この世界では偶像と書いてデュエリストと読み、決闘者と書いてアイドルと読むことがあります。 (地雷一等兵)
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-プロローグ-


生ぬるい目で見守ってください。




 

 

決闘(デュエル)とは即ち魂のぶつかり合いである。

そしてそれは海馬コーポレーションの開発したデュエルディスクによって更なる飛躍を遂げた。

自分の中の限界すら越えた領域を発揮し、信じるカードたちと共に、文字通り自分のすべてをぶつけ合う行為。

人々はそんなデュエルに心惹かれ、魅了されていた。

そして、アイドル達も……。

 

 

「サイキ~~ック!!! これでまた勝ちだね!!」

 

「むむむ、またユッコ殿に負けたであります……。」

 

事務所の一角でテンション高く決闘(デュエル)をしていたのはこの事務所を所有するアイドル芸能プロダクションに所属するアイドル、堀裕子と大和亜季だ。

サイキック族のトリッキーな効果を使いこなしつつ丁寧な力押しでゴリ押すエスパーユッコこと堀裕子に、基本に忠実、無謀に走らず丁寧に丁寧に戦う大和亜季はこのプロダクションの看板決闘者(アイドル)だ。

彼女たちアイドルは、偶像(アイドル)の面も持ちながら、決闘者(デュエリスト)でもある。

スポットライトの照らす明るくきらびやかなステージで歌い踊り、ファンからの歓声を浴びる彼女たちは、時に決闘者(デュエリスト)としてファンの歓声を浴びて闘う。

そして時にそれはliveバトルとしても扱われる。

 

「ユッコ、次の仕事だ。秋葉原のカードショップで営業な。お前のサイキックデッキで盛り上げてほしいそうだ。」

 

「了解、プロデューサー!このエスパーユッコに任せなさーい!」

 

ふふーんと胸を張る裕子に対して担当プロデューサーは慣れているのかスルーし、もう一人のアイドル、亜季にも話し掛ける。

話を振られた亜季は最初こそキョトンとしていたものの直ぐ様アイドルの顔つきになり敬礼する。

 

「お任せください!プロデューサー殿! ユッコ殿と協力して、そのイベントを大成功させてみせるであります!」

 

敬礼したままニヒッと歯を見せて笑う彼女の笑顔は年相応で、普通の少女に見える。

裕子も裕子で自信満々に笑っている。

そんな二人はプロデューサーに連れられて秋葉原の某カードショップに向かうのだった。

 

 

 

街頭の大型テレビジョンに映るアイドルへのインタビュー映像。

そこアイドルはピンクのワンピースを来た、ウェーブのかかったサイドポニーが特徴的な少女。

どんな質問にも眩い笑顔で答える彼女の姿は、見たものの目を惹き付ける。

 

「───さん、今回の大会で一番気を付けていたことはなんでしょうか?」

 

「はい! 笑顔です!」

 

ニカッと笑う少女。街頭のモニターに映る彼女の爽やかな笑顔、街行く人々は見上げて見える画面に目を惹き付けられ、足を止める。

 

「それでは、もっとも警戒していた選手、もしくは手強いと感じた決闘者(アイドル)はどなたでしょう?」

 

「はい! 渋谷凛さんです!あとは……鷲沢文香さんと、藤居朋さんです!!」

 

屈託のない笑顔、可愛らしい彼女は楽しそうに答え、ぽんぽんとサイドポニーを揺らす。

 

「それでは最後に! 島村卯月さん、あなたの目標……決闘者(アイドル)としての夢はなんでしょうか?」

 

「はい! 私のLive(デュエル)で、皆を、見てくれた人を笑顔にすることです!!」

 

彼女の名前は島村卯月、今一番勢いのある芸能プロダクション、610(ムトー)プロ所属のアイドルだ。

つい先日行われた決闘者(アイドル)たちのデュエル大会で優勝した実力者、参加した様々な実力者を退けた彼女の実力は本物である。

誰もが羨む一流のアイドル(偶像/決闘者)だ。

彼女以外にも一流のアイドルはいる。様々なプロダクションに。純粋にデュエルを楽しむ者だったり、強くなろうとするものだったり、その取り組む姿勢は十人十色だ。

 

「ごめん、プロデューサー。次は負けないから。」

 

それは渋谷凛であったり、

 

「サイキック~っ!!」

 

堀裕子であったり、

 

「そのデュエル気に入った! うちに来て妹とデュエルしてもいい!」

 

大和亜季であったり、

 

「にょわー♪ハピハピだにぃ!」

 

諸星きらりであったり、

 

「当然んん! 正位置ぃい!!」

 

藤居朋であったり、

 

「これも神のお導きです。」

 

クラリスであったり、

 

「えへへ、あの子も喜んでるや……。」

 

白坂小梅であったり、

 

「梶木さんのアドバイスのお陰かな~。」

 

西島櫂であったり、

 

「ち、ちびっ子ちゃうし……。」

 

脇山珠美であったり、

 

「この南条光には夢があるッ!!」

 

南条光であったり、

 

「最強デュエリストのエントリーです!」

 

浜口あやめであったり、

 

「さって、戦国デュエルだよっと。」

 

丹羽仁美であったり、

 

「凛の仇はとってあげるよ。」

 

北条加蓮であったり、

 

「いや、その敵討ちは私が先にやるよ。」

 

神谷奈緒であったり、

 

「アイドルの頂点……獲ってみせます……。」

 

鷲沢文香であったり、

 

「黒き翼は我と共にあり!!」

 

神崎蘭子であったり……

 

 

今の時代、アイドル同士が街中でデュエルすることなど日常茶飯事である。

むしろ、それを見なければ一日が始まらないと言う者さえいるのだ。それほどまでにアイドル達のデュエルは、決闘(デュエル)そのものは人々の心を魅了しているのだ。

 

そう時代は大決闘者(デュエリスト)時代、多くの人々がデュエルモンスターズをプレイし互いの腕を競い合う時代。

人々は日々の生活をこなしながら、一流の決闘者を目指す時代だ。

 

 

彼女たちは「アイドル(決闘者/偶像)」、人々を魅了する存在。

 

カードを愛し、カードに愛された存在。

 

この話は、そんな彼女たちを描いた青春譚である。

 

 

 

 

 

 





ちなみに基本的にはユッコたちのプロダクション視点になります。
いいプロダクション名は随時募集中です。

アイドルたちのデッキについては随時公開していきます。



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第1話 アイドルですから、デュエルしますよ。


はい、それでは本格的にデュエルしましょう。


では本編をどうぞ↓


 

 

「プロデューサー! 仕事(デュエル)は~? 仕事しないとこのエスパーユッコのサイキックパワーが鈍っちゃうよ~。」

 

「……あるにはあるぞ。」

 

「本当に!?」

 

事務所の中でデュエルディスクを腕に着けたまま自身を担当するプロデューサーに絡む裕子は、仕事の存在に目を輝かせる。

その時のプロデューサーの腕を掴んだ速度は恐らく彼女の中でも歴代最速だったのではないだろうか。

 

「なに?なんの仕事!? ねぇねぇ!!」

 

彼女が犬ならばぶんぶんと千切れるレベルで尻尾を振っていただろう。

基本的に彼女に回ってくる仕事イコール決闘(デュエル)であり、彼女が仕事に意欲的な理由だ。

 

「街中のデュエル、Liveバトルだ。」

 

「相手は!?」

 

573(コナミ)プロの神崎蘭子だ。」

 

「いやっほー!!あの子面白いから好き~!!」

 

蘭子の名前は聞いた瞬間に裕子は大きく跳ねあがり、拳を突き上げた。

573プロに所属する“黒翼”の神崎蘭子と言えば知らぬ者はいない実力派アイドルだ。あの島村卯月が制した大会には出ていなかったが、もし出ていればどうなっていたか分からない。

それほどの実力者だ。

 

「それじゃ、さっそく行こうよ!!」

 

「あぁ。行ってくるよ。皆も頑張れ。」

 

「自分も出掛けるであります。」

 

それまでモデルガンの手入れをしていた大和も立ち上がり裕子とプロデューサーの後ろに着いていく形で事務所を出ていった。

さて、そんな中事務所に残されたアイドルはと言えば……。

 

「暇ぽよ~。ねぇねぇ、ののっち~デュエルしよ~。」

 

「で、でも、里奈さん、の、デュエル、バイクに、乗らなきゃですから、森久保には、むーりー……。」

 

事務所のアイドルの藤本里奈と森久保乃々だ。

暇をもてあましたふじりながプロデューサーのデスクの下にいる乃々に話し掛けると、びくっと脅えたように体を震わせて言葉を返す。

そんな森久保の言葉にん~と唸ったふじりなは何かを思い付いたように鼻唄を歌いながらいつものライダースジャケットを着て事務所を出ていった。

 

 

 

「さて……おや? なにやら騒がしいでありますな。」

 

出掛け先で馴染みのカードショップを訪れた亜季はわいわいと盛り上がっているのを見つけ、首を傾げる。

その騒ぎの元は額縁に飾られた1枚のカード、“真紅眼の黒竜(レッドアイズブラックドラゴン)”だ。

超稀少なレアカードの存在にショップを訪れていた決闘者たちは憧れの視線を注ぐと同時にその下に置かれた“30万円”という値段に落胆の息を吐いている。もちろん、亜季も憧憬の視線を送る者の一人である。

 

「レ、真紅眼の黒龍!? 店主殿!?」

 

たまらず顔馴染みの店長のもとに詰め寄る亜季、そしてそれを中年の店長はニヒヒと笑って返す。

悪人面をしているとよく言われている彼の笑顔はなかなかに迫力があるが、そんなもの常連の彼女には関係ない。

 

「店主殿!あ、あのようなレアカード、一体どうやって手に入れたでありますか!? よ、よもや犯罪に手を……!!」

 

「いや~……知り合いの決闘者(デュエリスト)の伝を使ってなんとか……。苦労したぜ? なんせあの伝説の決闘王(デュエルキング)、武藤遊戯と肩を並べた決闘者、城之内克也のエースカードだからな。元から値は高いけど、今や最低でも前の倍の値はついてんだぜ?」

 

自慢げに語る店主はむふーんと息を吐き、新聞に目を落とす。

亜季は店主の説明を受けて財布の中身を見つめ歯噛みして悔しがる。芸能プロダクションの看板アイドルとは言え、1日で気軽にそこまでの金額をポンと動かせる訳もないのである。

目の前にあるレアカードに手を出せないもどかしさに亜季は店主のいるカウンターボードに手を置いて歯を噛んでいた。

 

「いや、そんなポーズされてもこればっかりは譲れないよ亜季ちゃん……。」

 

「ぐぬぬ……えーい!こうなったら決闘(デュエル)で気を晴らすであります! どなたか私と決闘(デュエル)しませんか!?」

 

気持ちを入れ換えようとデュエルディスクを左腕に装着した亜季は大声で店内の客たちに呼び掛ける。

名の知れたアイドルの彼女の呼び掛けに我こそはとこぞって名乗りをあげる。はいはい!わいわい!と声があがり、大きな騒ぎとなった。そのまま亜季は一日中このカードショップ前でデュエルを繰り広げていた。

 

 

 

その頃、とある水族館では・・・・・・

 

 

「それじゃあデュエルしようか。」

 

「えぇ、これもまた神のお導きなのでしょう・・・・・・。」

 

西島櫂とクラリスがイルカショー広場前でデュエルディスクを装着して向かい合っていた。

それは彼女たちにとってはデュエル開始の合図なのだ。

 

「じゃあ、私の先攻ね。ドロー!」

 

先攻櫂でデュエルが始まる。

 

「フィールド魔法、《伝説の都 アトランティス》を発動、さらに場に一枚カードをセット。《海皇の竜騎隊》を攻撃表示で召喚!ターンエンド。」

 

「ではこちらのターン、ドロー!・・・・・場にモンスターを裏側守備表示でセットしてターンエンド。」

 

場にカードも伏せずにターンエンドを宣言したクラリスの顔色は優れない。

そんな彼女の様子に櫂はニヤリと笑いドローする。

 

「モンスターを一体守備表示で召喚。《海皇の竜騎隊》でセットモンスターを攻撃!!」

 

攻撃したモンスターは《幻奏の音女タムタム》、アトランティスの効果で攻撃力の上昇した竜騎隊の攻撃で撃破される。

そのまま一枚伏せカードを場に出して櫂はターンエンドを宣言した。

そしてクラリスのドロー、しかしやはり顔色は優れず、モンスターを一体守備表示で召喚して終わった。

 

「なら私のターン、守備表示の《ヒゲアンコウ》を生け贄に《水精鱗‐リードアビス》を召喚!! リードアビスでモンスターに攻撃!」

 

「撃破されたシャインエンジェルの効果で《幻奏の歌姫ソプラノ》を特殊召喚、そしてソプラノの効果で墓地のタムタムを手札に加えます。」

 

「なら竜騎隊でソプラノに攻撃!!」

 

「く・・・・・・。」

 

攻撃を受け、これでクラリスのライフは7400となる。場のモンスターで攻撃し終わった櫂はターンエンドを宣言しクラリスのドロー。

 

「自分のフィールドにモンスターが居ないという条件から手札より《幻奏の歌姫ソロ》を特殊召喚します。更にモンスターを守備表示で召喚してターンエンドです。」

 

「ドロー!!」

 

そのターンは場のモンスター二体の総攻撃でクラリスのモンスターを一掃するも。ソロの効果で《幻奏の音女エレジー》を特殊召喚した。

そしてクラリスのターン。

場にカードを一枚セットし、モンスターを守備表示で召喚して終わる。

 

「モンスターを守備表示で召喚!リードアビスでエレジーを攻撃!!」

 

「その攻撃宣言に対して(トラップ)カード発動。《光子化(フォトナイズ)》! リードアビスの攻撃を無効化し、その分の攻撃力を私のエンドフェイズまでエレジーに上乗せします。」

 

魔法(マジック)カード発動、《海竜神(リバイアサン)の怒り》!星5以上の水属性モンスターの数だけ相手モンスターを破壊する。この効果でエレジーを破壊!!」

 

その後、伏せカードのないクラリスのモンスター、タムタムを竜騎隊で撃破し、ターンエンドした。

クラリスのターンになり、ドローしても彼女の顔は晴れない。場にモンスターを守備表示で召喚し、ターンエンドする。

そして櫂のターンになり、場が動く。

 

「ドロー!場に一枚カードを伏せて守備表示の《ペンギン・ナイトメア》を反転召喚! 効果発動!このカードが表側になったとき、相手フィールドのカードを手札に戻す、そのモンスターカードを手札に戻してもらうよクラリスさん。」

 

《ペンギン・ナイトメア》の効果でフィールドを丸裸にされたクラリス、しかしまだまだ《ペンギン・ナイトメア》の効果をあった。

このカードが表側表示の時、自分の表側表示水属性モンスターの攻撃力は200ポイントアップするのだ。この効果でアトランティスと合わせてリードアビスの攻撃力は3100、竜騎隊は2200だ。

一斉攻撃の5300ダメージに、クラリスのライフは残り2100となる。

次のターン、ドローしても逆転の材料をそろえきれなかったクラリスは一体のモンスターを守備表示で召喚するも、リードアビスと竜騎隊の攻撃に耐えきれず敗北したのだった。

 

 

「デュエルありがとう、クラリスさん。」

 

「いえこちらこそ……。」

 

勝負の終わった二人は歩み寄り握手を交わす。どんなにデュエル中はいがみ合おうとも、終わってしまえばこうして互いの健闘を称えあうのがアイドル(偶像/決闘者)だ。

彼女たちはアイドル、デュエルによって高めあい、観客を沸かせる存在。

だからこそアイドルはデュエルする。

 

 

 

 






櫂くんのデッキを乗せておきます。

水属性デッキ(西島櫂)
 
・モンスターカード
海皇の竜騎隊×2、海皇の突撃兵×2、引きガエル×2、ヒゲアンコウ×2、水の精霊アクエリア×2、ペンギン・ナイトメア×2、水精鱗アビスノーズ×3、水精鱗ネレイアビス×2、水精鱗オーケアビス×3、水精鱗アビスタージ×2、水精鱗アビスリンデ、水精鱗リードアビス、ビッグジョーズ×2、ニードル・ギルマン×2、ジェノサイドキングサーモン、超古深海王シーラカンス、氷帝メビウス
・魔法、罠カード
伝説の都アトランティス×2、海竜神の怒り、ポセイドンの力
海竜神の加護×3、忘却の海底神殿×2、儀水鏡の反魂術×2、潜海奇襲


プロフィール
・西島櫂
…元スイマーアイドル。イルカが好きで時おり私服や小物にイルカの着いたものを身につけることもある。
デュエルの師匠は梶木漁太である。
水族館に行くこともあり、デュエリストの梶木とはそこで知り合ったらしい。
水属性デッキの使い手であり、揃った時の火力はなかなか。
 
「んー、まぁ……これならなんとか。梶木さんのアドバイス通り、かな?」



ではまた次回でお会いしましょうノシ
感想・ご意見お待ちしてます。

次回予告

大変!街のテーマパークが悪のデュエリスト、ブラックレイナに占拠されちゃった!
このままじゃ子供達が遊べない、どうすればいいんだ。
そんな時に現れた謎のヒーロー!
そうだ、この街には彼女がいたんだ!

