暗殺教室〜3人目のsniper〜 (柱島低督)
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HR:登場人物の時間

登場人物紹介です。(若干ネタバレ感ありますが)


E-27

羽賀(はが) 恵美(えみ)

・山梨県出身

・本栖東中→椚ヶ丘中

・7月13日生

・身長 152 cm

・体重 47 kg

・血液型 O型

・カップ B

・得意科目 地理

・苦手科目 英語

・趣味 星を見る事(しかし人工光の多い東京で見えなくてヤキモキしてる系ガール)

・特技 星が見えれば星座が分かる

・(元)所属部 天文部

 

能力値(5点満点0.5点刻み)

・体力 2.5

・機動力 2

・近接暗殺 3.5

・遠距離暗殺 1.5

・固有スキル(隠密行動&奇襲) 4.5

・学力 4

 

作戦行動適性チャート(6点満点1点刻み)

・戦略立案 2

・指揮統率 2

・実行力 5

・技術力(罠.武器.調理など) 4

・探査諜報 5

・政治交渉 3

 

補足

・親の転勤に伴い編入試験を受けたが、烏丸先生により引き抜かれる。

・小柄なのが幸いして、隠密行動や潜入作戦に適性が高い。ハンドガンで近接系ガール。

 

 

 

E-28

渡辺(わたなべ) 悠斗(ゆうと)

・山梨県出身

・本栖東中→椚ヶ丘中

・3月2日生

・身長 172 cm

・体重 58 kg

・血液型 A型

・得意科目 数学

・苦手科目 現代文

・趣味 軍事オタク(趣味に属するのか?)

・特技 ものづくり・プログラミング(技術系)

・(元)所属部 水泳部(体力無いのにやたらと泳ぎは上手い)

 

能力値

・体力 1.5

・機動力 2.5

・近接暗殺 2.5

・遠距離暗殺 5

・固有スキル(隠密行動) 5

・学力 5

 

作戦行動適性チャート

・戦略立案 4

・指揮統率 3

・実行力 5

・技術力(罠.武器.調理など) 3

・探査諜報 4

・政治交渉 3

 

補足

・羽賀と同じく、というかこっちが元凶。自身と同じく、羽賀が転勤で東京へ行くと知り誘った。本人曰く、「転校先でも知り合いが一緒なら気が楽になる」とのこと。

・カルマのように完全無欠では無いが、竹林に匹敵するかそれ以上の学力で、転入試験の数学では満点を叩き出した。

・体力無いのに(50m走女子込みでE組最遅クラス)、泳力だけはある。そのため一部で「実は水生生物では?」と噂されているとかいないとか……

・名前のおかげで、今まで出席番号で最後尾以外経験したことがない。(「自分の出席番号でクラスの人数が分かる」とは本人談)

・狙撃に関しては千葉に並び、男子では僅差の2位。夜間狙撃クラス2位(速水に次ぎ)・男子1位。E組 最長狙撃成功射程記録保持者。

・千葉以上の超長距離でより高い精度を持つ。

グラフ

 ↓

 

【挿絵表示】

 

・影が薄いので気付かないところから撃たれ、実戦における戦力としては凶悪の一言。但し対人戦略は苦手で、パシられた時に真価が発揮される。

・ネタレベルでピーキー過ぎるスペック。

 

 

 

本栖東中

・実際には本栖湖東岸は静岡県に属するため、たぶん存在しない。本筋にも影響を与えない筈。

 

 

 

他の生徒の能力は公式に準ずる。

だが、筆者はアニメ版しか見たことが無いので、原作漫画の設定から乖離する可能性があります。ネットで拾うなどして出来る限り原作準拠で行く予定ですが、違和感を感じた場合は感想などでご指摘いただければ幸いです。




・こちらでも注意は払っておりますが、誤字脱字等発見された方は、お手数ですがご報告頂ければ幸いです。
・ご意見・ご質問などある方は、感想欄までお気軽にどうぞ。


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一学期
1限目:邂逅の時間


初めましての方は初めまして。


(今の3シリーズで一杯一杯なのに)新たにシリーズを始めました。
息抜き程度なので短い上に、キャラ設定がガバガバですが、お読みいただければ幸いです。


私立椚ヶ丘学園

都内の名門校、中高一貫のエスカレーター校にありながら、例外として、中学で追い出されてしまう落ちこぼれクラスがあった。

 

3年E組

通称:エンドのE組

 

そんなクラスに、とある超生物が担任として赴任して来た。マッハ20で飛び、最新鋭戦闘機相手に空中でワックスをかけるような奴だ。

月を破壊して三日月型にし、きたる3月には地球も破壊するという。国が暗殺を依頼したのが、そのE組だった。

 

なんの因果か、そのクラスの担任だったら引き受けると言うその超生物は普通に先生をしているらしい。

もちろん国家機密の身であるため、口外は厳禁。

 

口外出来ないオンボロ校舎で、始業のベルは今日も鳴る。

 

 

ー1ー

 

「起立!」

 

日直の磯貝が声を上げ、クラス全員が立ち上がる。しかし異常なのは、全員の手に銃(ハンドガンから軽機関銃、アサルトライフルなど型は様々)が握られていることだ。

誰もそれに違和感を覚えることはなく、照準器を覗いて目の前の、教師服を来た黄色い物体へ銃口を向けている。

 

「礼!」

 

一拍置いて磯貝が続きを叫ぶと、全員が引き金を一斉に引き、銃口から緑色をしたBB弾が飛び出す。しかし、残像を残すほどの速さで動くその超生物は、BB弾が届く頃には遥か離れた場所に居る。

 

「発砲しながらで結構なので、出席をとります。赤羽くん」

 

「はい!」

 

ハンドガンを構え、次々とBB弾を黒板へと送り込んでいる長身の赤髪の生徒が、声を張り上げて返事をする。

 

それぞれの生徒でそれが繰り返されること25回。

 

おおよそ2分もかからずに全員の出席をとり終えた殺せんせーは、出席簿を教卓に起きながらクラスに向き直る。

 

「皆さんには、残念な報告といい報告があります。どちらから聞きたいですか?」

 

あいもかわらずいつもの丸書いてちょん顔で、提案をする殺せんせー。いきなりの事に一同は騒然とするがすぐに、「落としてから持ち上げる方がいい」との声が彼方此方から上がり、学級委員の磯貝も、「それがいい」と殺せんせーに伝える。

 

「それでは……皆さん。……今日も命中弾ゼロでした。カルマ君が1発、速水さんも1発、千葉君は2発が至近弾でしたが、どうも狙いが甘いですねぇ」

 

「マッハ20で避けてるのに当たる方がおかしいだろコラ!その3人の至近弾を褒める方が普通じゃねぇのか!?」

 

殺せんせーが言い切ると同時に前原が立ち上がり、殺せんせーに物申す。

 

