IS 13の星座の守り人 (Scorpion)
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設定集

機体、人物の解説等をのせる場所。
新機体、新能力が登場し次第随時更新予定。


十二宮IS(※蛇使い座も含めます)

 

射手座 ???

世代:4

外見:???

武装:???

単一仕様能力:???

 

獅子座 ???

世代:4

外見:???

武装:???

単一仕様能力:???

 

蟹座 キャンサード

世代:4

外見:戦国時代の鎧武者を思わせる緑色の甲冑。兜の顔が出る部分の口を隠す形で隠密行動も取れる。

特殊技能:《蟹の鋏は何本か?(アンタッチャブル・キャンサー)

キャンサードを纏うことで発動する永続的機能。

武装:星鋏 アクベンス

腕に装備された蟹鋏。挟む力を器用に使えば物も持てる優れもの。切る力も抜群に高い。

拡張領域:巨蟹刀 カニキリ

特有アビリティは敵ISの操作感覚の鈍重化。持ち手の部分に蟹の意匠が施されている剣。

単一仕様能力:???

 

双子座 ジェミナイズ

世代:4

外見:全体が黄色く、機体の形態を切り替えることで白くなったり黒くなったりする。白くなった場合は顔の右側に、黒くなった場合は顔の左側にそれぞれピエロを模した仮面が装着される。

武装:《ジェミナイズ・カストル》(白い方)

・ワサト

掌に装備されているビーム砲。両手を向かい合わせてエネルギー弾を巨大化させて発射することもできる。

・ティジャートアルジール

脚部と足底部に装着されたスラスターユニット。足底部に集中させれば空中戦もできる。(空中戦イメージはフライボード。)

《ジェミナイズ・ポルックス》(黒い方)

・プロプス、ジースイ

両腕に装着されたビームブレード発生装置。左側がプロプスで右側がジースイ。

・ティジャートアルジール

カストルモードと共通のスラスターユニット。スラスターの速度を上乗せされることでキック力を強化することが出きる。

単一仕様能力:???

 

蠍座 スコルスピア

世代:4

外見:全身が青く、緑と赤のセンサーが胴体に備えつけられており、頭部はバイザー型、脚部は片足に4本ずつ青い線が引かれている。

武装:星針 アンタレス

刺突武器として使用可能。

背中に背負われた状態がデフォルト。

特殊技能:スコーピオン・アシッド

SEを30%消費して、IS一機につき装備、システム、機能のどれか1つを使用不可能及びエラーを発生させる状態にする。発揮確率は、左から75%、20%、5%となる。

:毒鋏 スコルピウス

普段は肩アーマーとして機能している。

装備をアンタレスから切り替えることで超至近距離戦を展開できる。

単一仕様能力:???

 

魚座 ピスケガレオン

世代:4

外見:双頭型の巨大な帆船。紫色と黒色のカラーリングが特徴で、船首の部分から搭乗しているISを射出できる。

武装:双魚破砕砲

艦首の魚を模した部分からエネルギーを圧縮。魔方陣としてエネルギーを高濃度展開の後発射する。攻撃に特化させた場合、大型の資源衛星(機動戦士ガンダム002nd season第9~10話に出てきた基地を参照)を一撃で破壊する威力を有している。

単一仕様能力:???

 

牡牛座 ???

世代:4

外見:???

武装:???

単一仕様能力:???

 

水瓶座 ???

世代:4

外見:???

武装:???

単一仕様能力:???

 

牡羊座 ???

世代:4

外見:???

武装:???

単一仕様能力:???

 

乙女座 ヴィエルジェ

世代:4

外見:金属的なものが使われていそうなのは武装のみで他は布のように見える。破れやすそうに見えて、実は搭乗者を守るバリアとして機能しているため、見た目より何倍も硬い。背中からは黄色い羽と桃色の羽が1対ずつ、計4枚の羽で構成されている。

武装:星杖 スピカ

攻撃、防御の要。

魔力を一定量放出することで、レーザーを放つ。

搭乗者のイメージから魔法効果を具現化することも可能だが、あまりにもむちゃくちゃなものはストッパーがかかり具現化されない。

単一仕様能力:???

 

天秤座 ???

世代:4

外見:???

武装:???

単一仕様能力:???

 

山羊座 ???

世代:4

外見:???

武装:???

単一仕様能力:???

 

蛇使い座 アスクレプオス

世代:4

外見:紺色をベースに朱色の線が至るところに巻き付いているかのようなデザイン。肩からは蛇頭型の連装ビーム砲が備わっている。

武装:魔星杖 ラサルハグェ

ヴィエルジェの持つスピカと同様の効果なので説明は省略する。

拡張領域:オフィウクス

何匹もの蛇が組合わさったような形。メインの頭部はとても大きい。飛行ユニットとして使うことも可能で、ISを最大3機まで搭載可能。

単一仕様能力:黒満ちる蛇使い《ブラックホール・アスクレス》

拡張領域から呼び出されたオフィウクスと合体する。合体状態のこの機体はアスクレピオーズと呼称される。この状態のアスクレプオスは4,5世代機に位置付けられる。即死攻撃の無効化に加え支援機と魔力を共有することで、より強力な攻撃を行うことが可能となる。

 

通常IS

 

ストライクヴルム

操縦者:星守 黄牙

世代:3

製作国家:ドイツ→束

武装:腕部大型クロー(三つ指型)×2

腹部荷電粒子砲×1

背部大型スラスター

拡張領域:合体《ブレイヴ》:砲凰竜 フェニックキャノン

元になったスピリット:月光龍 ストライク・ジークヴルム

 

第3世代型IS。戦法としてはスラスターで接近、クローで一撃を入れて距離をとるという一撃離脱を繰り返すのが主流。

本人の技量と相まって高速戦闘時は無類の強さを誇る。

戦闘スタイルの関係上、荷電粒子砲は滅多に使うことはなく、いつもは龍頭型の発射口は開いていないため自然とカモフラージュの機能や初見の奇襲性も獲得した。

拡張領域を解放することで機動力と火力を大幅に向上、射撃戦においても性能向上が見られる。

 

ルナテックヴルム

操縦者:星守 黄牙(ファング)

世代:3,5

武装:頭部レーザーバルカン

腕部実体短剣

スラスター直結型レーザー砲

背部大型スラスター

拡張領域:合体《ブレイヴ》:砲凰竜 フェニックキャノン

単一仕様能力:自在合体機構《フレキシブル・ブレイヴコード》

登録ブレイヴ:デス・ヘイズ

突機竜 アーケランサー

ジェットレイ

元になったスピリット 月光神龍 ルナテック・ストライクヴルム

 

ストライクヴルムのコア人格である少女に認められ進化した機体。クローが無くなったことで手の自由度が上がり、他のISの武器も装備できるようになった。ちなみにレーザー砲はブレイヴしている状態だと、右腕にその機能が集約されるため、遠距離戦性能が極端に落ちずにパワーアップが可能。ちなみにジェットレイとブレイヴしている場合のみ両腕にレーザー砲が追加される。

進化したことで単一仕様能力も開放された。自在合体機構は登録されてある三種類のブレイヴをどのような環境下においても使用可能に出来るもので、拡張領域にあるフェニックキャノン同様、自立稼働もこなせる。

 

打鉄弐式・改(←便宜上この名前)

操縦者:更識 簪

世代:3

武装:連装荷電粒子砲『春雷』

対複合装甲用超振動薙刀『夢現』

ブースター兼ミサイル発射管『山嵐』

脚部接続型回転式5連装ミサイルポッド×2

↑イメージはビルドファイターズトライのレオパルドダヴィンチの肩についてた回転するアレ

ハンドミサイルポッド

↑イメージはガンダム00の1期8話位に出てきた施設を破壊するために使われたキュリオスのアレ

折り畳み式銃剣

↑イメージはガンダムエクシアのGNソード

背部大型スラスター

 

第3世代型IS。簪が途中まで製作していた打鉄弐式を束が改良。武装も倍に増え、扱いが難しくなっているが、戦闘訓練にてそれらを難なく使いこなした。追加武装のミサイルポッドはそれぞれ各20発ずつ入っており、マルチロックオンシステムも完成しているため山嵐と組み合わせると最大108発を同時に発射可能で、理論上全てのミサイルを独立稼働させることができるものの、搭乗者の操作技術が追い付いていないためいまのところはオート操作のために搭載されているだけの代物である。

ちなみに、背部大型スラスターには春雷と山嵐、夢現が搭載されており、切り離すことでリフターとして機能させることも可能。

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)

操縦者:ナターシャ・ファイルス(シルバー)

世代:3→3,5→4

武装:銀の鐘(シルバーベル)(基本形態装備)

聖なる翼(ホーリーウイング)(第二形態装備)

熾天使の金翼(セラフ・グランウイング)(第三形態装備)

光剣の裁き(クラウソラス・ジャッジメント)(∥)

 

第一形態:広範囲殲滅型の第三世代軍用IS。背中のスラスター兼武装の銀の鐘や腕部、脚部にスラスターが取り付けられており、攻撃力、機動力の両方を兼ね備えた機体である。

 

第二形態:銀の鐘を片方破壊され二次移行した姿。砲門数は減ったものの、BT兵器の様に自在に羽を動かすことが可能。その結果攻撃の範囲が広がり、更なる機能向上がみられる。

 

第三形態:本体の姿はほとんど変わっておらず、頭の上に天使の輪がついただけであるが、翼の部分は生物的な構造に変化しており、六枚の羽から腕部の粒子供給ユニットにエネルギー粒子を移すことで両腕部の閉じていた箇所が開き、光剣の裁きが起動。完全開放すると範囲は一振り20mにも及ぶ。

もちろん翼の攻撃機能も残っており、抜群の射撃性能に加えて格闘戦もある程度出来るようになった万能機である。が、エネルギー効率が第一形態と比べてかなり悪くなっているため相応のエネルギー管理技術が要求される。

 

白式《神陽》

操縦者:織斑 一夏

世代:3,5

武装:???

???

背部大型スラスター

拡張領域:合体:極星剣機 ポーラキャリバー

単一仕様能力:零落白夜

元になったスピリット:太陽神龍 ライジング・アポロドラゴン

 

白式が新たな力を得た姿。全体は白がほとんどだが、翼型の大型スラスターの部分は橙色のような色で、ストライクヴルムと形状が違う上に、性能はそのストライクヴルムを大きく上回る。合体はポーラキャリバーと行うことで本来の白式の武装であった雪片の強化形である雪片弐型を装備できる。この機能と単一仕様能力、仲間達の連携により、福音を倒しきることができた。

 

ダークヴルム・ノヴァ

操縦者:篠ノ之 束

世代:?

武装:???

???

???

 

ISの生みの親である篠ノ之 束がストライクヴルムの内部データを流用し自分専用に新しく造り上げた機体。黄牙と共にありたい、その一心で造られたこの機体はどこか狂っており、単一仕様能力の発現に至っていないものの、それがなくとも既存のISを軽く超える性能で、オータムの使ったジェミナイズと同じくらいの力を持つようだ。

 

S(ストライク)プロキオン

世代:3

武装:脚部実体剣

有線式テールユニット

ウイング型小型スラスター

 

エクスカリバー内部に配置されていた自動操縦型の機体のうちの1機。特徴は通常のISでは採用されることがまず無い四足歩行。そして、ストライクヴルムから継承された竜型の頭部。高速移動し敵を撹乱、実体剣で斬りつけ敵を撃破するという高速戦闘に特化した機体である。重量が軽くその分脆く、対するISによっては一撃で撃破されてしまう欠点がある。

有線式のテールブレードは敵に突き刺すことも可能だが、天井など上に突き刺し上から奇襲するという戦法も取れる。

 

S(ストライク)シリウス

世代:3

武装:脚部実体剣

脚部クロー

背部スラスター兼荷電粒子砲

 

エクスカリバー内部に配置されていた自動操縦型の機体のうちの1機。SシリウスとSプロキオンは2機セットで運用されることが前提の機体であり、1機ずつに分断されると強さが半減する。

こちらの機体もSプロキオン同様四足歩行であるが、遠方からの援護が主な戦い方で、実体剣は身を守るための最低限度の装備であるため、切れ味はそこまで高くなく、あくまで近接戦闘での防衛行動を主な使い方としている。

クローで足場を固定し、荷電粒子砲を放つのがこの機体の戦法である。

 

 

人物設定

 

星守 黄牙

age:15

blood type:B

birthday:unknown

Main IS:ルナテックヴルム

 

本作の主人公であり、素性不明の学生。IS学園に入学する前の交遊関係はおろか、家族構成等何も開示されている情報はない。分かっているのは、彼の現在の保護者(?)は篠ノ之束であることとスコルスピアやアスクレプオスに星の守人と呼ばれていることだけである。

彼女との生活によって精神面は今時の学生とは思えないほど落ち着き払っているが、溜めこんだストレスが限界に達すると束に甘えるといった年相応の反応を見せている。

福音戦においては一夏と箒の二人を逃がすために1人で銀の福音と戦い傷を負うも彼の機体であるストライクヴルムのコア人格《ライ》に傷を治してもらい、亡国企業の移動拠点であるノアに拾われ、その一員となった。

エクスカリバー破壊ミッションでは、侵入者対策装置をブレイヴ状態を使い分けて突破。さらに、メインユニットにてS(ストライク)プロキオンを撃破。救助活動の迅速化に貢献した。

 

篠ノ之 束

age:24

blood type:AB

birthday:8/24

Main IS:ダークヴルム・ノヴァ

 

本作のヒロイン。世界から追われる身となってから各地を転々としていたが、ある少年を見つけてから日本に留まるようになった。彼の過去を知っているようだが、詳細は不明。

IS学園へ入学させる2ヶ月の間で、その彼に対して《何に代えても守るべき大切な人》という、彼女を知る人物からしてみれば嘘だと言われても仕方がない程に溺愛している。

福音戦においてその最愛の人を失うが、『彼女の所にある彼の持ち物が何一つ壊れていなかった』から生きているというオカルトを一縷の希望にして、彼のことを世界をまたにかけて探していたが、魚座のIS《ピスケガレオン》が顕現したことで発見した。現在は亡国企業の所有する船《ノア》に身を寄せており、黄牙との再会を果たしたことで精神的にも余裕ができているため、オータムと口喧嘩になることもしばしば。以前よりももっと深くなった愛で黄牙とすごせている。

 

織斑 一夏

age:15

blood type:A

birthday:9/27

Main IS:白式《神陽》

 

言わずと知れた天然ジゴロ。女性の恋愛的好意にまったくといっていいほど気がつかない朴念仁。その代わりなのか、ISの技術ののみ込みは人一倍早く、初戦となった鈴との試合では互角の戦いを見せ、タッグマッチでは量産機vs専用機というアドバンテージもあり、篠ノ之箒を単独かつ12秒で撃墜して見せるなど、成長著しい青年。

福音戦にて、白式の二次移行が発現。箒、セシリア、鈴、ラウラ、簪と協力して撃墜に成功している。

このまま鈍感さも少しずつ薄れてくれればいいのだが…

 

篠ノ之 箒

age:15

blood type:B

birthday:7/7

Main IS:紅椿

 

一夏ヒロインsその1。姉である束との関係はあまり良くなく、名前を持ち出される度に少々感情的になってしまうこともしばしば。普段は凛とした雰囲気を漂わせているが、一夏の事となると気が気でない様子で、あからさまにそわそわしだす(特に彼の女性関係の話題で)。

林間学校の際に束から紅椿を託され、イレギュラー的に専用機持ちとなった。

彼女が大切にしている言葉は、「己れの身に過ぎた力は劇薬である。慢心せず、相応の努力を怠るべからず。」

 

鳳 鈴音

age:15

blood type:B

birthday:10/17

Main IS:甲龍(ジャロン)

 

一夏ヒロインsその2。一夏とは小学5年生からの幼なじみ。それ故に、接し方もそれなりにフランク。一度一夏には遠回しに告白しているが、久しぶりに会った一夏は意味を履き違えて捉えておりブチギレて思い切り一夏の鳩尾に正拳突きを叩き込んでノックダウンさせた。理性が感情を上回ると手が出てしまうのが痛いところか。

彼への恋心が冷めた訳ではないが、今は襲撃事件を共に戦い抜いた戦友として一夏と接し、彼にISに関してさまざまなアドバイスをしている。

※甲龍の読み方はネット調べ。さすがにシェンロンはマズイだろうし…

 

セシリア・オルコット

age:15

blood type:O

birthday:12/24

Main IS:ブルーティアーズ

 

黄牙の彼女候補。元々は黄牙の試合を目撃してしまい、入学式終了後のホームルームまでの間の口封じとして彼の護衛を受けたが、クラス代表決定戦で自力で教室に戻れなくなっていたところを黄牙がお姫様抱っこで教室の近くまで送った結果、コロッと落ちてしまった。

福音戦最中から力を求めるようになり、夏休みの期間中は箒に特訓をつけてもらっているが、そのペースは常人に耐えられるものではないものの、責任と称して自身を奮い立たせることでどうにかこうにか耐えている。

※当作品のセシリアは女尊男卑の思想に染まっていないので、男性がIS学園にいることについては好意的である。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒ

age:15

blood type:unknown

birthday:unknown

Main IS:シュヴァルツェア・レーゲン

 

黒兎隊の隊長をつとめており、部下からの信頼は非常に厚い。軍上層部より黄牙のストライクヴルムのデータの入手または機体の入手を命じられた。が、タッグマッチにてレーゲンが暴走しかけたところをアスクレプオスに助けられ、そこから黄牙の戦い、彼とその嫁(?)である束が汚職等黒い事実を全てインターネットに晒し、その裏で黒兎隊を引き取った(連れ去った)ことで黄牙と束の元に行くことになった。学園生活は今も続けており、黄牙の事を「お父様」と呼んでいる。

私生活では黄牙、セシリアと3人ですごすことが多く、そのようすはまるっきり家族のようであると生徒間で囁かれている。

 

 

シャルロット・デュノア

age:16

blood type:B

birthday:4/18

Main IS:ラファール・リヴァイブ・カスタム

 

IS学園に男子生徒として編入した女性。その目的は二人しかいない男子生徒の機体データの入手であったが、一夏に気付かれて未遂に終わる。

その後は束と共に星の守人伝説を母国のフランスに帰って解明中。機体もそのまま使用している。

 

織斑 千冬

age:24

blood type:AB

birthday:12/8

Main IS:unknown

 

織斑一夏の姉でモンドグロッソ第1回優勝者。第2回では一夏が何者かによって拐われたため決勝戦直前で棄権。ドイツ軍の協力もあって、救出に成功している。

その後はISには乗ることは無いが、その経験を買われ、IS学園に教師として入学することとなった。書き足すような事ではないが普段のクールさに隠れて表には出ないが重度のブラコンである。

 

山田真耶

age:25

blood type:O

birthday:5/5

Main IS:ラファール・リヴァイブ(教員用カスタム)

 

日本の元代表候補生。おっちょこちょいな部分があるため生徒からは「まーやん」、「やまやん」、「やまや」etc.と数多くのあだ名をつけられている。本人は威厳を持つことが大事なようだが…

 

更識 簪

age:15

blood type:B

birthday:2/21

Main IS:打鉄弐式・改

 

日本代表候補生。姉にたいして劣等感を抱いていたが一夏の話を聞き和解。臨海学校にて自身の機体である打鉄弐式を完成させた。人見知りっぽい性格ではあるが、《漢のロマン》という奴は相当に分かっているらしい。

臨海学校以降に打鉄弐式に慣れるべく一夏と特訓し、データを二人で、もしくはシャルロットやクロエが使っているIS学園内に出来た仮設ラボで分析、次回の特訓内容の設定を行っている。なお、恋愛には興味がなく少女漫画を読み漁り、それっぽいシチュエーションになると頬が上気し、赤くなる。それが夏休み中であった為、噂になることはなかった。

 

織斑(星守) マドカ

age:13

blood type:B

birthday:5/14

Main IS:キャンサード

 

亡国企業の一員でコードネームはエム。黄牙と会う前に十二宮の1人であるキャンサードを既に知っていた人物。彼を回収しキャンサードを開放。その際に真名をバラされるという何とも言いがたい体験をしている。戦闘に関しては亡国トップクラスの腕前を誇るものの、表情が威圧感を伴って出てきてしまうために、幹部以外のメンバーから距離をおかれている。

エクスカリバー破壊ミッションでは最後の仕上げとしてピスケガレオンの中に待機していた。

 

オータム

age:26

blood type:A

birthday:6/18

Main IS:アラクネ/ジェミナイズ

 

亡国企業の1人。スコールとは恋仲に近い関係。暴走気味になりがちなタイプかと思いきや、かなり頭を使って戦闘を進めていく理論派タイプ。束との戦いも挑発、経路選択、敵ISの得意レンジの見極め等、技量も高い。姉御肌な所もあり、スコールと二人きりだと向こうから甘えてくることもあるらしい…?

エクスカリバー破壊ミッションでは救助を担当。任務完了後ピスケガレオンの砲撃の余波でエクシア諸とも吹き飛ばされてしまうという珍事件が発生した。

 

スコール

age:28

blood type:A

birthday:11/4

Main IS:ゴールデン・ドーン

 

亡国企業の1人。各地にある亡国企業の拠点の1つのリーダーを任されている。指揮能力、対人、対多数戦闘、カリスマ性、知謀、その全てが高水準に纏まっている女傑と言うべき人。であるが、プライベートになるとベタベタに甘えにいくらしい(オータムに)。それでも重荷にならないようにと抑えているのだとか。

破壊ミッションでは戦闘を担当し、敵機であるS(ストライク)シリウスを撃破している。



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プロローグ 星の守り人のIS入学試験
-2話 兎の弟子と入学試験


この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。



10:00 秘匿ラボ

薄暗い室内に何面あるか分からない程大量にあるモニター。そこには、ウサミミを頭に付けた、白衣を着た女性とショートヘアーで学生服を着た男性がくっつきながら話をしていた。

 

???「ねーねーおー君?」

???「何ですか、師匠?」

束「束さんはおー君の力になれてあげられたかな?」

???「今さら何を言ってるんです。師匠は俺にとって充分すぎる位に支えてもらっていますよ。今までもこれからも、ずっとです。」

束「そっか、それじゃあ今度もアテにしていいよね?」

???「ええ、他ならぬ師匠の頼みですから。」

束「…ありがとね。」

 

そう小さく呟いた後、彼女の目つきが変わり鋭いものとなった。

 

束「弟子である星守 黄牙《ホシモリ オウガ》に新たな試練を与えます。今回の場所はIS学園。そこで、男性操縦者であるいっk…織斑一夏に2人目の男性操縦者として接触及びその護衛、黄牙の持つ12枚の第4世代型の覚醒、自身のメインISである『ストライクブルム』の二次移行《セカンドシフト》と最終移行《ファイナルシフト》の完了。この2つを遂行してもらいます。何か質問は?」

黄牙「交友関係はどの程度任されるのでしょうか?」

束「彼女はつくんないで!!」

黄牙「ししょー…キャラが…」

束「だって、束さん以外とイチャついて欲しくないんだもん!おー君はクーちゃんのパパで、束さんの奥さんなんだよ!他の有象無象のゴミ虫共に渡したくないんだもん!」

黄牙「(あー、これはもうシリアスには戻らないか…)たばちゃん、俺たばちゃん以外に愛してる人はいないの知ってるでしょ?たばちゃんが自由の身になったら結婚するって約束したよね?それでもまだ信じてくれないの?」

束「ウグ…でもぉ」

黄牙「でもじゃありません。前回だって束さんが2時間も駄々こねて大変な思いしたんだよ?…まさか忘れたなんてこと、ないよね…?」

束「…ハイ,オボエテマス」

黄牙「それとも、篠ノ之さんは僕が女の尻追っかけ回すヤ●●ンに見えるの?」

束「そそそ、そんなことはないよ!?というかなんでさっきから呼び方がどんどん遠くなってるの…?」

黄牙「天災さんが信じてくれないからですよ?そこら辺ちゃんと分かってます?」

束「ゴメンナサイ…信じるから…その呼び方は止めてぇぇぇぇええええ!!」ビエーン

黄牙(あちゃー、ちょっとやり過ぎたか)

 

黄牙の怒りの質問攻めについに耐えきれなくなり泣き始めてしまった束。そこへ、

 

???「おはようござ…お父様これは…」

黄牙「あぁ、おはようクロエ。いつもの、と言えば分かるかい?」

クロエ「あっ…」

 

遅めの朝食を持ってきたクロエに軽く説明しながらおぼんを受け取り、朝食を食べ始めた。

 

黄牙「クロエ、今日の予定は?」

クロエ「今日は12:00からIS学園の実技試験があります。…お母様はどうしましょうか…」

黄牙「あー…すまんクロエ。」

クロエ「…わかりました。」

黄牙「ほら、たばちゃん?早くしないと全部食べちゃうよ?」

束「わー!待ってよー!」

 

朝食を食べ終えて自室に戻り、IS学園へ行く支度をする。

 

黄牙「受験票、筆記用具、腕時計と…あとは~…あ、」

 

何かを思い出し机の上から2段目の引き出しをあける。そこに入っていたのは三日月の形をした白い宝石が付いたネックレスと一纏めにされたカードがそこにあった。

 

黄牙「今日もよろしく、ストライクヴルム。…そして12枚のカードの覚醒、何が引き金になるのやら…」

 

黄牙が色々と思案していると、ドア越しに束の声が聞こえてきた。

 

束「おーくーん!そろそろ出発する時間だよー?」

黄牙「はーい、今いきまーす!」

 

そう返事をすると、黄牙は部屋から出ていった。

 

―――――――――――――――――――――――――

13:30 IS学園

筆記試験を終えた。次の実技試験まで休み時間であるので、自販機で飲み物を買いしばらくの休息を黄牙は1人で過ごしていた。

 

黄牙「これが、ここの知識のレベル…思ったよりだいぶ楽で良かったなあ。」

???「そうか、星守には少々物足りなかったか。」

黄牙「…まさか、あのブリュンヒルデにお会いできるとは思いませんでしたね。」

千冬「その呼び方はあまり好きではないのだがな。」

黄牙「そうでしたか。では…ちーちゃん先生d」

千冬「それはもっと好かん!…束の話は本当だったのか…」

黄牙「師匠の、ですか?」

千冬「ああ。全くあいつはお前のことが余程気に入ったらしい。2か月前に拾った!とメールが来て、半月経った時から毎晩お前の寝顔写真と共に何千字にも渡ってノロケ話をメールで送ってくる…これはあれか?私への当て付けか?」

黄牙「(寝顔写真のことは後でみっちり聞くとして…)頼りになる人は居なかったので師匠に拾ってもらって感謝しているんです。例え誰もあの人の味方にならなくとも俺だけはあの人の剣となり盾となろう…そう思えるほどに。それに師匠のそういうところは無自覚だということは貴女の方がご存知なのでは?それに織斑さんなら、男の1人や2人すぐに見つかりそうなものでしょうに。」

千冬「…皮肉屋な所は師匠譲りのようだな。」

黄牙「皮肉などではなかったのですが…申し訳ありません。」

千冬「何、気にするな。少しからかいたくなっただけだ。…お前の実技試験の時間はいつだ?」

黄牙「2人目の男性操縦者ということもあってか、一番最後です。明確に何時かは言えませんが。…というより織斑さんは知っているはずでは?」

千冬「あえて聞いたんだ。試合、楽しみにしているぞ?」

黄牙「御目がねにかなうと良いのですが…精一杯やらせてもらいます。」

千冬「ああ。ではな。」

 

千冬との談笑を終えた黄牙は、その後束に寝顔写真の件についてみっちり説教した。

 

―――――――――――――――――――――――――

16:30 IS学園 Aピット

―――これより、星守黄牙さんの実技試験を始めます。カタパルトデッキへどうぞ―――

 

機械的なアナウンスが聞こえ、目を瞑る。

黄牙(覆え、ストライク)

そう念じると白いISを纏った。

 

―――発進準備完了を確認。射出タイミングを譲渡します。―――

 

黄牙「星守黄牙、ストライクヴルム、出る!」

 

膝を少し曲げ、固定されたレーンを高速でスライドしていく。限界点と同時に膝を伸ばし、背部スラスターを起動してアリーナへと向かった。

 




次回、戦闘です。


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-1話 実技試験と英国少女

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


IS学園 Bピット

???「ふう…BT兵器が無ければ負けていましたわね。」

 

どこかの国の貴族が使いそうな言葉遣いで反省点を洗い出す、金髪の縦ロールが特徴的な少女が1人。彼女の名はセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生である。

 

セシリア「帰ったらしっかりと今回の戦闘内容を報告しなくては…!?」

 

偶然目に入ったアリーナの様子を写した映像に彼女は驚愕した。男がISを使っているではないか、女性しか使えない筈の機体を。

 

セシリア「こ、これは一体、どういう…」

???「呆然とするのもいいが、人の気配くらい気づいたらどうだ?」

セシリア「!?…貴女は…Ms.オリムラ!?」

千冬「やれやれ、有名になりすぎるのも考えものだな。」

 

突然現れた千冬にさらに驚きながらも、セシリアは彼女に質問した。

 

セシリア「Ms.オリムラ、あれは…いえあの方は一体どなたなのですか?」

千冬「見れば分かるが2人目の男性操縦者だ。親友が連れてきた。」

セシリア「つい先日世界初の男性操縦者が見つかったばかりですのに…しかもどこの国にもそんな報道はなかった、彼は特殊な環境にいるのですか?」

千冬「特殊といえば特殊だ。…忘れていたがこいつの存在は秘匿レベルⅤだ。お前が知った情報は入学まで話してはならない。それを破れば…あとは分かるな?」

セシリア「は、はい…承知しましたわ…。」

千冬「私はこの事を学園長に報告する。この試合が終わり次第お前にも来てもらうが、構わないな?」

セシリア「も、もちろんです…。」

千冬「そう怯えるな。ここで彼の試合を見ていくといい。きっとお前が成長できるようなものだと確信している。」

 

そう言い残し千冬はピットを後にした。1人残されたセシリアは、

 

セシリア(ブリュンヒルデにそこまで言わしめた実力、とくと見せて貰いますわ!)

 

設置されたモニターに釘付けになった。

 

IS学園 第2アリーナ

試験場に到着しグラウンドに着地すると、そこにはラファールを装備した試験官の姿があった。彼女は黄牙を確認すると、オープンチャンネルで彼に話しかけた。

 

三笠「はじめまして、あなたの相手をつとめる試験官の三笠 亜美よ。よろしくね。」

黄牙「よろしくお願いします。」

三笠「それじゃ、ルールの説明をするわね。と言ってもいたってシンプルであなたの操縦技術をしっかり見せることを前提として、私のSE(シールドエナジー)を可能な限り削ってね。操縦者の技術面と私のISのダメージ量からあなたのISのダメージ量を引いた数値を見て判断することになるわ。ここまでで何か質問は?」

黄牙「制限時間はあるのでしょうか?」

三笠「最大20分よ。他に何かあるかな?」

黄牙「いえ、充分です。ありがとうございます。」

三笠「では…管制室、試合開始の合図を。」

 

――試合開始5秒前、5、4、3、2、1、試合開始。――

 

開始のブザーが鳴ると同時にアサルトライフル2丁を持ち、黄牙に弾幕を張る―――よりも早く黄牙は相手の懐に真っ直ぐ飛び込んできた。そして

 

三笠「!?がっ…!」

 

思い切り大型クローの攻撃を叩き込んだ。絶対防御があるとはいえ通常ではあり得ない速度で突っ込んできた分のスピードも加わっており、その衝撃は計り知れない。2度目を打ち込もうとする黄牙に対して、三笠は急いで後退し、今度こそ黄牙に弾幕を張った。そしてその間に頭をフル回転させ先程の状況を分析する三笠。

 

三笠(今の加速…まさか、瞬時加速《イグニッションブースト》!?でも、そうでなければ15mの距離を一瞬で詰めることなんて到底出来はしない。それに今の攻撃だけでSEの2割を持っていかれるなんて…これは遠距離戦に徹しないと確実にやられるわね…)

 

と、今回の戦闘でのふるまいを決めた矢先に、ハイパーセンサーがロックオンを知らせる警報がなった。

 

三笠(ロックオンされた?火器の装備らしき物は見当たらなかったのに?…とりあえずここは撹乱しないと!)

 

考えている内にロックオンの正体が写し出された。

 

三笠(腹部に小型の荷電粒子砲を内蔵している!?あんな場所に武装の反応なんてなかったのに!?)

黄牙「撃ち抜く!」

 

光が迫る。三笠は機体をなんとかそこからはずそうとスラスターを全開にして逃れる―――光の奔流はアリーナの壁に直撃し爆発した。それはアリーナ全体を大きく揺さぶる衝撃となった。

 

三笠「まさか、そんなものを搭載しているなんて思いもしなかったわ…」

黄牙「もしかしたらバレていると思っていたのですが、どうやら驚いてくれたみたいですね。」

三笠「ええ、あなたのISの武装はそれで全てかしら?」

黄牙「そうですよ。(といってももうひとつ隠し玉はあるのだが)」

三笠「なら今度は―――」

黄牙「喋っている暇があるのですか?」

三笠「な―――」

 

またも瞬時加速で接近を許してしまい、クローによる連撃がラファールを襲った。

 

三笠(このままでは削りきられる…けどね、こっちにも…)「意地ってものがあるの!」

黄牙「!!」

 

ブレードを引き抜いたタイミングで一太刀入れることに成功した。そこからもう一撃入れようとしたもののストライクヴルムの最後の一撃が入り、ラファールのSEが0になった。ブザーが鳴りアナウンスが響く。

 

――ラファール、SEエンプティ。よって勝者、星守黄牙。――

 

勝利した黄牙はどこか満足感を覚えると同時に反省点を頭のなかに浮かべ始めた。

 

黄牙(最後に少し油断したか…そのせいでSEが8%削られた。悪い癖は直り難いものだなあ。)

三笠「どうしたの?そんなに難しい顔をして。」

黄牙「いえ、どうせなら完全試合というものをやってみたかった、そう思っただけです。最後の一撃、かなり効きましたよ。」

三笠「まったく、もう反省なんて真面目なのね。その方が好感が持てるからいいんだけど。」

黄牙「…大人の女性は子供をからかうのが好きなんですか?」

三笠「もしかしたらそうかもね。」フフッ

 

などと話していると放送が聞こえてきた。

 

――受験生の呼び出しを申し上げます。星守黄牙さんは学園長室に来てください。――

 

三笠「それじゃ早く行ってきなさい。遅れると怖いわよ?」

黄牙「脅かさないでください。…ありがとうございました。」

 

そう言ってピットに戻っていった。




《機体紹介》
ストライクヴルム
操縦者:星守 黄牙
世代:第3
製作国家:不明
武装:腕部大型クロー(三つ指型)×2
腹部荷電粒子砲×1
背部大型スラスター
拡張領域:合体《ブレイヴ》:砲凰竜 フェニックキャノン

どこで製作されたのか不明である第3世代型IS。
戦法としてはスラスターで接近、クローで一撃を入れて距離をとるという一撃離脱を繰り返すのが主流。
本人の技量と相まって高速戦闘時は無類の強さを誇る。
戦闘スタイルの関係上、荷電粒子砲は滅多に使うことはなく、いつもは龍頭型の発射口は開いていないため自然とカモフラージュの機能や初見の奇襲性も獲得した。
拡張領域を解放することで機動力と火力を大幅に向上、射撃戦においても性能向上が見られる。

次回、今後について。


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0話 2人目とこれから

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


16:35 IS学園 学園長室

千冬「失礼します。…更識、しばらくの休暇だったはずだが?」

更識「私もその予定だったのですが、轡木学園長に呼び戻しの命を受けたのでここにきた次第です。」

轡木「そういうことです、織斑先生。時間にはまだ早いと思いますが、何かあったのですか?」

千冬「はい…2人目の存在を知られました。」

更識「な!?」

轡木「それは…あまり穏やかではありませんね。それで、知った人物はどなたで今どこに?」

千冬「知った人物はイギリスの代表候補生であるセシリア・オルコット。第2アリーナのBピットに待機させました。どうなさるおつもりですか、学園長?」

轡木「そうですね、一旦こちらに呼んでもらえますか?彼女の処遇はここで決めます。」

千冬「わかりました。それでは呼んできます。」

轡木「いえいえ、それには及びませんよ…更識さん。」

更識「はい。」

轡木「オルコットさんをここに。道中星守くんに会った場合は同様に連れてきてください。」

更識「わかりました。それではまた。」

 

出る前に一礼し、その場を後にした更識。その様子を見届けた二人は

 

轡木「もう少し楽にしてもらいたいものですねえ。」

千冬「流石の彼女でもそれは無理ですよ。」

 

彼女の立ち振舞いに対して苦笑いを交えて話していた。

 

―――――――――――――――――――――――――

16:38 IS学園 Aピット

 

ピットに戻り、ISを解除して学園長室に行く準備をしていると携帯から連絡が入る。束からのようだ。

 

黄牙「もしもし」

束『あ!もすもすひねもすー!いつ帰ってくるのー?』

黄牙「学園長室に来いと呼び出しを受けたから少し遅くなるよ。ちゃんと待っててね。」

束『むー…じゃあ終わったら連絡して!迎えに行くから!』

黄牙「大丈夫なの、それ?」

束『おー君なら知ってるでしょ?IS学園はどの国にも干渉されない場所だってこと。』

黄牙「あ、そうだった。でも、人目につかないところでね。」

束『はーい。んじゃ切るねーバイバーイ』

黄牙「うん、また後で。」

 

電話を切り、ピットを後にする。学園長室に向かおうとするも場所を知らない為、ウロウロしていると

 

???「あら、貴方が2人目かしら?」

黄牙「……」

???「そう身構えないで。学園長から貴方を迎えに行けと言われているの。」

黄牙「なら、名前を名乗って頂けますか。知らない人についていかない事くらい小学生でも知っていますよ。」

楯無「それもそうね。私は更識 楯無。この学園の生徒会長をつとめているわ。ヨロシクね、星守 黄牙君?」

黄牙「…生徒会長が一受験生の名前まで知っているのは何故です?」

楯無「そこから先は貴方の情報と交換でないと教えません。」フフフ

黄牙「じゃあ聞きません。…貴女の後ろにいる人は?」

楯無「そうね、貴方の存在を早期に知ってしまった人物、と言った所かしら。」

黄牙「……」

 

黄牙が後ろの女性を見ると、

セシリア「ヒッ」

 

怯えているようだった。何かあったのだろうか。

 

黄牙「…とりあえず、学園長室の場所が分からないので案内お願いします。」

楯無「オッケー。それじゃ、お姉さんについてきてね。」

 

10分後、何やら偉い人がいそうな扉の前についた。ここがそうなんだろう。

 

楯無「ついたわよー…ってオルコットさん?顔が青いけど、大丈夫?」

セシリア「い、いえ…」

黄牙「大丈夫では無いと思いますよ。彼女に何を言ったか知りませんけど、完全に殺される前の人の反応じゃないですか、これ。」

楯無「うーん、とって喰ったりする訳じゃないんだけどなー…とりあえず入るわよ?」

 

そういうと楯無はドアをノックする。はぐらかされた様な気がするがそれを気にしている場合ではない。

 

楯無「更識です。星守 黄牙、セシリア・オルコット両名を連れてきました。」

 

一瞬の間があった後、扉を開く。そこには、先程会った織斑千冬と、白髪の老齢な男性がそこにいた。

 

千冬「先程ぶりだな、星守、オルコット。」

黄牙「はい。自分の戦闘はいかがだったでしょうか?」

千冬「それはお前が一番理解しているはずだ。」

黄牙「…仰るとおりで。」

轡木「はじめましてですね。私はこの学園の学園長を勤めている轡木 十蔵と言います。」

黄牙「星守 黄牙です。今回の呼び出しの理由をお伺いしても?」

轡木「それも大事な案件ではありますが、それよりも前に片付けなければならない問題があるのです。セシリア・オルコットさん、ですね?」

 

轡木に呼ばれ、体を大きく震わせる。完全に怯えきってしまっている。

 

セシリア「は、はい…」

轡木「1ついっておきますが、何も貴女を殺そうとは思っていませんよ。」

セシリア「それは、どうして…」

轡木「星守君はいずれこの学園の生徒全員が知るところとなる存在。早い話が、彼の生活を安全に過ごして貰うために彼の護衛を頼もうかと思っているのですが…」

セシリア「是、是非やらせていただきます!」

轡木「…更識さん?貴女何と言って彼女をここに?」

楯無「逆らわない方が自分の、ひいては国のためになる、と。」

轡木「更識さん…」

千冬「更識…後で反省文三枚書いて提出しろ。これは流石にやりすぎだ。」

楯無「も、申し訳ありません!」

 

先程までとはまるで別人のような楯無の態度に、星守は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

轡木「コホン、とにかくオルコットさんは星守君の護衛をお願いしますね。それと、星守君。ここまでで何か意見等はありますか?」

黄牙「そうですね…オルコットさん?」

セシリア「はいっ!」

黄牙「…いつもこんな感じ何ですか?」

セシリア「いえ、全く違いますけど…」

黄牙「じゃあ、いつもの喋り方で話をしてください。いつも堅苦しいと流石に息苦しいと言いますか…」

セシリア「わ、分かりましたわ。」

黄牙「これからよろしくお願いしますね。オルコットさん。」

セシリア「ええ、もちろんですわ。」

 

セシリアからぎこちなさが消え、空気も少し緩くなっていたところに轡木が口を開いた。

 

轡木「では、本題に移りましょう。星守君、これから3年間、君はこの学園の生徒となりますが、構いませんか?」

黄牙「元よりそのつもりでこの学園の試験を受けたんです。構う構わないの問題ではありませんよ。」

轡木「後ろ盾が君にもある、と?」

黄牙「そんなところです。まあ大々的に言えるようなものではないのですが、人体実験等が待っているのなら、すぐさま研究所ごと潰しに行ってくれる位。」

轡木「それは「おーくーん!」…一体誰の」

 

言うより早くドアを突き破って兎が抱きついてきた。

 

束「おー君遅い!束さんをいつまで待たせるのさ!」

黄牙「師匠…」

 

予想外の来客に黄牙と束以外全員が驚いていた。そんな中

 

千冬「束!?何故お前がここに!?」

束「簡単なことだよ、おー君いるところに束さんありなんだよ!」ドヤ

千冬「まるで意味が分からん…」

轡木「…なるほど。これは大々的に言えることではありませんね。」

楯無(篠ノ之 束博士!?重度の人嫌いの噂だけれど、いや、それよりも…)

セシリア(ああ…お父様、お母様…セシリアはもうすぐそちらに逝きますわ…)

楯無(オルコットさんが全てを悟った表情になっている…!)