次回「助けて!ぼくらのヒーロー、ナンジョルノ!」
デュエルスタンバイ!!




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第2話 助けて!ぼくらのヒーロー、ナンジョルノ!! 


今回はわりかし茶番が長いです。


では本編をどうぞ↓


 

 

 

みんなを笑顔にする、あの島村卯月がインタビューで口にした言葉である。アイドルたるもの見た者を魅了できなくてはいけないということなのだろうか。

まぁ、誰かのあこがれになる、誰かを笑顔にするということならば、すでにあるアイドルが広範囲で実践しているのだが。

 

 

日曜日の昼下がり、子供達の楽しそうな喧騒で賑わうここは遊園地。

ジェットコースターやフリーフォールからは楽しそうな絶叫が響き渡り、お化け屋敷の中からは恐怖に怯えた声が轟いている。

どこからでも楽しそうな声が聞こえてくる、どこにいようと聞こえるこの声が突然悲鳴に変わった。

 

「きゃー!!」

 

「たすけてー!!」

 

騒ぎの中心地はよくヒーローショーが行われる広場だ。

騒ぎを聞き付けた人たちがそこに駆けつけると、ヒーローショーの為に広場に集まったちびっ子と、それを囲むようにして立つ覆面の人間、そしてステージの上に立つデコ全開の少女がいた。

 

「はーはっは!この遊園地はこのブラックレイナ様が占拠した! 酷い目に合いたくなかったら大人しくしろぉ!」

 

「な、なんと……これはなんということでありますか!?(棒読み)」

 

「サ、サイキックピンチ!?」

 

「うわーたいへんだー、助けを呼ばなきゃ~(棒読み)」

 

()()でこの遊園地を訪れていた亜季や裕子たちは慌てたようにデュエルディスクを構える。

このような事態に陥ったらまずはデュエルで解決だ。

と、そのように意気込んで覆面たちにデュエルで挑む彼女たちであったが…………

 

 

「サイキック~!」

 

「や、やーらーれーたー(棒読み)。」

 

「で、デビフラ?!ワンキル!?」

 

結果は敗北。《デビルフランケン》の効果を使ってのワンターンキルに持ち込まれ、ワンキルされないまでも初手で大きく追い詰められ、敗北した。

そうやって挑んだデュエリストの敗北を見て、ブラックレイナはまた高々に声をあげて笑う。

 

「くくく、このままこの遊園地を拠点に!街を征服してやるわ!!」

 

「こわいよぉ……だれかぁ……。」

 

「助けなんか来るものか!! ここはブラックレイナ様が支配するんだ!」

 

その時だった。ブラックレイナの言葉にちびっ子たちの誰もが恐怖を抱き、泣きそうになった時にその声は響いた。

力強く、どこまでも響いていきそうな声。しかしそれでいて優しく、包み込むように、励ますような声だった。

 

「待てい!!」

 

「な、なんだ!?」

 

「ど、どこから!?」

 

突然響いた大きな声、ブラックレイナの行動に待ったを掛けたその言葉を聞いて覆面たちは慌てたように周囲を見渡し、声の主を探すが見つからない。

その時、ひゅーと風が吹き始めた。そして一人の覆面が遂に見つけて指差した先には高所に位置取り逆光を背負い、マフラーを風に翻す人物の姿がそこにはあった。

 

「どんな夜にも必ず終わりは来る。闇が解け、朝が世界に満ちるのだ……。人それを……『黎明』という。」

 

「ちぃ……!!偉そうに!何者だ貴様ぁ!!」

 

「お前たちに名乗る名前はない!!」

 

その人物の言葉に苛ついたブラックレイナが舌打ちをして声を荒らげ問い詰めるが、その人物はそうキリッと言い返した。

そしてとうっ!と言葉を発すると身を翻しながら着地し、ブラックレイナの目の前に現れる。

 

「悪逆非道のデュエリスト、ブラックレイナよ!この私が成敗してやる!」

 

「なにを~!」

 

地上に降り立ったその人物は左腕にはデュエルディスク、首に真っ赤なマフラーを巻き、マフラーと長髪を風に靡かせ、サングラスが光を反射する……いかにもなヒーローの姿をしていた。

そしてその彼女の姿を見たちびっ子たちが次々と声をあげる。

 

「ナンジョルノ! 正義の味方、ジョルノ・ナンジョルノだ!!」

 

「本当だ!本物のナンジョルノだ!」

 

「たすけてー!!ナンジョルノー!!」

 

子供達の声援を受けたナンジョルノが右腕を掲げてガッツポーズを取るとまた子供達が一際大きく声をあげる。

それが気に入らないのかブラックレイナは地団駄を踏み、左腕にデュエルディスクを装着した。

 

「ふん、貴様なんてブラックレイナ様の足元にも及ばないのよ!」

 

「いいだろう、正義は必ず勝つ!!」

 

二人はお互いにデュエルディスクを構え、決闘(デュエル)を開始する。

先攻はブラックレイナだ。

 

「さーて、ドローしてモンスターを裏側守備表示でセットしてターンエンドよ。」

 

「ならこちらのターン、ドロー!そして手札から《融合賢者》を使用して《融合》を手札に加える!そして《E-エマージェンシーコール》を発動して《E・HERO バーストレディ》を手札に加える。」

 

ナンジョルノのプレイングに周囲のちびっ子たちはおろか大人たちからも期待が高まり、歓声が漏れる。

 

「そして《融合》を発動! 《E・HERO フェザーマン》と先程手札に加えたバーストレディを融合、行くぞ!《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」

 

早速の融合モンスターの出現に周囲は多いに沸き、ブラックレイナが舌打ちする。

序盤から強力な融合モンスターによって場を支配し勝利を掴む。これこそが正義の味方、ナンジョルノの「E(エレメンタル)・HEROデッキ」なのだ。

 

「フレイム・ウィングマンでセットモンスターを攻撃!」

 

「くそ!キラー・トマトが……。効果を発動!攻撃力1500以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。《レジェンド・デビル》を召喚!」

 

「相手モンスターを撃破したことでフレイム・ウィングマンの効果発動!撃破したモンスターの攻撃力分ダメージを与える!キラー・トマトの攻撃力、1400のダメージだ!」

 

「ちぃ!!うっとうしい効果だ!」

 

ライフを削られ残り6600になったブラックレイナが顔を歪めて舌打ちする。が、そのあとに一瞬だけほくそ笑んだ。

その後、カードを2枚セットしてターンを終える。

 

「ドロー!こちらのスタンバイフェイズに《レジェンド・デビル》は効果で攻撃力を700アップし2200になる!! そして永続魔法《つまずき》を発動!このカードの効果でこれ以降召喚・反転召喚・特殊召喚されたカードは守備表示になる!」

 

「な、なんだって!?」

 

「そしてモンスターを一体セット、カードを一枚セットする。さらーに!レジェンド・デビルでフレイム・ウィングマンに攻撃!!」

 

「く……!」

 

攻撃力2200になったレジェンド・デビルによって2100のフレイム・ウィングマンは撃破され、100のダメージを受ける。

しかしナンジョルノは伏せていたカードを発動した。

 

(トラップ)カード《ヒーロー・シグナル》を発動!デッキから《E・HERO スパークマン》を召喚する。」

 

召喚したスパークマンも《つまずき》の効果で守備表示になる。

その後、レイナはターンエンドを宣言した。

 

「こちらのターン!ドロー!手札から《R‐ライトジャスティス》を発動! 場にいる“E・HERO”の数だけ魔法・罠を破壊する!《つまずき》を破壊!さらにセットカード《融合準備(フュージョン・リザーブ)》を発動、墓地の融合を手札に、さらにデッキから《E・HERO クレイマン》を手札に加え、融合を発動!」

 

あわや形成逆転、追い込まれたかのように見えたナンジョルノだったがしかしヒーローはへこたれないし諦めない!

 

「土の戦士よ!雷の戦士よ!その力を合わせ今ここに!さぁその力を私に貸してくれ!《E・HERO サンダー・ジャイアント》!!」

 

融合によりスパークマンとクレイマンがその力を合わせ新たなるヒーローが姿を現した。

その偉容にブラックレイナはおろか周りの観客たちも息を呑む。

 

「行け! 今こそその力を見せてやれ!!“ヴェイパー・スパーク”!!」

 

「くそぉ!」

 

召喚したタイミングでナンジョルノはサンダー・ジャイアントの効果を発動した。残り一枚の手札、《E・HERO ネクロダークマン》を捨てることによってサンダー・ジャイアントの攻撃力2400より低い攻撃力の表側モンスターを一体破壊するのだ。

サンダー・ジャイアントの一撃にレジェンド・デビルは撃破される。

傾けたと思っていた形勢を一瞬で覆されたブラックレイナは苦虫を噛み潰したような顔になる。しかしナンジョルノの反撃は止まらない。

 

「さらにセットモンスターを攻撃だ!ボルティック・サンダー!!」

 

「くそっ!!《メタモルポッド》の効果発動、お互い手札を全て捨てて5枚ドローする。」

 

ブラックレイナが伏せていたモンスターカードはメタモルポッド、このカードの効果でナンジョルノは手札のロスもなく手札を5枚補充する。

E‐HEROデッキ相手にメタモルポッドを伏せたブラックレイナの判断ミスと言えるだろう。

 

(ここで・・・・・・この状況で、やつの手札が5枚・・・・・・。まずい、だが!!)

 

ブラックレイナのターンになりドローしたカードを見て彼女はニヤリと笑う。そして自信満々にカードをディスクにセットした。

 

「《ジャイアント・オーク》を召喚!さらに《闇・エネルギー》を装備させる、これで攻撃力2500! サンダー・ジャイアントの2400を越えた! 行けジャイアント・オーク!!」

 

「くっ!? サンダー・ジャイアントが!?」

 

「ふふん!カードをセットしてターンエンド!」

 

得意げな顔になってターンエンドを宣言するブラックレイナ、しかし彼女のフィールドには効果で守備表示になったジャイアント・オークと二枚の伏せカードのみ。

ここは攻め入るチャンスとナンジョルノはドローする。

 

「墓地にいるネクロダークマンの効果により《E・HERO エッジマン》を生け贄なしで召喚する! そしてエッジマンで守備表示のジャイアント・オークに攻撃!」

 

「その攻撃宣言に対してリバースカード、オープン!!《魔法の筒(マジック・シリンダー)》! エッジマンの攻撃をそっくりそのままお返しするぜ!!」

 

「な、うわぁ!?」

 

ナンジョルノの攻撃にトラップが発動し、ナンジョルノの足場から爆炎と爆風が吹き出して彼女は吹っ飛ばされた。

その光景にちびっ子たちは悲鳴を上げ、大人達もどよめく。

そしてしばらくして煙が晴れると衣装の一部が焦げたナンジョルノの姿がそこにはあった。

しかし大きくライフを削られ残り5200となったナンジョルノはカードを2枚セットしてターンを終える。

ジャイアント・オークの攻撃力は装備込みでも2500、対してエッジマンは2600、耐えられる、このターンは持ちこたえられると判断したのだ。

 

「くくく・・・・・・ハーハッハッ──げほっごほっ!?」

 

ナンジョルノのターンエンドを聞いたブラックレイナは高笑いをするも咽せて咳き込む。しかし数秒後にはそれも収まり平然とドローする。

 

「ふふん、行くぞ!恐れ戦くがいい!! ジャイアント・オークを生け贄に、《邪帝ガイウス》を召喚する!さらにその効果により貴様のエッジマンを除外する!!」

 

「なに!?」

 

「さぁ貴様を守る壁はいない、いけガイウス!!」

 

「ぐあぁ!?」

 

ガイウスの効果により切り札も除外されたナンジョルノにガイウスの一撃が決まり、2800まで追い詰められたナンジョルノ。しかしそれだけでは終わらない。

 

「さらに、墓地にいる悪魔族モンスター3体をゲームから除外して《ダーク・ネクロフィア》を特殊召喚!やれ、ネクロフィア!!」

 

「な、うああっ!?」

 

追い打つように放たれた一撃にナンジョルノはまたしても爆発に吹き飛ばされる。

首に巻いたマフラーはぼろぼろになり、長髪をまとめるヘアゴムもちぎれ、パサリと髪が広がって風になびく。

 

「はっはっは!絶体絶命だなぁ、ナンジョルノ!諦めて逃げたらどうだ!」

 

「逃げる……?」

 

「あぁ! そうすればお前は助かるぞ?!」

 

ポツリと呟くように言ったナンジョルノの言葉、それを煽るようにブラックレイナが続ける。

ナンジョルノの耳には心配する子供達の声と、それを嘲笑うかのようなブラックレイナの言葉。それを聞いたナンジョルノはキツく右手を握りしめた。

 

「そんなことが……出来るか! 絶体絶命?! だからどうしたッ!!」

 

張り上げた大声はビリビリと空気を揺らす。そこには気迫があった、どんな劣勢に陥ろうが、どれほど危険な道だろうが諦めないという気迫が。

そしてナンジョルノの瞳には火が灯っていた。絶対に勝って皆を救うという意思の籠った火だ。

 

「ブラックレイナ! 決して正義は屈しない!正義は必ず勝つんだ!! ドロー!」

 

力強く言い放ち、山札から運命のドローを行う。

そしてナンジョルノは不敵に笑った。

 

「伏せカードを使用!《ミラクル・フュージョン》!」

 

「なんだとぉ!?」

 

「墓地からフェザーマンとバーストレディを除外することでフレイム・ウィングマンを召喚する!!」

 

奇跡の融合召喚により、再度フレイム・ウィングマンがその姿を現した。しかし、それだけではブラックレイナの表情は崩れない。

フレイム・ウィングマンでは今のフィールドにいる2体を越えられないからだ。

しかし、次の瞬間にその表情は崩れた。

 

魔法(マジック)カードを発動!《摩天楼-スカイクレイパー-》!!」

 

ナンジョルノがそのカードをセットした瞬間に辺りは暗くなり、高層ビルが建ち並ぶ景色が現れる。

急な景色の変化に周囲の覆面たちすら狼狽えている。

 

「な、なんだこれ!!」

 

「ここはヒーロー達の街、ヒーロー達のフィールドだ! この街で悪者に逃げ場はない、覚悟はいいなブラックレイナ! お前の罪を数えろ!!」

 

「は、はん!強がるなよ! フレイム・ウィングマンじゃあスカイクレイパーで強化しようとも次のターンで破壊できる!」

 

決め台詞を言いきったナンジョルノにブラックレイナは強気に言い返す。

確かに彼女の言葉は事実であり、スカイクレイパーの強化はHEROから攻撃した時に効果を発揮するのだ。

つまり次のターンには地力で負けるフレイム・ウィングマンは破壊されてしまう。そして別のモンスターによるダイレクトアタックで敗北させるビジョンがブラックレイナにはあった。

だがナンジョルノは冷静だ。

 

「ああ、このままじゃ確かに勝てない。だからこうする!魔法カード《スカイクレイパー・シュート》!」

 

「そ、それは!?」

 

「このカードは場にいる“E・HERO”の融合モンスターを対象に発動する。選択したモンスターより攻撃力が高い相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する!その後、この効果で破壊されたモンスターの内、元々の攻撃力が一番高いモンスターのその数値分のダメージを相手に与える!だが、今“摩天楼”フィールドカードが存在することにより相手に与えるダメージは、この効果で破壊されたモンスター全ての元々の攻撃力の合計分となる!!」

 

「なん……だと……っ!!」

 

そう、ナンジョルノが他の融合モンスターではなくフレイム・ウィングマンを選択したのはコレが理由だ。

フレイム・ウィングマンの攻撃力は2100、ブラックレイナのモンスター2体を下回る。

つまり、両方を破壊するのだ。そして《摩天楼-スカイクレイパー-》があることで2体の攻撃力の合計をダメージとして与えるのだ。そのダメージ、実に4600!

