美咲ちゃんがヒロインの二次創作もっと流行れ (ぷーある)
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可愛いだろお前だからもっと流行れ

 

 

 

 

 

 

 

若いうちは勉強を頑張りなさい。

若いうちに色々な事に挑戦しなさい。

 

大人は口を揃えて皆そう言う。実際先人である大人が語る事は正しくて今のうちに勉強をすれば将来職に就く時に有利になるだろうし出来ることも増える。

色々な事をする事で生き甲斐となる趣味を見付けれたり様々な出会いがあるかも知れない。

 

きっと正しいことだ。何かと選択を強いられる高校生という時期にそうやって勉強をしたり何かにチャレンジするという行為は必ず自分の力になったり思い出になったりして無駄だなんて事は殆どない。

 

 

「っておい、舞人聞いてるのか?」

「んあ?悪い、ボーッとしてた」

 

 

ちゃんと聞いとけよなー、と軽く俺に肩パンしてくる友達に悪い悪いと謝っておく。まぁどうせ俺達男子高校生の会話の内容なんてしょうもない事ばかりだ。

チャラい見た目をしているのに喧嘩はからっきしで気が弱いこいつは皆からヤンキーの可愛いバージョンという事でヤンチーの愛称で呼ばれている。気さくな奴で俺みたいな奴にも普通に接してくれる良い奴だ。

 

「昨日食ったたこ焼きにタコ入ってなかった話だろ?」

「全然違うわ。彼女にするならどんな奴がいいかって話だよ」

「あー。そんな感じの話してたな」

 

ほれみろ。しょーもない話だった。まさに思春期の男子高校生の会話のお手本みたいな内容だ。興味がないわけじゃない。きっと何やかんやで気の合う可愛い彼女でも出来れば何やかんやで楽しい毎日を送れるんじゃないかって思う。

けど俺はそんな気分じゃない。今はこうして何となく生きているだけで満足している。俺はもう走るのは疲れた。そういう意味ではこうやって何も考えないでただ無駄に毎日を浪費するっていうのは何とも新鮮ではある。

 

 

「何か余裕って感じだな。やっぱり彼女がいた事ある奴の余裕なのか?」

「別にそんなんじゃねぇよ。ただ今はそんな気分じゃないってだけだ」

「つってもお前がモテてたのは中学までの話だもんな。今じゃお前って何考えてるか分かんねぇって敬遠されてるし」

「お前と今休んでるジャンボがいなけりゃ間違いなく俺はボッチだった」

「それドヤ顔するとこじゃねぇからな?」

 

 

彼女がいたって言っても昔の話でどんな奴と付き合っても余り長続きしなかった。なんというかその当時は自分の事で手一杯で彼女の事に気を回す余裕なんてなかった。付き合ってたのは何となくモテていたのに優越感に浸っていたからだと思う。俺、木ノ原舞人は自惚れでなければある業界では割と有名人だったりする。まぁ今はもう全く関係ない話なのだが。

現に今は全くモテない。ある種の無気力状態である俺は当然の如く周りからは取っ付き難いと思われているらしい。まぁ俺自身その事は全く気にしていない。けどまぁこんな俺にも絡んでくれるヤンチーとジャンボには感謝している、何やかんやで俺の周りは賑やかで退屈はしない。

 

 

「彼女欲しいなぁ」

「それ昨日も聞いたわ」

「うっせぇ。年齢=彼女いない歴の俺をおちょくってんのか?」

「おちょくっとらんわ。てか初めて聞いたわその情報」

 

 

チャラい見た目をして彼女が出来たことが無いらしい。やはりコイツは何処までもヤンキーにはなれないヤンチーだったということだ。だが彼女が欲しいというその気持ちは分からなくはない。男子高校生なら殆ど皆そう思っているのでは無いだろうか。

ふわぁ、と欠伸をしながら窓の外を見る。ザァザァと降り注ぐ雨を見ながら頬杖をつく。

 

 

ずっと走り続けていた頃は何かに向かって俺は一直線に走っていた。遊んだりデートしたり、普通の中学生の様な事は全く出来なかったけど間違いなくあの頃は充実していて毎日が色鮮やかだった。雨の日でさえ俺の心は晴穏やかでいつも快晴。間違いなく、間違いなくあの頃の俺は人生を最大限楽しんでいた。

 

けど1度止まってしまった俺の足はもう前へと進んではくれない。次々と俺を追い越していく人達をただ見ているだけ。目標を失って近く気が付いた。俺はなんて空っぽなんだろうかって。

目標を失った俺には何も残らなかった。今もこうしてただ何事もなく何の気なしに時を浪費している。それが悪いとは思わない、それも一種の人生だと言える。けど何処か自分の見ている世界は昔より色褪せて見えていた。

 

 

 

 

今日は雨。

俺の心の中はあの頃からずっと曇のち雨のままだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

放課後、遅い時間に俺は1人で靴箱に向かっていた。本当ならHRが終われば秒で帰るのだが帰宅部である俺はあろう事か先生に呼び出され雑用を手伝わされた。暇なんだろ、手伝えという先生に文句も言えず終わったら既にこんな時間だ。頼まれたら断れきれないのは俺の昔からの悪い所だ。別に気が弱いとかそういうのではない。何というか俺も大概そういうお人好しな部分はさっさと訂正してしまいたいと思ってはいるのだが一向に直らない。まぁ俺の事はどうだっていい。

 

ふむ、と考える。

ヤンチーはあれでバレー部だし今頃体育館で汗を流している頃ではないだろうか。そんなどうでもいい事を考えながら歩いていると靴箱が見えてきた。

 

 

「ホントに大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。ホントに置き傘してあるから」

「ならいいけど……ありがとねっ!」

 

 

ふむ。どうやら先客がいるらしい。だが俺には関係がない事なので聞いてないフリをして自分の靴箱へと歩いていく。

傘を貸してあげたらしい女の子は貸して上げた奴の姿が見えなくなるとふぅー、と長い溜息を付いた。面倒な事になる前にさっさと帰ってしまおう。早足気味に靴箱に駆け寄るが既に遅かった。

 

 

「貸しちゃったなぁ……走ればなんとか……」

「…………」

 

 

どうやらこの女の子は置き傘もしていないのに自分の傘を友達に貸してしまったらしい。何となく分かる、気を使うというか俺も同じ状況なら同じ事をしていたと思う。何というか困ってる人は見てられないのだ。多分この女の子もそうなのだろう。

何となく似ているな、なんて思いながら俺はその女の子に向かって歩いていく。知ってしまった以上黙って帰れない。

 

 

「なぁ」

「えっ?」

 

 

突然喋りかけたからか少し驚いて振り返った女の子に向かって自分の持っていた傘を投げる。なんて事ないビニール傘だが傘なんて雨をしのげればなんだって同じだ。それを困惑しながらもしっかりと受け止めた女の子にじゃあ、とヒラヒラ手を振りながら歩いていく。

 

 

「ちょ、ちょっとっ!」

「傘貸しちまったんだろ?俺は家近いし使ってくれ。ほんと使ってくれ、気を使う必要とかマジでないから。というかそれやるわ、返さなくていいから」

「あ、えっと……」

 

