13†サーティーン† (氷鏡 瑠璃)
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13†サーティーン†
その目に、生気は無い。
生きているのか死んでいるのか、見当もつかない。
その男は仮面を被り、そして鎌を持ち、死んだ目で歩いていた。
そして――――
「ふぅ~今日も仕事終わった~」
中年のおじさんが一人で道を歩いていた。
お世辞にも、健康そうとは言いがたい。
「にしても…不気味なくらい静かだなぁ」
すると目の前に黒い羽が落ちてきた。
「…!カラスの羽か…びっくりした…」
その瞬間。
スパァァン!
「かぁっ!つぅ!いってぇ!…!あ、足が!足がぁぁ!」
彼の足は足首から先が無くなっていた。
彼は絶望の表情を浮かべる。
『今日がてめぇの命日だ。さっさと逝ちまいなぁ』
彼の首が、転げ落ちた。
『…こんなことしか…出来ねぇのかよ…鎌の扱いも銃の扱いも中途半端…仕事もできねぇ…クソッ!』
男――13は自室の机に向かって悪態をつく。
『…ッチ…こんなことしてても無駄か…』
天使の恥だ…
何で俺達と同じ見た目をしているんだ…
天使の癖に才能がない…
あれは天使じゃない…
人間にもなれない…
死神じゃないの?
縁起の悪い…
君は使えないよ。
来るな!死神!
どこまで堕ちていくんだろう。
僕は…どうなるの?どうなってしまうの?
あぁ…
ただ…皆と居たかった…
愛されたかった…
愛してみたかった…
仕事をしたかった…
お金を稼ぎたかった…
お腹が空いた…
普通に暮らしたかった…
…あれ?アレ?普通ッテナンダッケ?
モウナニモワカンナイヤ。
ワカルノハ絶望シタコトクライカナ?
アァ、僕ハ堕チキッタンダ。
イッソ…イッソ…!
死んだ方がましだ!!!
君は堕ちてきたのか…
死神にならないかな?
死神ならできるよ…
僕が人を殺さないといけないの…?
イヤだ…怖いよ…
何でこんなことしなきゃいけないの?
僕は皆と一緒のように暮らせないの?
怖い…怖いよ…
人を殺したくない…
嫌だ…やめて…僕を
僕をそこまで堕とさないでぇぇ!
13「っぁぁぁぁぁぁっ!…はぁ…はぁ…はぁ…夢かよ…くそっ…やな夢見たな…」
13の息は荒い。
13「はっ…俺が殺しを躊躇うなんて…っ…」
口元の傷が痛む。
お前はやっぱりダメだな!
死神の癖に躊躇うから天使に傷をつけられるんだ!
『だまれ…』
お前が最後に翼を見たのはいつだ!?
いつまで天使だと思っている!
『だまれ…だまれ…!』
お前はもう堕ちたんだよ!
お前の翼はもう真っ黒だ!
『ダマレェェェェェェェ!』
13「…自分に嘘はつけねぇか…頭冷やすか…」
13は部屋から外に出た。
ルチアーノ「…13、寝れないのか?」
13「おっさん…起きてたのか。」
ルチアーノ「…何があったかは聞かないが…一つ質問しても良いか?」
13「良いぞ。」
ルチアーノ「そのお前の煽るような口調…無理に作っているだろう。殺しに対する嫌悪感を隠しているな。」
13「…なんで…なんで分かったんだ…」
ルチアーノ「俺もお前も『死神』ではない死神だからだ…何となく…分かるさ…」
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