悪魔の名を持つ機械人形の記録を持つ者 (コレクトマン)
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旧校舎のディアボロス
少年は夢を見る


 

 

……俺は今の現世の記憶以外に別の記憶がある。………いやっ、正確にはある悪魔の名前を持っていそうな白い機械人形の記録とでもいうべきだろうか?その記録は毎度夢の中に出てくる。その夢の中で俺と大差ない年頃の少年が紅い荒野のような場所でその白い機械人形を自分の手足の様に扱い、少年が乗る機械人形を討たんとする翠の機械人形達を次々と倒していく。ある時は巨大なメイスを。またある時は機械人形に付けられし剣の尾を。その戦い方はまるで獣の様な動きでとても人間の動きではなかった。その時、空から高速で降り注ぎし針金の様な物が紅い大地を砕き、その衝撃の余波に巻き込まれた白い機械人形は左腕を失い、それを操る少年は機械人形内で重傷を負う。……それにも関わらず少年が機械人形を起こし、白い機械人形の本来の力を解放して最後まで戦いを止めることはなかった。そんな白い機械人形と少年に終わりを迎えた。少年は機械人形の本来の力を解放した代償としてその白い機械人形に魂を宿らせ、その白い機械人形は翠の機械人形に首を斬られ、晒し首として少年と機械人形の戦いを終わらせた。そして夢の終わりを告げるように二人の声が聞こえた。

 

 

 

 

……だろ?■■■……。

 

 

 

あぁ。そうだな……■■。

 

 

 

 

若干ノイズが混ざった声を聞き終えた時には朝が迎え、俺は夢から覚める。

 

 

「毎度思うが、何で俺がこんな夢を見るんだ?明らかに前世の俺でもあるまいし……」

 

 

そうぼやきながら俺こと、“三日月 涼夜”は学校へ行く支度をするのであった。

 

俺は幼い頃から無表情な奴と世間から見られている。今でも無表情な顔をしている。……これに関しては生まれつきだが、俺とて笑ったりとか怒ったりすることがあるんだが?そんなことを思いながらも俺は通っている駒王町の学校ことつい最近女子校から共学になった駒王学園に向かっていた。その通学時に通学路から二人の友人と会う。

 

 

「よっ!ミカ。何か元気なさそうだが?」

 

「先輩……おはようございます」

 

「イッセーに小猫……おはようさん」

 

 

俺の幼い頃からの友人の“兵藤 一誠”。俺が幼い頃に老人が何かおっぱいを語る所から一誠に出会った。その老人は俺が両親から渡された携帯用の防犯ブザーを鳴らしてその老人を追っ払った。その時の一誠は老人の話を真に受けていた為に俺が何度も注意して助平という悪影響がない普通の人間に戻すのに苦労したのは秘密であったりする。ちなみに余談だが、その老人は今は警察の豚小屋でお世話になっている。……だというにも関わらず懲りずにおっぱいを語っていたそうだ。

 

そしてもう一人は俺の後輩の“塔城 小猫”。この後輩との出会いは俺の趣味である料理で自分で焼いたクッキーを昼休みで食おうとした時に偶然小猫と会った。俺は何かと小猫がクッキーを欲しがってそうだったからか、もしくは小猫の名前の小猫だけに多数あるクッキーの七割を小猫にあげた。それ以降俺は小猫と友人になった。そんな二人に今日見た夢のことを話した。

 

 

「夢か………なんていうか、すげえ夢見たんだな?」

 

「機械人形……ですか。その少年は魂を乗っていた機械人形と同化してしまった…と?」

 

「あぁ……正直言って後味の悪い夢だったさ。何だって俺はそんな夢を何度も見るんだ?」

 

「さぁな?何か思い当たる節でもあるんじゃないか?」

 

「それが解ってれば苦労はないよ……」

 

 

そうぼやきながらも俺たちは駒王学園に着き、それぞれのクラスに入る。そしてこの学園のお約束がやって来た。

 

 

「「死ねよやぁーっ!イケメンがぁーっ!!」」

 

「「……はぁっ」」

 

 

メガネの元浜と禿頭の松田の二人掛かりのラリアットが俺たちに向かってくるが俺と一誠は呆れるくらいに軽々と避ける。からぶった二人は勢い余りすぎてそのままこける。

 

 

「……お前ら最近しつこいよ?イケメンだが何だがどうでもいいことを俺らにぶつけてくるな」

 

「「うるせぇっ!お前達が女子にモテて、女子にモテない俺たちの気持ちがわかるかぁー!!」」

 

「いやっ分かるわけないだろ?俺はお前じゃないし……」

 

 

元浜と松田の反論に一誠は正論を言う。この二人はこの学園の女子更衣室の覗き常習犯である。……よくよく思えばこの二人が退学されないのはある意味この学園の七不思議と思ったのは俺だけであろうか?そんなこんなで二人の口論に付き合うことなく授業の準備を行うのであった。

 

そういった感じの日常からある日のこと、他校と思われる一人の女子生徒が一誠に告白して来た。一誠に告白して来た女性は“天野 夕麻”という名前だそうだ。俺はその時に一誠から俺にデートの心得について教えて欲しいと頼まれた。あの……一誠、俺はデートの心得なんて初めて聞いたけどと思ったのはつい最近である。

 

そんな形で、俺は一誠にデートの心得とは違うけど、この街のスポットに誘うとか、カフェでランチ取ったりしてはどうだろうかと一誠に伝えた。この時、友人である一誠のデートが俺の日常の終わりを告げることを今の俺は知る由もない。

 

 

 

一誠と夕麻のデート 当日

 

 

 

一誠が夕麻とデートの日の夕暮れに俺は公園にある自販機で飲み物を買おうと公園に向かっていた。その時に俺はある違和感を覚えた。

 

 

「何だろう………いくら夕暮れ時で人気がないとはいえ、人が居ないのが逆に変だ。一誠達に何かあったのか?」

 

 

そう思った俺は急ぎ公園に向かった。そして時は夜中に突入する時間帯になり、公園に辿り着いて辺りを見渡すと、そこには黒い翼を羽ばたかせる彼奴(夕麻)の姿と、光る槍に刺されて倒れている一誠の姿があった。その時の俺は一瞬だけ理解出来なかった。……いやっ、したくなかったと言うべきだろうか。彼奴が一誠を……

 

 

 

殺したのだと………

 

 

 

「イッセー……?」

 

「あらっ?貴方は確かこの子の友達だった者ね?一応人払いの結界を貼っていたのだけれども、迷い込んだのかしら?なら残念ね、見られた以上生かして返さないわ」

 

 

この時に俺の感情はある一つの感情しか走ってこなかった。それは怒り。こいつは俺の友人の一誠を……一誠の初恋をこんな形で利用して殺した彼奴を許せなかった。そして俺は口からドスの効いた声で夕麻だった人外に語る。

 

 

「………おいっ」

 

「っ!?」

 

 

怒っている時の俺は周りが見えなくなり、より殺意が外に漏れ出す位に抱く。彼奴が何を考えていようと関係ないほどに………例えそれが、人外が相手であったとしても………。

 

 

「何やってんだ……お前……」

 

「(ば……馬鹿な!私が……たかが人間風情に怯えている!?)……くっ!!」

 

 

彼奴は一誠を殺したと思われる光る槍のような物を手から作り出し、俺に向けて構えをとった。その時に俺は彼奴の首を掴もうと一歩踏み出そうとした瞬間、何かが俺に呼んでいた。

 

 

呼べ………俺の名を………!

 

 

 

「…?……ぐっ!?」

 

 

空耳と思ったその時、俺の脳裏に何かが入ってくる。

 

 

 

()()()

 

 

 

()()()()()()()

 

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 

()()()()()()()()

 

 

 

それらの莫大な情報量が俺の脳裏を駆け巡り、処理速度が追いつかなかった。その時の俺は釣り上げられた魚のように動けず、鼻から血が垂れ、最終的の彼奴の前で気を失って倒れこむ。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

私ことレイナーレは今起こっている状況を理解できなかった。最初は計画を進める為に少年が持つ神器(セイクリッド・ギア)が障害となる可能性を考慮してこのような暗殺を行なった。しかし予想外なことが起こった。暗殺対象の友人であろうもう一人の少年がやって来たのだ。人払いの結界を貼っているのにも関わらず。そしてその少年は私が殺した少年の方を見た瞬間、普通の人間が出すとは思えないほどの殺気を溢れ出て、その殺気が私の方に向けられた。殺気を当てられた私はその少年のことを恐怖した。この人間を始末しなければ私が殺されると思って槍を構えたその時、その人間は急に動かなくなって鼻から血が流れ、最終的にその人間はその場で倒れこんだ。

 

 

「……何なの、この呆気ない終わりは?」

 

 

何故あの人間が普通の人間が出せるレベルではないほどの殺気を放つことが出来るのか理解できなかった。私はその人間が如何に危険であるかを身を以て知り、止めを刺そうと槍をその人間に向けようとした時に別の魔力を感知した。どうやらこの領地を管理している悪魔が感づいたのだろう。計画の修正が必要があると思って私は槍を消し、その場から撤退するのであった。

 

 

レイナーレSide out

 

 

 

俺は……どうなった?あの訳の分からない情報が頭の中で駆け巡ってきたことは覚えている。その情報は聞き覚えのない言葉の筈なのに何故か俺は知っているような気がする。厄災戦、モビルアーマー、ガンダム・フレーム、阿頼耶識システム。その情報の中で気になったのはガンダム・フレームという言葉だ。俺の勝手な推測だが、恐らくは俺が見た夢の機械人形のどれかかもしれない。……だけどそんな事はどうでもいい。俺は目の前で友人の一誠が殺されたことが一番悔やまれる。俺は………無力だ。俺に……俺に力があれば………

 

 

 

 

力が……欲しい!

 

 

 

 

……その願い、叶えてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は再び夢を見ていた。その夢は機械人形同士の戦いであった。白い機械人形が左腕を失いながらも翠の機械人形と戦っていた。そしてその機械人形から声がより明細に聞こえた。少年の声以外に女性の声が聞こえた。

 

 

 

 

何故だ!何故まだ抗う!!無駄な足掻きだ!!こんな無意味な戦いに、どんな大義があるというのだ!!!

 

 

 

大儀?なにそれ。無意味?…そうだな…

 

 

 

 

白い機械人形とそれを操る少年はボロボロになってでも少年は嗤う。その中で翠の機械人形を援護すべく、また違う翠の機械人形たちが迫り来る。

 

 

 

 

俺には意味なんてない。けど…

 

 

 

っは!?よせッ!!こいつに近づいては!!!

 

 

 

 

少年は彼女から狙いを変え、一番前に迫り来る機械人形に高速接近する。その機械人形はハルバードで攻撃するがそれを回避し、敵機械人形の上半身と下半身のつなぎ目を的確に破壊する。さらに横にいた敵機械人形の左腕を剣の尾で切断し、飛び掛かる。敵機械人形のコックピットらしき所を的確に貫き、機体ごと持ち上げ、後方にいた敵へ動かぬ機械人形と化した物を投げつける。そして白い機械人形の剣の尾で追い打ちをかけ、コックピットを貫く。

 

この一瞬で三人も仕留めた、その姿はまさに………

 

 

 

 

悪魔め……

 

 

 

けど…いまは…■■■がくれた意味がある…!何にも持っていなかった…俺のこの腕の中に……こんなにも多くのものがあふれてる…そうだ…

 

 

 

 

少年は彼女へ向かって歩き出そうとする

 

 

 

 

俺たちはもう、たどり着いていた

 

 

 

何なのです!あなたは!!果たすべき大義もなく、なぜ!!!

 

 

 

 

少年はスラスターを吹かせ、彼女へ接近し、剣の尾を放つ。

 

……が、それは彼女の足元に刺さる。銃撃を食らった剣の尾は壊れ、残った右腕も破壊されてしまう。しかし、少年はそれでも止まらない。彼の相棒が残した、最期の命令を果たすために。

 

彼女の攻撃により、コックピットを守る装甲が壊れ、少年の姿があらわになり、気付く。

 

 

 

 

もう…意識が…

 

 

 

俺たちの、本当の、居場所……

 

 

 

 

少年の白い機械人形が、彼女の翠の機械人形にもたれかかるように倒れる。そして、俺もまた夢から覚めるのであった。目が覚めた時に上を見て呟いた。

 

 

「……俺の知っている天井だ」

 

 

俺は身体を起こして昨日のことを思い出そうとした時にある事に気付く。

 

 

「あっ………そういえば、イッセーは?」

 

 

昨日俺はイッセーが殺されたところを目撃していたことを覚えていた。俺はただ、その光景が夢オチだったと祈りながらも学校に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

契約の日が近いな……。()()()()()()()()()

 

 

____________________________________________

 

 

続く

 

 

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悪魔が目覚める日

 

 

一つの不安を抱きながらも俺は駒王学園に通学し、そこで死んだはずの一誠とあった。

 

 

「イッセー……なのか?」

 

「ミカ…?ミカか!?」

 

 

一誠は一誠で何か焦っていた様子であった。一誠が言うに昨日デートした筈の夕麻のことを学園のみんなが覚えていないとのことだった。……みんなが覚えていない?俺は疑問に思う中、一誠は俺に夕麻のことを覚えていないか聞いてきた。

 

 

「ミカ……お前、夕麻ちゃんのことを覚えているか?」

 

「……覚えている」

 

「ほ……本当か!?」

 

「あぁ……彼奴がイッセーを殺した奴だってことは……」

 

 

彼奴のことを思い出すと怒りが湧き出てくる。彼奴がイッセーを……今度会った時は……。

 

 

 

叩き潰す……!

 

 

 

「ミ……ミカ?」

 

「!……ごめん」

 

 

どうやら怒りが顔に出ていたようだ。俺は一誠に謝罪しつつ、今日の夜に一誠と共に一誠が死んだと思われる公園に向かうことを決めた。

 

そして学校帰りから夜中で一誠と合流して一誠が死んだ公園に訪れた。そこには一誠が流したと思われる血痕が一切消えていた。

 

 

「イッセー、ここで合ってる?」

 

「……あぁ、間違いない。俺は確かここで夕麻ちゃんに何か光る棒のような物を俺の腹に刺して……」

 

 

俺はやっぱりと思ったその時、俺たちの背後から近づく者がいた。その者は黒いコートと黒い帽子を被っており、何処かの黒組織の者たちを連想するような格好をしていた。

 

 

「魔力を感知して来てみれば……貴様、はぐれか?」

 

「……はぁ?」

 

 

俺はその怪しさ満載の男に話しかけられてつい、間抜けた声を出してしまう。

 

 

「フム……俗に言う主人が誰であるか知らぬまま転生したばかりの悪魔か?それとも単にしらを切っているだけか?……まぁいい、どのみち殺してしまっても構わないだろう」

 

「!……なぁイッセー、こいつは……」

 

「あぁ、俺もお前と同じことを考えていた。こいつは……何かやばい!」

 

 

その時に俺と一誠は第六感が働いたのか、黒ずくめの男から脱兎の如く逃げる。

 

 

「ほう………やはり()()()であったか。ならば尚更逃しはせん!」

 

 

その黒ずくめの男は背中から黒い翼を生やし、それで飛行して俺たちを追尾してくるのであった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

俺こと一誠はミカと共に俺が死んだと思われる公園にやって来たのは良かったものの、その時に黒ずくめの男から訳の分からないことを聞いて来た挙句、俺たちを殺しに黒い翼を広げて追いかけて来た。俺たちは唯ひたすらに走り逃げていた。

 

 

「イッセー、彼奴は黒い翼を…!」

 

「あぁ!夕麻ちゃんのと同じ黒い翼だった!じゃあ彼奴は夕麻ちゃんの…?」

 

「それは分かんない。今は逃げ切らないと………!ぐっ!?」

 

 

走りながら会話している時に光る槍のような物がミカの背中に刺さっていた。それに気づいた俺はミカに駆け寄る。

 

 

「!……ミカァ!!」

 

「ぐ……イッ…セー……お前…は……逃げ……ろ………」

 

「ほお……僅かだか致命傷は避けたか。はぐれの分際にしては中々の反応速度だな。だが、所詮ははぐれ。お前の止めは後でもできる。今は目の前の奴を始末するか……」

 

「!?……くっ!」

 

 

俺はミカを助けたかったがミカは見ての通り負傷しており、担いで逃げたとしても追いつかれるだけだ。それを分かってミカは俺に逃げろと言った。そして俺はミカを置いて逃げることを選択する他なかった。……すまない、ミカ……!

 

 

一誠Side out

 

 

 

俺は………どうなった?周りは真っ暗で、何があるのか分からない空間に俺はいた。

 

 

「暗い………これ、死んだのかな?でも、俺はこの場所を知っているような気がする……」

 

 

 

 

ようやくこっちに来たか……

 

 

 

 

その時にこの真っ暗な空間で聞き覚えのない声が聞こえた。……でも、その声は初めて聞くものでありながらも何か懐かしさを感じた。

 

 

「アンタは……誰だ?」

 

 

 

お前が知ろうとしている物だ。解りやすく言えば、お前が毎度夢に見る機械人形こと、ガンダム・フレームの八番目の存在だ。

 

 

 

「八番目……?それに………ガンダム……フレーム?」

 

 

その八番目と名乗る声の主は、俺にある事を告げる。

 

 

 

……さてっ、手短に言おう。この世界の三日月よ……お前の友人が間も無くあの堕天使に殺されて二度死ぬだろう

 

 

 

その八番目は一誠の危機を俺に告げた。………一誠が………二度死ぬ?最初はどういう意味か理解する前に俺はまた怒りを抱いた。どういう形で一誠が生き返ったかは定かではないがこれだけは言える。

 

 

 

もう二度と奪わせてたまるか……!

 

 

 

そこで八番目は俺にある提案を伝える。

 

 

 

……それでだ、お前の友を救う手立てが一つだけある。それは、俺と契約する事だ

 

 

 

「契約……?契約すればイッセーを助けられるのか?」

 

 

 

それはお前次第だ。但し、契約すればお前はもう元の生活に戻れなくなる。強大な力は、より強いものを引き寄せる。そしてその力は時に枷となり、お前は孤独となるだろう。お前にその覚悟があるか?

 

 

 

八番目に覚悟があるかどうかを言われた時は覚悟があるのかどうかは自分でも分からなかった。………だけど、俺のやるべき事は決まってる。あの少年が決して止まることがなかったように………俺も………まだ、止まれない。

 

 

「……正直に言うと、俺はまだ分からない。けど、夢の中で出て来た少年のように俺も止まられない。だから………」

 

 

 

成る程な。……たく、前の世界の三日月といい、この世界の三日月といい……本当に、不器用な奴だな。ならば俺の名を呼べ。そうすれば契約成立だ。…といっても、お前はもう知っているんだろう?

 

 

 

八番目……いやっ、そいつの名前は分かっている。俺の仲間を……俺たちの居場所を守るために………お前の力を寄越せ……

 

 

 

バルバトス!

 

 

 

……フッ、契約成立だ!

 

 

 

涼夜Side out

 

 

 

俺は今現在、絶体絶命の状態に陥っている。ミカを置いて逃げたが、あの黒ずくめの男から夕麻ちゃんに刺されたあの槍と同じ物を俺の腹に投擲し、突き刺された。夕麻ちゃんに刺された時よりも何倍よりも痛みを感じた。その槍を抜こうにも腹に刺された痛みの所為で上手く抜けなかった。すると黒ずくめの男が俺の腹に刺さっている槍を引き抜いた。その所為で腹から大量の血が流れた。

 

 

「ガハッ……グッ……!」

 

「悪かったなぁ?痛い思いをさせてしまった。どうやら、僅かに急所を外してしまったようだ。あのはぐれと同じように……」

 

 

その男は今度こそ俺を殺す為に一歩ずつ近づいてくる。……すまない、ミカ。俺はもう……駄目そうだ……。

 

 

「次は確実に殺してあげよう……」

 

 

 

あのはぐれの小僧と同じように!

 

 

 

あのはぐれの小僧のように……?ミカのことを言っているのか?……ふざけるな。俺はまだ何も分かっていないというのに相手の都合だけに殺されるのは嫌だ。ミカだったら絶対そう言うだろうな……。その時の俺は無意識のうちにあしに力を入れ、立ち上がっていた。

 

 

「ほお……まだ立つ力が残っていたか……ならば今度こそ殺してやろう!」

 

「まだ…だ……。まだ……俺は………終われねぇ………!!」

 

 

 

そう…だろ?ミカァ!!!

 

 

 

黒ずくめの男が槍を持って俺にトドメを刺そうしたその時、俺の背後にある暗闇の中からガントレットとその他の鎧の一部分を纏い、巨大なメイスを持ったミカが、その黒ずくめの男に向けて振りかぶった。その黒ずくめの男はミカの奇襲に不意を突かれて、そのままミカが振るう巨大なメイスをもろに受けてしまい、そのまま地面に叩きつけられる。その時の男は完全に胴体を潰されて死んだ。……ミカ、生きていたんだな………。

 

 

一誠Side out

 

 

 

八番目ことバルバトスと契約した俺は急いで一誠の下に向かった。この暗闇の中でもバルバトスと契約したおかげなのかよりはっきりと道が見えていた。一誠を見つけた時には一誠は既に死にかけていた。その原因であろう黒ずくめの男が槍を持って一誠に止めを刺そうとしていた。あの黒ずくめの男が一誠を殺そうとしたということだけ分かった時には俺の腕には夢に出てきた白い機械人形ことバルバトスの腕の装甲が纏い、手から巨大なメイスを出現させてそのまま黒ずくめの男にメイスを叩き込む。完全なる不意打ちだった為にその黒ずくめの男はメイスによって胴体を叩き潰されて悲鳴を上げることなくそのまま絶命する。そして光の粒子となって数枚の黒い羽が舞うのであった。

 

黒ずくめの男を倒した俺は一誠に近づき、一誠の安否を確認する。見た感じだと腹から血が多量に出血しているのが分かる。

 

 

「イッセー!大丈夫か?」

 

「あ…あぁ。……まだ腹が…痛えけど………どうにか……生きてるよ」

 

 

一誠の安否を確認できたことに俺は一時的に安堵した。しかし、その安堵をかき消すかのように俺たちの前にファンタジーゲームに出てくる赤い魔法陣のようなものが突如と出現した。

 

 

「くっ………またか…!」

 

〔やめておけ、お前はまだ契約して覚醒したばかりだ。これ以上の戦闘はお前とて死ぬぞ?〕

 

 

俺は再びメイスを構え直すと契約したバルバトスから戦うのをやめるように声を掛けてくる。だが、あの魔法陣っぽいところから何が出てくるのか分からない以上戦いを止める訳にはいかない。一誠が死にかけているなら尚更だ。

 

 

「まだだ………まだ!!」

 

〔……時間切れだ、馬鹿が……〕

 

「何…?………あっ………」

 

 

その時に覚醒したばかりか脳に負荷が掛かり、鼻血を出しながらも俺はまた気を失ってしまう。その時に赤い魔法陣から人が出てきたのを俺は最後まで確認出来なかったが、気を失う前にその人の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

あの子は私が助けるわ

 

 

 

 

 

 

次に俺が目が覚めた場所は、俺の知る場所であった。

 

 

「此処は……俺の家?」

 

 

俺はあの時、一誠を助けた後に他のやつが来る可能性を考慮して構えたのは覚えている。その時にバルバトスが時間切れとか何とか行っていたような気がする。この時の俺は横越しに寝転がっていた。身体を仰向けにしようとした時に俺の背中に何か有るかのように引っかかって仰向けにはできなかった。しかもその部分が地味に痛い。

 

 

「……何だ?」

 

 

そう思って俺は鏡を使って自分の背中を見てみると、俺の背中には()()()()()()が出ていた。これを見た俺は不思議と恐ろしくても驚くことでも何でもなかった。寧ろ俺はこれを知っていた。……正確にはバルバトスに教えられたというべきであろうか?

 

 

「阿頼耶識システム……か」

 

〔そう……それが俺とお前の契約の証でもあり、お前の呪いの証でもある〕

 

「バルバトス?…起きていたんだ」

 

〔あぁ……それよりもだ。お前、背中のピアスを気にしてないようだがいいのか?〕

 

「これ?ただ単に仰向けが出来なくなっただけでしょ?」

 

〔そういう意味ではない。……まぁいい、背中のピアスは俺がこの世界に来てから覚えた認識阻害の魔法とやらで隠しておく。これなら普通の人間相手なら背中のピアスに気づかれないだろう〕

 

 

なんかバルバトスに気を使わせてしまったようだ。そんなこんなを思いながらも一誠が無事なのか気になったところにバルバトスが一誠はこの世界の悪魔に助けられたそうだ。この町の管轄者である“グレモリー”が一誠の一度目の死を眷属に加えることで蘇生させ、そしてあの堕天使を倒した後に一誠に魔力を分け与えて治癒力をあげて二度目の死は免れたようだ。…でも、ちょっと待て。じゃあ今の一誠は人間ではなくて何になったんだ?

 

 

〔あの小僧は人間を辞めて悪魔となり、グレモリーの眷属となった。悪魔はお前が考えている通りかどうかは知らんが、悪魔は人間よりも寿命が長寿だ。歳を軽く百以上超えることが可能だ〕

 

「そっか………とりあえずイッセーはグレモリーって人が助けたんだ」

 

〔……俺が言うのも何だが、お前も俺と契約してもはや人とは違うものになりかけている事を自覚しているか?〕

 

「?……別に外見は普通でしょ?何いってんの?」

 

〔そういう意味じゃ……はぁっ。この世界の三日月は前の三日月とは違うところをあげるならその天然性だな……〕

 

 

結局バルバトスは何が言いたかったのか分からなかった。そんなこんなで俺はいつも通りに学校に登校しようとしたけど、今日は何日なのか確認してみたら既に二日が経過して土曜日になっていた。つまり……不登校してしまった。

 

 

「あっ………不登校になるなこれ。………ま、いっか」

 

 

そう軽く考えながらも俺は外に出て公園に散歩していると一誠の姿があった。

 

 

「あっイッセー、一昨日ぶり」

 

「ミ…ミカ、無事だったんだな!」

 

 

お互いに無事であったことを確認した俺は一誠から昨日不登校だった俺はどうなったのかを聞いてみたら、体調不良の形で欠席になったそうだ。…まぁ、確かに体調不良を起こしたのは確かなんだけど……明らかにバルバトスと契約した時だな……。

 

そう俺が苦笑いで考えていると………

 

 

「はわぅ!!」

 

 

そこにシスターと思わしき人物が俺たちの前で転んでいた。一応俺はそのシスターに声をかけて手を伸ばす。

 

 

「あうぅ…何で転んでしまうんでしょう」

 

「……大丈夫、アンタ?」

 

「ああ……ありがとうございますぅ」

 

 

そのシスターは俺の手を掴んで立ち上がり、一誠がシスターが被ってたと思われるベールを拾って渡す。

 

 

「大丈夫?はい、これ」

 

「あ…ありがとうございます!」

 

 

一誠が言葉を理解している?一誠って確か英語は駄目だった筈だけど、悪魔になった影響か?……それ以前にあのシスターの人、明らかに外国人の筈なのに日本語がスラスラと喋れている?もしかして……バルバトスと契約した結果、そう聞こえるように自動的に翻訳されているのか?

 

そう考えているとシスターは何やら慌てたようで自分が持って来たと思われるキャリーバッグの荷物が散乱していることに気づいて自分でせっせとすぐに荷物をまとめてキャリーバックに詰め込んだ。何かと慌てん坊な人なのかな?俺はそのシスターにどうしてこの日本に来たのか聞いてみた。

 

 

「……ところで、アンタは何しに来たの?旅行…?」

 

「いえ、今日からこの町の教会へ赴任することになりまして……でも道に迷ってしまって……言葉も通じず困っていたんです」

 

「あぁ…教会なら多分分かるけど、俺たちが案内しようか?」

 

「本当ですか!これも主のお導きです!」

 

 

そのシスターは手に持つ十字架を握り、明るい笑みを見せた。その時に一誠が何か苦しがっていた。一誠は何やらシスターの十字架に反応して苦しんでいた。……大丈夫なのか?そう考えていると奥で一人の子供が泣いていた。どうやら転んで怪我を負ったみたいだ。その時にシスターが子供の方に駆け寄り、その怪我に手をかざすと光がでて、子供の怪我を治した。

 

 

「はい!これで傷はなくなりましたよ、もう大丈夫」

 

 

シスターが不思議な光で子供の怪我を治した時にその子供の母親と思われる人がやってきて、その子供をシスターから引き離すように連れて行く。まるで変な人に話しかけないように……。それを見ていた俺は無意識のうちに怒りがその母親の方に向けていた。それに気づいた母親は俺の怒りを感じ取ったのか一瞬青ざめ、子供を連れてすぐにここから去ろうとする。

 

 

「お…おい、ミカ!」

 

「……!ごめん」

 

 

その後に俺はシスターにあの力は何なのかを聞いてみたら治癒の力だそうだ。そして教会にたどり着くと一誠が余計に顔色が悪くなった。流石にここに長居すると一誠が苦しそうだったので俺は一誠を連れて帰ることにした。その時にシスターから道案内してくれたお礼をしたかったそうだが、一誠が苦しそうなのでまた今度会うことを約束した。

 

 

「そういえば名前は言ってなかったっけ?俺は三日月涼夜、みんなからは“三日月”か“ミカ”って呼ばれている」

 

「俺は兵藤一誠、みんなからは“イッセー”って呼んでくれ。えっと君は……」

 

「アーシア・アルジェントです!アーシアと呼んで下さい」

 

「じゃあアーシア、また今度……」

 

「はい!必ずお会いしましょうイッセーさん!ミカさん!」

 

 

そして俺は一誠と共に教会から離れた後、一誠は部活があるとのことで俺とは別れた。……というか一誠って部活入っていたんだな?それにしても……あのアーシアって人、何で無人のはずの教会に赴任することになったんだろう?そう考えても分からないと思った俺はまた今度考えることにした。しかし、このシスターの出会いが彼奴に会ってしまうきっかけになることを俺は知らない。

 

 

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続く

 

 

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アーシア・アルジェント

 

シスターことアーシアを教会に送り届けてから二日後……。今日一誠が何やら体調を崩して学校を休んだそうだ。一誠はここ最近何かと体調が崩れやすかったのかと思っているとバルバトスからこの世界の悪魔について説明してくれた。何でも悪魔は聖なる祈りや聖水、十字架や光属性が弱点だそうだ。……でも、そうなるとバルバトスはどうなんだろうか?

 

 

〔俺はこの世界の悪魔じゃないし、それ以前に俺は元いた世界の人間たちによって作られた悪魔であることをお前忘れているだろう?〕

 

「あっ……そうだった。バルバトスって確かガンダム・フレームって奴の?」

 

〔あぁ……俺が元いた世界は厄祭戦という最悪な戦争の中で作られた。人類を絶滅の窮地に追いやったモビルアーマーに対抗するため………いやっ、正確には殺すために作られた存在。それが俺たちガンダム・フレームだ〕

 

 

俺はバルバトスが体験……もとい、記録した情報によるとガンダム・フレームは72機も作られたそうだ。バルバトスはそのガンダム・フレームの八番目、ASW-G-08“ガンダム・バルバトス”というのが正式名称だといった。だけどバルバトスは名を短く“バルバトス”でいいといった。個人的にそっちの方が呼びやすいや。それと、バルバトスと契約してから俺の学校での生活は大きく変わった。先ず俺の身体能力が異常なほどに上がっていた。因みに普段の俺は自分の身体をこまめに鍛えていた。その結果、細マッチョ系男子と一部の女子が言っていた。まぁ、身体能力が上がったといってもあまり気にしない方なんだけど……。

 

そうこう考えていたら既に下校時間となり、外は夕暮れになっていた。俺はちょっと公園に寄りたい気分だったので公園に向かい、そして到着すると一誠と一昨日教会に案内したシスターのアーシアがいた。そしてもう一人、俺の知る奴がいた。

 

 

 

一誠を殺した奴だ

 

 

 

最初は頭の中で怒りが回ったが、すぐに冷静になって俺はすぐ近くの茂みに隠れて様子を伺った。距離が遠い分一誠たちやそいつが何をいっているのか断片的に聞こえづらかったが、そいつはどうやらアーシアが目的で来たそうだ。その時に一誠がアーシアを連れて逃げようとした時に彼奴は光の槍を出して投擲して一誠の腹を貫いた。その時にアーシアは治癒の力で一誠の貫かれた腹を直した。その時に俺は更に怒りが加速した。

 

 

「………!」

 

〔待て。今、お前が行けば状況が悪化するだけだ〕

 

「駄目だ……すぐに彼奴を殺さないと……」

 

〔怒りで周りが見えなくなってしまったらそれこそ元も子もない。言い方が悪いが、あの堕天使はあの小娘が狙いだ。ここはあえて見逃してその堕天使を追い、その堕天使が拠点としている場所に殴り込み、その小娘を救うしかない〕

 

 

バルバトスと会話していると彼奴はアーシアに何かを話しかけ、一誠が怒っていた。そしてアーシアは一誠を救うためなのか彼奴のそばに着いた。そして涙を流しながらも一誠に言葉を告げる。そして遠くで見ていた俺はアーシアの口許の動きを見てこう言っているように聞こえた。

 

 

 

さようなら

 

 

 

そして彼奴はアーシアを連れて魔法陣みたいなものを上空に展開し、それを通ってその場から消えた。その時の俺の行動は早かった。俺はバルバトスに彼奴が何処に行ったのか聞き出した。

 

 

「バルバトス、彼奴が何処に行ったか判る?」

 

〔あぁ……あの堕天使の魔力の波は記録済みだ。奴とあの小娘の場所は一昨日、お前が小娘を道案内して送り出したあの教会だ〕

 

「そこに奴が……アーシアがいるのか?」

 

〔無論だ。それと、急がなければあの小娘は死ぬぞ?〕

 

「アーシアが、死ぬ?………どういう意味?」

 

 

バルバトスが言うにアーシアが持つ治癒の力はこの世界の人間に宿る力である神器の一つ“聖母の微笑”が彼奴の狙いで、儀式を通して人間から神器を抜こうとしていたのだ。人間から神器を強制的に抜かされると……

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

その信じられない事実を突き出された俺はある感情に支配されていた。それは怒り。唯の怒りではない。彼奴に対する殺意と怒りが混ざり合って“怒りの殺意”というものが今の俺の身体の中で渦巻いていた。そして俺はその教会に向かうべく行くのであった。その時に俺は気づけなかった。俺が教会に向かう姿を見た一誠の存在を………。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

俺はアーシアを守ることが出来ず、夕麻ちゃんことレイナーレはアーシアを連れて魔法陣で教会の方に戻って行った。その時に俺はリアス先輩こと部長と相談しようとオカルト研究部の部室こと旧校舎に向かおうとした時にある姿を目撃した。それは怒りに囚われたミカの姿だった。ミカの目は何処か獣のような目つきをして教会の方に向かって行った。

 

 

「ミカ?!何でミカがここに?…………まさか!?」

 

 

俺は嫌な予感をして直ぐに旧校舎へ走って行った。そして部長に相談したものの敵対関係である堕天使とは戦争を避けるべくアーシアのことを諦めるように告げて来た。しかし俺は諦めきれず部長に儀式のことを告げると“大事な用ができた”といい、俺にチェスの兵士(ポーン)の特性を説明した後にその場を後にした。……こうなってしまっては俺だけで行くしかないと思ったその時にオカルト研究部の部員の“木場 祐斗”と小猫が一緒に行くと言った。木場曰く、部長は俺が教会に向かうことを認めたのだ。木場と小猫の二人を同行することで。

 

そして俺たちはアーシアが囚われている教会の入り口付近に足を踏み入れると、そこには大量の血痕が地面にばらまかれ、多数の黒い羽があった。これを見た木場たちは困惑した。

 

 

「これは……いったい?」

 

「この羽………堕天使の羽です」

 

「何だって?僕たち以外にこの教会に乗り込んでいるのか?」

 

 

この酷い状況の中、俺は一つ思い当たる節があった。

 

 

「まさか………ミカか?」

 

 

俺の友達であるミカがこの教会に乗り込んでいる可能性を考えながらも俺たちは教会に乗り込むのであった。

 

 

一誠Side out

 

 

 

一誠たちが教会に着く三十分前……

 

 

 

アーシアが囚われていると思われる教会に着いた時に黒い翼を生やした二人の堕天使………もう面倒だからカラスでいいか。そのカラスが俺の前に立ちふさがった。

 

 

「……貴様か、ドーナシークを殺した悪魔の仲間は!」

 

「あんたら誰?あのカラス女の仲間?……ていうか、ドーナ……何?ドナドナ?」

 

「黙れ!悪魔風情が!!貴様がドーナシークの油断をついたに決まってる!!」

 

「そうそう!えっ~と確かシスターのアーシアって子を守ろうとした兵藤一誠だっけ?見かけ倒しで、守る守る行って結局守れないし弱いし?挙句ただ自己満足に浸ってるだけの偽善者だもん!きゃははは!!!」

 

 

その言葉を聞いた俺は更に怒りが加速した。なぜ一誠のことをそこまであざ笑う?そして俺は無意識のうちに前に一誠を助けようとした時と同じように敵を叩き潰し、敵をぶつ切りにできる武器をイメージした。すると俺の手に光が収縮し、光が消えるとそこにはレンチとメイスを合体させたような武器“レンチメイス”が俺の手元に現れる。

 

 

〔それは…俺が奴から受け取った補給品のやつの…!〕

 

「イッセーが弱い?偽善者?それを決めるのは彼奴でもあんたらでもないんだよ……」

 

「ふん、たかが悪魔の仲間の人間風情が私たち堕天使に適うとおも………」

 

 

俺は相手が何をいっていようと関係なく背中にスラスターを出現し、展開してそのまま一気に距離を詰めてそのカラス女その3の頭をレンチメイスで叩き飛ばした。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

まだ喋っている途中で突然声が途切れた堕天使こと“カラワーナ”。その原因はあの人間の持つレンチのような巨大な鈍器でカラワーナの頭を叩き飛ばした。その結果あのカラワーナの頭部は遠く飛んで地面に“ペチャッ”と落ち、そして残った胴体は無くなった首元から血が吹き出してそのまま倒れて光の粒子となって消えた。数枚の黒い羽を残して……。それを認知するのを送れていた私こと堕天使“ミッテルト”はカラワーナがいきなり死んだことに理解できなかった。その代わりに理解できたのは二つある。一つがあの人間がカラワーナを殺したということ。そしてもう一つが………

 

 

 

何の情もない機械のように殺しに来た

 

 

 

「ひっ……!?う……うわぁぁーーー!!?」

 

 

私は光の槍を人間に投擲した後に空高く羽ばたいて距離を取った………つもりだった。

 

 

「逃がすわけないだろ?」

 

 

その人間は背中から何かを出現させて光を噴き出したと思ったらそのまま空を飛んで私のいる高度まで飛び、そして人間が持つ巨大な鈍器によって私は叩き落とされた。そしてその人間は私の後をを追いかける様に降下した。

 

 

「ガァッ!?………うくっ………ぃひぃっ!?」

 

 

その時にその人間の顔は機械のような兜を被っていた。額部分に左右対称の角、そして目を守る役割をしている翠の眼光を光らせていた。その兜はまるで“鬼神”を連想させるように恐ろしく感じさせた。

 

 

「た……助け……」

 

 

そんな人間に慈悲の言葉を投げるもその人間は慈悲の言葉を聞かず足に光が纏い、その光が消えた時にはハイヒール状の機械の足になった。そしてその足を上げ、無慈悲に私の心臓に向けて踏み潰し、そこで私の意識はここで途切れた。

 

 

ミッテルトSide out

 

 

 

カラス女の仲間を潰した俺は教会に入る前にアーシアが何処にいるのか聞き出した。

 

 

「バルバトス、アーシアは?」

 

〔この教会の地下だ。そこにその小娘がいる〕

 

「……分かった」

 

 

場所を特定した後に俺は教会の扉をレンチメイスでぶち破り中に入る。アーシアがいると思われる地下へ続くルート向かっていると、頭部に何かが当たったのを感じた。

 

 

「……?何か当たった?」

 

〔今のは……拳銃サイズの弾丸のようだな?〕

 

「おやおや〜?悪魔達が来ると思って不意打ちしたと思ったんだけどね〜?まさか機械の様な奴がこの教会にくるとはねぇ?」

 

 

声がした方向に向けると、そこには拳銃を持った神父の様な男がいた。……何かその神父がぶつぶつと言っているけど正直どうでもいい。ただ思うことは一つだけ。

 

 

「……つーか何で死なねぇんだ?巫山戯んなよてめぇ、それじゃあ俺のポリシーが傷つくっつうの。……という訳で死ね!つーか死ねよ!死ねクズ悪魔の……「…邪魔」あっ?……ゴボッ!?」

 

 

俺はその神父の顔面に一発殴って黙らせた後にアーシアがいる地下の祭儀場に向かった。そして祭儀場の入り口に着いた俺は扉をぶち破る。するとそこにはアーシアの姿と数名の神父とあのカラス女の姿があった。

 

 

「!…アーシア!」

 

「ん……三日月…さん」

 

「あら……貴方あの悪魔のお友達じゃないの?それにアーシアと面識があったのは驚いたわ。感動の対面だけれども少し遅かったわね?」

 

 

 

ちょうどいま儀式が終わるところよ?

 

 

 

「…!いやぁぁぁぁああ!」

 

「っ!」

 

 

俺は直ぐにアーシアの下に向かおうとするが神父達が邪魔をする。

 

 

「邪魔はさせん、悪魔に味方する者め!滅ぼしてくれ……」

 

 

俺は真っ先に向かってくる神父を空いていた左手でその神父の心臓部分に突き刺して黙らせた。突き刺された神父は理解する時間も悲鳴をあげる暇も与えらず、理解できないまま絶命した。そして残った神父たちに俺は告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら………消えろよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後からは断片的でしか覚えていないが邪魔をする神父、逃げる神父を一人残らず殺し尽くした。ある者はレンチメイスで叩き潰したり。またある者は俺が物理的に心臓を引っこ抜いて握り潰したり。その時の俺の姿は神父たちを叩き潰した際に返り血を浴びており、より悪魔の印象を強めた。

 

その際にあのカラス女はアーシアの身体から小さな光の球を取り出してそいつの身体に取り込んだ。俺はそんなのを関係なくアーシアを近づいたが既に衰弱し、死にかけていた。俺はアーシアを抱えて教会の地下から外へ出るべく上空へと飛び出し、教会の屋根を突き破るのであった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

そして今現在……

 

 

 

俺はミカが先にアーシアを助けようとしているのかを考えたが、考える時間がないためにその考えを停止する。そして俺たちは教会に入ろうとしたその時に、教会の屋根から何かが突き破ってきた。

 

 

「な……何だ!?」

 

「あれは………人?」

 

「…血の匂い」

 

 

その物体が俺たちの前に降りてきた。そして月明かりがその物体の正体を現す。それは、アーシアを抱えた()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「アーシア!?」

 

「イッセー君、待って。あの機械の様な何か……僕たちよりも遥かに強い…!」

 

「…この血の匂い、入り口にあった血だまりと同じ匂い」

 

 

小猫言葉で俺は理解した。あの機械人形が入り口にあった大量の血と黒い羽の正体を。あの機械人形がこの教会に殴り込み、アーシアを助け出したということを。その時にその機械人形が俺の方に向けると俺の友達の声で話しかけてきた。

 

 

「………イッセー?」

 

「……!?まさか……ミカ?お前なのか!?」

 

 

ミカが此処にいたことに驚いたが、ミカが抱えているアーシアのことを思い出してアーシアの安否をミカに聞きだす。

 

 

「ミカ、お前がアーシアを……?」

 

「……ごめんイッセー、アーシアは……もう」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、俺は分かってしまった。ミカが言う言葉の意味を………。

 

 

「そんな……ミカ、頼むから嘘だと言ってくれ」

 

 

 

あら?その子が言っているのは本当よ?

