ドラゴンボール外伝-激戦!人造戦士- (名無しサムライ)
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ドラゴンボール外伝-激戦!人造戦士-

「馬鹿な、この俺が!?」

 

 破壊神を超える男ジレン……。

 第11宇宙最強の戦士であり、かつて孫悟空と力の大会で戦った男は現在地に伏して倒れていた。

 プライドトルーパーズの制服はボロボロに破れ、全身から血を流している。

 

「やれやれ力の大会の強者とやらもこの程度か」

 

 そんなジレンを見下ろす一つの大きな影があった。

 筋骨隆々とした黒い肌を持つその男は、無傷でジレンを見下ろしている。

 

「これで第11宇宙も下した。後は第7宇宙だけだな……」

 

 男はそう言うと宇宙船に乗り込み去っていき、後には傷ついたジレンだけが残された。

 

 

「へへっ、また腕上げたんじゃねぇか? ベジータ」

 

「フン、それは貴様も同じだろうカカロット」

 

 ブルマの用意した孤島で、悟空とベジータは修行をしていた。

 傍らにはビルスとウィスがブルマの用意したご馳走を平らげている。

 

「悟空とベジータは随分と張り切ってるねえ」

 

「ホホホ。別の宇宙の強者だけでなく、同じ宇宙のサイヤ人とも戦って刺激されているのでしょう」

 

 そんな会話をしながら二人は悟空とベジータの戦いを鑑賞する。

 悟空とベジータがサイヤ人の生き残りであるブロリーと戦ってから1ヶ月ほどが経過していた。

 

「うん? どうやらこれで終わるみたいだな」

 

 悟空とベジータの様子を見て、ビルスがそう呟いた。

 

「行くぞカカロット!これで終わりだ!ファイナル……」

 

「そうはいかねぇさ! か・め・は・め……」

 

 二人の両手に眩い光が集まっていく。

 共に必殺技を放ち勝敗を決しようとしていた。

 だがその戦いはある人物の一声で終わることになる。

 

「ちょっとアンタ達! この島を破壊するつもり!?」

 

 ブルマが大声で叫ぶと、悟空とベジータは共に技の構えを解いた。

 

「なんだよブルマ。島が壊れてもドラゴンボールで元に戻るんだからいいじゃねぇか」

 

「良くないわよ! ドラゴンボールはまだ復活してないんだから!」

 

「フン、うるさい女だ……」

 

 興が冷めたとでもいうように、悟空とベジータの戦いは終了した。

 そして悟空達が用意されていた大量の食事に手を付けようとしていたその時だった。

 

「……! こいつは……!」

 

「ベジータ、おめぇも感じたか」

 

 悟空とベジータの表情が真剣なものに変わる。

 とてつもない大きさなの気を感じていたのだ。

 

「なにやらまた厄介事のようだねウィス」

 

「そうみたいですね」

 

 破壊神であるビルスとその従者であるウィスも同じく巨大な気を感じていた。

 力の大会で戦ったジレンや少し前に戦ったブロリーにも勝るかもしれないほどのものだった。

 

 

「ここが地球か。チンケな星だ」

 

 宇宙船から降り立った男は地球の風景を見てそう呟く。

 眼前には西の都があった。

 

「さて力の大会で優勝した孫悟空とやらを探すか……うん?」

 

 宇宙船から降り立った男が活動を始めようとしたところで動きを止める。

 視線の先にはネクタイをかけた青年が立っていた。

 

「あれは確か孫悟空と同じ第7宇宙の戦士孫悟飯か。ちょうどいい」

 

 男は悟飯に声を掛ける。

 

「貴様、孫悟飯だな?」

 

「そうだ。お前は何者だ?」

 

 悟飯は男をじっと見据えながら男の声に答える。

 男が放つ凄まじい気に悟飯は圧倒されていた。

 

(これだけの大きな気を放つなんて……一体何者なんだ)

 

「俺の名はイナフ。第12宇宙の戦士だ」

 

「第12宇宙だって?」

 

 悟飯は話を聞いて驚いた。

 別の宇宙へ移動するには神々だけが持つ特殊な宇宙船が必要なはずだが……。

 

「その第12宇宙の戦士が一体何をしに地球に?」

 

「以前開かれた力の大会で宇宙最強の戦士を決めていただろう? だが俺がいないのにそんなものを決められては困るのでな」

 

(そうか……。父さんと戦うために来たのか)

 

 第12宇宙の戦士イナフの話を聞いて目的を察した悟飯。

 

「それで孫悟空はどこにいる?」

 

「それを聞いてどうするつもりだ?」

 

「しれたこと。奴を倒してこの俺こそが全宇宙一の戦士だと証明するまでだ。このようにな!」

 

 イナフは突如として片腕から気弾を発し、ビルを破壊しようとする。

 

「なっ!?」

 

