気づいたら豚頭帝として群れを率いていた件 (ぱんつ)
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死んで、

とりあえず、ゲルドがかっこよすぎたので憑依させたかった。
ちなみに独自設定は変えるつもりありません。
これからはこうした方がいいんじゃない?的なアドバイスは幾らでも受け付けます。

文才も、内容もゆうてそこらにあるレベルですが、よければ見てね


 

 

真っ暗な街中、乾いた足音が響く。

ある一定のテンポで響くそれは、俺の足音だ。

 

友達と遊びに行った帰り、同じ方向へ帰る友達もおらず、駅から家まで一人で歩いている。

夜、街灯程度しか光のない田舎である俺が住んでいる町は、当たり前のように暗く、そして物音もしない。

聞こえるのは俺の足音、それと風の音ぐらいだ。

 

今更、お化けだの妖怪だの、そんなお伽話で怖がるような年でもないが、それでも少し不安な気持ちになった。

 

その不安をかき消すように、俺は耳元にイヤホンを嵌め、それなりの音量で音楽を聴き始める。

 

不安が嘘だったかのように気分が高揚し、思わず走り出したくなる気持ちにかられる、そんな曲を聴きながら俺は歩みを進めた。

 

 

 

 

もう少しで家に着く、それぐらいの距離になった時。

 

「すいません、ここから一番近いコンビニってどこか分かりますか?」

 

穏やかな、それでいて優しげな音色で後ろから語りかけてきたその人は、コンビニを探しているらしい。

今時スマホのマップ機能で調べれば、すぐにわかるのに、と少し億劫な気持ちになりながら、片耳だけイヤホンを外し振り向く。

 

 

グサッ、他の書籍などに倣って書くとすれば、その擬音が適切だろう。自身の心臓部に刺さっているナイフは、まるで元から俺の胸に生えていたかのようにしっかりと差し込まれていた。

 

勿論元から生えているはずもなく、それを証明するかのように溢れ出す血。それを止める手段などなくただ呆然とそれを眺める。

 

そのナイフを刺したはずの人物はいつのまにか逃げていたらしい。

街灯に照らされ、一人ポツンと膝をついた俺は、まるで何かの劇のようだ。

 

《確認しました。ユニークスキル『演劇者(エンジルモノ)』を獲得・・・成功しました》

 

そんな俺の頭の中に、何か機械的な声が響く。

しかし遅れて届いた激痛が、その声から意識を逸らした。

 

《確認しました。痛覚無効獲得・・・成功しました。続けて、耐突耐性獲得・・・成功しました》

 

だんだんと意識が朦朧としてきた、血を流しすぎてしまったのだろう。このまま死んで、生きた記憶も何もかも、全部消えてしまうのだろうか。

 

家族との思い出も、友達とバカやって先生に怒られたことも、好きって言ってくれたあの子のことも。

 

それは、嫌だなぁ。

 

《確認しました。完全記憶獲得・・・成功しました》

 

 

そういえば友達と貸し借りしていた漫画、返してもないし、返してもらってもない。こんなことになるなら、さっさと返しておけばよかった。

 

《確認しました。ユニークスキル『貸借者』を獲得・・・成功しました》

 

 

俺は17歳の高校生。

まだ未来が残っていて、まだ死ぬには程遠い年齢で、まだやり残したことがたくさんあって。

惰性で過ごしたこの17年間、何も代わり映えしない日常に生きている価値なんて感じられなかったけど、いざ死にそうになると、自分でも驚くほどに生きることに対して渇望してしまう。

 

《確認しました。ユニークスキル『不死者(シナヌモノ)』を獲得・・・成功しました》

 

 

また来世があるとしたら、最初からやり直し、か。

記憶なんて残ってないだろうけど、今まで積み上げてきたのに最初からは堪える。

 

《確認しました。生存している個体の中で生命力の弱いものに乗り移ります。その際必要なユニークスキル『憑依者(トリツクモノ)」を獲得・・・成功しました》

 

