君死にたまふ事なかれ (愛染 晴翔)
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始まりの教室
プロローグ


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気がつくと教室にいた。

と言っても、俺の通っている都内の小綺麗な私立高校の教室ではなく、東京から出るつもりがなくインドア派の俺では、ともすれば一生見ることはなかったであろう窓から山々の覗く古びた教室だ。どこだここは。俺はいつも通りに学校から帰ってきてから昼寝をするためにベッドに入ったはずだ。

陽が落ちかけ、オレンジ色に染まる教室。人の気配はなく、周囲を見渡しても私物らしきものは見当たらない中で異彩を放つものが一つ。

教卓の上に白い立方体が置かれていた。

 

「…抽選箱、だよな?…ッ!?」

 

近づいた瞬間、黒板に文字が浮かび上がった。いや、浮かび上がったと言う言い方には語弊がある。黒板は最初から視界に入っていた。入っていたのに何か書いてあることに全く気づくことができなかった。つまり、最初からあったのだ、この文字は。

黒板にはこう書かれていた。

 

『残り3人。一方通行

未元物質

超電磁砲

原子崩し

心理掌握

????

解析不能

くじを引き次第転移。【鍵】を帰還する人数分回収せよ。』

 

未元物質、超電磁砲、????、解析不能には横線が入っている。

文字を認識できなくさせる意味はなかった。恐らくこのふざけた内容の文字を鼻で笑わせ無いようにこんなことをしたのだろう。この四文字熟語の羅列は恐らく、というかまず間違いなく「とある魔術の禁書目録」に出てくる能力名だろう。

文脈から察するにくじで引いた能力を与えられ、どこかへ転移した後【鍵】とやらを回収するのが元いた世界に帰るための条件なのだろう。

流石にターゲットがこの7人でこいつらが鍵を持っています、とかは考えたく無い。

と、ここまで考えたところで転移とか能力とか真剣に考えている自分に気づき、苦笑する。

 

「一度冷静になるか。とは言っても文字が認識できなかったのは事実なんだよなー…」

 

箱から離れウロチョロと教室中を歩き回って見る。机の中は全て空、後ろにおいてある掃除用具入れも空。窓に触れようとしても鍵には何故か触れない。出入り口も同様。叩き割って見るか、と椅子を持ち上げ窓に叩きつけると跳ね返されて手を痛めた。

「引くしか無いか、怪しさ全開だけど。」

 

箱に手を突っ込み、ふと思う。これ、二つ引いたら能力増えたりしないかな、と。実行。

 

「まあそんなうまい話はないか」

 

窓に触れた時と同様になぜか2枚目に触れることができなかった。

手を引き抜き、確認する。

 

『一方通行』

 

「よしきたぁぁぁああ!!」

 

最高の引きだ。人数分の鍵と書いてある以上くじを引いたものたちは同じ場所に転移するのだろう。鍵が全員分あるとは限らない以上争うことだってあるかもしれない。争いを想定するのならば、およそ戦闘において万能と言える一方通行の能力が一番いいに決まっている。レベル5は割と相性であっさりと決着がつくこともある。心理掌握対原子崩しなんてカードになったら恐らく1秒かからずに原子崩しが敗北するだろう。その点一方通行には相性の悪い相手がいないし、幻想殺しも木原神拳もない以上最強だろう。まあ行く世界にもよるが。

 

そんなことを考えているうちに転移が始まった。ジジ、ジジジジ、というノイズのような音が走り、手の先、胴体の真ん中から消えて行き、その過程でグロテスクな内臓の断面が見える。

 

「GANTZっぽいなぁ…」

 

ほぼ確信している呟きを残し、俺の意識は暗転した。

 

 

 

 



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ネギあげます
鈴科家


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転移、というか見た目的には転送されて驚いたことが二つあった。

一つ目は自分の体が赤子のそれになっていたこと。

 

完全に元の姿のまま転送されると思っていた俺は混乱し——すぐに眠った。当然といえば当然なのだが、赤子の体ゆえに考えすぎると限界を超えてしまいすぐに眠たくなってしまう。

 

一方通行の頭脳のせいか脳の機能が発達しきっていない年齢でも常人並の思考はできていたが、体が自由に動かさないうえにすぐに眠ってしまい考えが途切れてしまうので逆に辛かった。

というかこれ、元の世界に戻れたとして年代とかどうなるんだろうか。リアル浦島太郎は流石に嫌だ。

 

二つ目は性別が変わっていたこと。

今でこそ淡々と「変わっていた」なんて言えるが、発覚当時は呆然として、次に悲しみ、最後に激怒した。怒るべき相手が誰か、どこにいるのかもわからないのでどうすることもできなかったのだが。

 

そして三歳の時に自分の今生における名前が鈴科百合子だと知って、怒りも風化していた俺は本気で呆れた。まさかこの名前にするためだけに女にしたのか、と。

 

まあ原作では一方通行の性別は明言されていなかったし、もしかしたら一方通行が女で、引いたくじのキャラクターに合わせて容姿性別も変化するのかもしれないが。

 

 

