二次元召喚をお知らせします。 (彩辻 シュガ)
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序章 えっちゃん、二次元より襲来。 其れは、きっと夢想でしかない祈り

多重クロス大好きです。あのわちゃわちゃ感が堪らない。

えっちゃんも大好きです。あの属性てんこ盛り美少女認めた菌糸類は神。

そんな感じで導入部分です。


––––––––何気なく、いつも思い浮かべることがある。

 

朝、布団の中で思考を整理している時。

 

道端の花が咲き誇った垣根を見た時。

 

公園のブランコが揺れている時。

 

スマホのロックを解除した時。

 

空の雲行きが怪しくなってきた時。

 

公式サイトを閉じる時。

 

どうしようもない理不尽な事象に振り回される時。

 

テレビの録画リストを開いた時。

 

ひとりでただ考えごとをしている時。

 

クタクタに疲れて、玄関に倒れ込みそうになった時。

 

 

 

「えー、恋泉礼、・・・・は休みか。桜樹周(さくらぎあまね)

「はい」

 

 

自分の名前が呼ばれる時。

 

 

ふと、思うことがある。

 

それはきっと叶わないと知りつつも思い浮かべてしまう、どうしようもない祈り。

 

 

 

 

 

 

–––––––––––何気なく、いつも思い浮かべることがある。

 

朝、ベッドの中で昨夜の夢を思い出そうとして、サーヴァントは夢を見ないことを思い出す時。

 

打倒セイバーに燃える友人に、部屋の整理整頓を催促する時。

 

食堂で和食セットのBを選ぶかDを選ぶか迷っている時。

 

廊下で、マスターに出会って何気ない世間話をする時。

 

お狐さまのお部屋で、高級和菓子をいただきながら炬燵でぬくぬくしている時。

 

ぐぁぁぁぁ、また麻婆かよぉぉぉ、と号哭するマスターを眺めている時。

 

一緒のパーティーにオリジナル(騎士王)がいて、「これ私の要素ほとんど残ってないじゃないですか」と言われる時。

 

どこぞのドラ娘が建てたというチェイテ城の上に、何故かピラミッドや姫路城だけでなく、黄金劇場とか氷の城とかが乗っていて、てっぺんに何やら黄金に光り輝くものがあるのだけれど、「見ちゃダメです!!」とお狐さまや赤い皇帝さんに止められる時。

 

廊下でハートのネックレスを見つけた時。

 

マスターと一緒に和菓子を食べる時。

 

 

 

「Xオルタ、羊羹食べる?お茶もあるよ」

「はい、食べます。お言葉に甘えて」

 

 

 

自分の名前が呼ばれる時。

 

ふと、思うことがある。

 

 

それはきっと叶わないと知りつつも、思い浮かべてしまうささやかな祈り。

 

 

 

 

 

 

 

疲れた。

 

 

 

もう、私は生きるのに飽きた。疲れてしまった。

 

 

 

なんてくだらない世界。欲と理不尽の入り混じる、醜い歪んだ世界。

 

 

 

もうあんな世界は見たくも聞きたくもない。

 

 

 

ただ安らかに、眠りにつきたい・・・・・

 

 

 

・・・・・あれは、なんだろう。

 

 

 

あの、希望と期待と幸福の入り混じった、混沌だが純粋で光り輝く世界は。

 

 

 

・・・・そうか。あれは、創られた世界に違いない。

 

 

 

あれは、人々の理想や空想を。その煌めきを。めいっぱい詰め込んだ創られた世界。

 

 

 

面白そうだ。なんて面白そうな、ふざけた美しい世界。

 

 

 

 

・・・・・そうだ。良いことを思いついた。

 

 

 

 

そうと決まれば、早速彼奴を呼ぶか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、絶対に現実にならない妄想。

 

もうだいぶ諦めている、そんな願い事。

 

 

 

『向こうの世界の人々に、会いたい』

 

 

 

 

其れは、多くの者達が心の底から望んだこと。

 

 

其れは、きっと夢想でしかない祈り。

 

 

 

 

–––––––2つの世界の人々の邂逅は、起こるはずがなかった。

 

–––––––そして、次元から外れた者の介入によって、起こるべくして起こった。

 

 



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はじまりは色物サーヴァント

ノリで書きました。

えっちゃんの可愛さと多重クロスの魅力をお伝えできれば・・・・


 

 「あの詐欺師ィィィィィィィィィ!!」

 

 某県のある都市。交差点に反響する、男の号哭。

 男の格好は少し奇抜だ。波の絵が描かれた白い着物の右肩を脱ぎ、黒いブーツを履いている。腰には『洞爺湖』と彫られた木刀を差していた。

 

「銀ちゃん落ち着いて!」

「そうよ銀時。確かにあの神は見事に私たちを騙したけど、一応三次元には来れたじゃないの」

 

 男を宥めるのは、2人の少女。1人はストロベリーブロンドの髪に花の髪留めをつけた少女。大きなリボンのついた制服のような服を着ている。1人は黒髪に赤いリボンをつけた少女。脇を露出した特徴的な巫女装束を纏っている。

 

「でも、確かに()()()()()()三次元に来た意味ないよね・・・・」

 

 髪留めの少女は辺りを見回した。信号はちょうど青に変わり、人々は一斉に歩き出す。歩調は皆心なしか早い。日は傾き始め、空は赤みを帯びていた。誰もかれもが、彼ら3人に気がつかない。彼らの存在は、この複雑で歪んだ三次元には不釣り合いで、壊滅的に浮いていたのに、誰もその事を認識できないのだ。

 

「そういやあいついねえな。あの、紅い剣持ったセーラー服の奴」

「あら、本当だわ。いつの間に・・・・・確か、あの子の名前は・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんっだこりゃ」

 

 そう小さく呟く。本屋帰りにコンビニに寄って、それから近くの公園のベンチで一休みして。そしたらWi-Fi飛んでたからなんとなくFGO・・・・『Fate/Grand Order』にログインしようとしたら、アルトリアの隣に見知らぬアプリがあった。

 

『二次元召喚プロジェクト』

 

 捻りのない名前だ。おまけにアイコンは白一色の味気なさ。コンピューターウイルスにしては作りが安すぎる。そもそもスマホにアプリを送り込む手口なんて聞いたことない。俺が知らないだけであるのかもしれないが。

 

 タイトルからして、ソシャゲか何かだろうか?プロジェクト、と言われて思い出すのは某白猫だが、それとは何の関係もない筈。とりあえず、押してみるか。

 

二次元召喚プロジェクト〜楽しい二次元キャラとのライフを送ろう〜

 

 タイトル画面には、それだけが出ている。二次元キャラとのライフ?きらファン的なサムシングか。ていうか、『GameStart』も何も出てないし・・・・・とか思ってたら、画面上にメッセージが表示された。

 

二次元キャラ反応を感知しました。

 

 ・・・・・・二次元キャラ反応?

 

「益々訳がわからな・・・・・えっ?」

 

 俺は、ふとスマホから視線を外して、そして絶句する。

 

 

 視界の端、公園の入り口付近から此方を見ているのは。

 

 

 後ろで纏めた白髪。靡くマフラー。ぼんやり紅く光る邪聖剣。眼鏡の向こうの蜂蜜を詰めたような双眸を輝かせ、此方を見ているのは。

 

 

 

 –––––––––––––––『Fate』の謎のヒロインX〔オルタ〕に間違いなかった。

 

 

 

 コスプレじゃない。絶対違う。そう断言する。だって彼女のその姿は、スマホから、二次元からそのまま飛び出してきたとしか言いようがなかった。三次元(この世)の理不尽を全て切り裂くような強さが、彼女から滲み出ていた。

 

 

「–––––––––見えてますか?」

 

 彼女はマフラーからその小さな口を解放し、俺に向けて言葉を紡いだ。川澄綾子さんの声そのままの、湖面を吹き渡る風のように清涼な声。

 

「み、見えて、ます」

「そう、それなら良かったです。折角三次元に来たのに、誰も私のことを認識していないみたいなんです。銀時さん達ともはぐれてしまいまして」

 

 三次元に、来た。Xオルタが、えっちゃんが、わざわざ三次元に来た?しかも、銀時、『銀魂』の主人公 坂田銀時も?

 突然、俺の頭の中でぱちっと電球がつく。もう一度スマホを見る。『二次元召喚プロジェクト』。そこに新たに表示されたメッセージ。

 

謎のヒロインX〔オルタ〕 出典 《Fate/Grand Order》

 

 もしかして、これが何か関係しているのか?このアプリのお陰で彼女が見えているのか?そもそもこのアプリは誰が作り、彼女らは何故三次元に来たのか?

 

「あの・・・・・となり座っても、よいですか」

「あ、は、はいどうぞ」

 

 Xオルタは静かな足取りで歩き出す。そして、ベンチにゆったりと腰掛けた。ぎいっ、と古い金属ベンチが軋んで泣く。その横顔には、傷も穢れもない。まさに創り出された人形のよう。Xオルタはひとつ息を吹くと、俺の方に向く。

 

「あなたの、名前は?」

「・・・・桜樹周(さくらぎあまね)です」

「そうですか。私は謎のヒロインXオルタ・・・・クラスはバーサー・・・・セイバーです。よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします」

 

 え、Xオルタによろしくされてしまった––––––––––––!!

 これは夢か?そう疑り、こっそり左手でズボン越しに太ももを抓ってみる。・・・・・痛い。夢ではなさそうだ。では幻覚か?日頃の堆積したストレスと二次元への強い憧憬による幻覚か何か。いや、幻覚にしてははっきりしすぎだし、そんなに俺は病んでない。

 

「あの、このアプリって・・・・」

「はい?・・・・・・なんですか、これ」

 

 スマホの画面を見せると、Xオルタは明らかに顔を顰めた。眼鏡の奥の琥珀は凝固する。

 

「もしかして、俺がXオルタさんを見ることができるのって、このアプリのせいなんじゃって思うんだけど」

「・・・・・・・なるほど。あのエセ天使、最初からこれが目的で。いつかずばっと、斬ってやります」

 

 Xオルタは極めて静かに瞋怒の炎を燃やした。ひしひしと刺々しい魔力、いやオルトリウムを感じる。エセ天使?そいつが黒幕か。俺の思考回路に割り込むように、またメッセージが表示される。

 

二次元キャラの同居人登録をしてみましょう

 

 同居人登録ぅ?なんだそりゃ。さっきも言った気がするけれども、なんだそりゃ。それをすると、Xオルタが・・・・俺の同居人になるとか?

 メッセージの下には『次へ』のボタンがあって、それをタップすると2つの空欄、下にはいつも打ってるあかさで始まるキーボード。

 

 

 

 名前 【 】

 

 出典 【 】

 

 

{登録}

 

 

 

 え、これ打つだけで登録!?

 簡単過ぎない?これだとキャラ本人の意思とは無関係に登録できそうな。・・・・・とりあえず、Xオルタに相談してみるか。

 

「Xオルタさん、これ・・・・・」

「・・・・なん、ですか?同居人登録・・・?あのエセ天使、そんなことまで」

「よく分からないし、しない方が良いよね?もうちょっと落ち着いてから・・・・」

「いえ、してください」

 

 えっ、いいの!?自分の身をこんなキモヲタに預けていいのかえっちゃん!!俺の動揺に全く気がつかないXオルタは、ん?しないの?といった風に瞬きする。姿勢を少し崩してがさりとセーラー服が皺を増やす。

 

 ううううううん、でもXオルタが良いって言うんだったら。

 い、良いよね?良いですよね、Xオルタが俺の同居人になっても怒らないでねダーク・ラウンズ(えっちゃん親衛隊)!!

 

 

 

 名前【謎のヒロインX〔オルタ〕】

 

 出典【Fate/Grand Order】

 

 

 

 と、登録!!俺の指先は一瞬揺らいだが、しっかり画面を押し込む。

 

登録が完了しました。楽しい二次元キャラとのライフを満喫してください。

 

 うぉあぁぁぁぁぁ!!やってしまったぁぁぁぁぁ!!少しの後悔と溢れる期待で内腑が破裂しそうになる。Xオルタはというと、さっきと変わらぬ表情でマフラーを少しずり下げると、

 

「それじゃあ、今日からよろしくお願いします」

 

 と告げた。

 

 え?これで?これで俺はXオルタと暮らすことになるの?展開早すぎやしないだろうか。なんか大事な色々をすっ飛ばしやしてないだろうか。

 Xオルタはじっと此方を見つめる。琥珀の瞳に、俺の間抜けな真顔を映している。一陣の風が吹き抜け、落ち葉が舞い上がる。俺は、意を決して口を開いた。

 

 

 

「––––––––––––よろしくお願いします、Xオルタさん」

「はい、こちらこそです。アマネさん」

 

 

 

 こんな感じで。

 

 

 俺と謎のヒロインXオルタ、そして二次元キャラを巡る日常は突然に、そして思ったよりも容易に幕を開けてしまったのだった。

 

 

 何はともあれ、えっちゃんは文学少女かわいい。あとで豆大福あげよ。

 

 

 




ただただ、和菓子大好きな文系眼鏡っ娘バーサーカーっつー属性てんこ盛りの色物サーヴァントに愛を捧げます。あと諭吉も。

えっちゃんの水着はまだですか運営さん。

ゆるく更新していきたいです。


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顕現せしは、天使(自称)に獅子王

えっちゃんかわいいなぁ、て思いながら毎日生きてます。

それよりモブサイコ100面白いから皆SS投稿してくれ。


 どうもハーメルンに集う皆々様。

 

 桜樹周 16歳、女の子っぽい名前がちょこっとコンプレックスな普通のヲタクです。前置きははさておき、今、俺の家に謎のヒロインXオルタがいる。

 

「お邪魔します。なるほど、ここがアマネさんの家ですか」

 

 とりあえず、Xオルタを家に連れて帰ることになった。未だに状況を呑み込めてないが、二次元から来た、仮に分類するなら異世界人といえる彼女を、一応は保護せねばならない。

 それに、質問も色々あるからな・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぼっちの俺は、女の子を・・・それも美少女を部屋に入れるのは気が引けたし、気もきく方ではない。それでも勇気を出してちゃんともてなした。コンビニで買ったスイーツで。

 

「もっきゅもっきゅ・・・・・」

 

 豆大福を頬張るXオルタを見ていると、俺の心が温かくなる。やっぱえっちゃんはかわいい。膨らんだ白い頬は餅みたいで、ほんのり紅が差している。

 

「アマネさん、アマネさんは1人暮らしなんですか?」

「ん?あぁ、そうだよ」

 

 コンビニで買ったたまごサンドを頬張りながら答える。俺はマンションの5階の一室に1人暮らし。両親は出張中で長期休暇の時しか帰ってこない。でもこんな俺に、1人暮らしという最上級の自由を与えてくれるくらいには良い両親じゃないかと思う。で、そんな感じだから誰かとおやつを食べるなんて久しぶりだ。

 友達?話し相手ならSiriがいるよ。

 

「そういえばXオルタさん。エセ天使って何者なんだ?」

 

 ずっと気になってたことだ。Xオルタが度々口にした『エセ天使』。彼こそが恐らく今回の事態を引き起こした黒幕だろう。二次元からキャラを引きずり出してきて利用して・・・・一体何が目的だ?単なる愉快犯なら1発殴る。

 

「あぁ・・・・・あの人はですね、金髪で白い服でイケメンで、一見天使ぽいんですが、言動が胡散臭いんです。なんかこっちを舐めてるみたいで」

「へー、なんか大体想像つくな」

 

 そういうタイプのキャラ多いよね。つかみどころないっていうか、トリックスターっていうか、黒幕ぽいっていうか。特に、白と金、そしてその見目麗しさで己の本質を包み隠し、あたかも潔白に見せ、多くの人々を騙眩かす。

 ・・・・・どっかでそんな感じのインキュベーターを見たような。

 

「しかも私達の力がほとんど通用しないんです。それでも三次元に連れて行ってくれると言ったので皆彼の言葉に従ったのですが。結果がこれです。誰も私達のことは見えなくて、しかも彼の作ったゲームに利用されてるなんて」

 

 Xオルタの力が通用しない?仮にもサーヴァントのXオルタの力が通じないなんてどんなチートだよ。ギル様か。

 そんでもって、三次元に連れて行ってあげるからと二次元の人々を期待させ、いざ三次元に放り込まれたら、自分のことを誰も知覚できない、と。

 どうやらXオルタは銀さんと行動していたようだが、三次元に来た時ひとりぼっちだった奴らは、孤独感を感じ、事前に何も言わなかったその偽天使に強い怒りを覚えたことだろう。

 Xオルタは話してる間にその怒りを思い出したようで、豆大福に白い指が食い込んでいる。それにしてもなんて奴だ。大事なことを最初に言わず、自分の目的の為に相手を利用する。ますます例の白いオコジョを感じる。

 

「で、奴は自分のこと天使って言ってたんだよな?其奴の名前は?」

「はい、あの人の名前は・・・・・ええっと」

 

「エル・ティアクローバーさ」

 

 知らない声。中性的で、よく通るアルトボイス。俺はサンドイッチを放り出して振り返った。

 

 そこにいたのは。眩い光を放つ黄金の髪、一点の汚れもない真新しい白いローブ、輝石をまばらに埋め込んだ木の杖を携えた麗美な青年。その青年は、穏やかに微笑んだ。

 

 

「どうも、桜樹周くん。僕こそが天界より遣わされし天使にして『二次元召喚プロジェクト』の運営、エル・ティアクローバーだ」

 

 

 刹那。紅い光が、俺の視界の端を横切り。真っ直ぐに、自称天使の胸元を突いた。

 

「ひっ!?」

 

 俺は反射的に目を覆う。だが、指の隙間からは生温い紅い血も、断末魔も、心臓が突き破られる音もしなかった。

 視界を解放する。紅い光・・・・・Xオルタの愛剣ネクロカリバーは、彼の胸元で寸止めされている。それを握る本人、Xオルタの瞳には、紅蓮の光が宿っていた。

 

「よくもまぁのうのうと顔出せましたねエセ天使。オルトリウムで焼き切ってあげましょうか、貴方なんて御陀仏です」

「それは困るなぁ。まだ細かいメンテナンスが残ってるんだよね。それよりもさ、こんなところで宝具撃ったら君の同居人はただじゃ済まないかもよ?」

 

 Xオルタは暫く天使・・・・エルを睨んでいたが、深い溜息をつくと剣を下げた。

 –––––––––––あっ、えっちゃんたらこんなシリアスシーンで大福咥えたまんまだ。豆大福食べたかったんだね、和菓子大好きなえっちゃんかわいい。

 

「それじゃあ、桜樹周くん。記念すべきユーザー第1号の君に、運営の僕からお話をしてあげようか」

 

 自称天使のその青年は、どこか胡散臭い笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「まず最初に言っておこう。この事態を引き起こしたのも、アプリを作ったのもこの僕だ」

「・・・・でしょうね」

 

 俺はちらりとXオルタを見る。豆大福にかぶりつきながらも、Xオルタの殺気は餡子の甘さじゃ隠しきれないらしい。俺に向けられてるんじゃないってことは分かるが、心臓がチクチクと突き刺される。

 

「で、なんでそんなことを?」

「大した理由じゃないよ。彼女達二次元の人々が何やら三次元に行きたがってたから、手を貸しただけ」

「・・・・だからって、自分のゲームに利用するなんて」

「え?だってその方が面白そうだろ?」

 

 あっけらかんと言い放つ自称天使。俺は唖然としてエルを見つめた。こいつ、何正直に言ってんだよ。エルはまるで当然のように、むしろ怒っているXオルタや俺のことが理解できないと言うかのようだった。

 面白そう?たったそれだけでXオルタ達を巻き込んだのか?彼女らの『三次元に行きたい』という願いを利用して。

 

 ––––––––––––あれ?なんで二次元のキャラ達は三次元に行きたがってたんだ?

 

 それを尋ねる前に、えっちゃんの苛立たしげな声が飛んでくる。

 

「ゲームに利用したのは怒ってません。私が腹を立てているのは、三次元の人達に私たち二次元の住人の姿が知覚できていないことです」

「でも桜樹周くんには見えているだろう。彼は君のファンだ。何か問題があるのかい?」

「そうじゃなくて。いえ、アマネさんが私のファンなのは嬉しいのですが、それじゃあ目的は達成されません」

 

 うわぁぁぁぁぁぁ!!何言ってんだよエセ天使!!俺がえっちゃんのファンだって勝手にバラすなよ、恥ずかしいだろ相手本人だぞ!!

 ・・・・・ん?目的?

 

「そんなことはないさ。まずは彼だけでも君たちの目的は果たせるだろう?」

「・・・・・けれど」

「謎のヒロインXオルタ。三次元はね、君が思ってるほど良い所じゃないよ」

 

 Xオルタは押し黙り、エルを睨み続ける。エルはというと、天使様らしく悠然と立ちXオルタを見据えていた。まるで自分の方が立場は上みたいに。張り詰めた空気。自分の家なのに随分と居心地が悪い・・・。

 

 

 

 不意に。少女の声がした。

 

 

 

「がおーん!」

 

 がおーん?えっちゃんもエルも俺も、そのあまりにも平和的で場違いな猛獣の鳴き真似にキョトンとする。

 

「おおっと。すっかり忘れてたよ、獅子王。ごめんねー」

 

 はっ!?獅子王!?ランサーアルトリアのことか?・・・・いや、違う。さっきの声、恐らく・・・・

 エルはローブの裾を腰までたくし上げる。現れたのは、天使らしい白い足と黒いブーツ、そしてそれをキュッと掴みこちらを見つめる二頭身のナニカ。それはぬいぐるみみたいに可愛い顔したライオンの着ぐるみを着た、金髪碧眼の少女。片手には骨つき肉をしっかり握っている。

 

「紹介するよ。僕の助手、獅子王だ」

「がおーん!」

 

 そう。それは、凛然と佇むあの槍トリアではなく。『フェイト/タイガーころしあむ』に出てきた、あの派生セイバー。

 

 

 「セイバーライオンじゃねえか!!」

 

 

 俺は、人生で一番大きな声で叫んだ。あっ、やっべ苦情くるなこりゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ココア、いつまでその猫もふってんのよ?」

 

「ごっめーん霊夢ちゃん!だってあまりにも可愛くて・・・・」

 

「全く、なんなのこの子・・・・・ちょっと銀時、そのコーヒーゼリーどこで拾ったの!」

 

「その辺のベンチに置いてたやつだよ、うるせえな」

 

「他人の食べてんじゃないわよ」

 

「どーせ置き忘れたんだろ、エコだエコ。このまま誰かに見つかって捨てられるよりはマシだろ」

 

「・・・・・あーあ、なんで私こんな人達と行動してるのかしら。それもこれも全部あのエセ天使の所為だわ・・・」

 

 

 

 

 〈・・・・・確か、この辺にコーヒーゼリーを置き忘れたような。僕としたことがコーヒーゼリーを置き忘れるなんて。でも飛ばされた時にたまたまおやつタイムだったのが幸い・・・・ん?無い?〉

 

 〈仕方ない、『サイコメトリー』。・・・・・やれやれ、どうやら僕と同じ奴の仕業らしい。それにしても騒がしい奴らだ。いつかまた会うだろうか。まぁ出来るだけ会いたくないが〉

 

 〈さて、あのエセ天使を一刻も早く見つけ出さないとな〉

 

 

 

 




好きな作品と推しだけ出していくスタイル。

何はともあれ、美遊の実装に乾杯。


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対偽天使用倍返し部隊、コギレ隊

今のところそんなに多重クロスしてないじゃん!って気が付きました。

もうしばらくはえっちゃんとアマネくんのゆるゆるライフ(with不審者とライオン)をお楽しみください。


「アマネさん、これはなんですか?」

 

 Xオルタが、湯気の立ち昇るカップラーメンを興味深そうに見ている。

 サーヴァント・ユニバースやカルデアにはカップラーメン無かったのかな。Xがカップラーメン食べてたはずだけど。

 

「カップラーメンだよ。お湯を入れて3分待つと美味しいラーメンが出来上がるんだ。Xオルタさん見たことないの?」

「はい、Xが何やら容器にお湯を入れてからじっと見ているのを何度か見たことがあるのですが。なるほど、これがカップラーメンですね」

「今日は冷蔵庫に何もなくてさ。明日買い物行かないと」

 

 そういえば、Xオルタって俺以外には見えてないから、別に外に連れ出しても大丈夫なんだよな。

 あそこのスーパー和菓子売ってたかなぁ、と思い出そうとする。

 ちょうど思い出した時、ずるずると別の記憶が引きずり出された。

 

「そういえばさ、銀時さん達と行動してたって言ってたよなXオルタさん。達ってことは、他に誰かいたのか?」

「えーっと・・・・・確か巫女の霊夢さんと、やたらとお姉ちゃんになりたがってたココアさんという人がいました」

「博麗霊夢に保登心愛!?」

 

 思わず身を乗り出し、目の前のカップラーメンを倒しそうになる。

 いや、銀さんに霊夢にココアって、3人とも人気作の主人公じゃないか!?どんなビッグネームと行動してんだえっちゃん!!

 

「でもなんではぐれたんだ・・・・?」

「道中で和菓子屋を見つけて、ショーケースにはりついてたらいつのまにか皆いなくなってました」

 

 迷子になる理由のテンプレじゃないか。

 和菓子に目を奪われてはぐれちゃうえっちゃんかわいい。

 

「へーえ、坂田銀時に博麗霊夢に保登心愛か。今どこにいるのかわからないのかい?」

 

 えっちゃんの目が一瞬にしてくすむ。

 まるで他人事みたいなその声に、俺は呆れ返って反論もできない。

 

「口を閉じなさいエセ天使。いつまでここに居座るつもりですか」

「キツイなぁ、天使に対してその言い草はなんだいXオルタ。君は仮にも騎士だろう、もうちょっと紳士的に対応できないのかな」

「・・・・・私はセイバーはセイバーでも、闇に生きる暗黒騎士。天使などという秩序に忠実な者に叛逆する側であり、貴方のような天使を騙る阿呆を斬り裂く者です」

 

 秩序に叛逆って、えっちゃん中立属性だけどね!

 でも冷たいえっちゃんも可愛いよ!

 

 さて、何故天使を自称する青年エル・ティアクローバーが晩御飯の時間になっても俺の家に居座っているのかというと、

 

『ほら、君大事なユーザー第1号だから?僕が常についておかないと』

 

 とのこと。ぶっちゃけうざい。

 

「がおーん!」

「あ、ごめんなさいがおトリア。別にあなたはいてもいいのです。たとえ言葉を喋れぬ者であろうと、生命は慈しむもの。動物愛護は私のモットーです」

 

 動物好きなんだ、えっちゃん。

 てかセイバーライオンって動物扱いなのか。

 

 あっ、がおトリアっていうのは、Xオルタがつけたあだ名だ。セイバーライオンだと呼びにくいからね。

 で、そのセイバーライオンは魚肉ソーセージをむしゃむしゃ齧っている。冷蔵庫に眠っていたものだ。

 

「扱い違くない!?てか僕にもごはん用意してよ!」

「貴方にあげる食料など残っていません。そもそも天使に栄養など必要ないのではないですか」

「天使だってご飯食べるよ!!おむすび大好きだよ僕!!」

 

 厳しいなぁXオルタ。さすがは暗黒騎士団の頭領ペンドラゴン卿。

 てか天使のくせに和食好きなんだ。名前外国人なのに。

 

 ふと。Xオルタが目を細めどこか遠い所に視線を向ける。

 

「・・・・・みんな、無事ですかね」

 

 カップラーメンの蓋から白い湯気がすり抜け、部屋の空気に溶けていく。

 住宅街の灯りで夜空が色を抜かれて、星は渋々縮こまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お腹空いたなぁ・・・・・」

 

 そう呟く傍らの少女をちらと見やると、霊夢はため息をつく。喉の奥に溜まった鬱憤も、その呼気に混じった。

 

「仕方ねえだろココア、あの野郎俺たちを何の前触れなく三次元に飛ばしたんだからよ。食いもんくらい渡せっての、あのエセ天使」

 

 前を歩く天然パーマのかかった白髪の男性は、吐き捨てるように返す。

 夜の街のビルディングは夜闇に溶け込むのを拒むように、必死にネオンで飾り立てているようで、LED照明に縁の無かった霊夢は目がチカチカして堪らない。

 

「取り敢えず、まずは寝床を確保しないといけないんじゃないかしら。貴方や私はともかく、ココアが・・・・」

 

 横を歩くココアを見る。くしゅん、と小さくくしゃみをすると、ココアは手を擦り合わせた。

 喫茶店の制服らしきそれでは、夜の冷気は防げないらしい。

 

 あのエル・ティアクローバーとやらに三次元に飛ばされて、もうそろそろ1日目が終わる。

 

 あてもなく歩き続けてかれこれ4時間半。

 怠惰を貼り付けたような顔のくせして割と体が丈夫そうなこの男坂田銀時や、毎日妖怪退治や異変解決に飛び回る楽園の巫女である自分はまだ体力に余裕があるが、飛ばされた時たまたま出くわしたこの同行者は極めて平凡な少女らしく、体力的にも精神的にも限界が近そうだ。

 

「・・・・・Xオルタちゃん、大丈夫かな」

 

 少し荒くなった息の中に、小さな声が混じっているのを聞き、霊夢ははっとする。

 この少女、自分が疲労困憊を極めているのにも関わらず、他人の心配をしている。

 

「てめー、まだあいつの心配してんのか?」

「うん。今頃どうしてるかな、お腹空かせてるだろうなぁって」

 

 いつの間にやらはぐれたあの分厚い上着のセーラー服の少女。

 霊夢はエセ天使への怒りとこれから先についての計画と不安でいっぱいだったというのに、ココアは未だに他人の心配をしている。

 

 優しい少女だ。悲しい程に、苛立つ程に、優しく思いやりのある人間だ。

 この少女を育てた世界というのが、如何に優しさと幸福に溢れた世界なのか容易に想像がつく。

 

「ココア、寒くないの?」

「あー、平気だよ。ありがとう霊夢ちゃん。でも霊夢ちゃんの方が寒いと思うなぁ・・・・・」

 

 ココアの視線は、特徴的な巫女装束から露出された白い腋へと向く。

 霊夢は首を傾げ、衣服に包まれていない自分の肩を撫でた。

 腋が出ていることによる寒さ。考えたこともなかった。そういえば、ココアの服は露出が少ない。

 なんでこの服は腋が出ているのかなんて考えたこともなかったし、今まで困ったこともなかった。

 

 不意に視線を下げると、ココアの歩調が遅くなり、狂いはじめている。

 流石にもう駄目か。疲れてきたのか。

 霊夢は静かに息をつく。

 

「ココア、」

「どうしたの、霊夢ちゃん」

 

 アメジストの瞳が霊夢を映す。白い指先は赤くかじかんでいた。

 

「ココア、貴方まではぐれたら面倒だし、ちゃんと私の手握っておきなさい?」

「え?あ、うん、いいの?・・・・じゃあ」

 

 差し出した手を、ココアがきゅっと握る。

 温かい。柔らかい、温度を持った手だった。

 えへへ、とココアが笑うのを見て、不思議と霊夢の表情も緩んだ。

 

「おーいお前ら何やってんだ、百合か?ここまでXオルタの魅力を全く伝えられていないからせめてもの読者サービスの百合ゆりシーンか?」

「うるさいわよ天然パーマ」

 

 銀時の言動はいつも良く分からない。出会った時からそんな感じだ。

 百合?花の一種だが、それがどうかしたのだろうか。霊夢もココアも良く理解できない。

 

「銀ちゃんも、手、大丈夫?寒くない?」

「俺は良いんだよ、別に。カイロ持ってるから」

「銀ちゃんカイロ持ってたの!?じゃあ私たちにも分けてよ〜」

「1つしかねーから嫌だ。んなことより、寝床はあそこが良いんじゃねえか?」

 

 と銀時が指差したのは、白亜のファサードを備えた、大きな建造物。それはいつか童話で見たようなお城のようだった。

『ホテル shadow DUO』とライトアップされている。

 

「ホテル!?うわぁ、すっごーい、きれーい!お城みたい〜!」

「あら、貴方にしては良いチョイスじゃない。・・・・ホテル?あぁ、宿のことかしら」

 

 少女2人は目を輝かせ、目の前のお城に胸を弾ませている。

 ・・・・しかし、銀時は口の端をひきつらせると、冷や汗をかいた。

 

 

 

「・・・・・・やっベー、ボケる相手間違えたわ」

 

 少女2人は知らない。此処がラブホテルだということを。

 男女が逢引の為訪れ、日本の人口増加に貢献する為頑張る所だということも。

 

 もしも此処にあの眼鏡の少年がいたなら、即座にこう叫んでいたことだろう。

 

 

 

「おいィィィィィィィ!!何やってんだアンタァァァァァァ!?どう考えてもラブホじゃねえか!!女の子2人を連れ込むような場所じゃないでしょ!?玉子の妖精におしゃべり禁止されろ!!」

 

 

 

 こんな感じで。

 

 さて、ボケが通じないのならさっさと切り替えて真面目に寝床を探そう、と銀時は思った。

 

「よし、じゃあやっぱあそこはやめて別の所に・・・・・」

「えぇ〜!?なんで!?」

「良い所じゃない、あそこ。なんで駄目なの?」

 

 清廉な少女達は澄んだ瞳でじっと汚れちまった銀さんを見つめる。

 

「そ、それは・・・・・・」

 

 冷や汗が止まらない。

 純粋で穢れを知らぬ少女にラブホテルが一体どういう場所で、どういうことをする場所なのか説明するには大きな勇気と全国の霊夢とココア推しの皆さんの許可が必要である。

 

「ほら、あの人達も私たちと同じだよ、なんで駄目なの?」

 

 ココアが指差すのは、女性2人(1人は明らかに未成年だった)を脇に抱えてラブホに向かうだらしない顔つきの中年男性だった。

 あれと同じにされたくはないし、なりたくない。

 だが・・・・

 

「銀ちゃん、行こっ?きっとステキなホテルだよあそこ」

「お城ってことは、きっとサービスも豪華でしょうしねえ。美味しい夜明けのお茶が飲みたいものだわ」

 

 きらきらと輝く双眸。あの純白の愛の城は、それほどまでに少女達の乙女心をくすぐるのだろう。

 銀時は頭を抱え、暫く思考回路をめちゃくちゃに繋いで必死に考え、そして・・・・・

 

 

 

「ま、まぁただ寝るだけだし、別に良い、よな・・・・・・」

 

 諦めた。

 充分な説明と、全国の霊夢推しとココア推しの皆さんからの評価を、坂田銀時は諦めたのだ。

 

「わぁーい!じゃ、行こうか霊夢ちゃん!」

「もう、さっきまであんなに疲れてたくせに。はしゃぎすぎよココア」

 

 2人の少女がラブホテルに走っていくのを見て、銀時は笑顔を引攣らせながらホッと胸を撫で下ろす。

 

 

「マジで良かった・・・・・俺たち三次元の奴らに見えなくて」

 

 月は冷ややかに太陽の光を反射して白銀に光る。

 人々の騒ぐ声と喧しいネオンを横目に、夜は更けていく。

 

 

 




通りすがりの狐の奥さん「ちょ、ちょっと!?見ちゃいました見ちゃいましたよ、この太陽の如き眩しき鋭き眼光で、良妻が見た!!成年男性の両手に花を!!なんって男でしょう、このキャス狐直々に神明裁決を与えてくれます!!」



通りすがりの超能力者その1〈いや、そこは諦めるな。強引にでもそこから離れろよ。やれやれ、彼奴がマダオと呼ばれる所以が理解できなくもないな。仕方ないから様子を見に行くか。死ぬほど嫌だが〉



通りすがりの世紀の霊能力者「なっ、なんだアイツは・・・!?女2人を連れてラブホに・・・・!!どう見てもあの2人は未成年・・・いや、この業界見た目と年齢が一致するとは限らないし・・・・」

通りすがりの超能力者その2「師匠、あの人達に声掛けなくていいんですか?」

「いいんだよ、大体お前と彼処入るのはなかなかに勇気がいるというか、一部の方々が非常に喜びそうというか・・・・」

「え?あのお城アトラクションか何かじゃないんですか?」

「え、モブおま、中学生で思春期なのに、え・・・?」



通りすがりのチーズ中毒者「あのお城すごいのです!!誰の持ち城でしょうか、信長とかですかね?とにかく、あそこなら美味しいチーズ料理いっぱいあるに違いないのです!!」

通りすがりのみんなのトラウマ『モベ、べべべ』

「フフフフ、そうですねシャルロッテ、流石は我が黒歴史にして分身、分かっているではありませんか!!それではレッツゴーなのです!」



通りすがりの第六天魔王「ぶぇっくしょん!!誰か儂の噂を・・・・」

通りすがりの病弱美少女「そんなわけないでしょノッブ。そんなことよりご飯にしましょうご飯に。ほら、あそこにホテルがありますよ」

「む、確かに。しかしのー、あのホテル、何やら妙なものを感じるような・・・・」

「あー、確かに男女カップルが多いですね・・・・あっ!あの人女の子2人もホテルに連れ込んでますよ!!しかもどちらも未成年!!」

「何ィ!?事案じゃな!追いかけるぞ沖田!!」

「はい、新撰組の名にかけて、あのペドをぶった斬りにしてやります!!」



通りすがりの吸血鬼姉「あら、このお城・・・・・一体誰のものかしら。まぁ良いわ。もうクタクタでしょうがない。行くわよフラン」

通りすがりの吸血鬼妹「姉様、あそこにパソコンあるけど壊していーい?」

「駄目よフラン。そう無闇矢鱈と色々壊すものじゃないわ。その力はあの偽天使を嬲り殺しにする為に温存しなさい」

「はーい、わかったわ姉様」



通りすがりのハイパーエージェント『私はハイパーエージェント、グリッドマン。ジャンクごとこの世界に顕現してしまったのでずっと此処から動けない状態にある』

『しかも誰も気づいてくれない。あそこのお城に向かっている3人組もだ。あそこの羽の生えた少女は私に気がついたが・・・・なんか怖いな。しかし、流石に人間観察にもひとりしりとりにも飽きてきた』

『裕太、君の使命を思い出すんだ、そして私を迎えに来るんだ!危機が迫っている、主に私に!暇すぎて!!』


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今宵はどうか良き夢を

FGOに新鯖、紫式部実装しましたね!ゴスロリだー!新しい文系鯖だー!

図書館できたのでえっちゃん喜びそう。

それはともかく本編スタートです。




周「そういえばXオルタさん。ココアといたって言ってたけど、何か言われたりした?」

えっちゃん「あー、はい。『私のこと、お姉ちゃんって呼んでね!』と自己紹介の直後に言われました」

周「(えっちゃんが年下に見えているのか・・・・)な、なるほどココアらしいな。で、なんて返した?」

えっちゃん「『ではココアお姉様と』と返したら、『お、おおおおお姉様!?』と驚愕して真っ赤になって倒れました」

周「(そんなに嬉しかったんだなぁ・・・・・)」



「あれ、もう10時?」

 

 テレビのチャンネルを意味もなく変えていると、いつも毎週夜の10時から始まる連続ドラマが流れていた。

 

「ふわぁぁぁ、それじゃあ、そろそろ・・・・寝ましょうか、アマネさん」

「そうだね!寝る子は育つ、寝る天使はよく育つ。早寝早起きは習慣づけないとね」

「がおーん!」

 

 えっちゃんがくいくいと目をこすり、大きな欠伸をひとつ。えっちゃんかわいいなぁ。寝顔も可愛いんだろうなぁ。

 エルはうざいから黙ってろ。できれば永遠に眠れ。

 セイバーライオンは全然眠くなさそうだ。にっこりスマイルで吠える。ライオンって昼行性だよね?

 

 ・・・・・ていうか。

 

「えーと、貴方達、俺の家で寝るつもりですか?」

「「え?当たり前でしょう?」」

「がおーん」

「・・・・あー、うん」

 

 嘘だろおい。

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ〜、はわぁ〜、きれーい!」

 

 ココアはエントランスではしゃぎ回る。さながら妖精のようだった。

 此処がラブホテルのエントランスでなければ。

 

「へーえ、なんか想像してたのと違うけど、綺麗なホテルね」

「お、おう、そーだなー」

 

 言葉が上手く出ない。銀時の背筋が冷えていく。

 

 メルヘンかつ豪壮な外装とは違い、落ち着いた色でまとめたシックでスタイリッシュな内装。小さなシャンデリアが煌々とついている。

 

 周囲の人々の話し声が、実にピンク一色の欲にまみれたものでなければ、穏やかにのんびりと過ごせただろう。

 

「銀ちゃん霊夢ちゃん、受付しないの?」

「私たち三次元の人には見えないんだから、する必要ないでしょ」

「タダでホテル泊まれんだからなー。初めてこのデメリットに感謝したぜ。天使様々だな」

「うぅ、そっか・・・・」

 

 受付の横を通過し、エレベーターに乗り込む。

 三次元の人間達は自分達を知覚できないようだが、どうやら物体は何の問題もなく反応するらしい。ホテルの自動ドアのセンサーも反応した。

 ボタンを押すと、エレベーターの扉が左右に開いて出迎える。

 

「さて、さっさと空いてる部屋探して寝ましょ」

「うん、もうくったくただよ〜」

 

 その前に色々取り除かねえとな、と銀時は心の中で呟く。

 何せラブホの部屋だ。何か大人の玩具やらゴムやらその他教育的に配慮が必要なサムシングを、2人に発見される前に除かねばならない。

 

 とりあえず5階のボタンを押す。エレベーターは静かに、最小限の機械音を立てて上昇する。人々の嬌声響く愛の城の内部へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、あのジゴロを追いかけねばならないというのに、なのに、なんでこんなところに油揚げがあるのですか!!」

 

 茶色い耳をピンと立て、豊かな毛を備えたふさふさの太い尻尾をパタパタ振りながら、玉藻の前はバイキングの和食コーナーで嘆く。

 

 玉藻の前はかの天照大御神の化身といえど、あくまで妖狐––––––––––正確には野干、ジャッカルだが–––––––なので、油揚げは好物のひとつではあった。

 

「ううむ、こうなったらさっさと平らげて捜索再開、サーチアンド玉天崩です!いやー、それにしても品数豊富ですねほんと」

 

 そんな玉藻の前を観察する者が2人。

 

「むむむ、あのもふもふ狐耳に尻尾、そして露出度の高い和装。何処かで見たような気がするんじゃが・・・・」

「記憶力ナッシングですね。あれは玉藻の前さん。キャス狐さんですよノッブ」

 

 軍服に紅い瞳の少女、織田信長に、桜がかった白髪の和装の少女沖田総司。

 2人は玉藻に視線を向けたまま焼き鮭をつつき喋る。

 

「おー、そうじゃったそうじゃった。奴も三次元に飛ばされとったのか。・・・・油揚げの前で尻尾振ってるな」

「狐ですからねー。声、掛けます?」

「まぁ、奴が超絶真っ黒もふもふ駄狐ビーストだからといっても、役に立つことには変わりない。ぶっちゃけ家事やってくれる有能家政婦ほしい!!」

「これから三次元で暮らしていくには、家事は必須スキルですからねー。此処にはオカンのアーチャーさんいませんし」

 

 2人は立ち上がって、玉藻の背後に近づいた。

 

 その時。

 

「ちょっとフラン!そのオムライスは私のものよ!!」

「だーめ!お姉様のものは私のもの、私のものは私のもの!『うー☆』ってやったら返してあげる!」

 

 永遠に幼き吸血鬼姉妹がオムライスを巡って争い、周囲を飛び回り、

 

「こふっ!?」

「きゃっ!!」

 

 沖田総司の後頭部に金髪の少女が衝突。

 色とりどりの輝石のついた羽がシャラリと音を立てる。

 沖田さんは喀血してその場に崩れ落ちる。

 

「病弱セイバーが死んだじゃと!?」

「は?一体な・・・・え!?貴方達いつぞやのぐだぐだの・・・あっ!」

 

 事態に気がついた玉藻は驚いて、手を滑らせお皿を取り落としてしまう。

 耳を突き刺す、プラスチックの砕け散る音。

 その破片は付近に四散し飛び散り。

 

「いやー、大量に大漁なので、すっ!?」

 

 丁度チーズ料理をありったけ皿に盛りつけ終えた、ぬいぐるみを頭に乗せた幼き銀髪少女は喫驚して飛び退き。

 

 そして手の上の皿はバランスを崩し、

 

 

 べちゃり。

 

 

 香ばしい匂いを撒き散らしながら、数多のチーズ料理が空中に投げ出され。

 

 そして、地球の重力に逆らえず下降。

 

 からの崩落。

 

 ホテルの料理人達が存外少ない給料とピンク一色の喋り声と自分の寂しい境遇にも負けず、腕によりを掛けて作った極上のチーズ料理は、

 

 あえなく潰れた。

 

 

「あ、あぁぁぁぁぁ!!ごめんなさい、大丈夫ですか!?」

 

 玉藻の前は慌てふためき、少女に駆け寄る。

 銀髪少女の顔を見ると、ロリポップのようにカラフルな瞳は涙で滲み、白い頬はみるみるうちに真っ赤に染まる。

 信長も、これは不味いとなんとかフォローに回る。

 

「いやぁー!それにしてもなんて脆い皿なんじゃ!もうちょっと丈夫なプラスチック使えってのー!全く、是非もないヨネー!!」

 

 信長の無駄に明るい声が虚しくホテルのバイキングに響く。

 軈て静寂が訪れ、そろりそろりと逃げ出す吸血鬼姉妹の小さな足音と、沖田さんの呻き声だけが微かに空気を震わせる。

 

「あ、あのー。怪我はありませんか?チーズ料理は後で取ってきますので・・・・」

 

 そこまで言葉を絞り出し、玉藻は硬直する。

 視界の明度が何故か下がっている。

 玉藻は唾を呑み込み、背筋の凍るような予感に震えながら戦々恐々として少女の頭上へと視線を上げた。

 

 

 

 

 

 刹那。視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お客さんみんなカップルだねー」

「そうねえ」

 

 ココアと霊夢が廊下を見渡す。銀時は冷える喉を抑えて、2つ先の部屋を指差す。

 

「そ、そんじゃあ、あの部屋に泊まるか?」

「3人一緒に?貴方は別の部屋に泊まれば?」

 

 それは駄目だ!!あの2人だけで泊まらせれば、部屋にあるいろいろを取り除けない!!

