落第騎士の英雄譚〜 (ユウ0725)
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1話

目が醒めると空に歯車がある荒野に立っていた。

 

周りには様々な剣山

 

この風景を知っているが思い出せない。

 

「どうしたものか。」

 

ただ一つ分かるのは、ここが心情風景ということくらいか。

 

「随分寂れた場所だな。」

 

まあ、俺自身が分からないから他の奴にも分からないんだろうな。

 

俺はその荒野を歩き出す。

 

先には何もないと思うが、歩き続ければ答えは見えてくるはずだ。

 

俺にはやらなくてはいけないこともある。

 

このまま倒れることなど許されない。

 

だったら歩き続ければいい。

 

その先に、日は登ると信じて………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………嫌な夢だ。」

 

目が醒めると自室のベッドの上だった。

 

気分は最悪だが、頭は冴えている。

 

「飯食って、模擬戦に行くか。」

 

なにせ、今日は留学生の『ステラ・ヴァーミリオン』との模擬戦だからな。

 

つーか、なぜ俺?

 

別に俺じゃなくても良くね?

 

まあ、適当にやって負けるか。

 

その時あまり使わない携帯が鳴る。

 

つーか、このタイミングで鳴るということは、理事長だな。

 

「はい、この電話には、いちゃもん、文句、不満、命令、不平は受け付けておりません。」

 

「教師に言う言葉かそれ?」

 

「自分に勝ってから言ってください。」

 

「ふん、可愛げのない奴だ。」

 

「切りますよ?」

 

「まて、『比翼』からの伝言だ。」

 

なんデスと?

 

「負けたら、もう面倒見ないだとさ。」

 

「はぁ!? それを先に言えババァ! 危うく負けようと考えていたぞ!」

 

「………中間ぐらいの言葉は聞かなかったことにしよう。」

 

「要件はそれだけですね? それしかないでしょう? では、闘技場に向かいますね。」

 

それだけ言って携帯を切った。

 

さて、今回は本気を出しますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして闘技場には、沢山の生徒が集まっていた。

 

「おー、こりゃ中々多いことで。」

 

「アンタはなんでそんなに呑気なわけ?」

 

目の前には噂の留学生

 

対峙して思ったが、確かに強い、そして努力の塊だ。

 

万が一いや、億が一にも負けることはないが下手したら傷をつけられそうだな。

 

「まあいいわ。アンタのランクは?」

 

「ん? 俺か? 一応Bってことにしてある。」

 

「一応って、何それ?」

 

「怒らない怒らない。それよりも構えな。口より剣だろ?」

 

そう言って俺は構える。

 

ヴァーミリオンは固有霊装を出す。

 

「アンタ固有霊装は?」

 

「出して欲しいか? ならば出そうか。」

 

『おっと!! ここで今までの試合で霊装を出さなかった彼の霊装が明らかになります!!』

 

闘技場内にどよめきが走る。

 

「開闢を紡げ『天地乖離す開闢の星』」

 

俺の目の前の地面から剣と言い難い霊装が出てきた。

 

『ほー、今回はアレか。アイツとんでもない霊装だったの忘れてたわ。』

 

『西京先生どう言うことですか?』

 

『まあ、空と地を裂いた剣って言ったら空想で何があると思う?』

 

『それは、ギルガメッシュの乖離剣ですよね?』

 

『正解だ。それと一緒って言ったらどうする?』

 

『はい?』

 

あのー、人の霊装バラさないでくれますかね?

 

ま、これは伐刀絶技なんだけどね。

 

霊装はまた別にある。

 

「ま、いいか。さて、始める? 手加減してあげるよ?」

 

「コイツ殺す!」

 

『始めるぞー、『let's Go ahead』!!』

 

「傅きなさい『妃竜の罪剣』!!」

 

「起きろ『天地乖離す開闢の星』」

 

その一言でヴァーミリオンの炎はかき消された。

 

「前言撤回、手加減はほぼ無しだ。」

 

ヴァーミリオンに人差し指を向ける。

 

「俺が総じて『鬼道』と呼んでるものだ。」

 

俺は冷淡に放つ。

 

「縛道の六十一『六杖光牢』」

 

ヴァーミリオンに六つの光が突き刺さる。

 

「何これ!?」

 

「縛道は相手の動きを止め、破道は攻撃技だ。」

 

俺はそのまま破道を唱える。

 

「破道の三十三『蒼火墜』」

 

同じ手のひらをヴァーミリオンに向けて放つ。

 

