インフィニット・ストラトスφ (カンパネラ35)
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第一話 狼
別の作品も同時進行で進めていますがどちらもしっかりと更新していく予定なのでよろしくお願いします。
ある所に一匹の狼がいました。
狼は孤独でした。狼には夢がありませんでした。しかしある時狼に一人の人間の女性が近づいてきました。それを機に狼の生活は大きく変化していきました。狼の近くにさらに一人の男性も近づいてきました。それから狼は孤独ではなくなりました。それから狼は人間と共存していきたいと考えるようになりました。その為狼は多くの同族達と戦いました。その中で出会った馬と蛇と鳥も同じ考えを持っていました。狼と馬は度々ぶつかることもありました。他にも自分とはずっと考えを違えた人間と最後まで自分とともに戦ってくれた人間。彼らの協力もあり狼は同族達の王を倒し、夢を持つことが出来ました。
———
戦いは終わった。歴史改変マシンは破壊され乾巧は自分が消えるのを待つのみとなった。巧はその場にいた全員に言葉をかけるとこの世を去った。
———
次に巧の目が覚めたときそこは見知らぬ場所だった。感じ的には何かしらの施設のように見えた。そこは先程までいた歴史改変マシンのあった施設とは全く別なようだった。
(さっきまでいた場所じゃないな?いや、それ以前の問題として俺は死んだはずだ。)
そう、先程彼は泊達にこれからの事を託して死んだはずだった。ついさっき生を終えたばかりの自分が何故ここにいるのかそれが分からなかった。
(何故この施設にいるんだ?何より一体ここは何の施設なんだ?)
そんな事を考えていると、
「動くな」
そう後ろから声をかけられる。声の感じから女性だと巧は理解した。巧が後ろを振り向くがそこには誰もいない一体どこから声をかけられたのか分からず疑問に思っていると。
「一体どこを見ている!!」
そう巧の頭上から声が聞こえた。そんなはずはないと思いながらも巧は顔を上げる。
「なっ・・・!?」
巧は驚いて声を出すことすらほとんどままならなかった。何故ならその女性は巧の見たことのないものを纏って空を飛んでいた。巧はそんな現場を見たことがなかった。そこで巧に一つの疑問が浮かび上がった。
『ここは本当に自分が住んでいた世界と同じ場所なのか?』と。
普段の巧ならそんな事は考えなかっただろうが、巧は別の世界がある事を知っていた。それは、ディケイドの存在だった。後輩ライダーであるディケイドの存在を知ってしまった為に巧はこの考えを否定できなくなってしまった。だが巧はすぐに我にかえると彼女に聞く。
「ここは一体どこなんだ。」
それに対して彼女は答える。
「貴様、本気で言っているのか?『IS学園』を知らない人間などいるはずがないだろう!!しらをきるつもりか?」
『IS学園』巧はその単語に聞き覚えがなかった。そして彼女の言葉から知っていて当然だということがひしひしと伝わってきた。その彼女の発言が巧に今いるこの場所が元々自分のいた世界ではないという事を確信させた。
「なんなんだその『IS』っていうのは。』
その言葉を聞いた瞬間先程までとは違い彼女の顔に信じられないものを見たかのような表情が加わる。
「まさか、本当にISを知らないのか?」
それに対して巧は、
「あぁ、聞いたこともない。」
———
その日は少し忙しい日だった。私の弟がISを動かしてしまい、急遽IS学園に入学することになってしまった。私はその日それの対応に追われていた。そんな時にそれは起きた。
「織斑先生、大変です!!」
そう言って私の同僚の山田先生が飛び込んできた。彼女はかなり焦っているように見えた。
「何が起こったんですか山田先生?」
そう聞くと
「それが、侵入者が・・・」
そう言い彼女は監視カメラの映像を私に見せてきた。そこには確かに一人の男が写っていた。まさか男を単身で送り込んでくるとは思わず少し驚いた。どうしてこういう日に限ってこういうことばかり起こるのかと私は頭を抱えた。
「とりあえず私が行きますから山田先生は待機していてください。」
そういうと、彼女は頷き
「織斑先生なら万が一もないと思いますけど気をつけて下さいね。」
そして現場に向かうとその男は全くこちらに気づかず何かを考えているようだった。私が声をかけるとこちらを振り向き二度目の呼びかけでやった上にいることに気づいた。さらにその男は浮いている私を見てとても驚いていた。まるでISを見たことがないかのように。その考えはその後に現実となった。そいつはIS学園を知らないと言った。最初に言われた時は、信じられずにそいつに怒りをぶつけたが、それでもその男はISすらも知らないと言った。そこで私は悟った。こいつは嘘をついていないと。だがまだ疑問は多く残っている。ここで話すのも何だ私は場所を移すことにした。
それがこの世界での乾巧の生活か始まりだった。
一話目です。
序盤かなり端折っていますが私自身があまり長くしすぎないようにやってしまったことです。許してか下さい。何でもしますから。(何でもするとは言ってない)
とりあえず二つの作品同時進行になりますが頑張ってやって行きます。
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第二話 二人目と三人目
今回急ですが大きく展開を動かそうと思います。前回伏線を立てておくのを忘れてしまっていた・・・。
とりあえず今回もやって行きます。
前回のあらすじ
始まる新たな狼さんの生活
世界初の男性操縦者・・・か。まさか一夏がISを動かしてしまうなんてね。そのせいで今男性もIS適性があるんじゃないかって調べているらしく、僕も一夏に勧められてIS適性検査を受けることになってしまった。
「お次の方、このISに触れてみてください。」
もう僕の番か・・・。まぁ、そんな簡単に適性が見つかるわけないし大丈夫だろう。そう考えながら僕はそれに触れた。僕の頭の中に情報が流れ込んでくる。次の時には僕はそのISを纏っていた。
「なっ!?まさか二人目の男性操縦者!?」
一瞬にして周りがうるさくなってしまった。まさか僕も起動できてしまうなんて・・・。その日僕は世界で二人目の男性操縦者となった。
———
俺は目の前の女が案内してくれている場所に向かっていた。さっきのことも聞かなきゃならないが、向こうも俺の事が気になっているだろう。一体俺の事はどうやって話せばいいんだ?
巧は迷っていた。自分の事をそのまま話すかそれとも少し脚色して話すかを。そんな事を悩んでいると。どうやら移動する場所についたようだった。
「あっ、織斑先生大丈夫でしたか?」
そう言って、近づいてきたのはどうやら目の前の彼女の知り合いのようだった。
(先生という事はここは学校か?)
「あぁ、山田先生特に問題はない」
「織斑先生、その後ろの子は?」
「今回の侵入者だ。だが、少し聞かなければならない事が出来てしまってな。」
「そうですか。なら私は彼のいた周囲などをもう一度調べてきますね。」
そう言って、彼女は巧たちから離れていった。その後移動した先は応接室のような場所だった。
「よし、ではまずは自己紹介をしよう。」
お互い未だに互いの名前すら把握していない事に巧は思い当たった。
「私の名前は織斑千冬という。このIS学園で教師をしている。」
やはりここは学校だったようだしかしその学園の名前が巧の疑惑をさらに確信的なものにしていく。
「乾巧だ。」
巧はそう簡潔に自己紹介をする。もっと何か言うことはないのかと思われるかもしれないが乾巧という人物は幼少期から誰かと関わる事が少なくそもそもコミュニケーション能力が高い方ではない。
「そうか、では乾いきなりで悪いがお前は何者だ?」
この時巧はまだ迷いがあった。ありのまま話したところで信じてもらえる話ではなかった。何より自分の正体については知られたくなかった。そんな迷いを感じ取られたのか千冬が言う。
「何か言えないようなことでもあるのか?」
その言葉で巧の気持ちは決まった。
「分かった、話そう。」
巧は自分の過去を話す事を決めた。しかし、自分が『オルフェノク』であると言うことは隠して。巧は自分が人間とは違うということを知られる事が嫌だった。
「信じられないかもしれないが、俺はこことは違う世界からやって来たんだろうな。」
「なに・・・?」
千冬がおかしなものを見るような目で見てくる。当然だろう。何せいきなり「俺は異世界からやってきた」と言っている男が目の前にいるのだから。
「しょうがないだろ。そうとしか考えられないんだ。何せ俺はISなんてものを見た事も聞いた事もないんだからな。」
「さっきも言っていたな。本当にISを知らないのか?」
「あぁ、知らないな。」
———
千冬は頭を抱えそうになった。まさかさっき言っていた言葉が本当だったなんてとは。この世界においてISを知らない人間など確実に存在していないという確信があった。なにせISは今の世界情勢を左右しているものと言えるだろう。だが目の前のこの男が嘘をついているようには見えなかった。
「もし、お前が別の世界から来たと仮定したとして、お前のいた世界はどんなところだった?」
「俺のいた世界はここと殆ど変わらない世界だった。ただISなんてものはなかった。それより、俺からも聞かせてくれ。」
そう巧にも聞きたいことはあった。それは千冬が先程から言っている『IS』とは一体何なのか。巧には大体予想はついているが先程彼女が纏っていた装備のことだろうと。
「ISっていうのは一体何なんだ?」
「そうか、それの説明もしなくてはならんな。」
そう言って千冬は説明を始めた。
「『IS』正式名称は『インフィニット・ストラトス』今から10年前に開発された。まぁ、パワードスーツのようなものだ。」
「パワードスーツ・・・」
ファイズのようなものかと巧は簡単に解釈した。
「元々『IS』は、宇宙空間での活動を前提に作られた。そのためかとてつもなく高性能に作られている。まず空中を自由に飛び回ることができるもちろん空中だけでなく地上の行動も自由に行える。そして強力な装備を持つことによる火力、そしてこれが一番大きな事柄ではあるがシールドエネルギーによるバリアと防御面も優れている。現代のどんな兵器や装備を凌駕するそんな兵器だ。」
