吾輩は北山雫である。 (風早 海月)
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番外編
バレンタイン、時々チョコ


バレンタインだよ!




 

 

バレンタイン。2月14日。

 

日本において、その日はチョコを友達や好きな人に渡す習慣のある日だ。

元々は、企業の宣伝だったりなどで始まった。

そして、その習慣は2095年現在でも続いていた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

2095年、2月13日。

 

私とほのかが第一高校へ向けて受験勉強をする真っ只中。

ふと、私は民放の放送に耳を傾けると明日はバレンタインだとか!

 

「ほのか!明日はバレンタインだよ!」

「雫…そんな場合じゃないよ!全然受かる気がしないよ!」

「うん!だからチョコ食べよ!」

「訳わかんないよ!?」

 

何を言う、頭を使うと糖分が必要でしょう?

 

「ほのか、私1回帰るね!」

「ちょ!?雫!」

 

私はスタコラサッサと魔法科高校のための予備校から抜け出してキャビネットに飛び乗った。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

なんで忘れていたのか!

今年もちゃんと渡す気でいたのに!

 

べ、別にほのかの事がどうとか、そういう訳じゃないよ!?

 

とりあえず、お手伝いさんの黒沢さんに来てもらう。

 

「黒沢さん!」

「はい。」

 

黒沢さんは我が家のハウスキーパーであり、女性使用人のトップでありながら色々な雑務も務める、仕事の鬼だ。ハウスメイド(一般的な意味でのメイド(女性使用人))からも尊敬と畏怖を集めている若き才女であるが、バツイチだ。

 

「ほのかにチョコを作りたい。」

「分かりました。」

 

黒沢さんは食材管理を任されている。食べ物に関しては彼女かシェフに聞くのが1番だ。

 

「ベルギー産のチョコはありますが、テンパリングしないと舌触りがよろしくないかと。」

「出来る?」

「…!彼女ならたしか出来たはずです。シェフに厨房の一部を借りることは話してありますから、先に待っていてください。」

「分かった。」

 

この人の凄いところは、私が全て喋らなくてもすぐに察してくれるところだ。さらに、彼女はこの家の使用人全員の名前と能力を把握していることだ。

ちなみにこの家の使用人は全部で16人もいる。ふふふ、メイド喫茶なんて行ってる人には羨ましがられちゃうかな?メイドさんは5人もいるんだよ。……しかも5人中4人は10代なんだよ。かわいいよ。

…残り1人の年齢はお察しください。もうすぐ還暦の凄腕おばちゃんです。

 

それはともかく、私が厨房に行くと、既にシェフである山城咲桜さんとキッチンメイドの野間叶恵さんが準備をしてくれていた。

…ちなみに、キッチンメイドの野間叶恵さんが凄腕おばちゃんだ。

 

「お嬢様!お待ちしてましたよ。もうすぐ桜夜が来ますから、それまで道具に触らないでくださいね。」

 

桜夜はメイド長の初瀬桜夜のことで、弱冠16歳でメイド長に就任しているほどの能力を有する。―――メイド長だからと言ってナイフを投げたり時間を止めたりは出来ない。

 

「お嬢様、お待たせしました。」

「桜夜、お願い。」

「かしこまりました。」

 

こうして、私のテンパリング講習が始まり、一日で在庫のチョコを使い切るのであった。

 

 

―――べ、別にほのかに渡すからそこまでやってるわけじゃないんだからね!

 

 

…1人でツンデレしてもあまり面白くなかった。

 

 

「そうでも無いですよ。」

「桜夜!?なんで心の中を!?」

「メイドの嗜みです。」

 

そこでナイフをかざさないで!それは咲夜だから!

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

2095年、2月14日。

 

街ゆく女の子のカバンの中や手の中にはチョコが入っていることだろう。

かく言う私もそのひとりだ。

 

 

…あげる立場になって15年。まさか生前の“僕”ならこんなにドキドキすることもしなかったと思うよ。

 

予備校に入ると、もう試験まで1週間ないことからもバレンタインの甘いピンク色な空間を作る人は多くないようだ。

 

「ほのか、これ。」

 

私は小さな紙袋を、自習室にいたほのかに渡す。

 

「本当に作ったの!?雫が!?」

「去年のことは忘れてって言ったのに!」

 

すみません、去年は姫路ばりとは言わないけど、ポイズンクッキングしてました。本当に反省してます。

 

「まさか中身はヤバいの入ってる?」

「今回は桜夜に見てもらったから大丈夫。」

 

桜夜は本当に、時間を止めたり出来るメイドのようで本当に神出鬼没だが、それ以上にお菓子作りの腕は天下一品だ。

 

「じゃあ、いただきます。」

 

恐る恐る少しかじるほのか。

そんなに私の料理には信用が無いか。無いですよね。無いはずだよね…

 

「!美味しい!凄いね!桜夜さん、雫のお菓子をこれだけ美味しく作らせられるなんて…!」

「感激するところ違うよ!」

 

もうポイズンしないから!

 

舌のとろける(物理)プリンはもう作らないよ!…多分。

 

「とりあえず、ごちそうさま。…雫。じ、実はね、私も作ってきたんだ。…食べてくれる?」

「うん!」

 

満面の笑みを浮かべる私にほのかは思わずと言わんばかりの顔と勢いで私の頭を撫でる。多分受験勉強によるストレスを私をもふもふすることで消化しているのだと思う。

いいよ。好きなだけ。

 

ほのかのなでなで気持ちいい。

 

 

 

 

 

予備校の先生から外でやれと言われるまでイチャイチャしていた私たちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様、上手くいったかしら?…時を止めて○○の惚れ薬を入れてほのかお嬢様との仲を進展するように仕向けたのだけれど…」

 

 

 




バレンタインSSです!
入学編の前、受験の頃の話です。
受験日程についてなど独自設定があります。


ちなみに、雫の家は総資産8000億円程度で、資産運用だけでも莫大な利益を産んでいます。その割には小さめな豪邸なので使用人も16人ほどしかいません。
ちなみに、第一高校の1年C組には雫の侍女候補も北山家の出資で入学しています。のちのちの出演をお楽しみに。


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入学編
初めまして、北山雫です。


吾輩は猫である、という作品を知っているだろうか。

 

『吾輩は猫である』は夏目漱石の長編小説であり、彼の処女作品である。1905年1月に『ホトトギス』に発表され、翌1906年8月まで継続していた。言わば、夏目漱石という作家を作った作品である。

「吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。」という書き出しで始まり、猫である「吾輩」の視点から書かれるという珍しい書風を使っている。

 

長々と説明した挙句、何が言いたいかって言うと、それ風に言わせていただくと、

 

『吾輩は北山雫である。昔はただの男子高校生。なんで北山雫になったのかとんと見当がつかぬ。』

 

という状態である。

 

え?何?あんなシリアスな作品で生きていかないといけないの!?

 

 

確かに、いわゆる転生モノの転生の間みたいなモノで、「さて、お主はどんな来世の容姿がいいかの?」「…それほど身長は高くなくていいよ。イケメンじゃなくても良いし。」「じゃあどんな世界に行きたい?」「…近未来で、スタイリッシュな世界で。」

 

確かに!身長は高くなくて(女子の中でも低い)、(女の子なので)イケメンじゃない、近未来でスタイリッシュな世界だよ?でもねぇ!どシリアスとまでは言わないけど、しょっちゅう戦闘してるような作品だよ?準主要キャラだよ?

死ぬわ……

てかまだほのかじゃなくて良かった。え?なんでって?もちろんお兄様相手に「きゃ///」なんてやってられないわ。確かにいい男ではあると思うけどね。

………私としてはレオの方がカッコよく思えるけど。先に言っておくが、精神的BLという訳では無いからね?私はゲイじゃない!

 

という訳で、赤ちゃんから始まった『北山雫』生活、始まります!

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

原作の通りに事を進めつつ、幾星霜。

 

小学生になってから、魔法の塾(正確には家で家庭教師)を親友のほのか、弟の航と一緒に受けている。

 

主な先生はお母さん。これでもお母さん―北山紅音、旧姓鳴瀬紅音は、かつて大出力の振動系魔法で名を馳せたAランク魔法師だ。

 

そこの皆さん!ちょっと待って!と思う方も多いでしょう!

なんで航が魔法使えてるの!?

 

確かに、成長したとしても魔法科高校には入れないくらいとはいえ、魔法使えるってことは魔工師になれるってことだよ!

良かったね!航!

 

完全に姉としての自覚が……いつの間にか…

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

北山雫になって、得だと思ったことがあった。

 

ほのかとのスキンシップが当たり前だと!

 

中学に入る少し前頃から、ほのかの胸が豊かに育っていき、そのたわわに実った胸を、北山家にお泊まりに来た時のお風呂に入る前脱衣所で生で揉む、夜ベットで顔を埋めながら寝る(同じベッドで寝てます)、ふとした時に後ろからわしづかみにする。

 

『産まれてきて良かった!』

 

と心から思う瞬間である。

 

 

 

ただ、前世と比べて嫌な点もあった。

 

月のものである。

私の場合、頭痛は初日から数日、腹痛も2日目辺りはヤバい。

最初の時は死ぬかと思ったわ…

 

だが1番やばいのは、その最中は魔法の速度と干渉力がガクッと下がってしまうのだ。

もちろん、一科生で上位のレベルを崩すほどではないが、シビアな時にやらかしてしまったらそれまでである。気をつけなければならない。

 

だだ、原作と違い、私の魔法力は全力発揮時なら深雪を上回りそうな気がするのは気のせいであると思いたい。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

という訳で!中学を卒業しました!

 

早い?

そんなこと言わんでください。何も無かったんです。

 

せいぜいほのかが原作よりもベッタリなだけなのです。モーマンタイです。だからその背中に押し付ける胸をどかしてください。凶器ですか?流石にそろそろ飽きてきました。え?自分がBしかないからってやっかむな?うるさいですよ。とにかく後ろの凶器の先っぽを夜に抓ることにします。最近イラッとして抓ると、顔を赤くして息を荒くしてるんですけど、どうにかなりませんか?

仕方ないじゃないですか!77の62.8で、なんとかBなのに!ほのかは増槽抱えるかのごとくブラサイズはD65なんですよ!?

 

虚しい。とりあえず抓っとこう。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「さ!雫とほのかちゃんの入学祝いだから、どれを選んでもいいわよ?」

 

私とほのかは今、CADのカタログを見ていた。

 

「私まで、いいですよ!」

「遠慮しないで。入学祝いよ。」

「すみません…じゃあ遠慮なく。」

 

ほのかは何かとお父さんからおこづかいを握らされたり、お母さんから服を買ってもらったりしている。

今更なのだが、ほのかはいつも遠慮してしまい、無理やり握らされるのである。今回もお母さんの圧力に負けた。

 

「FLTのシルバーモデルは性能はいいんだけど、汎用型はさほどじゃないんだよね…」

「うん。」

 

この世界では原作の通りに振舞っている私は、当然のごとく、口数が少ない口調である。

 

「ほのか、これいいんじゃない?」

 

ほのかにオススメしたCADはMysterious Witch Craftの腕時計型のCADで、某りんご社のタッチパネル腕時計のような形である。魔法使用は即時使用よりも確実に使えることを重視していて、日常生活にぴったりである。

モデル名はDreamin' Twilight、夢みる月夜の光。

(ちなみに、公衆の場での魔法使用は攻撃性がなければ許可されているものの、暗黙の了解で使わない。家の中や特殊な施設内、人の少ない場所に限定されている。)

 

「か、かわいい!」

 

その中でも、少女向けにデザインされたDolly ver.は、外身が薄い金属感のあるピンクで、付属のバンドも3種類(ピンク+ミント、水色、黄色)から選べその柄もまたかわいい。

 

「私、これがいいです!」

「私も。」

 

花の女子高生、おしゃれは大事。それ以上にこれは欲しい!

 

結局、CADはDreamin' Twilight Dolly ver.の、ほのかが黄色のバンド、私は水色のバンドで頼んだ。

 

…べ、別にほのかとおそろいごいい…んん!おそろいがいい訳じゃ無いんだから///

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

今日は魔法大学附属第一高校の入学式です!

 

「これは…」

「見事に分かれてるね…」

 

前と後ろ。一科生と二科生。

 

「目立たない方がいい。」

「うん、そうだね。あの辺でいいよね?」

「うん。」

 

ほのかが私の手を握って引っ張っていく。こういう時は頼りになる。

後でお菓子でも作ってあげようかな…

 

 

入学式はつつがなく終わった。生徒会長や新入生総代はかわいかった。何故かほのかに太ももをつねられた。なんでよ。

 

クラス分けはふたりともA組だった。

 

「クラス分け一緒でよかったね!」

 

尻尾があればブンブン音がしそうな程の嬉しがりように、少し周りの目を気にする。

 

同性間での赤ちゃんが出来るようになってはいるものの、魔法師能力が低くなるという俗説であまり同性カップルはよろしくないのである。まあ元々同性カップルが少ないのでその俗説もなりを潜めているが。

 

確か、四葉の現当主が、元カノに振られたとかなんとか。

 

 

閑話休題。

 

 

ともかくあまりよく思われないのではないかと少し危惧したが、入学式で感情豊かな子がはしゃいでるという見方になっているようだ。

 

なんか少し残念なのはなんでなんだろう…?



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劣等生は意外と凄いんだよ

入学式の後、IDカードの交付を受けてから、入試での実技で綺麗な魔法を使うと思っていた総代の子に話しかけに行こうとしていたほのかだが、周りにいる『優等生』たちと一緒になるのは…と遠巻きに見ていると、総代の子―司波深雪さんのお兄さんと待ち合わせしているらしいので、そちらに向かいぞろぞろと人垣ごと移動している。

何をそこまで追いかけたいのかな…

 

しばらくして、人垣が散っていくと、ほのかが血相を変えた。原作の通り。これって優等生の方の話だったかな?

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

『ごめんね、学校では取り乱して…』

『その人…司波達也君って言うみたい。楽しみにしてたんだもんね。』

『うん…勝手だとは分かっているんだけど、あんな魔法を編み上げる人が一科生じゃないなんてって裏切られた気持ち…ごめん、やっぱ勝手だよね。』

『でも、そんなに綺麗だったんだね。』

 

今日はお互いとりあえず家に帰って、あとは寝るだけになってから電話で話している。

 

何着てるかって?

スーパーボディ雫のスペックが1番効くのはショートパンツに七分袖のパジャマである。かわいい。特に袖口をキュッとゴムを入れることでフリルにしていてかわいい。大天使 雫ちゃんである。

 

『司波さんは圧倒的な魔法力…特に事象干渉力は凄まじいと思ったよ。多分干渉力なら雫より上。速度は入試の時は差をつけて勝ってたけどね。お兄さんのはあえて必要最小限の魔法力しか使わないっていうか…魔法式の無駄で出る、余剰サイオン光が全く出なかったの。』

『ほのか、第一高校は国際基準を入試制度に取り入れてる。だから、国際基準に評価されない項目で優れていても、評価は低いの。お兄さんの方もそうなんじゃないかな。低い魔法力を補うために無駄を削ぎ落としたとか。』

 

原作カンニングですね、すみません。

 

『そうだね…地元だと雫しかライバルがいなかったのに、雫と同格かそれ以上の司波さんには打ちのめされちゃった…雫の干渉力を超えるなんてね。お兄さんは…まだよく分からないけど、せかいはひろいよね……って聞いてる?あれっ!?』

『zzz』

『雫寝るの早いよー!』

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

ほのかはミーハーなところがある。しかも有名だとかそういうのじゃなくて、ほのか自身が気に入った人にミーハーを発動させるのである。

 

人がかわいい子を見てるとつねってくるクセに、自分はグイグイ行くから納得いかない。

 

ま、そんな所もかわいいんだけど。

 

優等生の通りにほのかと私が自己紹介し、授業を見回った。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「いい加減にしてください!深雪さんはお兄さんと帰るって言ってるでしょう!一緒に帰りたかったらくっついてくればいいんです!」

「昼もあまり喋れなかったし、何より二科生には分からない話もあるんだ!」

「そうよ!少し時間を貸していただくだけよ!」

「なんの権利があって2人の仲を引き裂こうとするんですか!」

 

とうとうやっちゃったねー、一科生の連中。

 

「だいたいキミたちはなんで楯突くんだ?ウィードのくせに…いいかい?この魔法科高校は実力主義なんだよ。その実力においてキミたちはブルームこ僕達に劣っている。つまり存在自体が劣っているという事だよ。身の程をわきまえたらどうだ?」

 

介入するなら今かな。ぼそっとほのかに話しかける。

 

「ほのか、行くよ。」

「えっ!?」

 

集団の後ろから無理やり対峙する間に入る。

 

「あなた、本気で言ってる?」

「どういうことだ?」

「昨日、ほのかにも話したけど、私達のこの学校は国際魔法基準…つまり魔法師ランクに乗っ取った試験やカリキュラムを組んでいる。魔法力としてカウントされるのは、魔法を発動する速度、魔法式の規模、対象物の情報を書き換える強度の3点。つまり、これ以外について魔法師としての実力はこの学校では見ていない。例えば多変数化、特定の事象に対する感受性、魔工師としての能力、戦闘魔法師なら戦闘勘、BS魔法師や先天性魔法に魔法演算領域を占有されている魔法師への評価、サイオン保有量、魔法演算領域の酷使耐久性、身体的性能と魔法の両立運用…全て込みなら多分二科生の中でもあなた達を超える魔法師はいる。例えばそこの後ろにいる男子と赤毛の女子。彼女たちなら今あなたがCADをクイックで抜いても余裕でCADを吹き飛ばせる。この距離なら身体を動かす方が早い。しかもそっちの女子…多分千葉家の門下だと思う。剣の魔法師ならこの距離は優勢じゃない?」

 

久しぶりの長ゼリフに少し息を切らせる。

 

「どうしても信じられないなら、演習室借りて模擬戦してくれば?そこの巨乳メガネ以外には勝てないと思うよ?」

「巨乳メガネってなんですか!?」

 

悪いが、私よりデカい乳を持つ者に対しては容赦せん。

 

「おっぱいメガネでも可!」

「嫌ですー!」

「それに、影で伺ってる生徒会長と風紀委員長、模擬戦の許可、貰えますよね?この学校の流儀なんですよね?」

 

木陰から出てきた生徒会長と風紀委員長。

 

「まさかバレてるとは…」

「全くだ。」

「ほのかが光を屈折させてくれたので。」

 

ほう…という顔でほのかを見る。

 

結局、その場でモブ崎…じゃなくて森崎と司波達也が模擬戦をやってグラムデモリッションを森崎に何度もぶち込んで戦闘不能にした。お兄様、マジぱねぇっす。



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SSボード・バイアスロン部

魔法師だからと言って、魔法科高校に全員が全員通う訳では無い。

普段は普通科高校の生徒として、魔法競技大会などでは魔法師(見習い)としてグループを組む魔法師も若干ながら存在する。

 

 

 

はたまた魔法競技のプロなんてのもいる。

CADメーカーなどの実業団によるプロリーグである。大人版9校戦とでも考えてもらえればいい。

 

北山家…特にお父さんこと、北山潮はプロリーグの観戦が大好きでよく連れてってもらえる。それから私こと北山雫は魔法競技にのめり込んでいく。

 

今のところプロリーグが設置されているのはモノリスコード、ミラージ・バット、ロアー&ガンナー、スピード・シューティング、ピラーズブレイク、スティープルチェイス・クロスカントリー、マーシャル・マジック・アーツ、マジックバイク(自転車競技)、SSボード・バイアスロンが存在する。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「風紀委員、ですか?私と雫が?」

 

教職員推薦枠で次席だった雫が、一昨日の騒ぎの時の腕を買われて風紀委員長の手回しで部活連推薦枠でほのかが呼ばれたらしい。

 

元々、教職員推薦枠は森崎だったが、二科生に遅れを取る者はいらないと言って変更してきた、と生徒会室にて生徒会長と風紀委員長から告げられた。こちらとしては、教職員推薦枠からまともな思考を持つヤツが入ってくれたのはありがたい、とは委員長の談。

 

「でも、ほのかは荒事向きじゃないですよ?」

「光井さんにはある意味私と同じ視覚的な感覚で監視塔になってもらいたいのよ。特に魔の1週間は。」

 

小悪魔めいた笑みでほのかに微笑む。この人は恐らく無意識に相手の心の中に入り込める人種だ。さらに頭の回転も速い。

交渉ごとにはもってこいな人物だろう。

 

「分かりました。」

 

ほのかの返事に合わせてコクリと頷いておいた。

 

「それから、生徒会推薦枠で司波…兄も昨日付けで任命した。結局副会長の服部とまた模擬戦して瞬殺したことで、あいつも負けを認めて謝罪したよ。」

「自らの言動をひっくり返されて、それでも負けを認めて謝罪出来るなんて、『なかなかできることじゃないよ』。」

 

北山雫の代名詞!ktkr!やっと言うタイミングきたー!原作だと夏だけど早まったね。

 

「そうだね、服部先輩も凄い人だね。」

「まあ、ともかくだ。今日の放課後から魔の1週間が始まる。後で委員会本部で。では、よろしく頼む。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「すみません。遅くなりました?」

「いや、集合15分前だ。問題ない。だが、全員来ているということで始めるぞ。今日の16:00からあのバカ騒ぎの1週間がやってきた。今回は運良く補充が間に合った。紹介しよう。1Aの北山雫、同光井ほのか、1Eの司波達也だ。光井は光学系術式に優れているので監視塔としてスカウトした。残り2人は実力だな。」

 

風紀委員会本部に集まっていた7人の風紀委員。そこに私とほのかが入った時には、少しざわついた。荒事の多い風紀委員で女子が入るのは珍しいことであるからだ。

 

「使えるんですか?」

「不安ならお前が付け。実力は真由美と十文字の折り紙付きだ。」

 

そこで委員長…渡辺摩利が立ち上がる。

 

「さて、諸君、今年も魔の1週間―あの馬鹿騒ぎの1週間がやってきた。風紀委員にとっては新年度すぐにして初っ端からの山場だ。魔法の不適正使用や騒ぎを見逃さないように。また、くれぐれも、風紀委員が率先して騒ぎを起こすことの無いように。以上だ。新年度初の全員出動だ。気張っていけ!」

 

お兄様、私、ほのか以外の5人は起立して右手で拳を作り、左胸を叩いた。…宇宙戦艦ヤマト。(ボソッ

 

「さて、お前達にはこれを渡しておこう。」

 

達也に胸ポケットに入るカメラを渡した。

 

「と言いたいところなんだが、女子制服用のが出来てなくてな。今日はオフで構わない。何かあったら、腕章をつけてから介入してくれればいい。よろしく頼むぞ。」

 

これは…あのくだりをやらなくてはならないのかな?

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

やっぱりこうなったか…

 

人垣に埋もれ、逃げられなくなった、私とほのかは現在進行形でSSボード・バイアスロン部のOGの人に誘拐されている。

私を掴んでいるのが風祭涼歌さん。ほのかを抱えるのが萬谷颯希さん。共にナンバーズとエレメンツの末裔だ。

そしてその後ろには、渡辺摩利風紀委員長が鬼の形相で追いかけてくる。

 

「うちの風紀委員に手を出すなー!」

「キミたち風紀委員なの?」

「一応。」

「ひああぁぁぁぁ―――」

 

ほのかはスピードと状況把握困難で悲鳴をあげ続けてる。

 

何度も渡辺委員長とスケートボードでの追いかけっこの中でも魔法の掛け合いをしているが、この2人のスケートボードの操縦と魔法の巧みさそしてコンビネーションに渡辺委員長も差が開かないものの縮まらない。

 

てか、渡辺摩利さんってナンバーズでもないのに魔法師として強すぎぃ(人の事いえないけど)。

 

かくいう私は、OG2人の戦術性とこの高速性に原作どうのこうの関係なく憧れのようなものを感じていた。

かっこいい。元男子高校生として、このかっこよさは非常に惹かれるものがある。

 

こういうものには惹かれちゃう。だって(元)男の子だもん。笑笑

 

 

 

しかも、それを可憐な少女(大学生に少女は無いかな?)が魅せたという事に、今の自分の取り柄に出来るんじゃないかと思った。

 

 

 

 

 

その後、結局、原作通りにSSボード・バイアスロン部にほのか共々入部を約束して、サイオン酔いした乗馬部の部員を運んだ。



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お兄様以外の風紀委員も、なかなか強いんだよ

翌日の午後の授業はビーチバレーだった。砂地で走るのは特に全身運動になり、魔法師の体力的なカバーをする…らしい。

 

今日は第二小体育館でビーチフラッグを行った。なんでも、砂の上で、起きて走って飛び込むという動作はビーチバレーに通じていて、最初の慣れさせるという部分に当てはまるらしい。

 

わざわざ水着に着替えなければならないこと以外は楽しかった。

 

 

何故かって?