これによりブラックレイナのライフは残り2000、フレイム・ウィングマンの射程圏内だ。

 

「行け!フレイム・ウィングマン!夜の街を駆け、悪を討て!!」

 

ダーク・ネクロフィアもガイウス破壊され、がら空きとなったブラックレイナのフィールド。そしてナンジョルノの宣言に応えるようにフレイム・ウィングマンは摩天楼の夜を駆けブラックレイナに迫る。

しかしレイナはまだ負けていない。

 

「残念だったなぁ!罠カード発動!《聖なるバリア・ミラーフォース》!!」

 

「それがどうしたぁ!押し通る! カウンター(トラップ)、《デストラクション・ジャマー》!押し通れ、フレイム・ウィングマン!!」

 

ナンジョルノの一押しによってフレイム・ウィングマンはミラーフォースの壁すらも突破しブラックレイナに到達する。

そしてその力を振るい、見事ライフをゼロにして見せたのだった。

ライフゼロ、ブラックレイナの敗北でデュエルは決着しフィールドも元に戻る。それまで夜のように暗かった周囲は嘘のように昼間の明るさを取り戻している。

 

「ぐぬぬ、覚えていろー!!」

 

デュエルで敗北したブラックレイナは覆面たちを引き連れて走って逃げていった。

その後ろ姿を見送ったナンジョルノはふぅと息を吐く。

 

「この世に悪は栄えない! このナンジョルノがいる限り!!」

 

キュピーンという効果音を伴って決めポーズを取るジョルノ・ナンジョルノに、子供達は大いに沸き立つ。

そんな子供達の声援を背にナンジョルノも走り出した。

 

ありがとうナンジョルノ、君のお陰で遊園地の平和は保たれた。

頑張れナンジョルノ!この世から悪がなくなるその日まで。

 

 

 

「という訳でお疲れさま、光ちゃん、麗奈ちゃん。」

 

「はい!」

 

「本当に疲れたわ……。」

 

ここは1160(ヒーロー)プロダクション。

南条光や小関麗奈、天道輝などのアイドルが所属する芸能事務所だ。

どこか疲れた様子の麗奈とまだまだ元気に目を輝かせる南条がなんとも対比的だ。

 

「関係者からはやはり大好評でね。この企画で全国巡業するかい?なんて声も出てるくらいだよ。子供達からも人気だし。」

 

ぺらぺらと紙の束を捲るプロデューサー花咲友也の言葉に南条は目を輝かせて食いついた。

そんな南条の行動に麗奈ははぁと溜め息をつくのだった。

 

 

 






E(エレメンタル)・HEROデッキ(ジョルノ・ナンジョルノ)
 
・モンスターカード
E・HEROエッジマン、E・HEROスパークマン×3、E・HEROフェザーマン×3、E・HEROワイルドマン×2、E・HEROバーストレディ×3、E・HEROクレイマン×2、E・HEROバブルマン×2、E・HEROブレイズマン×2、E・HEROネクロダークマン、沼地の魔神王×2、フレンドッグ
・魔法、罠カード
融合×3、ミラクル・フュージョン×2、E-エマージェンシーコール×2、R-ライトジャスティス×2、摩天楼-スカイクレイバー×2、融合賢者×2、サイクロン、未来融合-フューチャー・フュージョン、融合解除、スカイクレイパー・シュート、ヒーロー・シグナル×2、デストラクション・ジャマー、異次元トンネルミラーゲート
・融合モンスター
E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン、E・HEROガイア、E・HEROテンペスター、E・HEROフレイム・ウィングマン×2、E・HEROフェニックスガイ、E・HEROランバートガンナー×2、E-HEROワイルド・ウィングマン、E・HEROワイルド・ジャギーマン、E・HEROセイラーマン×2、E・HEROサンダー・ジャイアント
・サイドデッキ
Get your Game on!、O‐オーバーソウル、HERO'sボンド、ヒーローハート、ヒーローフラッシュ、


ジョルノ・ナンジョルノ
…突如として現れた謎のヒーロー。E・HEROデッキを使い悪のデュエリストと戦う正義の味方だ!
さぁ、君も彼女を応援しよう!!



南条光
…1160プロに所属するアイドル。その実態は正義の味方、ジョルノ・ナンジョルノの正体。しかしそれはちびっこ達には内緒だぞ!
ナンジョルノという正体を隠すために、南条光としてデュエルするときはカードを入れ換え、切り札をテンペストとフレイム・ウィングマン、セーラーマンに切り替えて戦っている。
最近の悩みはエアーマンが手に入らないこと。


小関麗奈
…1160プロのアイドル。悪役として一定の需要があるらしく、南条光とコンビを組んでヒーローショーを行う。
ブラックレイナとしてのデッキは演出の為のヒールデッキで、小関麗奈としてデュエルするときはE(イービル)-HEROデッキを使っている。
最近の悩みは小関麗奈として参加しているイベントでも子供達からブラックレイナと呼ばれること。





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第3話 アイドル交流会



リアルの都合で投稿が遅くなりました。

では本編をどうぞ↓


 

 

この日、ユッコたちはプロデューサーを連れてアイドルたちのデュエル交流会に来ていた。

ユッコたちのプロダクションからの面子はユッコ、亜季、ふじりな、森久保の四人である。

不定期に開かれるこの交流会はプロダクションやアイドルのランクに関わらず招待状が送られ、アイドルの都合によって参加するしないを決めてよいことになっている。ただ、基本的にアイドル側の都合を見て開かれる為、よっぽどのことがない限り多くのアイドルがこれに参加する。

会場を見渡せば名だたるアイドルの姿も見受けられる。

 

「573プロ……“黒翼”の神崎蘭子殿もおりますな。」

 

「”蒼氷”渋谷凛さん、も、います……ね。」

 

「みんな強そう!!」

 

「“糖劇(とうげき)”の佐藤心だぽよ~。」

 

「しゅがーはぁとって呼んでね♪てか呼べ☆」

 

ふじりなの発見したアイドルが本名呼びを聞き付けて笑顔で忠告してきた。

77310(ナナサト)プロに所属するアイドルであり、最近急激に頭角を現してきたアイドルの一人である。

自らを“しゅがーはぁと”と呼び、周りにもその呼び方をするように言っている26歳だ。

 

「ご、ごめん……ぽよ……。」

 

「分かればよし☆若いからって舐めんなよ♪」

 

笑顔の奥に隠された威圧感にさすがのふじりなも狼狽えて素直に謝罪した。

やはりデュエリスト、瞳の中の威圧感は本物らしい。しかし素直な謝罪によってその迫力も引っ込み笑顔のままどこかに走っていった。

 

「あ、あんなすごい人もいるなんて……む~り~……。森久保は、帰りますぅ~……。」

 

「ののっち、帰っちゃだめぽよ~!」

 

こっそりとその場を去ろうとする森久保の服を掴んでふじりなが呼び止める。

逃走に失敗した森久保は諦めたのか大人しくなり、ふじりなの小脇に抱えられた。

そんなこんなして彼女たちが懇意にしている他プロダクションのアイドルたちと会話を交わし、交流を深めているとあちこちでデュエルが始まる。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」

 

「「デュエル!!」」

 

 

あちらこちらで聞こえてくるデュエル開始の言葉を聞いて、ユッコはもう我慢できなくなったのか亜季を連れて走っていった。

そんな二人を見送ったふじりなは081プロに所属する向井拓海を見つけるとそちらに歩み寄り談笑を始める。おどおどとして、やや内気な森久保は盛り上がる周囲を見渡して隅っこの方に座るのだった。

 

 

「誰とデュエルしようかな~!」

 

「おっと、ユッコ殿。このカードを。」

 

「ん~?なになに?」

 

ユッコと亜季がキョロキョロと対戦相手を探して歩き回っていると突然亜季が思い出したように声をあげてカードを差し出した。

そのカードを受けとるとユッコは亜季の顔とカードを交互に見る。

 

「藤居殿に渡されたのであります。ユッコ殿の今日のラッキーカードだから、と。」

 

「へぇ~じゃあ早速……。」

 

亜季から渡されたラッキーカードを早速デッキに組み込むと、二人と近い場所から歓声が上がる。

その先に目をやれば、綺麗な茶髪をチョココロネ風ツインテールにしたアイドルと眼鏡をかけた黒髪のアイドルがいた。

既に決着はついており、眼鏡の方が膝をついて悔しそうに床を叩いている。

 

「すごい……さすが“秒読み”の北条加蓮……。」

 

「あの上条春菜がなにも出来ないまま負けた……。」

 

「悔しいだろうね。あの負け方……。」

 

ざわ……ざわ……と俄に騒がしくなる周囲をよそに、ダブルチョココロネヘアーの北条加蓮はその場を立ち去ろうとする。

そんな加蓮を追いかけて片腕を掴んだユッコは笑いかけた。

 

「加蓮さん!加蓮さん!」

 

「えっと……3199(サイキック)プロの、堀裕子……ちゃん?」

 

「いえーす! ねね、デュエルしない?」

 

こくこくと素直に頷いたユッコは幼子のように無邪気な笑顔を浮かべる。

そんなユッコの態度に加蓮はそのチョココロネ髪を撫でるとデュエルディスクを構えた。

 

「いいよ。でも、私はかなり強いからね。」

 

「望むところ!強敵とのデュエル!サイキック燃える~!!」

 

にひひと無邪気な笑顔のユッコに対して加蓮は小さく笑い、ディスクにデッキをセットした。

それに対してユッコも対抗するようにデッキをセットして距離を取る。カードに描かれたキャラクターが空間の中を駆け回るというソリッドビジョンの都合上、デュエリスト同士の間はそれなりに広くなくてはならない。

そのため、1度交渉してから距離を取るのだ。

 

「「デュエル!!」」

 

先攻は加蓮で二人のデュエルが始まる。

 

 

 

 

 





加蓮の二つ名でどんなコンセプトのデッキか分かる人いるのかな?

ではまた次回でお会いしましょうノシ



自称サイキックデッキ(堀裕子)
 
・モンスターカード
サイコウィールダー×3、サイコトラッカー×3、サイコ・エンペラー×2、サイコ・コマンダー×2、テレキアタッカー×2、サイコジャンパー×2、サイコ・エース×2、機界騎士アヴラム×3、星杯に選ばれし者×3、寡黙のサイコプリースト×2、ビットロン×2、ビットルーパー×2
・魔法、罠カード
緊急テレポート×3、アポート、フューチャー・グロウ、サモン・ダイス
念導力×3、サイコチャージ×3
・エクストラデッキ
ハイパーサイコライザー×3、ハイパーサイコガンナー、サイコ・ヘルストランサー×2、

※今回はサイコ・ジャンパーを1枚外し、亜季から受け取ったラッキーカードをいれています。


堀裕子

3199プロの看板アイドルで自称サイキック系エスパーアイドル。
使用するデッキは「サイコ」とついたモンスターを主軸にしたサイキックデッキ。
もうひとつはPSYフレームデッキを使用する。



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第4話 “秒読み”の加蓮

 
今回の加蓮が使用しているデッキは筆者が身内ノリで開かれるプチ大会でネタとして使ったデッキです。

では本編をどうぞ↓



 

 

「私の先攻、ドロー。」

 

ユッコと加蓮のデュエル、ドローした先攻の加蓮はニヤリと笑うとドローしたカードを発動した。

 

「魔法カード《終焉のカウントダウン》を発動!ライフを2000払うね。」

 

「早い!」

 

魔法カード《終焉のカウントダウン》の効果によって、残り20ターン、もっと言えばユッコはあと10回のバトルフェイズで加蓮のライフ残り6000を削りきらなくてはならない。

その後、加蓮はモンスターを一体伏せ、カードを1枚伏せてターンを終えた。

残り19ターン。

 

「ドロー!私のターン。場に《星杯に選ばれし者》を召喚して伏せモンスターに攻撃!」

 

「通すよ。モンスターは《素早いモモンガ》、戦闘で破壊されたことで効果を発動するね。私はライフを1000回復。そしてデッキから……2体、《素早いモモンガ》を守備表示で召喚するよ。」

 

加蓮のフィールドに2体のモンスターが追加され、ユッコは場に1枚伏せてターンを終える。

残り18ターン。

 

「ドロー。……場に1枚伏せてターンエンドだよ。」

 

残り17ターンとなり、ユッコの手番。彼女がドローした時、加蓮がトラップを発動する。

 

(トラップ)カード、《威嚇する咆哮》。このカードの効果で裕子ちゃんはこのターン攻撃宣言ができないよ。」

 

「ぐぬぬ……。なら、《サイコ・エース》を召喚してターンエンド……。」

 

残り16ターン。加蓮はドローするとそのまま何もせずにターンを終わらせ、残り15ターンとなる。

そしてユッコのターン。

 

「ドロー!自分のフィールドにレベル3モンスターがいるから手札から《サイコトラッカー》を守備表示で特殊召喚。」

 

手札からチューナーモンスターが登場し周りの観客たちがざわつく。

そしてそれを聞いているユッコは自慢気に笑う。

 

「レベル3《聖杯に選ばれし者》にレベル3《サイコトラッカー》をチューニング!」

 

きゅぴーん!という音と共にフィールドのモンスター2体が光を放ち、観客たちの視線を集める。

それに負けじとユッコも高々と1枚のカードを持つ右手を掲げた。

 

「サイキックに燃え上がれ!このフィールドを駆け抜けろ!唸れサイキック!!シンクロ召喚!《ハイパーサイコライザー》!!」

 

白銀に輝く肉体に、2輪の下肢を唸らせる戦士がユッコのフィールドに姿を現した。

シンクロ召喚によって場は更に盛り上がり、足を止めて観戦する者も出始める。

 

 

「ほう?共鳴を持ちし軍団か……。(なるほど、シンクロ主体のデッキですね。)」

 

「《終焉のカウントダウン》の発動を止められなかった時点でゴリ押ししかないんだ。」

 

神崎蘭子や早坂美玲が席に座り観戦し、

 

「そう……ゴリ押し。デュエルモンスターズが誕生してからずっとあった戦法、パワーカードによる蹂躙。」

 

「そう……。それがもっとも手っ取り早い。でも、うちの加蓮はそれを許すほど温くない。」

 

北条加蓮と同じ事務所、トライアド・プリムスの渋谷凛に神谷奈緒は観客の端で静かに見守る。

 

 

「いけ!ハイパーサイコライザー!サイキックに攻撃だ!」

 

