女神と星座の導きによりて (草ナギ)
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原作前
星1つ 星の導き


また、やっちゃった☆
はい、本っ当にすみません。
ある動画がきっかけで再熱してしまい、
つい、書いてしまいました。
昔考えていた【星矢】の夢主の一部設定のみ使ってます。
どうか皆様のお優しい心で見てやってください。


 「(え、此処どこ?)」

 

 「(確か、家で寝てたよね?)」っと事前にあった事を必死に思い出す。

 そう、会社で自分が任されていた書類の作成、コピーをしてギリギリ定時で帰れた事に喜んで、ご飯もちょっと豪華に刻んだトマトと赤ワインを少し入れて、お肉もお肉屋さんで買った良いところをもらい、圧力鍋で煮込んだビーフシチューである。中々美味ではないかと自賛してみたり。

 

 「(なんて!今はご飯の事はいいのです。今、この場所になぜいるのか状況整理しないと!)」

 

 しかも、今いる所はまさに裏路地で、何が起こるか分からないのである。

 つい、ウロウロと歩き回ってしまい、考え事もしていたので地面を見るのが遅れてしまった。

 

 ずるっ

 

 「はぅあっ!」

 

 ウロウロ歩いて足元にあったちり紙?を踏んで滑ってしまったらしい。

 

 「(あ、コレ、後頭部ぶつけるパターンですね)」

 

 なぜか冷静にそう思いました。

 けれど、衝撃に対して身体を強張らせていたのだが一向に痛みはやってこない。

 それよりも背中に力強くて、温かい腕に抱き留められていました。

 

 「君、大丈夫か?」

 

 フッと自分以外の声が自分より少し高い頭上から聞こえてくる。

 そちらの方に目線を上げてみると。

 

 「ん?この辺りでは見かけない顔だね。こんな所で何をしていたんだい?」

 

 滑って転びそうになった所を助けてもらい、そう話しかけてきたのは濃い茶髪に赤い鉢巻きをした少年でした。

 

 「た、助け、ていただき、ありがとうございます……。あの……、不躾で申し訳ないのですが、聞きたい事があるんです……」

 

 転んだ事に驚いた事で”何をしていたか”という言葉を聞きながらドキドキした胸を押さえ、お礼を言いつつもこちらの、疑問に思っていた事を聞いていました。

 

 「ん?」

 

 「ココはドコなんですか?」

 

 その問いに驚いたのは少年のほうだったが、

 慌てず冷静に私が少し警戒しているのが伝わった様で、優しく話しかける事にしてくれたみたいでした。

 

 「此処はギリシア。ギリシアの”ロドリオ村”だよ」

 

 「”ギリシアのロドリオ村”……」

 

 それを聞いた私の顔は驚きに満ちている事でしょう。

 

 「(ん?ロドリ…オ……村?)ていうか!ギリシア!!?え、ここって日本じゃないんですか!?」

 

 「日本……?何処かで聞いた…様な……!ああ、君は東洋人なんだね。こんな所で出会うなんて随分珍しいな」

 

 そう言われた私は少年の顔をじっと見つめてみる。

 ものすごく見覚えがありました。

 それよりも、そんなに見つめては失礼だ。挨拶せねば。

 

 「あの、えっと……私は真名。坂城真名(さかきまな)と申します。」

 

 「ああ、名乗らずにすまない。わたしの名は”アイオロス”。

 よろしく、真名」

 

 「(あ、ア、アイオロスですとぉー!?)」

 

 ”ギリシア”、”ロドリオ村”、”アイオロス”。

 こんなにもピースが集まると”ある予想”をしてしまう。

 ま、まさか、此処って……【聖闘士星矢】の世界!?

 そんな、まさか!?ちょっと待って!私、何もしてませんし、何も事故ってないのですが!?転生した訳でもなく、そうするとトリップ?何がきっかけなんです!?と、とにかく、状況を把握する為に質問をしてみる事にしました。

 

 「アイ「アイオロス」ふぇ?」

 

 裏路地の入口から顔を覗かせていたのは、背は真名より少し大きく、顔つきに幼さが目立った少年が居ました。

 

 「ああ、サガ。待たせてしまってすまない」

 

 「それは良いが、どうかしたのか?」

 

 「(や、やっぱりぃーーー!!)」

 

 ”神の化身”キタ━━━━━━━━!!

 【星矢】と言ったらこの二人ですよねー!!

 間近で見るとこの二人すごい……。雰囲気がというか、オーラっていうか(両方同じ意味?気にしないでください)

 

 「と、まぁ、――の小宇宙を感じて来てみたら、迷子を発見したんだ」

 

 「そうか……。君、あー、真名…でいいかな?」

 

 「あ、はい。真名と申します」

 

 「あぁ、失礼した。わたしの名は”サガ”。こちらのアイオロスとは同期の間柄だ」

 

 ぺこりとお辞儀して挨拶をする私を見て、合わせてくれるのか、同じくお辞儀をし返してくれるサガさん。

 

 「友人とは言ってくれないのか?」

 

 少し不満そうにサガさんを見つめるアイオロスさんにジト目で見つめ返しました。

 

 「……書庫掃除をわたし一人に任せて、兵の訓練に混じりに行くヤツを友人と呼ぶのはな」

 

 「ははは!で、サガ。この子から”あの小宇宙”を感じるんだ。もしかしてっと思うんだが」

 

 「話を逸らすな……。ふむ、確かにこの子からアレに似た小宇宙を感じるな」

 

 ジッと二人から見つめられて混乱する。

 

 「(え?え?何、なんですかー!?アレに似たコスモって何!?)私、何もしてませんよー!?」

 

 「ああ!混乱させてすまない。落ち着いて聞いてほしいんだ。もしかしたら君は…」

 

 「アイオロス、此処は長く話すのには適さない場所だ。移動しよう」

 

 そう、三人がいる場所は自分と出会ってからずっと裏路地で話し込んでいました。誰にも聞かれないという点では打って付けではあるが、話し込む場所ではないでしょう。

 

 「そうだな」

 

 「あ、……はい」

 

 アイオロスさんと共に返事をし、裏路地から出ようとすると

 

 「真名」

 

 サガさんが手招きしている。二人は並んで私を待っていました。

 その二人から手を差し出され、おずおずと手を重ねる。

 

 「?」

 

 そしてその瞬間に、裏路地には誰もいなくなったのでありました。

 

 




ちょっと短いですが、第一話です。
長い目で見てやってください。お願いします!


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星2つ 十二宮

 「(なんか【聖域】っぽい所にキター!)」

 

 先ほど出会ったばかりの二人に恐らく【テレポート】で、【聖域】と思わしき長い階段で繋がっている白い神殿がある丘?山?に着いた。

 ギリシア神話から出てきたかの様な美しさに口を開けてポカーンと建物や、その奥にそびえ立つアテナ神像を見つめていると。

 

 「真名、こちらだ。付いてきてくれるか?」

 

 「へ?えっと、はい!」

 

 いきなり【聖域】に連れてこられるとは一体?っと疑問に思いながら二人の後を付いていく。

 神殿(多分、あそこは十二宮)の方へ足が進む。なんていうかとても嫌な予感がしたので聞いてみる事にする。

 

 「あ、あの!」

 

 「ん?なんだい?」

 

 なんだい?じゃねーです。っと言いたい所だが、そこはグッと我慢。

 

 「私は何処に連れていかれるのでしょう?」

 

 「君には是非会ってもらいたい人がいるんだよ、大丈夫。とてもお優しい御方だからね」

 

 「(間違ってなければ今のこの二人の立場は、恐らく黄金聖闘士候補!そしてその二人が敬う言い方で人を指すなら師匠となる人か、【教皇】様のハズ!)」

 

 私、今ものすっごく挙動不審になってると思います。

 だって!今の教皇様ってシオン様ですよね!?下手な事するつもりはないけど、すんごく緊張するんですが!?あれですよね。下っ端の平社員がいきなり内容を知らされずにいきなり会社の副社長(社長はアテナ)に会う羽目になる感じですよね!?本当に怖いんですが!?

 ……あれ、私、聖域関係者じゃないから関係なくないです?でも、これから会いに行く事になってるから、まさか……?

 

 「あ、あの、もしかして、あそこの上にある神殿に行くんですか?」

 

 「ああ、そうだよ。あそこの名は【黄金十二宮】。君は黄道十二宮を知っているかな?」

 

 「はい、十二の星座の事ですよね。」

 

 「お!幼いのに中々博識だな。」

 

 「へ?おさない……?」

 

 アイオロスさんにそう言われ、この世界に来て?から初めて両手を見てみる。すると、自分の手が随分と小さく、周りを見渡せば自分が縮んでいる事に気が付きました。……は?

 

 「なんとぉー!!?」

 

 「うおっ!?」

 

 ええー!?目線が低いと思ったら、まさか縮んでるとかー!!

 コ〇ン君的状況!?真実はいつも一つ!?

 驚き!桃の木!山椒の木ですよぉー!!

 

 「もれなくSANチェックですー!」

 

 「さん?」

 

 「ちぇっく?何かチェックしないといけない事でもあるのか?」

 

 「落とし物でもしたのか?」っと心配げに見つめてくる二人の視線。

 

 「あ!いえ、何でもないです。はい」

 

 落とし物なんてしてないですよー。っと手の平を振ってみると「そうか」っと言って前へ向き直る時にサガさんが「何かあったら言いなさい」っと輝かんばかりの笑顔で言ってきました。うーわー、笑顔が美しっ!マジっぱないっす、サガさん。一体、貴方いくつですか?

 ……ん?本当に今、この二人っていくつです!?そして今、原作前なのはわかるけど、時系列はいつ頃!?

 

 「えっと、いきなりですけど、お二人は今いくつなんですか?」

 

 「ん?本当に突然だな」

 

 「わたしは8つになる。アイオロスは7つだな。」

 

 「そう!それにわたしには産まれたばかりの弟がいるんだ!可愛いぞ!名はアイオリアという」

 

 なんか無理矢理ではありますが、すっごく聞いてほしかったみたいで、誇らしくて嬉しいのか、とても良い笑顔で語るアイオロスさん。すっごく輝いてますねー。

 それを見て「仕方ないな」っといった感じに苦笑するサガさん。

 きっと可愛くて可愛くて仕方がないのでしょう。わかる。赤ちゃんって可愛いですよね。早くに結婚して子供が産まれた友人の旦那さんはすっごいデレッデレでしたからね。それもわかる!可愛いは正義なのだー。

 

 「そういう真名はいくつなんだ?」

 

 「え”?」

 

 ああ!そーですよね!聞いたら聞き返されますよね!それりゃそうですね!あはははは!

 って、笑ってる場合じゃねーです!本当に今って何歳頃の自分なんでしょう!?せめて鏡ー!鏡はありませんかー!?

 そう私がオロオロしていると

 

 「3つか、4つに見えるが、はっきり喋っているし意思もある。東洋人は見た目がわたし達より幼いと聞く。もしかしたら6つ,7つ位なのではないかな?」

 

 「あ!はい!5つです!(多分)5つ位ですよ!(恐らく)」

 

 サガさんナイスフォロー!後で改めて鏡があったら見せてもらいましょう!

 覚えている限りだときっと5歳だったと思うから。……多分。

 

 「ふふっ、そうか。……っと、着いた。さて、ここからさらに長いぞ。此処が【黄金十二宮】だ」

 

 遠くから見てもすごく神々しいのに間近で見るとさらに輝いて見えます。此処が【十二宮】……。星矢達がアテナの為に上り、黄金聖闘士と死闘を繰り広げる場所。

 そんな場所に何故私が、教皇シオン様に会ってどうするのか。

 果たしてどうなるのか謎です……。

 私が「むむむむむー」っと唸りながら頭を悩ませていると、突然サガさんが抱き上げてきた。

 

 「ふわぁ……!」

 

 「此処からは本当に長い。今日位は楽をしてもいいだろう」

 

 うおおおおおおおおお!!

 美しいですな!幼い感じがありつつ(実際8歳の少年だけど!)、美しい顔がこんなにも近いぃぃぃぃ!!

 私が思わず「ひゃわぁー」っと悲鳴(?)を上げていると

 

 「もしかしたら慣れないと、いけなくなるかもしれないからな」

 

 アイオロスさんが私からだと聞こえにくかったが辛うじて聞こえた内容。

 え?何?慣れって。

 

 「では、行くぞ」

 

 そういうとサガさんとアイオロスさんは階段を上り始めた。

 階段を上り始めてから通過していく宮殿の説明をしてくれる。

 一番最初が白羊宮、牡羊座(アリエス)の守護する宮、次が金牛宮、牡牛座(タウラス)の守護する宮……。ここまで誰とも会っていない。いや、女官さんには何人か出会っているが、(そういえば居るんだっけ、女官さん)黄金聖闘士には会っていないだけである。……年少組の前の黄金聖闘士はどこにいるんでしょう?

 双児宮、双子座(ジェミニ)の守護する宮を通り過ぎようかという時に視線を感じた。

 ふと出口の端っこにある柱に目を向けた瞬間、淡い青の髪が見えた気がした。

 あの子はもしかしてカノンさんかな?

 そういえば、サガさんの髪の色は青紫っぽいのでアニメカラーなのかな?と思い、ジッと見つめました。

 

 「どうかしたのかな?」

 

 「いいえ、なんでもないです」

 

 サガさんが私の視線に気が付き、首を傾げる。

 うあああああああああ!!

 あざとい!美少年の首傾げ、あざとい……。

 そんな事を頭の片隅に追いやって続いて巨蟹宮、蟹座(キャンサー)の守護する宮、獅子宮、獅子座(レオ)の守護する宮、処女宮、乙女座(バルゴ)の守護する宮……次々に進んで行く。

 沢山続くので省略しますが、やっとの事で今、最後の宮殿、双魚宮、魚座(ピスケス)の守護する宮に着きました。二人とも息切れしないとか、すごいです。サガさんは私を抱えてくれているのに驚きです。……しかし、此処まで来ましたが、黄金聖闘士には会わなかったですね。

 やはりというか、なんていうか、アイオリアが産まれている事から、恐らくこれから現れるのだろう。

 そんな感じで考え込んでいたら、歩いていたサガさんとアイオロスさんが立ち止まる。一体どうかしたのかと正面を見ると

 

 「魚座の黄金聖衣……」

 

 そう、双魚宮の真ん中を通ていると魚座(ピスケス)の黄金聖衣(ゴールドクロス)が黄金のオーラを纏い、行く手を阻むかの様に輝いていました。

 

 「勝手にパンドラボックスから出ているとは……。そして黄金聖衣のこの反応。やはり、この子は!」

 

 サガさんはそう言うと私を下ろし、軽く背中を押し、黄金聖衣に近づけさせる。

 すると輝きは増して……まるで私と会いたかったと言っている様に感じました。

 

 「おお、この反応はまさしく……」

 

 「ああ、やはり……だな」

 

 後ろに居たアイオロスさんとサガさんに振り返る。

 どういう事だろうと思っていると、黄金聖衣の向こうから歩いて来る人が居た。

 

 「この魚座の黄金聖衣の反応。僅かながら黄金の小宇宙を感じる……今代の魚座の黄金聖闘士はそなたかな?」

 

 「ふぇ……?」

 

 仮面を付け、豪奢なのだが上品さを感じる服装。そして、優しい穏やかさを感じる中で、威厳のある輝きを放っている。もしかしてこの人が……。

 

 「私は、この先にある【教皇宮】にて【教皇】を務める者だ」

 

 ……そう、【教皇シオン】様の登場である。

 



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星3つ 教皇

 

 あらすじー。

 魚座の聖衣が私に反応して輝きが増すとかどういうことでしょうか?

 教皇シオン様から「今代の魚座の黄金聖闘士か?」って聞かれて私の頭はパンク寸前!もう、どうしましょうって感じです!

 え、この小説って成り代わりモノだっけ??(メメタァ)アフロディーテって私なの!?

 いや、髪はこげ茶っぽいから多分違いますよね?ね?

 …………って、言うか。

 ”あらすじ”なんて言ってる場合じゃないです!

 

 「は、はは!初めまして、教皇様!真名と申しましゅっ!……いたい」

 

 「あ、最後噛んだ」

 

 「アイオロス!」

 

 「くくくっ、今代の魚座は元気が良いな」

 

 最後、噛んでしまったのは不覚……。

 しかし、教皇宮が目の前とはいえ、双魚宮まで下りてくるなんてどうしたんでしょう?

 毒薔薇の坂は大丈夫なのでしょうか……。あ、仮面を付けているから大丈夫なんですかね。

 でも、今の私にとって問題なのは

 

 「この金の鎧はなんなんですか?私と何か関係しているのでしょうか?それにこの輝き、なんだか生きてるみたいです」

 

 聖衣って、確か……。

 

 「ほぅ、その通りだ。その鎧は”生きているみたい”ではない。”生きている”のだ。しっかり意思も宿ってる。そして鎧の名は黄金聖衣(ゴールドクロス)。魚座の黄金聖衣(ピスケスのゴールドクロス)というのだよ」

 

 なんていうかこんなに説明されて黄金聖衣に反応されると嫌な予感が的中してしまいそうで……あ、フラグ。

 

 「見てわかる通り、この黄金聖衣はそなたの小宇宙に反応してこの様な輝きを放っている。真名、お前はこの黄金聖衣の候補生として此処で修行するのだ」

 

 デスヨネー!!拒否権はないですね!わかります!!

 しかも、”そなた”から”お前”になってる時点でもう私の扱いは決まってますね。うん、知ってた!!(涙目)

 ん?サガさんが私より前に出て教皇様の前でしゃがみ込み、頭をたれました。

 

 「恐れながら教皇。このサガ、発言してもよろしいでしょうか?」

 

 「うむ、申してみよ」

 

 「では……、真名は遠い異国より来た候補生。修行に入る前にこの子に黄金聖闘士の重要性や、女神アテナの事を理解させる為に話をするのはどうでしょう?書庫にある書物での勉強も大事ですが、今日来ていきなり”修行開始”というのは酷というもの。真名はわたし達と違い、最初からこの聖域に居た訳ではありません。幼いながらに意思もしっかりしています。年もわたし達と近い様ですし、わたし達と話せば理解してくれるハズです」

 

 さ、サガ様!!……って、違う違う。サガさん、私はただの迷子です。

 自分から来た訳じゃないのです。でも、黄金聖闘士の重要性はわかってるつもりですよ!文庫本で全巻読みましたからね。うろ覚えだけど……。しかし、サガさん、私の事”幼い、幼い”言い過ぎでは?君も8歳の身でしょー。身長大きくてそうは見えないですが。

 

 「良かろう。お前達の復習にもなるだろうしな。励むと良い」

 

 「ハッ!」

 

 なんと言いますか話がまとまりました。って感じですね。

 っという訳で私は魚座の黄金聖闘士としてこの聖域で修行する事になりました。

 私、本当にアフロディーテじゃないですよね?二次創作にある成り代わりとかないですよね?

 

 「では、真名」

 

 「はい」

 

 「まず、お前には仮面を授けなければな。その素顔を他者に見せるのはそれまでだ。今は特例としておこう。仮面の掟など、女聖闘士の事に関しては書庫にて女官長に教えてもらうといい。派遣しておこう。そして、この聖域で修行しながら同じ聖闘士同士で、研磨しつつ、立派な聖闘士となる事だ。これはアイオロス、サガ。お前達にも言えることだ」

 

 「「「はい!」」」 

 

 「では、私は教皇宮に戻るとする。気軽に……とは言えないが、何か私に知らせなければならない事が発生した場合、小宇宙で私に知らせる事。何故、小宇宙を使って知らせるのか、分かるか?アイオロスよ」

 

 「はい!テレパシー、いついかなる時もすぐに使える様にする為です。小宇宙のコントロール操作訓練ですね」

 

 「うむ、問題が簡単過ぎたかもしれぬな。まぁ、良かろう。ではな、真名、アイオロス、サガ。励めよ」

 

 「「「はい!」」」

 

 教皇様はそう言い残し、双魚宮を去って行きました。はぁ、なんかすっごく緊張しました……。疲れたぁ~。

 

 「真名!」

 

 「はぃっむぎゅっ!!?」

 

 え?え?名前を呼ばれ振り向いたらアイオロスさんに両手で顔を挟まれました!な、なんですかぁ~!?

 

 「こら!アイオロス、何をやっている!やめないか!」

 

 サガさんも怒ってくれていますが、何故か目線は私の顔を見ていました。

 うえーん!味方が居ません!

 

 「いや、こうして真名の素顔を見れるのも今だけだと思ったら、しっかり見ておかないとと思ってな。サガだってそう言いつつ、真名の顔を見てるじゃないか。見納めしたいんだろう?」

 

 「……」

 

 黙っちゃった!黙っちゃいましたよ。

 私でも分かるくらいですからね。図星ですよね。

 でも

 

 「私の顔なんて見ても面白くもないでしょうに」

 

 「何を言ってるんだ、真名。幼いのにこんなにも愛らしく、美しい顔つきをしているではないか」

 

 「は?何を言って……」

 

 「ふむ、真名。こちらに来なさい」

 

 「はい……」

 

 サガさんに呼ばれ、アイオロスさんから逃れた私は、サガさんに連れられて双魚宮の真ん中から端っこに進みました。しばらく歩いていると、魚座のレリーフが付いた扉にたどりつきました。

 

 「サガさん、此処は?」

 

 「此処は黄金聖闘士の住居にあたる場所だ」

 

 十二宮でそんな場所があるだなんて初めて知りました!原作じゃ、その辺触れてませんでしたね。

 扉を開けて中を覗くと奥行きがあるので結構広そうです。

 

 「此処で待っていなさい」

 

 と、言うと正面にある扉のすぐ横にあるカーテンの中に入っていき、しばらくすると何かを持って出てきました。

 

 「真名、これを」

 

 何かを差し出され、覗き込むとそれは手鏡……てかがみ……

 

 「手鏡!」

 

 うおおおおおおおおお!!

 手鏡だ!これで気になってた顔が見れる!

 

 「……?いつも通りの顔ですね」

 

 ただ、人より顔つきは良いらしいのですがね。でも、母に「出かける時はマスクを付けなさい。でないと外に行ってはいけません」っと言われてましたっけ。

 素顔を見た人は最初、放心するんですよ。何故でしょう?

 

 「まぁ、真名にとってはそうだろう。きっと成長すれば、聖闘士の中でもっとも美しい黄金聖闘士になれるだろうな。だが、仮面を付けるから、その素顔は拝めないのでわからなくなるだろうけど」

 

 何、そのまさにアフロディーテに付けられる代名詞は。

 私はあんなにも中性的な美しさはありませんよ!彼こそが黄金聖闘士の中で一番美しい黄金聖闘士になるんですから!うーん、手鏡で自分の顔を見れたから確信しましたが二次創作でよくある成り代わりではないみたいですね。実は今でも心底疑ってます。しつこいと言うなかれです!はっ!まさか、アフロディーテが居ない世界ではあるまいな!?そんな!嘘だと言ってよ!バーニィ!!

 私が手鏡を覗いたまま苦悩して固まっていると

 

 「さて、いつまでも此処にいては真名も休まらないだろう。明日から忙しくなる」

 

 「そうだな。わたしもそろそろ行かねば」

 

 「ふぉ?」

 

 「真名、今日はこの双魚宮から離れすぎない程度に探検するなり、この居住部屋で休むなり、女官と交流して仲を深めるのも良いだろう。これから世話になるわけだからな」

   

 サガさんとアイオロスさんはそういうと私の頭を一撫でして部屋を出ていく。ちょっ、早いですよ!それを見て私は手鏡を近くにあった棚の上に置いて追いかけました。

 走っている訳ではないのに早い足取りで双魚宮の出入り口に進む二人。

 

 「サガさん!アイオロスさん!」

 

 私の大声に振り返ってくれました。

 とにかく今、私が言いたい事を叫びます。

 

 「アイオロスさん!改めて、転ぶ所を助けてくださり、ありがとうございました!サガさん!階段の時、抱き上げてくれてありがとうございました!すっごい楽でした!そして、二人共!沢山親切にしてくれてありがとうございました!明日からよろしくお願いします!!」

 

 そう言い終わると息切れして顔を下げてしまいましたけど、言いたい事が言えて満足です。

 

 「「真名!」」

 

 呼ばれて下げていた顔を上げると

 

 「「これからよろしく頼む」」

 

 そう返され、嬉しくてちょっと涙目になりましたが、思いっきり返事をしました。

 

 「はい!」

 

 こうして私の聖域での修行、生活が始まりました。

 

 



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星4つ 友人

 早いもので、私が聖域に来てから2年経ちました。

 え?早すぎないか?って?細かいことはいいのです。(キリッ)

 私も7歳になり仮面を付けている事に違和感が無くなって、むしろ寒い日はこれがないと風邪を引くんじゃないかと思ってしまう程、必需品になっていました。

 それはいいのですが、今日の午後、私とサガとアイオロスの三人で教皇宮に来る様にとお達しがありました。

 ん、二人を呼び捨てにしてるのは二人から”さん付け”は他人行儀過ぎる!と言われてしまい、仕方なく呼ぶ事にしたのです。

 そうそう、私って、覚えが良いみたいで、すぐに小宇宙を感じられる様になりました!チートなのでしょうか!?特典みたいな!あ、私、神様に会ってませんでした。転生じゃないので。

 それにどうやらバランス型だったらしく、サイコキネシスも拳の強さも上達するのが早かったんですよ!

 ……ふっ。まぁ、世間で言う器用貧乏みたいなものですがね。

 

 「ま !」

 

 せめて特化型ならよかったですよ!ムウさんみたいにサイコキネシスに偏ってるとか、アルデバランさんみたいな体力系に偏るとか!

 

 「 な!」

 

 後は、カミュさんみたいな氷の力で戦うとか。ミロさんみたいな秘孔を突くとか。

 

 「真名!!」

 

 「!」

 

 名前を呼ばれて考え込んでいた思考から浮き上がりました。

 

 「人の話を聞いてるのか?」

 

 双魚宮の居住部屋でテーブルを挟み、正面に座る少年。

 それは双子座のサガ(今年の年初めに黄金聖闘士になりました。アイオロスと一緒にです)……ではなく、そっくりですが髪色が淡く青い。まるで南国の海の色の様です。

 性格もそっくりかと言われると確かに似ていますけど、こちらの方がぶっきらぼう……かもです。まぁ、なんだかんだで優しい所はそっくりですがね。そう、彼は双子座のサガの双子の弟、カノンです。

 

 「まったく、話をしている最中に思考に沈むんじゃない」

 

 「ごめんなさいー」

 

 双児宮で暮らし、サガのスペアとして隠れて暮らしている彼が、何故、双魚宮に居るのかというと、私が直接話したいし、出来れば友人になりたかったんです! 

 えっと、実は最初はそのつもりはなかったんですけど、理由はこのあと!チャンネルを変えたらピラニアンローズ投げちゃうぞ☆

 ……なんてな!気にしないでください!めちゃくちゃ恥ずかしいです!

 ごほん。話を戻します。そう、そして、その道のりはそれはそれは大変でした。

 まず、修行の為に聖域のコロシアムに向かう時、双児宮を通る度に視線を感じるんですよ。何故かアイオロスは気が付いてませんでした。どんだけ私を集中して見てるんですか、貴方。しかも視線を感じるのは毎日ですよ!毎日!なので、ある日を境に……まぁ、プッツンした訳ですが。私以外、居なかった時に視線を感じとったら”追いかけっこ”する事に決めました。

 例えば、私も自分の中にある小宇宙を極限にまで潜ませながら隠れ、カノンの本当に人が居るかもわからない位の微量な小宇宙の波動を辿って背後に回り、驚かしてみたりして。初めて驚かせた時は前のめりに転んで痛そうでした……。

 それが何度も続けば、流石のカノンも降参してくれて……あの時はものすごくうなだれてました。「疲れた……」って呟いてましたもんね。

 それからはカノンが自主的に双魚宮へ遊びに来てくれる様になりました。

 どうやって来てるのかは内緒だとかで、教えてくれませんでした。いじわるですねー?

 あ、ちゃんと私も時間が出来たらカノンに会いに行ってますよ。スニオン岬で会ってます。

 

 「女官や、コロシアムに居る聖闘士達の噂によると、3人の黄金聖闘士候補が来るという話だ」

 

 「ふむふむ」

 

 「……その中に魚座の黄金聖闘士候補も居るそうだ」

 

 「ふむふ……む?」

 

 カノンさん?今、なんと?

 

 「お前と同じ魚座の黄金聖闘士候補だ」

 

 「んん?……おお!本当ですか!」

 

 これはもしや、アフロディーテ、キタ━━━━━━━━?

 

 「本当だ。しかし、何故そこで喜ぶんだ。お前の立ち位置を脅かす存在だぞ?」

 

 「何言ってるんですか!カノン!これはある意味、義理の弟?妹?が出来るというおいしい展開!逃(のが)しません。逃がしません」

 

 その発言を聞いたカノンはすごい勢いでテーブルに突っ伏してしまいました。

 テーブル、壊さないでね?

 

 「お、お前というヤツは!……いや、お前はそういうヤツだったな。すまない」

 

 すまないとか言っておきながら、突っ伏したままで「くっくっく……!」って笑ってるの、見えてるし、聞こえてますよ。

 

 「もし、そいつが魚座の黄金聖闘士に選ばれたらお前はどうする……?」

 

 おおっと?いきなりですね。なんかシリアスを醸し出してきました。そんなの決まってます。

 

 「私は隠居しようかな。って思ってますよ」

 

 「は?」

 

 「んで、時々姉弟子としてその子が迷ってたらアドバイスしてあげるんです!目指せ!ツッコミもボケもかませる助言者!」

 

 「……真面目に聞いてるんだが?」

 

 おおっとぉ?(二回目)ちょっとお怒りですか。カノンさん。うーむ、怒り方からしてちょっと”激おこぷんぷん丸”寸前ですかね?

 

 「別にふざけてませんよ?私がもし選ばれなくてもその子は立派に勤めを果たしてくれると信じます。私は私で思ったまま、気の向くまま私自身が信じた道を進むだけです」

 

 なんですか、その鳩が豆鉄砲食らったみたいな表情は。

 今度は私が”おこ”になりますよ!

 

 「お前は本当にそれで良いのか」

 

 「もちろん、負けるつもりはありません。それに”もしも”ですよね?」

 

 「”もしも”だが、本当になってしまったら……そんな役回りで良いのか?」

 

 うーむ、なんかいつもより絡んできますね……。

 むむ?もしや……・

 

 「カノン、サガと何かありました?」

 

 「……」

 

 無言、顔を私から逸らしました。

 図星の様ですね。わかりやすい双子だことー!!

 わかりやすい仕草をする所もすっごいそっくりですねー。 

 

 「愚痴ならちゃんと聞きますよ。どうかしました?」

 

 「……」

 

 よっぽど言えないのか、無言を貫いてますね。

 一体、本当にナンジャラーですよ。

 仕方ないですね。

 

 「うーん、カノン」

 

 「……?」

 

 「ここにカノンが気に入ってるクッキーがあります」

 

 「!」

 

 お、釣れた。ふっふっふ、まぁ、まだ10歳の子供ですからね。

 実は機会があった時に女官さんに手伝ってもらいながら、趣味の一つであるお菓子作りをしてたりします。

 ただ、極偶にしか作れません。この時代で、しかも聖域に砂糖は貴重品なので滅多に手に入りません。

 だからこそ、女官さんに無理を言ってロドリオ村にて密かにお店で取り置きしてもらってます。私はやる時はやる女なのです。(ドヤァ) 

 むふふ、砂糖さえあれば後は 薄力粉、無塩バターがあれば簡単に作る方法があるのですよ!

 もちろんアイオロスとサガにもあげてますよ。二人も気に入ってくれてます。仲間外れはいかんのです。

 

 「これを手に入れたくば、白状する事です。大丈夫。誰にも言いませんよ」

 

 「……くっ」

 

 

 おおう、なんか悔しそう。

 あれ?なんか顔が赤くなってきてます?

 

 「カノン、風邪でも引いたんですか?」

 

 「は?」

 

 「顔が真っ赤ですよ?」

 

 「……!!」

 

 驚いた顔のまま固まってます。

 どうしたんでしょう?

 

 「あのー、カノンー??」

 

 「あ、う、くっ」

 

 すっごい汗です!?だ、大丈夫でしょうか?

 

 「用事を思い出した!今度また来る!その時ソレをもらうからな!」

 

 そういうと光速の如く走って行ってしまいました。

 何故カノンが光速で動けるのかというと、サガが黄金聖闘士になった時に、カノンもまた双子座の黄金聖闘士として認められたそうです。

 それはそうですよね。この言い方は好きではないのですが、サガのスペアなので同じように修行させられていたらしいですし、サガの物腰も習わされていたとか。徹底してますよね。カノンの人格、全否定してますよ。そりゃぁ、闇落ちしますわ。

 でも此処ではそういう兆候ないんですよね。良い事なんですが、何故でしょう?

 ……もう一度言いますけど、カノンは本当に大丈夫でしょうか?

 

 



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星5つ 弟弟子

 帰るカノンを遠くから見守り、しばらくして教皇宮に行く準備をしたらサガとアイオロスを待ちます。

 気持ちが逸って、入口から階段を見下ろしていると宝瓶宮、水瓶座(アクエリアス)の守護する宮から二つの影が出てきました。

 二人共キチンとそれぞれの黄金聖衣を着て登場です。

 

 「サガ!アイオロス!」

 

 「こんにちは、真名」

 

 「真名、待たせた様ですまないな」

 

 「いえいえ、私もさっき出てきたばかりです」

 

 ふおおおおおおおお!

 黄金聖衣を着てる二人を改めて見ますが、めちゃカッコイイです!

 これで10歳と9歳とかありえないのですが!!

 

 「では、行こうか二人共」

 

 「ああ!」

 

 「はい!」

 

 うー!楽しみです!もしかしたらアフロディーテが私の弟弟子になるかもしれないんですよね!そういえば後の二人は誰でしょう?

 なんとなく聖剣使いと冥界送りっぽいですよね。

 え?名前を出せですか?すみません、ネタバレになるのでまだ言えません。アフロディーテは良いのか?ですか。気にしなーい、気にしなーい。

 

 

□■□■□■□■□■□■

 

 

 「皆、集まったな。……では早速だが紹介しよう。新たに加わる黄金聖闘士候補達だ。まずは蟹座の黄金聖闘士候補、デス」

 

 「……おう」

 

 此処は教皇宮にある【謁見の間】です。

 普段、教皇様と会う時は此処で謁見するのが習わしらしいですよ。私が双魚宮で出会ったのは特例だそうで……あれ?私、たまに教皇様が双魚宮に来るので貢物(お菓子)お渡ししてるんですけど?(ワイロと言うなかれ)

 この教皇様、意外と茶目っ気があるぞ!まぁ、とりあえず今は紹介の方に集中せねば。

 教皇様に背中を押され出てきた銀の髪をオールバックにしている、ぶーたれた顔付きの多分デスマスク。

 っていうか、デスマスクの名前って最初は【デス】だったんですか?初めて知りました……。

 

 「こちらが山羊座の黄金聖闘士候補、シュラ」

 

 「よろしく頼みます」

  

 教皇様が次に紹介したのはシュラでした。

 名前を呼ばれて自ら前まで出てきました。おお、この頃から目付きが鋭かったんですね。しかし、デスマスクもちゃんと挨拶しなされ。お?シュラの後ろで隠れているのは……。

 

 「最後に……む、アフロディーテ。隠れていないで出てきなさい」

 

 「!」

 

 そうして教皇様はポンと軽くアフロディーテ(?)の背中を軽く押しました。

 んん?前髪が長くて素顔が見えません。ふむふむ、この子がアフロディーテですか。この位の時は恥ずかしがり屋さんだったんですかね?

 

 「そして、この子が二人目の魚座の黄金聖闘士候補、アフロディーテだ」

 

 「アフロディーテです……。よろしくお願いします」

 

 そうアフロディーテが挨拶すると教皇様は「うむ」と頷き、今度はこちらを見て

 

 「では今現在聖域に居る黄金聖闘士と候補の紹介をする。では、サガ」

 

 「はい」

 

 「「「!」」」

 

 サガが前へ出ます。すると、三人はそれぞれ目線をこちらに合わせていなかったみたいで、改めて私達を見ると目が真ん丸です。三人共固まっちゃいました。

 まぁ、私はともかく、サガとアイオロスは黄金聖衣着てますからね。眩しそうです。

 

 「私は双子座のサガ。三人共、よろしく」

 

 そういうと、サガは三人の身長に合わせて屈んで安心させる様に笑顔で挨拶しました。

 

 「次、アイオロス」

 

 「射手座のアイオロスだ。よろしく頼む」

 

 こちらも爽やかな笑顔です。うーむ、二人共やるのぅ。

 

 「そして、最後にこの子が一人目の魚座黄金聖闘士候補、真名」

 

 「こんにちはー!魚座の黄金聖闘士候補、真名です!」

 

 「!」

 

 お、やっぱりというかアフロディーテが反応してます。

 

 「なんだ、女じゃねーか」

 

 そんな声が聞こえました。むむ?なんじゃなんじゃ。

 

 「おい、アフロ。良かったな、女が競争相手で。楽勝だろ」

 

 「デス……」

 

 ふむぅ?これは?

 

 「止せ、デス。失礼だぞ」

 

 「何言ってんだシュラ。おれはアフロを心配して言ってんだぜ!」

 

 おや、やっぱりそうですか。私ったら……

 

 「教皇様と黄金聖闘士様の前だよ。デス」

 

 「ふん。でも、本当の事じゃねーか」

 

 な め ら れ て ま す ね 。

 

 「ふむ、デス君」

 

 「!?」

 

 デス君(今後こう呼びましょう)の後ろに音速で移動します。まぁ、私はまだ光速には動けないので音速なのです。もっと頑張らねば。

 そしてびっくりしたデス君は私が居る後ろを振り向いた瞬間。

 

 「な・ま・い・き、ですよー」

 

 思いっきり手加減してのデコピンを食らわせます。

 

 「でえっ!?」

 

 デコピンした所が真っ赤に腫れてます。

 うーん、もうちょい力加減を抑える訓練もしないとですねー。

 

 「こ、こんの馬鹿力女!何しやがる!!」

 

 「あまり、私を甘く見ない方が良いですよー?」

 

 「くっ、こんな女、冥界に飛ばしてやる!」

 

 お!来ますか?積尸気冥界波。

 

 「せきし「やめなさい」!?」

 

 サガがデス君の肩に手を置いて後ろに下がらせます。

 

 「先ほどアフロディーテも言っていただろう、教皇の前だ。真名も、挑発に乗るな。精神の修行が足りていないのではないか?もっと精進しろ」

 

 「はい!もっと精進します!」

 

 シュピッと敬礼のポーズを取ります。

 あ、今デス君が「けっ!」とか言って不貞腐れてます。

 膝カックンしてやりましょうか?(にっこり)

 なんてな!

 

 「落ち着いたか皆の者」

 

 「「「ハッ!教皇、失礼いたしました」」」

 

 「「「はい!失礼しました!」」」

 

 教皇様の言葉を聞き、私達は直ぐに教皇様に跪きました。

 とりあえず、なるほど。シュラはまだ良くわかりませんが、幼い頃から自分に厳しそうです。アフロディーテは見当違いではなければ、結構な恥ずかしがり屋さんですかね。デス君は……うん、楽しくなりそうかもしれませんね!

 

 「では、真名よ。これからはアフロディーテと共に修行に励みなさい」

 

 「はい!教皇」

 

 「は、はい!」

 

 ちょっとアフロディーテが不安そうな感じで返事をしましたが、まぁ、その内慣れるでしょう。見た目や雰囲気に騙されちゃダメです!このお爺ちゃん、意外とお茶目やぞ!

 

 「ではこれにて解散。皆の者、しっかり精進する事。良いな」

 

 そう言って教皇様は謁見の間を去っていきました。

 

 「では、アフロディーテ?」

 

 「は、はい……」 

 

 おおう、警戒されてますね。

 

 「これからよろしくお願いします」

 

 私はそう言うと右手を差し出しました。

 おっと、もちろん声は明るめに言いましたよ?

 

 「あ……はい、よろしくお願いします」

 

 そうお互いに挨拶し直し、握手するのでした。

 さてこれからどうなる事でしょう?

 

 



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星6つ 薔薇

 教皇宮からの帰り道。

 それぞれの宮に戻り、今日来た三人は荷解きをして明日から修行に入る事になりました。因みに私に突っかかてくるデス君は、アイオロスに軽く小突かれ、首根っこを捕まれて引きずられて行きました。

 ……さてと

 

 「では、アフロディーテ」

 

 「!」

 

 そうです。今日からアフロディーテと二人で生活する事になるんですから、別に親睦を深めるのもありですよね!

 

 「こちらにおいで」

 

 私がそう言ってある所に向かいます。まぁ、ある所と言っても、すぐ近くなんですけど。……うむうむ、ちゃんと付いて来てますね。

 

 「此処ですよ」

 

 「え」

 

 双魚宮の居住部屋の裏に小さな花園があります。

 その花園の一番端、そこに近付くと気付いた様です。

 それを見てアフロディーテは固まってしまいました。

 うん……、まぁ、ビックリですよね。

 

 「あ、あお……い、ばら……!?」

 

 そうです。実は私は1年半懸けてこの薔薇も育ててました。 

 んと、私としては青い薔薇が出来たのは本当に偶然で、自分でも驚いてはいるのです。

 そうして青薔薇に近付き、一本摘み取り、アフロディーテに渡しました。

 青薔薇の棘に気を付けながらも受け取り、繁々と青薔薇を見つめます。

 そりゃぁ、そうですよね。この時代、青薔薇なんて生まれてませんからねぇ……。

 

 「アフロディーテ、貴方、薔薇を模した小宇宙の技は習得していますか?」

 

 「え、あ、はい。一応ですけど……」

 

 「うん。では、その中に解毒や、麻痺を治し。治癒の力がある技はありますか?」

 

 「……?……いえ、ありません」

 

 ふっふっふー、ここまで言って気付かないとは、まだまだですねー。まぁ、当然ですか。

 

 「この薔薇の名は”キュアローズ”。主に治す為に特化した薔薇でして、私の血を混ぜて作った花です」

 

 「……は?」

 

「ちなみにこの薔薇は最初白かったんですよ。血を混ぜた水を与えていたら青くなったんです」

 

「ええ!?」

 

 うむうむ、驚いてますねぇ。

 最初、私も驚きました。ここは普通、赤くなると思うんですけど、何故か青でした。……実は私ったら宇宙人だったなんて事は、ない!ない!そもそも如雨露の水に血を混ぜる時、私から流れた血は赤かったですよ!

 それはさておき、実は1年半前、薔薇の技を習得する時に私の血が特殊だったので、こういう物が有ればと作ったんですよね。っていうか、技の継承でお世話になった先代の弟子の弟子にあたる人から聞いたら、私以外でこんな事が出来るのは恐らく”神”以外にあり得ないとの事。

 え?今更ですが、これこそが、真のチートなのでは?自覚がなかっただけで実は神様転生してて、この血が特典で、2年前にロドリオ村の裏路地に置いてかれたとかでしょうか?こんな事が出来るなんて我ながらまさに”奇跡”です。

 

 「何も戦うだけが戦いではないのですよ。私達聖闘士は、確かに聖闘士としてアテナの為、地上の平和の為に戦う事が本分。でも、アテナや他の聖闘士達を癒しの力があるヒーリングや、杯座の白銀聖衣(クラテリスのシルバークロス)の水以外でも癒してあげられればと思ったんです。変ですかね?」

 

 ポカーン顔でこっち見てます。恐らく混乱してるんでしょうね。

 今までも戦う事しか教えてもらってない訳ですから、多分否定的な考え方してそうな気がします。

 

 「あ……いえ、ぼくは……」

 

 「正直に言ってもいいんですよ?」

 

 「……こんな事言うのは失礼かもしれませんが、必要ないのでは?敵には情けなんて無用です」

 

 「ふふっ、本当に正直に言いましたねー。でも言いましたよね?”アテナと聖闘士達”の為って。別に敵の為ではないのですー」

 

 「うぁ、そ、う……ですね……すみ、ません」

 

 あらあら、恐縮しちゃって……怒ってないのですがねぇ。

 

 「アフロディーテ、これを貴方にあげます」

 

 私はそう言ってアフロディーテが持っていた青薔薇に小宇宙を注ぎます。

 すると黄金色のオーラが薔薇を包みました。

 この位なら得意ですよ!

 

 「わぁ……」

 

 「これでこの薔薇は枯れませんよ。まぁ、ドライフラワーや押し花にしても良いのですが、君にはこうした方が似合うと思って」

 

 「あ、ありがとう、ござい……ます」

 

 仮面で相手には見えないというのに思わず、微笑んでしまいました。

 アフロディーテもちょっと戸惑ってますが、喜んでくれているみたいですし、良かったです。微笑んでくれてます。

 

 「アフロディーテ、喜んでくれて良かったですよ。やっと笑ってくれました」

 

 そう私が言うと

 

 「あ」

 

 とてもビックリした顔で私を見ていました。

 

 「アフロディーテ、思ったんですけど」

 

 驚いている所で畳みかけます。

 アフロディーテの顔を覗き込むようにして、長い前髪を掻き分けました。

 

 「ほら、こんなに素敵な顔立ちなのに、隠してしまうなんて勿体ないですよ」

 

 アイオロスが9歳ですから、アフロディーテは今、4歳ですね。とても可愛らしい顔つきで、きっと将来は絶世のびじ……げふん、ごふん。

きっと絶世の美青年になるでしょうね!

 

「変じゃありませんか?男なのに女の様な顔をしているのは」

 

誰かにそう言われたんでしょうね、ちょっと涙目です。

……言った人は漏れなく粛清ですね(にっこり)

 

「大丈夫、この聖域でそんな事を言う人は居ません。もし、言われたら真っ先に私に言いなさい。その人はしょけ……ん”ん、拳骨ですから!」

 

そう言いながら前髪を掻き上げていた手を頬に添えて、もう片方の手で頭を撫でました。髪もサラサラやでー! 

 

 「あ、ありがとうございます……」

 

 「それに前髪を切りませんか?此処では気にする必要はありませんよ」

 

 「アイオロス様とサガ様も気にしたりなんて……」

 

 「あ、あの二人は気にしたりしません。大丈夫、大丈夫」

 

 あ、そうです。

 ついでにこう呼んでもらいましょう。

 

 「アフロディーテ、もし良かったら、私の事は”姉さん”と呼びなさい」

 

 「え?……姉さん?」

 

 うおおおおおおおおお!!

 アフロディーテに姉さんて呼ばれました!やっべ、萌へる……!

 

 「それから、私も貴方の事は”ディーテ”と呼んでも良いですか?アフロディーテだとちょっと長いですし、私としてはこう呼びたいです」

 

 「はい、構いません」

 

 ”アフロ”ではあまりにも可哀相過ぎるです……。あ、でもデス君は普通にアフロって呼んでましたね。

 でも、恥ずかしいから前髪を伸ばしていた訳ではなかった様で、ちょっとしたコンプレックスだったみたいですね。

 そこの所、見抜けなかったとは、まだまだ修行不足ですね。本当に精進せねば。

 ああ、後これも言っておかねば。

 

 「ディーテ、話しておく事があります」

 

 「 ? はい」

 

 「実は私、技やサイコキネシスの修行は一通り終わってるんです。後は自力で小宇宙を高め、自力で訓練して高みへと至ります。で、私はディーテの……まぁ、師匠代わりですね。本当は蹴落としとかしないと、いけないのでしょうけど、そういうの苦手なんですよね」

 

 私は手が出るの早いですが、気持ちは話し合いで済むなら、それで良いって感じです。アテナの聖闘士としては失格ですかね?

 

「だからと言って、諦めるつもりもありません。教皇様の言った通り、お互いに研磨し合おうじゃないですか!負けませんよ、ディーテ」

 

「はい、姉さん!ぼ……わたしも負けません!」

 

それではっと、

 

「ディーテ」

 

右手を差し出す。もう一度握手です。

 

「あ、はい!」

 

ディーテも直ぐに私がしたい事が分かって手を重ね、握手しました。

ふふふっ、負けませんからね!

 

 

 



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星7つ 聖域の日常

 黄金聖闘士候補の三人が聖域で修行を初めてから数日。花園での出来事からディーテと仲良くなり、ぎこちなかった”姉さん”呼びも違和感ない位の仲になりました!羨ましかろう?羨ましかろう?笑顔が素敵な弟分ですー!(無理矢理呼ばせてると言うなかれ)

 弟が可愛いというアイオロスの気持ちが良くわかります。

 そうそう、デス君ともですね!仲良くなったんですよ!お互いに仲直り?の握手の時に力いっぱい手を握る位には仲良くなりました!私からしたらまだまだ力み方が甘いですね。デス君、すっごく痛がってましたけど!

 え?全然仲良くない?そうですかー?

 そういえば、前髪を切って素顔を出したディーテにアイオロスもサガもやっぱりというか、確かに最初はディーテの美しさに驚いてましたけど直ぐに、気にしてませんでした。流石、二人共素敵過ぎる。

 それからデス君の前でディーテの事を”ディーテ”って呼んで返事が返ってきた時、

 

 「アフロが汚されたぁー!」

 

 って、言ってたので仮面で見えてなかったでしょうけど、にっこり笑顔で後頭部チョップしておきました。悶えてる姿を見て、ちょっと可哀相でしたかね。 

 ん?お前がやったんだろうって?気にしたら負けです。

 その姿を見ていたディーテとシュラはやれやれといった感じでした。

 それからもう少し日がたった頃に実はちょっと不味い事になってしまいましたが、なんとかなりました。

 サガにカノンと会っていたのをバレたかもしれなかったんです。

 というか、なんか確信してるみたいで夜中に双魚宮に来た時、青い顔したサガが

 

 「真名、お前は”もう一人の私”を知っているのか?」

 

 遊〇王かな?いや、とりあえず、そう言ってたので

 

 「いんや、全然知りませんね」

 

 キッパリと言ったんです。

 だってですね、いくら双子の兄弟でも一つや二つ、秘密位ありますよ。

 そうですねぇ。例えば、ベッドの下にある薄い本とか、パソコンの中にいる嫁とかですかねぇ?ん?なんでそんな秘密知ってるのかですか?ネタで知ってるだけですよぉ!言わせんな、恥ずかしいです!

 んで、しばらく見つめ合ったんですけど、サガはその場で深いため息をして

 

 「こんな時間にすまなかった。……ありがとう、真名」

 

 とか、最後の方は小声でしたけど、私には聞こえました。しかし、本当になんの事でしょう?っと、その時は思ってました。後になってスニオン岬でカノンと会った時に

 

 「この間、サガが夜中にそちらに行かなかったか?」

 

 って、言われたんで

 

 「来ましたよ」

 

 と、返したら、バツの悪そうな顔して説明してくれました。

 双児宮で兄弟喧嘩した時、どんな会話かは教えてもらえなかったんですけど、つい、私の名前を出しちゃったんですって。その時、時間が止まった感じがしたそうです。

 なるほど、そういう事ですかーっと、仕方ないですねぇ。言ってしまったものはしょうがないですよー。気にしなーい、気にしなーい。って言ったのに、微妙な顔されました。解せぬ。

 それから、カノンは最近、双魚宮に来る度合いが減りました。

 まぁ、今はディーテも居ますからね。私の方から会いに行かないと会えません。

 あ、ちなみにちゃんとカノンのお気に入りのクッキーを持参して会いに行ってますよ。会いに行く時に遠目でカノンを発見した時、寂しそうな顔してたんです。私に気が付くと全然そんな素振り見せないんで最初は気のせいかと思ったんですけど、何度か見かけるので見間違いではないですね。

 だから、会いに行った時に座って待っていたカノンの前に立って、頭から抱きしめてみました。

 すごく驚いてましたけど、大人しかったので、つい小さい子にする様に頭も撫でてしまいました。

 私は身体は幼いですけど、心はもう二十歳以上ですからね。こうしてあげる甲斐性位あるのです。相手は10歳の子供!甘えたい盛りですよねー。

 え?下心?なんの事でしょうね。わかりませぬな!

 会う場所がスニオン岬なんで潮風にあてられて髪が痛んでいるのでは?とか思っていたのですが、なんと!キューティクルにサラッサラですよ!癖っ毛っぽい見た目してスーッと指が通ります。マジ裏山。

 何?黄金聖闘士ってキューティクルで美形の集まりですか!?ん?アルデバランさんですか?彼はキューティクルな男気のある男前です!見た目ではないのです。

 なんて頭で考えてたら私から離れた……かと思ったら、抱きしめてきました。

 おおう、なんざます。なんざます?やはり甘えたい盛りですか?

 仕方ないですねー。っと背中に手を回そうとしたら、カノンが私の肩を掴んで勢いよく離れ

 

 「すまない」

 

 と言って走って行ってしまいました。

 後日、大丈夫かなーとか思ってたらケロッとしとりました。普通に挨拶したら普通に返されました。

 ……私の心配を返せ。っと隙を見て後ろに回り、チョークスリーパーを食らわせた私は悪くないです。乙女の純情をなんだと思っているのか。

 黄金聖闘士相手にそんな事出来るなら私も黄金聖闘士になれる?ははっ、私相手に隙を見せてる訳ですから技はかけ放題です。

 あと、サガにも似たような現象がありました。

 コロシアムの端、死角になる様な所に座っているサガが居ました。こちらは顔には出てませんでしたけど、雰囲気的に疲れと、瞳に悲しみの様なものが見えました。

 流石にどういう時系列なのかわかりませんけど、まだ悪の心は芽生えていないと思いたいですね。

 なんというか、そんなサガを見ていたら、こちらもちょっと切なくなっちゃいましたよ。

 なので、気配を消して近付き、背後から抱き着いてみました。

 おおと、痴女というなかれ。誰とでも出来る訳ではないのです。年的にもまだそんな事気にする必要ないですし、お寿司。お寿司食べたい。

 いつもなら抱き着く前に気が付くのに全然気付かなかったみたいですね。

 とても驚いてます。

 

 「ま、真名。……なんだ?どうかしたのか?」

 

 「どうかしたのか?ではありません。あんぽんたん」

 

 「あ、アンポンタン?」

 

 お?意味を知らない様ですね。まぁ、仕方ないですね。

 

 「間が抜けて愚かなことですよ。要はばか、あほって意味です」

 

 「……酷いな」

 

 少し笑ってくれてますけど、まだまだみたいですね。

 ちょっと体勢としてはツラいかもしれませんが、サガの横に移動して前回カノンにした様に頭を抱きしめてみました。こちらも同じ様に驚いてます。でもすぐに我に返ったのか慌て出して、離れる様に言ってきますが、自分から離れようとまではしません。うーむ、双子なのにこの反応の違い、面白いです。

 

 「真名、女の子が男にこんな事してはいけない」

 

 「女捨ててますのでノーカンですね」

 

 「のーかん?」

 

 説明は飽きたのでノーコメントです。

 結局そのままの体勢で数分お喋りしてました。お喋りが終わる頃にはサガも元気になった様で、笑ってました。あの疲れた雰囲気も悲しそうな瞳もしていないですね。

 あれは結局なんだったんでしょう……?

 



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星8つ 魚座

 

 三人が来てから一年経つ頃、私とディーテは教皇宮に呼びだされました。

 一体なんだろうかと思っていましたが、謁見の間に既にアイオロスとサガ、デス君にシュラの四人が揃っていたのでただ事ではないのは確かの様ですね。

 

 「真名にアフロディーテ。よく来たな」

 

 「「ハッ!お呼びでしょうか、教皇」」

 

 二人して教皇様に跪きます。

 

 「うむ。この度、どちらを魚座の黄金聖闘士にするか……決まったのでな」

 

 来ましたね。

 

 「真名よ、顔を上げよ」

 

 「ハッ!」

 

 「今代の魚座の黄金聖闘士として……心して務めよ」

 

 「はい!」

 

  そう力いっぱい返事をする私を見て「うむ」と頷き、ディーテを見ました。

 

 「アフロディーテよ」

 

 「は、はい!」

 

 「お前はこの聖域に残り、真名の補佐をする事。よいな?」

 

 ディーテも他の四人も心底驚いた顔をしました。

 そりゃそうですよね、意味がわかりません、って感じしてます。

 双子座の事を知らないでしょうけど、聞こえはまだいいですけど、表は黄金聖闘士の補佐、裏は言葉にしていませんが、私に何かあった場合のスペアとして務めろと言っているんです。

 それに、こうでもしないとディーテを聖域に残せませんでした。

 確かに私は黄金聖闘士になる為に努力してきました。でも、心の何処かでこう思っていたんです。”正規の魚座の黄金聖闘士はアフロディーテ”だと。

 先日、教皇様が双魚宮の裏に来た時に(ディーテが居ない時しか来ません)私が言ったんです。

 

 「もし、私が今代の魚座の黄金聖闘士に選ばれたら、アフロディーテを補佐に下さい」

 

 と、

 教皇様も、最初は断ってました。そういう勝手な事は罷りならんって。

 でも、私だって譲れないものがあるのです。

 そこでサガとカノンの関係を話に出してしまったんです。ズルいヤツ、卑怯者と言ってくれても構いません。

 そう決意した私の話が終わると教皇様は唸って悩んでいました。

 まぁ、直ぐに良い返事が返ってくるとは思っていません。

 だからこそ、「考えてくれませんか?」と言っておいたのです。

 教皇様はわかったと、返事をくれたので後は答えを待つのみ。一応、無事に話が通って良かったです。

  とりあえず、話も終わり、解散する事になったのですが、ディーテから

 

 「姉さん」

 

 「はい、なんですか?」

 

 「黄金聖衣を纏って見せてほしいんだ」

 

 なんじゃらほい?

 

 「教皇に認めてもらったのだし、聖衣を纏った姿の姉さんを見てみたいんだ」

 

 なんか、ディーテさん、とてもお目目がキラキラしてますね。

 ふっ、可愛い弟分の頼みです。

 

 「おいそれと着てはいけない、なんて掟はありませんからねぇ。良いですよ」

 

 その私の言葉に反応したデスが

 

 「お、じゃぁ、俺にも見せてくれよ!存分に笑ってやる!」

 

 「止めろ、デス」

 

 「なんだ?なんだ?別のにいいじゃねぇか。シュラのケチー」

 

 「ケチで結構」

 

 漫才かな?

 見たいなら見たいで良いですよー。って、言ったらシュラが微妙な顔してました。そんな話をしながら双魚宮に着き、宮の真ん中に立つ。

 

 「魚座の黄金聖衣!」

 

 そう小宇宙を高めて大声で叫ぶ。

 すると、魚座の黄金聖衣は瞬間移動した様に、一瞬で目の前に現れて私の身体を覆い出しました。

 そして、直ぐに黄金聖衣を纏い、マントを翻して皆の前に現します。

 

 「これが、魚座の黄金聖衣の鎧姿……」

 

 擦れた声なので誰かはわかりませんが、そう呟くのが聞こえました。

 ふっふっふー、私自身は大した事ないですけど、黄金聖衣は圧巻でしょう?

 

 「姉さん、綺麗です」

 

 「……ありがとうございます、ディーテ」

 

 なんていうか、流石にディーテに言われるとちょっと複雑です。

 まぁ、割り切るしかないですけどね。

 

 「けっ、えーっとなんて言ったか、そうそう、東洋人、あー、日本人のことわざでこんな言葉があるらしいぜ?”馬子にも衣装”ってな」

 

 「おおー、よく知ってましたね。座布団一枚!」

 

 「真名、座布団とは?そして、それでいいのか?」

 

 デス君がなんと、私の故郷の国のことわざを知ってました。本当にびっくり!

 そんでもってシュラのツッコミが冴え渡ってます。

 

 「どうですか、二人共!私もこれで黄金聖闘士の仲間ですよ!」

 

 アイオロスはポカーン顔、サガは無表情にジッっと見つめてきます。

 んん?二人共、どうしたんでしょう?