 だが悟飯が既の所で気弾を弾き飛ばし、被害はなくなるのであった。

 

「ほう小手調べとはいえ俺の攻撃を弾き飛ばすとはな。ウォームアップにはなりそうだ」

 

「お前が戦いたいのは勝手だがこの場所で戦うのはまずい。ついてこい」

 

「随分とお優しいことだ。いいだろう」

 

 戦いを始めようと構えたイナフに悟飯は場所を変えることを提案し、イナフもそれに従った。

 

 

「ムムム、これはいかんぞ……」

 

 一方その頃、界王神では別の界王神から連絡を受けた老界王神が頭を抱えていた。

 

「ご先祖様、一体何が?」

 

「うむ。悟空を狙って第12宇宙のイナフという戦士が地球を訪れとるらしい」

 

「なんだ。その程度なら悟空さんがなんとかしてくれるでしょう」

 

「それがあのジレンを倒した男だとしてもか?」

 

「えっ!?」

 

 老界王神の話を聞き界王神シンは驚愕する。

 あのジレンを倒す戦士が来ているとは……。

 

「ジレンだけじゃない。第6宇宙のヒットなどもやつの餌食にあったそうじゃ」

 

「そんな……。何故そんな事に」

 

「どうやら第12宇宙の科学者が造った人造生命体が暴走したようじゃのう」

 

「今すぐ悟空さんに知らせましょう! 北の界王のところへいってきます! キビト!」

 

 シンはキビトを呼び寄せると北の界王の星へ瞬間移動する。

 

 

『悟空~、聞こえるかー?』

 

 突然現れた大きな気の元へ向かう悟空のもとに界王から通信が来る。

 

「なんだ界王様か。どうしたんだ?」

 

『お前さん、今地球に現れた大きな気を追っとるんじゃろ?』

 

「よくわかったな界王様」

 

『そいつの正体について界王神様からお前さんに知らせたい事があるらしいぞ』

 

 そう言うと通信の相手がシンに変わる。

 

『悟空さん聞いてください。奴の正体は第12宇宙の戦士イナフです』

 

「第12宇宙だって!?」

 

『はい。そこで作られた人造生命体だそうです。既にジレンやヒットと言った他の宇宙の強者も餌食になっています』

 

「ジレンやヒットがやられたんか!? そいつかなり強いみてぇだな」

 

『いざというときはポタラを持っていきます。気をつけてください』

 

 そう言うと界王神との通信は途切れた。

 

 

「……っちゅうわけだ。めちゃくちゃ強いらしいぞ」

 

「なるほどな」

 

 悟空がシンから聞いた話をベジータに話す。

 

「とんでもなくやべえやつだってのにオラワクワクしたきたぞ」

 

「フン、単純な奴め。だがそれでこそサイヤ人だ」

 

 ベジータはそう言ってニヤリと笑った。

 そして二人はイナフの元へ全速力で向かう。

 

 

「ハァハァ……、くそっなんて奴だ」

 

 一方その頃西の都から遠く離れた荒野では悟飯がイナフと戦っていた。

 だが潜在能力を全て開放した悟飯であっても彼の敵ではなく、既にボロボロの状態であった。

 

「いい肩慣らしにはなったぞ孫悟飯。ではさらばだ、エッジスマッシュ!」

 

 鋭く尖った閃光が悟飯の体を貫こうと迫る。

 だがその閃光は悟飯を貫く前に弾き飛ばされた。

 

「大丈夫か! 悟飯!」

 

 閃光を弾き飛ばしたのは悟空のかめはめ波だった。

 

「父さん! それにベジータさんも!」

 

「後は俺達がやる。お前は下がっていろ」

 

 傷ついた悟飯を後方に下がらせると悟空とベジータはイナフの前に立つ。

 二人の姿を見たイナフは嬉しそうに笑った。

 

「ふふふ、会いたかったぞ孫悟空。そしてベジータ」

 

「おめえ何が目的だ」

 

「知れたこと。貴様達を倒し俺が全宇宙一の男だと証明する。そして俺の手による全宇宙の支配が始まるのだ!」

 

「ふん、くだらんことを」

 

 イナフの目的を聞きベジータはバッサリとそう切り捨てる。

 

「貴様らには俺の野望の礎となってもらう! 死ね!」

 

 襲いかかるイナフを相手に、悟空とベジータはいきなり超サイヤ人ブルーに変身する。

 そして三人の戦いが始まった。

 

 

「ふははは! どうした! 二人がかりでその程度か!?」

 

「くそっ、こいつやっぱつええ!」

 

「確かにこいつならばジレンをも超えるかもしれん……」

 

 二人がかりで戦う悟空とベジータだが、徐々にイナフに追い詰められていく。

 イナフの打撃を受け傷ついていく悟空とベジータ。

 だがそこに一筋の光が割って入る。

 