名前を知るのが遅すぎると思うかもしれないが、実は俺は捨て子なのだ。

施設の前に捨てられていて、そのままそこで三歳まで育った。当然赤ん坊のことを苗字で呼ぶ奴などいないので、自分の名前が「ゆりこ」ちゃんだということはわかっていたが、三歳になって里親に引き取られるまでは自分の苗字を知らなかったわけだ。

 

そして俺の現在、つまり十七歳までの激動の人生がスタートする。

 

 

目を覚まし、24畳の広い和室の障子戸を全て開け、朝日を取り入れる。普段は紫外線は反射しているが、病気はベクトル操作ではどうにもならないので健康のために朝の15分だけ紫外線の反射を解除する。ビタミンDの生成のためだ。

 

白の絹で仕立てられた寝間着を脱ぎ、下着を履き、高校の制服であるセーラー服に着替える。初夏なので涼しげな白に半袖の上品なデザインだ。

他の兄妹たちは使用人にやらせているのだろうが、俺はプライベートスペースに他人をあまり入れたくないので自分でやる。

ドレッサーの前まで行き、寝癖を櫛でさっと直し、今度は姿見の前に立ち、身だしなみをチェックする。

 

豊満な胸にしっかりとくびれた腰、引き締まったすらりとした長い足。そして何よりも新雪のような白い肌にセミロングの白い髪、引き込まれるような赤い瞳が印象的な美少女だ。我ながら完璧。

 

原作一方通行はベクトル操作の能力に頼りすぎたせいで筋肉があまり付いておらず、ホルモンバランスが乱れ中性的な見た目になっていた。なので俺は歩く、走るなどの運動時は能力を使わず、その他悪影響がありそうな能力の使用は控えている。何よりも完璧を求めるこの家では外見だって重要だ。

 

襖を開け廊下に出る。長い廊下を抜け、何度も道を曲がり大広間へ向かう。いつも思うがこの屋敷は広すぎる。さっさと拠点を別に移したいものだ。

 

大広間にたどり着き、使用人が絶妙なタイミングで開けた襖を通り、

部屋の中に入ると、そこには最奥の席を除き、全員が揃っていた。

入り口から見て左の列に五人、右の列に四人、右の一番奥と左列と右列の間の一番奥の席は空席だ。

 

俺が部屋に入ると口々に挨拶を口にする。

 

「おはようございます」

 

全員が言い終わった後俺も挨拶を口にして、右の奥の席に座る。

ここに座っているのは全員兄、姉とその親だがこの鈴科家では功績の順に次期当主の優先継承権が与えられる。俺が座った右奥の席は継承権第1位の席だ。挨拶を最後に言ったのもこの中で最も位が高いから。

 

俺が席についてすぐにまだ入り口の襖が開いた。部屋がしんと静まり返った。

 

黒の着物を着ている。両胸とここからでは見えないが、背中に龍を模した家紋。70近いというのに白髪など一本も見当たらない丁寧に撫でつけられた黒髪、濃いまゆに意志の強い瞳を持った老人だ。

 

この家の人間は全員そうだが、老人も背筋をピシャリと伸ばし気品を感じる完璧な歩き方で上座に座った。

 

この男こそが鈴科家22代目当主、鈴科源十郎だ。

 

 

俺は三歳の頃にこの鈴科家に引き取られた。

苗字が変わらないのが何となく嬉しかったから喜んでいたのだが、そんなことを考えていられるのは初日だけだった。

 

この鈴科家は室町幕府が栄えた時代に生まれた大名が現代まで発展し続けた家だ。時代に合わせいろいろな会社を立ち上げ、第二次世界大戦時もあの手この手で財閥解体を回避、現代まで生き残り続けた由緒正しき世界的大富豪だ。

 

他家が次々と廃れていく中、鈴科家だけが発展し続けられた理由はただ一つ。絶対的な実力主義だ。

血筋、無視。親子の情、無視。国の意向、無視。

東に優秀な頭脳の子供がいると聞けば養子にとり、西に傾国の容姿を持つものがあれば嫁にとる。

 

分野を問わず、血筋を問わず、優秀者のみを優遇し続け取り込み続けたのだ、この家は。当然教育することによって適性を発揮するものだっているため、教育はするが、この家は現時点での優秀さをこそ重視する。

 

ゆえに年齢は関係なく、三代目当主が当主の座についたのは六歳の時だったそうだ。現当主が鈴科に与えた利益を継承権を持ったものが上回れば即座に当主は交代する。

 

そして俺は容姿、頭脳の優秀さを見出されこの家の養子になった。

つまり何が言いたいかというと—————

 

「行平さん、先日お百合子様の援助を受けて豊島自動車を吸収合併したそうですね。さすがですわ。(百合子様の援助を受けておいて成果は豊島自動車だけ。お里が知れますわね)」

 

「いえいえ天音さんこそヴィエニャフスキコンクールで準優勝したそうではないですか。一年で準優勝とは恐れ入りました。(準優勝?完璧の家系たる鈴科の者が一年もかけておいて準優勝だと?私なら恥ずかしくて家に帰ってこれませんね)

 

————ギッスギスなのだ。全員自身の力に絶対の自信を持っている上に当主の座を得るために功績を打ち立てなければならない。

和やかな空気になどなるはずもない。

 

