

 あの頃の束さんってさ。

 世界には束さんと、キミと、あとちーちゃんと。

 それにいっくんと箒ちゃんだけしかいないと思ってたんだ。

 我ながらバカバカしい発想だよね。

 けど、当時は本気でそう思ってたんだ。

 

 

 他の“人間”なんてみんなヒト未満。

 束さんの周りにしか人間はいなくて。

 あとは全部、ヒトの形をした化け物かなんかと思ってた。

 ……B級映画みたいな設定だよね。

 割と本気で信じてた束さんが言うのはなんだけど。

 

 

 あれから十数年経ってさ。

 世界にはいろんな人が居る事を知ったんだ。

 ――――バカみたいな妄想をマジで信じてるやつとか。

 ――――束さんの知らない未知を提唱してるやつとか。

 ――――国のために命をささげる覚悟をしたやつとか。

 いろーんな人を二年かけて見てきたんだよ。

 

 

 で、一つ分かったのがさ。

 ――――アイツらも、人間なんだよね。

 束さんみたいに天才じゃないし。

 物事を理解するために何十年もかかるし。

 ISの一つも生み出せないやつらだけどさ。

 アイツらもちゃーんと人間なんだよね。

 

 

 ちーちゃんにこのことを伝えたらさ。

 すっごい真面目な顔で

 「お前以外の人間が生まれた時から知っていることをわざわざ話すな」

 って。 もうびっくりしたよね。

 束さんの知らなかったことが、世界中では当たり前のことだった。

 

 

 で、キミに聞きたい事っていうのはこれから。

 大事な話だから、ちゃんと答えてくれるとうれしいんだけど。

 ――――()()()()()()()()()()()()()()()()

 生物的には人間なんだろうけどさ。

 精神的、っていうかさ。

 

 

 さっきも言ったけど、昔の束さんにはね。

 他の人が自分と違う生物に見えてたんだよ。

 なにも理解しないし、理解しようともしてくれない。

 束さんの言葉は聞かないのに、他のやつらの話は聞く。

 ――――束さんが異常だってのは、その時点でわかってたんだけど。

 

 

 それから何年か経って、ちーちゃんとかキミと会って。

 束さんがちゃーんと感情を理解でき始めた時。

 ――――束さんはね、怖くなっちゃんたんだ。

 感情を理解して、誰かの考えを推し量ることができるようになって。

 その考えが、やけに他人と違うってのも分かってきて。

 ……そのズレが、とっても大きいものだ、っていうのも分かっちゃってね。

 

 

 もしかして、人じゃないと思っていたのが人で。

 人だと思い込んでいた束さんこそが異形の化け物じゃないかって思っちゃって。

 

 

 それから、束さんは必死に否定しようとしたんだ。

 自分は人間だって。

 化け物なんかじゃないって。

 でもできなかった。

 自分が化け物じゃない、って確証が持てなかったんだ。

 

 

 皮肉なものだよね。

 自分が人間かどうかも確証が持てないやつがさ。

 他の人間を“自分未満”って言って見下してたなんて。

 

 

 

 だからね、保留してたんだ。

 束さんが本当に人間を理解できた、って思ったとき。

 改めて、自分は化け物かどうか考えてみよう、って思って。

 ――――で、今に至ったの。

 二年くらい世界を回って人を見て。

 キミに自分の想いを打ち明けて。

 ちゃんと感情を学んで、最近もう一回考えてみたんだ。

 

 

 ……結局、答えは出なかった。

 いまもまだ、出せてないんだ。

 ――――だから、キミに判断してほしい。

 束さんは人かどうか、キミから見た姿を教えてほしいんだ。

 キミの出した答えなら、多分信じられる。

  

 

 ――――なんでこの話を今したかっていうとさ。

 束さんだって幸せになりたいんだ。

 キミに出会って、恋して、やっと結ばれて。

 これからもキミと一緒にいたいと思うんだけどね。

 ……でも、化け物じゃキミを幸せにできない。

 あまつさえ、キミを不幸にしちゃうかもしれない。

 そんなことは耐えられない。

 

 

 ――――ねぇ、――――。

 私は、人だよね? 

