魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~ (ショーン=フレッチャー)
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プロローグ 第1話 AD2001 はじめまして、そして、さよなら

新参者故、不手際があるでしょうが、温かい目で見守ってください。



照り付ける8月の太陽の下、一人の少女がブランコをこいでいる。

彼女だけ冬の曇り空の下にいるような表情だ。それもそのはず、彼女の家は大変なことになっているのだ。

父が仕事で大けがを負い、意識不明の重体。母と兄姉は間もなく開店予定の喫茶店の開店に向け大忙しなのである。

少女は邪魔をしないよう一人で公園にいる。そのため他に友達のいない少女はこうして一人でいるしかないのだ。

 ふと、隣からギターの音が聞こえてくる。

隣には銀髪銀眼で和装ともケルト風とも言い難い格好の同年代の少年がいた。

彼は歌っている。

 聞いたことの無い歌だった。

だけどいい歌であることは少女にはわかった。

歌い終わると少女は静かに拍手した。

なんとなく、そうしたくなったからだ。

 

「おおきに」

 

 少年は静かに京ことばのイントネーションで答える。

 

「こ、こちらこそなの」

 

 少女が返答する。その声は少したどたどしい。

根がコミュ障なのだろうか。

 

「一つ聞きたいことがあるんやけど、ええかぁ?」

「な、なに?」

「高町なのはっちゅう子を探しとるんやけど、あんた知らんかぁ?」

「わ、私がなのはなの」

「そら良かったぁ、すぐに見つかって」

「?」

「ああ、こっちの話や。俺はお宅のお父さんの知り合いの息子さんでなぁ、お見舞いに来たんやけど、どうもそれどころではなくてなぁ」

「何があったの?」

「幼い末娘ほっぽり出して何しとん、とダディとお母ちゃんがお宅にガチの説教かましとるところなんですわ。そんで俺は件の末娘を探しに来たんやけど」

「?」

「あー、要するになのはちゃんをお家に呼んで来いっちゅう話や」

「わかったの、でも私がいてもじゃまじゃない?」

「邪魔なもんですか、むしろ主役やで。さ、行きましょか」

「え?」

「え、やない。生憎俺は土地勘が無くてな、方向は分かれど道が分からん。悪いんやけど『翠屋』まで案内してくれへんか?」

「わ、わかったの」

「名前を言うてなかったなぁ、俺はレイ=金剛=ダイアモンド。レイと呼んでくれんか」

「私は高町なのはなの、レイくん」

「気安く呼ぶな」

「!?」

 

 

 

 

 

 かくして、少年と少女は翠屋へと向かう。

翠屋では英国紳士と京女に正座させられた母と兄姉がいた。

その様子にぎょっとするなのは。

 

「お説教は終わりで?」

 

 レイが英国紳士と京女に問いかける。

 英国紳士、レイの父であるデビッドが口を開く。

 

「ああ、今丁度な。限のいいところで来てくれた」

「さよか」

 

 レイは後ろに隠れているなのはをそっと前に促す。

 なのははおっかなびっくり前に出る。

 なのはの母、桃子がなのはの顔をじっと見る。

 

「なのは……、ごめんなさい……!」

 

 桃子は席を切ったように泣き始め、なのはに抱き着いた。

 なのはもそれにつられて泣き始める。

 なのはの姉、美由希も涙を隠しきれていない。

 兄の恭也はようやっと目が潤んでいる。

 

「全く、面倒臭い一家や」

 

 京美人、レイの母である櫻子が独り言ちる。

 

「でも、ええ一家やないですか」

 

 レイが言葉を返す。

 確かに今、高町家は家族としてしっかりと結びついているように見えた。

 それを見ながら、金剛=ダイヤモンド家の3人は静かに頷くのだった。

 

 

 

 

 

 それから半年後、高町家では普通の日常が繰り広げられていた。

喫茶店のマスターとなった父、パティシエの母、高校生の兄、もうすぐ中学生になる姉、そしてもうすぐ小学生になるなのは。

そこには普通の日常があった。

 

「ただいま入ってきました速報です。ブリティッシュエアウェイズ機墜落事件の情報が入ってきました。繰り返します、ブリティッシュエアウェイズハイジャック事件の情報が入ってきました。この墜落で飛行機に乗っていた日本人はレイ=金剛=ダイアモンド君6歳、レイ=金剛=ダイアモンド君6歳が搭乗しているとの情報が入ってきました。安否に関してはまだわかっていません。繰り返します……」




 いきなり安否不明になる主人公。
 次回、出番はあるのでしょうか?


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第2話 AD2003 人間の条件、化物の条件

 主人公は行方不明。
 ヒロインは未登場。
 そもそもこの作品を読んでくれている人がいるのか……。
 


 その日、海鳴市郊外の廃工場は人で賑わっていた。

といっても集まっているのはガラの悪い連中ばかりなのだが。

 

「なあ、俺らの目的ってこの紫髪の嬢ちゃんだけだよなあ、見られたからって言ったって他のガキ攫うの面倒くないっすか?」

「何言ってんだよ、こっちの金髪はバニングスの令嬢だ、それにこの二人のお友達なら親はいっぱい金持っているはずだろ? ついでに稼ぎゃあいいんだよ、ついでによ」

「それもそうっすね」

 

 下卑た会話を繰り広げる連中にアリサ・バニングスは憤慨し、月村すずかは恐怖し、高町なのはは戦慄した。

 もう二人誘拐された子供がいるのだが、銀髪で帽子をかぶった二人はなぜか寝ている。

 ソフト帽をかぶった少年には額に縦に傷がある。

 少女はカンカン帽をかぶった前髪ぱっつんだ。

 2人は呑気に寝息を静かに立てている。

 その様子に3人は呆れ、わずかにではあったが緊張がほぐれていた。

 

「ちょっと! あんたたちこんなことしてただで済むと思ってんの!」

「ただで済むからこんなことしてんのさ」

 

男の1人がアリサに拳銃を向ける。アリサはひっと息をのむ。

 

「俺らのスポンサー様は偉大な方でよ、ここまでやらかしても俺たちの安全を確保してくれるのさ。優しくて涙が出てきそうだ。そうら、スポンサー様のお出ました」

 

 男の声と共に白スーツの男が入ってくる。

 

「氷村のおじ様……?」

「久しぶりだな、すずか」

 

月村すずかは怪訝な顔で白スーツの男、氷村を見つめる。

 

「氷村のおじ様、どうしてこんな……」

「いや、なに君の家に話があるのさ。だというのに君の家は一向に私の話を聞いてくれないからね。こうするしかなかったのさ」

 

「何がこうするしかなかったよ! こんなことして!」

「黙れ」

 

 男たちが一斉に銃を構える。

ひいっと悲鳴が上がる。

 

「やめて! みんなに手を出さないで!」

 

すずかが泣きそうな顔で懇願する。

 

「それは月村の返事次第だ。夜の一族を統べるのが誰なのかそれがはっきりしてからだ。それにしても、そのような下等種どもとつるんでいるとは、月村も落ちたものだな。吸血鬼の、夜の一族の誇りを忘れた面汚しが」

 

 氷村の言葉が放たれた瞬間、遂にすずかは静かに泣き崩れた。

 

「吸血鬼……?」

「そう! 人間を遥かに上回る知力と体力! それを維持する代償としての吸血衝動! 紛れもなく私とすずかは夜の一族、吸血鬼さ」

 

 なのはの言葉を受け、氷村は歌うように己の出自を語る。

すずかの涙を気にしないかのように。

 

「だというのに! この僕を差し置いて月村を頭にするだと! 信じられない! 誰よりも優秀なこの僕が! 夜の一族のトップに立てないなんて! しかも人間と融和だと? 有り得ない! 我々と人間の間に築けるのは上下関係だけ、友情も愛情も幻想でしかないということが分からないのか! 現にすずかは君たちに隠していたじゃないか、自分が吸血鬼であることを。この時点で対等な関係など築けないというのに」

 

「……それが何だっていうのよ」

「うん?」

「それが何だっていうのよ、このクズがっ!」

 

 アリサが勢いよく啖呵を切る。

 

「黙って聞いていたけど、全然大したことない理由じゃない! 単に自分がトップに立てなかったことへの僻みでしょう! あんたがトップじゃなくて正解よ!」

 

なのははぽかんとし、すずかは顔を上げる。

 

「あんたはすずかとは違うわ、ええ比べるのもおこがましいわ!」

「アリサちゃん……」

「わ、私だって! すずかちゃんをいじめる人は許さないの!」

「なのはちゃん……」

「フフフ……、ハハハ! 真実を知ってもなおそんなことが言えるとは、想像力の乏しい餓鬼どもだ! だがもうじきわかるだろうよ。そら、お客様のお出ましだ」

 

 氷村の言葉と共に、廃工場の入り口に人影が現れる。

若い男女が2人ずつとスーツ姿の西洋人に和服美人が帯同している。

 

「随分と大所帯じゃないか、ええ月村忍、高町恭也。ああ、さくらも来ていたのか」

 

「氷村! 馬鹿な真似はやめて!」

 

 同行していた女性、綺堂さくらが声を上げる。

 

「馬鹿な真似? それは月村の方に向かって言うべき言葉だろう? ああ、君もそちら側だったね」

「氷村とやら、今すぐアリサを、その友達を解放しろ!」

 

 震えた声で叫ぶのは金髪の青年、アリサの兄ケントである。

氷村の冷たい視線や多数の銃器にやや怯えるもその姿は毅然としている。

 

「解放? それは月村の返答を聞いてからだ。だがその様子では……」

 

 ぶぱぶぱぶぱぶぱぶぱぶぱぶぱぶぱ

 

「もしも願いが叶うなら~♪ あなたと行きたいレインボー♪ どんだけ好きかと聞かれたら~♪ おませな妄想アイロニー♪」

 

 どこからか力の抜けるような音楽と訳の分からない歌が延々と流れてくる。今までの緊迫した空気はどこへやら。

 

「だれだ、こんな訳の分からん雑音を流しているのは!」

 

全員が音源を探す。

それは銀髪の少年の帽子からだった。

帽子が上下に割れてそこにステージとファンシーな時計があったのである。

ステージ上では女子高生が歌い踊っている。

 

「「「「「「なにあの、アレ!?」」」」」」

 

全員が、いや英国紳士と京美人以外がツッコむ。

その直後銀髪の少年と少女が目覚める。

 

「妄想アイロニー、ということは3時か。不埒物を処分するにはええ時間帯やな」

「この縄の縛り方甘いのではないか? こう、締め付けるときの痛みが無いのがなぁ」

 

 少年は氷村を睨みつけ、少女は縄の縛り方にダメ出しをしている。

妄想アイロニーは流れ続けている。

 

「さっきまでの話は聞かしてもろたで。ずいぶんとまぁご立派な言い分やな。氷村とやら」

「その前にその雑音を止めろ」

「自分たちは強く賢いから人間は餌として生きるのが当然? そんな訳あるかいな。始皇帝も真っ青の傲慢っぷりやな」

「雑音を止めろ」

「どれだけ姿形が人間と乖離していようとも、友達になれるのならそれは人間で、姿形が人間でも、他人を食い物にするんは化物や。あんたは間違いなく、化物やで」

「その雑音を止めろぉーーー!」

 

 少年の言葉か、それとも妄想アイロニーのせいか、氷村は激高して少年に向けて発砲した。

 

「きゃあああああああ!!!」

 

 誰かの悲鳴が響き渡る。

 

「そんな……」

 

ケント・バニングスが絞り出すように声を出す。

 

「有り得ん……、有り得んッ!」

 

氷村は戦慄した。

 

なぜなら銃弾は少年の掌で停止していたからだ。

 

「なぜだッ! なぜ弾が止まっているッ!」

「そら、うちらの息子やからなぁ。拳銃に負けるような軟な鍛え方はしとりまへん」

「それより、いいのか? 目を離しても」

「な、何を」

 

 氷村が呟いた途端、暴風が氷村の両脇をすり抜けた。次の瞬間、悪漢共が吹き飛んでいた。

 

「人より賢い? 人より強い? それがどないした、俺らの一族は1400年も昔からそんな連中と戦ってきたんやで」

 

 少年の言葉に氷村は我を取り戻す。

 

「お、お前らは一体……」

「英国王立魔術協会理事禁術部部長、ダイヤモンド家当主。デビッド=金剛=ダイアモンド」

「神祇省外道部部長、金剛家当主。金剛=ダイアモンド=櫻子」

「両人が嫡子、国際魔術結社(International Magic Society)所属レイ=金剛=ダイアモンド。氷村遊、お前さんは文句なしの地獄行きや」

 

 少年、レイ=金剛=ダイアモンドの口角が吊り上がった。

 それを見た氷村は僅かに慄く。

 

「魔術師だと……!」

「左様、アンタ、間違うた相手に喧嘩売りましたなあ」

「くっ、だがここで全員殺してしまえばいいだけの事」

「出来ますかなあ」

「黙れ! おい、お前ら、何のために金を出したと思っている! さっさとこの餓鬼を始末しろ!」

 

 そういわれては動かざるを言えない悪漢共。

 銃を構えてレイを取り囲む。

 

「アフーム」

「仕方ないのう」

 

 アフームと呼ばれた銀髪銀眼の少女が気怠そうに呟く。

 

「ふんぬぬぬぬぬぬ、バリアー!」

 

 アフームが叫ぶと同時に手から光が溢れ出る。

 たちまちのうちになのは達を虹色のシャボン玉のようなもので包み込む。

 

「「「な、なにこれ!」」」

「「「「「「何か出た!?」」」」」」

「気合があれば何でもできる。銃弾を跳ね返すバリアーだって張れる」

「「「「「「いや、無理でしょ!」」」」」」

 

 全員から総ツッコミを喰らうも、平然とするアフーム。

 

「ならば俺も、フルアーマーモード!」

 

 レイが叫ぶと同時にレイが光に包まれる。

 光が晴れるとそこには新聞紙で出来た鎧で全身を覆ったレイがいた。

 

「「「「「「小学生の工作かよ!?」」」」」」

「ただのこけおどしだ、やってしまえ!」

 

 誰かの掛け声と共に四方八方から銃が撃たれる。

 

「なのは!」

「すずか!」

「アリサ!」

 

 兄姉たちの悲鳴が響き渡る。

 思わず目をつぶるなのは達。

 しかし、銃弾がバリアーや鎧を貫通することはなかった。

 

「あ、ありえねえ」

 

 悪漢の一人が呟く。

 全員無傷で立っていたからだ。

 

「これは、奇跡なのか」

 

 ケントが呟く。

 

「いいや、必然さ」

「我らが魔術に隙は無し。戦車砲にも負けぬよ」

 

 デビッドと櫻子が平然と言う。

 

「レイ! とっとと片づけてしまいなさい」

「イエス! ダディ!」

 

 レイが声を上げると同時に、奇妙な構えをとる。

 

「貴様らには銃弾を馳走になった。こちらもお返しせんとなあ。千客万来『ダマスカス回転寿司』!」

 

 レイの周りに魔法円が現れたかと思うと、そこから四方八方に皿に乗った寿司が飛んでいく。

 

「「「「「「なにこれ!?」」」」」」

 

 全員がツッコんだ瞬間、レイの姿がぶれる。

 レイが高速で移動し、悪漢の一人に接近したのだ。

 ひっと悲鳴を漏らす悪漢。

 にやりと笑うレイ。

 

「あたたたたたた!」

 

 掛け声と共にレイが悪漢の口に高速で寿司を詰めていく。

 

「「「「「「何やってんのこの子!?」」」」」」

 

 寿司で口いっぱいになった悪漢はなぜか気絶するのだった。

 

「まず1人」

((((((こ、怖え~))))))

 

 悪漢共は恐怖を覚えた。

 悪漢の一人が悲鳴を上げながら逃げ出そうとする。

 彼の頭に寿司が激突する。

 彼はそのまま倒れ込み動かなくなる。

 

「さあ! 心行くまで寿司を御馳走しましょ! 有難く思い!」

 

 

 

 

 

「さてと、妾達は安全な所へと避難するかの」

 

 アフームに促され、バリアーごと移動するなのは達。

 バリアーの向こうでは寿司が舞い、レイが悪漢共の口に寿司を詰めていく。

 一方で恭也と氷村が戦っている。

 荒れ狂う寿司の嵐の中、互いに一歩も引かない様子だ。

 恭也の剣戟と氷村の拳舞が飛び交う。

 しかし、恭也が優勢である。

 やがて寿司の雨が止む。

 途端に恭也と氷村の戦いが激化する。

 

「無事についたようやな」

 

櫻子が5人の前にかばうように立つ。

ブレッドは非戦闘要員である若者たちの方にいる。

 

「っ! そういえば、アイツは!」

 

 アリサがレイの方を気にする。当のレイは悪漢共を地面に並べている。

 

「な、何をする気だ?」

「記憶消去と改鋳を行う気か、あれだけの人数を同時には初めてだろうに」

 

ブレッドの言葉の通りレイが行うのは記憶消去と改鋳の魔術である。

地べたに並んだ悪漢共に呪文を唱えながら頭を金属棒で殴打していく。

 

「ジョビジョバー! ジョビジョバー!」

「いや、アレ、大丈夫なの?」

「由緒正しい記憶に関する魔術の作法だ」

「ああ、そうなの……」

 

 ブレッドの言葉に忍は呆れたように呟く。やがて作業が終わったのかレイが合流する。

 

「いやぁ、あれだけの人数は息がキツイですわぁ」

 

 レイの衣服は返り血で染まっていた。

 

「よう持ったな」

「いや、アレただ殴っているだけじゃ……」

「魔術や」

「いや、でも」

「魔術や」

 