 

 

 

俺が一時的な現実逃避していた時にミカが突き破ってきた教会の屋根の穴からレイナーレが出てきた。

 

 

「…!レイナーレ!!」

 

「アハハハ!腐ったクソガキが私の名を気安く呼ぶんじゃないわよ!」

 

 

俺がアーシアの神器を抜き出したレイナーレに対して怒りが湧いた。しかし……それ以上に怒りを抱いている者がいた。

 

 

 

「お前がそれを言うな……カラスが」

 

 

 

俺は声がした方に悪寒が走った。その正体はミカが俺以上に怒りを抱き、殺意を増していた。ミカが抱えいたアーシアを降ろした後に手からレンチの様な鈍器を出現させた。

 

 

「あら…怖い怖い。そんなにキレてんじゃないわよクソガキ。それに、むしろ感謝してるわ。貴方の存在がなければあの子の神器を抜く計画の修正がなかったのよ?」

 

 

するとレイナーレが魔法陣を展開して更にはぐれ悪魔祓いを呼び出した。それでもミカの表情は変わらない。

 

 

「……アーシアを奪ったお前に礼を言われる筋合いはないんだよ。そもそも、その力はアーシアの物だろ?だったら……」

 

 

 

「……殺してでも取り返す!」

 

 

 

「……はっ!粋がってんじゃないわよ!たかが人間風情が!!」

 

 

その掛け声が合図でミカが背中に付いているノズルからジェットエンジンの様に吹かし、空を飛んでレンチの様な鈍器でレイナーレに振るう。そしてレイナーレは光の槍でミカの鈍器を迎え撃つ。その時に木場が俺にアーシアを連れて行く様に言われた俺はアーシアの方に駆け寄り、アーシアを抱えて教会から離れた。

 

教会から離れて木の茂みに隠れた俺は抱えていたアーシアを降ろして声をかけた。

 

 

「アーシア、待ってろ。俺が……俺たちが絶対にすぐ取り戻してやるからな!」

 

 

俺は神器を出してミカの加勢に向かおうとしたが………。

 

 

「イッセー……さん…」

 

 

アーシアが弱々しく俺の手を掴んだ。自分の命が終わるのを分かっているかの様に俺に話しかけた。

 

 

「……私、少しの間だけでも……友達ができて幸せ…でした……」

 

「……何言ってんだよアーシア。まだ生きることを諦めるな!またこの間の写真を撮りに行こうぜ!だから……」

 

 

アーシアは最後の力を振り絞って俺の手を握り、喋り続けた。

 

 

「また……友達に…なってくれますか…?……また一緒に……遊んでくれますか?」

 

「あぁまた友達になってやる!また一緒に遊んでやる!!だから……アーシア、死ぬな!!」

 

 

それを聞いたそアーシアは涙を流しながら嬉しそうな表情をしていた。そして俺は涙を流していた。受け止めたくない事実を目の前にしながら。

 

 

「……よかった。…私の為に泣いてくれる………。……もう…何も……イッセー…さん………」

 

 

 

ありがとう

 

 

 

その言葉を残してアーシアは静かに俺の目の前で息を引き取った。俺はあまりにも残酷な現実を受け止めることが出来なかった。

 

 

「なんで……なんでだよ……?何でこの子が傷つかなきゃいけない……?何で死ななきゃならない……!?なぁ神様よ!いるんだろ!?見てるんだろ!?答えろよ!」

 

 

俺は空に向かって神様に叫ぶ。聞こえるはずもない。そしてこの行動に意味がない。そう思った………。

 

 

 

君は……いつまで喚いているつもりでいるんだい?

 

 

 

悪魔の様な声を聞くまでは………。

 

 

「…ッ!誰だ!?」

 

 

 

私が誰なのかどうでもいい。君はその子を助けたいのは変わりはないのだろう?

 

 

 

「……!アーシアを……?」

 

 

 

だったら君の神器を覚醒させるんだ。今の君ならできる筈だ

 

 

 

その悪魔の様な声は優しい声で俺に語りかけた。

 

 

「……俺にどうしろってんだ。俺はたった一人の女の子を……それも友達になったばかりの子ですら助けられなかったんだ」

 

 

 

……何れにせよ、彼女はここで死ぬ運命には変わりなかったであろう。だが、それを君は容易く容認し、諦めてしまうのか?

 

 

 

「諦めたくない!俺だって諦めたくないんだ!だけど、その子が死んでしまったら意味がない!!意味が…ないんだ……」

 

 

 

……ならば彼女が生き返る術があると言ったら君は動くというのかい?

 

 

 

「アーシアが……生き返る?」

 

 

悪魔の様な声がアーシアが生き返る方法を知っているかの様に俺に告げ、そのまま話を続けた。

 

 

 

これは君が何れ契約を結ぶ為の下準備に過ぎない。その対価がどの様なものかは私でも想像のつかないものだ

 

 

 

「だけど……それでアーシアが生き返る方法を教えてくれるんだな?」

 

 

 

あぁ……それには君の友人である三日月の力が必要不可欠だ

 

 

 

「え……三日月が?」

 

 

 

彼女の蘇生には三日月にあることをやってもらうことだ

 

 

 

「あること?それは一体……」

 

 

俺はその声の主に聞き出そうとしたが、その声の主がこの場からさることを俺に告げる。

 

 

 

……そろそろ私もこの場から失礼させてもらおう。最後に覚えておいてくれ。神器は人の思いに答え、力を与えてくれる。ならば、彼女を救う気持ちを神器に想いを込めさせることだ。思いが大きければその力も強くなる。……では、また会おう……十一番目を宿りし者よ

 

 

 

声の主はそう告げていこう一切声が聞こえなくなった。その時に俺は神器を見た。あの声が言っていたことが本当なら……。

 

 

「なぁ…俺の思いが伝わるんなら、俺に力を貸してくれ!神器(セイクリッド・ギア)!!」

 

 

《BOOST!》

 

 

「まだだ!まだお前の力はこんなもんじゃないだろ!?あの子を……アーシアを救う力を!!!」

 

 

《Dragon Booster!》

 

 

俺の思いが伝わったのかは分からないが、これだけは言える。力が漲る!そして俺はミカたちの加勢に向かった。アーシア………絶対助けるからな!!

 

 

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続く

 

 

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堕天使を狩る者

 

 

俺は空を飛ぶカラス女と戦い始めて二分が経った。……たったの二分でも長く感じる。俺がレンチメイスを振るうたびにカラス女の身体に掠めるだけであった。

 

あのカラス女、こいつ(レンチメイス)のことを警戒している。俺は埒が明かないと判断してレンチメイスの打突部分を開き“レンチ形態”に切り替えてあのカラス女を捕まえようとするがそのカラス女は光の槍を身代わりにして俺の背後に回り込み新たに光の槍を作り出して俺に刺そうとした。

 

 

「貴方はその鈍器の方が扱い慣れているでしょうけど、そのぶん動きが単調なのよ!!」

 

「うるさい……なぁ!」

 

 

俺は脚部のスラスターを吹かしてカラス女の方に向けると同時にレンチメイスを打突部分を閉じて“メイス形態”に切り替えてそのままカラス女に叩き込もうとするが簡単に避けられる。何度も避けられているうちに俺は苛立ちを感じていた。

 

 

「お前……ちょこまかと……」

 

「それにしても、貴方につけられたこの傷………」

 

 

そう言ってカラス女はその傷に手をかざすとアーシアと同じ様に光がでて、その傷が治った。

 

 

「素敵でしょう?どんなに傷ついても治ってしまう素晴らしい神器なのよ。この力があれば私の地位は約束されたも同然のようなもの。偉大なるアザゼル様にシェムハザ様のお力になれるのよ!」

 

 

アザゼルやシェムハザと俺の知らない奴の名前を言うカラス女。アーシアの力を奪って何がしたいんだ、あのカラス女は。

 

 

〔……恐らくあの堕天使は独断の行動なのだろう。組織とは無関係で、只単に上司に己の有能性を認めてもらうが為にあの小娘の神器を狙ったのだろう〕

 

 

バルバトスが何やらあのカラス女の行動を読み取っているけどそんなのはどうでもいい。ただ分かっているのが一つだけだ。

 

 

 

彼奴は二度も友人の命を奪った

 

 

 

俺はそれだけの真実があれば十分であった。そして俺はレンチメイスを光に変えて消し、レンチメイスより少し軽めのメイスを取り出した。そのメイスは一誠を殺そうとした黒ずくめのやつを叩き潰したメイスである。

 

 

「……どんな傷でもといっても、回復の隙すら与えなければいい訳だろ?」

 

「無理よ。貴方はその背中のやつで空を飛べているようだけど、実際のところ空中戦自体は初めてでしょう?どちらにしろ、空中戦では私の方が上よ!」

 

 

そう言ってカラス女は光の槍を投擲してきた。俺はメイスでその光の槍を弾いてそのままカラス女の距離を詰めてメイスを振るうのだった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

俺は神器を覚醒させた状態でミカ達の加勢に向かうと、そこには木場たちによって倒されていた増援の神父たちの姿であった。その時に木場たちは俺が此処にきたことに気づいた。

 

 

「木場、小猫ちゃん!加勢に来たぞ!」

 

「兵藤先輩……?」

 

「イッセー君?シスターの方は………」

 

 

木場が俺ににアーシアのことを聞いた。俺は横に首を振るしかなかった。それを察した木場たちはこれ以上のことを聞かなかった。

 

 

「木場、小猫ちゃん。ミカは何処にいるんだ?」

 

 

俺は木場たちにミカが何処にいるかを聞くと小猫がミカの居場所を俺に教えた。

 

 

「……三日月先輩はあの堕天使と空で戦っています」

 

「空で?……っ!」

 

 

俺は小猫が言う空を見上げると、そこでミカがレイナーレ相手に苦戦していた。そこで俺はどうやってミカを手助けしてレイナーレをぶっ飛ばすかを考えた時に俺は一か八かの賭けに出た。

 

 

「小猫ちゃん、俺をレイナーレの方に投げ飛ばしてくれ!」

 

「……気でも狂ったのですか?」

 

「俺はいたって正気だ!とにかく頼む!」

 

「……分かりました。どうなっても知りません」

 

 

そして小猫は俺の服を掴んでいつでも投げられる状態になった。

 

 

「……どのタイミングで投げればいいんですか?」

 

「俺が“今”って言ったら思いっきり投げ飛ばしてくれ!」

 

 

ある意味危険な賭けだが、ミカやアーシアを助けるにはこれに賭けるしかねぇ!

 

 

一誠Side out

 

 

 

俺がカラス女と戦っている間に一誠が小猫たちと合流した。アーシアは一誠が安全な場所に置いてきたようだ。でも問題があのカラス女だ。アーシアから奪った力ですぐ回復してしまうためにジリ貧だ。

 

 

「しつこいな…お前」

 

「それはこちらのセリフよ、クソガキが!人間風情が至高の堕天使に……」

 

「至高だのどうの、イッセーやアーシアの命を奪っておいて………」

 

 

そう言いながらもカラス女の攻撃を弾いて、その隙を狙ってカラス女に蹴りをかました。

 

 

「あぐっ!?……人間風情がよくも!」

 

「あぁ、もういいよ。お前は二度も俺の目の前で仲間の命を奪ったんだ。イッセーだったらこう言うさ」

 

 

 

「アンタを()っちまえってさ!」

 

 

 

そう言って俺はスラスターを全開に吹かしてカラス女に接近してメイスを前に一直線に刺す。

 

 

「くっ……舐めるなっ!!」

 

 

それに負けじとカラス女は光の槍を俺が持つメイスの柄部分を破壊した。その結果、メイスの柄が折れて打撃部分だけ俺の手に残った。

 

 

「ちっ……折れた!」

 

「これで……終わりよっ!!」

 

 

カラス女は俺に止めを刺すべく光の槍を俺に向けて刺そうとしたその時………

 

 

ウォォォオオオオーーー!!

 

 

 

そのカラス女の背後から一誠が赤い色をベースに緑の宝玉を身につけたガントレットを着けて飛ばされながらやって来た。

 

 

「なっ!?こいつっ!」

 

「吹っ飛べ、クソ天使!!」

 

 

《EXPLOSION!!》

 

 

そして赤いガントレットが声を上げると同時に一誠がその拳の一撃をカラス女に当てた。俺はこの好機を逃さず壊されたメイスの打撃部分の()()()()()を起動させてそのカラス女に当てる。するとメイスの中央の部分から杭が出てカラス女の腹に打ち込まれる。そしてカラス女はそのまま落下して地面に激突する。

 

 

「ガハァッ!!?」

 

「……やった、ざまーみろ。……っておわぁっ!?」

 

「…!イッセー!」

 

 

その時に一誠が重力によって落ちていく。俺は一誠が地面に激突する前に一誠の腕を掴み、地面との激突を避けた。そして俺はスラスターを吹かしながら落下速度を減速しながら地面に着地した。

 

 

「助かった。サンキューな、ミカ」

 

「あぁ……イッセー。今のは凄かったけど、無茶しすぎ」

 

「す…すまねえ。でも………」

 

「貴方ならやれると信じていたわ」

 

 

俺は一誠と話しているとそこに紅髪をした女性と黒髮のポニーテールの女性がやって来た。その服装は駒王学園の制服で、駒王学園の生徒であることが分かった。その時に一誠がその紅髪の女性を見た瞬間驚いたような顔をしていた。

 

 

「ぶ……部長!?」

 

「不意打ちとはいえ、なんとか勝てたみたいね」

 

「な、なんとか……ですけどね。正直いえば、ミカがいなければうまくいかなかったかもしれません」

 

「それでもよ。よくやったわ、さすが私の下僕くん♡」

 

 

なんか一誠が少し緊張気味でその女性と話していた。もしかして、前にバルバトスがいっていた?

 

 

〔お前が思っている通りだ、三日月。彼女はこの世界の悪魔の一人、それもソロモン72柱の56番目の存在“グレモリー”だ〕

 

 

グレモリー………。あの紅髪の女性の人が一誠を助けた人だったんだな?そう考えているとその紅髪の女性ことグレモリーの人が俺のことを見ていた。

 

 

「それと……貴方ね?前にイッセーが言っていたミカって子は?」

 

「そういうアンタはイッセーを助けたグレモリーの人?」

 

「そうよ、私は“リアス・グレモリー”。貴方と同じ駒王学園の生徒で、貴方の先輩よ。そして私の横にいるのが……」

 

「初めまして、三年生の“姫島 朱乃”ですわ」

 

「さて……細かい自己紹介は後でしましょう。今はそこで倒れている彼女を如何にかしましょうか」

 

 

すると小猫が気を失っているカラス女を引きずって来た。……小猫って意外と力持ちなんだ。

 

 

「……部長、持って来ました」

 

「ありがとう小猫。朱乃、彼女を起こしてあげなさい」

 

「はい、部長」

 

 

すると黒髮の女性こと姫島先輩の指先に何もないところから水が集まって水玉を作り出してそのカラス女の顔に浴びせた。それに反応してカラス女が起きる。

 

 

「プハッ!……ッ!!」

 

「ごきげんよう、堕ちた天使さん?」

 

 

グレモリーの人ことグレモリー先輩がカラス女に挨拶する。するとカラス女が苦虫を潰したような顔をした。

 

 

「グレモリー……!追い詰められたと思っていたら大間違いよ。すぐにでも増援が……」

 

「残念ながら来ないわよ。貴方の仲間である堕天使カラワーナ、ミッテルトは何者かによって殺されたわ」

 

「!……嘘よ!あの二人が簡単に殺されるはずが……」

 

 

 

「あぁ……それ、俺が叩き潰した奴らだ」

 

 

 

それを聞いた先輩たちが何か驚いていた。……俺、何か変なことを言ったかな?

 

 

「……貴方だったの?あの堕天使二人を相手に?」

 

「…?そうだけど、何か変?」

 

「部長…ミカは天然性があるタイプなんです」

 

「そ……そう。それはそうと、その証拠であるこの羽……貴方は見覚えはあるわよね?」

 

 

グレモリー先輩がそう言いながらカラス女に黒い羽を見せるとそのカラス女は絶望したような顔をした。そしてグレモリー先輩がカラス女に一誠の神器を見誤ったとか、神滅具(ロンギヌス)とか俺の知らない言葉が出て来た。……後でバルバトスに聞いてみるか。そして、グレモリー先輩がカラス女に向き直ると殺す時の目になって告げた。

 

 

 

消えてもらうわ

 

 

 

死刑宣告を告げられたカラス女はこれを逃れようと一誠の方に向けると助けを求めて来た。

 

 

「イッセーくん!私を助けて!この悪魔が私を殺そうとしているの!私、あなたの事が大好きよ!愛してる!だから、一緒にこの悪魔を倒しましょう!」

 

 

ここまでの醜態を見た俺は、このカラス女は救えないと思った。この騒動のケジメをつけるために俺は行動する。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

レイナーレは俺に助けを求めて来た。ただ単に自分が生き残りたいが故に。今思えば、俺はこんな薄汚い女性に初恋をしてしまったのか?そして友達になったばかりのアーシアを殺した奴を許して欲しいと?レイナーレは何度も俺の名を呼んで助けを乞う。それでも俺は許せなかった。そして俺は部長にレイナーレのことを任せようとした。

 

 

「……部長、もう限界です。後は……?」

 

 

俺がいい終わる前にミカはレイナーレの前に立った。右手にレンチのような鈍器を持ちながら。そしてミカは俺に話しかけて来た。

 

 

 

「どうすればいい………イッセー?」

 

 

 

「……ミカ?」

 

「俺はどうすればいい?イッセーの言葉次第で俺はあのカラス女を叩き潰すつもりだ。イッセー、アンタはどうしてほしい?俺はどうしたらいい?」

 

 

ミカは俺に何かを期待している、若しくは狼が獲物を見つめる様な目をして俺に問い出して来た。ミカは兜っぽい物を被っている為に表情は分からないが、俺にはそういう目で見ていると思った。……俺はこの時、ミカの言葉に一時恐怖を覚えたが、俺はこのままじゃダメと思った。

 

 

「ちょっと貴方!?一体なにをいっているの!これは私たちの問題「部長……待ってください」……イッセー?」

 

「ここは……ミカに任せてください」

 

「え……だけど「頼みます、これは俺の我儘なんです」……分かったわ」

 

 

部長は俺の我儘を聞いてくれたことに感謝しつつも俺はミカにレイナーレのことをどうするかを伝えた。

 

 

「ミカ……俺が言うのはたった一つだ。たった一つのシンプルな頼みだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「潰せ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……分かった」

 

 

それを聞いたレイナーレは死刑宣告を告げられた時のように更に絶望をした顔をして俺に助けを乞いた。それでもミカはそんなこと関係ないかようにレンチのような鈍器を処刑人のように持ち上げる。

 

 

「ま……待って!?わ……私はイッセーくんを愛していたのは本当よ!本当!!だ……だったら、私がアーシアを生き返らせる術を教えてあげるから!だから、お願い!待っ……!?」

 

 

その時にレイナーレの命乞いは途中で途絶えた。その時にミカがレンチのような鈍器をレイナーレの頭に振り下ろし、レイナーレの頭を叩き潰した。レンチのような鈍器が振り下ろされたところには頭を潰されて肉片や目玉と血が地面に散らばり、わずかにひくつくレイナーレの死体があった。そしてそのレイナーレの身体が光に包まれ、やがて光の粒子となって消え、黒い羽を数枚散らせてこの世をさった。

 

 

「……グッバイ、俺の初恋…」

 

 

俺はそう別れの言葉を交わして空を見上げる。空は既に暗く星と月が照らしていた。

 

 

一誠Side out

 

 

 

俺はレンチメイスでカラス女にケジメをつけたその時に光となって散ったカラス女の場所から光の球体が現れる。俺はそれを掴むとそれが何なのか分かった。

 

 

「これは……アーシアの?」

 

「彼女の神器のようね。さて、これをアーシア・アルジェントさんに返してあげましょうか」

 

 

グレモリー先輩が言うがアーシアはもう生き返れない。あのカラス女が何かアーシアを生き返らせる方法を教えようしていたけど、多分苦し紛れの嘘なのだろう。その時にバルバトスがアーシアのことで話しかけて来た。

 

 

〔あの小娘のことだが………生き返らせることは可能だ〕

 

「え……?それってどういう事?バルバトス」

 

 

俺がバルバトスに聞き出そうとしていると何か先輩たちが驚いた顔をしていた。……確か2回目だったよね?

 

 

「ミ……ミカ?今お前のところから声が聞こえたんだが、もしかして神器が?」

 

「……?バルバトスの声が聞こえるの?」

 

〔あぁ……どのみちこのままやり過ごすのは無理と判断してな。俺とミカ以外の者は聞こえないようにしてたのをやめたところだ〕

 

「バルバトス……!?ありえないわ、バルバトス家は昔前に断絶した筈!」

 

 

何かグレモリー先輩が慌てているようだけど、分かっている事といえばこの世界のバルバトスっていないんだな?

 

 

〔まぁ、驚くのも無理はないか。俺は別世界のバルバトスだ。この世界のバルバトスは知らん〕

 

「……別世界?でも……いえっ、改めて考えてみれば貴方のような機械人形の姿を見て納得はいくわ」

 

〔それはそうとグレモリー、お前まだ駒を残しているか?〕

 

「え?…えぇ。ちょうど此処にあるわ」

 

 

そう言ってグレモリー先輩が取り出したのはチェスで使われる駒の一つ、ビショップ(僧侶)を取り出した。それを取り出して何をするつもりだろう?

 

 

〔アレは別の種族を自分の眷属に加える為のアイテムだ。メリットは長寿と蘇生だ。これがあればあの小娘も生き返るだろう〕

 

「………デメリットは?」

 

〔この駒で眷属になった者は悪魔へと転生することだ。前にも話したが、悪魔は光属性や聖水、十字架と言った弱点を抱えることになる。だが、その弱点を抱えずに蘇生させる方法がある〕

 

「あるんだ。……それってどんな方法?」

 

〔それを説明したいのだが……とりあえずお前はそれを解除したらどうだ?〕

 

 

……そういえば俺はまだバルバトスの姿でいたままだっけ?バルバトスに言われなかったら気づかなかったなと思いつつ俺はバルバトスをしまうイメージをして通常の姿に戻った。

 

 

「それが貴方の本来の姿ね?かなり鍛えてあるようだけど……」

 

「あらあら、思ったより小さい方だったのですね?」

 

 

姫島先輩が言うように俺の身長は小猫より数センチ大きい位の身長なのだ。俺はあまり気にしない方なんだけど……やっぱり身長は高い方が良いのかな?そんなことを考えてる時に俺は一誠からアーシアの場所を聞いてアーシアを連れてきた後にバルバトスが蘇生方法の話の続きをした。

 

 

〔……三日月。先ほどの話の続きだが、やる前にあの小娘に上着を掛けてやれ。蘇生した時に風邪を引かれては困るだろう〕

 

「あっ……そうか。というか、そういうものか?」

 

〔……そういうものだ〕

 

 

俺はバルバトスの言葉の間が気になったが今はアーシアを蘇生させるために上着とワイシャツを脱いだ。その時に先輩たちが何か俺の背中を見て驚いていた。……そういえば俺の背中のことを話してなかったっけ?

 

 

「……!?貴方、その背中は……」

 

「これ?バルバトスと契約した時に出てきた。おかげで寝辛くなった」

 

「いやっ寝辛いってレベルじゃないぞ!?何だその背中の突起物は!?」

 

「……阿頼耶識システムって奴だけど、詳しくはバルバトスに聞いといて」

 

〔俺に投げやりか?……まぁいい、とりあえず阿頼耶識システムのことは後で話す。とりあえずだグレモリー、その駒を貸してくれ〕

 

「え、駒を……?分かったわ」

 

 

俺はグレモリー先輩から駒を受け取り、アーシアに上着とワイシャツを被せてからバルバトスから蘇生方法の説明を聞いた。

 

 

〔それで、蘇生方法なのだが……少し特殊でな?〕

 

「特殊?それってどんなの?」

 

〔あー……オブラートに包んで言うなら……〕

 

 

 

〔……接吻する事だ〕

 

 

 

「「「……え?」」」

 

 

これを聞いた先輩たちや一誠たちが唖然としていた。でも俺には関係なかった。

 

 

「……分かった」

 

 

バルバトスの言う通りにすればアーシアが生き返る。そう思い俺は仰向けになっているアーシアの身体を起こし、口と口を重ねるようにキスをした。その時、アーシアが仰向けになっている地面から魔法陣のようなものが浮き出てアーシアの背中に俺のとは違う形の突起物(外見が円形状の短いボタンのような物)が一つだけ出てきた。そして俺が持っていた駒とアーシアの神器がアーシアの身体の中に吸い込まれていった。

 

俺はアーシアの口から離れると魔法陣は役目を果たしたかのように消えた。そしてアーシアの目蓋が動きだし、ゆっくりと目を開け始めた。

 

 

「んっ……あれ?私…」

 

「…アーシア」

 

「おはよう、アーシア」

 

「…イッセーさん、三日月さん?……えっ?」

 

 

アーシアが生き返った。その時にアーシアは一誠を見た後に俺を見た瞬間顔が赤くなっていた。

 

 

「み……三日月さん!?」

 

「…?どうしたの、アーシア?」

 

 

俺は赤くなったアーシアの様子を伺ったが、何が何だか俺には判らなかった。その時にバルバトスが俺に言ってきた。

 

 

〔三日月……その体制だから小娘は恥らっているんだ。もう放してやれ〕

 

「え?………あっ」

 

 

その時に俺は気が付いた。俺がアーシアを生き返らせるために身体を起こしてそのままの体勢だった。

 

 

「…ねぇイッセー?あの三日月って普段はあのような天然なの?」

 

「正直言うと俺でも分かりません。あそこまでの天然なミカを初めて見ました…」

 

 

何か一誠たちが俺のことで話しているようだけど……今はどうでもいいか。アーシアが無事に生き返ったのだから。

 

 

「……帰ろっか、アーシア」

 

「……はい、三日月さん」

 

 

こうしてアーシアはグレモリー先輩の計らいで駒王学園の生徒として通うことになった。そしてグレモリー先輩たちからバルバトスのことや阿頼耶識システムについて色々と質問してきた。……俺、説明下手なんだけど?

 

 

____________________________________________

 

 

続く

 

 

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戦闘校舎のフェニックス
シスターと29番目


 

 

アーシアが駒王学園に通うことになってから数日の時が流れた。その頃の俺はグレモリー先輩から眷属にならないかと聞かれたがバルバトスが俺と契約済みということで悪魔に転生が出来ないと言っていた。実際に試してもらったところ駒は何も反応しなかった。じゃあアーシアの場合は何で悪魔に転生できたのかをバルバトスに聞いてみたところ、悪魔への転生の仕組みを利用して二重契約させたそうだ。つまり、今のアーシアはグレモリー先輩の眷属でバルバトスと同じガンダム・フレームと契約した者だそうだ。因みにアーシアの背中にある阿頼耶識システムは俺のとは違う形であるのはバルバトス曰く、擬似阿頼耶識システムだそうだ。

 

……それとアーシアは今日、俺の家でホームステイすることになった。何でも一誠からの要望であった。一誠曰く、一人っきりの生活じゃ寂しいと思ってのことだ。……言ってなかったと思うけど、俺は家では一人暮らしで、生まれた時から両親の顔を覚えていない。覚えていたのは孤児院で育ったのと名瀬さんとアミダさんにお世話になったってことだけ。名瀬さんとアミダさんは俺がまだ子供だった頃に拾われて孤児院で生活することになった。そして俺が中学生の歳になった俺は一人暮らしをするのであった。時たまにお土産を持って孤児院に戻ってくることもある。そんなこんなでアーシアは俺の家にホームステイすることになったのだ。アーシアは悪魔兼擬似阿頼耶識使いとなっても神へのお祈りは続けている。祈る際にほんのちょっぴりだけ頭痛はあるそうだ。

 

そして俺はグレモリー先輩からオカルト研究部に入部しないかと誘われた。正直言うと最初は興味はなかったけど、アーシアや一誠、バルバトスのこともあるから俺は入部することになった。そして今現在の俺は一誠と共に身体を鍛えていた。なぜ鍛えているかというと前の堕天使やらはぐれ悪魔に負けないように鍛えるだそうだ。俺はそれに参加して一誠と共に鍛えることにした。一誠は幼い頃から俺と鍛えていた。……といっても暇な時に筋トレをする仲な感じであるが。その一誠の身体は俺と同じ細マッチョな感じに鍛えていた。

 

 

「ほらっ頑張って!後残り20回よ!」

 

「う……うっす!」

 

 

今俺たちが行なっている筋トレは腕立て伏せなのだが、俺は重りが2キロあるリストバンドを付けて行い、一誠はグレモリー先輩が一誠の上に乗っかって先輩を重り代わりに腕立て伏せを行った。軽く筋トレが終えた後俺たちは水分補給を取っていた。

 

 

「お疲れ様。10分休憩したら次は全力ダッシュよ」

 

「…うっす!」

 

「分かった」

 

 

そうして全力ダッシュを終えて鍛え終わった後、部員が全員揃っている時にバルバトスからオカルト研究部のメンバーにあることを告げた。

 

 

〔今日は俺の仲間……もとい、ガンダム・フレームを呼び出す〕

 

「ガンダム・フレーム?それって貴方が言っていた機械人形のことかしら?」

 

「ガンダム……フレーム?それって何ですか?」

 

〔あぁ……確かこ……いやっ、アーシアはまだ教えていなかったな。ガンダム・フレームは俺の様な機械人形のことを言うんだ。そしてお前にはそのガンダム・フレームを呼び出すことが可能になっている〕

 

「…それは私の背中にある阿頼耶識?というものと関係あるのですか?」

 

〔あぁ……元々阿頼耶識システムは俺たちガンダム・フレームの性能を完全に引き出す為も作られたインターフェースシステムだ。……どういう因果か、俺たちの世界で作られたインターフェースシステムがこの世界に来た時には俺たちの契約の証という形で形成されたようだ。それと、アーシアの背中のは擬似阿頼耶識と呼ばれるものだそうだ〕

 

 

阿頼耶識ってそういう形で形成されたんだ。というかバルバトス自体擬似阿頼耶識のことを初めて知ったような感じだった。バルバトスがいうに擬似阿頼耶識使いは俺のようにバルバトスを纏うことが出来ない代わりにガンダム・フレームを実体を持たせて召喚することが出来るということらしい。その時に一誠がバルバトスに何か聞いて来た。

 

 

「……なぁ、ちょっといいか?」

 

〔ん……三日月の友人か?俺に何か用か、小僧?〕

 

「小僧って……まぁ、そういうのはいいか。ちょっと気になったことがあるんだけど。この前の堕天使の騒動の時に俺は誰かの男の声を聞いたんだ。俺に神器の覚醒方法を教えたり、去り際に俺のことを“十一番目を宿し者”って言っていたんだけど…」

 

〔……なんだと、確かか?〕

 

 

それを聞いたバルバトスは何か驚いたような感じをだして一誠に詳しく聞き出した。

 

 

〔十一番目……確かにその声の主がそう言ったのか?〕

 

「あ……あぁ、何か思い当たる節でもあるのか?」

 

〔あるにはあるが……何せ確信たる証拠が不十分だ。……一先ずこの件は保留にしよう。今はガンダム・フレームを呼び出す方法だ〕

 

 

一体バルバトスは何を知っているのかちょっと気になったけど、バルバトスはそれを保留にしてアーシアにガンダム・フレームの呼び出し方を説明した。

 

 

「名前を呼ぶ……ですか?」

 

〔あぁ……擬似とはいえ一応阿頼耶識使いになったからな。一度無心になってみろ、その時に声が聞こえるはずだ。その声を聞いた時に不思議と知っている感じがあったらその名を言うんだ。間違って違う名前を言ったとしても間違った代償として魂を抜かれるわけじゃないから安心しろ〕

 

「いやっ…今の説明で安心しろって言われても逆に怖く感じるんだが……」

 

 

一誠はバルバトスの説明に何かツッコンでいるようだけど、今の説明にボケの要素はあったっけ?そう考えていると……

 

 

「わ……分かりました。私、頑張ります!…主よ、私の声がそのガンダム・フレームへと導いてください…ピャッ!!」

 

 

何やらアーシアが張り切っていてその場でアーシアが信じる神にお祈りをすると突然アーシアが頭を抱えていた。……あっ、アーシアはまだ祈りに対する頭痛がある事を忘れてた。

 

 

「アーシア、大丈夫?まだ頭痛がする?」

 

「あうー…今一瞬ですが頭の中に何かが見えたと思ったら頭痛がします」

 

「当たり前よ、悪魔が神に祈ればダメージぐらい受けるわ。こっちまで頭が痛くなってきた……」

 

 

どうやら別の意味でグレモリー先輩も頭を抱えているようだ。……正直いうと弱点が完全に消えていないようなんだけど?

 

 

涼夜Side out

 

 

 

私こと“アーシア・アルジェント”はバルバトスさんの言われた通りに無心になって主に祈りを捧げたら頭痛がしたと同時にバルバトスさんと似たような機械人形さんの姿が見えました。その機械人形さんの姿は左右非対称的で左腕には中型の盾を持ち、右肩には大きな盾のような物を取り付けられてあり、背中には巨大な大剣を背負っていました。兜のところは瞳の色は違いますがバルバトスさんと似た顔立ちでした。そして角が左右非対称で右の角は短く、左の角は長かったです。その姿を一種だけ見られましたが、その時に頭痛がやってきました。…痛いです。

 

 

 

……呼べ、俺の名を……

 

 

 

「えっ?今、声が……?」

 

 

その時に私の頭の中で誰かの声が聞こえました。その声を聞いた時にバルバトスさんが言ってた通り不思議と知っているような感じがしました。少しですが、私が呼ぶべき名前が分かってきました。その時にイッセーさんが私のことを心配してくれました。

 

 

「アーシア、大丈夫か?まだ頭痛とかするか?」

 

「イッセーさん…私は大丈夫です。それとバルバトスさん。主が私を導いてくれて、私が呼ぶべき名前が分かりました」

 

〔そうか……なら後は名前を呼ぶだけだ〕

 

 

バルバトスさんにそう言われて私は再び無心になって祈りを捧げました。やっぱり頭痛はしましたが、私の頭の中に再び声が聞こえました。

 

 

 

呼べ、俺の名を……お前なら、俺を知っているのか筈だ

 

 

「はい…!……来てください……」

 

 

 

アスタロト!

 

 

 

すると私の目の前に魔法陣が形成され、その魔法陣からバルバトスさんと同じ機械人形さんが出てきました。そして私はその機械人形さんの名前を言いました。

 

 

「貴方が……アスタロト…さん?」

 

〔あぁ……ガンダム・フレーム29番、“ガンダム・アスタロトリナシメント”だ。擬似阿頼耶識の契約の下、召喚に応じて参上した。……聞くが、お前が俺の契約者か?〕

 

「は……はいっ!アーシア・アルジェントです!よ……よろしくお願いします!」

 

〔お……おう、よろしく頼む。……しかし、なんだ。まさかシスターが擬似阿頼耶識使いだったとはな……〕

 

〔よう…アスタロト〕

 

 

その時にバルバトスさんがアスタロトさんに声をかけてアスタロトさんがバルバトスさんの方に向けると驚いたような態度をしていました。

 

 

〔げ…!?バ……バルバトスか?〕

 

〔厄祭戦以来だな、アスタロト。それはそうと何だそのアンバランスな姿は?前の真っ赤な装甲はどうしたんだ?〕

 

〔ちょ……ちょっとしたトラブルで無くしただけだ!多分……〕

 

〔ちょっとした以前に多分って……お前正直運がなさすぎだろ?〕

 

〔しょ……しょうがねえだろ!?こっちはこっちで色々と苦労したんだからよ……〕

 

 

バルバトスさんがいうアスタロトさんの前の姿のことが気になりました。アスタロトさんの前の姿は一体どんな姿なんでしょう?

 

 

アーシアSide out

 

 

 

とりあえずアーシアがガンダム・フレームの一機である29番目のガンダム・アスタロトリナシメントを召喚したり、バルバトスとアスタロトが厄祭戦の話をしたりと色々なことがあった。……主にアスタロトの本来の装甲やら何やらバルバトスが言っていたけど、まぁ…後で聞いてみるか。そんなこんなで無事に部活動を終えてアーシアと共に俺の家に帰った。そしてアーシアと部屋割りをした後に俺は食事をとってすぐに寝た。

 

 

 

………俺は不思議な夢を見ていた。それはとある民家で洗濯物を干す髪がアイボリー色の女性と洗濯物で遊ぶフレンチベージュの子供の親子が俺の前に映し出されていた。不思議そうに思っていると今度は金髪の女性がやって来た。そして洗濯物で遊んでた子供がその金髪の女性に抱きつき、金髪の女性はその子供を抱き上げた。しかし、俺が気になったのはそこではなくその子供の顔であった。その顔をよく見てみたら……

 

 

 

あの子供の顔が………俺?

 

 

 

そう考えているうちに金髪の女性とアイボリー髪の女性が話し合っていた。

 

 

「……■■■■の手、随分大きくなりましたね」

 

「うん、■■■■譲りだもんね」

 

「…未来を掴む手です」

 

「…?」

 

 

不思議と俺はその二人の女性を知っているような気がした。そして、不思議と何故かその女性に会えないと思っていたら寂しいと思った。俺はこれも夢の一つと思い再び目を閉じた。

 

……そして俺は再び目を開くと今度は別の場所にいた。周りを見てみると前にアーシアを助けに行った教会と似ていた。けど、少し違いを入れるとしたらその教会は人の手により修復され、より綺麗な教会になっていた。手入れをされてより綺麗になったなと思っている時に一誠がやってきた。

 

 

「イッセー…?」

 

「…大丈夫か、ミカ?今日はお前にとって大事な日なんだからしっかりしろよ?」

 

「俺の……大事な日?」

 

 

俺の大事な日?……一体何だろう、その大事な日って?

 

 

「おうっ、人生最大の見せ場で寝こけるのは流石にカッコがつかないだろ?ん?……どうやら、花嫁の支度は終わったみたいだな」

 

「花……嫁?」

 

「あぁ。行って来い、お前は未来をちゃんと掴んだんだ。だから、決して手放すなよ?」

 

 

そう言って一誠はここから離れる。花嫁って誰だろう?そう考えながらも一誠が言っていた花嫁がいる所へ向かい、花嫁がいる部屋に入ると白いドレスを纏うアーシアの姿があった。

 

 

「アー…シア?」

 

「三日月さん……」

 

 

白いドレスを纏うアーシアの姿は、俺が知っていたどんな姿とも違って見えて一瞬で、目を奪われてしまう。

 

 

「……どうしたんですか三日月さん?」

 

「……何でもない。行こうか、アーシア」

 

「はい……行きましょう」

 

 

アーシアと共に教会から外へ出ると一誠やグレモリー先輩、名瀬さんやアミダさんが俺やアーシアを祝福してくれた。この時俺は思った。こういう幸せな夢も良いなと。

 

そしてその幸せの夢は目覚し時計の音で終わりを告げ、俺は夢から覚めた。

 

 

「……夢オチ?」

 

 

そう呟いた俺はアーシアの分も含めて朝食を作利終えた時にアーシアが顔を真っ赤にしてやってきた。

 

 

「アーシア?大丈夫?」

 

「ヒャイッ!?だ……大丈夫です?」

 

「…?」

 

 

そんな感じでアーシアと共に朝食を取った後に学校に登校し、いつも通りの生活を送っていた。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

俺ことガンダム・アスタロトはバルバトスと厄祭戦後の話をしていた。バルバトスから聞いた話じゃあバルバトスは三百の年月で腐敗したギャラルホルン相手にやられたそうだ。俺の場合は記録が曖昧で俺は最後にどうなったのかあまり覚えていない。

 

 

〔……しかし、まさか三日月が見ていた夢を見れてしまうとはな〕

 

〔俺もだ。アーシアが何故教会から追放されたのか夢で分かった〕

 

〔そうか。……だが、それよりもだ〕

 

〔あぁ、そうだったな〕

 

〔〔二人が結ばれて結婚する夢をみるとは思って見なかったぞ(な)〕〕

 

 

一応バルバトスから厄祭戦後にガンダム・フレームは何機残ったのか聞いて見たが、バルバトスが見た記録の限りじゃあ確認できたのはバルバトスを含む5機だけだった。グシオン、フラウロス、キマリス、そしてバエル。グシオンとフラウロスはバルバトスと同じ鉄華団という組織にいた。キマリスはギャラルホルンでバエルはギャラルホルン革命軍に奪われてギャラルホルン同士の潰しあいに使われたそうだ。

 

それと俺の方も確認できたガンダム・フレームは俺を含めて4機。ウヴァルにダンタリオン、グレモリーだ。ウヴァルはどっかのヤクザの男に回収された。ダンタリオンとグレモリー何だがそこからの記憶が曖昧で思い出せない。ただ断片的に覚えているとしたらダンタリオンは一度殺り合ったが、訳ありの事情で協力することなった。そしてグレモリーはどういう理由でだが思い出せないが本気で殺り合ったのは確かだ。

 

 

〔…話が変わるが三日月の友人である兵藤という小僧の持つ神滅具何だが、アスタロト。お前も気づいているんだろう?〕

 

〔あぁ、あの神滅具に僅かだがドラゴンのような気配を感知した。…色んな意味で荒れそうだな〕

 

〔まったくだ。色んな意味で荒れそうだ〕

 

 

その予感が旧校舎で起きることを俺やバルバトスは知る由もなかった。

 

 

アスタロトSide out

 

 

 

学校へと通学中に俺は昨日の夢と出来事を思い返していた。夢の中では俺と部長が結ばれて結構式を挙げていた。その夢の中で急にドラゴンのような奴が出てきてあーだこーだと何か大切なことを言っていたような気がするが、それはただの夢であると解釈していた為にあまり覚えていない。そして真夜中に夢が覚めて顔でも洗って再び寝ようと思ったら魔法陣から部長がやって来ていきなり“私を抱いて”と言って来たのだ。この時に俺は内心焦ったが、取り敢えず俺の心を落ち着かせて部長の焦りを落ち着かせて説得した。それ以前に貞操なんてそう簡単に散らしていいものじゃない。本当に好きな相手と互いに愛し合ってこそのものだと俺は思う。俺の説得で何とか部長は納得して落ち着いてくれた。その時にまた別の魔法陣からメイドこと“グレイフィア”さんがやって来て部長を連れ戻しに来たようだ。そして部長は別れ際に俺の頰にキスした後に魔法陣を経由して帰っていった。……正直恥ずい気持ちになった。

 

次の日になった俺はいつも通りに学校に通学し、全ての授業を終えた後にミカが用事を済ませてから向かうと言って別行動を取った。その後に木場とアーシアと合流して旧校舎に向かったのは良いのだが、部長は何故俺に抱いてと言って来たのか分からなかった。木場に一応相談してみたが木場曰く、グレモリー家に関わることじゃないかといった。本当なら詮索するだけ野暮かもしれないけど、何か部長のことをほっとくことが出来なかった。そして旧校舎の部室に入る前に木場が何か強力な力を感じたようだ。

 

 

「木場……どうしたんだ?」

 

「…迂闊だったよ、此処に来るまで気付かなかったなんて」

 

 

木場の言葉に俺は警戒をしながら扉を開けるとそこには部長たちと昨日会ったメイドのグレイフィアさんがいた。アーシアがそのグレイフィアさんと目が合った瞬間俺の後ろに隠れた。俺はアーシアに大丈夫であることを伝えて安心させる。

 

 

「三日月以外全員揃ったわね?部活の前に少し話があるの」

 

 

部長は何やら大事な話があるようだが、何でミカだけ駄目なんだ?