巧はその説明を聞いて絶句した。実物を見た事がない為本当かは不明だがそのスペック通りのものだとしたら彼女の言った通りそれはただの兵器ではないのかと。
「それは一体世界にいくつあるんだ?」
「『IS』のコアは世界に467個少なくともそれ以上は存在しない。」
467その数字を聞いて巧はファイズと同じかそれ以上のものが467体も存在していることに脅威を覚えた。
「一体どこの誰がそんなものを作ったんだ?」
その問いかけに対して彼女、織斑千冬は顔を少し歪めた。
「『篠ノ之束』それがISの開発者の名前だ。」
篠ノ之束とは一体何者なのかその疑問を彼女に問いかける前に彼女は説明を続ける。曰く、彼女は天才である。曰く、ISの生みの親である。曰く、彼女以外コアの開発方法は誰も知らない。曰く、姿をくらまし今現在どこにいるかは世界中の政府等が探しているが見つかっていない。
その説明を聞いて巧は篠ノ之束を影山冴子達と同じ存在として頭の中に認識した。
「さて、ISについての説明はこんなものだ。」
そうして説明が終わった頃に、山田先生が何かを持って部屋に入って来た。持っているものは二つのアタッシュケースのようだった。
「織斑先生、彼のいた辺りにこんなものが落ちてたんですけど・・・。」
そう言って手に持ったアタッシュケースを見せてくる。
そこには【SMART BRAIN】のロゴが大きく書かれていた。
「これはお前のか乾?」
「あぁ、そうだ。」
巧がそう答えると巧の前にある机にアタッシュケースが置かれる。何故二つあるのか巧はそう思った。とりあえず巧は両方のアタッシュケースを開けてみることにした。
そうして開けた先には、片方には『ファイズギア』が、もう一方にはかつて一度も自分が使うことはなかった———『カイザギア』が入っていた。
「どうして、こいつがここに・・・?」
そう、ファイズギアは最後まで持っていたものだった。しかし、カイザギアは最終的にどこにあるかすら分からないものだったはずなのに。そのカイザギアが今手元にある事に疑問を覚えた。
「それで織斑先生、そのアタッシュケースなんですけど、そこからISの反応が確認されたんです。」
「なに?」
「しかも両方から確認されたんです。」
「おい乾、そのアタッシュケースの中身を調べさせてもらえないか?」
———
俺は千冬の言葉にとっさに答えることができなかった。あまりにも驚きが大きすぎたのと、カイザギアの装着者だった人達のことを思い出していた。特にその中でも思い出されるのは、草加と木場だった。あの二人のことは今でも鮮明に覚えていた。それが合わさりすぐに返答ができなかった。だがなんとか我にかえり彼女に答えた。
「あっ、あぁ、調べるのはいいが条件がある。」
「条件?」
その条件とはファイズギアとカイザギアを大切に扱ってもらうことだった。これを壊されたり分解されるのは色々と困ることがあったからだ。そう言いつつ不意に『ファイズフォン』に触れてしまった。その瞬間巧の頭に多くの情報が入り込んで来た。そして、いつのまにか巧は装備をまとっていた。それは先程織斑千冬が、装備していたISとファイズの中間のような装備だった。全身が覆われているわけではないがその装備はファイズの面影を残していた。大きな違いは通常ファイズにはないはずのファイズブラスターについているようなブースターが付いていることと、顔が完全に覆われていないことだろうか。顔には目の部分に黄色いバイザーがつけられていた。
「はぁ、二人目の男性操縦者か。どうして、こう厄介ごとばかりが増えるんだろうな。」
巧が困惑し、千冬が頭を抱えていると、部屋に別の教員が飛びこんでくる。
「織斑先生!!二人目の男性操縦者が発見されました!!」
彼女はそう報告して来た。それには流石に千冬も驚きを隠せず。
「なんだと!?そいつの名前は?」
「『木場勇治』と言うそうです。」
巧は驚いた。もう一人の男性操縦者の名前が自分のかつての仲間だった彼の名前と同じだった事に。
「とりあえずは、新しいISの解析からだ。それが終わり次第男性操縦者達にはIS学園に入学してもらう。分かったな乾。」
その顔が拒否権はないぞと物語っていた。
「あぁ、分かった。」
この日、新たに二人の男性操縦者が生まれ、二人のIS学園入学が決まった。二人の再開まであと少し・・・。
第2話です。
色々なことの説明回です。自分自身にしては若干長い文章量になってしまいました。そのため間違いなども多いかもしれませんがそのへんはすいません。とりあえず次回までまたお待ちください。
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第三話 SHR
できる限りもう一つの方の話も同時進行で進めたいので同じ話数になるまではこっちを投稿します。できるだけ早くに投稿していくつもりなのでお願いします。
そういえばなのですが、感想を書いてくださっているみなさま本当にありがとうございます!!かなり励みになっています。感想についてですができる限りは返信していこうと思っていますのでよろしくお願いします。
前回のあらすじ
ファイズギアとカイザギアが出てきました。
「全員揃ってますねー。それじゃあSHR始めますよー。」
教壇に立った山田先生が微笑みながらクラス全体に声をかけている。
それを見ながらも俺、織斑一夏は居心地悪く座席に座っていた。今でも思うがこれが一人だったらと思うととてもゾッとした。後ろの座席に俺の子供の頃からの親友である勇治がいなかったら本当に参っていたかもしれない。えっ、何故そんなに居心地が悪いのかって?
それはここに俺と勇治以外の男が一人もいないからだ。ここはIS学園ISば女にしか動かせないから周りは、女の子だらけだ。俺と勇治は偶然ISに触れたら動かせてしまったから今ここにいる。言うなればライオンの檻に放り込まれた人間のようなものだ。周りの目がとても怖い。しかも俺と勇治に意識が来すぎていて副担任の先生の話を全く聞いていないのが分かる。そろそろ涙目になってるから山田先生の方を向いてあげたらどうかと思う。うん?あれは箒か?久しぶりだなぁ。
「うっ、うぅ、とりあえずこれからよろしくお願いします。」
———
あの先生可哀想だなぁ。でも今俺たちが声を出したらさらに大変なことになるような気がする。とりあえず自己紹介に入っているし俺も自分の文を考えておかないと。次は一夏の番か。一夏周りに注意を払いすぎて名前を呼ばれているのに気づいてないな。
「織斑一夏君、織斑一夏君!」
「は、はい!?」
一夏ったらびっくりしすぎて声が裏返っちゃってるよ。
—クスクス—
一夏笑われてるけど流石にこれは話を聞いていなかった一夏のせいでもあるね。しかもその慌てようは、自己紹介を考えてないね?
「あっあの、大声出しちゃってごめんね?おっ、怒ってるかな?でっ、でも自己紹介『あ』から始まって『お』の織斑君の番なんだ。ごめんね?自己紹介してもらってもいいかな?」
それにしてもあの先生は流石に自信がなさすぎじゃないだろうか?先生ならもっと自信を持ってもいいと思うんだけど・・・?
「わっ、分かりました。やります。やりますから!!」
はぁ、今回ばかりは助けてあげられないよ一夏。一夏がこちらをちらっと見てくるので俺は顔を背けた。そして、背けた時に後ろ側の扉が開くのが見えた。そこから入って来たのは一夏の姉の千冬さんだった。それを見た時俺は一夏の冥福を祈った。
———
「おっ、織斑一夏です。よろしくお願いします!!」
くそっ、勇治は助けてくれないし、だからと言って何も思いつかないし、このままだと変な奴だと思われちまう!くっ、周りの「それだけ?」って言う目線が痛い。とりあえず、とりあえず何か言わなくちゃ。
「以上です!!」
あっ、周りの女子がコントみたいに倒れた!?まっ、まぁいい、これでなんとか乗り切っ・・・
スパァァァン!!
「イッテェ!!」
何だ敵襲か!?
「自己紹介もまともにできんのか?お前は。」
「ゲェ、関羽!?」
スパァァァン!!
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者。」
そう言ってから千冬姉は、教壇の方へと歩いていく。
「あっ、織斑先生。もう会議は終わったんですか?」
「あぁ、山田先生。HRを任してしまってすまなかったな。」
「いいえ、副担任なんですからこのくらいは。」
「諸君。私が担任の織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は若干十五才を十六才までに鍛えぬくことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな?」
千冬姉、一体どこの独裁者、もしくは軍隊なんだ?そんなこと言ったら周りのみんなはドン引きに決まって、
「キャー!!、本物の千冬様よー!!」
何でみんな嬉しそうにしてるんだよ!!
「ずっと、ファンでした!!」
自分の姉にファンがいるのは嬉しいけど今の発言を聞いてよく言えたな・・・。
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!」
本当に猛烈なファンっていうのは存在するんだな・・・。
「私、お姉様のためなら死ねます!」
最後のに関しては重いよ!!どんな覚悟を持って来てるんだ本当に・・・。
そんな言葉を聞いて本人はとてもうんざりしたような顔をしている。もしかしてこれが初めてのことじゃないのか!?
「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か? 私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか? 」
「きゃあああああっ!、そんな、お姉さまに叱っていただけるなんて!! 」
「もっと叱って、罵って下さいお姉様!!」
「でも時には優しくして!」
「そして付け上がらないように躾……いえ、調教してください!! 」
もう、何だこれ?でも千冬姉の登場でさっきまで俺たちだけに集中していた視線が千冬姉に集中したおかげで少しだけ居心地が良くなったな。まぁ、一瞬のことだろうけど。
「で? 挨拶も満足に出来んのか、お前は」
「いや、千冬姉、俺は―――」
スバァァァン!!