なのははこれ以上何も言えなかった。

恭也と氷村の戦いは佳境を迎えようとしていた。

いくら若いとはいえ恭也はそうそう『神速』を多用できるわけでもない。

一方の氷村は碌に喧嘩もしたことの無い坊ちゃん育ちである。

何とかスペック差で持っているものの、戦いの経験という意味では恭也に劣る。

何か一つ、この拮抗を崩す何かが互いにとって必要だった。

 やがて氷村に疲れの色が見え始める。

 恭也はそれを見逃さなかった。

 すかさず『神速』を使う。

 恭也の視界が変化する。

 世界がゆっくりと回転する。

 刹那の見切りが氷村に出来る筈も無く、氷村は敗れ去った。

戦いの決着はここについたのである。




 読んでくれた方は是非感想をお願いします。
 一つの感想が作者の力になります。
 質問も受け付けますので、ぜひいろいろ書いて下さい。


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第3話 AD2003 友達が出来た日

 前回のあらすじ
 誘拐されました♡


「さて、悪党どもはおねんねで、主犯のナルシストはお兄さんに倒され、これで一件落着ですかな」

「え、ええ、そうね」

 

 レイの言葉に動揺しながらも同意するさくら。

 平然と立っているこの少年がさっきまで行っていたことを考えれば、さもありなんである。

 

「記憶改鋳したからいつでも警察に送れますえ。どないします?」

「ホントにできてるの?」

「これでも魔術の腕はそこそこです故。今両親のチェックを受けていますが、僕の感触では無事に全員完了したと思うんですがねえ」

 

 悪漢共に何やら魔術をかけて回る、金剛=ダイヤモンド夫妻。

 やがて終わったのか、レイ達の方へと戻ってくる。

 

「全員出来ていたぞ、よくできたな、レイ」

「お褒めに預かり恐悦至極」

 

 一同が一応和やかな雰囲気になったとき、氷村の高笑いが響き渡る。

 

「わはははははは! 殺せ! 自動人形共! こいつらを殺せ! 跡形もなく無残に、残酷に殺してやれ!」

 

 その言葉が出た途端、工場の奥からメイド服姿の女性数人が出てくる。

 

「穏便に済ませてやろうと思ったが、もはや許さん! 殺す! 殺してやる! 全員残らずだ!」

「よく回る口です事」

 

レイが冷たく言い放つ。

4人のメイド服姿の女性たちはその手に日本刀を携えている。

 全員が一斉に襲い掛かる。

 人間ではありえないスピードで接近してくるメイドたちに恐怖を覚えたのか、なのは達は目をつぶる。

忍たちは彼女たちをかばわんとする。

恭也は目をかっと見開き対応しようとする。

次の瞬間、大地が爆ぜた。

 

「地雷魔術を仕掛けてみました」

 

 声の主はレイである。

 自動人形たちは足を吹っ飛ばされ動けなくなっている。

 

「な、人間だったらどうする気だ!」

「関係ないもん♪」

 

 恭也の指摘に我関せずといった態度のレイ。

 

「んだとこのド外道がーーー!!!」

 

 氷村の顔にレイの蹴りが入る。

 

「「「「「「お前のことだー!」」」」」」

 

 その一撃で氷村は昏倒する。

 これで一件落着か、と胸をなでおろす一同。

 しかし、レイと恭也のの鋭敏な感覚は何かを捕らえていた。

 

「まだ、おるな、そこの奴、出てこい」

 

レイが声をかける。

現れたのは一体の自動人形だ。

 

「イレインか」

「お兄さん、ご存じで?」

「最強の自動人形といわれている機体だ。まだ氷村が所有していたのか」

「ほう」

 

 レイが鼻を鳴らす。

 

「マスターの命に従い、排除します」

 

 イレインが二刀を構え、突撃する。

 恭也が構える。

 その前にレイが動いていた。

 

「はいドーン!」

「バヘマッ!」

「「「「「「手、デカッ!?」」」」」」

 

レイの右手が突如巨大化して、デコピンでイレインを吹き飛ばす。

 

「何というか、無茶苦茶だな」

 

 恭也が呟く。

 

「それが我々虚空戦士(ハジケリスト)という生き物なのですよ」

 

 レイがそういうと、イレインの方を見る。

 イレインは立ち上がり、レイの方を見やる。

 

「殺す! 殺してやる! そこのガキも! 全員だ!」

「あらま」

「まさか、感情の暴走!? こうなったイレインはだれにも止められないわ!」

 

 さくらが叫ぶ。

 

「成程、これは厄介な」

「君! 感心していないで、逃げるぞ!」

「いやあ、逃げられんでしょう。向こうさん、始末する気満々ですんで」

 

 イレインは左手の得物を鞭に変えている。

 

「一つお聞きしますが、あれをスクラップにしてもかまいませんね?」

 

 レイがさくらに問いかける。

 

「え、ええ、問題はないけど」

「ならよろしい」

 

 そういうとレイの指先に、水の球が現れる。

 

「水符『真夏のウォーターハザード』」

 

 高速で、水の弾幕がレイの背後の魔法円から放たれる。

 イレインは避け切ることが出来ず、直撃してしまう。

 

「がああああああ!」

 

 イレインは腰から真っ二つになってしまう。

 がしゃりと、イレインの体が崩れ落ちる。

 

「正面から突っ込んでくるなんて、あほな人。いや、人やないか」

「そういう問題ではないと思うが。それにしても、良く一撃で倒せたな」

「水圧マシマシの弾幕ですから。硬度は相当なもんですえ」

 

 恭也はそうか、とだけ返事をすると、イレインに近づいていく。

 イレインはバチバチと火花を上げていた。

 

「こうなってはもう動けないな」

「一応直す事も出来るけど、とにかく判断待ちね」

 

 そういうと恭也と忍は氷村を抱える。

 

「こいつは身内で処分を下すわ。当主に反目したんだもの、極刑は免れないわ」

「そうしてくれ。関係のない子まで誘拐したんだ。夜の一族的にはアウトだろう」

「そうですね」

 

 さくらとデビッドが氷村の処分について話している。

 レイはそそくさとアフームの方へと向かう。

 

「お疲れさん、ようやってくれました」

 

 そういうとレイはアフームの頭を撫でる。

 

「むはー、この瞬間のために生きてるのー」

 

「「「何だかオヤジ臭い」」」

 

 3人娘にツッコまれてレイはようやく撫でるのを止める。

 

「あの、あなたは私達が怖くないんですか?」

 

 すずかがレイに問いかける。

 

「怖くないとも、吸血鬼なんて。夜の一族なんて。逆に聞くが、君達は俺が怖くないんか? 簡単に自動人形を破壊できる力を持った俺が」

 

 3人は首を横に振る。

 

「そんなわけないじゃない、アンタは私達を助けてくれた。どうして怖がる必要があるのよ」

「命の恩人だから! 大丈夫なの!」

「私も、色々助けてもらっちゃったし」

 

 アリサ、なのは、すずかがレイに感謝の意を述べる。

 

「そういうこと。俺にとって夜の一族は敵にならんの。俺は一度真祖吸血鬼に会うたことがあるが、あれのプレッシャーとカリスマは半端なかったで。さもありなん、て感じやったな」

「アンタ一体どうゆう人生送ってるのよ」

「魔術師やから、神秘の存在は良くも悪くも隣人なんや」

 

 アリサの苦言を意に介さず、レイは言葉を返す。

 

「皆さん、申し訳ないのだけど、このまま月村邸まで来ていただけないかしら。説明したいことがあります」

 

 忍が声を上げる。

 

「まあ、そうなりますなあ」

「我々はもちろんついていくが」

 

 櫻子とデビッドがいの一番に賛同する。

それに続いて全員が同意を示す。

そして、全員で月村邸へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「わーい、にゃんこじゃー!」

 

 月村邸についた一行。

 早速アフームが大量の猫に興奮する。

 

「待て! 猫の身体能力は日本刀を持った人間と互角と聞く。すなわちこの状況は!」

 

 レイに言葉にはっとするアフーム。

 

「ここは、死地……!」

「左様、気を抜けば待っているのは死やで……」

「そんなわけないじゃない」

 

 アリサのツッコミが入り、一同は居間で話し合いをする。

 

「何の話でしたかな、確か、部長のヅラ隠蔽事件の話でしたかな」

「違うわ」

 

 レイの発言を切り伏せる忍。

 

「話したいことは夜の一族の掟についてです。私達の秘密を知ったものは、共に歩むか、記憶を失うかのどちらかを選択しなければなりません」

「そんな……」

 

 なのはが悲しそうな声を出す。

 

「我々金剛=ダイヤモンド家は最初から夜の一族の味方だ。秩序ある生活を送るうちは味方であると誓おう」

「「「右に同じく」」」

 

 デビッドの言葉に賛同する、櫻子、レイ、アフーム。

 

「すずかは友達よ。吸血鬼だろうと何だろうと知ったこっちゃないわ」

「アリサちゃん……」

「私だって、すずかちゃんの友達だもん! そんなの関係ないよ!」

「なのはちゃん……」

「アリサが白といったら烏も白だ」

「ケントさん……」

「……一同私達の味方ってことでいいのね。安心したわ。覚悟はしていたけど」

 

 忍が肩をなでおろし、ほっと一息つく。

 

「ええ人たちやないですか。良き縁を結びましたな」

「ええ、勿体無いぐらいだわ」

 

レイの言葉に忍は同意する。

 

「それにしても、誘拐発生から到着までのプロセスが早いですな。どういう訳で?」

 

 レイの質問に恭也が答える。

 

「君たちが誘拐されてすぐに氷村から脅迫状が届いたんだ。忍から連絡が入り、さくらさんと一緒に向かっていた時に、ケントと金剛=ダイヤモンド夫妻に会った」

「僕はアリサが帰りが遅いから探していたところ、金剛=ダイヤモンド夫妻と出会い、一緒にお互いの探し人を探していたんだ。そこに恭也たちが現れて。すずかちゃんが誘拐されたことを知ったんだ。アリサも巻き込まれているんじゃないかって心配になってダウジングを使ったんだ」

「ダウジング?」

 

 アリサがケントの話に疑問を覚える。

 

「ああ、我がバニングス家に伝わる秘術さ。いずれアリサも習うことになるだろうね。おっとこれは秘密にしてもらいたいんだ。ダウジングが使えることをね。話を戻すよ、僕はダウジングを使ってアリサ、すずかちゃん、なのはちゃんの居所をダウジングしたんだ。そしたら3人とも同じところにいることが分かったんだ。金剛=ダイヤモンド夫妻の息子さんたちも同じところにいることが分かって、こうしてみんなで向かったわけさ」

「成程」

 

 レイが納得したように頷く。

 

「それよりも気になることがあります。あなた達、金剛=ダイヤモンド家の皆さんが海鳴に一体何の用事ですか?」

 

さくらが疑問を呈する。

 それに答えたのは櫻子だった。

 

「ふむ、ここで言わぬは不義理かもな。ようござんしょ、私達の目的は来年海鳴で起こるであろう事件の解決のためです」

 

 どよめきが起きる。

 一同に不安が広がる

 

「事件だって!」

 

 ケントが声を上げる。

 

「左様、複数の予言者が同じことを言うてはりました。来年、海鳴という町で常識を覆すような事件が起こると。その事件を解決できるんは額に傷のある子供だけ、すなわちうちの息子という訳なもんで引っ越しのために来たんですよ」

 

「事件とは一体、何が起こるんです?」

 

 忍が櫻子に詰め寄る。

 

「さあ? 常識を覆すとしかわからんもんで。息子だけに任せるんは心配ですけど、これも修行だと思って任せることにしたんですよ」

 

「修業って、大丈夫なんですか? 息子さんって、今いくつ何ですか?」

 

「今年で8歳になります。ついこの間博士号を取得しまして」

 

「「「「「「嘘ぉ!?」」」」」」

 

「マジで」

 

「あの、博士号って何なの?」

 

 なのはが疑問を呈する。

 それにこたえるのは忍だ。

 

「博士号ってのはね、大学院ていう大学の上の学校を卒業したことを言うの」

 

「へえ、それじゃあ、頭いいんだ!」

 

「頭いいどころじゃないわよ! 本物の超天才よ!」

 

「いやあ、照れますなあ」

 

 レイが頭をかく。

 しかしすぐに居住まいを正して全員に向き直る。

 

「本日をもって、海鳴で起こるであろう事件の解決に尽力を尽くすことになりました。レイ=金剛=ダイヤモンドと申します。何分未熟者です故不手際が目立つかもしれませんが、よろしくお願いします」

 

 場がぴりっとした雰囲気になる。

 恭也や忍は何かとんでもないことが起きるのではないかという漠然とした不安が渦巻き始めていた。




 読んでくれる人がいてくれて幸いです。
 もっと読者増えないかなあ。
 どうやったら増えるのかなあ。
 あ、次回から本編入ります。


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第1部 AD2004 運命の年 第1章 何色でもない少女たち 第1話 ドラマティックは突然に

 前回のあらすじ
 何やら事件のヨ・カ・ン♡


 朝、それはさわやかな一日の始まり。

 それは誰であってもそうであってほしいものである。

 

「おはよう、皆の衆」

「「「おはよう、アフー……、耳から血が滝のように出てるーーー!!!」」」

「今日もすがすがしい朝じゃのう」

「「「気付いて! 耳が大変なことになってることに!」」」

 

 そして隣のレイには血が直撃している。

 

「「「レイくんも大惨事!」」」

「それより機能のテレビ見たかの? まさかダニエルがあんなことになるなんて」

「「「鼻からも出てきたーーー!!!」」」

 

「ダニエルががばごぼぐべぐびがべごぶ」

「「「口からも!? 病院行った方がいいよ!」」」

 

 レイが懐から杯を取り出す。

 

「「「何する気!?」」」

 

 レイはアフームの口から溢れ出る血を杯て受けると、一気に飲み干した。

 

「「「飲んだ!?」」」

「甘露!」

「「「そんなわけないでしょ!」」」

 

 これが彼女たちの日常である。

 

 

 

 

 

 昼休み、隣のクラスのレイと合流したなのは、アリサ、すずか、アフームは一緒にお弁当を食べていた。

今日の授業で将来の夢がテーマに出たのである。

 

「あたしは何らかの形で会社に関わっていたいわね、ケントが継ぐとしても、あたしも経営とかしたいのよ」

「私は、工学を勉強したいかな、それから家の会社にかかわっていたいし」

 

アリサとすずかは明確なビジョンを持っていた。

 早熟な二人は、早くも己の道を歩もうとその道を選び始めていた。

 

「わたしも、翠屋を継ぐのかなあ。でも……」

 

 なのはは漠然とした未来しか描けなかった。

 無理もない、9歳の子供に将来のビジョンなど簡単に描ける筈も無かろう。

 

「妾はもちろんピチカートファイブの4代目ボーカルじゃな。野宮真貴を超えるのじゃ」

「俺は実家を継ぎながら金融業や不動産業に手を出し、違法すれすれのスリルを楽しむんや」

「アンタらねえ……。てかアフームアンタさっきと言ってること違うわよ。さっきは宝塚の端役って言ってたじゃない」

「レイくんも、その夢黒すぎない? もっと夢のあること言おうよ」

 

 レイとアフームは相変わらずハジケた答えを用意していたのであった。

 アリサとすずかのツッコミももっともである。

 

「……なのははもう少し具体的な夢を持ったらいいんじゃない?」

 

 アリサの言葉に対し、レイが反論する。

 

「いや、夢を持つのはええけど、無理に持つ必要は無いと思うで。将来の夢なんてころころ変わってもええやろ」

「でも、夢がないと目標に向かって努力できないじゃない」

「夢や目標がある奴はそれでええ。せやけど、無い奴は探すところから始めんと。んで、探すのが億劫なら日々を一生懸命生きる。夢や目標なんて人それぞれ、馬鹿にせんと応援してやらんとなぁ」

「レイの言う通りじゃな。妾達にはそれぞれ家業がある。それ故具体的なビジョンが描きやすい。じゃが全ての家がそうとは限らぬし、全ての者が家業を継ぐとは限らん。夢があるということはある意味では幸せなことかもしれんの」

「……いつもこのくらい真面目ならいいのに」

「「それが出来ないのが我々虚空戦士(ハジケリスト)なのです」」

 

 なのはの呟きは無情にも否定されるのであった。

 

 

 

 帰り道、たわいのない話をしながらなのは、アリサ、すずか、レイ、アフームの5人は帰る。

 

「……す、け……」

「ねえ、何か聞こえない?」

 

 すずかの一声で全員が耳をそばだてる。

 

「たす……、け……、て……」

 

 か細い声が5人に届く。

 

「聞こえた! こっちからだわ!」

 

 アリサが先頭を切って声の方向へと駆け出していく。

路地裏で5人はけがをしたフェレットを見つける。

 

「これは……」

「ちくわ大明神の御使いや」

「フェレットでしょ」

 

 このフェレットは近くの動物病院に無事保護された。

 

 

 

 その日の夜、高町なのはは一人夜の街を走っていた。

昼間の声が、強く聞こえてきたからだ。

それにさっきアリサとすずかからメールが来た。

内容は声の件についてだ。

三人の家から動物病院はなのはの家が近い。

いてもたってもいられずになのはは駆け出していた。

やがて、動物病院にたどり着くなのは。

入った瞬間、妙な感覚と音がなのはを出迎えた。

その瞬間、世界から色が消えた。

そして、なのはの目に映ったのは黒い影から逃げる昼間のフェレットだった。

 

「大丈夫!?」

 

なのははたまらずフェレットに駆け寄る。

 

「来てくれたの……?」

 