 

 

「ミカ以外…?部長、何でミカだけは駄目なんですか?」

 

「彼は同じ部活の部員でも悪魔ではないわ。あまり巻き込ませる訳にはいかないわ」

 

 

部長はどうやら自身の問題をミカまで巻き込ませないように配慮したようだ。その時にグレイフィアさんが部長に代わりに話すことを聞いて来た。

 

 

「お嬢様、ここは私が説明しましょうか?」

 

「いえ、自分でするわ……実はね、私は…!?」

 

 

グレイフィアさんの提案を断って部長が話そうとした時に部室内でまた別の魔法陣が炎を捲き上げながら出現した。この時に俺とアーシア以外、あの魔法陣の紋様が何なのか分かっていた。

 

 

「この紋様は……フェニックス」

 

 

そして炎を撒き上げていた魔法陣の中から人の形をした何かが出てきた。そして撒き上がっている炎を払い、その姿を現わす。

 

 

「ふぅ……人間界は久しぶりだ」

 

 

現れたのはネクタイを着けずに着崩したスーツで身を包むホスト風の青年だった。紅蓮の炎をものともせず寧ろ涼しげな表情で部長に目を向ける彼こそが、フェニックスの名を冠する悪魔だ。

 

 

「会いに来たぜ?愛しのリアス」

 

「ライザー……」

 

 

吐き捨てるように部長がその青年の名を口にした。この時に俺は昨日の部長が何故俺に抱いてと言ってきたのか少し理解した。こういうキザな男はダメなパターンだということを。一応俺は部長からそのライザーという青年が何者なのか聞いた。

 

 

「部長…誰ですか彼は?」

 

「ん?何だリアス?明らかにこいつ俺のことを知らないようだが、下僕に話したのか?俺のことを」

 

「話す必要がないから話していないだけよ」

 

「あらら…相変わらず手厳しいことだな?」

 

「私が説明いたします。この方は“ライザー・フェニックス”様。純血の上級悪魔であり古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます。そして……グレモリー家次期当主の婚約者でもあらせられます」

 

 

このことを聞かされた俺は内心驚いていた。家の事情があるとはいえ部長がこういうキザな男と結婚することになると思ってもみなかった。部長はライザーとの結婚に不満を覚えていた。これは一波乱が起こりそうだ。そして俺は思った。この場にミカがいなくてよかったと。

 

 

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続く

 

 

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不死鳥と狩人

 

 

一誠に用事を済ませてから旧校舎に向かうと言ってから俺はその用事を済ませていた。その用事とは園芸部の作る野菜の観察である。観察しているとそこに一人の男子生徒がやって来た。

 

 

「よっ!ミカ。相変わらず園芸部の方を見ていたのか?」

 

「アンタは生徒会の会長の隣の人……」

 

「“匙 元士郎”だ。俺のことをちゃんと覚えてくれ」

 

「……“スプーンの人”?」

 

「いやいやいやっ俺スプーンじゃねえよ?!つーかお前ワザとか!?」

 

 

俺に話しかけて来たのは駒王学園の生徒会書記“匙 元士郎”というと男。最初に会った時はアーシアがこの学校に通う前の二週間前、英語の授業を終えて昼休み時に園芸部に来た時にであった。最初は注意されたのだけど、当時の俺は誰だったのか分からなかった。

 

今名乗ってくれた時に二週間前の英語の授業を思い出した。匙の英語名はスプーンであることを。その結果、生徒会の書記の人をスプーンの人と認識した。

 

 

「…つーか、お前確かオカルト研究部の方があるんだろ?行かなくていいのか?」

 

「あっ……忘れていた。ありがとう、スプーンの人」

 

「だから俺は……だぁもう、一々ツッコンでじゃキリがねえ」

 

 

そんな形で俺はスプーンの人に言われて旧校舎に向かった。そして旧校舎についた俺は扉を開けようとしたが扉にガタが来ているのか中々開けられなかった。その時にバルバトスがこの扉の異常が分かったようだ。

 

 

〔三日月、この扉は何かしらの術式でロックがかけられている〕

 

「ロック?開けられないの?」

 

〔問題ない、俺がこの扉に掛かっている術式を壊す。そうすれば普通に開く〕

 

「そっか。じゃあお願い」

 

〔あぁ任せろ。(…にしては妙だな、まるで誰かに入られたくないように念入りに術式が施されているな。どういうことだ?)〕

 

 

バルバトスが何か考えていたようだが、俺は気にせず普通に扉を手にすると何かのガラスが割れたような音が聞こえた。どうやらバルバトスが言う術式が壊れたかもしれない。そう思い俺は扉を開けるとそこで目にしたのは……

 

 

 

一誠が誰かしらぬ男の前で倒れている光景だった

 

 

 

涼夜Side out

 

 

 

三日月が旧校舎に来る十分前…

 

 

 

驚愕の事実発覚から少し経ち、ライザーは現在ソファーに我が物顔で座りながら姫島先輩が淹れた紅茶を飲んでいた。

 

 

「ふぅ、リアスの女王(クイーン)が淹れた紅茶は美味いなぁ」

 

「恐れ入りますわ」

 

 

姫島先輩はライザーの問いに返したのはいいものの、その姫島先輩の笑顔が笑っているようで目が笑っていなかった。アーシアはただこの重い空気にそわそわと落ち着きが無いくらいに俺の背後に隠れていた。その時に部長に動きがあった。

 

 

「いい加減にしてちょうだい!ライザー、以前にも言ったはずよ!あなたと結婚しないわ!」

 

「おいおい…君の御家事情は意外と切羽詰まっていると思うんだが?」

 

「余計なお世話だわ!私が次期当主である以上相手は私が決める!」

 

 

そこから色々と家の事情や何らと言い争っていた。その時に二人の口論に聞いたことのある言葉が出て来た。

 

 

()()()()

 

 

その言葉は前にミカに宿る神器?(バルバトスは正式名がガンダム・フレームと言っていた)のバルバトスが言っていたガンダム・フレームの名前の由来はソロモン七十二柱の悪魔たちから取ったものと言っていたっけ?一応木場からその七十二柱について聞いてみた。

 

 

「なぁ木場、七十二柱ってバルバトスが言っていたやつか?」

 

「うん。そういえばイッセー君はまだこっちの悪魔世界のことを説明していなかったね?大昔に力を誇った爵位持ちの一族が七十二あったけど、戦争でほとんどが消滅したんだ。グレモリー家、フェニックス家は共に戦争を生き延びた数少ない七十二柱の名家なんだ」

 

「なるほど……道理で悪魔事情も結構複雑なんだな。(となると部長はグレモリー家の悪魔としてだからか?いやっどっちかっていうと……)」

 

 

俺がそう考えているうちに部長側では口論がエスカレートしていた。

 

 

「私は家を潰さないわ。婿養子だって迎え入れるつもりよ」

 

「……しかしリアス、君は何がどうあれ俺と結婚するつもりはないのだろう?」

 

「そうよ、私は私がよいと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔にだってそれぐらいの権利はあるわ」

 

「なるほどな。……しかしなぁリアス、俺とてフェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ。純潔の貴族たるフェニックス家の看板に泥を塗るなんて真似、されるわけにはいかないんだ。キミがどう言おうが俺は必ずキミを冥界に連れ帰るぞ、キミの下僕を燃やし尽くしてでも」

 

 

これ以上部長が我が侭を言うのであれば即座に実行すると、暗にそう言っていた。怒気を孕んだ瞳を彼女に向けるライザーの周囲には熱を持った魔力が収束し、今にも炎となってこの場の全てを燃やし尽くそうとしているのが良い証拠だろう。一触即発な状態の中で声を出すものがいた。

 

 

〔……それは聞き捨てならないな?〕

 

 

その時にアーシアの前に魔法陣が形成された、その時にライザーやグレイフィアさんがこの魔法陣の紋様を初めて見て内心少し驚いていた。そしてその魔法陣から昨日アーシアが召喚したガンダム・フレームであるアスタロトが俺たちの前に現れたのだ。

 

 

〔お前たちの御家事情が何であれ、俺の契約者に手を出すというのなら…殺すぞ?〕

 

 

そう言ってアスタロトが背中に背負っていた大剣を左腕に持つ中型の盾に搭載しているもう一つの手で掴み、それをライザーに向けた。その大剣は剣というより折りたたみ式のナイフのような形をしていた。

 

 

「貴様……何者だ?たかが機械でできた人形風情が俺を殺すと?少し無礼がすぎるんじゃないか?」

 

〔お前が俺の契約者に手を出すというのならば無礼も何もないだろ?焼き鳥風情が…〕

 

「ほう……言うじゃないか、機械人形風情が……燃やし尽くしてくれようか?」

 

 

売り言葉に買い言葉。挑発を挑発で返し合い、別の意味で一触即発な状態になった。その時にグレイフィアさんが仲裁して来た。

 

 

「両者そこまでにしてください。これ以上やるのでした私も黙って見ているわけにもいかなくなります……」

 

 

 

「私はサーゼクス様の名誉のためにも遠慮しないつもりです」

 

 

 

グレイフィアさんからミカほどでもない殺気が出ていた。ある意味で強く、そして恐ろしいと思った。

 

 

「……最強の“女王(クイーン)”と称されるそう言われたなら仕方ない。バケモノ揃いと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対に相対したくないからな」

 

〔……だから何だ?たかがそんな殺気だけで俺を丸く収められると思っていたのか?大きく出たな、メイドよ……〕

 

 

それに怖気ついたライザーはここは一旦引くことを選択した。しかし、アスタロトは違った。グレイフィアさんの殺気を何とも思わず、邪魔するならばお前も殺すような目をしていた。その時に俺の後ろに隠れていたアーシアが勇気を振り絞って前に出てアスタロトを落ち着かせようとした。

 

 

「ま……待ってください、アスタロトさん!どうか落ち着いてください!」

 

〔アーシアか………本来ならそれはできないと言いたいところだが、興醒めだ〕

 

 

アーシアの説得でアスタロトは大剣を下ろして構えを解いた。

 

 

「何…?聞き間違いではなければ、今そこの娘が機械人形のことを()()()()()と言っていたが?」

 

〔俺をお前たちの世界の悪魔と一緒にするな。俺はお前たちとは違う世界の存在だ。俺はガンダム・フレームの29番目、ガンダム・アスタロトリナシメントだ〕

 

 

アスタロトが大剣をしまい、己の正体を明かしたがライザーにとって聞きなれない言葉であった。

 

 

「ガンダム……フレーム?聞かない名だな?」

 

「…お嬢様、以前報告にあったガンダム・フレームというもの。……彼がそうなのですか?」

 

「えぇ…その認識であっているわグレイフィア。本当ならもう一人いるのだけど席を外しているわ」

 

「それがバルバトスと?」

 

「えぇ、彼を私自身の問題に巻き込むわけにはいかないわ」

 

 

色々と話が脱線したがグレイフィアさんがこのことを予想していたのか部長に“レーティングゲーム”を推奨して来た。本来なら成人した悪魔だけしか出来ない公式のゲーム。しかし非公式であれば未成熟の部長でも参加可能である。つまりライザーが勝てば部長と結婚。部長が勝てばライザーとの結婚を取り消してくれるそうだ。その結果、部長とライザーはグレイフィアさんの案を了認した。

 

 

「……ところでリアス。まさか、この面子がキミの下僕全員なのか?」

 

「だとしたらどうなの?」

 

「いや何っ…本当にそれだけなら話にならないなと思ってな。俺の可愛い下僕たちに敵いそうなのは、精々リアスの女王(クイーン)くらいじゃねぇか、こりゃやる前から勝ちは決まったようなものだな?」

 

 

そう言ってライザーは指を鳴らすと彼の周囲にいくつものフェニックス家の紋章陣が展開され、合計15名の女性が現れた。

 

 

〔そいつらがお前の下僕たちか?悪趣味な……〕

 

「あぁ…ここにミカがいなくて正解だったよ」

 

「フッ……人間でいう“英雄色を好む”って言葉があるだろう?こいつらは俺の下僕……つまりは俺の所有物だぜ? 俺が俺の所有物に何をしようが勝手だ。まあ、どちらにしてもだ。お前らじゃこんな事は一生出来まい、下級悪魔くんに機械人形よ」

 

そう言うと、ライザーは女の子の一人と濃厚なディープキスをし始めた。

 

こいつ何処まで節操なしなんだ。場所を弁えろよ常識的に考えて!そう思いながらアーシアの目を俺の手で隠した。つーか、アーシアの教育に悪いから変なもの見せんじゃねえよ!

 

 

「……とりあえず部長が何で彼奴と結婚が嫌なのか分かった。こういう奴は余計にたちが悪い」

 

〔あぁ……お前のいう通りだな。英雄色を好むとは違って節操なしの種まき鳥野郎と言った方が正しいな〕

 

「貴様ら……言わせておけば。ミラ、軽く遊んでやれ」

 

「はい、ライザーさま」

 

「……っ!来るか!」

 

 

《BOOST!》

 

 

ライザーが下僕の女の子に命令を下す。相手は小猫ちゃんと同じくらい小柄で童顔な女の子。俺は神滅具である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を展開して身体の強度を倍加させる。武闘家が使いそうな長い棍棒を取り出し、くるくると器用に回した後、俺へ構えた。そしてその女の子が一瞬で間合いを詰めて長い棍棒を俺の腹部に叩きつける。

 

 

「ぐっ…!」

 

「ライザー様より弱いわね、あなた「うぉぉおおらああああっ!!」……えっ!?ガッハ!?」

 

 

攻撃した隙を見せた女の子の腹部を掴んでそのまま地面に叩きつける。予想外の反撃にその女の子は気を失うことはなかったがダメージを与えることができた。

 

 

「最後まで油断はするなって奴だ。……ぅぐっ!」

 

「イッセーさん!」

 

〔全く無茶をするな、お前は……〕

 

 

俺は捨て身のカウンターをやったおかげで先ほど女の子から受けた腹部の痛みを味わっていた。アーシアが聖母の微笑で俺を治療していた。

 

 

「ほう……俺の下僕の中では一番弱いとはいえ、少なくとも実戦経験は豊富なミラを捨て身の方法で倒すとは………だが、所詮はそんなものだ。いくら神滅具である赤龍帝の籠手を持っていたとしても使いこなせなかったら意味がない」

 

「……くっ、畜生が!」

 

「…まぁ、根性はあるな。少しでも使いこなせるようになれば面白い戦いができそうだな」

 

 

そうライザーが俺のこと見下していると、部室の扉が開く。その扉を開いたのはミカであった。

 

 

「ミ……ミカ?……まさか!」

 

「ん?何だ貴様は?何故人間がここに入って………がっ!?」

 

 

その瞬間、ミカが一瞬でライザーと距離を詰めて片手でネック・ハンギング・ツリーをかましていた。レイナーレの時と同じ殺気をライザーに向けて放っていた。

 

 

 

「お前……何やっている?」

 

 

 

「ぐっ!?貴……様………!?」

 

「ライザー様!?くっ、貴様!ライザー様から離れ「……邪魔」………ひっ!!?」

 

 

その時に先ほど俺と相手をした女の子がライザーを助け出そうとするがミカに睨みつけられ尋常じゃない殺気が女の子に向けられたためその女の子は腰を抜かしてしまう。そしてミカが掴んでいる指の握力でライザーの首を潰そうとしている。それを止めるべく俺とバルバトスがミカの仲裁する。

 

 

〔よさないか三日月、目の前の現実だけで判断するな。別にその男が一誠をやったわけではない〕

 

「ミカ、よせ!それ以上はいけない!それ以前に俺は大丈夫だ!」

 

「…イッセー?」

 

 

ミカを説得して何とかライザーをミカのネック・ハンギング・ツリーから解放させた。…でもこれでさらに厄介なことなったのは確かだ。

 

 

一誠Side out

 

 

 

そして今現在……

 

 

 

俺は一誠が倒れているのを見てその近くにいた見覚えのない男がやったと思い俺はその男に一瞬に近づきその男の首を掴み、そのままその男の首を締めた。その時にその男を助けようとした奴がいた。その時に俺は助けようとした奴を睨み付け、邪魔と言って黙らせた。その時にバルバトスと一誠の仲裁を聞いて俺が勘違いしていることに気づいた。そして俺はその男の首を離した。

 

 

〔三日月、カッとなって周りが見えなくなるのはお前の悪い癖だぞ〕

 

「ごめん、バルバトス」

 

〔三日月、謝る相手が違うだろ〕

 

「バルバトス……?では、あの子がお嬢様が言っていた……」

 

「えぇ…ガンダム・フレームの八番目、バルバトスを宿す“三日月 涼夜”よ」

 

 

バルバトスに注意された俺はその男の前に行き、少し頭を下げてこう言う。

 

 

「あの…すいませんでした」

 

「何が“すいません”だ、このガキが!!」

 

「ライザー様!」

 

 

メイドさんの制止を聞かず、その男は拳を俺に突き出す。それを俺はヒョイ、と容易くよける。正直いうと遅すぎるんだよな、今のは。

 

 

「このガキ……?おいっ貴様、その背中の突起物は何だ?」

 

「これ?見えているのアンタ?」

 

〔普通の人間なら見えないだけだが、悪魔といった人外たちにはモロバレだ〕

 

 

俺はそっかといって上着とワイシャツを脱いで背中の阿頼耶識を見せた。その時にアーシアが恥ずかしがってたけど何でだろ?そしてその男とその仲間たち?がその阿頼耶識を見て気持ち悪くなっていた。

 

 

「何だと……人間が身体に異物を埋め込むとは…ウグゥッ!」

 

 

その男は阿頼耶識を見たためか嘔吐が走りその仲間から紙袋をもらって吐いていた。

 

 

〔おいおい、種まき鳥野郎さんよ。阿頼耶識を見ただけで吐くんじゃねえよ。こんなんじゃフェニックス家の名折れだな?〕

 

〔アスタロト、それ以上煽るな。それでもやるんなら……ぶちのめすぞ〕

 

〔う……わ、わかったからそのメイスをしまえって!〕

 

「貴様……言わせておけば!」

 

 

種まき?あの男は畑でもやってるのかな?この時に俺は思ったことを口にしていた。

 

 

「種まき…?アンタは畑をやっている人?」

 

「誰が畑をやるか!!俺は名家のフェニックスの純潔の上級悪魔“ライザー・フェニックス”だ!」

 

「フェニックス……?畑をする火の鳥の人?」

 

「誰が直訳しろといった!それ以前に貴様、まだ畑から離れんのか!?ワザとか!?」

 

 

なんかライザーとかいう男は一々うるさい人だと思った。その時にグレモリー先輩たちは呆れていた。

 

 

「はぁ……まさかここまで三日月の天然が働くなんて……」

 

「あらあら…」

 

「あはは……」

 

「三日月先輩……天然すぎです」

 

「案の定こうなったか……ミカの天然性は」

 

 

何かみんな俺の事を天然だとか言っているけど、俺ってそんなに天然だっけ?一応状況を把握するためにメイドさん(その時にグレイフィアと名乗った)に聞いた。何でも部長の御家事情の問題で中々決まらず、そこでレーティングゲームで勝負することになったそうだ。その時に俺はそのレーティングゲームに参加するべきだと思った。

 

 

「ねぇ……俺もそのレーティングゲームって奴に参加しても大丈夫?」

 

「なっ!?三日月!」

 

 

するとライザーとかいう奴がうっすらと笑った。なんか見てるだけで気持ち悪かった。

 

 

「ほぉ…?お前はこのレーティングゲームに参加したいというのだな?」

 

「そう言っているけど……駄目なの?」

 

「いやっ、むしろ好都合だ。本来の公式なら駄目だが、俺たちが行うのは非公式のゲームだ。参加しても問題はない。その代わりお前はリアス側についた方がいいだろう」

 

「ちょっとライザー!話を勝手に進めないで!三日月の参加は認められないわよ!」

 

「何を言っているんだ、キミの所に新たな戦力が加わる事を許可したんだ。キミが認めなくてどうする?」

 

「彼は人間よ!私達悪魔の揉め事に巻き込むわけにはいかないわ!」

 

「それこそ、彼自身が望んだじゃないか。それにな、リアス。ただでさえ、キミの眷属と俺の眷属には大きな実力差がある。其処に即戦力クラスかどうかは知らないが、彼が入る事に何の躊躇いがある?キミも、俺との婚約を破棄したいのなら手段を選ばず、使えるものは使うべきだ。それが悪魔というものだ」

 

 

何か向こうは向こうで話が進んでいるようだけど、俺には興味がないようなものばっかりであった。そしてグレモリー先輩はそのライザーとかいう奴と話し合ってゲームは十日後とか決めていた。

 

 

「十日後………私にハンデをくれるというの?」

 

「屈辱か?今始めても結果は見えている。それでは面白くない。感情だけで勝てるほど“レーティングゲーム』は甘くない。下僕の力を最大限引き出してやらなければ王の資質を問われる。いくら才能があろうと活かせず敗北する者を俺は何度も見てきた。初めてゲームに臨むキミが下僕達との修行を行って、俺に勝ったとすれば文句を言うものは誰一人いない。ユーベルーナ、引き上げるぞ。準備しろ」

 

「はい、ライザー様」

 

 

そう言うとユーベルーナという女性が手のひらを下に向けて魔法陣が光を放つ。

 

 

「十日。それだけあればキミなら下僕を何とか出来るだろう。…………それと機械人形とリアスの下僕くん。俺の事が気に入らないなら、ゲームでお前らの力を見せてみろ。その時は俺が相手になってやる」

 

 

そう言い残し、ライザーとその仲間こと女性達とともに魔法陣の中へと消えていった。その後にグレモリー先輩が俺を巻き込んでしまったことを誤っていたが俺は気にしなかった。そして俺はグレモリー先輩たちと共にレーティングゲームに向けて十日間の強化合宿を実施するのであった。

 

 

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続く

 

 

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強化合宿

 

 

畑の火の鳥の人……長くて面倒だから畑の人でいいか。その畑の人とのレーティングゲームに向けて俺たちは荷物を持って部長の別荘地へ向かっていた。その荷物は木場や小猫、一誠と俺はより大容量のバックを持って山を登っていたから結構キツイな。

 

 

「ハァ……ハァ……結構…長いな。ミカ、そっちはどうだ?」

 

「キツイ……けど、何とか……平気……」

 

「もう少しで目的地よ。頑張って」

 

「……あの、私も手伝いますから。私たちの荷物もイッセーさんや三日月さんが……」

 

〔心配するなアーシア、あの三日月って奴は好きで持っているんだ。それにこの山登りも丁度いい修行になるだろうよ〕

 

 

アーシアが心配しているようだ。確か名瀬さんがこう言っていたっけ?女にあまり心配させてはいけないって。

 

 

「山菜が沢山採れたね。夕食のおかずにしよう」

 

「……天ぷら、おひたし、山菜おこわ」

 

 

……そう考えていると木場たちが登っている最中に山の山菜を手にしていた。

 

 

「木場?いつの間に山菜を採ったんだ?」

 

「登っている時に見つけたんだ。それともう少しで着くから頑張ろう」

 

「…そうだった。ミカ、俺たちも気合い入れ直して登ろう」

 

「あぁ、分かってる」

 

 

俺たちは気合いを入れ直して目的地である別荘地に歩みを再開した。

 

別荘地に向かって登り始めて三十分。ようやく別荘地と思われる屋敷に到着した。……それにしても屋敷が豪華だな。それぞれ荷物を降ろして荷物を仕分けた。

 

 

「さて……今日からここで十日間の強化合宿よ。私たちは着替えに行くわ。イッセーたちは向こうで着替えてね」

 

「うっす。……さてミカ、ジャージに着替えるか」

 

「そうだな…動きやすいほうがやりやすいからな」

 

「それじゃあ僕も着替えるけど……覗かないでね?」

 

「いやっ待て木場、その腐女子が反応するような誤解を生み出すな。いやマジで……」

 

 

木場の言葉に一誠が何か言っているようだけど気にすることでもないか。そんなこんなで俺たちはジャージに着替えた後に修行を行った。

 

強化合宿、一日目の最初の修行は木場との剣術修行である。互いに木刀を持ち、剣術や反射神経を鍛える。木場の剣術は凄いと思うけど何か俺には合わないと思った。最初は一誠が木場の相手をしていたのだが、何かと危なしかった。

 

 

「くそっ……早ぇ!」

 

「イッセーくん、そうじゃないよ。剣の動きを見るだけじゃなく視野を広げて相手と周囲も見るんだ」

 

「そう言ってもよ……俺はどっちかっていうと剣じゃなく拳の方が性に合うんだが……」

 

 

結構苦戦していた。その時にバルバトスが一誠にアドバイスを伝えた。

 

 

〔だったら、三日月と同じように感に合わせてみてはどうだ?〕

 

「感に合わせる?……そうか!」

 

 

そして一誠は木場に向けて木刀を振るう。案の定木場は軽々と避けて一誠の背後を取って木刀を突こうとした時に一誠は予想外の行動をとる。

 

 

「…そこか!」

 

「なっ!?」

 

 

それは木場の木刀を掴み、木場の前に一誠が持つ木刀を木場の前に突き立てる。

 

 

「無茶をするね、イッセーくん」

 

「悪りぃ。感に合わせるにはこれしかなかったからな」

 

「あはは……じゃあ次は三日月くん。僕とやってみようか?」

 

「分かった」

 

 

そう言って俺は木刀を持つと何か違和感を感じた。それは重さが足りない感じであった。

 

 

「軽いな……何か使いにくい」

 

「まぁ…やっておいて損はないよ。それじゃあ始めようか」

 

 

そして俺は木場と剣術の修行を行ったのは良いのだけど、殆どがメイスで戦うことがあったため木刀をメイス感覚で振るっても手応えがあまり感じなかった。一応バルバトスに聞いたんだけど、バルバトスの武装には太刀が備わっているそうだが使う場面が無いような気がすると思ったら。木場と剣術の修行をしていた結果、俺が持つ木刀がメイス感覚で振るう俺の扱いに耐えきれず折れた。その結果剣術の修行は俺だけ駄目だった。

 

次の修行は姫島先輩との魔力修行なのだが、俺自身に魔力があるのか少し疑問に思った。その時にバルバトスが言った。

 

 

〔心配するな、お前の中の魔力は精々バレーボールくらいの大きさだ〕

 

「そんなに大きいの?俺の魔力って……」

 

「大きい方じゃねえのか?俺に至ってはこんだけちっちゃいんだぜ?」

 

 

一誠が手元に集中して集めたと思われる魔力の塊が米粒のように小さかった。魔力に関しては人それぞれなのかな?

 

 

「できました!三日月さん、イッセーさん!できましたよ!」

 

「おぉ…上手くできたなアーシア」

 

「おめでとう、アーシア」

 

「あらあら、アーシアちゃんは魔力の才能があるのかもしれませんわね」

 

〔確かにな、後はその魔力をアーシアの神器と組み合わせれば新たな回復手段が増えるな〕

 

 

その時に一誠はアスタロトの言葉に何かピンと来たようだ。それを姫島先輩に相談したところ夕食用の野菜を取り出して一誠に渡した。一体何をするんだろう?それと俺も魔力を手元に集めてみると、バルバトスが言っていた通りバレーボールサイズの魔力の塊が俺の手元で出来ていた。次の修行に移る時に一誠はここに残って修行を続けると言ったため俺は一人次の修行に移った。

 

続いての修行は小猫との組み手だが、ここで問題が起こった。俺は小猫と組み手を行なっていたのはいいけど、小猫との身長差がちょこっとあるとはいえやりずらかった。

 

 

「やっぱり小猫の一撃……重いな」

 

「……打撃は体の中心線に狙って的確かつ抉り込むように打つんです。三日月先輩ならいけると思います」

 

「いけるかは分からないけど、やってみるよ。

 

 

小猫が言うように中心線に狙い、的確かつ抉り込むようの足に力を入れて踏ん張ったのは良いけど……

 

 

「……あっ、やば……」

 

「……三日月先輩?……え?わふっ!?」

 

 

その時に俺は足に力を入れすぎて足を滑らせてそのまま小猫に倒れ込んだ。俺は身体を起こして小猫の様子を確認した。

 

 

「……痛っ。小猫?」

 

 

俺は小猫の肩を揺すって安否を確認した。

 

 

「小猫、大丈夫?」

 

「う……ん。……三日月…先輩?……!?」

 

 

小猫が起きた瞬間顔を真っ赤になっていた。そして小猫は俺を押し出して距離を取った。

 

 

「……近すぎです、三日月先輩」

 

「あっ………ごめんなさい」

 

 

どうやら近すぎて距離を取ったようだったけど、多分それだけじゃないかもしれない。俺は小猫に誤った後再び修行を再開した。小猫が先ほどより強く拳で打ってきた。そして一誠がやってきた頃にはお互いに息切れの状態だった。

 

そして最期の修行なんだけど、俺は個人で自主練することにした。バルバトスのことをよりよく知っておく必要があるからだ。

 

 

〔俺が装備していた射撃武装か?〕

 

「うん。バルバトスって確か射撃武装が有ったんだよね?一体どんなの?」

 

〔あぁ…それなんだが、人間サイズ用にダウンサイジングしたから口径も小さくなっているからな。300mm滑空砲が今では30mm滑空砲だ。まぁ言ってもあれだ。実際に出してみろ〕

 

 

バルバトスが言うようにその滑空砲を出してみると、確かに人間サイズには大きい滑空砲だった。それを片手で撃つとなるとものすごい反動を受けることになる。

 

 

〔その点については俺の姿になればその反動すら片手でも撃てる。それとダウンサイジングした腕部の17mm機関砲何だが少し弾の取り扱いが難点なので50口径機関砲に変えておいた〕

 

「へぇー……じゃあ滑空砲の下にあるこれは?」

 

〔それは6mmBR弾搭載のマシンガンだ。主に牽制だけに使われるはずなんだか、あまり使われなかったけどな〕

 

「そうなんだ。……じゃあもし、レーティングゲームが長期戦になった場合はこっちがいいかな?」

 

 

そう言って俺は腕部の50口径機関砲を出してバルバトスに意見を求めた。

 

 

〔……恐らく長期戦になる可能性があるな。そのことを考慮して増加装甲を付けておくことを進めるぞ〕

 

 

そうしてバルバトスとレーティングゲームに必要な武装を決めたのであった。レーティングゲームで持っていく武装は30mm滑空砲にレンチメイス、そして予備兵装として鍔と柄を装着した太刀を持つことにした。因みに腕部の機関砲については固定武装という扱いだそうだ。

 

そして夕方になった後に部員全員で夕食であるカレー食べ、風呂やシャワーで修行の時にかいた汗を洗い流し明日の修行に備えて寝るのであった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

1日目の修行を終えた俺はベットで眠りについていた。その時に俺は変わった夢を見ていた。それはミカの中にいるバルバトスと同じベージュ色の機械人形ことガンダム・フレームがバルバトスと共に緑色の機械人形と戦っている光景だった。そのガンダム・フレームは巨大なハルバードを持って次々と緑色の機械人形を屠っていた。見た感じではバルバトスとベージュ色のガンダム・フレームが優勢だった。その時に緑色の機械人形たちはバルバトスたちから距離を取った。まるで巻き添えを食わないように逃げるかのように。そして今、その疑問であった緑色の機械人形たちの行動を理解した。それは上空……いやっ、それ以上に高い場所で何かがバルバトスたちのところに撃ち込まれた。それに巻き込まれたバルバトスたちはひどいダメージを受けて動かなくなったと思われた。

 

しかし、それすら争うかのようにバルバトスは起き上がった。そしてベージュ色のガンダム・フレームも瓦礫の中から這い出るように起き上がり、バルバトスたちを狙って撃ち込まれたと思われる杭を残った左腕で引き抜いた。その時に引導を渡さんが為に一体の機械人形が剣を持ってベージュ色のガンダム・フレームに接近して剣を振るう。満身創痍であるベージュ色のガンダム・フレームはかなりのダメージを受けていたために受け流すのが精一杯であった。

 

 

 

 

おのれ!死に損ない!この■■■■■■■の裁きを受けよ!!

 

 

 

…っ!その名前……がっ!ぐぅ…!

 

 

 

 

その時に戦っている機械人形の方から声が聞こえた。そして緑色の機械人形がベージュ色のガンダム・フレームを踏みつけて止めを刺そうとしたその時……

 

 

 

 

…ぬぅぅうううう!!

 

 

 

 

お前かぁぁあああーー!!

 

 

 

 

ベージュ色のガンダム・フレームが瓦礫の中に埋まっていたと思われる武器を引っ張り出した。その武器の形は巨大なペンチであり、そのペンチで緑色の機械人形を目の敵と言わんばかりに鋏込む。

 

 

 

 

何だと!?………あぁ!?

 

 

 

 

そしてベージュ色のガンダム・フレームはペンチで緑色の機械人形を鋏潰す為に残った左腕と背中にあるバックパックの隠し腕で最後の力を出し、機械人形の中にいるパイロットを鋏潰す。

 

 

 

 

お前がぁぁぁあああーーー!!!

 

 

 

 

あ……あぁ…!私は……こんな所で…!あぁ……あぁ!

 

 

 

■■■様ぁ!

 

 

 

その時に緑色の機械人形を助けようと別の機械人形がライフルに取り付けられているブレードをそのベージュ色のガンダム・フレームに突き刺す。それでもベージュ色のガンダム・フレームは力を緩めることはなかった。

 

 

 

……生きてりゃ、良いことあるもんだな?…てめぇをこの手で殺れるとは。

 

 

 

あぁ……あぁ!いゃぁ、あぁ助けぇっえぇ……あぇぐ!?

 

 

 

そして緑色の機械人形の中のパイロットはペンチによって鋏潰されて死んだ。これ程酷いやり方はあったのだろうかと思える光景だった。

 

 

 

………良い土産話が出来…た……。

 

 

 

その言葉を聞いた皮切りにベージュ色のガンダム・フレームのパイロットの命が消えて、俺は夢から覚めた。

 

 

「いったい何だったんだ、あの夢は?バルバトスと同じガンダム・フレームが出る夢を見るなんてな……」

 

 

俺はもう一回眠るためにも水分を補給しようとした時に部長がまだ起きていた。

 

 

「あらイッセー、起きていたの?」

 

「部長?そっちもまだ起きていたんですか?」

 

「えぇ、レーティングゲームに備えて戦略の勉強をしていたのよ。それと……貴方には話していなかったわね、私がライザーと結婚したくない理由を…」

 

 

その後に俺は部長が何故あのライザーと結婚したくないのかを聞いた。部長は悪魔社会の上級悪魔で名家のグレモリー家の悪魔であること。しかし…周りの悪魔たちはそのグレモリーのリアスしか見ず、リアス個人という女性を見てくれない。それが嫌で部長はグレモリー家の者ではなく、ただリアス個人という一人の女性として愛して欲しい。それが部長の小さい頃の夢だったそうだ。

 

 

「部長……」

 

「……ごめんなさいね、こう言う子供っぽいの見せちゃって」

 

「いえっ……正直に言うと、まだ人間だった頃の俺は部長に見惚れていたんです。その時は部長が悪魔であることは知りませんでしたけど……それでも俺はグレモリー家のリアス部長ではなく、その……一人の女性としてのリアス部長。えっとつまり、その……いつもの部長が好きなんです」

 

 

それを聞いた部長は何か少し顔が赤くなっていた。あれ?俺、部長に変なこと言ったのかな?

 

このままじゃ話が進まないと思い俺は急遽ライザーとその眷属たちの対策の話題を出す。

 

 

「あっ……そうだ。部長、ライザーとのレーティングゲーム何ですが何か対策でも?」

 

「え?え……えぇ、そうね?ライザーの攻略なのだけど。イッセー、ライザーがフェニックス家の悪魔であることは分かるわよね?」

 

「えぇ…その事はちゃんと聞きました。それが何と関係が………あれ?」

 

 

ライザーは確かフェニックス家の上級悪魔だってことは聞いている。でも何か肝心なことを忘れているような……?

 

 

「フェニックス……不死鳥………っ!?……まさか、不死鳥だけに不死身という事ですか?」

 

「察しがいいわねイッセー。そうよ、ライザーはその能力で公式のレーティングゲームで八勝二敗と戦績を残しているわ。その二敗は懇意にしている家系への配慮でワザと負けただけ」

 

「じゃあ実際は全勝で、公式のレーティングゲームのタイトル戦でも奪取する候補になっているわけですか?」

 

 

改めて俺は今度戦う相手であるライザーの能力に悩んだ。すると部長はライザーの能力に対する攻略法を俺に伝えた。

 

 

「そのライザーの能力なのだけど、事実上倒せないことはないわよ?」

 

「…と言うと?」

 

「圧倒的に力で押し通すか、起き上がるたびに何度も倒して精神を潰すかよ」

 

 

なるほど……前者の方は神クラスの力が必要だが神滅具である赤龍帝の籠手の倍加ならいけるか?いやっ、それは俺がまだリタイアしていないことを想定してのことだな。それと後者だが、ライザーの精神が尽きるまでのスタミナが必要なのだがどうしても短期決戦を狙わないと無理だな。

 

 

「……とりあえずその作戦はレーティングゲームの時に考えるのは?」

 

「そうね、この作戦は相手の出方次第に考えましょう」

 

 

そうして俺は対ライザー戦に対する作戦をレーティンゲーム当日に考えることにした。

 

強化合宿を開始してから七日が過ぎた。それぞれにみんなは強化することに成功した。木場の方はアスタロトと模擬戦を繰り返して木場の反射神経や少しの筋力を身につけた。アーシアの方は神器の回復能力をバルバトスがアドバイスをした。回復効果を魔力に宿らせて、それを回復対象に向けて飛ばすという発想だった。……どっかの狩猟ゲームの回復手段みたいだと思ったのは秘密であったりする。小猫の方はミカとの組み手を多くやった為かより動きに磨きがかかっていた。格闘術に関して小猫に聞いて見たのだが、言えないといったのであまり追求はしなかった。そしてミカの方はバルバトスを展開してみると肩や腕、腰部が変わっていた。バルバトス曰く、この世界版の第6形態だそうだ。因みに最初に俺が黒服の堕天使に殺されそうになった時に見たバルバトスの姿は第1形態で、レイナーレとやり合っていた時の姿は第5形態地上戦仕様だそうだ。……というか、バルバトスっていろんなバリエーションがあったんだな?

 

そんな形で俺は自分の神器の特性を理解するためにミカと模擬戦をすることになった。

 

 

「良い?これから模擬戦を行うのだけど、イッセーは先に神器を発動させなさい。イッセーの神器の発動から二分後に戦闘開始よ。それと三日月、一応いうけど模擬戦だからね?」

 

「大丈夫。その事はバルバトスにも言われた」

 

〔それはそれで大丈夫なのか?〕

 

「…まぁミカ、今回はお手柔らかに頼むぜ。ブースト!」

 

 

《BOOST!》

 

 

俺は神器を発動させて倍加させる。十秒毎に倍加していき、二分経った時に神器を再度発動させる。

 

 

《EXPLOSION!!》

 

 

発動した際に俺の神器の宝玉内にⅫと文字が浮き出ていた。

 

 

「何度も見るけど宝玉に書かれている数字、恐らく倍加した数を表しているのか?」

 

「そうよ、その状態は一種のストッパー。倍加は止まるけど一定時間、力が上昇した状態で戦えるわ」

 

「その分使用時間が限られ、倍加した負荷の中で動くと体力の消耗もそれなりに大きくなるってことか。正にハイリスク・ハイリターンだな……」

 

「でも強くなることに変わりないよね?」

 

「まぁ、そういう見方も取れるけどさ……」

 

 

そうミカとやりとりしていると部長はそろそろ模擬戦を始めると言ってきた。俺も準備しないとな。

 

 

「そろそろ模擬戦を始めるわ。イッセー、剣を使う?素手で行く?」

 

「いえ、ミカの場合はあの鈍器を使ってくるんで拳でいきます!」

 

「分かったわ。……それじゃあ始め!」

 

 

部長の合図と同時に先にミカがメイスを展開して俺に向けて振るってきた。相変わらず早えなミカは!俺は倍加した状態でミカのメイスを受け止めようとしたその時に感が走って回避を選択した。メイスが地面に叩き込まれると一瞬で半径2mにも及ぶクレーターができていた。そういえばガンダム・フレームってエイハブ・リアクターっていう動力炉を二個搭載しているとバルバトスやアスタロトが言ってたっけ?その分パワーが有りあまりすぎるそうだ。聞いただけでもマジで震えてきた。そう考えているとミカが腕部を前に出し、その腕部に搭載されている50口径機関砲(ペイント弾)を俺に向けて撃ってきた。

 

 

「あぶねっ!?」

 

「こいつで……!」

 

「くっ……当たるか!」

 

 

俺は何とかミカの攻撃を躱し、距離を取ると部長から指示があった。

 

 

「イッセー!魔力の一撃を撃ってみなさい!」

 

「魔力!?米粒みたいなのしか出せないけど撃てるのか?」

 

 

ちょっとばかし疑心暗鬼になった俺。その時にふと脳裏に言葉が響いた。

 

 

 

だったらイメージしてみろ。お前が必要な武器を……!

