女性恐怖症の一夏君 (のんのんびより)
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閑話
閑話~もしも、本音さんがヤンデレだったら(日記形式)part1~


最近投稿ペースが遅くなって申し訳ないです。

本日は閑話として、〈もしも○○だったら〉を投稿します。

本編の続きを書こうと思ったのですが、少しスランプになり始めてきたのでちょっと息抜きに。


注意
サブタイどおり、この話は日記形式になっております。



○月×日:天気 晴れ

今日からIS学園に通うことになるから、お姉ちゃんが記念に日記をつけてみたらと日記帳をくれた。

でも、書く事なんてあるのかな、と最初は思った。だって小学生の頃の夏休みの日記もそんなに多く書いた事が無いもん。

だからまた同じような事を書くだけかなと最初は思った。けど、今回は違うかも。

だって、私のクラスに世界で初めてISを操縦した男子が居るんだもん♪

 

クラスで初めて見たときの印象は、オドオドした怖がりの男子だと思った。実際に怖がりで自己紹介の時、クラスの皆から注目されている中ずっとビクビク震えてたんだもん。

 

その後私のクラスの担任が、あのブリュンヒルデって言われた織斑先生って言われた時は驚いたなぁ。

その時にイッチーが女性恐怖症って言う病気を患っている事も教えてもらった。

何かイジメとかにあったのかな?

 

2限目が終わった時に、私分からないところがあったからイッチーに聞いてみた。そしたらオドオドしながらも教えてくれた。その時つい私、イッチーの傍に行っちゃたんだよねぇ。

そしたら皆にいきなり注目されちゃった。びっくりしたけど、織斑先生の言葉で私も後から驚いた。だって、私がイッチーの傍に行ったり、触れたりしても発狂しないんだもん。先生曰く、私の気配が動物に近いからなのでは、だって。

そりゃあ狐の寝巻きとか着るけど、それだけのなのかな? 私以外にももう一人大丈夫な人が居るらしいけど、現状クラスの中だと私だけらしい。だから織斑先生にイッチーの身の回りのお手伝いをして欲しいと頼まれた。無論やりますって言った。

何か嬉しい気分になったなぁ。

 

そのイッチーなんだけど、何か2人の生徒になんか絡まれてたなぁ。1人はあの篠ノ之博士の妹のしののん。で、もう1人がイギリスの代表候補生のセッシ―。

 

なんかしののんは、イッチーの幼馴染って言ってるけどなんか幼馴染にしては暴力的だなぁって思っちゃった。私とかんちゃんなんて何時も仲が良い幼馴染なのに、なんか感じが悪い。

でも、もっと酷いのはセッシ―の方だ。イッチーが女性恐怖症だって織斑先生が言ってたし、守らないといけないルールも言っていたのにそれを無視した発言をした。

しかも侮蔑するような言い方をだ。酷いよねぇ、同じ女性として考えられないよ。

セッシ―に色々言われたせいか、イッチーが落ち込んだ表情を見て私色々励ましの言葉をかけてあげた。だってあんなに落ち込んだ表情にイッチーを見ると悲しくなるんだもん。

 

4限目の時間、クラス代表を決めるときに皆はイッチーにして欲しいなって思ってたらしい。無論イッチーの症状を考えたら、出来ない。けどイッチーがやりますと言った時の姿、カッコよかったなぁ。

けど、そんなときにセッシ―がまた要らない事喚き始めた。折角イッチーのカッコいい姿が見れたのに気分が何か最悪になって思わずセッシ―の方を睨んじゃった。でも仕方ないもん、初めての男の子の友達が悪く言われるのは気分がいいものじゃないもん。

 

その後、突然現れたイッチーのお世話ロボのメサメサが場を沈めた。その後織斑先生が1週間後、アリーナでクラス代表決定戦を行うと宣言した。でも、イッチーは大丈夫なのかな? 織斑先生はニヤッと笑って大丈夫としか言わない。何でだろう、凄く心配だ。

 

お昼ご飯の時、イッチーが一人で教室で食べようとしていた。一人ぼっちで食べさせたら、セッシ―みたいな人に何されるか分からない!、と思って同じクラスで仲良くなったきよきよとつっきーと一緒にクラスでお昼ご飯を食べることにした。

食堂で買った弁当を食べようと思った時にイッチーのお弁当が手作りと聞いて、食べてみたいと思ってお願いしたら、どうぞって言ってくれた。

それで出汁巻きを貰ったんだけど、凄く美味しくて頬っぺたが落ちそうになったぁ。

また食べたいなぁ。

 

放課後、イッチーに寮に案内する為一緒に残っていたら山田先生がカギを持ってやって来た。部屋の場所を聞いたら私の隣だった。凄く嬉しかった。これだったらお菓子食べに行ったり、勉強を教えて貰いに行けるや♪

 

って、あれ? 丸々1ページ書いちゃった。昔だったら半分も書けなかったのに。これもイッチーのお陰だったりして。

 

 

 

○月△日:天気 快晴

イッチーの事が心配で1週間日記を書けなかったぁ。でも、それももう大丈夫! だって今日のクラス代表決定戦、イッチーが余裕でセッシ―に勝ったんだから! 

 

セッシ―はイッチーに思いっきり地面に叩きつけられた衝撃で気を失って先生達に運ばれていった。

 

あともう一人、しののんもイッチーの戦い方が気に入らなかったのか、ピットに乗り込んできたが、織斑先生の出席簿で鎮められた。

私はその時いい気味だと思ってしまった。どうしてかは分からなかったけど、直ぐに分かった。

セッシ―はイッチーの事を男だからと罵ったから。しののんは自分の理想をイッチーに押し付けたから。

私はそれに無意識にムカついていたからだ、と。でも、なんで無意識にムカついたんだろう? イッチーが大切な友達だから? でも、それだけでこんな簡単にムカつくとは思えないし、何でだろう?

 

うぅ~~~~ん。分かんない時は、早く寝たら解決するかもしれないし、今日はもう寝よぉっと!

 

 

○月□日:天気、晴れ時々曇

朝目が覚めても結局昨日の疑問は分からなかった。でも、別に気にする事じゃないからいいや。

それで今朝はイッチーと一緒にクラスに登校した。一緒に談笑しながらクラスに向かっている最中、ずっとこの時間が続けばいいなって思っちゃった。だってイッチーとお話していると凄く楽しいんだもん!

 

SHRが始まって昨日の決定戦の結果イッチーが代表に選ばれた。皆喜んでいたし、私も喜んだ。

報告を終えた織斑先生がSHRの続きをしようとしたら、イッチーが副代表を決めたいと言った時はもしかして私を推薦してくれるのかなって、期待してたらその通りになった。

えへへへへ、イッチーとこれから一緒に仕事が出来るって嬉しいなぁ。

 

でも、またセッシ―としののんが喚いて、私が副代表には相応しくないって言ってきた。

 

ふざけるな。イッチーにまともに話も出来ない上に、自分の都合ばかりを押し付ける様な奴がイッチーの傍に寄るな。

 

って、あれ? 私なんでこんな暴力的なこと書いてるんだろ? まぁ、いっか。

 

今日はアリーナでISを使った授業で、イッチーとセッシーが前に出て実演してくれた。イッチーってやっぱりISに乗るのが上手いのかな? すっごい高い位置から急降下してきて10㎝ジャストで止まったんだもん。凄いなぁ。

私整備科志望だから乗る理由が無いけど、1年生の間は必要らしいしから今度イッチーに乗り方教えてもらおう。

 

それと今日はイッチーの代表就任のお祝いパーティーが開かれた。ついでに私の副代表もお祝いしてくれた。

一杯料理とかお菓子が用意されてたからお皿一杯に載せてイッチーと二人で仲良く食べた。なんかいつも以上に料理とかお菓子が美味しかったなぁ。

 

そう言えば何か織斑先生が近くの席で食べてたけど、どうしていたんだろう? やっぱりイッチーの事が心配で様子を見に来てたのかな? 

やっぱり何処のお姉ちゃんも、妹や弟は大事にしてるんだなぁ。




取り合えず今回は此処まで。
ヤンデレ的な事はあまり書かれて無いけど、時期が進むにつれてどんどんヤンデレ化していきます。


では、また皆さん。次回の更新をお楽しみに( ´Д`)ノ~


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閑話~もしも、本音さんがヤンデレだったら(日記編)~part2

また本編が滞り始めたので、ヤンデレだったら編part2をあげます。

ちょっと間が空いていたので日記形式で書くのに苦労した為、読みづらくなっているかもしれません。
その辺はどうかご了承ください。


△月×日 曇

 

朝何時も通りイッチーと楽しく会話して教室に行ってきよきよ達とお話してた。

その時に2組に転入生がやってくる話題になった。別段に気にもしなかったし、イッチーも特に気にしている様子はなく、むしろ関わって来なかったら良いなって零していた。

 

それよりもイッチーが気にしていたのはクラス代表戦の事だった。

きよきよやつっきー達は専用機持ちはイッチーと4組のかんちゃんだけって話をしていたけど、確かに専用機を持っている人は結構有利だよねぇ。

いっちーとかんちゃんが戦う事になったら、どっちを応援しようかなって考えていたら、イッチーが負けた場合の事をつい想像してしまったらしく表情が悪くなったから慌てて大丈夫だよぉって慰めた。

イッチーの状態に気付いた皆も負けても怒らないよって言って慰めていた。そりゃあ私もデザートのフリーパスは欲しいけど、イッチーには無理してほしくないなぁ。

 

皆の励ましでイッチーの表情が幾分か良くなったと思った瞬間に、イッチーの後ろの扉から私より若干背の低い子がイッチーの名前を叫びながら乱入してきた。その所為でイッチーは発作が起きた。

その後乱入してきた生徒は織斑先生が追い返したけど、私は驚き固まってしまってイッチーの事何もしてあげられなかった。ちょっと自分が無力に感じちゃった。il||li(つд-。)il||li

 

 

けど、織斑先生が私の心情を察したか分からないけど、イッチーの容体がまだ悪かったら保健室に連れて行ってやってくれって頼まれた。

 

授業中特にイッチーの容体が悪くなったりすることは無く無事にお昼までこれた。良かった良かったと思ってたら、今度はしののんとセッシーがイッチーに変な言い掛かりを吹っ掛けてきた。

自分達が当てられているのにも気付かないのが悪いのに、それをイッチーの所為にするのは流石に酷過ぎるでしょ。

あんまりこの2人と一緒にさせていたら、イッチーの症状が悪くなると思って私はイッチーを連れて屋上に行った。

2人っきりで初めてご飯を食べたけど、美味しかったなぁ。最初はイッチーの症状に影響が出るんじゃ?って思ったけど、特に問題も無かった。また2人で屋上でご飯食べようねって約束した。次何時行こっかなぁ。

 

お昼ご飯食べた後、授業中眠かったけどそれよりもイッチーが眠そうだったからペンでツンツンして起こしてあげた。起こした後前を見たら、織斑先生が目線で『GJ!』と送って来たように思えた。何でだろうぉ?

 

放課後いつもと同じようにイッチーと一緒に帰ろうとしたら、しののんとセッシ―が何か割り込んできた。ちょっとムッとなって顔に出そうになったけど、必死に我慢してこの2人を動けなくする方法が無いか探したら、織斑先生が睨んだ顔で2人を見ていたから、2人に教えてあげた。そしたら2人とも静かに自分の机に座って補習を始めた。私って優しいぃ!壁|ー ̄) ニヤッ

 

その後はイッチーと一緒に寮に帰った。部屋でこの日記を書いていたら、突然部屋の外からイッチーの名前を叫ぶ転入生の声が聞こえた。その後織斑先生の名前が出るわ、怒鳴り声が聞こえるわ何事かと思ってドアからこっそり覗き見たら織斑先生が

『しっかりせんとな、お姉ちゃんだからな!』

と、小さい声で零しながら頬を叩いて顔を引き締めてイッチーの部屋から去って行った。若干涙目だったけど、頬を叩いからなのかな?

 

 

×月☆日 晴れ

 

此処最近日記が書けなかった。理由は隣に転入してきたあの生徒が原因だと思う。

だってイッチーが女性恐怖症だって他のクラスの人達だってある程度は知っていると思う。つっきーやきよきよ達から聞いたが、他のクラスの生徒達もある程度情報は入っているらしい。

けど、暫くの間あの転入生のリンリンはイッチーにお構いなしに近寄ってくる。その所為で暫くの間、イッチーはずっと怯えた日々が続いていた。

しかも自分が悪い事をしているっていう自覚が無く、これも一夏の為!って言って来るから、無性に腹が立った。(○`ε´○)プンプン!! 

イッチーは漸くクラスの皆と少しずつお話しできるようになったのに、これじゃあ全部ぱぁになるじゃん。

まぁ、皆(しののんとせっしー以外)が一丸になってリンリンを教室内に入ってこない様にしたから酷くなることは無かった。

それにしてもイッチーも不運だなぁ。幼馴染2人が自己中で人の気持ち何にも考えないだもん。

もし私が小さい頃にイッチーと遇ってたら、今頃は今以上に仲良くなってるのかなぁ?

 

それと今日のクラス代表戦だった。それでイッチーと対戦相手を確認しに行ったら、あのリンリンが代表になっていた。イッチーがピットに備えられている装置で織斑先生に確認したら、教師に何も言わずに変わって貰ったらしい。

本当何考えているんだろぉ?

 

イッチーに声援を送った後、観客席から皆と合流してイッチーの応援を始めた。アリーナにはリンリンが既に出ていてイッチーが出てくるのを待っていた。そしてイッチーが出てきて何か会話をしていたようだけど、多分自分が代表で驚いたでしょ?とか聞いてたのかな? その後怒り出して何か喚いているようだったけど、結局何を言っていたのか分からなかった。

けど、開始直前にリンリンが何か言った後イッチーの様子が可笑しかった。よく見ると小刻みに震えていて、私もしかして発作が起きたんじゃ?って心配したけど次の瞬間イッチーが物凄い剣幕で怒った。

皆も怒ったイッチーに一瞬茫然となったけど、怒ったのがリンリンが何か言ったからなのでは?と推論して、皆応援の力を強くした。

試合はほとんどイッチーの独壇場だった。最後らへんは危ない様子だったけど、意表を突く攻撃でリンリンを倒してイッチーが勝った。

皆大喜びしてたけど、私だけ素直に喜べなかった。あの時のイッチ―は普段とは違う動きだった。だからもしかしたらイッチーの容体が悪くなっているのでと思って、気が気じゃなかった。

だからきよきよ達に一言言ってからイッチーのピットに行った。けど、ピットに入る許可も無いのに勝手に入ったら怒られるかも。でもイッチーの事も心配だしって扉の前で右往左往していたら、織斑先生から電話が来て出たらイッチーの様子を見に行ってくれって用件だった。

やっぱり織斑先生もイッチーの事心配だったんだぁ。

 

ピット内に入ってイッチーを探したら直ぐに見つかったけど、ベンチに座りながら背もたれに凭れて顔を伏せていたから、一瞬背筋が凍えたのは今でも憶えてる。

恐る恐るイッチーに近付いて声を掛けたら、すぅすぅって寝息を立てていたから寝てたのかぁ。って一気に体から力が抜けちゃった。

その後織斑先生に報告した後、保険医を送るって言われたからピットで待ってた。座るところがイッチーの座っているベンチしかなかったから、イッチーの隣に座って待ってたらイッチーの頭が私の肩に乗っかって来た。

その時私ついイッチーの頭を膝の上に乗せちゃったんだよねぇ。今思い返しても恥ずかしかしい事しちゃったなぁ。(n*´ω`*n)

でも、なんだか嬉しくも思ったなぁ。

暫くしたら保険医の先生が来たから仕方なくイッチーの頭を膝から降ろして枕状にしたタオルの上に寝かせてから、扉を開けて保険医の先生にイッチーを預けた。

 

イッチーが医務室で治療されている間、スマホにきよきよ達からメッセージが届いていて、内容がイッチーの容体についてだった。多分皆心配してるのか、履歴に沢山メッセージが届いてほとんどがイッチーの容体についてだった。

皆心配性だなぁ。といっても私もイッチーに何かあったらと思うと心配になるか。(^▽^;)

 

暫く医務室前で待っていたら、イッチーが出てきた。もう大丈夫らしく、部屋に帰っても良いって許可を貰ったらしいから一緒に帰った。

途中でイッチーが部活に入部する為、怖いから一緒に付いて来てほしいって頼まれた。

無論OKって了承した。イッチーは安心したような笑顔を浮かべるのを見て、私少し心がキュンってなっちゃった。

 

部屋に戻ったらルームメイトのつっきーからしののん達3人が織斑先生に鉄拳教育を受けたって教えてもらった。

何でもイッチーのお見舞いに行こうとしたら医務室前で3人が鉢合って喧嘩を始めたらしく、それで医務室の先生が織斑先生を呼んで3人を引き取ってもらったらしい。

本当に何考えてるのか、分からないやぁ。それにイッチーに逢えるわけないのにねぇ。

それにしても、またあの3人が織斑先生に鉄拳教育されたねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッチーに迷惑な事をするからだ、ざまぁみろ。




ま、まだヤンデレにはなってないはず?


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閑話~コラボトークショウ~

今回【ISと無気力な救世主】を執筆されております、憲彦先生からコラボのお誘いを頂きましたので、裏話を交えつつサブタイ通りトークショウを行います。

なお、両小説の登場キャラが登場する為、何方のキャラクターか分かり易くする為台本形式で書かせていただきます。

それと、若干キャラ崩壊もあります。(憲彦先生から許可は頂いております)


(主)「どうもどうも、欲しいゲームが立て続けに販売されそうで、懐は寒くなりそうだが、心はぽっかぽかののんのんびよりです! 本日はサブタイ通り、憲彦先生の小説【ISと無気力な救世主】とのコラボという名のトークショウを行いたいと思います! では、ゲストの御三方、どうぞぉ~!」

 

一夏(憲)「お邪魔しま~す」

 

本音(憲)「よろしくねぇ~」

 

バジン【失礼する】

 

(主)「いらっしゃ~い! 本日はよろしくお願いしま~す」

 

一夏(憲)「こちらこそ。あ、これつまらないものだがどうぞ」つ茶菓子

 

(主)「あ、これはわざわざどうも。さて、此方のキャラも待たせるのもいけないので、ご登場いただきましょう。 おぉ~い、3人共!」

 

一夏(のん)「お、お邪魔しまぁす」

 

本音(のん)「お邪魔しまぁす!」

 

メサ【失礼させていただく】

 

(主)「ほい、それじゃあ全員揃ったのでまずは自己紹介から始めましょう! まずは『ISと無気力な救世主』の皆様からどうぞ!」

 

一夏(憲)「織斑一夏だ。得意な事は家事とか料理。好きな物はまぁ、その、家族だ」

 

本音(憲)「(∀`*ゞ)エヘヘ おっと、私の番だねぇ。私は織斑本音。旧姓は布仏本音だよぉ。向こうの世界でイッチーと結婚して織斑性になったんだぁ。得意な事は料理で、好きな物はイッチーと家族♪」

 

バジン【バジン、フルネームは布仏・A・バジンだ。故あって布仏の婿養子となった。得意なものは色々。好きな物は、まぁウチの嫁さんだ】

 

(主)「はい、ありがとうございます! それじゃあウチの一夏君達お願いしゃす」

 

一夏(のん)「お、織斑一夏です。得意なものは家事と炊事です。好きな物はお菓子とその、可愛い動物です」

 

本音(のん)「布仏本音でぇす。得意な事はお菓子作りで好きな物はお菓子と動物寝巻きぃ!」

 

メサ【坊ちゃま専属のお世話ロボ、メサです。得意な事は家事全般など。好きな物は坊ちゃまのご勇姿をとった映像です! (^ω^)ノ】

 

(主)「はい、ありがとうございます! それでは主はちょこっと引っ込みますのであとは6人でお話しください。あ、話の途中で裏話を語りに出てくるかもしれないので、そこんところよろ! それじゃあばいび~!」

 

一夏(憲)「お、おう。……えぇと、それじゃあどうする?」

 

一夏(のん)「その、主から目録を渡されてて、それ通りに進めてって言ってたけど」

 

本音(のん)「えっとぉ、最初は両小説のキャラクター紹介だってぇ」

 

一夏(憲)「キャラクター紹介って、何でまた?」

 

ニョキッ(主)「説明しよう! 実は憲彦先生から小説の内容が少し似ているなと思っておられたらしく、それだったら両小説のキャラクター達の違いを比べてみようと言う訳で目録に組み込んでおいたのだ! 説明終了! じゃっ!(^_^)/」

 

一夏、本音(両方)「( ゚д゚)」

 

バジン【いきなり出てきたな】

 

メサ【そう言う人ですからね、あの主は┐(´∀`)┌ヤレヤレ】

 

一夏(憲)「えぇ~と、それじゃあ共通の身内からでいいかな? と言っても姉貴しかいなけど」

 

一夏(のん)「そ、そうだね。そっちのお姉ちゃんってどんな人なの?」

 

一夏(憲)「え? お前、姉貴の事お姉ちゃんって呼んでるのか?」

 

一夏(のん)「うん、昔から何時もお姉ちゃんって呼んでるよ」

 

一夏(憲)「マジで? 俺は無理だな。というかどうやってもお姉ちゃん呼びなんか絶対無理だ」

 

本音(憲)「あははは……。た、確かにお義姉さんって、お姉ちゃん呼び出来る様な雰囲気じゃないよね」

 

一夏(憲)「だろ? お前も何時かの為にお姉ちゃん呼びじゃなくて 姉貴呼びした方が=旦))`ω゚)!・;'.アベシ!!」

 

本音(憲)「い、いい、イッチー―!?」

 

一夏(のん)「ふぇぇ~~、な、なんで湯呑がぁ!? って、あれ? これ、お姉ちゃんのだ」

 

本音(のん)「そ、そうなの? でも何処から飛んできたんだろ?」

 

ニョキッ(主)「あぁ~、すいません。実はこっちの世界の千冬さんがなんか『向こうの世界の一夏が、私の可愛い一夏にいらんことを吹き込もうとしている!』って言って、次元の壁をぶち抜くほどの腕力で湯呑を投げたんですがぁ、遅かったみたいですね」

 

3人「うん」

 

バジン【相変わらず、どの世界の千冬も人間離れしているな】

 

メサ【全くですね。ところでそちらの世界の千冬氏は家事などは? こっちの世界では人並みの料理は出来るのですが、掃除だけがどうしても苦手らしく、以前可燃ごみの中からプラスチックのゴミが出てくるわ、プラゴミの中からはペットボトルが出てくるわ、大変ですよ。(´Д`)ハァ…】

 

バジン【こっちの世界では人並みの家事は出来る。得意と言えば掃除だな】

 

メサ【ほぉ~、それは羨ましい限りですな】

 

バジン【最近は子供も出来たから、子供用の料理の勉強も始めてる】

 

メサ【はぁ~、そちらの千冬氏はご結婚されているのですか。それはおめでとうございます。此方の千冬氏は……】

 

バジン【男っ気が無い感じか?】

 

メサ【無い訳では無いですが、未だにその気持ちに気付いてないのかもしれません┐(´д`)┌ヤレヤレ】

 

バジン【まぁ、両者の問題だから。其処は外部の人間ではどうする事も出来ん】

 

一夏(憲)「いててて。ま、まさか壁をぶち抜いて湯呑投げてくるとか、人間離れし過ぎだろ」

 

一夏(のん)「と、時々人間離れしてるからね、お姉ちゃんは」

 

本音(憲)「ほへぇ。あ、そうだそうだ。ねぇねぇ、向こうの私」

 

本音(のん)「なぁに?」

 

本音(憲)「そっちのお姉ちゃんってどんな感じなの? こっちだとバジンと結婚して幸せに暮らしてるんだけど」

 

本音(のん)「えっとこっちの世界だと生真面目で料理下手ぁ」

 

本音(憲)「えぇ~、料理下手なのぉ? こっちだとお料理得意なんだよぉ?」

 

本音(のん)「えぇ、あの暗黒物質を大量に作ったお姉ちゃんがぁ!? やっぱり異世界だと違うんだねぇ」

 

本音(憲)「そだねぇ」

 

一夏(憲)「あ、そうだ。これだけは聞いておこうと思った奴がいたんだ」

 

一夏(のん)「(。´・ω・)? 誰の事?」

 

一夏(憲)「篠ノ之姉妹。こっちだと色々やらかして2回死んでる」

 

一夏(のん)「∑(0д0)えっ!? 束お姉ちゃん死んだの!? てか2回ってど言う事!?」

 

一夏(憲)「詳しくは本編を読んでくれ。で? そっちの世界ではどうなんだ?」

 

一夏(のん)「えっと、こっちの世界だと優しいよ。自分の所為で世界を醜く変えてしまったって一回泣いている姿を見たことがあるんだぁ。あと、僕用のISを手配してくれたり、身の回りのお手伝いをしてくれるメサさんを作ってくれたりしてくれたんだ」

 

一夏(憲)「そうか、そっちの世界の束は優しい人物か。で、妹の方はどうなんだ?」

 

一夏(のん)「……僕は、苦手かな。事あるごとに僕に怒鳴ってきたりするし、一度手を挙げようとしてきたこともあるから(´ω`。)グスン」

 

一夏(憲)「……うわぁ、俺の所と同じかよ。で、箒から距離を置く場合何時もどうしてるんだよ?」

 

一夏(のん)「お姉ちゃんが何処からともなく現れて、何時も出席簿でしばいて引き摺ってってる」

 

一夏(憲)「ぷっ! 姉貴にかよ。しかもしばかれてねぇ。一回その光景見て見たいぜ。そうだ、他の奴等はどうなんだ? イギリスとかフランス、あとドイツの奴等は? あ、あと鈴も」

 

一夏(のん)「えっと、その……(lll-ω-)」

 

一夏(憲)「なんだ? なんか、聞いちゃまずい感じか?」

 

本音(のん)「イッチー(のん)。私が説明するからお菓子食べててぇ」

 

一夏(のん)「うんモヒ( ・ω・c)モヒ」

 

本音(のん)「えっとぉ、セッシーやリンリンなんだけど、いっつもイッチー(のん)の事をつけ回してるんだぁ。まぁ、その度に織斑先生のエスカリボルグ(出席簿)でしばかれてるけどねぇ」

 

 

2人(憲)「エスカリボルグ(笑)」

 

一夏(憲)「クックック、エスカリボルグって例えが面白れぇな。で、フランスとドイツは?」

 

ニョキッ(主)「申し訳ない、一夏君(憲)。これが投稿される頃はまだあの二人入学して無いんだ」

 

一夏(憲)「あ、そうなのか」

 

(主)「そうなのだぁ。 代わりと言っちゃなんだけど、裏話を此処で一つ。実は一夏君(のん)が女性恐怖症になった原因なんだけど、当初はラウラじゃなくて別の人が原因で発症する予定だったのだ」

 

一夏(憲)「へぇ~。その人って誰なんだ?」

 

(主)「原作の中で可笑しな日本の知識を持った人」

 

2人(憲)「あぁ~、あの人か」

 

2人(のん)「(o゜ー゜o)??」

 

(主)「まぁ、ウチの2人が知らないのは無理ないね。で、どいう風に発症したかと言うと、その人が一夏にある頼み事したんだけど、一夏に断られる。諦めきれないその人は再度頼み込もうとした際に一夏を押し倒す。恐怖にかられた一夏は叫ぼうとするが口押さえられる。その後なんやかんやあって千冬が飛んできて救助されるも発症すると言う流れだったのだ」

 

一夏(憲)「へぇ~。でもなんでそのルートを書かなかったんだ?」

 

(主)「いやぁ~、この人ルートで書くとその後の展開が書きづらいと思ってね。だから止めたのだ。それじゃあお邪魔しましたぁ」

 

バジン【意外なルートもあったんだな】

 

メサ【ですね。てか、どのみちどのルートもドイツ軍崩壊ルートじゃん( ´,_ゝ`)プッ】

 

一夏(憲)「ハッハハハ。さて、こっちのあいつ等だが。オルコットの奴は最初は典型的な女尊男卑の奴だったが、俺との戦いの後は改心して国家代表まで行ったぞ。鈴は国家代表の誘いを蹴ってIS学園の教師になった。あと二人いるが、説明した方がいいか主?」

 

ニョキッ(主)「うぅ~~ん。こっちだとまだ出てないし、いいかな」

 

?「「あんまりだぁ‼」」

 

一夏(のん)「ふぇっ!? い、今なんか変な叫び声がぁ(´;ω;`)」

 

本音(のん)「大丈夫だよぉ、イッチー(のん)。ただの雑音だからヨシヨシヾ(・ω・`)」

 

2人(憲)(あれを只の雑音呼ばわりするって、凄いなぁ)

 

バジン【さて、次の目録はと……。ん?】

 

一夏(憲)「どうした、バジン?」

 

メサ【えっとぉ、お次なんですが、《バジン対メサ チキチキ、3本勝負ぅ!》だそうです。o(゚◇゚o)ホエ?】

 

ニョキッ(主)「目録通りですよ。どっちのロボが最高か、その雌雄を決めようと思って組み込んでおきました。勝負の内容ですが、1本目は料理対決。2本目は機能対決。3本目は一夏君の良い所出し対決です。では最初の一本目参りたいと思うので、お二人共あちらにあるキッチンに移動してください」

 

バジン【マジか。まぁ、別に構わんが】

 

メサ【私も構いません。むしろこういう機会は中々ありませんしね。本気で行かせてもらいます!】

 

バジン【こちらもだ】

 

(主)「では、調理始め!」

 

~調理過程は飛ばします!~

 

バジン【出来たぞ】

 

メサ【こちらも出来ました】

 

(主)「それではお二人の料理を並べて下さい!」

 

バジン【俺はビーフシチューだ】

 

メサ【私はささみのチーズフライです】

 

(主)「ではまずは、バジンの方から実食‼」

 

4人(両方)「パクッ」

 

一夏(のん)「お、美味しぃ」

 

本音(のん)「本当美味しいねぇ。お肉も凄く柔らかぁい」

 

一夏(憲)「うん、美味いなぁ。バジン、お前圧力鍋で作っただろ?」

 

バジン【正解だ。圧力鍋なら少ない時間でもすぐに肉を柔らかく出来るし、その上野菜や肉の旨味も引き出せる。まさに主婦にとっての味方だ】

 

2人(のん)「へぇ~~」

 

(主)「皆さん大変満足されておりますが、次はメサさんのささみチーズ揚げです!」

 

4人(両方)「パクッ」

 

一夏(憲)「うん、チーズも良い具合に溶けている。それにこのささみ、少しだけコショウをまぶしているのか?」

 

メサ【よくお気付きになられましたね。その通り、コショウを少しまぶして揚げることで肉とチーズの旨味を引き出し食欲をそそらせております】

 

一夏(のん)「モグモグ。メサさんの料理は何時食べても美味しいぃ」

 

本音(のん)「私は初めて食べたけど、本当においしいねぇ」

 

メサ【喜んでもらえて何よりでございます、坊ちゃまぁ! ∩(´∀`)∩ワァイ♪】

 

(主)「では、皆さん。どちらが美味しかったか、お手元の方に配りました札を挙げてお答えください。どうぞ!」

 

一夏(憲、のん)つバジンとメサ

 

本音(憲、のん)つバジンとメサ

 

(主)「ちょ、ちょっと皆さん。なんで二人の札を挙げてるの?」つバジンとメサ

 

一夏(憲)「いや、どっちも美味くてな。白黒つけられなかった。てか主さんもふたつ挙げてるじゃねえかよ」

 

一夏(のん)「ぼ、僕もどっちも美味しくって白黒つけろって言われても無理、です」

 

本音(両方)「どっちも美味しい!」

 

(主)「ま、まぁ、どっちも料理に関してはプロ級を有しているロボットですからね。仕方がありません、この勝負はドローと言う訳で次の勝負に行きます。では、気を取り直して第2本目、機能対決! この勝負は両者に備えられている機能を4人に見て貰い、どちらが最も優れているのか決めるものです! では、先手はメサさんどうぞ!」

 

メサ【私に備えられている機能は次の通りです】

  【・家事炊事機能 ・TV電話機能 ・変形機能です】

 

(主)「はい、ありがとうございます。ではバジンさん、次お願いします!」

 

バジン【俺の機能はこれだ】

   【・変形機能(バイク、バトルモード、人型) ・家事炊事(育児可)機能 ・メール機能 こんなところだな】

 

(主)「はい、ありがとうございます! では皆さん。どっちの方が優れているか。お手持ちの札をお上げください!」

 

一夏(憲)つバジン

 

一夏(のん)(゚-゚;)オロオロ(;゚-゚) ソォ~つバジン

 

本音(憲)つバジン

 

本音(のん)つバジン

 

(主)つバジン

 

(主)「決まりました! 2本目の勝者はバジンさんです!」

 

メサ【な、何、だとΣ(T□T)】

 

バジン【(= ̄▽ ̄=)V】

 

一夏(のん)「ご、ごめんなさい、メサさん。だって、バジンさんがバトルモードになった時の姿がカッコよかったからぁ。 。゜゜(´□`。)°゜。ワーン!」

 

メサ【ぼ、坊ちゃまは悪くはございませんよ! わ、私のデザインは博士によって出来た物ですので、博士にお願いしてカッコいい姿になるようお願いしてみます!】

 

(主)「……何だろう。物凄い罪悪感を感じる」

 

一夏(憲)「まぁ、ドンマイ?」

 

本音(憲)「ド~ンマイ」

 

本音(のん)「ぬ~し~」

 

(主)「な、何ですか本音さん?」

 

本音(のん)「後で、スタジオ裏ねぇ。(#・∀・)」

 

(主)「す、すいませんでしたぁ!」

 

一夏(憲)「まぁ、自業自得だな。ほら、次の勝負あるんだろ?」

 

(主)「は、はい。では、最後の勝負! 一夏君の良い所出し勝負! 互いに一夏君に仕えているので、一夏君の良い所を出し合ってもらい、多くの良い所を出した方が勝ちとなります! 但し、共通している物は無しとします。それではバジンさんからお願いします」

 

バジン【良い所? うぅ~ん、他人の意思には簡単に流されない、だな】

 

(主)「では、次にメサさん!」

 

メサ【気遣い上手】

 

バジン【…目利き上手】

 

メサ【努力家】

 

バジン【……無いな、もう】

 

一夏(憲)「いやいやいや、まだあるだろ?」

 

バジン【すまん。長い付き合いだが、良い所より、悪い所の方が多い】

 

本音(憲)「あははは。(;´∀`)」

 

一夏(憲)_| ̄|○

 

(主)「え~、短い感じでしたがこの勝負、メサさんの勝ちです。因みにメサさん、後何個出せました?」

 

メサ【10個以上は出せるぞ。出そうか?】

 

(主)「いえ、時間も押してますし終了しておきます。では結果発表ですが、ドロー1回の両者一勝一敗という事で、引き分けです!」

 

一夏(憲)「それでいいのか?」

 

(主)「良いんです!」

 

本音(憲)「すがすがしい姿で宣言したね」

 

(主)「さて、時間も押してますから次の目録いきまぁす。次は本音さん二人のトークショウです。と言う訳で男性陣とロボット陣は一旦消えます!」

 

一夏(両方)「は?/え?」

 

バジン【消えるってどう言う事だ?】

 

メサ【何でもありになってきてません?】

 

(主)「細かい事は気にしない! それじゃあほいっ!」( ̄□ ̄)^o―∈‥・・━━━━━━━☆

 

4人「うわぁ~~~!?」【【マジで消えるぅ!∑(゚Д゚)!?】】

 

本音(憲)「おぉ~、消えた!」

 

本音(のん)「ホントだぁ。うぅ~ん、それでどうするぅ?」

 

本音(憲)「そうだねぇ。それじゃあ、自分しか知らないイッチーの事を挙げよっかぁ」

 

本音(のん)「おぉ~、良いねぇ。じゃあまず私から行くねぇ。こっちのイッチーは寝顔が可愛い。あとお饅頭を食べるときに口の周りにいっぱいに白い粉を付けながら食べるんだぁ」

 

本音(憲)「へぇ~。こっちだとね、家族の為にと人に気付かれない様日夜頑張ったり、些細な約束とか記念日でも憶えてて、こっそりお祝いしたりしてくれるんだぁ。この前も息子が初めてハイハイした日って事でケーキ作ってたなぁ」

 

本音(のん)「おぉ~、凄いねぇ」

 

本音(憲)「うん、私の自慢ができて大好きな夫なんだぁ。ねぇ、君はそっちのイッチーの事をどう思ってるの?」

 

本音(のん)「イッチーの事ぉ? う~ん、仲の良い友達かなぁ。お菓子とかご飯とか一緒に食べるくらいの♪」

 

本音(憲)「そっかぁ。私もね、最初の頃はイッチーとは仲の良い友達位だと思ってたの。でもね、ある日を境に意識するようになって気付いたらお付き合いしていたの。そして卒業してから結婚して、子供が出来て今は幸せな家庭を築いているんだぁ」

 

本音(のん)「へぇ~、そうなんだぁ」

 

本音(憲)「その時が来れば分かると思うよ。友達以上の気持ちに気付くと時がねぇ」

 

 

ニョキッ(主)「はぁ~い、お二人共短い時間でしたがトークショウ終了のお時間が参りました! おっと、あの4人も出さないと」( ̄□ ̄)^o―∈‥・・━━━━━━━☆

 

一夏(両方)「ほぎゃっ!?」

 

バジン&メサ【グホッ!】

 

本音(憲)「イッチー、大丈夫?」

 

一夏(憲)「お、おう。何とかな」

 

(主)「いやぁ~、楽しい時間があっと言う間に過ぎてしまいましたね」

 

一夏(のん)「うん。向こうの世界の事とか色々聞けたから満足です」

 

一夏(憲)「だな。偶にはあの主にも感謝しねぇとな」

 

本音(憲)「そうだねぇ。何時もナレーションとか色々頑張ってるし、何かしてあげる?」

 

一夏(憲)「そうだなぁ、まぁ何か考えといてやるか」

 

(主)「それでは皆様、宜しいでしょうか? 以上を持ちまして憲彦先生の小説と当小説のコラボトークショウを締めたいと思います。色々ありがとうございます!」

 

一夏(憲)「こっちこそいろいろ楽しかったぜ。なぁ、向こうの俺。もしこっちに来るようなことがあったらまた駄弁り合おうな」

 

一夏(のん)「うん。またね」

 

本音(のん)「ばいば~い、私ィ。また遊びに来てねぇ」

 

本音(憲)「うん、またなのだぁ!」

 

バジン【次に来る時は嫁と共に来させていただく。その時はまたよろしく頼む。・△・)ノ バイバイ】

 

メサ【えぇ、どうぞ。坊ちゃまや本音様もお喜びになりますでしょう。(^_^)/~~サヨナラ】

 

(主)「それでは皆様、さようならぁ~~~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「あれ? 異世界のお兄ちゃんとこっちのお兄ちゃんが此処に居るって聞いたんだけど誰もいない。なぁんだ、逢えると思ったのになぁ。まぁいいか。それじゃあ読者の皆さん、さようならぁ(* ̄▽ ̄)ノ~~ マタネー♪」




以上でコラボトークショウを終えます。

読みづらいと感じた方、本当に申し訳ありません!




最後の人? サァ~、ダレナンデショウネェ


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本編
1話


IS学園、言わずと知れた女性しかいないISを学ぶ学園だ。そんな学園にあるイレギュラー的出来事が起きている。それが、世界で初めて男でもISに乗れる者が見つかったのだ。

そしてその男子は今IS学園1年1組に居る。

 

~1年1組の教室~

1組の生徒達は皆ヒソヒソと一番後ろの席に居る男子生徒を見ていた。その男子生徒は何故だか分からないが、ブルブルと震えており顔は入学前に渡された教本で隠している為か、よくは見えなかった。

そして童顔で教師には見えないが、教師の証であるネームタグをぶら下げた女性が入って来た。

 

「はぁ~い、皆さんおはようございます! 私がこの1組の副担任、山田真耶と言います。3年間宜しくお願いしますね!」

 

そう元気よく挨拶をする。だが

 

「「「「……」」」」

 

クラスの中からの反応は無く、しーんと静まり返っていた。

 

「うぅぅぅう、では端の方から自己紹介を」

 

涙目で端から自己紹介をするよう指示され、端の生徒達から名前、そして趣味や中学の部活の事を話し始めた。

そして少年の順番となるが、全く自己紹介をしようとせずただ教本を読み続けていた。

 

「えっと、織斑君? 織斑く~ん!」

 

「ひゃ、ひゃっい!」

 

真耶に呼ばれ織斑と呼ばれた少年は肩を跳ね上げ、怯えた表情を見せる。その状態に真耶はある事を思い出し慌てて謝る。

 

「ご、ごごご、ごめんね! 『あ』から始まって今『お』の所まで来たから織斑君の自己紹介の番になったから」

 

「そ、そうですか。わ、わかりました」

 

そう言い席から立つ織斑。表情から顔色はあまり良くなく、未だにブルブル震えていた。

 

「お、織斑一夏と、言います。その、出来ればそっとしておいて、欲しいです。以上、です」

 

そう言い席に座る。先ほどとは違い本で顔は隠そうとはしないが、顔色はまだいい感じでは無かった。

一夏の自己紹介に生徒達は何処か物足りそうな表情を浮かべ、もっと喋ってと言いたげだった。

 

「大丈夫か、織斑?」

 

そう声が一夏の傍から聞こえ、生徒達は声の主の方に顔を向ける。其処には黒のレディーススーツを身に纏い、きりっとした目つきの女性が其処に居て、一夏の心配をしていた。

 

「だ、大丈夫、です。織斑先生」

 

先程とは違い少し震えているのが止み、顔色も少し良くなる一夏。

 

「そうか、もし無理そうなら何時でも言っていいからな」

 

「は、はい」

 

一夏の様子に未だ辛そうな表情を浮かべる千冬。だが顔付を変え教卓の元に向かう。

 

「遅れて済まない山田先生」

 

「あ、いえ。副担任として当たり前のことをしたまでですので」

 

そう言い教卓から降り、千冬と場所を変わった。

 

「では自己紹介の前に先に言っておくが、騒ぐのは禁止だ、いいな?」

 

そう言うと生徒達はコクンと頷く。

 

「では、私が君達の担任となる織斑千冬だ。ISについてのイロハを君達に教えて行くが、分からないからと放置するようなことは許さん。分からない事、もっと聞きたいことがあるなら私か山田先生に聞きに来るように。それが今後君達にとって必要な事なのだからな」

 

そう自己紹介を終え一息を付こうとした瞬間

 

「「「「きゃあぁぁぁ!!!」」」」

 

「本物の千冬様よ!」

 

「あぁ、私先生に教えてもらいたくて来ましたぁ!」

 

「手とり足とりお願いしまぁす!」

 

そう叫ぶ生徒達。すると

 

《ベキッ!!》

 

と、千冬が掴んでいた教卓にヒビが入った。

そしてクラスの中の空気が一気に重くなり、誰もが先程の歓喜の空気が消し飛んだ。

 

「……貴様ら、私が最初に言った言葉をもう忘れたのか?」

 

そう問われ叫んだ生徒達は首を激しく横に振る。全員重苦しい空気に居る中、只一人様子がおかしい生徒が居た。

一夏だった。先ほどよりも肩を震わせ、怯え切った表情を浮かべ呼吸が浅くなっていた。一夏はおもむろにポケットからペン型の注射器を取り出し腕に打った。

その様子を見た千冬は慌てた表情で一夏の元に近寄る。

 

「だ、大丈夫か一夏?」

 

肩に一瞬手を置こうとした千冬。だが手はその肩に置かれることは無く途中で止まった。呼吸がゆっくりと落ち着き、表情も幾分かよくなり始める一夏。

 

「大丈夫か? 無理そうなら保健室に「だ、大丈夫、です」そ、そうか。だが、無理はするなよ?」

 

コクンと頷く一夏に、千冬は悲しそうな表情を浮かべ教卓に戻る。一夏と千冬の光景に生徒達は茫然と言った表情を浮かべていた。

 

「……先程私が騒ぐことを禁止した理由がさっきのだ」

 

教卓に戻った千冬がそう言い、見渡すように顔を向ける。

 

「織斑はある症状を患っている。それが『女性恐怖症』だ。本来なら此処ではなく専用の教室を設けるのだが、高校生活をそれで終わらせる訳にも行かずこのような形になった。その為今から言う事は絶対に守れ。もし破ったりした者が居れば、私自ら引導を渡す。いいな?」

 

千冬にそう言われさっき叫んだ生徒達、そして叫んでいなかった生徒達は冷や汗を流しながら首を縦に振る。

 

「1つ目、大声を上げるな。2つ目、本人の許可なく体に触れない。3つ目、話すときは正面からで、ある程度距離をとること。4つ目、大勢で話しかけない。かならず少人数で話しかける事。5つ目、高圧的態度で接しない。以上の事は必ず守るように」

 

「「「「はい!」」」」

 

全員そう声を揃え言うも、千冬は良いだろう。と返す。だが、内心不安要素が残っている事に警戒していた。

その不安要素である2人に目線を向ける。1人は窓の景色を眺める黒髪の生徒。もう一人はムスッとした顔を浮かべた金髪の英国人。

 

(この二人が要警戒人物だな。……頼むから一夏を苦しめる様なことはするなよ、貴様ら)

 

心の中で2人に対し警戒心を浮かべる千冬。そして朝のSHRは終了した。

 

1限目の授業が始まるまでの間、それぞれ授業の準備をしながら一夏の方をチラチラと見る。

その視線には一夏も気付いているが、恐怖からか話しかけ様とはしない。準備を終えまた教科書で視線を遮ろとした瞬間

 

「えっと織斑君、少しいいかな?」

 

そう声を掛けられ一夏は本の上から少しだけ顔を出す。

 

「な、なんでしょう、か?」

 

「うん、そのままで良いから質問してもいい?」

 

「ど、どうぞ」

 

そう言い一夏は質問される事を返していく。オドオドはしているが、ちゃんと接しようとしている姿に生徒達は感心の様子を見せた。

 

1限目の授業が始まり、それぞれ電子ノートで黒板に書かれている事を写したり、教本にマーカーペンで線を引いたりしていた。

 

「えっと、此処までついてこれていますか?」

 

教卓に立っていた真耶はクラス全体を見渡すと、それぞれ頷く生徒達。

 

「織斑君は大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫、です」

 

一夏はおどおどしながらもそう返し、顔を下に向ける。

 

「そうですか? 分からなかったら、何時でも聞いて下さいね。なんたって先生ですから!」

 

そう言い胸を張る真耶。

 

「山田先生、そんなことを言っていないで早く進めてください」

 

呆れた表情で真耶に告げる千冬。真耶は慌てて授業を再開した。

そして1限目が終わり、それぞれ次の授業の準備や友達と談笑したりし始める。一夏は大きめの小説本を取り出しそれを読もうとすると

 

「ちょっといいか?」

 

「ヒッ!?」

 

そう声を掛けられ、一夏は突然真横から声を掛けられたことに驚き悲鳴を上げる。

 

「なっ! なんでそんな情けない悲鳴を上げるんだ一夏!」

 

そう叫ぶ黒髪の女子生徒。一夏は怯えた表情を浮かべ、体をブルブルと震えていた。

 

「そ、そんな、こと言われても「ごたごた言い訳を言うな! 貴様それでも男か!」」

 

すごい剣幕で怒鳴る女子生徒に一夏は完全に怯え切っていた。

 

「ちょっと篠ノ之さん! 織斑先生に言われていた事忘れたの!」

 

そう言い一人の生徒が一夏から離そうと引っ張る。

 

「五月蠅い! 今一夏と話しているんだ! お前には関係ないだろうが!」

 

「だからって病人である一夏君に怒鳴ることないじゃない!」

 

そう咎める生徒。すると箒は拳を握りしめ一歩踏み出した瞬間、箒の頭目掛け何かが振り下ろされ、ガンッと鈍い音が教室内に響き渡った。

 