 フェレットは弱弱しい声を放つ。

 

次の瞬間、黒い影がなのはに向かっていく。

 

「きゃあああああああ!!!」

 

 たまらず悲鳴を上げるなのは。

衝撃音がする。

しかし衝撃がなのはに届くことはなかった。

 

「間一髪やな」

「助けに来たぞ!」

 

 レイとアフームがそこにいた。レイの手には散弾銃が握られている。

 

「奴は俺らが引き付ける。フェレットはん! 説明を!」

「とにかくこの場を乗り切るために頼むぞ! とりあえずなのははフェレットと外へ逃げろ!」

 

 そういうと2人は黒い影に向かっていく。

 

「レイくん! アフームちゃん!」

「案ずるな! 俺達には戦いの心得がある!」

「このような事態は慣れっこじゃ!」

 

 そういうと2人は懐から何かを取りだす。

 長く茶色いひも状のそれは甘辛い匂いがした。

 

「「さあ、かかってこい! かんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょうかんぴょう!!!」」

 

 2人はかんぴょうで黒い影を打ち据え、縛り上げたりする。

 

「何あれ!? それよりも君には資質がある。お願い、僕に少しだけ力を貸してっ!」

「し、資質って……?」

 

 フェレットの言葉になのはは訳がわからず首を傾げる。

 

「僕はある探し物のために、ここではない世界から来ました。

でも、僕一人の力では想いを遂げられないかもしれない。……だから、迷惑だと分かっているんですが、資質を持った人に協力してほしくて……」

 

そう話すと、フェレットは腕の中から飛び降りた。

 

「お礼はします!必ずします! 僕の持っている力を、あなたに使ってほしいんです。僕の力を、魔法の力を!」

「ま、魔法……?」

「「かんぴょうかんぴょうかんぴょう!!!」」

 

 レイとアフームは長いかんぴょうを鞭のように操り黒い影を相手にしている。

なぜかアフームはかんぴょうで自分の体を縛っている。

すでに動物病院は半壊状態である。

 

「お礼は必ずしますからっ!」

「お、お礼とかそんな場合じゃないでしょ!?」

 

 フェレットがそう言ってくる。

 

「ど、どうすればいいのっ!?」

「これを!」

 

フェレットは首輪につけていた紅玉を口にくわえなのはに渡す

 

「温かい……」

「それを手に、目を閉じ、心を澄ませて、僕の言うとおりに繰り返して」

 

 なのはは言われたとおりに行動をした。 

 

「いい? いくよ!」

「……うん」

「我、使命を受けし者なり」

「我、使命を受けし者なり」

「契約のもと、その力を解き放て」

「ええと、契約のもと、その力を解き放て」

 

 なのはが契約の言葉を発していると、赤玉が脈動しているのをなのはは感じていた。

 

「風は空に、星は天に」

「風は空に、星は天に」

 

 どんどん紅玉は脈打っている。

 

「そして、不屈の心は」

「そして、不屈の心は」

 

 そして、二人の声が重なった。

 

「「この胸に!」」

「「この手に魔法を、レイジングハート、セットアップ!」」

『Stand by ready set up』

 

 すると、なのはが掲げて持っている宝石から光が立ち昇る。

 

「なんて、魔力だ……」

「ふえ~!? どうすればいいのっ!?」

「落ち着いてイメージしてっ!君の魔法を制御する、魔法の杖の姿を! そして、君の身を

守る強い衣服の姿を!」

「そ、そんな、急に言われても、えっと、えっととりあえずこれで!」

 

 すると、なのはが次に目を開けたらイメージしていた衣服を着ており、手には自分がイメージした杖が握られていた。

 

「成功だ!」

「え? え!? 嘘!? ほんとにいろいろ変わってる!?」

 

 なのはは状況を飲み込めずに目を丸くしておろおろしていた。

 

「なんやその姿は、まあええ、援護を頼むで」

「こいつ、中々しぶといのじゃ! 2人ではキツイぞ!」

 

 レイとアフームはユウガオの実で攻撃している。

 

「「ユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオユウガオ!」」

 

「それで、私はどうしたらいいの?」

「なんだあれ……、ある意味凄い……、ってそうですね、簡単な呪文は心に浮かぶだけで魔法が使えます。でも大きな力を必要とする魔法は呪文が必要なんです」

「呪文……?」

「心を澄ませて。心の中にあなたの呪文が浮かぶはずです」

 

 なのはは目を閉じる。

 

「うん、いける! リリカルマジカル、封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード! ジュエルシード、封印!」

『Sealing mode set up』

『Stand by ready』

「リリカルマジカル。ジュエルシードシリアルXXI――封印っ!」

『Sealing』

 

 杖から魔力の光が発射され、黒い影に直撃すると、黒い影は消え去り、後に残ったのは綺麗な青い宝石だけとなった。

 

「それは……?」

「はい。これが、僕が探していたジュエルシードです。レイジングハートで触れてもらえますか?」

「こ、こう……?」

 

 なのはが杖を近づけると、ジュエルシードが杖に吸い込まれた。

 

『No.XXI』

 

そして、なのはの格好も私服へと戻る。杖もいつの間にか宝石に戻っている。

 

「終わったの?」

「あなた方のおかげで、無事に封印できました。ありがとう……ござい……ます」

 

 お礼を言うと、フェレットが気絶する。

 

「解決したようやな」

 

 レイ、アフームがなのはに駆け寄ってくる。

 

「フェレットはんは……、気絶したか。いろいろ知ってそうな様子やからもっと話をしたかったんやけどな。まあええ、なのは、俺にそいつを預けてくれんか?」

「ふぇ?」

「うちなら設備も整ってるし、具体的な話も聞ける。それに、そっちはそれどころや無くなるからなぁ」

「え?」

 

レイが見つめる方向には高町史郎と恭也がいた。その顔は呆然としている。

 

「これは、やりがいのある事件になりそうや」

 

 レイはにやりと笑った。

 

「これは、つぶ貝のうまい寿司屋のようじゃ」

 

 アフームもまたにやりと笑った。

 




 読んでくれている人がいる、それだけが私の力になります。
 感想や評価をぜひ、やったことない方は練習だと思ってやってみてください。
 私はリアクションが欲しいのです。


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第2話 あなたの隣の非日常

 前回のあらすじ
 謎の喋るフェレットから貰った魔法の力。
 かんぴょう巻き。
 しかもいきなりの親バレって、原作と違うじゃん!



 初めての変身から翌日の放課後、高町家、バニングス家、月村家、が海鳴市内の高級マンションの高層階にある金剛=ダイアモンド家に集合していた。

これから始まるのは昨日の件についての説明だろう。

誰もが神妙な顔で説明が始まるのを待っていた。

やがて、ドアが開き、金剛=ダイアモンド親子と一人の少年が入ってくる。

その少年ははちみつの様な黄金色の髪を持ち、翡翠のような緑色の目をしていた。

 

「皆さんお集まりいただきありがとうございます。ではこれから地域の電気を見守り隊の会合を始めるとしましょか」

「「「「「「違う違う」」」」」」

「冗談はここまでにして、これから海鳴で起こるであろう事件について話し合うとしましょか」

 

 レイが口を開く。

 

「司会進行は私が行いますがよろしいですね? では、始めさせていただきます。最初に紹介します。本件の最重要参考人、ユーノ・スクライア君です」

 

 金髪の少年、ユーノが頭を下げる。

 

「ユーノ君、ここまでに至るまでのあらましを」

「わかりました。改めまして、スクライア族のユーノです。遺跡発掘を生業としています。ここに至るまで、僕は次元航行船であるジュエルシードの運搬をしていました」

「ちょっと待った! わからない単語が多すぎる! 一つ一つ説明が欲しいんだが」

 

 史郎が話を遮る。

 

「わかりました。まず前提条件としてこの世界には魔法があります」

「といっても家で使こうとる魔術とは全然違います。それは先ほど確認済みです。高度に発達した科学が魔法という形で現れた、と思ってください」

「魔法のおかげで光速を越えた移動ができるようになりました。それが出来る船に僕は乗っていたんです。それでジュエルシードというのはロストロギアという旧時代の遺物です。何らかのエネルギー源であるとは思われると思われますが、よくわかっていません。僕はそれを今回の依頼主に運んでいたんです。その最中、船が事故に遭いました。その時、ジュエルシードが船外に放り出されてしまったんです。思わず僕はそれをつかみに行き、船外に放り出されてしまいました。それで、気付いたらこの街にいたんです」

「それからどうなったの?」

 

 忍が質問する。

 

「しばらくこの街でジュエルシード探索をしようと思いましたが、身体も魔力も十分とは言えませんでした。そのため小動物の姿になって回復に努めつつ、現地の魔導士に救援を求めていました。」

「じゃあ、あのフェレットさんは!」

「そう、僕です。ですが誤算がありました。この世界が魔法の無い世界だったということです」

「さらに誤算があって、救援を求めた結果、反応したのが小学生5人やったということです」

「なのは達か、それにお前も」

「そうです」

 

恭也の回答にレイは頷く。

 

「以上が本件のあらましです。ほんでもって、ここからが本題です。ユーノ君の所有していたデバイスのレイジングハート、あぁ魔法発動のための補助装置、杖のようなもの思ってください、それがですな、なのはをマスター登録してしまいまして。現状ではなのはの方がユーノ君よりもマスター優先度が高いことになってしまいまして。要するになのはやないとジュエルシードを回収できんという訳でして」

「「「「「「えっ」」」」」」

 

 全員が驚く中、なおレイは話を続ける。

 

「現状、ジュエルシードを回収するのにレイジングハートの使用は不可欠。それがなのはをマスターとして認識しとる。これが問題なんですわ。えぇ、こら問題です。この事件、俺とアフームとユーノ君だけで解決しよ思うたら、なのは、いやアリサにすずかも巻き込みかねんのですわ、どないしましょ」

「どういうことだ? 巻き込みかねないというのは」

 

 ケントがレイに問いかける。

 

「すずかとアリサがユーノの念話を拾ったということは、2人にも魔法の素質があるちゅうことです。つまり、レイジングハートのマスターになる可能性がある、という訳なんですわ」

 

 全員が頭を抱える。

 

沈黙を破ったのはジュエルシードを感知したユーノだった。

 

「ジュエルシードが発動した!」

「何やと! 急いで向かうで、レイジングハートの状態は!」

「うん、ゴメン、セットアップできない」

「ハァ? こないな時になにを」

「Solley, but my muster is Nanoha Takamathi. Please take her me」

「ジョーダンはよしこちゃん! この場になのはを連れていけるか!」

「But……」

「私なら、出来るんだよね……」

「なのは?」

 

 なのはは小さくつぶやく。美由紀がそれに気づく。

 

「私、ユーノ君を手伝う! じゃないとユーノ君困るでしょ!」

「確かに困るけど、それでも君は巻き込めない! ああ、どうしたらいいんだ!」

「早ようせい! レイジングハート! マスターはユーノ・スクライアや! とっとと登録しなおしぃ!」

「But……」

 

 会議は踊り始め、全く進むことはなかった。だが、史郎の一喝が入ると一気に静まり返った。

 

「レイくん! うちの娘は誰に似たのか非常に頑固だ。だからこうなっては意地でもやるだろう。レイくん、うちの娘を傷物にしないでくれよ?」

 

 殺気を露にした史郎がレイに迫る。すでに何人かが怯えている。

 

「レイ、同じ妹を持つ身だ、あとは分かるな?」

 

 恭也も同じようにレイに殺気を飛ばす。レイは丹田に力を籠めると言い放つ。

 

「無論、嫁入り前の娘さんに酷いことが出来ますかいな。ご安心を『兄貴の誓い』に則り、この約定、違わぬものとしましょう」

 

「ねえゴメン、『兄貴の誓い』って何?」

 

 アリサのツッコミに構うことなくレイは続ける。

 

「レイの兄貴、それは何よりも重いぞ」

「ケントの兄貴、同じ兄貴として妹そばで守ってやれぬ恭也の兄貴の無念、如何程か!」

「っ! そうか、済まない恭也の兄貴」

「いいんだ、我ら三兄貴生まれし日違えど」

「「「……妹を思う志は同じ」」」

((((((ねえなにこの三国志的なノリ、ついていけないんだけど))))))

 

 かくしてレイ、アフーム、ユーノ、なのはによるジュエルシード回収チームが結成

された。

 

 

 

 ジュエルシード発動の現場は神社だった。

 発動体は熊ほどもあろうかという大きさの狼に似た姿をしている。

 その近くには気絶した中年女性がいる。

レイは中年女性を抱きかかえ、神社の方へと運んでいく。

 

「この人は俺が守る! その間に封印を!」

「原生生物を取り込んでる。気をつけて!昨日のよりも手強くなってる!」

 

ユーノの注意を聞き、なのはは唾をのむ。

 

「なのは!早く!」

「え、何を?」

「昨日の服と杖を、早く着替えるんだ!」

「え、ど、どうするやって変身するの?」

「我は使命をから始まる、起動パスワードを!」

「え〜〜!あんな長いの覚えてないよ〜」

 

発動体はなのはに向かって襲いかかる。

 

「なのは逃げるんだ!」

 

するとなのはの手が光を放つ

 

「レイジングハート?」

『Stand by Ready. Set up』

 

レイジングハートが宝石状態から杖に変化する

 

「パスワードなしで起動させた……。あ、なのは! バリアジャケットも!」

「う、うん」

『Barrier Jacket』

 

光に包まれるとなのはの姿が昨夜と同じ白い服になる。

 

『Protection』

 

桜色の壁と化け物がぶつかり激しい音が鳴る

 

『Condition:All green』

 

化け物が壁に弾かれ倒れる

 

「あの衝撃をノーダメージで……、やっぱりあの子はすごい才能を持ってる」

「まさかここまでの才能があるとはのう、びっくりじゃ」

「思ったよりいたくない……。えと、封印ていうのをすればいいんだよね。レイジングハートお願い」

『All right. Sealing Mode. Set up』

 

昨日と同じように光の帯が巻き付き化け物の顔に数字が浮かび上がる

 

『Stand by ready』

「リリカルマジカル、ジュエルシード、シリアルXVI、封印!」

 

化け物が光に包まれ消える。

残ったのはジュエルシードと恐らく取り込まれていた子犬が眠っていた。

ジュエルシードがレイジングハートの中に吸い込まれる

 

「ふぅ、これでいいのかな?」

「うん、これ以上ないくらいに」

「完璧じゃったな。そうじゃろう、レイ?」

「うむ。まさかここまでスムーズにいくとは思わなんだ。これなら頼りにしてもよさそうやな。発動体の強さもおおよそ分かった。収穫は大きいで。ああ、ご苦労様でした」

「ご苦労様でした、なの」

「妾の出番は無しか。まあ、何もないのが一番じゃがな」

 

 その後、レイの口八丁で中年女性の記憶を改鋳したあと、意気揚々と引き上げるのであった。

 

「うーむ」

「どないした、アフーム」

「今回はハジケが足りんかったのではないか?」

「言うな!」




 日に日に読んでくれる人が増えて嬉しい限りです。
 皆さん、評価を、感想をお願いします。
 作者は皆さんの疑問にお答えします。
 質問、どしどしお待ちしてまーす。


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第3話 世はまさにでんぢゃらす

 前回のあらすじ
 史郎公認でジュエルシードを集めることが出来るようになったなのは。
 尊い犠牲を出しながらも無事にジュエルシードを封印したのだった。
「いや、誰も犠牲になってないの!」


 サッカーというスポーツは今や老若男女問わず話題となる紳士的なスポーツである。

プレイするも観戦するもいいスポーツだ。

 隣にフーリガン、しかもトビウオの着ぐるみを着ているフーリガンがいなければの話だが。

 

「殺せ殺せ! 10番を殺せ!」

「そこじゃ、逝け! 潰してしまえ!」

「「殺れ殺れ~!」」

 

レイとアフーム、レイの6つ下の妹であるアウラとアリアがトビウオの格好をしながら過激なヤジを飛ばしている。

その様子をなのは、アリサ、すずかは遠巻きに引いている。

 

「フッ……、来たか」

「ユーノ君は誰なの?」

 

 ユーノはサッカー漫画に出てくる謎のオヤジっぽい行動をとっていた。

 今日は高町史郎率いる翠屋JFCの練習試合。

観戦席はカオスである。

 

 

 

 

 

 試合は翠屋JFCが2-1で勝利した。

現在は翠屋で祝勝会である。

その場にはなのはたちもいる。

レイは史郎の手伝いをしている。

レイにとっては世話になっている礼のつもりである。

 

「レイくん、すまないね、カッパとの交渉を引き受けてもらって」

「いえいえ、こちらこそいつもお世話になっとりますから。この時期はカッパは出産ときゅうり栽培の準備で過敏になるんです。話し合いで済んで上々ですわ」

「そ、そうか……。ていうか、トビウオになる必要は?」

「カッパといえばトビウオ、鶴に松と同じくらい風流な組み合わせですわ」

「そうなんだ……」

 

 史郎は考えることをやめた。

 

 

 

 

 

 なのはたちのテーブルにはいつものメンバーがそろっている。

話題は魔法とユーノの変貌についてだ。

当のユーノは人間態で呑気にパスタを食している。

会話の口火を切ったのはアフームだ。

 

「それにしても意外じゃったな、アリサが炎熱変換、すずかが氷結変換持ち、ユーノが虚空戦士(ハジケリスト)になるとは」

「となると、デバイスの用意はどうなるんや? ユーノ」

「そうだね、チューニングに時間がかかるし、ソフトウェアも専用の物を用意しなければいけないから、時間も費用も掛かるね。それに、そもそも僕が無事に帰れるかどうか……」