 

 「アイオロス―?サガー?」

 

 「「あっ」」

 

 やっとこっちに焦点が合いました。まったく、どうしたんでしょうね?

 二人は私に向かって頭を横に振り、「なんでもない!なんでもないんだ!」とサガに言われてアイオロスはサガの言葉を聞いていたので同調するように、うんうんっと、首を縦に振っていました。

 ふむ、では気にしない事にしますか!

 実はこの反応、後に後悔する様な出来事に繋がるとはこの時思いませんでした。

 ……なんてな!そんなフラグ起きませんよ!……起きませんよね?(ガクブル)

 そして、この時より半年後、シュラとデス君が黄金聖闘士になりました。

 これより今まで修行に費やしていた事の他に、”任務”に赴く事にもなりました。

 テロの鎮圧、救助活動、そして、平和を脅かす人間の粛清……。

 聖闘士の存在を簡単に世間に曝す訳にはいきませんので、各国の上層部の人間しか私達の存在を知りません。

 そうして、なんとか修行と任務を両立していたある日、突然、デス君が”デスマスク”と名乗る様になりました。

 そうです。巨蟹宮に死者の顔が浮き出てきたのです。

 っていうか、ココでデスマスクと名乗るんかい!

 ディーテとシュラはデス君の事心配していましたが、相変わらず私に絡んできますし、空元気ではない、ちゃんとした明るい笑顔を見せくれてます。

 元気なのは良かったのですが、デス君の宮を通った時、めちゃくちゃうるさいです。

 思わず「うっせぇですー!!」とか言って顔をぶん殴ってみたら、大爆笑されました。死んだなら、そりゃぁ未練があるかもしれませんけど、「さっさと成仏せんかい!」とも言った時のデス君、気付かないと思ったんですかねぇ?笑ってましたが、ちょっと涙目でしたよ。笑いで出たものではありませんでしたね。

 まったく、そんなに怖いならうちの宮に遊びに来ればいいのに、意地っ張りですねー。

 そう食事をしながらディーテに言ったら吹き出してました。それは絶対に本人に言わない方が良いって。えー?怖いなら怖いで良いじゃないですか。

 

 「なんてったって私達、まだ子供ですしね!」

  

 とか言ったら、ディーテは

 

 「子供の前に、私達は聖闘士だよ?」

 

 ってムッとした顔してました。口には出しませんでしたけど、かーわいいですねぇ!

 まったくもう!まったくもうですよ!

 確かに、黄金聖闘士になったのは後悔はありません。

 でも、君達がそういう感じでいてくれるから、私はこうやって普通に過ごせてるんだと思います。

 ふふっ……ありがとう。



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星9つ 年少者達

 さて、この状況はどうしたらいいでしょうか……。

 

 「カミュ、君、ミロに恨みでもあるんですか……?」

 

 「 ? 何の事です?」

 

 いや、何の事です?じゃ、ねーですよ。

 

 「この年でフリージングコフィンが完璧に使えるとは」

 

 「ああ、天才か」

 

 サガ、アイオロス、そういう事でもねーです。

 

 「お二人共、そういう事ではないと思いますよ」

 

 ジト目でそう言ったのはムウです。私の代わりにツッコミ入れてくれて、せんきゅーですよ!

 

 「見事に凍ってるな」

 

 コンコンと大きな氷を小突いたのはアイオリアです。

 

 「でも、どうするのだ?このままでは本当に死んでしまうぞ」

 

 後頭部をポリポリとかいて恐らく、冷や汗を掻いているのはアルデバランです。

 

 「ん?念仏でも唱えるかね?」

 

 平気な顔してそんな事を言うシャカ。

 そして、アイオリアが小突いた大きな氷の中身は、カミュと仲が良いという自負があるのでしょうけど、ふざけて怒らせてしまい、フリージングコフィンによって凍らされたミロです。(テテーン)

 アイオロスの言った通り、完璧なフリージングコフィンですけど、カミュに聞いた所、

 

 「凍らせるだけなら得意です」

 

 とか。この子、絶対に怒らせたらあかんヤツです。

 そう、実は三人が来たと思ったら、もう、あれからもう一年経ち、年少組、六人が各地の出身地、修行場から聖域に黄金聖闘士候補として集められ、修行の続きをしに来たのです。

 ……ふむ、年月とは経つのが早いですね。しみじみ。

 先輩としてしっかりせねば!ですね。

 

 「シュラー、ちょっとこの氷、切ってくださいー」

 

 「ふぅ、仕方ないな……」

 

 そう言ってミロを傷つけない様にギリギリの所で氷を切っていきます。

 流石、聖剣使いですね。

 

 「氷職人になりませんか?」

 

 「ならん」

 

 すっごく呆れたって顔してますね。サーセン!

 まぁ、さておき

 

 「では、皆さん、ここにマントがあります」

 

 「いつの間に……」

 

 腰に巻いていたので目立たなかった様ですね。サガ、気付かないとはまだまだですね。ふふっ、何故持っているかは秘密です。 

 

 「そのマント、どうするんだ?」

 

 アイオロスが何気なく聞いてきます。

 

 「こうするんです」

 

 マント全体に小宇宙を纏わせてミロを包み込み、そのまま小宇宙に熱を宿らせ、しばらくすると……

 

 「さ、さむっ、げほっげほっ!」

 

 「あ、ミロ」

 

 ミロが寒がりながらも咳をしてマントから出てきました。

 

 「「「「「おおー」」」」」

 

 「なるほど」

 

 「考えたな」

 

 「まぁ、こんな感じですね」

 

 ふっふっふー、どうでしょうか?中々やるでしょー?(ドヤァ)

 

 「うわっ、うっぜ」

 

 おや、この声は……

 

 「デスくーん?聞こえてますよー?」

 

 「げっ」

 

 さーって、次は鬼ごっこの始まりですよー!

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 もう、描写的にわーわー言いながら皆でデス君を追いかけます。

 

 「捕まえたらおやつ上乗せですよー?」

 

 「「「「「はーい!」」」」」「うむ」

 

 一人だけ返事が違いますが、気にしない気にしない。

 

 「普通、お前が捕まえに行くのではないのか?」

 

 「まぁ、姉さんだから」

 

 シュラのツッコミをそう言い返すディーテ。むむっ、どういう意味ですか?

 

 「そういう意味だよ」

 

 なぬっ!?心を読まれた!

 

 「いや、普通に雰囲気でわかる」

 

 すごいですね!

 

 「お前らー!ひぃっ!いい加減、はぁっ!俺を助けろー!」

 

 「「面倒だから嫌だ」」

 

 「ひっで!って、ちょっ、カミュ!さりげなく凍らせんな!シャカ!?お前まで参加してたのかよ!!うおっ!?アルデバラン!背後からってーのはひきょっ、ちょっちょっちょっ、アイオリア、ミロ、ムウ!その構えはぁっ!!?」

 

 うーむ、中々楽しそうですね。良い修行になります。関心関心。

 

 「……止めなくて良いのか?」

 

 「止めに入っても良いですよ?」

 

 私は双魚宮におやつの上乗せ取りに行ってきます。

 

 「「「「…………」」」」

 

 サガとアイオロス、シュラとディーテはそのまま黙ってデス君の様子を見ている事にしたみたいです。

 で、双魚宮にマドレーヌを取りに行って、コロシアムに戻るとデス君が色々と大変な事になってました。そうですね……。デス君、気絶してますね。もう逃げられないと言わんばかりに下半身のみ凍り付いてました。……ユリティースかな?

 サガとアイオロスは苦笑いしてますけど、シュラとディーテ。二人共、青筋出てますけど、大丈夫ですかー?

 

 「はぁ……姉さん、私達じゃ無理だと思うから助けてあげてほしい」

 

  まったく、仕方ないですね。

 

 「皆さーん、そのカニさんは置いておいておやつにしますよー」

 

 そういうとミロとアイオリアが我先にと、走ってきます。

 おおーっと?カミュが地面を凍らせてミロとアイオリアを転ばせて?自分はスケートの要領で滑って来ましたー!

 でも、ミロの横を通った時に足を捕まれ、転んでますね。

 遠周りで来たアルデバランとムウ、シャカが早かったです。

 おや、ムウとシャカがアルデバランに先を譲ってますね。

 貴方達、天使か……!いや、聖闘士だったわ。

 そして六人はおやつタイムに入りました。

 そんな六人を横目にシュラとディーテがデス君を助けてます。

 子供を甘く見ない方が良いですよ。

 手加減知らずなんで、いつも本気モードです。

 

 「真名、なんか手馴れてないか?」

 

 「小さい子が好きなだけです……言っておきますけど、そういう意味ではありませんからね?勘違い、のーせんきゅーですよ」

 

 気のせいではなければディーテとシュラが私から後退りながら少し離れてました。お二人さん、後で双魚宮裏に来なさい。

 ブラッディローズ食らわせますよ。

 

 



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星10 聖域の日常2

 さて、こうして黄金聖闘士達が揃った訳ですけど……、ん?ああ、はい。まだ一部候補で、最後の一人は聖域に居ないけれども。

 これからどうなるんでしょうね?

 このままだと女神、アテナが誕生してカノンがサガを誘惑?うん、誘惑だったですかね?して、サガの中の悪の心を刺激しちゃう……ハズ。

 うあー、マジうろ覚えですよー!!しっかりしなさい、私の頭!

 このままだとカノンはスニオン岬で死にかけてた所をアテナに助けてもらってた事知らずに、ポセイドン復活フラグ立てるし!アイオロスは死んで逆賊の烙印押されちゃうし!サガの乱は十三年まで成立しちゃうし!私はどうしたらーっ!!

 

 「おい、あいつ一体どうしたんだ?」

 

 「変なモンでも拾い食いしたんじゃね?」

 

 「いくらなんでも、姉さんはそんな事はしないよ」

 

 「でも強く否定は出来まい?」

 

 「……はぁ、姉さん、ごめん」

 

 そこの三人、聞こえてますよ。しーっかり聞こえてますとも!!

 ディーテ!最後まで否定しなさい!姉さんはおこですよ!おこ!

 確かに頭を両手で掴み、ブンブン振り回していましたが、決して拾い食いなんてしてません!むしろ、拾い食いしてたらお腹を押さえるでしょ!

 

 「なんだ、真名。拾い食いしたのか?」

 

 「黄金聖闘士でも拾い食いするんだな」

 

 「そんな訳ありますか。それに、拾い食いしたら押さえるのはお腹です」

 

 アイオリアとミロが私が本当に拾い食いしたと勘違いしてます。そこにムウのツッコミが入る!そんな君にシビアコ!

 っつーか、拾い食いで、そんなに盛り上がらないでください!本当に私の事をどう思っているのか……!

 

 「え」

 

 「えーっと」

 

 「控えめに言って変人」

 

 「その喧嘩買うから、カニさんはコロシアム裏に来なさい」

 

 「なんでだよ!本当の事だろ!?」

 

 「この子達を嗾けますよ」

 

 「……すんませんでした」

 

 わかればいいのです!ふっ、虚しい戦いでしたね……。

 

 「はぁ……姉さん、貴女という人は……」

 

 「心中察しする」

 

 ディーテ、シュラ、君達もコロシアム裏に来ますか?っと小宇宙を軽く燃やしてみる。

 

 「「!?」」

 

 「ふっふっふっふー」

 

 ちょっぴり怒ってるんですよーって、意味でも小宇宙を燃やした私に、三人は自主的に土下座(昔、私がデス君に教えました。二人は見てましたけど)して謝ってきました。デス君は二人から頭を押さえられてましたね。

 ふっ、口は災いの元っていうんですよ?

 

 「真名、強い……」

 

 「おー!俺もああなりたい!」

 

 「あの三人の様になりたいのかね?物好きだな。ミロ」

 

 「違う!そっちじゃない!馬鹿な事ぬかすな!シャカ!」

 

 「わたしはどっちにもなりたくないです」

 

 ちびっ子達はすんごい好き勝手に言ってますね。……そう言ってられるのも今のうちですよー。って、私、そんなに怒りっぽいですか?

 

 「ほらほら、皆さん。修行の続きをしますよー」

 

 「……お前が変な素振りするから」

 

 「んにゃ?何か言いました?」

 

 「な、なんでもねーよ!!」

 

 デス君がまた何か言ってましたけど、小声過ぎてわかりませんでした。

 うむ、気にしない事にしますかー。

 

 「では、皆さん、今日はサイコキネシスいってみましょー」

 

 「「えー」」

 

 「アイオリア、ミロ、”えー”ではないのです。苦手なものは今のうちに出来る様になった方がいいんですよ?」

 

 「でも、やっぱり苦手だよ」

 

 「そう言わずに」

 

 っと、言いながらアイオリアの頭を撫でます。うん、ふわふわな触り心地。

 

 「おれ、スカーレッドニードル使えるからいい」

 

 「アンタレス使えます?」

 

 「うっ」

 

 この時、ミロはまだアンタレスを使うのが苦手みたいでした。意外です?私も初めて知った時はビックリしました。どうやらアンタレスを打つのに小宇宙の練り方が甘いと打てないみたいで。

 小宇宙を燃やし、巧みに操る事が出来るにはサイコキネシスで慣れた方が良いと見ました。

 

 「早く使えるようになりたいでしょう?」

 

 「そ、そうだけど……」

 

 「ミロ、後でわたしの分のクッキー「ダメです」うっ」

 

 もう、皆さん平等に配ってるんですから、そういうのはダメです

 

 「カミュの分はカミュの分。ちゃんとミロにはミロの分があるので大丈夫ですよ」

 

 するとカミュが私に近付いてきて、服の裾をクイクイ引っ張ってきたので、カミュの身長に合わせる様に少しだけ屈みます。

 

 「でも、何かミロのやる気を出す方法がないと、このままだとサボってしまいますよ」

 

 「ふむ」

 

 では、こうしましょう。

 

 「ミロ」

 

 「ん、なんだ?」

 

 皆さんから少し離れて、こっちこっちと誘導し、耳元で囁きました。

 

 「え、ホント!?」

 

 「はい」

 

 「嘘じゃないよな!」

 

 「生憎、嘘は嫌いですね」

 

 そう言うと、ミロは目を輝かせて私に「耳を貸せ!」っと大慌て。まったく、仕方ないですねぇ。

 ミロに耳を傾け、言葉を聞きました。

 

 「はい、良いですよ」

 

 「おお!よーし、やるぞぉー!」

 

 「では、ミロ。君に決めた!」

 

 「おう!」

 

 そうして大岩に向かって指を突き出し、ミロを向けさせます。

 私はミロとの約束を考え、今後の事に関しては一旦隅に置いておく事にしました。

 その日ミロは何故か斜め上に向かって力を発揮し、この時にアンタレスを打つ為の小宇宙の練り方のコツを掴みました。ミロ、ちょろいですな。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「子供って単純ですよねー?」

 

 「……一応、言っておくがお前も子供なんだぞ?」

 

 おおう、忘れてました。私ってば、後少しで中身は三十二歳の身体は十二歳になるんですよね。……年取るの早いですねぇ。

 

 「カノンは今、十五でしたっけ?十五に見えない体格してますよねー」

 

 「そういうお前は小さいな。女の方が大きくなるのが早いと聞くが、本当に身長伸びてるのか?」

 

 「むむ、失礼な!身長に関しては後半戦でケリを付けます!」

 

 「何とケリを付けるつもりなんだ。お前は」

 

 くっくっく、とまた笑われました。まったく、失礼ですね!

 

 「さっきは助けない方がよかったですかね?」

 

 「……すまなかった。俺が悪かった!これでいいか?」

 

 「最後のは余計です」

 

 そう、何やら揉めてる?みたいな感じで、気になったんで近くまで騒ぎっぽい所に行ってみたら、カノンが似合わないにっこにこ顔して神官や、女官の相手をしてたんですよ。

 どうやらサガと勘違いされて、サガしか知らない事を聞かれてるっぽく、困ってますオーラが出てましたね。

 仕方ないので教皇様が呼んでいると言って抜けてきたのです。

 教皇様なら聞かれてもカノンの事を知ってますし、誤魔化してくださるでしょう。まぁ、気軽に聞ける様な立場じゃありませんから大丈夫だと思います。

 そして、私達はいつものスニオン岬に来ており、適当な岩に座って雑談していました。

 

 「で、カノン、私に言う事があるでしょ?」

 

 「……」

 

 「意地を張ってるとしつこいですよー?私」

 

 「あ!あ……が、とぅ」

 

 「ん?」

 

 「ありがとうと言ったのだ!ちゃんと聞け!!」

 

 なんか逆切れされてるー!?ん?あらま、顔真っ赤。

 

 「そんなに恥ずかしがらなくても……」

 

 「くっ!」

 

 まさに不覚!みたいな感じで悔やまなくても……。

 

 「仕方ない人ですねぇ」

 

 「う、うるさぃ!」

 

 からかい過ぎると拗ねるのでここまでにしますか。

 そう思っていい加減飽きてこないのか?と聞いたら、時々しか貰えないから飽きない。っと言われたクッキーを渡す為に、ベルトに引っ掛けていた袋を取り外すのでありました。

 

 




予定変更しまして、1日うpの予定を2,3日位空いて投稿する事にします。
落ち着いたら、また、1日毎になるかもしれません。
中途半端な感じで申し訳ありません。


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番外 サガ

 あの子と初めて会ったのはアイオロスが先だった。

 私が8歳の頃、ロドリオ村で、突然私とアイオロス、カノン以外の大きな小宇宙を感じたのが全ての始まり。

 それは黄金聖闘士特有のオーラでありながら、威圧感を感じさせず、むしろ近くの者を温かく包み込み安心させてくれる様な穏やかな小宇宙。

 一緒に来ていたアイオロスと別行動をとっていたが、気になって、この小宇宙の居所を探した。探していた小宇宙の近くに、もう一つの小宇宙を感じる。

 

 ……これは、アイオロス?

 

 少し急ぎ足になりながら二つの小宇宙を辿ってみると、裏路地に居る事が分かり、覗き込むとアイオロスに寄り掛かる幼い女の子が居た。

 件の力の元はその女の子からの小宇宙だった。

 「アイオロス」

 

 そう声をかける。

 すると二人してこちらを向いた。

 

 「ああ、サガ。待たせてしまってすまない」

 

 「それは良いが、どうかしたのか?」

 

 まさに気付いたばかりという風に装ってしまった。

 私は何を言っているんだ、素直に言えば良いではないか。

 アイオロスに、その女の子、”真名”と名乗ったのだと教えられた。

 そして、不意に真名が私を見た。 

 な!?……美しい。いや、まだ美しいというよりも、愛らしいと言った方が良いか。可憐だと思う。こんな子が存在していた事に驚く。

 む?何故か胸のあたりが苦しい……何故だ?このサガがまさか、こんな異常事態に陥るとは。

 帰ったらカノンに聞いてみよう。あいつならば私よりも様々な本を読んでいるから詳しいはずだ。

 一旦、思考を切り替える。とにかく、この子の内に秘めている小宇宙を調べなければ。

 

 「サガ。この子から”あの小宇宙”を感じるんだ。もしかしてっと思うんだが」

 

 「ふむ、確かにこの子からアレに似た小宇宙を感じるな」

 

 やはりというか、間違いなく真名から黄金の輝き。黄金の小宇宙を感じる。

 これは直ぐにでも教皇にお目通りしてもらわねば。

 

 「真名」

 

 真名へ手を差し出す。新しく覚えたばかりの瞬間移動だが、もう難なく扱う事が出来る様になっている。

 そして、真名を連れ、聖域に連れて行くのだった。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「っと、いう事なんだが、カノン。この胸の内の靄の様なモノがなんなのか、わかるか?」

 

 「は?」

 

 あれから双魚宮にて、魚座の黄金聖衣が真名に反応して輝くという様を見た。そして、教皇にお目通りし、これから魚座の黄金聖闘士候補として修行する事になった真名。

 そんな真名もいい加減、疲れただろうと双魚宮で宮から近ければ好きにしてもいいと言い、双児宮に帰ろうとした時。

 

 《明日からお願いします!》

 

 笑顔で今日あった事の礼を言いながら、改めて挨拶をする姿は、離れた分近付き、抱きしめてしまいたい衝動を抑えてアイオロスと共に返事を返すだけに留まった。

 

 「サガ、本気で言っているのか?」

 

 「 ? 本気も何もないが……」

 

 それがどうした?っと聞き直すとカノンは深いため息を吐き、横目で私を見る。

 

 「マジかよ……。こいつ、天然か。本当にこのカノンと双子の兄弟か?」

 

 とても小さな声で呟くモノだからよく聞こえなかった。

 

 「カノン、すまない。声が小さくて聞こえなかった。もう一度言ってくれ」

 

 今度は先ほどよりも深いため息を吐かれる。

 む?本当に一体なんなのだ。

 

 「カノンよ。私はまさか病気なのか?なんなのか知っているなら教えてほしい!」

 

 双子座の黄金聖闘士候補として病など冗談ではない!

 

 「サガよ」

 

 「な、なんだ」

 

 「本っ当に知りたいか?」

 

 「ああ、どんなに重い病でも私は打ち勝つつもりだ」

 

 「…………はぁ~」

 

 「……」

 

 「こいだ」

 

 ん?

 

 「こいだ。と、言ったぞ」

 

 ”こい”??

 

 「最近、教皇がお飲みになっている黒い……」

 

 「”コーヒー”だ」

 

 「あの、東洋の魚の……」

 

 「それは”鯉”だ……」

 

 カノンが頭を抱えて唸っている。

 

 「~~~っ!こいだ!恋!!病は病でも恋の病だ、愚か者!!お前は!あの!魚座の候補の小娘に一目惚れしたんだ!愛しているんだよ!!」

 

 「な……」

 

 なんだと!恋の病!?真名を愛しているだと!!?

 

 「何を、言っている。このサガがあの子に一目惚れなどと……。馬鹿な……」

 

 「ああ、馬鹿なんだよ。大馬鹿野郎」

 

 何やらカノンから陰鬱な雰囲気が漂っている。お前、大丈夫か?

 

 「カノン、随分陰鬱だが、大丈夫か?」

 

 ⦅ぷっつーん⦆ 

 

 「ん?」

 

 何か聞こえなかったか?

 

 「サぁ~ガぁ~!そぉういうのはぁ……お前の専売特許だろうがぁっ!!」

 

 あ、キレた。

 

 「星の砕けるさまを見よ!!」

 

 「させるか!!」

 

 お互いに鏡を合わせたかの様に技を繰り出す。

 

 「「ギャラクシアンエクスプロージョン!」」

 

 この日、久しぶりの大喧嘩に発展していったのであった。

 




2,3日空けますと書きましたが、ついまた投稿してしまいました。
お話のストックを書く予定だったのに……。
今度こそ日にち空けます。


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番外 カノン

 突然だが、サガが”恋”をした。

 何を言ってるんだと思うだろ?俺もそう思う。

 確かに初めて魚座の小娘を見た時、美しいと思った。だが、それだけだ。

 まさか、見た目だけで惚れ込んだのか?と思ったのだが、話を聞くと小宇宙を感じ取った事が初めであったらしい。

 なので俺も小宇宙を感じやすい様に、小娘がコロシアムに行く時にバレない程度に近付いてみたのだが……。

 

 「なんなんだ……あいつ」

 

 最初に感じたはずの小宇宙が何度挑戦しても感じ取れない。

 本当にヤツは黄金聖闘士候補なのか?

 そう疑うしかなかった。

 だが、他の聖闘士達から疑問視される所は見た事がなかった。

 何故なのか、どうしてっと思う心があったからなのか、あいつが”追いかけっこ”と称した小宇宙コントロール訓練みたいな何か(俺はそう思っている)が始まり、初めて捕まった時、俺は背後から驚かされて勢い余って思い切り転んだ。

 そんな姿を見られてしまい、物凄く恥ずかしくて少しの間、引き籠りになり、サガに心配された。

 

 「余計なお世話だ!」

 

 っと、言ったら、

 

 「弟の心配をして何が悪い!」

 

 っと、言い返されてしまい、余計に恥ずかしくなって喧嘩に発展した。

 そういう事で、負けた気にさせられた俺は、あいつにし返さなければ気が済まなかったので、何度も挑戦したが、その度に驚かせられて”追いかけっこ”の最後には思わず笑ってしまった。

 まさかこのカノンが、こんな事で心から負けを認める様な事になるとは思わなかった。

 笑ったのは良いのだが、その後、思い切りうなだれた。思わず疲れたと呟いてしまっても仕方あるまい。

 あいつ、あー、真名にはもう、俺がサガではない事がバレていて。……隠している事が馬鹿らしくなってしまうが、それだけは周りに言いふらされる訳にはいかない。隠してきた意味がなくなる。だが、真名がいきなり

 

 「友達になってください!」

 

 そう言ってきた。俺はそんな事を言われた事がなかったので驚いた。

 俺の事を知っているのは教皇とサガ、女官長位なモノだ。

 なので、俺は完璧に外との接触をするのが禁止されている。

 そんな俺に真名は俺と友になりたいと言う。

 別に憧れなかった訳ではない。

 本当に良いのか?と自問自答したが、絶対にいけないとわかっている。けれど、心の奥底では”己を知っている人がほしい”と思ってしまっていた。

 許されるだろうか……?この俺に友人など……俺がそんな思考に沈んでいると、

 

 「私がなりたいからそう言っているのです。なってくれないと……もう一回します?”追いかけっこ”」

 

 それを聞いた俺は全力で友人になる事の承諾と、”追いかけっこ”をお断りさせてもらった。

 そして、その時に聞いたのだ。何故、双児宮を通る時に小宇宙を感じなかったのか。すると真名は

 

 「小宇宙を扱う為の自主連みたいなものです。聖域を降りる時と上る時は小宇宙を最小限消してどうすれば早く動けるか実験してたんです。思いのほか楽しかったので、ずーっと続けてました」

 

 は?

 

 「いやー、小宇宙を抑えての上り下りは疲れますね。体力作りには最適……どうしました?」

 

 どうしました?ではない。

 そんな事で俺は今まで苦労していたのか……。

 

「そんな事とはなんですか。毎日、燃やすのではなく、逆に最小限小宇宙を抑えながら数時間どの位動けるのか、やってみようと思いまして。

 皆さん、小宇宙を燃やす事が出来ますが、普通に過ごす分の小宇宙をも抑えて過ごすのって、結構ツラいですよ。その分体内の小宇宙は解放すれば膨大なモノになりますね。多分」

 

 「多分かよ!」

 

 「視覚に頼らず、小宇宙を練りに練って溜めた力を敵に開放し、攻撃するって方法をする人だっていますよ!きっと」

 

 「納得しかけたのに、最後のはいらんだろう」

 

 こいつ、大丈夫なのか?頭。

 こんなヤツにサガは惚れたのか……。頭痛がしてこめかみを押さえた俺は悪くないと思う。

 

 「ふふっ、でも、結構貴方との追いかけっこは楽しかったです。ありがとうございました」

 

 その時、まだ仮面が出来ていない時だったので、素顔を間近に見ていた俺は真名の”本当に楽しかった”という気持ちが籠った小宇宙を発した真名の笑顔を見た時に……多分、落ちたんだと思う。

 これではある意味サガの事が言えないではないか!!

 正直、仮面無しでの笑顔を見れたのは幸運だったと思う。この二日後位に仮面が出来上がり、真名は素顔を隠して生きる事になった。

 しかし、真名の感覚が変なのか正常なのかわからない事があった、時々

 

 「この仮面、結構視野が狭まって良い訓練になります」

 

 とか、言いだしてまさに今の状況を楽しんでいた。それで良いのか、仮面の扱い。

 それにこの間言っていたが、

 

 「この仮面のおかげで風邪が引きにくくなった気がします!」

 

 違う、そうじゃない。お前は女を捨てているのだぞ。わかっているのか。

 

 「わかっていますよ!仮面の利点を探してみただけじゃないですか」

 

 こいつ、仮面の掟、ちゃんと理解しているのか……?

 大丈夫なのかと心配になった。

 それからコロシアムに訓練する以外は双魚宮に居ると知らされてサガには秘密で真名の所に隠れて通うようになった。バレたらサガのヤツ、もの凄く面倒な事になるぞ。

 サガは、真名に惚れてるから……多分、俺に今まで会っていたからと言ってギャラクシアンエクスプロージョンあたりでも食らわせに来るだろう。

 ……あいつだけには真名を渡したくないな。

 そんな想いがあの時した喧嘩に影響してしまったのだろう。

 サガから訓練していた時の真名の名を聞いた瞬間、思わず覚えたてのアナザーディメンションを放ってしまっていた。もちろん、サガも同じ技を習得している。俺の隙をつき、機転を利かして自身にアナザーディメンションを打ち出し、俺の後ろに移動して、光速拳を繰り出してきた。それを受け流し、俺もサガに光速拳を繰り出すが、ヤツも全て受け流してカウンターを仕掛けてくる。俺も負けじとサガに一発ヤツの顔に食らわした。まさにクロスカウンターの形になる。その後お互いに倒れこんだ。

 まったく、こんな事で嫉妬なんて、恥ずかし過ぎる……。

 その出来事があった翌日、ロドリオ村からの帰りなのか女官二人が歩いている時に聞こえてきた内容に驚いてしまった。

 なんと、真名以外の魚座の黄金聖闘士候補が居て聖域に来るという話を、聞いた。確信を持ちたくてサガが居ない事を確認して、コロシアムでも情報を集めてみた。どうやら本当らしい。近い内に真名に会いに行くか。

 その日から二日たった頃、俺は双魚宮に向かった。この話をする為に。

 もしかしたら、真名が俺と同じ存在になるのでは……っと、思ってしまった俺は真名に聞いてみたい事があった。だから、この話をした時にあまりにもしつこく聞いてしまったので真名にサガとの事を聞かれた。

 今度は詳しく思い出してしまうと、訓練中の真名がーとか、コロシアムで雑兵に親切にーとか真名の話をされて一緒に何か出来た事がなかったから嫉妬し、喧嘩してしまった事、今回の話を持ってきた時に、もしかしたら俺と同じになるのでは?と思っていたから、真名の反応を知りたかったという焦りもあった事など、あまりにも性急過ぎてしまった事で、聞き出しにかかってきた真名に思わず顔に出ていた様で、焦りに焦った俺は思わず逃げ出してしまった。なんと情けない……。

 こんな事、絶対に誰にも言えない。

 




また更新は2、3日後位になります。早く余裕を持ちたい。
小説の続き書きたいです……。


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星11 マニキュア

 どもども、皆さんこんにちは。

 今日も聖域幼稚園はっじまーるよー。

 

 「真名真名、”ようちえん”ってなんだ?」

 

 「おや、聞こえてましたか。んーとですね。君達位の年齢で勉強したり、遊んだり、お昼寝する施設みたいなモノですよ」

 

 「「へー」」

 

 幼稚園の説明をするとカミュが無言でビシッと片手を上げました。

 

 「うむ、申してみなさい」

 

 「その”ようちえん”とは、わたし達と一緒で小宇宙の訓練もするのですか?」

 

 おおっと、そこ聞いちゃいますか。うーむ、とりあえず正直に言いますかね。

 

 「いいえ、小宇宙訓練はしませんね。もっと詳しく説明しますと、私達が普通に出来る事をするんです。コミュニケーション能力や生活力、言葉使いや、簡単な書き取りに、足し引きとか。まぁ、戦士としての戦い方以外の事を学ぶ感じですね」

 

 「「おおー」」

 

 「もしかしたら、貴方達が成長して弟子を取る事になったら、教える様になるかもしれませんね」

 

 特にカミュとか、カミュとか。後、アルデバランやデス君あたりとか。

 

 「はい!」

 

 今度はミロが片手を上げます。

 

 「はい、申してみなさい」

 

 「”ようちえん”って菓子は出るのか?」

 

 おおう、それも聞くんですか。

 

 「うーん、そうですねぇ。記憶違いでなければ、あまり出ませんね。数も少なかったと思います」

 

 「「ええー!?」」

 

 何やら不満な声が聞こえますが……。どうしたんでしょう?

 

 「おれ、修行厳しいし、時々しかお菓子出ないけど、真名のお菓子が食べられないのは嫌だ!」

 

 「おれだって真名の菓子、食えないのやだ!」

 

 「お菓子目当てに修行してる訳ではないのですよ。二人共」

 

 「「わかってる!!」」

 

 「本当にわかっているのかね?」

 

 「でも、菓子が出るとやる気も出て、修行のし甲斐があると思うぞ?」

 

 「「アルデバランが毒されている……!」」

 

 ショックを受けた様に身体が仰け反っているムウとシャカ。

 ……どういう意味ですか?お二人共?

 ちょっと黒くなった私でしたが不意に訓練服の裾を引っ張られました。

 

 「真名、良かったら時間が空いた時、作り方、教えてほしいです」

 

 カミュが遠慮深そうな感じでそう言ってきます。

 もしかして……将来の弟子の為に……!?

 

 「ミロを黙らせる時、口に突っ込めば静かになりますから……」

 

 ある意味、切実な動機でしたぁー!!

 ミロー!貴方、本当に何してるんですかねー?将来はあんなにも情に篤く、実直な性格の為に曲がったことを嫌い、一度認めた相手に対しては強い信頼を寄せる……まさに番長?兄貴?そんなカッコイイ男になるのに、うーむ、どうしたらあんな感じになるんでしょう?謎です。

 

 「おや、カミュ、貴方、その爪はどうしたんですか?」

 

 私がそういうとサッと両手を背中に隠してしまいましたね。

 さっき見た時、指先は赤くなり、爪が割れていました。

 おお、そうです。

 

 「カミュ、訓練が終わったら私の宮に来なさい」

 

 「え……、はい」

 

 そんな不安な顔しなくても、取って食べる訳ではないのに。

 仕方ないですねぇ。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 夕方になり、皆、十二宮に戻るのですが、双魚宮にカミュとミロを一緒に連れてきました。(ミロはカミュが気になって一緒に来たみたいです)

 あ、ちなみにディーテは少しコロシアムでデス君とシュラの三人で残るそうです。何か企んでないでしょうねぇ?っと聞いたら、

 

 「へっ、お前じゃないんだから、そんな訳あるかよ」

 

 と、カニさんが何か申していましたので、キャメルクラッチを食らわせても問題ないですよね☆

 まぁ、そういう事で、二人を居住部屋に招き、椅子に座らせてお茶を出します。

 本当はジュースを出してあげたいのですが、ないので出せません。

 とにかく目的の物を取りに二人から離れます。

 自分の私室に入り、机の引き出しからマニキュアを出します。

 何故、そんな物を持っているのか。

 本当はディーテの私物でした。なんでも、

 

 「間違って買ってしまった。姉さん、使う?使わないなら捨ててもいいよ」

 

 そう言って。

 変な所で素直ではない弟弟子ですが、そんな優しい所があるのを見ると和んでしまいますね。

 結局もらったはいいのですが、使わないで取っておくだけだったので、カミュにあげようかと思います。折角もらった物です。誰かが使った方がマニキュアも喜ぶ?でしょう。

 何故マニキュアをあげるのか。それは爪の保護の為です。

 本当はネイル美容液などを塗った方が良いのですが、無いよりマシでしょう。

 カミュに桶に入れたぬるま湯で手を洗ってもらい、清潔にして、手を差し出してもらいます。

 やっぱりというか、指先はひび割れが酷く、真っ赤になっていました。特に人差し指が酷いです。

 

 「まずは、指先の治療ですね。ちょっと待っててください」

 

 私はカミュにそう言うと、改めて離れ双魚宮の裏にある花園に行き、隅に鉢植えで植えてあるアロエを切り取り、居住部屋に戻ります。

 そして改めてもう一回手を差し出してもらって、アロエの切り口を指先に擦り付けます。カミュは無表情ではありますが、痛いのか、手が震えています。

 我慢しているのでしょう。偉いですよカミュ!

 一通り塗り終わると、今度はヒーリングをかけます。

 

 「なー、真名。葉っぱの汁付けるより、最初からヒーリングかけた方が早く済むんじゃないのか?」

 

 なんでなんでと、ミロが聞きたがりだしました。

 

 「それもそうなんですが、それだと自然治癒力が弱くなってしまいますからね」

 

 「しぜんちゆりょく?」

 

 「身体が持っている本来の防御、免疫、再生機構などによって病気が治る事ですよ。怪我をするとカサブタが出来るでしょう?あれも身体が自分の力だけで傷を癒そうとしているという事です」

 

 「そうなのですか」「おー」

 

 うむうむ、これでまた一つ賢くなりましたね、二人共。

 

 「え、じゃぁ、その葉っぱなんだよ。なんか意味あるのか?」

 

 「ちゃんとありますよ。これはアロエといって、”医者いらず”と言われるほど万能な植物でして、古くから色々な人達の生活に役立てられてきたんです。

 そして、この切り口の液を使う事で自然治癒を促しているんです。ヒーリングの効き目も良くなりますので使ってるんですよ。まぁ、凍傷には軽い症状のモノしか効きませんが、無いよりはマシです」

 

 「そうなんですね」「おー」

 

 ふむふむと頷き、納得するカミュと感心しているミロ。

 

 「ちなみに、食べる、飲む、塗るといった様々な方法で使われます。今度、アロエヨーグルト作りますね。美味しいですよ」

 

 「楽しみにしています」「おー!」 

 

 ミロ、気のせいじゃなければ「おー」しか言ってませんよ……。

 

 「でもカミュ、貴方、こんなになるまで訓練していたのですか?どんな技です?」

 

 「……”カリツォー”という、相手の動きを封じる技です」

 

 ああ!カリツォーですか!なるほど、確か人差し指に小宇宙を集中させて放つんでしたっけ?だから人差し指が一番酷いんですね。納得です。

 ……あれ?カミュってこの技使えるんでしたっけ?うーん、本当にうろ覚えなので確信はないのですが、使っている所無かったような気が。氷河だけですよね?あれ?

 ……まぁ、良いのです。多分使う所が無くても習得はしていたのでしょう。じゃなかったら、氷河が知ってるはずないです!流石に氷河オリジナルの技ーな訳ない……ですよね?

 とりあえず、さっさと済ませてしまいましょう。塗るマニキュアの色は赤。カミュの髪も夕日の様な真っ赤な色なので似合っていると思うんですよね。

 最初は恥ずかしがっていましたが、塗り終わってマジマジとマニキュアを塗った爪を見つめて

 

 「ありがとうございます」

 

 と、言ってくれて、「あげますよ」って言うと遠慮してましたが、私が強引に渡すと観念した様にもう一度お礼を言ってくれました。そして、カミュはミロと宝瓶宮に帰って行きました。

 ……後でディーテにマニキュアのお礼と、勝手にあげちゃった事の謝罪をしなければっと思いながら、双魚宮の居住部屋に戻るのでした。

 

 




報告。まだ更新速度は遅いです。
でも、投稿は必ずします。
お待ちください。


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星12 降臨間近

 

 以下省略!!

 はい!いきなりなんだ!?と思われるでしょう。

 うん、私もされたらビックリです。

 えー、説明してほしいんですかー?んじゃぁ、説明しますけど……。

 年少組の皆さんが十二宮順に日にちを置いて黄金聖闘士になりました☆

 もうね、目の前で黄金聖衣を纏って教皇様の言葉を聞き、皆さん「謹んでお受けいたします」とか言ってるんですよ。年齢一行の子供がですよ!(自分の事は棚上げですよ!悪いか!)

 それを見ていた私は、解散になって教皇宮から帰り、双魚宮にて一人になって……もう、個人的に言わせていただくと、

 

 「はええええええ!!」

 

 でした。

 もう、口調も悪くなりますよね。

 教皇様はどんな事をお考えなのか!一気に皆さんを黄金聖闘士にしてしまう訳と……は……。

 まさか……、女神降臨が近い……?確かにそろそろだろうなって思っていましたが、こんなに早いんですか?ま……

 

 「マジかー……」

 

 言っておきますが、”マジか”と”間近”をかけたダジャレではないので悪しからず。

 って、ボケてる場合ではないのです。

 

 「気のせいですかねぇ……?」

 

 最近、兵士さん達の間でアイオロスの評判が微妙なんですよね。

 こ、これはまさか……

 

 「(闇の人格出始めてませんかー!?)」

 

 そうなんですよね!番外的何かで、サガの闇人格の策略によってアイオロスの評判を落としにかかる描写があるとかないとか。

 今まさにそんな状況ー!?ア、アイオロスゥー!!

 そんな事させてたまるかー!っという訳で。

 

 「《第14回、いつもありがとう!これからもよろしくね!の労うの会》ぃー!!」

 

 「「はい?」」「「「はぁ?」」」「「なんだ?」」

 

 ふっふっふー、皆さん、驚いてる驚いてる。そうですよねー。

 私達、黄金聖闘士は下の者達とは格が違い過ぎて、担当してる女官さんや、一部の兵士さん以外とは接触しませんからねぇ。

 こういうのはしたことがないでしょうな!

 

 「姉さん、”また”かい?」

 

 「む、”また”とはどういう意味なのだ?アフロディーテ」

 

 サガがディーテに質問してます。おや?意外と知らなかったんですね。

 

 「ふぅ。初めて知った時は私も驚いたモノだったけど……、半年に一度、姉さんは担当してくれている女官や、青銅、白銀聖闘士達だけでなく、下々の女官や、兵士たちにまで労りとして女官と一緒にクッキーを配っているんだ」

 

 「「「はぁっ!?」」」

 

 おおう、皆さんそんなに驚かなくても……。

 

 「そんな手間かけてんのかよ。ご機嫌取りかぁ?ご苦労様なこって」

 

 「むむっ、ご機嫌取りの何が悪いんですか!」

 

 「認めるのかよ!?」

 

 何を言いますか、大事な事ですよ。

 

 「何言ってるんです?私達は確かに十二宮を守る砦。だけれども、その他は下で働いている皆がいるから成り立つんじゃないですか。下を蔑ろにするのは論外。たまには労わなければ、信頼も何もありません」

 

 サガだって良くやってる事じゃないですか。ロドリオ村に行ってご老人に拝まれてるの知ってるんですよ?まぁ、黄金聖闘士になった私達にも拝んできますけど……。

 

 「材料はどうしているんだ。砂糖なんて貴重な物、良くそんなに手に入るな」

 

 「ふっふっふー、秘密です!なんてね。何、簡単ですよ。半年に一度だけ大量に買い占めているだけです。後は前回、使っていない砂糖を使いまわしているんです。使ってない砂糖をしっかり保存する方法があるのです。それに……」

 

 何より君達用に使って消費してますので古いのは直に無くなります!

 片手を振り上げ、そう言った私の顔は仮面で隠れてましたけど、輝いていたと思います。

 そして、そんな私をアイオロスとサガは苦笑して見つめて、ディーテや、デス君、シュラは呆れたかの様な顔をし、年少組は一部尊敬の眼差し(多分あまりわかってない)を私にしていたと、後でムウから教えてもらいました。

 まぁ、そんなこんなで、私は星の形をした小さな型抜きを持ち、他の皆さんにはそれぞれの星座の型抜きを持ってもらい、練っておいた生地に何個か皆さんで刳り貫いてもらいました。

 ただ、サガが自分の刳り貫いたクッキーを一つ欲しがったので、焼けた時にあげる事にしましたが、恐らくカノンにあげるつもりなんでしょう。弟想いな良いお兄さんですねぇ。

 ん……?仲が良いのは大変よろしいのですが、カノンってサガの中の悪を刺激して……サガが怒って……、あれ?こんな仲良しでカノンってスニオン岬に閉じ込められるんですか?え?マジで??

 どんな風に悪を刺激したのかが思い出せませんが……今のカノンって悪童って感じ全っ然ないんですけど。

 え、何かどこかでやらかしました?私。

 うーむ、全然心当たりがありますん。

 いえ、ありません。

 ……ま、なるようになりますよね!!

 と、開き直る私なのでした。

 とりあえず、クッキーの刳り貫きが終わり、熱しておいたオーブンもどきでクッキーを焼きます。

 耐熱性ガラスはこの台所にはありませんが、一部の方々が珍しがって覗き込みます。因みに今回は無塩バターがないので普通のバターに薄力粉、砂糖の三つで作りました。焼き時間は約十五分前後、簡単に出来上がります。

 今度、アイスボックスクッキーの作り方でもカミュに教えてあげますか。凍気で簡単クッキー!カミュ特性ですね。略してカミュクッキー。

 後でレシピ書きますか。

 そういえばですね。最近、砂糖の購入が楽になってきたんです。

 時代が変わってきたって事なんでしょうねぇ。

 そうしもじみ思っていると、

 

 「真名、真名はすごいな。なんでもできるんだな」

 

 きらきらした瞳で見つめてくるアイオリア。

 年少組の皆さん、私の身長と同じ位になってるんですよね。私、一応日本人の女性平均より高めなんですが……、何この子達、ちょっぴり悔しく感じてしまってます。

 まぁ、そんな事はいいのです。どうやら初めてクッキーを作る姿を見たのでアイオリア的にすごいと思ったみたいですね。いや、普通に誰でも出来ますよ。メシマズでなければ……。

 

 「私がすごいのではなく、お菓子を開発した人がすごいのですよ。私はそれに倣って作っているだけですから」

 

 「でも、小宇宙の練り方とか、技の開発とか、戦いだけでなくて、こういうお菓子の作り方を知ってるの、俺はすごいと思うぞ」

 

 おおう、純粋な瞳で見つめられると実は実年齢は三十一歳の私はなんだかちょっぴり複雑というか、自己嫌悪というか。ただ単に趣味がお菓子作りだからレシピが頭に残っているというか……特別すごい訳ではないのですが……。

 

 「なー、真名!そろそろ焼けるんじゃねー?」

 

 オーブン前にて待機していたミロがそう言ってきました。

 おお、確かにそろそろ十五分になりますね。

 

 「では、取り出しますか。アイオリア、ちょっと離れてくださいね。熱いですから火傷してしまうかも」

 

 「うん」

 

 クッキーの出来栄えは二重丸。良い出来です。

 次のクッキーをオーブンもどきに入れて、出来上がった方を冷まします。

 もちろんカミュに頼んで。

 

 「一気に冷やすのではなく、ゆっくりお願いします」

 

 と言うと、

 

 「わかりました」

 

 そう返事が返ってきて両手をクッキーにかざし、凍気というより冷気ですね。しかし、これってカミュの修行にもなりませんか?凍気をコントロールする意味で。一石二鳥ですな!そして、クッキーが焼ける度にやっていただいて無事に出来上がりました。

 

 「サガ」

 

 とりあえず出来上がった双子座のクッキーとおまけで入れた星型のクッキー数個を袋に入れてサガに渡します。

 

 「ありがとう、真名」

 

 「ふっふっふー、美味しく召し上がってくださいな」

 

 「ああ」

 

 相変わらず笑顔が眩しいです。うーむ、悪の人格って確かアテナの盾の光で浄化されるんでしたっけ?アテナが降臨してからじゃないと意味ないんでしょうか?今からしませんか?浄化。

 結論から言うと《第14回、いつもありがとう!これからもよろしくね!の労うの会》は大成功?でしたー。

 流石に私以外の黄金聖闘士達も参加していたので、めちゃくちゃ驚かれましたけど。私個人は楽しかったので良しとします。

 そうそう!アイオロスの評判ですが、そう簡単には評判は改善されませんでしたけど、なんか今回、黄金聖闘士の皆さんで配ったからか大分マシにはなった感じではあります。負けるな、アイオロス。がんばれアイオロス。今日の一番星も輝いているぞ!

 

 




次回も更新遅めです。
また、言いますが、頑張ります!


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星13 女神降臨

 アテナがアテナ神殿の神像前に降臨します。

 教皇様に黄金聖衣を纏い集合をかけらました。

 心で確かにそろそろって教皇様が星読みで読んでいたらしいけど、今日かよ!と思って居住部屋のあるカレンダーを見たら

 

 八月三十一日。

 

 あ、明日じゃん。

 

 そう、城戸沙織嬢の誕生日やん。なんて冷静になってカレンダーを見て……、自分、気付くの遅えええええ!!とか言ってる場合じゃねぇ!なんて、また口調が悪くなってしまいましたね。イッケねぇ☆

 まぁ、真面目な話、ぶちゃけ、アテナは皆に望まれて生まれるのではありません。

 ”地上の覇権をめぐり、守る為に”生まれるのです。

 一人の人間として生まれるのではないのです。

 私には彼女を”女神”としてみる事は、アテナが自覚するまで恐らくありません。多分。

 何故かって?だって、赤ちゃんで生まれてくるんですよ?生まれた瞬間から小宇宙を纏って明らかに”私は女神です”と言わんばかりに登場するんですか?

 まぁ、わかりませんけど。

 とにかく、今夜です。

 恐らく日付が変わると共に降臨されるのでしょう。

 ……クラッカーの準備は十分か?

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 はーい、此処はアテナ神殿の神像前!

 しかもアテナ 降 臨 !

 って、ふざけてる場合ではないのです。

 一瞬だけ物凄い膨大で清らかな小宇宙を感じたと思ったら神像前に現れました!

 女神、アテナ(赤ん坊)が!

 神像前に集まった黄金聖闘士の皆さんは全然動きません。すんごい茫然としています。

 え、何か反応しましょうよ。

 あの教皇様でも動きません。

 このまま赤ん坊を放置していられません。

 私は動く事にしました。

 

 「真名?」

 

 隣に居たカミュが怪訝そうにこちらを見ました。ふふっ大丈夫ですよ。

まずは教皇の前に跪きます。

 

 「教皇」

 

 「真名か……」

 

 あれ?なんか私が動くのを待ってました、みたいな態度ですね。

 多分、私がっというか、誰かが、なんでしょうね。

 とりあえず教皇に進言しました。

 

 「このままではアテナのお身体が冷えてしまいます。アテナ神殿にお連れした方が良いかと……」

 

 「うむ、そうだな」

 

 教皇様がそういうとアテナに近付き、抱き上げてアテナ神殿の中に入っていきます。

 連れていかれるアテナは不思議そうに教皇を見上げてました。……めっちゃ可愛い。

 おおっと、萌えてる場合ではないのです。

 皆さん教皇様を見つめて固まったままなんですもの。

 私は皆さんの硬直を解く為に手を叩きました。

 

 「はい!皆さん!静粛に!」

 

 「いや、元から静かなんですが」

 

 私が動いた事で既に硬直から解けていた?カミュが私にツッコミます。

 ちょっと言ってみたかっただけですよー。

 皆さん、どうやら私の一言で硬直が解けたみたいですね。

 うーむ、硬直というか緊張ですかね?

 なんか緊張が”解けた”というか、”脱力”した感じになってました。

 むむむ、どうしたんでしょう。

 

 「真名……、お前というヤツは」

 

 「なんていうか、お前らしいといえばお前らしいが」

 

 「実はここに用意していたクラッカーがあったり……」

 

 マントで隠してましたが後ろの腰に括り付けていたクラッカーが……。

 

 「それ、絶っっっ対使うなよ。フリじゃないからな」

 

 おおう、デス君にまで念押しされた。まぁ、当たり前ですけどね。

 しかし、アテナはこうして降臨されました。

 サガは……、泣いとる。めっちゃ泣いとるがな。滝涙流しとる。

 アイオロスもちょっと涙ぐんでますけど、サガ程ではないですね。サガの背中を叩いて慰めてる感じです。

 デス君とシュラはなんか強張っていた顔が私のクラッカーで強張りがなくなりましたけど、ちょっと神妙な顔して二人で話してます。

 年少の皆さんは、おお、興奮と放心、驚き?で、ありますが、ちょっと静かにわいわいしてますね。

 当の私ですが、きっとこの後、改めてアテナにお目通りできるのでは?と考えています。

 登場だけですからね。ある意味待っていた……女神が降臨された訳ですからね。でも、教皇様の反応はちょっと妙でした。普通なら女神が降臨された時、直に抱き上げて、

 

 「女神が降臨された!」

 

 とか、何か言いそうなモノなのに、固まって見守るだけ。うん、多分あれは見守ってました。さっきも思いましたが、誰かが動くのを待っていたかの様な……。なんか、怪しいです。

 ……ふぅ、なんて、怪しんでも何かが始まる?訳でもなし。今は気にしないで措きましょう。

 

 ━━━━━皆の者、アテナ神殿に来るのだ

 

 お、教皇様のお呼びじゃな。

 

 「皆さん、それじゃぁ、行きますか。では……、整列ぅー!」

 

 「するか、あほ」

 

 「カニさんは後で双魚宮裏に来なさい」

 

 「なんでだよ!!」

 

 そんなやり取りをしていたら周りの皆さんは笑っていました。どうやら落ち着いた模様。良きかな良きかな。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 そして皆でアテナ神殿の謁見の間にて教皇様が待っていました。

 

 「集まったようだな」

 

 教皇様に向かって十二宮順に並びます。

 そしてその順番にアテナに謁見します。

 皆さんアテナの入っている籠の近くまで行きますが、そこまでで後は傅き頭を垂れるだけで留まっていました。

 そして、私の番になりました。

 

 「魚座の真名」

 

 「はい」

 

 私はまっすぐアテナに近付きます。皆が傅いた場所よりも近くに。

 それに皆さん息を呑む音が聞こえました。

 そんな事気にせずアテナにもっと近付きます。

 

 「真名!」

 

 咎める様な声がしましたが気にしません。

 そして、私はアテナの顔を覗き込む事が出来る程近付きました。

 するとアテナは私を見上げて不思議そうな顔をしました。

 その顔を見た私は双魚宮の花園で植えてあるオリーブの枝と棘を取り去ったキュアローズ。青薔薇をマジックよろしく取り出します。

 すると意外とわかるのか、驚いた様な感じにアテナは目を見開いたかと思うと、きゃらきゃらと笑い出しました。

 そんなアテナが愛おしくて思わずといった感じに言葉が出ていました。

 

 「アテナ、ご存知ですか?オリーブと青薔薇の花言葉」

 

 オリーブはともかく、この時代に青薔薇の花言葉があるかは忘れました。でも、この子の誕生は戦いだけではなく、ちゃんと人間の女性としての幸せも感じてほしいと思うのは私がイレギュラーだからでしょうか?

 どうか、この子に運命に負けない様な加護が、ふふっ、女神自身なのに加護は変ですかね?幸せがありますように……。

 

 「オリーブは”平和”、青薔薇は”奇跡”、”神の祝福”というんですよ。ふふっ、そういえばオリーブは貴女様の木でしたね」

 

 そう言って仮面越しですが微笑みました。

 そっと持っていたオリーブの枝と青薔薇を”赤ん坊”の隣に添えます。誕生を祝福するかの様に。

 私の小宇宙を纏らせているので簡単には枯れないでしょう。

 そして、アテナに特大の敬意を表して傅き、頭を垂れます。

 それを見ていた教皇様はただただ静かに見守ってくれていました。

 そんな教皇様にそっとお辞儀して、アテナと教皇様から離れます。

 私の行動を見ていた皆さんは信じられない者を見たと言わんばかりの顔をしていましたね。

 つい、おかしくって笑ってしまいましたよ。

 

 「真名、笑っている場合では……」

 

 「はい、わかってますよ」

 

 ふっとアテナと教皇様を振り返り、籠の中に居るとわかっていますが、そっと手を振るのでした。

 

 

 




今回も短くてごめんなさい。
相変わらずまた遅くなります。
本当にすみません。


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星14 地位と友人

 さてさて!女神降臨で皆さん、浮き足立ってますよ!

 っていうか、それは良いんですが、これからどうなるんでしょうか……。

 確か、本来ならアテナ降臨に立ち会うのは教皇様だけで、アテナへのお目通りも話だけだった様な。(文庫本知識ですけど!)

 自惚れでなければ、やはり私の存在でしょうか……。

 なんか知りませんけど教皇様に試されてる気がするんですよね。

 ……すんごく嫌な予感がヒシヒシとするんですけど。

 こういう時ってなんでか当たるんですよね。

 そう、こんな事考えてたからでしょうか。

 この二日後、教皇様にアイオロスとサガ、私で呼び出しがありました。一体なんでしょう?

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「は?」

 

 今……なんと?

 

 「次の教皇は真名だ」

 

 なんですとおおおおおおおお!?

 

 「「真名!?」」

 

 声に出さず思わず跪いていた体勢から立ち上がった私は悪くないと思います。

 

 「教皇がご乱心ですぅー!!」

 

 「乱心してるのはお前だ!落ち着け!!」

 

 落ち着いて居られるかぁーー!!

 

 「神の化身と呼ばれる程のサガや、仁、智、勇に優れたアイオロスならまだしも、私が教皇って血迷いましたか教皇!!」

 

 「真名よ、お前は知らないかもしれないが、お前は自身が思っているよりもアイオロスや、サガよりふさわしいと思っている」

 

 だから、なんでやねん!

 

 「その心は?」

 

 「お前は周りの者達からなんと言われているか知っているか?」

 

 「知りません」

 

 正直にドきっぱり言いました。アイオロスとサガはそんな私を見てちょっと呆れてます。教皇様も反応しません。でも、言葉を続けました。

 

 「”聖闘士の中でもっとも慈悲深い黄金聖闘士”、”黄金最強の聖闘士”と言われているのだ」

 

 ……ええー。確かに今の所負け無しですけど、でもアイオロスとサガには負けてます。必ず一発はお見舞いしてますけどね!タダでは負けません!

 

 「アイオロスやサガの方がふさわしいとお前は言ったな」

 

 「はい、今でも不思議です。何故、私なのかと」

 

 いや、純粋に考えても二人の方がふさわしいやん?

 

 「真名、先ほども言ったな?お前は自身が思っているよりも教皇にふさわしいと。私はそう決断した」

 

 だから、どこでぇー!?

 

 「アイオロス、サガ、それでよいな」

 

 「「ハッ!」」

 

 ハッ!じゃないですよぉー!!なんでぇー!?

 という事が三日前。マジありえないんですけど。

 そんなささくれそうになる心を落ち着かせて、久々にカノンに会いに行きました。でも……。

 スニオン岬のいつもの場所にカノンが居なくて、その下、波が激しい牢屋の中にカノンが居ました。マジかよ。

 

 「ちょ、ちょっとおおおおおおお!なんでそんな所にいるんですかああああああ!!」

 

 「そんな大声出さなくても聞こえている」

 

 「なんで!そんな!冷静なんですか!!私、本気で驚いて……ああもう!何があったんですか!誰が入れたんです!?」

 

 「サガだが」

 

 こやつ、もっと慌てていたハズだったんですけど、なんでこんなにも落ち着いてるんでしょう?

 私が慌てているのを見て「くっくっくっく」って笑ってるんですが……。

 笑ってる場合じゃないでしょー!

 

 「まったく、仕方ないですねぇ。なんだか余裕そうですけど、出れる根拠でもあるんですか?」

 

 「ない」

 

 「ないんかーい!」

 

 さっきからツッコミしかしてませんよ!いい加減ボケさせんかい!

 

 「サガは長く俺を入れておくつもりはない様だったが、ヤツの悪の人格はどうかな?アイツは俺の事を邪魔に思っているからな」

 

 おおう、そっちでしたか。悪の人格マジKILL YOU!(殺意高いな自分)

 

 「それに、完璧にバレた」

 

 「何がです?」

 

 「俺達が出会っている事が完璧に、確信的にサガにバレた」

 

 いや、前に深夜に来た時にはバレてませんでしたっけ?見て見ぬフリしてくれてませんでしたっけ?あれ?

 

 「前からバレてませんでしたっけ?」

 

 「予想はしていたらしいが、確信はなかったらしい」

 

 あ、そなの。

 

 「え、まさか、それで入れられてる訳ではないですよね?」

 

 「馬鹿か。そんな訳あるまい」

 

 「ですよねー」

 

 じゃぁ、なんで入れられてるんです?

 そう聞くと、だんまりを決め込みました。ん?

 

 「……とにかく、俺の事は気にするな。必ず出て、ヤツをぶん殴ってやる」

 

 悪の人格の方ですよね?ですよね?

 

 「気にしますよ。大事な友達を放っておく事なんて出来ません」

 

 「……友か」

 

 波の音でかき消されて聞こえません。なんて言ったんですかー?