 

それぞれ四者四様の反応を示すなか、黄牙が口を開いた。

 

黄牙「あーこのタイミングで言うのもあれなんですが、お願いが1つ。」

轡木「もしかしてそのお願いとは…」

黄牙「あ、はい。3年間ずっと1人部屋って出来ますか?」

轡木「それくらいなら全然問題ありませんよ。篠ノ之博士と一緒に住めないかと言われるのかと思ってハラハラしていましたよ…」

黄牙「この状況にトドメ刺すほど鬼じゃ無いんで。」

千冬「が、学園長…今回はこれで終わりですか…?」

 

フラフラになった千冬が轡木に話しかける。どうやらちーちゃん成分を補給され過ぎたようだ。その後ろにキラキラしている束がいた。

 

轡木「はい、今回の件についてはこれで終わりです。三人とももう帰宅しても構いませんよ。」

セシリア「ありがとうございます。失礼いたしますわ。」

黄牙「失礼しました。ほら師匠、行きますよ。」

束「あーん、まだちーちゃん成分補給し足りないよー!」

黄牙「クロエに言って師匠のご飯抜きにしてもいいんですよ?」

束「またねー!ちーちゃん!」

 

三人が学園長室を出ていくと、緊張の糸が解けグッタリしていた。

 

轡木「流石は稀代の大天災…織斑先生、大丈夫ですか?」

千冬「…すみません、今日は早めに上がります。失礼します。」

轡木「更識さんも、お疲れ様でした。部屋に戻って下さい。」

更識「は、はい…失礼します…。」

 

―――――――――――――――――――――――――

17:00 IS学園 正面玄関

セシリア「それでは星守さん、篠ノ之博士、私はこれで失礼致しますわ。」

黄牙「あ、そうだオルコットさん?」

セシリア「な、何か?」

黄牙「一緒のクラスになったら普通に下の名前で呼んで欲しいんだけど、いいかな?」

セシリア「も、も、もちろんですわ!でしたら私のこともセシリアと呼んで欲しいのですが…」

黄牙「良いよ。」

セシリア「!!嬉しいですわ!では、本当にこれで失礼致しますわ!」

 

スキップで帰る姿を見送った二人。黄牙の隣にいた束は何やら不機嫌そうにしていた。

 

束「むー…おー君の女たらし。」

黄牙「俺そんなことした覚えは無いんだけどなあ…。」

束「帰ったらしっかり甘えるから、覚悟するのだ!」

黄牙「おーこわーい。…あ、思い出した。」

束「何を?」

黄牙「束さん、織斑先生に俺の寝顔写真送ってるって聞いたんだけど?」

束「ナーンノコトカナータバネサンオボエテナイナー」

黄牙「飯抜き」

束「やめて!いくら束さんでもそれは嫌だよ!」

黄牙「知りません。勝手に送った篠ノ之さんのせいです。」

束「そんなー!」

 

兎の声が空に響いた。




次回、クラス代表決定戦前。


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1章 星の守り人と学園事変
1話 1人目と大騒ぎ


この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


10:00 IS学園 1年1組

入学式を終え、黄牙は教室の一席に座っていた。彼の手には絵柄の無い12枚のカードがあった。その様子を見ていた周りの生徒は

 

「あれが2人目の男性操縦者?」

「何か…変わってる、よね。」

「けどすごいイケメンだよ!」

 

と、さまざまな反応を見せるなか、1人の生徒が近づいてきた。

 

???「黄牙さん?」

黄牙「お、セシリア。この間ぶりだな。」

セシリア「はい。元気そうで何よりですわ。」

黄牙「たかだか1ヶ月半しか経ってないよ。そろそろHRが始まるから早く戻った方がいいんじゃない?」

セシリア「そうですわね。それではまた次の休み時間に。」

黄牙「うん、またね。」

 

席に戻っていくセシリアを見送ってすぐ、チャイムがなった。ドアが開き、教師が2人入ってきた。1人は織斑千冬。既に多くの生徒が黄色い声をあげている。その状況に、もう1人の教師はオドオドしてしまい、HRが進まなくなってしまった。

 

千冬「静かに!」

 

千冬の鶴の一声で騒がしかった教室が一気に静まった。

 

千冬「まずは諸君、入学おめでとう。このクラスの担当となった織斑千冬だ。お前達にはISがどういう物がしっかりと認識した上でこの3年間を過ごしてほしい。そして、」

真耶「こ、このクラスの担当になりました、山田真耶です!よろしくお願いしましゅ!…あ」

 

真耶が噛んでしまったことで教室中の生徒が

 

((((あ、この人いじりがいありそう。))))

 

という共通認識を持つことになってしまった。

そんなこととは露知らず真っ赤になった真耶が口を開く。

 

真耶「み、皆さん、改めて入学おめでとうございます。最初のHRなので、自己紹介をしてもらいます!」

千冬「普通であればあいうえお順なのだが、今回は違う。まず、男性操縦者が自己紹介をしてから例年通りのあいうえお順でやってもらう。」

真耶「ですのでまずは、織斑君から自己紹介を…」

 

すると全員がその方向を向く。

 

一夏「あ、はい!織斑一夏です!よろしくお願いします!」

 

緊張しているのか声が上ずった。そしてそのまま喋る気配がない。

 

真耶「あの、以上、ですか?」

一夏「以上です!」

 

これには教室中ずっこけてしまった。千冬も頭を抱えてしまっている。

 

千冬「おい、織斑。もう少しまともに自己紹介できんのか。」

一夏「千冬姉、そんなこと言われても…」

千冬「織斑先生だ。公私混同するな、馬鹿者。山田先生、次に行ってください。」

山田「あ、はい。では星守君、お願いします。」

 

と言われて席を立つ。一夏に向いていた視線が集まってくる。

 

黄牙「星守 黄牙です。皆さんにとっては2人目の男性操縦者という認識なのでしょうが、そういうの関係なしに皆さんと仲良くしたいと思っています。1年間よろしくお願いします。」

 

黄牙が自己紹介を終えると、また黄色い悲鳴が上がった。

 

「優しさ溢れる爽やかイケメンキター!!」

「このクラスで良かったー!!」

「次の本は、黄×一で決まりね!ああ、ウス=異本が厚くなる…!」

「(その本を)良い値で買おう!」

 

など色々と聞いてはいけないものまで聞こえてきてしまった。

 

千冬「静かにしろ!」

 

またも黙らせた。千冬にはそう言う力があるのではないかと思ってしまうほどだ。

 

千冬「いちいち注意される様な行動をとるな!連絡事項も伝えられん!」

真耶「は、はいー…連絡事項もあるのでできるだけ早めにお願いします~…」

 

教師陣の言葉でその後は滞りなく自己紹介が進み、五時間目の時間にクラス代表を決めるということが伝えられた。

―――――――――――――――――――――――――

三時間目に入る前の休み時間に、一夏に話しかけられた。

 

一夏「なあ、星守、だっけ?」

黄牙「何か用?」

一夏「数少ない男性操縦者同士、仲良くしたいと思ってさ、これからよろしくな!」

黄牙「ああ、よろしくね。」

???「ちょっと良いだろうか?」

 

呼び掛けられた声の方を振り返ると、髪をリボンでポニーテールにした生徒が立っていた。

 

黄牙「何か用、篠ノ之さん?」

箒「ああ、一夏を借りて行っても良いか?あと、あまりその呼び方はしないでほしい。箒と呼んでくれ。」

黄牙「わかった、箒さん。」

箒「感謝する。行くぞ、一夏。」

一夏「お、おう。また後でな、黄牙。」

 

箒に連れられて一夏はこの場を後にした。

なお、授業に遅刻してしまい二人は千冬から説教を受けてしまった。

―――――――――――――――――――――――――

お昼休み。昼御飯を買いに行った後、黄牙を覗いているほんわかした人がいた。

 

黄牙「…食べる?」

???「うん、食べる~。」

 

そう言って黄牙に近づいてきた。

 

本音「布仏 本音《のほとけ ほんね》だよ~。よろしくなのだ~。」

黄牙「星守 黄牙です。よろしくお願いします。」

本音「ほしもんはいい人なのだ~。」

黄牙「そうでもな…ほしもん?」

本音「そうだよ~。星守だからほしもんなのだ~。」

黄牙「じゃあ布仏さんは、のほほんさんかなぁ。」

本音「およ~?そのあだ名は初めてだ~。」

黄牙「今までのあだ名とかあるんだ?」

本音「のんちゃんとか、ほんちゃんとかあるよ~。」

 

黄牙は親しみやすく感じた。そこへ

 

セシリア「黄牙さんはいつになったら話しかけに来てくださるの!?」

 

金切り声が聞こえてきた。膨れながらこちらに来るのはセシリアだ。

 

黄牙「あ、ごめん。」

セシリア「私だって黄牙さんとお昼を共にしたいんですのよ!?休み時間だって…」

黄牙「休み時間については俺のせいじゃないような…」

セシリア「とにかく!お昼は一緒に食べますわよ!」

本音「セッシー、お弁当あるの?」

セシリア「そ、それはってセッシーって私のことですの?」

黄牙「のほほんさんは人にあだ名つけて呼ぶ天才なんだよ。多分」

セシリア「そうなんですの?」

本音「呼びやすいように呼んでるだけだよ~?けどあだ名付けの天才…ちょっと長いのだ~」

黄牙「それはともかく。セシリア、明日は一緒に食堂行こっか。」

セシリア「もちろんですわ!」

本音「二人って付き合ってるの~?」

セシリア「なっ!?」

黄牙「あれ、そう見えた?」

本音「バッチリと。」

黄牙「いや、付き合ってないよ。そもそも俺じゃ不釣り合いだと思うし。…セシリアさん?何で睨むの?」

セシリア「別に何でもありませんわ。」フンッ

本音「ほしもんってニブチンさん?」

黄牙「えぇ…」

 

そうこうしているうちにチャイムが鳴った。五時間目の始まりである。

―――――――――――――――――――――――――

千冬「さて、朝のHRで言った通り、クラス代表を決める。自薦した者はもちろんだが、他薦された者も拒否権はない。誰かいるか?」

 

言い終わると同時に手が上がる。

 

「私は織斑君が良いと思います!」

「私もー!」

 

一夏「え、俺!?」

 

そしてまた手が上がり、

 

「私は星守君!」

「私も彼が良いと思います!」

 

黄牙「えーと、みんなちょっと待って。」

 

騒がしかった教室が静かになる。

 

黄牙「俺や一夏を推薦してくれるのは確かに嬉しいんだけど、もっとふさわしい人がいると思う。だから俺はセシリアさんを推薦するよ。」

セシリア「流石は黄牙さん。よくお分かりですわ。」

 

と自信満々にドヤ顔する。

 

千冬「他にいないか?ならば、代表を決定するためにISの試合を行ってくれ。一番戦績の良かったものが代表者の指名権を獲得。これで異論はないか?」

 

全員が首を縦にふった。

 

千冬「よし。では1週間後のこの時間に試合を行う。アリーナの予約は取っておくから、それについては問題ない。では、各自部屋に戻って構わんぞ。」

 

なお、この時間は本来もう部屋に戻る時間だったらしく、一夏と黄牙は部屋の鍵を受け取ってから戻った。

そして一夏はルームメイトの箒にシバかれた。何でもラッキースケベ、というやつらしい。

それから1週間が経ち、代表者決定戦の幕が切っておとされた。




次回、代表決定戦。


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2話 クラス代表決定戦

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


13:10 IS学園 第1アリーナ

クラスのほとんどの生徒が観客席に座り、今か今かと待ちわびている。

 

「織斑君と星守君の機体ってどんなのだろうね?」

「セシリアさんと勝負になるのかな?」

「相手はイギリスの代表候補生だもんね。」

 

と、会話しているなか、箒は

 

(頑張れ、一夏。お前ならきっと―――)

 

想い人の勝利を祈っていた。

―――――――――――――――――――――――――

IS学園 ピット内部

千冬「織斑の専用機が届いていない?」

 

怪訝そうに真耶に聞いた千冬。

 

真耶「どうやら、搬入場所を間違えたようです…」

千冬「運送業者として致命的じゃないか…それで、初期化《フォーマット》と最適化処理《フィッティング》含めてどれくらいで完了する?」

真耶「搬入完了が10分と聞いているので、25分程あれば問題ないと思います。」

千冬「わかった。星守、オルコット。お前らからやれ。」

黄牙「了解です。作業が終了するまで時間を稼いでおけば良いんですよね?」

セシリア「そう簡単にはさせませんわよ?」

黄牙「やって見せますよ。」

一夏「いいなあ、ああいうの。ライバルって感じで。」

セシリア「織斑さんもすぐに感じることになりますわ。」

黄牙「ま、とりあえず織斑には俺たちの機体情報を見せるみたいなものだし、よく目に焼き付けといてくれよ?」

一夏「おう!」

千冬「では、星守とオルコットは準備をしろ。カタパルトに入るまでISは展開するなよ?」

2人「「了解(ですわ!)!」」

 

カタパルトに入り、準備をする。いつもの様に目を瞑り、

 

黄牙(覆え、ストライク。)

 

そう念じてISを起動させた。

 

――オルコット機、発進してください。――

 

アナウンスが響いた後、声が聞こえた。

 

セシリア「セシリア・オルコット、ブルーティアーズ。大空を舞いますわ!」

 

レーンのスライドする音が聞こえた。数秒の間の後に

 

――続いて星守機、発進してください。――

 

と、アナウンスが入った。

 

黄牙「星守 黄牙、ストライクヴルム。出る!」

 

白き龍が空に放たれた。

―――――――――――――――――――――――――

二人の機体が出てきた時、生徒が沸きに沸いた。

 

「オルコットさんの機体格好いい!」

「星守君の機体、綺麗…」

「私、すごく楽しみ!」

「私も!」

 

と口々に言うなか、本音は

 

(セッシーのブルーティアーズはイギリスの第3世代IS。…けどほしもんの機体…何だろう、見た目だと分かんないけど、ドイツの第2世代機みたいな感じがするな~これはデータとらなきゃなのだ~)

 

とそんなことを考えながら黙々と準備していた。

 

その頃、アリーナ内部で浮遊している二人は、

セシリア「黄牙さん、その機体は…」

黄牙「あれ、前モニターで見たんじゃないの?」

セシリア「そうなのですけど…似ている機体があるのですわ。」

黄牙「へえ、知らなかったよ。勝ったら教えて?」

セシリア「もう勝った気でいますのね。その自信粉々にして差し上げますわ!」

黄牙「やれるものなら、ね。」

 

――Battle Start!――

 

開始の合図が鳴り、黄牙はスラスターを吹かして接近するが、

 

セシリア「愚直に突撃なんて!」

黄牙「愚直かどうか確かめてみるといい!」

セシリア「言われなくても!」

 

スターライトmkⅢが黄牙に向けてエネルギー弾を発射した。その瞬間、黄牙の姿を見失った。ハイパーセンサーが次に彼を捉えなおすと、既に後ろにおり、攻撃体勢に入っていたではないか。

 

セシリア「な!?」

黄牙「まずは先制攻撃だ!」

 

三つ指型のクローを一纏めにし、ブルーティアーズのスラスターを狙う。が、

 

セシリア「掛かりましたわね!お行きなさい、ブルーティアーズ!」

黄牙「何!?うおっ!」

 

青い小型ビットが4機レーザーを撃ってきた。寸でのところでかわそうとするも、脚部に被弾しSEを削られた。

 

セシリア「踊りなさい、ブルーティアーズの奏でる円舞曲《ワルツ》と共に!」

黄牙「生憎だが、踊りはHip-hopしか出来ないんでな!」

セシリア「ティアーズ、レディ!」

 

四方からレーザーの雨が黄牙を襲う。

 

黄牙(どうする?どうすればあのビットを…ってセシリア、動いてないのか?…だとするなら打つべき手は)

 

スラスターを吹かしてビットに接近、クローで1機撃墜しビットから距離をとった。セシリアもティアーズを自身の近くに待機させた。

 

セシリア「あら、もう降参ですの?」

黄牙「まさか、ここからでしょうが!」

 

黄牙はまたセシリアに接近し近接戦闘を試みようとするが、前方から無数のレーザーが迫る。ティアーズの後ろにセシリアが後方から射撃するという状態で。

 

セシリア「これで終わりですわ!」

黄牙「…ありがとな、のせられてくれて!!」

 

狙いをつけストライクヴルムを撃とうとしたその瞬間、黄牙のストライクヴルムの腹部から強力なエネルギー反応が発生したのをセンサーが捉えた。

 

セシリア(腹部にエネルギー反応!?まさか、武器はもう1つ搭載されていたというのですか!?)

黄牙「呆けている場合じゃないぞ!」

セシリア「!!」

 

回避行動に移ったセシリア、この行動の為にティアーズ3機は一時的に行動停止。それを見逃さなかった黄牙はそのまま荷電粒子砲を発射し一気に片付けた。

 

セシリア「まさかティアーズをあんな方法で…」

黄牙「あわよくばライフルも貰っときたかったけど、高望みしても仕方ない。今度はこっちの番だ!」

セシリア「くっ!」

 

スターライトからレーザーを放つも荷電粒子砲のエネルギーの余波を受けていたのか、数発撃つと銃身からスパークが発生し使い物にならなくなってしまった。

 

黄牙「こいつをくらいな!」

セシリア「ティアーズ!」

黄牙「何!?」

 

攻撃をくらわせようとした瞬間、上からミサイルがふってきた。黄牙は防御姿勢をとり、SEの減少量を軽減した。

 

黄牙「どういうことだ…!」

セシリア「ブルーティアーズは、6機ありましてよ!」

黄牙「隠し玉か!」

セシリア「切り札は最後まで取っておくものですわ!」

 

セシリアは残り2機のティアーズを展開し、攻撃を仕掛けた。先程のミサイルによって右腕のクローが使用不能になってしまい、左腕のみとスラスターを動かしながら迎撃にあたる。

 

黄牙(織斑と戦うまでとっときたかったけど、なりふり構ってる場合じゃない!)「拡張領域《パススロット》解放!」

セシリア「どんな策があろうとも…!な、その姿は一体…」

 

黄牙の背中に赤い何かが乗っており、何とスラスターの下側から荷電粒子砲が出てきているではないか。

 

セシリア「それが、その機体の真の姿ですのね…」

黄牙「これなしじゃ絶対勝てないと思ってさ、奥の手使わせてもらった。」

セシリア「…これが最終ラウンドですのね。」

黄牙「ああ。まさかこれまで使わされるなんて思わなかったよ。」

セシリア「私こそ、ブルーティアーズを6機全て使わされるとは思いませんでしたわ。」

黄牙「この試合、絶対に勝つ!」

セシリア「それは男だから、ですの?」

黄牙「いや、純粋にセシリアに勝ちたいっていう俺の意志だ!」

セシリア「私も同じ事を考えていましたわ!」

 

2機のティアーズが黄牙を襲う。黄牙はレーザーをかわしながらセシリアに高出力レーザーで反撃。動けないところを突いてブルーティアーズ本体にダメージを与えた。

 

セシリア「くぅぅうう!!」

黄牙「ぐあっ!?あんにゃろ、自分はお構いなしか!」

セシリア「全ては貴方を倒すためでしてよ!」

黄牙「そうかよォ!」

 

左腕のクローでティアーズを1機撃墜し、レーザーを放つ。

セシリアは最後のティアーズを壁にして、

 

セシリア「インターセプター!」

 

残りのレーザーを回避し、小型のブレードを展開。黄牙に迫る。黄牙もクローを展開し迎撃の体勢を整えた。

 

黄牙「こいつで」セシリア「これで」

 

黄・セ「「終わり(ですわ!)だ!」」

 

クローとブレードが、お互いの左肩に当たり、それぞれのSEが0になった。激闘が終了したことを告げるブザーが鳴り響き、

 

――ストライクヴルム、ブルーティアーズ、SE 0。よって第1試合、引き分け。――

 

そうアナウンスが告げた。

―――――――――――――――――――――――――

一夏「すっげぇ…」

 

二人の試合に釘付けになっていた一夏に、真耶が大変そうに千冬に話す。

 

真耶「織斑先生!二人の機体のダメージレベルがどちらもほぼCの状態です!」

千冬「そうか…」

一夏「ちふ…織斑先生、俺の試合はどうなるんですか?」

千冬「しばらく無理だ。二人の機体の修復が完了するまで、クラス代表決定戦ならびにクラス代表戦を延期させる訳にもいかない。この意味、分かるな?」

一夏「…1位が2人ってことだよな?」

千冬「そうだな。山田先生、ふたりをピットに誘導してください。私は観客席にいる生徒達に教室に戻るよう伝えておきます。」

山田「わかりました。」

 

そういうと真耶は放送室へ向かった。

 

千冬「そういうことだ。ISを待機状態にして、お前も戻れよ。」

一夏「わかっ…わかりました。」

千冬「お前は今回、初期化と最適化処理で手一杯で、戦闘できなかったからな。誰かに頼んでISの操縦訓練をしておけ。」

一夏「はい!」

 

一夏(今は無理かもしれないけど、いつか絶対2人追い付いて、追い越して、1番に…!)

 

2人の試合に感化され、目標を持った一夏であった。




次回、クラス代表決定戦のその後のちパーティー。


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3話 その後の出来事、そしてパーティー

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


黄牙「ハァ…ハァ…引き分けか。」

セシリア「黄牙さん、お疲れ様ですわ。」

 

肩で息をしている黄牙をセシリアが労う。

 

黄牙「流石代表候補生。これくらいじゃ疲れないんだな。」

セシリア「本国で尋常ではない程鍛えさせられましたから。…見事にボロボロにされてしまいましたわ。」

黄牙「それを言うなら俺もだ。こんなに熱い戦いができるんだったら、最後にやりたかったなあ。」

セシリア「たらればを言ってしまってはキリがありませんわよ?」

黄牙「それもそうか。」

セシリア「次は勝たせていただきますわ。」

黄牙「それは俺のセリフだよ。」

 

再戦を誓った2人に緑色のISが接近してきた。

 

真耶「二人とも、お疲れ様でした~って労ってる場合じゃない!星守君、オルコットさん。これからピットに向かいますよ。」

黄牙「了解です、と言いたいんですが…」

セシリア「先程の戦いでスラスターが破損してしまいまして…」

真耶「それなら問題ありませんよ。カタパルト機能とISの帰還機能こそありませんけど、1ヶ所アリーナ直付けのピットがあるんです。そこで応急修理を行います。宜しいですか?」

2人「「了解(ですわ)。」」

―――――――――――――――――――――――――

真耶「まったくもう!余力を残すこともこの場合では大事なんですよ!?」

 

ISを解除し、整備科の人に預けて一息ついていると真耶に正座させられ、説教を受けていた。20分が既に経過している。

 

黄牙(なぜ、説教されてるんだ俺たちは…)

セシリア(あ、足が、痺れてきましたわ…)

真耶「それに勝敗が決定しているなら、ややこしくならなかったのに…引き分けだと1位が2人になったら、任命権をどっちが握るか不明になっちゃって、仕事が増えちゃうじゃないですかー!」ウワーン

黄牙(愚痴まで挟んできた…)「あのー」

真耶「何ですか、星守君!」

黄牙「それなら、織斑にやらせれば良いんじゃ…」

セシリア「そ、そうですわね…私たちもバックアップに回らせていただきますわ…うぅ、足が…」

真耶「それはなぜですか?」

 

不思議そうに黄牙に質問する真耶。それについて黄牙は

 

黄牙「今回の試合で俺たちの機体はボロボロで、クラス代表戦にはギリギリ間に合わない、そうですよね?」

真耶「確かにそうで…あっ!」

セシリア「専用機持ちで万全なのは彼しかおりませんわ。しかも機体情報、操作技術も未知数。他クラスへ充分な脅威に思わせることも可能ですわ。」

真耶「言い分はわかりましたけど、その間オルコットさん達の機体は…」

黄牙「訓練機の打鉄とラファールを1機ずつ使わせてもらいます。毎日実技は無理だということを鑑みて、できなかった日は座学で補う。これなら問題はないはずですが、どうでしょうか?」

 

この計画を聞いた真耶は、

 

真耶「なるほど、それなら問題ないですね!」

 

さっきまで泣きそうになっていたのが嘘のように満面の笑みを浮かべた。

 

真耶「それじゃあこの事を織斑先生に報告してきますねー。二人はそのまま教室に戻ってくださいね?」

2人「「わかりました(わ)。」」

 

そう言って真耶はピットを後にした。

 

黄牙「さて、俺たちも戻るか…セシリア?」

セシリア「足が、痺れて、動け、ませんわ…。」

黄牙「Oh…」

セシリア「私のことは良いので、先に戻ってくださいな。」

黄牙「そのセリフ、ここで聞くと思わなかったなあ…あ、そうだ。」

セシリア「何か?」

黄牙「ちょっと恥ずかしいかもだけど…背に腹は代えられないか。」

セシリア「わ、私に何を―――」

黄牙「よっこいせ。」

 

黄牙は1人で納得すると、それを実行に移した。そう、お姫様抱っこである。もちろん黄牙はするのは初めてであり、セシリアもされるのは初めてである。

 

セシリア「ななな、何をしてますにょよ!?」

黄牙「耳元で叫ばないでくれ!1組のある階に着いたらちゃんと降ろすから!…これでも結構恥ずかしいんだぞ…。」

セシリア「そ、そう、ですわね…」

 

セシリアが顔を真っ赤にして俯いた。

 

黄牙「それじゃ、戻るぞ…」

セシリア「は、はい…お願い、します…」

 

二人は真っ赤になりながらピットを後にした。なお、教室に戻って、他の生徒に様子がおかしいことを散々いじられたのは言うまでもない。

―――――――――――――――――――――――――

その日の夜、セシリアはシャワー室で、

 

セシリア「黄牙、さん…」

 

流れてくるお湯を浴びながら彼の名前を口に出す。お姫様抱っこされた光景が頭の中鮮明に浮かんでくる。

 

セシリア「はあ、彼の護衛であるのにこんなことでは、黄牙さんに…」

 

また名前が出た。そして思い出す。そのループからなかなか抜け出せず、

 

セシリア(明日から、黄牙さんの顔、見れそうにありませんわ…)

 

顔をさらに赤くさせ悶々としていた。その感情が、ある星座を目覚めさせることになろうとは、誰も知る由が無かった。―――

一方その頃、黄牙は束から連絡が入り、

 

束『なーんで束さんにはやってくれなかったのか、な?』

黄牙「いや、あのときは非常事態で…」

束『二人とも真っ赤になって、いい雰囲気になっていたのが?』

黄牙「イエ…ソウイウワケデハ…」

束『夏休みになったら束さんにもやること!良いね!?』

黄牙「ハイ…」

 

束に押しきられ夏休みにお姫様抱っこする約束をされてしまった。なぜ知っているのか、とかそういうこともツッコむこと無く。そして、ひとりでにその光景を思い出す。

 

黄牙「何で、あんなことを…」

束『むー!聞いてるのかな!?おー君?おーくーん?』

黄牙「へぇあっ!?…あーうん、聞いてる、聞いてる。」

束『もー、束さんというスーパー可愛い美少女がいながら、他の女に手を出そうとするなんて、束さん、プンプンだぞー!』

黄牙「うぐ、すみません…」

束『束さんが聞きたいのは謝罪じゃなくて愛の言葉ですー!』

黄牙「え、あ、うん…」

束『…もしかしてマジ恋したのかな?私という将来のお嫁さんがいながら?』

黄牙「いや、そんなんじゃない…自分の行動が恥ずかしくなっただけだ…」

束『束さん相手に散々やってるのにー?』

黄牙「そうだけど…あー、何でやっちゃったんだろ…」

束『おー君は善意を振り撒きすぎなんだよ。たとえその娘と何もなくても、突拍子も無いことやっちゃって、後で恥ずかしくなる。おー君はこの傾向があるね。』

黄牙「珍しくまともなこと言ってる…」

束『へえ…そういうこと言うなら…帰ってきて、おー君が寝てる間に既成事実作っちゃうけど?』

黄牙「それは…ズルい、です…」

束『冗談だよー!おー君騙されたー!』

黄牙「な!」

束『(なんてね。)それじゃ夏休みを楽しみに待っているがいいのだ!』

黄牙「え、ちょっとそれはどういう…切れた…。」

 

束にひとしきりからかわれた黄牙は束の小声の発言が気になって仕方が無かった。

 

黄牙(え、え、待て待て待て待て!?たばちゃんはもうそこまでのビジョンを描いている、ってこと、なのか!?…うわああああああああああああ!!考えすぎて寝れない!夏休み終わったら子供できてたなんて…なんて、どおしよおおおおおおおおおおおお!!?)

 

翌日のことが一切気にならなくなるくらい、狼狽えてしまっていた。束は束で、

 

束「聞き取られちゃったらどうしよう…そのときは、おー君と1つになりたいなあ…キャー!束さんが出来なかった青春が!すぐ!そこに!」

 

1人で舞い上がっており、その光景を目の当たりにしたクロエがドン引いていることに気がつかなかった。

―――――――――――――――――――――――――

翌日、クラス全員に千冬からクラス代表についての発表があり、一夏に決まったことを告げられた。はじめは困惑していた一夏も、決まった理由や黄牙、セシリア両名のサポート有りという条件を聞くと、どうやらやる気になったようだ。その日の放課後、

 

??「あ、いたいたー星守くん。」

黄牙「どうしたの、相川さん。何か用?」

相川「実は、織斑くんのクラス代表就任記念と、オルコットさんとの激闘の労いを兼ねてパーティーすることになってさ。来れるかな?」

黄牙「それっていつぐらいにやるの?」

相川「今日の7時から、になるかな。もちろん消灯時間の30分までには終わりにするから。」

黄牙「分かった。とりあえずストライクヴルムの様子見に行ってからそっちに行くよ。まあ、ほぼ大丈夫だけど。」

相川「ホント!?良かったー!これで主役が全員揃ったー…」

黄牙「もしかして、他の2人も誘ってたの?」

相川「そうなんだよー…じゃん負けでさー。あちこち移動して最後に星守くん誘って終わりだったんだー。まあこれについては運が良かったって思うよ。」

黄牙「役得ってやつ?」

相川「そうだね。あ、そうだ。連絡先教えてもらっていい?」

黄牙「別にいいけど、何で?」

相川「遅れないように、の電話かな。」

黄牙「なるほど。いいよ。」

 

清香は内心ガッツポーズをしながら、

 

相川「いつ頃連絡すればいいかな?」

黄牙「余裕をもって20分前に電話してくれると助かるなあ。」

相川「オッケー、それじゃまた後でねー!」

 

普通に会話し、その場を後にした。

なお、パーティー会場で他の生徒に連絡先を持っていることがバレて、羨ましがられたのは言うまでもない。

 

そしてパーティーが始まる20分前に主役の3人が到着した。全員揃ったので前倒しで行われることとなった。

パーティー現場では新聞部が取材に来たり、箒が満足そうに一夏の隣にいて、ざわついている生徒がいたりと、騒がしくやっていた。

 

黄牙「よ、一夏。クラス代表就任おめでとさん。」

一夏「黄牙!ありがとな。最初聞いたときナンデェ!?って思ったけどな。」

黄牙「クラス代表戦まで頭も技術もがっつり鍛えてやるから、覚悟しとけよー?」

一夏「お、おう!任せとけ!」

 

そう一夏が言ったのが聞こえていたのか、会場のあちこちから、

 

「織斑君、頑張ってねー!」

「スイーツの年パスのために!」

 

と、欲望丸出しの声援が送られた。

 

黄牙「ははは、期待されてるな。」

一夏「うっ、急に胃が痛くなって…」

黄牙「もう緊張してんのかよ!」

 

そのパーティーは予定時間を過ぎること無くお開きとなり、各自自分の部屋に戻っていった。

―――――――――――――――――――――――――

 

??「ここが、IS学園。待ってなさいよ、一夏!」

 

 




次回、中国からの幼なじみ。


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4話 1stと2nd

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


黄牙「2組に転入生?」

本音「そうなのだ~。」

 

本音がある情報を持ってきた。それは2組に転入生が来たこと、そしてその転入生がクラス代表に就任したことだ。

 

箒「この時期に転入生、まあ間違いなく目的は…」

 

そういうと一夏と黄牙の方を見る。

 

一夏「俺たち!?」

黄牙「そりゃそうだろうな。」

セシリア「私ではありませんの!?」

本音「セッシーはクラス対抗戦に出ないからないと思うのだ~」

セシリア「そ、そんな…」

黄牙「まあ今回は俺と一夏っていう例外があるから…」

箒「そうだな。黄牙はわかっているだろうが、一夏。絶対に白式を取られるなよ。」

一夏「お、おう。」

 

などと話していると、まわりにも聞こえていたようで

 

「けど、専用機持ちは1組と4組だけだし大丈夫だよ!」

「しかも4組の専用機はまだ完成してないって噂だし」

「星守君とオルコットさんが付きっきりで特訓してるし!」

「これでスイーツ年パスは私たちの物!」

 

どうやらスイーツの年間パスポートでクラスの女子達は結束を強めたようだ。

と、そんな中

 

??「その情報、古いよ!」

 

何者かの声がした。

 

??「クラス対抗戦の勝利はあたし達2組が頂くわ!」

一夏「お前、鈴か?」

鈴「久しぶりね、一夏。宣戦布告しに来てやったわよ。」

 

堂々と胸を張ってドヤ顔するなか、

 

一夏「お前…似合わないな…」プルプル

鈴「何がよ!」

一夏「いや…格好…つけるの…」プルプル

 

一夏がプルプルしている。

 

黄牙「おーい、一夏ー?何プルプルしてんのか知らないけど、そろそろ授業始まんぞー?」

一夏「あ、ああ。それじゃ鈴、また後でな。」

鈴「何よ、逃げるの?」

一夏「そうじゃない。…後ろに気を付けろよ。」

鈴「ふん!この鈴ちゃんがその程度でビビる訳無いじゃない!」

??「ほう…そうか、なら一対一で相手になってやってもいいぞ?鳳。」

鈴「上等じゃない!かかってきな…さ…いいいい!?」

千冬「さっさとクラスに戻らんか馬鹿者。」

鈴「く、お、覚えておきなさいよ、一夏!」

 

そう言い残すと2組に戻っていった。

 

一夏「あー、笑いこらえるの大変だった。」

箒「お、おい一夏!今の奴とはどんな関係なんだ!」

黄牙「箒さん、前見て、前。」

箒「何だ!……すみませんでした。」

千冬「次は無いと思えよ?」

 

こうして授業前の一悶着が終わり、チャイムが鳴った。

―――――――――――――――――――――――――

昼休み、黄牙はセシリア、一夏、箒、本音、清香と共に食堂に行くと、

 

鈴「待ってたわよ一夏!」

一夏「おい鈴、食券買えないから早くどいてくれないか?」

鈴「い、今どこうとしたのよ!」

一夏「………」

 

なぜかイライラしている一夏。そこに黄牙がフォローを入れる。

 

黄牙「あー、えっと鈴さん、だっけ?今の一夏にはあんまり話しかけないほうがいいよ?」

鈴「どうしてよ?」

黄牙「クラス対抗戦に向けてちょっと気が立ってるんだ。」

鈴「さっき行ったときは普通だったのに…」

セシリア「まあ、対抗戦さえ終われば元通りになると思いますわ。」

鈴「そ、そうよね!きっと戻るわよね!…あの約束、覚えてるかな…?」

黄牙(ん?…なるほど。)

 

小声で言っていた『約束』。どうやら鈴にとってとても大切なものらしいことは様子を見てすぐに分かった。

 

箒「それで、だ、一夏。こいつとは一体どんな関係なんだ?」

一夏「あー…幼なじみだよ。」

箒「私以外にもいたのか…」

黄牙「あれ、箒さんは鈴さんに会ってないの?」

一夏「箒は小4まで、鈴は小5から中2の間だったから、入れ違いってやつだな。」

 

一夏が自分の過去について話しているなか、セシリア達は

 

セシリア(完全に蚊帳の外ですわ…)

本音(それ、私もなのだ。)

清香(私なんて空気だったんだけど…)

 

今日の日替わり定食である、生姜焼き定食を食べていた。突然鈴が言い出した。

 

鈴「ねえ、一夏。あのときの約束、覚えてる?」

セ・本・清(((恋愛話(゚∀゚)キター!)))

一夏「あー…毎日酢豚を食べてほしいってやつか?」

鈴「そうそれ!で、その…返事、とか、…ぅぅ」

一夏「いや、毎日酢豚は飽きないか?」

黄牙「………」

箒「………」

セシリア「………」

本音「………」

清香「………」

 

数刻たって、

 

鈴「何よそれ!それじゃ不満だっていうの!」

一夏「せめて週一くらいでいいだろうが!」

鈴「料理の時期聞いてるんじゃ無いわよ!」

一夏「じゃあ他に何があるんだよ!?」

鈴「自分で考えてみなさいよ!」

一夏「鈴が教えてくれたらそれで解決するだろ!」

鈴「あーもうあったまきた!今度のクラス対抗戦ケチョンケチョンにしてやるんだから!」

一夏「そうかよ!じゃあ俺が勝ったらその約束の意味、説明してもらうからな!」

鈴「な、出来るわけ無いでしょ!」

 

と、やいやい言い争っている二人をしり目に

 

黄牙「あいつ…マジかよ…。」

セシリア「今のは…」

清香「遠回しに告白してたね…」

箒「一夏は恋愛に関しては、朴念仁極めてしまっていてな…」

本音「あれ朴念仁ってレベルじゃないのだ…」

黄牙「鈍感神?」

箒「…実際それくらいかもしれん。」

 

既に昼食を食べ終え、教室に戻っていった。

―――――――――――――――――――――――――

訓練を終え、黄牙は自販機に飲み物を買いに行っていた。座れるスペースに泣いている生徒を見つけた。その生徒は鈴だった。

 

黄牙「おーい、鈴さん?あと30分で消灯時間だぞ?」

鈴「……星守…」

黄牙「何かあったのか?」

鈴「……たらどうしよう…」

黄牙「え?」

鈴「一夏に嫌われちゃったらどうしよう…」

 

目に涙を溜め、また泣きそうになっている。

 

黄牙「あー、っと、鈴さん?多分今回のはどっちもどっちだと思うぞ?」

鈴「どう…して…?」

 

少し落ち着いてきたのか、黄牙の喋ったことに反応する鈴。そして黄牙は続ける。

 

黄牙「鈴さんって、あいつが超鈍感な女泣かせだってこと知ってたんでしょ?なら、ストレートに告白すればもしかしたら伝わってたかも知れないよ?」

鈴「恥ずかしくて…言えない…」

黄牙「だから、酢豚になったわけか…」

鈴「やっぱり、きちんと言った方が、良かったのかな…けど、そんな場何て…」

黄牙「あるじゃん、もうすぐ。」

鈴「…え?」

黄牙「クラス対抗戦だよ。そこで優勝して、告白すれば良い。」

 

突拍子も無いことを提案した黄牙に鈴は

 

鈴「あ、あんた何いってんの!?さっき恥ずかしくて言えないって私言ったわよね!?」

黄牙「それで、告白するタイミング逃して、他の女性と付き合ったらどうするの?」

鈴「あの朴念仁がそんな事…」

黄牙「あるわけないと思う?」

鈴「……どういう意味よ」

黄牙「もし、ストレートに告白されたらいくら一夏でも、その人の好意を認識するかもしれないよ?それで、付き合っちゃったら、後悔しか残らないと思うけど。」

鈴「!!」

黄牙「それが嫌なら、しっかり勝って告白した方が良いと思う。」

鈴「……アンタ、自分のクラスの応援しないんだ。」

黄牙「応援しない訳じゃないけど、フリーパス自体はぶっちゃけどうでも良いんだ。あいつが後悔無く戦えたなら、今回のクラス対抗戦はそれで良い。」

鈴「無欲なのね。……話してたらなんか吹っ切れたわ。ありがとね。」

黄牙「教え子の試合でベストパフォーマンスを発揮してもらわないと困るからね。それに今のあいつの一番の壁は鈴さんだから。」

鈴「そうだった、あいつが勝ったら説明しないとだ…」

黄牙「ま、そういうことだし、しっかり壁になってやってくれよ。」

鈴「言われるまでもないっての。それと、鈴さんじゃなくて鈴で良いわよ。さん付けされるのくすぐったくて嫌なのよね。」

黄牙「じゃ、俺も黄牙でいいから。」

鈴「分かったわ。教え子負かしたら次は黄牙、アンタと闘(や)るわ。覚悟しときなさい!」

黄牙「強敵だぜ、今のあいつは。せいぜい頑張るこった。」

―――――――――――――――――――――――――

鈴と別れ部屋の扉を開けるとと、エプロン姿の生徒会長がいた。

 

楯無「ご飯にする?お風呂にする?それとも、ワ・タ・シ?」

黄牙「何してるんですか、この変態。織斑先生に言いつけますよ?」

楯無「それだけは勘弁して!」

黄牙「だったら着替えてくれませんかね。」

楯無「わ、分かったわよぅ。…ネットにはイチコロだって書いてあったのに…。」

 

黄牙に注意され、しぶしぶ着替えた楯無。

 

黄牙「それで、何でここにいるんですか。」

楯無「あの、ゴミを見るような目で私を見ないでくれるかしら…」

黄牙「いきなりされたらそんな風にも見ます。それに、俺の事情知ってるんですし、効果ないと思わなかったんですか?」

楯無「は、はい…」

黄牙「…で、要件は何ですか、変態生徒会長。」

楯無「せめて変態はとって!…クラス対抗戦後に2人、転入生が来ることになったから、注意喚起をと思って。」

黄牙「なら、部屋の前で待っててください。」

楯無「スミマセンデシタ…」

黄牙「要件はそれで、終わりですか?」

楯無「今日のところは、ね。クラス対抗戦が終わったら生徒会室に来てもらっても良いかしら?」

黄牙「それくらいなら、お安いご用です。」

楯無「それじゃおやすみ。お邪魔して悪かったわ。」

黄牙「はい、おやすみなさい。次来るときはちゃんとした格好でお願いしますよ。」

 

黄牙は、ベッドに寝転がりそのまま眠りについた。

その転校生2人が、IS学園に更なる騒動を呼ぶことを誰も知らなかった。




次回、代表戦とハプニング。


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5話 代表戦と星の目覚め

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


クラス対抗戦当日。一夏はとんでもなく気合いが入っていた。

 

一夏「よし!絶対勝つ!」

黄牙「頑張れよ、女子の為に。」

セシリア「織斑さん、気負い過ぎないでくださいませね。訓練の時の貴方を思い出して戦ってきてくださいね。」

箒「一夏、これを。」

 

そう言って箒が一夏にあるものを手渡す。

 

一夏「何だこれ?小さい、ぬいぐるみ?」

箒「とりあえず、御守りみたいなものだ。」

一夏「マジか!サンキュー、箒!」

黄牙「あ、一夏。モニター見ろモニター。組み合わせが発表されるぞ。」

 

そう言われ、一夏はモニターを見る。そこには

 

第1試合 1組vs2組

第2試合 3組vs4組

 

と表示されていた。

 

一夏「最初か…」

黄牙「向こうの情報はお前の幼なじみだってことだけだ。」

一夏「要するにわかんねーってことじゃねーか!」

 

ツッコミを入れる一夏。

 

黄牙「よくわかってるじゃん。」

一夏「情報が何もなかろうと、俺は勝つ!」

セシリア「見事にフラグですわね…」

箒「頑張れ、一夏!」

一夏「おう!」

 

そう言って、一夏はカタパルトに入っていった。

 

一夏「織斑一夏、白式。行きます!」

 

レーンがスライドし、アリーナへと飛び立った。

―――――――――――――――――――――――――

IS学園 第5アリーナ

鈴「遅かったじゃない…何それ?」

一夏「箒曰く御守りだそうだ。さあ、お前に勝ってあの約束のこと、洗いざらい話してもらうぞ!」

鈴「だーもう!分かってるっての!」

 

――これより、第1試合、織斑一夏vs鳳鈴音の試合を行います。5,4,3,2,1…試合、開始!――

 

開始のアナウンスと共に鈴が双天牙月を展開、一夏に迫る。一夏も雪片弐型を構え迎撃の準備を整えた。

 

鈴「はあああああああああ!!!」

一夏「…そこぉ!」

鈴「え…うわっ!?」

 

双天牙月が振り下ろされる前に一夏が甲龍の浮遊しているユニットに攻撃し、破壊した。

 

鈴「なんで、そっちを…」

一夏「『装備の予測が出来ないやつは優先的に破壊しろ』…黄牙から教わったことだ。大分悔しそうだな、鈴。」

鈴「なら破壊される前に見せたげる!破っ!」

一夏「何だ、うわっ!?」

 

何もないところから一夏はアリーナの壁まで吹き飛ばされた。

―――――――――――――――――――――――――

箒「一体何が起こったというんだ!」

 

先程の光景を目の当たりにして、動揺する箒。そこにセシリアが説明を入れる。

 

セシリア「あれが中国が開発した第三世代兵装、衝撃砲ですわ。」

箒「衝撃砲?」

セシリア「浮遊ユニットの周りの空間を圧縮、砲身を形成、解放した衝撃を相手に放つ厄介な武器ですわ。」

黄牙「つまり砲身も見えなきゃ、弾も見えないってことか…相手したくねえ…」

箒「何か弱点とかはないのか?」

セシリア「あの兵装自体にはないと思いますわ。あるとすれば操縦者では…」

黄牙「あいつ動体視力良いからそのうち避けるだろ。そのなかで、その弱点とやらも見つけられればいいが…」

―――――――――――――――――――――――――

戦闘が始まって5分が経過した。

 

鈴「ほらほら、さっきから喰らってばっかじゃない!」

一夏「こっから避ければ良いだけだ!」

鈴「避けられるもんなら避けてみなさい!破っ!」

一夏「(何だ、鈴の奴、破って言わないと撃てないのか?…いや、カモフラージュの可能性だってある。上手く動いてくれよ、白式!)うおおおおお!!」

 

ついに一夏が見えない砲弾を避けた。

 

鈴「そんな!でも、空中なら!破ァっ!」

一夏「もういっちょ!」

 

また避けた。目に見えて動揺する鈴。

 

鈴「な、2度も避けるなんて…」

一夏「この日のために地獄の訓練を乗り越えてきたんだよ、俺は!」

鈴「だったら!」

 

飛びながら衝撃砲を放ち、双天牙月を持って白式に迫る。そこで一夏の疑問が確信に変わる。

 

一夏「(そういうことか。鈴はさっきので破って言わなくても撃てることが分かった。そして、あの見えない砲弾を撃ってる間は体が俺の方に向いてる。つまり!)撹乱しながら動けば!」

鈴「そう思い通りにさせるもんかああああ!!」

一夏「何?うわっ!?」

 

そういうと鈴は、なんと双天牙月を一本投げて白式に直撃させた。

 

一夏「それありかよ!?」

鈴「戦闘にルールなんて無いわよ!さあ、動きが止まれば!」

 

鈴が一夏に衝撃砲を喰らわせようとした瞬間、

 

ドガアアアアアアアアアアアン!!