(トラップ)発動!《攻撃の無力化》。ハイパーサイコライザーの攻撃を無効化し、裕子ちゃんのバトルフェイズを強制終了させるよ。」

 

「むむむ……ターンエンドだよ。」

 

攻めの1手を無効化されたユッコはターンエンドを宣言する。これで残り14ターン。

加蓮はドローすると、場に2枚伏せてターンを終える。

残り13ターンとなった。

 

「こっちのターン!今度こそ!」

 

ユッコはドローして1度場を確認する。

加蓮のフィールドには伏せカードが2枚に《終焉のカウントダウン》、モンスターは守備表示の《素早いモモンガ》が2体、彼女の手札は3枚だ。

一方ユッコはドローして手札が5枚。場にはサイコ・エースにハイパーサイコライザー。伏せカードが1枚という状況。

 

「《機界騎士(ジャックナイツ)アブラム》を召喚! サイコライザー!アブラム!いけ!」

 

「通すよ。」

 

2体の攻撃で《素早いモモンガ》は2体とも破壊され効果でライフが回復する。

これで加蓮のライフは9000だ。そして《サイコ・エース》による追撃でライフは8000になる。しかしそれでもまだライフは8000でスタートラインと変わらない。

ユッコはターンエンドして加蓮に手番を渡した。これで残り12ターン。

 

「ドローして、《天使の施し》を発動。3枚ドローして……《魂を削る死霊》と《魂の氷結》を捨てるよ。で、ターンエンドね。」

 

手札入れ替えからのターンエンド。残り11ターン。

ユッコに手番が移り、ドローする。

 

「裕子ちゃんのスタンバイフェイズに割り込んで発動、《覇者の一括》、この効果で裕子ちゃんのバトルフェイズをスキップするよ。」

 

「なっ……!?」

 

徹底した攻撃封じにユッコは驚愕する。手札と場、そして加蓮の顔に目線を移しながら思考を巡らせる。

そしてカードを1枚伏せてターンを終える。これで残り10ターンとなった。

 

「こっちのターン、ドローして……。カードを1枚伏せてターンエンド。」

 

残り9ターン、あと5回とないバトルフェイズでユッコは加蓮の牙城を崩さなくてはならない。

 

「……《サイコ・エース》をリリースして《サイコ・エンペラー》を召喚。3体のサイキック族がいることで1500ポイント、ライフを回復するよ。」

 

「通すよ。」

 

上級モンスター、シンクロモンスターが並んでも加蓮の余裕は崩れない。

それほどこの場面を乗り切る自信があるのだろう。その余裕かましているキレイな顔を吹っ飛ばしてやると言わんばかりにがら空きの加蓮に攻撃を仕掛ける。しかし……

 

「手札から《速攻のかかし》を捨てて効果を発動。その攻撃を無効化し、バトルフェイズを強制終了させるね。」

 

「っ!?……ターンエンド。」

 

速攻のかかしの効果でまたも攻撃をあしらわれたユッコは歯噛みして悔しがりターンを渡す。

そして加蓮はドローしたカードを見るとニヤリと笑う。

 

「魔法カード《一時休戦》を使用するね。お互い1枚ドローして、次の裕子ちゃんのターン終了までダメージはゼロになるよ。」

 

「ぐ、ぐぬぬ……!!」

 

さらに攻撃の手番を減らされた裕子は顔を歪めて悔しがる。

残り7ターンだ。

 

 

「本当にえげつないデッキだなあれ。」

 

「戒めを以て(しもべ)の魂を縛るというならば、翼で飛び越えればよい。」

 

「そりゃ蘭子のデッキなら出来るだろうけどよ。」

 

(((……なんで理解できるんだ?!)))

 

冷静に考察する早坂とそれに返答する蘭子、端から見れば蘭子側の解答が解答になっていないように聞こえるが、デュエリストならぱ理解できるのだ。……恐らく。

しかしながら周りの観客たちは二人の会話、もっと言えば蘭子の言葉を理解できず、解説が現れることを今か今かと待っていた。

 

 

「あと7ターン……。勝てたか……?」

 

「そう、だね……。施しで死霊を落としたってことは無効化系のカードは揃ってるってことだろうし。」

 

「だな……。確か以前の大会の時の堀裕子のデッキにはカウンター(トラップ)はなかったはず。」

 

「とすれば、何もなければ加蓮の勝ちか……。」

 

 

 

「ちぃ……! セットしてた魔法カードオープン!《緊急テレポート》! サイコトラッカーを特殊召喚!」

 

「おっ?」

 

「またチューナーモンスターを?」

 

魔法カードまで使用してのチューナー召喚に周りも目を見開く。

 

「レベル4《機界騎士アブラム》にレベル3《サイコトラッカー》をチューニング!!」

 

2体目のシンクロ召喚に場は再度沸き立つ。

 

「闇を光に変換する乙女よ!サイキックに現れろ!!シンクロ召喚! レベル7、《サイコ・ヘルストランサー》!!」

 

「2体目だ!」

 

「いいぞー!サイキック~っ!!」

 

3体目の上級モンスターがフィールドに出現し、場が沸き立つ。

しかもヘルストランサーの攻撃力はサイコトラッカーの効果により3000という、あの海馬瀬人の嫁“青眼の白竜(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)”に匹敵するほどになっている。

だがしかし、《一時休戦》の効果で攻撃しても意味がないため、ユッコはそのままターンを終える。

残り6ターン。

 

「さて……ドローしてっと。場に二枚セットしてターンエンド。」

 

残り5ターンとなって手番がユッコに渡るものの彼女の顔色は優れない。

 

(かなり厳しい状況……。これはサイキックまずい……。あの場の4枚の伏せカードはまず間違いなく妨害系、あと3ターンか4ターンであの壁を突破か……、行けるかな。あのカードさえ来れば……!!)

 

恐れることなくユッコは瞳に闘志を燃やして山札に手をのせてカードを引く。よくも悪くもデュエルに対してまっすぐなのがユッコの良さだ。

ドローしたカードを見てユッコは笑う。

 

「サイコ・エンペラーをリリース!来い!《人造人間‐サイコ・ショッカー》!!」

 

「え……!?」

 

「おお! あのカードは私が渡したラッキーカード!」

 

サイキック族モンスターではない、しかも事前情報のないカードの登場に加蓮は目を見開いて驚く。そしてさらにサイコショッカーの効果で苦虫をかみつぶしたような顔になりそれまでの余裕が嘘のように消え去る。

サイコ・ショッカーの効果により、お互いはもう罠カードを発動できないのだ。勝利のための手段が罠カードに大きく依存している加蓮のデッキはこの手のカードに滅法弱いのだ。

しかも場にいるサイコライザー、ヘルストランサー、サイコ・ショッカーの攻撃力の合計はサイコトラッカーの効果も合わさり8000、1ターンで加蓮のライフを空にできる。

 

「やっちゃえ!サイキック!!」

 

「そ、速攻のかかしを捨てて無効化!!」

 

手札から速攻のかかしを捨てて難を逃れた加蓮であったが、しかし彼女の手札には覇者の一括などしかなく、壁にできるモンスターは一枚もない。

そうして形成逆転のカードも引けず次のターンの総攻撃で加蓮は敗北したのだった。

 

 

「やられた……。まさかサイコ・ショッカーだなんてね。」

 

「あはは、ふじともちゃんの占いでね。ラッキーカードらしかったからさ。」

 

「へぇ、藤居ちゃんの占いが当たったんだ。」

 

ユッコの言葉に加蓮が驚いたように目を見開く。それもそのはず、藤居朋は占い好きのアイドルとして知られているが彼女の占いが当たったことは数えるほどしかない。

そんなわけで付いたあだ名は「“当たらぬ八卦”の藤居朋」だ。そんな藤居朋の占いで判明したラッキーカードが勝ちにつながったことは加蓮にとって驚きのようである。

そのまま二人は談笑しながら加蓮を迎えに来た凛や奈緒とも親交を深めるのだった。

 

 

 




 
カウントダウンデッキ(北条加蓮)

・モンスターカード
魂を削る死霊×3、速攻のかかし×3、素早いモモンガ×3
・魔法、罠カード
終焉のカウントダウン×3、魔鍾洞×2、強欲で金満な壺×2、強欲で謙虚な壺×2、成金ゴブリン、テラ・フォーミング、一時休戦、天使の施し
メタバース×3、威嚇する咆哮×3、和睦の使者×3、覇者の一括×2、攻撃の無力化×3、ドレインシールド×2、光の護封剣、激流葬
・エクストラ
適当に15枚

・北条加蓮
906(クール)プロ所属の病弱系アイドル。病弱キャラは強キャラという法則に則り、作中でもかなりの強さを誇る。今回はサイコ・ショッカーによって惜敗するも本来のユッコのデッキなら半分詰んでいた。
あと、まだ出てきてはいないが、とあるアイドルの古代の機械(アンティーク・ギア)デッキにも弱い。


ではまた次回でお会いしましょうノシ




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第5話 登ってこい


今回の話で筆者&友人の行ったデュエルはたったの一回です。
見事に決まりました。

では本編をどうぞ。


 

 

 

 

さてまだ時間は継続し、アイドル交流会。

ユッコが加蓮とデュエルが終わってから暫く経った時のこと。会場の隅にいる森久保が騒ぎを聞きつけたことから始まる。

 

 

「あぁん?!やんのか!」

 

「上等だゴラァ!!」

 

声だけで分かる男同士の言い争い。それもどちらも語気は荒くかなり苛立っていることも容易に想像ができる。

森久保もその声を聞き付けて物陰から覗き込むと、二人の男性が睨みあっていた。二人とも顔がやや紅潮しており、側には空になった酒類の缶が置いてあることからも酔っていると分かる。

 

 

 

「うっせんだよ、この節穴がよぉ! 」

 

「んだゴラァ! 茄子さんの魅力もわかんねぇダボが何を言ってんだテメェ!」

 

「……ひ、ひぃ……も、森久保は、退散しますぅ……。」

 

掴み合いの喧嘩を始めそうなほど険悪な空気になり、周りの人達も目線を合わせないようにして顔を背けている。酒に飲まれているのか次々と様々なアイドルの名前を出して二転三転していく男たちの言い争いの話題。しかし場の空気は一向に良くならない。

そんな状況になり、森久保も巻き込まれないようにその場を後にしようとした。だが、その森久保の足が次の男の言葉で止まる。

 

「堀裕子とかいう訳わかんねーのよりも、茜ちゃんのが可愛いに決まってんだろ!」

 

「3199プロのアイドルなんざ比較に出すなよ! マトモな奴がいねぇじゃねぇか!」

 

酒に酔っているからか、周りへの迷惑を考えずに他のアイドルのことも口に出す二人。

その言葉が徐々にヒートアップしていくかと思われたときに森久保が言葉を投げ掛ける。

 

「あ、あの……取り消して、ほしい、ですけどぉ……。」

 

男たちのすぐ近くまで近寄り、震える声を絞り出して告げる森久保。

視線は泳いでおり、おどおどとしている。自分を奮い立たせる為か拳を力強く握りしめており、爪が食い込んでいる。

 

「あ?誰だよ?」

 

「こいつ、3199プロのアイドルか?」

 

「も、森久保の、ことは、バカにしてもいいです……けどぉ、でも、ユッコさんや、亜季さん、里奈さんの、ことを、バカにしたのは、取り消して、ほしいんです、けどぉ……。」

 

ぷるぷると小刻みに震える小さな体、それでも目をしっかりと男たちに向けていた。

しかし……

 

「だまってろチビ!」

 

「あぅ……!?」

 

森久保の言葉は届かず、男の一人によって突き飛ばされら尻餅をついてしまった。

さすがにやり過ぎた、と周りの人達も思ったのかざわざわと騒ぎになる。

 

(やっぱり、森久保は、森久保はぁ……。)

 

騒ぎの間も森久保は尻餅をついたまま俯いていた。

目元には涙が滲み、ぐすぐすと泣いている。そんな森久保を見た二人の男はざわざわと騒ぎが大きくなり始めているその場から逃げ出そうとしたのだが、そうは問屋が卸さなかった。

背後から彼らにそれぞれ肩を組むように腕が回されたのだ。

 

「おい……、アタシんダチになにしてんだ?」

 

「それもアタシの事務所の後輩ぽよ~♪」

 

現れたのは向井拓海と藤本里奈だった。元特攻隊長、悪鬼のような形相で森久保を突き飛ばした男を睨み付けている。

そしてふじりなも、口調こそ笑っているもののその瞳は全く笑っていない。

 

「お、お、俺らはわるくねぇし!」

 

「そうだよ! 俺らが話してたら、そこのチビが勝手に……!!」

 

「嘘っぱち言うなー!」

 

「俺らは見てたんだかんな!」

 

拓海とふじりなの腕を払いのけて言い逃れしようとした二人に対して周りの人たちから野次が飛ぶ。

それによって拓海の睨みつける瞳はますます鋭くなり、ふじりなの眼付も猛禽類のような冷徹さを見せている。その様に恐怖を抱いたのか、男二人はデュエルディスクを腕に嵌めた。

そんな二人を見て拓海もふじりなもデュエルディスクを起動させる。

 

「初めっからそうしろよ。そっちのが手っ取りばえぇんだからよ。」

 

「やるならマジだかんね? ハンパなデュエルじゃケガするだけじゃん?」

 

「じょ、上等だよ。」

 

「ふん、か、かか、かかって来いよ……。」

 

睨みつけてくる拓海とふじりなの眼光に男二人の声は震えている。そんな男二人に拓海がこう言い放った。“ハンデをくれてやる”と。

 

「は?」

 

「こっちはライフ4000、そっちは倍の8000でいいぜ。」

 

「な、舐めてんのか?!」

 

「あん? どうせそうしねぇと速攻でおわんだから気にすんなよ。」

 

男たちの言葉にも拓海は強気だった。必ず勝てるという確信を持った瞳をしている。それはふじりなも同じようで一点を見つめたまま黙っている。

 

「い、いいぜ。あとでほえ面かくなよ。」

 

「行くぞ……。」

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

四人一斉の掛け声で始まったデュエルは拓海が口火を切る。

 

「ドロー! 行ってこい、《ジェムナイト・ガネット》!! そんでフィールド魔法《バーニングブラッド》発動!!」

 

いきなりの速攻。フィールド魔法の効果により炎属性モンスターの攻撃力は500ポイント上昇し、ジェムナイト・ガネットの攻撃力は2400と、上級モンスター並みになっている。

その後、拓海はターンエンドを宣言し手番は男Aに渡る。男Aはドローすると場にモンスターをセットし、カードを一枚セットしてターンエンドを宣言した。

 

「アタシのターンだぽよ~! ドロー!モンスターを一体セット、カードを二枚セットしてターンエンドぽよ。」

 

「なら俺のターンだな。《サファイアドラゴン》を召喚してそっちの伏せモンスターに攻撃!」

 

男Bの召喚したサファイアドラゴンによってふじりなのセットしていたモンスター《UFOタートル》は破壊され、効果を発動する。

その効果でふじりなは《プロミネンス・ドラゴン》を特殊召喚し、さらに魔法カード《地獄の暴走召喚》を発動した。そうしてふじりなのフィールドにはバーニングブラッドの効果によって攻撃力2000のモンスターが三体並び、その影響を受けて男Bのフィールドにもサファイアドラゴンが三体並ぶ。だが……

 

「アタシんターン!! 《爆炎集合体ガイア・ソウル》を召喚!! そのままテメェの伏せモンスターを攻撃!」

 

攻撃力2500になったガイア・ソウルの攻撃により、男Aの伏せていた《巨大ネズミ》を破壊する。しかし効果が発動し場に二体目の《巨大ネズミ》を特殊召喚した。

だが……

 

「おらもう一丁!!」

 