 

全然関わりがないのにこんな事を思うのは失礼なのかも知れないがきっと俺と彼女は似ているから分かる。彼女もきっと何となく気を使ってしまったに違いない。分かるよその気持ちだからほんと気にすんな、という意を込めて捲し立てるように俺はそう言った。当然の如く困惑している彼女を放ったらかしにして俺は走って靴箱を出る。相合傘だなんて提案する度胸はないしそんなの出来るはずも無いのでする訳がない。だからこれが最善なのだ。

 

 

ずぶ濡れになりながらほんとこの性格損してるよなぁ、と自己嫌悪しながら俺は走って家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、風邪を引くこともなくいつも通り登校した。昨日の雨が嘘のように晴れた太陽の光を浴びながら俺は机に突っ伏す。何故俺は窓際の席になってしまったのかと今更ながら後悔せざるおえない。

 

「にしても昨日の雨やばかったなぁ。俺部活終わってそのまま走って帰ったわ。めっちゃ意識高いな俺」

「奇遇だな。俺も走って帰ったぞ」

「あ?何でだよ、お前傘持ってきてただろ?」

「気の所為だ」

「僕は家でマック食べてた頃かな?」

「お前には聞いてねぇよジャンボ。てか想像通りだわ、キャラと見た目がまんまなのはお前の魅力だがほんと聞いてねぇわデブ」

「デブなのを寧ろ誇りに思ってる。弁当忘れたからってマックの単語に過剰に反応しないでよ。弱く見えるぞ」

「いや、何がだよ」

 

 

しゅっしゅ、さっさっ、とシャドーボクシングをするジャンボとヤンチーをほっといて持参した焼きそばパンを食べる。

今日も賑やかだなぁ、と太陽の光に焼かれながら脱力気味に焼きそばパンを頬張る。

 

あいたっ、あごめん。

いや謝んのかよ仲いいなお前ら。とは言わない。キャラの濃いコイツらの相手をマトモにしていたら弁当を食べる時間なんてあっという間になくなってしまう。もう一度焼きそばパンを食べようとすると、トントンっと肩を叩かれた。

誰だと振り向けばいたのは同じクラスの女子。はて、俺に用事とは珍しい。基本ヤンチーとジャンボとしか絡みがないと分かっている2人が有り得ないモノを見るような目で見てくる。おい、お前ら後で覚えとけよ。

 

 

「木ノ原くん、奥沢さんが呼んでるよ」

「奥沢?誰だそれ?」

「ほら。今扉の外にいる子だよ」

 

 

聞き覚えのない名前に俺が首を傾げるとその肩を叩いてきた女子は扉の外を指差す。

そこにいたのは俺の目から見ても可愛いと言っても差し支えのない黒髪の女子。というか昨日俺が強引に傘を渡した女の子だった。

そうか、奥沢って名前だったのかと1人納得しているとジャンボとヤンチーが俺をまるで親の仇を見るような目で中指を立てながら此方を見ていた。

 

ていうかホント仲良いなお前ら。

取り敢えず俺も中指を立て返して席を立って廊下へと移動する。

 

律儀なもんで待ってくれていた奥沢の元へ行く。

「ごめん。お弁当食べてる途中だった?」

「大丈夫だ、パンだけだし食べ終わるのにそんなに時間は要らないしな」

 

なら良かった、と胸を撫で下ろす奥沢。本当に律儀な奴だ、お礼は別に要らないって言ったのに。だからそれをしっかりと本人に伝えてやる。

 

「別にお礼とか要らないぞ」

「けどやっぱりこれだけは言わないとって思ったから。ありがとう」

 

 

どくん、と心臓が跳ねる。優しく微笑んだ彼女笑みを見た瞬間全身に血が全身に回ったかのように身体が熱くなる。重い、何もやる気になれなかった俺が。今まで死んでいたのも同然な俺が生き返ったかのような、空っぽの俺が何かで満たされていくそんな感覚。今までにない感覚に戸惑っているとそれじゃ、と去っていく奥沢を俺はただ黙って見送るしか出来なかった。

 

席に戻ると当然のように俺はジャンボとヤンチーの質問攻めにあった。

 

「どういうことか説明して貰おうか。裏切り者」

「そうだ。裏切り者の君には説明する義務がある」「別に……昨日傘貸しただけだ。それのお礼言われただけ」

 

しきりに本当か?と疑ってくる2人にうんざりしながら俺はさっきの不思議な感覚について考えていた。今はあの時の感覚はなく正しくいつも通り空っぽの俺だ。けどあの時の感覚は鮮明に思い出せる。

 

「お前……さては奥沢に惚れたな?」

「嘘だろお前。ちょろ過ぎかよ。いや前から狙ってたとか?」

「いや……狙ってはない。惚れたのかと言われればかも知れないが」

 

 

目標を失って。空っぽになって。

またあの時のように俺は……

その日から俺は奥沢と呼ばれる女子に興味を持つようになった。

 

 

 

 



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こころも可愛いなそっちも流行れ

お前タイトル適当だろいい加減にしろっ!


 

あれから俺は奥沢という人間がどういう人物なのかストーカーにならない範囲で調べた。何故人1人の事を調べるのだけで人間というのはこうも騒ぎたてるのか。

奥沢が俺の教室に来た時もそうだ、なんの関わりもない女子に「奥沢さんと付き合ってるの?」って聞かれる始末だ。勿論しっかりと否定しておいた。傘を貸しただけで殆ど初対面だと言ったら何故か余計に騒がしくなったのはご愛嬌だ。

 

奥沢、フルネームは奥沢美咲。隣のクラスでテニス部に所属している。

友好関係は控え目だがしっかりと友達もいて陰ながら男子の人気もあるらしい。そりゃ可愛かったんだから当たり前だろ、とは思ったが何故陰ながらなのか。それには理由があった。

 

ここ花咲川にはある有名な女生徒がいる。その女生徒は「花咲川の異空間」と呼ばれ煙たがられているらしい。別にその女の子自体は悪い子ではないらしいのだが人間は理解出来ないモノを拒む、きっとその異空間と呼ばれる女の子は独特な感性を持っているに違いない。

そして奥沢はその異空間と仲が良く同じように少し避けられるようになったそうだ。まぁ元から仲が良かった人達はそうでなかったようで避けているのは噂しか知らず奥沢と喋った事も無いような人間だけらしいし特に気にするような事でもないだろうに。

 

 

 

「んでだ。お前奥沢をどうやって落とすんだよ?」

「そうだな。取り敢えずデートに誘って連絡先聞いてこい。間違えてもデート先はホテルにするなよ?」

「何故俺が奥沢にアプローチをかけることが決定しているんだ」

 

 

あれから何日か経った。以前として動きを見せない俺に2人はそんな事を言ってきた。何故どいつもこいつも恋愛事になるとこうも目の色が変わるのだろうか。こうなれば止める方法なんてなく面倒臭い事この上ない。

 

 