「……篠ノ之。貴様、私が言った事もう忘れたのか?」

 

「ち、千冬さん」

 

ガンッとまた箒の頭に出席簿が振り下ろされ、鈍い音がまた鳴り響く。

 

「織斑先生だ。篠ノ之、お前は織斑に近付くことは許さん」

 

「なっ!? なんで「お前が織斑の傍に居ると症状が悪化する恐れがあるからだ」くっ‼」

 

「分かったら、さっさと座れ」

 

そう言われ篠ノ之は悔しそうな表情で席へと戻る。

 

「四十院、すまんな」

 

「い、いえ。織斑君、苦しそうにしていたので」

 

「そうか。お前達も織斑が苦しそうだったら、少しでも手を貸してやる様に」

 

「「「はい!」」」

 

そう声が上がると、千冬は教卓へと行く。

そして2限目も終わり一夏の隣の生徒が話しかける。

 

「おりむー、ちょっといい?」

 

「ふぇ? えっと、いいですけど、その」

 

「あ、私布仏本音って言うんだぁ。宜しくねぇ」

 

のんびりとした口調で自己紹介をする本音に、一夏はよ、よろしくと返す。

 

「そ、それで何の用ですか?」

 

「えっと此処の問題が分からないから、教えて欲しんだぁ」

 

そう言い教科書のある部分を指す本音。

 

「えっと、其処だったら」

 

そう言いながらノートを取り出す一夏。

 

「どうやるのぉ?」

 

そう言い一夏が取り出したノートを覗き込む本音。

 

「えっと、此処の公式を分解して、それで当てはめれば、解ける」

 

「ほへぇ~、そう言う事だったんだぁ。ありがとうね、おりむ~」

 

「ど、どう、いたしまして」

 

そう言いノートを片付ける一夏。すると視線が一斉に自分に向いている事に気付き顔を上げる。生徒達のほとんどが驚いた表情を浮かべており、千冬や真耶も浮かべていた。

 

「な、何か?」

 

一夏は一斉に見られている事に怯えた表情を浮かべる。

 

「い、一夏。お前、今何があったのか、分かるか?」

 

「ふぇ? な、何がって?」

 

「の、布仏が今近くに居たんだぞ?」

 

そう言われ一夏はしばし茫然と言った表情を浮かべるも、あっ!と思い出した表情を浮かべる。

 

「そ、そう言えば、大丈夫だった」

 

「ほへぇ?」

 

一夏の一言の次に布仏の方に視線を向けられ、布仏は首を傾げる。

 

「…布仏、少し一夏に触れてみてくれないか?」

 

「いいですけど。いい、おりむ~?」

 

「…は、はい」

 

一夏は若干怯えながらも、身構える。千冬たちも万が一を考え何時でも動けるようにする。そして本音が一夏の方に手を置いた。

 

「……何とも無いか?」

 

「う、うん。なんとも、無い」

 

一夏自身は若干驚いているが、千冬たちにとっては大きな衝撃だった。

 

「ど、どどど、どう言う事ですか織斑先生?」

 

「わ、分からん。一体どういう訳か……ん?」

 

全員が首を傾げている中、千冬はある事に気付き本音をジッと見つめる。

 

「なんですかぁ、織斑先生?」

 

「……布仏。お前、周りから自分の事をどういう感じだと言われている?」

 

「どんな感じでか? え~と、のんびり屋で、お菓子が大好きな子ってよく言われます。あと動物の着ぐるみを着ると、のほほんとしてるって事も言われまぁす」

 

そう言うと千冬は顎に手を当てながら考えこみ、何かが合致したのか顔を上げた。

 

「なるほど。そう言う事か」

 

「えっと、どう言う事ですか?」

 

「布仏の性格だ。アイツののほほんとした性格とのんびり屋と言う事がもしかしたら織斑に警戒心を与えていないんだろう。だから織斑に近付いても、症状が現れないんだ。恐らく布仏の気配は動物に近いんだろう」

 

「そ、それじゃあ布仏さんは唯一織斑君に触れられる生徒と言う事ですか?」

 

「生徒の中であればな。他には私が知っている限り、一人しかいない」

 

そう言われ全員いいなぁ。と羨ましそうな視線を本音に送る。

 

「?」

 

布仏は重大性が分かっていないのか、首を傾げる。

 

「布仏、すまんが少し頼みがあるんだが」

 

「なんですかぁ?」

 

何時になく真剣な表情を浮かべる千冬に、皆なんだろうと思い静かになる。

 

「織斑の事、頼んでもいいか? 無論私が傍に居てやればいいのだが、教師故ずっとは居てやれん。だから唯一織斑に近付いても大丈夫なお前にしか頼めない。無理なら断ってくれても構わない。どうだろうか?」

 

そう言いこの通りだと言って頭を下げる千冬。千冬が本音に頼むのは教師としてではなく、弟を守る一人の姉としてであった。

 

「分かりましたぁ! おりむ~の事お任せ下さぁい!」

 

そう言いダボダボの袖を高々に掲げる本音。

 

「そうか、それじゃあ頼む。他の者達も出来る限りで構わん。織斑の力になってやってくれ」

 

「分かりました!」

 

「近付けるのが布仏さんだけですから、私達は私達で出来ることをやります!」

 

それぞれ意気込む生徒達を見て千冬は少し安心した表情を浮かべ、教室から退室して行った。



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2話

一夏の事を任された本音は出来るだけ一夏の近くに居る様にしていた。

 

「ねぇねぇイッチー。お菓子食べる?」

 

「えっと、その、い、頂きます」

 

一夏がそう言うと、本音は封の開いていないトッポの袋を取り出し封を開ける。

 

「はい、どうぞぉ」

 

「あ、ありがとう」

 

そう言いおずおずと袋の中からトッポを取り出した一夏はポリポリと食べ始め、本音も食べ始めた。その光景にクラスの生徒達は何だか和んだような表情を浮かべていた。すると近くに居た生徒が自分もと、封の開いたピーナッツチョコを差し出す。

 

「お、織斑君。このお菓子も美味しいよ?」

 

「え? えっと、その…」

 

差し出されたお菓子に手を出そうとしない一夏に、生徒はもしかしてとある事に気付く。

 

「も、もしかしてピーナッツ駄目だった?」

 

「ち、違うんです。その、ただ…」

 

中々口にしない一夏に周りはどうしたんだろうと心配そうに見ていると、本音が何かに気付き生徒が差し出したお菓子を1つ口にした。

 

「うぅ~ん、美味しぃ。いっちー、このお菓子美味しいよぉ」

 

「あの、それじゃあ、い、いただきます」

 

そう言い漸くお菓子を食べ始めた。周りは何故だろうと言った疑問で溢れていた。すると本音がそっと生徒の耳元に口を近づける。

 

「いっちーは多分、封が空いてるから警戒したんだと思うよ」

 

「封が空いてるから?」

 

「うん。多分イッチーはミッチーがその気になくても、何か入れられていると考えこんじゃって手が出せなかったんだと思うよ」

 

そう言われミッチーと呼ばれた生徒は納得のいった顔になる。

 

「そ、そうだったんだ。織斑君、ごめんね。先に私が食べたのを見せてからすすめれば良かったね」

 

「い、いえ。あ、貴女は何も悪くないので、気にしないでください」

 

おどおどした表情で言いながら本音から差し出されたトッポを頬張る一夏。疑問が解消された生徒達はお菓子を上げる際は未開封のものにしようと決めたそうだ。

 

時刻は過ぎ、3限目の授業が終わった休み時間。一夏は次の授業で使う教科書などを出していると、

 

「ちょっとよろしくて?」

 

真横から突然話しかけられたことに一夏は一気に肩を跳ね上げた。

 

「ヒッ!?」

 

「なんなんですの貴方! 私、セシリア・オルコットが折角声を掛けたあげたというのに、悲鳴を上げるなど「ちょっとオルコットさん」なんですの?」

 

高圧的な態度で一夏を見下すセシリアに、周りにいた生徒達は睨んだ視線でセシリアを見据えていた。本音でさえも睨んだ眼だった。

 

「貴女も織斑先生から言われた事、忘れたの? 高圧的な態度で接しない様にって言われてたじゃない」

 

「あら、忘れてなどいませんわ。ただ、私の喋り方等は幼少の頃からこれですのでこれで高圧的と言われましても、どうする事も出来ませんわ」

 

「だったらもう少し声の圧を抑えるとかしなさいよ。流石にあれは誰だって怖がるわよ」

 

「…ふん、もういいですわ」

 

女子生徒に注意されたのが気に喰わくなったセシリアは鼻を鳴らしてその場から離れ自分の席に戻って行った。

 

「あ、あの、ぼ、僕は気にして無いから――」

 

「そう言う訳には行かないでしょ」

 

「確かに。あれって明らかに織斑君の事侮辱した態度だったもん」

 

「本当よ。しかもは何よ、幼少の頃からこの口調だから無理って」

 

そう言いながら席に戻ったセシリアにジト目で睨む生徒達。一夏は自分の所為で空気が悪くなったと思い、若干戸惑った表情を浮かべていた。

 

「イッチー、大丈夫だよ」

 

一夏の気持ちに気付いているのか、本音が優しく声を掛ける。

 

「ほ、本音さん?」

 

「イッチーが悪いわけじゃないから。気落ちしなくていいから」

 

のんびりとした口調で諭す本音に、一夏はう、うん。と頷いた。そして4限目の授業を開始するチャイムが鳴り響き、それぞれ席に着いた。教室に千冬と真耶が入り千冬は教科書片手に授業を始めた。

チョークで教える箇所を教えようとした瞬間、何かを思い出したのか体を生徒達の方へと向けた。

 

「そうだった。実はクラス代表を決めるのを忘れていたんだ。誰かやる者は居らんか? 推薦でも構わんが、分かっているな?」

 

千冬が最後に付け足した言葉に生徒達の多くは頷いた。そしてそれぞれ隣にいる生徒達は誰かいないかと相談し合い始めた。

 

「ねぇねぇ、イッチーは誰になって欲しいとかある?」

 

「ぼ、僕は、特に誰とかは。た、ただ、いじめとかしてこない人だったらいいかな」

 

「そっかぁ。それだときよきよとかつっきーとかが良いねぇ」

 

そう談笑し合っている中、教室で手を挙げる者も推薦の声は上がらずただ隣り同士の話し合いしかなかった。その光景に見かねた千冬が案を出した。

 

「それじゃあやって欲しいと思う者を挙げてくれ。但しこれは推薦ではない。本人がやるかどうかは本人次第だという事忘れない様に」

 

そう言うと、生徒達は隣の生徒達の顔を見合う。そして一人がおずおずと手を挙げた。

 

「あの、私は織斑君が良いと思います」

 

「ほう、その理由は?」

 

「その、えっと…」

 

生徒が理由を全く述べない姿勢に、千冬は大体理由を察せたのかため息を吐く。

 

「珍しいからとか、そう言った理由だろ?」

 

そう問われ、生徒はシュンと項垂れコクリと頷いた。

 

「他の者達はどうだ? 織斑が良いと思っている者、手を挙げろ」

 

そう言われ、おずおずと10人程の生徒が手を挙げた。

 

「はぁ~。物珍しいのは分かる。だが、分かっていると思うが「あ、あの先生」ん? 織斑、どうした?」

 

「ぼ、僕やってみたいです」

 

やると宣言する一夏に千冬は若干驚いた表情を浮かべていた。

 

「ど、どうしてやりたいと言うんだ?」

 

「そ、その、す、少しずつでもいいから、女性にな、慣れる様になりたい、からです」

 

一夏は、緊張や不安など色んな思いがありながらも、自身の症状に向き合おうとしている。千冬は不安な表情を浮かべながらも、本人が頑張りたいと言っている姿に拒否しづらく、しばし思案した後決心した。

 

「分かった。それじゃあ「お待ちください!」…なんだオルコット?」

 

千冬は突然大声をあげ、机に叩きながら立つセシリアに予感的中と内心チッ。と舌打ちを放つ。

 

「何故男などにクラスの代表をさせるのですか! 私、イギリス代表候補生であるセシリア・オルコットこそが相応しいのです! 男などに代表を務めさせるなど、私に(以下省略)」

 

と、長い一夏に対する侮辱発言、そして日本に対する侮辱に日本人の多く生徒が睨むような視線をセシリアに向けていた。そんな中一夏はシュンと沈んでいた。

 

(ま、また僕が出しゃばったせいで、クラスの空気が悪くなった)

 

そう思い落ち込んでいた。無論隣にいた本音はその様子に気付いており、何とか元気づけようと考えるがいい方法が思いつかず必死に考えていた。

すると全く言い返してこない一夏に、セシリアは見下したような目つきを向ける。

 

「あら、何も言い返してこないんですの? 本当、男というは弱いですわね。いっそこのまま此処から出て行かれた方が「だったら貴女が出て行けばいいじゃない」なんですって?」

 

セシリアの言葉を遮る様に一人の生徒が零す。

 

「何度でも言ってあげるわよ。貴女が此処から出て行けばいいじゃない。極東が嫌いなんでしょ? だったらイギリスに帰れば良いじゃない。そうすれば織斑君と一緒に授業も受けないんだし」

 

生徒がそう言いながら立ち上がると、他の生徒達も、そうだそうだ! 帰れば良いじゃない。と同調する。しまいにはクラスのほとんどの生徒達から、帰れ帰れと促され始めた。

 

「な、なんですの貴女達は! これだから品の無い国は嫌なんですわ。私は出て行くつもりは《ガシャン!!》」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

突然教室の扉が蹴破られるように倒れ、生徒達は先程の殺伐とした空気が一気に変わり全員蹴破られた扉の先を見ると、何かが立っていた。それは胴体が長方形でメカで出来ており、頭には機械のうさ耳をしていた。

それはまさにロボットであった。

ウサギのロボットはガシャン、ガシャンと音を立てながら教室内へと入って来た。生徒達は茫然とその姿を見ていたが、一夏だけは呆けた顔を浮かべていた。

 

「め、メサさん?」

 

そう零した。

メサと呼ばれたウサギ型のロボットはセシリアの元まで来てセシリアを見つめていた。

 

「な、何なんですの?」

 

黙って見つめてくるロボットにセシリアは言い知れぬ恐怖が出てくるが、高圧的な態度だけは崩さなかった。するとメサは何処からともなくプラカードを取り出した。其処には

 

【てめぇは、俺を怒らせた。(# ゚Д゚)】

 

と書かれており、空いている右ハンドを変形させ、チェーンソーを出す。

 

「ヒッ!??」

 

ウォンウォンと鳴り響くチェーンソーを近づけられ、セシリアは恐怖から尻もちをつき後ずさる。

 

「め、メサさん。や、止めて」

 

そう声が上がる。メサは体を捻り一夏の方を見ると、びくびくしながらも止めようとしている一夏だった。

 

「ぼ、僕はき、気にしていないから」

 

そう言われメサはチェーンソーを止め右手を元に戻した。

 

【坊ちゃまがそうおっしゃるのであれば、止めます】

 

プラカードをそう一夏に見せた後、セシリアの方にもプラカードを見せる。

 

【命拾いしたな、雌豚( ゚д゚)、ペッ】

 

そう書かれたプラカードを見せた後、メサは千冬の元に向かう。

 

「な、なんだ?」

 

【博士からお電話です】

 

そう伝えると顔の部分が回転し画面が現れると、画面に千冬のよく知る人物が映った。

 

『やっほぉ~、ちーちゃん! 元気してたぁ?』

 

「た、束。やはりこのロボットを作ったのはお前か」

 

何処か見当がついていたのか、それでも呆れた顔を浮かべる千冬。画面の向こうに居る束は、にゃはははは!と笑いながら頷いていた。

 

『もちのろんじゃん! このロボット、メカウサギくん。略してメサ君はいっくんのお世話ロボットだぜぇ! 機能は多種多様で、洗濯、炊事、掃除などありとあらゆることが出来る万能ロボットだぜ! まぁ、基本はいっくんがやっている事の補助的な事だけどね』

 

「なんでまた? ……すまん、今の言葉は忘れてくれ」

 

千冬は束がロボットの開発した理由を聞こうとしたが、直ぐに見当がつき申し訳なさそうに訂正した。

 

『いいよいいよ。いっくんもちーちゃんが忙しいのは知ってるし、偶に帰って来ていっくんが困っている事が無いか相談とか乗ってあげてるから束さんは特に文句は言うつもりはないし。と、あんまり長居すると授業邪魔だね。メサ君、そろそろお荷物置いてお家にって、駄目だよ。いっくんの傍に居たいのは分かるけど、いっくんも頑張って其処に通おうとしてるんだから。いい? ちゃんと帰ってくるんだよ? それじゃあちーちゃん、いっくんばいびぃ~!』

 

画面の向こうでメサと何やら口論?の様なことをする束。そして通話が切れたのか画面から束が消えまた顔に戻るメサ。が、メサはしばし其処から動こうとせず一夏の方を見つめる。

 

「あの、メサさん。ぼ、僕は大丈夫だから、お家の事お願いします」

 

一夏がメサに向かってそう言うと、メサは考えるポーズをとりプラカードを見せた。

 

【…分かりました。坊ちゃまが頑張って克服しようとしてらっしゃるのであれば、涙をこらえます。(ρε;) クスン】

クリン【では、坊ちゃまのお部屋にお荷物を届け次第、家の方に戻ります。学業の方、頑張ってくださいρ(′▽`o)ノ゙ ファイトォ~♪】

 

そしてメサは教室の扉の方に向かい破壊した扉を持ち上げ、はめ直した後出て行った。

 

「……えぇ~、突然の事が起きたが、クラス代表の続きを行う。クラス代表だが、1週間後に試合を行って決めることにする。以上だ」

 

そう言い授業の続きを行おうとするが、一人の生徒が手を挙げる。

 

「あの織斑先生、それだと織斑君が不利なんじゃ?」

 

そう質問すると多くの生徒達が頷く。その質問に千冬はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「根拠は話す事は出来ないが、それは問題ない」

 

そう言い授業の続きを行おうとしたが、チャイムが鳴ってしまい授業は終了となった。




次回予告
お昼休み。一夏と本音は相川清香と鷹月静寐の4人とでご飯を食べることに。
そして放課後、一夏は本音と共に寮にある自室へと到着し寛ぐ。
時が経ち1週間後、クラス代表戦が行われようとした。

次回
のんびり日和、そして戦い


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3話

前回登場したメカウサギ、略してメサのイメージはウサビッチのメカネンコ1号を利口にした感じです。


殺伐だった4限目が終わりそれぞれ昼食をとりに食堂へと向かう中、一夏は鞄の中から弁当を取り出していた。

 

「あれ、イッチーは食堂に行かないの?」

 

隣の席の本音は鞄から弁当を取り出す一夏にそう聞くと、一夏はコクンと頷く。

 

「う、うん。その、食堂には、一杯他のクラスの、生徒が来るから」

 

そう言うと、本音は納得のいった表情を浮かべる。

 

「そっかぁ、いっぱい来るもんねぇ。……あ、良いこと思いついたぁ。ちょっとイッチー、ご飯食べるの待っててねぇ」

 

そう言いながら教室を出て行く本音。一夏は何故待っていてと言って出て行ったのか疑問を浮かべながら待つことに。

暫し待っているとビニール袋を持った本音と、同じクラスの鷹月静寐と相川清香がやって来た。

 

「えへへ、お待たせぇ~」

 

「えっと、一緒にご飯食べてもいいかな?」

 

「私もいい?」

 

「あ、は、はい。じ、自分なんかと一緒でいいなら、どうぞ」

 

そう言うと、それぞれ一夏の近くにある席に座りそれぞれ袋から弁当を取り出す。

 

「その、お弁当はどうしたんですか?」

 

「これ? 実は食堂には手製のお弁当も売られてるんだよ」

 

「コンビニとかで売られている物より栄養バランスとかしっかり考えられて作られてるから、外で食べたいって言う人には持ってこいなのよ」

 

「そ、そうなんですか」

 

一夏はそう言いながら自身のお弁当の蓋を開ける。中身は蛸さんウインナー、卵焼き、ホウレン草のお浸し、そして梅干しの入ったご飯だった。

 

「お、織斑君のお弁当凄いねぇ」

 

「し、しかも何気に蛸さんウインナー入ってる」

 

「さ、最近お弁当作りにはまってて。その、料理をしている時が一番落ち着くから」

 

そう言うと、3人は

 

(((か、可愛いぃ)))

 

と、男子にも拘らずそう思ってしまった。だが無理もない。原作の一夏はキリッとしたイケメンであるが、この作品の一夏は原作より身長が若干低く、その上若干幼い顔立ちの為、かっこいいとと言うよりも可愛いと言う言葉が最初に出てきそうな姿なのだからだ。

 

「な、何か?」

 

「う、うんん! 何でも無いよ」

 

「そ、そうそう。何でも無いよ!」

 

「何でもないよぉ。ねぇねぇイッチー、その卵焼き一つちょうだい?」

 

「え? えっと、ど、どうぞ」

 

一夏はお弁当にある卵焼きを差し出すと本音は弁当から卵焼きを掴み口に運ぶ。口にした瞬間本音はトロンとした顔つきになった。

 

「お、おいひぃ~」

 

「ほ、本音がとろけてる」

 

「そ、そんなに美味しいんだ。何か調理中に加えたの?」

 

「い、いえ。み、皆さんが知ってる調理方法で調理したから、その、家で誰もが食べてる味だと思うんだけど…」

 

そう答えるが、2人はうそぉ?と心の中で思いながら惚けた顔を浮かべる本音を眺める3人であった。

 

※その頃食堂では

和気藹々と楽しい会話などが生まれる食堂。だが、ある一か所だけは重苦しい雰囲気の中昼食をとっているところがあった。

其処にはセシリアと箒が座っており、その向かいには千冬が座ってご飯を食べていた。

 

「どうした、全然減っていないではないか。早く食わんと午後からの授業を腹を空かせたまま過ごす気か?」

 

千冬はそう言いながらご飯を食べる。だが2人は千冬から発せられる威圧感に食べようにも食べられずにいた。

 

さて、何故この二人と千冬はご飯を食べているか。それは二人共一夏の症状を悪化させる要因になると考えた為である。

箒は今朝、一夏に向かって大声で怒鳴る行為。セシリアは侮辱、高圧的態度で一夏に接した。その為昼休みになれば箒はまた一夏に、情けないやら男ならとか自分の価値観を押し付けようとする。セシリアの方も、もし食堂に一夏が居ればまた侮辱などするだろう。そうすれば学園内に居る女尊男卑の生徒も一緒に一夏を苛めようとするだろう。

もしそうなれば一夏の症状は悪化する。

だから千冬は2人を連れて食堂でご飯を食べているのだ。

 

「あ、あの千冬さ「織斑先生だ。で、なんだ?」そ、その一夏は?」

 

「あぁ。アイツなら教室で布仏達と一緒に昼食をとっている。布仏が一緒に居るから私も安心して任せられる」

 

「……な、なんでアイツなんだ。ギリ」

 

「そんなことお前が気にする事ではない。朝にも言った通りお前は織斑に近付くことは許さん」

 

そう言われ手を握りしめ震える箒。

 

「で、ではな、何故わたくしは織斑先生と昼食を?」

 

「決まっているだろう。貴様は極東が嫌いなんだろ? ならば、日本人である私も嫌いだと言う事だ。私は反感を持つ生徒を教育し直すのが得意でな。いざとなればISを使った殴り合いも行う。手始めにまずは貴様も篠ノ之を交えて昼食をとることにした」

 

そう言いながら茶を飲む千冬。千冬の説明を聞いたセシリアは内心あの時の発言に今更になって後悔していた。

ブリュンヒルデである千冬は日本人。更にISを生みだしたのも日本人である篠ノ之束。

つまりセシリアはその二人に対して侮辱したととられる行為をしたのだ。

セシリアは千冬自身を侮辱した為と考え、こういう罰を行っていると見当はずれな考えに行きつく。

 

その後、結局満足に昼食をとれなかった二人は午後の授業をお腹を空かせながら受けるのであった。

 

昼休みが終わりぞろぞろと生徒達が戻って来て5限目の準備を始めていと、千冬がやってきて一夏の元に向かう。

 

「織斑、1週間後の決定戦だがお前のIS、今持ってるか?」

 

「い、いえ。今、束お姉ちゃんが持ってます。その、1週間後には持って行かせるって、さっきメールが、届きました」

 

「そうか。そう言っていたなら問題無いな」

 

そう言い千冬は教壇へと戻って行き、授業を開始した。

5限目が終わり教科書を片付ける一夏。

 

「ねぇねぇイッチー。もしかして専用機持ってるの?」

 

「う、うん。自分の身を守る為のと、その、僕の症状が少しでもいいから緩和されるようにする為に、束お姉ちゃんが用意してくれたんだ」

 

「おぉ~、篠ノ之博士特製って事なんだぁ。凄いねぇ!」

 

「ぼ、僕はいいって、断ったんだけど、護身用の為って強く言われたから」

 

そう言いながら6限目の準備をする一夏。

 

「そっかぁ。でも博士もイッチーの事大切だと思って渡したと思うから大事にした方が良いよ」

 

「う、うん」

 

本音の言う通り、一夏自身も束が自分の身を案じて作ってくれたのは知っている。そしてそのおかげか、自分の身はある程度自分で守れるくらいにはなっている。だがそれでもいざと言う時、怖いものは怖いと考え込んでしまう。

 

因みにセシリアは一夏が専用機を持っていると分かると、負けるのが見えているから謝ったら許してやる。と高圧的に言おうと向かおうとしたが

 

「オルコット。貴様先程の授業、ちゃんと私の話は聞いていたのか?」

 

と睨むような眼で見てくる千冬に呼び止められ、は、はい!と背筋を伸ばしながら先ほどの授業内容を説明させられた。

 

そして放課後となり、ぞろぞろと生徒達が帰っていく中、一夏は教室に残っていた。その傍には本音も居り、一緒に談笑していた。

 

「先生、遅いねぇ」

 

「う、うん」

 

おどおどしながらも待つ一夏。すると真耶が教室内へと入って来た。

 

「あ、織斑君。お待たせしました。これが寮のカギになります。無くさない様にお願いしますね。もし無くしたら出来るだけ早く言ってくださいね。鍵の交換など行わなければいけませんから」

 

「は、はい」

 

一夏は真耶から鍵を受け取り、部屋の番号を見ながら手帳に書かれている寮の部屋番号と照らし合わせる。

 

「イッチー、部屋の番号って何ぃ?」

 

「えっと、1539だけど」

 

「おぉ~、私その隣なんだぁ。あれ、でも私の隣元々倉庫だったようなぁ?」

 

「えぇ? じゃ、じゃあ僕倉庫で「そんな訳ないだろ、織斑」あ、お、織斑先生」

 

倉庫で寝泊まりするのかと考え若干青褪める一夏に、突っ込む千冬。

 

「元々倉庫だった部屋を、お前用に改装したんだ。無論一人部屋だから安心しろ」

 

「そ、そうですか。あ、ありがとう、ございます」

 

「気にするな。ほら、荷解きなどあるだろ、早く帰るんだ。布仏、すまんが一緒に帰ってやってくれ」

 

「はぁ~い、了解であります!」

 

そう言い本音は一夏と一緒に寮へと帰って行った。

その後姿を千冬は満足そうな笑みで見送った。

 

「織斑先生、嬉しそうですね」

 

「ん? まぁ今のアイツの周りには同い年の女子はいないからな。布仏から少しずつ増えていってくれればいいんだが」

 

「そうですね。そう言えば職員室で言ってた野暮用は済んだんですか?」

 

「あぁ、簡単に済む野暮用だったからな。さて私達も職員室に戻るぞ」

 

「はい!」

 

千冬の後に続くように真耶も教室から出て行き2人は職員室へと戻って行った。

 

 

 

その頃IS学園の中にある建物の一つである、剣道場内に箒が寝っ転がっていた。何も知らない生徒からすればサボっているように見えるが、実際は気を失っているのだ。

その訳が数十分前まで遡る。

 

~数十分前・昇降口~

昇降口にて箒は一夏が出てくるのを待っていた。その姿は道場着を着ており、その手には竹刀が握られていた。

 

「全く遅いぞ一夏の奴め。出てきたら道場に連れて行って腑抜けた体に喝を入れてやらんと」

 

そう呟きながら待っていると

 

「おい」

 

「五月蠅い、あっち行ってろ」

 

「…誰を待っているんだ?」

 

「一夏に決まっているだろ。分かったらあっちに《ガンッ!》痛っ!? な、何を…ち、千冬さ《バシン‼》」

 

「織斑先生だ、馬鹿者」

 

そう言いながら箒の頭を叩いた出席簿を降ろす千冬。だがその目は睨んだ眼だった。

 

「篠ノ之、貴様懲りずに織斑に近付こうとはいい度胸だ。先ほど私に向かって馴れ馴れしくした事を含めて道場でOHANASIだ」

 

そう言われ箒は逃げ出そうとするもすぐに捕まり、引き摺られながら剣道場に連れていかれ1対1の剣道が行われ千冬の渾身の面が入り、箒は気を失ってしまったのだ。

 

 

~時間は戻ってIS学園にある寮~

本音と共に寮へと到着した一夏。

 

「それじゃあ、私ここの部屋だから何かあったら呼んでねぇ」

 

「う、うん」

 

そして一夏は早速部屋の鍵を開け中へとはいる。

中に入った一夏は扉に鍵とチェーンを掛けると部屋の奥へと向かう。部屋には一人用のベッドに、机。更にキッチンが備えられていた。

 

「き、キッチンも付けてくれたんだ」

 

一夏は千冬に色々用意してくれたことに感謝し、今度お弁当でも作ってあげようと考えるのであった。

 

そして1週間はあっという間に過ぎ、クラス代表戦の日となった。

アリーナに供えられているピットに一夏は自身用に作られた戦闘機のパイロット用スーツの様なISスーツを身にまとってISが来るのを待っていた。

ピットには一夏以外にも、千冬と許可を貰った本音が居た。

 

そして暫くしてガシャンガシャンと駆動音が聞こえ、扉からメサが現れた。

 

【坊っちゃま、ISをお持ちしましたよぉ!ヾ(*´∀`*)ノ】

 

「あ、ありがとう、ございますメサさん」

 

そう言い一夏はメサから待機形態だと思われる腕輪を受けとる。

受け取った腕輪をはめ展開するよう念じる。

すると目の前が真っ白な光で覆い尽くされた。暫くして光が収まると、周囲は真っ白な世界で覆われていたが、一夏はキョロキョロと何かを探すように辺りを見渡すと

 

〈久しぶりね、一夏〉

 

「ヒエッ!?」

 

突然背後から話しかけられ悲鳴を上げる一夏。

一夏の背後に居たのは、薄茶色のツインテールをした黒色の戦闘服を着ており、頭には猫耳の様なカチューシャをし、目が鋭い少女だった。

 

〈はぁ~。相変わらず怖がりね。この世界に居るのは私達2人だけなんだから、私が来る事くらい分かるじゃない〉

 

「そ、そうだけど、背後からと、突然話しかけないでよ、アイラ」

 

一夏は話しかけてきた少女、アイラに咎めるもアイラはふん。と鼻を鳴らして聞く素振りを見せなかった。

 

〈それで一夏。あんた、あの金髪ドリルに負けるかもしれないとか思って無いでしょうね?〉

 

「お、思ってないよ。た、ただ・・・」

 

〈ただ、何よ?〉

 

「あ、アイラが乗る機体が傷付く姿は見たく《バチン!》痛っ!?」

 

一夏が話している最中にアイラは一夏の額にデコピンをお見舞する。

 

〈何馬鹿な事言ってんのよ。機体が破損したくらい後で修理すれば直るわよ〉

 

「で、でもそれでも…」

 

アイラは一夏の甘さにため息を吐くも、少なからず悪い気はしていなかった。

 

〈だったらアンタがしっかり操縦して被弾を軽減しなさい。私もサポートしてあげるから〉

 

「う、うん」

 

そう言うと一夏の体は消えていった。一人残ったアイラはまた溜息を吐くも、クスリと笑みを浮かべるのであった。

 

〈…本当、甘ちゃんなんだから〉

 

真っ白だった周囲はいつの間にか、ピットに戻っていた。

 

「どうした、織斑?」

 

近くに居た千冬は心配そうにそう聞くが、一夏は大丈夫とだけ答え身に纏っているISの状態を確認する。

武装、姿勢制御、スラスター各部全てオールグリーンと表示されていた。

そして一夏はカタパルトに乗り込む。

 

〈さぁ一夏、あの金髪を叩くわよ〉

 

アイラの声が頭に響き、一夏は小さく頷く。

 

「お、織斑。バレットホーク、出ます!」




・バレットホーク(イメージ:漫画『バスタードレス』ガンホーク)
一夏の為に束が作成したIS。詳しい詳細は次回にて

・アイラ(イメージ:漫画『バスタードレス』原作通りの姿)
バレットホークのコアにいる人格。一夏に対し厳しく接するも搭乗者としては認めている。隠れツンデレで、一夏が見ていないところではデレた表情を見せる。
一夏の症状を緩和できるようにと、治療から悪化防止等を行っている。

次回予告
アリーナへと飛び出した一夏。多くの生徒達は一夏の腕前は初心者だと思い無様に負けてしまう。そう思っていた。だが、その思いは簡単に覆される。

次回
クラス代表決定戦


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4話

ピットから飛び出した一夏が乗るバレットホーク。先に出ていたセシリアはようやく出てきた一夏に怪訝そうな顔を浮かべる。

 

「フルスキン? ふん、そんな重そうなISでこのブルーティアーズに勝てるとお思いですの? どうみても勝敗など決しておりますわ。今その場で土下座して許しを請いましたら赦してあげなくもありませんわよ?」

 

実に上から目線の喋りにアリーナに居た多くの生徒達が不快な顔付になっていた。

 

「何よあの上から目線。まだ勝負も始まってもいないのに、勝った気になってさ」

 

「本当よ。まだ織斑君が弱いって決まったわけじゃないのに」

 

「で、でも織斑君女性恐怖症っていうハンディキャップを抱えているんだよ? ほ、本当に大丈夫かな?」

 

一人の生徒がそう零すと、皆顔をしかめながら俯く。

 

「…分からないわ。けど、今は織斑君を信じるしかないじゃない」

 

「う、うん」

 

1組の生徒達は一夏がせめてセシリアに一発お見舞いすることが出来ればそれで上出来だと思っていた。

そんな中、一夏はと言うとただ黙って立っていた。

 

「……何か言ったらどうですの?」

 

セシリアはそう問うが一夏は何も言わずただ前だけを見つめていた。

 

「ッ!? もう怒りましたわ! 完膚なきまで叩きのめしてあげますわ!」

 

怒りの表情を浮かべながら怒鳴るセシリア。そんな姿でも一夏は何も言わなかった。

 

 

その訳が一夏の目からはブルーティアーズに乗っているセシリアは()()()()()()にしか見えていないからだ。更に観客席にいる生徒達も訓練用人形として映っていた。歓声は普通の話し声程度で聞こえるも、セシリアの声は全く聞こえていなかったのだ。

 

〈あ、あの人なんか、怒ってる?〉

 

〈……さぁ? 何言ってるか全然聞こえてないから分からないわ〉

 

一夏は地団駄を踏むような動きをするセシリアに、怒っているのではとアイラに聞くも知らないと返す。だが本当はアイラには聞こえていた。もし今アイラの姿が一夏に見えていたら恐らく怯えた表情を浮かべるだろう。それだけ彼女の顔は怒りの表情で満ちていた。

 

〈(いい度胸ね、金髪。私の相棒に向かって罵声を浴びせた事。後悔させてやるわ)〉

 

そう思い鋭い視線でセシリアを見つめる。

そんな中、一夏が居たピットではと言うと

 

【おのれ、あの金髪ドリルがぁ。あの時坊ちゃまの御慈悲が無ければ死んでいたというのにぃ。今すぐそのドリル引き千切ってやろうかぁ。(▼皿▼メ)ノ】

 

ピットに備えられているモニターを壊さんと両手で掴むメサ。その姿からはどす黒いオーラが噴き出ていた。

 

「わ、わぁ~。め、メサメサがキレてるぅ。お、織斑先生どうし「うむ、オルコットには戻ってきたら私と1対1で模擬戦をするか。よし、そうしよぉ」わ、わ、わぁ~こっちもキレてるぅ」

 

本音は千冬にメサを止めてもらおうとするも、千冬は怒りのゲージが振り切れてしまったのか笑顔を浮かべ恐ろしい事を零していた。

 

『ではこれより、セシリア・オルコット対織斑一夏君との対戦を行います。カウント、3…2…1、試合開始!』

 

アナウンスが入ると同時にセシリアは高く舞い上がり自身のISに搭載されている無線兵器BITを展開する。

 

「さぁ、惨めに墜ちなさい!」

 

そう叫びながら攻撃を開始してくる。一夏はそれを回避しつつ拡張領域からハンターM202-BD60㎜アサルトライフルを構えながら撃つ。

 

「アイラ、あの飛んでるのって、確か…」

 

〈えぇ。脳波を使って操作する物よ。けど、どうやら彼女は未熟みたいね〉

 

「え? ど、どう言う事?」

 

一夏はアイラが何故セシリアを未熟と言ったのか首を傾げると、アイツを見なさいと言われる一夏。

 

〈今のところ、彼女があそこまで上がってから動いた気配はあるかしら?〉

 

「え? えっと、無かったと思う。そ、それじゃあ」

 

〈えぇ。彼女はBITを動かしている最中はまともに機体を動かせないからあそこから動けないのよ〉

 

そう言われ一夏はハッと理解した表情を浮かべる。

 

「そ、それじゃあ彼女に向かって攻撃すれば――」

 

〈えぇ。向こうは避けるので精一杯になる。そうなればBITなんて操縦している余裕なんて無くなるわ。どうすべきか、分かるわね一夏?〉

 

「う、うん!」

 

一夏はアイラの言葉の真意を理解し、ブースターでセシリアの攻撃を躱ししつつ準備を行う。

その頃セシリアは全く自身の攻撃が当たらない事に苛立ちを募らせていた。

 

(な、何故当たりませんの! わ、私はイギリスの代表候補生。そして学年主席ですのよ! そ、それなのにた、たかがIS初心者の男などに手間取るなど!)

 

怒りを浮かべながら攻撃を続けるセシリア。だが明らかにその攻撃は雑になり始めていた。

 

〈あ~ら、怒りで攻撃が雑になってるわね。一夏、サブアームの操縦権を私に回して〉

 

「う、うん。ぶ、武装出すよ」

 

そう言い一夏は背部にあるウイング、更に肩や腰、さらに脚部からサブアームが出てきてそれぞれのアームの目の前に武器が出される。

 

「なっ!?」

 

その光景にセシリアは驚きの余り声を零す。無論アリーナに居た生徒達も同様だった。突然サブアームが現れそれぞれ武器を手に取っているからだ。

 

「決まれぇ!」

 

そう叫び一夏はトリガーを引くと、それに続いてサブアームの火器も火を噴いた。大量に向かってくる弾丸にセシリアはBITをコントロールするのを止め回避行動に移る。セシリアはBITを自身の周りで飛ばしながら攻撃を行うが、向こうは攻撃しながら回避を行う。更にサブアームは常に自身を狙って攻撃をおこなってくる。

 

(な、何故ですの!? サブアームも同じように脳から送られてくる波長で動かしているはず。だから自身の動きには若干のタイムラグが生まれるはずだというのに、そ、それがい、一切無いとはど、どう言う事なんですの!?)

 

セシリアの見解は確かに正しい。人間は一度に2つの事を考え行動するのは難しい。故にセシリアはBITを動かしている最中は動きが止まってしまうが、BITを使い自身で狙い撃てる位置まで誘導するために絶えず攻撃の手を止めない戦法をとっていた。

だが一夏は機体を動かしながらサブアームを動かしている。つまり自分が出来ない事を平然と出来ていると思い込み、セシリアの表情に焦りの表情が生まれる。

 

だが実際はサブアームを動かしているのはコアにいるアイラであり、一夏は自身の機体だけ動かしているだけに過ぎない。

つまりバレットホークはコアにいるアイラ、そして操縦している一夏。この二人が信頼し合っているからこそ初めて本領が発揮される機体なのである。

 

〈あの金髪、どうやらアンタの動きに驚き過ぎて攻撃が明後日の方向に向かっていたりしているわ。一夏、バタリングラムであいつ叩き落してやりなさい〉

 

「うん」

 

一夏は右腕のアサルトライフルを弾切れになり沈黙していたサブアームに託し、拡張領域から破城槌を取り出す。

そして一気にブースターでセシリアに接近する。近付いてくる一夏にセシリアは恐怖しBITで攻撃しようとするもサブアームの火器によって落される。

 

そして高く飛び上がりバタリングラムを構える一夏。セシリアは引き攣っていた顔から笑みを浮かべる。

 

「残念でしたわね。BITは6機ありましてよ!」

 

そう叫びミサイル型のBITを放ってくる。BITは一夏の元に向かい爆発四散する。

それを見た滲み出ていた汗を流しながら笑う。

その時、爆発した黒煙から目を放した瞬間、セシリアの命運は決まった。

 

「ふ、ふん。ま、まぁここまで出来たことは褒めてあげますが、やはり勝利するのはこの「てやぁああ!」ガハッ!!?」

 

誰も聞いていないにもかかわらず話すセシリアに、一夏は躊躇いもなくバタリングラムを叩き込む。叩き落される直前、セシリアが見えたのは脚部から伸びるアームが持っているマシンガンが自身を狙っている光景だったが、その前に地面に着くのが先で強い衝撃と共にセシリアは意識を手放した。

 

『そこまでぇ! セシリア・オルコットさんが戦闘不能になりましたので、勝者は織斑一夏君です!』

 

アナウンスがそう告げると、アリーナに居た多くの生徒達が歓声を高々に上げた。

音量が下げられているが歓声が上がっている事に一夏は照れた表情を浮かべ、そそくさとピットへと戻ろうとするが、ふと地面に横たわっているセシリアの方に目を向ける。

 

「か、彼女運んだほうが〈教師が来るから放っておきなさい〉で、でも〈い・い・か・ら!〉は、はひぃ!」

 

アイラからの圧力に一夏は涙目で返事してピットへと引っ込んだ。その後セシリアは教師がやってきて回収された。

ピットへと戻って来た一夏。出迎えたのは

 

【流石です坊ちゃまぁ! 坊ちゃまのご勇姿、4K映像で録画しておきましたぁ!ヤッタァー!\(`∇\)(/`∇)/ヤッタァー!】

 

「よくやったぞ、一夏。それとメサよ、その映像後で私にも送ってくれ」

 

「イッチー、カッコよかったよぉ!」

 

と、桜の紙吹雪をまきながら出迎えるメサと普通に喜んで出迎える本音。そして笑顔で迎え、メサが録画した映像を送って貰おうと頼む千冬。

 

 

「う、うん。ただいま」

 

「さて、一夏。専用機を持つ者にはこのぶ厚い本を渡しておく。後で目を通しておけよ」

 

「は、はい」(お、重い…)

 

手渡されたぶ厚い本を渡され一夏はプルプルと腕を震わせるが、直ぐに拡張領域へと仕舞いこむ。

 

「さて、後は教師の『ガンガン!』……一夏、ちょっと此処で待って居ろ」

 

突然ピットと廊下を繋ぐ扉が叩かれ、千冬は直ぐに誰が叩いたのか察し出席簿を片手に扉へと向かい開ける。

扉が開くと其処には箒が立っていた。

 

「一夏! なんだあのた「フンッ!」痛っ!!??」

 

怒りの形相で一夏を怒鳴っていた箒。だが開いた先に居た千冬の出席簿によって思いっきり頭をしばかれ頭を抑えながら蹲る。

 

「まったく。貴様は理解するという言葉を知らんのか? 何度も私の忠告を無視するとはいい度胸だ。説教するから来い。織斑、もう今日は上がっていいぞ。後は教師の仕事だからな」

 

そう言い蹲る箒の首根っこを掴み引きずりながらピットから去っていた。

突然の事に一夏は茫然と言った表情を浮かべ、メサは一夏の前に立っていた。

 

「イッチー、帰ろ?」

 

隣にいた本音にそう言われ一夏はコクリと頷く。するとメサがプラカードを一夏達に見せる。

 

【またしばらくお会い出来ない事は寂しいですが、私もお家へと戻ります。~(mToT)/~~~ サラバジャー】

 

「う、うん」

 

「ばいば~い!」

 

二人に見送られながらメサはピットから出て行った。残った二人もピットから出て寮の部屋へと戻りゆっくりと休んだ。

 

その日の夜、一夏はコアの世界でアイラと会っていた。

 

「そ、それでアイラ。き、今日の戦闘どう、だった?」

 

〈ん? まぁ、60点くらいじゃない?〉

 

「うぅ。今日は60点くらいかぁ」

 

一夏は何時も操縦訓練や射撃訓練をした時にアイラにどうだったか点数を付けて貰っていた。最初の頃は低い点数ばかりだったが、ここ最近は漸く50点を超える様になったのだ。

 

〈攻撃の避け方は加点に値するけど、所々余裕がなくてブースターを吹かしたりしたでしょ? つまり無駄な動きが若干残っている証拠よ。それと最後にバタリングラムを叩き込むとき、アイツにはまだミサイル型BITがあるの忘れてたでしょ?〉

 

「…う、うん」

 

〈止めを刺すとき程油断するな。何回も言ったじゃない〉

 

「ご、ごめん」

 

アイラに叱られ、シュンとなる一夏。その姿にアイラは少し言い過ぎたと思い、照れた表情を浮かべ明後日の方向に顔を向ける。

 

〈ま、まぁ。サブアームが持っている武器が弾切れを起こしそうなのを素早く交換したりしたのは、その、良かったわよ〉

 

「そ、そう? よ、良かった」

 

落ち込んでいた表情からはにかみながら笑顔を浮かべる一夏に、更に照れた表情を浮かべるアイラ。

すると一夏は大きな欠伸を零す。

 

「ごめん、アイラ。そろそろ僕寝るね」

 

〈そう。それじゃあ、お休み〉

 

「うん、お休み」

 

そう言うと一夏の体はすぅーと消える。一人残ったアイラは少し寂しそうな表情を浮かべる。

 

〈はぁ。昔だったら一人は平気だったけど、今は少し寂しいわね〉

 

そう零しながら同じく体を消すアイラ。




次回予告
クラス代表決定戦から翌日。教室でクラス代表が一夏と発表されようとした時、セシリアは己の行動を謝罪した。そして一夏はクラス代表を補佐する副代表を決めることにした。
無論またひと悶着あったが、無事に決まった。
その日の放課後、クラス代表を祝うパーティーが1組の生徒のみで行われた。無論最強の番兵付きで
次回
クラス代表と副代表~モグモグ、おいひぃ~


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5話

クラス代表決定戦の翌日の朝。一夏は眠気に抗いつつも体をむくりと起こし、大きな欠伸を零す。

 

「ふわぁ~。アイラ、おはよぉ」

 

〈えぇ、おはよ。ほら、さっさと登校準備しなさい〉

 

せっつかれながら一夏はベッドから起き上がり、洗面台へと赴き洗顔と歯磨きを終え、制服に着替えキッチンへと立つ。

 

「今日は、簡単な物でいいかな」

 

そう言いながら一夏はトーストにハムと黒コショウをかけた目玉焼きを乗せる。

皿に盛り付けたトーストを机の上に置き、テレビを見ながら一夏は頬張っていると扉をノックする音が鳴り響く。

一夏はビクッと肩を跳ね上げそっと扉の方に顔を向ける。暫くすると

 

『イッチー、おはよぉ~。教室一緒に行こぉ~』

 

と本音ののんびりとした口調が扉の向こうから聞こえ一夏は一安心した表情を浮かべる。

 

「ちょ、ちょっと待ってて」

 

そう言い一夏は残ったトーストを口に放り込み、ミルクで流し込む。そして鞄を持って扉を開けると、何時もと変わらないダボダボの袖の制服を着た本音が立っていた。

 

「お、おはよう本音さん」

 