「だ、大丈夫だって、管理局? に連絡はいれたんでしょ?」

「そうよ、すずかの言う通りよ、私たちのデバイスは後回しにしていいわ。デバイスが無くても簡単な術式なら使えるんでしょ? なら届くまでなしでやってやるわよ。そこまで気を使わなくていいわ」

「……すずか、アリサ、ありがとう。元気と鼻毛が出てきたよ」

 

 そういうユーノの鼻から50センチ程の鼻毛が飛び出してきた。

 

「「「何で!?」」」

「何の! 俺も!」

 

 そういうとレイはまつげを伸ばした。

 

「「「どゆこと!?」」」

 

 

 

 

 

 ふと、なのはの魔力が有り得ないものを捕らえた。

翠屋JFCのキーパーからジュエルシードらしき気配を感じたのである。

 レイとアフームもまた感じ取っていた。

この和風カルボナーラの隠し味は昆布だしであることを。

 なのはは迷った。このことを伝えるべきかどうかを。

 レイとアフームも迷った。隠し味の正体をばらすべきかどうかを。

 そしてなのはは迷った末、黙っていることにした。

 レイとアフームは迷った末、黙っていることにした。

他に誰も気づいていないようだったからだ。ジュエルシードも昆布だしのことも。

 

 

 

 

 

数時間後、町は阿鼻叫喚の渦と化していた。

巨大な樹が突如として現れ、根が街を覆いだす。

ジュエルシードの仕業と判断したユーノ、なのはは異変の中心である大樹へと飛んでいた。

レイとアフームは妹を送り届けていたため不在であるが、先程念話で直に来ると連絡があった。

なのはは違和感を話しておくべきだった後悔していた。

きっと暴走しているのはさっきのジュエルシードだろう。

なのはは焦って速度を上げる。

ユーノは慌ててついていく。

 

「急がないと……!」

 

 なのはが急ぐあまり視野が狭まっていた。そのせいで目の前から迫る大樹の枝に気が付かなかった。

枝がなのはに襲い掛かる。

 

「きゃあああああああ!!!」

「「火符『マグマミキサー村田のドラムソロ』!」」

 

 炎が枝を焼き尽くす

 

「「マグマミキサー、マグマミキサー!」」

「レイくん! アフームちゃん!」

「マグマミキサー?(大丈夫か?)」

「マグマミキサー!(妾たちが来たからには安心して封印するがよい!)」

「普通にしゃべって!」

「……マグマミキサー(でも、ここからジュエルシードまでは樹皮に覆われて届きそうもないよ)」

「ユーノくんも!?」

「なら樹皮をはがせばええ」

「普通に話せるの!?」

 

 なのはの怒涛のツッコミを意に介さず、素早く策を組み立てるレイ。

 

「問題は再生速度を上回る火力やけど……」

「それは妾が用意しよう」

 

 アフームが手を上げる。

 

「行くぞ! 童話『マッチ売りのプリティアフームちゃん』!」

「マッチで!? 無理でしょ! てか自己主張強いよ!」

「はーはっはっは! 燃えてしまえ! 何もかも!」

「そんな話じゃないでしょ!?」

 

 アフームが放った火が大樹の樹皮を焼いていく。

 その速度は確実に再生速度を上回っていた。

 

「今や! なのは封印を!」

「……わかったの! リリカルマジカル……ジュエルシード封印!」

 

 桃色の極大な閃光がジュエルシードに向かって打ち込まれる。

 

「なんつーバカ魔力……」

「これ妾達いらなかったのではないか?」

「奇遇やな、俺も同じ事を思っとった」

 

 

 

 

 

 全てが終わった後、なのはは後悔を告白した。

 

「本当は、翠屋にいた時ジュエルシードに気付いていたの、でもみんな気付いていなかった

から気のせいだろうって、ほっといたの、話していればこんなことにはならなかったのに」

「それはどうやろか、もし話したとしても、その場で何が出来たかはわからん。それでも話してくれれば対策もとれたかもしれん。結局は結果や。封印は出来た。人的被害もゼロ、俺たちはこの失敗から学ぶことが出来た。それが全てや」

「うん、それはいいんだけど、何でバレリーナの格好をしてるの?」

 

 夕陽を背にバカ3人が舞う。それを冷めた目でなのはは眺めるのであった。




 日に日に増えていくUA数を眺めることが僕の楽しみとなっています。
 As編までは書き溜が出来ていますので、どうぞお付き合いください。


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第4話 対立は世の常

 前回のあらすじ。
「さて! 続いてはスポーツですね、のコーナーです! アフームさーん!」
「はーい! 今日のスポーツですねはこのようになっていまーす!」
 スポーツ新聞を広げるアフーム。
「「「「「「わかるかーーー!!!」」」」」」


 今日の放課後は月村邸でお茶会。

 ということでいつものメンバーでたくさんの猫と共にお茶会を楽しんでいた。

 お茶にはうるさい英国と京都育ちのレイもこの時ばかりは何にも言わずお茶会を楽しんでいた。

 

「いつまでもくよくよしてんじゃないわよ。せっかくのお茶会が台無しになるわ」

 

 大樹の件での失敗が拭えないなのはにアリサが苦言を呈す。

 

「あの時は相談されても誰も動けなかったと思うわ。それでもなのはが失敗だと思うのなら、次はどうするべきかわかるわよね?」

「これでも心配しているんだよ? 私たちじゃ一緒に回収できないけど、その分のサポートはしようって決めたの。だから何か悩みがあるんだったら遠慮なく言ってね」

「なのはは溜め込みやすいからなあ、吐き出せる相手がおるんや。遠慮なく言ってしまえ」

「……うん」

 

 アリサ、すずか、れいの言葉になのははゆっくりと頷く。

 ユーノは猫と戯れながら話を聞いていた。

 

「ユーノ、あんたもよ」

「え?」

 

 突如として話を振られたユーノは虚を突かれた顔をする。

 

「あんたも溜め込みやすそうなんだから、遠慮なく私たちに言っていいのよ」

「私たちもう友達でしょ」

「せや、同じ虚空戦士(ハジケリスト)として、相談はいつでも受け付けたる」

「……うん! ありがとう」

 

 ユーノは初めてできた同年代の友達の言葉に感動していた。

 例えるなら甲子園出場をかけた県予選の決勝でリトルリーグ時代からの親友兼キャッチャーから激励をもらったピッチャーのような心境だった。

 

 

 

 

 

 お茶会の最中、それは突然のことだった。

 ジュエルシードの反応がしたのだ。

 

「空気読まないわね。とっとと回収してきなさい」

「いってらっしゃい」

 

 アリサとすずかに見送られ、4人は森へと入っていく。

 目的地でそれを見つけた時、4人は唖然とした。巨大な子猫がそこにいたからだ。

 

「何じゃ……、コレ」

「多分、子猫の『大きくなりたい』という願いが特に歪むことなく叶ったんじゃないかな」

 

 アフームの疑問にユーノが答える。

 

「それなら回収は楽そうやな。気を引くんは任せとき。巨大猫じゃらしで気引いたる」

 

 そういってレイが取り出したのは竹の先端に楕円球モーニングスターが付いたものだった。

 よくしなるが俗にいう狼牙棒である。

 

「それはどう見ても凶器でしょ!?」

 

 なのはにツッコミを入れられても意に介さず、レイとアフームは狼牙棒を左右に振り巨大ネコの気を引く。

 うまくいったのか猫は興味を示し、前足を伸ばす。その先はレイとアフームだったが。

 

「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」」

「二人ともー!」

「ああっ、重っ、でもキモティー!」

「にくきうが、にくきうが、幸せー!」

 

 心配するなのはをよそに肉球を堪能する二人。

 

「いいからとっとと封印するの」

「いいな~」

 

 呆れるなのはと、羨むユーノ。

 封印の準備をするなのは。

 その時だった。背後から一筋の光が巨大猫に向かっていき、着弾、爆発した。

 

「「何事―!?」」

「え!?」

「何だ!?」

 

 全員が光の発射方向を見る。はるか遠く、電柱の上に金髪黒衣の少女が黒い杖を携えている。

 

「バルディッシュ、フォトンランサー、電撃」

『PhotonRancer.FullAutoFire』

 

 さらに数十の魔力弾が猫に押し寄せる。

 悲鳴を上げながら巨大猫はその場に倒れ込んだ

 

「な!魔法の光、そんな……」

「レイジングハート!お願い!」

 

 なのは以外の魔導師の存在に驚くユーノ、なのははレイジングハートを使いすぐに変化し、巨大猫に迫る追撃の雷光を障壁で防ぐ

 

「……! 魔導師」

 

 相手は攻撃をやめて近くの木の上に降り、こちらを見下ろす。

 金髪のツインテールに赤い瞳の少女だ。

 

「同系の魔導師、ロストロギアの探索者か」

「あぅ」

 

 警戒を強めるユーノ、なのはは少し疲れている。

 レイとアフームは肉球から抜け出そうともがいている。

 

「バルディッシュと同型のインテリジェントデバイスが2つ」

「バル、ディッシュ?」

 

 バルディッシュという名前を聞き、なのはは少女の持つ黒と金の杖を見る

 

「ロストロギア、ジュエルシード」

『Scythe Form. Setup』

 

 少女が発した言葉に反応したのか彼女の杖、バルディッシュが変形し金色の鎌が形成される。

 

「申し訳ないけどいただいていきます」

 

 少女の言葉と共に雷纏う一閃が放たれる。なのはは空を飛んで、ユーノはしゃがんでかわす。

 

「なんで、なんで急にこんな?」

「……答えても 多分、意味が無い」

 

 1度離れて互いに距離をとる

 

『DeviceMode』

『ShootingMode』

 

 2人のデバイスが形を変える、互いに砲撃型になった杖を相手に向ける

 

『DivineBuster.StandBy』

『PhotonLancer.GetSet』

 

 魔法を発動準備状態にしてにらみ合う、倒れていた猫が起き上がる。

 それになのはが気を取られ目線を相手から外してしまう。

 それが決定打だった。

 

「ごめんね」

『Fire』

「はっ!」

 

 気づいた時には遅かった、少女の放った砲撃はなのはを吹き飛ばす

 

「なのは!」

 

 黒衣の少女が巨大猫に迫る。それに立ちふさがる1つの影がある。

 

「行かさへんで」

 

 レイである。

 

「くっ、そこをどけ!」

『Photon Lancer. Full Auto Fire』

 

 多数の雷光がレイに迫る。

 

「相殺する! 土精をもって制する、土符『それは無限のライク・ア・ローリングストーン』!」

 

 回転する石が雷光を打ち消す。

 

『Order?』

「ロストロギア、ジュエルシード、シリアル14。封印」

『Yes. Sir』

 

 杖を上に上げると光の柱が伸び空に穴が開く。

 その穴から光の槍が猫に降り注ぎ光に包まれる。

 

「貰たぁー!」

 

 レイがジュエルシードに手を伸ばすも、ジュエルシードは黒い杖に吸い込まれていった。

 そこに残されていたのは子猫だけだった。

 黒衣の少女達はレイたちを一瞥すると去っていった。

 

「おのれ、おのれぇぇぇぇぇー!」

 

 レイの慟哭が響く。この日彼らは敗北した。たった1人にである。

 

「この恨み、晴らさで置くべきか……」

「彼女たち、何の目的でジュエルシードを……」

 

 ユーノの疑問は青空に吸い込まれていった。




 狼牙棒と言ったら、水滸伝の秦明が有名ですね。
 それはそうと、ハジケた文章というものはなかなか難しい。
 ギャグを考えるのも大変だ。


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第5話 温泉はオアシスたり得るか

 前回のあらすじ。
 敗北、以上。
「「「「「「もっと書くことないの!?」」」」」」



 ゴールデンウィークのある日、高町家、バニングス家、月村家に金剛=ダイアモンド家が加わっての温泉旅行の日である。

 移動は高町家、バニングス家の用意したワゴンなのだが、それに納得する虚空戦士(ハジケリスト)はいない。

 唸るエンジン音、響くレバーとドリフト。

 三つの風が峠を駆ける。

 彼らは走り屋。

 遊園地やデパートの屋上にあるアレで海鳴の山を行く。

 

((((((普通に車乗ったらどうなんだろう……))))))

 

 この後2,3回接触し、爆発もしましたが、無事に宿にたどり着きました。

 

 

 

 

 

 男湯にて。

 

「こうしてみると、全員何らかの形で鍛えているのが分かるな」

「そうですねぇ、男湯にしては華があるんやないですか?」

「意外だったのはユーノだな、結構筋肉質なんだな」

「遺跡発掘って体力勝負なんだよ。特にうちの一族のようなフィールドワーカーにとって体は資本で商売道具だしね。それでもやはり皆さんには劣りますけど」

「いやいや、よく鍛えられていると思うよ。幼いうちから筋肉をつけすぎると骨の成長を阻害するから過剰な筋トレは慎むべきだけど、そのくらいならいいんじゃないかな」

「そう言われると何だか照れますね、士郎さんみたいな体の大人ってあこがれますし」

「それは分かるよ。僕はどちらかというと細マッチョ型だけど、だらしない体の大人にはなりたくないしね」

「ケント兄さんは線が細い人やからなぁ」

「そういうレイくんもよく鍛え上げられてると思うぞ。だがその年で傷が多いのはどうかと思うがな」

「恭也兄さん、武を嗜むものとして生傷はつきものでっしゃろ。ま、流石に好んで傷こさえる真似はせんので」

「それもそうだ」

 

良く鍛え上げられた男たちの温泉は終始筋肉の話であった。

 

 

 

 

 

 風呂から上がり女性陣と合流して部屋へと戻る途中で、とある女性ととすれ違った。

  その瞬間、彼女が急に殺気を飛ばしてきた。

 

(今のところは挨拶だけね)

 

 突然の殺気と念話に慄くなのはたち。

 

(忠告しとくよ。子供はいい子にしてお家で遊んでなさいね。おいたが過ぎるとガブッとするわ――)

 

 女性は突如驚く。

 レイが殺気を返してきたのだ。

 

「レイくん、どうした?」

「あ、何でもないですよ」

 

 恭也にそう返すとレイは念話を返す。

 

(おいたが過ぎるんはどっちの方やろなぁ)

「さ、部屋戻りましょ」

 

 レイに促され全員で部屋に戻る。

 女性は一瞬びびったもののすぐに平静を取り戻し、立ち去る。

 そして、念話で通信するのだった。

 

 

 

 

 

 夜、ジュエルシード暴走の兆候を感じたなのはたちは現場へ急行していた。

 道中はおおむね順調であった。

 レイとアフームが謎の途中離脱をした以外は。

 

「見い! 幽霊や!」

「よっしゃゴーストハントじゃ!」

 

 そんな感じで別方向へと行ってしまったのである。

 その後の道中は順調であった。

 先に黒衣の少女と昼間の女性にジュエルシードを取られているという点を除けば。

 

「あーらあらあらあら、子供はいい子にって言わなかったっけか?」

「それを、ジュエルシードをどうするつもりなんだ! それは危険なものなんだ!」

「さーね? 答える理由が見当たらないねぇ」

 

 ユーノの質問を軽く受け流す女性

 

「それにさ、私親切に教えたよね。いい子にしてないとガブッといくよって」

 

 すると突然、女性の髪が伸び腕と足は人の物から鋭い獣の爪をはやす。

 体中がオレンジ色の毛に包み込まれ。女性は大きな狼に変わっていた

 

「やっぱりアイツあの子の使い魔だ!」

「使い魔!?」

「そうさ、私はこの子に作って貰った魔法生命。製作者の魔力で生きる代わりに命と力の全てを使って守ってあげるんだ。」

 

 狼はなのは達と少女のあいだに立ちふさがる

 

「先に帰ってて、すぐに追いつくからさ」

「うん、無茶しないでね」

「オーケー!」

 

 少女に返事をし、狼は跳躍しなのは達に襲いかかる。それをユーノが障壁を作り阻む。

 

「なのは、あの子をお願い!」

「させるとでも思ってんの!?」

 

 狼はユーノの障壁を前足の爪で障壁に傷をつける

 

「やらせてみせるさ!」

「移動魔法? まずい!」

 

 2人はユーノの移動魔法で消える。残ったのは2人の魔法少女となった。

 

「おや? 終わったのか?」

 

 がさがさと茂みからアフームが血塗れで出てくる。

 

「「きゃあああああああ!!!」」

 

 二人の少女の悲鳴が響く。

 彼女たちは知らない。

 これらが全て熊の返り血だということを。

 

 

 

 

 

「今のは……、おい! 何があった!」

「どーせレイかアフームがハジケたんでしょ。心配ないない」

 

 狼とユーノの戦いは膠着していた。

 しかしユーノ単独では攻撃もままならない。

 お互いに何か、一手必要だった。

 その一手は意外な形でもたらされた。

 

「時速120km!」

「うわああああああ!」

 

 レイがトラックに乗り高速で突っ込んできたのだ。

 悲鳴を上げる狼。

 トラックがユーノと狼、両者を分断する。

 

「助太刀いたす」

「レイ! 助かった!」

 

 トラックからレイが降りる。

 そこへ狼が襲い掛かる。

 しかしレイはそれをするりと躱すと、逆に狼の腹部に蹴りを放つ。

 

「横隔膜キック!」

「キター! 伝家の宝刀横隔膜キック!」

 

狼はレイの蹴りを受け、吹き飛ぶ。

 

「のう、ユーノ」

「何だい、レイ」

「タッグマッチの醍醐味は?」

「……ツープラトン!」

「その通り!」

 