 ちゃんと、キミと同じ、人だよね?

 

 

 ☆

 

 今にも泣きだしそうなほど悲痛な声で、束はそう訴えかけてきていた。

 そして、そう言ったきり、束は俯いてしまった。

 ――――相変わらず、考えすぎる癖があるというか。

 それも彼女の美点なんだが、今回は裏目に出たようだ。

 一つ息を吐く。

 

「束」

「……」

 

 呼びかけても返事はない。

 いつもなら全力で甘えてくるのだが、その予兆もない。

 ――――ここで、気休め程度に「お前は人間だ」というのは簡単だ。

 けれど、それじゃあ束は満足しないだろう。

 今俺にできる事は一つ。

 

「――――しょーじき、お前が人か、とか俺が人か、とか難しい話は分からん」

「……」

 

 沈黙。

 それも仕方ない。

 俺は天才ではない。

 彼女のように物事を深く考える事なんてできない。

 彼女のように知識を豊富に持っているわけでもない。

 

「けどな」

 

 俺は天才ではないから、思ったことだけを言える。

 ありのままの気持ちを、ただまっすぐに伝える。

 天才でない俺が、天才に言葉を返せるのであれば。

 束の満足する答えを返せるというならば。

 この方法しかない。

 

「たとえお前が化け物だろうと、俺が化け物だろうと。

 ――――お前が俺を好きでいる間は、ちゃんと人間だよ

「…………! 」

 

 我ながら恥ずかしいセリフだ。

 だが、そうだと確信をもって言える。

 だって、この少女が。

 ――――ずっと自分を好きでいてくれた少女が。

 ――――ずっと隣にいてくれた少女が。

 化け物だなんて、思えるはずがない。

 

 

「それに、だ」

「……? 」

「世界の中で誰がお前を化け物だと嗤おうが知ったこっちゃないし。

 俺がお前を不幸にすることはあるかもしれないけどな。

 ――――お前といれれば、俺は幸せだ。 俺が言うから間違いないだろ」

 

 

 顔が赤くなるのを感じる。

 変なことをいってないか不安だが、後悔しても仕方ない。

 束といれれば、幸せだ。

 どんなに辛くても、束の隣にいられることが嬉しい。

 そして、それを何より誇りに思っている。

 その気持ちに、嘘偽りなんて存在しないのだから。

 

 

 気持ちを切り替えて、束の手を握る。

 ここにお前はいると示すように。

 ぎゅっと強く、強く握った。

 

 

「……ちょっと、痛いんだけど」

「おぉっと、すまんすまん」

 

 

 声を上げられて、慌てて力を緩める。

 束を見れば、もう顔を上げていた。

 

 

「さて、と。

 束、なんか買おうぜ。 何食いたい?」

「……綿あめ」

「おっし了解、行こうぜ」

 

 

 そう言って二人、手をつないで綿あめの屋台を探して歩く。

 束の頬の水滴は、見なかったことにしてやった。

 

 

 ★

 

 

「――――自分が人間かどうか、なんてことでお前が悩むとはな」

「……束さん、これでも超真剣に聞いてるんだけど」

「分かってる。 そうさな、私では答えられん。

 答えるべきではない、とも言えるな」

「……ちーちゃん? 」

「そう怒るな。 ま、どうしても知りたいならアイツに聞け。

 その手の回答なら、私よりもアイツが答える方がいい」

「……アイツに? 」

「私も自分が人間かどうかなんてことは知らん。

 アイツは自分は人間だと確信をもって言うだろう。 その差だ。

 それに、お前らはもう付き合ってるんだろ? 弱みの一つでも見せてやれよ、束」

「……分かった」

 

 

 