 銀時はなんとか抵抗しようと言葉を探した。が、

 

「えー、でもこんな状況だし離れて行動しちゃいけないと思うなぁ。なるべくみんな一緒の方が良いと思う」

 

 ナイスココアー!!

 心の中で親指を立てる銀時。

 霊夢も、まぁその方が良いかもね、と首肯した。

 

「じゃあお前らちょっと廊下で待ってろ、部屋見てくるから」

「え、なんで?」

「え、えーと、ほら、誰か泊まってるかもしれねーし、ほら、なんかこう、危ないものがあるかもしれねえだろ!?」

 

 上手い言い訳が思いつかない。声も不自然だ。

 何故ヅラは毎回毎回スルスルと堂々と言い訳が出てくるのだろうか。ちゃんとした言い訳かはともかくとして。

 

「あー、そっか。爆弾とかあるかもしれないもんね・・・・」

「ば、爆弾!?」

「霊夢ちゃん知らないの?ドラマとかだとホテルに爆弾仕掛けられてたりするんだよー」

 

 なんですって!?と目を見開く霊夢。真剣にドラマの内容を例え話として語り出すココア。

 

 うん、馬鹿でよかったと銀時は胸を撫で下ろした。

 2人が盛り上がっている間に忍び足で去っていき、部屋に隠れるように入る。

 

 ドアを閉めると、銀時は深いため息をついて座り込んだ。

 

「さーて、どこから探すか・・・・」

 

 

 

 

「あら、銀時もう爆弾の解除に行ったの?死なないと良いけど」

「頑張ってね、銀ちゃん!」

 

 完全に部屋に爆弾がある前提で話を進める2人。

 廊下は相変わらず男女が引っ切り無しに通っていく。

 

 誰も、自分たちのことは見えていない。

 みんな、自分たちの事で精一杯で、廊下の端にいる異次元の存在を奥底に眠った本能で察知することすら出来ない。

 

 それが、少し寂しい。

 誰にも気づかれなくて。自分が世界から拒まれている感じがして。

 

 その時。霊夢の直感が、何かを知らせた。

 

「誰!?」

 

 声を張り上げ、注意深く周囲を見回す。

 通り過ぎるのは三次元の人間ばかり。皆霊夢たちのことは見えていない。

 けれども感じる。何か、鋭く、強大な力を。自分たちに向けられた視線を–––––––––!!

 

「・・・・・霊夢ちゃん?」

「ココア、誰かこの近くにいるわ」

「誰か?それって、()()()()()()()?」

「・・・かもしれない。敵意は感じないけど・・・・何故隠れてたのかしら。それに、私が気づいた途端消失したわ。何より、強い力を感じた。多分、私より強いかも」

「えっ!?霊夢ちゃんより・・・・?仲良くなれるかなぁ」

「・・・さぁ。また出てくるかどうかは分からないけれど」

 

 霊夢は虚空を睨む。

 生来の直感で感知した何者か。一体、何の目的で自分たちを見ていたのか。

 敵か味方か。それとも・・・・

 

「あのエセ天使の部下か何かかしら・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕の名前は斉木楠雄。超能力者である。

 詳しいことはWikipediaか『斉木楠雄のΨ難』の公式サイトを見てくれ。

 

 さて、コギレ隊(ココア・銀時・霊夢の3人)の様子がどうも気になって見に来てしまったわけだが。

 

 やれやれ、やはりラブホテルなんかに来るもんじゃないな。心の声が桃色一色で気持ち悪い。

 

 それに、透明化して追跡していたら博麗霊夢に気づかれてしまった。

 

 流石は楽園の素敵な巫女、神主本人が『最強』と認めた少女だ。天性の直感は超能力者の僕すら見抜くということか。

 

 まぁ思ったより銀時がちゃんとしているから大丈夫そうだな。僕もそろそろ何処かで寝るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パジャマ姿のえっちゃん可愛い!

 

 ・・・急になんだこの変態野郎と思うかもしれませんが。

 

 実は例の偽天使が、『そのままじゃ寝づらいでしょ』とえっちゃん用にパジャマを用意したのだ。

 いや、びっくりしたよ。杖を一振りしたらパッと出てきたんだぜパジャマ。てかこいつ本当に天使だったのか。

 

 えっちゃんが着ている灰色のパジャマ。八分袖には赤いボーダー模様がプリントされている。

 良いねー。現代的服装のえっちゃん良いね。全サーヴァントの私服霊衣解放やってくれないかな。

 

「それじゃあ、アマネさん。私もう寝ますね」

「あぁ、うん」

 

 Xオルタは、袖で閉じかけた瞼をこする。

 

 彼女が寝るのは俺の部屋・・・・・・なんて訳がなく。出張中で空っぽの母親の部屋で寝ることになった(ちなみにエルとセイバーライオンは勝手に父親の部屋で寝る準備をしていた)。

 

 そこは一緒の部屋で寝ようって誘えよ、と怒られるかもしれない。

 けれど仮にも女の子と同衾なんて、俺には無理無理無理無理無理、絶対無理!!

 俺生まれながらの草食男子ですから。シーザーサラダ大好きですから!

 

「アマネさん」

 

 Xオルタが、眠気で間延びした重たい声で俺の名前を呼ぶ。

 その度に耳がふわふわしてしまう。

 未だにこれは夢なんじゃないか、本当はXオルタなんて三次元にはいないんじゃないかと疑ってしまう。

 

 電気が点いていない廊下は、リビングの明かりだけでなんとか先が見えていて。

 そんな暗い場所でも、Xオルタは空間から浮き出しぼんやり光って見えた。この世界の摂理の一切を無視したような、そんな感じ。

 

 夜の静寂を、涼風の声が滑る。

 

 

「おやすみなさい、アマネさん。良い夢を」

 

「・・・・うん。Xオルタさんも、おやすみなさい」

 

 

 その一言を交わして、それぞれ別の部屋に入る。

 ドアを閉めると、廊下の空気が隔絶された。

 

 いつもの自室。

 ポスターとぬいぐるみとフィギュアが少しだけ。あとは本棚に漫画とラノベが整理整頓されて出版社ごとに並べられている。

 典型的な、ヲタクの部屋。

 

 俺はベッドにうつ伏せになる。ベッドの金属の足がぎいぎい抗議し、シーツが皺を寄せる。

 枕に顔を埋め、傍のフォウくんぬいぐるみをなんとなく鷲掴みにして耳の横に寄せた。

 

「・・・・・・良い夢を、かぁ」

 

 嬉しい。えっちゃんが気遣ってくれてるんだな、こんな俺を。

 もうXオルタがいるだけで良い夢なんだけどね、ホント。

 

 今宵は月が綺麗かな、なんて思ってちょっとだけ枕から顔を放す。

 スマホの電源を入れる。そして今日は何月だったかな、と調べようとして。

 少し気が変わって、ホーム画面のページをめくる。

 

 アルトリアの凛々しい表情のその隣のアプリを、軽く押す。

 広がる画面。

 

 

 

二次元召喚プロジェクト〜楽しい二次元キャラとのライフを楽しもう〜

 

 

 

 ––––––––これのお陰、なんだよな。

 

 Xオルタに会えたのも、セイバーライオンに会えたのも、自称天使が現れたのも。

 

 状況はやっぱり把握しきれなくて、今の状況が信じられなくて、夢見心地のままで。

 

 不安なことも、色々とあるけれど。

 

 俺にはえっちゃんが・・・・謎のヒロインXオルタがついてるんだ。

 

 きっと、何があっても大丈夫、の筈。

 

 

 

 これが夢なら、醒めませんようにと。

 

 軽く祈って、俺は夢境に身を預けた。

 

 

 

 

 

 

 




なんやかんやでこんな需要/Zeroの小説にお気に入り登録してくださる方や評価を入れてくださる方が・・・・!

嬉しい限りでございます。

今後ともお楽しみいただけるよう精進致します・・・・!






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文系少女はスマートフォンの中

白い侍「いやー、あのホテルのバイキング美味かったな」

紅い巫女「そうね。でも、なんかおかしかったわねあそこ」

桜色の姉(自称)「そうだねー。なんだろう、お客さんみんな、全体的に暗かったよね」

「そーいうもんだろ。どうせ昨日の夜、思ったより頑張れなかったんだろーよ」

「頑張る?何をよ?」

「えっ、そりゃあ・・・・」

「ま、まさか爆弾作り!?」

「えっ、アイツらみんな爆弾魔なの!?」

「・・・・・あー、うん、そうなんだろきっと(そういうことにしておくか・・・・・)」

「まぁ良いわ・・・・・それより、早くあのエセ天使を探し出して蜂の巣にしてやるわ」

「暴力は駄目だよ霊夢ちゃん!せめてビルの屋上から紐なしバンジージャンプくらいにしなきゃ」

「甘いなてめーら。シュールストレミングだらけの部屋にぶち込むか、ラッコ鍋煮た部屋に1人だけでぶち込むくらいしねーと」

「銀時、あんた悪ねぇ・・・・」

「お互い様だろうが、なぁ?」

「2人とも、なんか顔怖いよ?」





 青い、青い空。

 

 澄み切った蒼穹の下に、俺はいる。

 

 心地よい風で草花がそよぐ。

 

 多分、此れは夢なのだろう。

 

 地平線の上。そこに、知りすぎるほど知っている影が2つ。

 

『ねぇ、X』

『なんですか、えっちゃん』

 

 影の片割れ、白髪の少女は、分厚い上着を膝掛けがわりにして、そこに肘をつき、溜息をつくように言う。

 

『あの人のことを、信用してもいいのでしょうか』

 

 もう一方、金髪の少女は、帽子を深く被り直して、諦念の混じった声で答える。

 

『仕方ないでしょう。信用するも何も、三次元に行くにはあの人に頼るしかないんですから』

『・・・・三次元、ですか』

『・・・・えぇ。三次元です。漸く、漸く私たちは三次元に行ける。向こうの世界の人々に逢えるんですよ』

 

 金髪の少女の声は弾んでいる。まるでクリスマスイブの、寝る前の子供みたいに。

 何か、大きな贈り物への期待を膨らませているような。

 

『えっちゃん。この空の向こうに、三次元があるんですよ』

『本当なんですか?』

『そうです。見えぬけれども、あるんです。三次元と二次元の距離は、実はとても近くて、境目もとても薄いのです。だけど、今まで私達がどんな手を使っても、境界を越えることはできなかった』

 

 空は嘘みたいな青さで、雲は同じように嘘みたいな綿の模倣。

 その向こうに薄っすらと月が浮き出ていた。

 綺麗な、直線の飛行機雲が、天球を分断している。

 

『あの英雄王でもですか?』

『はい。水星の蜘蛛でも、あーぱー吸血鬼でも、首切りバニーでも、誰も彼もが三次元に行く方法を見出せなかった。でも行けるんです。私達は、あの空の向こうに行けるんです』

 

 2人は空を見上げて、そのまま暫く見上げていたが、それに疲れて仰向けに寝っ転がる。

 雲が流れていく。

 

『ねぇ、X』

『なんですか、えっちゃん』

 

 数分前と同じ会話。時間が止まったみたいに、吹いていた風は急に止んでしまう。

 

 白髪の少女は、躊躇いを見せたが、一瞬の後身体を勢い良く起こし、寝転がる友人を見下ろして言い放つ。

 

『私、三次元に行ったら–––––––––』

 

 

 

 

 

 

 ––––––––アマネさん。アマネさん。

 

 

 

 玲瓏とした声。

 途端に、夢は途切れる。

 眠っていた脳は覚醒し、情報を整理し始める。

 

 今、自分は寝ていた。で、さっきのは多分夢。・・・・・えっちゃんとXが会話している夢。

 もしかすると。あれはXオルタ達が三次元に飛ばされる前?

 つまりあれは前日譚?

 

 俺は掛け布団を投げ出す。

 さっき、Xオルタの声がした。起こしに来てくれた?

 そいつはいけねえ!えっちゃんに起こされたんならすぐ起きないと!

 

「おはよう、Xオルタさん。・・・・あれ」

 

 いない。

 俺の部屋には、俺以外の生物は存在していなかった。Xオルタはいなかった。

 幻聴?だとしたら俺ヤバくない?

 

「アマネさん、アマネさん」

「あれ!?Xオルタさん!?」

「ここです、ここ」

 

 Xオルタの声は確かに聞こえている。

 霊体化してからかっている?やりかねないなぁ。

 揶揄うえっちゃんかわいーい!

 

「アマネさん、ここです」

「えーと、どこですかー?」

「・・・・みさーげて、ごらん」

 

 新喜劇かよ、て思った。えっちゃん新喜劇見たことあるのかな。

 ・・・・・見下げる?

 

 見下げる。

 床にあるもの。

 カーペット。漫画。ラノベ。あっ、こないだ失くした消しゴム。そんでもって、充電中のスマホ。

 

 ・・・・・の、電源がついている。

 

『ここです、アマネさん』

 

 画面に映るのは、黒と白を基調とした部屋らしき背景と、滑らかに動いている謎のヒロインXオルタ。

 

『アマネさん、おはようございます』

 

「・・・・はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スマホの中にXオルタ?あぁ、そういう機能なんだよ」

「・・・・やっぱりエルさんの所為か」

 

 でしょうね。こいつが運営ですもんね。

 スマホの中のXオルタは、『色彩』を口ずさんでいた。

 歌ってるえっちゃんかわいい。

 

「同居人登録をしたキャラは、ユーザーのスマホの中・・・・・『二次元召喚プロジェクト』内に一時的に構築された二次元に入ることが出来るのさ」

「あー、なるほどだから同居人ってことですか」

 

 俺のスマホの中に二次元が構築され、その中にXオルタが住んでいる。

 で、今Xオルタがいるこの部屋も、二次元。

 

 それにしても良い部屋だ。モノトーンでシックな部屋で、両側の壁に本棚が備えられ、真ん中には炬燵が設置されている。

 文系なえっちゃんらしい部屋だ。

 ・・・・エルが作ったのだろうか。他人を弄ぶ割に、意外と気がきくのかもしれない。

 

『アマネさんを起こそうと思ったのですが。勝手に部屋に入るのも失礼かと。どうしようか迷っていたら、気がついたら此処に』

 

 やっぱり起こそうとしてくれてたんだ。

 というかXオルタ割とずぼらなのに早起きだなぁ。

 カルデアはそういうのキッチリしてたのだろうか。

 

「同居人登録したキャラは念じればスマホの中に入れるような設定になってるのさ。其処は君に用意した自室だよ。次からは其処で寝るといい」

『・・・・・ならば最初に言ってください。他人の部屋は落ち着かないです』

「ごめんごめん、言い忘れてた。あっ、出たい時はまた念じれば良いから」

『・・・・そうですか』

 

 Xオルタはエルを睨みつけると、一瞬俯いて、握った右手を顔に寄せる。目を閉じ、ポツポツと何やら唱える。

 

『此処から出る・・・・・此処から出る・・・・そしてエセ天使を斬首刑・・・・・』

「えっ、僕殺されるの?」

 

 一瞬の後。スマホの画面が光で満たされた。

 画面から手のひらサイズの光球が飛び出し、俺の隣で停止する。

 それは、忽ち大きくなり、人の形をとった。

 光が弾ける。

 さっきまでスマホの中にいたXオルタが、元の通り三次元に顕現した。

 

「改めて、おはようございますアマネさん。・・・ふわぁぁ」

「うん、おはようXオルタさん」

 

 あー、寝起きのえっちゃんかーわいーいなー!

 欠伸してるなぁ、やっぱりまだ眠いんだなぁ。

 

「がおーん!」

「あっ、がおトリアさん。おはようございます」

「おはようセイバーライオン」

 

 トテトテとセイバーライオンが歩いてくる。

 相変わらず元気ですなー。ライオンだから?

 

「がおん、がおーん」

「あー、そうだね。周くん。朝ご飯用意して?」

「え、無いですよ」

「え!?」

「昨日言ったじゃないですか。冷蔵庫に何もないから明日買いに行かないとって」

 

 此奴何も聞いてねえなこのエセ天使。

 てかマジで俺の家に住み着く気か。セイバーライオン置いてとっとと天に還れよ。

 

「じゃあ今から買い物、ですか。それでは私は留守番してますね」

「・・・・・・あそこのスーパー、今和菓子が安いんだ」

「早く行きましょうアマネさん」

 

 和菓子に目がないえっちゃん。切り替え早いねー。

 

 ・・・・今月分の生活費、大丈夫かな。

 両親が毎月ちゃんとお金を送ってくるのだが、まさか息子に同居人が3人(2人と1匹)増えているなんて思ってもみないだろう。

 4人分の生活を賄うだけのお金・・・・・どう考えても足りない。

 

 俺はお粥を食べ、エセ天使にはシラスを食わせればなんとかなるか。

 

 なんて思ってたら。

 

「あっ、そうだ。今日から買い物はこれで払うと良い」

 

 と言ってエセ天使が何やらカードのようなものを手渡す。

 

 真っ白なクレジットカード。右下に『二次元召喚プロジェクト』の金のロゴが入っている。

 

 えーと、何これ。

 

「それは魔法のクレジットカードさ!いくつかの術が掛けてあって、それでちゃんとどこの店でも支払いが出来るんだよ。天使からの賜り物なんだから、大切に使ってよ?」

「あー、つまり、同居人分の生活費は保障してくれるの?」

「うん、これからどんどん増えるだろうしね。でも無駄遣いは駄目だから」

 

 マジですかー!?お金くれんの、ヤッター!!

 初めて此奴に心から感謝したわ。これでえっちゃんに好きなだけ和菓子買ってあげられるな。

 今日は寿司買おうかなぁ・・・・

 

「ありがとうございます、エル様!!」

「おっ、やっと僕への感謝が芽生えたみたいだね?なんなら信仰してくれて構わないよ、うん?」

「それじゃあ、準備しようかXオルタさん」

「はい。和菓子が私を待ってます」

「がおーん!」

「えっ、無視?」

 

 

 時計は10時を回った頃。もうスーパーは開いているだろう。

 えっちゃんと買い物かー。楽しみだなー。

 あっ、でも1人で喋ってる変な奴って思われないように気をつけないと。近所のスーパーだから同級生来てるだろうし。

 

 鞄に財布、魔法のクレジットカード、スマホなどなどを入れてから、俺は洗面所に向かった。

 今日から、えっちゃんとの同居生活が本格的に始まるのだ。事の流れでいつのまにか同居することになってただけだけど。

 まずは頭を冷やして落ち着かなければ。

 

 ––––––––それに、謎も色々と残っている。

 

 買い物を済ませて、朝ご飯を食べて。

 

 そしたら、色々考えよう。

 

 

 

 

 

 




ビビった駄狐「あ、あぁぁぁぁぁ、死ぬかと、死ぬかと思いましたホントに!!命からがら逃げ出してきましたが・・・・なんなんですかあの怪物!?トラウマものですよ全く!」

事情察した超能力者〈・・・・なるほど。何やら下が騒がしいと思ったら、そんなことがあったのか。やれやれ、あの3人は本当に悪運が強いな。主人公だからか?まぁ僕も主人公だが〉

「それにしても、何やら視線を感じます・・・・まさか、あの怪物!?もー、嫌ですよもう!!助けて本体!!天よりその光で焼き尽くしてくださいませ!!」

〈流石は最高神、天照の化身といったところか。僕の存在に気づくとはな。あと、流石にビースト疑惑ある君の本体に攻撃されると此方も死にかけるからやめてくれ〉

「はぁ・・・・それもこれもあのエセ天使の所為。今すぐに見つけ出して火刑です!!」

〈同感だな〉


エセ天使「へーっくしょん!!誰か、僕の噂・・・・」

えっちゃん「してないと思います」

アマネさん「同じく」

がおトリア「がおーん!」




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主人公×主人公×主人公=主人公の参上

原作名を『多重クロス』に変更致しました。

ご指摘頂き、誠に有難うございます。

取扱説明書は全部目を通さないといけませんね、ぐだぐだと素材集めてる暇があったら。

そして今回、漸くFate以外の他作品のキャラとのエンカウントです。長かった。どんだけ掛けたんだ多重クロスの癖に。

長々と作者の話をして申し訳ありません。

それでは本編をどうぞ。




 Xオルタ、セイバーライオン、そして自称天使のエルを引き連れ、俺は買い物に出かけた。

 その前に、セイバーライオンも同居人登録をしておいた。

 

 エル曰く、

 

『ほら、セイバーライオンにも自室があった方が良いだろ?』

 

 とのことだ。

 ・・・・・ライオンの自室?サバンナの大自然だろうか。部屋っつーかそれじゃ縄張り?

 

『がおん!がおーん!』

 

 スマホの中で吠えるセイバーライオン。画面を見たら本当に背景はサバンナの草原だった。まぁカニファンでもサバンナに住んでたし。

 

『えーと、「この辺りは私の縄張りです」って言ってますよ』

 

 セイバーライオンの隣で魚肉ソーセージを齧っているのはXオルタ。

 どうやら部屋はキャラ同士で行き来が可能らしい。Xオルタが言うには、スマホの中は普通の家の中みたいな感じらしく、Xオルタの部屋の隣にセイバーライオンの部屋があるそうだ。

 

 後でアプリを色々探ってみるか・・・・。まだ色々と機能やらなんやらついてそう。あのエセ天使は『ごっめーん、言い忘れてた』って後から大事なこと言ってきそうだし。

 

 とか思ってたら、エルが話しかけてきた。

 

「で?何を買うつもりなんだい?」

「何って、今日のご飯だけど?朝食は焼き鮭にしようかな」

「料理できるのかい?」

「一応ひとり暮らしするだけのスキルはあります。まぁ上手いかどうかは別にして」

 

 料理は・・・・できなくはないけど、多分そこまで美味しくない。

 だからついつい冷凍食品とかファストフードとかで済ませがちなんだよね。自炊は大事だってお母さんには言われてたんだけど。

 ・・・・てか、なんで天使にそんな心配されなきゃいけないんだ。

 

「なんなら僕がやろうか料理。これでも家族の為に毎日料理は作ってたんだからね」

「いえ、結構です」

 

 天使に家族とかいるのだろうか。でもまぁミカエルの弟はルシファーらしいし。・・・・・つーか天使って料理作るのか。術で全部済ませるのかと思った。

 

『アマネさん、スーパーまだですか』

「あー、もう少しだよ」

『がおん!』

『「我が要求は肉のみです」って言ってます』

「はい、わかりました」

 

 セイバーライオン口調堅くない?ぶっちゃけ見た感じバーサーカーなのに。通訳されてるとはいえ、語尾が『〜がお』でも良い気がするけど。

 肉・・・・産地にこだわりとかあるのかな。

 

『あぁ、和菓子を買う時はスマホから出ますので。自分で選びたいのです』

「わかりました。でもXオルタさん、あんまり沢山買っちゃ駄目だよ」

『承知しております。状況が状況とはいえ、仮にも居候の身ですから。まぁとりあえず–––––––––』

 

 唐突に。

 

 ピコン、という軽快な音のあと、メッセージが画面上に表示されて、Xオルタは言葉を途切れさせる。

 

 

二次元キャラ反応を感知しました。

 

 

「えっ!?この近くにいるのか!?」

「おー、早速エンカウントか。誰だろうね〜」

 

 画面から光が溢れ、2つの光球は瞬時にXオルタとセイバーライオンに変化、アスファルトに降り立つ。

 

「アマネさん、警戒してください。強い力を感知します。どうやらこちらに向けられているようです」

「がおーん、がおん!!」

 

 Xオルタは剣を構え、セイバーライオンは激しく吠えたてた。相手はこちらに敵意を持っている?でも俺はあまり恐怖や不安を感じなかった。

 

 だって、考えられる可能性は、ただ一つ。その敵意の矛先は・・・・・

 

 

 

「もう、やっと見つけたよ〜」

 

「よくもまぁ俺たちを雑に扱ってくれたもんだぜ、天使サマよぉ」

 

「覚悟しなさい、エセ天使!」

 

 

 

 咄嗟に、視線を上方へ。見回して、発見する。一軒家の屋根の上。人影が3つ立ち、此方を見ていた。

 

 1人は、喫茶店の制服らしきものを着たストロベリーブロンドの少女。

 

 1人は、ぼさぼさの天然パーマの白髪の、木刀を腰に差した男性。

 

 1人は、紅を基調とした特徴的な巫女装束の少女。周囲に大きな球体が浮いている。

 

 その3人は、いつかチラと話で聞いた者達。そして、俺がよく知っている、そして世間的にもよく知られている者達。

 

 

保登心愛 出典《ご注文はうさぎですか?》

 

坂田銀時 出典《銀魂》

 

博麗霊夢 出典《東方project》

 

 

 

「ここで会ったが百年目・・・・その穢れた心で楽園に足を踏み入れた時点で、貴方の敗北は決まっていたのよ」

 

 大幣を向け、太陽を背に霊夢は笑った。

 

 彼ら3人は主人公。物語を担う者。その存在感は抜群で、屋根より見下げられて思わず息を呑んだ。発せられるそのオーラ。二次元からそのまま抜け出してきた、その浮世離れした出で立ち。彼らもまた、二次元より降り立った『本物』なのだと認めざるを得ない。

 

「Xオルタちゃん、久しぶり!」

「あ、ココアお姉様。久しぶりです」

「お、おおおおお姉様まままま!?」

 

 ココアは目を見開き、とろけるように頽れてしまう。その手首を、屋根から足を踏み外す寸前で銀時が掴んだ。

 

「おい、しっかりしろってのココア。ここでくたばってちゃてめーの妹・・・・なんだっけ、チノティアとやらに胸張ってお姉ちゃん面できねーだろ」

「ごめん、銀ちゃん。あとチノティアは違うからね、チノちゃんだから。それだとチノちゃんは神様になっちゃうよ、確かに眷属(ファミリア)はうさぎだけど」

 

 中の人ネタやめい。てか銀さんの所為でココアが銀魂に染められてるような。

 そんな様子を見てエルは肩をすくめ、3人に向かって返す。

 

「あのさ、僕今から買い物に行かなきゃいけないんだけど。君たちの相手をしてる暇は生憎ないんだよねえ」

「貴方の用事なんて知ったこっちゃないわ。幻想郷に住まう者共を代表して、私が裁きを加え・・・・・・あら」

 

 いつもの容赦ない霊夢節の途中で、視線が俺に向く。・・・・・え、俺見られてます?3人は俺の存在に気がついたようで、俺のことを注視した。

 

「あれ?Xオルタちゃん、その男の子は?」

「おいおい、エセ天使。てめーは俺たちだけじゃなくて三次元にまで迷惑かけるつもりか?なんならタダじゃおかねーぞ」

「ねえ、貴方。名前は?」

 

 唐突に名を問われる。噛まないように、俺は慎重に口を開いた。霊夢達の前で格好悪いところを見せられないしね。

 

「桜樹周です。えーと、Xオルタさん、の・・・・同居人、みたいな」

「同居人?・・・・あぁ、Xオルタを保護してくれていたのね。はぐれたと思ったらなるほど、匿われてたの」

「ええ。アマネさんが善い人で良かったです」

「そっか、Xオルタちゃん無事なんだ、アマネくんは善い人なんだ、そっかそっか〜」

 

 ひとまずは3人も安心したのか。俺に対して敵意を向けはしないらしい。良かった、Xオルタに何かしたんじゃ、こいつ不審者なんじゃと思われたらどうしようかと。

 

 暫く。何故か静寂を置き。

 

 3人は顔を見合わせ、代表して銀時が尋ねてきた。

 

「あー、あの、周だっけ?Xオルタを保護してくれたんだよな、助かるわ、此奴なんかぼーっとしてるから。えーっと、で、だ。・・・・・俺たちのこと、見えてるよな?」

「はい、見えてます。普通に」

「あ、うん。そうか、見えてるのか。そうだよな、見えてなきゃXオルタ保護できねーし持ち帰れねーし。あー、なるほど見えてるのね理解したえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

 

「・・・・・あー、説明します、私が」

 

 ・・・・・・そういや二次元キャラって俺以外の三次元の人間には今のところ見えないんだっけ。いやー、すっかり忘れてたわ。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、なるほどな。要するに、そこのエセ天使が『二次元召喚プロジェクト』っつーアプリを作って、お前含む選ばれし200人のアニメヲタクが願いを叶える為最後の1人になるまで戦ってんのか。そりゃエライことしでかしてくれたぜエセ天使サマ」

 

 どうやら銀さんの耳は過剰な空耳アワー製作所らしい。エルはそんなこと一言も言ってなかったはずだ。そんなゲームではなかったはずだ。きっと。

 

「いや全然話聞いてなかったみたいだね坂田銀時。そんなサバゲーじゃないし、ユーザー今のところ周くんしか居ないし」

「ま、どっちにしろ貴方が三次元の人間を、しかも私達のファンを巻き込んだことに変わりはない・・・・・やっぱり封印かしら」

「ちょっとー、そんなに殺気立たないでよ、ねえ周くん」

 

 こっちに同意求めんな。封印されろや勝手に。そうは思ったけど口には出さない。一応運営だし、多分年上だし。天使かはともかくとして。

 

「・・・・あー、あんまり、手荒なことは良くないですよ」

「・・・・貴方がそういうなら、仕方ないわね。ベランダから逆さ吊りくらいにしてあげましょうか」

「わーい、結局実刑判決だーい」

 

 エルさん涙目。これを自業自得、因果応報という。

 Xオルタの方を見ると、セイバーライオンを抱えてココアと楽しくお喋りに花を咲かせていた。

 

「ココアお姉様、元気でしたか?」

「こふっ、こ、ココアお姉様・・・・うん。元気いっぱいだよ。銀ちゃんと霊夢ちゃんもいるしね!」

「そうですか。私も、アマネさんが見つけてくれたおかげで昨日はなんとかなりました」

「良かった〜。あ、そうだアマネくん!」

 

 え?何?そのあやねるボイスで名前呼ばれると天に昇っちゃう気がするんだけど。ココアは俺の方に向き直り、屈託のない笑みをたたえた。花の種子が弾けるような、そんな笑顔。

 

「Xオルタちゃんのこと助けてくれて、本当にありがとう!私は保登心愛。気軽にココアお姉ちゃんって呼んでね!」

「よろしくお願いします、心愛さん」

「ココアお姉ちゃんって呼んでいいのに〜・・・・アマネくん、これからよろしくね」

 

 いや、だってさ。いい歳した男子が今日会ったばかりの美少女を『お姉ちゃん』とは呼べないよ。そんなことしたら俺気持ち悪いヤツじゃん。もうキモヲタですけど。

 

 ・・・・・これから、よろしく?だと?

 

「同居人登録、だっけ。してくれないかな。その、私達住むところなくて・・・・・もうXオルタちゃんと、あとセイバーライオンちゃんがいるのはわかってるし、迷惑かもしれないけど」

 

 ココアの表情は暗く沈んでいて、言葉の端々から一所懸命に此方を気遣っているのが一番伺えた。こんな困ってる女の子を放っておくわけにはいかない。俺は即答した。

 

「も、勿論、だよ。それに・・・・迷惑ではないよ。寧ろ嬉しいよ、心愛さん達が来てくれるのは」

「本当に!?銀ちゃん、霊夢ちゃんも!アマネくん、同居人登録してくれるって!」

 

 早速エルを縛り始めた2人に、ココアは声を掛けた。銀時と霊夢は顔を上げると、表情には出さないものの明らかに安堵している様子だった。縄で手足を拘束されたエルを放っぽり出し、2人は歩み寄ってくる。

 

「・・・・・・迷惑かけるわね。貴方を、こんなことに・・・・私達の問題に巻き込んで」

「いえ、大丈夫です。気にしないでください」

 

 迷惑なんて、本当に思ってない。俺は、あの憧れの、大好きなキャラクター達が三次元に来て、自分と会話してくれてるってだけでもう十分嬉しいのに。寧ろ、俺みたいなのが問題の当事者になってしまったことに申し訳なく思うし、迷惑だと思う。

 

「おう、今日から世話になるわ。俺は坂田銀時・・・・・ま、お前はもう知ってるだろうし、実写化までしちゃったジャンプ漫画の主人公の自己紹介なんて今更感あるけど。あ、女の子2人連れ歩いてたのは別に俺がロリコンってわけじゃねーから。何もしてねーから、うん」

「私は博麗霊夢。幻想郷の秩序を守る博麗の巫女・・・・ってことになるわね。あぁ、此処に賽銭箱があるから好きなだけお賽銭を入れてもいいのよ」

「よ、よろしくお願いします・・・・」

 

 うひゃー。本物だわやっぱり。Xオルタと出会った時もそうだったのだが、やはり凄く緊張してしまう。だって二次元キャラだぞ。ハリウッド俳優とか大統領とかが目の前にいたら萎縮しちゃうだろ?

 実際鳥肌が立つし四肢の震えが止まらない。相手がよりにもよって『主人公』なんだから尚更。

 

「うーん、良かったね周くん!同居人が3人も増えたじゃないか、大漁だよ!で、これ解いてくれないかな」

「ところでアマネさん。早く買い物に行かないのですか」

「忘れてた・・・・朝ご飯買わないとね」

 

 そうだった。スーパーに向かう途中だということをすっかり忘れていた。朝ご飯は魚肉ソーセージなどで軽く済ませたからまだお腹は空いていて、空っぽの腹の中を何かがぐるぐると回っている。

 

「あ、お買い物中だったの!?ごめんね、邪魔して」

「なら、私たちもついて行っていい?朝食はホテルで済ませてきたけど、やっぱり足りないの」

「てめーなー、あんだけ食べてまだ腹が満たされねえのか、ほんっと巫女のくせに強欲だな」

「貴方に言われたくない。剣士を名乗っておきながら大雑把で適当でいい加減で・・・・」

「まぁまぁ2人とも、仲良くしよ、ね?」

 

 ココア、銀時、霊夢の3人はなんだか親しげに見える。例えるなら年の微妙に離れた兄妹、的な。まぁ性格的にもバランスが取れてる3人だから、ここまで一緒に行動出来たのだろう。

 それにしても、人気作品3つの主人公達が出版社の壁を越えて会話してるこの状況、なかなか凄いのではないだろうか。この組み合わせで漫画描く絵師さんもいないし。

 

「さて、そんじゃあ行くぞてめーら!」

「ええ」

「そうだね」

「行きますか」

「がおーん!」

「「「「いざ、迷宮都市オラリオへ!!」」」」

「違います」

 

 こうして。ココア、銀さん、霊夢の3人が同居人となったのであった。・・・・・買う物増えるな。6人分の料理作れるだろうか。

 

「ねえ、この縄解いてくれない?切実に」

 

 

 

 




主人公4人目〈・・・・・あの3人の様子が気になるのでまた見に来たが・・・・やれやれ、まさかあのエセ天使がそんなことを企んでいたとは。・・・・・桜樹周、か。一度コンタクトを取ってみても良いかもな〉

良妻ヒロイン「むむっ、こっちから何やら獣の臭い。これはネコ科・・・・・まさか、私の分身(キャット)?兎にも角にも行ってみなくては。エクストラのヒロインたる私を差し置いて先にメインシナリオ介入とは許せません!待ちなさいキャット、この小説のメインキャラの一角たるのはこのオリジナル・タマモです!!」




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どん兵衛にお湯を入れたって吉岡里帆もカズも現れない

にぱにぱ魔法少女「ホテルのバイキング美味しかったのです!」

もべもべドール『モベベベベ〜』

「昨夜は、ちょっとなぎさがヘマしちゃいましたが・・・・ま、旅の恥はかき捨て、というやつですよ!」

『モベ、モベベベ』

「けどシャルロッテ、すぐに本性出すのやめてくださいね。昔の真っ暗ななぎさを思い出してしまうのです、流石我が黒歴史。それにあの狐さんとかちびっこ達、あと仲良しな和服の人と軍服の人・・・・色んな人が顔面蒼白で逃げ出しましたからね」

『モベ・・・・・・』

「落ち込んでてもしょうがないのです。反省を成長に活かすのです。それにシャルロッテはなぎさ以上に色々出来ますからねー。便利な部下がいるし、お菓子を作ったり、結界を作ったり・・・・」

『モベベベベ!』

「ええ、なぎさは女神の直属の部下。気高く尊く麗しい、究極の魔法少女なのです!・・・・・そうだ!なぎさ、良いこと思いついてしまったのです!」

『・・・・モベ?』




「アマネさん、私これとこれとこれが良いです」

「がおん、がおん!」

「アマネくん、このクロワッサン美味しそうだよ〜」

「周、エビピラフって何かしら?美味しいの?」

「なぁ周ぇ、この生クリームがたっぷり入ったショートケーキが今安いらしいぞ?な?」

「はいはい、わかりました。とりあえずカゴに入れてください」

「周くん。この冷凍焼きおにぎり・・・・」

「あっ、これ今日のチラシに載ってた牛肉だ」

「え、スルー?」

 

 さて。俺、桜樹周は、えっちゃん、セイバーライオン、エセ天使、そして先ほど出会ったココア、銀さん、霊夢の6人(5人と1匹)と一緒にスーパーマーケットに買い物に来ています。

 

 休日のスーパーマーケットはそこそこ人がいるけれど、その誰も彼もがXオルタ達が見えてない。スーパーの通路を駆け回って商品を眺める彼女達の姿を目に留められるのは、俺だけなのだ。

 そう思うと、なんだか優越感に浸ってしまう。

 

「じゃあ、俺ちょっとカップラーメンのコーナーにいるんで。買いたい物大体決まったら来てください」

「はーい」

 

 了承の声を聞き届け、俺はカートを押してカップラーメン売り場へと向かった。・・・・・置いていって大丈夫だろうかという考えも無くはないが、一度1人になって、冷静に情報を整理したかったのだ。

 

 二次元からキャラクター達がやってきて、どういうわけか三次元の人間達はそれが見えない。けど何故か俺は見えて、キャラ達と同居することになり、黒幕は天使を名乗る青年。

 ・・・・・・これが二次創作小説なら設定詰め込みすぎだ。絶対に人気出ないし需要が無い。

 

 さて、どん兵衛のCMらしきものが聞こえてくる。小さなモニターに、狐耳の美少女が映っていた。その横に、緑色のどん兵衛が陳列されている。

 俺は狐か狸かと言われりゃ狐派だ。例え誤字より存在価値が無くとも、狐耳は至高・・・・・

 

 

 

二次元キャラ反応を感知しました

 

 

 

「みこっ、なんですかこの女!?インスタント麺に宿る精霊か何かですか!?良妻フォックスは私だけで充分です!!」

 

 露出度の高い青藍の和装。2つに纏めた躑躅色の髪。頭部から生えた茶色い三角の獣耳。服を貫いて飛び出した太い尻尾。それを俺は知っている。

 

 いつか、月面の聖杯戦争でとある少年、又は少女と共に戦ったサーヴァント。かの高天原の最高神天照大御神の分霊。そして良妻願望のシリアスブレイカー駄狐。

 

 

 

玉藻の前 出典《Fate/EXTRA》etc

 

 

 

「・・・・・おや?ま、まさか貴方・・・・・私が見えるのですか?」

 

 ・・・・・どうやら、考察タイムはお預けのようだ。

 てかえっちゃん、セイバーライオン、ココア、銀ちゃん、霊夢と来てキャス狐って。

 そこに、セイバーライオンを頭に乗せ、和菓子を沢山抱えてえっちゃんが駆けてくる。

 

「アマネさん、この和菓子ちょっと高めなんですけど・・・・あ、お狐さん」

「あらXオルタさん。お久しぶりでございますね!」

 

 玉藻がにこやかに手を振る。尻尾も振る。そういや2人って面識あるんだっけな。炬燵友達として。

 

「ん?なんっだこの狐娘。キャサリンみたいなケモ耳詐欺じゃねえだろうな・・・・?」

 

 続いて現れるのは銀さん。まー、キャサリンはあれ考えた空知先生凄いけどね、色んな意味で。

 

「あぁ、銀時さん。この人はお狐さん、玉藻の前さんです」

「おっ、普通に美少女じゃねえか。銀さんこと坂田銀時でーす、よろしく」

「ええ、よろしくお願いします銀さんそしてくたばりやがりませこの浮世狂い!!弁明無用!!呪相・玉天崩!!

