Fate/AKIRA (411ayumi)
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プロローグ
…………
僕は……鉄……雄
ここは、人理継続保証機関フィニス・カルデア…人理焼却により、カルデア以外の全てが焼却された今の世界を救い、尚かつ弊挺した歴史を本来の歴史に修正するのが“現在”のカルデアであり、“人類最後のマスター”である彼女の所属している機関である。
「………ふぃー……」
オレンジ色の髪を棚引かせ、息を吐く少女、彼女こそが“人類最後のマスター”藤丸立香であり、
「お疲れ様です。先輩。」
立香の後輩であり、“デミ·サーヴァント”として現界しているマシュ·キリエライト。
「ホントマジで辛い……思っクソブラック過ぎんよー…」
「ま、まぁ…」
彼女らは現在、その狂った歴史を修正するために、過去へ飛ぶ、その過去にある“聖杯”を取り戻す事で歴史を修正する。と言う仕事。否、任務と言える。まあ、そりゃブラックだわな。
「さぁーて、溜まった石で召喚しますか。」
「どんなサーヴァントが出るか、楽しみですね!」
召喚システム。それは聖晶石と言われる魔力で構成された石を三つほど使い、魔力サークルに使用することで、“過去の英雄”をサーヴァントとして、召喚するシステムであるのだ。
これまでにもマシュの中に居るサーヴァントも入れれば、カルデアには“三体”存在している。
一人は、消え、一人は、ダ・ヴィンチ。一人は分からない。それがマシュの中のサーヴァントだ。
勿論、既に何回も召喚している訳だ。“冬木”でクーフーリンと出会い、ランサーとして召喚しており、黒いセイバーも召だって召喚している。…その他には大量の麻婆豆腐位だろう…
「クーフーリンニキに黒王…それと牛ちゃん…名前が…」
「アステリオスさんとアルトリアさんですよ…先輩…」
そしてサークルの前に立ち、決意した表情をする。もう麻婆豆腐は嫌だし、ましてやまるごしシ○ジ君なんてもうたくさんだ。
「さぁ来い!星五英霊よ…!」
──サークルの光は、“赤く”光り輝く。
「え?これって……。」
「嫌、何か変です!先輩!」
───サークルが壊れた。程よい位にいい音をして。そしてそこには“赤い革の服を着た”少年が佇んでいた。
「…………あのー…どちら様で?」
恐る恐る、質疑応答をしてみる。
「……ハハハ…そういう事か……」
何か一人で呟いている……そしてどことなく普通の英霊とは違う“ナニカ”を感じ取れた。
それは、ヘラクレスとも違う、威圧感では無いと、これは……“どこか、懐かしい感じ”だ。
「……サーヴァント…“キャスター”……」
「よろしく頼むぜ……マスターよォ……」
──これは、“未来を変えるため”の物語である。
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第一話 友達
………
金田!……助けて!!
「ハッ…何だよ…そんな顔して…」
「………。」
怖い。何か、違う。これまで見てきたサーヴァントと何もかも違う。まるで……
「そ、そうだ…真名を……。」
「それは…まぁ、言ってもいいさ…。でも、そうだな…」
「今は“帝国のキャスター”と呼んでくれ。」
帝国のキャスター。そう呼べと言われた。彼はほくそ笑みながら、私とマシュを見る。その目は、野心に溢れているかのような目をしており、ヘラクレスやアルトリアオルタとも違う威圧感を感じさせる。
そして、ふとドアの開く音は唐突に響く。
「!!」
「え、どうしたんだい?」
「ど、ドクター…。」
ドクターと呼ばれたクソリプ投げられそうなポニテオッサンこと彼はドクターロマン。相変わらずの胡散臭い顔して、ネットアイドルに頼りまくりなハゲである。
「彼が召喚した今回召喚サーヴァントかい?」
「は、はい…」
「真名は?」
「教えてくれません…」
「ええ……」
ドクターは困惑する。頭を抱えている。しかしそこは切り替えが早い。帝国のキャスターに話しかける。
「あの~……」
「あ?」
帝国のキャスターはどことなく威圧感のある顔をする。足も貧乏ゆすりのようにトントンしており、場の空気も考えぬように、怒りを見せつけるように。
「言っても“意味が無ェ”よ。」
と、返した。
「……え?」
ドクターが言う前に、“答え”は既に言われていた。ドクターは心の底を覗かれたかのような気味の悪い気分になった。そのためか、ドクターの表情はどこか青ざめている。
「なんで…。」
「クックっ…知らない方がイイかもなァ……?」
「“戻れなく”なるぜ…?」
戻れなくなる。──その言葉にはとてつもないほどの“重み”があった。それと同時にあのサーヴァントの正体を知りたい。そんな好奇心が頭を駆け巡る。だが、その事を考えると、止めろ。と本能が訴えかける。だが、立香は