「……全く、世話の焼けるカップルだな、アイツらは」

「千冬姉? 」

「なんでもない。 行くぞ一夏」




登場人物
・束さん
 幼いころは自分と自分が認めた人以外はヒトではないと思っていた。
 オリ主くんと過ごしている中で、異常なのは自分の方ではないかと思うようになる。
 これを「まぁいいか」で済ませると原作みたいな性格になる。

・オリ主くん
 天才ではない一般人。
 なんだかんだ束さんのことをよく理解してる。

 

いろんな質問
Q.なんか今回の話いちゃラブ少なくない……?
A.束さんがこんな性格になった理由を示そうとしたらこうなってしまいました。

Q.お前シリアスはないって……
A.まだオリ主くんが死んでないからセーフです

Q.束さんのいう"化け物"はどういうこと?
A.自分と自分が認めたやつ以外は人間じゃない!
 ⇒あいつらもちゃんと人間だった
 ⇒でも自分はあいつらとは違うのは確実
 ⇒なら自分は人の皮を被った化け物じゃないの? っていうことです。


Q.原作みたいな性格のままオリ主くんと過ごすとどうなるの?
A.オリ主くんが死ぬか監禁されるかのニ択です



 次回は(多分)最終回です


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篠ノ之束と愛の話

前回から少し時間がたったあたりのお話です。


 某日 夕刻 篠ノ之神社にて

 

 ☆

 

 ……おまたせ。

 ごめんね、ちょっと待った?

 どこ行ってたのか、って?

 あそこだよ、ほら、見える?

 そう、あの離れ。

 

 

 覚えてるかな、キミも入ったことあるはずだよ?

 そう、束さんの第六号秘密基地。

 ちーちゃんとキミと、三人で作った秘密基地。

 あそこにちょっと隠してたものがあってね。

 ちょっと気になったから取ってきたの。

 ……何かって?

 あとで教えてあげる。

 

 

 それより見て、ほら、演武だよ演武。

 あそこで舞ってるのがマイプリティーシスター箒ちゃん!

 わかる? ちょうどちーちゃんの横あたりに見える。

 そう、その子。 綺麗でしょ?

 だよね!! 束さんもそう思う!!

 

 

 ……え? 束さんが、アレを?

 いやー、えー、あのー。

 あれはティーンエイジャーだから許されるものであってね。

 束さんが巫女服着てるの見ても誰も喜ばないだろうし……。

 お、おう。 なかなかコアな趣味を持ってるね。

 ……そのうち、一回だけ着てあげるから。

 今はちょっと、ね?

 

 

 ん? ここに来た意味?

 ほら、演武が終わって、そろそろ祭りも終わるよね?

 で、毎年恒例の花火をやるわけだよ。

 この場所はね、誰にも見つからずに花火を見るにはちょうどいい場所なんだ。

 ちーちゃんにだって教えてない、ホントのホントに束さんの秘密の場所。

 ふふ、キミに教えちゃったから、もう秘密とは言えないね。

 

 

 で、ここでキミと一緒に花火をみたいなーと思ったんだ。

 ほら、これも覚えてるかな、えっと。

 秘密基地を作った年の夏に――――。

 ……そう、勢い余ってその、キスしちゃったこと。

 ……その様子だと、しっかり覚えてるみたいだね。

 あはは、はは……。

 

 

 ん、んん!

 あの時は、何やかんやで花火を見れなくてさ。

 それ以降も、なんとなく気まずくなって、二人で花火を見ようなんて言い出せなくて。

 結局、今日まで延びちゃったんだけど。

 ――――今日ね、キミと一緒に花火を見て。

 ついでにキミにに見せたいものがあるの。

 っていうか、さっき取ってきたやつなんだけどね。

 

 

 えっと――――――――。 

 

 

 ☆

 

「これ、ちょっと読んでみてよ」

「……なんだこれ、ノート?」

 

 手渡されたのは、古ぼけた大学ノートだった。

 使い込まれた跡が相当残っている。

 表紙には篠ノ之束、とかわいらしい字で書いてあるだけで、他には何も書いてない。

 中に何が書いてあるのか想像もつかないが、汚れ具合からするに相当の量だろう。

 恐る恐るそのノートを開いて。

 