 

 「なんでもない。とにかく、サガには気をつけろ。今のヤツは何をしでかすかわからんぞ」

 

 なんていうか、恐ろしい忠告を頂きました。うわー、もしかして教皇とアテナ暗殺、アイオロス逆賊フラグ立ちましたー??

 とりあえず今日は双魚宮に帰る事にしました。また来るとカノンに言い残して。でも、それがカノンと会うのが最後になるとは思いませんでした。

 ……なんて言うと思いましたか!ちゃんともう一回会ってますよ!

 海水でずぶ濡れになって、息も絶え絶えになってましたが……。

 

 「お前、本当に来たのか」

 

 「来てはいけませんか?」

 

 「いけない訳ではないが……サガが来たらどうするつもりだ」

 

 「隙を狙って、後ろに回り首筋にストーンっと……」

 

 「当身か」

 

 ヤツに通じるのか?

 っと、とても信じられないという目で見つめてきました。

 ふっ!笑止!

 

 「カバディしまくってその後、ぐるぐる周りを回り、動揺してる間に手刀を一発……!」

 

 「かばでぃってなんだ」

 

 カバディの説明をすると、こいつ、頭大丈夫か?という目を向けてきました。解せぬ。

 

 「鬼ごっこと変わりませんよ!」

 

 「俺は一度お前の頭の中を覗いてみたい」

 

 「やらせはせんぞー」

 

 「あほか」

 

 うむうむ、疲れて暗かった表情が少し明るくなりましたね。笑ってくれてますし、良しとしますか。

 

 「では、カノン。また来ますねー」

 

 「……本当に俺の事は気にするな。もう、来なくていい」

 

 「お断りします」

 

 「?」

 

 なんで、何言ってるんだこいつ。みたいな顔されにゃならんのか。

 

 「前にも言いました。大事な友人を放っておけますか!スカタン!」

 

 「真名……」

 

 すかたんとはなんだ?と聞かれてこけた私は悪くないです。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 で、なんでこうなってるんですかぁー!?

 

 「教皇!教皇!ステイ!ステイですよおおおおおおおお!!」

 

 「真名、ならばアテナをこちらに渡せ。ふっ、お前の命は取らん。安心して渡すがいい」

 

 全然、安心できないんですけどぉー!?なんで、なんでこんな事にぃー!?

 

 




まさかの主人公が教皇に!?
カノンは冷静でサガをそこまで恨んでません。
アテナに対しては謎ですけど。
さてさて、次回どうなるでしょう?
また投稿が遅いですが、見守っていてください。
お願いします。


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星15 逃走

 

 そうアレはカノンとスニオン岬で話をした後、帰りは深夜になっていました。そして、何か胸騒ぎがします。

 私は双魚宮からアテナ神殿を見上げました。アテナ神殿?何か……。

 あ。

 まさか……まさか!

 そう、今夜なのかもしれません。 教皇が暗殺され、アテナまでも殺されかかる……。

 いえ、まだ確信が持てません。…………胸騒ぎが止みません。

 行きますか。

 そう思い胸騒ぎの元凶、アテナ神殿へ向かいました。

 どうか気のせいでありますように……。

 そう願って。

 別に邪な気持ちで向かう訳ではないので、こそこそ隠れて移動するのもアレなんで堂々とアテナ神殿に向かいます。

 そしてアテナの眠る寝所の前に着きました。

 中で何やら音がします。

 うああああああ、入りたくないいいい!

 ええい!ままよ!

 

 「Good evening!アテナ!」

 

 「む!」

 

 教皇居たああああ!黄金の短剣持ってるうううううう!こやつ、偽物やぁー!!

 

 「教皇!こんばんは!何やってるんですか!?」

 

 「……お前も何しに来た?」

 

 短剣構えたまんまで私に話しかけてんじゃねーですぅー!

 

 「私は胸騒ぎがして此処に来ました。教皇は何故此処に?」

 

 「……」

 

 ……だんまり決め込みましたね。おっ、短剣を下に下ろし……今です!

 私は教皇の隙を衝いて素早くアテナを抱き上げました。

 

 「!!」

 

 「教皇、私、今日はアテナと寝たい気分なんで奥に行きますねー?」

 

 そう言って、そろそろとゆっくり奥に下がろうとしましたが。

 

 「待て」

 

 うっわ、心臓に悪いです……。

 

 「……はい」

 

 ゆっくり私は教皇へ振り返ります。

 た、短剣構えてるぅー!

 

 「アテナを置いて此処から去れ」

 

 「嫌です」

 

 即答ですよ。当たり前です。赤子のピンチですよ?助けずなんとする。

 

 「言葉がわからないとは言わせん。もう一度言う。アテナを置いて去れ」

 

 「嫌です!」

 

 じりじりこっち来てるぅぅぅ!!

 

 「教皇!教皇!ステイ!ステイですよおおおおおおおお!!」

 

 「真名、ならばアテナをこちらに渡せ。ふっ、お前の命は取らん。安心して渡すがいい」

 

 安心出来るかぁー!!

 教皇は改めて短剣を持ち直し、アテナへ振り下ろしてきました。

 私もアテナを守るように咄嗟に身体を丸めて庇います。

 ……?一向に刺される衝撃が来ません。

 

 「き、教皇、正気ですか……」

 

 アイオロスキタ━━━━━━━!!

 

 「どけ!くっ、アテナを渡せーーっ!」

 

 教皇の短剣を握っていた右手を掴んでいたアイオロスを押しのけ、私の腕の中に居るアテナに手を伸ばしてきました。

 

 「渡すかあほぉーー!!」

 

 私はアテナを抱えなおし、短剣に向かって蹴り上げました。その瞬間、短剣は教皇の兜に当たり、短剣と兜ではじけ飛び教皇の素顔が顕わになります。

 

 「き……教皇、貴方は……!?」

 

 「う……うう……見たな、アイオロス、真名」

 

 ああー、見ちゃいましたよ。見ましたよ!畜生!見たくなんか、見たくなんかありませんでしたよ!!

 

 「私の素顔を見た者は生かしておけん。アテナと共に死ね!」

 

 サガ!

 

 「アイオロス!アテナを任せましたよ!」

 

 「真名!?」

 

 よろめいているサガの隙を見てアイオロスに駆け寄り、アテナを渡します。

 

 「良いですか!?絶対に振り向かず、真っ直ぐに正面だけ見て、聖域から必ず脱出しなさい!!」

 

 アイオロスにそう言うと、私はアテナの籠に入れていた青薔薇、キュアローズをアテナのおくるみに差し込み、アイオロスにも私が元々持っていたキュアローズを渡しました。

 

 「もし、貴方が瀕死の重傷を負ったら迷わず使いなさい。茎の部分で刺す方法もありますが、花びらを口に含むだけでも違います!」

 

 「真名!」

 

 「私の事は良いのです!」

 

 サガに身体を向けて振り返り、アテナとアイオロスに微笑みます。

 

 「行きなさい!!」

 

 その言葉と共にアイオロスは駆け出し、近かった窓から身を投げ出しました。

 

 「くっ!逃がすか!」

 

 「そうはいきませんよ!」

 

 アイオロスが飛び降りた窓の所まで隔てる様に立ちはだかります。少しでも時間を稼がないと!

 

 「邪魔をするな!」

 

 「お断りします!」

 

 新技、いきますよ!

 

 「【パラライズローズ】!!」

 

 ”麻痺”の効果がある黄色い薔薇をサガに向けて放ちます。黄金聖衣を纏っていない、ただのローブであれば効くハズです。

 

 「黄金聖闘士や兵士さん達を呼ばれては厄介です。しばらく大人しくしてください!」

 

 流石に長い時間足止めは出来ませんが、何もしないよりは良いでしょう。

 

 「真名よ、甘いわ!【アナザーディメンション】!」

 

 「くっ!?」

 

 此処で異次元に飛ばされる訳にはいきません!

 私は身体をひねって床を転がり、技の範囲ギリギリで避けます。部屋が広くて助かりました。

 

 「もう一度!【パラライズローズ】っ!!」

 

 今度は先程よりも小宇宙を高め、力一杯に複数の黄色い薔薇を投げました。

 その薔薇をサガは避けたり、拳で潰したりして直撃を免れています。でも……

 

 「私が貴方の隙を見逃すとでも思いましたか!!」

 

 「何っ!?」 

 

 沢山の黄色の中にある青を見逃しましたね!矢座のトレミーの技を使わせていただきました。

 そう本命は……

 

 「キュアローズだと!?馬鹿な。回復系の薔薇を刺しても効果など……っ!?ぐぁっ!」

 

 そう、今サガの胸に刺さっているのはキュアローズ。

 回復系の技です。

 ですが……。

 

 「キュアローズの効果は身体の回復だけではありません。精神にもちゃんと効果はあります!」

 

 善の人格、サガ!目を覚ましてください!!

 

 「な、何ぃ!?くっ、うおおおおおお!!」

 

 悪の人格のサガが苦しみ出します。これで少しは……。

 

 「ふんっ!唯では……やられはせんぞ!」

  

 「なっ!?」

 

 「【幻朧魔皇拳】っ!」

 

 嘘っ!?

 

 「うあ、あああああああああ!!」

 

 私はサガの幻朧魔皇拳を喰らい、吹っ飛ばされて石台に後頭部をぶつけ、気を失いかけて、意識が朦朧としていました。

 意識が無くなりそうな時に、

 

 「アイオロスが、アテナ反逆を試みた!アテナを暗殺しようとしたのだ!!」

 

 それは貴方でしょうが……。

 

 「くっくっく、真名よ。光栄に思え。お前は私のモノとなるのだ」 

 

 そんな言葉が聞こえ、仮面が外される感覚がしました。顔が空気に晒されます。そして、唇にぬくもりを感じた後、

 

 「真名!真名……、アイオロス、すまないっ!!」

 

 そんな泣かないでくださいよ。仕方ないですねぇ……。

 意識が無くなるまで長く保てましたね。我ながら凄いです。……そして、完璧に私は,意識を無くしました。

 

 




遅い遅い詐欺してすみません。
投稿してしまいました。
次回ももしかしたら早いかも。


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星16 記憶

 ?

 私は……何をしていたのでしょう?

 少し硬めのベッドに寝かされていました。

 起き上がってみると違和感がありますね。なんか、着ている物がひらひら、スースーします。いつもならもっと身体にぴったりした男服の様な物を着て……ん?なんでそんな物着ていた事がわかるんでしょう?

 あれ、これってギリシアの昔の服じゃなかったでしたっけ?えーっと……ああ、ドーレス式キトーンですね。

 女官が着ている物に似ています。

 

 「?」

 

 女官……?なんの事でしょう……?

 ああ、でも何か忘れている様な……なんなんでしょうか?

 なんだか頭が軽いというか、顔が涼しく感じます。何故……?

 あ、ああ、私は、私は……。

 

 「私は、誰?」

 

 そうです。私は誰?

 なんだか、私は此処に居てはいけない気がします。

 此処には大事にしないといけないモノ?がない。そう思い、ベッドから起き上がります。ベッドの置いてある部屋から出てしばらく歩いていると外に出ました。

 下に続く階段。沢山の神殿が並んでいます。

 手前には沢山の赤い薔薇が引き詰めてある坂がありました。綺麗です。

 棘に気を付けながら降りました。

 でも、何故でしょう?薔薇の方が私を避けてる?いいえ、退いてくれている様な……?不思議な事があるモノです。

 しばらくすると一番手前にあった神殿に着きました。

 ……私は何故か懐かしく感じて中へ入って行きます。

 きょろきょろと中を見渡して神殿を抜けました。

 まだまだ下に神殿は続いています。

 ぼぅっと見つめていると

 

 「誰だ」

 

 後ろから声がしました。思わずビックリして振り返ると、

 

 「新しい女官か?」

 

 黄金の鎧を纏った、とても美しい少年が居ました。思わず少女かと思いましたが、身長も私より高いですし、声からして少年の声です。間違えたら失礼ですね。

 

 「答えないのか?」

 

 「あ……」

 

 何か言おうと声を出そうとすると、いきなり少年の纏っていた黄金の鎧が少年から離れます。

 

 「な、何!?」

 

 すると鎧は魚の形になり、点滅しながら輝き、私の周りを回って、まるで”嬉しい”と言っている様な……。

思わず微笑んで黄金の魚を撫でると鎧は私を纏い出しました。ちょっと重いです。

 それを唖然として見つめていた少年は

 

 「まさか……」

 

 信じられない者を見る目で私を見つめてきます。

 

 「ね……ねえさん?」

 

 ねえさん?

 私はなんの事かわからず、首を傾げて少年を見つめます。

 

 「貴方は……」

 

 わたしをしっているのですか?

 

 そう言うと少年は青褪め、驚いていた目をさらに見開いて、今度は固まってしまいました。

 

 ━━━━━デス!シュラ!双魚宮に、直に来てくれ!!

 

 耳に……いえ、頭に直接聞こえる不思議な声。目の前の少年の声ですね。それが聞こえました。超能力でしょうか?すごいです。

 

 ━━━━━なんだよ。今寛いでるから後でな。

 

 わっ、違う少年?の声がしました。これって私にも使えるんでしょうか?

 

 ━━━━━何やら慌てている様だが、何があった?

 

 もう一人いるんですね。複数で出来るなんてすごい!

 

 ━━━━━目を覚ました……姉さんが目を覚まして、目の前に居るんだ!!

 

 そう目の前の少年が頭に響く声で叫ぶと、話相手だった少年達の気配?がいきなりプツンと消えました。

 

 「ああ……、姉さん。貴女は、貴女の名前はわかりますか?」

 

 名前……、また首を傾げて憶えがないので横に振りました。

 

 「貴女の名は、まな。魚座の真名というんですよ」

 

 少年は一筋、涙を流して私の名前を言ってくれました。

 

 「ぴすけすのまな……私は真名というんですね」

 

 真名……真名……と、何度か自分の名前らしい名を呟いて忘れない様にします。

 

 「ええ。……そして、私はアフロディーテ。貴方の弟弟子にあたる者です」

 

 「そうなのですね。では、貴方の事は……ディーテと、呼んでも良いですか?」

 

 そう言うと少年、アフロディーテは更に涙を流しながら嬉しそうに笑いました。

 

 「ふふっ、記憶を失っても、やはり、貴女は姉さんなんですね」

 

 変わらないですね。そう言って。

 そうして少し話をしているとバタバタと大きな足音が下の階段から聞こえてきました。

 黒い髪を逆立てた短髪の少年と、オールバックにした銀髪の少年が目を見開いてこちらを見ています。

 

 「「ま、真名……」」

 

 「……はい、なんですか?」

 

 戸惑っている二人に微笑みながら覚えたての名前を呼ばれて返事をしました。

 すると銀髪の少年が

 

 「……お前、本当に真名か?仮面も付けてねぇとは、怪しいモンだぜ」

 

 ジロジロと見つめてくる少年がケッ!っと言ってそっぽを向きます。

 

 「デス!彼女の姿を見ろ。魚座の黄金聖衣を纏っているんだぞ」

 

 黒い短髪の少年がデス?少年を軽く睨んで私を庇う言葉を言ってくれます。

 

 「そりゃぁ、見りゃわかるが、あの仮面の下がこんな美人な訳ねーよ。黄金聖衣だって、良く似た偽物とかじゃねーの?」

 

 「それはない。私が纏っていた本物の魚座の黄金聖衣だ」

 

 中々信じようとしないデス少年を見ていたら口が勝手に動きました。

 

 「カニさん、いい加減にしないと双魚宮裏ですよ」

 

 「なんでだよ!……って、何!?」

 

 私も自分の発言に驚いて口を押えます。すると、三人の少年達は私を見つめて唖然としたかと思ったら、涙目になって大笑いしだしました。

 

 「は、はははは!本物だ!こんな事いうヤツ、他に居ねーよ!ははははは!!」

 

 「ま、まったくだ!真名しか居ないな!くっくっく!」

 

 「ふ、二人共、わ、笑うのは失礼……ぷっふふっ!」

 

 なんだか恥ずかしくなって柱の陰に隠れます。

 

 「おお?真名、なんだよ。一年寝てる間に女々しくなってんじゃねーか」

 

 「……いちねん?」

 

 いちねん、私は一年眠っていたのでしょうか?

 ……なんなんでしょう?何やら胸に穴が開いた様にとても寂しい気もします。

 忘れている一年前に何かあったんでしょうか?

 私が何か思い出そうとしている間にディーテが二人に説明していました。

 

 「は?記憶がない?」

 

 「では、先程の発言は……」

 

 「無意識……だろうね」

 

 デス少年はおでこに手を当てて「くっくっく」とまた笑い出しました。はて?

 

 「無意識であの言葉を言うとは。流石真名だな」

 

 「ふふっ、確かに」

 

 何やら少年達に笑われてしまいました。恥ずかしい。

 

 「そういえば、教皇は起きた事を知っているのかい?」

 

 「きょうこう?」

 

 「あー、こりゃ知らなそうだな」

 

 きょうこう?という方に私が起きた事を知らせないといけないみたいです。

 三人は私を連れて上の神殿に連れて行ってくれました。

 薔薇はディーテがなんとかしてくれましたよ。

 黄金の鎧もディーテが着てます。

 元々は私の鎧だったらしいのですが、今はディーテの鎧らしいです。似合ってますよっと言うと照れたように頬を赤くしてました。

 そして鎧を脱いでキトーンの姿になるとデスくん?デス君、うん。デス君とシュラ?がまた驚いた顔をしてちょっと顔を赤らめて

 

 「ま、前にも言ったが、馬子にも衣装ってな」

 

 「キトーン、似合っている」

 

 とりあえず、ありがとうと言っておきましたよ。

 少し会話しながら教皇宮の謁見の間に着きました。丁度今なら居るハズとの事です。

 警備の兵士さんにシュラが話しかけます。

 

 「教皇にお目通りしたい。扉を開けてもらうぞ」

 

 「ハッ」

 

 直に返事をした兵士さんが扉を開けて、私達は謁見の間に入ります。

 すると奥で椅子に座っている人と目が合いました。彼が教皇?

 

 「真名!?起きたのか!!」

 

 そう言って教皇は小走りで私に近付き、仮面を外したかと思うと私の頬を両手で添えて顔を上に向けさせて、なんとキスしてきました。

 驚いて目を見開いてしまいます。何故か嫌ではなくて、そのまま好きにさせていました。

 何度も啄むかの様なキスです。長くそんなキスをしているので余裕が出来、なんとなく連れてきてくれた三人に目を向けると、三人共そっぽを向いて見なかった事にしてました。

 ありがとう、三人共。

 そう心でお礼を言いました。

 そして、キスが終わり、顔が離れました。身体の方は抱きしめられてます。教皇は満足したのでしょうけど……って、うわっ、すっごい美形です。ディーテも美しいですが、また違う男性的美しさというか……。でも、この人、泣いています。目にゴミでも入ってしまったんでしょうか?

 

 「真名、私の事は覚えているか?恐らく、忘れているだろう?」

 

 「え、私に記憶が無い事を知ってるんですか?」

 

 なんでも、幻朧魔皇拳という本来は洗脳する技なのですが、まだ未完成の状態だったらしく、その技を喰らった直後、後頭部を強くぶつけた為にもしかしたら記憶に混乱が見られるかもしれないと予想していたそうです。

 ただ、一年も寝たきりになるとは思わなかったとの事。

 ……洗脳って、私何したんでしょうか?

 

 「小宇宙も青銅程になっているし、再会した時に仮面も付けていなかったから、アフロディーテが君を真名であると気付かなかったのだろう」

  

 「青銅程度の小宇宙で、魚座の黄金聖衣は反応していました。何故です?」

 

 ディーテが疑問をぶつけます。教皇がそれにゆっくり頷くと、

 

 「真名と初めて会った時も一般人程の小宇宙だったが、魚座の黄金聖衣は反応していたぞ。そして、真名は己を鍛えて小宇宙を高め、長年黄金聖衣を纏っていたからこそ、その名残で纏えたのではと推測する」

 

 なるほどーっと頷くと、

 

 「真名」

 

 名前を呼ばれ顔を上げます。

 

 「私はサガ。サガと呼んでくれ」

 

 「サガ?」

 

 「ああ、しかし普段、この三人の前以外では教皇と呼んでほしい」

 

 名前が沢山あるのですね。ふむふむ。

 

 「わかりました」

 

 私は何故か悲しそうなこの人に笑ってほしいと思い、そっと穏やかな心持ちで微笑みを返します。するとサガは目を見開き、私を抱き締め直し、また泣いてしまいました。なんだか身体の大きい幼子の泣き虫さんを相手してるみたいです。

 泣き止んでほしくて私からも背中に腕を回してポンポン軽く叩きます。

 余計に泣いてます。仕方ない人ですねぇ……。

 




洗脳ではなく記憶喪失でした。
洗脳された真名を期待した方々すみません。
次回は意外な事が!?なんて。
今度は本当に遅くなります。
どうか見守って下さると嬉しいです。
また、早く更新出来るようになりますように!


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星17 転移

 あれから一週間位立ったでしょうか。

 記憶がまだ曖昧ですが、ちょっとづつ戻ってきました。

 私が元魚座の黄金聖闘士であった事。

 アフロディーテという弟弟子が居る事。

 双魚宮で暮らしていた事。

 宮の裏で花園を育てていた事。

 今はこの位ですね。

 でも、何故でしょう。とても大事なモノ……ひと?でしょうか……忘れている様な。

 胸の靄が取れません。

 サガやディーテ達には言わない方が良いという予感がしますね。

 本当になんなんでしょう?

 まぁ、今は話さない事にしてます。

 それから、私は教皇宮、サガの寝所の隣にある部屋、そこに今は住んでいます。

 なので教皇……サガが合間を見て会いに来てくださってます。

 いつも私に優しいです。なんていうか壊れ物に触れるかのように優しい……優しいんですけどね?

 ……実はもう、サガのもう一つの人格、白髪のサガに会っていたりします。

 その時に言われたんですけど、

 

 「お前はもう何処にも逃げられん。お前は、私のモノだ。絶対にこの部屋から出るな。良いな?」

 

 えーっと?うん。

 善サガはまるで恋人の様に扱ってくれて、悪サガは所有物的な?感じで接してきますね。

 でも、共通点があるんですよ。まるで私がどこかに消えるんじゃないかって怯えているんです。悪サガはそんな素振り見せませんけど、ふとした時に不安そうな顔になるんです。一瞬なんでわかりにくいですけど。

 何故そんな事に怯えているかというと、かれこれ二日前、とても美しい輝きが私を包み込んで、この部屋からアテナ神殿の寝所に転移した事がありまして……。

 まるで誰かに呼ばれているかの様なのです。

 一体誰が私を呼んでいるのでしょう?

 なんだかその輝きを拒んではいけない様な気がするんです。

 そう思っていたからでしょうか。

 確か、コレってフラグっていうんですよね!

 それが立ちました。

 私が輝きの事を考えていた夜の事。

 

 「真名!」

 

 サガが青褪めて私の名を呼んで見つめます。

 私の周りに前回よりも強い輝きが包み込んでいるからです。

 

 「サガ」

 

 そうサガを呼んだ時に、その瞬間気が付くと私は、また転移していたのです。

 今度はアテナ神像の前まで。

 今日は此処までで、おしまいなのかと思いましたが、また輝きが私を包みます。

 ディーテ達に会えなかった事が残念です。だって、きっと、もう此処ではない別の場所に行く事になるかもと予感していたから。

 

 「真名!!」

 

 どうやらサガが短時間で私の小宇宙を探り当て、アテナ神像まで走って来てくれた様です。

 

 「真名!行くな!!」

 

 すごい必死な形相で私に叫ぶサガ。

 

 「サガ……」

 

 わたしはどこにもいきませんよ。

 

 そう微笑んで、唇を動かしましたが、声が出ていたかまでは、わかりませんでした。

 ただ……遠くで泣いている声が聞こえます。

 ああ、抱きしめて慰めてあげないと、罪の意識で涙が止まらない貴方を放っておけません。

 でも、今回は罪の意識ではないのですね。

 ごめんなさい、ごめんなさい。サガ。

 何処にも行かないと言ったのに……少しの間離れる事になるみたい。

 でも、いつかは貴方の傍に……貴方を抱き締めて、こう言いたいのです。

 

 大好きです、サガ。どうか泣かないで?

 

 …………

 そして、私はある場所で発見されます。

 ギリシアから遠く離れた地。

 東にある小さな島国、日本。

 その国に存在する大財閥、グラード財団。総帥、城戸光政公の屋敷の庭で私は倒れていました。

 赤子のアテナによって導かれて。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 うわあああああああ!

 うがあああああああ!!

 は ず か し い !

 なんて、なんて恥ずかしい!!

 いや、確かにサガの事は好きですよ!?記憶なかった私、超乙女過ぎませんかねぇ!?

 すんごい恥ずかしい!!顔から溶岩が!出ないけど!そん位の熱が顔から出る!!

 うああああああああ!ベッド広くて良かったぁ!ゴロゴロ転がっても落ちない広さ!ふかふかです!ありがとうございます!!

 とにかく!それは端っこに置いておきましょう!恥ずか死ぬ!!

 この城戸邸の深窓の令嬢よろしく、深窓の眠り姫だった私はお医者さんの話では三日眠っていたそうで。その眠っている間に記憶も安定したのか、しっかり記憶が復活しています。手厚く介護してくださってたみたいですね。

 そういえば、あの輝きの正体なんですが、どうやらアテナによるテレポーテーションだったみたいですね。何故アテナが私を此処へ転移させたのかは謎です。そもそも赤子の身でそんなことできるとかビックリなんですけど。

 ”彼”が私が庭に現れた時もアテナの小宇宙を感じたらしいのです。誰がですって?後でわかります。

 お医者さんからもう歩いても大丈夫とお達しを頂き、私はとある部屋へ行きました。中々厳重な扉です。警備の人も居ますが、私は顔パスで中に入れます。

 何故ここまで手厚くしていただいて、顔パスまで自由なのかというと……。

とある男性の言葉と、屋敷の主、光政公のお達しで自由に歩けるようになっているのです。

 ちなみにとある男性というのは……、

 

 「アイオロスー?入りますよー」

 

 ノックをして扉を開け、そっと部屋に入ります。

 部屋の隅にある大きなベッドに色々な機械でコードや、チューブ、点滴等で繋がれている男性。アイオロス。

 そう、彼は生きているのです。

 どうやら私が渡したキュアローズを使ったようで、一命を取り留めた様ですが、完全には治らなかったみたいで、時々目を覚ますのですが、お医者さんの話では、その時々でも意識があり、目を開ける事が出来るのが不思議なほど傷ついているそうです。でも、後遺症で喋れなかったり、足が動かせなくなっていたりしているかもとの事で……。

 まぁ、小宇宙を燃やせば立てたり、ある程度歩けるでしょうけど。

 でも、アイオロスは意識が戻った時、小宇宙を燃やせません。いえ、燃やしませんと言った方がいいでしょうか?

 テレパシー等の簡単なモノであれば大丈夫ですが、もしもそれ以上の理由で小宇宙を燃やせば、恐らく聖域にアイオロスが生きている事がバレる可能性はゼロではありません。なので、極力小宇宙を使わない様にアイオロスは基本、眠っています。

 え、でもなんでアイオロスがそんな状態でよく私の事を話せたな?って?

 サイコキネシスがあるじゃないですかー。簡単なモノでしたらメモ用紙に文字を書く事なんてお手の物。つまり、私の小宇宙を感じ取ったアイオロスが光政公にサイコキネシスで紙に文字を書き、私の事を伝えて今の状況に繋がる訳です。

 しかし、こう反応がないという事は眠っているみたいですね。ちょっと顔を見に来ただけなので直に退散しますか。

 

 ━━━━━真名か……。

 

 「あ、アイオロス。起きたんですね」

 

 ━━━━━ああ。……真名、私が起きている間に君に言いたい事がある。聞いてくれるか?

 

 「はい、良いですよ。なんでしょう?」

 

 ━━━━━すまなかった。この一年、気が気ではなかった。私とアテナが助かって、真名は一人聖域で一体でどうなったのか。

 

 あらま、もう気にしなくてもいいのにー、私は私の意志で二人を助けたかった。それだけです。

 

 「特に酷い扱いは受けてませんでしたし、向こうでも眠っていただけだったらしいですから、気にしないでくださいな」

 

 そう気にしなくて大丈夫ですよーっと、気さくに言います。本当の事ですしねー。

 

「それに、私の事より貴方の事ですよ。このままでは奇跡が起きないと、起き上がる事も出来ないとか」

 

 ━━━━━ああ、このままではアテナをお守り出来ない。早くなんとかしなければ……。

 

 ああー、焦ってますね。仕方ないことですけど。でも、此処には私が居るのですよ!

 

 「そう言うだろうと思いました、大丈夫ですよ。アイオロス。任せてください」

 

 ━━━━━真名?

 

 「光政公に頼んでお庭の端をお借りしようと思いまして」

 

 そう、キュアローズを育てるのです!聖域産ではないので品質は落ちますが、効果はちゃんと出るハズです。主に私の血を使っていますからね。

 

 「キュアローズであれば直にとまでは言えませんけど、起き上がる位までは回復出来るハズです。それに何より、追手が来たとしても私が此処に居ます」

 

 私はもう”元”ではありますが、黄金聖闘士だった身。自分しか戦う人が居ないと思ってもらっては困りますね。思わずニヤリと笑ってしまいました。

 

 ━━━━━真名……。ああ!私が回復するまで、よろしく頼む。

 

 「ええ、任せてください。アテナは私達でお守りしましょう」

 

 これから現れるであろう、五人の青銅聖闘士達が現れるまで。いいえ、それ以降も出来る事なら……!

 アテナ、どうか健やかに、穏やかにお育ちください。

 ……ただし、教育は厳しくしますよ。

 ええ、立派な淑女にしてみせます!馬になりなさい。なんて、言わせてたまるかぁー!!

 

 




まさかの彼です。
二次創作で彼が生きてる話って見た事ないなって思ったらこうなってました。
アイオロスは伝説級の存在だから死んでる方が良いという方々、すみません。
さてさてここから一体どんな展開になっていくのか、謎です!
(書いてる人が一番どんな展開になるのかわかっていない)


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番外 ミロ

 真名が居なくなった。

 アテナがアイオロスに暗殺されかけて、その場に居たらしい。

 教皇から聞かされたのは……、

 真名がアテナを救った事。

 サガと共に行方不明になったらしい事。

 真名とは、もう会えないかもしれないという事……。

 アテナを救ったという事は英雄じゃないか!なんで姿を晦ます必要がある!?

 なんで、居なくなったんだ!

 忘れたのかよ!

 約束したじゃないか!

 サイコキネシスを扱て小宇宙のコントロールが上手くなったら、皆と一緒に食べるアップルパイを作ってくれるって!

 俺、アンタレスを撃てるようになったぞ!

 アロエヨーグルトだってカミュと楽しみにしてたのに!

 他にもお前から教わる事が一杯あるんだ!

 だから、帰って来いよ!

 真名!!

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「カミュ……」

 

 「……なんだ?ミロ」

 

 此処はカミュの守護する宝瓶宮。

 カミュの小宇宙の影響で少し寒いけれど、我慢できない程ではない。本来なら。

 ……真名が居なくなった日から今日で一年。

 あんなに皆で修行したり、皆で菓子食ったりしてたのに、それがぱったり無くなった。

 カミュだって平気そうにいつもの無表情でクールに徹してるけど、この宝瓶宮は一年前に比べると寒さが倍になっていた。ぶっちゃけ我慢できん程寒い。

 でも、今日の自主練が終わってカミュの所に来てみると、いつもより寒さが落ち着いている気がする。

 何かあったのか。

 そう思って、とにかく宝瓶宮の居住部屋に行ってみた。

 扉を開け、リビングの椅子に座って何か手に持っている。

 紙の様だ。

 

 「宝瓶宮の中がいつもより冷気が少ないが何があった?」

 

 「……」

 

 カミュは一瞬目を伏せたが直にこちらに目線だけ合わせて、手に持っていた紙を俺に渡してきた。

 

 「なんだ?」

 

 あいす、ぼっくすくっきー(かみゅくっきー)の作り方……?

 

 「ん?」

 

 クッキー?

 

 「真名からだ。」

 

 「は?」

 

 真名からだと?

 

 「アフロディーテが真名の部屋の机の中から見つけたらしい。私達、全員分あるそうだ」 

 

 全員?

 

 「俺の分もあるのか……!」

 

 カミュから渡されたクッキーのレシピ紙を近くにあったテーブルに叩き置いた。

 

 「恐らくある。行ってこい」

 

 カミュに挨拶のつもりで片手を上げて軽く振り、宝瓶宮の居住部屋から駆け足で出て行く。

 真名からの手紙!

 俺は急いで双魚宮に走って向かった。

 カミュの手紙には書いていなかったと思うが、真名の行方を知れるキッカケになるのではと思ったのだ。

 

 「アフロディーテ!」

 

 目当ての人物は直に見つかった。まるで待っていたかのように。

 

 「……ああ、ミロか。君にはまだだったな」

 

 そう言って、居住部屋から封筒を持ってくる。

 我慢しきれなくて直に開けようとしたが、俺のではない別の手によって阻まれた。

 

 「此処で開けない方が良い」

 

 そうアフロディーテに言われ、どういう意味なのか分からなかったが、とりあえず言う通りにした。

 軽く礼を言って急いで自分の宮に帰る。

 何が書いてあるのか、その内容に期待が膨らんで鼓動が早くなっていた。

 急いで帰っていたからか、下りだからか、どちらか分からないが、思っていたより早く天蠍宮に着いた。

 居住部屋に入り、直に封筒を開ける。

 真名は一体俺に何を伝えたかったのか。

 今更になってハタっと冷静になる。

 カミュにはクッキーの作り方だった。そんな内容で、俺に真名の行方を知らせる様な事を書くだろうか。

 とにかく、読んでみないと始まらない。

 そう思って折りたたまれた紙を広げる。

 

 「は?」

 

 俺は確かに最初期待した。真名の行方のヒントになるのではないかと。

 だが、この手紙の内容を見て冷静になった。そう、冷静になったのだが……。

 

 「”ロドリオ村の出入り口から北に向かって歩け”?」

 

 手紙にはそれしか書かれていなかった。

 一体どういう意味なのか。

 俺は日の高さから見て夕方にはまだ早いと判断し、今から行く事にした。

 十二宮を下り、最初となる白羊宮に着く。

 双児宮は真名と同じく行方不明になっているので無人の宮だが、白羊宮の主は行方不明になったのではない。大分前に前の修行の地に戻ったのだ。

 ムウは手紙の事を知っているだろうか。

 もしかしたら一番最初に渡さているかもしれないと予想ではあるが、そう思う事にした。とにかく、今はロドリオ村に向かわなければ。

 聖域から出てテレポーテーションを使い、ロドリオ村付近に到着する。

 そして、村の出入り口に着き、手紙の内容を確認した。

 

 「ここから北か……」

 

 そう呟き、歩き出す。

 しばらく歩くと農園に出た。こんな所に農園なんてあったんだな。

 そこでまさか目的地はここじゃないよな?と思っていると背後から人の気配がして振り向く。そこにはつなぎを着た少し年老いた男が歩いて近付いてきた。

 

 「ああ、貴方様はミロ様ではありませんか。お待ちしておりましたよ」

 

 ”待っていた”だと?

 俺が少し不審に思っていると

 

 「真名様からお預かりしているものがあります。着いて来て下さい」

 

 そう言って男は歩き出す。

 とりあえず、それに着いていくことにした。

 農園の中を歩き、しばらくすると

 

 「こちらが、真名様よりお預かりしていた。”木”でございます」

 

 俺は唖然とした。

 何故かって?何故なら……

 

 「林檎の木……」

 

 そう、真名からの俺宛の物はレシピでも行方のヒントでもない。

 ”林檎の木”だった。

 

 「馬鹿……野郎」

 

 真名は馬鹿だ。俺は”皆で食べれるアップルパイ”が食べたかったのであって、”皆で食べれる林檎”を望んでいた訳ではない。だが、これは……。

 

 「ミロ様、あと、これを……」

 

 男が収穫小屋から封筒を持ってきた。俺の名前が書いてあるからどう見ても俺宛だ。

 それを受け取り、その場で封筒を破き中身を取り出す。

 そこには

 

 「……ははっ。やっぱり馬鹿だな真名は」

 

 封筒の中身、手紙を開いて読んでみた。

 そこには

 

 ”知ってますか?ミロ。ギリシア語で林檎ってミロっていうらしいですよ!はっはっは!思う存分ご自分を食すが良い!なんてね。”

 

 真名は馬鹿だ、そんな事知ってる。俺はギリシア出身だぞ?知らない方がおかしい。

 その時、頬に何か流れる感覚がした。頬を拭って見ると、俺はどうやら涙を流しているらしい

 こんな事で泣くだなんて俺はいつから涙脆くなったんだ。

 あと、手紙の最後には

 

 ”皆で美味しく食べてください”

 

 なぁ、真名。

 アイオロスがアテナを暗殺未遂をしなければ、お前はまだ此処に居たのかな……。

 真名が居なくなって、皆バラバラになってしまったぞ。

 早く、聖域に戻って来い。馬鹿者め。

 

 




ミロのターンです。
まさか真名がアテナを助けた事になっているとは……!(書いてる本人が驚いてどうする)
また日を置いて投稿します。がんばるぞー!


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星18 出会い

 はーい☆あれから七年経ちました!

 長いようで短く感じました。もう七年です。

 アテナの事は最初の頃はお嬢様と呼んでいたのですが、少し大きくなると私に名前で呼んでほしいと言ってきました。いきなり呼び捨てには出来なかったんで、光政公とアイオロスから許可を頂き、今ではアテナを”沙織”と呼び捨てにさせて頂いてます。

 それから、沙織も大きくなり、明るく穏やかにというか、我儘で傲慢っていう言葉とはかけ離れた性格になりました。え?どうしてかって?

 私なりの方法でお世話してましたからね。

 教育係に任命されましたし、優しい使用人の人とか周りにも助けてもらってましたけど!

 ふっ、教育の賜物というモノです。まぁ、私一人の手柄ではありませんが……。

 あ、でも時々位は我儘言いますよ。めちゃ可愛い我儘ですけど。一緒に本を読んでほしいとか、一緒にお昼寝してほしいとか。

 陰で一部の使用人さんから”お嬢様になんて事を”とか”お嬢様の教育係だからと生意気”とか言われてますが気にしてません。言いたい人には言わせておけばいいのです……と、思っているのか?

 放っておけないですよ!沙織にもろに聞こえるとこで話してるんですから、沙織の教育に悪いので、沙織にも気にしないようにしっかり言い聞かせてます。

 

 「私の事を色々言っている方々がいらっしゃいますが、気にしないでくださいな」

 

 と。けれど沙織は

 

 「でも、おかあさま……」

 

 そう、沙織は教育係である私の事を”おかあさま”と呼んでくれています。年的には姉ではないのです?なんて思いましたが、他の使用人も居るとはいえ基本的に育てたのは私ですからね。……はぁ、超可愛い、流石女神の化身。美幼女です。

 って、萌えてる場合じゃねーです。

 

 「沙織、私を気遣ってくださってありがとうございます。貴女の優しさはとても大事なモノ、その誰かを気遣う心を忘れてはいけませんよ」

 

 「はい、おかあさま」

 

 「良いですか?沙織。後、誰かを信じる事は良い事です。けれど、その人の言葉をなんでも鵜呑みにしてはいけません。ちゃんと、どうしてそう思って言葉にしたのか、理由はどうしてか。自分で考え、自分の目で確かめる事も大事です」

 

 「はい、おかあさま」

 

 ほらほら、言ってる傍から。

 

 「沙織、私の事を信じてくださるのはとても嬉しいです。でも、私が言った事も理由があるのですよ。ちゃんと理解はしていますか?」

 

 ちょっとビックリしましたっていう顔ですね。うむうむ、考えてる考えてる。

 

 「さっき言っていた通り、おかあさまはわたしに考えてほしいのですね?他の人の言葉をそのまま信じるのではなく、自分自身で確認をする事が大事であると」

 

 良く出来ました。沙織って、幼い割には知性的なんですよね。まぁ、メタい話が知恵の女神でもありますからね。アテナは。でも今は人間の沙織として頑張って考えた結果なのです。偉いわぁ。

 

 「その通りですよ、沙織。今の貴女には難しい話かと思いましたが……、そういう理解しようとする姿勢、偉いですよ」

 

 そういうと沙織は目を伏せて頬を赤らめながら照れていました。うーん、めっちゃ可愛い。

 そんなカワイ子ちゃんはなでなでの刑です。

 

 「きゃぁ、おかあさま。髪が乱れてしまいます」

 

 「その時は私が整えてあげましょうね」

 

 櫛の準備はばっちりです!

 

 「もう!おかあさまたら……」

 

 しょうがない人だと笑う沙織。そこでハタっと思い出したという顔になりました。

 

 「そういえば、おかあさま。おじいさまからお話は聞いていますか?なんでも近い内に、大勢の孤児の子達を引き取るというお話なんですが」

 

 おや、ついに来るのですね。

 

 「いいえ、まだ聞いていませんね。教えてくれてありがとう」

 

 これはアイオロスとも話をしなければ。

 

 「ねぇねぇ、おかあさま?」

 

 「なんでしょう?」

 

 「ロスさまと今日はお話できないの?」

 

 ロスさまとはアイオロスの事です。実は一時期”おとうさま”って呼ばれてたんですけど、アイオロスってば本人に直接言えなかったので私だけ部屋に居た時、

 

 ━━━━━アテナから”おとうさま”とは、恐れ多過ぎる……。真名、頼むから止めてもらえるように、伝えてもらえないか?

 

 って。いや、あの時は起き上がれなかったけど、少しなら喋れるようになってましたから自分で言えるでしょう?ってアイオロスに言ったら、

 

 ━━━━━もしも泣いてしまったら私はどうすればいい……?

 

 泣いたら泣いたで傍に居てあげて慰めてあげればいいのでは?と、今度はそう伝えると、

 

 ━━━━━真名、これでも私は真剣なんだが……。

 

 「……ええい、面倒!男なら直接言いなさい!今連れてきます!」

 

 そう言って、沙織を連れ出し、アイオロスの前まで連れてきて、あれよあれよと遠回りで説得し、愛称で呼ぶ事になったのでした。

 ちょっと泣きそうになっていた沙織に大慌てなアイオロスが見れて眼福眼福。←(ドS)

 まぁ、そんな事があったってだけなのですがね。

 

 「後ででも大丈夫でしたら、お話出来ますよ。します?」

 

 「はい!」

 

 あー、本当に可愛いわー。まったく、辰巳さん達は本当にどんな教育したんでしょうか?多分、ただ沙織の言った事を実行するだけで注意なんてしなかったんでしょう。沙織は本当にギリシャ神話通り、我儘放題だったんでしょうねぇ。

 でも、今は私が此処に居て、アイオロスが居る。その為、沙織に変化があるのでは?っと思う訳で。実際、女神として自覚してなくても聡明で、優しい心を持った可愛い美幼女になっているのです。変態に気を付けなければ……!

 

 「沙織、後でおやつに紅茶のシフォンケーキを食べませんか?生クリームたっぷりですよ?」

 

 「わぁ!食べたいです!えっと、おかあさまはご一緒ですか……?」

 

 上目遣いで聞いてきました。この幼女、自分の容姿わかってる!しかし、私は顔に出しません。平常心平常心。

 

 「沙織が良ければ一緒に食べましょうね」

 

 「はい!おかあさま!」

 

 うん、可愛い可愛い。あ、鼻血は出てませんよね?大丈夫大丈夫。

 ……もしも此処にデス君が居たらこう言うのでしょうね?

 

 「変態はお前だよ」

 

 って。

 ふふふっ、本当に言われたら、もちろん双魚宮裏ですけどね……。

 この時まさか遠くの異国で、銀髪をオールバックにした少年がくしゃみをした事を私は知りませんでした。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「おかあさまー」

 

 「あら、沙織?」

 

 花園で花の世話をしていると背後から五つの気配を感じ、呼ばれたので振り向きました。

 すると沙織が四人の男の子……一人は女の子でしょうか?いえ、もしかして、あの子は……

 

 「おかあさま、今日からうちに来た子達ですよ!えっと……」

 

 名前を言おうとしたのでしょうね。中々出てこない様子なので一人の子が前へ出てきました。

 

 「はじめまして!おれの名前はじゃぶです。邪武と呼び捨ててください!」

 

 おお!ちゅう……いえ、ユニコーンの邪武ですか。え、なんですか。まさか、沙織に一目惚れでもしてこうなっているんですか?もう忠犬……らしさが出てますね。早っ。

 ちょっと感動して握手します。今度は黒髪を長髪にした男の子が出てきました。お、もしかして……

 

 「はじめまして、おれの名はしりゅうともうします。おれも紫龍と呼び捨てでかまいません」

 

 おお、やはりドラゴンの紫龍。この頃から礼儀正しい……。はい、握手です。ん?紫龍の後ろから女の子の様な子が出てきました。この様子からしてやっぱり

 

 「あの、えっと、ぼくの名前はしゅん、瞬と言います。今日からよろしくお願いします……」

 

 おずおずといった感じで挨拶してきました。うん、アンドロメダの瞬でしたね。わかりやすいです。瞬とも握手しようとしたら横から声がしました。

 

 「なーなー、菓子が食えるって言うから付いてきたんだぜ?早く食わせてくれよー。腹減った」

 

 「な!お前、失礼だぞ!」

 

 邪武が少年の言葉に注意します。おおう、この子はわかりやすいですね。でも……

 

 「こら、少年」

 

 「ん?おわっ!?」

 

 少年の脇に手で掴み高く上げます。まぁ、ただの”高い高い”ですね。

 

 「ほーら、高い高い!」

 

 「ちょ、ま、なんだよ!やめろよ!恥ずかしいだろ!」

 

 うん、確かに顔が赤くなって暴れ出します。でも、無視です。

 

 「この状態から失礼します。私は真名。このお屋敷でお世話になっている者です。そちらに居る沙織お嬢様の教育係をさせて頂いてます」

 

 そういうと暴れていた少年はピタッと止まり、他の少年三人も驚きに満ちた表情で沙織と私を見比べています。

 

 「え、でもさっき、”おかあさま”って……」

 

 そう瞬が呟くとすかさず発言させていただきます。

 

 「私が沙織お嬢様に言って、呼んでもらってるんですよ」

 

 「え……違っ……」

 

 沙織が正そうとしますが畳みかけます。

 

 「それはそうと少年よ」

 

 「な、なんだよ……」

 

 私は輝かんばかりの笑顔で言いました。

 

 「ご挨拶は?」

 

 「は?」

 

 「皆さん私に挨拶してくださいました。私も挨拶を返しましたよ?でも、貴方は?」

 

 「へ?」

 

 ちょっと混乱してます?

 

 「私は貴方とは初めて会いました。それになんて言うお名前です?」

 

 「あ」

 

 まぁ、つまり……

 

 「挨拶は人として基本です、大事なのですよ。挨拶するまでこのままですよ?」

 

 「うげっ」

 

 ふっふっふ、どうします?

 

 「せ、せいや!おれの名前は星矢ってーんだ!よろしく!これでいいだろ!」

 

 そう叫ぶと私はすぐさま星矢を下ろしました。

 

 「え」

 

 「良く出来ました」

 

 そう言って星矢に微笑み、頭を撫でます。

 

 「あ……」

 

 「ちゃんと出来るんじゃないですか。挨拶。皆さん、これからよろしくお願いしますね?」

 

 邪武、紫龍、瞬を見渡し、最後に星矢を見つめて改めて挨拶します。すると撫でていた手の下から

 

 「よ、よろしく……」

 

 小声でしたがしっかり聞こえましたよー。ふふっ、可愛いですねー。聖域に居た頃を思い出します。

 

 「さて、この辺で堅苦しいのは止めましょう。皆さんはお菓子目当てです?なら、丁度いいですね。クッキー焼いてるんですよ、今なら一枚づつ摘み食い出来ます。内緒ですよ?沙織、もしよかったら手伝って?」

 

 「あ、はい。おかあさま」

 

 沙織が駆け寄ってきます。ちょっと膨れてますが多分、焼きもちですかね?

 なので沙織に手を差し出し、繋ぎます。すると沙織は笑顔になって私に微笑んできました。可愛いですー……。

 と、いう訳で、これが主人公達との初めての出会いでした。

 さて、これからどうなる事やら。

 

 




私の方がこれからどうなる事やらだい。
この先どうなっていくのでしょうね(震え声)
我が両手よ!
この先の結末を我に示せー!!
……さて、続き続き。


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星19 城戸邸の日常

 星矢達との出会いから数日立ちました。

 最初にああいう出会い方をしたからでしょうか?結構警戒してましたがそれも薄まり、私と沙織に対しては少しは気を許してくれてる……と思います。多分。

 何故多分かって?私と沙織以外の人達の態度の違いですよ。

 なんていうか辰巳さんを筆頭に結構子供達の扱いが乱暴なんです。

 他の子達も私が優しいのは最初だけ~みたいな感じで随分と警戒している子と単純にお菓子をくれる良い人~といった感じで警戒を緩めてくれる子のどちらかになっています。

 そうそう!遅れてやってきましたけど氷河も来ましたよ!

 最愛の母親が亡くなったばかりで悲しい思いをしているので、お菓子を皆さんに配っている時に抱き締めはしませんでしたが、頭を撫でて

 

 「……頑張りましたね。ツラいのによくここまで我慢しました。きっと貴方のお母様は、貴方が生きてくれている事に喜んでいますよ」

 

 黙ってお菓子を配ればいいのに、言わずにはおれない自分にちょっと自己嫌悪。そしてちょっと心がやさぐれているのでしょう。私に反発していました。

 涙目で

 

 「あなたに何がわかる!」

 

 と言われてしまいました。うう、氷河。ごめんなさい。

 後で聞いたら星矢がその場面を見ていたらしく喧嘩してしまったらしいですよ。瞬情報です。

 沙織は良く瞬と話をするので分かった事なんですけどね。

 うん、もしかしたらもうお分かりでしょうか?

 沙織が!原作では邪武しか味方が居なかった沙織が!瞬と紫龍、多分星矢とも仲が良いんですよ!特に瞬とは趣味が合うのか植物図鑑や、動物図鑑を一緒に見たりして笑ってましたし、紫龍は転びそうになった沙織を助けて、沙織もそれにお礼を言って微笑み合ってましたし、邪武は言わずもがなですね。本当に忠犬邪武でございます。

 それで星矢なのですが……ツンツンした態度を取っていますが、恐らく素直になれないだけでしょうね。あれは。デス君といい勝負なのでは?なんて思ったり。

 沙織も何となくそれを察しているのか、最初は星矢にツンケンした態度を取られているみたいなんですけど、遠くで様子を見ていたんですって。それで時々見せる星矢の優しさに気付いてからはツンケンした態度でも、自分を想って言ってくれている事にも気付いていつも微笑んでいます。

 くっ!二人共可愛過ぎか!沙織も大人な対応、素敵です!

 それから氷河なんですが、昨日謝りに来てくださいました。

 慰めてくれようとしたのに、あんな態度を取ってしまってごめんなさいって。

 気にしなくてもいいのにー!

 私も謝りましたよ?軽率であんな言い方してごめんなさいって。

 周りの大人がああですからね。驚かれました。

 その時氷河の両隣に居た瞬と沙織が

 

 「ね?言ったでしょう?真名さんなら気にしないで許してくれるって」

 

 「おかあさまは優しいから大丈夫って言ったでしょう?信じてくれました?」

 

 二人共天使か!!いや、(これからなる)聖闘士と女神だったわ。

 とりあえず仲直り?の握手もしましたのでこの一件は終わりました。

 で、氷河もカルガモよろしく、私の行く先とかで後ろについて来るようになりました。ちなみに先頭は必ず沙織です。

 うん、君達本当に可愛いですな!あ、最後尾は星矢です。

 しかし、性格が変わるだけでこんなに沙織と仲良くなるとは思いませんでした。流石に馬になりなさい。なんて言われて乗り回す事は一度もありません。っていうか、そういう発想もしないみたいで、とても良好的に過ごしているみたいです。

 あー、でも、沙織が光政公の孫娘という事で大半の子達は沙織を遠巻きに見ています。沙織もその事に気が付いているのか時々寂しそうです。

 でも、その時、必ず現れるんですよね。星矢が。

 この前は一輪の花を持って沙織に差し出し、

 

 「これ、やるよ」

 

 とか言って走って行っちゃうんですが……その年で青春してるとかレベル高いですね、星矢。流石フェミニスト。

 でも、私の花園から取っていくなら一言言ってくださいねー?(にっこり)

 私の花園で瞬と紫龍、氷河の三人に見つめられながら星矢の頬を摘み伸ばします。

 いたずら目的ではないのは分かりますが、いきなり大輪に咲いていたユリの花を切られていたらビックリしますよ。選んで切りなさい。選んで。

 でも、沙織にユリの花が似合うのは真理……ごふん、似合いますからね!

 気持ちは分からない訳ではないのです。

 そういうと星矢は

 

 「ユリの花がお嬢さんに似合うって、なんでだ?おれはただキレイに咲いている花なら……何でも、似合うと思う」

 

 星矢が何故”沙織さん”ではなく”お嬢さん”と呼んでいるのかというと、沙織の事を”沙織ちゃん”と呼んでいる所を聞かれて、辰巳さんに盛大に怒られた上に拳骨を喰らったみたいです。後で聞いたらそう言ってました。紫龍が。

 お の れ た つ み さ ん !

 けれども、ふっ!聞こえないとでも思ったんでしょうか?星矢の最後の言葉は小声でしたがしっかり聞こえてますよ!気持ちはすっごく分かります!沙織ならどんな花でも似合いますよね!

 しかし、この子恐ろしい。七歳の身でそんな発想出来るとか、流石主人公。将来が恐ろしい……(ごくり)

 

 「貴方が切った白ユリの花言葉が”威厳”純潔””無垢”という意味があるんです。本来は聖母マリアの花なのですが意味的には今のあの子の事を言っている様に感じます。威厳はちょっと早いですが、純潔で無垢な所はむっちゃ同意します。でも、ふふっ、花言葉なんて知らないでしょう?」

 

 その話を聞いた星矢は頬を赤くして

 

 「そ、そりゃぁ、おれはそんな言葉全然知らなかったさ!……ただ、寂しそうにしてたから元気になってもらおうと思ってだな……大きな花なら喜んでくれると思って……」

 

 後半になるにつれて小声になってぶつぶつ言い始めました。

 はぁー、なんなんでしょうね。この子。本当にまったくもう、仕方ないですねぇ。

 瞬と紫龍は微笑ましいモノを見たと言わんばかりに笑顔で見守っていますし、氷河はちょっと呆れ気味?ですね。

 おや、そういえば沙織は……。

 

 「お嬢さんなら邪武と一緒に激達と何か話してましたよ」

 

 おおー、交流してますねー。良い事です。

 

 「では、そんな君に贈り物として送るなら良い物がありますよ」

 

 「?」

 

 腰のポケットに入れていたメモ帳に円を描くように四つハートを書きます。

 

 「 ? なんだそれ?」

 

 「これは?」

 

 「?」

 

 「あ!これって……」

 

 星矢と紫龍、氷河は分からないみたいで、瞬だけ気付いたみたいです。沙織と植物図鑑見てますし、流石ですね。

 

 「瞬は分かったみたいですね?」

 

 「これってクローバーですよね?四葉の」

 

 「そうそう」

 

 「クローバーって……」

 

 「その辺に大体生えてるよな?」

 

 ふっふっふー、クローバーを甘く見ない事ですね。

 

 「基本三つ葉なんですが、三つ葉だけでも一つの葉に意味があり、”希望””信仰””愛情”の三つの言葉があるのですよ。四葉に関しては滅多に生えていなくて、見つけただけで幸運になるって言われてるんです」

 

 それだけではないのですがねー。瞬以外の三人はへーとか、ほうとか言ってます。まぁ、こういった花言葉とかって興味がないと知りませんよねー。ふふん、これからが本番ですよー?

 

 「ちなみに四葉にもちゃんと意味があって、それぞれ一つの葉に”希望””誠実””愛情””幸運”を表し、その四つが揃うと”真実の愛”という意味になります。海外ではちょっと意味が変わりますが、四つ揃っての”真実の愛”は変わりませんけどね」

 

 実はクローバーにはもう一つ意味があるのですが、それは言わなくても良いですね。私も知った時はビックリしたものです。

 ふと、星矢を見るとぽつりと呟きました。

 

 「……クローバーの方が良かったのか?」

 

 それを近かったので聞いてしまった私と三人の少年達。四人揃ってニヤニヤと星矢を見つめました。

 すると、それに気が付いた星矢が慌てて弁解してきます。

 

 「はっ!?な、なんだよ!何か変な事言ったかよ!」

 

 「いーえー、ただ微笑ましいなぁっと……」

 

 その言葉を聞いてカァッ!っと顔を真っ赤にする星矢。ふっふっふー、良いですねー。可愛いですわぁ。

 

 「お、おれは!ふ、ふん!もう知らん!」

 

 と、そっぽを向いてのっしのっしと花園から離れます。

 

 「あんなに気にかけてるんだから、素直になれば良いのに」

 

 瞬がぽつりと言葉をこぼします。本当にねー?

 紫龍と氷河もやれやれといった感じに頭を横に振ります。呆れてますね。

 

 「まぁ、男の子ですからそう簡単に素直にはなれないのでしょうね」

 

 幼い男の子は繊細です。それに、星矢はお姉さんと離れ離れにした光政公を憎んでるでしょうから、その孫娘の沙織に対して優しくしたくても複雑な想いもあると思いますし。

 

 「そういえば一輝はどうでした?瞬」

 

 「あ、兄さんは……その……」

 

 「うん、皆まで言わなくても良いですよ」

 

 拒否されたんでしょうなぁ……。瞬と一緒ならお話出来るかなー?って思ったんですけど、そう問屋は下ろさないですよねぇ?

 実はまだ一言も話してないんですよ。いや、一言ありましたね。

 

 「俺にかまうな」

 

 って、クールというより、ふっつうに拒絶された感ががが……。

 瞬はとてもその事を気にしていて、一輝を説得してくれてるんですけど、中々上手くいかない様で……瞬、ありがとうございます。

 星矢はなんとかなりそうですけど、一輝がなぁ。他の子に比べると聞きはしてくれますが、話す事はないという感じで、直に何処かに行ってしまうんですよね。まぁ、構い過ぎもいけませんし、程々の距離で接しますか。

 さーて、瞬達と離れて沙織を誘ってアイオロスの所にでも行きますか。

 

 




これから本当に仕事が忙しくなるので、遅くに投稿すると思います。
頑張りますけどね!(投稿)
どうか見守っていてください。
お願いします。



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星20 城戸邸の日常2

 

 昔々、ある所にお爺さんと、お婆さんが住んでいました……。

 おしまい!

 

 「はぁ?なんだその昔話。短っ!おれの知ってる昔話じゃないぞ。山で竹切ったり、川から桃が流れてくるんじゃねーの?」

 

 少年三人とまさかの沙織までうんうんと頷いています。

 実際に今も昔もお爺さんお婆さんだけで暮らしてるご家庭はあるんですよ!