「うん、おはよぉ。一緒に行こぉ」

 

一夏は頷き、本音と共に校舎の方へと向け歩き出す。暫く2人で談笑しながら歩いていると教室に到着し中へと入り席に着く。

暫し談笑を続けていると続々と生徒達が教室へと入って来て2人に挨拶を交わしながら席に着いて行く。

そしてSHR開始のチャイムが鳴り響き全員が席に着くと同時に真耶と千冬が教室へと入って来た。

 

「諸君、おはよう」

 

「「「「おはようございます!」」」」

 

「うむ。それじゃあ昨日の試合の結果を「あの、織斑先生」ん? なんだオルコット?」

 

おずおずと手を挙げるセシリアに鋭い目を送る千冬。

 

「その、先日の事を皆さんに謝罪したいのです」

 

「……いいだろう。但し短めに行え」

 

暫し思案した後に許可を出す千冬。セシリアはありがとうございます。と一礼後、体を生徒達の方へと向け深々と頭を下げた。

 

「日本の事、そして皆さんの事を馬鹿にした発言をしてしまい本当に申し訳ありません」

 

深々と頭を下げた状態でセシリアは謝罪の言葉を口にする。

しばしの沈黙が流れた後、生徒の1人が口を開く。

 

「…私も少し言い過ぎたわ。ごめんなさい」

 

そう言うと次々に謝罪の言葉を口にする生徒達。

 

「い、いえ。最初に私が侮辱した発言が事の発端なので。それと、織斑さん。貴方にも高圧的に接してしまい、申し訳ありません」

 

「ぼ、僕は気にして、無いので大丈夫、です」

 

気にしていない。一夏がそう言うとセシリアは暗かった表情からパァーと明るい笑顔を浮かべる。

 

「そ、それではですね。わ、私の事は「謝罪は済んだろ。さっさと座れ」ま、まだ済んで「済・ん・だ。いいな?」は、はい」

 

セシリアが何か企んでいると感じ取った千冬が有無を言わせぬ圧で終わらせた。

 

「ではクラス代表の発表を行う。山田先生」

 

「はい。クラス代表は織斑君となりました。あ、一繋がりで何だかいいですね」

 

手を合わせながらにこやかに言うが、当の一夏は若干困惑の表情を浮かべていた。

 

「どうしたのイッチー?」

 

「な、何で一繋がりだから、良いって言うのか分からなくて」

 

そう零すと、多くの生徒が理由は?と言いたげな視線を真耶に送る。真耶はえっとぉ。と視線を逸らす。

 

「山田先生。何も考えずに発言するのは止めるように」

 

そう言いながら千冬は出席簿で肩を叩きながらため息を吐く。

 

「す、すいません」

 

と若干涙目で謝罪をする真耶。

 

「それじゃあ織斑。クラス代表として挨拶を「あ、あの、織斑先生」ん? なんだ織斑?」

 

「そ、その、ふ、副代表を、決めたい、です」

 

「副代表をか? 何でだ?」

 

「その、ぼ、僕が突然、休んだ場合いた方が、その良いと思いましたし、後相談、出来る人が近くに居てくれると、嬉しいです」

 

オドオドしながらも訳を話す一夏に、千冬はふむ。と声を零しながら思案するもすぐにうむ。と頷く。

 

「分かった。それじゃあ、副代表になって欲しいという者は居るか?」

 

「は、はい」

 

一夏の言葉に多くの生徒達はやっぱりかと何処か納得のいった表情を浮かべており、セシリアは笑みを浮かべながら机に手を置きながら立てる準備に入っていた。

 

()()()()()()、その、やってくれませんか?」

 

「ほへ、私?」

 

一夏は隣にいた本音にお願いした。その光景に多くの生徒がやっぱりね。と優しい笑みを浮かべていた。

 

「は、はい。そ、その駄目、でしょうか?」

 

「ううん。良いよぉ」

 

快く了承する本音に一夏はホッと一安心した表情を浮かべ席に着く。

 

「うむ。副代表も無事に決まったようだから、SHRの続きを「ま、待って下さい!」チッ。なんだ、オルコット?」

 

無事に終わってSHRの続きが出来ると思った矢先にまた声を荒げるセシリアに、千冬は小さく舌打ちを放った。

 

「な、何故副代表を布仏さんにやらせるのですか? 副代表でしたら、同じ専用機持ちである私がいいのでは?」

 

「だ、だったら私は一夏の幼馴染みだ! 私の方が良いに決まってる!」

 

「篠ノ之さんは専用機持ちではありせんし、それに織斑先生から接近禁止を言い渡されておりますでしょ」

 

「そ、そんな物今関係ない!」

 

セシリアと箒は言い合いを行っている中、周りの生徒達は呆れた表情を浮かべていると千冬がチョーク箱から2本チョークを取り出し投げる構えを取り、そして

 

「フンッ!」

 

と勢いよく2人に向かって投げた。チョークは2人の頭にめがけて飛ぶ。そしてバチンと音が教室内に鳴り響く。

 

「「痛っ!?」」

 

「勝手に騒ぐな。騒ぐなら此処から出て行って何処か人の迷惑のならないとこでやれ」

 

睨みながら言われ2人は渋々と席に着く。

 

「副代表は布仏で決定。異論がある者は手を挙げろ」

 

そう言うとセシリアと箒以外手を挙げる者は居なかった。

 

「よし、多数決で布仏が副代表である事を此処で決定とする。SHRの続きをするぞ」

 

そう言い千冬はSHRの続きを行った。

 

~アリーナ~

アリーナで1組の生徒達が整列していた。生徒達の前にはジャージ姿の千冬と同じくジャージ姿の真耶が立っていた。

 

「よし、これよりISの実技訓練を行う。まず専用機持ちのオルコットと織斑前に出ろ」

 

そう言われISスーツ姿のセシリア、そして戦闘用の服装を着た一夏が前に出るが、セシリアと若干距離を置いていた。

 

「あ、あの。もう少し近くの方が」

 

「い、いえ。展開するとき、その、邪魔になるといけないので」

 

「大丈夫ですわ。で、ですからもう少し此方に「織斑の言う通り少し幅を開けなければいかんだろうが」…は、はい」

 

千冬に注意され、顔を伏せるセシリア。セシリアの行動に千冬は薄々感づいていた。

 

(こいつ、一夏に惚れたのか? ……よし、来年別のクラスに飛ばすか)

 

一夏の事を馬鹿にしておきながら、自分より強いと分かった瞬間に惚れました。そんな都合のいい話など存在しない。千冬はそう考えており、今朝の行動などから一夏の事を全く考えておらず自分の都合を押し付けている。

千冬はそんな厄介な存在がまた増えたと考え心の中でため息を吐いた。

 

「よし、ISを展開しろ」

 

そう言われそれぞれ展開するが、一夏の方が早く展開した。

 

「うむ、それじゃあ飛べ」

 

千冬の指示に一夏、セシリアと空へと飛びあがる。一夏はぐんぐんとスピードを上げて上って行く。

 

〈一夏、今前回よりも早めのスピードで上に上がってるけど大丈夫ね?〉

 

〈う、うん。このくらいならまだ大丈夫〉

 

アイラと会話しながら上に上がっていると、気付けば一番上辺りまで来ていた。

セシリアは一夏と地上の丁度中間あたりで上を見上げながら驚いていた。

 

〈あ、あれ? 上り過ぎた?〉

 

〈そうみたいね。まぁいいんじゃない〉

 

そう言っていると、地上に居る千冬から声がかかる。

 

『随分上がったな、織斑。よし、其処から急速降下して地上10センチで停めろ』

 

〈アイラ、い、行ける?〉

 

〈愚問ね。私がタイミングを教えるからアンタは私を信じて降下しなさい〉

 

そう言われ一夏はアイラを信じて降下を始めた。

地上がだんだんと近付いてくる。そして

 

〈今よ、一夏〉

 

アイラの合図を聞き一夏はブレーキを掛けると、段々とスピードが落ち空中で停止した。千冬は定規を持ってバレットホークの脚から地面の差を測る。

 

「10㎝ジャストか。私の指示通りにしたのは良いが、下りてくるときのスピードが速くて此方が冷や冷やしたぞ」

 

千冬はため息を吐きながら注意する。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「次は気を付けるんだぞ。よし、オルコット。次はお前だ」

 

そう言われオルコットが地上に降りてくる。そしてブレーキをかけて降りて来て空中で止まる。

 

「11.5㎝。途中で怖くなってブレーキを強くかけ過ぎたのが原因だな」

 

「しょ、精進します」

 

そして地上に降りてきた2人にそれぞれ並ぶよう指示する千冬。

 

「よし、それじゃあそれぞれ武器を出せ」

 

そう言われ、最初にセシリアが自身のライフルを取り出し決めポーズをとる。

可憐に決まったと思っているセシリアだが、千冬は鋭い目つきで睨んでいた。

 

「おいオルコット。貴様、まだ織斑に恨みがあるなら再教育するぞ」

 

「い、いえ! う、恨みなどもうありませんわ!」

 

「だったらそのポーズを止めろ。今すぐに!」

 

千冬に怒鳴られセシリアは即刻ポーズを止める。千冬が怒鳴った理由は銃口が一夏の方に向けられており、一夏が若干ビクッと怯えたのだ。

 

「よし、それじゃあ次織斑」

 

「は、はい」

 

一夏は手を前に出したと同時アサルトライフルを出した。

 

「0.2秒。早いな。よし、それじゃあ次はサブアームを展開して全部に武器を持たせてみろ」

 

「わ、分かりました」

 

千冬の指示に一夏はサブアームを展開する。そして手が現れた同時に武器を全サブアームの前に出して握らせた。

 

「サブアームを展開してから全武装するまで2秒か。常人なら難しい事をやってのけるとは、流石だな織斑」

 

優しい笑みで褒める千冬に一夏はフルスキンの為顔は周りには見えていないが真っ赤に染まっていた。

 

「それじゃあオルコット。次はお前だ」

 

「はい」

 

そう言いセシリアは手を前に出すも、なかなか出て来ず渦状の物が出ているだけだった。

 

「どうした? 織斑だったらもう10回以上は武器を出し終えているぞ」

 

「もう、インターセプター!」

 

我慢できず声で近接装備を取り出すオルコット。

 

「遅すぎるな。近接に持ち込まれたら即落とされているぞ」

 

「も、持ち込まれる前に「ほぉ。この前織斑に近接で叩き落されて気を失っていた癖にか?」うっ!?」

 

痛い所を付かれ声を漏らすセシリア。そしてつい一夏の方に目を向け睨んでしまう。

 

「睨むな、馬鹿者」

 

バチンと出席簿で叩かれるセシリア。絶対防御があるはずなのにセシリアは痛みから蹲る。

 

「よし、それじゃあ君達にもISを纏って貰いたいところだが、時間が無い為本日は以上とする。各自解散!」

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

そう言いぞろぞろとアリーナから退出していく生徒達。一夏もISから降り帰ろうとする。

 

「ねぇねぇイッチー」

 

「ほ、本音さん。な、何か?」

 

「あのね、今日食堂でイッチーのクラス代表のお祝いパーティーやるんだけど、来ない?」

 

「ぱ、パーティーですか? その、う、嬉しいですけどほ、他のクラスの人とか「大丈夫だよ。食堂を貸し切りででやるし、他のクラスの人はご遠慮くださいって貼紙張るから」そ、そうですか。わかりました、参加します」

 

本音は笑顔を浮かべやったぁと喜び、其処まで喜ぶことなのだろうかと疑問を浮かべながら首を傾げる一夏。

 

授業が終わり放課後となると一夏は鞄に教科書などを仕舞い教室から出て行く。

 

「あ、イッチー待ってぇ」

 

そう言いながら本音は一夏の横に並ぶ。

 

「一緒に帰ろぉ」

 

「う、うん」

 

そうして一夏と本音は一緒に寮へと帰って行く。2人が並んで帰って行く姿に教室に居た生徒達はほんわかした表情で見送っていた。

 

「なんか、本音さんがお姉さんで一夏君が弟みたいに見えるね」

 

「うん。なんか、和む光景だったね」

 

「心が、安らいだなぁ」

 

ほんわかした表情で見送る生徒達とは対照的に、しかめっ面になっている2人が居た。セシリアと箒であった。

 

(むぅ~、布仏さんが羨ましいですわ。大体何故彼女を副代表に選ばれたのか未だに納得できませんわ。同じ専用機持ちとして私の方が相談しやすいですし、その、分からない事などあれば手取り足取りとお教えしますのに)

 

(一夏の奴、デレデレとしおってぇ! しかもなんだアイツは! わ、私は接近を禁止されているというのに簡単に一夏の傍にいきおってぇ!)

 

2人がしかめっ面を浮かべている中、生徒達は

 

「あの二人なんかしかめっ面浮かべてない?」

 

「うん、浮かべてる。また織斑君に迷惑かける気なのかな?」

 

「たぶんそうじゃない。あの二人にパーティーの事話した?」

 

「ううん。だって話したら滅茶苦茶にしそうだもん」

 

確かに。と皆頷く中一人不安そうな表情を浮かべる生徒が居た。

 

「でも何処からパーティーをやる事が漏れるか分からないし、何か織斑君を守る方法を考えないと不味くない」

 

「うん。でも、方法なんて…あっ! 良いこと思いついた」

 

「なになに?」

 

「あのね――」

 

生徒の一人が耳打ちで話す内容にそれいい!と賛同の声を漏らす。

そして生徒数人が教室からでてある場所に向かって行った。

 

そして――

 

「それじゃあ」

 

「「「織斑君、クラス代表。そして布仏さん、副代表おめでとう!」」」

 

祝福の声が上がるとと同時クラッカーが鳴り響く。

 

「えっと、あ、ありがとう、ございます」

 

「えへへ、ありがとねぇ!」

 

照れた表情を浮かべながらお辞儀をする一夏と笑顔を浮かべる本音。そして皆の前にはお菓子やオードブルの料理が並べらえていた。

一夏は開始の挨拶終了後、直ぐに隅の方に引っ込み静かに持参したジュースを口にする。

すると本音が料理一杯のお皿を両手に持って一夏の元にやって来た。

 

「イッチー、料理持ってきたよぉ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

本音から料理を受け取るも一夏は手を付けようとしなかったが、隣に座った本音がぱくりと自分のお皿の料理を口にする。

本音が持ってきた料理はほとんど一夏と同じ物ばかりだった。

 

「ハムハム、美味しぃ」

 

幸せそうに食べる本音を見て一夏も食べ始めた。最初はちびちび食べていたが、気付いたら口一杯にご飯を食べていた。

 

「ハグハグ、ん。美味しい、です」

 

「本当だねぇ。あ、お代わり欲しかったら言ってね。取りに行くから」

 

「あ、ありがとう、ございます」

 

一夏と本音が仲良く食べている姿に皆ほんわかした表情で見ていた。そんな一夏達の座っている席の近くには

 

「ふむ、久しぶりに食堂で飯を食べたが旨いな」

 

と千冬が一夏達と同様にオードブルの料理を食べていた。そう、教室で生徒達が話していた対策とは千冬をパーティーに参加させることだった。

生徒達が職員室へと行き千冬に訳を話した所快く承諾し一夏の近くの席で参加したという訳だ。

 

そして案の定何処からかパーティーの事を聞いたセシリアと箒が参加していたが、千冬が一夏の傍に居た為近づけず悔しい顔を浮かべていた。

 

そして問題事など起こることなくパーティーは無事に終わりそれぞれ部屋へと帰って行った。




次回予告
学年別クラス代表戦が近付いている中、1組では2組に転入生が入ってくる話題で持ちきりだった。すると突然扉が開き一人の少女が現れ一夏に突撃をかましてくる。

次回
中華娘参上


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6話

クラス代表決定戦から数日が経ったある日の朝。一夏は何時もと変わらず本音と共に教室へと到着し席へと着く。

するとその傍に清香と静寐がやって来た。

 

「ねえねえ、2組に転入生が入ってくる情報知ってる?」

 

「ううん、知らなぁい。イッチーは?」

 

「ぼ、僕も知らない、です。と、というよりもぼ、僕はあまり関わりたくないです」

 

一夏はオドオドしながらそう答え教科書を机に仕舞う。

 

「そうだよねぇ。まぁ、よそのクラスだからイッチーには関係ないもんねぇ」

 

「けどクラス代表戦の時はその2組の代表と戦わないといけないけど…」

 

「でも確か2組の代表って専用機を持ってないって聞いたよ」

 

「そうなの? それじゃあ専用機持ちは実質1組と4組だけ?」

 

「恐らくね」

 

清香と静寐がクラス代表戦の事を話し合っている中、一夏は本音にある事を聞いていた。

 

「あの、本音さん。そのクラス代表戦には勝つと何か、貰えたりするんですか?」

 

「うん。優勝すると食堂のデザート食べ放題のパス券が貰えるんだぁ」

 

「そう、なんですか。だ、だからあそこが燃えてるんですか?」

 

そう言い一夏は教室の奥に居る生徒達の方に目を向ける。其処には

 

「皆、織斑君を応援するために横断幕やらなにやら準備するわよ!」

 

「もちろん!」

 

「分かってると思うけど、織斑君の症状を考えて出来るだけ目立たない程度で応援するわよ!」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

と燃えている生徒達が沢山いた。

 

「燃えてるねぇ」

 

「う、うん。……も、もし負けたら、お、怒られるのかな?」

 

燃えている生徒達の姿を見て一夏は負けた時の事を想像してしまったのか、顔が若干青褪めて震えていた。その姿を見た本音は慌てて元気づけようと近寄る。

 

「そ、そんなことないよぉ。負けても誰もイッチーの事責めたりしないよぉ」

 

「…そ、そう、なんでしょうか?」

 

まだ青ざめた表情を浮かべ若干涙目な一夏。その姿に応援しようと燃えていた生徒達が気付き慌ててフォローする。

 

「う、うん! お、織斑君が負けても責めたりしないって!」

 

「そ、そうだよ! それにデザートフリーパスは確かに欲しいけど、タダでデザートが食べ放題だと食べ過ぎて太っちゃうかもしれないしね」

 

「そうそう! フリーパスは二の次で本命はかっこいい織斑君の戦っている姿だから!」

 

皆一夏の為に色々フォローを入れたりする。そのおかげか一夏の顔は若干平常に戻って来た。

 

「…わ、分かりました。で、出来るだけが、頑張ります」

 

一夏そう答えると皆一様に安堵した表情を浮かべた。

すると突然一夏の背後にあった扉が勢いよく開き、一人の少女が飛び込んできた。

 

「一夏ぁ! 会いたか「させるか」グヘッ!?」

 

突然飛び込んできて一夏に突撃しようとした少女。だが千冬が突如現れそれを阻止するように首根っこを掴む。

 

「もうすぐSHRが始まるからさっさと帰れ、凰」

 

「で、でも千冬さ「織斑先生だ。さっさと帰らなければ首根っこを引き摺ってでも連れて行くぞ」す、直ぐ帰ります!」

 

そう言い凰と呼ばれた少女は足早に帰って行った。千冬ははぁ。とため息を吐こうとしたが一夏の事が先だと思い振り向くと、案の定発作が起きており腕に注射を打っていた。

 

「だ、大丈夫か一夏?」

 

「…は、はい」

 

若干顔は青ざめており震えている様子であった。

 

(無理も無いか。突然背後から大声を叫ばれた上に突撃してきたんだからな)

 

「…布仏、もし織斑の表情がまだ青かったら保健室に連れて行ってやってくれ」

 

「わ、分かりましたぁ」

 

本音の返答に千冬は申し訳なさそうに、済まない。と返し教卓へと向かいSHRを始めた。

それから暫くして一夏の症状は落ち着き始め表情が平常に戻って来た。そして1限目が始まりそれぞれ千冬が話す内容を真剣にノートなどにとっていた。

 

「よって此処の答案はこの通りになる。では、この問題をセシリア、お前が解け」

 

千冬はそう言いセシリアの方に顔を向け、問題を解くよう指名するが本人は真剣な表情で考え込んでいた。

 

(今朝の方、一夏さんとは一体どう言ったご関係なんでしょう? ま、まさか恋人とか! そ、そんなはずありませんわ。一夏さんは女性恐怖症、つまり恋人ではない。では一体)

 

思案に耽っているセシリアに千冬はチョークを取り出し思いっ切り投げつける。チョークはセシリアの頭部に命中しセシリアは上体を大きく仰け反った。

 

「私が何度も呼んでいるというのに無視とはいい度胸だな、オルコット」

 

「も、申し訳ありません」

 

「じゃあこの問題を解け」

 

そう言われセシリアは指定された問題を見たがすぐに答えが出て来ず俯く。

 

「わ、分かりません」

 

「人の話を聞かずに思案に耽っているからだぞ。よし、篠ノ之。お前が解け」

 

セシリアを座らせ箒に解くように指名し顔を向けるが、箒もセシリア同様に考えに更け込んでいた。

 

(あの突撃してきた者、一夏の知り合いか? 私の記憶にはあんな奴いないし。まさか私が引っ越した後に来た奴か? だとすると辻褄は会うが、どういう関係なんだ? ま、まさか恋人なのか? い、いやまさかな)

 

思案に耽っていると傍に誰かいる気配を感じ顔を向けると、目元をピクピクと痙攣させながら睨む千冬が其処に立っていた。

 

「貴様もか、篠ノ之」

 

「あ、いや。その千冬さ」

 

言い訳を言おうとする箒に千冬は有無を言わず箒の頭に出席簿を振り下ろす。

 

「痛っ!?」

 

「織斑先生だ、馬鹿者。それで篠ノ之、あの問題の答えは?」

 

「……分かりません」

 

「分かった、もういい座れ」

 

そう言い教卓へと戻る千冬。その後の授業も何度も2人は千冬に指定されるが、思案に耽って話を聞いていなかった為、問題の答えを答えることが出来なかった。

4限目の終わりごろ千冬は二人に対し、

 

「オルコット、篠ノ之。放課後に補習授業を行う。勝手に帰ったら明日の宿題を2倍にするからな」

 

睨んだ眼付きで2人に告げる千冬にセシリアと箒はガックシと首を墜とすのであった。

 

そしてお昼頃、一夏は何時もと変わらず鞄からお弁当を取り出していると

 

「「お前(貴方)の所為で怒られたではないか(ですか)!」」

 

「ヒッ!? そ、そんな事、言われたって」

 

突然怒鳴って来たセシリアと箒に一夏は怯え縮こまる。すると周りの生徒達が非難めいた顔を浮かべる。

 

「ちょっと。二人が怒られたのは自業自得じゃない」

 

「そうよ。織斑君は何も悪いことしてないじゃない」

 

そう言われ何も言えず口を尖らせる2人。一夏は直ぐにこの場から離れたいと考えていると、本音が一夏の服の袖を引っ張る。

 

「な、なんですか?」

 

「今日は屋上に行こぉ。今日は屋上が解放されているんだけど、誰も知らないと思うから静かだと思うし」

 

「そ、そうなんですか? そ、それじゃあ行きます」

 

そう言い一夏は本音の案内の元屋上へと向かう。その後姿に気付いた箒たち。

 

「お、おい一夏! 何処に行く気だ!」

 

「い、一夏さんお待ちになってください!」

 

そう叫び一夏の後を追おうとする2人。だがその行く手を阻む様に立つ生徒達。

 

「させるかぁ!」

 

「みんな壁を造るわよ!」

 

「ディーフェンス、ディーフェンス!」

 

2人を阻むように壁をつくる生徒達。

無論2人はそれを越えようとするも、人数の差によって阻まれる。

そうこうしているうちに1人の生徒が教室に駆け込んで来た。

 

「アタッカー連れて来たよ!」

 

生徒の言葉に壁をつくっていた生徒達は壁をつくるのをやめ、2人を廊下に行かせる。

何故壁を崩したのか疑問に持ちつつも、2人は一夏を追いかけようと廊下に出た瞬間

 

「ほぉ? 何やら一夏の昼食を妨害しようとしている奴がいると聞いてきたらお前達か」

 

そう声が彼女達の真横から響き、2人はその声にガタガタと震えながら首を声の方向に向けると、般若の面を背後に浮かべ鋭い視線を向ける千冬が居た。

 

「お、織斑先生…」

 

「昼食だが、丁度いい。また以前と同じように共に食べようではないか。あぁ、逃げても構わないぞ。逃げられたらな?

 

最後に恐ろしい感じに言われながらも、2人は逃げようとするも二人の首根っこを千冬は目にも止まらない速さで掴んだ。

 

「遅いな。それじゃあ行くぞ」

 

そう言い二人を引き摺りながら食堂へと向かう千冬。

 

「た、助けてくれ!」

 

「だ、誰かぁ!」

 

二人は教室から覗く生徒達に助けを述べるも

 

「「「「「(-∧-)合掌・・・」」」」

 

と言いながら手を合わせて見送った。

 

 

 

その頃一夏と本音は人がほとんどいない屋上で二人のんびりとお弁当を食べあったのだった。




次回予告
授業が終わり教室から寮へと帰って来た一夏。部屋で寛いでいると千冬が部活動に関する書類を持ってやって来た。暫くしていると扉をノックする音が鳴り響いた。

次回
記憶違い~や、約束って何?~


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7話

後半はシリアス展開となっています。


騒々しかった昼休みは終了し、昼食後の眠気と戦いながら生徒達は午後の授業に臨んでいた。

無論1組の生徒達も同様に眠気が襲ってくるが、誰一人として居眠りなどするわけにいかないと心に決めている。

何故なら居眠りをしようものなら千冬の容赦ない出席簿の眠気覚ましの攻撃が降ってくるからだ。だが

 

「…ウトウト」

 

と頭が前後にゆらゆらと動く一夏の姿があった。

無論一夏も眠ってしまえば千冬に怒られると分かっている為眠気に襲われながらも必死に抗っていた。

そんな一夏の姿にこっそりと覗き見ていた生徒達は

 

((((か、可愛いぃ))))

 

と心を和ませていた。因みに千冬も一夏がウトウトしている事には気付いているが、完全に眠ってはいない為注意はしていない。だが

 

(眠るんじゃないぞ一夏。お、お姉ちゃんは、お姉ちゃんはお、お前の事を叩きたくないんだ! だ、だから眠るんじゃないぞ一夏!)

 

と心の中で一夏を叩きたくない。眠るんじゃない。と応援していた。すると隣に座っていた本音が一夏の二の腕にペンでツンツンとつつく。

 

「ふえ?」

 

「イッチー、眠ったら怒られるよぉ」

 

とウトウトしていた一夏を起こす本音。

 

「あ、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

そう言い本音は顔を前に向ける。その姿に千冬は心の中でGJ!とサムズアップしていた。

 

そんなことがありながら時刻は放課後となった。

一夏は教科書をカバンに仕舞い立ち上がると同時に隣の本音も立ち上がる。

 

「イッチー、一緒に帰ろぉ」

 

「う、うん」

 

そう頷き返し教室を出ようとすると

 

「あ、一夏さん良かったらご一緒に「おい、お前は引っ込んでいろ! 私が一夏と一緒に帰るんだ!」篠ノ之さん邪魔しないでいただけますか!」

 

とセシリアと箒が一夏と一緒に帰ろうと誘おうとするも口論が勃発。本音はどうにかして一夏を教室から連れ出すべく手を考えていると、ふと教卓の方に目を向けるとセシリアと箒に冷たい視線を向ける千冬が居り、その手には教科書が握られていた。

その姿に本音は直ぐに妙案が浮かびニンマリと笑顔を浮かべる。

 

「ねぇねぇ、2人共。口論するのはいいけど、織斑先生の事はどうするのぉ?」

 

本音の言葉に2人は口論を止め、ゆっくりと教卓の方に顔を向ける。其処には教科書を丸め手を叩く千冬の姿があった。

 

「「……」」

 

その姿に2人は冷や汗を流し、そっと席に着いた。

 

「なんだ? 帰らないのか?」

 

「その、補習がありますので」

 

「お、同じく」

 

「そうか。ならさっさと教科書を出せ。補習を行う」

 

そう言い千冬は黒板に補習内容を書き始めた。

本音は上手くいったと思い一夏の手を引く。

 

「ほら、イッチー帰ろぉ」

 

「えっと、う、うん」

 

一夏は本音に引っ張られながら教室を後にした。

暫く廊下を歩いているとおもむろに一夏は本音に声を掛けた。

 

「ほ、本音さん」

 

「なぁに?」

 

「その、さ、さっきは、ありがとう」

 

「ん~? あぁ、どうってことないよぉ」

 

「そ、それでも、ありがとう」

 

はにかんだ笑顔でお礼を述べる一夏に本音はえへへへ。と笑いながら歩き続ける。

そして寮へと到着し本音は一夏の隣の部屋の1538の扉を開ける。

 

「それじゃあイッチー、また明日ねぇ」

 

「う、うん。また、明日」

 

それぞれ部屋へと入って行く。一夏は部屋へと入ると何時もと変わらず鍵とチェーンを掛けるとカバンを机の上に置き教科書とノートを取り出す。

 

「きょ、今日やったのって、この部分だっけ?」

 

〈えぇ其処よ。さて、何時もの通り私が幾つか作成した問題を出すから解きなさい〉

 

「う、うん」

 

一夏は自主勉用と書かれたノートを開きアイラが作成した問題を空間ディスプレイに出しながら勉強を始めた。

暫くして一夏はアイラが出した問題を全て解き終え答え合わせを行っていた。

 

〈10個中7個正解ね。間違えた問題は計算式が若干間違えているだけよ〉

 

「そ、そっかぁ。えっと、此処が×じゃなくて+だったの?」

 

〈そっ。ん? 誰か来たみたいよ〉

 

アイラが突然来客が来たと告げると扉をノックする音が鳴り響く。一夏はそっと顔だけ部屋から扉の方を見つめていると

 

『織斑、私だ。少し話があるから此処を開けてくれ』

 

扉の向こうからは千冬の声が聞こえ一夏は扉の元に向かいチェーンと鍵を解除し、扉を開ける。

 

「ど、どうしました、織斑先生?」

 

「さっきも言った通り少し話があってな。上がってもいいか?」

 

「か、構いません」

 

一夏は千冬を部屋へと上げ奥の部屋へと案内する。千冬は奥の部屋にある椅子の一つに座り持っていた資料を机の上に置く。

すると一夏がお茶と一緒に一切れのレアチーズケーキが載った皿を千冬の前に置く。

 

「ど、どうぞ」

 

「ん? 買ってきたのか?」

 

「う、ううん。その、自分で、作りました」

 

「そ、そうか。それじゃあ用が済んだら一緒に食べようか」

 

「は、はい」

 

千冬は一夏の手作りケーキを今すぐ食べたいと言う気持ちを抑え用件を済ませようと、持ってきた資料を一夏に手渡す。

 

「こ、これは?」

 

「それはこの学園に存在している部活や同好会の紹介資料だ」

 

「ぶ、部活と同好会の?」

 

一夏は手渡された資料をぺらぺらと捲りながら目を向ける。野球部、ソフトテニス部、プラモ同好会、ロボット研究同好会など色々な部活や同好会が書かれていた。だが、運動部や幾つかの文化部や同好会には赤いペンでバツ印が付けられていた。

 

「こ、このバツ印は?」

 

「それは運動部に関しては女子ばかりだから織斑は参加できないという意味で付けたのと、バツ印が付いた文化部や同好会は、その、織斑の事をよく思っていない連中が在籍している為、入るのは止めた方がいいと言う意味で付けた」

 

千冬の説明に一夏はそ、そうですか。と返事を返した。

良く思っていない連中、つまり女尊男卑の生徒がいるという意味だった。千冬は一夏がそんな生徒が居る部活や同好会には入って欲しくないと思い付けたのだ。

 

「無論部活や同好会の参加は個人の自由だ。お前にその資料を手渡したのは少しでも学園生活に慣れて欲しいなと言う教師の思いでだ」

 

優しい笑みで告げる千冬に一夏は、頬を赤く染めながら頭を下げる。

 

「あ、ありがとう、ございます」

 

「うむ。さて、教師の用事は済んだ。今からはプライベートの時間とする」

 

そう言い千冬はフォークを手に取り一夏が作ったレアチーズケーキを口にする。

 

「うむ、旨いな」

 

「そ、そう? は、初めて作ったから、その少し心配だった」

 

「別に心配するような変な味ではないぞ。このまま店に出されても売れるくらいうまいぞ」

 

「そ、そう? お姉ちゃんに言われると、その、嬉しいな」

 

照れた表情で笑顔を浮かべる一夏に千冬は皿に優しい笑みを浮かべながらケーキを食べる。すると思い出したような表情を浮かべ皿を机に置く千冬。

 

「そう言えば今朝の事。大丈夫だったか?」

 

「う、うん」

 

(全く、鈴の奴め。一夏が女性恐怖症だという事を知らんのか?)

 

千冬はそう考えながら出されたお茶を口にする。千冬が凰のことを鈴と呼ぶのは本名は凰鈴音と言う名前だからだ。小学4年の頃からの付き合いの為、鈴と呼んでいる。

 

「そうか。あ、そうだ。学園生活で何か困った事とかは無いか?」

 

「う、ううん。と、特に困ったことは無い」

 

「そうか。教室にいる者達とは仲良く出来そうか?」

 

「う、うん。その、本音さんのお陰で、皆と仲良くしてもらってる」

 

「そうか。それは良かった」

 

一安心した表情でつぶやく千冬。学園の教師である前に一夏の姉である千冬は、一夏が学園生活で困った事が無いか。相談したいことが無いか聞ける時間をつくりたかったのだ。

そして今回の部活の説明があった為、それを利用して聞く時間をつくったのだ。

だが、一夏は特に困ったことは無く、クラスの生徒達とも本音を通して仲良くしてもらっていると聞き安心したのだった。

すると突然扉をノックする音が鳴り、千冬は怪訝そうな顔付を浮かべる。

 

「誰が来たんだ?」

 

「わ、分かんない。その、本音さんだったら、直ぐに声を掛けてくるけど」

 

そう言い首を傾げる2人。すると扉の向こうから

 

『一夏ぁ! 居るんでしょ! 此処を開けなさい!』

 

と今朝一夏に突撃しようとした鈴の声が扉の前から響いてきた。一夏は若干怯えた表情で扉を見つめ、千冬は呆れた様な表情でため息を吐く。

 

「一夏、此処で待ってろ。私が応対してくる」

 

そう言い千冬は席から立ち扉の元に向かう。またドンドンと扉を叩く音が鳴り響く中、千冬は扉の鍵を解除し扉を開ける。

 

「ちょっと一夏! 扉を開け…るのが…ち、千冬さん!?」

 

「織斑先生だ、凰」

 

突然扉が開き一夏だと思い怒鳴る鈴。だが、開いた扉の先に居たのは鋭い視線で見下ろしてくる千冬だった。

 

「な、なんで織斑先生が、い、一夏の部屋に?」

 

「織斑に書類を届けに来ていたからだ。で、凰は一体何の用で織斑の部屋に来た?」

 

「その、一夏ってもしかして相部屋の人に困ってるとか思って私が変わってあげると言いに「残念だが織斑は相部屋ではなく一人部屋だ」えっ! 一人部屋なんですか!」

 

「そうだ。用は以上か?」

 

「あ、いや。その、もう一つあるんですが…」

 

そう言い鈴はチラチラと体をずらして奥の方に目を向ける。その行動で鈴の目的を察する千冬。

 

「はぁ、織斑なら奥に居る」

 

「えっと、上がっても?」

 

「上がるよりも呼んだほうが早いだろうが。織斑!」

 

千冬は奥に向かって一夏を呼ぶと、一夏は奥の部屋から顔を半分だけ見せる。

 

「な、何でしょうか?」

 

「凰がお前に用があるらしいが、其処で用を聞くか?」

 

千冬がそう聞くと一夏は小さく頷く。

 

「は? ちょ、ちょっと待って下さい! な、何でそんな所から話を聞くのよ! こっち来なさいよ!」

 

鈴は大声で呼ぶが一夏はビクッと体を振るわせ怯えた表情を見せる。

 

「馬鹿者! 織斑を怯えさせてどうする!」

 

「そ、そんなつもりは」

 

凰は口を尖らせながら俯く。その表情に千冬はあの懸念が疑問から確信へと変わろうとした。

 

「おい凰。お前の転入時の資料を見たが、代表候補生となって政府に織斑の幼馴染だからだと頼み入学した。間違いないな?」

 

「そ、そうです」

 

「ならお前の所の政府から、織斑に関する説明等されなかったのか?」

 

「せ、説明ですか?」

 

「そうだ。例えば、女性に対し異常な恐怖を抱く等だ」

 

千冬の問いに鈴は暫し目を瞑りながら首を傾げる。

 

「そう言えば役人の人に呼び出された時に、そんな話があったようなぁ」

 

凰の言葉に千冬は盛大なため息を吐いた。

 

「お前と言う奴はぁ。政府からの大事な話を聞き流すな、馬鹿者!」

 

「だ、だって一夏に会えると思って嬉しくて、その…」

 

呆れてものが言えないと言った表情でため息を吐く千冬。

 

「そ、それでその、さっきの例えって、まさか?」

 

「そのまさかだ。織斑は女性恐怖症と言う精神病だ。だから女性とはある程度距離をとらなければ発作が起きる。最近は治療のお陰である程度近くても問題無いが、お前と織斑の間にこれだけ距離があるのは、今朝のお前の行動が原因だ」

 

そう言われ鈴はしまった。と苦い顔を浮かべた。知らなかったとは今朝の鈴の行動は十分一夏に警戒心を抱かせるだけの行動であったためだ。

 

「うぅううぅう」

 

「唸ったところで変わらんぞ。用があるんじゃなかったのか?」

 

そう言われ凰ははぁ。とため息を吐き気持ちを切り替えた。

 

「そうします。その、久しぶりね一夏」

 

「う、うん。ひ、久しぶり鈴音、さん」

 

「鈴で良いわよ。……それで用事なんだけど、その一夏。あの時の約束覚えてる?」

 

「や、約束?」

 

「なに、忘れたの? 空港で、その、言ったじゃない。『料理の腕を上げて帰ってくるから、その時は毎日私が作った酢豚食べてくれる?』って」

 

照れた表情で鈴は一夏に告げる。隣にいた千冬はジト目で味噌汁のあれか?と言いたげな表情を浮かべていた。

そんな中、一夏は顔半分だが困惑した表情を浮かべていた。

 

「その、ぼ、僕、そ、そんな約束、した憶え無い」

 

オドオドしながらも憶えていないと告げる一夏。

その言葉に鈴は驚愕の表情を浮かべ、しかめっ面を浮かべる。

 

「お、憶えてないって、どう言う事よ!」

 

「ヒッ! だ、だって、僕、鈴音さんが、ひ、引っ越した時風邪で寝込んでたから」

 

一夏の訳にはぁ?と言葉を零す鈴。すると隣にいた千冬が思い出したように語り出した。

 

「そう言えば、あの時織斑は風邪で寝込んでいたな。確かあの時は国家代表の強化練習がある時だったが、織斑が風邪で寝込んだから早めに切り上げて帰って来たからな」

 

千冬の説明に、鈴は若干茫然と言った表情を浮かべていた。

 

「で、でも私確かに一夏に「信用できんと言うなら、五反田とかに聞けばいいじゃないのか? 確か織斑の代わりに私が行けない事を連絡したから、憶えているはずだ」」

 

千冬の説明に鈴は何も言えない表情で俯く。

 

「…わかりました。だったら!」

 

そう言い勢いよく顔を上げる鈴。その顔は決意に染まった顔だった。

 

「一夏! 私と付き合って!」

 

突然の告白。その光景に流石の千冬も若干驚いた顔を浮かべていた。だが一夏の返事は

 

「ご、ごめん、なさい。む、無理です」

 

怯えながらも断りの返事を返す一夏。

 

「な、なんでよ!」

 

「だ、だって、怖いもん」

 

「はぁ~? あたしはアンタの幼馴染でしょうが! 何処が怖いのよ!」

 

「今のお前の状態だっ!」

 

怒りの表情で声を荒げる鈴に隣にいた千冬は鈴の頭を叩いた。バシンと音が鳴り響き鈴は頭に手を置きながら涙目で千冬を見上げる。

 

「幼馴染みでも、今の織斑は女性のほとんどが恐怖の対象なんだ。怖いと思っても仕方がないだろうが」

 

「な、何ですかそれ! そんなの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

鈴の言葉に千冬は目を見開くも、直ぐに鋭い視線となり、拳を握りしめる。

千冬は一夏がどれ程辛い目に遭ったかも知らないのに、気合で克服しろと言う鈴の言葉に自制心が崩壊し拳を握りしめた右手が震える。その姿に気付いた一夏は振るえる唇を開く。

 

「お、お姉、ちゃん。だ、ダメ」

 

その言葉が千冬の耳に届くと怒りの気持ちは少しずつ落ち着きだした。

 

「…凰、部屋に帰れ」

 

「な、なんで「いいから帰れと言っている!」」

 

今まで浴びせられた事が無い程の怒声を浴びせられた鈴は体を強張らせ足早に部屋から飛び出していった。鈴が出て行った後千冬は肩で息をしていると、一夏が傍に近付き千冬のスーツの袖を掴む。

 

「だ、大丈夫?」

 

「……怖い姿見せて、済まない一夏」

 

「ぼ、僕は、大丈夫、だから」

 

そう言われ千冬は若干涙を浮かべるが、一夏に見られまいと顔を上げ見えない様にした。

 

「そ、それじゃあ私も帰るな。何かあったら隣の布仏か私の携帯に連絡しろ。いいな?」

 

「う、うん」

 

一夏の返事を聞いた千冬はそれじゃあな。と言い部屋から出て行った。




次回予告
多くの生徒が待ちに待ったクラス代表戦当日。
一夏はクラスメイトたちから応援されつつピットへと向かう。
そして対戦相手が発表されると、なんと2組の鈴と対戦することに。

次回
クラス代表戦part1


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8話

突然コラボと分けるなどと皆様の多大な迷惑を掛けてしまい本当に申し訳ございません。
今後はもっと気を付けて小説投稿を行って行きますので、どうかこれからもよろしくお願いします。
それと最初に書いていたコラボ話はIFルートとして別小説に移しました。
では、新しく始まるクラス代表戦、どうかお楽しみください。


クラス代表戦当日。アリーナの観客席へと向かう廊下にて、1組の生徒達は燃え上がっていた。

 

「いいか諸君! 今日は織斑君の初のクラス代表戦! 我々『織斑君応援支隊』の心構えはッ?」

 

「「「織斑君が発作しない程度の応援をして、頑張ってもらうこと!」」」

 

「よろしい! では何のために応援するっ?」

 

「「「「織斑君のカッコいい姿を見る為!」」」」

 

「その通り!」

 

と熱く燃え上がる生徒達を遠くから一夏と本音は眺めていた。

 

「…す、すごく燃え上がってるね」

 

「うん、燃え上がってるねぇ」

 

遠目でも分かるほど燃え上がっている生徒達。他のクラスの生徒達も何故あそこまで燃えているんだ?と首を傾げながら通って行く。

 

「そう言えばイッチー。そろそろ対戦相手が発表されていると思うし、モニター見に行こ」

 

「そう、ですね。見に行きます」

 

そう言い一夏と本音は対戦表が出されているモニタールームの元に向かった。

モニタールームには既に他クラスや他学年の生徒達がモニターに映し出されている対戦表を見ていた。

一夏はモニターを確認したかったが人が多く、女性恐怖症を患っている一夏は怖くて近付く事が出来ずにいた。

 

「……人が、多いのでその、僕ピット前に先に行ってます」

 

「そぉう? それじゃあ私が見てくるねぇ」

 

そう言い本音は軽快な動きで人混みの中へと潜り込んでいった。一夏は本音を見送った後その場から足早に去りピットへと向かう。

 

暫くしてピット前に到着した一夏。ピット前には自販機とベンチが備えられており、一夏は自販機に凭れられる側に座り拡張領域に仕舞っている小説を取り出し気配を消すように縮こまって本を読み始めた。

 

アリーナの観客席からであろう小さな喧騒をBGMに一夏は小説を読み続けていると

 

「イッチー」

 

と自身を呼ぶ声が聞こえ一夏は顔をあげた。其処には少し困惑顔を浮かべた本音が居た。

 

「どう、したんですか?」

 

「うん、実はねぇ。モニターでイッチーの対戦表を確認したら第一アリーナで1回戦目からだったの。けど、相手が2組の代表がアメリカの人じゃなくて、中国の人の名前だったんだぁ」

 

「中国? ……も、もしかして、凰鈴音って言う名前でしたか?」

 

一夏は本音の口から出た中国の人という言葉に、まさかと思いつつ鈴の名前を出す。

 

「ほへぇ、何でわかったのぉ?」

 

「や、やっぱり。でも、なんで鈴音さんが?」

 

「それが分かんなぁい。きよきよ達から聞いた話だとアメリカの人で専用機を持ってないって聞いたのにねぇ」

 

2人は何故そのアメリカ人ではなく転入してきたばかりの鈴が代表として出ているのか、それが疑問で仕方がなかった。すると一夏はふとある事を思い出しピットの中へと入って行き、本音もその後を追っていく。

 

ピット内へと入った一夏は壁に備えられている端末の元に向かい通信を入れる。

 

『こちら管制室。む、織斑か。どうかしたのか?』

 

画面には千冬が映り、一夏は対戦表の件を伝えた。

 

「あの、2組の代表なんですが…」

 

『あぁ、それか。 実は転入してきた当日にアイツ、その時のクラス代表に頼み込んで変わってもらったらしい。しかも教師に何も告げずに、だ』

 

呆れ顔で告げる千冬に、一夏と本音もえぇ~。と困惑の表情を浮かべていた。

 

「それって、その、書類上大丈夫、なんですか?」

 

『…大丈夫な訳ないだろ。教師に何も告げずに勝手に変わって貰うなど前代未聞だぞ。まったくアイツは!』

 

と怒り心頭な顔を浮かべる千冬。だがすぐに深く息を吐き何時もの表情へと戻る。

 

『兎に角2組のクラス代表はあの馬鹿だ。専用機持ちだが、慢心せずお前の思いっきりをブチかましてこい、織斑』

 

最後に笑みを浮かべながら一夏を応援した千冬は通信を切った。

 

「なんか、大変なことになっちゃったねぇ」

 

「…うん。それじゃあ、僕準備を始めるね」

 

「分かったぁ。あ、私観客席できよきよ達と応援してるから頑張ってねぇ!」

 

そう言い本音はピットから出て行く。一夏は直ぐに戦闘服に着替え、バレットホークを身に纏う。

するとアイラが呆れた口調で一夏に話しかけてきた。

 

〈はぁ、猪突猛進と言う言葉ピッタリの娘ね、アンタの幼馴染〉

 

〈…うん。根は、良いんだけどね。その、思い込みが…〉

 

〈でしょうね。じゃなきゃアンタの姉にあんだけ怒鳴られたのにクラスに来たりしないでしょ〉

 

アイラはそう言いはぁ。とため息を吐く。

千冬に怒鳴られ追い返された翌日、鈴は何事もなかったように教室に突撃してきたのだ。無論一夏は距離をとろうとするも、それをさせまいと距離を詰めてくる鈴。その結果恐怖で体が震え始める一夏。

すぐにクラスに居た生徒達は急いで鈴を一夏から引き離し、本音は一夏に大丈夫と励ましに傍による。

生徒達に邪魔されたのが癪に障ったのか怒る鈴だが、すぐに千冬が現れ出席簿で叩かれ追い出された。

 

本来怒られたら反省し、少しは慎むものだが鈴はそう言った事は一切なく朝のSHR前に怒られれば次は昼休み、そして次に放課後にと教室に突撃してきては一夏を怖がらせるのだ。

何度か1組の生徒達が突撃を止める様言ったのだが、鈴は

 

「はぁ? 私は一夏の為に会いに来ているのよ。こうやって会いに行ってやれば何時かは女性恐怖症なんて治るでしょ」

 

と根拠もない話をしてきたのだ。

無論1組の生徒達はそんな話を聞いて黙っているはずもなく、鈴が突撃してこようとする前に教室の扉前に生徒達が壁の様に立ち、入れない様にしたのだ。無論ただ立っていれば無理矢理通ろうとすると考え、何気ないガールズトークをしているように見せかける様にした。

結果鈴が一夏に突撃してくることはほぼなくなった。

 

〈暫くはクラスの子達があんたの周りを固めていたから突撃してくることは無かったけど、恐らくあの子相当鬱憤が溜まってるわよ〉

 

〈うっ。そ、それは何か変な事、言われるって事?〉

 

〈恐らくね。まぁ安心しなさい。彼女が何か言ってこようがこっちで聞こえない様にしておくから〉

 

〈う、うん。ありがとう、アイラ〉

 

はにかみながらお礼を述べる一夏。アイラはどういたしまして。と返す。だがコアの世界に居るアイラは頬を真っ赤に染め上げながら明後日の方向に目線を向け照れていた。

 

『これより、第1回戦1年1組対1年2組の試合を行います。代表選手はアリーナへと出て下さい』

 

ピットに備えられているスピーカーからアナウンスが流れると一夏は深い深呼吸を数回行う。

 

〈準備はいいわね?〉

 

〈うん、行こう〉

 

そしてバレットホークはカタパルトから射出され、アリーナへと飛び出た。




次回予告
アリーナへと出ると既に出ていた鈴。案の定相当鬱憤が溜まっていた鈴は吐き出すように自分の主張を吐き出す。
そして試合が開始されようとした時、鈴は一夏に言ってはいけない言葉を言ってしまう。
次回

クラス代表戦part2 ~禁句~


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9話

ピットからアリーナへと飛び出た一夏。アリーナには既に鈴が出て近接用の剣を両手に持って佇んでいた。

 

「ようやく出てきたわね、一夏。ふふん、私がクラス代表よ。ねぇ、驚いた?」

 

そう言いニヤリと笑う鈴。が、

 

「その、そんなに驚いてない。むしろ、勝手に変更して、良いのかな?って思ったくらい」

 

そう、一夏は思った事を口にした。一夏の返答に目元をヒクヒクとさせる鈴。

 

「ちょっと何よその反応! もう少し驚いたとか、そう言った反応しなさいよ!」

 

そう一夏に怒鳴るも、一夏は反応に困っていた。

 

「そ、そう言われても…」

 

「だぁ~! そのオドオドした姿勢も止めなさいよ!」

 

怒りを露にして怒鳴り散らす鈴。そのままの勢いで鈴は、今まで溜め込んでいた鬱憤を吐き出す。

 

「大体アンタの所のクラスの子達、一体なんなのよ! アンタの症状を治そうと思ってクラスに行ってるのに毎回邪魔ばっかりしてくるし、その上行く度に教室の扉前でガールズトークなんか始める始末で、入りづらいのよ!」

「それにアンタもアンタよ! 教室に入れないから廊下から呼んでるのに、毎回無視するなんてどういうつもりよ!」

 

ひとしきり言い終えた鈴は肩で呼吸をし、息を整える。

 

「その、呼ばれた事なんて1度も無いんだけど…」

 

〈確かに無いわね〉

 

思い返すように零す一夏。だが鈴は

 

「何度も言ってるわよ! もう良いわ。アンタを倒してそのままの勢いで優勝して、アンタのクラスの子達にアンタらが守るよりも、強い私が守った方がいいって分からせてやるわ!」

 

そう叫びながら武器を構える鈴。一夏もアサルトライフルを取り出す。

 

『ではこれより、第1回戦を始めます! カウント、3…』

 

アナウンスでカウントが始まり一夏は安全装置を解除していると

 

「そう言えば、アンタのクラスの子達はアンタを守ってばかりよね。要は怖がっているなら怖くないと分からせればいいだけじゃない。症状の緩和にもならない事をずっと続けた所で何の意味の無いのに」

 

鈴はそう言い1組の生徒達の行いを無意味だと言い捨てた。その言葉に一夏の中にある何かがキレた。

 

〈全く何てこと言うのよ彼女。一夏、もう彼女の声は聞こえない様集音マイクを「……許さない」一夏?〉

 

「……クラスの皆は、僕なんかの為に色々考えて接してくれてるんだ。それを無意味だなんて言い方…」

 

俯きながら若干震える体から滲み出る様に出る言葉。その言葉には僅かながら怒気が含まれていた。

 

『1…試合開始!』

 

「先手貰ったぁ!」

 

そう叫びながら鈴は両手に持った双天牙月を構えながら突っ込んでくる。一夏は手を下に下げたままだった。

 

(試合放棄? なら好都合! 待っておきなさい、アンタを守るのは私だけ…ッ!?)