 

 瞬間、玉藻の右足が豪速で銀時の股間を・・・・銀さんの銀さんを2連撃。

 

「ぐはぁっ!?」

 

 股間を押さえ、身をよじらせる銀時。しかし玉藻は容赦を知らぬ狐。構わず次の攻撃の準備に入る。

 股間を蹴った反動で大きく飛び退き、間を置かず助走。銀時の眼前で停止し、勢いが切れぬ内に床を蹴って高く跳躍。玉藻は真っ直ぐ、狙いを定めて下降する。

 それはさながら、出番を待ち焦がれた最後の銃弾の如く。

 

 直撃。

 

 玉藻の飛び蹴りは、確実に銀さんの銀さんを捉えたのだ。

 

 「ぐおふぇあくっ!?」

 

 床に倒れ伏し、悶絶する銀時に目もくれず。玉藻は、1人何となく呟いた。スーパーの蛍光灯は、夕日のように赫く照っているよう。

 

「・・・・・ご主人様、見てくれましたか?」

 

 16年生きてきて、俺は初めて『一夫多妻去勢拳』を見受け、その凄まじさを実感したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、つまり私の勘違いだった、ということですね。いやー、誠に申し訳ありません。何せ心眼持ってないものですから。みこぺろっ」

「舌出して許してもらえんのはペコちゃんとアインシュタインだけだ馬鹿狐!!銀さんの大事なところがマジで去勢されたらどうすんだ、銀さんが銀ちゃんになったらどう落とし前つけてくれるつもりだ、んん!?」

「まぁまぁ、落ち着いてください」

 

 Xオルタが静かに宥める。ただしえっちゃん本気で止める気は無いようで、セイバーライオンといっせーのせゲームをしながら言っている。

 

 玉藻の話によると。

 

 銀さん、ココア、霊夢の3人は道中ラブホテルに寄ったそうで。しかしラブホテルの存在意義そのものを知らぬ純真無垢な少女達はラブホテルをただしのお洒落なホテルと思い、泊まりたいとせがんだらしい。当然ながら、銀さんは一度は拒否したものの、結局根負けしてラブホテルに泊まっちゃった。それを玉藻が目撃してしまい、未成年の少女2人をラブホテルに連れ込む浮世狂いのハーレム男だと誤認識したのだ。

 

 まぁ、ちゃんと銀さんが拒んどきゃ、こんなことには・・・・金的を喰らわずにはいられたのだと思わざるを得ません。

 

「あれっ、かわいい!きつねさんの耳と尻尾だー!」

「・・・・・妖怪?何の用かしら」

 

 事態に決着がついたところで、ココアと霊夢が遅れて現れた。タイミングが良すぎる。流石主人公。

 

「ココアお姉様、霊夢さん。この方はお狐さんです」

「呪術も家事も、なんでもできちゃうサンシャインフォックス、玉藻の前と申しま〜す!以後、お見知り置きを」

 

 両手でコンッとポーズをとる玉藻。相変わらずのキャス狐さんだ。そしてもふもふ好きのココアは玉藻の耳と尻尾に目を奪われ、今にも手を伸ばしそうな勢いであった。それを軽く制し、霊夢が自己紹介する。

 

「私は博麗霊夢。面倒な妖怪かと思ったけど、敵意がないなら良いわ。家事ができるんでしょう?なら同居人になってくれないかしら」

「同居人?貴方達、もうこの世界で住む家を獲得しちゃってるのですか?」

「うん。さっきそこにいるアマネくんと一緒に住むことになったんだよ!あ、私は保登心愛!ココアって呼んでね!あともふもふしてもいい!?」

「なっ、この耳と尻尾をもふっていいのはご主人様だけです!」

 

 がーん!!と目に見えて落ち込むココア。霊夢と銀時がまぁ仕方ないだろと慰める。もふもふしたかったんだなぁ。確かに玉藻は女神の分霊だし、よほどセレブリティな毛並みなんだろうな。触ってみたくなくはないが、絶対怒られるからやめておこう。

 

「あれ、皆もう集まってたのかい?置いていかないでおくれよ全く!」

 

 嘆くように呼ぶ声。エセ天使だと気づいた0.2秒後には、一同揃って殺気立つ。眼光は鋭く、此方の精神が折れそうなほどの殺気に俺はたじろぐ。皆、それほどエルを嫌悪しているのだろう。如何せんエルはその殺気を軽く受け流し、澱みなく歩み寄る。

 

「いやー、このスーパー本当に品数豊富だよね、このポテチとか「呪相・玉天崩フルパワー!!」

 「あべしっ!?」

 

 その飛び蹴りに。瞋怒が、呪詛が、怨嗟が。その一撃に全て込められていた。

 まっ、自業自得だ。是非もないヨネ。

 

 

 

 

 




えっちゃん「家政婦が手に入りましたね・・・・これで毎日快適ぐーたらライフ確定です」

ココア「もふもふしたい・・・・あの耳と尻尾を存分にもふもふしたいよぉ・・・・」

銀時「まだ・・・・まだ股間が疼く・・・彼奴マジで呪術師なら回復ぐらいしてくれっつーの・・・・」



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二次元召喚のΨ難

回される方のノッブ「姉上・・・・・何処にいるのですか姉上・・・・」

「お腹も空いたし・・・・・あぁ、誰か僕を救ってやくれないかな・・・・・これじゃあ姉上を見つける前に死んでしまう・・・」

すでのな魔法少女「そこの貴方、お腹を空かせているのですか?」

「え・・・・?あぁ、そうだけど。お前は一体?僕達と同じ人間か?」

「イエスシャルロッテ!・・・・・なんてね、ちょっと弾けちゃいました。ええそうですとも。お腹が空いているのなら、なぎさが食料を提供しますよ?」

「本当か!?それは助かる!!・・・・しかし、僕は今対価として払えるものは何も・・・・」

「あるのです、払えるもの。・・・・・貴方の身体が」

「ひいっ!?おま、お前、僕に何するつもりだ!!」

「ふっふっふ・・・・・それではご案内するのです。シャルロッテ、結界オープンなのです!!」

ほむほむ派魔女『モベモベ〜!!』

「おい、お前何処に連れて行く気・・・あっ、ちょっと、おい待て、離せ!!誰かー、助けてー!!姉上ー!!」



儂はヴィイじゃないよ「む?今、儂呼ばれた?呼ばれたヨネ?」

るろうに桜さん「気のせいでしょ。自意識過剰ですよノッブ」






 ハーメルンに集う皆々様、ご機嫌よう。限られた時間を割いてこんな需要無しの自己満足小説を訪れてくれたことに感謝する。

 

 僕の名前は斉木楠雄。超能力者である。僕のことを知らない方は『斉木楠雄のΨ難』でググってほしい。まぁ、ココア、銀時、霊夢、玉藻の前と来たら次の登場キャラは僕だということくらいは予想されていたことだろう。

 

 完結した漫画の主人公が今更出しゃばるのもアレだが、僕には三次元でやらなければいけないことが2つある。1つは・・・・・今伝えなくても構わないか。もう1つは、大体想像がつくだろう。

 

 さて、僕が今何処にいるのかわかるだろうか。正解は、とあるマンションの一室。完全に不法侵入だが、僕の目的の内1つを達成する為には仕方ない。

 

「結構買っちゃったね・・・・それにしても本当にこのクレジットカード使えるんだ」

「和菓子いっぱい買いました・・・・おやつタイムが楽しみです」

「これぞ幸せ買い物帰り・・・・・なんでしょうね。ご主人様がいれば完璧なのですが」

「あぁぁぁ、どうしようもふもふしたい衝動を抑えきれない・・・!」

「あんな淫乱ピンクの突起物もふもふしたって仕方ねえだろ。ほら、ここにライオンいるんだから我慢しろよこれで」

「がおん!」

「てかセイバーライオンって本当に獅子なの?俄かに信じがたいわね」

 

 

 そう、その目的とは、

 

 

「本人がライオンって言ってるんだから僕はライオンだと思〈制限解除サイコキネシス!!〉

「いきなり!?」

 

 エセ天使への天誅である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈いきなり攻撃してすまない。一応僕としてはそこにいるエセ天使に狙いを絞ったつもりだったが、生憎僕の力は手に余るほど強大なんだ。怪我はないか?〉

 

「ええ、お狐さんが結界を張ってくれていたので」(・・・・この人、なぜ頭にロリポップが刺さっているんでしょう)

「私の手にかかれば、あれくらいの簡易結界の急制作なぞみこっと朝飯前です!」(むむむ・・・・・なかなかのイケ魂です!こちらの目を潰してしまうほどの輝きですね)

「玉藻ちゃんすごーい!流石だね!」(もふもふしたいもふもふしたいあー、もふもふしたいなぁ〜)

「まぁ僕は黒焦げになったけどね、何故か意図的に僕だけ守護対象から外されてたから」

 

 ちっ、芯まで焼き尽くしたつもりだったんだがな。エルの心は読めないな・・・・やはり僕の力があまり通じていないのか。まぁ詐欺師天使は置いといて。

 ・・・・・此奴が、桜樹周か。

 

「あ、俺も平気です、傷ひとつありません。斉木楠雄さん、ですよね・・・・よろしくお願いします」

 

 なるほど。これが自称天使エル・ティアクローバーにより事態に巻き込まれ、坂田銀時達の同居人となった、この件の当事者、桜樹周。

 一見すると、大人しくて静かなヲタク男子高生・・・・・悪い奴ではなさそうだが・・・・・

 

(斉木楠雄!?またもや主人公!?うわー、オーラ凄い、あと当然だけどイケメン、そしてCV神谷さん!!俺運良すぎじゃない、明日死ぬんじゃない?てか何故うちにいるんだ・・・・・それにしても皆エルが嫌いなんだな、当たり前だけど。ていうか斉木ってことは俺の心の中読まれてる!?恥ずかしっ、変なこと考えないようにしよう、あー、それにしてもえっちゃん可愛い・・・・・やばい、テレパシーで読まれてるんだった、無、無、無、無・・・・えっちゃん可愛いなぁ)

 

 はっきり言って心の声がうざい。

 ・・・・・まぁ、信頼に足る人物ではあると思う。さっきからずっと心の声を読んでいるが、本当にアニメが、僕たちのことが好きだということは理解できるからな。

 

「で?超能力者の佐倉さんが何の御用だ?こちとら同居人これ以上増えると面倒くせーんだよ、濃い奴増えると俺の出番減りそうだから」

 

 エスパー魔美じゃねえよ。やれやれ、この天パ侍は相変わらずといったところか。

 

 〈桜樹周、大体の事情は理解できた。その上でお願いしたいのだが、僕も君の同居人とやらにしてくれないだろうか〉

「あー、はい、俺でいいなら構いませんけど・・・・玉藻さん、朝食足りるかな」(わぁぁぁ、斉木が同居人かー、色々便利そうだけど、あっ便利とか言っちゃいけないな。でもこれで同居人7人目か、1日でこれって多いな、スーパーで買った食料で足りるかな・・・・)

「ええ、念の為多めに買いましたので。早速作りますね!紅師匠による地獄の修行の成果をご覧あれ!!家政婦タマモ、しゅっつじーん!!」

 

 全く、やかましい狐だ。紅師匠・・・・・・なるほどうん、確かに地獄の修行だなそれは。

 

「あ、僕の味噌汁にはネギ入れないでねー」

「リクエストしてんじゃねーよエセ天使!!黙って食卓についてなさい縊り殺しますよ!!」

「玉藻ー、俺のご飯には餡子乗せろよ」

「えー、なんですかその栄養偏った丼!まぁいいですけど」

 

 むしろ銀時の方を断れよ。どう考えても朝食が餡子丼って栄養以前の問題だろ、朝食をデザートと兼ねるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 桜樹周の家のテーブルでは全員が座れないので、エルが4人用炬燵を2つ用意した。そういうところはどうして気が効くのだろう。1つには桜樹周、エル、銀時、そして僕。もう1つにはセイバーライオンを膝に乗せたココア、霊夢、玉藻、Xオルタ。

 朝食は白米、焼き鮭、味噌汁。市販の沢庵もついていた。まぁ良妻を自称しているだけあってなかなか美味しい。

 

「玉藻さん、これすっごく美味しいよ!」

「がおーん!」

「お喜び頂けて光栄です。銀時様、宇治銀時丼如何ですか?」

「まぁまぁだな。まっ、良いんじゃねえの?」

「何その猫のエサ。米と餡子は分けて食べなさいよ」

「分かってねーなー。本来交わらぬ筈の者共が、常識という壁を乗り越えて邂逅する。栄養とかそんなもんは問題じゃねえ。異なる者同士の出逢い、それ自体が重要なんだよ」

「分かります。確かに味噌汁にわらび餅を入れると美味しいですよね」

 

 そんなわけがあるか。ご飯の上に餡子より問題じゃないか。やれやれ、面倒なやつらだな、全く。

 

「えーと、斉木さん、は・・・・」

〈敬称はつけなくて良い。同じ年だろう〉

「・・・・じゃあ、斉木くん、教えてほしいんだけど・・・・どうして斉木くん達二次元の人達は三次元に」

「おっと、これはいけない!」

 

 どうしたエセ天使。急に大きな声出して、頭がおかしくなったのか?なら矯正してやろう、サイコキネシスで強制的にな。

 

「急用が出来た。僕は少し出掛けてくるから、朝食は先に食べておいてくれ」

「言われなくても、もう食べ終わったわ」

「いいから早く失せるです、エセ天使。オルトライトニングを受けたいですか」

「キツイなぁ。それじゃあ行ってくるよ。周くん、後は任せた」

「ええ、任せたって言われても・・・・・」

 

 桜樹周の困ったような声も聞かず、エルはさっさと消え去ってしまう。どうせまたロクなことをしでかさないに違いない。

 やっぱり殺すべきだったか。

 

「・・・・・・えーと、どう、しようか?」

「アマネさん、まずは改めて自己紹介、というのはどうでしょう」

「あ、そうだね。これから一緒に過ごすんだもんね・・・・」(えっちゃんが助け舟出してくれたぁぁぁぁ!ありがたやありがたや、これから毎日拝まさせていただきますとも!)

 

 心の声うぜえ。そんなに好きなら口に出せばいいものを、全くヘタレなやつだ。

 でも悪い奴ではない。彼には申し訳なく思っている。こんな事態に巻き込んでしまったのに、僕達の存在を・・・・・孤独を満喫していた彼からすれば面倒な荷物でしかないのに、受け入れてくれるのだから。

 彼には、感謝しなければならない。そして、僕達の目的に一刻も早く取り掛からなくてはならない。彼の為にも。

 

 僕の名前は斉木楠雄、超能力者である。

 

 今日から三次元の、桜樹周という人間と、その他の厄介な奴らと共に同居することになってしまった。

 

 

 

 

 




ソルトスプラッシュ系霊能力者「お腹空いたなー、モブー」

空気読めない系超能力者「空きましたね・・・・」

神になりたい系悪霊「まっ、霊の俺様にはご飯なんざ必要ねえけどな」

「エクボ、いたんだ」

「いたよ!ずっと前から!!」

「でもなー、どうにかしてこの空腹をなんとかしねえと先に進めないぞ?」

まどマギの真のマスコット「おや?貴方たち、お腹が減ってるのですか?」

「・・・・君は?」

「私は百江なぎさなのです!お兄さん方、・・・・・お菓子は、お好きですか?」



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ただいまより点呼をとる!準備はいいか!

なぎっち「さぁさどうぞお兄さん方!ここからは魔女の結界の中なのです!」

モブくん「魔女・・・・?」

「ええ!しかして、現在はお腹を空かせた孤独で哀れな二次元民達の為の甘美な楽園!!『スウィーツ・シャルロッテ』なのです!さぁ信勝、仕事ですよしーごーと!」

カッツ「・・・・・・い、いらっしゃいませぇ・・・」

霊幻さん「メイドか・・・?どうやって衣装とか用意・・・・・て、こいつ男かよ!?」

「一瞬気がつきませんでしたね・・・・・」

「信勝、声が小さいですよ!貴方の武器はその中性的なビジュアル。存分に活かすのです!」

「い、いらっしゃいませ!!(あー、なんで僕がこんなことしなくちゃいけないんだ!姉上助けてぇぇぇぇぇぇ!!)」




 Xオルタの提案で、二次元キャラ達は自己紹介をすることになった。これから一緒に暮らすのだから、通過儀礼としては当然だろう。何より、この2日で一気に7人も増えた異邦の同居人達を、ひとまず把握せねばなるまい。

 

 まずはエルの助手、ということになっているセイバーライオン。

 

「がおん。がおがおーん、がおん。がおーん、がおん。がおーん、がおーん。がおんがおーん。がおん、がおーんがおん。がおん。がおーん」

 

 うん、全く理解できないや。俺と同じ意見なのか、彼女の言葉が分かるえっちゃんとテレパシーの使える斉木以外は皆一様に首を捻っていた。

 というわけで、えっちゃん通訳よろしく。

 

「『私の名はセイバーライオン。本来は誰にも縛られず生きる野生の騎士ですが、報酬が素晴らしいという一点のみでエセ天使に渋々仕えております。小柄な体躯で人語も操れませんが、通常のアルトリアに劣らぬ戦闘力と直感は備えておりますので、戦闘では必ずお役に立ちましょう。これから暫く、よろしくお願い致します』と言ってます」

 

 めっちゃ礼儀正しいなセイバーライオン。流石騎士王。ぶっちゃけXよりまともなのでは、このライオンさん。

 

 

 続いて、自称お姉ちゃんのココアさん。

 

「保登心愛です!気軽にココアって呼んでね!好きなものは、えっとパンともふもふしたものかな!元々家がパン屋さんだったから、パンを焼くのは得意だよ〜!将来の夢は、街の国際バリスタ弁護士としてパンを焼きながら小説を書くことです!私のことはお姉ちゃんと思って頼ってね!」

「分かりました、ココアお姉様」

「がおーん!(姉様、よろしくお願いします)」

「はわわわ・・・・・もっと、もっとお姉ちゃんって呼んでも良いよ!?」

 

 凄い喜んでるなこの自称姉。てか将来の夢未だにそれなのか。色々盛りすぎだよ、今日日ドラマでもそんな弁護士いねーわ。

 ・・・・・というか、今更ながらXオルタはココアより年下判定されているのか。

 

 

 続いて、天然パーマの悪い奴じゃない男、銀さん。

 

「はいどーも、なんやかんやでヒロイン2人をラブホテルに連れ込んじゃって大変株を落とした天パ白髪の変態男、銀ちゃんこと坂田銀時でーす。必殺技は木刀で殴ることでーす、あとロリコンではないんでそこんとこよろしく」

「あー、その節は大変失礼致しました・・・・」

〈マジでやったのか一夫多妻去勢拳。有言実行だなこの良妻〉

「次やったらマジで銀さんが銀ちゃんになるからやめろよ、もげるかと思ったわ」

 

 銀さん通常運転。因みに未だに股間は疼くんだとか。凄い威力だな一夫多妻去勢拳。流石アマテラスの分霊。でもあちこちで女性とフラグ立ててる銀さんにはぴったりだと思うけど。

 

 

 続いて、鬼畜な楽園の巫女、霊夢。

 

「楽園の素敵な巫女、博麗霊夢よ。幻想郷では主に妖怪退治と異変解決が仕事だったけど、三次元に来てまでそんなことしたくないからお茶飲んでゆっくり過ごさせて頂戴ね。あ、ここに素敵な賽銭箱があるからどうぞお賽銭を」

「お金とんのかよこの守銭奴巫女」

「じゃあパンが焼けるお姉ちゃんなんてどう!?」

「家事と呪術のできるもふもふ家政婦はいかがですか?」

「結構です」

 

 

 続いて、太陽のような笑顔眩しい良妻賢狐、玉藻の前。

 

「さぁさ皆様、手のひらをみこっと太陽に!聞いて戦け、見て嗤え!かの最高神の一側面、けれども紙装甲のピーキー英霊、本気を出せばハーレム壊滅!!創作世界より目的達成の為、もふもふで賢い家政婦のデリバリーにあがりました!我が名はキャス狐、真名を玉藻の前と申します!!」

「もふもふさせて!!」

「だ、だからこの尻尾はご主人様だけのものです!」

「がおーん!」

「あ、貴方がネコ科のスメルの正体!?誰が喜ぶんですかセイバーライオンとか!FGOにも実装されてないのに!!」

「つーか俺に金的した件まだ恨んでるからな、この淫乱ピンク」

「あ、まだ引っ張るんですかそれ。相当恨んでますね。でも貴方からハーレム臭がプンプンするんですよ?」

 

 おー、テンション高いなこの駄狐。そしてその厚揚げのようなふわふわの耳と尻尾、ちょっともふってみたくもある。ココアはまだまだめげないしょげない諦めないらしいし。

 ・・・・銀さんはなー、お妙さんとかツッキーとかさっちゃんとかとフラグ建ててるから。仕方ない、主人公だもの。主人公は皆一級フラグ建築士の資格持ちなのだ。

 

 

 続いて、もうこいつ一人でいいんじゃないかな、斉木くん。

 

〈僕の名前は斉木楠雄、超能力者だ。この名乗り口上も何万回繰り返したことか。やれやれ、漸く三次元に来れたかと思ったらエセ天使にまんまと騙されていたとはな。全く、普通のヘタレヲタクが主人公でXオルタがヒロインの多重クロス小説なんて需要ゼロだ。これから先の展開が不安しかない〉

「あ、この力の波動・・・・!貴方、ホテルで私のこと見てた奴ね!」

「私のこともストーカーしてましたね!?」

〈ついつい気になってしまってな。それでなくともお前らはマイペースすぎて心配しかさせないんだ〉

「え、ついてきてたの!?もしかして透明人間になれるの斉木くん!?すごいね超能力者って!」

〈まぁな。だが別に大したことないぞ、超能力なんて〉

 

 心配だから側から見守っちゃう斉木くんまじくーデレ。ていうか斉木くんの超能力で大したことないならこの世の全てのキャラの能力はもっと大したことないものになるんだけど。

 結局最強は誰だ論争の結論って、ギャグ漫画のキャラなんだよね。ギャグ漫画では現実のルールが通用しないから。

 

 

 最後に、お待たせしました皆々様、グランドえっ様の登場です!

 

「遥か彼方の銀河系から来ました、バーサー・・・・セイバーの、対・対セイバー用決戦兵器、謎のヒロインXオルタです。好きなものは炬燵に入って本を読みながら和菓子を食べることです・・・・・お腹が空いたので、もう和菓子食べても良いですか?」

「まだお昼じゃないので駄目ですよXオルタさん!」

「対・対セイバー用決戦兵器のセイバーってなんだよ、どんだけセイバー言ったら気がすむんだっての。つーか眼鏡でセーラーでセイバーで宇宙から来たってどんな不思議ちゃんだ、キャラ渋滞しすぎなんだよ」

〈そこまでにしておけよ菌糸類〉

 

 あー、えっちゃんマジかわいい!!その繻子のように輝く髪、飛び出たアルトリウム、琥珀の瞳、黒縁メガネ、季節外れの分厚い上着、川澄ボイス、そしてそのごっちゃごちゃのキャラ設定!!ありがとう星空めておさん、BUNBUNさん!!貴方は神か!!

 奥様方、この子俺の同居人なんでございましてよ!?国宝級ですよねこの愛おしさ!!

 

「ではアマネさん、最後はアマネさんがどうぞ」

 

 んんんんん!?えっちゃん何言ってんのえっちゃん!?

 

「がおーん!」

「そうだよ、私たちこれからアマネくんにお世話になるからね」

「改めて貴方のことを知っておきたいのよ」

 

 えー、俺の自己紹介なんて無価値で無意味だよ?もうさ、始業式のあと『よし、新しいクラスになったから出席番号順に自己紹介するぞー!』とか言う担任はマジで頭おかしいと思う、どぅーゆーあんだすたん!?

 俺が世界で5番目に嫌いなものが『複数の人間の前に立って喋る』ことなのに!!恥晒すだけなんだよ、やりたくないよー!

 

「・・・・・アマネさん、お願いできますか」

 

 Xオルタは、上目遣い、両手を口元に持っていって懇願するように言う。近くで見ると、その可愛さは否応なしに目に飛び込んでくる。

 う、うおあぁぁぁぁぁ!やりゃ良いんでしょやりゃ!!えっちゃんの前で恥かきたくないけど!!

 

 手に3回『人』と書いて飲み込む。深呼吸、深呼吸、深呼吸。目の前の人間は全てオジロスナギツネ・・・・・よっしゃいける!!

 

「え、あ、ささ、桜樹周です、ふふ、不束者で役に立たない非リア童貞ですが、ど、どうかこれかりゃ、よろしくお願いせ、し、しま、す」

 

 そうじゃねえだろ俺ぇぇぇぇぇぇ!!もっとスマートにいけただろ、あーあえっちゃんに引かれたおしまいだぁぁぁぁぁ!!

 

 だけど。

 

「・・・・はい、よろしくお願いしますアマネさん」

 

 Xオルタは、先程と変わらない調子で微笑んだ。ガッチガチに緊張してた俺のことなんて御構い無しに、その愛嬌を存分に振り撒いていた。

 引かれてない。普通に接してくる。こんなキモヲタの俺に。

 

「がおーん、がおんがおーん!!」

「アマネくん、私たちのファンなんでしょ!?いつも応援してくれてありがとう!これからもよろしくね!」

「つーか俺たちみたいなのなんて偉い人間じゃねえんだからそう緊張すんなって。もっと雑に扱ってくれたって良いんだぜ?俺たちのことなんて勝手に住み着いた野良犬か野良猫と思えよ」

「貴方にはこれから迷惑かけることになるわね。ま、貴方に寄り付く妖怪やら虫けらは私が退治してあげるわ」

「あのエセ天使に巻き込まれてさぞかし迷惑を被っているでしょう。しかし私、家政婦として貴方のためにバリバリ働きますよっ!!」

〈ていうかさっきから心の声が五月蝿くて仕方ないんだ。自意識過剰で思い込み激しすぎるぞお前。普通に接してくれ、アイドルじゃあるまいし〉

 

 ・・・・・そうか。俺、この人たちに『ファン』として認知してもらっているんだ。

 俺の名前を、人格を、存在を、確かにXオルタ達は認知しているんだ。俺が皆を知覚できるように。

 

 ––––––––二次元が好きだった。小さい頃たまたま深夜に起きちゃって深夜アニメを知っちゃったのが運の尽き、それからはアニメも漫画もラノベもゲームも大好きで、すっかりヲタクに染まってしまった。

 物語を進める手が止まらなくて。彼ら彼女らの姿に目を輝かせて。心の中で、ずっと応援と賞賛の連続だった。頑張れ、負けるな、凄い、恰好いい、可愛い、素敵だな。

 でも、本当は気がついていた。この声が届かないこと。所詮キャラクター達は創られた存在。俺たちはただ制作に踊らされているだけ。存在しない偶像に金を貢ぎ、愛を捧げてるだけ。

 死んだらおしまい、異世界に転生なんてできない。彼ら彼女らには逢えない。

 それが分かってて、でも愛するのをやめられない。辞めようと思ってヲタク辞められるのなら、俺はとっくに辞めてるよ。

 二次元は存在しない。平面上に描かれた偶像に謳う愛なんて、いつだって一方通行。

 

 そう、思っていて。

 でも昨日、つい昨日、なんでもない日に突然現れた、謎のヒロインX〔オルタ〕。

 エセ天使の先の見えない策略にはまって、俺は変なアプリを手に入れて、Xオルタと暮らすことになって。

 理解があんまり追いつかなくて、流れに身を任せてたら、気がつけば俺の家に、7人も二次元キャラ。

 ちゃんと視えてる、聴こえてる。

 

 ああ。存在したんだ。二次元も、キャラクター達も。

 

 俺の愛は一方通行じゃなかったんだ。ちゃんと、受け取ってくれる人がいたんだ。

 

 無駄じゃなかったんだ。

 

 俺は、ヲタクやってて良かったんだ。

 

「・・・・・ありがとうございます。その、皆さんこれからどうかよろしくお願いします」

「はい。アマネさんと出会えて、嬉しいです」

 

 アマネさんと出会えて、嬉しいです。アマネさんと出会えて、嬉しいです。アマネさんと出会えて、嬉しいです。嬉しいです。嬉しいです。です。です。です。

 

 その、確かな声。えっちゃんが存在して、俺に会えて嬉しいと言ったという確かな真実。

 緊張はほろりと解けていき。ずっと築き上げていた何か堅いものが心から外れていく。

 

 あ、やばい、先に言っときます、ここから先読まなくていいですよほんと。

 

 

 

 

 ぷつん。何かが、切れた。

 

 

 

 

 

「えっちゃん可愛いバンザイヤッタァァァァァァ!!ていうか最初に出会ったのがえっちゃんで良かったっていうか、ほんときのこ一生拝むわ!!控えめに言って天使!!神様ありがとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!そしてえっちゃんからのセイバーライオンんんんんん!!完全にこの子だけ場違い感半端ないけど流石アルトリアだわ堅物だわー!!早く実装しないかながおトリア!!更にそこからの主人公トリオよ、銀ちゃんココア霊夢って!!豪華すぎるよギャラはおいくら万円!?銀さんマジ通常運転!!でも恰好良いよ銀さぁぁぁぁぁん!!銀魂いつ終わるのかな、別に終わんなくて良いけど!!ココアのお姉ちゃん願望強すぎえっちゃんにお姉様って言われて死にかけてらぁぁぁぁぁ!!あー、ごちうさ3期おめでとうぅぅぅぅ!!これで晴れて難民卒業だわ、4期も待ってます!!そして腋巫女しとるわ霊夢ぅぅぅぅ!!賽銭箱三次元にまで持ってきたんだ、どんだけ欲しいの!?ココアと仲良ししてるのほんと百合ゆりだわー、萌え萌えだわー!!で、玉藻さんだよぉぉぉぉぉぉあー、もふもふしたいぃぃぃ「だがモフる」したいなぁぁぁぁぁぁ!!玉藻さんマジ駄狐、とりあえずココアちゃんにモフらしたげてぇぇぇぇぇぇ!!うおぉぉぉぉぉぉ斉木じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!心の中読まれてんのマジ恥ずいわ、ほんっとごめんねこんなキモヲタの心の中垂れ流しにして!!今すぐ心閉じる術覚えてくるわ!!てか斉木くんマジ万能そして安定のやれやれ!!安定のくーデレ!!こいつらが同居人なの!?こいつらがうちに来るの!?これからどんどん増えるの!?大丈夫俺!?命日はトゥデイ!?神よ仏よどうにかしてくれ!!生きてて良かった、バンザーイ!!世界ありがとうぅぅぅぅ!!最後に言わせて、『我が生涯に一片の悔いなし』!!」

 

 

 

 

 しん、と水を打ったように静まり返る空間、痛いほど刺さる沈黙。

 

 –––––––あれ、俺、もしかしてやらかした。うん、やらかしたな、胸の内全部言ったな?

 

 沈黙の帳を開いたのは、Xオルタのか細い呟き。頰を紅潮させ、指を絡ませながら、その言葉を空気に乗せる。

 

 

・・・・・・あ、あり、がとうございます・・・・?

 

 

 他のメンバーは同じような感じで、困惑したように目を合わせてくれない。

 

 あ、やばい。やらかしたやらかした、最後の最後にやらかしました。

 

 ドン引かれたよ。よりにもよって推しにドン引かれたよ。

 

 うん。はい。なるほど。とりあえず、

 

 

 

「・・・・・・・・・・死にます」

 

 その言葉を最期に、俺の意識は散逸した。

 

 

 

 




夢のヒーロー『さて、あれから1日が経ったがまだ裕太が来ない。・・・・・・まさか、何か危機に晒されているのか?くっ、どうにか此処から出られないものか・・・・』



セーラー服の似合う主人公「えーっと、じゃあこのショートケーキで・・・・・」

軍服の決まってるヒロイン「あー、私はチーズフォンデュセットで」

書生になる予定だった神さま「私は・・・・あー、マカロンタワーBセットと・・・・トマトジュースってある?」

やれやれ幼女「うーん、今から用意しますね!なるほど、ジュースですか・・・・・」

メイド服を着させられた友人「ていうか、このゴルゴンゾーラってチーズ、怪獣の名前かっての。あ、俺はモンブランでおねがいしまーす」

「かしこまなのです!いやー、忙しくなってきましたね信勝!」

未実装シスコン「はぁ・・・・なんでこの僕が年下の女にこき使われなきゃ・・・・・この給仕服もさっさと脱ぎ捨てたい・・・」

「文句言わない!メイド服が嫌ならミニスカ着物にしますよ?」

「だからなんで女物なんだよ!?」


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序章終了をお知らせします。

謎のナマモノ『ノブ!ノッブ!!』

自称天使「うんうん、なかなか良い調子みたいだね?でも開催までは我慢してよ?」

「チュートリアルとプロローグはこれにて終了。・・・・・さぁ、始めようか」


 ––––––––周くん、周くん。起きたまえ。

 

 意識は現世へ浮上。最早聞き慣れてしまったその声で、俺は目覚める。下が柔らかい。寝慣れたベッドの上。どうやら俺は眠っていたらしい。

 

 ふと。思い出す。

 

 つい先程の失態。隠すべき地の文、モノローグを露わにするという大失態を犯したこと。

 

 うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 確実に嫌われたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ドン引きしてたぁぁぁぁぁ!!

 

 悶絶する。恥ずか死ぬ。このまま地獄に堕ちて仕舞えばよいのだと、自棄になって頭を壁に打ちつける。当然痛くて、その場に蹲った。

 

「周くんどうしたんだい?何かやらかしたとか?」

「エルさんには関係ないでしょ・・・・」

 

 ベッドの上の自分を見下ろす、天使を騙る青年。なんだっていうんだ。俺はもう誰にも会いたくない、一年は引き篭もっていたい。

 だが空気の読めないエルは続けた。

 

「周くん。君にお知らせがあるんだ」

「・・・・・お知らせ?」

「アプリを開いてごらん」

 

 言われた通り、スマホの電源をつけてアプリを・・・・・『二次元召喚プロジェクト』を開く。画面に広がるタイトル。

 それに乗っかり、表示されるメッセージ。

 

 

【予告】ぐだぐだ二次元召喚〜ちびノブの叛逆〜 〔詳細〕

 

 

 

「・・・・・・何これ」

 

 予告?ぐだぐだ?ちびノブ?・・・・・まさか、イベント?これってイベントとかあるんだ、かったるい。えっちゃんとのんびり暮らさせろ。

 

「実は来週の月曜からイベントがあるんだ!勿論僕が主催だよ?」

「興味ないです。拒否権は?」

「ないよ!つまらないこと言ってないで参加してよ。報酬も豪華だから」

 

 報酬?・・・・・イベントって言うぐらいだから何かあるのだろう。しょうもないのだったらぶっ殺す。

 〔詳細〕をタップすると、新たな画面が表示された。

 

【予告】ぐだぐだ二次元召喚〜ちびノブの叛逆〜

 

 〈イベント開催期間〉ラスボスを倒すまで

 

 〈イベント内容〉街に溢れたちびノブ達。同居人達と協力して強力なちびノブの軍勢を討伐しましょう!

 

 〈報酬〉⦅同居人⦆ちびノブ、⦅アイテム⦆新撰組の羽織、⦅アイテム⦆聖杯、⦅機能⦆ショップ

 

 同居人・・・・つまりはちびノブをゲットできるってわけか。配布?新撰組の羽織、は・・・・着せ替えアイテムみたいな?そして聖杯。本物だったらヤバイな。ショップ機能・・・・・エルが店員なのか?

 

「ね、参加してくれるかい?」

「・・・・・・Xオルタ達に聞かないと」

「ま、そうなるよね!」

 

 でもなー!聞きに行けないなー!だってあんなことやらかしたもんなー!・・・・・・・しばらくアプリいじっとこ。

 

 メッセージを閉じ、タイトル画面をタッチするとメニュー画面らしきところに入る。

 

 

 

 設定

 

 お知らせ

 

 キャラルーム

 

 ステータス

 

 

 

 ・・・・・ステータス?

 気になって開けば、並ぶキャラ名。Xオルタ、セイバーライオン、ココア・・・・・同居人のステータスってこと?

 ソシャゲっぽいアプリだとは思っていたが、イベントだけではなくステータス表示もあるのか。レベルとか状態異常とか表示されるのか?

 とりあえず、Xオルタを押してみよう。

 

 

 

 謎のヒロインX〔オルタ〕

 

 出典『Fate/GrandOrder』

 

 状態 元気

 

 親密度

 

 

 親密度?絆レベルみたいな?てかあるの!?見ると、親密度の項目はボタンのような表示になっている。押さないと見られないってことか。

 ・・・・・し、親密度って見ていいよね?犯罪じゃないよね?

 よーし、見るぞ!せーのっ

 

『アマネさん』

 

 きえあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!・・・・思わず奇声をあげそうになって、ぐっと堪える。

 

 Xオルタがいる。画面の中に。ステータスの壁にもたれて、此方を見ている。今一番会いたくない人間だ。

 

『アマネさん、起きてますね。お昼ご飯食べませんか』

「うえ、えええええXオルタさん。なんでこんなところに?」

『何故って、私たち同居人は自由にスマホに出入り出来るのですよ』

 

 そうだった!すっかり忘れてたよ、あー、心臓止まるかと思った。

 そんなことより気になるのはXオルタの態度。なんだか普通すぎやしないだろうか。先刻の俺の心の叫びを聞いていらっしゃらなかったのだろうか。それとも引きすぎて神経凍りついたのだろうか。

 

「あ、あのXオルタさん。俺さっき、そのー・・・・・ちょっと感極まって叫んじゃったんだけど。もしかして聞いてなかった?」

『聞いてました、ばっちり』

「やっぱり!?じゃ、じゃあなんで、・・・・そんな普通に接してくるんだ?」

 

 Xオルタは深い溜息をついた。それは呆れの表現のようで、俺の背筋に寒気が走る。やはり嫌われてしまったか?

 

『・・・・・・アマネさん。先程のは聞いていました。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 Xオルタは言う。真顔で。その声に変化はなく、まるで『太陽は東から昇る』と当たり前のことを言うかのように。

 

『私たちの世界には、アマネさんよりもっと濃くて、もっと面倒で、もっと軽蔑すべき、ごみのような人間が沢山存在します。ですので、あれくらいの本音で私たち(二次元民)をドン引かせられると思わないでください、ね』

 

 そこに、瞋怒も呆れも侮蔑もない。感情の揺れは凪のように皆無。いつもの調子で、Xオルタはただそれだけを伝えた。

 

 そうか。考えてみればすぐ分かるじゃないか。なんて俺は馬鹿なんだ。数分前の自分を嘲笑する。

 

 常人なら、アレを聞けば即座にドン引き、次の日からは目も合わせてもらえないし口も聞いてもらえないだろう。俺の地位はカースト底辺まで墜落。

 だが、相手は一般人ではない。二次元のキャラクター達だ。数多の修羅場を潜り抜けてきた猛者達。そんな彼ら彼女らにいくらキモヲタの胸の内を聞かせたからといって、たかが俺如きがえっちゃん達の心を動かせるわけがないのだ。

 

 ・・・・・まぁ俺が気持ち悪いのに変わりはないのだけど。

 

『それにですよ、アマネさん』

「えーと、なんですかXオルタさん」

 

 不意にXオルタは俯き、何やら躊躇った。真実を伝えるべきなのか、迷っているような、そんな態度。しかし一瞬ののち、Xオルタはゆっくりと言葉を紡いだ。

 

『アマネさんの、ほんとの気持ち。・・・・・伝えてくれて、嬉しいです。・・・私たちのこと、二次元のこと、すごく大好きっていうのが、理解できました。・・・・・皆、驚いてましたけど。アマネさん、あんなに叫ぶとは思ってなくて。でも、・・・・・だからその、全然気持ち悪いなんて思ってません。ありがとうございます』

 

 Xオルタは、恥じらいを少し見せながらも微笑みを浮かべて。それはバーサーカーとは思えないほどに理性的な言葉だった。一所懸命に気遣い、なるべく本当のことを伝えようとしていた。

 胸を撫で下ろして安堵した。良かった。悪いようには思われてないらしい。

 

 ・・・・・てかえっちゃんヒロインすぎるよ!えっちゃんバーサーかわいいバンザーイ!!ヤッター!!

 

『アマネさん、お昼ご飯、食べましょう』

「・・・・・そうだね。ごめんなさい、心配かけて」

「うんうん、周くんは考えすぎなんだよ」

『・・・・・貴方は黙ってください。斬りますよ』

「僕だけ扱い酷い・・・・」

 

 画面上に光を湛え、瞬時にXオルタが現れる。実体を持った、Xオルタ本人。それが俺のベッドの上に。

 ・・・・・いやいやいや、そんなエッチなことはノーサンキューですから、考えただけで失神する!!てか一瞬エロいこと考えた俺は死刑だ!け、健全なお付き合いしましょうよ?俺はそのつもりですよ?

 

「行きましょう、アマネさん」

「・・・・うん、Xオルタさん」

 

 手を差し出される。反射で握る。白くて硝子細工のような小さな手は、触れるだけで壊れてしまいそうで。でも、確かに温度を持っている。ちゃんと伝わっている。彼女は生きている。俺の目の前にいる。

 

 ただ、それだけが途方もなく嬉しい。

 

 えっちゃんが・・・・・そして皆がいれば、この先なんとかなるんじゃないかと。根拠もないのに、そう思えた。

 

 

 

 昼ご飯を食べにリビングに行った俺を見とめたココアはひどく慌てていて、なんとも思ってないから、アマネくんとの関係はこれからも変わらないからと必死に弁明をされたものだ。

 

 銀さんも霊夢も玉藻も斉木も、勿論セイバーライオンも何も気にしてない様子だった。さっきのはなかったことになってるみたいで、誰も俺の叫びに言及しなかった。

 

 俺も忘れることにした。皆がドン引かなかったとはいえ、これからはもう少し感情と本音を抑えて生きていこうと誓った。普通に考えて、感極まって叫ぶ奴はアブナイ奴だと思う。あと近所迷惑。

 

 ・・・・・そういえば、イベントはぐだぐだだったな。ってことは、もしかしてノッブや沖田さんに会える?期待に胸を弾ませながら、俺は味噌汁を啜った。

 

「アマネさん、これからどうしますか?」

 

 そのXオルタの問いで、全員が俺の方を伺う。え?俺に判断を委ねられても。

 

「がおん、がおん!」

「貴方は皆の同居人。家主のようなものなのですから、これからの色々については遠慮なく貴方が決めてください、周様?」

 

 様。敬称をつけられると、むず痒い。俺は家主なんて身分じゃないんだけど。

 ・・・・まぁ、イベントの話はすべき、だよね。ぐだぐだってことはえっちゃんや玉藻にも関連する話だから。

 

「・・・・・えっと。じゃあとりあえず、イベントが開催されることになったんだけど・・・」

 「はい!?」

「・・・・え、エルさんが開催するって言い出して・・・」

「そうだよー!さぁ皆、盛り上がっていこうじゃないか!!」

「・・・・やっぱり殺しますか、このエセ天使」

「がおーん・・・!」

「イベント!?楽しそうだね!でもエルさんは一回息止めてね?」

「おうおう上等だ、俺のかめはめ波が火を噴くぞ」

「貴方そんな技使えたの?まぁ私が弾幕で虫喰いにしてやるから良いけど」

「みこっ、再度太陽に代わってお仕置きしてやりましょうか!?」

〈やれやれ。全く、こうなる気はしてたがな〉

 

 

 二次元より召喚されたキャラ達と、ヲタクな俺の日常の序章は、こうして幕を閉じ。自称天使の策略により、新たな戦い(イベント)へと身を投じることになるのだった。

 

 

 

 




次回予告

時はぐだぐだ、戦乱の世。

織田と新撰組がわちゃわちゃしているのを横目に平穏な日々を送っていたヲタク町人の桜樹周の前に現れたのは、妖刀『禰黒禍離刃』を携えし闇の女剣士越玖珠織堕、通称『えっちゃん』。そして天使を騙る謎の青年『恵瑠』、かつて妖から都を救った聖獣『聖羽雷庵』。

周はえっちゃん達のある目的達成の為、彼女らと行動を共にすることになる。

のちに仲間となったのは、『白夜叉』の異名を持つ流浪の侍『坂田銀時』、妖退治を生業とする空飛ぶ巫女『博麗霊夢』、姉に強い執着を持つ町娘『保登心愛』。

更に、幕府おかかえの女呪術師『おたま』、冷静沈着な村人(?)『斉木楠雄』も一行に加わり、旅はますます賑やかになる。

しかし平和な時は続かない。突如江戸に謎の物の怪が大量発生し、災厄を振り撒いているとの一報が入ったのだ。

果たして彼等の運命や如何に・・・・


えっちゃん「・・・・なんですかこの次回予告。設定から違うのですけど」

※嘘予告です。信じないでください。







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0.5章 幕間をお知らせします。 二次元戦隊 ゴレンジャイ

お馴染みゴレンジャイパロです。

まだ同居人になってない沖田さんとノッブがいますが気にしないでください。

これはギャグ時空です。ギャグとは何をやっても許される夢の許可証なのです。

そんなことよりキングプロテアを実装してください運営様。



某所 どこかの家

 

沖田「さてと、テレビテレビ・・・・・早くしないとニジトーーク!始まっちゃいますよ・・・・ポチッとな。おっ、やってますね!」

 

そそくさと炬燵に入って暖をとり、トーク番組を見始める沖田さん。

しかし、忍び寄る魔の手により、ごく普通の平和な時間は終局を迎えた。

 

突如。沖田は炬燵の中に引きずりこまれる!

 

沖田「きゃあぁぁぁぁぁ!!なんですかぁぁぁぁぁ!?」

 

信長「はっはっはっはぁ!!儂の真名は織田・・・・じゃなくて、髑髏仮面!!お主は今日から儂のカキタレになるのじゃ!!ハーメルン読者の皆さんに沖ノブのレズセを見せつけてやるのじゃー!!」

 

沖田「いやぁぁぁぁぁ!!百合展開は霊夢さんとココアちゃんだけでしよ!?いやー!土方さん助けてー!!」

 

第六天魔王波旬 髑髏仮面により、沖田の純潔が危機に晒されようとしている!!

助けを呼ぶ悲痛な病弱美少女の声・・・・・このままでは小説のタグに『ガールズラブ』と『沖ノブ』が追加されてしまう!!

 

その時!

 

「待てい!!」

 

信長「ッ!!何者じゃ!!」

 

流れ出す勇敢なBGM!それはヒーローの登場を俊述するものであり、同時にヴィランの死刑執行の予告でもある!

 

 

 

Xオルタ「アカレンジャイ!」

 

ココア「キレンジャイ!」

 

銀時「アカレンジャイ!」

 

玉藻「キレンジャイ!」

 

霊夢「アカレンジャイ!」

 

 

 

「5人揃って!!」

 

「ゴレンジャイ!!」

 

 

5つの勇気が此処に集った。彼等こそ、正義の味方『二次元戦隊ゴレンジャイ』!!

 

霊夢「さぁ、今のうちに逃げなさい」

 

沖田「はい!」

 

霊夢「早く逃げなさい!!」

 

沖田「はい!」

 

ひとまず沖田さんの貞操は守られた。此処からは、ゴレンジャイと髑髏仮面の戦い、秩序と混沌、善と悪のぶつかり合いとなる!