「…………なぁ束」

「なにさ」

「俺の見間違いじゃなきゃこれはあれか。

 ――――なんかの理論式か」

 

 篠ノ之束は何も言わなかった。

 ただ、笑みを深めて曖昧に頷くだけだった。

 しかし、――最近付き合いはじめて分かったことであるが――篠ノ之束は無駄なことは嫌う。

 しからば、この乱雑に書かれた数式のようなものにも意味があるはずだ。

 そう心を奮い立たせ、一心不乱に読み進める。

 

 そうしてからどれほど時間がたったか。

 読み進めている間、束は何も言わなかった。

 ただ、嬉しそうな瞳がこちらを覗き続けていた。

 

「……束」

「なにさ」

「なんだこの式。全然わかんねーわ」

 

 ひらひら、と手を挙げて降参の意を示す。

 式自体は理解できるものが多かった。

 しかし、その解はまったくもって理解不能であった。

 世の科学者の何割がこの式を理解できるというのか。

 いや、そもそも。

 

「……多分、これオリジナルの式をいくつか混ぜてるだろ」

えへへ、ばれちゃったか

「……」

 

 道理で途中から急に理解できなくなった訳である。

 解が出てきたと思ったら、他の解と不可思議な展開を見せ、新しい理論が顔をのぞかせる。

 その飛躍の一つでも論文にしておけば、篠ノ之束の功績がまた一つ増えるだろうが。

 こちらを微笑みながら見つめる彼女は、そんなことはしないだろうな、とも思う。

 意味不明な骨子から理論が構築されていく――――。

 このノートを表すならば、まさにそれだ。

 

「……で、結局なんなんだ、このノート」

「ふふ。 いいよ、教えてあげる」

 

 そういって、篠ノ之束はそのノートを手に取った。

 どこか懐かし気に、そして得意げに。

 その内容を、説明し始めた。

 

「このノートに書いてあるのはね。

 ――――ISコアの基礎理論、だよ

「――――は? 」

 

 

 瞬間、思わず気の抜けた声が出てきた。

 ISコアの基礎理論。

 篠ノ之束が生み出したIS、そのブラックボックス。

 それを紐解くカギが。

 こんな、古ぼけた大学ノートに――――?

 呆然とする俺をよそに、束は話し続ける。

 

 

「知ってると思うけど、ISコアの基礎理論っていうのは言っちゃえばISコアの作り方。

 で、今現在ISコアの製造法を知ってるのは、この地球上だと束さんだけ。

 それ以外の人間は知らなかったわけだけど」

「…………」

 

 

 ISコアの基礎理論は莫大な価値を生む。

 それは何十億、何百兆なんて言葉では言い表せないほどのものだ。

 なにせ、それを知れば、ISコアの製造技術を導き出せる。

 今まで束が独占してきたその方法が、世界に知れ渡る。

 その結果、何が起こるかなんてことは天才ではない俺でもわかる。

 ――――世界を変えるに足る力が、あちこちで乱立する。

 

 

「ふふ、ここに二人目が誕生しちゃった。」

 

 

 そんなことも予測できない束ではないだろう。

 いつにもまして何を考えているのか分からない。

 そこで、ふと気が付く。

 束は、笑っていた。

 声色も、どこか嬉しそうで。

 

 

「今、キミはこう思ってるでしょ。

 『なんでこんなことを今言うんだコイツは』って」

「……」

「むぅ、沈黙は肯定と受け取るよ」

 

 

 肯定も何もその通りだ。

 今の状況で、このノートを見せてきた意味が分からない。

 ついでに言えば、何故笑っているのかも理解できない。

 あのね、と束は続ける。

 

 

「――――キミに、知ってほしかったんだ。

 篠ノ之束が生み出したISのことを」

 

 

 そう語る彼女に、ふざけた様子は一切ない。

 ともすれば、本気で俺にISの基礎理論を見せたことになる。

 天才でも何でもない。

 篠ノ之束の彼氏というだけの、この俺に。

 

 

「きっと君が理解できないってことも分かってる。

 でも、知っておいてほしかったの」

 

 

 だってね、と束は続ける。

 無邪気に笑いながら。

 ためらう様子もなく。

 本当にうれしそうに、彼女は語った。

 

 

 

私の好きな人には、私の全部を知ってほしいと思うでしょ? 