 

(まさか、自分がたった一人で、誰にも見られず死ぬなんて)

 

思っていたより悲しいな…

 

それが最後に俺が抱いた気持ちだった

 

 

 

 




どうでしょうか。
ルビが付いてないものは募集中です、よければよろしく


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現状把握

結構、自分の勝手にやるつもりなのでご了承ください


 

「…飢えたオークの若者か」

 

その言葉がきっかけとなり、消え失せてしまったはずの意識が戻る。

 

「なかなかに強い力を秘めている。うまくすれば豚頭帝、いや豚頭魔王すら視野に入れていい」

 

自分の頭上で何か言っているのが聞こえるが、それより自分が生きている、という状況に驚愕していた。

身体から熱が抜けていく感覚。耐え難い苦痛。

確実に死んだ、そう思っていた。

 

それと、全身に力の入らなくなるほどの、この空腹感は一体なんだろうか。

 

「この俺、ゲルミュッドに従え、豚頭帝。そうすれば名と食料をやろう」

 

随分と偉そうに名乗り、随分と偉そうに提案をする声が聞こえた。

こう言っちゃなんだが、うぜぇ。

よく言えば自信満々な、悪く言えば傲慢なこの声の主は、ゲルミュッドというらしい。

顔も見えず、面識もない。そんな明らかに怪しい男からの話なんて無視して、現状を把握する。

いや、正確には"把握しようとした"だろうか。

 

 

まるで俺以外の意思に操られるように縦に頷いた俺の身体。いや、本当に俺の身体なのだろうか。そう疑問に感じるほど、俺の意思とは正反対な行動をしだした。

 

「ゲルド、お前の名前はゲルドだ。ふふ、ふはははは、これで俺の野望は叶ったも同然…!」

 

 

野望ってなんだ?まず、俺にはちゃんと名前があるんだけど?

そんな疑問が浮かぶ間も無く、"何か"を与えられた俺は、気を失っていた。

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

名を与えられてから一週間後。

俺、ゲルドはオーク達を引き連れながら、進軍を開始していた。

 

意識を取り戻した俺にゲルミュッドは『飢餓者』というスキルの説明をして去っていった。スキルという概念も、変わり果ててしまっていた体すらわからない俺を置いて、だ。

偉そうな上に気が利かないと言う、なんというか残念なやつである。

 

そんな奴は置いておくとして、何故何もわからないはずの俺がここまで落ち着いて、しかもオークを率いているのか。それは…

 

(もたもたしている場合じゃない、早く喰わねば皆が飢えてしまうぞ)

 

そう、この脳内に響く声のおかげである。

俺が現在使っている身体の持ち主だったらしいそいつに、俺は沢山のことを教えてもらった。スキルについてやオーク達について、それに聞いた話と俺の推測で、大体の現状を把握できた。

 

どうやら俺は、異世界のオークの王に憑依したらしい。

勿論頭のおかしいことを言っているのは自覚しているが、この身体の持ち主が弱っている時に突然俺に体の主導権を奪われた、と言っている上に、元の世界にいなかったオークという生物、そう思ってしまっても仕方がないだろう。

 

それに、そんなことどうでもいい、と思えるほどの問題が発生している。それは、オーク全体の食糧不足、それも深刻な。この身体の主導権を握っている俺からすれば、そんなことほっといて元の世界に戻る方法なり探したいところだが、そんなわけにもいかない問題がある。

 

実は、この身体の主導権を完全に握れているわけではない、という問題だ。ゲルミュッドに、提案をされた時に勝手に頷いたのが何よりの証拠。どうやら身体の元持ち主が強く願ったことはこの身体に反映されてしまうらしい。つまり、俺がオークという種族を見捨てるような行動を取れば、この身体の元持ち主(仮称:旧ゲルドとする)は俺の見捨てようとする動きを、なんとしてでも止めようとしてくるだろう。それも、尋常ではないほどの想いの強さで。