 

鈴は一夏に攻撃しようした瞬間、言い知れぬ何かが襲い突っ込むのを止め距離をとる。

 

(な、何今の? い、今私……か、体が震えてる?)

 

鈴の体はガタガタと震えていた。熱いわけでもないし、寒いわけでもない。それなのに体が震えている。そして頭でずっとサイレンが鳴り響いていた。

逃げろ、勝ち目なんかないと。

すると、手を下に下げていた一夏がおもむろに手に持っていたアサルトライフルを拡張領域に仕舞った。

 

「……クラスの皆は」

 

「えっ?」

 

「……クラスの皆は、僕みたいな人を温かく迎え入れてくれた。発作が起きない様にと色々配慮してくれた。それを、それを無意味だなんて言い方」

 

声は小さく震えている。だが、はっきりと鈴は分かった事が一つだけはあった。それは

 

「絶対に許さない!」

 

一夏が激しく怒っているという事だった。




次回予告
鈴の言葉でキレた一夏。そして一夏は拡張領域から武器を大量に取り出し鈴に向け放つ。

次回
キレた一夏。~……無茶しおって~


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10話

一夏の怒りの大声にアリーナの観客席に居た生徒達は驚き応援の声が止む。

 

「お、織斑君が、キレた」

 

「う、うん。どうしたんだろう?」

 

「多分彼女が何か言ったんじゃないの? 彼女、変に織斑君に付き纏っていたし」

 

1組の生徒達は、そうかも。と頷き合い声を張り上げる。

 

「織斑君頑張れぇ!」

 

「そんな子に負けちゃダメだよぉ!」

 

「やっちゃえぇ、織斑君!」

 

と声援が大きくなった。アリーナでは突然一夏がキレた事に動揺してしまい動きを止めてしまっている鈴。

無論一夏がそんな隙を逃すはずもなく、拡張領域から大型の武器を取り出した。

6砲身のガトリングカノン咆、『アヴァロン』。バレットホークの中で唯一の大型武器で、毎分3000発放つことが出来る銃である。

 

一夏はアヴァロンを取り出すと、素早く照準を鈴に定め引き金を引く。

砲身が回転し、瞬く間に大量の弾丸が鈴に向かって襲い掛かる。

突然の轟音に驚いた鈴は直ぐにその場から回避すると、自身のいた位置に向かって一直線に大きな砂埃が舞う。

 

「ちょっ!? 危ないでしょ一夏!」

 

鈴はそう叫ぶも一夏は何も返さず、再度アヴァロンを鈴に向ける。

 

〈一夏、聞こえる? サブアームを展開して武装を出して〉

 

〈分かった。彼女が避けた先に向かって撃ちまくって〉

 

アイラにそう返し一夏はウィングと肩と腰のサブアームを展開し武装を出す。アイラは一夏の様子が若干変わっている事に気付き、若干心配した表情を浮かべていた。

 

〈(バイタルなどには異常は無いけど、明らかに可笑しい。怒りで一時的に症状が治まっている? となると怒りが沈んだら……)〉

 

アイラは一夏の怒りが沈んだ後の事に不安な考えが頭を過るが、今は戦いに集中するしかないと、その考えを隅へと追いやった。

 

避けた鈴に向け再度アヴァロンを向けた一夏は躊躇いもなく引き金を引き大量の弾丸を放つ。

無論そんな弾幕を張られれば近付く事は容易ではなく、避け続けるしかない。だが、避けた先にサブアームの武装が攻撃によって、最早逃げ場などは無い。

 

「なぁっ!?」

 

アヴァロンの攻撃を避けたと思えばサブアームのアサルトライフルに撃たれるという、逃げ場のない状態の中、被弾を抑えようと逃げ惑うがガリガリとSEを削られていく。

 

「あぁ、もう頭きたぁ! もう容赦しないんだから!」

 

そう叫ぶと鈴は突然両肩の一部がスライドし何かが現れた。

 

〈一夏、気を付けなさい。彼女何かする気よ〉

 

〈分かった。アイラはあれの情報を集めて〉

 

一夏はそう言うとアヴァロンを仕舞いグレネードランチャー搭載型アサルトライフル、『AMWS-21』を取り出し警戒しつつ回避行動に移る。

 

「さっきのお礼よ!」

 

そう叫び鈴の肩から何かが放たれた。一夏はそれをギリギリで避ける。

 

〈アイラ、あれが何か分かった?〉

 

〈えぇ。あれは中国で開発された『龍砲』って言う衝撃砲よ。圧縮空気で砲身と砲弾を生成して放つ物で、おまけに空気で砲身などをつくるから目には見えないし、射線もほぼ無制限って言う物らしいわ〉

 

〈無制限と言えでも、撃つ方向には何かしらの徴候があるはず。次は発射のタイミングを調べて。多分単純な性格だから直ぐに分かると思う〉

 

〈フッ。えぇ、分かったわ〉

 

一夏の口から鈴の事を単純な性格と言う言葉が出てきて思わず笑みを零すアイラ。

アイラが調べている間、一夏は回避行動を行いつつAMWS-21を向けながら攻撃する。無論調査するアイラもサブアームを操作し射撃する。

 

「初弾を躱すなんてやるじゃない。でもその幸運、何時まで続くかしら!」

 

そう叫び龍砲を撃つ鈴。一夏は素早く両手持ちをしていたAMWS-21を右手で持ち、空いた左手にバタリングラムを構え地面に刺し軸の様にしてドリフトするように急カーブする。

 

「あぁ、もう避けるんじゃないわよ!」

 

そう叫びながら次々に圧縮空気を放つ鈴。一夏は先程同様にバタリングラムを使いながらギリギリで避け続けるが、そろそろ限界かな。と思い始めていると

 

〈待たせたわね。アイツの撃つタイミングが分かったから、モニターに表示するわよ〉

 

〈ありがとう、アイラ。脚部サブアームにも武装も出すから操作お願い〉

 

〈任せなさい〉

 

脚部のサブアームを展開し武装を展開する一夏。これによってほぼ全部のサブアームに武装が展開された状態になる一夏。

鈴はその姿に好機だととらえた。

 

(サブアームを全部展開したら、機動力は下がる。さっきまでギリギリだった癖に、それは悪手よ!)

 

鈴は、逆転勝利!と心の中で思いながら龍砲を撃つ。

だが、

 

〈一夏!〉

 

〈うん!〉

 

アイラの合図に一夏は機体の方向を急回転させ避けた。

 

「う、嘘ぉ!?」

 

今度こそ当たると思っていた攻撃が簡単に避けられ事に驚くも、直ぐに気を取り直して再度龍砲を撃つがまた簡単に避けられた。

 

管制室で一夏達の戦いを観戦していた千冬達は一夏の動きが先程と大きく変わった事に驚いていた。

 

「凄いですね、織斑君。まさか見えない砲弾をあんなにも簡単に避けるなんて」

 

「いや、そう簡単に避けられるような物ではない」

 

真耶の言葉を否定するように千冬は言い、険しい表情で続けた。

 

「相手の攻撃を避けるには、相手のほんのわずかな動きでさえ注視しないといけない。織斑は女性恐怖症というハンディキャップを持っている。そんな状態の中、相手の動きを注視しないといけないのは織斑にとって危険な行為だ」

 

千冬の説明に真耶はハッ。と思い出したような表情となり、悲痛そうな表情に変わる。

 

「お、織斑君は大丈夫なんでしょうか?」

 

「……分からん」

 

そう零した後、千冬は何も言わなくなりただモニターに映る一夏をジッと見つめていた。

だが、心の中では心配でしょうがなかった。

 

(…一夏、無茶するんじゃないぞ)

 

 

鈴の圧縮空気攻撃を避けつつ一夏は残りの武装をアイラと確認する。

 

〈残っている武器は?〉

 

〈ハンターは2丁とも弾切れ。背部サブアームのLAMPOURDEと脚部サブアームのLG5M-BDアサルトカービンは弾倉の半分切ってるわ。腰部サブアームのGEC-Bは弾切れ。アヴァロンも残り50発程。SCAVENGERが4発。ソードオフショットガンが2丁ともフル状態。近接用はナイフ2本、バタリングラム2本、左腕のフォールディングナイフって処よ〉

 

〈それじゃあ出し惜しみなしで行くよ!〉

 

〈えぇ、徹底的にやってやりなさい!〉

 

一夏は左手に持っていたバタリングラムを仕舞い、腰部分に付けられているSCAVENGERと呼んだグレネードを手に取る。見てくれは魚雷のような形をしているが、実際は発射機構が組み込まれた物で単体のまま発射することが可能な、ライフルグレネードなのである。

 

〈時限信管をアイツの居る距離から算出したから入力しておくわよ〉

 

〈お願い。発射後の放物線もモニターに出して〉

 

〈分かったわ。……モニターに出すわよ〉

 

アイラの言葉と同時に一夏は左手にとったSCAVENGERをモニターに映るよう持ち上げると、モニター上に放物線を描くように現れた線が表示された。

一夏はタイミングを見計らいつつ、構える。そして

 

「其処だ!」

 

そう叫ぶと同時にSCAVENGERを発射する。グレネードが発射されたのを確認した鈴は瞬発信管だと思い、軽く避けようとした。だが、突如通り過ぎると思われたグレネード弾が近くで爆発しSEを大幅に削られる。

 

「あぁ、もう! こうなったら接近戦でやってやるわよ!」

 

そう叫ぶと鈴は残り少ないSEでイグニッションブーストして自身の間合いに詰めてくる。

 

〈来るわよ、一夏!〉

 

〈うん!〉

 

一夏は間合いを詰めてきた鈴を向かい討つべく右手のAMWS-21を弾切れで沈黙していたサブアームの一つに渡し、拡張領域からバタリングラムを出す。

 

「おりゃああぁぁ!!」

 

そう言い振り下ろしてきた双天牙月をバタリングラムで受け止める。当初鈴はサブアームが狙ってくると思っていたが、弾切れを起こして幾つかのサブアームが沈黙していた為今なら懐に飛び込めばまだ勝機はあると考えたからだ。

 

「これだけ近ければサブアームの攻撃は出来ないでしょ!」

 

そう言いながら鈴は双天牙月を振りまくる。一夏は迫る斬撃をバタリングラムで受け流していく。一般の人から見れば一方的に押され始めているように見える。

 

「やばいよ。織斑君押され始めてる」

 

「最初の勢いが衰え来てるのかな?」

 

「諦めちゃダメだよ。頑張って応援しないと」

 

そう言い1組の生徒達は応援を強める。

だが管制室の千冬は違った。

 

「凰の奴、まんまと嵌ったな」

 

「え? どう言う事ですか?」

 

「見ていればわかる。だが、言えるとすればこの試合、織斑の勝ちだな」

 

千冬の予告に真耶や他の教師達は首を傾げるのであった。

 

一方的に攻撃していた鈴は隙を見せまいと斬撃を続けていた。

 

(ふふん。最初は結構押されたけど、スタミナ戦なら私の方が強いのよ。このまま一気に畳み掛けてやる!)

 

そう思いながら攻撃を続ける。だが続けざまに攻撃しようとした瞬間

 

〈一夏、今よ!〉

 

一夏はアイラが出した合図を皮切りに右手のバタリングラムを鈴に向かって突く。

 

「ッ!?」

 

突然の突き攻撃に思わず鈴は振り下ろそうとした逆の手に持っていた双天牙月で攻撃を弾く。バタリングラムは弾き飛ばされていき、その陰からバレットホークが左腕を胸の前で構えながら鈴の懐に潜り込む。

自身の懐に潜り込まれた鈴は驚くが、左手には武器が無いと思っていた。だが、左腕から刃が出ているのが見え防ごうとするも間に合わない。

 

「これで、とどめぇ!」

 

一夏は叫びと同時に左腕に出ている刃で鈴を斬り捨てた。その結果

 

『甲龍SEエンプティー。勝者1組代表、織斑一夏!』

 

アナウンスが流れると、アリーナの観客席から盛大な歓声が上がった。斬り捨てられた鈴は負けた事に悔しがり歯を食いしばる。

一夏はそんな彼女に目もくれずピットへと戻って行った。

 




次回予告
管制室で一夏が何故勝てると予想できたのか、その訳を千冬に聞く真耶。
その頃観客席に居た本音は一夏の様子が気になり、ピットへと向かう。

次回
疲れ切った一夏君~お疲れ様、一夏~


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11話

決着がつきアナウンスを終えた真耶は、千冬の方へと顔を向ける。先ほど千冬が言った意味を知るために

 

「それで織斑先生、どうして織斑君が勝つと予知できたんですか?」

 

「ん? なんだ、気が付かなかったのか?」

 

千冬はそう言い肩を竦めながらその訳を話し始めた。

 

「最後に織斑が押された様子、あれはフェイクだ」

 

「ふぇ、フェイクですか? けど、そんな風には見えませんでしたよ?」

 

真耶はそう言いながら先ほどの戦闘の様子のシーンをディスプレイに出す。ディスプレイには鈴が双天牙月で一夏を押すように斬撃を行っているシーンだった。

 

「確かにただ見ているだけでは、織斑が押されているように見える。だがな、織斑は効率的に凰の攻撃を受け流しているんだ」

 

そう言いながら千冬は真耶の前にあるキーボードを叩き、ディスプレイに一夏が使っていたバタリングラムと鈴の双天牙月が表示される。

 

「織斑のバタリングラムはランスの様に円錐形で後ろが太く先端が鋭く細い。逆に凰のは大型したとは言え青龍刀と何ら変わらん。あの試合、織斑は防御する際バタリングラムを一度も真横に構えなかっただろ?」

 

「は、はい。確かに」

 

「真横に構えて双天牙月を受け止めればすぐにバタリングラムは折られていたかもしれん。その為織斑はバタリングラムを斜めに構え、凰の斬撃を全て受け流したんだ」

 

「なるほど。でも、どうしてそんな事を?」

 

「残りの残弾では止めが刺せないと思ったんだろう。だから危険な近接に持ち込もうと考えたが、自ら仕掛けるんじゃなく凰の性格を利用すればいいと思ったんだろうな」

 

「性格をですか?」

 

「凰は単純な性格だからな。爆発物で凰にダメージを与えれば、アイツは頭に血が昇って近接で掛かってくると思ったんだろう。そして凰はそれに掛かった。その後は押されている様に見せかければ、アイツは織斑を押せていると思い込み、動きが単調になる。そして単調になり始めた時に織斑は凰の意表を突いたんだ」

 

「なるほどぉ。まさかあんな戦いの最中に、そんな作戦を考えるなんて凄いです!」

 

「そうだな」

 

そう言いながら千冬はまた別の事を考えていた。それはイチカの容態の事だった。

 

(あんな戦い方をすれば、一夏の奴相当疲れているはずだ。布仏に確認に行かせるべきか?)

 

そんな事を考えながら険しい表情を浮かべる千冬だった。

 

その頃アリーナの観客席に居た1組の生徒達は歓喜に包まれていた。

 

「よぉし! 織斑君がまず1勝したわよ!」

 

「最後はどうなるかと不安だったけど、まさかあそこで不意打ちを突いて勝つなんて、流石織斑君だね!」

 

「ねぇねぇ、織斑君の雄姿ちゃんと撮れた?」

 

「もっち! ちゃんと撮れてるわよ! 後で焼き増ししとくから」

 

1組が何故あそこまで喜びあっているのか分からない他クラスの生徒達は怪訝そうな顔を向けられているが、1組の生徒達は気にもしなかった。

普段気弱でオドオドし、ちょっとしたことでもすぐにビビってしまう一夏が、果敢に挑んで勝ち取った勝利。それだけでも1組の生徒達にとっては大きな喜びであった。

 

そんな中喜びで湧きだっている1組の生徒達とは違い、一人心配そうな表情を浮かべた生徒が居た。

 

(イッチー、大丈夫かなぁ)

 

そう思いながら一夏の心配をする本音。そして投影されている時間を確認すると、次の試合開始まではまだ時間があり本音は席から立ち上がる。

 

「あれ、本音何処行くの?」

 

「ちょっとイッチーの所に行ってくるぅ」

 

「分かったぁ。あ、織斑君に次の試合も頑張ってねって言っておいてぇ」

 

「了解なのだぁ!」

 

そう言いながら本音は足早に観客席から出入口へと向かった。

暫くして本音は一夏がいるピットへと到着し、出入り口横に付けられている装置で中に居るであろう一夏を呼び掛けた。

 

「イッチー、私だけど入ってもいい?」

 

装置に向かて声を掛けるが返事は無く、本音は不安な気持ちが大きくなる。

 

「どうしよう。勝手に入るのは不味いし。けど、イッチーの事も心配だし」

 

そう零しながらピットに勝手に入るか止めておくか迷っていると、ポケットに入れているスマートフォンがブルブルと震え、本音はスマートフォンを取り出して画面を見ると

 

「あ、織斑先生だ。もしもしぃ」

 

『布仏、今何処に居る?』

 

「えっと、今イッチーが居るピット前にいまぁす」

 

『織斑のか? フッ、それだったら好都合だ。すまんが、織斑の様子を見に行ってくれないか? ピットに入る許可は私が出す』

 

「分かりましたぁ」

 

千冬から許可が下り本音はピットのドアを開け中へと入る。

中へと入り少し奥へと行く、一夏が備え付けられているベンチに腰掛け、顔を伏せていた。

 

「あれ、イッチー。どうしたのぉ?」

 

一夏が顔を伏せている事に本音はもしかして何処か痛いのか?と思い急いで一夏の傍へと駆け寄る。

 

「イッチー、何処か痛い「すぅすぅ…」あれ、寝てる」

 

不安な表情を浮かべていた本音は近付いて規則正しい寝息を立てる一夏に一瞬キョトンとした表情になるが、直ぐに朗らかな笑みとなった。

 

「良かったぁ。あ、織斑先生に言わないとぉ」

 

そう言いピットにある装置に元に向かう本音。

 

『こちら管制室。おぉ布仏か。織斑はどうだった?』

 

「えっと、疲れているのか眠ってまぁす」

 

『やっぱりか。…分かった、保険医の者をそちらに向かわせる。すまんが、そのまま暫く織斑の傍に居てやってくれ』

 

「分かりましたぁ。あ、ピットの扉はどうしておきましょう?」

 

『そうだな。織斑はもう動けんから次の試合には流石に出られんだろうからアナウンスをしないといけない。そうなると馬鹿3人が織斑に突っかかってくるかもしれんからな。仕方ない、保険医が来るまでは鍵は掛けとけ』

 

「了解でぇす」

 

本音は千冬の指示通りにピットの扉を閉め、鍵を掛けた。

そして本音は一夏の隣に座り、保険医が来るまで待つことにした。

何もすることが無い本音は暫しぼぉーとしていると、肩にコテンと一夏がもたれ掛って来た。

 

「ふえ? イッチー、相当疲れたんだぁ」

 

そう零しながら一夏の寝顔を見る本音。スヤスヤと寝るその寝顔に本音は朗らかな笑みを浮かべていると、ふとある事を思いつく。

 

「このままだと寝づらいだろし、こうしてあ~げよっと」

 

そう言いながら本音はそっと体を動かしながら、一夏の頭を自身の膝の上に乗せる。

 

「えへへへ、こうしたらイッチーも寝やすいよね」

 

そう言い暫し一夏の寝顔を見ながら暇を潰す本音であった。

 

 

 

 

その頃アリーナの観客席では次の試合が今か今かと待ちわびていた。

それは1組の生徒達も例外ではなく、皆ソワソワしていた。

 

「うぅ~、次の試合の4組の代表も、代表候補生なんでしょ? 織斑君大丈夫かなぁ?」

 

「うぅ~ん、どうだろう? さっき試合を見に行っていた友達から聞いた話じゃあ、4組の代表の子は大量のミサイルを撃っていたって聞いてるよ」

 

「ミサイル? それなら織斑君なら問題無いでしょ。織斑君のISの弾幕なら『お知らせします』ん? なんだろう?」

 

皆一夏なら余裕で勝てる。そう話し合っているとアナウンスが入り全員静かになった。

 

『1組代表の織斑一夏君が体調不良の為、次の試合を辞退致しました。その為4組の不戦勝となりますので、次の試合は4組対5組の試合を行います』

 

突然のアナウンスに観客席は騒然となり、1組の生徒達も騒然となった。

 

「ウソ、織斑君辞退!?」

 

「そ、それより体調不良って、織斑君大丈夫なの!?」

 

「ちょ、ちょっと本音さん、織斑君の様子をって、居ないし!?」

 

一夏が体調不良と聞き1組の生徒達は騒然となり、様子を見に行って貰おうと本音に声を掛けようとしたが肝心の本音が居ない事に更に騒然となった。

 

「本音だったら、ちょっと前に織斑君の様子を見に行ってくるって行ったよ」

 

「え? そうなの? それじゃあ連絡を取って様子だけ聞いてみる?」

 

「そうしたいけど、本音と連絡が取れないのよ。何度電話しても繋がらないからさっきメッセージを送っておいたわ」

 

「そうなんだ。それじゃあ私達も後片付けをして帰ろっか」

 

「そうだね。あ、織斑君が復帰したらさ、またパーティーしない? 【織斑君初勝利おめでとうパーティー!】ってな感じで」

 

「お、それ良いね! じゃあまた皆と計画立てよっか?」

 

「「「「「おぉー!」」」」

 

と、和気藹々しながら1組の生徒達は後片付けを始めるのであった。




次回予告
医務室で目を覚ました一夏。医師の診察を受けた後、医務室まで付いて来てくれていた本音と共に寮へと帰っていく。
帰り道、一夏は本音にあるお願いをするのであった。
次回
お願いごと~一夏君専属の医師として、当然の事だよ~


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12話

 


「……ん。あれ、此処は?」

 

ぼやける視界から見える真っ白な天井を見て、一夏はアリーナのピットではない場所で寝ていた事に気付く。

寝たまま辺りを見渡すも、何処か分からずにいると

 

「お、目が覚めたみたいだね」

 

そう声が聞こえ一夏はそちらに顔を向けると、黒髪で白衣を着た男性がボードを持って立っていた。

 

「あ、伊田さん。どうして?」

 

一夏はそう言い、伊田と呼んだ男性に問う。

 

「そりゃあ、俺は君の担当医だからね。それに此処の学園には女性の保険医しかいないって千冬に頼まれたからさ」

 

「そう、だったんですか」

 

そう言いながら一夏はベッドから上半身を起き上がらせる。

 

「さて、それじゃあちょっと検査するよ」

 

そう言い伊田は一夏の体の状態を見たり、幾つかの問診を行った。

 

「――うん、大丈夫だ。けど、また無茶しちゃダメだよ?」

 

「はい、気を付けます」

 

問診を終え一夏は制服に着替えて始める。すると

 

「あぁ、そうだ。君のお友達が廊下で待ってるよ。此処に運ばれた後もずっと廊下の前で待ってたんだから、お礼言っておきなよ」

 

「へ? 友達?」

 

伊田の言葉に首を傾げつつも一夏は一礼して廊下へと出る。一夏は辺りを見渡し、その友達を探すとすぐに見つかった。

 

「あ、本音さん」

 

「あ、イッチー! もう大丈夫なの?」

 

「は、はい。ご心配をお掛けしました」

 

申し訳なさそうに謝る一夏に、本音は笑顔で気にしてないよぉ。と言い励ます。

 

「それで、イッチー。もう部屋に帰っても大丈夫なの?」

 

「は、はい。異常は見当たらないから、帰ってもいいそうです

 

「そっかぁ。それじゃあ一緒に帰ろぉ」

 

そう言い歩き始める本音。一夏もそれに続く様に歩き始めた。

 

一夏が医務室から出て行って暫く経ち、伊田は今日の一夏の容態をカルテに書き込んでいると

 

『―――れと言っている!』

 

『それは此方の―――!』

 

『あんた達の方が邪魔に―――!』

 

と扉の前で騒ぐ3人に気付く。

 

「やれやれ、一体何の騒ぎだ?」

 

そう言いながらペンを置き扉の元に向かう。扉を開け廊下へと出ると

 

「だから貴様らは帰れ! 私が一夏の元に行くんだ!」

 

「接近を禁止されているのをお忘れですか、篠ノ之さん。というか、2組の貴女も何故此処に居るんですの!」

 

「あたしは一夏の幼馴染だから居るに決まってるでしょ! アンタ達はお呼びじゃないのよ!」

 

と箒、セシリア、鈴が医務室前で大騒ぎを起こしていたのだ。

 

「はぁ~。ちょっと君達、此処は医務室前だよ。騒ぐんだったら他所でやりな」

 

そう言い3人に解散するよう促すが

 

「一夏の様子を見るまでは帰れるか!」

 

「そちらが向こうに行けばよろしいでしょ!」

 

「一夏の面倒を見るまでは帰れるわけないでしょ!」

 

と言う事を聞く気が無い3人であった。

その姿に伊田は思わずため息を漏らす。仕方ないと言わんばかりおもむろにスマホを取り出す。

 

「そうか。それじゃあ此方も考えが有るから」

 

そう言い伊田は何処かに電話を掛けた。

 

「もしもし。あぁ、俺だけど。悪いんだけど、医務室に来てくれないか? 君の所の生徒と2組の生徒が医務室前でギャーギャーと騒いで、迷惑なんだ。すぐに行くって? それじゃあ待ってるから」

 

そう言い電話を切る伊田。

 

「3人共、今すぐに逃げないと、大変な目に遭うよ」

 

そう言うと3人ははぁ?と怪訝そうな顔を浮かべる。

 

「大変な目って、どいう意味よ?」

 

鈴がそう言うとガシッと彼女の頭が掴まれた。

 

「こういう意味だ、凰。そして残りの馬鹿共」

 

掴まれた鈴。そして残りの箒とセシリアはガタガタと震え出し首を錆びついたかの様にギギギと後ろへと向ける。

そこには般若の面を被った様な表情の千冬が立っていた。

 

「そこまで元気があるなら、今すぐに道場へ行こうか。久しぶりに体を動かしたい気分だったからな」

 

そう言いながら千冬は鈴の頭を掴んでいた手に力を入れる。鈴は締め付けられる頭に悶え苦しみ意識を失う。

鈴を放り捨てた千冬は残りの二人に目線を向けると、箒とセシリアは逃げ出そうとするも千冬から発せられる威圧に足が縺れ倒れ込む。

 

「さて、逝こうか?」

 

そう言い2人を拘束し鈴を担ぎ上げ道場へと向かう千冬。

その後姿を伊田は苦笑いで見送るのであった。

 

その頃医務室からでて部屋へと戻る途中の一夏達はと言うと、談笑を交えながら歩き寮前へと到着していた。

 

「あ、そうだ。本音さん、少し、良いですか?」

 

「ん~、なぁにぃ?」

 

「じ、実は僕、部活に入ろうと思ってまして。それでその、一人で行くのが怖いので、その、一緒に来てもらえませんか?」

 

「部活にぃ? 別に付いて行くくらいな良いよぉ」

 

「あ、ありがとうございます。それじゃあ、明日行くので、お願いします」

 

そう言い頭を下げお礼をする一夏。

 

 

その日の夜、一夏は何時もと変わらずISコアの世界へと来ていた。

 

「アイラ、今日は本当にごめん」

 

申し訳なさそうな表情で謝る一夏。アイラはそんな一夏の姿を見ずに小説を読み続ける。

 

〈……そうね、確かに心配したわ。でもアンタが謝る事なんて一つも無いでしょ?〉

 

「で、でも僕があの時〈それこそ私が原因でしょ? 集音マイクをさっさと切ればアンタはキレることも無かった〉あ、アイラは何も悪くないよ」

 

そう言い互いに譲ろうとしない状態が続く。

 

~数十分後~

〈はぁ~、この話題何時まで続ける気よ一夏?〉

 

「うっ。だ、だって僕が〈すぐにそうやって自分の所為にしようとしない! もうお互いが悪かった! これでこの話題は終了! 良いわね?〉 で、でも〈お・わ・り!〉は、はひぃ」

 

強い圧で話を切り上げるアイラに一夏は涙目で了承せざる負えなかった。

するとアイラはある事を思い出し一夏に目線を向ける。

 

〈そう言えば一夏。アンタ、ピットで気を失った後の事何か憶えている?〉

 

「え? う、うぅん。気付いたら医務室だった位だけど、何かあったの?」

 

〈別に〉

 

そう言いアイラは目線を本へと戻す。その姿に一夏は何処か不安げな表情を浮かべていた。

暫く静まり返る世界。するとアイラが徐に本を読むを止め一夏の元に近付く。

 

〈ちょっと一夏、其処に座りなさい〉

 

そう言い一夏の背後にソファーを出現させるアイラ。

 

「え? ど、どうして?」

 

〈いいから座りなさい〉

 

鋭い目で睨むアイラに一夏は困惑しながらもソファーの端へと座る。座ったのを確認したアイラは一夏の隣に座ると、そのまま一夏の太ももに自身の頭を置いた。

 

「ふぇっ!? あ、アイラな、何してるの!?」

 

〈何って、アンタの恐怖症治療に決まってるでしょ? ほら、動こうとしない〉

 

突然アイラが自分の太ももに頭を置いてきた事に動揺しまくる一夏。アイラに動くなと言われ顔を真っ赤に染めながらも言われた通り動こうとせずジッとし続けた。

 

それからアイラは本を読み終わるまで一夏の太ももに頭を置いたのだった。その間一夏はずっと顔を真っ赤に染め上げたままだった

 

 

 

人物紹介

伊田洋一

容姿:テイルズオブエクシリア2のジュード・マティス

一夏の専属医師。千冬とは中学からの付き合いで、その伝手で束とも付き合いがある。

母親が医療関係者で、母の姿を見て医療を学び始める。最初は外科治療について学んでいたが、ある時に心に深い傷を負った自殺未遂者が運び込まれ、治療を行ったが再び自殺未遂をしたと言う記事を見て体の傷を幾ら治しても、心の傷がついたままではまた体に傷を作ってしまうと考え、精神科医になる事を決意する。




次回予告
次の日、クラスの皆に心配させたことを謝る一夏。そして放課後、一夏は本音と共に入部したいと思っている部活の活動部屋へと来た。

次回
一夏君入部する~よ、よろしくお願いします~


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13話

クラス代表戦の次の日。一夏と本音は1組の教室前に立っていた。

 

「み、皆さん。怒ってないでしょうか?」

 

「大丈夫だよぉ。それより、そんな顔を見せたら逆に皆が心配な表情を向けてくるよぉ?」

 

本音の言葉にそうかなぁ?と返す一夏。一夏が教室に入るのを躊躇っているのは昨日のクラス代表戦の事でだった。

初戦には勝てたが、一夏はその後怒りで普段以上の体力を使ってしまった為、ピットで気を失ってしまいその後の試合を棄権してしまったのだ。

その事で一夏はクラスのみんなの期待を裏切ってしまったのではと思い、気落ちしていたのだ。

 

「ほぉら、イッチー。何時まででも此処に居ても仕方がないから行こ?」

 

本音にそう言われながら手を引っ張られ、一夏はコクリと頷き一緒に教室内へと入って行く。

 

教室内に入ると、ほとんどの生徒達が入って来た一夏達の方に視線を向けており、一夏はビクッと肩を跳ね上げ顔を俯かせる。

すると

 

「織斑君、大丈夫?」

 

「へ?」

 

予想していた言葉とは違う言葉が掛けられ一夏は声を零し、恐る恐る顔を上げると声を掛けたと思われる生徒が心配そうな表情で見ており、他の生徒達も心配そうな表情を浮かべていた。

 

「あ、あの…」

 

「昨日体調不良で棄権したって放送されて、皆心配したんだよ」

 

「そうそう。大慌てになったんだから」

 

「そう、でしたか。その、ご心配をお掛けしました」

 

クラスメイト達を怒らせたと思い込んでいた一夏は、むしろ心配させたことに悪い事をしてしまったと思い頭を下げる。

 

「もう大丈夫なの?」

 

「はい。疲労で気絶してしまっただけなので大丈夫、です」

 

一夏の報告に皆安堵した表情を浮かべ、良かった良かったと笑顔を浮かべ始める。

すると隣にいた本音が笑顔を一夏に向ける。

 

「ほらね、皆イッチーの事怒ってなかったでしょ?」

 

「う、うん」

 

不安な思いが消え、ホッと一息を吐く一夏。

 

 

そんな中その様子を遠くからでしか見れない2人が居た。箒とセシリアである。

 

(うぅ~。か、体がい、痛いですの。せ、折角一夏さんが居られるに、こ、声を掛けられませんの)

 

(ち、千冬さん。ほ、本気で殺すつもりだったのか? あ、あそこまで本気で掛かってきたのって、いつ以来だ?)

 

そう、この二人と隣のクラスに居る鈴は昨日千冬に道場へと連行され、教育という名のお仕置きを受けたのだ。

その内容だが、素手の千冬対武器を持った鈴達との1対3の模擬戦であった。無論1対3、しかも相手は武器を持っているならば1人の千冬は不利と思われる。

だが、千冬は武器を持っている3人を容易く対処し、箒が持っていた模擬用の竹刀を持って3人を追いかけ回し始めたのだ。

逃げることが出来ない訓練は消灯時間ギリギリまで行わされ、その頃には3人はボロボロにされていた。

 

 

 

 

~放課後~

放課後を合図するチャイムが鳴り響き、一夏は教科書やノートなどをカバンへと仕舞って行く。

 

「ねぇねぇイッチー。入部する部活ってイッチーが入っても大丈夫なの?」

 

「うん。その、織斑先生が事前に調べてくれた資料だと、その、怖い人はいないって書いてた」

 

そう言いながらカバンを背負う一夏。本音は一夏の言う怖い人とは女尊男卑の生徒の事だろうなと推測し、そっかぁ。と返す。

 

「それじゃあイッチー。その部活の活動場所まで行こぉ!」

 

本音の元気ある掛け声に一夏は、元気だなぁと思いながら教室を出る。

 

2人の出て行く姿に、セシリアと箒が見逃すはずもなく手早く荷物を纏め痛む体に鞭を打ちつつ付いて行こうと(ストーキング)するが

 

「ちょっと二人とも何処行く気?」

 

と、大勢の1組の生徒達がジト目で二人の行く手を阻む。

 

「ど、何処にって部活に決まっておりますわ」

 

「わ、私も剣道部に行かないといけないんだ。其処をどけ」

 

そう言い部活に行くだけだと説明する。だが

 

「篠ノ之さん。今の貴女の状態で剣道できる訳ないでしょ。同じ剣道部の部員としては無理だと思うわ」

 

「セシリアさんもよ。そんなボロボロな状態でやったら怪我するわよ」

 

そう言い2人と同じ剣道部とテニス部所属の生徒が咎める。正論を言われぐうの音も出ない2人。

 

【バシン!!!】

 

と突然廊下から普段から聞きなれた音以上の打撃音が鳴り響いた。1組の生徒数人が確認すると箒達同様に包帯やらシップが沢山されている鈴が俯せの状態で倒れており、その前には出席簿を携えた千冬が立っていた。

 

「全く、あれだけ説教したというのにまだ分からなんのか、この馬鹿者は」

 

そうダルそうに零す千冬。

 

「織斑先生、その子また何かやらかしたんですか?」

 

「ん? あぁ、また何時もの如く織斑に突撃しようと教室前で待ち構えていたようでな。毎度の如く肉体説教だ」

 

1組の一人に聞かれ、呆れた様子で返す千冬。そしてふとある事を思い出し顔を上げる。

 

「まさかと思うが、ウチのクラスの馬鹿二人もか?」

 

「はい。ボロボロなのに織斑君をストーキングしようと教室から出て行こうとしましたが、クラスの皆で阻止していた所です」

 

そう言われ千冬は重いため息を吐き、出席簿で肩を叩く。

 

「そうか、それはご苦労だった。後は任せて、お前等も部活に行ってこい」

 

「分かりました。皆ぁ、織斑先生が後は任せろだってぇ!」

 

「「「「はぁ~~~い!」」」」

 

そう声が聞こえぞろぞろと教室内から生徒達が出てきて部活動へと向かっていく。千冬は傍を通っていく生徒達に部活動頑張る様に。と声を掛けていく。そして徐に両手を上げ勢いよく振り下ろし傍を通っていこうとする生徒二人を掴み止めた。

 

「貴様らは今から説教だ」

 

「「……」」ガタガタガタ

 

そう言い呼び止めたのは生徒達に紛れて脱出しようとしたセシリアと箒であった。二人は全身をバイブレーションの如く震えさせ、怯えるが千冬はそんな事気にもせず教室へと連行し説教を始めるのであった。

 

 

 

余談ではあるが、千冬によって気絶させられた鈴は2組の生徒達に回収され暫し教室内で寝かされ、気付いたころには月が上がり真っ暗な時刻であった。

 

 

 

 

教室でそんな事が起きているとは知らない一夏達はというと、学園の奥にあるとある教室前へと来ていた。

本音は顔を上げ表札を見ると其処には

 

『家庭科室』

 

と書かれていた。

 

「此処ぉ?」

 

「うん。でも、何だか静かだね」

 

そう言いながら、一夏はそっと扉をノックする。

 

『開いてるわよぉ』

 

そう中から聞こえ、一夏はそろぉりと扉を開ける。家庭科室には上級生のネクタイをした一人の女子生徒が書き物をしていた。

 

「あら、君ってもしかして今噂の男子生徒じゃない。何か御用?」

 

「あ、あの、此処って【料理研究部】で、良いでしょうか?」

 

一夏がそう聞くと女子生徒はニンマリと笑顔を見せて頷く。

 

「えぇ、此処が料理研究部の活動部屋よ。でも今日は部活はやってないわよ」

 

「え? やってないんですか?」

 

「今日は皆、お題に合うメニュー調べで居ないのよ」

 

お題?と女子生徒が言った言葉に首を傾げる一夏と本音。

 

「うん。ウチの部はそれぞれお題を出し合ってその中から一つのお題を選んで、お題に合う料理を調べて作るっていう活動なの。それで、今日のお題は【皆大好き、菓子パン】って言う物なのよ」

 

「「へぇ~」」

 

2人が関心の声を零していると、女子生徒はある事を思い出す。

 

「そう言えばここ来た理由を聞いてなかったわね」

 

「あ、そうでした。あの、僕も此処に入部したいのですが、大丈夫でしょうか?」

 

一夏はおずおずと入部希望の事を伝えると、女子生徒は目を点にさせ何回か目をぱちくりさせる。

 

「えっと、入部ってウチに?」

 

そう問われ一夏は控えめにコクリと頷く。

 

「……」

 

しばしの沈黙が流れる家庭科室。

 

「あ、あの?」

 

「え? あ、ご、ご、ごめんね。ちょっと驚いちゃって。入部ね。え、えぇ問題無いわよ。入部届の紙は?」

 

「あ、はい。こ、これです」

 

そう言い一夏は家庭科室へと入って行き女子生徒に入部届の紙を手渡す。

 

「うん、確かに。それで、そっちの子は?」

 

「あ、私はただの付き添いでぇす」

 

「そうなの? それじゃあえっと、織斑君だったわね。さっき言った通りお題に合った料理を調べて此処で作るから材料と必要ならレシピ等、それとエプロンと三角巾を持ってきてね。次皆が集まるのはGW明けになるからそれまでに準備とかしておいてね」

 

「は、はい。えっとよ、よろしくお願いします」

 

そう言い頭を下げる一夏。その後一夏と本音は家庭科室から退出していく。

 

 

残った女子生徒は2人を見送り、また一人だけになる。

 

「……」プルプル

 

黙り込みプルプルと震え出す女子生徒。そして

 

 

「よっっしゃあーーーーーーーー!!」

 

と声高々に拳を突きあげ喜ぶ女子生徒であった。




次回予告
IS学園はGWに突入し、多くの生徒達が実家に帰ったり学園に残って予習復習を行っている中、一夏も家へと帰って来ていた。
メサと共に家の中の用事を済ませていると、一夏はある事を思い出し友人の家に向かうことになった。

次回
一夏君お家に帰る~【坊ちゃまぁぁぁ!!】~


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14話

料理研究部の入部が決定して数日が経った日。世間はGWへと突入し、多くの生徒達は実家や小旅行をしに出掛けており、IS学園には自主練をする生徒や授業に何とか喰らい付けている生徒達が余裕を持てる様にと予習に明け暮れる。

そんな中、一夏は空っぽなのかぺターンと萎んだリュックサックを背負いながら校門前で立っていた。

 

「そろそろ来る頃かな?」

 

そう零しながら腕時計を見つめる一夏。するとガシャンガシャンと忙しなく聞こえる機械音に顔を上げると

 

【ぼっちゃまぁぁぁああぁぁぁ!アーッヒャヒャヒャーΨ(゚∀゚ )Ψ(゚∀゚)Ψ( ゚∀゚)Ψアーッヒャヒャヒャー】

 

と滅茶苦茶喜んでいるか、プラカードの内容が荒ぶっていた。

 

「お久しぶり、です。メサさん」

 

【はい! お久しぶりございます、坊ちゃまぁ! ささ、お家に帰りましょう!】

 

そう言い一夏の隣に立ち手を差し出すメサ。一夏はその手を掴んで歩きだした。

モノレールを乗り継ぎ、最後にバスに乗って家の近くまで行き、残りは歩いて行く一夏達。

そして歩く事数分、一夏は懐かしき家へと到着した。

 

【ささ、坊ちゃま。懐かしきお家にお上がり下さい。メサが直ぐに冷たいジュースをお入れいたしますので(*´∇`*)】

 

そう言われ一夏はうん。と頷き家の鍵を開け中へと入る。中は綺麗にされており、埃などは舞っていなかった。

 

「メサさん、何時も掃除しておいてくれたんですか?」

 

【はい。何時坊ちゃまが帰って来られてもいい様にと綺麗にしておりました。( ̄∇+ ̄)vキラーン】

 

「そう、なんですか。ありがとうございます」

 

メサにお礼を述べた後一夏は居間へと向かいリュックサックを降ろし椅子に座り一息つく。メサは直ぐに冷蔵庫から冷やされたジュースを氷の入ったグラスへと注ぎ、一夏の前に差し出す。

暫し休憩を入れた後、一夏は自身の部屋へと行き夏用の服や娯楽用のWalkmanやゲーム機、それと部活に使えるかもしれないと自身が書いてきた料理ノートをカバンへと仕舞っていく。

すると一夏は本棚に仕舞っている漫画の空いている部分に気付き首を傾げる。

 

「あれ? 此処の巻、どうして無いんだろう?」

 

暫し考え込んだ後、思い出したのか顔を上げる一夏。

 

「そうだ、弾君に貸してたんだ」

 

思い出した一夏は少し困惑した表情を浮かべていると、部屋をノックする音が鳴り響く。

 

「どうぞぉ」

 

【坊ちゃま。本日のご昼食なんですが】

クルッ【どうかされましたか?(・◇・ )】

 

プラカードを見せながら入ってくるメサ。一夏の困惑し表情を見せ、即座に自身の用事を聞くのを止めるメサ。

 

「じ、実は漫画を一つ、友達に貸してるんだけど。その家が、その…」

 

言い淀む一夏にメサは暫し固まった後、プラカードを見せる。

 

【なるほど。そのお友達の家にメサもご一緒しましょう】

 

そう書かれたプラカードを見せられ一夏は少し安心した表情を浮かべ頷く。

 

 

 

 

とある街にある食堂、その名は五反田食堂と言われている。

食堂内にあるキッチンでは一人の厳つい男性が新聞を読んでいた。

すると扉をノックする音が鳴り響き、ジト目で扉の方に目をやる。

 