特殊召喚された巨大ネズミをジェムナイト・ガネットで破壊し、今度も巨大ネズミを特殊召喚する。そして拓海はエンドフェイズを迎える時に魔法カード《火霊術‐「紅」》を使用し強化されたガイア・ソウルの攻撃力2500分のダメージを男Aに与える。

これで男Aのライフは4550というダメージを受けて残り3450となった。

 

「ぐぬぬ……俺のターン。モンスターを一体セット。《巨大ネズミ》を守備表示に変更してターンエンドだ。」

 

「アタシのターン! セットカードオープン!《ブレイズ・キャノン・マガジン》!そしてそれを墓地にリリースして……コイツを召喚ぽよ~!」

 

キュピーンと音がしそうなほど光を反射するカードを掲げてふじりなは宣言する。

 

「激アツマジヤバな悪魔っ!今ここに出てこい!アゲアゲで行くよー!《ヴォルカニック・デビル》!!」

 

特殊召喚されたヴォルカニック・デビルの攻撃力は強化分も含めて3500、今男たちの場に出ているモンスターは1900のサファイアドラゴン。

男Bはこの時敗北を覚悟した。

 

「ヴォルカニック・デビルでサファイアドラゴンに攻撃!」

 

「がっ!?」

 

まずは一体目のサファイアドラゴンが破壊され戦闘ダメージの1600が与えられる。さらにヴォルカニック・デビルの効果が発動して、男Bのフィールドのモンスターが全て破壊された。

そうしてがら空きになった男Bに対してふじりなはプロミネンス・ドラゴン三体の総攻撃を仕掛けて6000のダメージを与える。これでこのターンの合計は7600ダメージ。男は耐えきったと、驚愕を圧し殺して安堵したがそれはまだ遅い。

 

「エンドフェイズ、《プロミネンス・ドラゴン》の効果発動ぽよ☆相手ライフに500のダメージを与えるよ~!」

 

「なぁ!?」

 

ふじりなは男Bに500ポイント、男Aに1000ポイントのダメージを与えてターンを終える。

これで男Aとライフは残り2450となった。ふじりなのターンが終わるも、男Bは既にライフがゼロになっているため、手番は拓海へと渡る。

 

「ドロー!おっしゃぁ!魔法カード《一族の結束》を発動! これでアタシんフィールドのモンスターは攻撃力800アップ、バーニングブラッドと合わせて1300のアップ!!」

 

「なに?!」

 

「行くぜオイ! アタシは《ジェムナイト・ガネット》をリリース! 切り札登場!エンジン全開だ、フルスロットルで回せよ!! 《炎神機(フレイムギア)‐紫龍》!!」

 

拓海が召喚したのは炎族の最上級モンスター、その攻撃力は強化も合わせて4200を記録している。

そんな大型切り札の登場に男Aは目を向いて驚愕している。

 

(だ、大丈夫だ、まだ、耐えられるはず、壁は2体いるんだし、片方は《素早いモモンガ》、これでライフを回復しつつ耐えて逆転まで……。)

 

「耐えきれると思ったろ。残念だったな。」

 

「は……?」

 

「この《炎神機‐紫龍》には貫通効果がついてんだよ! テメェの《巨大ネズミ》の守備力は1450、こっちの攻撃力は4200!」

 

「な、なっ……?!」

 

想定の外にあった貫通効果の存在に男Aはたじろぐ。

そうして炎神機‐紫龍の攻撃によって男Aのライフもゼロになり、決着した。

一瞬での決着に周りもざわつきを抑えられないでいる。

 

「うっし……。アタシらの勝ちだな。」

 

「とりあえず、ののっちに謝ってもらおっかな☆」

 

「ぐ、ぬぬぬ……。」

 

デュエルで敗北した男AとBは視線を泳がせている。

ふじりなと拓海は森久保を間に挟みながら男二人を睨み付け、無言の圧をかけていた。

 

「す、すまん……。」

 

「突き飛ばして、悪かった……。」

 

男AとBは一言そう謝ると一目散にその場から走り去った。

その間も森久保はべそかいており、それを見かねた拓海が森久保の頭に手を乗せる。

 

「なんで、泣いてんだ?」

 

「……うぅ……。」

 

拓海の問い掛けに森久保は俯いたままで何も言わない。

 

「……尻餅ついたのが、まだ痛ぇのか?」

 

「……ぐす……。」

 

その問い掛けを森久保は首を振って否定する。

 

「……突き飛ばされた自分が情けなくて泣いてんのか?」

 

「……うぅ……えっく……。」

 

二つ目の問い掛けも森久保は否定する。

それを見て納得がいったように拓海は頷き、森久保と視線の高さを合わせるようにしゃがんだ。

 

「悔しかったんだろ? 仲間を、ダチをバカにされたのに、何も出来なかったことが。」

 

「……は、い……。」

 

今度の問い掛けを森久保は肯定する。手で次々と流れてくる涙を拭いながら、何度も、何度も首を縦に振って。

そんな森久保の姿を、優しい目で見守っていた拓海はパンっと手を叩いて立ち上がると、一際乱暴に森久保の頭を撫でた。

 

「ふわっ?!…………?」

 

「その気持ちがあんなら、強くなれるさ。アタシんプロデューサーの受け売りだけどな。ダチさえいれば、それだけで戦う理由になる。そんでもって、ダチの為に戦える奴は、どこまでも強くなれるってな。」

 

それだけ言うと拓海はわしわしと撫でていた手を退けて背を向けた。

ひらりと特攻服の裾が風をはらんで舞い、森久保の鼻先を撫でる。そして拓海は右手の人差し指を立てて、振り向かずに言葉を紡ぐ。

 

「お前なら登ってこれる。さっさと上がってこい、森久保ォ!」

 

それだけ告げて後は何も言わずに拓海はその場を去っていった。

そんな彼女の後ろ姿を見つめていた森久保はそれまできつく握りしめていた拳をほどき、胸に当てるのだった。

 

 

 

 







・炎族デッキ(向井拓海)
 
・モンスターカード
炎神機‐紫龍、爆炎帝テスタロス、炎帝テスタロス×2、火口に潜む者×3、炎帝近衛兵×3、ジェムナイト・ガネット×3、爆炎集合体ガイア・ソウル×3、ラヴァル・ランスロッド×3、火炎木人18×3、炎の精霊イフリート×3、名匠ガミル、ヴォルカニック・エッジ×3
・魔法、罠カード
一族の結束×3、真炎の爆発×3、火霊術‐「紅」×3、バーニングブラッド×2

向井拓海
…081プロに所属する元特攻隊長のアイドル。バーニングブラッドによる強化を活かしたハイビートデッキを使う。
 
 
 
炎属性デッキ(藤本里奈)
 
・モンスターカード
ヴォルカニック・デビル×2、プロミネンス・ドラゴン×3、バルキリー・ナイト×3、ヴォルカニック・ロケット×3、ヴォルカニック・バックショット×3、ヴォルカニック・バレット×3、ヴォルカニック・エッジ×3、炎帝近衛兵×3、UFOタートル×3、ヴェルズ・オ・ウィスプ×3
・魔法、罠カード
ブレイズ・キャノン‐トライデント×3、ブレイズ・キャノン×3、地獄の暴走召喚×2、ブレイズ・キャノン・マガジン×3

藤本里奈
…ユッコらと同じ3199プロ所属のアイドル。ヴォルカニックを中心としたバーンビートデッキを愛用する。
趣味はツーリングであり、時おり向井拓海をはじめとしたバイク仲間と走っている。





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第6話 アイドル達とプロダクション


時間掛かったなぁ……。


では本編をどうぞ↓


 

 

 

アイドル事務所には様々ある。

純粋にデュエリストとしての実力を磨かせるプロダクション、アイドルとしての面を磨かせるプロダクション、アイドル本人の意思を尊重するプロダクションなど、方針はそのプロダクションによって多種多様だ。

大手プロダクションではアイドル本人の意思を尊重することが多く、特に573(コナミ)プロダクションには個性豊かなアイドルが揃っている。

 

 

「ふ、煩わしい太陽ね……(おはようございます!)。」

 

「やぁ、おはよう。」

 

「にょわー☆おはようだにぃ♪」

 

「ん~……みんな、おはよ……。」

 

朝に出社してきた神崎蘭子、二宮飛鳥、諸星きらりを出迎えたのはクッションの上で眠そうに目蓋を開けてある双葉杏だ。

ほぼ事務所に住み込みの彼女はこうして1日の始まりを告げる役目を負わされている。

中々に個性の強い面々だが、根はまっすぐなアイドルであり、自分を高めることに妥協はない。

 

「蘭子ちゃん、今日もイベントね。君のデッキで盛り上げてよ。」

 

「くく、よかろう。我が(しもべ)たちの凶宴を見せようぞ!(分かりました! 精一杯私のデッキで盛り上げて見せます!!)」

 

「飛鳥も、蘭子と同じイベント。573プロツートップの実力、見せてやってくれ!」

 

「ふふ、たまには騒ぐのも悪くない。」

 

担当から今日の予定を聞いた二人は早速デッキ一式を持って外出の準備をして、事務所を出発。

そして杏ときらりを担当しているプロデューサーはぺらぺらと資料を捲ると杏の脇を抱き抱えてきらりに預ける。

プロデューサーの無言の行動に、目で真意を読み取ったきらりは杏を肩車して事務所から連れ出して行った。今日の二人はオフである。

 

「杏ちゃん、ショップにぃ、いっくよぉ~☆」

 

「はいはい……仕方ないなぁ……。」

 

きらりの肩に乗せられた杏は逃げることもせずにただきらりに運ばれる。

“あんきら”というコンビ名で活動する二人はオフでもこうして一緒にいることが多い。

ただでさえ長身で目立つきらりが杏を肩車しているのともあって周りの視線のほとんどは二人に注がれている。

 

「あ、あの二人って……」

 

「573プロの……?!」

 

「あのシルエットは間違いないって……。 」

 

「生で見たのは初めてだ、感激~!!」

 

「でゅ、デュエルしてくれないかな……?」

 

彼女たちの出現に街中の一角はざわざわと騒がしくなる。今をときめくアイドルの登場で、人だかりが出来るのは、今も昔も変わらない。

そんな人だかりの中から二人の人影が飛び出してきらりたちの前に現れる。

 

「イィィヤァアア!!」

 

「そこの二人、ちょっと待ってぇ!」

 

その二人組、一人は赤黒の忍者装束に身を包んだ小柄な少女であり、もう一人は傾いた衣装に身を包み、目を薄く閉じたようにして笑う少女だった。

カラテシャウトと共にエントリーしてきたその二人を見てきらりは小首を傾げるが、杏は面倒臭そうに溜め息を吐く。

 

1059(センゴク)プロの……浜口と、丹羽?なんで杏たちに?」

 

「ふっふっふ……! それは今からデュエルを申し込むからです!!」

 

「私たち“戦国ペア”が最強のコンビって、次の大会で証明する……その宣戦布告だよ。」

 

「ん~?それで、二人はぁ、きらりたちと、デュエルするの?」

 

きらりは誰よりも早くデュエルディスクを装着して二人に尋ねる。

そんなきらりに浜口あやめと丹羽仁美も同じようにデュエルデュエルを腕に嵌め構えた。それを開戦の同意と捉えたきらりは肩から杏をおろし、杏にもデュエルディスクを嵌めさせる。“面倒くさい”とぶつくさ文句を言う杏であったものの、最後はきらりのごり押しによって押し通され、タッグデュエルが幕を開けた。

 

 

「ドッロー!手札からぁ♪《トゥーン・キングダム》を発動するにぃ☆」

 

きらりがカードをディスクにセットすると、彼女の背後に絵本が現れその中から大きなお城が出現した。

そして、

 

「《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》を召喚♪おいで~☆」

 

お城の中から二人のデフォルメされたエルフが現れた。

そしてそのまま彼女はターンを丹羽仁美に明け渡す。

 

「ドロー……、《六武衆の結束》を発動。《六武衆の露払い》を召喚し、ターンエンド!」

 

「えっと、ドローして……、モンスターを一体セット。カードを二枚伏せてエンド。」

 

「ならばドロー!」

 

手番の回ってきた浜口あやめが勢いよくドローして、自分のターンをアピールする。

そして手札を確認するとニヤリと笑う。

 

「手札から《機甲忍者アース》を特殊召喚!さらに、そのアースをリリースして、《黄昏の忍者将軍‐ゲツガ》を召喚です!」

 

初手からの最上級モンスターの登場に周囲の観客も沸き立つ。だがしかし杏ときらりのどちらも焦ってはいない。

むしろ余裕さえ見せている。

 

「トゥーン・キングダムのせいでヂェミナイエルフは対象にできない……ならばそちらに!イィィヤァアア!!」

 

「撃破された《サイバーポッド》の効果発動。フィールドのモンスターを全て破壊するよ~。」

 

「その効果に対して、《トゥーン・キングダム》の効果発動だにぃ☆デッキトップのカードを1枚除外して、破壊を防ぐよぉ♪」

 

「くっ……ゲツガが……!?」

 

「この……!」

 

サイバーポッドによって破壊されたモンスターは墓地に送られる。そして、四人はデッキから5枚ドローしてレベル4以下のモンスターを召喚する。

 

「きらりはぁ、《トゥーン・仮面魔道士》と、《トゥーン・マーメイド》を攻撃表示だにぃ☆ハピハピ♪」

 

「……私は《影六武衆‐ゲンバ》と《六武衆の御霊代》を召喚。」

 

「えっとね~、《ニードルワーム》と《スフィア・ボム 球体時限爆弾》を裏側守備表示で。」

 

「ならば《忍者マスターSASUKE》と《忍犬ワンダードッグ》を攻撃表示!」

 

きらりの場に三体、他の三名の場には2体のモンスターが揃い、あやめはターンを終えてきらりに手番が回る。

 

「ハピハピドロー♪にょわ~☆ヂェミナイエルフを対象にして《トゥーン・ロールバック》を発動するにぃ☆」

 

そのままきらりは《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》の二回攻撃3800を丹羽仁美にぶつけて手札二枚を捨てさせる。

そして《トゥーン・マーメイド》と《トゥーン・仮面魔道士》でさらに丹羽のライフを削る。

これで丹羽のライフは残り1900となり、次のヂェミナイ・エルフの攻撃で落ちる段階まで来た。

そしてきらりがターンを終えて、追い詰められた仁美のターン。彼女はドローして息をつく。

 

「《影六武衆‐ゲンバ》で《六武衆の御霊代》をチューニング!シンクロ召喚、駆けろ《真六武衆‐シエン》!!」

 

六武衆のシンクロモンスターが出現し、場が大いに盛り上がる。

そしてそのままの勢いで杏の場のモンスターに攻撃する。そのモンスターはニードルワームであり、効果によって丹羽はデッキから5枚墓地へとカードを送る。

その後カードを伏せた仁美はターンを終えて杏の手番となる。

 

「手札から《二重召喚》を使用して、場に2体のモンスターをセット。さらにカードを伏せてエンドだよ。」

 

これでモンスターが三体場に並んだ杏のフィールド。それを切り崩すためにあやめがドローする。

 

「ワンダードッグをリリース!《渋い(シルバー)忍者》を召喚! 行け!杏殿の壁を打ち破れ! イィィヤァアア!」

 

「……モンスターは《ペンギン・ソルジャー》、《渋い忍者》と《真六武衆‐シエン》を手札とエクストラデッキに戻すよ。」

 

「なんと!?」

 

ペンギン・ソルジャーによって無慈悲にも上級モンスターを手札に戻された二人。なんたるウカツ!