「ですが、昨日は神崎さん1発と竹林君1発でしたし、これはマグレと言ってもいいんじゃないでしょうかねぇ~ヌルフフフ」

 

「でもよー」

 

「いいや、観念しろ前原。事実なんだから」

 

完全に断言した殺せんせーに前原が食い下がるが、前原と仲のいい磯貝が嗜める。

 

「それでいい報告って……」

 

その会話を見ていた生徒の1人が声を上げる。水色の長い髪を頭の左右で手のひら状に結んでいる、渚だ。

 

「おぉ、そうでしたそうでした。……聞きたいですか?」

 

『聞きたい聞きたい!』

 

ほぼ全員が異口同音に殺せんせーに叫び、次の言葉を待つ。教室正面の雛壇に立ち、全員の視線を一身に受ける殺せんせーは、誰もが予想外だった言葉を継ぐ。

 

 

 

「転入生が2人、新たに加わります」

 

 

 

一瞬沈黙が教室を支配したが、直後に、興奮と混乱と困惑の中に叩き落とされるE組生徒たち。

 

『えっ、え~~~!?』

 

しかしその混乱も長くは続かず、すぐに落ち着きを取り戻した生徒らは、再び意識を殺せんせーに集中させる。

 

「山梨県の公立中からです。男女1名ずつで、編入試験を受けていたところを烏丸先生が引き抜いて来たようです」

 

「暗殺者では……?」

 

「どうやらそんな事は無いようです」

 

暫く騒がしかった教室が徐々に沈静化しつつあるのを確認した殺せんせーは、扉の外に待機させている2人を呼ぶ。

 

「結構ですよ、入って来てください!」

 

ガラガラと扉が開くと、2人の生徒が入ってくる。不慣れなぎこちない動きで、教卓まで来たかと思うと、殺せんせーが一瞬にして黒板に名前を書き込む。

 

羽賀 恵美

 

渡辺 悠斗

 

羽賀(はが) 恵美(えみ)です。一年間、よろしくお願いします」

渡辺(わたなべ) 悠斗(ゆうと)です。『ユート』とでも呼んでくれれば……」

 

「俺が編入試験を受けていたこの2人を引き抜いてきたんだ。いいかげん頭数が必要だったからな。浅野理事長に許可は取っているし、学力的にも問題は無い。今のE組の平均レベルなら十分ついていける。お前は構わないんだろう?皆も、構わないな?」

 

「えぇ、暗殺が楽しくなるなら問題ありません。歓迎しますよ」

 

殺せんせーは即決だった。しかし烏丸先生はそれよりも、E組の生徒らが受け入れるかどうかが気になっていた。

 

「俺は十分ですよ」

 

1番に口を開いたのは前原だった。女たらしクソ野郎と揶揄されるほどチャラい前原だが、こういう場では空気を読んで、率先して面倒な役を買って出てくれる。磯貝と妙に馬が合うのもそれが原因かもしれない。

 

その後に誰も異論を言わなかったので、晴れて2人はE組に受け入れられることになった。




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2限目:あばずれ女の時間

とりあえずtex変換ツールを使ってみます(まぁどうせ定期テスト数学回で使う事になるでしょうが……)。

暫く狙撃は鳴りを潜めています。


『英語教師!?』

 

烏丸先生のカミングアウトにクラス中が騒然とする。

 

昨日にあった渡辺と羽賀の転入騒動も一頻り終わり、席も決まったところだ。渡辺は菅谷の後ろ、羽賀は奥田の後ろに収まり、漸く落ち着いたかと思った矢先でこの新たな騒動だ。

 

「ゼッテー殺し屋だな(前原)」

「どう見てもおかしいしな(菅谷)」

「烏丸先生が抜いてきた私たちとは違うよね(羽賀)」

「やっぱり恵美もそう思うか(渡辺)」

「羽賀さんらも何も聞いてないんだ(赤羽)」

 

様々な意見が飛び出すが、その悉くで殺し屋ではないかと思われている。

 

「恐らくだが、この時期に、しかも国からの斡旋で入ってくるということは、君らの予想通り暗殺者だろうな、と言うべきなのだろうが、奴がいない今なら問題無いな。彼女は殺し屋だ。色仕掛け専門の」

 

烏丸先生からも、肯定する言葉が飛び出す。全員が警戒を強めた刹那、迎えに出ていた殺せんせーが帰ってくる。

 

ガラガラと音を立てて開いた扉に全員の視線が集中する。教室内に入って来るや否や、殺せんせーが腕に誰か連れているのがはっきりと分かってしまった。異常なほどにピンク色のオーラを教室に振りまきながら、周囲に警戒感を与える。

 

当の本人の殺せんせーとは言うと、ピンク色の顔をしてニヤニヤしている。

 

(あぁ、オッパイに弱いのか……バカかよ)

 

全員が内心そう思った。そして一部の生徒(主にカルマ・悠斗・中村)はこうも思った。チョロすぎだろ。

 

「曖昧な関節、正露丸のようなつぶらな瞳、殺せんせー、私、虜になってしまいそう」

 

(殺せんせー騙されないで、そこが好みの女なんていないから)

 

女子の大半が心中そう思った。

 

そんな警戒を向けられているのに気づいていないのか、そのふりをしているだけなのか、ベタベタと殺せんせーにくっつき、甘い言葉をかけ続ける。

 

「イリーナ・イェラ・ヴィッチと申します。皆さん、宜しく」*1

 

(こんなんでこのクラス大丈夫かな……)

 

殺せんせーの本気を知らない渡辺と羽賀は、2日目ながら早くも不安を感じ始めていた。

 

 

 

ーーーーー

 

「暗殺バドミントン……?……菅谷、どんなのだ?」

 

2限が終わり、女子が使われていない別部屋へ移動して着替えが始まると、クラス中からボソボソと聞こえてきた『暗殺バドミントン』というパワーワードに眉を顰める悠斗。

 

「あぁ、悠斗は初めてなのか……うーん、なんていえばいいのかな……」

 

「おぉ、どうした菅谷?悠斗も」

 

菅谷が困ったこの状況で、颯爽と現れる磯貝。おぉ、イケメンだ

 

「実はかくかくしかじかで……」

 

悠斗が磯貝と話し始めると、もう出番は無いとばかりに着替えに戻る菅谷。

 

「なるほど……つまり烏丸先生の提案で、体幹と動体視力を鍛えるということか」

 

「なんだ、分かるじゃないか」

 

「説明が上手いんだよ」

 

「あぁ、そうか……なら良かったわ。俺も早く着替えなきゃ」

 

そう去り際に言葉を残し、自分の席へ戻っていく磯貝。それを見届けた悠斗も着替えに戻り、クラスは再び落ち着きを取り戻す。

 

 

 