「まだ開店前だ」

 

そう怒鳴りまた新聞を読み始める男性。すると扉がガラガラと開けられ、男性はギロリと扉を開けた人物を睨みつける。

 

「おい、まだ開店前だ…と…。お、お前さんは…」

 

【お久しぶりですね、五反田厳さん。それと、開けてきた者に対して睨むってどうなんですかねぇ。(▼⊿▼) ケッ!】

 

そう書かれたプラカードを見せられぐうの音も出ない厳。

 

「あ、あのお、お邪魔します厳さん」

 

そう言いながらメサの後ろに隠れながら挨拶をする一夏。一夏の姿を見て少しだけホッとなる厳。厳はある理由からメサの事が苦手になっていたのだ。

 

「お、おう一坊か。どうかしたのか?」

 

「えっと、弾君いますか?」

 

「弾? あぁ、2階で寝てる。勝手に上がっていや、儂が行くわ。ちょっと待ってろ」

 

メサの【あぁ?(`д´ ╬ )】と書かれたプラカードを見せられ厳は足早に二階へと上がって行く。そして

 

『何時まで寝てんだ、この馬鹿孫‼』

 

『いってぇぇ!!??!』

 

と二階から叫ぶ声が響く。暫くして頭を抑えながら降りてくる赤髪でバンダナをした少年が降りてきた。

 

「痛えぇ。えっと、お久しぶりです、メサさん。それと一夏」

 

降りた先に居た2人にそう挨拶をする少年。

 

「う、うん。久しぶり弾君」

 

【漸く降りてきたか。┐( -"-)┌ヤレヤレ...】

 

メサが見せてきたプラカードに何とも言えない弾。

 

「えっと、それで今日来た理由は何だ?」

 

「あの、貸してた漫画を、返して欲しくて」

 

「漫画? あぁ、済まん。借りてたままだったな。ちょっと待っててくれ」

 

そう言い弾は急いで二階へと上がって行く。暫くして一冊の漫画本を手に降りてきた。

 

「わりぃわりぃ。返しに行こうと思ってたんだが、お前IS学園に行っちまっただろ? それで返しに行こうにも行けなくってな」

 

「そう、だったんだ」

 

そう言い一夏は受け取った漫画本を肩から下げていたカバンへと仕舞う。

 

「そうだ、お昼はどうするんだ?」

 

「お家で食べる予定だけど、何?」

 

「あぁ~、いや。もしよかったらウチで食べていかないかって誘おうと思ったんだが」

 

チラッと弾はメサの方へと見ながら理由を述べる。

 

「そう、なんだ。ごめんね、家の用事が済んだらすぐに学園に帰る予定でいるんだ」

 

「そうか。また、時間があったら食いに来てくれ。腕によりをかけて作ってやるからよ」

 

「うん。楽しみにしてるよ」

 

そう言い一夏はメサと共に五反田食堂から去って行った。

 

2人が去って行った後、弾ははぁ。とため息を吐いた後厨房へと立つ。そして厳も降りて来て何時も座っている席へと着き、新聞をまた読み始めた。

 

「一坊は帰ったのか?」

 

「あぁ。家の用事がまだあるらしくて、それが済んだらすぐに学園に帰るんだってよ」

 

「そうか」

 

それだけ言うと厳は黙り、弾も何も言わず昼の営業の準備をする。

するとバタバタと階段から下りてくる一人の少女。

 

「お兄、この前一夏さんから借りてた漫画あるでしょ。あれまだある?」

 

「……あれだったらさっき一夏とメサさんが来て、返したぞ」

 

弾は淡々と言った口調で準備をしながら答える。

 

「ウソ、一夏さん来てたの!? 何で教えてくれなかったのさぁ!」

 

「……居た所で、お前とは面と話せない事くらい分かるだろ?」

 

「……」

 

弾の棘のある言い方に少女は顔をしかめ、口をつぐむ。

食堂内の空気が若干重くなり誰もが口を開かなくなっていると、一人の女性がガラガラと扉を開け入って来た。

 

「ただいまぁ。ごめんなさい、お父さん。頼まれてた食材が隣町まで行かないと無かったもんですから。……どうかしたの弾、それに蘭?」

 

そう女性が問うと、弾はから笑いで返す。

 

「いや、何でもねぇよ母ちゃん」

 

弾の説明に何処か引っ掛かりを憶える弾と蘭の母、五反田光莉はそう?と答えキッチンの冷蔵庫の中へと買ってきた食材などを入れていく。

すると

 

「ねぇ、お兄。さっき一夏さんが来てたって言ったよね?」

 

「あぁ、言った。それがなんだ?」

 

「私今から追いかけて「行って何をする気だよ?」た、ただお昼を一緒に食べませんかって言いに…」

 

「一夏は今日、家で飯を食うって言ってた。それに用事が済んだらさっさと学園に戻るって言ってたぞ」

 

「そ、そんなぁ。「……アイツは今色々大変な状態なんだ。そっとしておいてやれ」で、でも話したいことが一杯――」

 

《バァン!》

 

蘭の言葉を遮る様に厨房に居た弾は拳を握りまな板を叩く。

 

「そっとしておいてやれって言ってるだろうが! それにな、アイツが此処で飯を食いたがらないのはお前に原因があるのを忘れたのか!」

 

そう強く怒鳴ると、蘭は茫然と言った表情を浮かべた後トボトボと二階へと上がって行った。

肩で息をする弾に光莉と厳は何も言わず、ただ俯くのみであった。

 

「……わりぃ、ちょっとイラッときちまって」

 

「…いいのよ。それと、あの子も悪気があって言ったわけじゃないから、許してあげて」

 

光莉にそう言われるも、弾は少し暗い表情を浮かべつつも準備を再開した。

 

(はぁ~、こればっかりは儂の手でも無理だな)

 

厳はそう心の中で思いながら、ある事を思い返した。

それは今から1年ほど前、一夏はメサと共に五反田食堂へと訪れた。厳は何時もと変わらないぶっきらぼうな言い方で挨拶をするが、普段とは違う一夏の様子に怪訝そうな顔を浮かべ光莉と弾も心配そうな表情を浮かべていた。

其処で一夏と一緒に来ていたメサから一夏が女性恐怖症という精神病を患っている事を教えられ驚いたり悲しい表情を浮かべる3人。

そして一夏は久々に会った弾と遊ぼうと部屋でゲームをしていた時、事件は起きた。

 

「ねぇ、弾君。またそのキャラクターでやるの?」

 

「あったりまえだぁ! 俺はこいつを極めると決めてるんだ!」

 

そう叫びながら格闘ゲームのキャラを決める弾。すると

 

「ちょっとお兄、五月蠅い!」

 

と扉を勢いよく開け、怒鳴ったのは蘭であった。だがその格好はタンクトップに短パンと言った女子にはラフすぎる格好だった。

 

「ヒッ!?」

 

突然真横から叫ばれた事に驚いた上に、蘭の格好を見た一夏は発作が起きた事に気付き急ぎ注射を打とうとする。

一方弾は突然乱入してきた蘭に一瞬驚くも、メサから言われた一夏の症状を思い出し直ぐに蘭を追い出そうとする。

 

「おい馬鹿! そんな格好で部屋に入ってくるな! 部屋にすぐに戻れ!」

 

「も、戻るけど、一夏さんの様子が可笑しいじゃない! だ、大丈夫ですか、一夏さん?」

 

そう言い何も知らない蘭は一夏の肩に触れた瞬間

 

「ひ、ひやぁああぁあっぁぁあああ!!???!」

 

と、叫び倒れてしまう。

 

「い、一夏さん!?」

 

「ば、馬鹿! だから部屋に帰れって言ってるだろ!」

 

「そんな事言ってる場合じゃないじゃん! 早く一夏さんを病院に――」

 

蘭が一夏を起き上がらせようとした瞬間、部屋の扉が蹴破られた。

 

【坊ちゃまぁ! どうしたのですか!? (´□`;)】

クルッ【……(#´O`)は??】

とプラカードを掲げながら入ってくるメサ。そして目の前の光景にプラカードの内容を変え固まるメサ。

 

「め、メサさん」

 

【おい、これはどう言う事だ? ( ̄へ  ̄ 凸】

 

「す、すいません。妹は一夏の症状の事は知らなかったんです。あの、直ぐに病院に―」

 

【いや、結構。こちらで自宅へと送る。千冬氏のご友人に医者が居る。その人に診て貰う】

 

そうプラカードを見せた後、気絶した一夏を抱き上げようとすると

 

「だ、誰かは知りませんけど一夏さん気絶したんですよ! 病院に見て貰った方がいいですよ!」

 

そう言い一夏に近付こうとする蘭。

 

【坊ちゃまに近付くな、小娘(#`皿´)】

 

と威圧を放ちながらプラカードを見せるメサ。メサの威圧に負け尻もちをつく蘭。

 

【知らなかったとはいえ、坊ちゃまにこんな目に遭わせたんだ。絶対に許さんからなヽ(#`Д´)ノ】

 

そうプラカードを見せた後一夏を抱き上げ、メサは五反田食堂から出て行った。

 

(--あの日以降、一坊はこの店に来る頻度は減って、用があっても千冬ちゃんか、さっきのメサって言うロボットが一緒に付いてくるようになったからな。しかもこころなしか警戒している様な様子を見せて)

 

そう思いながら新聞を畳む厳。

 

 

 

その頃、IS学園に居る千冬はと言うと

 

「納得できません!」

 

と目の前に居る初老の男性に向かって怒鳴っていた。

 

「しかし、向こうの頼みですし「それでも、私は拒否します!」そ、其処を何とか頼めませんか?」

 

千冬は怒り顔を浮かべながら男性から手渡された紙を机へと叩きつける。そして鋭い眼光で叩きつけた紙の一枚を睨む。

其処には『転入生資料』と書かれており、写真と詳細が書かれていた。

写真には銀髪で眼帯をした少女が写っており、名前の欄には『ラウラ・ボーデヴィッヒ』と書かれていた。




次回予告
GWで生徒が居ない中、千冬は料理研究部の顧問に一夏に関する注意事項などを伝えていると、学園長室に呼び出される。呼び出された理由が転入生に関する事だったが、その内の一人に千冬は嫌悪感を露にする。

次回
千冬、心配事がまた増える





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15話

千冬が男性に怒りを表す数時間前、千冬は職員室である資料を作成を終えた所であった。

 

「これで良し。さて、後は…」

 

そう呟きながら目当ての人物を首を振りながら探すと、目当ての人物が居るのを発見し資料を持って立ち上がっる。

 

「幸平先生、少しいいですか?」

 

そう声を掛けたのは金髪のロングヘア―で、きりっとした目つきが特徴の女性だった。

 

「あら、織斑先生。どうかしましたか?」

 

「ウチのクラスの織斑が幸平先生の部に入部したとのことで、少しお話が」

 

「あぁ、彼の事ですか。ウチの部長が大興奮で噂の男性操縦士が入部してくれたって大声で連絡してきましよ」

 

苦笑いを浮かべながら幸平はそう言い、千冬もその光景が目に浮かんだのかお疲れ様です、と声を掛ける。

 

「それで、その彼の事で何か?」

 

「あぁ、そうでした。これを部員達に配っておいて貰ってもいいですか?」

 

そう言い千冬が幸平に手渡したのは先程作成した資料であった。

 

「これは…彼に関する注意事項ですか?」

 

「えぇ。幸平先生はご存知かもしれませんが、部員たちは恐らく知らないと思うので一応用意をしたんです」

 

幸平は渡された資料を見つめる。其処には千冬が1組で説明した一夏に関する接し方や気を付けなければならない事が書かれていた。

 

「なるほど。では次の部活動の時に生徒達に配っておきますね」

 

「すいませんが、お願いします」

 

そうお願いしていると、千冬は幸平が優しそうな笑顔を浮かべながらこちらを見ている事に気付く。

 

「あの、なにか?」

 

「いえ、噂通り弟思いのお姉さんだなぁと思って」

 

幸平の言葉に、弟思い?と首を傾げる千冬。

 

「皆噂をしていますよ。弟さんが入学してからというもの、織斑先生が陰ながら弟さんの為に彼方此方走り回ったり、病気の事を考えずに近付こうとしている生徒を睨みつけて追い返しているって」

 

クスクスと笑いながら説明する幸平に、千冬は( ゚д゚)ポカーンといった表情を浮かべていた。

 

「えっ? そんな噂が?」

 

「えぇ。皆最初は驚いていましたが、今はクールでカッコいい教師でもあり、弟思いの優しい教師でもあるって皆、新しい一面を見られたって喜んでましたよ」

 

幸平の説明に千冬は何とも言えない表情を浮かべ、頬も若干赤みを帯びていた。

 

「あら、織斑先生。もしかして照れてます?」

 

「て、照れてはいません! と、とと、兎に角にお願いしますね!」

 

そう言い照れた表情を見せまいと足早に自分の机へと戻っていく千冬。そんな背を幸平はクスクスと笑いながら見つめているのであった。

 

自身の机に戻って来た千冬ははぁ。とため息を吐いた後GW明けの授業の準備をしておくかと思い資料を出そうとした瞬間

 

『織斑先生、学園長がお呼びですので学園長室へお越しください。繰り返します、織斑先生、学園長がお呼びですので学園長室へお越しください』

 

「む? 一体何の用だ?」

 

突然の放送に千冬は怪訝そうな顔付で立ち上がり、職員室を後にした。

暫く廊下を歩き他の部屋とは違う少し高級そうな扉が現れ、千冬は扉をノックする。

 

「織斑です」

 

『どうぞ、お入りください』

 

そう中から聞こえると千冬は失礼しますと一言入れ、中へと入る。中に入り千冬は奥に座っている初老の男性の元に向かう。

 

「学園長、何か御用ですか?」

 

「えぇ、少しGW明けの事でお話があるんです」

 

そう言い初老の男性、轡木学園長にソファにどうぞ。と言われ千冬は学園長が座るソファの向かいのソファへと腰を下ろす。

 

「それでGW明けの事でとはどういうことですか?」

 

「実はGW明けに2人の生徒が転入してくることになりました」

 

そう轡木が言うと、千冬は怪訝そうな顔付となる。

 

「転入生、ですか? やけに遅い転入ですね」

 

「えぇ。実は転入してくる生徒の一人が、どうやらフランスで発見された男性操縦士らしんです」

 

轡木の口から出た男性操縦士と言う言葉に千冬の眉間にしわが寄る。

 

「男性操縦士が? 明らかに可笑しいですね」

 

「えぇ。織斑君が見つかった後に国際IS委員会が各国の支部に調査をするよう指示を出したと聞いています。今まで何の成果も無かったというのにそれが一企業が発見したというのですからね」

 

そう言いながら轡木は一枚の資料を千冬に手渡す。渡された資料に目を向けると、其処には金髪の女性の様な人の写真が張られ詳細が書かれていた。

 

「シャルル・デュノア。デュノア社社長の息子でデュノア社の企業代表。……まさか、こんな怪しさ十分な者を入れるのですか?」

 

「最初は私も疑問に思ったのですが、確たる証拠がない故拒否はできません」

 

そう言われ千冬は心の中で舌打ちを放ち、鋭い目で資料を見つめる。

 

「そうですか。それで、もう一人の転入生は?」

 

千冬はデュノアの件は後で考えるとして、もう一人の転入生について学園長に問うと、轡木は少し言いづらそうな表情を浮かべる。

 

「実は、もう1人は織斑先生のお知り合いと言っており、織斑先生のクラスに編入させて欲しいと要請がある生徒なんです」

 

「私の知り合い?」

 

轡木の言いづらそうな表情に禄でも無い事だなと考えつく千冬。

 

「して、その生徒と言うのは?」

 

轡木は千冬の問いにそっともう一つの資料を千冬に手渡した。その内容を見た千冬は一瞬で顔付が変わり紙を持つ手に力が入る。

 

「こいつは……」

 

「……先方は昔織斑先生にお世話になったと「こいつを世話をした憶えはありません」そ、そうですか」

 

千冬は苛立ちを貸せず学園長に対し少し強めの口調となる。そしてハッとなり顔を資料から轡木の方へと向ける。

 

「まさか、こいつとデュノアを私のクラスに入れるおつもりですか?」

 

「そのつもりで「私は拒否します!」お、織斑先生」

 

「こいつらが私のクラスに入れば、何が起きるか想像できますでしょ!」

 

「それは勿論理解しております。しかし、デュノア社のほうは証拠が無いですしもう一人の生徒は他の教師では手には負えません」

 

「それでも私は納得できません!」

 

そう叫び千冬は拒否の姿勢をとる。そして持っているのが嫌なのか、もう一人の転入生の資料、【ラウラ・ボーデヴィッヒ】と書かれた資料を机に叩きつける。

 

「織斑先生、貴女の気持ちも十分わかります。ですが、この二人に関しては他の教師には荷が重すぎるのです。無論、この二人が問題を起こした場合の裁量は織斑先生にお任せします」

 

轡木はそう言ってどうか。と深々と頭を下げた。千冬自身轡木には幾度か世話になった事がある為、これ以上の我儘はいけないという事は分かっていた。だが心の中でこの二人が一夏に対し、様々なトラブルを持ち込むと目に見えて明らかだった為素直に頷けない。どうしたものかと考えていると、ある事を思いつく。

 

(これだったらこの二人だけじゃなく、他の奴等も牽制できるのでは。 だが許可は下りるだろうか? いや、下ろさせる。絶対に!)

 

何かを決意した表情を浮かべた千冬は、拳を握りしめつつ口を開く。

 

「分かりました、学園長。転入生の件、承諾します」

 

「そうですか、ありが「ですが、条件があります!」……なんでしょう?」

 

「この二人が織斑に対し、何かしらトラブルを持ち込んでくる可能性は大いにあります。ですので彼に護衛を付ける許可をください。それさえ許可してくだされば私は引き受けます。無論殺傷兵器の使用は私の許可なくして使用は禁じさせます」

 

「……できれば殺傷兵器の許可制とかではなく完璧に無しの方が「なら私は引き受けません」……分かりました。ですが、相手の殺傷するのではなく、負傷程度で済ませて下さい。それが最大限の譲歩です」

 

「分かりました」

 

「それじゃあ政府に護衛の派遣の要請を「いえ、私の知り合いに頼みます」し、しかし学園の警備の関係もあります。政府の方が「あんな連中信用できません」ではその知り合いとは、どう言った人物ですか?」

 

「以前織斑に荷物を届けに来たロボット、それを製作した者です。奴なら完璧な護衛ロボを用意してくれます」

 

そう言われ轡木はまさかの言葉に思わず言葉が詰まる。

 

「ま、まさか篠ノ之博士の事ですか?」

 

「これ以上に信用できる者はありません。それに下手に政府が用意した護衛を学園内に入れれば、他国からもと護衛を出される恐れがあります」

 

そう言われ轡木は暫し思案した後、口を開いた。

 

「分かりました、それで構いません」

 

「ありがとうございます。では、失礼します」

 

そう言い席を立ち千冬は一礼した後学園長室から出て行った。一人残った学園長ははぁ。と重いため息を吐いた。

 

学園長室から退室した千冬は廊下を暫く歩き、突然止まり窓辺の柱に凭れる。

 

「聞いていたな? 頼むぞ」

 

誰もいないにも拘らずそう言うと窓の外に生えている草むらからガサガサと動き、束が現れ同じく千冬の背に合わすように同じ柱に凭れる。

 

「あいあいさぁ~。 いっくんが好みそうなプリティーでめっちゃ強い護衛ロボを作るよ!」

 

ケラケラと笑いながら伝える束。すると先程とは違う冷たい気配へと変えた。

 

「それにしてもさぁ。転校してくる奴の一人、懲りないねぇ。あれだけちーちゃんに痛い目にあわされた癖にさぁ」

 

「あぁ、全くだ。奴だけじゃない、他の連中もだ」

 

「だねぇ。それと、もう一人の疑惑だらけの転入生。あれ、男じゃないよ」

 

「だろうな。束、お前の方でも出来るだけ証拠を集めておいてくれ。いざとなったらあの会社もろとも潰す」

 

「ふふ~ん。そう言うと思って既に集め始めてるよぉ」

 

フッ、そうか。と零しながら千冬は凭れていた柱から背を離す。

 

「それじゃあ頼んだぞ」

 

「イエッサァー!」

 

と、そう言い束は草むらの中へと飛び込むとすぐにその気配は消え去った。

束が消え去ったのを確認した千冬は再び歩き出しながら静かに転入してくる一人、【ラウラ・ボーデヴィッヒ】の事を思い返す。

 

「チッ。アイツを思い返すと、あの事件の事を思い出す」

 

苛立ち気にそう零しながら、千冬は思い返す。一夏が女性恐怖症になってしまった、あの(モンドグロッソ)の事を。




次回予告
時間は遡る事、第2回モンドグロッソの時。すべては此処から始まった。

次回
全ての始まり~貴様さえ居なければぁ‼~


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16話

2年前、世界は第2回のモンドグロッソに盛り上がりを見せていた。そして最も盛り上がりを見せたのは第1回のモンドグロッソを制した日本の織斑千冬の試合だった。

誰もが今年の優勝は日本、そう思っていた。

そして決勝戦開始の時刻になったが、千冬はフィールドには出てこなかった。誰もが突然の事に騒然となり、委員会が千冬の待機している部屋へと赴いた。其処に広がっていたのは、

 

 

 

大会に来ていた日本政府関係者達の顔面がボコボコにされた状態で倒れていた。

 

一方千冬は自身のIS、暮桜のスラスター全開である場所へと向かっていた。そして目的地である、廃工場が目に見えた瞬間千冬は直ぐに持っていた雪片を構え壁を破壊して中へと突入した。

 

「一夏ぁぁ!!」

 

そう叫び部屋の中を見渡すと、拘束され涙を流しながら怯えている一夏と派手な格好をした女がいた。そして何故か一夏の服は若干はだけていた。

 

「ち、千冬様!? そ、そんな、どうして!?」

 

そう叫びながら女は後ずさる。千冬は雪片を握る手に力を入れつつ一歩ずつ女に近付く。

 

「貴様ぁ、一夏に何をしようとしたぁ!」

 

殺気全開で問う千冬に、女はヒッ!?と悲鳴を上げ尻もちをつきながら壁際まで後ずさる。

 

「答えろぉ!」

 

そう叫び女の背後に向かって雪片を突き刺す。突き刺さった雪片で頬が若干斬れ、血が流れる女は振るえる唇で口を開く。

 

「そ、その子から、い、遺伝子情報を手に入れてあ、貴女様と同じ血の子を、う、産もうと……」

 

その言葉に千冬は鋭かった目を更に鋭くさせ、雪片を引き抜き女の首元に添える。

 

「殺す」

 

その一言だけ発し、首を斬り落とそうとしたが僅かに残っていた理性が一夏が居る事を気付かせ思い止まらせた。振り上げた雪片を拡張領域に仕舞い千冬はある程度力を抑えた状態で女の頬を殴り飛ばし、意識を刈り取った。

力を抑えたとはいえ、殴り飛ばされた女からはメキッと鈍い音が鳴り響いており顔の骨が幾つか折れているのは確実であった。

 

女を片付け終えた千冬は直ぐにISを解除し一夏を解放し、力強く抱きしめた。

 

「すまない、一夏! 怖い思いをさせて本当に済まない!」

 

千冬は怖い思いをさせてしまった事、そしてすぐに助けに来てやれなかったこと。そんな思いが入り混じり溢れん涙を流しながら一夏に謝る。

 

「だ、だい、大丈夫。お、おねぇじゃんが、だ、だずげにきてくれだから」

 

涙声で伝える一夏に、千冬は済まないと何度も言いながら、一夏を落ち着かせる。

暫くしてドイツの軍人達も到着し、誘拐の実行犯であろう者達と主犯を逮捕していった。

そして一人のドイツ軍将校が千冬の元にやって来た。

 

「Ms.織斑。弟さんが無事で良かったです」

 

「あぁ、協力は感謝する。それで、貴様らの見返りは何だ?」

 

千冬の問いに将校はニンマリと笑顔を浮かべながら答えた。

 

「我が軍にあります、IS部隊の訓練を見て頂きたい。期間は1年です」

 

「……良いだろう。ただし、知り合いに弟を預けたいが、向こうにも都合がある為暫く弟も一緒に連れて行くぞ。だが万が一お前等が私の弟に何かしたら期間など関係なく私は弟を連れ一緒に日本に帰る。いいな?」

 

千冬の条件に将校は眉間にしわを寄せるが、直ぐにまた胡散臭い笑みをへと戻り了承した。

ドイツ軍の軍人達に連れられ、一夏と千冬はとある空軍基地へと到着した。一夏と千冬は用意された部屋へと案内され其処に荷物を置いた後、一夏の容態を診て貰うべく軍医の元へと連れて行く。

 

「――はい、診察終わり。怪我とかは無かったよ」

 

軍医の男性はそう言いながら、良かったな。と言いながら一夏の頭を優しく撫でた。

 

「ありがとうございます」

 

「いえ、軍医として仕事を全うしただけなので」

 

千冬は軍医に感謝しつつ一夏と共に部屋を出ようとした瞬間

 

「あ、お姉さんはちょっと待ってもらってもいいですか?」

 

「はい? 一夏、済まんがちょっと廊下で待って居てくれ」

 

「…うん」

 

そう言い呼び止められた千冬は部屋に残り、不安そうな表情を浮かべる一夏は廊下の外へと出た。

 

「それで、なんですか?」

 

「実は彼の事なんですが…」

 

軍医が心配そうな表情を浮かべている事に千冬も不安な表情を浮かべる。

 

「一夏が、何ですか?」

 

「まだ発症はしていないと思っていますが恐らく彼はPTSD、心的外傷後ストレス障害になりかけている恐れがあります」

 

軍医の口から出た言葉に千冬は茫然と言った表情を浮かべ、一瞬頭の中が真っ白になりかけた。だが、直ぐに気を取り戻しその訳を問う。

 

「ど、どう言う、事ですか?」

 

「今回彼のおかれた状況は、中学生にはあまりにもショックの強い事です。しかも性的暴行もされかけたとも聞いています。そんな強いショックを受ければ心につけられた傷は大きいです」

 

「では、今後発症する恐れがある、そう仰っているんですか?」

 

「恐らく。今は何とも無い様子でしたので大丈夫ですが、次にまた大きなショックを受ければ……」

 

其処から先を軍医は言わなかったが、千冬は直ぐに察することが出来た。

 

“また大きなストレス性のショックを受ければ、発症してしまう”と。

 

「分かりました。どうも、ありがとうございます」

 

そう言い千冬は一礼し廊下へと出て行った。廊下に出ると、一夏がベンチに座りながらこっくりこっくりと首を動かしながらうたた寝をしていた。千冬は悲痛な表情を浮かべながらそっと一夏の傍に座る。

 

(済まない、一夏。お姉ちゃんが守るって言ったのに。どんな事があってもお姉ちゃんが絶対に守ってやるって約束したのに)

 

そう思いながら一夏の頭を優しく撫でる。撫でられた事に気付いた一夏はそっと目を開け顔をあげてくると、千冬は優しい笑みを浮かべた。

 

「お姉ちゃん? 先生とのお話終わったの?」

 

「あぁ、待たせて済まんな。呼び止められた理由だが、一夏の傍に居てやるように、だそうだ」

 

「そう。……ふわぁ~」

 

「眠そうだな。ほら、おんぶしてやるから乗れ」

 

そう言い千冬はベンチから立ち屈むと、一夏はそっと千冬の背に体を預けた。千冬は久しぶりにおんぶした一夏の重たさに感慨深そうな顔を浮かべる。

 

(随分と重くなったな。……もう、二度とあんな目に合わせない。何があろうと、絶対に一夏を守る!)

 

千冬はそう心に改めて決心し、一夏を寝かせに部屋へと向かった。

 

 

それから数日が経ったある日、用意された部屋で一夏と千冬は朝食をとっていた。

 

「それじゃあ一夏、夕方頃に伊田が迎えに来るから荷物とかちゃんと纏めておくんだぞ。それと、暫く伊田のご家族と一緒に暮らすが、迷惑を掛けないようにな」

 

「うん」

 

千冬は一夏の返答を聞きながら、最後の一かけらのトーストを口に中へと放り込む。

そしてドイツの新聞を手に取り読み始めた。内容はほぼモンドグロッソのことが書かれており、千冬の途中棄権の事も書かれていた。

 

《前回優勝者、織斑千冬途中棄権!》

 

と、でかでかと書かれていた。詳細の所には様々な憶測が書かれており、あの日あった事件の事は書かれていなかった。

無論書かれているはずがない。一夏が誘拐された事件は、余りにも事が大きすぎる事件であった。日本側は千冬に誘拐された事を黙っていた事。そしてドイツは警備を任されていたというにも関わらず、事件を未然に防げなかった事などがあり、両政府の密談の結果事件は闇へと葬られた。だがこの事件は日本に大きな代償を支払う事となった。

それはブリュンヒルデである織斑千冬が引退したことであった。

2連覇達成という名誉のために一夏が誘拐された事を黙っていた政府。だが、当時の議員秘書の一人が千冬に密告したのだ。その結果千冬が怒りに震え、救助に向かおうとした時政府は止めに入るも、誘拐を隠そうとした政府にも怒りを抱いていた千冬は容赦なく政府関係者全員を目一杯の拳を振り下ろし、全員をぶちのめしたのだ。一夏が救助された後、千冬は意識を取り戻した数人の政府関係者の目の前で引退を表明した。無論引き留めようとしたのだが、事件の事をぶちまけるぞと脅され苦渋の思いで受け入れたのだ。

 

日本国内では決勝前に棄権したことで千冬を非難する声が上がっているが、千冬は気にも留めなかった。自身の大切な家族を守る為なら、自身の名誉など簡単に捨て去る。千冬はそう考えているからだ。

 

そして千冬は何時もの時間に部屋を出て訓練所へと向かい、一夏は持って来ておいた問題集で勉強を始めた。

~お昼前~

 

勉強を終え、使っていた道具を片付け始める一夏。そしてふと時計を見ると、既にお昼前となっており一夏は昼食を食べようと準備を始めるが

 

「あ、そういえば飲み物ってまだ有ったっけ?」

 

そう言いながら冷蔵庫の中を見るが、飲み物は無くがら~んとした中身であった

 

「どうしよう。……あ、確かお姉ちゃんがあそこにお金を置いておいてくれたはず」

 

そう言い一夏はベッド横の棚から小さなブリキ箱を取りその蓋を開ける。中には8.53ユーロ、日本円で約1000円分の紙幣と硬貨、そして手書きの地図が入っていた。地図には部屋から自動販売機までの道のりが書かれていた。

一夏はお金をポケットに仕舞い、地図を片手に部屋を後にした。

部屋を出て地図と現在地を確認しながら歩む一夏。そして漸く自販機が置いてある場所の近くまで着た一夏。

 

「えっと、今此処だから「おい」うぇっ!?」

 

突然声を掛けられたことに驚き、少し怯えた表情を見せながら声を掛けられた方を見ると銀髪で眼帯をした少女が居た。

 

「な、何か?」

 

「お前、織斑教官の弟か?」

 

睨みながら問うてくる少女に一夏は怯えた表情を浮かべながらコクリと頷く。

 

「……いなければ」

 

「えっ?」

 

「貴様さえ居なければ、教官は2連覇出来たんだぞ!」

 

そう怒鳴り少女は一夏を掴みかかる。突然の事だった為一夏は抵抗できず掴まれ、壁に思いっきり押し付けられる。

 

「貴様の様な弱虫が教官の傍に居るな!」

 

そう叫びながら少女は大きく手を振り上げ、思いっきり一夏の頬にビンタを喰らわせた。ビンタを受けた一夏は横に大きく吹き飛び地面に倒れ込む。

少女はまだ怒りが収まっていないのか、倒れ込んだ一夏に近付こうと一歩踏み出した瞬間肩を力強く掴まれ無理矢理振り向かされた。振り向かされた少女の目に飛び込んできたのは怒り顔を浮かべた千冬が振り下ろした拳であった。

 

「きょうかガハッ!!??!」

 

振り下ろされた拳は少女の顔面にめり込み、少女は大きく後方に飛んで行き廊下の端の壁に激突して止まった。少女の顔面は真っ赤に腫れあがっており、鼻は曲がり血が流れ出ていた。

少女を殴り飛ばした後千冬は急ぎ一夏の元に駆け寄る。

 

「一夏、大丈夫か!」

 

そう叫びうつ伏せに倒れている一夏を抱き上げると

 

「すはぁー、すはぁー、すはぁー」

 

と目を見開き上手く呼吸が出来ないのか、ずっと息を吸い続ける音を繰り返す。

 

(ま、まさか!?)

 

千冬の脳裏に軍医に言われた症状が頭を過り、急いで運ばなければと思い一夏を抱き上げ軍医の元に走った。

 

「――もう少しだぞ、一夏! 頑張れ!」

 

一夏に呼びかけながら千冬は軍医が居る部屋へと向かう。医務室と書かれた札のついた部屋に到着した千冬は脚で扉を蹴り開けた。

 

「えっ!? ちょっと、いきなり何をって、どうしたんですか!?」

 

「頼む、一夏を! 私の弟を助けてくれ!」

 

千冬の叫びに軍医もすぐに一夏をベッドに寝かせるよう指示し、一夏の容態を診始めた。

それから暫くして一夏は落ち着き始め寝息を立てた。

 

「これで、大丈夫なはずだ」

 

「よ、良かった」

 

軍医の隣で一夏の無事を祈り続けた千冬は脚から力が抜けへたり込む。軍医は千冬に手を貸しながら椅子へと座らせる。

 

「それで、一体何があったんですか?」

 

「……私が面倒を見る様押し付けられた訓練兵の一人が、一夏に暴行を働いたんだ」

 

「なっ!? 何てことを…」

 

千冬の口から出た言葉に軍医は言葉を失い顔を手で覆い隠した。

そして千冬は重い口である事を聞く。

 

「先生、一夏がPTSDになっている可能性はあるだろうか?」

 

「……今は何とも言えませんが、恐らくなっているかもしれません。それと、私の仮説なんですが恐らく「うぅん」あ、目が覚めたみたいだ」

 

軍医が仮説を言おうとする前に一夏の目が覚める。

 

「一夏!? 大丈夫か?」

 

千冬は急ぎ一夏に駆け寄る。一夏は薄っすらと目を開けながら千冬の方に顔を向けるが、

 

「ヒッ!?」

 

と目を見開きベッドの隅へと逃げる。

 

「い、一夏?」

 

千冬は突然逃げる一夏に困惑しながらも一夏に触れようと手を伸ばした瞬間

 

「駄目です!」

 

軍医がそう叫びながら千冬の手を掴み止めた。驚いた表情を浮かべた千冬は軍医の方に顔を向けると、軍院は切羽詰まった表情で首を横に振る。そして優しい笑みを浮かべながら一夏の方に顔を向ける。

 

「一夏君、私とお姉さんは少し外で話をしてくるから此処で待っててくれないか?」

 

軍医はそう語りかけると、一夏は小さく首を縦に振る。

軍医は千冬を連れ出し廊下へと出た。

 

「せ、先生。い、一夏の、あの状態は?」

 

「先程私が言いかけた仮説が恐らく…」

 

「その仮説とは、何ですか?」

 

「……恐らく、彼は女性に対し異常な恐怖を抱いているかもしれない、そう仮説を立てていたんです」

 

軍医の仮説に千冬は驚き固まるも、改めて一夏が受けた傷を思い返せばなる可能性は十分あった。

 

「で、では今の反応は…」

 

「恐らく、仮説が当たったんだと思います。そして先ほど私があなたの手を掴み止めたのも……」

 

「姉である私でさえも怖がるから、ですか?」

 

千冬の問いに軍医はコクンと頷いた。

 

「今の彼にとって家族であろうと、女性であれば恐怖を抱く状態です」

 

その言葉に千冬は悲痛な面持ちとなり、両手で顔を覆い隠した。

悲観にくれる千冬に軍医はかける言葉が見つからずただ黙っていると、数人程の足音が鳴り響くのを聞きつけ顔を向ける。

軍医の目の先に居たのは数人の兵士を引き連れた将校だった。その将校は千冬に1年程訓練兵の面倒を見る様指示した将校であった。

将校は悲観に暮れている千冬の元にやって来た。

 

「Ms.織斑。一つ尋ねたい。何故我が軍訓練兵の一人を殴ったのだ?」

 

「お前等の所の訓練兵の一人が、私の弟に暴行を働いたからだ」

 

「…そうですか。まぁそれいいです。さぁ、訓練所に戻ってください」

 

「何を言っているんだ貴様は?」

 

千冬は将校の言った言葉に悲観そうな顔から呆れた様な顔付を浮かべ将校を睨む。

 

「何、とは?」

 

「忘れたか? 私の弟に何かしたら期間など関係なく弟を連れ日本に帰る。私はお前にそう言ったはずだ。だから私は帰る」

 

そう言い将校を睨みつける千冬。将校は冷や汗を背に流しつつも余裕の表情を見せる。

 

「やれやれ、そのような口約束ですか。まぁ、確かに約束はしました。しかし、その訓練兵は本当に貴方の弟さんを暴行をしたのでしょうか?」

 

「なに?」

 

突然の発言に千冬は睨みながらも怪訝そうな顔を浮かべる。

 

「証言は貴女だけ。その訓練兵が弟さんを暴行を働いという確たる証拠が無ければあなたが提示した条件は満たされませんよ?」

 

将校の言葉に千冬はキッと睨んでいた目を更に鋭くさせる。

 

「残念ながらこの基地は外回りの監視カメラは多いですが、中に設置されているカメラは少なくてですね、恐らく映ってないでしょうね」

 

そう言っていると背後から部下であろう兵士の一人が将校の耳元に口を添え何かを伝えると、ニンマリとした顔を浮かべる将校。

 

「どうやらカメラにも映って無かったようです。恐らく弟さんは転んだか何かでしょう。それに訓練兵の顔面の痣も訓練によるものでしょうね。おい、其処の軍医。後で訓練兵の治療をしておくように」

 

そう指示を出し将校は千冬に訓練所に向かうようもう一度言おうとした瞬間

 

「証拠ならあるよぉ~!」

 

と、何処からともなく声が響く。そして突如窓から一人の女性が飛び込んでくる。

 

「束さん、登・場‼」

 

と決めポーズをとりながら現れた束。

突如現れた束に千冬や将校達は驚きの表情を浮かべていた。

 

「束、お前何故此処に?」

 

「そりゃあ決まってるじゃん。いっくんが平手打ちされた証拠、それを持って来たんだよ」

 

「ッ! 本当か!」

 

「ふふん、この天災に不可能は余り無いのだよ」

 

どや顔で言う束に、普段なら呆れた顔を浮かべる千冬も今回ばかりは頼りになる言葉であった。

 

「ど、Dr.篠ノ之。そ、そんな証拠一体何処に『貴様の様な弱虫が教官の傍に居るな!』『バチンッ!』なっ!?」

 

将校は証拠など無い、そう思っていたが突如束が空間ディスプレイを投影すると、其処には銀髪の少女が一夏に平手を喰らわせる映像が流れており、しかも音声まで付いていた。

 

「い、一体どうやって!」

 

「ふふん。束さん特製のカメラ搭載超ミニサイズの飛行型ロボットを使ったのさ! これでいっくんが暴行を受けたって言う証拠が提示されたぜ!」

 

束がそう高々に宣言すると将校は奥歯をギリッと噛み締める。そして

 

「クソッ、こうなったらお前達! 医務室にいる餓鬼を拘束して来い!」

 

激昂状態に陥った将校は背後に居た兵士達にそう指示を出すと、兵士達は医務室へと向かおうとする。将校は一夏を人質にして言う事を聞かせようと考えていたが、その選択は大きな過ちであった。

 

「ほい、ちーちゃん」

 

向かってくる兵士達に千冬は拳を構えようとした瞬間、隣にいた束が何かを投げ渡してきた。

 

「これは、模造刀か?」

 

「うん。だって真剣だと死んじゃうじゃん、あいつ等」

 

束の言葉に千冬はフッと笑みを零し確かになと言いつつ、模造刀を構える。

 

「さて、束」

 

「ほいほ~い」

 

千冬は束から受け取った模造刀を構え、束は荒ぶる鷹の様なポーズをとりながらほあちゃーと叫ぶ。

 

~数時間後~

 

基地の前に一台の車両が停車し、中から伊田が降りてきた。

 

「えっと、千冬が言っていた基地だが…。本当に此処か?」

 

そう言いながら伊田は辺りを見渡すが、余りにも静かだった。その上警備員が常駐する小屋には人は居るが酷く怯えており蹲って震えていた。

 

「い、一体何があったんだ?」

 

怪訝そうな顔を浮かべながらも、伊田は恐る恐る基地の奥へと進んでいく。道中クレーターやら折れた木、更にはひしゃげた街灯などが現れ伊田は不安な表情を浮かべる。

 

(まさか、テロリストにでも襲われたのか? だが、兵士達はボコボコにされているだけで、殺されてはいない。本当に何があったんだ?)