 

 

 

「俺の武器を?……誰かは分からないけど、取り敢えずやってみるか!」

 

 

そして俺は武器をイメージした。最初はどうイメージするか迷ったが、頭の中からある大砲のイメージが流れてきたのでそれを採用してイメージした。すると俺の手元に巨大な大砲が出現した。

 

 

「!……アレって」

 

〔馬鹿な!?アレは俺と同じ30mm滑空砲だと!?〕

 

「使い方は……少しだが分かる。こいつにさっきの魔力を弾丸代わりに!」

 

〔三日月、分かっていると思うが…〕

 

「あぁ……アレは当たったら唯じゃ済まなさそうだ!」

 

 

そして俺は出てきた大砲を持ち、魔力をその大砲に注ぎ込んで砲口をミカに向けて引き金を引いた。すると大砲のものすごい反動に俺は地面に足をついたまま後ろに飛ばされ、ミカはその大砲から放たれた砲弾を軽々と避けた。そしてその砲弾は向こうの山の方へと飛び、着弾するとものすごい爆風が上がった。……この時に俺は改めてもの凄いのを撃ったんだなと認識した。

 

 

「マジか…!倍加していたとはいてここまで威力が高いとは予想もしなかったな」

 

 

《RESET》

 

 

「今の危なかったな。バルバトス、さっきイッセーが持っていた奴……」

 

〔あぁ……間違いない。アレは俺の装備であり、奴の装備でもある。まさか本当にあの小僧にアイツが宿しているのか?〕

 

「……取り敢えずそこまでよ。一度色々と整理する必要があるわね、今回は……」

 

 

こうして俺の神器の特徴を理解し、ライザーとのレーティングゲームに備えてそれぞれ自主練をするのであった。……それにしてもさっきの声、アーシアの時の声じゃなかったな。どっちかって言うと夢の中で見たベージュ色のガンダム・フレームのパイロットと同じ声だったな。

 

 

____________________________________________

 

 

続く

 

 

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レーティングゲーム

 

 

強化合宿を終え、レーティングゲーム当日になった。俺たちは夜中の十二時になる時間に旧校舎へ集まり、それぞれの装備を確認した。木場は手甲と脛当てを装備して、剣を背中に背負っていた。小猫は手にフィンガーグローブを身に付け、膝には膝当てを付けてより格闘戦特化に仕上がっていた。アーシアは制服の代わりにシスターの服装を着て、ベールを被っていた。それとアーシアの手には十字架と聖水を持っていた。悪魔は十字架や聖水が弱点が故に触れないが擬似阿頼耶識のお陰で平気だそうだ。……じゃあ何で祈りだけは駄目だったんだろう?アスタロトは大剣ことデモリッションナイフと専用の対物ライフルのメンテをしていた。グレモリー先輩と姫島先輩は紅茶を飲んでリラックスしていた。そして一誠は強化合宿で新たに出た武装である30mm滑空砲と巨大なハルバードを手にしていた。

 

 

「イッセー、それ使えるの?」

 

「ミカか。これ意外と手にしっくりくるんだ。まるで使ったことがあるようなって感じだ」

 

「ふーん……じゃあさっきの滑空砲は?」

 

「アレか……部長から神器を使用してない時か、倍加で三段階目以上で撃たなければ使用はOKって言っていたよ」

 

 

そっかと納得した時にグレイフィアさんが魔法陣を経由してやってきた。

 

 

「皆さん、開始十分前です。準備はお済みになられましたか?今回のレーティングゲームはご両家の皆様に中継され、魔王ルシファー様も御覧になります。それをお忘れなきように」

 

 

俺たち以外にもグレモリー先輩のご両親と畑の人のご両親が此処に来ているんだ。でもどうしてだろう?

 

 

「…分かっていたけどやはりお兄様が直接見られるのね」

 

「え…?お兄様って……」

 

 

それを聞いた一誠は疑問に思った。何故グレモリー先輩は魔王ルシファーのことを兄と呼ぶのか。その疑問を木場が答えた。

 

 

「イッセーくん、部長のお兄様は魔王ルシファー様だよ」

 

「……マジで?」

 

「うん、マジだよ」

 

「マジか……けど、何でだ?お兄様はルシファーで部長はグレモリー一族だったよな?何か訳ありなのか?」

 

「うん、イッセーくんが言うように訳ありなんだ」

 

「それは私が説明いたします。先の大戦で魔王様は亡くなられたのです。しかし、魔王なくして悪魔は有り得ない……」

 

「成る程…そこで強大な力を持つ者へ魔王の名を受け継がせたってことか」

 

 

何かみんな色々と言っているけど、俺自身はあまり興味ないかな。部長の兄はルシファーだってことだけの話だし。そう考えているとグレイフィアさんがそろそろ時間だと告げてきた。

 

 

「そろそろ時間です。皆様、魔法陣の方へ」

 

 

グレイフィアさんに促され、俺達は魔法陣に集結する。

 

 

「なお、一度彼方へ移動しますと終了するまで魔法陣での転移は不可能となります」

 

 

帰ってくるときは勝敗が決した時のようだ。なら、勝って帰ってこないとな。負けなんて死んでも許されない。魔法陣がゲーム用のものであろう紋様に変わると発光し、俺達を包み込んだ。

 

………目を開けるとそこは先程と変わらぬ部室だった。でも外の様子が違った。

 

 

「あれ?外の空の色が真っ白だ。なんか変なとこに着いた?」

 

「本当だ……部室は変わらないのに何かが違う。これも悪魔の力によるものなのか?」

 

『皆様、この度グレモリー家、フェニックス家の“レーティングゲーム”の審判役を担うことになりました。グレモリー家の使用人グレイフィアでございます。我が主、サーゼクス・ルシファーの名の下、ご両家の闘いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う人間界の学び舎“駒王学園”のレプリカを異空間に用意しました。両陣営、転移された先が“本陣”でございます。リアス様の本陣が旧校舎のオカルト研究部の部室。ライザー様の本陣は新校舎の生徒会室。“兵士”の方はプロモーションする際、相手の本陣周囲まで赴いてください』

 

 

細かい説明を聴きながら俺はレンチメイスを展開する。レーティングゲームのルールはイッセーや部長から聞いた話によるとチェスという西洋将棋と同じということらしい。あらかたのルールを聞いた俺。そして姫島先輩は全員にイヤホンマイクタイプの通信機器を配る。全員それを耳につけながら部長がいう。

 

 

「みんな取り付けたわね?戦場ではこれで味方同士やり取りするわ。絶対に無くさないように」

 

『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それではゲームスタートです』

 

 

グレイフィアさんがゲーム開始の合図と同時に学校のチャイムが鳴った。そしてグレモリー先輩はホワイトボード上に地図を広げ、俺たちに作戦を伝えた。

 

 

「みんな、今から作戦を伝えるわ。今グレイフィアが言っていたように私たちがいるのはこの旧校舎が私たちの拠点で、新校舎がライザーたちの拠点よ。こちらのメンバーは半数しかいないのに対してライザーの眷属はフルメンバー。正直言って厳しいわ。そこで先ず、ライザーの“兵士”達を撃破しないといけないわね。八名全員が“女王”にプロモーションしたら厄介だわ。ライザーの兵士たちは恐らく新校舎までのルートを確保できるであろう重要拠点である体育館を占領すると思われるわ」

 

 

ホワイトボードに敷かれた地図にはマスで区切られ、縦と横に数字や英字が書き込まれている。多分、チェスのボードを模したのだろう。部長は旧校舎、新校舎の端っこを赤ペンで囲い、体育館を黒ペンで囲う。

 

 

「……となると、体育館を制圧するにはライザーの眷属たちをどうにかするしかないってことですか?」

 

「いえっ…私たちは体育館を逆に相手に制圧させるわ」

 

「わざと取らせる?何か方法でもあるの?」

 

 

俺は体育館をわざと取らせることに不思議に思った。そしたらグレモリー先輩はその理由を説明し、役割分担をした。

 

 

「体育館は表向きはそうするように仕向けるけど、最終的にはライザーの眷属の数人を体育館内に誘導、陽動戦闘を行い、頃合いを見計らって離脱し、朱乃の必殺の一撃で一網打尽にするわ。陽動といっても室内戦闘だから、機動力の“騎士”よりも破壊力の“戦車”の方が特性を活かせるわ。体育館を攻める前に祐斗と小猫は先ず森にトラップを仕掛けてきてちょうだい。予備の地図も持って行って、トラップ設置場所に印をつけるように。後でそれをコピーして全員に配るわ」

 

「はい」

 

「……了解」

 

「朱乃は森周辺と空に霧と幻術をかけておいてくれるかしら」

 

「わかりました」

 

「アーシアとアスタロトは私と一緒よ。アスタロトは確か…対物ライフルを持っていたわね?」

 

〔あぁ。21mm弾がないから20×138mmB弾を使用する対物ライフルに変更した物を持っている。……霧と幻術となると長距離射撃か?〕

 

「えぇ、あなたには朱乃が作った霧と幻術の中に入ったライザーの眷属を狙撃してもらうわ」

 

〔了解した。ガンダム・フレームとはいえ機械だからな。霧はともかく、幻術にはかからないから俺たち向けだな〕

 

 

そうして役割分担を決めたみんなは一斉に行動を行なった。そして俺と一誠だけが残った。

 

 

「……そういえば俺たちってどうすればいいの?」

 

「あっ…確かに言われてみれば。部長、俺たちはどうすれば?」

 

「三日月は敵に私たちの作戦を悟られないように体育館内で暴れてもらうわ。それと一誠、あなたはこっちに来て」

 

「お……俺?わ…分かりました」

 

 

そう言われて一誠はグレモリー先輩に近づくと先輩は一誠の頭を撫でた。

 

 

「あ、あの……部長?一体何を?」

 

〔グレモリー……まさか、その小僧のリミッターを一部解放させたのか?〕

 

「その通りよ。イッセーを下僕にする時に兵士(ポーン)の駒を八つ使ったの。だけど転生したばかりのイッセーはまだ駒八個分の力に耐えられる器ではなかった。だから何段階かに分けて封印をかけたの。それで今少しだけ解放させたの」

 

「なるほど……そういうことだったんですか」

 

「……つまり、今のイッセーは神器に耐えられる器になりつつあるってこと?」

 

「簡単に言えばそういう事になるわね。……そろそろ敵も動いている頃ね、イッセー、三日月。あなた達は先に体育館に行って小猫達と合流させるために魔法陣で転送させるわ」

 

 

そう言ってグレモリー先輩は魔法陣を展開して転送準備を終える。そして俺たちは武器を手にして魔法陣に乗り、体育館付近に転送される。

 

体育館付近に無事転送された俺たちは小猫達と合流する。

 

 

「部長、準備OKです!」

 

『それじゃ作戦通り体育館に入って陽動戦闘をお願いね』

 

「……了解」

 

「了解っす」

 

「分かった」

 

『祐斗は例の指示通りに動いてちょうだい』

 

「了解です部長。僕も動きます」

 

 

木場はトラップゾーンとかした森の方に向かって行った。そして遠くの方で姫島先輩とアスタロトが準備を終えたことをグレモリー先輩に伝える。

 

 

「所定位置に着きましたわ部長」

 

〔同じく、所定位置に着いた〕

 

『分かったわ。さて……私のかわいい下僕たち、準備はいいかしら?もう引き返せないわ。敵はフェニックス家の中でも有望視されている才児“ライザー・フェニックス”……』

 

 

 

『さぁ!消し飛ばしてあげましょう!』

 

 

 

「「「はい!」」」

 

「任され…た!」

 

 

グレモリー先輩の号令と同時に俺はバルバトスを展開してスラスターを吹かして上空に飛んだ後にそのまま体育館の屋根を突き破って突入した。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

ミカ達と行動しようとした矢先にミカが先に動いて体育館の屋根の上まで飛んで、そしてダイナミックに屋根を突き破って突入した。……やっぱ凄えよミカは。そう考えているうちに体育館が見えたのでここで木場は別行動を取った。残った俺たちは体育館に入るとそこにライザーの兵士3人と戦車1人、そして巨大なレンチの鈍器を持ったミカの姿があった。

 

 

「まさか上から攻めて来るなんて予想外にもほどがあるわよ、グレモリーの下僕さんたち!」

 

「戦車が1、兵士が3か。よしっ…小猫は戦車の方を、ミカはそっちの兵士2人を頼む!」

 

「……最初からそのつもりです」

 

「分かった」

 

 

そして俺はこの前の棍棒を持った兵士を相手にする為にハルバードを手にした。

 

 

「それがあなたの武器?前は素手だったけど、どんな武器を持とうと「遅い!」……えっちょ!?」

 

 

これから戦闘だと言うのに余裕なのか油断なのか武器のことで喋りだす兵士。その隙を突いて俺はハルバードを兵士に振るった。しかしそれを危うくも躱したライザーの兵士。でも逃すつもりはねぇ!

 

 

「このままゴリ押すっ!」

 

「くっ!…単純なパワーは迷いがない分、質が悪い!」

 

 

俺はハルバードを力任せに振るい、徐々にライザーの兵士を追い込んだ。

 

 

「くっ!…舐めるな!!」

 

 

ライザーの兵士は俺の持つハルバードを打ち上げて俺を丸腰の状態にした。

 

 

「これであなたは丸腰ね!!」

 

 

ライザーの兵士は勝利を確信して棍棒を俺に打ち込んだ………と思われた。

 

 

「なっ!?な……何よ、()()()()!?」

 

 

ライザーの兵士の棍棒を受け止めたのは俺の背中にいつの間にか展開していた脹脛装甲を転用したバックパックユニットに格納されている隠し腕が受け止めていた。俺が夢で見たやつとは少し形が違う。俺の出ているのは丸っこいバックパックユニットである。でも夢で見たやつと似ているところがある。まぁ…細かいことを考えるのは後でいいか。

 

 

「……さあな?これに関しては昨日発現したばかりなんでね、それに……俺にはまだ、(コレ)がある!!」

 

 

俺は思いっきりそのライザーの兵士に拳を叩き込んだ。吹っ飛んでいったライザーの兵士は体育館の壁に叩きつけられた。

 

 

「よし!後は…ミカや小猫は?」

 

 

俺は2人の様子を確認するとミカはチェーンソーを持つ双子の兵士をレンチの鈍器で壊してその後ミカがその双子を見て何か小さく無機質な声で言い放つとその双子はミカに怯えて動きを止めた。……一体何を言ったんだ、ミカは?そして小猫はライザーの戦車とまだ交戦していた。その際に小猫の服がボロボロになっていた。そして小猫は何とか敵を拘束するように押さえつけた。

 

 

「これでフィニッシュです」

 

「くっ…!」

 

 

流石は戦車の小猫。そう思っている時に通信機から部長の声が聞こえた。

 

 

『イッセー、小猫、三日月。そろそろ頃合いよ、至急そこから離れてちょうだい』

 

「了解!小猫ちゃん、ミカ。行こう!」

 

「分かった」

 

「…了解です」

 

 

俺たちは部長の指示でこの場から離れる。

 

 

「なっ!?これだけ優勢で逃げる気?!ここは重要拠点の筈よ!」

 

 

ライザーの戦車が何か言っているようだが俺たちは気にせず体育館を出た。そして……

 

 

 

撃破(テイク)

 

 

 

姫島先輩が放つ巨大な雷が体育館を直撃した。……はぐれ悪魔討伐の時も見たが相変わらず恐ろしい威力だな?

 

 

『ライザー・フェニックス様の“兵士”三名、“戦車”一名リタイア』

 

 

アナウンスから体育館にいたライザーの眷属がリタイアしたことを告げる。ここまでは順調だが、油断は出来ないな。……それと俺は薄々思ったが小猫の姿に少し困っている。

 

 

「次に行く前にミカ、すまないがその……このブレザーを小猫ちゃんに渡してやってくれないか?」

 

「服?別にいいけど……」

 

 

ミカは俺が脱いだブレザーを渡し、ミカは小猫に俺のブレザーを渡した。

 

 

「……ありがとうございます、兵藤先輩」

 

「あぁ、いくら予備の服があるとはいえその格好じゃ俺個人困るからな」

 

「……兵藤先輩って、意外と初心い?」

 

「それを言わないでくれ。……さて、この後だが……!」

 

 

この後のことを話そうとすると突然小猫の方に爆発が起きた。小猫の隣には確かミカがいた筈。

 

 

「小猫ちゃん、ミカ!」

 

「…大丈夫」

 

 

すると爆煙が晴れ、2人の様子を確認したらミカが小猫を抱きかかえて小猫を守っていた。しかもお姫様抱っこで……

 

 

一誠Side out

 

 

 

俺は一誠からブレザーを受け取った後に小猫に渡してその数秒後に上から殺気を感じて俺はとっさに小猫を抱えて地上用ブースターユニットを吹かし、その場から離れる。すると小猫がいた場所に爆発が起きた。一誠が俺たちのことを呼んでいたので返事をした。

 

 

「ミカ、小猫ちゃん!無事だったか!」

 

「生きてるよ」

 

「……三日月先輩、もう降ろしてください」

 

「あ……ごめん」

 

 

すぐに小猫を降ろした後に上の方を見上げた。するとそこにはライザーの眷属の女王がいた。

 

 

「今の攻撃は直撃のはずだったのに、何故私の攻撃がわかったの?」

 

「あんたは畑の隣の人?」

 

「“ユーベルーナ”よ!それと貴方はまだライザー様のことを畑の人と…!!」

 

「まぁどうでもいいよ……どうせ今から消える名前だ…」

 

 

そう言って俺はメイスを展開してそのメイスを空にいたユーベルーナに向けて投げた。しかし、そのユーベルーナは何かの魔法を唱えると投げたメイスが爆発した。…さっきの爆発はあいつの魔法のせいか。

 

 

「さっきの爆発……あいつの魔法による攻撃か」

 

「そのようだな。まさか犠牲(サクリファイス)の戦法を使ってくるとはな……」

 

「神滅具、赤龍帝の籠手とバルバトスの名を持つ神器を宿す者。勝つのはこちらだけど、いると厄介なのに変わりはないわ。さっさと消えてもらいましょうか」

 

「あらあら。貴女のお相手は私がしますわ。ライザー・フェニックスさまの『女王』、ユーベルーナさん。“爆弾王妃(ボム・クイーン)”とお呼びすれば良いのかしら?」

 

 

姫島先輩がこちらにやってきてあの畑の隣の人と相手をすると言ってきた。それにしても畑の隣の人の二つ名が爆弾王妃だったんだ。じゃあ爆弾の人かな?なんか爆弾か何か隠してそうだ。

 

 

「その二つ名はセンスがなくて好きではないわ、“雷の巫女”さん。貴女と闘ってみたかった」

 

「そうですか、それは光栄の至りです。イッセーくん達は祐斗くんのもとへ向かいなさい。ここは私が引き受けます」

 

「姫島先輩……分かりました、ここを頼みます!」

 

「……了解です」

 

「分かった。あの爆弾の人、何か隠していそうだから気をつけて」

 

「あらあら…ご忠告ありがとうございます。では行ってください」

 

 

俺たちが木場のもとに向かう際に爆弾の人が“誰が爆弾の人よ!?”と言っていたが気にせずそのまま木場のもとへ向かって行った。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

一誠達が体育館で戦闘開始する二分前

 

 

 

俺はグレモリーが指定した地点で20mm対物ライフルを構えて獲物が掛かるまで待った。その間にアナウンスからあの種まき鳥野郎ことライザーの兵士3名と戦車1名が倒されたことが伝わる。

 

 

〔未だに獲物が来る気配はなし……か。来なければ御の字だが……む?〕

 

 

そう考えている矢先に三人のライザーの眷属らしい姿を目視した。その眷属達は森の中に入っていった。

 

 

〔距離はざっと200か……グレモリー、こっちに向かって来る人影があった。恐らくライザーの眷属だろう〕

 

『分かったわ、貴方はそのままその眷属を狙撃してちょうだい』

 

〔了解。このまま狙撃する〕

 

 

俺は20mm対物ライフルのバイポッドを展開して対物ライフルを安定させる。そして照準を定めてたと同時に引き金を引き、対物ライフルの銃口から20×138mmB弾が放たれる。その弾丸はライザーの眷属には直撃しなかったものの、口径が大きい弾丸が地面に着弾した際に着弾煙が上がる。

 

 

「狙撃っ!?木の陰に隠れるわよ!」

 

「わ……分かったわ!」

 

 

狙撃された眷属は俺を警戒したのか木の陰に隠れた。しかし、そんな行動は無意味であることをライザーの眷属は知らない。

 

 

〔照準誤差修正……完了。修正射撃〕

 

 

そして俺は照準誤差を修正した後引き金を引き、次弾を撃つ。その弾丸は木の陰に隠れているであろう眷属もろとも貫通した。ライザーの眷属はあらかじめ防御魔法をかけていたためか20×138mmB弾を受けてもミンチにはならなかったものの戦闘続行不可能になる。

 

 

「……!貫通した!?ここにいてはマズイ!」

 

「…貰ったよ!」

 

「なっ……伏兵!?」

 

 

俺が狙撃したポイントに木場が奇襲を仕掛け、敵を撃破する。そしてもう1人のライザーの眷属はこの場から離れようとするとその場で爆発した。どうやら森に仕掛けたトラップに引っかかったようだ。そしてスピーカーからアナウンスが流れた。

 

 

『ライザー・フェニックス様の“兵士”三名リタイア』

 

〔グレモリー、さっきアナウンスで聞いたと思うが俺と木場でライザーの兵士を一体ずつ撃破。残りの1人はトラップにかかってそのままダウンだ〕

 

『分かったわ。木場にはイッセー達と合流させるように指示を出すわ。貴方は一旦こっちに戻ってちょうだい』

 

 

グレモリーの指示通り俺はこのポイントを離れて王であるグレモリーの護衛についた。この戦いが始まったばかりだが、何かとやな予感がする。俺たちガンダム・フレームが厄祭戦当時のパイロットもとい、阿頼耶識を通して感が鋭くなった。このレーティングゲームに何者かがやって来ると。その考えがレーティングゲーム後半で起こることを俺は知る由もなかった。

 

 

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続く

 

 

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進化する龍、怒れる狩人

 

 

俺ことバルバトスは一誠という小僧の背中に出たバックパックを見て内心驚いていた。間違いなくアレはグシオンのサブアームだ。それもまだリベイクの頃のバックパックだ。あの小僧は知らず知らずのうちにグシオンと適合してきているのか?それにしては阿頼耶識のピアスがないのがいささか不自然だ。もし完全覚醒でなくとも奴は無意識の内にグシオンの力を少しづつ解放しているのか?可能性があるとするのならば、グレモリーがあの小僧のリミッターを解除して少しだが駒の力を馴染むようになったのが原因か?

 

それともう一つ……契約者である三日月だ。性格が少しづつだが、少しづつ俺の世界の三日月の性格に成りかけている。前から思っていたが俺たちガンダム・フレームは阿頼耶識を通してパイロットと契約している。そして力を欲すれば欲するほどに力の代償が大きくなる。それこそパイロットの(いのち)を差し出さなければならない程にだ。事実上前の世界の“三日月・オーガス”は鉄華団のメンバーを逃がすために殿を務め、ダインスレイブを受けてもなお抗い、俺と最後の契約で力を引き出して多くの者を道連れに最後は三日月・オーガスの魂は俺に宿して運命を共にした。

 

……しかし、そこで問題が起きた。知らぬうちに俺は悪魔や天使、堕天使にドラゴンなどがいる世界に迷い込んだ。そして何より三日月・オーガスの魂が俺の中にはなかった。何故三日月・オーガスの魂が消えたのか分からないまま時が過ぎ去っていった。長い年月が経ち、どういう因果なのか、俺はこの世界の三日月に宿した。そしてこの世界の三日月の中には俺の知る魂の反応があった。それが三日月・オーガスの魂がこの世界の三日月に定着していたのだ。その結果、この世界の三日月は前の世界の三日月・オーガスの魂が体験した記憶を時折夢で見るようになった。……まさか、三日月・オーガスの魂がこの世界の三日月と同化し、人格も上書きしてこの世界の三日月であってそうではない者に成りかけているのか?その考えも否定できないまま俺は一旦その考えを内側に留め、戦いに集中することにした。

 

 

バルバトスSide out

 

 

 

俺たちは姫島先輩に言われて木場と合流する為、運動場に向かっていた。そこで俺たちはアナウンスから畑の人の兵士三名がリタイアと報道が流れた。そして俺たちは木場と無事に合流した。

 

 

「お疲れ」

 

「木場もお疲れ、そっちは兵士を?」

 

「うん、アスタロトさんが一人倒してもう一人はトラップに掛かったけどね」

 

〔アスタロトがか……あいつ本来の装備ではなくとも戦えるってことか〕

 

「バルバトス?アスタロトのことを少し疑っていたの?」

 

〔そういう訳ではないのだが……何分、厄祭戦の時のアスタロトの装備は真っ赤で、高機動近〜中距離強襲型で主に一撃離脱を想定した装備なのだが、前にアスタロトが言うようにあいつも向こうで色々あったんだろう〕

 

 

そういえばアスタロトが初めて召喚されてバルバトスと会話している時にそんなことを言っていたな。それよりも俺たちにはやるべきことがある。その時に一誠は木場にあることを聞き出す。

 

 

「木場、残りの奴らは?」

 

「もうすぐでこっちに来ると思う。どうするの?」

 

「俺はあそこの倉庫に隠れてこいつで援護射撃をする。まぁ一発撃ったら倉庫に出て俺も参戦するけどな」

 

「分かった。イッセーはそれでお願い」

 

 

イッセーが倉庫に入って強化合宿でイッセーが出した30mm滑空砲を取り出し、砲身が僅かに出れるように扉を開けて待ち伏せの準備を完了する。

 

そして俺たちは敵がやって来るまで軽く装備を整える。木場は剣を、小猫はフィンガーグローブを付け直し、俺はレンチメイスを持つ。すると畑の人の仲間達がこの運動場にやって来た。そしていかにも剣士っぽい人が何か言葉を発してきた。

 

 

「私はライザー様に仕える騎士(ナイト)カーラマイン!こそこそと腹の探り合いをするのも飽きた。リアス・グレモリーの騎士よ、いざ尋常に剣を交えようではないか!」

 

「……はぁ?」

 

 

ふと間抜けた声を出した俺。剣を交えようも何も今は戦闘であって決闘ではないのだ。正直に俺はこいつは何を言っているんだ?と思った。そしたら木場はそれにつられて名乗り出た。

 

 

「……名乗られてしまったらこっちも名乗らない訳にはいかないか……騎士として」

 

「そう言うものか?小猫は?」

 

「……知りません」

 

 

小猫は自分に聞いても困るような顔をしていた。そして木場はカーラマインと名乗る女性に名乗り返した。

 

 

「僕はリアス・グレモリーに仕える騎士の木場祐斗」

 

「ははは!堂々と真正面から出てくるとはお前の様な戦士がいて嬉しく思うぞ、私はそう言うバカが大好きだ」

 

「それ…あんたが言うの?」

 

 

聞いていて何か呆れるしかないんだけど……それ以前に喋ってばっかで隙だらけだし。

 

 

「騎士同士の戦いを僕も待ち望んでいたよ。尋常じゃない斬り合いを演じたいものだね」

 

「よく言った!リアス・グレモリーの騎士よ!いざ、勝“ドォウン!”……なっ!?」

 

 

カーラマインが木場に斬りかかろうとした時に倉庫から突然の砲弾がカーラマインに向けて飛んで来た。カーラマインは咄嗟に剣を引き抜き、その砲弾を後方へ弾き返した。

 

 

「なっ!?一体何処から……!」

 

 

畑の人の仲間が攻撃したやつを探していた。すると運動場の倉庫から30mm滑空砲を持った一誠がその姿を表した。

 

 

「イッセー君?君かい、あの砲撃は?」

 

「あー悪りぃ木場。何か盛り上がっているところを邪魔して。なんか相手が隙だらけだったんで撃ったのはいいんだが。撃って…よかったんだよな?」

 

「当たり前じゃん」

 

「三日月先輩……敵に容赦ない」

 

 

なんだかんだで小猫が若干引いていた。戦闘の場合、敵を倒すのに作法はただの枷でしかない。立ちはだかるものは誰であろうと全力で叩き潰す。ただそれだけだ。そして木場とカーラマインが仕切り直しで勝負に入った。

 

 

「まったく…泥臭くてたまらないと思っていましたが、今の戦法を見てなんとなくですけどカーラマインには同情いたしますわ」

 

「……アンタ誰?戦う気がなさそうだけど……」

 

「そういえばあの僧侶、なんか戦う気がない様だが。どうしてだ?」

 

「あらっ私のことは気にせずに。イザベラ、お相手してさしあげたら?」

 

 

すると半仮面をした人が俺たちの前に立ちふさがった。

 

 

「そういう事だ。お前の相手は私がしよう」

 

「それはそうだけどそっちの人は誰?なんか畑の人と似たような感じがするんだけど」

 

「畑の人ではない、ライザー様だ。……それはそうと、この方は“レイヴェル・フェニックス”。ライザー様の実の妹君だ」

 

 

何か半仮面の人が説明するとその畑の人の妹が自慢そうに目を向ける。……正直どうでもいいな。

 

 

「へー……畑の人に妹、いたんだ」

 

「ミカ……いくら興味ないからってそういう反応はどうかと……」

 

「……それよりもイッセー。目の前の半仮面の人「イザベラだ!」……頼める?」

 

「…あぁ。任せろ!ミカは他の奴を頼んだ!」

 

「あぁ。任され…た!」

 

 

俺はレンチメイスを手に畑の人の仲間の方に突っ込んだ。そして俺は敵を叩き潰す為にレンチメイスを振るうのであった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

バルバトスと三日月たちが運動場で種まき鳥野郎の眷属と交戦しているその頃、俺はグレモリーと契約者であるアーシアの下に戻って来たのはいいものの、どうやらグレモリーが痺れを切らして種まき鳥野郎に一騎打ちを持ち込むつもりだ。俺は全力で反対したがそれでもグレモリーは一騎打ちで短期決戦を狙おうとした。

 

 

〔駄目だ!俺から戦いの経験で言わせておけばそれは無謀だ!逆にお前がリタイアになったら俺たちの負けだ!〕

 

「分かっているわ!でも、これ以上長引けば仲間のスタミナが消耗する一方よ。そうさせない為にも私がライザーを倒す他に方法がないわ!それを分かってちょうだい!」

 

〔分かってないのはお前だグレモリー!!王は何が何でも倒れてはならない!例え犠牲が出るとしてもだ、何としても俺たちは勝たなければならない!!〕

 

 

王が倒れてはならない事はグレモリーも重々承知していたものの、それでもグレモリーは納得いかなかった。

 

 

「だけど……それじゃあ……」

 

〔俺たちガンダム・フレームが体験した厄祭戦もそうだ!犠牲なくして勝利はなし得ない、そしてお前が信じる眷属を信じなくてどうする?お前の為にお前の眷属やバルバトス、三日月が戦っているんだぞ!それすら信じずに仲間の思うのならそれは仲間に対する侮辱に他ならない!!それを分かれと言っているんだ俺は!!〕

 

「アスタロトさん……」

 

〔俺とて厄祭戦で初代の契約者と共にMAを狩り尽くす為に戦い続けた。しかし、月でMAと戦っている際にMAに隙を突かれて俺は初代の契約者と共に月面クレーターで力尽きた。地獄と言える様な厄祭戦と今のレーティングゲームと比べたらレーティングゲームの方がまだ生温く優しい戦いだ。それでも俺はこの世界でも敵が何者であろうと立ちはだかるのならば全力で叩き潰す。そして今戦っている仲間たちを信じて、俺たちはこの戦いに勝つ!だからグレモリー、お前も仲間のことを信じろ!〕

 

「アスタロト……ごめんなさい。私が軽率だったわ」

 

 

漸くグレモリーは納得してくれた様だ。改めて俺は作戦を練り直し、種まき鳥野郎の体力を消耗させる作戦を練った。

 

 

〔俺は単機であの鳥野郎を体力を徐々に削っていく。そしたら切り札の三日月やイッセーで一気に攻め込む。それで行くぞ〕

 

「分かったわ。……けど、これだけは言っておくわ。無理はしないでちょうだい。貴方とてアーシアを悲しませるつもりはないでしょう?」

 

「アスタロトさん……お気をつけて」

 

〔分かってるさ。俺とて奴に負けるつもりはないし、ここに戻ってくるつもりだ。……行ってくる〕

 

 

俺は単機で敵の王である種まき鳥野郎ことライザーに向かって行った。そして敵本陣についてライザーと相対した。

 

 

「ほぉ……貴様か、機械人形。俺はてっきりリアスが短期決戦で一騎打ちしにくると思ったが、その様子だとリアスを押し留めた様だな?」

 

〔まあな。……それはそうとお前をここで精神や体力を今のうちに削っておけば後々の三日月達の勝機に繋がるからな〕

 

 

俺はデモリッションナイフを手にし、折りたたんだ状態でライザーの方に向ける。

 

 

「お前が何をしようと結果は見えているがな。フェニックスの名ぐらいは聞いたことはあるだろう?」

 

〔あぁ……何度も傷つけてもすぐに再生するサンドバックだってことはな。要するにお前の精神をまいらせれば俺たちの勝ちだ〕

 

「……やれやれ、どうしてリアスと同じ様に貴様も負けず嫌いなんだ。まあ、そこが俺がリアスに惚れた点でもあるがな。くだらない挑発に乗ってやって、少しばかり試してやるか……!」

 

 

そう言ってライザーは手に炎を纏い、それを振るい俺の方に炭化するぐらいの熱を帯びた炎を飛ばした。俺はその炎を避け、ライザーの背後に回り込んでデモリッションナイフを振るうがライザーは軽々と避ける。

 

 

「……はっ!その大剣なら俺にダメージを与えられるだろうな。しかし、当たらなければ意味がないな?」

 

〔だったら当たるまで振るうだけのことだ!〕

 

 

俺は再びデモリッションナイフで振るうもライザーに当たる気配がない。ライザーは既にデモリッションナイフの間合いを把握していた。ライザーは上空へ飛翔し、俺との距離を取ってまたあの炎を撃ち込んでくるつもりだ。そうはさせまいと俺はスラスターを吹かしてライザーの距離を詰めるがまだデモリッションナイフの射程距離ではない。

 

 

「フッ!その大剣を活かせなければただの飾りの様だな?」

 

〔……そいつは、どうかな!〕

 

「何?……っ!?」

 

 

デモリッションナイフを峰側に回し、専用のグリップを握ってそのままライザーに振るう。そのままでは届きはしない……が、それは折りたたんだ状態のデモリッションナイフでの話だ。

 

デモリッションナイフを振るい、インパクトの瞬間に刀身を展開してライザーの肩から胴体まで横になぎ払う様に両断した。しかし、流石はフェニックスの名だけのことがあるのか両断された部分に炎が纏い、そこから一気に再生していった。

 

 

「………驚いたな。さっきの一撃、並みの上級悪魔ならただでは済まないだろうな?だが、俺を倒すにはちょいとばかし力不足の様だな?」

 

〔別にお前を倒す前提で戦闘している訳じゃないんだ。時間を稼げれば俺たちの仲間がここに駆けつける。そうすればお前を再生できなくなるまで殺しきれば俺たちの勝ちだ〕

 

「フッ……なんとも無駄な悪足掻きだな?それに、いつからお前らが優勢だと錯覚しているのだ?」

 

〔何っ?どういう意味『リアス・グレモリー様の“女王”リタイア』……何!?〕

 

 

ライザーが不適に笑った瞬間、アナウンスから姫島がリタイアになったことが俺たちに伝わった。

 

 

「どうやらユーベルーナがリアスの女王を倒した様だな?これで勝敗は決したも当然だな?」

 

〔……彼女とてただで倒れるつもりはない。俺たちに何かしらのバトンを託したんだ。例えば……お前の女王が回復手段か何かを使わざる負えない状況にしてその回復手段を使わせた。それも回復手段の回数に限りがある。……といえばいいか?〕

 

「……貴様、一体何を知っている?」

 

 

当てずっぽうで相手の心理を探って見たがどうやら図星の様だ。どんな回復手段をとったのかは知らないが、早いところライザーの体力を消耗させないとな。

 

 

〔さあな、今のは当てずっぽうで言っただけだ。その様子からするに図星の様だな?〕

 

「ちっ……当てずっぽうとはいえ勘付かれたか。だから何だというのだ?分かったからどうするというのだ?貴様ら機械人形風情に何ができるというのだ!」

 

〔知らん。だがな、そういう相手を見下す態度が俺自身気に入らねえんだよ!〕

 

 

俺は専用のアサルトライフルでライザーに向けて撃ちながらデモリッションナイフをサブナックルに持たせてそのまま第二ラウンドに挑むのであった。

 

 

アスタロトSide out

 

 

 

アスタロトがライザーと交戦する同時刻……

 

 

 

俺たちは今、ライザーの残りの眷属たち(ライザーの妹は除く)を倒す為に木場はカーラマインと、ミカと小猫は後からやって来た残りの眷属を相手にしていた。そして俺は“戦車”のイザベラ相手にハルバードで応戦していたもののハルバードの大振りを狙ってそこにカウンターを叩き込んでくる。俺もそこのところを鍛えているとはいえそう何発も受けるとかなり厄介だ。

 

 

「相当鍛えている様だな。何度もカウンターで打ち込んでいるのにも拘らずまだ立っていられるとは……」

 

「俺とてミカや部長達と共に修行してきたんだ。ここで負ける訳にはいかねえんだ!」

 

 

《BOOST!》

 

 

俺は神器を展開し、力を溜めている間にハルバードをイザベラに向けて投げた。

 

 

「武器を投げるなど……臆したか!」

 

「それが狙いだよ!」

 

「何っ?……!!」

 

 

俺はハルバードを躱したイザベラの隙をついて30mm滑空砲の砲口をイザベラに付けた。

 

 

「しまっ……!?」

 

「ぶっ飛べ!!」

 

 

《EXPLOSION!!》

 

 

零距離からの30mm滑空砲をモロに受けたイザベラはそのまま吹っ飛んでいった。そしてアナウンスが流れる。

 

 

『ライザー・フェニックス様の“戦車”一名リタイア』

 

 

「よしっ!この調子で!」

 

 

何とかライザーの“戦車”のイザベラを倒した俺。ミカ達の援護に向かおうとしたその時、俺の神器に異変が起きた。

 

 

「な……なんだ!?」

 

 

《Dragon Booster Second Liberation!!》

 

 

何と赤龍帝の籠手の形が変わったのだ。変わったのは形だけではない、コイツの使い方が頭に流れてくる。

 

 

「こいつは……神器がもう一つの能力が使用できる様になったのか?」

 

「まさかイザベラを倒し、この土壇場で神器が進化するなんて。予想外でしたが、それでも不死身相手に勝てる見込みなんてありませんわ。あれをご覧なさい」

 

 

レイヴェルが新校舎の方に指をさし、その方に向けるとアスタロトがデモリッションナイフでライザーと戦っている姿があった。

 

 

「アスタロトか!」

 

「えぇ、あの機会人形は相手が不死身と分かっていながら戦うなんて最初から勝ち目のない戦いに挑むと同じ愚行ですわ」

 

 

愚行……か。確かに不死身相手に挑むのは愚行かもしれない。……だけどそれは完全に不死身である場合だ。

 

 

「……愚行かどうかは俺たちを倒してから言うべきだな!」

 

 

《BOOST!》

 

 

俺は戦っている木場の下に駆け寄り、神器を解放する様に指示を出す。

 

 

「木場、お前の神器を解放しろ!」

 

「えっ!?魔剣創造(ソード・バース)を?」

 

「あぁ、そして受け取れ!ブーステッド・ギアの第二の力!赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア ギフト)!!」

 

 

俺は新たに目覚めた赤龍帝からの贈り物で溜め込んだ力を木場に譲渡した。これなら行けるはずだ。

 

 

「この力……いける!魔剣創造!!」

 

 

木場は剣を地面に突き刺すとそこから多数の魔剣が地面から生成され、カーラマインやミカと小猫が戦っている眷属たちに襲った。完全に予想外な攻撃にカーラマインや他の眷属も躱すことが出来ずモロに木場の攻撃を受ける。

 

 

「バ……バカな……!」

 

『ライザー・フェニックス様の“兵士”二名、“騎士”二名、“僧侶”一名リタイア』

 

 

一気にライザーの眷属は今いる女王と僧侶を除いて全滅した。しかし、溜めた力を相手に譲渡できる能力なんてある意味凄えな?

 

 

一誠Side out

 

 

 

なんか一誠が神器で新しい力に目覚めてそれを木場に譲渡すると木場が地面に剣をさした瞬間多数の剣が地面から生えてきた。それに巻き込まれない様に俺と小猫は敵から離れてた。すると畑の人の妹がその生えた剣に巻き込まれたのにも拘らず傷が再生していた。

 

 

「くっ…!これもドラゴンの力だというの……?」

 

「なんか剣が生えてきたのはびっくりしたな。どういう仕組みなんだろう?」

 

 

そう考えているとアナウンスから凶報が流れた。

 

 

『リアス・グレモリー様の“女王”一名リタイア』

 

「…!姫島先輩が?」

 

「!?……三日月先輩、危ない!!」

 

 

姫島先輩がやられたことに気をとらわれていたその瞬間、小猫が俺を押し飛ばした。そして押し飛ばした場所に爆発が起きた。さらにもう一箇所で爆発が起きた。そのもう一箇所は一誠と木場がいた場所であった。アナウンスからさらなる凶報が流れた。

 

 

『リアス・グレモリー様の“騎士”一名、“戦車”一名リタイア』

 

「小猫…!」

 

 

 

「女王と騎士と戦車、撃破」

 

 

 

小猫がやられた事を確認したその時、姫路先輩が相手にしていた爆弾の人がいた。この時の俺は一誠やアーシアを殺された時と同じようにある感情が湧き上がっていた。

 

 

「ここで貴方を始末させてもらうわ。ライザー様の脅威になり兼ねない貴方はね……」

 

 

爆弾の人が何か言っているけどそんなの関係ない。ただあるのは一つのことだけ。

 

 

 

奴は完全に叩き潰す……!

 

 

 

「安心なさい、すぐに貴方もリタイアさせて……!?」

 

 

俺は背部スラスターと地上用ブースターユニットを吹かし、レンチメイスで爆弾の人……いやっ、敵を地面に叩きつける。

 

 

「ガハッ!?」

 

「捕まえた…!」

 

「……何!?」

 

俺はレンチメイスをレンチ形態に変えて敵を挟みこみ、レンチメイスに搭載しているチェーンソーが起動して敵を切り刻む。

 

 

「があああああぁあぁぁっ!!??」

 

「……黙れよ」

 

 

敵をレンチメイスで挟めたままそのまま叩きつけて黙らせる。すると敵が光となってどっかに消えた。するとアナウンスから何か慌てているような感じで告げる。

 

 

『ラ……ライザー・フェニックス様の“女王”一名リタイア』

 

 

敵を倒した俺は次の敵を叩き潰す為に新校舎の玄関の方に向けると敵がいた。だった奴も叩き潰す。俺はレンチメイスを持ってその敵の方に向かっていった。邪魔をする者は誰であろうと全力で叩き潰す。ただそれだけだ。

 

 

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続く

 

 

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乱入者

 

 

……不味いことになった。三日月は今、小猫たちをリタイアさせた敵に対して無機質な憎悪と怒りを抱いている。その結果、敵の女王ことユーベルーナは三日月が持つレンチメイスのチェーンソーによって大ダメージを与え、さらに地面に叩きつけてその女王をリタイアさせた。

 

だが…問題は三日月の怒りだ。今の三日月は怒りを制御せず、むしろ敵対している奴を完全に叩き潰すために機械的に、ただ怒るというよりは静かなる怒りと言うべきだろうかあのレイヴェルという小娘を叩き潰すつもりだ。俺は何とか三日月の怒りを鎮めさせるために声をかけ続ける。今の状態の三日月はこのままだと危険だ。何としても怒りを鎮めさせねば……!