「――――――――」

 

 

 あぁ、もう。

 初めからわかっていたことだが。

 俺は、コイツに勝てる気がしない。

 

 

「――――あー、でも困っちゃったな-。 

 キミが理解できなくでも、このノートの中身を流出されちゃったらなー。

 他の人が理解しちゃったら、束さんとーっても困っちゃうなー。」

 

 

 あまりにわざとらしく、感情のこもっていないセリフ。

 甘えたように声を出す彼女に思わず苦笑いを浮かべる。

 もしかして彼女は、俺がそう簡単に秘密を漏らす男だと思っているのか。

 そんなことはしない、と大げさに誓ってみればいいのか。

 何の気なしに、とりあえず弁明の言葉を言おうとして。

 

 

――――んっ

「――――」

 

 ――――束の唇が、俺の唇を強引にふさいだ。

 まるで、初めてキスしたあの時のように。

 いきなりかつ大胆に。

 けれど、初めてのキスとは真逆で。

 触れ合うように優しく重ねられて。

 俺の唇は、あっさりと束に奪われてしまった。

 

 

「――――だからね。」

 

 

 唇が離れていく。

 その感触は、まだそこに残っている。

 あんまり驚きすぎて呆然とする俺を見て何を思いついたのか。

 ぎゅっ、と束が抱き着いてきた。

 胸に顔をうずめるようにして、しっかりと抱き着いてくる。

 

 

キミはこれからずーーっと、束さんと一緒にいなくちゃいけない。

 なにせ、束さんの一番大事な秘密を握っちゃったんだから

 

 

 束が顔を上げる。

 笑みを浮かべていた。

 いたずらが成功した子供のように、無邪気な笑みだった。

 呆然としていた俺は、その笑みをただ綺麗だと思うだけだった。

 

 

束さんは君が秘密を漏らしたりしないように、キミを監視しなくちゃいけない。

 もちろん、いつだって、どこだって、ずっと隣で監視させてもらうからね。

 どんなことがあっても、ずっと、ずーーーっと一緒

「……束」

 

 

 あぁそうか、と理解する。

 これは、言うなれば、束なりの――――

 

 

束さんはそう簡単にキミから手を引かないよ。

 一生かかってもキミを監視し続けるかもね。

 ――――それでもキミは、一緒にいてくれる? 」

「……まったく、お前ってやつは」

 

 

 そんなの答えるまでもないだろ――――と。

 そう伝えるように、再び二人の唇が重なった。

 

 

 真夏の夜空に、大輪の花が咲いた。

 それは、まるで二人を祝福するかのようで。

 世界が闇に包まれ、黄金が暮れた今。

 輝きはまばらに、けれども確かにそこにあって。

 白と赤の花火が、いつまでも二人を照らしていた。

 

 




登場人物
・束さん
 ヒロイン。
 オリ主くんが好きすぎる。
 このあとめちゃ(

・オリ主くん
 主人公。
 束さんのことが大好き。
 このあとめちゃ(

いろんな質問
Q.束さん神社の娘なんだし巫女服着よう?
A.巫女っていうのは穢れの無い人しかなれないとかなんとか。
 つまり、そういうこと。

Q.ISコアの基礎理論ってなんだよ
A.ISコアの基礎理論です

Q.束さんの見せた大学ノートに書いてあるのはマジのやつ?
A.マジのやつ。

Q.二人はこの後どうなるの?
A.いつまでも二人、幸せに暮らしました。

 「天才科学者と恋の話」、これにて完結です。
 あとがき→活動報告にて公開予定


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