 次の瞬間レイが駆け出す。

 ユーノがそれに続く。

 狼がレイの前に立ちふさがる。

 レイがにやりと笑ったかと思うと、高く飛びあがる。

 

「なっ!?」

 

 狼はそれを見上げる。

 その隙にユーノが近づいてくる。

 背後では着地したレイが迫ってくる。

 

「ゲンコ!」

「足ピン!」

「「クロス・ボンバー!!!」」

「……ぐはぁ!」

 

 狼は何故か吐血した。

 そういう気分になったからだ。

 

 

 

 

 

 2人の魔法少女の戦いは魔力弾の打ち合いと化していた。

 はじめ、話し合いで解決しようとしたなのはであったが。

 

「言葉だけじゃきっと何も変わらない。伝わらない」

 

 しかし少女に拒絶され交渉は決裂。

 互いのジュエルシードを賭けた決闘となったのである。

 

「くっ、こんな時に空が飛べれば……」

 

 歯噛みするアフーム。

 しかし、アフームは思い出したように閃く。

 

「そうじゃ、妾には翼があるではないか! 心の翼が……!」

 

 アフームは飛んだ。

 磔にされた聖者が天に上るように、両腕を伸ばし、手首で羽ばたきながら。

 その顔はとても晴れやかだった。

 

「なのはー! 助けにきたぞー!」

「きゃあああああああ!!!」

 

 有り得ない飛び方をするアフームになのはは思わず悲鳴を上げる。

 

「邪魔をするな!」

 

 黒衣の少女の電撃がアフームに襲い掛かる。

 アフームは変態的な軌道でそれを避ける。

 

「なんか、イライラする……」

「さあ! 反撃じゃ!」

 

 しかしアフームの言葉とは裏腹に彼女は何もしない。

 

「……攻撃手段が一切なしじゃ」

「「ええええええええええええ!!!」」

「ああ、翼が……」

 

 アフームは涙と共に力なく落ちていく。

 

「「何がしたかったの!?」」

 

 2人のツッコミが夜空に響き渡る。

 この後、砲撃の打ち合いをなのはが制すも、首元に鎌を突き付けられ、なのはが敗北。

 ジュエルシードを1個盗られた。

 黒衣の少女はジュエルシードを取ると地上に降りる

 

「帰ろう、アルフ」

 

 少女の言葉に狼、アルフは人型に戻り少女の元に飛んでいく。

 レイとユーノも慌ててアルフの後を追うと、なのはが少女に名前を聞いていた

 

「待って! 私は高町なのは! あなたは!」

「……フェイト、フェイト・テスタロッサ」

「あの、私は……」

 

 少女、フェイトはなのはの言葉を聞こうともせずに飛んでいった

 

 




 さあ君も心の翼で飛んでみよう!
 次回、レイの秘密が明らかに!?
 問うご期待!


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第6話 分かり合えないから傷つけあう

 前回のあらすじ。
 男湯で 筋肉の華 咲き乱れ   マッチョ芭蕉
「「「「「「誰!?」」」」」」



 学校にて、レイは頭を抱えていた。

 ノートには様々な論理記号が書き込まれ、授業のことは一切書かれていない。

 やがて、結論が出たのか、顔を上げる。

 そして大きく息を吐く。

 誰もこの天才の所業を咎める者はいない。

 咎めた所で聞く手合いではないのだ。

 今は丁度算数の時間だ。

 彼にとってはわざわざ話を聞くまでもない話である。

 担任も彼に話を振る気配はない。

 以前話を振り、割り算から純粋数学の問題の話をしようとして遮られたことがある。

 それ以来、この若く気弱な担任はレイをどう扱うべきかという難しい問題に直面しているのである。

 レイはそれを逆にありがたく思っていた。

 数少ない研究の時間を邪魔しないでくれるのだから。

 

 

 

 

 

「なのは、なのは!」

「ふぇ?」

 

 アフームがなのはを呼ぶが、なのはは気の抜けた返事をするだけである。

 

「やはり気になるのかの、マイケル富岡の現在が」

「違うよ! ……フェイトちゃんのことだよ」

「そうであったか、失敬失敬」

「フェイトって誰よ」

 

 アリサが話に入ってくる。

 すずかも一緒だ。

 

「うむ、フェイトというのはな、昨今妾達の頭を悩ませているジュエルシード強奪犯じゃ。何の目的で集めているのかわからない上、本人が話す気が毛頭なさそうなので交渉できず、レイも困惑している」

「そんな子がいるんだ」

 

 すずかが頷く。

 

「私は、フェイトちゃんがどうしても悪い子には見えなくて、どうしてジュエルシードを集めているのか知りたいの」

「妾やレイとしても、ジュエルシードは危険物。勝手に持っていかれるのは困る。それにやっていることは犯罪じゃ。どこぞの誰かは知らんが、人の土地で勝手に動かれるのは業腹じゃとレイも言うておった」

「珍しいわね、レイが怒っているなんて」

「それだけ、今回の件で神経を使っておるのじゃろう。ハジケる時間が減って妾はつまらぬ」

「下手すりゃ地球の危機だもんね。そりゃレイくんも気を遣うよ」

「アイツは変なところで真面目だからねえ」

「うん、レイくんが相当イライラしているのは私も見てて分かるもん。フェイトちゃんが話してくれたら全部すっきり解決できるのかな」

「どうじゃろうか、なのはの言う通り、まるっと解決するのが理想じゃ。じゃが妾達は幼い。出来ることは限られておろう。妾もせいぜい出来ることはタンゴを踊ることしか出来ぬ」

「それの何が役に立つのよ。ああ、もう! 私がデバイスを持ってたらとっちめて話を聞きだすのに!」

「アリサちゃん、ちょっと過激だよ。でも私も話してくれない人にはイライラするかな」

「そうだよね、すずかちゃんもそう思うよね。どうしたらフェイトちゃんは話してくれるのかな」

「話してくれるような状況、そんなものがあるのじゃろうか」

 

 4人とも頭を抱える。

 アフームが突然口を開く

 

「合気道の達人塩田剛三曰く、合気道で一番強い技は自分を殺しに来たものと友達になることだそうじゃ」

「それが何なのよ」

「フェイトと友達になれば、話してくれるかもしれん」

「どうやって?」

「さあ? 妾にはわからぬ」

「「「ダメじゃん」」」

「一概にダメとは言えぬかもしれんぞ。巨大猫の件では何も話してくれんかったが、温泉のときには名前を言うてくれた。これは大きな一歩じゃ。もしかしたらフェイトは誰かに話したがっている可能性もあるかもしれん。次に会ったときに何を話すかが大事じゃな」

「そうだね、アフームちゃんの言う通りかも。私達だって出会いは最悪だったし」

「そうなのか? そういえば妾は其方たちがどのように友達になったのか知らぬ。参考までに教えてくれんか?」

「もともと私がすずかのカチューシャを羨んでつかみ取ろうとしたのが始まりだったのよ」

「そこになのはちゃんが止めに入って、なのはちゃんとアリサちゃんが喧嘩になって」

「その最中にすずかちゃんがやめて! って叫んだの。それで仲直りして」

「それで今に至るってわけよ」

「不思議じゃのう、出会いというのは。何が縁を結ぶかわからん。妾達もそうじゃ。出会いは誘拐事件からじゃったな。それが今では無二の親友じゃ。全く合縁奇縁とはよく言うたものじゃ」

「そうね、それだったらフェイトと友達になることもできそうな気がするわね」

「そうだよ、なのはちゃん。フェイトちゃんと友達になろう。そうすれば前に進めるかも」

「うん、そうだね。次にフェイトちゃんに会うときは私の思いを伝えてみる。言わなきゃ伝わらないもん」

「そうじゃ、その意気じゃ。妾達も応援するぞ。みんなで友達になりに行こう。レイも含めてな」

 

 

 

 

 

 その日の夕方。なのはとフェイトは1対1で空中戦を繰り広げていた。

 ジュエルシードの強制発動を感じ取ったなのはたちは現場に急行し、そこにいたフェイトたちを発見。

 ジュエルシードは封印したものの、なのはに襲い掛かるフェイト。

 ユーノを抑えるアルフ。飛べないために応援に徹するしかないレイとアフーム。三様の戦いが繰り広げられていた。

 

「私がジュエルシードを集めるのはユーノ君の捜し物だから、私はそのお手伝いで……だけど、お手伝いをするようになったのは偶然だったけど今は自分の意思でジュエルシードを集めてる。自分の暮らしてる街や自分の周りの人達に危険が降りかったら嫌だから」

 

 なのははフェイトに自分の気持ちを伝える。

 

「これが私の理由!!!」

「……、私は」

「フェイト!答えなくていい!!!」

 

 口を開こうとするフェイトにアルフが叫ぶ

 

「優しくしてくれる人達のとこで、ぬくぬく甘ったれて暮らしてる様なガキンチョになんかに、何も教えなくていい!私たちの最優先事項はジュエルシードの捕獲だよ!」

「誰が甘ったれや」

 

 その声に全員が振り向く。

 レイが怒気を孕んだ声を出したのだ。

 

「自分らだけが不幸やと思うな! みんなそれぞれ不幸なんや。それを、自分らだけが不幸な言い様、とんだ思い上がりやなぁ!」

「う、うるさい! 私らのことを何にも知らんくせに!」

「知らん? ああ知らんとも! だって自分ら何にも教えてくれへんもの! 教えてくれんくせにわかってくれ? 虫がええにも程があるわ!!!」

 

 怒気がオーラとなって膨れ上がる。怒りのオーラにジュエルシードが反応する。

 

「ジュエルシードが暴走する!」

 

ユーノが叫ぶ。

と同時に暴風が吹き荒れ、両者のデバイスに罅が入る。

 

「そんな……、どうしよう」

 

 なのはが力なく慌てる。

 

「このままだとまずい、封印を!」

「なら俺がやる、けじめはつけんとなぁ」

「でもレイには手段がないんじゃ」

「手段ならある! ただ反則なんやけどな。これやると俺しかジュエルシードを扱えんようになる」

 

 そういうとレイは懐から銀色のカギを取り出し、ジュエルシードに向かって構える。

 

解放者の鍵(Remoeter’s Key)、ジュエルシードを封印せよ!」

 

 鍵がジュエルシードに刺さる。そのまま鍵を右回転させロックをかける。するとジュエルシードの暴走が止まっていく。

 

「暴走が、とまった……?」

 

 レイはジュエルシードを掴み懐に入れる。

 

「このジュエルシードは俺が預かる。せやから」

 

 レイの首元にボロボロの金色の鎌が突き付けられる。

 

「力づくで奪おうったってそうはいかん」

 

 鍵で鎌が払われ、レイは背後のフェイトを蹴る。直撃したフェイトは吹き飛ばされる。

レイにアルフが迫る。

レイは襲い掛かる爪をするりとすり抜けると、懐に潜り込む。

 

「秘技『くすぐりアタック』!」

 

 レイがアルフの脇腹をくすぐる。

 その隙にアフームがアルフの背後に周っていた。

 

「からのバックドロップ!」

 

 アフームがアルフを投げ飛ばす。

 

「というわけで、こいつは俺が貰てくで」

 

 そういうとレイは早々にその場を去る。アフームもレイについていく。後に残された面々はそれを呆然と眺めるしかなかった。




 次回、皆待望のあの男が登場!
 物語が加速していくぞ~!


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第7話 3人目は常識人だといいなぁ

 前回のあらすじ。
 父さん、アルフの一言がレイの逆鱗に触れたようで……。



 早朝の高町家の道場では、恭也と美由紀が朝稽古をしている。

 今日は珍しくなのはが道場にいた。

 何か思うとことがあるのか、物憂げな顔をしている。

 

「どうしたんだ、なのは」

 

 恭也がなのはに話しかける。

 

「お兄ちゃん、稽古はいいの?」

 

「今のなのはの方が大事だ。何があったのか、教えてくれないか」

 

 なのははぽつり、ぽつりとフェイトについて話し始めた。

 

「話を聞いてくれないのは、つらいよね」

 

 美由紀が静かに呟く。

 

「でも大丈夫、いつかきっとなのはの思いは通じるから」

「ほんの少しのきっかけで、分かり合える時がきっとくる。それまで強く呼びかけ続けるんだ。そうすればいつかきっと届く」

 

 なのはは頷く。

 きっとフェイトに私の思いを届けて見せる。

 そう胸に誓って。

 

 

 

 

 

 あるビルの屋上、アルフとフェイトがおり。フェイトの手にはケーキの箱があった。

 

「お土産はこれで良し、と」

「甘いお菓子か、こんな物あの人は喜ぶのかね?」

 

 そう言いながらアルフはケーキの箱をフェイトの代わりに持つ。 

 

「わかんないけど、こういうのは気持ちだから」

「そんなもんかね」

 

 フェイトの言葉に素っ気なく返すアルフ。

 

「…事件転移、次元座標。876C 4419 3312 2699」

 

 フェイトが座標を口ずさむと2人の足元に魔法陣が現れる。

 

「3583 A1460 779F 3125、開け誘いの扉。時の庭園、テスタロッサの主の元へ」

 

 そして魔法陣はアルフとフェイトを包み3人はその場から消えた。

 

 

 

 

 

 とある次元空間、そこに白を基調とした巨大な船のような物体が存在した。

 

「みんなどう? 今回の旅は順調?」

「はい、現在第3戦速にて航行中です。目標次元には今からおよそ160分後に到達の予定です」

 

 その船の中で緑髪長髪の女性の質問に男性オペレーターが答える。

 

「前回の小規模次元振以来特に目立った動きはないようですが、2組の捜索者が再び衝突する危険は非常に高いですね」 

 

 続けて別の男性オペレーターが目的地での状況を説明する。

 

「そう」

 

 女性は返事をしながら自分の席らしき椅子に座る。

 

「失礼します。リンディ艦長」

 

 すると、リンディ艦長と呼んだ女性スタッフが運んできた紅茶を机の上に置く

 

「ありかと、エイミィ。そうねぇ、小規模とはいえ次元振の発生は…ちょっと厄介だものね。危なくなったら急いで現場に向かってもらわないと。ね、クロノ」

 

 渡された紅茶を飲みながらリンディは傍らにいる黒髪の少年に声をかける。

 

「大丈夫、分かってますよ艦長。僕はそのためにいるんですから」

 

 少年、クロノは任せろと言わんばかりに自信よく答えた。

 

 

 

 

 

「たったの4つ……、これはあまりにも酷い」

 

 椅子に座った女性が呟く。

 女性の視線の先には両手を縛られたフェイトがおり、フェイトの身体中は鞭で叩かれた傷があり、所々服も破けている。

 

「はい。ごめんなさい母さん」

「いいフェイト?貴方は私の娘、プレシア・テスタロッサの一人娘。不可能な事などあってはダメ」

 

 女性、プレシア・テスタロッサはフェイトに近づき命令するように語りかける

 

「こんなに待たせておいて上がってきた成果がこれだけでは母さんは笑顔で貴方を迎えるわけにはいかない。分かるわね? フェイト」

「はい、分かります」

「だからよ。だから、覚えてほしい。」

 

 プレシアは自分の持つ杖を一本鞭に変える。

 

「もう二度と母さんを失望させないように」

 

 フェイトの顔が恐怖に染まる。

 

 そしてプレシアは手に持った鞭をフェイトに振り下ろした。

 鞭を叩く音が響く度フェイトの悲鳴が響き渡る。

 その声をアルフは壁越しに聞こえてくるそれから耳を塞ぎ、怒りと恐怖で震えていた。

 いつの間にか鞭の音が消えている。

 部屋の中からプレシアの声が聞こえてくる。

 

「ロストロギアは、母さんの夢のためにどうしても必要なの。貴方は優しい子だから、躊躇ってしまうこともあるかもしれないけど、邪魔にするものがあるなら潰しなさい! どんな事をしてでも! 貴方にはその力があるのだから」

 

 鎖が消え、フェイトは倒れこむ。

 

「行ってきてくれるわね? 私の娘、かわいいフェイト」

「はい。行ってきます、母さん」

 

 プレシアの言葉に僅かに体を起こし返事をするフェイト。

 

「暫く眠るわ。次は必ず母さんを喜ばせてちょうだい」

「はい」

 

 そう言い残しプレシアは奥の部屋へと消えていった。

 プレシアが居なくなったあと立ち上がったフェイトはプレシアが座っていた椅子の横にあるテーブルを見る。

 そこにはフェイトが母のために買ってきたケーキの箱が置かれたままだった。

 

 

 

 

 

 金剛=ダイアモンド家のリビングは香の煙で充満していた。

 

「こんなことが……」

 

 一人の女性が驚いている。

 

「すごいよね、魔法とは全然違うのに」

 

 宙に浮いた半透明の少女の声ががこの世のものではないところから響く。

 

「これで証明はええやろ? 問題はここから先、どうやって元に戻すかや。といっても実際に見るまでわからんが、大体の予測はつく。そのための準備がいるな」

 

 レイは封印したジュエルシードを手の内で弄びながら2人に語りかける。

 

「……本当になおるんだよね?」

 

 少女が不安そうに呟く。

 

「今のままやとキツイが、協力してくれるんやったら。いくらでも直しようはあるで」

「私に出来ることがあれば何でも申し付けてください。そういう契約ですから」

「私だって、出来ることがあるならなんだってするよ」

「その言葉が聞きたかった! それなら……」

 

 2人に指示を出すレイの顔は、悪い顔をしていた。

 

 

 

 

 

 海鳴海浜公園。そこにジュエルシードがある。

 何のいたずらか、ジュエルシードが発動する。

 なのはたちはそれを察知して現場に急行した。

 そこにはフェイトとアルフも来ていた。

 ユーノが結界を張るのを合図に戦闘が始まる。

 