本日三度目の破裂音が教室に響き渡った。
「織斑先生と呼べ。」
「・・・はい、織斑先生。」
「とりあえず、席につけ。今日はもう一人紹介しなくてはならない奴がいる。・・・入ってこい。」
うん?入学初日から転入生か。一体どんな奴なんだ?
———
・・・そろそろ、俺の番か。しかし、まさか生徒として通うことになるとは思わなかったな。何せもう、三十を超えるおっさんだからな。織斑に言われるまで気づかなかったな。まさか、自分が若返っているなんてな。
そう、今の巧は王を倒した頃と同じぐらいの年齢に容姿が戻っていた。簡単に言えば18歳ぐらいである。確かにこれでは生徒以外では通じないだろうと巧も思った。
「とりあえず、席につけ。今日はもう一人紹介しなくてはならない奴がいる。・・・入ってこい。」
巧は、そう呼ばれ入っていく。巧が入っていくと多くの生徒の目がこちらを向いていた。居心地の悪さを感じたが巧はそれを無視し教壇の横に歩いていく。
「乾、自己紹介をしろ。」
「乾巧だ。得意な事はアイロンがけだよろしく頼む。」
とりあえずこれで無難だろう。そう思い生徒達の様子を伺っているが時が止まったかのように返事が帰ってこない。
「おい、一体「「「き、」」」あぁ、き?」
「「「キャァァー!!」」」
突然教室中が騒がしくなる。巧達は思わず耳を塞いだ。
「まさかの男性!?」
「しかもイケメンよ!!」
「見た感じクール系かしら!!」
「男性操縦者が三人も、・・・さらに可能性が広がるわ!!」
最後の発言については何を言っているか分からないが普通でないことは確かだろう。巧は背筋に何か寒気のようなものを感じた。とりあえず巧は件の自分以外の男性操縦者を探してみることにした。程なくして彼らは見つかった。
(あいつが織斑千冬の弟の織斑一夏か。そしてその後ろが・・・)
そう考えながら巧は一夏の後ろの席に目を向ける。そこに座っている生徒は巧の方を見ながら目を見開きとても驚いたような表情をしていた。そして巧も彼の顔を見て驚きが隠せなかった。そこにはかつての状態よりも幼い木場勇治がいた。そして彼の表情がものがたっていた。彼が木場勇治本人であるということを。
「静かにしろ。これではSHRがいつまでたっても終わらん。」
そう千冬が言うと、さっきまで騒がしかった教室内が瞬く間に静かになる。
「では、これでSHRを終わりにする。何か質問はあるか?」
それに対し誰も手をあげる事はなく、
「そうか、ではこれからは諸君らはISについての講義に入り、後には実技が待っている。基本的な事は即座に覚えろ。いいな?」
「「「「「はいっ!!」」」」
それに対して異論を唱えることもなくSHRは終わりを迎えた。
というわけで第三話です。1日に2話投稿するのはめちゃくちゃ大変ですね。それでも話数が並ぶまではどんどんと更新していく予定です。これからもお願いいたします。
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第四話 狼と馬
この辺りからそろそろ戦闘が入ってくるなぁと思っている作者です。戦闘描写についてはファイズの関係の方がまだ書きやすいんじゃないかなぁと思っています。
前回のあらすじ
狼さんとお馬さんの出会い。
授業が始まったが織斑一夏は、危機的状況に立たされていた。
それは———
何だこれ?授業の内容が全く分からないんだけど・・・?
ちらりと後ろを振り返り自分以外の男性、乾と勇治が何をしているかを確かめると二人とも特に分かっていないというようなことはなさそうであった。
何で、二人ともこれを理解できてるんだ?俺には全く分からないぞ?
「織斑君、何か分からない事がありますか?」
あまりにも挙動不審すぎる一夏の様子に気がついた山田先生が、気遣うように声をかける。
「え、えっと」
「分からないことがあったら何でも聞いてください!何せ私は先生ですから。」
と少々誇らしげに言っている。
それに対し一夏は———
でも、今やってる範囲が全部分からないなんて言って本当に大丈夫かな?でも分からない事は分からないうちにって言葉もあるくらいだしな・・・。
一夏は意を決し声を上げる。
「先生!」
「はい、どうしましたか織斑君。」
「全部分かりません!」
これには流石にクラスの全員がコントのように椅子からずり落ちたりなど動揺をあらわにしている。
「えっ、えっと、全部、ですか?」
「はいっ!全部分かりません!」
「えっと、今の段階で織斑君と同じでほとんど分からないって人はいますか?」
主に他の男性操縦者、巧と勇治に向けてそう問いかける。しかし、その問いに対して声を上げるものはなく。全員が概ね理解しているということがわかる。
「織斑。入学前に渡した参考書はどうした?」
「あの、分厚いやつですか?」
「そうだ。」
教室内で授業を見ていた千冬が一夏に問う。
「古い電話帳と間違えて捨てちゃいました。」
スパァァァン!!
本日通算四度目の音が教室に響く。このぐらいになるとクラスの全員が「またか」と思い始めた。
「馬鹿者。参考書を捨てる奴があるか。後で、再発行するから一週間以内に覚えろ。いいな?」
「いや、千冬姉一週間は・・」
スパァァァン!!
「織斑先生、だ。何度言わせる気だ?それと私がやれと言ったらやれ。いいな?」
「・・・分かりました。織斑先生。」
その後も授業は続いていき、休み時間を迎えた。
休み時間になるとまた、朝の状態に戻ってしまった・・・。いや、朝の状態よりもひどいと思う。何せクラスの女子だけでなく他クラスの生徒、それに上級生の人まで俺たちを見にやってきているからだ。しかも見ているだけで話しかけては来ないんだよなぁ。
そんな事を一夏が考えていると、
「一夏、今日は災難だったね。」
一夏の後ろから声が掛かる。一夏は振り向きながら彼に声をかける。
「ひどいぞ勇治。どうして助けてくれなかったんだよ。」
「いやー、あれは無理だよ一夏。君、緊張しすぎたのか分からないけど声も聞こえないぐらい集中してたんだから。」
そう笑いながらいうこいつは、『木場勇治』俺の幼馴染で小さい頃からの親友だ。一緒に剣道をやってたりもした。俺が辞めるときに一緒にやめちゃったけどな。
そんな事を話していると、
「・・・ちょっといいか。」
「えっ?」
急に話しかけられて少し驚いたがそこにいたのはこれまた幼馴染の『篠ノ之箒』だった。最後に会ったのはだいぶ前だったが忘れるわけはなかった。
「少し、廊下に行って話さないか?」
「えーと」
そう言いながら勇治を見る。
「一夏、俺のことはいいから行っておいで。」
勇治は俺に笑いかけながら俺に言った。
「そうか、分かった。じゃあ箒行こうぜ。」
「あ、あぁ。」
そう言って俺たちは廊下へと向かっていった。
———
箒さんは、今でも一夏の事が好きなんだね。いつも間近で見てきたけど、やっぱり一夏は鈍感すぎると思うよ。現在知ってるだけでも二人は毒牙にかかってるかな。とりあえず今は、それを考えている場合じゃなさそうだね。
木場の後ろの席の巧が立ち上がり、木場の元へと歩いてくる。
「少し話さないか?」
その言葉を予測していたのか、
「あぁ、俺も君と話がしたかったんだ。」
そう言って一夏達とは別の方向へと歩みを進める。幸い一夏達に気を取られて巧達が外に出る事に彼女達は気づいていないようだった。そうして廊下のはずれ辺りの人目につかない場所に二人は足を進めた。そうして死に別れた二人は異世界での再会を果たした。
「木場、なんだよな?」
「あぁ、そうだよ乾くん。王を倒した時以来だね。」
そのお互いの言葉で二人は互いがあの闘いの記憶を持っている事を知った。
「まさか、こんな所で再会するとは思わなかったなぁ。」
昔を懐かしむように木場が話す。
「誰かに聞かれたら困るから昔のことは今は話さないけど、それでもこれだけは言えるよ。また会えて嬉しいよ乾くん。」
「あぁ、俺も会えて嬉しいぜ木場。」
「でも、詳しい話はまた後でにしようか。」
流石に一夏達の話が終わり巧と木場がいない事に気付いたらしく、気づけばまた女子達が増えつつあった。二人は一旦話をやめ教室に戻る事にした。
「あっ、二人とも一体どこに行ってたんだ?」
教室に戻ると一夏が声をかけてくる。
「あぁ、一夏。乾くんと二人で話してたんだ。そうだ、二人は初対面だったね。乾くん、まぁ知ってると思うけど紹介しておくよ。こいつは俺の親友の一夏だよ。幼馴染なんだ。そして一夏、彼は乾くんって言うんだ。彼は・・・昔馴染みとでも言うべきかな。」
などと三人で話していると
キーンコーンカーンコーン
二限目の始業を告げる鐘が鳴った。
———
二限目は何事もなく終わり二度目の休憩時間になった。とりあえず一夏達としても積極的に女子に関わっていく気は今の所なかった。なので男三人で会話をしていると。
「ちょっとよろしくて?」
「へっ?」
またしても一夏達に話しかけてくる女子がいた。見た目としては、白人特有のブルーの瞳、地毛であろう煌びやかな金髪はわずかにロールがかっていて、いかにも高貴そうなオーラを放っている。
「まあ何ですのその反応は!わたくしに話しかけられるだけでも相当の名誉だというのに。」
「いや、そんなこと言われても。俺君のこと知らないし。」
そう行った瞬間、勇治と巧の呆れた顔が見えた。
「本気で言ってるのかい?一夏。」
「その子の名前は『セシリア・オルコット』代表候補生って奴だ一夏。いわゆる『エリート』っていう奴だな。さっきの自己紹介で言ってたことだ。」
「そう『エリート』なのですわ。そちらのお二方は少しは勉強なさっているようですわね?」
しかし、それを聞いても一夏は釈然としない顔をしていた。そして次の一言がさらに周囲を困惑させる。
「・・・代表候補生って、何?」
「まぁ!代表候補生もご存知ないなんて!」
ここに来て三人、特に巧は千冬から聞いていた話を実感した。
ISが女性にしか動かせないという事による社会的立場の向上。それによって起きる『女尊男卑』。この世界にはその概念が蔓延っているということを。
「(まさか、ここまでのものだとはな)」
「まぁ、いいでしょう。わたくしが言いたいのはそんなことではないのですわ。先程の方を見る限りあなた方はISは初心者でしょう?ですから、どうしてもというなら、入試で唯一教官を破ったわたくしが教えて差し上げてもよろしいですわよ?」
「うん?教官なら俺も倒したぞ?」
「僕も倒したね。」
俺の場合は勝手に教官が自滅してくれて勝ったけど、勇治の場合は自力で勝ったって言ってたからな。やっぱり勇治は昔から喧嘩とかも強いんだよな。
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
「女子の中ではってオチなんじゃないのか?」
「そちらの方はどうなんですの!?」
そう言って巧に話題を振っていた。
「・・・俺は、そもそも入試を受けてないからな。」
「なっ!?」
「戦った相手といえば、ちふ・・織斑先生ぐらいなもんだな。強いて言うならそれが入試だろうな。」
これまた驚きの言葉が飛び出した巧は千冬姉と戦ったっていうのか!?そんなの初心者が勝てる相手じゃないだろ。
「結局、引き分けで終わっちまったけどな。」
千冬姉と引き分けた!?もしかして、巧ってめちゃくちゃ強いのか?見れば確か・・・オルコットだったっけ?彼女も流石に言葉が出ないぐらい驚いているのがわかった。
キーンコーンカーンコーン
そこでチャイムが鳴った。
「くっ、覚えておきなさい!!」
彼女も捨て台詞のようなものを吐いて席に戻っていった。
———
「全員いるな? では授業を、と言いたいところだが。その前に、再来週行われるクラス対抗戦に出るクラス代表者を決めなければいけないな。」
クラス代表者とは、簡単にいうならば学級委員長と言われた方がわかりやすいかと思う。そんな物も決めなきゃ行けないんだなぁ。そんな風に人ごとのように考えていると。
「自薦、他薦は問わない。そして推薦されたものに拒否権はない。誰か推薦したい者、やりたい者はいるか?」
その瞬間俺の背筋に何か寒気を感じた。これはもしかして、嫌な予感ってやつかな?