「さっさと告ってフラれてくれ。俺の為に」

「そうだぞ。フラれてくれ、いやフラれろ。俺たちの為に」

「いや何でだよ」

 

 

コイツら他人事だと思って好き勝手言いやがって。

 

 

「確かにちょっとドキッとしたが惚れたとは限らんぞ。俺には良くわからんが。取り敢えず今すぐにどうこうしようとは思っていない」

「なんだ。いつもにもまして真面目じゃないか」

「そうだな。余計に茶化したくなるよ」

 

 

ほんとお前らいい性格してるよ。

今思えば確かに俺は奥沢の微笑みにドキッとしてあの頃のように命を吹き返した、そんな感覚はあった。けれども今奥沢の事が好きか?と言われればそうだとは言い切れない。それは俺が本当に誰かを好きになって愛したこともないから分からないのもあるがやっぱり奥沢に感じたコレはただの一目惚れの様なモノじゃないように思える。俺もやっと最近になって自分の感情を整理してそう思ったのだ、何より自分の事は自分が良く理解している。

 

 

何でだよー、誘えよー、としきりにニヤニヤしながら言ってくるヤンチーとジャンボ。そろそろうざくなって来たな。無視しようと決めた時トントン、と肩を叩かれた。何となく既視感があるそれに振り向くと何時ぞやの女子生徒がニコニコしながらかコチラを見ていた。

何故そんなにニコニコしているのか、そんな事を疑問に思ったが直ぐに謎は解消された。

 

「木ノ原くん、奥沢さんが呼んでるよっ!」

「……なるほど。分かった」

 

ニコニコしながら指差す方を見るとやっぱりそこには奥沢がいた。しかし何処かバツが悪そうな表情をしている。何かあったのだろうか。

行ってくる、と一言2人に告げて奥沢の元に向かう。振り返りはしまい、絶対にムカつく顔でニヤニヤしているだろうからな。

 

廊下にいる奥沢の元へ行くと居心地が悪そうにしていて俺が来たのを見ると焦った様に目を逸らされた。

その対応は少し傷付くが何となく察した。さっきからヒソヒソと俺たちを見ている俺のクラスメイト達が気になるんだろう。そりゃ気のない男とそういう噂を立てられればたまったもんじゃない。逆の立場だったら俺だって嫌だし。

 

「ここじゃ視線がキツイ、移動しながらでいいか?」

「あー……うん、助かる」

 

取り敢えず宛もなく逃げるように2人で歩き出した。隣には奥沢がいる、やっぱり近くで見ると良くわかるがこの花咲川でも十分可愛い部類に入るだろう。だが少し緊張するだけでドキドキはしない。やはり一目惚れではないのだろうと己の中で結論を出す。

 

「えっと、いきなりごめん。けど何も聞かないで付いてきて。文句は後で聞くし謝るから、ほんっとにごめん」

「そこまで言われると逆に怖いんだけど。俺何処に連れてかれるんだ……」

 

そう本当に申し訳なさそうに言う奥沢。

逆にそこまで言われると怖いんだが。そんな恐怖心を抱いて何処に連れていかれるのかと思えば着いたのは1-C。俺のクラス1-Dのお隣のクラスではないか。

ふむ、わからん。ていうか奥沢さんや。何で自分のクラスなのにそんなに恐る恐る扉開けてんの?BOWでもいんの?

 

 

「こころ、連れてきたよ」

「待っていたわっ!」

「お、おう。初めまして?」

 

 

扉を開けた瞬間、びゅんっと空気を切り裂いたかのように突然目の前に綺麗な長い金髪を宙に舞わせながら女の子はそう言った。そんな女の子にめんをくらってると奥沢が

 

「こころ、ここじゃあれだし屋上に行こう」

「そうねっ!今日はいい天気だしそれがいいわっ!」

 

まだびゅん、と嵐が去っていくかのようにその女の子は廊下を走っていく。いや廊下は歩こうぜ。と何となく場違いな事を思っていると俺達が付いてきてないのに気が付いて金髪の女の子が戻ってくる。

 

「ほらっ、時間が無いわっ!早く行きましょっ!」

「ちょ、こころ待ってっ!」

 

奥沢が制止の言葉をかけるがこころと呼ばれた女の子は止まらない。奥沢と俺の手を握ったまま勢いよく駆け出す。そんなトンデモ展開に俺は冷静にあぁ、この子が弦巻こころなんだな。とっても明るくて太陽みたいな子だなとそんな事を思いながら手を引かれて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方が舞人ねっ!」

「まぁ、そうだけど。そういう君は弦巻こころだろ?」

「まぁっ!私のことを知っているのね、嬉しいわっ!」

「うん、分かった。分かったけどさ……近くない?」

「そうかしら?お話する時は近い方が絶対にいいもの」

 

 

いやそれはごもっともだけども。距離が異様に近い。手を伸ばせば抱き締めれるぐらい。いい匂いするしホントやめて欲しい、ほんとやめて欲しい(大事なことなので)

 

 

「けど俺は男で弦巻は女の子だ」

「???それは知っているわ、それに舞人にはそんな他人行儀な呼び方じゃなくてこころって名前で呼んで欲しいわ」

 

 

こてん、と首を傾げる弦巻。これは素でやっているのか?助けを求めて奥沢の方を見ると無言で頷かれた。あぁ、なるほど。こりゃ異空間と言われるだけあるな。

 

「ほらこころ。木ノ原も困ってるから少しコッチに来てよ」

「なら残念だけど仕方ないわね」

 

やっと少し離れてくれた。少し気に入らなかったのか残念そうな顔をしていたがあっという間にぱぁ、と顔が明るくなる。あの陽が昇るの早くないですか?夜の時間1秒もなかったよ。

 

 

「舞人に聞きたい事があるの」

「俺に?また何で」

「美咲があな、むぐっ」

 

 

凄まじいスピードで奥沢がこころの口を塞いだ。奥沢は心無しが顔を赤くして焦ってるようにも見える。ふむ、やっぱりよく分からん。

 

 

「こころまって。お願いまって。私もそんな気はしてたけどさ、けどやっぱり待って。それはダメ」

「何故なの?美咲が」

「あーあーあー!」

 

どんだけ待って欲しいんだ、とは突っ込まない。きっとここで俺が何か言っても悪い方向にしかいかない気がしたからだ。

 

「ホントに大丈夫だからっ!ほんとのほんとに大丈夫だからっ!」

「美咲がそこまで言うなら本当にそうなのね。それにさっきまでの美咲より今とってもいい顔をしてるものっ!」

「なっ!?」

 

 

何か俺置いてけぼりじゃね?

 

 

「舞人、私行くわねっ!また会いましょ」

 

 

そして嵐のように去っていく。

ふむ……やっぱり意味が分からん。俺は漫才でも見せられていたのか?ここ笑うところ?

 

「なぁ、俺は漫才でも見せられてたのか?」

「なわけないじゃん……あれがこころの素だよ」

 

なるほど。だからそんなに疲れてる顔してたんですね。そりゃ弦巻みたいな奴とずっと一緒にいたら疲れるわ。良い奴なんだろうけど何か色々とぶっちぎってるもん。

俺は奥沢が座っている場所から人一人分ぐらいの感覚を開けて座る。太陽が居なくなってしまったが外の太陽は元気なようで今日はとてもいい天気だ。

無言の時間が続く。だがこの静けさは寧ろ心地よい。

 

 

「木ノ原ってさ、中学の時バドミントンしてたよね?」

 

 

まるで頭にトンカチを叩きつけられたような衝撃だった。

何故それを?いやまぁ確かにちょくちょく新聞にもテレビにも出てたし知っている人は知っているのだろう。けど何となく俺は奥沢には知って欲しくないと思ってしまった。理由は分からない。何となく、そう思ってしまった。

 

「……あぁ、まぁ。今はもうやってないけど」

「そう、なんだ。ごめん」

 

それだけで察したのか奥沢は俺に謝る。いやそうじゃない、奥沢は何も悪くない。

 

「いや奥沢は何も悪くねぇよ。ネチネチと過去の事を引き摺ってる俺の方がよっぽど悪いさ。ほんとダサいよ」

 

そうさ。もう終わっちまった事なのにいつまでも俺は過去を引き摺ってる。過去って言っちまうには昔の事じゃないけれども俺はこうして今も目を逸らし続けている。そして今みたいに少しでも見てしまうと動揺して勝手に落ち込んじまう。本当にダサいったらありゃしない。

 

「そうかな。私はそれが普通だと思うけど」

「こんなにも惨めでダサいのがか?それは冗談キツイぞ」

「私はさ、もっと木ノ原って凄い人だと思ってたんだよね。けどなんと言うか……やっぱり普通だよ」

 

 

そうやってくすり、と笑う奥沢にドキッとする。不意打ち良くない。何だかそれが面白くなく不貞腐れていると奥沢が言葉を紡いだ。

 

 

「ごめんごめん。気を悪くしたのなら謝る、けどほんとに悪い意味じゃないから」

「分かんねぇよ、俺には」

「なんというかさ……あの時の木ノ原って凄くて周りと違うなって思ってた。だって常に何に向かって、目標に向かって一直線に頑張ってたでしょ?」

「おま、何でそれを」

 

 

目に見えて動揺する俺に奥沢は優しく語り掛けてくる。奥沢はテニスの試合の会場がわからないでさ迷っていた時に中学の頃の俺、ラケットバッグを背負った俺を見付けてこっそり後を付けたらしい。会場が分からないのなら同行者について行くのは確かな手だ。確かにバドミントンとテニスのラケットバッグは種類によってはアホみたいに似ているから初心者の人は良く勘違いしやすい。

それで見事に間違った奥沢はバドミントンの試合会場、そして俺の試合を見たのだと。

 

 

「分かるよ。それぐらいキラキラしてたから、けど何となく自分と似てるなーって思って。けどあんなに凄い人が私と何処と似てるんだってあの時は笑い飛ばしてたけど今やっと分かったよ、やっぱりあの時のは勘違いじゃなかったんだ」

「…………」

「挫折したり悩んだり立ち止まったり。そんなの当たり前だよ、それが普通でそれを軽々しく乗り越えれる人は皆特別なんだ。きっとそういうのはこころみたいな人、なんだと思う。私たち普通の人は1人じゃ無理だから誰かに支えてもらってやっとなの」

 

 

確かに、弦巻なら軽く乗り越えていきそうだ。何故かそんな姿が簡単に想像出来た。俺は自分の事が特別だと思った事なんて1度もない。バドミントンだって努力してきたその結果だと胸を張って言える。あぁ、けど。

 

「そうか。俺のこれは普通だったのか」

「そう。そうやって悩んで自己嫌悪出来るだけマシだよ、そうやって本気で打ち込める事があったのは凄い事だと思う」

「けど、俺どうすればいいか分からねぇよ。ずっと前だけ見て来てひたすらに目標に向かって走ってきた。それが突然なくなっちまったんだ。それしか知らない俺はどうすりゃいいんだ」

 

 

そう、俺はそれしかしらない。そうやって前だけ見て走ってきた俺は1度足を止めて目標を見失った俺はもうどうやって前に進み出せばいいのかまるで分からない。こうやって同い年の女の子に聞くなんて情けなくてどうかしていると我ながら思うけれど、それでも俺は前に進みたい。また俺はあの頃のように、色褪せた世界じゃなくて毎日が充実したあの世界に戻りたい。

 

 

「それは簡単だよ。また次の目標を見つければいいの」

「次の、目標?」

「そう。将来はあの職業になるとかそんな適当なのでいいんだよ、その目標に向かって全力で頑張れることを探せばいいの。大丈夫、だって私にだって見付けられたから」

 

 

そうやって微笑む奥沢の笑みはとても綺麗でキラキラしている。

あぁそうか。そうだったのか。それを聞いた瞬間すとん、と素直に言葉が心に落ちてくるのを感じた。何て簡単な事だったんだろう。もう落ち込んで意気消沈する時間は終わった、あとは目標を見つけて走り出すだけだったんだ。

 

 

「なんか、悪いな。相談事みたいなの乗ってもらって」

「いいのいいの。なんて言うかさ、分かるでしょ?」

 

 

そうやってほんの少し上目遣いで語り掛けてくる奥沢。その何かを期待するような目。分かる、分かるさ。俺達は何処と無く似ている。だからほっとけなかった、何より同じように立ち止まっている俺に同族嫌悪というか手を差し伸べた。

 

あぁやっぱり奥沢も似てるって思ってたのか。

何だかそれが嬉しくてつい笑ってしまう。

 

 

「あぁ。何となく分かってたよ、もう嘘ついてまで傘貸しちまったくだりからさっきの弦巻の保護者っぷりを見てもう嫌って程な」

「何それ。木ノ原こそ先生にいいように使われてるくせに」

「お前そりゃ言っちゃダメだろ」

 

 

あぁ似ているな俺達。自然に笑顔になる。

それがどうしようも嬉しくて、気が付いたら2人そろって5限の授業に遅刻してまた騒がれる事になるのを2人はまだ知らない。

 

 

 

 

 




全部書けてあるけど美咲視点を入れるか悩んでる。
入れるなら次かその次あたり、うーん。まぁいいか(適当)

次回、目標作って頑張るっつってもそれがないからウジウジしてたんじゃね?なんも解決してないじゃん。という当たり前なことに気が付いてまたウジウジする主人公をお楽しみ下さい。

ラッキーアイテムはハッピー!ラッキー!スマイル!イェーイ!
デュエルスタンバイ


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もっとだ、もっと流行れ

だからタイトル適当だろいい加減にしろっ!


 

 

 

 

 

「はぁ……結局振り出し、かぁ」

「まぁまぁ。私も一緒に探すからさ、頑張ろ?」

 

あれから事ある事に奥沢は俺の相談に乗ってくれた。あの日以降肩の荷が下りたというか俺の考えも変わった。いつまでもウジウジしてられない。奥沢のように、俺も普通の奴なりに前に進みたい。

しかし俺は気が付いた。

目標って言っても今の俺にあの頃のようにひたむきに一生懸命になれる事ってあるのか?