「へぇ!生意気にバリアまで張るのかい」

「うん、今までのより強いね。それにあの子もいる」

 

 暴走体の姿は木をモチーフにしているようだ。地面から根を生やして近づけないようにしてくる。

 

「飛んで避けて!」

「絡まったー!」

「お助けー!」

 

 ユーノの助言空しく、レイとアフームは見事根に捕まる。

 

「アークセイバー。いくよバルディッシュ!」

『Arc Saber』

 

 フェイトはバルディッシュを振り魔力刃を放つ。

 魔力刃は根を切るが本体には障壁を張って防がれる。

 しかし根を切られたのが痛いのか暴走体は苦しそうな声を出す。

 

『Shooting Mode』

 

 暴走体が怯んでいる隙になのはは砲撃の準備をする。

 

「撃ち抜いて!ディバイン!」

『Buster』

 

 なのはの砲撃が放たれる。

 暴走体は障壁を使い防御するが、耐えきれないのか体が沈む。

 

「貫け轟雷!」

『Thunder Smasher』

 

 更にフェイトも砲撃を放つ。

 暴走体は2人の砲撃を防ぎきれず、その体を光らせて消滅した。

 そこからジュエルシードが光の中から現れる。

 

『Sealing Mode. Setup』

『Sealing Form. Setup』

「ジュエルシード、シリアルⅦ!」

「封印!」

 

 封印魔法によってジュエルシードの輝きが弱まる。

 

「あの根っこ、煮物にしたらええ味しそうやったなぁ」

「ああ、確かに!」

「「何の話をしてんの!?」」

 

 なのはとフェイトが同時にツッコむ。

 

「ジュエルシードには刺激を与えたらけないみたいだ」

「うん、昨夜みたいなことになったらレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュも可愛そうだもんね」

「だけど、譲れないから」

「私は、フェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど」

『『Device Mode』』

「私が勝ったら……ただの甘ったれた子じゃないって分かってもらえたら。お話し聞いてくれる?」

 

 黙ったままバルディッシュを構え直すフェイト、次の瞬間2人は距離を詰めてデバイス

を振るう。

 

「ストップだ!」

 

 2人のデバイスがぶつかる寸前、1人の少年が現れ割って入る。

 

「ここでの戦闘は危険すぎる!時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおう……」

「「来るんが遅いんや(じゃ)ボケーーーッ!!!」」

 

 レイとアフームのダブルドロップキックが少年、クロノに炸裂する。

 

「「「ええええええええええええ!?!?!?」」」

「はてさてどうなることやら」

 

 ユーノの声が空に吸い込まれていく。夕日は澄んだ赤い色だった。




 評価がなかなかつかない……。
 次回、レイ、ア-スラで大暴れする。
 明日もサービスサービスぅ!


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第8話 交渉人 レイ=金剛=ダイアモンド

 前回のあらすじ。
 きんぴらごぼうが食べたいな。



「オラオラ! 時空管理局様のご到着やー!」

「全員武器を捨てて投降せいやー!」

 

 キックでのびたクロノを振り回しながらレイとアフームが悪人面で叫ぶ。

 

「フェイト! 撤退するよ、離れて!」

 

 アルフが全員の足元に魔力弾を放ち、土煙を巻き上げ煙幕代わりにする。

 

「おっと逃がさん、奥義『分身ディフェンス』!」

 

 レイが一瞬で回り込み、フェイトとアルフを分身で足止めする。

 

「いや、普通に空飛ぶけど……」

「Oh my god!」

 

 フェイトとアルフは空を飛んで逃げていく。

 

「逃げるなー! 逃げる奴は撃つぞー!」

 

 婦警のコスプレをしたアフームが二丁拳銃で背後からフェイト達を撃つも当たらない。

 

「何してんの!? やめて! 撃たないで!」

 

 なのはの叫びでクロノが目覚める。

 分身する少年、婦警コスの少女、場はまさにカオスであった。

 

「大丈夫、直に慣れますよ」

 

 ユーノがクロノの肩に手を置き、サムズアップする。

 その顔はいやににこやかである。

 

「あの、全員いいかしら」

 

 どこからともなく妙齢の女性の声が聞こえる。

 見ると空中にモニターのようなものが映し出され、そこに緑髪の女性が映し出されている。

 

「ちょっと話を聞きたいから、クロノ、皆さんをアースラまで案内してもらえないかしら?」

 

 

 

 

 

 クロノ・ハラオウンは内心憤然としていた。

 駆け付け早々に蹴り飛ばした銀髪の少年少女、レイとアフームは悪びれる様子もなくアースラ艦内を観察している。

 彼等は自分たちを虚空戦士(ハジケリスト)といった。

 だからと言って何をしても許されるわけでもない。

 

虚空戦士(ハジケリスト)だからと言って何をしてもいいわけないだろう」

 

 クロノはそういったが、その言葉はきれいに無視されてしまった。

 その行為がクロノのはらわたを煮えくり返す。

 白い魔導士、なのははそんな彼らを咎めてはいたが、聞き入れないとわかると、あきらめたようにため息をついていた。

 きっと彼女はいつもこのような目に遭っているのだろうと思うと、クロノはその心労をいたわりたい気持ちでいっぱいだった。

 

(こんな辺境の次元世界に虚空戦士(ハジケリスト)がいたとは初耳だ。第6次元文化圏だけじゃなかったのか)

 

 第6次元文化圏とは、第6管理世界ブリリアントを中心とした7つの次元世界の事である。

 虚空戦士(ハジケリスト)はこの世界に多数生息しており、虚空戦士(ハジケリスト)の96%がこの文化圏に属しているといわれている。

 他の世界からは『地獄』と、虚空戦士(ハジケリスト)からは『天国』と呼ばれている文化圏である。

 やがて、彼らは艦長室の前につく。

 

「艦長、お連れしました」

 

 精神を整え、クロノは声をかける。

 

「「「「へ?」」」」

 

 中に入った4人は素っ頓狂な声を上げる。

 そこにあったのは、盆栽に茶道具、鹿威しといった和空間であった。

 もっとも、どこか違和感を感じる造りではあったが。

 

「お疲れ様。まぁ4人ともどうぞどうぞ楽にして」 

 

 まだ混乱しているものの言われるままに座ると抹茶と羊羹が出された

 

「それじゃあお話し、聞かせてもらえるかしら。でもその前に自己紹介ね、私はこの船、次元空間航行艦船アースラの艦長、リンディ……」

「こかきくけここけかぁーーーーーーっ!!!」

 

 突如としてレイが叫びだす。その体からは怒りのオーラが噴出する。

 

「えっ、何、何!?」

 

 なのはが驚くのも無理はない。

 あまりにも突然のことだったからだ。

 

「いかん! レイはこの中途半端な和空間を見て怒りのあまり我を忘れておる!」

「「「どーゆーこと!?」」」

 

 アフームの説明はさらに混乱を招く。

 

「何を隠そうレイは裏千家家元から直々に茶の手ほどきを受けた茶人! お茶にはうるさい系男子! 故にこの空間が許せんのじゃろう。見るがよい、怒りのあまり千利休を召喚しておる」

「何で!?」

「「誰!?」」

 

 レイの帽子が割れて、千利休が上半身を出している。

 その額には青筋が浮かんでいる。

 

「詫びも無ければ寂びもない、数寄の要素が何もない。これでは宗匠の怒りを買うも同然」

 

 利休の目が見開かれる。

 

「喝ぁーーーーーーっ!!!」

 

 その瞬間、辺りが光で包まれた。

 

「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」」

「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 光が部屋を飲み込んだ。

 光が晴れると、何ということでしょう、中途半端な和空間は見事な茶室へと早変わり。

 盆栽、鹿威しの配置も計算され、ここに小宇宙が体現された。

 すっかり落ち着きを取り戻したレイが茶を点てている。

 

「あの、私がもてなす側じゃ……」

 

 リンディの言葉に、射殺すような目線で答えるレイ。

 

「あ、ハイ、すいません」

 

 もはやこの場の主導権を誰が握っているかは明白だった。

 

 

 

 

 

 ユーノから今回の一件の経緯、クロノとリンディから時空管理局についての説明が終わった。

 レイの立てる茶は素人の舌にも優しい味であった。

 

「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収に持ちましては時空管理局が全権を持ちます」

「「「「え」」」」

 

 突然の決定に反応が出来ない3人。

 レイだけが微笑みを崩さない。

 

「君たちは今回のことは忘れて元通りに暮らすといい」

「でも、そんな…」

「急にそんなこと言われても…」

「それはあきまへん」

 

 反応できたのはレイただ1人。

 

「本件の解決に至って僕は国際魔術結社(International Magic Society)から全権を委任されとります。時空管理局さんには申しありまへんけど、正式な手続きをもって僕から委任を申し渡すまで介入せんでもらえんでしょうか。」

 

 これにはリンディも面を喰らう。

 

「それに、僕はどうもあなたたちを信用しきれへん。重役出勤かました挙句、高圧的な態度で現地協力者に対応した。中途半端な方法で懐柔しようとした。どうせこの後、こちらの好意に付け込んで協力を取り付けようとしたんでっしゃろ?」

 

 レイの言葉にリンディは内心ぎくりとする。

 さらにリンディとしては優秀な魔導士に唾をつけておこうという魂胆もあった。

 だが、リンディはそれを9歳の少年に暴かれたことに動揺してしまう。

 

「ふむ、なら今の僕からいえることはたった一つです。『地球なめんな』。なんで、委任は無しの方向で」

「そんな話が通るか!」

「クロノ!」

 

 クロノが声を荒げる。

 

「ロストロギアの回収と保管、時空犯罪者の取り締まりは時空管理局の仕事だ! IMSだったか? そっちにそれが出来るとは思えない!」

「出来ますえ。ただしこちらのルールに従ったうえで」

「信用できないな、10にも満たない子供に全権を委任する組織なんて」

「そのセリフ、そっくりそのままお返しします。13歳の執務官殿」

「何だと!」

「クロノ!」

 

 リンディがクロノを諫める。

 

「っ! 申し訳ありません。艦長」

「こちらも言い過ぎましたわ。申し訳ありまへん」

 

 慇懃無礼な態度でレイが謝り返す。

 その様子にリンディは顔をしかめる。

 

「私達はあなたがIMSでしたか? そこから本当に全権を委任されているのか疑問に思っています。何か証拠のようなものはあるでしょうか」

「持っててよかった全権委任状」

 

 レイが懐から一枚の書類を取り出す。

 それはIMSから送られてきた全権委任状だった。

 

「これには時空管理局との交渉についても全権委任するという旨が書かれとります。勿論本物ですよ」

 

 リンディは全権委任状を受け取ると、仔細にそれを眺めた。

 クロノも全権委任状を覗き見る。

 

「これは……」

「どうやら本物のようですね。確かめる手段がありませんが、少なくとも偽物とは言い難いでしょう」

「ご理解いただけてほんにおおきに」

 

 レイは全権委任状をリンディから取り返すと、再び懐にしまった。

 

「それで、ジュエルシードの回収の権限についてですが……」

 

 リンディがレイに話しかける。

 

「ふむ、こちらとしても管理局の手は借りたいのですよ。ただしこちらにも面子というものがありましてな、その辺、ようわかりますやろ」

「……ええ、痛いほどに」

「全権委任は不可能ですけど、協力体制を築くことは不可能やないです。我々と時空管理局の協力をもって事件解決にあたるんがよろしいかと」

「……それが一番無難でしょうね。わかりました、時空管理局はIMSに協力を申し出ます」

「IMS代表としてその提案を受け入れます。ほな、書面で確約してもらいましょか」

 

 そういうと、レイの帽子がプリンターとなって書類を吐き出し始める。

 

「その帽子、どうなっているんだ?」

 

 クロノが疑問に思う。

 

「いやんエッチ。そこは男の子の秘密の場・所♡ 余計な詮索はしないでちょ」

 

 その一言で場が凍り付く。

 レイはそれを気にしないかのように、書類を取り上げると、読み上げる。

 

「主文、国際魔術結社(International Magic Society)、以下甲は時空管理局、以下乙の要請を受け入れ、甲乙間でのジュエルシード捜索における協力体制を築くことをここに宣言する。甲代表、レイ=金剛=ダイアモンド。と、提督殿、ここに署名を」

「ええ、わかったわ」

 

 リンディは書類を受け取ると、さらさらと署名をする。

 

「はい、これで我々は協力を築くことになりました。作戦行動の際は俺を呼んでくださいね。作戦立案にはかかわらんといかんもんですから」

「大丈夫なの?」

「安心してください、これでもIQは216あるもんですから」

 

「くそっ! 負けた! 僕213だ!」

 

ユーノが悔しそうに畳に拳を叩きつける。

 

「いや、両方凄いからな!?」

「ユーノ君もすごい頭良かったんだ……」

 

 クロノとなのはがレイとユーノの頭脳に驚嘆する。

 

「それで、その子たちはどうするのかしら?」

 

 リンディが示す方向には、話についていけないなのは、のんびりと茶を楽しむアフームとユーノがいた。

 

「ああ、彼女らはこの後意思確認しますよ。茶飲んどる方は参加するやろうし。それに、あの子にはずいぶん助けられましたしなぁ。なんか報酬を考えんと」

 

 

 

 

 

 その日の夕方、アースラから戻ったレイはその足で高町邸へと向かった。

 目的は作戦参加の意思を固めたなのはの代わりに史郎たちを説得するためである。

 高町家の面々に時空管理局の介入と、協力体制の構築の件を話したレイは、なのはが作戦に加わりたい旨を話した。

 

「なのはは出来ることを最後まで責任もってやり遂げることを望んでいます。僕としても信用できる人物がいた方が有難いので、嬉しいのですが、何分相手は巨大組織です。僕もできる限りなのはを守ることを誓います」

「お父さん、お母さん、お願い! このまま投げ出すのはいやなの!」

「僕からもお願いします! なのはの不利益なことにならないよう気を付けますので!」

 

 史郎は目を閉じ、熟考する。

 やがて考えがまとまったのか、静かに口を開く。

 

「レイくん、ユーノ君。頑固だが娘をよろしく頼む」

「レイ、わかっているな」

 

 恭也の問いにレイは目配せで答える。

 

「兄貴の誓いを違えるつもりは毛頭ありまへん」

「それが聞けて良かった」

「なのは、後悔しないようにやるのよ」

 

 桃子の言葉に頷くなのは。

 こうしてなのは、ユーノ、レイ、アフームは管理局に協力することになったのである。

 




 現在、空白期を書いているのですが、原作がないといくらでも書けることに気付きました。
 もういくらでも盛れる盛れる、ギャグも設定も。
 やっぱり主人公がなのはからレイに移った所為かな。
 原作部分は非ギャグキャラの出番が多いから、ギャグが挟みづらい。
 かと言ってレイを活躍させすぎるのもなあ。
 レイにはそこそこ苦労してもらわないと困るんだよなあ。


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第9話 近づいていく、決戦は金曜日

前回のあらすじ。
 千利休がブチ切れた、数寄の無い部屋にブチ切れた。



 アースラ内部ではある模擬戦の内容が映し出されていた。

 4人それぞれの総当たりでの模擬戦だ。

 名目は訓練として、実際は彼らの情報を得るためである。

 

「ほへぇ、みんなすごいねぇ」

「ああ、これだけ出来れば十分戦力として期待出来るだろう」

「クロノ君とどっちが上かなぁ?」

 

 オペレーターのエイミィ・リミエッタがクロノをからかう。

 対するクロノは憮然としつつも返事をする。

 

「4人の実力は認める、だけど僕は自分が負けてるとは思ってない」

「だねぇ、何てったってアースラの切り札なんだから」

「からかうのもいい加減にしろ」

 

 クロノはそっぽを向くのに対しエイミィはクスクスと笑いながら再びその映像の方へと目を向ける。

 するとちょうどレイとアフームの決着が着いたところだった。

 

「この2人は……、なんかすごいんだけど」

「ああ、何かが違う。お互いに全力じゃない。それだけ隠したいことが多いんだろうな。ていうかなんだ、ゴボウしばきあい対決ってふざけているのか」

「ええ、そうね。この2人は政治や外交で動いているもの。手札を全て見せるような真似はしないでしょう。レイくんの魔術という技術は私たちの魔法とは異なる。なるべく対策されたくないのでしょうね。もっとも、見せてくれた札だけでも十分すぎるほど強いのだけど」

 

 リンディが2人の感想を補足する。

 その手には砂糖入り緑茶が握られている。

 レイが見たらキレられる代物だ。

 すると、ジュエルシードの反応がレーダーに現れる。5人の出動が要請された。

 

 

 

 

 

 今回の暴走体は巨大な烏だ。

 

「ユーノ、あれ縛れるか?」

「ちょっと今のままじゃ無理かな、速すぎるし、レイはどう?」

「俺も難しいなあ、あのスピードじゃ縛れるもんも縛れん」

 

 ユーノとレイが話し合う。

 しかしすぐに作戦がまとまる。

 

「なら引き付けて動きを止めるしかないな」

 

 そう言うと全身にハンペンを張り付けると、巨鳥に相対する。

 

「さあ、こい大烏。このプロテクターでもって貴様を止めてやろう!」

「大丈夫なの、コレ!?」」

「アフーム! 引き付けぃ!」

「了解じゃ!」

 

 レイの合図でアフームが大烏に魔力弾を放ち、挑発する。

 巨烏はまっすぐ4人の方へと向かってくる。

 

「さあ、来い! 受け止めたるわ!」

 

 レイが気合を入れて、巨鳥に立ち向かう。

 やがてその嘴がレイに激突する。

 