 

アリーナのバリアを突き破り、黒いISが侵入してきた。

 

一夏「何だ、あいつ…」

鈴「アリーナのバリアぶち破るって、とんでもないわね。警戒しときなさいよ、一夏。」

一夏「分かってる。」

 

警戒体制をとった2人に、連絡が入る。

 

千冬『鳳、織斑、聞こえるか?』

鈴「問題ありません。何かあったんですか?」

千冬『どうやらあのIS、こちらのシステムをハックし、観客席の扉、非常用IS出撃装置、アリーナの非常用避難口がこちらのコントロールを受け付けなくなってしまった。』

一夏「それってつまり…」

千冬『ああ、教師部隊が到着するまで、お前達二人であのISの相手をすることになる。』

鈴「うわー何て貧乏クジ…」

真耶『なるべく早く奪還するので、それまで生きていてください!』

一夏「とりあえず、任せてください!」

千冬『鳳、織斑はIS初心者だ。いくら技術があるからとはいえ、まだ日が浅い。支えてやってくれ。』

鈴「了解です。」

千冬『頼んだぞ。』

 

そう言い残すと、通信が切れた。

 

鈴「一夏、SEあと何%ある?」

一夏「あと48%だ。鈴は?」

鈴「57%。わりと残ってるけど、全開戦闘は避けた方がいいわ。」

一夏「それにしても動かないな、あいつ。」

鈴「攻撃したらスタートとかじゃないと思いたいわ…」

一夏「ん?それだとあれ、無人機か!?」

鈴「それは…あり得るかもね。こんなに隙だらけなのにいっこうに攻撃してくる気配がない…けど、無人機だったらなんなのよ?」

一夏「俺の必殺技の100%を叩き込める!」

鈴「必殺技、ね。分かったわ。とりあえずアタシが引き付けるから、アンタはその必殺技とやらを準備しときなさい。」

一夏「ああ!任せたぜ、鈴!」

鈴「特別に任されてあげる。しっかり決めなさいよ!」

一夏「分かってる!」

 

そう言って、黒いISに向かっていく鈴。一夏は零落白夜を起動し合図を待った。

―――――――――――――――――――――――――

セシリア「黄牙さん、あの黒いISは…」

黄牙「(どこからの差し金だ?たばちゃんからこれを送る何て情報はなかったのに…!)分からん、けど非常事態であることは確かだ。」

 

と、言っていると携帯に連絡が来た。束からである。

黄牙「もしもし、師匠?今電話どころじゃないんだけど?」

束『とりあえずごめんなさい!』

黄牙「は?」

束『ゴーレムが1機そっちに行ってない?』

黄牙「黒いやつか?」

束『そうそれ!束さんの制御下からはずれて、IS学園で暴れてるみたいで…』

黄牙「おいおいマジか…そのゴーレムの強さとかどうなってるの?」

束『IS10機分のSEを削らないと止まらないよ!』

黄牙「…鈴と一夏が今戦ってるが、増援が出られる状況じゃないみたいだ。」

束『なんてこった…あれ、なんかおー君の12枚のうちの2枚が強い反応を示してるけど…』

黄牙「ん?」

 

そう言われて確認すると、2枚のカードに蠍座と乙女座のマークが表れ明滅している。

 

束『多分、そこの金髪縦ロールっ娘に乙女座が、おー君に蠍座がそれぞれ反応してるみたい。』

黄牙「は!?マジか…解放する方法は…」

束『もちろん不明。これが初めてだからね。』

黄牙「だよなあ…」

束『とにかく、それがあったらあのゴーレムは止められるはずだよ!こっちでも制御下に戻せないかやってみるけど、あまり期待しないでね。』

黄牙「了解。そんじゃ終わったら連絡する。またあとで。」

束『頑張りながら無事を祈ってるよ!』

 

電話が切れ、黄牙は、

 

黄牙「セシリア!」

セシリア「ど、どうしましたの?」

黄牙「とりあえず、これ!」

セシリア「へっ?」

 

何も告げられること無くセシリアは黄牙から渡されたカードに触れる。すると、2枚のカードが発光し、二人は光に包まれた。

―――――――――――――――――――――――――

??? 黄牙side

 

黄牙「ここは…」

??「やっぱ俺最初なのな…」

黄牙「誰だ!」

??「あ?さっきまで手に持ってたろうが?」

黄牙「蠍座のカードのこと…まさか!?」

??「そ。それ俺な。んでだ、お前、あの二人を助けたいか?」

黄牙「…俺の手が届く限り、必ず助けたい!」

??「へえ、すべて助けるとは言わねえんだな。」

黄牙「そんなの、神様でもない限り無理さ。」

??「変なところで俗っぽくなるな。ま、それでこそ星の守人だわ。」

黄牙「頼むからいい加減名乗ってくれよ。そうじゃなきゃ、二人を助けられない。」

スコル「それもそうだな。俺の名は 天蠍神騎 スコルスピア。蠍座の十二宮Xレアだ。俺の力存分に使えよ、星の守人。」

黄牙「星の守人?一体なんの――――――」

 

??? セシリアside

 

セシリア「私はいったい…」

??「あら、守人のとなりにいた娘がここに来るなんて、珍しいわね。」

セシリア「声、どこから…」

??「ここよ、こ・こ。」

セシリア「後ろ!?」

??「せいか~い。」

セシリア「だ、誰なのですか、貴女は!?あの人は、黄牙さんはどちらに!?」

??「彼ならスコルの所よ?言っておくけど干渉できないから会いに行こうとはしないでね?」

セシリア「質問に答えなさい!貴女はいったい…」

エル「名乗るから、ちょっと待ってね?私は 戦神乙女 ヴィエルジェ。乙女座の十二宮Xレアよ。…貴女が守人の第1の守護者なのね。」

セシリア「守人ではなく黄牙さんですわ!」

エル「説明してる暇はないわ…とにかくさっさと助けに行ってきなさい。貴女の愛する星の守人と共に。」

セシリア「ま、待ちなさい!まだ話は――――――」

―――――――――――――――――――――――――

光が強くなり、外に出される。

すると、カードに絵柄が表れたと同時に星座のマークが特徴的な指輪となった。

 

黄牙「セシリア、それ…」

セシリア「黄牙さん!」

黄牙「うおっ!?」

セシリア「い、今のは、いいい一体何だったんですの!?急にカードを渡されたと思ったら変な女性がいらっしゃいますし、十二宮Xレアとか言ってらしたし、何がなんだかまったく分かりませんわ!?」

黄牙「後でちゃんと説明するから、ともかくあの状況を何とかしないと!」

 

黄牙が指をさした先には、ボロボロの一夏と鈴の姿があった。

 

セシリア「織斑さん!鳳さん!」

黄牙「セシリア…行くぞ。」

セシリア「黄牙さん…分かりましたわ。」

 

二人は指輪を天にかざし、

 

(纏え、スコルスピア。)

(祓え、ヴィエルジェ。)

 

こう念じると光に包まれ、黄牙は青いISを、セシリアは白いISをそれぞれまとっていた。

 

セシリア「こ、これは。ヴィエルジェの服と同じ…杖もありますわ…何ですのこれ!」

黄牙「この肩のアーマー、スコルスピアの鋏か…背中の背負いものは…槍っぽく見えるな。」

 

見たこともないISを装備していた。

 

黄牙「とにかくこれで二人を助けないと!」

セシリア「今はルール無用ですわね!どうにかして侵入しなければ…」

黄牙「俺に考えがある。というか確実に入れる方法がある。」

セシリア「その槍でアリーナのバリアを破る…気ですのね…」

黄牙「そのとおり!ちょっと離れててくれ!」

セシリア「破れたら、最速で行きますわよ?」

黄牙「もち!じゃあ行くぜ。《星針》アンタレス!」

 

武器の名を呼ぶと、後ろの背負い物が手に展開された。

 

黄牙「ぜぇあ!!!」

 

アンタレスでバリアを一突きすると、粉々に砕けてしまった。そしてセシリアが

 

セシリア「こういう魔法使いみたいなこと、少々恥ずかしいですが、あの二人の安全には変えられませんわ!《光鎖》ライトニングバインド!」

 

光の鎖で敵機を縛る。

 

セシリア「今ですわ、黄牙さん!」

黄牙「おおおおおおおお!!」

 

その勢いのままゴーレムに突っ込んでいき、アンタレスで刺し貫いた。何かが砕ける音がして、ゴーレムはその動きを止めた。

 

黄牙「状況終了っと。一夏ー!鈴ー!無事かー!」

一夏「黄牙…わりぃ、助かった。」

セシリア「とりあえずピットに戻りますわよ?また襲撃があるかもしれませんし、お二人のISのダメージが…」

鈴「限界以上なんでしょ?まったく、何だったのあの機体。一夏の必殺技もまるでダメージなかったみたいだし…」

千冬『織斑、鳳、星守、オルコット!無事なら非常用ピットに来い!』

 

ISに通信が入り、千冬からの声が入った。その声がわずかに震えていて心配している様子が伝わった。

 

黄牙「さて、行きますか。」

一夏「黄牙、セシリア。そのISは…」

セシリア「ピットに着いたらちゃんとお話しますわ。」

鈴「だー!疲れたー!」

 

つい先程まで、命懸けの戦闘があったとは思えないほど4人は伸び伸びしていた。




次回、事の顛末と伝えられし神話。


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6話 後処理と神話の一部

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


ピットに行きISを解除した4人を待っていたのは、今にも泣きそうになっている真耶と全員揃っていて安心したような千冬の姿であった。

 

千冬「色々と言いたいことはあるが、まず…よくあの状況から戻ってきた。」

一夏「黄牙とオルコットが助けに来てなかったら今頃鈴と一緒に死んでたよ。」

鈴「そうね。その時のセシリアの格好…ホント女神様みたいだったわー。」

セシリア「んにゃっ!?わ、私が女神!?」

黄牙「あー、確かにその通りだわ。あのISの装甲、マジで服っぽかったし。何より似合ってた。」

セシリア「お、黄牙さんもですの!?」

一夏「俺は一瞬、お迎えが来たのかと思ったぜ。」

セシリア「皆さん、私をいじるのはやめてくださいまし!」

真耶「どにがぐ皆無事でよがっだでずー!」

 

談笑していると真耶が大声で泣き出した。それを全員で落ち着かせ、元の話に戻るまで30分かかった。

 

千冬「とりあえず織斑、鳳。SE残量が少ない状態で良くあそこまで粘ったな。」

一夏「それは鈴のおかげだよ。アドバイスとか色々してくれたし。ありがとな、鈴」

鈴「ふ、ふん!一夏が戻れるようになってたらあんなやつ鈴ちゃんがちゃちゃっとやっつけられたんだから!」

黄牙(素直じゃないなあ~。)

セシリア(まったくその通りですわね~。)

鈴「何か言ったかしら?」

2人「「いえ何も?」」

 

何かを感じ取ったのか、鈴がそう声をかけてきた。

 

千冬「それより星守、オルコット、お前達だ。さっきの機体は一体なんなんだ?」

星守「えっと、説明しても笑わないですか?」

真耶「それはどういう…」

セシリア「色々とオカルトじみた事が起こった、とだけ言っておきますわ、真耶先生。」

 

そうセシリアが言った後、黄牙が説明を始めた。黄牙の説明を箇条書きにするとこうだ。

①カードが光った。

②謎の空間に巻き込まれた

③謎の空間から出ると、カードが指輪状になった。

④その指輪がISになっていた。

その説明を聞いた4人はそれぞれ違う反応を見せた。

 

千冬「…何というか、お疲れさん。」

真耶「だ、大丈夫ですよ!そういう夢とか小さい頃見てますし、全然気にしません!」

一夏「そんな簡単に手に入るのか…」

鈴「な、何それ…www」

黄牙「とりあえず鈴、テメーはお仕置きだコラァァァァ!!」

セシリア「二人がかりでミノムシにしてさしあげますわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

鈴「え、いや、ちょ待っぎゃああああああああ!!!」

 

鈴は本当にミノムシの様にぐるぐる巻きにされ、天井から吊るされた。

 

千冬「それで、そのISだが…」

黄牙「解析するん、ですよね。」

千冬「ああ。3日以内には手元に帰ってくることを約束する。」

黄牙「了解です。あ、それと織斑先生、耳かしてください。」

千冬「ん?」

黄牙(この事は束に連絡しておきます。カードのデータの更新など、しなくてはならないので。)

千冬(了解だ。誰かに聞かれんところでやれよ。)

黄牙(わかりました。)

一夏「何話してたんだよ、俺たちに内緒で?」

千冬「何、期日を守らなければ災いが降り注ぐだろう、と釘を刺しに整備科に行くと言うだけだ。」

 

と、千冬は少しおどけた様子で言った。

―――――――――――――――――――――――――

その日の夜、黄牙は束に電話をした。

束『もすもーす!貴女の妻、束さんだよー!』

黄牙「はいもすもーす。そっちにデータの更新とかあった?」

束『それはなかったよ。けどその代わりに、ある文が出てきたんだよね~。』

黄牙「ある文?それは一体どんな内容なんだ?」

束『えっとね、《12の星目覚めし時、月を宿せし星の守人、獅子の力をその身に宿すだろう。》まだ続いてるっぽいけど、そこから先は出てきてないんだよね~。いやー困った困った。』

黄牙「星の守人?スコルスピアが言ってたな…」

束『へえ、そのIS喋るんだ。束さんが作った子供達みたいに。』

黄牙「スコルスピアが力を託してくれる時にしか話してないから、ちょっと違うかな。」

束『そっか…とりあえず任務継続かな。残り10枚のカードを覚醒させること。いっ君の護衛もちゃんとやってね。』

黄牙「了解。…なあ、たばちゃん。」

束『どしたの、おー君。』

黄牙「俺がそっち帰ったらさ、いっぱい甘えていいか?」

束『ふぇっ!?も、もちろんだよ!』

黄牙「ありがと、…愛してる。」

 

そう言って電話を切った。

 

黄牙(今回はセシリアを巻き込む形になったけど、次は誰も巻き込まないようにしないと。)

 

決意を固める黄牙。その一方で束は、

 

束「うきゃああああああああああああ!!!何今の、なにいまの、ナニイマノ!!?不意打ち愛してる(゚∀゚≡゚∀゚)キター!不足してたおー君成分MAXだよ!」

クロエ(幸せそうですね。録音しててよかった。)

 

一瞬の幸せを噛み締める束をよそに、クロエはちゃっかりその音声データを録音し、部屋でループして聞いていた。

―――――――――――――――――――――――――

??「本当に行かれるのですね。」

??「うん、何でお父さんは僕にこんな格好させるのか、分からないけど。」

??「お気をつけて。私どもは、貴女のお帰りを心よりお待ちしております。」

??「皆に伝えておいて。皆と過ごした時間は絶対に忘れないって。」

??「!…もちろんでございます…!」

 

??(誰か、僕を助けて…!)

 

ある者は、自由を求め偽りの自分を演じ、

 

??「クラリッサ、後は頼む。」

クラリッサ「隊長…御武運を。」

??「ああ。」

 

??(必ず見つけだす。我らが《ヴルム》を!)

 

また、ある者は龍を求める。

この二人がIS学園に新たな嵐を巻き起こす―――




次回、IS整備と姉妹の関係。


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7話 IS整備と会長の妹

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


黄牙「よし、今日の訓練はここまでだ。」

一夏「ありがとうございました!」

 

黄牙と一夏はアリーナにて、ISの訓練をしていた。今はISを解除し、ロッカールームにて制服に着替えながら、今回の反省会をしている。

 

黄牙「だいぶ対応できてるな。被弾率も35%。なかなか良くなってきたな。」

一夏「それでも、まだ遠距離には弱いけどな…」

黄牙「確かにな。35%の内、約7割は俺の荷電粒子砲やフェニックキャノンのビームによる遠距離攻撃。次から訓練相手をセシリアに変更だな。」

一夏「遠距離攻撃に関しては、あいつが一番だもんな。」

黄牙「それだけじゃないことくらいは分かってるだろ?」

一夏「BT兵器もなあ…本体が動けない隙を突こうとするんだけど、終わった後にセシリアが(動けるように努力しているのですわ!次こそは…!)とか言ってたし、その内動けるようになるんだろうな。」

黄牙「そうなったらかなりの強敵だな。」

一夏「だよなあ~…BT使いながら本人も狙撃してくるとかいよいよ、白式での攻略法みつかんねえぞ…」

黄牙「それでもやるしかないだろ。二次移行したら、射撃武器増えてるかもしれんけど。」

一夏「せめて使いやすさ重視が良いなあ…」

 

など、自身のISへの願望をのせつつ、ロッカールームの外に出た。

 

黄牙「さて、ISの修理でもしてくるかあ。」

一夏「ホント黄牙ってハイスペックだよな。戦闘も出来るし、ISの修理も出来るし。」

黄牙「自分のが2機あるだけでやること2倍だが?」

一夏「…そうだったな。」

黄牙「それにセシリアから頼み事請け負っちゃってさ。」

一夏「あの《ヴィエルジェ》って機体のことか?」

黄牙「そ。あれの詳細なデータを出してくれ、って。」

一夏「自分で使ってたのにそれが必要って、相当じゃないか?」

黄牙「ま、そっちはある人に任せてあるから問題ないけどな。」

一夏「ある人?」

黄牙「公には言えない、俺の後ろ楯。もちろんお前にも内緒。」

一夏「すげえ気になるけど、止めとこ。」

黄牙「お、良く分かってるじゃないか。訓練を始める前のお前ならすぐ首突っ込んでくるだろうな。」

一夏「色々学んだんだよ。触らぬ神に祟りなし、ってこともあるってさ。」

黄牙「ふふふ、今日はいい日だ。一夏よ、お前のISの調整も特別にやってあげようではないか。」

一夏「ありがたき幸せー…って時代劇じゃねーよ!」

黄牙「ツッコミもキレが増したな。」

一夏「動きのキレも良くしたい…。」

黄牙「そいつは訓練を重ねりゃきっと良くなるさ。ISハンガーにいくぞー。」

一夏「おーう。」

―――――――――――――――――――――――――

IS学園 ISハンガー

黄牙「こんちはーす。」

一夏「失礼します!」

 

ISハンガーに男子生徒二人が立ち入る。すると、

 

「あ!星守くんだ!」

「織斑君もいるわよ!」

「今日はツイてるなあ~!」

 

と、いろんなハンガーから声が聞こえた。

 

一夏「いつもこんな感じなのか?」

黄牙「初めて来たときはこんなだったなあ。今ではだいぶ落ち着いてる。今日の反応は一夏、君がここに来たからだ。」

一夏「あ、そっか。」

??「あら、いつもご苦労様星守くん。織斑くんははじめましてね。」

黄牙「紹介するぜ、一夏。ここの監督責任者の明石さんだ。」

明石「只今紹介にあずかった、明石 李奈よ。ここを使いたいときは私に言ってね。」

一夏「織斑 一夏です。来るときは黄牙と一緒のことが多いと思うので、そのときはよろしくお願いします。」

 

簡単な自己紹介が終わり、黄牙が明石に話しかける。

 

黄牙「明石さん。今日大きめのハンガー空いてます?」

明石「ちょっと待っててね。…えーっと、21番と27番が空いてるわ。どっち使う?」

黄牙「27番でお願いします。」

明石「了解。終わったらハンガーにある備え付けの電話でこっちに連絡してね。」

黄牙「ありがとうございます。一夏ー?行くぞー?」

一夏「お、おう!」

明石「いってらっしゃーい。」

 

27番ハンガーまでの道中、一夏が黄牙に質問した。

 

一夏「なあ、黄牙。ハンガーってどんな種類があるんだ?」

黄牙「ああ、説明しとくか。目的地までちょっと時間かかるし。」

 

と言うと、初めて来たときにもらっていた地図を広げた。

 

黄牙「ここのハンガーは全部で30基あるんだ。ISを展開しないで、システム面の調整をする小型ハンガーが10基。ISを展開して装備の点検をする中型ハンガーが10基。ISを複数展開してシステムや装備、あらゆる面を確認、修復する大型ハンガーが10基の内訳だな。ちなみに中型は1機だけ、大型は最大3機まで展開可能だ。今回俺たちは白式、ストライクヴルム、スコルスピアの3機をやるから、大型を借りたって訳だ。」

一夏「いつもこれだけ埋まってるのか?」

黄牙「まあ、訓練機とかの整備は主に整備科の人達が担当してるけど、ここまで埋まってるのは何かあったんだろうなあ。」

一夏「訓練機の数でも増えたのかな。最初にIS学園にある機体は、打鉄とラファールがそれぞれ5機ずつ、だったっけ。」

黄牙「後は個人的な調整もしてる人とかいそうだな。…着いたぞ。ここが27番ハンガーだ。」

 

大きく27と書かれた扉の前に着いた。

 

一夏「何というか、普通の家にありそうな感じだな。」

黄牙「扉はな。中はスゴいぜ?」

 

そう言って扉を開けた。その中には、システムを調整するためのコンピュータが4基あり、さらにその向こうにはISの損傷部を修復するための簡易ピット、ISを搭乗者なしで起動状態で固定できるハンガーユニットが3つ、搭載されている武器を固定するハンガーが2つ、搭乗者を安全に乗降できる籠付きのアームが3つが備え付けられていた。

 

一夏「すっげぇ…」

黄牙「設備に関しちゃどこの国よりも優れてるさ。さあ、一夏。ISを起動してくれ。メンテを始めるぞ。」

一夏「おう!」

―――――――――――――――――――――――――

明石が受付で待機していると、メガネをかけた生徒が1人やって来た。

 

??「あの…」

明石「あら、もういいの?」

??「システムの最終調整は終わったので…」

明石「実機の方はどう?」

??「まだ、大型スラスターが調達出来ていないので、しばらくは…」

明石「ならさ、27番ハンガーに行ってみなよ。」

??「ど、どうして…ですか?」

明石「今話題の男性二人がそこにいるから。」

??「!!」

明石「どうする?貴女がいいなら連絡いれとくよ?」

??「…お願いします。」

明石「了解。ちょっと待っててね。」

―――――――――――――――――――――――――

一夏「黄牙ー。明石さんから電話来てるぞー。」

 

一夏が備え付けられていた受話器をとり、黄牙に言う。

 

黄牙「まだ、時間じゃないはずだが、すぐ行く。」

 

そう言ってISのメンテナンスを中断し彼のもとまで行く。

 

黄牙「代わりました、星守です。」

明石『あ、星守くん。ちょっと頼み事を引き受けてくれないかな?』

黄牙「自分で良ければ構いませんよ。」

明石『ありがとー!今からそっちに1人連れていきたい娘がいるんだけど、調整はどんな感じかな?』

黄牙「3機の内1機はもう終わってますよ。残り2機はもう少しかかりますけど。」

明石『うん。状態もバッチリみたいだね!頼み事の内容が、その娘のISを少し見てほしいの。』

黄牙「報酬はどれくらいでしょうか?」

明石『食堂での食事をを1食奢っちゃう。』

黄牙「そのISの状態によってはもう1食追加しても構いませんか?」

明石『ええ。それくらいお安いご用よ。それじゃまた後でね。』

 

そう言って電話が切れた。

 

一夏「明石さん、なんだって?」

黄牙「1人連れていきたい人がいて、その人のISを見てほしいって。」

一夏「…今日中に俺たちのISの整備終わるか?」

黄牙「やるしかないさ。その人が来たらそっち優先になるから、なるべく進めとく。要望があれば言ってくれよ。」

一夏「オッケー。」

 

30分後にインターホンが鳴った。

 

黄牙「わりぃ一夏、出てくれ。」

一夏「了解。はいはーい。」

明石「ごめんね、急にこんなこと頼んじゃって。」

一夏「それは黄牙に言ってください。その人が?」

明石「ええ、更識 簪さん。」

簪「どうも…」

一夏「よろしく、更識さん。今奥で作業しているのが―」

簪「星守 黄牙君、だよね?」

一夏「流石に知ってるか。」

簪「これでも、日本の代表候補生だから…」

一夏「そうなのか!凄いな!」

明石「はいはい、立ち話もなんだしそろそろ入って見てもらってね、簪ちゃん。」

簪「は、はい。お邪魔…します。」

明石「それじゃ、後はよろしくね。」

一夏「了解ですー。」

 

明石を見送った一夏と簪。そこへ

 

黄牙「すまない。作業が一区切りつくまで時間が掛かってしまった。俺は星守 黄牙。よろしく。」

簪「更識 簪です…よ、よろしくお願いします…。」

黄牙「更識、というと―」

 

簪の名字を言ったとたん、彼女の顔に陰がさした。

 

黄牙「すまない、どうやらこれはタブーのようだ。早速で悪いが、君のISを見せてくれないか?」

簪「分かりました…奥のスペースでもいいですか…?」

黄牙「ああ。むしろそっちの方が良かったね。それじゃついてきて。」

 

黄牙は簪をストライクヴルムと白式が何本もプラグが繋がれている状態のハンガーエリアに案内した。

 

簪「あの、制服のまま展開するの…?」

黄牙「そのままで気持ち悪かったら一回着替えてきても構わないけど、どうする?」

簪「…あまり時間ない、よね。このまま展開する。」

黄牙「助かる。それじゃあ頼む。」

簪「うん…おいで…」

 

簪が念じると、彼女のISである《打鉄弐式》が出現した。

 

黄牙「よし。そのまま空いているハンガーに向かってくれ。そこで接続ならびに固定作業を開始する。」

簪「は、はい…」

 

そう言って、真ん中のハンガーに向かって行った。すると、アームが稼働し、優しく機体をおさえた。さらにプラグが何本も伸び、稼働部に接続された。

 

黄牙「よし、完了だ。降りてきてくれー。」

 

簪は一瞬不安になったが、籠付きのアームが来たので難なく降りることができた。

 

黄牙「ご協力ありがとう。ところでこの機体のコンセプトって一体何かな?見たところ陸戦タイプみたいなんだけど。」

簪「あ、えっと、実は…」

 

簪は打鉄弐式のコンセプトについて話し、さらにまだ未完成であることとスラスターの部品が足りない事を告白した。

 

黄牙「こいつは驚いた。この完成度でまだ未完成だなんて。」

簪「あ、えと、どうも…。」

黄牙「スラスターの部品については…一夏ー?白式のスラスターのデータ、簪さんの機体にフィードバックして構わないかー?」

一夏「ああ!それで機体が完成するなら、しっかり使ってくれ!」

簪「あ、ありがとう。」

黄牙「気にすることはない。ただの善意だからな。それと、1つ注意しておく。」

簪「な、何?」

黄牙「今の機体バランスなら今までのシステムでもどうにかなると思うけど、これに背部スラスターを取り付けると、システム間で齟齬が発生する可能性がある。その点はどうするんだ?」

簪「システム構成は、私の得意分野。2つの間で整合性をとるくらい、問題ない。」

黄牙「なるほど。それは失礼した。そんじゃ、機体チェックはこれにて終了だ。」

簪「ありがとう。…1つ、聞かせて。」

黄牙「ん?」

 

そういうと、深呼吸してこう言った。

 

簪「もし、絶対に勝てない相手がいたら、貴方はどうするの?」

黄牙「たとえそんな相手がいたとしても、今までの経験と自分の機体を信じて戦う。どれだけ力の差があったとしても、それを理由にして諦めたくはない。」

 

力強くそう簪に言った黄牙に簪は

 

簪「強いんだね。貴方って。」

黄牙「それを言うなら君もそうだ。」

簪「え…?」

 

黄牙が放った言葉に驚きを隠せないでいると、

 

黄牙「たった1人でISをここまで組み上げた。システム面にも不具合もない。これはすごいことだ。」

簪「それじゃ、ダメなの。」

黄牙「どうして?ここまでやってもまだ君は満足していないのか?」

簪「私は、お姉ちゃんを超えたいの。」

黄牙「生徒会長を?」

簪「あの人は、ISを1人で完全に作りきった。それに、ロシアの国家代表を任されて…いつも、比べられて…」

 

簪が言葉に詰まり始めたとき、一夏が

 

一夏「その気持ち、良くわかるよ。」

簪「何で…」

一夏「ISが広く浸透してから織斑先生は世界を1度制覇しただろ?そんなときに俺は、よく知らない周りの人達が戦乙女《ブリュンヒルデ》の弟、まあ、付属品みたいな扱いを受けた。」

黄牙「一夏…」

一夏「付属品でも当時の俺は仕方ないと思って、なにも言わずに心のなかにそのストレスをしまった。けど、ある時からそれはいわれのない批判へと姿を変えた。」

簪「…それって」

一夏「ああ。第2回モンドグロッソだ。俺は誘拐され、ドイツ軍と千冬姉に助けられた。その代わりに千冬姉は、優勝を逃した。」

黄牙「……」

一夏「それをTVで見てた信者共は何て言ったと思う?《恥さらし》とか《輝かしい歴史の1ページを無にした愚か者》とか、色々ネット上でボロクソに言われたよ。」

簪「そんな…織斑君は、何も…」

一夏「そんなのは関係ないんだろうな。あまりの誹謗中傷の多さに一時自殺することも考えた。こんな風に叩かれて苦しい思いをするならいっそ、ってな。」

黄牙「……止められた、のか。」

一夏「ああ、千冬姉にな。そんときの千冬姉は俺を強く抱きしめて、何度も謝ってた。千冬姉のせいじゃない、こうなった理由は他にあるのに。けど、落ち着いてからの最後の言葉が俺には一番記憶に残ってる。

『私を…1人に、しないで。親に捨てられ、一夏にこの世を去られたら、私はっ…何を支えにして自分を奮い立たせたら良いのか、誰の為に苦しい日々を耐えながら、頑張らないといけないのか分からなくなる。だから頼む、私の前から、居なくならないで…。』ってさ。」

簪「……」

 

簪は呆然としてこの話を聞いていた。

 

一夏「つまり、何が言いたいかっていうと、だな。どれだけ周りが酷いことをしたとしても、家族は絶対に見捨てたりしない。むしろ、そういうことをやったやつにどう責任とってもらうかとか考えるくらい、大好きなはずだ。」

 

すると簪が泣き出してしまった。

 

黄牙「前フリ長いし重い!」

一夏「な、なんだよ!簪さんを元気付けようと思って、」

黄牙「逆に結論丸々入ってねーよ!お前の経験のせいで簪さんボロ泣きじゃねーか!それにこの状態で生徒会長に見つかりでもしてみろ!?殺されるじゃすまねーぞ!!」

一夏「あ…」

 

などと漫才みたいなことになっていると、

 

簪「フフフッ」

2人「「ん?」」

簪「ありがとう。おかげで何か吹っ切れた。」

一夏「そ、そっか。ならよかった。」

黄牙「俺たちはまだ2機を調整するから送ることは出来ない。また何かあったら1組に来てくれ。その時は力になるから。」

簪「分かった。わざわざありがとう。それじゃ、また。」

 

そう言って簪は部屋を後にした。

 

黄牙「さてと、さっさと残りの2機もやるか。」

一夏「おう!」

 

部屋に残った二人は、ストライクヴルムと白式の調整を再開。白式はエネルギー効率の最適化と出力の調整、ストライクヴルムは荷電粒子砲の出力調整とクロー部分のエネルギー出力向上をし、45分程で作業を終えた。

また、簪と楯無の関係は少しずつではあるもののいい方向に向かっているそうで、後日楯無が2人にお礼しに行っていた。




次回、金の貴公子、銀の兵士。


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8話 金と銀の転入生

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


ある日の教室、何やら生徒達がザワザワしていた。

 

黄牙「おはよー。…なんか騒がしいけど、どしたの?」

清香「あ、星守君おはよう。今日転入生が来るらしいの。」

黄牙「またか…」

本音「ほしもんも気を付けてね~。」

黄牙「わかってる。一夏の耳にも入ってるだろうなあ。」

 

などと話していると、チャイムが鳴り一斉に席につく。

 

千冬「諸君おはよう。朝のHRを始める前に今日は転入生を紹介しよう。」

真耶「は、はい!では、入ってきてください!」

 

真耶がそう促すと、2人の生徒が入ってきた。すると女子生徒達がザワつきはじめた。1人が男性であるのだ。

 

真耶「では、まずはデュノアさんから自己紹介をお願いします!」

デュノア「はい。シャルル・デュノアです。よろしくお願いします。」

 

すると、1人の女子生徒が

 

「お、男?」

デュノア「はい。僕と同じ境遇の方がいると聞いて、こちらに入学を…」

黄牙(やべ耳塞ご。)

 

黄牙が耳を塞いだ瞬間、教室のガラスが震える程の声が響いた。

 

「「「「キャアアアアアアアアアアア!!!!」」」」

「守ってあげたくなるイケメン!」

「ああ、ここがヴァルハラか…」

「男運が無かったのはこのときの為だと理解した!」

 

黄色い声が響くなか、千冬が

 

千冬「静かにしろ!!馬鹿者共!!」

 

怒鳴り声が聞こえ、一瞬にして静まった。

 

千冬「まだ、もう1人転入生がいることを忘れるな。ボーデヴィッヒ。」

ボーデ「はっ!教官!」

千冬「教官ではなく先生だ。」

ボーデ「失礼しました!」

 

そういうと生徒の方に向き直り、

 

ラウラ「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

そう言うと教室内に静寂が流れる。

 

真耶「あの、以上ですか?」

ラウラ「ああ。」

 

誰かを見つけたのか、その席に行く。一夏の前だ。

 

ラウラ「お前が教官の弟か。」

一夏「そうだけど。」

ラウラ「お前が…!」

一夏「え、うおっと!?」

 

いきなりラウラが平手打ちをくらわそうとしたところを寸でのところでかわした。

 

一夏「いきなり何を!」

ラウラ「どうやら少しは出来るようだが、私はお前を教官の弟と認めるわけにはいかない。」

一夏「…認めたくないならそれでいい。けど俺が織斑先生の弟ということは昔も今もこれからも変わらない。」

ラウラ「……」

真耶「で、では、2人は一番後ろの席についてくださ~い。」

千冬「それと織斑、星守。デュノアのことは頼むぞ。」

一夏「え、そんないきなり…」

千冬「同じ男子同士だろう?助けてやれ。」

黄牙「了解です。」

 

少しの不穏を残しながら、HRが始まった。

―――――――――――――――――――――――――

デュノア「織斑君と星守君だよね?」

 

デュノアが2人に話しかける。

 

一夏「ああ、デュノアか。これからよろしくな。」

黄牙「一夏、そんな時間はないぞ。…奴らが来る…。」

一夏「あ!そうだった!」

デュノア「え?奴ら?一体何が…?」

 

デュノアの疑問はすぐに解消されるところとなった。女子の軍団が迫ってきていた。

 

「いたわ!転入生よ!」

「星守君と織斑君もいるわ!」

「今日こそは、ウス=異本の題材の許可をいただく!」

 

3人の元に殺到してきていた。

 

デュノア「ヒッ!」

一夏「あーあ、デュノアのやつビビって腰抜かしちまった。」

黄牙「はあ…一夏、お前デュノアを担いでロッカールームまで来い。」

一夏「な!?俺ごと見捨てるのか黄牙!」

黄牙「必要な犠牲さ。恨んでくれるなよ。さらばだ!」

 

黄牙は先に1人で走っていってしまった。

 

一夏「あの野郎…おい、デュノア?」

デュノア「な、何?」

一夏「ちょっと無茶するから、暴れたりすんなよ。」

デュノア「へ?何を言って…うわぁ!?」

 

一夏はデュノアを米俵を担ぐようにして走った。

 

デュノア「うわああああああああ!!?」

一夏「喋ってると舌噛むぞ!」

 

2人は走りながら、ロッカールームへ向かった。―――――――――――――――――――――――――

黄牙「お、思ったより早かったな。」

一夏「う、うっせ…俺たちを…おいてった…くせに…」

デュノア「し、死ぬかと、思ったよ…」

 

飄々としている黄牙と対照的に、女子に追いかけ回された一夏とデュノアは息切れを起こして座り込んでいた。

 

黄牙「後2分で授業始まるから、早く着替えてグラウンドに来いよー。」

一夏「く、くっそ…」

デュノア「いつも、あんな感じ、なの?」

一夏「いや、そうじゃない、けど。ともかく、これが、ここでの、男の珍しさ、だからさ。」

デュノア「う、うん。よく分かったよ。」

 

そう言って2人は着替えはじめた。なお、デュノアが一夏の上半身をみてすっとんきょうな声を出したり、こっちを見るなと言っていたりと、男子にしては少々女々しさを感じた一夏であった。一方黄牙は

 

箒「一夏はどうしたんだ?あと1分だぞ…」

セシリア「大方、黄牙さんのせいだと思いますわ…」

箒「ああ…おい星守。いつまで踞っているつもりだ。早くた…おい何笑いをこらえている…」

黄牙「わ、わりぃ…2人のさっきの様子を思い出して…プププ」

鈴「あ、黄牙…。ねえセシリア、あいつ何やってんの?」

セシリア「思い出し笑い、だそうですわ。」

鈴「え、怖っ。」

 

2組と合同授業と言うことなので、鈴も1組に挨拶しにいこうとしたが、黄牙の様子を見て、何か恐怖を感じた。ちなみに、一夏とデュノアは間に合わず、千冬から説教をくらった。デュノアは転入初日という事で免れたものの、一夏はがっつり怒られた。

―――――――――――――――――――――――――

昼休み、食堂へ昼御飯を食べに行こうとすると

 

ラウラ「星守 黄牙だな。」

 

ラウラに呼び止められた。

 

黄牙「何だよ、問題児さん。」

ラウラ「後で話がある。放課後屋上に来い。」

黄牙「突っぱねる可能性を考えないのか。」

ラウラ「少女1人の願いも聞けんのか?」

黄牙「少女って柄じゃ無いだろうに…。」

ラウラ「何か言ったか?」

黄牙「いえ、何も。」

ラウラ「ではな。」

 

そう言って、ラウラは去っていった。

そして、放課後には念を押すかのように

 

ラウラ「屋上で待っている。」

 

と、言われてしまった。

―――――――――――――――――――――――――

その放課後、黄牙は言われた通りに屋上に来た。

 

黄牙「言われた通り来たぜ。」

ラウラ「それについては感謝しよう。」

 

と言って、ラウラは一言

 

ラウラ「単刀直入に言う。プロトヴルムを渡せ。」

黄牙「なんだその機体名。俺のはストライクヴルムだ。」

ラウラ「とぼけるな。私の左目が、お前のネックレスがプロトヴルムであるという反応を示している。」

黄牙「お前の勘違いだろう。そもそもプロトヴルムなんて機体、俺は知らない。」

ラウラ「渡す気は無いようだな。」

黄牙「そもそも違う機体だ。お前に渡す道理がない。」

 

黄牙が拒絶すると、

 

ラウラ「ならば、力ずくで取り戻す!」

 

と、いきなり襲いかかってきた。

 

黄牙「ちっ!織斑先生はこいつに何を教えてたんだ!」

ラウラ「ありとあらゆる技術だ!」

黄牙「そういうことをいってんじゃねーっての!」

ラウラ「何!?うわっ!」

 

黄牙に足を引っかけられ、綺麗に転ぶものの即座に体勢を立て直した。

 

黄牙「流石に軍属、身のこなしが常人のそれじゃない。」

ラウラ「…待て、なぜ私が軍属だと知っている。」

黄牙「事前に情報が来ただけだ。その際、織斑先生にお前のことを聞いた。随分と後悔してたぜ、あの人。」

ラウラ「…は?」

黄牙「『あいつには戦闘面しか教えてやれず、1人の女子としてのことを何一つ教えてやれなかった。もっと早く気づけていれば良かった。』ってな。」

ラウラ「そんな戯れ言を信じるとでも!」

黄牙「…今お前の教官を《否定》したな?」

ラウラ「何…?なぜ今の言葉が教官を否定することに繋がる?」

黄牙「よーく分かったよ、お前はブリュンヒルデとしての織斑先生しか見ずに、本当の織斑先生を見ていないことにな。偶像崇拝なんぞしてるからお前自身の愚かさにも気づかない。」

ラウラ「貴様ァ!」

黄牙「悔しかったら、トーナメントで会おうぜ。そこで決着つけようか。」

ラウラ「…良いだろう。その言葉を撤回させてやる。」

黄牙「はっ、やれるもんならやってみろ。」

 

こうして、屋上での出来事は彼ら2人が知るのみとなった。そしてもう1つの事件が、動き出そうとしていた。




次回、偽りの仮面、本当の自分。


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9話 未遂と自由と

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。

※今回、シャルロットの扱いが良くないと思われます。シャルロッ党の方々本当に申し訳ありません。


黄牙「さーてと、そろそろ寝るか。」

 

ハンガーから戻ってきて寝る準備を始める黄牙。するとドアから、一夏の声がした。

 

一夏「黄牙ー!ここ開けてくれー!」

黄牙「何だよ、急に…ちょっと待ってろ!」

 

開けると一夏がいた。肩で息をしているあたり、相当な場面に出くわしたらしい。

 

一夏「いきなりごめん!ちょっとお邪魔する!」

黄牙「は?ちょ、おい!」

 

一夏は黄牙の部屋に飛び込んだ。

 

黄牙「何しに来たんだよ、こんな時間に。」

一夏「とりあえず簡単に話すと、シャルルは女なんだよ!」

黄牙「あ、そんな話?」

一夏「そんなって、黄牙お前…」

黄牙「気づかないわけ無いだろ。そもそも生徒会長から転入生に気を付けろって言われてる。何かあるって思うさ。」

一夏「ま、マジか…」

黄牙「んで、そのシャルルとやらと何かあったのか?」

 

黄牙に聞かれ、一夏は話し始めた。

 

一夏「あいつが白式からデータをとろうとしてた。」

黄牙「それで、白式はちゃんと取り戻したんだよな?」

一夏「もちろん。ほら。」

 

そう言うと、白いガントレットを見せた。

 

黄牙「とりあえずはOKだ。で、これからどうするよ?」

一夏「シャルルのことか?…千冬姉に相談するよ。」

黄牙「いい判断だ。この件については俺達に任せてもらう。…いいですよね?師匠。」

一夏「師匠?」

??「よくぞ気づいたな、おー君!それとおひさーいっ君!」

 

夜中なのに騒がしい声が響いた。

 

一夏「た、束さん!?」

黄牙「頼むから静かにしてくださいよ…」

束「むふふー束さんに静かにするという言葉は「じゃあクロエの飯抜き」…ごめんなさい」

 

一通り落ち着くと黄牙が

 

黄牙「とりあえず頼み事を「二人分終わってるよーん」流石です。それで、その二人はどういう人物で?」

束「うーんタダで話すっていうのはなー?頑張った束さんに何かご褒美とか無いのかなー?」

黄牙「…ちょっと耳かしてください。」

束「うん?」

 

束は頭を黄牙の方に傾ける。すると束の耳元で小声で

 

黄牙(二人になったら、一緒に寝てください。///)

束「!!」

一夏「束、さん?どうしてそんなに目をギラギラ「hoooooooooooooooooo!!!!!!!!」のわぁ!?」

束「良いよ良いよ!むしろそれが良い!ぐふふふふ…」

一夏「ヒッ…」

黄牙「それで、二人の、情報は?」

 

騒いだ束に少し顔の赤い黄牙が聞く。

 

束「おっと、喜びが勝ってしまった。ほい、二人の情報が入ったUSBメモリ。それでうまーくこっちに引き込んでね?」

黄牙「…了解です。何言っても良いんですよね?」

束「もちろんだよ!おー君が言った虚言も全てこの束さんが真実に変えてあげよう!」

黄牙「頼もしいことこの上ないです。それじゃまた後で。」

束「待ってるよーそれじゃバイビー!」

 

そう言って束は去っていった。部屋に残った二人は

 

一夏「いつ知り合ったんだよ、束さんと?あの人すごい人嫌いなのに。」

黄牙「いつかは言えない。けど、師匠のおかげで今がある。」

一夏「つか、引き込むって…ああ、いや何でもない。」

黄牙「だいぶ危機察知レーダーが強くなったな。この調子でその朴念仁っぷりも治ればいいが。」

一夏「お、おう。それは頑張る。とりあえず、千冬姉に電話するよ。後のことは頼む。…なるべく誰も傷つかない方法で。」

黄牙「その依頼料は高いぞ?」

一夏「何でもして良い券3枚。」

黄牙「…え、俺そんな趣味無いんだけど…」

一夏「ちげーよ!そういう意味で言ったんじゃねーよ!」

黄牙「悪かったよ。では、それでいこうか。」

 

この後一夏が千冬に電話をかけてデュノアは御用となり、懲罰房に入れられた。その際、彼女のISは凍結。送り出したフランス含め諸外国には彼女の一切の情報が渡ることはなかった。そのあと、黄牙は千冬と楯無に一任して欲しいと頼み、後ろ盾もあるからとゴリ押して何とか了承を得た。

一夏と別れ部屋に戻ると、そこにはウサギパジャマ姿の束がいた。

 

束「さあおー君!一緒に寝よう!」

黄牙「はい…」

束「むむむ?子守唄でも歌ってあげようかな?」

黄牙「すみません、お願いします…。」

束「…ん、分かった。」

 

そうして二人はベッドにいき、横になった。左側にいる黄牙が右側にいる束に抱きつく様子で。その後束は黄牙の肩を優しくたたきながら、

 

束「ね~んね~んころ~り~よ~、おこ~ろ~りよ~♪」

 

子守唄を歌った。安心した様子で黄牙は眠りについた。その時、一粒の涙が彼の目元から落ちた。それを拭き取った束は

 

束「身寄りになる親戚もなく、頼れる肉親もいない。そんな矢先に私に拾われて、IS学園に入れられた。不安しか無いよね。…けど大丈夫。黄牙のことは私が守るよ。償いのためでもあるけど、それ以上に貴方を愛する1人の女性として、ね。文字通り、世界を敵に回しても、きっと…」