「じゃあ、せめて出身地とか、年代は教えてくれませんかね? それ位は良いんじゃないですか?」
「……“2020年”の“ネオ東京”…つっても、この世界には存在しないがな。」
どことなく、そんな気がしていた。と言うよりも“初めから分かっていた”気がした。ドクターは驚いて一人で何か慌てながら喚いている。それはマシュも同じだ。そんな中、一人私は考える。
“彼は、何を遠慮しているのだ?”と。
「………。」
そんな事を考えていると、そのサーヴァントは笑顔になり、立香にこう言う。
「俺が遠慮してるってか?」
「…!」
やっぱりだ。間違いない。このサーヴァントは“人の心を読んでいる”。恐らく、魔術の類いでは無い。読詠もしていない。これは…“超能力”と言うやつだ。
「フフフ…面白いなぁ? お前。」
「ッ!…。」
「流石に肝は据わってるって事か…。」
そのサーヴァントは、興味心を剥き出しにしながら彼女にそう言う。
「そうとなりゃ、もう特異点に行こうぜ?」
「え?!」
特異点に行こうぜ。そんな事を言われても、まだ準備が出来ていない。レイシフト先を決めたり、そこの状況を知ったり……私やマシュはどうにか待ってほしい。そう言おうと思った矢先に…
最後に、どこか、寂しく…
「“ダチ”が一人…どこかにいる気がするんだ…。」
「ハァっ…ハァっ…!」
森林の中、大量の龍は“一人の聖女”を追いかけている。その聖女は息を切らし、顔には疲れが伺える。聖女は大量の龍を撒いた事に気づき、また、森林の中を歩き始めた。
「やっと…ハァっ…いなくなりましたか…!」
だが──
「グシャアアア!」
「なっ!!」
食われる。そう思った途端。
「うりゃァァァァァ!!」
“機械のモーター音”と共に龍を吹き飛ばした。その機械……バイクに乗った少年は鋭い目つきで
「大丈夫ゥ〜……。」
「あ、あなたは?」
「俺は……」
「“帝国のライダー”…いや、やっぱ“金田”で!」
キャスターと違い、彼はすぐにネタをばらす。
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第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン ~Bikers blood~
第三話 power
………
俺達ァは健康優良不良少年だぜ!!
「友達……?」
「ああ。ダチだよ…。」
特異点に、彼の友達がいると言う。普通は信じられない。特異点とは言え、違う世界の、違う人間がいる可能性なんて……とは思ったが現に彼のように違う世界から来ている人間がいるのだ…。もしかすると…
「あぁ。その通りだ。もう特異点だけの問題じゃねえよ。」
「!!」
まただ。また心の中を覗かれた。思わず、震える。相変わらず笑顔のままだ。
「ドクター…」
「ん?」
「え?」
「特異点の説明だよ。」
「あ、はい。」
「え、ちょっ…」
マシュが言う前に止めた…。それには理由がある。だがそれは好奇心でしか無いような…そんな下らない理由でしか無い。
「何故です!先輩!?」
「なんでって……どうせもうすぐ行くつもりだったんでしょ? それに私は知りたいの……。」
「…何を?」
「あの“キャスター”についてよ…。」
知的好奇心。いつも人はそれを抱いて進化していくものだ。だが、今回は少し違う。この感情は“人類として知らなければならない”そんな感情だ。
「………」
「ごめんね…でも…。」
「…私も薄々感じていました…。」
「え?」
「私もですよ。さっきからずっと」
マシュも一緒だったのか……不思議な感覚だ。誰かと同じ考えをするだけで、こうも違和感を感じるなんて…私はマシュにこう言う。
「大丈夫……いざとなったら皆がいるしね!」
「先輩…。」
特異点という現場にいるのはマスターだ。勿論それは戦闘の指示でだが、だからこそ、怖い。立香は“冬木”で溢れんばかりの狂気と恐怖を知った。しかしそれらを照らす優しい光でもあるのが、マシュなのだから。
マシュはこれまで孤独だった。ただ、それが何故かは今は知らない。だが、ああも、必死で私や…今はいない“所長”も…守ろうとした。その優しくも、険しい、今にも崩れそうな心で、その十字の盾を振るって、周りの“影”に囚われず、唯我独尊の如く、守り続けてくれたのだから。
「……よし、じゃあ行こう!」
「はっや!」
「N○ROばりの速さで説明が……?」
「聞いてないだけでしょ……」
冗談で洒落込む。いつもこんな感じだ。いつ死ぬか分からない。だから必死で笑顔を作ろうとする。
「……」
「どうしたの、キャスター?」
「無理して笑うんじゃねェ……」
「……ふふ。」
「んだよ?」
心配してくれているんだ。優しいサーヴァントだなと、ただそれだけ。
「………だからそんなに“遠慮”するんだ……。」
「……チッ!……ま、行こうぜ。」
「ハイ!」
マシュの明るい返事だ。本当に可愛い。流石うちのカルデア可愛さナンバーワンだ。