「レイくん! 大丈夫!?」

 

 なのはの声にレイが反応する。

 

「大丈夫や、プロテクターのおかげで助かったわ」

 

 その腹には見事な風穴が空いていた。

 レイが巨鳥を掴んでいる。

 

「貫通してるーーー!!!」

「ほい、バインド」

 

 なのはとのツッコミを意に介さず、ユーノはバインドを大烏にかける。

 

「「「さあ、封印を!」」」

「え、う、うん」

 

 困惑するもなのははジュエルシードを封印する。

 無数の光の帯が巨鳥に突き刺さり巨鳥の悲鳴と共にジュエルシードが摘出される。

 飛び出したジュエルシードにレイジングハートを向けると、ジュエルシードはそのまま吸い込まれていった。

 

「さて、戻るとしますか」

「まだ、穴空いてるよ!」

「じょ、状況終了です……ジュエルシード・ナンバーVIII無事確保。お疲れさま。4人とも」

「「「「あ、はーい」」」」

「ゲートを作るね、そこで待ってて」

「分かりました、というかレイそろそろ戻りなよ」

「もう戻っとる」

「「「「「「いつの間に!?」」」」」」

 

 いつの間にか腹の穴がふさがっているレイを見て、アースラスタッフの顔は引きつる。

 

「優秀だけど……、私では持て余しそうね。なのはちゃんだけならねえ」

 

 リンディの呟きは船の駆動音に掻き消されていく。

 事実、虚空戦士(ハジケリスト)は管理局内にもいるが、彼らを制御できる上司は全くいない。

 優秀なのは事実なのだが、それをうまく使いこなすかは別問題なのである。

 その頃、クロノとエイミィはあるデータを見ていた。

 そのデータはフェイトその使い魔アルフのもの。

 ここ数日の間に管理局が発見したジュエルシードを二個も奪われてしまっている。

 感知も出来ない事から相当強力な結界を張っている事が容易に想像出来た。

 そして問題はそのファミリーネーム、テスタロッサだ。

 

「かつて追放されてしまった大魔導師と同じファミリーネーム、か」

「じゃあその人の関係者なのかな?」

「分からない、本名とも限らないしこればっかりは何とも……」

 

 そしてフェイトの事を気にしているのは何もクロノ達ばかりではない。

 アースラに帰還したなのはは少し浮かない顔をしていた。

 

「なのは?」

「もしかしてフェイトの事かの?」

「うん、現れないなって」

「ジュエルシードを集めていればいずれ必ず会う事になるじゃろう」

「うん、そうだね」

 

 なのはとアフームはフェイトの悲しそうな眼が思い浮かべた。なぜあんな眼をしているのか。その訳を知りたいと、一層強く思うのだった。

 

 

 

 

 

 大烏戦からさらに数日、互いに手に入れたジュエルシードは2個づつとなった。

残りは6個を残すところとなった。

地上は全て探し終えたので、残すは海中だろうというのが管理局側の見解であった。

捜索の手伝いをしていたレイもそれには同意していた。

 

「うーん、見つからないなー」

 

 キーボードをたたきながらエイミィが呟く。

 

「あまり根を詰めすぎんと、見つかるもんも見つかりませんで」

 

 レイがティーセットを持ち運びながら寄ってくる。

 

「はい、お茶どす、熱いんで気ぃつけてつかあさい」

「ありがとう、気が利くねえ」

「いえいえ、こっちも結果が出んのは心苦しいですから」

「レイくんはすごいねえ、戦闘だけじゃなくてバックヤードでも大活躍じゃない」

「いえいえ、むしろこっちの方が得意なんですよ、僕」

「そうなの? あの強さだったらAランク魔導士なんてあっという間に倒せそうなのに、ずるいなあ」

「強うないと家を継げんもんですから、大変ですよ。下手に色々出来ると、一つ一つが中途半端になりかねんもんですから」

「そういうものかなあ、色々出来る人ってあこがれるけどね」

「万能の天才か、器用貧乏になるかは、当人次第ですから」

 

 レイはコンソールを覗きながら、茶をすする。

 

「見つかりませんか」

「全然見つかんないよ」

「この辺りは海流が乱れまくってますからなぁ。故に『海鳴』、潮が激しいときには文字通り海が鳴く」

「どっか1か所に固まっていると楽なんだけど」

「そんな都合のええことが……」

 

 突然艦内にアラームが鳴り響いた。

 

『エマージェンシー! 捜索域の海上にて大型の魔力反応を感知!』

「……ありましたな」

「うん……」

 

 

 

 

 

 モニターにはフェイトとアルフが映っている。

2人は巨大な魔方陣を展開している。

 

「強制発動、か。無茶なことを」

 

 レイが呟く。そこへ、なのはたちが現れる。

 

「これは……」

「フェイトちゃん!」

 

 モニターには6つの竜巻が映る。フェイトとアルフは翻弄されながらも封印しようとしている。

 

「あの、私急いで現場に」

「その必要はないよ、放っておけばあの子は自滅する」

 

 なのはの言葉をクロノは否定する。

 

「仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たした所で叩けばいい」

「でも、」

「今のうちに捕獲の準備を」

「「「了解」」」

 

 無情にもジュエルシード捕獲に動くアースラスタッフに困惑するなのはたち。

 

「提督殿!」

「私達は常に最善の選択をしないといけないわ。残酷に見えるかもしれないけど、これが現実」

 

 アフームがリンディに詰め寄るも、なしのつぶてである。

 

「最善、ねぇ。なら僕も最善を尽くしますわ」

 

 レイが声を上げる。

 

「今すぐ転送の準備を、現場に出ます」

「レイ! 話を聞いていたのか!」

 

 クロノが大声を出す。

 

「聞いとりました。そちらはジュエルシード確保に向けて動いてどうぞ。こちらは人命救助と地球を救うために動きますんで」

「レイくん!」

 

 なのはの歓声が上がる。

 

「なるほど、そちらの言い分も最もや、ジュエルシードを最優先すればな」

 

 レイがじっとりとクロノとリンディを睨みつける。

 

「こっちは目的が違うんで。こっちの目的は土地の安全や。あのままでは地球が潰されかねん。あくまで共同捜査ですよね、なら地球全権の僕が命令しても問題ないはずや。頭2人おるんやから」

「レイ! 転送の準備できたよ!」

 

 ユーノの声にレイが振り向く。

 

「ようし! 今行く!」

 

 去っていくのレイの後姿をアースラスタッフは見つめているしかなかった。

 

「そう言えば、レイくんとアフームちゃんって飛べたっけ」

「あ……」

 

 エイミィのつぶやきがアースラに混乱をもたらすのであった。

 

 

 

 

 

 空を落ちていく5人、一直線にフェイトとアルフのもとへと向かっていく。

 なのははデバイスを展開する。

 

「そういえば、レイくんとアフームちゃんは!?」

 

 なのははここで2人が飛べるかどうかに思い至るのである。

 なのはは思い返す、2人が空を飛んだことは一度もないことに。

 なのはは慌てて2人を見る。

 そこには、帽子からタケコプターの様なプロペラを生やしたレイとアフームがいた。

 

「飛べるの!?」

「「頑張れば」」

「頑張って済む問題じゃないよ!」

 

 そんな4人の登場をフェイトとアルフも察知した。

 

「フェイトの……邪魔をするなああああっ!!」

 

 アルフが体を縛っていた電撃を振り払い飛びかかるもユーノに止められる。

 

「なに!?」

「違う、僕達は戦いにきたんじゃない!」

 

 そしてすぐさまユーノは動いた。

 

「とにかく今は封印のサポートを!」

 

 そう言って魔法陣から鎖を伸ばし竜巻を縛り付けた。

 

「俺もサポートに回ろう! 捕獲『夏休み最終日の昆虫採集』!」

 

 レイが虫取り網の様な魔力をジュエルシードにかける。

 虫取り網が虫籠の様に変化してジュエルシードを包み、逃そうとしない。

 

「さあ、お二人さん! あとは任せましたえ!」

「フェイトちゃん、手伝って! ジュエルシードを止めよう!」

 

 レイジングハートから光の帯が放たれバルディッシュへと吸い込まれていく。

 

『Power charge』

『Supplying complete』

 

 先ほどまで刃も維持できなくなっていたバルディッシュが回復し、修復される。

 なのはの魔力がフェイトに分け与えられたのである。

 

「二人できっちり半分こ」

 

 ユーノ、レイにアルフまで加わったバインドはぎりぎりのところで踏ん張っていた。

 

「今のうち! 二人でせーの! で一気に封印!」

 

 そう言ってなのはは飛び立つ。

 

『Shooting mode』 

 

 それを阻もうとするように襲い来る多くの雷。

 だがそれもアフームの弾幕が的確に撃ち抜いていく。

 おかげでなのははただただ真っすぐに空を飛ぶだけで済み回避行動は一切取ってない。

 そして魔法陣を足場になのはは空中に立つ。

 

『Sealing form, setup』

「バルディッシュ……?」

 

 相棒が突然変形した事に驚くフェイト。

 

「ディバインバスター・フルパワー、いけるね?」

『All right, my master』

 

 魔法陣が広がる。対しフェイトの足元にもまた金色の魔法陣が浮かび上がり広がった。

 

「せーの!」

「サンダー!」

「ディバイン!」

「レイジ!!」

「バスター!!」

 

 金色の雷が落ち、桜色の砲撃が飛ぶ。

 二つの力は一つとなり大きな爆発と衝撃を生んだ。

 そんな中、海中から光と共に六つのジュエルシードが浮かび上がって来る。

 そのジュエルシードを見ながらなのはは思う、フェイトについて、自分がどう思っているかを。

 

「友達に、なりたいんだ」

 

 正直に、真っすぐに伝えるのだった。

 その時だった。レイの第六感がアラートを流した。ばっと上空を見る。紫色の雷が迫っていた。

 

「防御『ヘキサグラムシールド』!」

 

 正六角形の板がレイの目の前に展開されるが、紫電は容易に貫く。

 

「ぎゃああああああ!!!」

 

「レイくん!」

 

 レイは見事こんがり肉へと変貌していた

 

「「「「「「何で!?」」」」」」

 

 全員に紫電が襲い掛かる。落ちていく6人。

 そんな中フェイトを回収したアルフは真っすぐジュエルシードの方へと向かう。

 それをいつの間にか到着していたクロノによって阻まれる。

 

「邪魔を……するなあああああっ!!」

 

 吹き飛ばされるクロノ、アルフは急いでジュエルシードに目を向けるが3つしかない。 既にクロノが三つを回収していたのだ。

 

「う、あああああ!!」

 

 アルフは叫びながら魔力弾を海面に打ち付ける。

 すると特大の水しぶきがあがった。

 気が付いた時にはフェイトもアルフもその姿を消していたのだった。




 どうやったら読者が増えてくれるか、試行錯誤中。
 感想も評価も増えるといいな♪
 質問疑問待ってまーす♡


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第10話 バカサバイバー

 前回のあらすじ。
「竜巻警報発令! 竜巻警報発令! 付近の住民は落ち着いて避難してください!」



 アースラ艦内、リンディとレイが睨み合っている。

 先の意見の相違の所為である。

 お互いに最適な落としどころを探り合っているのだ。

 その緊迫した空気に誰もが口をつぐみ、息をのんでいた。

 やがて同時に大きくため息をつく。

 リンディが先に口を開く。

 

「今回の件は互いの目的の違いが生んだものでした。もう少しそちらに配慮するべきでしたね」

「いえ、こちらこそ勝手な真似をしました」

「これ以上この件については掘り下げないことにしましょう」

「それがお互いのためになりますな」

 

 ようやっと全員の顔に安堵の表情が浮かぶ。

 

「次は無いようにしましょう」

「そうしましょう」

「さて、問題はこれからね」

 

 リンディが話題を変える。

 

「クロノ、事件の大元について何か心当たりが?」

「はい、エイミィ、モニターに」

「はいはーい」

 

 どこからかエイミィの声が聞こえると会議室の机の真ん中に立体映像が現れ1人の女性が映る。

 

「あら、彼女は」

「そう、僕らと同じミッドチルダ出身の魔導師。プレシア・テスタロッサ。専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら違法研究と事故によって放逐された人物です。先程の攻撃魔法と魔力波動も一致しています。そしてあの少女フェイトは恐らく…」

「フェイトちゃん、あの時母さん、て」

 

 クロノの説明になのはが先程のことを思い出す。

 

「親子、ね……」

「その、驚いてたって言うより、なんだか怖がってるみたいでした」

 

レイは黙って何やら思案している。

 

「エイミィ、プレシア女史についてもっと詳しいデータは出せる?」

「はいはい! すぐに探します」

 

 しばらくして再びエイミィの声が響きだす。

 

「その駆動炉ヒュードラの事故が原因で地方の研究所に、事故に関しても色々揉めたらしいです。しばらくは辺境で研究をしていたらしいですがしばらく後に行方不明になって、それっきりのようです」

「家族や行方不明になるまでの行動は?」

「その辺は綺麗さっぱり抹消されてます。本局に問い合せて調べてもらってます。一両日中には結果が送られるそうです」

 

 エイミィの報告を聞き、手を顎に当てるリンディ

 

「……あれだけの魔力を使った後では向こうもそうそう動きは取れないでしょう。その間にアースラのシールド強化もしないといけないし」

「貴方達は一休みしておいた方がいいわね、一時帰宅を許可します。ご家族と学校に少し顔を見せておいた方がいいわ」

 

 

 

 

 

 どこか薄暗く不気味な空間、そこでフェイトは傷だらけになって倒れていた。

 そのような状態のフェイトにアルフが慌てて駆け寄る。

 体の至る所に鞭による傷が刻まれて最早痛々しいなどと言う状態ではない。

 アルフは部屋の奥を睨み付ける。

 一方プレシアはと言うとフェイトを傷つけた事など気にする素振りも見せずにジュエルシードを眺めていた。

 

「たったの9個、これで起動出来るかどうか、分からないわね」

 

 突然プレシアが咳き込む、すると真っ赤な血がその口から吹き出し床を汚す。

 口元を押さえていた手も真っ赤に染まっていた。

 

「あまり時間はないわ、私にもアリシアにも……!」

 

 すると突然部屋の壁が轟音を立てて崩れる。

 立ち込める煙の中現れたのはアルフだった。

 プレシアは無反応のままジュエルシードに意識を傾けている。

 アルフは一歩、また一歩とプレシアを目指して歩いてくる。

 そして一飛びの間合いに入った瞬間、飛びかかった。

 だがそれはプレシアが張った障壁により容易く阻まれる。

 それでもアルフは何度もぶつかり、障壁を破壊する事に成功した。

 障壁を破ったアルフは怒りに身を任せてプレシアの胸倉を掴む。

 

「あんたはあの子の母親で! あの子はあんたの娘だろ! あんなに頑張ってる子に、あんなに一生懸命な子に、何であんな酷い事が……ッ!?」

 

 この時アルフは気づいた、プレシアの目が虚ろであることを。

 彼女には自分の言葉なんて欠片もその心に届いていない事に。

 もはや彼女の意識はジュエルシード以外に向いていなかった。

 本能的に危険を感じ後退しようとした時にはもう遅かった。

 プレシアの一撃がアルフの腹部に直撃しアルフの体は軽々と吹き飛ばされる。

 

「あの子は使い魔の作り方が下手ね、余分な感情が多すぎる」

「ぐ、うぅ、フェイトは、あんたの娘は、あんたに笑ってほしくて優しいあんたに戻ってほしくてあんなに……!」

「フン」

 

 アルフの必死の訴えはプレシアにはまるで届かない。それどころか取り出した杖をアルフに向ける。

 

「邪魔よ、消えなさい!」

「……ッ!」

 

 プレシアはアルフに魔法を放った。

朧げな意識の中アルフは必死に転移呪文を唱える。

アルフは光に包まれ転移した。

 

 

 

 

 

 放課後、なのはたちはバニングス邸にいた。ここでアルフらしき橙色の毛の狼が保護されたと聞いてきたのである。

 

(アンタらは……)

 

 アルフが念話で話しかけてくる。

 

「これ以上話さなくてええ、傷に障ります」

「あんた、温泉のときに念話してきたやつね。なんでそうなってるのかわかんないけど」

(アンタらがいるってことは管理局の連中も見てるんだろ)

(時空管理局のクロノ・ハラオウンだ。正直に話してくれるなら悪いようにはしない。もちろん君の主、フェイト・テスタロッサのことも)

(なら、全部話すよ。でも約束して、フェイトを助けておくれ!あの子は何も悪くないんだ!)

(約束しよう)

 

 クロノの返答を聞いて、アルフはこれまでの事情を話し始めた。

 

(君の話と現場の状況、そして彼女の使い魔アルフの証言を聞く限りこの話に嘘や矛盾は無いようだ)

(クロノ、プレシア・テスタロッサはどうするのじゃ?)