 

相対した髑髏仮面。ゴレンジャイを一周眺め、ごくりと息を呑む。そして髑髏仮面は言い放った・・・・

 

信長「・・・・違う」

 

ココア「え?」

 

信長「そなたらおかしいぞ。なんて?何?そなた何と?」

 

ココア「・・・・ゴレンジャイ?」

 

信長「ゴレンジャイではない、そなた何色じゃ?」

 

ココア「キレンジャイだよ!」

 

「5人揃って!!」

 

「ゴレンジャイ!!」

 

信長「待て!!ちょっ、待てい!!な、何じゃ、そなたは何じゃ?」

 

ココア「キレンジャイだよ!」

 

信長「して、そなたは?」

 

玉藻「キレンジャイでございます」

 

信長「おかしいじゃろ!なんで黄色が2人もおる!?」

 

Xオルタ「アカレンジャイ」

 

信長「あー、うん。そなたはそれでいいぞ。で、そこな天パは?」

 

銀時「アカレンジャイ!」

 

信長「そこの脇巫女は?」

 

霊夢「アカレンジャイ!」

 

「5人揃って!!」

 

「ゴレンジャイ!!」

 

信長「違う違う!ちがあああう!!おかしいじゃろ!!なんで赤が3人で黄色が2人おるんじゃ、そなたらのスポンサーはマックか!?」

 

玉藻「あのー、だからその、私たち色とかそういうのじゃないんですよ」

 

信長「はぁ?」

 

ココア「ひとりひとりの個性を見てほしいの」

 

ココアは語る。人間の魅力は外見のみにあらず。内面も磨いてこそ、その魅力が外に出でるのだと。

私たちは、ナンバーワンではなくオンリーワンになればいい。世界にひとつだけの花なのだから。

 

信長「いや、そんなこと言っても。ちびっこは見た目じゃぞ?」

 

やはり悪道を極めた魔人に、人間の正義、清い心というものが理解できるわけがないのか、髑髏仮面は表情を微塵も変えない。キレンジャイAの言葉は、全く届いていないのか。

 

ココア「でもそれは・・・・・努力でなんとかしていけばいいと思う!」

 

Xオルタ「そうです」

 

ココア「だから・・・・皆同じ赤に見えるかもしれないけど、たとえば銀ちゃんはすっごく先生思いなところがあって。ひとついい話があるんだけど」

 

信長「いやいやいや、そんなんいいから。そんなことよりそなたらおかしいと思わんのか?なぜそなた以外に赤が2人おるのだ」

 

Xオルタ「斉木さんと同じこと言ってる・・・・」

 

信長「それ斉木の言ってることが正しいわ。おかしいじゃろ、自分以外に同じ色がいる時点で戦隊成立しとらん!」

 

銀時「だから中身で・・・・」

 

信長「中身など知らん!」

 

「5人揃って!!」

 

「ゴレンジャイ!!」

 

信長「だから成立しとらんって!!」

 

玉藻「私は良妻!」

 

信長「え?いや、そういうのはわからないんじゃが」

 

霊夢「わかったわ。私辞める」

 

信長「そういう気の悪いことを言うな!てか辞めて済む問題じゃないヨネ!そなたが辞めてもまだ赤2人いるし!」

 

ココア「仕方ない、私緑やるよ!」

 

信長「おおっ、やっと問題が解決の方向に」

 

玉藻「じゃあ私も緑やります」

 

信長「なんでじゃ!?」

 

玉藻「イメージカラーがピンク同士だから・・・・」

 

信長「違う!そういうのじゃなくて!!そなたが緑やるんじゃったら駄狐は黄色のままでいいじゃろ!てかイメージカラーがピンクならモモレンジャイやれ!!」

 

Xオルタ「もっきゅもっきゅ・・・・・」

 

信長「何食べとるんじゃー!」

 

ゴレンジャイのチームワークにより、髑髏仮面は激昂し疲弊していた!ゴレンジャイの絆は魔人に簡単に壊せるものではないのだ!

 

信長「おかしいじゃろ!そなたらの為に言っとるんじゃぞ儂は!」

 

Xオルタ「えーと、では・・・・今日は戦ってもらえないのですか」

 

信長「そうじゃろ、そなたら一回話し合わんか!戦隊じゃろ、いつも一緒にいるじゃろ?」

 

ココア「・・・・・私、銀ちゃん達とは初対面で・・・」

 

信長「は?仲間ではないのか?」

 

銀時「えーと・・・・今日紹介されて初めて結成したんだけど」

 

信長「そうなのか!?・・・・じゃあ駄目じゃ、もっと練習すべきこともあるじゃろう。あのな、儂なんか何百年もこれやってるんじゃぞ。何百年も第六天魔王やってるんじゃぞ?」

 

一同「・・・・・・」

 

信長「そうしてやっとひとり立ちして、沖田と組んでぐだぐだして、ソシャゲに実装されたかと思ったらまたぐだぐだして、そうやって生きてきたんじゃぞ」

 

一同「・・・・・・」

 

信長「そうじゃな、また来週ぐらいに此処で会おう。そこでそなたらの答えを見せてもらう」

 

一同「・・・・・・」

 

信長「それではさらばじゃ、ゴレンジャイ!あっ、最後に言い忘れてた!是非もないヨネ〜!!」

 

ゴレンジャイの正義の鉄槌により、魔の脅威は去った。しかし、髑髏仮面との再戦は遠くないだろう。

 

戦え、ゴレンジャイ!

 

進め、ゴレンジャイ!

 

二次元と三次元の平和を守る為に––––––––!!

 

 

 

 

 

監督 セイバーライオン

 

脚本 桜樹周

 

ナレーション エル・ティアクローバー

 

キャスト

 

女性 沖田総司

 

髑髏仮面 織田信長

 

アカレンジャイA 謎のヒロインXオルタ

 

キレンジャイA 保登心愛

 

アカレンジャイB 坂田銀時

 

キレンジャイB 玉藻の前

 

アカレンジャイC 博麗霊夢

 

 

 

 

Xオルタ「という夢を見ました」

 

斉木〈夢オチ?〉

 

 

 

 

 

 




次回は銀魂パロの予定です。何の回かは決めてません。

まだ出てないキャラを本編に先立ち先行登場する予定です。(本編進めてから出すのが面倒ともいう)


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同居人で銀魂マユゾンパロ+おまけ

銀魂マユゾンパロです。

次回からはぐだぐだ編がスタートする予定です。

ちびノブを実装してください運営様。




あらすじ

 

なんやかんやで周とはぐれちゃった同居人たち(斉木はどこかのスイーツバイキングに行った)。

そこでエルがうっかりで撒き散らしたウイルスによりマユゾン化した人々に襲われ、咄嗟にデパートのエレベーターに乗り込む。

彼らの運命や如何に・・・・・

 

 

 

 

 

玉藻「はぁ、はぁ・・・・全員無事ですか?」

 

銀時「1、2、3、4、5、6・・・・よし、全員いるな」

 

ほっと胸を撫で下ろしかけて、霊夢はハッと違和感に気がつく。巫女の直感は鋭い。特にこのような非常時には。

 

霊夢「いや、ちょっと待ちなさい。6人?ほんとにちゃんと数えたの?」

 

銀時「んだよ、大丈夫だって。ほら、俺に、お前に、Xオルタ」

 

Xオルタ「はい」

 

銀時「ココア」

 

ココア「うん!」

 

銀時「玉藻」

 

玉藻「みこっ」

 

銀時「セイバーライオン・・・・」

 

骨つき肉『・・・・・・』

 

銀時「よし、全員いるな」

 

霊夢「待たんかーーーい!!」

 

銀時がセイバーライオンと称したのは、骨を串のように刺した肉塊。少なくとも生命体ではない。それをセイバーライオンと称するその神経を霊夢は疑う。

 

霊夢「セイバーライオンって・・・・・これセイバーライオンのお肉カリバーじゃないの!?」

 

銀時「そうだよ。セイバーライオンは骨つき肉だよ」

 

霊夢「そうじゃなくてセイバーライオンの骨つき肉しかないのよ!!くっ、一階に置いてきたんだわ!早く戻らないと!」

 

Xオルタ「あそこに戻ったら皆ゾンビになっちゃうじゃないですか。私あんな眉毛になるの嫌です」

 

銀時「それによく考えろ・・・・・これ、ぶっちゃけセイバーライオンじゃね?」

 

霊夢「どこからどう見てもただの骨つき肉よ!!」

 

銀時「いやいや、現実から目を背けずに考えろ。一階に残されている猛獣とこの骨つき肉、どっちがセイバーライオンだ?」

 

霊夢「貴方が現実を見なさいよ!!」

 

Xオルタ「一階にいるのはもうただのライオンです」

 

霊夢「セイバーライオンはライオンじゃないの!!確かにこの肉があの子の(セイバー)だけど!!どっちにしろ一階のナマモノがセイバーライオンよ!!」

 

指摘する霊夢に対し、Xオルタはやれやれと言わんばかりに肩を竦め、ココアに微笑みかけた。

 

Xオルタ「何言ってるの、霊夢さん。こっちがホンモノですよ、そうですよねがおトリアさん」

 

ココア「がおーん!(無駄に裏声)」

 

霊夢「貴方はうざいから黙ってなさい!イラッと来るから!!」

 

ひどいよ霊夢ちゃん!とココアは涙目。霊夢は苛立ちで今にも弾幕を撃ってしまいそうだが、外はマユゾンだらけと思いぐっと堪えた。

 

玉藻「霊夢様。太古の昔から、人々の間では人間の心というものが何処にあるのか取り沙汰されてきました。それは心臓?それは魂?それは脳?・・・・・私は違うと思います。それは、骨つき肉・・・」

 

霊夢「貴方達に心はないの!?・・・・私たち、セイバーライオンのお陰で助かったのよ。もういいわ、私だけ一階に降ろしなさい!!」

 

吐き捨てるような怒号。霊夢はエレベーターのボタンに指を伸ばす。

その時。エレベーターが停止した。モニターに映る数字は『3』。

 

霊夢「あら?3階?ちょっと、私は1階に降りるって言ったのよ」

 

銀時「は?俺は屋上のボタンしか押してねーぞ」

 

玉藻「3階で待っている人がいるのではないですか?」

 

あー、なるほどと納得・・・・しかけて一同は血の気が引いた。今このデパートはマユゾンだらけ。ならば3階にいて、ボタンを押した者として可能性が大きいのは・・・・・・

 

銀時「開くなぁぁぁぁぁぁ!!止めろ!!奴等が来るぞ!!」

 

必死に閉じるボタンを連打するも。あえなくチーンという音と同時にエレベーターの扉は開き、3階とエレベーター内を繋いでしまう。

だが、扉の向こうにいたのは。

 

???「・・・・・」

 

青い髪の小柄な少女。右手には何かぬいぐるみのようなものをつまんでいる。

ココアは目を見開いて少女に駆け寄った。

 

ココア「チノちゃん!?なんでこんなところに!?・・・・あっ、それって」

 

チノは無言でぬいぐるみを差し出した。銀時が受け取る。そのライオンを象ったぬいぐるみのような生物、それはまさしくセイバーライオンであった。

 

ココア「チノちゃんセイバーライオンちゃん助けてくれたんだね!流石私の妹だよ!」

 

チノ「・・・・・・」

 

チノは喋らない。ずっと俯き、顔を見せない。その様子から不気味なものを感じた霊夢は、少し屈んでエレベーター内からチノの顔を伺った。

 

その長い前髪で隠されてはいるものの。ちらりと目に映ったそれは、黒くて太く、カモメのように繋がっている眉毛だった。

 

全員「・・・・・・」

 

銀時は、ココアに悟られぬよう足音を潜めてそっと移動し、静かに・・・・まさしく夜叉の如く、敵を背中から斬り殺すように。閉じるボタンを押した。

エレベーターの扉が冷酷に無関心に閉まる。直後、断末魔が響いた。

 

ココア「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

エレベーターが上昇していく。希望を残した、屋上へ。不憫な少女を、地獄に残して。

 

霊夢「銀時・・・・」

 

銀時「何も言うな。・・・・彼奴の死を無駄にするな」

 

霊夢「いや、そうじゃなくて、セイバーライオン・・・・・チノっていうあの子が連れてきたってことは・・・・・」

 

地面に座らせていたセイバーライオン。

誰もかれもが、息を呑む。背筋に走る寒気。

恐る恐る、視線を注いだ。

 

セイバーライオン「ぐがおぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!」

 

その凛々しいアルトリア顔には、濃いかもめ眉毛が刻み込まれていたのだ。

 

全員「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

この後、斉木がエレベーターの扉をぶっ壊して救出に来てくれたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ 斉木が活躍してないのでゆるく会話パート

 

 

 

玉藻「斉木様、超能力が使えるそうですね?ちょっと朝ごはん作るの手伝ってくださいませんか?」

 

斉木〈面倒くさいから断る。大体そうやって万能なものに頼ってると堕落するぞ。お前の夢は良妻だろ玉藻さん、自分で作れそのくらい。そんなんだから腹黒だの駄狐だの紙装甲の使えない鯖だの淫乱ピンクおばさまだの言われるんだ。それに僕が作ったって誰も喜ばない。お前が心を込めて丁寧に作るから美味しいんじゃないか〉

 

玉藻「な、何ですって!?年上で英霊の私に対しなんて偉そうな言い方を!!訂正しなさい、私は淫乱ではな・・・・・・ん?もしかして最後デレられました?」

 

斉木〈デレてない〉

 

玉藻「またまた〜、素直じゃない男の子ですねえ。そんなんじゃモテませんよ?」

 

斉木〈煩い。いい加減にしないとテレパシーで受信したお前の黒歴史を全国のハーメルン読者に公開するぞ〉

 

玉藻「な、ななな!?そんなことされたらお嫁に行けない!!」

 

斉木〈幸せ夫婦生活を送りたいなら、僕に余計なことを言わないことだ〉

 

玉藻「ところで斉木様。私今洋菓子作りに挑戦してまして、さっきコーヒーゼリーが丁度出来たところなんですが」

 

斉木〈やれやれ全く、このぽかぽかモフモフ良妻狐め。まぁ野菜を切るくらいなら手伝ってやってもいいがな〉

 

玉藻「チョロい」

 

 

 

 




エル「あれ、僕の出番なし?」

周「オリキャラはお呼びでないそうです」


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桜樹家の同居人達 その1

登場キャラまとめです。随時更新していきます。

最新話までのネタバレ注意。


桜樹周(さくらぎあまね)

 

年齢 16歳

誕生日 8月14日

血液型 O型

干支 未年

星座 獅子座

身長 170cm

体重 55kg

 

長所 空気が読める

短所 優柔不断、不器用、行動力がない・・・・ありすぎて書けない

 

特技 速読、空気を読む、寝落ち

趣味 アニメ鑑賞、読書、ゲーム

 

好きな食べ物 ジャンクフード、甘いもの、焼きそば

嫌いな食べ物 牡蠣、納豆、わさび

 

好きなジャンル 明るいコメディ系、人気なものを広く浅く。

好きな音楽 主にボカロやアニソン、一番好きなのは『トリノコシティ』。ボカロやアニソン以外ならRADWIMPS

好きな映画 アニメ映画、それ以外なら『メン・イン・ブラック』

推しキャラ えっちゃんが一番。大体ハマるのは三番手くらいのヒロイン。

 

座右の銘 『ヲタクならば影に生きるべし』

 

 

本作の主人公。

 

物静かで大人しく存在感がない、読書が趣味の草食系男子。・・・・と、学校では思わせている。

実際はキモヲタを自称するほどのガチのアニヲタ。美少女ものから少年漫画まで、人気どころは大体カバー済み。美少女もイケメンも等しく好む。二次元至上主義で、アニメを見たりゲームをしたりしながら駄菓子を貪る毎日を過ごしていた。

 

親が出張が多い為一人暮らしで、友達もおらず当然彼女もいない。彼女なら二次元にいますし?と思っている。実はちょっと寂しい。だが元々ひとり遊びを好むタイプのため他人と関わる気がない。しかし何故かクラスの人気者である恋泉が構ってくる。学校ではヲタクを隠している。

 

斉木曰く、『心の声が喧しい』。Xオルタ達の前で本音がアグレッシブに漏れた時はひどく動揺し悶絶した。でも受け入れてくれたのでとても安心している。

Xオルタ達が同居人になってからは、溢れ出す二次元愛を必死に抑圧して過ごしている。毎日楽しい、生きてて良かった!と思っている。

キャラ達が楽しく過ごせるようにしたいとは願っているものの、自分如きがXオルタ達と仲良くしていいのかと不安になることもある。

女の子っぽい名前が地味にコンプレックス。

 

 

 

エル・ティアクローバー

 

天使を自称する謎の青年。『二次元召喚プロジェクト』の運営でもある。一応イケメンではあるが、格好も言動も怪しいので周からは不審者扱いされていた。

天使かどうかは別として、何やら術らしきものは使えるようで、Xオルタ達の部屋をアプリ内に作ったり、『魔法のクレジットカード』を作り出したり、炬燵を出したりと色々便利。

『二次元キャラは三次元の人間には認識できない』という大事な大前提を伝えていなかったり、ゲームに利用したりした為、キャラ達にひどく嫌われていて、毎回殺されかける。

天使のくせに和食が好きで、どうやら学校にも行っていたらしい。

 

 

 

No.001 謎のヒロインX〔オルタ〕

 

出典 『Fate/GrandOrder』

 

本作のメインヒロイン。とってもかわいい。

 

ちょっとずぼらな、世にも珍しき文系バーサーカー。その正体は謎のヒロインXを打倒するために生まれた暗黒騎士団ダークラウンズの生き残り。だが本人は和菓子と文学と炬燵を愛し、日々をのんびりと過ごしている、極めて真面目なバーサーカー。

セーラー服、眼鏡、暗黒騎士、アルトリア顔、オルタと属性てんこ盛り美少女で、周は実装当時からずっと推している。

周が最初に出会ったキャラで、最初の同居人。

ココア達とは三次元に飛ばされた時から行動していたのだが、和菓子に目を奪われてはぐれたらしい。

和菓子をくれ、家に住まわせてくれた周には感謝している。

 

 

 

No.002 セイバーライオン

 

出典 『フェイト/タイガーころしあむ』etc

 

本作のマスコット。

 

ライオンの着ぐるみを着た小さなアルトリア・・・・一応青王とは別個体。虎聖杯から生まれたナマモノで、『がおん』としか喋れないが、ちゃんと知性を持ち、意思疎通が可能な獣。オリジナル同様かなり大食い。持っている骨つき肉は『聖剣ニクスカリバー』というらしい。

どうもエルの助手らしいのだが、今のところ助手らしいことを一切していないし、エルのことは他のキャラ同様嫌っている。それどころか完全にXオルタのペットになっている。

Xオルタはどうやら彼女の言っていることが理解できるらしく、専属の通訳となっている。また、Xオルタから『がおトリア』というあだ名をつけられている。

 

 

 

No.003 保登心愛

 

出典 『ご注文はうさぎですか?』

 

お姉ちゃんという存在に憧れを持つ、高校生の少女。天真爛漫で感受性豊か、可愛いものと動物が大好き。アホの子に見られがちだが、実は暗算が得意で理数系に強い。しかも六法全書を幼い頃に読んでおり、愛読書はドストエフスキーの『罪と罰』。

三次元に飛ばされた時から霊夢、銀時とは共に行動しており、霊夢とは友達になっている。銀時のことは年の離れたお兄さんくらいの認識で、頼りにはしている。

Xオルタやセイバーライオン、なぎさはココアのことを『お姉様』と呼んでおり、とても嬉しがっている。

その様子を見ているチノが心中でちょっぴり妬いていることは斉木のみぞ知る。

他の世界の二次元キャラ達と関わっていく中で、他の世界のキャラ達の暗い経歴や事情を知り、自分の世界が如何に平和で温かい世界だったのかを感じる。それにより『頼ってほしい』とお姉ちゃん願望が加速したが、なぎさ以外にはあっさりお姉ちゃん扱いを断られてしまった。

 

 

 

 

 

No.004 坂田銀時

 

出典 『銀魂』

 

大雑把で無鉄砲、常に無気力。ハイライトのない死んだ魚の目と天然銀髪パーマが特徴。極度の甘党で愛読書はジャンプ。必殺技は木刀で殴ることだが、この木刀、基本なんでも斬れる。ジャンプ主人公の割に意地汚く下ネタもバシバシ言う。しかしやる時はやる、情に厚い強くて恰好良い王道主人公らしいところもある。まぁやらない時はやらないけど。

三次元に飛ばされた時から霊夢、ココアと行動している。彼女たちに押されてラブホテルに泊まることになるなど、ピュアピュアな2人の扱いには困っているようである。

また、前述の行いのせいで玉藻に(勘違いとはいえ)一夫多妻去勢拳を喰らわされていた。だが和解して以降は両者の関係は良好。

 

 

 

 

No.005 博麗霊夢

 

出典 『東方project』

 

幻想郷の異変を解決することが生業の、楽園の素敵な巫女(自称)。

単純で裏表がなく感情豊か。敵に対しては容赦がない。様々な存在を惹きつける不思議な魅力の持ち主。神主曰く、『幻想郷で最強』。

銀時、ココアとは三次元に来てからの仲。銀時のことは典型的な駄目な大人と思っているが、多少は頼りにしている。ココアとは仲が良くて、幻想郷に滅多にいなかった『純粋な善人』の為新鮮らしい。

 

 

 

No.006 玉藻の前

 

出典 『Fate/EXTRA』etc

 

露出過多な着物を纏う、良妻願望のケモ耳呪術師。その正体は天照大御神の分霊が転生したもの。なので最強・・・・の筈だが、紙装甲でピーキー性能。ハイテンションでシリアスブレイクが大得意。

Xオルタには炬燵のヌシとして慕われている。度々和菓子も振舞っていた。でもお母さんと呼ばれた時は殴り飛ばしていたらしい。

ココアにはそのもふもふの尻尾を狙われている。ご主人様にしか触らせたくないのだが、ココアの並々ならぬもふもふへの熱意に、まぁちょっとくらいならいいかと思わなくもない。

現在は桜樹家の家政婦として家事をバリバリこなしている。

 

 

 

No.007 斉木楠雄

 

出典 『斉木楠雄のΨ難』

 

冷静沈着、少し性格の悪い男子高生。その正体は無敵の超能力者。

万能であるが故に全てを奪われた存在であり、喜怒哀楽を殆ど表情に出さない。他人ともあまり関わらないようにしている。だが、個性豊かな面々や厄介な災難を周囲に集めてしまうのは主人公の哀しき性。

毒舌で批判的かつ厭世的。だがなんだかんだでお人好しの素直になれないくーデレである。

ココア、銀時、霊夢のことは気にかかっており、3人が周と遭遇するまでずっと見守っていた。

モブとは同じ強力な超能力者であること以外に共通点が多く、とても親しい。

周の五月蝿いヲタク丸出しモノローグを常時聞かされており、『うざい』とコメントしている。だが信頼はしている。

 

 

 

 

 

 




《現在登場作品》

Fate/
銀魂
東方Project
ご注文はうさぎですか?
斉木楠雄のΨ難
モブサイコ100
魔法少女まどか☆マギカ


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1章 ぐだぐだ二次元召喚〜ちびノブの叛逆〜 月曜日の襲来

キングプロテア実装して〜とか言ってたらキングプロテア実装してたわ、ありがとう運営。ちゃんと公式サイトチェックしないとですね。

そして今回よりぐだぐだ編始動です。バンバン出しますよ、ええバンバンと。


 あー、嫌だ嫌だ。嫌すぎて死にそう。

 

 なんで俺は目蓋を開いてしまったのだろうか?良い夢だった。あれが夢だと分かっていたのなら、その夢に溺れていたというのに。

 

 ずっと眠っていたなら、俺はこんな悲劇を迎えずに済んだのに。

 

 或いは、今日という日を認識できるくらいの知性を失っていれば、こんなことにはならないのに。

 

 今日は月曜日。俺にとって・・・・・いや、世界中の同志にとっての、地獄の開門日。

 

 つまり、学校に行かなければならないということである。

 

 

 

「周様、朝食出来てますよ〜」

 

 リビングに入れば、俺より先に起床して朝食を作っていた玉藻の前の呼び声。

 ・・・・・そういえば、朝食が用意されている状況は久し振りだ。小学生の頃から親が出張で家にいなかったので、俺は大抵自分で作るか冷凍食品をチンするかだった。

 

「アマネさん、おはようございます」

 

 エルが出した炬燵のうち1つに既に入って食パンを食んでいたのは、謎のヒロインXオルタ。俺の同居人である。

 ・・・・・そう、俺の同居人。朝から晩まで推しが家にいる状況。流石に3日が過ぎるといちいち夢だと疑ってられない。これは真実なのだと、ヲタクの哀しい妄想ではないのだと、すんなり受け入れられる。

 でもまぁ、本当に二次元キャラが俺の家にいるんだな、と改めて認識する。

 

「ココア、銀時起こしてきなさいよ」

「えー、セイバーライオンちゃんが起こしてきてよ〜」

「がお!がおん!」

 〈僕は嫌だからな〉

 

 霊夢、ココア、セイバーライオン、斉木も既に起きていた。どうやら銀さんは起きてないらしい、まぁ予想はついていたが。

 炬燵という快楽に満ちた理想郷から抜け出すことを拒否した一同の視線は、自然とまだ意思を示していない者に向く。

 

「みこっ?私は嫌ですからね。あの人寝相悪いじゃないですか。この間寝ぼけて目覚まし時計壊してましたし」

「あー、してたしてた。銀ちゃん、あんなんだといつかとんでもないもの壊しかねないよね」

 

 もうやらかしてるけどね。宇宙人から託された時計ぶっ壊して、全宇宙の時間止めちゃう大惨事。最終的に擬音が時計直してくれたけど。

 

 さて、玉藻が拒んだことで、残されたのはXオルタ。なんだか一抜けルールで早く拒んだ者が勝ちみたいな空気で、『お願い』というより『義務』に近い。

 

「・・・・放っておけばいいのでは。寝たいだけ寝させましょうよ」

「まっ、それもそうね」

 

 Xオルタの意見に賛同を示し、一同はさっさと自分の食事に戻った。俺も炬燵に入る。この前と同じ、斉木の隣の位置。

 

「そういえばアマネさん。今日は学校に行くのですね」

「あー、うん。そうだよ・・・・・」

 

 やめてくれXオルタ。俺は現実から目を逸らしている最中なんだ。えっちゃん達がのほほんとブレックファーストを摂っているところを見て、ここは二次元なんだと暗示をかけていたんだ。

 

「・・・・・良かったら、ついていってもいいですか」

 

 ほいキタァーーーーーーーーーー!!俺の学園生活薔薇色確定じゃあぁぁぁぁぁ!!

 えっちゃんと受ける授業なら喜んで聞きますとも!!えっちゃんと受ける体育なら喜んでホームランもシュートも打ちますとも!!えっちゃんとやる掃除なら喜んで眼前のゴミ屑を排除しますとも!!

 

「・・・・・うーん、でもそんな面白いもんじゃないよ?」

 

 馬鹿なのか俺!!そこはもっと素直に喜べやキモヲタ!!

 

 ・・・・・・いや、これで良い。だって実際面白いところではないのだ、学校は。

 

 二次元の学校には、大抵イケメンや美少女が沢山いて、毎日毎日様々な事件を巻き起こすものだ。

 

 しかし、三次元は違う。

 性欲の捌け口に出来そうな安い女を貪らんとする下劣な品性の者達。

 

 本音を隠して必死で飾り立て、より高性能な相手を求め続ける者達。

 

『異常なし』というラベルをどんな惨事が起ころうと教室に貼り続け、自らの立ち位置を守る者達。

 

 そんな奴らを・・・・学校という閉鎖社会が生み出した、俺を含めた『醜い』人間を、Xオルタ達に見せるわけにはいかない。

 

「え〜、お願いアマネくん。アマネくんの言うこと聞くから」

「お願い周。私、三次元の学校を見てみたいわ。貴方が良いって言うまでは出てこないから」

 

 ココアと霊夢が両手を合わせて懇願する。・・・・この人たちにそんな顔されたら、断り辛くなる。

 

「・・・・いいよ。わかりました。でも勝手にスマホの中から出ないようにしてください」

「もちろんです。アマネさんは家主ですから。言うことは、聞きます」

「あら、だったら全員分のお弁当作らないと・・・・忙しくなりますね〜!」

 〈やれやれ、面倒だがついていった方が良さそうだ〉

 

 玉藻と斉木もついていくつもりらしい。

 玉藻がお弁当作ってくれるのは、結構嬉しく思う。いつもは冷凍のお惣菜を解凍して弁当箱に詰めただけで、味気ないものだし。

 

『ふわああぁ、』

 

 不意に大きな欠伸。同時にスマホの画面が輝き、光球が飛び出してくる。それは瞬時に銀さんを形作った。

 

「あー、よく寝た・・・・・」

「あら銀時様、おはようございます。お弁当の具、何が良いですか?」

「んあ?弁当ぅ?そうだな、おにぎりちょいと詰めて刻み生姜にごま塩振ってだな」

「スジの通ったフキですね、かしこまり〜!!」

 

 玉藻は冷蔵庫から食材をぽいぽい取り出した。・・・・うちの冷蔵庫って、そんなに入ったっけ。呪術で拡張しているのか?

 Xオルタ達は朝食を早々と済ませて、食器を片付けて、朝のワイドショーに夢中であった。

 銀さんは皆より少し遅めの朝食。天然パーマは寝グセがついて普段の倍ボサボサになっている。

 

 朝が進む。覚醒しきれない脳を置いてけぼりにして、支度が始まる。

 

 月曜日。毎回毎回、この日が来る度に絶望する。

 

 しかし、今日は違う。今回の月曜日は、えっちゃん達と一緒に迎えた月曜日。それだけでも、心の靄は少しだけ晴れて、足取りは軽かった。

 

 ・・・・・そういえば、イベント開始日は今日だった。学校で何も起こりませんように、と無駄に近い祈りをした。

 

 

 

 

 

 

 

 




這いよる幼女「さーて、今日もお仕事頑張るのです!」

ぶち抜きたい魔女『モベベ』

「おやどうしたのですかシャルロッテ、我が黒歴史。・・・・うん?」

『退職届』

「なに!?あー、あのヘタレ逃げましたね!!もう、ただでさえ忙しいっていうのに・・・・・」

青髪のロリ「・・・・・あの、すみません。ここはどこですか?」

「・・・・ん?」



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学校という名の地獄もえっちゃんがいれば耐えられる

破壊的妹「ねえ、お姉様。あのエセ天使を探している途中に、変わった鉄の箱があったから乗り込んだけど・・・・・」

かりちゅま的姉「フラン、貴方の言いたいことは分かっているわ。・・・・・ここ、何処かしら」


『新大阪駅』





『アマネさん、此処がアマネさんの学校なんですね』

「あぁ、そうだよ。俺は1年2組なんです」

 

 スマホの中から教室を見渡すXオルタ。

 スマホに向かって喋ってるなんて、痛々しい寂しい奴と思われるかもしれないが、いざとなればテレビ電話だと誤魔化せばいい。

 

『アマネさんはいつも学校で何をしてるんですか?』

「んーとね、まぁ休み時間はずっと読書を・・・・・」

「何やってんの?」

 

 中性的な声が乱入してくる。背筋に悪寒が走る。・・・・・・この感じ、何処かで一度あったような。

 Xオルタとの会話を中断されて苛立ちながらも、表情を抑えて俺は振り返った。

 

「どうしたんだ、恋泉」

「いや、桜樹がスマホに向かって話しかけてるから・・・・」

「家族からテレビ電話だよ」

 

 ふうん、と一応納得の色を見せたこの男子高生、名を恋泉礼という。彼との関係はただのクラスメイト同士なのだが、席が俺の前な上に出席番号も隣だから、話すことが多いのだ。

 

「テレビ電話かー、優しい家族なんだね?僕は親が雑な人でさー、聖夜兄ちゃんくらいだよ、僕といっぱい喋ってくれるの」

 

 お前の家族の話なんて聞いてねえよ。で、その話にどういう返信を求めてるんだ?あれか、『恋泉の兄貴は優しいんだなー』か?ほぼ鸚鵡返しだろうがそれじゃあ。

 

「でさー、うちの聖夜兄ちゃんは白米が・・・・おっと」

 

 言葉が途切れる。恋泉はふと見下げて、何かを床に発見した。それを拾うため、流れるようにかがみ、立ち上がった。

 

「このペン、誰の?」

 

 水色のシンプルなシャープペンシル。一見すれば、男子のものとも女子のものとも見えなくもない。

 恋泉はシャープペンシルを掲げて、その場で半周回った。俺は、恋泉から目線を外した時、此方を注視する視線に気がつく。

 それは、俺の左隣から。どこか諦念の混じったような、その視線。

 

「恋泉、それ雪條のシャーペンかも」

「え、そうなの?」

 

 恋泉が俺の左隣の席に座る女子生徒–––––––––雪條透にシャーペンを差し出す。雪條は目を見開くと、シャーペンを受け取った。

 

「・・・・・ありがとうございます」

「良いってことよー」

 

 笑みを浮かべる恋泉。だが雪條は、口を真一文字に結び俯いている。理由はすぐに分かった。

 俄かに、女子の囁き声が湧き立つ。

 

「ちょっと、雪條さんが恋泉くんにシャーペンを拾ってもらってるわよ」

「恋泉くんの気を引きたくてわざと落としたのよきっと。あの子如きが恋泉くんに近づける訳ないのにね〜」

「ほんっとにそうだよ。そんなに可愛くもないのに、何を堂々と落し物してるのか」

 

 思わず顔を顰めた。汚い陰口だ、深読みし過ぎである。可愛くなければ落し物もしてはいけないのだろうか。当然のように人間に等しく与えられた権利を踏み躙る考えだ。大体、お前らもそこまで可愛い顔してないだろ。これから永遠に落し物するなよお前ら。

 

 恋泉は文武両道、容姿端麗な奴で、その上性格も苛つくほど善良。嫉妬するのも馬鹿らしくなるくらい完璧な人間だ。女子にモテるのも当然のこと。

 対して雪條は、無口で雰囲気が暗いから人が寄り付かない。だが成績は良く、自分の意見をしっかり持っている。それにそこまで可愛くないわけでもない、寧ろよく見たら美人の部類だ。だがスクールカーストのトップグループというものは、自分の意見をはっきり述べられる自分達以外の人間を嫌うものだ。

 

「大体桜樹も恋泉くんと馴れ馴れしく話して・・・・・」

「ホモなんじゃないの?」

 

 そんな訳ないだろ、謝れ本当の同性愛者に。てかお前らは、恋泉が同性と話すことも許せないのか。それでは恋泉が孤独になってしまう。独占欲強すぎだろ、恋泉はお前のものにすらなってないのに。

 

 不意に、扉の開閉音。あれだけ騒いでいた皆が静まり返って、教室の前方を注目した。

 

「はーい、席につけよお前ら」

 

 担任の歌瀬だ。・・・・朝の会までは、まだ時間がある。いつもなら、この時間は、教職員達はまだ会議をしているはずだ。

 困惑が広がりつつも、一応は皆先生の言葉に従った。

 

「せんせーい、来るの早すぎませんかー?」

「あー、その理由も今から説明するから、ちょっと静かにしてろ」

 

 ざわめきが教室に浸透していく。予告をすっ飛ばした突然のイベント。生徒達は期待と不安に駆られた。

 

「はい、静かに静かに。いや、実はさっき警察から学校に連絡が入った。どうやら近辺に不審者の集団が出没したらしい」

 

 歌瀬先生は淡々と告げた。警察。不審者。現実と隣する、ほんの少し非日常感のあるその言葉を、澱みなく発音していた。

 この街は閉鎖的な因習もなく事件も特に起こらない、良く言えば平和、悪く言えば退屈な地域だ。だからこそ、不審者という存在白紙に垂らされた一滴の絵の具の如き存在感だった。

 

「というわけで、安全を考えてお前ら全校生徒を一斉下校させることになった。来たばかりで悪いが、今から下校の準備をするように」

 

 途端に歓声が上がる。生徒達は喜色満面だった。皆椅子を蹴っ飛ばすようにロッカーに猛進する。

 俺も準備しよう、と思ったところでスマホの中から声がする。

 

『・・・・・不審者がいるなら、尚更学校から出ては駄目なのでは』

『Xオルタちゃんの言う通りだよ。警察の人が捕まえるまで、外に出ない方が良いんじゃないかなぁ』

 

 Xオルタとココアが心配そうに話している。考えてみれば確かにそうだ。不審者がいるとの情報が警察に入ってるなら、さっさと捕まえればいい。わざわざ学校という一応の防壁の中にいる俺たちがその壁を越えてまで家に帰る必要はない。俺もなるべく危険に飛び込む真似はしたくない。

 

『別にいいじゃねえか、早く帰れんだから。それより周、帰りにコンビニ寄ってジャンプ買ってくんない?』

『あーあ、折角弁当作ったのに・・・・ま、また今度でもいいでしょう。さーて、帰ったら昼ドラ見よっと』

『不審者とやらが来たら、私が弾幕喰らわせてやるから安心なさい?』

 

 銀さん、玉藻、霊夢は全く気にしていないようだ。

 ・・・・そういえば、俺にはXオルタ達がいる。不審者を恐れる必要はないのだ。寧ろ不憫で可哀想なのは不審者の方。もしも奴らがXオルタ達に出くわせば・・・・・

 

 

 

 

【はーっはっはっは、俺たちは不審者だ!大人しく金を出せ!】

【金はありません。不審者は素粒子に還れ(ネクロカリバーで刺す)】

【ぐあぁぁぁぁぁ!!】

【がお!(思い切り噛みつく)】

【ぎゃああぁぁぁぁぁ!!】

【あっ、ごめんなさい手がすべっちゃった!(六法全書を投げる)】

【カドォォォォォォ!!】

【ギャーギャー煩いんだよ、この不審者ども!(木刀を投げる)】

【トゥヤゴォォォォォォ!!】

【そっちこそ賽銭置いてこの地から去りなさい!!(無慈悲なお祓い棒)】

【ぐぎゃあぁぁぁぁぁ!!】

【別に自賛じゃないが、思考の浅い犯罪者如き、僕の相手ではない(軽くデコピン)】

【ほぎゃぁぁぁぁぁ!!】

【一夫多妻去勢拳!!】

【くぁwせdrftgyふじこlp!?】

 

 

 ・・・・ となるに違いない。

 ご愁傷様、とこれより地獄をみる可能性のあるまだ見ぬ不審者達を悼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アマネさん、周囲を警戒してください。何か来たら私が斬ります」

「あー、うん。ありがとうXオルタさん」

 

 早朝の重たい霞んだ空気がすっかり晴れてしまった空には、雀達がくるくる回っている。ブロック塀の向こうで、大型犬の吠える声。道端に咲いた名も知らぬ花。

 平和すぎて、とても不審者がいるとは思えない。

 

 ・・・・・殺人は駄目だよえっちゃん。

 

 万が一俺が不審者に襲われた時のため、Xオルタがスマホの外に出て、俺の前を歩いてくれている。鞄に仕舞ったスマホからは、俺も出たい私も出たい、不審者ぶん殴りたいの大合唱だが、多分これも俺以外の人間には聞こえていないのだろう。

 

 えっちゃんと下校。これは良いシチュエーションだ。夢にまで見た光景。えっちゃんの小さな背中が、前にあるなんて。

 

「アマネさん。家に帰ったら、一緒に、ゲームしません?」

「Xオルタさんゲームできるの?」

「Xと、何回か。あと、カルデアでマスターやお狐さんや、その友人の蝙蝠の姫に教わりました」

 

 蝙蝠の姫・・・・・刑部姫か。伝承では姫路城に引き篭もり、中に入ってきた者をとり殺した妖。それがどういうわけかFateではオタサーの引きこもり腐女子お姫様に変貌している。今更ながら、Fateの鯖の設定はよく分からない。

 

 ゲーム。えっちゃんとゲームなんて楽しそう・・・・いや、俺完全に負かされそうだな。相手は腐っても英霊だし。

 家にあるゲーム、えーとSwitchとプレステ4・・・・皆で遊べるやつは・・・・スプラトゥーンとかマリカで良いよね?

 

 そこで唐突に、聞き慣れた軽い音。ピコン、とスマホから鳴る。

 

「・・・・その音は」

「うん。多分・・・・新しい二次元キャラがいるのかも」

 

 スマホを取り出す。何回も見た、画面上に表示されるメッセージ。

 

 

 

二次元キャラ反応を感知しました

 

 

『なになに〜?私たちの仲間が、近くにいるってことかな?』

『面倒な奴じゃないと良いんだが』

 

 辺りを見回す。ぐだぐだイベント開始日は、今日。来るとしたら、それは恐らく・・・・・

 

「アマネさん、備えてください。途轍もない魔力量を感知しました。これは・・・・・1人ではなく、軍勢?個々の魔力量が高いですね」

 

 軍勢。高い魔力量。このタイミングで来る軍勢なんて、そりゃあ簡単に想像がつく。この間エルが見せたイベント名は、『ぐだぐだ二次元召喚〜ちびノブの叛逆〜』。だったら、今から現れるのがそのちびノブだとしたら。

 それは、味方などではない。エネミーとしての、ちびノブだ。

 

 T字路の右の曲がり角の向こうから、微かな爆音が複数。細かな足音の集合体。時折聞こえる高い声。此方に、確実に向かってくる。

 

 Xオルタが敵の襲来に備えて剣を構える。スマホの中であれだけ喋くっていた同居人達も、息を潜め空気を張り詰めらせた。

 

 不意に。悲鳴が響いた。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!なんなんじゃ此奴らはぁぁぁぁぁ!?」

「ノッブの分身みたいなもんでしょ、止めてくださいよ!!」

「無理じゃって、数が多すぎるわ!!」

 

 予想はついていた。イベントのオープニングに相応しきキャラクターだ。そのやり取りから溢れる、脱力感はまさにぐだぐだ。

 

「この声は・・・・どこかで」

『おや、もしかしてあの人達ですか?』

 

 地から伝わる、強い振動。雀も散ってゆく。大量の気配がすぐそこまで迫る。可愛らしい鳴き声も、同様に。

 軈て、声と音と気配の壁はブロック塀の端から姿を現した。その先頭を行く、2人の少女が真っ先にお披露目となる。

 

「ぐぬぬ、此奴らどこまで・・・・って、そなたカルデアでッ!?」

「あー!!貴女Xさんとよくいた文系バーサーカーさん!?」

 

 軍服の小柄な少女は急ブレーキをかけ此方側に倒れこむように止まる。ハイカラな和装の少女は、軍服の少女に続き此方側に駆け込んで、Xオルタを指差した。

 

 

 

織田信長 出典《コハエース》etc

 

沖田総司 出典《コハエース》etc

 

 

 

「ここで知り合いに会えたのは嬉しいですが、Xオルタさんも早く逃げないと・・・・・ってうわぁ、来たぁぁぁぁぁ!!」

 

 沖田さんとノッブは瞬時にXオルタの後ろに隠れた。

 遂に、その軍勢が姿を現す。俺の膝より低いその体躯。織田信長をまんまデフォルメしたビジュアル。聖杯より生まれ出で、剣を持ち銃を構え、確かに自我を持ち動く、英霊の霊基を確かに持ったその生物。

 

 敵性生命体の軍勢は、沖田と信長を、一時見失ったその対象を発見し標的を見定め、俺たちの前に立ち塞がる。

 そして、先頭の一体が叫んだ。

 

 「ノッブゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 

 

ちびノブ【エネミー】 出典《Fate/GrandOrder》

 

 

 

 ちびノブ軍団。やつらの目は不敵に紅くぎらめき、Xオルタ、沖田、信長という三騎の英霊を見とめても物怖じせず、堂々と相見えた。T字路の先を埋め尽くすその大軍勢。やつらこそ、今回のターゲット。イベントの要。

 

 本当に、あのエセ天使は余計なことをしてくれたものだ。

 

「・・・・・Xオルタさん」

「ええ、分かっています。私たちの帰宅を邪魔するならば、容赦なく排除します」

 

 Xオルタの双眸が煌めいた。剣が紅く光り、奇妙なブオンブオンという機械音のような音で起動する。

 

 初戦闘だ。正直、戦いとか面倒だし痛いのは苦手だ。だがしかし、Xオルタの戦いぶりを、カッコいいえっちゃんを、ヲタクとしてこの目に焼き付けなければならない。そう思ったら、退けないだろう。

 

 

 

 




エル「さて、これよりイベントスタート。周くん達は見事ちびノブ達を討伐できるかな・・・・」

???「・・・・・・・」

「これの調整ももうすぐ終わるし。いやー、大変だった。ラスボスを作るのは苦労するね。それにしても便利だなぁ、・・・・・聖杯っていうのは」



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ぐだぐだエンカウント〜魔人と桜と文系、ついでに良妻〜

弟の鑑「もうあんなドS変態幼女にはついていかないぞ!全く、子供があんな風に育つなんて日本は末だな。やっぱり姉上が天下統一するべきだ・・・・・僕は自分の力で生き延びてやる、姉上に会うまでは!」

ぐだぐだマスコット「ノブ〜!」

「ん?こいつ、ちびノブ・・・・だったか?なんでこんなところに・・・・」





「ノッブゥ!」

「ノブノブ!ノブ〜!」

「はぁっ!」

「散れい!!」

「・・・・くらえ」

 

 襲いかかるちびノブ達の壁を、沖田が突き破り、信長が撃ち抜き、Xオルタが斬り裂く。捨て身で向かうも、いとも容易く払い除けられたちびノブ達は衝撃で吹っ飛ばされ地面に打ち捨てられた。

 

 ちびノブの数は、この2、3分で半分ほどに減ってしまった。だが攻撃が止む気配はない。果敢にも、ちびノブ達は武器や魔術を駆使して3人に立ち向かう。

 

『ちょっと何ですかあのナマモノ!?前に戦った時あんなにしぶとい奴でしたっけ!?』

「なんじゃ、キャス狐もおったのか・・・・・あぁ、儂らも出くわした時は一度戦ったんじゃが・・・・如何せん、数が多すぎる上に個々の力が強すぎる。儂の知ってるちびノブではない」

「なんでしょう・・・・・何か、不自然な力で強化されているようですね」

 

 人類史において、主要な戦は大抵『敵の数こっちの何倍も多かってんけどなんやかんやでこっちが作戦勝ちしたで!』パターンが多い。つまり、量より質。

 だが、それは相手が使い捨て前提の雑魚を掻き集めた軍勢だから。もしも、武に長けた強力な兵を多く編成した、質と量を兼ね備えた軍勢が相手ならば・・・・・勝ち目はないだろう。

 

「ノッブさんが宝具を使えばいいのでは?対軍、でしたよね」

「あー、それは駄目じゃ。だって魔力足りんし。儂今魔力供給の相手おらんからのー。受肉的な?ほら受肉したら現界は保てるけど宝具は魔力無いと撃てんじゃん?」

 

 信長の宝具、『三千世界(さんだんうち)』。マミさん的火縄アクションであり、最大捕捉は3000人。人造英霊兵団をあっという間に殲滅した強力な宝具。

 確かにそれさえあればちびノブ軍は全滅確定。しかし魔力が足りないなら無理だろう。いかなサーヴァントも魔力が命。

 

 ノッブのゆるい返しを受けて少し黙り込むと、Xオルタはちびノブ達を確実に薙ぎ払いつつこう言い放った。

 

「・・・・じゃあ、今沖田さんと魔力供給すればいいのです」

 「「こふっ!?」」

 

 え、えええええっちゃん急に何をおっしゃるんですの!?もしやえっちゃん姫女子でした!?目覚めちゃってました!?

