英雄譚、逆襲劇 (おうどん食べたい)
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英雄譚、逆襲劇

初投稿です。

こういう事があってもおかしくないんじゃないか、と考えて執筆しました。





 

七星剣王が決定し、熱狂している会場に冷水をかけるが如く現れたのは優勝者と同じ制服を身に纏う男の生徒。

 

これだけならまだ良かった。いや、良くはないが唯の厳重注意で終わるはずだった。問題なのは彼が手に持っているもの……正確に言えば、それを作るためにした事だ。

 

 

彼の手にはバスケットボールほどの大きさの物が1つ。それが生首だと気づいた瞬間、黒鉄一輝とステラ・ヴァーミリオンはいつでも戦闘を開始できるよう固有霊装(デバイス)を顕現させる。

 

 

2人とも疲労や消耗が激しいが、99.9%勝てると思っていた。何故ならば彼の能力は戦闘に向かない。その上、彼の伐刀者ランクはE。額面上の値を盲信する2人ではないが、恐らく勝てるであろうと推測していた。

 

そんなことを考えながら一輝はふと首に目を移す。良く観察すると、傷口が焼け爛れている。切断ならまだいい。彼の固有霊装(デバイス)は刀なので、それを用いたのだろう。だが、その切断痕が高温で爛れているならば話は別だ。彼の伐刀絶技(ノウブルアーツ)にそんな能力はない。ならば他の道具を使ったのか、と思うがそれを否定する。彼は他に何も持っていない。高温で焼き斬るならば、それ相応に巨大かつ高性能な兵器が必要だろう。

 

 

そんな時だった。彼が口を開いたのは。

 

「なぁ、アンタらは人工伐刀者(ブレイザー)計画ってモノを知ってるか?」

 

やけに冷たい風が3人に絡みつく。当てられる殺気は尋常ではない。果たしてこの世界に何人このレベルの殺気を放てるだろうか。どれだけ多くても片手の指は超えないだろう。

 

 

「人工伐刀者(ブレイザー)計画…?」

 

 

うわ言のようにステラが呟く。文字通りに受け取れば伐刀者(ブレイザー)を人工的に作り出すものだろうが、果たして可能なのだろうか。

 

 

「ああ、そうだ。そもそも疑問に思ったことはないのか? なぜ伐刀者が国防において極めて重要な位置にいるのか」

 

 

軍隊とは、国防とは何か。それを突き詰めれば突き詰める程、この世界の国防形態は歪だ。

 

 

「いや、正確に言えば、先天的な才能が強弱の大部分を占める上に、出生率が決して高いとは言えない伐刀者をなぜ国防の要としているのか」

 

 

当然すぎるが故に誰も気がつかなかった点を彼は指摘する。なぜ忘れているのか。なぜ覚えていないのか。戦争の基本とは何か。

 

 

「所謂ダイスのようなものだ。千人に一人しか生まれない確率。スペックは生まれてからのお楽しみ。一騎当千の猛者もいれば役立たずもいる。おかしいだろう? そんな奴等に国にとっての最重要事項を運に任せるなんて」

 

 

偶々役立たずしか生まれなかったらどうなる? その国家は"国を守る"という最低限の事すら果たせなくなる。通常兵器は伐刀者に通用しない。標準的な伐刀者を中隊規模で揃えてやれば瞬く間に国が消えるだろう。

 

 

「生まれる可能性が低く、質は運任せ」

 

「国を滅ぼす事など造作もない怪物もいれば、戦闘面では役に立たない雑魚もいる」

 

 

「兵器とは、誰が使っても一定の戦果を挙げれる物を指す」

 

 

扱う人間によって性能が可変する兵器は兵器足り得ない。必ずカタログスペックだけ発揮しなければならない。

 

「兵士の数は一定以上でなければならない。増加する分には構わないが、減少すれば国防力の低下を他国に示す事となる」

 

戦争の基本は数だ。無敵の石ころでは津波は防げない。それはステラ・ヴァーミリオンですら例外ではない。彼女がいくら強くても守れないものは守れない。その守るべきものが大きければ大きいほど、守るのは困難になり、取り零す規模もまた大きくなる。

 

 

「条件は全て揃っていた」

 

 

そう。悲劇が幕を開ける条件は全て整っていた。

 

 

固有霊装(デバイス)のロジックを調べる為に生きたまま解剖された伐刀者(ブレイザー)がいた。才能を無理やり埋め込まれ発狂死した子供がいた。霊装が暴走し、全身を内部から切り刻まれた青年がいた。受精卵の段階で調整を入れる為に暖かい母の胎内から冷たい鉄の子宮に移された命があった」