全ての言葉に裏の意味が付属する。まあ矛先は俺には絶対に向かないので実害といえば胃痛くらいなのだが。勿論引き取られた当初は俺にもガンガン攻撃してきた人はいたが、能力と一方通行の頭脳をもつ俺に太刀打ちなどできるはずもない。

 

 

小学校に入学する前にはミレニアム懸賞問題を全て解き、700万ドルを獲得。小学4年生には将棋タイトル七冠達成。小学校卒業時には将棋タイトルを一つも落とさずに囲碁七冠達成。一方通行の演算能力はスパコン並みなのだ。学園都市の。人間とやって負けるなどあり得ない。

 

 

このあり得ない偉業と完璧な容姿でメディアも狂乱の渦、俺はすでに世界規模で有名人だ。

 

 

スポーツ系統は能力を使えば簡単に総なめにできるだろうが、専門家が見れば動きの不自然さにすぐに気付くだろうから出なかったし、芸術系はそもそもさっぱり理解できなかったのでそれも出場しなかった。音に感情を込めるとか意味わからん。

 

 

あとはそれらで得た金を株で転がすだけだ。一方通行の演算能力は(ry

まあそんなこんなで俺はぶっちゃけ個人の総資産だけで鈴科家と同じくらいあるのだが、会社経営はしていないので人脈もないし、お爺様との契約もあるので継承権一位にとどまり、当主にはついていないというわけだ。

 

 

ちなみに毒を盛ってきたやつは口に入る前に自動で反射され、俺の残念な姿と引き換えにお亡くなりになっていただいたし、狙撃してきたやつは反射された銃弾でリアルアンパンマンになった。

 

 

ちなみに言いふらしてはいないが別段能力のことは隠していない。

バレたところでどうこうなる能力ではないし、抑止力になるならば知っておいてもらったほうがいい。

 

 

そして朝食を食べ終え、使用人からスクールバックを受け取り、学校に向かうべく玄関に向かった。

 

 




妙に代替わりが多いのは功績によって当主が入れ替わるので同じ人物が一代挟んで二代やることがあるからです


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原作開始

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学校へ行き、授業を受け、帰宅した。

単調な生活だ。しかし、退屈な日々があるからこそ、今日のような死に近づく日がたまらなく感じる。

自室で黙々と今日やるべき仕事をこなしていると寒気が走った。

『お知らせ』だ。私はスーツを持ち帰らない派の人間なのでそのまま待機する。やがて古いオーディオから流れるようなノイズ音とともに俺の体は消えていった。

 

 

原作GANTZのミッションは中継され、世界の大富豪、俳優、政治家たちの中で誰が生き残るか、何分で星人が討伐されるのか、ギャンブルが行われていた。

 

そう、大富豪だ。そこに鈴科が含まれていないなどあるはずもない。

 

幼少期から源十郎が一部のものを引き連れて仕事のスケジュールがない日に何処かへ行っているのは確認していた。

そして俺が中学に入学すると同時にGANTZに参加する許可をとりにいった。

 

その頃にはもう継承権は一位間近といったところだったし、資産もバカみたいな額があったが、仮にも保護者なので一応許可を取りに行った。

さぞ源十郎は驚いたことだろう。

 

源十郎にしてみれば教えた覚えのないGANTZミッションを娘(年齢的には祖父と孫レベルだが、戸籍上は娘)がなぜか知っていて、しかも観戦したい、ではなく参加したいとかほざき始めたのだ。

 

控えめに行って混乱の嵐だろう。

能力を見込んで引き取ったとはいえ、一応は娘。それなりに愛されている自覚もある。

それでも驚愕を表に出さず5秒ほどの一時停止だけで脳内を整理したのは流石当主と言えるだろう。

 

再起動の後、当然源十郎はなぜブラックボールのことを知っているのか、どこまで知っているのか、なぜ参加したいのかを問うてきた。

それに対して俺はこれまでの経緯を語った。

 

と言っても難しい話ではない。原作知識を持っていて、金があれば誰でもできる事だ。

まずはGANTZを作ったドイツの企業を探し出す。これについては簡単だった。娘が寝たきりで経営が芳しく無い企業をドイツ国内に限り調べるだけだ。

時系列がずれていることも考えられたが、そんなことを考えていたら何もできないのでとりあえずスルー。

一週間もせずに見つかったという報告がきた。

 

財閥の名前はマイエルバッハ。会長はハインツ・ベルンシュタイン。

会社は傾きかけで、現在世界中から暗号解読のプロフェッショナルを集めて何かさせようとしている。

タイミング的にはもっと早く見つけたかったが仕方がない。すぐに接触して融資の話を切り出す。

 

言語が解読されればGANTZウェポンを作り莫大な財を築き上げるハインツだが、現在は傾きかけの会社の会長。

GANTZウェポンを作るのだって金が必要だろうし、作り上げるまでは本当にできるか半信半疑、いや、疑いの方が大きいはずだ。藁にもすがる思いなのだろう。

 

条件はこの件を鈴科を主とした他の誰にも話さないこと。怪しいが美味しい話ではあるし、ここで受けなければ会社に未来はない。

すぐにハインツはこの話に飛びついた。

 

そして言語の解読に成功したハインツはすぐにGANTZウェポンの製造に成功したというわけだ。

 

全てを正直に話すわけにはいかないので、以前からマイエルバッハと繋がりはあったこと、ずっとGANTZの存在は知っていたことを嘘を交えながら話し、参加するのならば自分でマイエルバッハに話を通すことと、ミッションに参加している間は当主にはならないという契約で俺は戦いの場へと足を踏み入れた。

 

 

ジジ…ジジジ…

 

(また来た!)