「はい、織斑君がいいと思います!!」
「それなら私は、木場君を推薦します!!」
「だったら、私は乾君を!!」
やっぱりこうなるか。なんだかそんな予感はしてたんだよなぁ。他の二人もなんだか諦めたような顔をしてるなぁ。
「ふむ、織斑に木場に乾か。他に誰かいないか?いないのであればこの三人でから決めるが。」
「待ってください!!納得いきませんわ!!」
そう言って立ち上がったのはさっきの休み時間に絡んで来たセシリア・オルコットだった。
「クラス代表というのですから。実力トップのものがなるべきですわ!!それなのに物珍しいからという理由だけでこんな極東の島国の雄猿にするなんて、恥さらしもいいところですわ!!」
俺は、その言われようにさっきのことも合わせて少し頭にきていた。
「わたくしがこんな極東の島国に来たのはISの勉学のために来たのであってそんなサーカスのためではありませんの!!」
そこで俺は頭にきてついに口を出してしまった。
「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一不味い料理ランキング何連覇だよ!!」
「なっ、わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
二人の論争が始まってしまい収集がつかなくなってしまいそうになった所で意外な人物が止めに入った。
「おい、やめろ二人とも。」
巧だった。
「あなたもわたくしの邪魔をしますの!?」
「だから落ち着け。ここで口で言い争っていても仕方がないだろ。織斑先生が自薦、他薦共にありだって言ってるんだ。今の俺たちに拒否権はない。だったら口で語るんじゃなくて腕で示せ。お前もさっき言ってただろう『実力トップのものがなるべき』、なんだろ?」
昔の巧ならこんなことは言わなかっただろう。だが巧も元々18歳だった頃とは違う。精神年齢は確実に大人になっていた。
「・・・わかりました。決闘ですわ!!」
「よし決まったな。勝負は一週間後、放課後に第三アリーナで行う。それまではできる限り励め。」
———
セシリアは少し悩んでいた。それは先程のやり取りのことである。
(なんなんですのあの男。私に対して怒るわけでもなくだからと言ってもう一人の男のように私を批判するわけでもない。これまで見てきた男達とは何かが違う気がしますわ)
セシリアは困惑していた。男というのはセシリアの思っている通りの本当に情けないだけのものなのだろうか?
(いいえ、どうせあの場だけに決まってますわ。一週間後の戦いで私が正しいということを証明してみせますわ。)
どうも第四話でした。
今回は、巧がファイズ本編では見せないような一面を見せていたりします。私の感じたものではやはりファイズ本編と仮面ライダー4号の時の巧はかなり違うように感じました。今回はその感覚がかなり大きく反映されていると言えます。
さて、とりあえずまた次回までお待ちください!!
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第五話 代表決定戦
この作品なんだか分かりませんが、もう一つの作品と比べてUAの伸びがめちゃくちゃいいです。理由は分かりませんがそれだけ見ていただけたらって考えると嬉しいです。数字が伸びていくのを見て画面の前でめちゃくちゃニヤニヤしながら見てます。これからもよろしくお願いします!!
前回のあらすじ
巧達の決闘が決まる。
学園が放課後を迎え巧達三人は相談していた。
「それで?一体誰が女子と相部屋になる?」
今、一夏達の手の中には二つの鍵がある。これは寮の二人部屋の鍵である。お分かりいただけただろうか。そう一人あぶれるのだ。それなら一人と二人で分かれればいい話ではないかと思うかもしれない。しかし、事はそう簡単には運ばない。あぶれた一人は追加の部屋がないため、女子と相部屋になってしまうのだ。
「とりあえず、ここでうだうだしててもしょうがないだろう一夏。ここは潔くじゃんけんで決めることにしないかい?」
「俺はそれでいいぜ。」
二名が賛同したことで一夏の逃げ場は無くなった。だったらと、一夏も、腹をくくることにした。
「それじゃあいくよ。」
三人に緊張が走る。
「「「最初はグー。じゃんけん———」」」
———
場所は変わって三人は寮の廊下を歩いていた。三人の内の一人、そう、一夏は顔をうつむかせかなりガックリとしている。そうみなさんのご想像通り一夏はじゃんけんに負けたのだ。
「ほら一夏、そんなに落ち込まないでよ。じゃんけんの結果なんだから仕方ないだろう?」
「そうだ、一夏まだ最悪の展開と決まったわけじゃない。」
「クソッ、他人事だからって適当なこと言いやがって。」
そんなことを話していたら部屋の前にたどり着いていた。
「じゃあ、僕たちは『1026号室』だね。それじゃあ頑張ってね一夏。」
「出来る限り頑張れよ一夏。」
そう言って二人は自分が入る部屋の隣の部屋に入っていく。それを見届けてから一夏は腹をくくることにした。
———
俺は一夏の安全を祈りながら部屋に入った。木場と完全に二人きりになれるのはこの部屋の中しかない。話をするなら今だろう。
「木場、昼間の続きのことなんだが・・・。」
「あぁ、俺もそれについて話そうと思っていたんだ。」
とりあえず巧はずっと気になっていたことを聞くことにした。
「木場は一体どうしてこの世界にいるんだ?』
その質問に対して木場は懐かしいものを思い出すような面持ちで語り始めた。
「俺は、あの時王の動きを止めて、乾君の攻撃を受けた後、気づいたら俺は赤ちゃんになって見知らぬ親の元に生まれたんだ。あの時は流石に驚いたなぁ。それから少しして、小学生に入った頃に一夏に出会った。それから中学を経てここに至るってわけだよ。」
その言葉を聞いて巧は疑問に思った。さっきの説明を聞く限り木場はオルフェノクではないのだろうか?
「乾くんの考えている事は分かるよ。僕がオルフェノクかどうかだろう?」
木場には見透かされていたようだ。なので改めて聞いてみる。
「それで、一体どうなんだ?」
「結論から言えば、僕はオルフェノクだよ。でも、僕はこの世界で死んだわけじゃない。生まれた時からオルフェノクだったんだ。」
という事は、木場はもうオルフェノクになって15年も経っているというのだろうか?それだと一体寿命はどうなるのだろうか?
「寿命に関しては今の所は問題はないよ。灰がこぼれたことも一度もないよ。それに、あの時と姿が少し変わっているんだ。しかもオルフェノクになっている時、昔より体が動く感じがしたよ。もしかしたら昔より強くなっているのかもしれないね。」
俺はこちらに来てから一度もオルフェノクなっていない為、確認していないから分からないが木場がそうなのであれば俺もそうなっているのだろうか?