 

「い、いやいやいや、何を言っとるんじゃそなた。ま、魔力供給って何か知っとるか?ナニをナニしてナニするか知っとるか?」

「何が哀しくてノッブと合体しなきゃいけないんですか!?魔神セイバー(意味深)はもういいですよ!!もうFate終わらせる気無いですし!!」

『Xオルタさんったらそんな大胆なこと言えたんですね!?文系自称する割に直接的。タマモ驚き桃の木殺生石ですよ』

『え?まりょくきょーきゅーってなんなの玉藻さん?』

『魔力供給・・・ナニをナニして・・・合体・・・あっ(察し)そういうことか、うん銀ちゃんまた一つ賢くなったわ』

『はぁ?あの、だから何の話なの?なぜ皆慌ててるの?魔力供給の何がいけないの?』

『こちとら天下の少年ジャンプの主人公だっつーの。唐突な百合描写されても対応できないぞこっちは』

 

 ざわつくキャラ達。・・・・ココアと霊夢は理解できていないようだが。ほんっとにピュアピュアだなー、この少男化社会に生きる姉と巫女め。性とかそういうのから隔離されてやがる。

 

 えっちゃんは極めて平然としていて、恥じらう様子もない。小首を傾げると、答えた。

 

「血液を飲ませればいいのでしょう?魔力炉はそれで回ります」

 

 沈黙が下りる。あー、うん。体液交換は血液も含まれるよね、うん。

 ・・・・・・誤解させること言うなよ、ざわつかせんなって!!

 

「あ、うん。そういうこと。大事じゃな血液。赤血球と白血球と血小板をゴクゴク取り入れるの大切じゃな、元気にはたらく為にな?なぁ沖田?」

「そうですね、血液大事ですねー!でも私病弱だからノッブが出血してほしーなー!!」

 

 ノッブと沖田が、無駄な勘違いを誤魔化そうと必死で言い張る。スマホの中では、玉藻と斉木が胸を撫で下ろし、銀さんは『なんだよつまんねえな』と言いながらも深い溜息をついていた。ココアと霊夢は、『血を飲むの!?大丈夫なの!?』と喫驚していた。ピュアですなー。

 

『まぁ、でも信長さんの血を沖田さんが飲むってシチュエーションもそれはそれで耽美的で百合百合しいので、魔力に関しては私がなんとかしますよ』

「おう玉藻!設定上最強鯖のそなたにはサポートがお似合いじゃ、さっさと儂の宝具強化してNP回復せんかい!」

『ぐぬぬぬ・・・・鏡でぶん殴りたいところですが状況が状況。早いとこ終わらせて貴方をover killです織田信長!!』

 

 スマホから瞬時に玉藻が顕現する。周囲を鏡が巡り、陽光を反射する。彼女の輪郭は放出された魔力で蒼然と輝いた。

 

「それでは、バリバリ呪いますよっ!『呪層・廣日照』!!」

 

 Xオルタ、信長、沖田に呪術が掛けられる、それは援護スキル。攻撃力も防御力も低いがサポート呪術に長けた彼女は、団体戦でこそ活きる。

 

「続きまして、宝具お披露目タ〜イム♡三次元初です、初公開!!画面の前の皆々様、私の神様ぽいところよーく見逃さぬよう!!」

 

 ・・・・・どこ見て喋ってんだこの駄狐。

 

 言うだけ言い捨て、玉藻は口元を引き締める。展開される、桃色に煌めく結界が、玉藻をスポットライトの如く照らした。

 

「–––––––軒轅陵墓、冥府より尽きることなく」

 

 静謐な立ち姿。常世の理は一切遮断された神秘的な雰囲気の中、玉藻は詠唱を紡ぐ。

 

「出雲に神在り。審美確かに、魂に息吹を、山河水天に天照す」

 

 いつものハイテンションな駄狐なぞ、欠片も見当たらぬ超自然的な美。神々の長たる者の神性。

 緑が、水が、空が、彼女の輝きを引き立てる為に在った。

 

「これ自在にして禊の証。名を玉藻静石、神宝宇迦之鏡なり」

 

 玉藻の周囲を巡っていた鏡–––––––『玉藻静石』。冥界の力を秘めた神宝。それは妖しく輝き、回転の速度を増してゆく。

 光が満ちる。光は魔力となってXオルタ、信長、沖田を取り巻いた。

 

 断片的な解放といえど、味方の魔力と傷を回復し魂と生命力を活性化する。まさしく神の道具に相応しい。合戦で真価を発揮する援護宝具–––––––––『水天日光天照八野鎮石』。使えない宝具No. 1という不名誉な称号を、彼女は人理修復の長き戦いにおいて返上した。

 

 玉藻は不敵に笑った。その笑みは化生のように不気味で、女神のように眩しい。

 

「––––––––なんちゃって☆」

 

 ・・・・・・途端に気が抜けた。えっちゃん達に関しては古典ゴケをかましていた。出自はシリアス、普段は茶目っ気溢れる良妻狐巫女。それが玉藻の前という女だ。

 

「さぁさ第六天魔王さん、とっとと決めてくださいまし!」

「言われずとも分かっとるわ!そなたの宝具演出でどんだけ文字数使っとるんじゃこの幸せ者め!!儂の凄さを見せつけられて引き篭もるでないぞ!」

 

 信長は蠢くナマモノの軍勢を見据えた。溢るる新鮮な魔力。それらは全て、これより撃つ宝具の為。敵軍を、確実に一掃する為に。

 

「–––––––––三千世界に屍を晒すが良い」

 

 詠唱を始めた信長に、ちびノブが数匹ほど襲いかかる。素早く剣を抜き、薙ぎ払った。

 後ろから、玉藻による呪術の援護。Xオルタと沖田も、信長の宝具発動を阻まんとするちびノブを斬り捨ててゆく。

 

 信長の背後、数多の火縄銃が展開する。その数実に三千丁。その銃口は、ちびノブ軍団を捉えていた。無数の銃の出現にちびノブ達はたじろぐ。

 

 「天魔豪臨!これが魔王の『三千世界(さんだんうち)』じゃあっ!!」

 

 それは射撃開始の合図。一斉に火縄銃が掃射される。容赦なく、無機質に、火縄銃の三千もの弾はちびノブ軍団を撃ち抜いていく。三千丁の火縄銃。騎乗スキルを持たぬちびノブであろうとも、それは確かな脅威だった。撃ち跡から濃い煙と火の香りが立ち上る。視界は灰色に焼かれていた。

 

 –––––––煙の帳が晴れた時、銃弾の雨に撃たれたちびノブ軍団は1匹残らず消滅していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー、儂らはソシャゲに利用されとったのか。それはエセ天使を火刑に処すべきじゃな、無間地獄を味わわせるべきじゃ」

「周さん、ごめんなさい巻き込んで・・・・・」

「いえいえ、そんな」

 

 戦闘後、俺たちは自宅に向かっていた。ひとまず敵は退けたとはいえ、第2の軍勢が襲撃に来るという可能性は少なくない。Xオルタ達は戦闘で多少傷付いているため、自宅に戻って体制を立て直してからちびノブ殲滅に向かうべきと、皆で話し合い決めた。

 

「あ、同居人登録、しておいて大丈夫ですか・・・・?」

「ええ、お願いします。あー、これでご飯がお腹いっぱい食べられますね!」

「そうじゃな、美味しいご飯にぽかぽかお風呂、あったかい布団が儂らを待っとる!あの時は・・・・あ、あんな化け物がいた、から泊まれんかったがな」

 

 ノッブの表情は至って平常の笑顔グラフィックだった。だが、心なしか青褪めている気もする。

 化け物・・・・織田信長が恐れるような化け物なんているのだろうか。

 

『にしてもよ、お前本当に"沖田"なのか?どっからどー見ても大正の病弱女生徒にしか見えねえっつーの。俺の知ってる沖田はもっとドSでバンバンバズーカ撃ちまくってだな』

「はぁ、貴方の世界ではそうなんでしょうね・・・・ん?この声どこかで聞いたことあるような・・・うーん、思い出せない」

 

 あ、杉田さんがゲーティアしてたよね確か。てか覚えててあげようよ沖田さん。一応ラスボスなんだからさ。ゲーティア涙目だよ涙目。

 

「そうじゃ、そなたエセ天使の居場所知らんか?見つけ次第一族郎党皆殺しにする予定なんじゃが」

「うーん、知らないし人殺しに加担したくはないですね」

 

 エセ天使ことエル・ティアクローバー。この事態・・・・二次元キャラ召喚の黒幕で、Xオルタ達をこの三次元に送り込み、更には勝手にゲームに利用、果てはこんな大迷惑なイベントまで開催した自己中心的な愉快犯。

 多分、ちびノブ達を強化したのも、沖田さんとノッブに襲わせたのも彼奴の仕業だ。キャラを操る術まで使えるのか?どっちにしろ、かわいいちびノブ達を駒にするなんて許し難い。

 

「・・・・斉木さん。エセ天使の居場所とか、千里眼で分からないのですか?」

「そうですよ。斉木様ならあの屑天使くらいみこっと見つけられますよね?」

『僕に期待するな。千里眼は全てを同時に見渡せる訳じゃない。・・・だが、ちびノブ達が襲ってきた方向から探れば見つかるかもな』

 

 そう言うと、斉木はスマホから外に降り立った。俺の前に立った斉木の向こうに、大きな交差点が広がる。ふと、後ろを振り返って、疑問を抱く。

 此処は町で一番大きな交差点の筈なのに、人通りが少なすぎやしないだろうか。俺の後ろには2、3人ほどしか人がおらず、向こう側の歩道も同様。店は皆一様にシャッターを閉めていた。おかしい。まだこの時間はどの店も開いたばかりのはずだ。

 

「斉木さん、どうですか・・・・寄り目?」

 〈千里眼は寄り目をしなければ見えないんだ。集中してるから話しかけるな・・・・うん?アレは・・・・!〉

 

 斉木は寄り目を解除し、虚空を睨んだ。俺もそれに倣って同じ方向を見る。

 

「えっと、どうしたんですか斉木さん」

 〈来るぞ、さっきのデフォルメ生命体が。しかも、さっきより何倍もデカい〉

 

 でかノブだ!こう続けざまに出会うもんなんだな。でもさっきのちびノブ軍団で宝具撃ってようやく勝てたのに、でかノブなんて・・・・Xオルタ達の体力と魔力が持つかどうか。それにぶっちゃけ早く帰って録画消化したい。

 

 〈心配するな。さっきは面倒だから此奴らに見せ場を譲ったが、次は僕が一発で終わらせて・・・・・・あっ〉

 

 斉木が一瞬驚愕したように目を見開いて、すぐまた真顔に戻る。Xオルタは斉木の様子に首を傾げ、訊いた。

 

「何かありましたか。もしかして、大福が降ってきたとか・・・・」

 〈脳内メルヘンか。そうじゃない、・・・・・でかノブが消えた〉

「・・・・え?」

 〈あれは、何か別の強い力にひねり潰されたような・・・・もしかすると、僕達と同じ二次元の人間かもしれない〉

 

 えー、まだ沖田さんとノッブと会って1時間も経ってないよ。前から思ってたけど新キャラ登場のペース早すぎない?

 ・・・・とか文句言うわけにもいかない。斉木の案内で、早速俺達は新たな二次元キャラの保護に向かうことになった。

 

 

 

 

 




白Tポイズン「・・・・さっきの変な生き物、倒してよかったんでしょうか」

世紀の霊能力者「普通にこっちに攻撃してきたからな。それにありゃ人間じゃねえ。どうせエセ天使あたりが用意したんだろ。それにしても腹減ったな。またなぎさちゃんのとこ行くか」

「・・・・信勝くん、また変な格好されてないかな」





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Ψキッカーの邂逅〜相性100%〜

幕末のバーサーカー「ったく、なんで三次元に来て最初に出会うのがお前なんだよ。だがそんなことはどうでもいい。俺が生きてる限り、此処が新撰組だ」

絢爛なバーサーカー「それは茶々のセリフだし!!もー、伯母上どこ行ったの〜!!」

四万円弱のエージェント「・・・・そこの君!私の声が聞こえるか!?」

「「うん?」」





 〈恐らくこの辺りだったはずだ。・・・・心の声も大きくなってきている。まだこの辺りにいるな〉

「あっ、そうか。斉木さんは200m圏内の心の声は聞こえるんでしたっけ」

 

 テレパシー。斉木の強力な能力のひとつであり、悩みの種でもある。半径200メートル圏内にいる人間の思考を、良心も悪心も区別なくその全てを平等に感知する能力。一見便利に見えるが、常時オンの為めちゃくちゃ煩いらしい。この能力の所為で、斉木は齢2歳にして世界に絶望したそうだ。

 

 〈・・・・お前なら、心の声を聞けばあの力の主が誰だか分かるだろう?僕の力で聞かせられるが〉

 

 え?・・・・あ、もしかして『強制以心伝心』の応用か!

 自身を媒介に互いの心の声を中継する、テレパシーの応用、それが『強制以心伝心』である。夫婦喧嘩の仲裁の為斉木が使った技だ。

 まぁ本心を互いに受信させられるなら、一方的にもできるのか。

 

「あ、じゃあお願いします」

 〈よし、では流すぞ。少し五月蝿いかもしれないが我慢しろ〉

 

 斉木のテレパシーが途切れる。

 突然、遠い雑踏のようなノイズが聞こえた。俺の脳内に斉木が力を加えているのだろう。軈てノイズは少しずつ消えていく。

 そして、完全にノイズが消失した時、俺の頭の中に直接声が響いてきた。

 

 

 

【・・・・・・何だろう、何か感じる・・・これは・・・超能力者が、この近くにいる?もしかして、律か花沢くんかな!?だったら早く見つけないと・・・】

 

【・・・・・・あの自称魔法少女のお陰で飯と宿は手に入れられたが・・・・やっぱり家族や友人と会えないのが3日も続くと、モブもキツイだろうな・・・・】

 

 

 

 超能力、律、花沢、モブ・・・・それらの単語からキャラを導き出す。この2人は多分モブサイコ100の影山茂夫と霊幻新隆だ!マジか、Fate、ごちうさ、銀魂、東方、斉木楠雄と来てモブサイコか。召喚基準が分からない。

 ・・・・自称魔法少女って誰なんだろうか。

 

 〈どうだった?〉

「モブサイコ100・・・・えっと、心読めてるなら分かるか。の、登場人物の2人。1人は斉木さんと同じ超能力者の中学生で、もう1人は・・・・偽霊能力者?」

 〈僕と同じ超能力者・・・・で、偽霊能力者?・・・・あぁ、なるほどそういうキャラなのか〉

 

 俺の頭の中を覗いて情報を受け取ったのか、斉木は考え込むように頷いた。

 その時。

 

「・・・・アマネさん」

 

 突然、Xオルタが袖を引っ張ってきた。陶器のような白い指。琥珀の瞳が、此方を窺う。

 

「斉木さんとばかり話して。2人の世界に入らないでください。私も喋りたいです」

 

 えっちゃんんんんんん!!ごめんねえっちゃん放ったらかしにして!!

 てか!袖を!えっちゃんが俺の袖を引っ張って!うん、もうこの制服洗わないよ!!

 

「ていうか、斉木さんって超能力者なんですかー。凄いですね、だったらさっきのちびノブ軍も私たちの代わりに倒してほしかったなー」

 〈お前らに出番を譲ったんだ。僕がちびノブを全滅させても何も面白くない。言っておくが、僕がサーヴァントになったら全員生存ルートで聖杯戦争が1日で終わるからな?〉

「チートかつシリアスフラグ破壊者!!そなた一生型月に出られぬぞ!!」

「よくもまぁそんな最強キャラがのんびりとジャンプの主人公出来ますよね〜」

 〈ギャグ漫画だからな・・・・・さて、ぐだぐだやってないで会いに行くぞ。・・・・・その、もう1人の超能力者に〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『影山茂夫 出典《モブサイコ100》』

 

 『霊幻新隆 出典《モブサイコ100》』

 

 『エクボ 出典《モブサイコ100》』

 

 

「ど、どうも・・・・初めまして、影山茂夫です」

 

 モブは何やら緊張しているようで、若干声が震えている。仕方ないことだ。いきなり自分より年上の見知らぬ人間に囲まれたのだから。

 

 〈僕の名前は斉木楠雄。・・・・君と同じ超能力者だ。よろしく〉

 

 斉木は微笑むと、手を差し出した。"君と同じ"。其処には、超能力者という以外の、彼のモブへの共感というものが見てとれた。

 モブは安堵の息をつくと、斉木の手を握った。

 

「・・・・よろしくお願いします、斉木さん」

「良かったなモブ、同じ超能力者がいて。・・・・・で、そこのお前らは?」

 

 霊幻は訝しげに俺達を見る。・・・・まぁ、セーラー眼鏡に狐耳呪術師に和装剣士に軍服少女なんて、側から見ればコスプレ大会か何かと思ってしまう。

 

「えっと、俺の名前は桜樹周・・・この人達の家主、みたいなもので・・・・三次元の人間です。この人達はXオルタさん、玉藻さん、沖田さん、信長さん。・・・・霊幻さん達と同じ、二次元の人間です」

「はー、他の世界の奴らは随分変な格好してんだな・・・・ん?三次元の人間なのに、なんでお前は俺達のことが見えるんだよ」

「・・・・・それはそのぉ・・・・エルさんの力というか」

 

 エル、という単語を聞いた途端、霊幻は舌打ちした。やはり嫌っているのだろう。ぶつぶつと、「やっぱり彼奴の仕業か・・・・くそっ、あんな奴信じるんじゃなかった。いつかぶん殴る」と呟いていた。

 

「つーか、お前さん達から凄まじいまでの霊力ビシビシ感じるんだが・・・・・一体何者だ?」

「緑の風船が喋った!?なんじゃ、この変な生き物!!」

「風船じゃねえ!!俺様はいずれ神になる大悪霊エクボ様だよ!!」

「大悪霊ぅ?貴方がですかぁ?」

「五月蝿いケモ耳女!!こんな姿だからって俺様の力を舐めんじゃねえぞ?」

「そうですか・・・・あ、私元高天原の最高神、そして有能呪術師であり三大化生の玉藻の前と申します以後宜しくそしてさようならエクボ様」

「ア、ハイスミマセンデシタ」

 

 うん、流石に玉藻には勝てないよねエクボも。だって元アマテラスだもんね。エクボも理解しただろうから除霊しようとするのやめようね玉藻さん。

 

「ごめんなさい玉藻さん、そんなに凄い人だなんて知らなくて。そいつは僕の友達なんです・・・エクボのこと、許してあげてください」

「・・・・まぁ、可愛い男の子の前でこんな雑魚エネミー討伐したってカッコよくないですよね」

「シ、シゲオ・・・・!!」

 

 良いやつだなモブは。俺中学生の頃こんな純粋じゃなかったぞ。

 

「ところで、斉木さんはどんな能力が使えるんですか?僕は念力なんですけど」

 〈僕は・・・・そうだな、君と同じ念力(サイコキネシス)・・・・それとテレパシー、瞬間移動・・・・〉

「へー、すごいなぁ・・・・」

 〈透視、サイコメトリー、予知、テレポート・アポート、千里眼、パイロキネシス・・・・・〉

「え」

 〈念写、復元能力、透明人間、変身、石化、マインドコントロール・・・・・・〉

「そ、そんなに!?・・・・斉木さんは本当にすごいなぁ」

 〈別にそこまでじゃない。僕の能力は強すぎて装置で制御する必要があるんだ。制御装置が外れれば振り返っただけで地面が抉れる〉

「・・・・・振り返っただけで?」

「なんだよ・・・・オールマイティな上に強さが出鱈目すぎる。完全に今までの超能力者の上位互換じゃねえか・・・・」

 

 モブと霊幻が呆気に取られる。当然だ。斉木楠雄はあまりにも万能すぎる。

 やろうと思えば3日で世界を滅ぼし、人理修復が1週間で終わり、ラブライブに優勝しなくても廃校を阻止し、策略など練らなくても好きなあの子に告らせる。まさにチートだ。今時なろう系にもこんな嘘みたいな出鱈目チート能力者はいない。

 

 〈影山くん。僕は確かに万能に見えるかもしれないが、超能力には様々な欠点や制約がある。超能力なんて生きる上で必要ないし、僕は普通の日常を送りたいんだ〉

「・・・・・!僕もです。僕も、なるべく超能力に頼らないように生きようと・・・・斉木さんみたいに凄い超能力者でも、そんな風に思うんだ」

 〈当たり前だ。・・・・・それに、僕はそこまで凄い訳じゃない。君も、僕と同じくらい強い超能力を持っている〉

「え?・・・・でも僕は、沢山能力を持ってないし・・・」

 〈そうだ。君は念力(サイコキネシス)のみを持っている。それはその能力のみに全力を割くことが出来るということ。常にどんな状況でも最大出力を出せるということだ。僕の能力は常時オンになっているものがあるからそうはいかない〉

「・・・・・なるほど」

 

 斉木とモブ、どっちが強いか。これは長年議論されていることだ。3日で世界を滅ぼすことができる斉木と、???%を引きずり出せば災害レベルの惨事を引き起こすモブ。どちらも強いし、ぶっちゃけ何でもあり。だからこそ決着がつかない。

 

 〈君と僕が戦えば、どちらが勝つか判らないだろうな。・・・・決着がつく前に地球が崩壊しそうだが。だが、僕は君と戦うつもりはない、君も誰かとの戦いはなるべく避けているだろう〉

「はい」

 〈つーか最強対決とかどーでもいい。全王とラッキーマンと球磨川さんでやってろそんなもん〉

「・・・・ラッキーマン・・?」

 〈まぁそれはその辺に置いといて・・・・影山くん、僕は君と似ているのかもしれない。こうして会えたのも何かの運命だ。・・・・改めて、よろしく〉

「・・・・はい、よろしくお願いします、斉木さん!」

 

 今此処に、最強の超能力者2人が交わった。似た境遇を持つ2人の邂逅を夢見た者達は日本中にいて、今それが果たされた。

 斉木楠雄と影山茂夫。一歩間違えば暗黒面に堕ち世界を滅亡させるだろう彼ら2人が揃えば、無敵の布陣である。

 

「シゲオ・・・・そいつマジでヤバそうだぞ・・・いつかのツボミちゃんに告りに行ったお前さんの時と同じくらい強い力が刺さってきやがる・・・・俺様じゃなかったら近づいたら一発で除霊されてたな」

「モブの新しい友達が良い奴っぽくて良かったけどよ・・・・あの刺さってるやつは・・・・ロリポップ?」

 〈制御装置だ。仕方ないだろう機能や構造の都合上、こういうデザインになったんだ〉

 

 へー、そうなんですね・・・・と興味津々で制御装置を嘱目するモブ。斉木もなんだかモブ相手には対応が穏やかだ。やっぱり気があうのだろう。

 

「・・・・斉木さんが友達できて良かったです。なのでアマネさん、お腹空きました」

 

 文の前後がめちゃくちゃである。接続詞って知ってるえっちゃん?てか文系だよね?でもそういう間の抜けたところも可愛いよ。

 

「お腹空いたんですか?・・・・・だったら、なぎさちゃんのところに案内しますよ」

「なぎさ・・・・というのは、誰なのですか」

「自称魔法少女の子供だよ。縫いぐるみを連れててな、上手い菓子と寝床を提供してくれたんだが・・・・どうも、なんかこう・・・」

「俺様としてはどうも信用できねえんだ。なぎさは正体不明の聖なる力でプロテクトが掛かってるし、縫いぐるみの方は底知れぬ魔を感じるしよ」

 

 なぎさ、魔法少女、菓子、縫いぐるみ?ひょっとして、まどマギの百江なぎさだろうか。マギレコでイベント実装されて漸く日の目を見た、叛逆の物語初出の追加戦士。

 

 ともかく、えっちゃんの言う通り確かにお腹は減った。そろそろ正午だし。

 モブ達に案内してもらおう、そのなぎさのところに。

 

 

 

 




這いよるなぎ子さん「いやー、商売繁盛でよろしいのです!!これもチノが働いてくれるお陰なのです!」

妹系ソーサラー「いえ、私はあまり愛想が良くないので・・・・お客さんが集まるのは、此処のお菓子が美味しいのと、なぎささんが明るいからですよ」

「もう、お世辞は結構ですよチノ。もっと自信持つのです、チノは可愛いんですから」

「・・・・そう言ってもらえるのは、嬉しいです」

「でも、チノはなんか寂しそうなのです。家族と離れたからですか?」

「・・・・・家族・・・・ええ、まぁ・・・」



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Welcome to Sweetsなぎろって

モブ「師匠、いつもの塩は持ってないんですか?」

霊幻「あー、それが今丁度切らしててな。砂糖で代用してる」

エクボ(悪霊甘くしてどうすんだよ)

ココア「えっ!?幽霊ってお砂糖でも祓えるの!?」

霊夢「ココア・・・・貴方もしかして馬鹿なの?」






『此処・・・・ただの内科ですよね?』

 

Xオルタが小首を傾げた。目の前には、ビルの一階にある内科が構えていて、やはり俺達の周りに人はいなかった。なんてことない普通の内科。『矢良内科』と書かれた看板。・・・・カタカナで書けば『ヤラナイカ』・・・・ふっ。

 

えっちゃん達には、モブや霊幻師匠がいるから一応スマホの中に戻ってもらっている。

 

「はい。そうなんですけど・・・・・なぎさちゃん、開けて」

「はいはーい!・・・おや、新しいお客様もいますね?では結界オープンなのです!」

 

どこからともなく明朗快活な返事。途端に内科のガラス戸の中心に闇が渦巻き、膨張していく闇は、やがて俺達を呑みこんだ。逃げなかったのは、多分これまで得た情報からこの先の予想がついていたからだ。

 

闇が瞬時に晴れる。まず感じたのは、不気味なほど甘ったるい香り。空間にまるでオブジェクトのように設置された、奇抜で大小様々な、非現実的な色彩とスケールの菓子。

 

跳ねるように此方に駆けてくるのは、砂糖細工のように銀髪を煌めかせた、パンプキンを連想させる造形の衣装を纏う少女。頭に乗せた、キャンディー頭の独特の縫いぐるみ。

 

「いらっしゃいませ!此処は魔女結界、甘美な絶望の食卓。しかして哀れな二次元民達のパラダイス。Sweetsなぎろってへようこそなのです。私は副店長でウェイトレスの百江なぎさなのです!そしてこっちが・・・・」

「モベベ!!」

「店長にして当店のパティシエール、更にこの結界の管理人。お菓子の魔女Charlotteなのです」

 

 

 

百江なぎさ 出典《魔法少女まどか☆マギカ》

 

お菓子の魔女 出典《魔法少女まどか☆マギカ》

 

 

 

やっぱり。彼女はまどマギの百江なぎさ。・・・・・魔女も?

 

「あ、影山さん、霊幻さん、エクボさんお帰りなさい」

 

なぎさの後ろから歩み寄ってきたのは、涼やかな青い髪と瞳の少女。トレイを盾のように胸の前に抱えている。

 

「チノ、新しいお客様ですよ~!」

「そうなんですか。いらっしゃいませ。私はこの店のアルバイトでバリスタの香風智乃で・・・・・・・・・」

『チノちゃああああああん!!」

 

スマホから飛び出したココアがチノに抱きつく。その運動エネルギーに耐えきれず、チノは背中から地面に倒れた。

 

「チノちゃああん、会いたかったよぉ~!」

「・・・・・ココアさん、重いです」

「なになに?今おっきい音聞こえたけど~?」

「あ、アカネ。いや、チノが知り合いに再会したようで・・・・」

「・・・・グリッドマンのキャラもいるの?」

「あれぇ、君、私のこと知ってるの?」

 

益々選考基準がわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

香風智乃 出典《ご注文はうさぎですか?》

 

新条アカネ 出典《SSSS.GRIDMAN》

 

響裕太 出典《SSSS.GRIDMAN》

 

宝多六花 出典《SSSS.GRIDMAN》

 

内海将 出典《SSSS.GRIDMAN》

 

 

 

「改めまして、香風智乃です。・・・・ココアさんが大変お世話になりました」

「いえいえ、そんな・・・」

「そして此方が・・・・」

「此処のお客の新条アカネでーす。あ、もう知ってるんだっけ?いやー、私達人気者だな~ヒロインの私達のお陰だよね。ねっ、六花」

「え?あー、うーん。まぁ嬉しくなくはない、けど・・・・」

 

GRIDMANのヒロインは上半身と下半身を分担してて良いよね。飾らない可愛さの六花と素晴らしく可愛いアカネ。EDを2人の仲良しビデオにしたのは大正解だと思いますTRIGGERさん。

 

「あのー、それで、其処の人達は・・・・」

 

うん、響くん良い質問だ。

 

 

「いっち、にー、さーん!!おっしゃあぁぁぁ十万ゲットォォォ!!これで私は億万長者!!」

「現実じゃただの貧乏巫女だけどな」

「まぁまぁ銀時様。ゲームに現実の事情を持ち込むのは御法度ですよ」

「やったー!霊夢ちゃん見てみて、私結婚したよ~!」

「へー、そうなの。遅かったわね?」

「がお!」

「あ、ノッブ、私子供生まれたので1つピンください」

「なーんで儂に頼むんじゃ?おっ、子供2人目~」

「グルルルルルルル・・・・!!」

「お狐さん、唸らないでください」

「そうだぞ、器が小さいなぁ玉藻は」

「そういえば霊幻、お前さんまだ結婚出来てねえな」

「別に良いだろ!!俺はな、一生独身で良いんです〜!!」

「・・・・師匠は良い人だから、きっとお嫁さんが見つかりますよ」

「モブ〜!お前だけだよ俺の味方は〜」

〈やれやれ騒がしい奴らだ・・・・このコーヒーゼリー、嫌いじゃない〉

 

 

 

「・・・・彼処で人生ゲームをやっているのが、響さん達とは別の世界に住む人達です」

「・・・・・・コスプレイヤーがオフ会でゲーム大会してるようにしか見えない・・・」

「変わった世界の人達なんですね・・・」

 

内海と響は微苦笑を浮かべた。俺も軽く頷いて、皿に盛られたクッキーをひとつ摘まんでかじる。口の中に広がる小麦の甘い香り。砕かれたチョコレートチップが舞う。同じテーブルの六花とアカネはチーズフォンデュを堪能していて、芳ばしい香りが漂う。

・・・・・GRIDMANの世界もそこそこ変わってると思うけどね。

 

「周、ご注文はありますか?・・・おっとメニューを渡してませんね」

「あぁ、ありがとう」

 

なぎさに手渡されたメニューは、チョコレートかビスケットで出来ていると思ったが意外にも普通の画用紙に丁寧な字で菓子の名前が書かれている。ショートケーキ、ガトーショコラ、モンブラン、チーズケーキ、プリン、パフェ・・・・・・・・ん?

 

「ねえなぎさちゃん」

「なんなのです?」

「・・・・お菓子の魔女ってチーズ生み出せたっけ」

「!!」

 

なぎさの瞳が凍りつく。・・・・やっぱりそうか。お菓子の魔女には、お菓子を自由自在に生み出す能力がある、と設定にあった。しかしお菓子の魔女は大好物のチーズだけは出すことが出来ない。

希望の象徴であったのに、自分の希望や願望を永遠に叶えることが出来ない、絶望を振り撒くことしかできぬ化け物と化した皮肉な魔法少女の成れの果て。それが魔女であり、故に生前母親にチーズを贈ろうとしたなぎさは、魔女化後チーズを手に入れることが出来なくなった。

 

なぎさは、お菓子の魔女––––––––シャルロッテを、『パティシエール』と称した。ならばこの店のお菓子を生み出しているのはシャルロッテ。それなのに、シャルロッテはチーズを作れないはずなのに、メニューにはチーズケーキが入っている。

 

「・・・・・ま、なぎさ達のファンならそのくらい知ってて当然なのです。ええ、正解なのですよ。そのチーズはシャルロッテが生み出したものではありません」

「それじゃあ、このチーズは一体どこから・・・・」

「盗みました」

「ぶっ!?」

 

その場の全員が思わず飲み物を噴き出す。なぎさは皆の様子に首を傾げ、続けた。

 

「勿論、普通の家ではなく悪い人の家から盗んだのです。なぎさは義賊なのです」

「わ、悪い人って・・・・誰から盗んだの?」

 

呼吸を整えて六花が尋ねる。なぎさは満面の笑みをたたえて即答した。

 

「ヤクザです!」

「ぶーっ!?」

 

またも噴き出す一同。対してなぎさは一同の反応に瞬きする。

 

「ヤクザと政治家からは何を盗っても怒られないのです。常識なのです」

「自分の常識が他人に通用すると思うでない!!なんじゃそなたは、ヤクザの家からチーズ盗んで何故堂々としとるのじゃ、悪魔か何かか!?」

「ひえぇ・・・・明らかに悪いことしてるのに罪悪感もないよあの子・・・・昔の私を見てるみたいだよぉ・・・・」

 

ノッブが常識とか言いますか、と沖田さんが溜息。アカネに関してはちょっと引いている。

なぎさは己の罪も罰も全く自覚しておらず、周囲の言葉が理解できていないよう。それどころか本題でなく別の部分に憤り始めた。

 

「悪魔ですって!?むむむ、女神の眷属たるなぎさをあんな奴と一緒にしないでほしいのです!本質は病弱眼鏡ヘタレ後輩の癖に変にイキってイメチェンして、ミステリアス強キャラ感醸し出して思わせぶりな発言と爆弾しか投げられない、結局最後はまどかの前で無様晒して、果ては愛というものを履き違えてまどかをパクって世界改変までした、あのお馬鹿なまどか教の過激信者の爆弾魔ほむほむとは全然違うのです!」

 

滅茶苦茶にほむらをdisり散らかしている。余程嫌悪していると見た。まぁ改変後の世界で魔法少女の力とか記憶剥奪されちゃったからね。

 

「ね、そう思いますよねシャルロッテ!」

「モベッ!」

 

シャルロッテの瞳は相変わらずハイライト無しの暗黒おめめだが、それでも感情は伝わる。シャルロッテの瞳は狂熱に燃え滾っていた。そういえばお菓子の魔女はほむらに倒されたのだった。そこそこ憎悪を感じる部分もあるのだろう。

 

「お待たせしました、チョコレートパフェです・・・・」

「チノ〜!聞いてくださいこの軍服のじゃロリがなぎさを悪魔とか言ってくるのです〜」

 

さっきまでポコポコ怒っていたなぎさは、チノが来ると一瞬で目尻に涙を浮かべて甘えん坊の小学生に変わっている。しかも抱きついていた。「うむうむ、これは望みがありますね、うん」と呟く。・・・・何の話だよ。

 

俄かに。背筋を走る冷気、視界にチラつく白い光。

 

「やぁ周くん、そして二次元民達!イベント始まったけど元気にしてるかい!?」

 

現時点の評価は最低最悪の世紀の詐欺師天使、エル・ティアクローバーの再登場。無論キャラ達の殺気は奔流してこの空間に漲り、俺のちっさな硝子のハートにひびが入った。エルがいて、二次元キャラ達がいる時、その時間その空間は三次元から切り取られてアニメか漫画かゲームのワンシーンに変貌する。俺だけが除け者になる気がして、身体が縮こまる。

 

「出ましたね、エセ天使。斬られたくなかったら去りなさい」

「冷たいねえ、Xオルタ。すぐに斬るとか殴るとか蹴るとか、君達ってそれしかできないの?」

「黙れ」

 

空気が段々鋭利になって、俺は今すぐにでも此処から逃亡したくなった。嫌だ。相手が俺じゃないとは分かってる。でもあんなに敵意を剥き出しにした冷酷なXオルタを見たくない。––––––––––なんで?エルは敵だ。怪しいやつで、妙に便利なところもあるけど、この件に関しては彼奴は完全に敵的存在だ。じゃあXオルタがああなってもいいんじゃないか?

解らない。どういうわけか、俺は何故かエルに情が湧いているらしい。勿論友情とか愛情とかではない、もっとこう、根本的な、不可逆的な何か・・・・・

 

考え込んでいる内に、奇怪な咆哮で俺は顔を上げた。

 

刹那、視界を紅と黒が横切る。

 

それがお菓子の魔女の本体、第2形態だということに気がつくのに2秒しかかからなかった点については、流石ヲタクと褒めてほしい。

 

「マジかっ・・・・・!!」

 

俺は椅子から立ち上がり、迅速に空気を突き破っていくお菓子の魔女を追いかける。お菓子の魔女はエルを喰らおうとして、床に突っ込んだ。甘く香る煙と瓦礫、ぱりぱりぱり、ポテトチップスが砕けるような音。

 

「もう、乱暴だなぁ、死ぬかと思ったじゃん?元気そうだし僕は帰るね〜」

 

星屑になってエルが消失する。毎回毎回、消え方が違う気がした。この前は一瞬でエフェクト無しで消えたり、煙を巻いて消えてたりした。楽しんでるのだろうか、自分の力を。

 

お菓子の魔女第2形態は、ピンクの人形が既に呑み込み直していた。かわいらしくげっぷまでしている。魔女って生き物なんだな、と当然のことを改めて認識した。

 

「あ、あの、桜樹さん」

 

モブの声。桜樹さん、と俺の苗字を呼ばれるのはむず痒い。Xオルタ達は俺のことをファーストネームで呼んできたから。

 

「どうしたの影山くん」

「いや、それが・・・・・」

 

モブの貼りついた真顔に冷や汗が流れる。指差した先の光景の、一番近くにはまず斉木がいて、深い深い溜息をついていた。その隣ではなぎさが小さく舌を出す。

 

その向こう、Xオルタ達がいた場所。其処には先刻同様Xオルタ達がいたのだが、様子がおかしい。皆一様に青褪めていて、糸で縛られたみたいに微動だにしない。

 

「あー・・・・・もしかして」

「はいなのです。––––––––––みんな怖くて凍りついちゃってます」

 

お菓子の魔女。かつて日本中、否世界中の人間を恐怖の底に突き落とし、蔓延していた『萌え萌え美少女アニメ』というイメージを喰らい尽くしてまどマギを日本の代表的アニメに駆けあがらせた立役者。

 

えっちゃん達がフリーズするのも、是非もないヨネ。

 

 

 

 

 




Q.お菓子の魔女はそんなに怖かったんですか?

えっちゃん「べ、別にににににこ、怖くないですすすすす」

銀時「はっ、あ、あんなのただのびっくりモンスターだし?俺の敵じゃねーし?うん全然こわかねーよ」

玉藻「ギャップ萌えってやつですか?狙ってるんでしょうけど?まぁ大したことないですね!ええ、何も大したことないですよぉ!!」

ココア「怖かったよぉぉぉぉぉぉ!!」

だそうです。



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苦労人未成年達の茶会

転スラ終わったけど続編決定!やったー!モブサイコ3期、かぐや様2期も待ってます。切実に。

ところで今更ながらえっちゃん除いた5人の同居人の人気アンケートですが、玉藻と霊夢大人気すぎませんか。あと誰かココアにも入れてあげてください。

そんな想いを抱いてないけど、今回はココアさん回です。


「先ほどは申し訳なかったのです、ええ本当に」

 

 一応形式的な謝罪をするなぎさ。本当は悪いともなんとも思っていないはずだ。なんせヤクザからチーズ盗むくらいだから。さっき疑った霊幻が問い詰めたら、「飲み物も盗んだ」と白状した。全くこの幼女は。

 

「もう気にしてないよ!ねっ霊夢ちゃん」

「あああああ当たたたたたたり前よよよよよよよ」

 

 君の友達ケンシロウみたいになってますけど。

 

「だから一緒におやつ食べよ、なぎさちゃん」

 

 ココアは微笑む。朝露に微かに濡れた花が、陽光のもと咲くように。なぎさは静かに頷いて、てくてく歩き出した。

 

「早く席に座るのです。お詫びにとっておきのお菓子をご馳走するのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ええっと」

 

 どう話題を出そうかと、ココアは考えあぐねた。大きなクッキー生地のテーブルに、自分とチノとなぎさ、そして響に内海に六花とアカネ、霊夢にモブ、斉木。流石に大人数だからテーブルを分けようという話になったのだが、何故このメンツになったのか。向こうのテーブルでは、銀時達が何やら談笑していて、話の内容はよくわからない。大人は凄いなぁ、とココアは感心する。

 

 ちなみにこの時銀時達が話していたのはどぎつい下ネタ混じりのえげつない時事ネタで、銀時と玉藻以外は苦笑い混じりで話を聞いており(特に周の苦笑は慣れたものがあった)、とても談笑とは呼べない状況だったがココアは知る由もない。

 

 だがココアはこのメンバーでおやつタイムを盛り上げようとする使命感があった。何故ならココアはお姉ちゃんだからだ。

 

「と、とりあえずケーキ食べよ、ねっ!」

 

 テーブルの真ん中にドカッと置かれた、フルーツと生クリームに彩られた、既に人数分等しく切り分けられたホールケーキ。気まずい空気の中誰も手がつけられなかったのだが、ココアの一言で各々取り皿とフォークに手を伸ばす。

 

 三角柱に切り分けられたケーキの、先端部分をフォークで切り、刺して食べる。滑らかな生クリーム、盛られたチョコレートチップとラズベリーで、甘くて酸っぱくほろ苦い。

 

「そういえば、霊夢ちゃんって巫女なんでしょ?どんなお仕事してたの?」

 

 脳に糖分が回って、何気ない話題を思いつく容量が空く。霊夢は物珍しそうに蒼く光るブルーベリーを見つめてから口に放り込み、それから答えた。

 

「大したことじゃないわ。主に妖怪退治とか、異変解決ね。報酬もあまり入らないのよね、ほぼタダ働きってやつ?」

「そうなの?どんな異変を解決したの?教えて教えて!」

 

 好奇心旺盛なココアは話をねだる。面倒くさいから嫌だ、と答える代わりにケーキを大きめに切って、数秒ほど頬張っていたが、ココアはアメジストの瞳を相変わらず輝かせている。そういえばこの少女は少々空気が読めない子だったと気がついて、霊夢は嘆息した。

 

「別に・・・・突然幻想郷を覆った紅い霧を消したり、冬が終わらない理由を突き止めたり、満月がすり替わってたのを元に戻したり、とかかしら」

「そうなんだ・・・・・すごく不思議な異変だね」

 

 いつか図書館で読んだ和風のハイファンタジー小説みたいで、ココアは現実味の無さに、これが現実なのだと理解に時間がかかった。

 

 出会った時にも少しだけ聞いた。霊夢の住んでいた世界は、外の世界で忘れ去られた、幻想となったものたちが住まう常識に囚われない世界なのだと。幻想や迷信とか空想とかいったものを、かき集めて濃く煮詰めた世界。

 

「妖怪とか、妖精とか、吸血鬼とか、亡霊とか、月の姫とか・・・・まぁ、神と戦ったこともあるわね。全部勝ったけど」

「霊夢ちゃんすごーい!!」

 

 自信ありげにそう言い切った。ココアに賞賛されて満更でもなかったらしい、霊夢はニタニタ笑って「朝飯前よ」と付け加えた。

 

「霊夢さん、そんな凄いことしてたんだ。・・・・俺は、グリッドマンと一緒に怪獣から街を守ってたけど・・・・」

「え、響くんって怪獣と戦ってたの!?」

「・・・・ちなみに、その怪獣と街を創ったのが私、です」

「ええ!?アカネちゃんも凄いなぁ〜!」

 

 怪獣、という明確な敵性生命体の名称が出てきて、一同の興味が高まる。響は照れ笑いを浮かべ、アカネは少し俯く。其は真っ直ぐな褒めに対する照れか、又は過去に犯した罪に対する後悔か。

 

「うわぁ、皆色んなことしてるんですね・・・・」

「モブくんは超能力者なんでしょ?何か、超能力でやったこととかあるの?」

「・・・・・そうだな、ついスプーン曲げちゃったりとか、悪霊退治とか、世界征服の阻止?とか」

「世界征服の阻止!?最後だいぶスケール大きいよ!?モブくんやっぱり凄いね!!」

「いや、大したことじゃ」

 〈僕に比べれば十分世界に貢献してるじゃないか。僕は日本を滅ぼす噴火を止めたくらいだ、影山くんに比べれば規模が小さい〉

「噴火を止められるの!?超能力で!?斉木くんも物凄いことしてるな〜」

 

 あまりに突飛で壮大な話に、ココアは益々目を輝かせ、前のめりになる。直情な関心に悪い気は起こらない。モブは照れて頭を掻いた。斉木は平常通りの真顔だったが、嫌がる様子は見せていない。

 

「そうだ!なぎさちゃんは魔法少女なんでしょ?魔法少女ってどんなことするの?」

「・・・・希望を呈し、奇跡を起こすのが魔法少女。しかし、なぎさは奇跡なんて起こせませんでした」

「え」

「お母さんのために、チーズケーキを持って、病院に行って。そしたらお母さんはなぎさの目の前で殺されました。ーーーーーーーーーなぎさは、お母さんの助けを無視しました。見殺しにしました」

 

 

 

 展開するスクリーン、投影される映像、舞う黒砂糖。

 

 病室のベッドに横たわる、血の抜けた顔の女性。散乱しきった、慟哭。

 

『なぎさ、ひとりにしないで』

 

 精神を抉るほどの静寂。

 

『なぎさ、返事をして』

 

 返事はない。極彩の瞳には母親だけが映り込んでいるのに、返事はしない。

 

 ぐちゃり。

 

 チーズケーキの潰れる音。

 

 場面はくるりと転換し、うっとりするほどお菓子の国。

 

 走り回る鼠のようなちいさな化け物。何かを探す、探す。

 

 チーズ、チーズ、チーズはどこだ?

 

 気持ちが欲しい。愛が欲しい。

 

『おしまい』

 

 全てがキャンディで埋められる。埋め尽くされる。何もかも遮断して。

 

 

 

 

「あ、あぁ、ああ」

 

 手が震えた。目尻に涙が浮かんで、頬を伝う。一気にあたたかいものが奥へ引いていく。ココアは悲しかった。腹が立った。後悔した。

 

 この少女は。明朗快活で、おませた少女は、背景にこんな苦しいものを背負っていたのか。それなのに、それなのに。

 

(私は、傷つけたんだ。平然となぎさちゃんの地雷を踏んで。私は、なんて無神経なんだろう?他の皆に対してもそうだよ。私、全然人の気持ち考えられなかった。今までがすごく幸せで、恵まれていて、それが普通だと思ってたんだ)

 

「なぎさちゃん、その」

「もう何回も反芻して、何回も考えた過去なので。もうなぎさ自身気にしてません。それになぎさにはマ」

 

 言い切る前に、抱きつかれた。ココアの焼きたてのパンみたいな、心のある人間の体温が触れる。

 

「ごめんね、なぎさちゃん、ごめんね。悲しいことや辛いことがあったんだよね。それなのに聞いてごめんね」

「いえ、謝らないでください。なぎさは大丈夫なのです。怒ってません」

「ほんと?」

「はいなのです」

「気にしてない?」

「はいなのです」

 

 「じゃあ私のことをお姉ちゃんって呼んで!」

 

 「論理が飛躍しすぎなのです」

 

「私を姉と、家族と思って慕って良いんだよ!」

「えー・・・・」

「だからお姉ちゃんって呼んで!」

「ココア」

「お・ね・え・ちゃ・ん」

「ココアお姉さん」

「うん!よろしくねなぎさちゃん!」

 

 漸くココアはなぎさから離れた。暫くココアの胸に埋もれていたので、なぎさは呼吸を整える。

 なかなか良いですね、と何がとは明らかにせず呟く。

 

「みんなも!私のこと、お姉ちゃんって呼んでいいんだよ!」

「いやぁ・・・・」

「それは・・・・」

「ちょっと・・・・」

「大体同年代だし・・・・」

「あなた、どっちかというと妹キャラなのよね・・・・」

「ごめんなさい、初対面なので・・・・」

 〈断る〉

「即答!?」

 

 ココアは心優しき少女である。だがしかし、自らの姉として、頼れる家族として慕うには些か器の大きさが、覇気が足りない。

 

「でもまぁいいや!ほら、ケーキ食べようよケーキ!あ、せっかくだからトランプしようよ!」

「おやトランプなのです?チーズが景品ならやらなくもないのです」

「なぎさちゃん、本当にチーズが好きなんだなぁ・・・・」

「ココア、口にクリームついてるわよ、拭きなさい」

「え!?あ、ほんとだ!」

 

 それでも、覇気も器も無くても、彼女には人を惹きつける魅力と、思いやりの心が確かに備わっている。『姉』という存在に拘らずとも、彼女は人から慕われるために大切な資質を持っているのだ。

 

 ちなみに、ココアが皆の話を聞いているとき、チノが久し振りの再会にも関わらず構ってもらえず無自覚に妬いていたのは、斉木のみぞ知る話である。

 

 

 




マギレコのなぎさイベで描かれた百江なぎさの過去がさー、予想通り重すぎてさー。これ虚淵さんに書かせたらもっとえぐかったろって思います。

なぎさは私をまどマギ沼に引きずり込んだ張本人なので、存分に活躍させたいです。



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ラスボス攻略ってしなきゃ駄目ですか?永遠にほのぼのとした中休みの期間を引き延ばすのは罪なんですか?

今回短めです。







「あー、お腹いっぱいです」

 

 俺の隣でえっちゃんが床に寝転がった。流石はアルトリア派生というべきか、えっちゃんの食べっぷりは凄まじいものがあった。なぎさがお詫びとして出してくれた、ヒグマほどもある巨大黄粉もちをひとりで3つも平らげてしまったのだから。

 

「喜んでくれて嬉しいのです」

「モベー!マスカルポーネッ!!」

「ほら、シャルロッテもこう言ってるのです」

 

 いや、魔女の言葉は分かりませんって。それにしても、今の状況ってなぎさが実質2人いるってことだよな?なぎさがなぎさの言ってる旨を伝える・・・・ややこしや。

 

「それじゃあ、たらふく食ったし帰るか。おーいそこのJS。会計はしなくていいのかよ」

「JSではなく百江なぎさなのです。ええ、どうせ皆さんお金持ってないでしょう?死んだ魚の目をしたおじさん?」

「おう、じゃあ帰るわ。行くぞ周、帰って・・・・・・・えー、帰って何すんだっけ」

「はっ、馬鹿ね貴方は。決まってるでしょう、ほら私達にはやることがあるじゃない。・・・・なんだったかしら」

「もう、霊夢ちゃんったらドジだな~。ほらあれだよあれ!・・・・なんだったけ」

「がおん!がおーん!」

「ああ、そうでした。がおトリアさんは記憶力が良いですね。そうでしたそうでした、今から私達がやらなくてはいけないこと・・・・」

 

 やらなくてはいけないこと。そう、今すぐに、この先の悪夢を、向けられた刃を回避するためにやるべきこと。

 

 それは・・・・・・・・

 

 

 「歯磨きです」

 「違うよ!?」

 

 

 いつの間にか現れたエセ天使が即ツッコむ。お前如きがえっちゃんにツッコんでんじゃねーよ。

 

「もっとやることあるでしょ、ん!?」

「・・・・エセ天使を殺すこと、とかですね」

「過激だなー!僕が何したって言うんだ!!」

「したから殺されかけてんだろーが。モブ、彼奴溶かせ」

「え?でも超能力は人に向けちゃ・・・・」

「あれは人間じゃなくて天使だからセーフだ」

「なるほど」

「納得しないでよ!そーいう時だけ僕を天使扱いする!!じゃなくて!君達にはやることがあるだろう!?ろ!?」

 

 やること?なんだっけ、タイムライン警備?じゃないな、周回?クラスアップ?

 

「ラスボス討伐だよぉぉぉぉぉ!!もう出現しちゃってるんだよ!!君達がのんびりおやつ食べてる間に!!」

「あ、そういえばイベントの途中だったわね」

「すっかり忘れてたわ。おいなぎさ、宇治抹茶アイスのおかわりー」

「言ってるそばからおかわり頼むなっつーの!!」

 

 あ、俺も何かたーのも。ガトーショコラとか。

 

「もう!!良いのかい君たち!?このままだと街はちびノブに侵略されてしまう!!」

「つーか貴方のせいであんな変なエネミーが出現したんでしょーが。なんですか、一夫多妻去勢拳喰らわしたろか」

「でもまぁ・・・・ラスボス倒さないとアレ終わらないんでしょ?行こうよみんな~」

 

 ココアが言ってることは正しい。ココアの言葉に渋々、といった感じで、皆が腰を上げた。

 

「まー、やるしかねえか・・・・終わったらジャンプ買ってくれよ周」

 〈さっさと終わらせるのが一番だな。どうせ大したものじゃないだろう〉

「私の良妻パワーでみこっとイベント解決してやりますよっ」

「あっ、なぎさもついて行くのです!終わったらチーズ奢るのですよ!」

「じゃあ俺らも行くか。なぁモブ」

「そうですね・・・・」

「それじゃあグリッ・・・・・そうだ、いないんだった・・・」

 

 俺もクッキー全部食べておくか。ちゃんと準備して、しっかり体を整えて。えっちゃん達の戦いを、一秒たりとも見逃さないために。

 

「行きましょうか、アマネさん。早くイベントを終わらせて、みんなでゲームをしましょう」

 

 和菓子を満足するまで平らげたXオルタの瞳は、いつもの数倍輝き、白い肌に紅みが差す。糖分を補給したことで、魔力が満ち足りる。

 

「そうですね」

 

 そして!!「どうだ見たか全国の朋友共、俺だけがこの大乱闘ニジゲンブラザーズの目撃者なんだぞ!!」という優越感を夕食のおともにするために!!

 

 

 

 

 

 

 




キャラ増えてきたので全員平等に活躍させるのが難しい。

多重クロスなんて特大地雷なのに、そうならない瀬戸際で綱渡り成功させてる方は凄いと思います。


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ぐだぐだラスボス戦開幕!〜3時のおやつにマカロン食べたい〜

ぐだぐだ編、ラストスパート突入です。

戦闘描写しんどい。


 「えええええええええええ〜!?」

 

 結界を出た先、交差点で信長が目にしたものとは・・・!?

 

「ええええええええええええ!?」

 

 「ノッブゥ〜!!」

 

 白金に輝くドレスを纏い、可視化できるほど増幅した魔力を惜しげもなく湛えた、でかノブ。その出で立ちは、かつて何処かで見た、外部魔術回路。

 

 『天の衣でかノブ【エネミー】 元ネタ《Fate/》』

 

「天の衣!?アイリさんが着てたやつじゃん!?」

「アイリ・・・・懐かしいものを感じます。彼女と過ごした記憶。彼女を守った記憶。これは・・・・大体2年前の記憶」

 

 めっちゃ最近!!つうかそれ多分カルデアの記憶!!えっちゃんアイリとパーティ組んだことあるんだぁ~。

 

天の衣(ヘブンズフィール)でかノブ・・・・・略してノブンズフィール!!いやぁ、儂のネーミングセンスは天下一じゃな!!まさしく魔王に相応しいネーミングセンスじゃ!!」

「いや、結構誰でも思いつきますよノッブ。ナルシストも程々にしないとまた燃やされますって」

「私は良いと思うけどなぁ、怪獣っぽくて」

「ほら、新条アカネは分かっとるぞ!!そなたのような映す価値ナシの人斬りとは違い、センスがあるのじゃ!!」

 

 怪獣の名前ぽい・・・・それは果たしてほめ言葉なのだろうか?あとノブンズフィールは怪獣っぽい名前なんだろうか?

 

 「姉上えぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 不意に、自我を持った人間の中性的な声。姉上、というその四文字に込めた確かな困窮と焦燥、助けを求める叫び。

 

 俺は目を凝らし、ノブンズフィールの背後に、物理法則に逆らって宙に浮かぶ紅い鳥籠を発見する。その中で、人が格子を握って此方を凝視していた。

 

「来てくれたんですね!?姉上ならきっと僕を見つけるって信じてました!!ちびノブが急に襲ってきて、路地裏に追い詰められて奪われて・・・・」

「何をじゃ?処女を?」

「念のため携帯してた護身用の武器ですぅぅぅぅぅ!!なんでちびノブに処女を奪われなきゃいけないんですか!?」

 

 柘榴の瞳に涙を滲ませ、織田信勝が嘆く。

 ビコーズ、君がまわされる方のノッブだからです。

 

「とにかく助けてください!!まさか人生で鳥籠に閉じ込められる日があるとは思いませんでしたよ!?」

「さながら囚われのお姫様じゃな。となるとあのノブンズフィールは魔王ポジション?なんじゃって、そんなの認めぬ!!魔王は儂だけじゃあ!!ノブンズフィール、貴様を退治してくれるぅぅぅぅぅ!!」

「どうでも良い理由でやる気出さないでくださいよノッブ・・・あっ!?抜け駆けは禁止ですよ!?」

 

 ノブンズフィールに突撃する信長。魔力で編まれた火縄銃が火を噴く。だがその弾丸がノブンズフィールを貫くことはなかった。

 

「ノブノブ!」「ノブノッブ!!」「ノッブ~!!」「ノブノブノッブ!!」「ノブ!!」「ノッブノッブ!!」「ノブノブ!」「ノッブ!!」「ノブゥ!!」「ノブノブノッブゥ!!」

 

 顕現したのは、天の衣を纏ったちびノブの大軍。ノブンズフィールの身体が黄金に輝き、天の衣ちびノブが生まれ出でていく。綺麗に積み上がり強固な防壁を築き上げた。弾丸はちびノブにより阻まれ、ノブンズフィールに届かない。それどころか、ちびノブウォールは一斉に火縄銃を構え、此方に照準を合わせる。

 

「自分の縮小版コピーを生み出すなんて・・・・やるなあの怪獣!!・・・・・じゃないな、なんだあの生き物」

 

 一応分類上はサーヴァントですよ内海くん。

 

「ふぇっ!?なんかあのちびノブ達、私達のこと狙ってるよ~!?」

「静かになさいココア。大丈夫よ、あんな攻撃、普通に防げるわよっ!!」

 

 霊夢がお祓い棒を振るうと、無数の光弾が射出された。同時に、ちびノブの銃撃も開始される。降り注ぐ弾丸の豪雨、それらは全て霊夢の弾幕により撃ち落とされ相殺される。弾幕が結界となり、攻撃を防ぎきった。

 白煙が晴れ、傷一つない俺たちを見て、ちびノブウォールが意気消沈したように声を漏らす。

 

「どんなもんよ!さぁ、とっとと降参しなさい!!」

「霊夢ちゃんすごい!!本当に巫女なんだね!!」

「えっ、逆に今までなんだと思ってたの・・・・?」

「痛々しい貧乏コスプレイヤーじゃね?」

「銀時、貴方は黙ってなさい!!」

 

 そうこうほのぼのしたやり取りをしてるうちに、ちびノブ達は火縄銃を構え直す。第ニ波が来る。

 

「ちょっ、また撃ってきますよ彼奴ら!?」

「安心するのです、今度はなぎさにお任せなのです!行きますよシャルロッテ!」

「モベ!」

 

 瞬時に、シャルロッテの小さな口から、ピエロの顔をした巨大な黒い大蛇が吐き出され、なぎさが飛び上がりそれに騎乗する。シャルロッテは不敵に笑うと、瞳を渦巻かせてちびノブウォールに突っ込んでいく。

 当然ちびノブが迎撃する。弾丸は小魚の群れの如くシャルロッテの口の中に呑み込まれていき、そしてシャルロッテが燃え盛る。

 

「なぎささん、シャルロッテさん!・・・・・どうしよう、2人が・・・・」

「心配無用なのですよチノ!!従業員を残して死にはしません!!」

 

 威勢の良い声。炎と煙が晴れた其処には、無傷のシャルロッテとなぎさがいる。コンクリートの上に散らばる、シャルロッテの皮の残骸。

 

「残念でしたねナマモノども!!シャルロッテはいくらでも脱皮出来るのですよ!!さぁ、一気に決めさせてもらうのです!!『魔法のシャボン(ポップ・アッタッカメント)』!!」

 

 ラッパの音は高らかに。吹き出されるシャボンは万華鏡のようにくるくる彩る。シャボン玉は風も無いのに真っ直ぐちびノブウォールに向かい、パン、と軽やかな音で爆ぜた。

 爆風をまともに喰らった防壁の中央部のちびノブ達は消滅し、中央部が崩壊したことで他のちびノブもバランスを崩し、ちびノブウォールが砕け散った。ノブンズフィールが再度露わになる。

 

「どんなもんじゃいなのです!!」

 

 だがノブンズフィールは再度咆哮する。ノブンズフィールの身体は黄金に輝き、大量のちびノブンズフィール達がぽこぽこと生まれてくる。

 

「またですか!?これじゃあキリがない・・・・今度は私が!」

「おい待てハイカラ女学生」

「ハイカラ女学生!?まさかそれ私のことですか銀さん!?」

 

 銀さんが沖田さんを牽制する。沖田さんのツッコミも無視し、銀さんは語り出した。

 

「ここまで本編18話まで来た。それなのに、俺の本編合流はソシャゲに未実装のネタキャラより遅く、霊夢とココアが仲良しこよしして、玉藻が家政婦醸して、斉木が無敵のモノローグツッコミかましてんのに、俺の出番も大した活躍は殆ど無ェ。更にはハイカラ女学生にのじゃロリに超能力者2人目に詐欺師に悪霊に、闇アリ幼女に化け物に特撮モノのメインキャラ4人だあ?馬鹿野郎!!俺の影が薄くなる一方じゃねえかクソッタレ!!」

 

 言い切ると同時に駆け出す。銀さん、そんなこと考えてたのか・・・・。知らなかった。

 

 銀さんは木刀を抜いて、防壁を構築し始めたちびノブンズフィールの大軍に向かって行く。あっ、と後ろから小さな悲鳴。側から見れば、無茶な事をしているように、無駄な自殺行為のように見えるかもしれない。しかし、彼は、銀さんは大軍の気迫に屈さず、突撃していく。

 

 ちびノブンズフィール達が銀さんを囲み、瞬く間に覆いかぶさる。その肉壁を、白銀の太刀筋が一瞬で破く。散る、ちびノブンズフィール。それでも尚懲りずに飛び掛かる敵軍を、銀さんは一刀で払い除ける。電光石火の早業で、防壁を成す前にちびノブンズフィール達を斬り捨てていく。

 

「んだよ、ラスボスの割に思ったより弱っちいんだな。で?これで終わりかナマモノさんよぉ」

「ノブゥ〜・・・・ノッブ!!」

 

 悔しそうに歯噛みして、ノブンズフィールは次々とコピーを生み出すが、ちびノブンズフィール軍の波は即座に断ち切られる。仮にも英霊の霊基を有するちびノブ達を物ともしないその強靭、その機敏。其の強さは正に夜叉の如く。

 あっという間にちびノブンズフィール軍は片付けられた。

 

「銀ちゃんすご〜い!!本当にお侍さんだったんだね!!」

「え、逆になんだと思ってたんだよ」

「痛々しいマダオじゃないの?」

「黙ってろ霊夢!!」

 

 ノブンズフィールが鈍い眼光で睨みつける。だが、ちびノブンズフィールを生み出す気配は無い。

 

「もうストックが底をついたんでしょうか」

「がおがおーん!」

「そうですねがおトリアさん。今がチャンスです」

 

 己を守る防壁も尖兵もいない。今なら存分にノブンズフィールを叩ける。その場の者達が攻撃の態勢を整えている時、ぽつりと響が呟いた。

 

「・・・・・ジャンクさえあれば、俺も戦えるのに」

「響くん・・・・・・」

「裕太・・・・・」

 

 いつもなら、街を守る力はすぐ手の届くところにあって、実際彼はグリッドマンとなりツツジ台を守り抜いた。けれども、今は違う。此処は三次元で、本来は怪獣なんて出るはずがないのに怪獣が出て、そんな異常事態なのにジャンクはない。グリッドマンはいないのだ。響は焦っているのだ。何も出来なくてもどかしいのだろう。

 

 突如。『声』が乱入する。

 

「あぁ~!!何このでっかいの!?てか叔父上何あっさり捕まってんの!?そんなにヒロインしたいの!?茶々から出番を奪い取りたいわけ!?」

 

「おい、無駄口叩いてねえで此奴運ぶのお前も手伝え!!ったく、ハイパーエージェントだっつうんなら自分の足で戦場に向かえってんだ」

 

「すまない、茶々、土方。私は裕太と合体しなければ実体化出来ないのだ。此処まで運んでくれたこと、感謝する」

 

 

 

 『茶々 出典《Fate/GrandOrder》』

 

 『土方歳三 出典《Fate/GrandOrder》』

 

 『グリッドマン 出典《SSSS.GRIDMAN》』

 

 

「茶々!!そなたも来とったのか!!」

「土方さんも召喚されてたんですね!!良かった、元気そうですね!!」

「叔母上ぇ~!無事~!?なんか叔父上ピンチっぽいけど~!!」

「おう沖田、お前も相変わらずじゃねえか!カルデアから急に消えた時は流石に焦ったが、血を吐きすぎて死んだわけじゃなさそうだなぁ!!」

「はい!!全部あのエセ天使のせいです!!土方さんとの手合わせすっぽかしたわけじゃありません!!全部あのエセ天使のせいです!!」

 

 交差点の先から駆け寄ってくる、茶々と土方、そして土方に抱えられた古いパソコン。

 

「グリッドマン!!」

「裕太、今この三次元に危機が迫っている!あの偽天使によって!私と共に再び戦ってくれ!!あの偽天使の目論見を打ち破るために!!」

「ああ!!勿論だ!!」

 

 どうやらグリッドマンもエルを恨んでるらしい。偽天使って二回言ったもんね。大事なことは基本二回言うもんね。

 

 見上げれば突き抜けるほどの蒼天。降り注ぐ眩しい光は、ツツジ台で永らく続いていたあの夏のように。

 

 ノブンズフィールは咆哮し、より一層輝きを増す。気迫が高まっていく。

 

 キャストは揃った。これより、決戦の幕が開く。

 

 

 

 

 



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後悔しても是非もないヨネ

 「ノッブノブゥ〜!!」

 

 ノブンズフィールが突進してくる。その巨躯をもって、一直線に。

 

「まずいですね、ぶつかったら内臓吹っ飛びますよコレ!!ここは私の結界で守ります!!響様は早いとこアクセスなんたらしてくださいませ!!」

「はい、ありがとうございます玉藻さん!!・・・・・じゃあ、行くぞ!」

 

 響がジャンクの画面に勢い良く手を突き出した。

 

 「アクセスフラァァァァ––––––––––––」

 「ノブゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」

 『ラスボスが討伐されました。イベントクリアです。』

 

 

 

 

「・・・・・・・はい?」

 

 突如頽れるノブンズフィール。何が起こったか理解できず周りを見渡して、皆の視線が一点に集中していることに気がつく。

 

 其処には、ノブンズフィールに向かって人差し指と中指をさした状態で硬直している、顔面蒼白のモブがいた。

 

 金の粒子に変換され消滅してゆくノブンズフィールを、俺はただ呆然と見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い、狭い部屋に、低い男の声が反響する。

 

「ノブンズフィールはお前が殺ったんだろ・・・・・・」

 

 テーブルに置かれた安価なスタンドライトに照らされた埃は、埃の癖に胸張って星屑のように白く煌めく。

 パイプイスに座らされた黒髪の少年が、ごくりと唾を呑み込んで言った。

 

「・・・・はい」

「お前が殺ったんだろ・・・・」

「いや、さっき返事し」

 「お前が殺ったんだろ!!」

「え、あ、はい」

 

 激昂。けれども男は平静を取り戻し、何処かから何かを受け取る。蒼い模様のついたお椀に、照り輝く白米が盛られ、その上にたっぷりソースのかかったトンカツが乗っている。踊るように立ち昇る湯気。

 

「カツ丼食えよ・・・・・」

「いや、でも銀さん、僕お腹空いてな」

 「カツ丼食えよ!!」

「は、はい・・・・?」

 

 少年は、躊躇いながらも箸を手に取った・・・・・・

 

 

 

「いや何やってんだお前」

 

 部屋の電気・・・・・・正確には、シャルロッテが魔法で作り出した砂糖細工の蛍光灯が点く。

 霊幻はジトリとした目で、モブを睨みつける銀さんを見ていた。

 

「うちの弟子をあまり責めないでくれるか?悪気は無かったんだし、力のコントロールが出来ていたのは斉木くんが証明済だろうが」

「黙ってろショタコン。確かにこの中坊はただあのデカブツの動きを止めようとして、それに超能力を使っただけだってのは分かってんだよ」

「おい待て。今俺のことをショタコンと言ったか?モブとは師弟関係以上の何物でもないし、手を出した事実もない。そうやって軽率に他人を犯罪者扱いすんじゃねえよ。どんな無法地帯に住んでたんだお前?とにかく発言には気をつけて頂きたい」

「師弟関係?てめーがあんなモンスター級の超能力者の師匠だぁ?笑わせてくれるぜ、ほんとに霊能力なんて持ってんのかよ霊幻さんよぉ。さっきの戦闘でも何にもしてなかったしなぁ?実はただのよくいる類のインチキ霊能力者なんじゃねえの?」

「ほー、この世紀の天才霊能力者霊幻新隆をインチキ呼ばわりとはな?この、数多の悪霊を除霊し、世界征服を企む組織の刺客である超能力者達を下してきたこの俺をインチキ呼ばわりとはな!?」 

 

 確かに霊幻は、寄越された依頼は全部解決してきた。まあ、結局霊能力は無いからインチキである事に変わりはないんだけど。

 銀さんは、まくし立てる霊幻を見下すようにハッと嘲笑するとキッパリ言い放った。

 

 

「何が超能力者だよ。どーせお前が倒せんだから超能力者っつっても大したことねえ奴らなんだろどーせ」

 

 ピッ。霊幻がボイスレコーダーのスイッチを押す。高い電子音は、フラグが立った知らせのようでもあった。

 

「今の発言、きっちり録音させてもらったぜ銀さん?後から冗談でしたなんて誤魔化すんじゃねえぞ?」

「あ?どういう事だよ?」

「時が来れば分かるさ。・・・・俺やモブが来たってことは、彼奴らもその内来るってことだろうからなぁ?」

 

 ・・・・あっ(察し)。銀さんご愁傷様です。

 で、霊幻と銀さんがやいやい言い合ってる横で、モブと斉木はのんびりおやつを食べている。

 

「僕のせいで2人が喧嘩に・・・・やっぱりまだ超能力を制御しきれてないのかな・・・・」

「心配すんなシゲオ。俺様が日頃からお前に取り憑いて超能力をきっちり有効活用してだな・・・・・」

 〈黙ってろ悪霊。・・・・影山くん、気にすることはない。今回のあのラスボス、例え君が何もしなくとも誰かがすぐに倒せていただろう〉

「そうなんですか?」

「ノブンズフィールだっけ?大分魔力の量も質も高かったけど、如何せんそれを込めた器が脆すぎるのよね~。攻撃力とか技術力とかじゃあ確かに強いかもしれないけれど、防御力が砂の城ほども無いの。バランスが悪いわね」

 

 うまい棒をかじりながら、綿飴のソファーにもたれる霊夢が横から会話に入ってくる。

 あんみつを頬張りながら、沖田さんは溜め息混じりに言う。

 

「あれ作ったのって、例のエセ天使ですよね?イベントのラスボスですよラスボス。それがあんなんじゃ素材とりほーだい過ぎて林檎すぐに無くなっちゃいますよ」

「悪かったねー!!ラスボス弱すぎて!!イージーモードみゃは☆すぎて!!」

 

 どっかぁーん!!

 

 どうきょにんたち の いっせいこうげき!

 

「ちょっとぉぉぉ!確かに今回の件は完全に僕が悪いけど、これはひどくない!?」

 

 効果はいまひとつのようだ・・・・

 

「うるせーエセ天使!!お前のせいで俺たち(銀魂)はいつまでたっても連載終了(卒業)出来ないままなんだよ!!」

「知らないよ!!それは空知さんのせいであって僕は無関係だよ!!」

 

 天使が珍しく正論を語る。

 銀魂はマジで一生終わらない気がして怖い。別に良いけど。

 

「まさかこんな早く倒されちゃうとはね?プログラミングは得意分野なんだけどなぁ。聖杯って万能願望器じゃないの?」

「そなたのようなフェイカー天使に聖杯が使いこなせる訳なかろう。聖杯を道具にして良いのは儂のような器用者だけじゃ!!」

「流石は姉上です!!」

「はーいシスコンは黙って仕事してくださいねー。サボってたらスカートの丈短くしちゃうのです」

「はいっ、ただいまー!」

「おいチーズジャンキー!!信勝をこき使って良いのは儂だけじゃ!!子供の癖に目上の人間をこき使うでない!!腹切れ!!」

「姉上・・・・」

「はい、カステラてんこ盛りセット、金平糖パフェお待ちー、なのです」

「信勝ガンバ☆」

「姉上・・・・!!」

 

 エルをほったらかしにして、ノッブはカステラにかじりつき、なぎさはカッツをこき使う。最早付き合うのも面倒なのだろう、悔しそうに口を結んだエルは何故か俺の隣に座る。おいこっちくんな、其処はえっちゃんの席じゃわかっとんのかわれ。

 

「あっ、そうそう。ラスボス戦始まる前くらいから、交差点に人いなかったでしょ?」

「そうでしたね」

 

 やっぱり此奴の仕業か。

 

「僕が結界を張って、人払いもしたんだよ!感謝したまえ!!」

 

 知らん。大体このイベントを企画して開催したのは全部貴方でしょーが。何故感謝しなきゃならんのか。

 それにしても便利だなこのエセ天使。

 

「さて、イベントは終わったし、報酬は後であげるよ。僕も帰って次のイベントの準備しなくちゃ・・・・」

「次があるんですか?」

「そうだよ周くん。今回の失敗を糧に、次はもっと良いイベントにするよ。それまで頑張ってね」

「・・・・頑張るって、何をですか?」

 

 エルさんは、いつも通り怪しげな笑みを、胡散臭さ満々のその微笑みを浮かべた。

 

「同居人との楽しいライフだよ」

 

 だからその、楽しいライフっていうのがまず日本語としておかしいんだけど。そうツッコもうとして、面倒になってやめた。

 そもそもなんで此奴は、俺にXオルタ達を寄越したのだろう?面白そうだからという理由なら、前に銀さんが勘違いした通りサバイバルゲームとかにすれば良いのに、何故俺だけに、二次元キャラ達との幸せな時間を独占する権利を与えたのだろう。

 

 解らないことは幾ら考えても解らない。イベントが終わっても、結局何の謎も解けないままだ。

 

 Xオルタ達は、どうして三次元に来たのか?

 

 エルさんは何故二次元キャラ達に干渉したのか?

 

 何故俺に『二次元召喚プロジェクト』を与えたのか?

 

 そもそもエル・ティアクローバーとは何者なのか?

 

 ぐだぐだイベで何か展開が進むと思ったのだが、どうも思い通りにはいかないらしい。俺はスマホの電源を入れ、アプリをタップした。

 

 『二次元召喚プロジェクト〜二次元キャラ達との楽しいライフを送ろう〜』

 

「なーんでこんなことになったのかなー」

「私とアマネさんが出逢うことが出来たからです」

 

 俺がみっともない悲鳴を上げる5秒前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も図書館に行っていたんですか。読書が好きなんですね」

 

 玄関で出迎える。だが少女からは返事がなく、横を素通りされてしまった。彼女の目に、まだ自分は映っていない。

 

「お風呂掃除しておきましたよ。トオルはゆっくり身体を休めるべきです」

 

 追いかけて声を掛ける。少女は鞄をリビングに放ると、ソファに身を投げ出した。

 

「・・・・休んでも休んでも疲れたまんまなんだよなぁ」

「それはトオルがずっと、嫌なものを心に溜め込んでいるからですよ。家の中くらい好きなように吐き出せばいいのに」

「・・・・ほんっと面倒くさい」

 

 徐に立ち上がる。お風呂の準備だろうか。今日彼女がいない間にクローゼットの中を整理したのだが、気がつくか。怒るかもしれない。

 

 この少女は、奥底に、深くて暗い、大きなものを隠している。それに気づいているのに、自分はこの少女に何もしてやれない。自分は二次元の人間。彼女は三次元の人間。次元の間に横たわる、絶対的な深い溝。

 

「・・・・・・・・・えっちゃん、私どうしたらいいの?」

 

 想い出すのは、どこにいるとも知れぬ一番の親友。夕日はすっかり傾いて、夜が始まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




えっちゃんの影薄くなってる気がするのです。ヒロインなのに・・・



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ぐだぐだエピローグ~終わり良ければ大勝利~

かぐや様見てからワンパンマン見ると、サイタマが白銀会長のその後にしか見えなくなります。私だけでしょうか。

そんな無駄話はさておき、次回でぐだぐだ編完結・・・する筈。


「・・・・・さん、アマネさん、起きてください」

 

 小鳥のさえずりより先に、玲瓏な声で意識が目覚める。重い目蓋をこじ開けて、俺は身体を起こした。

 ベッドのへりに手を掛け、しゃがみこむのは二次元の少女。

 

「おはようございます、アマネさん」

「おはようございます、Xオルタさん」

「がお!がおん!」

 

 Xオルタのフードの中から、ぴょこっとセイバーライオンが飛び出る。彼女も元気そうだ。

 

 Xオルタのお陰で、朝から爽やかな気分。今日は、きっといい一日になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リビングに繋がる扉を開けると、其処はまるで異世界。カラフルに彩られた空間に充満する甘い香り。

 

「あっ、周!Xオルタ!おはようなのです!」

「モベ!」

 

 此処はお菓子の魔女の結界の中。俺の家、マンションの一室にシャルロッテが結界を張っている。これなら部屋の狭さを気にせず、同居人全員がひとつの部屋で過ごすことが出来る。

 ・・・・・魔女って、味方にして自我と知性を持たせたらめっちゃ便利なんだなぁ。

 

「おはようございます周様。今日も学校なんでしょう?早く朝食食べてくださいねっ」

 

 玉藻がキッチンから声を掛けてくる。多分お弁当の用意に忙しいのだろう。同居人は以前の倍に増えたから、家政婦である玉藻の仕事量もそれに比例するのだ。

 

 けれども、昨日の朝とは違うことがひとつ。

 

「ノッブゥ!」

「ノブノブ!」

「あ、ちびノブ様達はトマトを切ってくださいますか?あっ、そこのちびノブ様達はおむすびを作っておいてくれます?」

 

 昨夜、エルからのイベントクリア報酬として同居人となったちびノブ達。彼女らは小さな体に見合わず力持ちで器用な従順な働き手として、玉藻のお手伝いをしている。

 

「六花〜、見てみて、ショップで買っちゃったんだけど〜」

「それドローン!?アカネドローンとか使えるの?」

「まぁねー。此処じゃ使いどき無さそうだけど・・・・」

 

 機能として追加されたショップ。昨夜覗いてみたのだが、中々品揃え豊富だった。代金は例の魔法のクレジットカードで支払うらしいが、それは実質タダな気がする。タダより高いものはないとよく言われるので俺は警戒して使っていなかったのだが・・・・どうやら同居人達は気にせずバンバン使ってるらしい。

 

 唐突に。耳を劈くアラームの音。

 

「あなたは誰!?どうやって此処に入ってきたの!?チノちゃんから離れて!!」

「・・・・ココアさん、警察に・・・いえ、なぎささんに通報しましょう」

 

 なにやら剣呑な状況である。浅葱の羽織を纏ったココアは印籠のように防犯ブザーをかざし、背中にチノを隠している。

 

「いやだから俺様だって俺様!!エクボだよエクボ!!」

 

 一方、黒髪でスーツの見知らぬ男性は必死に訴えかけている。・・・・あれ、見たことあるような。

 

「そんな俺様俺様詐欺には引っかからないよ!エクボちゃんはね、もっと気持ち悪い造形の緑色の謎の生き物なんだよ!!あなたみたいなダンディなイケメンじゃないの!!」

「お前さん俺のことそんな風に思ってたんだな!?だからこの身体はだな・・・・」

 

 ・・・・んん?あの頬に描かれた赤丸、もしかしてあの男は・・・・?

 

「ふわぁあ、よく寝た・・・・」

「師匠、昨日寝言うるさかったですよ」

「えっマジ?」

 

 テーブルの上に置かれた俺のスマホから、霊幻とモブが出てくる。俺の部屋にスマホ置いてたら銀さん辺りが勝手に部屋を探るかもしれないので、リビングに置きっぱなしにすることにしたのだ。

 ・・・・いや、別にエロ本とか持ってませんから!!ただちょっと警戒心強いだけのミーアキャット男子なだけですから!!

 

 スーツの男はモブに目を留め、助けを乞う。

 

「おいシゲオ!こいつらに説明してくれよ!!俺様はイケてる大悪霊エクボ様だって!!」

 

 モブは瞬きすると、小首を傾げて瞬時俯き、口を開いた。

 

「誰?」

「デジャビュ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「他の人に憑依してただけなんですね・・・。だったら最初からそう言ってくだされば・・・」

「言ってたよ!!」

 

 チノにシャウトするエクボ。緑青の霊体が空気の振動で震える。こらこら、幼女に怒鳴るなエクボ。真下には白目を剥いた男性がうつ伏せに倒れていて、セイバーライオンが好奇心に駆られて、もしくは獲物を品定めするように、つっついたり抓ったりしている。

 

「店に売ってたんだよ、『気絶した守衛』って。まさかとは思ったが、本当に此奴が出てくるとはな。正直出てくるまでは俺様も顔を忘れてたぜ」

「へー、意外と色々売ってんだなー」

「・・・・これって人身売買なんじゃ」

 

 霊幻がふうん、と興味深そうに頷き、モブからは抑揚のない落ち着いた声でとんでもない単語が飛び出る。まさかモブの口から人身売買なんて物騒な単語聞く日が来るとは。

 守衛さん・・・・商品扱いなのか・・・・ちびノブはキャラ扱いなのに・・・ほんっと二次創作において守衛さんの人権はゼロだよね。

 

 で、チノが怒鳴られているとき、ココアも同様に怒鳴られていた。

 

「おい心愛!!その浅葱の羽織を纏うということはお前は新選組の一員として、『誠』の一字を背負い戦い続けるという覚悟を持つことだ!!」

「はい!」

「お前にその覚悟はあるのか!?ぬくぬくしたほのぼの世界に生きる小娘のお前に!!肉体も精神も魂も擦り切れぼろぼろに成り果て、苦しみ悶えることになろうとも、最期まで戦うことを諦めず、誠を貫く覚悟は!!」

「はいっ、私はもふもふとチノちゃん達を守るため死ぬまでパンを焼き続けるであります!!」

「上出来じゃねえか・・・・だったら、あの不審者野郎の前で立ち止まってんじゃねえ。新選組のやるべきことは、敵を倒すことだ!!躊躇してねえでさっさと斬れ!!」

「了解でサー!!すぐに防犯ブザーを買い替えます!!」

「さぁ俺についてこい!!新選組の何たるかを叩き込んでやる!!」

「副長、私はトマトが苦手です!!」

 

 ・・・・会話成立してねえ!!何これ、バーサーカー同士が会話するとこうなっちゃうの?てかココアはバーサーカーじゃないよね!?

 

「うわー、なんじゃあれ。お互いがお互いの中で会話を自己補完してて全く会話になっとらんのじゃけど。それぞれがお手玉しててその上キャッチボールやってるつもりになっとるんじゃが」

「姉上はバーサーカーになってもまともですもんね、あの農民上がりと違って」

「ていうか・・・・ココアさんが私の後輩になるのかぁ・・・なんかすごーく心配なんですけど」

「伯母上ー、醤油とってー」

 

 バサノブはなー、あれでも割とヤバい状態らしいけど。あと茶々ちゃん、みんながココアと土方さんのバーサークな会話でドン引いてるのに平然と朝ご飯続けるあたりバーサーカー。 

 

 とか思ってたら、今度は少年の絶叫が響き渡る。

 

「わぁぁぁぁ!?えっ!?銀さんジャンクに何やってんの!?」

「何って・・・・クリトリマンもご飯食べるかなーって・・・・」

 

 銀さんはまるで当然のように、カエルの子がカエルだとでも言うように、ジャンクのモニターの上にフライ返しで目玉焼きを盛り付ける。

 

「グリッドマンだよ!!精密機械の上に目玉焼きを盛るな!!あーあーなんてことしてくれてんだよ!!ほら裕太も・・・・・」

「え?」

 

 響はポカンとして、振り返る。手に持っているのは、コアラのマーチやパイの実、そして饅頭の箱・・・・・

 

「いやお供えじゃあるまいし!!」

「読経は1回7000円よ」

「巫女はお経読まないでしょ!?」

 〈やれやれ騒がしいと思ったら・・・・後で少し分けてくれないか〉

「斉木まで!?」

 

 内海はツッコミすぎで疲弊し肩で息をする。内海はどちらかというとボケに回る方だろうから、ツッコミは慣れていないのかもしれない。そういえばボラーによくツッコミという名の蹴りを入れられていたが、グリッドマンの一部たる彼の蹴りは強烈だったろう。

 

 俺は木製の椅子(これもショップで購入したものらしい)に座ると、スマホの画面を操作する。忽ち光を放った画面から、黄金に輝く杯が飛び出す。

 

 聖杯。この間のイベントの報酬。万能の願望器。・・・・『願いをなんでも叶える』という利便性と汎用性は、善人が使えば世界を救済することができ、悪人が手にすれば世界は破滅を迎えるかもしれない、諸刃の剣。

 

 玉藻と斉木が調べてくれた結果、この聖杯が汚染されていないことが証明された。だから使っても問題はない、のだけれど。皆で話し合った結論は、『いつか使うべきときに使う』。・・・・・要するに、先延ばしだ。きっとこれが最善の結論なんだろうが。

 

「はーい、皆揃ってるー!?」

 

 神出鬼没のエセ天使が、朝の霞んだ、どこか間延びした空気を吹き飛ばし、代わりに殺意を連れてくる。

 

「今日は皆さんに良いお知らせがあります!」

「殺す」

「ねえXオルタ?会話してくれる?」

 

 えっちゃんはバーサーカーだからな。是非もなし。

 

「で?今日はなんなんですかエルさん?」

「まともに話してくれるのは君だけだよ周くん!!じゃあ前置きはナシで発表しちゃうぞー!!」

 

 何処からともなく聞こえるドラムロール。

 

 エルは満面の笑みで告げた。

 

 

 

 「ガチャを実装します!!」

 

 「マジすか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 






銀さんにボケさせるのすっごい難しいことに気がつきました。銀魂SS書いてる人は天才ですね。




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桜樹周はガチャで当てたい

完全に私事なのですが・・・・・・・・なんとFGOの1600万ダウンロード記念のピックアップがえっちゃんだー!!ありがとう運営!!

これを期にえっちゃんSSが増えますように。

次々回の長編に出すキャラのリクエストアンケートを設置していますのでよろしくお願いします。


 ガチャ!!

 

 古今東西、ソシャゲには必ずといっていいほど存在するシステム!!ゲーム内の固有仮想通貨を使い、アイテムやキャラを引く所謂くじ引きである。

 

 しかしながら、お目当てのアイテムやキャラを当てることはそう容易なことではない。当然高性能なアイテムや人気のキャラは排出率が低く、嫁を引き当てるがために人々は何千万枚もの諭吉を制作に貢いできたのだ!!

 

 一歩間違えれば、人生そのものがゲームオーバーになりかねない悪魔のシステム!!それがガチャなのである!!

 

 

 ・・・・とまぁ、こんな風に説明してみたものの。

 

 どうやらエセ天使の言うことには、課金制はナシだそうで。イベントクリアなどでしかコインを貰えないらしい。ちなみに俺は無課金勢である。コツコツログインして溜めてんだよ聖晶石。

 

「ガチャではアイテムやキャラが出てくるよ。コイン3枚でガチャ一回。コイン30枚あげるから、10回出来るからね」

「エセ天使、これ換金したら何円になるの?」

「がめついね霊夢ちゃん!」

「換金は受け付けてないよ」

「チッ」

 

 売らないでよ霊夢!新しい同居人勧誘の為に要るんだからさ!

 ・・・・ガチャ、か。金色の(恐らく)プラスチック製の玩具みたいなコインをいじくり回す。キャラを二次元から新しく召喚する、ってことだろう。エルには本当に召喚する能力があるのかと改めて認識する。

 

「それじゃあ、早速始めようか!」

 

 どうやら、貯めておくという選択肢は与えてくれないらしい。全く、この自称天使は。

 

 

 

 

 

 

 1回目

 

 飴細工の照明が落とされ、魔女結界は薄暗くなる。床に展開される、空色の円環。

 

「ではそろそろ召喚はじめるよ~」

 

 ところで、電気を消す必要はあるのだろうか。雰囲気を大事にするのは良いことだが、如何せん召喚者であるエルが怪しさ満点のイッタイ厨二天使な為に荘厳さとか、神聖さとかいうものが一切感じられない。

 

 軈て、空間に光が満ち、収まる。現れたのは・・・・

 

「・・・・パンの耳?」

 

 Xオルタの第一声で思わずズッコケる。そんなバナナ。パンの耳が出てくるガチャなんて見たことも聞いたこともな・・・・・パンの耳だ。

 其処に在ったのは、瓶に入った、パンの耳4つ。こんがりキツネ色に焼けた、パンの耳。砂糖の甘い香りを漂わせている、パンの耳。

 

 Xオルタはスタスタとソレに歩み寄り、パンの耳を1つ齧る。

 

「あっ、美味しいですよこれ」

 

 そんな問題ではない。でもパンの耳頬張ってるえっちゃんが可愛いからヨシ!!

 

「あっ、ずるいですよXオルタ。なぎさにも分けるのです!」

「私も食べるー!チノちゃんも食べよ!」

「あ、私はいいです。朝ごはん食べてお腹いっぱいなので」

「えー、じゃあ霊夢ちゃん食べる?」

「じゃあって何よ、じゃあって・・・・」

 

 パンの耳に齧り付く少女達を横目に、俺は訝しげにエルを見る。あっクソ、涼しい顔しやがって。パンの耳とかふざけてんのかテメー。

 

 そうこうしているうちに、2回目の召喚が始まった–––––––––––

 

 

 

 

 2回目

 

 結果 パンの耳

 

 

 

 3回目

 

 結果 パンの耳

 

 

 

 4回目

 

 結果 パンの耳

 

 

 

 5回目

 

 結果 パンの耳

 

 

 

 「いやどんだけパンの耳出るの!?」

 

 ・・・・・思わずツッコんでしまった。冷静になれ、俺。

 

「美味しいですよ、アマネさんも食べましょう」

 

 いただきまぁす!!わぁい、えっちゃんがパンの耳を恵んでくれたぞぉ!!末代まで家宝にするぞぉ!!・・・・・・じゃねえよ!!

 

「いやぁ、もぐもぐ、まさかもぐもぐこんなにもぐもぐ、何も出もぐもぐないとはなもぐもぐ、このエセもぐもぐもぐもぐ天使野郎めもぐもぐ」

 

 銀さんちょっと食べるか喋るかどっちか決めてくれます!?食べながら喋るのはテーブルマナー違反なんだよ!!

 

「それじゃあ6回目の召喚を・・・・あっ」

 

 急にエルが素っ頓狂な声を上げるものだから心臓が跳ねる。何がなんだっていうんだ。

 

「やっべ、力の配分間違えて5回分連チャンでやっちゃった」

 

 何やってんだエセ天使!!1回1回の召喚をドキドキしながら待ち構えるのがガチャの醍醐味というのに!!・・・・このガチャやったの初めてだけど。さっきからパンの耳しか出てないけど。てか5回分って中途半端すぎじゃないだろうか・・・・

 

 その時。不意に、頭上から光が降り注ぎ、目蓋が反射で閉じる。手で光を除け、見上げて驚いた。

 

 天井に、先刻から展開している空色の円環・・・・・召喚の術式が灯っている。

 

「・・・・・は?」

 

 丁度、銀さんの真上。

 

「あー、銀時様?パンの耳食べてないで急いでそこから退避した方が良いと思うのですが」

「あ?んだよ一体何があーーーーーーーーーーーーーーー」

 「「「「わぁあぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 

 それは一瞬の出来事だった。円環から吐き出された4人の少年少女がほぼ同時に銀さんの頭上に雪崩れ込み、銀さんの首は衝撃であらぬ方向へと曲がる。急激な加圧に耐えられず、あっという間に身体が地面にめり込んだ。

 

「な、なんなんだ一体・・・・?」

「いったたたた・・・・もー、何が起こったんですか!?」

「ゲームしてる途中だったのに・・・・あれ、何処だ此処」

「あのー、会長?思いっきり踏んづけてますよ・・・その人の頭」

「ああ?・・・ああっ!?いっ、いやいやすみません!!大丈夫ですか!?」

 

 目つきの悪い、純金飾緒のついた学ランの青年が銀さんの頭から急いで飛び退く。銀さんは引きつった笑みを浮かべ、小刻みに震えながら顔を上げる。

 

「あ、大丈夫大丈夫、俺ジャンプの主人公ですから、主人公はどんな困難にも耐えられますから。ところでそこのお嬢さん、俺のケツ思いっきり踏んづけてんだけど」

「え?ああああ!?申し訳ありませんっ!!」

 

 黒髪を紅いリボンで結わえた美少女が、転がるように銀さんの臀部から退く。

 

「いやぁ、召喚は成功したみたいで何より何より!!」

「あ~!!この人この間来た胡散臭い偽物天使ですよかぐやさん!!」

「やっぱりあんたの仕業か・・・・誠実に依頼を遂行するとは思わなかったけど、まさかこっちの事情ガン無視でいきなり呼び出すとかマジでナイわー」

 

 

 

 

 『二次元召喚に成功しました』

 

 『白銀御行 出典《かぐや様は告らせたい》』

 

 『四宮かぐや 出典《かぐや様は告らせたい》』

 

 『藤原千花 出典《かぐや様は告らせたい》』

 

 『石上優 出典《かぐや様は告らせたい》』

 

 

 

 ・・・・・・・・かぐ告も対象なの!?範囲広すぎませんか!?明らかにこのメンツとは毛色違いますよね!?

 

「ったく、迷惑なこった。なんで天井から人間が降ってくごふぅっ!?」

 

 立ち上がろうとした銀さんに、トドメを刺すように。空色の円環は銀色のスクーターを排出して閉じた。

 

「・・・・・・・あっ、このバイク『銀』って書いてるのです!」

 

 ・・・・・・・とりあえず。

 

 ガチャの結果は大勝利ってことで、良いですよね?

 

 

 

 今回のイベント結果

 

 報酬

 

 新選組の羽織

 ちびノブ

 ショップ

 聖杯

 

 

 勧誘した同居人

 

 沖田総司

 織田信長

 影山茂夫

 霊幻新隆

 エクボ

 百江なぎさ

 お菓子の魔女

 香風智乃

 響裕太

 宝多六花

 内海将

 新条アカネ

 土方歳三

 茶々

 グリッドマン

 織田信勝

 

 

 ガチャ

 

 パンの耳×5

 白銀御行

 四宮かぐや

 藤原千花

 石上優

 銀時のスクーター

 

 

 総合評価 B++

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からはかぐや様編・・・・という名の日常短編集です。

その次の長編はワンパンマン&モブサイコ回です。ワンパンマンキャラはサイタマ、ジェノス、フブキ、ソニックの登場が確定しているので、それ以外はアンケートの結果で決めようと思います。

・・・・番犬マン・・・出したいけど情報微妙に少なすぎて・・・・


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1.2章 かぐや様は三次元でも告らせたい~同居人達の混沌頭脳戦~ かぐや様は三次元でも告らせたい

かぐや様編スタートです。全4話くらいを想定しています。





『かぐや様は告らせたい』!!

 

 2015年6月号よりミラクルジャンプで連載開始、その後ヤングジャンプに移り、現在大好評連載中のラブコメ漫画。

 

 名門校・秀知院学園の生徒会長である白銀御行と、副会長である四宮かぐやは両想いなのだが、プライドが高すぎるがために「如何に相手に告白させるか」と考えお互いに知略の限りを尽くして繰り広げる恋愛頭脳戦の模様を描いており、その特殊な設定が本作の柱で、人気の理由の一つである(だが現在は天才とか頭脳戦とかそういう描写が減少していっている。でも好き。面白いから)。

 

 そのメインキャラ4人は現在、ひょんなことから日本の某都市に住む男子高生桜樹周、そして自分達と同じ二次元からやってきたモノ達と同居することになり・・・・・・

 

 

 

 

 それから、2週間が過ぎた!!

 

 

 その間、特に何も起こらなかった!!

 

 

「そういえば、藤原さんと石上くんが見当たらないのですが・・・・?」

(おかしい・・・・・どうしてこうなったの!!)

「ああ、藤原書記はココアさん達とパン作り、石上会計は桜樹さん達とゲームしてるみたいだな」

(おかしい・・・・・こんなはずじゃなかった!!)

 

 両者、こみ上げる悔しさを押し流すように紅茶を飲み干す。端から見れば、端麗な男女の優雅な昼下がりの一時。だが2人の心中では鳴門海峡のように思惟が激しく渦を巻いていた。

 

「まぁ・・・もうそんなに馴染んだんですか・・・2人が楽しそうで何よりです」

(会長と同居して2週間も経ったわよ・・・・!?ちょっとくらい何か関係が進展しても良いんじゃないの!?)

「そうだな。ご飯も美味いし、風呂も広いし、他の世界の人間から学ぶことも多い。此処での生活も、思ったより悪くないかもな」

(四宮と同居して2週間経ったというのに・・・・!!少しくらいは大きなイベントあっても良いだろ!!)

 

 同居生活が始まった頃は、見知らぬ世界での見知らぬ人間との生活に不安こそあったものの、2人は期待で胸を膨らませていた*1・・・・

 

(会長とひとつ屋根の下・・・・!?・・・・これはチャンス!!この機会に会長に告白させてみせる・・・・!!)

(四宮と同居・・・・!?・・・・四宮との仲を進展させる大チャンスだな!!なんとしても結果を残す!!)

 

 普段から学校で顔を合わせている2人。生徒会の業務は忙しく、夜遅くまで居残りすることもある。共に過ごす時間は長い。

 

 だが同居生活となるとレベルが違う。これから24時間、ひとつの空間で同じ時間、同じイベントを体験することになるのだ!!しかも期限は未定!!当分の間、ずっとこのまま!!

 

 これは2人に舞い降りた、かつてないほどの好機。エセ天使を嫌悪していた2人だったが、この時ばかりは彼を神の遣わした日々の努力に対する褒美として歓喜した・・・・

 

 

 

『あら、会長。頬に米粒が・・・・』(つまんで取る)

『おっと、すまんな・・・・』

 

 

『・・・・なんだ、映画を見ているのか』

『ええ、会長が勉強なさってる時に、坂田さんが急に映画鑑賞会を始めて。・・・・会長もどうです?席も殆ど埋まってるので、私の隣にどうぞ』

『そう、だな。休憩がてら映画を見るのも良いだろう』

 

 

『・・・会長、お風呂上がりですか』

『ああ、良い湯加減だった。それに広いし・・・・ん、どうした四宮』

『(会長の寝間着姿・・・・)いえ、なんでもありません』

 

 

『三次元の星空も、なかなか良いものだな』

『ええ・・・・とても。もしも目的が達成できたら、その時はこの空を・・・・・くしゅん』

『夜だから肌寒いな。・・・戻るか?』

『・・・・・いえ。もう少し、このまま』

 

 

 

 起こりうるイベントは未知数!!告白フラグ乱立注意報発令!!かぐ告が三次元で完結してしまう可能性大!!

 

 しかし現実は非情である!!

 

 

『あら、会長、頬に米粒が・・・・』

『こふぅっ!!』(吐血と同時に味噌汁を白銀の上にこぼす)『ちょっとなぎさちゃん!なんなんですかそのおぞましい顔はぁ!?』

『あ、すみません、つい。気を抜くとこうなるのです』

『・・・・・・・か、会長大丈夫ですか!?』

『・・・・・ああ、何の心配もない』

 

 

『・・・・・・なんだ、映画を見ているのか』

『ええ、会長が勉強なさってる時に、坂田さんが急に映画鑑賞会を始めて。・・・・会長もどうです?席も殆ど埋まってるので、私の隣にどうぞ』

『そう、だな。休憩がてら映画を見るのも良いだろう・・・・ところで四宮』

『はい?』

『その四宮の席というのは、もしかして彼処のことか?』

『ノッブ!』『ノブゥ!!』『ノブッ』(ポップコーンを持ってソファに陣取る)

『・・・・ま、まぁ子供は優先ですよね』

 

 

『・・・会長、お風呂上がりで『きゃああああ銀時の変態!!』

『おぶぅっ!!』(弾幕が白銀に直撃する)

『会長!?』

『だから偶々間違えただけだっつってんだろ!!そもそもお前みてーな馬鹿巫女の貧相な体に興味ねーわ!!』(走り抜けていく銀さん)

『誰がまな板ですってぇぇぇぇ!?』

『あばふっ!?』(更に強力な弾幕が白銀に直撃する)

『会長ーーー!?』

 

 

『三次元の星空も、なかなかい『ズシィィィィンッ!!』え?』

(ベランダの前を通過していくハイパーエージェント)

『裕太ぁぁぁぁ!!何寝ぼけてアクセスフラッシュしてんだよぉぉぉ!!』

『ていうかグリッドマンも素直に受け入れないで!!』

『六花ー、そっち工事中のビルあるから止めなきゃ不味いかもー!!』

『・・・・戻るか、寒いし』

『・・・・はい』

 

 

 

 ママレードボーイでL♡DKなドキドキ☆同居生活など其処には存在しない!!かぐやも白銀も、多重クロスΩ級同居コメディ(藤原書記以上の要警戒人物達の存在)を想定していなかったのである!!

 

((はぁ・・・・・))

 

 深い深い溜息。

 この2週間、2人は別に何のアクションも起こさなかった訳ではない。寧ろより一層本気で策略を練り上げ、授業や仕事がない分その時間に出来るだけアプローチを仕掛け、隙あらば戦を起こしていた。だが決着の時が見えたところで、タイミングを見計らったように突然の事態による強制停戦。

 それが2週間も繰り返され、両者互いに疲弊していた。

 

 と、そこに。聞き慣れた明朗な声。

 

「あっ、かぐやさーん!会長も!お茶飲んでるんですか?」

「・・・・・藤原さん」

 

(なんでかしら・・・・・最近藤原さんがまともな人間に見える・・・・此方側の人間に見えてくる・・・・きっと病気なのね・・・・)

 

「パン作り楽しかったですよ〜。かぐやさんもまた今度一緒にやりましょう?」

「そうですね、機会があれば・・・・」

「じゃあ明日もやろうかな!今度はかぐやちゃんも一緒に!」

 

 ビクン!!とかぐやの肩が跳ねる。蕾が開くが如きその明るい少女の声に、恐る恐る振り返る。案の定、ソファーの背もたれの向こうから身を乗り出しているココアがいた。

 

「コ、ココアさん・・・・それは有り難いのだけれど、なんというか、そう連日やるのは貴方や玉藻さんのご迷惑にならないかしら」

「大丈夫!玉藻さんも、『厨房の後片付けをちゃんとやるならいくらでもやってくださいませ』って!」

「あ、あらそうなんですか・・・・・」

 

(ココアさん・・・・別に直接邪魔をされたり被害を受けたりしたわけじゃないけれど、どうも、なんというか・・・・明るくて、距離が近くて、・・・・藤原さんと似てるところがあるのかしら・・・・)

 

 打算も下心もない、純粋なその優しさ、その明るさ。かぐやがココアに対して感じるものは、照れにも近く、また恐怖にも近い。それでなくとも、異世界の人間というだけで、ある程度の距離は置いてしまうものだ。

 

「それでね、今日は千花ちゃんとチノちゃんと、あと六花ちゃんアカネちゃんなぎさちゃんと一緒にクリームパンを・・・・・あっ!!」

 

 ココアはかぐやの顔から、ふと視線を逸らして白銀に向ける。いきなり注目された白銀は、なんだ、というように瞬きする。

 

「もうっ、また夜遅くまで勉強してたんでしょ?そういうのは体に悪いんだよ、()()()()

「うう、しかし前からの習慣なものだからつい・・・・」

 

(み、御行くん!?この子今、会長のこと御行くんって呼びました!?)

 

 呼び方というものは、人間関係の親密さを測るバロメーターである。特に下の名前呼びは、互いの間に相当の時間と信頼関係が無ければ出来ない呼び方であり、異性同士ならそのハードルは格段に上がる!

 それを、ほぼほぼ初対面でしかも異世界の人間であるココアがいともあっさり乗り越えるのだから、かぐやは当然動揺する。

 

(なんて図々しい子なの!?というか下の名前呼びされてるのに会長も普通に接してるし・・・・ココアさんには人間関係の距離感とかそういう常識がないのかしら?そういう世界の子なのかしら)

 

 ちなみに、現時点で最も常識や価値観や文明が類似しているのはかぐ告世界とごちうさ世界である。

 

(いえ、でも私や会長だってココアさんのことを下の名前で呼ぶし・・・・・・だって保登さんって呼びにくいもの。きっとココアさんも呼びにくいから下の名前で会長を呼ぶのよね)

 

 下の名前呼びの条件にはいくつかの例外も存在する。

 ・名字が呼びにくい

 ・近くに相手の家族や同じ名字の人間がおり区別する為

 ・本人が名字で呼ばれることを好まない(名前で呼ばれることを望んでいる)

 などである。

 

 確かにココアの名字である『保登』は些か呼びにくく、ファンの間でも二次創作界隈でも、ココアやモカのことを保登と呼ぶ人間はいない(そもそもごちうさ世界の人間の名字は大抵呼びづらい*2)。

 

 だがここでかぐやはハッと気がつく。

 

(いや、別に『白銀』は呼びづらい名字じゃないじゃない!!前の私は普通に呼んでたし!!)

 

「ま、まあでもココアさんの言う通りかもしれません。深夜の勉強は控えた方がよろしいかと。暫くは学校もテストも無いわけですから、せめて夜はゆっくり寝た方が良いですよ会長」

「そうだな・・・・」

「?」

 

 2人の会話の様子を見て、ココアは小首を傾げ少し考え込む。そして言い放った。

 

「ねえかぐやちゃん、ここ学校じゃないし生徒会の活動中でもないんだから、御行くんのことは会長って呼ばなくても良いんじゃないかなぁ」

「へっ?」

「普通に名前呼びでいいと思うの。ねっ、千花ちゃんもそう思うでしょ?」

「確かに・・・・じゃあこれからは私も『みゆき君』って呼ばせてもらいますね!」

「えっ!?あー、まぁ良いが」

(なんですって!?)

 

 以前*3生徒会解散後の打ち上げの際、白銀が会長でなくなったことで、かぐやは白銀をどう呼べばいいのか悩んでいた。

 結局白銀がもう一度会長をやることになり、かぐやは以前のように『会長』と呼んでいたのだが・・・・・

 

 此処は三次元。秀知院学園ではないのだ。業務も自分以外の生徒たちもほぼいない今この場で、白銀の『生徒会長』という肩書きはほぼ無意味に等しい。つまり白銀をわざわざ『会長』と呼ぶ意味はあまりない。

 

(となると・・・・この機会に名前呼びに移行すれば、会長との距離が縮まるわね。いや、でも、『白銀さん』っていうのはやっぱり昔みたいでちょっと。だからって、私は藤原さんやココアさんみたいに気軽に『御行君』なんて馴れ馴れしく呼べない。それに・・・・)

 

『"御行君"?四宮、別に名前呼びっていうのは下の名前に限った話じゃないし、ココアさんはあくまで肩書き呼びは堅苦しいという意味で言ったんだろう?』

 

『それなのにわざわざ下の名前で呼ぶなんて・・・それはまるで・・・・』

 

(それじゃあまるで私が会長のことどうしても下の名前で呼びたいみたいじゃない!!・・・・・仕方ないわ。ここはこれまで通り行きましょう)

「ココアさんのお気遣いは有り難いですが、やはり私は『会長』呼びの方が慣れていますので。生徒会が解散したわけでもないですし」

「そうですねー、私もやっぱり今まで通り『会長』呼びにします」

「そっかぁ。そうだよね。かぐやちゃん達にもかぐやちゃん達の付き合い方があるんだもん。私みたいな他人が口出すことじゃないか〜でも御行くんはちゃんと9時には寝なきゃ駄目だよ」

 

(うっ・・・・・でもやっぱりちょっと羨ましい・・・私がココアさんみたいになれたのなら、会長に、こんな感じに当たり前のように真っ直ぐ距離を縮めに行けたのでしょうか・・・・)

 

 かぐやは、性格が良い方ではない。常に他人を見下し、自己の利益の為利用することを真っ先に考える。それはかぐや自身も認めざるを得ない、昔から刻まれてきた帝王学と生来のものにより構築された人格の一面だ。

 だからこそ。かぐやは白銀のような、自分とは正反対の生粋の善人に惹かれたのだろう。

 

「あっ!そうだ良いこと考えた!!」

 

 いきなりパチンと手を叩いて、ココアは部屋中の注目を集める。

 

「御行くんもパン作りやろうよ、一緒に!」

「えっ?いや、なんでそうなるんだ?」

「御行くんって、いつ見ても勉強ばっかりしてるし、空いた時間もすぐに玉藻さんやアマネくんのお手伝いしたりしてるし・・・だから、たまには美味しいパンを作って楽しんで、ゆっくり休もうよ!きっとぐっすり眠れるんじゃないかな!?」

 

 ねっ!と、アメジストの瞳を煌めかせて白銀に迫る。純粋な善意による提案は、子供の必死の頼みごとのようで、白銀は断りづらい。

 

「・・・・分かった。そういうのも良いかもしれん」

「じゃあ決まりだね!それじゃあ後で優くんも誘うとして・・・・そうだ、折角だし同居人みんな誘っちゃおっと。あ、かぐやちゃんと千花ちゃんと、御行くんと優くんって同じ世界から来たんだよね?」

「え?あっ、はいそうですけど」

「だったら、かぐやちゃん達4人は同じ班だね!知ってる人とやった方が美味しいパン作れるだろうし」

 

(なんですって!?そ、それってもしかして・・・・)

(それじゃあ、四宮とパン作り・・・・だと!?)

 

「あれっ、もしかして他の世界の人たちと組んだ方が良かった?」

「いえっ、全然大丈夫ですよ、はい。パン作りですか、楽しみですね会長?」

「そうだな、パン作りはあまり経験もないし、授業でもやらんし。こういう世界だからこそできる経験かもな」

 

((・・・・ココアさん、ナイスッ!!))

 

 2人は、久し振りにこの世界に来たことに歓喜した。

 

 

 

 

 本日の勝敗 両者勝利(2人でパン作りチャンス獲得)

 

 三次元での共同作業編に続く。

 

 

*1あくまで比喩表現。実際にかぐやの攻撃力が増したわけではない。

*2香風、天々座、宇治松など

*3単行本6巻収録『かぐや様は呼びたくない』参照




次回はもう少し白銀会長のモノローグ出したいです。


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白銀御行は味方がいない

いつの間にか、めでたく『二次元召喚をお知らせします。』はお気に入り100件超え、その上UA1万超え。

きっとかぐや様パワーですね。集英社の方角に祈りを捧げようと思います。

これも応援してくださる皆様のお陰でございます。これからもどうかよろしくお願い致します。

あと、アナログですがこの小説の表紙的なイラストを描きました。


【挿絵表示】


左が周、右がえっちゃんとがおトリアさんです。周のイメージが違ったら申し訳ありません。あとセイバーライオンのコレジャナイ感。

小説も書けて絵も描ける人って凄いですよね。





 前回までのあらすじ

 

 秀知院学園に通う四宮かぐやは、どのラブコメにもいる(どこにでもいる)金持ちでプライドが高くてポンコツな(ちょっぴりドジなフツーの)女の子☆

 

 ちょっと気になるオトコノコ、生徒会長の白銀御行に告らせるため、日々恋の戦いを繰り広げているのです☆

 

 けれどもある日突然、白銀、親友の藤原ちゃん、白銀の友人で後輩の石上くんと一緒に異世界へ飛ばされてしまう・・・・!!

 

 そんなかぐや達を助けてくれたのは、地味で影の薄い普通のヲタク高校生桜樹周くん。かぐや達は、周くんと不思議でちょっと変わった周くんの同居人達と暮らすことになって、毎日ドキドキの連続!

 

 そんな中、かぐや達は桜樹家の同居人達と共にパンを作ることに。一体どうなる・・・・!?

 

 

 

 

 

 お菓子の魔女の魔女結界 厨房

 

「はーい、それじゃあ『ココアお姉ちゃんのベーカリー教室』はっじめるよー!」

 

 ココアの明るい声が広い部屋に響く。シャルロッテが構築した厨房の間は、小学校の家庭科室のように見える。

 

「今日は4人班で協力して惣菜パンをつくるよ~。具材は沢山用意しているから、好きなものをパンに入れてね。分からないことがあったら、私に聞いて!」

 

 白銀は、前の長机に置かれた食材たちを見る。キャベツやトマト、胡瓜。苺やバナナやキウイ。餡子やチョコレートやホイップクリームなどもある。・・・・ところで、中央にでかでかと置かれているあのチキンのようなものは七面鳥だろうか。ついでに言うと、何故お寿司とかステーキとかいった完成品の料理が置かれているのか。

 

(まぁ、それは別に良いとして・・・・)

 

 ちらりと、視線を横に流す。真紅の三角巾を巻いたかぐやは、白銀と・・・・いや、今いる大多数の人間と同じジト目で食材を見ていた。

 

(ここで恰好良いところを見せつければ、四宮は俺に見惚れるはずだ!)

 

『うわぁ、会長のパンおいしそーですね!』

『素敵です会長・・・・会長、これから毎日、会長の作ったパンを私に食べさせてください!』

 

(てな感じで!!)

 

 味噌汁系告白を想定する白銀。LINEで簡単に告れるようになった時代、そういう告白はやや古い気もするが彼にとっては問題ない。

 

 白銀は昨日ココアに誘われた後、今日の為にずっとパン作りについて勉強していた。時間がないので実際に調理こそしていないものの、店でレシピ本を買ってパン作りのコツや重要点を丸暗記した。それこそ、寝る間も惜しんで。

 

(こっそりキッチンに忍び込んで実践したいところだったが、キッチンはちびノブが衛兵として見張ってたからな・・・・だが、予習は完璧だ。いける!)

 

「それじゃあ、やる、ぞーーーーーーーーーーーーー」

 

 ()()を見た瞬間、全身から血が引いていく。視界がぼやける。白銀は心臓を握りつぶされた気分になった。

 それでも彼のプライドは、告白したら負けという思考を半年以上も貫くくらいには高い。荒い息を整えて、震える足を何とか踏ん張って、()()を睨んだ。

 

 道化のような化粧をした、羽飾りをつけた黒い化け物。顔の端まで裂けた大口を結び、何かをぶら下げていた。

 

 人だった。頭部を大口に突っ込まれた人。黒い清潔なワンピースが化け物の唾で濡れる。ぽとり。ローファーが虚しく落ちていく。

 

 あれは、紛れもなく秀知院の制服だと、白銀は理解する。こんな非日常的状況でも、彼の頭脳はしっかり動いているらしい。

 この世界に来てから、就寝時以外は白銀達はなんとなく制服で過ごしていた。いきなり呼ばれたものだから、それしか服がなかったというのもあるし、単に私服を買うのを忘れていたというのもある。

 

 自分の隣には、硬直した石上と、顔面蒼白で後ろの机に手をつきなんとか立っているかぐや。となると、あれは。

 

 大方状況が理解できた白銀が一歩踏み出した時。横を駆け抜けていく小さな影。

 

「こらぁーーー!!シャルロッテ駄目じゃないですか!!千花はチーズじゃないんですよっ!?」

「モベッ?」

 

 化け物はぺっ、と人間を吐き出す。唾液まみれの桜色の髪が、べちゃりと床に落ちる。藤原の首は、ちゃんと胴体に繋がっていた。

 

 周囲の者達が息を呑む音が聞こえる。それほど場は痛々しい静寂に包まれていた。ごそり、と静かに藤原が上体を起こす。ほっと息をつくと、藤原は言った。

 

「え?どうして黙ってるんですか皆さん?生きてます?」

 

 (こっちの台詞だ馬鹿やろう!!)

 

 藤原はパチパチと瞬きして、服についた埃を払う。まず唾液まみれの頭部をどうにかするべきなのに、全く気にしていない様子であった。

 

「もー、何が起こったのか分からないし、なんとなーく首が痛いし・・・・」

 

(なんとなーくで済ませられるか!!死にかけてんだぞ!!)

 

「藤原先輩シャルさんに食べられかけてたんですよ。覚えてないんですか?」

「あっ、そーなんだ!」

「まぁ、生きてて良かったですね」

「いやいや石上くん、なめてもらっちゃ困りますねー。こんくらいじゃ私は死にません!!」

 

(死ぬわ!!フツーに死ぬわ、首かじられたら!!あと石上も藤原も生命に対する価値観が軽すぎだろ!!なに、なんでコイツらこの状況にすっかり順応しちゃってるの!?)

 

「もー、シャルロッテったらいけない子なのです。いやぁすみませんね千花」

 

 てててて、と駆け寄ってきたなぎさがぺこりと謝る。ほら、シャルロッテもごめんなさいするのです、と頭を下げさせる。

 

「別に気にしなくていいよー、生きてるしー」

 

(気にする気にする!!なんなら慰謝料馬鹿ほどふんだくっても許されるから!!というかチーズと人間間違えるって、あのぬいぐるみには世界がどういう風に映ってるんだよ!!あれ、藤原書記ってこんなに器大きかったっけ?殺人未遂の罪を許しちゃうくらいの聖女だったかあの人!?)

 

 ここに自分の味方はいないのか?自分と同じように、この状況に違和感を持っている人間はいないのか?白銀は希望を込めて辺りを見回す、が。

 

「アマネさん、パンに餡子と苺を入れて苺大福パンにしませんか」

「あー、いいねそれ。美味しそうだと思うよ」

 

「師匠、なんで塩をそんなに用意しているんですか?」

「塩パンを作ろうと思ってな・・・・・どうだ、お前も食うだろ?」

「あ、大丈夫です」

 

「ちょっと銀時様!その大量のホイップクリームとチョコレートはなんですか!!」

「え?パンに入れるにきまってんだろーが玉藻」

「駄目ですそんな不健康な甘ったるいパン!!そう思いますよね霊夢様!!」

「ねえ、ホイップクリームって何?」

 

(あれぇぇぇぇぇぇぇ!?なんか普通にしてんだけどー!?神経どうなってんだこの人達!!)

 

 つい先刻、同居人が殺されかけたというのに、何事もなくパン作りを始めている一同の様子に鳥肌が立つ。

 もしや自分はヤバい人達と関わってしまったのではないか?ノリで爆弾のスイッチ押しちゃう人達なのではないか?

 だとしたら、このままでは非常に不味い。今まさに、かぐや達が命の危険に晒されている。会長である自分がしっかりしなくては・・・・と思い、白銀はかぐやの方を見た。

 

「・・・・会長」

「な、なんだ?」

「パンに入れる具材、何にします?」

 

 (四宮よお前もかぁぁぁぁぁぁ!!)

 

 藤原も石上も、そしてかぐやも。ずっと此方側の味方だと思っていた人間が、この短期間でいとも容易くこの異常で混沌とした空気に既に呑まれている。白銀の中で、何かが崩れていった。

 

『あらあら会長、一体何がおかしいって言うんです?』

 

『たったこんなことで動揺してるだなんて、器が小さいんですのね・・・・』

 

 『お可愛いこと』

 

(うん、・・・・もう、なんかどうでもよくなってきた。藤原書記が生きてるんだから別に良いよね・・・・)

 

「会長?どうかしましたか?」

「いいや・・・・早く作ろうか、うん」

 

 何もかもを諦めた白銀のその表情には、どこか清々しいものがあった。全てに指摘するより、抵抗せず全てを受け入れた方が、遥かに楽だと白銀は気づいてしまったのだ・・・・!!

 

 だがしかし。

 

(会長までなんか平然としてるんですがぁぁぁぁぁぁ!?)

 

 かぐやはおかしくなったわけではなかった。ただ、白銀でも察することが出来ないくらい、生来より刻み込まれた帝王的プライドをフル回転させて、必死に平静を装っていたのだ。

 

(どうしましょう、もしかしてまともなの私だけ?そうなの?私だけなの?)

 

 気がつけば、藤原も何事もなかったかのようにパン作りに取り掛かり始めていてさっきの惨状が自分の見た白昼夢かのように思える。

 

(それにしてもさっきの人形・・・・なんて恐ろしいのかしら。ただの動くゆるふわマスコットと信じ込んでたのに!)

 

 かぐやですら、Magica Quartettoの撒いた最初で最大の釣り餌に見事に引っかかったらしい。その釣り餌はといえば、やっぱり何事もなかったかのように、パンに何のチーズを入れるか選んでいる。

 

(なんだろう、私がおかしいの?藤原さんいつも石上くんの発言には怒ったりするのに何故自分を殺そうとしたシャルロッテには怒らないの?なんで?私がおかしいの?)

 

 そうこうしている間にも、時は過ぎていく!かぐやも手は動かしているが、先刻のマミられ藤原の映像が頭から離れない!

 

(はぁ・・・・初めて会った時から、私達とは違うものを感じてたけど、これほどだなんて・・・・・異世界の人達は皆個性的ね・・・・これじゃあ、私の存在感薄くなる一方じゃない。会長の中で大きな存在にならなければならないのに・・・・)

 

 その為に。かぐやはこのパン作りに臨んだのだ。

 

 夜中密かに、キッチンを借りて練習した。誰かの邪魔が入らないように、カステラでちびノブを買収して衛兵をさせた。

 

 けれども。不思議と、上手くいく気がしない。周りの人々は、あまりにも自分達とは次元が違う。運動神経も、頭脳も、才能も。世界の"種類"そのものが異なるのだ。

 

(・・・・だめよ四宮かぐや。弱気になったところを悟られてはいけないわ。今はパン作りに集中するのよ、パン作りに)

 

 そう思って、早速小麦粉をとった、その時。

 

「千花〜、見てくださいチーズたくさんパンに入れるんですよ〜」

「うわぁ、それすごく美味しそうだね!」

 

 振り返れば、藤原と頭にシャルロッテを乗せたなぎさが談笑している。加害者と被害者が交わす会話とは到底思えない。

 

「ところで千花。本当にさっきの大丈夫でしたか?シャルロッテは小さいとはいえ強力な魔女なのです、後遺症とか・・・・」

「気にしなくていいって、死んでないし〜」

「うーん、でもさっき、貴方の友達が貴方のことすごーく心配そうに見ていたものですから」

「そうなの?」

 

 藤原が此方を向いた。かぐやと白銀はサッと聞いてないフリをする。その間にもなぎさは続けた。

 

「千花は周囲の人間に恵まれてるのです。ところで、なぎさ聞きたいことがあるのです」

「なぁに?」

 「かぐやと御行って付き合ってますよね?」

 

((こふっ!?))

 

 子供は、いつでも大人の想像の範疇を超えていく!!どうして自分から死ににいくようなことするのか!?どうしてそんなことに気づけるのか!?どうしてそんな質問をするのか!?

 

「なぎさ達、実はかぐや達の為に歓迎パーティーの準備していたのです。でもなかなか話が纏まらなくて、結局普通に駄弁ってたりしちゃうのですよ。その時に出た話なのですが」

 

 かぐやと白銀は、なぎさに釘付けであった。歓迎パーティーの計画を立てていたことは初耳だが、それよりも気になるのは話の内容だ。

 

「なんか2人ともいつも一緒にいるじゃないですか。会長と副会長っていう関係性は分かるのですけどね?でもそれでも、必要以上に2人一緒になろうとしてるように見えるのです」

 

 なぎさは未熟で幼い子供だ。しかし彼女とて魔法少女で、世界の概念たる円環の理が数多の魔法少女から選んだ直属の部下だ。そのくらいは見え透いている。

 

「皆で話してたのです、ありえる話だって。2人とも美形だし、頭もすごく良いし、仲良いしって」

「うーん、確かにそうなんだけど、べつにかぐやさんと会長は付き合ってないよ。すごくお似合いなのは私も感じるけど・・・・・付き合っててもおかしくないけど、今のところそういうのはないかな」

 

 藤原の返答は、現時点では真実に他ならない。それでもちょっぴり、ちょっぴりだけ2人は落胆する。

 だがなぎさは溜息をつくと、こう続けた。

 

「いやいや、それは千花が鈍感なだけなのです。実は両想いかもしれないじゃないですか」

「そうなのかなぁ」

「そうなのです。でもなー、あれは苦労しそうですよね、恋の成就までに」

「へ?どういうこと?」

 

 なぎさは首を横に振って肩を竦めた。

 

「ほら、あの2人プライドがエベレスト級に高そうじゃないですか。だから自分から告白すると負けた気がするから『いかに相手に告白させるか』ばっかり考えて状況が何も進んでなさそうなのです」

 

((!?))

 

「超高校級の頭脳を無駄にフル回転させて幾度となくアプローチは仕掛けるのだけれど、なんやかんやで失敗して結局三歩進んで二歩退がる的なアレになってそうなのです」

 

「というか、その失敗の理由の大半が、何らかの外的要因、要するに邪魔が入ったってことだと思うのですよ。あの2人賢いから計画は綿密に立ててそうだし。特に千花とか優は無意識に計画を混乱させてそうですよね、性格的に」

 

「その上、此処だったら邪魔になりそうな人沢山いるのです。だからあまり上手くいってないかもしれません」

 

 なぎさの予想は概ね正解である。で、当然2人は動揺する。

 

(あ、あの子なんて恐ろしいの!何?テレパシストなの!?)

(両想い・・・いやまぁ両想いだろうけど、なんでそこまで分かるんだあの子!!)

 

 藤原はそんな2人に構わず、小首を傾げると、言った。

 

「それはなぎさちゃんの考えすぎだと思うけど〜」

 

 藤原は高度な頭脳戦に全く気がついていなかった!!音感はあるけど直感はないのだ!!

 

「そうですか?でも、かぐやと白銀最近元気ないから・・・・もしかして、なぎさ達が邪魔してるんじゃないかって話になって」

 

(え?)

(そんなこと思ってたのか?)

 

「気を付けてはいるのです。周には居候させてもらってる身ですから、なぎさ達同居人はなるべく迷惑かけないように努めようって、そう考えてるのです。・・・・でも、同居人の中でも、色んな人がいるのです。強い人弱い人、明るい人暗い人、優しい人冷たい人。なぎさでも理解できない人もいるのです。だから、きっとかぐや達はとまどうだろうなぁって。それに、かぐや達の世界はココアやチノと同じで、魔法が存在しない世界なのです。だからすごくなぎさ達みたいなのは困るのです、かぐや達にとって」

 

 かぐやの世界に、魔術は存在しない。アーサー王は伝承通り男性だったろう。空を宇宙船が飛んだりしないし、弾幕ごっこなんて文化もない。超能力者なんて、きっとかぐやの世界では皆インチキだろうし、魔法少女もいない。町に怪獣がやってくることもない。

 

「かぐや達がいると楽しいのです。色んな話が聞けて。かぐやも白銀も頭が良いから勉強教えてもらえるし、千花はテーブルゲーム上手いし、優はゲームが得意だから、周が楽しそうなのです。ファンが楽しそうにしているのを見るのは嬉しいのです。でも、」

 

 なぎさは俯いて、ぽつぽつと話す。

 

「でも、かぐや達は楽しくないのかなって思うのです。なぎさ、さっきもすごく迷惑かけたのです。それでもかぐや達は此処にいてくれるのです。きっと優しいからです」

 

 普通、非科学的で非常識な事態が起こったら、大抵は自分のキャパシティーを超えるから、未知のものに触れたくないからと逃げ出すだろう。

 

「きっとなぎさ達は無意識に迷惑かけちゃうこと、たくさんあるのです。だから・・・・」

「・・・・ずっと、心配だったの?」

 

 静かに頷く。何も気にしていないわけじゃない。自分の常識が、他人にとって非常識になることくらい知っていた。ただ、自分達はその状況に慣れすぎて、気にせずそのまま流してしまうのだ。

 

「その、なので・・・・」

「気にするな」

 

 白銀が動いた。歩み寄って、なぎさの背丈に合わせてしゃがむ。

 

「確かに困ることも多い。毎日弾幕やら宝具やら使われて喧嘩されるのは、五月蠅いし危険だし。正直邪魔になることもある。だがな、少なくとも俺はなぎさちゃん達のことを、嫌いだと思ったことはない」

 

 シャルロッテが、ふわりと床に降り立って、白銀を見上げた。少し間があって、白銀は続ける。

 

「なんというか・・・・まぁ、変わった人達だと思う。でも此処にいるのは皆、俺達と同じ自我と意思を持った一個体であることに変わりはない。苦手だと思う部分もあるが、凄い一面や学べることもある。自分と価値観が違う人間を、ただそれだけで排斥したりしない。例え魔法少女だとしても、怖い化け物だとしても、な」

 

 そっと手を伸ばし、なぎさの頭を撫でる。昔、妹にやったように。ゆるりゆるりと撫でて、少しして手を引っ込める。

 

「だから気にするな。俺達も、まだまだ戸惑うことは多いが、ゆっくり時間をかけて理解していきたい」

「・・・・そうですか」

「流石に人間をパックンチョするのはやめてほしいが」

「モベッ!」

「善処するそうです。なぎさも、もっと見とくのです」

 

 それじゃあ、ありがとうございますとなぎさは自分の班に戻っていく。時計の針は、まだ五分しか動いていない。しかし、ほんの短い間に、何かが決定的に変わった、白銀はそんな気がした。

 

「会長、優しいですね」

 

 かぐやが歩み寄ってくるのを見て、白銀は立ち上がった。

 

「・・・・妹を思い出してしまってな」

「あー、圭ちゃんのことですね!」

「そうですか」

「さて、気を取り直してパン作るか」

 

 たとえ、どんな状況で、どんな場所で、どんな人間がいたとしても。どれだけの困難があっても。恋愛頭脳戦が止まることはない。『告白させてみせる』というその想いは、決して砕けないのだから。

 

「・・・・ところで」

 

 ずっと黙々と作業に取り掛かっていた石上が、ポツリと喋り出す。

 

「藤原先輩結構ガッツリ喰われてたのに、よく首取れませんでしたね。どんだけ首硬いんですか」

 「「それな!!」」

 

 

 本日の勝敗 白銀の勝利

 

 次回に続く

 

 

 

 




周(それにしてもよく死ななかったな書記ちゃん・・・・)

銀さん(もうやだあの魔女マジ怖えー!!)

チノ(私もチーズに見えるんでしょうか・・・・・)

別に気にしてない訳じゃない。


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かぐや様は食べさせたい

銀時「新しい元号は」

『糖分』

銀時「でありま(上から降ってくる大量の塩)ぐふうっ」

霊幻「えー、改めまして、新しい元号は・・・・」(塩まみれで伏せた屍の上に立つ)

『霊幻』

霊幻「でありま(真っ直ぐに刺さるネクロカリバー)あぐぬっ」

Xオルタ「・・・・・新しい元号は」(屍ふたつを蹴っ飛ばす)

『えっちゃん』

Xオルタ「です」

新しい元号は『えっちゃん』!!新たな時代の幕開けはえっちゃんが告げるわけないでしょーが。

・・・・新しい元号は、『令和』であります。皆さま令和になってもどうぞよろしくお願い致します。




 改めて、パン作りが開始された。

 

「パン作りは戦いなんだよ!ほんの少しのミスが完成度を左右するんだから!1秒たりとも気を抜いちゃ駄目!!本気でパンにぶつかっていくんだよ!!」

 

 歴戦の戦士の如きオーラを発するココア。普段のポワポワオーラとはまるで違う。当然のことだ。彼女はパン屋の娘。これまでの人生で、幾多ものパン作り(戦い)を潜り抜けてきた猛者。勝利の喜びも敗北の悔しさも、幾度となく味わってきたのだから。

 

「ココアさん、すごい気迫ですね」

「だな。俺たちも負けてられないぞ」

(だが・・・・意外とパンをこねるのは難しいんだな・・・・体力も使うし、時間もかかる)

 

 パンをこねるのは、グルテンを繋げてふっくらしたパンにする為である。きちんとこねなければ、ペッチャンコで不味いパンが出来てしまう。

 

「ふぅ、ふぅ・・・・かぐやさん、疲れてないんですか?」

「ええ、このくらいなら大丈夫です」

 

(昨日あれだけ練習しましたしね!どうですか会長、私はパンを作れる家庭的な女ですよ!)