 

 

隣の凶器に反対側の凶器…ほのかもだけど深雪も比較的大きい…深雪の分まで今日はほのかを抓ろう。

挙句の果てには、ビーチフラッグでうつ伏せの状態でスタートを待つので、水着越しでもほのかの物が潰れてて、自分のを見下ろしてため息をつくという行動が私を含め何人かが見ていた。大きい割に形もいいからさらに嫉妬だ。

 

 

閑話休題。

 

 

実は女子の制服はいくつか種類があって、インナーガウンの場合、形こそ決まっているものの、色や刺繍はパターン組み合わせでかなり種類がある。さらに、その中のワンピースも3パターン存在していて、深雪の着ているピッタリとしたタイプ、渡辺委員長の着ているスリットの入ったタイプ、千葉家の門下―と思っていた千葉家の娘さんだったエリカの着ている裾が腰部~臀部のあたりから少し広がっているタイプがある。

私とほのかの制服は3つ目の広がっているタイプに、ほのかは橙、雫は水色、刺繍は揃えて花にしている。べ、別にほのかとおそろいがいいって訳じゃないからね!?

 

それはともかく、とりあえず更衣室の陰でほのかの先っぽを摘んでおいた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「さて、2人にはこれを渡しておこう。」

 

放課後、渡辺委員長から小型のカメラを受け取った。

 

「女子制服にはポケットがジャケットの内側にしかないからな…どこでもいいが、留めておけば撮れる。スイッチはここだ。」

 

渡辺委員長が使い方を説明する。

 

「そして、お前達はSSボード・バイアスロン部に入部するんだったな?ならばバイアスロン部のデモを手伝って来い。何かあったら対応しろ。お前達は幸い未だ風紀委員として知られていないからな。潜入捜査だ。」

 

「了解。」

「はい!」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

とは言ったものの…

 

流石にそうポンポン起こるわけでもなく、デモのサポートをしつつ見学していた。

 

「なるほど…加速は瞬間のベクトルの操作だから加速で速度を上げて身体操作でボードを操作することで魔法力に余力を持たせてるのか…ほのかなら移動加速複合でも射撃魔法飛ばせそうかな、複合魔法も難なく出来ちゃうからね。」

「無理無理!マルチキャストは不得意なんだよ…その上精密照準なんて…」

「じゃあ、私みたいに2台持ちにすれば?」

「パラレルキャストなんてもっと難しいよ!?」

 

実は、ほのかには秘密だが、この時点で既に3台のCADのパラレルキャストは可能にしている。お兄様を超えた…!

 

右手に汎用型、左手に特化型、メガネに模した汎用型(ただし起動式は2つまで)で、フォノンメーザーを高出力で発揮出来る。ある意味、戦術級魔法師である。

 

あ、ちなみに、性能の低い競技用だと2つまでが限界でした笑笑。

 

「魔法なんてイメージなんだからどうとでもなるのに…」

 

その時、渡辺委員長から風紀委員の共通チャンネルで通信がきた。

 

『北山、光井、司波、今どこだ?』

『司波です、校舎3階にて喧嘩の仲裁中です。摘発する程ではないので事後報告します。』

「私…北山と光井です。小体育館裏でデモの見学中です。」

『北山と光井は第一体育館前での乱闘騒ぎに対応してくれ。鋼太郎と沢木が対応しているが、手が足りん。私も急行するが、そちらも頼む!ほかの連中は私と共に不適正使用の摘発中だ!』

「了解、全速力で。」

 

直ぐにほのかに囁く。

 

「ほのか、乱闘騒ぎの対応!急ぐよ!」

 

そう言ってバイアスロン部の先輩からボードを借りて全速力で飛ばす。

加速魔法で加速して身体操作で曲がる。

 

「昨日のあのふたりみたいに!」

 

今持っている左腕の内側にある入学祝いのDreamin' Twilightに加えて眼鏡型のCADをかける。眼鏡型に入れてある起動式はフォノンメーザーと衝撃砲だ。

 

後ろの方でほのかが安全運転しているが、置いていく。

 

「見つけた!」

 

殴り合おうとしていた手前の2人を衝撃砲―エアブリッドの振動系バージョンのパルス波で弾き飛ばす。

 

「ほんと、傷つけないように魔法使うのって難しいな…」

 

魔法で戦うのも拳や武器で戦うのも同じで、手加減をしなければ後遺症の残るような攻撃になってしまう。

 

「沢木さん!後ろ!」

 

沢木先輩に後ろから来たほのかが叫ぶ。

 

「はぁぁ!」

 

CADを操作した沢木先輩が気合を入れる。

エアアーマー。収束・移動系の複合魔法で、体表面から3~5cmの相対座標に圧縮空気の層を築く魔法 。

 

圧縮率や侵入角によってはハイパワーライフルと呼ばれる対魔法師用の高初速徹甲ライフルすらも弾くことの出来る攻防一体の技。

 

故に、後ろからのドライブリザード―二酸化炭素の昇華したドライアイス弾も弾く。

 

「すまない、助かった!」

「いえ!私の役割ですから!」

 

ほのかが閃光で目潰ししたところを、辰巳先輩がシングルアクション(単一工程)の移動魔法で吹き飛ばしていく。

私の衝撃砲で体勢を崩させて、沢木先輩がマジック・アーツで落としていく。

さらに合流した渡辺委員長が加重系で拘束していく。

 

 

 

 

魔法師の無意識的な情報強化の鎧は鎧ごと移動させたり、加重させることで無視することは可能であることを活かした―逆を返すとそれしか出来ない方法である。

だが、対人魔法師戦ならばとても効果的である。

 

 

乱闘騒ぎはわずか10数分で解決された。




UA3500、お気に入り100を超えました!
ありがとうございます。

感想、評価、お待ちしています。
気分で返答しますので。笑笑

今後も楽しんでいってね!


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探偵なんて、なかなかできることじゃないよ(前編)

4000文字を超えて長くなったので前後編に分けました。

後編も今日中に投稿します。


「美少女探偵団?」

「そう!」

 

赤毛の天真爛漫少女、明智英美は私とほのかにグイッと顔を寄せて言う。

 

「えーっ、なにそれ!?」

「だってこんなのほっとけないじゃん?」

 

こうなったのは、今日―勧誘週間3日目の放課後の始まりに遡る。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

私とほのかが腕章をつけて巡回(遠巻きに)していたところ、少し離れた生垣の根元で赤い髪の少女を見つけた。

彼女―明智英美、愛称エイミィは喧嘩の現場を覗いていた。

 

「エイミィ、何してるの?」

「あの人…二科生で風紀委員やってる人だけど、さっきからわざと攻撃受けてるんだ。全て回避したり打ち消したりしてるけど…」

「そんな!?」

「…(流石お兄様笑笑。この程度なら避けるよね。)」

「どうすればいいのかな…?」

「証拠がないし、現行犯なら私達の証言で通るけど…」

「だからさ…私達で証拠を押さえない?」

 

と、ここで冒頭に戻る。

 

 

しかし、忘れないで欲しい。

 

雫とほのか、さらにエイミィは成績優秀者だ。入試成績は既に公然の秘密である以上、人目に触れると勧誘される。…つまり…

 

「ハイポスト・バスケ部です!どうですか!?」

「女子レッグボール部です!」

「クラウド・ボール部!入部しない!?」

「射撃やってみない!?」

「山岳部!サバイバルしようぜ!」

 

風紀委員とSSボード・バイアスロン部でおなかいっぱいです。

ってか非魔法競技の部活がなんで私達みたいな魔法成績優秀者にたかるのかな!?

 

シャドウスクエア―光波振動系魔法の1つであり、指定の四角柱の内側に光波が入らないようにする障壁魔法―でほのかが勧誘組を目潰しして全速力で走って逃げた。

 

こういう時はほのかって便利だと思う。

工程数の多い魔法も出来るし。

 

隣の芝は青く見える、かな。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

翌日。

 

校舎の屋上には、SSボード・バイアスロンのユニフォーム(速攻でボード含めて買った)姿の私とほのか、狩猟部の練習着姿のエイミィの影があった。

 

「何も近くで見ている必要は無いのよ。遠くからの方がよく分かることだってあるしね。」

「それに、クラブのユニフォームを着ていればしつこく勧誘されることもないしね。」

 

この会話を聞いている時、私はマルタイのお兄様の監視ではなく、襲撃者の捜索でもなく、隣のほのかの姿を愛でつつ鼻血を垂らしていた。

仕方ないじゃないか、こんなにほのかの色っぽい太ももを晒す短いスパッツに肘に長袖インナーにクラブTシャツと肘膝のプロテクター…色っぽすぎる!

ほのかのスタイルはそれこそ個人的には深雪より健康的でいいと思う。深雪は若干完璧過ぎると私は思ってしまう。

―――簡単に言えば、色気のない絶世の美少女というのが正解だろうか。確かに色気がない訳ではないのだが、どちらかと言うと手を出せない雰囲気を醸し出す容姿なのだ。

ほのかの場合、手を出したくなるような容姿なのだ。そういう意味ではほのかの方が美少女だと私は思う。

 

「し、雫!?大丈夫!?鼻血出てるけど!?」

「あ、安宿先生呼んでこようか!?」

「大丈夫。問題ない。」

 

ティッシュを鼻に詰めて、監視に戻る。

 

「来た!」

 

達也の進行方向に魔法の兆候が出た。

そこから十数メートル離れたところにCADを持っている男子生徒を見つけた。

 

「見つけた!右の方!」

「ほんとだ!」

 

魔法が発動する直前にかき消された。

 

「今の…キャストジャミング…?」

「間違いないの?」

「雫のボディーガードさんが使ってたやつと同じ…」

「でも、『お兄様』がアンティナイトを持っているようには見えないよ。」

「深雪に怒られるよ?」

 

寸劇をしていた私達にエイミィが叫ぶ。

 

「あっ!逃げた!」

 

こんな時のために……

 

「特化型!?」

 

拳銃タイプの銃身が長く照準補正の付いた特化型で襲撃者をロックする。

使った魔法はドライミーティア。発射したドライアイス弾を命中前に昇華してその衝撃で攻撃するもの。

 

「…外した。」

「照準難しいよね〜。」

 

魔法は厳密な座標指定をしなければならない。

だからこそ、射撃系魔法は自身の近くで魔法を発動する。魔法の発動座標が近ければ近いほど感覚的な照準が早くなるのである。

簡単に言えば、魔法の座標指定で遠くの敵の近くに魔法を発動させるより、近くで発動してその効果が相手の方向に飛ばす方が早いのである。

 

「顔、見えた?」

 

ほのかに首を横に振って見えなかったと伝えるが―

 

「見たよ!バッチリ!あれは男子剣道部のキャプテンだったと思う。」

「えっ、ほんと!?」

「写真かなにかで確かめてみなきゃだけど、多分間違いないよ。」

「写真…」

「生徒会ならありそう。風紀委員として必要だからって言ってみようかな。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「個人情報になるから、ひととなりだとかは持ち出しは出来ないわね…生徒会室に来てくれれば見せられるけど…あっでも、写真と競技成績くらいなら、部活連の広報部の学内ページに掲載されていたと思うけど…」

「学内ページ?」

「…?」

「ふたりとも知らなかったのね。」

「!」

「こんなのあったんだ…」

「授業中はロックされていて見られなくなっているから、気づかないかもしれないわね。初期画面から見せるから見ててね。」

「うん、ありがとう!」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「うん!あの時逃げてったのコイツだよ!間違いない!3年F組司甲か…動機はなんだろ…嫉妬?」

「その人は二科生だから単純に嫉妬ではないと思う。」

「あっ、F組か。…でも、『同じ二科生なのになんであいつだけ!』ってならありえなくはなさそうだよね。」

「だけど、私達が見たのは一科生のグループばかりだった。」

「こんなこと言いたくないけど…一科生と二科生が下級生に嫌がらせをするためだけに日頃の対立を棚上げにして手を組むなんて考えにくいよね。」

「対立っていうより、無意識の差別…もぶざ…森崎くんたちは実際に対立してたけど。」

「はたからみると私達もそうだったね…」

「ええっと、手を組めないなら、つまり複数グループが、狙ってるってことかな?」

 

はあ~とため息を吐く私達にエイミィはトドメをさした。

 

それにしても、何が出来るか…

 

「あ、」

「なに?ほのか。」

「襲撃現場の写真を撮るっていうのはどうかな!」

「写真!?」

「そこまですると、本格的にストーカーなんじゃ…」

「ち、違うよ!証拠を集めるだけなんだから!」

「でも、写真を届けるとしたら生徒会でしょ?大変なことになるって話だったじゃん。」

「確か匿名の通報システムがあったと…」

「公益通報システムの学内版だね。」

「そうそれっ!」

「でもね…」

 

私が渋ると、ほのかとエイミィが『ん?』という顔でこちらを見る。

 

「そもそも、専用のカメラじゃないと写真には余剰サイオン光も魔法式も起動式も映らないし、エアブリッドも映らない。ドライアイス弾も魔法で出来たものだから消えやすいし。専用のカメラは軍とか警察じゃないと発注すら出来ないから…」

「「確かに。」」

 

つまり、八方塞がりなのであった。






UA4,800を超えました!皆様、ご愛読感謝です~

今後も楽しんでいってね!


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探偵なんて、なかなかできることじゃないよ(後編)

数日後。

 

なんの対策も立てられずに勧誘週間を終えた。

 

もうこれで終わり…と思っていた。否、私はまだあると知ってはいた。が、ここまで来てまさかこの展開になるとは思っていなかったのだ。

 

「あっ…」

「えっなに?」

「ほら、あそこ。剣道部の主将だよ。」

「えっあの写真の?」

「あれ、でも今日は剣道部って部活のはずだけど…」

「あやしい!ピンときた!」

 

誰かこの2人のブレーキ役やってくれ。

 

「ちょっとつけてみようか?」

「そうだね、気になるし。」

「はぁ…ついて行くよ。」

「じゃあ…今度こそ、美少女探偵団、活動開始!」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

まずい。完全に誘導されてる…アンティナイト持ってるんだったよね?サイオンウォールを発動待機させとこう。

 

「家がこっちの方なのかな?」

「いや…朝はキャビネットで登校してたし、違うと思うんだけどね。」

 

その瞬間、司甲は走り出した。

 

へぇー、移動加速系の後押しなくてもかなりのスプリンターじゃない。

 

「気づかれた!?」

「わかんないけどとにかく追うよ!」

 

素人の尾行だからねぇ~。バレてない方がおかしいよね。

 

裏路地に入った瞬間、見失った。

そして…バイクに乗った黒づくめに囲まれた。

 

彼らはバイクから降りると、少女3人と甘く見たのか囲むだけ囲んで余裕ぶっていた。

 

「ふたりとも、私が合図したら走って。あと、CADのスイッチを。」

「うん。」

 

「ふん、コソコソと嗅ぎ回りやがって…我々の計画を邪魔するネズミは―」

 

わざわざ口上を待つのは特撮だけで十分だよ!

 

「GO!!」

 

路地に出る方向に黒づくめの間を抜いて『ほのかとエイミィ』は走り出した。

 

「目を逸らしたら、やられるよ?」

 

それに対して目を奪われていた下っ端ども4人中2人を衝撃砲で吹き飛ばしていく。今回は乱闘騒ぎと違って威力は死なないで怪我しても知らんくらいで、Dreamin' Twilightで発動しているため処理速度もこちらの方が速い。

 

「ただの女子高生だと思って…」

 

さらにそれに振り返った残っていた下っ端残り2人をエイミィが加重系の槌で殴る。

 

「なめないでよね!」

 

そこに、遅れて援軍に来た下っ端5人がいた。

 

「私も!」

 

ほのかの閃光魔法で目潰しをする。

 

「クソ…化け物め!これでも喰らえ!」

「きゃあっ!」

 

ほのかが頭を抑えながら倒れ込み、エイミィは座り込んだ。

 

「ほのか!」

「ふふ、苦しいか。司様からお借りしたアンティナイトによるこのキャストジャミングがある限り、お前達は一切魔法を使えない。」

 

まだ立っていた私と座り込んだだけのエイミィを見て、

 

「まだ効果が足りないようだな…」

 

とアンティナイトにサイオンをさらに流し込んだ。

 

「!…う…」

 

エイミィが倒れた。

 

「な、なぜお前は倒れないんだ!」

「アンティナイトによるキャストジャミングは、魔法式が対象物のエイドスに働きかけるのを妨害する無系統魔法の一種。 無意味で不規則なサイオン波を大量に散布することで、魔法式がエイドスに働きかけるプロセスを阻害する。非魔法師でもサイオンさえ保有していれば運用可能。でもね…そのサイオン波は無系統障壁魔法『サイオンウォール』を事前に展開することで防げる。さらに言えば非魔法師のキャストジャミングは総じてサイオンの扱いがなっていないことから強度が低い。私にその程度のキャストジャミングは効かない。キャストジャミングの強度を超えるサイオン量で魔法式を組み立てればいいだけ。」

「馬鹿な…」

「バイバイ。」

 

衝撃砲で相手の意識を刈り取る。

 

「た、助かった…の?」

「うん。サイオンウォールを張っといて良かった。それと…深雪、盗み見は良くないよ?」

 

建物の角から出てきた深雪。

 

「…分かってたの?」

「気を張ってたからね…疲れた。」

「後片付けは任せて。今大事にしたくない事情があるのだけど…いいかしら?」

「うん、監視カメラにも撮られてないし。」

「そう、ありがとう。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ねえ、雫、なんでキャストジャミングが雫には効かなかったの?」

 

ほのかが帰り道、私に疑問をぶつけてきた。

 

「サイオンウォールだって言ってたけど、あの時展開してなかったでしょ?」

「…要はサイオン波が魔法式がエイドスに働きかけるのを防ぐ魔法がキャストジャミング。私にとって、非魔法師のサイオンの扱いに慣れていないキャストジャミング程度なら干渉力で無理やり魔法を使える。ただそれだけだよ。サイオンウォールは最初はスタンバイしてたけど、破棄しちゃってたからもう一度組むよりも倒した方が早いと思ったんだよ。」

「なるほどねぇ…やっぱり雫って凄いね!」

 

エイミィのその無邪気で眩しい笑顔に勝る干渉力はないと私は思うけどね。

ま、ほのかの方がかわいいけどね。

 

「そんなことないよ。私だけなら達也さんのためにここまでやろうとは思わなかったと思うし。きな臭すぎて。」

「それにしても…軍事物資のアンティナイトを持ってるヤンキーなんて居ないよね?本当にやばい相手ってことだよね?」

「確かに!雫のボディーガードさんもアンティナイトは『レンタル』だもんね…」

 

私達3人はそのまま近くの駅からそれぞれキャビネットで帰宅した。

 

あ、今日はほのかもうちに来るの?

久しぶりの抱き枕!ktkr!



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速さなら負けないよ。

魔法実技の授業。

 

1年生のこの時期はとにかく発動速度の短縮が優先される。

それは一科生であろうと二科生であろうとカリキュラムは同じである以上、やることは同じだ。

 

しかしながら、今は機械に慣れることを目的にやっているため、1000ms(ミリセコンド)を切ることを目標にやっている。

一科生ならばある程度本気でやれば1発で通る課題でも、二科生にとってこの課題は厳しい。

 

達也さんのクラスのE組では、達也さんの友達2人がまだ終わっていないから昼休みもやるので、深雪がお昼ごはんにサンドイッチを買って来て欲しいとメッセージが届いたらしい。その頃は、深雪とほのかと食堂でお昼ごはんにしていたので、食べ終わってから、サンドイッチをコンビニ風の購買でいくつかと飲み物も人数分購入して行くことにした。

 

実習室に入り、達也さんの後ろにつけた時に、深雪が遠慮がちに声をかけた。

 

「お兄様、お邪魔してもよろしいですか?」

「深雪…と、光井さんに北山さんか。」

 

振り返って私達を確認したのはエリカ。

 

以前の森崎と二科生の対立の時にCADを払い落とせると言った千葉家の門下―と思っていたが、娘だったらしい。しかも免許皆伝。剣術だけに限れば渡辺委員長を超えるらしい。

 

「エリカ、気を逸らすな。すまん、深雪。次で終わりだから、少しだけ待っていてくれ。」

「っ?」

「分かりました、お兄様。」

 

プレッシャーのかけ方がえげつないお兄様。

 

2人は気合いでCADのパネルに手を載せた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「終わったー!」

「ふぅ…ダンケ、達也。」

 

レオ―対立した時のCADを払い落とせると言った男子の方だ―の謝辞に片手を上げて応えるお兄様、2.5枚目っぽい。

 

そこに、私達は歩み寄っていく。

 

「ふたりともお疲れ様。お兄様、仰った通りに揃えて参りましたが…足りないのではないでしょうか?」

 

決して小柄とは言えないどころかがっちりとしたレオ、千葉家の免許皆伝つまり体育会系が確定的なエリカの2人+文化系少女1人にしては少ないように思える。体育会系の高校生はガッツリ食べるのは当たり前という常識は薄れてはいるが未だにその傾向があるのはもちろんである。身体は動かせば動かすだけエネルギーを消耗するし、魔法は脳を過度に使うため糖分を消費する。

 

「いや、もうあまり時間もないからね。これくらいが適量だろう。深雪、ご苦労さま。光井さんと北山さんもありがとう、手伝わせて悪かったね。」

「いえ、全然問題ないですよ!」

「大丈夫、私はこれでも力持ち。」

 

3人からサンドイッチと飲み物を受け取った達也さんはそれをレオとエリカに渡していた。

 

「なぁに?」

「サンドイッチか?ダンケ!」

「食堂で食べると午後の授業に間に合わなくなるかもしれないからな。」

「ありがと~。もうお腹ぺこぺこだったのよ!」

 

達也さんは美月さんにもサンドイッチを勧めながら深雪からお弁当を受け取った。

 

「…でも、いいんですか?実習室での飲食は禁止なんじゃ?」

「飲食禁止は情報端末を置いてあるエリアと実習用CADのエリアだけだよ。校則でも特に禁止していないしね。」

「えっ、そうなんですか?」

「そうなんだよ。俺も禁止されているものだとばかり思い込んでいたから、少し意外だった。」

 

和気あいあいと実習室の端にある椅子を寄せてきて遅い昼食にありつく居残り組に、私達差入れ組も飲み物だけ持ってその輪に加わった。

 

色々話をしていく中で、次第に苗字呼びだった人も名前呼びが普通になっていった。

 

一科生二科生を超えて仲がいい『グループ』はここ以外には無いだろう。

一科生二科生で恋人はいるらしいが。

 

「深雪さんたちのクラスでも実習が始まっているんですよね?どんな事をやっているんですか?」

 

ほのかと私が目を合わせるのは同時だった。どう答えるべきか。指導担当が付くかつかないかだけでカリキュラムは同じである。

 

「美月たちと変わらないわよ。ノロマな機械をあてがわれて、テスト以外では役に立ちそうもないつまらない練習をさせられているところ。」

「一科も二科もカリキュラムは同じだよ。」

 

深雪の毒舌とそれを気にしていないような私に私と深雪を除いた5人が驚いた。―多分達也さんは私が反応してないことに驚いたのかな。

 

「ってことはこれと同じCADなのよね?」

「ええ。」

「参考までに、どのくらいのタイムかやってみてくれない?」

「えっ?私が?」

 

自分を指さす深雪に、エリカは大きく頷く。

 

「いいんじゃないか?」

 

苦笑いしながら頷く達也さん。深雪は躊躇いながら承諾してCADに向かった。

 

CADのパネルに手を置く。

余剰サイオン光が閃き、速度を見ていた美月の顔が強ばった。あれは段違いな速度に驚愕してるね。

エリカの催促に美月のフリーズが解けて、数字を読み出した。

 

「235ms…」

「はっ!?」

「すげ…」

 

そしてそのフリーズはレオとエリカにも伝染した。

レオとエリカは授業では1000msを切れなくて苦労していたのだ。それをあっさりとこれだけの差を見せられると苦笑するしかないだろう。

 

「あの…雫さんにほのかさんもやってみてもらえますか??」

 

いち早く立ち直った美月がお願いしてくる。

 

「私は深雪ほど速くないんだけど、いいの?」

「はい!お願いします!」

 

ほのかはCADの前に立つと後ろからの視線に緊張したのか深呼吸をする。

達也さんも『ほう…』といった顔で眺めている。

 

CADに触れる。

 

また深呼吸。

 

余剰サイオン光がひかる。

 

「492ms。ほのか、緊張し過ぎ。いつもより100ms遅い。」

「そ、それで遅いんですか?」

「見られてるっていう環境に慣れてないせいだと思う。魔法は精神状態に依存するから。」

「なるほど。ってかそれでも0.5秒切ってくるんだ…」

「比べ物にならないな…」

 

エリカとレオの言葉に、私は少しだけ反論する。

 

「ほのかの凄いのは基礎単一系つまり1工程じゃなくて多工程の魔法を難なくこなすところ。キャパシティが大きいんだよ。」

 

そして、私がCADの前に立つ。

 

実を言うと、今までは全力でこのテストをしたことが無い。

一応入試でもあった処理速度のテストだけど、入試本番は月のもので魔法力が下がっていたし、その後の処理速度の練習でも寝不足で全力とは言えなかった。(私の場合、体調に魔法力が多分に左右される。)

だが、今日はなんの不調もない。今日こそは深雪を超える!