(僕らは艦長の命令があり次第、プレシアの逮捕に変更する事になる。君たちはどうする)

 

 アフームの質問に対するクロノの返答は公僕のそれだった。

 

(私は、私は、フェイトちゃんを助けたい! フェイトちゃんが悲しい顔は私もなんだか悲しいの。だから助けたい! 悲しいことから。それに友達になりたいって伝えたその返事をまだ聞いてないしね)

(右に同じく。ここにいる連中全員が同じ気持ちや)

(分かった。フェイト・テスタロッサについては君たちに任せる)

(なのは、だったね。頼めた義理じゃないけど、お願い、フェイトを助けて。あの子、今本当に一人ぼっちなんだよ)

(うん、大丈夫、任せて)

 

 

 

 

 

 朝が来る。全ての決着をつけるために、少年少女たちは海浜公園に集う。

 

「ここならいいよね。出てきてフェイトちゃん」

『Scythe. Form』

 

 突然バルディッシュの声が聞こえ、全員がそちらを見ると電灯の上にフェイトが立っていた。

 

「フェイトもう辞めよう。あんな女の言うこともう聞いちゃダメだよ!このままじゃ不幸になるばっかりじゃないか…だからフェイト!」

 

 アルフが説得を試みる。しかしフェイトはゆっくりと首を横に振る。

 

「それでも私はあの人の娘だから」

 

 フェイトの変わらぬ意思を聞くとなのはは変身する。

 

「ただ捨てればいいって訳じゃないよね。逃げればいいって訳じゃもっとない。…切っ掛けはきっとジュエルシード、だからかけようお互いが持ってる全部のジュエルシードを!」

『Put Out』

 

 レイジングハートから11個のジュエルシードが現れる。

 

『Put Out』

 

 同じくバルディッシュからも9個のジュエルシードが現れる

 

「それからだよ…全部、それから」

 

 なのはとフェイトが構える。

 

「私達の全てはまだ始まってもいない。だから、本当の自分を始めるために……始めよう。最初で最後の本気の勝負!」

 

 アフームが前転しながら、二人の間に割って入る。

 

「ファイッ!!!」

 

 レイがコングを鳴らす。

 決闘が始まる。

 




 今日はハジケ度数が低いなあ。
 でも安心してください、明日はたっぷり出番があります。
 そう言えば、UAが1000人を突破しました。
 ひとえに読者の皆さんのおかげです。
 今後も応援よろしくお願いします。


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第11話 思い出がいっぱい

 前回のあらすじ。
 なのはVSフェイト! いよいよ開幕! したりしなかったり!
「「「「「「どっちだよ!?」」」」」」



「さあ始まりました世紀の魔法少女同士の対決。実況は私レイ=金剛=ダイアモンドと」

「解説のユーノ・スクライアでお送りします」

 

 全員で結界を張った後、レイとユーノは実況解説をしていた。

 アフームはラウンドガールとして待機している。

 

「アンタたちっていつもこうなのかい?」

「いつも、かどうかは分からんが、楽しいぞ?」

 

 アルフの質問にアフームが答える。

 一方アースラでも始まった2人の戦いをモニター越しにクロノとエイミィが見ていた

 

「始まったみたいだね…」

「あぁ、エイミィ。準備の方は問題ないか?」

 

 エイミィの言葉に頷きつつ確認をするクロノ

 

「うん。あの子の帰還先の追跡準備は出来てるよ。それと次元魔法による別次元からの攻撃の追跡も大方準備完了」

 

 サムズアップをしながら笑顔で答えるエイミィ。

 だがその顔は直ぐに真面目な顔に変わる

 

「でも、あのことなのはちゃん達に伝えなくて良かったの?プレシア・テスタロッサの家族とあの事故のこと」

「勝ってくれるに越したことはない、それに今はなのはを苦しませたくない」

 

 エイミィの質問にクロノは少しその顔に影を落としながら答えた。

 

 

 

 

 

「杖同士の鍔ぜり合い、接近戦から始まる戦い」

『Photon Lancer』

「ここでフェイトが仕掛ける。解説のユーノさん」

「はい、フェイトとしては得意の速攻戦術でなのはを沈めたいところ。先制を取って有利な状況に持ち込みたいところでしょうね。しかしなのはも負けてませんよ」

『Divine Shooter』

「ファイア!」

「シュート!」

「なのはも攻撃を返す! いや、この子本当に魔法に触れて1月ちょいなのでしょうか!」

「昨日、戦術を練りましたからね。対フェイト戦に限って言えば相当の対策がとれるはずです」

「なのはがランサーをかわす。なのはの弾は追尾弾だ。フェイトこれをシールドで防ぐ!」

「お手本のような流れですね。お互いタイミングを探り合っています」

「シュート!」

「今度はなのはから仕掛けた!」

『Scythe Form』

「しかしフェイトこれを鎌で切り裂くのか。1つ、2つ、3つ! 最後は避けた。さあこのままインファイトか!」

「なのははインファイトが苦手ですからね。いい手です」

『Round Shield』

「なのは楯で防ぐを選んだ!」

「定石道理ですね。フェイトがこれを貫けるかどうか」

「ここでさっきの1発がフェイトを襲う! フェイト痛恨のミス!」

「避けるべきではなかったですね。この一発が流れをどう変えるか」

「ああっと! フェイトがなのはを見失う! これは痛い!」

「ここからどう出るでしょうか」

『Frash Move』

「せえぇぇぇぇぇぇい!!!」

「なのはまさかのインファイトー!」

「これは意外だ! 砲撃でいくと思ったのに!」

「何という魔力の大爆発。2人とも大丈夫か!」

「これは分からなくなってきたなぁ~」

『Scythe Slash』

「フェイト仕掛けた! だがなのはも紙一重で避ける!」

「今のでダメージが少ないのは痛いですね」

「おおっと、今度はフェイトが仕掛けてきたぞ」

『Fire』

「危ない危ない危ないぞなのは! ギリギリのところで防ぎ切った!」

「流れがフェイトの方に向いてきましたね」

(初めて会ったときは、魔力が強いだけの素人だったのに)

 

 フェイトは内心焦っていた。

 なのはの成長スピードを見誤っていたのだ。

 しかし誰が想像できるだろう、魔法と出会って2月にも満たない少女がここまで戦えるようになるとは。

 

(速くて、強い。迷ってたら、やられる!)

「おおっとここでフェイトが巨大な魔方陣を展開だ」

「ここで決める気ですね」

『Phalanx Shift』

「間違いないこれは大技だー!」

「ライトニングバインド」

「おっとなのははバインドで動けない」

「なのはがこれを堪え切れるかが勝負ですね」

「アンタら呑気に解説していていいのかい!? フェイトは本気だ!」

「神聖なる決闘の邪魔をするものは神であろうと許されぬ」

「決闘の行末を見守ることこそ実況解説の役目」

「……一応ありがとう、手を出さないでくれて。全力全開の一騎打ちだから。私とフェイトちゃんの勝負だから!」

(でも、フェイトのそれは本当にまずいんだよ!)

「平気!」

 

 なのはは強気でフェイトに立ち向かう。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

「来るぞ大技がー!!!」

「まだ実況してんのかい!!!」

「フォトンランサー・ファランクスシフト! 打ち砕け、ファイヤ!!!」

「決まったーーーーーー!!!!!!」

 30近い魔力球から魔力弾が打ち出され、その全てがなのはに殺到する。

なのはの姿は爆発の煙で見えなくなる。

「なのは!」

「フェイト!」

「どうなった、これは!」

 

 フェイトは左手に魔力を集中させる。

 油断なく止めを刺す構えだ。

 やがて煙が晴れる。

 そこにはしっかりとなのはが立っていた。

 

「高町なのはが生きていたー!」

「まさか、耐えきるなんて」

「いった~、打ち終わるとバインドも解けちゃうんだね、今度はこっちの……」

『Divine』

「反撃来るか!」

「番だよ!」

『Buster』

「キター! なのはのターンだ! フェイトも魔力弾を投げるが、無駄無駄無駄! シールドで防ぐしかない!」

「フェイトは消耗してますからね。耐えきれるかどうか」

(直撃!でも、耐えきる。あの子だって…耐えたんだから!)

「耐えられるかフェイト! 手袋とマントはもうだめだ~!」

 

 やがてなのはの砲撃が止まる。

 

(フェイト?)

「耐えた~! だが息も絶え絶えだぞ!」

「いや、すごいですね。よく耐えた」

「しかしなのはの攻撃は終わらない」

「受けてみてディバインバスターのバリエーション!」

『Starlight Breaker』

「来たぞ高町なのはの必殺技!」

「フェイトがこれにどう出るか」

「バインド!?」

「が、動けない! 現実は無情!」

「これが私の全力全開! スターライト、ブレイカーーー!!!!!!」

「きまったぁぁぁぁぁぁ!!!」

「な、なんつーバカ魔力!」

「うわあ、フェイトちゃん生きてるかな?」

 

 アースラのクロノとエイミィもフェイトの安否を心配する。

 撃ち終わったなのはは肩で息をしている。

 飛行魔法も切れかけている。

 一方のフェイトは気絶したまま海へと落ちていく。

 

「フェイトちゃん!」

 

 なのははフェイトを追いかけて海へと飛び込もうとする。

 その前に海がせりあがり、フェイトが海中から現れる。

 

「水符『ウォーターベッドの恋人』。この勝負、高町なのはの勝利!」

 

 アフームがフェイトを助けていた。なのはは安心したのかため息をつく。

 

「ん……」

「あ、気づいた? ごめんね……大丈夫?」

「……うん」

「私の……勝ちだよね」

「……そう、みたいだね」

『Put Out』

 

 バルディッシュからジュエルシードが排出される。

 これで決着、というところで邪魔が入る。

 紫電が天から降ってきた。

 

「いかん!」

 

 アフームが楯になるように割って入る。

 

「んほおおおおおお!!!!!!」

 

 紫電がアフームに直撃して、服が破け、素肌が露わになる。

 その素肌には縄が巻き付いていた。

 

「「「「「「何巻いてんの!?」」」」」」

 

「下着代わりの縄が無事で何よりじゃ」

「「「「「「下着の代わりなの!?」」」」」」

 

 そんなやり取りをしている間にジュエルシードが消えていた。

 

「エイミィ! 追跡は!?」

「もちろん! しっぽ、掴んだよ!」

 

 アースラでは予定通り次元間の追跡を成功させる。

 

「よし、すぐに艦長に座標を」

「割り出し完了!送信!」

 

 驚くほどのスピードでプレシアの居場所を割り出し司令部に送る。

 それを受け取ったリンディはすぐに指示を出す。

 

「武装局員、転送ポットから出動!任務はプレシア・テスタロッサの身柄確保です!」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 20人近い局員がプレシアの居る時の庭園に転移する。

 その頃プレシアは喀血していた。

 

「くっ、やはり次元魔法はもう体が持たない。それに今のでここも見つかった」 

 

 口を手で抑えながらプレシアは横のモニターを見る。

 そこには気を失ったフェイトを抱えるなのはとフェイトの様子を見るアルフ、撤収作業を進めるレイとユーノ、見悶えるアフームが映し出されていた。

 

「フェイト、あの子じゃやダメだわ。そろそろ潮時かもね」

 

 プレシアはそんな言葉をこぼすのだった。

 

 

 

 

 

「お疲れ様」

 

 リンディが労いの言葉をかける。

 

「それから、フェイトさん。初めまして」

 

 リンディに声をかけられるがフェイトは手に持っている、ひびの入った待機状態のバルディッシュを見つめている。

 

(母親が逮捕されるところを見せるのは忍びないわ。なのはさん彼女をどこか別の部屋に)

(あっ、はい)

 

 念話でリンディに頼まれ、なのははフェイトを連れて行こうとする

 

「フェイトちゃん良かったら私の部屋に…」

「総員、目標を発見!」

 

 1人の局員の声に反応するフェイト。

 モニターには大勢の局員と椅子に座るプレシアが映されていた。

 

「プレシア・テスタロッサ。時空管理法違反、及び管理局艦船への攻撃容疑で貴方を逮捕します!」

「武装を解除してこちらへ」

 

 局員の通告を無視するプレシア、数人の局員が奥の部屋に調査をしに入っていく。

 

「2班は向こうを我々は奥の部屋を捜索する」

「こっちに何かあるぞ!」

 

 局員達がある扉に気づき扉を開ける。

 

「な!? こ、これは……」

 

 中に入った局員達は驚きの声を上げるモニターから見ていたなのは達も驚く。

 フェイトは声すら出ていない。

 そこには大きな円筒形の装置の中に浮かぶ金髪の髪の少女。

 その姿はフェイトと瓜二つの顔をしていた。

 

「私のアリシアに触らないで!!!」

 

 いつの間にか現れたプレシアによって1人の局員が吹き飛ばされる。

 

「撃て!」

 

 隊長らしき男の声に従い数人の局員がプレシアに攻撃を行う。

 だがそれはプレシアには届かず打ち消される

 

「煩いわね……」

 

 そう言いながら左手を前に出すプレシア。

 次の瞬間部屋にいる局員だけでなく突入した全局員に雷が降り注ぐ

 

「いけない!エイミィ、局員達の送還を!」

 

「りょ、了解です!」

 

 リンディは倒れた局員達を直ぐにアースラに転移させる

 

「アリ……シア?」

 

 フェイトは先程プレシアの言ったアリシアと言う名前を呟いている。

 

「もうダメね、時間が無いわ。たった9個のロストロギアではアルハザードに辿り着けるか分からないけど…」

 

 愛おしそうな目でアリシアと呼ばれた少女が入っている装置に触れる。

 するとプレシアは首を回しモニター越しにこちらを見る

 

「もういいわ、終わりにする」

 

 プレシアの声が司令室に響く

 

「この子を亡くしてからの暗鬱な時間を、この子の身代わりの人形を娘扱いするのも。聞いてるかしら? あなたの事よフェイト」

 

 フェイトがビクリと体を震わせる。

 

「せっかくアリシアの記憶をあげたのにそっくりなのは見た目だけ。役たたずでちっとも使えない、私のお人形」

 

 重くなる空気の中でエイミィが口を開いた。

 

「最初の魔力炉の事故の時にね、プレシアは実の娘、アリシア・テスタロッサを亡くしているの。彼女が最後に行っていた研究は使い魔とは異なる…使い魔を超える人造生命の生成」

 

 エイミィの説明に驚くなのは達、そして話は続く

 

「そして死者蘇生の秘術。…フェイトって名前は当時彼女の研究に付けられた開発コードなの」

「あら、よく調べたわねそうよその通り。」

 

 エイミィの説明を聞いてプレシアが言葉をつなぐ。

 

「だけどダメね、ちっとも上手く行かなかった。作り物の命は所詮作り物…失ったものの代わりにはならないわ。アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。アリシアは時々わがままも言ったけど私の言うことをとても良く聞いてくれた」

「やめて……」

「アリシアはいつでも私に優しかった」

 

 ガラスの筒を撫でながらプレシアは言葉を続ける。

 

「フェイト、やっぱり貴方はアリシアの偽物よ。せっかくあげたアリシアの記憶も貴方じゃダメだった」

「やめて、やめてよ!」

 

 なのはの声が大きくなる。だがプレシアは止まらない

 

「アリシアを蘇らせるまでの間に私が慰みに使うだけのお人形。だから貴方はもういらないわ。どこえなりとも消えなさい!!!」

 

 フェイトの目には涙が溜まっていく。

 

「お願い!もうやめて!!!」

 

 フェイトの頭には優しい頃の母の記憶と自分に鞭を叩く記憶が巡り巡っていた。

 

「いい事を教えて上げるわフェイト。貴方を作り出してからずっとね、私は貴方が、大嫌いだったのよ!!!」

 

 フェイトの手からバルディッシュが零れ落ち、フェイトも力が出ずに座り込む。

 

「フェイトちゃん!」

「フェイト……」

 

 なのはとユーノがフェイトに駆け寄る

 

「アハハハハハハ!!!」

「言いたいことはそれだけか?」

 

 レイの声が艦内に響く。

 

「さっきから聞いていれば随分と身勝手な言い訳、ご苦労さん。さて、あんたも物理学を学んでいるならわかるやろ。同種の元素を配合した2つの物質の相違性とエントロピーを」

 

 プレシアが息をのむ。

 

「どんなに同じ材料を持ってきたとしても、全く同じもんを作れることはない。どんなに同じ材料を持ってきたとしても、一度崩れ去ったもんがすっかり元通りになることはない。あんたはそれをわかっているはずやろ? 俺が分かるんや、物理学者であるあんたに分らんはずがない」

「煩い」

「そもそも、死者蘇生なんという禁術、不確定が過ぎる。そんなおとぎ話にすがらねば生きていけんのか?」

「煩い!」

「アンタの行動には矛盾が多すぎる。一体何を隠しとるんやろなぁ」

「煩い! 煩い! 煩い! もういいわ! 始めるとしましょう」

「た、大変です!これを見てください!」

 

 エイミィがモニターを切り替えると、複数のモニターに時の庭園の各所が映し出される。

 すると地面から無数の機械兵器が現れる。・

 

「これは…」

「時の庭園より傀儡兵の反応確認!60、80!さらに増加します!」

「プレシア・テスタロッサ、貴方は一体何をするつもりなの?」

 

 リンディの問いにプレシアが答える。

 

「私達は旅立つのよ!失われた都、アルハザードへ!!!」

 

 9個のジュエルシードがプレシアの周りに現れる。

 

「この力で旅立って、取り戻すのよ。全てを!!!」

 

 ジュエルシードが光を放つ。

 

「次元振です!規模は…中規模以上!」

「ジュエルシード9個発動!次元震、更に強くなります!」

「転送可能な距離を維持したまま影響の少ない区域に移動を!」

 

 アラームが鳴り響く中、挙げられた報告に対して命令を出すリンディ。

 そんな中プレシアの笑いが司令室に響く。

 その顔は狂気に染まっている。

 

「私とアリシアはアルハザードで全ての過去を取り戻す!」

「過去は過ぎ去るのみ、現在はただ在るのみ、未来は向かってくるのみ。待っておれ、プレシア・テスタロッサ。俺が貴様に現実というものを叩き込んでやろう」

 

 レイの口角が不気味に吊り上がった。




 この回は非常に頑張りました。
 特に実況解説の部分。
 次回より第12話を全5話でお送りします。
 え、意味が分からない?
 つべこべ言わず読めや!


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