 

「四宮は流石だな。もしかして経験あるのか?」

「(ギクゥッ)え、ええ前に一度だけ」

 

 尚、その『前』はつい昨日の深夜のことを示すが嘘ではない。

 

「そうか・・・・」

「会長は大丈夫ですか?お疲れならば手伝いますよ」

「あ、ああ」

 

 白銀は手も腕も疲労が溜まっていた。パンをこねる作業はかぐやに任せ、自分は別の作業にさっさと取り掛かろう・・・・とそこまで考えて、白銀ははたと気がつく。

 

(いや待て待て!これは罠だ!!もし素直にこれに応じてしまったら・・・・)

 

『あらあら会長、もう疲れてしまわれたのですね?ただパンをこねるだけなのに』

 

『女性の私が平気なのに男性の会長はクッタクタで、誰かに任せたいということですか?』

 

『お可愛いこと』

 

(俺としたことが・・・・!分かりやすい罠に引っかかるところだった!)

 

「い、いや大丈夫だ。もうすぐ終わるしな」

「そうですか・・・・」

 

(気遣いアピールは失敗かしら・・・・まぁ、会長にも男のプライドというものがありますよね。それはいいとして、)

 

 かぐやはパン生地に目を落とす。この後、こね終わったパンの形を整え、具材を中に入れ包む。それからオーブンで焼けば美味しいパンの完成だ。

 パン作り中の家庭的アピール等の仕掛けはあくまでついでに過ぎない。かぐやの最終目的は、最初から決まっていた。

 

(私の作ったパンを会長に食べさせる。そしたら・・・・・)

 

『美味い・・・・美味いぞ四宮!』

 

『四宮、これから一生、毎朝俺にパンを作ってくれないか?』

 

(と告白してくる!!完璧だわ!!)

 

 天才は思考パターンが一緒なのである!!結局2人は同じことを考えていた!!その告白パターン自体がベタすぎるし今時ねーよとかは別にして!!

 

(その為にもパン作りを成功させないといけない!!大丈夫、まさかパン作りで宝具が飛び交うことは無いだろうし、あのほん怖魔女も二度は出てこない・・・・・)

 

 「絢爛魔界日輪城!!」

 

(いきなり宝具!?)

 

 振り返れば、沖田、ノッブ、土方、茶々の班に骸骨兵が群がっている。周囲は、呪詛と怨嗟に燃える焔。

 

「さぁさぁ、真田くん後藤くん毛利くん長宗我部くん明石くん!!茶々の為にパンをこねて焼いてゆくのじゃー!!」

「ちょっと!?私達まで燃やされるじゃないですか!!」

「はっはっはっは!!その身を灼く呪いの焔で、パンを焼くというか!!流石は我が姪、日輪の寵姫じゃ!!羽振りが良いのう!!」

「此処が魔女の結界だろうが日輪城だろうが、俺の使命に変わりは無え!!俺が!!ここが!!新撰組だぁぁぁ!!」

 

 (普通にパン作って!?)

 

「きゃあぁぁぁ!!六花ぁぁぁぁぁぁ!!」

「こら駄目じゃないですかシャルロッテ!!だから人間とチーズは違うものだって言ってるのです!!」

 

 (再犯が早すぎる!!)

 

 白銀のカッコイーイイハナシ展開からわずか5分後にはこの惨状!!1人は壊れた幻想でパンを焼くと宣い、1人は1話前の白銀の恰好良いシーンをすっかり忘れてカニバリズムに興じている!!にも関わらず周囲の人間は平然とパンをこね、辺りには血と炎と小麦粉の香りが漂う!!

 

 カオス!!まさにカオスである!!

 

(もう!!もう知らない!!もう私はツッコまない!!何がなんでも、意地でも最高のパンを完成させてやるわ!!)

 

 めげない!!しょげない!!泣いちゃだめ!!かぐやの心は静謐に燃えていた・・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 2時間半後

 

 

「はい、みんな完成したみたいだね~!お疲れさま!」

 

(よ、よし・・・・よし・・・・・・・よし!!)

 

(無事に・・・・・・・パンを完成させたわ!!)

 

 途中、えっちゃんのオルトリウム暴走、恐怖のピタゴラスイッチ、ジャンクの水没などなど、様々な事件が起こったが、2人は無事にパンを完成させた!両者ミッションコンプリートである!!

 

「いやぁ、何事もなく終わって良かったですね~」

「藤原さん・・・・それ本気で言ってるのかしら?」

「なんか僕のパン明らかに不味そうなんですけど・・・・あれですかね、パンは人の心を映す鏡なんですかね。根暗で非リアな僕が作ったから、この通り酷い出来なんですよ、ははははは・・・・・・・・」

「そ、そんなことはないと思うが・・・・大体石上のパンが焦げたのは坂田さんがオーブン壊しちゃったからで、お前は悪くないし」

 

 何はともあれ、後は互いに自作のパンを食べさせるだけ。なんの問題も無い。筈だった。

 

「あの、」

 

 焼き立てパンが4つ入った籠を持って、現れたのはXオルタ。

 

「私の作ったパン、味見してもらえませんか。アマネさんにあげたいんですが、先に他人からの客観的な意見が聞きたいんです」

「ああ、成る程な」

「しかし、なぜ私達に?」

「一番常識人だと思うので」

 

 サーヴァントやら魔法少女やら超能力者と比べれば、確かにかぐや達はまともな部類である。また、その発言は自分をアブノーマルだと認識していることになるが、彼女は気づいていない。

 

「餡子入りのパンと抹茶クリーム入りが2つずつあるので、食べてください」

 

(・・・・まぁ、一個くらい食べてもお腹いっぱいにはなりませんし。いただいても良いですよね)

 

「分かりました!じゃあ私は抹茶クリーム入りのにしますね!」

「僕も抹茶のやつにしますね・・・」

 

 藤原と石上が先に抹茶クリームパンを選んだので、白銀とかぐやはあんパンを手に取る。ツンと香る、こんがり焼けた半球体のパン。餡子と抹茶とは、和菓子好きの彼女らしい具材のチョイスだ。

 

 それじゃあいただきまーす、と一同はパンにかじりついた。

 

 かじりついた。

 

 かじりついて、

 

 そして、

 

 「「ひぎゃあああああああああああああああ!!?」」

 

 約2名、突然襲来した最大級の辛味に叫喚した!!鼻孔を奥からつんざく尖った香りに悶絶する!

 

「藤原!!石上!?一体どうした、何があった!!」

「落ち着いてください2人とも!あっ、えーと、水!!とりあえず水!!」

 

 口からパンを吐き出しかねないほど苦悶する藤原と石上!水道に走るかぐや!!2人がリバースするまで最早一刻の猶予もない!!

 

「ちょっとXオルタさん!!これ抹茶クリームじゃなくて山葵だよ!?」

 

 駆けてくるのは周。緑色の絞り袋を持っている。

 

「えっ?でもそれ、ラベルには抹茶って・・・・『ツンとした香りは製造工程上で付着したものです』って・・・・」

「ツンとした香りが製造工程で付着する抹茶クリームなんておかしいって!!それにこれ、おっきい会社で作ったやつでは無さそうですよ。大体製造会社の表記が無いなんて食品表示法違反だし・・・・」

 

 あー、俺がちゃんと見とけば~!!と嘆く周。しかし藤原と石上がピンチだという状況は変わらない!時間の歯車は回り続けるのみ!!

 

「藤原さん、石上くん、水飲んでください」

「む、無理です・・・・吐きます・・・・」

「水なんて飲んだら辛いのが口全体に広がっ・・・うっ、うぷっ」

「お、おいとりあえずビニール袋用意してくれ四宮!」

 

 何もかも終わりかと思われたその時だった!!

 

「ちょっとまったー!!」

 

 頭上から降ってくるソプラノボイス。見れば、魔女に跨がった百江なぎさ。

 

「辛いものには甘いもの!!これで落ち着いてくださいなのです!!」

 

 ポイッと何かが放られて、かぐやがキャッチする。オレンジ色と紫色の円柱容器のそれはゼリーだった。

 

「ゼリーなら山葵も流れるはずなのです!さっきシャルロッテがお痛をしたお詫びなのです」

「ああ、助かる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地獄を見ました」

 

 と、後に石上が語った『偽抹茶クリームパン味見事件』は、その後3ヶ月、大人達の酒の肴にされたそうな。

 

「それにしても、大変だったね・・・・私も、ちゃんと具材は確認したんだよ?でも、抹茶クリームなんて最初から用意してないし・・・・」

「そうなんですか?」

 

 かぐやの確認に、ココアは頷く。

 

「食品表示のしっかりしてない食品なんて、絶対に使わないよ!!パン屋の娘として、それだけは誓えるよ!」

「じゃあ、この抹茶クリーム・・・・ではなく、山葵クリームは一体どこから?」

 

 今回の元凶たるXオルタは、首を傾げる。被害者の2人、藤原と石上は口直しに玉藻の作ったおむすびを涙目で頬張っていた。

 

「さぁ・・・・こんなことしそうな人って、銀時さんか、信長さんか、あるいは・・・・」

「いやぁ、まさかこんなに上手くいくなんて。もぐもぐ、このパン美味しいねえ~」

 「やっぱりお前かエセ天使!!」

 

 その胡散臭い青年の声に即座に反応し、その場にいた同居人全員が手近な投擲可能な物体を自称天使に集中砲撃!!

 

「ちょっ、痛い!何すんのさ!?」

 

 だがエルは、それらをバリアを展開して軽く弾く。チッ、と心中で舌打ちする同居人達。

 

「エセテンシハ、シスベシDEATH」

「藤原千花?なんかキャラ違くない?もぐもぐもぐもぐ・・・・」

「あの?パン食べながらって、それが人と話す時の態度ですか?」

 

 かぐやは額に青筋を浮かべる。そういえば、エルが両手に持っている焼き立てパンは誰が焼いたものなのか。ちらとテーブルのトレイの上を見れば、2つの銀のトレイから、ごっそりパンが無くなっている。

 

 そしてそれは、かぐやと白銀のものであった。

 

((ふざけるなエセ天使ぃぃぃぃ!!))

 

 この後、生徒会メンバーによるエセ天使リンチ大会が始まったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二次元召喚プロジェクト内 共有スペース

 

 

(私の計画が・・・・エセ天使のせいで台無しに・・・・)

 

 同居人達の仕業なら、まだ許せたかもしれない。けれども、相手はエルだ。事前予告もなく突然こちらの世界に呼び出してきて、重要なことを知ってそうなのに教えず、こちらに会いに来たらきたで迷惑なことしかしない、エセ天使だ。正直、かぐやは彼に好感を持つことができない。

 

(もうすっかりパンも冷めちゃったし・・・・・)

 

 ひとつだけ残っていた、かぐやが作ったパン。甘すぎない、ほろ苦いチョコレート入り。それも一連の騒動のゴタゴタが片付いた時には、無情にも冷め切っていた。

 

 夕食まで時間はある、けれどもおやつには遅過ぎる、そんな曖昧な夕方。かぐや以外は、この仮構築された空間の外で人生ゲーム大会をしていたはずだ。共有スペースにいるのは、かぐや1人。

 

(あーあ、仕方ないわ。こんなの会長に渡せるはずないし。自分で食べるしかないわね)

 

 椅子に座って、袋からパンを取り出した。虚しさが心に広がる。

 

「四宮?」

「か、会長?」

 

 驚いて椅子から転げ落ちそうになって、堪える。別に不思議ではない。この共有スペースは各同居人の自室に繋がってるから、騒動の後さっさと勉強に自室に戻った白銀が、此処に来たっておかしくはない。

 

 ふと、白銀の左手を見れば。握られている袋の中に、焼き色のついたパン。

 

「会長も、パンひとつだけ残ってらしたのですね・・・・」

「ああ、冷め切ってるがな」

 

 本当は、かぐやにあげるはずだったそのパン。白銀もまた、かぐやと同じく現況を嘆いていた。

 

(こんな冷めたパン・・・・・四宮には渡せんしな。ひとりで食べるつもりだったが、まさかこんなところで会うとは・・・・・)

 

「全く、エルさんはロクなことを起こさんな」

「そうですね・・・」

 

 白銀は嘆息しながら、かぐやの向かいの椅子に座る。諦念と虚無感の蔓延する静寂の空間。白銀とかぐやは、2人きり。

 

 両者、パンに齧りついた。

 

「・・・・・そういえば四宮、四宮はパンに何を入れたんだ?」

「私ですか?チョコレートです。ビターチョコレートを入れたものですが」

「へっ?」

 

(ビターチョコレート・・・・・だと?)

 

 白銀は驚愕で固まる。何しろ、白銀もビターチョコレートをパンに入れたからだ。勿論、具材を一緒にする意図なんてなく、また、工程途中で起こった様々な事件に意識が逸れていて、かぐやが何を入れたか、今の今まで白銀は知らなかった。

 

 奇跡的な偶然の一致である!

 

「で、会長は何を入れたんですか?」

 

(ぐっ)

 

 聞かれたら聞き返す。情報の等価交換は、コミュニケーションの基本であり鉄則である!

 ここで無理矢理話題を変えたり、返答をはぐらかすのは会話の流れとして自然ではない!

 

(しかしここで、俺がビターチョコレートを入れたことを言うと、わざと一緒にしたんじゃないかと疑われてしまう・・・・・いや、ここは堂々と、堂々とだ!無駄に偶然を強調せず、自然に!!)

 

「俺もビターチョコレートだ。四宮と同じとはな」

「あら・・・・・そうなんですか?まぁチョコレートクリームはミルクチョコレートとビターチョコレートしかありませんでしたし、被ってもおかしくはありませんね」

「そうだな」

 

(会長と具が同じですって!?まぁ色々あって会長をちゃんと観察してなかったし・・・・・くっ、四宮かぐや一生の不覚だわ・・・・それにしても、)

 

 ––––––––––––何かしら、この違和感

 

 かぐやは謎の違和感を、パンに齧りつきながら絶えず感じていた。何か、決定的な事象のズレ、歪み、すれ違いがある。そういう違和感を、鋭く察知していたのだ。

 

(何か・・・・何か、何かあるはず。一体これは何の違和感・・・・?)

 

 と、ふと目を落とす。そこには、かぐやが焼いたパン。白銀と同じ、ビターチョコレート入りの。

 

(あー、それにしても、このパンなんか違うな?いやなんかって何だ・・・・・?)

 

 白銀もまた、僅かに違和感に気がつき始めていた。少し手を止め、パンをじっと注視する。

 

 自分が焼いた、半球体のパン。具は相手と同じ。

 

(このパン・・・・いえ、そんなまさか、でも、ありえないこともない。まさか、このパン・・・・)

 

(これ・・・・まさか、もしかすると・・・・・このパン、まさか・・・・・!!)

 

(会長のと––––––––––––)

 

(四宮のと––––––––––––)

 

(入れ替わってる!?)

 

 かぐやは白銀が食んでいるパンと自分が今食べているパンを交互に見やる。注意深く観察すると、かぐやが持っているパンは白銀のものよりひとまわり大きいような気もする。

 

 白銀のパンが乗っていたトレイと、かぐやのパンが乗っていたトレイは、隣り合わせだった。あの騒動で混乱していたのに、本当に自分のトレイからパンを持っていったという確証は?

 

 あの何しでかすか分からない職業詐称天使が、パンを入れ替えるという些末で重大な悪戯をしていないという保証は?

 

 そんなものはない。だが大きさの件が確かだという証拠もない。ただの勘違いかもしれない。

 

 心なしか相手の方が大きい/小さいような気がする、という漠然とした理由で、パンが入れ替わってるのではなんて憶測を語れば、それこそお可愛いこと案件。

 

 けれども、止まぬこの違和感。正体に見当がついた時、恐ろしいほどにしっくり来てしまったこの違和感。

 

 今自分が食べているパンは、果たして。

 

「会長?」

「なんだ?」

「––––––––パン、とても美味しいですね」

「––––––––だな」

 

 2人きりの空間に、ただしんと響くパンを齧る音。壁に掛けられた時計が、規則的な音で規則的に動く。そこにあるのは、採点されない疑問と、それにより生まれた、緊張と緩慢の混ざる不思議な空気。

 

 藤原と石上が共有スペースに戻ってくるまでの、残り15分間。

 

 かぐやと白銀は、確かに2人きり、自分が焼いたものか分からないパンを食べていた。

 

 

 

 本日の勝敗 両者(なんやかんや)勝利

 

 




次回でかぐや様編完結です。といっても次回はオリ主とえっちゃん回ですが。久々のえっちゃんメイン!ヒロインなのに影が薄い!


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えっちゃんは読みたい

小説の前書き!!

大抵のハーメルン小説には、毎話前書きが存在しており、世の作者達は近況やガチャの当たり外れ、アニメの感想やその回の内容の軽い予告などを書くという。

だがしかし、20000文字以内という制限付きの前書きに、その作者が何をどのように書くかというセンスがモロに出る!前書きの内容次第では、読者を惹きつけることも出来るし切られることもされる、という大きなポイントなのだ!

そしてセンスも語彙力も皆無の作者は、当たり障りのない毒にも薬にもならないことを書こうとする、でも思いつかない!

どうしても書くことがない時は、申し訳程度の寸劇で勘弁してほしいものなのである!!




ココア「・・・・・」

藤原「・・・・・」

玉藻(なんでしょう・・・・・あの2人、こっちを見てる気がします)

ココア(もふもふしたいもふもふしたいもふもふしたいもふもふしたいもふもふしたいもふもふしたい)

藤原(あの耳と尻尾・・・・・まさか・・・・直に、生えてる・・・・!?(今更気付く))


以上、申し訳程度の寸劇でした。それでは今回えっちゃん回です、どうぞ。







「へー、三次元にはこういうゲームがあるんですね」

「石上くん、モンハン知らないんですか?」

「僕の世界には無かったですね。同じような内容のゲームはありましたけど」

 

 魔女結界が閉じられ現れた本来のリビング。周と石上は、テレビの前に座ってゲームをしていた。他の同居人は、自室にいるか風呂に入っている。風呂から早めに上がった石上が、髪が乾くまでに暇があるからと周のモンスター攻略に付き合うことになったのだ。

 

 石上は、周に性質が最も似ている・・・・・と、周は思っている。同じヲタクで、明るく元気なわけでもない、寧ろ暗い性格。だからこそ付き合いやすい。サーヴァントや侍や巫女や超能力者なんかと比べたら、ずっと落ち着ける。

 

(もう2週間以上も一緒にいるけど・・・・・なんかまだ気が引けるんだよなぁ。えっちゃんとも、もっと仲良くなりたいんだけど)

 

「アマネさん」

「はいっ!?」

 

 噂をすれば影である。振り向けば、お風呂上がりで白金の髪を湿らせたパジャマ姿のXオルタ。周はびっくりしてボタンを押し間違えそうになる。

 

(えっちゃんだあぁぁぁぁぁぁ!!お風呂上がりだあぁぁぁぁぁぁ!!もう何回もみたけど!!)

 

「アマネさんって、本とか持ってますか」

「本・・・・・ですか」

「ショップを覗いてみたのですが、小説は売ってなかったんです。三次元の本が、どういうものなのか知りたくて」

「えーっと・・・・・」

 

(まずい・・・・・小説なんて持ってないぞ)

 

 桜樹周は生粋のヲタクである。持ってる本は9割漫画やラノベ、普通の小説なんて読書感想文の課題図書くらいしかない。文系少女のXオルタが満足できる品があるかどうか。

 

「ま、漫画やラノベでも良いですか?」

「それでも構いません。マスターとよく読んだことがあります」

「あ、僕も漫画借りていいですか?」

「いいですよー。ちょっと待ってて・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺の部屋って・・・・相変わらず汚いよなぁ。前よりは片付いたけど)

 

 と思いながら、本棚を漁る。ひとり暮らしだし別にいっか、と以前は二次創作の薄い本をそこら中に放置していたが、Xオルタが家に来たときに慌てて押し入れに突っ込んだのは今や懐かしい記憶だ。

 

(とりあえず、今いるメンバーが出てない作品にしようかな。このすばと、転スラ、盾の勇者の成り上がりで良いよね?漫画ははたらく細胞と、あとワンパンマン・・・・あっ、がっこうぐらし読ませてみよっと)

 

 彼女は1話を最後まで読んで、どんな反応を示すだろうか?漫画やラノベを読んで、どんな感想を述べるのだろうか?考えだすと、妄想が止まらない。

 

(よし、こんなもんかな)

 

 石上とも、共通の話題を増やしたい。折角仲良くなれそうなのだから。キャラとファンという位置関係は、永遠に変わらないにしろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと」

 

 持ってきた本を見るなり、2人が微妙な表情になったのを見て、周はまずい、選択を間違えたと激しく後悔した。

 

「周さん」

「はいっ」

 

 口を開いたのは石上だ。

 

「これですか?」

「そ、そうです。い、嫌なら他の持ってきますが」

「あ、いや、そうじゃなくて」

 

 石上は積まれた本の一番上、『この素晴らしい世界に祝福を!』というタイトルのラノベを手に取ると、表紙を指差した。

 

「・・・・・これ、真っ白なんですけど」

「は?」

「表紙。タイトルも何も書かれてないんですが、そういうデザインなんですか?」

 

 そう言う石上が指差すところには、ハッキリと、明確に、駄女神アクアの自慢げな笑顔が描かれている。

 

(え?なに、見えてないの?もしかしてお風呂上がりでボケてらっしゃる?)

 

「いや、ふつうにタイトルもイラストもあるよ?」

「え?いや、でも・・・・あっ」

 

 ラノベをパラパラとめくった石上が目を見開く。どうしたのですか、と覗き込んだXオルタも、ポカンと口を開けた。

 

「これ・・・・・文も挿絵も無いじゃないですか。真っ白ですよ」

 

 そんなまさか。周が覗き込むと、ちゃんと活字が紙の上で整列している。

 

「いやいや、俺には見えますけど・・・・」

 

(ん?()()()?俺には見えてて、Xオルタと石上には見えてない?ってことは・・・・)

 

 周は、ひとつの仮説に辿り着く。それをより濃厚なものにするため、周はXオルタと石上に質問した。

 

「あの、お2人とも。この本、全部真っ白に見えるんですか?」

「・・・・・はい、全部真っ白です」

「何も読めませんね」

「中の文も、何ひとつ読めないんですか?」

「そうです。アマネさん、これ落丁本なのでは」

「それとも、正直者にしか見えないっていうアレなんですかね」

 

 とそこまで言って、ハッと石上は何かに気がつく。Xオルタも、あっと声を漏らした。

 

「お2人とも」

「なんですか、アマネさん」

「ところで、自分の世界の『タイトル』って知ってます?」

 

 2人は瞬きすると、顔を見合わせた。幾らかの時間ののち、2人は答える。

 

「『タイトル』?・・・・知りません」

「あー、『タイトル』なんて考えたこともなかったですね」

 

(やっぱりだ!)

 

 周の仮説が真実味を帯びてきたことに対し、密かにガッツポーズをする。周は割と考察厨だ。

 

「自分たちがフィクションの世界の人間であることは知ってます。でも、タイトルとか、自分の世界がどういう媒体なのかは、考えたこともありません」

 

 Xオルタは、ラノベを一冊手に取った。Xオルタから見れば、ただの白紙の塊でしかない。周に見える世界。自分に見える世界。そこには、大きな差異が生まれていた。

 

(そうですか、私達には本が読めないのですか。三次元に行けば、三次元の人たちと同じ世界が見れると思ったのですが。・・・・・現実は厳しいです。それに・・・・)

 

「それに、これじゃあ私はずっと本が読めないのでは・・・・」

 

 Xオルタはすっかり絶望する。仮にも、バーサーカーで唯一の文系。そのアイデンティティが、この世界では何の真価も発揮しないのだ。

『FGO本編でそこまで文系っぽいことしてたっけ』?そんな質問はナンセンス!本人が文系と言うからには文系なのである!

 

(えっちゃんが落ち込んでる・・・・・!俺に何か出来ないか?家主として、ファンとして!えっと、何か、何か、何か・・・・・)

 

「あっ!!」

「なんですか、周さん」

 

 Xオルタと同じく絶望で瞳を濁らせた石上が問う。漫画が読めないのだから、ヲタクである石上もかなりのダメージを受けているのだ。

 

「Xオルタさん、石上くん、今から本屋行きませんか」

「本屋?でも、私達は本が読めないですよ」

 

 周は首を横に振る。

 

「全部が読めないわけじゃないと思います。だって、石上くんはゲームできてたし。俺の考えが正しければの話ですけど・・・・・」

 

 ゲーム?何故そこでゲームの話が出てくるのだろうか。2人は首を傾げる。

 だが、周の表情は、真剣そのものだ。嘘も取り繕いもない。

 

「わかりました。行きましょう、アマネさん」

 

 

 

 

 

 

 周のよく行く本屋は、自転車で行ける距離にある。まだ夜も浅いから開いている。漫画やラノベ、アニメ雑誌や攻略本や公式ガイドブックを豊富に取り揃えている、ヲタクに優しい本屋だ。勿論、普通の本も沢山揃えている。大抵のものは此処で売っている。

 

「いらっしゃいませー」

 

 バイトの女性の、軽い声。木の香りが、エアコンの涼風に混じっている。背後で自動ドアの閉まる音がするのと同時に、周のスマホからXオルタと石上が飛び出した。

 

「どう、ですか」

「はい、えっと・・・・・」

 

 目の前には、最近賞を取った本が特別コーナーに並んでいる。Xオルタはそれらに顔を寄せて、それから振り返った。

 

「・・・・・・見えます。読めます。この本、私にも読めます」

 

 マフラーで口元がよく読めなかったが、それは喜色満面の笑みだった。

 

(やっぱりだ。俺の考えは間違ってなかったんだな!)

 

 

 周の仮説。

 

 二次元キャラには、漫画やラノベが読めない。その理由、それは『情報規制』であると、周は考えている。

 

 恐らくキャラ達は、自分が作られた存在であることは知っているが、自分の世界が一体どういうものなのか、どう見られていて、どう話が進んでいるのかは知らないのではないか。その世界の、重大な事実や秘密。それらを全て承知とは限らないのではないか。

 

 もしも、それらを、"重大なネタバレ"を、彼ら彼女らが知ってしまったら。もしかすると、その後の物語や、二次元世界に多大な影響を与えてしまうかもしれない。

 

 その為の『情報規制』。視覚や聴覚の面から、情報を制限しているのだ。それがあのエセ天使の仕業かどうかは理解らないとして。

 

 ならば、何故石上はゲームが出来たのか。それは、そのタイトルが『モンスターハンター』であったからだと周は考えている。Xオルタ達が読めなかったのは、『このすば』や『ワンパンマン』。

 

 今まで、二次元より召喚されたキャラの、その世界の選択の基準はよく分からなかった。しかし、何か漠然とした基準はあるのかもしれない。その基準がなんなのかは、周にもハッキリ分からない。

 

 だが、二次元キャラは全部が読めない見れないというわけではない、ということが判明しただけでも十分だ。これで、Xオルタは本を読むことが出来る。それだけで、周は幸せなのだ。

 

 

 

「アマネさん、ちょっと見てきてもいいですか」

「うん。買ってほしい本があったら呼んでください」

「あ、周さん。僕もちょっといいですか。読める漫画、あるかもしれないんですよね?」

「多分、ですけど」

 

(良かった・・・・・・2人が元気になって)

 

 Xオルタと石上がてってってっ、と楽しげに去っていく姿を見て、それだけで眼福なのだ、周というヲタクは。

 

(そういえば、留守は銀さん達に任せちゃったけど・・・・・大丈夫かなぁ)

 

 

 

 

 

 

 

 

「会長・・・・これは、なんなのでしょうか」

「俺にもわからん。・・・・だが、これだけは解る。これを彼奴らに見つかるわけにはいかない」

 

 いつになく、真剣な表情の2人。それを手にとり、また元に戻す。

 

 隠匿された、重大な秘密を知ってしまった彼と彼女には、今後巨大な罪悪感とプレッシャーがのしかかることだろう。

 

 展開された結界に巻き込まれた、隅っこのマガジンラック。いくつかの雑誌の、その間に隠されたもの。

 

 現在、警戒対象たる藤原暴風域(チカチカハリケーン)は、ハイテンションツッコミ玉藻と無言のツッコミ斉木を巻き込みながらゆっくり此方に近づいている。

 

 これだけは、バレるわけにはいかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺もなんか探そっと)

 

 漫画コーナーに足を踏み入れる周。目的とする品は特にない。

 

 本屋というものは結婚相談所のようなものである。自分が望む条件、望むビジュアルの相手が幾つかは存在しており、自分の願望を完璧に満たすそれを探し出す。見つかった相手と運命的な邂逅を果たし、一生連れ添うことになるかもしれない。勿論、どれだけ探しても見つからなかったり、やっぱりなんか違うわと振り出しに戻ったり、途中までは幸せに暮らしても、その後上手く行くとは限らないところも、それもまた人生なのだから仕方ない。

 

 周はきららの4コマ単行本の並ぶ棚を物色する。

 

(キルミーベイベーは10周年かー。この帯何度も見たけど、なんか10周年の佇まいとか気迫じゃないよね、キルミーベイベーは)

 

「アマネさん、ちょっと」

「は、はいっ!!」

 

 慌てて振り返って、棚に背を向けたのは、『別に自分は萌え豚ってわけじゃないからねっ、ねっ』という訴えのつもりである。全く意味を成してないが。

 

「気になるのがあるので、来てほしいのですが」

「あー、はいわかりました」

 

 Xオルタの後を、ついていく。周囲から見れば、周はひとりで本屋に来た、どこにでもいる在り来たりなぼっちだ。目をふと逸らして、本屋に来てまでいちゃつく若いカップルを目にして、そんな在り来たりなぼっちは舌打ちをする。

 

(ま、まぁ別にいいですし。俺にはえっちゃんがいますし。家政婦だっていますし?お前らより100倍幸せですし?ざまみろバーカ、明日にでも別れてしまえ!!)

 

 低レベルで知性を感じられない呪詛を吐いていると、Xオルタが立ち止まる。

 

 ここはまだ漫画コーナーのはずである。しかし、漫画のなかにも、二次元キャラが読めるものがあるのかもしれない。そう考えて周は横に立つ棚を見てーーーーーーーーーーーーーーーーーーー激しく咳き込んだ。

 

「ごふっ!?」

「あの、アマネさん。こういうのって、やっぱり三次元にもあるんですか」

 

 Xオルタが案内した先。そこはーーーーーーーーーーーーーーーBLコーナーである!!

 

 

『BL』!!

 

 男性同士の恋愛を描いた作品を表す『Boys Love(ボーイズラブ)』の略称であり、『やおい』とも呼ばれる。それらを好む人間は自身を『腐女子』『腐男子』と自虐的に呼称する!

 

 主に人間の男性同士の絡み(意味深)を描いているが、その内容は普通の恋愛漫画同様、十把一絡げである!

 

 

「はうっ」

 

 惜しげもなく晒されている、平積みにされた裸で抱き合う美男たち。その開放的で耽美的な異様に周は一瞬怯んだが、また持ち直した。

 

「Xオルタさん・・・・もしかして、腐って・・・」

「いえ、三次元にもあるのだな、と思っただけです。それ以上もそれ以下もありません」

 

(な、なんだ、良かった・・・・・それにしても良かったわ、あーいうの慣れてて。普通の男子高生なら悲鳴あげてたな。お陰でえっちゃんのまえで醜態晒さずに済んだし)

 

「周さん、あのー・・・・・えっ、もしかしてXオルタさんは腐って・・・・」

「違います」

 

 やってきて早々凍りつく石上に、Xオルタは即答する。

 

「で、お2人とも買いたい本は見つかったんですか?」

「はい、もちろんです」

「僕にも読めそうな漫画があって助かりました・・・・」

 

 コクリと頷くXオルタ、ほっと胸を撫で下ろす石上。周はもう一度横を見る。そしてBL本がこんなにも堂々と置かれている本屋なんて希少だろうな、と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー、三次元にはこんな漫画があるんですね!」

「藤原さん・・・・貴女、こういうのは禁止されてるんじゃ・・・・」

「こ、これは三次元の勉強だから、セーフです!」

 

 石上から借りたのだろう、藤原は少女漫画を読んでいる。少々過保護な彼女の父親は大衆の娯楽を禁じている。だが、三次元の、見知らぬ異世界について学ぶためならば仕方ない。そういう言い訳である。暫くは家にも帰れないのだから、幾ら読んでもバレない。父親の検閲も入らない。

 

(藤原ちゃん楽しそうだなー)

 

 そんな藤原を横目に、周はXオルタの向かいに座る。小さなテーブルには、ページの中盤あたりに栞の挟まれた小説が置かれていた。世にも珍しき文系バーサーカーは、もっきゅもきゅとわらび餅を頬張っている。横には、何やら小さな紙袋。

 

「Xオルタさん、その本面白い?」

「・・・・・現時点では、なんともいえないです。しかし文章は綺麗ですし、表現も豊かですし。展開も無駄な引き伸ばしがありません」

「そっかー、じゃあ後で俺にも貸してくれないかな」

「良いですよ」

 

(やったー!!ついに一歩を踏み出したなキモヲタ!!これでえっちゃんと仲良くなれる!!)

 

『本の貸し借り』!

 

 他人の所有する本に興味を持ったとき、それを貸してもらう。単純でありふれた行為。だがこの行為は、相手との関係をより深めるのに最も有効な手段である!!

 

 まずその本を貸してもらうよう頼む、それだけで会話が生まれる!!その後本を読み、相手がこの本の何に惹かれたのか、嗜好を探ることができる!!更に読み終わった後返すときに、『どう?面白かった?感想教えてよ』と次の会話に発展する!!

 上手くいけば、たった数日で本を貸し合う関係にまで持ち込めるだろう。一緒に本屋に買いに行く、図書館に読みに行く、なんてことにもなるかもしれない!!

 

「うん、ありがとうございます」

「ああ、そうだ。・・・・・アマネさんに、渡すものがあったんです」

「え、俺に?」

 

 Xオルタは、ごそごそと横に置いた紙袋を探り、何かを取り出した。それは、折り畳まれた赤い布と青い布の2枚。

 

「・・・・ショップで買いました。仮にも居候の身。ずっと何かお礼がしたいとは思ってて」

「そ、そんなの良いのに」

「いえ、させてください。・・・・・殿方が何を喜ぶのか知らないので、取り敢えずこれなら実用的かな、と」

 

 と、Xオルタは青い布の方を差し出す。サラリとした布の質感。広げると周の手よりひとまわり大きい正方形に展開する。右下には、白いペケマークの刺繍。

 

「ハンカチです。・・・・私が赤、アマネさんは青。私とおそろいですよ」

「ほえっ!?お揃いですか?」

 

(えっちゃんと!!お揃い!!お揃い!?え、家宝にする!!)

 

「えっと・・・・・た、大切に使います。ありがとうございます」

「はい。喜んでいただけて何より。あと、お狐さんに頼んで、一応呪術で保護をかけてます。簡単には破れません」

 

(うわぁ、何それ。俺大層なもん貰っちゃったなー・・・・そういやこれって、絆礼装みたいなもんかなー)

 

 などと思案していると、玉藻の「みなさーん、夜更かししてないでそろそろ寝てくださいねー」の声。奥の厨房ではガチャガチャと音がするので、恐らく残りの家事を済ませているのだろう。

 

「手伝った方が、いいですかね?」

「その方がお狐さん喜ぶと思います。最近同居人が増えて忙しそうなので。・・・・・それに」

 

 Xオルタは赤いハンカチを掲げた。

 

「このハンカチ、早速使いたいです」

「・・・・俺は、大切にとっときたいですけど。汚すのが申し訳ないというか」

「大丈夫。お狐さんに、自動浄化呪術も掛けてもらってます」

「便利ですね玉藻さん」

 

 周はそう言って見下げる。手の中には、青いハンカチ。Xオルタからの感謝の気持ち。少なくとも、一緒に本屋に行ったり、こうやってハンカチを貰うくらいには親しくなれてるのだと。そう思う。このハンカチは、彼女との関係性のカタチ。本来は見えない、信頼や親しみを可視化したもの。

 

 絶対に手放さないように、周はきゅっと握りしめた。

 

 

 

 本日の勝敗 両者勝利(本の購入成功&関係進展)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の隅のマガジンラックを覗いて、それが変わらぬ位置にあるのを確認する。ほっと一息ついて、また自室に戻った。

 

 そして、スマホを耳元にやる。

 

「もしもし?うん、例のあれはちゃんと置いてるって・・・・・は?いや、目覚めてませんから」

『えー・・・・・じゃあ計画失敗かなー』

「そもそもそんな計画立てんな。で?急になんで電話かけてきたの?予想はつくけど」

『うーん・・・・・実はね、今度そっち行こうと思ってるの』

「はっ!?」

 

 思わず大きな声が出る。・・・・大丈夫、誰も起きた様子はない。スマホの中の彼ら彼女らの自室まで、自分の声は届かない。

 

『なに?どうせぼっちで帰宅部だから特に用事もないでしょ?』

「いやそうだけど・・・・大体さ、ひとりぐらしの男の部屋に平気で泊まるのは女としてどうなの?」

『いーのいーの。というかあんたは私を襲う根性ないでしょ童貞。じゃあ、明後日そっち泊まるから』

「はい!?あ、明後日!?」

『うん。じゃ、私忙しいから。切るねー』

 

 ブチッ。通話が切れる。

 

 周はハアッ、と大きな溜息をついて、ベッドに潜る。

 

(どうしよう・・・・俺にしか見えてないから、Xオルタ達のこと隠し切れるよね・・・いやー、でもまたなんかやらかしそう!)

 

 考え事をしているうちに。周は、眠りに落ちていった。

 

 周が寝たのを見計らったかのように。ピコン、とスマホ画面に表示されるメッセージ。

 

【予告】EPISODE OF ONE&HUNDRED〔詳細〕

 

 自称天使が連れてくる嵐は、すぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 





次回予告

俺、桜樹周16歳!今日から私立二次元学園に通うことになったんだ!でも転入早々遅刻しそうで大変!急いでたら人にぶつかっちゃった!!

その曲がり角でぶつかったのは、図書委員でとっても美少女なXオルタさん!しかも転入先のクラスで隣の席になるなんて、これは運命!?それとも偶然!?

担任の坂田先生は授業で週刊少年ジャンプを音読してるし、クラスメイトの霊夢さんはたかってくるし、ココアさんは俺を弟扱いするし、それに、上級生の玉藻さんの花嫁修行に付き合わされるし!俺と同じ班になった響くんは正義のヒーローらしいし、尊敬してた生徒会長の白銀先輩と四宮先輩はなんかややこしい両想いだし、バイト先の霊能力者の事務所は超能力者のたまり場になるし!!あーあ、この学校でまともなのは斉木くんだけだよ!

しかも、Xオルタさんが在籍する『放課後パラダイス部』とかいうわけのわからない部に入れさせられて、変な事件に巻き込まれるなんて・・・・・俺はどうすればいいんだ!?



Xオルタ「だからなんなんですかこれ」

嘘予告です。



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1.5章 幕間をお知らせします。 二次元小噺をお知らせします。

今回は思いつきの短編集です。


〈霊基再臨〉

 

ココア「見てみて~。お店で買っちゃったんだ~」

 

Xオルタ「ピンク色の・・・・セーラー服ですか」

 

ココア「うん!私が前に通ってた高校の制服!えっちゃんと同じセーラー服だよ」

 

Xオルタ「なるほど・・・・」

 

ココア「体操服もね、売ってたんだよ!今度一緒に買おうよ」

 

Xオルタ「いえ、私は霊基再臨があるので(ピチピチの体操服に変わる)」

 

ココア「なにそれ便利!ねえ玉藻さん、玉藻さんも早着替えできる?」

 

玉藻「あ、出来ますよ(豪華絢爛な露出高めの着物・大量の飾りつき)」

 

ココア「・・・・体操服にはなれないの?」

 

玉藻「なれません」

 

ココア「・・・・そっかー」

 

玉藻(あからさまに興味をなくされた・・・・!?)

 

 

 

 

〈年齢と身長の落差〉

 

藤原「ところで、皆さんは何歳なんですか?私は17歳、高校2年生ですよ~」

 

ココア「17歳?じゃあ私と同じだね!嬉しい!」

 

藤原「えっ、そうなの?私てっきり年下だと思ってた~。じゃあチノちゃんは何歳?」

 

チノ「私は15歳、中学3年生です」

 

モブ(年上・・・・?ずっと小学生かと思ってた・・・・)

 

なぎさ(同い年かと思ってたのです・・・・)

 

 

 

〈まあ最終話では祝ってもらってたじゃん〉

 

霊幻「おうモブ。何やってんだ?」

 

モブ「斉木さんと、香風さんと、あとなぎさちゃんと一緒にお菓子食べてるんです。美味しいですよこのショートケーキ」

 

霊幻「魔女の力ってすげーな。ま、この世界でもお前に仲のいい友達が出来て何よりだ」

 

なぎさ「新隆、新隆はここで友達できましたか?」

 

霊幻「ん?いやー、同年代の人間がほとんどいないからなー」

 

なぎさ「じゃあ、元いた世界には、新隆の友達沢山いるのですか?」

 

霊幻「・・・・」

 

チノ「霊幻さんは社会経験も豊富ですし、多才ですし、優しいですし・・・・私と違い、沢山の友人がいますよね、きっと」

 

斉木(やめろ的確に傷をえぐるな)

 

霊幻「・・・・あー、うん、勿論。いるいる、いっぱい友達いるぞー」

 

斉木(強がりだな此奴)

 

霊幻「なっ、お前ら?」

 

銀時「いや俺をカウントしないでくれる?」

 

玉藻「私いつ友達になったんですか?」

 

霊幻「そうツンケンすんなよ、銀ちゃん、玉さん」

 

銀タマ((うぜえ))

 

 

 

〈肉体を隠さずして精神を隠す〉

 

なぎさ「もーいーかーい?・・・・うん、行きましょうか」

 

響「・・・・」

 

なぎさ「・・・・裕太。これかくれんぼですよ。そこに直立されたら鬼としては困るのです」

 

響?「私はハイパーエージェント・グリッドマン。響裕太という人間は今此処に存在していない」

 

なぎさ「肉体が見つかってる時点でアウトなのです」

 

 

 

〈ラッキースケベ〉

 

銀時「さーて、風呂はいろっと・・・・」

 

ガラッ

 

でかノブ「ノブッ!ノブノブノブノノブノブノブ!!(きゃあっ!何見とんじゃこの変態!!)」

 

銀時(・・・・・嬉しくねー)

 

 

 

 

〈怪獣の定義〉

 

アカネ「できたー!やっと完成したよ怪獣フィギュア~」

 

モブ「アカネさんは怪獣が好きなんですか?」

 

アカネ「うん、好きだよ。・・・・女子高生で怪獣好きって、変かな」

 

モブ「そんなことないです・・・・あの、聞きたいんですけど、怪獣ってどこからどこまで怪獣なんですか?」

 

アカネ「怪獣の定義?うーん・・・・人型でも怪獣は怪獣だし、自我を持ってて、人間に友好的な子も怪獣とは言われるしなー」

 

モブ「じゃあ、あれは怪獣ですか?」

 

エクボ「(諸事情で最盛期状態)ん?」

 

アカネ「うわキモい」

 

 

 

〈ただし漬け物、てめーは駄目だ〉

 

土方「いいかパン娘、新選組の隊員として、今教えたことをよく頭に叩き込んどけ!!」

 

ココア「わかりました!ところで副長、沢庵っておやつに入りますか!?」

 

土方「馬鹿かお前は!!入るに決まってんだろ!!」

 

沖田「入りません」

 

 

 

〈来世に期待しましょう〉

 

なぎさ「ごふっ(かぐやに正面からぶつかる)」

 

かぐや「あらなぎさちゃん大丈夫?走ったら危ないわよ」

 

なぎさ「・・・・・望みは薄いですね」

 

かぐや「へ?」

 

 

 

〈でもなぎさはそっち属性ではないのです〉

 

なぎさ「くふっ(寝転んでる六花の足に突っ込む)」

 

六花「うわっ、びっくりした・・・・大丈夫?」

 

なぎさ「・・・・・うん、なかなか良質ですね」

 

六花「はい?」

 

 

 

〈玉藻道場〉

 

玉藻「えいっ、やぁ!!」

 

かぐや「こ、こうかしら」

 

玉藻「いいえ!もっと足を伸ばして!その一撃に全ての感情を込めるのです!」

 

銀時「何やってんだあいつら」

 

ココア「一夫多妻去勢拳?の練習だってー」

 

銀時「えっ、俺また蹴られんの?」

 

ココア「うーん、なんか、『万が一のときの為に・・・・!』って、かぐやちゃん言ってたけど・・・・・もしかして、好きな人とかいるのかな!?」

 

白銀「へあっくしょん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回も何か短編を書いて、同居人一覧を投稿したら次の長編に入ろうと思います。



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