 

 

どう考えても猟奇的だった。狂信的だった。黒鉄龍馬なんていう英雄(バケモノ)が示した可能性により、その実験は開始された。終戦後から現代までの約70年間、回数にして三回行われた。

 

 

「そんな事は不可能だ、って顔してるけどあんまり人間の科学技術の進歩を舐めない方がいい。終戦から、黒鉄龍馬の出現からもう数十年経っている。それだけの期間があれば伐刀者(ブレイザー)のロジック程度調べられる。終戦から今まで、幾つの新発見があった? どれほどの技術的進歩があった? 特に近年の携帯情報端末の進歩は目覚ましいだろう? それと同じだよ」

 

 

第一次はデータ収集、第二次は同調性やメリットデメリットの調査、第三次は人工伐刀者(ブレイザー)の完成。名前を奪われ、付けられたのは太陽系の星々の名とギリシャ文字の識別コード。各惑星毎にαからωまでの構成員。

 

 

「俺たちは第三次の被験者だ。俺達(かんせいひん)を作り出すために死んでいった人間の数は計り知れない。そんな完成品の俺たちですら、俺を残して皆死んだけどな。皆人体を無視した改造に耐えれなかったんだ。俺は能力的に長持ちしたから生き延びたが、それでも余命一年を切ってる」

 

 

「人のため、国のため、世界のため、愛のため、平和のため。あぁ、美しいな。心の底から称賛するよ。彼らの心にあったのは紛れもない善意であり、明日をより良く生きようとする熱意だ」

 

 

俺達という生贄を祭壇に捧げ、人間の未来を照らす。そうなった原因は偶々俺達が困窮した家に生まれ、親に売られただけ。突き詰めていけば結局、運が悪かったの一言で片付けられる事。

 

 

「それは尊敬の念を抱くべき人類愛であり、未来を信じていた証左に他ならない」

 

 

研究者は人類を愛していたんだろう。可能性を信じていたんだろう。人間は、何処へだって飛べると思っていたんだろう。

 

 

「で?だから?」

 

 

その美しさでこの穢れが消せると思っているのか。

 

 

その尊さでこの下劣が無くせると思っているのか。

 

 

その善意でこの悪意を救えると思ったのか。

 

 

もしそうだとしたら──────

 

 

あぁ、なんて愚かなんだろうか。

 

 

「それで俺たちが納得するとでも? 巨大な愛に踏み潰されたちっぽけな愛には価値がないと? 全体を存続させる為の致し方ない犠牲だから諦めろと? 運命を甘んじて受け入れろと?」

 

 

俺たちの痛みは人類を存続させるための必要悪だと?

 

 

「どうして俺たちが、そんなに安易に納得しなければならない!」

 

 

認めないし認められない。その救世に轢殺された我らが認めると思っていたのか。あぁ、嫌だ。たとえ神が認めようと、我らが拒否しよう。我らは、そうやって嚇怒の炎を燃やしながら生きてきた。

 

 

「これは証明だ!俺たちが!決して伐刀者に劣ってない事の!」

 

 

だからこそ受け入れた。この忌まわしき力を。伐刀者を殺せるならば、俺達はどんな事だろうがやった。我らの研鑽の全てはこの為に。黒鉄龍馬なんていう英雄(バケモノ)が見せた幻想を俺達が打ち砕く。

 

 

「俺たちの涙が!痛みが!後悔が!絶望が!過去が!未来が!命が!決して無駄ではなかった事の!」

 

 

これが、俺達の存在証明。

 

 

「加害者は忘れても被害者は決して忘れない!反逆の時を、復讐の時を、逆襲の時を虎視眈々と狙っている!精々上手く踊れよ? 血を流す覚悟も武器を取る意思すらない雑魚ども。お前たちが忘れ去った過去が、お前たちを殺しに来たぞ!」

 

 

雄々しく謳い上げるは逆襲劇(ヴェンデッタ)開始の宣誓。死者と罪(せかい)を守り抜く為に、忘れない為に。未来と繁栄(せかい)の全てを敵に回した。

 

 

「そんなの、ただの八つ当たりじゃない!」

 

 

ステラ・ヴァーミリオンが彼を糾弾する。正論で殴りつける。彼女も学友がこんな風に変貌するなんて思わなかったのだろう。悲痛に響く声は確かに彼の鼓膜を震わせた。

 