 

 

 

 

 

 

CADに触れてサイオンを流し込む。

 

 

雑な起動式を取り込みつつ魔法を発動させる。

 

 

余剰サイオン光が輝く。

 

 

 

 

 

「232ms…」

「え!?」

「…」

 

たった3ms。勝ったには勝った。

でも、私の得意分野である干渉力では全力で使える時で僅差で負けた。キャパシティは私は大きいけど、工程数が多くなり過ぎると使えても細かい操作は苦手なので負ける。

 

処理速度では僅差と言えないくらい小さすぎる差で勝った。たった少しのことで変わってしまうくらいの差で。勝ったと言うよりドローだろう。

 

「雫、そんなに速かったっけ!?」

「入試は…体調崩してたし、この間の実習も寝不足だったから…体調に魔法力が多分に左右される体質だからね。」

 

だが、それにしても悔しい。得意な系統も振動系で同じ。

どちらが上かと聞かれれば深雪だろう。私が勝っているのは無いのだから。

 

「まさか深雪に処理速度で勝るとも劣らない魔法師が同学年にいるとは思わなかったよ。」

 

達也さんが本当に驚いたのか目を少し見張っていた。

 

「いや、体調に左右されてて、万全の状態でやっと同じくらい。」

「それでも、そうそういないさ。」

 

その言葉は私の少し沈んだ心を癒してくれた気がした。



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襲撃される魔法科高校

『全校生徒の皆さん!』

 

バカでかくハウリングさせた校内放送に、ほのかと私は思わず耳を塞ぐ。

 

『し、失礼しました。全校生徒の皆さん!我々は差別撤廃を目指す有志同盟です!』

 

予想よりもエガリテの行動速度が早かったな…早すぎる男は嫌われるよ?

………ま、遅すぎるよりはマシか。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

翌々日。4月23日。

 

有志同盟と生徒会の公開討論会が行われることになった。

 

全校集会とは名ばかりの自由参加であるが、ほのかと雫は風紀委員として警備任務に就いていた。

 

通常なら七草会長がマルチスコープと呼ばれる知覚系魔法で校内外を監視しているが、今日は討論会に力を入れるのと後進の育成という名目でほのかの光波振動系魔法での監視がメインとなる。

 

私は全員が全員講堂にいても何かあったら対応できないと言って、部活棟の方でSSボード・バイアスロン部の練習をしつつこちらの方面への警戒を担当していた。

 

生徒会は背後関係にブランシュがいることを知っていると原作ではなっていたので、この配置を話した時は案外すんなり通った。

 

 

 

 

ドォン!

 

 

 

部活棟に近い演習林で、競技用のCADで遠距離射撃を練習している時だった。

 

「なんの音!?」

 

思わず口走った私の耳に飛び込んできたほかの部員の声。

 

「何あれ!」

「実技棟から煙が上がってる!?」

 

いや、ただの煙じゃない…火災なんてものじゃない。あの煙は1度だけ見たことがある。『爆煙』だ。

 

直ぐにボードとDreamin' Twilight、例の事件の後に買ったトーラス・シルバー作の特化型拳銃形態CAD White Snowを持つ。

 

「おおおおおお落ち着いて聞いてね?」

 

部長が震えながら端末を見ながら話す。

 

「当校は今、武装テロリストに襲われているわ!」

「…マジですか部長!?」

「こんなこと冗談で言わないわよ!護身のために一時的に部活用CADの使用が許可されています。でも、あくまで身を守るためだからね。」

「部長、全周警戒を取るべき。」

 

私が提案すると、部長は直ぐに全周警戒を部活の実力者に頼む。

 

「来る!」

 

演習林の入口方向を警戒していた先輩が声を上げる。

 

「そこ!」

 

部活で射撃のみを練習する時の狙撃銃型特化型CADを咄嗟に取って、ドライブリザードを見舞う。

 

「よし。…部長。私は風紀委員として警備任務を受けていますので、先に行きます。」

「気をつけて!」

 

ボードに乗ってDreamin' Twilightで加速魔法を使って演習林を抜けていった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「北山!」

 

後ろには森崎が走ってきていた。しかも腕輪型の汎用型CADで魔法加速で走っていた。

 

「お前は襲われなかったか?」

「ナイフを持った男の人に襲われたけど、バイアスロン部は全員無事。今は部活棟に避難してる。私は風紀委員として図書館棟方面に増援に。」

「ナイフか…どうやら銃を持っているのは一部らしいな。風紀委員経由で報告してくれ。実技棟方面はサブマシンガンで武装していると。こっちは部活棟に応援に行く。」

 

森崎は部活用のCADであそこまでやっているようだ。

普段からこんなふうだったら部活連推薦枠で風紀委員に来てもらいたいんだけど…たぶん無理か。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

1歩遅かった。

 

図書館棟には既にお兄様たちが突入したらしい。図書館棟前はレオと上級生数人がテロリスト相手に大立ち回りしていた。

 

「レオ、その収束魔法…硬化?上手いね。」

「これしか取り柄がねえからな!」

 

と言いつつも既に2桁のテロリストを落としている。

ドライミーティアを私も撃ちつつ左手の特化型の起動式のマガジンを入れ替える。

 

このマガジンに入っているのは振動系だ。

 

振動系に置き換えているドライブリザードで相手を撃ち落としつつ左手首のDreamin' Twilightで適度に加速魔法でスピードを上げる。

 

図書館棟の制圧が終わると同時に、図書館棟前も完全制圧された。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

達也さんの捕らえた壬生紗耶香という二科生から事情聴取を行っていた。

 

簡単に言うと、壬生先輩がエガリテしいてはブランシュに加担していた原因は渡辺委員長が言った言葉の誤解…だった。達也さんは洗脳されているだろうと言っていた。

つまり、同盟の背後にブランシュがあることが証言として出てきたという事だ。

 

「予想通りですね、お兄様。」

「本命すぎて面白みにかけるけどな。」

「委員長、現実なんてそんなものですよ。」

 

少し暗めの雰囲気の中、七草会長がさらに重めの雰囲気で壬生先輩に告げた。

 

「残念だけど、今回の件は警察に報告することになるわ。」

「わかっています。それだけの事をしたのですから。」

「待ってください。」

 

達也さんは待ったをかける。

 

「今回の事件、首謀者は先輩や司先輩ではありません。そちらを先に叩けば先輩たちのことを不問にできるのではないでしょうか?」

「えっ!無茶よそんな…!私だって助けたいのはやまやまだけど…」

「司波くん、私なら大丈夫だから―」

 

七草会長と壬生先輩が止めようとする中、目を伏せながら聞いていた十文字会頭が目をゆっくり開いて問うた。

 

「勝算はあるのか?」

「十文字くん?」

「はい。…別に先輩のためではありません。俺たちはもうこの事件の当事者です。俺たちの平穏な生活を脅かすものがあるなら―――俺は全力で叩きます。」

 

その眼は戦う者としての覚悟に満ちていた。

 

「なるほどな。理由は分かった。そういうことなら俺も全力を挙げて協力させてもらう。」

 

「「ありがとうございます。」」

 

十文字会頭の言葉に達也さんと深雪が2人で頭を下げた。

 



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反撃する魔法科高校

小野先生からの情報で、目と鼻の先にある廃工場がヤツらの拠点だということが分かり、突入班を編成する。

 

学校に残らなければならない責任者と警備担当者として、七草会長と渡辺委員長が残ることになった。

 

よって、司波達也、司波深雪、十文字克人の3人は言い出しっぺの法則―と言うよりは自主的に参加。

さらに、西城レオンハルト、千葉エリカ、桐原武明の3人も参加を申し出る。

 

さて、私とほのかはどうするべきか…本来の物語ならばこのまま帰宅だろうが、そもそも原作ならこの部屋にも来ていないはずなのである。

さて、どう動こうか。

 

「…私も行かせてください!」

 

考えているうちにほのかが立候補した。

 

「だが、今回は攻勢に出るんだ。君の能力では直接戦闘には向かないだろう?」

「私もついて行きます。それではどうでしょうか?」

「……雫、サイオンが枯渇寸前じゃないか?」

 

十文字会頭の言葉に、思わず言ってしまったが、すぐに達也さんから制止が入った。

 

「…なんでそれを?」

 

実は、森崎と別れてからレオと合流するまでにアンティナイトを持つ銃火器で武装したテロリスト15人と単独で交戦していて、いつもよりサイオンを流す量を増やして魔法式のサイオン構成量を増やして無理やり魔法を連発してから、図書館棟前の戦いに参加したため、図書館棟前ではドライブリザードという比較的燃費の良い魔法を使わざるを得なかった程には消耗していた。

 

「雫、悪い事は言わん。残れ。」

 

無表情で告げる達也さんだが、その瞳は既にこの部屋には向いていない。

 

「ドライブリザードならまだ使えるし、切り札も数回ならまだやれる。」

 

フォノンメーザーはまだ使える。さらには『あれ』もまだ使える。

 

「北山、お前は確か出力が売りの振動系が得意だったな?」

「はい。」

「司波、連れて行け。戦力にはなる。」

「…分かりました。」

 

お兄様にとっては今の私とほのかは戦力にはならない―とでも思っているのだろう。

だが、まだやれる。『この人の“あの眼”は万能でない』という事だ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「司波、お前が言い出したことだ。お前が指揮を執れ。」

 

装甲を配置した4WDの運転席に座り装甲車を爆走させる十文字会頭。

 

「了解。俺と深雪は正面、会頭と桐原先輩は後ろから、レオとエリカは退路の確保、ほのかと雫はジープで固定砲台だ。正面の門はレオの硬化魔法で車ごと突っ込む。」

「オーケー!パンツァー!」

 

既に、すぐ目の前に門が来ている。レオの硬化魔法は装甲や車のフレームを全て『固定』した。

 

門を突破した車は直ぐに止まらざるを得なかった。

 

「おいおい、既に歓迎ムードかよ。」

「やる気満々ね。」

 

外の敷地には土嚢のバリケードと重機関銃や小銃でこちらを捉えていた。

 

「会頭!」

「ぬぅ!」

 

十文字会頭が咄嗟に一定質量以上の物質を通さない障壁魔法を展開した。

 

「レオ、硬化で突っ切れるか?」

「車ごとはきついな。」

 

既に十文字会頭の障壁魔法に大量の弾丸が当たっている。

 

「レオ、個人でいい。バリケードの内側に入り込んで暴れろ。…雫、弾を防げるか?」

「可能。」

「よし、それなら、会頭は障壁を展開しながらレオに続いてください。その陰に桐原先輩が続いて内側で暴れてください。エリカと深雪はジープの陰で後ろを警戒。」

「了解!」「分かった。」「かしこまりました。」

 

「GO!」

 

達也さんの合図でレオと十文字会頭、桐原先輩がバリゲードに突っ込む。

 

私は障壁魔法を振動発散複合系で発動した。

当たった弾が一瞬で高温になり蒸発した。

 

「達也さん、後ろに大っきい大砲が!」

 

光波振動系魔法で奥を見ていたほのかが大砲を見つけた。

 

「大砲?……まさか!こんなものまで持ち込んでいるのか!」

 

達也さんは『あの眼』で見たらしく、驚く。

 

「ほのか、見して。」

「うん。」

 

その大砲は第3次大戦時に対魔法師用に作成された、ハイパワーライフルの前の対魔法師用兵器『ピアーズキャノン』だった。

 

要は、魔法力で防げない程の運動エネルギー(質量と速さ)で撃つ砲だ。

 

十文字会頭クラスの障壁魔法でなければ防げはしない。

 

「!」

 

私は装甲車の上に上り、正確な位置を目視すると、特化型CAD White Snowのマガジンを交換する。

 

「決める!」

 

サイオンを流しつつ引き金を引く。

 

パルス波エアブリッドでは無い、『晒してもいい』魔法では最強の破壊力を誇る魔法を発動した。

 

「……フォノンメーザーか…!」

 

達也さんの声が感心するような声だった。貸一つだ。私が撃たなければ、分解を使っただろうからね。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「暇だなー。」

「暇だねぇ〜。」

「暇だな。」

「はぁ…暇。」

 

外の担当4人の心の声だった。さっきの戦闘が嘘のように何も起こらなかった。中も1度も銃撃の音もない。圧勝している証拠である。

 

そもそも室内遭遇戦でお兄様に勝る人間はいないどころか、深雪の凍火なら銃火器を止めることが出来る。まあさっきは人が多かったから、達也さんの『眼』を晒したくなかったんだね。

 

結局、十文字家の後片付けが来るまでは何も起こらなかったのであった。




入学編のメインストーリー、完

評価、お気に入りありがとうございます。
お気に入りは170を超え、UAは7,600を超えました!
ありがとうございます。


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アフターストーリー

4月24日。公開討論会翌日。

カフェ、アイネブリーゼ。

 

そのドアの前には立て看板が置かれていた。

 

 

『貸切』と。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「「「かんぱーい!」」」

 

7つのグラスが合わせられる。

 

「よーし、今日は飲むわよー!」

「エリカちゃんったら、既に盛り上がってるね。」

「…あれ、ノンアルだよな?」

 

お兄様を除くE組3人のどこか抜けている会話に、私とほのかは顔を見合わせてくすくす笑った。

 

「私達も来てよかったのかな?」

 

元々E組の4人+深雪の所に交ざっているので、ほのかが遠慮気味に深雪に問う。

 

「もちろん!ぜひ来て欲しくて呼んだのよ。」

 

深雪の微笑みは美人すぎる。

 

「今日は賑やかだねぇ。なんの集まりなんだい?」

「お疲れ会のような…」

「達也くんのお誕生日会だよ!」

「「「「えっ!?」」」」

 

確かに、昨日のことがあって、だが、その前からエリカが計画していたらしい。

 

「エリカちゃんなんで教えてくれないの!?」

「いやー、正確な日付は知らないよ。」

「えっ?」

「どうせ4月中でしょ?誤差の範囲かなあって深雪に昨日…」

「そう、()()()()()()()()()って、ビックリしたわ。」

 

深雪の「悪意なんてありませーん」という笑顔に、私は、「なるほど、図ったんだね。」と勘づいた。

 

そして、エリカも「ん?」と引っかかったらしく、達也さんに

 

「まさか本当に今日だった?」

「ああ、驚いたよ。ありがとう。」

 

という会話で、確定的になり、深雪に問い詰めるものの、深雪の方が1枚上手である。

 

「プレゼント用意してないよ…」

「気にすることないですよ…って私が言っていいのかわからないですけど。」

「確かにそれは達也さんの言葉だね。」

「ま、俺らも同じクラスなのに全く知らなかったわけだしな。」

「まあまあ、みんなに気を使わせたくなかったんだろう。このザッハトルテを僕ときみたちからのプレゼントということにして手を打たないか?」

「さすがマスター!」

 

マスターの持ってきたザッハトルテはマスター作らしく、アイネブリーゼとロゴがついていた。

 

「マスター、いつからパティシエに!?」

 

思わず口走った私に、マスターは、

 

「昔は魔法師だったんだが、魔法技能を失ってから専門学校に通ってね。親が喫茶店を営んでいたから、それに影響されてね。」

「へぇー。」

 

ザッハトルテにロウソクを挿して、私が振動系魔法でロウソクの先を熱して発火させた。

 

マスターを含めた全員で『ハッピーバースデー』を歌って、達也さんが「フッ」と息を吹き掛けてロウソクを消した。大きなザッハトルテに16本のロウソク。消えたロウソクが、独特な匂いを生み出した。

 

「おめでとー!」

「おめでとうございます!」

「おめでとう、達也!」

「おめでとう、達也さん!」

「おめでとう…!」

 

私達の祝福を横から深雪が嬉しそうに拍手していた。

 

「達也さん、実はいつかのタイミングで渡そうと思って用意はしてたんだけど、今日にはラッピングは間に合わなくて…剥き身でごめん。」

 

私が差し出したのは、古代ルーン文字の書き方や起動の仕方などを私がまとめたオリジナル魔導書である。

達也さんは魔導書をめくる。

 

「ほぅ…雫が書いたのか?」

 

コクリと私が頷くと、感心したように、

 

「凄いな…古代ルーン文字をここまで解明している人はそれほどいないと思うが。」

「私が唯一『自分の』努力で手に入れた技だから。」

 

そう、前世での私は結構オカルトマニアだったので、ルーン文字を専門にオカルト研究部で研究していた。

 

こちらに来てもルーン文字だけは日本で誰にも負けないと言うくらいに自分で研究を続けた。おかげで古式に分類されるルーンを日本で1番の理解している魔法師となってしまったが。

 

「ありがとう、雫。大切に使わせてもらうよ。」

「うん。」

 

そのやり取りを少し驚いた顔で深雪が見ていた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「やっぱり今年の九校戦の本命はウチと第三高校……」

 

九校戦の下馬評や前年・一昨年の結果からもやはり、総合優勝は第一高校と第三高校が有力だ。

 

首都圏の人口比率の影響で、優秀な魔法師が多くなりやすい第一高校の優勝回数は多い。

ただ、第一高校の場合、国際基準のみの教育しかしないので、第三高校や第九高校にたまに負けてしまうことが多々ある。

第二高校は第一高校の関西版で、こちらも優勝経験がある。

 

「ん…ほのかから電話…」

 

『もしもし、雫、期末試験の勉強進んでる?私ぜんぜんでさー。』

『うっ…九校戦のことで頭がいっぱいで…忘れてた。』

『ええっ!じゃあさ、一緒に勉強会しない?エイミィも誘ってさ。』

『いいんじゃないかな。』

 

 

ふふ、エイミィか…胸は私よりも小さいけど、腕も足もキレイでロリータも似合いそうだな…赤い髪も映えそうなブラウスに…裾にモコっとしたフリル使ったミニスカに白ニーソ……ぐへへへ。

 

ほのかと一緒に着せ替え人形にしたいなぁ。




入学編、完結。

この話で10話ですね。文字量これくらいがピッタリかも。


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九校戦編
九校戦は今年も熱いよね


魔法言語学。

 

この学問は、古式魔法に使われてきた祝詞や呪文などを学ぶ学問である。

 

 

「『光あれ』をラテン語でなんて言う?」

「えーと、なんだっけ?」

「Fiat Lux!」

「That's Right.」

「光は得意範囲なのに〜!」

 

私の出した問題は、魔法言語学の問題集からの問題だ。

 

呪文は要は自己暗示のようなものなので、確固たるイメージのわく言語でないと使えないのだが…

 

「ラテン語はイギリスでは小さい頃から必須教養だからね。サンスクリット語とかエノク語とかはさっぱり…」

「大和言葉とか祝詞ならほのかの方が少し有利みたいなものだね。」

 

選択科目はいくつかのうちから2つ取らなければならない。

魔法言語学、魔法幾何学、文字型魔法学、魔法民族学、魔法道具学、そして…占い学。

ちなみに、内容は文字のままなのだが、占い学は『エイドスには未来が詰まっているのだー!』というちょっとイカれた研究者が集って出来た学問なので、取る生徒はよっぽどの変人以外いない。

閑話休題。

私は文字型魔法学と魔法幾何学、ほのかとエイミィは魔法言語学と魔法幾何学を取っていた。

 

正直、魔法工学で達也さんが余裕なのと、文字型魔法学で私が天下なのは同じである。

文字型魔法…基本的にはルーン文字が基本であり、北欧ルーン文字やアングロ・サクソンルーン文字やゲルマン共通ルーン文字、果てにはルーン文字の組み合わせ。それらは私が日本で1番の使い手である。“教えられる”ことなどないに等しい。まあ、別角度から見れるかもしれないという思いからこの学問を受講しているのだが。

 

さらに、必修の魔法工学と魔法理論。これが曲者だ。

 

魔法幾何学は要はコンパスやら定規やらの製図用文房具を使って魔法陣の制作をするだけだし、文字型魔法学は楽勝だし、魔法言語学は2人で頑張れ。

 

でも、CADのソフトなんて訳わかんないし。

 

理論は今のところ魔法の原理を学んでいるが、物理や化学を扱うので、これもまた難しい。

 

明らかに物理・化学が大学範囲まで使われている。訳分からん。

 

でも、やらねばならぬ。なぜなら…

 

「実技といえば、このテストの点数が九校戦のメンバー選抜に考慮されるんだよね。」

「そう!だから今回の試験結果は大事なんだよ…!」

 

そう、あの魔法のお披露目には必要なことだ。

なんと言っても、対馬で達也さんにマテリアル・バーストを使わせるわけにはいかないのだ。

この物語がシリアスにハマっていくのはあの事件『灼熱のハロウィン』が原因である。少なくとも、あれが無ければリーナが脱走兵を殺すのが少なくなるし、達也さんものちのち狙われないで済む。

 

あとはクラーク親子をどうにかすることを考えないと…今は四葉に消えられると達也さんたちの後ろ盾が無くなってしまう。

 

如何ともし難い問題である。

 

この世界にはクラーク親子いないとか無いかな?

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

運命の結果発表の日。

 

学内ネットワークで個人用端末に配信される。

その結果は……

 

「来た!」

 

総合順位

1 司波深雪

2 北山雫

3 光井ほのか

4 十三束鋼

5 森崎駿

………

 

実技順位

1 司波深雪

2 北山雫

3 森崎駿

4 光井ほのか

5 十三束鋼

………

 

理論順位

1 司波達也

2 司波深雪

3 吉田幹比古

4 光井ほのか

5 十三束鋼

 

順当かな。

原作よりも魔法力は強くなってる分総合順位が上がったね。

 

 

私は何としてもアイス・ピラーズ・ブレイクを深雪と戦わなくてはならないのだから。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

九校戦の新人戦の女子選抜メンバーが集められた。

 

新人戦 女子メンバー

司波深雪

北山雫

光井ほのか

明智英美

里美スバル

滝川和美

春日菜々美

桜小路紅葉

冨安天音

栗井めい

 

の10名である。

……あれ?

 

 

新人戦 女子メンバー

司波深雪

北山雫

光井ほのか

明智英美

里美スバル

滝川和美

春日菜々美

桜小路紅葉

冨安天音

栗井めい

 

 

……桜小路紅葉さんは九校戦編に描写無かったよね。

しかもさらに2人は知らない(原作でも見てない)人だよね?

 

まあいっか。

 

「皆さんには九校戦の新人戦メンバーとして参加をオファーしたいのですが、どうですか?」

 

集めた側は七草会長以下生徒会だ。どちらかと言うと深雪もそちら側だ。

 

「何も無ければ、このまま出場種目の確認をします。よろしいですか?」

 

一同が軽くと、モニターに出場種目表が用意された。

 

 

スピード・シューティング

北山雫、明智英美、滝川和美

 

バトル・ボード

光井ほのか、桜小路紅葉、栗井めい

 

クラウド・ボール

里美スバル、春日菜々美、冨安天音

 

アイス・ピラーズ・ブレイク

司波深雪、北山雫、明智英美

 

ミラージ・バット

司波深雪、光井ほのか、里美スバル

 

 

なるほど、全てで1位を取りに行く配置か。

確かに、深雪、私、ほのかは分散されている。

 

さらにほかの2名も中々堅いメンツを揃えている。

 

「何か意見はありますか?」

 

CADオタクと言われる中条あずさ先輩が声をかける。

 

クラウドだけは日程の問題があったのか。とはいえ、里美さん―スバルの実力はあるし、春日さん―菜々美も原作だと何回戦かまでは残ってた気がする。

 

「では、このまま採用させていただきます。わざわざ放課後に集まってもらってありがとうございます。お疲れ様でした。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

発足式を終えたその日の放課後。

1年A組の教室は生徒会名義で抑えていた。

 

「技術スタッフの司波です。CADの調整の他、訓練メニューの作成や作戦立案をサポートします。」

 

集められたのは、新人戦女子のスピード・シューティング、アイス・ピラーズ・ブレイク、ミラージ・バットの3種目に出場する選手。

 

深雪、ほのか、私、スバル、エイミィ、和美の6人だ。

 

「エンジニアは女の子がよかったなぁ〜。」

「私は誰でもいいよ、仕事さえちゃんとしてくれれば、ね。」

 

元々達也さんは新人戦をメインに担当することは決まっていたらしいが、男子は拒否したらしい。森崎もつっぱってた手前、手のひらを返すのが決まり悪いのだろう。

 

「ちょっと、エイミィ!スバルも失礼よ!達也さんの腕前は、プロ級なんだから!」

 

確かにプロ級だね。『シルバー』さん笑笑。

 

「うちで雇われない?」

「雫、ライセンスのない状態で雇われるつもりは無いと何度も言ってるぞ?」

 

何度目かのアプローチも歯牙にもかけない。

 

「それにしても…名前呼びか〜。もしかして彼氏とか?」

 

滝川和美よ、お前は吹雪の中に突っ込みたいのか!?

 

ま、自分の周りだけ情報強化すればいいか。

 

「ちがうよ!ね?雫。」

「うん、私も名前で呼んでる。」

「へぇ、雫も名前呼びなんだ…2人はお兄さんとどんなご関係で?」

「2人はお兄様のお友達よ。」

「友達?」

「お友達よ。」

「あやしぃ。」

「お友達よ。」

 

私達に助け舟を出したのか、釘を刺してるのか、和美やスバルの言葉に微笑みをたたえて答えていた。

 

「はぁ…そろそろ打ち合わせを始めたいんだが…」

 

女三人あつまれば姦しいと言うが、6人だと収集がつかないらしい。

 

 

…私の前世って男子高校生だけど、女の子として数えていいのかな?




主に魔法科高校の優等生をメインに作っていますが、アニメ・原作ラノベなども取り入れています。

評価、感想、お気に入り、ありがとうございます。
UAももう少しで1万越えそうですね…ありがたやー。

評価、感想、お待ちしています!