 

せっかく機会を貰ったっていうのに未だに俺は足踏みをしていた。

 

 

「その……なんだ。こんな頻繁に付き合ってくれてるのに成果もねぇし無理に付き合う必要もねぇぞ」

「いいのいいの。乗り掛かった船だし、それに……」

「それに?」

 

 

 

実の所は断られなくてほっとしている自分がいる。何だかんだで俺はこうやって奥沢といる時間が好きだ。元より俺は何もせず意味もなくぼーっとする事が嫌いではないし、それに奥沢は自分と似ていて親近感があるからか一緒にいて居心地が良かった。

ただ何となく奥沢とだべって、同じ景色を見て、たまには誰かの愚痴とか喋ったり、ご飯食ったり。そんな何でもないありふれた毎日を過ごすのもいいかも知れない。

けど、それでも俺は前に進みたい。

 

それに、から後の言葉が出て来ない奥沢はなんというか目が泳いでいて目を合わせてくれない。心無しか頬がほんのり赤みが指している気もする。チラッといじらしく上目遣いで俺をチラ見しては焦って目を泳がせる奥沢の変貌ぶり、というか小動物を思わせるソレに己の心臓が大きく脈打つ。

 

いやそれは反則だろうと。

 

 

「それよりもっ!何かやりたい事とかないの?そしたら割と目標って立てやすい思うんだけど」

 

 

何だか露骨に話題を逸らされた気がする。と言ってもここでそれを追求した所で気まずくなるのは分かっているので変に追求したりしないが。

 

やりたい事、やりたい事かぁ。

ぱっと思い付くのはやっぱりバドミントン。我ながら未練がましいというか情けないというか。

現状それは出来そうもないので置いとくとして他に何かないと考えた時ぱっと思い付くのは……

 

 

「えっと……何?」

「……えっ?あ、いややりたい事ってなんだろって考えたらぱっと思い付いたのが奥沢…………」

 

 

の隣りに居たい。と言おうとして思いとどまった。いや待て、まてまてまてまてちょっと待てや。

馬鹿なのか俺は。それをぱっと思い付いた自分もそうだが躊躇いもなく馬鹿みたいに正直に口にした俺は本当に馬鹿なのか。いや馬鹿だから口にしたんですね分かります。

 

これじゃまるで。

 

 

「あ、いやそうじゃなくてっ!えーっと……まぁ気にすんなや!」

「…………ぁ、う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が奥沢の事を好きみたいじゃないか。

 

 

 

 

 

 

ほれみろ奥沢が困ってる。そりゃいきなり異性にそんな事言われて平気な奴は相当モテる奴ぐらいだ。

いや確かに奥沢は学年の中でもかなり可愛いと思うし俺なんかの相談に乗ってくれたり面倒見もよく気も使える。これでモテなければ誰がモテるのか。

 

けどそれ以降、体育座りをして顔を足に埋めて縮こまられ殆ど会話のないままその日は解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ。俺の取り柄ってなんだ?」

「ないな」

「ないね」

「おい」

 

 

 

コイツらに聞いたのが間違いだったのかもしれない。あれ以来奥沢と顔を合わせると何故か目を逸らされ早足で逃げられる。

分かる、分かってるさ。馬鹿な俺でも避けられてるって分かる。

自業自得だって分かってても少しショックだ。女子に避けられるのは年頃の男にとって堪える出来事である。

 

因みにジャンボとヤンチーにそれを言ったら「さっさと爆発して地面に埋まって死ね」って言われた。

解せぬ。

 

 

「と言われてもなぁ。ゲームは微妙だし勉強はそれなりだし運動もそこそこ、うん。モブAだな」

「異議なし。押しに弱くて頼まれると断れない厄介事に巻き込まれやすいモブAだね」

「まぁ……モブってのは否定しない。けど取り敢えずお前ら1発殴らせろや」

「まぁ落ち着けや。いうてお前本当に器用貧乏じゃん?」

 

 

う、痛い所を付いてきやがる。実際俺は器用貧乏だ。やろうと思えば並以上にこなせるが所詮は波程度しかない。飽き性でどんな事も相当楽しくなければ続かないし結局の所自分には取り柄と言えるほどのものなんかない。

 

━━━結局、俺にはバドミントンしかないのか

 

考えても答えは出ずぼーっとしたまま学校が終わり流されるように先生の手伝いをする。結局、結局自分は流されたにまま生きている。悪いことではない、そういう人生もある。けど自分は一体何をしているのかと思わずにはいられない。奥沢に言われ気付かされ自分は何が変わったのか。

いや何も変わっちゃいない、前に1歩すら進んでいない。

 

 

「木ノ原は、もうバドミントンしないのか」

 

 

ふと、先生がそんな事を聞いてきた。

 

「…………」

「腐る程聞いちゃいるとは思うがお前らぐらいの年なら、やっぱり何か死に物狂いでやってる方が絶対将来良かったって思える思い出になる、それにお前」

「分かっちゃいるんすよ、結局の所ウジウジ悩んでまだ自分の中で向き合えてないんです。ほんと、情けない話っすけど」

 

 

遮るように言葉を重ねる。

分かっている。自分の事なのだから自分が良く理解している。

時間が解決してくれる、そんな風に後回しにして。結局今何も変わってないじゃないか。

 

そうか、とそれ以降その話に触れないでいてくれる先生はやっぱり先生で大人なんだなって思う。

気が付けば手伝いも終わっていつの間にか自分は学校を出ていた。それすらも気が付かない程俺は考えに耽っていたらしい。

 

 

 

 

 

あぁ本当に情けない。

けどそんな自分を自分じゃどうしようも出来なくて。

 

 

 

 

 

 

こういう時はやっぱり気分転換をすればいいのだろう。しかし生憎と友達と言える友達は殆どいないし遊びと言える遊びをしてこなかった俺には趣味とも呼べるものもなければ遊び方だって殆ど知らない。

 

けど不思議と俺はそこに足を運んでいた。

 

 

「変わんねぇな、ここは」

 

 

街の細道を通り抜けて坂を上り辿り着いたそこはバルコニーの様な小さいスペースに簡素なベンチが置かれただけの場所。

俺がまだ小さくて街を歩いている時にたまたま発見した、子供風に言えば秘密基地みたいな場所。あの頃はここから見える街の風景に息を飲み目を輝かせていた。

 

それから俺はここの景色が好きになった。ちょくちょく来るようになってその頃ぐらいからかな。バドミントンを初めて簡易ネットを持ち込んで練習何かもしたりして随分とここにはお世話になったものだ。

何気にバドミントンのコートより少し大きいぐらいなのも良かった。

 

前に来たのが随分と昔のように感じる。前に来たのは確か、まだバドミントンをしていた時だ。

手すりにもたれ掛かる。生憎と今は曇り、綺麗な街並みの風景もその美しさは半減している。

 

 

良くこうしてぼーっと景色を眺めてたっけ。

 

 

肌に感じる風も遠くで擦れ合う草木の音も俺は好きだった。何より何もしないでここでぼーっと景色を眺めていると不思議とやる気が湧いてくる。

 

変わんねぇな、俺も、ここの景色も。

 

いや俺は変わったのかも知れない。

それは前に進んだとかじゃなくて悪い方向に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの前まで俺はバドミントン命の馬鹿野郎で寝ても冷めてもバドミントン、バドミントン。テレビも録画している自分の試合とか実業団チームの試合だとか常に見ていたり、家に帰っても特性の板に壁打ちやサーブ練習をするぐらい俺の日常にはバドミントンで溢れかえっていた。

 

単純に好きだった。もちろん対人スポーツである以上勝ち負けもあったけど勝つ負けるより俺は何よりバドミントンが大好きだったんだ。

 

けどやるからには勝ちたいだろ?