 

それでも。

 

 

「あぁそうさ!これはただの八つ当たり!変えれるはずのない過去!意味のないif!」

 

 

そんな事は既に分かっているさ。こんな事をしても、何も変えれないって。何も戻らないって。

 

 

「それでもこの現実よりは価値があるだろう!?何もかも奪われたこの現実よりは!殺されたんだぞ!? 終わったんだぞ!? なら過去にすがるしかないだろ!?」

 

 

だが、引き下がるわけにはいかない。俺達はこの道を選んだ。なら、往くしかない。正論で全部を救えるほど、この世界は優しくできてないんだよ。

 

 

「お前達さえいなければ俺たちは生きれたかもしれないのに!」

 

 

伐刀者(ブレイザー)の所為でこうなったのでなければ、希望も夢もないではないか。どうあっても俺たちが滅ぶなんて結末しか許されないではないか。この終焉が何かの間違いではないのならば、どうやっても俺たちには生きる権利がないと認めることになってしまう。

 

 

「さあ、奈落の底から絶叫を上げろ、人造惑星(プラテネス)…!相手は全員伐刀者なんだ。楽勝だろう? 今こそ、奴らを全員殺し尽くすぞ…!」

 

「この世界に生きている伐刀者全ての断末魔を以って、我らの逆襲は完遂する!」

 

 

手に持っていた生首を投げ捨て、両手を広げる。その表情は歓喜に歪んでいた。

 

 

「刮目せよ。これが、俺たちの歩んできた(絶望)だ」

 

 

彼の背後から小さな十字架が現れる。

 

 

これが、彼らの墓標。 人の手で持てそうなほどに少ない十字架が、彼らが確かに存在したことの証明。世界に敗北した証。生を蹂躙され、死を陵辱された彼らには遺体なんてない。代わりにあるのは、彼が受け継いだ遺品だけ。

 

固有霊装(デバイス)完全解放(フルオープン)

No.ν・海王星(ネプトゥヌス)過負荷(オーバーロード)

 

その十字架が溶け、混ざり、固まり、1つの形を取る。

 

 

それは剣。彼らの憎悪が結晶化したもの。内部に渦巻くエネルギーは核弾頭すら可愛く見える領域。

 

 

「死ね…!薄汚れた伐刀者…!」

 

これこそが彼らの真実。愛を奪われ、絶望を与えられた敗北者の悲鳴。その蓄積された負のエネルギーを激痛を代償に解放する。掠めただけでも死を誘う常闇の悪意が、この世界に決してあってはならない汚泥が流れ出る。

 

 

付属性(エンチャント)の極致が怨嗟の咆哮を上げる。それに伴い飛翔する星々。太陽(ヘリオス)が。水星(ヘルメス)が。金星(アフロディテ)が。火星(マルス)が。木星(ゼウス)が。土星(クロノス)が。天王星(ウラヌス)が。冥王星(ハデス)が。一斉に牙を剥く。

 

 

どの能力も天然物の伐刀者(ブレイザー)に勝るとも劣らない物だ。しかし、本来の使い手ではなく、非才の彼が使用する事により、その出力は約6割にまで落ち込む。

 

 

だが、それでもこれは破格だ。たった4割の出力低下で、伐刀者(ブレイザー)の命とも言い換えれる固有霊装(デバイス)を、伐刀絶技(ノウブルアーツ)を使用できるのだ。これを破格と言わず何という?

 

 

固有霊装(デバイス)は1人につき1つだけ。言葉にするのも憚られる当然の摂理。その常識が、たった1人の理不尽によって打ち砕かれる。

 

 

付属性(エンチャント)は単体ではおそらく最弱の部類に入る能力だろう。だが、共に戦う誰か(死者)がいるのならば、その可能性と多様性は正しく無限大。異能を自在に組み合わせて、全く反対の性質を持つ能力すら同時に共存させ、自分に襲いかかるデメリットは皆無。

 

 

泥が。悪意が。痛みが。憎しみが。悲しみが。終わりが。血が。肉が。骨が。臓器が。人間が。命が。命が。命が。命が。命が。命が。

 

 

終焉へ誘う光へ変換される。

 

 

未来崩壊・灰塵の光(エンデ・リヒト)!」

 

 

 


 

 

 

「……俺もまだまだだな。情が移ったのか?」

 

 