ーーーーー

 

「うぐおりゃっ!」

 

前原が力の限り高く跳ね上がり、斬撃でボールをコートへ叩き込む。凄まじいスピードで地表へ落ちていき、勝ったと確信した前原は姿勢を緩める。

 

「させるかぁぁぁ~!」

 

しかし滑り込んだ岡野が弾き飛ばして打ち上げ、隙の空いた前原の脇へ羽賀が撃ち込む。

 

「やった!」

 

『おぉ~』

 

本人はマグレと言いながらも、初めてで点を決めた羽賀にクラス全員が感心する。

 

次は向こうのサーブで始まるが、磯貝が高く跳び、ボールがネットを超えるかどうかのタイミングで撃ち返し、岡島の脇に落とす。

 

「運動音痴にはできない芸当だな……」

 

「言うほどじゃないよ~。力抜きなよ~」

 

「中村、いやホント無理だから……」

 

味方の磯貝・前原、相手の岡野・羽賀を見ながら呟く悠斗。中村が横から気の抜けた声をかける。

 

そんな最中、集中力が欠けていると悟った木村が刺突で、コート後ろにいた悠斗の足元へボールを落とす。

 

「うわぁ~っ!」

 

悲鳴を上げながら、悠斗は前に出て打ち返そうとナイフを構える。斬撃で真下から切り上げるように打ち返したが、タイミングが悪くネットに直撃する。

 

「あっ……」

 

「やるじゃ~ん」

 

「全然やれてないでしょこれは……」

 

中村に反論する悠斗。次のボールを菅谷が打ち上げ、サーブで打ち込もうとした瞬間、コート脇で見守っていた殺せんせーにイリーナが近付く。

 

「こ~ろせ~んせ~!こ~ろせ~んせ~!足がすっごくお速いとお聞きして…インドのお茶を買ってきて頂けますか?」

 

「お安い御用です」

 

またピンク色の顔になって応える殺せんせー。一瞬した後には、衝撃波を周囲に残して姿を消している。

 

「えっと、マッハ20だから24,000 km/h……んでもってインドのチャイの本場……大陸北部まで6,000kmだから……$\frac{1}{4}$時間、つまり片道15分程度か……往復でも30分ちょい」

 

チャイムが休み時間の始まりを告げると同時に、悠斗が呟く。

 

「あっ、先越された……」

 

口を開こうとした瞬間言い終わられた片岡が項垂れる。悠斗と恵美はサッパリだが、周りは何かとフォローしようとする。

 

「片岡、前に麻婆で同じ事やってたんだよ」

 

「あぁ……そういう……」

 

「まぁ、気にして無いからいいよ」

 

「その割には結構落ち込んでたよね」

 

恵美の一言も片岡には結構効いたようだ。恵美は無言でその場を去ろうとする片岡に気付き、ごめんなさいと声をかけている。

 

磯貝がイリーナに振り返る。悠斗もその先を追い、イリーナに辿り着く。そこには意外な(ある程度予期していた)、煙草を咥え火をつけているイリーナの姿があった。

*1
本音をいえばピンク色で書いてやりたかった




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3限目:ビッチ姐さんの時間

突然ですが悠斗君、軍事オタク&銃器オタクでもあります。


「あの、イリーナ……先生?英語の授業、お願いできますか?」

 

磯貝がクラスを代表してイリーナに声をかける。しかし素が出ているイリーナはキレたようにこう言い放つ。

 

「気安くファーストネームで呼ばないでもらえる?あのタコの前以外では先生を演じるつもりも無いし。私の事は『イェラヴィッチお姉様』と呼びなさい」

 

本性を曝け出したイリーナの前に、それまでのほのぼのした空気は消し飛び、途端に脈絡なくシリアスが始まる……かに思われたのだが、カルマの一言で崩壊する。

 

「で、どーすんの?ビッチ姐さん」

 

「略すな!」

 

(あ、ちょろい)

 

全員が直感でそう思った。

 

「アンタ殺し屋なんでしょ?俺ら全員がかりで倒せないあの怪物、ビッチ姐さん1人で倒せんの?」

 

「ねぇ悠斗」

 

そんなシリアスの中、悠斗に小声語りかけてくるのは恵美だった。

 

「ん?どうした?」

 

「普通、自分の名前を略されたくらいじゃキレないよね?凄い殺し屋みたいだし」

 

「あぁ、恵美は英語苦手だったか……えっと、カルマの発音思い出してみ?」

 

一つ一つ説明していく悠斗。恵美とは20cmの身長差があるので、必然的に悠斗は少し屈み、恵美は少し背伸びした格好になる。

 

「えぇと、"ヴィッチ"が"ビッチ"……"ビッチ"……あっ」

 

「そう。vicは普通の意味なんだろうけど、bitchは違う。例外として雌犬とかもあるけれど、あばずれ女・売女とか、訳し方はいろいろあるけど、殆どが変態を意味するマイナスの言葉になる」

 

「カルマ君……そこまで考えて……」

 

「日本語でVとBの発音に区別が付けづらい所まで織り込み済みでやってるな、アイツの場合」

 

「すごい……」

 

「相手の発言から揚げ足を取り、そうでなくとも一瞬で煽りに変える……頭の回転が速いよ」

 

そんな会話が続く中、全員は室内へ移動している。廊下で別れ、着替えを済ませると、再び教室でイリーナと対する。

 

授業内容は磯貝に言っていたのと同じく、自習。

 

「なぁビッチ姐さん……授業してくれよ~」

 

「そ~だよビッチ姐さん~」

 

容赦なく突き刺さる言葉がイリーナを段々イライラさせていく。

 

「アーもう!ビッチビッチ五月蝿いわねぇ!私が今から正しいV(ヴィー)の発音を教えてあげる。上の前歯で下唇を噛む様に……そうそう。それなら静かでいいわ」

 

(なんなんだよこの授業は……!)