 

 「君達が暇だっていうから私が昔考えたお話してるのに、なんという言い草」

 

 そう、ある日の昼下がり、花園でお世話していたら沙織と少年達四人が来て、いきなり、

 

 「おかあさま、何かお話を聞かせてください」

 

 「おれ達が知らないような話だったら尚良し!」

 

 突然の無茶ぶりである。

 仕方ないので昔、聖域に居た頃にぼーっとして口に出していた昔話(自作)を語って聞かせてみる事にしました。

 いやー、意識しないで語っていたものだからデス君に

 

 「桃食うのは分かるが、中身の赤ん坊見て”あら、美味しそう”とかなんで、そんな展開になるんだよ!?おかしいだろ!何より最初の所でだ……言わせてもらうがな!爺さんと爺さんって、婆さんは何処に行った!?言葉使いも変だぞ!オカマか!!」

 

 という総ツッコミにより中断した昔話がありまして……。デス君、君は日本の昔話知ってるんですか?すごいですね。

 ふむ、今度はその話をしてみましょうか……。

 

 「今度はまた違った昔話しますけど、聞きます?」

 

 「あ、いや、いい。大人しく鬼ごっことかしてるよ」

 

 ふむ、不評でしたか。ならば仕方ないですねぇ。

 ふとスカートの裾を引っ張られてその先に居る子に目を向けました。

 

 「おかあさま、おかあさまが良ければ、瞬や皆にあの青いお花を見せてあげたらどうかしら?」

 

 「「「青いお花?」」」

 

 瞬と紫龍、氷河は少し興味を惹かれたのかユニゾンして聞いてきました。青いお花……恐らくキュアローズの事でしょう。実際青い花なんて珍しいですからねぇ。

 

 「お嬢さん、悪いけどおれ、パス。花とか、興味ねーもん」

 

 後頭部に手を回して組んだ格好になった星矢がそう言ってきました。

 沙織が悲しんでいたら何かを持って(主に私の花園の花)行って慰めている君に興味がないだとぅ?

 

 「あ……そうなの?ごめんなさい、星矢。よくお花を持ってきてくれるから、興味があるのかなって思って……」

 

 しゅんっと少し顔を伏せてしまう沙織。

 この反応は喜んでくれると思って言ったみたいですね。しかも本命の男の子は興味がないという。す、すれ違いですかー!?

 星矢の方をチラ見すると、氷河と瞬に肘で小突かれてますね。

 それで、つまんねーって顔から、あ、ヤバいって顔に変わります。うん、うちの大事な女神(娘)を悲しませてんじゃねーですよ?

 

 ━━━━━真名。

 

 おや?

 

 ━━━━━アイオロス、どうかしましたか?

 

 ━━━━━今、沙織お嬢様の悲しみに満ちた小宇宙を感じたのだが……。

 

 …………。

 

 ━━━━━アイオロス、今からでも遅くないです。沙織に”おとうさま”呼びを復活してもらってはいかがでしょう?

 

 ━━━━━……何故だ!?

 

 いや、多分純粋に心配して聞いてきたのでしょうけど、タイミングが……。

 

 ━━━━━まるで親ばかみたいな感じでしたので……つい。

 

 ━━━━━お、親ばか!?

 

 「うっ。あ、あー、興味はないけど見た事ない花ならすこーし。うん、少しだけ気になるかなー?な、なんて……」

 

 今更ながらマズイと思ったらしい星矢。

 でも、そのさっきの言葉の撤回を聞いた沙織は

 

 「本当?嫌じゃない……?」

 

 伏せていた顔を上げて星矢を見つめてます。少し目が潤んでますね。

 

 「え、えっとだな。う、うん……いや、じゃない」

 

 そう星矢の”いやじゃない”を聞いて花の蕾が大輪で咲いたの如く輝かしい笑顔を、星矢に向けた沙織は心底安心したという感じです。

 しかし、沙織よ。お主、天使から小悪魔にジョブチェンジしてませんかね?

 ほら、星矢ったら美幼女である沙織の輝かしい笑顔を見て赤面して固まってますよ。

 

 ━━━━━今度はどうした!喜んでいるようだから心配はしていないが……。

 

 いえ、貴方がどうしたですよ。

 

 ━━━━━ただ単に、お友達の言葉に一喜一憂してるだけですから。大丈夫ですから。

 

 ━━━━━そ、そうか。

 

 アイオリアを育ててましたから、私より子育てとか先輩なのに、沙織に関しては過保護というか……まぁ、沙織はアテナなのだから仕方ないですけどね。

 過保護なんて通り越して元々信仰対象ですから、当たり前なんですが……。

 何故かアイオロスって沙織に対しての態度が親目線なんですよ。

 まぁ、アテナとしてなら改めて敬うでしょうけど。

 アイオロスもちゃんと人間の沙織として接してくれているという事ですね。

 今は良い事なんですが、アテナとして覚醒したらどうなるのか気になります。多分ですけど、意識を変えて”アテナ”として接するんでしょう。

 え?私はどうなのかって?私はボケもツッコミも出来る助言者を目指してますので、アテナの相談役あたりでも務めたいなー……なんて、思ってみたり。

 とりあえず、今、それは良いのです。

 今、目の前で起こっているおいしい展開を見逃す事はできないのです。はい。

 

 「カメラは……カメラはないのですかー!?ああ、無いのでした。仕方ない、心のカメラで撮るしか!」

 

 「何を撮る気ですか?何を。しかも心のカメラって……」

 

 紫龍の鋭い?ツッコミにハッと正気に戻ります。

 せんきゅー紫龍。私は正気に戻った!

 

 「まぁ、とりあえずビニールハウスまで来ますか?その青い花もありますし」

 

 実はこの花園、小さなビニールハウスがあるんです。

 そう、まさにキュアローズを作る為の物。だって、誰だって如雨露に血を垂らした水を薔薇にあげてるだなんて気持ちが悪いでしょう?

 なので死角になっている目立たない場所にビニールハウスを建ててもらったんですよー。

 私の血のせいかは分かりませんが、枯れにくいですけど用心に越した事はないですからね。

 

 「沙織、前にあげた花はまだ大丈夫ですか?」

 

 「はい、綺麗で元気に咲いてますよ!」

 

 沙織にあげているのも実はパラライズローズ。

 屋敷内で何かが起こる訳ではないのですが、沙織の室内の警護は私がやっています。でも、私も万能ではありませんので、基本、警備員さんに扉の前で警護してもらっています。

 私があの黄色い薔薇に小宇宙を注がない限り麻痺の効果はありません。

 何に使うのかって?勿論殺さず捕まえる為ですよ。

 普通の強盗や泥棒では入って来れませんが、聖闘士であれば……?

 うむ、つまりはそういう事です。

 

 「では、ご開帳~」

 

 ビニールハウスの扉を開けて端に寄り、沙織達を入りやすくさせます。

 

 「わぁ」「おー」「これは……」「すごい」

 

 ビニールハウス内は半分以上がキュアローズです。なるべく品質が良い物をアイオロスに与えたいので改良したりして育ててます。それでもやはりというか聖域育ちには敵わないのですが……。

 

 「これは、バラですか……?」

 

 瞬が私を見上げて質問してきます。

 

 「はい、当たりです」

 

 するとぽつりと呟く声が聞こえました。

 

 「……噂は本当だったのか」

 

 氷河が私をちょっとビックリした感じに目を見開いて見つめてきました。なんぞ……?

 

 「なんだよ。噂って」

 

 「……良い噂ではないぞ」

 

 ため息をつき真っ直ぐに私を見つめて語りだしました。

 

 「”この屋敷には魔女が居る。自分自身の青い血で育てた青い薔薇を使った魔法で、死者を蘇らせようとしている”と……」

 

 ああー、その噂ですかー。

 

 「氷河!おかあさまは魔女ではないわ!噂だってデタラメよ!」

 

 いやー、ほぼ間違いないですし……。

 だって、こうですよ?

  

 魔女と言われる力を持っている→黄金聖闘士としての小宇宙の力。

 

 自分自身の青い血で薔薇を育てた→元は赤い血だが、育つ薔薇は青いので勘違いされやすい。

 

 薔薇を使った魔法→必殺技。

 

 死者を蘇らせようとしている→アイオロスの事。本来は死んでいた。

 

 という訳で、何処かで気でも抜けていたのか見られていたみたいで。

 実はこの噂って結構前からあったモノでして……。

 恐らく一部の私に悪い印象を持ってる使用人さんの人が広めているんだろうと思います。

 陰でこそこそされるより面と向かって言いなさい。と言いたいですね。

 

 「沙織、私は気にしていませんから」

 

 「けど、おかあさま」

  

 心配そうにこちらを見つめてくる沙織。うう、優しい子です。

 

 「魔女は魔女でも、私は沙織にとっての魔法使いでいるつもりです」

 

 シンデレラの魔法使いみたいな……ですよ?

 

 「 ! おかあさま……」

 

 なんだか感動した!って顔に書いてありますね。

 でも、実は沙織の近くには笑顔にしてくれる男の子が、魔法使い……いえ、今はまだ聖闘士候補が居ますから。

 おや、今度は氷河が星矢に肘で小突かれています。

 そして、申し訳なさそうに謝ってきました。

 

 「真名さん、ごめんなさい。お嬢さんも、不快にさせてごめん」

 

 「いいえー、気にしてませんので、大丈夫ですよー」

 

 「氷河……ううん、私も言葉がキツかったわ」

 

 三人で謝って解決しました。こういう事は早めに終わった方がいいですからね。

 

 「ほら、二人共。一応私の自慢の一つ。青薔薇を見て行ってくださいな」

 

 「「はい!」」

 

 うむうむ、子供は笑顔が一番ですよ。

 

 




次回予告
真名が萌え死しかけます。

なんてな!
いや、もしかしたら本当かも。
っと、言うのは冗談で、まだ未定です。
頑張って投稿するぞー!
どうか、見守っていてください。
お願いします!


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星21 射手座とペガサス座

 

 ある日、光政公からそろそろ子供達を聖闘士の修行に行かせるとの知らせを受けました。

 いつになるかはまだ決まっていないみたいですけど、話を聞くと今週当たり行き先を決める為のくじ引きが始まるみたいですね。

 それに対して沙織は不安そうでした。

 折角仲良くなった子達と離れるのは勿論、死ぬかもしれない地獄に行かせられると聞かされては仕方のない事でしょう。

 うん、私は結構スムーズに進められたので、死にかけたりしませんでしたけど。それはそれは、腕立て千回とか、腹筋千回とか、肉体的訓練は大変でしたけどねー。

 それはさておき、ちょっとした事件がありました。

 アイオロスなんですが、なんと、星矢達に会ってみたいって言ってたんですよ。なんでも沙織から話を聞いて興味を持ったとか。

 光政公に話して会う事は出来るか―――なんて多分出来ないです。アイオロスが生きている事を、いくら子供でも知れ渡る様な事をしてはいけないのです。

 まさに極秘機密。なのですが―――。

 

 「ごめんなさい、おかあさま。お話をちゃんと聞かなかったせいで……」

 

 「いいえー、大丈夫ですよ。沙織。私も注意し忘れていたのが悪いのですからね」

 

 そう、実は沙織ったら、私が沙織から離れる時、習い事のレッスンを受け、予定より早く終わった後、星矢達に会いに行ったんだそうで、そこである拍子にアイオロスの話をしてしまったみたいでして。

 話を聞いた星矢達はやっぱりというか、会ってみたい!と言い出し、沙織は慌ててアイオロスの状態を説明すると、星矢は監禁みたいなもんじゃん!とか言い出してしまったそうです。

 監禁というか、安静第一なのですが、時々アイオロスは起き上がれる時に無理をして筋トレしだすんですよね。本を読むのは良いのですが、筋トレはもう少し良くなってからではないといけないのに……。

 肉体の衰えを感じてしまって、落ち着かないとか言ってるんですけど、そこは沙織に言って止めてもらっています。

 懲りてはいないですけどね。仕方のない人です。

 まぁ、そんなこんなで星矢ときたら、屋敷に忍び込んでサプライズで会いに行こうとしているんです。

 私は止める立場なんですが、アイオロスの”会ってみたい”という言葉を、聞き入れてあげたいという気持ちもあるんですよね。

 例え、アイオロスが負傷していなかったとしても、星矢の言う通りアイオロスには監禁に等しい扱いをしなければいけない訳ですからね……。

 それから、心配があるといえば星矢の事なんです。

 ほら、彼はギリシアの聖域近くでの修行でしょう?

 アイオリアに会った時、どうなるのかハラハラすると言いますか。

 だって、兄弟だからか、アイオリアはアイオロスにそっくりな訳で。

 星矢はなんだかんだ抜けている所があるので、心配なんですよね。……勿論フォローはしますけど。

 まぁ、会えるかは分かりませんが、私が出来る事といえば、見逃す程度に留めて星矢が折檻を受けない様にする位でしょうか。

 沙織から話を聞いていた私は今日の夜。つまり、今ですね。アイオロスの部屋の扉前で待機していました。

 しばらく無音でしたが、突然、屋敷の中が騒がしくなりました。来ましたね……星矢。

 

 ━━━━━真名。

 

 ━━━━━アイオロス……。

 

 ━━━━━星矢という少年が来たのか?

 

 ━━━━━そうでしょうね。……会いたいんでしょう?

 

 ━━━━━ああ、出来る事なら……流石に無理にとは言わないのだが……。

 

 これではな。っと苦笑するテレパシーが聞こえました。

 

 ━━━━━星矢自身が望んだ結果です。貴方だってそうでしょう?貴方の事です。無意味な事を言う訳ではないのでしょう?

 

 会えたなら、ですけどね。

 

 ━━━━━真名にはお見通し、という訳か?

 

 ━━━━━どうでしょうね?っと、来ましたよ。

 

 そこでテレパシーを中断しました。星矢が来たみたいです。

 

 「あ、真名さん!」

 

 「星矢」

 

 どうやら一人みたいですね。でも、屋敷内は騒がしいまま。

 普通なら子供である星矢一人では来れないハズです。多分、三人の少年達が協力しているのかもしれませんね。この段階でこの団結力すごいです。

 

 「真名さん、ロスさまっていう人の部屋ってココ?」

 

 「さて、どうでしょうね?」

 

 そういうと星矢はうげっ!っと声を上げて後ろを見たり、私を見たり。

 

 「そりゃないぜ、真名さん!ココまで頑張って来たのに!」

 

 「ふふっ、すみません。ちょっとした意地悪です。さぁ、入りなさい」

 

 そういって扉の前から身体をずらしました。

 

 「え?いいの?」

 

 「”彼”も会いたがっていましたから」

 

 騒がしくしてはいけませんよ?と言って扉を開けて促します。

 

 「へへ、失礼しまーす……」

 

 星矢がそう言って部屋に入る際こちらに顔を向けて、

 

 「さんきゅーな、真名さん」

 

 と、片目を閉じてウィンクしてきました。まったくもう。

 そして扉を閉めます。

 中に入らないのかって?邪魔が入らない様に見張りですよ。

 きっとアイオロスの事ですから、沙織の事を話すのでは?と思っています。まだアテナである、という話はしないでしょうけど、アイオロスなりに沙織から聞いた星矢に何かを感じたのでしょう。

 五、六分たった頃でしょうか?遠くの方からこちらに真っ直ぐ向かってくる約五名の小宇宙を感じます。

 その中の三つは感じ慣れている小宇宙です。

 

 「ああ、真名様。こちらにいらっしてたのですね」

 

 「一人のガキがこちらに来ませんでしたか?」

 

 黒服の大男のSP二人が瞬と紫龍、氷河をそれぞれ片手で持ち上げています。

 三人共疲れているのでしょう。息が荒いですし、頬も一発殴られている跡があります。

 

 「来ていませんよ?この屋敷は広いです。恐らく迷っているのではないですか?」

 

 「本当ですか?隠してませんよね?」

 

 そう言って私を疑っているのか、グラサン越しにも睨んでくるのを感じました。まぁ、仕方ないですね。普段から沙織と一緒に星矢達と良く共にいる所を使用人達にも見られていますから。

 

 「私には隠す必要もありません。お疑いならば、この部屋を覗いてご覧なさい。お叱りは私が受けます」

 

 負けじと睨み返します。いけないと教えているのに此処に来た四人にも罪はないとは言いませんが、子供に対しての扱いが酷過ぎます。こう見えて怒っているのですよ?

 私から二人に対して軽く殺気を当ててますので、怖気づいたのか後退りするSP。

 

 「い、いえ、知らないのであればいいのです。大変失礼をいたしました」

 

 腰抜けめ!それで沙織や光政公を守る仕事をしているとは思えません。

 もう少し骨のあるSPを雇うべきと進言しましょうか?

 

 「あと、その子供達は私が預かります。即刻此処から立ち去りなさい」

 

 SPを睨みながら、そう言い放つとSPの一人が

 

 「え!?さ、流石にそれは……」

 

 「お叱りは私が受けると言ったハズです。いう事を聞かなければ……」

 

 殺気の圧力を上げて睨めば大慌てで三人を離し、この場から走って逃げて行くSPに呆れて物も言えません。貴方達、此処の警護していたのではないのですか?逃げるとか、SPの風上にも置けません。

 とにかく今は三人の手当てをしなければ。恐らく頬を殴られただけではないでしょう。この屋敷は沙織には優しいですけど、孤児として連れてこられた子供達の当たりが酷過ぎます。

 改善したい所ではあるのですが、恨まれる覚悟を持った光政公に沙織以外の改善はしません。いえ、出来ません。

 本来ならばご自分のお子さん達に優しく声をかけたり、抱きしめたりしたいハズなのに、それは出来ないと。そんな覚悟を持った人だから城戸邸の改善は沙織の事しか出来ないのです。

 改善と言いましたが私は別に沙織……アテナの親代わりになったと思いあがった訳ではありません。

 沙織は幼い内になら我儘放題を許せる立場ですが、女神アテナとして覚醒したら我儘なんて言っていられません。本来はそうだったかもしれませんが、最初のギスギスした沙織と星矢達の関係をなんとかしたかったんです。

 ふふっ、そこが烏滸がましいのでしょうけどね。

 所詮は私の個人の我儘、偽善でもあります。

 内心で苦笑していると

 

 「あ……、真名さん、痛っ」

 

 殴られて気絶していた瞬が最初に気が付きました。ああ、無理して起き上がってはいけません。

 優しく頬に手を当てヒーリングを施します。

 すると少しずつ頬の腫れは消え、痛みで歪んでいた顔つきも元に戻り、いつもの優しい顔になりました。

 

 「わぁ、真名さん、本当に魔法使いみたいですね。痛みが無くなりました」

 

 まさか、傷が完璧に癒えた事には気付いていないみたいですね。仕方ありません。

 そうして未だに気絶している紫龍と氷河にもヒーリングを使って、傷を癒し終わり、壁に寄り掛かる様に座らせてアイオロスの部屋の扉を見つめました。

 瞬から視線を感じたので目線を合わせようと屈みます。

 

 「あの、真名さん。星矢は……?」

 

 此処に着いたのか気になるようですね。瞬を安心させてあげる為に優しく微笑みます。

 

 「ちゃんと此処へ着きましたよ。今はこの部屋の中です」

 

 そう聞くと瞬はホッと安心した顔になって微笑み返してくれました。

 それから、少し……、多分二、三分たった頃に扉がゆっくり開きます。

 そこから周りを警戒しているのでしょう。ゆっくりと星矢が出てきました。

 

 「あ、星矢!」

 

 「お、瞬!無事で良かった!」

 

 瞬と星矢はお互いが無事(本当は瞬は無事とは言えなかったけれど)で安心したようで、両者とも笑顔です。

 

 「星矢」

 

 「あ、真名さん」

 

 「話は出来ましたか?」

 

 アイオロスと、という意味で話しかけます。

 

 「真名さん、おれ……」

 

 「ん?」

 

 星矢は真っ直ぐに私と目を合わせ、決意したという意思を感じます。

 

 「おれ、おじょ……沙織さんを守るぜ。色んなモノから、守ってやれる男になりたい!」

 

 お、おおう……。中でどんな会話をしたのか、明確に分かる訳ではありませんが、やっぱり沙織関係であった様ですね。

 ん?

 

 「”沙織さん”?」

 

 星矢は今、沙織の事を”お嬢さん”ではなく、”沙織さん”と呼びました。何かの決意をしたみたいですし、とにかく見守りますか。

 

 「なんだよ。おれが沙織さんの事を沙織さんって呼んじゃダメなのかよ?」

 

 不貞腐れたように言い放ちます。違うのですよ、星矢。

 

 「いいえ、それは良いのですが……、星矢?」

 

 「ん?」

 

 「沙織を守るとはどういう事か、分かっていて言ってます?」

 

 この子の持つ予定の聖衣は”ペガサス”。

 このペガサスはある意味特別な物で、遥か昔の聖戦では、ある偉業を成した聖闘士の聖衣です。

 でも、それは昔の話。今のこの星矢が成すかは、私やアイオロスが居る事によって変わるかもしれません。でも、聞かずにはいられなかったのです。

 

 「分かってる……なんて、正直言いきれないけど、男と男の約束だ。絶対に守って見せる!それに……なんだ……」

 

 「はい?」

 

 「……沙織さんは強がりだから、素直に泣ける場所に、おれはなりたい。……へ!女を守るのは!当たり前の事だろ!!」

 

 子供がいきなり大人顔負けの男の顔になったと思ったら、そっぽを向いて顔が真っ赤になっている年相応の少年の顔に戻りました。

 うあー、これは!

 

 「はいはい、そうですね。よろしくお願いしますよ。騎士殿」

 

 その辺転がりたいです!萌える!!何この子、私を殺す気ですか!?マジ半端ない!小さいけれどちゃんと男ですねぇ!まだまだ可愛い盛りですけど!

 

 「なんなら、おまけに真名さんだって守ってやらぁ!」

 

 「もう、星矢、恥ずかしいからって調子に乗らないの」

 

 瞬が星矢を諫めました。

 瞬、ナイスです!

 

 「さて、屋敷内も落ち着いたみたいですし、部屋に戻りますか」

 

 送っていきますよ。と言うと星矢と瞬にお礼を言われ、紫龍を背に背負い、星矢は氷河を背負いました。瞬も星矢の手伝いしてますね。

 さて、くじ引きが始まると直に修行の地に送られます。

 それまでにアレの準備を始めますか。

 こうしてペガサスは射手座により複数の道の一つを見つけました。

 さて、この子はどんな子に育つのか、楽しみですね。

 

 




星矢、アイオロスと出会うの巻。
さて、星矢とアイオロスはどんな会話をしたのでしょうね?
次回はどんな話になるのやら……。
どうか、見捨てずに見守っていてください!
お願いします!


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星22 出発

 今日はくじ引きにより聖闘士になる為の修行の地に行く第三陣、瞬と一輝が修行に旅立つ日です。

 さて、どうなるか分かりませんが、今日の為に用意しておいた物を渡さなければなりません。

 もしも”コレ”を使う事になったら”彼”の運命が変わります。どうなるのでしょうね……?

 確か、瞬の行くアンドロメダ島の説明を聞いてから一輝が脱走するのでしたか。

 その後で”コレ”を渡さなければなりません。

 間に合うと良いのですが……。

 ん?沙織ですか?沙織なら瞬のお見送りに行きましたよー。

 

 「今のわたしにはこういう事しか出来ませんから……」

 

 って言って。

 さ、沙織!なんて健気!っというか、友達を想う心があれば当たり前の事なんですけど、それでもそう思います。

 良い子に育って、私は嬉しいです。

 しばらくすると警報音が屋敷に響き渡りました。

 きましたね!

 

 「とにかく、警備の人よりも先に一輝を見つけなければ」

 

 一応説明を書いた紙もちょっと細長い手作りのお守り袋に入れておきます。

 何があるか分かりませんからね。

 準備をしておく事に越した事はありません。

 とにかく、電流が流れている塀の近くを見回ります。

 本当なら小宇宙を探って探した方が早いのですが、一輝に関してはそこまで関りがある訳ではないのでまさに手探りで……。

 今はそんな事は良いのです。早くしないと死にはしませんが一輝が電流の餌食になり、屋敷の人間から暴力を振るわれてしまいます。

 そこは阻止しないと!

 

 「はなせ!」

 

 むむ!近いですね。

 

 「よせ!一輝、お前死ぬ気か!?」

 

 おお!間に合いましたー!

 

 「一輝!止めなさい!塀には電流が流れているのですよ!」

 

 「あ!真名さん!」

 

 紫龍が私に気付いて名前を呼ばれましたが、今は返事をする余裕はありません。

 

 「どけーーーーっ!!」

 

 「退きません」

 

 星矢を踏み台にして飛びますが、私に首根っこを捕まれて宙ぶらりになりました。

 

 「は、離せ!」

 

 「離しません。紫龍、私は一輝を連れて此処から離れます。なんとか誤魔化して下さい」

 

 「え!?あ、はい!」

 

 紫龍からの返事を聞いた私は私の花園まで移動します。

 まぁ、一輝が暴れてうるさかったですが、そんな事は気にしません。

 瞬が大事で心配なのは分かりますが、アンドロメダ島の瞬の師匠になるダイダロスさんなら心配ありません。

 辰巳さんはそこまでは知らなそうですから私から説明しました。

 

 「本当に信用できるんだろうな?そのダイダロスとやらは」

 

 「はい、その誠実さから沢山の信頼を得ている方です。彼なら厳しいアンドロメダ島の環境から助けて下さるでしょう」

 

 「……、なんでこの屋敷から出た事のないあんたがそれを知っている」

 

 「それは秘密です」

 

 今は話す時ではないので。

 

 「その説明も大事ですが、一輝、貴方に渡すものがあります」

 

 「?」

 

 「これです」

 

 そう言ってポケットからお手製お守りを一輝に渡します。

 

 「これはなんだ?」

 

 「一応説明文を書いておきましたが、簡単に説明させて頂くと、もしも、もしもですよ?デスクィーン島で何か致命的な大けがをしたらコレの中身を使いなさい」

 

 「は?」

 

 まぁ、はぁ?ってなりますよね。うん。

 

 「良いですか?助かりたい、助けたいという状況になったら迷わず使う事。約束して下さい」

 

 「……、そういうのは瞬に渡せ」

 

 「沙織に届けて頂きましたよ?」

 

 「あの守り袋か。だが、こちらの方が大きいみたいだが」

 

 「効果はある意味一緒です」

 

 物は基本的には一緒です。質が違いますが。

 

 「もう一度聞くが、瞬にも渡したんだな?」

 

 「沙織が渡した所を見たのでしょう?」

 

 疑い深いですねぇ……仕方ない事ですけど。

 

 「施しは受けん」

 

 「受けろ。阿呆」

 

 ここまで説明させておいて”施しは受けん”とはこれ如何に。

 思わず口調も乱暴になりますわ。

 

 「む……」

 

 「む。じゃぁありません。いいですか?絶対ですよ?」

 

 フリではありませんからね?その時に後悔しても知りませんよ?

 

 「……わかった。受け取ろう」

 

 そう言うと一輝はお守りを受け取ってくださいました。ホッと一安心です。

 これで受け取らなければ服に糸で縫い付ける所でしたよ。

 

 「では、そろそろ時間ですね。一緒に行きましょう」

 

 警報まだ止んでませんし、私が一緒に行った方が一輝も、もしかしたら殴られる事はないと思いますしね。ていうか、させませんが何か?

 さっきの塀の辺りにまだ人だかりがありますね。

 ん?紫龍が胸倉を掴まれて……殴られそうになってる!?

 

 「子供に何してるんですか!!」

 

 思わず叫びましたよね。

 

 「ま、真名様……!?」

 

 犬を連れた警備員さんを思いっきり睨みました。

 子供達の一部から”怖っ”という声が聞こえましたが無視です。

 

 「その子を離しなさい」

 

 「しかし!一輝を庇う事をしたのですよ!?」

 

 「……離せ。っと、言いました」

 

 聞こえませんでした?

 

 私がそういうと警備員さんは顔を青褪め、紫龍を掴んでいた手を離し、その場から離れていきます。

 ……言われる前に離れるとは、SPよりはマシですかね?

 

 「大丈夫ですか?紫龍。すみません、無茶を頼んでしまって」

 

 「いえ、一輝を助けて頂いてありがとうございます」

 

 「真名さん、一輝は?」

 

 周りにはまだ子供達が居ます。なので、一輝には屋敷の裏の方で一旦待機してもらっていました。

 此処で話す訳にはいかなかったので星矢と紫龍、氷河に来てもらって屋敷裏に向かいます。

 

 「あ、一輝」

 

 「……」

 

 無言な一輝を見て星矢は腕を組み、睨みつけました。

 

 「おれに何か言う事あるんじゃないのか?」

 

 「……ふん」

 

 「~~こんにゃろー!」

 

 「落ち着け星矢。一輝も、星矢と真名さんが止めなかったら電流で大けがする所だったんだ。何か言葉をかけてもいいのではないか?」

 

 氷河が今にも飛び掛かりそうな星矢を抑えて、紫龍が一輝に言い放ちます。

 

 「……ふぅ、助かった。礼を言う」

 

 それを聞いた星矢はピタッっと止まり、氷河から離れ、下から一輝の顔を覗き込みます。

 

 「……なんだよ。やけに素直だな」

 

 「悪いか」

 

 言いたい事は言えという感じですね。一輝。

 

 「いや、悪い訳じゃないけどさ」

 

 ちょっとバツの悪そうな星矢。まぁ、素直に謝られるとは思っていなかったんですけら仕方ないですよね。

 

 「一輝、そろそろ行かないと……」

 

 「ああ」

 

 あ、バスに乗り遅れますね。

 

 「私も一緒に行きます」

 

 そういうと皆さんがこちらを見上げてきました。な、なんじゃぃ。

 

 「真名さん、真名さんもバスに乗るのか?」

 

 「ああ、そっちでしたか。違う違う。一輝が単体でバスまで行ったら折檻されるでしょうから、それを何とかしようかなって」

 

 それを聞いた一輝はムスッと顔を歪め、

 

 「そこまで世話にはならん」

 

 「私が嫌なんです」

 

 押し切る事にしました。

 そして、最小限の荷物を持ってバスまで一緒に行きました。おーおー、警備員さんや、辰巳さん率いる使用人さんも居ますね。

 

 「辰巳さん」

 

 「おお、真名。でかしたな。さ、一輝をこちらに……」

 

 「辰巳さん」

 

 私は辰巳さんや、他の男性方に見えるように、にっこり笑顔で

 

 「一輝にしつけという暴力、折檻等の行いをしたら……どうなるか分かりますか?」

 

 顔は笑顔に、目は笑わずに。辰巳さん達のみに向かって殺気を放ちます。

 殺気を感じ取り後退りする使用人達。

 

 「一輝は脱走しようとしたんだぞ!お前にそんな権限はない!」

 

 意外と一歩も引かない辰巳さん。汗はかいていますが、その根性だけは買います。

 

 「彼は脱走していませんよ?現に此処に居ます」

 

 「そんな事は結果論だ!俺を殴り、走り去って行ったんだぞ!」

 

 「走り去った……。だけですよね?」

 

 その証言頂きです!

 

 「別に脱走しようとして走り去ったという証拠はないですよね?」

 

 「な」

 

 だって、辰巳さんがそう言っただけで、一輝はこの通り此処に来て、バスに乗ろうとしてるだけですもの。

 

 「何か言い分はあります?」

 

 「ぐぬぬぬっ」

 

 ぐぬぬぬじゃありません。スキンヘッド。

 

 「辰巳!」

 

 「おお、お嬢様」

 

 沙織の登場です。キッと全体を見てキリリッと目を吊り上げて言いました。

 

 「おかあさまを困らせたらダメでしょう!」

 

 沙織ならそう言ってくれると信じてましたよ!

 はぁ、マジ沙織は天使です!いや、女神でした。(このネタ何度目?)

 

 「お、お嬢様……」

 

 がっくりと項垂れる辰巳さん。ざまぁ。

 

 「ほらほら、時間もないですし。はい、一輝。気を付けていってらしゃい」

 

 一輝にそう言って軽く背中を押します。

 ちょっと今のやり取りで戸惑っているのかもしれません。ごめんなさーい!

 

 「ああ……いってくる」

 

 何か後半言いました?ぼそぼそって感じで聞こえなかったんですけど。

 

 「 ? 聞こえなかったんでもう一回お願いします」

 

 「 ! なんでもない!」

 

 一輝は慌ててバスに乗り込みました。そして、沙織と一緒にバスに手を振り、見送ったのでした。

 




なんとか近い内に書けました。
仕事帰ってすぐに書き始めましたが、意外となんとかなりました。
次回もなんとかなると良いのですが……。
気合入れて頑張ります。


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星23 大切

 無事に瞬と一輝が出発して、氷河と紫龍、星矢も出発する時が来ました。

 その時に恒例のお守りを渡す役は沙織です。

 というか、自分が渡したいとの事で、親しくしてくれた公式で生き残る青銅聖闘士(星矢達含む)達にお守りを渡していました。

 その中で邪武が一番感動し、

 

 「必ず、必ず聖闘士になって帰ってきて、お嬢様をお守りします!」

 

 と意気込んでいました。その言葉に沙織は

 

 「無理をしてはいけないわ、邪武。でも、待っているわね」

 

 そう言ってにっこり笑顔の沙織を見た邪武は、大感動した!っという感じで滝涙を流し、バスに乗り込みました。

 聖闘士星矢の人達って結構泣く人多いですよね。

 まぁ、泣く程ツラい事や感動してしまうのは仕方ない?ですからね。

 私ですか?確かにツラかったり、感動した事があった時は涙目にはなりますけど、そこまでですね。思いっきり泣いた事ありません。

 あ、いや、ありました。ありました。

 沙織が初めて喋ったり、立った時ですかね?あれは感動しました。

 もうね、可愛いを連呼して思わず頬擦りしましたよ。

 我が女神の可愛さは世界一ぃぃぃいいいい!!って。

 仕方ないですよねぇ……。(しみじみ)

 そうそう、話は戻りますが、ちゃんと紫龍と氷河にもお守り渡しましたよ。

 ただ、中身が中身なので、老師とカミュにバレないか心配ですが。

 まぁ、なんとかなるでしょう!プラス思考でいきまっしょい!

 それで星矢なのですが、何?あの子。

 ツンツンしてた態度が無くなってアテナとして覚醒した沙織を守ってる時みたいな感じになっていましたよ。

 

 「沙織さん。おれ、絶対戻ってくるから」

 

 「星矢……」

 

 何、なんなの?二人の世界作ってるんですけど?君達、七歳の子供ですよね?

 なんともグラニュー糖とハチミツ、苺ジャムにスクラロースを混ぜた甘さ加減。

 ちなみにスクラロースとは!砂糖の約600倍の甘味を持つ甘味料の事です。

 甘すぎ?現実を見て下さい!あの二人の雰囲気!マジ甘ですから!

 え?六年後再会する訳ですがどうなるんでしょうね。

 ……さて、紫龍と氷河にもお守りの説明をしないと。

 

 「つまり……」

 

 「何か身体的な怪我をしたら開ければ良いんですね?」

 

 「そうです。もうダメだーって思ったら、使って下さい。細かい説明は中の紙を読むように」

 

 防水加工もしてある優れものです。

 そう言うと、へーっとお守りを見つめる二人。力作でございます。

 

 「修行は厳しいですが、二人なら大丈夫だと確信しています。身体には気を付けて下さいね」

 

 「「はい!」」

 

 良い返事です。

 

 「紫龍、氷河!」

 

 沙織が小走りでこちらにやってきます。どうやら二人の世界から戻って来た様ですね。

 

 「元気で……身体を大事にしてね?どうか、無事に戻ってきて」

 

 「はい、お嬢さんも元気で」

 

 「風邪とかに気を付けてください」

 

 三人共笑顔です。うむ、仲が良い事は良い事です。

 無事に皆さんにお守りを渡せて満足しました。

 後は皆さんの判断に任せます。

 そして、バスは動き出し、皆さんを乗せて行きました。

 沙織はちょっと涙ぐみながら手を振ってお見送りします。

 さて、後は……

 

 ”彼”をどうしましょうか?

 

 

  □■□■□■□■□■□■

 

 

 「辰巳さん」

 

 「ふん、来たか」

 

 沙織を寝かしつけた深夜、辰巳さんに頼んで地下の一室を借り、パラライズローズで麻痺させてこの時間まで放置していた一人の男性。

 

 「う”ぅう……」

 

 白銀聖闘士、烏座のコルウス。

 本来はジャミアンが烏座のハズですが、今の彼は確か、十一歳。

 まだ修行中なのでしょうね。

 恐らく彼が先代の烏座なのでしょう。

 キュアローズでほんの少し麻痺を中和します。喋れるけど動けない感じですかね。では……

 

 「で、何様でこの屋敷に忍び込んだのですか?カラス達を使い、私や使用人達、お嬢様の行動を覗いて、しばらく見かけないと思っていましたが……直に此処に来るとは。命が惜しければ正直に言いなさい」

 

 「…………」

 

 コルウスはジッとこちらを見てしばらくすると泣き出しました。

 

 「やはり……」

 

 「?」

 

 「やはり生きておいででしたか。真名様」

 

 「…………」

 

 え?ええー、狙いはまさか……

 

 「ずっと……ずっと貴女の行方を捜していたのです」

 

 私かい!!

 

 「この黄金の小宇宙の籠めてある青い薔薇、間違いない」

 

 おおう、墓穴を掘りましたか。

 

 「仮面を付けていなかったのでカラス達から聞かされた貴女の特徴等を調べてみると、聖域に居た頃の貴女にそっくりでして」

 

 え……、聖域に居た頃の事を知ってるって……スト……。

 

 「教皇もお探しになられていましたよ」

 

 さ、サガああああああ!!

 確かにあんな別れ方したから気に病んでいるだろうなって思いましたけど!

 記憶喪失だった私!”探さないで下さい”位言いなさい!……無理ですよね!分かります!

 

 「真名様、聖域に帰りましょう!教皇だけではございません!他の黄金聖闘士の方々や、下々の者達も待っています!」

 

 「……此処から離れる訳にはいきません」

 

 沙織とアイオロスから離れる訳には……。

 

 「あの娘の事ですか……?」

 

 「…………」

 

 あ、この流れ……マズイ……!

 

 「もしも、私が死んだら、娘の部屋にある窓から突撃を仕掛けて、殺すように言ってあります」

 

 「貴方、随分と私を舐めているようですね」

 

 なんてな!

 

 「!」

 

 「カラスを嗾ける事は想定済みですよ。テラスに一瞬でも入ったら最後」

 

 私の毒の薔薇がカラス達を殺します。

 

 そう最後に付け足して言い放ちました。

 冷めた目でコルウスを見つめます。

 

 「……私に対して何かするのは構いません。けれど、お嬢様に何かするのであれば、この真名、容赦はしません」

 

 私はちゃんとコルウスに見えるようにロイヤルデモンローズを構えて見せました。

 出来る事なら此処に居る間は、こういった技は使いたくはなかったのですが、聖闘士相手ではそう言っていられません。

 青銅聖闘士ならば技を使う事はないのですが、コルウスは白銀聖闘士。念の為の保険は必要です。

 別に青銅相手でも甘く見てはいけないのも分かっていますが、(例:星矢達)こういう考えが聖闘士の中では一般的な常識なのです。

 しかし、こういったある意味捨て身みたいな行動をしてコルウスは一体何を考えて動いたのか……。

 嫌な予感がします。

 …………。

 ……まさか。

 

 「コルウス、貴方。私がこの城戸邸に居る事を確信し、聖域に知らせの連絡をしてから此処に忍び込みましたね!?」

 

 ヤバいです。先手を打たれました!

 下手をしたら私が此処に居ることによって、アイオロスが見つかり、生きている事。

 ひいては、沙織の事もバレる可能性も……!

 自分の事ですが、なんて軽率だったでしょうか……。

 まさか、聖域に居た頃の生活習慣を知っているストーカーもどきが居るだなんて。不覚です。

 

 「はい、聖域にはもう知らせのカラスを送っております。どうか、真名様。聖域にお戻りください」

 

 …………。

 沙織……アイオロス……。

 

 「……ふぅ、分かりました。聖域に戻ればいいのですね」

 

 「真名!お前!」

 

 部屋の端で私達を見守っていた辰巳さんが声を荒らげます。

 連絡を入れられてしまっては、どうにもなりません。

 

 「辰巳さん。沙織を、彼を頼みます」

 

 「何を言っているんだ!そいつを始末すれば……!」

 

 「もう、手遅れですよ」

 

 「……くぅっ!」

 

 聖域に私が城戸邸に居る事が伝われば、何人もの追手が来ることでしょう。

 何故かって?七年前のあのテレポーテーション。

 あれはまさに沙織の、アテナの小宇宙だったからです。

 私が此処に居るという事は生きているアテナの傍に居るという事。

 つまり沙織を殺しに聖闘士を送ってくるでしょう。

 勿論いざとなれば私だけでも戦います。が、

 問題はアイオロスです。

 彼が生きている。

 その事はまだバレていない様子。

 けれど、もし大勢の聖闘士達が来て、黄金聖闘士まで来たら?

 沙織を守りながら、アイオロスも守る事は出来ません。

 まぁ、守るだなんてアイオロスに直接言ったら怒るでしょうけど。

 此処は私が大人しく聖域に戻った方が良さそうですね。

 

 「コルウス、この屋敷に居る人達を殺す様な事があれば……。殺しはしません。ただ、直に殺されなかった事を後悔させます」

 

 パラライズローズを取り出し、不敵に微笑みます。

 勿論、コルウスを見つめる目は笑っていません。

 

 「わかりました。この屋敷の者達に手出ししません。勿論、あの娘にも」

 

 「当たり前です」

 

 おっと、つい即答で言ってしまいました。

 でも、言葉の通り当たり前です。だって、彼女は……

 

 「では、行きましょうか」

 

 私の大切な、

 

 「聖域に」

 

 娘(女神)なのですから。

 




オリキャラ、コルウスさんです。
コルウスとはラテン語でカラスという意味です。
本当はオリジナルキャラを出すつもりはなかったんですが、出すことになりました。
苦手な方はすみません。


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星24 聖域へ

 

 光政公に挨拶をして、聖域へ行く前に沙織とアイオロスへの手紙を簡単に書き、行く準備をします。

 何故光政公には話して二人には話さないのかって?

 二人の事ですから、引き留められるのは目に見えています。

 あの二人に引き留められては、私も決心を鈍らせてしまいますからね。

 仕方のない事です。

 

 「……言い訳、になってしまいますね」

 

 「真名様、何かおっしゃいましたでしょうか?」

 

 「なんでもありませんよ。それよりも、移動手段はなんですか?瞬間移動ですか?」

 

 小宇宙での移動は大分使っていないので、久しぶりに使ってみたいとは思いますが。

 

 「いえ、”彼ら”を使います」

 

 そう言ってコルウスはカラス達を呼び寄せます。

 ……鬼〇郎かな?

 恐らく、原作で沙織を攫った時の様な移動手段なのでしょうね。

 うん、まぁ、同じですね。移動手段。

 

 「聞きますが、私もですか?」

 

 「そのつもりでしたが、真名様が瞬間移動の方が慣れているとおっしゃられるなら、そちらでも構いません」

 

 こやつ、さり気なくディスってません?捕まえた事怒ってるんですかね?

 

 「いえ、貴方の慣れた移動手段で行きましょう」

 

 合わせてやんよ!仕方ないですから!ね!

 

 「わかりました。ではこちらのカラス達を。お前達、頼むぞ」

 

 そう言うと、私を運ぶ予定のカラス達は一斉に返事をしました。

 なんか、コルウス達を見ていたら、私が拗ねているみたいな態度ですね。さっきから。

 ちょっと反省です。いい年して大人げないですね。

 

 「よろしくお願いしますね。カラスさん」

 

 カァっとひと鳴きして返事をされました。言葉が分かるとは流石カラス。

 もしくはコルウスの技量ですかね?

 そしてカラスにつり下がり、紐をブランコ状にして座って運ばれます。

 勿論、カラス達も日本からギリシアまで行くのはキツイですから休み休みに孤島などに寄ったりしながら進みます。カラスさん、ふぁいとーですよ。

 そうして、数日立つとロドリオ村付近の場所に下りました。

 懐かしいですねぇ……。

 

 「真名様、長旅お疲れ様です」

 

 「いえ、カラス達のおかげです。ありがとう」

 

 カラス達に礼を言うとやっぱりというか、ひと鳴き聞こえ、それぞれ紐を解き、木々にとまりました。頭が良いですな。

 

 「此処からは私が先導します。仮面を付けていない貴女はまるで美しい女官候補にしか見えませんので」

 

 美しいは余計じゃい。

 

 「では、お願いします」

 

 魚座の黄金聖衣を呼んで纏えば一発なんですけど、今はもうディーテのモノ。そう勝手に纏えないんですよね。

 そう思いながらロドリオ村には入らず、直接聖域に向かいます。

 しばらく歩いているとコロシアムに着き、懐かしさで周りを見回しました。

 

 「此処は変わりませんね」

 

 「はい、兵の皆も、聖闘士達も日々鍛錬しております」

 

 「鍛錬も良いですが、座学はしているのですか?」

 

 そういうとコルウスはそっぽを向いて早足で聖域方面に向かいます。

 座学は得意ではないのですね……。

 コロシアムの端に居るというのに視線を感じます。

 そこには”彼”そっくりに成長しているアイオリアの姿がありました。

 いや、本当にそっくりですね?

 

 「真名様、どうかされましたでしょうか?」

 

 「いえ、なんでもありません。行きましょう」

 

 アイオリア、また会いましょうね……。

 

 そう気持ちだけでもと思い、見つめてくるアイオリアに微笑むと彼は何故か、たじろいて目を逸らしました。

 おや?微笑む位しかしてないんですけど。

 まぁ、大丈夫ですかね?

 しかし、聖域に来てしまった訳ですから、素顔はバレても良いのです。

 もう聖闘士ではない?もどきみたいなモノですかね?

 長年仮面を被っていませんのでこの際、殺すも愛すもないですよねー。

 そんな事を歩きながら考えていると、

 

 「真名様、この先は貴女様お一人でお上りください。私はこれ以上進んではいけないとの事で……」

 

 コルウスに言われてハッとしました。

 気付いたら、もう目の前には聖域の白羊宮前まで来ていました。

 

 「わかりました。此処までありがとうございました。コルウス」

 

 「いえ、そのお言葉だけでも勿体なきお言葉。此処までお連れするのが我が役目ですので、お気になさらないでください。では、失礼します」

 

 コルウスがそういうと来た道を戻って行きました。

 さて、上りますか。果たして何人の黄金聖闘士に会うでしょう?

 白羊宮、ムウは今居ないですからさっさと行きます。

 

 「あー、居ますねぇ」

 

 上って金牛宮前に居ます。

 そう、”居る”んですよ。恐らくアルデバランが。

 私が近寄って小宇宙を探ったら見つかりましたね、コレは。

 

 「果たして、無事に通れるのでしょうか?」

 

 まぁ、女は度胸!やーってやりますよ!

 そして、金牛宮に入っていく私なのでした。

 

 「こんにちはー!」

 

 金牛宮の真ん中あたりまで来てそろそろ出会うであろうアルデバランに挨拶しました。すると、柱の陰から元々大きかったですが、成長して大きくなった訓練用の服を着たままのアルデバランが出てきました。……本当に大きいです。

 

 「ほう、挨拶とは随分と余裕なのだな。だが、この聖域の女官ではなさそうだ。名を名乗れ」

 

 すっごく余裕そうに言ってきました。さて、それでは面白みがありません。

 ちょっといたずらでもしましょうか。

 

 「ふふっ、挨拶は大事ですよ?けれども名を名乗るのは今は出来ません。ご自分で当てられよ。御仁」

 

 「ふむ、確かに挨拶は大事だが名乗らないのであれば、仕方ない。当てると言っても、手掛かりも何もないのでは無理ではないか」

 

 「そうですか。では、こうしましょう」

 

 私は人差し指を一つ上げます。

 

 「?」

 

 「一発です」

 

 にやりとアルデバランに笑いかけました。

 

 「貴方は私に一発当てれたら、私は此処を去りましょう。そして、私が五回、貴方に触れたら此処を通してください」

 

 「…………」

 

 おお、どんどんアルデバランの小宇宙が高まってきましたね。

 さて、返答は?まぁ、分かっていますがね。

 

 「ふふふ、ははははは!俺も舐められたモノよ、良いだろう。女とて、容赦はせん。かかって来い!」

 

 ふふっ、そうではないと面白みがありません。

 

 「では、失礼して……」

 

 私がそう言うと、アルデバランに向かって走り出しました。

 

 「むっ、正面から来るとは!本当に舐められているな!」

 

 アルデバランはそう言って音速5、白銀聖闘士並みの速さで私を掴みに動きました。舐めているのは……

 

 「貴方ですよ!アルデバラン!」

 

 「むっ!?」

 

 光速で動く事が出来る黄金聖闘士であった私に、音速は止まって見えます。

 私を掴もうとしたアルデバランの手は、触れるか触れないかの瞬間に高く飛び上がり、アルデバランの頭部に手を置いて、改めて飛び上がりました。

 そして、アルデバランの背後に着地して向き直り、背中にタッチして直に離れます。思った通り、腕を伸ばし振り回す形で私に攻撃してきました。遅いですよ!

 

 「これで一、二回目」

 

 「くっ、お前、何者だ?俺の動きが分かっていた様だが……」

 

 ふふふっ、それは

 

 「秘密です。さて、あと三回ですよ?」

 

 「……どうやら舐めていたのは確かに、俺の方だったようだ。だが!」

 

 むん!と一声上げて気合を入れたようですね。そうでなくては!

 

 「今度はそうはいかん!」

 

 そう言い放ち、アルデバランの必殺技、グレートホーンを放つ態勢になりました。

 流石に黄金聖衣を着ていないので威力は多少変わりますが、着ないでくれて助かります。

 もしも着ていたら私も魚座の黄金聖衣を着ないと一発掠っただけでも大ダメージですからね。ある意味感謝です。

 

 「では、私もヒントでも出しますか!」

 

 そう言い、黄色い薔薇、パラライズローズを取り出します。

 聖域に居る人物達でパラライズローズを知っているのはアイオロスとサガ、年中者の三人のみ。アルデバランにはどう映るでしょうね?

 

 「薔薇……?アフロディーテの弟子か何かか?」

 

 なるほど、そう来ますか。

 

 「さて、どうでしょう?」

 

 「それに、俺は名乗っていないのに何故お前は俺の名を知っている?」

 

 おおう、バレましたか。さり気なく言ったつもりでしたので、意外と早かったですね。

 

 「それは……」

 

 「……それは?」

 

 「秘密です!」

 

 にぱっ!っと微笑みます。

 

 「ふっ、流石にそうそう教えてはくれんか」

 

 「そういう事です」

 

 「ならば、言いたくなる様にするまで!」

 

 気合をためる様な態勢になり、小宇宙が高まります。来ますね!

 

 「【グレートホーン】!!」

 

 勢いをつけて両手を突き出し、必殺技を繰り出しました。

 そして、私が立っていた場所まで黄金の小宇宙が襲いましたが、先程よりも高く飛び上がり、グレートホーンから逃れます。今度はアルデバランの真横に飛び降り、突き出している腕、肩にタッチして直に離れます。

 ちなみにパラライズローズを刺してからですけどね。

 すると、グレートホーンの技を放ち終わった時、アルデバランがガクッと膝をつきます。

 

 「これであと、一回」

 

 「くっ、このしびれる様な感覚は……!この薔薇か!ちぃっ!」

 

 パラライズローズをむしり取りましたが、もうすでに遅し。ですよ?

 

 「はい、チャックメイトです」

 

 私がそう言って近付いた瞬間、横に腕を振り上げ、私は後ろへ下がります。

 

 「そう簡単に上がらせてなるものか……!」

 

 「…………」

 

 仕方ないですねぇ。

 私は猛り立つ野牛と化しかけているアルデバランに近付かない様に遠くから薔薇を取り出し、投げつけ、また腕を振り上げる動作をした瞬間を狙ってもう一度薔薇を投げました。

 青い薔薇を。

 それを見たアルデバランは驚愕に目を染めて己の肩に刺さるキュアローズを見ました。 

 

 「お前……、いや、貴女は……。まさか」

 

 「やっと、わかりました?アルデバラン?」

 

 そう言いながら近づき、膝をついている為、私より低くなったアルデバランの頭に手を置き、撫でます。

 

 「大きくなりましたね、アルデバラン。元々私より大きかったですがね」

 

 「真名……真名なのか……?」

 

 そう言って確認してくるアルデバランに私は微笑みかけました。

 




戦闘シーン入れる予定なかったのに、入れてしまった……。
上手く書けたか不安ですが、ちゃんと戦闘してます?怖ぁ……。
また、続き書けたら直に投稿しますのでお待ちください。


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星25 帰還

 「ふふっ、お久しぶりですね。アルデバラン」

 

 口元を抑えてクスリと笑います。

 するとアルデバランは

 

 「真名、貴女は今まで何処に居たのだ?この七年、聖域の聖闘士達が探しに探して見つけられなかったんだぞ?」

 

 ……七年ずっととか、その執念が怖いです。果たして誰の執念なんでしょうね?

 

 「すみません、私個人の事情です。聞かないでくれるとありがたいのですが……」

 

 誤魔化せたらなーっと思い、目を伏せ、表情を暗くします。

 私的には迫真の演技だと思うんですけど、いかに?

 

 「ふむ……真名がそんなにも話したくはないとは……、分かった。気にはなるが、聞かないでおこう」

 

 流石アルデバラン!話が分かります!

 

 「ありがとうございます。アルデバラン」

 

 「しかし、真名。貴女は聖闘士を辞めてしまったのか?仮面を付けていないのはそういう意味なのだろう?」

 

 床に座り込み立っている私を見上げるアルデバラン。座ってもギリギリ私の方が高いと言ったところでしょうか。大きいなぁ。

 

 「そうですね。今では聖闘士もどきみたいなモノですかね?完璧に辞めた訳ではないのですが、仮面を付けていないのは流れです」

 

 「……流れ?」

 

 「流れです」

 

 しばらく無言でしたが、くっくっくと小さく笑う声がアルデバランからします。笑える要素は何処ですか?

 

 「貴女は何年経っても変わらんな。なんだか懐かしい……。嬉しく思うぞ」

 

 あ、懐かしくで思い出しました。

 

 「アルデバラン、私が書いた手紙読みました?」

 

 そう言って確認します。

 

 「ああ、読んだ。”力だけでなく、速さにも経験値を振りなさい”と書いてあったからな。これでも速くなった方なんだ」

 

 ふむふむ、なるほど。これは気合を入れて

 

 「今度、内緒で速くなる様になる訓練表でも作りますか」

 

 「今度?真名、これからはずっと聖域に居るのか?」

 

 まぁ、うん。

 

 「そういう事、ですかねー?」

 

 「そ、そうなのか……。また賑やかになるかもな。昔の様に」

 

 その事なのですが……

 

 「アルデバラン」

 

 「なんだ?」

 

 「私が聖域に帰って来た事は誰にも言わないでください」

 

 その言葉を聞いたアルデバランは驚愕に目を見開きました。

 

 「な、何を言っている!何故秘密にしなければいけないんだ?」

 

 そりゃそうですよねー。私でもそう思いますよ、うん。

 

 「実は、私が戻ってきたのはアテナの為なんです」(※嘘ではありません)

 

 「アテナの……?」

 

 「はい、そうです。私が聖闘士もどきみたいな事になっているのも、アテナの為でして」(※嘘ではありません)

 

 「…………」

 

 「私は陰からアテナをお守りする為に此処にいるのですよ。なので、秘密にしなければなりません」(※嘘ではありません)

 

 「……そう、なのか」

 

 「はい。アルデバランの負担になってしまう様で、すみません」

 

 すみません、アルデバラン。本当は貴方とも会うつもりはなかったのですが……、任務に出ているか、訓練に行っているかとも願っていたのですけど。

 

 「私との事は新しく入った女官といった風に接して頂けると助かります」

 

 「真名を女官として見ろ……と?」

 

 なんですか、その「何を言っているんだ?」っという顔は。

 

 「まぁ、今更感はするでしょうけど我慢して下さい」

 

 「あ、ああ。わかった」

 

 約束ですよ!

 

 「はい、アルデバラン!」

 

 「?」

 

 私はお約束恒例の小指を突き出し、

 

 「指切りです!」

 

 にっこりとアルデバランに笑いかけました。

 するとアルデバランは意表を突かれたという顔になり、高々に笑い出しました。な、なんですか?

 「はははははは!こういうやり取りも、懐かしいな!真名が真名のままで安心したぞ!……わかった。このアルデバラン、牡牛座の黄金聖衣に誓おう!秘密を守ると!」

 

 おおう、ちょっと大げさですかね。

 でも、悪サガからアルデバランを守る為です。ここは良しとしましょう。

 そしてアルデバランと指切りをして、さて、そろそろ行きますか。

 

 「では、アルデバラン。私はそろそろ行かねば」

 

 「ふむ、そうか……。また、会えるんだろうな?」

 

 アルデバランにしては珍しく不安顔ですね。

 ああ、そうか。私が眠っている間、サガと年中組の三人位しか聖域に居た事は知らなかったみたいでしたし、沙織にテレポーテーションされた分も足すと、丁度七年居なかった事になるんですね。

 

 「会えますよ。同じ聖域に居るのですから」

 

 「 ! そうか、うむ、そうだな。すまんな!変な事を聞いてしまった!」

 

 「いえいえ、では、また会いましょう」

 

 そう言って手を振り、次の宮、双児宮に向かうのでした。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「さてはて、流石に此処に居る訳ないでしょうけど、一応探りますか」

 

 こうして聖域を上るのは久しぶりでしたので、懐かしみながら上ってしまいました。

 双児宮ではよくカノンをおちょ……こほん。一緒に追いかけっこしましたね!

 そんな事もあったなー、なんて現実逃避してるばやいではないのです。

 な、なんで居るんですかー!?

 

 「さ、サガ……!?」

 

 うわっ、思いかけず大きな声が出てしまいましたよ。

 双児宮にまだ入った訳ではないので、キョロキョロと周りを見渡します。

 だ、誰も居ませんよね?

 

 ━━━━━ふん、やっと来たか

 

 おおう、噂をすれば影?ですね。

 

 ━━━━━さっさと入れ。”私”がお待ちかねだぞ?

 

 うおぅ、さり気なく”私”とか言っていましたが、この言い方は……多分ですけど、

 

 「悪サガっぽいですね……」

 

 ぽつりと呟いたつもりだったんですけど、

 

 ━━━━━聞こえているぞ、誰が”悪”サガだ。誰が。

 

 いや、あんたですよ。あんた。

 でも、聞こえていたとか、どんだけ耳が良いんですか。

 地獄耳ですか、そうですか。

 

 ━━━━━……いい加減にしろ、さっさと入って来い。

 

 「はい、わかりました」

 

 こういう時は、返事は一回で済ませた方が良いんですよね。

 ワザとらしく二回言うと怒られますから、要注意です。

 ……ふっ、経験者は語る、ですよ。

 まぁ、此処でうだうだしていても仕方ないので、言われた通りに双児宮に入りました。

 

 「……お久しぶりですね。サガ」

 

 双児宮に入ってしばらくすると、見覚えのある後ろ姿がありました。

 その後ろ姿に思わず挨拶をしたら、

 

 「……真名!」

 

 っと、叫ぶ様に呼ばれて顔に影が出来たと思ったら、抱きしめられて「なんじゃい!?」と思って顔を上げたら、またですよ!また!

 こう、感動の再会?的な?感じにいつなりました!?

 またキスされてるんですけど!?

 何故避けなかったのか?避けれるハズないですよ!滅茶苦茶速かったですよ!?

 光速越えてませんでした?って、聞きたい位ですよ!

 この人、キスが好きですね!?本当になんなんですか!

 ……ああ、もう!仕方ないですね。

 しばらくこうしててあげますよ!ちくせう!

 




はい、自ら来ました。
サガ様でござい。
真名もサガの苦悩を知っているので、好きにさせてるという感じでしょうか。
ちゃんとサガの事は好きみたいですけど、恋愛感情なのかは実は分かってないという……。
ある意味悪い女かもしれんです。(笑)
さて、また、お手手と相談して書かねば。
がーんばりますよ!


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星26 邂逅

 えー、あれから三分?五分経ったでしょうか。

 キスされている最中?にサガがびくりと動いたかと思えば、私を抱きしめていた手は肩に置かれ、ベリッと引き剥がされました。

 またもや、なんじゃい?と思って閉じていた目を開けると……

 首から上が全部真っ赤になっていて、正に動揺して涙目にもなってます。っといった顔をしているサガが居ました。

 コレは絶対に脳内で羞恥を感じながら大混乱してる感じです。

 ……貴方はどこの乙女ですか?