少し前に来た裸の女の子は夢だと思ってらのか息を荒げながら床に横たわっている。

やはり皆同じ来かたをするのか、頭、つま先から徐々にグロテスクな面を晒しながら体が出来ていく。

 

(おいおい、まじかよ…)

 

一瞬、絵画の世界に迷い込んでしまったのかと思った。

それほどまでにその現れた少女は幻想的な見た目をしていた。

身長は160センチほどで、女にしてはそこそこ高いだろう。

老人のそれとは違い、輝くようなツヤを持ったサラサラの銀髪、欲望を向けるのがためらわれるくらいに芸術的なまでに整ったスタイル。

これが黄金比だと言わんばかりの顔の造形の中に輝く、吸い込まれるような真紅の瞳。

この子も死にかけたのだろうか、驚きの表情が顔に浮かんでいる。

 

裸の女の子が転送されてきた時は騒がしかった室内もいつのまにか静まり返っている。

 

「…本編が始まり出したか。」

 

すぐに無表情になった少女はボソリと呟いた。

近くにいた玄野と加藤にしか聞こえないくらいの声量だ。

一拍おいて小学校の教師と女顔の不良が騒ぎ出した。

 

「鈴科百合子だ!そうだ思い出した!どっかで見たことあると思ったんだよ!こいつ鈴科百合子だぜ!」

 

「ほ、本当だ!僕もニュースで見たことあります!ミレニアム懸賞問題を全て解いた天才だって!やっぱりTV番組なんじゃないか!」

 

ヤクザたちは我関せずといった様子だ。よく見れば冷や汗をかいている。

(誰だよ…俺ニュースなんか見ないから知らないぞ)

 

少女は何も言わずに黙って立っている。

玄野が少女の素性を問おうとしたその時、

 

 

 

『あーた〜〜らし〜〜〜い

あ〜さがきた きぼーうのあーさーが

そ〜れ いっちに〜さん!!』

 

 

唐突に音楽が流れ出した。

黒い玉から流れているようなのでひとまず皆んな集まった。

 

 

『 てめえ達の命は、

無くなりました。

 

新しい命をどう使おうと

私の勝手です。

 

という理屈なわけだす。 』

 

 

 

黒い玉の表面に裏返ったり口語が混じったりと適当な文章が浮かびあがる。

 

「何が言いたいんだコレ…「り」と「す」が逆だ」

 

「なんだこりゃ、ハハハ」

 

「これウケねらってんじゃん、やっぱ電波少年かもな」

 

それぞれが勝手に所感を述べていく。

そしてさらに表面の文字が変化し、画像と文字が現れる。

 

 

 

 

『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい

ねぎ星人 特徴 つよい

くさい

好きなもの

ねぎ、友情

口ぐせ ねぎだけでじゅうぶんですよ! 』

 

 

 

「なんじゃコイツ気色悪〜」

 

「ねぎ星人〜〜?弱そ〜」

 

(電波少年?催眠術?納得いかね〜〜。じゃあ何なのかっつったらてんでわかんねーけど…)

 

ねぎ星人の情報を皆が見て感想をいう中、玄野は納得がいかず黒い玉を調べていた。

 

(てゆーかいつのまにかあの超美人の子どっか消えてるし、裸の子は加藤の学ランもらって着てるし、何なんだよ、もう)

 

顔が超タイプなので裸の子とはお近づきになりたかったし、美人と親しくなりたかったのに、少し目を離した隙に片方は消え、片方は加藤にとられてしまった。

 

「たくよー、何なんだよ!……おわっ!」

 

八つ当たりに玉の後部を蹴ろうとしたした瞬間、ガコンという音とともに玉の三方向が開いた。当然玄野はバランスを崩した。怒る気にもならずに微妙な顔をしている。

心を落ち着け、開いたところを見てみると、後部にはスーツケースが人数分、左右にはおもちゃのショットガンと拳銃のようなものが入っていた。全て黒塗りだ。

 

「かっこえ〜〜っ、本物くせ〜〜重〜〜」

 

不良がショットガンで遊んだり、中に人間がいるとか教師が騒いだりしている中、スーツケースを取り出しているとひとつだけ白のスーツケースがあることに気づく。

取り出してみる。

 

「『ろりこんれず』?なんだこれ、誰のことだ?」

 

「渡してください」

 

「おわっ!」

 

文字に首を傾げていると、すぐ後ろから澄み切った脳に浸透するような声がした。

びくりと体を震わして後ろに振り向くと先ほどの白い少女がいた。

「あ、あぁ…」

 

「ありがとうございます。……それと、私はロリコンではありませんからね」

 

「え?あ、うん…」

 

スーツケースを渡すと、弁解しながら去っていき、奥の個室に入った。

 

(なんで入れるんだ?さっきは扉にさわれなかったぞ)

 

「おい、畑中ァ〜〜ッ畑中…おい…」

 

追いかけようか迷っていると、ヤクザの片割れが大声を出したのでそちらをみる。すると来た時と同じように体が消えていくヤクザが見えた。

そしてもうひとつ視界入る。中坊が服の下に()()()()()()()()

 

おかしい、皆開けてはいたがスーツを着ているやつはいなかった。

あいつは最初から着ていたのか?あのスーツには何かあるのか?