 

全員が全員同じ事を考えて敵対心を剥き出しにする。驚く事に、普段お淑やかな神崎さんまでキレている。悠斗はだいぶ後ろの席だが、肩が沸々と震えているのが傍目で分かる。

 

そんな最中、衝撃波が教室の窓を震わす。

 

「おっ、殺せんせーだ」

 

声を上げた瞬間、イリーナが動き始め、誰よりも速く殺せんせーを拉致っていく。

 

「倉庫に来ていただけませんか?私、お話したいことが」

 

「えぇ構いませんよ」

 

やはりピンク色の顔をしてデレデレ答える殺せんせー。あっさりと()()へと拉致られていく。

 

「大丈夫かよ……」

 

校庭に出て様子を見守っていた悠斗が呟く。

 

向こうでは磯貝と烏丸先生が話している。

 

 

 

暫く経つが、何も起きず、戻ろうとして倉庫から目を離したその瞬間。

爆発的な音が断続的に倉庫から溢れ出す。

 

「うわっ、何だ!?」

 

「たぶん全部アメリカ製の機関銃」

 

『どうした!?悠斗!?』

 

音だけでいきなり機関銃が複数であること(まぁ出てきた男が複数だったので当たり前だが)、すべてアメリカ製であることを推察する悠斗。

 

「M-61と、……M-249か?…………あとはたぶんM-134」

 

(コイツもコイツで何なんだ……)

 

型まで言い放つ悠斗にクラス中がドン引きする。

 

「あ、終わった」

 

そんな中、射撃音が止む。全員の注目と視線が倉庫に釘付けにされるが、その直後に聞こえてきたのは、

 

『イヤぁぁぁぁぁぁ~~~』

 

イリーナの悲鳴だった。

 

 

 

 

 

それとヌルヌル音も。

 

 

 

 

 

 

『ヌルフフフ……』

微妙に殺せんせーの声も聞こえてくる。

 

 

「銃声が止んだと思ったら悲鳴とヌルヌル音が!」

「大丈夫かよ殺せんせー……」

 

「これを映しちゃうとレーティング的にアウトだからねぇ」

『不破どうした!?』

 

真顔で染み染みと語る不破にクラス全員がツッコミを入れる。

そんな事はお構いなしと、好奇心満々で岡島が声を上げる。

 

「行って、見てみようぜ!」

 

いい加減殺せんせーのことも気になっていただけに、下心丸出しの岡島の発言が割とまともに聞こえてしまう。

 

「あぁっ!ビッチ姐さんが健康的でレトロな服にされてる!」

 

消炎の香りと一緒に、倉庫からフラフラとした足取りで現れたイリーナ。その服装は入っていった時とは大きく異なり、体操服にブルマーである。極めつけにその姿を見たE組生徒の第一声がこれである。

 

「オイルでリンパのマッサージされて……早着替えさせられて…………その上触手とヌルヌルで()()()()()まで……」

 

やや上気して赤く染まった頬を揺らして声を発するイリーナ。

 

『どんなことだっ!?』

 

男子の一部(特に岡島と前原)が鎌首をもたげて首を突っ込む。しかし放心状態のイリーナに完全スルーされ、殺せんせーに質問の矛先が向けられる(主に一部の女子から辛辣な言葉で、冷たい視線と一緒に)。

 

『殺せんせー、何したの?』

 

(・_・)

 

こんな顔で返される。

 

「知らない方がいい事もあるんです」

 

「悪い大人の顔だ!」

 

渚のツッコミが冴え渡り、何故かキルト状になっているボロボロ教師服の殺せんせーは逃げる。

 

「どんな皮膚してんだよ……」

 

悠斗の呟きは虚空に消えてゆく。




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4限目:山下りの時間

「え、昼休みから移動開始なの?」

 

昼休みも早々に、いそいそと支度を始めたE組の様子を見て、悠人は目の前の菅谷に声をかける。

 

「あぁ、『E組は全校生徒の規範となる様、どの他クラスよりも先に集合して整列していなければならない』ってルールがあって」

 

()()()()か」

 

「そう。いつもの」

 

悠人が納得した声を出し、菅谷もそれに応じる。

 

「まぁ、ウチは本校舎から離れてるから休憩時間から出発しないと間に合わないんだけどな」

 

「あ、そっか」

 

一頻り会話を終えて、他のクラスメイト同様表に出て、揃ってスタートする。

 

 

 

-1ー

 

 

事件(……というか事故)が起こったのはその時だった。

 

恵美のいる女子班がボロボロの橋を渡り切り、悠人が千葉、三村、岡島に続いて足を踏板に踏み出した途端、老朽化していて、重みに耐えきれなかった木製の橋桁がポッキリとへし折れ、4人揃って川へ投げ出されたのだ。

 

『うわーっ!』

 

男子4人組の声が上がり、女子勢が振り返るも時すでに遅し。4人とも水中に没した後だった。

 

しかし、そこは元水泳部。着衣水泳という初めての経験の中でも、悠人は速やかにクロールに移って、あれよあれよと言う間に岸へ辿り着き、瓦の礫の上に身を投げ出す。

 

「あぶねぇ……」

 

『悠人(君)!』

 

と女子勢が驚いた声を上げるも、その声は三村の叫びにかき消された。

 

「岡島ァ~~!」

 

悠人共々女子全員が、声がした方へ眼をやると、両手を上げた状態で顔面蒼白の岡島が、クルクルと回りながら流されてくるところが見えた。

三村は右手で放心状態の千葉を支え、左手を伸ばして固まっている。

 

「回収するよ」

 

『オッケー!』

 

速水が音頭を取り、女子4人がかりで岡島の救出を始める。

 

「あー、死ぬとこだった。ありがとよぉ!」

 

救出され、一言呻いたあと、鼻の下を伸ばしながら二の句を継ぐ。

 

「このまま流した方が正解だったかも」

 

直後に速水がポツリと呟き、岡島はうつむく。その沈黙に居た堪れなくなった岡島は、驚異の回復力で飛び上がると、そのまま飛び出していった。

 

「さ、先に行くわ!」

 

今にして思えば、あれが悲劇の始まりだったに違いない。

 

(なんか、脳内に胡散臭いドングリが一瞬割り込んできた……)

 

 

 

-2ー

 

 

『キャーッ!』

 

森の中に甲高い悲鳴が響く。原・不破・矢田の女子3名が、蛇の大群に絡まれていた。

 

「なんで藪なんかつついたのぉ!」

「間違って蹴とばした枝が藪に突き刺さっただけでしょ!?」

 

「藪をつついて蛇を出すとは、まさにこのことだね」

『原さん他人事すぎっ!?』

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

と、そこにどこからか聞こえてくる声。岡島だった。

 

蛇の集団のど真ん中を勢いで突き抜けてくかと思われたが、運悪く木の根っこに足を取られ、姿勢を崩して体が宙に飛んで行く。

さらに運の悪いことに、落下地点は蛇の飛び出してきた藪の中だった。

 

「ひぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 

『お、岡島くーん!?』

 

3人が声をかけたが、痛みに悶えながらも立ち上がった岡島の全身には、何匹もの蛇が絡みついていた。

 

しかしそれに目もくれず、川の水を滴らせながら飛び出していく岡島。

3人は、蛇の完全に散った道の中程で立ち尽くしていた。

 

そこに通りかかる悠人。

 

「ん、どうかした?」

 

「藪をつついちゃって出した蛇が、飛び込んできた岡島君にくっついていった」

 

不破がさらりとえげつないことを口にする。

 

「大丈夫かアイツ……」

 

「何かあったの?」

 

「さっき川に流された」

 

『川に流されたんだ………………()()()()()()!?』

 