だから俺は本気で日本一になるって目標を立てて練習をしていた。それは学生の中って訳じゃなく正真正銘の日本一、全日本総合という大人のプロも含めた大会で勝つ事を目標にしていたんだ。

それ相応に努力をしていて文字通り血反吐を吐いたりぶっ倒れるぐらいの練習もしたりしていたけど、それでもバドミントンが大好きだった俺は苦もなくそれをこなしていった。

 

その成果もあって全国の学生の大会で優勝して着実に実力を伸ばしていってるんだという実感もあった。

 

真っ直ぐ目標に向かって一直線に。

ただ楽しくて仕方がなくて。毎日が輝いていたのは間違いない。

あっという間に時間は過ぎて、気が付いたら俺は全日本のコートに立っていた。本当に、本当にあっという間だった。

良くテレビで見る選手が目の前にいて興奮しながらも俺はその中で戦い勝ち上がった。

 

勝って勝って勝って。

気が付けば決勝戦、身体が嘘のように軽くてショットは嘘みたいに狙い通りに飛んでいって、ネット際の駆け引きも手に取るように転がせた。

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、楽しい。楽しくてたまらない。俺はどこまでも飛んでいける。そう思った矢先だった。

 

 

 

足に違和感を感じた。最初は捻挫かと思ってアドレナリンにものを言わせて試合を続行。けど次第に違和感は大きくなり、さっき感じていた身体の軽さは嘘のように重くなり。

けど俺は諦めなかった。当たり前だ、俺は今この時の為に必死に、全身全霊全力全開でここまで駆け抜けてきたんだ。こんな簡単に終われない、終わらせはしない。

 

そんな思いとはうらはらに身体は重く言う事は聞いてくれない。どんどん離されていくスコアに焦りを覚える。いや、やれる。俺はまだ飛べるんだ。あきらめない、諦めたくない。

ここで簡単に諦めてしまったら今までの努力が全て無駄になってしまうようで。

 

頑なに諦めない俺に監督がまだお前は若いからチャンスはあると、寧ろここで大怪我をして選手生命に支障をきたした方が問題だと諭され、涙を流しながらも俺は試合を棄権した。

 

悔しかった。全力を出し切れなくて、けれどもゴールは目前で届かなかった。こんなにも悔しい事があるだろうか。

結局俺の怪我は重症で怪我のせいで治ったとしても全力で動けるのはせいぜい1時間程度、それ以上は危険だと医者に言われた。

辛いと言えば嘘になる。けど別にバドミントンが出来なくなる訳ではない。だから俺は特に気にしなかった。プレイが出来るのなら形は違えど日本一になる方法は幾らでもあるのだから。

 

だから俺は手術後必死にリハビリをして、またコートに舞い戻ってきた。

 

また俺は飛べる、どこまでもいけるんだ。

そう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳裏に浮かぶのは足に違和感を感じたあの屈辱の試合。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足が動かなかった。

 

 

 

 

 

 

まるで床に縫い付けられてしまったかのように動かない足に俺は漠然としたまま立ち尽くす。

 

何故動かないんだ、なんでなんでなんでっ!

 

 

何度試してみても駄目で落ちていくシャトルをひたすら眺めるだけ。

俺の足はそれ以降、また怪我をするのではないかという恐怖に縛られ動いてはくれない。

 

 

 

ずっと俺はあの頃から足を止めたままだ。

 

 

 

「ほんと、情けねぇなぁ」

 

自重するようにポツリと呟く。

もうあの頃のように日本一になるという目標に熱も感じられず。大好きなバドミントンは恐怖で足がすくんでしまって出来ない。

大事なモノ全てが抜け落ちてしまったかのようで、今の俺は正しく空っぽだ。

 

あぁ、目標が……頑張る理由が欲しい。今を生きて熱を感じていたい。

 

 

 

「舞人っ!また辛そうな顔をしているわ、けど大丈夫っ!私が貴方を笑顔にしてあげるっ!」

 

 

 

そんな時、曇り空から太陽が顔を出した。

 

 

 

 

 

 




上司「インフルで病欠多いからお前今月休み無しな」

わい「アッハイ」

そんな感じでした。


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ミッシェルから出てきた美咲はエロ可愛いぞもっと流行れ

みんなやっぱり好きなんだなって。
今回はこころんのターン、次が本番だぞ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさ」

「なにかしら?」

「1つ聞いていい?」

「いいわよっ!」

「なんで俺達……空の上にいるんだ?」

 

 

 

俺は今空の上にいる。

え?何言ってるか分からないって?

安心して欲しい、俺もさっぱり分からない。

 

いつも上にある雲が下にあるって何だか不思議な気分だ。遮るもののない太陽はギラギラと元気に暑苦しいぐらいに俺達を照らしている。

すげぇよ、俺ヘリとか初めて乗ったわ。

 

あれよあれよと連れてこられたのは空の上。ラピュタは本当にあったんだ(棒読み)

ふぅ。現実逃避はこの辺にまでにしておくか。けどほんと、意味が分からん。なんかね、もう超展開過ぎて脳が動きを再開するまでに既にヘリに乗り込んでたわ。なるほど、奥沢はいつもこんな感じなんだな(遠い目)

 

「なに?此処で昼寝でもすんの?」

「せっかく空の上に来たんだもの、それじゃ勿体ないわっ!」

 

俺別に未来予知とか全然使えないけど何だか嫌な予感がびんびんなんだけど。

いやいや弦巻さんいい天気だからお昼寝しようよ、きっとヘリの中でする昼寝は斬新でかつてない挑戦だと思うんですよ。

 

あの、その、ホントに待って。ちょっと!襟首持たないで貰えますか?

 

 

「行くわよっ!」

「だろうと思ったけど事前に説明ぐらいしろやァァァァァァァァァァ!」

 

 

 

拝啓

お父様、お母様。

俺今空を飛んでます。

もう駄目かもしれないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開幕スタイリッシュ飛び降り自殺はどうかと思うんだ。命が幾つあっても足りんわ。というか俺がパラシュートの使い方分からんかったらどうするつもりだったんだ。

 

 

「でさ」

「何かしら?」

「どういう事?」

「そういう事よ!」

 

 

すみませーん、通訳さんいますかー?