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全国魔法科高校親善魔法競技大会

九校戦の正式名称。長いね。


途中事故に巻き込まれそうになったものの、無事九校戦会場である『富士演習場』の敷地内にある軍が所有する宿泊施設に到着した。

 

荷物も細かいもの以外は規定のパッケージで輸送済みである。

 

大きくても部活バッグくらいにしかならないはずなので、現代の旅行はとても楽ちんである。

 

「ついに来ちゃったね、九校戦!どきどきする…!」

「まずはこの後懇親会だね。」

 

懇親会という名の鞘当て会。または腹の探り合いの会。

 

私とほのかはもちろん、達也さん達技術スタッフや作戦スタッフも参加する。

 

ああ、去年まで画面の向こうか観客席からしか見れなかった九校戦を、選手として参加できるなんて…

感無量です…

 

 

さ、『私も鞘当てしてきますかね、エクレール・アイリとやらに。』

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

大きな会場に各校の登録メンバーが集まり始める。

 

9つあるテーブルに各校の生徒が固まってしまうのは仕方の無いことだが、だからこそ、『力のあるもの』だとか『注目株』などはすぐに発見されてガヤガヤとなる。

 

立食パーティー式を取り入れていて、制服着用が義務付けられている。ちなみに、達也さんは刺繍ありの制服を学校の予備から借りたそうだ。

 

そして、パーティーが始まる。

 

注目株は三校のクリムゾンプリンス『一条将輝』だ。

イケメンで家柄もいいので、他の高校の女子はきゃあきゃあとまるでアイドルに出会ったファンのような盛り上がりである。

 

そして、それを冷ややかに見る少女がいた。

 

「戦いの前だというのにお気楽なものね。懇親会を何か別のものと勘違いしてるんじゃないかしら。全く軽薄で嫌になるわ。」

「それだけ気を抜いてる者が多いということじゃ。楽勝♪」

「沓子はそうやってすぐ楽観視するの良くないわ。」

 

そして、彼女たちも有名な選手である。

一色愛梨、十七夜栞、四十九院沓子。

 

「そう。『懇親会』を辞書で引いてみることをおすすめする。」

 

私はその背後から声をかける。

 

「なんですって?」

「懇親会。組織や集団に属する人どうし、また目的を同じくする人どうしが交流し、親睦を深めるための会。つまり、鞘当ての会でも腹の探り合いの会でもない。」

「これから戦う相手に仲良くなれなんて笑えますわね。」

「九校戦は元々優秀な実戦魔法師を国に供給するためのもの。だからこそ軍が全面協力してる。」

「そんな建前なんてどうでもいいんです。だいたい、あなたはナンバーズ?何かの優勝経験でもおあり?そうでも無いなら話すだけ無駄よ。」

 

へぇ、やっぱり性格も変わってないね。

 

「ロアー&ガンナーU-16実業団2094で、ホクザングループのガンナーとして、春、夏連覇。」

 

実はロアー&ガンナーをほのかと一緒に出場していたりする。

お父さんにおねだりしたら翌日には『ホクザングループ、ロアー&ガンナーの実業団を設立!』とニュースになった。

 

「…マジか。たった1晩で実業団を作った化け物グループの?」

「マジ。」

 

一色さん、口調崩れてるよー。キャラ崩壊しないでー?

そうさせた私が言うのもなんだけど。

 

確かに知る人ぞ知る伝説だもんね、お父さんの仕事の速さ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

来賓の挨拶が始まっても、私は飲み物片手に少しずつ『ある仕掛け』をしていた。

 

原作通りかどうかは知らないが、どうせ九島のおじちゃんがイタズラすることは分かっているのだ。今から注目してもらっても構わないだろう。

 

「老師」と呼ばれる十師族の頂点に立つ長老である。

21世紀の日本に十師族という序列を確立した人物であり、20年ほど前まで世界最強とさえ言われていた魔法師である。

 

まあ、最強なんて状況によって大きく変わるものだから、なんとも言えないけど。

ただ、地力が高いことは確かな人物だ。

 

最強の名を維持しながら第一線を退いて以来、ほとんど表舞台に立たない彼は毎年恒例でこの九校戦には顔を出すことで有名だ。

 

魔法力は確かに加齢で衰えたりそれに対して体力も必要だが、今この時点で、恐らく老師に正面切って戦える魔法師はここにいる卵たちの中では両手の指で数えるほどもいないだろう。

 

そして―――

 

 

老師の番つまり大トリで、スポットライトに出てきたのは、イブニングドレスに身を包み髪を金髪に染めた若い女性だった。

 

(しめた!)

 

と小声で叫び(器用だったなとあとから思った。)、待機させていた『弱く微かな』領域干渉と光波振動系魔法で、弱く微かな精神干渉系魔法(個人的には情動干渉系だと思うのだが)を打ち消しながら、女性の後ろに隠れる九島閣下を照らす。

 

九島閣下は驚いたように、『こちらを見た。』

 

「まずは悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する。」

 

90位のおじいちゃんの声にしては若い。張りのある声だ。

 

「今のはちょっとした余興だ。手品に微かな魔法を忍ばせていたものだが、そのタネに気づいたものは、私の見るところ5人だった。そして、さらに私のしていることを打ち消したものが1人。微かな意識を逸らす精神干渉系魔法を同じく微かな領域干渉で破り、光波振動系魔法で私を照らした。つまり、私がもしテロリストだとすれば、それを阻めるのはたったの6人、だという事だ。魔法とは、手段であって目的ではない。その事を思い出して欲しい。重いものを魔法で動かすのと、てこで動かすのでは結果は同じだ。魔法というツールを持つ諸君らは魔法力を磨くことも大事なことだが、それ以上に魔法の使い方について学んで欲しい。魔法を学ぶ若人諸君、私は諸君らの工夫を楽しみにしている。…それと、領域干渉と光波振動系の子には絶大な賛辞を送っておこう。」

 

厚い皮膚より速い脚。かつてのドイツの名将の言葉だ。電撃戦という新しい戦法を、道具を上手く利用して開戦期のドイツを優位に持ち込んだ。

これと同じである。最も『有効』な魔法の使い方をしろ。という事だ。

 

この事は若き少年少女らには戸惑いをもたらした。

 

だが、それが『巧みな』魔法師になる第1歩であることを忘れてはならないだろう。

 

 




本当はお風呂の話まで入れたかったんだけど、文字量が中途半端になるからここまでで!

評価、お気に入りありがとうございます。UAも1万を超えて11,000超。感謝感謝です。謝謝。

昨日の時点で週間ランキング138位に載ってました!
…ランキング載ったら通知してくれたら嬉しいんだけどなぁ。


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お風呂は魔境

「リーブル・エペーは、イギリス発祥の魔法アリのフェンシングって思うと早いよ。ただし、バトル・ボードと同じで直接妨害は禁止なんだよ。」

「へぇー。」

「さっき私がボコスカにしたのはそのリーブル・エペーで中学時代に名を馳せた選手。1年生ながら、本戦のミラージに出る。」

「上級生を押しのけて…!?」

「うん。あともう1人もリーブル・エペーで有名な選手。四十九院沓子さんとはロアガンで戦ったことあるよね。」

「あー、あの速い人ね!うわぁー、今から気が重いよ…バトル・ボード決勝まで当たらないといいなぁ…」

 

一人用にしては大きいベッドの枕に顔を埋めるほのかに、たんたんと説明していく。

 

その時だった。

 

『ピンポーン』

 

と部屋の呼び鈴が鳴った。

 

「はーい!」

 

ほのかがインターホンのカメラ機能で相手を見てからドアを開けた。

インターホンも仮想投影型のパネルを使うから中々近未来的だよね。少なくとも私はそう思う。

 

ドアを開けると、エイミィを先頭に一高新人戦女子メンバーがぞろぞろ。

ああ、お風呂イベントですね。そんなのもありましたね。

最近ほのかと一緒にお風呂入るのは当たり前なので忘れてました。

 

―――てか風祭涼歌さん(バイアスロン部OG)みたいに、ほのかって私に『依存』してるよねぇ。あれぇ?なんでお兄様にいかないんだ?まあいっか。その方が私としては“嬉しい”し。

 

「温泉に行きたいかー!?」

「それは高〇生ク〇ズだから。古い。ニューヨークに行きたいかー!?だっけ?」

 

そう、この世界では高校〇クイ〇はとっくの昔に終わってしまっているんだ…

…もし、復活したら私とほのかと達也さんで出たいかな。あ、でも達也さんって案外魔法やCAD以外の事って知らないのかも…あ、でも、深雪は一般科目も達也さんに教えてもらってたっていうしいけるかな。

 

エイミィは改めて咳払いで場を流して、「ふっふー」と可愛らしく鼻にかけながら笑う。偉そうに腰に手を当てて、

 

「温泉に行くわよ!」

 

…エイミィって東方のレミリアに似てないかな?もしくは運命な作品のダメットさん。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

地下浴場は広大な温泉宿のような広さこそそれほどでもないが、銭湯くらいの広さはあった。

 

元々軍用施設のこの施設は、怪我や筋肉疲労などの湯治用に用意されたものだが、精神衛生的にも温泉のような景観に作られているため、一高1年女子は『おお!』という歓声をあげた。

 

「こんな所があったなんてね。」

「軍の施設だけど、頼んだら許可が出たんだよ。」

 

湯着もしくは水着が必要だが、それも貸してくれた。(ちなみに制服や普段着など普段の洗濯物も、学校での体育着や部活着などのようにクリーニングが無料で行われる。機械が発達したおかげですね。)

 

それにしても…

 

薄くて座ったらお尻も見えてしまうくらいに短い湯着が肌に張り付き、艶かしい雰囲気を醸し出している。

 

特にほのかの胸は最近さらに大きくなって、D65でも小さめだったが、D65ギリギリの大きさまで大きくなった。あんまり大きくても垂れちゃいそう…てかもしかして私がいじってるからかな?

 

そして、それは他の人もほのかの発育がかなり良いと思ったらしく…

 

「しっかしほのか、発育がいいよねえ。」

 

じっと観察していたエイミィ。

ちなみにエイミィはAなのはお察し。(あれ?Aだよね?AAじゃないよね?)

 

「揉ませろーっ♪」

「ちょっ!」

「おほー、こりゃなかなかの揉みごこち♡」

 

モミモミと音が出そうになるほどにエイミィの指の形に沈むほのかのおっぱい。

 

「やだ、エイミィがおっさん化してるよー!助けて雫!」

 

まあまあ、まだ少女同士の悪ふざけで済んでるし、いいんじゃないかな。

 

「大丈夫だよ。ほのかは…揉むところがあるから。」

「雫の許可が出たところで遠慮なく♡」

「えっちょ…っ、いやぁぁぁ―――っ!」

 

そこに、全自動人間洗濯機と揶揄される自動シャワーブースから出てきた深雪。

 

「どうしたの?大きい声で。」

 

長く艶やかな黒髪をお風呂用にアップにまとめている深雪に全員が思わず2度見。

 

「あまり騒ぎ過ぎると貸してくださった軍の方に失礼になるでしょう。」

 

シャワーを浴びた水滴が“濡れた”ようにみえて、とても色っぽく、湯船に浸かるその仕草と白い肌に思わず目がいく。

 

さっきのほのかの比ではない程に、悪ふざけですまない雰囲気になる。

 

一同はみな顔を赤くして(風呂のせいではない)、鼻息を荒くしつつ、理性を働かせていた。

 

そこでやっと視線の意味を解したのか、ハッとした顔をする。

 

「えっと、な、何かしら、ちょっと……」

 

 

確かに美少女の中の美少女と言える深雪だが、こうまでして『同性にまで惹かされる』ことはなんなのだろうか。“無意識下の情動干渉魔法”を発動しているのか、はたまたスバルのような魔法特性なのか。

 

まあとにかく、ほのかが深雪に見惚れてたことは事実である。

後でお仕置きが必要だろう。

エイミィもまた着せ替え人形に―――あ、それすると私も着せ替え人形にされたんだっけ。やめとこ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「いやー、危なかった。深雪の白い肌の魔力…」

「あそこで我に返らなければどうなっていたか…」

 

エイミィとほのかよ。多分押し倒して、乱交に発展していただろうよ。我に返って正解だよ。何が楽しくてこんなシチュエーションで初めてを散らすのか。……いや、ある意味思い出になったかもしれないね。黒歴史化すると思うけど。

 

「と言うかエイミィはふざけすぎだよ!」

「えっ、だってほのかの胸ぽよぽよして気持ちいーもん。」

 

 

 

お風呂から出て、部屋に帰る時に、一色さんたち三高1年女子3人組がいた。

やっぱり、三校はおっぱい小さいのかな?一色さんは平均サイズちょい小さめで、十七夜さんは私より少し大きいくらい、四十九院さんはエイミィより小さいかも。ストレスでいっぱいな人生だったのかな?

 

うちは七草会長やほのかに深雪に、一高はおっぱい大きい人結構いるけどなぁ。

 

寒いところは脂肪蓄えないといけないのにね。

 

 




評価、お気に入りありがとうございます。
UA12,000、お気に入り250を超えました!
今後もよろしくお願いします。

先程見たら週間ランキングで132位に上昇してました!
ありがとうございます!


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九校戦は誘惑いっぱい

九校戦が開幕する。

 

各校本戦新人戦メンバー最大40人が制服で整列した開会式はそれはそれは壮観であった。

否、それ以外は見どころがなかったと言うべきか。

 

陳腐な形式を踏んだ開会式の後、私はほのかとエイミィと共に開会式に出ていない達也さんやエリカたちが取っておいてくれた席に向かう。

 

「わぁ、色んなキッチンカーが出てるんだね!」

「ケバブにバーガーにクレープ…これは!フィッシュ&チップスも!……最近食べれてないし…ちょっと寄っちゃおっかなぁ…」

「色んな国のファストフードが勢揃いだよ。でも、特におすすめなのは、ナインティワンアイス。この会場限定のフレーバーがあるから。」

 

私は選手としては初めてだが、観客としては何回か来ている。

 

「さすが、毎年来てるだけあるね、雫!」

「大会中気をつけないと太っちゃいそう。」

 

と言いつつ既にフィッシュ&チップスの袋を左手に抱えている。

ちなみに、ほのかも既に右手の中にケバブがある。

 

「ほのか、ケバブにチリソースはありえない。ケバブにはヨーグルトソースが王道…!」

「いやいや、砂漠の虎じゃないんだから、普通に中辛のチリソースでいいよ。」

「2人とも!ドネルケバブにはソースは要らないわ!」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「おーい、こっちこっちー。」

 

言い方がひなたで絵を書く漫画の宮子っぽいエリカ。中の人違うはずなんだけど…

 

 

まあともかく、エリカたちのおかげで1番良い席で七草会長のスピード・シューティング、渡辺委員長のバトル・ボードを見た。

 

ただ……

 

七草会長の熱狂的なファンが男性なのは分からなくはない。あの容姿だ。とてもコケティッシュだろう。だが、魔法科高校の女子たちが、『お姉様ー!』『素敵です!』と言っていたり、

渡辺委員長のファンが女の子ばかりで、『きゃー!』『抱いてーっ♡』っておかしくない?この世界ってこんなに百合百合しい世界だったっけ?

 

「凄いね…」

「うちの先輩達には“熱狂的な”ファンがついているみたいだね。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

2日間の日程を終え、男子クラウド・ボール以外は事前計算通りに進んでいた。

 

そして、3日目。

 

バトル・ボードの準決勝決勝、アイス・ピラーズ・ブレイクの予選後半と決勝リーグが行われる。

 

そして…女子バトル・ボード準決勝。

私は渡辺委員長に少しだけアドバイスを行った。

 

『委員長、今回だけは“足元”に注意してください。“水”が不意に動く可能性がありますから。』

『ほう?どういうことだ?』

『あくまで可能性です。第一高校を優勝させたくない奴らが最初に狙うのは三巨頭の中で1番後ろ盾の少ない委員長で、狙いやすいタイミングは去年の決勝カードとして有名であり、タイム差の小さかった七高とのレースです。』

『…頭の片隅には置いておこう。だが、大会委員会の監査のある中で外からの魔法は使えんよ。』

『大会委員会全体を丸め込めなくても、一部なら可能です。危険は頭に入れておいてください。』

『はぁ…分かった。』

 

だからこそ、彼女には勝ってほしいものだ。

 

試合開始のブザーに委員長と七高選手が高速でスタートして、その後ろを三高が追う形だ。

 

「足元に注意だよ、委員長。」

 

そして―――

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「だましだまし―――か。」

「すまん、十文字。」

 

七高選手のボードを水ごと吹き飛ばす魔法を使用した時、バランスを崩した渡辺委員長は立て直してなんとかトップでゴール。七高選手も特に怪我はなく終わった。

 

その勢いで渡辺委員長は決勝、圧倒的な速さで優勝、したものの…

ゴールと共にボードから落ちて意識を失ったのだ。

 

肋骨にヒビが入っている状態で無理をしすぎた結果らしく、しばらくは運動禁止を言い渡されてしまった。

 

運命はどうしても深雪に本戦のミラージに出て欲しいらしい。

 

「まあとにかく大事にならなくて良かったです、渡辺先輩。」

 

深雪の言葉に、1年女子イツメンはウンウンと頷く。

 

「だが、これで本戦ミラージは優勝確率が一気に下がった。小早川は悪い選手ではないんだが…」

「特出する選手ではないな。」

 

十文字会頭と渡辺委員長の言葉に、イツメン+深雪はなんとも言えない空気になる。

 

「しかもだ。三高が思いのほか点数を伸ばしてきている。新人戦は三高が有利と言わざるを得まい。一条の跡取りに一色の令嬢、水の四十九院にリーブル・エペーの十七夜、極めつけにカーディナルジョージ。対してこちらで魔法競技を中学以前からの経験者は光井・北山のみ。」

「ロアガンだったな。道理で光井のバトル・ボードは上手いと感じたんだ。」

「私達、四十九院さんのロアガンソロを見たんですけど、ヤバいですよ、あれ。」

 

幸いにして総合ではロアガン夏の大会優勝出来たのではあるが、ソロ部門のみでの競技なら圧倒的に負けていただろう。

 

「つまり、我々一高は、私のミラージ棄権を補うだけの何らかの作戦が必要なのか。」

「そういうことになります。」

 

部屋に入ってきた市原先輩と七草会長が肯定する。

 

「私の考えとしては、新人戦をある程度犠牲にしても本戦ミラージにリソースを分けるという結論に達したわ。」

 

七草会長と作戦スタッフで練った作戦をここにいる全員に告げる。

 

「ミラージ・バットの訓練を積んでいて、摩利に匹敵する実力者―――深雪さん、あなたしかいないわ。深雪さんには摩利の代わりにミラージ・バット本戦に出てもらいます。」




評価、お気に入りありがとうございます。

週間ランキングで先程112位でした。2桁行くまでもう少しですね笑笑


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私にとっては前哨戦だよ。

大会4日目。

 

とうとう新人戦のスタートである。

この日の一高最初の競技は私のスピード・シューティングだ。

 

私としては“あくまで前哨戦”だけど。

 

 

「新人戦トップバッターは雫だな。CADの調子を確かめてくれ。」

 

 

待機室にCADを持ってきてくれる達也さん。少しサイオンを流してみるが、すばらしい出来である。

 

「すごくいい。完璧だよ。達也さん、やっぱりウチで雇われない?こんな腕のいい技師はいないよ。」

「そんな軽口が出るくらいリラックスしているなら大丈夫だな。」

「本気なのに…」

 

そう、FLTごと買収してもいいんだよ。お兄様。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

スピード・シューティングのユニフォームは色こそ自由だが、形はほとんど同じだ。

 

裾がミニ丈で襟が首周りまでチャックの着いた長袖ワンピースにブーツとタイツ。

あえてミントっぽい色を採用した。

 

視聴覚照準補助のHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)もお揃いの色にした私はCADを胸に抱きしめる。

 

あの舞台に、あの九校戦に、私が立つ。

 

行こう。私の名前を轟かせる戦いに…!

 

 

シューティングレンジに入り、立射の構えを取る。

たが、まだブザーが鳴らない。

 

カメラの調整に手間取っている。魔法を可視化するカメラなので繊細な扱いが必要なのである。

 

カメラが整い、改めてCADを構える。

 

照準は照準補助がやってくれるから、私は引き金を引くだけ。

 

 

 

開始。

 

この魔法を見た他校の技術者や作戦スタッフは思うだろう。『北山雫は精密な照準が苦手』と。

 

それこそ思うつぼであるのに。

 

 

『アクティブエアーマイン』または『空中能動機雷』。

 

“私のアイデア”を達也さんが作り上げた魔法だ。

原作に比べて私のすることは無いに等しい。

 

CADの照準補助に使用するポイントは全て任せているからだ。

 

「私に達也さんのCADがあれば、鬼に金棒だよ。」

 

 

100/100。パーフェクトを新人戦トップバッターにして達成した私に観客が沸いた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「お疲れ様!すごかったよ雫!」

「ありがとう。」

 

ほのかが走ってきてその勢いで抱きついてくる。

 

潰れた胸の質量感が…羨ましくも妬ましくもありながら嬉しくもあるその感触に加え、ほのかが抱きついてくるくらいのプレーが出来たことに満足感が胸の中に溢れる。

 

「達也さんのおかげだよ。空中能動機雷(アクティブエアーマイン)―さっきの魔法もインデックスの登録申請が来るかもって話だよ。“達也さんの技能がなかったら作れなかったあの魔法がだよ。”」

「インデックスって…!あの魔法大全だよ!?魔法史に名前が残っちゃうレベルじゃない!」

「身近にインデックス登録される人が出るなんてね。」

「雫も達也さんも快挙だね!」

「いや、まだ登録申請が来るかもって段階だから。」

 

私がわざとギリギリの線を話したところをそのままみんなスルーしたが、達也さんは多分色んな考えが渦巻いているだろう。

 

『まもなくスピード・シューティングBグループの予選を開始します。』

 

来たね。十七夜栞。私が倒すべき最初の壁。

 

「見に行ってもいいかな?気になる選手がいるから。」

「三高の?」

「うん。ほぼ必ずあの人には当たるだろうから。」

「よし、じゃあ行こう!」

 

ほのかは午後試合だけど…気分転換になるかな。それに、私が頑張るところ見せれば、ほのかもきっと…!

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「なんかお客さん多くない?」

「優勝候補筆頭っていう選手だから。事前情報だとね。」

「へー。」

 

エイミィはそろそろCADの調整行った方がいいんじゃないの?Cグループの予選だよね?

 

『次は女子スピード・シューティング予選Bグループ!第三高校、十七夜栞選手!先程は第一高校の北山選手がパーフェクトを記録して大いに驚かされましたが、前評判では優勝候補筆頭の十七夜栞選手!どんな魔法で魅せてくれるのでしょうか!?』

 

ブザーと共にスタート。

 

やっぱりか。

 

「これは…!?」

「クレーが次々に連鎖して破壊されている!」

 

観客が思い思いに驚く中、この人と戦うかもしれない私とエイミィは分析をする。

 

「1つ目のクレーを破壊するのは振動魔法として、どうして次々とほかのクレーにその破片が飛ぶのかな?」

「多分、移動と加速の複合だね。クレーは比較的脆いから慣性で壊れる。破片ならさらに。」

「まさかあれだけの破片の数を全て把握してそれぞれ移動させてるの!?」

「移動する物体の位置の把握だって難しいのにあのコンマ秒でそれぞれの破片を認識してるんだね。」

「そんなのスーパーコンピュータでもなきゃ無理だよ!」

 

会話を聞いていたほのかが冷静にとは言えない勢いでツッコミを入れる。

 

「でも…それを把握してるっていうの…?」

 

怖がるエイミィ、カワユス。

 

でも、これは実際に見ると凄いね。アリスマティックチェイン(数学的連鎖)

 

100/100。パーフェクト。

 

「それにしてもこの…金沢魔法理学研究所のものか…三高はクリムゾン・プリンス、カーディナル・ジョージ、エクレール・アイリ、そして十七夜栞に四十九院沓子…学生の大会にしてはいささか反則的な顔ぶれだな、三高の新人戦メンバーは。」

「…お兄様、それは人の言えた義理ではありませんよ。」

 

深雪がクスッと笑いながら達也さんに言う。

 

「そうかな?」

「そうですよ。」

「達也さんがついてますもんね!」

「同感。」

 

これで予選Bグループもラスト数人になった。

 

「エイミィ、そろそろ行った方がいいんじゃない?」

「そうだね!達也さん、行こう!」

 

 

予選Cグループのエイミィの次は予選Dグループの和美で最後だ。

 

そろそろ私も準々決勝の準備と行こうかな。




ついに来た…週間ランキング2桁!98位!

感謝です!


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私達、策士だよ。

スピード・シューティング女子新人戦準々決勝。

 

予選A~Dグループまでの上位2名が出場できる決勝トーナメントの初戦だ。

 

一高からは3人全員が予選を突破している。

 

一応、同じ高校の3人が早くに当たらないように、予選グループをずらしたり、決勝トーナメントでもなるべく当たらないようにトーナメントが組まれる。

 

準々決勝は既に2試合を終えて、エイミィと和美が突破し、準決勝で同校対決が決定。

 

もうひとつの準決勝進出者を決めるための戦いが幕を開ける。

負けられない戦いがそこにある。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

(私達の作戦は―全て十七夜栞を倒すための作戦。だから、)

 

「踏み台になってもらうよ。」

 

相手は四高の選手。

 

決勝トーナメントでは赤白のクレーを、自分の色のクレーを撃ち抜かなければならない。

 

そのために“替えたCAD”を悟られるわけにはいかないのである。

 

 

『予選Aグループ、一位通過の一高北山選手!アクティブエアーマインで魅せてくれた選手だが、対戦形式では相手クレーも巻き込んでしまう諸刃の剣だろう!どう見せてくれるのか楽しみです!対して予選Dグループ、二位通過の四高梶木選手!オーソドックスな移動系相殺作戦を取ります!下馬評では不利ではありますが、それを覆し得点圏に進めるのか!?』

 

今、準々決勝が始まる―――!