口を揃えて驚いた声を出す3人。

 

「飛び出してったから追いかけてたら、岡島の悲鳴が……」

 

そこまで言うと、遠くから微妙な地面の振動と()()()()()が聞こえてくる。

 

 

 

ー3ー

 

 

『お、岡島……』

 

巨大な落石に追い立てられるように、見当はずれの方向へ走り去っていった岡島の姿を見て、誰からともなく名前を呟いていた寺坂組のところに、急いでいる様子の悠人が追いつく。

 

「岡島は?」

 

「びしょ濡れで蛇くっつけたままあっちへ走っていったわよ」

「というかアイツに何があったんだよ」

 

「ちょっとした事故が重なって」

()()()()()()?』

 

「あっちは遠回りになるから、先回りできるよな?」

 

「たぶんできるわよ」

 

立ち話も早々に、先回りに飛び出していった悠人。

どんどん進むにつれ、高度は下がり、()()()()が微妙に聞こえだす。

 

岡島の悲鳴も聞こえなければ、わずかに感じていた地面の振動も、途中で一度強くなってから弱まってきたので、先回りできたと判断した。

 

「誰だよ!蜂の巣刺激したの!」

 

今度は岡島ではなく、杉野の声が森の中に響く。そこでは、杉野・渚・菅谷・神崎・茅野・奥田が、今度は蜂の大群に襲われていた。

 

「うおっ!?あぶねっ!」

 

『何しに来た悠人!?』

「というかヤバイ!刺される!」

「キャッ!」

「神崎さん!?」

 

「動いたら余計に狙われるぞ!ゆっくり群れから……」

 

なんかてんやわんやだな、と思って場を収めようと声を出した悠人だったが、視界の端に()()動くものを捉えて戦慄する。

 

『お……岡島………』

 

「アイツ、大丈夫かな……なんか凄いことになってたけど……」

 

杉野がボヤく。その横に立つのは渚と悠人。蜂の群れは全て、()()()引っ張っていった。他の面子は地べたに四つん這いになっているあたり、襲撃は相当激しかったに違いない。

 

杉野は野球で鍛えた体力、渚と悠人は気配を消すことで体力の消耗を抑えて、辛うじて体力を残していた。

 

「落石はなんとか振り切ったっぽいな……」

 

「落石って……」

 

「川に流されて、蛇の大群のいる藪に突っ込んで、落石に追い立てられて、いまさっき蜂の群れを引っ張ってった」

 

「おいおい、アイツそのうち死ぬぞ……」

「悠人君は、どうしてここまで来たの?」

 

「あぁ、最初に橋が落ちたのに巻き込まれて、それで大丈夫なのか不安になって追いかけて、んでもって落石のところで岡島が遠回りルートの方行ったから、急いで先回りしたらこんなことになったというか……」

 

「そうだったんだ……」

 

「あー、急いだから疲れたわ」

 

「お、おう……」

 

そう言ってから、地面に横になる悠人。

 

「やーもう、蜂とかカンベンしてぇ……」

 

「でも、岡島が全部持ってったな……」

 

「岡島、厄払いでも受けた方がいいんじゃ……」

 

そこへ涼しい顔して現れる烏間先生。流石陸上自衛隊内でも最強と目されるだけはある。この程度では汗もかかないのだろう。

 

「今のペースなら、充分間に合う」

 

「ちょっと~!アンタ達~!」

 

山下り双六を、1D100のダイスで100の目でも出したかの如く、思い切り飛ばして下ってくるビッチ先生。

 

「休憩時間から移動なんて……聞いてないわよ……」

 


 

 

始業のベルは、今日もなる。

 




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5限目:テストの時間

「……ば賞金百億だし」

 

「百億あれば、成績悪くてもその後の人生バラ色だしね」

 

さっきのキャラ変化有り分身授業でマシンガンのように浴びせられた内容を整理し、殴り書き用ノートから清書用ノートに書き写していると、矢田と中村の声が聞こえてくる。

 

「そ、そういう考え方をしますか!?」

 

慌てたような声色で殺せんせーが割り込む。

 

「ねぇ悠人。雲行きがちょっと怪しいんだけど」

 

右から恵美が囁く。頷きだけ返して、作業は続けたまま次の言葉に耳を澄ます。

 

「俺達、エンドのE組だぜ?殺せんせー」

 

「チッ、余計なことを」

 

小さく呟く業。苛立ちが伝わってくる。恵美の勘の鋭さは健在か、と作業を止めて教卓に視線を向ける。

 

「テストなんかより、暗殺の方がよっぽど身近なチャンスなんだよ」

 

「なるほど。よく分かりました」

 

真面目な相*1になって真面目モードの声を発する殺せんせー。急な展開に、誰もついていけていない。

 

「今の君たちには、暗殺者の資格がありませんねぇ」

 

そして、陰になって見えなかった、バツ印を浮かべた顔をして、校庭に出るよう言った。

 

「急に校庭に出ろなんて、どうしたんだ殺せんせー」

 

「さぁ?」

 

校庭のふちに立つE組のクラスメート達。

 

 

 


 

 

閑話休題。

 

『第二の刃を持たざる者は…暗殺者の資格なし!!』

 

というお説教*2が終わったところで、いよいよ本題。

 

1学期中間テストの日がやってきた。

 

 

 


 

 

一時間目:数学

 

(なんだ、全国区に名を轟かせる椚ヶ丘もこんなものか。他愛ないな)

 

分配法則*3、展開公式、共通因数をくくり出して展開公式の逆、と次々に平らげていく。

 

言うなれば、七面鳥にアサルトライフルを撃っているようなものだ。*4

 

周りが一瞬面くらっていた問4も、答えは見えている。

 

(各項の形を整理して、分母の有理化をすれば、全て$\sqrt{3}$の係数計算になる。次の問題次の問題)

 

二次関数の場合、定義域が軸を跨ぐなら値域の上限か下限は頂点まで下る*5のに注意して、完了。

次は円周角の性質と接弦定理を使えば普通にわかる。

次は中点連結定理を数回繰り返すだけ。

 

(よし、2枚目に突入。時間は……まだ35分あるな)

 

ここまで僅か10分という猛ペースで解いてきたが、悠人の集中力は途切れない。

 

(まぁ、形式的に係数$a$を求めるか……んでもって、点$A$の座標を式に代入して、$p<0$の条件から負の方の値を取る……と。次は……$AB//CD$だから$AB$の傾きと、点$C$から$CD$の式が得られて、連立方程式を解いて点$D$の座標は分かる、っと)

 

解答用紙にシャーペンを奔らせ、自身の思った解法を書き込んでいく。

 

(これは頂点を共有する三角形だから、底辺の比がそのまま面積の比になって、あとは手の運動)

 

と、1分程度で解を求めて解答用紙に書き込む。

 