あの白い少女もスーツを渡せと言ってきた。

 

スーツがなんなのかはわからないが着ないとまずい、そんな予感がする。すぐにスーツをケースから出し、着替えようとするが、サイズがちょうどすぎて着られない。

服を脱いでいると玄野の転送が始まった。

 

「ちょ、まってまって、やばいっ、」

 

 

 

『 行って下ちい 00:58:41 』

 

 

 

 

 

 

 



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閑話:観戦者

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世界の闇の深い、深いところ。彼らは退屈な日々に刺激を求め、そこにやってくる。超巨大な空間の中央天井にモニターをいくつも合わせて球状にしたようなものが取り付けられ、そこに無数の戦闘の映像が流れている。

 

すり鉢状になっている観客席には意味はないだろうが形式的に仮面をつけている男女が大勢いる。

 

人種も体型も性別もバラバラな彼らに共通するのはただ一つ、金を持っていることだ。

やがてシルクハットにツバメ服、片手にはステッキを持った男がモニター下の舞台に現れた。

スポットライトが当たり、観客の目がモニターからそちらに移る。

 

『 『Ladies and gentlemen(レディィスエェンドジェントルメェェエン)!!!ようこそお越しいただきました紳士淑女の皆さん!

 

今宵も世界の命運をかけた闘いの時間でございます!

残念ながらお越しいただけなかったお客様方も画面の向こう側で盛り上がっていることでしょう!!

 

しかしいきなりですが私は皆様に謝罪しなければならない!

当然皆さま今宵は誰が生き残るのか出馬表、おっと失礼、出戦士(プレイヤー)表を確認いただけているかと思います!

 

そう!お気づきの通り我らが戦姫、【百点狩り(ハンドレッド・イーター)】は今回観戦することができないのです! 』

 

途端、会場からものすごいブーイングが起こる。

 

『ああっと皆さん!ブーイングしたい気持ちはよくわかります!初ミッションから冷静な思考!圧倒的な武技!そして何よりその類い稀なる美貌で皆様を虜にしてきたあの生きる芸術を目にすることができないなんて!

私も聞かされたときはあぁ!神はいないのかと嘆いた!!

 

しかし聞けばこれは『まんてんめにゅー』を使って私たちに正当な権利として、彼女直々に請われたことらしい!!

たしかに見たい!彼女の【百点狩り(ハンドレッド・イーター)】たるゆえん、毎ミッションごとに行われるまるで打とうと見紛うばかりの百点星人の討伐を見たい!

 

だがこれまで私たちに素晴らしいものを見せてくれた彼女の!!

『しばらく中継は控えてほしい』という些細な願い!!

叶えてあげたいと思いませんか!!? 』

 

仕方がない、また素晴らしいものを見せてくれるなら、と肯定的な意見が飛び交った。

 

 

 

『 …ああ!なんて素晴らしい!私は今猛烈に感動している!

皆さまはなんて優しいんだ!!世界はこんなにも美しかったのか!!

 

ありがとう!ありがとうございますお客さま方!!

 

彼女もしばらくすればまたその目の覚めるような戦闘を見せてくれることでしょう!

 

それでは我々のオススメする見所のある戦士(プレイヤー)を紹介していきたいと思います!

まずは————………』

 

男の話題がシフトして、戦士が次々にモニターに映し出されてゆく。

 

夜はまだ長い。命がけで戦う戦士たちにとっても、それを狂気のこもった笑顔で観戦する彼らにとっても。

 

 

 

終末が訪れるまで、きっとこの光景は終わらないのだろう。

 




・主人公は死にそうなとき以外基本能力をミッションで使わない。

・まんてんめにゅーは文字通り万点を通ると出現する選択肢で、ある程度財団に要求を言える。真実を知らないものには大体の真実も伝えられる。

・せんてんめにゅーでは「より強い武器をもらう」が消え、「点数を貯める」が出現する。貯めるのはゼロからスタート。ほんのちょっとだけ武器やスーツをカスタムできる。

・鈴科家なので当然主人公は武術、射撃は達人級。

・まんてんめにゅーを使って主人公は百点星人のところへ優先的に送ってもらっている。

・基本的に主人公はゲームに関しては他プレイヤーと同じ条件でやっている。マイエルバッハチートとかは使っていない。

オリ設定警報発令中、耐性のないものは直ちに避難してください。


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介入

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Fuck!あのしいたけ(食蜂)だな名前変更しやがったのは!玄野に絶対変態だと思われたじゃねぇか!一応弁解はしておいたけどミッションを重ねるごとに信憑性は減っていくだろうな…ガンツって基本的に本当のことしか書かないし…

 

