Fate/ Re:alter (zaregoto)
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騎士王

「ん・・・」

 

 朝日が部屋に差し込み、自然と目を覚ます。いつもは目覚まし時計と共に目を覚ますが、今日は違った。

 

 むくりと上半身のみ起き上がり、軽く伸びをする。その拍子に、小さい欠伸も出てしまった。

 

「くぁ・・・」

 

 寝ぼけながらも立ち上がり、障子を開き、窓を開いた。本物の朝日が瞳に食らいついた。少しだけ眩しさを覚えながらも、気持ちのよさは否めなかった。

 

「・・・そろそろ桜が来る。早く準備しないと」

 

 少年、衛宮士郎は少しだけ得をしたなぁと感じながら、部屋の襖を開き、洗面所へと向かった。

 

 

「くはぁ・・・!!」

 

 同時刻、この青年もまた、冬木の地へと降り立っていた。

 

 成田から電車などを乗り継ぎ、走ること数時間、和な街へと到着した。

 

「しかし、ニッポンは本当に人が多いな」

 

 明らかに不機嫌そうにそう呟いた。英語でそう言っているので、周りは全く気にもとめていない。

 

「取り敢えず、冬木。まずは宿探しだけど、外国人が行っても不思議に思われないような所はどこか」

 

 これから、戦争が行われる。すでに戦士が揃いつつあるため、緊張状態だと言われても否めない。

 

 故に、金髪で蒼い目の男が、辺りを散策、もとい探索しながら歩いていれば、分かる人間には分かってしまう。

 

「少しだけ考えすぎかもしれないな。・・・まったく。師匠ってば、宿くらいとってくれてもいいのに」

 

 少しだけぼやきながら、歩みを進める。

 

 戦争には参加しない身だが、用心にこしたことはないだろう。

 

 

 士郎は朝食を終え、三人分の食器を洗っていた。

 

「ごめんなさい先輩。洗わせてしまって」

 

「これくらいいいさ。それより、桜は朝練があるんじゃあないか?」

 

 桜と呼ばれた少女が申し訳なさそうに言ったが、士郎は気にしているそぶりを見せなかった。

 

「そうよそうよ、遠慮しないで座ってなさい、桜ちゃんは」

 

 藤ねぇがそう呟いた。一人食卓でくつろいでいるが、自分が一番急がなければならないだろう。

 

 藤ねぇは穂群原学園の教師なので、そういう結論にいきつく。

 

「まったく・・・。取り敢えず藤ねぇ、桜を学校まで送ってってくれよ。俺は少しだけやることが・・・っ痛!」

 

 皿を洗いながら話していると、急な手の甲よ痛みに襲われた。その拍子に、皿を床に落としてしまった。落ちた衝撃で、皿が割れ、辺りに大きな音が響いた。

 

「だ、大丈夫ですか!?先輩!」

 

「大丈夫士郎!?」

 

 桜も、くつろいでいた藤ねぇも、士郎の身を安じ、そう言った。

 

「大丈夫大丈夫。少しだけ手が滑っただけだって。あ、大丈夫だから桜。怪我するぞ」

 

 そう言いながら、砕けた皿の破片を拾う。その最中、手の甲に奇妙な痣があることに気がついた。

 

「大丈夫です先輩。先輩こそ、怪我を・・・」

 

 どこかで打ったかな・・・?

 

 そう考えながら拾っていると、一緒に拾ってくれていた桜が、手の甲を一直線に見つめていたのに気が付いた。

 

「どうした?桜」

 

「いえ、その痕」

 

「これか?知らないうちに出来てたんだ。多分、ガラクタでも弄ってたときにでも出来たんだろう」

 

 そう士郎が言うと、桜が悲しそうな表情を士郎に向けていたのに気が付いた。

 

「心配するなって。二、三日でもすれば消えるさ」

 

「・・・はい」

 

 皿を拾い終えると、桜は身支度を始めた。時間にして七時半。朝練は八時からなので、まだ間に合うだろう。

 

「じゃ、行ってくるね士郎!遅刻しちゃだめだぞ?」

 

「行ってきます」

 

「分かってるよ藤ねぇ。桜も、行ってらっしゃい。また、学校で」

 

 そう言って、玄関の扉を開く。二人が門から出ていくまで、士郎は見送っていた。

 

「ふぅっ・・・・・」

 

 二人が居なくなって一息吐くと、士郎はそのまま敷地内にある倉へと向かった。

 

 まだ登校まで時間はある。取り敢えず鍛錬だ。

 

 士郎は、倉の重い扉を開いた。

 

 

 戦争の参加者なら、監督役に助けを求めることができる。しかし彼は参加者ではないが故にそれは出来なかった。出来ないが、歩みの先はその監督役がいるであろう、教会へと進んでいた。

 

「まずは遠坂の邸宅の場所を調べないと。師匠はそこまで教えてくれなかったからな。遠坂を訪ねろとだけしか言わなかった」

 

 故に、監督役である言峰を訪ねるのである。大変癪ではあるが。

 

 太陽が燦々と輝く道を、ゆっくりと歩く。日本の町並みというのは、中々に綺麗なものであると感じていた。

 

 ロンドンの町並みに引け劣らない。

 

 



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