 

そう言って黄牙を強く抱き締め、二人は眠りについた。翌日目を覚ました黄牙は残された書き置きに目を向けて、改めてこなさなければならない依頼に集中した。

―――――――――――――――――――――――――

IS学園 懲罰房

デュノア「………」

 

1人で過ごした時間もよくわからなくなった。人と関わることは食事のときのみ。完全に外から隔離された部屋に彼―いや彼女―はいた。そこへ、

 

??「案外じっとしているものだな。フランスのスパイさん?」

 

声が変な、全身マントを被った人間がそこにいた。

 

デュノア「…誰?…いったい何の用かな?」

??「君に話を持ってきた。しがらみから解放され自由を手にするための話をね。」

デュノア「……もう、いらない。」

??「何故?」

デュノア「…僕には、もう戻る国も、帰る屋敷もない。監視の先生達が話しているのを聞いたよ。謎の勢力の襲撃にあい、国は壊滅。デュノア社も潰され、屋敷にいた人間も全員死亡。…どうして、どうして僕だけ生き残ったんだろう…」

??「…クックック、アーハハハハハハハハ!!」

デュノア「何がおかしい!!」

??「いや、失礼。君は随分と素直な人間な様だ。誰とも分からん人間の情報を信じるとは。」

デュノア「じゃあ何?まだ残っているとでもいうの?」

??「ああ、もちろんだよ。最も君の件に関わった悪い人たちは処刑したがね。」

デュノア「…え、…?」

??「これを見てもらおう。」

 

そう言うと、マントを被った人物は端末を取り出しある映像を見せた。

 

??「シャルロット様。お久しゅうございます。」

デュノア「え、…アルベルト…さん…?」

アルベルト「これだけ伝えておきます。彼の…星の守人の元にいます。貴女が優しくしてくださり、貴女の身を心より案じた者たちは皆、彼の元で元気にしております。シャルロット様のお戻りを心よりお待ちしております。それでは。」

デュノア「!!星の、守人…そんな、あれはただの伝説じゃ…」

 

シャルロットが困惑していると、まだ映像が続いていた。

 

アルベルト「もう、よろしいですよ。」

??「すみません、デュノア家次期当主の直属の執事筆頭にこのような真似をさせてしまって。」

アルベルト「すべては、シャルロット様を救うためです。この老いぼれに出来ることがあるならば、何なりとお申し付けください。星守 黄牙様。」

黄牙「やめてください、様だなんて。」ピッ

 

ここで映像が止まる。

 

??「やれやれ、少し見せ過ぎたか。」

シャル「え…?何で、彼が…」

??「その疑問に答えよう。」

 

そう言って変声機を外し、マントをとると

 

シャル「何で、どうやって君が…」

??「すべては依頼のためさ。まあ、少し失敗したから俺にも依頼主に何か払わんといけないけど。」

シャル「…僕は、何をすれば良い…君が僕を助けて、何の得があるのさ、星守くん?」

黄牙「そうだな…2つある。1つは裏と表で生きろ、かな。」

シャル「…は?」

 

黄牙の言ったことの訳が分からず、よく分からない反応をそのまま返した。

 

黄牙「表については言うまでもなく、デュノア社の再建。膿を出しきった後のことはシャルル、いやシャルロット、君に一任された。」

シャル「れっきとした犯罪者である僕がかい?」

黄牙「それならもとから無罪だ。両親の脅迫による精神衰弱、それに男装指示の証拠も出て、彼らは永遠に塀のなかで暮らすことになった。それに伴って君の容疑は全て両親のものとなった。が、君だけ何もないというわけにはいかなかったからな。IS学園内の懲罰房での禁固1週間という運びになった。すでに6日経っている。良かったな、明日出られるぞ。」

シャル「裏は何なのさ?」

黄牙「篠ノ之 束の元に入り、ある企業について調査してもらう。」

シャル「ある企業、それは?」

黄牙「亡国企業《ファントムタスク》。」

シャル「なるほど、責任重大だね。1つ目、受けさせてもらうよ。それで、2つ目は?」

 

シャルロットは1つ目を了承し、2つ目を聞く。

 

黄牙「二つ目は、俺たちの家族になってもらうことだ。まあ、これについてはどんな返事でも良い。シャルロットの意思を尊重する。」

シャル「…なら、それについては断らせてもらうね。」

黄牙「理由は、なんて聞く必要もないか。」

シャル「うん。」

黄牙「なら、話はこれにて…すまない、もう1つあった。シャルロット、君が本国に着いて一段落したらアルベルトさんが話していた星の守人伝説とやらについて、データで送ってほしい。構わないか?」

シャル「もちろん、そのつもりだよ。」

黄牙「助かる。これで本当に話は終わりだ。」

シャル「そっか、ねぇ、星守くん。」

黄牙「黄牙で良い。何だ?」

シャル「また会えるかな?」

黄牙「―すべては星の導きのままに―」

シャル「!!」

黄牙「じゃあな。」

 

そう言って黄牙はここから離れていった。

その翌日、シャルロットはIS学園から退学し、故郷へ帰っていった。ニュースになっていたこともあって、責める声は上がることはなかった。アルベルト達とまた1からやっていくそうだ。そして、タッグマッチ前になって、女子達が組もうと誘ってきたが、一夏と組むということで事なきを得た。

その2週間後、タッグマッチの日が訪れた。




次回、タッグマッチと―――の覚醒。

シャルロットについては今後も登場予定です。


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10話 焦がれた強さと3枚目の覚醒

この小説は作者の投稿モチベーション維持の為の作品です。


IS学園 第4アリーナ

カタパルトで待機している二人。一夏と黄牙である。一夏は

 

一夏「いよいよ決勝か…」

黄牙「緊張か?」

一夏「まあ、そうだな。」

黄牙「いつも通りやりゃ良いんだよ。それに、あいつらの分もしっかり落とし前つけてもらわなきゃなァ…!」

一夏「それについては俺も同じだ。よくも鈴とセシリアをあそこまで…!」

 

実は準決勝でセシリア・鈴ペアとラウラ・箒ペアがあたり試合が行われたのだが、その光景は試合というより蹂躙と言った方が合っていた。

まず武装の破壊から始まり、スラスターを木端微塵にし、AIC(停止結界)で動きを封じて大型のレールカノンが着弾するタイミングで解除し、二人をアリーナの端から端まで吹き飛ばした。

常人であればPTSDを発症してもおかしくないレベルであったが、鈴とセシリアは何とか踏みとどまった。しかし試合のダメージが響き全治3週間のケガを負った。その上二人のISもダメージレベルが蓄積限界ギリギリであり、突貫で修復作業をしても20日は掛かると整備科の人達が言っていたそうだ。

この一連の騒動があって、黄牙と一夏は燃えている。

 

――カタパルトへの接続完了。タイミング譲渡。――

 

電子的なアナウンスが聞こえた。

 

黄牙「星守 黄牙、スコルスピア。目標を穿つ!」

一夏「織斑 一夏、白式。行くぜ!」

 

蒼と白の機体が射出され、今回の戦いの舞台へと向かっていった。

―――――――――――――――――――――――――

ラウラ「…何だ、その機体は?」

黄牙「ストライクヴルムに目ぇ行きすぎだ、タコ。それにおいそれとこいつの性能なんざ吐くか。」

ラウラ「ふん、どんな機体を使おうが私の勝利に揺るぎはない。後で後悔しても知らんがな。」

黄牙「そっくりそのまま返してやる。」

一夏「箒、今の俺たちは手加減できないぞ。」

箒「承知の上だ。だからと言って易々と勝ちを譲る気は無い!」

 

――これより、決勝戦を開始します。――

アナウンスが響き、開始のブザーが鳴った。

 

一夏「カウントは!」

黄牙「俺は20、一夏は12!」

一夏「任せろ!」

箒「!?」

ラウラ「何をするのか知らないが!」

 

ラウラが右手をかざそうとすると、

黄牙「やっぱそうくるよなぁ!」

黄牙がアンタレスを使って衝撃波を放った。回避運動が少し遅れ、ラウラに当たる。

 

ラウラ「何!?」

黄牙「ぜああああああ!」

ラウラ「愚直に突っ込んでくるとは!」

 

真っ直ぐ突撃してくる黄牙を今度こそAICで止めようとする。が、

 

ラウラ「何故、AICが作動しない!?」

黄牙「自分で考えなぁ!」

ラウラ「ぐぅっ!?」

 

アンタレスがシュヴァルツァ・レーゲンに届きダメージを与えた。反撃の隙を与えまいと追撃を仕掛ける。その時、一夏から個人間秘匿通信(プライベートチャンネル)を通じて《箒、ダウン。》と簡潔に報告された。

そのすぐ後に――篠ノ之 箒、SE、0。篠ノ之、ボーデヴィッヒチーム残り1機。――と、アナウンスがなる。

 

ラウラ「ちっ!」

黄牙「舌打ちしてる暇なんぞねぇだろがァ!」

ラウラ「レーゲンがAICだけと侮るなァ!」

黄牙「侮ってたらここまで接近なんぞするか!はァっ!」

ラウラ「レールカノンが!…クソッ!」

 

プラズマブレードを展開し黄牙をどうにか弾き飛ばして上空に飛んだラウラ。しかし、

 

一夏「ハアアアアアアア!!」

ラウラ「!!」

 

一夏が急接近し、ラウラの懐に入る。

 

一夏「黄牙にばっか集中してくれた方が良いんだけどな!」

ラウラ「舐めるな!すぐに落ちたやつと違うのだ!」

一夏「そうかよ…上手く引っ掛かってくれてありがと、な!」

ラウラ「まさか…!」

黄牙「そうよ、そのまさかよォ!」

ラウラ「ぐあああああ!」

 

ふくらはぎのスラスターを吹かして一夏とラウラがいるところまで飛んできた黄牙。その攻撃をくらってアリーナの地面に叩きつけられた。

 

ラウラ(こんな…こんなところで、負けるのか…?嫌、嫌だ!私は、勝たなければならない…絶対的な勝利を…!)

???《汝、力を求めるか?》

ラウラ(ああ、よこせ。二人を負かせられる力を!)

???《VT system,a…iv….a…om…c o………g》

ラウラ(!!??)

 

何かのシステムが突如したかと思えば、軽い口調の声が代わりに聞こえてきた。

 

??《あっぶね。もうちっと遅かったら呑まれてたか。ちっせぇ闇だが、さっきのキモい泥食ったらどうにか顕現のための因子は揃ったみてえだな。そこのチビ、体ぁ借りるから少し奥にいってもらうぜ♪》

ラウラ(な、何…を…。)

 

見知らぬなにかに眠らされたラウラに気づくのは、黄牙のポケットに入ったカードが光ってからだった。

 

一夏「なあ黄牙、ポケット光ってるぞ?」

黄牙「ん?…嘘だろ…」

 

個人間秘匿通信に連絡が入る。束からのようだ。

 

束『おー君!蛇使いの反応アリだよ!』

黄牙「蛇使い…まさか、アイツから出てるのか。」

??《そのと~り。俺だ。》

二人『「!?」』

 

突如何者かの声が割り込んできた。

 

黄牙「誰…とは言わない方が良いか。」

??《流石は星の守人。察しが良いねぇ。そんなアンタに1つお願いがあってね。》

束『私の黄牙に何させるつもり?発言によってはただじゃ置かないからね?』

??《ハハハ、守人の嫁のウサギさんにはそんな危ないやつに見えるかい?ISという枷のある状態の俺が?》

束『よ、嫁!?』

??《なあに簡単なことだ。今の俺のISにカードを差してくれればそれでいい。》

黄牙「それによるお前のメリットはなんだ。」

??《守人伝説、だったか。それの第一段階の突破…は大義名分で、星の守人と最初に戦った星座になりたい。ただそんだけだ。》

束『…それだけなの?』

??《意外かい?》

束『もっとエグいの来ると思ってたよ。』

??《あんたは俺がどううつってんだか…》

黄牙「…分かった。それでいいんだな。」

??《おうよ。》

黄牙「一度通信を終える。後でな。」

??《楽しみにしてるぜ。》

 

そうして蛇使いとの会話は終わった。

 

束『…とりあえず頑張ってね。』

黄牙「分かってる。」

 

そう言って束との通信を切り、ラウラに近づく。

 

黄牙「差し込み口は、と。お、あったあった。」

 

右腕のプラズマブレード発生装置に後付けのような差し込み口が出来ていた。そこに蛇使い座の紋章が浮かんだカードを差し込んだ。すると紫色に発光しそれが起き上がったかと思えば、杖を持った、朱色と紺色のラインが幾重にも重なったISがそこにたっていた。

 

一夏「何だよ、あれ…」

黄牙「一夏、手ぇ出すなよ。」

一夏「何かあったのかよ?」

黄牙「あいつは俺をご指名なんでな。サシでやる。」

一夏「…分かった。絶対勝てよ!」

黄牙「言われるまでもねぇ!」

 

黄牙はそのISに目を向け、臨戦態勢を整えた。

 

アスクレプオス(以下レプ)「さあ!第2ラウンドだ!」

黄牙「ま、それでいいが…マジで行くぜ!」

 

星座と星座が今ぶつかり合おうとしていた。




次回、星の激突。


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11話 蠍vs蛇使い

お待たせいたしました。

この小説は投稿モチベーション維持のための作品です。


レプ「その前に、まずは自己紹介だな。俺は蛇使い、アスクレプオスだ。今は訳あってこいつ(ラウラ)の体を借りてる。…いいバトルにしようぜ?」

 

ラウラ自身では無いためなのか、先程までのどこか焦りにも似たような面持ちとは一変し本心からこの戦いを楽しもうという気持ちが見てとれる。

 

黄牙「星守黄牙だ。こちらこそよろしく。お前の力を見せてもらう。」

 

二人の様子を遠くから見ている一夏は

 

一夏「本当に大丈夫なのかよ…あいつ、とんでもないオーラを纏ってる様に見えるけど…」

???「どうなるのだろうな。星守と奴の勝負は。」

一夏「!?…箒、ピットルームにいるんじゃ無かったのかよ?」

箒「確かにさっきまでいたさ。だが、ボーデヴィッヒの体が光出してから奴の雰囲気が変わっただろう?その時に感じたんだ。直でこの戦いを見なければこの先IS搭乗者としてひいては剣の道を行く者として成長できない、と。」

一夏(二人の武器がどう見ても剣じゃないっていうツッコミはヤボ、かな。)「本当にヤバそうならピットに戻る。それでいいか?」

箒「もちろんだ。死んだら元も子もないしな。」

 

一夏と箒は、武器を構えている黄牙とアスクレプオスの二人をアリーナの端で見守ることになった。

仕切り直してまた始まろうとしていたタイミングで千冬から無線が入った。

 

千冬『星守、ボーデヴィッヒの身に何があったのかを説明しろ。』

黄牙「…それは後でも構いませんか?これについては少々説明が面倒なので。今この段階では奴には危険性はないと確信していますが。」

千冬『なぜそう言いきれる?』

黄牙「奴から通信が入ってきた時に一通り会話しました。その際、目的については自分と戦うことだということでした。」

千冬『そうか…星守、お前に一任する。奴のデータの収集も頼む。』

黄牙「了解です。」

 

千冬がそう言うと通信は終わった。

 

レプ「話は終わりかい?」

黄牙「ああ。」

レプ「なら、存分に楽しもう!俺たちのバトルを!」

 

アスクレプオスが尋常じゃない速度で突っ込んでくる。

 

黄牙「は!?」

レプ「突っ立ってるだけかよォ!?おもっきし行くぜぇ!」

黄牙「ッ野郎!」

 

黄牙のアンタレスとアスクレプオスの杖《魔星杖 ラサルハグェ》がつばぜり合う。

 

黄牙(刃がねぇのになんて耐久性だこの杖!?)

レプ「お前今『刃が無いのになんてかてぇんだ』って思ったろ?」

黄牙「!?」

レプ「刃ならあるぜ?今から出すけどなァ!《闇刃》ダークブレード!」

 

アスクレプオスがそういうと紫色の粒子が杖の先に集まり、槍の先端のような形を作った。

 

黄牙「これは…ヴィエルジェと同系統の!!」

レプ「そーいや乙女座と蠍座が今居るっけか。なら予想くらいつくだろうよッ!」

黄牙「なっ!?ぐあっ!!」

 

つばぜり合いから黄牙の姿勢を崩し、回転しながらスコルスピアのアンタレスと腹部に同時にダメージを与えた。その様子を見ていた一夏と箒は

 

一夏「なんだあの動き!?」

箒「どうやら奴は戦いに慣れているようだな…あの一回の動きだけで星守の槍が使い物にならなくなり、ダメージを受けた…今の私たちではどれだけ奴とやれるのか…」

一夏「黄牙…!」

 

黄牙「ちっ…やっぱ狙ってくるか…」

レプ「だが、蠍座の武器はもうひとつあるだろ?」

黄牙「よくご存じで。《毒鋏》スコルピウス!」

 

そう宣言すると両肩のアーマーが両腕に装着された。

 

レプ「超近接戦か…なら、《黒域》ブラックフィールド。」

 

黒い魔方陣が地上に展開された。次の瞬間

 

一夏「ぐっ!?」

箒「な、なんだ…急に体が重く…」

 

バリア内にいた一夏と箒が片膝をついた。

 

黄牙「何だこれ…動きづれぇ!」

レプ「針がありゃあまだ勝負になったろうが、これで終わらせてやらァ!」

 

そう言い放つと上空へと飛び、魔方陣を形成した。

 

黄牙「おいおいマジか…一夏ァ!」

一夏「何だよ!?こっちも今体が重くて動けないんだけど!?」

黄牙「防御姿勢とっとけ!出来るなら箒さんをカバーしてだ!」

一夏「わ、分かった!」

 

一連の指示を黄牙が出すまでの間に

 

レプ「汝に捧ぐは蛇皇の猛毒。生けるモノ全てを蝕む力、特と味わえ!人蛇の蝕毒《ピオーズヴェノム・インフェクション》!」

 

蛇使い座の星の配置が描かれた魔方陣から蛇型のエネルギー弾が地上に向かって発射された。

 

黄牙「ぐおおおおおおお!?」

一夏「ぐぅ!?…あれ?思ったよりダメージがない?」

 

レプ「お楽しみは…これからだ…!」

 

そう言うやいなや、ISの部品だけ融け始めた。

 

一夏「な、何だよこれ!?融けてる…!」

黄牙「ちっ!一夏はISを解除したら箒と一緒にピットに戻れ!…!」

レプ「ほぉ?」

 

黄牙が何か念じると白銀のIS ストライクヴルム が纏われていた。

―――――――――――――――――――――――――

真耶「織斑先生!あれって…」

千冬「高速切替《ラピッド・スイッチ》をISごと行ったのか…あいつの機体の所有数がそうさせたか。」

真耶「ISを複数所有しているなんて星守君とオルコットさんくらいですもんね。いつこれを習得したんでしょう?」

千冬「私に聞かれても困るんだが…」

―――――――――――――――――――――――――

黄牙「ふぅ…一発勝負だったが上手くいったか…」

レプ「そんな風に 人蛇の蝕毒 を回避されるとは予想外だったな…じゃそろそろ出すかね、あいつを。」

黄牙(まだ何かあるのか…何がくる?)

 

レプ「さてと、充分魔力は貯まったか…起きろ!我が眷族にして半身!オフィウクス!そんでもって…単一仕様能力発動!黒満ちる蛇使い《ブラックホール・アスクレス》!」

 

大型の蛇のようなユニットを呼び出したかと思えばアスクレプオスはそのユニットと合体。禍々しい姿へと変貌した。

 

黄牙「うっわ…」

レプ「これでようやく本来の力が出せるってもんだ。13番目の力、打ち破ってみせろ!」

黄牙「言われるまでもない!パススロット開放!フェニックキャノン!」

 

二人の最後の戦いが始まった。




次回、決着と伝説の解明。

時雨雪さん、誤字報告ありがとうございます。


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12話 決着、星を束ねて。

…こっちがメインになってる気がするが一応。

この小説は作者の投稿モチベーション維持のための作品です。


戦闘の場所が地対空から空対空に変化したことで、二人の戦いはより苛烈さを増した。

 

黄牙「フルバーストで!」

 

腹部の荷電粒子砲とフェニックキャノンのレーザー砲の計3門から発射されたビームがアスクレピオーズに迫るも、

 

レプ「バーリア!っと。」

 

魔方陣の影響で無効化されてしまった。

 

黄牙(遠距離はほぼ無意味、なら接近戦で!)

 

スラスターを全開にして突っ込んでいく黄牙のストライクヴルム。

 

レプ「お、いいねえ。だが!」

 

蛇の尾が黄牙に迫ってきていた。が、

 

黄牙「んのりゃあ!」

レプ「!!」

 

瞬間加速を2度使って、懐に潜り込んだ。

 

黄牙「下ががら空きだ!」

 

今度こそビームが当たった、かに見えたが

 

レプ「前の戦場でそいつはくらった!2度目はない!」

 

バリアが展開されていた。

 

黄牙「何!?」

レプ「そのまま潰れな!」

 

機体がそのまま迫ってきた。

 

黄牙「クソッ!間に合え!」

 

押し潰される寸前に辛くも脱出に成功し、距離をとった。

 

黄牙(真下からの攻撃を予期していたみたいな反応の仕方だった…それに《以前》?何かありそうだが…今は!)

 

三つ指型のクローを刺突できるように1つにまとめ、フェニックキャノンのビームを発射する。

 

レプ「だーから意味ねえっての。バリアだ。」

 

そのビームは弾かれる。が、発射元に黄牙の姿はない。

 

レプ「また下か?」

 

下を見るもそこにもいない。次の瞬間、何かがとりついたように感じた。

 

レプ「まさかそうくるとはな!」

黄牙「ゼロ距離なら!」

 

光の奔流が初めてアスクレピオーズに届いた。

 

レプ「ぐぅぅ!」

黄牙「こいつで最後だ!」

 

ゼロ距離で撃ち込まれ、地上に落とされるアスクレピオーズ。それを見計らって空中にいた黄牙が再度突っ込んでくる。

 

レプ「ちっ!」

 

阻むようにバリアが二重に展開される。

 

黄牙「どぉりゃああああああああああ!!!」

レプ「俺のバリアに突っ込む気かよ!」

黄牙「ただ突っ込むだけじゃないぜぇ!」

 

さらに回転を加えてアスクレピオーズを二重のバリアごと貫いた。絶対防御が発動した。

 

レプ(見事なもんだなあ…これで1stフェーズが終わり、2ndフェーズの扉が開かれた…。ここからが正念場だぜ?)

 

アスクレピオーズが解除され蛇使い座のマークが施された指輪がラウラのそばにあり、そのラウラは気絶した状態で倒れていた。アナウンスが響き、歓声が回りから上がるなか、ストライクヴルムから新たな表示が出た。

 

黄牙「ん?zodiac elements…その下は…Lunatic ray?…ゾディアックが23/100でルナテックが67/100…なんだこの数値…ああいかんいかん。今はボーデヴィッヒの救助が優先か。」

 

当事者である彼は、気にもせずにラウラを回収したあとピットに引っ込んだ。その後の表彰式にも姿を見せずに、一夏のみが参加。彼いわく、破損箇所の修復という最もらしい欠席理由をそこにいる全員に話したという。

―――――――――――――――――――――――――

ところ変わって、保健室。一人の少女がそこに寝かされていた。

 

ラウラ「ん…ここは…?」

??「起きたか。随分よく眠っていたじゃないか。」

ラウラ「…なぜ貴様がここにいる。星守黄牙?」

黄牙「ん?ああ、表彰式とかそういうイベントは苦手でね。ああ、警戒は解いてくれていい。君の出生を知っているからね。」

ラウラ「何…?」

 

驚いて目を丸くするラウラに黄牙は、

 

黄牙「後ろ楯が一晩でやってくれました。…随分理不尽な事があったみたいだな。」

ラウラ「…ああ。兵器として扱われる事に関しては何も思わない、むしろそうあれという科学者によって産み出された試験管《デザイン》ベイビーだからな。」

黄牙「ISが出るまでは、か。」

 

黄牙がその言葉をついた瞬間、何かに火がついたかのようにラウラは怒りを滲ませた。

 

ラウラ「ああ、そうだ!今までの兵器では歯が立たないと知ったやつらは私に手術を施して、失敗するやいなや私を切り捨てた!」

黄牙「それと俺の機体を手に入れることに因果関係がない。それにお前のレーゲンの方が良いだろうに。AICだっけか。十分過ぎるくらいに力があるが?」

ラウラ「それではダメだったんだ!」

黄牙「…どういう事だ?」

ラウラ「…私のいる隊は一機一機のクセが強い。故に、強大過ぎる力を扱いきれぬ者が多数出た。それを見た上層部は何と言ったと思う?使えぬものにここにいる資格は無いと言ってきたんだ!素人がいきなり爆弾を完全に分解しろと言われているようなものだというのに!そのせいで何人もの部下が隊を追われた!隊長だというのに部下一人救えなかった…そして、半年前ある事件が起きた。」

黄牙「ある事件?」

ラウラ「Gefangener Drache…龍拐い事件だ。試験開発されていたIS一機が何者かによって強奪された。その機体は我々の隊、黒兎隊に配備される予定だった。」

黄牙「ドラッヘ…?」

ラウラ「きっとお前の機体の名のヴルムはリンドヴルムに由来しているのだろう。だから龍拐いなのだろうな。…そしてその機体はわれわれが待ち望んだ量産型の機体、つまり第2世代機だった。」

黄牙「第2世代?…ああ、第3世代はどの国も量産化の目処がたっていないからグレードダウンして配備しようとしたのか。」

ラウラ「私はようやく我が隊が安全に、そしてここから先欠けることなく進んでいけると確信した。…だが、その希望すら絶たれ、存続の危機にまで陥った。」

黄牙「で、俺に接触し、ストライクヴルムのデータを持って帰る、あるいは取り返すのがお前の任務って訳か。」

ラウラ「隊員は全員人質に取られ、送り出される時に見送られたよ。それがこのザマだ。笑いたければ笑うがいいさ。所詮は仲間一人助けられん無様な隊長だ…。」

黄牙「…なんだ、お前結構いいやつじゃないか。」

ラウラ「何…?」

黄牙「よし決めた。お前にかかっている呪縛全部俺が取っ払ってやる。」

ラウラ「は!?貴様何をするつもりだ!?」

黄牙「無論その上層部?とやらを潰して、あんたのお仲間も救うが?」

ラウラ「…なぜそうまでする?放っておけば良いだろうに…」

黄牙「何故、か。そうだねぇ…」

 

そこで溜めるとラウラに顔を近づけて、

 

黄牙「お前が欲しくなった、じゃダメか?」

ラウラ「はにゃ!!!???」

 

突然こんなことを言われれば誰でも顔を赤くするが、ラウラに至ってはそもそも言われることが今まで無かったためそういうことに関しては耐性がまるでなかった。

 

ラウラ「ななな、にゃにを、いいい言っているんだ、き、貴様は!?」

黄牙「部下を思いやって、自ら先頭に立つ。中々できることじゃない。それこそ上層部のやつより余程偉いってもんだ。お前とその隊をここで無くすには惜しいと思ったし、お前に関しては確実に俺のものにするって今決めたからなあ。」

ラウラ「…私たちをどうするつもりだ。」

黄牙「そいつぁ、ゴミ共をボロ雑巾も真っ青なまでにズタズタにしてから話すさ。てなわけで、たーばーちゃーん!あとはヨッロシクゥ!」

 

誰かに呼び掛けるように声を出すと、人一人入りそうな人参がブゥンといきなり現れて、

 

束「呼ばれて飛び出てジャジャジャーン!開発者の束さんだよー!」

 

天災が現れた。驚愕のあまりラウラは

 

ラウラ「(゜ロ゜)」

 

こんな顔(↑)をしていた。

 

束「おー君?また女の子落としたね?」

黄牙「え、…あ」

束「はー!何だよ何だよ!!束さんという超絶可愛いお嫁さんがいながら二人も落とすなんて!!おー君の天然ジゴロ!」

黄牙「んな!?…ゴホン!それはともかく「ともかくしないから後でじっくり話そうね…?」…ハイ。…ドイツの情報ってどれくらい集まってる?」

束「完っ全に収集完了してるよ。最も、いつ潰そうか考えてたんだけどね。」

ラウラ「ちょ、ちょっと待て!」

 

ようやく正気に戻ったラウラが、

 

ラウラ「何故ここに篠ノ之博士がいる!?」

??「それは禁則事項ですよ。…私の妹。」

 

人参からもう一人現れた。その姿はラウラによく似たものだった。

 

黄牙「クロエ…ついてきてたのか。」

クロエ「勿論です。お父様♥️」

黄牙「外堀が埋められている、だと…」

ラウラ「お父様!?」

黄牙「そこに反応しないでくれ頼むから…」

 

そんな反応をしり目にラウラに近づくクロエ。そして、

優しく抱き締めた。

 

ラウラ「な、何を…」

クロエ「姉としての励ましです。今までよく頑張りましたね。」

ラウラ「姉…さん…」

クロエ「フフ、何ですか?」

ラウラ「あ、ああ…うぅ…うわああああああああ!!」

 

ラウラの泣き声がこだまする。その様子を見ていた二人は、

 

黄牙「さてと、俺たちは奴等を潰そうか。」

束「姉妹仲を引き裂いた罪を購うがいい…」

黄牙「…キャラ変わってるし。」

 

その後、軍の主要施設を壊滅させ、束がレーゲンから事前に抜き取っていたVTシステムを公表されたドイツは各国から猛烈な批判を受けた。その際に黒兎隊の面々を救出しフランスにあるラボに護衛隊として雇ったのはまた別の話。

束に説教されたのも別の話。

―――――――――――――――――――――――――

3日後、普段通りの学校生活が送られた。悪い空気もラウラの国の事の顛末をTVで一部知ったので、どこかへ飛んでしまっていた。

 

ラウラ「お父様!今日の昼食は何にしましょうか?」

黄牙「学内でその呼び方は勘弁して…」

 

一夏「あそこまで余裕無い黄牙はタッグマッチ以来だな。」

セシリア「私が護衛ですのに、あそこまでイチャイチャしてぇ…!!」

鈴「セシリア、おーい…聞いてないわね…」

本音「ほしもんはいつの間に子供出来たんだろーね?」

箒「なっ!?何て破廉恥な!?」

鈴「いつの時代の人なの、それ?」

 

と、和気あいあいと過ごしていた。

―――――――――――――――――――――――――

またまた場所は変わってフランスの資料室。そこにいるのは束とシャルロット、そしてアルベールである。

 

束「…ねぇ、これに書かれてること、ホントなの…?」

 

シャル「残念ながら、事実ですよ。」

 

束「そ…んな…どうしよう…このままじゃおー君が…おー君が!!」

 

アルベール「落ち着いてください!まだそうなると決まったわけでは無いはずです!」

 

束「でも!もう星の力も月の神の力も溜まってきてる!このまま、ためさせたら、本当に…」

 

シャル「だからこそ、ここでねじ曲げるんです。居場所をくれたあの人をここに残すために。」

 

束「そう、だね。束さんだって失いたくないから。あの人を、私の愛する人を。」

 

 

12の星目覚めし時、月の力を宿せし星の守人、獅子の力をその身に宿すだろう。

 

その力を宿した星の守人、世界に平和と安寧、未知をもたらした後、星座を連れて宇宙の彼方へと飛び去り、永劫の時を13の僕と過ごすだろう。

 

―――――守人伝説、●●●●星●。




次回、海に行く前に。

…機体設定を細かく書いた方が良いか。

ちなみにアスクレプオスとアスクレピオーズは別形態なのです。誤字報告してくださってありがたいのですが、誤字ではありません。指摘させるようなお手数をかけてしまい申し訳ありませんでした。


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閑章 interval
1話 海に行く前に。


黄牙「水着を買いに行きたい?」

ラウラ「うむ!」

―――――――――――――――――――――――――――――

ラウラがいきなりこんなことを言い出したのには訳がある。

7月の臨海学校では1日目は自由時間、2、3日目にISの筆記、実技等の訓練をするという予定である。そのため丸一日暇な時間が出来、滅多なことをやらかさない限りは行動の自由が約束された。

 

千冬「それとISスーツは確実に持ってくること。忘れた場合は濡れたままの水着、最悪下着で受けてもらうことになる。例年通りだとしても問題だが、今年は男子生徒がいる。露出狂だと思われたくないなら必ず持ってくるように。」

女子生徒たち『はい!』

 

ISスーツでも充分思春期真っ只中の男子二人からすれば水着以上にキツいだろうに…

 

一夏「臨海学校か…」

黄牙「訓練期間は一日半だーって言っても今回は足元砂浜だし、それなりにキツいものになりそうだな。」

セシリア「ですがそれよりも大事なことがありますわ。」

黄、一「「??」」

鈴「季節は夏、そばには海、ときたら!」

ラウラ「海水浴しかないだろう!お父様!」

黄牙「その呼び方やめろ!あとノリノリだなお前ら!?」

―――――――――――――――――――――――――――――

ラウラ「今まで軍属でずっと訓練や任務に明け暮れていたから、水着をほとんど持っていないのだ。」

黄牙「ほとんど…おい、まさか俺が行かなかったら…」

ラウラ「?学園指定のすくーる水着?とやらだが。」

黄牙「よし行くぞ。セシリア、護衛頼む。」

セシリア「…あの、黄牙さん?もしよろしければ、私の水着も選んでほしいのですが…」

黄牙「えっ」

 

困惑する黄牙にセシリアが、

 

セシリア「ダメ、ですの?」

 

上目遣い+目をうるうるさせて言ってきた。

 

黄牙「…はぁ、分かったよ。暇な日いつだ?空けとく。」

セシリア「まあ!ありがとうございますわ!」

黄牙(あれは世の男性ほぼ落ちるだろうが!!くっそ、カワイイが過ぎるぞこんちくしょう!)

 

黄牙の悶える様子を見ていた一夏、箒、鈴は

 

一夏「大変だな、あいつ。」

鈴「あれはセシリアの完勝ね。」

箒「タイミングも完璧だったな。」

一夏「何で二人揃って解説してるんだよ!?」

鈴「それはそうと一夏?」

一夏「無視!?」

箒「私達もその、なんだ…水着を選んでほしいんだが…」

一夏「俺にか?こういうのって女子同士の方が良いんじゃ」

鈴、箒「「それとこれとは話が別!」」

一夏「は、はい!僭越ながら選ばせていただきます!」

 

…二人に尻に敷かれていた一夏であった。

 

?『ぐぬぬ…』

??「………」

 

その様子を直で見ていた人物とモニター越しに見ていた人物がいるとは知らずに、予定を決めて水着を選びに行くのだった。




閑章は多分3~5話位使う可能性あり。


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2話 待ち合わせ、鉢合わせ!?

黄牙「待ち合わせ場所は、ここか。…ちょっと早かったか。」

 

レゾナンス入口前の噴水広場で腕時計を確認し、時間を見る男が1人。星守黄牙その人である。今日は水着を選ぶことになった。

 

???「やはり最初に来ていたんですね、お父s」

黄牙「その呼び方を公共の場でするな。」

 

ラウラが来た。黄牙はラウラの服を見ているうちに、

 

黄牙「今日は水着のあとはラウラの服を買わないとか…」

ラウラ「な!?そこまでしなくても」

黄牙「制服のままはマズイだろ?身分証明なら生徒手帳で事足りるからな。それに…」

ラウラ「それに?」

黄牙「ラウラはもとがいいんだからお洒落しないともったいないだろうに。」

ラウラ「お父様!」

黄牙「…まずその呼び方をどうにかしないとかぁ…」

 

はたからみたら なんだあのイチャイチャカップル とか色々思われそうだが、これが黄牙とラウラの普通な光景である。と、いつもの会話をしていると、

 

????「お待たせいたしましたわ。」

ラウラ「む、遅いぞセシリア。」

セシリア「申し訳ありません。準備に時間がかかってしまって…」

黄牙「あー…なら仕方ないか。」

 

セシリアが来た。白のワンピースに日傘という何とも清潔感のある格好をしていた。

 

黄牙「今日は護衛とかそういうの気にしなくていいからさ。気軽にいこうぜ?」

セシリア「もちろんそのつもりです。…何か言うことがありませんこと?」

黄牙「え?…あー、スゲー似合ってる。」

セシリア「むぅ…今日はそれで勘弁してあげます。次はちゃんとほめてくださいね?」

黄牙「お、おう…努力する。」

 

頬を膨らませて少し不機嫌そうに見せたセシリアにラウラが

 

ラウラ(今のは充分誉めていたのではないのか?…後でクラリッサに聞いてみよう。)

 

と、思ったのはまた別の話。

 

セシリア「さあ、早く鈴さん達のところへ行きますわよー!」

黄牙「うん?ちょっと待って?」

セシリア「あっ」

ラウラ「…」

 

なぜか黙りこんだラウラと何か思い出したかのように『あっ』といったセシリア。

 

黄牙「思い違いなら悪いんだけどさ、今日3人で行くんじゃないのか?」

セシリア「そ、それは…」

ラウラ「おいセシリア、おt…黄牙殿「殿いらん」…黄牙に報告するのを忘れていたのか?」

セシリア「あの、えっと…」

黄牙「…大体分かった。報告は来てないけど、そういうことなら早く行こう。」

セシリア「はい…申し訳ありませんわ…」

 

目に見えてテンションが下がったセシリアに黄牙が小声で

 

黄牙(セシリア、俺気にしてないから。)

セシリア(ですが…)

黄牙(いいんだよ。友達との買い物でテンション上がってたんだろ?仕方ないさ。)

セシリア(黄牙さん…!)

ラウラ「私を除け者にすーるーなー!」

 

だだっ子の様になってしまったラウラをなだめて一夏達の元へ向かった。

―――――――――――――――――――――――――――――

その頃一夏、箒、鈴は

 

鈴「あいつらがここに来たら驚かしてやるんだから…ヒヒヒ…」

一夏「なあ、箒?鈴の奴何であんなにテンション高いんだよ…」

箒「私に聞くな…」

 

物陰に身を潜めていた。




次回、ひと悶着。


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3話 ちょっとした

黄牙、ラウラ、セシリアの3人が一夏達の待つ場所の近くに来たところで、

 

黄牙「なあセシリア?」

セシリア「はい、どうかしましたの?」

黄牙「…」

 

無言で指を指した先には見慣れたツインテールの先っぽらしき髪の毛が出ていた。

 

ラウラ「黄牙どうし…撃ち抜こうか?」

黄牙「おどかすだけでいいからね?そんな物騒なこと言わないで?」

ラウラ「…それでは何か足らん気がするな。セシリア、黄牙、耳を貸してくれ。」

セ、黄「「?」」

 

二人に何かを伝えるラウラ。それを聞いた二人は次回

 

セシリア「いい考えですわね。日頃の恨み、晴らさせていただきますわ…フフフ

黄牙「いつもどれだけボッコボコにされてんだ、お前…ほどほどにしとけよ、頼むから。」

ラウラ「…私から振っておいてなんだが、セシリアは少々暴走気味だな。」

 

ラウラが二人の方に目を向けると、目がヤバいセシリアをどうにかしてストップさせる黄牙という何とも言いがたい光景がそこにあった。

 

一夏「なあ鈴、いつまでこうしてるつもりだよ?時間なくなっちゃうだろ?」

鈴「しーっ!あんまり大きい声出さないでよ!見つかったらどうするつもり!?」

箒「はあ…付き合いきれん。一夏、鈴のことは任せたぞ。」

一夏「エ"ッ…」

鈴「あら、気が利くじゃない。」

 

ヤレヤレと言った感じでその場を後にした箒。その直後、

 

?、?「「わっ!!」」

一、鈴「「うわあっ!?」」

 

背後からいきなり大きな声が聞こえて、二人は驚いて振り向く。そこにはセシリアとラウラの二人がいた。

 

ラウラ「ふふふ、我々を陥れようなど100年早いわ!」

セシリア「訓練の仕返し、大成功ですわ!」

 

ラウラはドヤ顔で勝ち誇ったように、セシリアは高笑いをしていた。腰に手を当てて。そこへ、

 

??「そこまでにしとけ。他の客の迷惑になるぞ。」

セ、ラ「「はいぃ…」」

 

あからさまにテンションが下がった二人の後ろに黄牙がいた。

 

鈴「な、なんで私達が驚かそうとしてたのが分かって…」

黄牙「お前のツインテ。」

鈴「え?」

黄牙「物陰から出てたんだよ、ツインテールの先っぽ。」

鈴「あんたどんだけ目良いのよ…」

黄牙「?両目2.0だが?」

鈴「そういうことを聞いてるんじゃないっての!」

 

無事に(?)合流した6人。水着屋につくまで、

 

鈴「なんでよー…」

一夏「まあ相手が相手だったからなぁ」

ラウラ「まったく…相手が鈴や箒以外の不届き者であれば確実に処断したものを…」

黄牙「それはやめなさい。って不届き者なんて言葉いつ覚えた…」

箒「それより、セシリア?仕返しとか言っていたなぁ?」

セシリア「ピィッ!そ、それは、その…」

箒「帰ったらキツくしてやる。覚悟しておけよ?」

セシリア「そんなぁ~…」

 

と、いかにも高校生らしい会話を繰り広げていた。

―――――――――――――――――――――――――――――

??『こちら、バンドルラビット。サウザンドウィンター、状況を報告せよ。』

??「…こちらサウザンドウィンター、目標に気付かれぬまま尾行を継続中。…なぜ私がこんなことをしなければならないんだ、束?」

束『だってぇ~、水着欲しいんだも~ん。それにおー君どんな水着着るのか知りたいし~?ちーちゃんはいっ君の気にならないの~?』

千冬「お前の我が儘に付き合ってるだけありがたいと思え、束。…一夏め、なぜ私を誘わなかったんだ…!」

束『ちーちゃん?本音出てるよ、本音。』

千冬「…ともかく、私も水着を買い換えなければと思っていたところだったからこうして付き合っている。それ以上でもそれ以下でもない。」

束『なんだかんだ言ってもやってくれるちーちゃんやっさしいー!』

千冬「今度の臨海学校の時覚えておけよ…!」

束『キャー!ちーちゃんこわーい!』

千冬「斬るぞ…!

束『ちょーっとまって?微妙にニュアンス違ったよね?完全にトランシーバーじゃなくて束さんに向けて言ったよね?』

千冬「さあな。これだから自意識過剰な天災兎は。」

束『何おう!?』

 

……なぜか後をつけているブラコン教師と、トランシーバー越しに様子をうかがう天災が楽しそうに会話していた。




次回、Let's 水着選び!


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4話 水着を選ぼう!

そうこうしているうちに水着屋についた黄牙たち6人。

 

鈴「さて、水着屋さんに着いたけどどうする?」

一夏「どうするって何だよ?水着選ぶんだろ?」

鈴「そ、それはそうだけど…///

 

顔を赤くして、うつむいてしまう鈴。その様子に黄牙とセシリアがあることに気づく。

 

黄牙(あー、そういうことか。)

セシリア(どういたしますの?)

ラウラ(二人で納得するな!私にも説明しろぉ!)

黄、セ((いずれわか(りますわ)るさ。))

ラウラ(む、むぅ…)

 

うまーくラウラがはぐらかされたところで、セシリアが鈴に小声で

 

セシリア(鈴さん?予定変更しますの?)

鈴(う、うん…何か急に恥ずかしくなってきちゃって…///)

セシリア(分かりましたわ。では、プラン2で行きますわよ?)

鈴(ごめんね、せっかく黄牙ともっと仲良く出来るチャンスだったのに…)

セシリア(あー!あー!何も聞こえません!何も聞いていませんわー!)