どうやら俺は日本にいながら国境を跨いでしまったらしい。

 

「あのさぁ、ほんと説明して貰っていい?」

「もうすぐ頂上よっ!舞人!」

「あー、うん。そうだね」

 

分かったよ、俺の負けだ。降参だ。

 

「さぁ……落ちるわよっ!」

「そりゃジェットコースターだもんなぁぁぁぁぁうぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何でジェットコースターなのに下向きながら乗ってたんだよ。殺す気かよ、ていうか殺意しか感じねぇよ。もう飛んでいかないように必死に安全バー握りしめたわ。

考えた奴絶対性格悪い(確信)

 

「そろそろ説明、いいですか?」

「ドキドキするわねっ!」

「あー、はい」

 

まぁ確かにさっきからやたらといい匂いするし時たま腕に柔らかい何かが当たってすげぇドキドキしますね。

ってちげぇわ。そうじゃねぇわ。

そろそろね、いいと思うんですよ。予め言わせて貰いますとですね。

 

 

「キャーっ!」

「実は俺絶叫系ほんとダメなんですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 

 

本日落下3回目。

フリーフォールとか頭おかしい。ほんと頭可笑しい(キレ気味)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「楽しかったわねっ!」

 

燃え尽きたよジョー。

最初から頭可笑しかったけどさぁ、後から来たここもわざわざ貸し切りにしてまでやる必要あった?俺に何か殺意でもあんのかね。

 

けどこんなクソ広い遊園地に俺達だけってのも何だか変な感じだ。遊園地ってのはタダでさえだだっ広いのにそこに黒服の方と俺達しか居ないってのはやっぱり寂しい。勝手なイメージだがこういう所は色々な人達の声や笑顔が溢れていて、歩いているだけでも楽しくて気が付けば自分も笑顔になっている。こう、何だか心がワクワクするのだ。そういう不思議な気分にさせてくれる。

 

ベンチに座って項垂れていた顔を上げるとまだ余韻に浸っているのか弦巻は笑顔でぴょんぴょん飛び跳ねている。

 

楽しそうだなぁ、というか弦巻は何時でもたのしそうだ。けどその何時もにも増してその笑顔は輝いて見える。

その笑顔を見ていると、絶叫系はやっぱり苦手だが乗って良かったって思える。自分何かと一緒に乗るだけでこれだけ楽しんでくれているんだ、この笑顔を見れただけでもこうしてグロッキーになってまで乗った甲斐があったってもんだ。

そんな弦巻を見ていると急にくるっと回ってこっちを向いて、

 

 

「やっと笑顔になったわね、舞人っ!」

「まぁなんだ。絶叫系は苦手だが今回悪くなかった、サンキューな」

 

 

弦巻は弦巻なりに俺を元気付けてくれたのかもしれない。それにしちゃやり過ぎだって思わなくもないが気持ちは素直に有難い、何時でも他人の優しさってのは落ち込んでたり悩んだりしている時は良く身に染みるもんだ。

 

自分の事のように喜んで笑い掛けてくれる弦巻に何だか気恥ずかしくなって目線を逸らし頬をかく。

そういえば遊園地に来るのは久しぶりかも知れない。ずっと自分はバドミントン漬けだったし。けどデートで女の子にせがまれて来たことがあったっけ。

 

デート、恋人。

本来であればそういう関係の者たちの多くがこういう場所にデートに来るのだろう。

もちろん俺と弦巻は彼氏彼女でも何でもない。

チラッと弦巻を見る。

 

文句なしで可愛いしスタイルも良い。彼女の周りは常に笑顔で溢れていて、彼女の力強くて太陽の様な笑顔は色んな人を毎日照らしている。

まぁ確かにすげぇ理解し難い奇行に走る事もあるがそれも彼女の魅力なのだろう。

はっきり言ってとても魅力的な彼女だが恋人って言われると何だか違う気がする。

 

もし恋人にするならこっちの考えている事何となくを分かってくれて、俺みたいな情けない奴を側にいて支えてくれる。面倒みも良くて気が使えれば完璧だ。

そうそう、そんな奥沢みたいな……

 

 

「ってうぉぉぉぉっー!何考えてんだ俺はっ!」

「急にどうしたの?」

「あ、いや何でもない。何でもないんだ」

 

 

恥ずかしくなって叫んじまったよ。顔が馬鹿みたいに熱い。きっと今の俺の顔はゆでダコのように真っ赤になっているに違いない。

 

 

「じゃあ、舞人。また明日来るわねっ!」

「あ、うん。また明日ー……また明日?」

 

 

何かめっちゃ嫌な予感するんですけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、舞人っ!一緒にキラキラ輝ける目標を見つけましょ!」

「どうしてこうなった」

 

 

何か学校終わった瞬間捕まって連行。気が付けばグランドにいた。何で俺が目標探してるって知ってんの、とか思わなくないが考えるのは止めた。きっと弦巻の事で深く考えたら負けだと思うんですよ。

 

「今度は何するんだ?」

「これよっ!」

 

うん。その白と黒のボールはどう見てもサッカーボールだな。

 

「サッカー、やるわよっ!」

「いや2人しかいないんだけど」

「行くわよっ!」

「話聞けやっ!ってあぶなっ!」

「避けちゃダメよ舞人、ちゃんとゴールを守らなきゃ」

「ばっかお前あんな殺人シュート止めれるわけねぇだろっ!」

 

 

 

何だよそのスマイルトルネードとかいうシュートは。俺の目がおかしくなければ何かボールに凄い星のエフェクトが付いてるような気がするんだが。

まずボールの勢いだけで砂煙舞ってる時点で止められるわけないよね。ゴッドハンドでも使えばいいの?

 

そうやって殺人シュートの雨を浴びせられたり。

 

 

 

「楽しいわっ!」

「速攻でシュート打ってんじゃねぇよ、というか入んのかよ……」

 

 

 

バスケで1on1してドリブルすらせずその場でボール投げるだけで全部入れられて無双されたり。

 

 

 

「えぇーいっ!」

「ちょっ、やめ……あべしっ!?」

 

 

剣道でボッコボコにされて男の尊厳をボロボロにされたり。というか何で竹刀が分身すんだよ。

 

 

 

 

そんな感じで弦巻に毎日毎日何かとボロボロにされ続けた。最初の方はヤンチーとかジャンボに「二股とか死ねや」ってボロカス言われてたが今はもう肩に手を置かれ「頑張れよ」と応援される始末。

そんなん言うなら助けろよ、なんて言うと目を露骨に逸らされ逃げられた。アイツらいつか絶対しめる。

 

 

 

 

 

 

「ってのがあってさ。弦巻の奴、運動神経どうなってんだよ」

「ふーん……」

「……今日は都合が悪かったか?」

 

 

 

そんな弦巻に連れ回され雑巾のように転がされる毎日。当然のように俺は奥沢に愚痴っていた。俺の為ってのは分かるし何やかんやで楽しいのだがあそこまで無双され続けると1人の男として堪えるものがある。同じように弦巻に振り回されている奥沢なら俺の苦労も分かってくれる、そう思っていたのだが。

しかし奥沢の反応は鈍い、なんと言うか不機嫌な気がする。

 

 

 

「別に、そんなんじゃない」

 

 

 

ならどうしてそんなに不機嫌なんだ?