だいぶ心優しい善王だったようでオーク達のことを一番に考えている、まだ数日とはいえ、それが強く伝わってきた。

 

旧ゲルドを説得することはおそらく不可能で、主導権を完全に握る方法があるわけでもない。オーク達の飢餓という問題を解決しなければ、俺は自由の身にならないわけだ。

 

だから俺は、こうしてオーク達を率いて食糧を探し求めている。

目標はジュラの大森林にある豊かな自然。暴風竜ヴェルドラという、邪竜が封印されているらしいが、少しぐらいの恵みなら許してくださるだろう、という旧ゲルドの考えの元向かっている。

 

 

ここでまた新たな問題が。

目的地に向かうまでの食糧がない、ということだ。

オーク全てを養うための食糧など、そう簡単に手に入れられるはずがなく、目的地であるジュラの大森林の自然に着いたとしても、おそらく長くは持たない。それぐらいの量の食糧をその分用意し、進軍している間、全員に行き渡らせる、簡単に言おう。無理である。

 

しかし、それについては解決出来た、と言っても過言ではない。

その秘密は『飢餓者』のスキルにある。そのスキルの効果は腐食し、喰らう、そして喰らったものの能力をある程度取得出来き、それを支配下にあるものにも与えることの出来る能力。

飢えれば飢えるほど強くなり、喰らえば喰らうほど強くなる。

その上、俺が食いさえすれば支配下にあるもの全て飢え死にすることがない、という兵站の概念がいらなくなるほどの良スキル。

それに三大欲求の一つである食を満たすだけで強くなれるなんて、チートにもほどがある。

 

このスキルがある限り、俺が食いさえすれば皆は死なない、ということである。まあ、俺が食べる食糧さえ不足しているわけで、こうして進軍しているわけであるが…

 

とりあえず、オーク達を救う目処は立っている。

作戦なんてあってないようなめちゃくちゃな行動だが、物量とスキルでなんとかなりそうなんだから恐ろしい。

 

と、そんなことを考えている間にも、オーク達がゲルミュッドの指示で向かわせていたオーガの里を潰してきたらしい。

配下のオーク達が食べたオーガ達の能力が、全体に反映されさらに力を増す。これでさらに上の魔物を喰えるだろう。

そして、死んだオーク達からも、多量の魔素容量が送られてきた。

 

もちろん、先ほどの『飢餓者』にそんな能力はない。

この能力は、俺が所有している別のスキルによるものだ。

 

 




独自設定展開しまくります。
それと遅れてすいません。


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『貸借者』

はい、独自設定やりまくりました。
嫌な方は言ってください。なんとか出来そうならしてみます。


この身体には二つの魂が宿っている、といえる。

他の世界から憑依してきたらしい俺と、元々の身体の持ち主である旧ゲルド。俺が身体の主導権をある程度得たせいか、旧ゲルドは精神により近い存在となった。本人の話では、自分は部屋の中にいて鏡のようなものから俺が見たものを見れるのだとか。音も部屋全体に響くらしい。

 

精神により近い存在になったからなのか、理由は定かではないが、旧ゲルドは俺のスキルも見ることが出来るようだ。その部屋の中に話に聞く限りだとスマホのようなものがあり、そこに書いてある、と言っていた。

 

身体を奪った俺に対して、多少の敵対心は持っているようだが、そこは善王。オーク達が助かるのなら、とスキルの詳細をしっかりと伝えてくれた。その詳細の中にあったスキル、『貸借者』。死んだオーク達から魔素容量が送られてきた理由はこれである。

 

そのスキルの能力を簡単に説明すると、スキルや魔素など、基本的に認識しているものを貸したり、借りたり出来るスキルである。

そして、貸したものに1分毎に1倍から1.1倍までの利子を付けることが出来る。

つまり、100の魔素容量を相手に貸した場合、1分で110、2分で121と返してもらう時の魔素容量が増えるのである。レジストされる時もあるらしいが、十分強力なスキルだ。