 

想像以上に仲良くなった二人に箒が、

 

箒「それで、結局どうするんだ?」

セシリア「当初の予定と異なりますけど、男子と女子でわかれて水着を選ぶことにしましょう。織斑さん、黄牙さん、よろしいですか?」

黄牙「了解だ。いくぞ一夏。」

一夏「おう。選び合いっこは」

黄牙「せんでいいわ!」

鈴「あ!男子の水着コーナーは奥の方にあるから!」

一夏「分かったー!」

 

そういって鈴達とわかれ、男子コーナーへ向かう二人。それを見送った四人は、

 

箒「どうした、鈴?いつもなら強引にでも一夏に選ばせると思ったのだが?」

鈴「う、ううう、うっさいわね!恥ずかしくなったもんはしょうがないでしょ!」

ラウラ「たかが水着を選ぶだけでなぜそこまで…」

セシリア「乙女心は複雑なんです…さあ、私たちも行きましょう?本当に時間がなくなってしまいますわよ?」

 

と、セシリアに促されて水着を選ぶことになった。

―――――――――――――――――――――――――――――

男子side

一夏「分かってはいたけど男物の水着少ないなあ…」

黄牙「仕方ないことだろうぜ?女尊男卑の思想が広まったってだけだ。」

 

事も無げに告げる黄牙に一夏は

 

一夏「だけって…じゃあ黄牙はこの思想を変えることが出来るのかよ?」

 

少々八つ当たり気味に疑問をぶつけた。それにたいして黄牙は

 

黄牙「ん?ああ、やれると思う。」

一夏「!?」

 

自信があるように返答した。驚きを隠せない様子の一夏を後目に黄牙は続ける。

 

黄牙「発端は師匠のISだとしても、そこに至るまでには多くの人の、ひいては女性権利団体、だっけ?…そいつらの意思が関係しているからな。どこかできっかけを作って、男女平等に出来ればそれで解決だ。」

 

ここで言葉を区切る黄牙。そして

 

黄牙「最もそのきっかけに誰も乗らなかったらこのままの思想のまま突き進んでいくんだろうぜ。そこに待つのは…何だと思う?」

一夏「えっ、それは…」

 

何とか答えを出そうとしていると

 

黄牙「ま、さすがに今はそんなことを考えなくていいだろうけどな。」

一夏「え…?」

黄牙「お前が矢面に立つのはもう少し先だ。その時自分や支えてくれる人に後悔させる選択は取らせるなよ、って事を言いたかっただけだ。」

一夏「あ、うん…それより水着だ!」

黄牙「だな。」

 

一夏(あいつ、何を言ってるんだろう?矢面に立つ?俺が?一体どういう…)

新たな疑問を払拭できないまま、臨海学校に使う水着を選ぶのだった。

―――――――――――――――――――――――――――――

女子side

箒「水着か、こうしてみると案外種類があるものだな。」

ラウラ「ほとんど下着と変わらない気がするが…?」

鈴「ふーん?じゃあ下着でいるか水着でいるかどっちが恥ずかしくない?」

ラウラ「??」

 

鈴の質問に どういうことだ? という感じで首をかしげるラウラ。

 

セシリア「ラウラさん?」

ラウラ「む?」

セシリア「海で下着は公然猥褻罪で捕まりますわよ?」

ラウラ「法に引っ掛かるのはよくないな。ならば水着だろう。」

 

と、強引に納得させた。

 

鈴「これでよかったのかしらね…」

箒「私に聞くな…む、ちょっとサイズが…」

 

箒が小声で言ったにも関わらず、鈴が錆びたロボットのように首を箒に向けて、

 

鈴「へぇー?大きくて困ってるんだー?…その無駄乳寄越せゴラー!!

箒「えっ、ちょおい!やめろ!」

鈴「どうやらったらここまででかくなるのよ!」

箒「知らん!むしろ剣道の時には邪魔でしかないのだが!?」

鈴「嫌みか貴様ー!!」

箒「止めろ!揉むな!こんな場所で!!」

鈴「なーにが邪魔になるよ!!私の努力より遺伝か!遺伝なのかこのー!!」

箒「ほ、ホントに止めろ…これ以上は…///」

セシリア「あっ、鈴さんストップ!ストップですわー!」

鈴「セェシィリィアァ?あんたも箒と同じだからさぁ?大人しく私の妬みをくらいなさいよー!!

セシリア「ひぅっ!?あっ、ちょ、鈴さん!?」

ラウラ「鈴…織斑に連絡するぞ?」

鈴「え」

 

ラウラがそういって鈴に近より

 

ラウラ(このままお前の暴走が止まらないのなら、一切合切を織斑に報告させてもらうが?)

鈴(え、あ…)

ラウラ「どうやらおさまったようだ。…箒?」

箒「………」

 

どうやら腰が抜けたようだ。

 

鈴「あ、ごめん。その、やり過ぎちゃった…」

箒「鈴、後で、シバく。」

鈴「ヒッ!?」

 

片言で絶許宣言を受けた鈴。ラウラとセシリアは、

 

ラウラ「…セシリア、箒の水着だが…」

セシリア「すでに選んでありますわ。もちろん皆さんの分も。」

ラウラ「助か…ん?おい待て。私たちのもか?」

セシリア「私の見立てに間違いは無くってよ?」

ラウラ「……そうか。近くのベンチまで運ぶぞ。」

 

その後黄牙達と合流し会計を済ませようとするとセシリアから、当日まで秘密ですわ!と言われて別々で会計を済ませた。

なお千冬は、

 

千冬「束、まだ決まらんのか。私もこの後学園で仕事があるのだが?」

束『急かさないでよちーちゃーん。どれが良いのか迷ってるんだからさー。』

千冬「勝手に選ばせてもらうぞ。」

束『あっちょ!…ってそれ束さんがいいなって思ってた奴!』

千冬「早く決めないお前が悪い。」

束『ぐぬぬ…』

 

その30分後に束も選び終えたようで、千冬の手には2着の水着が入った買い物袋があった。




IS勢(水着着用者)はアニメ準拠の水着です。黄牙と束はそのときになったら出します。
次回、第2章 臨海学校事変 に続く。


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2章 臨海動乱編
1話 いざゆかん、臨海学校!


1話でまとめると長くなりそうなんで分割します。


「海、見えたよ!」

 

誰かが発した言葉から窓の外を見る。どこまでも続く青い海を目にして生徒達は浮かれているようにも見える。

 

千冬「浮かれるのもいいが、明日からISの操縦訓練があることを忘れるなよ。」

 

その言葉で、少しテンションが収まったようだ。

 

黄牙(海か。随分とデカい水溜まりってたばちゃんから説明されたけど…水溜まりじゃなくて湖の方が正しい気がするんだが。)

一夏「黄牙、どうしたんだよ?」

黄牙「いや、海をこの目で見るのは初めてだからさ。」

ラウラ「何!そうなのか!?」

黄牙「そこまで驚くことか…?」

箒「大体はプールでいいからな。海には滅多に行かないんだ。」

ラウラ「そ、そうなのか。」

 

バスに揺られながら、目的地の旅館に向かうIS学園の1年生。車内では誰が出したのか自分の手札を0枚にすれば勝ちのU○Oの創作ルール、「DOS(ドス)」のクラス内大会が行われていた。決勝戦まで残ったのは、黄牙、セシリア、本音、真耶だった。…なぜ真耶が参加しているかはともかく決勝戦前に旅館に着いた為、そこでお預けとなった。

―――――――――――――――――――――――――――――

千冬「ここが私たちの臨海学校の間お世話になる花月荘だ。」

 

バスが止まり、入り口の前で整列している1年生達。するとそこから一人の女性が姿を表した。

 

??「あら?これはこれは。IS学園からようこそおいでくださいました。皆様のご到着、お待ちしておりました。」

真耶「あ、女将さん。いつもお世話になっております。」

女将「ふふ、この時期は毎年そうですからもう慣れてしまいました。そちらのお二人が例の?」

千冬「はい。男性操縦者です。二人とも挨拶しろ。」

 

そう言われて、黄牙と一夏は前に出る。

 

黄牙「星守 黄牙です。2泊3日の間お世話になります。よろしくお願いします。」

一夏「織斑 一夏です!よろしくお願いします!」

女将「ふふ、元気があっていい子達ですね。夏の日差しの下にいるのは暑いでしょうから、中へどうぞ。」

 

エントランスに着くと千冬から部屋割りについての説明があった。

 

千冬「部屋割りについてだが、各々が決めた6人以下のメンバーだ。なお、専用機持ちの女子生徒は同室だ。織斑と星守についてはこの場で教えることはできん。プライベートがあるからな。本人が許可すれば教えてやってもいいが、他言無用だ。分かったな?」

『はい!』

真耶「では、部屋に着いたら荷物の整理、そのあとは夕食まで自由時間なので、楽しんでくださいねー!」

 

真耶がそういってからの女子達の行動は早かった。このときの様子を黄牙はこう語った。

 

「水を得た魚のようだった」

 

と。

―――――――――――――――――――――――――――――

黄牙「あーつーいー…」

一夏「まあまあ」

 

水着姿の男二人。一夏は紺色無地のトランクスタイプ、黄牙は黒色無地のトランクスタイプを着用していた。

 

一夏「けど、水着一体型でサポーターとかついてるもんなんだな。」

黄牙「普通についてるもんじゃないのか…」

 

水着を選んだ際にこの事を新発見したかのようにいう一夏であった。そして二人の水着を見た女子の反応はというと、

 

「二人とも着痩せするタイプなんだ…」

「筋肉の付き方に無駄がない…良い…」

「…夏コミこれでいこう。」

「ちょっと待ってその話詳しく」

「二万までなら出せる」

 

色めき立っている様にも見える。そこへ、

 

??「居たわね、二人とも!」

黄牙「おー、鈴。それにラウラも。」

ラウラ「どうだ、お父「ん?」…黄牙!私たちの水着は!」

黄牙「よく似合ってるよ。フリル付きのもあるのか…」

鈴「当然あるわよ!一夏、私は?」

一夏「え、ああ、えっと…すげー可愛いと思う…ぞ?」

鈴「可愛い、そっかー可愛いかー…えへへ///」

一夏(あれ、鈴ってこんなに可愛かったか…?)

 

一夏の言葉に照れながらも嬉しそうにする鈴。

 

ラウラ「黄牙…コーヒーはないか…ブラックの…」

黄牙「残念ながら無い。にしても水着マジック…これ程のものとは…」

?「おい、黄牙…あれはどういう状況だ…?

黄牙「待って俺にその視線を向けないで」

??「まあまあ、箒さん?今からでも間に合いますから、ね?」

箒「…セシリアは良いよなあ…どうせ私なんか…

セシリア「箒さん!?オーラをしまってくださいまし!!」

 

負のオーラが漂ってしまっている箒。どうにかそれをおさめよう奮闘するセシリア。そこへ、

 

一夏「黄牙ーそろそろ泳ぎに行こうぜー…箒、どうした?」

黄牙「あー、多分鈴の抜け駆けでこうなってる。」

鈴「やっぱりかー…悪いことしたわね」

箒「りぃん~?」

鈴「ひゃい!」

 

妬ましげに鈴に視線を向ける箒。その目に光がない。

 

箒「抜け駆けだな?抜け駆けしたんだな?」

鈴「えと、その…ほら、箒ならもういるかな~って思って…」

箒「神妙にお縄につけええええええええええええ!!!!」

鈴「イィヤー!!!!!」

 

鬼のような形相で追いかけ回す箒。その手にはどこから取り出したのか木刀が握られていた。その光景を見ていた四人は、

 

一夏「止めなくて良いのかよ?」

ラウラ「流石にあれに乱入するほど私は愚かではない。」

黄牙「あの白い水着…赤く染まりそうだな…」

三人「「「冗談でもそれは言っちゃいけないだろ(いけませんわ)!!」」」

 

黄牙が総ツッコミをくらっていた。

―――――――――――――――――――――――――――――

少し時が経ち、箒によるO☆HA☆NA☆SHIもすみ、HEIWAに海で遊んでいた。黄牙はパラソルから出ずに手持ち扇風機で涼んでいると、

 

セシリア「黄牙さん、休憩中ですの?」

 

セシリアが声をかけてきた。

 

黄牙「ああ。二時間ぶっ続けで泳ぐのはしんどかった…」

セシリア「あはは…」

黄牙「あ、あと言いそびれていたけど、水着スゲー似合ってる。」

セシリア「ふふ、ありがとうございますわ。」

 

水着を誉められたセシリアの頬がほんのり赤くなったのには、黄牙は気づいていないようだった。

 

セシリア「黄牙さん、1つ頼み事があるのですが…」

黄牙「ん?何だ?」

セシリア「その、私にサンオイルを塗っていただけませんか?」

黄牙「」

 

世界が止まったような気がした。




次回、1日目後編。

※DOS…ルールはU○Oとさほど変わらないが、あがり方が一種類増えている。
①手札1枚の時にU○Oと宣言し、次の自分の番で最後の一枚を捨てる。
②手札2枚の時にDOSと宣言し、次の自分の番で最後の二枚を捨てる。
ちなみに②の方法で上がった場合、その次にあがる人から②でしかあがれなくなる。

…適当に考えてみたけどひでぇルールだこれw


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2話 恋に波乱は付き物です

セシリア「その、サンオイルを塗ってくださいませんか?」

黄牙「」

 

その言葉を受け、フリーズする黄牙。

 

黄牙(サンオイルを塗って!?え!?何で!?いや、頼まれるのは嬉しいし、サンオイル塗りたいけど、けど…理性持たない気がする…セシリアスゲー綺麗だもん。そんな状態でサンオイル塗れるか!?いや塗れない!理性とぶ!それはホントにやだ!断りたくはないけど…どうすれば~!!」

セシリア「//////」

 

途中から口に出してしまっている上にセシリアが顔を真っ赤にして下を向いてしまった。

 

??「何やら困っているようだな。」

黄牙「その声は!」

千冬「私だ。」

黄牙「お、織斑せんせぇ~!!」

 

黄牙が窮地に一生を得るような安堵した声を出す。

 

千冬「オルコット。どうやらお前の体は星守には刺激が強すぎるようだ。サンオイルは私が塗ってやる。」

セシリア「ふぇ?」

 

いきなりの展開に思考が追い付いていないセシリア。しかし、千冬の

 

千冬「ついでだ。奴の部屋番号を教えることの、な。」

セシリア「は、はい!」

 

この一言で完全に理解し、千冬に塗られることを決意。黄牙にきちんと謝罪し、「後で部屋に伺いますわ」と言って他のパラソルへ移動した。当事者であった黄牙は、

 

黄牙「…部屋に戻るか。」

 

そういって旅館の方へ歩いていった。

―――――――――――――――――――――――――――――

旅館に戻り、自室で寝転がっていた黄牙。するとなんの前触れもなく3つの指輪が光だした。

 

黄牙「何だぁ!?」

 

光が収まると、そこにはスコルスピア、ヴィエルジェ、アスクレプオスがいた。

 

スコル「よお!久しぶりだな!」

レプ「おいスコル、心ここにあらずな表情だぞ、今の主は。」

エル「ごめんね。重要な話があるからこうして呼んだの。」

黄牙「え、ああ、それは良いけど…話って?」

 

少し間をおいて、ヴィエルジェは話を切り出した。

 

エル「今回、上手く行けば十二宮の二人を仲間に出来る可能性があるの。」

黄牙「何だって!?…スコルスピア達三人ってそれが誰かまで分かるのか?」

 

新たに仲間に出来ると聞かされ驚き、それを落ち着かせて質問をぶつける。

 

エル「ごめんなさい…流石にそこまでは分からないわ。」

スコル「分かってたら苦労はないが、苦労し悩み、それを乗り越えて成長するのが人ってもんなんだろ?」

黄牙「そうだな。」

レプ「あと、俺から1つ忠告だ。」

 

アスクレプオスが真面目な顔をして黄牙に話しかける。

 

レプ「俺やヴィエルジェ、スコルスピアを仲間にする際、今まで全部試練的なものがあったろ?」

黄牙「まさか…今回も、か。」

レプ「話が早くて助かる。二人仲間にするってことは難易度は相応に高い。最悪の事態も頭の片隅に入れとけよ?」

黄牙「…了解だ。」

スコル「さて!これで重要な話は終わりだ。次会うのが楽しみだぜ。」

黄牙「あ、ホントにそれだけ言いに来たのね。」

エル「本当はもっと前から自由に会話することは出来たけど、あなた以外にこの事を知られるわけにはいかなかったの。」

黄牙「俺の師匠にも?」

レプ「ああ。それに、向こうから話しかけられるだけって言ってたろ、お前。」

黄牙「あ…」

レプ「そういうこった。あんまり長居するのも悪いしな。しっかり休めよ。」

黄牙「おう。ありがとな。」

 

三人の姿が光の粒子となって消え、指輪が三つ消えた場所にあった。

 

黄牙(最悪の事態…か。)

 

言われたことが気になって仕方がなかった。

―――――――――――――――――――――――――――――時間は進んで夕食後。黄牙は千冬に呼び出されていた。何故か夜の砂浜に。

 

黄牙「あの、俺が呼び出された理由って何でしょうか?」

千冬「そうだな、2つ言っておこう。…二人きりの時間を楽しめ。そして消灯時間は守れよ?」

黄牙「……了解です。」

 

そう言い残して千冬はその場を去った。そして、

 

?「おー君!」

 

呼び掛けられて振り向く黄牙。そこには水着を着た束がいた。桃色で合わせた上下、両方ともフリルがついている物で、トレードマークのウサミミがついておらず、長い髪がハーフアップで纏められていた。

 

束「おー君どうかな?似合ってるかな?」

 

見惚れていた黄牙はすぐに反応できないでいた。

 

束「おーい、おーくーん?」

黄牙「えあっ!?」

束「やっと反応したね。で、どう?似合ってる?」

黄牙「え、っと…」

 

上目遣いで黄牙を見上げる束。黄牙は直視できずに目をそらしてしまう。

 

束「おーくーん…?」

黄牙「いや、その、似合ってない訳じゃない!むしろ似合いすぎて、可愛すぎて、束のこと見れない…」

 

黄牙の言葉を聞いた束は顔を赤らめるも満足そうに

 

束「ふふふ、良かった。」

 

笑顔でそういった。

 

黄牙「で、どうしてここに?」

束「…ちょーっと我慢できなくてさ。おー君成分の補給に来たのだ!」

黄牙「あはは…分かったよ。たばちゃん、おいで?」

 

両腕を前に広げて受け入れ体制を作る。そこにすっぽり収まる束。そしてどちらからともなく抱き締めた。

 

黄牙「そんなに寂しかったの?」

束「それもあるけど、…笑わない?」

黄牙「え?うん、まあ。」

束「…昼の出来事、見ててさ。ちょっと金髪ドリルに嫉妬しちゃった。」

黄牙「意外だな。たばちゃんでも嫉妬するんだ。」

 

そういった黄牙に束は抱き締める力を少し強めて

 

束「だって、おー君は私のお婿さんだもん。どんな人にも渡したくないの。」

黄牙「…そっか。ふふ」

束「あー!笑った!」

黄牙「そこまで想ってくれてるんだなって嬉しくなっちゃって、我慢できなかった。ありがとう、たばちゃん。大好きだ。」

束「うん。私も大好き。絶対離してあげないからね、おー君。」

 

顔が近づく。そして二人は幸せそうにキスをした。一瞬とも永遠とも感じる時間だった。

―――――――――――――――――――――――――――――

旅館に戻った千冬は、真耶にどこに行っていたかを聞かれた。千冬はその質問にたいして、

 

千冬「何、ただ散歩したい気分だっただけだ。」

 

と、答えたそうだ。




次回、2日目。


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3話 兎の本心

千冬「よし、全員揃ったな。ではこれよりISの実技授業ならびに、整備授業を始める。」

 

千冬の一声で始まった臨海学校の本番といえるISに関する授業。

やることは普段受けている授業と何ら変わらない。が、

 

千冬「専用機持ちは各自一対一の模擬戦を行ってもらうが、更識、打鉄弐式は完成しているか?」

簪「いいえ…ですが9割程終わっています。あとはOSの最終調整と装備の取り付けとインストールで終わりますけど…」

千冬「そうか、なら午前中に私の悪友と」

?「ちーちゃーん!」

千冬「…」

 

響く声。顔をしかめる千冬。千冬以外の全員が声のする方へ顔を向けると、

 

?「昨日ぶりだねちーちゃん!あと、悪友じゃなくて親友でしょー?」

千冬「朝から騒ぐな、話している最中に遮るな、砕くぞ。」

?「何を!?」

 

突如現れた謎?の人物。そしてその後ろから二人の人物が現れた。

 

???「お父様ー!」

???「そっち呼びはダメって言われてなかった?」

黄牙「お前らも来てたのか…」

黄牙以外『!!??』

千冬「…まず自己紹介ぐらいしろ。ほとんどの生徒がついてこれていない。」

 

そういわれた三人は、

 

束「仕方ないなあ。ハロー、篠ノ之束だよー。」

クロエ「お初で無い方もいらっしゃいますがはじめまして。クロエ・クロニクルと申します。」

シャル「久しぶりだね、皆。シャルロット・デュノアだよ。」

一夏「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

困惑しながらも待ったをかけた一夏。

 

束「いっ君おひさー。どしたーの?」

一夏「あ、お久しぶりです…じゃなくて!シャルロットが何でここにいるんですか!?新生デュノア社の社長でしょ!?」

シャル「あはは…確かにそうだけど、社の舵取りはアルベールさんに任せてあるんだ。」

鈴「この時間が終わったら色々聞くから覚悟しなさいよ、シャル!」

シャル「ふふ、分かった。」

千冬「あー、積もる話があるのは分かるが、授業中だ。」

 

と言って騒がしくなった生徒達を静かにさせる。

 

千冬「今回の三人の役割は2つに分けられる。1つは訓練の教官役、これはデュノアとクロニクルに任せることになっている。もう1つがISの整備、これは束、任せるぞ。」

束「まあ良いけど、整備用のISなんて…ああ、そういうこと。」

千冬「そういうことだ。構わないな?」

束「いーよー!クーちゃん、シャルりん頑張ってね!」

クロエ「任されました!頑張ります!」

シャル「あ、呼び方いつも通りのまま…」

ラウラ「質問があります!織斑先生!」

 

とんとん拍子で話が進んでいくなかで今度はラウラが質問する。

 

ラウラ「先生方はどちらにつくのでしょうか?」

千冬「両方だ。見回りをしながら改善点やアドバイスを出す。」

ラウラ「了解しました!」

千冬「では各員「ちーちゃんストップ!」…まだ何かあるのか」

 

待ったをかけたのは束だった。

 

束「箒ちゃんちょっと来てくれるかな?」

箒「…」

 

静かに前に出てきた箒。すると束が金と銀の一対の鈴がついた赤い紐を箒の前に出した。

 

束「はいコレ。」

箒「…まさか姉さん」

束「うん。けど勘違いしないで。箒ちゃんが特別だからじゃなくて「私自身を守るための機体、ですよね?」…改めていう必要無かったかー。」

箒「当然です。あの言葉に恥じぬよう鍛練を続けているつもりですから。」

束「ん。なら良しだね!」

 

それを受け取った箒。

様子をうかがいながら話すタイミングを見計らっていた千冬。

 

千冬「話は終わったか?なら今度こそ授業スタートだ。訓練機は打鉄、ラファール共に五機ずつ計十機を順番に使ってもらう。篠ノ之は織斑達の方に合流しろ。更識は打鉄弐式を束に預けて、チューンナップと、整備授業用の機材となってもらうが、良いだろうか?終わったら稼働試験も兼ねて篠ノ之と訓練という形をとる。」

簪「は、はい!後でよろしく、篠ノ之さん。」

箒「ああ。お互いに初陣だが、譲るつもりはないぞ。」

簪「それは、私も同じ。」

千冬「それでは授業開始だ、実技授業の方はまず十人ほどの人数でグループを組んでくれ。その中でのリーダーを決めたら訓練機を取りに来てもらう。整備授業を受けるものは束のところに集まれ。では行動開始!」

 

一斉に動き出した生徒達。

 

束「はいはーい。整備の授業はこっちでやるからね~。それじゃ、えーと、更識さんだよね?貴女の弐式貸してくれる~?」

簪「は、はい!お願いします!」

 

緊張しまくっている簪。それをよそに束はキーボードを使って弐式を展開していく。

 

束「えーと、打鉄弐式の外部展開許可を一時的にアンロック。…およ、まだ装備ついて無いんだね。」

簪「はい。拡張領域にしまってあります。」

束「ん、りょーかいだよーっと。…面倒だし全部だしちゃえ。」

簪「え?」

 

すると、直方体の底部にブースターが取り付けられている物体が大小2つずつ、薙刀、ジョイント付きの連装砲が出てきた。

 

束「なになに…薙刀が『夢現』、連装砲…わーお荷電粒子砲なんだこれ…で、名前が『春雷』、そんでもってさっきの4つの直方体が『山嵐』…遠距離主体っぽいけど、実際どう運用するの~?」

簪「あ、はい!さっきの篠ノ之博士の説明で合っています…けど、「システムの調整がまだ終わってない?」…そうです。」

 

指摘を受けた簪が少し落ち込んで返答する。少し間を取ってから束が質問した。

 

束「ねーねー更識さん?これここまで全部一人でやったの?」

簪「ブースターのデータは織斑君から借りて、それを弐式用に改造したのは星守君です。…私はそれと元々の機体の運動時間の誤差を無くすためのソフトを作りました。それ以前は倉持技研から引き取って私一人で「にゃんですとぉ!」ひあっ!?」

 

驚愕した様子を見せた束に驚いてしまった簪。

 

束「ほほう、この子をほとんど一人で作ったんだ。いーねー、更っち。」

簪「さ、更っち…?」

束「ならば、ここから整備授業いや、魔改造授業を始めるよ!受けに来た皆!?Are you ready!?」

「「「「「「「「「「Year!!」」」」」」」」」」

簪「えっ?えっ?」

 

訳がわからない様子でオロオロする簪。それとは対照的に目をギラつかせる生徒達と束。

 

束「さあさあさあ、上空をご覧遊ばせぃ!」

 

上をみた生徒達。すると、黒い箱が落ちてきた。

 

束「この中に入っているのは束さんが!今考えて作り出した!この子の装備の!上位互換的なものが!あるよ!今回はそれを取り付けるのが束さんが教えることなのだ!あ、ちなみにOSのは付きっきりで更っちに教えるからね!」

簪「は、はいぃ!」

 

簪が振り替えるとそこにはおらず、生徒達の姿は黒い箱のなかにあった。

 

「何これ!?展開式の剣!?」

「たたんだら射撃武器にもなるよこれ!」

「手持ち型のミサイルポッドが1つにふくらはぎの部分につける5連装ミサイルポッドが2つ…?」

束「それはミサイルの大きさを小さくする代わりに装甲部分にエネルギーを送り込んで内部から破裂させるんだー。ちなみに1つにつき20発入ってるよーん」

『みぎゃあああああああああああああ!!!!??』

 

何がなんだかわからない装備の数々。その中には

 

「これって、星守君のISのスラスター?」

「機動力確保のため、かなぁ。」

「あ、カラーリングが簪さんのISに合わせてある!」

 

見慣れた装備もあった。

 

簪「あの、これは…」

束「ん?今の弐式に追加する設備といったところかな。弐式とこの装備達を組み合わせたら…!」

簪「なんていう浪漫武装…!」

束「お、分かってるねぇ。それじゃあOSの調整開始だよ!先にいうけど私は更っちの補助しかしないからね。メインで組むのは更っちだよ!」

簪「が、頑張ります!」

 

そういって二人は作業を始める。怒濤のスピードでシステムが組上がっていくが、簪が難点にぶつかった。

 

簪「やっぱりマルチロックオンシステムが上手くいかない…」

束「お任せあ~れ!チョイサー!」

 

束は発射のオートメーション化とマニュアル化の切り替えシステム、発射弾数の増減の切り替えシステムを一気に組み込んだ。その時間僅か90秒。

 

簪「すごい…これが天災の力…」

束「なーんか勘違いしてるけど、束さんだって最初っからこれできてた訳じゃないからね?」

簪「え?」

 

驚いた様子で束を見つめる簪。話を変えるかのように束は

 

束「私は世界に見せつけたいが為にこの子達のコアを作った。本来の使い方も示そうと思ったんだけどね。でも重大な欠陥が見つかったけど使われたあとだった。遅かったんだよ。それからある思想が発展していったんだよ。」

簪「女尊男卑…」

束「そ。…私はね、更っち。この時代遅れな思想を消したいんだ。ISが使えるから偉い、自分達は選ばれた存在なんだ、とかいう有象無象が気に入らない。この子達には悪いけど、まだ未完成な状態で世に出しちゃったんだ。」

簪「未完成、ですか。」

束「女性のみじゃなくて男性にも使えるようにする。今のおー君といっ君は異物、邪魔者だと思っている人もいるかもしれないけど、それが本来私が目指したISって機体の完成形だからね。」

簪「………」

『………』

 

整備が終わったのか、他の生徒達も束の話に耳を傾ける。

 

束「あらら、来てたんだ。それじゃあ皆に質問するね。私が作ったIS(インフィニット・ストラトス)、その本来の使い方は何でしょーか?」

 

という質問に、

 

『………』

 

簪も含め誰も答えることが出来なかった。

 

束「ま、そりゃそうなるよね。ちなみに正解は宇宙空間での行動、でしたー。」

 

その言葉に目を丸くする生徒達。すると一人の生徒が

 

「あの、どうして宇宙何でしょうか?」

束「そりゃあ他の天体や惑星に降り立ってその星の資源とか知的生命体と出会うためだよ!だっていままでやってのけた人なんていないでしょ!?それを私が作ったISで成功させたなんてことになったらそれこそ夢があるってもんだよ!」

 

束のテンションの乱高下についていこれない生徒達。しかし、1つだけ分かったことがあった。

取っ付きづらいという噂は嘘なのだと。

なお、弐式はストライクヴルムのスラスターに夢現、山嵐、春雷を全部載っけてかつ支援機として動くようにして、左手に手持ち用ミサイルポッド、右腕に展開式の銃剣。両ふくらはぎに5連装ミサイルポッド2門と弐式の面影がほとんどなくなってしまった。

 

束「ま、やることはやったからあとは起動とその他諸々だね。それじゃあ更っち、乗ってみよう!」

簪「来て、打鉄弐式。」

 

そう呟く簪。光に包まれて新しい打鉄弐式をまとった。脚の部分も以前と比べて少しスッキリしているように見える。

 

束「よっし!起動成功!そこから飛んで!」

簪「え、ええ!?」

束「私たちが完成させたんだし、それくらいやってほしいな~?」

簪「え、あ、はい!行くよ!」

 

そういって空中に飛び上がる。水平線が見えた。

 

簪「すごい…」

 

海の綺麗さに見とれている簪。地上はというと、

 

束「よっっし!飛んだよ皆!!」

「やったああ!!」

「なんか感動するね!」

「涙出てきた…!」

 

大騒ぎであった。

その後、戦闘訓練も行って地上に戻ってきた簪。それを迎える束達。

 

束「はーいお疲れさま!どうだった?」

簪「ちょ、ちょっと休憩、させて、ください…」

束「うむ!」

 

ドヤ顔して腕を組む束。水を飲んで息を整え、簪がいう。

 

簪「あんなにハードにする必要ありました…?」

束「日本代表候補生なんでしょ?それぐらい軽くやってもらわなきゃねぇ~」

簪「」

 

フリーズした簪。ちなみにその戦闘訓練が、

レベルⅠ:発射されたミサイルをどんな武器使っても良いから撃ち落とす。撃墜率95%以上(発射弾数20発)

レベルⅡ:発射されたミサイルを山嵐、手持ちミサイルポッド、5連装ミサイルポッドのみを使って撃ち落とす。撃墜率90%以上(発射弾数50発)

レベルⅢ:発射されたミサイルをさっきの3つのフルバーストで撃ち落とす。しばりとしてフルバースト後に発射した全てのミサイルをマニュアル操作化して撃ち落とす。撃墜率85%以上。(発射弾数100発)

と、レベルⅢだけ遥かに難易度が高い内容だった。

 

束「これだけやっちゃえば、問題ないね!」

簪「す、既に疲労が…」

束「さあ、あとは箒ちゃんとの「大変ですー!」ありゃ?」

 

誰かが酷く慌てた様子で走ってきた。その影が明らかになった。真耶であった。

 

真耶「あ、篠ノ之博士。少し耳を貸してもらっても…」

束「んー?…!?」

 

驚愕した表情に変わる束。そして今いる生徒達に指示を出す。

 

束「更っちは私と一緒に来て!他の皆はー…おっぱい魔神についてって自分達の部屋で待機!ぜぇったいにその部屋から出ないでね!」

簪達『はい!』

真耶「お、おっぱい魔神!?」

 

そういって簪を連れていく束。その顔は我が子を心配する母親の顔みたいだったと後に簪は語っている。

そしてこの事件が1つの転換点であることなど知る由もなかった。




次回、作戦開始。


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4話 vs福音 ブリーフィング

「専用機持ち皆いなくなっちゃったけど、何かあったのかな?」

「先生からは部屋から出るなの一点張り…」

「すごく不安だなぁ…どうなっちゃうんだろ。」

 

突然の授業の中止、専用機持ちの不在、2つの要素が生徒達の不安を掻き立てる。そんな中本音は、

 

本音(皆、無事に戻ってくると良いなあ。)

 

何かに祈るように寝たフリをした。

―――――――――――――――――――――――――――――

花月荘 臨時作戦本部

 

ラウラ「ISの暴走…?」

千冬「そうだ。今朝アメリカ軍基地にて稼働実験中だった銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が突如暴走。向こうからの情報は暴走理由、解明に至らず。現在調査中。そして、攻撃の対象が設定されていなかったのが、暴走開始後に星守黄牙、織斑一夏の両名と断定されているそうだ。」

「「「「「「「!!?」」」」」」」

 

千冬の言葉に絶句する一同。それを気に留めないようにしているのか、千冬は続ける。

 

千冬「今回、IS学園に依頼された任務は福音の無力化、もしくは破壊だ。」

鈴「ちょっと待って、軍の不始末を私たちでつけなきゃならない…んですか?」

千冬「その通りだ。本来なら自分達のこと位責任をもってほしいところなのだがな…」

 

部屋の空気が重くなる。その後に千冬から発せられた言葉は意外なものだった。

 

千冬「今回の作戦はここにいるメンバーには参加を強制しない。自分から志願するのであれば別だが、どうする?」

 

その言葉を聞いて、一番に発言したのは

 

黄牙「行きます。」

 

黄牙だった。

 

千冬「…それがどれだけ危険か理解した上で決めたんだな?」

黄牙「ええ。ターゲットがここにいちゃ他の人を危険にさらすことになるってのも理由ですけど。」

千冬「そうか、他の者はどうだ?」

ラウラ「私は一生徒の前に軍人です。ここで逃げることなどできません。」

鈴「呼ばれた=参加してくれると踏んだんですよね?なら、行きますよ、こういうヒーロー的なのの経験はありますから。ね、一夏?」

一夏「…ああ。狙われてるならこっちからでたほうが周りの被害も抑えられる…けど、それ以前に黄牙が行くんだ。俺もいく。」

セシリア「なら、現場の司令塔も必要でしょう?私も行きますわ。」

 

次々に参加を志願するラウラ、鈴、一夏、セシリア。残りの二人である箒、簪に束が、

 

束「まあ参加しないってなったら今聞いたことは誰にも言わないでねっていうのを約束してもらうだけだからさ。気楽に考えても良いと思うよ。」

箒「…大丈夫です。少し気を引き締め直していた所だったので、私も参加します。」

簪「少し怖いですけど、大丈夫です。私もやります。」

束「…そっか。」

 

どこか不安そうな顔をした束。全員の参加を確認した千冬は、

 

千冬「協力、感謝する。作戦を始める前に何か質問はあるか?」

セシリア「対象の詳細なスペックが知りたいです。」

千冬「分かった。だが、これも機密事項だ。話そうものなら、懲罰房行きだ。では、表示するぞ。」

 

立体データが投影された。

 

黄牙「機動力は俺らのISより上か…」

セシリア「武装も1つだけですが、厄介なものですわね。」

ラウラ「スラスターと同化しているのか。砲も36門と、射撃性能も格段に高いな。」

鈴「つまり福音を倒すには…」

束「懐に潜り込んで一撃必殺。それしかないねぇ。」

 

そのプランが束の口から放たれた瞬間、全員が同じ方を見る。

 

一夏「……白式の零落白夜で決めるしかないんだな。」

千冬「そうだ。この中で一番速度を出せる機体は誰のだ、束?」

束「んー、多分紅椿じゃないかな。おー君や更っちのよりデータ上は速いし。」

千冬「そうか、なら作戦の参加メンバーは決まった。織斑、篠ノ之、星守この三人で行く。他の四人は作戦失敗時に備えて待機だ。」

「「「「「「「了解!」」」」」」」

―――――――――――――――――――――――――――――

作戦開始5分前

黄牙「よし、二人とも準備だ。」

一、箒「「ああ!」」

 

三人はISを纏った。一夏が箒の肩に掴まる。

 

黄牙「そんじゃ改めて作戦内容の確認だ。まず箒と俺が一夏を対象に運ぶ。次に一夏の零落白夜で福音を行動不能にする。」

一夏「その後福音を回収して帰投する、言葉にするのは簡単だけど、なぁ…」

箒「心配するな。私も黄牙もいる。お前は一撃いれることだけ考えろ。」

黄牙「もし失敗しても撤退すればまた作戦の立て直しができるしな。」

一夏「…分かった。」

千冬『それでは、オペレーション:ゴスペルダウン、開始!』

 

作戦開始の指示が飛ぶ。

 

黄牙「星守黄牙、ストライクヴルム、出る!」

箒「篠ノ之箒、紅椿、出撃する!」

一夏「織斑一夏、白式、行きます!」

 

海を伝って、空へと飛翔した。生死をかけた作戦が今、始まった。




次回、白龍墜つ。


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5話 vs福音 作戦開始

箒「見えてきたぞ、福音だ。」

 

ゆっくりとその姿が見えてきた。全身銀色で所々の水色の部分がアクセントとして入っている。

 

黄牙「なんつーか随分と綺麗な機体だな。」

一夏「だよな。」

箒「狙われているというのを忘れるなよ。」

一夏「分かってるよ。」

 

福音に近づいていく三人。すると福音がこちらを向く。そして、

 

『!!!!!!』

 

レーザー砲撃をしてきた。

 

黄牙「箒はあいつの射程範囲外まで退避しろ!どうにかして俺が引き付ける!」

箒「頼む!」

 

二手に分かれた黄牙と、箒、一夏。福音は黄牙の方へ向かい、レーザー攻撃を続ける。

 

黄牙「数が多いだけで、狙いが甘いな!」

 

レーザーを避け続ける黄牙。その隙に箒達は背中側へ回り込む。

 

箒「準備は良いな、一夏!」

一夏「おう!」

箒「行くぞ!」

 

瞬間加速を使って一気に接近する箒。福音が箒達の方を向くも黄牙が荷電粒子砲を放って注意を引かせる。

 

一夏「決める!うおおおおおおお!!!!」

 

白式の零落白夜を起動して福音に斬りかかる一夏。福音が咄嗟に体をずらして翼の片方を失わせた。

 

一夏「クソッ、翼だけか!」

箒「もう一度いけるか、一夏?」

一夏「おう!次で決める!」

 

片翼を失った福音が静止している。が、

 

『Laaaaaaaaaaaaa!!』

 

人の悲鳴にも似た叫び声をあげた瞬間、福音が光に包まれた。

 

一夏「な、なんだあれ!」

箒「一体何が…」

黄牙「…まさか!?」

 

片側しかなくなっていた翼が両側に戻り、10枚の羽に変化していた。

 

黄牙「二次移行(セカンドシフト)…!」

一夏「そんな…」

箒「…どうする、撤退するか?」

黄牙「向こうが許してくれればな。」

 

エネルギーを1ヶ所に溜めつつある福音。どう見てもとんでもない攻撃が来る予兆だった。

 

黄牙「ちっ!」

一夏「黄牙!?」

 

福音へ向かっていく黄牙。予想していなかった行動に面食らってしまう一夏。自身も向かおうとするも箒に止められる。

 

一夏「箒、何してんだよ!?」

箒「…悪く思うな。」

一夏「何……いっ、て…」

 

手刀で一夏の意識を刈り取った箒。一夏を抱えて背をむけるとプライベートチャンネルで黄牙に言う。

 

箒『必ず戻ってこい、でなければお前を斬る…!』

黄牙『おー怖。ま、善処するとだけ言っとくさ。さっさと行け。』

箒『すまない…!』

 

戦闘空域から離れていき、二人が見えなくなるまで見送った。すると、通信が入る。

 

千冬『おい星守!なぜ二人が離脱している!状況を説明しろ!』

黄牙『そっちのモニターで確認してないんです?』

千冬『確認しているからこそ言っているんだ!なぜ二人を』

黄牙『あ、ちょっとばかしキツくなって来たんで切ります。福音(アレ)のデータ送るんでしっかり倒してくださいよ?』

 

それを最後に通信を切る黄牙。

 

黄牙(さあて、出来るだけ情報を回収して次に繋げてやるさ。)

 

福音から超出力のレーザーが放たれる。それを回避する黄牙。

 

黄牙(うっわ、なんだあの威力。アレ食らったら一たまりも…!!)

 

考えているとスラスターにビームがかする。上4枚の羽が光ったまま天使の羽のように振るわれるとマシンガンのように光のビームが迫る。

 

黄牙(なんつー動きしてんだあれ!射撃に関しちゃ万能過ぎる性能だな!だが…!)

 

ビームマシンガンを避けきり、福音にクローを突き立てる黄牙。だが、それを読んでいたが如くいなされ、捕まってしまう。福音がエネルギーを溜め始める。

 

黄牙「あーあ。マズったか…だけど、一矢報いさせてもらうぜ!フェニックキャノン!」

 

独立稼働させて羽2枚を破壊させるが、3枚目の羽を破壊する寸前にその3枚目の羽によって破壊され吹き飛ばされてしまった。

 

黄牙「これで威力2割減か…あとは日頃の行いフェイズってな!」

 

先程より威力が低いものの致命傷を負わせられるビームが撃たれた。それに向かう黄牙はどこか自信ありげな顔をしていた。

―――――――――――――――――――――――――――――

『ピー』という音が部屋のなかに響く。

 

鈴「え…」

セシリア「そんな…嘘、ですわよね…?」

ラウラ「……」

簪「嫌ぁ…!」

クロエ「お父様…!」

シャル「どうして…」

 

メンバーがそれぞれショックにうちひしがれる。束は

 

束「ねえ、ちーちゃん…嘘だよね…?おー君の生体反応が、掴めないんだけど、死んでないよね…?」

 

涙をためて必死に平静を装う束。千冬がかけた言葉は彼女を絶望に叩き落とすのに充分すぎるものであった。

 

千冬「…現時刻をもって、星守黄牙をMIAと認定する。総員、次の指示があるまで待機しろ。」

束「嫌、嫌だよ!もっと範囲を広げて探したら絶対…!」

千冬「諦めろ。」

束「ちーちゃん!」

千冬「うるさいぞ!星守の死を無駄にする気かお前は!」

束「!!…うぅ…ひっぐ…うわああああああああああん!!」

 

大切な人の死という現実を親友に突き付けられ泣き崩れる束。悔しそうに手を握る力を強める千冬。それはここにいるメンバー全員の士気を落とすには充分すぎるものだった。

―――――――――――――――――――――――――――――

海上を一夏を抱えて通過している箒。

 

箒「なぜ、こんなことをしているのだろうな。私は…」

一夏「う、うぅ…」

 

目を覚ました一夏は状況が変わっていることに気付く。

 

一夏「おい箒!福音は、黄牙はどうなったんだよ!」

箒「あとでちゃんと説明する。今はおとなしく運ばれろ。」

一夏「でも、お前の顔、なんだか苦しそうだぞ…」

箒「それも説明する…黙っていろ。」

一夏「………」

 

絞り出したように声を出す箒にそれ以上話しかけることは出来なかった。




次回、リベンジ前のブリーフィング。


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6話 vs福音 友達の為に

箒に抱えられ旅館に帰投した一夏。出迎えたのは千冬だけだった。

 

一夏「ちh…織斑先生。他の皆は…」

千冬「…ここでは説明せん。臨時作戦本部まで来い。篠ノ之もそれで良いな?」

箒「分かっています。」

一夏「…?」

 

そして着いていった先で事の経緯を全て説明された。

 

一夏「そんな…黄牙が俺達を逃がすために…」

千冬「事実だ。それと篠ノ之、お前星守に何を頼まれた?」

 

そう箒に質問する千冬。箒は

 

箒「…もし一夏が失敗した場合、一夏をつれて旅館に戻れ、と。」

千冬「…」

一夏「何で、俺達を…」

千冬「すまないが、部屋に戻ってくれ。次の作戦を考える。」

一夏「なっ、どうしてだ千冬姉!黄牙が死んだんだぞ!?悲しくないのかよ!!」

千冬「あいつは最後まで二次移行した福音のデータを送ってきた。そして篠ノ之に頼んだ行動、福音を倒すための要を失わなせないようにしたんだろうな。まったく、悲しむ暇さえもなくしてくれるとはな…」

一夏「…」

 

辛そうに話す千冬。

 

千冬「ともかく、あいつが命を懸けて送ってきたデータを無駄にするわけにはいかない。次の作戦で福音を確実に落とす。」

箒「あの、姉さんは…」

 

腫れ物に触れるかのように聞く箒に千冬はこう答えた。

 

千冬「あいつなら、星守の反応が消失して少し経ったタイミングで気絶した。今はクロニクルとデュノアに連れられて別の部屋で眠っている。…愛している人間を失ったんだ、今はそっとしておいてやれ。」

箒「そう、ですか…」

千冬「もう少し時間が経ったら、呼びに行く。オルコット達がいる部屋で待機しろ、良いな?」

箒、一「「分かりました…」」

 

そういって部屋をあとにする二人。そしてセシリア達のいる部屋に入る。

 

鈴「…お疲れ、二人とも。」

一夏「鈴…」

鈴「他の三人は次に備えて、準備中よ。」

一夏「なあ、鈴?辛くないのか…?」

鈴「…辛いけど、今はメソメソしてる場合じゃないから。あいつの仇討ちだもの。」

箒「そうか…織斑先生から伝言だ。もう少ししたらまた呼ぶそうだ。」

鈴「了解よ。」

 

それから10分後、千冬に呼ばれて集まった6人。

 

千冬「集まったな。では作戦内容を説明する。」

 

4つのモニターに写し出される福音を倒すためにすべき行動。

 

千冬「まずボーデヴィッヒのレーゲンのAICで動きを止める。次に、織斑の白式の零落白夜で福音を叩き落とす。最後に織斑以外の5人の火力で殲滅する。」

一夏「もしラウラが攻撃されたらどうするんですか?」

千冬「その場合はオルコット、鳳、更識の三人で福音の羽を狙って足止めして、再度AICで止める。」

鈴「羽を、ですか?」

千冬「ああ。星守が最後に送ってきたデータはビーム兵器で羽2枚を破壊したものだ。私は射撃武器で羽を落とせる物だと仮定している。」

 

全員が静かになる。千冬は続ける。

 

千冬「最終目標は福音の破壊のみに絞る。全員、異論はないな?」

「「「「「「はい!」」」」」」

千冬「では準備に入れ。…私と束の分まで、頼んだぞ。」

 

そういって千冬は去った。

 

鈴「セシリア、ラウラ、もうインストール終わってる?」

セシリア「もちろんですわ。」

ラウラ「ああ。」

鈴「簪、機体の調整は?」

簪「完了してるよ。」

鈴「一夏、箒、覚悟はできた?」

一夏「ああ!」

箒「もちろんだ。」

鈴「皆、行くわよ!」

鈴以外「「「「「おう!」」」」」

 

6機のISが友の仇討ちのために空へ飛んだ。




次回、駆け上がる白き太陽。


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7話 vs福音 思いをのせて

翼で自身の体を覆って休眠状態をとる福音。SEも徐々に回復しているようだ。

 

ドガァン!