心の中で悪態をつきながらセーラー服を脱ぎ、スーツに着替える。俺のだけ色が白いのは『せんてんめにゅー』で改造したからだ。多少なら形状も変更できるので、首の部分が少し下に下がって全体的にゴツい印象が取れたスタイリッシュさが押し出されたものになっている。

 

これまでは修行も兼ねて強い星人のところに優先的に送ってもらっていたから、足手まといをなくすために基本的にミッションは一人でやっていた。ゆえにスーツを着るのも無人の部屋だったから堂々と着替えられたのだが、これからは人が増えるし家で着てきた方が無難かもしれないな。

 

さて、実のところおれは原作介入に興味はない。

ならば何故玄野が来た日にこの部屋に呼ばれているのかというと(無論偶然ではない)、【鍵】の手がかりが本編にあると思ったからだ。

というのも、何年もかけて鈴科の力を使って探しているのに全く見つからないのだ。いくら形状すらわからないからと言って、日本を裏で牛耳っている鈴科が見つけられないというのはおかしすぎる。

そして俺は発想を変えた。おそらく【鍵】はまだ出現しておらず、本編と関わることで手がかりが見つかるのではないか、とそう考えた。

 

そして玄野計という人物が東京エリアの部屋に呼ばれた時、強力な星人と戦うのをやめ、俺も東京に転送するように指示したのだ。

 

予想があっているかどうかわからないが、違っていればお手上げだ。できればあっててほしいものだ。

 

 

転送され、人に見つからないように気配を消しつつ透明化を起動する。一連の動作を終えたところで確認すると、メンバーが西の嘘説明を信じて駆け出したところだった。

それにしてもガバガバだな西の説明。エール大学とかイェール大学のパチモンみたいな名前使ってるし、催眠術とかもう信じさせる気ないだろってくらい投げやりだな。

と、そんなことを考えつつ玄野と岸本を尾行する。俺というイレギュラーは加わったが概ね原作通りに事が進んでいる。

 

お、政治家の首無し死体見て引き返した。そりゃあんな不自然な死に方してれば怖くもなるよな。というか尾行する方間違えたか?原作に忠実に行くならきちんと目撃しなければいけないのはネギJr.の方だった。今更考えたところで後の祭りだが。

そして玄野が死体達とネギ星人と遭遇した。

 

玄野が岸本を置いて逃走していくのを民家の屋根をつたい追いかける。またをすり抜けたり長い階段を大ジャンプしたりとアクロバットに逃げていく。まあ初ミッションにしては度胸がある方かな。

しかし着地に失敗して転がり、ネギ星人の接近を許した。

「計ちゃん!逃げろっ!

 

「!?」

 

「早く!」

 

転んだ玄野を殺そうとするネギ星人を加藤がヘッドロックして逃げるように促す。しかし玄野は体がすくんで動けない。ネギ星人がもがいた拍子に爪が加藤の腕に引っかかり、中ほどまで切り裂かれる。

 

「ハァッ…ハァッ…ハァ…うおぉぉおおお!!」

 

玄野の興奮した精神に呼応し、スーツが人工筋肉を形成、ネギ星人の腕を掴みそのまま握りつぶさんと力を込める。

 

「やっぱ…すっ…げぇ計…ちゃん…はは」

 

加藤が瀕死のままクロノの勇姿を目撃し、子供の頃の思い出と重ねやはり玄野計は自らの憧れだと再確認する呟きを漏らす。

そしてついに、ゴキンッという嫌な音が響き、ネギ星人の両腕が折れる。

ネギ星人も最後のあがきとばかりに頭を掴むが、人工筋肉が肥大化したままの玄野に体の各所を殴られ続け、命乞いを始めた。

 

「ユルッシテ!クダ…サイ…ネギ、アゲマス!」

 

カタコトなのが同情を誘うな。ここまで弱い星人を久しく見ていなかったからなんだか懐かしい気分だ。

「もう…やめて…、やって…くれ…。もともと、俺らが…悪…」

 

加藤がこちらが先に子供を殺したのだと、玄野に伝えようとする。

しかし、肺をやられたのかうまく喋れないでいると、バチバチという音がして腕だけが出現し、Yガンがネギ星人に放たれる。

西だな。あちらからは俺の姿は見えていないだろうが、俺は見えないのにもかかわらずそこにある不自然なベクトルを感知しているため、位置、装備、体制全て把握している。

 

Yガンがネギ星人をぐるぐる巻きにし、地面に縫い止める。

そして西が透明化を解除し、玄野達の前に現れた。

 

「あ、お、おまえ!ど…どこにいたんだ!」

 

「近くにいたよ。ずっとね」

 

はーい、俺も俺も。

 

「なんとか時間内か…今回はあんたにやるよ。その銃でこいつを撃ってみろよ」

 

「撃つって…これで?」

 

「うん、それ。」

 

西が玄野に撃つように言うが、玄野も撃つとどうなるか薄々察しているため躊躇する。

 

「引き金二つとも引いてよ。」

 

腕を上げ、照準を合わせる。

 

「おい、まさか…撃ったらこいつ…」

 

「うん。死ぬよ、もちろん」

 

実際に見るとこのやり取りすごいもたついてるな。西はもっと説明するべきだし、玄野ももっと意思をはっきりするべきだ。まあ人(人?)

の生き死にがかかってるんだから気持ちはわからんでもないんだが。

 

そこからしばらく玄野と西の問答が続き、玄野が撃つのをやめる。

 

「せっかく点数ゆずってやろうと思ったのに。まァいいや」

 

なんかこのまま原作通りにネギ星人編が終わるのも微妙だな。結局変なところはなかったし俺も行動を起こしてみるべきかな?てかぶっちゃけ見てるだけとかつまんないし。介入する気はなかったけど実際に参加しちゃってるんだから記念に参加しておこう。

 

そして西がトリガーにかけた指に力を込める前に俺は透明化を解除し、ネギ星人を縦に両断した。

 

 

「は、ぁ?」

 

玄野は自分でも随分と間抜けな声を出したと思った。

だが無理もない。撃つか撃たないかの葛藤をして、殺さないと決めた直後のことだ。完全に思考が停止した。

ネギ星人が両断されたと気づいたのは拘束具ごと切られたネギ星人が地面に倒れた時だ。一瞬白い光のようなものが縦に走ったとは思ったが、それが斬撃だと気づくには速度が早すぎたし、普通斬撃というものは切った瞬間に分かれるのにもかかわらず、まるで体が切られたことに気づかなかったと言わんばかりに地面とぶつかるまでそのままの形を維持していたのだ。わかるわけがない。

 

そしてようやく思考が整理されると、場の様子が目に入る。

 

絵画のように整った幻想的な容貌の、自分のものとは違う白いスーツに白い刀のようなものを持った少女。少女相手に先ほどまで持っていたおそらく捕獲用の銃ではなく、おそらく攻撃用の自分が持っているものと同じ形状の銃を構える中坊。

二人の足元には脳漿と内臓をぶちまけるネギ星人だったもの。

先ほどあの部屋にいたメンバーの死体を見ていなければおそらく吐いていただろう。感覚が麻痺している。

 

「おい、あんた何だ。星人か?」

 

「この格好をみてメンバーだと理解できないのですか?それに臨戦態勢に入るまで約1秒。殺す気なら10回は殺せました。戦闘者としては論外ですね」

 

「この格好って…色々おかしいだろ!白いスーツなんて見たことないし、武器もだ!何なんだよ!」

 

「…そういえば東京エリアでは百点を取ったら解放を選ぶのが一般的なんでしたね。忘れてました。それと臨戦態勢のくだりは無視ですか。トリコファンとしては絶許案件ですよ」

 

知らない情報が多すぎる。なんなんだ、百点?人間なのに星人?

 

「おい!おまえら二人とも俺に説明——-」

 

「転送ですね。」

 

発言を遮られ、同時に視界が変わる。

 

「うわっ、なんだこれっ!きた時と同じか!?」

 

そして西、百合子と順に転送され、その場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 



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採点

誤字、脱字報告待ってます


まず西と玄野と俺が転送され、岸本、間をおいて加藤も戻ってくる。あと犬。ひとしきり加藤の帰還を三人が喜び合ったあと、我に返ったように俺と西を玄野が睨みつけ、加藤と岸本も経緯を聞き、こちらに厳しい視線を送る。なお、その間西はずっとこちらに銃を向けている。

 

「この部屋に帰ってきたのですから人間は確定でしょう。いい加減銃を下ろしたらどうですか?」

 

「まだ採点がある。ガンツがおまえの名前を表示したらひとまず銃は下ろしてやる。」

 

汗をダラダラと流しながら答える。原作でもヤンキーや加藤にビビっていたし、頭がイっちゃってはいるが小心者なのだろう。

 

「はァ?ガンツ?採点って?」

 

玄野が問うが俺も西もスルーする。

 

 

『ちーーーーん』

 

 

『 犬 0てん

やるき,なさすぎ

ベロ 出しすぎ

シッポ ふりすぎ 』

 

 

「ハァ?」

「ベロ出し過ぎだって…そりゃそうだ、ははは」

 

犬の画像、点数、一言コメントが表示され犬が落ち込む。

 

 

『 巨乳 0てん

ちち でかすぎ

ぱんツはかづにうろつきすぎ 』

 

『 かとうちゃ(笑) 0てん

おおかとうちゃ(笑)死にかけるとわ

なにごとぢゃ 』

 

『 西くん 0てん

どんまい TOtAL87てん

あと13てんでおわり 』

 

「チッ!まあ3点だからいいけどさ、なかなか出てこないな、お前」

 

悪態をついたあと西がニヤリとこちらに視線をやる。

 

 

『 くろの 0てん

巨乳みて ちんこ たちすぎ 』

 

「はァ!?あ……!あっ!」

 

「巨乳みて、チンコたちすぎ」

 

西が面白がってガンツの表示を読み上げ、岸本が加藤の元へ逃げる。

 

「ふっ…くくっ」

 

俺も知っていたがおもしろすぎて笑ってしまった。岸本に逃げられて嘆いていた玄野だったが、俺の方を見て惚けたように停止している。見惚れたようだな。よいよい、存分に我が美貌を見るがいい。

そして最後。

 

『ろりこんれず————

 

ガンッッッ!