 

そう思いながら歩いていると、突然横にあった建物の窓から何かが飛び出してきた。

 

「うおっ、な、なんだ!?」

 

突然の事に声を上げながら飛び出してきたモノを見ると、それは他の兵士達とは違う階級の高い軍服を着た男だった。男の顔はパンパンに腫れあがっており、更に腕や脚はあらぬ方向に曲がっていた。

 

「……こ、この男に何が「む、伊田ではないか」ん? 千冬、それに束。お前ら一体何をしてたんだ?」

 

突然男が飛び出してきた窓から声を掛けられ伊田だが顔を向けると千冬と束が居り、束はやっほーと言いながら手を振っていた。

 

「訳を話すと長くなる。歩きながら話すから其処の扉から来てくれ」

 

「あぁ、分かった。この男はどうする?」

 

伊田はそう言いながらピクピクと痙攣している男に指を刺しながら千冬に問うと

 

「放っておけ。そいつはとんでもない事をやろうとした男だからな」

 

そう言われ伊田は首を傾げつつも男を放置して千冬達の元へと向かった。千冬と合流後、千冬は伊田にこの基地で起きた事を何一つ隠すことなく話した。最初の内は伊田は驚いた表情を浮かべていたが、後からは真剣な表情を浮かべていた。

 

「そうか。全く、何考えているんだろうな、あの伸びた奴は」

 

「さぁな。と、此処だ」

 

そう言い千冬が止まったと同時に伊田と束は止まり一つの扉の前へと到着した。千冬は扉を数回ノックする。

 

「私だ。開けてくれ」

 

そう言うと扉の鍵が開くと、中から軍医が現れた。

 

「終わったのですか?」

 

「えぇ、訓練兵と投降した兵士以外は全滅です」

 

そう言うと軍医は引き攣った笑みを浮かべた。

 

「千冬、この人は?」

 

「あぁ、この人は一夏の治療にあたってくれた人だ」

 

千冬の説明に伊田はそうか。と言い軍医の方に顔を向ける。

 

「初めまして、日本で精神科医をしている伊田洋一と言います」

 

「ドイツ軍軍医、トーマス・ヴェッツ少尉です」

 

自己紹介をしながら握手を交わす二人。そしてトーマスはその場で一夏の状態など事細かく伊田に説明した。

 

「そうですか、結構深刻な状態ですね」

 

「はい。…申し訳ありません。同じドイツ人、ましてや民間人を守る軍人が民間人に手を挙げるなどしてしまい」

 

トーマスは本当に申し訳なさそうな表情を浮かべており、千冬はその姿にそっと首を横に振った。

 

「いえ、貴方は何も悪くありません。一夏の為に色々手を差し伸べてくださったり、発作が起きた一夏を懸命に治療してくれました。感謝の言葉しかありません」

 

そう言い頭下げて礼を述べる千冬。千冬の姿にトーマスは気が楽になったのか少しだけ笑みを浮かべた。それから千冬は一夏と自分の荷物を纏め基地入口へと向かった。

 

「――それじゃあ千冬、一夏君を連れて帰るからな」

 

「あぁ、頼む。一夏、別の飛行機になるが日本に帰ろうな」

 

伊田の隣にいる一夏に千冬は優しい顔で伝えるも、一夏は怯えた表情を浮かべ伊田の後ろに隠れてしまう。

千冬は悲観そうな顔を浮かべ、束は困った顔を浮かべていた。

 

「……それじゃあ行くな」

 

そう言い伊田は一夏の荷物を車へと積みに行く。一夏は伊田の後に続く様に車の元へと向かい、千冬はその姿に悲しそうな表情を浮かべる。

すると突然車へと向かっていた一夏が立ち止まり何度か後ろをチラチラと見る事を繰り返す。そして

体を千冬の方へと突然向けた。

 

「お、お姉、ちゃん」

 

突然自分の名前を呼ぶ一夏は千冬は驚きの表情を浮かべながらその姿を見据える。

一夏の脚はブルブルと震え、顔色も青くなっており無理をしている事は明らかだった。だが、それでも一夏は千冬の方に体を向けたままでいる。

 

「い、いって、来ます」

 

震える唇で一夏が言うと、千冬は目頭が熱くなるのを感じるも我慢する。

そして優しい笑みを浮かべ手を振る。

 

「あぁ、いってらっしゃい。また日本でな」

 

そう言うと一夏も小さく手を振りながら車へと向かい乗り込む。そして車は発進し千冬と束はその姿が見えなくなるまで見送り続けた。

見えなくなったのを確認した束はそっと千冬から体を背けた。

 

「もういいよ、ちーちゃん。我慢しなくても」

 

「…変な気遣いなどするな、馬鹿者」

 

そう言いながらも千冬は心の中で束に感謝しつつ我慢を解き、目から涙を流した。

暫く涙を流した後、千冬も束の運転する人参ロケットに乗り込んで日本へと帰って行った。

 

 

 

 

今回の1件、ドイツ政府は沈黙を貫いた。いや、貫かざるをえなかった。その理由は簡単だ。そう、束の介入があったからだ。

ドイツ政府の高官たちが集まる場所に突如として束のビデオ電話が届いたのだ。

 

『やあやあ、政府の凡人共。篠ノ之束さんだよぉ。お前等に警告だぁ! 今回の暴行事案をちーちゃん達に何か責任みたいなものを押し付けようとする動きを見せたら、この映像をネットの世界に放流させちゃうぞぉ!』

 

そう言い束はディスプレイを出すと少女が一夏に乱暴を働いた映像と将校と千冬とのやり取りの映像をたて続けに流した。

その映像に高官たちは驚き固まる。そして自分達の首がいま斬り落とされそうな状態になっている事に顔面を蒼白させた。

 

『ふふ~ん。そろいもそろって顔面が真っ青だねぇ。まぁ無理も無いっか! それじゃあ確かに忠告したからねぇ!』

 

そう言って束との通話は切れた。高官たちは急ぎ今回の発端となった関係者全員を呼び集め、口止めを行った。

そんな関係者の中にいた2名の人物。

腕や脚を折られた将校、そして訓練兵の少女『ラウラ・ボーデヴィッヒ』に対しては処罰が下された。

将校は除隊処分を言い渡され、ラウラには訓練兵とはいえ民間人に暴力を働いたとして、3週間の営倉行きと6ヵ月間のトイレ掃除が言い渡された。




次回予告
GWが明け生徒達がぞろぞろと戻ってくる中、一夏も本音と談笑し合っていた。そしてSHRとなり千冬は2人の転校生の紹介を行う。すると転校生の一人が一夏の元に向かい手を振り上げる。だがそれを阻止する者達が現れた。

次回
出動! 織斑護衛隊‼~フモッフゥ!~


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17話

GWが終わりに近付くにつれぞろぞろと生徒達が戻ってくるIS学園。

皆GWに何処に行ったのか話し合ったり、日帰りか一泊旅行にでも行ったのかお土産を持って教室で友達と食べ合ったりする生徒達もいた。

そんな中、一夏も隣の席に座っている本音、そして相川と鷹月と談笑し合っていた。

 

「へぇ、これが今までイッチーが勉強してきた料理なんだぁ」

 

「う、うん。といってもチラシとかテレビでやってたものだけど」

 

「でも、凄いと思うよ。これだけ集めるのも大変だと思うし、それに自分なりのアレンジも一緒に書き加えてるんだから」

 

「本当本当。それにしても、読んでるとお腹空いてくるなぁ」

 

3人が見ているのは一夏が家から持ってきた料理ノートであった。中身にはデザートやらカレーなど色々な料理が書かれており、中には郷土料理の物まで書かれていた。

そうしていると、チャイムの音が鳴り響きそれぞれ席へと付いて行く。

生徒達が席に着いたと同時に千冬を先頭に真耶と転入生だろうか金髪の男装をした生徒と、銀髪で眼帯をした生徒が入って来た。

 

「皆、おはよう」

 

「皆さん、おはようございます」

 

「「「「おはようございます!」」」」

 

「お、おはようございます」

 

生徒達の挨拶に紛れる様に小さく挨拶する一夏。だがその顔色は少し青く、怯えた表情を浮かべていた。無論千冬はその姿には気付いている。そしてその原因も。

 

(やはり、そうなるよな。さて、彼等を何時紹介しようか)

 

そう思いながら千冬は窓際へと行き凭れる様に立ち、真耶が教卓へと立つ。

 

「はい、それでは本日は皆さんと同じクラスメイトになる生徒達をご紹介させていただきます。ではデュノア君からお願いします」

 

「はい」

 

真耶にデュノアと呼ばれた金髪の生徒は一歩前へと出る。

 

「シャルル・デュノアと言います。フランスにあります、デュノア社の企業代表です。二人目の男性操縦者として此方のクラスに本日から通うことになりましたので、どうかよろしくお願いします」

 

そう言って一礼するデュノアに生徒達は拍手で出迎えた。

皆の拍手に再度一礼した後一歩下がるデュノア。

 

「はい、ありがとうございます。それではボーデヴィッヒさんお願いします」

 

真耶は笑顔でもう一人いた生徒にそう声を掛けるが

 

「……」

 

何も言わずただずっと仁王立ちのままでいた。

 

「あ、あのぉ?」

 

真耶は聞こえていなかったと思い再度声を掛けるも、無視を続けるボーデヴィッヒ。何度声を掛けても無視をするボーデヴィッヒに遂に千冬が動いた。その手には何時もの出席簿を携えながら。

 

「教師から呼ばれているのに、無視をするなッ!」

 

「痛っ!?」

 

そう怒鳴って出席簿の背表紙を何の躊躇いもなくボーデヴィッヒの頭部目掛け振り下ろした。

ガンッ‼と鈍い音が教室内に鳴り響き、全員あぁ~あ。と言いたげな表情を浮かべていた。

 

「し、しかし教官。私は「此処は軍学校ではない。ISの知識、技術を学ぶ学校だ。軍学校とはき違えているなら、今すぐにでも国に帰れ」……も、申し訳、ありません」

 

「謝罪など聞く気など無い。さっさと自己紹介をやれ」

 

今まで生徒達に見せた事が無いような辛辣な態度でボーデヴィッヒに説教をする千冬に生徒達は首を傾げながらもボーデヴィッヒの挨拶へと耳を傾ける。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

そう言うとそれ以降黙るボーデヴィッヒ。

 

「えっと、以上ですか?」

 

「以上だ」

 

真耶の問いに対し淡々と言った口調で終わりと告げるボーデヴィッヒにガックシと肩を落とす真耶。

そんなボーデヴィッヒに対し千冬は

 

(やはり引き受けるべきではなかった)

 

と心の中で苛立ちと後悔を浮かべていた。

 

「はぁ。自己紹介を終えたならさっさと席に着け」

 

そう言われデュノアとボーデヴィッヒは空いている席へと向かう。するとボーデヴィッヒは顔を下に向けながら本を読んでいる生徒に気付く。その顔を見て顔を険しくさせボーデヴィッヒはその生徒に近付く。

 

「おい、何で貴様が此処に居る?」

 

声を掛けられた生徒、一夏はビクッと跳ね上げ恐る恐る顔を上げる。

 

「な、なんでって、その「貴様の様な弱虫がこんなところに居るな!」……うぅ」

 

そう怒鳴るボーデヴィッヒに一夏は怖がって縮こまる。周りの生徒は流石にこれ以上は不味いと思い止めに入ろうとした瞬間、一夏の席からすぐ横にある扉が突然開く。扉の先に居たのは黒と灰色のまだら模様の生物の様な着ぐるみが数体おり、その手にはショットガンが握られボーデヴィッヒに狙いを定めていた。

 

「なっ!?」

 

驚くラウラは突然の事でその場で固まっていると、着ぐるみたちは躊躇いも無くボーデヴィッヒに向かってショットガンの引き金を引いた。放たれた弾丸はボーデヴィッヒの頭と胴体に命中し、着弾した衝撃でボーデヴィッヒは本音の机の上に倒れ込んでしまう。ラウラの体に命中したのは訓練用の模擬弾頭であった。

倒れ込んだボーデヴィッヒに対し、着ぐるみの一体がスタンバトンを装備してボーデヴィッヒに目掛け振りかざした。

 

「き、貴様なにぉぎゃあぁぁああぁぁぁあ!??!!」

 

スタンバトンの電撃を受けたボーデヴィッヒは悲鳴を上げた後、気を失ってしまった。気を失ったボーデヴィッヒに着ぐるみ達は顔に麻袋を被せ、手足には拘束用のバンドをする。

突然の事に全員茫然と言った表情を浮かべていると、扉から同じ姿だが色が違う着ぐるみが入って来た。

すると教卓に居た千冬が口を開いた。

 

「えぇ、皆に紹介する。織斑の護衛として本日から着任した『フモッフくん』とその部下達である『モッフくん』達だ」

 

そう言うと黄色い着ぐるみ、フモッフ君やモッフ君達は一斉に一夏に向かって敬礼した。

 

『ふもっふ!』

 

するとフモッフが何処からともなくプラカードを取り出し一夏へと見せる。

 

【本日より君の護衛をすることになった、フモッフだ。よろしく頼む】

 

「えっと、よ、よろしくお願いします」

 

「ふもっふ」

 

一夏との会話を終えたフモッフは次に千冬の方に顔を向けプラカードを見せた。

 

【所で彼女は一体どうする?】

 

「あぁ、ボーデヴィッヒか。次の授業はアリーナで授業を行うから、済まんが第1アリーナに放り捨てといてくれ」

 

「ふもっふ!」

 

千冬の指示にフモッフは敬礼で返し、後ろに振り向くと何体かに指示を出す。指示を受けたモッフ数体がラウラを担ぎ上げそのまま教室から出て行った。

 

「よぉし、SHRの続きをするぞ。さっきも言ったが、次の授業はアリーナで行う。2組との合同でISを使った歩行訓練などを行う。訓練の際、専用機を持っている者は補助にまわって貰うからしっかりと教える様に。あぁ、それと布仏は織斑と同じ班になる。理由は言わなくても分かっているな?」

 

「「「はい!」」」

 

「よろしい。ではSHRは以上だ。全員服を着替えて第1アリーナに集合するように。あぁ、それとフモッフ」

 

「ふもぉ?」

 

「済まないが、2体ほど織斑の護衛に付けてやってくれ」

 

「ふも! ふもふもふも、ふもっふ!(お前とお前、行け!)

 

「「ふもっふ!」」

 

フモッフの指示を受けたヘルメットに4と5が書かれたモッフが敬礼し一夏の傍に行き護衛に着く。

 

「えっと、よろしく、お願いします」

 

「ふも!」

 

護衛に着くモッフ達に言葉をかけた後、一夏はモッフ達の護衛と共にアリーナの更衣室へと向かって行った。それに続いて残ったフモッフとモッフ達も出て行く。

一夏が出て行ったのを確認した千冬は真耶と共に教室から出て行こうとすると

 

「あ、あの織斑先生」

 

「ん? デュノアか、何だ?」

 

出て行こうとする千冬を呼び止めたデュノア。その表情は少し困惑した表情を浮かべていた。

 

「えっと、更衣室ってどう行けばいいんですか?」

 

「学園手帳に書かれているだろ。それを見ながら行けば行ける」

 

「そ、そう言われましても」

 

千冬ははぁ。とため息を吐き隣にいた真耶に顔を向ける。

 

「山田先生、デュノアを更衣室へ案内してやってください」

 

「分かりました。それじゃあデュノア君、離れず付いて来てくださいね」

 

「は、はい!」

 

真耶に付いてくるよう言われデュノアは真耶の後に付いて行く。遠ざかっていくデュノア達に千冬は反対方向に歩きだし階段の踊り場まで来ると誰もいないにも拘らず千冬は口を開く。

 

「デュノアから目を離すな。他の奴らも同様だ。おかしな行動をすれば直ぐに一夏を守れ」

 

「ふも!」

 

千冬の背後からそう声が聞こえると、ぼひゅぼひゅと言う音が聞こえ次第に遠くなっていく。その音を確認した千冬はそのまま階段から降りていき、職員用の更衣室へと向かって行った。

 

 

 

 

フモッフ

姿 フルメタル・パニック ふもっふ!のボン太くん(タクティカル装備タイプ)

束が作成した一夏専用の護衛ロボット。

着ぐるみの様になったのは、メサがほぼロボットという姿の為もっとキュートな姿にしようとしてこうなった。

統率、指揮力等に優れ、部下であるモッフ達を手先の様に動かす。

装備は非殺傷用の模擬弾を装填したライフルとショットガン

但し、千冬の許可が下りれば、実弾に変更し敵対対象を負傷させる。

 

モッフ

姿 フルメタルパニック ふもっふ!の量産型ボン太くん

束が作成した一夏専用の護衛ロボット。

着ぐるみの様になったのはフモッフ同様の理由。

フモッフよりも能力的に若干劣っているが、チームプレーでその差を補っている。

ヘルメットにナンバーが書かれており、現在までに2から12まで居る。

装備はフモッフと同様ではあるが、模擬弾を装填したバズーカを持っている。

此方も千冬及び、フモッフからの許可があれば実弾を使用する。




次回予告
モッフ達の護衛を受けながら一夏は更衣室で着替え、アリーナへと出る。
1組と2組の合同授業が始まるが、初っ端から色々トラブルが起きる。
無事に授業が終わり暫くしてお昼の時間になるも、一夏はトラブルに巻き込まれるのであった。

次回
合同授業とお昼ご飯~お弁当の中身、どうしよ?~


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18話

「そ、それじゃあお二人や皆さんは束お姉ちゃんが造ったんですか?」

 

【はい、その通りでございます】

 

教室から護衛として付いて来てくれるモッフ二人と談笑をしながら更衣室へと目指す一夏。

護衛が付いていなかったときは、一夏は何時も何処から女性が来るか分からないと言う恐怖に怯えながら更衣室へ向かっていたが、今は護衛が付いているおかげか、一夏は少し笑顔を浮かべておりモッフ達との会話を楽しんでいた。

 

そしてアリーナに備えられている更衣室へと到着し、一夏は中へと入り着替えアリーナへと出ると他の生徒達が既に来ており、談笑を行っていた。

それと大きめの麻袋が転がっており、中には何かいるのかもぞもぞと激しく動いており、2組の生徒達は気味悪がって近付かず、1組の生徒達は中身が何か察しているのか特に気にする様子もなくクラスメイト達と談笑していた。

そんな生徒達の中から一夏が来た事に気付いた本音は急ぎ足で一夏の元に駆け寄る。

 

「イッチー、道中大丈夫だったぁ?」

 

「うん。モッフさんの4号さんと5号さんが護衛に付いていてくれたおかげで大丈夫だった」

 

「そっかぁ。ところで、4号さんと5号さんって?」

 

「モッフさん達って、皆同じ顔だから何か区別できる方法が無いかなと思ってて、そしたらヘルメットに数字が書かれてたから、それで区別しようと思って」

 

「あぁ、なるほどぉ」

 

本音とそんな話をしながら授業開始まで談笑をしていると、ジャージ姿の千冬が現れ生徒達の前に立つと同時にチャイムが鳴り響く。

 

「よし、全員集合!」

 

千冬の号令がかかると1組と2組の生徒達は足早に4列並びで揃う。

 

「よし、全員いるか?」

 

「あの、デュノア君がまだ来ていません」

 

「はぁ? まだ来てないだと?」

 

1組の生徒からの報告に千冬は眉を顰めていると

 

「す、すいません。遅くなりました!」

 

そう叫びながら走ってくるデュノア。それに対して千冬は鋭い目でデュノアを睨む。

 

「遅いぞ! 何をしていた?」

 

「そ、その…。山田先生に送って貰っている最中に他クラスの生徒達に囲まれ身動きが取れなくなってしまって…」

 

デュノアの説明に、千冬ははぁ。とため息を吐く。

 

「そうか。なら今回は初日という事で見逃す。だが、次は無いと思え」

 

「は、はい! すいません」

 

千冬の睨みにデュノアは急ぎ列へと加わる。

 

「よし、これで全員…あ、いかんいかん。こいつのことを忘れていた」

 

そう言いながら千冬は足元に転がっている麻袋のひもを緩め中にいるモノを引っ張り出す。

中か出てきたのは拘束状態で口にはガムテープを張られたボーデヴィッヒであった。

 

「えぇ、1組は知っていると思うが2組の生徒達にも説明しておく。織斑には本日から護衛部隊を付ける事となった。織斑の症状悪化に誘発しそうな事をしようとする者は即座に護衛部隊が武力行使を行ってくる。以上だ」

 

そう言いながら千冬はボーデヴィッヒの口に貼られているガムテープを勢いよく引き剥がす。

 

「痛っ!?」

 

「五月蠅いぞ、ボーデヴィッヒ」

 

「し、しかし「元を辿ればお前がいらんことをしなければそうはなっていないだろ」うっ」

 

「今回は軽めだが、次に問題を起こせば反省房にぶち込む。分かったな?」

 

千冬の睨みながらの問いに対し、ボーデヴィッヒは体を振るわせながらコクリと頷く。

千冬は拘束バンドを外し列に入るよう指示する。ボーデヴィッヒは俯きながら列へと加わって行った。

 

「よし、これで全員揃ったな。ではこれより1組と2組の合同授業を行う。まず初めに、凰とオルコット。前に出ろ」

 

千冬の指示に2人は首を傾げながらも、前へと出てくる。

 

「えっと、何をするんですか。織斑先生」

 

「もしかして彼女と対戦ですか?」

 

「早とちりをするなこの馬鹿者。もうすぐ来る」

 

そう千冬が言ったと同時に何処かともなく悲鳴のような声が響く。

 

「ひ、ひえぇぇ~~~!??!」

 

その声に全員辺りを見渡すも声の主が見つからず、一人が空を見上げた所気付いた。

 

「え、嘘? 山田先生が落ちて来てる!?」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

生徒の言葉に全員空を見上げると、ラファールを身に纏った真耶が勢いよく落下して来ていたのだ。

 

「よ、よよ避けてくださぁぁぁぁい!!?」

 

「に、逃げてぇ!?」

 

「ぶつかったら死んじゃうぅ!」

 

落下してくる真耶に生徒達は急ぎその場から離れようと逃げ出す。無論一夏も急ぎ逃げようとした瞬間、何かに躓きその場に倒れ込んでしまった。

 

「い、一夏君がぁ!」

 

「や、やばい山田先生の落下地点って織斑君の所だぁ!」

 

「イッチー!?」

 

全員ぶつかる。そう思っていた瞬間、突然ボシュン!という音が鳴り響いたと同時に真耶が乗っているラファールにロケットランチャーの弾頭が命中、真耶はその爆発の勢いで一夏のいる地点とは別の場所に墜落した。

全員突然の出来事に驚き固まっていたが、ボシュンという音が鳴った方へ顔を向けると其処には

 

「ふもっふ!」

 

と、ロケットランチャーを肩に担いだフモッフと数体のモッフ達が其処に居た。

 

「あ、あれが織斑君の護衛部隊?」

 

「なんか着ぐるみみたい」

 

「か、可愛いかも」

 

2組の生徒達は初めて見る護衛部隊にそんな感想を零している中、フモッフはロケットランチャーを担いだまま一夏の元に近付きそっと手を差し伸べる。

 

ふも(どうぞ)

 

「あ、ありがとうございます。フモッフさん」

 

ふもっふ(どういたしまして)!」

 

差し伸べられた手を握りしめ立ち上がる一夏。

一夏が無事だと判断できたフモッフはモッフ達を引き連れアリーナから出て行った。

 

「イッチー大丈夫?」

 

「う、うん。フモッフさん達のお陰で大丈夫」

 

フモッフ達の後から本音も一夏の元に駆け寄るケガの有無を確認する。体には何ともなく服が汚れた程度だった為本音はホッと一安心する。

 

「……えぇ、問題があったが全員私の元に集まれ」

 

そう千冬が指示を出すと逃げ惑っていた生徒達は急ぎ足で千冬の元に集まった。

 

「よろしい。では、凰とオルコット。今から山田先生と模擬戦をして貰う」

 

そう言うと2人は、はぁ。と何処か気乗りしていない様子を見せる。

 

「なんだ? 山田先生相手ではやる気が出んのか? 仕方ない、私が代わりに相手を「「山田先生で大丈夫です!」」よろしい。と、その前に」

 

千冬は顔を生徒達から墜落した真耶の方に顔を向ける。その先には目を回しながらクレーターに寝っ転がる真耶が居た。千冬はチッ。と舌打ちを放った後、出席簿片手にクレーターの下へと下りていき、そして

 

「何時まで寝ているんだぁ‼」

 

と叫んだと同時にバチン‼と甲高い音が鳴り響いた。

 

「ほぎゃっ!? す、す、すすすいません!」

 

「さっさと上に上がって模擬戦の用意をしてください!」

 

「は、はいぃい!」

 

千冬の叱責に真耶は慌ててクレーターの上へと上がり、その後に千冬も上がって来た。

 

「さて、山田先生と其処にいる代表候補生の二人との模擬戦を行う。一応言うが、山田先生は元日本代表候補生で、選ばれた候補生の中でトップに入るほどの実力を有していた」

 

「い、いえいえ。そんな、昔の事ですよぉ」

 

真耶は照れた表情で、謙虚に言う。

 

「だろうな。じゃなきゃ、あんなへまなどせん」

 

千冬の冷たいツッコミがさく裂し、真耶はガックシと首を墜とすのであった。

 

「では、双方準備に入れ」

 

そう言われセシリアと鈴、そして真耶は空へと上がる。

 

「それでは、始め!」

 

千冬の合図と共に双方模擬戦を開始した。

 

「では終わるまでの間、デュノア。お前の所会社が造ったラファールについて説明しろ」

 

「え? あ、はい! ラファールは――――」

 

千冬からの突然の振りに、デュノアは慌てながらも説明を始めた。周りに居た生徒達は模擬戦を見ながらもデュノアの説明を聞く。すると模擬戦を見ていた千冬が口を開く。

 

「デュノア、其処まででいい。もう終わる」

 

その言葉と同時に空から鈴とセシリアが落下してきて、真耶も一緒に降りてきた。

 

「えぇ、このように代表候補生2名が束になっても簡単に倒される。この学園に居る教師の多くは優秀な成績を残した元代表候補生や国家代表、そして軍人などが居る。山田先生の様にぽわぽわしている教師もいるが、侮っているとさっきの二人みたく痛い目を見る羽目になるから気を付ける様に」

 

『はい!』

 

千冬の説明に生徒達全員が返事を返す。

 

「よし、ではこれよりISを所持している生徒を指導員として君達にもISを乗って貰う。班は名簿順に並んでもらうが、織斑の班には補助役として布仏に入って貰う。では別れろ!」

 

そう言われ生徒達はISを所持しているセシリアや鈴、新入生のデュノアやボーデヴィッヒ。そして一夏の元に集まる。どの班も1組や2組の生徒達が入り混じっているが、何故か一夏の班だけは1組の生徒がほとんどであった。

一夏は一番扱い易いと思える打鉄を本音に持って来て貰い、班のメンバーの前に置いてもらった。

 

「そ、それではIS教えていきます」

 

「お願いしまぁす!」

 

「よろしくね、織斑君」

 

「無理しない程度でいいよ」

 

班のメンバーとなった生徒達からそう声を掛けてもらいつつ一夏は基礎的な歩きか始めましょうと指示を出す。無論近くに居た本音も一夏の補助として指示出しを行った。

メンバーとなった生徒達は一人一人ISに乗ってゆっくりとした歩調で歩き始め、一夏はバレットホークを身に纏った状態でISに乗った生徒がこけない様、ISの前で後ろ歩きで補助していた。

 

 

 

その頃他の班はと言うと

 

・セシリアの場合

「ですから、脚を45度の角度まで上げ、そして前へと進む。その時腕も45度の角度で曲げながら動かす! そう言っているではありませんの!」

 

「だから、それじゃあ分かりづらいって言ってるでしょ!」

 

受け持った班のメンバーと口論をしていた。

その訳だが、セシリアの会話の内容の通り、細かすぎるのである。セシリアの細かすぎる説明に生徒達はチンプンカンプンな表情を浮かべ、もう少し分かり易く説明してと言うが、これが一番分かり易いの一点張りであった。

 

・鈴の場合

「だから、勘って言ってるでしょうが! 乗ってたら自然と分かるのよ!」

 

「それはごく一部の人だけでしょ! 乗った回数が少ない私達じゃ分からないわよ!」

 

此方も口論していた。

鈴の教え方は、ほぼ適当に等しい《勘で感じろ》という物であった。

つまりセシリアの真逆の教え方であった。

 

・デュノアの場合

「そうそう。そうやってゆっくりと足を上げながら前に進んで」

 

「う、うん」

 

分かり易い説明をしながら一夏の様に補助にまわりながら班のメンバーに教えていた。だが次の生徒でトラブルが起きた。

 

「それじゃあ次の人、どうぞ」

 

そう言いながらデュノアは次の人の顔を見る。

次の人は箒であった。

 

「私はいい。一夏の所に行って教えて貰ってくる」

 

「え? で、でも班異動は駄目だって…」

 

「そんなもの知らん。兎に角私は一夏の所に「勝手に班異動をしようとするな、この馬鹿者」あ痛っ!?」

 

突然何処からともなく千冬が現れ、箒の頭を出席簿でしばいた。

 

「私の許可も無く班異動は禁止だ。さっさとデュノアに教えてもらえ」

 

「で、ですが私は「お前は織斑に接近するなと警告したはずだ。何だったら私自ら血反吐を吐くような講習でやってやろうか?」い、いえ、結構です」

 

「だったらさっさと教えてもらえ。後ろの奴が乗ることも無く終わってしまうだろうが」

 

そう言われ箒は渋々デュノアに教えてもらうのであった。

 

・ボーデヴィッヒの場合

「……」

 

「あ、あのぉ?」

 

仁王立ちのままで目を瞑ったままで何も教えようとしないボーデヴィッヒ。班のメンバー達は困惑した表情を浮かべ、どうしたらいいのか分からず立ち尽くしていると

 

「何をしている、ボーデヴィッヒ」

 

と苛立ちを浮かべた千冬が現れた。

 

「はっ! ISについてこいつらに問うたところ、ただのアクセサリ位としか思っていない回答でしたので訓練など行わず立たせておりまっ!!!???!」

 

千冬に敬礼しながら答えるボーデヴィッヒに対し、千冬は躊躇いなど一切ない勢いで出席簿の背表紙をボーデヴィッヒの頭に叩きつけた。

 

「貴様の判断で訓練の中止をするな! もういい、ボーデヴィッヒ。貴様は向こうで立って居ろ」

 

痛みで蹲るボーデヴィッヒに対し千冬はそう言い放った後、訓練が出来ていない生徒達を他の班へと振り分け、訓練を受けさせた。

そして時刻は経ち、授業終了間近となった時、生徒達全員千冬の前へと整列していた。

それぞれ生徒達のの顔つきは異なっており、訓練に満足出来た表情や、苛立ちなどを浮かべた生徒達など様々であった。

 

「では、以上で本日の訓練は終了となる。今日満足の行く訓練など出来なかった者もいるだろうが、今回は申し訳ないが運が悪かったと思ってくれ。それともしアリーナで訓練などを行う場合は、一人では行わず、複数人で行うよう。理由は自己満足で訓練を行うよりも、客観的視点からのアドバイスなどがあった方が自分の為にもなるし、他の者たちの為にもなる。いいな?」

 

『はい!』

 

「よろしい。では以上で合同授業を終える」

 

『ありがとうございました!』

 

千冬の号令と共に、生徒達は疲れたぁと言いたげな表情などを浮かべながらアリーナから出て行く。すると

 

「あぁ、凰とオルコット。それと篠ノ之とボーデヴィッヒ。お前等は残れ」

 

帰ろうとする生徒達の中からその4人を呼び止める千冬。ボーデヴィッヒ以外の3人は首を傾げながらも千冬の元に集まる。

 

「お前達はまともに訓練を行おうとしていなかったから、罰として其処にあるクレーター(真耶作)を埋める様に」

 

「えぇぇ!? それは山田先生が埋めるべきでは!?」

 

「そ、そうです! わたくし達はちゃんと班員に教えましたわ!」

 

「わ、私もちゃんと訓練はやりました!」

 

「こいつらは分かりますが、何故自分まで!?」

 

4人は千冬が言い渡した罰に納得がいかない様子で叫ぶも、千冬の鋭い睨みを向けられ先程までの気迫が消し飛び意気消沈となる。

 

「お前等のどこを見ればまともといえる? まずオルコット。貴様の教え方は細かすぎる。凰、お前は説明不足だ。篠ノ之、お前は自分勝手すぎる。ボーデヴィッヒ、お前は他者を見下し過ぎだ」

 

千冬の説明にぐうの音も出ない4人は黙ったまま俯く。

 

「3限目の授業が始まるまでに穴を埋めておくように。それと、適当に穴を埋めるなどして誤魔化していた場合は、学園にあるすべてのトイレを綺麗になるまで掃除をさせる。いいな?」

 

「「「「……」」」」

 

「いいか、どうか聞いているだろうが!」

 

「「「「は、はい!」」」」

 

漸く返事をした4人に千冬はフゥ。と息を吐いた後、アリーナを後にした。その後4人はいがみ合いながらも、穴を埋めるのであった。

 

時間は経ちお昼頃。

一夏は何時もと変わらずカバンの中からお弁当を取り出す。

 

「それじゃあイッチー、今日は裏のベンチで集合ね」

 

「うん。も、モッフさん達と先に行ってるね」

 

隣の席の本音は集合場所を確認した後、谷本や相川達と共に小走りでお弁当を買いに向かった。

3人を見送った一夏はお弁当を持って廊下で待機していたモッフ(4号と5号)の元に向かう。

 

「本音さん達とご飯を食べに行くので、一緒に来てもらってもいいですか?」

 

「「ふもっふ(了解)」」

 

敬礼で了承したことを返すモッフに、一夏は安堵した表情を浮かべながら歩き出そうとした瞬間

 

「あ、一夏! 私特製の酢豚持ってきたわよ!」

 

と、隣のクラスから飛び出る様に現れる鈴。その手には酢豚が入っているであろうパックの入った袋が握られていた。

 

「あ、あの、お気持ちは、嬉しいですけど。その「あぁ、お礼とかいらないから。ちゃんと残さず食べてね!」あ、あの、だから」

 

鈴の一方的な押しに一夏は断ろうとすることが出来ず困っていると、傍に居たモッフ(4号)が動いた。

モッフ(4号)は鈴が一夏に押し付けようとしていた酢豚のは入ったパックをひったくり、無線機を取り出して何処かに連絡を入れる。

 

「ちょ、ちょっと! それは一夏の為に作ったものよ! 返しなさいよ!」

 

そう怒鳴りながらモッフ(4号)から酢豚を取り返そうとするが、モッフ(5号)がスタンバトンの電源を入れバチバチと音を鳴らしながら、睨みを効かせ抑制する。

 

「な! そ、そんな物で怖がる私じゃ無いわよ!」

 

そう叫びながら取り返そうとした瞬間

 

「ほぉ? なら私ならどうだ?」

 

と、鈴の背後からドスの利いた声が響き、鈴は錆びついた歯車の様にギギギと小刻みに震えながら振り向くと鈴を睨みつける千冬が其処に居た。

 

「フモッフから一夏に手料理を手渡そうとしている奴がいると聞いて来てみれば、貴様か」

 

「お、織斑先生。だ、だって一夏は酢豚好きだったから「残念だが、織斑は女性が作った手料理は食えんぞ」えっ!? な、何でですか!」

 

「織斑は女性恐怖症なんだぞ。お前が作ったその料理に、変な物でも加えられていたらと一夏は考えてしまう。だからだ」

 

そう言い千冬は4号から酢豚の入ったパックを受け取る。

 

「食べて欲しかったら自分で先に食べて安全だと分からせないと織斑は食わん。だが、お前が作った物は問答無用で私が処理する」

 

「な、何でですか!?」

 

「当たり前だ。転入してきたその日からずっとお前は織斑に迷惑をかけまくっているだろが。しかも貴様はそれを悪びれもせずにだ」

 

「そ、それは一夏の女性恐怖症を治す為で「馬鹿者! 逆効果だ! この説明は前にもしただろ!」そ、そうでしたっけ?」

 

千冬の説教に鈴は縮こまりながらも、説明された事を思い出そうとするも思い出せず首を傾げたままであった。

 

「まったく。兎に角、この酢豚は私は処理しておく。織斑、お昼ご飯を食べに行ってこい。モッフ達も織斑の護衛を続けてやってくれ」

 

「は、はい。失礼、します」

 

「「ふもっふ!」」

 

千冬に行くよう言われ、一夏とモッフ達はその場から立ち去っていく。

 

「あ、ちょっとあたしも「お前は私と一緒に昼食だ。折角だ、この酢豚の感想を貴様の前でしてやる」え゛!?」

 

「ほら行くぞ」

 

そう言いながら鈴の首根っこを掴み、引き摺りながら食堂へと向かう千冬。鈴は「お、お助けぇ~~~!?」と叫びながら引き摺られていった。

 

鈴の襲撃を何とか退けた一夏は階段を降りていく途中

 

「あ、一夏さん、此方でしたか。実はわたくし、初めて料理を作ったのですがぜひ食べて下さいませんか?」

 

と、今度はセシリアと鉢合ってしまった。セシリアは持っていたバスケット一夏に手渡そうとするもモッフ達が直ぐに一夏の前に立ち、それを防ぐ

 

「ど、退いて下さらない? 一夏さんにお渡しできませんわ」

 

セシリアの抗議に、モッフ達は何も言わず睨んだままだった。

 

「あ、あの、お気持ちは嬉しいですけど、じ、自分のお弁当があるので…」

 

モッフ達の後ろからそう言いやんわりと断る一夏。

 

「そ、それでしたらご一緒にお昼をとりませんか?」

 

「その、本音さん達と先に約束してるので、また今度でもいいですか?」

 

一夏は本音達が待っているかもしれないと思い、別の日にしませんかとセシリアに問う。

 

「でしたらわたくしもご一緒しますわ。それでしたらわたくしが作った料理も食べられますし」

 

そう言いセシリアは何が何でもついてこようとして来た。すると

 

「あ、イッチー。此処に居たんだぁ、探したんだよぉ」

 

そう言いながら下から上がってくる来る本音。

 

「ご、ごめんなさい本音さん」

 

「うぅん、いいよぉ。皆が待ってるから早く行こ」

 

本音にそう誘われ一夏は行こうとしたが、セシリアが待ったをかけた。

 

「お待ちください、布仏さん。実はわたくしも今からお昼なんです。宜しかったらご一緒してもよろしいでしょうか?」

 

「セッシ―もぉ? うぅ~ん、私は別にいいけど…」

 

そう言いながら本音はチラッと一夏の方を見る。一夏は若干嫌そうな顔を浮かべていた。その表情を見た本音はチラッとセシリアが持っているバスケットに目を向け、事情を察した。

 

「ねぇねぇ、そのバスケットの中身って何?」

 

「これですか? これは私が初めて作ったサンドイッチが入っておりますの」

 

「へぇ~。それじゃあ、それがセッシーのお昼ご飯?」

 

「え、えぇまぁそうですわ」

 

若干言いよどむセシリアに、本音は心の中で確信を持つ。彼女(セシリア)が持っているあれは、イッチーに食べて貰う物だと。そこで本音はとある妙案を思いつき、それを実行した。

 

「そっかぁ。よかったよかった」

 

「はい? 何故良かったというのですの?」

 

「だって、イッチーに食べて貰うって言ってもイッチー食べられないからねぇ」

 

「え? どう言う事ですの?」

 

「イッチーは女性恐怖症なんだよぉ。そのサンドイッチに何か入れられているんじゃ?ってイッチーは考えて食べないよ」

 

本音の説明にセシリアはそうだった。と思い出したような表情を浮かべるも、直ぐに笑みを浮かべる。

 

「そ、それでしたら大丈夫ですわ。何も可笑しな物は入れておりませんわ。料理本を見ながら作ったので、美味しく出来ておりますわ」

 

「ふぅ~ん。まぁ、セッシーのお弁当だからイッチーには関係無い事だと思うけどねぇ」

 

そう言い一夏に行こ。と促す本音。一夏は少し困惑の表情を浮かべながらもモッフ達に護衛されながらセシリアの横をすり抜けて本音の元に向かう。

 

「お待ちください!」

 

と、セシリアが一夏と本音に待ったをかけた。そして徐にバスケットの中からサンドイッチを取り出す。

 

「私が作ったこのサンドイッチに何も可笑しな物が入っていないと証明して見せますわ!」

 

そう言ってサンドイッチを頬張るセシリア。サンドイッチを食べて直ぐにセシリアの様子が可笑しくなった。顔色が赤くなったり青くなったりと変化が激しいうえに大量の汗を流し出したのだ。そして口を手で覆うと大急ぎで何処かへと走り去っていった。

 

「な、何だったんでしょうか?」

 

「さぁ? 気にしないで行こぉ」

 

そう言われ一夏は後ろ髪を引かれながらも、モッフ達と共に本音達が待っている学園裏のベンチへと向かった。

 

 

その頃デュノアはと言うと

 

「デュノア君って好きな料理って何?」

 

「好きな女性の仕草とかは?」

 

「ラファールの上手な乗り方とか教えて!」

 

と、食堂で女子生徒達に捕まって色々質問攻めに遭っていた。

 

「ちょっ、ちょっとみんな落ち着いてぇ! ひ、一つずつ答えたいからぁ」

 

と、悲鳴のような懇願を上げるデュノア。だが生徒達の気迫によってそれは打ち消され、その後も大勢の生徒達の質問攻めに遭い、お昼を満足に取れなかったデュノアであった。




次回予告
放課後、一夏は入部した料理研究部へと向かった。
初めて会う部員達に緊張と不安などの表情を浮かべながらも、一夏は部活動を始めた。

次回
一夏君、高校初めての部活動!~よ、よろしくお願いしますぅ!~


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19話

『キーンコーンカーンコーン』

 

授業終了を知らせるチャイムが鳴り響き、教卓に立っていた千冬はチョークを箱に戻し生徒達の方に体を向ける。

 

「では、本日は此処までとする。織斑、挨拶を」

 

「は、はい。起立、礼」

 

『ありがとうございました!』

 

「着席」

 

そう言うと千冬や真耶は教室から出て行き寮に帰る者、部活に行く者と生徒達は準備を始める。

一夏もカバンに教科書やノートを仕舞い席から立ち上がる。

 

「あ、イッチー。今日から部活だっけ?」

 

「う、うん。まだ他の部員の人達と挨拶してないから、凄く緊張してるけど」

 

「大丈夫だよぉ。イッチーなら出来るって!」

 

そう言い本音は一夏を応援する。本音の応援に一夏は少し照れた表情を浮かべながら、あ、ありがとう。と返しモッフ達と共に料理研究部の活動部屋である家庭科室へと向かった。

 

 

 

 

 

ところで、自身で作ったサンドイッチを食べ気分を悪くしたセシリアはと言うと

 

あぁぁぁあぁああぁぁぁぁあ

 

と保健室のベッドで魘されていた。

何故保健室に居るのか。簡単に説明すると

 

サンドイッチを食べ気分を害する

     ↓

トイレに駆け込もうと、走り出す

     ↓

教師に見つかり、お説教される

     ↓

我慢の限界に達し、気を失う

     ↓

保健室へと運び込まれる

 

と言う訳である。

因みにセシリアが作ったサンドイッチは、危険物として焼却処分された。

 

 

 

暫し学園内を歩き、モッフ達と共に家庭科室へと到着した一夏。恐怖心と不安が圧し掛かりつつも、一夏は扉をノックした。

 

『どうぞぉ』

 

そう中から聞こえると、一夏は恐る恐る扉を開けた。

 

「し、失礼します」

 

そう言いながら中に入ると調理実習台が並んでいる側には6人程の生徒達が座っており、前の調理実習台には入部届を出しに行った際に居た先輩が居た。

 

「おぉ、来た来た。それじゃあ先に自己紹介をお願いして良い?」

 

「は、はい」

 

先輩の言葉に一夏はビクビクしながらも他の部員たちの前へと立つ。家庭科室の後ろにはモッフ達が居り頑張れと小さく応援していた。

 

「お、織斑一夏と言います。りょ、料理には少し自信があります。ど、どうか、よろしくお願いします」

 

そう言い頭を下げる一夏。暫し沈黙した後生徒達はパチパチと拍手を始めた。

 

「うん、宜しくねぇ織斑君」

 

「よろしくねぇ」

 

「どれ程の腕か楽しみにさせてもらうね」

 

部員達は一夏の入部に優しく向かい入れる姿に、一夏は心の中でホッと一安心した。

 

「それじゃあ織斑君は、其処の実習机で良い?」

 

「わ、分かりました」

 

部長の指示に一夏は後ろに並んでいる実習机の一つの席に着いた。

 

「それじゃあ皆の自己紹介をするね。まず私がこの料理研究部の部長、セレスティーヌ = コンヴェルシ。皆からはセレスって言われているからよろしくね」

 

「私は稲葉紀子。セレスとは入学前からの友人なの。宜しくね、織斑君」

 

「神崎里佳子じゃ。喋り方は家の事情故これなのじゃ。よろしく頼むぞ」

 

「私は狗山あおいやでぇ。よろしくねぇ」

 

「藤條朱乃と申します。どうかよろしくお願いしたしますわ」

 

「ニコラス・アレルヤです。ニコって呼んでね」

 

「アメリア・ランバートよ。気軽にアメリアって呼んでちょうだい」

 

部長のセレスの挨拶から部員たちの挨拶が終わり、一夏は再度宜しくお願いします。とお辞儀をする。

 

「さて、自己紹介は終わったけど……。織斑君、後ろにいるあの2体の着ぐるみは一体?」

 

「あ、あのお二人は僕の護衛の方達です」

 

一夏がそう紹介するとモッフ達はふもっふ!と言いながら敬礼する。

 

「そ、そう、分かったわ。それじゃあ早速部活を始めたいと思います。お題は『みんな大好き 菓子パン』という事で、それぞれ調べてきたレシピで調理を始めてね。それとさっき手渡した紙に書かれた織斑君の接し方についても注意するようにね」

 

「「「「はぁ~い!」」」」

 

「は、はい」

 

セレスの開始の合図と共に皆は調理準備を始め、一夏もエプロンや三角巾を身に付け調理準備を始めた。

皆は持ってきた材料をボールや鍋などに入れながらパン生地を作っていく。すると神崎は一夏の調理している様子に首を傾げた。

 

「ん? のぉ、織斑よ。少し良いか?」

 

「ふえ? えっと、だ、大丈夫です。何でしょうか?」

 

少し距離が離れていた為、怖がることは無かったが突然声を掛けられたことに少し怯えながらも神崎の方に顔を向ける。

 

「お主の机にあるそれはなんじゃ? 小麦粉ではなさそうじゃが…」

 

神崎がそう言い一夏の机の上にある袋を指さす。神崎の言葉に他の部員達も一夏の方に顔を向ける。

 

「こ、これは“米粉”です」

 

「米粉? 米粉って確か米を粉末状にした物よね。なんで米粉を?」

 

稲葉は一夏が持ってきた米粉に首を傾げながら問う。菓子パンとは言えパンと同じ材料を使用しており、その大本が小麦粉である。

だが一夏は小麦粉ではなく米粉を使って菓子パンを作ろうとしていた。

 

「そ、その、前にテレビで米粉を使ったパンの作り方をしていたんです。それで少し試したくて。そ、それと……」

 

「それと?」

 

説明の途中で急に言いづらそうな表情になる一夏に、皆首を傾げながら見守っていると

 

「その、こ、小麦粉アレルギーの人でも美味しく食べられるパンをその、作れるようになったらいいなと思って」

 

縮こまりながらも、説明する一夏に部員達は

 

(((え、何あの可愛い後輩君(同級生)は? めっちゃ抱きしめたいんだけど?)))