 

強烈な砲撃が福音の羽に直撃した。

 

ラウラ「初弾命中!奴の動きを止める!」

 

AICを使って福音の動きを止めたラウラ。手を対象に翳さなくても使いこなせるようになっていた。

 

ラウラ(せめて、お父様に見て貰いたかった…いや、今はこの戦いに集中する!)

 

気を緩めることなく福音を止め続けるラウラ。一夏が福音に近づいていく。

 

一夏(絶対に決める!)

 

上段から福音を袈裟斬りにして、大ダメージを与えた。

 

福音『!?!?!?』

 

暴走状態がさらに増したのか、羽を全て使って6人に攻撃を仕掛ける。

 

鈴「羽が自立稼働するとはね…」

セシリア「ですが、動きが甘すぎですわ!」

 

セシリアがBT兵器と共に福音の羽を複数枚一気に撃墜する。

 

セシリア(貴方と共に空を飛びたかった…それが叶わないのなら、せめて貴方のそばに少しでも近くに…!)

 

彼と共にあろうとする姿は、大空の女王の片鱗を覗かせた。

そして福音は羽のほとんどを失い、攻撃手段もほぼなくなった。

 

鈴「これで仕上げよ!」

簪「全部、持っていって!」

 

鈴は龍咆の乱れ撃ち、簪は全108発のミサイルを発射し、姿が煙に隠れるまで着弾させ続けた。福音は羽一枚を残してボロボロの状態であった。

 

『Aaaaaaaaaaaa!!』

 

叫び声と共に光に包まれる福音。

 

箒「まさかまた…!」

 

羽が6枚に戻り、完全に天使の翼のような形となった。頭上には天使の輪のような装飾が施されている。

 

セシリア「三次移行(サードシフト)…!」

ラウラ「ここにきてまだ足掻くつもりなのか…!」

 

福音が手を広げ、光が腕に収束する。

 

鈴「全員散開!当たるんじゃないわよ!」

5人「「「「「了解!」」」」」

 

光の剣が腕から放出される。その長さは5メートルは下らない、とんでもないものであった。

 

一夏「なっ!」

箒「あんなものまで…」

 

福音が瞬間加速を使ってあるところへ向かう。そこにいたのは鈴だった。

 

鈴「え―――」

一夏「りぃぃぃぃぃぃぃぃん!!」

 

振り下ろされそうになった剣を剣で受け止める一夏。

 

鈴「一夏!?」

一夏「もう、誰も死なせない!俺の仲間に手を出すなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

瞬間、一夏も先程の福音同様光に包まれる。

―――――――――――――――――――――――――――――

一夏「ここ、は…」

??「お前は何故力を求める?」

 

太陽を背に何者かが問う。

 

一夏「…大切な人たちを守るためだ。」

??「だが、お前は人一人守れなかった。それどころか守れなかった存在にお前は守られた。」

一夏「!!」

 

現実を突きつける謎の人物。

 

一夏「…そうだな、俺は守れなかった。けど、救えなかったことを悔いる気持ちを抱いて、今を生きようとする人まで守れなくなるのは、俺は御免だ。」

??「…」

一夏「だから、俺に力を貸してくれ、白式。」

白式?「…その道は困難を極めるぞ。戻ることも許されず、ただただ前を見てひたすら自分の理想に近づく為に進む。その覚悟はあるか?」

一夏「もちろんだ!」

白式?「なら、受けとれ。今のお前に必要な力だろう?」

一夏「ああ!」

―――――――――――――――――――――――――――――

光が晴れていく。白い機体の背中から龍の翼のようなものが生えている。赤というよりは橙色のようなカラーリングをしている。

 

鈴「一夏、腕!」

 

レーザーブレードを両腕で受け止める一夏。ディスプレイに投影された機体の名は―

 

一夏「白式、《神陽(じんよう)》…」

鈴「聞いてるの!?腕大丈夫なの!?」

一夏「ああ、問題ない。…この機能は」

 

ある機能に目をつける一夏。福音を弾き飛ばし、その機能を使う。

 

一夏「拡張領域(パススロット)開放!極星剣機ポーラキャリバー!合体(ブレイヴ)!」

 

そう呼ぶとどこからともなく戦闘機が現れ、ブースターと剣が切り離される。羽に合体し剣を掴み取る。

 

一夏「おぉらぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 

剣を振りかぶり、福音に急接近する一夏。レーザーブレードと鍔ぜり合わせ、叩き落とす。

 

一夏「これで、最後だぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

十字に福音をぶった斬る一夏。機能が停止したのか落ちていく福音。

 

セシリア「福音の反応、消滅しましたわ。」

箒「これで終了、か…」

鈴「………」

簪「……どうして、こんなに虚しいんだろう…」

ラウラ「…帰投する。…一夏、帰るぞ。」

一夏「…ああ。」

 

こうして、オペレーション:ゴスペルダウンは完遂された―――かに思われたが

 

??「…おし、あいつらは撤退したか。2()()の回収作業に入るぜ。見つけたら報告しろよ、エム?」

エム「ふん、分かっている…」

 

誰かを海中から船に引き揚げようとする者達がいた。




次回、臨海学校最終日。


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8話 牙のいない日々に

千冬「各々思うところがあるだろうが良くやってくれた。」

 

帰りのバスの中で、千冬に言われた言葉を思い出していた一夏。その顔に陰がさす。

 

一夏(あんなに、辛そうに言われても、な…)

 

他の専用機持ちは、昨日の疲れがとれなかったのかぐっすり眠っている。別のバスにいる鈴と簪も同じ状態であった。束はというと目が覚めるなり、クロエとシャルを連れて何処かへ行ってしまった。千冬が彼女から聞いた話によると、「おー君の持ち物が何一つ壊れていなかった。つまりまだ生きてるかもしれないよね!」ということだそうだが、オカルトを信じるほどに異常を来している束の様子は明らかにそれにすがりついている風に見えたらしい。

 

一夏(黄牙、俺、頑張ってお前に追い付いて、みせ、る…)

 

睡魔に勝てなかったのか、眠りにつく一夏。車内も『黄牙が死んだ』という事実を突き付けられたことで静かなのもあり、すぐに寝付けたようだった。

―――――――――――――――――――――――――――――

IS学園に到着し、臨海学校から戻った生徒達はそれぞれの自室に戻っていった。翌日、『非常事態に運悪く巻き込まれて死亡した』黄牙へ弔砲と黙祷が捧げられた。このような場でも不謹慎な輩はいた。女尊男卑の思想に染まった生徒である。「あんな男など死んで当然だ」、「前から気に入らなかった」、「逆にせいせいした」等と口々に話していた。その様子が千冬に筒抜けであった為、問答無用で懲罰房に叩き込まれ反省文1万枚を書かされる事となった。

 

一夏「あいつが何をしたってんだ!!」

 

屋上に行って誰もいない空気に怒りをぶつける。

 

箒「一夏…。」

一夏「あいつは、皆を守って死んじまった…それすら知らない奴に、あいつの何がわかるっていうんだ!!」

 

そんな様子が見ていられなくなったのか箒がそっと抱きしめる。

 

箒「言わせておけばいいんだ。あんな戯れ言しか垂れない連中。」

一夏「…箒は悔しくないのかよ?」

 

少し落ち着いたのか冷静さを取り戻した一夏が質問する。

 

箒「…悔しくないわけがない。だが、星守を死なせたのはあいつの頼みを聞いた私にも責任がある。」

一夏「なら!」

箒「だがな、それで言い返したところで奴らに何か響く訳じゃない。どうせ媚を売ったんだ等という馬鹿げたことを言われるだけだ。」

一夏「……」

箒「それが許される世界が嫌なら、私達で変えるんだ。黄牙が目指した世界を私達で作り出すんだ。」

一夏「…黄牙が世界を変えるなんて簡単だって言ったのが今になって分かった気がする。」

鈴「なら、それに乗らない手は無いんじゃない?」

 

いつから聞いていたのか、鈴達がいた。

 

一夏「いつの間にいたんだよ。」

セシリア「最初からですわ。」

ラウラ「鈴の発案でな。鈴g「余計なこといったらすりおろすわよ?」…」

箒「簪はどうした、一緒にきてそうなものだが?」

鈴「今は姉のところよ。…一番キテそうだったから。」

箒「…それもそうか。」

ラウラ「それに、世界の情勢が良くない方向に傾きつつあるからな。」

 

ラウラの発言に一斉にその方向へ顔を向ける一夏達。

 

一夏「どういうことだよ、それ?」

ラウラ「…どうやら、お父様が亡くなったことで、女性権利団体の活動が過激化しているらしい。」

4人「「「「!?」」」」

 

ラウラから投下された爆弾発言に驚愕する5人。

 

鈴「ねえ、それの最終標的さ…」

セシリア「…あまり当たってほしくない予想が現実になりそうですわね。」

一夏「…俺、か。」

ラウラ「ああ。女尊男卑の思想に染まった生徒達に声をかけてお前を殺させる様なこともしてくるだろうからな。今後はお前の護衛につく。すでに学園長からの許可もとってある。…気を付けておけよ。」

一夏「分かった。」

 

ラウラから忠告を受けた一夏。

 

鈴「さ!お昼食べちゃいましょ!」

セシリア「ふふ、そうですわね。」

鈴(それと箒?一気に距離近くなったわね?)

箒(な、何を言い出すんだ急に!?)

鈴(今日は大人しく退いてあげるけど、今度からは容赦しないからね?)

箒(!…臨むところだと言わせてもらおう!)

 

小声で話す箒と鈴。

 

ラウラ(むー…)

セシリア(むくれないでくださいな…)

 

子供と母親のように見えるセシリアとラウラ。

 

一夏(ああ、この感じ、好きだな。黄牙も居て欲しかったなあ…)

 

もういない友に思いを馳せる一夏。安寧の日常さえこれからの戦乱に巻き込まれていくのをこの時はまだ実感できずにいた。




次回、面上げる月の白龍。


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3章 sideF 月と星と聖剣
1話 月龍と亡国の邂逅


???

 

黄牙「…どこだ、ここ?」

??「さあ、何処でしょう?」

黄牙「!?」

 

いつの間にか後ろに立っている白いドレスを着た少女。

 

黄牙「さっきまで福音の攻撃をくらって…あれ?」

??「福音なら私達の隣にいるよ?現実世界のだけど。」

黄牙「…じゃあ俺が見てるのは夢だとでも言いたいのかよ。」

??「うーん、それも違うかな。」

黄牙「………」

 

考え込む黄牙。その様子を見た少女は、

 

??「ねえ、これを見ても今貴方がどこにいるか分からない?」

黄牙「ああ?」

 

少女の方に視線を向けると、一体の龍がそこにいた。

 

黄牙「…お前かよ、()()()()()()()()。」

ストライクヴルム(以降ライ)「あったりー!」

 

声色から嬉しそうなことは伝わった。そして少女の姿に戻るストライクヴルム。

 

ライ「このまま誰?ってなるままなのかって思って心配だったんだよ?」

黄牙「普通分からんわ。自分のISが女の子の姿してんだぞ。」

ライ「えへへー(^^)」

黄牙「えへへじゃねえよ!…俺は今生きてるのか?」

ライ「もちろん!けどね、私と貴方はここで1つの儀式をしなくてはいけません!ドヤ」

黄牙「………」

ライ「無反応はやめてよー!」

黄牙「うるせえ!だったら ドヤ とかするんじゃねえよ!!」

ライ「むー…( ̄^ ̄)」

黄牙「むくれるな、ったく話が進まねえ…」

 

ため息をつく黄牙。

 

ライ「ちゃんと話すからよく聞いてね!さっきの戦闘で私の月の力が完全に開放されました!それにさしあたって、貴方とどんな時も永遠に一緒にいるという約束をしなければなりません!」

黄牙「なるほど。」

ライ「どんな時も、だからね?ここ重要だよ?」

黄牙「…ああ、分かった。」

 

黄牙の反応に驚くストライクヴルム。

 

ライ「相思相愛の人と一緒にいられなくなるんだよ!?」

黄牙「覚悟の上だっての。束がいっこうに星の守人伝説について連絡してこないってことは、俺が消えるか何かあるんだろう?」

ライ「………消えはしないよ。宇宙の中心で私達とずっといるだけ。」

黄牙「なーんだ、そんな事か。てっきり存在そのものを抹消されるかと思ったぜ。」

ライ「!!?」

 

さらに驚くストライクヴルム。

 

ライ「どうしてそんな平然と出来るの…?」

黄牙「どうしてって言われてもなあ…俺の嫁は宇宙の中心くらい、何年かすれば届きそうだしな。」

ライ「…信頼してるんだね。」

黄牙「そいつは当たり前。俺は束を愛しているからな。」

ライ「まったくもー…じゃあ進化については了承でいいんだね?」

 

改めて聞いてくるストライクヴルムに黄牙は、

 

黄牙「もちろんだっての。これからもよろしくな、相棒。」

ライ「!!…うん!」

 

そういって二人は手を繋いだ。その瞬間光に包まれる。

―――――――――――――――――――――――――――――

???

黄牙「…はっ!」

 

目を覚まし上体を起こす。隣を見てみると福音の操縦者であろう人がベッドに寝かされていた。

 

黄牙「なんだここ?…上下に揺れているってことは船の中か…」

??「そうだぜ?」

黄牙「うわあ!?」

 

またしても起き抜けに驚かされた黄牙。

 

黄牙「だ、誰だよアンタ!」

??「おいおい、せっかく助けてやったのにそれはねーんじゃねーか?」

黄牙「起きて早々におどかして来たのにか!?」

??「ビビりすぎだろお前…まあいいや。俺様はオータム亡国企業の一員だ。」

黄牙「!!」

 

亡国企業。かつてシャルロットに頼んで調査させていたIS企業だった。

 

黄牙「何故、俺を助けた?広告塔にでもするつもりか?」

オータム「アホか、お前は軍でいうとこのMIAだ。広告塔になんぞ出来るわけねーだろ。それに自己紹介はまだ終わってねえよ。」

黄牙「何だと…」

 

驚愕する黄牙を構うことなく続けるオータム。

 

オータム「続けんぞ。それと、安寧を守る者達(アニング・プロテクターズ)のメンバーだ。」

黄牙「アニング・プロテクターズ…?」

 

聞きなれない単語に困惑する黄牙。

 

??「何をしているオータム。」

黄牙「織斑先生!?」

??「…別人だが。」

オータム「エム…こいつに自己紹介してただけだぜ?」

 

エムと呼ばれた千冬似の女性に話すオータム。

 

エム「お前が星の守人か。」

黄牙「どうしてそれを…」

エム「蟹がよく口走っていたからな。今は剣になって、母船の方にいるが。」

黄牙「!!」

 

何度目かわからなくなるほど驚く黄牙。それをよそにオータムが

 

オータム「ん?何か3つ位光ってねーか?」

エム「さっきの蟹とあと二つか。」

黄牙「…まさか」

 

そういって待機状態の福音にカードをかざすと、カードが双子座のマークが特徴的な指輪に変わった。

 

オータム「へえ…そう変わんのか。」

エム「身体機能は問題無さそうだな。」

黄牙「相棒のお陰でな。あと、解析装置とかどこかにないか?」

エム「この小型船にはないな。母船まで我慢してくれ。」

黄牙「…了解だ。」

 

この後、福音の操縦者が目を覚まし状況説明を受けて、亡国企業所属となった。彼女いわく、「戦いを終わらせる為になるのなら力になる。ゴスペルもそう言ってる。」だそうだ。




次回、彼の選択。


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2話 周りの空気に流されて

オータム「見えたぜ。あれが俺達の拠点、ノアだ。」

二人「「……」」

 

豪華客船のようにしか見えないが、亡国企業(安寧を守る者達)の拠点らしい。

 

エム「何を呆けている。これからお前達と衣食住を共にする場所だぞ?」

黄牙「…乗ったことないんだが…ここまでの船に…」

??「私も…」

エム「星守はともかくファイルスは意外だな。」

ナターシャ「ナターシャで良いのに…」

オータム「エムは堅物だからな。」

エム「何か言ったか?」

オータム「なーんにも?」

 

和む黄牙以外の三人。後方のハッチが開き、

 

??『お疲れ様。早くブリーフィングルームまで上がってらっしゃい。』

オータム「わーってるよー!」

 

大人びた女性の声がスピーカー越しに聞こえた。

 

黄牙「今のは…?」

オータム「俺の上司だな。…形だけたぁ言えこういう言い方好きじゃねえんだけどなあ…」

黄牙(もうちょっと深い関係…なのか。)

 

そんな事を頭のなかで思い浮かべながら黄牙達はノアに乗船した。

―――――――――――――――――――――――――――――

ノア内ブリーフィングルーム

 

スコール「はじめまして、私はスコール。所属は…言わなくてもわかるわよね?」

黄牙「あ、はい。星守黄牙です。救助していただいてありがとうございます。」

ナターシャ「ナターシャ・ファイルスよ。それにしても拾われたのが貴女達で良かったわ。軍だったら留置所行きかもしれなかったし。」

スコール「そうなったら、アメリカ支部の人間に助けさせるわよ。おそらく世界ではじめて三次移行をはたしたISだもの。それ以前に銀の福音(その子)と心を通わせている点で助ける対象よ?」

ナターシャ「…ありがとう。」

 

ナターシャとスコールの間で話が進むなか、黄牙が質問する。

 

黄牙「あの、俺はどうしてここに連れてこられたんですか?」

スコール「…星の守人伝説の全てを伝えるためよ。」

黄牙「全て…?」

 

まだ釈然としていない黄牙。スコールが話し始める。

 

スコール「貴方も部分的に知っているだろうけど、月の力宿せし星の守人っていうフレーズがあるでしょう?貴方のISは既に力を宿す条件は満たしているのよ。」

黄牙「進化したのは聞いてたけど…まさかそれが月の力だったなんて…」

スコール「???」

 

気まずそうにオータムが話す。

 

オータム「あー、あのなスコール。こいつまだ自分のISがどうなったのか完全には把握してないんだよ。」

 

それを聞いたスコールが硬直する。少しして

 

スコール「……なら、アナライズルームを使って。エム、蟹のことは話したの?」

エム「ああ。開放することも出来るそうだ。」

スコール「あらそう。それじゃそっちも頼むわね、ファング?」

黄牙「…ファング、って俺のことですか?」

スコール「もちのろんよ。貴方だってばれないようなコードネームをつけてみたんだけど…ダメかしら?」

黄牙「いや、ダメじゃないですけど…」

スコール「なら、決まりね。ナターシャはシルバーで良いかしら?」

ナターシャ「良いわよー。コードネームって面白そうだし。」

 

話が進んでいき、黄牙とナターシャは亡国(安寧)所属となった。

 

黄牙「…オータムさん?」

オータム「なんだよ?」

黄牙「スコールさんっていつもあんな感じ、ですか?」

オータム「まあ、な…そこも良いところだけどな。」

 

どうやらそれで上手くいっているようだ。それと惚気のようにもとらえられた。

 

黄牙(あー、そういう関係なのね。完全に理解した。)

 

黄牙は何かを理解した。




次回、星と月を知る。


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3話 星と話す者

ノア内 アナライズルーム

 

エム「着いたぞ。」

 

エムに案内されてアナライズルームに到着した黄牙。

 

黄牙「エム、さん?」

エム「エムでいい。あと口調も砕いてくれ。なんだ?」

黄牙「どうやって蟹座のことを…」

エム「どうと言われても、声が執拗に聞こえたからとしか言えんが…」

黄牙「………」

エム「どうしたファング。」

 

自分、セシリア、ラウラ、束以外に十二宮(+13番目)ISの声を聞くものがいた。その事実を受けて考え込んでしまう黄牙。

 

黄牙「これで、五人目…」

エム「??」

黄牙「…何でもない。」

エム「そうか。それでは入るぞ。」

 

エムが扉を開けると、PCが何台も並んでいる。何本か接続端子のついたコードも見受けられる。

 

黄牙「セットする場所は…ここか。」

 

そういうと黄牙はまず待機状態の自身のISをセットした。

 

黄牙「えーと…腕に小型の実体剣、頭部レーザーバルカン…頭部がバイザー型になったことで情報処理能力も上がっている…粒子砲は無くなったのか。スラスターにレーザー砲が追加されても性能がアップしている…拡張領域には変わらずフェニックキャノン…ん?」

エム「何かあったのか?」

 

不思議そうに画面を覗き込んでくるエム。

 

黄牙「いや、俺の機体にも単一仕様能力が追加されてな。ちょっと驚いただけだ。」

エム「…どんな能力だ?」

黄牙「え?」

エム「ど ん な 能 力 だ ?」

 

なぜか目をキラキラさせながら威圧するかのような言葉遣いをするエム。そんな様子に気圧されたのか、

 

黄牙「分かった、分かったからその期待してるのか強制してるのか分からん状態を何とかしてくれ…」

エム「そんなに分かりづらかったか?」

黄牙「…あとでスコールさんとこに相談しにいくか…」

 

そう言ってディスプレイに単一仕様能力を投影していく。

 

エム「自在合体機構(フレキシブル・ブレイヴコード)…?」

黄牙「俺のストライクヴルムは元々拡張領域にあるフェニックキャノンを使って合体(ブレイヴ)してたんだが、今のこいつ…ルナテックヴルムは…口で言うのがメンドイからとりあえず見てくれ。」

エム「む、…これは!?」

 

投影したディスプレイに映し出されていたのは、カラーリング、武装が異なる3機のルナテックヴルムだった。

 

エム「武装の切り換えをISごと行う…のか。」

黄牙「大体はそうだな…ブレイヴ状態から他のブレイヴに換装出来る…つまり戦闘中に別の戦闘スタイルの機体になれるってところか…?」

エム「その3機は識別名とかは無いのか?」

黄牙「ちょっと待ってろ…ああ、あった。」

 

3機の識別名を載せていく黄牙。

 

エム「紫色のが『ルナヘイズ』、後ろのスラスターが変わっているのが『ルナジェット』、赤いのが『ルナランサー』…高機動系は共通しているようだな。」

黄牙「ここから詳しい情報を得るには戦闘訓練がいいんだろうが…そうもいってられないな。スコールに任された任務もあるし。エム、蟹はいまどこにある?」

エム「アナライズルームに剣がひとつあるだろう?それだ。」

黄牙「…マジ?」

 

そう言って部屋を見渡すと確かにあった。鞘がないのか空気にさらされている。

 

黄牙「…エム、お前が開放してみてくれ。」

エム「??」

黄牙「あー…まあ、頼む。」

エム「…まあいいが。」

 

そう言われて黄牙から蟹座のマークが緑色に光っているカードを渡される。

 

エム「かざせば良いのか?」

黄牙「まあ、それでいいと思うが。」

エム「曖昧だな…」

 

呆れたような声を出すエム。剣に近づきカードをかざす。すると光が部屋を包んだ。

―――――――――――――――――――――――――――――

エム「ここは、どこだ…」

黄牙「ああ、なるほど…」

??「ようやく姿を見せたか。」

エム「誰だ!」

 

声の主にエムはそう言い放つと、袴を着た男がそこにいた。

 

キャンサード(以降サード)「我は十二宮Xレアが1人、巨蟹武神 キャンサード。汝と以前から言葉を交わしていた者だ。」

エム「お前が…」

黄牙「やっぱりそうか。」

サード「む?そこにいるは星の守人か。どうやら既に三人…いや四人いるようだな。」

黄牙「ああ。双子座の次がお前だ。」

エム「それでキャンサード、とか言ったか。どうして私をここに連れてきた。それになぜ私と話をした。」

 

キャンサードを睨みながら質問するエム。それについてキャンサードは

 

サード「何、汝という存在の核を知りたくなっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。話したのは単なる暇潰しよ…なあ、織斑マドカ?」

エム「!!」

黄牙「え…まさかの隠し子…?」

 

織斑マドカという名前をバラされたエムに、驚く黄牙。

 

エム「貴様…何故ここでそれを言った?」

サード「秘密にしたところでいずれ明るみになるのは時間の問題。それが少しばかり早くなっただけよ。」

エム「……」

 

キャンサードの言葉に黙ってしまうエム。

 

黄牙「だからちーちゃんに似てたわけだ…」

サード「星の守人よ。」

黄牙「ん?」

 

キャンサードが黄牙に話しかける。

 

サード「双子座…ジェミナイズと我と共にいる十二宮は魚座だ。だが、今までとは訳が違うぞ?」

黄牙「え、何…どゆこと…」

サード「帰れば分かることだ。それとマドカ。」

マドカ「…何だ。」

 

伝えることがありそうにマドカに話しかけ直すキャンサード。

 

サード「星の守人が死んだという扱いを受けた今、護衛が出来るのは汝しかおらん。その事、努々忘れるな。」

マドカ「分かっている。」

サード「ならば行け。これから先は動乱が暫し続く。しかと守り抜いて見せろ。」

マドカ「お前の力を借りるかもしれないが、それでもいいんだな?」

サード「無論だ。」

マドカ「…ああ。」

―――――――――――――――――――――――――――――

話を終えて辺りが光りだす。それが晴れるとアナライズルームに戻っていた。さらに()()()()()()()()()()蟹座のマークが入った指輪があった。

 

マドカ「何故薬指…剣がなくなっている?」

黄牙「さてな。…それはずせそうか?」

マドカ「…いや、このままでいい。ファング、お前の名字を借りるぞ。」

黄牙「え、何で?」

 

困惑する黄牙にマドカは言う。

 

マドカ「織斑という名字が私にあっていないように感じた。只それだけだ。」

黄牙「…はいよ。」

マドカ「それはそうと、魚座だ。」

黄牙「魚座…どっかの魚が対象…ってことはないよな。」

 

キャンサードが話した訳が違う魚座。これが意味するものを考えていると扉が開いた。

 

オータム「ファング、エム!任務来たぜ!」

エム「…随分なはしゃぎ方だが、どんな任務だ。」

 

任務内容を確認するためにエムが聞く。タブレットPCを使って確認するオータム。

 

オータム「えーとだな、1か月後に女権団の持つ戦略級衛星の破壊だってよ!」

黄、エ「「??」」

 

オータムの口から放たれた言葉に、二人は首をかしげた。




次回、操縦者の操縦者による操縦者のための機体の解析。


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4話 調べあげよう、発表しよう!

なーんかこの回難しかったなあ…
待ってて下さった皆様に感謝申し上げます。


黄牙「女権団の戦略級衛星の破壊?何だってそんなことを…」

エム「…まさかIS学園に撃ち込むなどというアホなことをしでかす気か?」

 

エムが自身の推測を語るとオータムは

 

オータム「らしいぜ。向こうは夏休みで人手もあまり無い所を突く…のはまあ分かるんだけどよ、織斑一夏っつー女権団の目の上のたんこぶがいるタイミングで撃った方がいいんじゃねーかって思っちまうんだが…」

 

オータムの意見に黄牙が

 

黄牙「男がいるのに干渉出来ない所がある時点で女権団にとっては面倒になったんだろうな。まさか自分等が作った実質男人禁制の場所にイレギュラーが入るなんて思いもしなかったんだろう。随分とやり方が強引になってきてるのは俺の死によるものだし。それに…」

エム「それに、なんだ?」

黄牙「いや、なんでもない。」

 

黄牙(まさかこんな形でたばちゃんの夢を叶えることになるとはな…)

 

オータム「とにかく準備はしないとだしな。解析は全部終わったのか?」

 

任務についての話が終わると、オータムが聞いてきた。

 

黄牙「俺の相棒(ルナテックヴルム)はもう終わったが、キャンサードとジェミナイズはまだだ。」

オータム「…??」

黄牙「…蟹座と双子座はまだだ。」

オータム「あー!名前か!」

エム「気づくのが遅い…ともかくどちらから先にやるんだ?」

黄牙「んー…ジェミナイズからだな。エムはそれ(キャンサード)を外して待っててくれ。」

エム「了解だ。」

 

黄牙はルナテックヴルムを解析装置から外し、ジェミナイズを設置した。

 

黄牙「さてと…何だ、こりゃ。」

エム「どうした?何か面白い機能でもあったのか?」

黄牙「……前面と背面を切り替えられる。」

エ、オ「「は?」」

 

驚きの機能を持っているジェミナイズにすっとんきょうな声を出してしまう二人。

 

エム「…驚いていても仕方ない。機体データを表示してくれ。」

黄牙「りょーかい。まずはこっちから。」

 

ディスプレイに投影されたのは黄色と白のカラーリングのピエロみたいな機体だった。

 

オータム「随分とまあ…派手な機体なこって。」

黄牙「この状態の機体名はジェミナイズ・カストル。掌に武装されているビーム砲はワサト、脚部と足底部にあるスラスターはティジャート・アルジール。スラスターはもう1つの形態でも変わらないらしい。」

エム「ほう、ではもう1つの状態の機体を出してくれ。」

黄牙「ほいほいっと。」

 

ジェミナイズ・カストルの右側に黄色と黒のジェミナイズが現れる。

 

黄牙「えーと…こっちの状態はジェミナイズ・ポルックス。両手の外側に装備されているレーザーブレードはそれぞれプロプス、ジースイ…とさっきの脚部、足底部のスラスターだな。」

オータム「派手なわりに随分とシンプルな武装してんだな。」

黄牙「そうみたいだが…まあとりあえず、これでジェミナイズの解析は終了だ。エム、キャンサードを借りるぞ。」

エム「ああ。」

 

ジェミナイズを装置から外して黄牙はそれをポケットに入れる。エムからキャンサードを借り装置にセットして、解析作業を始めた。

 

黄牙「ええと………」

エム「また何かあったのか?」

 

頭を抱えて沈黙する黄牙に話しかけるエム。

 

黄牙「……見ればわかる、か。とりあえず表示するぞ。」

エム「おい、何を言って……は?」

 

ディスプレイに表示された情報を見て意味が分からないという雰囲気で言葉を発するエム。

 

オータム「武装は《星鋏 アクベンス》…だけだあ!?」

黄牙「あと拡張領域の《巨蟹刀 カニキリ》という、超インファイト型の機体だが…ん?」

オータム「どしたよ、ファング?」

黄牙「キャンサードとカニキリに何か特殊技能(アビリティ)があるようだが…何だこれ?」

 

まずカニキリのみをディスプレイに表示し、特殊技能について解析する黄牙。表示されていくそれを見る二人。

 

オータム「あ…?IS1機の挙動を20分の1の速度まで低下させる衝撃波を放つ。その3分後に半分に減衰、さらに3分後に元に戻る…地味にヤなアビリティだな。」

エム「ああ。キャンサードの方も出してくれ。」

 

そう言われてキャンサードを投影し、詳細を出す。

 

オータム「………」

エム「…おいファング」

黄牙「先に言っておくが、調べた結果としてのデータしか出していないからな?」

オータム「だからってなあ…!」

 

驚きが限界突破した様子のオータム。

 

オータム「相手が防御体制の時ふたり以上じゃないとISコアにダメージが入るってのはどう考えてもおかしいじゃねーか!!

 

キャンサードのアビリティのインチキ度合いに噴火してしまった。苦笑しながら黄牙は

 

黄牙「…初見殺しには打ってつけだろ?」

オータム「それにしたって限度があんだろうが!!それに同じ十二宮のISにそのアビリティが付与されるとか何と戦争をおっぱじめる気だ!!」

エム「落ち着けオータム。」

オータム「ああ!?」

エム「……先に進まん。」

オータム「…わりぃ。」

 

エムのもういっぱいいっぱいな声にオータムのテンションも沈静化した。

 

黄牙「とりあえずこれで解析終了だな。」

オータム「おいエム、先に進むが何だって?」

エム「言うな…」

黄牙「後はその衛星までどうやっていくか、だよな。」

エム「そこはスコールが何とかしてくれるだろうがファング、その紫色に光っているものはどうにかならんのか?」

黄牙「ん?…あ!そうだこいつもだった!」

オータム「は?」

エム「おいまさか今までそいつの指輪化を忘れていたとか言うんじゃあるまいな?」

黄牙「………」

 

図星のようで口笛を吹く素振りを見せる黄牙。

 

エム「 お 前 は ど う し て そ ん な 大 事 な 事 を 今 の 今 ま で 忘 れ て い た !? 」

黄牙「場所が変わったのと解析に夢中で…首絞めないでぐええ…」

オータム「まーまー解析は終わったわけだしよ、スコールんとこ戻ろうぜ?」

エム「ぐぬぬ…それも、そうだな。いくぞファング。」

黄牙「死ぬかと思った…」

エム「動作確認の時覚悟しておけよ?」

黄牙「」

 

死んだような顔をしている黄牙、ふんすといった感じでやる気満ち溢れるエム、やれやれといった感じで二人を見るオータムが一緒に艦橋に戻っていった。

―――――――――――――――――――――――――――――

スコール「私たちを見つけて何をしたいのかしら?」

ナターシャ「話してくれないとこちらとしても対処しようが無いのだけれど…?」

???「………」

スコール「あくまで黙秘、というわけね。」

オータム「戻ったぜー、って誰だよそれ?」

 

スコールと見ず知らずの誰かが艦橋にいた。メイド服にしてはあちこちがボロボロで赤く長い髪も枝毛がある。が、黄牙を見るやいなや驚愕の表情を浮かべた。

 

???「まさか、そんな…!?」

スコール「あら戻っていたのね。」

エム「はあ…また何か巻き込まれたか。」

黄牙「ん?…あー…」

 

黄牙を困ったように見るエム。

 

黄牙「えーと、とりあえず名を名乗ってくれないか?」

???「はっ!?…も、申し訳ありません…」

 

何か考え込む様子のメイドに話しかける黄牙。

 

ナターシャ「彼女、何聞いても答えてくれなかったのよ。」

黄牙「え、そうなんですか?」

???「…貴方様が生きていらっしゃったと分かった今、黙秘権を行使する必要は無くなったようです。」

5人「「「「「??」」」」」

 

そういってメイドが立ち上がりスカートを軽く持ち上げお辞儀をする。

 

チェルシー「私はチェルシー・ブランケット。セシリアお嬢様に仕えるメイドでございます。」

黄牙「え…」

チェルシー「今回、アニング・プロテクターズの皆様にお願いがあって参りました。」

ス、エ、オ「「「………」」」

 

姿勢を戻してそう言うと彼女は沈痛な表情で

 

チェルシー「私の妹を助けていただけないでしょうか…!?」

 

こう発言した。




次回、乱入の深青、その経緯。


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5話 彼女はなぜここに来たのか

今回英文(Google翻訳で単語をほぼ繋げただけ)が1文あります。文法がからっきしダメなので間違っていたら教えて下さい。



スコール「妹を?」

チェルシー「はい…」

黄牙「助けるにしても場所が分からなきゃどうしようもないと思うんだが…どこにいるか知っているのか?」

 

黄牙の問いかけに対してチェルシーは

 

チェルシー「…女権団が妹を、エクシアを連れ去る時にこう言っていきました。『私達の理想郷を汚す男を潰す聖剣の糧としてこの女は頂いていく』と…」

ナターシャ「それって…」

チェルシー「はい…エクシアは、エクスカリバーの…動力源にされたと、しかっ…!」

 

言葉を詰まらせ涙を流すチェルシー。

 

オータム「…任務が1つ増えたな、スコール?」

スコール「ええ、エクスカリバーの破壊と人命救助。人命救助の舞台が宇宙と変わっただけの事よ。」

ナターシャ「それはそうだけど…スコール、移動手段はどうするつもりなの?たった一月でエクスカリバーに行くためのロケットや任務遂行後の帰りの手段を用意できるとは思えないのだけれど…」

 

ナターシャの言葉にその場にいる全員が黙ってしまう。すると、黄牙のポケットの中で紫色に光っていたカードが強く光りながら飛び出した。

 

黄牙「うわっ!!」

オータム「カードがひとりでに出てきやがった!」

 

カードは浮きながらいつの間にか出来ていた差し込み口に自ら入っていった。すると突如として船体が大きく揺れた。

 

エム「な、何だ!?」

黄牙「…まさか、嘘だろ…!!」

オータム「ちょ、おい!ファング!?」

 

黄牙が部屋を飛び出す。それを追いかけるオータムとエム。

 

スコール「艦橋から見えてるけれど…私達も行ってみる?」

ナターシャ「良いわねそれ。彼の十二宮IS…だったかしら。どんな姿か直ではっきりと見てみたいし。」

 

興味がある程度位の会話で落ち着いているスコールとナターシャ。

 

チェルシー(反応が対照的すぎる…!!)

 

その状況に心の中で突っ込みをするチェルシー。と、

 

ナターシャ「置いてきぼりにしてしまったわね。ごめんなさい。」

チェルシー「あっいえ、お気になさらないでください。しかし、黄牙様のあの慌てようは一体…」

スコール「それもファングが行った道を辿れば分かることじゃない。行ってみましょ。」

チェルシー「は、はい…」

 

三人はエムとオータム、黄牙が行った道を歩いていった。

―――――――――――――――――――――――――――――

黄牙「な、何じゃこりゃああああああああああ!!?」

 

デッキに出た黄牙が見たのは光を放つ紫色の帆船だった。船首と思われるところに2匹の魚が口を開けているところを型どったものがある。

黄牙が出てくるのを待っていたかのように沈黙していたが、やがて光が黄牙を包み込む。光が晴れると黄牙はそこにおらず帆船もとても小さい光を灯したまま沈黙した。オータムとエムは

 

オータム「おい!ファング!!いねーのか!?」

エム「…どうやらあの船がキャンサードの言っていた魚座らしいな…」

 

目の前の

 

オータム「はあ!?じゃあ何か、あれもISだって言いてえのかよ!?」

エム「そういわざるを得ないだろう。あとはファングが戻るのを待つ。だが…」

 

心配そうに淡い光を放っている船を見るエムと開いた口が塞がらないオータム。

―――――――――――――――――――――――――――――

そんな二人に心配されているとはつゆ知らず、光に呑まれた後まわりの風景を見る黄牙。

 

黄牙「…ずいぶん静かだな。」

 

黄牙が小さな岩に腰掛けているすぐ目の前に川が流れている。ただ1つの清流の音に耳を傾け、リラックスしようとしたところに

 

??「さっさと、気づきなさーい!」

??「サーイ!」

黄牙「のわっ!?」

 

大声を出して現れたのは子供の人魚と全長30cm位の2頭身マスコットキャラクターだった。

 

黄牙「いきなりおどかすなよ!」

??「放っておく守人が悪いのよ!ばーかばーか!」

??「バーカ!」

黄牙「なんなんだよこれ…」

 

バカとか言いながら黄牙の周りを動き回る二人(?)。数分後にはおとなしくなって

 

アルレシャ(以降アル)「そういえば自己紹介をしてなかったわね!私はアルレシャ!こっちのちっこいのはレーヴァティ!私達がピスケガレオンよ!」

レーヴァテイ(以降レーヴ)「ヨ!」

黄牙「お、おう…よろしくな…俺は「星守 黄牙」…知ってるんだな。」

アルレシャ「当たり前じゃない!13の星を束ね、私達と共に過ごすってスコルスピアから聞いたわ!」

レーヴ「聞イター」

黄牙「へ、へえ…」

 

普通の会話をしていた。

 

アル「さて、私達があなたをここに呼んだのはあるお願いを聞いてもらうためよ!」

レーヴ「タメヨ!」

黄牙「お願い?まあ内容によるけど…で、どんなお願いなんだよ?」

アル「私達を活躍させなさい!!」

レーヴ「ナサイ!」

黄牙「……そんだけ?」

アル「それだけよ!あなたの相棒並みとまでは言わないけど、何かあったら私達を優先的に頼ってよね!」

レーヴ「頼レ!」

黄牙「…なあ、俺がいたところから宇宙まで行けるか?」

 

軽く質問をする黄牙。するとアルレシャは

 

アル「当然よ!なんたってあなたが私達を全員集めて銀河の中心に行く移動手段は私達に一任されているもの!」

レーヴ「モノー!」

黄牙「そうか…なら、今すぐ活躍出来るぞ。」

アル「…もう集めてきたの?」

レーヴ「ノ?」

黄牙「違う。ちょっと宇宙に用があるんだよ。」

アル「そうなの?」

レーヴ「ナノ?」

黄牙「ああ。実はな…」

 

黄牙は光に包まれる前の経緯を説明した。

 

アル「要するに移動手段に困っているという訳ね!」

レーヴ「ワケネ!」

黄牙「そゆこと。」

アル「ならドーンと頼って良いわ!地球の外に出るなんて朝飯前なんだから!」

レーヴ「アサメシマエー!」

黄牙「頼もしいな。それじゃあ1か月後よろしく頼む。」

アル「あ、あと!もう1つ!」

黄牙「ん?」

アル「集め終わった時の契約もそっちに戻ったらかけなさい!」

レーヴ「サイ!」

黄牙「ああ、分かってる。」

 

そしてまた光に包まれる。

―――――――――――――――――――――――――――――

オータム「お、おい!あれ!」

エム「…どうやら戻って来たようだな。」

オータム「なんだよ、何にやけてんだよ?」

エム「なっ何でもない!…よかった

 

光から出てきた黄牙に安堵するエムをいじるオータム。すると黄牙が光の方を向き、誰にも聞こえないようにこう呟く。

 

黄牙「Command Pisces. Carry me on you when Thirteen constellations gather to me.」

 

何か文章を唱えると、船は黄牙の手に光となって集まる。その光は魚座のマークをした指輪に変化した。

 

スコール「それが魚座の十二宮ISの指輪なのね、ファング。」

黄牙「スコールさん…それにナターシャs「ナターシャ」…ナターシャにチェルシーさんも。」

チェルシー「は、はい…」

オータム「三人ともなんでここに来たんだよ?」

スコール「十二宮ISがどういうものか興味があったのよ。」

ナターシャ「右に同じくね。」

チェルシー「そんな二人に連れられて、ここまで来ました。」

スコール「ファング、ミッションはこなせそう?」

 

と、スコールが聞いてくる。それに対して黄牙は

 

黄牙「魚座が来てくれたお陰で問題なくこなせますよ。」

 

こう答えた。

 

スコール「それは何よりよ。皆、明日から作戦会議を行うわ。プランをしっかり詰めて任務の完全遂行を遂げましょう。」

スコール以外「「「「「了解!」」」」」

 

1か月後に行う任務に向けて、アニング・プロテクターズは動き始めた。

―――――――――――――――――――――――――――――

???「この反応…やっと見つけた…!」

 

どこかの海上。ボートに乗って大切な人を探す1人の女性。その目に光は殆ど無い。手で持てるほど小さいモニターに写っていたのはPisces awakeningの文字。

 

???「さっきの反応が出た場所以外は全部探した。もしそこに私の大事な人(おー君)が居なくて、(おー君)の星の力を悪用するなら…」

 

その女性のネックレスは黒と白、二色一枚の羽が胸元にくるデザインをしていた。そして光の無い据わった目で反応場所のポインとを見て呟く。

 

束「全部壊して私も(おー君)のとこに逝こう…」

 

様子のおかしい希代の大天災がすぐそこに迫っていた。




次回、ミッション前のハプニング。


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6話 闇に覆われる

…落とす方が楽に書けるな。(オイ)


ノアの客室で暇をもて余している黄牙。ジェミナイズ、キャンサード、ピスケガレオンの覚醒からすでに10日が経過していた。

 

黄牙「あの後チェルシーさんに俺の存在はここにいる人以外に話したらダメって言うことを約束してもらったし、定期ブリーフィングは明日…ならやることは…」

 

客室から外に出ようとした瞬間

 

warning! warning!