あれほどの攻撃を受けたのに、一輝とステラは無事だった。無論傷はあるが、どれもかすり傷のようなものだ。彼が意識的か無意識的かはさておき、手加減した事は紛れもなく真実だ。それに対して彼は自嘲的な笑みを浮かべるが、直ぐに無表情になる。

 

 

「結合解除。 No.γ・木星(ゼウス)解放。伐刀絶技(ノウブルアーツ)発動、天霆(ケラウノス)

 

 

軍刀の様な形状の固有霊装(デバイス)に黄金の光が集束する。一輝をロックオン。そして発射。着弾。この一連の動作がほぼ同時に行われるが、 No.γ・木星(ゼウス)が解放された時点で危険を察知した一輝は回避行動に出ていた為外傷はなかった。

 

 

一輝は即座に体勢を立て直し、加速。コンマ一秒以下でトップスピードに入り、彼の懐に易々と飛び込む。刃が閃くその瞬間、彼は No.γ・木星(ゼウス)をリリース。

 

 

No.η・土星(クロノス)

 

 

彼の左脇腹から右肩にかけて切り裂くはずだったその刃はするりと受け流された。

 

 

「なっ……!」

 

 

驚愕する時間は1秒未満。即座に体勢を整え、次の攻撃に移ろうとするが、その1秒未満は致命的だった。目前に迫る彼の魔手に一輝の危機察知センサーは過剰な反応を示していた。回避しようにもあちらの方が早い。ならば防御をと思うが、この体勢からでは即座に移れない。

 

一輝は知る由もないが、No.η・土星(クロノス)の能力は色即絶空(ストレイド)という衝撃操作能力。ただの打撃であろうとも一撃必殺に変える能力であり、当たれば死を免れないであろう。

 

 

そう、()()()()の話だ。一輝は1人で戦っているわけではない。少しすれば増援が来る。それに、何より、同じフィールドには背中を預けられる恋人兼パートナーがいる。

 

 

妃竜の大顎(ドラゴンファング)!」

 

 

戦線に参加したステラから放たれる自動追尾炎。その攻撃を脅威と判断し、振りかざした魔手を下げる。その直後大きくバックステップ。着弾までの時間が僅かに伸びただけだが、その僅かな時間が必要だった。

 

 

そう、固有霊装(デバイス)をチェンジするのに必要な0.18秒が。

 

 

変換(シフト)No.ζ・天王星(ウラヌス)氷河姫(ピリオド)発現」

 

 

彼を追尾していた炎が一瞬にして氷漬けになり、撒き散らされた冷気が温度を下げる。だが、追撃の手は緩まない。彼が一輝の元から離れた事により、ステラは味方を気にせずその火力を発揮できる。

 

 

焦土蹂撃(ブロークンアロー)!」

 

 

無数の火球による絨毯爆撃。過剰な火力と広範囲の攻撃故、通常なら逃れる術はない。しかし、それらは一定の距離になった瞬間に凍らされる。

 

 

だが、それは陽動。本命は炎を纏わせた妃竜の罪剣(レーヴァテイン)による接近戦。しかし、このまま接近しても一瞬で凍結されてしまうだろう。

 

 

故に、対魔力、対固有霊装(デバイス)最強の使い手にその決定的な隙を作らせる。

 

 

「喰いちぎれッ!暴喰(タイガーバイト)!」

 

 

昨年の七星剣王である諸星雄大が参戦し、即座に固有霊装(デバイス)を展開。魔力を食い破る伐刀絶技(ノウブルアーツ)暴喰(タイガーバイト)を発動。

 

 

瞬間、粉砕される絶対零度の結界。それと同時に更に加速。固有霊装(デバイス)を交換させる暇は与えない。故に取る姿勢は刺突。線ではなく点の攻撃が、彼に襲いかかる。

 

 

だが……

 

 

「なるほど。氷河姫(ピリオド)を無効化した上での接近戦。俺に固有霊装(デバイス)を変更する隙を与えないように試みたようだが……一手足りなかったな」

 

 

そこには、ステラの刺突を素手で受け止めている彼の姿があった。無論、力では圧倒的にステラが上だ。それなのに拮抗していると言う事はつまりNo.η・土星(クロノス)を発動したのだろう。だがどうやって?