「それじゃ、レイシフトするよ。……ちゃんと説明聞いてないみたいだけど…まあ、大丈夫だろ!」
「聖杯を取りにいけばいいんでしょ!」
「聞いてたのか……(困惑)」
「マシュも……」
「ハイ! 大丈夫ですよ。霊脈に召喚サークル確立させればいいんですね!」
「お、おう……」
時代も勿論分かる。“1431年のフランス”。なるほど、つまり“百年戦争”の真っ只中だ。少し緊張し、深呼吸をして……
「んじゃ!」
コフィンに乗り出し、目を瞑る。どうか、生き残れますように。と
………
「……んーっ……ん?」
目覚めたそこは草原だった。
「マシュー……キャスター…ってうおっ!」
「フォーウ!」
フォウ君。前回の特異点の冬木で見つけた小動物。相変わらず可愛らしい。モフモフしてしまった。
「先輩………ってフォウ君じゃないですか?」
「フォウ君もレイシフトできるの?」
「……そのようです。先輩かわたしのコフィンに忍び込んだのでしょう。幸い、フォウさんに異常はありません。わたしたちどちらかに固定されているのですから、わたしたちが帰還すれば自動的に帰還できます。」
「はぇー……すっごい博識。」
「はい。わたしたちは運命共同体です。──マスター。時間軸の座標を確認しました。どうやら1431年です。現状、百年戦争の真っ只中という訳ですね。ただ、この時期はちょうど戦争の休止期間のはずです。」
「戦争に休みなんてなー…」
「歴史なんぞ知るかよ。」
相変わらずキャスターも腕を組んだまま無愛想にぶっきらぼうな返事をする。
「……百年戦争はその名の通り、百年間継続して戦争を行っていた訳ではありません。この時期の戦争は比較的のんびりとしたものでしたから。捕らえられた騎士が金を払って釈放されるなど日常茶飯事だったそうで……先輩?」
「……空が…。」
「………。」
そして、そのタイミングに通信が入る。
『よし、回線が繋がった! 画像は粗いけど映像も通るようになったぞ!って、どうしたんだい三人とも? そろって空を見上げちゃったりして?』
その声に反応し、マシュは持っていた機材を操作する。
「ドクター、映像を送ります…。あれは、何ですか?」
『これは──光の輪……いや、衛星軌道上に展開した何らかの魔術式か………?』
ロマンおじさんの反応から見て、“アレ”は普通の現象では無さそうだ。
『なんにせよとんでもない大きさだ。下手をすると北米大陸と同サイズか……? ともあれ、1431年にこんな現象が起きたという記録はない。間違いなく未来消失の理由の一端だろう。アレはこちらで解析するしかないな……。キミたちは現地の調査に専念してくれていい。まずは霊脈を探してくれ』
「分かった! 解析頼むね!」
「わかりました、ドクター。周囲の探索、この時代の人間との接触、召喚サークルの設置……やるべきことは山ほどあります。一つずつこなしていくしかありません。まずは街を目指して移動しましょう、先輩。」
マシュにそう言われ、キャスターと共に20分近く歩いた頃、向こう先にそれなりの人影が見えた。
「先輩、止まって下さい。確認……どうやらフランスの斥候部隊のようです。どうしましょう。接触コンタクトを試みますか?」
「ちょっと…怖いな…。」
「見たところヒューマノイドです。話し合えばきっと平和的に解決します。ヘイ、エクスキューズミー。こんにちは。わたしたちは旅の者ですが──」
そう話しかけるマシュとは裏腹に私は嫌な予感がした。何秒か沈黙した後、兵士たちは
「ヒッ……! 敵襲! 敵襲ー!」
兵士たちはそう叫びだし、仲間を呼び始めた。予感的中とはこのことだ。だが、“冬木”よりは、まだマシだろう。
『ヤッホー、手が空いたから様子を観に……って、何でまわりを武装集団に取り囲まれてるんだい!?』
「ちょっと黙れ…」
『……はい……』
余りにも哀しくなる、一瞬の刹那である。
「………おい…」
『は、ハイ!』
「…“殺さなかったらいいんだろ?”」
『え? …えぇ、まぁ…』
「……おーけぇー…。」
キャスターは、笑顔でこちらを向き、
「……期待はすんなよ。」
「え?」
「行けぇぇぇぇぃ!!」
隊長格と思わしき兵隊が叫び、争いは勃発する。
──だが、
「……ウぉぉぉぉぉ───!!」
──地面はひび割れ、地震が発生する。キャスターを取り囲む“赤い光”が一層輝きを増す。
「なっ!?」
「先輩! 掴まってください!」
「──────!!」
─────刹那、爆発が起きる。
「うわぁぁぁぁ!」
「ぐぁぁぁぁぁ!」
兵士たちは、突風に揺らされる瓦礫の如く飛んでゆき、
「ぎゃっ!!」
「ぐれっ!!」
血を吐き、倒れてゆく。
「………あ、ぁぁ……。」
「………す、すごい…」
「………。」
「やりすぎちまったか?」
まだ、始まったばかりだ───
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