問11.$f(x)$を求めよ。

 

3点が与えられているから、$y=ax^{2}+bx+c$にそれぞれ代入して$a,b,c$についての連立方程式として解くという手もあるけど、

$x$切片が与えられているんだから、$y=a(x-p)(x-q)$の式の$p,q$に切片の値を代入して、$a$についての一次式に最後の3点目の座標を代入するのが楽だな、とあたりをつけて計算していく。

 

(あれ、ここってテスト範囲だった?……まぁいいか)

 

 

問12.$g(x)$を求めよ。

 

(はいはい、平方完成して出しますよ)

 

と一瞬で式を求める。

 

(残り2問は最小値と最大値か。場合分けして……っと。…………これでよし)

 

と、全問解き終わって顔を上げる。ここまで25分。残り20分残っていた。

 

 

 


 

 

1日目のテストが終了。2日目の朝がやってきた。

 

「悠人、眠そうだけどどうしたの?」

 

「昨日、テスト範囲が大幅変更くらってたから、ヤマ張ってテスト勉強をやり直してた。一夜漬けだけど」

 

「おいおい、大丈夫かよ」

 

登校中に恵美と話していると、後ろからやってきた前原が話に入ってくる。

 

「大丈夫。1限目の問題を秒で解ききってから残り時間で寝る」

 

「無茶言うなよ」

 

「まぁ、昨日の数学は満点取れそうだし、それ以外は別にどうなっても構わないんだが……」

 

「そこに命かけてるんだ……」

 

 

 


 

 

「先生の責任です……」

 

黒板の方を向いたまま、うつむいて声を発する殺せんせー。テスト返却の後、深刻そうな顔*6をして沈んだ声を出していた。

 

テスト範囲の変更に追随できなかったE組は、その殆どがトップ圏外へはじき出された。

 

「この学校の仕組みを甘く見過ぎていたようです……君たちに顔向けできません……」

 

ここに来て、1人ピンピンしていた業がナイフを構え、殺せんせーの後頭部へ投げつける。

 

「いいの?」

 

と言い、立ち上がって殺せんせーへと近づいていく。

 

「顔向けできなかったらさ、俺が殺しにくんのも見えないよ?」

 

その手に返却されたテストが握られているのに気付いた悠人も立ち上がり、その後をつける。

 

「カルマ君!先生は今、落ち込んで……」

 

そこまで言って、渡された解答用紙を見て息をのむ。

 

「俺問題変わっても関係ないし」

「俺も」

 

と言い、悠人も問題を渡す。

 

国語:92点

数学:100点

社会:98点

理科:96点

英語:97点

 

5教科計:483点

学年:8位

 

「2人揃って数学100点かよ……」

 

「なんでそんな点取れるんだよ……」

 

『目の前にある数字を計算するだけだから』

 

「えっ……」

 

異口同音に答える悠人と業。思わずお互いを見交わすが、業の目力に堪え切れなくなった悠人は肩をすくめる。

 

「鳴り物入りで椚ヶ丘に来てるんだから、このくらいは取らないと」

「悠人のバカぁ!」

 

悠人が恵美に突っ込まれている傍ら、業は殺せんせーにケンカを売っている。

 

「ここで逃げるってことはさぁ、ただ殺されるのが怖いんじゃないの?」

 

「なーんだ、殺せんせー怖かったのかぁ」

『それなら正直に言えばよかったのに。怖いから逃げたいって』

『ねー』

 

怒った殺せんせーは、普段の顔色に戻ってからこう言い放った。

 

「今度は期末テストで、奴らに倍返しでリベンジです!」

 

何がおかしかったのか、誰かが噴き出す。瞬く間に笑いは全体へ広がり、さっきまでの暗い雰囲気は消え去った。

 

 

 


 

 

始業のベルは、明日も鳴る。

*1
まぁ、違いは一切ないのだが

*2
と、ついでに校庭整備

*3
で、項の順を整理

*4
マリアナ……アウトレンジ……ウッアタマガ

*5
もしくは上る

*6
まぁ、違いは一切ないのだが




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6限目:修学旅行の時間 -00-

お待たせいたしました。
アニメの話数と少しずれていますが……

今回から修学旅行です。
ちょっと多めになる予定。


「再来週の修学旅行に向けての準備ですが、まずは班決めを来週までに行っておいてください。男子15人、女子13人、計28人なので、原則として7人班4つですね。ですが、場合によっては6人班や8人班程度なら認めることにします」

 

という殺せんせーの発言があってから早くも一週間。恵美はどこかの班に誘われたらしいので、心配しなくて大丈夫そうだと思い、昨日のうちに手近な4班班長の渚と話をつけておいた。

 

「修学旅行の班か……カルマ君、同じ班にならない?」

 

「オッケー」

 

「大丈夫かよカルマ、旅先で喧嘩売って問題になったりしねぇよな?」

 

「ヘーキヘーキ」

 

と答える業。目に邪悪な色を浮かべながら、1枚の写真を取り出す。

 

「旅先の喧嘩は()()()()目撃者の口も封じるし、表沙汰にはならないよ」

「おい!アイツだけは誘うのやめようぜ!」

 

急いだ風の杉野が、渚に耳打ちする。しかし渚はちょっと微妙な顔で答える。

 

「でも気心知れてるし……」

「で、メンツは?」

 

それを遮って訊く業。答えを待たずに渚の手に握られた紙を覗き込む。

 

「渚君に杉野と茅野ちゃんと羽賀さんと……」

「奥田さんも誘った!」

「あとは悠人君も」

 

「なるほどね、7人きっかりだけど……1班2班は7人ずつ、3班は6人で決まったらしいから1人足りなくね?」

 

どこから仕入れたのか不思議な情報を言いながら、周りに目を向ける業。

 

周囲を見回した視線は、自慢げな顔をした杉野で止まる。

 

「実は、女子が1人足りない時があるんじゃないかと見越して、だいぶ前から誘っていたのだ」

「実際にはそんなことにはならなかったけどね……」

 

「渚、それは言わないお約束だ……それで、クラスのマドンナ、神崎さんでどうでしょう!?」

 

といい、わずかに頬を赤らめながら紹介する杉野。なるほどそういうことね、と呟く業。

 

(なるほど、そういうことか杉野)

 

1人後ろから納得する悠人。

 

「おー、異議なし!」

 

少し首を傾げたままの神崎さんが、軽く会釈をして、微笑みながら渚に語り掛ける。

 

「よろしくね、渚君」

 

「よぉし!どこ行くか決めよう!」

 

「暗殺のことも考えなきゃいけないんだよな……」

 

と言いながら、悠人は先日の体育の授業を思い返す。

 

 

 


 

 

「みんな、知っての通りだと思うが、来週から京都二泊三日の修学旅行だ。君たちの楽しみを極力邪魔したくはないが、これも任務だ」

 