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

私の使うHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)は照準補助として使っている訳では無い。

プレーエリアの空間を仕切るためである。

 

CADに直結されたHMDはクレーがどこに入ってきたかをCADの照準補助から確認している。

つまり、CADとHMDの誤差があるかどうかを確認しつつ引き金を引くだけでクレーを破壊できた。

 

 

だが、今度は対戦形式。戦い方を変更する。

 

 

大きな意味での収束魔法を使う。

マクロ的に見た『自分の色のクレーの密度』を中心部に近づくほど高くなるという空間を作り出す魔法で中央部に集めたクレーが各自で押し合い潰れるのである。

 

 

だが、次の試合のためには出力規模を『9つ』と思わせておく必要がある。

この特別なCADには起動式はたくさん入るが、9つの起動式だけで準々決勝を突破しなければ、切り札を切らねばならなくなる。

 

切り札は深雪と戦う棒倒しまで取っておきたい。

 

 

 

 

結果は言うまでもなく、98/100対85/100で勝利した。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

準々決勝最終戦の前。

 

私が勝利して控え室に戻る前に、十七夜栞が声をかけてきた。

 

「第三高校の十七夜栞です。試合、拝見しました。あなたと“準決勝”で相対することを楽しみにしています。」

 

十七夜栞はそれだけ言うと、隣にいた一色愛梨を連れて試合に向かっていった。

 

「次の試合は当然勝つ自信があるってことだね…わかった。私も準決勝楽しみにしてるよ。」

 

私は彼女の背中にそう呟いた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

『新人戦女子スピード・シューティングは決勝トーナメント、早くも準決勝を迎えます!予選では超高校級の魔法に度肝を抜かれ、準々決勝でも選手達の熱い戦いに手に汗を握りました!その戦いもついに4強まで絞られ、残っている選手は全てが得点圏入賞が確定しています!いずれも有力選手です!』

 

私の画像が映る。

 

『準決勝第1試合は注目カード!予選では新魔法“アクティブエアーマイン”で会場を興奮の渦に巻き込んだクールビューティ!予選ではパーフェクト!準決勝でも圧倒的な魔法力でライバルを制圧するのか!?第一高校、北山雫選手!』

 

そして、十七夜さんに画像が移る。

 

『なんと本大会パーフェクトを2度記録!その正確無比な軌道予測に並ぶ者なし!連鎖を奏でる重奏曲“アリスマティックチェイン”は準決勝でも炸裂するのか!?第三高校、十七夜栞選手!』

 

簡単でない相手だが、負ける気はない。

 

『とうとうこの2人がぶつかります!両選手の活躍をどうぞお楽しみください!』

 

実況中継が一旦切れる。

 

私はシューティングレンジに向かう。

その廊下で、相手、十七夜さんと会った。

 

「北山さん、準決勝よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく。…宣言通り上がってきた。さすがだね。準々決勝見たよ。」

「ええ、私も。北山さんの準々決勝十分に検討しました。」

「へぇ。」

 

私は歩みを止めつつニヤリと笑い、吹っかけた。

 

「どちらも準備は万端だね。」

「ええ。お互いベストを尽くしましょう 。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

ピーというブザーと共に準決勝第1試合が始まった。

 

私はHMDの色の識別によって自分のクレーを見定め、収束魔法で自分のクレーを集めて押しつぶす。

 

その反動で相手の白いクレーが逸らされる。

 

が、相手もそのまま連鎖を続けている。

 

私のパターンではここで相手が混乱して魔法の照準が甘くなるのだが、やはりこれくらいは“計算できる”。

 

それが引っかけだとも知らずに。

 

 

前半から中盤になろうかという時間帯、今のところミスは私の方が1枚多い。

 

さらに2枚落とす。

 

まだ焦らない。

 

 

『布石は打ってあるのだから。』

 

 

中盤を終わる頃、十七夜さんのアリスマティックチェインが“連鎖を外した。”

もちろん直ぐに持ち直して今のところミスはないが…

 

私は少しだけ口角を上げた。

 

「私の勝ち。」

 

そう、本当に彼女が私に勝ちたかったら、規模の大きすぎる魔法式を使うアリスマティックチェインではなく、オーソドックスにエアブリッドやドライミーティアでクレーを破壊するのが勝機はあるだろう。

 

終盤、連鎖が繋がらないアリスマティックチェインなどお話にならない。

 

 

96/100対92/100。

 

十七夜栞は終盤に8つも落として、優勝への道を私に譲ることとなった。

 

『試合終了!北山選手、決勝進出だー!開催前の下馬評を覆したー!』

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

結局、準決勝第2試合はエイミィが勝った。

 

そして、十七夜さんと和美の3位決定戦が先に行われて、私との戦いに魔法演算領域に負荷がかかったのか、アリスマティックチェインはあまりにお粗末な連鎖となり、和美が征した。

 

決勝は今度こそ『汎用型CAD』の良さを引き出した私と、移動系が得意なエイミィがいい勝負をしたものの、エイミィの大雑把さが、仇となり、私がパーフェクトで新人戦女子スピード・シューティングを制覇した。

 

…地味にエイミィは私に似ていると思った試合だった。

 

得意魔法の大質量の移動系に対しての魔法力だけなら私と同等か少し下かと思うくらいだ。

 

 

 

 

「凄いじゃない!快挙よ!これは!一高が1位から3位までを独占なんて!」「選手が頑張ったからですよ。」

 

と、さっきからハイテンションや七草会長を、達也さんが聞き役(?)になっている。

 

「それもあるけど、達也さんの力が大きいってみんな分かってるよ。」

「自分がここまで来るなんて思っても見ませんでした!」

「司波くんには感謝してるよー!」

「雫の空中能動機雷(アクティブエアーマイン)も達也さんの考案した魔法として魔法大全(インデックス)に登録されますからね!」

 

ほのかの賞賛を滲む言葉に私もコクリと頷く。

 

「名声がますます高まっちゃうわね〜。」

「困るな〜、ウチの秘密兵器なのに。」

 

七草会長と渡辺委員長がすごくいい顔であからさまに言う。

だが…

 

「いえ、空中能動機雷(アクティブエアーマイン)は北山さんの名前で登録しました。」

 

「「「えっ!?」」」

 

おいおいという顔で渡辺委員長が、

 

「謙遜もいき過ぎるとイヤミだぞ。」

 

と、コイツは…と呆れ顔をする。

 

「いえ、謙遜ではありません。俺は『自分が作った魔法が自分で再現できない』という無様を晒したくないからですよ。あの魔法は北山さんの魔法力があってようやく実践レベルで使える代物です。さらにそもそものアイデアは北山さんのものですので、それを起動式に書き起こしただけですから、あながち間違いではありません。」

 

そう話す達也さんの顔は少しだけ残念そうだったりする。

 

少なくとも、私にはそう見えるのであった。

 

 




お気に入り360超え。ありがとうございます。
評価、感想もありがとうございます。


お気に入り、評価、感想は私がこの小説をアリスマティックチェインさせる源泉なのです…笑笑

今後もよろしくお願いします。


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序章。

結局、バトル・ボード予選を閃光による妨害による圧倒的な差を作るスタートダッシュでほのかは予選を突破した。

 

だが、あまりにも新人戦男子の成績が酷かった。

 

スピード・シューティングは森崎の準優勝を除き、予選突破出来ず。

バトル・ボードは予選突破が1人。

 

女子のスピード・シューティング1~3位独占+バトル・ボード予選突破2人という差はとても大きかった。

 

 

おかげで夕食に来ていた1年男子のグループはズーンと沈み、1年女子のグループは達也さんを囲んではしゃいでいた。

 

 

 

 

 

 

…さらに夜に私、ほのか、エイミィ、深雪、スバル、菜々美、の6人は部屋でお菓子パーティーをした。

 

「こんな時間に罪深いよ〜(泣)」

「あ、これおいしーい♪」

「この1口のために頑張ってるんだよ!」

「スイーツは別腹さ。」

 

と、それぞれほのか、エイミィ、菜々美、スバルの談。

 

ちなみにほのかはそれでも嬉しそうに食べてました。

 

 

 

 

 

マジで九校戦太るって…

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「菜々美、スバル。」

「「なに?(なんだい?)」」

 

スイーツパーティの後、私は菜々美とスバルを引き止める。

 

「明日のクラウド、一色愛梨に対しては、人間の限界を超えた速さで動くから気をつけて。」

「どういうことだい?」

「リーブル・エペーをプレーしている時に、人間の限界を超えた速さで動いてた。自己加速術式だけじゃなくて、多分放出系併用の知覚魔法を使ってると思う。」

「大丈夫さ。僕相手なら必ず遅くなるさ。僕の固有スキルがある限りね。」

「ううん。ボールに集中すれば、相手がとこにいようが打ってくるはずだよ。ラケットのCADは汎用型?」

「いや、特化型だよ。」

「自己加速術式?」

「そう。」

「なら…加速系障壁魔法を追加しとくといいと思うよ。菜々美は?」

「特化型で、“虹の跳弾(レインボースプリング)”を入れてるよ。」

「なら、加速系障壁魔法だよね?スバルのと同じ大きい障壁を入れておいたほうがいいよ。あの人の球には対応できないと思うよ。」

「わ、わかった。」「ああ。」

 

さて、このことがどうでるか…

 

菜々美もスバルも、一色さんに勝てない訳じゃない。

『魔法とは、手段であって目的ではない。』

老師はいい言葉を残したものだ。

 

エクレール・アイリの弱点は必ずある。原作がどうあったとしても、私は菜々美とスバルには彼女を突破してくれると信じている。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

アイス・ピラーズ・ブレイクは3つの予選グループに分かれていて、その予選もトーナメント。つまり負けることが許されない。

 

そして―――

 

 

『さあ、始まりました!アイス・ピラーズ・ブレイク、新人戦女子!第1回戦予選グループA第1試合!スピード・シューティング新人戦女子で優勝しその名を轟かせる第一高校、北山選手!事前評価を超える戦いで十七夜栞選手を破った経緯から、このアイス・ピラーズ・ブレイクでも活躍が期待できます!そして、対するは、第五高校、須永選手!事前評価はあまり良くはありませんでしたが、下馬評を覆せるのか!?負けられない戦いがそこにある!』

 

試合会場のボルテージが上がる。

 

アイス・ピラーズ・ブレイクはその競技の特性から、公序良俗に反さない服装ならなんでも許されることから、女子アイス・ピラーズ・ブレイクはファッションショー、男子アイス・ピラーズ・ブレイクは仮装大会(制服率は高いが)と言われる。

 

 

 

私の服装は―――

 

『それでは、両選手入場です!東側、第一高校、北山選手!西側、第五高校、須永選手!北山選手は魔女―メイドのコスプレでしょうか?黒と白を基調としたコーディネートです!対して須永選手は昭和風な衣装となっています!』

「第五高校は、永久に不滅です!」

 

いや、昭和風を気取るな。

 

私は東方の魔理沙のコスプレである。

 

 

 

なんでかって?魔女って聞くと、まず最初に彼女が出てきたからである。

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

この試合、12対0で圧勝した。

まだ共振破壊と情報強化しか使っていない。

 

『あれ』と『あの魔法』を使うのは、深雪相手まで取っておかねばならない。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「スバル、優勝おめでとう!深雪、雫、エイミィも、予選グループ決勝進出おめでとう!」

 

今日は休みだったほのかが私達を労い、賛辞を送る。

 

菜々美は、準決勝で一色さんと当たり、セットカウント0-2合計得点18-89で敗退。

 

決勝リーグでは、スバルと一色さんがそれぞれ第九高校の選手と戦い、ストレート勝ち。

ラストゲームで、スバルは先に20-17でワンセットを取り、次のセットはやはり認識阻害を無視して打ち込みはじめて8-18で一色さんが取り、ファイナルセットでは攻防激しく、スバルも加速系魔法を多用しつつ11-10でスバルがセットを取り、セットカウント2-1合計得点39-45と、駆け引きの世界のレベルで辛勝した。

 

「ありがとう、ほのか…とても嬉しいよ。」

 

と、舞台がかった言動がその凄さをにじませてるんだけどね…

 

「いやぁ、司波くんの組んでくれた魔法のおかげだね!」

「うん。司波くんの技術には目を見張るよ!まさか氷炎地獄(インフェルノ)まで組めるとはね!私も担当してもらってれば、一色さんともう少しいい試合できたかもしれないのに〜。」

「おいおい。自分の至らなさを技術のせいにするんじゃない。」

「そうよ、菜々美。」

「はっ!そう言えば担当してくれた先輩にすっごく失礼かも…」

 

だそうですよ、和泉先輩。またはいずみん。

 

「いずみんって言うな!」

 

と、どこからか聞こえてきた和泉先輩(リカちゃん)の声。

 

「やめろぉ…」

 

和泉先輩のHPが亡くなった(誤字にあらず)ところで、一高1年女子の内ここにいる8名はゾロゾロと食事会場である、懇親会の行われた大きな部屋の半分ほどの広間から出て、部屋の方に戻ろうとする時に、三高1年女子の組が揃って食事に来るところだった。

 

深雪と一色さんの話の後、握手とともに競技に全力を尽くすことを誓い、その場を入れ違う。

 

そして、それぞれの部屋に戻って行った。

 

 

 

私も体調を整えないとね。

明日の『Show Time』のためにね。



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始まりだよ

8月8日。九校戦6日目。新人戦3日目。

 

アイス・ピラーズ・ブレイクの予選グループ決勝がそれぞれ行われた。

 

深雪は言わずもがな上がってきた。(逆に深雪に勝った人と戦いたくはない。)

エイミィは十七夜栞さんとやりあい、1本差で逆転勝利。

 

とはいえ、エイミィはサイオン切れとスタミナ切れでダウン。今のところ点滴を繋がれている。まあ、寝不足の貧血と重なってのことだろう。しかもエイミィはこの間“きてた”はずだ。貧血になる要素が重なってしまっていた。

 

「ちょっとみんな聞いてくれるかしら?」

 

“珍しく”キチンと会長としての仕事をしているらしく、大会委員会からの提案を聞いてきたらしい。

 

「新人戦女子アイス・ピラーズ・ブレイクは我が第一高校が決勝トーナメント出場枠を全て独占しました。そこで、大会委員会からの提案なのですが…戦わずに3人とも同率優勝でどうか、と仰ってくれているの。」

「あの…私は言われる前から棄権しようかと思ってました。」

「それはそうよね。」

 

エイミィの言葉に呆れを含ませながらもキレよくツッコミを入れる七草会長。

 

「じゃあみんな提案を受け入れるってことでいいかしら?」

「待ってください!」

「北山さん…」

「雫…?」

「私は深雪と戦いたいです。予選トーナメントなんかじゃ全然切り札どころか見せ札も使えてないんです。」

「「え…」」

 

私の言葉にエイミィと七草会長がドン引きするような気配を滲ませる。

 

「き、北山さんはそう言ってるけど…深雪さんはどうかしら?」

「私は雫が戦いたいと思ってくれるなら、私にそれを断る理由はありません。それに…」

「それに?」

「同年代で私を“倒そうとしてくれる”人はなかなかいないうえに、全力でぶつかることの出来る環境はそうそうありません。」

 

深雪はその事をよく知っている。魔法師の中でも特に深雪や私のような出力の高く照準精度よりも威力と速さのタイプは特に周囲への被害が大きくなりがちである。

 

だが、この九校戦の中ならば、必ず国が直してくれるし、観客席もピラーズ・ブレイクのような観客席の近い競技はA級魔法師が保護しているし、医療施設も充実している。

こんな全力でぶっぱなしていい環境はそうそうない。

 

「深雪、受けてくれてありがとう。」

「ううん、私も雫と全力で試合してみたかったわ。」

「ほんと?私、深雪と同世代で本当によかったと思ってる。どうなっても悔いはないから全力できてね。」

「ええ、もちろんよ。」

 

 

 

 

真剣勝負。

に水を差す奴が。

 

七草会長、『なになに?痴情のもつれ?ライバル関係?メンチ切っちゃう?いししし。』みたいな顔して、隣の渡辺委員長に呆れ顔されてるぞ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

私の攻撃の札は4つ。

 

1つは共振破壊。通常札。

2つ目に、フォノンメーザー。見せ札。

3つ目が、耐久系の切り札。

最後が、とっておきでスペシャルなジョーカー。

 

ふふふ。深雪は“どこまで引き出してくれるのかな?”

 

防御はもちろん情報強化。領域干渉だと燃費悪くて切り札とジョーカーが切れない。

ジョーカーを切る時は硬化魔法に変えるのも忘れてはならない。

 

 

情報強化は対象物のエイドスを、魔法式でなぞるという関係上、特に魔法の直接攻撃に対して効果を発揮する。しかしながら、その強度も一定割合で強化される。エイドスが二重になっている以上、外からの干渉によって変化しづらくなる。

 

対して、硬化魔法は、対象物を構成するパーツとパーツの間の相対距離を一定に保つ魔法である。棒倒しで使う場合、それぞれの氷の分子H2O同士の距離を保つ魔法である。これは、硬化させるのに魔法力を割く分情報強化に比べて直接攻撃に対しては耐性が低いものの、外部からの物理的攻撃に干渉力の限り保護できる。

 

ジョーカーの威力に耐えられるのは1本でいいけどね。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

川端康成の作品の中で有名な雪国の冒頭が思い出される。

『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』

私の陣地を抜けると雪国であった。

 

 

 

 

アイス・ピラーズ・ブレイク新人戦女子決勝リーグ。

 

エイミィは棄権。

決勝リーグは、私と深雪の決勝戦に変わった。

 

予選トーナメントでは東方の魔理沙を始めとしたアニメなどのコスプレをしていた私だけど、決勝いや、深雪と戦う時だけは、これって決めて持ってきた衣装にする。

そう、原作で着ていた振袖である。

 

対する深雪は予選トーナメントと同じく巫女装束である。

 

CADは、

私は左手に特化型拳銃形態、左手首に汎用型腕輪形、右手の薬指に特化型指輪形態を装備して、

深雪は右手の端末形汎用型しか見えない。

 

 

『新人戦アイス・ピラーズ・ブレイク女子決勝リーグ!なんと今年は決勝リーグ出場枠を第一高校が独占!同率優勝という提案を蹴り、選手は戦うことを決めたそうです!その同校対決が始まろうとしています!決勝リーグ出場者は、明智英美選手、北山雫選手、司波深雪選手の3人です!明智選手は予選トーナメント決勝で第三高校十七夜栞選手と当たり逆転勝利を収めましたが、消耗激しく棄権!よって、優勝はこの2人の一騎打ちにより決められることになります!東側、北山雫選手!新人戦スピード・シューティング女子で優勝候補を破り優勝しました!その力はこれまで1度も抜かれていない司波選手の氷柱を崩すのか!?西側、司波深雪選手!ドクターストップのかかった渡辺摩利選手の代わりに本戦ミラージ・バットに出場します!他の上級生を差し置いてミラージに出場する実力に加え、予選トーナメントでは1度も自陣の氷柱に破壊判定が出ていません!さあ、どんな戦いになるか、楽しみです!』

 

 

実況の声も、観客の声も、私にとっては味方だ。

 

 

なぜなら…

 

 

「深雪、It's Show Timeだよ。」

 

私のショーのお客さんだからだよ。

 

 




遅くなった挙句、まだ棒倒しの深雪戦に入れなくてごめんなさい!

本当ならもっと早く書きたかったけど、ここからは物語を大きく左右する部分なので、雫についての設定を詰めておりました。
この後も少し遅めになるとは思いますが、まったりと楽しんで貰えると幸いです。


前話の「第五高校は、永久に不滅です!」の元ネタ、今の若い人は知らないんでしょうねぇ(老人風に)
ま、私も知らなかったんですけど。


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私は、お母さんを超える。前編

試合開始のブザーと同時にCADのボタンを押す。

 

左手首の汎用型で温度耐性に注力した情報強化をかける。

そして、共振破壊。深雪も氷炎地獄(インフェルノ)

 

まずは両者ともに通常の札。

 

深雪の振動を抑えるエリア魔法で共振の前に振動が止まる。

私の情報強化でインフェルノでは氷柱の温度は上がらない。

 

対抗魔法でない魔法同士が同じ対象物に魔法をかける場合は、干渉力が少しでも上回ればいいが、対抗魔法(情報強化や領域干渉)を抜くには明確な差の干渉力が必要になる。

 

でも、情報強化をかけていても、じわりじわりと周囲の熱で氷柱が溶けだすだろう。

対してこちらの共振破壊は届いていない。

 

“見せ札”と行きましょう。

 

左手を右の袖に突っ込み、特化型拳銃形態のCADを抜く。

 

(2個持ち!?)

(なんだあのCADは!)

(司波達也…一体何者なんだ!?)

(アイツはこのハイレベルな戦いで選手が使いこなせる自信があって持たせているのか!?)

(パラレルキャストか…!有り得ん!)

(えっ!?本当に!?)

 

会場がどよめく中、私はCADにサイオンを流しながら引き金を引く。

 

距離、出力、確認して。発動。

 

(フォノンメーザーっ!?)

 

抜けた。

 

『今大会初めて司波選手の氷に魔法がヒットしました!北山選手のフォノンメーザーです!破壊判定!北山選手、先制!今大会初めて司波選手が氷柱を失いました!』

 

今のフォノンメーザーの出力で1本抜けるくらいの防御か…“つまらないね”。

 

『なんと、フォノンメーザーとは!』

『司波選手のインフェルノも凄いですが、こちらもやりますな!しかも短時間でインフェルノのかかっていた氷柱を抜くとは…!』

 

(すごい…)

(マジで…!?)

 

ザワザワとした観客席の一高の集まってるブースには、目を見張る達也さんの顔と、競技が終わったばかりでバトル・ボードのユニフォームにジャージを羽織っただけのほのかの祈るような顔、エイミィの興奮した顔、他にもこの試合を楽しんでくれていると同時にどんな札が出るのかと期待する目がこの会場を埋めつくしていた。

 

そう。これを望んでいたんだ。

 

“この環境を”!

 

深雪、まだまだ私と踊ってもらうよ!

 

 

2本目の氷柱にフォノンメーザーを撃ち、抜きかけたところで、深雪が魔法を切り替えた。

 

来たね、振動減速系広域冷却魔法“ニブルヘイム”。

 

(フォノンメーザーを中止したのか?)

(いや違う…これは…!)

 

『フォノンメーザーの熱を超える冷却!広域冷却魔法ニブルヘイムです!』

 

(ウソだろ!?)

(ありえねぇ!?)

 

これすらも私の予測範囲だよ、深雪。

 

情報強化を硬化魔法に密かに息継ぎの瞬間に切り替え。

 

 

そして、来る、インフェルノ。

 

 

その熱でも、分子間の距離を保つ私の硬化魔法には届かない。

 

『なんと!ニブルヘイムで作った液体窒素の気化の際の膨張を攻撃に利用!しかしながら、北山選手の氷柱は無事です!』

 

“なんでっ…!?”という思念が流れてきそうな程のはてなマークが観客席や深雪から飛んでくる。

少し違うのは、深雪の“どうやってあれを防いだの!?”という目と達也さんの“なるほど。”という目と、ほのかとエイミィのほっとした目だけである。

 

『判明しました!北山選手はニブルヘイムの際に情報強化の息継ぎのタイミングで分子間の距離を一定に保つ硬化魔法に切り替えて、今の攻撃の後、情報強化に戻した様です!』

 

(ウソだろ!?予測してたってのか!?あの液体窒素を!)

(今年の女子新人戦棒倒しは本戦よりもハードだぞ!?)

(魔法師としてって言うより、こいつら化け物だろ!?)

 

さて、ニブルヘイムで消されるフォノンメーザーは潰された。どうするのか?と玄人なら思うところだろう。

実際、深雪もまだ余裕な顔だ。

 

 

 

私の切り札、解放だよ。

 

『おおっと!?インフェルノで温度が下がっていた司波選手の陣地の氷柱の温度が上がっていきます!サーモグラフィーで確認できます!』

 

(何が起こっているんだ?)