 キスしてきたのはそっちで、そういう反応をするのは、どちらかというと私の方なのでは?とか思ったり。

 とりあえず、正気に戻さなければと私はサガに往復ビンタを食らわすことにしました。乙女のキスは安くないのです。

 五、六回叩いた時に手を握られ、叩くのを止められました。

 

 「……痛いのだが」

 

 「痛くしてますから」

 

 つい、にっこりと微笑んでしまいました。きっと今の笑顔はとても良い顔してると思います。

 それに、元々涙目になっていたサガですが、まるでビンタされて涙目になった様に見えてしまいますね。

 ちょっとおかしくてクスクス笑うとサガはびっくりした顔をした後にほんのりと微笑んでいました。

 だがしかし、その頬は手形は付いていないものの、真っ赤になったままでしたので余計に笑いが……ふふふっ。

 なんというか殺伐とした雰囲気になるかもとか思いましたが、そんな事はなく、穏やかな雰囲気が双児宮を包んでいました。

 

 「真名……よく、帰って来てくれた……」

 

 「まぁ、意外と長い間見つからなかった事が、奇跡でしたからね。長い休暇をもらったと思えば、ですかね」

 

 と、まぁ、そういう事にして、沙織やアイオロスについては、はぐらかさなければ……。

 もし、また幻朧魔皇拳を打たれたら、今であれば完成しているでしょうし、完璧に洗脳されて居場所を吐かされたなら……ヤバいです。

 絶対にどんな事をしても二人の事は言いませんよ。もしもの事があったら……。

 うん、それは最後の手段です。

 自惚れではなければ沙織に泣かれてしまいますからね。それだけは勘弁です。

 

 「ところでサガ。白髪のサガは今どうしているんですか?先ほどテレパシーで話しかけられていたんですけど」

 

 ふと、先程の事を思い出しました。なんだか、今のサガは普通にしてますけど、支配力では悪サガの方が凄そうなのですが。

 

 「ああ、ヤツは今、気絶している」

 

 「は?」

 

 気絶?

 

 「真名の声を聴いたら、居ても立っても居られなくなってしまって……」

 

 「…………」

 

 おおい!それでいいのですか悪サガさん!?呆気なさ過ぎでしょう!

 サガもサガです!なぜその勢いをアテナ暗殺しかけていた時に出さなかったのか!

 いえ、分かってはいるんです……。その時に本格的に身体を乗っ取られて抗う術が見つからなくて苦しんでいた事は!

 でも、だがしかし!駄菓子菓子ですよ!そう思ってしまうのは仕方ないと思うんです!

 こらこら、そこで照れてる場合ではないのですよ。

 180㎝以上の大きな男が照れも……そうだった。

 見目は男性的ですが大変麗しいですから、気持ち悪い処か、母性を擽られるというか……。

 こやつ、お、恐ろしい。(ごくり)

 ま、まぁ、それはその辺の端っこにでも置いておいて。

 

 「とりあえず、私を見つけたのは烏座のコルウスですから、彼に感謝する事ですね。本当は帰ってくるつもりはなかったんですから」

 

 拗ねてますという雰囲気を出してプイっと顔を背けました。

 

 「……真名」

 

 「なんですか?」

 

 「コルウスならば……死んだぞ」

 

 …………はい?

 

 「何を……言って……」

 

 「コルウスは死んだと言った」

 

 死んだ……?

 

 「真名よ。何故私がこの双児宮に居るのか、分かるか?」

 

 ま、まさか……!!

 

 「お前を迎えに来たのは確かだが、他にも用事があってな」

 

 「 !? サガ、貴方、気絶しているのではなかったのですか!?」

 

 サガの髪が白くなって……!

 

 「くっくっく、私がそう簡単に気を失うハズなかろう。……確かに、意識は朦朧としていたが」

 

 最後!最後、小声でしたけど聞こえてますよ!

 完璧に髪が白くなり、目は真っ赤に染まって顔はサガなのに別人の様になってしまいました。

 そう、この姿、人格こそが悪そのもの。私が悪サガと呼んでいる者です。

 

 「私がこの聖域で別れた後、そんなに時間は経っていないハズ。双児宮に元々居たとしても私と別れたばかりの彼にどうやって……!」

 

 金牛宮だって通らなければならないのに!

 

 「真名、私は、いや、”私”が昔からしていた事をしに出掛けた。そのついでにヤツには死んでもらった。それだけの事よ」

 

 昔からしていた事……?

 

 「 ! 慰問ですか!」

 

 そう、私が聖域に居た頃も教皇様は勿論、サガやアイオロス、黄金聖闘士の皆は聖闘士を知っているロドリオ村には良く慰問に訪れいました。

 今でもロドリオ村に慰問に行く事は珍しい事ではありません。特に、教皇は。

 

 「そう、慰問の帰りのついでだ。金牛宮では、随分と遊んでいた様だな」

 

 見られていましたか……。

 私だって小宇宙を最低限に抑える事が出来るんです。サガに出来ないハズがないです。

 

 「サガ、なぜコルウスを殺したんですか?彼には咎なんて無いハズですよ」

 

 「お前を見つけて連れてきた。それで十分」

 

 は?

 

 「私を見つ……そんな事で!?」

 

 何言ってるんですか!?この人!

 

 「見つけてきた事は褒めてやっても良いが、お前の事は誰にも知られる訳にはいかんのだ。本来ならばアルデバランにも消えてもらわなければならないが、ヤツは黄金聖闘士。私とてどうなるかわからん。お前が秘密にすると約束させなければ今頃は幻朧魔皇拳を使って洗脳する所だった」

 

 ……くっ……コルウス、すみません。

 

 「……はぁ、コルウスが亡くなって、不審に思われてしまったらどうするんですか?死体だって見つかれば余計ですよ?」

 

 「それならば、デスマスクに命じている。今頃は処理している頃だろう」

 

 用意周到ですね、この人。

 

 「ちなみに、今、この聖域に居る黄金聖闘士は?」

 

 「アイオリアはコロシアム、シャカとミロは任務で不在。カミュはシベリア、デスマスクは知っての通り死体を処理をしている所で、シュラとアフロディーテは自宮に居る」

 

 見事にアルデバラン以外出払ってますね……。

 

 「……もしかして、コルウスに連絡をもらってから、今日私が帰る事を見通して出払わせましたね?」

 

 「アルデバランに関しては、ヤツの任務が簡単過ぎてしまったからな。早くに戻ってきてしまったのは予定外だった」

 

 おおう、アルデバラン、危なかった……。約束させて良かったです。

 

 「アイオリアが聖域に一番近いですし、さっさと行きましょう。見つかったら厄介です」

 

 これ以上犠牲を出す訳にはいきません。

 

 「ふん、お前に免じてさっさと上ってやる。感謝しろ」

 

 「はい、感謝します。だから、早く上に行きますよ」

 

 そう言って、サガの手を掴み、急かしながら上るのでした。

 善サガも面倒くさいですが、悪サガも面倒くさいですね。まったく、流石同一人物。そういう所は同じですね。

 そういえば、カノンもなんだかんだと面倒な人でしたね。すぐ怒るし、拗ねるし。

 ……流石双子。面倒くさいのバーゲンセールですね。悪の人格を入れると三人も面倒くさい人が居ますよ。

 いや、そういえば黄金聖闘士で面倒くさくない人って少ないですよね。

 双子座だけじゃなかったですね。

 ……頭痛が痛いです。(ワザと言っています)

 幼い頃は皆さん素直で良い子でしたねぇ。あ、多分今でも良い子でしょうね!まだ十四歳のハズです。

 あれ、もしかして年少組は思春期入ってます?難しいお年頃ってヤツです?

 アルデバランからはそんな感じはしませんでしたけど……

 うん、気にしないでおきましょう。

 




サガしか出ない話でしたね。(お前が書いたんやろ)
黄金聖闘士が好きだ!だが、双子座も好きなんだ!
サガは無意識に天然入ってるって信じてる!(お前だけじゃい)
ちなみに題名の「邂逅」は久しぶりに会うという意味で「邂逅」です。
……さーて、次回もどんな感じになるでしょうかね!
またお手手と相談です。(またか)
がんばって書くぞー!


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星27 邂逅2

 あれから一気に双魚宮まで上りました。

 え?他の宮の様子を教えろですか?

 やっぱりというか、シュラとアフロディーテしか会わなかったですよ?

 デス君は多分、そろそろ帰ってくるんじゃないでしょうか。

 ちなみに、シュラに会った時は何も言われなかったですけど、頭を撫でられて、ディーテには穏やかな表情で軽いハグをされました。

 ちょっとほっこりしたのは内緒です。

 しばらくすると見覚えのある銀髪の少年が階段を上ってきました。

 あれは、デス君ですね!

 

 「デス君!お久しぶりです」

 

 「あ?ああ、久しぶり」

 

 相変わらずそっけないですねぇ。

 まぁ、らしいといえば、らしいですけど。

 

 「おおー、こうしてみると皆さん、大きくなりましたねぇ。昔は私位だったのに」

 

 「流石にあれから六年も経ってるんだ。私達だって成長するさ」

 

 ディーテがはにかみながら言います。

 ディーテ……こうして見ると本当に美しいです。

 ちゃんと男の人で、声も男性的なのに女性らしい美しさを持っているとか、美の女神アフロディーテにも負けてないんでない?

 

 「姉さん、記憶が戻っているのはもう分かっているから、はっきり言うけど、私は!見た目はこうだけれど!男だから!うっとりしない!」

 

 「……ハッ!危ない危ない。危うく見惚れて魂が飛んでいく所でした!」

 

 っぶねーです。私の弟分、最高にふつくしいのでぼーっとしちゃいましたよ。

 「たはは」とディーテに笑って後頭部を片手で撫でていたら、後ろから目隠しされました。?なんでしょう?

 

 「……サガ、大丈夫。姉さんだよ?私に惚れたりしないって」

 

 「だが……」

 

 「こいつに惚れた腫れたとかって認識できんのかよ?」

 

 「というか、サガ、いつの間に戻ったんだ」

 

 うーん、話の流れ的にこの私の目を覆ってるのはサガの手のようですね。

 ん?ディーテに惚れる……?

 

 「ディーテは弟分ですよ?」

 

 「ほら、だから言っているだろう?心配ないって」

 

 「………うむ」

 

 サガは何を不安がっているのでしょう?謎です。そろそろ目を覆っている手を退かせてはいただけないものですかねぇ。

 あ、そうそう

 

 「デス君、後で双魚宮裏です」

 

 「なんでだよ!!」

 

 忘れてませんよ、さっきの発言。誰が認識障害だって?誰が。

 

 「誰もそこまで言っとらんわ!」

 

 「むむ、心を読むだなんて生意気ですよ。カニさん」

 

 「本当にお前は相変わらずだな!?」

 

 うむ、このやり取り、懐かしいですね。こうでなくては。

 

 「で、サガ、そろそろ手を退かせてくださいな。何も見えませんよー」

 

 さっきからずっと目隠しされてるんですが、早く退かせてくださいー。

 

 「あ、ああ。すまなかった」

 

 そういって手を退かせて頂きました。ふう、視界が明るいです。

 

 「しかし、今日は随分と長くいつものサガが出ているな」

 

 シュラがちょっと疑問に思っている事を言った感じですね。何ですか?悪サガばかり出て来てるんですか?

 

 「大方、姉さんが居るからじゃないかな?ふふっ、これこそ”愛”の力ってヤツかもね」

 

 うおっ、恥ずかしい発言、ありがとうございます、ディーテ。

 

 「けっ、そんなお綺麗な理由じゃねーだろ」

 

 デス君がジト目でこちらを見つめながら言います。なんでしょう?

 

 「どうせ今は希望を持たせて、後で絶望に落とす様な事でもするんじゃねーの?いつものサガは邪魔だろうからな。まぁ、碌な事は考えてないだろうよ」

 

 「おおー」

 

 思わず拍手してしまいました。予想だけでも出来るデス君はすごいです。

 多分考え方が似てるのかもしれませんね。

 

 「おい、今失礼な事考えなかったか?」

 

 「いいえ、全然?」

 

 勘がいいですね。危ない危ない。

 

 「……私としては一生出てこなくても良いのだが」

 

 そりゃそうですよね。悪サガが出て来てしまったから、沙織とアイオロスは……。

 ん?悪サガが出てきたのって一応カノンが原因だったハズですけど、別にカノンって悪童なんて言われるような事してませんよね?

 それにサガとは結構仲良かったハズです。どうやって悪へ誘惑したんでしょう?

 あれー??

 ま、まぁ、とりあえず、今の聖域は悪サガに支配されている様なモノですからね。

 察するに正体がバレそうになる、もしくはバレたりする等になると、その人は殺されるみたいです。

 良くそれで今までバレなかったものですわ。

 一応不審に感じていた人が居た様な描写はありましたから完璧とまではいかなかったみたいですけど。

 それに特にこう、混乱してるーとか、混沌としてるーとかってないんですよね。

 悪サガがちゃんとお仕事等しているようには感じません。どうしてるんでしょう?

 

 「真名、ヤツがまともに執務等していると思うか?」

 

 「ぶっちゃけ、思いません」

 

 「本当にぶっちゃけやがった」

 

 「しかも即答」

 

 「流石、真名だな」

 

 こらこら、三人共どういう意味ですか。

 

 「執務や慰問等は、全てこのサガがやっている」

 

 「え、彼は?」

 

 「…………」

 

 めっちゃ眉をひそめて黙ってますよ。よっぽど言いたくないんですね。

 

 「それなら俺、女侍らせながらワイン片手に優雅にしてた所見たぜ?」

 

 「デスマスク!!」

 

 おや、それはアニメでやってませんでしたっけ?

 しかし、そうですか。侍らせてたんですか。そうですか……。

 

 「……真名?」

 

 「ん?」

 

 なんですか?四人共、身を寄せ合って私から離れるとは。

 

 「お、怒っているのか?」

 

 「怒る?何に対してですか?」

 

 ふふっ、ちょっとモヤッとしましたが、それだけですよ。

 そう、そ れ だ け ですよー。

 

 「……サガ、お前のせいだぞ」

 

 「私か!?」

 

 「どちらかと言えば真実とはいえ、はっきり言ったデスマスクが悪い気がするのは俺だけか?」

 

 「私としてはどっちもだと思う。サガは……姉さんの言葉を借りるなら”仕方がない”事だという感じかと……」

 

 何やらボソボソと何か話してますけど、なんでしょうね?

 まぁ、それはそれとして

 

 「所でサガ」

 

 「 !? な、なんだ?」

 

 そんなにビックリしなくても……

 

 「さっきも聞きましたけど、執務とかは貴方がしてるんですよね?」

 

 「そうだが?」

 

 「全部終わらせて来たんですか?」

 

 そう聞いた瞬間、サガの顔色が悪くなりました。

 そして、彼は

 

 「真名、すまない。私は……私はこれからやる事がある。それが終わったらまた会おう。デスマスク、シュラ、アフロディーテ。後は頼む」

 

 そう言って教皇宮に向かいながら仮面を付け、兜をかぶりました。

 なるほど、これは

 

 「終わって、ないんですね……」

 

 多分ですけど、私の事を知ったので”執務なんぞしてられるか!”みたいな感じで気分転換も兼て慰問に行き、そのついでにコルウスを始末。

 そして、私に会いに来たと。

 なんというか、サガ、改めてコルウス、すみません。

 理由がほとんど私のせいとか……。笑えませんねぇ……。

 




こんなお話の終わり方ですみません。
中盤あたりまではお話出来てたんですけど、後半難産でした。
毎回の事ですが短くてすみません!
もう少し頑張ります!


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星28 聖域の日常3

 

 あの双魚宮での再会から一年経ちました。

 聖域に来て私は何をして過ごしているかというと……

 

 「サガ……サガ!起きてください」

 

 「むっ……」

 

 まずは何故かサガの抱き枕兼、目覚まし時計役になってます。

 え?何故そんな事に?って?私が知りたいですよ。

 最初はさて寝るかーってなった時に悪サガが私を抱えてベッドに運ばれて抱きしめられたのが初めでした。

 正になんでやねんでしたよ。

 え?身体の関係になった?青少年達よ!すまんな、すまん!そんな艶やかな関係になっておらんのですよ!

 純粋に人肌恋しいだけみたいな感じで抱きしめられてました。

 最初の朝、起きたらその時は先にサガが起きていて、ベッド下でガックリと項垂れて何かブツブツと顔を真っ赤にさせて呟いてました。

 なんて言っていたんでしょうね?聞こえませんでしたよ。

 それから毎夜、夜になると悪サガは私を自身の寝室に連れて行き、抱き枕にするのが日常化してきました。

 てっきり、サガへの嫌がらせ(実際、最初の頃元のサガに戻った際、すっごく狼狽えてました)にやっている事なのでは?と思っていましたが、意外と違う様で私を抱き締めてぐっすり眠ってました。

 私ってマイナスイオン的なものでも発してるんでしょうか?

 まぁ、とりあえず、元のサガも日にちが経つに連れて、慣れてきたのか今ではぐっすり寝ています。

 ちなみに、こんな風にサガが眠れるようになったのは実は半年前の事でして、それまでは執務室で書類と睨めっこしてました。

 まさに徹夜で。

 悪サガが仕事をしないので、本当にサガが出てくる時でないと仕事が進まず、仮面が無かったら目の下の隈は直にバレるでしょうね。

 そんな訳で、私は教皇直属の秘書みたいな事をする事に。

 ……私、何やってるんでしょうね?

 沙織やアイオロス、星矢達が心配なのにサガを助ける事をしている……。

 ……うう、だって、ほっとけないんですもの!

 なんていうか、再会してしばらくした時にちょっと久しぶりにクッキーを焼いたので、サガに差し入れに行ったんですが、そこで一心不乱に書類と向き合っているサガを見て

 

 「大丈夫ですか?サガ。後は分かる範囲で整理位はしておきますから、焼いたクッキーでも食べて休憩して下さい」

 

 そう言ったら、懸命に動かしていた手を止めてこちらを見つめたかと思うと、ポロッとサガの目から涙が出てきて静かに泣いていました。

 すっごく驚きましたね!

 詳しく話を聞くと、ディーテとシュラが手伝ってくれるらしいのだが、黄金聖闘士の役目もあるので偶にのみ手伝ってくれていたのですが、思ったよりも忙しくなってしまったので、長い間ずっと一人で処理していたそうで……。

 デス君?彼がお手伝いすると思いますか?

 私は思いません。ええ、全くもってしないでしょうね。

 そんでもって感動して泣いてしまったとか……。

 どんだけですか!?サガ、マジで精神的に参ってますね!?

 とりあえず、精神的に疲れているのであればと、双魚宮にディーテに頼んでおいたハーブティーの茶葉を取りに向かい、サガの元へ戻ってお茶を入れました。

 ハーブティーには心を落ち着かせる効果があるので今のサガには丁度いいでしょう。

 ストレスやイライラ、不安と不眠で悩む方にはお勧めです。

 ただ、ブレンドを間違えると逆効果だと聞きました。(城戸邸の使用人さんから教わりました)

 気を付けなければ!

 まぁ、とりあえず教わった通りに淹れたので大丈夫でしょう。

 そして、それがキッカケとなって手伝う事になりました。

 やってみて分かりましたが、毎日ちゃんと仕事をしていれば徹夜しなくても夕方には終わって後は自由時間が出来るみたいですね。

 おのれ、悪サガ。

 それで、微力ながら私も手伝う事によって睡眠が出来るようになった、という訳です。

 しかし、何故悪サガは私を寝室に連れて行くのか……、謎のままです。

 まぁ、それは良いのです。慣れましたので。

 一番苦労したのは聖域に居る黄金聖闘士達です。

 特に私の存在を知っているアルデバラン。

 彼にはこっそりと素早さを上げる為の訓練表をこっそり渡したり、たまにこっそりと会いに行ったりしました。

 え?正体がバレないのかって?

 大丈夫です!何故なら、仮面を付けている姿しかアルデバラン以外の年少組は知らないからです!

 聖域を通る時、聖域の新しい女官として特に喋らず、挨拶はお辞儀をする感じですね。

 あまり喋る姿も見せていないので声も聞かせていない訳で。

 なので、バレる心配は無問題!(多分)

 

 「ふむー、この一年、こっそりするのが慣れてしまいましたね」

 

 「姉さんの事が知られたらサガや私達が困るからね。悪いけど、我慢してもらうしかないんだよ」

 

 「分かっていますよ。それにしても、花園が残っていたのはありがたかったですね。ディーテがお世話してくれたお蔭です」

 

 そうなんです。私が居なかった七年間、ディーテが私の花園のお世話をしてくれていたんです。とても嬉しかったですね。

 

 「薔薇を育てるついでだよ、ついで」

 

 「ふふっ、はい。そういう事にしておきますね」

 

 「本当なのに……」とちょっと拗ねた様に呟いていましたが、分かってしまいますよ。

 ちゃんと植物の種類別に肥料を与えていた事、雑草も抜いてくれていた事、色々して下さっていたのが、まるわかりな状態でした。

 綺麗でしたもの。

 

 「それにしても、姉さん、元々お茶を入れるのが上手かったけど、やっぱり更に腕を上げたよね。前に居たところでは使用人の様な事をしていたからかな?」

 

 おおっと、また来ましたね。探りが。

 

 「ふっふっふー、こう見えてメイド見習いを卒業して正式なメイド業をしていたんです。流石にお茶の入れ方ぐらい覚えますよ」

 

 「サガの話では”お嬢様”とやらに仕えてたって聞いたけど?」

 

 「ええ、孫娘さんでしたよ。可愛い方でした」

 

 「心残りはないの?その”お嬢様”には」

 

 「ありますよ。すっごく楽しくて遣り甲斐のある”仕事”でしたから」

 

 「”仕事”……ねぇ」

 

 「他に例えようがないですよ?」

 

 「ふむ……」

 

 ちょっと納得いかなそうな顔をしていますが、これ以上は喋るつもりはありませんよ?ディーテ。

 

 「まぁ、いいか。あ、姉さん、紅茶お替り」

 

 「はいはい」

 

 そうしてお茶会は続き、夕方近くになるとそろそろサガの仕事がひと段落します。

 お手伝いするハズの私が何故ディーテとお茶会をしていたのか。

 純粋にお休みだったんですよ。

 それ以外にありませんて。

 そして、サガはお仕事が終わるとお風呂に入りに行きます。

 そこに出くわさない様に気を付けます。

 またまた何故かって?

 清い関係ですけど、悪サガには時々貞操の危機にさらされた事、何度かあるんですよ。お風呂で。

 何故か寝る時は大丈夫なのに、お風呂場でって。どういうことなの?

 そう、聞きたいです。はい。

 まぁ、そういう危機が何度かあった時はサガが助けてくれていましたが、私自身もお風呂場に行かない様に気を付けてます。

 時間も把握してますからね。

 お風呂はサガが元々お風呂好きだったので元は一緒の悪サガもお風呂が好きみたいなんですよね。

 昼間もたまに入ってますし。

 本当、好きですねぇ……。まぁ、お風呂は心の?命の?洗濯とも言いますし。

 サガには必要でしょうね。

 ストレス的な意味で。

 ファイト!サガ!負けるな、サガ!応援してますよ!

 




もう一年か。早いなぁ……。
はい、すみません。
短いうえにまるで中途半端な終わり方してますね。
次回はもうちょっと長く書けたらいいなって思っています。
思っているだけだろう?わかってますね!(ごめんなさい)
次回もお手手と相談です。がむばります!(誤字にあらず)


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星29 一年前

 さて、私が聖域に来て五年、後一年で原作突入です。

 いやー、早いような長いような、よく分からない様な。

 聞いてくださいよ、教皇宮と双魚宮からほとんど離れなかったんですけど、シャカにバレそうになりました。

 そうですよね。声さえ聴ければバレる可能性大な人ですからね。

 だって、彼は視覚ではなく、聴覚と小宇宙で判断してたんですから。

 普段は一般の女官と変わらない位の小宇宙に抑えてますが、声だけはそうもいきません。

 まぁ、ちょっとは意識して声を変えてるんですけど、年中組に練習相手になってもらったんですが、案の定というか、最初は笑われました。

 特にデス君。

 勿論、双魚宮裏行きですけどね。(にっこり)

 そうそう、ミロや、たまにカミュにも会いました。

 全っ然気付かれませんね!

 一応、不審というか、疑問には思われた事があるのでは?って思うでしょうけど……。

 私の存在ってそんな覚えられない程印象なかったんでしょか?

 それを丁度一緒に居たシュラに聞いてみると

 

 「それはない。絶対にない」

 

 滅茶苦茶力いっぱいに否定されました。声がマジでした。

 

 「あ、そうなのですね……」

 

 とりあえず、信じる事にしました。顔も真顔でしたのでちょっと怖かったです。

 ちなみにカミュにはたまにとか言いましたけど、本当に極たまにしか聖域には居ません。

 まぁ、氷河を育てているんですから、それは当たり前なんでしょうけど。

 ただ、召集されるとちゃんと来る事から、悪サガから反逆!って思われてないみたいですね。

 良かったです……。

 それから、ふとカミュの爪を見た時、嬉しかったですね。

 だって、今でも赤いマニキュアが塗られているんですもの。

 ちょっと嬉しくなってカミュがシベリアに戻る前に花園からギボウシを主役にして、いつも赤いマニキュアを使っているとの情報があるので、感謝の気持ちを込めて白いカスミソウを添えた一輪挿しの花瓶を宝瓶宮の居住部屋扉前に置いておきました。

 扉を軽くノックしてこっそりと覗きに行った時、扉が開いて花瓶に気付いたカミュが辺りをきょろきょろと周りを見渡して花瓶を手に取り、部屋へ帰っていく姿を見て、私自身も双魚宮に戻りました。

 果たしてギボウシの花言葉に気付くでしょうか?カミュにぴったりな花言葉ですからね。

 出来れば気付いてほしいです。

 ちなみに、双魚宮の花は聖域特性なので季節関係なく咲く花もあったりします。

 だって夏に咲くギボウシと冬に咲くノースポールが一緒に咲く時があるんですよ?不思議です……。

 まぁ、そんな事はいいのです。重要な事ではありません。

 所で!アイオリアの事なんですが!彼!一部の兵士やら!聖闘士達から!散々”逆賊の弟”と陰から言われてるんですよ!!

 マジ絶許なんですが!?そもそもアイオロスは逆賊なんかじゃないですよ!

 知らないくせにー!!とか思ってモダモダします。

 つい、放っておけなくて獅子宮の居住部屋の前に、一言二言の言葉をしたためた手紙とその季節の花を一輪添えて置いていました。

 最初は目も呉れなかったんですが、溜まっていく手紙と花を見てその内に回収、今では楽しみにしてくれているのか、居住部屋の横に返事の手紙を置いてくれる様になりました。

 流石に私もお節介でしょうか?迷惑でしょうか?と悩みましたが、私も今では返事の手紙が楽しみになっています。

 スレないでよくここまで育ったものです。

 アイオリア、立派過ぎですよ!今では皆が認める”猛き獅子の勇者”なんて呼ばれてるんですよ!すごいです。

 それでも未だに”逆賊の弟”呼ばわりする人が居るのは嘆かわしいです。

 いい加減にしなさいって感じですね。

 そうそう、あと、ミロなんですが。

 ちゃんと手紙の場所に行ったみたいですね。

 ロドリオ村の端にある農園。林檎の木がある場所に。

 私もお裾分けしてくださいました。

 本当はアップルパイを焼いてあげる約束だったんですけど、そろそろサガが悪サガになる頃かなって思ったら、色々残さないといけないとか、勝手に思ってしまいまして。

 ”皆で食べれる”というワードから、いっぱい実る林檎を選びました。

 元はアップルパイから、林檎の木にしただけなんですけどね。

 実はちょっと怒ってるでしょうか?なんて思っていたり……。

 まぁ、林檎の木を大事にしているって噂を聞きますので、大丈夫ですかね?なんて思いますけど。

 それから、老師とムウなんですけど、実は会いに行った事があるんですよね。

 サガは年中組の誰かか、兵士の人に任せればいいと言っていたんですけど、押し切りました。

 それでムウには正体を明かそうか明かさないか、とても悩みました。

 結局明かしてはいないんですけどね。

 ヒントだけ残しておきました。

 青薔薇を塔の入口?に置いて帰りました。

 え?召集の件ですか?さて、私は懐かしい人に会いに行っただけで、手に持っている手紙はおまけです。

 そもそも、私は行きたいと言いましたけど、召集しに行きたいとは言ってません。

 恐らくこの事はサガにも分かっていたでしょう。

 私がただ単に会いたかっただけであり、二人が召集しても来ない事も。

 老師はともかく、偽の教皇に従っている様に見える使者である私(仮面無しで小宇宙も抑えている)にはムウは会わないであろうと思っているでしょうね。

 でも、まさか、青薔薇を持参しているという事は気付かなかった様で……。

 帰る時に塔を背にして歩いていた時、後ろから一人の男性がテレポーテーションで移動してきたのが分かりました。

 まぁ、ムウなんですけどね。

 青薔薇を見たのでしょう。息を飲む音が微かに聞こえました。

 そして、私を呼び止めるべきか悩んでいましたが、止めたみたいですね。

 私はそのまま帰る事にしました。

 冷たいですけね?確かに後ろ髪を引かれましたが、ムウの判断です。気にしない事にしました。

 そうそう、老師にも会いに行きましたよ。

 何より、紫龍に会うかも?なんてハラハラしてましたけど、結局会わないで済みましたね。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「初めまして、老師。真名と申します。お見知りおきを」

 

 「ふぉっふぉっふぉ、初めまして、じゃな。お主が真名か。噂はかねがね……」

 

 噂……?

 

 「噂、ですか?」

 

 「うむ、今のお主は仮面を付けていない様だが、昔は”聖闘士の中でもっとも慈悲深い黄金聖闘士”、”黄金最強の聖闘士”と言われ、シオンから教皇候補と聞かされておったぞ。ああ、後、”アテナを救った聖闘士”としても有名じゃな」

 

 マジかよ……。(ごくり)

 

 「そ、そんな大層な人物じゃないです。私は、自分の信じた道のりを歩んだつもりです。でも、それが正しいかは正直に言えば分からなくて……」

 

 「ふむ……」

 

 老師が己の髭を撫でてちょっと悩んだ感じになりましたが、直にこちらに目線を合わせて

 

 「突き進んでみたらどうかの?」

 

 「突き、進む……」

 

 「人間、誰しも苦しみ、悩むモノじゃ。ならば、信じてみた道を突き進むのもまた道であろう。確信を持って大丈夫とは言い切れんが、やれる事は全てやってみるのも良いのではないかのう?」

 

 「やれる事、ですか」

 

 もし、サガ達、黄金聖闘士達が死なない未来があったとしたら?

 現にアイオロスは死んではいません。

 そんな未来を信じてもいいのでしょうか?

 

 「老師、私は諦めなくても良いのでしょうか?まだ、出来る事があると信じても良いのでしょうか?」

 

 「儂は、そう思うがのう」

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 老師に言われたからではないですけど、まだ間に合うのなら、やってやろうではありませんか。

 

 「この際、運命なんか、くそくらえです!やーってやりますよ!」

 

 この発言と共に起こした行動に因って、運命が変わる聖闘士が居るかはまだ分かりませんが、今出来る事を、出来る限りやりますよ。

 ええ、正にやってやりますよ!!

 




行動するのが遅いと思うけどやってやんよ!
っと、気合いが入った真名さんの話でした。
さて、これからどんな事が起こるでしょうね?
本当に謎なんですが!?
自分、大丈夫か!?
出来る限り頑張ります!
お手手と相談しながら!


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聖域編
星30 物語の始まり


 「さぁ!星矢!ペガサスの聖衣をちょっくら頂いてきなさい!」

 

 「合点だ!」

 

 さて、いきなりで失礼します。真名です。

 ある決意をして、あれから一年。

 まず私がした事は星矢との接触でした。

 もち、星矢を強化する為と、沙織に手紙を届けてもらう為です。

 サガには素直に言いましたよ?前にお世話になった所の息子さんって。

 良い顔はされませんでしたけど、私の事は内緒にすれば大丈夫と押し切りました。

 え?最近押し切る事が多い?気のせいですよ。

 サガに正直に話したいですけど、悪サガが付いて来てしまうので話せません。

 そうそう、早めに味方に付けたかったんでシャカにだけは私の事をお知らせしました。

 え?カミュとミロ、アイオリアにムウは?話していませんよー。

 彼らにはまだ話す時ではないのです。

 シャカの説得が良く出来たな?はい、私もそう思います。

 カミュはシベリア、ミロは任務、アイオリアはコロシアムに居た時に接触しました。ムウ?彼はジャミールですよ?

 最初は……まぁ、信じませんよね。久しぶりに身体を動かしましたよ。

 五感剥奪される前に決着を付けました。

 デコピンで。

 流石に説得させるだけなんで、怪我とかさせられないですよ。

 アイオリアにバレる可能性も含めて一瞬だけ小宇宙を爆発させて大量のパラライズローズをシャカの周りに咲かせました。

 私の小宇宙に反応して痺れる花粉を飛ばし、シャカの動きを麻痺させました。

 

 「 ! この小宇宙、まさか本当に真名か?」

 

 「今更過ぎますよ、シャカ。これでロイヤルデモンローズや、ピラニアンローズだったらどうするんです?」

 

 「む」

 

 「むっじゃありません。全くもう、仕方ないですねぇ……」

 

 この子は人の話を聞くのが苦手でしたっけ?昔はよく話を聞いてもらった側なんでそんな事はなかったと思うんですけど……。

 まぁ、そんなこんなで事情を話していたら、まさか……そんな!みたいな感じにショックを受けていました。

 

 「このシャカが見抜けなかったとは……」

 

 「まぁ、元のサガで表に出てるからでしょうね。仕方ありません」

 

 慰問に出かけるのも元のサガですからね。

 気付きにくいでしょう。

 そして、アイオロスの事も話しようかと思いましたが、止めておきました。

 驚かせたい訳ではないのですが、戦闘?の後なので誰も居ませんけど、もし、隣の宮の獅子宮の女官か、アイオリアに聞こえてしまったらヤバいです。

 え?教皇が実は偽の教皇でサガである事を普通に喋っているけどソレは良いのかって?

 ……気にしたら負けです!!

 とにかく、シャカにはもう話してしまいましたし、ちゃんと時が来るまで内緒にして頂く約束をしましたからね。

 ……久しぶりに貴女の作ったクッキーが食べたいとか言われたら、泣くしかないじゃないですか!

 あのシャカがですよ!?マジ感動しました。

 その後、クッキー焼きましたよ!あ、ちゃんとサガ達の分もあります。

 それでディーテ達にも話をしたのかって?しましたよ?

 ただし、沙織の居場所とアイオロスの事に関しては話してません。

 すんごく、渋々って感じに納得してもらったんですが、もしも沙織がこの聖域に来たらどうするか聞いたら

 

 「真名には悪いが、俺は戦うぞ。今の話だと現在のアテナは齢十二との事。聖戦に向けて、俺達が支え、お守りするアテナが軟弱では話にならん」

 

 「姉さん、すまないが私もだ。強者が絶対であるというのが私の信念だ。そこを曲げる訳にはいかない」

 

 「けっ、女神だかなんだろーが、お前だって信じてる道を突っ走ってるんだろ?それは俺達もって事だ。俺達は俺達の目で見て感じられる事が全てだ。ま、アフロが言った事そのまんまだな」

 

 との事でした。

 とりあえず、私がしようとしている事は止めないけれど、完璧な味方にはなれない。そういう事です。

 そして、星矢ですよ!星矢!

 彼も大きくなりましたよー。

 私の腰より上あたりに頭がありましたが、今では首を動かすのではなく目線で頭が見える位になりました。

 再会する時に星矢の小宇宙に向かってテレポーテーションしたら星矢の真ん前に居ました。しかも、修行中だったらしく勿論、魔鈴さんも一緒です☆

 

 「え!真名もがっ!?」

 

 「星矢!しーっ!しーっですよ!」

 

 「……誰だい?あんた」

 

 すんごく魔鈴さんに不審気に見つめられました。

 そりゃ、いきなり目の前で星矢の口に手を当てて黙らせ、静かに!なんて言ってるんですからね。

 名前を言っている所から、知り合いであろうという位は分かった事でしょう。

 

 「初めまして、私は教皇宮の女官見習いで、日本から此処、ギリシアで教皇様のお世話をする為に来ました!」

 

 「ぷはっ!な、な!なぁ!?」

 

 おおう、星矢が驚いてる驚いてる。

 

 「ふーん、あんたが最近噂になってる教皇付きの女官見習いかい」

 

 ま、また噂!今度はなんでしょう……。

 

 「なんでもアテナご自身から望み、召し上げられたと聞いたよ。大変優秀で、教皇の仕事を手伝っているとか」

 

 合ってる!ある意味合ってるけど、そんな噂があるとか止めて!恥ずかしくて逃げ出したくなります!

 

 「真名さん!あんた、なんで此処にいるんだよ!沙織さんは!ロスさんはどうしたんだよ!?」

 

 おわあああああ!!

 

 「サオリさん?……ロスさん?」

 

 ま、魔鈴さんが怪しんでおりますー!!

 

 「星矢!」

 

 「な、なんだよ」

 

 「ちょっとコロシアム裏に来なさい」

 

 「は?」

 

 そう言うと私は星矢を勢いよく小脇に抱えてコロシアム裏まで走って行きました。

 それを見ていた魔鈴さんは茫然としてしまって追いかけられなかったらしく、私の後ろ姿を見ていたそうです。

 そこへアイオリアが来て、魔鈴さんに挨拶すると

 

 「星矢は一緒ではないのか?」

 

 と聞き、

 

 「……コロシアム裏に行っちまったよ」

 

 と、言うとアイオリアが顔色を真っ青に染め、

 

 「そ、そうか。コロシアム裏か。……随分懐かしい言い方を聞いたな」

 

 「アイオリア?」

 

 「何でもない……」

 

 と、まぁ、そんなやり取りがあったとか、なんとか。

 とにかく、星矢には此処で私の名前はマズいので他の言葉で呼んでほしいと言ったら、

 

 「じゃぁ、おば「せ い や?」……お姉様」

 

 「いやー、お姉様では今更感があって恥ずかしいですねぇ」

 

 沙織にお姉様とか呼ばれたらニヤニヤしそう。おかあさまでも言われた時嬉しかったですけど……。

 

 「……どうしろっつーんだ」

 

 プイっとそっぽを向いて拗ね始める星矢。まぁまぁ

 

 「姉御とか、姉貴とかなら良いですよ?」

 

 「言い方が変わっただけじゃねーか!!」

 

 おおう、鋭いツッコミありがとうございます。

 

 「でも、姉さん呼びは嫌でしょう?貴方にとって特別な方の呼び方ですもんね」

 

 「うっ……」

 

 自身の実姉に対しての呼び方です、大事な方ですからね。

 

 「じゃ、じゃぁ……あねきで」

 

 「はい!わかりました!ではこれからは此処に居る間、姉貴と呼びなさい!」

 

 「ん?」

 

 星矢が首を傾げました。なんぞ?

 

 「此処に居る間?真名さ……姉貴、どういう意味だ?」

 

 「私も魔鈴さんと共に君を強くしようかなって!」

 

 ………………

 

 「は?はぁっ!?」

 

 「星矢、安心しなさい。内緒ですが、こう見えても私は元聖闘士!それに師匠っぽい事もした事がありますから、加減も分かっているつもりです!大丈夫、ちゃんと魔鈴さんとはお話させて頂きます!」

 

 「ちょ、ちょっと……」

 

 「座学も任せろー、バリバリー」

 

 「やめて!」

 

 そういう訳で、星矢を原作より強化しようキャンペーンの始まりです!

 まずは聖闘士として基礎は出来ているみたいなんで、50㎏程のリストバンドを……。

 こうして私の運命の輪から抗う為に、出来る限りやっていこうという決意の物語が始まったのでした。

 あ、それから無事に星矢はペガサスの聖衣をGETしましたよ。戦闘シーンは割合しました!メンゴ☆

 強いて言うなら最初はちょっと危なかったですが、後半は殴ったら地面に埋まりました。カシオスが。

 星矢、油断しましたね……。後でコロシアム裏です。

 




原作に突入です!
さぁ、この先原作通りに行くのか!?
全く別の物語になるのか!?
どうか見守っていてください!
お願いします!


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星31 一時の別れ

 「じゃぁ、この手紙を沙織さんに渡せば良いんだな?」

 

 「はい、よろしくお願いします。星矢」

 

 魔鈴との別れが済んだ後、星矢と会う約束をしていました。

 手紙の内容は”私は聖域で無事な事”、”聖域に戦いを挑むなら私を気にしないで本気で来る事”を書きました。

 銀河戦争を止めないのかって?アレは元々悪と闘う聖闘士の養成と、聖域に潜む邪悪をあぶりだす為の物(主に悪サガの事)ですからね。

 

 「そんじゃぁ、俺は行くけど、本当に来ると思うか?」

 

 「来るんじゃないですかねぇ?」

 

 うげーっと唸っている星矢。

 それは何故か。私がシャイナさんが来るかもしれないって伝えてあるからですよ?

 まぁ、かもしれない?ですから、可能性の話ですから。

 そう言いますけど、星矢は確信があるみたいで

 

 「姉貴がそこまで言うって事は来る方が可能性は高いね。絶対」

 

 「おおう、言い切りますね」

 

 「だって!”あの”シャイナさんだぜ!絶対来るだろ!」

 

 ”あの”とまで言われているシャイナさん……。私が星矢に会う前まで何してたんですか?

 ちょっと戦慄しましたけど気を取り直して星矢に言いました。

 

 「まぁ、足止め位はしますよ。足止め位は」

 

 「その言い回しされると不安になるんだけど」

 

 あ、ちょっとジト目で見つめてきました。

 仕方ないですねぇ。

 

 「本当にしますよ。足止め」

 

 「お!そんじゃぁ、信じるぜ。姉貴」

 

 じゃぁな!っと言って駆け出す星矢。

 ただ、私は言っていません。シャイナさん”を”足止めするとは。

 

 「そろそろ出て来ても良いんですよ?兵士の皆さん」

 

 恐らく保険みたいな感じでシャイナさんに報告されていたのか兵士の方々、ひぃ、ふぅ、みぃ……十人位ですかね?それ位の人数が出てきました。

 

 「ふん、高々女官の身で何が出来る」

 

 ふむ、甘く見られてますね。

 

 「では、こういう事が出来ますっよ!」

 

 私は音速の速さで五人程一気に一人一人、拳一つで吹っ飛ばしました。

 

 「はい。後、半分」

 

 「な、何ぃ!?」

 

 「貴様!今、何をした!」

 

 聞くのではなく、一応は自分で見極める事を覚えなさい。

 全く、修行が足りていません。

 

 「仕方ないですね。特別ですよ!」

 

 擬似!

 

 「ペガサス流星拳!」

 

 『うわあああああ!?』

 

 ペガサス流星拳を撃たれた事に驚きながら残りの半分の兵士さん達は倒れました。

 

 「な、何故……貴様がその技を……!?」

 

 「ふっ、笑止!」

 

 これ、一回は言ってみたかったんですよね。

 

 「そんなのは簡単です。何故なら……ペガサス流星拳は私が教えたからです!」

 

 まさにバーン!っと音が鳴っているんじゃないかって感じですね。今。

 そうなんですよ、ペガサス流星拳は私が教えました。

 いやー、ついっというか、なんというか、星矢って決定的必殺技を持っていなかったんで、教えてしまったと言いますか……。

 いいじゃないですか!早い段階で覚えられたおかげで、星矢の成長加減は早まりましたから!小宇宙コントロール的に!

 

 「殺した訳ではないのですから、次に目覚める時は自分の足で帰りなさい。では、おやすみなさい、兵士の皆さん」

 

 私はそう言うとまだ意識があった兵士さんの首に手刀を当てました。

 ぶっちゃけ、当身をしたがけですけどね。

 しかし、……ふう。最近?小宇宙を燃やさず戦うのに慣れてきましたね。

 ある意味暗殺者とか向いてるのでは?なんて自惚れてみたり。

 聖闘士の方々は小宇宙の燃焼具合で弱いか強いか決めてる所もありますから敵を欺くなら味方からとはよく言ったものです。

 あれ、一応味方なんですよね?一応は(自信がない)

 まぁ、それは良いんです。置いておいて下さい。

 多分目覚めたらこの事は覚えているでしょうけど、そうやたらめたらに話さないでしょう。きっと。

 だって、”ただの女官に負けたー”だなんて周りに言えます?

 曲りなりに兵士ですよ?(原作では雑兵ともいう)

 星矢みたいななりたてでも聖闘士。負けても仕方ないってなりますが、一応女官として通っている私に負けたとなると……ね?

 要は話せないだろうから放置!これが一番です。

 さて、今頃は星矢はシャイナさんに勝てたでしょうか?

 一応原作よりも強くなったと思いますが、まだまだ詰めが甘いというか、フェミニストだからシャイナさんを説得でもしようとするかもしれませんね。

 今の星矢なら白銀聖闘士に負けるのは、まずないハズです。……多分。

 あの子、後少しでセブンセンシズに目覚めるかも?なんて思ていましたが結局そこは間に合わなかったです……。

 今目覚めていれば、強くて原作開始的な感じになったんですけど。

 仕方ないですねぇ……。

 でも、いきなり強くなってもまだまだ少年の身体。

 これからも成長する訳ですから、無理に作っちゃうと壊しかねないんで、これからも試練を与えていきますか。

 瞬に紫龍、氷河もですね。

 え?一輝ですか?彼はもう自分でなんとか出来そうなんで、(不死鳥座の時点で)大丈夫と信じていますよ。

 で、今、めっちゃヤバい状況になってきているんですけど……。

 

 「今の戦い、見させてもらった」

 

 な、何故今、此処にいらっしゃるんですかね?

 

 「やはり、君は唯の女官ではないようだな」

 

 あ、アイオリアぁー!!

 此処でアイオリアにエンカウントとかマジですかー!?

 っていうか、”やはり”とか言われているから、なんか前から疑われていた感半端ないんですけどー!!

 せ、背中に冷や汗が……、や、ヤバいです……。

 でも、もしかしたら何か正体バレの良い布石になるかも?

 

 「さてはて、どこから見ていたのです?」

 

 とりあえず、さぁ!言いなさい!どこからどこまで見てました!?ハリー!ハリー!!

 

 「君が星矢と別れた時から見ていた」

 

 結構前から居たぁー!

 

 「星矢にはお別れの挨拶をしなくても良かったんですか?」

 

 「恐らく見送られるのが気恥ずかしかったのもあるのではないかな?なんの連絡もなしに行ってしまったから、そうだと思う」

 

 「そうですか」

 

 やっと冷や汗が引きました。とにかく、なんとか切り抜けないとですね。

 

 「で、アイオリア様?私に何か言いたい事があるのではないですか?」

 

 この際はっきりしましょうね!

 

 「……君は何者だ?」

 

 「教皇宮の女官見習い……いえ、今では普通の女官ですね。それ以外にないのでは?」

 

 さて、どう来ます?

 

 「さっきの音速の拳。説明してはくれないのかな?」

 

 「ただ、気まぐれに習わせられただけですよ。アフロディーテ様に」

 

 ディーテ!名前をお借りします!

 

 「魚座のアフロディーテに……?音速で動けたという事は、君は聖闘士の弟子か、或いは……どこかのスパイか何かではないか?アテナがお望みになったというのも噂でしかないからな」

 

 おおう!そこを突かれましたか!でも、まだまだです!

 

 「スパイはないですね」

 

 「ん?」

 

 「他の黄金聖闘士様方からも聞いてみてください。私の身はそれで証明されます。そうですね……」

 

 また、ここはお名前をお借りしますよ!

 

 「シャカ様とか」

 

 シャカ!君に決めた!

 

 「しゃ、シャカだと!?」

 

 おおー、驚いてます驚いてます。

 まぁ、シャカですからね。仕方ないですね。

 ちょっと、いえ、かなり嫌でしょうけど、証人位にはなってもらいますよ?シャカ。 

 

 「はい、シャカ様でしたら、私の身を証明してくださるでしょう。それに、私は絶対にアテナを裏切る行為は致しません。この命に代えてでも」

 

 「!!」

 

 ええ、産んだ訳ではありませんが、沙織は周りの人々に支えられながらも、私が育てました。例え、女神であっても”私の”大事な子です。

 裏切る訳もなければ、敵のスパイだったとしても、その相手を裏切って沙織の味方になってみせます!それ位の覚悟位、とっくにしています!

 

 「アイオリア様、私を信じろとは言いません。でも、どうか、今は引いては下さいませんか?いつか、女神の御前ではっきりするでしょう。私が何が目的で、何者であるか」

 

 「……女神の御前だと?」

 

 さて、そろそろ行きますか。一応、戦意喪失してくれているみたいですし。

 

 「では、アイオリア様、ご機嫌よう」

 

 「!」

 

 此処で光速を出したらモロバレなんで、あえて追いつきそうな音速で走ります。

 でも、きっとアイオリアは攻撃したり、追ったりしないでしょう。

 女神の名を出した私に、忠誠心篤き誇り高い獅子は訳アリであろうとも、自分から後ろを向いた女一人に、その獅子の咆哮を向けたりしないでしょうから。

 




星矢と一時的な別れとアイオリアとの邂逅?ですね。
さて、沙織さんとアイオロスは手紙を読んでどんな決断をするのか?
どういう展開になるんでしょうね!
お手手とそうだ(以下略)。
よろしくお願いします!


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星32 銀河戦争

 

 星矢が日本に帰った日から数日。

 日本で銀河戦争が始まったらしいですよ。サガが言ってました。

 流石におこでしたねぇ。

 まぁ、聖闘士の私闘は禁じられてますから仕方ないんですけど……。

 それに内緒で活動していた聖闘士の事も、世界に知られてしまった訳で。

 しかもトドメが優勝した青銅聖闘士が”黄金”のパンドラボックスを手に入れるとなってますから余計でしょうね。

 写真を見ると、どう見てもそれは射手座のパンドラボックスな訳でして。

 どうやらアイオロスはこの扱いに了承したみたいです。

 まぁ、優勝賞品無しの大会とか、盛り上がらないでしょう。

 そして、しばらくすると教皇宮に一人の兵士が乗り込んで来ました。

 なんぞ?

 

 「きょ、教皇!大変でございます!」

 

 「そんなに慌てて、一体どうしたのだ」

 

 「あ、あの!あ!あい!げほっ!ごほっ!」

 

 相当慌ててますね。私に水を貰い、一息つくと

 

 「はぁっ!大変失礼しました!教皇、一大事でございます!」

 

 「うむ、申してみよ」

 

 サガも改めて姿勢を正し、兵士の言葉を待ちます。

 

 「はい、あ、あの、聖域の裏切り者!逆賊アイオロスが!アイオロスが生きておりました!!」

 

 「な、何っ?!」

 

 うわっ、此処でバレましたか。

 

 「かの私闘を繰り広げている”銀河戦争”にて、決勝戦の相手として立ちはだかったのは、車椅子に乗って優勝候補である青銅聖闘士相手に生身で立ち向かうあの姿。間違いありません!彼奴は射手座のアイオロスでございます!」

 

 全く、アイオロスは……何やってるんですかー!多分、まだ完治もしてないでしょうに、出てくるだなんて!

 つい、怒ってしまう所ですが、もしかしたら沙織の案である可能性もあります。

 私闘する聖闘士達の話だけでも怒っているのに、そこで射手座の黄金聖衣が優勝賞品。しかもアイオロスが生きている、荒波が立ちますよね。

 サガにとっては恐らく、嬉しさと申し訳なさが込み上げてきてそうですけど、悪サガにとってはそうではないでしょう。

 つまり、自分のしでかした悪事、本当はアテナの暗殺はサガがしようとした事、教皇が偽物である事が暴露されるでしょうし、悪サガはアイオロスの近くにはアテナが居るであろうと予想するハズです。

 

 「あの、射手座のアイオロスが……。 ! この事を知っているのは後は誰だ?」

 

 「恐らく私だけではないかと」

 

 おや、どういう事でしょう?

 

 「ん?何故だ。アイオロスだと気付いたのは他にもいるハズだろう」

 

 「いえ、彼奴は……顔上半分を仮面で隠しておりましたから」

 

 はい?覆面レスラーの仲間かな?なんて言ってみましたけど顔半分隠してあたのに、アイオロスだと思った根拠はなんだったのか。

 

 「私は昔、アイオロスとよく訓練しておりました故、声や仕草等で直に分かりました」

 

 結構バレやすい理由キタコレ!え、それって長年アイオロスと訓練した人全員て事なんじゃ……。

 

 「我々はもう長い事アイオロスに会っていないせいで、多少彼奴を美化してしまったんだと思います。私と一緒に見ていた同僚も一緒に気付きそうだったのに、まさかあそこで仮面ライダーのポーズをとるとは……昔、私位しか見た事がなかったので皆、”あ、違うアイオロスではない”っと思われてしまいました」

 

 あ、アイオロスー!全力で遊んでるー!!

 サガも項垂れていますね。まぁ、仕方ないですけど。

 しかし、兵士さん仮面ライダー知ってるんですねぇ。

 アイオロスはきっと暇つぶしでテレビを見た時に仮面ライダーを見たのでしょう。

 ポーズをとる程見ているという事はハマったのか……。

 ただ、ハマってなくてもポーズが気に入って遊んでいるのか……。

 後半ですね!きっと!

 まぁ、青銅相手ですから星矢以外は本当にお遊びしてそうですね。

 

 「ちなみに決勝まで行った青銅聖闘士はどなたでした?」

 

 「 ? ペガサスの星矢でしたが」

 

 やっぱり、デスヨネー。

 

 「ペガサスの星矢?…… ! 前にこの聖域にてペガサスの聖衣を巡って試合をしたな?あの星矢か」

 

 「そのハズです」

 

 おや、あの時、試合で名前を言っていたから流石に覚えていましたか。

 

 「……とにかく、分かった。これから”蟹座のデスマスク”を呼ぶ。お前はそのデスマスクの指示で動け。いいな」

 

 「は、はい!」

 

 サガがそう言うと兵士さんは扉へ向き直りました。

 その瞬間、私は懐から黄色い薔薇に小宇宙を流し、

 

 「【パラライズローズ】」

 

 兵士さんにパラライズローズを放ち、麻痺させて動けなくさせました。

 今はもう床に倒れており、

 

 「な、何故……」

 

 そう呟いていましたので、答えてあげる事にしました。

 

 「今はまだ話せません。すべては教皇の為。……しばらく遠くで生活していてください。そしていつか、この聖域に戻り、地上の為、アテナの為に戦って下さい」

 

 私は途中から小声で兵士さんにそう言うと、腰に下げていた少量の宝石が入っている袋を兵士さんに握らせて、ギリシアから遠い異国へテレポーテーションさせました。

 

 「この場で”蟹座のデスマスク”の名を出したら殺すように言っているのに、お前は何故殺さない?」

 

 「無駄な殺生は嫌いだと何度も言っています。それに、いつの間に入れ替わっているんですか?」

 

 軽く教皇、悪サガを睨みつけます。

 油断も隙も無いですね。

 

 「それにしても、意外でした」

 

 「何がだ?」

 

 「貴方の事です。この聖域に居る黄金聖闘士を全員呼び出して、日本に向かせ、アイオロスを殺しに行かせると思っていました」

 

 本当に意外でした。

 悪サガの事ですから、本当にそうするであろうと思っていましたので。

 

 「何、ちょっとした余興を思いついただけの事よ」

 

 「余興、ですか」

 

 こやつ、何をするつもりなんでしょうね……?

 

 「ふっ、お前風に言えば”思わぬ事が起こってしまった。”そんな所か」

 

 「…………」

 

 すっごい嫌な予感がするんですが?

 

 「まだその時ではない。それまで精々足掻いてみる事だ」

 

 そんな言葉を残し、悪サガは教皇宮の奥へ消えていきました。

 本当に何をするつもりなんですかねぇ……?

 

 「ふむ……、とにかく悪サガの言う通り足掻きまくってみせますよ」

 

 後、油断せずに行きまっしょい!

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 そう思っていましたが、まさか後にあんな事になるだなんて……

 

 「思っていなかったのです……」

 

 「おい、あいつ、何か語りだしたぞ」

 

 「気にしたら負けだ。デス」

 

 「昔からだが、飽きないのか。あれ」

 

 ええい、外野うるさいですよ!

 あれから教皇宮の私の部屋で、お茶を飲んでいた時にこんな会話してました。

 まぁ、そろそろこのやり取りも出来なくなる可能性がありますからね。

 真剣に頑張らなければ!

 目指せ!出来る限り死亡回避!目指せ!黄金全員生存!(言い方変えただけで同じ意味)

 シオン様ごめんなさい!貴方は不回避でした!

 

 「これってシオン様ファンに怒られる言い方でしょうか?」

 

 「お前の心の中が読める訳じゃねーからな?いきなりシオン様ファンとか言われても、わっかんねーからな?」

 

 カニさん貴方、前に読んでいませんでした?気のせいではないハズ……。

 

 「お前の顔に出てんだよ」

 

 「そんなにわかりやすいですか?」

 

 ぺたぺた顔を触っていると、頬にデス君が触れてきてどうしたのかと、顔を上げてみたら、いきなり部屋の扉が開いた時にはデス君が吹っ飛んでいました。

 で、デス君ー!?

 

 「真名、危なかったな……」

 

 「サガ……貴方、タイミング良かったですけど、どこからか見ていたんですか?」

 

 元のサガってたまに?うん、たまに。

 たまに動きというか何処かで見ていたのでは?と言いたくなる感じにいきなり登場するんですよね。

 結構驚くんですよ?でも、私にとっては悪い事ではないので良いんですけどね。

 改めて思いますが、こういうやりとり、大事にしたいです。

 サガとアイオロス、仲直り?してもらいたいですし。

 沙織とも仲良くしてほしいですからね。

 そう思いながらサガに笑顔を向けるのでした。

 




はい!銀河戦争にて、アイオロス参戦!
流石にまだ勝てないでしょうね。星矢達。
頑張れ、青銅諸君!負けるな!アイオロス!
悪サガの言っていた余興とは一体……?
次回を待て!です。


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星33 願い

 

 はーい!私は教皇宮の女官、真名!

 私は今……

 

 「監禁されています」

 

 まさにリアルorzって感じです。(絵文字として見てみて下さい)

 私の居ない間にアイオリアが日本へ行き、沙織とアイオロスに会った様で……。

 そして謁見の間でアイオリアがシャカに拳を収めてくれと説得されたらしいです。

 ”あの”シャカが”あの”アイオリアに話し合いで解決に導くとか!しゅごいです……。

 アイオリアになんて言って納得させたのかが気になる所ですね。

 んで、何故私が監禁されているのかと言うとですね。

 扉に鍵を閉められた時に言われました。

 

 「お前は私の”切り札”だ。時が来るまで此処に居ろ。まぁ、必要ないだろうがな」

 

 って、悪サガに。

 本当に何を企んでいるのでしょう……?

 必要がない……?

 あ、もしかして

 

 「沙織達がそろそろ聖域に来る?」

 

 恐らく悪サガは”私”に何かさせたいんだと思います。

 何をさせる気か分かりませんが、そう簡単にいう事を聞くとは思っていないハズ……。

 私が沙織の敵になる訳ないじゃないですかヤダー。

 っと、いう訳で、ポケットからあるものを取り出します。

 これを広げて広げてー、シワを伸ばしてー。

 

 「あら?こんな所にシルクハット」

 

 折り畳み式?シルクハットです。

 えー、これをですね。……はい!種も仕掛けもございません!

 

 「これより取り出したるはー?」

 

 伝書鳩ぉー!(ぱんぱかぱーん)

 ふっ、幼い頃の沙織に見せる為に始めた手品ですが、こうも上手くいくとは……。

 

 「天才(?)って罪ですね……」

 

 ……なんか一人でこんな事するのも虚しいのでやめやめ。

 伝書鳩によってまずカミュあたりに手紙を届けます。

 ん?助ける為?ええ、助けますが手加減しろだなんて言いませんよ?

 そんな事したら氷河が成長しないじゃないですかヤダー!

 だからこそ、お役立ちアイテム!私のマジ”切り札”!

 

 「キュアローズぅー!」(テテーン)

 

 これには何度も助けられました。

 でも、過信し過ぎてもいけません。

 結構、コレって小宇宙の操作難しいんですよ?

 最初は私の小宇宙を注いでいるので、他の方が発動の為に小宇宙を注入すれば簡単に発動しますけど、長く私の小宇宙から離れるとですね、効果が薄れるんですよ。

 使う為に一輪に集中して小宇宙を留めておいたキュアローズであれば、枯れたり、効果が薄くなったりしないですし、特別な物になると一日を懸けて小宇宙注入に集中すればお腹に穴が開こうとも、心臓停止五分過ぎていたとしても復活します。

 ただし、一日を懸けて小宇宙を注入している際、目を逸らしてはならない、食事も摂らない、睡眠も取らない、お手洗いも出来る限り行ってはいけない、行っても五分以上離れると効果はなくなります。最初っからになります。

 だからと言いますか、アイオロスも私が城戸邸に居れば、今頃は完全復活しているハズで。

 あの兵士さんの話では車椅子に座っているという事は、後遺症が残っている可能性もありますね。

 しかし、この聖域産キュアローズであれば数か月、んー、短くても半年?で復活できるでしょう。

 それ位”聖域産”という事は、結構特別なんですよ?

 と、それよりもこの特別産キュアローズをですね。

 

 「手紙と一緒に括ってですね……」

 

 鳩におでこをくっつけて、カミュの小宇宙の特徴を教えます。

 え、どうやって?ですか?小宇宙を操作すれば出来ますよ!ただ、ちゃんと相手の小宇宙の特徴、まぁ、簡単に言えばイメージですね。

 そのイメージをちゃんと伝えたい相手の事を伝書鳩に覚えさせれば良いんです。

 マークで伝えても問題ありません。

 マーク、例えばですね、水瓶座のレリーフで伝えても良いんです、そうすれば宝瓶宮に行きます。

 そして、水と氷の凍気をイメージすれば、此処から近い場所に居るであろうイメージに合う人物の元へ飛んでいきます。

 この近くといえばカミュしかいないので間違う心配はありません。

 で、ここで間違ってはいけないのは、この私の伝書鳩が特殊であるという事です。

 普通の伝書鳩ではそうはなりません。

 ”聖域産”の伝書鳩です。

 小宇宙でテレパシーを使えば済むのであまり使われませんが、兵士さんあたりで重宝されています。

 ん?兵士さんが小宇宙使えるのかですか?使えませんよ?

 この聖域産の伝書鳩であれば、人物に届けるのではなく、場所に届けるのであれば、普通の伝書鳩と同じ事が出来ますので、良く使われています。

 まぁ、ここまで説明すれば、”聖域産”の物が特別であると分かるでしょう。

 ですけど、遠すぎると使えないという難点があったりします。

 遠くてもギリシアの隣、アルバニア位しか飛べません。

 だからこそ、星矢に日本の沙織達に手紙を届けてもらったんです。

 まぁ、それはさておき、

 

 「はい、ではお願いします。ハトさん」

 

 そして、宝瓶宮に居るであろう水と氷の魔術師、カミュの元へ飛びだって行きました。

 後もう一通あるので、どうか!私が放ったハトさんである事がバレません様に!

 そう願う事しかできませんでした。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 あれから数日経ち、ふと空を見ると飛行機が飛んでくるのが見えました。

 恐らく沙織達です。

 ついに来ましたね……ここが正念場です。

 星矢達の成長を促す為に、黄金の皆さんを生かす為に……。

 今まで出来る限りの事をしてきました。

 ふっ、これからだってやる事はいっぱいあるのです。

 私だって死ぬ気はありませんので、精一杯頑張りますよー!

 そう背中に炎を灯らせ、気合いを入れていると星矢達の小宇宙を感じました。

 それにアイオロスの小宇宙も……。

 聖域に近付いてきます。

 と、なるとそろそろ沙織に黄金の矢が射られる頃でしょうか……。

 本当ならそんな事阻止したいですけど、ここは心を鬼にします。

 沙織の為であり、星矢達の為ですからね。

 ……私は、あの子達の為とか言いながら、本当にそうなのかと悩んでしまいます。

 沙織達には成長してもらいたいですし、黄金の皆さんには認めてもらいたいと思っています。

 その想いは本当です。

 それから多分ですけど、アイオロスは上ってはこない気がします。

 何故かって?勘ですよ!たまには私だって勘頼りしますよ。

 多分、矢の事は星矢達に任せて沙織の護衛をすると思います。

 本当に勘ですけどね。

 実際、アイオロスの小宇宙は聖域の入口、白羊宮の前から動きません。

 意外と勘も当たるものです。

 白羊宮に星矢達が居る事が分かります。きっと聖衣の修理をしてるんだと思います。

 修理が終われば次は金牛宮。

 アルデバランが守護する宮です。

 ちなみにアルデバランには星矢達の事を伝えていません。けれど、原作でどんなやり取りをしていたかを知っているからではありません。

 彼なら星矢達を正しく導いてくれると信じています。

 さて、では伝書鳩に任せて手紙を飛ばしますか。

 

 「ハトさん」

 

 くるっくー

 

 バサバサと羽をはばたかせ、窓に近付いてくれます。

 そして私の元まで来ると筒のある方を差し出してきました。

 

 「これで”最後”です」

 

 そう、これが最後の手紙。

 あと、この聖域で出来る事はテレパシーを飛ばす位ですかね。

 聞かれても困る会話は手紙に書きました。

 後は聞かれても困りません。

 

 「さぁ、ハトさん飛んでください」

 

 そう言って伝書鳩を飛ばします。

 これでどう運命が転がるのか分かりません。

 ただ、どうか……、

 

 「皆が死なない運命を手繰り寄せる為に」

 

 それが彼らの幸せであるかなんて分かりません。

 でも、皆を知っている私は彼らに生きてほしい。

 そう願ってはいけないのでしょうか……。

 




遅くなりすみません。
もしかしたら、また遅れるやも。
でも出来る限り自分のペースで書けたら即投稿します。
どうか生暖かく見守ってください。
頑張ります!


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星34 上を目指して

 あらすじー。

 星矢達は無事?アルデバランの試練を勝ち抜き、双児宮へ。

 そして星矢と紫龍はなんとか幻影迷路化していた双児宮を突破。

 瞬は自力で双児宮を抜けましたが、氷河は双子座の黄金聖闘士の技、アナザーディメンションを受けましたけれど、瞬のおかげで天秤宮に出られました。

 ですが、氷河の師、水瓶座のカミュによって氷漬けになってしまいました。

 さて、巨蟹宮に着いた紫龍と星矢ですが……。

 

 ━━━━━こんの分らず屋!!

 

 「分からず屋なのはお前の方だろうが!!」

 

 私とデス君の喧嘩に戸惑っていました。

 

 ━━━━━さっき聞きましたけど、子供達の顔の件は、積尸気冥界波を扱いきれなかった時に、誤って巻き添えてしまっただけでワザとではなかったじゃないですか!もう何年前の話してるんですか?しかも、なんでそこで嘘を言うんです?馬鹿ですか!!

 

 「まったくの嘘ではないわ!俺は分かっていてガキ共を巻き添えにしたんだ!正義の為に仕方なくなぁ!!」

 

 ━━━━━子供達の泣き声に良心の呵責に苛まれて苦しんでいたのは知っているんですよ!!

 

 「……!う、うるさい!昔の事だろうが!いい加減黙れ!邪魔だ!!」

 

 ━━━━━黙りません、止まりません。貴方が星矢達を通すまで、いいえ。戦っている最中だったとしても喋り続けてやんよ!

 

 「こんの……!くっそ女ぁ!!」

 

 ぎゃー!ぎゃー!!

 

 「星矢、真名さんが聖域に居ると言っていたが、この小宇宙、真名さんは何者なんだ?」

 

 「ああ、言ってなかったな。姉貴、元聖闘士だったらしいぜ?」

 

 「な、なんだと?」

 

 「だけど、訳アリだとは聞いてたが、黄金聖闘士と知り合いだったなんて聞いてないが……まぁ、姉貴だしな。不思議じゃないか」

 

 しーっかり聞こえてますよ?星矢。

 

 ━━━━━星矢、この一件が済んだらコロシアム裏ですよ?

 

 「はぁ!?」

 

 その言葉を聞いていたデス君が

 

 「へん、星矢よ。ざまぁないな!」

 

 なんて言うので

 

 ━━━━━あ、デス君も後でコロシアム裏です。

 

 「な!?」

 

 ━━━━━強者が正義と言いましたね?ならば、貴方に負けたことがない私が正義です。異論は認めません。

 

 「はぁ!?何言ってやがる!俺は手加減してやってるだけの事よ!」

 

 ━━━━━では、積尸気冥界波を撃つ時、動作が遅過ぎなんですよ!もっと撃つ時は光速で撃ちなさい!っていつも言っているでしょう!

 

 「ぐっ、う、うるさい!俺に指図するな!前にも言っただろう!俺は強者と認めた者の言う事しか聞かん!」

 

 ━━━━━そうですか……。では、”これ”を喰らって起き上がれなかったら星矢達を通しなさい。

 

 「は?」

 

 そう言うと私は小宇宙を高め、右手に力を溜めます。

 そして窓へ近付き、十二宮の巨蟹宮の方向へと思いっきり勢いをつけて……。

 

 「でぇぇえええりゃあああああああああ!!」

 

 一気に溜めていた攻撃的小宇宙を放ちます!

 そう、この攻撃方法は原作のハーデス十二宮編でサガがシャカに放った攻撃の応用です。何故私がその技を使えるかですか?

 前に言ったでしょう?私、器用貧乏なんですよ。

 出来ると思った技は一通り出来ます。

 威力は本家本元程ではないですけど、それなりに強力なハズです。

 ”これ”を受ければ、気絶位はするでしょうね……。

 さて、デス君はーっと……。

 

 「な、なんだったんだ……。今の小宇宙は……」

 

 「姉貴……、あんたは一体……」 

 

 おおっと?星矢達がまた戸惑ってますねぇ。

 という事は……?

 巨蟹宮の中に居る人間の小宇宙を探ります。

 ふむ、これが星矢で……これが紫龍……。デス君は……?

 

 「がっ……はぁっ……」

 

 あ、居ました。直撃喰らってますね。避けなかったんでしょうか?

 

 ━━━━━デス君?意識はありますかー?

 

 「ぐっ……畜生がぁっ……!」

 

 ━━━━━この攻撃を受けて無事ではいられないハズですよ?星矢達を通してもいいですよね?

 

 「けっ、好きに……し……がっ」

 

 おっと、気絶しましたか。

 

 ━━━━━はいです。では、星矢、紫龍。早く先へ行きなさい。私が手助けできるのは少しだけですから。

 

 「お、おう!行くぜ!紫龍!」

 

 「あ、ああ!ありがとうございます!真名さん」

 

 ━━━━━お礼は良いのです。早く先へ、沙織と氷河が心配です。急いで。

 

 私がそう言うと二人は駆け出しました。

 春麗ちゃんのお祈りや、紫龍の黄金聖闘士を凌ぐ程の小宇宙を高める事が出来なかったのはちょっとアレですけど、デス君はねー、ちょっとねー。

 やり過ぎ感すごいから容赦出来なかったといいますか……。

 だって、デス君、原作だと蟹座の黄金聖衣に見放される程屑……ごほん。

 所業をやったり、言ったり……見てられませんよ。

 本当はちゃんと良い所だってあるのに。捻くれてますけどね。

 ……まぁ、それは良いです。

 …………。

 生きてくれて良かった……。

 それで……それだけで良いです!

 ここで介入しなかったら、デス君は……。

 ……とにかく後、シュラ、カミュ、ディーテにサガです。

 まだまだこれだけいますが、最後までやってやりますよ!

 気合い入れてますが、この扉の向こうが騒がしいです。

 恐らく私が攻撃的小宇宙を放ったからでしょうね。

 光の玉が飛んでいく様はビビりますよ。うん。

 小宇宙が見える方々、すみませんでしたー!

 でも、反省はしますけど、まったく後悔はしていません!

 許せとも言いません!

 むしろ、もっとやるかも!

 皆の命を守る為!いえ、自己満足でしょうけど!覆してやりますよ!

 待ってなさい!四人共!私にお命よこしなさい!

 ……あれ?言葉がおかしいですか?気のせいですよ。

 




今回はいつもより短いです。
すみません。
次回は獅子宮、アイオリアはどうなっているのでしょう?
次回を待て!です。


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星35 上を目指して2

 巨蟹宮を駆け抜け、獅子宮の入口にたどり着いた星矢達ですが、そこで見たモノは……。

 

 「な!これは!?」

 

 「なんだ?何が起きているんだ?星矢」

 

 「あ、ああ。……沢山の兵達の山がそこら中に出来ているんだ」

 

 「な、なんだって……?」

 

 そう、数えるなら恐らく100人程の兵士達の山が出来ていました。

 獅子宮の中からも悲鳴と獅子の咆哮が聞こえてきます。

 

 「これは一体どうなって……!息があるな。生きている」

 

 「恐らくアイオリアだ。きっと中で戦っているんだ!」

 

 そういうと星矢は獅子宮の中へ走って行ってしまいました。

 紫龍もその足音を頼りに向かいます。

 

 「アイオリア!アイオ「ぐわああああ!!」うおわっ!?」

 

 星矢がアイオリアの名前を叫びながら中へ駆けていると、すぐ横の柱に兵の一人が吹き飛ばされていました。

 

 「星矢か!」

 

 「アイオリア!これは……一体何があったんだ?」

 

 そう星矢に話しかけられたアイオリアは自分の周りに居た兵達を吹き飛ばし、全員気絶させると、兵達の服のポケットなどを探り出すのでした。

 

 「アイオリア?何やってんだ?」

 

 「……星矢、この兵達は俺を見張り、言う事を聞かせる為に獅子宮で俺の世話をしてくれていた女官達を、人質にしているのだ」

 

 「な、なんだって!?それは本当か!」

 

 「ああ、そして伝書鳩が飛んできて足にあった手紙を読むと、この獅子宮に居る兵達の中から、一人だけ女官が捕らえられている牢の鍵を隠し持っている者が居るらしい。その鍵を持っているヤツがその牢の場所も知っているとの事でな。この行為はその鍵を探す為にしているんだ。……正直、こんな事は気が乗らんのだが」

 

 星矢と紫龍は手伝おうと言い出しかけますが

 

 「お前達は先に上へ行け」

 

 アイオリアに止められ、上へ向かわせる為に言い放ちます。

 

 「手紙にはアテナの事も書かれていた。本来ならばアテナの為に俺も共に行きたいが、女官達を放っておけない。彼女達が居なければ俺はもしかしたら、こうして黄金聖闘士をしていられなかったかもしれないからな。彼女達には恩がある。女官達を助け次第すぐに向かう!だから、先に行け!」

 

 「アイオリア……、ああ!先に行ってるぜ!」

 

 「アイオリア、手伝って差し上げられず、すみません」

 

 星矢と紫龍の言葉を聞いたアイオリアはフッと笑うと、

 

 「気にするな。次の処女宮では気を付けろ。ムウにも言われているだろうが、黄金聖闘士とお前達では力の差が何十倍も違う。そして何より、守護しているシャカの目を絶対に開かせるな」

 

 「目を?」

 

 星矢を見つめながら神妙な顔つきで頷くアイオリア。

 まぁ、シャカの目が開かれる時、その場に居るモノは全て息絶えるとかなんとか言ってるんですが、先手必勝すれば意外と楽ですよ。慢心しなければ大丈夫です。

 ……昔、デス君達にそう言ったら

 

 「そりゃぁ、お前だけだわ」

 

 とか言われまして!皆さんだってやれば出来ますよ!

 五感奪われる前に一気に気絶まで追い込めばイケるイケる!

 とにかく二人はアイオリアにそう言われ次の宮、処女宮に向かうのでした。

 あ、もう皆さんお分かりでしょうが、このアイオリアに送った伝書鳩と手紙は私です。

 昨日のうちに送れていれば良かったのですが、ハトさんは他の事でお願いしていたので昨日は帰って来てないんですよね。

 今日の朝帰ってきました。お疲れ様です、ハトさん。

 そして、二人は処女宮に着いて直に……まぁ、シャカにやられてますよね。

 その後瞬も追い着いて、シャカと戦いますが瞬の必殺技ネビュラチェーンを放ちますが自分に技が返ってきてしまい、鎖が瞬に巻き付き締め付けられて倒れてしまいます。

 容赦ないですね!でも、これは私がシャカに頼んだことです。

 前にシャカを説得する時に言ったのです。

 

 「アテナと一緒に来る青銅達を叩きのめしてくれませんか?」

 

 って。

 

 「正気かね?」

 

 って聞かれたんですが、しっかり正気です。って答えましたよ。

 彼らには時間がないという事で必死だからこそ試練を与え、最速でセブンセンシズに目覚めてもらう為でもあります。

 シャカと瞬には悪いと思いますが、一輝の小宇宙を高める為です。

 案の定、瞬達を救いに来た一輝はシャカと戦いますが、シャカは目を開けて一輝を追い詰めて五感を奪います。

 一輝はそれを利用してセブンセンシズに目覚め、小宇宙を高めてシャカと一緒に消滅?しました。

 シャカも一輝も実はこれでも生きているからすごいです。

 流石、もっとも神に近い男の黄金聖闘士シャカ、青銅最強と謳われる鳳凰座の聖闘士、一輝ですね。 

 ……あの、なんて言いますか、なんだか私が黒幕化してません?

 裏で根回しして黄金聖闘士達の運命を変えてたり、黄金聖闘士達を利用して星矢達を育ててるし。

 あれ……?私ってもしかして悪サガより暗躍してません?

 ……き、気にしたら負けです!(汗だらだら)

 あ、後紫龍の目ですが、天秤宮の中に通る入口の横あたりでキュアローズ一輪を活けてある花瓶を手紙と一緒に置いておきました。

 紫龍の分だけですけど。

 氷河の分も用意しようとしましたが、瞬の成長の施す為にあえて置きませんでした。

 薄情だと思いますが、心を鬼にします。

 黄金聖闘士達が生き残るなら星矢達を育てる意味がない?

 いや、主人公だからという訳で育ててる訳ではありません。

 聖戦に向けて必要だからこそ育てているんです。

 恐らく聖戦の時に”壁”を破壊する為、黄金聖闘士達は力を使うでしょう。

 その壁を通り、戦いに赴くのは星矢達にしか出来ない事です。

 だからこそ、星矢達にはセブンセンシズに目覚めてもらわなければなりません。

 きっと、私もその時は……。

 ……とにかく!今は星矢達の成長を見守りましょう!

 と、いう訳で、処女宮を一輝のおかげで通れるようになり、天秤宮へ着いた星矢達。

 その入り口で花瓶に気付いた瞬は直に手紙を読み、キュアローズに小宇宙を流して紫龍の後頭部に刺しました。(なんかシュール)

 すると時間もかからずに徐々に目が見えるようになって、その四、五分後には完全に治っていました。

 聖域産のキュアローズですからね。それに普通の失明ではないので一日を懸けて小宇宙を注ぎ、特別仕様にしたキュアローズです。

 はい!簡単に作っているなぁ。とか思ったそこのあなた!

 甘いです!はちみつと黒糖、グラニュー糖にイチゴジャムを混ぜたかのように甘いです!

 おおう、胸やけしそう……。

 こほん、良いですか?確かにホイホイと一日懸けた特別なキュアローズを渡してますが、私がなんの苦労もせず作っているとお思いですか!

 小宇宙のおかげで枯れないので、作れる時に作って作り置きしてるだけですよ!

 ふっ、何度睡眠不足で隈を作り、膀胱炎になりかけたと思ってるんです?

 あの頃はまだ若かった。そういう事です。

 と、いう訳で、目が治った紫龍は私からのものである事を知ると、無意識でしょうか?紫龍は小宇宙で私にお礼を言っていました。

 気にしないでくださいー!本来なら春麗ちゃんのおかげで治るんですけど、私がデス君を生かす為に介入したので、勝手にした事なのでー!!

 自己満足ですみませんー!!

 私がモダモダしていると星矢達は天秤宮の中へ入り、柩の様な氷に閉じ込められている氷河を見つけました。

 死んでいる様に見えた氷河ですが、星矢達は直に気付きます。

 微かに感じる氷河の小宇宙を。

 まだ氷河は生きている!星矢はペガサス流星拳で壊そうとしますが、氷の柩は傷一つ、ヒビもつきません。

 そこへ天秤座の黄金聖衣が現れ、天秤座だけが許された黄金の武器を手に紫龍は氷の柩を壊しました。

 氷河は凍死寸前ですが、紫龍が先ほどのキュアローズは氷河に使えばよかったと悔いています。

 おああ、ごめんなさい。紫龍、これも試練です。頑張って乗り越えてください!

 そして、瞬が氷河の事は自分に任せて先へ行くように言いました。

 ちょっと渋ってましたけど、瞬を信じて任せる事にして二人は先へ行きました。

 瞬が小宇宙を高め、命懸けで氷河を助けようとしている事を知らずに……。

 




真名が出ませんがナレーションでカバー。(カバーになっていない)
仕事も忙しくなったのもありますが、私情によりもしかしたらまた遅くなるやも。
頑張って書きますので、生暖かく見守ってください。


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星36 上を目指して3

 氷の柩に入っていた氷河を助ける為、瞬は天秤宮に残り、星矢と紫龍を見送りました。

 そして、瞬は氷河を抱きかかえ、冷え切っている氷河を温める為に小宇宙を燃やし、弾けました。

 それを天蠍宮で感じ取った星矢と紫龍。

 急いで戻ろうとしましたが、天蠍宮を守護しているミロに止められ、ミロの必殺技、スカーレットニードルを受けて動けなくなり、倒れてしまいました。

 二人がピンチに陥っていると、瞬のおかげで復活した氷河が現れます。

 そして、なんとか生きている瞬を星矢達に任せて先に行かせ、氷河はミロと戦いました。

 そして戦いの末、ある意味では氷河の勝利でした。

 ミロは見たくなったのでしょう。

 この戦いの行方を。

 だからこそ、氷河を助ける為に血止めのツボ、真央点を突きました。

 そうして氷河を上に行かせ見送りました。

 全くもう、これだから……。

 

 ━━━━━仕方ないですねぇ……。男の方々は。

 

 「むっ、誰だ?……!いや、この小宇宙、巨蟹宮でも感じたが……まさか!?」

 

 おや、今更気付いたのですか?

 

 ━━━━━気付くのが遅いですよ、ミロ。

 

 「お、お前は……真名!本当に真名なのか!?」

 

 ━━━━━はい!私、真名!今、教皇宮で監禁されてます!

 

 「は?」

 

 むむ?なんかあまり驚いてない感じです?

 

 ━━━━━ミロー??

 

 「ば……」

 

 ━━━━━ん?

 

 「馬鹿者があああああ!!」

 

 ━━━━━ひょえっ!?

 

 い、いきなりなんですかぁー?!

 

 「前々から馬鹿だ馬鹿だと思っていたが!まさか、お前が居なくなったこの十三年間、監禁されていた訳ではあるまいな!?」

 

 ━━━━━いえ、流石にそんな長期的に監禁されてませんよ。

 

 「ならば、何故姿を現さなかったんだ!俺は、俺達はずっとお前を探していたのに!」

 

 ━━━━━えーっと、私、ミロの前に姿を見せていますよ?

 

 「な、何……?」

 

 まぁ、気付かないですよねー。顔出してましたし、小宇宙も普通の女官レベルまで落としてましたし。

 

 ━━━━━普通に林檎も貰いましたし。双魚宮で。

 

 「…………まさか」

 

 ━━━━━さっき通った青銅の一人を鍛えてました。まぁ、付け焼刃みたいなものですけど。

 

 「……!!教皇宮の新人女官!あれはお前だったのか!!」

 

 ━━━━━はい!ちょっと事情があって話せませんでしたが、あの顔が私ですよー?

 

 流石に七年間、アテナとアイオロスの二人と共に居て、六年聖域に居ただなんて言えませんですよー。主にサガ辺りがヤバい目にあうでしょうね。

 私、隠されてましたから。五年も。

 

 「なっ!そういえば、お前、仮面はどうした!まさか……うむ、お前の事だ。仮面が面倒になって、顔を見た者は全て愛す。とか、ほざくのではあるまいな?」

 

 ━━━━━流石にそれはー……ふむ。

 

 「おい、冗談だからな?お前の事だからそうなのでは?とか思ったが冗談だ。だから、真に受けるな!俺が悪かった!」

 

 ━━━━━……ふふっ、私も冗談ですよ。ただ、理由があって聖闘士を辞めてしまったんです。今はディーテが正式な魚座の黄金聖闘士ですよ。

 

 「そうだったか。しかし……ふっ、無事で良かった……」

 

 おやおや、さっきまで星矢達に向けていた殺気や緊張感が解けていますね。

 

 ━━━━━氷河を、彼らを見てどうでした?ミロ。

 

 「ああ、俺は見たくなった。彼らの行方をな……」

 

 そう言い、ミロは上の宮。人馬宮を見上げ、青銅の四人を見守るのでした。

 次の人馬宮はアイオロスの守護する宮です。

 今は沙織の傍に居るので宮には居ませんが、そういえば射手座の黄金聖衣は持ってきているのでしょうか?

 窓から覗いてみると聖域の白羊宮の辺りで黄金の輝きが見えました。

 どうやら保険として持ってきたみたいですね。

 此処に全ての黄金聖衣が揃った事になるのでしょう。

 十二宮が見える教皇宮の部屋なので各宮の黄金に輝く光が見えます。

 

 「あれが黄金聖衣の共鳴……」

 

 フッとなんとなく気になったので聖域にある十二星座を象った塔、火時計を見ます。

 どうやら本筋とは違い、私の説得?で巨蟹宮の時間が余り、人馬宮で特になのも無かったみたいなので通り過ぎた様ですね。

 つまり、本筋では残り三時間でしたが、今は二時間程余裕があり、五時間程も時間があります。

 と、言っても少し余裕があるというだけなので、油断していられないのです。

 星矢達はなんとか磨羯宮に着き、通る事が出来ましたが、磨羯宮を守護するシュラにより分断され、一人残った紫龍はシュラの相手をして、他の三人を先に行かせました。

 紫龍はシュラの聖剣とまで謳われる手刀を避けたり、白刃取りをして攻撃をいなしました。

 そして、必殺技の打ち合いになり、師である老師によって封印していた技、廬山亢龍覇を使って天へ上ります。

 今です!!

 

 「魚座の黄金聖衣!此処へ!」

 

 小宇宙を燃やし、最高に高め、魚座の黄金聖衣に訴えかけます!

 今はディーテが着ていたでしょうが、無視です!

 

 「魚座の黄金聖衣よ。どうか、私の願いを聞き届けて下さい!」

 

 まだ、間に合うハズ!!

 

 「魚座の黄金聖衣よ!紫龍に纏いつきなさい!」

 

 そう言い放ち、魚座の黄金聖衣を飛ばします。紫龍の元へ!

 そして光の筋を作り、天へ昇っていく龍の元へ行きました。

 

 「はぁはぁ、くっ……」

 

 これで……良いはずです。

 こうすればシュラは紫龍に山羊座の黄金聖衣を渡さなくても良いですし、紫龍も黄金聖衣を着ていれば助かる……と思います。

 

 「後は……カミュとディーテ!」

 

 絶対に死なせません!

 そこで部屋の中の風向きが変わった事に気が付きます。

 後ろの扉が開いているみたいです。

 それに振り返った時、とても強い衝撃が頭を貫きました。

 

 「さ……」

 

 私の意識はそこで途切れました。

 次に意識が戻ったのは……。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「ついに見えてきたぜ……。双魚宮!」

 

 「星矢、分かっていると思うけど」

 

 「ああ!ダイダロスの敵討ちだったな!」

 

 「ふふっ、先生は死んではいないよ。星矢」

 

 そう、瞬の師、ダイダロスは長年召集に応じず、その罰として魚座の黄金聖闘士アフロディーテによって死にかけるも、瞬が去り際に姉弟子のジュネに渡していたお守りの中身、キュアローズの花びらを使い、ギリギリの所で生き残ったのであった。

 勿論、ジュネには使用法を教えていたので助かったが、もし教えていなければダイダロスは死んでいたかもしれない。

 その事を思うと、ジュネに渡しておいて良かったと思う瞬であった。

 

 「まさか、あのお守りの中身が、真名さんの青薔薇の花びらだったのには驚いたよ。しかも癒しの効果があるだなんて……。小宇宙は本当に色々な可能性があるね。……僕、嬉しいんだ」

 

 「瞬?」

 

 「聖闘士は戦いの為だけではなく、誰かを癒す事も出来る。その可能性を生み出した真名さんはすごいと思うよ。心から尊敬する」

 

 「瞬……」

 

 「ふふっ、星矢、僕なら大丈夫!さぁ、アフロディーテは僕が相手をする!その隙に星矢は先へ行ってくれ!」

 

 「ああ!」

 

 そう言うと、二人は駆け出す。

 双魚宮の入口に誰かが立っていた。

 二人を迎えるように。

 二人を……

 

 「あ……、あれは……!」

 

 「真名さん?」

 

 拒むように……。

 




また大分遅くなってしまいすみません。
しかも、今回も短い……。お許しください!(ガクブル)
多分状況的にまた遅くなるやも……。
さて、星矢達の前に立ち塞がるのは……?
次も頑張ります!


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星37 洗脳

 「真名さん?」

 

 名前を呼ばれ、階段下に居る青銅聖闘士、ペガサスの星矢とアンドロメダの瞬に目を向ける。

 来てくれて嬉しい様な、来てほしく無かった様な複雑な心境をしていた。

 真名が何故此処に?と思いながらも階段を上がる二人。

 あと数mという所で立ち止まる。

 

 「よく此処まで来ましたね。星矢、瞬」

 

 「あ、ああ。此処には居ないけど、氷河達のおかげだぜ!勿論、姉貴のおかげもあるけどな!」

 

 「そうですか……」

 

 その言葉を聞くと顔をふかせ、黙ってしまう真名。

 何か様子がおかしいと感じ始める星矢と瞬。

 

 「星矢、瞬。急いで私の横を走り抜けなさい」

 

 「「え?」」

 

 一瞬何を言っているのか分からなかった二人。

 横を走り抜けろ?

 

 「真名さん、此処は魚座の黄金聖闘士アフロディーテが守護している宮ですよね?彼が居るのであれば僕は戦わなければ「良いから!急ぎなさい!!」

 

 「「!?」」

 

 瞬の言葉を真名は遮り叫ぶ。

 星矢と瞬は見た。

 真名から微かに黄金のオーラが身体から出ている事に。

 

 「あ、姉貴?」

 

 「真名さん……貴女は……」

 

 「貴方達の今持てる一番早い速度で走り抜けなさい!何度も言わせるのではありません!!」

 

 悲鳴に似た叫びに身体が震える二人、とにかく言われた通りに走り抜けようとするが

 

 「え?」

 

 「は?」

 

 二人の身体の中心を貫かれた感覚が襲った。

 そう、”黄金の輝き”によって。

 

 「「う、うああああああ!!」」

 

 後ろへ吹き飛ばされる星矢と瞬。

 けれど、その二人の身体を受け止める者達が居た。

 

 「大丈夫か?星矢」

 

 「瞬、しっかりしろ」

 

 聞き覚えのある声が受け止めてくれた者達から聞こえ、慌てて振り向く。

 

 「紫龍!?生きていたんだな!良かった!」

 

 「氷河!無事だったんだね!」

 

 そう、紫龍と氷河が駆け付けて来てくれたのである。

 

 「駆け付けて来たのは俺達だけではないがな」

 

 「え?」

 

 その言葉に後ろを振り向くと、階段の下から黄金の輝きを放つ者達が現れる。

 

 「星矢、無事か」

 

 「アイオリア!」

 

 「真名、一体どうしたというのだ?」

 

 「ミロ?」

 

 「教皇、真名に完成したあの技を使ったのか……」

 

 「シュラ」

 

 「氷河、仲間たちを私達より後ろに下がらせろ。彼女の相手はまだ、お前達では無理だ」

 

 「カミュ……」

 

 四人はそう言われ、とりあえず黄金聖闘士達の後ろへ下がる。

 さっきの黄金色の攻撃といい、一体真名に何があるというのか……?

 

 「シュラ、カミュ。無事で良かったです」

 

 笑顔でそう言ってきた真名。

 だが、そのいつもの穏やかに輝いていた瞳は濁っていた。

 そんな瞳を見て顔を歪ませたが、カミュとシュラは返事を返す。 

 

 「ああ、貴女のおかげだ。真名」

 

 「お前には助けられてしまったな……」

 

 カミュとシュラの言葉に星矢と瞬は紫龍と氷河を見つめて

 

 「どういう事なんだ?」

 

 「まずは俺から説明しよう。俺は老師から封印する様に言われていた技、亢龍覇を使い、シュラと共に消えるはずだった」

 

 「な!?」

 

 「紫龍!?」

 

 「聞け、俺はこの通り無事だ。まだ続きがある。そこで天に昇っている途中に黄金の輝きに包まれた。それは黄金聖衣」

 

 黄金聖衣、そう聞いた星矢と瞬は驚きを隠せない。

 

 「な、なんだって!?」

 

 「ああ、正直俺も驚いた。どうやらシュラが俺を生かそうと自身の黄金聖衣を渡そうとしたらしいが、他の黄金聖衣が俺に纏いつき、守ってくれたらしい」

 

 「そ、そんな事が……」

 

 「そして、黄金聖衣を纏っていたおかげで、俺もシュラも少しの間気絶していただけに止まったという訳だ」

 

 そう聞いた二人は唖然としていたが、氷河が次の説明をしてきた。

 

 「俺も正直死んだと思っていた。だが、下から来たミロ達に助けてもらったんだ」

 

 「ミロ達に?」

 

 「宝瓶宮の居住部屋に真名さんの青薔薇があったそうなんだ。それを使い、まずは俺よりも重体だったカミュ、次に俺と、治療してくれたのだ」

 

 「そうだったのか……」

 

 「でも、真名さんの青薔薇で治療って先生の件で知ってはいたけれど、改めて凄いって実感するね」

 

 「ああ、そしてその後に聞いた事に俺と紫龍は驚愕した」

 

 「「え?」」

 

 「よく聞いてくれ、二人共。真名さんは……」

 

 氷河が何か言おうとしたその時、自分達が居る側の出入り口から、凄い速さで黄金の輝きが入ってくる。

 その輝きは真名の隣に降り立ち、こちらを見据えている。

 

 「あれは……」

 

 「魚座の黄金聖衣?」

 

 星矢と瞬は「まさか……」とまたもや驚愕した。

 

 「そうだ、もう分かっただろう?」

 

 魚座の黄金聖衣は一度強く輝くと真名の身体に纏い出す。

 

 「そう、真名さんは……」

 

 「”元”聖闘士は聖闘士でも」

 

 そして、”それ”は姿を現した。

 

 「「十二宮最後の宮、双魚宮を守護する魚座の黄金聖闘士!」」

 

 瞳は濁り、無表情で星矢達を見つめる魚座の黄金聖衣を纏う真名の姿であった。

 

 「な、何言ってんだ。二人共」

 

 「魚座の黄金聖闘士はアフロディーテではないの!?」

 

 黄金聖衣を纏った真名を見ても未だに信じられないでいる星矢と瞬。

 正直、紫龍も氷河の二人も半信半疑ではあったが、今のこの状況でやっと分かったのである。 

 

 「ああ、今の正式な魚座の黄金聖闘士はアフロディーテだ。だが、真名は女性だ。普通ならば女の聖闘士は女であることを捨て、仮面を付けて聖闘士となる。そのハズなのに、何故黄金聖衣を纏える?」

 

 振り返りはせず、真名を警戒しているカミュが会話に参加してきた。

 その言葉にシュラが答える。

 

 「真名は訳アリで仮面をしていないだけで、聖闘士を辞めた訳ではない。本人は”元”と付けているみたいだが、ある意味言葉の綾みたいなものだ。アフロディーテに黄金聖衣の継承が移ったとしても、どうやら魚座の黄金聖衣は仮面を付けていなくとも未だに真名を聖闘士として認めている様だな」

 

 「それはそうだ」

 

 シュラの言葉に同意する様に何処からか声がした。

 

 「教皇から認められ、黄金聖衣からも認められたのは本来は姉さんだからな」

 

 それはどうやら真名の背後から聞こえた声であった様である。

 柱から姿を現したのは……

 

 「アフロディーテ!」

 

 そう、真名の背後の柱から姿を現したのはアフロディーテであった。

 

 「私も、姉さんが纏うのであれば問題はない。それに……」

 

 アフロディーテは真名に近付き、頬を撫でる。

 それを何も感じていないかの様に、無表情のままで青銅四人を守るかの様に立つ黄金四人を見つめていた。

 

 「今の姉さんは教皇のいう事ならば何でも実行する。抗っている様だけれどね」

 

 その言葉を聞いた星矢と瞬は察する。

 先ほど「走り抜けろ」と言ったのは、自分達の行く道を邪魔しようとしている自分に抗い、先の道に行かせようとしたのだ。

 どうやら抗いきれなかった様ではあるが……。

 

 「それはどういう事だ!真名に何をした!」

 

 アイオリアが怒りを露にしてアフロディーテに叫ぶ。

 

 「姉さんは……幻朧魔皇拳を受けている。昔にも受けているから効果は薄いようだが、より完成された幻朧魔皇拳を受けたのだ。その洗脳はそう簡単には解けない」

 

 「な、何!?」

 

 「教皇にのみ許された魔拳……!」

 

 アフロディーテの言葉を聞いて驚く黄金聖闘士達。

だが、シュラだけが分かっていたかの様にため息をつく。

 

 「……やはり、その技を使ったのか」

 

 「シュラ?分かっていたのか?」

 

 カミュがシュラに問いかける。

 

 「恐らく真名の事だ。どんな事をしようとも、紫龍達の信じるアテナを傷つけるとは思えん。ならば、効果は薄くとも幻朧魔皇拳を使われるであろうと予想しただけの事」

 

 「確かに……真名らしいと言えば、らしいのだがな」

 

 シュラの言葉にミロが同意しながら苦笑する。

 

 「だが、悠長な事を言ってはいられん。真名が抗っている今はまだ大人しい方だが、もし真名が俺達の攻撃を受けた時、その魔拳は本領を発揮する」

 

 青銅の四人はその言葉を聞いて嫌な予感がよぎった。

 

 「い、一体どうなるんだ……?」

 

 しばらく無言が続き、目線だけ振り返るシュラ。

 

 「魔拳に抗っていた良心は無くなり、殺戮機械と化す」

 

 「そ、そんな!!」

 

 「なんとかならないのか!?」

 

 「一応方法はある……可能性は低いがな」

 

 その言葉を聞き、真剣に聞き入る四人。

 

 「方法は二つだ」

 

 「それは……?」

 

 シュラは一度、目を閉じて直に開くと星矢達を見つめ

 

 「一つ、目の前で死人を出す事。そして、もう一つが真名にしか該当しない方法……」

 

 「勿体付けないで早く言ってくれよ!」

 

 星矢が急かしてくるのを見て、もう一度ため息を吐き、意を決して言い放つ。

 

 「……精神力のみで魔拳の威力に勝つ事だ」

 

 それが一番低い可能性だった……。

 




はい!ここまでなんとか書けました!
星矢達に正体?がバレましたね!
立ちはだかるのは黄金聖闘士の真名!
しかも洗脳されているというね!
次回は戦闘になるんでしょうか……?(ガクブル)
上手く書けるか分かりませんが頑張ります!
そして、また投稿が遅くなるフラグが……。
ちまちまでも頑張って書きますので、見守ってください。
お願いします。


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星38 アフロディーテ

  十二宮最後の宮、双魚宮で立ちはだかるのは教皇によって幻朧魔皇拳を受け、洗脳された黄金聖闘士として星矢達の前に立つ真名。

 十三年前の真名しか知らない同じ黄金の四人、もしも彼女の実力が昔と変わらないのであれば、黄金聖闘士の中でも最強格の位置にある。

 警戒するのは仕方のない事である……が、彼女から攻撃を仕掛けてくる事はない。

 こちらをじっと見つめ、仁王立ちの如く立っている。

 

 「……来ないのですか?」

 

 真名はじっと、目の前に立つ動かない者達を見つめて静かにそう言った。

 ……動かないと言うより、”動けない”というべきか。

 何かの拍子に彼女に攻撃を与えて魔拳の効果が出てしまえば殺戮の限りを尽くしてしまう。

 それだけはさせてはいけない。

 昔、任務に赴く際は、黄金聖闘士の中でも徹底的に周りの被害、巻き添え等には気を付けていた真名。

 そんな彼女だから出来る事ならば犠牲を出したくない。

 そう思う黄金の四人だったが、しかし、睨み合うだけでは時間が経ってしまい、黄金の矢が刺さっている沙織嬢(アテナ)を救えない。ならば……。

 

 「星矢!」

 

 「あ、おう!」

 

 「瞬!」

 

 「は、はい!」

 

 「氷河」

 

 「はい!」

 

 「紫龍」

 

 「はい」

 

 「真名とアフロディーテは俺達で抑える。お前達は教皇宮へ、時間がない!」

 

 アイオリアがそう星矢達に言い放つ。

 

 「教皇ならば、もしかしたらアテナのみではなく、真名もなんとか出来るかもしれない!急げ!」

 

 「わ、わかった!」

 

 星矢が返事をした瞬間、黄金の四人が動く。

 それに反応したのはアフロディーテのみ、真名は目線だけで黄金の四人を見つめる。

 まるでそう来る事が分かっていたかの様に。

 

 「【ロイヤルデモンローズ】!」

 

 アフロディーテはロイヤルデモンローズを黄金の四人にそれぞれ投げつけ、薔薇が刺さるかという時にシュラは手刀で払い、カミュは凍気を使って凍らせ、ミロとアイオリアは左右に避ける。

 

 「そう来るのは分かっていた!【ロイヤルデモンローズ】!」

 

 避ける四人を見る前にアフロディーテは既にもう一度ロイヤルデモンローズを複数投擲。

 今度こそ当たるかという所で、四人はそれぞれ黄金聖衣に当たるように身体を捻る。

 

 「アイオリア、カミュ、ミロ!あの薔薇の香りを吸うな!瞬間的に毒が回るぞ!」

 

 薔薇が散る際はしっかりと鼻と口は手で覆い隠し、完璧に散り落ちるまで待つ。

 下手に散っている最中に薔薇の花粉等を吸ったら薔薇の毒にやられる可能性があるからだ。

 その瞬間を狙ったのかアフロディーテは一番近くに居たミロに狙いを定め、光速の蹴りをお見舞いする。

 

 「喰らえ!」

 

その蹴りをバク転の要領で避け、体勢を整えて透かさず、スカーレッドニードルでアフロディーテの身体の秘孔を突こうとしたが、アフロディーテもまた、それに気付いており赤薔薇をミロの指先に向けて放つ。

 

 「ロイヤルデモンローズ!」

 

 小宇宙を纏う赤薔薇に一瞬怯んだがロイヤルデモンローズに見せかけたモノである事に気付き、素手で払いのける。

 

 「くっ、フェイントか!」

 

 それにより隙が出来たミロの腹部にアフロディーテは光速の拳で殴りかかる。

 ミロも己の隙が出来てしまった事に素早く気付き、拳が腹部に当たる前にこちらも光速の手刀にて払い、払った反動を使いそのまま回し蹴りを食らわせる。

 

 「ぐぁっ!!」

 

 咄嗟に腕で防御するが、諸に蹴りを喰らい柱に吹き飛び、ぶつかるアフロディーテ。

 

 「……ディーテ」

 

 真名はアフロディーテに近付き、息をしているか確かめる。

 どうやら気絶しているだけの様だ。

 それだけ確認するとその場にまた佇み、こちらを見据えている。

 ここまで戦っておいてなんだが、実はミロは本気を出していない。

 今のアフロディーテは黄金聖衣を纏っていないからだ。

 もしも黄金聖衣を纏っていたならば、戦いは続行だっただろう。

 実力自体は互角なのだが、防御面に関しては圧倒的に不利なのはアフロディーテだ。

 ミロが本気で蹴りをぶつけていたのならば、今頃アフロディーテは腕の骨は折れ、その蹴りの威力により、絶命していた可能性が高い。

 だが、ミロはそうしなかった。

 アフロディーテが心から教皇に心酔しているのは知っている。

 ここで殺せば真名が受けた幻朧魔皇拳の効力も解除されるだろう。

 でも、それは出来ない。

 真名がそれを望んでいないからだ。

 この十二宮の戦いを見ていれば分かる。

 真名はこの戦いで出来る限り”死者を出さない様にしている”事は明白である。

 もし、真名が居なければ今頃は黄金聖闘士が”半分程死んでいた”事だろう。

 兵士達にも死者が出ていた可能性もあるのだ。

 その例が獅子宮女官の人質の件である。

 アイオリアはもう分かっていた。

 あの名前のない手紙を持ってきた伝書鳩が誰からの物で、女官の牢の場所を知っている兵士が居る。と、書かれていなければ殺して鍵のみを手に入れ、自力で探して回っていたであろう可能性がある事を。

 カミュも氷河との闘いで朽ちるだろうと思っていた。

 だが、この十二宮の戦いが始まる前日、カミュの元へ青薔薇、キュアローズが届いた。

 この時になって初めてカミュは真名が聖域に居る事を察した。

 しかし、何故キュアローズが送られてきたのかが分からない。

 手紙にも

 

 《テーブルにでも飾ってください》

 

 としか書かれていなかったからだ。

 後から知ったのだが、ミロから

 

 「昨日、伝書鳩が来てくくってあった手紙に《宝瓶宮の居住部屋のテーブルにある物をカミュと氷河に使いなさい》と書いてあった」

 

 つまり師弟で戦い、死に懸ける事が分かっていたという事だろう。

 真名は”死”を望んでいない。

 だからこそシュラの時も魚座の黄金聖衣を使い、紫龍に纏わせてシュラは紫龍に己の黄金聖衣を与える事なく、その命は助かっているのである。

 ここで死人を出せば想像上ではあるが、アテナも悲しむであろう。

 己の守護を与えている聖闘士同士の戦いだ、不本意極まりないかもしれない。

 だが、それ以上に悲しむのは真名であろうという事も予想は付くというモノ。

 今ならば分かる。真名は表でも陰でも色々と根回ししていた。

 やっている事は自分勝手であるかもしれない、偽善かもしれない、だが、それ以上に我慢できなかったのだ。

 自分の周りに居る人達が、自分の大切にしてきたモノが無くなるのが。

 だからなのだろう。

 魔拳を受け、アフロディーテが生きている事を知ると、そっけない感じではあるモノの、安堵していた。

 後は、星矢達をなんとか真名の横を通らせ、教皇宮に行かせるのみである。

 シュラが一歩前へ出る。

 

 「アイオリア、カミュ、ミロ。一つ言っておく、真名の後ろに回るのは俺がやる。お前達は正面のみで戦え」

 

 「な」

 

 「何を言っている?」

 

 「その前に!真名を相手に全員で仕掛けるのか!?」

 

 シュラは目線のみでアイオリア達を見つめ、返事を返した。

 

 「そうだ」

 

 「「「!?」」」

 

 「お前達は真名の実力をちゃんと見た事があるか?」

 

 その言葉に十三年前の真名を思い出す三人。

 そう、真名はふざけている様で思慮深い人で、周りの人々に優しかったし、幼かった自分達にも優しかった。

 修行にも厳しかった……だがその後、修行した分沢山の愛情をくれた。

 母や姉が居たらこんな感じだろうと思う程に。

 だからこそ真名を知る人々は彼女を”聖闘士の中でもっとも慈悲深い黄金聖闘士”と呼んでいた。

 だが、シュラを除く三人は真名の本当の実力というモノを知らない、見たことがないのである。

 真名が最強格であろうというのはアイオロスとサガが言っていたからだ。

 本人にも聞いたことがあるが

 

 「アイオロスとサガには負けますよ。でも、一発くらいはお見舞いしています」

 

 そう言っていた。

 つまり、十三年前は黄金聖闘士の中でも最強を誇っていた二人に負けるが、一矢報いる位の力を持っていた事になる。

 そのハズなのだが、シュラの雰囲気はそれにしては警戒し過ぎている気がする。

 戦闘事態彼女は十三年もの離脱をしていたハズで、ブランクがあるであろうと予想していた三人。しかし、シュラのこの警戒はなんだ?

 そう思い、改めて真名を見つめる三人。

 そこで初めて気付く。

 黄金の大きな小宇宙も内に秘めている様に身体から滲み出ている。

 まるで周りに被害が出ない様に抑えている様にも感じる。

 シャカとは違い、視覚を閉じている訳でもない。

 だが、彼女は……

 

 「真名は常に小宇宙を抑える様に過ごしている。本人の話では寝ている時も常に、らしい」

 

 「な、なんだと?」

 

 「つまり彼女は……」

 

 シュラはこくりと頷くと

 

 「シャカ以上の小宇宙を秘めている可能性がある」

 

 攻撃を与えてはいけない、その上に、シャカ以上の実力があるかもしれない相手にどう戦えば良いか。

 複数で挑まなければ、こちらが”ヤ”られるかもしれないのである。

 




令和になって初の投稿です!
出来れば一日に間に合いたかった……。
十二宮戦ボス前の戦い相手はアフロディーテでした。
真名が戦うのを期待した方々すみませぬ!
戦闘描写が難しい!我が友人の言葉を頂かなければ書けなかったでしょう。
ありがとう!本当にありがとう!自慢の友人です。
さて次回、今度こそ、主人公の出番です。
果たしてどんな展開になるのか……。
私にもやっぱり分かりません。
それから、評価の一言 必要文字数についてなのですが、活動報告をご覧ください。
私のアホな行動で自分の首を絞めております。
後、恐らくまた遅くなるでしょうけど、頑張って書きますので見守っていて下さい。
よろしくお願いします!


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星39 真名戦前編

 

 シャカ以上の実力、というよりも小宇宙だが、真名は小宇宙のコントロールに関して天才的な才能を持っていた。

 なんといっても、たったの一日で小宇宙を感じ取り、大岩を翌日には粉砕させてみせたのだ。

 それから彼女は考えた。

 

 「そうです、シャカさん(この時はシャカに会っていないのでさん付け)は常に視覚を封じる事で小宇宙を内側に秘めているんですから、普段から五感全てで小宇宙を抑えて生活したら良い線行くんじゃないでしょうか?」

 

 そして、これをもし,近くでデスマスクが聞いていたら

 

 「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、頭おかしいんじゃねーか?アイツ」

 

 っと言っていたであろう。

 だが、真名は実際にそれを実行し、成功させていた。

 そんな馬鹿なと思うであろうが、事実である。

 実際にその事を痛感しているカノンは此処には居ないが、もし、居たとしたら

 

 「アイツは、ある意味変人だと思う」

 

 そうぶっちゃけるだろう。

 そしてデスマスクと共に双魚宮裏行きになる事が決まっていたと思う。

 二人は犠牲となるのだ。

 そう、小宇宙馬鹿の犠牲にな……。

 え?そんな事を言っているとナレーションやっている自分もヤヴァイって?

 …………。

 真名はただ佇んでいるのみであった。だが、それだけでも分かってしまう。

 彼女から滲み出る小宇宙のオーラが。

 こちらを見据えた濁った瞳が。

 だけれど、決してあちらからは仕掛けて来ない。

 仕掛けて来ないというよりも、見様によっては我慢している様にも見える。

 やはり魔拳に抗っているのであろうと予測する。

 動かないのであればチャンスなのではと思うだろう。

 しかし、シュラは嫌な予感が脳裏をよぎって離れない。

 そこでシュラは近くに落ちている手のひら程の柱の欠片を拾い、真名の近くに投げつけた。

 そう、”真名に投げた”のではなく、”真名のすぐ横に投げつけた”のである。

 

 「シュラ!?」

 

 「一体、何を……?」

 

 ミロとカミュがシュラに問う。

 そして投げた先を見る。

 

 パァーンッ!

 

 そんな甲高い音がした。

 投げた石が砕け散ったのだ。

 しかも真名は”どこも動かしてはいない”様に見える。

 先ほどもそうだ。

 黄金の四人と紫龍、氷河は見ていた。

 星矢と瞬が”見えない何か”によって弾かれたのを。

 いや、そう見えただけで真名はちゃんと動いていた。

 手を動かし、星矢と瞬を二発の平手によって吹き飛ばしたのである。

 光速の速さで。

 黄金聖闘士は光速の速さで動き、扱う事も出来る。

 だが、真名のソレは黄金聖闘士である四人でも辛うじて見えただけ。

 そんな速さで叩かれた星矢と瞬は、よく無事だったなと頭の片隅で思う。

 つまり、シュラがやって見せた事は、動かないでいる様に見える真名の横を、普通の方法では星矢達を通らせる事は出来ないという事である。

 

 「ちょっ、マジかよ」

 

 「……今の、見えなかった」

 

 けれど、その見えない動きに対し、直接ソレを受けた星矢と瞬は怪我一つしていない。

 考えられるのは一つ、真名は人間相手に手加減しているという事。

 そこにチャンスがあるかもしれない。

 瞬時にそう察して、黄金の四人はお互いにアイコンタクトを取り、一つ頷く。

 

 「一気に方を付ける!行くぞ!」

 

 シュラが三人にそう言って走り出す。

 三人もそれに付いていく形で走り出した。

 まず、先手を取ったのは……カミュだった。

 

 「【カリツォー】」

 

 真名の周りを凍気の輪が満ちていく。

 カリツォーは凍気の力によって動きを封じる技である。

 一つの輪では効果は薄いが重ね掛けが可能なため、複数の輪を生成した方が効果は高くなるが、時間がかかる。

 一時的な技でもある為に、初見での使用でしか効き目はない。

 昔、どんな技であるか説明した事があったが、実際に使って見せた事はないので、一度ならば効き目はあるだろう。

 実はミロと戦う前に氷河がカリツォーを使っている。

 一払いではねのけられてしまったが。

 だからこそ今、この瞬間でしか真名に対して使えないのである。

 思ったとおり、背にはためかせていたマントで一払いしようとした真名。

 それを見逃さず、ミロとアイオリアが動けない真名の左右に移動して両腕をしっかりと掴んだ。

 

 「今だ!星矢達!」

 

 「走り抜けろ!」

 

 その言葉を聞いた青銅の四人は頷き合い、急いで真名を掴むミロとアイオリアの横を通ろうとしたが

 

 「……離しなさい」

 

 そうぽつりと言って真名は、おもむろに両腕を掴んでいるミロとアイオリアごと一度己に引き寄せ、思いっきり反動をつけて両腕を小宇宙と一緒に大の字で放ち、ミロとアイオリアは吹き飛んでしまった。

 

 「「うああああ!!」」

 

 「アイオリア!ミロ!」

 

 星矢が立ち止まりそうになったが、直に

 

 「こちらの事は気にするな!走れ!」

 

 カミュにそう言われ躊躇したが、その言葉に頷き、急いで走る。

 そこで、真名は星矢達に拳を向けようとしたその瞬間、足元が大きく崩れた。

 

 「【聖剣】(エクスカリバー)!!」

 

 その技名と共に。

 

 「!!」

 

 大きな切れ目が己の足元に出来た事に驚き、一瞬硬直してしまい、そのまま足を滑らせ、大きな切れ目に落ちてしまった。

 てっきり攻撃してくるなら己自身にしてくるだろうと思っていたので、出ばなをくじかれた気がした。

 だが、真名はよくも邪魔をしたな。という気持ちと、良くやってくれた。という気持ちの両方を感じている。

 後半は真名の本心であろう、前半はどうみても魔拳の影響である。

 横になっていたのを直に起き上がり、上を見る。遠くの方で駆けていく音がする。

 この音は星矢達であろう。今直に追いかけて

 

 「殺さなければ……」

 

 呟いた瞬間、頭に衝撃を感じた。己の手にもその瞬間、痛みを感じる。

 そう、真名は自分自身で己を殴ったのである。

 それは呟きでも許さない。そういった感情が今の真名の心を支配していた。

 しかし、その感情も直に無くなり、魔拳の効力に抗う為に無感情になるが、わずかに魔拳に押されかけてしまった。

 己の役目として本来ならば全員行かせる訳には――――。

 いや、青銅の少年達だけでも行かせなければアテナ(沙織)は――――。

 いいえ、彼らを追いかけて……こ ろ し ――――。

 

 「…………!!」

 

 真名は切れ目の間から高く跳躍する。

 双魚宮の中に舞い戻り、素早く周りを見渡し、小宇宙で星矢達を探る。

 どうやら星矢達はデモンローズの坂を走っている様であった。

 星矢達はそれぞれの必殺技でデモンローズを蹴散らしていた。

 どうやらデモンローズの事を前もって教えられていた様である。

 それを感じ取り、舌打ちしたくなる気持ちと、安堵する気持ちの両方を感じて、なんとかやり過ごす。

 両方の気持ちに蓋をしないと、魔拳に負けてしまいそうになるからだ。

 そして、目の前に立つ黄金聖闘士達。

 これで良い。こうなったらもう、最後の手段だ。

 殺すのは嫌、自害も出来ない、精神力で勝つには後一押しないと無理の様だ。

 ならばとそう思い、懸命に今感じている気持ちのまま、ソレを伝える。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「アイオリア……ミロ、シュラ…カミュ……。お願いがあります」

 

 「真名?」

 

 「このままではジリ貧です。だから」

 

 にっこりと笑顔で伝える事にしました。

 

 

 わ た し を こ ろ し て く だ さ い。

 

 

 声になったか、わかりませんでした。

 けれど、四人が目を見開いて驚いている事が分かります。

 私の言った事が伝わったのでしょう。

 

 「な、何を言っている」

 

 「そうだ!何を言っているんだ!?そんな馬鹿な事……!」

 

 「……教皇のやった事は」

 

 「え?」

 

 いきなり”教皇”という名を出した私に驚きの声をあげます。

 

 「確かに、悪い事をしていたでしょう。けれど、彼は彼なりに自身の正義で、この聖域を守っていました。私には出来ない事です」

 

 「真名……正気に戻って?」

 

 私は彼らの言葉にかまわず話を続けます。

 

 「許せとは言いません。むしろ許さなくても良いです。けれど、どうかチャンスを……生きる事の許しだけは与えてあげて下さい。それが、彼の罰になります。まぁ、言ってしまえば、生き恥を曝してでも生きろという事です」

 

 少し早口になってしまうのはこの際気にしないで頂きたいですね。

 

 「真名……」

 

 「そうそう、殺していただく時はココを、狙ってください。痛いのは嫌なので」

 

 ココとは額の事です。シュラの聖剣で首を切られた場合なのですが、例えですけど、ギロチンで首を切ると死の間際、心臓止まるまで生きて意識があるんですって。こっわ。

 なので、一思いに額を貫いてほしいですね。

 ふむ、攻撃しないのであれば、こちらから行きますか。

 

 「さて、では行きますよ!”元”魚座の黄金聖闘士真名。行きます!!」

 

 唐突に戦闘を開始したのでした。

 




すみません、本格的な戦闘は私には無理です……。
しかも星矢達を通すのが遅い!
本当に申し訳ありません。
まさかこんなに展開が遅く、長いとは思いませんでした。
次も戦闘ありですけど、どうなる事やらで……。
次も遅くなるでしょうけども、ちゃんと書きますのでお待ちください。
どうか、生暖かく見守ってください。お願いします。


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星40 真名戦後編





 「さて、では行きますよ!”元”魚座の黄金聖闘士真名。行きます!」

 

 その言葉がきっかけになり、私は戦闘を開始しました。

 私はまずアイオリアに狙いを定め、ちょっと速さを上げて懐に入り込みます。

 膝を抱えるようにしながら回転し、大きな円を描くようにして足首を伸ばして、後ろ回し蹴りをお見舞いしました。

 

 「ぐっ!」

 

 それによりアイオリアの頭に衝撃が走った様で、意識が飛びかけたみたいですが、被っていた兜によって守られ直ぐに体勢を正し、こちらの間合いからバックステップで離れました。

 離れた時に膝をついてフラついていますが、気合いで乗り切っている様です。

 

 「次!」

 

 次に近くに居たカミュの正面からやや斜め横辺りの位置に移動。

 素早く構えた状態から、外側の足に体重を乗せて上半身をやや傾け、カミュの奥足が、私の股の正面に来るような位置取りをします。

 その位置から振りかぶって拳を思いっきり叩き込みました。

 

 「かはっ!?」

 

 「カミュ!」

 

 「よそ見をしている場合ではありませんよ?ミロ」

 

 吹っ飛ばされたカミュを見たミロに忠告して、一気に間合いに踏み込んで拳を放ちます。

 

 「くっ!」

 

 が、間一髪といった風にミロにかわされました。

 しかし、一瞬だけ動きが止まったのを見逃しません。

 すかさず奥足を前に出して身体を固定、ミロの前に出つつ腹部に連続攻撃を繰り出して、最後の一発は勢いをつけ両手を突き出し、小宇宙を爆発させて吹き飛ばしました。

 

 「うあああああああっ!」

 

 「くそっ、真名!止めろ!」

 

 吹き飛ばされたミロを背後にシュラが私に制止するように訴えかけてきます。

 

 「…たい………アロ…ズ…」

 

 「……真名?」

 

 じっとシュラを見つめながら呟きます。けれど、聞こえていなかったみたいですが、仕方ないです。

 一瞬ある解決策を思い出したのですが、直に霞みが掛かって消えてしまいました。

 とにかく認識できる、今一番伝えたい事を叫ぶ事にします。

 

 「私の意識が出ている今ならチャンスなんです!実際こうして傷つけている事が楽なんですよ!こんな事、したくもないのに!!」

 

 「真名……」

 

 「お願いします、シュラ。どうか」

 

 

 わたしをころ――――

 

 

 

 「それは断るよ。真名」

 

 

 

 「!!」

 

 それはもう聞く事はないと思っていた声でした。

 何故…彼が此処に……。

 

 「…………アイオロス」

 

 思わず、双魚宮の出入口を凝視してしまいました。

 そこには沙織の傍に居るハズのアイオロスが居て……。

 

 「なぜ……此処に?」

 

 驚きのあまり戦闘衝動も今は落ち着いています。

 

 「何。今、君の傍に行かなければ後悔してしまいそうだったんだ」

 

 笑顔でこちらを見つめてくるアイオロス。

 彼は車椅子での移動手段しかないと思っていました。

 恐らく六年は治療していなかったハズです。

 けれど、今の彼の両足はしっかりと地面の上にあって。

 

 「足は?」

 

 「まだ完治していないよ。小宇宙で一時的に歩いているに過ぎない」

 

 ああ、なるほど。流石としか言えないですね。

 しかもそれだけではなく。

 

 「その恰好は?」

 

 そう、今のアイオロスは射手座の黄金聖衣を纏っています。

 

 「君を止めに」

 

 「……止めてくれるんですか?」

 

 「ああ」

 

 そう言って、アイオロスは私から少し離れた場所まで来ました。

 

 「真名」

 

 「……はい」

 

 一体どうやって止めると言うのでしょう……。

 

 「何を使うかは秘密としよう。例えて言うなら……」

 

 「?」

 

 「君にもらった物を返そう。という事だ」

 

 「??」

 

 一体どういう事でしょう?もらった物を返す?