授業が始まり、前に立った烏間先生から練習メニューが発表されるのかと身を構えたE組は、緊張を緩める。

 

「ってことは、あっちでも暗殺?」

 

「その通りだ」

 

質問する岡野に、それに答える烏間先生。

 

「京都の町は、学校とは段違いに広く複雑。しかも君たちは、廻るコースを班ごとに決め、奴はそれに付き合う予定だ。スナイパーを配置するには絶好のロケーション」

 

「烏間先生」

 

「なんだ?」

 

一瞬言葉が止まったタイミングで、悠人が声を上げる。

 

「京都で観光中に暗殺となると、もし成功したとして……いや失敗しても、一般の観光客に見つかるのでは?騒ぎになったらマズイと思うんですが……」

 

「奴の暗殺に関して、事は人類の存亡に関わる重要事項だ。奴は、発見されるのを極端に恐れているようだから、一般人に気づかれないように暗殺を跳ね除けるだろう。だがこの際、奴の暗殺に成功しさえすれば、騒ぎが拡大したとしても事後発表で済ませられる。なんせその時には、脅威は消え去った後なんだからな」

 

「なるほど……」

 

「既に国は狙撃のプロを手配した。成功した場合、貢献度に応じて100億円の中から分配される。他に質問は無いか?……無いようだな。暗殺向けのコース選びを、よろしく頼む」

 

『はーい』

 

 

 


 

 

「そうだね、暗殺に適した場所って何処になるんだろう?」

 

「烏間先生は、スナイパーを手配したって言ってたよね」

 

茅野の素朴な質問に、渚が合わせる。

 

「狙撃なら、開けた場所がいいんじゃね?」

 

そこに業も加わる。この三人組は仲いいな、と思いながら悠人は口を開く。

 

「国が手配したってことは相当な実力者。というかあんな超生物のタコがターゲットだって言われたら大概の殺し屋は辞退すると思うから、腕は超一流だととらえていい筈。長距離からの狙撃もできると思うけど……」

 

「確実性は欲しいよな」

 

一瞬止まった悠人の言葉を引き継いだ杉野。

 

「そう。だとすると、何かしらの建物から見下ろす形で狙撃できるポイントが近くにあればいいから……」

 

「逆に条件が緩くなったね」

 

そこに続ける神崎さん。落ち込んだオーラを出す悠人。

 

「で、でも、近くに人がいない方が好都合だよね」

 

フォローしようと必死に意見を出す恵美。

 

「殺せんせーを惹くなら観光地がいいんだろうけど……矛盾するな……」

 

「あ、いいところ思い出しました」

 

「ホント!?」

「さすが神崎さん!」

「どこどこ!?」

 

「当日までは秘密。殺せんせーがどこで聞き耳立ててるか分からないし」

 

その一言で、騒ぎは収まる。

 

「ビッチ先生、置いてけぼりくらいそうだけど……」

 

「ビッチ先生なら大丈夫だろ、ああ見えてあっさり本音吐くし」

 

茅野が視線を向けた先に目の焦点を合わせた悠人が言い切らないうちに、ビッチ先生が逆ギレして前原にキレ返される。

 

「ほら」

 

「あぁ、うん……そうだね……」

 

「っていうか、アレ完全に銃刀法違反……」

 

その喧騒の中現れる殺せんせー。クラスが静まり返るが、その視線は触手の上に乗った赤い()()()()()()()()()に注がれている。

 

「一人一冊です」

 

そう言うや否や、誰も動かない内にマッハ20で全員に配る。

 

「うわ重っ!」

 

「なんだよコレ!」

 

その中でも再び前原がキレて殺せんせーに食って掛かる。

 

「修学旅行のしおりです」

 

「辞書だろコレ!」

 

(前原、ナイスリアクション)

なんてことを悠人が思っているうちに、殺せんせーは一冊余った()()()の最後のページをやたら丁寧に切り離す。そこから先はマッハ20で作業して、気が付くと指先には黄色い建築物が乗っていた。

 

「殺せんせーがマッハ20で下見した観光マップと、京都土産人気ベスト10。初回刊行特典は『組み立て紙工作金閣寺』です!」

 

『ノリノリじゃねーか!』

 

このとき、まさかあんな目に遭おうとは誰も知る由は無かったのだ




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6限目:修学旅行の時間 -01-

新幹線車内のちょっとした平和な風景が描ければな、と思いながら書きました。ちょっと長くなりましたが……


「うっわ、A組からD組までグリーン車だぜ?」

 

「ウチらだけ普通車、いつもの感じだねぇ」

 

菅野のボヤキに中村も重ねる。それが聞こえたのか、D組の田中と高田*1が言い返す。

 

「おやおや、君たちからは貧乏の香りがするねぇ」

 

「えぇー、学費の用途はぁ、成績優秀者に優先されまぁす」

 

「スナック菓子食いながらとか、典型的な小皇帝だな」

 

悠人がその様子を中国が抱える諸問題に絡みつける。

 

「アイツら、結局のとこ脳みそすっからかんでしょ?」

 

「違いない」

 

カルマが扉をくぐりながら悠人に投げかける。

 

「トランプ持ってきたからみんなでやろうぜ!」

 

変な雰囲気を断つように杉野が声を上げる。

 

「賛成!」

 

茅野も賛成し、特に反対意見も出なかったためトランプをすることになった。

 

「大富豪か……久しぶりだな。8人だから、1位大富豪、2,3位富豪、4,5位平民、6,7位貧民、8位大貧民ってとこか」

 

「ルールは?」

 

通路を挟んで悠人が呟き、恵美が訊く。

 

3人側に渚、業、杉野、神崎、奥田、茅野の6人が座り、通路を挟んで反対側に悠人と恵美が座っている。シートを回転させてボックス仕様にしているので4人分だが、2人分は荷物置き場になっている。

 

「マシマシでいいんじゃない?」

 

カルマの悪魔的な目つきがチラリと見えた。気のせいだ。そうに違いない。

 

「いいんじゃない?」

 

悠人が返すと、神崎さんがルールの確認をする。

 

「えっと……

 

話をまとめると、以下のようになった

 

数字特殊ルール名効果
-スぺ3スペードの3に限り、ジョーカーに対してのみ上位に立つ
55スキップすぐ次の手番のメンバーを飛ばすことができる。何枚出しても飛ばすのは1名のみ
77渡し7を出した枚数分、任意の相手に自分のカードを押し付けることができる
88切り場を流して自分からスタートにできる
1010捨て10を出した枚数分、自分のカードを捨てることができる
JJ(イレブン)バック場が流れるまで強さが逆転し、スぺ3>ジョーカー>3>4>…………>K>1>2となる
ジョーカー-2より強い。複数枚出しのとき、任意のカードの代用にできる
革命同じ数字のカードを4枚出すことで強さ逆転が発生。場が流れても継続。革命後の強さ順でより強いカードで革命できるメンバーがいる場合は革命返しとなり、逆転は発生しない。後述の枚数縛りを無視して、自由なタイミングで出せる
枚数縛り複数枚出しのとき、全員出す枚数は揃えなければならない

