弦巻家の彼は普通になりたい! (オオル)
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弦巻シンは普通に憧れる

はじめましての方が多いと思います!どうもオオルです!僕の作品って重い話が多いけどちゃんとした話もかけるってところを見てもらいたいです!それではどうぞ!!


 人は生まれた時から恵まれた環境で育つとどうなりますか?そんな結果は目に見えています、あれもこれも何もかも好きに手に入ってしまい、無茶を言うがなんでも叶ってしまう...そう俺の家、弦巻家はそんな恵まれた環境だった。いや俺もわがままとか願いとかは言ってたよ?DSが欲しい!とかPSP欲しい!とか他にもetc...ここまではまだ許容範囲だ、けどな!姉さんの欲しいものはずば抜けていた。

 

「大きな島に別荘が欲しいわ!」

 

 と、言い出しハワイを買収して

 

「このゲーム機改造すればもっと楽しくなるわ!新しいのを作りましょう!」

 

 と言い、3DSが開発され

 

「どうして北極にペンギンさんはいないの?そうだわ!北極にペンギンさん達を連れていきましょう!」

 

 と言い出し、生態系すらも変えてしまう恐ろしい人物に育ってしまった。ペンギンはと言うと今も元気に北極で暮らしているらしい、よく生きてるな!

 

 そんな姉と他にもいろいろ事情があり、俺は弦巻家を避けるようになり一人で家を飛び出したのであった。

もちろんこんな環境で育った俺は何も知らない世間知らずだ、途方に暮れてたら黒服の人に捕まり終わったと思ったらマンションに連れていかれ

 

「とりあえずここに住んでください」

 

 と言われた。多分だけどお父様が手配してくれたんだと思う、そして今の今までここで過ごしている

 そして現在

 

 ピピピピピピピピピ

 

「うるせぇ!!!」

 

 目覚まし時計を止め布団から身を出す、大きな欠伸をして今日から通う高校の制服えと着替える

 

「よし!普通だよな!俺!」

 

 洗面所の前にて鏡を見ながら気合を込めて言った。

 

「いってきます!」

 

 誰もいない家だがそう言って学校に向かった。

 おっと、自己紹介がまだだったな!俺の名前は弦巻シン!今日から花咲学園に通う高校一年生だ!弦巻家の一人だが今は身を引いてるから金なんて持ってないぞ?家賃はお父様が払ってるしな!いや俺だって自立したいと思ってるよ!?でも家賃がクソ高いんだよ!バイトして生活費を稼ぐのがやっとだぞ!あ、そうだ、これからの学費もきっとお父様が払うんだ、俺って自立できねーじゃねーか!

 

 

 そんなこんなで学校に到着、新入生の人達が自分のクラスは何処かと探している中に混じり俺もクラス表を見ていた。

 

「弦巻、弦巻っとー」

 

 上から見ていくと

 

「あ!あったーってはぁ!?」

 

 皆さんクラス表は見たことありますよね?あれって名前順なんですよ、五十音順って決まってるんですよ、ここで一つ言っておこう、俺には姉さんがいる、弦巻こころ、弦巻家の跡継ぎ娘だ、俺とこころは双子の姉弟で、もともと先に生まれた方を跡継ぎにする予定だったらしい、その結果こころが跡継ぎになった。って話で!その弦巻って同じ苗字はあいつしかいない!

 

「な、なんであいつがこの学校にいるんだよ!」

 

 クラス表の前で堂々と叫んだ俺はみんなの視線を集めていた。

 

「あ、ああー!お腹痛いなー!」

 

 苦し紛れの言い訳をしてクラスに向かった。

 

 今思い出したらこころのやつこの中学校に通ってたな、中高一貫だからそのまま進学したのか、なるほどなるほど

 

「じゃねーよ!」

 

 トイレにて一人でいることを見計らって叫んでいた。

 冗談じゃない!あいつと同じ高校に三年間も通うなんて!お父様がはめたに違いない!

 

「ああーちゃんと頼んでおくべきだった!!」

 

 と言っても、俺は今お父様から距離を置いている、てか話すのすら怖くてもう一年近くあってもないし家にも帰っていない。まあいい、このことは諦めよう、だったら!

 

「よし!とりあえず友達を作ろう!」

 

 俺は普通の人になりたいんだ!だったら友達を作ることは普通だよな!?友達作っていろんな話をする、うん!普通だ!でも、友達選びはちゃんとしないと前みたいなことが起きる

 

 (き、気にするな気にするな、今度はきっと大丈夫だ!)

 

 と、とりあえず仲のいい友達一人でも作ればそこから広がっていくはずだ!ほらよく言うだろ?友達の友達って!あれだよ

 

 トイレから出ると教室前でみんなが並んでいた。おそらく入学式に行くために並んでいると思う、ん?待てよ...ってことは俺の独り言も聞こえてたんじゃないか!?自分の並び場所に向かう時女子の何人かがクスクス笑っている気がした。めっちゃ恥ずかしいじゃないか!

 

 

 入学式も終わり今はHRをしている、先生の話を聞いていたら

 

「よし、それでは自己紹介をしようか」

 

 き、来てしまった。だよねーそりゃーそうだよね!自己紹介あるよね!あーあ俺とこころが姉弟ってバレてしまうよ!ここまでこころとは一切係わっていないのにさ!

 

「それじゃー先生から、先生はー先生だー以上、はい次」

 

 おいおいそれでいいんすか先生!だったら俺もその手を借りよう!

 

「はい次」

 

 俺の前に何人か自己紹介して俺の番が来た。

 

「俺は俺だ!みんなよろしくな!」

 

 完璧だ!弦巻って言ってないからこれでこころと姉弟ってバレることはない!何か言われたら

 

「ん?たまたま同じ苗字だよ、キニシナイデ」

 

 って言える!

 俺はやり遂げた顔をしながら席に座ろうとするが

 

「それはダメだわシン!」

「なっ!?」

 

 ど、どうしてそこでお前が発言するんだよこころ!

 

「あ!私の名前は弦巻こころよ!世界を笑顔にするために頑張ってるわ!よろしくね!」

「で!シンは私の弟な」

「あ、おい!ちょっと待て!」

「ん?どうしたの?シン!」

「あ、いやー」

 

 待て待て待て待ってくれ!この流れだと俺がこいつの弟だってバレてしまうだろ!?

 

「そー言えばこころんとその人同じ苗字じゃなかったけ?」

「は!?」

「はぐみ見たもん!クラス表!こころんの名前の下に同じ苗字でシンって人いたよ?」

 

 はぐみと名乗った人がその発言をしたあと教室がざわめいた。

 

「確かに似てるよね」

「髪色も同じだね」

「目とか似てない?」

 

 やばいやつやんこれ...でもこいつの弟だなんて絶対思われたくない!

 

「ち、違うよーえっとはぐみちゃんだっけ?同じ苗字の人なんて世界中いくらでもいるさ」アハハ

 

 だよね!こころ!と顔をむけるが

 

「?何を言ってるの?あなたは私の弟、シンじゃない!」

「「「「「えー!!」」」」」

「終わった」

 

 それを言うと教室中の人達が驚いていた。もうおしまいだー俺の平凡な高校生活がーまあ百歩譲ってこいつの弟であることはバレてもいいけど結局こいつの弟ってバレたら弦巻家ってバレるけどな!バレるのは嫌なんだよ!なんでってたかられるから!

 

「おい!こころ何言ってんだよお前は!」

「減るもんじゃないからいいじゃない!」

「俺の寿命が減るわ!このアホが!」

「アホじゃないわ!」

「真剣に返すなよ!」

「あー俺の平凡な高校生活がー」

「そんなの楽しくないわ!もっともっと楽しみましょう!」

「お前のせいで楽しめないんだよ!!!」

「はっ!」

 

 ふと我に返って教室中を見渡すがみんな口をぽかーんと開けて見ていた。

 

 (や、やらかした!)

 

 するとヒソヒソ話が聞こえてきた。

 

「あのこころちゃんの弟らしいよ」

「きっとお姉さんみたくやばい人だよきっと」

「俺関わらないようにしよっと弦巻家の人間だしな」

「俺もだな、命がいくらあっても足りん」

 

 お、おい!こころと一緒にしないでくれよ!

 

「ま、待ってくれ俺はこいつとはー」

「長い、次」

「ちょ!先生!」

 

 俺の高校生活は最悪のスタートとなってしまった。

 

 (こ、これから俺の高校生活はどうなるんだよ!)

 

 心の中でそう言ったが誰にも聞こえてない

 

 

「とゆーことなんでー黒染めします」

「うん、なんで?」

 

バイト先にてバイトの先輩と話していた。バイトの先輩であるリサ先輩こと今井リサさんは俺の数少ない知り合いの一人だ、ん?友達じゃないのか?馬鹿たれ!こんな可愛い人が友達なんておこがましいだろ!?

 

「だ、だって金髪って普通じゃないでしょ!?」

「普通だって!この世界では!」

「この世界ってなに?他の世界とかあるの!?」

「あっははーちょっと落ち着こうか」

「何がなんでも俺は絶対黒染めしますからね!」

「んーシン君がしたいならすればいいんじゃないかな?」

「ですよね!リサ先輩!」

 

 リサ先輩ならわかってくれると思ってたぜ!なんせもう結構長く付き合ってるからな!あ、付き合ってるってそーゆう意味じゃないぞ?

 

「でもアタシはー黒じゃなくてもいいと思うなー」

「そうですか?じゃー何色にします?」

「んーそうだね」

「「んー」」

 

 2人で悩んでいる時にこいつが現れた。

 

「だったらモカちゃんとお揃いにしよ〜」

「あ!それいいかもね!」

「いいかもじゃないですから!お前今日非番だろ!」

「店長がどうしても入ってくれって〜」

「く、店長め...」

 

 こいつがいるとリサ先輩と2人っきりでいれねーだろ!?ああ、こいつってのは青葉モカで俺の同僚だ、こいつはそうだな、百歩譲って友達って関係だな、こんなマイペースなやつに友達なんているわけがない!そんななか?俺が友達になってやってるんだ、感謝しろよな?

 

「まあまあ〜同僚だしいいじゃん〜」

「いたらいたでムカつくだけだけどな」

「で〜?結局髪色はどうするの〜?」

「あ、それな!どうするか...」

 

 本当にどうしよーだって今金髪だよ?金髪なんて普通じゃないじゃん!黒こそが王道で正義だろ!?なら俺はそれを貫き通す!

 

「俺黒髪にするぜ!」

「おーそう来たか」

「まあ〜似合うんじゃないの〜」

「お前の意見は聞いてねぇ!」

「え〜酷いよシン君〜しくしく」

「嘘泣きやめろや!」

 

 3人で俺の髪色の話をしてる時に店長さんが現れて言った。

 

「はいはい、みんな仕事やってねー時給減らすぞー」

「げ、減給はやだぁあ!!」

 

 俺の生活がかかってる!

 

「そか、なら働いた働いたー」

「「いらっしゃいませー」」

「しゃーせ」

 

 リサ先輩と俺は気合が入ったがモカのやつは相変わらずだった。

 バイトってあっという間に終わる、何故かって?俺が真面目に働いてるからだよ!?高校生でありながらの社畜なめんなよ!?

 

「おい、黒染めすんだろ?これ使えよ」

「お、おー!店長ありがとうございます!」

 

 なんで店長が持ってるか気になるがそんなことはどうでもいい!無料で手に入ったんだ!金を払わずに物が手に入るってめちゃくちゃいいよな!昔なんて欲しいものなんでも手に入る環境だったからな、今は不便だがこれが普通なんだよな!そうに決まってる!

 

「店長それって安いやつでしょ?大丈夫なんですか?」

「大丈夫だろ、多分だけど」

「店長の多分は信用できないからね〜」

「お、言うね、モカちゃん、増給しちゃうぞー?」

「やった〜」

「な、なんでー!?」

「そーだな、可愛いから?」

「もう店長ったら〜褒めても何も出ませんよ〜」

「じゃ、じゃあ俺は!?俺って結構イケメンでしょ!?」

 

 そう、俺は顔には自信がある!決してナルシストではない!

 

「そうだな、イケメンだから減給な」

「なんでだァ!!」

 

 男女平等社会とはなんなんだよと思いバイト先をあとにした。

 

「店長もちろん冗談ですよね?」

「当たり前だ、あいつ世間知らずだからな、遊んでるだけだ」

「シン君なんでも信じ込んじゃいますよ〜?」

「...やめとくか」

 

 残った3人の話であった。




全バンド中学から結成している設定です!あとは花咲学園で共学になっています!今後は他作品とこの作品をどちらとも投稿していきたいと思っております!できれば評価と感想をよろしくお願いしますね!ではまた次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンの黒染めとライブ...

先日この作品を間違えて他の作品に投稿してしまいました。今後二度と同じミスがないように気を付けたいと思います!ではどうぞ!!



 洗面所の前にて鏡を見ながら言った。

 

「やべー!俺マジでちょー普通じゃね!?」

 

 昨日店長から貰ったやつで黒染めおこなったところ昨日まで金髪だった髪は黒くなっていた。

 

「やった!やったぞ!これで今日から普通だ!」

「金髪じゃないし!これで目立たない!完璧ktkr」

「やば!もうこんな時間!遅刻するなんて普通じゃないぞ!」

 

 朝食も食べすに家を出た。普段から朝食は食べないんだ、なんでかって?金がかかるだろ?昼飯はバイト先で賞味期限が近くなったもの、または切れたものを貰ってそれを食べてるんだよ、夜飯は作りたいけどまずいからなーよし、とりあえず料理の勉強しようかな、うん!

 

 

 教室にはチャイムと同時に入れた。決して遅刻ではない!

 

「あっぶねー遅刻するところだった」

 

 みんなから見られている、なんで?あ!

 

「おはよう先生!」

 

 そうだな、そうだよな!先生に挨拶してないからだよな!きっとそうだ

 

「おい弦巻シン、なんだその髪は」

「髪?あー黒染めしました!どうですか?普通に見えないですか!?」

「...後で生徒指導室に来い」

「な、なんでぇ!!」

 

 どうやら黒髪にしただけで普通にはなれないようだ、おまけに

 

「弦巻君髪染めてきたよ」

「うわ、ヤンキーじゃん」

「普通染めてくるか?」

「やっぱり危険だ、関わるのはやめとこう」

 

 評判がまた悪くなってしまった!

 

 (な、なんでだ!何がいけなかったんだ!?)

 

 そんな中

 

「シンは金髪も似合うけど黒髪も似合うのね!ステキだと思うわ!」

「ああーお前の意見なんてどうでもいいですよ!」

「私も黒髪にしてみようかしらね!シンとお揃いだわ!」

 

 な、何を言ってる!?

 

「俺はお前とお揃いが嫌だから染めてきたんだろ!?」

「私はお揃いがいいわ!」

「話を聞いてねぇー!」

「はっ!?」

 

 いつもだ、こいつといたらいつものやり取りをしてしまう、だから印象が悪くなるんだよな!

 

「まあいい、朝のHR始めるぞー」

 

 一日の最悪の出だしになった。

 

 放課後になり生徒指導室にいる、普通の生徒なら呼ばれることなんてない、この普通じゃないって所に心が痛むぜ

 

「で、なんで黒染めしてきた?」

「えっと、金髪って雰囲気悪いじゃないですか?だからです!」

「だったら入学前からしとけばよかった話だろ?」

「...ごもっともです」

 

 だ、だってさ!同じ高校にまさかこころがいるなんて思わないだろ!?くそ!これも全部あいつのせいだよ!

 

「先生!」

「な、なんだ」

「俺は!ふ!つ!う!に!なりたいんです!」

「そ、そうか」

「お願いします!今回は見逃してくださいよ!お金なら払いますから!」

 

 俺の財布の中にある全財産あげてやるぜ!

 

「弦巻家からお金もらうなんて考えられん、もういい、今回は水に流してやるから」

「せ、先生!」

 

 弦巻家がどうたらって聞こえたが、まあいい、許されたのならこしたことはない!

 

「ありがとうございました!」

 

 大きな声で満面の笑みで生徒指導室を後にした。

 

 

 よーし!今日もバイトだ!毎日バイトだ!社会に貢献するぞー!って完全に社畜じゃねーか!まあ生きるために働くこと、これは普通だよな!それに比べてクソ姉さんのこころときたら働きもせずに無駄なことにお金を使ってんだろうな!ここ数年何してるかなんて全く知らないけど社会的立場で言ったらー?俺の方があいつより上だ!そうだな俺が上なんだ!あっははは

 

「一人で何言ってんだか」

 

 ん?あれはーモカか?一人でいてなにしてんだ...あ!友達いないんだったな!(シンが勝手に決めつけてる)ならしゃーない、今日あいつはシフト入ってたはず、バイト先に着くまで少しだけ相手をしてやろう、感謝しろよな

 

「おいモカ」

「あ、シン君〜黒髪似合ってるよ〜」

「そーですか」

「今日バイトだろ?暇だから一緒に行ってやるよ」

「じゃあ仕方がないから超絶美少女JKモカちゃんが一緒に行ってあげるよ〜」

「JKって昨日なったばかりだろ!?」

「こまいことは気にしないこと〜」

 

 バイト先につきレジをおこなう、あ、言ってなかったけ?俺のバイトはコンビニの店員さんです、コンビニの店員って客がいない時は少しお話できるんだよね、でも今はモカの2人だけ、リサ先輩がいたら楽しいんだけどなー!そんな時

 

「暇だからモカちゃんクイズ〜いえ〜い」

「知らねーしやらねーよ」

「正解したらパンが貰えます〜」

「やる!」

 

 食い物がクイズを答えるだけで手に入るならやるしかない!

 

「パンはパンでも食べたくても食べられないパンはな〜に」

「解答権は1回だけね〜」

「はっ!なんだその問題は!俺をなめているのか?」

「いえいえ〜」

「そうだな、答えは目に見えてるから俺が外したらモカの言うことなんでも聞いてやるよ」

「...それって本当〜?」

「ああ、本当さ!男に二言はない!」

「じゃあ答えてどうぞ〜」

「いくぞ!」

 

 そんなの決まってる、パンはパンでも食べられないパンだとフライパンだ、だけどな!パンはパンでも食べたくても食べられないパンってのはあの固くて食いにくいやつ!

 

「ズバリ!フランスパンだ!」

「...」

「どうだ!?正解して驚いて声も出ないか!?」

 

 パンは俺が貰ったぜ!

 

「ぶっぶ〜不正解〜」

「はぁ!?なんでさ!」

「正解は〜」

「消費期限切れのパンでした〜」

「はぁ!?」

「いやーさすがのモカちゃんでも消費期限切れのパンは食べたくても食べれないよ〜」

「な、なんだと」

 

 た、確かによく考えればそうだ、けど俺は賞味期限切れのものをよく食べてるから食べられないって感覚がなかった。ち、畜生!!

 

「では〜なにを頼もうかな〜?」

「も、モカ様!あまりお金がかからないことをですね...」

「あ、じゃああたし達のバンド見に来てよ〜チケットあげるから」

 

 はい、と言ってチケットを渡してきた。

 

「は?ライブ?」

「そうそう〜あたし達Afterglowのライブ見に来てね〜?」

「いや、待て!」

 

 ん?あたし達?ってことはさ

 

「お前...友達いるのか?」

「何言ってるの〜?モカちゃんには友達たくさんいるよ〜?」

「うわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ聞きたくない情報だー!!」

 

 てっきりこいつも俺と同じで友達がいないやつだと思ってた。なのにー

 

「まあまあ〜ライブ来てくれたらみんなにシン君のこと紹介するよ〜?」

「ま、まじで!?俺にも友達できる!?」

「ん〜蘭は無理でも他の人ならなれると思うよ〜?」

「モカー!お前と友達でよかったぜ!」

「お〜そうですか〜」

 

 そうだよ!同じ学校で友達を作らなくてもいいじゃないか!他校のやつと仲良くなればそれに越したことはない!よし!いけるぞ!いけるぞ!

 

 

 言われた通りにライブ会場に来たのはいいが何もわからん、あと人が多すぎる!なに!?そんなに人気あるんすか!?

 

「あのーライブってここですよね?」

 

 近くにいた人に聞いてみた。別に人に尋ねるぐらい普通だよね?

 

「あ!君ここ来るの初めてかな?」

「あ、はい!」

「なら下に降りるといいよ!下がライブ会場だから!」

「わかりました!ありがとうございます!」

「もしかしてライブ来るの初めて?」

「はい、知り合いがチケットくれたんで」

「知り合いって今日出るバンド?」

「そうです!えっと、バンド名なんだったけ?」

 

 あれ?まじでなんだったけ?なんか言ってたよな...あふろー?あふたー?なんだっけ?

 

「これ今日参加するバンド一覧だよ!」

「あ!これです!Afterglowです!」

 

 見せてくれた表に書いてあったAfterglowを指さして言った

 

「知り合いて誰なの?」

「あーモカってやつですよ」

「へーモカちゃんの彼氏なのかな!?」

 

 何を言ってんだよモカの彼氏!?

 

「ち、違いますよ!」

「なんだーそーなのかー」

「お、俺もう行きますね!それじゃあ!」

「うん!ライブ楽しんでね!」

 

 会場に入り数分後にライブが始まった。さっき見た表によると1番目がRoselia?2番目がモカの出るAfterglowで3番目がハロー、ハッピーワールド?4番目は...

 

 このRoseliaって所は出てきた瞬間に周りの人達が一斉にうわぁーってなって何となくすごい人たちなんだなと思ったところ!?なんとそこにはリサ先輩がいた!

 

 (な、なんでそこにいるんだろ!まあいいや!見とこう!)

 

 ずっとリサ先輩を見ていたらリサ先輩がこっちに気づいたようだ、気づいた先輩は俺にはウィンクをしてきた。すると俺の周りにいたモブが

 

「な!今の俺にウィンクしたよね!?」

「はぁ!?俺だろ!お前じゃねーよ!」

「なんだとてめぇー!」

 

 と口論になっていた。ふざけんな、あのウィンクはお前らなんかにしてない、誰でもない俺にウィンクしてきたんだよアホンダラども!!

 

 あっという間に曲は終わりAfterglowの出番となった。

 

「Afterglowです!それでは一曲お聞きください」

 

 モカのやつ本当にいるんだな、ギターだよな?ギターしてるなそれにしても凄いな、あのモカがこんな凄いことをするなんて、それにモカだけじゃない。

 

 その周りの人達も凄いなーみんな真剣に演奏をしながら楽しんでいる、今を大切にしてるんだろうな...

 

 それに比べ俺はどうだ?やりたいことなんてありやしないし今を生き延びるのに精一杯の毎日、例えやりたいことがみつかったとてやる時間が無いからな、そんな人達を俺に紹介して友達になってもらう?そんなの無理だよ、彼女達と俺住む世界が違う気がする

 

 彼女達と友達になるのはやめとこう、友達は自分と似たような人となることが一番だ!うん!

 

 (演奏よかったよって感想を今度バイトで言うか)

 

 演奏も終わり、ライブの後モカと会う話だったがそれを無視して帰ろうとした時、やつが現れた

 

「ハロー、ハッピーワールドよ!みんな!笑顔になる準備はいいかしら!」

 

 そう、こころが現れた。どうやらバンドを組んでいたようだ、ハロー、ハッピーワールドで世界を笑顔にね...ふっ、どうせ金を使って活動してんだろどうせ、昔からそーゆうやつだからな

 

 …と思っていたが普通にみんなレベルが高い、それによく見ると俺と同じクラスのやつもいるし友達と活動してんのかな?

 

 なんだよそれ、なんでこころに友達がいてバンドなんてして俺より楽しい人生なんだよ!どうして何もしてないこころが、俺は毎日バイトに明け暮れる生活をしているのに、なんでこころの方が充実してんだよ...

 

 まあ別にバイトは嫌いじゃない。楽しいと思えば楽しくなる、けど人生それで楽しいのか?

 

 それに俺はこころみたくお父様やお母様に頼りっぱなしではない!確かに家賃は払ってもらってる、けど!こころみたく無茶な頼みもしてないからいいだろこれくらい!?でも、なのに...

 

 (いやいや気にすんな!俺は俺、あいつはあいつだ!それに俺の方が社会的立場は上だから大丈夫だよね!)

 

 まだこころがライブをしているが最後まで聞かずに会場を後にした。

 

「あれ?まだライブしてるよ?帰っちゃうの?」

 

 あ、さっきの人だ、詳しかったからきっとここで働いてい人だと思う

 

「あはは、ちょっと初めてで疲れたんで帰ります」

「あ、モカと会ったら伝えといてください、演奏よかったって!」

「え?あ、うん!」

「じゃあ失礼しますね!」

 

 そう言いライブハウスを後にして

 

「よーし!明日もバイト頑張ろうかな!」

 

 月が輝く夜空に向かってそう言ったのであった。

 

 ライブを終えたAfterglowは本日の感想を述べていた。

 

「今日の演奏よかったな!」

「うん、いつも通りだった」

「も〜蘭はいつもそれだね〜?」

「べ、別にいいじゃん!よかったし!」

「私も今回はでき良かったと思うよ!多分体重も減ったと思う!」

「ひ、ひまりちゃん、そんなすぐに落ちないよ」

「確かにな!」

「「「「あははは!」」」」

「も、もうみんなー!!」

「あ、そう言えばみんなに紹介したい人がいたんだよね〜」

「そう言えば言ってたな、どこにいるだ?」

「終わったら待っとく〜って言ってたからいると思うけどな〜」

 

 ライブハウスのカウンターにてその話をしているが目的の人はいない

 

「あ!Afterglowのみんな!演奏おつかれーよかったよ!」

「まりなさん」

「えへへ、よかったですか?」

「うんうん、よかったよ!」

「あの〜まりなさん、なんか髪の色が不自然な人見ませんでしたか〜?」

「あ!彼ね!言われてみれば所々金髪が混じってたかも?」

 

 そう、シン君は安いやつで黒染めしたからもう既に少し色が落ちてきていた。

 

「どこにいますか〜?」

「帰ったよ?なんか疲れたーって言ってたよ!」

「...そうですか〜」

「あ、伝言頼まれてたんだった!」

「演奏よかったよだってさ!」

「...は〜い」

 

 その後ライブハウスを出ていき

 

「なんで紹介したかったんだ?」

「ん〜友達がいないって萎えてたから〜」

「何それ!?可哀想じゃん!」

「そう〜だからひーちゃんなら友達になってくれるかな〜って、それにシン君イケメンだし」

「え!?そうなの!?」

「うっそ〜」

「も、モカ!」

「まあいいや〜今度紹介するよ〜」

「おう!いいやつだといいな!」

「イケメン君だったら狙っちゃおうかな!?」

「ひまりちゃん頑張って!」

「それでいいの?ひまり」

 

 あー今思えばちょっと酷いことしたかも、シン君ってこころの弟だし、なんか嫌ってたからね〜

 

 (今度謝っとこうかな〜)

 

 そう思った瞬間だった。




こないだも言ったけど重くないはず!大丈夫だよね...感想やアドバイスなどいただくととても嬉しいです!では次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンには不安がある

今日は少し短めです、それではどうぞ!!


「いらっしゃいませー」

 

 今日も今日とてコンビニでバイトですよ、まあ別に嫌いじゃないからいいけどさ

 

「シン、前だし頼んだ」

「店長りょうかーい」

 

 今思えば店長と二人っきりで話したことあんまりねーな、なんかリサ先輩がいたりモカがいたりであんまり話した覚えがない

 

「お前もう色が落ちてるぞ?」

「え?そーっすか?まあ今度はいいやつ使いますよ」

「買う金あんのか?」

「ないんで給料増やしてくださいよ」

「そーだな、考えてやらんこともないな」

「ま、マジですか!?」

 

 まさかの店長ってめちゃくちゃいい人なんじゃ...

 

「嘘だよ、しっかり働け」

「で、ですよねー」

 

 そんなたわいもない話を店長として午前のバイトは終わった。1時間近く休憩をもらってまた午後に出る予定だ、いやまじで社畜ですなー

 

「昼飯ねーだろ?これ食えよ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 店長がなんかいろいろくれた。多分捨てるものをくれたんだと思う、けどそれが嬉しいんだよ!

 店長から貰った弁当を食べながら昨日のことを思い出した。あいつらは俺にとって眩しかった。特にモカとこころのやつ、あいつら俺と同じで仲間だと思っていたがどうやら違ったらしい、まあ俺が勝手に決めつけてたことだしな、でも...

 

 (モカのやつ、結構サマになってたな)

 

 あんなやつが真剣に取り組む、そーゆうのいいな、憧れちゃうよ...

 

 (で、でも俺は俺だからな!気にすることはない!)

 

 そうだよ、彼女達が凄いだけ、俺は普通なんだよ普通...あれ?俺普通じゃん!?よかったーって思うはずなのに...はずなのに?

 

「んーわからんな」

「何がわからないの〜?」

「うわ!モカ!驚かすなよ!」

「昨日のライブ来てくれたんでしょ〜?ありがとね」

「あーごめん、昨日は疲れて帰ってしまったよ」アハハ

 

 まあ嘘ではない。嘘ではないが逃げたことに変わりはない。まあー無理に紹介しなくてもいいしな

 

「ごめんね、こころが出るって知ってたのに」

「...」

 

 えー!?何謝ってのこいつ!別に俺はなんとも思ってないのに!

 

「気にしてねーって、あいつがバンドしてたのは驚いたけどあいつはあいつで俺は俺だ!」

「んなことより俺はリサ先輩も出てたの驚いたぞ!?Roselia?だったけ?あの人達もお前達ぐらいすげーな!」

「それに比べ俺はー」

「...俺は?」

「な、なんでもない!さて!午後もひと頑張りしますかねー!」

 

 あ、危ねー!モカに昨日思ったこと言うところだったぜ、別に気にしてねーから!俺は普通になりたいから!

 

 その日はずっとバイトに明け暮れ夕方近くに終わらせてもらった。ちょうどモカも終わったようだ

 

「おつかれでしたー」

「しゃーしたー」

「モカちゃんまた今度ねー」

「店長俺は!?」

「お前は一生来んな」

「な、なんでさ!」

「明日もお前の働きに期待してるぞー?」

「おー了解です!ボス!」

「お〜?そのやり取りモカちゃんてきにいいポイントですよ?」

「なんだよポイントって」

「モカポイント〜貯まるといいことあるかもよ?」

「興味ねーな」

「そんな〜およよ〜」

「はいはい」

 

 本当にこんな奴が昨日あそこでライブした本人なのか?なんだ?こいつにはオンオフのスイッチ機能でもついているのだろうか

 

「あれ〜?シン君帰らないの〜?」

「今度ある宿泊研修のために必要な物買うんだよ」

「そっちもある感じ〜?うちも今度あるんだよね〜」

「へーそっちもあるのか、モカの所って女子校だろ?やる意味あんのか?」

 

 先生曰く宿泊研修ってのは生徒同士が仲良くなるために行い、また学校のルールや社会マナーなどを学ぶためにあるらしい、あとリラックスするためにもだってさ、つまりな!友達を作る絶好のチャンスなんだ!俺の今の評価はクラスでこころより低いだろう!けどな!この宿泊研修で少なくとも友達一人は作ってみせる!

 

「あるよ〜シン君はどこでするのかな?」

「ああーここだよ、なんとか山?の所に泊まって活動するだってさ」

 

 俺は持ち物を買い揃えるために持ってきたしおりの宿泊先が書かれたページに変え指をさして答えた。

 

「あ、一緒だ、よかったね〜?」

「は!?まじで!?」

「うん、しかもビックリ日付も一緒だ〜」

「う、嘘だろ!」

「これであっちでも会えるね〜」

「勘弁してくれよー!!!」

 

 ただでさえ今少し関わりたくねーなって思ってたのに!

 

「もう〜本当は嬉しいくせに」

「嬉しくねーよ!いいか!お前に頼らなくてもあっちで友達を作ってみせるからな!」

「あ、そうだね〜あっちについたらモカちゃんの友達紹介してあげるよ」

「あ...」

 

 それはやめとこうかな、だって明らかに彼女達と俺は関わることがない存在だしな

 

「別にいいし!」

 

 そう言って歯ブラシセットとシャンプーとボデイーソープがセットになってるいる商品をカゴに入れた。

 

「そう〜?でも紹介しちゃうね」

 

 と、いいモカは俺と同じ物をカゴに入れた。

 

「おい!なんで同じやつ買うんだよ!」

「え〜いいじゃんお揃い〜嬉しくないのかな〜?」

「どうしてあいつと同じことを言うんだよお前はー」

「え?」

 

 こころのやつも俺とお揃いがいいとか今でも言うしな

 

「なんでもねーよ、てかそれ自分で金払えよ?俺マジで貧乏人だからな!」

 

 毎日を生き延びるのにが精一杯だからな!

 

「だからモカちゃんが買うよ、シン君の分もね〜」

「は?なんでさ」

「いやー昨日色々やっちゃったし〜?」

 

 あー、あのことか別に気にしなくていいのに

 

「別にいいって、さっきも言ったろ?俺は大丈夫だからさ」

「モカちゃんが大丈夫じゃないの!買うね〜」

「お、おい!?」

「なんだお前、モカに買わせるのか?」

「店長違います!これはですね!?」

 

 今は店長がレジしてるんだった!ほらね!やっぱりこうなる!何かいいことがあるといつも不幸が起きる!俺の人生はこんなことばかりだよな!

 

「そのうち返してやれよー?いつか大物になって俺も見返してくれ」

「あ...うん!」

「阿呆、うんじゃなくてサーだろ?」

「イエス!サー!」

「お〜これまたモカポイントが貯まりましたね〜」

「だってさよかったなシン」

「て、店長までこいつのわけわからん遊びに付き合うんすか!?」

 

 この店長はいい人なんだけどすぐに遊び出す人なんだよなーまあこんな俺を雇ってくれてるからいいけどさ

 

 宿泊研修に必要な物は買い揃えたところでモカと一緒に帰っていた。

 

「なんでお前と帰ってんだよ」

「途中まで一緒だからいいじゃん〜」

「まあ途中まで我慢してやるよ」

 

モカとは同僚で結構長くいるがあんまり一緒に帰った覚えがないからな、まあ今回ぐらいは一緒に帰ってやってもいいか

 

「...研修不安?」

「んー友達ができるか少し不安だな」

「シン君見た目悪いからね〜」

「俺ってそんなに見た目悪い!?イケメンじゃないの!?」

「んーイケメンだと思うけどー柄が悪いって言うか〜」

「イケメンは認めてくれるのね、モカは」

 

 できればリサ先輩にシン君イケメンー!って言ってもらいたい人生だよ、とほほ

 

「まあ〜楽しむしかないよ〜」

「一度きりの人生だよ?全力で楽しもうよ」

 

 おーとモカは声を出し腕を上げていた。ふっ、一度きりの人生楽しむか…俺は楽しめているのだろうか...んなことより!

 

「よし!宿泊研修で友達1人でも作るぞ!」

 

 おー!と言いモカの真似をしながら気合を入れた。




少しでもいいなと思ったら是非感想と評価をお願いしますね!!


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弦巻シンには友達ができた

今回から彼女が登場します...それではどうぞ!


 宿泊研修とは生徒の仲を深めるためにあると聞いた。ぼっちの俺は行ったところで友達がいなくて悲しい研修になる...だがな!ここで諦めたらダメなんだよ!?友達がいない?だったら研修中に作ればいいんだよ!

 

「みんなバス乗ったなー」

 

 先生のその一言で生徒の確認をとりバスが出発した。

バスの席順?そんなの決まってるだろ?一人じゃないんだよな!一番後ろの席は6人座れるからな!わざと選んだんだ

俺抜きでワイワイし始めている、ん?まて、なんだあれは?

 

「ね、ね!それなんなの?」

「...これ?」

「そう!その手に持ってるやつ!」

「携帯電話だよ?」

 

 け、携帯電話!?携帯電話ってあのパカパカするやーつじゃないの!?え?ちょっと目を離した隙に進化しすぎじゃないか?(ちょっとって言って10年近く経ってます)

 

「今どき携帯電話知らない人初めて見たよ」

「いや、そのーいろいろ事情があってさ...」

「へーあ、私山吹沙綾!よろしくね」

「え、えっと、シン!じゃなくて弦巻シンです!よ、よろしくね」

 

 これはいけるぞ!友達初GETになるか!?

 

「事情ってなんなの?」

「あ、えっと」

 

 俺はこの山吹さんにこれまでのことを話した。彼女は俺の話を真剣に聞いてくれた。聞き終わると

 

「あははっ!こころって昔から変わらないんだね!」

「なっ!こころと友達なのか!?」

「うん、バンドもしてるからね」

「あ、うん」

 

 そ、そうか山吹さんもバンドしてるんだ...

 

「着いたみたいだね!降りよっか」

「うん」

 

 隣には友達がいたはずなのに俺にわざわざ気を使ってくれてまじで助かったよ、彼女はわかる!とてもいい人だ!是非友達になりたいレベル

 

 着いた先は山の麓で泊まるための施設があり、ご飯を食べるための広い野原がある

 

「よーし、適当にグループ作って飯食っとけ」

 

 で、出ましたよグループ、ぼっちのやつにとって辛いことだぞ!?

 

「シン!一緒に食べましょう!」

「はぁ!?なんでお前と食べんだよ!」

「もう長いこと一緒に食事をとってないわ!久しぶりにシンと食べたいわ!」

「あーはいはい、俺は食べたくないんだよ」

 

 なんでこころと飯を食わなきゃならんのだ、それにその弁当はなんだよ!?捨ててもいい容器にご飯詰めて持ってくるって話忘れてたのか?あとはコンビニ飯とか持って来いって話だったろ?俺は貰ったもの持ってきただけだけどさ!

 

「シンはお母様の料理食べたくないの?」

「!」

 

 た、食べたい、食べたいけど!ここで負けたら終わりだ!

 

「シン君も食べようよー私もいるしさ、ね?」

 

 ま、眩しい!山吹さんの笑顔がめちゃくちゃ眩しい!けどよく考えてみて?俺は山吹さんとご飯食べたいよ?けど周りの人達がどう思う?もし俺と仲良くなったせいで山吹さんがハブられることが起きたら?想像しただけで怖いな

 

「い、いや俺はいいよ!一人で食べんの慣れてるしな!」アハハ

 

 と言って走ってその場から離れた。

 

 (山吹さんのためだ...うん!そうだ!)

 

 走ってその場から離れたのはいいが、ここ何処だ?目の前には女子生徒がたくさんいるが...なんだここは?

 

「あれ〜?シン君?」

「!」

 

 こ、この声には聞き覚えがあるぞ...!

 

「もう〜そんなにモカちゃんに会いたかったの?」

「も、モカ!なんで此処に!?」

「こないだ言ったじゃん、一緒の所だって〜」

 

 そ、そうだった!思い出した!一緒に必要な物買ったな

 

「誰がお前に会いに来るかよ!」

「またまた照れちゃって〜」

「だいたいお前!...な」

「「「「...」」」」

 

 なに!?怖!なんで後ろの人達ずっと黙って俺の事見てるの!?てかこの人達ってこないだライブしてた人達じゃん

 

「あ、みんな紹介するね〜友達のシン君でーす」

「いや、いいってモカ」

「いやだよ、モカちゃんが紹介したいから紹介するのだ〜」

 

 だったら紹介だけでもされとくか

 

「あ、えっとシン...です」

 

 弦巻って言ったらなんとなくダメな気がしたからな、やっぱりこの苗字は嫌だな

 

「モカと話してる時と話し方違うけどなに?」

「え!?えっと、友達だから?」

「じゃー友達になったらそのウザイ話し方やめてくれる?」

「う、ウザイ!?」

「おい蘭言いすぎだろ、アタシは宇田川巴だ!よろしくなシン!」

 

 う、宇田川巴さんね、おっけおっけ

 

「で、このツンツンしたやつが美竹蘭だ」

「ツンツンしてないし!」

「はいはーい!上原ひまりだよ!気軽にひーちゃんって呼んでもいいよ!」

「私は羽沢つぐみです、シン君よろしくね!」

 

 上原ひまりさんに羽沢つぐみさんね

 

「みんないい人だから友達になってくれるよ?」

「え?いや、えっとだな」

 

 言えないよな、俺は彼女達みたく何か全力で取り組んでいるようなものが何もない、強いていえばバイトぐらいしかできない俺が彼女達と果たして友達になってもいいのか?

 

「「「「「...」」」」」

「あれ?みんな黙ってどうしたの?」

「おい」

「!」

 

 後ろ向くと担任が立っていた。

 

「何処にもいないと思ったら他校の生徒をナンパか?」

「い、いや!違いますよ先生!」

「この状況で言い訳できるのならして見せろ」

「いやだから彼女達は俺の!...俺、の」

 

 友達だ!って言えないよな...

 

「はい、ナンパだな、後で反省文書けよ」

「い、嫌だ!待ってよ先生!」

 

 先生に引っ張られる形でモカ達とサヨナラになった。

 

 

「聞いた?弦巻君他校の生徒ナンパしてたんだって」

「あ、さっきねしかも女子高の生徒でしょ?」

「やっぱりちょっと怖いよね...関わらないようにしないとね」

 

 おい!なんでもう出回ってんだよ!?なんで!?なんでなの!てかナンパなんてしてないから!モカ達とお話してただけだろ?勝手に決めつけないでくれよ!

 

「よし、それでは今から登山を行うがその前に準備運動をおこなう、2人組を作れ」

 

 待てよまたなんでそんなことを…先生俺の事いじめてない!?教育委員会に報告しちゃうよ!?でも俺はな!

 

「せ、先生!」

「なんだナンパ野郎」

「「クスクスッ」」

 

 く、クソー!!

 

「2人組を作れってのは悪い文明です!必ず誰かが余ってしまいます!」

「確かにそうだな...」

 

 よし!この反応なら行ける!いやー口に出してみるものだな!そう思ったが

 

「余ったら先生と一緒にするか」

「なんでそうなる!?」

「はい、2人作った作ったー」

 

 そう言われいろんな人達が2人組を作り出した。ヤバイ、早くしないと余って先生と一緒に準備運動をする刑になってしまう!

 

「ね、ねぇ!」

 

 と声をかけるがスルーされ

 

「なぁ!」

 

 と言っても無視され

 

「か、完全に終わった」

 

 その場で膝をつき四つんばいの体制になっていた。この世の神は俺を見放したんだ畜生!と思った時

 

「シン君、一緒にやろうよ」

「え!?」

 

 そう言って山吹さんが手を差し伸べてくれた。

 

「い、いいの!?」

「いいよ、香澄は先生としたいーって言ってたしね」

 

 それを聞いて先生の方をみると確かに誰かと一緒に準備運動をしていた。

 

「お、お、お願いします!!」

「こちらこそよろしくね!」

 

 笑顔が眩しい!ここにいたかマイエンジェル!彼女は本当に優しい人だ!

 

「なんか視線集めてるね」

「あー俺なんかとしてるからだな、ごめん」

 

 2人で背中を伸ばすあれをしていた。まああれって言ったらわかるでしょ?きっと、そんな中ずっとじーって見られてる気がする、やっぱり俺とやってるからかな?

 

「あははまあ私は気にしないから大丈夫だよ」

「や、山吹さん!」

「沙綾でいいよ?私もシン君って呼んでるし」

「じゃ、じゃー沙綾さんで」

「はーい」

 

 その後も準備運動を続け最後にずっと気になってたことを聞いた。

 

「あ、あのさ!沙綾さん!俺達ってど、どんな関係?」

「え?えっとーさすがに名前呼びだけで友達越えるのは違うかとー」

「いや違う違う!...って友達!?」

「うん!今日から友達だけど?どうしたの?」

 

 ヤバイ涙が出そうだ、高校生になって初めて友達ができたぞ!涙が出そうだがそれを頑張って堪えた。

 

「それじゃ登るぞー好きなやつと登っていいから」

 

 よし!なら!

 

「沙綾さん!一緒に」

「さあやー!一緒に登りましょう!」

「いいよーこころ」

「シン君は?」

「シン!あなたも一緒に登りましょうよ!」

 

 なんでいつもお前は俺の邪魔をするのかな!?

 

「...いや、いいよ!他のやつと登るから!」

 

 じゃ!っと言い先頭の男子軍団の所に向かって行った。

 

「ねぇ!俺も一緒に行ってもいいかな?」

「「「「...」」」」

「弦巻!お前さっき山吹さんと2人で準備運動してただろ!?」

「羨ましいぞこの野郎!?」

「イケメンっていいよな!?」

 

 え、えー!なんかめっちゃキレてる!?なんで!なんかしたか俺?

 

「お前みたいなイケメンは知らん!サラバだ!」

「な、なんでだぁ!!」

 

 ドタドタドタと走って先に行ってしまった。こ、こうなるなら素直にこころいるの我慢して紗綾さんと一緒に登ればよかったよ...

今になって後悔したシンであった。




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弦巻シンは考えすぎた

考えます、ではどうぞ!!


 1人で山を上るとどーなりますか?

 

「...迷った」

 

 そう、そんなの迷うに決まってる

 

「迷ったぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁぁあぁぁぁあああ!!!!!」

 

 山の崖の上にて1人悲しく叫んでいた。

 ま、待ってくれ!俺はただ友達が欲しかっただけなんだ!なんでこんな目に遭うの!?

 

「これも全てこころのせいだ!あいつが紗綾さんを連れていかなければな...!」

 

 まあ着いていかずに1人で登り始めた俺が1番悪いけどな!わかってんじゃねーか!

 

「と、とりあえずどーするか」

 

 今は崖にて休憩しているが...まさかここがゴールってわけじゃねーよな?こんな危ないところがゴールだと怖いよな

 

「...1回下までおりてみるか」

 

 下まで降りて、道をちゃんと確認しながら登れば目的地には到着できる、できるんだけど...

 

「体力めっちゃ使う!」

 

 自慢じゃないが運動能力には自信がないんだ。恐らくモカよりもないと思う、てかあいつ結構ありそうだよなーバンドもしてるし

 

「バンドって言ったらみんなしてるよなー」

 

 今覚えばみんなしてる。こころに沙綾さんそしてモカ達...みんな、みんなバンドをしてる。何か一生懸命に取り組めることがあるっていいよな...俺なんか親に反抗して家を出て、特にやることなくて毎日を生きるためにバイトをし続けるだけの人生。これでいいのか?

 

「人生一度きりだよ?楽しまなきゃ」

 

 モカが言ったセリフだ。俺は人生を楽しむことができてるのだろうか...いっそのこと家に戻ればバイトをする必要がなくなりやりたいことをみつけて取り組むことができるかもしれない。

 

「うわぁ!」

「...いってー」

 

 考え事をしてる時に盛大にコケてしまった。コケてコケて転がり続けて下まで降りていた。

 

「...痛えぇ!なれない考え事しながら山の中歩くからこんなことになるんだよ!」

 

 誰もいないと思い大声で文句を言っていたら

 

「あれ?またまたシン君?奇遇ですな〜」

「!」

「な、なんでいるの!?」

「シン君が急に飛び出してきたんじゃーん」

「ほら〜ひーちゃん泣いてるじゃん」

「え?」

 

 時は少し遡る

 

「疲れたぁー少し休憩しようよー」

「ひまりーこんなので疲れてたらライブ中体もたないぞ?」

「ら、ライブは楽しいからいいの!」

「それだと登山が楽しくないみたいな言い方だよ?」

「登山も楽しいけど足が疲れるの!」

「もういい!絶対ここで休憩するからね!」

 

 と、いいひまりは石の上に座り

 

「じゃあ休憩しよっか」

「流石蘭!わかってる!」

「...1分だけね」

「ご、ごめんって!5分だけ」

「5分あればカップラーメン1個作れるよね〜」

「ああそうだな!あーここ何日間ラーメン食えねーのかー昨日食っとけばよかったよ」

「終わったらみんなで食べに行こうねー」

「あ、シン君連れて行ってもいい〜?」

「あいつ嫌い」

「蘭そう言うなよな」

「...うん」

 

 ガサガサガサガサ

 

「な、なに!?」

「森の中から音が聞こえるよ!」

「しかもだんだん近ずいてくる〜」

「もしかして熊!?やだよ!まだ私死にたくない!!」

「ひまりちゃん大丈夫!死んだフリしよう!」

 

 と言いつぐみは死んだフリをするが

 

「つ、つぐー!?大丈夫!?ねえつぐ返事してよ!?」

「うわぁぁぁん!!!」

「...つぐみも起きてやれよ」

 

 ひまりにはネタが通じないようだ

 森の中から音の原因である人物が出てきて

 

「...痛えぇ!なれない考え事しながら山の中歩くからこんなことになるんだよ!」

 

 時は戻ります

 

「つぐが!つぐがぁあ!!」

「大丈夫だって、フリだからさ」

「く、熊じゃなかったの!?よかったー!」

「つ、つぐー!」

「ひ、ひまりちゃん!?」

「本当に死んだかと思っだよー!」

 

 上原さんが号泣している、一体何があったんだよ!

 

「何があったんだ?」

「シン君が驚かすからこうなったんだよ!?」

「えー!?俺なんかしましたか!?」

「...本当にうっざ」

 

 うう、美竹さんから何か言われたが気にしないぞ、気にしない!

 

「そんなことよりシン君なんであんなところから出てきたの〜?」

「ああ、道に迷ってな、考え事しながら歩いてたら盛大にコケてここまで転がり続けたんだよ」アハハ

「1人で登るからだよ、友達できてないの〜?」

 

 友達はできてるがただ一緒に登ってないだけ...なんて言えたもんじゃねーよ!

 

「と、友達は今作ってるところだ」

「友達友達ってそんなに友達いないのか?」

「い、いねーよ!ボッチなめんなよ!?」

「はっ!」

 

 しまった!ついモカに突っ込むくせでいつもの口調になってしまった!

 

「ご、ごめん!えっとー友達いません!はい!」

「...あんたさまじその話し方なんなの?」

「...」

「なに?友達じゃないあたし達には一生そのウザイ話し方するの?」

「い、いや俺は...」

 

 友達じゃないやつにモカと同じような話し方してるとなに?こいつ調子乗ってね?って思われるものじゃないの!?なんで丁寧に話してるのにウザがられるんだよ!

 

「友達になったらその話し方やめてくれる?」

 

 友達になりたいよ!なりたいけど俺は...

 

「無理だよ...君達と俺のいる世界は違うんだよ...」

 

 無理なんだ、俺は彼女達みたくなにかに真剣にましてや全力で取り組むものが何もない。バイトは生きるためにやってるだけであって取り組んでるわけじゃないんだ。俺に友達になる資格なんてないんだよ

 

「シン君」

 

 そんな時だ

 

「シン!こんな所に居たのね!」

「こころ!?」

「あら!蘭達もいたのね!」

「先生が心配してたわ!早く頂上に行きましょう!」

 

 と言い俺の手をとるこころだが

 

「シン君とこころって付き合ってるの!?」

「ん?なんで?」

「だって手!繋いでるじゃん!」

「違うの!?」

 

 この人は...手を繋いでいるだけで恋人になるのか!?し、知らなかった...だったら

 

「離せよこころ!」

「あっ、もう乱暴ね」

「なんだ、シン友達いるじゃん」

「この人は友達じゃないよ!」

「そうよ!」

「ま、待てこころ!」

 

 彼女達に知られたくない!

 

「シンは私の弟よ!」

「「「「え?」」」」

 

あーあこいついいやがった。これで弦巻家の1人ってバレたな、本格的に彼女達とはもう...友達になれないかもね




急いで書いたので誤字や脱字があるかもしれません、どうか許してください!感想などを受けるとモチベが上がります!それと少しでも面白いと思ったら投票もよろしくお願いしますね!では次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンは信頼をえたが...

今回からシンは彼女達と結構絡むようになります!それではどうぞ!!


「シンは私の弟よ!」

 

 こころのやつが言いやがった。

 一番知られたくなかったのになんで言うかな!?

 

「え!?じゃあシン君とこころは双子の姉弟なの!?」

「ええそうよ!」

「言われてみれば似てるな」

「モカは知ってたの?」

「知ってるよーだって同じバイトだし〜?」

「モカはシンと同じバイトなのね!様子はどうかしら?迷惑かけてない?」

「バッチグー彼はよく働いてくれてるよ〜?」

「ぼ、ボス!?」

「何かようかい〜?コードネーム弦巻シン君」

「それってコードネームじゃないよね!?本名だよね!?」

 

 しれっと本名言わないでくれるかな!?

 

「ふふっ、こころちゃんは弟思いなんだね!」

 

こいつが弟思い?なわけないだろ!?

 

「なわけないだろ!?てかなんでお前がここにいんだよ!」

「先生が呼んできてって!みんなもう着いてるわよ?」

「...なるほどな」

 

 でもだからって1人で来んなよ!もし怪我でもしたらお父様になんて言われるか...想像しただけで怖ーよ!

 

「わかった、わかった、俺一人で行くからお前一人で先に行けよ」

「ダメだわ!先生に頼まれたもの!」

「はぁ?」

 

 またまた時は遡り

 

「みんないるかー」

 

 頂上に着いた先生はみんながいることを確認した。

 

「先生ーシン君がいませーん」

「またあいつはナンパか?」

「いやーそれは違うかと」

「どうした?山吹?」

「シン君言ってました。あれは友達なんだって、勘違いされてて落ち込んでましたよ?」

「...そーだったのか、悪いことしたな」

 

 沙綾がその話をするとみんなは

 

「そうなんだ、勘違いしてたね」

「後で謝っとこうか...」

「でも関わるの怖いー!」

「弦巻姉、弦巻弟を連れてこい」

「任されたわ!先生!」

 

 時は戻り

 

「だから一緒に行きましょう!」

「い!や!だ!」

「なんでよ!昔はあんなに私の後をついてきてたじゃない!」

「そ、それは昔の話だ!お前恥ずかしいこと言うなよな!?」

「だいたいお前はな!」「シンはね!」

 

 姉弟喧嘩が始まりそれを見ている仲良し5人組は

 

「なんか姉弟喧嘩って初めて見たぜ」

「巴ちゃんはあこちゃんと喧嘩しないの?」

「あことは仲良いからな!喧嘩なんてしないさ!」

「いいなー!私なんてお姉ちゃんとよくお菓子の取り合いになるよ!」

「それ喧嘩じゃないじゃん」

「い、一応喧嘩なの!」

「んーモカちゃんと蘭は一人っ子だからわからないねー」

「いたらいたでめんどそう」

「またまたそんなこと言って〜モカちゃんが妹になろっかー?」

「い、いらないから大丈夫」

 

 こ、こいつら俺がこころと口論をしてる時なんて話をしてるんだ!俺も混ざりたいだろ!?

 

「もういい!俺は彼女達と一緒に登るんだよ!」

「なら私も登るわ!」

「だ!か!ら!お前はいらねーっての!?」

 

 そんな時だ

 

「あたしはあんたの方がいらないね」

「え?」

 

 美竹さんがそう言った。

 な、なんで?確かに俺は彼女達と友達じゃないけどこころと登るより彼女達と登った方がましだし楽しいと思う、なのに...なんで!?

 

「あたし達はこころと友達だけどあんたとは友達じゃない」

「っ!」

「住む世界違うって...大金持ちのあんたと市民のあたし達とは違うって言いたいんでしょ?」

「なっ!?ち、違う!」

「じゃあ何が違うの?」

 

 確かに俺が弦巻家ってバレればそう思うのも無理はない。けど俺は違うんだよ!別にお金持ちだからとか市民だからとかそんなの関係ないんだよ!俺はただ、ただ

 

「俺は、俺は君達みたいになにかに全力で取り組んだり君達に見合うものを持ってないんだよ...」

「って何言ってんだろ俺!あ、先行きますね、さよならー!!!」

 

 彼女達に言うだけ言ってそこから逃げ出し頂上に向かって走り出した。

 

「「「「「...」」」」」

「ちょ、ちょっとシン!」

「ごめんね?」

「こころが謝る必要ないよ」

「にしても蘭少し強く言いすぎだぞ?」

「...少し反省してる」

「もうーシン君泣いちゃうよ〜?」

「...シンはね、きっと友達が欲しいのよ」

「うん、知ってるー」

「昔友達選びを失敗して酷い目にあったから...」

「でもあなた達ならきっといい友達になれると思うわ!シンと友達になること少し考えてくれれば嬉しいわ!」

 

 こころもそう言うと「まてまてシンー!」と言って頂上に向かった。

 

「あたしは友達になりたいけどなー」

「でもそれをシン君が拒むからね〜」

「ていうかもう既に友達じゃなかったの?」

「うーん私たちが思っててもシン君が思ってなかったらね...」

「蘭がさっき酷いこと言ったからねー」

「っ!」

「で、でもこれで諦めたら所詮その程度のものだったってことだよ」

「お〜言いますな、蘭さんー」

「か、からかわないで!」

 

 その頃シンはと言うと

 

「だはー!つ、疲れたぁ」

 

 逃げるようにあの場をあとにしたあと1度も止まらず頂上まで走ったらクソ疲れた!も、もう歩くことすらきついよ...

 

「あ、お疲れ様ー」

「さ、沙綾さんーどうして俺を置いていったのー!?」

「あははーどちらかと言うとシン君が私達を置いていった方が正しいかな?」

「うっ!ま、まぁーそうだよねー」

 

 畜生!こころさえいなければこんなことにはならなかったんだよ!

 

「立てる?」

 

 沙綾さんが手を出してくれてる!なにこの状況!?めちゃくちゃいいシチュエーションじゃん!もう友達沙綾さんだけでもいいかもしれない!...が、沙綾さんの手を取る瞬間にたくさんの視線を感じて見てみると男子のみんなからの視線だった。

ま、まずい!ここで沙綾さんの手を取ったら!...さっきみたいになってしまう!

 

「じ、自分で立てるよ!」

「そう?ならよかったよ!」

「おっしゃー!完全復活シン様だぜ!」

「あ、あははは」

 

 沙綾さんが苦笑いしてる

 こんなネタしなければよかったぁぁああ!!

 

「弦巻...」

「ど、どうした?」

 

 さっきの男子集団の奴らが近寄ってきた。

 な、なんだ?また何か言われるのか!?

 

「俺達が間違ってた!すまん!」

「へ?」

「お前が弦巻家だからやばいやつだって思ってたけどさ」

「さっき山吹さんが違うって言っててさ」

「俺達の勘違いだって知ったんだ!」

「お、お前ら!!」

 

 やっとだ!やっとわかってくれた!やっとって言ってもまだ数日しか経ってないけど嬉しい!めちゃくちゃ嬉しい!元々少なかった男子とやっと分かり合えた!きっとこいつらとなら!

 

「だ、だったら俺ととも」

「シーーーーン!!!」

「ぬわっ!」

「もう一人で行ったら危ないじゃない!」

「急に抱きつくのも危ないと思うぞ!?てか離れろよ!!」

「はっ!」

 

 ま、まずいぞ

 

「弦巻...」

「な、なんですか?」

「「「「「やっぱりお前は俺達の敵だ!!」」」」」

「なんでいつものこうなるの!!!!!!」

 

 あらかたこころのやつが抱きついてきてそれに嫉妬したんだろう、でもそれは違うだろ!?

 

「お、おい待ってくれ!」

「弦巻知ってるかー?信頼ってのは上げるのは大変だけど些細なことで無くなるんだぞ!?」

「ガーン!……」

 

 こ、この学校の数少ない男子とやっと仲良くなれると思ったのにー!!

 またまた膝をつき四つんばいになり落ち込んでいた。

 

「シン大丈夫よ!また上げればいいわ!」

「お前のせいで一生上がらねーんだよ!!」

 

 山の頂上にて弦巻シンは叫んでいた。

 

 (俺って最近叫びすぎじゃね!?)

 

 ...知りません。




今回の話を含めてまだ6話しか投稿してないのにもうUAが4000超えました!ありがとうございます!そして☆8で投票してくれたpepepe-さんありがとうございます!!少しでも面白いっと思ったら投票と感想よろしくお願いしますね!ではまた次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンは初めておっぱいを見た!

前話で沙綾を紗綾と間違えてました。誠に申し訳ございません!すぐに報告が来たので直しました。さて宿泊学習と言えば!そうお風呂ですね!それではどうぞ!!


 登山をした後山の頂上にて集合写真を撮ることになった。もちろん俺は1人で撮ることになると思っていたが...こころのやつが俺と撮りたいとか言い出し、俺は拒否したがもめてる間にシャッターを押され事実上こころと隣で写真を撮ったようなものになった。

 その後特に何も起きずに平和に下山することができた。俺はどうしてたかって?みんなから離れないように後ろから着いて行っただけだよ!

 その後はすぐに疲れお風呂に入ってもいいって話だったから大浴場に行き1人で温泉に浸かっていた。

 

「1人で温泉って悪くないな」

 

まあいつも家で1人で入ってるがあそこはここより広くないしな!ここより広い風呂があるのは実家ぐらいだろ

 

「って!ちがぁぁぁぁああうう!!!!」

 

「なんで1人で大浴場に入ってるの!?」

 

「普通はみんなと楽しく入るんじゃないの!?」

 

「なんで誰もこねーんだよ!?」

 

 そう、もう入浴してもいい時間のはずだ!なんで誰も来ないの!?そんなにみんな疲れてないの!?それとも俺抜きで楽しい遊びとかしてるの!?ねぇ!誰か来てよ!300円上げるからさぁ!

 

 バシャーン

 

 ん?この音は!誰か入ってきたのか!?よ、よかったーこのまま俺一人かと思ったぜ

 

 バシャバシャバシャバシャ

 

 お、おい!なに温泉で泳いでんだよ!全くマナーがなってないな!世間知らずの俺ですら大浴場でのマナーぐらい知ってるぞ!※自分で世間知らずだと認めている模様

 ったく、注意してやるか

 

「おーい、大浴場で泳いじゃいけませんよー」

 

「「えっ!?」」

 

「あ、弦巻君だ!」

 

「な、なんで男湯にお前が!」

 

 その時大浴場前にて

 

「おい新人!ちゃんと大浴場の男湯と女湯ののれん変えたか?」

 

「はい先輩!5分前に変えました!」

 

「5分前に...?馬鹿野郎!きっちり6時に変えないとダメだろうが!」

 

「へ?」

 

「6時前までは男湯が大浴場で女湯が普通の浴場だろ!?」

 

「6時から変わること忘れたのか!?」

 

「そ、そうでした!」

 

「もし変える前に入ってたらやばいだろ!?」

 

「で、でもそんなアニメみたいにギリギリで入るやつなんていませんよ!」アハハ

 

「それもそうだな!ほっといても大丈夫だよな!」アハハ

「「あはははっ!!」」

 

 

 おーーーい!!!!聞こえてますよ!?それよりこの状況...最悪だ!

 

「だってさー良かったね、アニメみたいなこと起きてるよ?」

 

「よくねーよ!花園さんだっけ?てか!む、胸見えてるから!」

 

「え?私は別にいいよ?減るものじゃないし」ドヤ

 

 

 意味がわからない!なんで今ドヤったの!?ねぇ!そんなことより!

 

 

「やばいどうしよ!みんなが来たら俺の人生終わっちまう!」

 

 

 もし俺が女湯にいたってことがバレると

 

 

「見て見て、女湯に入った男子ってあの人らしいよ」

 

「しかも弦巻家なんだって!」

 

「うわ、やっぱり危ない人だ」

 

 うわぁぁぁああああああああぁぁぁ

 それだけは絶対にやだー!!!!!!

 

「ねえ、花園じゃなくておたえって呼んでよ」

 

「この状況でよくそんなこと言えるよね!?」

 

「人間みんな生まれた時はスッポンポンだよ、だから裸の方が仲良くなれると思うの」

「な、何を言ってるの!?」

 

「あ、香澄達少し遅れるって言ってたから今から出れば間に合うかもね」

 

「きゅ、急だな!まあいいありがとう!すぐに出る!」

 

 目指すは出口!浴場から出て急いでパンツを履いて誰にも見られずにのれんをくぐり生還する!これしか俺に道は残されていない!

 

「すごーい!見て見て沙綾!とても広いよ!」

 

 な、なーむチーン

 

「ベストタイミング!香澄!」

 

 な、何を言ってんだあんたは!?と、とりあえず近くにあった岩場に身を隠した。

 

「おたえ!って何が?」

 

「なんでもないよー」

 

「じゃあ早速お湯に浸かろうかなー」

 

 

 やばい、やばいやばい!花園さんの友達ならこっちに来るはずだ!ど、どうする!?

 

「待って香澄!先に体洗わないとね♪」

 

「そうだね!沙綾洗いっこしよー!」

 

「いいよー」

 

 沙綾さんやっぱりあなたはいい人だ!どれだけ彼女に救われたことか!

 

「で、どうするの?香澄達が来たってことはこの後みんな来るよ?」

 

「すごく冷静だね、花園さん」

 

「花園じゃなくておたえ!」

 

「お、おいあまり大声出すなよ!」

 

「あ、うん」

 

 両手で口を押さえつけて可愛いやつだな!って!さっきから胸隠せって言ってるのになんで隠さないのかな!?目の前にちょうどいいサイズのメロンが2つあるんですが!!!

 

「ん?なんかシン君の声しなかった?」

 

「「!?」」

 

「ん?したかなー?」

 

「おたえも一緒に体の洗いっこしようよー!」

 

「ごめん、先に洗った」

 

「そーなんだ!ちょっと残念...」

 

 

 す、すまんな花園さん俺の為に沙綾さん達と一緒に体洗いたかったはずなのに

 

「明日あるしね」

 

「俺に明日はあるのかな?」アハハ

 

 もうマジで泣きそう、なんでこうなるの!?新人さんまじで許さないからね!?

 

「あ!サウナルーム!あそこに行けばいいんじゃないかな?」

 

 と指を指すが行動一つに一つで胸が揺れるんだよ!なに!?見せびらかしてるのかな!?

 

「あ、今夜私の胸思い出してイラやしいことしないでね?」

 

「す、するわけないだろ!?」

 

 急に何を言い出すんだよあんたは!

 

「で、でもどうやって移動するの?」

 

「私が平行移動するからその後ろに隠れて移動するのは?」

 

「ナイスアイディアだ花園さん!」

 

「花園じゃなくてお!た!え!」

 

「しつこいぞ!?これで3回目だぞ!?」

 

 この状況よりあんたは呼ばれ方を気にするのですか!?そんなこと気にするより今自分の状況わかってくれよ!目の前に異性がいるんだよ!?お互いスッポンポンで普段絶対に見えないものがお互い見えてるんだよ!?

 

「私ってスタイルいい?」

 

「知らねーよ!」

 

「自分では結構いいって思ってるよ?」

 

「ならいいじゃないでしょうか!?俺は今日初めて育った異性の裸を見たんです!」

 

「弦巻君って痩せてるね!」

 

「あーダメだ!...話が通じない!」

 

 この花園さん「おたえ!」あー!俺の脳内にまで入ってくるな!!この人は話が通じない!でも今頼れるのはこの人だけなんだけど...なんでこの人俺に協力してくれるんだ?普通なら

 

「きゃー!変態よ!」

 

 って言って俺は学校を立ち去ることにもなるかもしれない状況だぞ!?なのになんで...

 

「ど、どうして俺の脱出に協力してくれるの?」

 

「なんでってー友達だから?」

 

「え?俺達いつ友達になった?」

 

「さっき」

 

「なんで?」

 

「お互い裸だし友達だよ」

 

「い、意味がわからんがとりあえず友達って言ってくれてありがとう!!!」

 

「よし!行動開始だ!」

 

「おーう!」

 

 お、おい!?

 

「おたえまたどうしたの?」

 

「なんでもないよ!」

 

「ば、馬鹿野郎!?何考えてんだよ!」

 

「ごめんごめん」

 

「じゃあーいくよ!いちにさんしーにーにさんしー」

 

 いいぞ!このままのリズムで行けばサウナルームまで行ける!サウナルームに入った後なんて知らない!鍵があるなら誰も入れないように鍵をかけるだけだ!

 

「おたえ...何してるの?」

 

「「!?」」

 

「い、いやーストレッチだよ!いちにさんしーにーにさんしー」

 

「あ!私もやりたーい!」

 

「あ、香澄やる?」

 

 お、おい!なに普通に誘ってんだよおたえ!あ、おたえって呼んでしまった、まあいいや友達って言ってくれたしな!ってそれはどうでもいいんだよ!おたえと向き合ってるってことはめ、目の前に戸山さんがいてその胸とあそこが丸見えでーや、やばい鼻血が

 

「お、おたえ!血が!」

 

「ん?あー、ちょっと生理かも」

 

「なんだ!安心した」ホッ

 

ホッじゃねーよ!普通生理中風呂入ると血って出るのか?いや知らんけど!鼻血出した俺が悪いけどさ!

 

「いやーとても広い大浴場だなー」

 

「りみー大丈夫?」

 

「うん、平気だよ美咲ちゃん」

 

「これが日本の温泉ですね!!」

 

「私大浴場なんて初めて来たわ!」

 

「こころの家の風呂もこれぐらい広いでしょ?」

 

「けどみんなとお風呂に入るのは初めてだわ!美咲!」

 

「はいはい、楽しみですねー」

 

「こころん一緒に泳ごうよ!」

 

「北沢ー浴場で泳ぐなよー」

 

「はーい」

 

ガヤガヤザワザワ

 

「「!?」」

 

 最悪だ、先生とみんなが来た。とりあえずおたえに背中をトントンとして合図出そうと思ったが

 

「ひゃん!?」

 

「「お、おたえ!?」」

 

 ガハッ!きゅ、急に変な声出すなよ!お湯が口の中に入っただろ!

 

「な、なんでもないよ」

 

 そのままさっきと同じ動きで俺が最初にいた岩場に戻ってきた。

 

「ど、どうしよか...」

 

「これはあれだね、諦める?」

 

「諦めねーよ!俺はここから抜け出し生きて帰るんだ!」

 

 

 こんな所で見つかってみろ!本当に人生の終わりだぞ!?

 

「先生の体って大人って感じだなー」

 

「そうだろ?戸山もいつかこんなんになるさ」

 

「えへへーなれたらいいな!」

 

 先生は自分の胸を持ち上げ生徒達に話していた。

 

「私はどうかな?」

 

「め、目の前で同じ行動をするな!」

 

 そんな時だ

 

「お?弦巻、お前結構胸あるんだな」

 

「そうかしら?自分ではわからないわ!」

 

 な、なにー!?こころの胸の話だと!?あいつって貧乳じゃなかったの?最後に見た中学の時はまだあんまりなかったような...

 

「ねえ私って大きい方?」

 

「あー!さっきからなんなんですかあなたは!?」

 

「しー大きい声出すとバレるよ?」

 

「くっ!」

 

 お前のせいだろ!!!って大声で言いたい!なんなんだこいつはまじで!

 

「沙綾も大きいと思うわ!」

 

「え!?わ、私!?」

 

「確かに...沙綾の形がいいよね!触らせてよ!」

 

「ちょ、ちょ香澄!それはダメだから!」

 

 な!?沙綾さんの胸の話だと!?こ、これは是非聞きたい!...ってそんなこと考えるなんて俺は変態か!(変態です)

 

「私って形も」

 

「わかった、おたえの言いたいことはわかったから少し黙ろうか」

 

「(✱・H・✱)キュッ」

 

 か、可愛いやつだがおかしいやつだよな...

 

「わ、私よりほら!有咲の方が大きいし形もいいよ!」

 

「あー確かに、市ヶ谷さん大きいからね」アハハ

 

「いいですよねー胸が大きいって」

 

「み、美咲ちゃん!?美咲ちゃんも大きいから、だ、大丈夫だよ!」アセアセ

 

「あはは、ありがとうりみー」

 

 ダメだ、みんな胸の話しかしない!ここに男子がいるのに!でも彼女達は知らないんだよな俺がいるって!

 

「若宮やっぱりモデルやってるだけスタイルいいな」

 

「はい!毎日レッスンして維持してます!」

 

「日本には美味しいたこ焼きやお好み焼きなどあり来た時は食べすぎて太ってしまいました...」

 

「でも!それから血が滲むような努力の末前よりもいい体型になりました!」

 

 うんうんわかるよ、たこ焼きとかお好み焼きって美味いよね!俺なんて弦巻家にいた時食ったことないからモカに食わされた時はとても感動したもんだよ

 

「たこ焼き?お好み焼き?なにそれ!美味しいの?」

 

「こころさん知らないんですか!?」

 

「ええ知らないわ!多分シンも知らないと思うわ!」

 

 黙れ!俺は知っとるわ!

 

「はっ!くせ者!」

 

 ガコ

 

「ど、どうしたの?イヴ」

 

「おたえさん!そこに誰かいませんでしたか!?」

 

「「!?」」

 

 風呂桶投げて岩を崩すって何してんだよ!俺の隠れる場所がなくなったじゃねーか!い、今はおたえの後ろに隠れているがバレるのも時間の問題だ!

 

「あ、あ!見て見て!自然のうさぎ!」

 

「え?どこどこ!?」

 

「今のうちに潜って!」

 

「た、助かる!」

 

 よくやったおたえ!お前使えるじゃん!

 

「何処にもいないよー?」

 

「あれー?さっきまでいたのになー」

 

「それよりおたえさん!さっきまでそこに誰かいませんでしたか?」

 

「うーうん、誰もいないよ、私一人だったから」

 

「...そーですか」

 

 この若宮イヴって子ヤベーな!この子のせいで危うくバレるところだったよ!

 

「とりあえずみんないなくなるまで耐える作戦で行こう」

 

「いいけど私ここから動けないよね?」

 

「...お願いします!」

 

 みんながいなくなるまで待つ作戦だが...そうは上手くいかないものだ

 

「はあはあはあ、もう10分以上経ってるぞ!?まだあがらないの!?」

 

「女子は長風呂なんだよ?」

 

「にしてはなげーだろ!」

 

 長すぎる!俺なんてつかってすぐに上がる人だぞ!?

 

「おたえーいつまでもそこに居ないでこっちで話そうよー」

 

「うっ!」

 

「あとちょっとー」

 

 もう限界だ!おたえもずっとここにいて怪しまれてる、もうおしまいなのか!

 

「...誰かそこにいるの?」

 

「「!?」」

 

「な、何言ってるのー沙綾」

 

「あはは、さっきイヴが言ってたから気になってねー」

 

 こ、こっちに来るな!ってむ、胸が普通にあって、目のやり場にこ、困る!それにもうのぼせて意識が...やばい...

 沙綾さんが来て意識がもうろうとしてる絶体絶命の時に奇跡が起きた!

 

「すみませんー!」

 

「女将さん、どうしたんですか?」

 

「うちの新人がのれんを変えるタイミング間違えたとかで...既に男性の方が入浴してないか確認をしたいなと...」

 

「男性の方はいましたか!?」アセアセ

 

「って言ってるが見たヤツいるかー?」

 

「先生!」

 

「おーおたえどうした?」

 

「さっきまで生きてましたが...さっき死にました」

 

 そこにはお湯に顔をつけプカプカ浮かんでいるシンの姿があった。




いやー羨ましいやつですね、本当にさ!次回シンは無事にここから脱出することができるのか!?乞うご期待!あ、今回は読みやすいようにしてみました!これの方が読みやすい!または前回の方がよかった!などの意見があれば教えてください!皆さんにあわせたいと思います!


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弦巻シンは初めておっぱいを見た!その2

前回の続きです!


 ふっふっふー!俺は今完全に気を失ってるっとみんな思ってるだろう!

 

 時はほんの少しばかり遡る

 

「「こ、これだ!」」

 

「これしかない!俺が気絶したふりするからあとは頼んだ!」

 

「ばっちりまかせて」グッ!

 

 不安しかないが今はおたえに頼るしかない!

 

 時は戻り

 

「さっきまで生きてましたが...さっき死にました」

 

『えー!!!???』

 

「う、うそ!シン君!?」

 

「おたえどーゆうこと!?」

 

「ん?さっき女将さんが言ってた通りだと思うよー」

 

「と、言うと?」

 

「私が1番で来た時からいたよ?出ようとしたけど香澄達が来て出れなくなってずっとイヴが壊した岩場に隠れてたのさ」ドヤ

 

 ごめん、まじでなんでドヤるのか意味がわからん!だが説明ありがとう!

 

「ま、誠に申し訳ございません!!!」

 

「か、彼は私達が連れていきますので!!」

 

 勝った!これを待っていたのさ!焦って俺をすぐに連れて行ってくれるって信じてたぜ女将さん!

 

「いや、少し待ってくれ」

 

「!?」

 

 な、なんでだよ先生!男子が女子風呂にいるんだぞ!?一刻も早く退場させたいんじゃないのか!?

 

「おい花園、こいつ私達の会話を聞いていたのか?」

 

「「!?」」

 

「き、聞いてたら」

 

「聞いてたら処理する」

 

 や、やめてー!!めちゃくちゃボキボキって骨の音が聞こえるんですけどー!!

 

「せ、先生、でも不慮の事故だし許してあげたら?」

 

「えー山吹さんそれでいいの?私達裸見られたかもしれないんだよ?」

 

「特に花園さんなんてずっといたから見られてたでしょ?」

 

「うん、だから友達になったよ?」

 

「あ、はいはいなるほどね、え!?」

 

 な、何言ってるの!ね!?俺を助けてるって話じゃないの!?てかずっとお湯に顔つけてるから息できないんだよ!リアルガチでし、死にそう

 

「とりあえず引き上げるか」

 

 た、助かった!が、ここで大きく息をしたら気絶したふりがバレてしまう

 

「おーい起きろー弦巻ー」

 

『せ、先生!?』

 

 ベシベシベシ

 

 痛いから!ビンタしないでよ!起きちゃうだろ!?

 

「せ、先生もし弦巻君が起きたらどーするんですか!?」

 

「なんだ奥沢?そんなに裸見られたくないのか?」

 

「なっ!?み、みんな見られたくないですよ!」

 

「私は全然平気だよ?」

 

「さ、流石おたえ!凄いね!」

 

 凄いね!じゃねーよ!この状況考えて!みんなで俺を囲んでなに?俺をここから出させる気ゼロなのかな!?

 

「あ、沙綾本当に形もいいね」

 

「お、おたえ!ダメだって!」

 

 お、お前は俺を助けること忘れてるぞ!?

 

「あ、そうだった」

 

 そうだ!思い出してくれたか!

 

「先生の体って大人ですね」

 

「お?花園もわかるか?」

 

 そっちの話は思い出さなくていいんだよ!

 

「ほれほれー弦巻ー今目を覚ませば男子の誰もが憧れる景色が待ってるぞー」

 

「!?」

 

 誰が好んで先生の胸を見たいと思うんだよ!?だがな...大抵の女子の裸は見てしまったんだよな...

 

「せ、先生そろそろ弦巻君解放しましょうよー」

 

「わ、私裸見られたらお嫁に行けないよ!」ウルウル

 

 な、泣かないでよ!?誰だか知らんがまじでごめんって!後で俺が新人さんに伝えとくからさ!

 

「はぐみ男の裸初めて見たかも!」

 

「あら?そうなの?私は小さい頃よくシンとお風呂に入ってたわ!」

 

「あ!私もあっちゃんとたまに入ってた!」

 

「私も純と沙南お風呂に入れてるよー」

 

 君たちの家族事情なんて今は知らなくてもいいんですよ!あ、沙綾さんには弟と妹がいるのね、って違う!

 

「シン!起きなさーい!」

 

「ぐふぇ!」

 

 こころのやつが急に飛び乗ってきた。

 まじでクソ痛い!溝入ったかもしれない...

 

「こ、こころ!裸なんだから馬乗りなんてしちゃダメでしょ!?」

 

「んー?なんでダメなの?美咲」

 

「あーも!これだからこころは!」

 

 考えてみろや!裸同士の異性が馬乗りってやばいだろ!?俺ですらそれぐらいわかるっての!

 

「あ、はぐみ絵本で見た事ある!キスしたら寝てる人が覚める話!」

 

それはシンデレラ!※白雪姫です(シンは世間知らずです)

 

「そうなの!ならキスしようかしらね!」

 

『!?』

 

 や、やめろ!俺のファーストキスを奪うなよ!あーやばいまじでやばい!このままだと、このままだと本当にまずい!ファーストキスの相手が姉貴のこころなんて死んでも嫌だぁあああ!!!

 

「...何をしてるのかな?」

 

「!」

 

「チェスト!!!!」

 

「わあ!?」

 

のっかっているこころの顔を掴み浴場に投げ入れた。

 

『...』

 

「...」

 

 こ、これはあれですね

 

「じゃあ帰ります!」

 

『帰らせるかぁあああ!!!』

 

「だはー!クソ!神様助けてくれよ!!!」

 

 その後、彼がお風呂場から出てきたのは事件が起きた1時間後だった。

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 女子風呂からは出れたが気を失ってるのがフリだとバレて廊下にて「私は覗きをした変態です」って書かれた紙を首から下げられ正座しておりさらにその上に重りの石を乗せられている

 

「はぁ不幸だ...」

 

「なんでこんな目にあうんだよ!」

 

「「誠に申し訳ございません!!!」」

 

「本当だよ!?あんたらのせいで俺の高校生活終わりだよ!」

 

「「誠に申し訳ございません!!!」」

 

「同じこと言えば許されると思うなよな!?」

 

 今回の事件の発端である新人さんとその先輩さんが俺に土下座をしている

 

「はぁもういいですよ、どっかいってください」

 

 あーまじで泣きたい。なんでこうなるんだよ!

 

「ほ、本当にすみませんでした。あ、あのー後日お詫びになにか送りたいと思いますのでお名前聞いてもいいですか?」

 

「...弦巻シンです」

 

 俺は力なく答えたが

 

「つ、つ、つつつつ、弦巻!?」

 

「は?」

 

「た、大変申し訳ございません!!どうか命だけはお許しを!!!」

 

 ははーんさては俺が弦巻家の1人だと知って焦ってるようだな!はっはは!散々痛い目にあったんだ!お前らを恐怖の底に叩き込んでやるわい!!

 

「...大丈夫ですよ」ニコリ

 

「お父様には黙っておきますね」ニコリ

 

 で、できない!それに俺にそんな権利ないし!

 

「ご、後日お詫びをお、おおお送りしますので...」

 

「あ、住所は学校から聞いといてくださいね!あ!俺のマンションに届くようにしろよ?」

 

「か、かしこまりました!」

 

 本当に家に届くんだろうな、少し以上に心配だ

 

「あ、反省してるー?」

 

「おたえ...色々言いたいが協力してくれてたから水に流してやる」

 

「飛んだ災難だったね!シン君!」

 

 話しかけてきたのは戸山香澄さんだ。自己紹介の時に言ってたからな!それに風呂では盛大に裸を見てしまった...このことは黙っておこう

 

「高校生活終わりだよ、あはは」

 

「だ、大丈夫だよ!多分...!」

 

 多分ってなんだよ多分って!絶対嫌われたからね!?

 

「私達だけだったら説明したら出れたかもしれないのにね」

 

「沙綾さん...そんなことできるわけないでしょ!?」

 

「確かにそうだね!ごめんごめん」

 

 謝る時もあなたは可愛いですか!?まじでこの人女神様なんじゃないの!

 

「シン君これで友達だね!」

 

「お前とはもうあまり関わりたくねーよ」アハハ

 

「えー私達お互い裸を見せあった仲じゃん」

 

「その誤解を産む言い方やめてくれないかな!?」

 

「うるさいぞそこの変態!」

 

「す、すみませんんん!!」

 

 先生の部屋の前ってキツくないですか!?話すのめちゃくちゃきついじゃないですか!

 

「あはは、じゃああたし達ご飯食べに行くね!」

 

「あ!忘れてた!私もうお腹ペコペコだよー」

 

「ハンバーグあるかな?」

 

「もうりみ達行ってるみたいだから行こっか」

 

 ま、待ってよ!

 

「さ、沙綾さん!おたえ!戸山さん!お、俺達友達だよな!まさか置いていくようなことしないよね?」

 

「んー感想文10文字以内で書いてきてあげるねー」

 

さ、沙綾さん!それは完全に美味しかったの一択じゃないですか!畜生!!!

 

「本当に不幸だぁ」

 

 また廊下で1人ですよ、俺の宿泊研修はこんなことになるはずじゃなかったのに...ウルウル

 

「おい弦巻!」

 

「聞いたぞ!女子風呂に侵入したってな!」

 

「!?」

 

「いや見直した!お前こそ心の男だ!」

 

「罰を受け終わったら一緒に遊ぼうぜ!」

 

「お前は今日から友達だ!!」

 

「それより弦巻を胴上げだ!!」

 

 わっしょい!わっしょい!わっしょい!わっしょい!

 

 みんなが胴上げしてくれてるけどあれ?なんでだろ、目から涙が垂れてくるよアハハ

 

「お前らうるさいぞ」

 

「せ、先生!弦巻のやつは間違ってない!男として立派なことをしただけだ!」

 

「そうだそうだ!」「弦巻を解放しろ!」「俺らに早く感想聞かせろ!」

 

「お、お前ら!」

 

 最後の一言は余計だが俺の味方をしてくれてるいる!

 

「ほーう、だったらこいつに味方したものは一緒に罰を与えるぞ?」

 

「ふっ、先生何言ってるんですか?俺達はさっき友達になった!」

 

「そうだよな!みんな!」

 

「あーうん、入ったの弦巻だし、悪いのは弦巻だよな」

 

「そ、そうだね、俺らは無関係ですよ?」

 

「弦巻ちゃんと反省するだな」

 

「お、お前ら!?」

 

『ごめんー!!!!』

 

「お前らぁぁぁあああ!!!!」

 

 あいつら...許さんぞ!?

 

「おー血の涙ですなー」

 

「お前いたのか」

 

 モカのやつらも同じ旅館に泊まってたのか、まあそうだよな、この辺の旅館ってここしかないからな

 

「お前一人か?」

 

「あ、他の人も連れてきた方が良かった〜?」

 

「いやお前1人でいいよ、それで十分だ」

 

 何言ってんだろ俺は!?

 

「ち、違うぞ!ただ喋り相手が欲しいだけだ!」

 

「えへへーシン君素直になりなよー」

 

「う、うるさいな!」

 

「...あたしはシン君の味方だよ?」

 

 き、急にどうしたのモカさん!?

 

「な、なにか企んでるのか?」

 

「いやーシン君が可哀想だから慰めてあげようと思ってさ〜あ?」

 

「なるほどな、まあーモカが味方って心細いけど1人でもいるなら心持ちがいいよ」

 

「おろ?なんか素直だね〜?」

 

「疲れてんだろ、きっと」

 

 そう、きっと疲れてるから少しだけ素直になってるだけだ、きっとそうだ

 

「あっ!そー言えば後で肝試し大会するらしいよ〜」

 

「あ?でもそれってそっちだけだろ?」

 

 予定表にそんなことは書いていなかったはずだぞ?楽しみにしてたから何度も見たんだ、間違えることは無い、ご飯を食べた後は自由行動だったような...

 

「なんか急にするんだってーそれに花咲学園と合同でねー」

 

「へ?」

 

「一緒のペアになれるといいねー?」

 

「行けるかもわからんしモカとは嫌だなー」

 

「え〜さっき素直になったじゃん〜」

 

「そ、それはそれ、これはこれだ!」

 

「ふ〜んそーなんだー」

 

「お、おう」

 

 なんですかその目は!?人を馬鹿にするような目を人に向けちゃいけません!

 

「じや〜モカちゃんはパンがよんでいるのでさらばだ〜」

 

「二度と俺の前に現れるな」

 

 肝試しねー女子校と合同だから高確率で女子とペアになれるんだろうなーいいなーあいつらは女子とペアになって喜ぶんだろうなー俺も参加したいよ

 

「...反省したか?」

 

「ぜ、ぜんぜえー!」

 

「な、なんだよ」

 

「ぎもだめじにざんかしだいよー!(肝試しに参加したいよ)」

 

「なんで知ってるんだよ...まあ参加させてやるから泣くな」

 

「ほ、本当ですか!?先生はやっぱりいい人だ!」

 

「まあー解放したところでお前はきつい視線が集まるけどな」

 

「そ、そうだったあ!!!」

 

 肝試しには参加できるみたいだが...同じクラスの女子からの人をゴミのようにみる視線は受けることは確定のようですな、俺は悪くないのにさ!!!!!




次回はあの話です...お楽しみに!よかったら評価と感想、お気に入り登録などしてくれると嬉しいです!


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弦巻シンは肝試しをしに来たはず...

今回は真面目な話です


 どうやら本当にモカ達の高校と合同で肝試し大会を行うようだ。俺はさっきまで先生の部屋の前で反省をさせられていたため晩飯も食べずに肝試し大会の会場に先生と一緒に向かっていた。別に夜飯を抜くぐらいはしょっちゅうのことだから大丈夫だ。けどな!それよりみんなの視線が痛いのなんのやら...

 

「あの人らしいよ」

「やっぱり弦巻君だったんだー」

「女子風呂に入るなんて最低...」

 

 あのー泣いてもいいですか?

 もしここで

 

「あれは不慮の事故ですからぁあああ!!!」

 

 なんて言ってみな?さらにこいつやばくね?って思われるだけだからやめておこうかな

 

「まあー無理もない、恨むなら旅館の新人さんを恨むんだな」

「もう過ぎたことなんで気にしてないですよ」アハハ

 

 そう、もう気にしないし新人さんだから許してあげるよ

 

「お?弦巻帰ってきたか!」

「貴様らよくも堂々と俺の前に現れたな!?」

 

 こいつらさっき俺のこと見捨てたくせにさ!

 

「ごめんって!そんなことより今から肝試し大会やるんだぜ!楽しもうぜ!」

「それに女子校と合同だ!」

「間違いなく高確率で女子とペアになれる!」

「「「「わかるよな俺らの気持ち!」」」」

「お、おう」

 

 できれば俺は女子とペアになってその人に実は誤解だと言えばそこから広まり今回の事件の真相を知ってくれるいい機会になると思う...はずだ!だってさ?さっきの事件といい完全に嫌われたよ...ここで他校の生徒とペアになったら意味がないがそれはそれで心待ちが楽だからいいとするか

 

「クジでペアを決めるー引いていけー」

 

 そう言い俺以外の男子はみんな一斉に引きに行った。俺だけそこに取り残され他の人達が引き終わり最後に引きに行き残り物のクジを引いた。

 

 (最後?)

 

 番号ではなく最後と書かれていた。

 なに?俺が最後に引いたことバカにしてんの?クジにすら馬鹿にされるって一体なんだよ...

 

 いつの間にか肝試しは始まっていた。ひとり悲しくぼーっとしてたら始まっていた。あいつらは

 

「なんでペアが女子じゃないんだ!?」

「高確率を超えていくスタイルだぞ!」

 

 うあああと嘆いていた。

 まあそーなりますよね?女子が沢山いるのに数少ない男子と同じペアって萎えるよねー俺も萎えるよ

 

「弦巻はどうだったんだ?」

「んーわからん、最後ってのは確かだな」

「なんだそれ、どーせお前もペアが男子ってオチだよ!」

「ふっ、だといいな!」

 

 正直さっきのことを忘れててこいつらとは仲良くなっていた。まあ別に怒ってないしな!ああ、これが友情ってやつなのか!俺は今から青春を送れそうだよ

 

「次のヤツらー」

 

 そう言われみんなは消えていき最後に俺がその場でひとり残っていた。なんかデジャブを感じるな

 

「最後はお前らだな」

 

 さーてと、俺のペアは誰なのかな?

 

「え?あんたなの?」

「み、美竹さん!?」

 

 そこに現れたの赤メッシュこと美竹蘭さんだった。

 

「森の奥にある神社からお札を取ってきて旅館に戻る、ルートは自分達で好きな道選んでいいぞー」

 

 なんですかその甘々なルールは!もし遭難とか起きたらどーするんだよ!ま、まあそれより早く行って早く終わらせるか...どうやら美竹さんは俺のことが嫌いらしいしな

 

「それじゃー行きましょう?美竹さん」

「...うん」

 

 き、気まずい!始まってまだ1分ぐらいしか経ってないが気まずすぎる!今日初めて喋ったわけだし?なんか話の種とかを沢山持っているわけじゃないしさーんー

 

「あんまり近くに来ないで、キモイから」

「素直に傷つくからやめてくれよ!」

「...」

「あ、ごめん」

 

 し、しまった!友達でもないのにまたモカにツッコミするノリで言ってしまった。あーもう俺のバカ!!

 

「あんたそっちの方が合ってると思うよ?」

「え?」

 

 そんなやり取りをしてる時だ

 

 ガサガサガサガサ

 

「な、なに!?」

「なんだろ、ちょっと見てくるね」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 音が聞こえるところに向かい恐る恐る見てみると

 

「うわぁ!ビクッたーなんだたぬきかよ」

 

 たぬきが出てきてそのまま森の奥に行った。きっと巣に帰ったんだろう

 

「美竹さんたぬきだったよ!」

「へ?」

 

 そこには半泣きでうずくまっている美竹さんの姿があった。

 なっ!?さ、さては

 

「み、美竹さん、まさか暗いところ苦手なの?」

「な、なわけないじゃん!全然平気だし!」

「だ、だよね!?美竹さんがそんなはずないよね!」アハハ

 

 そんな話をしている時またまた動物が現れた。次は鹿かよ、え?鹿!?自分でノリツッコミをしてるなか

 

「やっぱり無理ぃぃいい!!!!」

「え!あ!ちょっと美竹さん待ってよ!!」

 

 なんだよ!やっぱり暗いところ苦手だったんじゃないか!なんで強がったんだよ!

 

 美竹さんは走って行きあっという間に神社に着いた。よかった、離れて迷うより目的の場所に着けたなら大丈夫だな

 

「美竹さん大丈夫?」

「...あんたにこんな姿見られるなんて一生の恥」

「ご、ごめん...」

 

 なんかとても申し訳なくなったから謝ったが

 

「...話変わるけどあんたのその話し方本当にムカつくね」

「...」

 

 どうやらいけなかったらしい、俺だって好きでこんな話し方をしてるんじゃないよ、ただ嫌われたくないんだ。嫌われることが一番嫌なんだよ

 

「じゃあどうすればいいの?」

「...モカと話してる感じで話させばいいじゃん」

「あいつは特別だ」

 

 そう、あいつは特別なんだ。バイト仲間で友達だからあんな強い口調で話すことができる、けど美竹さんはどうだ?友達ですらないし今日会ったばかりの人だ。そんな人にモカと同じように接しろ?俺には無理だよ

 

「特別って...モカのこと好きなの?」

「は!?なんでそーなんだよ!」

「あっ」

「ふふ、あたしはそっちの喋り方の方が好きだよ」

「なっ!?」

 

 急に何言うんだよ、調子が狂うな

 

「...モカから聞いたよ、あんたさ自分の家が嫌いなんでしょ?」

 

 あいつ何勝手に人の事話してるんだよ、まあ本当に嫌いだから別にいいけどさ、自分の恵まれた環境は見たらうらやましいと思い。そしてそれを嫌う俺を見たら贅沢なやつだなって他人は思うはずだ。だからきっと美竹さんもそう思ってるはずだ。

 

「そうだよ、俺のこと贅沢なやつだなって思った?」

「別に、あたしも自分の家が嫌い。いや大っ嫌い」

「そうなんだ...」

 

 これは意外だな、贅沢だと思わないってことは美竹さんの家もそれなりに大きい家なんだろう、そんな家を嫌うって

 

「あたし達似てるね」

「そうだね」

 

 思ってたことを言われた。俺が思うなら美竹さんもそりゃー思うよな

 

「なんで嫌いなの?」

「...美竹さんこそなんで?」

「あたしが話したら話してくれる?」

「...うん」

 

 美竹さんは自分の家を嫌う理由を話してくれた。彼女の家は華道の家らしく美竹流を美竹さんに受け継がせるために毎日父親から華道の話を持ち掛けられ嫌気がさしてるらしい。それに今やってるバンドのこともごっこ遊びだからやめろって言われていて毎日喧嘩をしてるらしい

 

「バンドはごっこ遊びなんかじゃないっていつも言ってるのに...!」

「...ごめん、それであんたはなんで嫌いなの?」

「俺が嫌いな理由はな...」

 

 自分の家が嫌いな理由を話した。小さい頃からやばすぎた姉さんの話し、そして自分が恵まれた環境で育っていること、そして何より...

 

「友達に騙されたんだ」

「...こころが言ってたことってそのことだったんだ」

「あいつは本当になんでも話すな」アハハ

 

 恐らくだが登山の時に俺が彼女達から逃げて1人で頂上に向かっている時にでも話をしてたんだろう

 

「その人達は俺が弦巻家で金持ちって知ってて金のために俺と友達になってたもんなんだよ」

「...」

「ある日な、親が病気で寝込んだから金貸してくれ言ってきたから金を貸したらそれが嘘でね...騙されたんだ」

「それ以降お金持ちである自分の家が嫌いになって、俺はそれで...」

 

 全く恥ずかしいよな、今日会ったばかりの人にこんな話をしてさ、この話はまだモカにも話したことないのにな

 

「...だから友達は自分からちゃんと作るって決めたんだ。それにもう屋敷にもいないし金もないから同じことは起きないと思うよ」アハハ

「そっか、そんなことがあったんだね」

 

 そうだ、だからこそ俺は友達が欲しいんだよ、心の底から信頼出来る友達がさ、今のところはモカ1人だな

 

 今日友達になったばかりの沙綾さんとおたえに関してはまだ心の底から信頼できるかどうかわからないけど…いい人だと思って間違いないと思ってる。

 

「だったらあたしが友達になってあげるよ」

「...え?」

「友達になったらモカと同じ話し方でも不自然じゃないしね」

「...話聞いてた?」

「俺は自分で友達を作るって言ったでしょ?」

「...」

「俺は美竹さんと友達になれないよ」

「昼に言ってた全力で取り組んでいることがないから友達になれないの?」

「...うん」

 

 その通りだ。俺には君達と違って全力で取り組んでいることが何も無いんだよ、何も

 

「そんなことないと思うよー」

 

 誰かが言った。木の影から出てきたヤツは俺の知ってる人だった。

 

「モカ?お前いつの間に...」

「いやーまさか蘭のペアがシン君だったとはね〜」

「モカいつからいたの?」

「んーシン君が自分の話してる時かな?」

 

 顎に手を置きいかにも決めポーズですよ感出して答えてる...なんだよそれ、モカがいないと思って話してたの聞かれてたなんて恥ずかしいじゃん

 

「シン君にはあるはずだよ?」

「...なにが?」

 

 何の話かは知ってるがあえてなにが?と返した。

 

「今やりたいことだよ」

 

 今やりたいこと、ね、なんなんだろうか、本当に何も無い。彼女達が羨ましいよ

 

「自立したいんじゃないの?」

「...」

 

 自立はしたいよ、したいけどそれがやりたいこと?ダサすぎるだろ

 

「それにバイトも頑張ってるじゃん」

「...それは生きるために働いてるんだよ」

「...じゃあ今を全力で楽しむため(・・・・・・・・・・)に働いてるんでしょ?」

「!」

 

 そう、なのかな?

 

「どうだろ、わからないや」アハハ

「いつもそうやって笑って誤魔化すよねー」

「...」

「こんな歳でもう自立すること考えてるなんて凄いなーモカちゃんはまだまだ親に頼るけどねー」

 

 違う、凄いのはモカ達だ

 

「あたし達は別に凄くないよ」

「あんたなんか勘違いしてない?」

「勘違い?」

「あたし達は全然凄くないし普通(・・)だよ」

「普通なのか?」

「そう、普通だよ」

 

 あれが普通?冗談じゃない。あれが普通なら俺はなんだよ、普通にもなれない主人公ですか?

 

「俺が求める普通ってのはなんなんだろうな」

 

 わからない。彼女達が普通なら俺は普通じゃないと思う。

 

「だったら探そうよ、普通をさ」

「...探す?」

 

 何言ってんだよモカのやつ、普通を探す?意味がわからない。普通ってのは探すものじゃない。なるものだろ?

 

「シン君が求める普通になるんだよ」

「俺が求める普通...」

 

 俺が求める普通、そんなのまだわからないよ...あ、なるほどな、そーゆうことか、これは完全モカにやられたな

 

「ふっ、お前と友達でよかったよ」

「どーしまー」

「それ略しすぎだろ!?」

「ツッコミを入れるってことは吹っ切れたかな〜?」

「ああ、吹っ切れたさ」

「俺は探すよ、俺が求める普通をさ」

 

 そう、これから探すよ普通になるためにな!なに、これから生活が変わるわけではない。これまで通りに生活しながらゆっくりと探せばいいさ

 っと、その前に

 

「美竹さん」

「...蘭でいいよ、美竹って呼ばれるの嫌だから」

「あたしもあんたのことシンって呼ぶから」

 

 お互い苗字が嫌いで辛いですな

 

「そーですか」

 

 モカが教えてくれた。俺にも今を全力で生きるために取り組んでいることがあるって、ずっとそれは違うと思ってたが他人に言われたら認めちゃうよな

 

「蘭」

「なに?」

 

 前まで友達になる資格がないって言ってたけどさ、今は違う気がする、だから俺は彼女達と、

 

「俺と、俺と友達にー」

「おい!長々といつまでもここにいるなよな!」

「せ、先生!?」

 

 なんでいつもいい時にあなたは現れるんですか!?なに?絶対タイミング見計らってるよね!?

 

「先生だー逃げるよ蘭〜」

「そうだね、怒られるのはシンだけでいいや」

「お、おい!?お前ら!」

 

 さっきまで俺と真面目に話してたのにこの仕打ちはないと思いますよ!?

 

「貴様は本当に懲りないなーまたナンパか?」

「ち、違いますって!」

「また反省会だな」

「どうしていつもこーなるんだよ!!!!」

 

 森の中の神社の前にてシンの大声は逃げているモカ達にも聞こえるほどの声だったらしい。

 

 次の日

 

 食堂の前にて彼女達をずっと待っていた。すれ違う人達から「何してるのあの人?」や「やっぱり弦巻君って怖いよね」や「また懲りずに女の子ナンパしてるんだよ」って全部悪口じゃねーか!やっぱり女子の評価を上げるには相当時間がかかりそうだ。

 

「モカーちゃんと時間通りに起きろよな?」

「ごめんごめんー」

「で、でも朝食には間に合ったから大丈夫だよ!」

「つぐーモカに少し甘くない?」

「え?そうかなー」

「普段ひーちゃんも甘やかされてるから大丈夫〜」

「何それ!?ひどい!」

「ひどくはないよ」

 

 来た。彼女達を待ってたんだよ!

 

「おろ?シン君じゃーないですかー」

「お前らに用事があってな」

 

 昨日いいそびれたことを言いに来たんだよ、まあ蘭に言いそびれただけなんだが彼女達全員に言う予定だったしまあ大丈夫だよな!

 

「単刀直入に言うぞ」

「...俺と友達になってくださいぃぃいい!!!!」

『いいよー!』

「軽!?じゃなくてあ、ありがとう」

『...』

 

 あれ?みんな黙って何してるの?

 

「お、おいおいどーしたんだ?」

「お前こそどーした」

「!」

 

 こ、この声は!

 

「山吹に友達だって嘘をついていたのか?」

 

 また先生だよ!なんでいつもタイミングがいいですかあなたは!?

 

「ち、違います!本当ですって!」

「じゃなんで今友達になってくださいって言ったんだよ」

「は!?」

「...懲りないやつだな、また昨日と同じ罰だな」

 

 最後ぐらい、最後ぐらい、いやいつも言ってることだよな

 

「あーもう!不幸だああああ!!!!!」

 

 その後この話は広まりシンの存在は女子の中ではナンパ師になっていた。

 

(いつか取り消せるんですよね!?)

 

...さあーどうでしょうね




最後はいつも通りの落ちでした。新たに☆9に評価してくれたピスケス23さん、戦刃 rimさんありがとうございます!!あと2人投票してくれればバーに色が付きますね!是非皆さん評価そして感想の方をお待ちしております!では次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンと楽しかった宿泊研修

タグについていた恋愛は今後恋愛展開を加えようと考えていたためです。まだ恋愛展開の話を投稿してない中でタグをつけて皆様に誤解を生んでしまい誠に申し訳ございません。今後このような指摘をされないようにしていきたいと思います。
それではそうぞ


 楽しかった宿泊研修だって?そんなわけないだろ!1日目はいろんな事件があった。まず登山では迷子になり1人悲しく崖で叫び、その後はなれない考え事をしながら歩いていたら盛大に転けて下まで転がり落ちるわ、その疲れを癒すために風呂に行けばのれんの変えるタイミングを新人さんが間違えて酷い目にあった。

 そのため2日目以降はずーーーっと先生の部屋の前で正座の罰だよ!俺は何も悪いことしてないのにさ!勝手に決めつけられて2日目の楽しそうなイベントなんて参加する権利すらなかったよトホホ

 

 宿泊研修も終わり学校に戻ってきて少し話をして解散となった。今日まで宿泊研修だったためバイトのシフトは入れていない。つまりだ!今日は完全なオフ!有意義な午後を送るんだ。散々な目にあった宿泊研修のことを忘れて伸び伸びしたいが...

 

「さすがに腹減ったな」

 

 もう何も食べていなかった。いや食べれたよ?食べれたけどみんなからの視線が痛くてさー!あいつらは呑気に飯食ってたけど俺は無理だっての!あんな人をゴミで見る目なんて向けられたことがないから平気なんだよ!?

 

 重い荷物をガラガラ音を立てながら運び、目的の場所に着いた。そう、家ではない。まだ家に帰るにはなんか少し早いと思ったからな、今日ぐらい少し贅沢をしてもいいだろう

 

「お!(げん)の兄貴じゃあーねーか」

「おやっさん久しぶりだな!」

 

 ここはラーメン三郎、月一度ぐらいのペースで来ている店だ。ここのラーメンは美味いからな!まあ俺が知ってるラーメン屋がここしかないだけだけどな

 

「いつものでいいかー?」

「1番安くて美味いやつで!」

「阿呆が!俺の店のラーメンは全部美味いんだよ!」

「そーだな!」

『あははっ!』

 

 この人とは仲がいいんだ。昔屋敷を出たばかりでバイトも何もしてなくて無一文だった俺にラーメンをタダでくれたいわば命の恩人ってやつだな、ここで働かせてよって言ったが見込みゼロって言われて働けなかったぜ...畜生!!まあそんな恩もあり週一は無理だが月一に通うんだよ

 

「最近バイトの調子はどーだ?」

「んー絶好調!ここで働くよりマシだな!」

「お!言うじゃあねーか弦の兄貴!」

「...その弦の兄貴ってやめてくれよ!」

「なんでだ?カッコイイだろ?」

 

 まあー別にいっか、それより客少ねーな、なに?繁盛不景気ですか?

 

「客いねーな」

「いやいや、これから増えんだよ」

「ん?そっか」

「はい!ラーメンいっちょう!おあがりよ!」

 

 きたきたきたよ!この1番安い豚骨ラーメン!これが一番美味いんだよ!俺がこれしか食ってないだけだけどさ!

 

「いつ見ても美味そうだよな!」

「おいおい違うだろ?」

「美味そうじゃなくてー?」

『美味い!』

 

 いい歳した奴らが無邪気に美味い!って言ってハイタッチをしていた。他の客がいたら普通できないよ?それに恥ずかしいしな!

 

「おっさーんこんにちはー」

『あっ』

 

 どうしてだよ、なんでいつもいつも俺ってなんか恥ずかしいこととかしてる時に人が来るんだろう、それに友達だしな!

 

「あれ?シンじゃねーか!お前も三郎通ってたのか!?」

「と、巴さんか、まあうん」

「巴だけじゃないよ!みんないるよ!」

 

 な、なんだと!?じゃーあいつらもか!

 

「おーこないだぶりですな〜」

「生きてたんだね、シン」

 

 こいつらには会いたくないんだよー!!!なにこないだの話!こいつらに全て話して挙句の果てには普通を探す?何言ってるの俺!?ただの痛いヤツじゃん!あ、あの時はその場の流れとか色々あって気が動転して自分でもわけわからない恥ずかしいことばかり言ってた気がするからーああー恥ずかしい!!

 

『ニヤニヤ』

「なんだよその顔は...」

「いやー、別にー?」

「ふふ、なんでもないよ?」

 

 嘘つけ!絶対なにか隠してるだろ!?あーもう!なんでこいつらに話したんだよ俺のバカ!

 

「なんだー弦の兄貴は巴ちゃんと知り合いだったのか?」

「お、おい!その弦の兄貴ってやめろよ!」

 

 他人の前で言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいんだからな!

 

「へー弦の兄貴ね〜」

「も、モカ変なこと考えてるならやめとけよ?」

「んー考えとくね〜」

 

 やっぱりこいつはダメだな!

 

「それより早く食べよーぜ、あたしずっとラーメン食いたかったんだよな!」

「そうそう!巴ずっとラーメンって言ってたしね!」

「よかったね!巴ちゃん!」

 

 今まで静かだった場所も彼女達が来た途端賑やかになったな、これも彼女達の凄さって言うのかな?...でも蘭がみんな普通って言ってたから俺もこんな存在になれたらいいなって思うな

 

「一緒に食べる?...ふふ、弦の兄貴さん?」

「こ、こいつ!」

 

 蘭のやつはなんだ!?モカと同じで俺のことをいじるのが楽しいのですか?

 

「と、言っても俺は今食ってるからなー」

「じゃーカウンター席でいいさ、みんなもいいよな?」

『いいよー』

 

 無理に合わせなくてもいいのにな、まあみんなでラーメン食べるってのも

 

「悪くないね」

「俺のセリフを取るなよ!」

「ごめん、あたしのセリフだから」

「なにそれ!?」

 

 席順は俺の隣がモカでその隣が蘭、つぐみさんに巴さんにひまりさんだ。はっきり言ってこの並び順に意味はない...がなんで隣がモカなんだよ!できればつぐみさんみたいな子が隣だと嬉しかったな!

 

「とか言って嬉しいくせに〜」

「はいはい、嬉しいですよー」

「棒読みすぎー」

 

 でもなんだかんだこいつのおかげで彼女達と友達になれたもんだしな、モカには感謝してるよ

 

「ねえねえ!シン君!」

「なにー?ひまりさん」

「シン君って弦巻家なんだよね!凄いなー!」

『っ!』

 

 反応したのは俺と俺のことを知ってるモカと蘭だった。別にひまりさんは聞いているだけだ、落ち着け俺

 

「そ、そうだけどなにかな?」

「すんごい金持ちでしょ!お金とか貸してもらえたりして!なんちゃってね!」アハハ

 

(お金貸してよ)

 

「っ!」

 

 昔誰かが俺に言った言葉だ。そうだ、あいつらだ、あいつらは俺が弦巻家って知ってて金を求めてきてそれで俺は、俺は...昔のことを思い出したら体の震えが止まらなくなった。まさかこのセリフを聞くなんて思いもしなかった。それに本当に友達だと思った人に言われるなんて...また俺は選択を間違えたのか?

そんな震えてる俺に嫌気がさしたのか隣のヤツは

 

 《大丈夫、大丈夫だよ》

 

 そう言って俺の手を握ってくれた。隣のヤツはあいつだったはず、そう、モカが俺の手を握ってくれていた。そのおかげか分からないけど震えは治まり、ずっと開かなかった口が開いた。

 

「じょ、冗談やめろよなー!俺今屋敷いねーし金もないから毎日バイトだぞ?」アハハ

「だよねー!冗談だから信じないでね?」

「わ、わかってるって...」アハハ

 

 なんだ冗談だったか、ならよかったけどそれなら初めから言わないでくれよ!?少し以上に怖かったぞ...まああいにくひまりさんとは席が1番離れていたから俺の変化には気づかなかったからよかったよ

 

「...いつまで握ってるの?」

「んーシン君が落ち着くまでかな〜」

 

 あんたの隣の蘭のさんがずっと見てるんですよね!?あの!離してくださいお願いしますから!!

 

「も、もう大丈夫だって!あ、ありがとう」

「どーいたしましてー」

 

 モカのやつってなんだかんだで頼りになるんだな、今回は助かったよ、お前がいなかったらサイフを開けて有り金全部払うところだったぜ...俺ってまだまだダメダメだな、普通を探しながらトラウマの過去とも少しずつ向き合っていく必要がありそうだな

 

「あ!おっさん聞いてくれよ!シンのやつな!研修中に女子風呂に入ったんだよ!」

「はっ!?それは本当か!?」

「な、何言い出すんだよ!?」

 

 いい終わり方だったのになんでその話をするのかな巴さん!?

 

「あ、それ私も聞いたよ…本当なの?」

 

 ひまりさんが自分の胸を隠すようにして聞いてきた。その仕草を見てあの風呂場での光景を思い出してしまった。おたえの身体といい、戸山さん、それに沙綾さんの身体を...ま、まずい戻ってこい俺!

 

「もう遅いよ」

「へ?」

「鼻血、出てるから」

「なっ!?」

「あれれー?もしかして想像しちゃってた〜?」

「そ、そんなシン君でもだ、大丈夫だと...思うよ!」

 

 こんな可愛い子に無理させるなんて俺はなんて悪いやつなんだ!

 

『シン(君)は変態さんだなー』

「違うからぁぁあああ!!!!」

 

 おやっさんの店にて俺の声がただただ響いているだけだった。




気づいたら評価のバーに色がついていました!新たに投票してくれた☆9にぼたもち@さん、いざなみさん、ジャムカさんそして☆8にけりぃさんありがとうございます!!他にも投票してくれた方もありがとうございます。またつける評価が低いということはこの作品のどこかしらがよくなかったとゆうことです。ですので今後は自分でも確認をとりどのような作品にすればよいか考えていきます!できれば赤のバーになれるように頑張りたいと思います!!感想やアドバイスなどお待ちしております!では次回でお会いしましょう!!それと!次回からやっとハロハピが登場します!お楽しみに!


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弦巻シンとハロー、ハッピーワールド

進展がクソ遅くてすみません!!ですので説明にほぼ日常ストーリーですと書きました!それではどうぞ!!


 普通に学校に登校するが...

 

『じー』

 

 やっぱり視線が痛い!確かに俺も悪いかもしれないけどあれは違うだろ!そろそろ誤解が解けてもいいと思うんだけど!?

 

「おはよーシン君」

「沙綾さんおはよー!」

 

 こんな中でも声をかけてくれるなんてあなたは女神様ですか?

 

「私もいるよー」

「私も!」

「戸山さんおはよー」

「私にはー?」

「はいはい、おはよー」

 

 戸山さんはまあーなんだ、いつの間にか友達になってた。うん、おたえに関してはあの事件の時に助けてもらったがその後がなー俺のこと忘れて遊んでたから結局バレたんだよな!

 

「...お前達がいなかったら完全にクラスで孤立だよ」アハハ

「そーかな?男子もいるから大丈夫でしょ」

「違う!仲のいい女子がいることが大切なんだよ!」

「なるほど!」

 

 あいつらは俺のことを睨んできているが...悪いな!俺はお前らのことなんて気にしないと決めたんだ!

 

「山吹さんよく弦巻君と話せるねー」

「んーシン君は普通に面白い人だよ?」

「そーだよ!美咲ちゃんも話してみれば?」

「...いやー私は遠慮しとくよ」アハハ

 

 その間の間に俺の方みんなよ!まあー確かに彼女の裸は見てしまったかもしれない。けど何度も言うけどあれは不慮の事故で俺だって早く忘れたいさ!

 

「美咲!シンはいい子よ?」

「女風呂に居座ってた人がー?」

「んーそれでもシンはいい子よ?」

 

 こ、こころ姉様!お前のこと少し見直したぞ!

 

「でも変態でもあるわ!」

「お前が言うなよ!」

「なによ!」

 

 前言撤回、やっぱりこいつはバカだ。

 

「あ!今日は路上ライブをするの!是非見に来てね!」

「...今日はバイトー」

 

 宿泊研修から帰ってきてまたバイトの日々ですよーだ!でもこれも俺が今を全力で生きるためにやっていることなんだ。それにバイトはなんだかんだで楽しいしな...って完全に社畜じゃん俺!

 

「私もバイトー」

「あれ?おたえバイトしてるのか?」

 

 こいつがバイトって一体なんのバイトしてんだ?...わからん、予想ができん

 

「ライブハウスのバイト」

「なにそれ?カッケーな」

「そうかな?シン君もする?」

 

 んーカッコイイけど別にしなくてもいいかな?それに何も知らねーしバイトの面接で落とされるのがオチだよ

 

「やらねーな」

「そう、それより私の裸どうだった?」

「ぶっ!」

 

 こ、こいつはまた何を急に言い出すんだよ!?

 

「お、お前のは嫌ってほど見たから忘れたくても忘れねーよ!」

「そーなんだ、私のこと思い出して変なことしてない?」

「してねーしやらねーよ!」

 

 なんでこいつはこんなことを何を思わずに話せるんだ?少し以上に将来が不安だぞ!?

 

「ねえねえ!私は?」

「戸山さんのは...アンマリミテナイヨ」

「そっか!ならよかったー!」

「いやいや戸山さん?今の完全に片言だったじゃん!」

「弦巻君絶対覚えてるの黙ってるよ?」

「えー!?そうなの!?」

 

 お、奥沢さーん!!あなたもあなたでなんてことを言うんですか!?そりゃー戸山さんの体は覚えているけどさ!そんなの本人に言えるわけねーだろ!?あ、おたえはバカだからいいんだよ

 

「...じゃー私は?」

「え?さ、沙綾さんは...」

 

 はっきり言ってめちゃくちゃ鮮明に覚えている。だっておたえの後ろから見えてたりしたもん!でも仕方がないだろ!?事故だったんだからさ!でも

 

「うん、覚えてます...はい」

「...そっかーまあ減るものじゃないし私は気にしないよ!」

 

 ま、眩しい!相変わらず笑顔が眩しい人だ。それに気にしないなんておたえと同じこと言ってるけどなんか違う意味に聞こえる気がするよ!

 

「...」

 

 なに?奥沢さんがずっと俺を見てるんですが、俺の顔に何かついてるのか?

 

「美咲ーシンの顔をじっと見て何してるの?」

「え?いやー変態だなーって思って」

「奥沢さんにとって俺は変態なのかよ!?」

「うん」

「即答!」

 

 ま、まあ仕方がない。少しずつだ、少しずつ誤解を解消していけばそのうちクラスのみんなが知るはず...耐えるだけだ!!

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 放課後になりバイトに向かおうと思ったが先生に宿泊研修の件の反省文がまだ終わってないとのことで呼び出しをくらった。いやいや!反省文書かせずにずっと正座させてたの誰ですか!?他でもないあなた!先生ですよ!

反省文は全部終わってないが帰っていいとのことだったから帰るが...

 

「完全に遅刻だ」

 

 もう着いても店長に怒られるビジョンしか見えないな、そんなことを考えながら一応バイト先に向かうが

 

「ハロー、ハッピーワールドよ!今日は路上ライブを行うわ!」

 

 遭遇してしまった。なんで俺のバイト先に行くルートの途中にいるんだよ!わざとか!?

 

「あ、シン」

「蘭か」

 

 なんとこころのライブに蘭さんがいましたーなんでだろ?蘭ってこーゆう曲あんまり好みそうには見えないけどってまだそんなに絡んでないのに何言ってんだよ

 

「なんでここにいるの?あ、姉さんのライブ見に来たの?」

「お前な!なんで俺が好き好んでこころのライブを見に来るんだよ」

「それじゃなんでいるの?」

「これからバイトに向かう途中にいたんだよ」

 

 そのまま素通りしようとしたら蘭に声をかけられ今ライブを聞いているんだろ?

 

「なら行けばいいじゃん、行かないの?」

「なんか少し気が変わった。蘭が聞いてるからなんか興味あるのかなーって」

「...あっそ」

 

 うわ、何その冷たい反応、てか俺っていつから蘭とこんなに仲良くなったっけ?あれか?森の中の神社でお互いの話をして似てるから仲間意識が強くなってしまったのかな?そうだ、きっとそうだよな、うん

 

「悔しいけどこころって歌うの上手いんだよね」

「そーなのか?小さい頃からあいつの歌は聞いてたからわかんねーや」

 

 今思えばあいつは小さい頃からよく歌を歌ってたな、それを聞いて上手い上手いって言ってたんだけ?今思えば恥ずかしいな!

 

 (終わったあと褒めてやるか...)

 

 姉貴に向かって言うセリフじゃないがー双子だし別にいいだろ?もしかしたら俺が先でこころが後だった場合も無きにしも非ずだしな?

 

「あんたとこころって全然似てない」

「そーだな、どちらかと言うと俺は蘭と似てるかな」

「...」

「ごめん冗談だって!」

 

 調子に乗りすぎてつい思っていることが口に出てしまった。でも蘭本人が似てるって言ってたし...だ、大丈夫だよな!

 

「別に、なんとも思ってないから」

「...ならいいけど」

 

 蘭とそんな話をしていたらあっという間にこころ達のライブは終わり聞いていた観客達もぞろぞろとその場を後にして帰っていた。その中で今でも残っている2人組がいる、そう俺達だ。

 

「今日のライブ絶好調だったね!」

「ええ!今日のライブも最高に楽しかったわ!」

「子猫ちゃん達が私を見て感動していたよ、ああ、なんて儚いんだ」

「み、美咲ちゃん大丈夫...?」

「だ、大丈夫ですよ、花音さん」

 

 こころとはぐみさん?以外のメンツは初めて見たな、前にモカ達のライブの時に演奏してたが途中で抜け出したからな

 

「おーい、こころ」

「シン!来てくれたのね!」

「まあバイト先に向かう道中でやってたからな」

「げっ、弦巻君...」

「さっきから気になってたがあれはなんなんだよ!?」

 

 あのピンクの熊はなんですか!本物の熊なのか?いやいやありえないよな?でもこころだぞ?熊をてなずけてライブに参加させている...わけではないよな?

 

「ミッシェルよ!いつも私達のサポートをしてくれるのよ!」

「ミッシェルってとてもふわふわなんだよ!触ってみる?」

「触る!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

 うわ、まじでやわらけ!ふわふわで気持ちいな!ずっと触ってられるよ!

 

「も、もういいんじゃないかなーあはは」

「んな嫌がるなよ!」

「あーもう!美竹さん何とかしてよ!」

「わかった」

 

 痛っ!蘭のやつが首根っこ掴んできやがった。もっと触らせろよ!めちゃくちゃ気持ちいんだぞ!?

 

「あんた中身知らないの?」

「し、知らない、誰なんだ?」

 

 待てよ、なんか少し聞き覚えがあるような声だったな...どこで聞いた?確か朝教室で聞いたような...

 

「奥沢さんだよ」

「...まじかよ!」

 

 ミッシェルの方を見るがその変わらない顔の中で奥沢さんが凄く嫌そうな顔をしてるのか目に浮かぶよ!あ、明日にでも謝っておこうかな...アハハ

 

「あ、この人って美咲ちゃんが言ってたこころちゃんの弟さん?」

「そーですよー、まあ詳しい話は彼に聞いてください」

「あ、うん、えっと松原花音です、そのよ、よろしくね?」

 

 なんですかこの可愛い人!こんな人俺の学年にいたっけ?

 

「えっと2年生です」

 

 なんと先輩だったのか!なに?リサ先輩といい先輩には可愛い人しかいないんですか!?

 

「弦巻シンです、いつもこころがお世話になっております?」

 

 我ながら何を言ってるのやら

 

「やあ、君がこころの弟君かい?はじめまして、瀬田薫だよ」

 

 この人はあれだ、可愛いじゃなくてカッコイイ人だな!さぞ女子の方からも好かれているんだろうな...女子に好かれるっていいな!俺なんてひどい目で見られてるよ!?

 

「君は子猫ちゃんではなく子犬くんだね」

「な、なんですかそれ?」

「つまりーそーゆうことさ」

「意味がわかりません!」

「ねえねえ!はぐみのことは知ってるよね?」

「知ってるさ!嫌ってほどにな!」

 

 彼女のせいで初日からこころの弟とバレて宿泊研修では彼女がわけわからんことを言いこころはそそのかされて俺にキスしてこようとしてきてさ、本当にあなたには苦悩しましたよ!

 

「ならよかった!これからもよろしくね!」

「あ、はい」

 

 こころがいる限りもう無理なんだろうな、きっと

 

「っとそろそろ時間だ、すまないね子犬くん、私達はもう行くよ」

「そうね!もう片付けも終わったしそろそろ帰るわ!またね!シン!」

 

 こころ達が帰っていく、まったく騒がしいメンバーだったな。こころ、お前は最高のメンバーも見つけたんだな、すげーよ、でも俺も負けないくらい仲のいい友達がいるからな!

 

「こころ!」

「なーに?」

「歌上手だったぞ」

「っ!ええ!ありがとう!」

 

 まったく、世界を笑顔にするがもっとうのやつが弟に上手だねって言われただけで満面の笑みになるなよ!こっちがなんか恥ずかしくなるじゃん!

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

「いい姉さんだね」

「あれのどこがだよ」

 

 こころ達のライブも終わり蘭とバイト先に向かっていた。思ったんだけどなんで蘭と向かってるんだ?

 

「蘭はこれから何しに行くんだ?」

「バイト」

「へー蘭もしてたのか!何してるの?」

「...教えない」

「そーですか」

 

 蘭がバイトって何してるんだろう、めっちゃ気になる!が、蘭のことだから教えてくれないんだろうなー

 

「...最近調子どう?」

「なにがさ」

「その、家のこと」

 

 あー家のことね、特に何もない。ただ俺がお父様から逃げているだけですね

 

「なんも進展なしですなー」

「なにそれ、モカの口調でも真似たの?」

「まあ正解だな」

 

 あいつの話し方は真似しやすいからな!これも長年あいつと同じバイトだったからだと思うけどな

 

「蘭は?」

「あたしも進展なし、帰ったらいつも怒られるだけ」

「そうか」

「でも蘭は家に帰ってるだけましだよ」

「...」

「俺なんて帰らずに1人で生活してるからなー」

 

 帰ろうと思えば帰れるけどやっぱりお父様が怖いんだよなー今まで何をしてたんだとか絶対言われそうで怖い

 

「まあお互い親が理解してくれるといいね」

「そうだな」

 

 俺に関しては家が嫌いなだけだから親が認めるとか理解するとかそんなの無いと思うがここは蘭に合わせる方がいいだろ

 

「何かあったら俺でよければ相談とか乗るからさ」

「...なにそれ、あんたに相談する前にみんなに相談するし」

「で、ですよね!」

 

 少し以上にカッコつけすぎた。めっちゃ恥ずかしいよ!!!!

 

「それじゃあたしこっちだから、またね」

「おう!またなー」

 

 蘭と別れた後バイト先のコンビニに着いたところ珍しく人が沢山来ていた。一体何があったんだ?

 

「おい!シン!きたなら早くレジ入れ!人手不足なんだ!」

「...はい!」

 

 どうやら遅刻しても怒られずにバイトに参加できるようだ。

 

「あ、お前今日遅刻したから今日の分なしな」

 

 だよね!いつもこーなるよね!

 

「お?言うかな〜?」

「言うぞ」

「これは言うね!」

「あーもう!不幸だああああ!!!」

 

 が、実際に遅刻したシンが悪いため店長に論破され泣いているシンであった。




評価の色が赤になっていました!投票してくれた方ありがとうございます!!

それと分かったことが評価がつくにつれてアドバイスや指摘が辛口になってくる!でもこの作品のことを考えて指摘されているためこの作品をちゃんと見てくれているんだなと思いました。でも時には優しい感想も欲しいかな?

今後もいろいろ指摘されるかもしれないですがよろしくお願いします!では次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと黒毛和牛が生んだ話

話が浮かんだらメモって書くようにしてます。あとそろそろ投稿頻度が遅くなるかもしれません、ここ毎日投稿しててちょっと休憩したいので...その点許して!ではどうぞ!!


 月曜から金曜まで学校に通いその後にバイトを行う、そんな日を乗り越え癒しの休日、土日は土曜日だけバイトを入れておりいつも日曜日は休みなんだ。まあ休みだからといって特にすることないけどな!

 

「そろそろバイトに行くか」

 

 今日は確かリサ先輩がいたはずだ!宿泊研修後からあんまり喋ってないからな、俺の苦悩を聞いて欲しいよ

 

\ピンポーン/

 

「...誰だ?」

 

 インターホンが鳴った。俺の家を知ってるのは黒服さんとお父様だけのはず、それ以外は宅配便か?特に荷物も頼んでないし...なんだろ、ちょっと怖いな

 

 恐る恐るインタホーンから外の様子を見るが帽子をかぶっている人しかいない。受話器をとり鍵をあけマンションの中に入れた。

 

「あ、こちら弦巻シン様のお宅でしょうか?」

「はい」

「お届けものです、こちらにサインを」

 

 どうやら荷物だったらしい。言われた通りサインを書き、荷物を受け取り部屋に戻って中身の確認をした。

 

「こ、こここ、これは!?」

「く、黒毛和牛!?」

 

 なんでこんな高級な肉が俺の家に届けられるんだ!?まさかお父様が気を使った...ってことはないよな、それならこころ?いやこころは俺の家知らねーし黒服の人にはこころに教えるなって前に言ってるから知らないはず!

 

「い、一体誰が...」

 

 宛先を見てみるとこないだの宿泊研修で泊まった旅館の名前が書かれていた。そう言えば後日お詫びの品を送るって言ってたな!それでお詫びが黒毛和牛!?奮発しすぎじゃないか!?いや、待てよ?俺はこの人達のせいで酷いレッテルを貼り付けられたんだ!このくらいのお詫びは普通だよな!?

 

「ってそろそろバイト行かねーと!」

 

 時計を見て時間を確認した後急いで家を出てバイト先に向かった。

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

「「ありがとうございましたー」」

 

 リサ先輩と2人でレジの担当をしていた。

 

「なんか久しぶりにシン君とレジしたね♪」

「そうですね!」

「宿泊研修どーだった?」

「そ、それがですね!」

 

 客もあまりいなかったからリサ先輩に宿泊研修での話をした。もちろんあの事故の話もだ。まあモカと蘭と話したことは話してない。だって恥ずかしいじゃん!

 

「で、それのお詫びで今日黒毛和牛が届いたんですよねー」

「黒毛和牛!?」

 

 やっぱりその反応になりますよね!黒毛和牛なんて普通食べませんからな!誕生日とかご褒美とかで食べるような肉だろ?まあ昔はしょっちゅう食べてたけどそんな生活は今はもうしていない!

 

「でも俺料理できないからどーしようか迷ってるんですよねー」アハハ

 

 料理はくそ苦手だからな、自立したいとか言ってるくせに料理の勉強しようとしないからな、何してんだよ俺!?

ん?まてよ?料理ができる人俺の隣にいるじゃん!!

 

「り、リサ先輩!」

「な、なに?」

「黒毛和牛食べさせてあげるので調理してください!!」

 

 リサ先輩に熱い視線を向けながら大声で頼み込んだ。リサ先輩なら料理が得意だからきっと黒毛和牛をさらに美味しく調理してくれるはずだ!

 

「アタシは全然いいよ!それに黒毛和牛食べれるしね♪」

 

 よし!これで心配はなくなった!あとは日付を決めて肉を持っていくだけだ!

 

「よ、よかった!なら今度も」

「いいなー!モカちゃんもくろげわぎゅー食べたいよ〜!」

 

 大声で言ったからこやつに聞かれていたんだな!しまったーもっと考えて言えばよかったが...まあモカにはこないだお世話になったし少し大きすぎるが恩を返しておいてやるか

 

「別にいいが少しな!」

「モカちゃんにとっての少しでいかせていただきますー」

「お前沢山食べそうだな!」

 

 でもまあーこれが普通ってやつなのかな?友達と一緒にご飯食べるってことはさ、まあリサ先輩は友達ではないかもしれないけど知り合いだしな!今度自分から友達ですか?って聞いてみるか、いややばいやつかよ!

 

「いつ食べる〜?今日?」

「今日って張り切りすぎだろ!」

「アタシは今日でいいよ?」

「リサ先輩まで!?」

 

 普段から黒毛和牛なんて食べないから早く食べたいのかな?まあいいや!今日にするか!

 

「じゃあバイトが終わった後肉持ってきますね!」

「えーシン君の家じゃないの〜?」

「お、俺の家で料理するの!?」

「んーシン君一人暮らしなら大丈夫じゃないかな?」

 

 確かにリサ先輩の家やモカの家だと家族がいるしな、ここは俺の家で料理して食べるのがいいと思うが...異性を家にあげる、いや人を家にあげるなんて初めてだぞ!?おもてなしとか何もわからん!

 

「いいですけど俺の家何もないですよ?」

「調理器具は?」

「まあそれなりには揃ってるかと」

 

 一時期まじで料理頑張ろうって思って調理器具だけは揃えたからな、今回マニアックなことをしない限り大丈夫だろ

 

「よーしなら今日はシン君の家で肉パーティーだー」

「おー!」

「え!?り、リサ先輩!?お、おー!」

「話盛り上がってるところ悪いがお前ら仕事しろよなー」

『はーい』

 

 店長にそう言われ仕事に戻る俺達であった。

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 バイトも終わり後は俺の家に行くだけ、そんな途中でモカがある発言をした。

 

「ねえー蘭も誘っていい〜?」

「なんでだよ!?」

「いいじゃん!蘭も誘いなよー!」

「まあ、リサ先輩がそう言うならいいけど」

 

 モカのやつなんで蘭のやつを誘ったんだ?あれか、友達と肉を食べたらさらに旨くなるってやつか?

 

「ってもういるけどねー」

「どうも」

「はや!?」

 

 もう連絡取ってたなら先に言えよな!

 その後はモカが話を振りそれについてみんなで話してた。これも普通ってやつなんだろう、学校帰り、またはバイト帰りに友達と喋りながら帰宅する、今までは1人で帰ってたからな、おいそこぼっちとか言うな!

 

 話をしてるうちにメインの肉はあるがそれ以外の食料がないと気づき途中でスーパーに寄っていた。

 

「お金ぐらい俺が出しますよ!」

「いやいや高級な肉貰うからさ?それ以外の食材はあたしに買わせてよね♪」

「いや、で、でもー」

「あーもう!アタシが買いたいの!買わせてくれないなら料理作らないよ?」

「お願いします!!」

 

 いってきまーすと言ってリサ先輩は食材を買いに行った。それにモカがついていくと言い今現状蘭と2人っきりだ。

 

「2人っきりになっちゃったね」

「なんか最近2人でいるの多くない?」

「そうかもね」

「あ、そういえば今度またライブするんだよね」

「そーなのか?」

「うん、ガルジャムっていって大きいライブに招待されたから出るの」

 

 へーそんな大きいライブに招待されるほど演奏が上手いのか!まあ彼女達ならいい所まで行くと思うけど...って何も知らないのに知ったように言ってしまった。すまん

 

「見に来る?」

「んー見れるなら見てみたいな!」

「...そっ、だったらチケット今度渡すよ」

「お、おう」

 

 そんな話をしながら蘭が近くにあった自販機で飲み物を買いに行った。

 

「ほら、コーヒー飲める?」

「の、飲めるけど、なにこれ?」

 

 なんで急に飲み物渡してくるの!?何か企んでいるのか...

 

「あ、あたしだけ飲むのはなんかあれじゃん!」

「それにご飯食べるしそれの前払い!」

「わ、わかった。ありがたく受け取るよ」

 

 コーヒーは飲めないわけではない。苦手なだけだ!決して飲めないわけではない。大事なことだから2回言ったよ

 

「...飲めないの?」

「の、のの飲めるさ!」

 

 そう言って一気飲みするが...

めっちゃ苦い!いつも思うけどコーヒー飲める人ってなんてカッコイイなって思っちゃうよ!

 

「別に普通だよ、つぐみの家が喫茶店だから慣れたんだよ」

「へーつぐみさんの家って喫茶店なのか!」

 

 初めて知った!今度寄ってみようかな!コーヒー飲めないけど他の飲み物もあるだろ、きっとそうだ!そうだよね!?

 

「...なんでさんとかつけるの?」

「え?あーなんとなく?」アハハ

「また笑って誤魔化す」

「...」

「あんたさ?もっと積極的に絡んでもいいと思うよ?」

「...キモがられない?」

「どちらかと言うとあんたカッコイイ人の分類じゃないの?」

『ん?』

 

 えー!!!ら、ら、蘭さん今なんて言いました!?

 

「ち、違う!やっぱりシンはキモくて変態だから!」

「あ、あははっ!で、ですよね!」

「あ、も、モカ達帰ってきた!早く行くよ!」

「お、おう!」

 

 ガチトーンで言ってたから一瞬期待したがやっぱり違ってたか!でも蘭から変態って言われるのは腑に落ちん!俺はお前に何もしてないだろ!?

 

「2人共何してたの〜」

『なんでもない!』

「わーお息ピッタリだ」

 

こんな恥ずかしい話ができるわけないだろ!?

 

「あーもしかして蘭になんかいやらしいことでもしてたのかな~?」

「なんでだよ!?」

「んーシン君ならしそうだけどね」

「なんでリサ先輩までそんなこと言うんですか!」

 

なに!?俺がいつお前らに変なことしたんだよ!俺は何もしていないだろ?そりゃー宿泊研修でひどい事故もあったけどさ!

 

「やっぱり宿泊研修の件があるからね~?」

「うん、あれは酷い」

「アタシも今日話聞いたけどさすがに話ができすぎてるよねー」

「本当だから黒毛和牛が届いたんでしょう!?」

 

話したときは信じてくれたじゃん!なんでそんな裏切ること言うんですか!?

 

「まあまあーとりあえずシン君これからはしないようにしようね~?」

「だから事故なんだって!!!!」

 

スーパーの前でまたまたシンは叫んでいた。この後のお肉パーティーはどうなるのか!?

 




評価のバーが黄色に戻ってた...また赤になれるように頑張ります!

そしてUAが10000、お気に入り登録100人超えました!この作品をこんなに読んでくれて嬉しいです!今後も頑張りますのでよろしくお願いします!

今回は話が長くなりそうなので2つに分けました!後編も楽しみにしててくださいね!では次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと黒毛和牛が生んだ話 後編

さすがに後編を残して休むのもなんかあれかなっと思ったので投稿します!てか本当に休むか分からなくなってきた!ではどうぞ!!


 その後蘭とはあまり会話をせずに俺の家に向かた。

 

「ここです」

「ここですって」

「え?なにここ」

「おー凄いですな〜」

 

 そう、俺の家はここら辺でおそらく1番高級なマンションなんだよな、こんな所の家賃なんてぜってぇ高いから払えねーんだよ!ここに住んでたら一生自立できないって思ってるからな!でも引越しするのも無理だし今はこの家に住むしかないんだよ

 

「カードキーなんて初めて見たかも」

「お、俺の家はもういいでしょ!早く中に入りましょうよ!」

 

 カードを使い鍵をあけ、俺が住んでいる部屋に向かう

 

「適当にくつろいでてください、まあ何も無いけど」アハハ

「何も無いのレベルじゃないでしょこれ!?」

「まあそーですよね!」

 

 本当に何もないんだよなー使ってない部屋とか普通にあるし日常生活に必要なものしか揃ってない。まあくつろげるって言ったらテレビを寝っ転がって見ることぐらいかな?テレビは最近になって買ったけどな!

 

「よくこれで生きていけるね」

「なんだその言い方は!普通だろ?」

「いやーさすがにこれはないよー」

「も、モカまでも言うのか!?」

「あはは、まあそのうち買い揃えなよ?アタシは肉の解凍の準備しとくね♪」

 

 リサ先輩が肉の下処理を始めたところで俺も朝乾かしてた服を取り込んだ。

 

「手伝うよ」

「いやいいって、一応客だろ?」

「モカを見てみろ!テレビの前で寝っ転がってるだろ!」

「あれはモカだから」

「いいから手伝うって」

 

 モカのやつは寝っ転がってテレビを見てるのに蘭のやつは手伝うってお前良い奴すぎるだろ...!

 

「おー2人仲良く洗濯物を取り込んで夫婦みたいですな〜」

『なっ!』

「何言ってるの!?モカのバカ!」

「本当に何言ってんだよ!?」

 

 夫婦になりたい人ってのはリサ先輩みたいな料理ができる人となりたいです!そう言えば蘭とモカは料理できるのか?

 

「お前ら料理できるの?」

「モカちゃんはできるよ〜」

「...」

「ら、蘭さんは?」

「で、できないよ!わ、わるい!?」

「いえ!悪くありません!まったく大丈夫であります!」

「おー久しぶりにモカポイント貯まったね〜」

「あったなそんなわけわからんポイント!」

 

 モカとこんなやり取りをするのもなんか久しぶりだな!

 

「シン君料理以外はできるの〜?」

「当たり前だ!一人暮らしなめんなよ!」

「でも料理できてないじゃん」

「それは蘭も同じだろ!?」

「あ、あたしはまだ一人暮らししないから大丈夫なの!」

「な、なんだよそれ!」

 

 一人暮らししないから料理しなくていいなら料理できるリサ先輩とモカはなんなんだよ!

 

「じゃーシン君とモカちゃんが結婚したら料理だけしてそれ以外の家事はシン君に任せれるね〜」

「なんでお前と結婚する前提なんだよ!?」

「えーいいじゃんーお互いWinWinの関係だよ〜?」

「WinWinじゃねーよ!」

 

 モカと結婚なんかしたら絶対苦労するからな!?てかそれ大半の家事は俺がしないといけねーじゃねーか!

 

「モカー料理作るの手伝ってよー」

「はーい」

 

 その後はモカも加わりリサ先輩と料理をしていた。その時俺は何してたかって?手伝おうとしたさ!けど包丁で指の先を少しを切り盛大に血を流して退場しました。まあ色々あって

 

「完成ー!みんな食べてみて!」

「おー!美味そう!」

「無難にステーキにしてみたよ♪」

「美味しそ〜早く食べようよ!」

「わ、わかったからそのヨダレを拭けよな!」

 

 今まで使ってなかった皿とフォークやナイフ、そしてテーブルに付属でついてきた椅子もやっと使える日が来たよ!今まで椅子なんて俺が使う分しか使ってないからな!

 

『いただきます!』

 

 みんなでいっせいに言い、調理された黒毛和牛を食べた。

 

「う、美味い!美味すぎる!」

 

 久しぶりにこんな高級な肉食べたぜ!昔屋敷にいた時は普通に食べてたからな、こっちに来て初めて食べたらめちゃくちゃ美味いじゃねーか!

 

「モカちゃんは今幸せですー」

「リサさん美味いです」

「モカも蘭もシン君も美味しいって言ってくれて嬉しいよ!」

「リサ先輩料理上手すぎです!」

 

 本当に上手すぎて美味い!俺も将来こんな人と結婚したいぜ!まてよ?俺がリサ先輩と結婚すれば...ってこの考えはモカと同じだ!や、やっぱりやめとこう

 

「この野菜スープも美味しいです!」

「それはアタシ作ってないよ?」

「それはモカちゃんが作りました〜」

「はぁ!?」

「いやー美味いって言ってくれるなんて嬉しいよ〜結婚しちゃうー?」

「だから結婚しねーから!!」

「あ!この米もいい炊き加減ですよ!」

「それもモカが炊いたやつね」

「へ!?」

「いやー本当に結婚しちゃう〜?」

「絶対しないからな!」

 

 なんでお前はそんなに俺と結婚したがるんだよ!なに!?弦巻家の一員になりたいのかお前は!

 

「まん丸お山に彩りを!Pastel Palettesふわふわピンク担当!丸山彩でーす!」

 

 つけていたテレビから誰かしらが自己紹介をしていた。どうやらなんかの歌番組らしいが初めて見たなーまあ俺がテレビをつい最近買ったからだけどさ

 

「あ、彩さんだ」

「え?知り合いなの!?」

「うん」

 

 えー!?テレビに出る=有名人だろ!?それによく見るとPastel Palettesって言うアイドルバンド!?だから知ってるのか!でもそ、そんな人と蘭は知り合いなのですか!?

 

「あんたと同じ学校の人だよ?」

「えー!!嘘だろ!?」

「いちいち反応がうるさい」

 

 蘭になんか言われたが気にしない...俺と同じ高校にこんな人いたんだ!今度沙綾さんに聞いとくか

 

「シン君は日菜先輩とは仲良くなれるかもね〜」

「あ!確かに!振り回されそう!」

「その人誰なんですか?」

「んーこころと仲がいい人だよ!」

「じゃダメです、仲良くなれません」

「そ、即答だ」

 

 あのこころと仲がいいやつなんて友達にもなりたくねーよ!上から目線だけど話を聞いてわかる、やばい人だ!

 

「ほら今テレビ出てる人だよ」

「その人もアイドルなんですね!?」

「ちなみにー若宮イヴちゃんもアイドルだよ?」

 

 あ、あの人か!風呂桶で岩を破壊した人!あの子もアイドルだったのか...ん?まてよ?そんな人と俺は同じクラスなの?やばくね!?そんなの普通じゃないじゃん!でもまあ、うん、クラスにいるからしょうがないからこれはなかったことにしよう

 

「あっはは!本当にシン君何も知らないんだね!」

「お、俺だってテレビ買ったからこれから色々学ぶんですよ!?」

「そーお?ならおねーさん期待しとくね♪」

 

 色々な話をしながらご飯を食べ終わっていた。もともとは高級な肉を食べる会だったのにそんなの忘れてテレビに出た人の話や普段の話などをして盛り上がった。それに誰かと一緒にこの家でご飯を食べるのは初めてだっからな、少し以上に楽しかった。

 

「じゃーアタシ達帰るね!」

「あ、送っていきますよ!」

 

 もう外は暗いしな、さすがに女子達だけで帰らせるのもさ?なんか嫌じゃん

 

「おー男前ですな〜」

「違うよモカ、暗いところに連れ込んでなんかするんだよ」

「んなことしねーよ!」

「まあ送ってくれるのはいいことじゃん?」

「り、リサ先輩!...抱きついてもいいですか?」

「...よし!みんな行こっか!」

「あーあ!冗談です!」

 

 冗談でもこれはさすがに言いすぎたな!まあなんだかんだあったけど蘭の家まで着いた。

 

「蘭の家大きいな」

「何言ってんの?あんたの実家の方が大きいくせに」

「ひ、否定できねー!」

「じゃーねー蘭〜」

「蘭〜また今度ね!」

「うん、モカ、リサ先輩、さよなら今日は楽しかったよ」

「お、俺は!?」

 

 大事な人忘れてますよー!!

 

「うん、シンもさよならまた今度ね」

「お、おう!」

 

 なんかいつも店長が俺は?って聞いたらなんか酷いこと言われるから今回もそうなのかなって思ったけど違った。なんか調子狂うな

 

その後少し歩きモカの家に着いた。

 

「じゃーリサ先輩、シン君さよなら〜」

「うん!また今度ね!」

「またバイトでな」

「あ、シン君〜」

「なんだ?」

「今度一緒に家具買いに行こうね〜?」

「い、行かねーよ!」

「またまた照れちゃって〜」

「早く帰れよ!じゃあな!」

「はーい」

 

 モカのやつは前から変わらねーな、まあこれがあいつの普通ってやつなのかもしれないな

その後さらに少し歩きリサ先輩の家に着いた。

 

「アタシここだからここまででいいよ」

「わかりました。それじゃまたバイトで」

「うん、またね!ばいばーい」

 

 リサ先輩が別れの言葉を言い玄関のドアを開けようとしていた。その時だ、その時なんか今言わないといけないって思ったんだ。俺と友達になってくださいって

 

「り、リサ先輩!」

「うわ!な、なに?」

 

 咄嗟に名前を呼んでしまった。どーすんだよこれから!と、とりあえずそれとなく言ってみるか

 

「お、俺達の関係ワンランク上げませんか!?」

「あはは、え、えっとー告白なのかな?」

「!?ち、違います!そーじゃなくて!」

 

 《あんたさ?もっと積極的に絡んでもいいと思うよ?》

 

 蘭が言ったセリフを思い出した。

 そうだ、もっと積極的に絡んでもいいんだよ!蘭が言ってくれたんだ!だから俺は!

 

「俺と友達になってください!」

 

 って言えることができたんだ。

 

 (ありがとな、蘭)

 

 心の中で蘭に感謝の言葉を言いリサ先輩の方を見た。

 

「あれー?アタシはもう友達って思ってたけどシン君は違ってたのかなー?」ニヤニヤ

「えっ!?いや、違くて!その...友達ってことでいいんですか?」

「うん!全然いいよ!」

 

 よ、よかったー嫌われるかと思ったよ!でもリサ先輩が前から俺のことを友達だと思ってくれてたのは嬉しいな

 

 (そっか、もっと積極的に絡んでもいいのか)

 

 蘭には感謝しないとな

 

「それじゃアタシ帰るね」

「はい!またバイトで!」

「うん!バイバイ!」

 

 リサ先輩と本当に別れて1人で帰っていた。するとどうだろう、急に人に話しかけられた。

 

「君ーこんな夜中に1人で出歩いてたら危険だよ?」

「へ?」

 

 自転車に乗ってきた警官が降りてこっちに来た。

 

「早く帰りなさい。さもなくば事情聴取して親に連絡して迎え呼んでもらうよ?」

「そ、それだけは許してください!す、すぐに帰ります!」

「うん、気をつけてね!」

「はあーなんでいつもこうなるんだよー!」

「おーい奇声をあげないでねー」

「あ、す、すみません」

 

 どうしていつも俺はいいことがあるとその後に悪いことがすぐに起きるんだよ!?神様俺はなにか悪いことでもしたのでしょうか!?

 

 (...さあ?)

 

 Oh my God!

 今後深夜にうろつくのは二度としないと心に決めた。

 

 




ほぼ日常ストーリーでごめんなさい!

新たに投票してくれたプロスペシャルさんありがとうございます!!ほとんどが☆9で10が一人もいないーもらえるように頑張ります!

感想などいただくとモチベがかなり上がります!少しでも面白いと思った方は投票や感想お願いしますね!では次回でお会いしましょう!


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弦巻シンには幼馴染がわからない

 今週も今週とてバイトの日々だった。多分あのバイト先で店長と同じレベルで働いている自信がある、店長ずっと働いてるしな、あれ?店長って休んでるの?休んでるとこ見たことないんだけど!?あの人って何か強靭な体力の持ち主なのか?

 

 あ、そういえば今日モカの様子が少し変だったな...何かあったのか?リサ先輩と2人でレジにいる時に何か話してたしな、まあ女子にしかわからん悩みがあるんだろう、そんなことよりだ!

 

「今週も頑張ったし!少し贅沢してもいいよな!」

 

 そーう!まだ黒毛和牛は余っている!二人分ぐらいあるから来週も食べれる!俺はこの一週間土曜の夜に食べることを夢見て頑張ったんだ!

 

 家に着くが...ホテルドアの前に誰かいる

 カードキー使ってドア開けて入ればいいのに

 

 あ!お客さんか、まあ不幸だったな、この自動ドアはカードキーでロック外さないと開かないんだよ、俺も最初開かなくて1時間近くまって管理人さんの方が教えてくれたんだけどな!恐る恐る近づくが近づいてわかった。

 

「…えっと、蘭?」

「……」

 

 待っていたのは蘭だった。しかも泣いているいやーあの、人のマンションの前で泣かれるのも困るんですが...

 

「どうしたんだよ」

 

 蘭はドアに寄りかかって座っていた。蘭と目線を合わせるためにしゃがんで蘭を見る

 

「――……っ!」

「な、泣いてたら分からないだろ?」

「……んかした」

「ん?」

「みんなと…喧嘩…しちゃった」

 

 そうか、なるほどな、だからモカの様子がおかしかったのか、幼馴染で同じバンド。きっと何か言い合いになったんだろう

 

「どうしたんですか?」

「え?いやーこいつは」

「おいおい女性が泣いてるぞ」

「君!なにかしたのかね!?」

「ち、違いますから!!!!」

「なんでいつもこーなんだよ!」

 

 近くにいた人達から声をかけられいかにも俺が蘭を泣かせたみたいに言ってくるから蘭の腕を掴みひとり文句を言いドアを開け自分の部屋に向かった。

 

『……』

 

 お互い黙っている、いやそりゃそうでしょ!?だって目の前に泣いてる人がいるんだよ!?そんな能天気に話しかけれねーだろ!そもそもなんで蘭のやつ俺の家に来るんだよ、もっと他に宛があるだろ

 

「えっと、なんだ話したくないなら話さなくていいから」

「――……ありがとう」

 

 うっ、なんか調子狂うなー時々素直になるやつなんなんですか?男はそんなところに惚れるんですよ

 洗濯物を取り込もうと立ち上がるが

 

「――……まって」

 

 服の袖を捕まれ移動を阻止された。

 いや、俺にどうしろと!今までに異性の人の相談なんて受けたこともないし慰め方もわからねーっての!ど、どうすれば...

 1人で考えている時に蘭が口を開いた。

 

 話を聞くとどうやら蘭のことをみんなが心配してくれたにも関わらず家の事だからみんなには関係ないと言いつい酷い態度をとってしまったらしい。

 

蘭ってこーゆう性格だから1度口に出したらもう引き下がれないとばかりに思い。巴さんと喧嘩になったようだ。それにバンドのみんなを巻き込んでしまい今Afterglowはピリピリしてる状況

 

「…それでそのまま走ってライブハウスを出ていったと」

「――…コク」

「え?お前俺が帰る今の今までずっと待ってたの?」

「――…コク」

 

 なんだよそれ、なんかめちゃくちゃ申し訳ない感半端ないんですが

 

「みんなには関係ないって言って突き放しちゃったの…」

 

 関係ない、ねー、確かに無関係者かもしれないな

 

 それと俺には友達と喧嘩したこととかないしましてや今までそんな喧嘩するほど仲がいいやつなんていなかったからわからない。わからないがわかることもある

 

「あのな蘭、一度口に出してしまった言葉はもう戻すことができないんだ」

「――……っ!」

「言葉ひとつで人を離れ離れにするんだよ」

「…それじゃあたし達は」

「でもな、それは普通の友達だ。けど蘭達の友情はその程度なのか?違うだろ!」

「…っ!」

「お前達はやり直せることができるんだよ!だから…」

 

 これは昔お母様が俺に言った言葉だ。こころと喧嘩して酷い言葉使った時に言われたんだったけ?今思えば普通に酷いこと言ってるけどな、まあこの言葉で蘭が彼女達と仲直りできるならそれでいいけどさ

 

「だから…そんなことで喧嘩するなよな」

 

でも喧嘩するほど仲がいい友達がいるって羨ましいなって思う自分がいる。俺もモカ達とそんなふうに仲良くなれるのかな?それともこれが普通ってやつなのか?友達と喧嘩して仲直りすることがさ、でも喧嘩はしたくないなーモカには勝てるきしねーもん

 

「シンのくせに生意気」

「や、やっぱりそう来ますよね!?」

「でも…うん、ありがとね」

「明日みんなに謝るよ…あたしのかけがえのない大切な友達だからね」

「おう!」

 

 しまったー!少し以上に調子乗ったしカッコつけすぎた!何これ!?めっちゃ恥ずかしいじゃん!でも、まあ話も終わったことだし!

 

「よし!少し空気が重くなってきたから料理でもするか!」

「…あんたできるの?」

「まかせろって!少しだけ料理の練習したからな!」

 

 本当に少しだけだ。3回程度してみてわかったことがあるんだよ、それはな!自炊って結構金がかかるってことだ!今まで夜飯はコンビニで余ったパンや弁当などを貰って生活してたから事実タダだったんだよ!けど自炊だから食料とか買って金がかかる!

 

「…じゃーあたしは米炊くから」

「炊けれるのか?」

「そ、それぐらいできるし!」

 

 まったくさっきまで落ち込んでた人がよく言うよな!肉の調理方はこないだリサ先輩が作ってくれた時にそれとなく聞いていたから何となくわかる

 

 (確かこうしてこうしてこうでー)

 

「完成だ!」

「ご飯も炊けたよ」

「ベストタイミング!」

 

 肉も焼き終えたしご飯も炊けたから食べるとするか

 

『いただきます』

「お肉食べてもいいの?」

「気にすんな、黒毛和牛のお肉ひとつで友達が機嫌直すならいいだろ?」

「なに?馬鹿にしてるの?」

「…いいから食えよ!」

 

我ながら自信作なんだぞ!結構上手く焼けたと思ってるからな!

 

「…なにこれ、めっちゃ肉硬いんだけど」

「あれー!?や、焼きすぎたかなー」

 

肉を食べるが硬い、硬すぎる!なんだよこれ!だ、だったら蘭の炊いた米は

 

「...おい、この米ネチャネチャしてるぞ?」

『…』

『ぷっ!あっはは!』

 

 2人とも料理が苦手だったらそりゃーこうなるよな!俺らはお互いの料理のできなさで笑っていた。

 

 そんな空気を壊すように蘭の携帯に一通の電話がかかってきた。

 

「…父さんからだ」

「出ないのか?」

「やだよ、どうせ華道の話だもん」

「…出てみろよ」

「…うん」

 

 蘭が電話に出た。喋り方的にどうやら本当にお父さんらしいな

 

「うん、友達の家に泊まってる」

「っ!だからそれは何度も言ってるじゃん!」

「バンドはごっこ遊びじゃない!」

「…もういい!父さんなんて知らない!」

 

 蘭が電話を切ろうとしたが

 

「まて」

「...シン?」

 

 蘭が電話をきる前に携帯電話を横取り蘭の父さんに言いたいことを言った。

 

「…あんた父親だろ!娘の一人ぐらいのわがままや願いぐらい聞いてやれよ!」

「華道の家だから?そんなの知るか!」

「そんな家にずっと縛り付けられてたらやりたいこともろくにできなくなってしまうだろ!」

「少しは娘の気持ちも考えてやれよ!」

 

 電話をきり手に持ってる携帯電話を床に叩きつけようとするが

 

「ちょ、ちょっと!それあたしの携帯!」

「…ごめん」

「…なんでシンが謝るのさ」

「ごめん、俺って最低だよな」アハハ

「お父様が怖いからって、お父様にこんなこと言えないから、他人の親に八つ当たりしちゃったよ」

 

 そう、この言葉は誰でもない自分の親、つまりお父様に一番言いたい言葉だった。でも俺はお父様が怖いからってずっと逃げ続けている、そんななか目の前で蘭が親と口論してるところを見てさ?...最低だな

 

「違うよ、シンはあたしの代わりに嫌な役をしてくれた!最低なんかじゃないよ」

「で、でも俺は!」

「だったらいつか同じセリフを自分の親に言いなよ」

「っ!」

 

 俺がお父様にさっきと同じセリフを言う?そんなの無理だ!あの人に適わない!逆らうことさえいけないのに俺は今逆らっているんだぞ?

 

「…あたし決めたよ」

「なにを?」

「もう華道から逃げない!バンドを逃げ道なんかにしない!」

「そしてシンの見本になる」

「…俺の?」

 

 見本になるって一体なんのさ

 

「そう!親にちゃんと言えば向き合ってくれるって証明するから!」

「…だから、見てて!」

「っ!」

 

 なんなんだろうな、さっきまで俺が落ち込んでた蘭を慰めていたのに今じゃ立場が逆だな

 

「…じゃあ見届けるよ」

「うん」

「でもシンはお父さんからは相当怒られると思うけどね」

「なんでそれを今言うかな!?」

 

 本当になんで今言うんだよ!見届けるって言った途端もう明日蘭の家に行きたくないんですが!

 

「ダメだよ、約束したからね?」

「…はい」

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 ご飯も食べ終わり風呂にも入った。その後は適当にテレビを見ながら話を続けていた。あんなことがあったのにお互い忘れたいのかわからないが無我夢中でテレビでの話などしていた。

 

 そして寝る時になって事件が起こる

 

「ふ、布団がひとつしかない!」

 

 そう!この家には誰も泊まりに来るはずがないと思ってたから布団は俺が使ってるやつしかない!

 

「ら、蘭さんどーします?」

 

 この際蘭に布団を譲り俺は絨毯が敷かれているテレビ前のリビングで寝るか

 

「いいよ、一緒に寝ようよ」

「はぁ!?」

「今のシンはその、ほっとけないから」

 

 俺のことを気遣ってくれてるのか...いや少し以上に嬉しいよ

 

「じゃ、じゃー一緒に寝るか(棒読み)」

「う、うん」

「あ、こっち向いたら殺すから」

「ぜ、絶対に向きません!」

 

 その夜は違う意味であまり眠れなかった。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 次の日蘭の家に向かっていた。これから蘭がバンドのことと華道についての話をするために向かっている。蘭は見届けてって言うからついて行くが...多分蘭のお父さんに怒られると思う、いや絶対にだ!だってさ?いきなり知らない男性から怒鳴られたら不機嫌になるでしょ?俺はなるね!

 

「ついたよ」

「相変わらずでけーな」

「何嫌味?前も言ったけどあん」

「わかったから!それ以上言わないでくれ!」

 

 実家の風景が頭に浮かんでくるからやめてください!

 

「…じゃ行くからここで待ってて」

「お、おう」

 

 そういい蘭は家に入っていった。

 よ、よかったー!家にあがると思ってたから蘭のお父さんと会うのは確定だと思ってたが門の前で待機なら大丈夫だな

 

 数分後誰かの足音が聞こえた。きっと話は終わったんだろう

 

「蘭、どーだっ…た?」

「君が弦巻シン君かい?」

「――……ん!!!」

 

 ら、らら蘭のお父さん!?な、なんでここに来るの!?

 

「昨日はどうも」

「す、すみませんでしたぁああ!!!」

 

 その場で勢いよく土下座をした。

 

「かっこ悪いよ」

「お前もいたのかよ!」

「…君のおかげで蘭の本当の言葉を聞けたよ、ありがとう」

「え?いや、俺はー...はい」

 

 友達の親に対してやってはいけない態度をとってしまったにもかかわらず、礼を言われるってなんだよこれ…まあゆ、許されるならよしとするか

 

「ところでシン君は蘭の彼氏なのかい?」

「――……はっ!?」

「いつ結婚するんだい?式はいつあげるんだい?私も今からスケジュール調整を...」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

 

 娘の気持ちも考えてやれよって言葉を撤回します。この人あれだ、めちゃくちゃ親バカじゃねーか!娘のこと好きすぎて娘のことちゃんと考えてる人じゃん!

 

「ふふ、どーする?結婚する?」

「お前までモカと同じようなこと言うなよ!」

「あっはは!あたしはみんなの所に行くから、ありがとねシン!」

「おい!待ってくれ!今俺を1人にするな!」

 

 今1人になると蘭のお父さんの対応しないといけないだろ!?

 

「昨日泊まったんだろ?娘はどうだったかい?」

「あーもう!不幸だぁぁあああ!!!!」

「不幸とはなんだ!蘭のことを馬鹿にしてるのかね!?」

「そっちじゃなぁーいい!!!」

 

 その後俺と蘭は恋人じゃないと何度も言うが信じてもらえず最後の最後にやっと信じてくれた。信じてくれたのはいいがその気はないのかとか君になら娘を頼める...ってそんな話はまだはえーよ!!

 

 (次回!シンと蘭が結婚します!)

 

「絶対しねーから!!嘘だから信じんなよ!?」




あのー蘭視点書いた方がいいですか?書いてほしい場合は感想で意見をお聞きします。何もなかった場合はそのまま次の話を投稿しようと思います。

評価がまた下がってしまった…上げれるように頑張ります!では次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと美竹蘭

急いで書いたけどわかる、蘭視点難しかったです...ではどうぞ


 その日巴と喧嘩した。原因は本当に些細なことだった。

 

 自分でもなんであんなことで喧嘩したんだろうって思える原因だった。それはみんながあたしのことを心配してくれたのに…その心配すらなんかうざく感じちゃって

 

「みんなには関係ない!!」

 

 って言って突き放してライブハウスを出ていった。

 

 別に何処かに向かおうとは思わなかった。家に帰ればお父さんからまた細々言われ喧嘩になってしまう。それにさっきも電話で説教されたから今は…今日はもう関わりたくない

 

 どこにも行く宛がなくフラフラしていると見覚えのある建物の前に着いていた。

 

「(ここは、シンの家だ…)」

 

 前に1度だけ部屋に上がったことがあるから知ってる、それにこんな高級なマンションってこの辺りだとこれしかないからこれがシンの家なんだってわかる

 

 シンの部屋番号を入力して呼び出しボタンを押そうと思った。思ったけど…なんであたしはここにいるんだろうって思った。別にシンとはそれほど仲がいい訳ではない。なのになんであたしはここに来たんだろうって思った。

 

 考えたけど会えばわかるかもと思ったから呼び出しボタンを押した。押したが返事はない。

 

「(あ、バイトかな)」

 

 バイト先にでも行く?でもなんで?シンに会ったところでどーするの?何か変わるの?それに午後からモカはバイトって言ってたからきっとシンがいるならモカもいると思う。

 

「(あたしってこんなにも弱い人だったっけ……)」

 

 自分の不甲斐なさに涙を流していた。それはもうシンが帰ってくるまでずっと、ずっと泣いていた。こんなのは迷惑なことだとわかってる、わかってるけど体がここから動こうとしない。

 

 どれぐらい待っただろう、シンが帰ってきてあたしを部屋に入れてくれた。絶対になんで蘭が俺の所に来てるんだ?他に宛があるだろって思ってるに決まってる、でもなんでか知らないけどシンを選んだんだよ、頼る人をさ

 

 シンは話したくないなら話さなくていいって言ってくれた。でもそれは違うんじゃないの?って思った。だってここまで来て何も言わずに帰るのもおかしいじゃん、だからあたしはシンに話した。

 

 その話をしたあとシンが言ったの

 

『1度口に出した言葉はもう戻すことができない』

 

 って、それを聞いた時あたしはみんなになんてことをしたんだろって思った。シンの言うとり言葉は暴力よりももっと酷い凶器だなって、だから本当に取り返しがつかないことをしてしまったと自分を恨んだよ…けど

 

『友情はその程度か?違うだろ!』

 

 シンはそう言ってくれた。

 

 友情はその程度か?…違う!あたし達の友情はその程度じゃない。中学の文化祭で初めてライブをしてその後一緒に夕焼けを見て泣いてみんなでこの景色絶対に忘れないって誓った。だからバンドの名前もAfterglowにして夕焼けを、あの日の結成したことを一生忘れないために付けた。そっか、そうだよね、それにあたし達の友情は夕焼けで繋がってるんだって前に巴が言ってたよね、たとえ離れ離れになってもこの夕焼けがあたし達を繋いでくれる

 

 だから…あたしはまたきっとみんなとやり直せることができると思った。

 

 シンがちょっといいこと言ったもんだから

 

「シンのくせに生意気」

 

 って言ってやった。けどシンはそん言葉も『いつも通り』の受け答えで返してくれた。

 

 でも…シンのことかなり見直したよ、前はただウザイ人って思ってたけど今はあたしにとってかけがえのない友達の1人だよ

 

 話が終わり、シンが作ってくれた不味いご飯を食べてる時にお父さんから電話がかかってきた。あたしは出たくないって言ったけどシンが出ろって言うから出てみたら

 

 案の定説教、バンドはごっこ遊びじゃないって何度も言うけど信じてくれない。そんなお父さんに嫌気がさして電話を切ろうとした。

 

 けどシンはそれを止め、電話を代わりお父さんに説教っていうか、怒鳴っていた。

 

 それを聞いた時シンって本当に馬鹿だなって思ったよ、他人の親で無関係なのに本気で怒っててさ、正直少しカッコイイなって思ったよ、馬鹿だけど

 

 その後シンが謝ってきた。けどそれよりもあたしは嬉しかった。確かにシンがしたことは世間一般的に異常行動だ。けどあたしが言えないことを代わりに言ってくれた。本当は自分で言わなきといけないセリフ、けど今回ばかりはシンに頼ってもいいかなって思っちゃったんだよ

 

 シンも自分がした行動に後悔していた。けどあたしの代わりに嫌な役をしてくれたシンにこう言った。

 

「だったら同じセリフを自分の親に言いなよ」

 

 ってさ、シンの家とあたしの家は全然違う、けどさ、一応証明にはなるじゃん、だからあたしは決めた。

 

 もう華道から逃げない。バンドを逃げ道にしない。そしてシンの見本になるってさ…だからシンには見届けてと伝えた。

 

 それからの行動は早かった。次の日すぐにお父さんのところに行き話をした。

 

「――……父さん」

「帰ってきたか、昨日の電話はなんだったんだ?」

「あれは…あたしの友達が言ったの」

「――……そうか」

 

 父さんは昨日の電話のことについて話しかけてきた。シンが怒鳴ったんだよ、父さんが怒るのも無理はない。

 

「シンが言ったセリフ、それがあたしの本音」

「……」

「バンドはやめない…やめたくないから決着をつけに来たの」

「バンドはごっこ遊びって言うけどあたしはそう思ってない!」

「あたし達は本気でやってるの」

 

 今までずっと言いたかったけど言えなかったことをやっと父さんに言えることができた。

 

「本気と言われてもそれは口先だけだろう」

「…これ、今度のライブのチケット」

「あえてバンド名は言わないよ、ちゃんとあたし達を見つけて欲しいから」

「…あたしが証明してあげる、あたし達のバンドはごっこ遊びじゃないって!」

「だから…あたし達の音を聞いてくだ…さい」

 

 確かにいくら本気と言ったところで証明できない。だったら父さんにあたし達の音を、演奏を、全てをぶつけるだけ、これであたしが本気だってことを証明する!

 

「――……わかった」

「――……ありがとう、父さん」

 

 伝わったんだ。あたしの気持ちが…だったら次はみんなと仲直りして父さんに本気だってことを証明するために頑張らなくちゃね

 

「――……華道のこともちゃんと向き合うから」

「――……蘭」

 

 うん、これでよかったんだ。あたしはシンのおかげで前に進むことができたよ

 

「(ありがとう、シン)」

 

 心の中でシンにお礼をしたけど、門の前で待ってくれてるからその時にもお礼しとかないとね

 

「ところで昨日電話で話していた人は誰だい?」

「弦巻シン、あたしの友達」

「……そうか」

「会ってみる?今門の所にいるけど」

「……そうするか」

 

 ごめんシン、やっぱりあんたにはカッコつけさせたくないや、ふふ、だから父さんに怒られるの我慢してよね?

 

 父さんが先に行っててその後に来たが案の定シンは土下座をしてた。うん、やっぱりカッコ悪い方がシンらしいよ

 

 父さんがシンにあたしの彼氏なのかって聞いてたけど……

 

 ないない、あたしがシンと付き合って恋人同士になるなんてないしなる気なんてないよ

 

 ここはあれだね?こないだのモカみたいな返事だとシンは喜ぶのかな?

 

「ふふ、どーする?結婚する?」

 

 と言うとシンは『いつも通り』の返事をしてくれる、これはモカが言いたくなる気持ちもなんとなくわかるよ、まあ嘘か本当かなんて今は考えなくてね?

 

 そうだね、あたしはシンと恋人にはなりたくないけど…相棒ぐらいにはなってもいいかな?もともと似たような人だったし、それにシンの見本にもなれたしね

 

「(あたしはシンより1歩先に出たよ?シンも頑張ってね)」

 

 そんなこと心の中で言いながら

 

「ありがとうね、シン!」

 

 感謝の言葉を言い。みんなと仲直りするために集合場所に向かった。




☆10に投票してくれたピスケス23さんありがとうございます!!初めての評価10でとても嬉しいです!

感想や評価お待ちしております!では次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと勉強会

本日高校を卒業しました。もともとこの作品は仮卒期間中が暇だったので書き始めた作品ですが自分でもまさかこんなにたくさん読んでもらえるなんて思いませんでした。本当にありがとうございます。まだまだ話は続きますのでどうぞよろしくお願いいたします。

長くなりました。それではそうぞ


 学生の本職はなんですか?はい、勉強ですね!でも俺はどーですか?バイトに明け暮れる日々ですよ!だから俺が頭悪いと思うか?違うな

 

「テスト返却するー、初めてのテストで満点がいるぞー」

 

 ざわざわと教室が騒がしくなる。そう!テスト期間を終え今日テスト返却が行われる日だ!はっきり言っておこう

 

「弦巻ー」

「……」

「英語は満点か、やるな」

 

 俺は頭がいいってわけではない。今回はいやいやいい点数を取ってしまったんだよな…

 

「シン君ー何点だったーって英語100点!?」

「あーめっちゃ恥ずかしい(棒読み)」

「絶対思ってないでしょそれー」

「ご、ごめんって沙綾さん」

 

 日々バイト尽くしの俺だがな、仕事に入る前に少し時間が余るんだよ、その時にやることがなく暇だから勉強してたらこんなに点数がよくなっていたんだ。

 

 あーあとはあれだな、日曜とか暇だったからテストも近いしずっと勉強してたな

 

 それと小さい頃から英才教育で英語は馬鹿みたいに勉強させられてたからな、多分こころも満点だと思うぞ

 

「シン君すごいね!勉強したの?」

「な、なわけ!」

 

 言えない、口が裂けても休みが暇すぎてずっと勉強してたなんて言えない!

 

「こんなに頭いいなら勉強会誘えばよかったね!」

「うん、私達が有咲に質問しすぎて大変そうだったしね」

 

 へー勉強会ね、べ、別にーそんなの憧れてなんかねーし!(めちゃくちゃ憧れてる)

 

「シン君私と答案用紙変えない?」

「変えねーよ!てかお前点数低すぎだろ!?」

「うん、バイトとバンドがんばりすぎた」

「でも赤点じゃないよ!」ドヤ

「赤点なんて取らねーよ!」

『へ?』

 

 反応したのは戸山さんとはぐみさんだった。戸山さんがいるのはわかるがなんではぐみさんもいるんだ?

 

「かーくんやばいよ!はぐみ英語赤点だよ!」

「はぐー!私は数学が赤点だよー!」

「なお今回赤点だったやつは放課後補習な」

『いやー!!!』

 

 はっきりわかる、赤点取らなければ大丈夫だってことだな

 

「シン君助けて!」

「お願い!はぐみに英語教えて!」

「ごめんバイト」

『そんなー!!』

 

 さっきから二人揃って息ぴったりだな!可愛すぎだろ!?でも悪いな、バイトがあるから手伝えないんだ。

 

「シンのことだからバイトの間に勉強とかしてたんじゃない?」

「な、なんでバレてる!?って」

「い、今シンって呼びましたか!?」

「え?うん、なんか君って付けるのもあれかなーって」

 

 め、女神様ですかあなたは!君付けから君なしにレベルアップしたのは凄いことだぞ!

 

「ほら?シンも私のこと沙綾って呼んでいいから」

「そ、そうする!」

「うん!よろしくねシン」

「よ、よろしく沙綾さん...じゃなくて沙綾?」

 

 んーなんかなれないな、友達になってから数ヶ月経つがその間ずっとさん付けだったからな!まあそのうち慣れるか!

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 テスト返却も終わり土曜日のバイトも終わり久しぶりにゆっくりできる日曜が来た。

 

「今日は一日中テレビ見ながらぐうたらしてよう!」

 

\ピンポーン/

 

 誰だ?俺の癒しの休日を邪魔するやつは

 文句を言いながらインタホーンの映像を見る

 

「やっほー遊びに来たよ〜」

 

ガチャ

 

 インタホーンの受話器をすぐにもとの場所に戻した。

 

「あれ?なんか知ってる人がいたような…まあ気のせいか」

 

\ピンポーン/

 

「――……なに?」

「いやー1人で寂しくて死んでないかな〜って」

「俺はうさぎかよ!」

 

 んなことで死んでたらとっくの昔に死んでるわ!

 

「――……勝手にしろ」

 

 そういいドアの鍵を解除した。これに気づかなかったら来ないし気づいたら来るか、まあモカ1人なら適当にやればそのうち飽きたとか言って帰るだろ

 

『おじゃましまーす!』

「モカひとりじゃないんかい!」

 

 まさかのAfterglow全員集合って話聞いてないぞ!

 

「シン君が何も聞かないからだよー」

「…お前ら隠れてたな!」

「いやーシンの家広いな!」

「こんな所に住んでるなんてすごいね!」

「へ、部屋がたくさんある」

「ま、まあな」アハハ

 

 そりゃー驚くよな、だってこんな所に1人で住んでる高校生なんていないからな!

 

「相変わらず何も無い家だね」

「蘭…ちゃんと仲直りできたんだな」

「う、うるさいな!」

 

 何その反応!人がせっかく心配してやったのに酷くないか!?

 

「で?蘭達は何しに来たの?」

「勉強会しに来たの!」

 

 うん、すんごい笑顔でひまりさんが言ってるけど意味がわからん!は?勉強会?なんでここで!

 

「いやいや〜聞きましたよ?テストいい点数だったって」

「誰にだよ!」

「さーやー」

「モカと沙綾知り合いだったのかよ!」

 

 初めて知ったよその事実!そう言えば前に沙綾の家がパン屋だって話を聞いたな…モカはパンが好きだから沙綾のところで買ってるってことなのかな?

 

「そーゆうわけだからお願い!今度テストあるから数学教えて!」

「はあーしょうがないなー教えてやるよ!」

 

 正直いって勉強会って少し憧れてたしな!

 

「ありがとう!つぐも巴も蘭もモカも教えてくれないって言ってたからシン君に断られてたら泣いてたよー!」

「は、ははは」

 

 お前ら仲いいんじゃなかったのかよ!

 

 その後ひまりさんの勉強を面倒見るが

 

「なんでこんな問題も解けないんだよ!?」

「うぇーん!ご、ごめんなさいシン君ー」

「阿呆!シン君じゃない!先生と呼べ!」

「せ、先生ー」

「先生じゃね!シンだ!」

「どっちなのー!?」

 

 はっきり言って破壊的に頭が悪すぎた。高一のテストなんてほぼ中学で習ったことがメインのテストだぞ!?

 

「貴様はこの問題を解いておけ!」

「はい!」

「ひまりしごかれてるね」

「シン君に頼んだの間違いだったね〜」

「もーシン君先生厳しいよー!」

「そ、その名前で定着したんだな」

「でもほら?これで成績上がるからよかったね!」

「よくないよー!!」

 

 まったくダメダメだな、教えるのは簡単って思ったがそうでもないなー

 

 俺は普段の勉強より頭を使ったから少し風にあたるためバルコニーに出ていた。

 

「ひまり結構頑張ってる方だよ?」

「いやーあれは酷いよ」

 

 バルコニーで休んでいる時に蘭が来た。

 ひまりの話をしたあと特に話すことなく2人とも黙っていたが蘭が話しかけてきた。

 

「あのさ、ライブどうだった?」

「ああ、最高だったぜ!今度やる時また誘ってくれよ!」

「…お父さんあのライブに来てたの」

「へ、へー」

 

 そう、あの話の後ライブのチケットを蘭がくれたためバイトを休んでまで見に行った。行った結果損することはなかったし新曲も聞けたからよかった。でも蘭のお父さんも来てるなんて知らなかったな

 

「バンド、認めてくれるって」

「――……そっか」

 

 蘭は凄いな、自分の意見をちゃんと親に言えてさ、俺はまだ逃げてる、きっとこの高校生活中はずっと逃げ続けるんだろうな

 

「次はシンの番ね」

「は?」

「あたしはシンより一歩先に行ったから、悔しかったら追いついてみなよ」

 

 このヤロー、簡単に言ってくれよな!?

 

「馬鹿か、蘭の親とレベルがちげーよ」

「なっ!」

「でも、まあーそれなりに頑張ってみるよ」

「――……っ!う、うん」

 

 遅くてもいいさ、いつか、いつか絶対にお父様に自分の意思が言えるようになれるといいな、それと蘭にも追いつけるように頑張らなくちゃな

 

「じゃ、じゃあ、あたし戻るね、シンも早く来ないとひまりが怒るよ?」

「どーせまだ解き終わってないから大丈夫です」

「ふふ、そうかもね」

 

 蘭とそんな話をした後すぐにモカがやってきたか。

 

「なんかシン君と2人で話すのも久しぶりだねー」

「そうだな、バイトも最近は店長とレジだったしな」

「あたし達ちょっと喋りすぎたかもね〜」

「かもな」

 

 なんかモカにツッコミ入れずに話すの久しぶりだな!

 

「――……蘭の件ありがとね」

「いやいや気にすんな…ん!?」

「へーやっぱりシン君が一枚かんでましたか〜」ニヤニヤ

 

 なっ!はめられた!

 

「どうやら蘭はー?その日友達の家に泊まってるとのことでしたが〜」

「おやおやおやー?シン君大人の階段登っちゃたのかな〜?」

「そ、そんなことしてねーから!」

 

 なんで泊まる=大人の階段登るだよ!俺はそんなことをする勇気はありません!

 

「じゃーモカちゃんなら〜?」

「尚更無理だよ!」

「えーショックーおよよ〜」

「相変わらずその嘘泣きやめろ!」

 

 やっぱりモカと話すとこーゆう展開になるよなーなんでだろ!?

 そんな時急にモカが俺の手を握って言った。

 

「…えへへ、ありがとうね」

 

 前に起きたことを思い出した。前にひまりが、あ、呼び捨てしちゃったけどあいつは大丈夫だよな?ってその話じゃなくて

 

 ひまりが俺のトラウマに関係することを言った時モカが手を握ってくれたから震えが止まり、声を出すことができたんだ。なんだろうな…

 

「モカに手を握られるとなんか安心する」

「……」

「って何言ってんだろうな!?」

「…だったら結婚する〜?」

「だからなんでだよ!!」

 

 こないだからことある事に結婚するー?ってモカは聞いてきますな!?

 

「シン君先生!終わりました!」

 

 ひまりが問題を解き終わったようだ。

 

「ほら、戻るぞー」

「えーまだ握っててもいいじゃーん」

「離せコノヤロウ!」

「あっ!もーシン君は照れ屋さんだな〜」

「う、うるせえ!」

 

 そんなやり取りをしてバルコニーをあとにして部屋に戻ってひまりの解いた問題を答え合わせる

 

「どう?今回は結構自信あるんだー!」

「……」

「ひまり」

「よ、呼び捨て!?」

「黙れ!こんな点数とるやつにさん付けなんてしてられん!」

「うぇーん!厳しいよ!!」

 

 その後勉強会は進みひまりもある程度の問題なら解けるようになっていた。なんだろう苦労して教えたかいがあるなーって思ったよ、将来先生にでもなるか?いや、無理だな

 

 その後勉強会も終わり、みんなが帰る時間になったため1階のロビーまで見送りをすることにした。

 

「あー疲れた」

「本当に疲れたね」

「ひまりが言うな!俺がわかりやすく教えてやったんだろ!」

「で、でも私だって頑張ったんだよ!」

 

 おい!いちいち大きな動きをするな!その、胸が!胸がめちゃくちゃ揺れてるから!!

 

「な、なんだ、今後勉強会するなら場所ぐらいはか、貸してやるよ」

『……』

「素直じゃないな〜楽しかったなら普通に言いなよ」

「え!?シン君楽しんでくれたの!?」

「あー!やっぱりなんでもねーよ!早く帰れ!」

 

「見てみて、女5人も連れ込んでたよあの人」

「!?」

「やーね、このマンションにとんだプレイボーイが住んでたなんてね」

「学生よ?やっぱりそーゆーことが好きみたいね」

 

 あのーおそらくこのマンションの住人さんが何か言ってるんですが…え?言ってもいいですか?言ってもいいよね!?

 

「違いますからー!!!!!」

 

 さっきまでそこで話してた人に向けて叫んだが

 

「急にどうしたの?」

「お前ら5人が俺の家に押し掛けてきたから勘違いされたんだよ!?」

「…いやー楽しかったねーもう腰と足ガクガクだよ〜」

「だ、だから変なことを言うなよモカ!!」

 

「まあ、若いわねー」

「青春してるわねー」

「あーもう!不幸だぁぁあああ!!!!」

 

 どうして俺はいつも他人からそんなふうに見られるのでしょうか!?それになんでいつも俺がこんなセリフを言って終わる必要があるのでしょうか!

 

 シンの名台詞がマンションのロビーにて響いていた。




本当に高校生活はあっとゆうまでした。毎日が楽しく充実した三年間でした!シンにもわかってほしいものです(笑)

新たに☆10で投票してくれたいやっふうううううさんありがとうございます!ほかにも投票してくれた方もありがとうございます!

感想や評価お待ちしております!では次回でお会いしましょう!


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弦巻シンとお見舞い

それではどうぞ!


 今日もバイトです。いや何度も言うけど別に嫌いじゃないよ?はっきり言ってこのバイトをしてなかったら今の俺はいないしな、世間知らずの俺を雇ってくれた店長がいたから今の今まで生活することができているんだ。あれは確か1年前

 

「ここで働かせてください!!」

 

 コンビニのレジの前で頼み込んだんだったけ?いやさ?何度も言うけど何も知らなかったんだって、バイトをするには履歴書書いて面接するとか何も知らなかったんだよ

 

 もちろん最初は『何言ってんだこいつ』的な対応だったけどその日は別のバイト希望者の面接があったようだ。そこに俺もぶち込まれ人生初めての面接を行った。あ、その希望者がモカな

 

 結果は最低…だった受け答えなんてろくにできずに完全に終わったと思った。けど何故か店長は俺を採用してくれたんだ。

 

 今でもなんで採用してくれたのかなんてわからないし採用された後もいろいろヘマして怒られたけど決して俺をクビにしようとはしなかった。

 

 なんだかんだで店長にはお世話になってるしそのうち恩を返すのもありかな、いや返さないとな

 

「店長ー今日モカは風邪で休むそうなんでアタシが代わりに来ました」

「そっか、わかった」

 

 1人で昔のことを思い出している時にリサ先輩がバイトに来て店長にモカが休むって話をしていた。

 

 あいつが風邪をひくとはねーなんか珍しいな

 

「いや、リサ今日は入らなくていいぞ」

「え?でもモカが今日シフト入ってるって...」

「あーあいいよ別に、おいシン」

「…なんですか?」

 

 おにぎりコーナーの仕入れをしてる時に店長が話しかけてきた。

 

「あと少しで終わるんでちょっと待ってくださいよー」

「いやいい、お前今日はもう上がれ」

「ん!?」

 

 な、何言ってんの店長!俺は今日午後まで仕事のはずですよ!?ま、まさか本当にクビ…なのか!?

 

「え、え?なんか俺まずいことしましたか?」

「いや別に」

「そ、そうですか」

 

 なんだよそれ!なんか紛らわし言い方すんなよ!

 

「二人ともモカのお見舞いに行ってやれ」

『て、店長ー!!』

 

 リサ先輩と俺は声を揃えて店長と呼ぶ、いやまさかあの店長がモカのことを心配して俺の仕事がまだ残ってるのにもかかわらずお見舞い行けってなんていいやつなんだ!

 

「特にシン、お前は行くべきだ」

「ん?あ、なんで?」

 

 なんで特に俺は行かないといけないんだ?いやお見舞いぐらいは行くけどさ

 

「お前知らないのか?」

「――……なにが?」

「お前自分がモカにどれだけ救われてるのか知らねーだろ」

「いやいや知ってますよ!」

 

 ひまりの件とかあるしな、なんだかんだでモカにお世話になってることは悔しいぐらい自分でも理解してるよ

 

「…じゃあ俺がお前のことクビにしようとした時にモカが止めたことも知ってるのか?」

「――……え?」

「『あたしがシン君の分まで頑張るので辞めさせないで下さい』って言ったんだぞ?」

 

 なんだよそれ、そんなの初耳だぞ!モカが俺のことを助けた?でも待ってくれ、俺は当初まだモカとはそんなに仲良くなかったはず…なのになんでモカのやつは

 

「まあ、それを聞くついでにお見舞い行ってこい」

「――……わかりました」

 

 バイト先をあとにしてリサ先輩とモカの家にお見舞いするために向かった。

 

 途中でリサ先輩とお見舞い品買っていこうよって話になり無難にフルーツがたくさん入った物を買った。あ、もちろん金は俺が払ったよ?リサ先輩がいいって言ってたけど俺が払いたかったから払ったんだ。

 

『………』

 

 モカの家に向かう途中会話なんてなかった。その原因は俺だ。俺がさっきからずっと店長から聞いた話を頭の中で考えてしまいリサ先輩の話しかける隙がないのだろう

 

「(モカのやつはなんで俺を…別に助けてって頼んだわけでもないのに)」

 

 頭の中で考えて考えて考え込んでいると

 

 ガンッ!

 

「痛えー!!!!」

「ちょ、ちょっと大丈夫!?」

 

 思いっきり電柱に頭突きをかました。

 思い出したー俺って考え事しながら物事をすることが苦手だったな!前の宿泊研修で学んだはずなのに何してんだよ!めっちゃ痛い!

 

「ぷっ!ふふ、あっはは!」

「ちょ、ちょっと!?そこまで笑うことないでしょ!?」

「いやいやーごめんね、あはは!」

「い、行きますよ!」

 

 リサ先輩にめちゃくちゃ笑われたがそんなことよりもずっと頭の中があのことでいっぱいだった。また考えてながら歩いていると

 

「もーう!しっかりしなよシン!」

「……」

「こーら!」

「い、いたいれふ(いたいです)」

 

 リサ先輩が走って俺の前に出てきて両手で頬をつねってきた。

 

「シン君!いやシン!」

「な、なんですか」

 

 つねられた手を離してリサ先輩が俺の名前を呼んだ。

 え!?今まで君付けだったのに急にどーしたんだろ!?

 

「シンは考え込んでる時の顔がカッコよすぎるからあんまり考え込むの禁止!」

「へ?」

「よーするに!今から考え込むこと禁止って言ってるの!いい?わかった?」

「は、はい!」

 

 なんかリサ先輩がカッコよすぎるって言ってたように聞こえたけど!?

 確かに…そうだよ、俺らしくない。こんなに考え込むことはやめだ!モカ本人に聞けばいい話だからな!

 

「あ、シンごめんね?Roseliaの件で急に用事できちゃった」

「え!?」

「はい!ちゃんとモカのところ行くんだよ!バイバーい!」

「――……えー」

 

 なんだよそれ!急に用事入るってなんだよ!1人でお見舞いって俺何すればいいかとか分からねーよ!そんなことを思っていたが

 

「着いてしまった」

 

 モカの家に着いた。前に見送ったから家の場所はわかってたからいいけどこれからどーする?とりあえずインターホン押して家の人に事情を説明して上がらせてもらうか!

 

\ピンポーン/

 

 き、緊張するな、てか異性の家になんて初めて来たもんだからな!蘭の家は門までだったからドアの前にすら立ってないから今の状況は初めてだ。

 

「はーい」

「えっとえっと?どちら様ですかー?」

「え、えっとーモカの友達の弦巻シンです!こ、この度はモカさんのお見舞いにき、来ました!」

「あらあら、モカちゃんの友達のシン君ねー」

「いつもモカから話は聞いてるわよ?どーぞ、上がってください」

「は、はい」

 

 いつもモカから話聞くってなんの話してるんだろうなモカのやつは...なんかめっちゃ気になる!

 

「あ、これはお見舞い品です、後でモカに食べさせてください」

「あらあら、これはありがとございます」

「モカは2階にいますので部屋に入って大丈夫ですよ」

「わ、わかりました!」

 

 なんだろう、この人全然モカと雰囲気が違う!モカがあれだからお母さんもそんな感じなのかなって思ったけど違ったな!

 

でも見た目は凄く似ていた。モカの髪が伸びて胸が大きくなった人で…って何言ってんだよ俺は!?

 

 モカちゃんの部屋と書かれたドアプレートがついてるドアの前に来た。きっとここがモカの部屋なんだろう

 

 トントントン

 

 ドアをノックして合図を送る

 

「――……どーぞー」

 

 声を聞いた感じそこまで辛くなさそうだなって思ったが...ドアをあけていざ見てみると結構辛そうな面構えしてんな

 

「シン君だーお見舞い来てくれ…たの?」

「ああ、そうだよ」

「嬉しいなーシン君がお見舞いに来てくれて」

「はいはい」

「あはは、ほ、本当なんだけどなー」

 

 モカがこんな状況だとさっき店長から聞いたことを聞きたくても聞けねーな、それにいつもと違ってのんびりした口調じゃないな

 

「シン君ーお見舞い来てくれたならモカちゃんからのお願い…聞いてくれる?」

「結婚以外なら聞くよ」

「それはまた今度でー…」

 

 また今度ってまた言うのかよ!お前は相変わらずだな!心配して少し損したぞ!?

 

「――……手握ってくれる?」

「モカちゃんもシン君と一緒で手握ると落ち着くの…」

「――……わかった」

 

 モカからそう言われて内心少し嬉しい気持ちになった。なんて言うのかなーなんか俺だけじゃなくてよかったって感じかな?

 

 握り方なんか知らないから普通に握るが

 

「恋人繋ぎがしたいよー」

「恋人って!お前な」

「お願い聞くってー」

「はいはいしますよ!」

 

 モカから指を絡んできたから同じようにすればいいのか?なんだろう、恋人同士でもないのに恋人繋ぎってなんか申し訳ない感半端ないんですが

 

「えへへ、ありがとね…」

「――……おう」

 

 いつもの脳天気な口調じゃないし結構疲れてるんだろうな、それか真面目なふりをしてるか

 

 やっぱり今回聞くのはやめとこう、今はモカの風邪が早く治るためにモカには治療に専念させたいしな

 

「考え事してどーしたの?」

「え?わかるのか?」

「うん…シン君の考える時の顔カッコイイから」

「っ!?」

 

 リサ先輩といいモカといいなんでそーゆうこと言うかな?べ、別に?俺がイケメンってことぐらい知ってるし!?…すみません、調子に乗りました。

 

「聞きたいことあるなら聞いてもいいよ」

「――……でも、いいのか?」

「モカちゃんは優しいからー」

「――……うん」

 

 俺は今日店長から聞いた話をモカに話した。

 

「――……どうして俺を助けたんだ?」

「――……同僚がいなくなると嫌じゃん?」

「真面目に答えろよ」

「――……蘭に似てたから」

 

 俺が蘭と似てた?確かに蘭も俺と自分は似てるって言ってたな、モカもそれを感じとったのだろうか

 

「じゃあモカが俺と仲良くするのも蘭と似てるからか?」

「あはは、違うよーシン君と仲良くなりたいから友達なんだよ?」

「――……そっか、ならよかったよ」

 

 もしここでそーだよーって言われてたら傷ついてたなーでも違ったからよかったよ

 

 モカのやつは俺とまだ仲良くない時から俺のことを思ってくれてたなんて嬉しい、それが蘭に似てたからって理由でも俺を助けてくれたことには代わりない。

 

「モカ…お前は俺のこと好きなのか?」

『………』

「――……って何聞いてんだろな俺!?」

「ご、ごめん!冗談だから!」

 

 本当に何言ってんだろう!?ちょっといいムードになったから告白すればワンチャンいけるとでも思ったのかよ!残念ながらそんないい結果なんてこないのがお決まりなんだよ!

 

「モカちゃんはシン君のこと…だよ」

「え?なんて?」

「だ、だからー」

 

 そんな時なんの前触れもなくドアが開いた。

 

「あらあらー恋人繋ぎなんてシンさんはモカちゃんの彼氏さんだったのねー」

「モカのお母さん!?ち、違いますから!」

「でもでもーその手はなんなのかなー?」

「!?」

「こ、これはそのー」

 

 そりゃー恋人繋ぎしてると勘違いもされますよね!!

 

「おい!モカもなんか言えよ!」

「……ふんだ、シン君なんて知らなーい」

「も、モカ!?」

「あらあらーモカちゃんは可愛いわよ?」

「ふふ、ここにフルーツ置いておきますから食べさせてくださいね」

「だってさーシン君お願いねー」

「――……わかりましたよ!」

 

 その後モカにフルーツを食べさせ食器を1階のキッチンのところに持っていく途中、モカのお母さんが町内会の集まりがあるらしく少し家を外すとのことで留守番を頼まれた。まあモカがあれだし何かあったら動ける人が必要だから俺はその留守番を受けることにした。

 

「シン君頭痛いよー」

「んーと言われてもなー」

「眠たいよー」

「なら眠れよ!?」

「んーまた手を握ってくれたら寝れるかも?」

「はいはい、わがままな姫様ですね」

「えへへ、ありがとう」

 

 頭痛いはずなのに笑顔を作ってさ、本当にモカは笑顔が似合う人だよ

 

「シン君ー今度一緒に家具買いに行こうね?」

「――……行くから今は風邪を治そうぜ?な?」

「――……うん、おやすみ」

 

 そういいモカは眠りについた。

 前々から一緒に家具買いに行こうって言われてたからな、それになんだ、最近はモカといると楽しいって思えるしな...

 

「(これが俺の普通なのかなー)」

 

 そう思うシンだった。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 モカが寝たあと留守番の件があったためまだモカの家にいた。とりあえず暇すぎるからモカの部屋にあった漫画を借りて読んでいた。勝手にとって申し訳ねぇ!今度謝っとくか

 

「――……シン君ー」

「………」

 

 もう起きたのか?まだ1時間ぐらいしか経ってないが…

 

「えへへ、結婚しようねーむにゃむにゃ」

「…お前は夢の中でもそんなこと言ってんのかよ」

 

 付き合ってもないのに結婚って飛びすぎだろ?まだ付き合おうならわかるけど結婚

しようはわからん!

 

 プルルルルルルルル、プルルルルルルルル

 

 電話がかかってきた。1階に降りると家の固定電話がなっていた。

 

 こ、これも留守番の仕事だ!電話に出て事情を説明してあとからかけさせるように頼むか

 

「もしもし、青葉です」

 

 なんかなれないなー人の苗字を電話先の人に言うのって

 

「――……誰だ?」

「なんで私の家にいるはずのない男性の方が出るんだい?」

「!」

 

 ま、まさかこの人!

 

「お、お父さんですか!?」

「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」

「だいたい君はなんなんだい!?勝手に人の家に上がって!」

「い、いや、モカのお母さんが上がっていいと...」

「君はモカたんの一体なんなんだい!?」

 

 も、モカたん!?なんだそれ!モカのやつ家ではモカたんなんて呼ばれてるのか!?

 

「いいか!?うちの可愛いモカたんは誰にも渡さんぞ!?ましてや君みたいな知らない子に」

 

 ガチャ

 

 長くなりそうだったから電話を切ったが…これでよかったよね!?それになんだよ!モカたんは誰にも渡さんぞって!蘭のお父さんと真反対じゃねーか!ってそこじゃなくて!どうしてどこの家も親バカなんだよ!!!

 

「あらあらーお出迎えしてくれますのねー」

「え?いや、あのさっき電話がかかってきて」

「まあまあーそうでしたか、ちなみにどのような内容で?」

「あー特に何も…」

 

 すみませんー!!嘘ですー!!めちゃくちゃモカのお父さんからの電話でした!!

 

「ではでは私は夕食の準備をしますね」

「シンさんも食べて行き、きゃっ!」

 

 あ、危ない!

 

「だ、大丈夫ですか?」

「これはこれは申し訳ございません」

 

 モカのお母さんが玄関の段差でコケそうになったから急いで手を取りコケるのを阻止した。

 

「いえ、これぐらい普通ですよ」

「まあまあー心強い方ですね」

「あはは」

 

 この時すぐにモカのお母さんと手を離せばよかったが離すのを忘れていた。

 

「モカたーん!お父さんが助けに来たよ!」

『――……あ』

「き、貴様!モカたんだけでなく私の妻を…許さん!!!」

「違いますから!誤解です!!」

「あなたすみません…私堕ちちゃいます」

「な、何を言ってるんですか!?」

「もしもし、警察ですか?不倫相手が高校生の場合って」

「で、電話かけないでくださいよ!」

 

 なんでいつもいつもこーなるんだよ!!てかモカのお父さん帰ってくるの早すぎるだろ!?

 

「あーもう!不幸だああああ!!!!!」

 

 モカの家の玄関先でシンのいつものセリフが響いた。

 

 その後モカのお母さんが説明をしてくれて不倫の件は完全に白になったが…モカたんの看病の件はありがとう、けどモカたんは君には渡さないぞ!っと力強く言われた。




今回もモカ視点書いた方がいいですかね?感想にて意見をお待ちしております!何もなかったら予定しているあの人が登場しますがね...

新たに投票してくれた☆9RINAさんありがとうございます!そのほかに投票してくれた方もありがとうございます!

感想や評価お待ちしております!それでは次回の話でお会いしましょう!



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弦巻シンと青葉モカ

やっと恋愛展開書けたー短いけど話が濃いと思うから許して!それではどうぞ!


 朝起きたら具合が悪く、頭が痛かった。1階に降りるとお母さんがいたから

 

「お母さんー頭痛いよー」

 

 と話しかけた。

 

「あらあらー風邪でも引いたのかしら?」

 

 お母さんはあたしにデコを当てて体温を測ってくれた。昔から風邪を引く度にお母さんにはこうやってよく体温を測ってもらってたなーって思い出したよ

 

「あーこないだのひーちゃんが風邪ひいてる時にお見舞い行ったからうつっちゃったかもー」

「まあまあーそうなのね、喉は大丈夫なの?」

「――……うん」

 

 何度か喉を鳴らして確認したけど痛くないし異変も特にないから大丈夫だと思う。

 

「そうねそうね、とりあえず休みなさい」

「――……はーい」

 

 部屋に戻り寝ようと思った。

 

「(あ、今日バイトだった)」

「(それに久しぶりにシン君とレジが一緒の日だったのに…)」

 

 あれからシン君とはあまり一緒にレジをしてないから久しぶりで楽しみにしてた。モカクエをだそうと思ってたのに今日は無理みたい

 

「(リサさんに連絡しとこ)」

 

 リサさんに事情を説明して今度リサさんの担当日にあたしが代わりに入るって約束で今日の分の仕事を頼んだ。

 

「(あーみんなに連絡してないからお見舞い来ないんだろうなー)」

 

 ここで『風邪ひいたからお見舞い来て』ってAfterglowのグループに連絡しようと思ったよ

 

 けどひーちゃんが自分のせいで移したんじゃないかって思っちゃうからやめといた。でも移されたのは本当だけどねーそれは今度お話するよ

 

「(シン君お見舞い来てくれないかなー)」

 

 そんなことを思っていた。けどシン君はバイトだしリサさんもあたしの代わりに行っちゃったから来れない。

 

「(今日はシン君とたくさんお喋りしようと思ってたのに)」

 

 でももうそれはできない。風邪をひいちゃったから...楽しみにしてる時に限ってこんなこと起きるもんね

 

「(――……不幸だね)」

 

 シン君がいつも言ってるセリフを借りて言い、その後眠りについた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

\ピンポーン/

 

 インターホンの音で起きた。

 下からお母さんが誰かと話している声が聞こえたあと階段の登る音が聞こえた。

 

 多分お父さんだと思った。お父さんモカちゃんのこと好き好ぎるからなーあたしのこと『モカたん』って呼ぶからね、もう高校生だからやめて欲しいけど嫌いじゃないから許すよ

 

トントントン

 

 ドアをノックしてきたから

 

「――……どーぞー」

 

 って答えた。すると今日もう会えないと思ってた人が来てくれた。

 

 そう、シン君が来てくれたの、本当に嬉しかった。

 

 シン君が来てくれたからさ、なんか甘えたくなって

 

「手握って」

 

 って頼んだら握ってくれた。いつもはあたしがシン君の手を上から両手で包み込む形で握ってたけどシン君から握られるのは初めてだった。

 

「(シン君の手大きいんだね)」

 

 やっぱり男子だから大きいんだろうねって思った。それにシン君に手を握られると落ち着くし握ってても落ち着く、それに前にシン君がモカに手を握られると落ち着くって言ってくれた時はうれしかった。

 

「恋人繋ぎしたいー」

 

 って言ったら最初拒んだけど握ってくれた。この時にも思ったの、いつの間にかシン君が立派になったなって、昔から絡んでいたけど最近になってそう思うようになった。

 

 シン君が黙り込んで考えてた。時々見せるその考えてる時の顔、近くで見てたならわかるけどカッコイイの…たぶんだけどこの考えてる時のシン君の顔を見たら誰もがそう思うと思うよ、だって本当にカッコイイんだもん

 

 聞きたいことがあるなら聞いていいよって言ったら昔の話をしてきた。どうして俺を助けてくれたんだって

 

 昔のことを思い出した。モカちゃんとシン君がバイトの面接を受けた日、最初この人全然ダメじゃんって思ったよ?けど不器用ながらに一生懸命仕事を頑張る姿を見てね、応援したくなったの

 

 少し話すようになってシン君が自分の家が嫌いで出てきたって話をしてくれた。この話を聞いた時『あ、なんか蘭と似てる』って思った。

 

 そしたら何日か後に店長がシン君を辞めされるって話をしてたから

 

「あたしがシン君の分まで頑張るので辞めさせないで下さい」

 

 って頼んだの、そしたら店長はシン君を辞めさせることはなかった。

 

 最初は蘭に似てるって思ったけど今は違う、シン君はあたしにとって大切な友達だよ、もちろん蘭達と同じぐらいに、だからシン君をみんなに紹介しようとも思った。

 

紹介した結果みんなとは最初友達になれないって言ってたけど最後はシン君自身から友達になって下さいってみんなに言っていたの。

 

その後あたし達Afterglowがさ、蘭の家の件でもめた時もシン君が蘭を助けてくれた。そのことについてこないだ聞いたけど気にするなって言っててさ…蘭がちょっと羨ましいって思った。モカちゃんも甘えたら相手にしてくれるのかな?

 

「モカ…お前は俺のこと好きなのか?」

 

 って聞いてきた。

 

 昔からずっとシン君ばかり見ていた。バイトでも早く来ないかなーって、一緒に帰りたいなって思ってた。けどシン君って素直じゃないからさ?いつも拒むんだよ、そんなシン君が可愛く見えてね…

 

それにいつもシン君のこと考えるし、シン君といたら楽しいって思えるしもっともっと一緒にいたいと思う、それにたくさん話したいとも思うの、だからきっと

 

「(モカちゃんはシン君のことが…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(――……好きなんだ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 って確信した。傍にいたい、隣にいたい。ずっと一緒にいたい。こう思うってことは好きって証拠なんだなって思った。自分でもわかるぐらい今は赤い顔になってると思う、この握ってる手も離したくないと思って強く握ってしまう。

 

 知ってしまった。気づいてしまった。自分がシン君を、異性として、男子として好きなんだって…

 

 だからシン君の問いに答えようと思ったの

 

「モカちゃんはシン君のことすきだよ」

 

 自分でもわかるぐらい小声で好きって言ったけどやっぱり聞こえてなかったみたい。でもそれはそれで今は助かるよ

 

 だってまだこの関係でいたいじゃん、もしモカちゃんが告白して成功してお互いが恋人になって気まずくなったりしたら嫌じゃん?

 

「(…シン君から告白されるのを待とうかな)」

 

 女子なら好きな人から告白された方が嬉しいって前にひーちゃんが言ってた。今ならわかるよ、モカちゃんもシン君から告白されたい

 

 でも待っとくだけじゃダメ、シン君がモカちゃんのこと好きになってもらうために頑張らなくちゃね…って思ったけど変に意識せずに何も変わらずいつも通り接する方がいいかも

 

 さりげなくデートの約束をしてその後眠りについた。

 

 この恋は間違ってない。前からモカちゃんはずっとシン君のことが好きだったんだよ、ただそれに気づいてないだけだったのかもね…それに今回気づくことができた。風邪をうつしてくれたひーちゃんに感謝しないとね、今度コンビニスイーツでも買ってあげようかな?

 

 シン君が、モカちゃんと一緒にいると楽しいって思えるようにこれからも頑張って接していくよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弦巻シン君………あたしはあなたに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――……恋をしています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




モカが素直に言う話はたぶん今回だけです。今後の話はモカはシンのこと好きなんだなーって思って読んでいたただけると嬉しいです!

それとー今後シンはモカ以外の女子と仲良くしますが!まだシンはモカの気持ちに気づいてない設定になのでシンのやつを叩かないでね!

新たに投票してくれた☆9海市蜃樓さんありがとうございます!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします!☆1評価が多くて少し泣く...まあ、どこか気に入らないところがあったんでしょうね、あと少しで赤に戻れたのに!...とりあえず頑張ります!

少しでも良かったと思ったら感想と評価お待ちしております!


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弦巻シンとアイドルの出会いは突然に

デート編は次の機会に...


 前も言ったと思うが学生の本職は勉強です。勉強をすることで将来やべーやつが誕生するかもしれないだろ?だから勉強するんだよ、多分

 

「いらっしゃいませー」

 

 平日の朝っぱらからバイトをさせられてた。

 

 いやいやなんで!?今日学校!今の時刻は9時です!もう授業始まってますから!

 

 事の発端は先日のモカのお見舞いの件だ。あれの短縮した時間働けとのことで今日のこの平日にぶち込まれた。

 

 学校は!?って聞いたら店長が連絡を入れてるらしい。うん、意味がわからん!よくバイトで遅刻が許されたね!?

 

「シン、そろそろ学校行け」

「いや、店長が働かせたんでしょ?」

「1時間多く時間取ってやったから休んどけ」

「店長神ですか!?」

「はよ行け」

 

 平日の朝っぱらからのバイトも終わり学校に向かっていた。さっきパンとか飲み物とか貰ったから昼飯に困ることは無いな!

 

 学校につくがもちろん授業中だ。

 店長が1時間多く余分な時間取ったって言ってたから屋上でサボっとくか、でもなんかサボるって…明らかに普通じゃないけどさ?さすがに俺も休みたいです。

 

「あーえーいーうーえーおーあーおー」

 

 屋上に誰かいる。

 え?なんで?今授業中でしょ!?あの人何してんだろう?あ、発声練習ってやつかな?

 

 ドアの前にて待機していたが体重がかかりドアが開いてしまった。いや引き戸じゃないんかい!?

 

「えっ!?だれ!」

「いや!決して怪しいものじゃないです!」

「な、なんでいるの?」

「あーえっと、サボりーです...」

 

 仕事(バイト)で遅刻して店長が時間に余裕を取ってくれたから屋上で時間潰そうと思ったなんて言えない。

 

「サボりは感心しないよ!」

「そーゆうあなたもサボってるでしょ!?」

 

 今この状況誰がどう見ても二人ともサボってるようにしか見えませんよ!?

 

「わ、私はこれから仕事なの!」

「仕事ってなん…の!?」

 

 真正面から見て気づいた。てかなんで今まで気づかなかったんだろう!

 

「まん丸お山に彩りを!Pastel Palettes ふわふわピンク担当!丸山彩でーす!」

 

 頭の中で脳内再生された。

 

「ま、丸山彩さん!?」

「え!?私のこと知ってるの?」

「知ってます!最近テレビでよく見ますよ!」

「そ、そう?えへへ、嬉しいな!」

 

 うわー蘭が言ってたことって本当だったんだな!あの丸山彩さんが俺と同じ高校だって話!それにしても生で見ると全然違うな

 

「あ、あのー顔が近いよ…」

「す、すみません!!ちょっとテレビと雰囲気違ったので…」

 

 なんでだろう、髪型が違うから?それともメイクしてないから?いやアイドルだとこの歳でメイクってするの?

 

「君…名前なんて言うのかな?」

「弦巻シンです」

「弦巻…あ!こころちゃんの弟君?」

「あ、はい」

「やっぱり!似てると思ってたんだ!」

「いや、苗字でわかるでしょ!」

 

 弦巻なんて珍しい苗字は世界中探して俺の家だけだと自負しております。だって聞いたら大抵の人が驚くじゃん!?

 

「そうだよね!うっかりしちゃってた!」

 

 舌を出して笑顔してあなたは可愛すぎやしませんか!?

 

 それからというもの俺と丸山彩さんは意気投合して話が盛りがっていた。なんで私のこと知ったのか、なんの番組で見たとかな、まあ俺が知ってる範囲で答えたよ!テレビもつい最近買ったって話をしたら

 

「え?シン君一人暮らしなの?」

「そーですけど?」

「こころちゃんと暮らしてないの?」

 

 あーそれ聞いちゃいます?

 

「えっと、こころのやつは屋敷に住んでますよ」

「シン君は?」

「言ってもわからないところですよ」アハハ

 

 嘘だ。本当はあんな所に住んでるなんて思われたくない!家出してまで贅沢な所に住んでるなんて思われたくねーよ!

 

「ふーん、そーなんだ!」

「丸山彩さんも」

「そーれ!なんでフルネームで呼ぶの!?」

「え?じゃ、じゃー丸山先輩?」

「…なんか違う!」

「んー彩先輩?」

「うん!それが一番しっくりくるし呼ばれて嬉しい!」

 

 ま、眩しい!こ、これがアイドルの作る生の笑顔なのか!?破壊力が凄まじいぜ…

 

「…話変わるけどさ」

「はい」

 

 急に彩先輩のトーンが落ちた。あれ?俺なんかまずいことしたのかな...

 

「シン君は聞かないの?」

「え?何がですか?」

「そのー他の人のこと聞かないの?」

 

 ん?何を言ってるかさっぱりわからん

 

「だ、だから!イヴちゃんとか千聖ちゃんとか日菜ちゃんとか麻弥ちゃんとかの話だよ!」

「…え?なんで聞く必要があるんですか?」

「――……え?」

「いやだって今は彩先輩と話してるじゃないですか?」

「――……別の人の話する必要あります?」

 

 いやー話したいなら話すけど俺から話すことはないと思うけどなー

 

「――……そ、そうなんだ、うん」

「え!?な、何かまずかったですか?」

「――……いや、嬉しくて」

 

 あ、あの!?なんで泣くんですか!嬉し泣きだったとしてもなんか俺が泣かしたみたいで申し訳ない感があるんですが…

 

「いや、あのね?異性の人ってみんな私に色々聞いてくるの」

「あー彩先輩アイドルですからね」

 

 男子はアイドルがクラスにいるとそりゃーすぐに話しかけに行きますもんだよ、同じクラスの若宮さんもいつも男子から話しかけられてるな

 

「なんか調子乗ってるみたいで悪いけど…そーゆうのが嫌なの」

「別に調子乗ってもいいじゃないですか」

「――……え?」

「だって彩先輩凄いじゃないですか」

 

 こないだなんかの番組で彩先輩がこんなことを言ってた。

 

 私は3年間アイドルの研究生として活動して最後の年でパスパレに入ることができました。ずっと努力し続けてよかったて思えます!

 

 的なことを言ってたんだ。その話を聞いて俺はすげーなって思えもしたし

 

「彩先輩は俺の憧れの存在だなって思いました」

 

 俺には持ってない何事も最後までやり遂げる、努力を続けれる精神を持っているから

 

「シン君の…憧れの人が私?」

「はい、ずっと最後の最後まで諦めずに努力を続けて今は売れっ子のアイドルグループのボーカル担当」

「そんな彩先輩は十分凄いです」

「――……っ!」

「って何言ってんだろう!?こんな今日知ったばかりの後輩にこんなこと言われると引きますよね」

 

 なんで俺はいつもいつも頭で考えたことをすぐに口に出すんだよ!こないだのモカの件といい忘れたのかよ俺は!?

 

「ううん!私嬉しいよ!」

「へ?」

「いつもはね、応援してるよ!とか、頑張ってね!とか、ずっとファンです!とかばかりだったけど…」

「憧れの存在って言われたの生まれて初めてだから…嬉しい!」

 

 そ、そうなのか…だったら

 

「俺はファン1号ならぬ、憧れてくれる後輩1号ですね」

「うん、ありがとう」

 

 憧れてくれる後輩1号とかカッコつけて言ったけどさ…俺ってやばいやつじゃね?今日初対面の人にそんなこと言われてみ?絶対に引くだろ…

 

「シン君みたいな友達がたくさんいたらいいなー」

「………」

 

 過去の俺だったらこう言ってただろう

 

『住む世界が違うから友達になれないです』

 

 って…でも今の俺は違う

 

『あんたさもっと積極的に絡んでもいいと思うよ?』

 

 蘭が教えてくれてた。積極的に絡むことの大切さ、実際にそれでリサ先輩とは友達になれた。まあリサ先輩はもとから俺のことを友達だと思ってたらしいけど…こんな勘違いがおこるからちゃんと接しないといけないんだなって思ったよ

 

「だったら…俺と友達になってください」

 

 って言えることができるんだよ

 

 俺はまだ蘭みたく親に意見を言って次に進む一歩を踏み出すことはできないかもしれない。だからってさ、他のことも一緒に逃げていい理由にはならないんだよ

 

「…うん!なろうよ!」

「でも…ひとつ頼んでもいい?」

「…なんですか?」

 

 本当になんなんだろう、友達になってやるけど気安く話しかけるなとかか?え?それって友達じゃないじゃん!

 

「学校にいる時はアイドルの私じゃなくて学生の私を見てほしいな…って」

「――……っ!?」

 

 さっきの話から何となくわかる。きっと他の人は彩先輩のことをアイドルの彩先輩として接していて、学生の彩先輩を見てないってことなのかな?だから俺には学生の自分を見て欲しいって頼んだんだと思う…だったら俺は

 

「そんなの当たり前ですよ、彩先輩!」

「――……うん!」

 

 俺が憧れるのはアイドルの丸山彩だと思ってた。けどよくよく考えればさ?目の前の彩先輩が努力を続けてアイドルになってそれは中学時代から続けていた。ならさ、アイドル関係なしに俺は彩先輩のこと凄いと思える、だから俺の憧れる存在ってのは変わらない。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 ちょうどいいタイミングで学校のチャイムがなった。

 

「それじゃ私は仕事に行くね!」

「…ついさっき学生の私を見て欲しいと言ってすぐに仕事ですか」アハハ

 

 見て欲しいと言いながら仕事に行くところもなんか彩先輩らしいけどね

 

「えっ!?そ、それはーその…」

「冗談ですよ、仕事頑張ってください!」

「――……うん!」

「次の授業はちゃんと受けるんだよー!」

「――……はーい」

 

 彩先輩は走って屋上を後にした。

 

「(彩先輩はもう行ったよな…)」

 

 誰もいないことを確認して深呼吸を行い

 

「俺はなにくそ恥ずかしいことしてんだよ馬鹿野郎!!!!!?????」

 

 あー死にたい死にたい死にたい!!完全に黒歴史確定だよ!憧れる存在の彩先輩、なに?憧れてくれる後輩1号です?学生の私を見てほしい、はい、当たり前ですよって?まじで恥ずかしい!!!!あー死にたい!!

 

 一人で頭を抱えて嘆いていた。

 

「…なにしてんの?」

「お、奥沢さん!?」

 

 な、なんで奥沢さんが屋上にいるんだ?まさか!話を聞いてたわけじゃないよな?だってあれは授業中に話してたし今来たらわからないはず!

 

「こころから解放されるために時々来るの」

「お前も辛いな」

「弦巻君に同情されたくありません」

「そ、そうですか」

 

 この奥沢さんは本当に俺のことを敵視してるからな、あの宿泊研修の事故で!何度も言うけどあれは本当に事故だったんだって!

 

「ここに来る前に彩さん会ったんだよねー」

「へ、へー」

「…彩さんがいい後輩兼友達ができたって喜んでたけど」

「まさか弦巻君?」

「…なんで彩先輩人に話すかな!?」

 

 よりにもよって俺のことを嫌う奥沢さんに言うの!?

 

「黙ってどうしたのー憧れてくれる後輩1号さん」

「その名前で呼ぶなよ!!!!!!」

「やだね、私後輩1号がしたこと忘れないから」

「あーもう!不幸だぁぁああ!!!」

 

 きっとこのまま奥沢さんからはずっとこのあだ名で呼ばれるのかな...これはあれだな、カッコつけた俺の罰だな、今回ばかりはいい仕事をしたな神様さんよ!!俺はあんたが嫌いですよ!

 

 そんなことを心の中で言い屋上を後にした。

 




シンは鈍感なんで許してやって!…これも彩視点書いた方がいいですか?意見を感想にお書きください。お待ちしております!

少しでもいいと思ったら感想と投票お願いしますね!


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弦巻シンと丸山彩

やっぱり今後の話に関係するのかもなんでで書きました。それではどうぞ!


「みなさんこんにちは!まん丸お山に彩りを!Pastel Palettes ふわふわピンク担当!丸山彩でーす!」

 

「(ふー挨拶はもうだいぶ慣れてきたね…)」

 

 私は学校の屋上で挨拶の練習をしていた。

 け、決してサボりとかじゃないよ!仕事前に1時間休憩もらったから屋上で休みながら練習してたの!

 

「つ、次は発声練習!」

「あーえーいーうーえーおーあーおー」

 

 大きな声を出して発声練習をしていた。これはパスパレが結成する前からやってることで…なんて言うのかな?ルーティーンって言うのかな?

 

ガチャ

 

 私が1人で練習をしてる時に誰か来た。今は授業中だから誰も来ないはず…え?なのになんで人が来るの?

 

 話を聞いたらサボりに来たらしい。注意したけど私もサボりじゃないの!?って言われたから全力で否定した。

 

 これから仕事だと言ったら彼は私のことに気づいた。こーゆうのってアイドルだとダメだと思ってるけど気づかれるのってやっぱり嬉しい。

 

 そんな話をしてる時に彼が急に顔を近づけてきた。な、なに!?って思ったけど顔を確認してたらしい。異性の人とここまで近くで目を合わせたのは初めてだったから緊張した。

 

 彼の名前を聞いたら「弦巻シン」と答えた。弦巻?弦巻って…

 

「こころちゃんの弟君?」

 

 って聞いたら彼はそうだと返事をした。確かによく見てみると目元とか髪の色とか似てるなーって思ったの

 

 苗字でわかるでしょ!?ってつっこまれて気づいた。そうだよね、苗字でわかるよね!うっかりしてた。

 

 それから彼と…シン君とは意気投合した。なんで私のことを知ってるのか、なんで知ったのかとかね?最近テレビを買ったって言ってたから一人暮らしなのかなって思って聞いたらそうだった。

 

 この歳で一人暮らしって凄いなって思ったよ、だって一人だよ?寂しいよ!家に帰っても誰もいないって私は無理…かな?いつも家に帰ったら妹がお出迎えしてくれるからねーそれに慣れちゃったのかもね?

 

 彼は何故か私のことをフルネームで呼ぶの、私は名前で呼んでるのになんかフルネーム呼ばわりだと距離を置かれてる感が出て嫌だなーってついさっき会ったばかりなのにね!

 

 だから指摘した結果彩先輩と呼ばれることになった。先輩つきで呼んでくれるのは香澄ちゃんぐらいだから新しく増えて嬉しい。

 

「シン君は他の人のこと聞かないの?」

 

 って無意識のうちに聞いてしまった。

 

「(な、何聞いてるの私!?)」

 

 と思ったけど聞いたからには最後まで聞くしかない。

 

 自分で言うのもなんだけどパスパレはここ数ヶ月で有名になった。だからクラスのみんなは同じ仲間のイヴちゃん、麻弥ちゃん、日菜ちゃん、そして千聖ちゃんの話を聞いてくる人ばかりだった。

 

 それに嫌気が指していた。

 

「(なんで私のことを見てくれないの?)」

 

 ってね

 

 確かに千聖ちゃんは元子役で今も女優さん、そしてアイドルでもある、イヴちゃんも写真のモデルさんだってしてるし、日菜ちゃんはなんでもできちゃう天才ちゃん、麻弥ちゃんは音楽機材を扱うのが上手でたまにテレビで説明したりもしてるし、みんな私よりも注目浴びてるし凄いと思う

 

だからみんな聞いてくるんだって…

 

「…聞く必要ありますか?」

「今は彩先輩と話してるじゃないですか?」

 

 シン君は私の質問にたいしてそう答えてくれた。そんなことを言ってくれた男子はシン君だけで本当に嬉しかった。クラスの男子なんてみんなそう

 

「千聖ちゃんのサイン貰えないかな?」

「日菜ちゃんて本当に凄いよね!」

 

 私の周りに群がりそう言うの、私はと言うと

 

「あっはは、今度聞いとく…ね」

 

 苦笑いして答えることしかできない。千聖ちゃんなんて隣クラスにいるのになんで私に言うのかな?

 

 そんなの…決まってる、私が話しかけやすいからなんだよ千聖ちゃんに比べて私の方が話しかけやすいんだと思う、なら、なんで私を見てくれないの?

 

 言えたらいいのにね

 

「――……私を見てよ!!!!」

 

 なんてね…そんなこと言ったら調子乗ってるって思われちゃうよ

 

 こんなことをシン君に聞いたって意味ないのに…さっき知ったばかりの人、シン君は私のことを知っていても私はシン君のこと知らないからね…

 

「別に調子乗ってもいいじゃないですか」

 

「彩先輩は俺の憧れの存在だなって思いました」

 

「彩先輩は十分凄いです」

 

 シン君はそう答えてくれた。

 え?私がシン君の憧れの存在?なんでそんなこと言ってくれるの?って思った。

 

 けどシン君が私のことを語ってくれる姿を見てさ…

 

「(この人は私のことをちゃんと見てくれてるんだ)」

 

 って思ったの

 

 応援してるよ!とか、ずっとファンです!とかは握手会の時に言われたりしてる、けど「憧れの存在」なんて…誰かに言われたことなんて1度もない。

 

「俺はファン1号ならぬ、憧れてくれる後輩1号ですね」

 

 シン君はそう言って少し照れていた。けど…私はとても嬉しかった。

 

 自分でも気づいてない凄いところをシン君が教えてくれた。

 

「(私って十分凄いんだ...)」

 

 ずっとみんなよりダメだと思ってた。けどシン君が教えてくれた。私のことを凄いと言ってくれた!憧れの存在だって言ってくれた!

 

「シン君みたいな友達がたくさんいたらなー」

 

 心の中だけで言ったと思ったら声に出ていた。今日会ったばかりでそんなこと言うのって変かな?って思って慌てて口を抑えるけど…

 

「だったら…俺と友達になってください!」

 

 すぐに返事をしてくれた。本当に友達になりたいと思った異性が、男子はシン君が初めてだった。

 

「…うん!なろうよ!」

 

 でも…ひとつ頼みたいことがあったの、アイドルとして自分を見られるのは嬉しいよ?けど彼に…シン君には私を友達の、学生の丸山彩として見て欲しいなって思ったの

 

「そんなの当たり前ですよ、彩先輩!」

 

 まったくシン君はよく恥ずかしいこと言えるよね…無意識なのかな?でもそれが凄く嬉しい。

 

 初めてだよ、男子の友達ができたのは…その友達がシン君でよかったなーって思う、だって

 

「(シン君は私のこと見てくれてるもん)」

 

 自分よりも自分のことを知ってるって私もまだまだだなーって、私は私、みんなはみんな、もう周りなんて気にしないで私はアイドルを続けるんだ。

 

 仕事の時間になったからシン君に別れをつげ屋上を後にした。

 

「あ、彩さん」

「あ!美咲ちゃーん!」

 

 屋上から生徒玄関に向かうため階段を降りてる途中に美咲ちゃんと会った。前に何度か話したことあるから自然に仲良くなっていたの

 

「あれ?この時間に屋上から降りてくるって…彩さんまさか」

「ち、違う!サボりじゃなくて…そのー」

「ふふ、冗談ですよ」

「も、もーう!美咲ちゃん!」

 

 さっきまで頭の中でいろいろ考えていたけどやっぱり私はこの感じがいいよね?自分でもそう思うよ

 

「何してたんですか?」

「えへへ、後輩?いや友達とお喋りしてたの!」

「――……え?それって…んー」

「ま、まあー楽しかったらいいんじゃないですか?」

「うん!本当にいい友達ができたよ!」

「――……そうですか」

「あ、私急がないと!じゃーね!美咲ちゃん!」

「はい、あー!ちゃんと足元見ないとコケますよ!」

「大丈夫だってー!きゃっ!」

 

 階段で盛大にコケてしまった。

 

「(う、うーは、恥ずかしいよ!)」

 

「だから言ったのに…」

 

 その日1日いい気分になれると思ったのに…最後にコケて台無しだよー…でも

 

 服に着いた埃を払い終え

 

「よーし!今日も頑張るぞー!」

 

 自分で気合を入れ直して仕事に向かった。

 




新ヒロインかも…しれない

少しでもいいと思ったら感想と投票よろしくお願いします!それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと初めてのデート

お待たせしました!デート編です!それではどうぞ!




 みんなは女子を遊びに誘ったことはありますか?俺はない!ないが…今は誘わないといけない状況なんだ!

 

「ありがとうございましたー」

「――……しゃしたー」

 

 この俺の隣で腑抜けた挨拶をしてるやつ、青葉モカに遊びの約束をしなきゃならないのだ。

 

「今度一緒に家具買いに行こうね?」

 

 って言われたからさ!そっちから誘ってくるって思うじゃん!?なのに何日待っても誘ってこない!なに!?焦らしプレイってやつですか!?

 

 ま、まあーいいさ、女子に言われるより?自分で言った方がカッコイイだろ?つまりそーゆうことだよ

 

「――……も、モカ!」

「なーにー?シン君?あ、もしかしてプロポーズ〜?」

「ち、ちげーよ!か、家具買いに行く話あっただろ?いつ行く?」

「――……覚えててくれたんだー」

「当たり前だろ!ど、どーすんだよ?いつだ?」

 

 言ってみると言う前より恥ずかしいな…でもまあ言えたからよしとするか!

 

「んー明日とかどうー?」

「あ、今日でもいいよ〜?」

「そっか、じゃあ今日にするか!」

 

 今日で済ませれるなら早く済まそう!き、緊張するし、恥ずかしいからな!

 

「――……っ!?え、えへへーシン君は仕方がないな〜」

「なんだよ!モカが今日でもいいって言ったからだろ!?」

「もーう、そんなにモカちゃんとデートしたかったの〜?」

「やっぱりお前うぜぇー!!!」

 

 バイトのレジにて俺の発狂が響いた。幸い客が誰もいなくてよかったものの…いたらやばかったな

 

「じゃーモカちゃんは着替えてきますのでー」

 

 バイトも終わりそのまま行こうと思ったんだけどな

 

「なんで?そのまま一緒に行こうぜ?」

「んー行きたいのはやまやまだけどーせっかくのデートだし?おしゃれしたいじゃん」

「いや、別にデートじゃ」

「バイバーイ」

「――……話聞けよ」

 

 俺はそのままショッピングモールに向かった。今どきはショッピングモールにも家具が売ってるんだなー家具屋さんでしか買えないって思ってたよ

 

 待ち合わせの噴水広場につき、近くのベンチに座ってた。

 

「(――……暇だ)」

 

 まじで暇すぎるー周りも見渡すがカップルばかりだった。一人でいてめっちゃ虚しくなったよ…トホホ

 

 あ!あそこのカップル自撮りしてるぞ!いいな携帯、俺もそのうち買おっかなー

 

「(――……早くモカ来ないかなー)」

 

 なんだかんだで内心モカと遊ぶことを楽しみにしてる自分がいるんだよなー

 

「――……だーれだ」

 

 突然目の前が真っ暗になり後ろから話しかけられた。いやいや、こんなことするやつなんて

 

「――……モカだろー」

「正解だよー」

 

 後ろを振り向いて驚いた。いや、だっておしゃれしてくるって言ってたからさ、なんか高い服とか可愛い服で来るのかなって思ったら

 

「じゃーん、制服でーす、どお〜?」

「どおーっていつも見てんだろ...」

「えー?いつもモカちゃんを見てる?」

「もうシン君ったらースケベ〜」

「はいはい、スケベですよーだ、行くぞー」

 

 まさかの制服とはなーあれか?わざわざ俺に合わせてくれたのか?

 あ、言い忘れてたけど俺大抵制服来て生活してるから、バイトに行く時も制服なんで!それが土曜日でもな!

 

「えへへ、制服デートだね〜」

「――……っ!こ、これが目的だったのか」

「そうだよー?どー?キュンって来た?」

「わざわざ俺に合わせてくれたんだな、ありがとうな」

「――……う、うん」

 

 なんかモカの反応がちょっと気になったが、うん、いつも通りのモカだな

 

 待ち合わせ場所を後にしてショッピングモールの中に入り、家具が売っている店に向かってる途中だ。

 

「家具って何買うの〜?」

「え?モカが決めるんじゃないの?」

「あ、そーします?だったらまずはね〜」

 

 んーと言って考え出すモカ、それの隣を歩く俺達の姿は恋人同士に見えるのだろうか?だって時々すれ違う人達からすごい目で見られるもん!

 

「ベッドかなーベッド買おうよ」

「おっけーベッドな!」

 

 そう言いベッドコーナーに向う

 

「(た、高ぇ!約3万もするのか)」

 

 正直舐めてた。ベッドってこんなにも高いんだね

 

「サイズはーどーするの?」

「俺一人だしシングルでいいだろ」

「えーでも将来はモカちゃんと結婚して一緒に暮らしてー毎日ハッスルするからー」

「そうだな…」

 

そうだなーモカと結婚してハッスルして…

 

「――……ワイドキング買う?」

「買わねーよ!てか結婚しねーから!」

 

 危ねぇ!こいつがいつも結婚しようって言ってくるから釣られるところだった!

 

「おっしいーあと少しだったのに」

「――……お前ちょっと黙っとれ」

 

 まずモカと結婚するためにはあの父親さんを突破しねーといけねーんだぞ?無理だろ!てか結婚しません!

 

「んー蘭とかモカちゃんが泊まり来るかもだからー」

「そうだな、ダブルでも買うか?」

『.........』

「――……ってちがーう!」

「あちゃーこれまたおっしいよ〜」

 

 なんだよなんなんだよ!?なんでそんなに大きいベッド買わせるんだよ!?

 

「と、とりあえずセミダブル買っとくか」

「まあーシングルだと少し狭いかもだからねー」

「――……お、おう」

 

 今回は何も言わなかったな、諦めたのかな?まあいいや、店員さんを呼び、目の前にあるベッドを買い、後日家に届けてもらうように頼んだ。

 

「べ、ベッドで3万持ってかれた!」

「そんなもんだよーモカちゃんのベッドは10万ぐらい?ってお父さんが言ってたー」

「へ、へーすごいな」

「――……今度寝に来るー?」

「行きません!」

 

 あの人ならモカのためにそのぐらい金を使っても当然だよなーそれにちょくちょくベッドで寝るとか…誘ってんのかよ!?だが…屈したりしねーぞ!

 

「次はソファーかなー」

「え?まだ買うの?」

 

 もうベッドだけで生きていけると思うんですが…

 

「ソファーに座りながらテレビ見るの最高だよ?」

「――……よし、買おう!」

 

 モカの口車に乗せられソファーも買うことになった。まあソファー買うならテーブルも必要になるじゃん?と言われテーブルも買わされ…

 

「合計4万消えた…」

「ま、まあー家具は高いからねー」

「――……でも、楽しかったからいいよ」

「――……っ!そ、そうだねーうん!」

 

 確かに楽しかったしな、これが普通なのかもな、モカは彼女じゃないけどさ?彼女と一緒に暮らすために家具を選んだりすることは将来的に普通なのかも

 

「あ!シン君ゲーセン行かなーい?」

「お!いいぞ!俺ゲーセン行ってみたかったんだよなー!」

 

 屋敷を出てゲーセンなんて行ったことないしな!行ってみたくても一人でなんて行けねーだろ!?

 

「クレーンゲームしないー?」

「いいぞ!やろうぜ!」

「あーこのクッションモカってきたから狙うねー」

「――……モカってきたからってなんだよ」

 

 一人で小声でツッコミを入れていたがモカはモカっときたクッションが景品のクレーンゲームにお金を入れて操作し始めた。

 

 どうやら食パンのクッションやメロンパンのクッション、その他パンのクッションが景品だった。

 

「んーやっぱりクレーンゲームって難しいね」

「シン君やってみるー?」

「やるけど…モカはこのクッション欲しいのか?」

「え?んー手に入るなら欲しいかなー」

「よし、手に入れるまでやるぞ!」

「え?うん、あ、ありがとね」

 

と、言ったものの難しいな…小銭が無くなったぞ

 

「ちょっと両替してくる!」

「――……うん」

「戻ったぞモカ!これでもっかい勝負だ!」

「――……シン君」

「なんだ!」

「――……それ、コインゲームのメダルだよ?」

「な、な、な、なんだとー!?」

 

 どおりで硬貨が多いなって思ったよ…1万円分両外したと思ったのにまさかあの両替機がメダルに変える機械だったのか!

 

「う、嘘だろおい…俺の1万がー!」

「シン君、大丈夫だよ、その気持ちだけでモカちゃんは嬉しいよ?」

 

 モカに、女子にこんなこと言わせるなんて…俺はやめねーぞ!男に二言はないんだ!

 

「いや大丈夫だ!必ず手に入れるから待ってろ!」

「あっ!シン君ー」

「モカ!両替機ってどれ!?」

「――……もーしょうがないなー」

 

 モカに両替機を教えてもらい次こそ両替に成功して先程のクレーンゲームに挑戦する

 

 持ち上がり手に入ったと思ったら落ちて、また上がったと思ったら落ちて、次は持ち上がらなくて

 

「何これ!?おかしいだろ!?」

「――……次モカちゃんがやってみるねー」

 

 と言いモカがワンプレイすると

 

『………………あっ』

 

 あっさりとメロンパンのクッションが手に入ってしまった。

 

「えっとーシン君ごめんね?」

「――……全種類コンプする」

「――……え?」

「――……全種類コンプするから待ってろ!」

 

 モカがもういいって言うか俺が嫌なんだよ!カッコつけて取るまでやるとかいいながらモカにいいところ持ってかれて恥ずかしいだろ!?だったら全種類コンプしてやるよ!

 

 結果は

 

「いやー無事にコンプリートできたぜ!よかったよかったー」

「嬉しいけどーこんなにいらないよー」

「ううっ、だ、だよなー」

 

 確かにこんなにいらないし持って帰りにくいよな?

 

「半分シン君のお家に置いとくよ、遊びきたり、泊まりに行ったりした時に使うねー」

「そうか…って泊まり来るのかよ!?」

「まあーそのうちねー」

「拒否権なしかよ...」

 

 まあ別にモカならいっか、前に蘭も泊めたことあるし…問題なんて起きないし起きやしねえ!

 

「ごめん、モカちゃんちょっとお花をつみにいってきまーす」

「おっけおっけー」

 

 もうちょうどいい時間だしな、お開きにするのかなー

 

「(まだ、少しだけモカといたいな…)」

 

 って何考えてんだろうな俺は

 

「(――……ん?あれはー)」

 

「ごめんごめんーちょっと混んでて遅れちゃったよ〜」

「――……モカ、これ」

「えーなにこれ?」

「えっと、今日付き合わせたからそのお礼だよ」

 

 待ってる時、目の前に良いものが売ってたからな、買ってしまったよ、結構高かったけど…まあ別にいっか

 

「ま、まさか婚約指輪ー?」

「んなわけねーだろ!?てか早く開けろよ!」

「――……うん、あ、パーカー?」

「なんだ、モカに似合うと思って買った、なんかパーカーで悪かったな」

 

 A08と書かれたパーカーが目の前に売ってたんだよ!なんか買った方がいいかなって思ったし、色が白色だからモカに合うかなって…

 

「――……シン君!」

 

 モカは急に抱きついてきた。

 

「お、おい、抱きつくなよ」

「えへへ、ありがとう、大切にするね!」

「――……いや着てくれよ!」

 

 そんなツッコミをかましてショッピングモールを後にした。友達とこんなに夜遅くまで遊んだのは初めてで楽しかった。まあモカが相手だったってのもあるのかな?

 

「今日の制服デートはどーだった〜?」

「んーデートじゃねーけど楽しかったよ!」

「じゃ次は結婚式だね〜」

「――……あーもう結婚した前提なのね」

 

 俺はモカのお父さんに怒鳴られる運命が決まったようだな…ってちげーから!

 

 てかずっと前から思ってたんだけど

 

「なんで結婚なんだ?」

「んーなんでだろうね〜」

「――……俺と付き合うのじゃー」

「………………」

「――……なんでもない!帰るぞ!」

 

 何を言ってんだよ俺は!?モカのやつは冗談で言ってるんだぞ!?まじでとらえて付き合うじゃダメなのかと聞くなよな!

 

「――……意気地無し」ボソ

「んー?なんか言ったか?」

「なんでもないよー」

 

 俺も好きな人ができて、そいつと心の底から結婚したいと思ったら俺は

 

「結婚しよう」

 

 って言うのかな?これが普通のプロポーズだよな?

 

「シン君〜」

「――……なんだ?」

「将来絶対結婚しようね〜」

「――……ふっ」

「だから結婚しねーっての!!!!」

 

 ショッピングモール目の前のカップルがたくさんいるような噴水広場にてシンのその発言は周りの人達からどう思われたのか...想像するのはあなた次第です




モカとシンは本当に結婚するんですかね...まあ最終話あたりで明らかになりますね

クレーンゲームをクレンゲームって書いてた!いつも伸ばさずに言うからくせで間違えた!許して!訂正しました。

少しでも面白いと思ったら感想と投票お願いしますね!それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと文化祭準備

初のシリーズ編で長いかも…全部で何話になるかな?

それではどうぞ!


 人の3大欲求を知ってますか?ひとつは食欲、次は性欲、最後は睡眠欲、俺はこの3つの中で1番これがないと死ぬだろって思う欲がある。それはせい、じゃなくて睡眠欲だ。

 

 昨日はパスパレの特番があったため夜遅くまでそれを見ていた。この際言っておくかパスパレにめちゃくちゃハマってしまった。いやー彩先輩が出てるしね?見ちゃうよ!

 

 そのせいで昨日はあまり寝ることができず今の状況。

 

 今日は天気がよく、窓から差し込む太陽の光が俺を深い眠りへと誘う…

 

 はっ!?いかんいかん寝てた。

 

 先生に注意されてないとゆうことはバレてなかったのか、いやーよかったよかった。あの先生のことだからバレてたら怒られてたよ

 

 堂々と大きい欠伸を行い今の状況を確認した。

 

「文化祭実行委員?戸山さんが選ばれたのか、男子は…」

「――……え!?」

 

 黒板に書かれていたの実行委員欄に戸山香澄、そしてその隣に弦巻シンと書かれていた。

 

「じゃ、決まりだなーお前ら頑張れよー」

 

 先生がそう言い完全に終わるタイミングになっていた。

 

「ちょ、ちょちょちょっと先生!?」

「なんだ、起きたのか」

 

 ギクっ!ば、バレてたのか

 

「せ、先生!なんで俺が実行委員なんですか!?」

「決めてる時に堂々と寝てたヤツが悪い」

「そ、そんな横暴な…」

「本当はあたしがしたかったのよ?でも男女一人ずつって先生が言ったからシンに譲ったの!」

「こころ!最近現れてないと思ったらまたお前の仕業か!」

 

 お前は本当に何してんだよ!?いや文化祭実行委員とか普通はしないものだろ!?なんでそれを俺がしなきゃならんのだよ…

 

 それに実行委員だと文化祭当日は歩き回れないだろ?終わった。沙綾やおたえとかと回ろうって思ってたのに!

 

 あ、言うのを忘れてた。今この花咲学園では近々文化祭が行われるんだ。その事は知ってたさ、けどまさか実行委員になるとは誰も思わないだろ?

 

「(まあ、なったからには真面目に取り組むか)」

 

 なったからにはしょうがない。それに寝てた俺も悪いからな、頼まれた仕事をこなしながらやり遂げれば大丈夫だろ

 

「あ、言い忘れてた。今回は羽丘と合同文化祭だからなー」

『えー!!!!????』

 

 前言撤回だ。逃げてもいいですか?

 

「シン君!頑張ろうね!」

「お、おう!」

 

 こんなキラキラした目で言われたら逃げたくても逃げれねーよ!てかなんで戸山さんは実行委員になったんだろう、まあ今度聞くか

 

「今度会議があるから出席してね!」

「――……わかった」

 

 羽丘と合同ってことは文化祭の準備量が約2倍近くになるってことだ。これは相当キツイだろうな…

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 何日後かは忘れたが花咲学園で羽丘の実行委員生徒達と会議を行っていた。

 

「羽丘女子学園生徒会長氷川日菜だよー!」

「今回はアタシの提案した花咲学園と合同文化祭を承認してくれてありがとね!」

 

 この人か…今回が合同文化祭になった原因は!それにしても凄いな、2年生で生徒会長って…3年顔負けじゃん

 

 その後は羽丘と花咲の生徒会の人達が挨拶を行っていた。その時しったけどうちの生徒会長も2年生だったんですね、入学式の時代表で読んだ生徒3年だと思ってたよ、なんでかって?体つきがエロ…なんでもない。

 

 そして知ったがつぐみさんは羽丘の生徒会役員だったんだな、初めて知った。

 

「で、では実行委員長を決めたいと思います...」

「私してみようかな!」

「やめとけ、仕事が多くなってきつくなるだけだよ?」

「そ、それもそうだね!」

 

 うちの生徒会長こと白金さんが弱々しく言っていた。なんか自信なさげな生徒会長だなって思ってしまった。ごめんなさい

 

 実行委員長ねー1年の俺らがでしゃばってやる必要ないし?勝手に上級生の人が立候補するでしょ

 

「はいはーい!わたしやりまーす!」

「なんていうかー文化祭成功させたいからーやってみたいです!」

「で、では決まりでよろしいでしょうか?」

 

 知らない女子生徒が手を挙げその人が実行委員長となった。制服的に羽丘の生徒だろう

 

「あとは副実行委員と書記、会計担当の人を決めたいと思います」

「副実行委員長はねーんーつぐみちゃんやれば?」

「わ、私ですか!?」

 

 ここで登場つぐみさん!うん!君なら任せられる!

 

「私も羽沢さんが適任かと思います」

「さ、紗夜さん…」

「おねーちゃんは書記するでしょ?」

「言われなくてもそのつもりよ?ね?市ヶ谷さん?」

「え!?わ、私もですか!?」

「会計は燐子ちゃんで!」

「は、はい!」

 

 おおー凄いな!すぐに決まったぞ!それに会計に会長を置くとか…羽丘の会長、こころの友達はやっぱりやべーやつだな!

 

「じゃー今からは実行委員長が話進めてねー!」

「わかりました!」

「では今からそれぞれの仕事を決めたいと思いまーす!」

「えっと広告班、機材管理班、装飾班とそれぞれ決めまーす!」

 

 なんか本格的になってきたな、えっと?広告班が…って仕事多いなー!機材管理班は?これも多い…装飾班は最初仕事があまりないが文化祭当日が近づくにつれて仕事がハードになって行くのか…でもまあ、持ち場が決まったらそこの仕事につくか

 

「シン君どーする?」

「俺はそーだな、戸山さんと同じところでいいよ」

「それだと装飾班?」

「あーそこでいいよ」

 

 よりにもよって1番めんどくさい装飾班を選んでいたか!

 

「あ、すみません、今回は合同のため仕事が多くなる恐れがあります」

 

 うん、そーですね

 

「ですので助っ人班を作りたいと思います」

「仕事内容は人手不足の班の手伝いを行う係です」

「やりたい方がいた場合その方を優先したいと思います」

 

 誰がそんなキツイ仕事選ぶかよ!?全ての班の手伝いだろ!?キツくないか!?

 

「アタシやるよ!」

「日菜…あなたは仮にも会長でしょ?本部にいて仕事の進行状況を確認する仕事があるのよ?」

「そんなのつまんないー体動かしたいよー」

「もう…あなたと来たら」

 

似てると思ったら姉妹なのか?同じ氷川だしきっと姉妹だろう、お互いわがままなやつが家族ってきついな、勝手に同情してすみません!

 

「ではあとひとり誰かお願いします」

 

ざわざわざわ

 

会議室にてみんながざわつき始めた。いやそーでしょ、そんなきつい仕事を自分から進んでやる人はいないと思うよ?

 

「し、シン君!や、やらない?」

「――……へ?」

 

みんなが一斉に俺の方を見てきた。

つぐみさーん!!!何言ってるんですか!?なんでそこで俺の名前を出したんだよ!

 

「シン君頭いいからいけるかなーって」

「そんな理由で俺を推薦するな!」

「あー!思い出した!シン君ってこころちゃんの弟でしょ?」

「…………」

 

 ずっとバレないように戸山さんに隠れてやりすごしていたのに…この人に目を付けられたらもう終わりだなと悟った。

 

「シン君と話してみたいと思ってたんだよねー!」

「あ、そうだ!シン君も助っ人班入ろうよ!きっと楽しいよ!」

 

 もうお終いだ!この人にこんなこと言われて『いやです!』なんて答えてみろ!周りのヤツからなんて言われるか…もう選ばれた道はひとつしかないんだ!

 

「――……はい」

「では残りの人の仕事を決めたいと思いまーす!」

 

 その後はこれから待ってるであろう地獄を想像しながら待っていたらあっという間に会議は終わっていた。

 

「シンくーん!!!」

「ちょ、ちょっと!?抱きつかないでくださいよ!」

「わ!近くで見たらこころちゃんと似てるね!それに髪色も金髪だ!」

「は、離れてください!」

 

 やっぱり近くで見ると可愛いな!さすがパスパレギター担当の氷川日菜、彩先輩なみに可愛くて目のやり場に困る

 

 あ、言い忘れてた。髪色は戻しました。元々友達を作るために黒染めしたもんで友達できたし戻してもいいかなーって思ってさ、え?ダメだって?知らん!

 

「氷川先輩、なんの仕事するんですか?」

「え?そーですね、私は書記の係なんで…」

「いや、あの妹の方なんですが…」

「ま、紛らわしい言い方しないでください!」

「――……えー」

 

 だって今明らかに俺は妹さんと話してたじゃん!なのになんで!?

 

「あはは!間違えないように名前で呼ぶ?いや名前で呼んでよ!」

「わ、わかりましたから!顔が近いですよ日菜先輩!」

「反応面白いなー!」

 

 やっぱりこの人と関わるのはきつそうだな…これから文化祭が終わるまでずっと同じ仕事だとかきついだろ!

 

「では私も紗夜とお呼びください」

「え?いやでも…」

「なんですか?日菜は名前で私は苗字なのですか?」

「呼びます!紗夜先輩!」

「よろしい」

 

 この姉妹はなんなんだよ!?俺とこころの姉弟とは全然ちげーな!

 

「明日から仕事が始まりますので日菜の面倒頑張って下さいね」

「は、ははは」

 

 苦笑いしかできなかった。

 

「シン君…私のせいでごめんね?」

 

 つぐみさん!?そんな可哀想な顔しないでくれよ!俺が悪いことしたみたいじゃん!いや悪いことしたのか俺は?なんだろう、なんか俺が悪い感してきたんですが!?

 

「…ぜーんぜん大丈夫!うん!俺はこの仕事やりたかったし?推薦してくれてありがとな!」

「そっか!ならよかったよ!」

 

 つぐみさんがそう言い笑った。…守りたい、この笑顔

 

「シン君!私装飾班になったよ!」

「おーそうか、まあ頑張れよ!」

「うん!」

「お、おい香澄!?あんまり弦巻君とは喋らない方がいいと思うぞ?」

「…………」

「えーありさーなんで?」

 

 市ヶ谷さんの言いたいことはもうわかる、わかります、あれですよねーどうせあの宿泊研修の事故の話でしょ?もう何か月前の話だよ!許してくれ!

 

「おたえと香澄と沙綾のやつ裸見られたんだろ!?」

「いやー私のは見てないって言ってたよ?」

「うん、ソウデスネ」

「…………」

 

 市ヶ谷さんが黙って俺を見ている…

 

「市ヶ谷さんなにかな?」

「……ポピパのメンツに近づくなよな!」

 

ガーン

 

 ってことは…沙綾やおたえとか文化祭の出し物を一緒に見て回ろうと思ってた俺の計画が!!!!ってそもそも実行委員だから回る時間があるかどうかすら危ういんだがな

 

「へーシン君おたえちゃんと沙綾ちゃんの裸見たんだー」

「あ、あとこころんとはぐと美咲ちゃんと他には…」

「あーあーあ!いらんことを言うなよ戸山さん!」

 

 こんなの日菜先輩に知られたら、弱みを握られたら俺はこの人に逆らえなくなってしまうだろ!?

 

「…弦巻さん本当ですか?」

「さ、紗夜先輩!?そんな人をゴミでも見るような目で見ないでくださいよ!」

 

 やめて!その目は宿泊研修でめちゃくちゃ浴びせられた目だから本当にやめてください!

 

「あはは!シン君はスケベだねー」

「だから違うからー!!!!!!」

 

 会議室にて俺の叫びが響いた。

 

「だ、大丈夫だよ?そんなシン君でもわ、私は友達だから!」

「――……つ、つぐみさん!」

 

 今回ばかりは最後に味方がいましたよ神様!

 

「シン君!文化祭!絶対成功させようね!」

「え!?お、おう!まかせろ!」

 

 つぐみさんと気合を入れた後会議室を後にした。

 でもな、まさかこの文化祭準備期間であんなことが起きるなんて今の俺達は誰も知りえなかった…




急いで書いたので誤字脱字があるかもしれません!何かあった場合は報告していただけるとすぐに直します!

少しでも面白いと思ったら感想と投票お待ちしております!では次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと文化祭準備と...

再投稿です。もう一度読んでいただけると幸いです。


 数日後から文化祭に向けてそれぞれの仕事が本格的に行われていた。俺はと言うと

 

「――……暇だ」

 

 本部にて仕事が来るのを待っていた。よくよく考えれば初めから人手不足に陥ることってないからなー

 

「暇なら私達の仕事を手伝ってください」

「――……と、言われましても紗夜先輩」

「なにすればいいんですか?」

 

 目の前にはつぐみさん、紗夜先輩、市ヶ谷さん、会長がいた。あ、会長って白金先輩ね!なんか会長って呼ぶのに憧れてたんだよな!

 

「あれ?実行委員長は?」

「クラスの方に行きました。どうやらクラスの出し物の話をするそうです」

「――……へー」

 

 クラスの方ね…実行委員長がそんなんで大丈夫なのか?

 

「シン君!仕事が来たよ!」

「――……なんですか?」

「羽丘で前回使った文化祭の看板再利用できないか確認してきてだって!」

「――……雑用じゃないっすか」

 

 まあ初仕事だ!気合い入れてやるしかねえ!

 

「ここが羽丘かー!」

 

 目の前に広がるは女子高の羽丘女子学園!この学校の中には教師以外の男子は俺だけになるってことか…あれ?ハーレムじゃね?

 

「あ、女子しかいないからって興奮しないでねー?」

「し、しませんよ!?」

 

 日菜先輩と来たら…俺は断じて変態じゃねー!(変態です)

 

 部活の準備運動として走っている生徒がいる、それは揺れる揺れる揺れまくる、うわー俺実行委員でよかったかもしれない

 

「…………」

「――……はっ!?」

 

 隣を見ると日菜先輩がジト目でこっちを見ていた。

ま、まずい!俺が胸ばっかり見てたことがバレたか!?

 

「シン君って巨乳が好きなの?」

「いや全然」

 

 即答する

 

「――……本当に?」

「本当です」

「本当のこと言ったらリサちーの胸触らせるよ?」

「…………」

 

 あ、あぶねーハメられるところだった!

 

「あちゃー釣れなかったかーるんって来ないなー」

「まじで違うんで!」

 

 それに前から思っていたけどるんってなんだよ!?

 

「あ、ついたよ!」

「話聞いて!?」

 

 と言ってももう日菜先輩は遠くの彼方にいた。外の倉庫の中に看板があるとの事だったから中に入り出してみたものの

 

「あーやっぱり羽丘女子学園文化祭って書かれてるから今回は使えないね」

「いや、そんな結果目に見えてたじゃないですか!」

 

 誰でもわかるだろ!?てかなんで俺気づかずに行ってたの!馬鹿じゃないの俺は!?

 

「やっぱり作り直しだね、装飾班に連絡してちょうだーい」

「――……いや、どーやって?」

「シン君携帯持ってないの?」

「持ってないですよ!欲しいぐらいですよ!」

 

 言い忘れてたけどこのご時世に俺は携帯電話を持っていません。ですので連絡帳?0人ですよ!あはは、凄いだろ!?

 

「えー!?なんで持ってないの!?」

「家庭の事情ですよ!」

 

 その後わざわざ俺の今の状況を説明した。俺が一人暮らししてることとかね

 

「んーならしかたがないね、アタシので連絡するねー」

「持ってるなら最初からしてくださいよ!?」

 

まったく…モカよりもきつい人だなこの人は!まだモカの方が可愛く見えるよ…いや、モカの方が絶対可愛い…ってその意味じゃないよ?

 

「じゃー本部に戻ろっか!」

「――……はい」

 

 また花咲に戻んのかよ、往復結構きついぞ

 

「ただいま戻りましたー」

「ちょうどいいタイミングだな弦巻シン!」

 

 珍しく市ヶ谷さんが話しかけてきた。お?なんだ!?やっと誤解が解けたの!?

 

ドン!

 

「はい!これ全部目を通せよ!」

 

 ドンって言ったよ、ドンって音が鳴ったよ!?なにこの紙の集まりは!?

 

「全て申請書です、必ず目を通してくださいね」

 

 申請書ってまだクラスの出し物決める期限ってまだまだ余裕あるぞ!?うちなんてまだ決めてもねーよ!

 

「つぐみさん印鑑は?」

「あー実行委員長が持ってます!」

「…困りましたね」

 

 これだ!これをきに抜け出せることができる!

 

「俺が行ってくる!」

 

 勢いよくドアを開けその場をあとにした。

 

「あ!おい!逃げんな弦巻シン!!」

 

 すぐに戻るから許せ市ヶ谷さん!

 本日2度目の羽丘に登校したあと走って3年の教室につき、実行委員長を探した。

 

「実行委員長ー」

「んーどうしたの?」

 

 いや、どうしたのじゃなくてですね…

 

「仕事、溜まってるんで消化してくださいよ!」

「あー!ごめん!忘れてた!」

「…しっかりしてくださいよ」

 

 その後実行委員長と一緒に羽丘を後にして花咲の本部に向かった。

 

「ただいま戻りましたー」

「みんなごめんー」

「実行委員長、来てすぐですみませんがこの資料に印鑑を」

「あ、はーい」

 

 実行委員長が来たから仕事が楽になると思ったが…

 

「えっと、これは、ど、どーするのかな?」

「あーこれは、こうして、こーでです」

「あ、副実行委員さんありがとうー!」

「はい!あ、羽沢でいいですよ?」

 

 この実行委員長がまー捌けない、これでなんで実行委員長の仕事しようと思ったんだよ

 

「これお願いします」

「あ、これもお願いします!」

 

 いろんな人がつぐみと実行委員長に仕事を押してくれてる、まあ確認しないといけないからな、これも実行委員長と副実行委員の運命ってやつかな?

 

「こんなには無理だよー!」

「あ、では私が全部担当しますので…実行委員長は休んでていいですよ?」

「あ、ありがとう羽沢さん」

 

 おいおい、それはいくらなんでも頑張りすぎじゃないかいつぐみさん?いくら実行委員長が捌けないからってつぐみ1人でやる必要ないだろ…

 

「つぐみさん、少し手伝うよ?」

「んーでも私が最終チェックするし…このまま見た方が早いかなって」アハハ

「――……そっか」

 

 確かにそうだな、俺が1度確認したところで最後に確認するのはつぐみさんなんだからね、だったら俺は今ある仕事を頑張りますか!

 

 まだつぐみさんの手元に届いてない資料をまとめる仕事をしてる中、俺の隣では日菜先輩が高速タイピングしてるし、紗夜先輩の方を見ると資料の確認してる、実行委員長は椅子に座って休んでる、いやあなたが1番働けよ!?

 

 市ヶ谷さんと会長は肩がこったのか腕をぶんぶんまわしてる、そりゃーあんなに大きなもの持ってたら肩もこりますよねーまあ何とは言わないけど

 

 まって、この中で男子って俺だけじゃん!いや、考え込むな、考えるな!俺は無だ。目の前の仕事に集中するんだ。

 

 目の前にまだ残ってる申請書の山を再び見ることになった。

 

数日後

 

「副実行委員、これお願いします」

「この件もお願いします!」

 

 とうとう仕事が全部つぐみさんに行くようになった。多分だが…実行委員長より副実行委員のつぐみさんの方が捌けるってわかったんだろう、実行委員長の所には仕事が来ず、つぐみさんのところばかりに来る

 

「つぐみさん…大丈夫?」

 

 いかにも少し元気がなさそうに見えた。

 

「え?大丈夫大丈夫!私は平気だよ?」

「――……うん」

「あ、紗夜さんこの件なんですが…」

「燐子さん、現在の予算費どうなってますか?」

 

 こんなに仕事に熱中しすぎて大丈夫なのか?本人が大丈夫って言ってるからな…

 

「つぐみさん、休める時はちゃんと休めよ?倒れたりしたら元も子もないんだからさ」

「う、うん!大丈夫!わかってるよ!」

 

 返事はしてくれるが本当に大丈夫なのだろうか…本当に倒れたりしたらやばいからな…

 でも本人が大丈夫って言ってくるから大丈夫なんだろうな

 

「あれだね、私いらないね!」

「自分で言ってて恥ずかしくないんですか!?」

「――……この際もう羽沢さんが実行委員長した方がいいかもね?」

 

 まあーその方が妥当だと思うけど…

 

「実行委員長はムードメーカーとして頑張ればいいのではないですか?」

「なにそれ酷い!?」

 

 やっと俺にもひまり以外にいじれる人ができましたよ…嬉しいか嬉しくないのかどっちだろうか?

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 あれからさらに日はたった。申請書も最初の頃より減り今は追加申請書ばかりが来るようになっている…が相変わらずつぐみさんのところばかりに来る、相当キツイだろうな

 

 クラスの出し物は沙綾がパン屋さんのためパン屋さんをすることにしたらしい。いやー山吹ベーカリーさまさまですよ!あとは申請書をつぐみさんに見せて通れば大丈夫だな…

 

 本部に向かっている時にだ。

 

「おーい!シーン!」

「巴さん!?なんでここにいるの!?」

 

 羽丘の生徒でも実行委員のつぐみや日菜先輩が花咲に来るのは分かるがなんで巴さんがいるんだ?

 

「私もいるよー!」

「ひまり…お前も来てたのか」

「反応薄いよ!?」

「はいはい」

「むぅー!!!!」

 

 おいおい頬をふくらませて可愛いやつだなおい!

 

「つぐがね?最近仕事頑張ってるけどなんか元気がないなーって思ってね」

「大丈夫か見に来たんだよ、それにさ」

「……あたし達にできることがあれば手伝いたいなって」

「お、お前ら…!」

 

 めちゃくちゃ嬉しい!今本部はまじで人手不足だから俺と日菜先輩が手伝ってるんだよ、ボランティアって形なら参加できると思うから紗夜先輩に頼んでみるか

 

「こんちはー」

「あ!遅いよシン君!」

「いや早い方でしょ!?」

 

 そんなやり取りをしたあとにつぐみ達に巴さんとひまりが協力したいって話をした。

 

「もちろん大歓迎ですよ」

「紗夜さん!ありがとうございます!」

「これでつぐのサポートができるね!」

 

 つぐみさんは本当に仲のいい友達を持ったよな、幼馴染っていいよな、俺も1人や2人欲しい人生だったさ

 

「つぐみさんこれで仕事も捗る…よ?」

 

 隣にいたつぐみさんが急に俺にもたれかかってきた。普通なら喜ぶところだがすぐ異変に気づいた。

 

「つぐみさん?つぐみさん!つぐみさん!?」

「つ、つぐ!」

「――……え?つぐ?」

「――……羽沢さん!?」

 

 返事がない。

 嘘だろ?俺がこないだ言ったことが本当に起きてしまったのか?

 

「救急車だ!誰か救急車を呼んでくれよ!」

 

 誰でもいい!

 

「ひまり!巴!救急車だよ!早く呼べよ!」

「――……つぐが?なんで?どうして?」

「おい!ひまり!」

「――……っ!わ、わかった!」

 

 クソ!最悪のことが起きてしまった…なんでこんなことが起きるんだよ!なんでつぐみさんが倒れるんだよ!

 

「きゅ、救急車呼んだよ!すぐに来るって!」

「と、とりあえず運びましょう!」

「会長!担架ってどこにありますか!?」

「確か...保健室にあります!」

「――……わかりました!」

 

 つぐみさんをすぐに病院に送るために玄関まで運ぶためには担架が必要だ。だから俺は急いで取りに行き

 

「乗せるぞ!確か頭と首を持ちながら足を持つんだよな?」

 

 何も知らないがこうすればきっと大丈夫だと思って巴さんと一緒に担架に乗せて玄関まで連れて行った。

 

 玄関についたと同時に救急車も到着しつぐみさんはすぐに救急車に乗せられ病院に向かう準備はできている

 

「誰か1人乗れますがどうしますか?」

「巴、ひまり、お前らのどちらかが乗れよ」

『…………』

「いや、シンが乗ってくれ…あたし達は今回何もできなかった…だからつぐを頼んだ」

「――……わかった」

 

 人生初めて救急車に乗り、病院に向かった。

 

 病院について先生の診察が終わった。どうやら頑張りすぎて疲労が溜まっていたらしい。2、3日もすれば退院できとるとのこと…

 

 病室に運ばれたつぐみさんの部屋で目が覚めるのをずっと待っていた。待ってる時に考えることは自分を責めることばかりだった。

 

 どうしてあの時に異変に気づかなかったんだ。初日からつぐみさんはかなりダメージを受けていたはずだ。毎日毎日毎日ずっと申請書、または資料を見ては印鑑押して、夜遅くまで残っていた。もちろんバンド活動なんて参加できていなかった。

 

 それにどうしてつぐみさんにばかり負担をかけたんだって…でもそれは仕方がないことじゃないか!実行委員長が使い物にならない中つぐみさんがやらないと誰が印鑑押すんだよ…実行委員長の他に印鑑押せるのはつぐみさんだけだ。

 

「(俺がちゃんともっと強く休めよって言っておけば...!)」

 

 無理矢理でも休めよって言うか、無理矢理でも俺が仕事を手伝っておけばこんなことにはならなかったと思う。

 

 考えれば考えるほど自分を責めてしまうが、その後は考えることなくつぐみさんが目を覚ますのをずっと待ってるだけだった。

 

「――……あれ?ここは…」

 

 1時間後につぐみさんは起きた。

 

「――……こんばんは、つぐみさん」

「――……シン君?」

「あれ?私…なんで病院に」

「――……本部で倒れたんだよ」

「――……そうなんだ、ごめんね?」

 

 ごめんねだって?違うだろ

 

「――……謝るのは俺の方だ」

「――……ごめん」

「なんでシン君が謝るの?」

「俺が…俺達がつぐみさんに頼りすぎた」

「…………」

 

 このことは誰がなんと言おうと変わらない事実だ。紗夜先輩も日菜先輩も、それ以外のみんなもどこかしらでつぐみに頼ってしまってた。

 

「あはは、私って本当にダメダメだなー」

「…………」

「話変わるけどね?私ってバンドの中で1番下手なの、下手で下手で下手で…もう嫌になっちゃうよ」アハハ

「努力してもなにも成果がない、有咲ちゃんや燐子さんみたくコンクールでいい結果なんて出したことない」

「馬鹿だよね?体力なんてないのに努力し続けてさ、仕事も頑張ってさ、結果倒れたんだよ?」

「みんなに、シン君に迷惑かけてさ…」

「――……私って本当に何もできない人…!」

 

 つぐみさんは泣いていた。今のつぐみさんの心情なんて読めやしない。俺は誰かさん見たく読心術があるわけじゃない。でもこればっかりはわかる

 

「――……自分の限界を認めたら人はそこまでしか行けない」

「――……え?」

 

 まったく人に言える立場じゃないのにな、自分だって無理だって決めつけてさ?お父様から逃げてるくせに…でも今はつぐみさんが、いやつぐみが優先だ。

 

「キツツキって知ってるよな?」

「――……うん」

「あいつらって木に穴開けて巣を作るよな?」

「それってさ、膨大な時間がかかるんだよ」

「――……うん」

 

 これまたお母様が昔言っていたことだ。『キツツキのような人になりなさい』って、最初は意味がわからなかった。けど今ならわかる

 

「あいつらは木って言う壁をぶち壊して巣を作るんだよ」

「――……っ!」

「今は無理でも何度も何度も打ち込めばそのうち壁は壊れるかもしれない!次の一撃で壊れるかもしれない!」

「努力を続ければいつか自分の身に役立つんだよ」

「努力が無駄になる?笑わせるなよ!努力するから壁が出てくるんだろ!」

「――……っ!」

「だから努力することが無駄なんかじゃない!つぐみがしてきたことは間違ってない!」

 

 これはつぐみに言ってるが、つぐみだけじゃない。自分にも言い聞かせてるんだ。逃げてばかりの俺に言ってるんだ。努力なんてしてない。してないが生まれながらの絶対超えられない壁があるんだよ、でも…今は俺のことは後にしよう

 

「体力がないならつければいい、なにか成果が欲しいのならコンクールに出ればいい」

「――……だから…自分のことを嫌いになるなよ」

「――……っ!」

 

 俺が話を言い終わるとずっと黙っていたつぐみが話し始めた。

 

「――……私ずっと自分が嫌いだった…!」

「どんなに頑張って努力してもあまり身につかない自分が嫌だった…!」

「私、私はずっと言われたかったの…」

「努力は無駄じゃないって!ずっと、ずっと言われたかった!」

「シン君…私って間違ってないよね?」

「――……うん」

「シン君…私ってこれからも努力を続けても…いいんだよね?」

「――……ああ」

「シン君…私って自分のこと好きになってもいいんだよね?」

「つぐみ…大丈夫だって、自分を信じろ、な?」

「――……シン君!」

 

 つぐみは大泣きした。無理もない、ずっと自分を嫌ってたんだ。それを違うって言ってくれた人が現れたんだ。自分の努力は無駄じゃなかったと知ってさ…

 

「つぐみ、文化祭絶対成功させような」

 

 これはつぐみが俺に言ったことだ。やる気がなかった俺はつぐみのこのセリフでやる気が込み上げてきたんだよ

 

「――……でも、私みんなに迷惑かけたし」

「――……大丈夫だって」

「俺がつぐみを苦しませない仕事環境を作くるからさ…」

 

 そう、俺がつぐみを苦しませない仕事環境を作る、いや作ってみせる、何がなんでもつぐみがこれから二度と倒れることがないようにするんだ。

 

「――……え?それって」

「――……じゃ、帰るよ」

「う、うん」

 

 できるできないの話じゃない。やるかやらないかの話だ。俺はやるぞ、やってやる、実行委員の仕事環境の1つぐらい変えてやる!

 

「シン君…!」

「…………」

「私はあなたに救われました…いつか絶対!シン君に恩を返します!」

「…だったらずっと笑顔でいてくれ、それが俺にとっては恩返しだよ」

 

 カッコつけてる自覚はあるよ、けど今はそんなことよりこの文化祭実行委員の仕事環境を変えないといけない。変えるために俺がすることはわかってる…

 

 外に出ると大雨だった。誰かさんの心の中のように止まることがない雨がずっと降り続けていた。

 

 傘を持っていないため雨に打たれながら帰る選択を選び家に帰った。

 

「ほんと、つくづく不幸だよな」

 




実行委員長のキャラがまずかったのかな?確認してきたらそんな感じでした。今後このようなことが起きないようにしていきたいと思います。

なお本日はいつもの時間に続きを投稿しますのでよろしくお願いします。


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弦巻シンと文化祭とは

話の展開が難しんだよーがんばってるから許して!
それではどうぞ!


 後日緊急で会議が行われた。理由は簡単、つぐみが倒れたからだ。

 

「…とのことで副実行委員が倒れてしまいました」

「私自身その日は羽丘の方で仕事をしてまして…あ、でもそこまで進んでなくて…」

 

 実行委員長の初日の気合いは完全になくなり、今は不安だらけなのか声が震えている

 

「てかさ?実行委員長がダメダメだったから副実行委員に負担かけたんじゃね?」

 

 誰かがそう言った。それに対して会議室ではそれに同意する人達が多い、確かにつぐみの方が仕事ができており効率もよかった。でもそれは生徒会の仕事をしてるため慣れてたからなのだ。でも実行委員長はどうだ?何もしたことがない。こんな仕事は初めてだって前に言ってた。

 

「…………」

 

 実行委員長は黙って自分の手を強く握っていた。無理もない。だって今自分が攻められてるからな…でもそれだけか?つぐみが倒れた原因はそれだけじゃないはずだ。

 

「――……さっきから聞いてたらペラペラペラペラよく喋るよなー」

『…………』

「――……弦巻君?」

 

 紗夜先輩が驚いている、だって俺ってこんなこと言う人じゃないじゃん?でもさ、結構強く言わないと響かないと思うんだよ

 

「つぐみが倒れたのが実行委員長のせい?ソレは否定しないな」

「…………っ!」

「でも本当にそうか?違うだろ!」

 

 机を叩きその場に立ち上がる。確かに実行委員長が使えなかったからって原因もあると思う、けど…

 

「つぐみに…副実行委員に頼っていた俺らが1番の原因じゃないのか?」

『…………っ!』

「つぐみはあの性格だから頼まれたことは断れないんだよ…」

「だからみんなが頼るのも無理はないかもしれない!」

「けど!そんな1人に頼って成功して楽しかった文化祭!とはならねーだろ!」

「みんなで協力して成功させるのが文化祭じゃないのか!」

「俺が求める理想の文化祭はそーだろってずっと思ってた、違うのか!?どー思うんだよあんたらは!」

 

 ずっと言いたかったことが言えた。でもこんな1年坊主が言ったところで生意気なやつだなって思われるかもしれない。けど言いたかった。変えたかったんだよ、この仕事環境を

 

「確かに副実行委員に頼りすぎてた…」

「実行委員長にも頼んで仕事の負担を少しでも減らせれたかもしれない…」

「弦巻の言う通りだ、俺達にも責任がある…」

 

 どうやらみんながわかってくれたようだ。てかそもそもわかってたと思う、いや、わかってて欲しかった。わかってたらこんなこと起きてなかったからな…でもよかったよ、これでつぐみへの仕事の負担も減り、倒れることなんて二度と起きないだろうと思う。

 

「――……弦巻君、ありがとう」

「いえ、俺もつぐみに頼ってたんで…」

「――……うん、私決心できたよ」

「――……は?」

 

 決心ってなんだ?やっと実行委員長としての自覚が芽生えたってところかな?ならそれはそれでいいと思うけど…

 

「今回の件は私が未熟なばかりに起きてしまったことです…」

「ですので、その責任として実行委員長を辞めます」

 

 な、何言ってんだよ!あんたが辞めたら誰が実行委員長になるんだよ!もうみんなそれぞれの仕事が板に付いてきた頃だぞ?今ごろ変更なんて迷惑になるだけだろ!

 

 実行委員長は腕につけていた実行委員長と書かれた腕章を外し俺の目の前まで歩いて来た。

 

「弦巻君、君が実行委員長になって、いや、君がふさわしいと思う」

 

 そう言い腕章を俺に渡そうとしてくる

 

「――……なんですか?これ」

「見てわからない?実行委員長の腕章だよ」

「――……だからなんで俺に渡すんですか?」

「さっきも言ったよ?弦巻君がふさわしいって」

 

 いや、でもあんたがそう言ってもみんなが認めないんじゃないのか?だって俺1年だよ?1年が実行委員長とか…できるわけないじゃん

 

「アタシもシン君がするべきだと思うなー前の実行委員長使えなかったしね!」

「正直に言われるときついから会長やめてよ!」

「あはは!冗談だよ!」

「それに文化祭をよくしたいって気持ちはさっきので十分わかったから」

「でも日菜!そう簡単に決めたら!」

「まあまあーまだ決まったわけじゃないし!」

「決めるのはシン君次第だよ?」

 

 俺次第…か、俺みたいな1年坊主がこの集団をまとめることができるのか?少なくとも元実行委員長より働けると思う、けど俺よりも適任はいるはずだ。紗夜先輩や日菜先輩とか…

 

「俺がつぐみを苦しませない仕事環境を作ってみせるからさ…」

 

 ってつぐみと約束した。

 

「(そうだな、そうだよな)」

 

 元実行委員長が渡そうとしている腕章を受け取ろうとした。

 

「――……弦巻君」

「…………」

「その腕章は重いですよ?あなたに務められますか?」

 

 紗夜先輩が話しかけてきた。そりゃーそうですよね、こんな1年に実行委員長の仕事ができるか不安になりますよね…でも

 

「――……つぐみと約束したんです」

「――……羽沢さんと?」

「はい、つぐみを苦しませない仕事環境を作るって」

「…………」

 

 そう、約束したんだ。約束したからには果たさないといけないよな?

 

「だったら俺はつぐみより上の立場にならないといけない…」

 

 副実行委員長より上の立場はひとつしか残されていない。

 腕章を受け取りそれを左腕につけて言った。

 

「――……俺が実行委員長になる!」

「だから!……みんな、俺について来てくれ」

「――……来てください!」

 

 我ながら勝手すぎると思う、元実行委員長や、羽丘の会長から推薦され実行委員長になるってみんなの意見も聞かずに実行委員長の腕章をつけ宣言した。本当に勝手すぎる、そんなの誰もついてこないだろ…って思ったさ、けど

 

「弦巻君ならいけるよ!」

「前のやつより全然いいぜ!」

「頼むぞ1年坊主!お前にかかってる!」

 

 どうやらみんな受け入れてくれたみたいだ。市ヶ谷さんはちょっと苦笑いしてるけどな…

 

「まったく前代未聞ですよ、実行委員長が途中で変わるなんて」

「でもまずこの合同文化祭自体が前代未聞だから気にしなくていいんじゃないかな?」

「それとこれとはまた別でしょ…」

 

 氷川姉妹がなにか話しているが…確かに途中で変わるなんて起こることがないと思う。けどなったからにはやり通す、そして作るんだよ、つぐみに負担をかけない仕事環境を作ってみせる

 

「じゃー実行委員長!ついでだから文化祭のテーマ決める会議をしよっか!」

「――……はい!」

 

 日菜先輩にそう言われ、やる気がこもった声でそう答えた。

 

 その後会議は終わり、文化祭のテーマも決まった。テーマはそうだな、言わなくてもいいだろ…それより!

 

「――……つ、疲れたー」

「初仕事お疲れ様でした」

「さ、紗夜先輩ー!」

 

 そう、ついさっき実行委員長になったばかりなのにすぐに会議の進行を行っていたんだ。

 

 初めての進行なもんで何すればいいかなんてわからなかったけど、とりあえず今やることはこれだろ!って決めて話を進めたらなんとかまとまった。

 

「へー弦巻シン結構やれるんだな、少し見直したぞ」

「い、市ヶ谷さん!」

「か、勘違いすんなよな!?まだポピパのメンツに関わることは禁止だからな!」

 

 で、ですよねーまあ普通に絡むんですがね!

 

「はい、シン君これ全部目を通してねー」

 

 また目の前に大量の資料と申請書の更新願い届けの山が現れた。

 

「言いましたよ?務められますかと」

「――……もちろんやれますよ!」

「弦巻君…が、頑張ってくださいね!」

 

 俺の前に腕を出し、ガッツポーズをしている白金先輩こと会長が言った。

 

 や、山の向こう側にさらに大きな山が2つある!こ、これは頑張るしかね!

 

「俺はこの山を乗り越え次の山に行くんだ!」

『――……んー?』

 

 みんなにはわからないような言葉をいい仕事に専念した。

 

「あとこれと、それと、あれもお願いしますね」

「さ、さすがにソレは無理があるんじゃ...」

「お前がやるって言ったんだろーちゃんと仕事しろよな」

 

 俺が自ら選んだ選択だが…

 

「はあ、不幸だぁぁああー」

 

 力なく答えたその言葉は俺をさらに不幸にするだけだなと悟った。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 後日つぐみが退院して本部に戻ってきた。

 

「みなさん迷惑をかけて本当にすみませんでした」

「今後は自分の体調を確認しながら仕事に専念したいと思います!」

「実行委員長にも迷惑をかけました。すみません…」

 

 つぐみが実行委員長に謝ってるが…

 

「あははー私は元実行委員長ね?」

「え、えー!?そ、そーなんですか!?」

「うん、私ね実行委員長辞退したの」

「そして彼があたらしく実行委員長になったの!」

 

 元実行委員長はそう言い申請書の確認をしていて忙しい俺を指をさして言った。

 

「し、シン君が新しい実行委員長なの!?」

「――……おう」

 

 まあ驚くよな?だって退院したら実行委員長が元になってて助っ人班だった俺が実行委員長になってるんだからな

 

「だからつぐみ…」

「俺が実行委員長になったからには俺にどんどん頼れよ?」

「…………っ!」

 

 俺が実行委員長になったからにはもうつぐみに負担をかけさせない。つぐみが一人でやってた仕事ぐらい俺にだってできるはずだ。いや、やってみせる!

 

「――……でもそれは無理かなー」

「――……え?」

「私副実行委員だから実行委員長のサポートしないといけないからね!」

「――……だけど、また私が無茶した時は止めてください」

「…………っ!」

「頼りにしてますよ?実行委員長さん!」

「――……おう!まかせろ!」

 

 笑顔でそう言ってきたつぐみに対して俺も笑顔で答える、なんだろう、急にやる気が出てきたぞ!

 

「よーし!早速仕事に取り掛かるぞー「あっ!」ってなんですか元実行委員長!」

 

 人がせっかくこれからやりますよ感出してたのになんで邪魔するの!?

 

「もしかして弦巻君と羽沢さんって付き合ってるのかな!?」

『…………ん?』

「だって弦巻君こないだ言ってたじゃん!」

 

 んんっ!と咳払いして

 

「約束したんです、俺がつぐみを苦しませない仕事環境をつくる」

「ってね!」

 

 俺の声を真似てそう言う。

 や、やめろー!今聞くとめちゃくちゃ恥ずかしいじゃねーか!あ、あの時はその、俺もいろいろあってそのーなんだ!

 

 た、たまにはいいだろカッコつけても!!

 

「し、シン君…みんなの前でも言ってたの?」

「みんなの前?おやおやー二人っきりでなにか話してたのかな??」

「入院してる時に話したんだよ!少しは頭使ってください!」

 

 ダメだ!みんなが俺とつぐみをみてる!た、確かにあんなセリフを言っていたら間違えられるのも当然だ。けど…俺が彼氏とかつぐみが可哀想だろ!だから

 

「絶対に付き合ってませんから!!!」

「そんなことより仕事仕事!まだやること沢山ありますよ!」

 

 そんな話をし終えいざ仕事に取り掛かろうとした時だ。

 

「おい弦巻!弦巻はいるか!」

 

 担任の先生がドアを勢いよく開け本部に入ってきた。

 

「あ、いたな、お前実行委員長になったんだろ?」

「あ、はい、でもなんで知ってるんですか?」

 

 なったけどまだ担任には話してなかったと思うんだが…まあ文化祭実行委員の誰かがみんなに言いふらしてそれが耳に入ったのかな?

 

「戸山から聞いた」

 

 あ、あいつは余計なことを!!でもまあー知られるのも時間の問題だったしな

 

「それより今からその件で学長から話があるそうだ」

「――……は?なんで?」

 

 まじでなんで?学長ってこの学校で一番偉い人じゃないの?そんな人に呼び出しって…俺生きて帰れないんじゃね?

 

「お前が元実行委員長を脅迫して実行委員長になったんじゃないかって疑いが出てるからな」

「はっ!?なんでですか!?」

 

 そんなの横暴だ!俺はちゃんと元実行委員長と日菜先輩の推薦を受けて実行委員長になることを決意したんだぞ!?

 

「私も知らん、とりあえず学長室に行くぞ!」

「早く行かないと私の首が飛んでしまう」

「それはあんたの都合じゃないですか!」

 

 先生に首根っこを捕まれ引きづられる形で本部を後にした。いやあんたら助けてくれよ!俺まだ実行委員長としてなんも仕事してないよ!?

 

「――……シン君!」

 

 ここで話しかけてきたマイエンジェル羽沢つぐみ!君だけは助けてくれると思ってたよ!

 

「ファイトだよ!」

 

 あーその言葉を聞くとなんかやる気が出てくるなーけどなー今の状況はどう考えてもやばいんだよなー

 

 最近になってつくづく思う。

 

「やっぱり俺って不幸だぁぁああ!!!」

 

 先生に引っ張られながら叫んだ声は廊下に響きわたった。

 

 その後学長室にて話を行い、俺の無実は証明された。学長からあの話が本当だったら君を消してたよって笑いながら話した時変な汗が出てたなんて誰にも言えない。

 




とゆーことでシンが実行委員長になりました。つぐみ視点は書きません、何故なら...感がいい人はわかると思います。

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弦巻シンと青葉家訪問は怖い

みんなお待たせ!今回はモカ回です!それではどうぞ!


 あれからさらに数日後、俺が実行委員長になったことはみんなに知れ渡っていた。まあ1年が実行委員長だからな?先輩達もちょっと不安な雰囲気を漂わせてた。

 

 仕事もだいぶ一段落ついてきた。やってみてわかるがこんなにもきつい仕事をつぐみは1人でずっとしてたんだな…

 

「お疲れ様です」

「おつかれー」

 

 仕事を終えた先輩達は本部を後にしていく

 

「(この後バイトかー)」

 

 苦行すぎるわ!文化祭の準備しながらのその後にバイトってな…

 

「おつかれでーす」

 

 自分もそう言い本部を後にした。

 

 羽丘から出てバイト先に向かおうと思ったが…校門で見覚えのあるやつが立っていた。

 

「あーシン君遅いよー」

「――……モカ?」

「うん、シン君の大好きなモカちゃんですよ〜?」

「なんでそーなるんだよ!?」

 

 まったくモカといると楽しいな、こんな調子でぼんぼん話しかけてくるからツッコまないとなんかダメな気がするんだよな

 

「バイト一緒に行こうよー」

「あれ?モカ今日シフト入ってたっけ?」

 

 確か今日はリサ先輩が入ってたはず…

 

「こないだ風邪引いた時にモカちゃんの代わりに入ってくれたからーその恩返しだよ」

 

 ん?待てよ、リサさんその日は途中まで俺と一緒にいてそこからRoseliaの件で用事入ったって…

 

「なんか自分も抜けたら仕事回らないと思ったらしくてねー」

「モカちゃんのお見舞いよりバイトを優先したんだよーおよよ〜」

「な、なんだよそれ!?」

「でもシン君がお見舞い来てくれたから嬉しかったよ?」

「――……っ!」

 

 こいつは平然とそんなこと言うからな…てかリサ先輩俺に嘘ついてバイトに戻っていたのか!

 

 そのせいでめちゃくちゃ恥ずかしいことしたじゃねーか!モカとは恋人でもないのに恋人繋ぎしてさ?いや、別に嫌ではなかったさ、むしろ嬉しかったっていうか…落ち着いたかっていうか…

 

「(って何考えてんだよ俺は!?)」

 

「――……つぐの件ありがとね」

「お前…なんか俺にお礼ばっかり言ってね?」

 

 こないだの蘭の件といい、なんかモカにお礼ばかり言われてる気がする、俺の方が助けられた恩は大きいと思うけどな

 

「いやいやー感謝してるから言ってるんですよ〜?」

「……まあ俺達がつぐみに頼りすぎたから起きたもんだしな、これぐらい普通のことだよ」

 

そうだよ、俺達がつぐみを助けることは普通なんだよ

 

「――……普通ねー」

「シン君は普通をみつけることできた?」

 

 みつけることができたか?んーどうだろうな、最近いろんな人と絡んでてその人にはその人による普通があるんだなってあらためて思ったよ

 

「――……まだだな」

「――……みつかるといいね」

「おう!」

 

 そんなやり取りをして2人で並んでいる時

 

「――……えーい!」

 

 モカが俺の手を握ってきた。

 え?なんで?俺なんか今落ち込んだ顔でもしてたか?なんかモカに不安にさせるようなことでもしたっけ…?

 

「な、なにしてんだよ!?」

「やっぱりシン君の手って大きいね」

「まあー男子だしな、モカより大きいだろ」

「――……うん」

 

 なんか調子狂うな…でも、モカと手を握る、いや、今の状況は手を繋ぐだな、繋いでいると落ち着くの本当だしな

 

「――……恋人繋ぎしないー?」

「え?あ、いやー俺達って別に…」

「もー前にしたんだから1度も2度も同じだよー」

「お、おい!?」

 

 モカはそんなことを言い普通に握っていた手を絡めるように握り変えた。

 

「ええへ、恋人みたいだねー」

「――……はあー勝手にしろ」

「またまた照れちゃってー」

「照れてねえ!」

 

 今この状況を他の人に見られたらなんて思われるんだろうな?やっぱり恋人同士って思われるのだろうか…

 

「シン君」

「――……なんだ?」

「――……結婚するー?」

「だからなんでだよー!」

 

 やっぱりモカはこんなやつですよね!?

 

 バイト先に着くがキツすぎる、普段できていた仕事も2倍近く時間をかけてやるレベルだよ

 

 まあそんな地獄のバイトとも終わり後は上がるだけ、そんな時にだ。

 

「やっほーシンーモカー」

「リサ先輩!?今日はモカと代わったんじゃないんですか?」

 

 なんでリサ先輩は来たんだ?来るなら別にモカと変わる必要なかったんじゃね?

 

「あー文化祭の準備でさ?忙しくてモカに頼んだの」

「へーそうだったんですかー」

「お前も知らなかったのかよ!?」

 

 てっきりモカは知ってると思ってたけどな

 

「それでね実は今から…」

 

「え!?ほ、本当にやるんですか?」

「アタシはやるよ!やるしかない!」

「モカちゃんも面白そうだからやるー」

「お、お前らマジかよ!?」

「シン君?腹を括ろうねー?」

「――……んー!わかった!」

 

 俺の文化祭のためだ!仕方がないことじゃないか!

 

「店長!」

「――……なんだよ揃いも揃って」

『文化祭の準備があるのでバイト休ませてください!』

「お、いいぞ」

「軽!?」

 

 本当に返事が軽いな!バイトの3人がしばらく休ませてくれって頼んでるんだよ!それをひとつ返事って…店長神かよ!

 

「そのかわり文化祭成功させろよ?」

「だってさーシン実行委員長頑張ってね♪」

「貴殿の働きに期待しておるよー」

「なんだ、お前実行委員長だったのか?なら尚更成功させろよ?」

「あ、あはは、ははは」

 

 店長にまで期待されるってなんかめちゃくちゃプレッシャー感じるのですが…

 

 その後バイト先を後にしていく帰る直前に

 

「シン君ーお母さんがこないだのお礼したいから家にご飯食べにこないかだってー」

 

 って言ってきた。お礼?あーモカの看病と留守番の件か、でもなーモカのお父さん苦手なんだよな…でもまあお礼してくれるのならされとくべきだよな!

 

「いつだ?」

「今日」

「今日!?」

 

 いきなりすぎないか!?そーいうのって事前に何日か前に言っておくべきなんじゃないの?

 

「またモカちゃんの部屋に入れるかもよー」

「そ、それはだ、大丈夫だ!」

「えーそんなー」

「とりあえず迷惑じゃないなら行くよ!」

「じゃー決まりーモカちゃんのお家にレッツゴー」

 

 急遽モカのお家にご飯を食べに行く話になったため向かってる、その途中でさ?モカがまた手を繋ぎたいって言うもんだから繋いださ

 

 途中同じクラスの人に見られたが大丈夫だよな?気にしたら負けだ。

 

「着いたよーあがっていってー」

「お、お邪魔します…」

 

 2回目だけどなんかソワソワするな...それに女子の家なんてあんまり来ないだろ!?まあ前にお見舞いでモカ部屋に入ったけどさ!

 

 今回は部屋に入ることはないだろう、だってご飯食べるだけだよ?

 

「あらあらーシンさんいらっしゃいー」

「えっとえっと、まだご飯の準備がすんでないのでモカちゃんの部屋で待っててくれますか?」

 

 前言撤回、そう言えばこの人はモカのお母さんだったな、そりゃーそーなりますわな、リビングで待機なんてさせてくれないですよねー

 

「だってーモカちゃんの部屋に行こうねー」

「――……おう」

 

 前に来た部屋と同じだ。違うといえばモカがベッドで寝ずに俺の目の前にいるぐらいかな?あ、後は制服姿ってところだな

 

「ベッドの所に座ってていいよー」

「じゃーそーさせてもらうよ」

 

 座ってわかる、俺のこないだ買ったベッドよりもふかふかじゃねーか!こ、これが高級のベッドってやつか?いや、思い出した。屋敷の方がふかふかやん

 

「モカちゃん着替えるねー」

「あ、うん――……って!」

「んー?なに?」

「な、な、なんで俺の前で着替えるんだよ!?」

 

 そ、そのお腹見えてるから!って俺は前にお腹よりも凄いところ見たけどさ!いや、モカじゃないよ?

 

「もー照れ屋さんなんだからーじゃー壁向いとけばいいじゃん?」

「そ、そーさせてもらう」

 

 モカに背を向け何も無い壁と睨めっこする、するのはいいが制服を脱ぐ後、服と服がかすれる音が耳に響く

 

「(い、今後ろでモカが着替えているのか)」

 

 そんなことを頭の中で考えている時

 

「――……シン君ー」

「な、なんですか!?」

「今モカちゃん下着姿だけど見る〜?」

「――……っ!?」

 

 な、なんだと!?今モカは俺の後ろでした、下着姿!?ってことは振り向けばモカの下着姿が見れるのか…

 

 っていかんいかん!何を考えているんだ!モカは友達だぞ!?決してそんなことはしてはならない!

 

 そうだ!素数を数えよう!素数を永遠に数えとけば考えることを放棄できるはず!

 

 2.3.5.7.11.13.17.19.23.29.31.37.41.43.47

 

「着替え終わったよー」

「――……お、おう」

 

 ようやく壁とも睨めっこが終わり振り返るがモカの着ている服に見覚えがある

 

「そ、それって」

「そーう、シン君が選んでくれた服だよ〜」

「おーやっぱり似合ってんな!」

「――……う、うん」

 

 うんうん!選んだかいがあったよ!モカってバイト来る時とかいつもパーカーだけど家にいる時もパーカーなんだな

 

「シン君ー今の状況…わかる?」

「――……な、なにがさ」

「男女がひとつの部屋にいるんだよー?」

「――……っ!」

 

 知ってる、気づいていたさ!こんな状況誰もが喜ぶシチュエーションですよ!で、でも俺は手を出すようなことはしないぞ!?く、屈したりはしない!

 

「ほらほらーシン君がしたいことなんでもするよー」

 

 ベッドに寝っ転がり俺を誘惑してくるモカ…

 

「――……なんでも?」

「う、うん、なんでもだよ?」

「だったら…」

 

 俺は欲に負けてしまいずっとモカにしたかったことを頼んだ。そしたらモカのやつは

 

「…うん、シン君にされるならモカちゃん嬉しいよ」

「――……おう」

 

 その後は準備に取り掛かった。だってするの初めてだし?やり方なんてわからないしな、まあなるようなるだろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ・・・んぅ・・・あっ!」

「・・・んっ!」

「はっぁ・・・んぅ・・・あぁっ!」

「モカ・・・気持ちいい・・・か?」

「う、うんっ!・・・き、きもちいれふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って!紛らわしい感じにするなよ!!」

「えー?なにがー?」

 

 なにがじゃねーよ!?完全に違うことしてる感じだったじゃねーか!?

 

「なんでマッサージで喘ぐんだよ!こ、こっちが恥ずかしいだろ!?」

「えーだって気持ちいいっ!・・・んだもん!・・・あっん!」

「だからそれをやめろって!!!」

 

 皆さん安心してください。ただのマッサージをしてるだけですので!なんでマッサージかと言うと…

 

 前にバイトでモカが『最近肩こりがー』って言ってたのを思い出してな、なんかマッサージしてやりてーなって思ってさ?だからなんでもいいって言ったから頼んだんだよ

 

 でー?頼んだらこのザマだよ!?もしモカのお母さんとかに聞かれていたらどーすんだよ!?

 

 そんなことを思ってる時に

 

「モカちゃーん、シンさーん、ご飯できました…よ?」

「――……あっ」

 

 最悪だよ、いや自分からマッサージさせてくれって頼んだから仕方がないことですよね!

 

「きゃーシン君に犯されちゃうよー」

「お、おい!?変なこと言うなよ!」

「えっとえっとーシンさん?まだゴムはつけてくださいね?」

「だから違いますって!!!」

 

 その後なんとか誤解が解けてリビングにて夜ご飯を食べようとしたが...

 

「…………」

 

 だよね!モカの家ってことはそりゃーモカのお父さんもいますよね!?俺がいるからめっちゃ不機嫌じゃん!

 

「あらあら、あなたシンさんとご飯が食べれるからって張り切りすぎよ?」

「モカたんと食べたいんだよ!」

「でもでもーシンさんの料理盛り付けるの手伝ってくれたじゃない」

「それは…お前の手伝いがしたかったんだよ…」

「まあまあー優しいですね」

 

 そう言って俺達の目の前でイチャイチャし始めた。あのーやめてくださいよ、なんか寂しくなるじゃないですか!?

 

「あたし達もイチャイチャするー?」

「――……対抗しようとするな」

「むーいたいー」

 

 モカのデコにチョップをかましてやると

 

「き、貴様ー!モカたんになにするんだよ!」

「す、すみませんモカのお父さん!調子乗りました!」

「だから君にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!!」

 

 だー!なんでそーなんだよ!ちゃんとモカのってつけただろ!?

 

「まあまあーあなた?ご飯が冷めますので食べましょう?」

「――……そうだな」

 

 ご飯を食べるがそれはそれはとても美味しい!メニューはハンバーグとナポリタン、それに野菜スープだな、この野菜スープはモカが前に作ったやつと味が似てるから親から教えて貰ったんだろうな

 

「さてさて、シンさん今日はどーしますか?」

「――……え?」

「でもでもー時間も時間ですし泊まって行きます?」

「おーお母さんいいねーモカちゃんと一緒に寝ようよ~」

「いや、でもー」

 

 モカのお父さんが絶対に許さないだろ…そう思ってモカのお父さんの方を見るが

 

「いいんじゃないか?泊まって行っても」

「――……え!?じゃーん!?」

 

 モカのお父さんが許可したから泊まるか?と思った時だ。

 

「あ、君に渡したい物があるんだ」

 

 はい、と言って手紙を渡してきた。なんで手紙なんだ?なにかモカ達に聞かれたらまずいことでも書かれているのか!?恐る恐る中身を覗いてみると…

 

「はよ帰れ、シバくぞ」

 

 と書かれていた。短い文だが言いたいことがとても短く短縮られた文だ。わかりやすい、この人は俺がこの家にいること自体が嫌なんだろう、キットな!

 

「なんだい?」ニコニコ

 

 顔は笑ってるが目が笑っていなかった。これはあれだな、泊まるのはやめとこう

 

「あ、あー!まだ洗濯物取り込んでなかったな!」

「――……なにー?その棒読みー」

「それになんでお父さん手紙なんか渡したのー?」

「それにさ?ほら!俺まだ死にたくねーし」

「えーでも、モカちゃんはシン君と…」

「まあ本人が言ってるんだ、帰らせよう」

「ほら、早く支度したまえ」

「え?ちょ、まって!早いですよ!?」

 

 無理やり立たされ玄関まで連れていかれドアを開けて放り出され、最後は荷物も放り出された。

 

「じゃ、二度と来るなよ?」ニコニコ

 

 え、えー!?なんでそんなに嫌われてんだろう…あ、いや嫌われる原因あったわ

 

「(あーもう!不幸だぁぁああ!!)」

 

 人の家の前では叫べないため心の中でそう言いモカの家を後にした。

 

◆◆◆◆

 

「ふうーやっと帰ったなあのガキ!モカたんをあんな奴に渡すもんか!」

「お父さーん、この手紙なに?」

 

 モカはそう言い手紙を振りながら父親に聞いていた。その手紙はシンがわざと忘れたわけじゃない。モカのお父さんに急かされた際に忘れたんだ。

 

「ち、違うんだよ、モカたん?モカたんのためにと思って…」

 

「――……お父さん?」ニコニコ

「――……な、なに?」

「今後モカちゃんのことモカたんと呼ぶの禁止ね」

「ご、ごめんなさいー!!!」

「あと半径1メートル以内に入るのも禁止ね」

「そ、それだけは勘弁を!!!」

 

 その場で土下座をするモカのお父さんだった。

 

「(せっかくシン君とお泊まり会してそーゆうことできたかもしれないのに…)」

「(今度お父さんがいない時に誘おうかな?)」

 

 恋する乙女は止められないのです。ブレーキがなくなったモカは今後シンにたいしていつも通りに接しながら攻めていくんでしょうね




この話のせいでタグにR15をつけるはめになりましたね

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弦巻シンは甘えたい…

お久しぶりです、リアルが忙しくて更新が遅れました。それではどうぞ


 文化祭当日が近くになるにつれて気温も上がり、今日で7月に入ったためこれからもっと本格的に暑くなってくるところだ。

 

 文化祭当日まで後2週間を切った。今日も文化祭実行委員の皆さんは仕事に明け暮れております。俺はと言うと

 

「実行委員長、ポスターの確認をお願いします」

「――……うん、いいですね、今回のテーマを大きく書いてアピールしてるし」

「ちゃんと合同文化祭であることを強く書いてるからわかりやすいです」

 

 それぞれの仕事の最終チェックに明け暮れていた。

 

「わかりました。ではこれで通しますね」

「はい!お願いします!」

 

 ポスターはこれでなんとかなった…次はチケットのデザインだな…

 

「あ、これはチケットのデザイン案ですが…」

「――……ではこれでいったん作りましょう、後でまた確認します」

「了解です!」

 

 頭の中で思ってることが次から仕事として目の前に現れる、それはそれで助かるが結構きついんだよな…

 

「ふふ、意外とさまになってますね」

「紗夜せんぱーい、冗談はやめてくださいよ」

「いえ、弦巻君の働きは十分に凄いですよ?」

「元実行委員長のせいで遅れていた分をすぐに取り戻したじゃないですか」

「――……そうですね」

 

 あの人が捌けずにつぐみ1人に任せたせいであんまり進んでなかったからな、その遅れを取り戻せられたのはいいが…俺一人の力じゃねーしな、実際みんながやる気を出したから間に合ってるだけだよ

 

「こんにちはー!」

「彩先輩!?な、何用ですか?」

 

 ここで登場俺の憧れの人彩先輩!こんな疲れきってる時に会えるなんて嬉しいぜ!

 

「あー!シン君が実行委員長になったって話本当だったんだね!」

「まあー成り行きで」アハハ

「何言ってるのーカッコつけてたくせにー」

「ひ、日菜先輩それは掘り返さないでくださいよ!」

 

 あの日は別に気にしなかったが後日めちゃくちゃ恥ずかしい思いしたからな!?あの後つぐみが退院して戻ってきたけど顔見るの恥ずかしかったもん!

 

「そ、その私もなんか恥ずかしいのでやめてください…」

「つ、つぐみ!?ち、違うんだけど、えっと、んー」

『…………』

「2人とも黙ってどうしたの?」

『なんでもないです!』

 

 き、気にするなーシン、もう終わったことなんだ、気にしたらダメなんだ。実際もうつぐみには負担かけてないしな…でも俺がきついかも、けどやりきらないといけないんだ。

 

 初の羽丘と花咲の合同文化祭、これは絶対に成功させないといけないんだ。

 

「(こんな所で誰かに甘えちゃダメなんだよ…)」

 

俺が、実行委員長がしっかりしないといけないし手本にならなきゃいけない、だから…俺に休んでる時間はないんだ。

 

「――……で、彩先輩何の用ですか?」

「あ、そうなの!私ライブしたいの!」

「――……えっと、パスパレを呼ぶ予算なんてうちにありませんよ?」

 

 彩先輩がライブって、パスパレが来るってことだろ?んなの無理だよ、呼べねーよ!?

 

「ちがーうの!オリジナルバンド作るんだよ!」

「おーオリジナルですか」

「そうそう!私とー彩ちゃんとー花音ちゃんとーリサちーとつぐみちゃんで!」

「へー豪勢なメンツですね」

 

 特に彩先輩と日菜先輩とか、絶対ギャラ払わないで出れないような人が出るんだぜ?凄いだろ…って!

 

「つ、つぐみもでるのか!」

「え?う、うん!日菜先輩がやろうって...ごめんね?私ってこーゆう人だからさ」アハハ

「――……つぐみがしたいなら止めないさ」

 

 頑張りすぎて倒れて欲しくないが…つぐみが決めたんだ。俺に止める権利なんてねーしな

 

「日菜さん!」

「これ以上つぐみに負担かけないでくださいよ!」

 

 おー蘭のやつが現れたーここ花咲だよ?わざわざ来たのかな?

 

「まあー蘭落ち着きなってー」

「あ!モカちゃんちょうどよかった!」

「ほえ?」

「シン君!アタシを抜いてモカちゃん入れるね!」

「んーなんかよくわからないけど入りますー」

「あ、はい」

 

 蘭の出てきた意味なんだよ…

 

「モカが入るならつぐみの心配もいらないね」

 

 あ、そーゆうことか、まったくお前は友達思いが強いやつだよ、本当に仲直りできてよかったな?蘭

 

「わかりました。このメンバーで登録しときますね、有志は全部最終日に入れますのでよろしくー」

「よーし!みんな作戦会議だよ!羽丘の生徒会室に行くよ!」

「日菜!あなたはここに残って弦巻君の仕事を手伝いなさい」

「いや、日菜先輩大丈夫ですよ、あらかた仕事は片付いているので」

 

 まあ嘘だけどね…日菜先輩に話しかけられて邪魔されたりしたらもっと間に合わないかもしれないからな!

 

「ほら!シン君もそう言ってることだし大丈夫だよ!」

「――……ならいいけど、本当に大丈夫ですか?」

「――……はい!」

 

 力強く答えた後、日菜先輩御一行は羽丘へと向かったのであった。

 

「――……本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫です、心配しすぎですって」

 

 紗夜先輩が聞いてくる、前につぐみが倒れたため過労に敏感になってるようだ。

 

「羽沢さんのように倒れたりはしませんよね?」

「大丈夫です、倒れそうになったらビンタしても起き続けます!」

「――……それだと体をさらに壊すだけです」

 

 ううっ!紗夜先輩が言ってることが正論だ。何も言い返せません

 

「――……あ、羽丘の進行状況を確認しないといけませんね」

「だったら日菜先輩に連絡すれば」

「実際に目で見ないとわかりません、弦巻君見てきてくれませんか?」

 

 いや見てきてくれって…

 

「実行委員長の俺がですか?」

「察しが悪いですね、ここまで鈍感なんですか?」

 

 ん?何言ってるか意味がわからん、察しが悪い?いや、すぐに実行委員長が行かないだろって気づいてるじゃないですか!?

 

「休んできてくださいって言ってるの!」

「――……え?」

「ほら早く!」

「え!ちょっと、まだ仕事が!さ、紗夜先輩!?」

 無理やり本部から押し出され挙句の果てに鍵まで閉められた。

 

「後は私がしますので安心を」

「――……はーい」

 

 紗夜先輩に無理やり部屋から追い出されしぶしぶ羽丘に向かっていた。まあこれも仕事だし、確認して明日伝えればいいって話だから終わったら帰るとするか

 

 羽丘につくが既に看板は完成していた。正門にもう飾られてる、少し気が早いと思うが…みんなそれほど楽しみにしてるってことだろうな

 

 中の様子も見たが進行状況はうちよりよかった。やっぱり女子高ってだけあって内装は華やかで可愛らしいな、まあ装飾してるのは授業で使わない教室だけのようだけど

 

 確認をしてる時に何人もの女子生徒から実行委員長だ!って話しかけれらた。みんなが応援してくれてな?まあ嬉しかったさ

 

「(うちもそろそろ準備始めた方がいいな)」

 

 一人で考えて歩いている時だ。

 

ビシャ!

 

 何者かにバケツいっぱいの水をかけられた。

 

「あ!ご、ごめんなさい!ってなんだーシン君じゃん!」

「…………」

「見知らぬ生徒に水かけちゃったと思ったよ!」

 

 俺に水をかけてきたのは上原ひまりことこのバカが水をかけてきやがった。

 

「ひまり…なんでホースなんて使ってたんだ?」

「え?いやー文化祭に向けて掃除だよ?ここはテニス部が担当なんだ!」

 

 ふーん、なるほどな、ホースでバケツに水を貯めそれを周りに振り回してたのか

 

「ひまり、俺も掃除手伝うからホース貸して」

「え!?手伝ってくれるの!?シン君ありがとう!」

 

 ふっ、ちょろいやつだな…俺にホースを与えたこと後悔させてやる!

 多分過去一悪役の顔になった瞬間だった。

 

「くらえひまり!!」

「あー!シン君水かけないでよ!」

「黙れ!お前がかけたんだろ!?こっちはびしょ濡れなんだよ!」

 

 制服が濡れて着替えもない状況でこれから家に帰らないといけないんだぞ!?ひまりも道連れだ!

 

「ちょっ……シン君……出しすぎ!」

「ほらほらー避けないと濡れるぞ!フハハ!」

「シン君……やめてよ……!」

 

 やめない、目の前でひまりがずっと水に打たれてるがやめない

 

「シン君……出し…すぎ!い、息がで……きないから!」

「そのさっきから紛らわしい言い方するなぁ!」

 

 なんか俺が違うものかけてるみたいじゃねーか!まあ何とは言わないけどさ!

 

「もうふくびちゃびちゃ!ブラまで透けてるし!」

「…………っ!」

 

 わ、忘れてた!今のひまりは制服姿だかセーターを着てない!それに夏服だ!服の生地が薄いから透けやすいんだった!

 

「――……シン君?ここで私がなんて言うかわかる?」ニヤニヤ

「ひ、ひまり?そ、それはやめようぜ!?謝るからさ!」

「きゃっー!!私!!汚されちゃった!!」

「おい!」

「私の初体験奪われちゃったの!しかも濡らしプレイでー!」

「や、やめろお前!!」

 

 急いでひまりの口を抑えようと思い飛びつくが…それがいけなかったのか

 

「きゃっ!」

 

 押し倒す形になってしまい

 

「ひまり!大丈夫か!」

 

 駆けつけた巴にその姿を見られ

 

「――……シン、お前」

「ち、違いますから!ただの事故だから!」

「――……巴...私汚されちゃった」

「だからお前も紛らわしい言い方するなよ!」

「シン、あたしの友達に手を出したんだ。覚悟はできてるよな?」

「あーもう!不幸だぁぁああ!!」

 

 その後無事に誤解は解けたが解けるまでに数え切れないほど土下座をしたことは誰にも言えない…ちなみにだがこの件はモカと蘭の耳にも入り数日間弄られた。

 

「――……不幸だ」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 文化祭当日まで残り数日となった。やれることはやってきたつもりだ。機材の調達、ポスター制作、チケット、売店の審査もちゃんと全部通った。その他の件も苦戦はしたが生徒の応募に応えられるよう試行錯誤を重ねてなんとか間に合うことができた。できたが...

 

「シン君……頼みがあるんだけどいいかな?」

「んーどーした香澄?」

 

 この文化祭に向けての作業を行う中で香澄とは仲良くなり今まで苗字呼びだったが名前で呼べるほど仲良くなれていた。いやー文化祭の力ってスゲーな

 

「Poppin’Partyのライブの時間…ずらすことできる?」

「多分できるけどーなんでだ?」

「その、おたえが……」

 

 なるほどねー他のバンドのところで修業するはずがそのままライブに参加する形になったのか、で?そのライブが文化祭当日と被ってるため1番最後にして欲しいと…

 

「シン君ごめん…私の勝手で…」

「気にすんな!会長や紗夜先輩には俺が事情説明して変えてもらうからさ」

 

 別に順番を変えることぐらいはたやすい。後はそうだな、出演者達に事情を説明しなければな

 

「シン…顔色悪いけどちゃんと休んでる?」

「――……休んでるよ?」

「またつぐみみたいに倒れたりしないよね?」

「――……しないって、心配するな沙綾」

「――……うん」

「じゃ、俺本部に戻るから、クラスの仕事任せっぱなしでごめんな香澄」

「今度なにか奢ってね!」

「――……おう!じゃーな」

 

 教室のドアを閉めたあとトイレに急いで駆け込む、吐き気はあるがここ何日何も食べ物が喉を通らなかったためか物が出ることはない。

 

「……まさかな、ここまで重いなんて知らなかった」

 

 実行委員長の責任、そんなの俺には重すぎる、重すぎたんだよ、女の子一人を助けるためには俺は体をボロボロにしないといけないのか…

 

「(頭痛い……熱っぽい)」

 

 ここ数日間はずっと夜遅くまで残り仕事をしていた。ずっとみんなからの最終チェックに明け暮れ…家ではなんか落ち着かないし休む気すら起きずにあまり眠れなかった。

 

 まあこの点に関しては興奮して眠れなかった?俺が悪いんだよ

 

 だが、そんな弱みを出してはいけない。俺は実行委員長なんだ。みんなの手本になるんだよ、休んでる暇なんてない。

 

 ここは花咲だが羽丘の生徒もいる、当日が近づいてるためそれぞれの仕事の助けとして来てくれる生徒がいるんだよ

 

 あ、授業は今やってないよ?準備期間で全部カットされてるからクラスの装飾をしたりしてるんだよ

 

 多分本部には誰もいない。

 

「(いないなら…休むか?)」

 

 休みたいと思ったさ、けどやっぱり体が休もうとしねーんだよ、今ここで弱みを出したら今まで頑張ってきたのが無駄になるんじゃないかって

 

 誰もいないと思う本部のドアを開けるが

 

「あ、やっと来た」

 

 知ってる人がいた。

 

「この時間は誰も来ないと思ってたんだけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――……蘭、なんか用か?」

「別にークラスにいるのも楽しくないし、ひまり達の教室にいるのも居心地悪いし」

「だからって花咲の本部に来る必要ないだろ?」

「――……そうだけど、なんかシンに会いたかった」

「――……っ!そ、そーですか」

 

 そんなこと冗談でも言うなよな、男子はそんなこと言われると「え?こいつ俺に気があるの?」って勘違いするんですよ

 

「隣…座れば?」

「――……座るって、なんで床に座ってんだよ」

 

 椅子があるのになんで床なんだ?あれか?絨毯が気持ちいいからか?

 

「いいから来なって」

「――……わかった」

 

 隣に座ると微かに甘い香りがする、女子の匂いってやつか?モカとは違う匂い、それのせいで蘭の匂いだなー思ってしまう

 

 って何言ってんだろうな、俺って匂いフェチなのか?なんかソレはやだな

 

「顔色悪いけど…大丈夫?」

「あーなんか言われるけど大丈夫だよ」アハハ

「――……嘘つき」

 

「…………」

 

「シンは嘘つく時笑って誤魔化すもんね」

 

 沙綾の時は意識して笑わなかったのにな、蘭の時は何故か笑ってしまったよ

 

「――……無茶しすぎ、休んでよ」

「…………っ!」

 

 蘭はそう言い俺の頭を自分の太ももの上に乗せた。アレだ、俗に言う膝枕ってやつだな

 

「――……なにしてんだよ」

「頑張ったね」

「…………っ!」

「べ、別に実行委員長だし当然だろ」

 

 そうだ、頑張ったねってそれは当たり前だ。だって俺は実行委員長、俺が実行委員長なんだからな…

 

「――……偉いね」

「……確かに偉そうだったかもな」

 

 こんな1年が先輩達に指示を出してさ?偉そうって思われたかもしれない。

 

「――……凄いね」

「……凄くない、誰にでもできる……さ」

 

 紗夜先輩や日菜先輩が実行委員長をしてたら俺よりももっと仕事は進んでいると思う

 

「大丈夫だよ、シンの頑張りは私が知ってるから」

「…………」

 

「――……甘えてもいいんだよ?」

 

「…………っ!」

 

 蘭は一言一言ずつに俺の頭を撫でてくれた。最後の一言なんて耳元で囁くように言ってた。

 

 その一言を聞いた瞬間に今まで貯めてた、我慢してた弱音が出てしまった……

 

「なんだよそれ……ずっと決めたのに……誰にも甘えないって決めてたのに……そんなこと言われると、おれ……」

 

「――……俺さ」

「うん」

「――……俺頑張ったんだよ」

「うん」

「頑張ったけど…俺一人でつぐみに優しい仕事環境を作れなかった……!」

「…………」

 

 ずっと心の底から思ってたことを蘭に言ってしまった。そうだよ、俺はつぐみに作るって言ってたのに

 

「結局みんなに頼ったんだよ…!」

「そんな簡単に一人で全部変えられないよ」

「でも約束したんだよ!俺が作るって…なのに!俺は!……なのに!」

「うん」

 

 結局頼ったんだよ、紗夜先輩からは十分凄いって言われた。でも俺じゃないんだよ、俺はまとめただけであって動いたのはみんなだ。確かにつぐみに負担はかからなくなった。だからライブにも参加できるようになった。でも約束が違うだろ…作るって言ったのに

 

「つぐみはシンのことわかってくれてる」

「それにさ…!実行委員長としてちゃんとやれてたかもわからない……!」

「大丈夫、シンはちゃんと仕事できてたよ?」

 

 蘭はこう言ってくれる、けど本当にそうなのか?俺はちゃんと実行委員長として責務を果たせたのか?

 

「シン自身が頑張れてないって思うならさ?」

「――……次は頑張ろうね?」

「…………っ!」

「もう文化祭終わっちゃうけどさ?他のこと頑張ろうよ?ね?」

「…………蘭……!」

 

 次頑張ればいい、って蘭は言ってくれた。今まで泣きながら言っていたが最後のセリフを聞いた途端泣き止むことができなくて、そうだな号泣って言うのかな?泣いてた。

 

初めてだった。女子に泣かされたのは、誰かに聞こえてるかもしれない。けど、もう泣き止むことはできなかった。泣いて、泣いて、泣き続けてた。蘭の制服のスカートに俺の涙が垂れ落ちてシミができてるのに蘭は何も言わない。ただずっと黙って俺の頭を撫でてくれてる

 

 頭を撫でられるのも久しぶりだった。小さい頃眠れない時によくお母様が俺とこころの頭を撫でて寝付かせてくれてたんだ。

 

 その事を思い出すと、今まで忘れていた眠気が一気に俺を襲ってきた。

 

「――……蘭」

「ん?なに?」

「――……手を握ってもいいか?」

「――……うん」

 

 甘えてもいいって言ったからさ?とことん甘えてもいいよな?だから...手を握ってもいいかって頼んだんだよ、モカとは何回も手を繋いだことあるけど蘭の手は新鮮だった。

 

「(俺ってまだまだガキだな……)」

 

 蘭に手を握られるとなんだろうな、心強く感じてしまう、今ならやれないこともやれるかも…って感じになる

 

「眠たいの?なら寝てもいいよ、この時間は誰も来ないんでしょ?」

「…………うん」

 

「――……おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――……あたしの……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蘭が小声でなにか言っていたように聞こえたが…そんなことを気にするより俺は深い眠りに入っていった。




もともとこの話は別々で投稿するはずだったんです。あ、最後にシンが叫んだところです。
でも忙しくて投稿できずにまとめました。

まー察しがいいひとはわかると思います。これでよかったんだよね?恋愛って難しいですね

少しでも面白いと思ったら感想と評価お待ちしております!それでは次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと美竹蘭の心情

つまりそういうことさ


 恋とはなにか、それをあたしはまだ知らない。だって中学の時からずっと女子校で生活してるから男子と話す機会なんてなかった。

 

「あー私の前に素敵な王子様でも現れないかなー」

 

 ってひまりはよく言う、王子様ってそんなメルヘンチックな出会いなんてあるわけないじゃんって昔言った覚えがある…

 

「(あたしにもいつか好きな人ができるのかな?)」

 

 誰しもが一度は恋をする、けどあたしは初恋ってのはしたことがない。そんなあたしにもいつか好きな人はできるのかな?

 

 

 

 

「(――……あ、寝てた)」

 

 今は文化祭準備期間中で授業はない。クラスのみんなは寝てたあたしを置いていって準備の方に向かった様子だった。

 

 別にそのことについては怒ってないよ、だって寝てた自分が悪いし、普段からクラスのみんなとはあんまり絡んでないしね、仕方ないよ

 

「(みんなは何してるかな?)」

 

 みんながいる隣のクラスの様子を見る、隣はつぐみの家が喫茶店だからその流れで喫茶店を開くことにしたらしい。

 

 様子を見るけどみんな楽しそうにやってる、それにモカ達も楽しそうにしてていいなって思ったよ、つぐみも今日はクラスの方に顔を出してるみたいだね、元気になって良かった…

 

 つぐみが倒れたあとあたし達はその日にお見舞いに行った。行ってる時にたぶん……あたしだけが気づいたと思う。

 

 その時あたし達は傘をさして走ってつぐみが入院している病院に向かっていた。すれ違う瞬間に大雨の中傘もささずに歩いてる…シンの姿があった。

 

 髪と服はびしょ濡れで、最近戻した綺麗な金髪は雨に濡れて前髪が目を隠すほどになっていた。そのせいかみんなは気づかなかった。多分それよりつぐみのことが心配でみんなの目に入らなかったんだ思う。

 

 一瞬見えた顔はどこか元気がなくて…そしてなんか悲しそうで...いつものシンじゃない感じだった。声をかけようと思ったよ、けど…かけてどうするの?って思った自分がいた。

 

 その後つぐみのお見舞いに行き、シンがつぐみの異変にすぐ気づき救急車を呼ぶようにと頼んだって話を聞いた。…それならなんでさっき、あの時あんな悲しそうな顔してたんだろう…シンは胸を張れる立派なことをしたのに、なんでなんだろう?って思った。聞こうかなって思った…けどあんな顔をしてたんだよ?聞かれたくないかもしれないからそっとしとこうかな……って思ったの

 

 回想は終わり、あたしも教室に入ろうと思ったけど…入るだけ気まずくなるだけだからやめた。

 

「(なんかシンに会いたいな…)」

 

 あとから聞いた話だけどシンが文化祭実行委員長になったって話がうちでも広まっていた。だって1年が実行委員長だよ?前代未聞って話だし…きっと苦戦してるに決まってるそれに花咲と羽丘の合同文化祭なんて初だから仕事も大変だと思う

 

 時々こっちで姿を見るけどなんか話しかけちゃいけない感じがするんだよね…常に何か考えてるし、それに…シンの考えてる時の顔ってカッコイイんだよ

 

「実行委員長ってカッコよくない!?」

「私狙ってみようかな!」

 

 って近くにいた生徒が言っていたと思う。確かに、今のシンがそのままの姿だったらモテモテだろうね…

 

 そんなことを思い出しながらシンがいる花咲学園に向かっていた。着いたのはいいけどシンがどこにいるとかわからない。

 

「(実行委員長だから本部にいるのかな?)」

 

 本部に着き、ドアを開けるが誰もいない。そのうち来るだろうと思って待っていた。自分でもなんでシンに会いたいかなんてわからない。わからないけど会いたいなって思ったんだよ、あって話したい。シンと関わりたいって…あたしどうしたんだろうね

 

 数分後廊下からスリッパが地面と擦れる音が聞こえてきた。それと同じぐらいに荒い息が聞こえる、その音は近づきあたしが今いる本部の前で止まりドアが開いた。

 

 そこに現れたのはあたしが花咲にまで来て会いたかった人、弦巻シンがそこにはいた。いたけど…明らかに様子がおかしい。さっきまで荒かった息を隠すように呼吸を行う。それでも顔色は悪い。

 

「顔色悪いけど…大丈夫?」

 

 あたしがそう聞くけどシンは笑いながら答えた。このシンがアハハって笑いながら答える時は嘘をつく、もしくは誤魔化そうとしてる時だ。

 

「嘘つき」

 

 って聞くと答えてくれない。今にも倒れそうで…つぐみと同じになるんじゃないかなって思った。シンが倒れるなんて嫌だよ……なら無理矢理でも休ませるしかない。

 

 そう思いシンの頭をあたしの太ももの上に置いた。膝枕って言うのかな?初めてしたけどこれであってるよね?

 

「頑張ったね」

 

 ずっと言いたかった。羽丘で見るシンはカッコよくて、仕事をこなしている姿はさまになていた。なっていたけど...無茶してるなって思ってた。だから「頑張ったね」そう言ってシンの頭を撫でた。一言言うと口は止まらず

 

「――……偉いね」

「――……凄いね」

 

 ってずっと言いたかったことが止まらない。だって…本当に凄いよ、1年でよくここまでまとめたものだよ

 

「――……甘えてもいいんだよ?」

 

 そう言うとシンは泣き始めた。自分がつぐみを苦しませない優しい仕事環境を作るって言ったのにみんなに頼ってばかりだったってシンは言ってた。

 

 けどそれは違うと思う、シンが実行委員長としてみんなをまとめることができたからこの結果になってると私は思う。羽丘に来て仕事をこなすシンはさまになっていた。テキパキと指揮を出しすぐにステージ制作も完璧にこなしてシンには人の上に立つ素質を持ってるんじゃないかって思えた。

 

 それに...自分で甘えてもいいとか言ったけど本当は違うの、あたしがただシンとこうしたかっただけなの...やっぱりそうなのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(あたしはシンのこと好き)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ずっと目を逸らしていた。これは恋じゃないって、ただ友達に会いたいだけなんだって思ってた。でもこの膝枕だってあたしがしたいと思ったからしてる、それに異性の友達に会いたいなんて思うことはやっぱり「好き」って証拠なのかな?それに今この時間がずっと続けばいいのにって思ってしまう…

 

 元々あたし達は似たもの同士でシンには少し興味を持っていた。持っていたとしても今みたいになる感情なんて持っていなかった。はっきり言ってあたしがシンに惚れるような行動はしてない…とは言えないかも

 

 前にあたしのためにあたしの父さんに怒鳴ったことがあった。娘のやりたいことの一つや二つやらせてやれよって…その時は自分の感情に気づいていなかった。でも今ならわかるよ

 

 あたしはその時からあんたに惚れてたんだって…だから今なら、いや、今から素直になれる

 

 あんたの顔が好き、あんたの笑う顔が好き、あんたの考える顔が好き…そしてあたしに甘えるあんたの顔が好き。

 

あんたの……シンのすべてが好きです。

 

 自分でもここまでシンが好きなんて気づいてなかった。今日のこの時間に花咲に来て、シンに会ってよかったと思ってる、だってこんなにも好きだって気づけたんだもん

 

 ちょっと前まで恋人にはなりたくないかもなんて言ってたっけ?でも今は違う、相棒なんかよりシンと恋人になれるものならなりたいと思う。

 

 シンが手を握ってもいいか?って聞いてきた。あたしは迷わずシンの手を握る、だって好きなんだもん、気づいてしまったし…あたしはもうあんたしか目に入らないよ

 

 恋は盲目って言葉を聞いたことがある、もうあんたの好きなところ、いいところばかりを見つけてしまう、それでも構わないよ、だってあたしはシンのことが好きなんだから…

 

 シンが眠そうにしてたから寝てもいいよって言うとすぐに寝た。たぶんずっと委員会の仕事に明け暮れていて十分な睡眠が取れていなかったんだと思う。

 

シンの寝顔はいつもの顔や、考えてる時のカッコイイ顔ではなくて初めて見る顔だった。

 

「(ふふ、可愛い)」

 

 シンの寝顔もあたしは好きだよ

 

 もう完全に寝たと思う、可愛い寝息をたててあたしの太ももに頭をのせすやすやと寝ている

 

「――……おやすみ…あたしの好きな人」

 

 まだシン本人には言えないよ…だって恥ずかしいし、もし振られたりしたら今の関係が壊れちゃう、だからまだ告白はしないよ…

 

 失敗しない為にもあたしはこれからはこれまで以上にシンと関わっていく、だって一緒にいたいしね…でもあんまり近すぎると引かれるかな?でも決めたんだよ…

 

「(あたしはシンの隣にいたい)」

 

寝ているシンの頭をなでながら心の中でそう言った。

 

「弦巻シン君……あたしはあなたに…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――……心を揺さぶられています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




蘭本格参戦です。あのーこの話なんですがー

恋愛ってタグはつけてますが…本格的に恋愛が始まるのはこれからなんですよ!つまり今から読み始める方は二十数話近く日常ストーリーを見ないといけないんですよ!

今の自分の考えですがこの作品はいいところで、つまり文化祭編で一区切りつけて続編として続きを書くのはどうかなと思っています。恋愛ストーリが読みたい方にも読めるようにするのもありかなと思いこの考えにしました。あーでもそれはそれでややこしくなるかもーしれないー

このままでいいか、それともタイトルを変えて続編を書くか…自分勝手な意見ですみません!是非意見を感想で聞きたいと思います。

まあ続編だからと言ってスタンスは変えませんがね(笑)


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弦巻シンと文化祭当日そして...

やっぱりこのまま書いていこうと思います!
とうとうこの日が来てしまった…それではどうぞ!

急いで書いたので誤字脱字があるかもしれません、お許しを


「次は文化祭実行委員長による文化祭開催宣言です」

 

 文化祭当日、とうとうこの日が来た。この日に向けて毎日夜遅くまで学校に残り準備を進めてきた。

 

「――……実行委員長の弦巻シンです」

 

 開催宣言ねー何言えばいいんだろう、でもとりあえず

 

「えーまずはこんな1年の俺に任せてくれたことありがとうございます」

『…………』

「ってこんな堅苦しいこと言わないほうがいいですよね?」

 

 そうだ、せっかくの文化祭だ。堅苦しいのはなしにしよう

 

 思いっ切り空気中の空気を吸い叫んだ。

 

「お前ら!最高の思い出作りたいか!!」

『おー!!』

「だったら全力で楽しむぞコノヤロウ!!」

『おー!!』

「花咲、羽丘合同文化祭!合わせて羽咲文化祭開催だ!!!」

 

 文化祭開催宣言も無事に終わった。いやーアドリブだったけど上手くいってよかったよ!だって考えてる時間なんてなかったしな!

 

「開催宣言お疲れ様でした。アドリブにしては上手くまとまってましたよ?」

「いや紗夜先輩、俺はただ叫んだだけですよ?」

「まあーそれがシンらしいんじゃね?」

「――……シン?」

「――……なっ!?」

 

 今市ヶ谷さんがシンって呼んだよね!?いつもフルネームだったけど俺の名前呼んだよね!?

 

「か、勘違いすんなよな!フルネームで呼ぶのがめんどくさくなっただけだし!」

「で、ですよね!わかってました!」

 

 やっと名前で呼んでくれたと思ったんだけどなーやっぱり違いましたね!

 

「それより仕事ですよ、白金さん行きましょう」

「は、はい…!」

 

 会長ってなんで生徒会長やろうって思ったんだろう…だってなんかいつも自信なさげって言うか…まあ俺が言えたことじゃないけどね

 

 そんなことを考えながら本部に戻る俺だった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 本部に戻ってきてからずっと仕事だ、クレームの対処を行い、問題が起きた場合はすぐに駆けつけ解決させる、そんなに仕事はないだろと思っていたが…なんせ合同文化祭、ひとつの仕事が2倍になるぐらいだからな

 

「ねぇねぇ知ってる?文化祭のあの話!」

「あーあれでしょ?後夜祭のキャンプファイヤーで一緒に踊った人とは永遠の愛で結ばれるって話でしょ!」

「うんうん!ロマンチックだと思わない?」

 

 実行委員の女子達がその話をしていた。

 

「私も踊る人見つけて踊ろっかな!」

「私も!」

 

「残念ながらそんな暇はありませんよ」

「我々実行委員は文化祭の後に反省会を行い次の代の仕事を捗らせる役目があるんですよ?」

 

 そう言えばあったなそんな話が、だったらその文化祭の話なんて知ったところで意味ねーな、てか

 

「それにそんないい話があるわけないじゃないですか」

「そーだそーだ!」

「どうやら弦巻君も私と同じ意見らしいですね」

 

 そんな簡単に将来のパートナーが決まるわけないだろ!?アホか!そんな話なんて誰が信じるかよ!

 

「ほら、そんな話はやめて仕事に戻りますよ」

『はーい』

 

 その話をし終え仕事に戻ろうとした時

 

『シン(くん!)』

 

 蘭と彩先輩が本部に来た。

 なんだ?なんかトラブルがあったのか!?あったならすぐに解決させてやるぞ!!

 

『文化祭一緒に回らない?』

『――……え?』

 

 え?って言いたいのはこっちの方だよ

 

「――……蘭ちゃん?今なんて言ったのかな?」

「――……彩さんこそ、なんて言いましたか?」

「わ、私はシン君に一緒に文化祭回ろって言ったの!」

「奇遇ですね、あたしも同じこと言いましたよ?」

「ううっ!」

 

 なんだ?なんだ、一体何が起きてるんだ!?俺の目の前で蘭と彩先輩が言い合いしてるんだが……てか

 

「あのー俺は実行委員長だから…まわ『シン(くん)は黙ってて!』…はい!」

 

 俺は実行委員長だから文化祭回れねーって言いたいのに話を聞いてくれない!

 

「うー!し、シンくんは私と回るの!」

「へ!?」

 

 そう言って彩先輩は俺の左腕に抱きつく

 あ、あのー!その!いろいろ当たってるんですが!?や、柔らかい何かが!何とは言わないけど!

 

「違います!シンはあたしと回るんです!」

 

 次は蘭がそう言いながら俺の右腕に抱きついてきた。さっきからあんたら何してるんですか!?恥じらいとかないの!?

 

『…………』

「だいたいなんで彩さんがシンとまわりたがるんですか?」

「そ、それは…そう!友達だから!」

「それだとあたしもシンとは友達です」

「え、えーと私に憧れてくれる後輩だから!」

 

 ちょ、ちょっと彩先輩!?みんなの前でそんな恥ずかしいこといわないで下さいよ!?

 

「――……あたしは……あたしは!」

「シンに膝枕をしました!」

『…………っ!?』

 

 反応したのはここにいる全員だった、幸い日菜先輩と会長と市ヶ谷さんつぐみはいなかったからよかったが…

 

 なんでその事言うかな!?待って思い出すとめっちゃ恥ずかしい!蘭に泣かされ膝枕され挙句の果てにはそのまま寝ちゃうとか…は、恥ずかしいなおい!

 

「そ、それは本当なの?シンくん!」

「――……はい」

「他にもまだありますよ?」

「シンの家にも泊まりました。シンと一緒に下校しました。シンはあたしの父さんに気に」

「わー!わ!わ、わ、わかったからちょっと黙ろっか!な!」

 

 蘭が爆弾発言ばかりするもんだから急いで口を抑えた。抑えたのはいいが周りの人達が焦ってる

 

「し、シンくんの!シンくんの裏切り者!」

「えー!?なんで!?」

 

 うわわわん!と泣きながら彩先輩が本部を後にした。まあ泣きながらって言ってもそんな本気で泣いてたわけじゃないよ?…なんだその目は!俺のせいじゃないからね!?

 

「えっと、蘭、スマンが文化祭を回ることはできないよ…」

「――……そっか、そうだよね」

 

 そ、そんな顔するなよ!蘭の今の顔はそうだな、効果音をつけると

 

ガーン

 

 って顔をしてるな、いや、俺は言おうとしたからね!?それを君達が聞かなかったんでしょ?

 

「はー仕方がありませんね、弦巻君?1時間だけですからね?」

「――……え?」

「特別に許可します、ほら早く行かないと時間なくなりますよ?」

 

 そう言って俺と蘭を押して本部から追い出す、なんだろう、前にもこんなことがあったと思う…

「その代わり帰ってきたら働いてもらいますからね!」

「――……はい!」

「行くぞ!蘭!この1時間ですべてを制覇するぞ!」

 

 蘭の腕を掴み廊下を走る

 

「ちょ、それはさすがに無理だから!」

「こらー!廊下は走ってはいけませんよ!……って聞こえませんよね」

「いいなー実行委員長ーあたし達も回りたいなー」

「はー後で休憩をあげますので今は働いてください」

『きゃー!!紗夜先輩カッコイイ!!』

「カッコよくありません!!!」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 本部を後にして蘭と一緒に文化祭を回る

 

「蘭!たこ焼きあるぞ!食べようぜ!」

「うん」

「あ!クレープもあるぞ!」

「う、うん」

「蘭ーさっきからうんしか言ってないぞ?大丈夫か?」

 

 蘭に顔を近づけて聞く

 

「な、なんでもない!シンが楽しめてるならそれでいいから」

「――……そっか!」

 

 んーでもなー俺だけ楽しむのはなんか申し訳ない感あるしな!ど、どうするか

 

 自分でも驚くぐらいはしゃいでるのわかってる、だって文化祭だぞ!?実行委員長になる前から誰かと回りたいと思ってたさ、いざ回るとなるとつい...な?ガキみたいにはしゃいでしまったよ

 

「――……あたしは」

「あたしは隣でシンが笑ってくれるだけで嬉しいよ?」

「――……っ!?」

 

 蘭は笑顔でそう答えた。

 よくそんな恥ずかしいこと言えるよな…!な、なんかそーゆうのやめろよ!隣にいずれーじゃん

 

「ふふ、はしゃぐシン可愛いよ?」

「は、はぁー!?か、可愛くねーし!」

「そうかな?可愛いよ?」

「男子は可愛いよりカッコイイって言われたい人生なんだよ!」

「大丈夫、シンはカッコイイから?」

「――……そ、そーですか!」

 

 蘭のやつなんなんだよ!最近までは何考えてるとかわかってたけど今はまじでわからん!なんでそんなに俺を褒めるようなことばかり言うんだろうか…

 

 こないだの件か?俺が蘭に甘えたせいなのか!?

 

「ほら行くぞ!」

 

 考えるのはやめよう、考えてもしょうがねーしな!今は俺に残された30分間は実行委員長の仕事を忘れてた遊ぶんだよ!

 

「あら!シンじゃない!」

「…………」

 

 こころが後ろから話しかけてきている、けど俺はそれをあえて無視する、だってめんどくせーじゃん!こいつにかまうと俺の残り時間がなくなっちまう

 

「――……シン、振り向いた方がいいと思う」

「えーなんで…さ……!」

 

「久しぶりだな……シン」

「――……っ!?お、お父様…」

「お母さんもいるわよ?」

 

 俺と同じ髪色、似てる口元、間違いなく目の前にいる人は俺のお父様だ…なんで、なんで!なんで!?どうしてお父様が文化祭なんかに来てるんだよ!

 

「こころ……!お前…!」

 

考えられる可能性はこころが、こいつがお父様を招待したんだと思う。だって今回の文化祭は完全招待制だ、招待された人しか中に入ることは出来ない。

 

「そうよ!シンとお父様が仲直りできればいいかなって思ったの!」

「――……お前な」

 

まったくとんだ姉様ですな、可愛い弟が会いたくないって知ってるのに無理やり会わせるなんてな

 

「シン兄久しぶり!!」

「――……久しぶりだな、シンジ」

 

 みんなには言ってなかったけどな?俺とこころには弟がいるんだよ、弦巻シンジ、俺とこころとは結構歳が離れているまあーあれだろ、俺とこころの双子を世話しながらもう1人育てるのは困難だから俺らがまともになって作ったんだろうな…この言い方はよくないな

 

「隣の娘は…なんだ?」

「――……友達です」

「そうか、それよりこの文化祭、お前がまとめあげたらしいな」

「――……はい」

 

 きっと馬鹿にされるんだろう、こんなしょうもない文化祭なんかするなって、きっとそうだろう

 

「上手くまとめてるじゃないか、さすが俺の息子だな」

「…………っ!そ、そーですか」

 

 まさか褒めてくるとは…なんか意外だな、もっと俺の事を嫌ってると思ってたんだけどな

 

「どうだ?うちに戻って本格的に人の上に立つための勉強をする気はないか?」

 

 なるほど、これが目的か…俺のことを褒めてその勢いで実家に、屋敷に戻ってこさせる作戦だな

 

「…………」

「黙ってどうしたんだ?」

 

 「屋敷には戻りません」って言えない。言いたいのに体が、口が動かない。それに体が震えてきた。目の前にお父様がいるだけで恐ろしい、まったくどうしてこんなにも俺は弱いんだよ、なんでその一言すら言えないんだよ!

 

「……まだ反抗を続ける気か?」

「――……いい加減目を覚ませ、お前は弦巻家の人間だ」

 

 ダメだ、足も震えてきた。もう立てることすらできない。膝から崩れ落ちるようにその場に座った。やっぱり無理だ、この人にはかなわないんだよ…蘭が上手くいったから自分も行けるって思ったがそんな考えは甘かったんだ。

 

「シン、うちに帰ってきたらなんでも叶う」

「――……なんでも?」

「ああ、シンの欲しいものが全て手に入る、権力も、地位も、名誉も、それに財力も」

「…………」

 

 今にでも屋敷に戻れば俺は…俺の欲しいものが全て手に入る、お金だって困らないぐらい手に入りきつい日々のバイトももうしなくて良くなる…

 

「――……本当になんでも叶うの?」

「ああ、そうだ、だから一緒に帰ろう」

 

 そう言ってお父様は俺に手を差し伸べてくる。この手を取れば俺は今の生活とおさらばで楽な生活になるだろう…お父様の手を取ろうとした、その時

 

「――……違うでしょ?」

 

 蘭が俺の手を握ってきた。まるでその手を取ってはいけないかのように俺の手を握った。

 やめてくれよ、もう楽になりたいんだよ…自立したい、屋敷に帰りたくない、けど怖いんだよ…!もう無理なんだよ!かないっこないんだよ!

 

「シンが本当に欲しいものは帰ったとしても手に入らないよ?」

「…………っ!」

「よく思い出して!シンが本当に欲しいもの!」

「俺が…本当に……欲しいもの...?」

 

 蘭は両手で俺の手を包み込む形で手を握り変えた。俺が本当に欲しいもの?それは…

 

「あたし達と約束したでしょ?普通を探すって...」

「…………っ!」

「帰ったところで普通は手に入らないよ?」

「…………」

 

 そうだ、そうなんだよ、簡単なことだった。俺は前に蘭とモカと約束したんだ、普通を探すって、そうだ!俺は探すんだよ!自分で手に入れるんだ!誰かに与えられるなんて真っ平御免だ!

 

 蘭の手を強く握り立ち上がる。蘭と手を繋ぐとやる気が出てくるし今なら…今ならどんなことにも挑戦してみようと思える!

 

「――……お父様!」

「屋敷に帰ったら俺の生活は激変すると思う」

「けど!それは…その生活は普通の生活なんかじゃない!」

「俺は普通になりたいんだ!そして…自立したい!」

 

 もう一度蘭の手を強く握りしめて言った。

 

「……だから屋敷には帰りません!」

 

 言えた、やっと言えた!ずっと言いたかった!お父様に言いたいことがやっと言えた。俺一人だと絶対に言えなかっただろうな、蘭が隣にいたから、蘭が手を握ってくれたおかげで言うことができたんだ。

 

「――……そうか、自立したいか」

「だったら家はどうする?学校はどうする?」

「家賃と学費は俺が払ってる、自立するとは俺が払ってる金をこれから全部シンが払うんだぞ?」

「――……お前にできるのか?」

 

 そう言われることは想定内だった。もう答えは決まってる

 

「だったら家を出ていきます…」

「――……学校だって辞めます」

「…………」

「お父様!俺の覚悟はそんな甘いものじゃない!俺は本気です!」

 

 家をなくしても、学校を辞めても俺は屋敷にはもう帰らない。俺は自立したいからな、でも中退ってのは普通じゃないかもな?でもさ?それが俺の普通なのかもしれない

 

「――……お前の覚悟は確かに受け取った」

「――……好きにしろ、これからは自分の力で生きるんだな」

 

「――……はい!ありがとうございます!」

 

 認めてくれた。認めてくれたけど…これはこれで完全にお父様に嫌われただろうな…だって反抗したし?まあ当然の結果だな

 

「あーそう言えばあの部屋は俺が買ったもので家賃なんて払ってなかったなー水道光熱費払ってただけだな」

「――……え?」

 

 急に何を言ってるんだお父様は?

 

「学費も3年間まとめて払ったし…戻すことはできないな」

「まあ、これから頑張るんだぞ、シン」

「学校は辞めるんじゃないぞ」

 

 何が起きてるかわからない。ん?どゆこと?お父様が今の部屋をそのまま使ってもいいって言ってるってことでいいんだよな?

 

「まったく、素直じゃないですね」

「――……うるさい」

「そうですか?なら黙りますね♪」

 

 そう言いお母様が笑顔でこっちに近づいてくる

 

「あの人は不器用ですからねーその点シンさんも理解してるかとね♪」

「いやいや!わかりませんよお母様!」

 

なんもわからん!てか展開が早すぎてついていけない自分がいるよ!つまり俺はこれから自由でお父様に怯える生活はしなくてもいいってことでいいんだよね!?そうだよな!

 

「つまりこれからはシンさんの好きなように生きてもいいってことですよ♪」

「よかったですね!」

「――……お母様……!でも…ごめんなさい、俺のせいで色々迷惑かけたと思います」

 

 お父様の他にもお母様にも色々と迷惑をかけたはずだ。だから謝るのは当然だよな?

 

「いえいえ、自分の愛息子が自立したいだなんてお母さんは嬉しいわよ♪」

「それに…その子の握った手は離しちゃダメよ?自分だけのものにしなさいよ♪」

 

 と、お母様に言われ気づいた。あれからずっと蘭の手を握ったままだった。

 

「うわ!!ごめん蘭!」

 

 急いで蘭の手を離す、あの、まじでごめん!

 

「べ、別にな、なんとも思ってない!」

「お、おう」

 

 それはそれでなんか…うん、シン君悲しくなるよ…トホホ

 

「名前なんていうの?」

「――……美竹蘭です」

「――……蘭ちゃんね」

 

 お母様は急に蘭に近づき耳元で何かを言っていた。

 

「(シンさんは鈍感だからとても苦戦すると思うわ♪)」

「…………っ!?」

「(頑張ってね!)」

 

 ボンっ!と音がなるくらい急に蘭の顔が耳まで真っ赤になる、なんだ!?お母様は蘭に何を言ったんだろう!?気になる!

 

「ら、蘭さん……だ、大丈夫ですか!?」

「な、なんでもないから!こっち来ないで」

「――……は、はい」

 

 ですよね!あんなに手を握ってたから引きますよね!まじでごめん!

 

「あらダメよ?そんな態度だとシンさんにふり……」

「あ、あーあ!ちょっとお義母様黙って下さいよ!」

「まー!お義母様なんて、こんな可愛い子がお嫁さんに来るなんて嬉しいわよ♪」

 

 ボンっ!って音を立ててまた蘭の顔が赤くなる

 

「し、シン!」

「は、はい!」

「け、結婚……する?」

「――……なっ!?」

 

 蘭!一体どうしたんだよ!

 

「まあー!シンさん!式はいつにします!あなたも話に入って!」

「――……息子は渡さんぞ」

「ちょ、ちょっとまって、まって下さい!」

 

 なんだ、なんだこれは!?なんでもう蘭と結婚する前提で話が進んでるんだよ!?てか息子は渡さんぞって俺は婿入りしねーからね!?お父様!

 

「まだ結婚しませんから!てかできねーし!」

 

 それに蘭が可哀想だろ!?俺と結婚とか絶対したくないはず!冗談で言ったことをお母様が間に受けてるだけだろ!

 

「こころ!お前もなんか言え!」

 

 さっきからずっと黙ってくれてたことには感謝してる、けどもう話してもいいだろ!?

 

「話していいの!?だったらシン!蘭!結婚おめでとう!とーってもハッピーだと思うわ!」

「シン兄結婚おめでとう!!もう僕も甥?になるのかな!」

「あー!!!やっぱりお前らダメだ!!!」

 

 ほらな、何かいいことがあるとね?すーぐこれだよ!あの!言ってもいいよね?いいよな!?

 

「あーもう!不幸だぁぁぁあああ!!!!」

 

 この後はお母様達の興奮を止めるために俺の残った自由時間は全てなくなり、実行委員長としての仕事に戻るのであった…




これでシンは自由ですね!シンジは今後の話に必要なんで紹介しました。

多分今週は更新が難しいかもしれません、ですので今回は少し長めに書きました。これで許していただけると嬉しいです!

次はあの子の回なんで期待してて!それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンは騙されやすい

なんとか投稿することができたー急いで書いたので誤字脱字があるかもしれません
それではどうぞ!


「羽咲文化祭2日目開催だー!!!!」

『おー!!!』

「本日の最終メインは有志のバンドがたくさん参加するからみんなちゃんと見に来るだぞ!!」

『おー!!!』

「最後にキャンプファイヤーもあるから楽しみにしてろよな!!」

「よーし!それまで遊び倒すぞ!!!」

『おー!!!』

 

 本日の開催宣言もアドリブでなんとか乗り越えた。乗り越えられたが…さすがに最後のやつは念を押し付けてたかな…?まあみんなには是非見てもらいたいからな!

 

「本日も調子のいいスタートでしたね」

「いや、昨日と同じで叫んだだけですよ?」

 

 紗夜先輩は褒めてくれるが…いや本当に叫んでるだけなんで!叫んでなかったらこんなこと言ってもなんともならないからね!?

 

「昨日は途中で抜けて笑顔で帰ってきましたが…そんなに美竹さんと回れたのが楽しかったのですか?」

 

 あーそのことですか…

 

「お父様から許しを得た!」……なんてことは口が裂けても言えない!だってさ!?恥ずかしいだろ!

 

 それになんか蘭と回ったことが楽しかったみたいな流れになってるし……

 

「はい!蘭と回れて楽しかったです!」

「そうですか、それは良かったですね」

 

 まあ蘭と回れて楽しかったしな、これは嘘じゃない。それに…な?蘭には助けてもらったし…

 

 けどさ!絶対蘭は俺に良い感情なんて持ってないよね!?だってさ!こないだは蘭に膝枕されて泣いて、昨日は手まで握ってもらい俺が道を外そうとした時はすぐにとめてくれた。

 

「俺って……蘭に助けて貰ってばかりだな」

「――……はっ!?」

「?急にどうしたのですか?」

 

 頭に思ったことがく、口に出てた!あーもう!俺ってなんでいつもそーなんだよ!

 

「な、ナンデモナイデスヨ!さ!早く本部に行きましょーう!」

「まあ、やる気があるならそれでいいのですが」

 

 紗夜先輩の背中を押しながら羽丘の本部に向かった。2日目、つまり最終日は羽丘がメイン会場だ、なんせ花咲より広いし校舎も新しいからな、最終日メインのバンドも十分に行えるスペースがあるからな

 

 今日も昨日とは特に変わらない。何か問題が起きればすぐに解決し、クレームが来たら対応する、例えばそうだな…昨日は演劇部が急に握手会を行いだし長蛇の列ができて俺とつぐみで列の整列をさせてたんだよ、いやーまじでキツかった!瀬田先輩人気ありすぎな!

 

「ねえねえ!踊る相手見つけたの!?」

「そうなの!昨日誘われちゃった!」

「きゃー!!いいな!その人と付き合っちゃうの!?」

「んーまだわからないの!」

『きゃー!!!』

 

 はいはいまた昨日の話ですね、もういいですよ!あの結びの話だろ?んないい話あるわけないだろ?信じるだけ無駄なんだよ、無駄無駄

 

「無駄ですよ?我々には終わっても仕事がありますので」

『そ、そんなー!!』

「いや昨日も言ったじゃないですか?」

 

 昨日もこんな感じのやり取りしたと思うぞ?

 

「えー!実行委員長!お願い!踊らせてよ!」

「――……まあー考えときます」

「お願いします!!」

 

 適当に返事すれば勝手に落ち着くだろ、まあそんなこと俺が許可しても紗夜先輩が許可しないと思うけどな

 

「シン君いますかー」

 

 話が終わると同時にモカのやつが本部にやって来た。

 

「おーモカか、なんだ?トラブルか?」

「うん、シン請書を出しに来ました〜」

 

 ん?あー追加の申請書か、確かモカ達の所はカフェだったはず…一体何を追加する気なんだ?

 

「なになに?「シン君と制服デートをしたい」……は?」

「申請書、出せば大丈夫って前に言ってたか「いやいや!」もーなに〜」

 

 ちょっと待て!なんで申請書で俺と制服デートをしたいって書くんだよ!意味わからん!

 

「モカ、これは申請書でどうにかなる話じゃないぞ?」

「えー生徒の意見をなるべく聞くんじゃなかったの〜モカちゃん悲しいよ〜オヨヨ〜」

「――……いや、でもな」

 

 モカと回れるものなら回りたいが…昨日蘭と回って紗夜先輩に仕事1時間だけだが任せてしまったしな…それに紗夜先輩は昨日自由時間がなかったって聞いたし

 

「申請書を提出されたら仕方がないですね」

「弦巻君?生徒の要望は答えるのが実行委員長の仕事ですよ?」

「これも仕事だと思って回ってあげるのはどうですか?」

 

 紗夜先輩はそう言うが…

 

「いやー昨日蘭と回りましたし……」

「――……!」

 

 ん?なんか一瞬モカが反応したように見えたが気の所為だよな?まあいいや

 

「――……いや、でも」

「それとも私達には仕事を任せることができませんか?」

「い、いや!そんなことは無いですよ!?」

 

 みんな頑張ってくれてる!つぐみや市ヶ谷さんは今花咲の本部にて仕事をしている!それにみんなの仕事ぶりは俺が一番知っている!

 

「でしたら羽を伸ばして来てください」

「――……わかりました」

 

 気を使ってもらってばかりだ、けど俺はそんな簡単に気を使わせてもらってるばかりだと嫌なんだよ

 

「――……午後の仕事は頑張ります」

「午後は紗夜先輩が休んでてください!」

「……ではお言葉に甘えてそうさせていただきますね」

「――……はい!」

 

 確か紗夜先輩は午後の有志に参加してなかったからたくさん休めれるはずだ、その間に俺が紗夜先輩に任せた仕事分を取り戻さなきゃな!

 

「なんかごめんなさい、モカちゃんのせいでー」

「そう思うなら最初から来るな」

「うー痛いーけど嬉しい〜」

 

 チョップかまして痛いけど嬉しいって…感情が忙しいやつだな!

 

「ほら行くぞ!時間は無限じゃねーからな!」

「――……うん!」

 

 とりあえず本部を後にした。いやーなんかあの紗夜先輩以外の先輩達がなんかうるさかったしな、モカは彼女なのかって…彼女なわけねーだろ!

 

「最初どこ行くんだ!」

「シン君〜モカちゃんと一緒に回れるからって喜びすぎ〜」

「お前な!モカが訳分からんシン請書なんか出したからこーなったんだろ!?」

「えーそーだっけーモカちゃん知らなーい」

 

 こ、こいつ!!やっぱりモカはこんなやつだよな!?蘭みたいに回れると思ったがそうはならないよね

 

「とりあえず沙綾のパン食べに行きたい〜」

「あーうちのクラスだな、まあーモカが行きたいなら行くか!」

「では花咲にレッツゴ〜」

 

 モカが出発の合図をし花咲に向かった。あの恥ずかしいことに俺本当にクラスの出し物に関してはあんまり協力してないんだよなー実行委員長の仕事が忙しくて香澄が任せて!って言ってたから任せたが…話によると昨日めちゃくちゃ繁盛したらしいしな!よかったよ

 

 路面電車から降り花咲に向かう

 

「――……ほら」

「――……なーに?この手」

 

 いやなーにって

 

「モカはなんでか知らんが俺と手を繋ぎたがるだろ?だから、はい」

 

 俺はモカに手を差し伸べる、急に握られるとドキッて来るからさ?どうせされるなら自分からした方がなんとも思わないだろ?

 

「とか言って本当はシン君が手を繋ぎたいだけなんじゃないの〜」ニヤニヤ

「――……もーいいです」

 

 モカがまたこーゆうこと言うからな、手を引っ込めようとしたが

 

「仕方がないから繋ぎますよー」

「俺は別にいいんだけどな」

「またまた照れちