個性【ジェット】のような何か (ヒツジだらけ)
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落下死〜〜ショタ〜〜中学生
緊急SOS!空の上絶対死ぬ大作戦
「お客さ〜〜ん!!!どうですか〜〜‼︎気持ちイイでしょ〜〜‼︎」
耳の真後ろで男に問われる。字面だけだと変な勘違いをされてしまうかもしれないが、別にいかがわしい事をしているわけではない。何故なら…
「は〜〜〜い‼︎スカイダイビング最高ですね〜〜‼︎」
スカイダイビングエンジョイ中だからだ!!
後ろにいる男はインストラクターの中本さん。(なかもっちゃんと呼んで欲しいと言われた。)インストラクターとは、高度やタイミングを見極めてパラシュートを開いてくれるアクティビティエンジョイ勢にとってはありがたい存在だ。飛ぶ前は滅茶苦茶ビビってしまったけど、いざ飛んでみるとなんと素晴らしき事か。この世界からすると自分がどれだけ小さな存在かがよくわかる、もはや虫だね、踏んでも気づかない虫レベル。
宝くじに当たり、クソみたいな会社を辞めて、社畜から死ぬまでにやりたい100の事を20代で始めた成金虫にジョブチェンジした俺は文句無く楽しんでいた。
はずだった。
「なかもっちゃ〜〜ん!こんなに楽しいならもっと早くしてれば良かったです〜〜‼︎これからは年に一度はやろうと思いま〜〜す!!!」
「ありがとうね〜‼︎そう言ってもらえて嬉しいよ〜!!!
でもさ〜‼︎それ無理かもしれな〜〜い‼︎」
「はい?どうしてですか〜〜!!?」
「うん…パラシュートがね、開かないんだ…」
「ヘェ〜………………は!!?なかもっちゃんどういうこと!?」
「どんだけ引っ張っても無理っぽくてさ〜‼︎壊れた時のための予備のパラシュートも開かないんだ〜〜‼︎」
「いやいや‼︎開かないんだ〜〜じゃねえよ!!!!どうしてくれんだよ‼︎地面近いんだよ‼︎」
「あ〜〜もうダメっぽいんだよね!このまま心中だね‼︎」
「ふざけんじゃねぇぞなかもっちゃ…いや中本‼︎てめぇなに一人だけピンチすぎて楽しくなってんだ!!」
俺はどうやら一生分の運を宝くじのあたりによって使い切ってしまった様だ。そして最後はこの頭がおかしくなってしまった男と心中か…ハハッ何が虫だよ、来世は大空を自由に飛べるアイアン○ンスーツでも開発しようかなぁ、なんてしょうもない事を考えてる間に地面はどんどん近くなり、踏んでも気づかない虫みたいに呆気なく死んだのであった。
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「いっ、今のは?」
個性発現と共に誰かが死ぬ映像が流れてきた、というか誰かというより十中八九前世の俺…いや僕?、まぁ俺でいいか、自分が死ぬ体験というのはとんでもなく恐ろしく、全身から冷や汗がドバドバ出ているのが分かる。今も心配そうに自分を見ている母さんに強がることもできなかった。
「柚空⁉︎大丈夫⁉︎え、風邪‼︎?個性発現した‼︎?病院行く⁉︎今日幼稚園お休みする⁉︎」
「まっマシンガントーク過ぎるよ母さん、ちょっと落ち着いて」
外では年間何千万も稼ぐエリートウーマンな母さんも俺の事になると途端に弱くなる、コレと料理下手さえどうにかすれば、美人で気立ても良い自慢の母さんなのに…、こういう所も可愛いけど。
それから数分後。
「ごめん…もう落ち着いたわ、それでどうしたの?」
「うん、多分だけど個性発現したみたい、ほら」
そう言って俺は足裏から空気をボフッと出して見せた、いや足裏だけではなく、手のひらと肘からもボフッボフッと母さんの顔に空気を当てまくる。
「個性‼︎?やっぱり病院行かなきゃ‼︎幼稚園お休みするからね!?」
ありがたい、何故前世の記憶が戻ったかは分からないがもうこれまで通りには振る舞えないだろう、前世合わせて精神年齢20代後半の男が幼稚園児と接するには覚悟がいる、乳児の時に記憶戻らなくて良かった〜。あと自分の息子が消えているとか無くて良かった〜。今世も男に産まれて良かった〜〜。
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それから、かかりつけの病院に行き風邪とかでは無く無事個性発現が医者に言い渡された。医者によると俺の個性は「ジェットボディ」と言うらしい………。あれ?ジェット?それって確かグラントリノの個性じゃね?俺のは足裏だけでなく手のひらとか肘からも空気を出せるからボディが着くってことか?まぁ似た様な名前の個性だし親戚なのかな。
そんな事より、何故俺がグラントリノの個性の詳細まで知っているかは前世に関係する。何故なら…今俺がいるこの世界は、「僕のヒーローアカデミア」という前世の漫画の世界なのだ。
その昔、中国かどっかで赤ちゃんが光ってなんやかんやで個性っていう特殊能力が発見されましたよ。的な話から始まった気がする、ちょっと端折ったが此処からが大事な話で、殆どの人が個性っていう危ないものを持っている以上素行の悪いやつは個性を使って悪さをする、だからそれを止める存在が現れた。それがヒーロー‼︎主人公はそんなヒーローになるべく汗と涙ありで頑張ります‼︎みたいな物語だ。俺自身この漫画は友情!努力!勝利!って感じで素直に好きだった。そんな漫画の世界に来れたのだからテンションも高くなるのは当たり前だろう。そんな所が見透かされたのか、母さんが話しかけてきた。
「柚空、楽しそうね、でも飛び回って怪我とかしないでね」
「男の子は怪我するものだよ母さん」
「あら?急に大人みたいなこと言うのね」
「男子三日会わざれば刮目せよ…みたいな?」
「そっかぁ…そういうこともあるのねぇ…」
この母親大丈夫か?いくら俺には弱いといってももう少し疑えよ…どうでもいいか、それより気になっていたことを聞こう。
「ねぇ母さん親戚にグラントリノっている?ヒーローの事なんだけど。」
「グラントリノ?いないわよ、というかヒーローすら今は親戚にいないわ。」
「え?」
親戚にグラントリノがいない?
誤字脱字があれば誤字脱字報告で報告お願いします。
2/21 10:37
今後の展開上かなりヤバめな矛盾点が見つかりましたので修正しました。
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遅刻はしたが美少女とはエンカウントせず。
親戚にグラントリノがいないと分かったあの日から数日、俺は………特に気にすることなく第二の人生を謳歌していた。グラントリノに会えないのは残念だけどどうしても会いたいってキャラじゃないし、個性の都合上会っておいた方がいいか、ぐらいの考えだったから大きな不満は無いそれに別に会えなくてもトレーニングくらい一人で出来るからだ。
何故、未だ五歳のガキがトレーニングなんて始めようとしているのか?それは…ヒーローになりたいからだ。初めはこの世界の花形の職業、ヒーローというものはただ悪い奴をぶっ飛ばして、周りにチヤホヤされてカッコいいから、なんて子供さながらの考えでなろうとした、いや別にそういう憧れの理由からでも良いんだろう、どんな理由でヒーローを目指すのも個人の自由だ。だが俺には前世がある、ギャグっぽい感じで死んでしまったけど死を経験した事は確かだ、そんな俺だからこそ出来ること、救える命があるんじゃないか?そう思うようになった。この世界で本当に一度死んだ奴なんて俺ぐらいだろう。あともう一つ理由があるが…
「スウゥ〜〜〜、ハアァ〜〜〜〜」
そして今俺が出来るトレーニングといえば個性の強化だ。筋トレとかの体づくりは、この歳でやり始めると成長を阻害してしまうから、小学生の高学年あたりからでいいだろう、必然的にやることといえば将来の為の技の考案と、個性の地力の底上げだ。俺の個性はグラントリノに本当に似ている、だからこそ俺が知っている原作知識を利用したトレーニングが出来るんじゃないかと考えた、そしてグラントリノの個性といえば自分が吸った分の空気を足裏にある噴出口からジェットのように噴き出すというもの。似た個性の俺ならばとにかく肺を鍛えまくって備えたほうがいいと考えたのだ、決してエロいことを考えてハァハァ言っているわけでは無い。
「柚空〜?何時までもハァハァ言ってないで、そろそろ幼稚園行く時間よ〜」
「あっ、うん今行く」
母さんにどきりとする事を言われながらももうすぐ家を出る時間を知らせられる。この母、名前を天羽 風華と言うのだが時々心を読んでるんじゃないかと思うような事を言ってくる、彼女の個性は読心とかでは無く身の周りの空気を集めて発射するみたいな個性だった筈だ、因みに今のは実際に俺がハァハァ言っていたからであってエロいことを考えている事がばれたとかではないはずだ。
ひゅ〜あぶねぇ〜。
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「ねぇ母さん、聞いて良い?」
「ん〜?どうしたの柚空?」
幼稚園への向かい道、俺は母さんにどうしても気になることを尋ねた、それは…
「父さんの事があるのに、何で俺にヒーロー目指させてくれるの?」
「あぁ…お父さんか………そうねぇ」
俺の父、天羽 飛泳はヒーローだった、そう…だっただ、ヒーロー名は「スカイスイマー」個性は「空中遊泳」息を止めている間だけ、空中を自由に泳げる個性だ。デビュー当時は注目されていたが、他の攻撃的で派手な個性を持っているヒーロー達にどんどん注目が集まってしまった。そしてランキングにもめっきり顔を出さなくなった頃に…
「ヴィランに、殺されたのに……」
「うん…、柚空には詳しくは教えて無かったね。
分かったわ、何だかここ最近の柚空は一気に大人っぽくなったから話してあげる、あの人の……飛泳さんの話を…」
「父さんの話…」
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私、天羽 風華にとって飛泳さんは不思議な人だった。決して強い個性を持っているわけでもないのに周りの人を笑顔にすることが大好きで、誰よりもヒーローをしてます‼︎って感じで世間から注目されなくなっても全く変わらず笑顔で居続けた人だった。そしてあの事件が起きてしまった…
その日、いつものパトロールを終えて事務所に帰ろうとした時に三人のヴィランと遭遇したの、それも今にも幼い女の子を誘拐しそうな現場にね、近くに飛泳さん以外のヒーローはいなかったけどそれでも一人で立ち向かったわ、でもやっぱり三人ものヴィランを相手に、攻撃的な個性じゃない飛泳さんはどんどん傷を負っていったみたい、氷柱で体を貫かれたり、鎖で締め付けられたり火で焼かれたりね…、それでも飛泳さんは諦めなかったの、どんなに絶望的な状況でもヒーローである自分が救わないとどうする!?っなんてよく言ってたから…。
そして他のヒーローが駆けつけるまで粘った結果三人のヴィランが捕まり、一人のヒーローが死に、一人の少女が救われたわ。
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「それが飛泳さんが亡くなった理由よ…」
「そっか………それが父さんの最期…」
想像以上にカッコいい人だったな、僕の個性は戦闘に強い個性だけど、果たして父さんの様な状況で女の子を救えるだろうか?自分の命まで犠牲にして誰かを守れるだろうか?本当に強い人だったんだなぁ。
「でもそれなら尚更分からないよ、どうしてヒーローの夢を応援してくれるの?」
「ふふっ、お母さんだってねぇ本当はヒーローは目指して欲しくないのよ?」
「え?そうなの?」
「うん、でもねお母さんはヒーローであるお父さんに、笑顔にして貰っちゃったから」
「笑顔に……」
「そう、人を笑顔にして自分も笑顔で亡くなった飛泳さんに…
だから柚空にも手の届く範囲でいいから、誰かを笑顔にするヒーローになって欲しいの、その為には柚空自身が笑顔でないとね、だから柚空がやりたいようにやって良いよ」
ああ…なれたら良いな。本当にそんなヒーローになれたのならどれ程幸せなことだろうか。俺はこの話を聞いてどうしようもなく父親として、ヒーローとしてのお父さんに憧れてしまったのだ。
そうだな…一度憧れてしまったものはしょうがないか。
俺はもう、その背中しか見えなくなってしまった。
「母さん………俺……なるよ‼︎人を笑顔にするヒーローに!!!」
「うんっ‼︎その意気だ‼︎」
この人達の子供として生まれて良かったなぁ…………。
「あれ?母さん幼稚園は?」
「あっ‼︎いっ急いで柚空‼︎‼︎早くっ‼︎」
「あぁ…うん…」
家で話せば良かったねの巻
感想欄は何を書いてもいいです。あ、展開予想だけはやめてください。
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技の名前を自分で考えてつけるのってもしかしてイタい?
「はっ、よっ、ほっ……」
中学3年生の夏休み、俺は普段住んでいる京都から母さんの実家である千葉まで遊びに来ていた。 というのも数年ほど前から夏休みや冬休みなど大きな休みが始まると、こちらの方に来てお爺ちゃんの所有する山で修行を始めていたのだ。
「ふぅ…まだまだっ!」
そして今、朝食前にやっている修行は木から木へと個性を使って高速で飛び回るという平衡感覚と飛行能力の強化だ、さながら気分はスパイダー○ンってね。次々と切り替わる景色に戸惑う事なく太い枝を中心に山を駆け回る。今でこそぴょんぴょん(心も)飛び跳ねているが始めのうちはゲロを吐きまくったり、手に木の破片が刺さったりして大変だった。
「よし、次だ」
次の修行メニューは技の開発だ、技の考案自体は小さい頃からしてきた事だが中3にもなり身体も大きくなってきたから技の衝撃にも耐えられるだろうと思い実践してみることにした。
「よいしょっと」
俺は一本のかなり大きい木の前に下り立ちアイアンサックを右手に嵌める。まずは基本的な攻撃になるこの技から。
「ふんっ‼︎」
右手を思いっきり振りかぶり肘から出る空気を出力にしてスピードに乗った拳を木に打ち付ける。
パァンという破裂音を出しながら放ったこの攻撃は打ち付けた所を中心に大きく罅を入れる。これは「ジェットナックル」と名付けた。同じような技で足系の「ジェットキック」がある。
「スゥ〜…らぁ‼︎」
次の技は少し難しい。
右手からアイアンサックを外し先程の技と同様に肘から空気を出す、だが先程とは違い掌底のように手を突き出し木を打つ、そして直ぐさま手の平の噴出口から空気を出して打撃箇所から離す、その後肘からも空気を出しもう一度木を打つと罅が広がり木が大きく揺れた。同じ箇所に連続で打ち込むこれは「ツインショット」だ。
「フッ!フッ!…フフッ!」
次は遠距離攻撃だ。
木から10メートルぐらい離れて右手の平を木に向け左手は威力を上げる為に出す空気を絞る発射口を作る。そして連続でパンッパンッと手から空気を出していく、が流石にこれは木を少し揺らすまでだった。この技は現状は攻撃力こそ少ないが人を少しだけ硬直させることが出来る。技名は「ジェットブレッド」コスチュームでいいのが欲しいね。
「せ〜のっ……セイッッ‼︎」
そして最後は現時点では一番攻撃力の高い技だ。
もう一度アイアンサックを右手に嵌め構える。足を踏み込むのと同時に足裏から空気を出しいっきに木の前まで辿り着く、その時に先程も披露した「ジェットナックル」を混ぜ合わせて木へと叩きつけると遂に限界を迎えたのだろう、見上げるほど大きかった木がドシィィンッ‼︎と腹に響く音を立てて倒れた。う〜んこれは「ジェットストライク」かな?木を殴り倒したが罪悪感ナシッ‼︎
「腹減ったな……もう終わるか」
何とか形にはなったし後は細かい所を直していけばいいだろう、例えば「ジェットナックル」や「ジェットキック」だとインパクトの瞬間に直ぐ腕や足を引くことで自分に返ってくる反動の衝撃を相手に背負わせたりとか。まぁ今はひとまず朝風呂に入ったあと朝食を食べて腹を満たそう。
くぅ〜疲れました。
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シャワーを頭から浴びながら鏡に映る自分の姿を見てみると、前世とは似ても似つかないほど整った顔をした俺がこっちを見ていた。
やや太い眉毛と左目にある泣きぼくろが特徴の空色の目や、キリッとした鼻立ちとぷっくらとした唇は母さんに似たのか一見すると少女にも見える。
反対に髪の色は父さんに似たのだろう、写真で見る笑顔の良く似合うヒーローの栗色の髪が少し長めに生えていた。今でも鏡を見るたびに少しビクッとしてしまう、慣れないね。
「ああ、もうちょっと腹筋は鍛えた方がいいかな?」
綺麗な身体に産んでくれて父さんと母さんには感謝しかないが俺はヒーローを目指す身だ、その為にまずは屈強な身体が必要になってくる…、が今のままじゃもう少し足りない、筋トレでは腹筋を主に鍛えた方がいいだろう。つまり男の子ならシックスパックだよねっ♪という事だ。
風呂から出て身体を乾かし婆ちゃんの作るお味噌汁を待つ。いや〜千葉は良いね、血みたいに赤い犬みたいなやつもいるし飲み続けたら糖尿病間違い無しみたいなコーヒーもあるし(ここまで褒める気ナシ)朝食は和食だし。
「柚空ちゃん、お味噌汁出来たよ」
「ヨシキタッ!いただきます!」
チー○君やマックス○ーヒーの事は兎も角俺にとって朝食が和食というのはかなり嬉しいことだ。何故なら京都の自宅では毎朝毎朝パンやパンやパンを食べていたから。別にパンが嫌いって訳でもないし、片親しか居ない以上朝の忙しい時間に手軽に食べられるパンが選ばれるのは当然の事なのだが、パンの消費量日本一の京都人である俺としてはパンしか無いから食べるのであって和食があればそっちを食べたいのだ。選ばれたのは和食でした。
「美味い! 美味すぎる‼︎」
俺にとってこの千葉の祖父母宅へ行くというのはヒーローへの修行と共に毎朝訪れるヤマ○キ地獄のパン祭りからの逃亡も兼ね備えていた。
「柚空ちゃん?女の子ならもうちょっとお上品にならないとだめよ?」
「んぐ…婆ちゃんいつも言ってるけど俺は男だから、長年勘違いしてるから」
「俺、だなんて男みたいな物言いは世間では受け入れられ辛いぞ柚空」
「あぁ…爺ちゃんも分かってないし聞いてないんだな…」
この二人、揃って耳が悪くそのくせ都合のいい箇所だけ聴こえるという厄介な老化の仕方をしていた。もう面倒くさいから適当に「は〜い」と返事しておいた。
そんな感じで時は進んでいく。
天羽 柚空
Birthday : 10/21
Height : 176cm
好きなもの : 洋菓子や和菓子など甘い物全般(特にあんこ系)
THE・エピソード
・前世の記憶があるため、周りの同年代の子たちと壁のようなものを感じて幼稚園の頃から友達が少なかった、が身内にはツッこんだりボケ倒したりと内弁慶な所がある。
・容姿の端整さから特に異性には話しかけられにくく距離を置かれて内弁慶に拍車がかかっていた、そんな理由から身内以外の女性と話す時は未だに赤面してしまうため、なるべく目を合わさない様にしている。
○個性『ジェットボディ?』
・自分の両手の平や両肘、足裏から空気を出して高速移動する!
出せる空気の量は自分で吸った量に依存するため息切れを起こしやすく、あまり長い間戦っているとばててしまうぞ‼︎
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俺氏、天啓を授かる。
あらかじめご了承ください。
わかる人がいれば教えて頂けると有難いです。
中学生最後の夏休みが終わり、校長先生からの(クソどうでも)良い話しを記憶に刻み込んだ始業式を終え2学期に突入した頃、俺は今雄英高校にやってきている。というのも日々、クラスメイトと会話することもなく休み時間だろうが授業中だろうがずっと教科書と見つめ合っていた俺はそこそこ成績が良いのだ。その関係から俺は強個性ということもあり雄英高校の推薦入学試験を受けられる事になっていた、別に休み時間やる事がなくて教科書を開いて、今勉強してるから忙しいですよアピールしていたわけじゃない。これはマジだ。
「うわぁ…雄英でけぇ…」
原作では街みたいに広い施設が何個もあると表記されていたが、実際に自分の目で見てみると規格外過ぎて引いてしまう。ここに税金が消えていくのか…消費税たけぇなぁ…。
まぁそんな事より試験内容のチェックだ、たしか筆記試験と個性をメインに使った実技がありそして最後に面接がある……そう面接だ。俺が知っている知識はオールマイトとオール・フォー・ワンの神野での戦いまでしかないが、そこまでは推薦入試の内容までは書かれていなかった、どうやら面接試験があるらしい。他二つは問題無いのだが俺にとっては一番の鬼門の「面接試験」こいつだけは頂けない、今から考えるだけで膝が震えてきやがる…ぢぐじょ〜〜‼︎なんでなんだよ〜〜〜‼︎‼︎(藤原竜○)
俺は泣きそうな気持ちになりながらも試験会場へ向かった。
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「筆記は以上で終了だ!次は実技‼︎最後に面接だぜ!
実技は6名ずつの審査となる!番号呼ばれた奴から試験場へ…!」
無事筆記試験を終えた俺は学校のジャージに着替え個性メインの実技へと進んでいた。あ、轟君と八百万さんだ、それにB組になるであろう塩崎さんと骨抜君がいる、何気に原作キャラを初めて生で見たな。
「試験内容は3kmマラソン、ただしただ走っても完走できないコースだ!
個性を駆使してゴールしろ!」
どうやら巨大な施設を使って行うマラソンみたいだ。爆発地帯や森などが見える、あれ?ロッククライミングか?
「次!3、11、19、27、35、43前へ‼︎」
19番か…俺が呼ばれた様だ、それに一緒に走るのは八百万さんだ。彼女の個性は確か「創造」でどんな場面でも対応出来るぶっ壊れ強個性だったか…、気を抜いていい相手じゃないな最初からフルスピードでかまそう。
「お手柔らかにお願いしますわ」
「え?あ……はぃ」
びっくりした、いきなり話しかけてくるとは思わなかった。もしや俺が女子と話すのが苦手と知って…?いやないか、流石に自意識過剰すぎだし彼女の性格上そういう事をしなさそうだ。それよりもそろそろスタートする、気を引き締めるぞ!
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それから特にどうということもなく1着でゴールした俺は次の指示まで休憩していた。やっぱり空飛べるのってずりぃわ、色々行く手を阻む仕掛けもあったのにまるで意味無かったもん。「ジェットボディ」半端ないって‼︎そんなん出来ひんやん普通!
と、「ジェットボディ」さんに握手して貰っていた俺に坊主頭の男が話しかけてきた。
「あんた凄い速かったな‼︎空ビューンって飛んで‼︎凄かったな!」
「え、えぇ……」
何だろうこの男、初対面なのに暑苦しいな、俺と対極にいる人だ。この距離なのに大音量で話しかけてくるし、ツバ飛んでるし。
「俺、夜嵐 イナサっす‼︎よろしくお願いします‼︎」
「どっどうも…天羽 柚空です
あ、41番呼ばれてますよ君の事じゃないですか?」
「ああ‼︎本当だ‼︎試験終わったらまた話しましょう‼︎それでは!」
「えぇ…嫌ですぅ、ってか聞いてないし…」
こんな濃いキャラの人も受けてたんだな…A組にもB組にもいなかったはずだから落ちちゃったんだろうけど。
それから、大人しくダンゴムシと遊びながら待っていると遂に悪夢の時間が来てしまった、そう面接だ。一体何故面接をする必要があるのか?前世の英検の面接試験では面接官と微塵も話を合わさなかったのに通ったぐらいだし別にいらないんじゃないの?
どうしよっかなぁ…もう嫌になってきたなぁ…しんどいなぁ…なんか本当に体調悪くなってきたなぁ…このまま帰っちゃおうかなぁ。
………
よし!帰ろう‼︎今帰ったら夜嵐君とやらと会わずに済むし、面接官とも顔を合わせずに済む!それに緑谷君がデカいヴィランぶっ倒すところも見たいし。あれ?やはり俺は天才だった?いや、これは神からのメッセージだな。じゃあな受験生ども‼︎天羽 柚空はクールに去るぜ…
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「入試番号19番 天羽 柚空君、入試番号19番 天羽 柚空君、面接試験が始まります至急試験会場までお急ぎください。繰り返します、入試番号19番〜」
その後、彼の姿を見たものはいなかった…。
「天羽…柚空?」
自分の好きな作者さんに書き方が影響されちゃいますよね。
最後に主人公の名前を呼んだ人物とは!?
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教師のクセにっ‼︎ナマイキッ!
「天羽……お前なぁ…推薦入試だぞ?途中で帰るってどういう事だよ」
「ずっずびばぜん、せんぜい…自分でもぢょっどおがじぐなっぢゃっで」
「いや、どうおかしくなったら帰るんだよ?雄英高校から凄い電話きたぞ?」
「ずびばぜん…面接官ど話ずのが本当に嫌で…怖ずぎで変なズイッヂ入っぢゃっで…」
推薦入試を途中でバックれた俺は翌日、当然の事ながらクラスで唯一俺と会話出来る担任兼体育教師の豚皮先生から呼び出しを受けていた。それにしても話し長えなぁ、さっさと終わんないかなぁ、泣く演技面倒くさいんだよ。昨日母さんに怒られたから説教は聞き飽きてるし。
「まぁウチの学校で推薦資格あったのはお前だけだからお前が決める事だし俺は別にいいんだけどよ…」
「え?なぁんだそうだったんですか、はぁ〜疲れた」
てっきり俺以外の奴から推薦資格ぶんどった立場で途中で帰ったのを怒られてるのかと思った。ならもう罪悪感に苛まられる必要はないな、帰りにGE○でも寄ーろおっと♪
「露骨に態度変えんなよ…で、結局一般の方受けるんだろ?」
「はい?当たり前じゃないですか、俺推薦入試受からなかったんですよ?」
「お前人を怒らせる天才か?途中で帰ったんだからそれこそ当たり前だろうに…はぁ…もういいわ、教室戻っていいぞ」
「はい…いつもいつもすみません」
「人見知りしやすいところさえ直せばお前本当に優等生なんだかなぁ」
何言ってんだ?この豚さん寧ろこれが俺の持ち味だろうに、ほら完璧すぎるのはかえって話しかけられにくいし。俺は年に数えるほどしかクラスメイトから話しかけられないけど。
というか自分の将来を決める大事な試験途中でバックれたような奴を優等生予備軍にするとかこの人も疲れてるね…、流石に今回の俺の事で上司的な人から怒られただろうにこの程度で許してくれるとかマジ天使、何気にこの先生にはいつもお世話になってるな。体育の授業に2人組作れなくて動けなかった俺とペア組んでくれてるし……あれ?待てよ、そもそもこの豚が2人組作れって言ったんじゃねぇか‼︎
「あんただけは許さん‼︎‼︎」
「いきなり如何したっ‼︎?」
さぁ〜て昼休みだしとっととメシ食って寝てるフリするぞ〜〜。
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「あ…天羽君だ、職員室から帰ってきたみたいだよ」
「本当だ、はぁ天羽様今日も尊い…」
「ねぇ天羽君ってさ、雄英の推薦入試途中で帰っちゃったらしいよ」
「はぁ?あり得ないでしょ流石に」
「だよね〜でもなんか雄英から学校に連絡きたのは確かだってさ」
「う〜ん風邪ひいて行けなかったんじゃない?」
「天羽君が風邪?ふふっ弱ってる天羽君もいいなぁ」
「はぁ天羽様を看病したい…」
さて、本日のお弁当はポテトサラダにミニハンバーグ、ミニスパゲッティにコーンと白米の黄金コンビだ。何気にこれを食べる為に学校に来てるまである。冷めきったご飯を食べながらこれからの事を考えよう。
やっぱり途中で帰っちゃったのはダメだったかな…でも緑谷君が0Pヴィランぶっ飛ばしてるところとか原作のシーンを見たかったし、まぁビビって帰ったのもあるが…ん?そういえば緑谷君と同じ会場になるんだろうか?
あれ?もしやマズった?……………ヤバいよヤバいよ‼︎如何すんだよ‼︎テッちゃんもビックリだよ‼︎自分の後先考えない所がこんな結果になるとは…‼︎
こうなりゃ祈るしかねぇ‼︎同じ会場にぃ!なれぇーーー‼︎‼︎
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「一般の」筆記試験を終えた俺はクソデカホールにて座っていた。
「今日は俺のライブにようこそー!エヴィバディセイヘイ!!」
イエェェェイ!!!と、心の中でひとり大歓声をあげるが勿論声には出さず無言で過ごす。
「こいつはシヴィー!受験生のリスナー!!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?YEAHHH!!」
この人も大変だな、こんなシラケ切った空気の中このハイテンションで話すのも…そういえば推薦入試の時は夜嵐君が反応していたっけ?彼、どうしてるかなぁ…待たずに帰ったこと怒ってるかなぁ…。
「入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!演習場には仮想敵ヴィランを三種・多数配置しておりそれぞれの『攻略難易度』に応じてポイントを設けてある!」
そう、ここが大事だ。ここで緑谷君と同じ試験会場にならなければ今までの俺がただのアホの子になってしまう、そんな事実はないと信じたい。ちなみに今回俺は普通のジャージと両手用のアイアンサックを持ち込んでいる。
「各々なりの個性で仮想敵を行動不能にしポイントを稼ぐのが君達リスナーの目的だ!もちろん他人への攻撃等のアンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」
おうおう!誰がするかよそんなこ「質問よろしいでしょうか!?」おふぅ…そういえば居ましたね飯田君…。
「プリントには四種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」
「ついでにそこの縮毛の君、先程からボソボソと……気が散る!物見遊山のつもりなら即刻、雄英から去りたまえ!」
「……すみません」
これよこれぇ‼︎こういうシーンを見たかったのよぉ‼︎中々興奮させてくれるじゃないっ‼︎
ちなみに言っておくと緑谷君は想像以上にブツブツうるさかった、それをみんなの前で指摘する飯田君もうるさいけど。
「オーケーオーケー受験番号7111くんナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0P!ソイツは言わばお邪魔虫!スーパーマリオブラザーズやったことあるか!?あれのドッスンみたいなもんさ!各会場に一体!所狭しと大暴れしている『ギミック』よ!」
スーマリかぁ…前世でやった以来だな。0Pヴィランはドッスンどころのデカさじゃなかった気がするけど。
「俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校の”校訓"をプレゼントしよう……かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていくもの』と!『Plus Ultra』それでは皆、良い受難を」
くぅ〜〜かぁっこいぃ〜やっぱり昔の偉人はいいこと言うなぁ。
Plus Ultraか…確か意味は「皿を向こうの6番テーブルへ!」だった気がする(心に何も響かず)
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持ってきたアイアンサックとジャージに着替えた俺は実技試験の演習会場に来ていた。さぁ〜〜てどこかなぁ〜緑谷くぅ〜ん?さっきから姿が見えないけど如何したのかなぁ〜?
………
本当に何処いったのかなぁ〜?いい加減にしないと怒るよ〜?今名乗り出たら怒らないでおいてあげるよ〜?(小学校の教師感)
………
嘘だろ。マジか。これは…。
「いねぇじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!!!」
どうやら俺はアホの子らしい…。
遂にストックが切れました。
不定期更新タグの本領発揮です。
2/3 1:51
ちょくちょく改稿してるので1話から見直してみるとかなり違ったりします。
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怒りを拳に…Plus Ultra‼︎
「あ"あ"ぁ〜〜いやだよぅ、ブッ飛ばすトコロ見たかったのによぅ」
「あんた大丈夫か?」
柄にもなく膝を地面に着けながら号泣していると、泣いているのが心配になったのか誰かが話しかけてきた。
「うぇ‼︎?あ、はぃすみっ…すみませんでしたぁ」
「ああ…大丈夫そうならいいんだけどさ、でも本当にどうしたんだ?」
会場でいきなり泣き始めたヤバい俺に近づいて来たのは知っているキャラだった。このオレンジ色の髪をサイドテールにまとめた女子は確か拳藤 一佳さんだっけ?あらまぁ…えれぇべっぴんさんだなぁ…。
「はっ…はい、それっ…それが友達と会場別れちゃって…いっ一緒に受ける予定だったんですけど(大嘘)」
「それだけであんなに……? まぁ同じ中学のヤツとは協力出来ないみたいだしさ仕方ないって」
「そっそうですよね、おさっ…お騒がせしてすみませんでした」
「私は別にいーよ、じゃお互い頑張ろうな!」
そう言って彼女は俺から離れていった。やさすぃのぉ流石はB組の姉貴分と言われるだけはある。どう考えても関わっちゃいけない俺にまで手を差し伸べてくれるとは…。それにしてもさっきの俺滅茶苦茶吃りまくってたけど引かれてないかな?
……
うんっ!!気にすんな、きっと大丈夫だ‼︎
やっぱり天羽は‼︎100人乗っても‼︎ダイジョーブ!!!(死にます)
あ、変な事考えてる場合じゃなかった。たしかプレゼントマイクからいきなりスタートの合図を言われるんだったよな、いつ走り出してもいい様にストレッチでもしておこう。
それから数十秒後、なんの脈略もなく響いたスタートの合図を耳に俺は足裏からある程度の高さまで飛び上がるぐらいの空気を出してそこから一気にジェット移動で仮想ヴィランをぶっ倒しに向かった。
「目標発見!ブッコロッ‼︎…」
ドガンッ‼︎という音と共に仮想ヴィランの胴体にジェットナックルを叩きつける。はいはいブッコロスブッコロスコロ助ナリ〜、もうこれで何体目だよ…一々数えるのも面倒くさくなって暴れ回っていたけど、彼等はどんだけ人間の事嫌いなの?機械の反逆か…なんだかDETROITでBECOMEでHUMANって感じ。こいつらにもこいつらなりの戦う理由があるんだろうか…?
だがツブす!!!こっちだって誰かに配慮してる暇はねぇんだ。過去の自分のお茶目な行動によって今回ばかりは絶対に受からなければいけないのだ‼︎へけっ‼︎
確かこの試験で見ているのは直ぐさま状況を把握できる「情報力」
瞬時に現場に駆け付けられる「機動力」
混乱した状況でも落ち着いて冷静でいられる「判断力」
そして説明いらずの「戦闘力」
これらを主に見ていたはずだ、その点俺は個性上機動力は申し分ないし?いつもクールでナイスガイだし?技の考案を先走ってやっちゃうぐらいには戦闘力あるし?情報力は言わずもがな、原作知識と空からの偵察で文句なしだ。
と、余裕をかましていたところ突如地面が大きく揺れ巨大な何かがズシンと足音を立てた。
そう0Pヴィランだ。
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ーーーーーーーー
ーーーー
こんなの…敵うわけないっ‼︎
ビルより巨大なロボットを見て拳藤一佳は彼我の力関係を悟った。あれがドッスン?笑わせる、随分可愛い表現をしたものだ。それより今すぐ逃げないと…。
「うっうぅ…だっ誰か」
「‼︎?」
とその時、0Pヴィランが現れた衝撃で瓦礫に挟まったのか、一人の女の子が動けなくなっていた。
「だっ大丈夫‼︎?今助けるから!」
もともと、人が泣いていたり困っていると助けたくなってしまう…つい話しかけてしまう…拳藤一佳はそういう人間だった。
「おいっ!誰でも良い‼︎手伝ってくれ‼︎」
「ふざけんなっ!なんで俺が‼︎他の奴に言えよ!」
「ぐっ…なぁ‼︎あんた!コッチ来て瓦礫をどかしてくれ!」
「嫌よ!何でそんなメリットのない事しなくちゃいけないの‼︎」
だがそんな彼女一人の力だけでは瓦礫を取り除く事は出来ず、周りに助けを呼んでも皆自分が逃げる事に精一杯なのか誰も聞く耳を持たなかった。
助けても自分には何の得もない、1Pにもならないと分かっているからだ…。
それがヒーローなのか?いや違う、少なくとも自分の目指すヒーローとは困っている人を前にして自分だけ逃げ出すような存在ではなかった筈だ。どうやらこの試験では人を助けてもポイントにはならないみたいだが…。
「誰か………誰か…………助けてくれ…」
そんな受験生にも学校にも絶望した思いでいるところ…
「わかった、今助けるよ」
ヒーローが来た。
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ーーーーーーーー
ーーーー
「え?………あんたさっきの」
「あぁさっきはありがとうね、遅くなってごめん次は俺が助ける番だ」
どうやら少しだけ泣いていたようで彼女の目元に涙が滲んでいた。彼女はそれに気づくと腕で目を拭いこちらに笑いかけた。
「こっちこそありがと、あそうだ瓦礫どかすの手伝ってくれる?」
「う〜ん…滅茶苦茶カッコつけて登場したばっかりで申し訳ないんだけど、もう時間ないみたい。」
そう言って俺は自分の背後に指を向ける。
「え?時間って……あっ」
「うん来てるね、0Pヴィラン」
「どどどっどうしよう‼︎拙いって!」
クマの○ーさんに出てくるピ○レットみたいに吃る彼女に、少し可笑しくなった。始めに会った頃吃ってたのは俺なのに立場が逆転している。
「拙くない、あいつ倒しに行ってくるよ」
「あいつって…0Pヴィラン!?あんなデカいのに勝てるわけないって‼︎」
「そんなこと無い、それにここ以外にも瓦礫に挟まって動けない人がいるかもだし」
「それは…そうだけど…」
「じゃ行ってくる」
「あ……」
そう言って俺はすぐに向かうべく、現段階最速の両足裏と両手の平からジェットをだすアイ○ンマンスタイルで0Pヴィランへ向かった。
「さぁ〜てと待たせたなぁドッスン君よぉっ‼︎」
0Pヴィランの前に飛び出し周りに人が居ない場所があるかを確認する。やはり他にも動けなくなっている人がいたが、人が居ない空いた空間を見つけた。
「一撃で決めるから覚悟しとけよ‼︎」
スターは持ってないがこいつは俺でも倒せる。思えば緑谷君がこいつをぶっ飛ばす所を見たくて推薦の面接試験を途中でバックれた、みたいな所もあるんだよな…まぁ結局違う会場になっちゃって見れなかったんだけど…。
………
そう考えると許せんっっ!!!!
俺が面接ビビって帰ったのも‼︎それで先生に怒られたのも‼︎全部全部お前のせいじゃねぇかあああっっっ!!!!!!!!!(責任転嫁)
「ジェットレイジッッッッ!!!!」
両足からジェットを使いスピードに乗りながら八つ当たり100%で放った「ツインショット」は新たな技へと昇華し見事0Pヴィランをぶっ飛ばしたのだった。
面接にはビビるが困ってる人にはビビらない主人公‼︎
次回‼︎審査員査定‼︎相澤先生の考えやいかにっ!?お楽しみに‼︎
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屈辱のキスと白熱の議論
「試験‼︎しゅ〜りょ〜〜‼︎」
ドォォン‼︎という音と共に0Pヴィランが倒れた。それと同時に実技試験終了の合図が響き渡る。俺は0Pヴィランを殴った態勢から体を起こし腕を抑えながら地上に降り立つ。
「つぅ〜イテェなぁ」
やっぱりぶっつけ本番で新技試すのは良くないね。衝撃が強過ぎたのかアイアンサックが壊れ右腕も少し腫れている。無理な態勢から放ったから腕だけに負担をかけ過ぎた、次からは体全体を使って放てるように要練習だな。あ、そうだ拳藤さんの所へ瓦礫退かしに行かなきゃ。
「は…はは、本当に倒しやがった…」
「おう、私が倒しました‼︎(農家風) で、瓦礫どかすから手伝って」
「あ、うん…ってあんたその腕で大丈夫?」
「ちょっと痛いだけだから、じゃいくぞっ…せ〜のっ‼︎」
少し痛むがこのくらいなら我慢できる。俺は拳藤さんに手伝って貰い個性を使いながら女の子が挟まってる瓦礫を退かした。そしてそのあと来た雄英高校の看護教諭リカバリーガールと共に来た救護ロボットによって、女の子は俺たちにお礼を述べた後搬送された。
「お前さん怪我しとるね〜」
ああ…来てしまった…ババアからの素敵なプレゼントだ…
「チユ〜‼︎」
「うぇ〜…このクソバッ……ありがとうございました…」
「飴食べて元気出しな〜」
ババアからの接吻に吐き気を催している俺に拳藤さんが話しかけてきた。
「そういえばあんた、話し方が初めに会った時と違うね。」
「え?あ…本当だ…」
自分でも不思議だ…女子と話すときは大抵緊張して吃りまくるのに今は全然緊張しないな。なんでだろ?
「あぁ〜あれかも、ほら困ってる所を見ちゃったから」
めっちゃ慌ててる人を見ると逆に自分は冷静になれたりするし、あの理論?
「ふぅ〜ん、まぁいいや今の方が格好良いよ」
そうかな?俺はどんな状態でも格好良いと思うけど…まあ考え方は人それぞれだ、ほら人には人の乳酸菌っていうし。
「私、拳藤 一佳ってんだ、あんた名前は?」
「あ、そうか名前言ってなかったな…俺は天羽 柚空これからよろしくね」
「これからって…まだ合格できたかも分かんないのに…それに私、あの子の事助けててあんまり仮想ヴィラン倒せなかったし」
?…ああ、拳藤さんは知らないのかレスキューPの事。
「いや、合格してるよ拳藤さんなら」
「なんで言い切れるんだ?」
何でってそんなの…
「誰もが自分の事を考えて動いていた中、君だけは…拳藤さんだけは違った、それに天下の雄英だよ?自分よりも他人の事を助けようとした人を落とす訳がない」
「あっ……」
俺も拳藤さんの他人を助けようとした所を見て0Pヴィランをぶっ倒そうと思ったクチだし。この子なら間違い無く受かる、てか原作ではそうだし。
「そっか…そうだといいなぁ」
「おう!!」
というかヤバいのはむしろ俺のほうだ、一応ヴィランPは滅茶苦茶稼いだしレスキューPも拳藤さんの件でかなり稼げたと思うがやっぱり推薦入試の事がある。何で帰っちゃったんだろ?思いつきとノリで行動すんのもうやめようかな…でもこういう頭おかしい事を平然としないと俺って感じがしないし………悩むわぁ。
その後、最後の小遣い稼ぎに他の瓦礫に嵌ってる人を助けて回った。
なんか「瓦礫に嵌って動けない‼︎」ってエッチな広告みたいだね…
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「いんや〜、今年も中々粒ぞろいだな」
「レスキューP0、ヴィランPだけで2位か…」
「対照的に、ヴィランP0で8位か」
「久しく見てなかったなぁ、アレをぶっ飛ばしちゃうの」
「俺も思わずイェア‼︎って叫んじまったぜ」
とある会議室にて雄英高校の教員兼プロヒーロー達が実技試験の様子について話していた。そして話題は一人の少年に切り替わる。
「んでヴィランP80レスキューP40のこの男、天羽 柚空か…」
「P多過ぎだろ」
「てかコイツの個性グラントリノさんに似てないか?」
映像が映し出されるとプロヒーローの一人が声を上げる。
「ふむ、スタートの合図と共に直ぐさま上空へ移動し、周りの受験生に気を遣いながらもとんでもないスピードで向かっていったな」
「それに10分間動きっぱなしだ…個性を使い慣れてるね、特に機動力がずば抜けてる…小さい頃から訓練でもしてたのかな?」
「後こいつも0Pヴィランぶっ飛ばしたしな」
「グラントリノさんってジェットだったか?年齢的に孫かなんかか?」
「いや書類を見る限り彼らに血縁関係はないよ」
「そんな問題じゃ無いだろう」
プロヒーロー達が議論しているなか一人の男が声を上げる。
「天羽 柚空…確かコイツは推薦入試中に途中で帰ったやつだ」
「あぁ〜そういやいたな実技試験トップだったくせに面接の前に帰ったやつ」
「えっ‼︎彼が途中で抜け出した子⁉︎」
「私あの時凄い探したよ…」
「何でまた雄英に来たんだ?てか何で帰ったんだ?」
「どっちみち入試中に帰ったやつは不合格だろ」
「今回もトップだったのに…勿体無いなぁ…」
「ちょっと待つのさ‼︎」
段々と不合格の流れになっていったところそれまで黙っていた1匹からもまた声が上がる。
「確かに途中で帰ったことは事実だが、彼は周りの者たちが逃げるなか少女を救う為にあの0Pヴィランに立ち向かった事も事実だよ‼︎」
それは子供達の未来を思う雄英高校の校長の言葉だった。
「確かに…それにあの戦闘力だここで消えるのは余りにも惜しいな」
「ちなみに彼の担任の先生によると、普段は勉強熱心で問題も起こさない大人しい子の様だがコミュニケーション能力に少し問題があるそうだよ」
「あぁ〜それで面接前に帰ったのか」
「優等生なのか問題児なのかよく分からん奴だな」
「俺は反対です、どんな理由であれ途中で帰るような奴はプロヒーローにはなれない」
「オールマイト、貴方はどう思う?」
「私は…そうだな、どんな人間だって完璧じゃないさ、それに彼はまだ学生だこういう事を改善して導いていく事こそ教師でありプロヒーローである私達の仕事だろう?」
「だ、そうだよ相澤君…」
会議室にいる全ての者達が一人の男に視線を向ける。
「……………………はぁ分かりました、ですがコイツのせいで一人落ちるのは理不尽だ。特例として1組だけ21人として迎えましょう、そして天羽 柚空は俺が引き取ります。当然見込みがないと判断した場合は即刻退学させますので…」
「うんっ‼︎異議無し!」
男が折れ話題は次の生徒について移っていった…
これで誰も消さなくて済みますね。
あと主人公に甘い!って思う方にはすみません、これが限界です。
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この支配からの…
タイトル変えた方がもっと注目されんのかな…
「la〜lala〜la〜lala〜la〜別に言うことないぜぇ〜」
ただいま皆さんにお聞きして頂いた曲は、天羽 柚空で「5秒で適当に作った曲」でした。
さて何故今こんなゴミみたいな事を考えているかというと…実は雄英からの合格通知が来ないのだ。一応雄英以外のヒーロー科がある学校も受けたのだがやっぱりヒロアカファンとしては雄英高校に入りたい。そんなわけで俺は今絶賛ソワソワ中なのだ、変な事でも考えて気持ちを落ち着けていないとやってられない。
「柚空、雄英からの通知が来ないからって慌て過ぎよ?それに雄英が駄目だとしても士傑は受かってたじゃない」
「そうなんだけどさ〜やっぱ校風的には堅っ苦しい士傑よりも自由が売りの雄英の方が性に合ってるし」
「でも雄英だと一人暮らししなきゃいけないじゃない、料理とか大変よ?母さんが…」
「情けない、普通逆でしょ…まぁ今の時代クック○ッドとかデリッ○ュキッチンとかあるし頑張ってよ」
最悪コンビニメシでも良いし、今のコンビニメシは意外と激アツなのだ。
「えぇ〜〜」
「えぇ〜じゃない、いい加減子離れしなさい」
「もぅ…あ、雄英高校から荷物届いてたわよ〜」
「は‼︎?早く渡せよ!今の会話いる!?」
何だ⁉︎この無意味な焦らし‼︎
俺は母さんから手紙の様なものを預かると自分の部屋へと急いだ。
「お、おお…頼む‼︎」
封を開けると中には丸い映像機が入っていた。すると…
「私が投影された!!!!」
オールマイト…という事は俺は…
「細かい事はいい!まずは天羽少年‼︎私から一言言わせて貰おう」
自然と拳を握り息を呑む。
「合格おめでとう!筆記、実技、両方とも文句なしの高得点だ!!」
よっっっしゃあああぁぁぁ!!!!ごうか〜〜く!!!!超嬉しい‼︎
「ただ…君の場合推薦入試を途中で帰ってしまった事が議論の争点になってね…不合格にするという意見もあったんだが」
ああ…やっぱりそうだよな普通に考えても意味不明だし…。
「その代わり‼︎君はヴィランP80レスキューP40の高得点という事もあり、特例として1クラスだけ一人多い21人として迎える事にしたのだ!!」
おお‼︎という事は俺のせいで誰も落ちなかったんだ⁉︎これは何気に嬉しい、好きなキャラばっかりだったからな…お茶子ちゃんとか基本女子。
「ん?レスキューPとは何かって?それはだな…」
あ、もういいですさようなら。そして映像機をしまい部屋を出て母さんの所へ合格の報告をしに行った…
ネットオークションで映像機売ーろおっと♪
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オールマイトが映った映像機を52万で売った俺はその資金を元手にして新生活の為に家具やゲーム、マンガなど今まで我慢していたあらゆる娯楽アイテムを買い漁っていた。ほらスーマリもやりたかったし…いやもちろん修行もするよ?技の精度を下げないくらいにはさ…。
そして今、俺は卒業式を迎えていた…。
「天羽…卒業おめでとう中学お疲れ様、そして雄英高校合格もだな」
「豚皮先生……ぜんぜいにはっ‼︎ほんどうにっ!ご迷惑をお掛げになりまじだっ‼︎」
思えば1年の頃からずっとこの人が担任だったな、色々あったもんだ…調理実習の時に間違えて鍋に入れかけたり、体育の授業のドッジボールでうっかり殺しかけたり、その度に公にならない様に皆に箝口令を敷いて俺を庇ってくれたっけ。
「ぜんぜいっ!俺の第2ボタン受け取ってくださいっ‼︎」
「いや……それは要らない」
「あ、あぁ…はい」
「ふふっ…おい ユソラ」
「?」
「カゼひくなよ」
「‼︎………ティーチャーピッグ!!!長い間くそお世話になりました!!!この御恩は一生…忘れません!!!」
そうして俺は第2ボタンどころか全てのボタンを豚皮先生に押し付け中学校を後にしたのだった…。
因みに夜の校舎の窓ガラスは壊してない。
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ーーーー
卒業式より数日後俺は高校デビューを決めるために美容院へ行っていた。ほら、やっぱり面接でビビったこと雄英の先生にも指摘されたみたいだからさ…俺も少しは人と接しようと思うわけよ。そしてバッチリ見た目を決めたら自分にも自信が持ててちゃんと人と話せるだろうし。
「いらっしゃいませ〜ご予約の方ですか?」
「うぃ…はっはい」
「こちらへどうぞ〜」
うっかり変な声が出てしまったが気にせず対応してくれた。コイツっ‼︎出来る‼︎
「今日はどんな感じに切りましょうか?」
「えっと…よく分からないのでお任せで」
「はぁ〜い、じゃあ今より少し短い感じで切っていきますね〜」
ほっ…良かった、髪型とか全然分からないので助かった。
「お客さんかっこいいですねーモテるでしょ?」
「えっ?いや全然モテませんけど」
「またまた〜というかもしかして高校生ですか?」
「いえ中学生です、あもうすぐ高校生ですけど」
「あぁ〜という事は今回は高校デビューのためとか?」
「はい…」
何だこの店員‼︎?ウルセェよ!!!黙って切れよ!!!コイツ俺のストーカーかなんかか⁉︎………ってあれ?俺も普通に話せてる………どして?
「近くの高校行くんですか?」
「いえ雄英です…」
「雄英って…雄英高校⁉︎凄い‼︎」
「あっありがとうございます…」
もしかして会話のコツは人に質問してみるのがいいのか?奥義見つけたり…。
そしてその後、軽く毛先にウェーブをかけてくれたりしていい感じに仕上げて貰った。
感謝なんかしてあげないんだからねっ!!!
タイムリーな話ですね。
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雄英入学編
ボク‼︎サイノウマン‼︎
四月、雄英高校登校初日
実家の京都から雄英の近くまで引っ越した俺は今雄英高校にいた。
「は〜広いな〜」
それにしても廊下が広すぎる、道路並みにデカすぎて自分が小人にでもなった気分だ。
「あ、あそこがA組か?」
俺が通う教室まで近づいたようだが教室の前に何かがある、あれは…寝袋か?
「お友達ごっこがしたいならよそへ行け………ここはヒーロー科だぞ」
このセリフ⁉︎相澤先生だ‼︎生で見れた!
「はい静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠けるね」
いつから数えて8秒なんだろうか?というか邪魔だな、人の往来の多い出入り口で話すなんて合理性に欠けるね。
「担任の相澤 消太だ。よろしくね」
「あの〜すみません、通っていいですか?」
「?お前は…天羽 柚空だな………早速だがこれ着てグラウンドに出ろ」
そう言って相澤先生は寝袋から体操服を取り出した。自己紹介させてくれないのね…。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
「「「個性把握テスト!?」」」
体操服に着替えグラウンドに集まった俺はクラスメイト達の驚く声を聞いていた。
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ、雄英は自由な校風が売り文句そしてそれは先生側もまた然り」
うんうん分かるわ〜驚くよね、まさか入学式すら出ないとは、でも長ったらしいどうせその日の内に忘れるだろう校長の言葉を聞くぐらいならこっちの方が楽で良い。あ、でも雄英の校長ってネズミさんだっけ?聞いてみたい気もする。
「実技入試成績のトップは天羽だったな…中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」
「覚えてません」
「………」
名前を呼ばれ問われたので素直に答えるとなぜか少し呆れた目で見られる。いや覚えてる方がおかしくない?それと俺がトップと聞いたからかクラスメイト全員が俺を驚愕の目で見て爆豪君からも睨まれる。ひゅ〜注目されてるぜぇ〜。
「はぁ…爆豪お前は?」
「67メートル」
「じゃ個性使ってやってみろ」
俺が速攻でいらない子になり爆豪君にシワ寄せがいった。本当にごめん。
その後原作通りに爆豪君が死ねと叫びながらボールを投げ705.2メートルという大記録を出した。
「何コレ!おもしろそう‼︎」
「個性思いっきり使えんだ⁉︎さすがヒーロー科‼︎」
個性を存分に使えることに興奮したのか一気に湧き立つクラスメイト達。
「おもしろそうか…ヒーローになるための3年間、そんな腹積りで過ごす気でいるのかい?………ようし8種目トータル成績最下位のものは見込み無しと判断し除籍処分としよう」
「「「はぁーー!!?」」」
あぁやっぱりやるんだな、確か去年は自分の担当する生徒全員落としたんだっけ?
「ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」
じゃあ…初日からクビは嫌だし全力でやろうか。
第1種目:50メートル走
さてこの競技は俺の個性が活きる競技だな、機動力には自信がある。
「天羽と蛙吹準備しろ」
呼ばれたようなので蛙吹さんと共にスタートラインにてクラウチングする。
「位置ニツイテ……ヨーイ」
機械の告げるスタートの合図を聴き直ぐさま駆け出す。先ずは足裏からのジェット噴射でスピードに乗り速度が落ちない内に両手の平からもジェット噴射を出し更に加速する。
「1ビョウ27」
どうやら2秒以内でゴール出来たようだがまだまだ遅い、得意分野でもあるから1秒は切りたかったな。
「ケロ、あなた凄く速いのね」
「うぇ?あ……ふぁい」
反省していると蛙吹さんが話しかけてきた。思わずキョドってしまった。
「蛙吹 梅雨よ 梅雨ちゃんと呼んで」
「あまっ天羽 柚空です‼︎柚空とよっ呼んで下さい‼︎えーと、つ………つつ………ふぅ…ツユ茶……」
「焦らないで、ゆっくりでいいわ」
焦らないでと言われても女子を下の名前を呼ぶのなんて前世振りだし如何しても戸惑う、それにこのままだと蛙吹さん…いや梅雨ちゃんの名前が罰ゲームで飲むだし汁みたいになってしまうし。
「つっ……つつ……つぅー」
頑張れ!俺‼︎イケるはずだ‼︎勇気を出せ‼︎Plus Ultra‼︎
「あぅ……つっ梅雨ちゃん…」
「ケロ…偉いわ、よく頑張ったわね天羽ちゃん…」
呼べたぁぁーー‼︎壁を乗り越えたぞぉー‼︎やはり雄英高校…良き受難だぜ。
ちなみに飯田君も俺には勝らずとも原作通り好記録を出していた。おそろしく速い走り 俺でなきゃ見逃しちゃうね。
第2種目:握力
これはどうも出来ないな、普通にやるか。
「フンッ‼︎‼︎………はぁ…70kgか…」
障子君は540kg出せたようだが俺はそうもいかない、個性上こんな時は単純な増強系が羨ましい。
「や〜500kg超えって凄いよね!」
「そうですね、羨ましいです………ん?」
「あ、私 麗日 お茶子!天羽 柚空君だよね?実技入試トップってホント?」
「おっ、おちゃっ!?………おちゃちゃ!」
また女子に話しかけられた、この直ぐにキョドる癖はなんとか出来ないのか?しかもまたお茶関係だし、というか原作見てて思ったけどどいつもこいつもコミュ力高すぎだろ。コミュ力高すぎ高杉君。
「わっ驚かせてごめん!」
「いっいや、こっちこそごめん…えーと……麗日さん」
急に美少女に話しかけられたら驚いてしまうのは仕方ないだろうし。にしても可愛いなぁ〜。
「そっそれで…あー実技入試の事だっけ?そう…だよ合格通知でオールマイトが言ってたし」
もう持ってないけど。
「はー、もしかしてあの0Pのやつも倒した?」
「うん…まぁ」
「お〜やっぱり1位の人は違うね!レスキューPも高かったでしょ?」
「うん、0Pヴィランを倒した事で貰えたみたいだし」
俺なんかよりみんなの方がよっぽど凄い……知って行動したのと知らずに行動出来たのではその意味がまるで変わってくる。あの時は拳藤さんを助けなきゃって気持ちで行動したけど、どっかで打算的な気持ちもあっただろうし。
「俺は……全然だよ…」
「?」
はぁ…急にナーバスになってしまった。初対面なのに面倒くさい奴だな俺…。
「よく分からないけど、人助けしたのは良い事だよ?」
「え?」
「どんな気持ちでやった事でも、助けた事には変わらないし」
「………」
……何だか救われた気分だ。俺は死んで漫画の中の世界という場所に生まれ変わった事に初めはワクワクしていた。だがそれだけでは当然なく、親に対しても何処か他人の様に思っていた。そんな俺だからこそ原作知識の保有からくるレスキューP稼ぎの人助けに罪悪感を感じていた。我が物顔でやりたい放題の転生主人公そのものだしな。でも……そうか…確かに助けられた側からするとそんなもの関係なくて、ただ助けられたという事実があるだけだよな…。何気ない一言で人は急に救われる事がある。
「ありがとう…本当に……ありがとう」
「ううん‼︎どういたしまして!」
ヤバい、こう言う事言われたの初めてだからマジで泣きそう。
「麗日さん…もし良かったら俺と…」
「ん?…………え‼︎?ちょっと待って、いっいきなり⁉︎」
顔が赤くなり焦った様子の麗日さん。だが人と関わると決めたのだ、何よりこの想いは伝えたい。
「おっ……俺と…」
「はっ、早いって‼︎いや早さの問題や無いけど‼︎」
そう、早さの問題じゃない。
「とっ友だちになって下さい!」
「え?……………あぁそういう………うん」
よっしゃああああ‼︎今生初の同級生友だちゲット‼︎これは手持ちボケモン確定だな。と、喜んでいると照れた顔から戻った麗日さんが呆れた表情になった。
「はぁ…私てっきり…」
「告白されるかと?…フフン、残念だったな!うっかり惚れそうにはなったけど、まだ攻略される訳にはいかん‼︎」
「なんやこの残念イケメン……まぁいいや、元気にはなったみたいやし」
いい子だなぁ…人を笑顔にするって俺の理想じゃね?この子に惚れられる緑谷君が羨ましい。
第3種目:立ち幅跳び
待たせたな‼︎シリアスは終わりだ‼︎空を飛べる俺の出番だ‼︎
「スタート」
さて、50メートル走とは違い、速さを測る競技じゃないから普通にやるか。
「スゥ〜…ほっほっ」
パンッパンッと小気味良く空を飛んでいると相澤先生から声が掛かる。
「天羽、それどこまで出来る?」
「うーん…特に疲れないんで飽きるまでですかね」
「そうか…もう下りていいぞ」
あれ?楽しくなってきたからもっと飛びたかったけどもうお終いか。
「相澤先生、俺の記録は?」
「無限だ」
「は!?無限⁉︎」
「測りようがないからな」
「はぇ〜」
飽きるまで出来るだけで限界はあるんだけど…。
「天羽君、無限って出たんだ⁉︎何ソレ⁉︎」
「俺もよく分かんないです…」
記録の適当具合に驚いていると麗日さんが話し掛けてきた、飛行は俺の得意分野だしね、でもこの後自分も無限という記録を出す事になるとは思っていないだろう。
そういえぱグラントリノは飛行能力ってどのくらいあるんだろう?俺と違って足裏からしかジェット噴射出来ないし、あまり長いこと飛んでられないんだろうか?
そう考えると俺の個性って本当にチートだな、兵器とかは搭載してないけどマジでアイ○ンマンみたいだし。
第4種目:反復横跳び
「はっ!はっ!はぁっ‼︎」
左右の手と足の噴射口から連続でジェットを放ちかなり速いスピードで動き回り大記録を出すも峰田君には敵わなかった。これは個性も活きるし自信があったんだけど惜しくも勝てなかったのは辛い。俺の欠点は極短時間に連続でジェット噴射する事に慣れていない所だ。
「天羽君どうだった?」
「良いところまでは行けたんだけど峰田君って人には負けたみたい…麗日さんは?」
「私は全然だったよ〜あの記録は凄いよね」
うん、峰田君には勝てる気がしないな…
第5種目:ボール投げ
さて円から出ないでどこまで飛ばせるかな?
「せ〜のっ‼︎」
取り敢えず片手でボールを握り思いっ切り振りかぶり、肘からジェット噴射を出してスピードに乗った所を直ぐに手の平からジェットを出し押しだすような形でボールを放つ。
「1回目は506.3メートルだ」
あ〜まぁ片手だしこんなものか、次は両手でやろう。
「はぁー‼︎」
1度目とは違い腰を落としガッチリと構えながら両手でボールを挟み込む、空気の漏れが無いように手で発射口を狭めていく、そのままかめはめ波のように両手の平からジェット噴射を出し、安定感と威力の両方を兼ね備えた一撃でボールを吹き飛ばした。
「780.6メートルだ」
「すげぇ‼︎マジかあいつ!」
「顔も良いし個性も強いとか才能マンだな」
お〜新技だけど存外上手くいったな、技名でも付けようか…かめはめ波はマズイよな…同じ少年誌だけど、う〜ん「ジェットカノン」とか?
記録に喜んでいると、麗日さんが投げ終わったようでこっちに近付いて来た。
「天羽君!私も無限って出たよ‼︎」
「お揃いだね、流石俺の親友」
「親友⁉︎今日会ったばっかりで⁉︎」
「何言ってんだい、一緒に河原で殴り合った仲じゃないか」
「記憶が捏造されてる‼︎?しかもグレてた感じだ‼︎」
そりゃあもう盗んだバイクで走り出してたしね。なんて、くだらない話をしていると緑谷君の出番になったのか円に向かって歩いていく姿が見えた。
「地味めの人、大丈夫かな…」
「そうだね、じみどりや君が心配だね」
「あの人、じみどりや君って名前なんだ?」
「いや違うと思う、喋ったこと無いし」
「じゃあ違うじゃん⁉︎思った事すぐ口に出すのやめなよ!」
「ごっ、ごめんなさい…」
これまで目立った記録を出していない緑谷君を心配したのか、不安そうな目で見ている麗日さんに茶化した感じで話すと怒られてしまった。お茶子だけに………ってな‼︎
「な……今確かに使おうって…」
1回目は残念ながら46メートル何故なら…
「個性を消した」
今まで起きてるのか寝てるのかよく分からなかった相澤先生が口を開いた。そして緑谷君に向かって鋭い視線を向ける。
「つくづくあの入試は…合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」
「消した!!あのゴーグル…そうか……!見るだけで人の"個性"を抹消する"個性"!!抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!!!」
独り言がデカいな、緑谷君。まぁでも、そうだ相澤先生の個性は視線を向けた相手の個性を一時的に消すというもの。異形型には効かなかったはずだが、この個性社会においてこれ程ヴィランにとってやり辛い相手も珍しいだろう。
マフラーを緑谷君に巻き付けて何か喋っている相澤先生、緑谷君の個性について話しているんだろうな…。ちなみに相澤先生は目のガチガチ感がヤク○みたいでちょっとだけ怖かった。
相澤先生から解放された緑谷君が再度円の中に入る。そして大きく振りかぶりボールを投げた。
ーー705.3メートル
思わぬ結果に驚いたのかクラスメイトからどよめきが起こる。
「まだ……動けます」
指から血を流しながらも未だ闘志を宿す目に相澤先生もニヤリと笑う。すると爆豪君が「デクッ!てめぇどういう事だ‼︎」と手から爆発を起こし詰め寄っていったが、結局は相澤先生に締め上げられてしまった。
キレやすい若者……現代社会の闇ですな。
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他の3種目も超絶イケイケ究極モードで突破し、ドキドキの結果発表の時間がやってきた。私が来た!!!
「因みに除籍はウソな………君らの最大限を引き出す"合理的虚偽"」
「「「はぁっーー‼︎?」」」
相澤先生の一言に何人かの生徒が驚きの声をあげる。退学がかかってたもん、そりゃ驚くわ。
「嘘に決まっているじゃない…よく考えたら分かりますわ」
呆れたような雰囲気を出し胸を揺らしながら言う八百万さん。その胸をチラ見とかでは無くしっかりと目に焼き付けていると、麗日さんが問いかけてきた。
「天羽君は気づいてた?」
「えっ?おおっ俺?もも、もちろんだとも‼︎ぜっ全部お見通しさ!」
「いや…なんか嘘っぽいけど…」
ちょっと動揺してしまったが別に嘘は言ってない。その後個性把握テストを終えクラスメイトと自己紹介しあい、飯田君と麗日さんと緑谷君と一緒に帰った。それと、惜しくもテストは2位に終わってしまった。好記録を出しまくったが万能さで八百万さんに負けた感じかな。
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通学時の無視と昼休みのシリアス 〜恋の始まり?を添えて〜
ステイン編の時どうしよ。
八百万さんのおっぱいと個性把握テストで負けた日から翌日。ゲームを一本昨日の夜にクリアして、気分が良かったのでスキップしながら学校に向かっていると前方に緑谷君が見えたので挨拶をする。
「緑谷君、おはよう」
「ブツブツ…ブツブツ」
「あれ?……緑谷君?」
「ブツブツ………ブツブツ」
「………」
「ブツブツ…ブツブツ」
無視された。
何故だ?一体俺の何がいけなかったんだろう?まだ知り合ったばかりで馴れ馴れしくし過ぎた?それとも気づかないうちに何か気に触るような事を言ってしまったのだろうか?久しぶりに友達が出来た事もあり、舞い上がってしまったか…うざ絡みは麗日さんにしかしてない筈だし。
「緑谷君…俺、何かしてしまったか?…」
「うわぁ‼︎あっ天羽君⁉︎……もしかして話し掛けてた?」
「うん、そうだけど………あれ?気づいてなかったの?」
「あはは…うん、本当にごめん」
「あぁ〜そっか、ならいいや」
良かった〜、てっきり嫌われたのかと思った。そういえば緑谷君って集中すると周りが見えなくなるんだっけ?初めて出来た同い年の男友達に避けられたと思って変な想像しちゃった。
「学校、一緒に行こう!」
「うっ、うん!」
戸惑う緑谷君の手を無理矢理繋いで学校へ向かった。手汗が凄く出てたので直ぐに離したが…。
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その後、プレゼントマイクの英語講座など、ヒーロー達による通常授業を終えお昼休みになった。
「白米に落ち着くよね!最終的に‼︎」
「はっはわわ、らっランチラッシュ!本物だ〜‼︎」
俺は飯田君と麗日さん、緑谷君と共に食堂でクックヒーロー、ランチラッシュの豚汁定食を食べていた。
「コイツァ美味いっ‼︎美味すぎるっ‼︎」
「むっ、天羽君少しはしたないぞ」
「やっぱり和食が落ち着くよね」
「ああ!分かるぜ、麗日さん!」
飯田君に注意されながらもご飯をかきこむ。俺と同じ和食派の麗日さんも同じ気持ちの様だ。まず何より目をひくのが温かく香り豊かな豚汁だろう。食べ易いようにカットされた人参や大根、ごぼうに豚肉を啜るだけで身体を安心させる様な汁が引き立たせる。これだけで白米が何杯も食べられてしまう。
次に、よく味の染み込んだ切り干し大根か…一噛みするとコリコリと口の中で音を鳴らし俺を楽しませる。手間をかけて作ったのだと分かるその味は、俺を至高の気分へと連れて行った。
最後にしっかりと焼き目のついた三匹の子持ちししゃもだ。中までちゃんとと火の通ったその身は、噛むたびにプチプチと卵を潰し舌を喜ばせてくる最高の逸品だ。これだけの料理を安価で食べられるのは本当に嬉しい。明日からは弁当ではなく食堂で注文しようかな、朝早起きして作るのも面倒だし。
「はぁ〜美味しかった、杏仁豆腐も頼もうかな」
「あ!、天羽!!」
「?」
豚汁定食を食べ終わり、食休みのためにデザートでも食べようかと思っていた所、誰かに名前を呼ばれた。
「やっぱり合格してたんだな天羽、入学式にいなかったからもしかしてって思ってたんだ」
「あ、拳藤さん久しぶり」
俺に話し掛けてきたのは一般入試以来の再会となる拳藤さんだった。
「実は、俺らA組は入学式の時に個性把握テストをやっていて出れなかったんだよ」
「わざわざ入学式に!?……変わった担任なんだな…」
「ねぇ天羽君、この人は?」
「あ、この人は拳藤 一佳さん…ヒーロー科B組……だよね?」
飯田君と緑谷君がいきなり話しだした拳藤さんと俺に不思議そうな目を向け、麗日さんが俺に問いかけてきたので答えた。が、俺が拳藤さんの組を知っているのは不自然かと思い確認の意味を込めて拳藤さんに目を向ける。
「ああ、無事合格したよ、改めてよろしくな拳藤 一佳だ」
「ぼっ、俺は飯田 天哉」
「みどっ!緑谷 いっ出久です‼︎」
「初めまして!麗日 お茶子です!」
「うん、よろしく拳藤さん………で、そちらの方は?」
拳藤さんと共にいたのは忘れもしない、俺が途中でバックれた推薦入試にもいた塩崎 茨さんだった。
「塩崎 茨です……ああやっと会えましたね、天羽様…」
「はい?」
やっと会えた?俺を探していたんだろうか?塩崎さんとは推薦入試の時に顔を見合わせているはずだが…いや、話したわけでもないし俺だと気付かなかったとか?
「推薦入試の面接の時にいなくなった貴方を呼ぶ為の放送を聞いて、貴方様が天羽という名前だと分かったのです…」
「ああ〜そうだったんだ」
「いや、いなくなったって……まず何してんだよ天羽…」
「やっぱり意味分からんな、天羽君…」
拳藤さんと麗日さんが呆れた目でこちらを見てくる。そんな事言われても、あの時は極度の緊張と直前に飲んだエナジードリンクによるハイテンションで正気を失っていたんだ…。というかそもそも何故俺を探していたんだ?
「俺を探してたっていうのは?」
「はい、天羽様のお父様の事ですが………この場で話しても?」
「!」
お父様の事というと亡くなった俺の父、プロヒーローの天羽 飛泳の事だろう。何故彼女が父の事を?いや、それよりもこの場で話すのか………別に悪い人達じゃないし良いかな。言われて困る様な話でもないだろう。
「良いよ、話してくれ」
「はい………まず、私は幼少期に天羽 飛泳様…プロヒーローのスカイスイマーに助けられた者です」.
「えっ?君が?」
「スカイスイマー⁉︎スカイスイマーって10年以上前にヴィランと戦って殉職したプロヒーロー!えっ⁉︎天羽君のお父さんなの⁉︎」
緑谷君の言う通り俺の父はプロヒーローだ。そして俺が前世を思い出す前、まだ個性も発現してない頃に幼い少女を誘拐しようとするヴィラン達から助けた際、そのヴィラン達によって殺されてしまった。それにしても、そうか………塩崎さんが父さんが助けた少女か…。
「その事で…私はずっと悔いていました………旅行へ行ったあの日、もしも私が迷子にさえなっていなければ……もしも旅行にさえ行っていなければと…」
「そう…か」
悲痛な顔で話す彼女はきっと長い間苦しみ続けたのだろう、本来ならば彼女を襲ったヴィランこそが悪いのであって、彼女に非は無いはずの事なのに自分のせいで人が死んでしまったと考える程に…。
「亡くなられた天羽様には、本当に申し訳無く思っております…私が……私さえあの場にいなければ、今ごろ家族と仲良く暮らしていたかもしれないのに………恨まれても仕方がない事です…」
「………」
「そして、天羽 柚空様……間接的にでもお父様の命を奪ってしまい申し訳ありませんでした…」
「それは…」
ああ…それは違う。
父さんは、そんな事を思って欲しくて助けたわけじゃない。そんな顔になって欲しくて救ったわけじゃない。俺は父さんの事を多く知っているわけじゃないけれど、そんな人じゃない事だけは分かる。
「そうじゃないよ塩崎さん……そうじゃないんだ…」
「え?」
「俺の父さんは、泣いている君に笑顔になって欲しくてあの場から逃げなかったんだ、助けた君が泣いていて欲しくはないと思う」
「笑顔に…」
「俺は母さんから聞いただけだけれど、父さんはいつも笑顔を浮かべて周りの人達を幸せにしていたんだって」
「それでもっ、私のせいで亡くなった事には、変わらないじゃないですか…」
「そうだね…確かに生きていたなら今頃は父さんと母さん、そして俺で3人仲良く暮らしていたかもしれない」
そんな生活は楽しいだろうな。テレビで時々ヒーロー活動をしている父さんを見て、母さんと一緒に応援したりして。たまの休日には3人でピクニックに行ったり、海までドライブに行ったりして。
「なら…」
「でもね、そんな未来は存在しないんだよ…どれだけ後悔しようが、どれだけ夢を見ようが、もしかしたらの話でしかない」
「………」
例えばあり得たかもしれない未来は、結局はなかった未来だ。
「それに、そんな父さんだからこそ……泣いている女の子を命を賭して助けてしまうヒーローだからこそ、俺はヒーローに憧れたんだ…」
「ヒーローに…?」
「ああ、だから父さんに救われた君がそんな事思わないでくれよ………ゆっくりでいい、せめて少しずつでも笑顔になってくれ………それが俺の願いだ」
「天羽…様」
それが父さんへの何よりの弔いだ。
「ありがとう……ありがとう…ございますっ!」
泣きながら感謝を告げる塩崎さんは、涙を流している筈なのにさっきよりも随分と幸せそうな顔をしていた…
まさか彼、天羽君にそんな過去があったとは…初対面で緊張した態度をとったり、かと思えば急に親友とかいってきたり、色々と不思議な人だ。
彼の第一印象は綺麗な人という認識だった。透き通るような栗毛の髪に澄んだ空色の瞳、整った顔立ちはまるで高級な人形のようで話しかけるのに戸惑ったほどだ。そのくせにいざ話してみると臆病な一面もあったり、楽観的なところも見えたりと本当に忙しい人だ。でも悪い人ではない事は確かだ。
いつもとは違い大人びた笑顔を浮かべる彼に何故か胸を高鳴らせながら思った。
戦闘訓練は誰と戦わせるか悩みます。
2/21
第1話にて展開上大きな矛盾点が見つかりましたので修正しました。
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ええ!?年会費無料⁉︎
お昼休みが終わり、拳藤さんと塩崎さんと別れてから次の授業の為に教室まで戻ってきた。次の授業というのはヒーロー科だけの特別授業、ヒーロー基礎学だ。プロヒーローから直々に教えを請うチャンス、自分の糧にしよう。
「わーたーしーがー! 普通にドアから来た‼︎」
席に座って待っているとピシャリと音を立てドアが開いた。
「オールマイトだ‼︎」
「スゲェや!ホントに先生やってるんだな!」
「アレ、銀時代のコスチュームね」
「画風違いすぎて鳥肌が‼︎」
今しがた登場した人物に俄かにクラスメイトがざわつく。それもそのはず教室に入ってきたのは、現代なら世界中の子供達が知っているであろうNo.1ヒーローのオールマイトだからだ。ムキムキの筋肉お化けな身体を包む青いマントが特徴的なそれは、今では見かけなくなった少し昔のコスチュームだ。
「私の担当はヒーロー基礎学、ヒーローの素地を作るため様々な訓練を行う科目だ、単位数も最も多いぞ。早速だが…今日はこれ!戦闘訓練‼︎」
「戦闘ォ‼︎」
「訓練…」
戦闘訓練と聞き、興奮する者も不安そうな者もいる。俺は楽しみだな。
「そしてそいつに伴って〜、こちらっ‼︎入学前に送ってもらった個性届けと要望に沿ってあしらえたコスチューム‼︎」
オールマイトが指を差し、01から21までの番号が書かれた箱のような物が壁から出てきた。
被服控除、箱の中身はコスチュームだ。個性届けを提出し色々なサポート企業や研究機関が作ってくれたもので、デザインや機能など自分の求めたものが入っているはずだ。
「「「おおっ〜〜!!!」」」
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」
「「「はいっ‼︎」」」
俺は04と書かれた箱を手に持ち着替えに行った。
ところでオールマイトが来た時にドアがかなり乱暴に開けられていたが飯田君は注意しないのだろうか?
「格好から入るってのも大切なことだぜ、少年少女!自覚するのだ今日から自分は………ヒーローなんだとっ!!!」
オールマイトがテンションブチアゲな感じで少し喧しいが俺も似たようなものだ。
「天羽君、カッコ良いね!」
「おお〜麗日氏〜、麗日氏も似合ってますぞ〜」
「何そのしゃべり方…」
麗日さんが褒めてくれた俺のコスチューム(寒い日コーデ)は、灰色のYシャツの上に携帯食料やフラッシュグレネードなどが入ったファーフード付きモスグリーンカラーのモッズコート、下はシュッとした動きやすいジーンズだ。あ、個性の為にちゃんと服の肘はレースになっている。
そして何と言っても1番の目玉は専用サポートアイテム、今回俺が頼んだのはメタリックホワイトに青色の蝶の模様が入ったガントレットとグリーブ("空式")だ。グリーブもだがこの空式ガントレットには手の平と肘に細く狭めた噴射口が付いており、ジェット噴射の威力を格段に上げている。そしてその事により機動力が劇的に上がるだけでなく遂に片手だけで「ジェットブレッド」が威力も上げて撃てるようになったのだ。材質はアイ○ンマンをリスペクトしてチタン合金を使った。他は、何故か頼んだ覚えが無い黒と白の線が交差しあったチョーカーもある。
対して麗日さんは、顔を守る半透明のマスクとボディラインがはっきり分かるパツパツスーツだ。可愛い子は何を着ても似合うね。
「天羽さんのコスチュームは、籠手と脛当て以外は変わったデザインではないのですね」
「お、おぉ…八百万さんは、すっ素敵ですね」
「ありがとうございます、本当はもっと布の面積を少なく注文したのですが…」
装備を確認していたら八百万さんが話しかけてきた。八百万さんのコスチュームは肌面積が恐ろしく広く、見ているだけで何だか悪い事をしている気分になる。その…スゴく良いです。
「ヒーロー科、最高」
「分かる」
「………」
「え、何?」
「ううん、別に」
峰田君と俺がやおよろっぱいを見て目の保養にしていると麗日さんがジト目をしてきた。何だろうか?もしかして仲が良い間柄だけの秘密の合図的なやつか?次からは俺も睨み返せばいいのかな。
「さぁ、戦闘訓練のお時間だ!」
遅れてきた緑谷君も来て全員揃ったのを確認したのかオールマイトが前にでて話し出す。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
パトレ○バーにそっくりなコスチュームの、声からして飯田君だと分かる人が質問した。
「いいや!もう二歩先に踏み込む!ヴィラン退治は主に屋外で見られるが統計でいえば屋内の方が凶悪ヴィラン出現率は高いんだ」
確かにそうだろうな、いつもテレビとかで見るヴィラン達はチンピラみたいな後先考えて無い感じの奴らみたいだし。
「真に賢しいヴィランは屋内にひそむ!!君らにはこれからヴィラン組とヒーロー組に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」
「基礎訓練なしに?」
「その基礎を知るための実践さ!…ただし今度はぶっ壊せばOKなロボじゃないのがミソだ。」
大きなゴーグルを頭につけた梅雨ちゃんがオールマイトに質問するとオールマイトから答えが出た。あのロボットには悪い事したなぁ…ムシャクシャしてやった、今は反省している。
「勝敗のシステムはどうなります?」
「ブッ飛ばしてもいいんスか。」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか…?」
「分かれるとは、どのような分かれ方をすればよろしいですか。」
「このマントヤバくな〜い?」
「何でチョーカーあるんだろ?」
「んん〜〜、聖徳太子ぃ〜!!!」
あ、しまった。みんなが矢継ぎ早に質問するから俺も乗ってしまった。オールマイト、困らせちゃったね。んん〜〜、聖徳太子が実在した人物かは諸説ありぃ〜!!!
「状況設定はヴィランがアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている!ヒーローは制限時間以内に敵を捕まえるか、核兵器を回収する事。ヴィランは制限時間まで核兵器を守るか、ヒーローを捕まえる事。」
カンペを見ながら欧米かっ‼︎って感じの設定を並べていくオールマイト。
「コンビ及び対戦相手は…くじだ!」
「適当なのですか!?」
オールマイトがくじ箱を出した途端飯田君が反応する。が、オールマイトが答えるより早く緑谷君が答えた。
「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップすることが多いし、そういうことじゃないかな…」
「そうか……!先を見据えた計らい…失礼いたしました!重ねて質問失礼します!このクラスの人数は21人、しかしそれでは1人だけ余るのではないですか?」
そう、本来なら20人で偶数になり誰も余ることが無いが原作にはいない存在の俺がいる。ここら辺はどうなるんだろう。
「それについては安心してくれ、ちゃんと考えてあるとも!まずクジ箱の中に1つだけKのクジを用意しそのクジを引いた者ともう一度戦う組みを最後に対戦させる事にする‼︎つまり6回戦中1組だけ2回戦う事になるな!」
「それだと1人の側が圧倒的に不利ではないですか?」
「その代わり、1人の側はヴィラン役にして準備時間を20分にする!それだけではなく最後に対戦する事によって、必然的にKを引いた者は自分が戦うコンビの情報が分かることになるな!時間切れになったらもちろんヴィラン側の勝利だ‼︎」
成る程、只でさえ有利なヴィラン役に準備時間延長や情報収集という1人側に好条件を付けて2人側と対戦させるのか。それでも数の暴力は覆せない気がするが…。
「誰がKを引いたかな〜?」
「ああ…はい俺です、オールマイト」
まぁ案の定というか、やっぱり俺が1人だけのチームKを引いた。これで中学の時のデジャヴだね。
「さぁ!最初の対戦相手はこいつらだ!!Aコンビがヒーロー、Dコンビがヴィランだ!」
そしてオールマイトが最初の対戦クジを引き、原作通り麗日さんと緑谷君ペア、飯田君と爆豪君ペアに分かれた。原作の矯正力ってやつだろうか?
「麗日さん」
「ん?天羽君?」
「頑張ってね………あと、いってらっしゃい」
「!……うん!いってきます!」
緑谷君チームが勝つのは分かっているが、念のため応援しておく。気分は妻を見送る専業主夫だ。気に入ってる子を贔屓目で見てしまうのは仕方ないよね。
そして第1試合が始まった。スタートして少し経ち、爆豪君が飯田君と離れヒーローチームに襲いかかるという単独行動をとった。
「いきなり奇襲…」
「爆豪ズッケェ!奇襲なんて男らしくねぇ!」
マジで?そうなると俺の考えてる作戦が破綻しちゃう…
「奇襲も戦略!彼らは今、実戦の最中なんだぜ!」
そうそう!オールマイトは分かってるな〜やっぱ。不意打ちとか上等なんだよなぁ〜やっぱ。
爆豪君の奇襲に上手く対応する緑谷君、そして爆豪君の攻撃に背負い投げで返す。どんだけ〜!!!
これは激アツだね、普段誰よりも爆豪君を見てきた緑谷君だからこその一撃だろう。
いつも見下している緑谷君に、カウンターを決められたのが癪に障ったのか爆豪君がキレた顔で何か叫んでいる。まぁコッチには聞こえないんですけどね。
そしてそのまま緑谷君は爆豪君を引きつけて、麗日さんは核を探しに行った。
「スゲェなアイツ!個性も使わずに入試2位と渡り合ってる‼︎」
合ってるんだけど、間違っても本人の前では2位って言わないようにしてほしい、キレられるの俺だからね。てか本当に爆豪君凶悪な顔してるな、ヴィラン目指してます!って感じのかっちゃんだ。
散々逃げ回っていた緑谷君が爆豪君に見つかった。
「爆豪少年!ストップだ‼︎殺す気か⁉︎」
コスチュームによる大技を放つ爆豪君、壁を抉りながら建物を揺らし緑谷君を吹き飛ばした。
「少年‼︎緑谷少年!!!」
爆風が晴れ緑谷君の無事を確認できたが…イッちゃってるね爆豪君…。
「先生!止めた方がいいって!爆豪アイツ相当クレイジーだぜ⁉︎殺しちまうぜ‼︎」
「いや………爆豪少年!次それ撃ったら強制終了で君らの負けとする‼︎」
訓練って事だからか、優しい判定だな。あのビルには麗日さんもいるし、どっちのチームの負けでもいいから止めて欲しいけど。
また始まる爆豪君の怒涛のラッシュ。緑谷君はサンドバッグ状態だった。
「リンチだよコレ!テープ巻きつければ捉えたことになんのに!」
「ヒーローの諸行にあらず…」
「緑谷もスゲェって思ったけどよ…戦闘能力において爆豪は間違いなくセンスのかたまりだぜ…」
確保テープ云々に関しては緑谷君もそうだな、せっかく背負い投げした時に爆豪君が一瞬驚いて止まってたんだから、その隙にすぐ巻き付けておくか追撃でもすれば良かったのに。が、緑谷君が窓際まで動いたって事はそろそろだ…。
「双方中っ⁉︎」
2人は交差しあい爆豪君は緑谷君へ爆破を、そして緑谷君は天井へ衝撃波を放ち、飯田君と戦っていた麗日さんが崩れた瓦礫を使い上手く核モドキを障った…。
「ヒーローチーム………W i i i i i i N!!!!!!!!」
「まぁつっても……今戦のベストは飯田少年だけどな!!!」
「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」
「んん〜そうだなぁ〜、何故だろうなぁ〜、分かる人!!!」
勝利した筈のヒーローチームから選ばれなかったのを疑問に思った生徒達にオールマイトは問い掛ける。オールマイトが挙手を促すと、八百万さんが手を挙げた。
「それは飯田さんが一番状況設定に順応していたからです。爆豪さんの行動は、戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程、先生も仰っていた通り屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様、受けたダメージから鑑みてもあの作戦は無謀としか言いようがありませんわ。麗日さんは中盤の気の緩み、そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを"核"として扱っていたら、あんな危険な行為はできませんわ。相手への対策をこなし"核"の争奪をきちんと想定していたからこそ、飯田さんは最後対応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは"訓練"だという甘えから生じた反則のようなものですわ」
「……………ま、まぁ飯田少年もまだ堅すぎる節はあったりするわけだが、まぁ正解だよ、くぅ〜〜!」
むむっ!指導者として言うべき事も全て言われたからか自信を無くしたオールマイトに川平慈英が憑依した!!楽天カードマイト!!
今回の対戦については俺も似たようなものだな。爆豪君は考えていなかっただろうが、爆破という個性故に核モドキから離れたはいいが、その後の緑谷君を集中狙いや大技でブッパ、テープを直ぐに巻かなかった事がかなりの敗因だろう。フォローみたいで絶対言わないけど。
「ようし!皆んな場所を変えて第2戦を始めよう!今の講評を良く考えて訓練に挑むように!」
「「「はい!!!」」」
その後、第2戦から第5戦まで保健室に行った緑谷君以外のA組生徒達は、互いに戦い講評し合っていた。
次はいよいよ俺の番だ。
イラストは描けないのでご自身で想像してみてください。
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