 

と心の中で思った。

 

「あ、あの、何か?」

 

「はっ! う、ううん。何でも無いよ! それは立派な事だと思うよ!」

 

「う、うむ。確かにアレルギーを持っている者でも食べられるパンを作るのは立派な事じゃ!」

 

「その通りですわ。他者を気遣ってその様な配慮をできるお方はそうそうおられませんわ」

 

部員たちにそう言われ、一夏は顔を真っ赤にさせながら俯きながら作業を再開した。

今まで女性に怯えながら生活してきたため、一夏は女性、特に姉である千冬以外から褒められた事が余り無かった。

最初は自身の思いを馬鹿にされると思っていたが、まさかの高評価に思わず驚きと羞恥心が沸き上がり、部員達の方に顔を向けるが恥ずかしくなり作業に戻ったのだ。

 

そして暫くしてそれぞれの調理台には色とりどりの菓子パンが置かれていた。

ジャムパンにあんパン、そしてメロンパンにクリームパン。どれも美味しそうに見える中、部員達が特に気になっているのが、一夏が作ったパンであった。

一夏が作ったのは米粉のミルクパンであった。

 

「よし、それじゃあ皆それぞれ行き渡っているわね。それじゃあ」

 

「「「いただきまぁす(のじゃ)!」」」

 

「い、いただきます」

 

それぞれパンを手に取り口へと運び食べ始めた。無論一夏もパンを口に運ぼうとする前にチラッとモッフ達の方に目を向ける。

モッフ達は一夏の視線に気付くとコクリと頷きながら部員達から見えない様コッソリと背中からプラカードを見せる

 

【(・ω・)bグッ】

 

それを見た一夏はこっそりとホッと息を吐いた後菓子パンを頬ばり始める。

一夏がモッフ達に確認したのは調理中変なものが入れられていないか、それを確認したのだ。

無論一夏自身部員達がそんな事はすることは無いと信じたい。だがどうしても不安になってしまう。

その為モッフ達に部員達の調理様子を見て貰っていたのだ。

モッフ達に確認を終え、一夏は安心した様子でパンを口一杯に頬張りながら

 

「モヒ( ´ω`c)モヒ」

 

と幸せそうな表情でパンを食べる姿に

 

((((あぁ、何だか和むなぁ(のじゃ)))))

 

とほんわかした表情でパンを食べていた。そして最後に皆は一夏の作ったパンを手に取る。

 

「それじゃあ最後は織斑君のパンを食べるわよぉ」

 

「楽しみだなぁ」

 

「見た目も良いし、香りも凄く香ばしい」

 

「そやねぇ。はよう食べたいわぁ」

 

「それじゃあいただきます」

 

そう言い皆一夏のミルクパンを頬張る。一夏は不安そうな表情を浮かべながら見守っていた。

そして

 

 

『おいしぃい!!』

 

と全員声を揃えながら張り上げた。

 

「外はサクッてしていて、中はふんわりしてる!」

 

「それになんだか優しい味だわ」

 

「うむ、この様な甘美なパンは初めてじゃ」

 

「めっちゃ美味しいわぁ」

 

「本当においしいですわ。これでしたら紅茶とも相性がよさそうですわ」

 

「本当に美味しいね、これ!」

 

「確かに美味しいわね。ねえ、織斑君。これってなにか入れているの?」

 

アメリアにそう問われ、一夏は照れた表情を浮かべながら答える。

 

「い、いえ。レシピに載っていた通りに作ったので特に何も…」

 

「そうなの。でも此処までふんわりしているのは凄いわね」

 

「そうだね。ん? ねぇ織斑君」

 

「は、はい。何でしょうか?」

 

「あそこのトレーの上に残っているパンは?」

 

セレスにそう聞かれ一夏は自分の机に置かれているトレーへと顔を向ける。トレーにはまだ2つ程パンが残っていた。

 

「こ、これはお姉じゃなくて織斑先生と友達に渡すパンです」

 

「友達は分かるけど、織斑先生にも? どうしてまた?」

 

「その、織斑先生のお陰で、この部活にも出会えたし、他にも色んなことでお世話になってるからお礼にと思って。……あの、もしかしてダメ、何でしょうか?」

 

「え? ダメって?」

 

突然一夏が困った表情で駄目なのかと聞いてくる事にセレスは戸惑いの表情を浮かべる。

 

「つ、作った料理は他人に手渡すのがです」

 

「あ、あぁ。別に問題無いわよ。皆も作った料理は少し多めに作ったりして友達とかに手渡しているからね」

 

「そ、そうですか。良かったぁ」

 

セレスの説明に一夏はホッと安心した表情をうかべる。

そしてパンを食べ終えた部員達は道具やシンクの清掃を行い、そしてそれぞれ席に着く。

 

「それじゃあ今日は此処までにしましょうか。それで、次は何のお題をするかお題を書いて貰ってもいい?」

 

そう言いながらセレスは白紙の紙をそれぞれ手渡していく。皆何にしようかなと思いながら思案にふけながらも思いついた物を書いていく。一夏も何にしようか悩みながらも思いついた物を書いた。

そして書かれた紙が集められそれぞれ黒板に貼られていく。

紙にはそれぞれ

 

『ピザ』

 

『ホールケーキ』

 

『中華料理』

 

『丼物』

 

『麺料理』

 

「さて、それじゃあ皆どれがいいかな?」

 

「無難なのは丼物とかどうじゃ?」

 

「それもいいけど、ピザとかはどう? シーフードだったりミートピザだったり、色々種類もあるからアレンジレシピとか浮かび易そうだし」

 

「それだったらホールケーキもよろしくありません? ショートケーキやチーズケーキとか色々ありますわ」

 

「うぅ~ん、どれも想像しただけで涎が出てくるなぁ」

 

皆悩んでいる中、一夏もどれがいいだろうと思い見ていた。

暫しどれにするかと悩み、話し合いが行われるが結局決まらずセレスはお題の紙を全て事前に準備しておいた箱に入れシャッフルし、手を入れて一枚引き出した。

セレスが引き出したお題には

 

『旬の食材を使った料理』

 

と書かれていた。

 

「えぇ、次回のお題は『旬の食材を使った料理』となりました。因みにこれを書いたのって誰?」

 

皆を見渡すようにセレスが問うと、おずおずと一夏が手を挙げた。

 

「ぼ、僕です」

 

「お! 織斑君かぁ。因みに理由は?」

 

「その、そろそろ夏にも近付いてきたので旬の食材を使った料理を作って見たいなと思いまして。そ、それに部活の名前の通り、旬の食材で出来る美味しい料理の研究にもなると思いまして」

 

一夏の説明に部員達は確かにと納得の表情を浮かべる。

 

「それじゃあ次の部活は旬の食材を使った料理としまぁす。次の部活は木曜日になるから皆それまでに食材とレシピを準備してきてねぇ」

 

「「「「はぁ~い」」」」

 

「は、はい」

 

こうして一夏の初めての部活動は無事に終わり、一夏は袋に入れたパンを持ってモッフ達と共に寮へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

登場人物

セレスティーヌ = コンヴェルシ

姿 崩壊3rd キアナ・カスラナ

 

料理研究部部長の3年生。食べることが好きで自ら美味しい料理を探求するべく料理研究部に入部。結果部長まで昇進した。

 

稲葉紀子

姿 崩壊3rd 雷電芽衣

 

料理研究部の部員というよりも副部長に近い3年生。小さい頃からセレスとは友人で、美味しいものの為に突き進むセレスのサポート役を担っている。誰に対しても分け隔てなく接することから、『研究部のお母さん』とひそかに呼ばれている。

 

神崎里佳子

姿 世話やきキツネの仙狐さん 仙狐

 

喋りが独特な2年生。身長は一夏より少し上。明るく人を元気にさせるのが生きがい。

 

狗山あおい

姿 ゆるキャン 犬山あおい

 

1年生でのんびりとした関西弁で喋る子。悪意のないホラ話をして、最後には「ウソやで~」と言って締める姿に、皆を和やかにさせる。

 

藤條朱乃

姿 HSD&D 姫島朱乃

 

撫子口調の2年生。実家が有名な和菓子店で、本人も和菓子作りが得意。料理の腕が鈍らないようにする為と、実家の和菓子店を広く知って貰うべく料理研究部に入部した。

 

ニコラス・アレルヤ

姿 ギャラクシーエンジェル ミルフィーユ・桜葉

 

元気いっぱいの1年生。何事にも元気いっぱいに挑戦し、失敗してもへこたれず再挑戦を繰り返す。

ちょっぴりアホの子だが、ときおり鋭い閃きを発揮して摩訶不思議な料理を生み出す。(これまで不味い料理を出したことが無い)

 

アメリア・ランバート

姿 セキレイ 月海

 

とある企業のご令嬢らしく、料理などはしたことが無かったが学園に入学後初めてやったところ、その楽しさにはまり日夜勉強をする努力家。

 

 




次回予告
部活で作ったパンを千冬に届け、一夏は寮の部屋に帰ろうとした所、デュノアと鉢合い少し話す事に。
早々にデュノアとの会話を切り上げ、一夏は本音の元にパンを届けに向かった。

次回
手作りパンのお届け~い、一夏の手作り、パン!~


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20話

家庭科室から出た一夏は部活動で作ったパンが入った袋を大事そうに持ちながらモッフ達と共に千冬が居る寮母部屋へと向かっていた。

 

「お姉ちゃん、喜んでくれるかな?」

 

そう零しながら歩いていると、『寮母室』と書かれた札のかかった部屋に到着し、一夏はそっと扉をノックする。

 

『誰だ?』

 

「あ、あの、織斑です」

 

中から声を掛けられ、一夏は名を名乗ると扉の鍵が開き千冬が現れる。

 

「どうした織斑?」

 

「その、あの…」

 

照れた表情を浮かべ周りを少しきょろきょろとする一夏に、千冬は一夏の持っている物に目が行く。

 

(あぁ、なるほど)「まぁ、立ち話も何だ。中に入れ」

 

何となく訳を察した千冬はそっと部屋の中に一夏を通した。モッフ達は部屋の中までは入らず扉の両脇に立ち銃を胸の所で掲げながら警備を始めた。

 

「それでどうした、一夏?」

 

「その、…はい」

 

周りの目が無くなり、一夏は緊張が若干やわらぎ持っていたパンを千冬へと手渡す。

 

「ほぉ。その、一夏の手作りパンか?」

 

「う、うん。部活の皆と、一緒に作ったの。小麦粉じゃなくて、米粉で作ったミルクパンだけど」

 

「そうか。旨そうだな」

 

「ぶ、部活の皆からは美味しいって褒められた」

 

照れながら伝える一夏に、千冬はそうか。と笑顔を浮かべる。

 

「そ、それじゃあ僕本音さんにも、パンを渡しに行って来るね」

 

「あぁ、いってらっしゃい。それと一夏。今日の初めての部活動はどうだった?」

 

「その、凄く、楽しかった」

 

「そうか。それは良かった」

 

一夏の返答に満足そうな笑顔を浮かべる千冬に、一夏はそれじゃあ失礼しますと言って部屋から出て行った。

一夏が出て行った後、一人ぽつーんと残った千冬はパンを持って奥の部屋へと行き椅子に座って机の上に一夏の手作りパンを置く。

 

「い、一夏が作ったパン! では、いただきます!」

 

そう言い千冬は袋からパンを取り出し緊張した面持ちでかぶりつく。そして

 

「旨すぎるぅううう!!!!」

 

と、部屋の中で叫んだとか。

 

 

 

 

千冬に無事パンを届け、一夏とモッフ達は本音の部屋へと向け歩いていた。

前後にはモッフ達が居る為、すれ違う生徒達と視線が交じるという事は無い為、一夏はモッフの背中を見ながら歩いていた。すると突然前を歩いていたモッフが歩を止める。一夏は突然歩を止めたモッフ(4号)にどうしたんだろうと首を傾げつつ、そっとモッフの背後から前の方を覗き込むと、少し困った表情を浮かべたデュノアが立っていた。

 

「あ、あの、何の、用ですか?」

 

一夏はモッフの背後から警戒心MAXでデュノアに用件を聞く。

 

「いやぁ。僕達ほら、世界に2人しかいない男性操縦者だからさ。親睦を深めるために、これから夕飯一緒にどうかなと思って」

 

デュノアはモッフの背後から覗く一夏に頬を染めながら、一緒にご飯でもどう?と誘う。だが一夏は

 

「す、すいません。僕は部屋で食べるので、大丈夫です。その、急いでいるので失礼します」

 

そう言い一夏はモッフの背をクイクイとひっぱりモッフの護衛の下デュノアの横をすり抜けて行った。

 

「あ、ちょっ…行っちゃった」

 

速足で遠ざかっていく一夏にデュノアはガックシと肩を落とす。

すると手を頬に当てるデュノア。その頬は赤く染まっており、息も若干荒かった。

 

(あぁ、やっとお喋りできたぁ。それにしてもやっぱり生で見ると可愛かったなぁ。よし、このままお喋りを続けて行って仲良くなって、親友になったらあれやこれやしたり…。あぁ~、楽しみだなぁ~)

 

などと、頭の中で妄想を繰り広げるデュノア。

実はこのデュノア、可愛いものには目が無く持ってきた荷物の中に密かに可愛い服やそれを撮るためのカメラを入れて持って来ていた。そして今回の偽装転入にデュノアは当初陰鬱な気分であったが、相手が可愛い子だと知り承諾したのだ。

 

(仲良くなったら、可愛い服を一緒に着て写真撮ったりとか色々したいなぁ)

 

と、本来一夏のISデータを盗む様言われているにも関わらず、本来の任務そっちのけの事を考えるデュノアであった。

 

 

 

 

その頃デュノアから速足で逃げた一夏はと言うと自身の部屋の横の本音の部屋に来ていた。扉の前に立っていた一夏は控えめにノックをする。

 

『はぁ~い、どなたですかぁ?』

 

「あ、あの、一夏です」

 

そう一夏が声を掛けると、パタパタと駆け足の音が部屋の中から聞こえるとガチャリと扉が開かれた。

 

「やっほぉ~、イッチー。どうかしたのぉ?」

 

「あの、これ。その、色々お世話になってるから、そのお礼です」

 

照れた表情で一夏は持っていたパンの入った袋を本音に手渡す。

 

「えぇ~、これもしかしてイッチーの手作りパン?」

 

「う、うん。今日の部活で、初めて作ったの。部員の皆は美味しかったって言ってくれた」

 

「そうなんだぁ。ありがとうね、イッチー!」

 

飛び切りの笑顔でお礼を言う本音に一夏は頬を真っ赤に染めながらコクリと頷いて、それじゃあ。と言って部屋へと帰って行った。

 

本音は一夏が部屋に帰っていくのを見送った後部屋の中へと戻っていく。奥の部屋には相川が予習をしていた。

 

「あ、お帰り。ん? それは?」

 

「これ? イッチーのお手製パンだよぉ。いいでしょぉ?」

 

そう言いながら本音はベッドの上に座り袋からパンを取り出し食べようとする。すると

 

「な、何ですとぉ!? えっと、えっとぉ! ほ、本音、このトッポ一箱で一千切り下さい!」

 

「……2箱寄越しなぁ」

 

「なにィ!? うぅ~。えぇい、持ってけどろぼぉー‼」

 

相川は頭の中でトッポ2箱と一夏お手製のパンを天秤にかけ、貴重性から一夏のお手製パンの方に大きく傾いた為机の中に貯蔵しておいたトッポ2箱を本音に渡した。

トッポ2箱を受け取った本音はパンをほんの少し千切り相川に手渡した。

そして2人はパンにかぶりついた。

 

「お、美味しぃ~」

 

「お店に並んでても可笑しくない程美味しぃ!」

 

一夏のパンに2人は幸せそうな表情を浮かべ、相川はトッポ2箱払って良かったと思いながら小さなパンの欠片を噛み締めながら食べた。




次回予告
朝、何時もと変わらず一夏と本音は一緒にクラスにやって来た。誰もが今日も平穏で和む一日の始まりだと思っていた。だが、突然それは破られた。

次回
レッドアラート‼ ~モッフ、そいつを拘束しろ!~


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21話

初めての部活動の次の日、一夏は朝早くから部屋で弁当作りを行っていた。

 

「えっと、昨日用意したホウレン草のお浸しも入れたし、海苔入り卵焼きも入れた。ウィンナーも入れた。うん、準備よし」

 

弁当箱に入れたおかずを確認し蓋をする一夏。

 

〈相変わらず美味しそうなお弁当を作るわね、アンタ〉

 

「そ、そうかな? ……あと、これどうしよう」

 

一夏はそう呟きながらある物に向け困った表情を浮かべる。

 

〈どうするの? 残ったお浸しと卵焼き〉

 

ISコアにいるアイラは呆れた様な口調で言う。そう、一夏が困った表情を浮かべた理由はボウルに残ったホウレン草のお浸しと半分ほど余った海苔入りの卵焼きであったであった。

 

「どうしよう。……あ、そうだ!」

 

困った表情を浮かべていた一夏だが、何かを思いついたのかキッチン下の棚からタッパーを取り出し残ったお浸しと卵焼きを詰める。

 

〈どうするのよ?〉

 

「その、本音さん達のお昼の足しにして貰おうと思う」

 

〈なるほど。まぁ確かに彼女達なら喜んで食べるでしょうね〉

 

アイラはフッと笑みを浮かべているのかそう言い、一夏はそうだといいなぁ。と少し不安な表情を浮かべながらカバンの中に弁当とタッパーを入れる。すると扉をノックする音が鳴り響く。そして

 

『イッチー、教室行こぉ!』

 

と、何時もと変わらない時間にやってくる本音。

 

「あ、はぁ~い。ちょ、ちょっと待っててください」

 

そう言いながら一夏は鞄を背負い玄関で靴を履き替え扉を開ける。扉の先には笑顔を浮かべた本音が立っていた。

 

「おはよぉ、イッチー」

 

「お、おはよう本音さん」

 

そう挨拶を交わしながら一夏は扉に鍵を掛ける。それと同時にボヒュボヒュと2体のモッフ達が隣に何時の間にか出来ていた『警護室』と書かれた部屋から出てきた。

 

「あ、おはようございます。えっと、今日は7号さんと9号さんですか?」

 

【はい。交代制で警護することになりました。本日はよろしくお願いします。(`・ω・´)ゞ】

 

そうプラカードを見せながら敬礼するモッフ(7号と9号)達。

 

「はい。今日も、お願いします」

 

そう言い一夏はモッフ達の警護の元本音と共に教室へと向かった。

 

「昨日はありがとうね、パン」

 

「い、いえ。本音さんにはその、色々お世話になってるので、少しでも恩が返せたらなと思って渡しただけなので」

 

一夏は照れた表情を浮かべながら、喜んでもらえてよかった。と内心喜んでいた。

そして二人と2体は教室へと到着し、一夏と本音は中へと入り、モッフ達は廊下に残り一夏の席から一番近い扉の両脇に立ち銃を携えながら警備を始めた。

 

教室内に入った一夏は直ぐに自身の机に座り教科書やノートを机の中に仕舞う。

そして顔を上げると、相川と鷹月が笑みを浮かべながら近付く。

 

「織斑君おはよ!」

 

「おはよう織斑君!」

 

「お、おはよう、ございます」

 

「おはよぉ、2人ともぉ」

 

相川と鷹月は2人の元に来ると何気ない談笑をしながら時間を潰していく。すると

 

「おはよう」

 

とデュノアが笑顔で挨拶をしてきた。

 

「あ、デュノア君おはよう!」

 

「おはよう相川さん。織斑君もおはよう!」

 

「……お、おはようございます

 

と一夏にとびっきりの笑顔で挨拶をするデュノアに一夏は一瞬ビクッとなりながら小さく挨拶する。

隣の本音は一夏の様子に若干首を傾げつつも、その様子を見守り続けた。

そして会話グループの中にデュノアも交ざり談笑が再開する。

すると相川が何か思い出したような顔つきになり一夏の方に顔を向ける。

 

「そうだ、織斑君。昨日本音にパンあげたでしょ?」

 

「えっと、はい。その、日頃のお礼にと思ってあげましたけど…」

 

「実はね、私も少しだけ本音に貰った。対価は大きかったけど

 

「? な、何か言いました?」

 

「う、うぅん。何も無いよ。で、あのパンすっごく美味しかったよ!」

 

「そ、そうですか? それは良かったです」

 

はにかみながら笑顔を浮かべる一夏。その姿にほんわかした表情を浮かべる4人。するとデュノアがある事を本音に聞く。

 

「パンって?」

 

「イッチーが部活で作ったパンだよ。イッチーは料理が得意なんだぁ」

 

そう言うとデュノアはへぇ~。と声を漏らす。

 

「凄いねぇ、織斑君! その歳でパンとか難しい料理が出来るって!」

 

そう言いデュノアはつい一夏の頭を撫でてしまった。デュノアはただ褒めるために頭を撫でてあげただけであるが

 

「……」ガタガタ

 

「えっ?」

 

一夏の表情はみるみる悪くなりデュノアや相川達はどうしたんだろう?と心配そうな表情を浮かべてる。そんな中本音は直ぐに一夏の身に何が起きているのか察した

 

「イッチーから離れて‼」

 

そう叫び一夏の頭からデュノアの手を払い除けようとする前に一夏の発作の方が早かった。

 

「ひやぁあぁああぁ!???!!」

 

そう叫ぶと同時に一夏は椅子から転げ落ちる。

 

「い、イッチー!?」

 

転げ落ちた一夏に本音は急いで駆け寄り一夏の容態を診る。すると扉から一夏の悲鳴を聞いたのかモッフ達が入ってくる。そして一体は無線機で何処かに連絡を取り、もう一体は周囲警戒の為武器を構える。

 

「イッチー、大丈夫!?」

 

そう声を掛けるも一夏から返答はなく、それが余計に本音を不安に駆らせる。

 

「あぁぁ、ど、どうしたらぁ。あっ! く、薬!」

 

思い出したかのように本音は一夏が発作を起こした時に打っているペン型注射器を探す。

 

「えっと。えっと。あ、あった!」

 

上着の外や内ポケットなど手当たり次第に探して発見し、直ぐに一夏の腕に注射した。注射したと同時にチャイムの音が鳴り響き教室の前の扉が開く。

 

「おい、既にチャイムは鳴っているって、一体何をしているんだ?」

 

扉から入って来た千冬は席に座らず人だかりの様に集まっている生徒達に声を掛ける。

 

「あ、お、織斑先生! お、織斑君が!」

 

「織斑がどうしたんだ?」

 

「きゅ、急に悲鳴を上げて倒れたんです!」

 

「な、なにぃ!?」

 

生徒達の報告に千冬は驚き急ぎ生徒達を掻き分けて進むと、倒れた一夏と心配した表情で一夏に話しかけ続ける本音。そして

 

「ふもぉ」

 

「……」

 

モッフに武器を向けられ冷や汗を流しながら手を挙げるデュノアの姿があった。

 

「布仏! い、一夏の容態は?」

 

「そ、それが薬を打ったんですけど、目を覚まさないんです!」

 

「薬は打ったんだな? そうか、それならいい。重度の場合は強制的に眠らせる作用がある」

 

千冬の説明に本音は安心したような表情を浮かべ、重い息を吐く。

すると今度は複数のボヒュボヒュと足音が鳴り響き、扉からフモッフを先頭に数体のモッフ達が現れた。

 

「フモッフか。どうした?」

 

【担架を持ってきた。それと捕縛が必要と報告を受けた為人員も連れてきた】

 

プラカードを見せながらフモッフは後ろに居たモッフ数体に指示を出し一夏を担架に乗せる。

 

「そうか。それじゃあ布仏。すまんが一夏を頼む」

 

「分かりましたぁ」

 

そう言い本音は担架に乗せられた一夏とモッフ達と共に教室から出て行った。

2人とモッフ達が出て行った後、千冬はモッフ(7号と9号)に銃を向けられたデュノアの方に顔を向ける。その顔は般若の様に恐ろしい表情を浮かべていた。

 

「さて、一体何をしたデュノア?」

 

「あ、あの。ぼ、僕はただ、織斑君の、頭をその、撫でただけで…」

 

千冬から発せられる威圧感に怯えながらデュノアは振るえる唇で答える。

 

「あ、あの織斑先生。織斑君は、その、きっと驚いて症状が出たんじゃないんですか?」

 

1組の生徒の一人が、デュノアを庇う様にそう言うと何人かもそうですよ。と同意するように頷く。

 

「確かに突然頭を撫でられたら、織斑も驚くだろう。だがな」

 

千冬は一旦言葉を区切ると、デュノアを鋭く睨みつける。

 

「それが男性だった場合は、症状など起きることは無い」

 

「「「「えっ?」」」」

 

千冬の口から出た言葉に生徒達全員が呆けた顔を浮かべる。

 

「で、でもデュノア君は男ですよ?」

 

「そ、そうです。それだったら何で織斑君は症状が起きたんですか?」

 

「決まっている。そいつ(デュノア)()()()()()()()()()()

 

千冬の突然の爆弾発言に1組の生徒達は暫し思考が停止したのかシーンと静まり返り、デュノアは何でバレてるの!?と言いたげな表情を浮かべていた。

 

「ふん。何で知っているのかと言いたげな表情だな、デュノア。だがその説明は後で取調室でたっぷりと聞かせてやるから覚悟しろ。モッフ、そいつを独居房にぶち込んでおけ!」

 

「「ふもっふ!」」

 

千冬の指令にモッフ7号と9号は了承し、固まっているデュノアを拘束し担ぎ上げて連行していった。

 

(よし、面倒ごとの一つが片付いたな。……後一つ、どうやって片付けるか)

 

千冬はデュノアの件は簡単に片付いたが、もう一つのボーデヴィッヒの件はどうやって片付けようかと思案しながら固まった生徒達を起こしてSHRを始めるのであった。




次回予告
医務室に運ばれ目を覚ました一夏。伊田の問診後、本音と共に教室へと戻る。
その頃、SHRを終えた千冬は取調室へと赴きデュノアと対峙していた。

次回
バレた理由~これはお前の物だな?~


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22話

――カリカリ

 

医務室に備えられている机で書類を作成する伊田。そして

 

「……イッチー」

 

一夏が眠っているベッドの隣で心配そうな表情で椅子に座る本音が居た。

SHRは既に終了しており、1限目が始まる前であった。本音は時間いっぱいまで一夏の傍に居よう。そう思いジッと一夏の傍に居た。

すると

 

「…う、うぅん」

 

そう声が聞こえ本音は驚いた表情を浮かべ一夏の顔を覗き込む。

ゆっくりと瞼が開かれ、ぼぉー。とした表情を浮かべる一夏。

 

「イッチー、大丈夫ぅ?」

 

そう声が横から聞こえ一夏はゆっくりと本音の方に顔を向け頷く。

 

「う、うん。だ、大丈夫」

 

そう言いながら一夏はゆっくりと上体を起こす。

2人の傍に伊田も問診表がはさまれたクリップボードを持ってやって来た。

 

「起きたみたいだね。それじゃあ問診をするよ」

 

「は、はい」

 

伊田の問いに一夏は一つずつ答える。暫くして伊田は書き終えた問診表を見て総合的な結果を診断した。

 

「うん、特に異常は無いかな。もう教室には戻ってもいいけど、体に違和感とか不調を感じたらすぐに医務室に来るんだよ」

 

「は、はい。失礼します」

 

そう言い一夏は一礼して医務室を出て行く。本音もその後に続こうとしたが

 

「あ、君ちょっと」

 

そう伊田に呼び止められ本音は脚を止める。

 

「なにかぁ?」

 

「さっき一夏君には問題無いとは言ったんだけど、実は少し心配事があってね」

 

「な、何でしょうか?」

 

「うぅ~ん、確証がある訳じゃないんだけど、もしかたら症状が少しだけ戻っている可能性があるんだ」

 

「えっ!? そ、それじゃあ……」

 

伊田の説明に本音は顔色を悪くする。

本音はもしかしたら相川達と会っただけで発作が起きるんじゃないのかと思ったのだ。その顔色になった理由を本音は震える唇で伊田に問う。

 

「いやいや、君が想像している様な状態にはならないよ。ただ、もしかしたら入学してきたくらいの状態になってるかもしれない」

 

そう言われ本音は少しだけ安堵したような表情を浮かべる。

 

「それで君にお願いしたいのは、クラスの皆に今まで通り接してあげて欲しいと言って貰いたいんだ」

 

「どう言う事ですか?」

 

「今回の騒動で恐らく皆は一夏君に気を遣ってそっとしておこうとすると思うんだ。そうなると一夏君は迷惑を掛けてしまって距離を置かれていると思い込むと思うんだ。だから今まで通り接してあげた方が彼にとって有難いんだ。無論症状が起きない程度にね」

 

伊田の説明に本音は分かりました!と元気良く返事をして廊下で待っているであろう一夏の元に向かう。

そして廊下でモッフ(8号と5号)と一緒に待っていた一夏と共に教室へと向かった。

 

 

そして教室前に着いた2人と2体。一夏はビクビクしながらも教室に入ろうと取っ手に手を掛けるもすぐに手を引っ込めてしまう。

その姿に本音は、そっと一夏の手を握りしめる。

 

「大丈夫だよ、イッチー。私も付いてるから」

 

そう言い一夏を安心させる本音。一夏はう、うん。と頷きそっと取っ手に手を取って開けて中へと入る。

中に入ると一斉に生徒達は開けた一夏に注目する。その視線に一夏はビクッとしながらも、自分の席に座る。そして視線を遮るように本を開け顔を隠した。

一夏が中に入ったと同時に本音も中に入り自分の席に着き辺りを見渡す。

生徒達の多くは一夏が戻ってきた事に嬉しそうではあるが、今朝の事もあってかどう接したらいいのか分からず困った顔を浮かべていた。

 

本音は伊田の頼まれていた事をどうやって実行しようかと悩んでいると

 

「ねぇ、本音ちょっといい?」

 

と相川と鷹月が困った顔を浮かべながらやって来た。

 

「どうしたのぉ?」

 

「うん。織斑君なんだけど、大丈夫だったの?」

 

「本人に聞きたいけど、今朝の事もあるし聞けなくてさ。本音だったら何か聞いてるかなと思って」

 

2人の問いに本音はそっかぁ。と言いながら、医務室の事を2人に話した。それと伊田に頼まれた事も2人にも話した。

 

「―――そっか。症状が戻ってるかもしれないんだ」

 

「うん。でも、さっきも言った通り普段通りに接した方がイッチーの為だって先生が言ってた」

 

「それで織斑君の症状は改善されるの?」

 

「分かんない。でも、距離を置いたらイッチーが一人ぼっちになったと勘違いするかもしれないって先生が…」

 

本音の言葉に2人はそっかぁ。と悲痛そうな顔を浮かべる。そして2人は何か決心したのか顔付を変える。

 

「それじゃあ私達、皆にさっきの事伝えに周ってくるね」

 

「え? いいの?」

 

「当ったり前じゃん。皆も織斑君の事心配してるからね。早いとここのことを伝えに行った方が良いし、織斑君の事も放っておけないからね」

 

そう言って相川と鷹月は他の生徒達の元に向かっていく。2人に本音は心の中でありがとう。と感謝の気持ちを浮かべた。

 

 

 

 

その頃千冬はと言うと、学園の地下に設けられている取調室に居た。

暫く椅子に座りながら待っていると、背後にあった扉が開き2人の人物が入って来た。

 

「来たな、デュノア」

 

入って来たのは、腕に手錠がはめられたデュノアと銃をぶら下げた警備員だった。

警備員はデュノアを千冬の向かいの席に座らせると、そのまま千冬の背後の扉横に立つ。

千冬は机の引き出しから紙束を取り出し机の上に置く。

 

「さてデュノア。単刀直入に聞くぞ。お前が男装で此処に来た理由は織斑のデータを入手する為。そうだな?」

 

「……その、はい」

 

デュノアはもはやどう言い訳をしようと、既に自分がやろうとした事はバレていると考え正直に答えた。

実父と継母が営むデュノア社の命令で男装したこと、一夏からデータを入手することなどデュノアはすべて千冬に告白した。

 

「―――以上が、僕が指示された事です」

 

「分かった。では処分が決定するまでは貴様は独居房に入れられる。取り調べは以上で「あ、あの!」なんだ?」

 

「ど、どうして僕が女だって分かったんですか?」

 

デュノアは教室で告げられた事がずっと引っ掛かっていた。教室で取調室で話すと言ってたためデュノアはその訳を聞くべく声を上げたのだ。

 

「あぁ、取調室で教えてやると言ってたな」

 

千冬はそう言いながら立ち上がって部屋の隅に置かれているプラスチック製のコンテナ箱から段ボール箱を取り出した。

 

「昨日の夕方。お前宛ての荷物が届いてな」

 

「荷物、ですか?」

 

「あぁ。どうやら送り先とは別の場所に行っていたらしく遅れて到着したみたいでな。で、保安上の理由で荷物にX線検査を掛けたら、変なものが映っていてな」

 

そう言い机の引き出しから一枚の紙を取り出した。それはX線を通したであろう荷物の画像であった。

 

「荷物表には服と書いてあり、中身も服だった。だが、この画像に写っている服は何だ?」

 

そう言い画像に写っている服に指をさす。その服はコスプレ用なのかフリフリの付いた可愛らしい服であった。

 

「っ!? えっと、あの…」

 

「まぁ、当初は女装と言う趣味だと思っていた。が、念のため開けたんだ」

 

「えっ!? 開けたんですか!?」

 

「開けるに決まっているだろ。そしたら、これが出てきた」

 

そう言い段ボール箱から引っ張り出すように取り出したのは女性もののブラジャーであった。

 

「流石に女装するのにこれまで必要か?という事で後日お前に問おうとしたら、今朝の事件が起きたという訳だ」

 

以上だ。と言い千冬は説明を終えた。

 

デュノアはガックシと首を落とし、あの時量を減らしておけば良かった。と準備時の事を今更になって後悔するのであった。

そんなデュノアの姿を見つめながら千冬は別の事を思っていた。

 

(まぁ、お前が女だという事は入学以前から束から聞いていたし、フモッフ達からの報告でもすぐにばれていたからな)

 

そう思いながら後ろに居た警備員に独居房に戻すように指示する千冬であった。




次回予告
今朝の事件で迷惑を掛けたと思い落ち込む一夏に、本音や相川達が元気づけるべく話しかけ続けた。
事情を知った生徒達も一夏を元気づけるべくそれぞれの出来ることをする。

次回
一夏君元気づけよう作戦始動! ~皆、お菓子の貯蔵は十分あるか?~


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23話

「――では1限目を終了します」

 

き、起立。礼

 

「「「ありがとうございました!」」」

 

ちゃ、着席

 

1限目の授業が終わり生徒達は使っていた教科書等を手早く片付けていく。一夏も使っていた教科書などを片付け本を取り出して読み始めようとしたところで

 

「織斑君、少しいい?」

 

そう相川が声を掛けてきた。

 

「な、何でしょうか?」

 

「うん、さっきの授業で少し分からないところがあったから教えて欲しくて」

 

「ど、何処ですか?」

 

そう言い一夏は先程片付けたノートを取り出す。

 

「この32ページにある問4の問題なんだけど」

 

「えっと、それでしたら、この式で解けます」

 

そう言い一夏はノートをパラパラと捲り、相川が聞いてきた問の回答が書かれたページを見せる。

 

「あ、なるほど此処が間違ってたのかぁ。織斑君ありがとうね!」

 

「い、いえ。お役に立てたなら、嬉しいです」

 

「あの、織斑君。私も聞いてもいいかな?」

 

そう言い今度は鷹月がノートを持ちながらやってくる。

 

「昨日の5限目に織斑先生が教えていた箇所、ちょっと分からなくてさ。ちょっと教えてくれない?」

 

「あ、はい。ちょ、ちょっと待って下さい」

 

机の中から別のノートを取り出しペラペラと捲り昨日やった箇所のページを開く一夏。

隣の本音もノートを取り出しながら分からなかった箇所を聞こうとする。

3人が一夏に分からない箇所を教えてもらっているのは、何時もと変わらない光景であった。

 

周りの生徒達も相川や鷹月から教えてもらった通り普段通りに過ごす。そんな中鷹月や相川が生徒達に説明していたのを耳に入れた復活したセシリアや箒は一夏の元に向かおうと考えていた。

 

(普段通りにしていればいいと言っておられましたが、どう言う事でしょう? うぅ~ん、相川さん達は一夏さんに勉強を教えてもらっている様ですし。はっ! 私も彼女たちのように勉強を教えてもらえばいいのでしょうか? そうですわ、色々あれこれ教えてもらえるチャンスですわね)

 

(普段通りと言うが、私は何時も普段通りだからな。それにしてもあいつ等、何時も一夏と一緒に居る方が可笑しいだろうが! えぇい、今日こそ追い払ってやる!)

 

2人はそれぞれそう思いながら立ち上がり一夏の元に向かおうとしたが

 

「「ふもぉ?」」ジャキッ

 

一夏の背後に居た2体のモッフが2人に向け銃を構えたのだ。

 

【自分の席に戻れ。これは警告だ】

 

一体がプラカードを見せながらそう告げた。モッフ達警備部隊は今現在警戒状態になっており、発作の原因になりそうな者などから一夏を守るべく警戒態勢になっていた。

因みに相川や鷹月が接近を許されたのは、警戒しなくても大丈夫だと判断されている為である。

 

「い、一夏さんに勉強を教えてもらおうだけですわ」

 

「お前等には関係無いだろ」

 

それぞれそう言い一歩踏み出した瞬間、バスンと発砲音が鳴り響き箒とセシリアの額に模擬弾が命中しそのまま二人は仰け反り倒れた。

 

「「~~~~~~っ!!!???」」

 

2人は声にならない程の痛みに撃たれたところを抑える。すると廊下から2体のモッフが現れ倒れている2人を拘束してそのまま教室から連れ出していった。

一連の光景に生徒達は

 

((((馬鹿だねぇ、あの二人))))

 

と思ったのであった。

 

そんな事がありながら2限目の授業が始まり取調室から戻って来た千冬が教卓へと立つ。

 

「えぇ、2限目を始めるがオルコットと篠ノ之は何処に行った?」

 

「接近を許されてもいないのに織斑君に近付いた為に、モッフ君達に撃たれて連れて行かれました」

 

2人が居ない事を生徒達に聞いてきた千冬に一人の生徒がそう説明すると、千冬はそうか。とだけ答え授業を開始した。

そして暫くして授業終了のチャイムが鳴り響く。

 

「――では2限目の授業は以上だ。織斑、挨拶を」

 

「は、はい。起立、礼」

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

「ちゃ、着席」

 

着席したと同時に千冬と真耶は教材を持って教室から出て行く。他の生徒達も教科書などを片付けていく。すると数人の生徒達が一夏の元に近付く。無論警戒態勢にあるモッフ達は近付く生徒達に

 

【用件は?】

 

とプラカードを見せる。セシリア達と対応が違うのは警戒度が大きく違う為である。

最大警戒度が5だとすると

 

警戒度0→千冬、本音、束

警戒度1→相川、鷹月

警戒度2→ご近所の奥様達

警戒度3→1組の生徒達

警戒度4→他のクラス、真耶

警戒度5→1期ヒロイン

 

となっている。

 

「えっと、織斑君や本音さんとお菓子を食べたいなぁと思って」

 

「あ、勿論未開封のお菓子です。検査してもらっても構いません」

 

そう言い持っていた未開封のお菓子をモッフに手渡す生徒。受け取ったモッフはお菓子の箱を入念に調べ、封を開けお菓子の成分を調べる。暫くして検査を終えお菓子を生徒に返す。

 

【異常は無い。接近を許可する】

 

そうプラカードを見せられ生徒達は一夏の元に向かう。

 

「織斑君お菓子食べよ」

 

「本音さんも一緒にどう?」

 

「食べるぅ!」

 

「い、いただきます」

 

そう言い生徒達と共にお菓子を食べ始める一夏。お菓子を食べる一夏に生徒達はほんわかしながらお菓子を食べる。

 

その後3限目、4限目と授業が終わり昼食の時間となった。一夏は何時もと変わらない本音達と共に昼食をとろうと考えていると

 

「あ、織斑君。今日は私達も交ざってもいいかな?」

 

「お邪魔じゃなければご一緒してもいいですか?」

 

そう話しかけてきたのは、四十院神楽と鏡ナギであった。

 

「えっと、あの、ぼ、僕は構いませんよ」

 

「私も良いよぉ。それに皆と食べたほうが美味しいしぃ」

 

一夏が構わないと許可が取れ2人はやった。と喜び本音達と一緒に弁当を買いに向かう。暫くして弁当を買ってきた本音達ともに一夏はクラスで昼食をとり始めた。

昼食をとり始め和気藹々と談笑が開いている中、一夏は昼食が始まる前から気になっていた事をナギ達に聞く。

 

「あ、あの、鏡さん。少し、いいですか?」

 

「なに、織斑君?」

 

「その、今日は皆さんどうして僕によく、話しかけてくれるんでしょうか?」

 

一夏は不安そうな表情を浮かべながら聞く。今朝の事もあって一夏は周りの皆に迷惑を掛けた為、距離を置かれると思っていた。

だがクラスメイト達は距離を置くどころか一夏を気に掛ける様に話しかけたりして来たのだ。

その事で一夏は疑問が沸いたのだ。

 

「そりゃあ織斑君が心配だからだよ」

 

「そうそう」

 

「し、心配ですか?」

 

「うん。ほら、今朝の事もあって皆心配してたんだよ」

 

「織斑君が戻って来た時は嬉しかったけど、直ぐに駆け寄って大丈夫なのかなって思ってたんだ。そしたら相川さん達から普段通りに接すればいいって教えてもらってね。だから普段通りにしながら織斑君の様子を気に掛ける様にしてたんだ」

 

「まぁ昼食を一緒にとろうって誘ったのは相川さん達が羨ましいから、混ぜてもらっただけなんだけどね」

 

ナギはそう言い笑みを浮かべる。隣の四十院もそうですね。と同意しながら笑みを零す。

2人の話を聞いた一夏はと言うと

 

「(´;ω;`)ブワッ」

 

と涙目になっていた。

 

「ど、どうしたの織斑君!?」

 

「わ、私達変な事言っちゃった!?」

 

「イッチーどうしたの!?」

 

突然涙目となった一夏に5人はアワアワと慌てる。

 

「み、皆さんが、そんなに、気に掛けてくれていたなんて、知らなくて。それが、ヒック。その、嬉しくて…」

 

そう言い涙を流す一夏に、あ、そう言う事。と5人は納得しながら涙を流す一夏に慰めるのであった。

因みにそんな様子を扉の影から覗いていた人物がいた。

 

「良かったな、一夏。お前の事をちゃんと気に掛けてくれる生徒達で」

 

と千冬が嬉しそうな表情を浮かべながら見ていた。因みにその足元には

 

「むぅ~~! むぅ~~!?」

 

と猿轡をされた鈴がロープで拘束されて転がされていた。毎度の如く1組に突撃して一夏を連れ出して食堂でご飯を食べようとしたのだが、千冬が現れてこの様な状態にされたのである。




次回予告
クラスメイト達に気に掛けられて数日が経ったある日。部活で使うレシピを調べるべく図書室に行く一夏とモッフ達。
そして放課後、料理研究部へと行き料理を作り始める部員達。
さてさて、一夏君は今回どんな料理を作るのだろうか?

次回
旬の食材の料理~お腹空いたぁ~


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24話

デュノアが女とバレてから数日が経ったある日。一夏はモッフ(8号と9号)と共に図書室に来ていた。

 

「えっと、料理コーナーは…。あ、あった」

 

そう言いながら一夏は料理コーナーに置かれている本の中から一冊の本を取り出し開く。

 

「えっと、6月の食材を使った料理は…。ほへぇ~、結構あるんだぁ」

 

本に書かれていた料理に一夏は驚きの声を零しながら、他の本数冊をもって机の元に向かう。

無論モッフ達も持つのを手伝い机の上へと置く。

色々な料理本を読みながら一夏はノートに料理のレシピと簡単な絵を描いていく。

 

それから時間は経ち、放課後。

使っていたノートや教科書などをカバンに仕舞う一夏。

 

「ねぇねぇイッチー。今日お部屋に遊びに行ってもいい?」

 

「えっと、ごめんなさい。今日、部活で遅くなってしまうんです」

 

「あ、今日なんだぁ。それじゃあ仕方ないねぇ」

 

「ご、ごめんなさい。その、代わりと言ってはなんですが冷たいお菓子を持ってきますね」

 

「お菓子‼ しかも冷たいの! うん、良いよぉ!」

 

一夏の口から冷たいお菓子と出ると本音は嬉しそうな表情を浮かべ、「冷たいお菓子、どんなお菓子かなぁ?」

と零しながら想像に耽るのであった。

 

そして一夏はモッフ達と共に家庭科室へと向かった。

中に入るとセレスと稲葉、そして神崎が準備をしていた。

 

「こ、こんにちは」

 

「お! 織斑君こんにちは。今日も宜しくね」

 

「よろしくね、織斑君」

 

「宜しくなのじゃ」

 

それぞれ挨拶を受けながら一夏は自分の机に行き拡張領域に仕舞っていた材料を取り出していく。

一夏が取り出したのはカットされたメロン、粉寒天、牛乳、パセリ、マッシュルーム、バター、インスタントご飯であった。

 

「織斑君、今日は何をつくる予定なの?」

 

「えっと、マッシュルームの混ぜご飯とメロンのミルク寒天です」

 

「あら、美味しそうね」

 

「うむ、混ぜご飯に冷たい寒天とはいいのぉ」

 

3人から組み合わせが良い。と褒めてもらい一夏は頬を染めながら、ありがとう、ございます。と小さく零す。

そして残りの部員達も到着し、それぞれ持ってきた食材を出しながら準備を始める。

 

一夏はまずカットされたメロンの水気を切る。次に鍋に粉寒天、水、牛乳を入れよく混ぜながら煮込む。粉寒天が完全に溶けた事を確認後砂糖と牛乳を少しずつ加え沸騰直前まで加熱した。

沸騰直前まで煮立った寒天をボウルに移し、とろみがつくまで冷水で冷やす。とろみがついてきた後、水気を切ったメロンを入れ流し缶の中に移し冷蔵庫の中に入れ冷やした。

 

冷蔵庫の中に入れた寒天が固まるまでの間、一夏はもう一つのマッシュルームの混ぜ込みご飯をつくり始めた。

まず持ってきたインスタントご飯を電子レンジの中に入れ温め始めた。インスタントご飯が出来るまでの間にマッシュルームとパセリを薄切りにしたり、細切れにした。

切ったマッシュルームをあらかじめ熱したフライパンにバターと一緒に入れ良く炒める。暫くしてフライパンを火からおろしパセリと醤油、塩と胡椒を混ぜる。混ぜ終えた後に温めたインスタントご飯を入れまた混ぜ込み器に盛りつけた。

 

マッシュルームの混ぜ込みご飯を作っている間に、冷蔵庫に入れた寒天が固まっており、一夏は流し缶から形が崩れない様慎重に取り出し、食べやすい大きさに切り分けて小皿に盛り付けて行った。

 

 

一夏が料理を完成させて暫くして他の部員達の料理も完成しそれぞれお皿に盛り付け食べ易い様に更に小皿に盛り付けてそれぞれの机に並べる。

机の上にはインゲンの入った牛肉のレンコン巻きフライ、豚と枝豆の梅生姜焼き、大葉と梅の春巻きなど6月や初夏の旬の食材を使った料理が並べられた。

 

「それじゃあ皆、手を合わせて」

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

それぞれ手を合わせて頂きます。と挨拶するとそれぞれ気になっていた料理に手を取り口に運ぶ。

 

「おぉ~、このレンコン巻き美味しいですぅ」

 

「此方の梅入りの生姜焼きも中々の物ですわ」

 

「どれも美味しいわね」

 

「ほんまやねぇ」

 

「織斑君が作ったマッシュルームの混ぜ込みご飯も美味しいわね」

 

「そうね。手軽にできる混ぜ込みご飯だから部屋の簡易キッチンでもすぐ出来そうね」

 

「この寒天のお菓子も中々の美味じゃ」

 

皆気になった料理を手に取り口に運びながら料理を堪能し、一夏も

 

「モヒ( ´ω`c)モヒ」

 

と美味しそうに料理を食べていた。

暫くしてそれぞれの机の上に置かれていた料理は無くなり、部員達は使った食器を洗いまた次のお題を考えるべく用紙にお題を書いていく。

 

「―――それじゃあお題が集まったからどれにするか決めるけど、毎回皆で話し合いをして決めるよりもくじ引きみたいにした方が早いと思うからそっちの方にするわね」

 

「「「「「は~い」」」」

 

セレスは皆の返事を聞いた後、お題の書かれた紙を箱の中に入れ見えない様明後日の方向に顔を向けながら箱に手を突っ込みガサゴソと動かす。

そして腕を引っ張り出し一枚の紙を取り出した。

其処に書いてあったお題は

 

【真夏に嬉しいお菓子】

 

「それじゃあ次のお題はこの“真夏に嬉しいお菓子”です。次の部活動は来週だから皆準備をしっかりとして来てね」

 

「「「「はぁ~い!」」」」

 

こうして今日の部活動は無事に終わった。

 

 

因みに、一夏は部活終了後にメロンのミルク寒天を持って約束通り本音に手渡していた。

ミルク寒天を食べた本音の感想は

 

「冷たくて、美味しいぃ~~」

 

と物凄く幸せそうな表情を浮かべる本音であった。




次回予告
部活動の次の日、何故かデュノアが教室に居る事に生徒達が困惑する事態に。千冬はその訳を説明して生徒達を落ち着かせる。
そして放課後、一夏は本音達と共に外のベンチでお菓子を食べていると、アリーナから大きな衝撃音を聞くのであった。

次回
千冬、ストレス値上昇~……貴様ら、覚悟はできてるんだろうなぁ?~







どうも、のんのんびよりです。最近投稿ペースが遅延して本当に申し訳ないです。
さて、普段なら次回予告を書いて終わっている後書きなんですが、今回ちょっと理由がありまして、出てきました。
その理由というのは

一夏「う、うぷ主さん。何か用ですか?」

本音「なんで私達を呼んだのぉ?」

メサ【何か御用ですか?(*´д`)??】

千冬「いきなり何だ、主」

束「お裁縫の途中だったのに、何の用?」

おぉ、来たね5人共。ちょっと確認だけど束さんと千冬さん以外の3人は以前憲彦先生の所の一夏君達とコラボトークしたの憶えてる?

一夏「う、うん。楽しかったです」

本音「うんうん。それがどうかしたの?」

実は憲彦先生から今度は此方に来られませんかって、お誘いを受けてね。それで集まって貰った訳。

一夏「む、向こうに行けるんですか? それは嬉しいですヽ(*´∀`)ノ」

本音「そうだねぇ。また向こうの私とお話ししたいし」

メサ【またバジン殿と料理の事でお話ししたかったので、楽しみですv( ̄∇ ̄)】

千冬「ほぉ、向こうの一夏達と会えるのか。それは楽しみだな」

束「確かに‼ 別の世界のいっくん達がどんなものか気になるね!」

そりゃあ良かった。それじゃあちょっと待っててね。向こうの状況とか見てくるから

一夏「楽しみだね、本音さん」

本音「うん!」

束「そう言えばちーちゃん。前にお気に入りの湯呑を思いっきり壁に投げつけてたけど、あれ何したの?」

千冬「気にするな。少し制裁を加えただけだ」

お待たせ。憲彦先生から向こうに行く為のスイッチを貰って来たよ。それじゃあ皆集まって!

~ゾロゾロ5人集合中~

皆、集まった? それじゃあ押しまぁす!

“ピンポ~~ン”

千冬「…何も起きんぞ、主」

あれ? 可笑しいな。もう一回押してみるか

“ピンポ~~ン”

一夏「や、やっぱり何も起きませんよ?」

おっかしぃな? 押したらチャイムが鳴って向こうに行けるって言ってたんだけどなぁ? 仕方ない、強めに押すか

“ピンポ~~~~~ン”

ゴゴゴゴゴゴ←黒い穴が生成中

お! 上手く行ったみたいだな

一夏「こ、これ上手く行ったのでしょうか?」

本音「なんか違うようなぁ?」

気にしない、気にしない。ほら、5人共早くいくよぉ!

5人「お、おぉ~」

と言う訳で憲彦先生とコラボトークをする為、ちょっと出かけてきます! 
では、また次回!