「さて、僕から話せる事はこれぐらいだよ。そろそろ俺も乾くんがどうしていたか聞きたいな。」
そう言われ巧も話し出す。あの時王を倒せた事。その後、多くの後輩や先輩ライダー達と出会った事。そして、歴史改変マシンを巡る戦いの事、そこで出会った仲間達のこと。多くのことを話した。
「そうか、海堂がそんなことを・・・。」
全ての話を終えた時木場はそう呟いた。木場にとっても海堂は思い入れの深い人物であるからだ。
「しかし、乾くんはとてもすごい体験をして来たんだね。」
二人は考えた。互いに数奇な運命だと思う。互いに仲を違えたこともあった。そして、最後は巧に全てを託し二人は別れた。それから10年以上の時を経て異世界で再会し、今同級生として生活している。こう考えると本当にとんでもない運命である。
「改めて、言わしてもらうよ。乾くん、又君に会うことができて嬉しいよ。」
「それはこっちのセリフだ木場。もう二度と会う事はないと思っていたからな。」
そう言って二人は笑った。互いに心からの笑いだった。そのまま二人は話を続けていき、夜は更けていく。その頃隣の部屋の一夏は相部屋になった箒に木刀で追いかけ回されていたが、話に夢中になっていた二人が気づく事はなかった。
———
少し時間が経ち、夜も更けてきた頃。互いに話を終え落ち着いた頃に巧が切り出した。
「そうだ、木場お前に渡したい物がある。」
そう言って巧が取り出したのはアタッシュケースだった。そのアタッシュケースに書かれたロゴには木場も見覚えがあった。
「これは、お前が持っているべきだと思う。」
そう言ってアタッシュケースを渡される。恐る恐ると言った感じで木場はアタッシュケースを受け取り中を見た。
「これは・・・。」
「あぁ、カイザギアだ。」
そう、そこにあったのはカイザギアだった。最後の時に木場が使っていた物だった。
「どうしてこれがここに?」
「知らん。どうやら俺が目覚めた場所の近くに落ちてたらしい。」
これも一緒になっと言いながら、乾くんは、手に持ったファイズギアを見せてくる。
「ついでにだが、それはISだ。カイザフォンが待機状態になってる。」
「本当に俺が持っていていいのかい?」
「あぁ、俺にはファイズがあるからな。」
「そうか、なら有り難く使わせてもらうよ」
そうして話を終えた2人は話しているうちにかなり遅い時間になってしまったことに気づき、眠ることにした。
———
翌日、教室に入ると、既に一夏は教室にいた。
「おはよう、一夏。昨日は大丈夫だったかい?」
「いや、大丈夫ではなかったかなぁ。」
一夏の歯切れの悪さに疑問を覚える。
「じゃあ、何かあったのかい?」
「まぁ、そうなるな。・・・実は、相部屋自体は箒と一緒だったんだけど・・・。」
そこまで聞いただけでも木場は察してしまった。
「少し、やらかしちゃってな。木刀を持った箒に追い回されたんだ。」
木場にはその光景が鮮明に思い浮かんでしまった。一夏は普段から発揮する、間の悪さを発揮してしまったのだろう。
「と、とりあえず、大変だったね一夏。」
まぁ、あの間の悪さは一夏の特有のものであり、昔から時折発揮することがあるものだった。
キーンコーンカーンコーン
話していると、いつのまにか始業の時間になっていたようだった。三人は席に着き今日も授業が始まった。
———
放課後、その日は特に授業中に何かが起こることなく、放課後を迎えた。
「さて、クラス代表決定戦に向けて練習をしなくちゃね。」
「そのことなんだけど・・・、俺は箒に教えてもらうことになっててさ。」
「箒さんに?」
「あぁ、女子の中で一番仲がいいのは箒だからな。箒に頼んでみたんだ。」
「・・・俺達も見に行っていいかい?」
「あぁ、いいと思うぜ。」
そう言うと、一夏は箒さんの場所に向かって行き、多分だけど俺達も一緒に行くことを伝えてるんだろう。そうして一夏が俺たちの場所に戻ってくる。
「じゃあ、行こうぜ。」
俺達は一夏の後ろをついて行った。
———
道場、か。俺が一夏と木場について行くと道場にたどり着いた。着くと早速、篠ノ之が、剣道の防具をつけていた。それに続いて一夏が防具をつけている。それから試合が始まっている。一夏が、終始押されているのが分かった。
「篠ノ之は、強いな。」
「彼女の家は剣道の道場でね。彼女は小さい頃から剣道をやっているんだ。少なくとも今の一夏が勝てる相手じゃないね。」
話しているうちに試合は終わっていたようだ。試合は一夏のボロ負けのようだった。
「さて、せっかく来たんだし俺達も試合をしないかい?」
「・・・俺は剣道はやったことないんだぞ。」
そう、この場にいる四人のうち巧だけは剣道の経験がなかった。少なくとも自らやったことはなく学校の授業で習うような少しの知識ぐらいしかなかった。
「大丈夫、少し打ち合うだけだよ。」
木場は引く気はなさそうだった。
「・・・分かった。」
そう言って、木場は迅速に、巧は少し時間がかかりながらも防具をつけた。そうして軽く慣らすかのように打ち合う。
(やっぱり乾くんは筋がいいな。)
普段からファイズエッジなどを使っているからか類稀なる戦闘の才能なのかは分からないが荒削りながらも巧はやはり、強かった。
(これなら大丈夫そうかな?)
木場は手を止める、それに合わせて巧も手を止める。
「乾くん、やっぱり試合をしないか?」
巧は、結局こうなるのかと考えながらも頷いた。
———
やはり、一夏め、鈍っているな。昔の一夏はもっと強かった。まぁいい、私がとことん鍛え直してやる!!・・・うん?
考えている箒の視界の端に打ち合っている姿が目に入る。
あれは、木場と乾か、木場は剣道の経験者だったな。打ち合っているということは、乾も経験者なのか?
そんなことを考えながら注視してみると、
いや、あの乾の動きはほとんど剣道をやったことがない人の動きだ。
二人が何か話した後に互いに少し離れて竹刀を構える。どうやら試合をするようだな。しかし、先程の打ち合いを見ると、木場の圧勝だろうな。私はそう考えていた。そう、試合が始まるまでは。
「えっ?」
いつのまにか隣にいた一夏も、彼奴らの試合をみていて驚いたようだった。みれば一夏達目当てで見に来ていたクラスの奴らや、その他のクラスの奴らも見入っているのが見える。しかし、彼らが驚くのも無理はなかった。乾と木場はお互いに攻防を繰り返している。そう、攻防を、だ。攻防とは互いの実力差が開いていれば確実に起きないものだ。さっきまでの打ち合いとは違い互いに全力で戦っているのが分かった。同年代とは思えない苛烈な戦いだった。
この時、巧と木場は、互いに違うものを駆使して戦っていた。巧はこれまでの戦闘によって培われてきた経験それに勘と呼ばれるもの。木場は、巧ほどの戦闘経験がないため、純粋な剣道の技術で戦っていた。その絶妙なバランスがこの攻防を生んでいた。しかし、このバランスは、何かの要因で簡単に崩れることをものがたっていた。そして、最終的に勝ったのは、———木場だった。
要因は、慣れない防具を身につけ長めの時間戦っていた巧に隙ができたことだった。その隙を木場は見逃さなかった。綺麗に木場の面が決まって、試合は終わった。
———
今の試合はすごかった。最初は絶対に勇治の圧勝だと思った。俺は勇治と剣道をやっていた。だから勇治の強さを知っている。でも、蓋を開けてみれば内容は五分五分だった。やっぱり巧って強かったんだな。俺は二人に近づいて行った。
「二人ともすごいな!巧がこんなに強かったなんてな。」
「そうでもない。まだまだ強い奴はいるさ。今回だって木場に負けたしな。」
「何を言ってるんだい乾くん?今回は剣道だったから俺に軍配が上がったけどこれが、剣道じゃなかったらこうはいかないよ。」
俺は、勇治がここまで人を褒める所を初めて見た。どうやら勇治は巧のことを自分より強いと認めているらしいことが伝わって来た。
「じゃあ、俺はこれで戻らしてもらうぞ。」
「そうだね、俺も汗を流したいし今日はここまでかな。」
「おう、分かった。また明日だな。」
そう言って二人は部屋に戻っていった。
———
そして、期限の一週間がやって来た。この一週間結局俺はISの練習をしないままクラス代表戦を迎えてしまった。
「なぁ、箒。」
「どっ、どうした一夏?」
「結局ISの練習は?」
俺は箒に詰め寄った。この一週間俺はISの練習の代わりに結局ずっと剣道で鍛えられていた。さらに言えば俺は自分がどのISを使えばいいのかも知らないままだった。
「ちふ・・・織斑先生、俺はどのISを使えばいいんですか?」
「お前のISは、もう少しで『専用機』が届くことになっている。だからお前の試合はそいつが届いてからになる。だから試合順としては
まず
『乾vsオルコット』
次に
『木場vsオルコット』
この辺りまでには一夏の専用機が届く予定だ。
場合によっては後に回すが
『織斑vs木場』
そして
『織斑vsオルコット』
そして
『木場vs乾』
最後に
『織斑vs乾』
の順番で行く。」
「そう言えば、勇治と巧のISはどうなるんだ?」
「乾には、専用機がある。木場には打鉄を———。」
「織斑先生、俺にも専用機があります。打鉄の貸し出しはいりません。」
そう言って勇治は千冬姉に、アタッシュケースを見せる。そのアタッシュケースを見て少し驚いた後、巧の方を見た。巧は静かに頷き、千冬姉にアイコンタクトを送っていた。あのアタッシュケースが一体何なんだろうか?この時の俺には分からなかった。
「では、最初の対戦者である乾とオルコットは準備をしろ。」
そうして二人は準備を始めた。
第五話でした。
本当は、今回で戦闘まで終わらせる予定だったのですがそこまで行けなかった。orz
とりあえず次回戦闘に入ります。私ここ書くのが楽しみだったのでこの部分は近いうちに更新します。
では、次回もよろしくお願いします!!