場が通常モンスターだけにされたあやめと、空にされた仁美。そんな状況できらりに手番が回る。

このターンにきらりは《トゥーン・マーメイド》をリリースして《トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール》を特殊召喚した。

その手番できっちりと仁美にトドメを刺し、あやめにもダメージを与えるのだった。

 

相方を失い、手札的にも苦しくなったあやめはその後も挽回できずにずるずるとジリープアー(徐々に不利)な状態へと追いやられて敗北する。

 

 

 

「ぐ、ぐぬぬ……!」

 

「……負けちゃったかぁ……。」

 

デュエルが終わると悔しそうに膝を着くあやめと薄目で笑いながらにやにやときらりたちを見る仁美の姿が対照的だった。

 

「きらりたちの勝ちだにぃ☆ハピハピ、嬉しいな♪」

 

「それよりも、早く行こ~……。」

 

「杏ちゃん、仕方ないにぃ。二人ともぉ、またデュエルで勝負しよぅねぇ!」

 

きらりは笑顔で手を振るとまた杏を肩車してその場を去っていった。

去っていく杏ときらりの姿を見送る仁美は広角をさらにつり上げて笑う。

 

「仁美殿、どうでしたか?」

 

「うん、見切れた……。」

 

「ふふ……ならば勝ったと言うもの。情報のアドバンテージはこちらにある。こちらも本気のデッキを使ったわけではない。」

 

「そう! 全ては近く開かれる事務所対抗トーナメントの為に……!!」

 

立ち上がったあやめはぎゅっと拳を握りしめて息を吐く。

その思考はこれから開かれる各事務所チームでの対抗戦。その戦績はシンデレラガール総選挙の結果に大きく関わってくる。だからこそ、多くの事務所、多くのアイドル(デュエリスト)はその大会に全力で挑む。

 

「強敵は多い……。573プロ、610(ムトー)プロは言わずもがな……。」

 

「トライアドを擁する906(クール)プロ、初代シンデレラガールの“十字軍”十時愛梨や、“炎陣”の向井拓海がいる081プロ……。」

 

9489(クジャク)プロの“旋風”の城ヶ崎美嘉、“敢闘”城ヶ崎莉嘉、1160(ヒーロー)プロ、“運命(デステニー)”天道輝はもちろん強敵……。」

 

二人の脳裏には今まで活躍してきたアイドルたちの顔が次々と浮かんでいる。

全員が全国区の知名度と、それを裏付けるだけの実力を持った猛者達だ。

 

6966(ロックンロール)プロの松永涼、0093(オオカミ)プロには“狼牙(ファング)”木場真奈美にダイナソー古賀小春。」

 

111(ピンゾロ)プロの鷹富士茄子、“ジョーカー”兵藤レナ……。77310プロの7代目シンデレラガール、“月兎”の安部菜々、“糖劇”のしゅがーはぁと。」

 

次々と名前の上がるデュエリストたち、それは観る者全てを魅了するまさにアイドルの鑑だ。

彼女たち、彼らの一挙手一投足に観客たちは魅了され、時が経つのも忘れるのである。

 

「帰るよあやめちゃん。この情報の精度をさらにあげて研究しなきゃ。」

 

「承知!」

 

 

 

彼女たちはアイドル。デュエルで笑顔を与え、人々を魅了する存在だ。

 

 

 

 






さて、……いったい何人、何個のデッキを作ろうか……。


次回予告!

な、なんだって!?今度はブラックレイナが球場を占拠しただって?!しかも、正義のヒーロー、ジョルノ・ナンジョルノは下っ端たちに足止めされてるなんて!
このままじゃ球場に来た子供達が危ないよ!
そうだ、この街にはまだ彼がいたんだ!皆、彼の名前を呼ぶんだ!
せーの、助けて! マスク・ザ・サンシャイン!!



ではまた次回でお会いしましょうノシ




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第7話 我らがヒーロー!マスク・ザ・サンシャイン!!


なんでだろ、1160プロの話はすんなり行くんですよ。


では本編をどうぞ↓


 

 

この街にはヒーローがいる。

ジョルノ・ナンジョルノのように悪のデュエリストから街の平和を守る存在。その彼の名は……

 

 

ある土曜日、この日はアイドルたちによるデュエルイベントの為に街の球場が使われていた。子供達からの人気の高いアイドルが集まるイベントとあってか、会場には大勢の子供達が来ていた。

そして、アイドルたちのデュエルが終わるとそこからはライブが始まるのだが、終盤に差し掛かりジュピターのライブの途中でいきなり会場のライトが全て消えたのだ。

突然のことに会場はざわざわと騒がしくなり、至るところで怖がる子供達の声があがる。

そんな時、突然スポットライトが球場の中央を照らし、一人の人物を映し出した。

 

「はーっはっげほっごほっ!? 」

 

高笑いの最中に噎せるといういつもの芸を披露し、観客たちの視線を集めるブラックレイナだった。

しかし状況は大変なものだ。会場内はブラックレイナの手先によって制圧され、アイドルたちも動けないでいる。

 

「お、おい!お前っ……!?」

 

「邪魔するなぁ!」

 

「「冬馬!!」」

 

黒服たちの隙を見てブラックレイナに掴みかかった天ヶ瀬冬馬だったが、直ぐに見つかり殴り飛ばされた。殴られて吹き飛ぶ冬馬の姿にジュピターの御手洗翔太と伊集院北斗が叫んだ。

その様子があまりにも衝撃的だったのか、子供達は悲鳴をあげる。

ざわざわと不安になり泣きかけている子がいれば、ナンジョルノの名前を叫んで助けを求める子もいる。しかし……

 

「ナンジョルノは来ない!!私の手下が奴を足止めしているからな!!」

 

ブラックレイナの言葉にどよめきがさらに大きくなる。

ヒーローが来ない、そんなブラックレイナの言葉によって子供達の恐怖はピークに達する。

その時だ。

 

「そこまでだ!!」

 

力強い声が球場内に響き渡った。

黒服や子供達、アイドルらはもちろん、ブラックレイナもその声の主を探すために到るところに目を向ける。

 

「ここだ!」

 

声とともにバッと照明が当てられその姿が闇の中から浮かび上がった。

ナンジョルノに似たヒーロー衣装。赤いマフラーを暗闇で翻し、目元から耳までを隠す近未来的な流線型のサングラスが光を反射している。

 

「き、貴様は……っ!!」

 

「あぁ、そうさ。迂闊だったな、ブラックレイナ!この俺を忘れるとは!!」

 

そのヒーローは陣取っていた高所から飛び降りると俗に言うスーパーヒーロー着地を決めてブラックレイナの前に立つ。

その男の姿にブラックレイナは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべている。

 

「この……邪魔をするのか、マスク・ザ・サンシャイン!!」

 

「当たり前だ! この俺がいる限り貴様の自由にはさせんぞ!」

 

そのヒーロー、マスク・ザ・サンシャインはビシッとポーズを決めてブラックレイナに告げる。

その言葉に地団駄を踏んだ彼女はいつものようにデュエルディスクを装着した。そんな行動に応えるようにサンシャインもデュエルディスクを装着する。

 

「「デュエル!!」」

 

先攻はマスク・ザ・サンシャイン、ドローして手札を確認する。

 

「《E・HERO エアーマン》を召喚、効果を発動して手札に《E・HERO クレイマン》を加える。そして場に二枚伏せてターンエンド!」

 

「……ドロー!」

 

ブラックレイナは手札を確認し、次にサンシャインの場を確認する。

場には攻撃力1800のエアーマン、伏せカードが二枚。ニヤリと笑ったブラックレイナが動き出す。

 

「《切り込み隊長》を召喚!効果で《ゴブリン突撃部隊》を特殊召喚!!」

 

効果を使っての展開、しかも片方の攻撃力は2300と上級モンスター並みの力を持っている。

そのまま《ゴブリン突撃部隊》の攻撃で《E・HERO エアーマン》を撃破し、500の戦闘ダメージを与えたブラックレイナは次に切り込み隊長で直接攻撃を試みるが、そうは簡単に行かなかった。

 

(トラップ)カード、《ヒーロー・シグナル》を発動! モンスターが戦闘破壊されたことで手札かデッキからE・HEROを特殊召喚する! 俺はデッキから《E・HERO シャドー・ミスト》を特殊召喚!」

 

サンシャインが召喚したのは攻撃力1000のシャドー・ミスト、そんなモンスターが何だとばかりにブラックレイナは攻撃を仕掛けるのだが……、

 

「もう一枚の伏せカードを使用!《マスク・チェンジ》!」

 

「なんだと!?またか!!」

 

「フィールドのシャドー・ミストを墓地に送り、来い!《M・HERO(マスクドヒーロー) 闇鬼(あんき)》!!」

 

サンシャインの必殺、《マスク・チェンジ》によって現れたのは攻撃力2800の闇鬼、それによって攻撃を仕掛けてきた《切り込み隊長》を返り討ちにし、1600のダメージを与える。

さらに、墓地に送られた《E・HERO シャドー・ミスト》の効果により、サンシャインは手札に《E・HERO ザ・ヒート》を加えた。そして切り込み隊長を破壊したことで闇鬼の効果が発動し、二枚目の《マスク・チェンジ》を手札に加える。

 

「ぐぅ……小癪なぁ……!!」

 

「それがどうした!」

 

“チェンジ”速攻魔法を駆使し、強力な力を持つM・HEROを軸にして戦う、それがマスク・ザ・サンシャインの“M・HERO”デッキだ。

モンスターを破壊され、《ゴブリン突撃部隊》が効果で守備表示になったブラックレイナはそのままターンを終える。

 

「ドロー!《E・HERO クレイマン》を召喚!手札から《マスク・チェンジ》を使用して、クレイマンを墓地に、《M・HERO ダイアン》を召喚する!」

 

これでサンシャインのフィールドに攻撃力2800のアタッカーが2体並ぶ。

さらにサンシャインは手札から《マスク・チャージ》を使用することで墓地から《E・HERO シャドー・ミスト》と《マスク・チェンジ》を手札に加えた。これでサンシャインの手札は5枚となる。

 

「ダイアンで守備表示のゴブリン突撃部隊を攻撃だ!」

 

攻撃力2800のダイアンの攻撃で守備力ゼロの突撃部隊はあっさりと破壊される。

そして、戦闘破壊して墓地に相手モンスターを墓地に送ったことでダイアンの効果が発動する。

 

「ダイアンの効果でデッキから《E・HERO エアーマン》を特殊召喚、さらにエアーマンの効果でデッキから《E・HERO スパークマン》を手札に加える!」

 

手札にHEROを加えたサンシャインはがら空きのブラックレイナに対して攻撃を仕掛ける。だか、そこでブラックレイナは意地を見せる。

 

「手札から《速攻のかかし》を捨てて効果発動!その攻撃を無効にしてバトルフェイズを強制終了!」

 

強制的に攻撃を遮断したブラックレイナは薄く笑いを浮かべながらドローする。

手札は4枚、その中から逆転の手立てを彼女は模索していた。

 

「くく……モンスターを一体セット、カードを一枚伏せてターンエンドよ。」

 

「……? ドロー! カードを2枚セット、闇鬼で直接攻撃(ダイレクトアタック)!効果で威力は半減の1400だ!」

 

「そんなもの、痛くもない!」

 

直接攻撃でライフを残り5000まで削られたブラックレイナであったが、まだ余裕の表情だ。

続けてダイアンでセットモンスターに攻撃を仕掛けるのだが、そのモンスターがいけなかった。

 

「サイバーポッドの効果を発動! お互いのモンスターを全て破壊する!!そしてデッキトップ5枚をドローして召喚できるモンスターを召喚するぞ!」

 

「くそ……!」

 

フィールドのモンスターが全て破壊されたサンシャインは悔しそうに奥歯を噛み締める。

そして捲られた5枚のカードは《E・HERO クレイマン》、《E・HERO ワイルドマン》、《E・HERO キャプテン・ゴールド》、《ヒーロー・シグナル》、《H‐ヒートハート》だった。

それによりサンシャインはキャプテン・ゴールドとクレイマンを召喚するのだが、キャプテン・ゴールドは自身の効果で自壊してしまう。クレイマンを守備表示にしたサンシャインは、メインフェイズ2で《E・HERO ザ・ヒート》を召喚、カードを一枚セットしてターンを終える。

 

「くくく……はーっはっは!!」

 

「この……!?」

 

しかしブラックレイナのフィールドには3体のモンスターが並んでいた。

《ジャイアント・オーク》、《セコンド・ゴブリン》、《ケルベク》の3体だ。

ブラックレイナはドローしてさらに場にモンスターを召喚する。

 

「来い!《ゴブリンエリート部隊》! さらにセコンド・ゴブリンをユニオン、ジャイアント・オークに装備させる!」

 

「くっ……!」

 

「やれ!ゴブリンエリート部隊でクレイマンを撃破!」

 

「《ヒーロー・シグナル》を発動! 手札から《E・HERO スパークマン》を召喚!」

 

クレイマンが破壊され、代わりにスパークマンが展開されるがしかしそれがどうしたと、ブラックレイナは追撃する。

ジャイアント・オークの攻撃でスパークマンが破壊され、600の戦闘ダメージを受けてしまう。これでサンシャインのライフは残り6900となった。

 

「ドロー! 手札から《マスク・チェンジ》を発動!ザ・ヒートを墓地に、出でよ!炎を纏いしヒーロー!《M・HERO 剛火》!!」

 

召喚されたのは攻撃力2200のモンスター、しかし剛火の本領はまだこれからだ。

 

「このカードは墓地にいる“HERO”の数だけ攻撃力をあげる!俺の墓地にはいま、9人のHEROが眠っている、つまり剛火の攻撃力は100×9で900アップ、3100だ!」

 

「なんだとぉ!?」

 

「そして!セットカード、《H‐ヒートハート》を使用する! この効果で剛火の攻撃力を500アップ、さらに貫通能力を付与する! 行け、剛火!炎を纏いて悪を討て!!」

 

剛火はサンシャインの指示で走り出し、守備表示の《ゴブリンエリート部隊》を攻撃する。

守備力1500のエリート部隊を破壊し、貫通効果で2100のダメージを与えた。これでブラックレイナは残り2900まで削られる。しかしサンシャインの反撃はこれで終わらない。

 

「セットカード《ヒーロー・ブラスト》を発動!墓地のスパークマンを手札に戻し、攻撃力1600以下のモンスターを一体、お前のケルベクを破壊する!」

 

「このぉ!?」

 

一気に形勢逆転に持ち込んだサンシャイン、これがヒーローの実力だと誇示するかのように右腕を掲げる。

そんな挑発的な仕草にびきびきと表情をしかめるブラックレイナはドローを行うと落胆したようにジャイアント・オークを守備表示にする。

 

(今は耐える時だ……! 剛火の火力は厄介だが貫通効果を持っている訳じゃないんだ!)

 

生唾を飲み下したブラックレイナはさらに手札から《盗人ゴブリン》を発動してサンシャインにダメージを与えつつ500のライフを回復する。これでサンシャインのライフは6400、ブラックレイナは3400となる。

 

「さぁ……俺のターンだが覚悟はいいな?」

 

「な、なに?」

 

「手札から《H‐ヒートハート》を使用する!!」

 

「な、なにぃ!?」

 

二枚目のヒートハートの存在にブラックレイナは目に見えて狼狽える。

これで剛火の攻撃力は3500となり、貫通効果を得た。しかもブラックレイナのフィールドには守備力ゼロで守備表示のジャイアント・オーク、そして残りライフは3400、ブラックレイナは息を呑む。

 

「さぁ!ショータイムだ、命燃やすぜぇ!!」

 

「こ、この……また、こんな……!?」

 

生き生きと言葉を発するサンシャインに対して、ブラックレイナの表情はどんどんとひきつっていく。

 

「行け剛火!! ジャイアント・オークに攻撃だ!!」

 

サンシャインの号令に剛火は跳躍する。大きく空を舞い、右足を突き出すようにしてジャイアント・オークに向けて跳ぶ。

 

「ヒィイロォオオッ! キィィイイックッ!!」

 

炎を身に纏い火球となった剛火の一撃によってジャイアント・オークは爆発四散し、ブラックレイナのライフもゼロになった。

その爆発に合わせるようにサンシャインは彼女に背中を向け、右腕を掲げると人差し指を空に向ける。

 

「俺は天の道を行き、全てを輝きで照らす男だ。悪には決して屈しない。」

 

「お、覚えていろよ~!!」

 

デュエルに負けたブラックレイナは悔しそうに歯噛みしながら部下の黒服達を連れて球場から出ていった。

するとそれまで落ちていた電灯も復活し球場の中を明るく照らす。

そうして平和を取り戻したライブ会場ではまたイベントが再開され、来場者は満足したのだという。

 

 

ありがとう、マスク・ザ・サンシャイン!君のお陰でまた街の平和は保たれた!