(さっぱりわからん。)

(へぇ…)

 

『これは、電子レンジです!家庭用電子レンジよりも氷に波長が合うように設定した電磁波を、空中から放射しています!しかも、新しく作っている訳ではなく、様々な空中の電磁波を増幅しているだけなので、消耗も抑えられています!』

 

振動加速増幅系電磁波加熱魔法“ウェーブヒーター”。

共振破壊と同じく、極性分子が振動する波長があるため、波長や振幅などを変数として設定している魔法。

 

これで、条件は少しだけこちらに向く。

 

こちらはインフェルノで少しづつ温度が上昇していて、あちらもウェーブヒーターで加熱されている。

ただ、まだこちらが不利だ。インフェルノはウェーブヒーターの熱も奪っていく。

だが、まだ耐える時。インフェルノを切る時が必ず来る。その時が攻め時。

 

ウェーブヒーターを1度切り、フォノンメーザーに切り替える。

深雪の氷柱2本目を完全に破壊する。

 

『再びフォノンメーザーです!現在10対12で北山選手がリード!しかしながら温度は今のところ北山選手の陣地が少しづつ溶け始めています!制限時間は残りは4分ほどです!このままでは北山選手の氷柱は破壊判定が出てしまいます!』

 

ある程度の魔法に対する理解のある人なら、私の敗北が予期出来ると思う。

でも、まだまだ。これからだよ!

 

フォノンメーザーを溜めを作ってから出力を上げて撃つ。

 

『おおっと!司波選手の氷柱3本一気に抜いた!?出力が段違いだ!』

 

(力を温存してたのか!?)

(おいおい…なんなんだ、今年の新人戦は!)

(司波達也…凄まじい技術者だな。)

 

初めて深雪が怯む。

ちょっと無茶をしたかいがあるね。

 

深雪は再びニブルヘイムに切り替えて防御に徹しつつ、直接私の氷柱に振動魔法をかけ始める。

 

この時を演出するために私はずっと待っていた上に少し無茶をした。

 

実は、ジョーカーを使う指輪形態のCADこの決勝では達也さんにも触らせていないどころか、存在すら知らないだろう。

私の自力で調整した起動式にOSを搭載している。

(ちなみに起動式を書いたのは、お父さんの会社経由で依頼した達也さん(シルバー)だ。)

 

だから、達也さんも私のジョーカーは知らないのである。

 

キラキラした目でこちらを見る達也さん。意外と好奇心旺盛な人だ。“感情を失ってる”って本当は嘘なんじゃない?あれ、好奇心は強い情動じゃないのかな?まあいいか。

 

 

 

 

 

 

おいで、私のジョーカー。唯一指輪形態のCADに込められた、起動式を読み込む。

 

硬化魔法をたった1本のみにかけ、他は防御しない。

 

深雪の振動魔法でどんどん破壊される。

 

でも、その時だけは、深雪も油断する。

 

 

 

 

 

 

 

加速加重振動収束発散五系統複合魔法“深淵鉄槌(アビス・ハンマー)

 

 

余剰次元の大きさを加重振動の工程により元の大きさに強制的に戻した反動のエネルギーをマイクロブラックホール化する前に汲み取り、加速収束発散で純粋なエネルギーとして標的に向かって放射する魔法。

 

元々、私が戦略級魔法を使うために考えた魔法で、出力をいっぱいに(防御も何も考えなければ)すれば戦略級となるだけの威力となるだろうと予測している。

 

 

ちなみに、私が余剰次元だとかM理論だとかを知っているのはヤマトのリメイクアニメからだ。

 

実際に魔法科の原作でも灼熱のハロウィンの後にUSNAで“余剰次元理論に基づく極小ブラックホール生成・蒸発実験”とやらが行われていることから再現可能と踏んだのだが…

 

 

 

『た、ただいま、司波選手の氷柱の全壊、北山選手の氷柱1本の生存を確認しました!優勝は第一高校、北山雫選手!』

 

 

“上手く調整出来てよかった。私や深雪も巻き込まれかねない魔法だったからね。”

 

 

 




お気に入り、評価、感想、ありがとうございます。


ちなみに、雫の深淵鉄槌はエネルギーのみを取り出すという面倒な手続きを踏んでいるので大丈夫ですが、マイクロブラックホール化した後にホーキング輻射をエネルギー化した場合は例の実験の如くこの世ならざるものがいらっしゃいます。


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私は、お母さんを超える。中編

「おめでとう!雫!」

「まさか深雪に勝つとはね…」

「びっくりしたよ!」

「すごかったよ☆」

 

ほのかとスバル、エイミィ、菜々美が口々に褒める。

 

首席で入試成績も高くて、それこそアイス・ピラーズ・ブレイクは深雪が優勝して私かエイミィが入賞すれば御の字みたいな感じでの配置だった。

もちろん、7月の定期試験での実技でも負けている。なのに、私は勝った。

この快挙を一高の新人戦女子メンバーはよく分かっていた。

 

「ほのかも、バトル・ボード優勝おめでとう。」

「うん!ありがとう!さっきみんなにも言われたよ!」

 

ほのかは私に抱きつきつつ耳元で叫ぶ。興奮し過ぎ。

 

「ほのか、耳痛い。」

「ご、ごめん。」

 

あははは、とエイミィとスバル、菜々美、和美の四人は笑う。

 

「ねえ、雫、そろそろ着替えに行かない?私、そろそろ寒いし、少し恥ずかしいよ。」

 

ほのかはバトル・ボードを優勝してからすぐにジャージを羽織っただけで雫の応援に来ていたため、羽織っただけのジャージの下にたわわに実った2つのメロンを始めとした体のラインがくっきりである。

しかも、バトルボードのユニフォームは薄手(かなり薄い)のウェットスーツであるため、結構ピッタリとしているのだ。

 

「大丈夫だよ。ほのか、スタイルいいから。自慢出来る。」

 

と私は親指を立てて励ましておいた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

ほのかがシャワーを浴びてるうちに、私はホテル内のカフェスペースに向かった。

 

すると、私の探していた人達がいた。

達也さんと深雪だ。

 

どうやら、慰めてもらうついでに桃色空間を作り出して周りの人達に砂糖を吐かせていたようだ。

 

「達也さん。」

「雫か。優勝おめでとう。まさか深雪に勝てる魔法師が同年代にいるとは思わなんだ。」

「ありがとう。」

 

そう言いつつ私は達也さんと深雪をテーブルに挟んで、座る。

 

「ホットのミルクココアをタンブラーでお願いします。」

「かしこまりました。」

 

九校戦の施設であるこのホテルでの飲食は全て軍の施設からお金が出るのでありがたい。

ウェイターに注文を伝えて、改めて達也さんと深雪の顔をみる。

 

「2人に…というか、達也さんに話があるんだ。ここだと誰かに聞かれてもおかしくないから、後で達也さんの部屋に行ってもいい?ほのかにも聞かれるとまずいから。」

「…吹雪になるぞ?」

「お兄様!私でもそこまでじゃありません!」

 

お兄様が最近ギャグ補正がかかっているように見えるのは気の所為かな?

 

「深雪もいてもいいよ。別に深雪なら聞かれても問題ないよ。」

「じゃあ、後でいつものメンバーで集まった後に、一緒に行きましょ?お兄様もよろしいでしょうか?」

「ああ。あまり遅くなるなよ、深雪、雫。」

「かしこまりました。」「うん。」

 

ココアをウェイターから受け取り、席を立つ。

 

「じゃあまた後でね。」

 

と、私は歩きながらココアの入ったタンブラーを見つめて、ほのかの微笑む顔を思い浮かべるのだった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ごめんなさい、遅くなって。」

「ううん、いまさっき集まったところだよ。」

 

新人戦女子メンバーのうち、私、ほのか、エイミィ、スバル、菜々美は九校戦会場に来てから、ほぼ毎日お茶会をしているが、深雪や和美や紅葉の3人もたまに来る。

今日は深雪も来ている。

 

「それじゃあささやかながら、ほのかと雫の優勝と深雪の準優勝にエイミィの3位入賞を祝して…」

『乾杯!』

 

凄いことに、ここにいる全員が入賞者だ。しかも…

 

「いやぁ、やっぱり凄いね、司波君は。ここにいるみんな、司波君の恩恵を受けてるね。僕もやっとその恩恵に浴することになるな。」

 

スバルは少し口角を上げつつ、肉食獣が獲物をロックオンしたような目と雰囲気を醸し出す。

 

「明日はほのかとスバルのミラージですものね。頑張ってね。」

「ああ、負けるつもりはないさ。僕にも司波君がついてくれるからね。」

「ドキドキするけど、精一杯やるよ!」

 

ほのかの朗らかな声と表情には、バトル・ボードで見せた自信のなさはなかった。

私はほのかに伝えられたのかな?勇気と情熱を。

 

「がんばって、ほのか。」

「うん!」

 

私が激励すると、ほのかは満面の笑みで頷いた。

 

「負けるな!スバル!」

「やっちゃえ、スバル!」

「任せなよ。」

 

テンション高い組(菜々美、スバル、エイミィ)のハイテンションには深雪もほのかも苦笑いである。

 

「ミラージは衣装がかわいいんだよねぇー。」

「うん。体のラインは出るけど、ひらひらしてて…本当に妖精みたいだよね。」

「同じラインの出る服でも、ウェットスーツとは違うなぁ。ちょっと恥ずかしかった…」

 

ピチピチしてて薄手だからね。

私は恥ずかしげに手を合わせていたほのかの両手を、私の両手で包んで顔を近づける。

 

「大丈夫だよ、ほのか。ほのかのラインは自慢出来るって、さっきも言った通りだよ。」

「ありがとう。」

 

困り顔でも笑いながらほのかは答える。

そこに、ふむふむという顔でエイミィが付け加える。

 

「確かに素晴らしいたわわだものね!」

 

エイミィの目がキラんと光る。

 

「もませろー!」

「きゃあぁあ!!」

 

ほのかに飛びかかるエイミィ。

その間に割って入って、エイミィの顔にペシっと張り手を打つ。

 

「だめ。ほのかを揉んでいいのは私だけ。」

 

そう、もう誰にも渡さないのです。

しばらくは私だけのご褒美枕なのです。

 

 

 




お気に入り700件と総合評価1,000突破しました!
感謝です!


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私は、お母さんを超える。後編

説明回です。




「それで?話ってどうしたんだ?」

 

達也さんの部屋に深雪と来た。

 

ほのかは都合よくエイミィとスバルと菜々美と和美の5人でトランプをやりに行くらしい。

 

「達也さんの裏の顔を借りに来た。」

「「!?」」

「戦略級魔法師、大黒竜也特尉。」

「!?」

「雫、それをどこで知った。」

 

達也さんの顔は一気に険しくなる。

 

「2通りあるけど聞く?」

「…聞こう。」

 

深雪も驚きから離れて少し険しい顔になる。

 

「1つは、お父さんのツテ。元々沖縄防衛戦で戦略級魔法が使われていたのは分かってた。一撃で艦隊を沈められる兵器は核のみ。なら魔法を使ったとしか考えられない。そして、その時のお父さんの会社の航空系の子会社の乗客名簿を本当はダメだけど見せてもらったら、興味深い名前があった。司波深夜。レテ・ミストレスとして有名だった四葉深夜が結婚したのは有力家系には通告されていた。その彼女と一緒にいる司波深雪。そして、1人別の席にいた司波達也。2つ目の理由で、彼らが四葉で、あの魔法の使い手だって思った。だから、兵器や弾薬を軍に売る子会社からのツテを利用して、少しづつ証言を集めた。あの時の魔法の容疑者は、風間玄信、真田繁留、司波達也、桜井穂波の4人。そのうち、古式の風間玄信、魔法力に秀でている訳では無い真田繁留、桜シリーズの調整体、と来れば達也さんしか残らないんだよ。“実力が未知数なのは”。」

「…桜井穂波がなぜ桜シリーズと知っている。」

「政府が関与したシリーズで、第1世代だから記録も政府に残ってる。政府の記録ほど漏れやすいものは無いよ。それがたとえ裏帳簿でもね。」

「……2つ目の理由は?」

「私はこの世界の大まかな“設定”を知ってるから。達也さんは前世とか来世とか輪廻転生…は違うか、転生とかは信じる?」

「いや、ありえない。情報的に亡くなれば、その人間がいるという世界の情報が消える。」

「そっか。じゃあ2つ目の理由はあまり信じれないかな。私は前世の記憶があるんだよ。それも、『この世界が1つの創作物』としての世界を知ってる。作品群に書いてあったことならほとんど分かるよ。もちろんどこに相違点があるかは分かってないけど、達也さんも、深雪も、私北山雫も、みんな小説にもアニメにも漫画にもなっていた登場人物だったよ。例えば、達也さんの分解と再生。例えば、四葉のフラッシュキャスト。トーラス・シルバーは牛山さんと達也さんの連名。他にも達也さんですら知らないことも知ってるよ。達也さんの将来のお嫁さん教えてあげようか?」

「誰ですか!?」

「深雪…」

 

深雪の食いつき具合が…ブラコン過ぎでしょ。

 

「達也さんは、“四葉真夜”の息子として、四葉深夜の娘である司波深雪と婚約するよ。」

「お、お兄様と…!」

 

深雪が頬に両手を当てて体をくねらせてる。ほっとこう。

 

「それは無理だろう。三親等以内での婚姻は不可能だろう?」

「だから、『四葉真夜の息子』って言ってるでしょ?それに、子供のことなら気にしなくていいよ。深雪は完全調整体魔法師。たとえ元が同じ人間からのものでも、調整体だから問題ないよ。」

「深雪が調整体?」

「達也さんの能力を抑え込むために作られた存在。それが深雪だよ。だから達也さんが生まれてから、四葉英作が能力を分析した後に調整されて作られたから11ヶ月の差で生まれたんだよ。」

「ばかな…」

「四葉の技術の粋を集めたから、完全調整体。つまり、寿命とか遺伝子の安定性とかは考えなくてもいいよ。」

「とりあえず、その話は聞かなかったことにしよう。」

「シスコンお兄ちゃんが妹と結婚出来るんだから嬉しいんじゃないの?今日の夜から一緒に寝ちゃえば?もちろん意味深な方で。」

 

私は微妙に表情を動かしてニヤニヤを浮かべる。

 

「それはともかくだ、とりあえず、雫の話は当面は信じよう。それで?俺に何を求めるんだ?」

「棒。」

「…」

「冗談。」

「…」

 

いつものポーカーフェイスに戻していることも、達也さんが何も言わない理由だろう。

 

達也さんいじり楽しい。

 

「大天狗風間玄信少佐と佐伯広海少将、四葉家当主四葉真夜に会わせて欲しい。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「なるほどな…それで、1番近い私の所に来たと。」

「はい。」

「ふっ、特尉の足も案外ついてしまうものだな。」

「北山家がいかに手が広いか、身に染みました。」

 

風間少佐と話す達也さんだけど、意外と“司波達也”のPDは誤魔化されているが、ガードはそこまで頑丈ではない。

むしろシルバーの方が徹底的に情報を止めている。

 

「それで、我々にどういう御用かな?お嬢さん。」

「私を国家公認戦略級魔法師として、政府に認知させて欲しい。いや、公認でなくてもいい。“公表”された戦略級魔法師となることが目的。」

「なぜかな?私は思うに、君にメリットは名声くらいしかないだろう?北山家ならそれも得られると思うがね?」

「私の目的は、達也さんのマテリアルバーストを使わせないこと。あの魔法は今後日本魔法界を含む世界が達也さんを狙う元になる。その火種は日本を燃やすことになる。あなた達も達也さん達と対立する可能性が出てくることになる。」

「ふむ。つまりだ。大黒竜也特尉を戦略級魔法師としてではなく戦術級魔法師として運用することを求めるということかね?代わりに君が戦略級魔法師となると。」

「バカな。雫、俺のためにそんなことを―」

「別に達也さんのためじゃないよ。私は私とほのかに火の粉が飛んでこないようにしたいだけ。しかも隣に達也さんと深雪っていう火薬庫があるんだもん。日常を守るためだよ。2つ目の理由で、これから私が動かなければどうなるかは知ってる。もしかしたらクラーク親子は居ないかもしれない。そうだとしても、確実に今年度中に戦略級魔法を使うタイミングが来る。その時に達也さんは使われるし、五輪澪さんも弱い体をおしてまで軍艦に乗る。その時の戦略級魔法を使った人を特定するためにUSNAからスターズが乗り込んでくる。達也さんをこれ以上放っておくことは私たちの日常を損なうことになるよ。」

「…いいでしょう。佐伯少将には私から伝えよう。君の言うことが本当だとすれば、今年度中に君の戦略級魔法を試射出来るようだ。そこで効果が認められなければマテリアルバーストを使う。認められれば、恐らく公認戦略級魔法師として通るだろう。」

「……ありがとうございます。それでは、失礼します。」

 

そっと立ち上がりドアの方に向かう。

 

そこに希望があると信じて。

 

 

 




お気に入り、感想、誤字報告、ありがとうございます。


佐伯や風間という一介の軍人に、公認戦略級魔法師を決めるだけの裁量はない!と仰る方もいると思いますが、裏事情があります。(ご都合だけどネ)
実は元から、達也のマテバは佐伯も危惧していて、晒せる手札が欲しい所でした。さらに、今回の独立魔装大隊の九校戦会場での任務は、将来有望な魔法師のスカウトなので問題ないという扱いでお願いします笑笑


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大好きだよ!

九校戦7日目、新人戦4日目。

 

午前中には新人戦ミラージ・バット、予選が行われた。

4人各6グループの予選で、出場者はほのかとスバル。

欠員を出すともったいないとのことで、加速魔法が得意で連続発動に耐えられる菜々美が深雪の代わりに出場。

 

ほのかは初動の速さで、スバルは認識阻害と跳躍への適性、菜々美の加速魔法と耐久力でそれぞれ予選を勝ち抜いた。(菜々美はギリギリだったが。)

 

ちなみに、ミラージの予選は朝からで、明るい時に行うことから少し暗めな色の衣装もしくはアクセントに暗い色を入れるのが伝統だ。

 

とはいえ、スバルのように某少女歌劇の男役のような衣装で挑む選手は稀だが。

ほのかの衣装は本当に妖精のようなかわいらしさを持っている。その衣装のまま襲ってもいいですか?

 

「みんな、予選突破おめでとう。」

「雫ー!」

 

3人が一高のテントに集まってたところに行くと、ほのかが抱きついてくる。

 

「うん、やっぱりあれだね。ミラージも含めてだけど、際どいユニフォームは長袖ジャージを羽織ることで強化されるね。」

「ちょ、雫!どこ触ってるの!?」

「ほのかのお尻。」

 

仕方ないじゃない。ほのかのプリッとしてるお尻が強調される格好なんだから。

どこぞの登山家みたいに言おうか?そこに萌えるお尻があるからだよ!

 

プシューと、顔を真っ赤にして精神的に気絶するほのかを見ながら、一言。

 

「シチュエーションって大事だね。家でほのかの胸をいじるより遥かに興奮するよ。」

「公開羞恥ぷれいでも始める気かい?」

 

冷静にツッコミを入れるスバルも顔を赤くしている。

おっぱいのついたイケメンの少女らしいところが見られるとは。ギャップ萌えですねぇ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

森崎君たちの出場するモノリス・コードは、各校4戦して上位4校で決勝トーナメントを行う変則リーグ制を採用している。

 

だが、その第2試合での事故(と言っておく)が起こってしまった。

 

スタート地点付近で、開始直後に室内でAランクの殺傷ランクが付けられている破城槌を撃ち込まれたのだ。

 

どこかのタイミングで森崎に警告しようと思っていると、なかなかタイミングが無くて何も出来なかったのだ。

 

だって仕方ないじゃん!男の子と話す機会なんて前世ほどないんだよ!?しかも、どう話せば『誤解』されないかとか考えると話しかけられないし。

 

それはともかく、原作の通りに達也さんと西城くんと“ミキ”がモノリスの代表に抜擢された。

 

 

『僕の名前は幹比古だ!』

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

夜7時、順番は逆となったけど、達也さん達がモノリスのメンバーに抜擢される前。

 

本来のステージとなったナイターゲーム、ミラージ・バット新人戦は決勝出場者の6人のうち3人が一高である。特に注目されているのはほのかとスバルだ。

光球の発生をいち早く分かる光への感受性の高いほのか。

いないと思っていたところから出てきて横からホログラムの光球をかっさらって行くスバル。

この2人だ。

 

衣装も明るい色で固められていて、本当にかわいい。

ほのか、生足ならなお良しなんだけどなぁ。

 

ちなみに、菜々美は急遽なため、七草会長のお下がりだ。(サイズは調整済み)

……なんか、超少女趣味だね。うん。妖精と言うより魔法少女。カードで夢幻召喚出来そう。

 

 

 

『試合終了!優勝、光井ほのか選手!準優勝、里美スバル選手!4位、春日菜々美選手!第一高校が得点圏3人とも入れてきました!』

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ほのか!」

「雫ー!」

 

ジャージも羽織らないで決勝の衣装のまま駆け寄ってきてその勢いのまま、ほのかの控え室に先に来ていた私に飛び込んできた。

 

「優勝おめでとう。」

「やったよ!雫!」

 

ぴょんぴょんと跳ねるほのか。かわいい。

 

大きな蝶の形の飾りの付いた髪飾りやその衣装は本当に妖精に見えるくらいかわいい。来年は私とミラージにしようかな。

 

ほのかは嬉しそうにしながらも、飛び跳ねるのをやめて、私に抱きつきながら顔と顔が至近距離の状態にして、覚悟を決めたような表情をしていた。

 

「雫…私、雫の事、好き!」

「ほ、本当に?」

「いつ言おうか、言って断られちゃって離れちゃったらどうしようとかずっと言えなくて…!だから、バトル・ボードとミラージ・バットで優勝して告白しようと思ってたの…」

「ほのか…!」

 

私はほのかに答えの代わりに、ほのかの唇に私の唇を落とした。

ほのかの頬には涙がキラリと光っていた。

 

多分、私の頬にも。

 

 

 

 

 

 

あーあ。これじゃあ守りたい理由が増えちゃうよ…ほのか、大好きだよ。小学校で出会った時から。

 

 

 

 




少し短いけど、この話はここまで!

次話は九校戦が一気に進んで終わります。
深い深い裏話が少しづつ表に出てくる前兆が…!


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我らが第一高校、常勝軍団なり!

九校戦8日目、新人戦最終日。

 

達也さんたちモノリスコード第一高校交代メンバーは八高、二高を破り、決勝トーナメントに。

 

 

決勝トーナメントは九高と初戦を戦う。

 

渓谷ステージでの戦いは古式使いである“ミキ”の真骨頂が発揮された。

 

『僕の名前は幹比古だ!』

 

吉田くん、活躍したからとおっても、カメラをガシッと掴んで自分の名前をを声高に叫ぶのは変人だよ。なかなかできることじゃないよ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

その後、第三高校のクリムゾン・プリンスとカーディナル・ジョージを擁するモノリスコードチームと我らが第一高校モノリスコードチームがぶつかり、達也さんの戦闘技術、詰将棋のような吉田くんの古式魔法、西城くんの頑丈さに救われた。

 

その大健闘には観客席や応援ブースから大きな拍手で迎えられた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

九校戦9日目、本戦4日目。

 

深雪のミラージの日だ。

 

優勝は深雪。小早川先輩やもう1人の選手は予選落ちだった。

 

え?小早川先輩はどうしたのかって?もちろんCADの電子金蚕のことを風間少佐経由で軍人が見張っていたCADチェックで発見した。

でも、電子金蚕を見れる人がいなくて、エレクトロン・ソーサリスが出てきたと聞いた。

 

 

十文字会頭たちのモノリスコードは、うん。圧倒的だったよ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

九校戦、10日目、最終日。

 

十文字会頭たちはモノリスコードを圧倒的な戦いで優勝して、総合優勝に花を添えた。

 

そして、夕方から表彰、ダンスパーティー、祝勝会という順でイベント目白押しだ。

 

それぞれ各競技で入賞した人を表彰会の司会が紹介して、それぞれ拍手が送られる。

 

1年生の中では、私、ほのか、スバル、深雪、エイミィの5人が司会の大会委員に呼ばれた。

 

『―各競技の入賞者は以上です。お互いの健闘をたたえて、全ての選手に大きな拍手を。』

 

私とほのかは一高生の集まるエリアの壁際で手をぎゅっと繋いで肩を寄せあった。

 

『それでは続いて、総合優勝及び新人戦優勝の表彰です。総合優勝及び新人戦優勝、第一高校。代表者4名は前へ。』

 

総合優勝と新人戦優勝で2人づつだ。

総合優勝の方には七草会長と十文字会頭。

新人戦優勝の方は私とほのかが。

総合優勝は生徒会長と部活連会頭と、新人戦優勝は新人戦での得点数でと七草会長が話していた。

 

『優勝トロフィーとメダルの授与は九島烈閣下です。』

 

「第一高校の諸君、優勝おめでとう。特に、新人戦女子の工夫はとても面白かった。」

「恐縮です。」

 

私がそう返すと、老師はニヤリと笑った。

 

『第一高校に大きな拍手を!』

 

このおじいさんの顔を私は死ぬまで忘れないと思う。

私はまだそれを知らなかった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

ダンスパーティーではなんと生演奏でのダンスパーティーとあってこれは是非踊りたいと思っていた。

 

「エイミィ、僕と踊っていただけますか?」

「もちろん!」

 

おっぱいの付いたイケメンと赤毛の少女が中央で踊り始めた。

 

「雫、私たちも踊ろう?」

「うん。」

 

ほのかは私に手を伸ばし、私は手を重ねる。

ほのかの方が女の子らしくてかわいらしいけど、身長の関係でほのかが男性役だ。

公式設定では私は158cmあるそうだけど、嘘だよね。ほのかが162cmなのは知ってるけど、私は154cmしかないよ。エイミィと同じかエイミィの方が高い。てか公式設定とエイミィの絵って比例してないよね。私の見立てだとエイミィも154くらいだし。

ま、身長同じくらいでも私の方が胸あるけどね!