 

なお、8人という人数を考慮してトランプ2組を使用する。(←ここ重要)

 

「柄縛りは採用しなかったのか」

 

「2組あるからやってもよかったんだけどね。あと階段とか」

 

「階段と柄縛りが同時発生すると無理ゲー感が強くなるからなぁ……」

 

「色縛りならどう?」

 

悠人と業の会話に、渚が提案をする。

 

『それだ!』

 

全会一致で色縛りと階段が加えられた。

 

色縛り

・前者と同一色のカードを出した場合、もしくは最初に縛る色を宣言した場合、以降のメンバーはその色に合わせなければならない。

・枚数縛りと同時発生の場合は、色の枚数の組み合わせで縛る。

 

階段

・前者から連続した数字を出した場合、もしくは連続する数字で複数枚出しを行った場合、以降のメンバーはそれに続く数字を出さなければならない。

・この場合のみ、枚数縛りを適用外とする。つまり、最初に何枚階段で出そうが、次のメンバーは1枚のみでも可となる。もちろん、複数枚出しもできる。

・枚数縛りを適用しないため、色縛りは赤or黒単色となる。

 

「あ、詰んだ」

 

配られて早々、悠人が声を出す。

 

「技持ちカードが壊滅的だ……」

 

「じゃあ蹂躙してあげましょうか」

 

悠人のつぶやきに、業が絶望を足す。

 

「それじゃぁ……」

 

周りは着実に枚数を減らしていき、6以下の弱いカードが出る機会も減っていく。パス回数はカルマ1、悠人4、他0という絶望っぷり。

 

10枚も残している業の動向が読めない。というか、何かを狙ってる目つきしいる。

 

と悠人が思った瞬間、手番が回ってきた神崎さんが8切りから5で革命を起こし、まさかの1抜け。この時点で4枚以上持っているのはカルマと渚、悠人、茅野、恵美だったが、悠人は3,4を革命できるほど持っていない。茅野もパス。と、渚が3で革命返し。とはいえ神崎さんの1抜けは変わらない。

 

「やったっ」

 

「おー」

「さすが神崎さん!」

 

茅野と杉野が声を上げる。ここまで進行しているが、まだ悠人は7枚という残り方だった。業の場合、なにかのコンボを狙っている感じがするのでこの場合枚数は問題にならない。

 

「日頃の行いってか……」

 

「まぁ、業君が最初に7渡しでだいぶ押し付けてきたしね……色縛り、赤で」

 

「そう言いながらも俺に押し付けるのな……」

 

恵美が7渡し2枚を使い、悠人に10と9がやってくる。いずれも黒。

 

「はぁー、パス」

 

「悠人君不幸体質過ぎない?Jバックで」

 

「ハハハ勝った」

 

渚のJバックに、業が重ねる。

 

『あっ』

 

不穏すぎる発言に全員が声を上げる。しかし時すでに遅く、業が温めていたのであろう8切りで場を流し、更に2枚の8切りで残り6枚に減らす。

 

そして、ドヤ顔で3枚のカードを取り出す業。

 

《2,2,2》

 

「2を3枚か……ジョーカー3枚出せるやついるか?」

 

杉野が問いかけるが、全員首を横に振る。

 

「そりゃーそうでしょ、だってジョーカーはここにあるんだから」

 

そう言いながら、流れた場にジョーカー3枚を置く業。これで上がりだ。

 

『うっ』

 

全員が呻く。

 

「なんだよこれ!反則だろ!」

「引きが良すぎだろてめぇ!」

 

即座に食い掛る杉野と悠人。

 

「コレ勝てるやついないだろ……」

 

「いや、いける」

 

『嘘っ!?』

 

全員が驚き、悠人の次の手を見つめる。

 

《スぺ3,スぺ3,ジョーカー》

 

「うわぁ……」

 

「なるほどね……スぺ3が最強になるのはジョーカーが出ているときのみ。今までジョーカー0だったから静かだったわけか」

 

「んでもって、今ジョーカーが全部出たから、これでどうだっ!」

 

《9,9,10,10》

 

「階段か……」

 

「色縛り黒」

 

そう言いながら残り2枚になったカードを見てニヤニヤする悠人。それに気づいたのか、杉野が声を上げる。

 

「いや、10ってことは……!」

 

「10捨てで2枚捨てて上がり!」

 

そう言いながら手札の4と5を場に投げ出す悠人。ここに来てまさかの3位、富豪になる急展開。

 

『ファッ!?』

 

「いやー、恵美が9と10を両方黒でくれたからなんだよねぇ」

 

「やらかしたかぁー」

 

完全に勝者の風情を漂わせる悠人。

 

「あーもう!こうなったら次で上がる!」

 

逆ギレした恵美は、Jを3枚出す。

 

「Jバックで、色縛り、黒1、赤2」

 

「温存しておいてよかった8切り」

 

杉野が残り3枚をすべて出して上がり、4位平民。

 

「私もこれで、どうだぁっ!」

 

そう言いながら2を2枚出してそのまま場を流した*2茅野は最後に3,4を出し、宣言する。

 

「階段で色縛り、赤!」

「うっ」

 

どうやら渚は赤の5を持っていなかったらしく、パス。ここで奥田が5,6の階段で上がり、6位貧民。5スキップで恵美を飛ばして渚の手番になる。

 

「はい、7渡し」

 

そういいながら最後に持っていたJを渡す渚。これで7位貧民なので、恵美は8位大貧民となる。

 

「くぁーーーーーーーーーーーーーーー」

 

変な声を出しながら席に崩れ落ちる恵美。

 

「まぁフラグ立てちゃったし仕方ないね」

 

「もう一回やろう!そうしようそれがいいよ!」

 

悠人の冷静な評価に、まくしたてるように恵美が2回戦を始める。

 

「そうだ、飲み物買ってくるけど皆何がいい?」

 

カードを悠人と杉野、そして恵美が執拗かつ徹底的にシャッフルしているのを見かねた神崎さんの提案で、神崎、奥田、茅野が飲み物を買いに行くことになった。

 

「俺はパス。煮オレ持ってきたから」

 

「用意周到だな……自分は緑茶でいいかな」

 

まさかこんな些細なことがきっかけとなるとは誰も予想していなかった

*1
公式サイトでは五英傑の4人組がまとめられてるのに個別にページがある。謎過ぎる

*2
ジョーカーは全て出ているから2を超えるカードは誰も出せないので、無条件に全員パスで一周して場は流れる




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