 何年もアイオロスにあげた物なんてありませんよ?

 

 「真名」

 

 「は、い」

 

 驚きで少し落ち着いていた反動でしょうか?少しづつ魔拳の力が強く……。

 

 「ア…イオ……ロス!止めるな…ら、一思いにで……すよ!」

 

 ではないと、止まれません……!すると、アイオロスが動きました。

 手に黄金の弓を持ち、矢を背から取り出しています。

 

 「兄さん!」

 

 「「アイオロス!!」」

 

 「よせ!アイオロス!」

 

 アイオリア、ミロにカミュ、シュラが叫んでます。

 これで、彼らを傷付ける事はありません。

 気張って動いてなるモノですか……!

 

 「いくぞ、真名」

 

 「はい」

 

 そして矢は放たれました。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 矢は放たれた。

 真名は目を閉じ、その瞬間を待った。魔拳の力は”避けろ”と叫んでいる。

 だが、真名は動けない。いや、”動かない”。

 アイオロスが来てくれて良かった。心の底からそう思う。

 そして、

 

 

 トスンッ

 

 

 っと小さく、そんな音が真名の額から聞こえた気がした。

 

 「……あ」

 

 身体に、心に全力で抗い、消し去る事が不可能と思っていた重圧が軽くなってくる。

 完全に消えた訳ではないがこれならばと小宇宙を高め、自身の精神を強く意識して魔拳の力を追い出す。

 どこか遠くの方で何かが破裂した音が聞こえた気がした。

 そして、その瞬間真名は気が抜けて倒れ込む所だったが、アイオロスがいつの間にか傍に居て抱き留めていた。

 目を閉じる瞬間、見えたのはアイオロスの腕と”青い花びら”だった。

 

 「……ああ……なるほど」

 

 真名は直に分かった。この花びらはキュアローズの花びらであると。

 しかも、ただのキュアローズではない。

 恐らく十三年前、沙織……アテナのおくるみに刺したキュアローズだ。

 それは正に特別も特別、沙織……アテナの為に作った物である。

 一応似た様な物が作れない訳ではないが時間が掛かる。

 数日(目安としては一週間程)ある一定の時間に小宇宙を注ぐ必要があった。

 しかも夜、月が出ている間のみで、運が良くなければ作れないのである。

 何故なら晴れていないといけないからだ。

 なので、その効果も絶大なのだ。

 ただし、それは真名以外の者に対してのみ。

 キュアローズは真名の”血”を吸い小宇宙を注がれて、初めて効果を発揮する。

 つまり、真名自身には効かない……訳ではないが、それは怪我した場所に直接茎で刺す等しないといけないけれど、効果はとても薄い。

 使わないよりマシだろうという感じだ。

 なので今回アイオロスが使ったのは特別なキュアローズだからこそ、洗脳しているであろう頭、脳に直接面している場所、額に小宇宙で黄金の矢に見せかけたキュアローズを刺し、少しでも魔拳の洗脳から精神を取り返す為に、こういった荒技を使ったのである。

 キュアローズを使う事を悟られない様に気を付けないと、魔拳の効果によって真名に握り潰されない為にあえて黄金の矢を利用した使い方をしたのだ。

 そうすれば、己は死ぬと思っている真名は、避けようとする魔拳の力に全力をもって抗うであろうと。

 だから秘密とさせてもらったのである。

 

 「少し眠れ。真名」

 

 そう言われ、少しづつ意識が遠くなる。

 しかし、眠る訳にはいかない。

 真名にとって、まだこの後、最後の試練が残っているのである。

 そう、”サガ”という最後の試練が……。

 




気が付いたらお気に入りが108件……。
うあああああ!!
ありがとうございます!ありがとうございます!
すっごく嬉しいです!本当にありがとうございます!
これからも頑張ります!!
今回も短いですがこれでも本当にがんばりました……。
マジで必死でしたよ……。
戦闘シーンは私には難しいですね……。
でも、どーーーしても書きたかったんです。
書けて満足です。燃え尽きたぜ、パトラッシュ。


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星41 わだかまり

 急に意識が浮上する感覚がして目が覚めました。

 

 「……?」

 

 そして気が付くと誰かに横抱きにされています。誰ですかね??

 

 「真名?」

 

 呼びかけられて垂れていた頭を持ち上げ、正面を向くと

 

 「……あ、アイオロス?」

 

 「良かった、目が覚めたようだな」

 

 私は思わず周りを見渡すと、そこは聖域の一番下、白羊宮の近くでした。

 どうやら歩いているみたいです。ん?と、いう事は……

 

 「……!沙織!」

 

 そうです!星矢達は間に合ったんですか!?沙織はどうなりました!?

 思わず私を抱えているアイオロスの肩を掴み揺さぶります。

 

 「アイオロス!沙織は!?星矢達は!?」

 

 「落ち着け、真名。大丈夫だ」

 

 真剣な目で見つめられ、冷静な声でそう言われたので、少しづつ落ち着きました。

 しかも”大丈夫だ”と言ってくれたのです。アイオロスがそう嘘をつくとは思えません。

 

 「真名、大丈夫か?」

 

 「……アルデバラン」

 

 「真名、起きたばかりでいきなり暴れるんじゃない。」

 

 「カミュ」

 

 「その調子だと大丈夫ではあるようだな」

 

 「ミロ」

 

 「ふむ、無理はするな」

 

 「シャカ」

 

 「兄さん、いい加減真名を抱えるのを変わろう。今、テレパシーでムウに車椅子を近くまで持ってきてもらっている」

 

 「アイオリア、ありがとう。だが、私は大丈夫だ」

 

 今までアイオロスの後ろを付いて来る形で降りて来たのでしょう。

 アイオロスに抱えられている私を覗き込むように見つめて各自、声をかけてきました。アイオリアは勿論、アイオロスに、です。

 気のせいではないのでしょうね。アイオリアの目が少し赤いです。

 それに今、微笑んで返事をしたアイオロスを見たアイオリアはきっとまた、なんでしょうね。

 ぽろぽろと目から涙が流れてきています。

 

 「アイオリア、男がそう簡単に涙を見せるものではないぞ」

 

 「す、すまない。兄さん」

 

 必死に涙を止めようとしているアイオリアに、アイオロスは仕方がないと言った感じで一息つき、アイオリアを咎めていた厳しい顔つきだったのが嘘の様に今は穏やかに微笑み、

 

 「今まで沢山の苦労があっただろう。しかし、それを乗り越え、一人前の戦士となった。私はそんなお前を誇りに思う」

 

 「に、兄さ」

 

 「胸を張れ、アイオリア。誇りある獅子の黄金聖闘士。お前は立派なアテナの聖闘士だ」

 

 そう言われたアイオリアは目を見開き驚いている様です。

 涙も引っ込み……いえ、いきなり滝の様に涙が流れてきました。

 それを見たアイオロスは苦笑しています。

 他の皆さんもそれを見てアイオリアの肩に手を置いたり、背中を軽く叩いたり、それぞれ声をかけてあげていますね。

 

 「アイオリア、アイオロスの事、今まで黙っていてすみませんでした」

 

 「…………」

 

 「言い訳にしかなりませんが、アイオロスの安全を考えると黙っているしかなくて……」

 

 「真名」

 

 「……はい」

 

 なんとか涙を止められたアイオリアは私を見つめて

 

 「ありがとう」

 

 「……?」

 

 「兄さんが今こうして生きていてくれた。俺はそれだけで十分だ」

 

 「アイオリア……」

 

 ふとアイオリアは笑顔になり、私の手を取って両手で包みぎゅっと握りました。

 

 「兄さんの命を救ったのは真名のキュアローズのおかげだと聞いている。本当に……ありがとう」

 

 「……私もあの時は咄嗟でしたからね。後はアイオロス自身の判断ですし」

 

 「それでも、だ」

 

 「ふふっ、はい」

 

 そう二人で微笑み合っていましたが、そろそろ降ろして頂かないと恥ずかしいのでアイオリアから手を放してもらって、私を抱えているアイオロスの腕を軽く叩き、もう大丈夫と言って降ろしてもらいました。

 

 「ありがとうございました。アイオロス」

 

 「ああ、どういたしまして」

 

 改めてアイオロスの後ろに居る方々に顔を合わせました。

 まず近くに居る所から、アイオリア、シャカ、ミロ、カミュ、アルデバラン、意識が戻っていたみたいで、まだ本調子ではないデス君を支えているディーテ、少し離れた場所に居るシュラ。

 こうして見るとまだ足りないですが昔を思い出します。

 さて、ではまず……。 

 

 「アイオロス、アイオリア、ミロ、カミュ、シュラ」

 

 私はその五人を呼ぶとちゃんと返事をくれました。

 そして

 

 「大変すみませんでした」

 

 そう私が頭を下げ謝罪を言わせて頂きました。

 そう、先程の幻朧魔皇拳の洗脳の件です。

 いくら本意ではなくとも傷付けた事に変わりはありませんし、魔拳で殺戮機械とならない様に私を気遣いながら戦い、止めてくれて……。

 

 「本当にご迷惑をかけ「真名」」

 

 「?」

 

 「君がいつも言っている事だと思うが、それで十分なんだが?」

 

 何の事でしょう?いつも言っている事……?

 

 「”ありがとう”、がないぞ?真名」

 

 そのアイオロスの言葉に他の四人は頷いて穏やかな目で見つめてきます。

 

 「……あ」

 

 そうです。私は昔、皆さんに謝罪をする事も教えましたが、その後に”ありがとう”を言う事も教えていました。

 「謝罪も大事ですが、お礼を言うのも大事です!」と教えていました。

 きっとその事でしょう。

 

 「あ、ありがとうございました……」

 

 「ああ、どういたしまして」

 

 私としたことが……不覚……!

 そこでふとアイオロスを見た後に、シュラと目が合いました。

 何故か顔を背けてます。私、何かしましたっけ?

 そこで気が付きました。

 

 「アイオロス」

 

 「ん?なんだ?」

 

 「シュラ」

 

 「!!」

 

 多分ですけど、シュラ、あの件をアイオロスとちゃんとお話ししてませんね?

 まぁ、時間もなんもなかったでしょうけど、大事な事なので今のうちに……。

 シュラを呼んで手招きしましたが来てくれません。

 名前を呼んだ時は反応していたのに。

 仕方ないですねぇ……。

 私はそう思いつつシュラに近付き、背中を押しました。

 ビクともしませんですが……。

 

 「……真名」

 

 「動きなさい。でないと、私がシュラを強制横抱きの刑に処すです」

 

 「!?」

 

 そう言うとため息を付けれ、少しづつ動いてくれました。

 でもアイオロスに近付くと鈍かった動きも更に鈍くなり、ほとんど動かなくなりましたが、まぁ、この位で良いでしょう。

 

 「シュラ」

 

 「……」

 

 「真名、あまりシュラに無理は……」

 

 「いえ、この際です。はっきりしちゃいましょう」

 

 むむむっとシュラの顔をじっと見つめます。

 それにたじろぐシュラ。なんとなく私の言いたい事を分かっているのでしょう。

 アイオロスも分かっている様で、シュラを庇う感じに言ってきましたが、私の件はもう終わったのにシュラのあの態度、わだかまりはさっさと消すに限ります。

 まぁ、長い年月も経ち、殺し、殺されたと思っていた訳ですからそう簡単にはいかないでしょうけど……。

 アイオロスは気にしていないみたいですが、シュラと……アイオリアは、ね?

 

 「……俺は謝らないぞ」

 

 「シュラ」

 

 「俺は俺のした事を背負って生きていく。アイオロスを殺そうとした事もだ」

 

 「…………」

 

 「……だが、アイオロス」

 

 「なんだ?」

 

 今まで顔を背けていたのが今度はしっかりと目線を合わせて見つめ合っています。

 

 「俺は後悔していない」

 

 「ああ」

 

 「しかし、沙織嬢……アテナに忠誠を誓い、守る事は信じろ」

 

 その言葉にアイオロスは微笑み、

 

 「ああ!」

 

 シュラと握手したのでした。最後に……。

 

 「デス君、ディーテ」

 

 「……ああ?」

 

 「なんだい?姉さん」

 

 「沙織を、アテナを認めてくれますか?」

 

 そう言うと二人は

 

 「……会ってから言ってやるよ」

 

 「…………」

 

 ちゃんと答えていない様な事を言っていますが、その目は真剣でした。

 今はこの位ですね。

 

 「さて、行きますか!」

 

 私達の女神、アテナの元に!

 




投稿が大分遅くなり大変申し訳ありません。
次の話は……、構想だけは少し出来てます。
書いてはいませんけども。
ある意味真名の決戦です。
さて、次回もどうなるでしょう。
どうか生暖かく見守ってください。お願いします。


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星42 最後の試練

 私達が沙織達の元へ着くと兵士達が騒ぎ立てていました。

 

 「アイオロス、真名、皆もお帰りなさい」

 

 「ムウ」

 

 ムウがこちらの帰還に気付き、近付いてきました。

 アイオリアがムウの名を呼ぶと

 

 「ええ、分かっていますよ。アイオリア。貴鬼」

 

 「はい!ムウ様!」

 

 ムウの弟子の貴鬼が小さな身体より少し大きな車椅子を引きながらこちらに来ました。

 

 「はい、アイオロス。車椅子!」

 

 「ああ。貴鬼、ありがとう」

 

 アイオロスは貴鬼にお礼を言い、車椅子に座ると小宇宙の燃焼を止め、一息つきました。

 

 「兄さん、やっぱり無理を……」

 

 「ははっ、本当に大丈夫だ。こんなに大きくなっても心配症だな。アイオリアは」

 

 「なっ、そ、そんな事は……」

 

 そんなやり取りを微笑ましく見ていると

 

 「アテナ復活ばんざーい!」

 

 「ばんざーい!ばんざーい!!」

 

 そんな声がそこら中から聞こえてきました。

 

 「お嬢様、胸の傷は本当に大丈夫ですか!?」

 

 「ええ、まるで嘘の様に傷跡も何もありません。皆にも心配をかけました。ありがとう……」

 

 胸に黄金の矢が刺さっていた沙織は、本当に矢が刺さっていたのが言葉通り嘘の様に無くなって、元気に立っていました。

 そんな沙織を見つめていると、アイオロス達、黄金聖闘士達は沙織に近付き

 

 「アテナ……、我ら黄金聖闘士、貴女を真の女神として迎える事に同意いたしました」

 

 「牡牛座のアルデバラン」

 

 「獅子座のアイオリア」

 

 「乙女座のシャカ」

 

 「蠍座のミロ」

 

 「山羊座のシュラ」

 

 「水瓶座のカミュ」

 

 そこまで名乗ると彼らは後ろに居たデス君とディーテに振り向きました。

 

 「……わーったよ、言えば良いんだろ。言えば」

 

 そうデス君が言うとディーテにアイコンタクトをして前に出て沙織の前に膝をつき見上げて言いました。

 

 「……蟹座のデスマスク」

 

 「魚座のアフロディーテ」

 

 「「貴女を我らの女神として認めます」」

 

 それを見ていた黄金聖闘士の皆は頷き合って、

 

 「これよりのち、アテナに忠誠を誓います。そして五老峰の老師や、此処には居ない他の聖闘士も兵士にいたるまで、これよりのちは……」

 

 その言葉と共にアイオロス以外の黄金聖闘士、青銅聖闘士、兵士達皆が沙織に跪き、

 

 

 「女神よ、貴女の元で地上と正義と平和を守る為に戦います!!」

 

 

 一同、一糸乱れることなく言いきりました。

 すると、沙織は聖域の上の方を見上げて走って行ってしまいます。

 

 「あっ、お嬢様、一体どちらへ!?」

 

 そう執事の辰巳に呼ばれても振り向きもせずに。

 

 「行かせてさし上げてください。彼女は今、普通の少女に戻ったのです。これからはアテナとして想像を絶する戦いが待ち受けています。今だけは普通の少女にさせてあげて下さい」

 

 ムウがそう発言すると私はある事を思い出しました。

 私にとっての最後の試練が残っている事を……。

 

 「……サガ!」

 

 見送っている場合じゃないです!

 ちょっと足がもつれましたが、沙織を追いかけます。

 

 「真名!?」

 

 後ろでアイオロスが驚いて私の名前を呼びましたが、すみません。今は無視です!

 沙織を見失わない様に小走りで付いていきます。

 ……しばらくすると前方に沙織の前で跪く黄金の塊が……!

 

 「さ せ る くぁぁあああ!!」

 

 今まさに心臓に目掛けて勢いよく手刀しようとしているサガに私は

 

 「必殺っ!」

 

 今居る場所が階段下であるなんて関係ないです!

 そう、勢いを付けて高く、サガ達の居る場所よりも高く飛び上がり

 

 「天昇牙・飛翔崩落襲閃・滅っ(めぇえええええつっ)!!」

 

 即席の必殺名を叫び、思いっきりのかかと落としを――――

 

 「ぐはっ!!?」

 

 サガの脳天に決めました。

 ……サガが気絶したのを確認、息をして生きている事も確認すると一息つきました。

 

 「ふう……」

 

 良い汗をかきました! 

 

 「あ、貴女は……?」

 

 おや、沙織ったら気付かないんですかね?

 まぁ、沙織から後ろ向いてますし、声だけで判別するのは

 

 「……ま…さか、お、お母様?」

 

 おお?案外早く気付きましたね?

 

 「ふふっ、大きくなりましたね。沙織」

 

 「あ……ああ……!」

 

 振り返ると沙織は涙を流して私を見つめました。

 すると、少し離れた場所に居たので小走りで私に近付いてきて

 

 「お母様!!」

 

 思いっきり抱き着いてきました。

 ふふっ、少し大きくなりましたが、まだ十三歳の少女。甘えたい盛りですよね。

 

 「お、お母様!お母様ぁ……!」

 

 「ふふふっ、大変でしたねぇ。沙織。でも、良く頑張りましたね」

 

 「はい!はいっ!沙織は!沙織は頑張りました!」

 

 「一人で戦う決意をして、寂しかったでしょう?怖かったでしょう?大丈夫ですよ。星矢達が、聖闘士達が、皆が居ますからね」

 

 そう言うと涙を流す目をこすり、目元を赤くして私を見上げてきました。

 

 「…………まは?」

 

 「ん?」

 

 何か沙織が呟きましたね。

 

 「……お母様は居て下さらないんですか?」

 

 …………くあああああああ!

 

 「可愛い!」

 

 「きゃっ!」

 

 「沙織!可愛い!流石、私の娘ですね!こんなに可愛いのは女神だから?違いますね!確かに女神の化身でも沙織が沙織だから可愛いのでしょうね!もう!よしよしですよぉー!」

 

 もう!こんな健気で可愛い子がお母様と呼んでくれる!最高ですな!

 思わず抱きすくめて沙織の頭を撫でると

 

 「お、お母様、苦しいです」

 

 沙織は確かに苦しそうですが、その顔は嬉しそうな顔でもあって。

 ちょっと名残惜しいですが沙織を離し、これからやる事を伝えます。

 

 「さて、沙織。ごめんなさいね。私はこれからやらねばならない事があります」

 

 「はい」

 

 岩の床に叩き付けられ、頭が埋まっている姿は結構シュールですね。(実はずっとこのまま放置してた)

 とにかく、起こします。

 

 「【キュアローズ】!えい」

 

 小宇宙をキュアローズに流し、効果を発動。岩の床から出ているサガの後頭部に刺します。

 その姿は更にシュールになりました。しばらくすると……

 

 「……はっ!」

 

 ボコンッ!っと岩の床から頭を出し、気が付くサガ。

 

 「私は……?はっ!アテナ!……に、真名?」

 

 「おはようございます。サガ」

 

 私は茫然とするサガににっこりと微笑みかけ、

 

 「歯ぁ食いしばれや!あんぽんたんんーっ!!」

 

 黄金の左手にてフルスイングで平手打ちをサガの頬に目掛けて放ちました。

 

 

 バッチーン!!

 

 

 そんな甲高い音が辺りに響きました。

 サガの右頬が真っ赤に腫れましたがこの際無視です。

 叩かれてもなお私が此処に居るのが信じられない様で、私を見つめてきます。

 

 「ま、真名。何故此処に……」

 

 「馬鹿な事を考えてる、あんぽんたんにちょっとお仕置きをと」

 

 またにっこりと微笑み、今度は右手を振りかざします。

 

 が

 

 「…………」

 

 「………?」

 

 振りかざすだけで固まる私の様子を窺うサガ。

 沙織も私の様子がおかしいと心配気な雰囲気です。

 そこでついに

 

 「……サガのバカ」

 

 「 ! 真名……」

 

 私の目から涙がこぼれてきました。

 滅多に泣かない私ですが今回は我慢できません。

 

 「何勝手に自己完結して死のうとしてるんですか」

 

 「しかし、真名。私はあまりにも……」

 

 「言いたい事はわかります。けれど、それは貴方一人が死んで解決するんですか?犯してしまった罪を償い切れると思っているんですか?」

 

 「確かに私が死ぬ事で犯してしまった罪が許されるとは思っていない。だが、私は……」

 

 「何故そこで生きて償うという選択肢が出てこないんですか!アホですか!?貴方!」

 

 「それはあまりにも烏滸がましいだろう」

 

 「烏滸がましくて何が悪いんです?それに生きて償った方が十分罰になりますよ!」

 

 「真名……」

 

 「ええい!面倒!!」

 

 私はもう自分に正直に生きましたが、この際です。

 ぶっちゃけてやる!!

 

 

 「私の為に生きなさい!サガ!!」

 

 

 「「!?」」

 

 その場に居るサガと沙織から驚いたという空気を感じます。

 ええい、ままよ!

 

 「ええ!好きですよ!大好きです!!死んだら私が困るんですよ!!いらないならその命、私にください!」

 

 「真名」

 

 「もう!ここまで女に言わせて!恥ずかしくないんですか!あんぽんた「真名!!」!?」

 

 目を強くつぶって叫んでいた私は名前を呼ばれ、恐る恐ると開けてみると、こちらを真剣な顔をして私を見つめるサガが居ました。

 

 「真名、私はやってしまった事を償わなければならない」

 

 「……はい」

 

 「私は本当は正義の為に生きたかった」

 

 「過去形ですか?」

 

 そこで沙織を、アテナを見つめるサガ。ですが、改めて私を見つめ直して、私が顔を伏せてしまいかけたところで

 

 「……正義の為に生きたい」

 

 「…………!」

 

 「私はアテナの聖闘士だ。何よりも守り、優先するのはアテナだと、真名も理解しているだろう」

 

 「はい」

 

 「だが、私は君の為に生きたい」

 

 「!!」

 

 その言葉に驚き、伏きかけた頭を上げ、真っ直ぐにサガを見つめました。

 サガはまた、沙織を見つめて

 

 「アテナよ。私は……私は生きても良いのでしょうか……。勿論、罪は消えず、生きていく限り償っていきます。それに、忠誠を誓うのは貴女ですが、この命は彼女の為に生きたいと……そう想ってもいいのでしょうか?」

 

 沙織はその言葉を聞くと笑顔で言いました。

 

 「ええ、サガ。貴方は生きても良いのです。どうか、私達と共に歩み、貴方の正義を貫いてください」

 

 こうして、私の最後の試練は成し遂げたのでした。

 




大分遅くなり、すみませんでした。
ついに、真名とサガの告白会ですよ!(違う)
サガもやっと告白出来ましたね。
さて、次回はギャグが書けると良いなぁ……。


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幕間
幕1 ときめき大戦争


注意!
このお話はギャグと恋愛話強めです!
苦手な方はブラウザバック!


 聖域、教皇宮、謁見の間にて――――

 

 「はい!皆さん!そろそろ気が済んだでしょう。こっち向いてください!」

 

 パンパンと手を叩き私の方に意識を向けさせます。

 そうして私に背を向けていた黄金聖闘士の皆さんは、本当に気が済んだのか私の方に振り向き、こちらに近付いてきました。

 ちなみにその振り向いた皆さんの後ろには年少組(特にムウとアイオリア)から必殺技や普通のパンチで沈められているサガが居たりします。

 黄金聖衣を着ているので手加減無しですよ。

 皆さん容赦ないですねぇ。仕方ないですがね!

 ん?年中組ですか?それならこの謁見の間の端っこで倒れてますね。

 サガの起こした事を黙認して、協力してたんですから仕方ないでしょう。

 なんか振り向いた皆さんはまだ若干不満気ですね……。 

 ストレスでも溜まっているんでしょうか?

 

 「真名」

 

 「はい、なんですか?」

 

 ムウが私を真っ直ぐ見つめて呼びました。なんぞ?

 

 「単刀直入にお伺いします。サガに愛の告白をしたというのは本当ですか?」

 

 「おうふ」

 

 本当に単刀直入ですよ。躊躇も何もありませんですね。

 

 「んん”、あー、えー、そのですねぇ……」

 

 「真名!」

 

 「はい!」

 

 ミロにいきなり詰め寄られ私の右手を両手で包み、見つめてきます。

 なんぞや!?

 

 「俺ではダメなのか!?」

 

 「は?」

 

 思わず目が点になりますよね。すんごいじーっと私を見つめてきます。

 ほ、本当にどうしたんでしょうか!?

 「ミロ、落ち着け。それでは答えたくとも答えられない」

 

 「カミュ……」

 

 そうカミュがミロに言うとミロは私の右手をそっと離し……

 

 「真名、私はどうだろうか」

 

 た、右手をカミュが改めて片手で握り、己の胸元にあてて聞いてきました。

 

 「カ、カミュ!お前……!」

 

 「すまない、ミロ。私とて譲れないモノがあるという事だ。……確か、真名風に言えばこうだったか?”悲しいけどこれ戦争なのよね”。と、言うんだったか……?」

 

 「「ぶっ!!」」

 

 あ、アイオリアとアルデバランが吹き出しました。

 え?二人共このネタ知ってるんですか?意外です……。というか

 

 「真顔でそのセリフを言わないでください!私も吹き出しそうでしたよ!」

 

 「……?ちなみに今なら氷河も付いて来る」

 

 「商売上手かな?」

 

 ちょっとグラ付きましたが、耐えました!耐えましたよ!!

 

 「真名」

 

 「ムウ……?」

 

 どうしたんでしょうね?なんか改まって?

 

 「私を選んで頂ければ貴鬼も付いてきますよ?」

 

 「貴方もですか!ブルータス!!」

 

 つい叫んでしまったのは仕方ないですよね?ね??そんなにっこり笑顔で言わんでも!

 

 「ぶるーたすとは存じていませんが、昔から想っていたのは本当ですよ?」

 

 気付かなかったでしょう?っと聞かれ思わず魂抜けそうになりますよね。

 

 「昔からというなら、私はどうかな?」

 

 「へ?」

 

 私の左横から声がしました。ま、まさか……

 

 「あ、貴方もですか?アイオロス……」

 

 「ははは、ただし、君に想いを寄せているのは私だけではないがな」

 

 「んん?」

 

 どういう事でしょうね??

 

 「アイオリア」

 

 「兄さん!?」

 

 「アイオリア、素直になれ」

 

 「うっ……」

 

 「え?アイオリア?」

 

 そうアイオリアの名前を呼ぶと伏いていた顔を上げ、私を見た時に顔を真っ赤にしてこちらに近付いてきて……

 

 「……真名」

 

 「……はい」

 

 こ、この展開は、ま、まさか……(汗)

 

 「お、俺にしないか……?」

 

 ですよねー!知ってた!!

 

 「っていうか、皆さん!いきなりどうしたんです?本当に!」

 

 怒涛の展開過ぎるでしょう!なんですか!?このライトノベル的な、乙女ゲーム的展開は!黄金聖闘士の逆ハーレムとか誰得ですか!?

 え……?作者得……?知らんがな!!そもそも作者とか!メタい!メタタァですよ!!

 

 「いえ、私達の気持ちをちゃんとお伝えして考え直してもらおうかと……」

 

 「いきなり過ぎて考えられませんよ」

 

 「いきなりではなければ大丈夫なんですか?」

 

 「うっ……」

 

 ムウの鋭いツッコミに尻込みしてしまいますね……。

 

 「別に私達はサガとの事を認めないとは言っていません」

 

 「は?」

 

 え?ではどういう……??さっき考え直して~とか言ってたじゃないですか。

 

 「ただ、私達の気持ちも聞かれずにそういう関係になられるのが嫌だっただけです」

 

 「そこは”私達は出る幕ではありません。見守りましょう……”的展開になるのでは?」

 

 なんか此処に居る人全員からため息が……え?なんです?

 

 「要はですね、真名。私達はこの気持ちを黙っている程、出来た人間ではないという事です」

 

 「それに、聖闘士の恋愛は禁止されていない」

 

 「実際結ばれている方はいらっしゃいますからね」

 

 ああ、白銀聖闘士、琴座のオルフェとその恋人ユリティースの事ですね?

 間に合わなくて毒蛇から助けてあげられなかったんですが、結局オルフェは冥界に行ってしまいましたし、どうなったんでしょうね?

 

 「お、お前達……」

 

 「あ……サガ」

 

 どうやら気絶から気が付いたサガが震える両手で起き上がって……ああ、無理をしてはいけません!

 

 「さ、サガ……」

 

 思わず傍へ行って支えようと近付こうとしましたが、アイオロスに阻まれました。

 むむっとアイオロスを見ると人差し指を口に当て、しーっと言い、ウィンクしてきました。

 んん?これから何が起きるんです??

 

 「サガ。そういう訳なので、認めない訳ではありませんが、真名を簡単には渡せません」

 

 「ムウ……」

 

 「真名はアテナとはまた違った我々の大事な女性です。今回の件の首謀者である貴方に真名を幸せに出来ますか?」

 

 なんだか、すんごいシリアス展開に移行していく感じが……。

 

 「私には、無理だろうな」

 

 「ほう……?」

 

 「私は罪人だ。そんな私が真名を愛しているというだけで、幸せに出来るとは思っていない。だが、例え私が恥辱を受けたとしても、彼女だけは守ると誓っている」

 

 「当たり前です」

 

 ふう、と深くため息をつくムウはボロボロな姿ではあるものの、目だけは真剣そのもので、こちらを見つめて来るサガに

 

 「………全く、貴方という人は。まぁ、貴方だからこそ任せられるのですが」

 

 そう呟くムウの声は小さくて、きっとサガには聞こえなかったでしょうね。近くに居たからこそ私には聞こえました。

 

 「もし、油断したら私が真名を頂いてしまいますよ?」

 

 そんな事を言いながら私の肩を抱き寄せて見せるムウ。

 

 「な!ムウ!」

 

 「それは……」

 

 「そんな事許すハズが!」

 

 「貴方方は黙っていて下さい」

 

 キッパリ、ハッキリと結構言いますねぇ……。

 

 「……ムウよ」

 

 「シャカ?」

 

 おや、此処でシャカの登場とは、どうかしたんでしょうか?何かムウやサガにいう事でも……?

 

 「とりあえす真名を離したまえ」

 

 「 ? はい」

 

 「真名よ」

 

 「はい」

 

 シャカは私の左手を掴むと唐突に

 

 「お前の事が好きだ」

 

 「へ?」

 

 い、今それを言うんかいぃぃいいい!!

 遅すぎやしませんか?タイミング、おかしくないですか?いや、おかしいでしょう!

 

 「しゃ、シャカ?」

 

 「む?これはサガと真名がしていた告白合戦の続きではないのかね?」

 

 「合戦!?」

 

 「色々考えてみたが、私の場合そうするのはいつもの私らしくないので、単刀直入に言う事にした」

 

 「は、はぁ……」

 

 「なので真名、私の近くで私を拝む事を「「何を言ってるんだ!お前は!!」」

 

 うおっ、耳がキ――ンっと……!って、この声はアイオリアとミロ?

 

 「思わず唖然としてしまったが、いきなり何を言い出す!」

 

 「そうだ!いくらサガが優勢とはいえ俺を差し置いてストレートに言うとは何事か!!」

 

 サガが優勢って……えーっと……。

 私も唖然とシャカとミロ、アイオリアのやり取りを見ていると、

 

 ビシッ

 

 っとシャカと繋いでいた手を弾かれ、また違う手の暖かな体温を感じました。

 

 「真名」

 

 名前を呼ばれ、ビックリして後ろを振り向くとサガが立っていました。

 

 「サガ」

 

 「真名」

 

 そっと頬に手を添えられて、ちょっと上に顔を上げると

 

 「愛している」

 

 そう言って、サガは私に

 

 

 

 キスしました。

 

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「けっ、見えてる勝負なんてするもんじゃないぜ。全く」

 

 「でも告白ぐらいはすれば良かったんじゃいかい?」 

 

 「真名は気が付いていなかった様だが、昔からサガの事が好きだったからな。アイツがキスを簡単に許すとは思えん」

 

 「私は君にも言ってるんだけれど?シュラ」

 

 「「…………」」

 

 「本当に、仕方ないな。素直じゃないというか、なんていうか」

 

 素直じゃない友人を持ったものだな。私も……。

 




シリアルとシリアスを融合してみたんですが、うまくいかなかった例ですね。
逆は―ですよ!皆さん!(笑)
ツッコミ入れるなり、笑うなりして下さい!(強制)
書いてて恥ずかしかったし、楽しかったです!!
次もギャグ回の予定です。
さてどんな話になるでしょうね?


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幕2 一輪の花

注意!
ギャグメインと言ったな。
あれは嘘だ。
……嘘なんだ orz


 「で、俺達が死に懸けで眠りっぱなしの時に、そんなラブラブ合戦なんてやってたとか。姉貴も隅に置けないな?」

 

 「ら、らぶらぶがっせん……」

 

 「もう、星矢。ここまで治してもらったんだから良いじゃないか」

 

 「でもよー」

 

 現在、私が居る場所はグラード財団の療養所、集中治療室に居ます。

 つい今しがた星矢達をキュアローズで意識が回復する所まで癒しました。

 通常のキュアローズならここまで回復しますが、それ以上だと特別仕様の物でないと無理です。

 何故一気に治してあげられないのかは、まぁ、自然治癒的問題がですね……。

 強くなるならこういう慣れも必要です。

 

 コンコン

 

 っと、扉を背にしていたので叩く音に振り向きながら返事をします。

 来ましたね!

 

 「はい、どうぞ入ってくださいな」

 

 「失礼します」

 

 言葉の後に扉が開き、一人の美少女が入ってきました。

 おや、本当はもう一人居ますね。そう扉の隅にいる人物を目を凝らして見つめていると……

 

 「星矢、瞬、氷河、紫龍」

 

 「「「「沙織さん!」」」」

 

 入って来たのは沙織でした。到着が思っていたより早かったですね。

 

 「お母様」

 

 「はい、もう大丈夫ですよ。峠はとっくに過ぎてます」

 

 「ありがとうございます。お母様」

 

 沙織はにっこりと安心しきった笑顔で私にお礼を言ってきます。

 うおっ!眩しっ!笑顔が、笑顔が眩しいです!どなたかサングラスを持てぃ!

 

 「皆、今回の聖域での戦い、本当にありがとうございました……」

 

 沙織は四人全員が見える場所に立ってお辞儀をしながらお礼を言います。

 

 「へへっ、止めてくれよ。沙織さん!俺達は好きでやった事だぜ?」

 

 「星矢」

 

 「そうですよ?僕等は沙織さんだからこそ助けたかっただけで」

 

 「瞬」

 

 「気にする必要はない。俺達はアテナ……沙織さんを守るのは当然の事」

 

 「氷河」

 

 「そんなに気に病まないで下さい。俺達は大丈夫です」

 

 「紫龍」

 

 四人のそれぞれの言葉に、気のせいではなければ沙織ったら、ちょっと涙ぐんでいますね。

 

 「ありがとう……」

 

 そう言って四人にお礼を言う沙織……萌え。

 

 「お母様?」

 

 「おっと、沙織?後ろの彼女の紹介はしなくても良いんですか??」

 

 涎が出そうでしたが、話題を振って対処します。

 此処で”彼女”の登場ですか。やっと手続きが終わったんですねぇ。

 

 「そうでした。皆に、特に瞬に紹介したい人が居るのです」

 

 「え?僕に……ですか?」

 

 沙織が自身の後ろ、いつの間にか廊下の隅で縮こまってしまっている”彼女”を呼びます。

 

 「どうぞ、入ってください。”エスメラルダ”」

 

 「は、はい」

 

 そう彼女の名前を呼ぶと部屋に入ってきました。

 その彼女の顔を見て驚く四人。

 

 「は!?」

 

 「え?」

 

 「……瞬?」

 

 「沙織さん、この人は……?」

 

 四人が戸惑うのは仕方ありません。その入って来た少女の顔つきが瞬そっくりだったからです。

 四人の反応を見て戸惑っていましたが、瞬を見た瞬間、にっこりと微笑んでみせました。一輝から聞いてますもんね。瞬の事。

 

 「こちらはエスメラルダ。昨日から私付きの女官兼秘書をしてもらうことになりました。それに、この方は一輝の紹介なのですよ?」

 

 「「「「兄さんの/一輝の!?」」」」

 

 ここで紹介しているので皆さんお分かりでしょうか?

 そうです。こうして登場したエスメラルダは本来は一輝の修行をしている最中に、一輝の師である……えーっと確かアニメではギルティーって名前でしたっけ?その人の拳の余波で死ぬハズだったんですけど、これが生きてるんですよー。

 そこで皆さんご存知のチート技こと、一輝がデスクィーン島に修行しに行く前に渡したお守りです。

 中身は勿論キュアローズです。花びらではない一輪の花状態。しかも、ちゃんと特別製で私は寝不足と膀胱炎と戦いましたよ。

 ええ、恥てるばやい(誤字にあらず)ではないので白状しました。

 どうやら一輝はエスメラルダを助ける選択をしたみたいですね。

 まぁ、愛しの女性が助かる可能性があるんですからね。当たり前ですね。

 でも一輝ってば沙織から聞いたんですけど、その一軒から極力エスメラルダに近寄ろうとはしないらしいんです。

 でも、他の城戸邸の使用人の人から聞いたんですが、たまに陰から女官と秘書の勉強等を頑張ってるエスメラルダを見守ってる一輝を見かけるとか。

 ……こんな事言いたくないんですけど、一輝よ。

 一歩間違えれば、そういう人の事を”ストーカー”っていうんですよ。

 多分、話しかけたくても出来ないんでしょうね。きっとエスメラルダが死にかけたのは、自分のせいって思ってるかもしれませんし。

 まぁ、一輝が居ないデスクィーン島に残して行くのが心配で、一縷の望みで沙織を頼ったのは英断かと。

 よくやりました、一輝。

 

 「私はデスクィーン島近くの島出身ですが色々あって一輝と出会い、親しくして頂いてました。その縁でアテナ……沙織様に仕える事になりました。よろしくお願いします」

 

 おや?親しくして頂いて”ました”?過去形ですか。そうですか……。

 一輝め、ちゃんと会ってませんね?今度会ったら言ってやんよ。

 いくら大切な彼女の為に会わない方が良いと思っているでしょうけど、彼女の方は会いたそうですよ?

 ん?何故そう思うのか?さっき過去形で言った時、ちょっと切なそうでしたもの。

 そのくらいは流石に分かりますよー。バカにしない事ですね!

 

 「彼女はとても優秀で直に仕事内容を覚えてしまいました。勿論、彼女には護身術などは教えていますが、本格的な戦闘をさせるつもりはありません。あくまでも、彼女は私の”女官で秘書”ですから」

 

 流石、沙織。略してさすさお。え?略しきれてない?細けー事は良いんですよ!

 どんな人にも必ず小宇宙はありますが、扱えるか扱えないかでは違いますからね。エスメラルダにそこまで求めてはいないでしょう。

 そういえば女官、というか侍女といえば私がトリップした頃に連載中だった『セインティア翔』なのですが、学校は本当にあるみたいですね。

 まぁ、私が城戸邸に居る時も幼稚園や学校に行ってましたし、その時にはお友達は……うん。察しってヤツですね。

 えーっと、確か聖闘少女には会った事がないのですが、どうしてるんでしょうね?

 私も詳しくは知らないですけど、一応居るみたいです。

 けれど、邪神エリスはいませんので『セインティア翔』の物語とは違った現実の様ですね。

 ん?何故エリスが居ないかが分かるかって?話でしか知りませんけど子馬座の聖衣を持っているのが『セインティア翔』の主人公、翔子ちゃんのお姉さんの響子ちゃんらしいんですよ。

 今頃ならエリスに依り代として乗っ取られてる頃ですよね?

 なので、私のいるこの世界にはエリスは登場しないという事です。

 ……多分。

 

 「っていうか、皆さん、一輝から聞いてないんですか?エスメラルダの事」

 

 「う、うん。再会してからも、あまり話もしてなかったですし……あ!でも、真名さんには会いたがってました。なんか、一言お礼を言いたいみたいな事を言ってましたよ?」

 

 あー、それはまさしくエスメラルダの事ですね。それしか心当たりありませんし。

 ちょっと前位にエスメラルダ本人からお礼を言ってもらってますから、気にしなくてもいいですのにー。

 おや、エスメラルダが瞬のそばに行きますね。

 

 「貴方が瞬さん、ですね?」

 

 「あ……はい」

 

 「ふふっ、一輝から貴方の話を聞いていたので、他人の気がしませんね」

 

 「え、僕の話ですか?」

 

 「ええ、私に顔つきがそっくりな、泣き虫だけれど、とても心優しい自慢の弟が居るって」

 

 「に、兄さん……」

 

 おお、瞬が照れてる照れてる。

 エスメラルダもニコニコと笑ってますし、星矢達四人は……、星矢と氷河はニヤニヤしてますし、紫龍と沙織が穏やかに微笑んでますね。

 眩しい……癒しのオーラ纏ってるよ此処の子達。

 やだ……私ったら、汚れすぎ……?

 




大分遅れてしまい、すみません。
最近遅くて本当にすみません!
これもあれも中国版の聖闘士星矢のアプリゲームが悪いんや!
中国語読めないけど、勘でプレイ中


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幕3 候補生

 こんにちはー!真名です!

 今、私は何処に居るでしょーか?答えは……。

 

 「うわああああ!」

 

 「はい!次!」

 

 「は、はい!お願いします!」

 

 答えはコロシアムの広場でしたー☆

 今、訓練生の中から選び抜かれた候補生として白銀クラスになれるかも?しれない人達の実力を見ている所です。勿論、手加減はしてますよ?

 

 「おりゃぁっ!」

 

 「捻りが甘い!体全体を捻って打ちなさい!」

 

 まだ隙が出来やすいので軽く脇に蹴りを入れます。

 

 「ぐあぁ!?」

 

 バランスを崩し、身体を支えられずに少し吹っ飛びます。あれ?もうちょっと軽くした方が良いでしょうか?

 

 「精が出るな」

 

 「おや、アイオリア」

 

 私が自分の力加減を調節していると声をかけられました。

 すると……

 

 「あ!アイオリア様!?」

 

 「おお!本物だ……!」

 

 とか、ちらほら聞こえてきます。

 最近まで色々あったので候補生達に会うのは初めてでしたねぇ。

 

 「どうだ?真名から見て良い線をいっている者達は居るか?」

 

 「んー、ぼちぼち……ですかねぇ?」

 

 「そうか……」と呟くアイオリアを見ていると、後ろからぼそぼそと囁きあっている候補生達がいます。

 

 「……出来るならさ。見てもらうんだったらアイオリア様の方が良いよな?」

 「……だよなー。なんてったって聖闘士の最高峰、黄金聖闘士だもんな」

 

 聞こえてますよー??

 

 「真名?此処の者達には言っていないのか?」

 

 「”普段”の実力を見せてもらうんですから、言わない方が好都合ですよ。どれだけ本気か、とういう所もわかりますしね」

 

 そう言うと、なるほどっという感じに頷くアイオリア。

 候補生達は頭の上に?が乱舞しております。

 頷いていたかと思っていましたが顔を上げ、私を見ると

 

 「だが、気のせいではなければ、甘く見られていないか?まさかと思うが”教皇付きの女官”として此処に来ているのではないだろうな?」

 

 ぎくーっ!思わず汗だらだらですよー?

 

 「……やはりか」

 

 思いっきりため息を吐かれました。だってー……。

 

 「真名の考えも分かる。だが、本気度を知るにしても、甘く見られるのでは本末転倒だ。白銀になる可能性の候補生が極少数になるぞ?」

 

 「うう、はい。一応、分かってはいるのですが……」

 

 「あー……お前達」

 

 「「「「「は、はい!」」」」」

 

 おお!見事な程、一気にアイオリアの前に整列していますね。これが黄金聖闘士の力!(少し違う)

 

 「此処に居る真名は元ではあるが、聖闘士でな。位は黄金、元魚座の黄金聖闘士だ」

 

 「「「「「は?」」」」」

 

 「その位を移譲してアフロディーテが受け継いでいる……のは知っているか。そして、今はアテナの補佐、相談役として”フクロウ”という名の新しい役職を与えられている。……言っておくが実力は黄金の時のままだ。甘く見て、真名が怒りを露わにしたら……どうなるかは分かるのではないか?」

 

 そう候補生達がアイオリアから私の方を向くと汗が大量に流れ、ガタガタと震え出しました。だ、大丈夫ですかねぇ……?

 

 「……”あの”黄金聖闘士の真名様?」

 

 「……同名なだけではなかったんですか?」

 

 すんごいガタブルいってるー!?なんていうか、気のせいではなければ泣きかけてる人も居ませんかー?っていうか”あの”とはなんじゃらー??

 

 「いや、確かに元は黄金聖闘士でしたけど、それだけですよー?怖くないですよー?」

 

 そう言って候補生達に近付きますが、その分下がって距離を開けます。

 な、なんでやねーん!

 

 「怖くないですって、言ってるじゃないですか」

 

 「し、しかし……」

 

 「先ほどの私達の態度はあまりにも……」

 

 その言葉を聞いて思わずため息を吐きました。その瞬間、ビクリと震える候補生達。

 ふっ、そういう事ならやってやんよ!

 

 「この際です!順番なんて気にしないでかかってきなさい!」

 

 「えええええええ!?」

 

 「真名様!?」

 

 さっき実力加減を見させてもらった候補生達を合わせると30人ですか。

 この中から更に絞って厳選しなければいけないのですが……

 

 「私に一発当てられたら、白銀決定ですよー!」

 

 「え!?」

 

 「本当ですか!?」

 

 お、釣れました釣れました。

 私が”元”黄金と聞いても”白銀になれる”という欲には勝てないみたいです。星座の聖衣って憧れますよねー。しかも青銅ではなく白銀ですからね。

 ふふー、丁度ちょっと面倒くさくなってきて……げほん、ごほん。

 この際ですから一気に決めてしまうのも有りですよね!

 ああ、アイオリア。何、ため息ついてるんです?もう正体バレしたので本気のやる気MAXになった候補生達がこっち見てますよ。

 

 「さて、では……」

 

 私は候補生達の集まりの中を通り、真ん中あたりで止まります。

 そして、にやりと笑うと

 

 「かかってきなさい!」

 

 その言葉を言った瞬間、沢山の拳と蹴りが襲い掛かってきました。

 

 「……シオン様、お借りします!」

 

 そう呟き、私に後ちょっとで攻撃が当たる瞬間。

 

 「甘く見るでないわ!小僧共ぉぉおお!!」

 

 小宇宙を乗せて思いっきり両手を振り上げて候補生達を全員吹っ飛ばしました。

 そうです。ハーデス十二宮編で教皇シオン様が使った「うろたえるな小僧共!」で有名な技?です。

 一度使ってみたかったんですよね☆

 そして、見事に車〇落ち(顔面から地上に落ちる事)するので中々痛そうです。

 

 「ううっ、この人数で……しかも白銀候補の俺達が一撃でKOさせられるだなんて……!」

 

 おや、直ぐに気が付くなんて中々頑丈ですが……何言ってるんでしょう?この人は。

 

 「私とて”元”とはいえ黄金を背負っていた身。例え白銀としての実力があっても簡単にはやられませんよ。……貴方、もしかして新しく入った兵の中から選抜された人ですか?」

 

 「え、あ、はい……」

 

 「そうですか。貴方は座学をしっかりやった方が良いですね」

 

 「え”」

 

 「当たり前です。青銅、白銀、黄金の実力を分かっていないみたいなので、座学もちゃんとやりなさい。戦闘のみでやっていける程、聖闘士は甘くないですよ」

 

 「は、はい……」

 

 全く、聖闘士をなんだと思っているんですかね?

 この人、なんだか白銀より青銅の方が合ってる気がします。

 んん?こらアイオリア、そっぽ向かない。ふふっ、昔は勉強苦手でしたものね?今は大丈夫でしょうけども。……大丈夫ですよね?

 

 「はい!皆さん、お疲れさまでした!貴方達の力はみさせて頂きました。そこからどういう結果になるかは、しばしお待ちください!解散!」

 

 私がそう言うとその場で座り込む人、よろけながらも帰る人、仲間?で集まり話し合う人、それぞれの行動に出ています。……ふむふむ。

 

 「アイオリア」

 

 「ああ、分かっている」

 

 私は石椅子の上に置いてあったポシェットの中からメモを取り出して、書き込みます。

 書き込みが終るとそのメモをアイオリアに渡しました。

 

 「後は向こうが知っているハズなので、よろしくお願いします」

 

 「ああ」

 

 アイオリアはメモを渡されて直にコロシアムを出て行きました。

 えっとですね、メモに書いてあるのは名前です。そこから見てもらう人……まぁ、神官の人と言いますか、占い師みたいな人と言いますか……。

 守護星座を見てもらうんです。そこから数人ダブる場合もあるので、そこは正式な試合で戦い、勝って、晴れて聖闘士になる……感じでしょうかね。

 詳しくは私は知らないのですが、そういう決め方があるらしいですよ?

 ペガサスの聖衣を懸けて戦った星矢とカシオスの試合みたいなモノでしょうか。

 で、何故”私”がこういう白銀の選抜をしているかというと、うーん、何と言った方がいいでしょうか?

 なんか、聖域の皆さんに”私(真名)はこの聖域に居るぞー!”的な、宣伝というか、正式に帰って来た!みたいな……。

 今の私はこういった事もする立場に居るよ!やったねアテナちゃん!仕事が増えるよ!……おいぃ、止めろ。仕事が増えるとか、嫌でござる。

 

 「あ、そうです。沙織の予定を聞いておかないと……」

 

 なんか、近い内にグラード財団の総帥としてギリシアの大富豪の子息の誕生祝いがある……と、か……。

 

 「えーっと?」

 

 なんだか、思い出せそうで思い出せませんね……。最近忙しかったですからね。

 なんていうか、嫌な予感と言いますか。何と言いますか……。

 こんな時はスニオン岬にでも行きますかね!

 この後少し時間が空いてますし、気晴らしに行きますか!

 ……そして、私は猛烈に自分の気楽さを恨みました。

 

 

 ポセイドン編、始まるじゃないですか、やだー。

 

 




投稿遅くなって、すみませんでしたー!!
ゲームとかは関係なしにマジで色々あって遅れました。
しかも、また次回も遅くなる可能性もあったり。
それでも、ちまちま書いていきます!
はい!次回からポセイドン編です!
どういう展開になるのか、自分でも分かりませんが、頑張って書きます!
どうか、生暖かく見守ってください!


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海皇ポセイドン編
星43 誕生日


 「それではジュリアン様の十六歳の誕生日を祝して乾杯ーーっ」

 

 「「「かんぱーい」」」

 

 はい、こんばんは。私達は現在、ギリシアの海商王、ソロ邸でのパーティーに来ています。

 

 「わぁ、一杯人が居ますね。辰巳さん」

 

 「それはそうだろう。世界一の海商王の一人息子、ジュリアン・ソロ様の誕生パーティーだからな。世界中から名士が集まっている。ああ、こら、エスメラルダ、珍しいからと周りを見回すな。田舎者と勘違いされて恥をかくのはお嬢様なんだぞ」

 

 エスメラルダが物珍しそうに周りをキョロキョロと見回し、辰巳さんの言葉で恥ずかしがって直に見回すのを止めました。

 沙織と一緒に辰巳さんとエスメラルダの様子を見て可愛らしくて、つい見守ってしまいました。微笑ましいです。

 どうやら周りもあまりこちらを気にして……、おや、意外と見られてます?

 

 「その反応、真名。お前は未だにその顔立ちの自覚がないのか……。一応美女の分類に入るんだから自覚を持て。お嬢様は勿論、エスメラルダだって美少女なんだぞ。……目立つ事この上ない」

 

 小声ですが最後、聞こえてますよ?沙織とエスメラルダが美少女なのは当たり前です。何言ってるんですかね。私が美女……うーん、すんごい違和感ががが。

 

 「でも、ジュリアン様も大変ですね」

 

 「ん?どうしてです?」

 

 「えっと、先日御父上が亡くなられて、遺産も全て譲られて今や事実上のソロ家の総帥なんですよね?沙織様と同じくお若い身で大変ではないかと思って……」

 

 「ふふっ、エスメラルダは優しいですね」

 

 「エスメラルダ?私なら大丈夫。こうして辰巳やお母様、貴女の様な心優しい素敵な秘書が居ます。それに……皆が付いてますから。きっとジュリアン様にもそういった方達が付いていてくれているハズですよ」

 

 「あ……はい!」

 

 沙織が言った”皆”とは、恐らく聖域の、聖闘士の皆さんの事でしょう。

 勿論、沙織の事ですから、青銅の皆さんも含んでいるのでしょうけど、さてはて、それだけでしょうか?ニヤニヤ。

 

 「 ! ……お母様?」

 

 おおっと、沙織が私に気付いてむむっと少し眉毛を吊り上げてますね。

 ふっふっふー、ダメですよー、沙織。可愛いだけです。

 ……おや、どなたか近付いてきましたね。

 

 「ふっ、パーティーを楽しんでくれている様で何よりです。ミスサオリ」

 

 おお、この少年は……

 

 「ジュリアン・ソロです。今夜は私の誕生日によく来てくれました」

 

 「こちらこそ、お招きにあずかりまして光栄ですわ」

 

 中々気障っぽいジュリアン少年十六歳キター。

 ちょっとテンション上がってましたが、沙織がジュリアン少年に頭を下げたので私達もそれに倣ってお辞儀しました。

 

 「私の父から城戸光政翁と親交があったと聞いています」

 

 「ええ、お爺様からもギリシアの大富豪、ソロ家のお話は伺っておりました」

 

 「貴女に一度お会いしたいと思って今夜こうしてお招きした次第ですが、今夜の私は随分と幸運らしい。こんなにも美しい女性を三人もお会いできるなんて……。特にミスサオリ、貴女は想像以上にお美しい……」

 

 ジュリアン少年よ、何当たり前な事を言っているのですか。

 沙織が!美しいのは!当たり前です!!(大事な事なので二度以下略)

 私の!娘で!私達の!女神やぞ!!

 芯が強くて、健気で気高く、慈悲深くて、大いなる愛しみの精神!何処に出しても恥ずかしくない、私の自慢のお嬢様やぞ!!

 おのれ……大事な事なのに語彙力が乏しい自分が憎い!だが、事実である……ってあれ?辰巳さん何下がってるんです?ニコニコ笑顔で可愛らしいエスメラルダを見習いなさい。ジュリアン少年が近くに居ても緊張しない鋼の精神、流石、もう立派な秘書ですね!」

 

 「いいえ、私はまだまだですよ。けれど、真名様は本当に沙織様が大好きであらせられるのですね!」

 

 「ん?」

 

 おや?

 

 「……くくくっ!」

 

 おやおや?ジュリアン少年が笑いを堪えてます。沙織は……何やら恥ずかしそうですね?どうしたんでしょう?

 

 「真名、お前、思っている言葉が途中から口に出して言っていたぞ……」

 

 辰巳さんが片手で顔を覆ってため息をついて私に言いました。

 何……だと……?

 

 「み、ミスサオリの付き人は随分愉快な人みたいですね?」

 

 「あ!その、これはジュリアン様!沙織様、大変失礼いたしました」

 

 「い、良いのですよ。ミスサオリは従者にとても慕われている事は良く分かりましたから……ふふっ」

 

 ジュリアン少年よ。笑いが止まっていないですよ。

 ふと気になったので小声で辰巳さんに話しかけます。

 

 「……ちょっと辰巳さん。なんで止めてくれなかったんですか?というか、どこから声に出てました?」

 

 「……”芯が強くて~”の辺りだ」

 

 随分と初めの辺りじゃないですか!!