戦えサンシャイン、悪のなくなるその日まで……!!

 

 

 

 

 

「ありがとう、助かったよ輝くん。」

 

「いいんだよプロデューサー。イベントに穴を開ける訳にはいかないだろ?」

 

その日の1160(ヒーロー)プロではチーフプロデューサーの花咲が所属アイドルの天道輝にコーヒーを奢っていた。

もちろんその横ではメイクを落とした小関麗奈もいる。

この日のヒーローショーも本来ならばナンジョルノこと、南条光がやるはずだったのだが突然の発熱によって出られなくなり、急遽その日空いていた天道輝がマスク・ザ・サンシャインとして代役を果たしたのだ。

 

「麗奈もお疲れさま。ほとんどアドリブになったのに、よくやり遂げてくれたね。」

 

「ふん、このレイナサマにかかればこんなの簡単よ。」

 

「はっはっは、そりゃ頼もしいな。俺のサンシャインと、光のナンジョルノ、両方の公演で悪役をやってるもんな。偉いぞ。」

 

輝は花咲や自分から視線を逸らした麗奈の頭を分厚い掌でわしわしと撫でる。

そんな輝の行動に麗奈は頬をうっすらと赤くしてより視線を逸らすのだった。

 

今日も1160プロは平和である。

 

 

 





M・HEROデッキ(マスク・ザ・サンシャイン)

・モンスターカード
E・HEROスパークマン×2、E・HEROエアーマン×2、E・HEROシャドー・ミスト、E・HEROクレイマン×2、E・HEROザ・ヒート×2、E・HEROキャプテン・ゴールド×2、E・HEROワイルドマン×2、E・HEROウィングマン×2、E・HEROバーストレディ×2、E・HEROフラッシュ×2、
・魔法、罠カード
マスク・チェンジ×3、マスク・チャージ×3、ヒーロー・シグナル×3、ヒーロー・ブラスト×2、H‐ヒートハート×3、O‐オーバーソウル、E‐エマージェンシーコール×2、R‐ライトジャスティス×2、摩天楼‐スカイクレイパー‐、ヒーローフラッシュ!!
・エクストラデッキ
M・HERO闇鬼、M・HEROダーク・ロウ、M・HEROブラスト、M・HEROカミカゼ、M・HERO光牙×2、M・HEROダイアン×2、M・HERO剛火×2

マスク・ザ・サンシャイン
…ジョルノ・ナンジョルノと共に街の平和を守る正義のヒーロー!M・HEROを軸にしたデッキを駆使して悪のデュエリストから皆を守っている。
その正体は1160プロのアイドル、天道輝だが子供たちには内緒だぞ?


天道輝
…1160プロ最強のデュエリストであり、“運命(デステニー)”の二つ名で有名である。
ヒーローに憧れがあり、自身が演じるマスク・ザ・サンシャインのヒーローショーの時でも特撮ヒーローの決め台詞をパロディーすることがある。


小関麗奈
…1160プロに所属するアイドルであり、ブラックレイナの中の人である。
マスク・ザ・サンシャイン、ジョルノ・ナンジョルノと、二人のヒーローを相手にする悪役を演じており、参加した公演の場数は1160プロの中でもトップクラスに多い。


ではまた次回でお会いしましょうノシ




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堀裕子生誕祭 特別編


ユッコちゃん!誕生日おめでとう!!

では本編をどうぞ↓



 

 

堀裕子、通称ユッコ。3199プロの看板アイドルである。サイキックキャラを持ち味に地元では大人気のアイドルだ。

使用するデッキはサイキック族を使ったシンクロデッキ。レベル6、レベル9シンクロモンスターをメインに戦い、奇襲のように召喚されるサイキックモンスターで勝利を掴むのが彼女のやり方である。

今日は彼女の日常を見ていこう。

 

 

───ピピピピ ピピピピ ピピピガッ

 

「ん~……さいきっくねむい……。」

 

目覚まし時計を止めたユッコは眠そうな目をこすりながら伸びをして体を目覚めさせる。

ここは女子寮、3199プロが保有する社員寮の一つであり、主にアイドルと女性トレーナーが寝泊まりする場所だ。

 

「ん~っ!! よっし!!」

 

体も目覚めたユッコは立ち上がるとパジャマから私服に着替えて部屋を出る。

このプロダクションは人員が少ないため、基本的には個室である。

私服に着替えたユッコが目指すは寮に併設された食堂。食堂と言っても配膳係りのおばちゃんがいるわけではない。寮にいる住人たちで食事を作っているのだ。

女子寮のメンバーで料理が出来るのは亜季くらいのものだが……。ふじりなは基本的にカップ麺で済ませようとし、森久保は手の込んだ物までは作れず、ユッコも基本的な物しか作れない。

 

「おはよ~……ん~いい匂い!あっきー今日のご飯は~?」

 

「普通でありますよ?味噌汁に白米、漬け物に玉子焼きと焼き鮭であります!」

 

そう言ってエプロン姿の亜季が食卓にご飯を並べていく。

その朝食の匂いにつられてか、森久保とふじりなも食堂に姿を現す。

この事務所を代表するアイドル(偶像/決闘者)四人が揃って朝食を摂るのはいつものことである。

そうして揃って朝食を摂っていると、ロリ組に事務員やアイドル候補生たちも次々と顔を出しては食事を開始する。

 

そうやって朝食によってエネルギーを補給すれば各々がその日の予定に取りかかる。

亜季、ふじりなはそれぞれボーカルとダンスレッスン、森久保はデュエルレッスンだ。そしてユッコはと言うと……

 

 

「ふふーん、雑誌のインタビューとはこのエスパーユッコも有名になりましたね!!」

 

全国的に有名な雑誌“週刊遊☆戯☆王”で行われている企画、「今週のアイドル」として記者から取材を受けていた。

 

 

 

──デュエルを始めた切っ掛けはなんでしょう?

 

ユッコ.子どもの時に見たデュエルの大会です!もう、ずばばばーんって、凄くて!今でも覚えてますよ!

 

──そうですか、ではサイキック族デッキを使っているのは、その印象に残っているデュエリストが使っていたから?

 

ユッコ.いえ、そんなことはないですよ? サイキックだから、使ってるんです!

 

──サイキックだから……とは?

 

ユッコ.このエスパーユッコのサイキックを知らない?! な、ならこの場で見せてみましょう!さいきっく~!スプーン曲げ!!むむーんっ!

 

──お、おぉ?! た、確かに曲がりましたが……両手で端を持ってたような……?

 

ユッコ.そ、そんなことありませんよー! これはサイキックです!念力ですよ!

 

──は、はぁ……。えっと話を戻しますね。今、何人もアイドルの方がこの業界にいますが、対戦してみたいアイドルは誰でしょう?

 

ユッコ.そうですね~!取り合えずシンデレラガールの7人全員は確定ですね!蘭子ちゃんとはしたことあるんですけど、他の6人ともいずれは!!

 

──シンデレラガールの人たちですか……。じゃあ、今その蘭子さん以外の6人のうち、一人とデュエルが出来るなら、誰としますか?

 

ユッコ.う~ん……卯月ちゃん、いや、高垣さんも捨てがたい……。加蓮ちゃんと同じ事務所の凛ちゃんもいいな~!十時ちゃんもいいけど……修子ちゃんもいる……。ここは菜々さんですね!

 

──ウサミンさん?その理由は?

 

ユッコ.融合を軸にして、あんなトリッキーに立ち回ってくるの、凄く楽しそうですから!!

 

──楽しそう、ですか。では、裕子さんがデュエルをする理由もやはり?

 

ユッコ.はい!楽しいからです!!

 

──なるほど! 事務所では普段からデュエルしているとお伺いしましたが?

 

ユッコ.暇な時は基本的にそうですね!あっきーとか里奈ちゃんとか、乃々ちゃんたちとしてます!

 

──仲がいいんですね! やはり事務所の仲間とは競い合いですか?

 

ユッコ.はい!みんな強いから、負けないようにするのが大変です!

 

──ほほう? そんなに強いんですか? ちなみにどんな感じなんでしょう?

 

ユッコ.乃々ちゃんとあっきーは、こっちが思うように動けないし、里奈ちゃんはパワーって感じで気を抜くと負けちゃうんですよ!

 

──なかなか個性的なんですね。

 

ユッコ.はい!みんな違うタイプで、面白いです!!

 

──そうですか! では、最後に目標とファンの方に一言お願いします。

 

ユッコ.最強のサイキックアイドル目指して頑張ります!皆さん、一緒にサイキック~!!

 

 

 

……このインタビューが実際に雑誌に載ったところ、なぜだかユッコの人気が少しあがったらしい。

 

 

 

 





おそらく特別編はこんな感じになります。


ではまた次回でお会いしましょうノシ




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第8話 ダイナソー小春


ではでは~……続きです!

本編をどうぞー↓


 

 

0093(オオカミ)プロのチーフプロデューサーは元西日本代表だった男が務めている。

その名をダイナソー竜崎。

日本最強を決める戦いで東日本代表のインセクター羽賀に破れて準優勝。その後参加したペガサス氏主催の決闘者の王国(デュエリストキングダム)では城之内克也に敗北し早々に敗退、その後も海馬瀬人主催の大会でも敗退してしまう。その事を引きずり落ちぶれて居酒屋で飲んだくれていたところを0093(オオカミ)プロの代表に拾われ、今に至る。

 

そしてそのダイナソー竜崎の教育を受けて0093プロの2枚目のエースとして活躍するのがダイナソー小春こと、古賀小春だ。

0093プロに所属するアイドルとしては木場真奈美に次いで有名であり、その実力も高い。

 

「プロデューサーさん~、次のお仕事なんです~?」

 

「あぁ、次はデュエルイベントや。小春ん力を見せてやれ!」

 

「分かりました~! ヒョウくんも頑張ろ~!」

 

小春はダイナソー竜崎の言葉にペットのヒョウくんを高々と掲げてやる気を見せる。そんな小春の無邪気行動にヒョウくんも舌を動かしてリアクションを取る。

事務所の中で明るく振る舞うムードメーカーの笑顔に事務員や代表、木場も笑顔になる。

 

「ふ……小春はやはり元気だな。こちらも笑顔になってしまうよ。」

 

「そうだね~……木場くんといい、小春ちゃんといい……君たちをスカウトしてよかったよ。」

 

離れた場所で小春とダイナソー竜崎の様子を見守る木場と代表の二人は頬を緩ませていた。

木場と小春の二人はここの代表がスカウトしてきた生え抜きの二人である。そんな小春が次第にアイドルとして有名になっていることに代表は嬉しそうに頭髪を撫でた。

 

 

 

「今日の対戦相手は~、22(にゃんにゃん)プロの櫂さんです~。」

 

「ふふ、よろしくね。小春さん。」

 

イベント会場でにこやかに握手を交わした二人はデュエルの為に距離を取る。

にこやかな笑顔で対峙する二人、しかし両者共に気迫は充分だ。無邪気な笑顔を浮かべる小春でさえ、その瞳に宿す気迫は本物である。

 

「手加減はしないよ! 《伝説の都アトランティス》を発動!さらに《ニードル・ギルマン》を召喚するよ!」

 

自己強化とフィールド魔法による強化で攻撃力を1900まで上げたモンスターが召喚され、ダイナソー竜崎の顔が曇る。

モンスターの能力による相互強化によって打点を稼ぎ、パワーで制圧するのが西島櫂のデッキであり、単体の打点で勝負する小春のデッキとは、ある意味相性が悪い。と言うよりも分が悪いのだ。あるカードを使わない限り。

しかしそれでも小春は慌てない。

 

「小春のターンでドロ~! 《化石調査》を発動して《セイバーザウルス》さんを手札に。さらに《ワンダー・バルーン》を使います~!」

 

「来た! 小春の黄金パターンが来るで!!」

 

小春が発動したカードを見て、客席で見ていたダイナソー竜崎は思わず立ち上がると拳を握りしめる。

そして我に返ると周囲の視線から目を逸らして座り直す。

 

「《奇跡のジュラシック・エッグ》を攻撃表示で召喚して~! 手札から4枚のモンスターカードを捨てますね。これでワンダー・バルーンにカウンターが4つ乗ります~。モンスターは全て恐竜族なので、卵さんにはカウンターが8つ乗りますね!その卵さんをリリースして、デッキから、この子を召喚!来て~、《究極恐獣(アルティメットティラノ)》くん!」

 

「ちょ、そんなのあり?!」

 

僅か1ターンでの最上級モンスターの登場に対戦相手の西島櫂は目を点にして驚く。

どころか観客席もダイナソー竜崎以外は驚いていた。

 

「やっちゃえ、ティラノくん~!」

 

「え、うそでしょ!?」

 

ワンダー・バルーンの効果により、攻撃力が1200も下がったニードル・ギルマンに対して行われる蹂躙、その一撃でライフを2300も減らされた櫂は苦虫を噛み潰した顔になる。

そして櫂のターンではモンスターを守備表示に召喚して終わる。

 

「小春は~《ヴェルズ・サラマンドラ》さんを召喚します!行け~ティラノくん!」

 

「破壊された《ペンギン・ナイトメア》のリバース効果発動! 《ワンダー・バルーン》を手札に戻すよ!」

 

「あら~……それなら、墓地のカードを2枚除外してサラマンドラくんを強化、攻撃力2450で直接攻撃します~!」

 

バ火力とも称される恐竜族独特の高パワーに、櫂のライフは3250まで既に減らされている。

しかしこのまま終わるような私じゃないと、ドローする。

 

「来た!手札から三枚の水族性モンスターを墓地に捨てて、《水精鱗(マーメイル)‐リードアビス》を特殊召喚!そして速攻魔法《海竜神(リバイアサン)の怒り》を使用する!この効果で《究極恐獣》を破壊!リードアビスでヴェルズ・サラマンドラを撃破!」

 

「は、はわ~……。」

 

形勢逆転。場のモンスターを全て破壊され、逆に相手のフィールドには強化された切り札が存在する。

しかしそれでも小春は臆さずにドローした。

 

「《天使の施し》を使います! 三枚ドローして、手札から《ワンダー・バルーン》と《Re:EX》を捨てます!そして、カードを一枚伏せます~!」

 

(何を、するつもり……?)

 

「そして私のエンドフェイズに伏せた罠カードを発動!《化石発掘》!手札を捨てて効果発動です~!墓地の恐竜族を蘇生、出て来て~!《超伝導恐獣(スーパーコンダクターティラノ)》くん!!」

 

「っ!?」

 

小春が呼び出したのは攻撃力3300の超伝導恐獣、櫂の切り札リードアビスを上回るモンスターの再度の出現に櫂は息を呑む。

しかしそれでも22プロを代表するデュエリスト、動揺を押し殺してドローする。

 

(こ、ここで引きが……!?)

 

櫂が引いたのは《ビッグジョーズ》、逆転まで繋げるカードではなかった。

そのまま櫂はビッグジョーズを守備表示にして召喚し、ターンを終える。

 

「ドロ~! カードをセットしてリードアビスに攻撃~!」

 

「しまった!?」

 

うっかりミス、本当に些細なミスではあるが攻撃力2900のリードアビスは超伝導恐獣によって撃破され、400の戦闘ダメージが櫂に与えられる。

これによって残りは2850、このライフを守りながら櫂は小春のフィールドにいる超伝導恐獣をどうにかしなくてはならない。

そのプレッシャーが櫂にのし掛かる。

 

(何か、来い……!!ペンギンとか……!!)