 

あ、ホールの真ん中の方から睨まれてる。最近“ミキ”といいエイミィといい心の中を読み過ぎじゃない?

 

「僕の名前は幹比古だ!」

 

あ、ホールでボーイをしてるんだ。後で飲み物お願い。

 

 

踊っていると、ほのかの胸が当たる。凹凸って意味では1年生最高だと思うけど…イヤミか。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

一高関係者だけになった祝勝会には、途中参戦した西城くんと吉田くんの姿も二科生の制服だが、そこにあった。

 

「それじゃあみんな、グラスは持ちましたか?」

 

『おお!』と会長の問いに答える“信者”たち。

みんなあの小悪魔を信仰するなんて…愚かしいね。

 

「では、新人戦・総合の両優勝及び総合優勝3連覇と選手及びスタッフ一同みんなの健闘に!」

 

 

「「「「「カンパイ!」」」」」

 

50を超えるグラスが掲げられた。

 

そこには怪我を負ったものの九校戦期間中に魔法治療で完治させた渡辺委員長の姿はあるが、森崎以外の元々の新人戦モノリスコードメンバーの姿は無い。森崎は定率減速を反射的に発動させた上に立会人の荷重軽減魔法も合わさり全治2週間で過度な運動をしなければ問題ない状態になってはいるが、ほか2人は立会人の魔法だけで全治1ヶ月の重傷だ。未だに病院のベッドから起きれていない。

 

色んなところでバカ騒ぎと言ってはアレだけど、それこそ入学してからすぐの勧誘週間並みにバカ騒ぎをしては渡辺委員長が軽く諌める。とは言え本当に軽くで、ほぼ無礼講状態。

 

「けーいー!」

「花音!?なんか出来上がってない!?」

「けい、うるさいよー!」

 

と言いつつ自分の唇で五十里先輩の唇を塞ぐ。

 

はたまた七草会長はまた服部副会長をいじって遊んでいる。

 

市原先輩も達也さんと魔法談議に花を咲かせていて、その横には深雪が嬉しそうに微笑んでいる。

 

「ほのか、来年も絶対にここに来よう。」

「もちろん!次も四十九院さんに勝つんだから!」

 

と言うほのかに、私はいきなりほのかの唇を塞ぐ。

 

「こういう時に他の女の子の話はしないで。」

「ごめんごめん。」

「私はほのかしか見てないから。」

「私も雫の事が大好きだよ。」

 

夏は熱い恋の季節だとかつて誰かが言っていたけど少なくとも私にとってはほのかの隣ならいつでも恋の季節だと、そう思いながら私は祝勝会の喧騒をほのかの指の感触を確認しながら眺めているのだった。

 

 

 

 




九校戦編、完


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夏休み編
SSボード・バイアスロン、夏季大会


SSボード・バイアスロンの高校生大会には全国の魔法科高校の他一般高校に進学している魔法技能を有する生徒も参加することがある。

 

もちろんほとんどないが。

 

「凄いね!九校戦程じゃないけど、規模が大きいね!」

「うん。高校生の大会でこれ程とは…!」

 

そして、そのSSボード・バイアスロン夏季大会2095の会場には、九校戦で一気に有名になった私たち2人の姿もある。

 

「うそ!?北山さんだよ!」

「隣の人、光井さんじゃない!?後でサインもらえないかな!?」

「て、これからあの2人とタイムアタックとか無理ゲーじゃない…」

 

と、聞こえてくるだけでもこんな感じ。

 

「私たち、結構話題だね!」

「下馬評でも優勝候補に上がってた。」

 

SSボード・バイアスロン夏季大会2095の下馬評では、

予想優勝評価

1位:五十嵐亜美(第一高校3年)

2位:水尾佐保(第三高校3年)

3位:光井ほのか(第一高校1年)

4位:鳳舞香(第九高校3年)

5位:北山雫(第一高校1年)

となっている。形質上、バトル・ボードで優勝した水尾さんとほのかは評価値が上がるとは思っていたけど、それを上回る部長、流石です。

 

SSボード・バイアスロンは指定された色の的だけを魔法で破壊しながらコースを走破する競技で、的を破壊していい射撃ゾーンが200m事に10m設定されていて、走破タイムで競う。他の色の的を破壊する減点で、魔法のスピード・威力・正確性が求められる。

特に、誤射数(他の色の的の破壊数+破壊できなかった自分の破壊するべき的の数)が鍵を握る。誤射があるとその分のペナルティが課せられるのだ。

順位を決定するのは、走破タイム+誤射数×走破タイムの5%の計算式である。

なお、走破タイムを計算式に組み込んでいるため、タイムは小数点以下2桁のみ有効とされ、小数点以下3桁以降は切り捨て。

他にも細かいルールはあるけど。

 

 

ちなみに私が予想評価が少し低めかと言うと、正確性の求められるこの競技に九校戦で見せた正確性よりも高火力高威力な魔法が理由に上がっていた。

 

「ふふ、2094年度ロアガンU-16春夏覇者のガンナーの射撃センスを舐めないでよ。」

 

私がニヤリと覇気を漏らすとほのかはぶるっと震えた。

 

「そんなに怖い?バトル・ボードとミラージ・バットを優勝したのに?」

「だ、だって!」

 

ほのかが言い訳しようとした時、放送がかかった。

 

『まもなく、開会式を行います。』

 

開会式は選手の参列は必要ない。どちらかと言うと、画面を見るかそれよりもアップやCADの調整を行う。

 

ちなみに、この競技に限らず、魔法競技の高校生大会は基本的にそれぞれの実業団チームを擁する企業の合同出資で開催されているため、CADの調整機も十分に貸出が出来る。

まあ技師は自分で雇うか自分でやるかの2択だけど。

 

私とほのかは、九校戦の時に達也さんに暇な時でいいからと言って書いてもらった起動式を確認してから、『家から走らせてきた作業車』でCADのサイオン波の特性に合わせて調整させる。

 

「お嬢様方、終わりました。」

 

ほのかと私にCADを渡すのは、彼女自身も魔法師であり第一高校の1年生である比嘉麻里安。一応私の侍女候補。

 

技師としての勉強中でもある。

 

「ありがとう、麻里安。いつも助かる。」

「ほんとに!私まで、いつもありがとう。」

「いえ。私もまだまだ勉強の身ですし、旦那様からもほのかお嬢様も私の娘みたいなものだからと。」

「小父様…」

 

ブルータァァス!と叫びそうなほのかを尻目に、麻里安の頭を撫でる。

 

ちなみに麻里安は15歳ではあるが、容姿だけなら10歳かもう少し下にしか見えないロリっ娘だ。将来的に合法ロリになるのは間違いない。そして、精神的にも若干妹っぽい。

現に今撫でていると嬉しそうに擦り寄ってくる。いや、これは妹と言うより犬か!?

 

少しいじけた顔のほのかもかわいい。でも、放置もかわいそうだしほのかも撫でる。

 

あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

『現在、暫定1位は第一高校の五十嵐亜美選手!第九高校の鳳舞香選手は既に試合を終えて暫定2位となっています!』

 

既に半分の競技を終えた。

 

『次の出走は、魔法科高校外の登録選手です。北関東高校体育科の1年生、大空彩華選手です。』

 

魔法科高校以外の選手は数人いるが、あまり注目されない。魔法科高校以外の魔法師は基本的には魔法科高校にも受からない程度の力しかないという事だからだ。

 

『スタートしました。好スタート。速くも遅くもなく安定しています。』

 

だが、ゴールに近づくにつれて、実況は驚愕を含み始めていた。

 

『5つ目の射撃ゾーン、誤射無し!このペースでの誤射無しは見たことがないぞ!?』

 

そして…

 

『ゴール!誤射無しパーフェクト!スコアは…216秒18!2位との間に20秒ほど差をつけてゴール!暫定1位です!』

 

普通くらいの魔法力(二科生くらい)を効率的に運用した素晴らしい魔法だった。

正直、五十嵐先輩には勝てるとは思うけど、彼女に勝るにはまだ足りないと思えた。

 

 

 

 

今大会の最終順位は、

 

1位、大空彩華 北関東高校 1年 216.18

2位、北山雫 第一高校 1年 228.24

3位、五十嵐亜美 第一高校 3年 235.41

4位、水尾佐保 第三高校 3年 236.02

5位、鳳舞香 第九高校 3年 238.98

 

となって、SSボード・バイアスロンの高校生大会が始まってから初めて魔法科高校以外の高校の生徒に優勝メダルが贈られた。

 

 

 

 

 




ことあと、雫はほのかの胸の中で悔しがったそうな…
(もちろんニヤケながら)




感想、お気に入り、評価ありがとうございます。
意見の分かれる展開を含んだ九校戦編はどうでしたでしょう。


この話からはキャッキャウフフの夏休み編です!お楽しみを!


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雫とほのかのお家デート

お家デート。

それは、カップルがどちらかの家に行くデートのことを指す。

 

 

……あれ?ほのかってしょっちゅうウチに来てるけど、お家デートに当たるのかな?むしろいつも通りな気がする。

と、ほのかに話したら、

 

「いつもとは違うことをしよう!」

 

という話になったのだけど……

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「じゃあ何する?」

「何しようか…」

 

考えると、案外家での付き合い始めてからとその前との差異がほとんどないことに気づいた。

 

「そ、そういうことしか思いつかないよ…」

「ほのかったら…エッチ。」

 

この時にポッと赤くなって恥じらう表情にすれば完璧なのに、私の表情筋はほとんど動かずに目がニヤリと笑う。

 

「し、雫だって、中学生の頃からお泊まりの時に夜2時頃1人でシてるの知ってるんだからね!」

「ふふ、それに顔真っ赤にしながらも手を動かしてるほのかのことも私はしってるんだけどね…」

「ちょえ!?なんで!?」

「なんでって…私はその頃からほのかを“オカズ”にしてたから。」

 

とりあえず、こんな話しかしてなかったで、1時間ほど飛ばすことにする。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「じゃあ、桜夜にお菓子でも教えて貰いに行く?」

「それもいつもと同じだよぉ。」

 

あ、ごめん。もう1時間飛ばします。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「分かった!バドミントンしよ?」

「いいね!」

「ちょっとまってて。桜夜ー!」

「はい。」

「バドミントンをしたいんだけど、用具ある?」

「はい。公式試合に使える用具1式は揃っています。あとはラケットですが、お2人が好きなものを選んでいただけます。」

「じゃあお願い。」

「かしこまりました。」

 

ちなみに、桜夜は呼ばれた瞬間には私の前に現れて、用を言い終わると、直ぐに消える。

 

擬似瞬間移動かな?でも魔法らしい感覚はないんだよね…

 

「い、いつ見ても桜夜さんって凄いね…」

「あの瞬間移動だけは多分達也さんでも見えないと思う。」

 

北山家には体育館(体育室?)も存在する。

バドミントンコート3面分、バスケコート1面分、バレーボールコート1面分の体育館が存在する。

ちなみに、その体育館やその他施設は、使用人も休日や就業時間外に使うことが出来る。(ちなみに、使用人がいればその友人も連れてこれる)

 

「お嬢様方、準備が整いました。ラケットも体育館にあります。」

「分かった。」

 

また桜夜が瞬間移動したかの如く、出現する。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

既にバドミントンコート3面分全てにネットが張ってあり、床には特殊樹脂のシートが敷かれていた。

 

「あれ?麻衣?」

「お待ちしておりました。お嬢様方。ただいまラケットをお持ちします。」

 

いつものメイド服姿ではなく、手足を晒した色気たっぷりのスポーツウェア姿の西崎麻衣がいた。彼女は5人のメイドの中でNo.2に当たり、主に寝室の調整を担当するチェインバーメイドである。まあ近年にそんな職種分けはあまり意味は無いけど。

 

「なんで麻衣が準備しているの?」

「麻衣は2年前中学生バドミントン大会全国優勝の経験がありますから。」

「なにそれ、聞いてないよ。」

 

桜夜と私が話している間にほのかはラケットを決めたらしい。

トップライトでテンションは23ポンド、5U6の重さとグリップ。かわいらしい白と赤が基調となったラケットだ。

 

私はトップヘビーでテンションは27ポンド、4U5の重さとグリップ。薄緑に黄色を基調としている私らしい(?)色だと思う。

 

 

半袖にショート丈のスポーツウェア(麻衣と同じ型)に着替えてまずはアップから。

 

「準備運動の後は2往復ダッシュ、2往復目は全力で。その後にバックダッシュ。最後に前後スキップで合計5往復します。」

 

足腰に怪我をしないように先に走る。麻衣なんかは今でももっとアップをすると言うけど、それを私たちがやるとそれだけで疲弊するのでこれだけ。

 

「まずは私が上げるので、こちら側に返してください。」

 

いつの間にか、アップと言うより練習になっているが、気にしちゃいけないだろう。

 

クリアー、ドライブ、ロビング、ドロップ、ヘアピンと、教えて貰いつつ打ち分けていく。

 

「よし、それじゃあ試合形式でやりますか。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

私とほのかの試合形式。

 

21点先取の3セットマッチ。

1セット目は21-14で私が取り、2セット目は24-26でほのかが取った。

 

 

そして、第3セット。

 

29-29。

 

次の1点を取った方が勝ちだ。ここまでゲーム途中の1分の休憩とゲーム間の2分の休憩しか取っていない私たちの体力はほぼ尽きていて、汗がウェアにベタベタとして肌につく。

 

「29マッチポイントオール。」

 

麻衣の宣言の後、ほのかのサービス。

ルール規定のシャフトが下向きでなくてはならないルールの中でサービスはギリギリまでハイスピードなサービスを生む。

 

ほのかがホームポジションに戻りかけているのを見て、動いている反対側、つまりサービスを打った側のサイドを狙う。

フォアのサイドで打ったシャトルはほのかの動く反対側へ。

 

ほのかはその場で足を踏ん張ってバックハンドでラインに沿って打ち返す。

 

逆方向に飛んで来た球をドライブでほのかのコートに返す。

すると、ほのかもドライブで返す。

 

こうなるとドライブの応酬である。どちらかがミスをするまでの。

 

 

と、思わせておいて、私は少し浮き上がってしまったほのかのドライブをオーバーの高い打点でスマッシュを打つ!

わけではなく、そのインパクトの瞬間にフッと力を抜いてふわりとコート前に落ちる球を打つ。

 

ほのかの中では、ドライブかと思ったらスマッシュの構えをされてドロップが来たと、思わせられているはずだ。

 

ロビングで対応を何とかしたほのかの打球は甘く、そのままドライブをコートの後ろ側に打ち返すとほのかは間に合わず、私の勝ちとなった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

北山家のお風呂は銭湯程に大きい。さらに個室のシャワーブースやサウナもある。

とは言え、使用人は専用の浴場があるので使わない。なので、ここを使うのは北山家とほのかと客人だけである。

 

 

 

脱衣所でウェアを脱ぐと、ヒヤッとする。汗が気化して体温が奪われる。

 

体を動かす時のためのシンプルな下着を上下ともに脱いで生まれたままの姿になると、鏡に映る自分のスタイルに少しだけ肩を落とす。

 

「大丈夫だよ!雫だってまだ成長の余地はあるよ!……きっと。

「きっとって言ったね…」

 

私たちがシャワーブースに入ろうとすると、2つあるシャワーブースのうち1つが『修理中、使用禁止』と貼り紙されていた。

 

「雫先に入りなよ。」

 

多分、幼い頃からほぼ2つ目の家になっている私の家でもまだまだ遠慮はしているのだろう。もしくは、自意識過剰かと言われるかもしれないけど、もしかしたら一応それっぽいことは出来ていないものの恋人に対しての思いやりかもしれない。

 

「いや、ほのかも風邪ひくよ。」

「わ、私は頑丈だから!」

「…小学校の頃―――――」

「わあー!それは言わない約束でしょ!?」

「じゃあ言わない代わりに一緒に入ろうよ。」

「!?……うん。」

 

いくら北山家とは言え、1人用のシャワーブースはかなり狭い。そもそもシャワーブースは直ぐに暖房が入るように小さめに設計されていたから小さいのだ。それこそ、私とほのかが一緒に入ると、少し動くだけでお互いの体に当たる程には。

 

「シャワー流すよ。」

 

このシャワーブースのシャワーは天井に埋め込まれているレインシャワーと通常のシャワーヘッドのやつの2つある。

 

今ほのかが流し始めたのはレインシャワーの方だ。

 

だけど…

 

(シャワーのパネルを操作するほのかのお尻が…ツルツルで…ぷにぷに…)

 

「ひぁっ!?」

 

ほのかのお尻を撫でると、ほのかがビクッとする。

 

「し、雫〜、やめてって〜!」

「ほのかのお尻がかわいいのが悪い。」

 

そのままわしづかみにしつつ揉むと、キュッとお尻の穴側に力が入るのが分かる。

 

「と、とりあえず汗流してからにしよう?」

「“何を”かなあ?」

 

私はニヤりと笑うと、ほのかに真正面から抱きつく。

 

「んぁっ…!」

 

ほのかから汗とは違うネチョリとした液体が溢れだしていた。

 

「続きは後でね。」

 

ほのかはシャワーを浴びる間、ずっと顔を真っ赤にしながら少し切なそうな顔をしていた。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「シャワーブースを使えないようにしましたが…これでお2人の仲が進展するんですか?」

「ええ。意外とあの2人は欲求不満で“お互いに”結構前から意識していましたから。想い人として。」

 

メイドの直江夕姫とメイド長の桜夜がこんな話をしていたことを知る人は彼女らしかいなかった。

 

 

 




次の日の朝、メイド長の桜夜は起こしに行くと裸の2人を発見し、寝室担当のメイド麻衣はびしょびしょになった雫の部屋のベッドを片付けたらしい。
数日間は2人が桜夜と麻衣に会うと、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていたとか。



お気に入り、評価、誤字報告ありがとうございます。

もはや同棲に近いこの2人にお家デートを書くのは難しかった…


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夏祭り 前編

夏祭り。

それは元々病気や災害をもたらす悪い霊を追い払うという意味のお祭りが多いらしい。

 

だけど、第三次世界大戦の影響や寒冷化の影響・食糧難の影響などで、地方での夏祭りという『イベント』は姿を消した。

 

もちろん都市の中などでは未だに行われる所はある。だけど…

 

 

 

「ダメだよ。」「ダメよ。」

 

私とほのかは恋人になって初めての夏を思いっきり遊ぼうと計画して、夏祭りを見つけた。のだが…

 

「2人だけで行くなんて、悪い虫が寄って来ちゃうじゃないか。」

 

と、お父さんが反対。

 

「だいたい、夏祭りは結構治安が悪くなりやすいんだから…」

 

と、お母さんも反対側。

 

「どうしてもダメ?」「小父様、お願いします!」

 

と、私とほのかはお父さんに上目遣い。

 

「うっ…分かった。それなら、私が夏祭りを作ろうじゃないか。」

 

 

 

この一言で、まさかあんなことになるとは私たちには分からなかった。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「つまり、うちの別荘で夏祭りをやるの?」

「そう!それなら我が娘たちに悪い虫は寄ってこない!」

 

我、名案を得たり。とお父さんが嬉しそうに話す。

 

「それに、人がいないのが嫌なら学校の友達なら呼んでも構わないよ。」

 

 

…え?

せっかく知り合いのいないところでイチャイチャ出来るかと思ってたのに?

 

学校の友達に私たちが恋仲だってバレるって事だよね?

魔法師の同性婚は魔法技能の低下を招くっていう俗説のせいで忌避されることなのに…

 

「エイミィとかスバルとか深雪ならいいんじゃない?」

「あ、そもそもあの人たちならバレてそう…」

「それにさ、私はね、バレてもいいと思うんだ。深雪もエイミィもスバルも達也さんも西城くんもエリカちゃんもほかの人たちもさ、そんなことで態度を変える人じゃないよ。私は私たちの友達を見る目はあると思うよ。」

「…そうだね。みんな呼ぼうか。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「―――っていう訳なんだけど、エイミィはどう?」

「行く!」

 

翌日、SSボード・バイアスロン部の練習に来た私は、同じく狩猟部の練習に来ていたエイミィに聞くと、即答だった。

 

「菜々美と深雪と達也さんは今のところ無理って聞いてるよ。」

「じゃあ私からスバルと紅葉と和美には連絡してみるわ。」

「お願い。」

 

部活棟にあるシャワールームの前で話し込む。ちなみに部活棟のシャワールームは男女それぞれ15室あり、休暇中のこの時期の昼間はガラガラで私とエイミィしかいない。

 

「狩猟部は夏の予定ないの?」

「うん。馬の世話の当番しかないよ。まあ馬の世話には走らせることも含まれてるから結構ハードな馬術練習になるけどね…」

 

なるほど。それでそんなにヘトヘトな様相なのか。

狩猟部ってなんか半分馬術部みたいなところがあるよね。

 

シャワールームは、学校のものであるだけあり、うちのよりは小さいがそれなりに作りはしっかりしている。

セキュリティも女子の方には脱衣所のところも含めてかなり高い。

ちなみに男子の方もセキュリティは成されているが私はその内容までは知らない。

 

「まったく、無駄にお金かけてるよね。ウチが言うのはなんだけど。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

8月16日。

 

東京、羽田空港。そこに集まったメンバーは、私、ほのか、エイミィ、スバル、菜々美の5人の姿に加えてC組に所属しながら私の付き人の候補である比嘉麻里安の姿とメイド長の初瀬桜夜の姿があった。

 

「菜々美以外ははじめまして。比嘉麻里安です。麻里安って呼んでね。雫様の付き人候補です。」

「明智英美様、里美スバル様、春日菜々美様、はじめまして。北山家でメイド長を仰せつかっております、初瀬桜夜です。」

 

もちろん麻里安はほのかは何も言わずに除外している。それだけの付き合いのある間柄である。

3人はメイドや付き人と聞いて、マジか…と私を見る。

 

「本物のメイドとか初めて見た…」

「ぼ、僕も、雫のウチがお金持ちとは聞いていたが…これ程とは…」

「あはは!信じられない!」

 

ああ、そのくらいで驚かないでよ。

 

 

お父さんの親バカでやらかした“()()”を見たらもっと驚くよ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

()()”1つ目。

 

「まさかコレを貸切とは…」

「凄い…」

「お、大きいです…」

「菜々美、ネタに走りすぎだよ!?」

「ほのかも生やす?」

「なんのこと!?」

 

そう、ホクザングループの傘下にある航空会社の飛行機(小型ジェットとは言え)を1機貸切で目的地付近の空港に行けるのだ。

 

まさか貸切にするとは思わなかったよ。なかなかできることじゃないよ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

()()”2つ目。

 

「なにこれ!?」

「映画の中みたい!」

「ぼ、僕の認識阻害が異物感多すぎて機能しなくなりそうだね…」

「お、小父様…」

 

飛行機の内装が、とても高級感のある機内で、ファーストクラスなんて屁でもない程に高級住宅のリビングのような空間が出来上がっていた。

 

ついでに、壁に私とほのかの幼少期からの写真が飾られていた。

 

 

そして、“()()”の残りのは、私の想像を遥かに超えていた事を目的地に着く時に知ってしまうのだった。

 

 

 

 




課題提出日が迫る中で更新が遅れました。
本日提出しました。
最近やること多すぎぃ

お気に入り、誤字報告、評価、ありがとうございます。


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夏祭り 後編

ベタ甘なんじゃあ……

ブラックのコーヒー片手に何日も掛けて書きました…




 

 

「リ、リムジンだって…!?」

「この時代に!?」

「きゃは!すごーい!」

 

目を丸くするスバルとエイミィに比べて、早くも菜々美は適応し始めたらしい。

 

新千歳APに到着後、その目の前に現れたリムジンに手早く乗り込む。

 

「桜夜、今日は登別の?」

「はい。」

 

我が北山家は日本各地に別荘がある。

北海道には登別に存在する、温泉付き別荘だ。維持管理は黒沢さんと桜夜の2人で行っている。ホクザングループの子会社の最新鋭3Hの実験兼維持管理も並行して行っているため、桜夜たちは機械の管理や手の届かない所を管理するだけでいいらしい。

 

…ホクザングループのアダルト系部門も3Hらしきものを作っているらしいけど…

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「いつ来ても凄いね〜。」

 

ほのかが私の手を取りつつ別荘の中に入る。

 

「いらっしゃいませ、お客様方。おかえりなさいませ、お嬢様方。」

「……雫、これは3Hかい?」

「うん。最新型の実験兼維持管理に導入してるんだけど…」

 

その3Hは、幼かった。

 

外見年齢では小学生高学年くらいだろうか?10歳前後の容姿の女の子がこちらを見ていた。

 

「小型化の実験でもしてるの?それとも…そっち系?」

「……お嬢様、ここの3Hは…アダルト部門と家電部門の合作です。」

「よく、このサイズに出来たね…」

「無線送電でバッテリーを搭載しないことで対応したらしいです。しかも…『りな、リビングにお客様方を案内しなさい。』」

「かしこまりました、管理者様。お客様方、こちらにどうぞ……っきゃあっ!?」

 

ロリ型3H『りな』は案内しようとして振り向くと、バランスを崩して転ぶ。

 

「痛いですぅ…」

「センサー系が少ないためよくドジをします。その分対衝撃性能は高く耐久性も高いのですが……アダルト部門の技術?で、『ドジっ娘は萌える!』だそうです。」

 

お尻をさする『りな』とその解説をする桜夜に呆れた目を向ける面々。

 

「ちなみに、『ロリふたなり型』も最近作っているらしくて、『淑女』の方々が買っているらしいです。『ロリ型』も女性相手も出来るようにプログラムされているらしいですが…」

 

そして、その情報に発言した桜夜以外の全員が顔を真っ赤にしたのだった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

アダルト3H事件もあったが、それぞれが客室に案内を所々りなが転びながらも済み、さて何をしようかという段階に入る。

 

「一応現在時刻は16:24で、18:00には準備できるから、30分くらい暇だけど…温泉行かない?」

「いいね!」

 

源泉かけ流しの温泉があるのだ。

 

「私は準備に行きますので…麻里安、お嬢様方のお世話はお願いね。」

「はーい。」

「『りな、ついてきなさい。』」

「かしこまりました、管理者様。」

「転ぶとめんどうだし…『りな、私の腕に掴まりなさい。』」

「分かりました、し、失礼します…」

 

言語シミュレーターとエモーショナルシフトは最新型だ。ホクザングループの技術力は世界一イィィィィィ…

なんか言わなきゃいけない気がした。

 

ちなみに、エモーショナルシフトは表情の変化や態度の変化を司る感情模倣システムだ。

 

(もしかして…『りな』を導入したのって…桜夜?)