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25話

前話でお知らせした、憲彦先生とのコラボトークショウに参加させてもらいました。
色々とはっちゃけていて面白い話となっておりましたので、ぜひお時間がありましたらご覧いただきたいです。

コラボトークした作品は『ISと無気力な救世主リメイク』という作品です。

https://syosetu.org/novel/205676/


部活動の次の日、一夏は昨日部活動で作ったメロンのミルク寒天と同じ作り方で、今度はイチゴのミルク寒天を昨晩作成しそれをタッパーに入れていた。

 

<はぁ~。すぐに応用料理を作るわよね。しかも美味しそうだし>

 

「そうかな? でも、アイラに褒められると、その、嬉しいかな」

 

<…あっそう>

 

そう言うと、アイラはそれ以降黙り込んでしまう。

一夏は一瞬心配な表情を浮かべるが、何時ものダンマリだろうと考え調理に戻る。

そんな中、ISコアにいるアイラはと言うと頬を染めながら口を尖らせていた。

 

<(まったく、何であぁも簡単に照れさせる事を言えるのよ。…まぁ、悪い気はしないけど)>

 

そんな事を思いながら世間の情勢から最新ISから装備までの情報収集を行うのであった。

 

 

朝の弁当作成とおやつの切り分けを手早く済ませ、朝食を取り教室に行こうとカバンを持ったところで扉がノックする音が鳴り響く。

 

『イッチー、教室行こぉ!』

 

『織斑君、一緒に教室に行こ』

 

扉の向こうから本音と相川の声が聞こえ、一夏はカバンを背負い鍵を開け扉を開ける。

 

「お、おはよう」

 

「おはよう、イッチー」

 

「おはよう織斑君」

 

挨拶を交わした3人。それと同時に扉の警備室から2体のモッフがライフルを携えながら出てきた。

 

「おはよう、ございます」

 

「「ふもっふ!」」

 

一夏の挨拶に元気よく返すモッフ達(10号と11号)

そして3人と2体は教室へと向かい始めた。

 

暫く3人での談笑をしながら向かっていると途中で鷹月とも合流し、4人で教室へと向かうのであった。

そして教室へと到着し中に入るとそれぞれの机に荷物などを仕舞って行く。

 

「それでねその子、『FPSは…、遊びじゃないんだよ!』って言いながら白熱してたんだよ」

 

「そ、それは白熱してるねぇ」

 

「そ、そうですね。でも、それだけのめり込めるゲームは本当に面白い作品だと思います」

 

「あぁ、確かにぃ。私の幼馴染のかんちゃんもよく高速でキーボードを打てる様にする為に、一時期タイピングゲームにはまってたなぁ」

 

「タイピングゲーム? あぁ、確かにあれって時間内に打たないといけないもんねぇ」

 

「それ、僕もやってました。でも、指が直ぐにつってしまうので止めましたけど」

 

「確かに、あれを高速打ちしようと思うと指つりそうだよね」

 

それぞれゲームの話をしているとチャイムの音が鳴り響き相川や鷹月達は席へと戻り、全員が席に着いたと同時に教室前の扉から真耶と千冬が入って来た。何時もと違うとしたら、2人の後からデュノアが入って来た事だった。

デュノアが入って来た事に生徒達は驚きの表情を浮かべていた。

その光景にも反応せず千冬は淡々と言った表情で口を開く。

 

「諸君、おはよう。えぇ、見ての通りデュノアが本日からまたこのクラスの生徒として通うことになった」

 

その言葉に生徒達は動揺が走り、ざわざわと騒がしくなる。すると一人の生徒が手を挙げた。

 

「あの、織斑先生。彼女は男性操縦者と偽って入学してきたんですよね? それじゃあ此処にはいられないんじゃ?」

 

「夜竹の言う通り、コイツは性別を偽って転入してきた。だが、性別を偽っただけで特に犯罪的な事をしていない為、学園上層部の恩情によって再度女性として入学してきたと言う訳だ」

 

千冬の説明に生徒達は、納得のいった者と何処か納得がいっていない者と半々といった感じであった。

 

「お前達も色々と思うところがあると思うが受け入れる様に。それじゃあデュノア、さっさと自分の席に着け」

 

千冬に言われデュノアは居心地が悪そうな表情を浮かべながら席に着く。

 

「では、朝のSHRを始める。まず初めに――――」

 

デュノアが席に着いたと同時に千冬はSHRを始める。

さて、クラスにデュノアが戻って来れた理由、それは千冬が言った通り学園上層部の恩情によって戻って来れたのだが、もう一つ理由があったのだ。

それは、デュノア社が関与している決定的な証拠が無かったからである。

デュノアの荷物、そしてスマホなど教師達が入念に調べたが会社が指示した証拠の物はなく、シャルロットに聞いても

 

『その、口頭で指示されて。手段は自分で考えろって言われました』

 

と言い、関与している証拠は一切見つからなかった。

このことから学園上層部は証拠が無い以上、デュノアを拘束しておく訳にはいかない上に、シャルロット本人がデュノア社とは縁を切りたいと申し出てきた為協議の結果彼女が本当にデュノア社と縁を切ったと確認できるまで学園で保護する事となったのだ。

そしてその監視役としてクラスの担任だった千冬が選ばれた為、また元のクラスに戻って来たという訳である。

 

因みに監視役に選ばれた事に千冬はかなりキレて会議室が修羅場と化しそうだったのを何とか上層部が交渉し、納得してもらったとか。

 

 

「――それでは最後に、再来週に行われる学年別個人トーナメント戦についての変更があった為知らせる。山田先生、詳細を」

 

「はい。えぇ、再来週行われるトーナメント戦なのですが、今年入って来た代表候補生及び国家代表の多くが第3世代機のISを所持している事から、より経験などを得る目的としてツーマンセルで行うことになりました。此方がその詳細が書かれた紙になりますので皆さんしっかりと熟読してください。それとツーマンセルの希望票は明日配布しますので、それまでに周りとよく相談してください」

 

真耶はそう説明しながら、持っていた用紙を前列の生徒達に渡し後ろに回させる

生徒達に配られた用紙には以下の条件が書かれていた。

 

1.タッグを組む生徒は同学年とし、クラス等は関係なく組める。

2.代表候補生もしくは国家代表生同士のタッグは武装に制限を掛ける事。一般生徒とのタッグの場合もこの条件は当てはまる。

3.対戦相手に国家代表生もしくは代表候補生が居る場合は2の条件は免除される

4.当日までにタッグが決められなかった場合は、当日に抽選によってタッグが決められる。

 

と他にもいろいろと条件が書かれているが、上記の条件が基本として大きく書かれていた。

すると一人の生徒が手を挙げてる。

 

「あの織斑先生。織斑君はどうするんでしょうか?」

 

そう聞くと周りの生徒達も、どうするんだろう。とざわざわと騒がしくなる。

 

「その辺に抜かりはない。学園上層部と協議した結果、織斑の学年別トーナメント戦の参加は自由となった。それと織斑のタッグは、織斑とタッグになる奴が一緒に私の所に来なければ参加は認めない。こうする理由は、本人の与り知らないところで勝手に希望票に名前を書いて出す“馬鹿者”がいる恐れがある為こうすることにした」

 

千冬は馬鹿者の部分を若干強調しながら説明し、生徒達はなるほどと納得した表情を浮かべる。(数人はガックシと肩を落とすのであった)

 

「では、本日のSHRは以上とする。織斑、挨拶を」

 

「は、はい。起立、気をつけ、礼。着席」

 

朝のSHRは終わり千冬達が教室から出て行き、生徒達は先程の学年別トーナメント戦のタッグをどうするかと話し合いを始めたり、他の談笑を始めたりした。

 

「イッチーはトーナメント戦でるの?」

 

「その、出来たら出たいなと思ってます。けど…」

 

「そっかぁ。タッグの人がいないとねぇ」

 

そうお喋りをしながら次の授業の準備をする2人。

 

(うぅ~~ん。イッチーはまだ悩んでいるみたいだし、もう少ししてから誘ってみようかな?)

 

(ほ、本音さんに何時も迷惑かけてるから頼めなかった。でも、他にタッグが組めそうな人がいないし、どうしよう)

 

2人はそう思いながら準備をするのであった。

 

因みにその馬鹿者(セシリアと箒とシャルロット)3人はというと

 

「「「……」」」

 

「「ふもぉ」」

 

【分かってるよな?(゜д゜メ)】

 

とモッフ達に銃とスタンバトンとチラつかせられ一夏の元に行けなかったのであった。

 

そうして時間は過ぎて行き、放課後。

生徒達はそれぞれ部活に行く者や、教室に残って駄弁っていたりするもので別れた。本音もカバンに教科書などを仕舞っていると

 

「あ、あの本音さん」

 

「ん~、なにぃイッチー?」

 

「その、昨日作ったメロンのミルク寒天の応用で、イチゴのミルク寒天も作ってみたんです。ですから、その、相川さん達と味見をしてくれませんか?」

 

「昨日のイチゴ版! 食べるぅ!」

 

本音がハイテンションで返事をしていると、相川達も一夏達の席へと集まった。

 

「どうしたの、本音? やけにハイテンションみたいだけど」

 

「だってイッチーが作ってくれたお菓子の味見をお願いされたんだよぉ」

 

「えぇ! そ、それは確かにテンションが上がるわね」

 

「うん。確かに」

 

「あの、相川さん達にも味見をお願いしたんですが…。その、いいですか?」

 

「私達もいいの?」

 

「は、はい」

 

自分達も食べられる。相川達はいよっしゃあぁ!と内心高ぶっていた。そして4人は教室から出て外に設けられているベンチへと向かった。

 

「―――うぅ~~ん! 冷たくて、美味しいぃ!」

 

「本当。お店で売ってるお菓子みたい」

 

「だね。これだったら私、毎日買っちゃうかも」

 

ベンチでイチゴのミルク寒天を食べ、3人はお店に出ていても可笑しくない程の美味さに舌鼓していた。

 

「よ、喜んでもらえて、良かったです」

 

3人に喜んでもらえた事に一夏ははにかみながら笑顔を浮かべ自身の手元にあるイチゴのミルク寒天を頬張る。

初夏の為か若干気温は暑いものの、木陰に置かれたベンチには涼しい風が吹き、4人はただ幸せな時間が過ぎていく。

 

『ガッシャーーン』

 

「「「「っ!?」」」」

 

突然の音に4人の肩は跳ね上がり、近くに居たモッフはすぐさま銃を構え周辺警戒を行う。

 

「な、なに今の音?」

 

「どっかで事故でもあったのかな?」

 

相川と鷹月がそう話していると、モッフ(11号)が一夏の傍に近付きプラカードを見せる。

 

【どうやらアリーナにてトラブルが起きたみたいで、千冬氏がそちらに向かったとのことです】

 

「え、お姉ちゃんが? 何があったんですか?」

 

【詳細はわかりませんが、代表候補生同士の喧嘩があったとのことです】

 

「そ、そうなんですか」

 

「何か気になるから見に行ってみる?」

 

【それはお勧めできない。一夏様をお守りするのと同時に、君達の安全も守らねばならない為行くのはよした方がいい】

 

「そ、そう? それじゃあ大人しく此処にいておこっか」

 

「それがいいね。下手に行って巻き込まれたりしたら危ないもんね」

 

そう言い相川達はお菓子を食べるのを再開し、一夏は不安な気持ちを抱きつつも千冬が怪我無く無事に事態を収拾できることを祈りながらベンチに座り直した。

 

 

 

 

 

時間は少し遡り、一夏達がベンチに到着するほんの少し前まで戻る。

この日、アリーナでは数人の生徒達が訓練を行っており、それぞれタッグマッチに備えてかタッグを組んで連携練習を行っていた。

其処へセシリアがISを身に纏ってやって来た。彼女もタッグマッチの為練習しようと考えていたが、組んでくれる相手がまだいない為一人訓練をしようとアリーナに出ていると、向かいのピットから甲龍を纏った鈴が現れた。

 

「あら、貴女は2組の代表の…」

 

「そう言うアンタはイギリスの代表じゃない。何してるのよ、此処で」

 

「訓練ですわ。もうじき学年別トーナメント戦がありますので」

 

「ふぅ~ん。でも今年はタッグマッチらしいから一人で練習しても連携が取れないんじゃないの?」

 

「別に問題ありませんわ。わたくしが華麗に指示を出せばいいだけの事ですので」

 

「華麗にねぇ。合同授業でのアンタの指示の出し方を見た限りじゃ、無理そうだけど」

 

「そう言うのでしたら、貴女も同じだと思いますが」

 

「随分と私に気に喰わない様な言い方ね?」

 

「無論ですわ。怖がっている一夏さんにずけずけと近付いておられるのですから」

 

「あれは私は味方だって教えるためよ。そう言うアンタだって料理が下手糞らしいのに、手料理を食べさせようとしたらしいじゃない」

 

「あら、それは貴女も同じじゃありませんの? 食べられない一夏さんに無理矢理料理を手渡そうとしたらしいじゃありませんの」

 

互いに喧嘩を売ったり買ったりして、2人の間に只ならぬ空気が流れ始める。

 

「もういい加減口喧嘩するのは止めましょうか」

 

「えぇ。お互い国の代表候補生。決着を決めるのでしたらやるしかありませんわ」

 

そう言い二人は周りに生徒がいるにも関わらず模擬戦を始めようとすると

 

「ほぉ、なら私も混ぜて貰おうか」

 

と2人の横から声がかかり、2人は声のした方に顔を向けるとラウラがISを身に纏った状態で立っていた。

 

「アンタ、最近転校してきた奴じゃない」

 

「どう言うつもりですの?」

 

「ふん。ただ貴様らが本当に強いのかどうか確かめるだけだ。気にするな。あぁ、勝つ自信が無いのならさっさと帰ってくれていいぞ。負け犬など呼ぶつもりはないからな」

 

煽る様に話すラウラに2人はカチンと頭にきて武器を取り出す。

 

「いいわ。吠え面掻くんじゃないわよ!」

 

「やってやりますわ!」

 

2人が武器を構えたと同時にラウラも武器を構え戦闘が開始した。

突如開始した模擬戦に周りにいた生徒達は驚きと悲鳴を上げ急いで避難を始める。管制室に居た教師もアナウンスで直ぐに止めさせようと怒鳴る。

 

「ちょっと、貴女達! 模擬戦の許可は出していないわよ!」

 

そう怒鳴るも3人の耳には届いておらず攻撃はあちこちに飛び交い何時避難中の生徒達を巻き込むか分からない状況であった。管制室の教師は急ぎ内線用の受話器を手に取り連絡を取る。

 

「もしもし、此方第1アリーナ管制室の諸見里です。現在生徒3名が無許可で模擬戦を始め、危機的状況です! 避難を終えていない生徒も居り何時ケガ人が出てもおかしくない状況で、急いで誰か寄越してください!」

 

激しい攻防が繰り広げる3人。彼女達は周囲の状況にも目もくれず戦い続けていた。

 

「いい加減堕ちたらどうなのよ!」

 

「そうそう墜ちるものか!」

 

「このぉ!」

 

3人の攻撃は苛烈さを極め、あちこちにクレーターを造ったり壁には大きなへこみを造ったりと酷い有様であった。

そして3人はそれぞれ一旦距離をとり息を整える。そして再度攻撃しようと武器を構え直した瞬間、3人に突然とてつもない程の寒気がはしった。

 

(な、なによいきなり!? 物凄い寒気がする!)

 

(なんなんですの、この寒気は!? そ、それにか、体の震えが止まりませんわ)

 

(こ、このプレッシャーは何だ!? あいつ等じゃないとすると一体誰が)

 

それぞれ突然の寒気とプレッシャーに驚いていると、地の底から響く様な声がアリーナ内に響く。

 

貴様らぁ、覚悟はできてるんだろうなぁ?

 

そう声が聞こえ、3人は声のした方に恐る恐る首を向けると、其処には腰にありったけの打鉄用の近接ブレード《葵》を引っ提げた千冬が立っていた。

その姿を見た3人はガタガタと震え、顔面は蒼白であった。

 

「言い訳は後で聞いてやる。兎に角今から貴様らを――」

 

 

 

――――――――シメアゲル

 

千冬はそう言い終えると同時に持っていた葵を勢いよく振り投げた。葵は回転しながら3人の元に向かい、ラウラと鈴は急ぎその場から退避するも

 

「ふぎゃっ!!????!!」

 

セシリアは間に合わず顔面に葵が命中、そのまま後ろに倒れ込んでしまう。避けた二人に千冬は慌てることなく腰に装備した葵を抜き、常人では出せない脚力で二人に迫る。

鈴はパニック状態になりながらも何とか千冬から逃げようとするも

 

2人目

 

そう背後から聞こえ、振り向く暇もなく

 

「あぶくぅ!!!??!!!!」

 

後頭部に強い衝撃を受けそのままずっこけるような形で地面に横たわる。そして千冬は阿修羅の様な表情でラウラの方に顔を向ける。

 

後は貴様だけだ

 

「きょ、教官。わ、私は、た、ただ…」

 

黙れ

 

そう短く言い、目にも止まらなぬ速さでラウラの懐に潜り込み千冬はたまりにたまったストレスを一気に開放するかのようにフルスイングで葵を振る。

 

「うがはっ!???!!!」

 

横っ腹からくる強い衝撃で吹き飛ばされたラウラはそのまま地面に転がり落ち意識を失う。

 

「此方千冬、問題を起こした生徒3名を鎮圧した。教師数人を至急送ってくれ」

 

無線機でそう指示を出した千冬は転がる3人に目もくれずアリーナから出て行った。

その後武装した教師数人がやってきて3人を拘束、反省房に放り込まれたのは言うまでもない。




次回予告
3人の制圧を終えた千冬は、寮母室に戻り一息ついていると一夏が部屋にやって来た。
千冬は一夏を部屋に上げ用件を聞くと、料理を作りに来たと言う。
次回
団欒
~やはり、のんびりできる日は良い~


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26話

~職員室~

アリーナでの一件を手早く済ませた千冬は、重いため息を吐きながら自身の机に置いてあるコーヒーを口にする。

そしてカップに入ったコーヒーを飲み干すと、千冬は現在の時刻を確認する。

 

(16時半か。明日の教材の準備は済んでいるし、どうしたものか)

 

そう思いながら机の上を整理していると、書類を抱えた真耶が千冬の隣の席へと戻ってくる。

 

「あ、先輩。さっきのアリーナの喧嘩、大丈夫でしたか?」

 

「あんなもの早々に片付く。で、あの馬鹿者どもは何時まで反省房に放り込んでおくと決まった?」

 

「えっと、上層部と学園長の協議の結果、タッグマッチ戦までだそうです」

 

「チッ。もっと長い事放り込めばいいものを」

 

舌打ち交じりで言う千冬に、真耶は苦笑いを浮かべながら持っていた資料を見つめながら分けて行く。

 

「アリーナの設備を壊したと言うよりもへこみやクレーターを造ったりした程度などで、そんなに長くは放り込めませんよ」

 

「それでもだ。周りに生徒達が居たと言うのにそれを全く気にもしないでいきなりで模擬戦を始めたんだぞ? それを考慮してもタッグマッチ戦までは短すぎる」

 

「…確かにそうですね」

 

千冬の説明に真耶も若干思うところがあるのか、若干悲しい表情を浮かべる。

自身が受け持った生徒が喧嘩、それも周りに人がいる状況でISを使った喧嘩を始めたのだ。

下手をすれば死人も出る恐れがあった事だけに、真耶はセシリア達に十分反省してくれることを切に願っていた。

 

真耶と駄弁っている間に時刻は17時を過ぎ、千冬は寮母室に戻ると真耶に伝え手提げかばんを持って職員室を後にした。

寮母室に戻った千冬は手提げカバンから弁当箱を取り出し流し台でサッと洗い、乾燥機の中に仕舞いソファに深く座り込む。

自然と重いため息が零れ目を閉じていると

 

[コンコン]

 

と扉をノックする音が鳴り響き、閉じていた目を開け体を起こし扉の前まで行く千冬。

 

「誰だ?」

 

『あ、あの、織斑です』

 

「織斑? 鍵は開いてる。中に入れ」

 

そう言うと扉がそっと開き顔を覗かせたのは心配そうな表情を浮かべた一夏だった。

 

「お、お邪魔します」

 

そう言い中に入る一夏。

 

「どうかしたのか一夏?」

 

「あの、モッフさん達からアリーナで喧嘩が起きて、お姉ちゃんが止めに行ったって聞いて心配になって…」

 

そう告げる一夏に千冬は

 

「そ、そうか」

(う、うぅぅぅううぅ。や、優しいなぁ一夏。お、お姉ちゃん。そんな優しい弟がいて幸せだぞぉ!)

 

と内心泣き喜んでいた。

 

「見ての通り怪我はない。私はそう軟に鍛えていないからな」

 

「そ、そっかぁ。良かったぁ」

 

安心したようにほっと胸を撫で下ろす一夏。

すると一夏は手をもじもじさせる。

 

「あの、お姉ちゃん。この後、時間ってある?」

 

「ん、時間か? そりゃあ消灯時間までは私は此処にいるが、どうしてだ?」

 

「その、久しぶりに、お姉ちゃんとご飯を食べたいと思って…。だ、駄目かな?」

 

上目遣いで聞いてくる一夏。その姿に千冬は

 

(い、いかん。は、鼻から血が出そう…)

 

と弟ラブメーターが一気に急上昇した為か鼻から溢れ出そうになるものを必死に抑える。

 

「お、お姉ちゃん?」

 

「はっ!? だ、大丈夫だぞ! し、しかし食材がなぁ」

 

そう言いながら千冬は今朝の冷蔵庫の中身を思い出す。

 

(確か、昨日作った煮物の残りと冷凍餃子。それとキャベツくらいだったか?)

 

碌な食材が無いな。と思っていると

 

「い、一応僕の部屋から少し持って来てるから、それで出来るよ」

 

「そうか。…ん? も、もしかて、一夏が作ってくれるのか?」

 

「うん」

 

「それは楽しみだな」(久しぶりの一夏の手料理! 此処で食わねば何時食えるか分からん!)

 

中々忙しい余りに一夏の手料理が食べられずにいた千冬にとって、この機会は滅多にないチャンス。

だからこそ

 

(この時間に仕事を持ち込もうとしてきたら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらゆる手段を用いて断る!)

 

と考えていた。

 

キッチンに立ち一夏は冷蔵庫に入っている物を確認し、一夏は冷蔵庫から煮物と餃子、キャベツを取り出し調理を開始した。

キッチンからシャカシャカと米を研ぐ音を聞きながら千冬はほっこりとした笑みを浮かべながらその様子を見ていた。

 

(はぁ、久しぶりの手料理。楽しみだなぁ)

 

そう思いながら一夏が出してくれたきゅうりの浅漬け(手作り)を食べる千冬。すると

 

[コンコン]

 

とノックする音が鳴り響く。

 

(チッ。仕事だったら適当に理由を付けて断るか)

 

そう思いながら千冬は鍵を開け扉を開けると、其処には

 

「よぉ千冬」

 

「なんだ伊田か。何か用か?」

 

扉を開けた先にいた伊田に問う千冬。

 

「いや、久しぶりに二人で晩酌でもどうかなと思ってな。あぁ、無論ノンアルの酒だからな」

 

そう言いながら手に持っていた大きめのビニール袋を見せる伊田。

 

「それはいいな。あ、そうだ。ちょっと待っててくれ」

 

ある事を思いついた千冬は中に入っていき、キッチンにいた一夏に声を掛ける。

 

「一夏、伊田が来たんだがアイツも交じってもいいか?」

 

「え、伊田さんも? うん、良いよ」

 

一夏の許可を貰い千冬は入り口にいた伊田を中へと招き入れる。

 

「おじゃましますっと、やぁ一夏君」

 

「こ、こんばんわ伊田さん」

 

「千冬、もしかして今晩は一夏君の手料理だったのか?」

 

「あぁ。ほら、何時までも立っていないでこっちに座ったらどうだ」

 

そう誘われ伊田は千冬の向かいの席に座る。そして料理が出来るまで千冬と同様に浅漬けを口にしていた。

 

それから暫くしてお盆に料理を載せて持ってくる一夏。

 

「お、お待たせしました」

 

そう言いお盆を机の上に置きそれぞれの前に並べて行く。

 

「おぉ、旨そうな炊き込みご飯だな」

 

「確かに、いい匂いがする」

 

千冬達の前に置かれたのは人参やゴボウ、油揚げなどが入った炊き込みご飯であった。

2人が炊き込みご飯の匂いにほんわかしていと、一夏が次に持ってきたのは大きめの鍋であった。

 

「ロールキャベツ、です」

 

そう言って鍋を置き、蓋を開けるとコンソメの匂いとロールキャベツとジャガイモがゴロゴロと転がっていた。

 

「ふむ、これも旨そうだ」

 

「そうだな」

 

料理を並び終えた一夏は伊田の隣の席に座り、それを確認した千冬はそれじゃあ。と声を掛けながら手を合わせる。

 

「頂きます」

 

「「頂きます/い、いただきます」」

 

そう言いながらそれぞれ箸を手にご飯を食べ始める。

 

「この炊き込みご飯、具材に味が染みていて旨いな」

 

「確かに。俺が来てからそんなに時間が経っている訳でもないのに、結構沁みてるな」

 

炊き込みご飯い入っているゴボウや筍など味が沁み難いものまでしっかりと味が沁みており、ご飯も味が濃すぎず、薄すぎずと言った丁度良い感じであった。

 

「この、炊き込ご飯。お姉ちゃんが作った煮物を使ったんだよ」

 

「ん? 煮物って冷蔵庫に入っていた物か?」

 

「うん」

 

「ほぉ、上手い活用法だな」

 

「だな。俺も煮物を作った時に余りそうだったら試してみるか」

 

そう言いながら炊き込みご飯を頬張る伊田。そして千冬は鍋に入っているロールキャベツをお玉で掬い、お椀によそってかぶりつく。

すると千冬は、かぶりついたロールキャベツにふと違和感を感じ、その断面を見る。

キャベツに包まれていたのは餃子であった。

 

「これ、餃子を巻いたのか?」

 

「う、うん。そのまま焼いても良かったんだけど、キャベツがあったからロールキャベツにしてみようと思って試してみたの」

 

「はぁ~、こういう調理法もあったのか」

 

千冬と伊田は改めて一夏の腕に驚くのであった。

その後談笑を交えながら千冬達は一夏の手料理を食べ終え、それぞれ湯呑に入った温かいお茶を飲みながらのんびりしていると千冬がふとある事を思い出し一夏の方に顔を向ける。

 

「そう言えば一夏。今朝話したトーナメント戦、お前は出るのか?」

 

「で、出たいと思ってるけど、その…」

 

目を伏せる一夏に、千冬と伊田は理由を察し苦笑いを浮かべる。

 

「全く、一夏。お前の事だ、布仏に迷惑を掛けているから頼みづらいと思ってるんだろ?」

 

「……」コクリ

 

千冬の言葉に一夏は小さく頷くと隣に座っていた伊田がポンと一夏の頭の上に手を置き撫でる。

 

「相変わらず心配性だな。まぁ、それが一夏君だからな仕方がないもんな」

 

「そうだな。一夏、明日布仏に聞くだけ聞いてみろ。アイツの事だから別に迷惑とは思っていないはずだからな」

 

「……う、うん。聞いてみる」

 

まだ心配なのか暗い表情を浮かべているが、ちょっとだけ一歩前に出せた事に千冬と伊田は優しい笑みを浮かべる。

 

時刻が20時となり、一夏は部屋へと帰って行き残った2人はノンアルの酒を飲みながら浅漬けと伊田の持ってきたつまみをつまむ。

 

「それにして一夏君の料理の腕、ますます上がっているんじゃないのか?」

 

「そうだな。まぁ、いいじゃないのか? 料理のできる男はモテると言うしな」

 

「それ、俺に対する当てつけか?」

 

口を尖らせながら言う伊田に千冬はそんな訳ないだろと笑みを零す。すると寮母室の窓が突然開き

 

「やっほ~~~! 束さんも混ぜてぇ!」

 

と束がぴょ~んと飛び込んできた。

 

「お前なぁ。いきなり飛び込んでくるな! 誰かに見られてって事は無いか」

 

「当たり前じゃん、ちーちゃん。この束さんを見つけられるのはちーちゃんとよー君といっくんだけだもん」

 

フフンと笑う束に伊田は苦笑い、千冬は呆れた様な溜息を吐くのであった。そして3人は消灯時間になるまで酒とつまみを食べながら駄弁り合うのであった。




次回予告
次の日、一夏は千冬に背中を押され本音にタッグを申し込もうとするが…

次回
一夏君、タッグを申し込む~お、お願い、しましゅ~


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27話

千冬と伊田と共に夕食を取った次の日。

時刻は朝6時と、起きている生徒は少なく起きている生徒は朝の部活動や早朝トレーニングなどを日課にしている生徒のみだった。

その頃一夏はと言うと

 

「スー、スー、スー」

 

と規則正しい寝息を立てながらお気に入りのアニマル縫いぐるみ(束作)を抱きながら寝ていた。

静かな時間が流れている部屋に、ずかずかと足音を立てながら近付く生徒が居た。

 

「全く一夏の奴め。もうすぐタッグマッチ戦が近付いていると言うのにまだのんきに寝ているのか」

 

と剣道着を着た箒が一夏の部屋近くまで来た。扉の前まで来た箒は扉に向かって大きく拳を振り下ろそうとしたが

 

「一夏起きっ!!??」

 

突如背後から首を絞められ、更には右脇から腕を通されたため右腕は上に伸び自由が利かない状態となった。

箒は振り解こうとするが、どうする事も出来ず意識を失いだらんとなる。背後から箒を羽交い締めをしたのはモッフだった。一体のみならず複数体がライフルを箒に構えていた。

彼等は一夏にとっての要警戒人物の一人となっている箒を寮内に仕掛けた監視カメラで監視しており、箒が一夏の部屋に向かおうとしていた為隠れて待機していたのだ。

その後モッフ達は箒を拘束し担ぎ上げ、反省房に放り投げ込むのであった。

廊下でそんな事があったにもかかわらず、部屋の中にいる一夏はと言うと

 

「もふもふぅ」

 

と寝言を零しながら縫いぐるみを抱きしめて寝ていた。

 

~一時間後~

 

ピピピピッ‼

 

ベッド横に備えられている目覚し時計がけたたましいアラーム音を鳴り響き、一夏はもぞもぞと腕を伸ばしてアラームを切る。そしてぼんやりとした表情を浮かべながらむくりと起き上がる。

 

「ふわぁ~~、おはよぉアイラぁ」

 

〈えぇ、おはよう。ほら、さっさと洗面台に行ってその爆発した寝ぐせを梳かしてきなさい〉

 

「うん」

 

アイラと会話した後、一夏はベッドからよろよろと降り洗面所へと向かう。

 

『――よって本日は一日晴天となるでしょう』

 

「ハムハム」

 

朝のニュース番組を見ながら一夏はイチゴジャムとマーガリンがたっぷりと塗られたトーストをかじりながら、昨日千冬達に言われた事を思い出す。

 

(お姉ちゃん達は大丈夫って言ってくれたけどやっぱり心配だなぁ)

 

そう思いながら一夏は不安な表情を浮かべながら最後の一かけらを食べ牛乳を口にする。皿やコップを水で満たした桶の中に入れると扉をノックする音が鳴り響き

 

『イッチー、教室に行こぉ!』

 

と本音の呼ぶ声が聞こえた。

 

「あ、はい。今行きます!」

 

本音にそう答えながら一夏はカバンを背負い廊下へと向かう。

扉を開けるとのほほんとした笑みを浮かべた本音が居た。

 

「おはよぉイッチー」

 

「お、おはようございます、本音さん」

 

挨拶していると、隣の警備室から2号と4号のモッフが出てきた。

 

「「フモッフ!(`・ω・´)ゞ」」

 

「おはよう、ございます」

 

「おはよぉ」

 

モッフ達にも挨拶した2人は教室に向かって歩き出した。

 

教室に向かう道中、一夏は本音にタッグの事を何時切り出そうと悩みながら歩を進めていた。隣にいた本音は一夏が何か思い悩んでいる表情に、首を傾げながらも一夏に問う。

 

「イッチー、どうかしたのぉ?」

 

「えっ?」

 

「なにか悩んでるのぉ? 私でよければ相談に乗るよぉ」

 

と笑顔で言う本音に、一夏は意を決して言おうと思い口を開く。

 

「あ、あの、本音さん。その、ぼ、僕と「あ、2人共おはよぉ!」「おはよう二人共」あうぅぅ」

 

意を決して本音にタッグを申し込もうとしたが、運悪く相川と鷹月の2人がやってきてしまった為挫かれるように止まってしまった。

 

「うん、おはよぉ。それでイッチー、なに?」

 

「あの、えっと、だ、大丈夫、です。さ、先に行ってます」

 

そう言い若干落ち込んだ表情を浮かべながら歩き出す一夏。その後姿に、本音は少し心配した表情を浮かべ、相川と鷹月は何とも言えない表情を浮かべながら見送る。

 

「なんか織斑君落ち込んじゃったけど、どうしたの?」

 

「わかんなぁい。なんか悩んでた表情を浮かべてたから相談に乗るよって言って何か言おうとしたところで二人が来て、結局聞けなかったなんだぁ」

 

「あちゃ~、間が悪い時に私たち来ちゃったのかぁ」

 

「だね。どうしよ」

 

「うぅ~ん。別に二人が悪い訳じゃないから気にしなくても良いと思うよ」

 

「そうだけど、織斑君が相談しようとした事も気になるし」

 

「もしかしてタッグの事じゃないのかなぁ?」

 

鷹月がそう言うと2人もあぁ、それかもと何処か納得のいった表情を浮かべる。

 

「確かに織斑君がトーナメント戦に出ようと思ってるなら、本音に申し込むもんね」

 

「そうだよね。でも、なんで悩んでたんだろ?」

 

「うぅ~ん、分かんない。取り合えず教室に行こ。イッチーの相談事は自分から話してくれるまで、聞かないであげよ」

 

「そうだね。タッグの申し込みだって決めつけるわけにもいかないし」

 

3人はそう話し合い、一夏が再度相談して来るまでは相談事は聞かないであげようと決めるのであった。

 

それから時間が経ち、4限目の授業終了のチャイムが鳴り響く教室。

あれから一夏は、本音達と談笑はすれどもタッグの申し込みが出来ず落ち込んだ表情を浮かべるの繰り返しだった。本音達も無理して聞こうとせず一夏の決心がつくまでは見守っていた。

 

〈はぁ、いい加減にタッグの申し込みしたらどうなのよ〉

 

呆れた様な口調で言うアイラに、一夏は落ち込んだ表情を浮かべる。

 

〈うぅぅ、い、言おうと思ってるんだけど、ど、どうしても断られたらと思うと、怖くて…〉

 

〈はぁ~、あの子の性格からしてそれは無いでしょ。というか絶対にあの子もアンタとタッグを組みたいと思ってるはずよ〉

 

〈そ、そうなのかなぁ?〉

 

〈気になるんだったら、さっさと聞いてきなさい〉

 

〈う、うん。き、聞いてみる〉

 

アイラに背中を押され、一夏は隣に座っている本音の方に顔を向ける。

 

「あ、あの、ほ、本音さん」

 

「うん、なぁにイッチー?」

 

「あの、ぼ、僕とた「織斑君、ちょっと話があるんだけど!」ヒッ!?」

 

意を決して本音に申し込もうとした矢先に、突然真横から話しかけられ一夏は肩を思いっきり跳ね上げた。

突然一夏に話しかけたのはデュノアで、満面の笑みを浮かべる彼女に周りにいた生徒達は一斉にデュノアを一夏から遠ざける。

 

「ちょっと、真横から織斑君に話しかけちゃダメでしょ!」

 

「そ、それはごめん。で、でも大事な話が合って…」

 

「大事だからって突然真横から話しかけちゃダメ! って、持ってるその紙って何?」

 

デュノアを遠ざけるのに手を貸した生徒の一人がデュノアの持っている紙に気付き見ようとするが、デュノアは見られまいと隠す。

 

「な、何でもないよ」

 

「何でも無い訳ないでしょ。その紙なに?」

 

「まさか、タッグマッチの希望票?」

 

「ギクッ」

 

一人がまさかとばかりに希望票と問うと、デュノアは一瞬体を硬直し視線を逸らす。

 

「ち、違うよ。ま、前の授業で配られたプリント。ちょっと、織斑君に教えてもらおうと思って…」

 

「だったら私達が見ても問題無いでしょ。なんで隠す必要があるの?」

 

「そ、そりゃあ見られたら恥ずかしいって、ちょっと何するのさ!」

 

デュノアは紙を見られまいと隠そうとしていたが、モッフ達が素早くその紙を奪い取り広げる。隠そうとしていた紙は推測通りタッグマッチの希望票の紙で、名前の欄には既にデュノアの名前が書かれており更に何故か一夏の名前も書かれていた。

その紙を見た生徒達はジト目でデュノアを見つめる。

 

「これ、どう言う事?」

 

「そ、そのぉ……」

 

言いづらそうな表情を浮かべながら視線があっちこっち泳ぐデュノアに生徒達は

 

「皆、デュノアさんに対する判決は?」

 

「「「「「勿論、ギルティ!!」」」」」

 

「えぇぇ!? ちょ、ちょっとまっ『バリリリ』あばっばっばばば

 

突然の有罪判決にデュノアは何とか弁明(言い訳)を言おうとするが、モッフの振り下ろしたスタンバトンの方が早く強烈な電撃を受け、デュノアはそのまま倒れ込む。そして廊下からモッフ数体が現れ、デュノアをロープで簀巻き状態で拘束し、そのまま運んで行った。

もはや1組の日常光景の様になってきた光景に、生徒達は気にも留めることなくお昼を取りに教室から出て行った。

 

「……」シュン

 

突然話しかけられた事に対し、何とか落ち着けたがまた出鼻を挫かれ言う事が出来なかった一夏。落ち込みながらご飯を食べようとすると

 

「イッチー、大丈夫ぅ?」

 

心配した表情で一夏に問う本音に、一夏はコクリと頷き返す。

 

「そっかぁ。…えっと、それで何か用があったんじゃないのぉ?」

 

「……えっと、や、やっぱり、大丈夫、です」

 

そう言いご飯を食べる一夏。本音はその姿に心配した表情を浮かべ続けていた。

 

 

 

因みにその光景に千冬は

 

「……デュノア、〆るか」

 

と持っていたチョークケースが潰れそうな位、手に力を込めていた。

 

 

 

~放課後~

カバンに教科書などを仕舞い、一夏はカバンを背負って教室を後にしようとすると

 

「あ、イッチー。ちょっと待ってぇ」

 

と本音から呼び止められた。

 

「な、なんでしょうか?」

 

「この後、時間ってある?」

 

「え? あ、はい。ありますけど…」

 

「お、それじゃあこれ一緒に食べに外のベンチに行かない?」

 

そう言い本音がカバンから取り出したのは、スティック菓子だった。だがそのパッケージに一夏は驚いた表情を浮かべる。

 

「そ、それって、確か地域限定でしかも数量限定の」

 

「うん、こりじゃがのチョコバナナ味! えへへ、偶然昨日手に入ってね。イッチーと食べようと思ってとっといたの。だから一緒に食べよ」

 

「い、いいんですか?」

 

「うん、ほら行こ」

 

一夏はは、はい。と言い本音と共に教室を後にした。

教室を後にし、外の人通りの少ない所に置かれたベンチに2人は腰掛け、お菓子を頬ばり始めた。

 

「うぅ~~ん、美味しぃ」

 

「う、うん。チョコバナナの風味も良いし噛んだ時の触感も良い」

 

2人はお菓子に舌鼓しながらポリポリと食べ続ける。

 

「ねぇ、イッチー」

 

「は、はい。なんでしょうか?」

 

「此処だと誰にも邪魔されないと思うし、言えると思うよ」

 

「え?」

 

本音の言葉に一夏は呆けた顔を浮かべた。

 

「ほら、私に相談しようとするたびに話せなかったりしたじゃん。此処だったら来ないはずだからイッチーの相談に乗れるよ」

 

のほほんとした笑顔で言う本音に、一夏はジーンと胸が温かくなりながら、言うべきかどうか迷い顔を伏せる。

暫し沈黙が流れた後、一夏は意を決しして口を開く。

 

「あ、あの、ぼ、僕とた、タッグを組んでくだしゃい」

 

と本音に告げる一夏。が、緊張のあまり最後の方を噛んでしまい、耳まで赤くなるほど恥ずかしくなり俯く。

 

「うん、良いよぉ」

 

「ほ、本当に良いんです、か?」

 

「うん、私もイッチーとタッグを組みたいなぁって思ってたし」

 

了承する本音にそっと顔を上げ、はにかんだ笑みを浮かべる一夏。

 

「あ、ありがとう、ございます」

 

お礼を言う一夏にえへへへ。と笑顔を浮かべる本音。そして二人はお菓子を食べ終えた後、タッグの申請をしに職員室へと向かった。

職員室へと到着し中へと入る一夏と本音。一夏は怯えた表情を浮かべながら辺りをきょろきょろと見渡していると

 

「ん? 織斑か、其処で何をしている?」

 

と机に座っていた千冬が一夏に気付き声を掛けると、一夏と本音は足早に千冬の元へと向かった。

 

「あの、た、タッグの申請に、来ました」

 

「ふむ、布仏とタッグを組むんだな。布仏も織斑とタッグを組むことには同意したと捉えても良いか?」

 

「はい、イッチーとタッグを組みまぁす」

 

「分かった。それじゃあタッグの申請は私がしておく。頑張れよ、2人共」

 

「「は、はい/はぁい」」

 

2人はそう返事をして職員室から出て行き、千冬は事前に準備していた一夏と本音の名前の書かれた希望票を引き出しから取り出し判子を押す。

 

「よし、これで正式に決定だな」

 

そう呟いた千冬は2人が何処まで行けるだろうな。と考えに更けるのであった。




次回予告
ついに始まる学年別タッグマッチトーナメント戦。
一夏と本音は果たして優勝まで行けるのか。

次回
タッグマッチトーナメント戦 第一回戦
~「がんばろぉ!(≧▽≦)」「お、おぉ~」~


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28話

一夏と本音のタッグが決まってから数日が経ち、学年別タッグマッチトーナメント戦となった。

大勢の参加者が今か今かと待ち望んでおり、それは観客席にいる生徒達も同様だった。

 

『えぇ~、ではこれより第1回タッグマッチトーナメント戦を行います。まず第一回戦の発表します』

 

そうアナウンスが流れ生徒達はそれぞれモニターに顔を向ける。

 

「織斑君と本音の名前あった?」

 

「えっとぉ。あ、あった! 第一回戦の6組目だ」

 

「6組目か。となると、第3アリーナあたりかな」

 

「そうだね、よぉし皆ぁ! 織斑君と本音の応援に行くわよぉ!」

 

「「「「おぉーー!!」」」」

 

1組の生徒達はそう声を高々に上げながら、ぞろぞろと第3アリーナに向け歩き出す。

1組の生徒達が第3アリーナに向け歩き出している中、一夏達はと言うと第3アリーナに備えられているピットでいそいそと準備をしていた。

 

「ほ、本音さん。準備の方は大丈夫ですか?」

 

「うん。イッチーの方も大丈夫? 専用機持ちは武装に制限が掛けられるみたいだけどぉ」

 

「う、うん。大型ガトリングカノンと腰につけているライフルグレネード、それとソードオフショットガン2丁と対物ライフルを使用不可にしました」

 

「そっかぁ。あ、そうだ。武器の譲渡はOKだっけ?」

 

「えっと、確かパートナーの機体が訓練機であれば試合中の譲渡は良いはずです。も、もちろん撃墜された後の譲渡は禁止ですが…」

 

「良かったぁ。ラファールの武装ってグレネードランチャーとライフルなんだけど、弾が足りなくなった時とかだと近接装備がナイフ一本だけだから心配だったんだぁ」

 

「そ、そうでしたか。あの、足りなくなったら言って下さい。ライフルでしたら一杯ありますから」

 

うん。と頷く本音。そして一夏は再度タブレットで装備を確認を始める。

 

〈えっと、アイラ。武器はこれだけあればいいよね?〉

 

〈えぇ、十分よ〉

 

一夏の手元にあるタブレットには現在バレットホークに積まれている武装が書かれていた。

リストには

・ハンターM202-BD 60㎜アサルトライフル

・LG5M-BD アサルトカービン(膝サブアーム用)

・その他アサルトライフル関連が12丁

・バタリングラム(破城槌)

・対物ナイフ

・ヴァイブロ・バヨネット 接近戦闘用超振動銃剣

・フォールディングナイフ (左腕用装備)

 

と書かれていた。無論これだけの量は普通駄目であるがある理由からOKにされたのだ。

その理由は以前デュノアを1組に戻す際にした千冬との交渉した時の事だ。

学園上層部にデュノアを1組に戻す事を伝えられた千冬は殺気全開で断ろうとした所、引き受けてくれれば可能な限りのそちらの提示する条件を呑むと伝えたのだ。

其処で千冬は今度行われるタッグマッチで、一夏の機体に乗っている武装を他の機体よりも多く持って良いことを許可する事。そしてフモッフ達警備部隊の戦力強化を提示したのだ。

フモッフ達の戦力強化は良しとされたが、武装を他の生徒達よりも多く持つことに関しては難色の顔を示され、千冬はもう一押しとばかりにこう付け加えた。

 

『織斑の機体はサブアームという特殊装備を持っている。各国からの来賓がいる場所で、サブアームの有用性を示す事が出来ると思うが?』

 

そう言われ、学園上層部も一夏の類稀なるサブアームの操縦には目を見張るものがある事から、特例として許可したのだ。

 

『これより第一回戦を開始します。出場する両選手達はアリーナに出て下さい』

 

そうアナウンスが出され、一夏と本音はそれぞれISに乗り込む。

 

「それじゃあイッチー、優勝目指して頑張ろうね」

 

「う、うん。頑張りましょう」

 

そう言い一夏は気持ちをしっかりと引き締める。

 

〈行けるよね、アイラ?〉

 

〈ふん。誰に向かって言ってるのかしら? サポートは任せてあんたは何時も通り機体の操縦に集中しなさい〉

 

〈う、うん!〉

 

準備が終わり2人は外に出ると、対戦相手である生徒がラファールと打鉄を身に纏って立っていた。

 

「布仏さん、織斑君。悪いけどそう簡単には勝たせないからね」

 

「これも勝負。悪く思わないでね」

 

「ふふぅ~ん、負けないぞぉ!」

 

「ま、負けません!」

 

お互いそう言い合い武器を出す。そして

 

『カウント。3、2、1、試合開始!』

 

カウント開始と共に打鉄を纏った生徒が前に出て来て、ラファールを身に纏った生徒はグレネードランチャーとライフルを構えながらそれを援護してくる。

一夏達はと言うと、一夏はサブアームを展開すると同時に武器を出してサブアームに装備させ、本音はアサルトライフルを構えながら前へと出てる。

前に出た打鉄はハンドガンを本音に向けながら撃ち、本音も応戦とばかりにライフルを撃ちながら一定の距離を保つ。

一夏は展開したサブアームの武装を駆使しながら本音の援護をしつつ、ラファールの牽制をしていた。

 

〈一夏、ウィングの右アーム、それと腰部左アームの弾がそろそろ尽きるわ〉

 

〈わ、わかった。次の出すね〉

 

アイラからの警告に一夏は次の武装を何時でも出せるようにしていると、弾が切れたのかアイラが警告したアームが沈黙したためすぐさま次の武装を出して攻撃を再開した。

 

「うへぇ~、織斑君の弾幕ヤバすぎるよぉ。何とか接近できない?」

 

「無理だよぉ! こっちも布仏さんの相手で忙しいんだからぁ!」

 

2人の生徒はそう叫びながらも、攻撃の手を止めない。

 

「イッチー、ごめぇん。なかなか落とせなくてぇ」

 

「い、いえ、大丈夫ですよ。あの、弾の方は大丈夫ですか?」

 

「うぅん、ちょっとヤバいかなぁ。グレネードランチャーはまだあるけど、ライフルが心許無い感じかなぁ」

 

「そう、ですか」

 

一夏は攻撃してくる2人に射撃をしつつ、どうすべきか悩んでいると

 

〈一夏、大分前の事だけど山田先生と中国とイギリスの模擬戦憶えてるかしら?〉

 

〈え? う、うん。憶えてるけど…〉

 

〈あの時の戦法が使えるんじゃないかしら?〉

 

アイラからの提案に一夏は当時の状況を思い出し、そして現状の状況と照らし合わせる。

 

〈う、上手く誘導出来たら〉

 

〈えぇ、勝てるわよ〉

 

そう言われ一夏は直ぐに行動に移すべく、攻撃しながらも本音に作戦を伝えた。

 

「ほ、本音さん。僕が彼女達を誘導するので、誘導した場所に攻撃してください」

 

「イエッサァー!」

 

一夏の指示に本音は何時でも攻撃できるように、残った武装を取り出す。一夏はサブアームと左右に持っている武器を構えながら二人に気取られない様に誘導すべく攻撃をする。弾が切れたら素早くライフルを放り捨てては次の銃を取り出すと言った、隙を一切作らない状態となったのだ。絶えず張り続ける弾幕に2人は避けるのに手一杯となってしまった。

 

「うわわわ。いきなり激しくなったぁ!?」

 

「い、一旦体勢を立て直すよ!」

 

そう言い2人が一緒の個所に下がると、その好機を一夏は見逃さなかった。

 

「ほ、本音さん、今です!」

 

「待ってましたぁ!」

 

そう叫び、本音はグレネードランチャーを2人に向かって撃ち放つ。

 

「ちょっ!? 弾幕から更に爆撃!?」

 

「よ、避けられないぃ!?」

 

2人の悲鳴は本音のグレネードランチャーの爆風で掻き消され、辺りは土煙がたちこめた。暫くして土煙が晴れると2人は目を回しながら気絶しており、ISも解除されていた。

 

『其処まで! 勝者織斑、布仏ペアです!』

 

『わあぁぁぁぁ!!!』

 

アナウンスが流れたと同時に大きな歓声が上がり、一夏と本音は笑顔を浮かべる。

 

「や、やりましたね本音さん」

 

「うん! まずは初戦突破だぁ!」

 

そう声を掛け合いながらピットへと戻って行った。




次回予告
無事に初戦を突破した一夏と本音。次の対戦相手は鈴とオルコットだった。
さぁ一夏と本音は、無事に第2回戦も突破できるのか?

次回
タッグマッチトーナメント戦 第2回戦
~「ハムハム、お菓子美味しぃ( ̄~; ̄)」「モヒ( ・ω・c)モヒ」~


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