 

しかし現実は非常である。ドロー出来たのはニードル・ギルマンであり、この状況を打破出来るとは言い難い。

そのまま守備表示で召喚し、場を凌ごうとする。だが……

 

「小春のターン! 《セイバーザウルス》さんを召喚~!そして《生存競争》をセイバーザウルスさんに使います!」

 

「あ、やば……!!」

 

状況を察した櫂が声を漏らす。《生存競争》によってセイバーザウルスの攻撃力は2900まで上昇、さらには連続攻撃の能力まで付与された。

そして櫂の場にいるモンスターの守備力はアトランティスによる強化を含めても2900に届いていない。

 

「セイバーザウルスさん、やっちゃえ~!」

 

「このぉ……!!」

 

「そして~ティラノくん!いっけ~!!」

 

強化されたセイバーザウルスによって守備表示のモンスターは全滅し、がら空きとなったフィールドを蹂躙するように超伝導恐獣が突進する。

その一撃によって櫂のライフはゼロになり、敗北した。

 

「た~……負けちゃった~……。」

 

「勝ちました~!」

 

決着か着くと小春は嬉しそうに跳び跳ねて観客席に手を振る。

その中にダイナソー竜崎の姿を発見すれば一際嬉しそうに激しく手を振るのだった。

 

 

 

 

 

 





恐竜族デッキ(古賀小春)
 
・モンスターカード
究極恐獣、超伝導恐獣、超古代恐獣×3、奇跡のジュラシックエッグ×3、ベビケラサウルス×2、ヴェルズ・サラマンドラ×3、ジュラック・ヴェロー×3、セイバーザウルス×3、ハイパーハンマーヘッド×3、Re:EX×3、ジュラック・プティラ×2
・魔法、罠カード
ワンダー・バルーン×2、化石発掘、天使の施し、化石調査×3、テールスイング×2、生存競争×2、一族の結束×2


・古賀小春
…ダイナソー竜崎の弟子であり、同じく恐竜族によるパワーイズジャスティスなデッキを使う。
ペットのヒョウくんも大きくなったらあんな風になるのかな~と目を輝かせている。



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第9話 運を味方につけるだけ


早速続きが出来ました~!

では本編をどうぞ↓


 

 

111(ピンゾロ)プロ、名前の響きは些か賭博じみているがいたって健全な芸能プロダクションだ。

“当たらぬ八卦”の藤居朋、“ジョーカー”兵藤レナ、“天運”鷹富士茄子などの凄腕デュエリストが在籍していることでも有名である。

 

 

「や~……茄子さんとの勝負は久々……勝てるかな?一応占いの結果は悪くなかったけど。」

 

「ふふ、楽しみですね。」

 

事務所の目の前の道路で二人は向かい合っていた。

道行く人々もそんな二人の姿を見て足を止め、これから始まるであろうデュエルに心を弾ませる。

 

「あれって……!」

 

「ここは111プロの事務所前だし、間違いないって!!」

 

「うは~! あの二人のデュエルが生で見られるのか! ラッキー!!」

 

周囲の観客たちはざわざわと騒ぎながらカメラを構える。

そうこうしているうちにデュエルが始まった。先攻は茄子だ。

 

「ドロー! 《地雷蜘蛛》を召喚! 《セカンド・チャンス》を手札から発動!」

 

攻撃力2200の下級モンスターを召喚した茄子はそのままターンを終える。

そして藤居朋のターン。

 

「《コーリング・ノヴァ》を召喚! そのまま攻撃!」

 

「来た……!」

 

攻撃力1400の《コーリング・ノヴァ》による攻撃、それは単なる自爆である。

もちろん攻撃力2200の《地雷蜘蛛》に勝てる訳はなく、そのまま戦闘破壊されるのだが、藤居朋の狙いはそれだった。

 

「破壊された《コーリング・ノヴァ》の効果発動! 攻撃力1500以下の天使族モンスターを特殊召喚する、この効果で私は《アルカナフォースIV-THE EMPEROR》を特殊召喚!さらに特殊召喚が成立したことで速攻魔法《地獄の暴走召喚》を使用する!」

 

特殊召喚からのコンボによって藤居朋のフィールドには三体のTHE_EMPERORが並び、効果の影響で茄子のフィールドには三体の《地雷蜘蛛》が並んでいる。

それだけなら攻撃力1400のモンスターが並んだだけで済むのだが、アルカナフォースの本領はここからだ。

 

「タロットよ回れよ回れ!!運命を占え!」

 

フィールドに存在する《アルカナフォースIV-THE EMPEROR》のカードのソリッドビジョンが回転を始めた。

その様子を茄子は神妙に見つめている。

 

「ストップッ!!」

 

「んん~っ! 正位置ぃ!!」

 

回転する三枚のカードは茄子の声で止まり、全て通常の向きで止まる。

この事により、《アルカナフォースIV-THE EMPEROR》の効果が発動する。

 

「正位置の効果を発動! 効果によりアルカナフォースモンスターは攻撃力が500アップ、これが3枚!」

 

あっという間に藤居朋のフィールドに攻撃力2900のモンスターが3体も並ぶ。そしてまだこれがバトルフェイズの出来事なのだ。

 

「3連打ぁ!!」

 

「くぅ……!」

 

THE_EMPERORの総攻撃、それは《コーリング・ノヴァ》の自爆特攻を帳消しにする計2100のダメージを茄子に与える。

これでお互いのライフは茄子が5900、藤居朋が7200と差が開いた。しかし茄子は慌てない。

 

「ドロー……ふふ、《時の魔術師》を召喚。効果を発動!」

 

「げげげ!?」

 

茄子が召喚した時計のようなモンスターが持つルーレットが回転を始める。

その針の止まる先を藤居は不安な顔をして見つめていた。

そして徐々に針が遅くなり、ルーレットが止まる。針の先の文字は“当”だ。

 

「ぎゃ~っ!」

 

「ふふ、これで朋ちゃんのフィールドにいるエンペラーは全滅ね。がら空きの朋ちゃんに直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

「く~っ!」

 

攻撃力500の《時の魔術師》の攻撃によって6700と、少しだけライフの差が縮まった2人。そして返しの藤居のターンになる。

 

(た~っ!ついてないや、ここでこのカードは嬉しくないよ~……。)

 

藤居朋はドローしてきた《光の結界》を発動させ、モンスターを一体セットしてターンを終える。

 

「ドロー、《Ms.JUDGE》を召喚してセットモンスターに攻撃!」

 

「残念、《アルカナフォース0-THE FOOL》は戦闘じゃ破壊されないよ!」

 

「なら、このままターンエンド。」

 

戦闘破壊されないTHE_FOOLを壁にして時間を稼ごうとする藤居朋。その作戦は功を奏したのか、盤面が整い始めようとしていた。

スタンバイフェイズに発動される《光の結界》の効果は無事に発動され、カードの状態は正位置のままだ。

ドローして4枚となった朋の手札には《アルカナフォースVI-THE LOVERS》、《光神化》、2枚目の《地獄の暴走召喚》、そして切り札とも言える《アルカナフォースXXI-THE WORLD》が存在している。

 

(逆転する……いや、勝つ!勝った!!)

 

確信を得た朋はそのまま手札のカードに手を伸ばす。

 

「《光神化》を発動! 手札から《アルカナフォースVI-THE LOVERS》を特殊召喚!その特殊召喚に対して《地獄の暴走召喚》を使用!!」

 

これによって朋のフィールドにTHE_FOOLが一体、THE_LOVERSが三体の計4体のモンスターが並ぶ。しかしそれだけでは終わらない。

THE_LOVERSの特殊召喚に対して“表”の効果を発動させる。そして残る通常召喚の枠に、THE_LOVERSをリリースして最後の1枚を召喚したのだ。

 

「時を操る最強のモンスター! 来い私の切り札ぁ! 《アルカナフォースXXI-THE WORLD》!!」

 

召喚されたのは朋のデッキで最強の攻撃力を誇るモンスター。もちろんアルカナフォース特有の召喚時のルーレットは《光の結界》によって正位置となっている。

 

「あらら……。」

 

攻撃力3100の登場に茄子は小さく言葉を漏らす。しかしまだ慌てていない。

THE_WORLDの攻撃によって《時の魔術師》を破壊され、2600のダメージを受け3300までライフを削られ、更には《光の結界》の効果によって破壊したモンスターの攻撃力分ライフが回復し、朋のライフが7200になる。だがまだ茄子の顔には余裕があった。

 

「まだ余裕そうだね、茄子さん。けれどもTHE_WORLDの効果はここからよ!エンドフェイズ、LOVERS2体をリリースしてTHE_WORLDの効果を発動!時よ止まれぇ!」

 

ここで発動される《アルカナフォースXXI-THE WORLD》の効果、自身のモンスターを2体リリースすることにより、相手のターンを飛ばしてしまうという凶悪なものだ。

 

「WOOORRRYYYY!!! ドロー! 手札から《セカンド・チャンス》を発動!」

 

ほぼ勝敗が決したと確信した朋はハイテンションにドローしたカードをセットする。

そしてそのままTHE_WORLDで茄子のMs.JUDGEを撃破し1300の戦闘ダメージを与える。これにより茄子のライフは2000、朋のライフは9000となる。

もはや観客たちも朋の勝利は揺るがないと見たのか朋がどうやって決めるのかに注目していた。しかし……

 

「ドロー、ふふ。《BM-4ボムスパイダー》を召喚します。」

 

「あ……っ!」

 

「ボムスパイダーの効果、このカード自身とTHE_WORLDを対象にして発動します。その2枚を破壊!」

 

「こ、この~っ!(お、落ち着け私……大丈夫、まだTHE_WORLDが破壊されただけ! THE_FOOLは戦闘破壊されないし、これで茄子さんのフィールドはがら空き! そう、このまま押しきればいいのよ!)」

 

切り札を破壊されても朋は落ち着いていた。粘る為のTHE_FOOLの存在であり、まだ余裕がある。しかしそんな朋の予想の上を行くかのように茄子が口角を吊り上げる。

 

「何を勘違いしてるんですか? 私のターンはまだ終わりませんよ?」

 

ボムスパイダーのカードを墓地に入れた茄子はそのまま手札に手を伸ばした。

そして1枚のカードを手に取るとゆっくりとした動作でモンスターゾーンに置く。

 

「闇属性、機械族モンスターが墓地に送られたことで私はこのカードを特殊召喚するね。」

 

モンスターが置かれたことでデュエルディスクが作動し、ソリッドビジョンが映し出される。

それは銃の形をした頭と腕を持つドラゴンだった。

 

「《デスペラード・リボルバー・ドラゴン》を召喚……!!」

 

姿を現したのは茄子の切り札、攻撃力2800を誇る機械族モンスターだ。

しかしそれだけではない。その銃のような頭と腕は飾りではないと言わんばかりに音を立てて弾倉部分が回転を始める。そしてガチンという音がして回転が止まると1ヶ所、右腕の銃口から弾丸が発射され、朋のフィールドにいるTHE_FOOLを破壊した。

 

「げぇ……!?」

 

「ふふ、戦闘破壊なんてしませんよ。」

 

フィールドのモンスターは全て破壊され、手札もない朋の顔色は目に見えて悪い。

しかしそれでもデュエリストの端くれ、旗色が悪かろうが降参はしない。

それでもドロー力が弱まっているのか、逆転に繋がるカードを引けず、モンスターをセットしてターンを終える。

 

「私のターン、《サイコロプス》を召喚します。サイコロプスでセットモンスターを攻撃!」

 

「《コーリング・ノヴァ》の効果で《コーリング・ノヴァ》を特殊召喚!」

 

「ならそのコーリング・ノヴァをデスペラードで攻撃!」

 

「このぉ……!」

 

サイコロプスの一撃で破壊されたコーリング・ノヴァの効果でフィールドに2体目のコーリング・ノヴァを出したものの、《デスペラード・リボルバー・ドラゴン》の無慈悲な銃撃によって破壊される。

これにより朋のライフは7600だ。そしてコーリング・ノヴァの効果で朋は《アルカナフォースⅢ-THE EMPRESS》を特殊召喚する。

そして朋のターンに移る。ドローしたのはTHE_FOOL、それを裏側守備で召喚してターンを終えた。

 

「《スナイプストーカー》を召喚。そして……。」

 

茄子がちらりとデスペラードの方を向けばそれに応えるように弾倉を回転させる。

そして今度は2発、銃口から弾倉が発射された。

裏側守備のTHE_FOOLは破壊出来なかったもののEMPRESSを破壊して茄子はターンを終える。

 

その後は茄子のデスペラードを筆頭にした除去によって朋の場を荒らし、じわじわとライフを削っていくことで茄子が勝利を手にしたのだった。

 

 

「勝ったと思ったのになぁ……。」

 

「そこで油断するから負けるのよ。」

 

デュエルを終えた二人は握手を交わしながら反省会をする。

お互いが切り札を出し合った試合だけに、どうして決着がこうなったのかは今後に繋がることだ。

 

茄子曰く、「運を味方につけるだけ」らしいが。

 

 

 

 







・111ピンゾロプロ
…名前の響きはあれだが賭博などとは一切関係ありません。ただし所属アイドルのお仕事は競馬、競輪などでの営業がメインの模様。筆頭アイドルは鷹富士茄子であり、他の面々もギャンブル要素の強いデッキを用いている。
1所属デュエリスト
…鷹富士茄子、藤居朋、兵藤レナ、白菊ほたる

アルカナフォースデッキ(藤居朋)
 
・モンスターカード
アルカナフォースXXI-THE_WORLD×2、アルカナフォース0-THE_FOOL×3、アルカナフォースⅢ-THE_EMPRES×2、アルカナフォースⅣ-THE_EMPEROR×3、アルカナフォースⅥ-THE_LOVERS×3、アルカナフォースXIV-TEMPERANCE×2、コーリング・ノヴァ×3、ジェルエンデュオ×2
・魔法、罠カード
強制転移×3、セカンド・チャンス×2、地獄の暴走召喚×2、光神化×2、光の結界×2、ライトニング・ボルテックス、サイクロン、月の書×2
群雄割拠×2、エンペラー・オーダー×2、逆転する運命


ギャンブルデッキ(鷹富士茄子)
 
・モンスターカード
地雷蜘蛛×3、一撃必殺侍×3、サイコロプス×3、スナイプストーカー×3、BM-4ボムスパイダー×3、きまぐれの女神×2、時の魔術師×2、Ms.JUDGE×2、ルーレットボマー×2、ブローバック・ドラゴン×2、デスペラード・リボルバー・ドラゴン×2、リボルバー・ドラゴン、ゴッドオーガス
・魔法、罠カード
デンジャラスマシンTYPE-6×2、出たら目×2、セカンド・チャンス×2、リバースダイス×3、ダーク・サンクチュアリ、ラッキー・チャンス


・藤居朋 111ピンゾロプロ
…趣味占い、しかし当たることは少ない。アイドルになったのも占いがきっかけらしい。
使用するデッキはアルカナフォースデッキであり、アルカナフォースのモンスター、THE_WORLDによる「ずっと俺のターン!」戦法を使う。
キャラ崩壊被害者の会一号
 
「おっかしいなぁ……占いだとこのタイミングで引けるはずなのに……。」
 
 
・鷹富士茄子 111ピンゾロプロ
…幸運系アイドルで、その名前から年末年始の特番には引っ張りだこの売れっ子アイドル。
ギャンブルデッキを使用し、大きなリターンで勝利を手にしている。同僚の藤居とは仲がよく、一緒に食事を取る姿が目撃されている。
 
「456賽なんて、使わなくても勝てますよ。」





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