制限は借りる時には相手の許可が必要、だということ。

 

ここまでくれば大体分かると思うが、俺は『飢餓者』によって配下に与えられる魔素などを、"貸す"と認識して1.1倍の利子をつけている。

貸したものを返してもらうことは自由に出来るらしいが、貸し与えた対象が死んだ場合、即座に返済。返さないといけない能力が本人が返せる限界を超えていた場合、魂をも消費して返され、魂を消費しても返しきれなかった場合、返さない分は全てなかったことになるらしい。つまり、先程死んでしまったオークに貸し与えたもの、全てを何十倍にして、魂さえも消費し、文字通り全てを根こそぎ奪い取った、ということである。

 

悪いが見た目が豚に似ている以上、そこまで嫌悪感は湧かないし、旧ゲルドも最初は反対していたが、得られる利益を説明した上で、俺が根気強く説得したおかけで、死んでしまったオークに対してだけは許可してくれた。

 

結果的に俺は、何百というオーク達の能力を奪うことができた、ということだ。

かといって、劇的に力がついたわけではない。すぐに死んでしまうオークなど、所詮雑兵。塵も積もれば山となる、というが何百と積もっているのに山にはまだ遠そうだ。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆

 

 

オーガ達の里を滅ぼした数週間後。

 

(王よ、前方の湿地帯に多数の蜥蜴人族がおります。そいつらを喰らい、ジュラの大森林の緑地へと向かうのがよろしいかと)

 

先に進んでいる隊からの、スキル思念伝達による報告。それは湿地帯にいるリザードマンについてだった。ここにくるまで、多数の種族を食してきた俺達オークの軍勢は、一人一人がそこらの魔物には負けない程の能力を身につけ、その上、豚頭将軍などの上位種達がいる。未だ自分自身で戦ったことはないが、豚頭帝である俺は恐らく豚頭将軍より強い力が備わっているだろう。ここ数週間の中で、ここらに生息している魔物の強さをある程度把握している俺からすれば、リザードマンという種族が何千といようと余裕だろう、そう判断出来た。

 

リザードマンの住処へ攻め込んでいいか、旧ゲルドに確認を…といきたいところなんだが、最近何故か旧ゲルドの意識が混濁し始めている。これを機に、とオークたちを見捨てて逃げるのもいいかもしれないが、ここ数週間一緒に過ごしただけで、かなり愛着を感じてきてしまっている。それに、前と違って今は皆が俺を守れるほど強くなっている、俺が一人でいるより、こいつらに囲まれてる方が安全なのでは?と思えるほどには。

 

簡単に言えば方針は変えず、オーク達を助ける。その後はその時に考えればいいだろう。

 

 

とりあえず、配下のオークにリザードマンの住処へ攻め込むことを思念伝達で伝え、一斉に動き出す。

新たな食料にありつけるからか、王からの命令だからなのか、反論を見せず、従うオーク達。そこにはかつて食糧すらなく、弱者だった頃のあいつらはおらず、完全に捕食者の目で、負けることなど一切考えておらず、慢心と油断が透けて見える。

 

まあ、いくら愛着湧いてきたとは言え、慢心と油断で死んでしまうやつまで守る気は起きないし、死ねば死ぬほど俺に利益があるからいいんだけど。

 

 

そんなこと考えている間にも、オーク達がリザードマンに進撃を始めたらしい。食欲旺盛なオーク達のことだ、数時間でリザードマンを殲滅し、食べ尽くすだろう。

ああ、可哀想に、なんて他人事のように考えながら、思念伝達で送られてくる情報に耳を傾けていた。

 

 

 

 

 





思念伝達は恐らく最初から持ってたと予想して、です。
こっちの方がいいんじゃない?的なのあればくださいませ。


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