そう喉まで出かかっていた言葉を何とか押し留める。他人に何故不機嫌なのか聞くなんて愚の骨頂、それが自分のせいなら尚更でそれは鈍感糞ラノベ主人公のする事である。

普段なら何となく分かる奥沢の考えている事も今はまるで分からない。けど何となく不機嫌なのは自分のせいなのだということは分かる。そうでなければ自分のことより他人を優先しがちな奥沢がこうも俺に不機嫌そうな態度を取るはずがない。

いつもは心地よい筈の沈黙が今はピリピリとしている。何とかしなければ、と思う。けど何を言って行動したところで逆効果なのではないのか。そう思うと俺は最初の1歩を踏み出せない。

 

 

「悪い。今日は解散するか」

 

 

結局また俺は逃げる事を選んだ。

何も言わず帰って行く奥沢を見届けて俺は屋上の手すりに体重を預ける。何とも言えない、それこそどうしてこうなったんだと思う。

 

「ほんとダメダメだなぁ、俺って」

 

自己嫌悪を幾ら繰り返せばいいのか。何とかしなければいけないというのは分かっている。バドミントンの事も、もちろん奥沢の事も。

けど。俺にはどうすればいいのかも、何を選べば正解だったのかも何もかも分からない。

奥沢に近付きたくてこうやって頑張って。けど、どうしてか奥沢の機嫌を損ねてしまって。それだけでこんなにも身体が重くなるのか。

 

というか何で俺はこんなにも奥沢の事ばっか考えているんだ。

ふとした時。奥沢の事を考えている事がある。そんな事を言えばキモイって言われるかもしれない。けどどうしても奥沢の、言葉や笑顔が脳裏にチラつくのだ。だからこそ俺は前に進もうも足掻けていたんだと思う。

 

 

奥沢は俺は普通だって言うけれど。皆も俺みたいにこんなに悩んで苦しんで、それでも前に進んでいるのだろうか。

そうだと言うなら俺は普通じゃなくて半端者だ。逃げて、逃げて。仲良くなれたと思っていた奥沢とは気まずくなって。

あぁ苦しい。こんなクソみたいなループを繰り返すならばいっそ何も考えないで逃げ出すのもいいかもしれない。それも1つの人生、そう自分に納得させて。

 

 

「それはダメよっ!」

「弦巻、か」

 

 

此奴は本当にエスパーか何かか?

というより俺がウジウジとしている時に現れてこっちの気も知らずに強引に、それでいて優しく照らしてくれる。

 

「さぁ、舞人。行くわよっ!」

「何処に……」

「体育館よっ!」

 

 

 

こうして俺は結局また流されて行動する。

輝く太陽に手を引かれて、それを苦しそうに、悲しそうに見詰める誰かの目にも気付かないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつかはそれに向き合わなければならない日がくるってのは弦巻に連れ回されていると何となく分かっていた。

体育館に入るとそこには俺にとって懐かしい光景が広がっていた。150cm程度のポールにかかったネット、どう見てもバドミントンのネットでコートだった。

あぁ、遂に来たかと思う。これだけ色々な事をやっていればいつかはと思ったが今日だったとは。実に間が悪い、いつもの調子なら弦巻の勢いに任せて頑張れたのかもしれない。けど今の俺にはそんな気力はなかった。

 

理由は分からない。

いや嘘だ、本当は何となく分かっている。

 

 

「今日はバドミントンをやりましょっ!」

「……すまない。バドミントンだけは、勘弁してくれ」

 

 

いつもと変わらない馬鹿みたいに真っ直ぐで眩しい笑顔でそう言う弦巻に俺は目を逸らして俯いて。

弦巻には悪いが今の俺にはバドミントンと向き合えるだけの気力も理由も何も無い。

 

 

「大丈夫よ、バドミントンをしている貴方はまるで夜空に輝くお星様のようにずっとキラキラしていたわっ!あんなに楽しそうにしていたら見ていた私も笑顔に、そして何よりバドミントンをやりたくなったわ!」

「見た、のか」

 

 

見られてしまったか。まぁそんなことだろうとは思っていた。実際ネットで調べれば俺の試合なんてそれこそ無数に存在している。

自分でも良くあそこまで楽しそうにプレイ出来てたもんだと思う。当時良くあそこまで楽しそうにプレイしてる奴なんてお前ぐらいなもんだって言われてたぐらいだし。まぁ言われてる本人からすればよく分からないが見ている人はそう見えていたのだろう。

 

 

「間違いなく舞人は皆を笑顔にしていたわっ!」

「仮にそうだったとしても今はそんな事出来やしねぇよ。何より、もう俺にはラケットを握ってシャトルを追い掛ける意味も理由もない。熱を感じないんだよ」

 

 

あんなに楽しかったバドミントンも今ではそれをする理由も意味も無くなって、昔感じていた全身を掛けていく熱も感じられない。何より足が動いてはくれない、イップスなのかまた別のものなのか病院に行ってドクターに見てもらう事もなく怖くなって逃げ出した今じゃもう分からないが。

 

 

「なら何で舞人はそんなにも苦しそうな顔をするの?」

「そりゃ……やりたくても出来ないし何一つとして上手くいかないんだから当たり前だろ」

「違うわ。どうしてそこまでして苦しみながら舞人は前に進もうとするの?」

「それは…………」

 

 

どうしてだろうか。何故俺は前に進もうとこんなにも苦しみながらもがき続けているのか。諦めてしまったモノに焦がれて、こうして苦しんでいるのはどうしてだったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━大丈夫、だって私にだって見付けられたから。

 

 

脳裏に浮かぶのはそうやって笑顔を浮かべる女の子の姿。

あぁ、そっか。

 

 

 

「……奥沢みたいになりたくて、近くに居たくて俺は前に進む事にしたんだ」

「なぁんだ。ちゃんと頑張る目標が舞人にもあるじゃないっ!」

「ぁ…………」

 

 

 

何だよそれ。結局気がついてなかっただけで俺には目標があってそれなのに勝手に自滅して。

くっそダサいなおい。

 

 

「ふふふっ、ははははははははっ!ほんとバッカみたいだな!いや俺は間違いなく馬鹿だわ!」

「よく分からないけど舞人が笑顔になって良かったわっ!」

 

 

馬鹿だ、ほんと馬鹿だ。

けど良かった。俺はまだ頑張る理由がある、目標がある。それだけで、それが分かっただけでなんだろう。今は何だか身体が熱くて軽い。

生きている、今俺は生きて頑張れている。結果はどうとかまだ全然だけれど目標さえ見えていれば馬鹿な俺でさえどうすればいいのか分かる。そうやって昔から俺は走り続けるのだけは得意だったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだわっ!美咲を呼んでくるわねっ!」

「…………は?あ、いやちょっとまって!色々と男の子にも準備が……ってまじで待てやコラ!」

 

 

 

 




こころんのヒロインムーヴ
可笑しいどうしてこうなった、分かったぞ。次はこころんを流行らせればいいという御託宣だな。

という訳で次が本番です。


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