 

 

バルバトスSide out

 

 

 

私こと“レイヴェル・フェニックス”は目の前の状況に言葉が出なかった。女王のユーベルーナがリアス様の眷属を三人を倒し、形勢が逆転してこちらが優勢になった。ここまでは良かった。しかし…ユーベルーナがレーティングゲームに参加してきた人間を相手しようとした時に再び形勢が逆転されるとは思っていなかった。その人間は背部と腰側に付いているスラスターと思われる部分からジェットエンジンのように吹かし、そのままユーベルーナに肉薄し、レンチの様な鈍器で叩きつけた後に追撃に鈍器が口を開き、ユーベルーナを挟み込んでその鈍器からチェーンソーの音が鳴り、ユーベルーナを斬り刻み、ユーベルーナを黙らせるかの様に地面に叩きつけた。その際にユーベルーナから出た返り血は人間の胴や顔に付いていた。特に……顔についた返り血が眼と頰の間にあり、それが下に流れてまるで血の涙を流しているかのように見えた。

 

 

「嘘………人間が悪魔に、それも女王のユーベルーナをこうも簡単に……?」

 

「……まだいた。敵が……」

 

「……ひっ!?」

 

〔むっ……!不味い!!小娘、逃げろ!今の三日月は普通ではない!!〕

 

 

返り血を浴びた人間は私の方を向けて無機質な声を出して私を見て敵視し、レンチの鈍器を引きずりながら一歩、また一歩と進みながら私に迫っていった。私はその際に人間に宿している機械人形から逃げる様に言われた。……しかし私は逃げようにも足がすくみ、動けないでいた。私は知らず識らずにあの人間……いえ、アレは決してその様な生易しいものではない。

 

 

 

私は、あのバケモノに恐怖を抱いてしまった

 

 

 

フェニックス家特有の再生能力があると分かっているの筈のなのにバケモノはそんなの関係ないと言わんばかりに徐々に歩を進め、距離を狭まれてそのバケモノと眼が合った瞬間、私は腰を抜かしてしまう。

 

 

「い……嫌っ……来ないで…!」

 

「もういいよ。もう、喋んなくて……」

 

〔…よせ三日月!そいつは敵じゃない!!敵意のない奴を無闇に殺すな!!〕

 

 

バケモノはレンチの鈍器を上げて振り下ろす様に構える。その時の私はただ動けず、味方もいないのにも拘らずがむしゃらに助けを求めた。

 

 

 

誰か……助けて……!!

 

 

 

そう助けを願い、レンチの鈍器が振り下ろされる恐怖で眼を閉じ、無駄な行動かもしれないが自身の身を守る。その時にレンチの鈍器が振り下ろされたと思われる風を切る音が聞こえた。フェニックス家特有の再生能力があるのにも拘らず私は死を覚悟した。その時に金属が打つかる鈍い音が響いた。

 

……しかし、いつまで経っても痛みが襲って来なかった。恐る恐る眼をゆっくり開くとそこには、赤龍帝の籠手を持つリアス様の兵士が私を守って下さった。

 

 

レイヴェルSide out

 

 

 

危ねぇ……!小猫達がやられて一時思考が停止していたがアナウンスからライザーの女王がリタイアになったことを聞いて我に返った俺は周りの状況を確認した。その時に見たのは、静かな怒りを抱くミカがレンチメイスを引きずって戦うつもりも無いライザーの妹レイヴェルに向かっていた。その時に俺は悟った。ミカは今、怒りのあまり周りが見えていない状態だ。

 

そう判断した俺は赤龍帝の籠手で倍加し、背中の隠し腕をだしてミカがレンチメイスを振り下ろすより先にレイヴェルの前に立ち、ミカのレンチメイスを受けて止める。……それにしてもパワーがあり過ぎるのは分かっていたが、倍加しているとはいえここまでの馬鹿力だってのは俺でも予想外だ!

 

 

「イッセー、退いて……そいつ殺せない」

 

「止めろミカ!こいつは戦う気は無いんだ!」

 

「駄目だ、こいつを放っておくとまた邪魔をしてくる。その前に叩き潰す……」

 

「いい加減にしろ!!小猫達が死んだ訳じゃないんだ!それに………」

 

 

 

「これ以上、アーシアを悲しませるな!!」

 

 

 

「っ!……アーシア?」

 

 

ミカがレンチメイスに力を入れるのを止め、レンチメイスを持ち上げてミカはそのままゆっくりとレンチメイスを下ろした。

 

 

「ごめん、イッセー」

 

「……ったく、少しばかり寿命が縮まったよ。いくら何でもアレはやりすぎだ。……でもまあ、お互いに無事であるぶん問題ないか……」

 

 

俺は何とかミカの怒りを鎮めさせてレイヴェルの助けた。……本当なら敵なのだが、相手は全く戦意を持っていないのだ。……最もミカの怒りと殺意を知って完全に戦意どころかトラウマになっていなければいいのだが……。

 

 

一誠Side out

 

 

 

俺ことライザーはアスタロトと名乗る機械人形と戦ってから数分が経った。あのアスタロトという機械人形は思ったほどに中々粘る。フェニックス家特有の再生能力があるとはいえ、ここまで粘る機械人形は初めてだ。……リアスはとんでもない原石()を見つけたものだな。そう改めて認識しているとアナウンスから何やら動揺めいた感じで報道してきた。

 

 

『ラ……ライザー・フェニックス様の“女王”一名リタイア』

 

「…何っ!?」

 

〔……どうやら形勢逆転……と言いたいところだが、かなり面倒なことになった様だな〕

 

 

そう機械人形が言い、新校舎から下の運動場であるグラウンドを見てみるとそこにはリアスの下僕兼現代の赤龍帝である小僧が俺の僧侶兼妹のレイヴェル・フェニックスを守っていて、バルバトスという機械人形を纏う小僧にリアスの下僕が説得をしていた。

 

 

「何だ……?奴らは一体何を……」

 

〔どうやらお前の女王が三日月の怒りを買っちまって暴走している様だな。どのみち彼奴は非公式のレーティングゲームであろうと殺しに掛かる様だ。そこにいるお前の僧侶、確か……お前の妹だったか?その僧侶が戦う気が無くても怒った状態の三日月はそんなのお構いなしに叩き潰すつもりだぞ?〕

 

「何だと!?……くっ!貴様の相手は後回しだ!」

 

 

俺は機械人形の相手を後回しにし、新校舎から出て先に機械人形を纏う小僧とリアスの下僕諸共炎でなぎ払おうとした。しかし…こいつらは勘がいいのか俺の攻撃を軽々と避けてみせた。

 

……やはりこいつらは真っ先に潰しておく必要があったと若干後悔があったがそれは後回しだ。今はあの機械人形の纏う小僧とリアスの下僕をどうやるかを考えるしかないな。

 

 

ライザーSide out

 

 

何とかミカを説得できた矢先に炎が俺たちに向けて降ってきた。俺とミカはそれに気づいて回避し、何とか致命傷を避ける。

 

 

「何だ?!……上か!」

 

「新手…!」

 

 

その時に俺たちは一旦戦闘を止め、上を見上げるとアスタロトと戦っていたはずのライザーが新校舎から降りてきた。そのライザーの背中から炎の翼を出して降りてきた。

 

 

「ライザー!?お前、アスタロトはどうした!」

 

「奴との相手は後回しにした。今の所は無事だが、そんなのはどうでもいい。最も厄介な存在であるその小僧はここでリタイアになってもらう」

 

「……何しに来たかはどうでもいい。アンタが俺の敵であることに変わりはないんだろ?」

 

 

……正直言って不味い。ミカの暴走を止めたのは良いのだが、ライザーが介入してくるなんてこっちでも想定外だ。肝心のアスタロトは新校舎の屋上で俺たちを見ていた。まるで俺たちの戦いを見届けているかの様に。くそ……!さっきミカのレンチメイスを受け止めた際に背中の隠し腕が若干痺れて動かせないときた。このまま戦えばも最悪の場合共倒れだ!そう考えていると頭の中から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

《今のお前ではあのフェニックスや悪魔を纏う人間には勝てんだろう》

 

「……!この声……夢に出てきたドラゴンか……!」

 

《お前がこいつらに勝つには俺と契約することだ》

 

「……対価として何かが持っていかれるってことか?」

 

《その通りだ。それを分かっているのならばどうする?俺と契約するのか?しないのか?》

 

「俺は……!?」

 

 

そう考える時間すら与えないと言わんばかりに俺たちは何者かの銃撃を受けた。俺とミカはそれに感づいてその場から動き出して回避し、ライザーは俺たちと反応が遅れて頭部に銃撃を受けて頭部が吹き飛んでしまう。その威力を見た俺たちは対物ライフルに使用される口径の12.7mm弾であることを理解した。そして頭部を吹き飛ばされたライザーはフェニックス家特有の再生能力で頭部を再生させる。

 

 

「な…何だ!?」

 

「今のは……」

 

「あれは……!」

 

 

俺とミカは銃撃されたと思われる方向に目を向けるとそこにはライフルを持ったモスグリーン色の機械人形の姿があった。そして何より、その数だ。ざっと見て100体……いやっ、この場合は100機と言えばいいのか?機械人形には見覚えがあった。

 

 

「嘘…だろ……!」

 

「夢に出てきた奴だ…!」

 

 

その時の俺は夢に出てきたモスグリーン色の機械人形の名前を知らなかった。しかし不思議と知らない気がしなく、その名前を知っているような気がした。

 

そしてミカは、俺と同じようにモスグリーン色の機械人形の名前を口に出した。

 

 

 

“グレイズ”と……

 

 

 

一誠Side

 

 

 

俺は屋上にてバルバトスと三日月たちが種まき鳥野郎の戦いを見ていたが途中で何者かの介入でそれどころではなくなった。本来ならこの世界には存在しないはずのギャラルホルンの主力MSの“EB-06 グレイズ”が三日月たちの前に現れたのだ。それも100体という数を揃えてである。

 

 

〔おいおい……どういう因縁なのか知らねえが、なんでギャラルホルンのMSがこの世界にあるんだ?しかも俺たちと同じサイズと来た。……なんで奴らがここに来たのか考えても仕方ない、その考えは後でも出来る。今は三日月たちの加勢に向かわないとグレモリーや契約者のアーシアが危ねえ!〕

 

 

俺はバックパックのスラスターを吹かし、右手に専用のアサルトライフルを持ってそのまま三日月たちの方へ向かった。

 

 

アスタロトSide out

 

 

 

俺は何処からともなく現れた数多いグレイズに対して警戒していた。この戦いを見ていた両家からもこのような事態は予想外だったようでアナウンスを通してグレイフィアさんがレーティングゲームの中止が宣告された。

 

 

『何者かの介入により、現時刻をもってレーティングゲームを中止いたします。リアス様とライザー様は速やかに……』

 

 

宣告中に突然とグレイフィアさんの声が途絶えた。この通信の途絶え方をバルバトスが知っていた。

 

 

〔この途絶え方……もしや、エイハブ・ウェーブか?〕

 

「エイハブ・ウェーブ?それって何?」

 

〔俺たちガンダム・フレーム……いやっ、MSに搭載されているエイハブ・リアクターから生成するエイハブ粒子の粒子崩壊によって引き起こされる磁気嵐のことだ。これの影響でリアクターの付近ではレーダーや無線通信などの電波や電気を用いた機材が使用できなくなる〕

 

「じゃあ……今の状態はグレイフィアさんとは連絡が取れないのか?!」

 

〔小僧、お前の考えてる通りだ。俺たちは今、奴らの存在の所為でこの異空間にて孤立したと考えるべきだろう〕

 

 

成る程と思った時に俺は思った。じゃあバルバトスたちにも搭載されているんじゃないのか?と。

 

 

「……じゃあバルバトスはどうなの?そのリアクターっていうの積んでいるの?」

 

〔いやっ…前の世界ではそうだったのだが、この世界に来た時に俺たちガンダム・フレームに搭載されている二基のリアクターこと“ツインリアクターシステム”から生成されるエイハブ粒子そのものがが変異して、この世界で言う魔力という形に変換したのだ。どういう原理なのかは分からんがその証拠にレーティングゲーム開始時にグレモリーから受け取った通信機器が使えたのがその証拠だ〕

 

 

俺はそうなんだと理解していると畑の人が100機もいるグレイズを見て何かしらの怒りを抱いていた。

 

 

「ぐ……あの機械人形共め!貴様らの差し金ではないのは先の攻撃で理解した。俺とリアスの勝負に水をさしてくるとは……!許さんぞ!!」

 

 

そう言って畑の人が炎の翼を出して100機のグレイズに向けて突っ込んでいった。

 

 

「おいおい…!まさか一人であの数を相手するつもりか!?」

 

〔そのようだな。しかしあの物量……いくらフェニックスとはいえ再生能力が追いつくかどうか分からんな〕

 

「なら……やることは決まっている」

 

「ミカ……?」

 

 

 

「俺たちはまだ止まれない。相手が誰であろうと全力で叩き潰す…!」

 

 

 

〔相変わらずのようだな、三日月。……ならば行くか?〕

 

 

止まれない俺に若干呆れるもバルバトスは俺に問いを投げた。その時に俺は不意に笑い、バルバトスの問いに答えた。

 

 

「……じゃあ、行くかぁ!」

 

 

俺はレンチメイスを持って背部スラスターと腰部の地上用ブースターユニットを吹かし、畑の人が戦っているグレイズ達の方に向かった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

ミカは背中のスラスターと腰部についているブースターユニットを吹かしてライザーと同様に俺を置いてあの機械人形達の中へ突っ込んでいった。俺も向かいたかったのだが、ミカの暴走を止める際にかなりの力を使った為に疲労感が拭えなかった。その時に部長達がやって来た。

 

 

「イッセー!大丈夫っ!?」

 

「イッセーさん!」

 

「部長!?それにアーシアも、どうしてここに?」

 

「あなた達が未知の敵と戦っているのを使い魔を通して見ていたの。最初は通信機器で知らせようとしたのだけど何故か使えなかったから直接来たのよ!」

 

 

俺は何故通信機器が使えなかったのかをバルバトスの会話を思い返した。あのモスグリーン色の機械人形ことミカが言うにあれはグレイズという名前らしい物のリアクターから発するエイハブ・ウェーブによって通信機器が使用不可能になったことと、ミカがグレイズ達を叩き潰す為に向かっていったことを部長に説明した。

 

 

「そういうことね。それじゃあ三日月は今向こうでライザーと共に戦っているのね?」

 

「はい、平たくいえばそうです」

 

「三日月さん……」

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 

ミカのこと心配している時に俺に声をかける者がいた。その者はライザーの妹であるレイヴェルであった。

 

 

「お前は……ミカの暴走のことはすまなかった。もう大丈夫なのか?」

 

「えぇ、多少のことならもう心配いりませんわ。……それよりも、これを使いなさい」

 

 

そういってレイヴェルが俺に手渡したのは何かしらの水のような液体であった。すると部長がその液体の正体を知っていた。

 

 

「それは“フェニックスの涙”!?まさか……」

 

「えぇ、リアス様も察する通り、ユーベルーナはリアス様の女王を相手に体力を消耗した時に使用しましたわ」

 

 

部長の会話を察するにどうやらこのフェニックスの涙は回復アイテムの一つのようだ。しかし気になることが一つある。

 

 

「なぁ……一つ聞きたい。何で俺にこれを渡したんだ?」

 

「それはあの人間に殺されそうになった時に助けてもらったお礼ですわ。それを使ってあの人間を助けにいったらどうですの?」

 

「そうか……その、ミカのことは本当にすまなかった。それと……ありがとな」

 

「!!?…か、勘違いしないでほしいですわ!私はただお兄様を助ける為に利用しているだけですわ!そ……そう、それだけ……ですわ……

 

 

俺がお礼を言った時にレイヴェルが顔を赤くして何処かツンとした態度で返す。そしてその後の言葉を聞こえたのだが俺はあえて聞こえてないことにした。

 

 

「とりあえずありがとな。部長……俺、行ってきます!」

 

「えぇ、気を受けてね。それと信じているわよ」

 

「イッセーさん、三日月さんをお願いします!」

 

「あぁ、任せろ!ミカ……今行くからな!」

 

 

俺はフェニックスの涙を飲んだ後にそのままミカの方に向かっていった。ミカ、無事でいろよ!

 

 

一誠Side out

 

 

 

単身で向かった俺は炭化するぐらいの熱を帯びた炎を飛ばした。それをモスグリーン色の機械人形共は散開して回避する。その内3体が俺が放った炎を受けてそのまま爆散した。残った機械人形共は俺を包囲して機械人形共が持つライフルで集中砲火を放つ。

 

 

「チィッ…鬱陶しい!!」

 

 

俺は自身の周りに先ほどの炎を出現させてそれを防御のカーテンのように自信を守った。しかし集中砲火を受けている分身動きが取れなかった。

 

 

「クソッ!少しばかり怒りに身を任せすぎたか……!」

 

 

俺は悪態をついていると炎のカーテンの穴である真上からバトルアックスを片手に構えた機械人形が降って来て、俺の身体に深く食い込むようにバトルアックスを振り下ろした。俺はフェニックス家特有の不死身の能力を駆使してそのバトルアックスをあえて身に受け、お返しと言わんばかりに機械人形に至近距離で炎をぶつけた。その結果、俺の放つ炎をまともに食らった機械人形は爆散した。

 

しかし、この戦法は不味かった。予想以上にダメージの蓄積が大きく、身体の再生があまり追いついていなかった。

 

 

「くっ!あの時、あの機械人形(アスタロト)相手に消耗したツケがここに来て回って来たか…!」

 

 

俺が疲弊しているところに機械人形共がバトルアックスやライフルを構えて徐々に近づいて来て俺に止めを刺そうとしていた。

 

そう思ったその時、白い機械人形が先ほど俺に止めを刺そうとした機械人形共の中に飛び込むように介入し、次々と機械人形共を破壊していった。ある時はレンチのような鈍器で叩き潰し、またある時は口が開いたレンチの鈍器に挟まれ、レンチの鈍器の中に仕込んでいたチェーンソーで機械人形の胴体部分を真っ二つにしていった。その時に俺はその白い機械人形の戦いぶりを見て俺の身体に違和感を感じた。

 

 

「な…何だ?俺の腕が、震えている……だと?」

 

 

それは恐怖だった。俺は知らぬうちにあの白い機械人形……いやっ、アレは機械人形でありながら中身が全くの別の何かと思わせるくらいに情け容赦も無く、ただ眼前の敵を叩き潰していた。宛ら悪魔とでも言わせるぐらいの戦いであった。そして俺を止めを刺そうとした機械人形共を破壊した白い機械人形から声が発せられた。

 

 

「畑の人、生きてる?」

 

「!…お前か、バルバトスの機械人形を纏う小僧」

 

〔おーおーまだ生き残っていたか、種まき鳥野郎。フェニックスの名は伊達じゃないようだな?〕

 

「…ちっ、貴様もここに来たのか」

 

〔まあな?それに、もう一人ぐらい来たぞ〕

 

憎たらしいあの機械人形が言うように赤龍帝の籠手を持つリアスの下僕もやって来た。

 

 

「ミカ、アスタロト!待たせた!」

 

「うん。ちょうど良い時に来たよ」

 

〔イッセー遅いぞ、向こうでグレモリーとイチャコラでもしてたのか?〕

 

「「屋上で高みの見物していたお前には言われたくないよ(ぜ)」」

 

〔ちょ…!?俺の扱いひどくねえか?!〕

 

「茶化すのは後にしろ、先ずは目の前奴らを片付けてからだ」

 

 

先程の機械人形共は陣形を立て直し、ライフルやらバトルアックス、バズーカに剣と様々な武器を持って俺たちを待ち構えていた。

 

 

「……今回のレーティングゲーム、奴らの介入で台無しだ。不本意だが、奴らを片付けるまでしばらくは共闘させてもらうぞ」

 

「俺は構わない。イッセーはどう?」

 

「心配すんな、俺のことは俺自身で守るからミカはいつも通りに行くぞ」

 

「ふ……じゃあ足引っ張んないでね?」

 

「おまっ!?……無事に終わって疲れて動けなくなっても担いでやんねえからな?」

 

 

リアスの下僕と小僧はこの機械人形の数の前に臆するどころかむしろ普通に会話していた。すると待ち構えていた機械人形共は痺れを切らしたのか一斉に動き出し、物量と言う名の数の暴力で攻めてきた。すると小僧はレンチの鈍器を構え、そしてリアスの下僕は何処からか巨大なハルバードと盾を構え、そして憎たらしい機械人形は背中に背負っている大剣を構えるのであった。

 

 

〔(今回ばかりは二代目の名前を借りるか)……アルジ・ミラージ、ガンダム・アスタロトリナシメント!〕

 

「三日月涼夜、ガンダム・バルバトス」

 

「(なんか名乗っているようだし俺も……かな?)今代赤龍帝、兵藤一誠!」

 

 

「「〔行くぞ(よ)!〕」」

 

 

その言葉を合図に三人は一斉に行動に出た。バルバトスの機械人形を纏う小僧はレンチの鈍器を器用に使って機械人形を叩き潰し、腕部に取り付けられている機関砲を使って機械人形共に向けて放っていた。

リアスの下僕はハルバードを機械人形に向けて力任せに振り下ろすとその機械人形は真っ二つにならなかったものの機械人形の頭部は潰れて行動不能にさせたのだ。

そして憎たらしい機械人形は大剣を使って次々と機械人形共を叩き潰すようにぶった斬り、更には機械人形が使っている剣を奪ってはそれを使って確実に機械人形を潰していった。

俺はフェニックス家の誇りを守る為に奴らより多くの機械人形を破壊した。……破壊したのは良いのだが、明らかに俺よりも奴らの方が圧倒的に機械人形共の数を減らしていた。

 

 

機械人形共を破壊し続けてから30分

 

 

最後の一体となった機械人形をあの小僧が仕留めてようやく一息つくことが出来た。あの戦いでボロボロになったのは俺とリアスの下僕だけであった。

 

奴らを全て片付けた後レーティングゲームの勝負は引き分けという形で幕を引いたかのように思えた。しかし、引き分けになったとはいえ元を正せばあの機械人形共を送り込んだ第三者の介入によるもの。にも関わらずリアスとの結婚は変わらないことに俺は納得出来なかった。リアスとの勝負は結局は無意味だったのか?

……巫山戯るな!俺は納得出来ない分怒りが絶えずにいた。だが、俺が納得する方法は一つだけ残されていた。それは、今代の赤龍帝との決闘である。

 

 

「今の奴なら赤龍帝の籠手を使いこなすだろう。でなければ、俺に勝つことは先ず不可能だろうが、奴なら可能だろう」

 

 

そして俺はリアスの下僕に招待状と言う名の果たし状を送る準備を行うのであった。

 

 

____________________________________________

 

 

続く

 

 

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赤龍帝の覚醒

 

 

レーティングゲームに乱入してきた100体……いや、100機のグレイズ相手に俺は戦い抜き、終わった時にはもう身体の限界に近かった為に俺は気を失った。

 

そして今の俺は夢を見ていた。そこは前に見た紅い大地の場所ではなく、廃墟と化した町の所だった。そこでこの前戦ったグレイズと似た機械人形と前の夢に出たベージュ色のガンダム・フレームが戦っていた。その戦いは追うものと追われるものの戦いと思われた。グレイズに似た機械人形は交代しながらもライフルでベージュ色のガンダム・フレームの頭部を精確に当てていく。

 

 

 

 

まだ捕まらんよ、小童には!

 

 

 

うぉぉおおおおお!

 

 

 

 

対してベージュ色のガンダム・フレームは腕を交差して頭部を守りながらもグレイズに似た機械人形との距離を詰めて機械人形が持つライフルの銃身を掴んで肉薄し、握りつぶす。

 

 

 

 

随分私情に囚われた攻撃だな。…さては身内でも死んだか?

 

 

 

っ!黙れ!

 

 

 

 

ベージュ色のガンダム・フレームのパイロットは図星を言われたことを癇に障ったのかバックパックの隠し腕を展開した。

 

 

 

 

守るべきものがある、それは結構。仇を討つ、それも結構!

 

 

 

てめぇは俺が殺る!それだけだぁ!!!

 

 

 

 

グレイズに似た機械人形は使い物にならなくなったライフルを手放してがベージュ色のガンダム・フレームの頭部に拳を叩き込むがベージュ色のガンダム・フレームはそれを右の拳でガードし、反撃に左手で銃身を潰したライフルで叩き、追い打ちにアッパー、そして左ストレートを叩き込む。

 

グレイズに似た機械人形はベージュ色のガンダム・フレームの左ストレートを右手で防ぐが、その背部に取り付けられている隠し腕に殴られ不意を突かれる。そしてベージュ色のガンダム・フレームはそのグレイズに似た機械人形にただ只管に……

 

 

 

殴る

 

 

 

殴る!

 

 

 

殴る!!

 

 

 

しかしグレイズに似た機械人形はただ殺られるわけにはいかず、ベージュ色のガンダム・フレームにど突き、隙を突いて距離を取る。

 

 

 

 

お前は人として至極まともだ。しかしなぁ!…な!?

 

 

 

ぬぅぅぁあああ!!!

 

 

 

 

ベージュ色のガンダム・フレームは背部スラスターを吹かしてグレイズに似た機械人形に組み付き、そのまま地面に叩きつける。それにより煙が舞い上がり、視界が曇って見えづらくなった。そしてグレイズに似た機械人形は思ったよりもしぶとく生き残っていた。

 

 

 

 

戦場では、まともな奴から死んでいくのが常···

 

 

 

己が正義を守るため、もがく奴から淘汰されるのだぁ!!

 

 

 

 

グレイズに似た機械人形の左腕に取り付けられている取手が付いたシールドを手にするとシールド部分が折り畳んで一つの手斧となった。煙で見えないがその手斧で目の前にいると思われるベージュ色のガンダム・フレームに向けて振るう。そして金属がぶつかり合う音が響くと同時に煙が晴れるとそこにいたのは……

 

 

 

……なっ!?

 

 

 

巨大なペンチを構えたベージュ色のガンダム・フレーム……否、()()()姿()だった

 

 

 

よかったな……

 

 

 

アンタが()()()()!!

 

 

 

 

ベージュ色のガンダム・フレームは巨大なペンチをグレイズに似た機械人形に鋏込んで地面に押し倒すと隠し腕と両腕でペンチに力を入れてグレイズに似た機械人形とそのパイロットごと鋏潰す。

 

 

 

 

ぐううぅぅ!?…お褒め頂き感謝するぜ、名も無き小童よ。このロートルの死は必ずや、貴様の未来の姿となるだろう!!

 

 

 

 

グレイズに似た機械人形のパイロットはベージュ色のガンダム・フレームに死に際の預言をするとグレイズとは違う別の機械人形が向かってきた。

 

 

 

 

■■ー!

 

 

 

…さらばだ!(……悪りぃ、■■■■)

 

 

 

グレイズに似た機械人形のパイロットがそう告げた瞬間、機械人形が爆発してベージュ色のガンダム・フレームを巻き込んだ。

 

 

 

 

■■!?……!

 

 

 

 

グレイズに似た機械人形の自爆によって巻き込まれたベージュ色のガンダム・フレームは自爆した機械人形の爆炎の中から出てきて己が無事あることを示し、パイロットも心配してくれた機械人形のパイロット伝えた。

 

 

 

 

平気だ。俺は……生きている

 

 

 

 

ベージュ色のガンダム・フレームに乗るパイロットの言葉は重かった。先程倒したパイロットが言ってたように身内が死んだ者と含めて、俺は生きてしまっている。心配した機械人形のパイロットはそう感じた。

 

 

 

 

……うん、そうだね。アンタは生きてる

 

 

 

 

戦いには勝ったものの、心には深い傷跡みたいなものが残る気持ちになった俺はそれを皮切りに夢から覚めるのであった。

 

 

「ン、ウゥン……はっ!」

 

 

俺が目を覚ますと、そこにあるのは何もない真っ白な空間だった。俺に話しかけてきた男を除けば……

 

 

〔……どうやら目が覚めたようだな〕

 

 

俺は話しかけてきた男の姿に見覚えがあった。それは夢に出てきたベージュ色のガンダム・フレームのパイロットであった。

 

 

「アンタは……夢に出てきたベージュ色のガンダム・フレームのパイロットか?」

 

〔俺は“昭弘・アルトランド”。お前が夢で見た“ガンダム・グシオンリベイクフルシティ”のパイロットだ〕

 

「グシオン……?もしかして、バルバトスと同じ?」

 

〔あぁ。……率直に聞くが、お前がグレイズ達を相手にして気を失った後に何日が経ったと思う?〕

 

「何日…?……っ!?」

 

 

ベージュ色のガンダム・フレームことガンダム・グシオンリベイクフルシティのパイロットである昭弘から何日経ったことを聞かれ、その時に俺は理解して焦った。

 

 

「なぁ!俺は何日眠っていた!?」

 

〔…二日だ。二日間お前はこの空間に眠ったままだ。だが、お前が元の世界に戻る前に会いたい奴がいるそうだ〕

 

「俺に……会いたい奴?」

 

〔あぁ。……そろそろ出てきたらどうだ?〕

 

 

昭弘の掛け声でこの空間により紅い炎が出現した。しかし俺はこの炎というより、炎から放たれている感覚を俺は知っている。

 

 

「お前は……俺の神器に宿るドラゴンか?」

 

《やれやれ……ようやく目を覚ましたか………あまり俺の前で無様な姿を見せるなよ、“白い奴”に笑われるぜ?》

 

「白い奴?そいつはなんなのか分からないが、そもそもお前は一体……」

 

赤い龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)“ドライグ”。兵藤一誠、お前の左腕にいるものだ》

 

「ドライグ……」

 

 

俺の左腕こと神器に宿るドラゴンの魂“ドライグ”であることが分かった俺。その時に昭弘が俺にあることを告げる

 

 

〔……話のところ悪いが、お前は直ぐに元の世界に戻ってもらう〕

 

「……!そうだ、部長が!」

 

…案外せっかちな男だな?グシオンを宿した二代目よ?

 

〔あのグレモリーって奴は、俺の知っている奴と同じ声だった。……唯それだけだ〕

 

 

俺は一瞬昭弘がいう部長と同じ声の人って一体どういう人なんだろうと思ったがそれを後回しにした。そして俺はドライグにレーティングゲームで言われた契約のことを答えた。

 

 

「ドライグ……前のレーティングゲームで言っていた契約なんだが、俺は決めた」

 

ほぅ?……して、その答えは?

 

「俺は部長の様に頭が良いわけでもないし、木場の様に剣の扱いが上手いわけでもない。小猫ちゃんの様に格闘術だって未熟だし、姫島先輩の様に強くない。……それでも、俺は強くなる!ドライグのいう白い奴がどんな奴なのか分からないが、俺は強くならなくちゃならない!ミカが俺に期待する様に俺はもっと強くなる!だからドライグ、俺の左腕をくれてやる!だから……」

 

 

 

俺の思いに応えてみせろ!!

 

 

 

よかろう……契約成立だ!

 

 

 

この契約の際に俺の左腕が眩い光りを放つと同時に俺の意識は無事に元の世界に戻り、目を開けると俺の知る旧校舎の部室であった。

 

 

「ここは……知っている場所だ」

 

「目が覚めたみたいですね?」

 

 

俺が身体を起こすとグレイフィアさんがいた。どうやら見た感じだと俺はグレイフィアさんに看病されていた様だ。

 

 

「……グレイフィアさん、率直に聞きます。レーティングゲームはどうなったんですか?」

 

「あの謎の機械人形達の介入によりレーティングゲームは中止になり、それにより勝負は振り出しに戻ることはなく、ライザー様とリアスお嬢様の婚約破棄は白紙になりました」

 

「そうですか……」

 

 

俺は身体を起こして、上半身裸だったので服を着た。そして俺はグレイフィアさんに部長のことを聞いた。

 

 

「グレイフィアさん、部長は今どこに?」

 

「お嬢様は現在、冥界でお嬢様とライザー様の婚約パーティに参加しておられます」

 

「木場達は…?」

 

「お嬢様のお付き添いになられております。会場にいない関係者は一誠様だけです。それと、ライザー様から一誠様に渡してほしいと頼まれたものです」

 

「ライザーが……俺に?」

 

 

グレイフィアさんが懐から一通の手紙と魔法陣を取り出し、それを俺に渡した。俺は魔法陣より先に手紙の中身を確認した。その手紙の内容は、俺に対しての果たし状であった。

 

 

 

“リアスを取り返したければ婚約パーティに殴り込んで来い、そこで決着をつける”

 

 

 

「幾ら何でもシンプルすぎるだろ?……だが、分かり易いな」

 

「それと、サーゼクス様からの伝言があります」

 

「……魔王様から?」

 

「はい……」

 

 

 

「妹を助けたいのであれば会場へ殴り込んで来なさい」

 

 

 

「……だそうです。眠っておられる間、貴方の中から強大な力を感じ取りました。それも二つ、一つはドラゴン……何者にも与しなかった唯一の存在。そしてもう一つは我々悪魔の名家に近いようで遠いような存在。三大勢力を絶滅の窮地に追いやった忌々しきあの力であればあるいは……」

 

 

……恐らくグレイフィアさんは俺の左腕に宿るドラゴンと身体に宿るバルバトスと同じガンダム・フレームのことを言っているのだろう。そういってグレイフィアさんは先に婚約パーティ会場へ転移して行った。……それにしてもライザーと魔王様。偶然なのか同じ内容で俺に婚約パーティに殴り込んでこいと言われたのはある意味変な感じである。ライザーと魔王様はグルなのかなどの考えを辞めて俺はグレイフィアさんから渡された魔法陣を見て直感した。これは婚約パーティ会場へ転移する為の魔法陣であると。魔法陣を使う前にレーティングゲームの時にミカが言っていた言葉を思い出した。

 

 

 

俺たちはまだ止まれない。相手が誰であろうと全力で叩き潰す…!

 

 

 

あぁ……そうだったな、ミカ。あいつの言う通り俺もまだここで立ち止まる訳にはいかない。

 

 

「……俺は行くぞ、ミカ。俺だってまだ、止まらねえ…!」

 

 

そして俺は魔法陣を使い、婚約パーティ会場に転移するのであった。……待ってて下さい部長、俺が今行きます!

 

 

一誠Side out

 

 

 

あのレーティングゲームの後一誠を除く俺たちはグレモリー先輩と畑の人の婚約パーティに参加していた。だけど、グレモリー先輩と畑の人は何やら嬉しくない顔をしていた。

 

 

「……なんかグレモリー先輩と畑の人、大事なパーティなのに嬉しくなさそう」

 

〔気づいていたか。あのフェニックスの三男坊は前の戦いの結果のことをよく思っていないのだろう〕

 

「え?……三日月くん、それはどういうこと?」

 

「……お兄様はあの試合の後、荒れていましたわ。あの試合に関しては納得できないって」

 

 

木場が俺に聞き出そうとすると畑の人の妹が代わりに説明した。……確かレイヴェルって名前だっけ?

 

 

「アンタは畑の人の妹の……」

 

「ひっ!?……れ、レイヴェル・フェニックス……ですわ」

 

「?……あっ」

 

 

レイヴェルは何故か俺が声を掛けただけで怯えていた。その時に俺は前のレーティングゲームの事を思い出した。そして俺は名瀬さんに言われた事を思い出した。

 

 

 

“どんな理由であれ、女を泣かせては駄目だ”と……

 

 

 

「えっと……ごめんなさい」

 

「……えっ?」

 

「あの時、アンタを泣かせてしまって本当にごめん」

 

「い……いえっ、こ……こちらこそ。そ……それはそうと、リアス様の兵士はまだいらっしゃらないのですか?」

 

 

レイヴェルはまだ俺に対して怯えているものの何とか耐えつつも一誠のことを聞き出した。

 

 

「イッセーはまだ来てないよ。このパーティには」

 

「そう……ですか……」

 

「イッセーさん………」

 

 

アーシアが一誠がいないことに心配していた。俺はアーシアに大丈夫である事を伝える。

 

 

「アーシア、イッセーなら大丈夫。イッセーなら絶対にここに来る。イッセーも、俺と同じように止まれない。グレモリー先輩を向かいにくるよ」

 

 

俺の言葉を皮切りにパーティ会場の扉が開いた。そしてそこから一誠がやって来た。

 

 

「部長ー!!遅くなりました!」

 

「イッセー!?」

 

「ライザー・フェニックス!!アンタが送り出した果たし状の下、部長のリアス・グレモリー様を取り戻しにやって来たぞ!!!」

 

 

一誠が畑の人にグレモリー先輩を取り戻しに来たと伝えると警備兵らしき人物達が一誠を取り抑えようしていた。……そうだ、考えるまでもない。俺のやることは決まっている。

 

 

「おい、貴様!ここがどこだと分かって……があぁっ!?」

 

 

俺はバルバトスを纏ってレンチメイスを展開してそのまま警備兵に向けて投げつけて、警備兵の一人を黙らせた。

 

 

「なっ!?貴様!!自分が何をしたのか分かって……「…邪魔」何っ!?ゴッハァ!?」

 

 

そしてもう一人の警備兵は直接殴り付けて黙らせる。そして一誠の道を切り開いた。

 

 

「イッセー、少し遅いよ」

 

「悪いミカ。それにみんな、待たせた」

 

「…遅いです」

 

「あらあらやっと来たんですか?」

 

「イッセーくん、ここは僕たち……と言いたいけど、三日月くんがもう道を作っちゃったけど、ここからは僕たちが抑えるよ」

 

「あぁ…サンキューな!」

 

 

そう言って一誠はグレモリー先輩と畑の人の下に向かっていった。そして俺は他の警備兵の相手をするのであった。

 

……一誠、俺は待ってるから。グレモリー先輩をお願いね。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

俺がリアスの下僕に果たし状を送りつけたのは良いが、よもやあの小僧がリアスの下僕の為に一人で叩き伏せるとは予想外であったが、リアスの下僕が来たということには変わりはない。

 

そう……レーティングゲームではあの機械人形共の介入により俺と奴との決着はつけられなかったが、今なら納得の出来る決着がつけられる!

 

 

「来たか……小僧」

 

「あぁ来てやったぜ、アンタが送りつけた果たし状を見てな!……勝負だ、ライザ―・フェニックス。俺が勝ったら部長……リアス・グレモリーは俺がいただく!!」

 

 

何気にこいつはリアスの前で殺し文句を言ってないか?リアスの顔が真っ赤になっている。一方の俺やリアスの両親達や他の上級悪魔達が俺がリアスの下僕に果たし状を送りつけたことを初めて知って混乱していた。すると一部の上級悪魔が俺に説明を求めて来た。

 

 

「ライザー!これはどういう事だ!」

 

「聞いての通り、俺は前のレーティングゲームの結果に納得してはいない。だからこそ、俺はリアスの下僕に果たし状を送り込んだ」

 

「そして、私が用意した余興でもあります」

 

 

するとサーゼクス様が俺たちの前に現れ、俺とリアスの下僕の決闘を余興と告げた。それを聞いたリアスの下僕は俺とサーゼクス様はこの決闘に関してつるんでいるような顔をしていた。……正直に言えば、俺はそのサーゼクス様にこの決闘を利用されたのだがな。そしてサーゼクス様はリアスの下僕の方に向ける。

 

 

「初めて会うね…赤龍帝。いやイッセ―君と言った方が良いのかな?私はサーゼクス・ルシファー。リアスの兄だ」

 

「……はい、それについては部長から聞いております」

 

「そうか。君のことはリアスから聞いているよ。非公式のレーティングゲームとはいえ、随分と活躍されたようだね?是非、その力をライザーとの戦いで見せてもらえないかね?」

 

 

サーゼクス様の声に結婚式に来ていた悪魔達が一斉に声を荒げる。中には反感を抱く者もいた。

 

 

「サーゼクス様、そのような勝手は!」

 

「このような何処の馬の骨とも分からぬ下級悪魔風情に「おい……」……はっ!?」

 

 

すると口にしていた悪魔に悪寒が走った。その悪魔の背後にはバルバトスと同じ名を持つ機械人形を纏う例の小僧がサーゼクス様と同等……いやっ、下手をすればそれ以上の殺気を放っていた。……これだ。俺が始めて恐怖というもの抱き始めたあの殺気だ……!

 

 

「な…何だ貴様!下等な人間風情が私に「ごちゃごちゃと煩いよ…黙ってろ」…ヒィ!?」

 

 

やはりあの小僧は恐ろしく思える。赤龍帝の方がまだマシとも言える程の怒りと殺意がこの会場に充満していた。一部の耐性のある上級悪魔は平常心を保てているものの、他の悪魔の方はあの小僧に対して恐怖を抱いているはず。俺の妹のレイヴェルもあの小僧に一度殺されかけたことがあった分トラウマになっている。

 

 

「すまない、何かと君のことは他の者達には伝わってなくてね。そろそろ話を戻したいのだが怒りを鎮めてくれるかい?」

 

「……分かった」

 

「ありがとう。……さてイッセー君、君がライザーに勝てたら望みの報酬…はもう言っているね。我が妹でいいのかな?」

 

「はい。部長を取り戻しに俺はここに来ました!!」

 

「いい答えだ。勝ったらリアスを連れて行きたまえ。ライザー、君もそれでいいかね?」

 

 

何やらトントン拍子で事が進んでいったようだ。最初は予想外ではあったが、どの道リアスの下僕と決着を付けられることには変わりは無い。

 

 

「感謝いたします、サーゼクス様」

 

「よろしい。では舞台は私が用意しよう」

 

 

そう言ってサーゼクス様は俺たちが戦う場所である城を舞台にした異空間に俺たちを転移させた。

 

 

ライザーSide out

 

 

 

俺は部長の自由を賭けてライザーと決闘の舞台に転移された。転移した所は城の様な場所であった。

 

 

「お前の能力は既にすべて割れているとは言え、お前は俺を倒すつもりなのだろう?」

 

「あぁ!お前が不死身だろうと俺は絶対に勝ってみせる!プロモーション“女王”!!」

 

 

俺は兵士の特有のプロモーションで女王になったと同時に俺は神器である赤龍帝の籠手を展開してドライグと契約して手にした力を解放する。

 

 

「輝きやがれ!オーバーブーストォッ!!」

 

 

《Welsh Dragon over booster‼︎‼︎》

 

 

俺はドライグとの契約で神滅具特有の奥の手である禁手(バランスブレイカー)を発動させる。俺の身体に赤い鎧が纏い、赤龍を連想させる様な姿となった。

 

 

「これが龍帝の力!赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)!!」

 

「何っ!?禁手だと!既に至ってという事か!…だが、力を振り回すだけで俺に勝てるか!!」

 

 

ライザーが俺の方に突っ込んで来た。俺はドライグから制限時間を聞いた。

 

 

「ドライグ、どれ位だ?」

 

 

《ざっと約10秒だ。それ以上は身体が保たん》

 

 

「十分だ!(あくまで約10秒か。……恐らく5、6秒で解ける可能性があるな。そうなったら、俺の中にあるアレを呼び出すしかない)…速攻でケリをつける!」

 

 

俺は拳を握りしめ、ライザーの方へ走り出す。部長の笑顔を取り戻す為に!