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第六話 夢
前回のタイトル、最初は代表決定戦まで行く予定だったのであのタイトルなんですが、よく見るとタイトル詐欺ですねあれ。もしかしたらいつのまにかタイトルが変わっているかもしれません。その辺ご了承をお願いします。後、今回めちゃくちゃ迷いながら書いたので文章がめちゃくちゃおかしいかもしれません。更に今回は多くの自論と独自解釈を含んでいます。不快に思ったら申し訳ありません。
前回のあらすじ
やっぱりたっくんは強かったよ・・・
今、俺はピットに向かって進んでいた。その途中で一夏と篠ノ之、木場が待ち構えていた。それぞれの浮かべている表情は様々だった。一夏には、俺を心配するような表情が浮かんでいた。篠ノ之は、勝てるわけがないという少しの嘲りが浮かんでいる。そして、最後の木場は、少しも心配しておらず俺を信頼してくれていることが伺えた。
「巧、本当に勝てるのか?」
「あぁ、勝つさ。」
いや、負けられなかった。セシリア・オルコット、あいつは異常なまでに男を弱いものだと見ている節があった。あの感じは他の奴らとは違う。多分だが過去に『男は弱い』という印象を持ってしまうような何かがあったんだろう。俺は、それを変えてやりたいと思ってしまった。あいつに、オルコットにそんな考えを持っていて欲しくないと思った。だから、負けられない。
「心配するな、一夏。俺は、負けないさ。」
そう言って、一夏達の横を通り過ぎていく。そして俺は、ISを展開する。
「それが、巧のISなのか?」
「あぁ、これが俺のIS『ファイズ』だ。」
不思議と、今は負ける気がしなかった。
「行ってくる。」
それだけ言うと俺は、ピットから飛び出した。そして、アリーナの中央付近で静止し、正面を見据える。そこには蒼いISが待っていた。
「(あれが、オルコットの専用機『ブルー・ティアーズ』か。)」
分かっているのはその名前だけ。その他の情報は何も無かった。もちろん、千冬が意図的に情報を隠しているのだろう。何せセシリアは彼らと違って代表候補生という、その国の中でも選りすぐりの存在である。一つも情報がないという事はありえない話である。千冬は試合に公平性を持たせようとしたのだろう。巧のISは、まだ千冬と木場以外は誰も性能を知らない機体だ。もちろん、情報などあるはずがない。更にこれは初戦だ。情報は戦いながら手に入れろという事だろう。
「よく逃げずにやってきましたわね。褒めて差し上げますわ。」
「逃げるわけないだろ。自分で売った喧嘩だ。」
「負ける事が確定しているのに来るなんて、とんだ物好きですわね?」
「負けんさ、絶対に、な。」
———
やっぱりよく分かりませんわ。この男は一体何なんですの!?何故こんなに自信満々なのですか!?男とは弱いもののはずですわ。えぇ、そうに決まっています。あんなのは唯の表面的な物にすぎませんわ。
セシリアは自分の父親の事を思い出す。セシリアの中で父は『情けない男性』だった。いつもへこへこと頭を下げている人だった。セシリアは、父が誰かに強く何かを言っているところを一度も見た事がなかった。そして、父と母が亡くなった後に、遺産目当てで近づいて来た男達を見て、セシリアは男が本当に情けない存在なのだと確信してしまった。そんな考え事をしているセシリアの意識を巧の質問が現実に引き戻した。
「なぁ、オルコット。」
彼は、静かにわたくしに声をかけて来ました。そして———
「おまえ、夢は…あるか?」
そう、わたくしに問いかけました。何故そんな事を聞くのか私には理解できなかった。先程まで思考していたことも相まって、この時のわたくしは、彼からの言葉を真に受けて考えてしまった。わたくしの夢、そんなものはあっただろうか、と。
セシリアは考えるが、夢と呼べそうなものは思い当たらなかった。それが顔に出ていたのか巧は一言、寂しそうな顔をしながら言った。
「そうか。」
「っ!?一体、何ですの。わたくしを馬鹿にしてますの!?」
「いや、負けられない理由が増えただけだ。」
そう言って、彼は武器を構えた。わたくしは頭の整理がつかないまま、試合が始まろうとしていた。
「これより、クラス代表決定戦第一試合を行う。それでは、試合開始!」
———
オルコットは、俺の質問に対してかなり困惑しているようだった。それもそうだ今から戦う男が何の脈絡もない質問をして来たのだ。困惑するに決まっていた。こいつにも、目標はあるのだろう。強くなりたいだとか、その他にもいろいろあるだろう。だがな、それはあくまで目標にすぎない。さっきの反応からもわかる。こいつには目的、そう夢がない。何の為に強く、何の為に戦うのか、その目標の最終地点がない。海堂や木場は、夢は呪いと同じだと言っていたが、俺はそれだけだとは思わない。夢はそいつにとっての原動力にもなれる。俺はそう思う。だからこそ、夢を持ってない奴には負けられない。今の俺には夢があるからな。そうして俺はファイズフォン開き『106』を入力すると
【Burst Mode】
そう音声がなり準備が完了した。俺はそれを構える。
試合が始まると、流石というべきかオルコットはすぐに先程までの思考を放棄し、切り替えて来た。手に持った銃を構え、俺に向けて射撃を繰り返す。射撃の精度はやはり高かった。日頃から訓練をしている事が伺えた。俺は回避をしながらオルコットに向かってフォンブラスターを連射する。
「わたくし相手に射撃で挑むおつもりですの!?」
巧にとってもそれは難しい事だと分かっていた。射撃の腕ならばしっかりと訓練をしているセシリアの方が上である。だが距離さえ開けていれば避けることは難しい事ではない。それに対してセシリアがしびれを切らした。
「もう、出し惜しみは無しですわ!
さあ、踊りなさい!!わたくし、セシリア・オルコットと『ブルー・ティア―ズ』の奏でる円舞曲《ワルツ》で!!」
———
「何だあれ?」
モニターには巧を取り囲む四つの何かが浮かんでいた。
「『ブルー・ティアーズ』オルコットの機体の名称にもなっている装備だ。」
そう解説するのはアナウンス室から戻って来た千冬だった。
「ちふ…織斑先生、あれは一体どういうものなんですか?」
「ブルー・ティアーズは見ての通り本体から離れて多方向からの攻撃を可能とする遠隔操作型装備だ。」
その説明の最中にモニターではブルー・ティアーズの攻撃を掻い潜りながら地面へと降りていく巧の姿があった。
「どうして、巧は地面に降りたんだ?」
「馬鹿者、そんな事も分からんのか。奴は少しでも死角からの攻撃を減らしているのだ。」
そう、多方向からの攻撃が可能という事は空中にいるのと地上にいるのでは攻撃の方向の数が違う。空中では上方向だけでなく、下方向までも気にしなくてはならない。巧は下からの攻撃をなくす為に地上へと降りたのだった。
でも、どちらにせよ巧はジリ貧なんじゃないのか?あれじゃあ一方的に撃たれるだけじゃないか。
「織斑、お前の考えは間違いだ。」
何で、考えてる事がわかったんだ?
「「一夏は、考えている事が、顔に出ている(からね)。」」
と木場と箒にも言われてしまった。まっ、まぁそんな事はどうでもいいんだとりあえず聞きたい事があった。
「俺の考えが間違ってるってどういう事ですか。織斑先生?」
「貴様はこのまま一方的に乾が負けるのではないかと考えたのだろう?」
「うっ…。」
その通りだったからこそ何も言えなかった。
「奴はそんな柔なやつではない。戦った私が保証しよう。」
そうだ、確か巧が千冬姉と戦った事があると言っていた。確か決着がつかなくて引き分けになったって言ってたっけ。
「ふむ、そろそろだろうな。」
そろそろ、試合が動こうとしていた。
———
最初は多方向からの攻撃は厄介だったが、動きに慣れてくれば誘導して避ける事は可能だった。しかもどうやら、こいつを操っている間はオルコットの方は動けないみたいだしな。そろそろ、か。巧はファイズフォンに『103』を入力する。
【Single Mode】
ファイズブラスターを『Burst Mode』から『Single Mode』に切り替える。『Single Mode』の特徴は連射は出来なくなるが一発の威力が上がる事。そして巧は『ブルー・ティアーズ』に向かってファイズブラスターを撃ち、ビットを一つ撃墜する。
———
「えっ?」
それは誰の声だっただろうか、だがその声は木場と千冬以外の全員の声を代弁していた。先程までビットによって一方的に攻撃されていた巧が次々とビットを破壊していく。そして、30秒経たない内にビットは全て撃墜されていた。
「あれが奴の力だろうな。私も戦うまで分からなかったが、あれは奴の経験と、センスが成せる圧倒的なまでの先読みだ。」
一体これまでどれだけの戦いを経てきたのだろうな。あれの強さは一般人の枠に収まるものではない。まぁ、奴の過去を考えれば仕方のない事なのかもしれんな。
———
何なんですの!?何故こんな簡単にわたくしのブルー・ティアーズが撃ち落とされるんですの!?
セシリアに油断はなかった。油断して勝てる相手ではないと判断した上で戦っていた。それでも、これだけの差がある事にセシリアは愕然とした。
———
巧は全てのビットを撃墜すると、セシリアが愕然としている間に武器を変え、ファイズエッジに持ち替えた。そして左手にミッションメモリを出現させ、それをファイズエッジに装着した。
【READY】
そして、左手にファイズフォンを出現させ、『ENTER』を押す。
【EXCEED CHARGE】
ファイズエッジが赤い光を纏う。巧はそれをセシリアに向かって振る。すると赤い波がセシリアに向かっていく。やっと、立ち直れたセシリアには避ける事が出来ない。気付いた時には赤い光に拘束されていた。
———
なっ、何ですのこれは!?