 

大きな揺れと共に、警戒のアラートが鳴った。すぐ後に艦内放送で

 

ナターシャ『ノアに侵入者が1人入り込んだわ!皆、警戒して!この揺れ方普通じゃない!!』

 

ナターシャが伝える。

 

黄牙「女権団にバレた…?いや、それだったらもっと大人数で制圧にくるはず。…たばちゃんのところにもシャルとクロエがいる、けどやっぱそういうことか…?」

 

廊下で独り言をブツブツ喋っていると

 

オータム「ファング!」

 

オータムに呼び掛けられた。

 

黄牙「何で今ここに?」

オータム「ジェミナイズを借りに来た!」

黄牙「アラクネは?」

オータム「普通にあるが、もしもの保険として、な?」

黄牙「…分かった。気をつけて。」

 

そう言ってオータムに双子座のマークの指輪を渡す。

 

オータム「あんがとよ!」

 

そう言って走っていく背中を見送る黄牙。そのあと自分の三日月のネックレスを見て

 

黄牙「…初陣になるかもな。」

スコール「流石にそれはダメよ?」

黄牙「!?」

 

いつの間にか背後にいたスコールに驚きを隠せない黄牙。

 

黄牙「ダメってどういう…」

スコール「そう易々と貴方の生存を明かすわけには行かないけど…もし侵入者が彼女ならちょっといい案があるんだけど。」

黄牙「?」

 

何かを耳打ちされる黄牙。

 

黄牙「スコールさん…本気で言ってます?」

スコール「本気よ。辛いのはわかるけど、すこーし我慢してね?」

黄牙「…とりあえずちゃちゃっと終わらせましょう。」

スコール「ちゃちゃっと終わるかは向こうの反応次第、何だけどね。」

黄牙「…終わったら一回殴らせてください。」

スコール「…ええ。」

 

からかうようにするスコールに少しムカついた黄牙。ある準備のために二人はある場所へ向かった。

―――――――――――――――――――――――――――――

オータム「エム!」

エム「来たか。ちゃんとあれは有るんだろうな?」

オータム「借りてきたぜ?」

エム「ならいい。…そろそろ来るぞ。」

 

ゆっくりと侵入者の姿が表れる。

 

オータム「なんだ…あれ…!!」

エム「あいつの機体に似ているがアレの方が性能が絶対的に上のようだ…!」

 

相手を威圧するかのような大きな黒い羽とほぼ同じ場所から生え出た白い羽。肩や膝など体の至るところにある黄色のトゲ。

 

エム「さしずめストライクヴルム・ダーク、と言ったところか…!」

???「…やっぱりいるんだね、ここに。」

エム「!?(勘づかれた…まさか、奴は!)」

 

その一言に一瞬硬直するエム。

 

オータム「テメエ…いったい何のようがあって入り込んでやがんだ!!」

???「用事?…そんなの1つだけだよ。」

 

顔の部分のバイザーを解除し、誰が操作しているか明らかになる。

 

束「返してもらいに来たよ。私のおー君を!」

 

そう高らかに宣言するはISを作った天災、篠ノ之 束だった。

 

エム「貴様には悪いが、それは果たせない約束だ!」

 

キャンサードを纏って束に突っ込んで行くエム。オータムもそれに続くようにしてアラクネを装着する。

 

束「ま、そうだよね。だからさあ…!」

 

カニキリを振り下ろそうとしたエムの腹に思い切り拳を喰らわせる束。

 

束「力ずくで取り戻す!」

オータム「エム!…野郎ッ!!」

 

距離を縮めアラクネの足を使って刻もうとするオータム。束はそれを受け止めてエムへと放り投げる。

 

エ、オ「「ぐあっ!!」」

束「蟹座も覚醒してたなんて…でも2対1で私のダークヴルム・ノヴァをどうにか出来ると思ってるの?しかも片方は第2世代(ガラクタ)。もっとマシな戦力を用意しなよ。」

エム「随分と言ってくれる…!」

オータム「…なら用意してやろうじゃねえか!」

 

オータムがアラクネを解除し、指輪をはめて天に掲げた。すると白と黄色のピエロのような機体が表れる。

 

オータム「いい感じに馴染むなァ、あいつから託された機体はよォ!!」

エム「…それは同感だがテンションが上がりすぎだ。」

束「双子座まで…へえ…」

 

肩を震わせ怒りを滲ませる束。すかさずオータムが煽る。

 

オータム「やっぱ伝説の事をまったく知らせなかったような薄情者にゃあ、あいつは渡せねえなあ!!?」

束「……だ。」

オータム「聞こえねえぞ!もっと腹から声だしてみやがれ、クソ兎!!」

束「誰が薄情者だあああああああああ!!!」

 

束がオータムの煽りにぶちギレ、オータムの方に突っ込んでいく。それを見てニヤリと笑うオータム。そのまま外まで誘導するかのように逃げていく。

 

エム(まったく、効果覿面だが生きて帰ってこれるのか……ん?)「なんだ、スコール。」

スコール『エムー?ちょっとやることができたんだけど。』

エム「…篠ノ之束に関することか?」

スコール『あら、やっぱり侵入者は彼女なの。それなら話は早いわ。ブリッジまで連れてきてくれないかしら?』

エム「………」

スコール『エム?何かあったの?』

 

エムの沈黙にスコールが聞いてくる。そして

 

エム「お前の彼女がバカやらかして今頃外だ。」

スコール『……あの娘ったらもう…ジェミナイズの反応は追えてるから私が指定するポイントに誘導させて。』

エム「分かっている。」

スコール『…頼むわね。』

エム「尻拭いなどもう慣れた。切るぞ。」

 

スコールからの通信を切った後、目的ポイントのデータが送られてくる。

 

エム「やれやれ…これをオータムに送る…いや、少し灸を据えてやるか。」

 

エムが音声を添付してデータをオータムに送る。

―――――――――――――――――――――――――――――

束が殴る。オータムが避ける。束が蹴る。また避ける。オータムが外に誘導している間ずっとこれが続いていた。

 

束「このっ、ちょこまか、すんなああああ!!」

オータム「動きが単調だなァオイ!そんなんじゃあいつに捨てられちまうぜぇ!!」

束「うるさい!私のおー君がそんなことするわけない!勝手なことを言うな!」

オータム「どおだかなあ!!嘘つきは嫌われるぜェ!!」

束「うるさ、ガッ!?」

 

オータムがジェミナイズ・カストルに装備されたビーム砲でダメージを与え距離が開く。

 

オータム(効いてる効いてる。さて、次は…あ?エムから?)

 

開いた隙に送られてきたデータと音声ファイルの主を見る。音声ファイルを聞くと

 

エム「あとでこってり搾られろ。」

 

そう言っていた。

 

オータム(や、やべえええええええええええ!!これ絶対スコールにバレてるゥゥゥゥ!!)

 

心のなかで叫んだ。

 

オータム(エムのやつ、チクりやがったなチクショウ!あとでシバく!!ととと、とりあえず指定されたポイントまで誘導すればばば、ききききき、きっと許される…)

 

心のなかで動揺したり、同僚へ怒りをぶつけようとする。

 

束「考え事してんなよ、年増ァ!!」

 

その言葉が聞こえたかと思うとオータムのすぐ横に拳を振りかぶる束がいた。

 

オータム(やべっ!)

 

寸でのところで何とかかわすオータム。

 

オータム「って、誰が年増だコラァ!アタシはまだ26だ!」

束「束さんより2歳上ー!ほら年増じゃん!」

オータム「うっせえメンヘラ兎!」

 

そう言って飛び去るオータム。

 

束「誰がメンヘラだこのヤロー!!」

 

それを追いかける束。だが、逃げたはずのオータムがヘリポートにいた。ヘリポートに着陸する束。

 

束「何?束さんにぶん殴られる気になった?」

???「あら、そうは行かないわよ?」

 

声の方に目を向けると金髪の女性と見覚えのあるシルエットのISがそこにいた。

 

束「…お前がおー君をさらったのか…!」

???「さらった?むしろ助けてあげたことに感謝してほしい位なんだけど、ねえ…黄牙?」

束「!!」

 

ISを解除してその姿を表した黄牙。

 

束「おー君…!」

黄牙「………」

 

束が心の底から安堵しているのに反して、束を睨み付ける黄牙。

 

黄牙「なあ、束。俺言ったよな?何か分かったことがあったら伝えてほしいって。」

束「っ……!」

黄牙「束が隠してたことは全部スコールさんと、ストライクヴルムに聞いた。どうして言ってくれなかったんだ?」

 

語気を強めて束に質問する黄牙。

 

束「だって、だってそれじゃおー君がいなくなっちゃうんだよ!?私はっ…私はそんなの嫌だよ!!」

黄牙「ならどうして俺に十二宮ISを解放させた?」

束「それは「何も知らなかった、って言う理由を除けば…大方自分の知らない機体を知りたかった、とかそんなところか?」…!!」

黄牙「…そりゃそうか。自分の知らないISは調べたくなる。開発者の知的好奇心は侮れないな。」

束「そ、れは…」

 

黄牙の言葉に束は俯いてしまう。

 

黄牙「束を信じた俺が馬鹿だったんだな。」

束「ま、待っておー君…!」

黄牙「スコールさん、もういいです。」

スコール「…そう。処遇はどうする?」

黄牙「…任せます。俺は部屋に戻りますね。」

 

スコールに束を任せその場を去る黄牙。

 

束「おー君…」

 

失意の束にスコールが近づいてくる。

 

スコール「…一緒に来てもらうわよ?」

束「………」

オータム「おい「オータム。」…」

 

スコール、オータムに連れられて船内に入っていく束。その目は絶望にうちひしがれ、侵入してきたときよりも黒々と深い闇に包まれていた。

―――――――――――――――――――――――――――――

スコール「オータム、後でね?」

オータム「ピィッ」




次回、晴れない心。


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7話 心の靄

話を膨らますの難しい…
短めですがどうぞ。


束の急襲から5日。定期ブリーフィングの2回目である、のだが

 

ナターシャ「大丈夫なの、彼?」

スコール「心持ち次第、と言ったところかしらね。けどオータムがどうにかしてくれるわ。それにしても良いのもらっちゃったからかまだ赤いのが引かないわ。」

チェルシー「どんな威力で殴られたんですか…」

 

チェルシーがドン引きして、目線を向けたスコールの頬には誰かが殴ったような跡がうっすらと残っていた。

 

エム「3日も寝込むとは思っていなかったぞ?」

スコール「気絶しただけよ。オータムは?」

ナターシャ「ちゃーんと博士の世話してるわよ。…あんなにしおらしいところもあるのね。」

スコール「その状態は当然と言えるけれど…今は私達だけで進めましょう。」

エム「了解だ。」

 

そうして会議は始まっていく。聖剣の破壊とエクシアの救出を完遂するために。

―――――――――――――――――――――――――――――

オータム「…昼食だ。」

束「………」

 

ノアの独房に入れられているのはこの間の襲撃犯である篠ノ之束。隅の方で体育座りをして丸くなっている。

 

オータム「早く食わねえと冷めるぞ。」

束「…いらない。」

オータム「毎度空にしてるやつのセリフじゃねえな。」

束「……いつまでここにいれておくつもり。」

オータム「…さあな。」

 

ちょっとした会話はオータムが世話をしていくなかで出来るようになっていた。

 

オータム「じゃ、また夜食の時にな。」

束「………」

 

オータムはそう言ってドアを閉めて出ていく。

 

束「…おー君…」

 

最愛の人にすがるように呟く束。その最愛の人はというと

―――――――――――――――――――――――――――――

アナライズルームにその姿があった。

 

黄牙「…調べてみるか。」

 

束の持っていたIS、ダークヴルム・ノヴァを解析装置に置いてその力を隅々まで投影していく。性能を分析し、文章にして、理解を深めようとしている。

 

黄牙「…よくこんなデタラメな機体を作ってきたなあ。」

 

投影された文章。それを眺めて呟く黄牙。そんな彼に来客が一人。

 

オータム「入るぞー…何してんだ?」

 

オータムである。スコールから束のお目付け役だけでなく、彼の様子も見るように言われているため、隔日ではあるが見に来ている。

 

黄牙「ああ、束の機体を解析してた。」

オータム「ラビットのかよ…ってまたこいつも…」

 

オータムもそれが目に入り、呆れながら声を出す。

 

黄牙「十二宮の機体とほぼ同じくらいの性能持ちなのがさっきわかったからね…ってラビット?」

オータム「おう。」

 

ふとある予想がよぎる黄牙。

 

黄牙「まさか…」

オータム「ま、そのまさか、だな。お前にそいつを口説き落としてもらうぜ?」

黄牙「スコールさんはこのことを?」

オータム「知らなきゃ出さねえよ。」

黄牙「デスヨネー…はあ…」

 

オータムからいきなり任務を通達された黄牙。しかもスコールも絡んでいるという状況に頭を抱えてため息をつく。そんな黄牙にオータムは

 

オータム「何を悩んでんのか知らねえが、待ち合わせに遅れすぎたら大切なヤツは他のとこに行っちまうぜ?」

黄牙「!!…3日くれ。どうにかする。」

オータム「おう。…次のブリーフィングは2日後だ。ちゃんと来いよ。」

黄牙「…了解。」

 

返事を聞き届けたオータムは部屋から出ていった。

 

黄牙「落ち込んではいられない、よな。…どうしたらたばちゃんを引き込めるか、しっかり考えていくとしよう。」

 

その目に迷いは無く、決意に満ち溢れていた。




次回、復帰する牙。


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8話 任務に向けて

お待たせして申し訳ありませんでした。サーガブレイヴ見てたら色々浮かんできそうだな、とおもったので…


黄牙「心配をかけてすみませんでした!」

 

ブリーフィングルームに入るなり謝罪する黄牙。

 

スコール「気にしてないわよ~」

オータム「スコールお前…」

エム「首謀者とは思えない物言いだな…」

スコール「いいじゃない。誰かが言わないとなんだから、ね?」

 

ウインクで二人に返すスコール。ナターシャとチェルシーはというと三人のやり取りをいつもの事であるかのようにスルーして黄牙を案内する。

 

チェルシー「無事復帰なさって何よりでございます。」

ナターシャ「とりあえずお帰り。ファングは私の隣の席ね。」

黄牙「あ、どうも…」

ナターシャ「スコール?始めて欲しいんだけど?」

スコール「あらそう?じゃあ前回までに決まったことをファングに話してから本題に移るわよ~」

 

会議だというのにどこかのんびりしているスコール。その様子に黄牙は小声でナターシャに、

 

黄牙(あの、いつもこんな感じ何ですか?)

ナターシャ(まあ、ね。これは慣れてもらうしかないわ。)

黄牙(あっ…はい。)

 

スコール「とりあえず前回までの話ね。移動手段はファングの十二宮ISの1つを使うわ。それでエクスカリバーの軌道まで到達、その後内部に突入してチェルシーの妹であるエクシアを救出、同時に内部からエクスカリバーを破壊。破壊が完了し次第地球に帰還して任務完了よ。何か質問は?」

黄牙「無いです…というかもう内容決まってるじゃないですか!!」

スコール「それでも不安はひとつあるのよ?」

黄牙「それはいったい…」

エム「ISが宇宙空間で活動出来るのかどうか、この点だ。」

黄牙「ん?…ああなるほど。」

 

一瞬疑問符が浮かぶものの、即座に理解する黄牙。

 

エム「どうやら理解したようだな。頼んだぞ。」

オータム「お前らだけで話進めんなよ!全然わかんねえぞ!?」

黄牙「IS搭乗者の生命保護機能である絶対防御をバリアフィールドとして実体化、全体を保護して空気の確保、及び宇宙環境で活動できるようにたb…ラビットに頼む。そういうことでしょ?」

エム「そういうことだ。」

オータム「……なんか、怖いわお前ら。」

 

黄牙とエムの以心伝心さに一種の恐怖すら覚えるオータム。

 

スコール「ファング」

黄牙「…ええ、分かってます。」

ナターシャ「ちゃんとオトして来なさいよ?」

黄牙「はい…ん?」

オータム「どうした?口説き落としてくるんじゃねーのか?」

黄牙「ナターシャさん!?別の意味入ってませんかそれ!?」

 

チェルシーは顔を真っ赤にして、手で覆い隠してしまっている。

 

エム「やるのかやらんのか、どっちだ、ファング?」

黄牙「寄らんでいい!やる!やるから!やらせていただきますからその人を殺しそうな目で睨むのを止めてください!」

エム「…これでもわくわくしていたんだが…」

スコール「はいはい、落ち込まないの。肝心要の兎の捕獲、よろしく頼むわね、ファング。」

黄牙「…はい。」

 

どこか信用ならない目でスコールを見る黄牙。

 

スコール「ちゃんと二人っきりにするし、カメラでも見ないわよ?」

黄牙「その言葉、信じますよ。」

スコール「ええ。」

 

そう言って部屋を出る黄牙。その後ろ姿を見届けた各々は顔を見合わせ、ニヤリと笑った。チェルシー以外。

――――――――――――――――――――――――

束「………」

 

独房でじっと目を瞑る束。そんな時、扉が開いたような光が差し込む。ゆっくり目を開けて光の方を見ると、そこには

 

束「っ!」

黄牙「…1週間ぶりだな、篠ノ之博士。」

 

変わらず無事の、冷酷な目をした黄牙(最愛の彼)がそこにいた。黄牙に会えた嬉しさを押し殺して、息を飲み干し束は言葉を紡ぎ始める。

 

束「…何の用?」

黄牙「質問と勧誘だ。」

束「そう…早く済ませようよ。」

 

触れたい気持ちをおさえ、抱きつきたい気持ちを潰し、速やかに事を終わらせようと試みる束。そんな彼の表情は

 

黄牙「…ああ、そうだな。」

 

曇っていた。

 

―――やめて、そんな顔を見せないで。―――

 

黄牙「まず質問だ。ISに搭載されている絶対防御、あれは宇宙空間でどう使う?」

束「…地上と同じように使えるよ。注意するなら頭部は保護しておくことと、プライベートチャンネルを常時開いておくこと。」

黄牙「空気の確保は」

束「いるわけないじゃん。元々の設計思想は大気圏外での活動が前提なんだし、コアが宇宙空間と判断すれば自動で付く。」

黄牙「判断から装備されるまでの時間は?」

束「コンマ0001秒」

黄牙「…よくもまあそこまで仕込んだものだ。」

 

黄牙が感心したように反応する。胸に来る暖かいものを感じながら束が質問する。

 

束「ま、天災だからね…こっちからも質問。なんで今それを聞くの?」

黄牙「それが必要になったから、だ。」

束「ふーん…」

黄牙「聞いておいてその反応か。」

束「束さんにとって君たちがISを何にどう使おうが勝手だからね。…けど、私の子供たちを人殺しの道具に使おうだなんて思っちゃいないね?」

黄牙「その真逆の人助けだ。」

束「あっそ。」

 

―――良かった。―――

歓喜で踊りたくなるのをこらえる束。

 

束「質問は終わり?」

黄牙「…ああ、ここからは勧誘だ。単刀直入に言う、俺たちのもとに来い。」

 

いきなり切り替わり頭が混乱しそうになるも

 

束「…束さんがそっちの仲間にメリットは何?」

黄牙「……俺と共にいる、それだけだ。」

 

―――メリット?それが?…利害関係だったの?―――

 

束「…そんなの嘘じゃん。」

 

肩を震わせ涙声になる束。

 

黄牙「何?」

束「ずっと一緒なんて、そんなの嘘じゃん!!

 

目に涙を溜め立ち上がり、声を荒らげる束。

 

束「臨海学校でおー君が死んだって計器で出された時どんな気持ちだったのかおー君に解る!?ようやく、私が普通の人として幸せになれると思った矢先に奪われて、目の前全部真っ暗になって、それでも諦めたくなくて!どんな思いで…っ!どんな思いでおー君の痕跡を必死にかき集めてここまで来たか、おー君に解る!!?」

黄牙「………」

 

反論もせずただじっと聞き続ける黄牙。落ち着いたのか独房のベッドに腰かける束。

 

束「…最初に見つけた時は驚いたよ。まさかテロリストに拾われてたなんてさ。」

黄牙「博士それは…」

束「分かってる。彼女たちは違う、そう言いたいんでしょ?」

黄牙「…ああ。」

束「…随分入れ込むんだね。」

黄牙「世話になったからな。…あの時、拾われなかったら俺は本当に命を落としていた。暗く、寒い、海の底で1人で、な。」

束「…え?」

 

呆然とする束。それもそのはずで確かにあの時機械は彼を死んだと断定した。何故ならあの光線のなかで人間が生き残っている確率を算出して導きだした間違いようのない事象だった。

 

黄牙「それでも死ななかったのは、相棒が、ルナテックヴルムが俺の命を必死に繋ぎ止めてくれたおかげだ。」

束「…」

 

今度は束が静かになる。

 

黄牙「ライ…ああ、ルナテックヴルムと話せたのは…多分拾ってもらった後なんだろうな。愛する人と離れ離れになるって、後悔はしないのかって、何度も言われた。」

束「おー君…?」

黄牙「だから相棒に言ってやった。博士が、…たばちゃんならきっと伝承通り俺が銀河の中心に行っても、きっと会いに来てくれる。そう信じているってな。だからこそ、隠してたって知ったときは悲しかった。まだ信じてもらえてなかったんだ、って。」

束「……」

 

俯く束。透明な液体が頬を伝う。

 

―――どうして、信じてあげられなかったんだろう…―――

 

束「ごめん、なさい…絶対に知られたくなかった。その事実を受け止められなかった。何より、おー君と離れたくなかったんだよぉ…う、うぅ…」

 

決壊してしまった心のダム。止めどなく溢れ出す心の激流。そっと黄牙の方に抱き寄せられる。彼が鍵を持っていたのだろうか。

 

黄牙「…それが聞けただけでも、俺は嬉しい。」

 

最初の厳しい声音はどこへやら。彼は彼女を抱き締めて優しく伝える。

 

黄牙「もう一度だけでいい。俺の事を、信じて欲しい。」

束「…うん、私も、愛して欲しい。もう2度と離さないって誓ってくれる?」

黄牙「ああ。もちろんだ。」

 

そう言って久しぶりの二人の時間を心行くまで噛み締めた。

――――――――――――――――――――――――

次の日。

 

スコール「さて、じゃあ自己紹介お願いできる?」

束「ハロハロー!篠ノ之 束だよー!コードネーム?はラビット!よろしくぅ!」

 

束は晴れてアニング・プロテクターズのメンバーとなった。上層部も快く受け入れ、一切の手出しはしないという約束を取り付けた。

 

束「やー良かったー!これでひと安心だよー!」

オータム「厄ネタが転がり込んできたの間違いだろ…」

束「何かいった、年増蜘蛛?」

オータム「うるせーよ、厄介メンヘラ兎。」

束「は?」オータム「あ?」

ナターシャ「はいはい、喧嘩しない。」

 

チェルシー「随分と賑やかになりましたね。」

マドカ「騒がしいの間違いだ。全く…」

スコール「あら、騒がしいのは嫌い?」

マドカ「…別に。」

黄牙「ブリーフィングは終わったし整備はまた明日か…」

束「聞いてよおーくーん!またおばさんが苛めてくるー!」

オータム「テメエ!根も葉もねえこといってんじゃねえぞ!」

黄牙「…ふんっ!」

 

騒がしすぎたのか束とオータムにげんこつをくらわせる黄牙。

 

束「なーんでよー!」

オータム「お前が喧嘩吹っ掛けてくるのがわりいんだろが!」

黄牙「喧嘩両成敗だ!…もう一発受けとくか?」

束、オ「「すみませんでした…」」

 

しゅんと静まる二人。

 

黄牙「それよりラビット、計画に穴はないか?」

束「あると思うかね、ファング君?」

黄牙「…なかったな。」

束「元々の計画が完成してたんだし、それにちょちょいと手を加えただけだからね。問題なく行けるよ。」

スコール「太鼓判ももらえたことだし、残りの期間は整備期間としましょうか。各員決行当日までに間に合わせておくようにね。」

6人「「「「「「おー!!」」」」」」




次回、作戦開始!


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9話 作戦開始!

赫醒(←字合ってるか不安)のガレットを楽しみに待っています。


いよいよ作戦の決行日。ノアの船内に黄牙たちの姿はなく、ノアのとなりに展開されていた十二宮ISが一機、ピスケガレオンの艦橋に繋がる廊下を歩いていた。

 

オータム「随分広いな。いったい何人入れんだこれ?」

エム「ノアが元になっているのなら、ノアを基準に考えればいいだろう。」

ナターシャ「普通はそこまで順応できないんだけどねぇ…」

 

普通に会話しているオータムとエム。それをよそにピスケガレオンの内装を右に左に顔を動かしながら見ているナターシャ。

 

スコール「豪華客船と言うよりは…」

黄牙「完全に海賊船、だよな…」

束「にしては綺麗だよね~」

チェルシー「幽霊船ではありませんからね…」

 

話しながら中をどんどん進んでいく7人。艦橋に入るとあったのは、大型のディスプレイに写された金髪少女とマスコットキャラクターだった。

 

黄牙「出迎えありがとな。アルレシャ、レーヴァティ。」

アル『覚えていてくれたのね!!』

レーヴ『ヤッター!』

束「へえ、この娘達がおー君が深層心理のなかで見えてた姿なんだねぇ…」

アル『あら、星兎ちゃんじゃない!』

レーヴ『ウサギー』

束「…もう突っ込まないからね、十二宮の13人(そっち)で盛りあがってることについては。」

アル『なーんだ、つまらないわねー』

レーヴ『ネー』

束「………」

 

イラつきをギリギリのところで押さえ、拳を握る束。

 

黄牙「今すぐ出せそうか?」

アル『号令がいつでも出せるわ!』

レーヴ『モンダイナシー!』

オータム「号令だぁ?そりゃどういうやつだよ?」

 

オータムの問いかけにアルレシャが胸を張って答える。

 

アル『おーがの口から【出航!】って言えば良いの!』

レーヴ『ソー!』

スコール「あら、本当に海賊っぽいじゃない。」

チェルシー「海賊、ですか?」

ナターシャ「気にしたら負けよ…」

 

やれやれといった感じで発言するナターシャ。それを余所に黄牙は

 

黄牙「よし、やろう!」

束「わー、おー君乗り気だー…」

 

ノリノリであった。そんな彼にアルレシャは、

 

アル『それじゃあ、【船長】!号令お願いね!』

レーヴ『ヨロシクー!』

黄牙「よーし、ピスケガレオン!エクスカリバーに向けて、出航だ!!」

アル『おー!』

レーヴ『オー!』

――――――――――――――――――――――――

アル『成層圏突破したわ!』

レーヴ『シタ!』

オータム「はええよ!」

 

合図してから数分とあっただろうか。海上から離脱し、ロケットを打ち上げるかのごときスピードであっという間に宇宙にまで来てしまった。もちろんピスケガレオンの船内にいるので宇宙服は着ていない。違う点があるとすれば

 

ナターシャ「これが、無重力…」

チェルシー「わ、わわっ…バランスがとりづらいですね…」

アル『皆はIS?の準備をしてちょうだい!そろそろ見えてくるわよー!』

レーヴ『クルゾ!』

オータム「なあ、ファングは出られるのか?」

 

ふと、疑問を口にするオータム。

 

スコール「彼を出すの?」

オータム「試運転の1つもしてねえんだ。それぐらいの機会はあっても良いだろ?」

スコール「良策とは言えないけれど、まあいいわ。で、どうなの?」

アル『誰か2人残っていれば問題ないわ!』

レーヴ『ドースル?』

 

この場にいる全員が黄牙に目を向ける。

 

黄牙「…行く。進化した相棒のこと、知っておかなくちゃならないから。」

スコール「そう、分かったわ。ならエム、チェルシーと一緒に残ってもらえる?」

 

待機指示にエムは少々不満げに応える。

 

エム「…了解だ。」

スコール「むくれないの。最後の仕上げはピスケガレオンじゃないと出来ないんだから。」

エム「分かっている。」

スコール「じゃあ次ね。シルバーとラビット。貴女達はISを纏ってピスケガレオンの周囲を警戒をお願いするわ。」

シルバー「ええ、分かったわ。よろしくね、ラビット。」

ラビット「ん、任されたからにはちゃーんとやるよ。」

スコール「ファングとオータムは私と一緒にエクスカリバーに突入。エクシアを救助したら即離脱。ファングはこれが初の稼働だから無理はしないこと。良いわね?」

オータム「たりめぇだ!」

ファング「了解です。」

 

話がまとまったところに、アルレシャが話す。

 

アル『それじゃ、カタパルトまでいってらっしゃい!』

レーヴ『イッテコーイ!』

――――――――――――――――――――――――

ピスケガレオンの船首の魚の口が開く。足をのせるためのレールがありそこから発進していくというシステムで、どこか安堵したように黄牙が呟く。すでにルナテックヴルムをまとった状態で、スコール達3人は先に出ている。

 

黄牙「あー、これは変わらずか。」

束「不満?」

黄牙「まさか。」

束「………」

黄牙「たばちゃん?」

 

黙ってしまった束に黄牙が首をかしげながら聞く。

 

束「あのさ、おー君。」

黄牙「…どしたの」

束「…ううん。何でもない。気を付けてね。」

黄牙「……ちょっとこっち来て。」

 

束に呼び掛け、黄牙は思いっきり束を抱き締めた。

 

束「わぷっ…おー君?」

黄牙「不安そうな顔しないの。心配性だなあ全く。」

束「…そりゃ心配するよ……」

黄牙「ちょっと助けに行くだけだからさ。よく見ててよ。」

束「…うん…」

 

そういって束を離す黄牙。カタパルトレーンに足を乗せて

 

黄牙「行ってくるね、たばちゃん。」

束「…帰ってきてね、おー君!」

黄牙「もちろん。」

 

深呼吸して目を開く。

 

黄牙「星守 黄牙!ルナテックヴルム!静の海より飛翔する!」




次回、宇宙を駆ける月の龍。


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10話 三色一龍

やっぱり光導のデッキを組むなら十二宮Xレアは一枚ずつ入れたいところ。


オータム「しっかし、軍事衛星なんてもん普通使うかね?」

スコール「そうでもしなければ平和はないって考え方になってるんじゃないかしらね。互いに銃を突き付けあって、暴発しないように監視して…」

オータム「だからこそ俺らみてぇな存在も必要だ。表と裏の世界の抑止力となれる存在が、な?」

 

スコールの心配事に微笑みながら答えるオータム。

 

黄牙「…なんか似合わないですね。」

オータム「よく言われるっての。」

スコール「そろそろ予想されている迎撃圏内に入るわ。注意して。」

黄、ス「「了解。」」

 

エクスカリバーとの距離を近づける3機。すると警報が鳴り、無数のレーザー砲が敵対者を落とさんとビームを放った。

 

黄牙「…遅い!」

 

レーザーの間を回避しながらスラスターに直結されたビームを撃ち、レーザー砲を落としていく。オータムはジェミナイズをポルックスの状態で稼働させ、スコールに当たる軌道のレーザーをレーザーブレードで相殺させていく。

 

オータム「抉じ開けられるか、スコール!」

スコール「数が減ってるんだもの。この程度、私とゴールデン・ドーンなら朝飯前!」

 

超高温の炎を発生させ、集め、収束させて、

 

スコール「一点集中…融かし落とす!!」

 

迎撃砲のレーザーより細く、尚且つ侵入口を狙ったその一射は見事に命中した。

 

オータム「サンキュー!おいファング!開いたぜ!行くぞ!」

黄牙『もうですか!?了解です!』

 

3機は融かされた侵入口からエクスカリバー内部に侵入した。

――――――――――――――――――――――――

???「…そう、分かったわ。」

 

受話器を置き、溜め息をつく女性。

 

???「これから新しい世界が作られるというのに、邪魔ばかりしてくれるわね、亡霊どもめ…」

 

忌々しげに吐き捨てると、どこかに連絡をする。

 

???「ええ、どうも。あの4機のロールアウト、早めてくださるかしら?…もうあれに使い道は無いわ。…そう。来るべき日が早まった、それだけのことよ。では。」

 

電話を切り、邪悪な笑みを浮かべる。

 

???「私達の理想郷を作るために、誰にも止めさせないわ…!」

――――――――――――――――――――――――

エクスカリバーに侵入した三人。侵入ルートをバイザーに映し出して確認しながら目標であるエクシアの元へ急いでいる。

 

オータム「ちっ、内部のシステムでもハックしてやりゃ良かったか!」

黄牙「ここは俺がやって良いですか?」

スコール「…ええ。しっかりテストしなさい。私達は後ろで見ているから。」

黄牙「了解です。」

 

そう言うと、あるシステムを起動した。そのシステムの名は

 

黄牙「単一仕様能力(ワンオフアビリティ)発動。機構:月鎌(コード:ルナヘイズ)!」

 

ルナテックヴルムのバイザー部分が紫色に発光し、全体を包む。光から現れたのは、巨大な鎌を持ちスラスター部分に暗い色の羽がついた紫色のルナテックヴルムだった。スラスターについていたビーム砲は左腕についている。

 

黄牙「死神様のお通りだ!…なんてな。」

 

鎌を携え、機銃を斬り飛ばし、羽からエネルギー弾を放出し、警備システムをダウンさせていく。

 

オータム「大分楽になるな、これ。」

スコール「これで3つのうちの1つなんだから、とんでも化け物ね。」

 

残骸の上を通りすぎながら談笑している二人。そんな彼らの目の前に、分厚そうな壁が立ちふさがる。

 

黄牙「機構変更(コードスイッチ)機構:月槍(コード:ルナランサー)!」

 

今度は赤くバイザーが発光。元々あった紫の羽は赤く、ブースター付きの機械的な大型翼に変更され、ブースターの赤、本体の白そしてバイザーが金になった。大型の槍が両手に1つずつ、装備されている。

 

黄牙「一点突破で!」

 

ブースターを点火し、槍を前に突きだして壁にその切っ先を突かせる。そして、

 

黄牙「これで足りないなら、自分でそれを補うまで!!はああああああああああああ!!」

 

体をねじり、自身をドリルのように回転させて壁をぶち抜き突破した。

 

オータム「随分と頭も回ってやがる。」

スコール「援護して融かしてあげたかったんだけどねえ~」

オータム「言ってる場合か。」

黄牙「そろそろ広間みたいですよ。」

スコール「そこに生体反応はあるかしら?」

 

バイザーの機能をMAPモードから探索モードに切り替える。すると、

 

黄牙「…いました。ケーブルにIS共々繋がれてます…エネルギーがどこかに流れているふうに見えますが…」

オータム「…女権のクソ共、イギリスの最新鋭機をスクラップ同然な使い方しやがって…」

スコール「なるほど、上から出されていたゼフィルスの捜索および回収…破壊作戦前ギリギリに来たのはそういうことだったわけね。」

 

サイレント・ゼフィルスが装着されたエクシア。目を瞑ってそこから動かない。

 

黄牙「パイロットには管が繋がれていないみたいです。どうします?」

スコール「無理矢理外しましょうか。その後撤退よ。」

 

黄牙に指示を出した直ぐ後、突然施設からアラートが鳴り響く。

 

『メインユニットに侵入者有り。メインユニットに侵入者有り。エネルギー供給中断。擬似コア起動開始。』

オータム「ちっ!警戒が薄いと思った途端これだ!気を付けろファング!何か来やがる!!」

黄牙「分かってます!」

 

オータムが警戒を促す、アラートの機械音声がさらに告げる。

 

『擬似コア起動確認。IS Sシリウス(ストライクシリウス)、IS Sプロキオン(ストライクプロキオン)に接続。起動シークエンス、緊急時のためスキップ。強制起動。』

 

その音声を最後にアラートが途切れる。そして隔壁が閉ざされエネルギー菅の先にあったところから2機のISが降り立つ。姿が違えど、そのベースは彼らがよく見知った物だった。

 

スコール「いくらプロトヴルムから造れるとは言え、応用機を2機も…!」

黄牙「何て面倒な…!」

オータム「流石に潰さねえと帰してくれなそうだ…!」

 

冷や汗をかく三人を尻目に2機の咆哮が轟いた。




次回、模された物。


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11話 任務、遂行。

1人回ししてると1戦ごとにデッキを微調整するのは何でだろうか。


スコール「オータムはエクシアの救助!ファングは私と一緒にあの2機を止めるわよ!!」

オータム「おう!」

黄牙「了解!」

 

スコールがすぐさま二人に指示を出した。それに則り行動を起こす。が、オータムを妨げるかのようにシリウスとプロキオンがそれよりも早く動き出す。シリウスが背中の砲撃ユニットからレーザーを打ち出す。

 

オータム「ちっ!」

スコール「後ろ!」

 

紙一重でシリウスの攻撃をかわしたすぐ後、プロキオンがオータムに迫る。

 

黄牙「やらせるか!」

 

黄牙がプロキオンとオータムの間に入り、槍を交差させて攻撃を受け止めた。

 

黄牙「早く行ってください!そう長くは…!」

オータム「分かってらあ!」

 

足底部のブースターを全開にしてゼフィルスに近づいていくオータム。

 

黄牙「…ぅらあっ!」

 

それを見届けた黄牙は槍を交差させたままプロキオンを押し飛ばす。すぐに体勢を戻したプロキオンは黄牙の方を向いている。

 

黄牙(ターゲットがこっちに移った?なら遠慮なく!)

 

ブースターを吹かし、突き出す。かわされる。払う。かわされる。追いすがり斬りつける。かわされる。一瞬であることに気づき、次の手をとる黄牙。

 

黄牙(速度が足りないのなら!)

機構変更(コードスイッチ)機構:月飛(コード:ルナジェット)!」

 

すぐさま単一仕様能力を簡易で発動。改良型のスラスターにブースターキャノンの機能を両腕に装着。白銀に輝くルナテックヴルムがそこに立っていた。

 

黄牙「踊ってやる、俺のワルツを!」

 

バルカンを放ちながら高速で接近する黄牙。それをかわそうと右に飛ぶプロキオンに爆発が起きた。

 

プロキオン「!!??」

黄牙「予測通り初手でヒット…連擊に出る!」

 

近づきながら左腕のレーザー砲を放っていたのだ。これは予測外だったのか混乱している様子のプロキオン。その隙を黄牙が見逃す筈もなく、両腕のレーザー砲を連射する。

プロキオンに向けて発射されたレーザーは一射も外されること無く直撃し、爆発を起こした。

 

黄牙「……」

 

煙が晴れる。そこには残骸となったプロキオンが転がっていた。

 

黄牙「状況終了。スコールさんは…」

スコール「ここよ。」

 

後ろを振り返ると、排熱しているゴールデン・ドーンを装着し、その蒸気にまみれたスコールがいた。

 

スコール「AIなだけあって単調で助かったわ。」

オータム「こっちも終わったぜ。」

 

ISが装着されたままのエクシアを抱えながらオータムが合流した。

 

黄牙「パイロットは?」

オータム「無事だ。ISの部分のみにコードが繋がってて助かったぜ。」

スコール「それじゃ、帰還しましょうか。あとファングは束に最後の仕上げの準備、連絡しておいて頂戴。」

黄牙「了解です。」

 

そのやり取りのあと、個人間秘匿通信(プライベートチャンネル)で束に連絡をいれた。

―――――――――――――――――――――――――――――

束「おー君から連絡来た!救助成功、仕上げに掛かれ。だって!」

ナターシャ「了解よ。エム?聞こえた?」

 

通信を繋いでいるナターシャはエムに声をかける。

 

エム『ああ。いつでも撃てる、らしいが。』

ナターシャ「チェルシーはどうしてるの?」

エム『再び会えるのだ。そっとしておいてやろう。』

ナターシャ「…それもそうね。三人が出てきたら発射してくれる?」

エム『ちょっと待っていろ。…了承を得た。タイミングはアルレシャ達に任せる。』

 

双魚の帆船の口が開き、魔方陣が形成。エネルギーが貯められつつあった。そして、

 

束「おー君達出てきたよ!」

ナターシャ「エム!」

エム『ああ。双魚破砕砲(ピスケ・バスタードキャノン)発射!』

 

エムの号令の後、大出力のレーザー砲が聖剣に向け撃ち放たれた。しっかりと真ん中を撃ち抜き、衛生兵器の崩壊の様を7人は見届けた。

炎に包まれ残骸と化し、なおも爆発を続けている。砕かれた破片は大気圏突入時の熱で燃え尽きる、そうだ。




次回、章エピローグ。次の任務は。


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12話 to the next mission

次章の前にちょいちょい閑話を挟みます。


黄牙「あの威力は想定外だったんだが…」

束「まさかあんなになるなんてねー。お陰でメンテに時間かかっちゃってしゃーないし。」

アル『普段の使い方と違うもの!ぜーんぶ攻撃に使えばこんなものよ!』

 

ノア船内の黄牙の自室にて話しているアルレシャと黄牙、そして束。どうして2人(と1機)がいるのか。それには訳があった。

―――――――――――――――――――――――――――――

衛生兵器エクスカリバーを粉々にするために使われたピスケガレオンの武装である双魚破砕砲(ピスケ・バスタードキャノン)。想像以上の威力であった為に爆発の余波のエネルギーも大きく、気絶していたエクシアを含む4人は思いっきり吹っ飛ばされてしまった。

特に、オータムがエクシアをISを起動させたまま担いでいたため、爆風の影響をもろに受けてしまった。

 

オータム「ああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

スコール「オータムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!??」

黄牙「嘘だろ…ってスコールさん!早く追い付かないと!あのままだとどこ行くか分かんないですよ!?」

スコール「はっ!そ、そうね。早くいかないと…!」

束『心配無用ってやつだよおー君!』

 

束からの通信が二人に入る。

 

束『なーちゃんが羽全部使ってどーにかこーにか受け止めたから安心して戻ってきていいよ!』

黄牙「グッジョブたばちゃん!ありがとう!」

束『ちゃんとなーちゃんにも言うんだよ?そこの金ぴかもだからね!』

スコール「いい加減に名前で呼んで欲しいんだけどねぇ…」

黄牙「まあ、対象に入ってる時点で秒読みだと思いますけど…」

束『返事は!?』

黄・ス「「は、はい!」」

 

そうして任務は終了し、ノアにたどり着いた。のだが、

 

アル『このままで良いじゃないのー!』

レーヴ『ノー!』

黄牙「そうは言ってもだな…」

 

何とアルレシャが駄々をこねてしまった。レーヴァティはそれに倣っているだけのようだが。

 

アル『空中船よ空中船!船にのって空を飛びたいと思わないの!?』

レーヴ『ノー?』

オータム「んなことしたら幽霊船と間違われるぞ。」

アル『私達ボロっちくないもん!』

レーヴ『ナーイ!』

 

見かねたスコールが

 

スコール「あら、じゃあ次の任務は休みにしちゃおうかな~?」

エム「次…?もうでたのか。」

アル『え!?』

レーヴ『エー?』

スコール「次も活躍したかったら…良い子の二人は分かるわよね?」

アル『むー…じゃあ守人か兎のところにいつもいても良い?』

スコール「良いもなにもそのつもりよ。ちゃんと待機状態で、ね?」

アル『…分かったわ。絶対呼びなさいよ!』

レーヴ『ヨンデー』

スコール「ええ、もちろん。」

 

スコールの発言を最後に、ピスケガレオンは魚座のマークが特徴の指輪に戻った。しっかり黄牙の手元に戻っている辺り本当に活躍したいようだ。

 

ナターシャ「手慣れてるのね。」

スコール「これくらい余裕よ。じゃ、戻りましょうか。任務については私とオータム、あとチェルシーの三人でやるわ。」

チェルシー「は、はい!お任せください!」

オータム「だーよなぁー…あーメンドクセ…」

スコール「量増やすわよ?」

オータム「あー!なんか急にやりたくなってきたわ!そんじゃ行ってくるわ!お前らしっかり休めよ!」

チェルシー「では私も。この度は本当に、ありがとうございました!」

 

一礼しオータムとスコールの後を追っていった。

 

ナターシャ「さ、部屋に戻りましょ?エクシアは?」

エム「奴なら安寧(アニング)特製のメディカルカプセルに放り込んでおいた。しっかりと治療して、最低でも2週間は掛かると、医療班は言っていたが。」

束「束さんが弄ってようやく2週間かあ…医療技術もかじっとくべきだったかな?」

エム「…やはり、こうして話すとよくわかる。噂など当てには出来んな。」

黄牙「でしょ?」

エム「ああ。」

 

少し微笑みを見せるエム。黄牙と束に向き直り、

 

エム「これからは次の任務まで休暇だ。船内のプレイルームには暇潰しの道具がこれでもかとある。暇をもて余したらそこに行くと良い。ではな。」

黄牙「ああ!」

ナターシャ「あ、そうだ。言い忘れてたことが1つ。」

 

そういうとナターシャは黄牙に近づき耳元で

 

ナターシャ(しっかり甘えて甘えさせなさい。邪魔しないから、ね?)