 

 

____________________________________________

 

 

続く

 

 

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決着

 

 

三日月たちがいる冥界とは違う別の場所で、とある二人の人物の内一人に宿りしドラゴンは一誠に宿しドラゴンが覚醒した波動を感じ取っていた。

 

 

《…目覚めたようだな、奴が》

 

「そのようだな。今代の赤龍帝はどれほどのものなのか楽しみだ」

 

「あぁ、君の目的も近くないうちに果たされるだろう。さて……兵藤一誠、今代赤龍帝でありながら11番目の悪魔を宿りし者。その禁忌の力、どう使うのやら。見せてみろ、君の可能性を」

 

《意外と奴を高く評価しているのだな?今代の赤龍帝の実力ではあのフェニックスに勝つのも怪しいものだ》

 

「さて、それはどうだろうな?」

 

「……お前は兵藤一誠ならフェニックスに勝つと?」

 

「悪魔は義理堅いものだ。一度交わした契約を、途中で投げ出したりなどすまい…という事だよ」

 

 

その言葉を皮切りに二人はその場を後にした。その時に一誠を高く評価していた人物はもう一人に勘付かれない様に笑っていた。まるで、運命がこちらに流れているかのように……

 

 

???Side out

 

 

 

俺はドライグとの契約で禁手に至り、赤龍帝の鎧を纏いライザーとぶっ飛ばすために手元から30mm滑空砲を展開し、砲口をライザーに向けて魔力を込めた砲弾をぶっ放す。

 

だが、ライザーとてこいつの危険性を理解していたのか容易く回避される。

 

 

「はっ!その武器の特性や限界は見えているぞ!」

 

「もとよりそれが狙いだっ!!」

 

 

俺は背中から隠し腕が格納しているバックパックユニットを展開し、そこからスラスターを吹かしてそのままライザーに向かって突っ込んだ。

 

 

「真正面からか……馬鹿め!態々自滅しに来たか!!」

 

「そうでもねえさっ!!」

 

 

ライザーと肉薄したと同時に俺は30mm滑空砲の砲身を掴み直し、そのままライザーに叩きつける。ライザーはそれを他愛無いかの如く炎を纏った腕で30mm滑空砲を叩き壊す。その時に30mm滑空砲の中にある30mm弾がライザーの炎によって誘爆を起こし、30mm滑空砲が爆発して爆煙が俺とライザーを包む。

 

その爆煙が晴れるまで待たずに俺は行動を起こした。無論、ライザーも同様である。爆煙の中から出た俺とライザー。互いの左腕を相手に突き出すように殴りだす。しかしそれを防ぐために余った右腕を使って防御する。ライザーは俺の腕を掴み、俺は右腕でライザーの拳を防ぐ。

 

 

「…くっ!あのバルバトスの小僧といい、アスタロトの機械人形といい、貴様は本当に厄介だな!!」

 

「俺は部長の笑顔を守るためなら、お前の炎なんざ一々食らってたまるか!」

 

「ちっ!貴様のその諦めの悪さと不屈さ……赤龍帝のクソガキ、いやっ兵藤一誠!貴様はたったそれだけの為に俺の邪魔をするか!!」

 

「一度は部長に命を救われたんだ。俺だって難しいことはまだ分からねえよ。だけどな、俺は初めて……部長が、リアス先輩のことが好きになったんだ!俺が部長を守る理由や俺がてめぇを倒す理由は、それだけで十分だ!!」

 

「…イカレているな、貴様も!!だからこそか、お前が迷いのない一撃を放てるのか。だが、所詮それだけの事!俺とてフェニックスの名を背負う名家の一人……だからこそ!俺は全力で貴様を倒す!!」

 

 

「今ここで、リアスの前で散れっ!!」

 

 

するとライザーが俺を蹴飛ばして距離を離された。そしてライザーは片手に炎の魔力を収束させて巨大な炎の魔力弾を俺に向けて放って来た。……だが、かえって好都合だ!

 

 

「そうやすやすと散れるかよっ!!」

 

 

《Transfer!!》

 

 

倍加させ、ストックしていた分を魔力に譲渡させ、俺の左腕の赤龍帝の籠手に譲渡させた魔力をライザーに向けてぶっ放す。俺が放った魔力弾とライザーの放つ炎の魔力弾とぶつかり合い、爆発が起きて俺とライザーの渾身の技が相殺される。技が相殺された爆煙に再び俺とライザーに包むとこのタイミングで俺が纏っていた赤龍帝の鎧が10秒も経っていないにも関わらず鎧が消えた。

 

 

「……やっぱり()1()0()()つっても、ここまでが限界か」

 

《そのようだな。代価は十分だが、お前の基礎能力が低すぎる。故に10秒経つ前に解けたのだ。修行不足だ》

 

「あれでも修行不足か……。まぁ文句は言わねえけどさ、俺の中にまだ彼奴がいる」

 

《彼奴だと?……っ!お前、まさか……!》

 

 

そうドライグが何かを察したようだが生憎とその問い答える時間はないようだ。ライザーが爆煙を炎で払い出して俺の姿を捉えた。

 

 

「ちぃっ!よもや相殺されるとは……なっ!?」

 

 

ライザーは俺の左腕を見て驚いていた。……そりゃそうだよな?何せ左腕を差し出して禁手したから左腕が()()()()()()と化しているのだから。

 

 

「貴様……ドラゴンに腕を支払ったのか…?」

 

「まあな。左腕を支払ったおかげで俺は一時的に禁手に至ったけどな。……といっても基礎不足で6秒で直ぐ解けたけどな」

 

「なるほどな……しかし、お前とて分かっているはずだ。もう二度と元の腕には戻れないという事を!」

 

「そんなの先刻承知だ。腕一本で部長が戻ってくるなら安いものだと思ったさ。だが、まだもう一つ支払ってないやつがあるけどな」

 

「何っ!?まだ何かを支払うつもりか!……なら、その前に俺がお前を倒すッ!」

 

 

ライザーは背中の炎の翼を羽ばたいて加速し、俺との距離を詰めてくる。その時に俺は、ライザーと戦う前に俺の中にいるドライグ以外の存在である彼と契約の話を思い出していた。

 

 

〔…予め言っておくが、俺と契約したらお前の背中に阿頼耶識が出てくると同時に脳処理が追いつかない程の情報量がお前の脳に直接入ってくる。それが俺と契約する際の下準備だ。俺と契約する時は俺に力を求めろ。それでお前との契約が成立する〕

 

 

……確かそう言ってたよな?昭弘。俺は何としても部長を助けたい、だから……

 

 

「 俺の思いに応え、力を貸せ!()()()()!!」

 

 

そう叫んだその時、俺の頭の中で俺の知らない情報が沢山入って来た。その量は尋常じゃなく、“痛い”という言葉すら発せられないほどの痛覚が襲った。頭からは脳が焼かれるような痛みと背中から何かが突き破って出て来そうな痛み。かつて俺が体験したことがない痛みが俺の身体と頭に駆け巡った。

 

 

「ぐ……があぁっ!?」

 

《小僧っ!?》

 

 

痛ぇ……めちゃくちゃ痛ぇ。これほどの痛みをミカは体験したのか?その時に俺の頭にある声が聞こえた。

 

 

〔悪い、お前の身体と同調するのに手間取った。もう一度俺の名を呼べ、それで契約成立だ〕

 

 

なるほどな。さっきの痛みは俺と同調する為の下準備ってことか。……だったら俺のやることは決まっている。なぁ昭弘……これを言うのは二度目だ。

 

 

 

俺に力を貸せ、グシオンッ!!

 

 

 

〔あぁ、分かっている。契約は既に成立だ〕

 

 

 

一誠Side out

 

 

 

俺たちは一誠と畑の人の戦いを見届けていた。最初は一誠が赤い龍のような鎧を展開した。……あれって一体何だろう?

 

 

〔あれは小僧の持つ赤龍帝の籠手による禁手、赤龍帝の鎧だ。だが、あれは代価を支払うタイプのようだな〕

 

「それって…イッセーがイッセーじゃ無くなるってこと?」

 

〔正確にはあの小僧がドラゴンになるということだ。今の小僧は左腕を支払ってドラゴンの腕と化している。もう元に戻ることは出来ん〕

 

 

一誠がドラゴンに?カッコ良さそうだけど人間に戻れないとなると何かやだな。……そう考えていると畑の人が一誠に目掛けて接近した。その時に一誠が向かってくる畑の人の前で何かを叫ぶと急に一誠が苦しみだした。

 

……あの苦しみ方、俺は知っている。一誠がカラス女に殺されたあの時にバルバトスの声を聞き、脳に莫大な情報量が駆け巡って処理速度が追いつかず、釣り上げられた魚のように動けず鼻から血が垂れて気を失った苦痛だ。すると一誠の背中にある変化が起きる。それは……()()()()()()()()()が一誠の背中から突出した。一誠の背中から突出した突起物には血が付いており、背中からは血が流れていた。その一部始終を見ていたグレモリー先輩やレイヴェルは一誠の異常に驚いていた。

 

 

「イッセーっ!?」

 

「あ……あれは一体?」

 

「!……バルバトス、あれって……」

 

〔あぁ……間違いない、アレは阿頼耶識だ…!そしてあの小僧の中には奴がいる!〕

 

 

バルバトスも少しばかり驚いていて、一誠の中にバルバトスと同じガンダム・フレームがいると判明した。……それにしても、一誠は一体どんな奴と契約したんだろう?……でも、不思議と契約した奴がどういう奴なのか知っている気がした。その時に俺は、無意識にどこにもいないであろうその名前を小さく呟いた。

 

 

「………昭弘?」

 

 

涼夜Side out

 

 

 

赤龍帝の小僧がこれ以上何かをする前に勝負をつけようとした途端、小僧は俺の前で急に苦しみだしたと同時に背中からバルバトスを纏う小僧と同じ突起物が二つ突出して背中から血を流していた。一体何をするつもりなのかは知らんが、またとない好機を逃すわけにはいかん!

 

 

「これで終わりだ!兵藤一誠っ!!!」

 

 

そして俺は拳に魔力の炎を纏わせて小僧の顔面に叩き付けてた。

 

 

 

「……なっ?!何ぃっ!?」

 

 

 

……筈だった。俺の拳は小僧の機械人形の腕に変異した右腕に受け止められた。………いやっ腕だけではない。

 

 

 

バルバトスを纏う小僧と同じように()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

ただ一つ違いを入れるのなら左腕の方は赤龍帝の籠手のままだ。そう考えた一瞬の時間を見逃さなかった小僧は受け止めた拳をしっかりと掴んで俺を逃がさないようにした。

 

 

「……捕らえた!」

 

「…っ!?しまっ……!」

 

 

俺を掴んで固定したと同時に小僧の背中からもう二本の隠し腕が展開して赤龍帝の籠手を纏った左腕で俺に殴りかかる。俺はすぐに余った左腕でガードするも隠し腕が俺の頭部という急所に殴り当てる。

 

 

「ぐおぉっ!?」

 

「まだだ、まだ終わりじゃない!!」

 

 

そして小僧の攻撃は的確に急所ばかり狙ってくる。左腕に胴を叩き込まれれば隠し腕が頭部に叩き込まれる、それを小僧が俺の身体に繰り返し殴り掛かってくる。

 

この時に俺は理解した。この小僧は俺が不死身であることを理解して精神的に追い詰めるつもりだ!俺の拳は炎を纏わせいる分攻撃力はあるがその実、攻撃を当てる度に力が分散する。しかし、この小僧は神器で力をあえて倍加せずに小さく、鋭く、確実に急所のみを狙って来やがる!リアスが教えたとは到底思えん、…となるとアスタロトの機械人形の奴か?奴め……レーティングゲーム前の十日間の修行でなんて素晴らしいそして、なんて恐ろしいことを小僧に叩き込んだんだ……!中々どうして理に適った攻撃だ!敵の()()()()()()()()()()()()……!しかし、その様なことをアスタロト本人は教えてはいないことに気づくのは先の話であることを当時の俺は知る由もなかった。

 

 

「ぐっ……!調子に乗るな!!」

 

「なっ…ぐはっ!?」

 

 

ただ殴られ続けられる訳にもいかない為に俺は小僧を蹴飛ばして距離をとった。

 

 

「グゥゥ……!逃すかぁぁーっ!!」

 

「何っ!?まだ追って……ウガァッ!?」

 

 

しかし小僧は背中からスラスターらしき部分を吹かし、俺と肉薄したと同時に俺もろともに地面に叩きつけられた。それにより煙が舞い上がり、視界が曇って見えづらくなった。

 

 

「ぐ……貴様は本当に予想外でデタラメな奴だな!しかし、この婚約は悪魔の未来の為に必要な事だ!お前のような何も知らない下級悪魔がどうこうするような事じゃない!!それを分かっているのか、兵藤一誠ッ!!!」

 

 

俺がフェニックス家の再生能力で傷を癒ながらそう小僧に問いかけると同時に大半の魔力を炎に変え、拳に炎を纏い小僧がいると思われる所に殴りかかると鉄を殴ったような痛覚が拳に襲った。そして舞い上がっていた煙が晴れて小僧の姿を捉えた。

 

 

「っ!……んなっ!?」

 

 

巨大な盾らしき物をペンチに変えて俺を見る小僧の姿を……

 

 

「あぁ……そんなことは分かってる。だがな、俺は決めたんだ。部長の笑顔を守る為なら俺がどうなろうが構わない。もう元の姿に戻れなくなろうとも、俺は部長の笑顔を守る!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……理由はそれだけで十分だっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして小僧はペンチを開いて俺を鋏込んで地面に押し倒すと隠し腕と両腕でペンチに力を入れて俺を鋏潰しに掛かる。本来ならフェニックスの不死の能力で身体を切断させて直ぐに離脱したい所だが、俺は先の攻撃に大半の魔力を使い切った分精神力が著しく低下しており脱出が困難であった。

 

 

「ウゴオォォァアァァッ!!?ま……まさか、貴様の様なガキに俺がここまで追い詰められるとはな。兵藤一誠…!だが、俺とてタダで負ける訳にはいかん!」

 

 

ここに来て俺はある一か八かの賭けに出た。残された魔力を小僧の持つペンチから鋏込まれるのを運よく逃れた左腕の手に集め、バランスボールサイズの炎の球体を作り上げた。俺の言う一か八かの賭けというのは……

 

 

 

至近距離で爆炎の魔法にて小僧もろとも自爆することである。

 

 

 

「何っ?……まさかっ!?」

 

 

これを悟った小僧は少し焦りを生じた様だ。……だが、気づくのが少し遅かったな!

 

 

「勝負には負けるが……戦いだけは、勝ちは譲れん!お前も道連れだ、兵藤一誠ッ!!」

 

 

そう言って俺は出来上がった炎の球体を小僧の持つペンチに叩きつける。その瞬間、炎の球体から瞬時に光が溢れ出し、炎の爆炎が俺や小僧を巻き込んだ。

 

 

ライザーSide

 

 

 

ライザーの自爆に巻き込まれた俺は咄嗟に“シザーシールド”を手放して両腕をクロスさせて防御するが、あまりの爆風と灼熱が俺に襲う。赤龍帝の鎧と同様ある程度の火傷とダメージは受けなかったものの、グシオンこと昭弘と契約した時に阿頼耶識を通して脳に直接大量の情報が送られたり、阿頼耶識特有のピアスが背中から突出してそこから血の量は少なからず外に出血した分、今の俺は軽い貧血&脳震盪状態であった。俺は身体的に限界が近づいている為に今纏っているグシオンを解除した。

 

 

「ぐっ……!やっぱり二回立て続けの契約は身体に堪えたか。……ライザーは、どうなったんだ?」

 

 

今俺の目に映っているのはライザーの自爆によって出来た爆煙しか見えなかった。そして少し時間が経つと、煙が晴れてライザーを視認できる様になった。今のライザーの姿はボロボロの状態でフェニックスの再生能力が追いついていないのかライザーの身体には所々炎が出ていた。

 

 

「……っ!まだ、立っていたか……うぐっ!?」

 

 

俺は構えようにも身体が既にボロボロの状態で立っているのがやっとであった。

 

 

「くそっ!こんな時に……!」

 

「………フッ」

 

 

その時にライザーは薄っすらと勝利を確信して笑みを浮かべた。

 

……が、それが最後の力だったのかライザーはその場で倒れこんで気を失った。そして一部始終を見ていたグレイフィアさんの声で戦いは終わりを迎えた。

 

 

『ライザー様、戦闘不能。よってこの勝負、兵藤一誠様の勝ちです』

 

 

勝ったことで気が抜けたのか俺もライザーと同様に倒れた。.…正直言ってやるもんじゃないな。柄ではないことは?そして俺は左腕の方を見てみると左腕の二の腕部分まで皮膚がドラゴンの鱗で出来ていた。

 

 

「参ったな.……分かっていたとはいえこれは厄介だな。コスプレアイテムって言っても通じないだろうな。どうしたものか.……?」

 

 

そう考えながらも何とか上半身を起こすと部長やミカ、アーシアがやって来た。

 

 

「イッセーさん!大丈夫ですか!?」

 

「イッセー、大丈夫?生きてる?」

 

「あぁ.……どうにか、生きてるよ」

 

「イッセー.……」

 

「部長……何とか勝ちましたけど、こんなカッコ悪い姿ですいません」

 

 

俺は部長に対して不格好な姿に対して謝罪すると部長ははしゃがんで俺と目線を合わせた。そして……

 

 

 

「……馬鹿!」

 

 

 

部長は俺の頰に平手打ちをした。

 

 

「……部長?」

 

「貴方はどうして命を投げ捨てるような事をしたの!それに…貴方のその背中、私を助ける為に命を削ってまで.…私を……」

 

 

……どうやら部長は俺の命を投げ捨てるような戦いを見て怒っていたようだ。我が子を心配する母の様に泣いていた。……情けない話だ。部長の笑顔を守ると言っておきながら、その守るべき部長を泣かせてしまった。

 

 

「……すいません部長。これしか部長を取り戻す方法が無かったんです。だけど、俺は後悔はしてません」

 

「イッセー……」

 

 

その時に部長は俺にある思いを告げる為に俺の目と向き合った。

 

 

「……貴方のことは信頼しているわ。でも、もしまたライザーの時と同じように別の婚約者が現れた場合は貴方はどうするの?」

 

「その時は俺が部長を守ってみせます。強くなってこの龍帝の力とガンダム・フレームの力を使ってでも。……強化合宿の時に部長が俺にグレモリー家の者ではなく、ただリアス個人という一人の女性として愛して欲しいって言ってましたよね?前に俺が言いましたけど一人の女性としての、いつもの部長が好きって言ったんですけど、その……はっきり言うと、俺は………」

 

 

 

「リアス部長が……大好きです。……もちろん、異性として……」

 

 

 

「!………イッセー」

 

 

その後アーシアの神器で治療してもらい、何とか動けるようになった後に現魔王様であるサーゼクス様に謝罪した。そして部長を連れ帰る時にサーゼクス様から“グリフォンに乗らないのかい?”と言われた。だけど俺はそれを断って自分で部長を連れて行くと告げた後にグシオンのバッグパックを展開してミカたちに部室で会う約束をした後に部長を抱きかかえ、バックパックのスラスターを吹かしてこのパーティ場を後にした。

 

冥界から人間界までのルートはドライグが教えてもらっている為、道に迷うことはなかった。この時に部長が話しかけて来た。

 

 

「……ねぇイッセー、少しいいかしら?」

 

「部長?どうしたんです……っ!?」

 

 

すると部長が俺の唇を、自らの唇で塞ぐ。……って、えぇっ!?

 

 

「私のファーストキス、確かに貴方にあげたわ。大切にしてね?」

 

「お……応っ…?」

 

 

流石の俺でも予想外すぎて頭の回転が追いつかなかった。まさか部長からファーストキスを貰うとは思ってもいなかった。

 

 

〔ああ……その、なんだ。うまくやれよ〕

 

 

いやっ昭弘、頼むからその言葉は勘弁してくれ!そんな感じ俺は部長と共に人間界に戻るのであった。

 

 

一誠Side out

 

 

 

リアスを連れて人間界へと戻るリアスの兵士である兵藤一誠をフェニックス卿と共に見送った現魔王こと“サーゼクス・ルシファー”は縁談の破談について話し合っていた。

 

 

「フェニックス卿。申し訳ない。折角の縁談を」

 

「……いえ、私の方こそ申し訳ない。確かに純血同士の縁談は魅力でしたが、それ以上に価値があるものを見れましたので」

 

「……ライザー君ですか」

 

「ええ。息子はどのレーティングゲームにおいて足りなかったのは敗北だ。フェニックス家の再生能力。アレは一族の才能を過信しすぎた。……だが息子はその再生能力が低下した状況下でも目は死んではいなかった。兵藤くんと言ったかな?彼に礼を言いたかった。彼のおかげで息子は一皮剝けたでしょう。親としては息子の成長以上に嬉しいものはありませぬ。それに我らには既に純血の孫が居りますゆえ」

 

 

元を正せば自分たちの欲をリアス()ライザー(息子)に押し付けてしまったのが発端である。彼らにも自由に生きる権利がある。それを悪魔の存続の為という理由で彼らの意思を無視してことを進めてしまった。

 

 

「我々も少し、強欲すぎたのかもしれません。先の戦争で地獄を見たが故に……」

 

「ですね。……しかし、赤い龍にグシオンの名を持つ新たなガンダム・フレーム。あの忌々しき龍がこちら側に来るとは実際に目にするまでは信じ難いものでした。次はやはり……」

 

「えぇ。やはり……いやっ、必ずと言ってもいいでしょう」

 

 

 

白い龍

 

 

 

「やはりか。……赤と白が出会うのは時間の問題か」

 

 

先の見えない未来を思いながらもサーゼクス達は婚約パーティを中止するのであった。

 

 

____________________________________________

 

 

続く

 

 

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月光校庭のエクスカリバー
使い魔


 

 

一誠が畑の人と決着が付いてから数日という時が流れた。

 

変わった事といえばグレモリー先輩が一誠の家に住まうことになったそうだ。何でも花嫁修行? というのをする為に住まうらしい。そして一誠の左腕なんだけど、中にいるガンダム・フレーム“グシオン”こと昭弘はバルバトスが阿頼耶識を隠す為に認識阻害の魔法で左腕と背中に出た阿頼耶識を隠したそうだ。それにしても……昭弘って名前を聞いた時に俺の脳裏に今まで埋れていた記憶が急に浮かび上がったかの様に思い出したのが気になったけどそれは後回しにした。それと畑の人はグレモリー先輩から聞いた話によると一誠と決闘の後、強くなるために武者修行に出かけたらしい。

 

 

……なんか色々あったな、色々と……

 

 

そして俺は現在、放課後にオカルト研究部の部室である旧校舎でグレモリー先輩が一誠やアーシアの為にある事を告げた。

 

 

「「使い魔……ですか?」」

 

「ええ、貴方達もそろそろ使い魔を持っておいた方がいいと思って。使い魔は情報伝達や相手の追跡、様々な事で役立ってくれるの。 大抵悪魔は使い魔の一匹は持つものよ」

 

 

へぇ……使い魔ってそういうもんなんだ。……アレ?それじゃあアーシアのアスタロトみたいな感じのことをいうのかな? 

 

 

〔いやいや三日月……確かに俺は擬似阿頼耶識を通してアーシアと契約を交わしているが、俺は使い魔じゃなく悪魔の名を持つMSだからな? 〕

 

「使い魔じゃない?……じゃあ、使いMS?」

 

〔いやっ何でそうなる!?……というか使いMSって何だ? 初めて聞いたぞその名称!? 〕

 

 

アスタロトがツッコンでいるとドア越しに聞こえるドアをノックする音と凛とした声が聞こえた。

 

 

「失礼します」

 

「どうぞ」

 

 

その声は部室内にも響き、朱乃がその場で返答する。一秒ほどの間が空いてからドアノブに手をかける音がして、部室の入り口が開かれる。そこから入ってきたのは何人もの駒王学園の生徒達だった。この部室に入ってきた全員は見覚えのある顔だった。彼らの先頭に立っていたメガネをかけたショートヘアーの少女こと駒王学園の生徒会長“支取 蒼那”こと生徒会の人。

 

 

「あっ……会長の人」

 

「支取蒼那です、三日月くん」

 

「あらっ……三日月、貴方ソーナと会っているのかしら?」

 

「え? そうだけど……確か、アーシアがこの学校に通う前の頃に一度生徒会の仕事を手伝ったことがあったんだ。その時に会った」

 

「その時はお世話になりました」

 

 

その時の仕事というのは書類の搬送作業や荷物の整理の手伝いだった。あの時は束になった書類を崩さずに運ぶのに苦労したのは俺だけだったような気がする。

 

 

「そういえば紹介が遅れたわね。イッセー、アーシア。改めて紹介するわ。こちらは“支取 蒼那”。さっき三日月が言ってた通りこの学園の生徒会長よ」

 

「よろしく兵藤くんにアーシアさん」

 

「こ……こちらこそよろしくお願いします!」

 

「ど……どうも、よろしく」

 

 

一誠とアーシアが会長の人と挨拶を交わした後にその会長の隣にはスプーンの人がいた。

 

 

「あっスプーンの人、アンタもいたんだ」

 

「匙だっつうの!もうそのあだ名は勘弁してくれ!?」

 

「あーっ……ここにもミカの天然性の犠牲者が……」

 

「また三日月なの?……はぁっ」

 

「あはは……」

 

「三日月先輩……」

 

「あらあら……」

 

 

みんなはみんなで呆れてる様な感じを出していた。……なんか俺だけはぶかれている様な気分だな。そもそも何で会長の人がスプーンの人を連れてきたのかグレモリー先輩が話していた使い魔のことと関係しているそうだ。その結果、スプーンの人と一誠、アーシアの使い魔を探す為に使い魔の森と呼ばれる場所に向かうことになった。因みにグレモリー先輩が俺に使い魔はいらないかと聞かれたけど俺にはバルバトスがいるからと言って断った。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

木々が生い茂る森。周囲の景色が赤く見える奇妙な森。

 

 

通称 “使い魔の森”

 

 

そう呼ばれる場所に魔法陣を介して転移して来たのは良いものの、中々不気味な場所だ。

 

 

〔あぁ……俺もこんなに不気味な場所を初めて見るが、慣れれば問題はない〕

 

 

婚約パーティにてライザーに勝利した後も俺の中に居る明宏もこの不気味な場所は初めてであるが慣れれば問題ないそうだ。……というかそう言うものなのか? 

 

 

「使い魔ゲットだぜ!!!」

 

「うぉっ……! 何だ!?」

 

 

そう考えていると突如聞こえる大きな声。その声の元は俺達の目の前にある大きな樹に登っていた中年の男性。しかしその服装はまるで夏休み中の小学生と称するような服であった。

 

 

「部長……あれはなんですか?」

 

「彼が使い魔マスター“ザトゥージ”よ。 安心して見た目は変かもしれないけど腕は確かよ」

 

「……なんか胡散臭い」

 

 

目の前の使い魔マスターを見て、ミカは容赦なく毒舌を吐く。自分に合った使い魔探しはすこしばかり不安が生まれる俺であった。

 

 

 

それから色々なことがあった。使い魔マスターのザトゥージの案内の元、俺達は複数の使い魔候補を見て回った。ものすごく筋肉のついたウンディーネ、毒蛇のヒュドラなどを見て回り、俺やアーシア、匙にオススメと勧められた毒蛇のヒュドラを強要されているとミカがキレて無言でザトゥージを俺たちから引き離した後に左腕にバルバトスの腕部50口径機関砲を展開して容赦なく撃った。因みに弾丸はペイント弾だった為に大事に至らなかったものの、いきなり撃たれたザトゥージはそれ以降ミカの前で無理にオススメを強要しない様心に誓うのであった。その後ミカは部長に説教されました。ザトゥージは俺に最強クラスのドラゴンを勧めてきたのだが、今の俺には無理であることを最初から分かっている為に断った。

 

結局、俺は使い魔を見つけようも中々しっくりとこなかった為か捕まえなかった。その頃にアーシアは先ほど出会った着ている服を溶かすという力を持ったスライムに襲われたそうだ。その時にミカはそのスライムを原型をなくす位にメイスで叩き潰し、アーシアを助けた。その際にもう一匹のスライムが出て来てアーシアに襲いかかろうとした時に小さな蒼い体色をした可愛らしい小さなドラゴンがアーシアを助けてくれた。アーシアはその小さなドラゴンを気に入り、使い魔にした。そして小さなドラゴンもアーシアを気に入り、アーシアに懐いていた。

 

 

「キュー! キュー!!」

 

「うふふ、くすぐったいですよ」

 

「よかったな、アーシア。なぁミカ?」

 

「うん、よかったね。アーシア」

 

「はいっ! それじゃ……この子の名前は“()”くんです!」

 

 

その名前を耳にした時、俺の脳裏に痛みと電流が走った。暁という名前はいい名前なのだけど何かが引っかかる。何故かその名前だけはダメだと思った。……何でだろう? こう思ったの初めてだ。

 

 

「……っ、何だ?」

 

「ミカ……?大丈夫か?」

 

「うんっ大丈夫。……でも何だろう? 俺はその暁って名前、悪くはないんだけどもっと大事な名前の様な気がして……」

 

「そうですか?暁という名前が良かったと思ったのですが……」

 

 

アーシアが残念そうな顔をしていた。ミカはせっかくの名前を決めたのに。

 

 

「ごめんアーシア……。暁って名前はいいけど……俺自身、何かその名前に引っかかるんだ」

 

 

そう謝罪しつつも俺がミカのフォローに回ろうと名前を即席で“ラッセー”と付けた。小さなドラゴンはその名前が気に入ったのかかなり喜んでいた。アーシアもラッセーという名前も良く思い、小さなドラゴンの名はラッセーと決まった。

 

 

 

結局のところ、俺とミカの使い魔探しは相性の良い使い魔は見つからなかった為、俺たちの使い魔は無しになった。匙の方は聞きそびれてしまった為どんな奴なのか判らない。そして今現在、今日は部室のある旧校舎に清掃が入る為に今回の部会は俺の家で行うことになった。

 

 

……しかし、俺にとって面倒なことが起きた。

 

 

母さんが俺が小さい頃のアルバムを持ってきてみんなに見せたのだ。ミカならまだともかく、他のみんなに見せられるのは流石に恥じらいを感じる。あの時は俺がまだ老人のおっぱい話を真に受けていた為に俺はミカに何度も注意されて助平という悪影響がない普通の人間に戻ったのは俺にとっての秘密なのだが、もはや……秘密もプライバシーもなかった。

 

 

「イッセー先輩の意外な赤裸々の過去……(プッ)」

 

「ちょ……小猫ちゃん!? 俺の黒歴史を暴露しないで〜〜!!」

 

「小さいイッセー小さいイッセー小さいイッセー……!」

 

「部長さん! その気持ち、分かります!」

 

「アーシア!」

 

 

あーもうっもはや混沌(カオス)の領域だよ。小猫ちゃんは俺の黒歴史を見て笑っちゃっているし、部長とアーシアは小さい頃の俺やミカの写真やらを見て何やら意気投合してるし。そんでもってミカや木場はどうなんだろうか? 

 

 

「あっ……これ、イッセーと俺が海で一緒に泳いだ写真だ」

 

「へぇ、本当に君たちは仲が良かったんだね?」

 

 

どうやら二人も意気投合している様だ。もう俺ですらどうにもならなかった。

 

 

〔諦めるしかないな、こいつは……しかし、家族か……〕

 

〔家族の写真か……そういえば俺の二代目の奴も嘗ては家族が居たんだったな〕

 

〔……お前もか? 〕

 

〔あぁ……そうだが、行ってなかったか? 〕

 

 

アスタロトと昭弘は何やら自分たちの家族について話し合っていた様だ。……最もアスタロトは二代目のパイロットのことを言っている様だが。そんな状況に木場は俺のアルバムの中にある()()()()()を見てその目つきを鋭くさせた。

 

 

「イッセーくん。この写真なんだけど……」

 

「これか……? これは確か近所に住んでいた子だ。よくミカと一緒にヒーローごっこして遊んでたんだけど、……あの時のミカは容赦がなかったというか何というか……。小学校へ上がる前に親の転勤とかで外国へ行っちまった」

 

「それって確か……“紫藤イリナ”っていう女の子?」

 

「そうそう、確かそういう名前……えっ?」

 

 

ミカが俺たちと一緒に遊んだ相手の子の名前を思い出したのは良いが、問題はそこじゃない。写真に写っているイリナって子が男の子ではなく、女の子だったっていうことだ。

 

 

「……あのさミカ、イリナが女の子って……マジ?」

 

「当たり前じゃん」

 

「……マジか。元気活発な子だったからてっきり男の子かと思ったよ」

 

「あーっ……二人とも、少しいいかな? この写真に写っているこの剣に見覚えは?」

 

 

俺たちが過去のことを思い出している中、木場は俺たちに写真に写っている西洋剣について問い出してきた。

 

 

「これか? うーん……ガキの頃すぎてあまり覚えてないな」

 

「俺も。……ていうか、俺はそういうの興味なかったから覚えてないけど……」

 

「そう……でも、こんなことがあるんだね。思いがけない場所で見かけるなんて……」

 

「ねぇ木場、この剣……何か知っているの?」

 

 

 ミカがそう木場に聞き出すと、木場はミカの問いに答えた。

 

 

「これは……聖剣だよ」

 

 

怒り、憎しみと言った負の感情をその瞳に揺らぎながら……

 

 

一誠Side out

 

 

 

それから数日が経ち、この時期になると学校行事の一つである球技大会が近づいていた。何でもこの球技大会は部活対抗戦があるそうだ。その球技大会の種目は当日発表まで不明だそうなので今現在はグレモリー先輩と部員全員で部活前に球技の練習をしているのだった。因みに今回の球技練習は野球の守備練習らしい。俺は野球のことはあんまり詳しくないんだけど、多分簡単なんだと思う。ただ単純に、投げて、打って、走ってを行う競技だと思う。

 

 

〔…多分そう思っているのはお前しかいないぞ?〕

 

「そういうもんか?」

 

「三日月、よそ見はしない!ほらっボール、行くわよ!」

 

 

バルバトスと話している内にグレモリー先輩がバットでボールを打ち込み、上空へ打ち上げる。その時に俺はバルバトスの地上用スラスターを展開し、スラスターのガスを吹かしてそのまま上空に飛んで打ち上げられたボールをキャッチする。

 

 

「ちょ……三日月!?バルバトスを展開しないで!練習にならないでしょう!」

 

「あっ……ごめん」

 

「おいおいミカ……球技大会でバルバトスを公に晒したら幾ら何でも面倒なことが起きるぞ」

 

〔……それ以前にだ。俺を戦い以外のことで使わないでもらいたいのだが……〕

 

 

グレモリー部長とバルバトスに怒られて俺はバルバトスを使わない様に球技練習をした。その時に木場の様子が変だった。一誠の家であの写真を見て以来、上の空になってボーッとしてる時が多くて今でもグレモリー先輩が打ったボールを取り損ねる場面がちらほらあった。

 

 

 

そんな感じで一週間が経ち、球技大会が始まった。最初の戦いは個人戦で、グレモリー先輩と会長の人とのテニス対決だった。けど、グレモリー先輩と会長の人の戦いは凄いものだった。

 

 

「凄いんだな……会長の人」

 

「応よっ!……てか、まだ会長のことを会長の人って言っているのか?」

 

「……ていうか、スプーンの人は何やってんの?」

 

「……もうツッコミ疲れたぜ。俺たちは会長を応援してんだ。そっちはグレモリー先輩の応援しに来たんだろ?」

 

「そうだけど……あれはもはや試合というか死合いに近い様な気がするんだが……」

 

〔俺には分からん。……気にしたら負けだろう〕

 

 

一誠と昭弘は二人の戦いを見てもはやなんとも言えない様な感じだった。それで二人の戦いなんだけど、両者のラケットが壊れて同意優勝で方がついた様だった。その次は部活対抗戦で、種目はドッチボールで俺たちの最初の相手は野球部だった。

 

 

「狙え!兵藤を狙うんだ!!」

 

「…おいおいおいおいおいっ!てめぇら俺ばっか狙いやがって、ふざけんな!!」

 

〔一誠お前……この学校で一体何をやらかしたんだ?〕

 

「俺は何一つもやらかしてねえぞ!」

 

 

その野球部の者たちが何故か一誠だけを狙っていた。その理由はどうしようもない理由だった。

 

 

「二大お嬢様のリアス先輩と姫島先輩に当てられるわけないだろ!」

 

「癒し系金髪美少女のアーシアさんと学園のマスコット的ロリロリ少女の小猫ちゃんにも当てられん!」

 

 

 

肩書きのことはどうでもいいけど、ただ単に女性には当てたくないという願望が丸見えだった。……本当にこれはひどいと思った時にある野球部員が一誠たちに対して言った。

 

 

「木場は当てると女子が怖い!三日月はと思ったが、強すぎるため論外!ならば兵藤、貴様しかいない!」

 

「お前なんかが美男美女揃いのオカ研にいるのが解せん!」

 

 

その言葉に俺は少しだけキレた。……一誠がオカ研にいるのが解せない?それを決めるのはお前らじゃないんだよ。

 

 

「マジでふざけんな!……うわぁ、あぶねっ!?」

 

「死ね野獣!イッセーを殺せぇ!!」

 

 

野球部員の一人がボールを受け取り、そのまま一誠に向けて投げる。その時に俺はボールが一誠に直撃するところに手を出して、片手でボールを掴んだ。流石の野球部員たちや一誠たちも驚きを隠せなかった。

 

 

「なっ!?ボールを……片手で?」

 

「み……ミカ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、何これ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 

俺に聞かれたことに戸惑いを隠せない野球部員は間抜けな声をあげた。

 

 

「これは……何?」

 

「やばい……やばいやばいやばいっ!三日月がキレたっ!!」

 

「アレッ?俺たち、三日月をキレる要因を作ったっけか?」

 

 

俺がキレたことによって野球部員たちがたじろぐ中、野球部のキャプテンが何かを思い出した様だ。

 

 

「アーッ!!思い出した!三日月は親友や仲間に対して侮辱や傷つける行為はその者を確実に許さないというのを忘れてた!つまり、イッセーは三日月の親友であり、俺たちは知らぬ内に三日月の逆鱗に触れてたんだ!」

 

 

その野球部のキャプテンの視点で見てみると、三日月の背後にバルバトスが浮かび出ているかの様に野球部員たちをにらみつけていた。俺はそのボールを投げて来た野球部員に向けて思いっきり投げつけた。

 

 

「ちょ、早っ……オブゥッ!?」

 

 

その野球部員はボールをキャッチしようとしたが、ボールがあまりにも早すぎてキャッチできずに直撃し、アウトになる。

 

 

「くそっ!こうなったら恨まれてもいい!イケメン、覚悟ぉっ!!」

 

 

すると他の野球部員はボールを回収して標的を一誠から木場に変えてボールを投げつける。しかし、木場はまた上の空になっていてボールが迫っていることに気づかなかった。

 

 

「…!おいっ木場!何ボーッとしてやがるんだ!避けろっ!」

 

「……えっ?」

 

 

このまま木場に直撃すると思われたが、何とか俺がボールを片手で再びキャッチする。

 

 

「…あっ三日月くん?」

 

「あっぶねぇ………なぁぁああっ!!」

 

「(あっ……これ避けられね)…ハンブラビッ!?」

 

 

キャッチしたボールをそのまま投げた奴の方に思いっきり投げ返した。そして木場に投げて来た野球部員は狭っくるボールに対してキャッチするのは不可能だと悟り、そのまま顔面に直撃する。ドッジボールのルール上、顔や頭にボールが当たった場合はセーフなのだが、直撃した当の本人は当たりどころが悪く、気を失って倒れる。その時に審判がこの状況を判定した。

 

 

「オカ研、危険ボール!三日月涼夜、退場!」

 

「……あっ」

 

 

つい怒りに身を任せて行動していたが、結局のところそれが裏目に出てこのような事態を招いてしまった。気付いた時には既に後の祭りだった。流石にボールを相手の顔に向けて投げた訳じゃないけど審判の判定上仕方なく指示に従った。その後は一誠たちは俺抜きで何とか部活対抗戦で優勝するのであった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

三日月たちが駒王学園の球技大会で活躍している一方、電車から降りて駅前でとある三人のエクソシストがある目的のためにこの駒王町に訪れていた。

 

 

「う〜ん!久しぶりの故郷(日本)に帰って来たらほんと懐かしいわ!」

 

「イリナ、いくら故郷に来たとはいえ任務を忘れるな。我々の任務は……」

 

「えぇ、分かってるわゼノヴィア。()()()君も今回はよろしくね」

 

「えぇ、こちらこそお願いします」

 

 

この三人のエクソシストが来たことでこれから起きる事件が思わぬ展開として待ち構えていることを今のエクソシストたちや三日月たちは知る由もない。

 

 

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続く

 

 

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忌むべき過去

 

 

球技大会に無事に優勝した俺達。終わった後には雨が降り出していた。そんな雨の時間帯に俺と木場は部長に怒られていた。俺のは危険ボールで他の人に迷惑をかけてしまったこと。そして木場は部長に頬を平手打ちで叩かれた。先ほどドッチボールの試合中に上の空になっていた事である。

 

 

「どお?少しは目が覚めたかしら?今回の部活対抗戦、何とか優勝はできたのだけど、チームが団結しないとならない場面で終始あなたの心ここにあらずだったわ。あの時、三日月がフォローに入らなかったら怪我を負ってしまう所だったわ。下手をしたら私たちに危険が及んでいた。……あなた自信に一体何があったの?」

 

 

そうきつく言うが部長は木場の事を心配していた。しかし、木場の表情は何かに囚われているかの様に目のハイライトが消えかかっていた。

 

 

「木場……?」

 

「あっ……ううん。何でもないよ、三日月くん。部長、大会では申し訳ありませんでした。調子が悪かったみたいです。もういいですか?球技大会も終わりましたし……〔随分な物言いだな?木場〕っ!……アスタロトさん」

 

 

木場が部長の言葉を流す様にここを去ろうとした時にアスタロトに声をかけられて去るのを止めた。そして一誠たちがやって来て少し場の空気が重くなった。

 

 

「木場……あの写真に写っていた剣を見て以来、お前最近少し変だぞ?」

 

「祐斗先輩……」

 

「木場さん……」

 

 

それぞれは木場のことを心配していた。しかし、木場はみんなのことを見ているのに見ていない様な感じだった。

 

 

「……僕は大丈夫。ただ、基本的な事を思い出していたんだよ。僕が“何の為に戦っているか”を」

 

「基本的な事……?」

 

「部長の為じゃないのか?」

 

「違うよイッセーくん……僕は復讐の為に生きている。聖剣“エクスカリバー”を破壊する為に。それが僕の戦う意味だ」

 

 

木場はエクスカリバー?という剣を破壊するのが木場にとって生きる理由だというけど、そもそもエクスカリバーって何?

 

 

〔エクスカリバーはアーサー王伝説に登場する、アーサー王が持つとされる剣だ。魔法の力が宿るとされ、ブリテン島の正当な統治者の象徴とされることもあるとも言われている。……だが妙だな?〕

 

 

バルバトスがエクスカリバーについて説明してくれた。そのエクスカリバーって剣はそんなに凄い剣なんだ?俺にはよく解らないけど。……だけど、バルバトスが言う妙って何だろう?