「舐めないで!! そんな炎で私を焼けるとでも思ったの!!」

 

蒼火墜を弾くと同時に六杖光牢を破る。

 

『おっと!! 鬼道が破られました!! さあ、次はどうする!?』

 

さっきからやかましい。

 

「ヴァーミリオン、お前には悪いが、あまり手の内を晒したくないのでな、これで終わらせる。」

 

俺は『天地乖離す開闢の星』をしまう。

 

そして、その場にしゃがみ地面に両手を当てる。

 

「縛道の九十九『卍禁』」

 

ヴァーミリオンはまずいと悟ったのか炎を飛ばしてくる。

 

 

だが、遅い。

 

 

「初曲『止繃』」

 

巨大な布がヴァーミリオンを巻き取る。

 

「くっ! こんなもの!!」

 

「無理だよ。それは解けない。今使ってるのは俺が作った『鬼道』の中でも最も威力の高い90番台、そして、破道と縛道の両方の使い道もできる『鬼道』だ!」

 

俺は詠唱を続ける。

 

「弐曲『百連閂』」

 

鉄串がヴァーミリオンの手足を固定する。

 

「ああああああああ!!!」

 

ヴァーミリオンが叫ぶ。

 

幻想とはいえ、痛いものは痛い。

 

「せめてもの慈悲だ。一思いにやってやる。」

 

俺は両手を合わせる。

 

「終曲『卍禁太封』」

 

その瞬間、闘技場が暗くなった。

 

何故ならヴァーミリオン目掛けて巨大な碑石が降ってきているからだ。

 

 

 

ズゥゥゥゥン!!!

 

 

 

腹の底から響く音と共にヴァーミリオンは押し潰された。

 

俺は詠唱を解除する。

 

そこには無傷のヴァーミリオンがうつ伏せに横たわっている。

 

闘技場は唖然とし、勝者のアナウンスすら忘れられていた。

 

 




『天地乖離す開闢の星』はエアと呼んでください。

一応、霊装は


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2話

「だる。」

 

あの試合の後から、取材とか抜かすアホが来た為、取り敢えず姿をくらました。

 

「おい、何故ここに来る。」

 

「ここが一番安全なんだよ。」

 

そう、理事長室にだ。

 

「貴様が中途半端にやるからだ。」

 

「んだよ、『卍禁』まで使ってやったのにか?」

 

「アホか。アレが一番強いわけないだろう? しかも霊装も出さずに。」

 

「当たり前だよ。俺の霊装はそうそう出していい物ではないからな。」

 

そう。

 

俺の霊装は中々出せるものじゃない。

 

「出したら瞬殺じゃん?」

 

「確かにな。幾千幾万の刃が飛んで、四方八方の斬撃をどうやって躱すかだよな。」

 

「いや、前非公式の試合で全て叩き落とした奴はいたよ。」

 

「は?」

 

いやぁ、アイツはヤバかったな。

 

「そいつは認識不可能に近い速さで尚且つ斬撃を飛ばしてくるからな。」

 

「お前と同等の奴がいるのか?」

 

「そうともいう。あと、雷切と比べるのもおこがましい速さだったよ。」

 

「雷切が早いのか?」

 

「冗談よせよ。あっちが何倍も速いぜ。」

 

理事長は頭を抱える。

 

「はあ、お前なら負けんだろうが、今年は出るのか?」

 

「いや、出たいけど出場したら相手がやる気なくすじゃん?」

 

「それを含めてBランクとしているのだがな。」

 

「いや、やっぱ出る。そこでランクを明かす。」

 

「それがお前の考えか?」

 

まあ、そっちの方が面白いけどね。

 

「さあ? 取り敢えず出るよ。あ、そろそろ警察から連絡くると思うよ?」

 

「なに?」

 

そこで理事長の携帯が鳴る。

 

「どうした? は? 分かった。すぐに行こう。」

 

理事長はまた頭を抱える。

 

「ね?」

 

「ね? じゃない。全く、今度は解放軍だ。」

 

「まあ、千里眼で見てたし。ま、相手が決まったら教えてよ。」

 

俺は笑いながら理事長室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1時間後に俺の携帯に連絡が来た。

 

『一回戦対戦相手『クロノ・メイザース』となります。時間は明日の10時に闘技場に来てください。』

 

「ふん、Dランクか。大したことはない。」

 

俺は通知を見て笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日俺は1時間前に闘技場に来ていた。

 

理由は黒鉄の試合結果が知りたかったからだ。

 

「ま、当然アイツが勝つよな。」

 

そこには勝者黒鉄と書いてあった。

 

「次は俺か。ま、負けるわけないよな。」

 

『次の出場者はゲートまで来てください。』

 

俺は放送であった通りにゲートに向かっていく。

 

「やあ。」

 

「お、黒鉄か。おめでとう。」

 

「いや、君も出るとは思ってなかったよ。」

 

「俺もちょっとは興味が出てきたからな。」

 

「君も頑張ってね。」

 

「当たり前よ。楽しみにしてるぜ!」

 

それだけ言葉を交わし、俺はゲートに向かった。

 

 



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3話

『やってきました。本日の二試合目! 今回初出場で期待の目が向けられます! 東のゲートより、あのステラ・ヴァーミリオンに勝利した『神峰優』選手です! そして、対戦するのは西ゲートより『クロノ・メイザース』選手です! この試合どうなりますか西京先生!』

 

『ま、神峰が相当なヘマがなければ神峰じゃね。』

 

『おっと、西京先生も推してます! さて、試合を始めましょう!』

 

放送ウザ!!

 

「さっきの試合、Fランクでも勝てたんだ! Dランクの俺でも勝てる!」

 

 

 

『そうだ! やれ!!』

 

『Fランクに出来て、俺たちに出来ないわけがない!!』

 

 

 

あー、ウゼェ。

 

あれば黒鉄が努力して勝ったんだよ。

 

それをランクなんかあてにならないってか?

 

「………なんかさ、盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、アレは黒鉄の努力の成果な訳、そうそうお前らが勝てるわけねぇだろ?」

 

 

 

『そんなことねぇ!!』

 

『どうせ、金なんだろ!!』

 

『八百長だろうが!!』

 

 

 

虫酸が走る。

 

勘違いにも程がある。

 

『宣戦布告です! さて、この試合はどうなるか! 早速始めましょう!』

 

もういい。

 

伐刀絶技は使わねぇ。

 

俺の本当の霊装で相手してやる。

 

 

 

 

『let's go ahead!!』

 

 

 

 

「行くぞ!!」

 

「散れ『千本桜』」

 

『あれ? 神峰選手の霊装はこのあいだのじゃないんですか?』

 

『あん? アレが霊装なワケあるか。アレは伐刀絶技だ。アイツの霊装はこれが本物だ。』

 

『なんですと!! 神峰選手の霊装は今使っているものとの事です!』

 

うるさい。

 

「蒼火墜」

 

「こんなの効くか!!」

 

あっさりと弾かれる。

 

「こんなものかBランクは!!」

 

「うるせぇ。」

 

もう知らねぇ。

 

あったまきた。

 

手の内晒してやるよ。

 

「お前はどう履き違えている? さっきのは只の足止めだよ。これを使うためのな。」

 

俺は千本桜を逆さにし、地面に落とす。

 

 

「『卍解 千本桜景厳』」

 

俺の後ろに刀が浮かび上がる。

 

そしてその刀は全て花びらに変わる。

 

「そんな虚仮威し効くかよ!」

 

俺は手を振るう。

 

「ギャアァァァァァァ!!!」

 

それだけで相手は切り裂かれ地面に倒れた。

 

『あ〜あ、クロノはアイツを怒らせたのが間違いだったな。』

 

『どういうことですか?』

 

『黒鉄のように努力もせず、高いランクに勝てると思っていただろ? それがアイツの怒りを引き起こした。ちなみにアイツの霊装は、名前を聞いた通り『千本桜』で、最初の段階だと、数千の刃が飛び、相手を切り裂く。そして、さっき使った『卍解』だと、その刃の数が幾千から幾万になる。ちなみにアイツはその上の形も後三段階持ってる。』

 

『えげつないですね。』

 

まあ手の内晒すって思ったから晒したよ。

 

「会場の努力もせずにランクが上のやつに勝てると思ってる馬鹿どもよく聞け! 黒鉄の試合はアイツの努力の結晶だ。それを馬鹿にすんじゃねぇ! そして、俺がBランクだと誰が言った?」

 

俺は一呼吸置く。

 

「俺はAランクの更に上、Sランクだ! 次、馬鹿な発言してみろ。速攻で殲滅してやる。」

 

俺はそれだけ言うと会場を出た。

 

それに遅れて

 

 

『勝者 神峰優!!!』

 

 

会場は拍手も起こらず、唖然としていた。

 

 



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