黄牙(…分かってますって。)

ナターシャ(ならよろしい。)

 

怪訝そうにナターシャを見る黄牙。

 

束「…もういいでしょ!束さんのおー君から離れて!」

 

割って入った束。どうやら良い雰囲気に見えていたようで、ちょっと嫉妬しているようだった。

 

ナターシャ「ふふふ、じゃあごゆっくり~」

 

手を振りながら船内に戻っていった。

 

束「やっぱりおー君監禁した方がいいかな?かな?」

黄牙「そんなんじゃないから。部屋戻るよ。」

束「待ってよー!」

―――――――――――――――――――――――――――――

要するにイチャコラしに来ただけである。ケッ。

 

アル『ちゃんと呼ぶんでしょうね?』

黄牙「スコールさんは約束を守る人だからね。あのときもぶん殴る約束してちゃんと受けてもらったし。」

束「え、何それ。束さん知らない。」

黄牙「…知らなくて良いこともあるんだよ?」

束「ぶー。おー君のケチー。」

黄牙「ケチで結構。」

アル『…じゃ、戻るわね。』

黄牙「ん?おう。ありがとうな。」

 

指輪から光を明滅させていたがやがて光らなくなった。最後に交わした言葉が若干トーンダウンしていたのは気のせいだろう。きっとそうだ。

 

黄牙「………」

束「………」

 

換気扇が回る音しか聞こえてこない。何故なら、お互いにお互いを気遣っているためである。

黄牙は束がメンテナンスの作業をしているから、束は黄牙成分を吸引したいのを抑えて、しっかり休んでほしいと思っているのだ。数分の間を開けて、黄牙が呼び掛ける。

 

黄牙「…ねえ、たばちゃん。」

束「…んー?」

黄牙「ちょっとこっち来て。」

束「んー。」

 

呼ばれるがままに束が向かっていく。距離が近づく二人。

 

黄牙「……やりたいことがあるんだけど。」

束「ん、いいよ。」

 

黄牙にされるがままに体を預ける束。お姫様抱っこの体勢になって、ベットに腰掛ける黄牙。彼の首に手を回してお互いの顔が近くなる。黄牙の太腿の上に束が乗る形になった。顔を少し赤くして至近距離で話す二人。

 

束「覚えてたんだ。」

黄牙「もちろん。」

束「…別に忘れてても怒んないのに。」

黄牙「僕がやりたかったから。ダメ?」

束「…ズルい。急に年下モードなんて。」

黄牙「兎を捕まえる為には手段は選ばないから。」

束「まーったくもー…1つ勘違いしてるよ、おー君。」

 

束が頭を寄りかからせ、上目遣いで優しく続きを話す。

 

束「兎だって、私の牙をほったらかしにはしないからね。それこそどこにあってもね。」

黄牙「…身にしみて分かってる。」

束「…はい!シリアス終わり!うりゃりゃー!」

黄牙「えっあ、ちょ、くすぐ…ったい…!」

 

首をくすぐられるもどうにかこうにか笑いをこらえている黄牙。

 

束「しばらくはこうだもんね!心配させたぶん思いっきり注入させてもらうからね!」

黄牙「ひぇ…待って…そろそろダメ…限界!」

束「さあさあ!思いっきり笑うのだ!おりゃー!」

 

くすぐる手を止めない束。ついに

 

黄牙「あっはははははは!!も、もうやめてー!笑い死ぬー!!」

束「まだまだー!首の次は脇腹だー!」

黄牙「ほ、ホントに、ダメだって、ひゃははははは!!」

 

その後3時間、エムが迎えに来るまでいろんなところをくすぐり続けたようだ。

 

 

 

その日の夜。スコールが誰かと電話していた。

 

スコール「今回の件。ご協力、感謝いたします」

??『いえいえ。当然の事をしたまでですよ。』

スコール「彼女は…レインは元気ですか?」

??『勿論。…今はまだ偽名、ですが。』

スコール「いつか本当の名ですごさせてあげたいのですけれどね。」

??『その為に、戦っているのでしょう?』

スコール「…はい。」

??『なら、成就するその日までそれを貫くべきだ。迷うこと無く、ただ真っ直ぐにそこに向かって進みなさい。』

スコール「…ありがとうございます。こんな小娘にもったいないお言葉です。」

??『貴女が小娘など微塵も思っていませんよ。彼とまた会える日を楽しみにしています。』

スコール「はい…ではまた。」

 

そう言って電話を切るスコール。

 

スコール「…今回の任務、あの人の力がなければ、達成はおろか妨害によって間に合わなかったかもしれない…」

 

夜空を見上げ一人呟くスコール。

 

スコール「轡木 十蔵…いや、くつっち先生、だったかしら。ふふっ。」

 

言葉にして放たれたその名は、かつて黄牙が在籍していたIS学園の長であった。




次回、interval 2。


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閑章2 束の間のbreaktime
1話 IS学園にて その1


ようやっとこっちの視点で書ける…


ある夏の日。衛生兵器エクスカリバーの崩壊が成ったあの時。一夏達は何をしていたのか。どんな風に過ごしていたのか。その一部をここに綴ろうと思う。

―――――――――――――――――――――――――――――

銃撃の音がアリーナの中でこだまする。近づき離れてを繰り返す赤と蒼。紅椿を駆る篠ノ之 箒とブルーティアーズを駆るセシリア・オルコットが戦闘を繰り広げていた。セシリアの額に微かに汗がにじんでいる。

 

セシリア「くぅ…!」

箒「…ふっ!」

 

短剣(インターセプター)(雨月)が鍔競り合う。インターセプターを逆手に持ち何とかこらえている様子のセシリア。だが、その均衡は長くは続かない。

 

箒「…!」

 

ロックオンアラートが鳴り響く。セシリアのブルーティアーズから射出されていたビット(ブルー・ティアーズ)2機が紅椿の背後を捉えていた。

 

セシリア「機動力を削げれば!」

箒「そう易々と削られるものか!」

 

ビットからビームが放たれるより前に、左手に持っていた空裂を体を捻って振るう。すると刀身からレーザーが打ち出された。ビームをビット本体ごと斬り捨て、捻った副作用的に鍔競り合っていたセシリアを弾き飛ばした。そして紅椿の展開装甲を機動力に回し、高速で突っ込む。

 

箒「…獲った!」

 

雨月での袈裟斬りが入り、ブルーティアーズのSEが0になった。

 

セシリア「はあっ…はっ…はっ…」

箒「…今日はこれくらいにしたらどうだ。」

セシリア「いえ…まだ、あと1戦…頼めますか…?」

箒「…あいつがいなくなり、夏休みに入ってからというもの日に15戦を毎日越えている。体を壊せば元も子も「だとしても!!」…」

 

言うが早いかセシリアが声を発する。

 

セシリア「…だとしても、私の力が足りないばかりに、あの人を…黄牙さんを失って…!」

箒「セシリア…」

 

今にも泣きそうな顔をして声を絞り出すセシリアに箒は

 

箒「そんなことを言えば、それは私が言う台詞だ。」

 

優しく声をかけた。

 

箒「あの時、私はその場にいた。戦闘を継続することもできただろう。だが、星守の言うことに従って私は一夏を逃がした。本当に気に病むべきはお前ではなく私だ。」

セシリア「箒さん…」

箒「あえて言うぞ。気に病むな。引き摺るな。前を見ろ。」

セシリア「………」

 

そう言って場から去っていく箒。去り際に

 

箒「今のお前をみたら星守はどう思うか、それを想ってみるといい。」

 

その文言を残して。1人残されたセシリアは

 

セシリア「…想いました。考えましたとも。ですが…こうして体を動かさないと、こびりついて離れてくれないのです。頭から黄牙さんの、怨嗟の声が…。だから、私はっ…」

 

涙をぬぐうも止めどなく溢れてくるそれを、止める術を知らない。いや、忘れてしまっていたのだった。




次回、その2。


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2話 IS学園にて その2

次はこの二人。


鈴「……で、いつまであんたはここに入り浸るつもりなのよ?」

ラウラ「いつまでも、だ。」

鈴「あっそ…」

 

呆れ気味にため息をつく鈴。それもそのはずで、林間学校に帰ってきてからというもの箒やセシリアといった友人の部屋や、IS学園で保護されているシャルロットとクロエのラボに各3日ずつすごして回っているのだ。…何故だか鈴の部屋ではおよそ倍の期間である1週間の期間をすごしているが。

 

鈴「…クラスの同級生と話してるの?」

ラウラ「………」

鈴「あー…最近話したやつは?」

ラウラ「お姉さまだ。」

鈴「クロエとどんな話したのよ?」

ラウラ「…お父様のことだ。」

鈴「黄牙の?」

ラウラ「…ああ。」

 

俯いてポツポツと話すラウラ。

 

ラウラ「お姉さまは、私の知らないお父様の話を聞かせてくれた。篠ノ之博士…いや、お母様か。3人でどんな風にすごしていたのか、馴れ初めや、お母様の感情の揺らぎ、お父様の裏の顔…などな。」

鈴「裏の顔?…何、あいつヤバい方に手を出してんの?」

ラウラ「な!そんなわけ無いだろう!お母様と二人きりで居るときの事だ!」

鈴「あー…って紛らわしいわ!」

ラウラ「ならば他にどう言えばいいのだ!」

鈴「んなもん二人でイチャついてるって言えば良いのよ!」

ラウラ「なん……だと……!?鈴、イチャついてるとは何だ?」

鈴「そこからね…良いラウラ?イチャついてるって言うのは―――」

 

と、『イチャついてる』の説明に自身の願望も混ぜ込みながら45分使ってしまった。ちなみにラウラは

 

ラウラ「もういい…もう分かったから…///」

 

赤面した顔を見られないように顔を伏せてしまった。

 

鈴「あ、あー…ちょーっと話しすぎたわねオホホホホ…というか、アイツのこと引きずってないんだ?」

 

その言葉に僅に反応するラウラ。

 

ラウラ「…引きずっていないと言えば嘘になる。こうして、鈴や箒、お姉さま達に会って話していなければ、きっとセシリアのようになってしまっていただろうな。」

鈴「……セシリアが、ねぇ…」

ラウラ「これは、教k…織斑先生から訊いた話だが、私が来るまで、お父様の護衛はセシリアが1人でやっていたそうだ。」

鈴「それでそこまで…でもさ、最初の作戦の時、『私も一緒にいかせてくださいまし!』って言わなかったんだろ。」

ラウラ「予想として言うなら、紅椿との性能差の問題だろう。ブルーティアーズは第三世代機、紅椿は第四世代機だ。それにあの時は高機動パッケージに換装する時間すらなかったのだ。それでは箒と一夏、それにお父様にすら追い付けない。行きたくても行けなかった。それに一刻を争う事態に無駄な時間を割かせてはならないと思ってしまったのだろう。」

 

あまりにも理路整然と根拠を述べるラウラに鈴は

 

鈴「随分冷静に物を言うわね。」

ラウラ「元軍人のメンタルを嘗めるなよ?」

鈴「…え、元?」

ラウラ「あー、いや!今も軍人だぞ!?」

鈴「嘘下手ねぇ…ま、いいわ。そこに関しては突っ込まないから。」

ラウラ「…すまん…」

鈴「まったく、もう。さ、夜ご飯食べに行くでしょ?」

ラウラ「ああ。」

 

そうして二人は部屋からでた。




次回、その3。


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3話 IS学園にて その3

一応これで閑章はおわりにします。


シャル「どう、クロエ?」

クロエ「…ダメですね、ロストしました。」

 

IS学園地下。そこには12のモニターとコンピュータがある。その場所は以前束が使っていたラボとよく似た施設であった。

 

シャル「魚座、蟹座、双子座の反応は掴めたけど、それからはまったく音沙汰無し…キツいなあ…」

クロエ「お父様亡き後に立て続けに3つの星座が開放されたことを考えれば…」

 

―――黄牙(お父様)は生きているかもしれない。―――

 

その結論は二人の共通の認識だった。そこへ、

 

??「よ!」

??「お、お邪魔します…」

 

一組の男女が入ってきた。

 

シャル「あ、一夏に簪ちゃんだ。どうしたの?」

一夏「ちょっと簪の機体で見てほしいデータがあってな。」

簪「メンテナンスの施設が全部埋まってたから、ここに頼りに来ました。」

シャル「夏休みは整備も多くなるもんね。クロエ、どこか空いてるとこあったよね。」

クロエ「はい。では、正面右ののISベースでお願いしますね。」

シャル「後でお菓子持ってくね。」

一夏「おう、ありがとな!」

??「お菓子!」

シャル「うわっ!?」

簪「…本音…」

 

お菓子と言う言葉に釣られて出てきたのは布仏 本音だった。

 

本音「あ、えへへ~…」

簪「…どうして着いてきたの?」

本音「やー、楯無っちゃんに心配されてさ~。根を詰めすぎじゃないかーとか、一夏くんめぇ……!とか。」

一夏「え、俺?」

簪「はあ…まったくお姉ちゃんは…本音」

本音「心配ご無用!って伝えればオッケー?」

簪「うん。ちゃんと2学期が始まる前に微調整も終わらせるっていうのも一緒に。」

本音「りょーかーい!あ、お菓子はもらってくねぇ~。」

 

そう言ってシャルロットが持ってきたお菓子の1つであるチョコパイを貰って去っていった。

 

一夏「ちゃっかりしてるなあ…」

簪「そういう娘だから、ね。」

一夏「こうしちゃいられない。早く行こうぜ!」

簪「ちょ、手をつかまないで…」

 

満更でもない様子の簪。それに気づかない一夏。その様子を見ていた二人は

 

シャル「まーったく一夏は…」

クロエ「いや、多分あれは落ちてませんよ。」

シャル「え?」

クロエ「簪さんはもしかしたら…」

 

簪(少女マンガっぽい…!有り!)

 

クロエ「こんな感じで考えているのでは?」

シャル「え、ええ…ホントに?」

クロエ「会う頻度を考えればこうなると思いますが…」

シャル「……ソウダネ。サギョウニモドロウカ。ア、クロエサンハフタリノデータトッテオイテネ。」

クロエ「何故カタコトなんですか!?」

 

ツッコんだクロエをよそにシャルロットは十二宮ISの捜索を再開した。

―――――――――――――――――――――――――――――

一夏「…一緒に来たのは良いんだけど、俺何かやることあるのか?」

簪「正直に言うと、無い、かな。」

一夏「デスヨネー…あ、そうだ。簪さんの姉さんとはもう仲直りしたのか?」

簪「うん。あの時もなぐさめて貰った。今はちょっとストーカーじみてるのが怖い。」

一夏「あ、あはは…それは、何と言うか大変…だな?」

簪「…まあね。でも、あの出来事がなかったら、こんな風に甘えたりとか出来なかったと思う。」

一夏「俺と黄牙がメンテナンスしてたとき、だっけ。」

簪「どうしてうろ覚えなの…」

一夏「…色々ありすぎたからな。」

簪「…うん。」

 

そして思い出される、あの音。忘れることのできない現実。

 

一夏「今黄牙がいたら、どんな風にこの夏をすごしたんだろうな。」

簪「そうだね。星守君がいないから、オルコットさんも大分追い詰められてるみたい。」

一夏「セシリアが?…ああ、このところ箒が相談しに来たのってセシリアのことだったのか。」

簪「篠ノ之さん、なんて?」

一夏「…幼い頃の自分を見ているようだ、だってさ。」

簪「…?」

一夏「えっと、力だけを求めている状態って言えばわかるか?」

簪「それは重症。」

一夏「…だよな。」

 

あまりに簪の反応が早く、少し反応が遅れた一夏。すると、扉をノックする音が聞こえた。

 

一夏「はーい。」

クロエ(クロエです。データを取りに来ました。)

一夏「あ、分かりました。今開けます。」

 

ドアを開け、クロエが入ってくる。

 

クロエ「簪さん。そのデータと言うのは…?」

簪「えと、これです。」

 

画面に表示される打鉄弐式・改。そこに映っていたのは、

 

クロエ「…積載量オーバー、ですか。」

簪「どうにかして軽量化したいんですけど、どうしたら良いか…」

クロエ「IS学園は設備はあっても投入できる資材は少ないですからね。これは、外部から発注する必要がありますが…」

 

そういうと簪が

 

簪「マイクロミサイルとかあったりしますか?」

クロエ「……無い、と思います。」

簪「ですよね……」

クロエ「………」

 

気まずい沈黙が場を包む。

 

クロエ「しばらくは追加武装のミサイル類と、夢現を取り外すという形で対策をとりましょうか。」

簪「あ、はい分かりました。すみません。」

クロエ「いえいえ。気になさらないでください。ではこれにて失礼致します。あと長居はお控えくださいね。」

一・簪「「あ、はい。」」

 

こうして時間は過ぎていく。夏休みの後にくる、とんでもイベントの時期もそこまで迫っていた。




次回、新章。2学期スタート!


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4章 陽と月は交差する
1話 夏休み明けと言えば…?


夏休みにやってしまった経験、一度はあると思うんです。


夏休みが明けた。それはつまり、

 

一夏「宿題おわってねええええええええええええ!!!」

 

絶望の幕開けである。

この男、夏休みの課題の存在を夏休み開始3日目で忘れてしまっており、その日から訓練にISの調整(簪やラウラに教わりながら)をしていた結果、筆記課題に一切手を付けていなかったのである!

 

箒「おはよう…朝から騒々しいぞ、一夏。」

一夏「箒!今日提出の課題ってどれだ!?」

箒「全部だ。」

一夏「神は俺を見捨てた!!」

箒「………」

 

うなだれ意気消沈の一夏を可哀想なものを見る目で眺める箒。

 

一夏「ほ、箒は終わってないよな…?」

箒「初日に終わらせたが。」

一夏「そうですか…」

??「おはよう、朝から事件の予感がするな…」

??「先程の叫び声が外まで聞こえましてよ?」

 

教室に入ってきた金髪ロングのお嬢様と銀髪ロングの眼帯娘。セシリアとラウラである。

 

一夏「いや、絶望にうちひしがれているだけだから心配しないでくれ…」

セシリア「え、ええ…何がありましたの…」

ラウラ「大方夏休みの宿題とやらを忘れたのだろう。」

セシリア「ああ、それで…」

箒「…まったく、忙しいのは分かるが、時間くらいあっただろう。」

一夏「えと、それがですね…」

 

一夏は全て話した。それを聞いた三人は

 

箒「それはお前が悪い。」

セシリア「頭に花沸いていらっしゃいますの?」

ラウラ「言ってくれれば切り上げたというのにこいつは…」

一夏「オルコットが一番辛辣!そこまで言うことないだろ!?」

セシリア「だとしても忘れるとは一体どういう記憶力してますのよ!」

一夏「うぐ…おっしゃる通りです…」\キーンコーンカーンコーン/

 

話しているうちにHRの予鈴がなった。

 

真耶「皆さーんおはようございます~。今日から2学期が始まります!授業の内容もより専門的になってきますから、分からないことがあったら気軽に聞いてくださいね!そして連絡事項を織斑先生、よろしくお願いします。」

千冬「はい。諸君、2学期の最初のイベント、何だか分かるか?」

 

するとあちこちから声が発せられる。だがイベント内容の予想ではなく、

 

「夏休みマジック何てなかった…」

「締め切り…印刷…ふふふ…」

「ダメだ、すっかり落ち込んでいる!?」

「寮部屋のゲーム大会楽しかったあ!」

「エアスラッシュは悪い文明」

 

等々すっかり思い出語りになってしまっていた。

 

千冬「オルコットォ!

セシリア「ひゃいっ!?」

 

千冬が大声でセシリアを呼んだため、静まり返った。

 

千冬「2学期の?最初の?イベントは?

セシリア「ぶ、文化祭、ですわ…」

千冬「そうだ!文化祭まで時間がないというのにいつまでもいつまでもお前達は夏コミだ恋愛だポ●●ン大会だと…!!」

 

額に青筋を浮かべ、拳を握っている千冬。

 

箒(おい、一夏?何だか千冬さんの様子が…)

一夏(…福音戦の事後報告、溜まりにたまった仕事の処理に追われたせいで完全な休みが2日しかなかったんだってさ。)

箒(ああ…)

 

一夏と箒がコソコソ話をしていると、

 

ギュン!ドガァン!

 

何かが二人の間を飛んできて床に当たり粉微塵になった。チョークである。

 

千冬「織斑ぁ…篠ノ之ぉ…私語を慎めぇい…!!

一・箒「「は、はい!!」」

真耶「あ、あはは(これは織斑先生が伝えるの無理そうだなぁ…)…今回は文化祭でのクラスの出し物を決める時間をもうけます。昼休み後の2時間を使って生徒の皆さんで決めてくださいね!あと、宿題はHR終了後すぐに回収しますので、準備しておいてください!」

一夏「……終わった…」

箒「…骨は拾ってやる。」

 

そして正直に報告した一夏は授業が終わってから寮長室で全ての宿題が終わるまで寝ることは叶わなかったという…。

時は進んで五時間目。何故だか書記になった一夏と内容を取りまとめる議長の役になったセシリアが壇上に上がった。真耶と千冬は教室の後ろで座って様子を見るようだ。

 

セシリア「で、では。我が1-1の出し物を決める会議を始めますわ。どなたか意見のある人はいらっしゃいますか?」

 

すると、

 

「織斑君とポッキーゲーム!」

「織斑君と座敷遊び!」

「織斑君をモデルにデッサン!」

 

等々、一夏をメインに…というより一夏に比重がほぼ全ていっている内容しか出てこなかったのだ。

一夏は小声でセシリアに

 

一夏(ぜ、全部表示するのか…?)

セシリア(ま、どうにかして抑え込むので任せてくださいませね。)

一夏(お、おう…)

 

教室前方にある黒板と同じくらいの大きさのモニターに挙げられた内容が表示されていく。

 

セシリア「では、織斑さん。全却下で♪」

 

「「「「「ええええええええええええええええ!!!」」」」」

一夏「お、おう!」(ふぃーあぶねえ…良かったぁ)

 

セシリアによって即座に消された。心なしか一夏は安堵している。

 

「な、何故だぁ!」

「私のプランは完璧だったはず…!?」

「異議有り!これでは議長の独裁だ!何故却下されるのか理由を述べるべきです!」

 

セシリアに向けられるブーイング。そんなセシリアだが、

 

セシリア「では、問いましょう。貴女達はこれで通したとして、シフトはどうするつもりでしたの?」

「そ、それはぁ…」

セシリア「これでは織斑さんが全ての時間にいなければならなくなってしまいますわよね?休憩時間など、それはどうされるおつもりで?」

「え、えと、その…」

セシリア「そしてさらに付け加えれば…」

 

一度言葉をきり、人差し指を突き付け

 

セシリア「織斑さんは、見世物ではなくってよ!!」

 

凛として響いた声に心を叩き割られていく俗生徒達。

 

セシリア「私はちゃんとした意見の提示であるならこのような手段はとりませんわ。誰か意見のあるかたはいらっしゃいませんの?」

 

そして手が上がる。箒だ。

 

箒「喫茶店など、どうだろうか。」

セシリア「ふむ、ここに来てまっとうな意見が出ましたわね。」

 

さらに手が上がる。ラウラだ。

 

ラウラ「であればただの喫茶店ではなく、メイド喫茶が良いと思うのだが。」

「「「「「「「ぶーっ!?」」」」」」」

 

これには教室の全員が驚愕の色を隠せなかった。最も隠していたのが千冬なのだが心の中で

 

千冬(クラリッサだな、あいつめぇ…こんな時にまで私の胃を破壊しに来るんじゃない…!!)

 

こんなことを思っていたのは知る由も無いだろう。

 

セシリア「え、ええと…他に意見が無ければメイド喫茶になりますが…よろしいですね?」

 

クラスの反応はというと、

 

「奉仕される側ではなくする側…いいかも…」

「メイド服どこしまってたかなあ…?」

「1回着てみたかったんだよねぇ~メイド服!」

「食べ物の調達とかはレゾナンス内の食料品店で、かしら」

 

悪くない反応だった。だが

 

一夏「なあ、俺は何を着れば良いんだ?ま、まさかメイド服とか言わないよな…?」

セシリア「もちろん別ですのでご心配なさらないでください。皆さんの着るものは私の別邸で準備して前々日辺りに着ていただきます。それまでは所作をお教え致しますわ。」

一夏「お、おう分かった。」

セシリア「では、1-1の出し物はメイド喫茶に決定ですわ。」

 

拍手がおこった。そして、

 

セシリア「では、メイド喫茶にて出す料理についてですが―――」

 

議論はまだまだ続く。

―――――――――――――――――――――――――――――

円形のテーブルに女性五人が向かい合って座っている。

 

??「襲撃日時はいつ、ブレイン?」

ブレイン「9/12 土曜日の13:00。」

 

物腰が柔らかそうな女性が質問し、堅物そうな女性、ブレインが答える。

 

??「はっはぁ!ようやく暴れられるのか!待ちくたびれちまったぜ!」

 

楽しげに声を出す勝ち気そうな女性。

 

ブレイン「上空から量産したシリウスとプロキオンを投下してから私たちが出る。そういう手筈。」

??「我らの正当性を示す、聖戦なのよ!」

 

この場にいるリーダー格と思われる女性が熱をあげている。

 

??「随分と熱が入っているのね。」

??「これに熱が入らずしてどうします。」

??「…私は、あの国に復讐できればそれで良い。憂さ晴らしする相手に興味はないわ。」

ブレイン「こっちは冷静。対極的。」

??「…帰ってこないと分かっていても、成し遂げたいことがある。それだけの話よ。」

??「ほな、ウチは待機してますわ。積極的に動くの、面倒やさかい。」

 

気だるそうに座っている白衣を着た女性が喋る。

 

??「あ?んだよ、お前でねえのかよ。」

??「ウチの機体、対ISやのうて対人特化なの忘れてもうてるやろ。場所が広いと制御できんっちゅーことやし、隠し玉って言って欲しいわー、なあ、アームズ?」

アームズ「んなこたぁ覚えてなかったが…そーかよ、IS戦じゃ役立たずかよ、ドクター?」

ドクター「なんやクソガキ…?」

アームズ「今から闘るかァ!?」

??「止めなさい二人とも。戦力の低下は私自身望んでいません。」

アームズ「ちっ…」

ドクター「はーい。」

??「準備が整うまで自由時間よ。部屋で待機するなりすごしたいようにすごしなさい。」

??「そうさせてもらうわ。」

ブレイン「命令、了解。」

 

部屋を出ていく、小柄で眼鏡をかけたブレインとモデルのようなスタイルの一人の女性。

 

アームズ「シミュレーター使うぜ。体が疼いておさまりやしねぇ。」

ドクター「ウチも作業に戻りますわ。ほな、またな~。」

 

さらに部屋を出ていくアームズと呼ばれた女性とドクターと呼ばれた女性。

 

??「待っていなさい、織斑一夏…!神聖なるISが男も使えるというくだらない事象もろとも、葬り去ってあげましょう…!」

 

リーダー格の女性から怨嗟の声が発せられる。それを聞いているものは誰一人いなかった。

部屋を出た女性とブレイン。話ながらそれぞれの部屋に向かっている。

 

ブレイン「復讐を終えた後、貴女はどうする?」

??「…珍しいわね。貴女が質問するなんて。」

 

ブレインが質問したことに驚く女性。

 

ブレイン「じー………」

??「はぁ…答えるからじっと見ないの。…そうね、あてもなく世界旅行でもしようかしら。」

ブレイン「アテナの考えに賛同する。是非連れていって欲しい。」

アテナ「名前…って貴女どうしたの?そこまで私を気にかける理由でも出来た?」

ブレイン「……理由は不明。ただ、着いていきたいと、突発的に思考しただけ。」

 

突発的に思考(・・・・・・)。その言葉を聞いたアテナは

 

アテナ「ふふっ。じゃ、私の目的が達成されたら、一緒に女権団抜けちゃいましょっか。」

ブレイン「…うん。」

 

二人のようすはさながら年の離れた姉妹のように見えた。

 

IS学園襲撃事件まで、あと12日――――。




次回、どっちと回るの!?

※最後の方に出てきた女権団のメンバーはアテナを除いて全員オリキャラです。アテナが誰か、頭の中で予想してみてください。


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2話 彼はどう切り抜けるのか?

青春イベント(勝手に命名)のひとつ、文化祭。彼はどんな選択をするのでしょうか。


鈴「さあ、一夏?」

箒「…私か鈴か」

鈴・箒「「どっちを選ぶの!?(…どちらを選ぶ…)」」

一夏「え、ええと…」

 

こうなったわけは少々物事を整理しながら説明しよう。。

―――――――――――――――――――――――――――――

文化祭の日程は9/12~13の2日間。当初の予定であればその2日分を1日ずつにわけて一人の時間をとってもらうという、二人の目論見はどういうわけか打ち砕かれてしまった。(尚、どちらもそれを話に行けていなかった模様。)

 

IS学園には文化祭の日に友人を招待できるチケットが各々に配布される。それは男性操縦者も例外ではなくちゃんともらっており、彼の親友である五反田弾の元にそのチケットが送られ、彼が一人で行くつもりだった。が、なんと夏休みが終わる1週間前に、妹の蘭がそれを聞きつけ、一緒にいきたいとゴネたのだ。ちなみにどうにかして欲しいと弾が送ってきたメッセージのやりとりがこれである。

 

弾:一夏、どうにかして蘭の分のチケット取れないか…?

 

一夏:規定で1人1枚って決まってるからなぁ…

 

弾:そこを頼む!あいつ俺が行けないって言っても聞かねえんだよ!!

 

一夏:…ダメ元で千冬姉に聞いてみる。無理なら諦めてくれって伝えて欲しい。

 

弾:ホントに頼むな…マジで…

 

そして、千冬に確認したところOKが出てしまった。もう一度言う。出てしまった(・・・・・・)のだ。何を隠そう()の分がどういうわけか余っていて、発行してしまった以上、どうにかして処分したいと考えていたところに、一夏が来た。千冬はこれ幸いとばかりに一夏にそれを押しts…もとい手渡した。

 

そして、蘭のところにもそれがわたった…だけなら良かったのだが…あろうことか一夏に案内して欲しいと頼んできたのだ。

これには流石に弾もキレ気味に無理言ってチケットとってもらったのにまた頼むのはわがままが過ぎると言ったのだが、ここはフラグメイカー一夏。持ち前の優しさが遺憾なく発揮されてしまい、1日目のシフト外の時間に案内すると言ってしまった。一夏本人は100%善意、蘭はデートと勘違いという何とも言えない悲しい状態になった。そして、これが箒と鈴の耳に入ったのはつい最近の出来事だった。

 

恋する女性は怖いもので、1人はそれはそれはきれいに額に青筋をたて、もう1人はため息をついたそうな。そして鈴がどういうわけかを聞きに行こうとして箒に諫められる。そんなやりとりがこちらである。

 

鈴:一夏のとこに行くわよ

 

箒:…私も行かなければダメなのか…?

大方蘭がゴネて弾に無理やり言ったんだろう。

 

鈴:じゃあ蘭にとられても良いのかしら?

 

箒:それは嫌だが…

 

鈴:でしょ!?こういうときはちょっと強引な方が良いのよ!分かった!?

分かったら一夏のとこに行くわよ!いいわね!?

 

箒:え、ええ…

 

…と、こんな感じのやりとりがあって現在の光景に戻る。

―――――――――――――――――――――――――――――

一夏「どっちかって言われても…二人と一緒に回るじゃダメなのか?」

箒「それは私も考えたが…」

鈴「アンタ役得な場面多かったじゃない!夏祭りだって一緒に回れなかったんだからここはアタシに譲ってくれたって良いじゃないの!」

箒「と、聞かなくてな…」

一夏「…なあ、鈴。3人で回ろうぜ?言わなかったのは謝るけどさ、鈴がさっきの1日ずつ二人で回るってのを言ってくれたら弾からの頼みだって断ったぞ?」

鈴「でも…アタシだって、誰にも邪魔されない二人の時間が欲しいの!」

一夏「鈴…」

 

恋する乙女は止まれない。それに鈴は箒達と違いクラスが別で会う時間も箒と比べれば少ないのだ。

 

鈴「アタシだって無理言ってるのは分かってるわよ…でも、でも!」

箒「鈴…やはり私が譲った方が良いと思うのだが…出し物のシフトも被っている時間が多い。鈴、ここはどうにかそれで収めてはくれないだろうか?」

鈴「……そこまで言われちゃ、下がるしかないじゃない…」

箒「すまないな。そうだ一夏。」

一夏「お、おう」

 

ゴタゴタが片付いたかと思ったら箒が一夏に近づき耳元で

 

箒(蘭には悪いが、積極的に話さない方がいいだろう。鈴のためにも。)

一夏「……箒?」

鈴「ちょっとー!箒アンタ一夏に何言ったのよ!!」

箒「こちらの話だ。気にしなくていいぞ、鈴。」

鈴「…言っとくけど、気遣い遠慮なんてしてたらすぐにとっちゃうんだからね。」

箒「一夏はまだ誰のものでもないだろう。」

鈴「そういうこと言ってるんじゃないわよ!文化祭の日、覚悟しときなさい一夏!」

一夏「…え、あ、おう。…楽しみにしてる、ぞ?」

鈴「あ、うん…じゃ、じゃあアタシ部屋に戻るから!」

 

そう言って駆け足で戻っていく鈴。

 

一夏「なあ、箒。さっきのは…」

箒「…私も部屋にもどる。しばらく入ってこないで欲しい。」

一夏「…分かった。」

 

そうして部屋に戻っていった箒。取り残された一夏は

 

一夏「別人みたいになってたな、箒のヤツ…」

 

どこかおかしかった部分を感じ取っていた。そしてその箒は

 

箒「私はなぜ、あのようなことを…?」

 

湧き出た謎の気持ちの折り合いをつけられずに1人、部屋で葛藤していた。




次回、所変わって。


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3話 確認事項

長々お待たせしておいていつもより文字数少ないとはこれいかに。




「さて、これでいいかしら。今さらだけれど、頭のいたい話ね…」

 

資料をまとめるのは亡国企業日本支部実働部隊隊長、スコール・ミューゼルである。現在彼女は人員の調整を行っている。調整といえど所属人員を登録し、整理するだけ…であれば良かったのだが、その登録される人員が問題だった。

元米国IS部隊所属ナターシャ・ファイルス、IS開発者篠ノ之束、2人目の男性IS操縦者星守黄牙の3名である。

 

「特にラビットは説得によって加入だから納得して貰わないと後でどうなるか、しっかり明記してあるのは確認済みだし…」

 

彼女の言うとおり福音戦後にナターシャ、黄牙を回収、その後日本支部本拠地である船に襲来し、これまた説得された束。事実ではあるがつつかれることは確実である。

 

「それにIS学園はもうすぐ学園祭、襲撃者がいる可能性は極めて高い…それに向けて準備してもらっているのだから、事が起こるまで静観でも何ら問題はな「入るぞー?」い…どうしたの、急に?」

 

ドアが開き入ってきたのはオータムだった。スコールの副官であり、恋仲だ。

 

「あぁ、全員の準備が終わったことを報告しにな。」

「そう。なら自由時間にしてちょうだい。」

「了解。…それと」

 

そういってスコールの目の前に来るオータム。唇同士がふれあいそうな距離で小声で話す。

 

あんま根を詰めんなよ…心配になるぜ?

「…大丈夫よ、適度に休息取ってるから。

「…わーったよ。たまには甘えさせてやろうかと思ったんだけどなあー?」

「あら、ベットの中じゃ別人みたいに甘えてくるのに?」

「そ、それは今関係ねえだろ!!?」

「ふふっ、冗談よ。膝枕してくれる?ちょっと眠くて、ね?」

「…あいよ。」

 

軽くじゃれたあと、2人で長い休憩を取っていた。

―――――――――――――――――――――――――――――

その一方で

 

「おーくぅーん…」

「どした…の、そんな状態で」

「オーニウムが足りなぁい…仕事終わったでしょー?」

「やることあるって言ったでしょ?それまで待ってて」

「ケチんぼー」

 

這いずりながら寄ってくる束を軽くあしらう黄牙。どうやらIS学園の情報を集めているようだ。

 

「どーせ当日までにスコちーが作戦だったり色々考えてくれるってば~」

「だとしても、だよ。念には念をいれておいた方がいいし。」

「それはそうだけどさー?「それにたばちゃんだってシャルロットとクロエに黙って1人で来てるんだから謝んなきゃいけないの忘れてないよね?」…もちろん分かってる。」

 

少しだけ空気がはりつめる。それもそのはず、束は黄牙の存在を確認できたらそのままIS学園に戻ることも出来たのだが、彼女は彼と一緒にいることを選んでいるのだ。

 

「まあ俺も謝んなきゃならない人がいるからさ、2人で謝らなきゃならなくなりそうだよなあ…」

「おー君はまだいいよ金髪ドリルとクロちゃんの妹の2人なんだしさ…束さんシャルりんとクロちゃん、それに加えてちーちゃんもなんだけど…」

「あー……骨は拾うよ」

「勝手に殺さないで!?」

 

……謝る対象によってイメージが異なってしまっているようで、黄牙は緊張からかテンションが少し落ちている。束は意気消沈寸前のようだ。

 

「それにさー、マーちゃんのことをどういっくんに説明しよーかなーって。」

「あぁ、そうだった…説明いるかな?」

「…いっかー。妹一人増えてもなんとかなるでしょー。」

 

随分と雑に放り投げたものである。

 

「個人的にはナターシャさんが問題だろうな。俺と同じで。」

「死者蘇生みたいなことが同時に2件はキツそうだねえ…あー大変そーだなー」

「…なんか語尾がやたらと伸びてない?」

「気になるならオーニウムを補給させろー束さん干からびちゃうぞー?」

 

うつ伏せにぐだりとしながら両手を前に出している束。

 

「あぁ、もう…おいで?」

「やたー…抱き上げて~?」

「分かったよ。…よっ、と…」

「へへっ…おー君いー匂いするー…」

「…そのまま寝ないでよ?」

「だーいじょーぶいっ…んふふー」

 

補給中は半分寝ぼけているように幸せな顔をしている束。いつもつけているウサミミもへなへなと力が抜けている。そんな束を微笑ましい様子で見守る黄牙。作戦を確認している今だけは静かでのどかで平和な時間を過ごしていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――

そして、時刻は学園祭当日に突き進む。




「随分やる気じゃない…!」

「私は、あの人の子だ!」

「それはそうと、どうして1人で行ったのか説明、してもらえますよね??」

「厄介事が次々と…」

「離しません、だから貴方も…」

「俺はあのときからずっと強くなった!」

次回、新章、学園祭動乱篇。

「「…ただいま、皆。」」


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4-2章 1話 学園祭の始まり

ついに始まる学園祭。

楽しい楽しい(?)催しもあるようで…?


花火のように空気の破裂する音がする。色が見えずとも、その時は刻一刻と迫っていた。

 

「皆様、ついにこのときが来ましたわ…!」

「正直まだ少し恥ずかしいのだが…」

「ロング丈にしただけマシと思ってくださいな?本来は…」

「分かった!分かったからあの時の服はやめろぉ!」

 

何故だか円陣を組んでいるのは1年A組の面々(教師以外)。やたら気合いの入った様子のミニスカメイドセシリアと慣れない衣服に戸惑うロングスカートメイド箒。

 

「しかしクラスメイトの何名かは見ているのだろう?ならあれでも良かっただろうに。」

「そういう問題ではない!…ないんだ…」

「むむ…そうか。」

「でもラウラこそその格好で良かったの?」

 

メイドカフェにいそうな格好をしているのはシャルロット。そして…

 

「??なにか問題でもあるのか?」

 

黒いウサミミカチューシャをつけて、メイド服を着ているのはラウラだ。

 

「あるな。」

「うん、ある。」

「あるね。」

「な、なぜだ!?」

「ウサミミ銀髪眼帯ツインテロリミニスカメイドは属性盛りすぎでは?」

「ぞ、属性…??」

 

クラス中から総ツッコミである。一文だけでもかなりお腹いっぱいになりそうなものだが、そんな属性のバイキング、いや交通渋滞が存在してしまっているのだ。

 

「目立ちたいわけじゃないけど、正直、執事服の俺が霞んでないか…?」

「…まあ、その分負担が減ると思えばいいんじゃないか?」

 

女装メイド…ではなく執事服を着ている一夏。クラスメイトにメイド服を着させられそうになったが全力で拒否したらしい。そうこうしているうちに、全校にアナウンスが流れ始めた。

 

『これより、IS学園、学園祭を開催いたします。入場されるお客様は正面ゲートにございます、チケット読み取り機に進んだ後に、ご入場なさいますようお願い致します。』

 

「さあ、準備に入れ!ここから教師組は校内の巡回警備のため、各々が判断を下して出しものを成功させること!いいな?」

「「「「はいっ!!」」」」

千冬の檄が飛び、いっそう気を引き締めたA組の生徒たちはテキパキと準備を開始した。

―――――――――――――――――――――――――――――

そして経過すること数時間……

「織斑くん!3番テーブルにカフェオレマカロンセット"甘い執事の癒しのご褒美"出してきてー!」

「分かった!…ってご褒美って何だよ!?」

「織斑くんがいつもやってることでいいから!!」

「ボーデヴィッヒさん!7番テーブルポッキーセット"ドSメイドのあーん付き"出たよー!」

「な、私にやれと!?」

「ご指名だからお願い!」

「くっ、こんなことならホール担当に立候補するのでは無かった…!」

「箒ちゃん!1番テーブル3種のカップケーキセット"恥じらい乙女の差し入れ風"入りましたー!」

「(これも、試練だ…精神を鍛えるための…!!)わ、分かった…!」

 

まごうことなき大盛況。追加料金を支払うことでオプションが追加できるとあって、外には大行列が出来ていた。なんともいかがわしさが拭えない形ではあるが。そして裏にてシフトの時間を待っているのは、セシリアとシャルロットだ。

 

「これはまた随分と盛り上がってるね…」

「やはり、追加オプションが覿面でしたわね…まさかここまでになるとは…」

「あれ、僕らもやるんでしょ?しかもお客さんからのアドリブで。」

「ここで引いては女が廃りますわ!!そろそろ交代の時間ですので、いきますわよ!!」

「あ、え、ちょ、待ってよー!(…まあ元気そうなら良かった、かな?)」

 

シフト交代のために走り出す二人。そんなときだった。

 

ドガアアアアアアアアアァァァァァァァァァンン!!

 

突如辺りに響いた爆発音。クラスにいた人間が顔を伏せる。

 

「な、なんだぁ!?」

「爆弾解体部のグラウンドステージじゃないの?」

「いえ、にしては音が大きすぎますわ!!」

「…まさか!?」

 

空から降ってきたのは四足で動くバイザーをつけたナニカだった。それも学園全体にばらまかれているようだ。それを窓からみたセシリアが

 

「…ヒッ」

「!おいセシリア!しっかりしろ!あれはアイツではない!」

「で、ですがあれは…あの、頭部の形状は…!!」

「アイツは二足、今回のは四足!さらに人が入るような形状や動きをしていない!」

「ィャ…イヤァ…!」

「くっ、父上ならもっとうまくやったのだろうが…!」

 

「オイオイ、腰抜かすのぁまだはえぇぞ?」

 

「「!!」」

 

いつの間にか教室にいた侵入者。屋内にも関わらず機体を展開している。

 

「貴様、どうやって!」

「至って簡単。オレも招待されテンだよ。…殺り合えそうなのぁ5、いや3かァ…!」

 

フルフェイスで顔が見えないが戦闘狂(バトルジャンキー)のような喋り方をしている侵入者。ツインアイが紅く獰猛に光る。腕の先には爪のようなものがついている。しかし、それ以外の特殊武装は無いように見える。

 

「ま、舞台も整ってきた、オレも機嫌がいい。名乗ってやるかァ!」

「「!」」

 

まるでよく分からない理屈で吠えるナニカ。

 

「オラクルVII(セブンス) チャリオット、アンフェアブリンガー、アームズ!なぶり殺しにしてやるゼェ!!」

「来るぞ、早く展開しろ!」

 

屋内で、民間人もいるなかでのIS戦闘が勃発する――!!

―――――――――――――――――――――――――――――

「彼女たちが動いたわ。準備をお願い。」

「「了解(あいさー)。」」

 

近海に船が出現する。それは客船、はたまた戦闘艦か。紫に輝きながら船は進む。彼らがいる、その目的地へ。

 

「久々だねえ…気分はどう、おー君?」

「まだ普通、かな。」

星の時計(ホロロギウム)は?何か示したの?」

「間に合えば壊れ、間に合わずば別れり…だってさ。」

「どーしてもおー君に順風満帆にはいかせたくないみたいだねえ。カミサマってのは。」

「だからこそ、そんな運命を覆す。」

「自信家だな、お前。」

「…なんでいるんだよ、年増。」

「戦闘補佐と事が終わった後の仲介役だとよ、ガキ兎。」

「あ?束さんとおー君の2人だけで充分なんだけど?」

「…俺が頼んだ。それで納得して欲しい。」

「えぇーなんでよー」

「絶対言葉足らずで拗れる。それと俺たちはやることがある。」

「………渋々だかんな!し・ぶ・し・ぶ!!」

「強調しなくて良いっての。おらいくぞ!」

 

船から離れる機影3機。それは援軍か更なる敵か……今はまだ、知る由もない―――




突然の強襲に苦戦を強いられる福音討伐組の面々。

分断された一夏とセシリアに彼を思わせる機体が続々と群がっていく。

2方面に突如として現れる計3機のIS。彼らがみたものとは――

次回「星、現れる新龍」

恐怖に打ち克つのは、誰かが支えてくれるという事実。


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