 

 

気づきたくないことを知ってしまった気がした。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

温泉は今では珍しい昔ながらの“洗い場”のある温泉スタイルだった。

 

そして…お約束は再び。

 

 

「それ!」

「ひゃん!」

 

エイミィがほのかの胸を鷲掴みにする。

 

「おおー。羨ましい…ふわふわ………!?」

 

でも、今の私がそれを許すとでも?

エイミィの足元には穴が空いていた。

 

「うっそ…CADなしでフォノンメーザー…」

 

撃たれたことにではなくフォノンメーザーに驚くとは…エイミィ…最近肝が据わった気がする。

 

「エイミィ、ちょっとO☆HA☆NA☆SHIしようか?」

「ちょっと雫の後ろに魔王が見えたんだけど!?女の子の!」

 

それは多分幻覚だよ。決して精神干渉系魔法で『少し頭冷やそうか…』の人を見せたわけじゃないよ?ホントだよ?

 

「それ!」

 

ほのかに背を向けてエイミィに向けて右手を伸ばした時、ほのかが私の胸を“摘んだ”。

 

「…っ!!!」

 

“最近感じることの多くなったビビビっとする感覚”に私は座り込む。

 

「雫…やりすぎは良くないよ?」

 

ほのかは私を背中から抱く。

たわわに実った果実が潰れて、先っぽの硬さを感じる。

 

とは言え、みんなのいるこんな所で大胆なことは出来なくて、悶々としながら温泉から上がった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

午後6時になって、妙にツヤツヤした桜夜と少し髪がボサついているりなにはあえて視界に入れないようにしながら、夏祭りの会場を眺める。

 

凄い。

 

ボディガード兼警備員としてうちで雇われているC級魔法師の森谷さんと島田さん、雑務を担当している鴨井さん、メイドの榊梨沙ちゃんに直江夕姫ちゃん、更にはシェフの山城咲桜さんまでが出店を出していた。

 

てか、山城さん以外の出店が高校生の文化祭レベルなのは仕方ないのか…

それとも元二つ星料理人たる山城さんが出店レベルを大きくかけはなれているのか…

 

私たちは出店を楽しんだ。

梨沙ちゃんのわたあめに、夕姫ちゃんのクレープ、山城さんのケバブとトルコアイス、鴨井さんの唐揚げとたこ焼きと。

 

え?服装?

もちろんみんな浴衣ですよ。特にほのかは部屋に帰ってこのまま襲いたいくらいかわいいよ。色違いの花柄で、ペアルックだし。ちなみに私は黄緑、ほのかはオレンジだよ。

 

ほのかは着る時大変そうだったなぁ…こういう時ばかりは小柄で胸が小さくてありがたいと思ったよ。

 

ふふん…浴衣は寸胴体型が似合うのだ…言ってて悲しくなった。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「さて、そろそろです。」

 

麻里安が出店役の人も含め全員に告げた。

するとぞろぞろと店から出てきた。

 

「なにが始まるんだい?」

「なになに?」

「きゃはははは!」

 

な、菜々美が壊れた…

 

とにかく、特設された観客席に座る。

私はこのことを知っている。桜夜も麻里安も隠していたらしいけど、準備している本人を抑えないと。

家の庭を手入れしている庭師の村井さんが、道具小屋の中でコソコソしていたのを見て覗いてみると、6号玉やら5号玉やらが出来上がっていた。

 

あの人、庭師も出来るし、大工も出来るし、火薬もいじれるとは…

 

 

打ち上がった花火にみんなで「たーまやー!」と叫んだり、ひときわ大きな1尺を打ち上げたのか大きな花火の下でほのかと唇を交わしたり、エイミィがそれを見て私の唇を奪ってきたり、それに思わずビンタしたり、何故か山城さんの呑んでた酒を菜々美が呑んで脱ぎだしたり、それを見てしまった男性陣を魔法師組が制裁したり、菜々美が全裸でスバルを襲って唇を奪ったり、打ち上げ花火を打ち終わって戻ってきた村井さんが頬に煤を付けていたり、山城さんが酔いつぶれたり。

 

楽しい時間はあっという間だった。

 

 

 

 

 

朝起きたら、そんな楽しかった記憶と思い出を思い出し、そして起きていたほのかの腕の中だったこともあり、私は精一杯微笑んでほのかに「おはよう、ほのか。」と言ってキスをするのだった。

 

 

 




さあ!次は夏休み編最後の話である小笠原諸島の別荘に参りますよー。

お気に入り、評価、誤字報告ありがとうございます。


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そうだ、海に行こう。1日目

夏祭りの次の日、思い切って私とほのかについてエイミィやスバルと菜々美の話してみた。

 

え?どうだったか?

 

「お互い気にしてたのは目に見えてたよね?」

「ああ、ソワソワしてお互いを見てたりね。」

「しずほのキタコレ!」

 

菜々美ぇ…ペンを走らせるなペンを。

 

 

とりあえず、そういう反応だったので私とほのかは嬉しく思いながらも感謝した。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

帰る前、桜夜が小声で(お持ち帰りしたい…けど出来ない…)と言っていたが、そう長くもない間に本宅のメイドにロリ型3Hが加わるのは雫には何となく分かったのであった。

 

そして、その帰り道。

エイミィの一言で、桜夜が忙しくなったことは私の記憶に新しい。

 

「深雪とか司波君たちともどこか遊びに行きたいね〜。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

というわけでまいりました、小笠原!

 

メンバーは、私、ほのか、エイミィ、深雪、達也さん、エリカ、美月、レオ、幹比古の9人。

さらに使用人が、麻里安、黒沢さんの2人が同行する。

 

…え?3H?小笠原の別荘にもいるよ?

あそこにいるのは…

 

「―――なんだっけ?黒沢さん。」

「あそこのは過酷環境下での活動実験機である『CPRT-195sY23』ですね。」

「いや、開発試作コードで言われても分からないけど。」

「簡単に言えば『R2-D―――」

「黒沢さん、それを言ってはダメだよ。」

「それが屋外作業用にあって、他にアニメ作品とのコラボ企画で『麻衣奈95独立型』が設置してあります。」

「―――それアダルト部門関わってないよね?」

「いえ、アダルト部門だけで作り出したそうです。アニメもR-18指定のアニメらしくて…」

「ホクザングループェェ………」

 

もはやそのうち完全人工生命体とか作り出しそうで怖い。

 

「さあ、こちらです。」

 

みんなを黒沢さんの先導で部屋に誘導していく。

 

さすがに何部屋も客室がある訳では無いので、相部屋となる。

深雪と達也さん、エリカと美月、レオと幹比古の3部屋に分かれる。

ちなみにエイミィは私とほのかの部屋に来る。

 

大丈夫、大丈夫。バレないようにするから。

 

…達也さん、深雪に押し倒されないよね?

 

 

まあいっか。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

白い砂に照りつける太陽。

 

一時は寒冷化で海水浴そのものが出来ないような状態にもなっていたが、ココ最近の海水浴客は増加傾向にある。

もちろんその手の事業もホクザングループも参入していて、大分利益を上げているとか。

 

部屋から出てサンルームから見る海岸はとても綺麗で夏らしい光景だった。

 

 

「あ、雫!水着に着替えに行くけど、雫はどうする?」

 

たまたまサンルーム前の廊下から見つけたのだろうほのかはこちらに声をかける。

 

「今行く。」

 

私は踵を返して、ほのかの隣を更衣室に歩いていく。

 

 

 

うーん、私も髪伸ばそうかな?いつかツインテとかしてみたいなぁ…

エイミィの長い赤毛を見ているとたまにそう思う。

 

「ほほう…エリカは着痩せするタイプかぁ…」

 

ここに来るまでに仲良くなっていたエイミィにエリカはブラを外した瞬間を狙って胸を揉まれた。

 

「ひっ…ちょっとエイミィ!」

 

こぉおらぁ!と結構広い更衣室の中で追いかけっこを始める上裸のエリカと全裸のエイミィ。小学生でもしないようなことを…

 

その間に私は服を脱いで1度裸になる。

日焼け止め―旧来の物とは違い、赤外線反射・紫外線カット・制汗フィルム(九校戦の行きのバスの時の七草会長の使っていたものの最新版の海水浴用試供品)を足先から顔まで全てに塗り定着させる。(このフィルムはリムーバーをつけるまで剥がれない性質がある最新版で、水着や砂と擦れても取れずらいという特徴がある。)

そして、白と薄いピンクを基調としたフリルのあしらわれたガーリーな水着を着る。

ほのかがそういう時に持ってきたスク水もあったんだけど、さすがに痕とか残ってるということもあって新しく買った。

ちなみに、ほのかも色違い。あちらは白と黄色。

………体の一部が違うだけでロリータっぽいのか妖艶なのか同じ水着でもこんなに差が出るとは…これでも少し大きくなったんだけどね…

さらにおそろいのパーカーを羽織る。光を吸収しづらい白いパーカーだ。

 

「あれ?」

「深雪と美月ならとっくにビーチに出ていったよ。」

 

質問文を言う前にほのかが先回りして答える。

なるほど、これが阿吽の呼吸と言うやつか。

 

「じゃあ行こうか。」

「うん!」

 

ほぼ時を同じくして準備を終えた私とほのかはそのまま更衣室のドアを開けてビーチに出た。が!

 

「ちょっと待って!」

「あ!バカ!」

 

エイミィが私たちのあとを追って飛び出してきた。

 

「わ!」「ひゃあ!?」

 

私とほのかの間を転んだらしくすっ飛んで行った。“全裸で”。

 

「あーあ。達也さん以外に見られたら精神的に死ぬね。」

「あー、達也さんって見ても動じなそう…枯れてる?」

 

ほのかに大分酷いように言われているが、それも仕方なかろう。

 

「というか、達也さんとか十文字会頭が興奮しているところ見たくないな…イメージ崩れて。」

「確かに。」

 

急いでエリカがバスタオルを持ってエイミィに掛けてやっていた。

……ん?エリカ…上は急いで水着着たみたいだけど、下は下着じゃない?着替える前に追いかけっこ始めてたし…

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

レオと幹比古は競泳(遠泳?)に出て行って達也さんはパラソルの下で深雪を眺めていた。

達也さんの目が『眼福、眼福。』と言ってそうなのは私の思い込みだと思いたい。あの人はそんなキャラじゃないはずだ。

 

私たち女子6人は3人づつのチームに分かれて水を使ったサバゲー的なことをしていた。

・水流に当たったら退場

・3人全滅したチームが負け

・水流は自分から半径1m以内から発射

・防御に領域干渉と情報強化は使用禁止

・審判は達也さん

とこれくらいしか決まっていない穴だらけなゲームだが、遊びであるためルールの抜け穴を突く人はいない。

 

重戦車みたいな攻防力を誇る深雪、攻撃力に秀でたエイミィ、水流に複雑な軌道を描かせるほのか、すばしっこく避けつつ隙を突くエリカ、水のヴェールを纏って防御に徹する美月、溜めは大きくても一撃が重い私。

 

綺麗な水のアートが夏の日差しをプリズムに虹を映し出していた。

 

「それ!」

「おっと!」

「きゃ!?」

 

私の水流砲が相手チームだったエリカとほのかに向いたが、エリカには当たらなかった。

 

「お返し!」

「要らないよ!」

「隙あり!」

 

細く勢いはないが、反応しづらい場所に水流を打ち込んでくるエリカのを避けると、それに集中しすぎていたエリカにエイミィがエアブリットならぬ水ブリットをエリカに当てる。

 

あちらはほのかとエリカを失って深雪だけ。

こちらは無傷で私とエイミィと美月が残る。

 

「美月、少しの間でいいから防御全部任せるね。」

「ええ!?深雪さんの水流なんて止められないですよ!?」

「逸らせばいいよ!」

 

私のお願いは確かに無理そうに聞こえるが、実はそうでも無い。

 

エアアーマーのように圧縮空気で装甲を作る。美月でも一瞬だけなら耐えられるはず。その間に私とエイミィの大火力で落とす。

 

「「いっけぇ!!!!」」

 

 

 

 

 

 

そうやって、その後も色々とゲームをして夕焼けになるまで遊び倒したのだった。

 

 

 

 



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そうだ、海に行こう。夜

夕食は麻里安特製の海軍カレーだった。

 

 

麻里安の父は国防海軍軍人だった。あの沖縄海戦で大亜連合の別動艦隊と交戦し、壊滅させられた日本国防海軍の即応艦隊の一員として出撃し、本隊の上陸を遅滞させた艦隊に所属していた『はるかぜ』の艦長だった。

ミサイルという物の戦術的価値が低下(被迎撃率と火力に対する単価がフレミングランチャーに劣り始めたため)して、フレミングランチャーの『爆弾を投げつけ合う』戦いには、爆弾をどれだけの数を打ち出せるか、という物量戦となっていた。

命中率など機械のおかげでほぼ100%だ。

そんな中で、最も戦果を上げたはるかぜは戦闘前に非戦闘員とフレミングランチャーの弾薬を全て投棄している。余計な被害を抑えるためだ。

彼らは時代遅れも甚だしい無誘導の大口径酸素魚雷を合計60本ばらまいたのだ。

戦果としては6隻撃沈、8隻大破。

それでも彼らの船が母港に帰ることは無かった。

 

さらに、同じく陸軍軍人だった麻里安の母も陸戦に巻き込まれて亡くなった。

 

そんな時に、とある軍人から頼まれて彼女を引き取ることになったのだ。

その軍人は何かあったらよろしくと言われていたらしく、高校からのいい友人だったらしい。

 

その父から習ったはるかぜカレーがこの夕食のカレーだ。

決して辛くない、お子様カレーのようだが、深いコクがあってまろやかなカレーだった。

確か麻里安の父は辛いのが苦手だったと聞いた記憶がある。

 

「うん、さすが麻里安…おいしい。」

「確かに、カレーだけは麻里安には勝てませんね…」

 

黒沢さんの多才ぶりには勝てないと思うよ。てか黒沢さんに魔法技能があったらさすがに多才すぎる。

 

今やはるかぜカレーを作れるのは麻里安ただ1人だ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

夜の月明かりの下で、各々手持ち花火を楽しむことに。

 

中でも、女子組はシャッター速度を遅くしたカメラで花火の軌跡の模様を描いた。

 

「綺麗…」

「深雪ってあんなキャラだったのね…」

 

深雪は両手に花火を持ちながらその花火の火花を魔法で加速させて噴射系花火のように10mくらい飛ばして笑ってる。

普段のおしとやかなイメージが崩れる。というかトリガーハッピーな何かみたいに見える。

 

そんな中で、達也さんは少し離れたところで何か作業をしていた。

 

「達也さん、何してるの?」

「見てのお楽しみだ。」

 

そう言ってニヤッと笑った。

 

「そんな笑い方してるから深雪に悪い人ですねって言われちゃうんだよ。」

「そうか?」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

深雪特製スイカのシャーベットを食べながら(スイカを用意してたら深雪が、シャーベットにしてみる?と聞いたため)楽しんだ手持ち花火はもう無くなってきた。

 

最後のシメは線香花火と相場は決まっているが…

 

「ん?この線香花火…いつもと違う?」

「てか桐箱の線香花火って何!?」

 

エイミィの違和感は触った感触から。エリカの驚きはその入れ物。

 

「純国産線香花火だよ。昔はもっと安かったみたいだけど、今は…いくらだったっけ?」

「30本入りで10万円です。」

 

黒沢さんが私の知識の補填をする。

現代の貨幣価値はだいたい100年前と同じくらいにデノミされている。

 

「さ、3本で1万…」

「なんて金の使い方だ…」

 

美月とレオがドン引きした。

 

「でも、その分の芸術的価値はあると思うよ。」

 

私はその線香花火を持ち、火をつける。

 

 

蕾。

 

牡丹。

 

松葉。

 

柳。

 

散り菊。

 

 

移りゆく美しさには見る者を魅了する魔力がある。

 

 

「綺麗…」

「すごい…」

 

そこにいるもの全てを引き込んだ1本当たり3,333.333…円の線香花火は十数秒で消えてしまった。

 

この線香花火の凄いところは、マイクログラム単位で調整した火薬量や紙の厚さで消えるまで玉が落ちない(落ちづらい)という点だ。

だからこそ最後まで見ることが出来るもので、職人芸らしい。

 

その美しさに引き寄せられるかのように各々は線香花火を手に取った。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

さて、海岸での花火を終えて、お風呂の時間となった。

 

この別荘は大浴場が1箇所あるだけで他にシャワー室も小浴場もないため、時間で男女分けをすることにしてある。

 

 

18~21時は女の子で、21~23時は男の子とした。その他の時間は適宜その場でということになっている。

何故こんなにも長く取るのかと言うと…

 

長風呂勢

1~2時間:私、美月

1時間くらい:ほのか、エリカ、幹比古、レオ

 

なのでそうした配慮をしている。

 

 

 

サウナも完備しているので、そちらに入っていると美月が来た。

 

「雫さんこっちにいたんですか。」

「うん。サウナ、嫌いじゃないから。」

 

メガネを外している美月は珍しく感じた。

 

ほのかのもすごいけど、それ以上の“物”をお持ちで。

肩幅が狭い割に胸が大きいからロリ巨乳な風にも見える。

 

ほのかも来ればいいのに…ほのかの胸に流れる汗を(自主規制)したい。

 

「雫さんは夏休み終わってから何か特別なことはあるんですか?」

「…論文コンペの護衛は多分回ってこないと思うから多分ないと思うよ。機材の護衛はあるかもしれないけど、メンバーの護衛は夜遅くなることもあるからなるべく上級生の男子から選出されるから。」

「へぇー。じゃあ今度美術部に来ませんか?ほのかさんと一緒に。今度書くイラストのモデル探してたんです〜。」

「ほのかに相談してくるよ。」

 

 

そう言って私はサウナを出てシャワーを浴びてから脱衣場へ向かった。

 

 

 

ちなみに、このモデルが百合同人誌のイラスト集(全年齢とはいえ)のモデルであったのを知るのは発売されてからの事だった。



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そうだ、海に行こう。2日目

更新遅くなりすみません!

前半は理論的な魔法の話、後半はイチャイチャだけです。
筆が乗らなくて話が進まない…


 

 

実はこの旅行は準備期間の短さもあり、1泊3日の予定なのだ。

 

1日目から2日目は別荘に宿泊。

2日目の深夜にクルーザーで出発して3日目早朝に東京に戻る。

 

つまり、今日帰ることになる。

 

 

昨日の海岸線近くでの水流のぶつけ合いなどをはじめとして、かなり遊び尽くしていたので、今日はヨットで沖に出る予定だった。もちろん発動機付きだが。

 

「じゃあ行きますよ。」

 

黒沢さんがヨットで待っていた。が、その横には見たことも無い不思議な透明な物体―いや、それは嘘だ。ペットボトルのような物をすごく大型化したような物が置いてあった。

 

「海中散歩をするために昨日作っておいたんだ。」

 

実は、達也さんは昨日の夜作っていたのは、プラスチックの板を継ぎ接ぎして作ったプラスチック潜水艦だった。

 

しかも、恐らく分解と再生と精霊の眼をポリマー(巨大分子)の構造に使って板を曲げたり継ぎ接ぎ部分の凹凸をなくしたりしていたのだろう。今みると1枚板にしか見えない。

……無駄なことに分解と再生使ってるなぁ…

 

「どうやって潜るの?」

「移動加速加重の3系統複合魔法だ。干渉力的にさすがにそのままでは深く潜れないから水を入れる。蓋の部分にCAD兼舵輪を用意してある。」

 

どうやらバラストに水を半分くらい入れて潜ることを容易にしたらしい。よく見るとゲームのジョイスティックのような握りが用意されている。

 

「あとは、酸素は二酸化炭素を“分離”すればいいだろう。」

 

CO2からCを分離して容器に保存すれば酸素を作り出すことは出来る。

 

「私でも動かせる?」

「計算上なら雫でも深度100は潜れるな。」

 

全力発揮時なら深雪とほぼ同格の私の魔法力なので、深雪はそれ以上に潜れるかもしれない。

 

「あれ?水圧に対しての防御は?加重系で他に作るの?」

 

使えると聞いた私がジョイスティックにサイオンを流して起動式を取り込むと、その感覚から船体強化の魔法は使われていなかった。

 

「いや、レオの硬化魔法で耐えるつもりだ。どうせ100m以上潜ることは無いから軽くで十分だし息切れを起こすことも無いだろう。」

 

どうやらこのジョイスティック型CADは例の飛行魔法のためのCADを改造したものらしく、滑らかな航行が出来るらしい。

ちなみに、今までも加重系飛行魔法は擬似的に再現されていた。常駐型特有の息継ぎを取り入れて一つ一つの魔法を息継ぎごとに完結させることで即応性は伴わないものの空を飛ぶことは出来ていた。(ミラージ・バットでよく使われた戦術だったが、跳躍を使う選手の方に妨害されることが多く最近の主流では無い)

 

閑話休題。

 

みんなが乗り込んだことを確認して達也さんが飛行魔法を蓋に掛けて閉じた。

 

「深雪、頼む。」

「はい!お兄様!」

 

達也さんから頼まれたことが嬉しいのか満面の笑みでジョイスティックにサイオンを流し込み、卓越した魔法力を使って一気に潜った。

 

 

「美しい…」

「きれい……」

「Beautiful……」

「Schön…」

「красивый…」

「雫、それはふざけすぎだよ…」

 

光景に心奪われながらもツッコミは的確なエイミィ。

え?ドイツ語?もちろんレオの言葉だよ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

楽しい時間というのはあっという間に過ぎていく。

 

既に帰りのクルーザーは出港準備に入っている。

 

 

「雫!」

「?…どうかしたの?」

「ちょっと来て!」

 

ほのかが建物の陰に誘う。

 

「雫…ごめんね。」

 

それだけ言うと、ほのかは唇を私の唇に押し付けた。

そして、そのまま私の下唇を吸う。

 

「――――っはぁ…どうしたの?いきなり。」

「…せっかく通じ合えたのに恋人らしい“青春”って言えばいいのかな、が出来てなくて…物陰でいきなりキスって青春っぽくない?」

「それはBLとか少女漫画の読みすぎじゃない?」

「…雫は嫌だった?」

「べ、別に嫌じゃないけど…」

「じゃあいいよね。」

 

再びほのかは顔を近づけた。

 

…チュ、ニチュ……

 

そんな音が聞こえてきそうなディープキスだ。いや、実際に聞こえている。

ほのかの舌が私の口内を掻き回す。

キスは好きだけど、キスがなんで気持ちいいのかなんて知らないし、この気持ちいいという感覚はどこがどう気持ちいいのかは分からない。ただふわふわした白い雲のような感覚だ。

 

「………ん、はぁ…」

「…はぁ、雫…もっと…」

 

三度、ほのかの顔が近づこうとした時、ガサッと陰から音がした。

 

「あ…ご、ごめんなさい!お、落し物探してて!」

 

顔を真っ赤にしてアワアワしていたのは美月だった。

 

「つ、続きどうぞ!船の時間までにお、終わらしてくだしゃい!し、失礼します!」

 

そう言うと、美月は踵を返して走っていった。

 

「あ…ど、どうする?」

「どうしよっか…」

 

私も今まで―というか、今日までは押せ押せだったので(いわゆるタチ?)、グイグイ来られるとどうすればいいか意外と分からない。

 

「とりあえず、戻ろう?」

「うん…」

 

ほのかはそう言うと、建物の陰から船に向かって歩き出した。

 

が、少し歩いてから振り返って、口先に短く唇を落として、耳元で、「今夜は私が寝かさないからね。」と囁いて、さっきよりも速度を上げて歩き出した。きっと慣れない事をして恥ずかしいのだろう。私の顔も真っ赤にゆで上がっているのだから、きっとそうである。

 

 

 

 




次回から横浜騒乱編です。

雫視点なため、だいぶカットする部分がありますがご容赦ください。


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