 

 「……辰巳さん、帰ったら城戸邸の裏まで来てください」

 

 「ちょっ!?」

 

 「……大丈夫です。ただの八つ当たりですから」

 

 「……なお悪いわ!」

 

 「あ、あの、お二人共」

 

 「「ん?」」

 

 エスメラルダが戸惑いがちに私と辰巳さんに話しかけてきました。

 

 「ジュリアン様が沙織様をエスコートして、テラスに行ってしまいましたよ?」

 

 「何!?」

 

 「あら。ジュリアン様、積極的ですね」

 

 でも、なーんか引っかかるんですよね。

 ジュリアン様、結構重要な人物だった様な……。

 もうこの世界に来て何年も経ってますし、うろ覚えな所もありますからねぇ……。

 そういえば多分ですけど、そろそろ物語が動く頃ではありませんでしたっけ?

 次の神様は……えーっと……ポ……おおっと?

 名前の最初の文字を思い出す所で沙織がテラスから帰ってきました。

 おや?ジュリアン少年は良いのですか?

 ……いいのですか、そうですか。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 そして、深夜。

 沙織が寝泊まりしているソロ邸の部屋で、沙織はある一人の兵によって攫われようとしています。

 沙織を抱え、兵がテラスまで行き、外に出ようとすると……

 

 「連れて行かせる訳がないでしょう?」

 

 「な、何ヤツ!?」

 

 私が引き留めます。当然です。

 

 「それはこちらのセリフです」

 

 ふむ、あの魚のような鎧は……。

 

 「フン、女一人で何が出来る!」

 

 「こういう事が出来ますよ?【パラライズローズ】!」

 

 沙織に当てない様にパラライズローズを主に鎧の隙間辺りを狙って放ちます。

 

 「ぐ、ぐわああああ!?」

 

 魚の鎧を着た兵は痺れから沙織を手放し、テラスから落ちてしまいました。

 あらら、下は海ですが痺れているので泳げるでしょうか?

 テラスから身を乗り出し、下を見ましたが沈んだまま出てきません。

 ふむ、もしかして

 

 「逃げました……?」

 

 まぁ、そんな事は良いのです。重要な事ではありません。

 

 「沙織?沙織。大丈夫ですか?」

 

 沙織の安否が大事です。

 私が沙織に意識があるか、怪我などがないか確認していると

 

 「真名、アテナは無事か?」

 

 「アイオリア。ええ、気を失っていますが、それだけです」

 

 実はこのソロ邸に来る時に遠くから沙織、アテナの護衛として聖域からアイオリアが一緒に来ていたりします。

 私も一緒なんですから大丈夫って言ったんですけどね!

 まぁ、もしもの時の為ですから仕方ありません。

 

 「しかし、先程のヤツは何者で目的はなんだったのか……」

 

 「分かりません。けれど、実力的に下っ端ぽかったですよ」

 

 先ほどの兵の恰好……もし、沙織を女神の化身と分かっていて攫ったあの行動は……。もしかして……

 

 「……海皇ポセイドン」

 

 ぽつりと呟きますが波の音でかき消えました。

 うん……

 

 

 忘れてたあああああ!!

 ジュリアン・ソロっていえば!海皇ポセイドンが復活する度に依り代として選ばれるソロ家の人間で!しかも、彼って今日十六歳になったんですよね!?

 ポセイドンが復活する年齢じゃないですか、やだー!

 確か、今頃だとスニオン岬の崖の辺りで輝いているポセイドンの三つ又の鉾が刺さってて、人魚のテティスが迎えに来ている頃ですよ!やだー!!

 

 ですが、まだ私は思い出し切れてはいなかったのです。

 そう……海皇ポセイドンの海底神殿には、”彼”が居る事を、いまだに忘れていたのです。やだー……。

 




遅いと言いましたが、意外と早く書けました。
次回も早く書ければ良いんですけど……心配です……。
さて、ポセイドン編の始まりです!
この先どんなことが待ち受けているのでしょう?
そして”彼”とは誰なのか!
生暖かく見守ってください。


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星44 再会

注意
本編ですが、恋愛要素少しあります!
苦手な方はご注意!そんな強いかはわかりませんけど!(をい)


 朝、目が覚めたら知らない天井が見えました。

 あ…ありのまま、今起こった事を話します。私は、日本の城戸邸にある自分の部屋で寝ていたと思ったら、いつのまにか知らないギリシア神殿風のゴージャスな部屋で目が覚めました。

 な……何を言っているのか、分からないと思いますが、私も何をされたのか、何が起こったのかも分かりません……。

 頭がどうにかなりそう……なってませんねぇ。

 催眠術だとか超スピードだとか……一応使えます。

 そんなチャチ?なものでは断じてないです。もっと恐ろしいものの片鱗を味わ……ってもないです。はい。

 

 「っていうか、本当に此処何処です?」

 

 某電柱頭の青年のお言葉風に語りましたが、結構事態は深刻ですよ。多分。

 女神アテナの化身で、グラード財団の総帥もやっている沙織を狙うのではなく、私を攫う?とは……一体何の目的が……?

 っていうか、この私が此処に連れてこられたのに気付かないで、ずっと眠りこけていたとは……、なんたるざまなんでしょう。

 それにギリシアのソロ邸から帰って二日後にこの事態。

 明日には世界中に異常災害、地震に水害等が襲うハズ……。

 

 「その原因がポセイドンの仕業な訳で……」

 

 沙織が自分からポセイドン神殿に行く事になったら、付いていくつもりだったのに。此処は一体何処なんでしょう?

 ちょっとこの部屋を調べ……

 

 コンコン

 

 「……おや?」

 

 この部屋をいざ調べようと、寝かされていたベッドから降りようとしたら下りる所で扉からノック音がしました。

 そのノック音の後に直扉は開かれました。すると

 

 「ふっ、やはり起きていたか」

 

 入って来たのは一人の男性でした。

 ……滅茶苦茶聞き覚えのある声に、この小宇宙。

 すんごいそっくりですが、”彼”ではありませんね。

 と い う こ と は ?

 

 「……カノン?」

 

 思わず小声で聞いてしまいました。

 聞こえなかったみたいで、この部屋に入ってきて私の所まで来ました。

 黄金聖衣に似た代物を纏って兜を被り、素顔は見えませんが、この懐かしい小宇宙。

 うん、間違いないですね。

 

 「カノン……ですか?」

 

 「ほう?誰の事だ?」

 

 いきなりとぼけだしました。全く、仕方ないですねぇ。

 

 「とぼけても無駄ですよ。この部屋の外には誰も居ない様ですし……兜を脱いで素顔を見せなさい」

 「ふん、その態度、相変わらずだな」

 

 そう言うと被っていた兜を脱ぎ、しっかりと目線を合わせてきました。

 そう、男性の正体は双子座の黄金聖闘士サガの双子の弟、双子座のカノンです。

  ん?なんだか顔がちか……

 

 「ふんぬ!」

 

 「うおっ!?」

 

 思わず顔を近付いてきたカノンの顔をグーパンで殴り付ける所でした。

 すんでで避けるとは……やりますね!カノン!

 

 「何をする」

 

 「それはこちらのセリフですよ。なんでそんな近いんですか。後少しでキスするところですよ」

 

 「するつもりだから近付いたのだが?」

 

 むむ?なんですと?っていうか!

 

 「出会い頭にキスとは、貴方達双子は見た目だけでなく中身まで本当にそっくりですね!」

 

 思わずプンスコ!ですよ!一応まだ乙女としては軽々しく唇を許したりしませんよ!

 

 「……何?」

 

 おおう、なんだか声の質が一オクターブ程下がった様な……。

 

 「双子と言ったな?つまり、サガも同じ事をしたという事か?」

 

 なんだか不穏な気配ですね……なんじゃ?なんじゃ?

 

 「え?あー…まぁ、そうですねぇ」

 

 あははは!っと笑ってみると両腕をがっしりと掴まれて、片手でまとめられ、空いたもう片方で後頭部を掴まれて強引にキスされます。……はい!?

 

 「ちょっ!?ん、んん!?」

 

 ちょっとたんまたんま!!ディープなのしてる!ディープなの!

 右足をなんとか持ち上げて少し小宇宙を纏らせ、思いっきりカノンの腹部に蹴りをお見舞いします。

 

 「ぐっ!」

 

 「ぷはっ!」

 

 息が出来るって素晴らしぃー!なんて言ってるばやい(誤字にあらず)じゃないです!

 

 「何するんですか!」

 

 「……キスだが?」

 

 そんな事はわかっとるんじゃぃ、コノヤロー!

 

 「いくらカノンでもこんな事……怒りますよー!!」

 

 激おこプンプンドリームですよぉー!!

 

 「……サガには普通にさせているのだろう?」

 

 「……そ、それは」

 

 思わず顔が真っ赤に染まるのが分かります。今ならおでこで水をお湯に沸かす事が出来そうです。

 

 「……さ、サガは、と、特別です!」

 

 プイッと顔をカノンから背けます。べ、別に恥ずかしい訳ではないのです!

 改めて認識するとて、照れると言いますか…何と言いますか……。

 

 「真名、お前とサガはまさか……」

 

 「あー、そのー……、そ、そうですよ。多分、思っている通りの関係ですよー」

 

 こうなったらやけじゃ、コンチクショー……。

 ん?カノンが此処に居て?黄金聖衣に似た鎧を纏っている……。

 そして、この部屋はギリシア神殿風の造り……も し か し て ?

 

 「カノン、話は変わりますが、此処は……どこですか?」

 

 「……此処は海の底、海皇ポセイドンの海底神殿だ」

 

 や、やっぱりぃー!!はっ!そうです!まさか……

 

 「もしかして貴方が私を此処に連れて来たんですか?」

 

 「……そうだ。お前の小宇宙を辿って日本の屋敷から連れて来た」

 

 そうですよねー?貴方位なら私が眠ったままでも連れ出せますよねー……。

 SPぃー!用心棒ーぅ!!貴方達何やってるんですかぁー!高い給料払ってるんですから、きっちりと仕事しなさいぃー!!

 聖闘士相手に無理があるのは理解していますけど、少し位は立ちはだかるとか、……いえ、まず、侵入者が出た事に気が付きなさーい!!

 え?お前も起きなかっただろう?気付かなかったというか、起きなかった私も私ですけど……。反省。

 

 「私を此処へ連れてくるようにとか言われたんですか?」

 

 「いや、俺の独断だ」

 

 「へ?独断……ですか?」

 

 「これから全世界はポセイドンの意志によって大災害が起きる。正に現代のノアの箱舟の様にな。その大災害からお前を守る為に連れて来た」

 

 な、なんてこったですよ……。いえ、ちょっと待ちなさい。

 

 「何故私だけなんですか?」

 

 「分からないか?」

 

 質問を質問で返されましたー。

 

 「……分からないから聞いてるんです」

 

 するとカノンはため息をついて私と視線が合いました。なんぞな?

 

 「俺がお前を愛しているから、放って置けなかっただけだ」

 

 「なるほど!そういうわ……け……」

 

 な、なんですとぉー!?

 私はカノンと視線が合ったまま驚きで目を見開いていました。

 あ、貴方もですか!?

 

 「……黄金逆ハーとか、誰得ですか!?」

 

 ※作者得で「うるせーですよ!!」

 すんごいメメタァ的ナレーションがありましたが、気にしないですよ!

 

 「なんだ?逆……?」

 

 「カノン!気にしちゃダメです!気にしたら負けですよ!」

 

 「あ、ああ」

 

 ああ!カノンが穏やかな顔をしてこっち見てます!

 分かってるんですよ!その微笑み!「昔と全然変わっていないな」っていう生暖かい眼差しで見ているって事!

 好きで変わってない訳じゃないですよ!ドチクショー!

 

 「まぁ、この際良いです。気にしません。兎に角私を日本の屋敷に返してください」

 

 「それは無理だ」

 

 「なんでです?」

 

 「既に日付は変わり、大災害が始まったからだ」

 

 へ?もうですか!?は、はやぁーっ!

 

 「え?もう戻れないんです?」

 

 「諦めろ」

 

 すんごいはっきり言いますね。

 うーん、早く抜け出したい所なのですが、沙織達に悪いのだけれど、此処で沙織達が来るのを待っていた方が良いかもしれません。

 無理に出て行こうとするとまず、海底神殿のどのあたりなのか、此処は海の底なので帰り方が分からないと帰るに帰れないですからねぇ。

 なるべく大災害を防ぎたいところではあるのですが無理そうです。

 此処で待つと決めましたが、流石にツラいですね……。

 沙織……星矢達、気を付けるのですよ。

 …………サガ、会いたいです。

 気落ちしていた私を見ていたカノンが若干ツラそうな表情をしていたのを、私は全く気付きませんでした。

 




カノンは積極的なイメージ。
やはりと言うかまた遅れたぁー!
申し訳ありません!
とにかく、遅れてもぽちぽち書いてますのでお許しくださいー!


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星45 柱

 あれからー、十一日立ちましたー。

 はい!もう十一日ですよ!?十一日!日にちが経つのは早いですねぇ。

 この海底神殿に居ると地上がどうなっているのか分かりません。

 沙織達は無事でしょうか?

 聖域に居れば安全でしょうけど心配です。

 いえ、確かまだ日本の城戸邸に居るのでしたっけ?

 うーん、流石にこの辺りはうろ覚えですねぇ。

 沙織がこのポセイドンの海底神殿に海将軍、セイレーンのソレントと来るのは…………。

 あれ?もしかして今日?

 ええーっと……、城戸邸にテティスが来てー、星矢が瀕死の状態なのに(原作では。ですけどね)助けに来てー、沙織が看病してー、アルデバランが来てー、ソレントが来てー、アルデバランが負けてー、ソレントが沙織にポセイドンの所に連れて行けって言ってー……。

 あ、やっぱ今日ですねー。ってぇ!!

 

 「そんなのんきに言ってる場合ではないのです!!」

 

 このままではまた沙織が危険な目に!

 諦めずに何度か脱走し続けて外にはなんとか出れますが海底からの脱出までは出来なかったんですよねぇ。ちくせう……。

 え?海闘士達にはバレなかったのか?ですか?

 ふっ、私の特技をお忘れか。小宇宙を極限まで下げて動くことが可能です!さらに!聖域でのこそこそ生活で培った隠れての移動も出来ます!

 抜け出す事は出来るのです!抜け出すだけですけどね……。

 こんな海底で星矢達ってどうやって帰ったんですかぁー!!誰か教えて、ヘルプミー!

 そんな風に悔し気にベッドに項垂れていると

 

 「どうした」

 

 ノックも無しにカノンが部屋に入ってきました。おや、兜はもう外してるんですね。

 

 「カノン、ノックしてもしもしして下さいよ。乙女の部屋ですよ」

 

 「すまないが、何処に乙女が居るんだ?」

 

 こやつ……、無言の腹パン食らわせてほしいんですかねぇ?

 

 「この十一日間、脱走しまくる乙女なんぞ居てほしくないんだが」

 

 「……ぴー、ぴーっぴぴー」

 

 「……誤魔化すのも口笛も下手だな、お前。出来てない上に口で言ってるじゃないか」

 

 うるせーですよ!下手っぴなのは知ってますー!あと、なんですか!顔が笑ってますよ!

 

 「報告があって来た」

 

 「……なんですか?」

 

 「アテナが来たぞ」

 

 は?なんですと!?早くありませんか!?

 

 「沙織がですか!?」

 

 「……ほう、アテナの人としての名を呼び、尚且つ呼び捨てとは。余程お前達は仲が良いと見える」

 

 うっ、しまった。思わず”アテナ”ではなく、”沙織”と呼んでしまいました……。

 来る事は分かっていましたが、それはもう少し後だと思ってました。

 とにかく、今は沙織がどうなっているか聞かなければ。

 恐らく、今、地上に降っている大雨の勢いを抑える為に、この海底神殿の中心の柱、メインブレドウィナに入ってしまうハズ。

 

 「良いだろう、教えてやる。今、アテナはある場所で地上に降る大雨を抑えている」

 

 「代わる事は?」

 

 「出来ない……不可能だ」

 

 出来れば止めたい……。私が代わってあげたい。

 でも、それは出来ない。状況が許さない。……言い訳ですね。

 あの子の精神的成長の為にも我慢しなければならないのです。

 これは沙織……いいえ、”アテナ”。地上を守る女神に降りかかる神々の試練でもあるのだから。

 

 「カノン。いい加減、私を出してもらえませんか?沙織の……アテナの傍に居たいのです」

 

 「何を言っている」

 

 「許可が出ないと、今度は貴方に見つからない様に徹底的に隠れるし、場合に寄っては、私が此処に居る事を知らないポセイドンに会いに行って速攻でバラします」

 

 「お前もただでは済まないぞ?」

 

 「覚悟の上です」

 

 っていうか、此処に居る以上、覚悟が出来てないと始まらない気がしますが?

 なんて思っていると、カノンは一度目を閉じて開きます。

 

 「ダメだ」

 

 「ダメなんかいぃ!!」

 

 そこは許可を出すところでしょーがぁ!!

 

 「今のこの状況でお前を外に出す気はない」

 

 そう言うとカノンは兜を被り、部屋を出るとガチャン、ガチャン、ガチャン、ガチャン、ガチャンと……って多いんですが!?

 

 「って!このガチャンってなんの音ですか!?」

 

 扉の向こうのカノンは扉越しに言いました。

 

 「南京錠の音だが」

 

 「多いですよ!」

 

 「お前相手には少ない方だ」

 

 こやつ、分かってやがるです……!!

 今までは、扉のノブ(棒状のノブで、掴んで廊下側に引っ張って開けるタイプ)に鉄の板を挟んで引っ掛ける様な扉の閉め方だったのに、今更鍵のかけ方を変えるとは!カノン性格悪くなりました?

 え?よくそんな状態で抜け出せたなって?サイコキネシスで少しづつズラして外しました。

 外し終えて鉄の板を落としたら甲高い音が出て、この神殿?の外に居る海闘士達に聞こえてしまったら、私の事バレるじゃないですかー。バレたら相当面倒です。

 扉の前で耳を澄ましていると、しばらくしたらため息が聞こえ、扉から遠ざかる足音が聞こえて消えました。チャーンス☆

 

 「さて、もう少し様子を見て脱出せねば……」

 

 本当は今すぐにでも行きたい所ですが、早く出るとカノンに勘付かれてしまいますからね。今はまだ慎重に、慎重にですよ!

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 さて、そろそろ良いでしょう……。

 なんか地響きも聞こえてきますし、恐らくメインブレドウィナを壊して沙織を救う為に、世界の大海を支えている七本の柱を壊さないといけないんで、それぞれ柱を守る海将軍と戦ってるハズですけどー……。

 

 「なんか、壊すの早くないです?」

 

 だって、この地響きが聞こえだしたのってさっきですよ?

 そろそろ抜け出す頃合いかなー?って思っていたら、いきなりですよ。

 しかし、こんだけ派手に壊しているなら遠慮はいりませんね!!

 私は扉の前に立ち、深呼吸して、ある人物の必殺技をお借りする事にしました。

 

 「いきますよ!」

 

 扉相手ですが、間合いを取って……

 

 「……エックス!カリバぁぁぁあああああ!!」

 

 そうシュラの聖剣をお借りしました。前にも言った通り、私は威力こそ本物より弱いですけど、見た事のある必殺技であれば真似できます。

 そして、今こそ真に脱出する時!この部屋に居るのも最後。派手に出て行ってやりますとも!

 正にザシュッ!ザシュッ!ドゴォォオオンッ!!という感じの破壊音と共に扉は細切れ、やってやりましたです!

 

 「さて、兵士としての海闘士達に勘付かれる前に行きますか。沙織!待ってなさい!今、私が行きますからね!」

 

 そう独り言を言って、早足で沙織が中に居るであろう、メインブレドウィナへ向かうのでした。

 

 

 □■□■□■□■□■□■

 

 

 「はぁー、大きいですねぇ」

 

 もう隠れる必要もないので堂々とメインブレドウィナの近くまで来ました。

 え?そんな堂々として良いのか?海闘士達はどうしたのかです?

 え?そこの地面で寝てますが何か??(ニヤリ)

 これくらい軽い軽いですよー。私を誰だと思っているんです?

 

 「こ、これは……貴女!そこで何をしている!」

 

 しばらくメインブレドウィナを見つめていたら人魚姫のテティスが現れました。

 

 「貴女、一体どこから……?」

 

 「どこからでしょうね?」

 

 ちょっと様子見でからかってみましたがお気に召さなかった様で、ムッとした顔をして睨まれてしまいました。おおう、すみません。

 

 「此処がこの海底神殿での一番の神聖な場所と知っていて、此処に居るのか!」

 

 「はい」

 

 「ならばここから去れ!さもなくば……」

 

 そう言うとテティスは戦闘態勢に入りました。うーん……。

 

 「えーっと貴女、私を知らないんです?」

 

 「いきなりなんだ?知る訳がないだろう」

 

 この反応……、私が元黄金聖闘士であった事知らないとみました。

 やだ、私ってば影薄い……?

 とりあえず、今の役職を名乗っておきますか。

 

 「私は真名。地上を守るアテナの補佐にして相談役、”フクロウ”の役職に付いています」

 

 「……アテナの従者か」

 

 「まぁ、そんな所ですね」

 

 私がそう発言するとテティスは更に警戒してこちらを睨んできます。

 しばらく見つめ合っていると

 

 「テティス」

 

 「な!ポ、ポセイドン様!いけません、此処から離れてください。アテナの従者が……!」

 

 「良い、下がれ」

 

 「……はっ!」

 

 ポセイドン……ジュリアン少年に言われて下がるテティス。

 さて、沙織以外の神、海皇ポセイドンの依り代の登場ですね。

 

 「沙織さん……いや、アテナの従者だったのですね。付き人の方」

 

 「そうです。私の大事な、だいーじな!女神様の従者です」

 

 「な!貴女、ポセイドン様に失礼ですよ!」

 

 「良い、テティス」

 

 「……は、はっ!」

 

 ジュリアン少年と見つめ合っていると、先に発言したのはジュリアン少年でした。

 

 「…………不思議だ」

 

 「 ? 」

 

 「アテナと会った時に感じた事が貴女にも感じる……。どういう事だ?」

 

 「は?」

 

 この人、何を言って……

 

 「貴女も古代ギリシアの神々な「いやいやいやいや、ない!なぁーい!それはない!」」

 

 どきっぱりと言い切ってやりました。

 いくらなんでもソレはない!だって、設定モリモリにもほどがあります!

 

 「しかし……」

 

 「ジュリアンしょ……ごほん、ポセイドン、貴方、流石にソレはないですよ」

 

 だって、私はココじゃないどこかから若返りトリップでこの世界に来たんですよ?

 いくら私が孤児でもそれはないですよー。

 ……え?聞いてない?聞かれてませんでしたし、気にしてませんでしたからねぇ。

 今はそれどころではありません。さて、どう切り抜けるか……。

 




さていきなりジュリアンさんからの「貴女も神?」発言!
果たしてその言葉の意味は?
謎ですが次回をお待ちください。
もしかしたらもっと謎が深まるかも……?
次回も遅くなりそうですが頑張って書きますので、見守っていてください。
お願いします。


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星46 出生

 へーい!ただいま結構、大ピンチな真名です!

 え?どこが大ピンチなのかって?

 ………………。

 海底神殿のラスボス、ポセイドンの依り代ジュリアン少年が目の前に居るからですよ!!

 下手こいたら本物の海皇ポセイドンが現れるかもしれない件についてぇええ!!

 しかも、「貴女は同じ神ですか?」宣言を頂く前に防ぎましたが、そんな神フラグなんぞ欲しくないです!

 思えば、かれこれ色んな職に就きました……。

 えーっと、黄金聖闘士でしょー?教皇候補(ほとんど忘れていました。シオン様メンゴ☆)でしょー?メイドでしょー?沙織の教育係でしょー?教皇宮付きの女官でしょー?アテナ補佐のフクロウでしょー……。

 何ですか?このラインナップ、思わず笑いが……込み上げてきませんよ!チクショー!!

 しかもこの中にまさかの”神”が入ったら怖いんですけど!?(※神は職業ではありません)

 それ以前に私が神とか!……ないですな。

 しばらく見つめ合っていると、遠くの方でまた一つ柱が壊される音がしました。

 気のせいでしょうか?やっぱり柱が壊されるのが早い気がするんですけど……。

 

 「テティスよ」

 

 「はっ!ポセイドン様」

 

 「紛れ込んだのが、どうやら四匹のネズミだけではない様だ。此処は大事ない、様子を見てきてくれ」

 

 「はっ!」

 

 テティスは破壊されたばかりの柱に向かって走り去る瞬間、私を見て睨んでいました。

 美女の睨みとか、どこかの業界ではご褒美らしいですけど、そんな趣味は私には無いので、ちょっぴり怖かったです。

 

 「……貴女に否定されても、この感覚は消えません。一体貴方は誰なのか」

 

 ジュリアン少年よ。

 それは私が知りたいですよぉぉおおお!!なんなんですか!?

 その話はもうなかった事にしませんかね!?こっちとらキャパがオーバーですよ!

 

 「しかし、これだけは分かります」

 

 「 ? 」

 

 「”私は貴方を知っている”」

 

 「え?」

 

 ほ、本当に……ちょっと待っって下さいぃぃ!!

 

 「……それはそれとして、メインブレドウィナに居るアテナが、貴女が来た事で貴女の小宇宙を感じ、安らいでいる事は気付いていますか?」

 

 「そういえば……遠くの方に居た時は、何度かアテナの小宇宙がはじけた感じがしていましたが、今はあまりそういう事はありませんね……」

 

 沙織……大丈夫ですか?いくら貴女が覚悟を持ってアテナとして戦おうとも、貴女はまだ十三歳の少女……。

 こんな事を思っていたら貴女に失礼になる事は分かっています。けれど……

 

 「私はいつでも、例え離れていたとしても、貴女と共に居ますよ」

 

 そっと沙織を想い、両手を組んで祈りを捧げます。

 地上の雨の水に浸り、命の危機に瀕している沙織に応援のつもりで小宇宙を燃やし、沙織にもっと届くように送ります。

 するとジュリアン少年がその小宇宙を感じ取った瞬間、ハッと何かに気付いた様に私の顔を凝視しました。

 

 「あ、貴女は……いや、”お前”はまさか!?」

 

 「……?」

 

 今度はなんです?(恐る恐る)

 

 「ふっふっふ、ははははははははは!!」

 

 ちょっ、思いっきり笑い出した!?なんですか?狂いました?本当になんなんですかー!?

 

 「そうか!お前は、そういう事か!それなら”アテナ”が”お前の小宇宙に反応しない訳がない”!」

 

 「は?」

 

 な、なんです?笑い出したと思ったら、急に雰囲気が……。

 ってぇ!ジュリアン少年の小宇宙がなんだか大きくなって……しかも、なんです?

 ”沙織”が”私の小宇宙に反応しない訳がない”?

 

 「……それは一体どういう事ですか?」

 

 「ふっ、そうだな。”今”のお前では理解できないだろう。しかし……本当に懐かしい。本来ならまだ”ヤツの中”に居るハズだからな」

 

 ”ヤツの中”?なんだか私を知っている言い方です。

 それに…… 

 

 「貴方は私を知っているんですか?……”海皇ポセイドン”」

 

 完璧ではないにしろ、この状態はまだまどろみの中にいるみたいですね。

 もし、本当に目覚めたとしたら……いや、本当にヤヴァイです。(吐血)

 

 「お前は自分の出生を知っているのか?」

 

 「……私は自分の親の事は知りません、施設で育ちました」

 

 んでもって、施設の皆は良い人ばかりでしたねぇ。勿論、そこの同じ境遇だった子達と怒ったり、泣いたり、笑ったり……恵まれてました。

 成長して施設を出て、一生懸命働いて、友達から勧められた漫画にハマってアニメにハマって見事にオタクになって、それを生き甲斐にしてた一般ぴーぽーなOLでしたよ。

 ふっ、今では懐かしいですねぇ。

 

 「今の生活も波瀾万丈で大変ですが、嫌ではありませんです」

 

 「そうか……。時に、真名とやら」

 

 「おや?私の名前をご存知で?」

 

 あれ?私、ジュリアン少年にも、ポセイドンにもまだ名乗っていませんよね?

 

 「テティスとの会話が聞こえていたのでな」

 

 「そうですかー」

 

 地獄耳なんですねー。

 

 「私の”子”を産まないか?」

 

 ………………。

 

 「はい?」

 

 今、なんと……?

 

 「私の子をう「あー!ちょちょちょちょ!!待って!すみません、待って!ステイ!ステイですよ!ポセイドン!!」」

 

 直球過ぎぃ!!え?これってセクハラ?神様なら何でも許される感じ?冗談はよし子ちゃん!!

 

 「落ち着いて下さい!何より私には恋人がですね!?」

 

 「関係ない」

 

 おおぅふっ……、これだからギリシアの神様は!

 あ、沙織は別ですよ?確かにギリシア神話のアテナって最初の頃、我儘放題やりたい放題だったみたいですけど、沙織は私が厳しぃーく!育てましたから我儘言っても可愛いモノでしたから全然問題なかったですけどね!

 

 「いきなり過ぎますよ!って言いますか、お断りします!」

 

 「何故だ。私と子を作りさえすれば、地上と海はおろか、もしかしたら天上さえも制覇出来るかもしれないというのに?」

 

 …………………。

 

 「え?何言ってるんですか?」

 

 子供を作るのってそんな大それた事と繋がるんです?

 っていうか

 

 「それは”貴方の子”だからですか?”私の子”だからですか?その言い方からするに……」

 

 ”私の子”という感じな気がするのは私だけですか??

 何故かって?だって、地上と海に関しては今戦ってますし、なんでそこで天上が関係しているんです?

 子供って関係ないですよね?私、人間ですから神との子供って、ただ単に半神半人の子が産まれるだけで何かに関わる訳ではないですよね?

 そりゃぁ、神話では色々ありますけども……

 

 「そうだ。思っている通り、お前だからこそ意味がある」

 

 やっぱりそうですかー!っていうか、心の中覗かないでくれませんかねぇ?

 本当に私は神様なんですか!?人間でいたーい!!

 

 「お前がその腹に子を宿し、それが男児であればなお良い」

 

 なんで性別決めてるんです?女でも良いでしょう?って、そうじゃないです。自分。

 

 「なんだか色々混乱してるんですけど?」

 

 「お前が正しく”覚醒”すればいいのだ」

 

 覚醒って……、もう一人の私よ!目覚めよ!!的な?ないない。

 

 「名前を言えば思い出すか?」

 

 

 ――――よ。

 

 

 「――――!!」

 

 その名前を聞いた瞬間、キーンっという音と共に、激しい頭痛が私を襲いました。

 そうして頭痛に耐えていると、頭を過る様々な事。

 少し前にあった穏やかな時間。

 大好きな人達が生きている事実。

 必死に黄金聖闘士達を死なせない様に走り回った事。

 簡単には負けない様に子供を鍛えた事。

 幼い娘と怪我をしている友人、子供達との時間。

 聖域で少しの間、記憶喪失になっていた事。

 アテナ神殿で起こった乱。

 女神の降臨。

 幼い聖闘士達との修行の日々。

 黄金聖闘士に選ばれた事。

 弟弟子が出来た事。

 黄金聖衣に認められ候補になった事。

 二人に村の路地裏で発見された事。

 …………。

 普通に会社に出勤してギリギリ定時で帰れた事。

 学校を卒業。

 気が付けば施設に居た事。

 …………。

 逆流するように今までの記憶が思い出されます。

 いつまで続くんだと苦しんでいると最後に思い出したのは

 

 

 さ お り に 似 た お ん な の 子 が た た か っ て。

 

 

 「うっ、あああああああああ!!」

 

 この記憶はなんですか!?私は知りません!この記憶は何?誰の記憶?どうなっているんですか?

 私は”誰かの中に居ました”。

 この沙織に似た少女が戦っている姿も見ました。見ているだけでした。

 本当にどうなっているんでしょう?

 何よりあの名前を言われた瞬間、まだ続きそうな記憶は私の脳に負担を感じたのでしょう。

 気絶という形で収まりました。

 本当になんなんですか……?

 とりあえず……気絶します!スヤァ。

 

 




真名の秘密を一部公開。
このヒントで真名がなんていう存在なのか分かる人が居たら、
今、私が考えている無謀な事を云おうと思います。
え?今話せって?誰かに背中を押してもらわないと踏み出せない病なのでふ!!
次回も遅いかもしれません。けども、頑張って書きます!
どうか生暖かく見守ってください!お願いします!


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星47 奇跡

 ……また知らない天じょ、じゃないぃぃいいい!!

 

 「てぇいやぁあ!!」

 

 「がはっ!?」

 

 「「「「真名さん!/姉貴!」」」」

 

 今、ジュリアン少年の顔がすんごい近くまで来て、そうです。

 キスされそうになって思わずグーパンかましてしまいました。

 おや?此処はまさかもしかして?

 

 「玉座の間ですか?」

 

 キョロキョロと周りを見てみると射手座の聖衣を纏った星矢が弓矢を構えていました。

 そんな星矢をシャイナさんに紫龍と氷河、瞬も庇っていました。何事?

 

 「でかした!姉貴!!」

 

 「え?」

 

 星矢がそう言うとすっごい速さで玉座の後ろを走り抜けました。

 はっやっ!!

 そして、その後を追いかける三人。

 

 「真名さん、流石です」

 

 そう言って駆け抜ける紫龍。

 

 「真名さんなら、何かやってくれると思いました」

 

 氷河、どういう意味ですか?

 

 「ありがとうございます!真名さん!」

 

 瞬は相変わらず礼儀正しいですねぇ。

 …………。

 いや、そうじゃねーですよ。なんですか?この状況。

 誰か説明プリーズ。

 

 「真名、お手柄だよ。流石だね」

 

 「おや、シャイナさん」

 

 いや、本当にどういう事ですか?って

 

 「おわっ!?じゅ、ジュリアン少年……?」

 

 玉座のすぐ横にジュリアン少年が倒れていました。

 マスクはとれていませんがおでこが異様に赤いです。なんか幻で湯気とか出てそうな雰囲気。

 ……あれ、もしかしてグーパンした場所っておでこだったんです? 

 マスク付けてるのに効いてるんですか?マジかー。

 

 「この玉座の間に付いた時、ポセイドンに抱えられてたんだ」

 

 ふむ、つまりはこうですね。

 行方不明になっていた私がこの海底神殿に来た事で、居る事を察したけれどアテナがピンチだったので仕方なく保留。

 とにかく、アテナを救う為に七本の柱を破壊しないといけない訳です。

 が、しばらく柱を守る海将軍と戦って勝ったは良いものの、柱を破壊できずにいたら、なんと!黄金聖闘士が老師の聖衣、天秤座の聖衣を持って……。

 まって?ねぇ、まって??

 黄金聖闘士!?来てるんですか!?え?誰が??シャイナさんが居るって事は持ってきたのはシャイナさんじゃないんです??

 え?シャイナさんは黄金聖衣を奪われない様にする為の護衛で付いて来た。ですか?なるほどー。

 それで途中から別行動してたんですが、後二本となった柱を壊すだけになり、いつの間にか来た一輝とその黄金聖闘士に任せてメインブレドウィナのあるポセイドンの神殿を先に通る為に四人が来たら、玉座に座るポセイドンが私を抱えて座っていたので人質として捕まっていると思ったっと……。

 

 「あー、なるほどー」

 

 深く頷きながら納得しました。

 しかし、本来なら黄金聖闘士は動けないハズ。一体誰が来たんでしょう?

 あれ?本当でしたらシャイナさんも星矢達と一緒に走って行ってるハズなのに……?なんで此処に居るんでしょう?

 

 「シャイナさん、なんで此処に居るんですか?星矢達と一緒じゃなくていいんです?」

 

 「あんたの事、放って置けないだろ?」

 

 え、天女かな?いや、聖闘士だったわ。

 そんな事を考えていると、最後の一本だったらしい柱が壊れる音が遠くの方から聞こえました。

 ……さて、ここからが本番ですよ。星矢。

 

 「……シャイナさん、離れて」

 

 「え?」

 

 そう、気絶してるはずのポセイドンからさっきとは比べモノにならない程の小宇宙が高まってきているのが分かります。

 これは……怒ってますねぇ。

 

 「……おはようございます。ポセイドン」

 

 「……――――か」

 

 「な!がふっ!?」

 

 ポセイドンが私の事を――――と呼ぶと、シャイナさんは思わずといった感じに驚いて大声を出すところでしたが、私が口を押さえて、もう片方の手の人差し指を私自身の口元に持っていき、シャイナさんに小声で話します。

 

 「……シャイナさん、今はしー…ですよ?後ほど話します」

 

 「…………(こくり)」

 

 シャイナさんを下がらせるとポセイドンに向き直ります。

 おお、怒りの小宇宙をビシバシ感じ、そう思った時です。

 一瞬、神殿の外で光が走ったかと思ったら星矢達四人に直撃したらしく、倒れています。

 その光はポセイドンを、もしくは三つ又の鉾を見れば一目瞭然でした。

 ポセイドンの神としての雷撃です。

 更に雷撃を撃とうとする動作をしたのを見て、それに気が付いたシャイナさんはポセイドンを止めようと駆け出そうとしましたが、私はシャイナさんを止める為に鳩尾に一発決めました。

 恨まれても構いません、今のポセイドンは危険です。

 そうしてシャイナさんを気絶させて部屋の隅に運びます。

 今なお雷撃を放つポセイドン。

 私が前に出て止めるしか……と、考えていたら誰かがポセイドンを背後から押さえていました。あれは……

 

 「一輝!」

 

 「真名!離れていろ!」 

 

 そう、そして一輝はポセイドンを押さえながら星矢にポセイドンを封じる事の出来る唯一の物、アテナの壺がメインブレドウィナの中にあるという事を伝えたのです。

 ……誰ですかぁー!そんな大事なモノをそんな所に仕舞ったアホはぁー!!

 あ、確かカノンだったわ。おのれ、カノンー!!

 そんな事を思っていると一輝のみに目掛けて雷撃が襲いますが、一輝は負けずに押さえ続けます。

 そして、私は見たのです。

 どんなに必殺技を放とうと、今まで七本の柱を壊してきたハズの天秤座の聖衣に備わっている武器を使おうとも、ヒビ一つつかなかったメインブレドウィナが、紫龍と氷河の必殺技によって小宇宙を究極までに高めて纏った星矢は光の一本の矢の様に飛び、メインブレドウィナの原子を砕くさまを。

 それは本来であれば、ありえない事であったのだけれど、星矢はやってのけました。

 そう、ありえない事が起きた。それは人間が人間以上の力を発揮して限りなく神に近い行いを成す事。

 

 

 それはまさに”奇跡”が起きたという事。

 

 

 ポセイドンはそれを目の当たりにして唖然としていました。

 そうしているとメインブレドウィナが破壊された事によって海底神殿もまた、崩壊を始めたのです。

 そして、破壊されたメインブレドウィナの根本、扉からアテナ、沙織を抱えて歩いて出てくる星矢の姿がありました。

 ポセイドンはそれを見ると私の腕を掴み、引きずるようにして星矢達の元へ行きます。

 

 「ペガサスよ……よくもやってくれたな」

 

 「ポセイドン!」

 

 「あ……お、お母様!!」

 

 「沙織……」

 

 星矢と沙織を見つめているとポセイドンは沙織に話しかけました。

 

 「なんだ、アテナよ。人間を、この者を母と呼ぶのだな?」

 

 「彼女を、彼女を離してください。ポセイドン」

 

 「嫌だ、と言ったら?」

 

 「彼女は確かに私の従者です!ですが、貴女の関心を引く様な人ではありません!離してあげて下さい!」

 

 その言葉を聞いたポセイドンはニヤリと笑い

 

 「なんだ?まだ気付いていないのか?」

 

 「何に気付いていないというのです?」

 

 沙織はポセイドンを見つめ、本当に何の事なのか分からずに困惑を隠せない様です。

 

 「止めなさい、ポセイドン。アテナを惑わすのは」

 

 「ふふふ、仕方ない事だったな。貴女も先ほど気付いて覚醒したばかりだった……」

 

 「ど、どういう事だ?」

 

 「…………」

 

 星矢は更に困惑し、”アテナ”は私とポセイドンのやり取りをみて、成り行きを見守っていました。

 そしてはっきりとポセイドンは言ったのです。

 

 「アテナよ。どうやら貴女は無意識のうちに気が付いていたようだな。この女性こそが貴女の”母”であると」

 

 「な!?」

 

 「…………」

 

 「そう、この女性こそがゼウスの最初の妻にして、子供を身籠った時、もしそれが男児であればゼウスの地位を脅かす存在だと予言された。それを阻止する為にゼウスによって飲み込まれはしたが、体内で守り、”娘”を外へ出した。だが、己は残り、ゼウスに知恵を授け続けた。よくゼウスの体内から出て来れたな?」

 

 「そ、それってつまり……」

 

 「…………っ」

 

 

 

 

 「こう呼んだ方が良いか?”知恵の女神メティス”よ」

 

 

 

 

 

 




ついに真名の正体が分かりましたね。
この答えにたどり着いた人は何人いるのでしょう?
え?ほとんどの人?むしろ全員?おおぅふ。
バレバレだったよね……(´;ω;`)
では!次回にはどの黄金聖闘士が来たかが分かる回になるハズです!
次回をお待ちください!
どうか生暖かく見守ってください!お願いします!


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星48 再封印

注意!
カッコイイ黄金聖闘士は居ません!
以上!


 「知恵の女神、メティス……」

 

 「そうだ。この女性こそゼウスの最初の妻にして、アテナの母、知恵の女神メティス。神話の時代でガイアとウラノスは予言した。”身籠った赤子が男児であればゼウスの地位を脅かすだろう”と。そして、その予言は今現在でも続いている」

 

 「な、なんだって!?」

 

 「メティスに男児を身籠らせ、その子供を傀儡として操れば!オリンポスの主神であるゼウスをその地位から降ろせる。天界を支配できるという事だ!」

 

 ポセイドン、楽しそうですねぇ。もう、うわーはははははは!!とか笑い出しそうです。

 なんていうかもう、ここまではっきりしてますと一周回って冷静になりますよね。

 それにですね、星矢。「な、なんだって!?」は、今まさしく私のセリフですよ。

 私が女神の化身ですか、今までそんな事頭スポーンでしたよ。

 まぁ何故ゼウスの体内から出れたのかは私もわかりませんけど、この世界に来る前に居た世界に関しては、予想ですけどなんとなく理解しました。

 本当はこの世界の住人で、何か強い力で引っ張られてそのまま異世界に流れ着いたはいいものの、反動で記憶も一緒に喪失、赤子の姿で施設の前に居たのを恩師が発見、そこで成長。

 んでもって、私を探していたみたいな”何か”によってこの世界に引き寄せられて、戻って来た……感じですね。

 若返ったのは……なんとなくですが、今なら分かります。

 ”何か”の正体……クロノスです。私がこちらに戻る時に私を幼くしました。

 恐らくではありますが、あの神、愉快犯の気質あるので”退屈してたから悪戯してみよう”位の気持ちで私を幼くしたんでしょうね。

 何故クロノスと分かるのかですか?クロノスの小宇宙を感じましたので間違いありません。あの死にぞこないのあん畜生、その内どついたろうか……。

 思わず口調も悪くなりますよ。

 ……もう考えるのは止めましょう。とりあえず、目の前の問題を何とかしないと。

 

 「ポセイドン。お母様を離してこの壺に戻りなさい!」

 

 「それは……!アテナの壺だと!?この私が長い間眠っていた壺……一体どこから!?」

 

 「メインブレドウィナの中からです。この壺も私と共に蘇りました」

 

 なんと言いますかクライマックス間近ですね。

 

 「ポセイドン、ここまできた以上、もはや貴方の完全なる敗北です」

 

 「バカな!アテナよ。貴女がそこまでして愚かな人間共を守り抜こうとするなら、私も貴女を放って置く訳にはいかない!この三つ又の鉾で死んでもらう!!私には地上を浄化するという大いなる使命があるのだからな」

 

 「神の勝手な解釈で地上に手を出してはいけません。もう一度言います。お母様を離しなさい」

 

 「もはや問答無用!死ねアテナッ!」

 

 ポセイドンがそう言って沙織に向かい鉾を投擲する動作をした瞬間、星矢が前に出るのを見ましたが、あの勢いではいくら星矢が射手座の黄金聖衣を纏っていたとしても危険です。何故なら投げつけられたのは”ポセイドンの三つ又の鉾”。

 黄金聖衣は聖衣の中でも特別な鎧、どんな事があっても壊れる事はありません。けれど、相手が神では話は別です。

 今、”どんな事があっても壊れない”といいましたが、流石の黄金聖衣でも神の前では簡単に壊れてしまいます。

 そして三つ又の鉾は”神”の武器、まさしく神の力が宿っている神聖な物。

 そんな物が今まさに沙織と星矢に投擲されました。

 このままでは二人一緒に串刺しになると直感した瞬間、無理矢理ポセイドンに掴まれていた片手を思いっきり振り上げて外し、二人の前に出ようと走ります。

 

 「沙織!星矢!」

 

 「あ!お母さっ!?」

 

 

 ドカァッ!カランカラン……

 

 

 ……背後でそんな音が聞こえました。

 私はギリギリ二人の前に出て、ポセイドンに背を向けて庇っていましたが、音はしたものの、刺さった衝撃はきていません。

 むしろ、何かとぶつかって弾かれた音がしたような……

 恐る恐る後ろを振り返ると、黄金の輝きが背後にありました。

 

 「アテナ、ご無事ですか?真名に星矢も大事ないか?」

 

 その黄金から落ち着いた声で、私達に聞いてきました。

 この声に、この小宇宙。しかもその黄金は双子座の黄金聖衣に、カノンにとてもよく似ていますが、違う事にすぐ気が付きました。この人は……

 

 「「「サガ!」」」

 

 「アテナ、遅くなり、申し訳ありません」

 

 「い、いえ、良く来てくれました」

 

 そう、私の背後でポセイドンに警戒しながらも、佇んで居たのはサガでした。

 というか、沙織も戸惑っていますよ。だって 

 

 「……投げ飛ばした弟の心配は無しか。愚兄」

 

 サガとポセイドンの丁度真ん中に倒れている人物。

 

 「……お前の説得に時間を掛け過ぎた所為なのだから文句を言うな。愚弟」

 

 倒れているのはサガと全く同じ顔をしたサガの双子の弟、カノンでした。 

 しかし、あのサガが

 

 「「投げ飛ばしたぁ!?」」

 

 星矢と一緒に思わずツッコんでしまいました。

 サガってそんな事する人でしたっけ?え?カノン限定?そうですかー。

 

 「私が真名とポセイドンの間に入って盾になる事も考えたのだが……」

 

 ちらりとカノンを見て

 

 「丁度良い盾代わりが隣に”居た”ので、勢いでつい……」

 

 「ついって……それで弟投げんなよ。なんだかサガ、姉貴とやる事似てないか?……えーっとなんだったか、その、アレだ」

 

 サガの言葉に星矢がまたツッコミを入れつつ、言葉を探して考えていると

 

 「似た者夫婦?」

 

 「それだ!」

 

 沙織が解答して星矢がその答えを言った沙織に「流石、沙織さん!」と言うと「たまたまです」とちょっと照れた感じに微笑んでいました。

 あー…二人共、可愛いんじゃー……。って、ちゃうちゃう。

 ふと、改めてカノンを見れば、余程”勢い”とやらが強かった所為か、すんごいガクガクいっている腕を伸ばし、ゆっくり立ち上がっていました。

 って、そうです。ポセイドンの前でした。危ない危ない、ほのぼのしてました。

 

 「サガよ。その”勢い”とやらがアテナの為では無ければ、俺はお前を異次元の彼方に飛ばしていたわ」

 

 「カノン。私がそうなる前に、お前に星の砕けるさまを見せているぞ」

 

 この双子、ポセイドンの前なのに喧嘩始めようとしてるぅー!?

 でも、険悪な雰囲気だったのに、カノンはサガから沙織に向き直り、跪きました。

 

 「アテナ。十三年前、スニオン岬の岩牢でいく度命を救って頂き、心からの感謝を……」

 

 「カノン」

 

 「そして、謝罪を」

 

 「え?」

 

 カノンは跪いていた体勢から立ち上がり、近くに転がっていた三つ又の鉾を拾い上げて再び沙織の前に跪くと

 

 「この三つ又の鉾は、このカノンが引き抜いてしまい、この騒動を引き起こしてしまいました。まさに、神への冒涜を仕出かした罪人でございます」

 

 「カ、カノン……」

 

 「全ては愚かなるこのカノンの罪。申し訳ありません、アテナ。申し訳……ありません……!」

 

 カノンはそう言って鉾を己の胸に突き立てようと……この双子は!!

 

 「チェストォー!!」

 

 思いっきりカノンの脳天に手刀を振り下ろしました。

 

 「ぐおっ!?」

 

 バシャッ!ドコン!ぷかぁ……

 

 「え!お、おい姉貴!?」

 

 「しばらく寝ててくださいねー」

 

 良い感じに手刀が入りましたね。気絶しています。

 バシャッていう音は、実は海底神殿は今、崩壊を続けています。名前の通り海底にあるので、上にある海水が私達が立っている場所に流れています。

 なので、カノンは床に一度沈んでいましたが、浮き上がってきたので顔を上に向けて介抱します。うん、息はしてますね。

 

 「カノンは私が診ています。サガは沙織と星矢を」

 

 「ああ」

 

 「……茶番は終わったか?」

 

 ポセイドンは静かにこちらを見ていました。

 怒っていたハズなのに、なんだかビックリです。

 

 「ポセイドン」

 

 ポセイドンは右手を差し出し手のひらを広げて、目線を私に合わせて語り掛けてきます。

 

 「メティスよ、私と共に来い。貴女となら一緒に壺の中に封印されても良いぞ?」

 

 「お断りします」

 

 ズバッと即答しました。当たり前です!目的がもう分かり切ってますからね!絶対に嫌です!!

 

 「まぁ、そうであろうな……今回は負けを認めてやってもいい」

 

 ん?なんか潔い。

 

 「だが、覚えて置け。メティス、お前を諦めた訳ではない!次に目覚めた時、覚悟して置け」

 

 ヒェッ、この神、諦めが良いのか悪いのか分からないです!

 

 「そしてアテナよ、愚かな人間達に加担した事を必ず後悔するぞ。そして、オリンポスの神々の怒りを受けて罰せられる事になるかもしれん。覚えて置けアテナ!」

 

 そう言い終わると沙織は何かを察したのか壺の蓋を取り、ポセイドンに向けました。

 すると、ポセイドンの魂?であろうオーラがジュリアン少年から出て壺に収まります。

 沙織は壺に蓋をしました。するとその場で少しの間目をつぶり、何か考えている様でした。

 

 「……沙織」

 

 沙織の肩に手を置いて呼びかけます。

 

 「……お母様」

 

 私に振り返って嬉しい様な、ちょっと複雑な様な、そんな表情で私を見つめます。

 

 「アテナ、真名」

 

 「沙織さん!姉貴!早く避難を!!」

 

 星矢とサガに呼びかけられ、そこで私と沙織はハッとして周りを見渡します。

 

 「星矢!サガ!ジュリアン・ソロを助けなくては!」

 

 「……!沙織、あれを」

 

 「えっ?」

 

 沙織に私が見つめる先を指さしました。

 そこにはジュリアン少年を抱えたテティスが居たのです。

 

 「どうかご安心を……ジュリアン様はこのテティスが命に代えても地上へお送りいたします。それが、ジュリアン様に対する恩返しです」

 

 「恩返し……?」

 

 「テティス!」

 

 「 ? 」

 

 私は咄嗟にカノンをサガに渡すと、テティスの元まで駆け出し、指先をテティスの口に突っ込みました。

 

 「ふぐっ!?」

 

 「お母様!?」

 

 「テティス、貴女は人魚姫(マーメイド)でしたね」

 

 「……?」

 

 「死んではいけません」

 

 「 ! 」

 

 私は必死にテティスに言い聞かせます。

 

 「人魚姫だって泡にならずに、幸せになったって良いと思うんですよ」

 

 「……」

 

 「ちょっとで良いので指を舐めなさい」

 

 「?……!!」

 

 指にピリッとした感じがした瞬間にテティスの口から指を引きます。

 

 「傷はもうないですね?ジュリアン少年と一緒に居たいと、心から想うのであれば生きる事を諦めて助けるのではなく、一緒に生きたいから助けなさい」

 

 「メティス様……」

 

 唖然としたテティスに私は微笑んで言いました。

 

 「行きなさい、テティス」

 

 私を見つめてテティスは直ににっこりと微笑むと、後ろで波打っている底の深い場所にジュリアン少年を連れて潜って行ってしまいました。

 

 「真名、行くぞ。時間がない」

 

 「はい」

 

 そして、ポセイドンの海底神殿は崩壊しました。

 




海底神殿に来た黄金聖闘士はサガでしたー。
メティスの説明を簡単に改めて入れました。
ポセイドンさんあざっす!
次回もなるべく早く書けたらいいなー(願望)
どうか、生暖かく見守ってください!お願いします!


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幕間2
幕4 やらかした


短いうえに、ギャグ強めです。
カッコイイ双子はいない。いいですね?


 ポセイドンとの戦いが終わり、数日が立ちました。

 新聞を見るとジュリアン少年はエーゲ海で見つかり、ポセイドンとして君臨していた十数日間の記憶はなく、ソロ家の全財産をなげうって水害にあった難民の救済にあったったそうです。

 そして、ジュリアン少年は被害にあった子供達を慰める為に旅に出たらしいのですが、その傍らに二人の人物が寄り添っていたとか。

 一人はフルートを吹くのがとても上手い音楽生の青年。

 もう一人はジュリアン少年が倒れていた所を助けた少女との事。

 ……この少女、恐らくテティスではないかと。

 そうであると信じています。どうか幸せに……。

 そして、そんな風の噂話を聞いた翌日、聖域の教皇宮の謁見の間に場面は移るのですが 

 

 「この状況、何処かで見ましたねぇ……」

 

 「私にも身に覚えがあるが……ヤツの自業自得だ」

 

 そう、この謁見の間のど真ん中で傷だらけのカノンが倒れて居ました。

 彼は黄金聖衣を着ていないのである程度手加減されて……いると良いですね。

 沙織はサガを残し、他の黄金聖闘士の皆さんを下がらせてカノンが起き上がるのを待ちました。

 そして身体を震わせながらゆっくり立ち上がり、沙織の近くまでふらふらと近寄って跪き、今回のあらましを語りだしました。

 カノンはポセイドンを目覚めさせて騙し、自分が地上と海の支配者になろうとした……らしいのです。

 らしいとは?と皆さん思うでしょう。

 カノンから話を詳しく聞くと実は、カノンてばスニオン岬で数日、自分でも反省の意識がちょーっとあったみたいで、我慢していたらしいのですが、何日も死に懸けていましたので、このままでは死ぬ!と思い、脱出をしたんですって。

 そこでポセイドンの三つ又の鉾を発見。アテナの封印を見て、やっべ!と思って別の場所を探そうと牢獄近くまで戻るも、強い波に押されて三つ又の鉾にぶつかり、鉾を抜いたというか、倒したといいますか……。

 まぁ、不可抗力ですね。

 そして、そのまま海底神殿に行ってしまい、探索するとそこにはポセイドンの封印された壺が!これに対し、カノンは嫌な予感しかしないと、とんずらをしようとしたんだそうですが、何の因果かアテナが施した封印の札が自然に取れてしまい、ポセイドンが自身の纏う鱗衣に宿り話しかけられ、状況に混乱して話を合させていたら、本当の事が言えなくなってしまい、やけくそになって……えーっと、やらかしたんだそうです。

 サガにとってはまさに身内の恥といいますかー。他の黄金聖闘士に言えませんよ。

 やけくそって……カノンー……。まぁ、当時十五歳でしたからねぇ。

 内容が結構アレなんですけど、仕方がなかったといいますか……。

 沙織は苦笑してましたが、サガはムカ着火ファイヤーでした。

 顔を見ると般若が下りていたというか、怖かったです。

 その後、

 

 「サガよ、お前がさっさと俺を出さなかったのが悪いんだろうが!」

 

 っとキレて、

 

 「カノン、確かに私も悪かったが後一、二日待てなかったのか!?私はちゃんとお前を出しに行ったが、もぬけの殻になっていたから心配していたのだぞ!それなのにお前というヤツは!!」

 

 と、サガもお怒りになり、沙織を避難させて二人を見守りました。

 沙織はちょっとオロオロしていましたが(可愛い)直に落ち着いて私と一緒に見守ります。

 しかし、二人は本当に十三年離れていたのでしょうか?

 そっくりそのままの形で拳やキック、カウンター等を同じタイミングで出しては避けたり、同じ必殺技を繰り出して相殺させたり……。

 流石双子という事なんですかねぇ?

 そして、ついに決着の時が!クロスカウンターで両者たお……れない!

 サガが!サガが立っています!カノンだけです!カノンだけが倒れました!

 まぁ、仕方ないですね。だってさっきまで黄金聖闘士の皆さんからお許しが出るまで必殺技のオンパレードだったんですから。

 ここまでサガと戦えたのはある意味凄いです。

 

 「さて……」

 

 私は倒れているカノンに近付き、キュアローズに小宇宙を流してカノンの脳天に刺しました。

 ん?脳天に何かするの好きだな?やりやすい場所なので!(にっこり)

 しばらくするとカノンはむくりと起き上がり、手を握ったり胸を軽く叩いたり調子を見ました。

 そういえばカノンにキュアローズを使うのは初めてかもしれませんね。

 

 「これが真名の……メティスの力か?」

 

 「ん?いいえ?神の化身なら誰でも使えますよ?」

 

 「「え?」」

  

 「ん?」

 

 私の言葉に驚く沙織とサガ。どうかしたんでしょうか?

 

 「どういうことだ?」

 

 目の前のカノンが聞いてきました。

 

 「だって、私も神の化身ですからね」

 

 「いや、そうではなく……」

 

 「だって、霊血(イーコール)の力ですし」

 

 沙織は忘れえているかもしれませんが、霊血には不老不死の力が宿っています。

 キュアローズは本来は変哲もない普通の白薔薇ですが、私の血を如雨露に一滴のみ垂らし、水で薄めて与えていました。

霊血は黄金色のモノなので黄金の薔薇が出来るハズでしたが、私が「薔薇なら青い薔薇が見たいなぁ」っと無意識に思っていたので、その思い込みが強かったからなのか、薔薇は青くなった……って勝手に思っているんですけどね!

 沙織は「まぁ……」っと驚いていて、サガはちょっと唖然。

 「なるほど」っとカノンは今効果を実感して納得。

 ふと何に気が付いたかのように私を見つめて

 

 「では、俺は不老不死になったのか?」

 

 そう聞いてきました。

 

 「なってませんよ?」

 

 そう、何故なら

 

 「水でめっちゃ薄めてますし、私が無意識とはいえ、本来は黄金色なのを無理矢理青色に変えてますので」

 

 まぁ、そういう訳でして。色は関係ないかもしれませんが、自分でもその辺分かっていないので、多分そうだろうなって思っています。はい。

 

 「そんな事で霊血の効力が薄まるのか?」

 

 「事実、薄まって効果が過剰に出ていないので大丈夫かと」

 

 沙織にサガ、カノンはこう思ったようです。

 

 

 どう大丈夫なんだ!?それは!

 

 

 っと。

 




今回はカノンが「やらかした」という事でした。
何やってんだ……。って感じですね。
ドジっ子カノンか……一部では萌えそうです(笑)
後はキュアローズの秘密?でしたね。
さて次回もどうかゆっくりとお待ちください。
まさか別ジャンルに手を出そう……だなんて思っていますん!


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