 

「ガンツゥ…表示戻せよ?」

 

「「「!?」」」

 

ドイツの拠点にいる食蜂がふざけているのだろうが、名前を出すわけにもいかないのでガンツと呼び、蹴りを入れる。俺の丁寧語しか聞いていなかった他のメンバーは衝撃を受けて固まっている。一族以外と話すときは特に喋り方にこだわりはないので問題はない。

 

百点狩り(ハンドレッド・イーター) 3てん

TOtAL2243てん 』

 

「なっ…!なんだこの点数は!解放を選ばない奴がいることは知ってる!だけど…一体何年やればこんな点数が溜まるんだ!お前が部屋のメンバーだってのは認めてやるけど、そのスーツと点数のことを答えろ!」

 

西が追い詰められたような表情でこちらに問う。脅迫のつもりかなんなのか知らんけど結局銃下ろしてないやんけ。

どうしようかなー、どこまで言おうかなー。

 

「そうですね…一から話すのも面倒なのでそこにいる三人にあなたが状況説明してください。それで明日の夕方、ここから見える…ほら、あれです、あの一番高いビルの最上階まで来てください。いろいろ教えてあげます。あなたたちも来たければ来て構いませんよ。」

 

あなたたちというのは当然三人をさしている。ちなみにあのビルは原作が始まったら拠点を家から移そうと思って用意していた俺のビルだ。最上階だけでなくビル丸々一棟買い取った。イレギュラーな星人が出てミッション外の時間に攻め込まれても困るからな。

 

「それではまた明日。」

 

そう言って手をひらひらさせながら透明化して部屋を出て行く。ドアに一番近いところにいたため、止められることもない。西の制止の声が聞こえるが、無視する。

何気にスーツ持ち帰るの初めてだな…。

 

 

我ながらいい案だったと思う。加藤の正義節に応対するのも面倒くさかったし、どうせ原作どうりに進まないだろうから、原作勢を強化するために訓練を行おうと思っていた。あのビルはいろいろ揃っている。一石二鳥だな。

 

そんなことを考えながら帰路についていると、俺の横に誰かが転送されてくる。まあ、誰かは分かりきっているけど。

 

「こんばんは、鈴科さぁん。うふふ、面白かったわぁ、主人公にスーツケースを見られたときのあの反応。」

 

長い金髪にベージュのサマーセーターを着た半袖の制服、ミニスカート。腕にはオペラグローブをつけ、特徴的な(しいたけ)を輝かせ、ニマニマとこちらを見ている少女。食蜂操祈だ。

「ふざけやがっててめェ、あれもう弁解不可能じゃねェか…。本気で殺意が湧いたぞ」

 

「うふ、ごめんなさぁい。だってせっかくの原作なんだもの、私だってちょっとは介入したかったのよぉ」

 

「まァ気持ちは分からんでもないけどよォ…ハァ、すぎたことを言っても仕方ねェか…」

 

「うふふ、以後気をつけるわぁ。それにしても、また私の美少女力に屈したみたいねぇ」

 

「チッ…」

 

言わずもがな、こいつも転生者だ。俺の情報網に引っかかるまでは能力を使って引きこもり生活を満喫していた。この世界がGANTZの世界だということに気づかずに親元を離れてグータラしていたらしい。そこを俺が引きずり出してこいつの分の【鍵】も手に入れるまで協力する条件で俺に協力している。

そしてたちの悪いことにこいつは現実でも美少女だったらしく、自分の容姿の使い方を理解している。こいつには俺の中身が男だと伝えてあるので能力が効かない故にこうして美少女さを全面に押し出してくる。鬱陶しいけど可愛いから許す。GANTZスーツを着ていれば電磁波でガードされてこいつの能力は効かなくなるから謀反の心配もない。というかしても即座に制圧できる。

 

「それで、一応こちらでモニタリングはしていたけど、現場の視点で何か異常はあったかしらぁ?」

 

「ァア、なかったよ。鍵の手がかりらしきものは何もな。」

 

「そぉ、ま、気長にいきましょう?ここまで十何年も経っているんだもの、今更急いでも誤差よ、誤差」

 

「そォだな」

 

食蜂のいう通りだ。今更急いだところで、帰還したら時間が過ぎていた場合、もはや誤差の範囲だろう。…食蜂にとっては。

 

「明日第四拠点であいつらに説明と強化をする。見たいンなら監視ユニットを飛ばしておくンだな。」

 

「了解したわぁ、主人公がどこまで強化できるか楽しみねぇ。それじゃあ、おやすみなさい。いい夢を」

 

そう言って食蜂はまた転送で帰っていった。

 

「はァ、一応あいつらにも今日のこと報告しとくか」

 

携帯を操作して、今日の顛末を世界各所にある他の転生者たちにも知らせておく。見つかってないのは垣根提督と藍花悦のみ。他は度合いは違うが一応味方陣営に組み込めた。

 

【鍵】の手がかりは見つからなかったが、それなりに順調にことは進んでいる。

この流れを止めないようにしよう。

 

「…必ず戻るからな、美夏」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




転生者は口調が体に引っ張られます。
主人公は普段かなり気を張って敬語にしてます。


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