 

 

〔そもそもエクスカリバーは湖の乙女に返却されたという伝承がある。……だが、もうこの世に存在しない筈のエクスカリバーを木場は憎んでいるのかがこれが解らん〕

 

〔……これは俺の勘だが大方あれだろ?そのエクスカリバーを再現しようとした連中がいて、エクスカリバーのレプリカ(模造品)を作り上げた。そんで木場は、そのレプリカのエクスカリバーに対して憎しみをいだいている。違うか、木場?〕

 

 

バルバトスが考える最中、アスタロトがそのエクスカリバーの経由を推理して木場に問いかける。木場はアスタロトに図星をつかれた表情をしていた。

 

 

「……まさかアスタロトさんが僕の過去について言い当てるなんて思いもしませんでした」

 

〔あくまで勘だ。……それとグレモリー、木場の件は俺に任せてくれないか?〕

 

「アスタロト……?」

 

〔こいつの目は二代目の契約者と似ている。二代目の契約者の家族を殺した俺達と同じガンダム・フレーム……正確にはその契約者を殺す為に家族の仇かもしれない俺を利用してな〕

 

 

アスタロトから意外な過去を聞かされた俺と一誠たち。その結果、グレモリー先輩はアスタロトの案を呑み、木場のことを任せるのであった。そしてアスタロトはアーシアから木場と一緒に行く事になることを伝えて、木場と共に学校を後にした。……因みにバルバトスから聞いた話によるとアスタロトは姿を消せる魔法で自身の姿を消して木場と共に行動している様だ。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

俺はこの世界で得た魔法で姿を消して木場と共に町中を歩く最中、俺は先ほど話した二代目の契約者の過去の続きを話していた。

 

 

「……じゃあ、その二代目の契約者は家族の仇かもしれないアスタロトさんを利用してまで本当の仇であるアスタロトさん達以外のガンダム・フレームを?」

 

〔前にも言ったが、正確にはその契約者だな。それと、その家族を殺したガンダム・フレームの名は契約者が右腕の義手で直接俺と擬似的に繋がっていた為に分かる。その契約者の家族と右腕を奪ったガンダム・フレーム……“ガンダム・セーレ”。それが二代目の契約者が探している仇のガンダム・フレームだ〕

 

 

木場は二代目の契約者こと“アルジ・ミラージ”が辿った過去がその様な悲劇に見舞われていた事に驚きを隠せなかった。そして何より、その家族の仇かもしれないガンダム・フレームであるアスタロトを使ってまでも仇であるガンダム・セーレとそのパイロットを探しているのだった。

 

 

〔まぁ……俺とて敵が同じガンダム・フレームであろうと、契約者と共に戦場を駆け抜け、生き延びるしか俺達作られたガンダム・フレームの運命(さだめ)だがな〕

 

「……でも、それじゃあアスタロトさんが報われないじゃないか。いくら僕でも復讐の為に復讐の対象であるエクスカリバーを使うわけには……」

 

〔俺も含め、他のガンダム・フレームは厄祭戦が終結した時には既に御役御免だったのさ。別に慰めてくれとは言わん。ただ、俺達はそれしか生き方が知らん存在さ。……それと、もう出て来ても良いんじゃないか?〕

 

 

俺の言葉を皮切りにコートを着た男が奇妙な剣で俺達に襲撃して来た。木場は神器である魔剣創造で魔剣を創り出し、俺は背部に背負っているデモリッションナイフを取り出してその襲撃者が持つ剣とぶつかり合った。その時に木場はコートを着た男の顔に見覚えがあった。俺の場合はアーシアとの契約で記憶を共有されているためその襲撃者が何者なのか分かった。

 

 

「やっほ、おひさだね!」

 

「フリード・セルゼン…まだこの街に潜伏していたのか」

 

〔俺の場合は初めましてと言うべきか?アーシアの件は世話になった様だな?〕

 

「おやおや〜っ?一人はご機嫌ナナメでもう一人は俺っちをぶん殴ったクソ人形野郎とそっくりな奴だな?」

 

 

このフリード・セルゼンという男、どうやら一度だけバルバトスを纏っている状態の三日月と一戦やり合った様だな?アーシアの記憶によるとアーシアを救出しに来たのは三日月が先だった様だ。

 

 

「…まぁおまえさん等のご機嫌なんざさらさら興味はないんだけどなぁ?俺っちにとって今は最高な気分でキミとの再会劇に涙ナミダでございますよ!」

 

「…その剣はッ!」

 

 

木場はフリードが持つ剣に見覚えがある様だった。するとフリードが自身が持つ剣についてベラベラと喋り出した。

 

 

「これっすか?こいつはエクスカリバーっつう聖剣様でございますよ!おまえさんの魔剣と俺様のエクスカリバー、どちらが上か試させてくれないかね?もちろん、お礼は殺して返すからさぁ!」

 

 

そういってフリードはエクスカリバーのレプリカで俺達に斬り掛かろうとする。だが、その動きは人間の動きではなかった。俺にとっては過去の厄祭戦で戦ったMAより遅すぎた為に対処は容易かった。しかし、木場にとっては悪魔の駒(イーヴィル・ピース)ナイト(騎士)の恩恵によって敏捷性が高くなっているものの、相手は木場の動きについて来れるどころか追いつかれる一歩手前であった。……最も、復讐心に囚われている今の木場では一度勝っている相手に敗れるのも時間の問題だろう。

 

 

「…くっ!?」

 

「おーおー、かなり苦戦しているようだねぇ?俺っちが使う天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビットリィ)に為す術無く敗れるなんてどんな気持ちっすか?まぁ知らなくても良いけどな?何せ俺様が殺すんだからなぁ!」

 

 

フリードがいう言葉が正しければどうやらあのエクスカリバーのレプリカこと天閃の聖剣の恩恵でより敏捷性が上がっている様だ。道理で人間の限界以上に動ける訳だ。だが、どの道俺にとっては()()()()

 

 

〔……いつまでも、いい気になるな!〕

 

「あぁ…?うぉっと危なっ!?」

 

 

俺はデモリッションナイフを展開して刀身を伸ばし、そのままフリードに向けて振るう。フリードは自身の危機を感じ取って俺のデモリッションナイフを避けて距離を取ろうとする。しかし、それを逃がす俺ではない。俺は右肩に接続されている大型シールドに搭載されているサブアームを展開して腰に懸架している専用のアサルトライフルを掴み、そのままフリードに向けて撃つ。フリードは天閃の聖剣の恩恵で得た敏捷性を生かしてアサルトライフルから放たれる弾幕を躱すのであった。

 

 

「うぉっと危ない危ない。つーか、何で天閃の聖剣を持っている俺様の動きについて来れるんだ?」

 

〔あんなの俺が戦った化け物(MA)と比べたら化け物の方が早い。それに、エクスカリバーのレプリカがなきゃ戦えないんじゃお前は精々三流以下だな?〕

 

「ちっ!おまえさん、俺様を殴りやがったあのクソ人形と同じ様にむかつくな。…つう訳で死ね!直ぐに死ね!死ねよクソ悪魔ッ!!」

 

 

フリードは木場から俺へと標的を変え、天閃の聖剣の効果でスピードを上げ、真っ直ぐ俺に向かって突っ込んで来た。俺はデモリッションナイフを構えて迎え撃とうとするが、俺は上空から何かがくるのを感じた。

 

 

〔っ!俺ら以外の気配?……上か!〕

 

 

その時、上空から人の姿をした黒い何かが俺とフリードの間に落ちて来た。……いや、正確には降下して来た言うべきか。その謎の人の姿をした黒い何かは俺にとって見覚えのある姿だった。それは黒いグレイズだった。だが、俺達の前に現れた黒いグレイズは一回り大きかった。特に肩部の装甲と脚部のパーツが違っていたのだ。

 

 

〔あれは……!グレイズか?にしては大きさが違う……〕

 

〔見つけたぞ……!教会からエクスカリバーを奪った罪深き神父、フリード・セルゼン!!〕

 

 

その黒いグレイズはバックパックにマウントしている大型のアックスを取り出して、それをフリードに向けた。どうやらあのグレイズは教会の差し金のようだ。だが……あの時に現れたグレイズの軍団とは無縁なのかどうか分からなかった。

 

 

「ありゃりゃ?今度は教会の方が来た様だねぇ?まぁ俺っちとしてはちょうど良いけどなぁ?何せ俺様にはこの天閃の聖剣があるからなぁ!!」

 

 

フリードは突如現れた黒いグレイズに対して天閃の聖剣を構え直してそのまま斬り掛かろうとする。しかし……

 

 

 

〔貴様のその思い上がり、この私が正すっ!!〕

 

 

 

黒いグレイズがそういうと頭部センサーが開き、深紅の隻眼を晒すと同時に黒いグレイズが一瞬で消えた。

 

 

〔…っ!早いな。(……あの動きは、阿頼耶識か!)〕

 

「消えた?」

 

「あぁ?……っ!?」

 

 

フリードは突然目の前から黒いグレイズが消えたことに疑問に思った瞬間、後方から殺気の様なものを感じ取った。先ほどの黒いグレイズはフリードや木場を上回るスピードでフリードの背後を取ったのだ。そして黒いグレイズは手に持つ大型のアックスをフリードに向けて振り下ろす。その時にフリードは咄嗟に天閃の聖剣でその大型のアックスを受け止めるがスピードもパワーも黒いグレイズの方が上だった。その結果、フリードは黒いグレイズの攻撃を受け止めきれず地面に足をついたままそのまま後方へと吹き飛ばされる。

 

 

「だぁあああっもう!うぜぇッス!何すかそのインチキでデタラメじみたそのパワーとスピードは!?クソがっ!やってられっか!」

 

 

そういってフリードは懐から閃光手榴弾っぽいものを取り出してそれを地面に投げ捨てると、そこから眩い閃光が俺達を包み込んだ。

 

 

「くっ!」

 

〔目眩ましを……っ!奴は!?〕

 

 

閃光が収まった時には既にフリードの姿はなかった。この場に残っていたのは俺と木場、黒いグレイズだけであった。

 

 

〔……逃げたか。それよりもだ、そこの黒いグレイズ。お前は一体何者だ?〕

 

「…君は、一体?」

 

〔…申し訳ございません。その問いに答えられません〕

 

 

そう言って黒いグレイズはこの場から離脱する様に上空へと飛び、そのまま姿を消した。……今回の件、後に大きな事件とつながりそうだな。

 

 

アスタロトSide out

 

 

 

アスタロトが木場と共に一緒に行動する事になってからの俺と部長、ミカとアーシアは俺の自宅で木場やアスタロトが言っていたエクスカリバーについて部長から聞き出した。その時に部長が“聖剣計画”と呼ばれる教会側の計画のことを話した。

 

 

「…聖剣計画?」

 

「えぇ……数年前まで聖剣エクスカリバーを扱える者を育てる計画が存在していたの。祐斗はその計画の生き残りなのよ」

 

「教会がそんな計画を?…初めて知りました」

 

「それってつまり、木場はそのエクスカリバー?って奴を使いこなす為に育てられたってこと?」

 

〔話から聞けばそうなるだろうな。この世界の悪魔に取っては聖剣は脅威となる兵器だからな。そのエクスカリバーのレプリカを使いこなす者が増えれば尚更悪魔側が不利だろうな。……だがグレモリーよ、その計画には裏があったのだろう?〕

 

 

アーシアは初耳だったらしく、バルバトスは聖剣計画について理解した様だった。俺にはよく分からないけど、そのエクスカリバー?ってのは厄介なのはよく分かった。そしてバルバトスはグレモリー先輩にその聖剣計画の裏について聞き出した。

 

 

「…えぇ、その計画には裏があったの。聖剣に適応が出来なかった者たちを“不良品”と評して殺傷処分したの。木場はその聖剣に適応出来なかった者の一人なのよ」

 

「そ…そんな。主に使える者がそのような事を……」

 

「木場にそんな過去が……」

 

〔俺達が元いた世界よりひでぇ事をしやがる連中がいたんだな。これじゃあ()()()()()()()()と変わらねえじゃねえか……!〕

 

 

昭弘が元いた世界の何かと比べて怒りを隠せないでいた。特に俺は昭弘が言うヒューマンデブリについて気になった。

 

 

「…ヒューマンデブリ?昭弘、それって何なんだ?」

 

「その言葉、私でも初めて聞いたわ。直訳しても悪い気分になるだけの言葉ね」

 

「昭弘さん…?」

 

〔そういえばお前達にはまだ話していなかったな。俺がヒューマンデブリだった頃の話を〕

 

「ねぇ、昭弘。それって俺やイッセー、アーシアの背中にある阿頼耶識と関係あるの?」

 

 

ミカはヒューマンデブリと関係ありそうな感じで昭弘に聞き出してみた。アーシアの場合は擬似阿頼耶識だけど阿頼耶識とヒューマンデブリ。どういう関係なのか俺も気になった。

 

 

〔昭弘、俺からも頼む。一応こいつらには俺達が体験した過去を話す必要がある〕

 

〔三日月のことか……〕

 

〔あぁ。もしかしたら三日月の記憶と関係するやもしれん〕

 

〔……分かった。大まかだが、ヒューマンデブリのことや俺がまだ生きてた頃、鉄華団について話そう〕

 

 

昭弘はヒューマンデブリや自身が生きていた頃の話をした。そしてバルバトスは昭弘の説明の補足を入れる様に俺達に分かりやすく説明する。

 

 

 

昭弘とバルバトスの説明から数十分が経った。内容からして酷いものだった。まずはヒューマンデブリだ。文字通り人間のゴミともいうがバルバトスがいうには孤児のことを示している様だ。昭弘達の世界の様々な孤児たちは奴隷の様な存在だった。あるものは少年兵として、あるものは性的な奴隷として自販機の飲み物の値段で売られ、使い潰されるだけの消耗品のような扱いを受けていた。特に昭弘の場合は少年兵として売られ、前にバルバトスが話してくれた有機デバイスである劣化版阿頼耶識システムを埋め込まれてMW(モビルワーカー)と呼ばれる小型の乗り物に乗せられて戦わされたそうだ。

 

ここから先は話が長くなりそうなので一部は割愛されたが、“オルガ・イツカ”という昭弘と同じ阿頼耶識を埋め込まれた少年兵が他の少年兵を率いて弾除けとして扱っていた組織を乗っ取って下克上を果たし、鉄華団と新たに組織を名乗り、破格の勢いのままに伸し上がって来た。しかし、二年後のある戦いに参加して鉄華団や他の孤児たちにとってのアガリを目指して戦ったが、敵の策が一枚上手でその戦いは敗北し、多くの犠牲を払いながらも鉄華団は無事に本部へと戻って来れたものの、既に敵が鉄華団を戦争犯罪者として世間に情報を回して彼らの逃げ道を塞いだのだ。

 

オルガは何とか生き残った鉄華団の団員と共に逃げ出すルートを探した。その結果、本部を自爆させて自分たちが死んだ様に見せつけて密かに生き延びる道を見つけたのだった。だが、運命はそんな彼を許しはしなかった。逃走ルートを見つけたオルガ達は鉄華団に伝えようとするが、道中に暗殺者(ヒットマン)達によってオルガと共に逃走ルートを探していた団員もろとも始末されそうになる。しかし、オルガはまだ若い団員を庇って自らを犠牲にしてまでも団員の命を守ったのだ。その時にオルガは襲って来た暗殺者の一人を倒し、まだ本部にいる団員を思いながらもある言葉を残してこの世を去った。

 

 

 

 

俺は止まんねえからよ……お前達が止まんねえ限り、その先に俺はいるぞ…!

 

 

 

だからよ…………止まるんじゃねえぞ…………

 

 

 

 

オルガという団長を失っても鉄華団の団員でもあり、オルガの相棒でもある“三日月・オーガス”はオルガが残した言葉(命令)を果たす為に他の団員を逃がす為に殿を務める。その殿に昭弘も参加していた。三日月と昭弘は殿をしていた仲間も逃がし、敵の注意を引きつける様に足掻いた。しかし、その足掻きも火星の低軌道からの禁忌の兵器“ダインスレイヴ”と呼ばれる大型のレールガンが撃ち込まれ、三日月達は瀕死の状態に追い込まれるのだった。それでも三日月達は満身創痍でありながらもダインスレイヴの攻撃から生き延びたのだった。生き延びたとしても僅かな命しかないこの状況でもオルガの命令を果たす為に命尽きるまで最後まで足掻くのだった。昭弘は鉄華団が壊滅した原因でもあり、愛する者が殺されたきっかけを作った敵上官をシザーシールドでコックピットごと鋏み潰して仇を取った。三日月はバルバトスと最後の契約ことリミッターを外し、多くの敵を道連れにした。そして二人は己の役目を終え、この世を去った。

 

 

 

「…あなた達ガンダム・フレームにそんな過去があるなんて……」

 

「そんな…こんなの、あんまりです……!」

 

「昭弘、お前にそんな過去が……」

 

「…“三日月・オーガス”に“オルガ・イツカ”って名前、どっかで聞いた事があるな。(……でも、何処でだろう?本当に何時聞いた事があるんだろう?……もしかして、前に見た夢と関係してるのかな?)」

 

 

この時にミカは俺達より少し難しい顔をしながら一人考え込んでいた。

 

 

一誠Side out

 

 

 

その頃、例のエクソシスト達はこの駒王町でエクスカリバーを奪った犯人の足取りを探っていた。しかし、これといった情報が得られずにいた。駒王町のとあるカプセルホテルで明日の段取りを決めようとする中、アインは情報収集の為に単独行動することを二人に伝えた。最初は全員で行動した方が良いのではないのかとゼノヴィアは言ったが、アインは“問題ありません”と告げて一人で情報収集に向かっていった。アインが情報収集に向かってから30分が経過した。

 

 

「アイン君、遅いね……大丈夫かな?」

 

「彼の事は問題はないだろう。……だが、確かに遅いな。彼は教会に取って切り札でもあり、一歩間違えれば教会どころか三大勢力にとって脅威になりうる力を持っている」

 

「確か……“阿頼耶識”だったかしら?それによってあの黒い機械人形みたいな物を纏う彼って……?」

 

 

そうイリナとゼノヴィアが話し合っている時にアインが情報収集を終えて戻って来たのだった。

 

 

「イリナさん、ゼノヴィアさん、戻りました」

 

「あっ…アイン君。戻って来たのね」

 

「アイン、この街で何かめぼしい情報があったか?」

 

 

ゼノヴィアはアインに情報収集の成果を聞き出すとアインからあることを告げられる。

 

 

「はいっ。…先ずは、奪われた聖剣エクスカリバーの三本の内一本である天閃の聖剣が発見しました。その聖剣を所有していたのは、はぐれエクソシストのフリード・セルゼンです」

 

 

フリードが天閃の聖剣を所有していることをイリナ達に話すアイン。三人の次の行動はこの町を管理しているグレモリーとの接触を果たすことであった。そして今日の活動はここまでにしてそれぞれの部屋に戻り明日に備えるのであった。部屋に戻ったアインは前の世界、前世の嘗ての上司である二人の名を言い、自分に言い聞かせる様に唱えた。

 

 

「クランク二尉、ボードウィン特務三佐。俺はこの世界でもあなた方の誇りと意思を次ぎます。そしてイリナさん達を守ってみせます……!」

 

 

エクソシストでありながら主にではなく前世の上司に祈りながらもアインは明日に備えて眠るのであった。

 

 

____________________________________________

 

 

続く

 

 

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教会の使者とかつての敵

 

 

木場の過去、そして昭弘とバルバトスが体験した過去を聞いてから既に時間帯は深夜になっていた。今夜は遅いという理由で母さんがミカとアーシアを家に泊まることになった。俺はというと、部長とミカ達が寝た後に少し水分を補給しようとコップに水道水を汲んで飲んでいた。

 

 

「木場の過去もそうだが、昭弘とバルバトスの過去もかなり酷いな。…特にヒューマンデブリって言葉。聞いても嫌になるな……」

 

《よう、相棒。思い出しているところ悪い》

 

 

すると突如と俺の脳裏に声が響いた。俺はこの声に聞き覚えがあった。それは俺の左腕に宿るドラゴンの声であった

 

 

「…っ!?ドライグか!……というか、ライザーの一件以降全然話しかけてこなかったがどうしたんだ?」

 

《まぁ…こっちも色々と俺の力と昭弘のいうグシオンの力を同調させる形で新たに調整をしてたんでな》

 

〔その割にはかなり時間がかかった様だな?〕

 

 

神滅具である赤龍帝の籠手とガンダム・フレームであるグシオンを同調させる?それってどういうことだ?

 

 

《お前の身体は未だに成長途中だからな。勝手ながらお前の中に宿るグシオンと赤龍帝の籠手を両方出せる様にグシオンの左腕を変えさせてもらった》

 

〔そのお陰で左腕部のグレネードランチャーが使えなくなったがな〕

 

《それはすまなかったな?いずれにせよ、お前がいつ“白い奴”と出会うかわからないからな》

 

 

ドライグはさっきから白い奴と言っているが、一体どういう奴なのか良く解らなかった俺はドライグにその白い奴について聞き出した。

 

 

「…なあ、前から訊きたかったんだけどその白い奴って何だ?ドライグと同じドラゴンなのか?」

 

《ほう……意外だな?相棒が白い奴がドラゴンであることに気付くとはな?……そうだな、白い奴とは白い龍“バニシングドラゴン”のことだ》

 

 

その後にドライグはまだ生前だった頃…つまり、神と天使、堕天使、悪魔の三大勢力による戦争当時の話をしてくれた。ドライグはかつてその白い龍と大喧嘩をしたそうだ。喧嘩した理由は喧嘩故に怒りが有頂天に達していた為かあまり覚えていなかったそうだ。…それはそれで最悪だな。

 

その大喧嘩に巻き込まれた三大勢力は互いに協力し合い、ドライグ達を倒そうと一致団結したそうだ。三大勢力は数多の犠牲を出しながらも何とかドライグ達を倒し、魂を神器に封印することに成功した様だ。……しかし、敵対する三大勢力が同盟する理由がドライク達の喧嘩なんてな。正直言って“何やってんだドライグゥ!!”と叫びたかったのは内緒である。

 

魂を神器に封印されたドライグ達は人間を媒介にして幾度も世代でその白い奴と何度も出会い、戦う様になったそうだ。媒介である人間が死ねば神器であるドライグ達も機能を一時的に停止して次にドラゴンの力を宿せる人間が生まれてくるまでこの世に魂を漂わせるそうだ。そして俺がそのドラゴンの力を宿せる今代の赤龍帝に選ばれたってことか。

 

 

《そうだ。俺はお前に宿り、お前は悪魔になった。さらには別世界の悪魔まで宿すと他の歴代では起こりえなかった事だ。別世界の悪魔の力を持つ悪魔を宿主とするのは長い年月でお前が初めての事だ。だから楽しみにしている。今回はどうなるのかを……な》

 

 

グシオンの力を宿した俺はドライグにとって歴代の赤龍帝の中で異例で初めての存在の様だ。まぁ、ドライグにどう言われ様が俺の答えは一つだ。

 

 

「……いいかドライグ。これだけは言っておく。俺は部長やミカ、仲間の為にこの力を使う。グシオンも同様だ。俺はライザーとのレーティングゲームが始まる前の強化合宿や婚約パーティに乗り込む前に俺はある夢を見たんだ。ガンダム・フレームであるグシオンが体験した記憶を」

 

〔それは恐らく俺がまだ生きてた頃の事だ。まさかイッセー……お前、俺の過去を無意識の内に夢で見ていたのか?〕

 

「多分そうなるだろうな。それに、知らず知らずに俺はミカに見られている気がするんだ。改めて思うとすげぇよ、ミカは。強くて、クールで度胸もある。小さい頃に初めて会った時はよくあいつに助平の道に進みそうだった俺を止めてくれた。さらには一人でアーシアを助けに行った。堕天使のレイナーレの事で部長に頼んでけじめを付けようとした時にミカの目は何かを期待している、若しくは狼が獲物を見つめる様な目をして俺に問いかけてきたんだ。“イッセー、俺はどうすればいい?イッセーの言葉次第で俺はあのカラス女を叩き潰すつもりだ。イッセー、アンタはどうしてほしい?俺はどうしたらいい?”ってな」

 

〔三日月が……そんな事を?〕

 

「あぁ。……あの目を見せられた俺は、あの目は裏切れないと思った。あの目に映る俺は、いつだって最高に粋がって、カッコイイ兵藤一誠でないといけないと思ったんだ。だから俺は強くなる。たとえ白い龍だろうと邪魔をする者が立ちはだかったとしても、そいつ等を全力でぶっ潰す…!」

 

《…はははっ!まさか白い奴を“だろうと”扱いとはな。その様に言う宿主はお前が初めてだ。今回ばかりは楽しみで仕方ないな》

 

 

ドライグと昭弘と会話しているうちに既に深夜の二時になっていた。流石の俺も悪魔とはいえ寝過ごして学校に遅れるわけにはいかない為に直ぐに寝るのであった。

 

 

 

それから数日後、学校から下校中にミカとアーシアと一緒に俺の家に向かっていた。何でも何か忘れ物をしたらしい。

 

 

「なぁミカ。一体俺の家で何を忘れたんだ?」

 

「畑に関する本や、野菜に関する本をイッセーの家に置き忘れてた」

 

「そう言えばお前、そういうの興味持っていたな。いつかやってみたいのか?」

 

「うん。まだ無理だけど、俺はいつか農場をやってみたんだ」

 

「農場ですか。それは良いですね、三日月さんならきっと出来ますよ!」

 

 

そう他愛もない会話をしながら俺の家に到着した。俺はドアを開けようとしたその時、俺の身体に悪寒が走った。あの時、俺が悪魔に転生して悪魔の仕事をしている時に感じた嫌な感覚…。それはフリードの様なはぐれエクソシストの様な感覚だった。俺はそれを感じ取って警戒したがミカは何事もなかったかの様に俺の家に入っていった。

 

 

「…お邪魔します」

 

「ちょ…ミカッ!?待てって!幾ら何でも…」

 

 

俺はミカを連れ戻そうとアーシアと共に家の中に入った。そしてリビングに入った時には母さんが女性のエクソシストの二人にお茶を入れてたところだった。

 

 

「あらっお帰りなさい。そんなに血相変えてどうしたのイッセー?それと三日月君じゃない。今日はどうしたの?」

 

「ちょっと、忘れ物してそれを取りに来たんだ。…ところで、今更なんだけどそっちの二人のうち一人はもしかして紫藤イリナ?」

 

 

そのエクソシストの茶髪の女の子は紫藤イリナだという事に気付いたミカ。……ていうかマジか、ミカ?あの頃ボーイッシュなイリナがこんなに綺麗な女性になっているなんて思いもしなかった。

 

 

「あらっ三日月君よく分かったわね?そうよ、あの頃は男の子っぽかったけど今じゃすっかり女の子らしくなって母さんもびっくりしたわ」

 

「こんにちは一誠くん、三日月くんと一緒に会えるなんてこれも主の導きね」

 

「あ…あぁ、あの頃は男の子かと思ったんだが、写真を見ている時にミカが女の子だって言わなかったら気がつかなかったよ」

 

「あはは…間違えるのも仕方ないか。あの頃の私は男顔負けにヤンチャだったからね。……それにしても、お互い会わないうちにいろいろあった様だね」

 

 

イリナはそう言っている時にもう一人のエクソシストがこっちを見ながら“いつでもいいぞ”と言わんばかりに微小な殺気を放っていた。その事を気にせずにミカはイリナと話を進めていた。

 

 

「うん、こっちはイッセーと一緒に駒王学園のグレモリー先輩っていうオカルト研究部の部長のところで部活動しているんだ」

 

「へぇ、そうなんだ。本当に…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

イリナはそう言いながら俺の方を見た。どうやら俺が悪魔になった事に気付いているようだった。ただ、ミカの場合は気付かなかったようだ。ミカの場合は悪魔っていっても別世界の、機械の悪魔だからかバルバトスの気配を察知することが出来なかった様だ。もう一人のエクソシストも同様だ。

 

 

「……何か遠回しでバカにしてる?」

 

「あぁ…ごめん。別にそう言う意味でいった訳じゃないの。安心して、今日はもう帰るから。久々に日本に帰って来たものだから懐かしくなってちょっとおじゃましたの。でもアイン君が待っているからここでそろそろお暇しましょうか。ゼノヴィア、行こう」

 

「あぁ」

 

 

イリナ達はここでエクソシストとしての活動を再開する為に俺の家からお暇しようとした。

 

 

「あらっ…もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

「また今度おじゃまさせてもらいますわ。それじゃあね一誠くん」

 

「私はいつでも構わないのだがな…」

 

 

そういってイリナ達は俺の家から後にした。その時に部長が俺達の事を心配していて安否を確認してから安心した様だ。そして部長から明日の放課後、学園の部室にイリナ達が訪ねてくるそうだ。部長曰く、生徒会の支取会長から聞いた話によると部長と交渉する為に来た様だ。……それにしても、イリナが言っていたアインって奴は一体誰だろうか?イリナと同じエクソシストだろうか?謎を抱えたまま次の日へと時が経つのであった。

 

 

一誠Side out

 

 

 

イリナ達がこの町に来てから翌日の放課後、グレモリー先輩が言ってた通りイリナ達が学園の部室にやって来た。木場はやって来たイリナ達……というより、イリナ達が持っている物に殺意を抱いていた。

 

 

「一誠くんたちは知っていると思うけど、私は紫藤イリナよ」

 

「…ゼノヴィアだ」

 

「あなた達の事はソーナから聞いてるわ。…ところで、後の一人は何処にいるの?聞いた話では三人と言ってたけど?」

 

 

グレモリー先輩がイリナ達以外のもう一人について聞き出して来た。その時にイリナの隣にいる青髪の女の人、ゼノヴィアがそれに答えた。

 

 

「あぁ…もう一人は今、単独で情報収集を行っている。もうそろそろ戻ってくる頃合いだが……」

 

 

ゼノヴィアがそういうと部室の扉から一人の男が入って来た。エクソシストの格好(白いローブ)をしているイリナ達とは違って、その男は幻想獣が七つの星が描かれている旗をつけた大きな角笛を吹いている様なエンブレムが付いた軍人が着そうな軍服を着ていた。

 

 

「すみません、遅れました!」

 

「遅いぞアイン。いくら情報収集とはいえ大事な交渉に遅れてしまっては意味はないだろう?」

 

「申し訳ございま……っ!」

 

 

その時、その男は俺を見た瞬間まるで目の敵を見つけたかの様に殺意が増し、そして俺に向かって来てどこから取り出したのか巨大なアックスを俺に向けて振り下ろそうとした。

 

 

「「「っ!?ミカ(三日月さん)っ!」」」

 

「「アイン(君)っ!?」」

 

「っ!」

 

 

俺は咄嗟にバルバトスを展開してレンチメイスを呼び出して振り下ろしてくる巨大なアックスを受け止める。その時に男の姿は前に戦った畑の人とのレーティングゲームで突如と現れたグレイズと似たデカい奴へと姿を変えていた。そこからはその男と俺の力比べだった。

 

 

〔貴様は…!私と同様にこの世界に来たのか!クランク二尉を手に掛けた罪深き子供…!〕

 

「…誰そいつ?」

 

〔貴様ぁっ!!〕

 

 

なんか訳の分からないことや、あった事のない人物を勝手に俺が殺した様な口ぶりで言っているが俺にとっては聞き覚えがないものばかりだった。そしてその男は開いた左手を高速回転しながらも俺に殴り掛かろうとする。それを見た俺は咄嗟に右手でその男の左腕を掴み、腕相撲の要領で組み合い、力尽くを以て抑え込む。

 

 

〔ぐうぅ…!〕

 

「ちょっと…じっとしてろ……!」

 

「三日月くん!そのままアイン君を抑えてて!」

 

 

するとイリナが白いローブに巻きついている紐を解く。すると、その紐はハリセンへと姿を変えた。そしてそのハリセンで……

 

 

 

「アイン君、少し落ち着きなさい!!」

 

 

 

〔え?……ぶほっ!?〕

 

 

思いっきり男の頭にド突いて、その男を無力化した。このシュールな光景にグレモリー先輩達は思考が追いついていなかった。するとイリナが俺に謝罪してきた。

 

 

「ごめんね、三日月くん。アイン君がなんか暴走して襲いかかってしまって……」

 

「別に気にしてないけど……あいつが言ってたクランクって誰?」

 

「ううん……私達でもその名前は初めて聞いたわ。アイン君は滅多に自分の過去を話したりしないの」

 

「…もう正直言って訳がわからないわ」

 

 

このような状況に流石のグレモリー先輩は頭を抱えていた。一誠たちは俺が怪我をしていないか心配していた。今回は怪我はなかったけど、あのデカくて黒いグレイズ。アレには見覚えがあるようなないような感じだった。

 

 

 

後からやって来た“アイン・ダルトン”という男が落ち着いた時には俺に謝罪をした。何でも仇であるバルバトスに乗っていた子供と瓜二つだったからか勘違いしてしまった様だった。因みに俺の立ち位置は悪魔陣営の協力者としてイリナ達と話を通しているそうだ。そして本題である交渉の内容は教会に保管、管理していたエクスカリバーのレプリカ三本が何者かに奪われたそうだった。イリナ達はそのエクスカリバーのレプリカを本物と思っている様だった。ただ、同じエクソシストであるアインだけを除いて……。因みにゼノヴィア持っていた布の中には“破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)”を呼ばれるエクスカリバーのレプリカを持ち、イリナがアインに対して無力化する為に使ったアレは色んな形に変化させることが出来る聖剣“義体の聖剣(エクスカリバー・ミミック)”だそうだ。

 

 

「そう……実は私の眷属がそのエクスカリバーのもったはぐれエクソシストと遭遇したわ」

 

〔確かフリード・セルゼンだったか?奴が言うには天閃の聖剣といった物と使っていた〕

 

「そうですか。実はアインが単独行動で情報収集している時にそのフリードと接触し、天閃の聖剣を所持していることをアインから聞きました。……それと、あまりツッコンじゃいけないのは分かっているけどこれだけは言わせて。……その機械人形の様な物?と言うより人?は誰ですかっ!?後、三日月くん。あなたさっきアインと同じ様に機械人形を纏えるの?」

 

 

イリナはアスタロトや俺がバルバトスを纏っているところを見た為か色々と動揺していた。とりあえず俺はこのままじゃ話が進みそうにないのでイリナの問いに答えた。

 

 

「うん。バルバトスと契約したら出来た」

 

「イリナ、色々と言いたいのは分かるが本題から外れているぞ」

 

「あっ……ごめんゼノヴィア。話を戻すわ、その奪われた三本のエクスカリバーなのだけどアイン君が新たに得た情報によると、その犯人は堕天使組織“紙の子を見張る者(グリゴリ)”の幹部“コカビエル”ということが判明したわ」

 

「堕天使の組織に!?それもコカビエルなんて聖書にも記された者の名が出るとはね…」

 

 

エクスカリバーのレプリカを奪った犯人は前に一誠を殺したあのカラス女と同じカラスの幹部であるコカビエル?という奴らしい。コカビエルって何か言いづらい。何かコーラとビールが混じった名前だな。それで青髪の子のゼノヴィアがグレモリー先輩に依頼というより注文は“教会の問題は教会でけじめをつける。悪魔陣営はこの事件に関わるな”だそうだ。教会の本部曰く、悪魔陣営が堕天使と手を組んでいる可能性があると考慮した結果だそうだ。グレモリー先輩は全くもって堕天使とは協力していないことを自分の名前にかけて宣言した。

 

 

「あぁ…私達も貴方がそこまでバカでない事くらいは知っているさ。今のはただの確認事項だ。ここからは私達三人でコカビエルからエクスカリバーを取り戻すつもりだ」

 

 

ゼノヴィアが三人だけでそのコカ………もうカラスのコーラの人でいいや。そいつからエクスカリバーのレプリカを取り戻すつもりだった。

 

 

「……例えそうだとしても、幾ら何でも無謀ね…死ぬつもり?」

 

「そうよ「いえ、違います!」…アイン君?」

 

「自分はともかく、二人は死ぬことはありません。俺が命をかけても二人を守ります!」

 

 

イリナ達は主の為ならこの身を捧げる覚悟だが、アインは違った。逆にこの身を捧げるのは主ではなくイリナ(仲間)達の為にであった。

 

 

「それは貴方の主への信仰だからかしら?」

 

「いえ、正直に言えば俺は主……神のことは信じてはいません。むしろ俺は俺の信じられる上官の誇りと意志を継ぐ為に戦うつもりです」

 

「アイン………私達の為に思うのは分かるが、いくら何でも主に対して口が過ぎるぞ」

 

「アイン君、貴方のいう事は分かるけど私たちは大丈夫だから」

 

 

イリナ達はアインに守られるほど柔ではない事を告げる。だけど、俺から見てもなんかイリナ達が危なっかしく見えるんだよな。何でだろう?

 

 

「申し訳ございません。しかし……」

 

「大丈夫よ、私達を信じて。ね?」

 

「……イリナ、アイン、私たちもそろそろここから出よう。要件は済んだ」

 

「あら、お茶の一杯くらい飲んでいけばいいのに」

 

「悪いが悪魔と馴れ合う気はない」

 

 

そう言ってイリナ達は部室を出ようとした時にゼノヴィアは何故かアーシアを方に向いた。

 

 

「…そういえば、兵藤一誠の家で出会った時にもしやと思ったが…“魔女”アーシア・アルジェントか?」

 

 

ゼノヴィアがアーシアの事を魔女と呼んでいた。魔女ってどういう事と思ったけれど、これだけは分かった。

 

 

 

こいつも俺の仲間(家族)に手を出そうとする奴という事を。

 

 

 

涼夜Side out

 

 

イリナ達がお暇しようとした時にゼノヴィアがアーシアの方を見て何かを思い出したのか彼女の事を魔女と称した。…アーシアが魔女というのはどういう事だ?

 

 

「あなたが一時期内部で噂になっていた元“聖女”さん?確か追放されて何処かに流れたと聞いてはいたけど、悪魔になっているとは思わなかったわ」

 

「…あ、あの…私は…」

 

〔おい、イリナと言ったか?俺の契約者に手を出そうというのなら俺が黙っていないぞ〕

 

 

イリナがアーシアが追放されたことを聞いてきた時にアスタロトはアーシアを庇う様に前に出てイリナ達に威嚇する。するとイリナは敵対する意思はない事を示す様に言葉で返した。

 

 

「そこまで敵視しなくても大丈夫よ。ここで見たことは上には伝えないから。“聖女”アーシアの周囲に居た方々に今のあなたの状況を話したらショックを受けるでしょうからね」

 

「しかし悪魔か。かつて“聖女”と呼ばれていた者が堕ちるところまで堕ちるものだな。しかも悪魔と化して悪魔を使えるとは。これでは“聖女”と慕われていた時とは真逆だな」

 

〔ほぉ…?言ってくれるじゃねえか。俺ならまだしも、契約者に対する侮辱は俺でも我慢ならねえぜ?ガキが〕

 

 

ゼノヴィアとアスタロトが売り言葉に買い言葉と一触即発な状態になっていた。何気にアスタロトって喧嘩に走りやすいんだな?…まぁ俺もゼノヴィアの言葉には一歩手前でキレそうになったけどな。するとゼノヴィアがアーシアにある事を聞き出した。

 

 

「…一つだけ聞きたい事がある。キミはまだ我らの神を信じているのか?背信行為をする輩でも、罪の意識を感じながら信仰心を忘れないでいる…それと同じものをキミから感じるんだ」

 

「…捨てきれないだけです。ずっと信じてきたのですから…」

 

「アーシアさん…」

 

 

アーシアは今でも神様に対する信仰を捨ててはいない。ミカがアーシアを悪魔に転生させた時に擬似阿頼耶識が付いてしまったが、神様に対する祈りによるダメージはある程度は減ったことで今も神様に祈りを捧げている。その時にゼノヴィアがアーシアにある提案……いや、脅迫紛いなことを告げる。

 

 

「そうか。ならば私達に斬られるといい。我々の神は罪深い君でも、それでも救いの手を差し伸べてくれるだろうからな。…せめて私が断罪しよう。神の名においてな」

 

 

そう言ってゼノヴィアは特殊な術式を施された布を解き、破壊の聖剣をアーシアに向けて斬り掛かろうとした。流石の俺も我慢の限界だった。だが、俺よりも我慢の限界のやつがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい……何を、やっている?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なっ!?」

 

 

そう。それはミカであった。ゼノヴィアが破壊の聖剣を振るう前に手首を掴み、止めていた。木場の聖剣に対する殺意がまだ可愛く見える程とてつもなく異常な殺気を放ちながらだ。

 

 

一誠Side out

 

 

 

アーシアに聖剣を振り下ろそうとする奴を止めたのは良いけど、こいつ……むかつくだな。神様とか信仰心とはあまり興味ないけど魔女とか、神の名の下にとか、そんなことで仲間が殺されるのは俺でも我慢ならなかった。

 

 

「ちょ…三日月くん!?」

 

「ミカっ!?」

 

 

一誠たちが何か言っているけど、今は話を聞ける状態じゃないな。

 

 

「貴様は……何故魔女である彼女に肩入れする?」

 

「別に……俺達の仲間を殺らせたくないだけ」

 

「聖女に友人など必要ない。聖女は神に愛される存在だ。そんなものが、他人から愛や友情を求める時点で聖女の資格はない。……っ!ぐ……あぁっ!?」

 

 

俺はゼノヴィアが言った言葉に怒りを抱いた。聖女という理由で友人は必要ない?そんなの誰が決めつけた?

 

 

「……アーシアに友人は必要ない?それを決めつけるのはお前でも、神とか言う奴でもないんだよ」

 

「ぐっ…!…では貴様は、彼女の何だ?」

 

「俺の友達で仲間、家族だ。アンタ等の御託なんて知らない。仲間に手を出す奴、俺達の前に邪魔をする奴は全部敵だ」

 

 

そう言って俺はゼノヴィアの手首を離し、バルバトスの左腕を展開して機関砲をゼノヴィア達に向けた。

 

 

「貴様……それは教会への挑戦か?」

 

「ゼノヴィアさん、いい加減して下さい!流石に今のは我々が悪いですよ!」

 

「なっ!?アイン!お前は奴に肩入れをするのか!?」

 

 

途中で割って来たアインがゼノヴィアを制しさせる。そしてイリナがゼノヴィアに説明をする。

 

 

「落ち着いてゼノヴィア。今アーシアを斬ったらそれこそ悪魔との交渉が無意味になるのよ。私たちの目的はアーシアの断罪ではなくエクスカリバーの奪還よ。それを忘れないで」

 

「……むぅ、納得はいかないが仕方ない」

 

 

ゼノヴィアは納得しないまま聖剣を下ろした。そしてアインがアーシアに謝罪した。

 

 

「…申し訳ありません、アーシアさん。あなたのことは聞いております。悪魔を助けた事で教会に追放されてしまったことを…」

 

「アインさん……」

 

 

なんかアインがアーシアが追放された理由を知っている様だった。

 

 

「あなたはどうかその慈悲と慈愛を忘れないで下さい。それは人、悪魔、天使、堕天使にもあるもので……ん?」

 

「あの……アインさん?」

 

 

喋っている途中にアインが突然喋るのを止め、黙り込んだ。その時に俺は嫌な予感を感じ取った。…これ、またヤバイ奴になるパターンだ。俺はイリナから紐に擬態している聖剣を借りた。

 

 

「…借りるよ」

 

「えっ…?ちょ!?三日月くん、それは聖剣使いじゃないと使えないよ!」

 

 

イリナはそう言っているけど、取りあえず駄目下でメイスをイメージした。するとその擬態の聖剣は俺の意思に答えたのかイメージ通りにメイスに姿を変えた。何で使えたのかは良く解らなかったけどまぁいいや。

 

 

「嘘っ!?」

 

「ん……丁度いい」

 

 

メイスに擬態した事を確認してアインの下に向かう。するとアインはアーシアを見て誰を連想させたのか突然黒いグレイズに変化して狂い出した。

 

 

〔クーデリア・藍那・バーンスタイン!……うぼぁっ!?〕

 

 

俺はメイスで発狂したアインをド突いて無力化させた。その時に何か華を咲く様な歌が聞こえた様な気がした。無事に無力かした後にイリナにメイスに擬態した擬態の聖剣を返した。

 

 

「これ、返すよ」

 

「えぇ……」

 

 

流石のイリナでもこの状況にはツッコミを入れようにもどうツッコめば良いのか判らなかった。それはグレモリー先輩や一誠たちも同じだった。その時にようやく我に返った木場がイリナ達に声をかける。

 

 

「……色々ツッコミ所はあったけど、君たち……というより、聖剣に用があるんだ」

 

「…誰だ、キミは?」

 

「君たちの先輩だよ。……失敗作だったそうだけどね」

 

 

木場は聖剣に対しての憎悪がさらに増していた。もはや誰もこの憎悪は止められなかった。

 

 

____________________________________________

 

 

続く

 

 

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狩人対聖剣、復讐者対元復讐者

 

 

俺達は旧校舎敷地内の庭に集まっていた。何故集まっているのかと言うと木場が聖剣に対して怒りと憎しみを剥き出しというのもあるけど、ゼノヴィアが俺と戦いたかったそうだ。主に俺が教会に対して敵だとか言った事に気に食わなかった様だったけど。グレモリー先輩は頭を抱えながらも木場の事を思い、止む無く私的な決闘を行う事になった。組み合わせ的に言えば俺対ゼノヴィア、アイン対木場、イリナ対一誠と言う形で決まった。

 

 

「始める前に一応確認しておくがこれは私的な決闘で、教会は関知しない。私達は事を大きくするつもりは無いしそちらも同じ認識という事でいいか?」

 

「えぇ。(そうでもしなきゃ祐斗の気が治まりそうにないもの)」

 

「リアス・グレモリー眷属の力。それに我々の“先輩”とやらの力。そしてバルバトスという機械人形を纏ったキミの力、試させてもらう」

 

 

ゼノヴィアは破壊の聖剣を構えていつでも仕掛けられる体勢に入る。俺はメイスと予備武装としてあまり使う事の無い太刀を装備する。決闘が始まる前に一誠が俺に話しかけて来た。

 

 

「ミカ、いいか?決闘とはいえ殺し合いは禁止だからな?出来る限りエクスカリバーを壊さず、殺さない様に手加減するんだぞ。いいな?」

 

「……分かった。出来るだけ殺さない様に努力してみる」

 

 

一誠に言われて何とか殺さない様に気をつけようとする最中、黒いグレイズに姿を変えたアインと木場が話し合っていた。

 

 

〔まさかキミがグレモリーの眷属だとは思いませんでした。あの時は貴方の身元を確認する暇もありませんでしから……〕

 

「それもそうだね。あの時は仕方ないと言いようが無かったからね。フフフ……」

 

〔……?笑っているのですか?〕

 

「うん……壊したくて仕方なかったものが目の前に現れたんだ。それがうれしくてさ」

 

 

この時の木場は何時もの木場ではなかった。ただ、復讐心に囚われた悪鬼のような感じだった。その時にアインが木場を見て何か悲しそうな目をしていた。

 

 

〔…一つ聞いてもいいですか?貴方は聖剣計画の生き残りですか?〕

 

「…!……今更そんなことを聞いてくるなんてね。本当ならキミを相手をしてる場合じゃなく聖剣の方を壊したいんだけど……」

 

〔それは出来ません。何故なら、私があなたを止めます〕

 

 

するとアインは背中に懸架している巨大なアックスを取り出して木場に向ける。そして木場も魔剣創造から生み出された光喰剣(ホーリー・イレイザー)を構える。そして一誠もイリナと戦う為に構える。その時にイリナが何かベラベラと語り出した。

 

 

「さぁ、イッセーくん!私がこのエクスカリバーであなたの罪を裁いてあげるわ!アーメン!」

 

「お…応っ。(アレッ…?イリナって“この子は関わっちゃいけない”タイプの子だったか?)」

 

 

最後にはアーメンと言っているけど、当の本人である一誠が唖然としていた。何とか我に返った一誠は戦闘態勢に入る為にグシオンを纏おうとした。

 

 

「…何がなんだか分からないが、いくぞ、グシオンッ!!」

 

 

《BOOST!》

 

 

一誠はそう叫んでガンダム・フレームのグシオンを纏った。だけどいつものグシオンとは違うところがあった。違うところをあげるなら左腕が赤龍帝の籠手に変わっていた事だった。

 

 

「…あれは、神滅具(ロンギヌス)!」

 

「嘘っ!?イッセーくんも三日月くんと同じ?それにその左手はまさか、赤龍帝の籠手?まさかこんなところで出会うなんて…」

 

〔アレは…ガンダム・フレーム!まさかイリナさんの幼馴染みにも宿しているなんて……〕

 

 

「イッセーくん達に気を取られていると怪我ではすまなくなるよ!」

 

 

 

二人がよそ見をしている最中、木場がアインに斬り掛かろうとするがアインの両肩から機関砲が展開されて木場に向けて斉射する。

 

 

「くっ!?…まさか機関砲が搭載されているなんてね!」

 

〔…貴方の剣筋といい、魔剣創造で創る剣。まさに貴方の怒りと憎しみを表しています〕

 

「あぁ、僕のこの力は無念の中で殺されていった同志の恨みが生み出したものでもある!この力で貴方を倒し、エクスカリバーを叩き折る!」

 

 

二人は剣とアックスでぶつかり合いながらも戦いを始めた。そして俺も武装を取り出そうとしたけど、一誠から殺さない様にと言われた為どの武装を取り出せばいいのか分からなかった。

 

 

「…どうしようか。……ん?」

 

 

その時にふと頭の中にある武装が思い浮かんだ。それは俺が使っているメイスを小型した物だった。それも二つ。俺は直感的にそれを使う事にした。アレなら加減出来そうな気がする。

 

 

「うん。思った通り、使いやすい」

 

〔ほぉ……それはルプスの時のツインメイスか。破壊力は劣るが小回りが効いて加減が出来そうな奴だな〕

 

「加減だと?……随分となめられたものだな!」

 

 

ゼノヴィアはバルバトスの言葉に癇に障ったのか聖剣を手に突っ込んで来た。俺は直ぐに横に除けた後に背後に回り込んで手に持つ小型メイスをゼノヴィアに叩き付ける。

 

 

「……っ!」

 

 

するとゼノヴィアは背後から攻撃してくる事を直感で判ったのか叩き込まれる前に聖剣を盾にして初撃を防ぐ。

 

 

「浅いか…!」

 

「…なるほど、悪魔の序列8番目の名はダテではないということか。しかし!」

 

 

ゼノヴィアは小型メイスことツインメイスを弾いてそのまま力任せに俺に向けて聖剣を振り落とす。その時に俺はアレを受けると不味いと思って回避に専念して後方へ飛んだ。するとゼノヴィアが持つ聖剣が地面に叩き込まれた瞬間に地面が抉れ、クレーターが出来上がっていた。この破壊力を見せつけたかのよに俺に言葉を掛けて来た。

 

 

「我が“破壊の聖剣”は破壊の権化!砕けぬ物は……!がっ!?」

 

 

だけど、実際隙だらけだったので俺は相手の言葉を聞く気もなく、ただ一誠の言われた通りに相手を殺さない様に加減して戦闘不能に追い込む事を考えてゼノヴィアに蹴りを入れこんだ。その時にゼノヴィアはまた直感で聖剣を盾にして蹴りを防いだものの、パワーがこっちの方が強かった為に倒れ込む。

 

 

「くっ…!まだだ!まだ終わりでは……!?」

 

 

俺は直ぐに倒れているゼノヴィアにマウントポジションで乗りかかり両手で持ったメイスを交互に叩き付け、何度も何度も急所を外し殺さないようにゼノヴィアに叩き込む。

 

 

 

何度も

 

 

 

何度も

 

 

 

殺さない様に、殺さない様に、殺さない様に、殺さない様に……

 

「くっ!?こうも不利なポジションを取られては……!」

 

 

ゼノヴィアは聖剣を盾にしながらもツインメイスの攻撃を防いでいた。一誠に言われた事を、懸命に全うする三日月。ゼノヴィアの持つ聖剣で防いでいるが、一撃一撃叩き込まれていく毎にスタミナが減っていく。想像を絶する重さのある一撃が聖剣で防いだとしても衝撃を殺しきれないのだ。小細工を様さない単純にして純粋な力。──暴虐と蹂躙が、ゼノヴィアを襲い続ける。しかし、そんな暴虐と蹂躙に終わりを迎える。

 

 

「……?何だ、攻撃が…止んだ?」

 

「……そうだった。エクスカリバー、壊したら駄目だったっけ?」

 

 

そう、三日月は教会のエクスカリバーを壊しては駄目という事を一誠にいわれたのだ。その事を守る為に攻撃を止めたのだ。

 

 

「あ…あぁ、こちらとしてはそうであると助かるが…?」

 

「…じゃあここまで。イッセーから言われているから、殺さない様にって」

 

 

そう言って俺はマウントポジションを解く為にゼノヴィアから離れる。残されたゼノヴィアはあの圧倒的な力を見せつけられ、未だに言葉が出なかった。そして俺は二人の戦いが終わるまで待った。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

俺はグシオンを纏ってイリナの持つ日本刀に擬態した擬態の聖剣に対抗する為にハルバードを呼び出す。

 

 

「それじゃあ、こちらもいくよイッセーくん!」

 

「…俺だって負ける訳には、いかねえんだっ!行くぞ!」

 

 

バックパックのスラスターから推進剤を吹かし、一気にイリナとの距離を詰める。イリナはいきなり俺が向かって来たことに驚いたのか横に飛んでよける。

 

 

「やるわねイッセーくん!でも、隙だらけだよ!」

 

「…っ!」

 

 

イリナの擬態の聖剣がグシオンを纏った俺の身体に斬りつける。聖剣による大ダメージを覚悟した俺だが、予想外なことが起きた。グシオンの装甲に傷がつく程度で自身に痛みが来なかった。

 

 

「……あれ?思ったより痛みがない?」

 

「…嘘!?私が使いやすい日本刀の形態でも斬れない?それ以前に悪魔、堕天使は聖剣の攻撃をその身に受ければ力と存在を消されてしまう筈なのに……一応掠れる程度に加減していたんだけど何その頑丈な機械人形は?」

 

「(……確かグシオンの装甲は昭弘がいうにナノラミネートアーマーってものが使われていて実体弾射撃やビーム兵器に対し圧倒的な防御力を発揮するって言ってたか?打撃系による質量攻撃だと許量がオーバーして装甲諸共ひしゃげるかもしれなかったけど、イリナの攻撃は運良く許量範囲内だったってことか)…でもまぁ、ありがたい!」

 

《BOOST!》

 

 

グシオンの装甲に感謝しながらも丁度いい時に赤龍帝の籠手のストックが二つ分溜まった。俺は加減する為に力を解放する。

 

 

「丁度溜まった様だな。いくぜ、ブーステッド・ギア!」

 

《EXPLOSION!!》

 

〔…!こいつは……!〕

 

 

その時に昭弘は神器と一体化したグシオンを通して赤龍帝の籠手から送られる力を感じていた。俺は気にせずに倍加した力を駆使してハルバードでイリナに向けて振るい落とす。

 

 

「……あまい!」

 

 

するとイリナは俺の攻撃を読んでいた為か軽々と除けられてしまい、そしてイリナの持つ擬態の聖剣が日本刀の刀身から鞭のような物に姿を変えた。

 

 

「……鞭?刀だけじゃないのか?」

 

「日本刀は私が使い慣れているから普段これだけにしぼろうと思ったんだけどアイン君の指摘で鞭といった物も扱うになったのよ。それと、このままでいいのかしら?」

 

「何っ?……っ!?」

 

 

そうイリナにいわれるとイリナが持つ鞭に擬態した擬態の聖剣が俺が持つハルバードを弾いた。その結果、今の俺は丸腰の状態に陥った。

 

 

「…やっべ、武器が……!」

 

「これで勝負ありね、いくらイッセーくんでも神滅具があったとしてもほぼ()()の状態じゃ無理そうね!」

 

 

イリナのいう通り今の俺は丸腰の状態だが、武器は赤龍帝の籠手だけではない。だが、ここで予想外な事が起きる。

 

 

 

〔ン"ン"ン"ヌ"ゥゥゥ!誰が、丸腰だって!!〕

 

 

 

「なっ…!?昭弘!?……おわっ!?」

 

 

身体の支配権を昭弘に奪われて後ろ腰にマウントしていたシザーシールドを取り出し、シザーシールドを展開した。

 

 

「嘘っ…!?きゃあぁぁ!?」

 

 

予想外の攻撃にイリナは判断が遅れてシザーシールドに鋏まれてしまう。その後はイリナを地面に押し倒してそのまま鋏み潰さない様にギリギリ抜けだせない程度に鋏み込む。

 

 

「ちょっ……おま、昭弘!?いきなり俺の身体を勝手に動かすなよ!びっくりするだろ!?ていううか、そういうの何時から覚えた!?」

 

〔あ…あぁ、すまん。丸腰と聞いて、つい…な?〕

 

「予想外とはいえ、まさかイッセーくんに負けるなんてね。流石に私も参っちゃうな?」

 

 

取りあえず俺とイリナの勝負は俺の勝ちという形で終わった。その後にミカが終わった?と様子を見に来た様だ。どうやらミカの方も決着がついた様だ。……後は残るのは木場だけだ。俺とミカは木場の方を見て見ると、木場の方がかなり不利……いや、完全にアインという男に圧倒されていた。

 

 

一誠Side out

 

 

 

木場の魔剣創造で生み出した光喰剣で戦っていたのはいいが、アインが扱う巨大なアックスによって折られた。そこで木場は神器で炎燃剣(フレア・ブランド)氷空剣(フリーズ・ミスト)と新たに魔剣を作り出した。

 

 

〔騎士による敏捷性に炎と氷の魔剣ですか。……だが、いくら手数が多くても!〕

 

 

しかし、アインは冷静に木場の動きを読み、その巨大なアックスで二つの魔剣が折られてしまう。……しかし、今更だがよくあんな巨大なアックスを持てるな?

 

 

「……キミのその力、破壊の聖剣並に凄まじい威力だね。七本のエクスカリバーを消滅させるのは彼が居る限り修羅以上の道か。だったら、そのアックスの破壊力と僕の魔剣の破壊力。どちらが上か勝負だ!!」

 

 

その時に木場は俺と同じデモリッションナイフをベースにした魔剣を作り出した。木場の奴、俺のデモリッションナイフをモデルに新たな魔剣を作り出すとはな。見事な成長だが、それはエクスカリバー以前に()()()()()()()()()()()()()()()と、相手が()()()()使()()()()()()()()()だ。

 

 

〔あのバカ、柄じゃねえ事をやりやがって!〕

 

「っ……!思っていたより、重い…!……それでも、だとしても!!」

 

 

木場はエクスカリバーに対する復讐心を糧にして、何とかデモリッションナイフの魔剣をアインに向けて振るう。

 

 

…しかし振るったのはいいが、アインはそのデモリッションナイフの魔剣を左手で受け止めた。

 

 

「っ……な、何っ!?」

 

 

流石の木場でも素手で止められるとは思ってもいなかった。

 

 

〔復讐心に駆られ、魔剣ですらこの体たらく!そんな物で、私には効かない!!〕

 

 

するとアインの左腕に装着されているパイルバンカーが木場の魔剣に打ち込んでその魔剣を砕く。

 

 

「砕かれた!?…っ!しまっ……!」

 

 

アインは木場が生み出した魔剣を折られて戸惑っている隙の瞬間を逃さずそのまま蹴りを入れた。蹴りとはいえ、相手はMSに姿を変えた状態だ。とどのつまりは、固い金属が蹴りの速度で身体に打つかる訳だ。

 

 

「がぁ……っ!!」

 

 

この世界の悪魔はそれなりに頑丈と効くが、流石の木場でもこの衝撃は効いた様だ。すると勝負がついたかの様にアインは黒いグレイズから人間状態に戻った。

 

 

「貴方の敗因は、エクスカリバーに対する復讐心に駆られ、自分の持ち味を殺してしまったのが原因です。貴方の持ち味はその多彩な魔剣と俊足。先ほどの巨大な魔剣を作り出したのは間違いだった。今の貴方には先ほどの巨大な魔剣を振るうには筋力不足です」

 

「ぐっ……くそ…ぉ……!」

 

「それ以前に、今の貴方ではエクスカリバーどころか聖剣を持たない私ですら倒せません。本当にエクスカリバーに対する復讐心だけを考えているなら、一生エクスカリバーを叩き斬る事は不可能です」

 

「…ま、待て!」

 

 

アインは木場の静止の言葉すら聞かずそのままグレモリーの方に向かい、私的な決着は着いた事を告げる。

 

 

「リアス・グレモリーさん。先ほどの話ですが、我々はエクスカリバーを奪還する準備の為に一度拠点に戻ります。貴女は彼をお願いします。復讐心に囚われたままではいずれ……」

 

「えぇ……ご忠告痛み入るわ」

 

 

この私的の決闘は三日月という例外を除いて引き分けという形に終わった。決闘を終えたゼノヴィアとイリナはアインと共に一度拠点に戻る為に旧校舎から去るのであった。そして去り際にゼノヴィアが一誠に()()()を告げる。

 

 

「兵藤一誠、一つだけ言おう。白い龍(バシニングドラゴン)は既に目覚めているぞ」

 

「バシニングドラゴンが?……その忠告、覚えておくよ」

 

 

一誠に白い龍が既に目覚めていることを伝えた後にアイン達はその場を後にした。

 

 

アスタロトSide out

 

 

 

私的の決闘が終わった後からか木場はエクスカリバーに対する憎しみと復讐心は増幅していた。そして木場はオカルト研究部の下から離れようとしていた。

 

 

「待ちなさい!祐斗!私の下を離れて“はぐれ”になることは私達は望んでないわ!貴方はグレモリー眷属の“騎士”であり、“家族”なのよ!」

 

 

“家族”……か。確かに血の繋がりはないけど、グレモリー先輩にとって部員皆が家族同様に大切に思ってくれている。だからその繋がりを断ち切りたくないのも分かる。でも木場は怒りと憎しみの所為で大事な仲間が見えなくなっている様に見えた。

 

 

「僕は同志達のおかげであそこから逃げ出せた。だからこそ、彼らの恨みを魔剣に込めないといけないんだ…だからこそ僕は……エクスカリバーを!」

 

「……でも、本当にそれでいいの?」

 

 

そう俺は木場に言うと、木場は俺が言った言葉に何かが癪に障ったような感じだった。

 

 

「三日月くん……キミは僕の生き方が間違っていると言いたいのかい?」

 

「木場……仮にそのエクスカリバー?を折ったとして、その後どうするの?」

 

「……そんなのキミには関係無いじゃないか」

 

「それじゃ答えになってない。ちゃんと答えて」

 

 

俺が木場に問い出し、木場は俺の問いに答えずにはぐらかす。しかし、俺は木場に問いつめた。そしてしびれを切らした木場はようやく答えた。

 

 

「……分からないよ。同志達の為にエクスカリバーを壊せれば僕はもう…後は分からないだけだよ」

 

「駄目だよ、それじゃあ歩みを止めると同じだ。俺や、皆はまだ止まれない」

 

 

その言葉に反応したのか、木場の感情が爆発した。

 

 

「……じゃあどうすればいいんだ!!三日月くんは僕が味わったあの地獄を分かった風に……っ!?」

 

 

木場は俺に掴み掛かろうとするが木場より先に俺が木場のYシャツに掴み掛かる。

 

 

「…その先が木場にとっての()()()なの?」

 

「……僕の居場所?」

 

「俺は止まらない、止まれない。…決めたんだ、あの日に……イッセーが悪魔になったあの日に、決まったんだ」

 

 

そうだ……俺はこの学校や町、皆と過ごした時間が大切なものだ。それがいつまでも続くように俺は止まらない。

 

 

「……どうして、どうしてそこまで僕のことを!」

 

 

 

「仲間の為にだから……」

 

 

 

「……っ!仲間だって?」

 

〔三日月…お前……〕

 

「これは、アンタが決めることだよ。…多分、俺が最初にあのカラス女を殺した時と同じ、これからの全部を決めるような決断だ。だからこれは、自分で決めなくちゃいけないんだ」

 

 

そう言って俺は掴んでいた木場のYシャツを手放した。その時にアスタロトが木場に問いつめた。

 

 

〔完全に俺が言おうとしたことを三日月に全部取られたな。木場、取りあえず今日は一旦帰って頭を冷やせよ?怒りと憎しみに囚われたまま戦ってちゃ只の枷になるからな〕

 

「アスタロトさん……」

 

 

その後、木場は少しだけ頭を冷やしてこの場を後にした。そしてグレモリー先輩は今日の部活動を中止にして皆自分たちの家に帰るのであった。

 

 

 

それから翌日の土曜日。その日に一誠から呼び出しがあった。俺はその呼び出しの理由を聞く為に集合場所である駅前に向かっていた。そして到着した時には一誠と小猫、スプーンの人がいた。どうやら一誠が小猫とスプーンの人を呼び出したからだった。そして俺は一誠に呼び出した訳を聞き出した。それは、木場を救う為に復讐を手伝うことを兼ねてエクスカリバーの破壊だった。

 

それを聞いたスプーンの人は嫌々だった。そして小猫は木場のことをほっとく訳にはいかず、一誠の案に賛成した。スプーンの人は関わらないようにその場から離れようとしたがあっさりと小猫に掴まってしまった為、渋々同行することになった。因みに一誠から聞いた話だとグレモリー先輩と姫島先輩、アーシアにはこのことを内緒にしているそうだ。でも何時バレるのかは時間の問題だった。

 

 

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続く

 

 

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聖剣破壊と47番目

 

 

エクスカリバーを破壊する為に俺たちはグレモリー先輩達に内緒(主に一誠の独断だけど)で行動していた。その為にもまだこの町いるかもしれないイリナ達を探していた。そしてイリナ達を目視で発見すると、そこには異様な光景があった。

 

 

「私は言いましたよね!?町中で騒ぎを起こさず行動すると!…なのに何でこうなったんですか!?」

 

「あー……ご、ごめんねアイン君……」

 

「す…すまない……」

 

 

アインがイリナ達に説教している光景であった。これを見た一誠とスプーンの人はなんて声をかければいいのか分からなかった。

 

 

(……一体、何がどうなんだ?イッセー?)

 

(いや、そんな事は俺が聞きたいくらいだ。なんか逆に声を掛けにくくなったのは確かだけど……)

 

「……こんな所で何してるの?」

 

 

いくら待っても終わらなさそうな感じがしたので俺はアイン達に声をかけた。その後にアインから聞いた話によるとアインが情報収集中の間にイリナが怪しい商人から如何にも胡散臭い絵画を聖ペトロと思い込み、教会から渡された資金を全額で購入してしてしまい、資金難に陥ってしまった。無論ゼノヴィアは勝手に資金を詐欺まがいの絵画の為に全額支払ってしまったことに怒り、口喧嘩をするがそういう場合ではないと冷静になり、路銀を稼ぐ為に大道芸で何とかしようとイリナが買って来た絵画をゼノヴィアが叩き斬ろうとするがここでもまた口喧嘩になってことが進まない時にアインが戻って来たのだ。それもかなり怒った顔をしながらだ。例えると顔は笑顔なんだけど、内心はかなり激怒していたような感じだった。

 

その結果二人は正座させられ、アインの説教を受ける羽目になって今現在に至るそうだ。……イリナって以外と財布の紐が緩いタイプなのかな?とりあえず三人を見つけた俺達はちょうどお昼頃だったので昼食を兼ねて話し合いをする為に携帯で木場を呼び出して近くのファミレスで食事をするのであった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

イリナ達を見つけた俺達はミカが携帯で呼んだ木場と合流して近くのファミレスで昼食をとることにした。資金難でよほどのことなのかかなり腹を空かせていたのか、よく食べていた。昼食を終えた後にゼノヴィアが今回俺達が接触して来た理由を聞き出して来た。

 

 

「……それで、今回私たちに接触した理由は?彼がいるということはやはり?」

 

「あぁ、こっちもこっちでアレだからな。単刀直入に言うと……聖剣(エクスカリバー)の破壊に協力したい」

 

 

エクスカリバーの破壊に協力したい。その言葉だけでもアインを除く二人は驚いた様子であった。しかしゼノヴィアは冷静に考え、俺達の案を了承した。

 

 

「……そうだな、一本ぐらい任せても構わないだろう。破壊出来るのであればだが……ただし」

 

「分かっている。俺達()()がそちらに協力していると悟らせない様に行動すればいいんだろ?」

 

 

流石の俺でも教会と悪魔が手を取り合ってエクスカリバーを破壊しようとしていると部長達にバレると面倒なのは明白だ。無論ゼノヴィア達も同様、教会の上層部にバレるのは避けたいくらいだ。その時にイリナが反対の意を示した。

 

 

「ちょっとゼノヴィアいいの!?いくら相手はイッセーくんとはいえ悪魔なのよ?」

 

「……じゃあ俺は?」

 

「え……っ?えっと……三日月くんはその、民間人?だから……?」

 

 

イリナは三日月は悪魔ではなく人間であることを告げられてちょっと混乱はしたがとりあえず疑問系だけどそれらしい理由?で答えた。しかし、アインとゼノヴィアの場合は違った。

 

 

「いえ、イリナさん。今回の任務は私が組み込まれているとはいえ三人だけでは任務的に辛いのは明白です」

 

「それは分かっているわ。でも…!」

 

「そうだな、私たちは最低でも三本のエクスカリバーを破壊して逃げ帰ってくればいい。私たちの聖剣も奪われるぐらいなら自らの手で壊せばいいだろう。私やアインの()()()を使ったとしても無事帰還出来る確率は三、四割だ。自己犠牲に等しい」

 

 

ゼノヴィアの言う奥の手というのに少し気になったが、アインの奥の手って確かあの黒い機械人形のことだよな?だとしてもそれで三、四割の確率なんて堕天使組織グリゴリの幹部コカビエルってそこまでに強いのか? 

 

 

「……でも、それを承知で来たのよ?それこそ私たち信徒の本懐じゃないの」

 

「イリナさん、前にも言いましたが二人は私が命をかけて守ると…」

 

「アインの言うことも分かる。任務を遂行し、無事帰る事こそが本当の信仰だと信じる。イリナも薄々はそう考えているのだろう」

 

「……それはそうなんだけど、間違っていないわ。けど……」

 

「何、私たちは悪魔の力を借りない。代わりにドラゴンの力を借りる」

 

 

そうゼノヴィアがいった言葉に耳を疑ったイリナはゼノヴィアの強引な屁理屈に反対であったが、任務が困難なのは事実であったため納得は出来なかったものの渋々了承した。そして今まで黙っていた木場が口を開く。

 

 

「……話が纏まったようだね」

 

「キミの事はアインから聞いている。あの聖剣計画の生き残りであることを。教会でもあの計画には最大級に嫌悪されたものだ」

 

 

教会の方でも聖剣計画は嫌悪されている様だ。するとアインが木場にある情報を伝える。

 

 

「…貴方にはもう一つ知る事が有ります。その計画の責任者は異端とされ追放。今では堕天使側に属しています」

 

「堕天使側に?その者の名は?」

 

「“バルパー・ガリレイ”。教会では“皆殺しの大司教”と呼ばれた薄汚れた罪深き輩です」

 

 

アインから聖剣計画の責任者の名を聞いたその後は無事に交渉は成立し、俺たちはエクスカリバーを破壊するために準備を進めるのであった。因みに木場に付いていたアスタロトが俺達が部長に内緒で聖剣を破壊する計画をアーシアに知られている可能性があると告げられた。元々アスタロトはアーシアと擬似阿頼耶識で契約している為に情報が漏れていた様だ。どのみちここまで来たらやるしかないと決めた俺は怒られる覚悟でいつも通りに準備を進めた。

 

 

一誠Side out

 

 

 

一方のエクスカリバーを奪った堕天使達のとある隠れ家にてある機械人形が自身の武器の手入れをしていた。その武器はハンマーの円形状の先切り金づちのような形をし、ヘッド部分に採掘用のドリルが組み込まれていた。その武器の手入れをしながらもはぐれ神父であり、天閃の聖剣を奪ったフリードが戻ってきた。

 

 

「…ダァー!クッソ!?はぐれ悪魔でも狩って来たってのに俺っちの怒りが中々収まらねえ!……あんの黒いクソ人形の野郎、今度あったら絶対ぶっ殺す!!」

 

〔……相変わらず神父か悪魔狩りでもしていたようだな?よく飽きないものだな〕

 

「うっせ!テメェにだけには言われたくねえよ!それにな、テメェを見ていると俺っちをぶん殴ったあのクソ人形のことを思い出すじゃねえかよ。いっそのことテメェからぶっ殺してやろうか?」

 

〔ほぉ…?そいつはどんな奴なのか気になるが、俺を殺すのに聖剣(そいつ)がなきゃ何もできないお前さんじゃ俺には勝てんよ〕

 

「あぁん!?テメェ、何処までもムカつく野郎だな!!」

 

 

一触即発でどちらか仕掛けてもおかしくない状況に一人の堕天使の老人が止めに入る。

 

 

「よさないか、お前たち。くだらぬことでことを荒立てるな」

 

「あぁ?バルパーのじいさんじゃねえか」

 

〔バルパーか。お前さんが来たってことは4本目と5本目が見つかったってことか?〕

 

「……察しが早いようだな。お前たちにはその4本目と5本目となるエクスカリバーを回収してほしい」

 

 

この堕天使バルパー・ガリレイは教会が忌み嫌っている聖剣計画の責任者でもあり、俺を雇ったクライアントからの依頼で護衛対象でもあり、口封じの対象でもある。当の本人はそんな事に気づいてはいないようだがそんな事は俺にとってはどうでもいい事だ。俺を雇ったクライアントとは堕天使の幹部であるコカビエルだ。……まさか天使というMA(化け物)を狩るために造られた悪魔が堕ちた天使に雇われるとはな。300年以上長生きしてみるもんだな。

 

 

〔…分かった。残りのエクスカリバーの回収なんだが、おまえさんが持っている夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)、一時的に借りるぞ。試しておきたい事が有るんでな〕

 

「良いだろう。ただし、万が一破壊されたとしてもコアは持って帰ってくるんだぞ」

 

〔分かってる。そっちも報酬のことを忘れるなよ?〕

 

「金の事か?分かっとる、儂の目的はエクスカリバーを完全な物にするのが目的だからの。目的を達せられた暁には欲しいだけ金をくれてやろう」

 

〔まぁ、俺に取っちゃエクスカリバーだろうが何だろうがどうでもいい事だな。……だが、欲しいだけもらえるってのは悪くはないな〕

 

「期待しているぞ。序列47番目の悪魔の名を持つ機械人形……()()()()よ」

 

 

バルパーは俺に期待している様だが、正直エクスカリバーなんざどうでもいいのだが。……ただ一つ気になる事がある。それは俺以外のガンダム・フレームの存在だ。もしや、お前もこの世界にいるのか?()()()()()……

 

 

ウヴァルSide out

 

 

あの交渉の後、一誠が作戦として天閃の聖剣を持つフリードを誘き寄せる為に神父とシスターの格好をして捜索した。探索を始めて1時間が経過し、今いる場所は人気のない裏路地を捜索していた。

 

 

「ここでも収穫無しか……」

 

「神父のふりをしていればそのうちアイツと出会うと踏んでいたんだが……」

 

「いや……存外にイッセーの作戦通り何か気配を感じる」

 

「…三日月先輩?」

 

〔どうやら三日月の言う通り、何かが近づいている様だ。警戒しろ(……だが、もう一つの気配なんだ?)〕

 

 

バルバトスに言われた通り警戒をしていると木場はその気配を感じ取って上を見上げた。

 

 

「……上か!」

 

「ヒャッハーーッ!!神父御一行様天国へご案内ってね!」

 

 

突如上空からフリードが降って来て天閃の聖剣で俺に斬り掛かろうとする。俺は咄嗟にレンチメイスを展開してフリードの攻撃を防ぐ。俺はフリードを見て何処かで見たような感じがした。

 

 

「こいつ……確かアーシアを助ける時に」

 

〔あぁ。どうやら三日月がぶん殴ったはぐれ神父だな〕

 

「おやおや、おひさしぶりですねぇ!!俺っちはおまえさんをぶっ殺すときを待っていたんですよ?あん時にぶん殴ってくれた礼はおまえさんの命でつぐなってもらうぜっ!!!」

 

「……うるさいな」

 

「ミカ、援護するぜ!伸びろ、ラインよ!」

 

 

するとスプーンの人が神器を展開してカメレオンのベロのような長い鞭をフリードの足に絡み付いた。フリードはそれを切り裂こうとするが鞭が予想以上に固かったのか切れなかった。

 

 

「何じゃこりゃ?うぜぇっス!」

 

「そいつはちょっとやそっとじゃ斬れないぜ!木場、今のうちにやっちまえ!」

 

「ありがたい!」

 

「チッ!だが、俺っちのエクスカリバーちゃんはおまえさんの創る魔剣くんでは、相手になりはしませんぜ!」

 

 

フリードは天閃の聖剣で木場が創りし魔剣を叩き折り、木場に斬り掛かろうとする。

 

 

「……くっ!」

 

〔…だったら、こいつならどうだ!〕

 

「あん?……って、うぉ?!」

 

〔押し切るっ!〕

 

 

その木場の背後からアスタロトがデモリッションナイフを展開してフリードに斬り掛かるも大振りであったが故にフリード後方へバックステップしてアスタロトの攻撃を躱す。

 

 

「ダァーッうざったりぃ!!」

 

「そんでもって駄目押しだ!黒い龍脈(アブソーブション・ライン)!!」

 

「あ?……!?これは!」

 

 

するとフリードはスプーンの人の神器によって力が吸い取られるような感覚を覚えた。

 

 

「どんなもんだ!これが俺の神器だ!俺は兵藤やミカの様にガンダム・フレームっつう機械人形がなくてもこれぐらいは出来るぜ!このままお前がぶっ倒れるまで力を吸い取ってやるぜ!」

 

「おいおいっ!?力を吸い取る神器ってマジか……!」

 

「ウガーッ!?ドラゴン系神器が忌々しい!斬れねえ分、うざったい!」

 

「今だ木場!お前が自力でケリをつけたいのは分かるがこいつはマジで危険だ!俺が弱らせるから一気に〔悪いが、それはこっちとしては逆に困るんでな〕……!誰だ!?」

 

 

木場に好機を伝えようとしたその時に突如とフリードとは違う渋い声の主が裏路地に響いた。しかしアスタロトはその声に聞き覚えがあった。

 

 

〔(この渋い老人のような声……まさか……!)…匙、直ぐにそこから離れろ!〕

 

「えっ?」

 

 

その時に匙の真上から人みたいな何かが降りて来て、そのままハンマーの様な鈍器を匙に向けて振り下ろそうとする。しかしアスタロトが匙を割り込む形で庇い、デモリッションナイフで襲撃して来た奴のハンマーの柄部に当てる様に受け止める。そのハンマーはヘッド部分が採掘用のドリルになっており、生身の人間がこれをくらえば肉が抉られるどころではない。それ以前に、相手はバルバトスやグシオン、アスタロトと同じ機械人形でもあり、ガンダム・フレームであった。その襲撃して来たガンダム・フレームの正体をアスタロトは知っていた。

 

 

〔……薄々思っていたが、やはりこの世界に来ていたのかよ!!()()()()!〕

 

〔やはりお前だったか、アスタロト。それにバルバトスとグシオンもいるとはな!〕

 

 

そういってウヴァルはアスタロトから距離を取ってフリードに近づく。どうやらあのウヴァルという奴は敵の様だ。

 

 

〔全く、先陣きっておいてこのザマとはな。どのみち、今のお前さんじゃアスタロトやバルバトス、グシオンには勝てんよ〕

 

「うっせぇ!!こんのトカゲくんのベロさえなけれりゃ俺っちの天閃の聖剣で悪魔共をぶっ殺せたっつうの!」

 

「それは聖剣の使い方が未熟なだけだ、フリードよ」

 

 

すると他にも別の声が聞こえた。その声が聞こえた方向に向くと裏路地の建物の屋上でこの戦いを見ている老人がいた。

 

 

「バルパーのじいさんか!」

 

「バルパー……ガリレイッ!」

 

「バルパー・ガリレイ?……ガリガリ?」

 

 

さっきの老人はどうやらバルパー・ガリレイという奴らしい。というより、何か名前がガリガリって感じな名前だと思ったのは俺だけであろうか?そんな事を気にせずバルパーは木場の魔剣を見て懐かしく感じていた。

 

 

「ほう……魔剣創造か。随分と懐かしい物(神器)だな。それよりもだフリード、お前に授けた“聖なる因子”を刀身に込めろ」

 

「ヘイヘイ、こうか?」

 

 

フリードはバルパーの言われた通りに刀身に何かしらの力を込めると刀身から聖なる輝きが起こりだす。

 

 

「へっ……あらよ!」

 

「なっ!?斬られた!?」

 

 

その刀身でフリードの足に絡み付いていたスプーンの人の神器の鞭を斬り裂いた。そして距離を取った後にウヴァルと共にバルパーがいる所に移動した。

 

 

「フリード、ウヴァルよ。そろそろそのくらいにしておけ。これからコカビエルの元へゆくぞ」

 

「チッ、分かったよじいさん」

 

〔そうしたいところ悪いが、どうやら奴さんは俺たちを逃がすつもりはない様だ。殿は勤めておく、お前さん達は先に行きな。それとだな、4本目と5本目がようやくお出ましの様だ〕

 

「何?《見つけたぞ!罪深き神父フリード・セルゼンにバルパー・ガリレイ!!》……!」

 

 

すると隣の建物の屋上でイリナ達がそれぞれのエクスカリバーを持ってやって来たのだ。

 

「やっほー、イッセーくん!」

 

〔エクスカリバー使いに黒いグレイズか。さしずめアレ等が教会の切り札か。(……だが、あの黒いグレイズは些かサイズが異なるな。用心に越した事はないか)〕

 

「反逆の徒め!神の名のもと貴様を断罪してくれる!」

 

「ハッ!吐かせ腐れビッチが!!」

 

 

その時にフリードは閃光手榴弾閃光手榴弾っぽいものを取り出してそれを地面に投げ捨てると、そこから眩い閃光が俺達を包み込んだ。そして閃光が収まるとウヴァルを除くフリード達が姿形を消していた。しかし、そのパターンを知っているアインは直ぐにフリード達の後を追う。

 

 

〔同じ手を何度も……!〕

 

 

しかし、この場に残ったウヴァルはアイン達の行く手を妨げ、挑発する様に声をかける。

 

 

〔悪いが、ここから先は行かせんよ。それに……お前さん達は聖剣(こいつ)に用があるんだろ?〕

 

 

そういってウヴァルが見せびらかしたのは一つの剣だった。だけどイリナ達はその剣を知っていた。

 

 

「…それって、夢幻の聖剣!?」

 

〔そういう事だ。お前さん達が奴らよりこいつが目当てなんだろう?ならば、こちらに着いてくんだな〕

 

 

そういってウヴァルはイリナ達が探していたエクスカリバーの一本である夢幻の聖剣を持ってフリード達とは逆の方向に逃走した。

 

 

「逃がさん!追うぞイリナ、アイン!」

 

「うん!」

 

〔分かっています!〕

 

 

イリナ達もウヴァルの後を追う様に向かって行った。そして木場もまたエクスカリバーに復讐を果たす為にウヴァルの後を追った。

 

 

「僕も追わせてもらおう!」

 

〔あのバカ…!目先の事を考えずに行きやがって!……だが、俺もウヴァルの事も気になるからな。俺も行くぞ!!〕

 

〔三日月、俺達も追うぞ。何やら嫌な予感がする〕

 

「バルバトス?……分かった。じゃあイッセー、グレモリー先輩に適当に言っといて」

 

「ちょ……おまっ!?待てミカ、お前勝手に……!」

 

 

そう一誠に伝えた後に俺は木場とアスタロトと共にウヴァルとイリナ達の後を追うのであった。取り残された一誠達はグレモリー先輩達に見つかってお仕置きを受ける羽目になってしまうのは別の話だった。

 

 

涼夜Side out

 

 

 

アスタロトを含めバルバトス、黒いグレイズにエクスカリバー使い。その者等を人気のない空き地に誘い込んだ俺は全員がそろうまで待った。そして数分が立った頃には教会からのエクスカリバー使いと黒いグレイズ。そして悪魔陣営のガンダム・フレーム、バルバトスにアスタロト。最後に転生悪魔であり魔剣創造という神器を持つ悪魔が此処に集った。

 

 

「もう逃げられんぞ!黒い機械人形よ、その夢幻の聖剣をこちらに返してもらうぞ!」

 

〔ほう、俺を追い詰めた事で勝ったつもりでいるのか?だとしたら拍子抜けもいいところだ〕

 

「…何だと!?」

 

〔ウヴァル、戦う前に一つ聞かせろ!俺たちやお前以外にもガンダム・フレームが存在するのか!?〕

 

 

どうやらアスタロトの方は薄々と俺達ガンダム・フレームがこの世界に集って来ている事に感ずいている様だ。

 

 

〔そこらへんはお前の想像に任せる。俺にとっちゃそんなことはどうでもいいんでな〕

 

「……そうだね、キミの言う通りそんな事はどうでもいい。エクスカリバーは僕の手で破壊させてもらう!」

 

〔お前さんは魔剣の小僧か。中々面白い神器を持っている様だが……貴様では、このウヴァルには勝てんよ!〕

 

「それはやってみなければ分からないよ!僕は同志達の為にもエクスカリバーを超えるんだ!」

 

 

魔剣の小僧は新たな魔剣を創造し、俺に斬り掛かろうとする。

 

 

〔勝ち目がないというのに勝つつもりでいるとは!その鼻っ柱をへし折ってやらねば何も分からぬか!!〕

 

 

俺は手持ちのマイニングハンマーで斬り掛かってくる魔剣の小僧が創った魔剣を叩き折り、そのまま小僧を蹴り飛ばす。

 

 

「ガハァッ……!?」

 

「木場っ!?」

 

〔木場っ!……ウヴァル、テメェ!〕

 

 

アスタロトはデモリッションナイフを展開して俺に向け、教会の連中とバルバトスも己が持つ武器を構える。

 

 

「アインとは違う機械人形とはいえ、夢幻の聖剣は取り返させてもらうぞ!」

 

「神の名のもとにアナタを断罪するわ!」

 

「お前………」

 

〔ガンダム・フレーム、ウヴァル!……貴様の罪は、貴様の死を持って罪を払う!!〕

 

〔俺とて無駄な時間を過ごすのは嫌いでね………!4本目か5本目のエクスカリバーのどちらか貰い受けるぞ!〕

 

 

俺は再びマイニングハンマーを構え、一対六と不利な状況でも余裕の姿勢を崩さなかった。それに、俺には切り札である夢幻の聖剣がある。一段のエクスカリバー使いよりかは使いこなしてみせよう!そうして俺は二機のガンダム・フレームと魔剣の小僧、そして教会の連中の相手をするのであった。

 

 

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続く

 

 

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