「むっ!?」

 

 光の先をイナフが見るとそこにはピッコロが立っていた。

 

「なるほど、こいつがイナフか。とんでもねえ化物だ」

 

「ピッコロ!」

 

「孫! ベジータ! 仙豆だ、食え!」

 

 ピッコロは悟空とベジータに仙豆を投げ渡す。

 

「なんだと? 減っていたはずの奴のエネルギーが回復した……!?」

 

「わりぃ、助かったぞピッコロ」

 

「フン。後、こいつは海王神様からの預かりものだ。使うかどうかはお前らに任せる」

 

 そう言うとピッコロはポタラを二人に渡す。

 

「ポタラじゃねえか」

 

「どうやらお前達が合体でもしない限り、奴は倒せないだろうということらしい」

 

「チッ、余計なお世話だ……!」

 

 合体嫌いのベジータはポタラを手に舌打ちをする。

 

「けどポタラを使わねえと確かにやべえ」

 

「合体は二度とゴメンだといったはずだカカロット」

 

「このままじゃあいつが地球を破壊し尽くして、ブルマやトランクスも死んじまうぞ! それいいのかベジータ!」

 

「チッ、さっさとよこせ!」

 

「サンキュー、ベジータ!」

 

 悟空とベジータがポタラを身につけると、二人は引き寄せられるように衝突し光りに包まれる。

 そしてそこには二人が合体した究極の戦士……ベジットが立っていた。

 

「へっ、相変わらずすげえ気だ。俺は悟飯を助ける。後は頼んだぞ」

 

「ああ、任せときな」

 

 悟飯の元へ向かうピッコロを見送ると、ベジットはイナフに向け構える。

 

「ほう合体とはな。貴様、名はなんという?」

 

「ベジット。そして、こいつがベジットブルーだ!」

 

 そう言うとベジットは超サイヤ人ブルーに変身する。

 ブルーベジットとイナフ……、今ここに究極のバトルが始まろうとしていた。

 

 

「無事か、悟飯?」

 

「ピッコロさん!」

 

 仙豆を与えられた悟飯はパワーを取り戻す。

 

「手酷くやられたようだな」

 

「ええ、奴の強さはこれまでの敵と次元が違います」

 

 ベジットとイナフの戦いを見て、悟飯はそう漏らす。

 

「あんな奴と互角以上に戦えるなんてやはり父さん達はすごいです」

 

「そうだな」

 

 

「この俺が押されているだと……!?」

 

「どうした? もっと本気でやって欲しいな」

 

 イナフの攻撃を全て軽々と受け止め、ベジットは的確に攻撃を当てていく。

 その一撃一撃がイナフに相当なダメージを与え、イナフはボロボロになっていた。

 

「おのれぇ……! ならばこいつで片付けてやる! ハイパーエッジスマッシュ!」

 

 極太の気弾の塊がベジットに向かって放たれる、

 だがベジットはそれを軽々と片手で弾き飛ばした。

 

「なっ!?」

 

「どうやらもう終わりなようだな。こいつでトドメだ。ファイナルかめはめ……」

 

 トドメを刺そうと両手を構えるベジット。

 そして最強のファイナルかめはめ波が放たれようとしたその時だった。

 

「なっ……!?」

 

「いっ……!?」

 

 なんとポタラのタイムリミットが過ぎて、合体が解けてしまったのだ!

 

「フハハハ! 驚かせてきたようだが、もう終わりのようだな! カタをつけてやる!」

 

 合体の解けた悟空とベジータを散々に痛めつけていくイナフ。

 もう終わりかと誰もが思ったその時、悟空の体が銀色に光輝く。

 

「あれは……身勝手の極意!」

 

 悟空の姿を見て、ベジータはそう漏らす。

 かつて力の大会で一度だけ悟空が変身した身勝手の極意……その変身を悟空は再び成し遂げたのだ。

 

 

 それからの勝負は一方的だった。

 イナフの攻撃はことごとく悟空に避けられ、逆に悟空の攻撃の一発一発がイナフにダメージを与えていく。

 どんどんとボロボロになるイナフは気を減らしていた。

 

「かめはめ波!」

 

「ぐわああああああああああ!ち、ちくしょ……お……ぉぉぉ!」

 

 そして悟空のかめはめ波でイナフは完全に消滅するのであった。

 

 

「合体に頼らなくてもいいようにもっともっと鍛えねえとな!」

 

「当然だ! 俺達サイヤ人に限界など無い!」

 

 イナフを倒して数日後、悟空達は再び修行に明け暮れていた。

 イナフに破壊された宇宙はナメック星のドラゴンボールによって元の状態に戻されていた。

 傷ついた戦士達も回復し、再び地球と宇宙に平和が訪れる。

 悟空達がいる限りその平和が破られることはないだろう……。

 



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