 

 

その答えは彼らの足元にあった。散らばったフィールドの破片。それらは莫大な熱量を浴びた様に表面が溶解している。

 

 

やった事は至極単純、ある程度の大きさのフィールドの破片をステラの刺突コースに割り込ませ、即席の壁にした。たったそれだけのこと。

 

 

無論破片に攻撃を防いでくれる壁としての性能を期待したわけではない。狙いは時間稼ぎ。破片を砕かせ、刺突の速度を落とし、固有霊装(デバイス)を発動するための時間を作った。その目論見通り、彼を突き刺そうとした所でNo.η・土星(クロノス)が発動。致命傷を回避したのだ。

 

 

当然、ノーダメージではない。摂氏3000度の熱量を間近で浴びたのだ。全身に火傷を負っており、溶けた服が皮膚に張り付いている。

 

だが、たったそれだけのダメージで危機を打開した。目の前にいるのは決定的チャンスを逃し、硬直しているステラ(間抜け)。このチャンスを逃す彼ではない。

 

妃竜の罪剣(レーヴァテイン)を跳ね上げ、衝撃操作。肉体内部に衝撃が留まる様に設定し、No.η・土星(クロノス)を解除。今頃ステラは全身がバラバラになりそうな程の激痛を味わっているだろう。

 

 

ステラ以外ならばNo.η・土星(クロノス)で殺してもよかった。だが、彼女はドラゴンだ。全身をシェイクされた傷でも再生される可能性がある。

 

 

ならば再生できない傷を、『死』以外の結末を与えない能力をぶつければいい。その思考の元、顕現させたのはNo.ε・火星(マルス)。能力は分子間結合破壊能力、殺塵鬼(カーネイジ)

 

 

「ステラッ!避けろォォォォォォォ!!」

 

 

一輝の絶叫がフィールド全体に響き渡る。それを聞いて回避行動を取ろうとするが、もう遅い。分子を破壊する悪魔の如き一撃は目前だ。

 

 

「死ね……チッ」

 

 

その瞬間、ステラからターゲットを変更。何処からともなく襲来した銃弾、黒刀を迎撃する。

 

 

「次から次へと……それにしても意外だな。アンタらも参戦するなんて」

 

 

「素行不良の生徒を制裁するんだ。そりゃウチも参戦するさ」

 

 

現KOK世界ランキング第3位、西京寧音。

 

 

「全くだ。仕事を増やしてくれるな、貴様」

 

 

元KOK世界ランキング第3位、神宮寺黒乃。

 

 

そして彼はざっと周りを見渡す。

 

 

無冠の剣王(アナザーワン)、紅蓮の皇女、深海の魔女(ローレライ)黒い茨(ブラックソニア)、雷切、紅の淑女(シャルラッハフラウ)剣士殺し(ソードイーター)、浪速の星、天眼、鋼鉄の荒熊(パンツァーグリズリー)、風の剣帝、血塗れのダ・ヴィンチ、世界時計(ワールドクロック)、夜叉姫、その上闘神までもが参戦した。

 

「……あぁ、いいさ。全員纏めてかかってこい。潰してやるよ」

 

 

「全ての人造惑星(ほし)よ、 No.ν・海王星(ネプトゥヌス)の元へ集え。即ち、No.α・太陽(ヘリオス)No.δ・水星(ヘルメス)No.θ・金星(アフロディテ)No.ε・火星(マルス)No.γ・木星(ゼウス)No.η・土星(クロノス)No.ζ・天王星(ウラヌス)No.ω・冥王星(ハデス)

 

 

付属性(エンチャント)の極限値に集う星々。それらは歪んだ輝きを放ちながら、彼の近くに舞い降りる。

 

核融合による出力無限上昇の天奏(スフィアライザー)と熱量を集束させる烈奏(スフィアセイヴァー)

 

磁力による不可視の支配領域を作り出す錬金術師(アルケミスト)

 

 

無数の機械蜂を使役する露蜂房(ハイブ)

 

 

分子間結合を破壊する殺塵鬼(カーネイジ)

 

 

核分裂・放射能光発射能力である天霆(ケラウノス)

 

 

衝撃を自在に操作する色即絶空(ストレイド)

 

 

あらゆるものを凍結させる氷河姫(ピリオド)

 

 

反粒子を生成する滅奏(スフィアレイザー)

 

 

体から莫大な魔力が消費されるが、天奏(スフィアライザー)による出力無限上昇によってそれを打ち消す。それどころか、展開されている全ての固有霊装(デバイス)の魔力量を上昇させる。

 

 

「さぁ、続きを始めようか」

 

 

幾多もの規格外固有霊装(デバイス)を背に携え、彼は三日月型に歪んだ笑みを浮かべた。




続きません。


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