セシリアは今現在赤い光に拘束され、機体を動かせない状況にあった。前を見据えると赤い剣を構えながらこちらに突撃してくる巧の姿があった。
わたくしの負け、ですわね。何故彼はあんなにも強いのでしょう。先程戦いの前に見せた負けないという覚悟。そして、わたくしへの質問。あれらが関係あるのでしょうか。
とりあえず分かる事は一つだった。完敗であるということだけ。
そして、セシリアは意識を失った。
- 試合終了 勝者 乾巧 -
こうして第1戦は幕を閉じた。
どうも、第六話です。
やっぱ戦闘描写しようとすると書くのにとんでもない時間がかかりますね。最後に投稿した時すぐに書き始めたのに結局できたの二日後って何なんですかねぇ。因みにこの後の話の流れは全試合やると流石に長すぎるので一夏vs巧と木場vs巧はしっかりと書く予定です。では、次回も出来れば見て頂けると幸いです。
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第七話 巧の夢
この前書き書くのとサブタイトル考えるのですら一時間以上迷い続けています。作者です。
そして本文はこれから考えます。やっぱり、文章を書いてる人をめっちゃ尊敬します。まぁ、俺なんかが何言ってんだって感じですが。
前回のあらすじ
スパークルカットが炸裂!!
目覚めるとそこは、保健室のベッドの上だった。
「わたくしは…?」
「起きたか。」
ベッドの隣を見ると先程まで戦っていた相手である、巧がいた。
「何故、貴方がここに?」
「何でって、お前が倒れたから運んできたんだろうが。」
そうでした、わたくしは倒れたんでしたわね。
「特に、外傷はないらしい。おそらく、精神的に不安定になった事が原因じゃないかってさ。目が覚めたら動いても大丈夫だそうだ。」
「そうですか。一応お礼を言っておきますわ。」
いや、違う。そうではない。わたくしが言いたいのはそんな言葉ではなかった。しかし、心の中ではまだ男の人を信じられないわたくしがいた。まずは、心の中にある疑問を解消する事にしましょうか。
「何故貴方は、試合前にあんな事を聞いてきたのですか?」
「夢の話か。」
そう、その質問は試合の最中もわたくしの心の中に棘のように刺さって消える事はなかった。
「夢っていうのは、俺にとっては特別なものなんだ。俺の周りには夢を諦めなきゃならなくなった奴、夢を追いかけてた奴もいた。」
そう話している彼は何かを思い出すような、懐かしそうな顔をしていました。でも、それと同じくらい、寂しそうな顔をしていました。
「その頃の俺には夢が無かった。」
「貴方にも夢が無かったのですか?」
「あぁ、無かった。だからこそ、夢を持つ事ができた時は嬉しかったさ。」
そう言った彼の顔は、嬉しいと言っている筈なのに泣きそうでした。そんな彼にわたくしは、気になって聞いてみてしまいました。
「貴方の、巧さんの夢って何なんですの?」
「『世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに、みんなが幸せになりますように』それが俺が見つけた夢だ。あの頃あいつらと出会ってなかったら俺はこの夢を見つけることはなかった。」
そう語っている時の巧さんは嬉しそうな顔をしていました。まさか、こんなにコロコロと表情が変わる人だとは思いませんでしたわ。
「それで、少し脱線したが、何故そんな質問をしたかだったな?」
そうでしたわ。元々そういう話だったのを忘れてましたわ。
「それはな、オルコット。お前があいつらと出会う前の俺と同じだと思ったからだ。」
「昔の巧さん…ですか?」
いつのまにか、呼び方が変わっているのはとりあえず置いておくことにして、巧は話し出す。
「あぁ、あいつらと会う前の俺は、子供の頃に起こった事が原因で人と関わる事を避けてた。誰かを傷つける事が怖かったんだ。簡単に言えば孤独だった。俺は多分あいつらと出会ってなかったら、最後まで一人で生きて、誰にも知られずに死んでただろうな。」
今の彼からは想像もできない言葉だった。今の彼は誰かと関わる事を避けるどころか今現在も自分から関わりに行っているではないかと。
「お前は、完全に孤独ではないだろうが、これまで頼れる相手は、いなかったんじゃないか?」
図星だった。セシリアは両親が亡くなり、自分がオルコット家の当主となり財産を狙ってくる者たちから家を守らなければならないと思い。常に一人で頑張ってきた。確かに家は名門であるため、使用人達はいた。が、立場的に相談できる相手ではなかった。そういう意味では彼女は孤独だった。
「お前は、無理に大人になろうとしている感じがする。こんな事、俺が言えた義理じゃないが、俺は無理に大人ぶる必要は無いと思うぜ?」
「しかし、それでは…」
そう、今巧の言ったことは解決には繋がらない事である。故に巧が本当に言いたいことはそんな事ではなかった。巧は意を決してセシリアに話しかける。
「俺が言いたいのは、人を頼れって事だ。思い当たる奴がいないっていうんなら、俺を頼れ。少しぐらいは力になってやれるし、お前を守ってやる事だってできるかもしれねぇ。俺なんかじゃあ頼りないかもしれねぇけどな。」
セシリアは、自分の顔が熱くなるのが分かった。いきなり異性から遠回しにとはいえ、「お前の事を守ってやる」と言われたのだ。それに巧は、容姿はかなり整っている方である。それも、つい先程自分を下した相手が言うのだ。その腕は保証されている。では、彼が嘘をついている可能性は?これも無いと言えるだろう。彼の今までの発言が全て演技なのだとしたら、凄すぎて逆に尊敬してしまうだろう。
それに、わたくし自身が巧さんを信じたいと、そう思いましたわ。
「ありがとうございます。巧さん。」
セシリアは、ベッドから立ち上がる。
「そして、ごめんなさい。」
そう言って、セシリアは巧に頭を下げた。
「わたくしは、巧さん達に酷い言葉をかけてしまいました。それを謝りたいのです。」
「…そうか。でもな、それは俺じゃなくて一夏達に言ってやれ。」
「えぇ、巧さん。これからは、わたくしの事はセシリアと呼んでくださいませんか?」
「いいのか?」
「えぇ、お願いします。」
「あぁ、これからよろしく頼むぜセシリア。」
———
「試合はどうなったんですの?」
「今は、一夏と木場が戦ってる。セシリアの戦いは延長になった。」
「その事なんですが、わたくしは今回の戦いを辞退しようと思っているのです。」
「どうしてだ?」
「今回でわたくしは自分の弱さを知りました。わたくしは、力不足だと感じました。今の状態では、無様な状態を晒すだけですわ。」
「そうか、セシリアがそう決めたのならいい。」
というわけで、第七話です。
今回から本格的にヒロインが決まっていきました。最初からこういう展開で行くつもりだったのですが、やはり書くのが難しいです。それでも頑張っていきますのでお願いします!!
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第八話 再戦の思い
めちゃくちゃ久しぶりの更新です。最近はネプテューヌにどハマりしまして。ゲームをやったりアニメを見たり動画を見たりしていました。しかし、そろそろ他作品が恋しくなって来たのでまた書きます。気づいたらUAが1万を超えそうなところまで来ていてとても驚きです。後、今回時間の都合でかなり短めになってます。
前回のあらすじ
堕ちたな(確信)
セシリアと巧がアリーナに戻ってくるとそこには項垂れている一夏と、それを慰めている木場の姿があった。巧はどうしたのかと思い、近くにいた千冬に聞いてみることにした。
「なにがあったんだ?」
「あぁ、乾か。オルコットもいるのか。」
「えぇ、織斑先生。ご心配をおかけしました。」
そう言ってセシリアは頭を下げる。
「そうか、まぁいい。とりあえず今のこの状況についてだったな。ただ織斑が木場に負けたというだけの話だ。それも圧倒的にな。」
巧はそれを聞き、まぁ当たり前だなと思った。何故なら一夏は、ISを操作するのは初めてなのだから。そう思ったが声をかけなければ始まらないと思い巧は二人に近づいていく。
「大丈夫か一夏。」
「あぁ、巧か…。」
顔を上げた一夏は少し泣きそうな顔をしていた。
「情けないよな。せっかく専用機が届いたっていうのに。」
どうやら、話を総合すると、巧とセシリアの戦いが終わったが、巧とセシリアが共に保健室へと行ってしまい、戦いを続けようにも一夏のISはなくどうしようかと思っていたところに、ちょうど一夏の専用機である『白式』が届き、急遽木場と一夏の戦いを先に行う事になったようだった。フォーマットやフィッティングの終わっていない初期状態の機体で戦った一夏は一次移行が完了する前にやられてしまったのだという。
「さっきから、一夏が弱いわけじゃないとは言っているんだけどね。聞く耳を持ってくれないんだ。」
そう言って木場は苦笑いをしていた。
「いつまで落ち込んでいるつもりだ織斑。」
そこに見かねた千冬がやってきて一夏に声をかける。
「まだ次があるのだからそこまでに今回の反省をし、それを生かせ。…とりあえず、乾達も戻ってきたのだから次の試合に行くぞ。」
千冬にしては優しい言葉をかけて千冬はその場を立ち去っていった。
「えっと、次の試合は一応、オルコットさんと木場君なんだけど…。」
山田先生が次の対戦を行う二人を呼ぶが…
「山田先生、その事なのですが…わたくしは今回の代表決定戦を辞退しようと思いますわ。」
っとセシリアが今回の試合の辞退を宣言する。
「ええっ、オルコットさん辞退しちゃうんですか!?」
山田先生はかなり驚いているようだった。まぁ、それも仕方のない事ではある。何故なら今回唯一の代表候補生が辞退するというのだ。
「どっ、どうしてですかぁ!?」
「わたくしは、先程の巧さんとの試合で自分自身の未熟さを思い知りましたわ。今の状態で戦ってもただ醜態を晒すだけですから。」
そう言っているセシリアの顔は憑き物が落ちたように清々しい顔をしていた。
「そうですか…。そっ、それなら次の試合は…、乾君と木場君です。準備が出来次第アリーナにお願いしますね。」
勇治と巧は互いに少し笑いながら見合っていた。
「乾くんと本当に戦うのは久しぶりだね。」
「あぁ。そうだな。」
互いに互いの戦い方は分かっている。特にファイズギアとカイザギアでの戦いとなると自然と戦いは近距離戦に絞られる。
時代と次元を超え、かつて仲間であり時に敵であり同じ思想を掲げた二人の戦いが幕を開ける。
どうもめちゃくちゃ久しぶりの第八話です。
今回、勘を取り戻しながら書いているのでかなり短い上に文章がおかしいと思います。次の話は早く書ける予定です。どうかゆっくりとお待ちいただきたいです。
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第九話 木場の思い
投稿がかなり遅れてしまい申し訳ありませんでした。リアルの事情と文字を書くことへのモチベーションの低下もありかなり遅くなってしまいました。また投稿を再開していこうと思っておりますのでお付き合いください。最近555を全話見直したのですが意外と終盤ぐらいまで木場とたっくんはすれ違ってたんだなぁと昔の記憶はあてにならないことを知りました。
前回のあらすじ
木場 vs 巧
とある別の世界のおはなしです。そこにも灰色のお馬さんがいました。
その世界では灰色の怪物たちが覇権を握っており人間は弱小な種族でした。お馬さんは灰色の怪物でありながら人間に協力していましたが、ある日一緒に行動を共にしていた蛇さんと鳥さんが騙し討ちにあって死んでしまいました。それを人間のせいだと思い込んだお馬さんは人間とそれに与する狼の敵に回ってしまいました。
———
前の世界で俺は乾くんを裏切ってしまった。過程はどうであれそれだけが事実だ。結果として、俺のやったことで乾くんの寿命は大きく縮まってしまった。オルフェノクと人間の共存を諦めスマートブレインの社長としてオルフェノクの延命を願った。でも、最後まで戦い続ける乾くんをみてまた乾くん達を信じたくなった。だから俺は乾くん達と共に『王』を倒した。自分の身を犠牲にして…。だけどそれでも俺のやった罪は許されるものではなかった。…初日の夜乾くんにこのことを話した。そしたら…
「木場自身にも信念があって、俺にもやらなきゃいけないことがあった。それがぶつかり合っただけの話だ。…あんまり気にすんな。」
そんなことを言われた。乾くんは許す許さないの話じゃないって言うけど。俺は自分が許せなかった。乾くん達と道を違えてしまった自分を。だから俺は決めたんだ。今度は何があっても乾くんを信じるって。
———
現在アリーナの中央には似通った二つのISを纏った二人が立っている。二つのISの違いは黄色と赤。その二つの色の違いだけである。纏っているのは二人の男。この世界において三人しか存在していない男性操縦者のうちの二人乾巧と木場勇治である。
「木場、『カイザ』の調子はどうだ?」
「あぁ、やっぱり最後まで使っていたベルトだからかな俺の体にしっかりと馴染んでくれているよ。」
その言葉を聞き巧はホッと息をつく。カイザギアを使ったものはかつての戦いでは誰一人として生き残らなかった。そのことが頭によぎり巧は少し不安になっていた。
「大丈夫だよ乾くん。」
そんな巧の心を読み透かしたかのように木場が巧に笑いかける。
「今度こそ俺はあの理想を叶えるって決めたんだ。…だから俺はそれまでは死なないよ。それに…俺はまだあの時乾くんを裏切ってしまった自分を許せてないからね。」
「木場…。」
かつて掲げた『オルフェノクと人間の共存』という理想。木場はその理想を現実にすることをこの世界に来てから誓ったのだという。そして詫びとは木場がスマートブレインの社長に就任しオルフェノクの延命に向けて王の復活を為そうとしたときのことらしいが、巧からすればあれは木場にもその時の想いがあってのことであるため仕方のないことだと考えていたが、木場からすれば簡単に割り切れることではないようだ。
『いつまで話している。そろそろ試合を始めるぞ。』
どうやら少し長く話し過ぎたらしく痺れを切らした千冬から準備をしろと催促されてしまった。巧と木場は瞬時に頭を切り替え戦闘態勢を取る。乾はファイズフォンを木場はカイザブレイガンを構える。
『…準備はできたようだな。ではクラス代表決定戦第三試合を始める!
…試合開始!』
再び異世界にて2本のベルトがぶつかり合う。
———
戦闘開始が告げられた直後、二人同時に互いに向かって加速を始める。光弾で牽制し合いながらもどんどんと距離を詰めていく。そして肉弾戦の距離まで近づき互いにいつのまにか出現させていたファイズショットとカイザショットによるパンチを繰り出す。左手にファイズフォンとカイザブレイガン、右手にはファイズショットとカイザショット。同様のスタイルで近接戦を繰り広げる。互いに手の内は分かりきっている。後はどちらが先に仕掛けるかそれが大きく勝負を左右すると言えるだろう。
———
「…すげぇ!!」
モニターを見ていた一夏は先程まで負けて消沈していたとは思えないほど興奮していた。それは目の前で繰り広げられている戦いによるものであった。息をつく暇もないほどの苛烈な攻防。
「織斑、お前はこの試合をよく目に焼き付けておけ。お前は次に乾と戦うのだからな。そうでなければ先ほどの木場の時と同じ結末を辿ることになるぞ。」
「うっ…。分かってるよちふ…いや織斑先生。」
「しかしすごいですね乾君に木場君も。どちらも譲らないですね。」
超近距離での戦いでありながら互いに躱し反撃を行う。未だに決定打はなく互いに攻撃が掠める程度でシールドエネルギーにも差は生まれていない。互いに装備も、戦い方も熟知しているからこそ起こる激戦。だがその均衡が突然崩れ去る。
———
うん。やっぱりこの距離での撃ち合いだと俺の方がジリ貧だね。だったら俺から仕掛けさせてもらおうかな。
ここにきて木場が仕掛ける。木場は巧のパンチを右手を巧から隠すように最低限の動きで半身をずらして躱す。そしてその際にカイザショットを仕舞い、代わりにミッションメモリーを出現させた。そして半身をずらす勢いのままに体を回転させ巧から見えない位置でカイザブレイガンにミッションメモリーを差し込む。そして振り向きざまにカイザブレイガンを巧に向けて振り抜いた。
———
「あっ、あれって!」
一夏が大きく反応する。
「あぁ、先程お前を下した時にも見せていたな。確かにあれは知らなければ初見で避けることは難しいだろうな。」
「そんな!それでは巧さんの負けだと言いますの!?」
巧が負けるかもしれない。セシリアからすれば俄には信じ難いことであった。あれだけの強さを見せた巧がそんな簡単に負けるはずがないと信じたかった。
「落ち着けオルコット。言っただろう知らなければ…と。奴は戦闘センスがずば抜けている。…それに元々いま木場が使っているISを持っていたのも乾だからな武器の特性程度は把握しているだろうな。」
———
もちろん巧もカイザブレイガンの特性は知っていた。それがIS戦において初見殺し的な要素になるであろう事も。通常のファイズやカイザだった時とは違いミッションメモリーの使い方次第でISのファイズやカイザは戦いのバリエーションが広がった。だからこそ銃であり剣としても使えるカイザブレイガンを巧は警戒していた。故に巧も木場が半身をずらし最低限の動きで躱した時、木場から見えない左手にはミッションメモリーが握られていた。そしてファイズショットにミッションメモリーを差し込みファイズフォンを出現させ『ENTER』を押す。
———
『Exceed Charge』
木場のカイザブレイガンと巧のファイズショットによるグランインパクトがぶつかる。しかし、拮抗することなく巧のグランインパクトにより木場は大きく吹き飛ばされる。巧は油断せずにそのままファイズポインターを出現させ足に取り付ける。そしてもう一度ファイズフォンの『ENTER』を押し込む。
『Exceed Charge』
「ハッ!」
巧は大きくジャンプし空中で起きあがっている途中の木場に足を向ける。するとファイズポインターから赤い三角錐が飛び出し木場に向かう。そして巧が赤い三角錐ごと木場の体を通り抜け、木場の後ろに着地する。ファイズのライダーキック『クリムゾンスマッシュ』である。
———
はは、やっぱり乾君は強いなぁ。今のところ全敗だね。でも乾君が強いことはとても嬉しくて負けたのにとても清々しい気分だ。久しぶりに乾君と戦えてよかった。
———
-試合終了 勝者 乾巧-
二つのベルトの戦士の戦いは巧の勝利で幕を閉じた。
今回ファイズショットとカイザショットがグランインパイクと以外の形で出てきましたが、ISのシールドエネルギーには殴りや蹴りがほとんど効かないみたいな話をどこかで見た気がして殴りや蹴りでもダメージが通るように通常の武器(なんかメリケンサックとかみたいな感じ)として使っていると思っていただけるとありがたいです。後、一応戦いでの手順は二人とも出現させるのと消すのを同じ手順数にしているはずだと思うのですがなにぶん自信がありません。間違っていたらすいません。
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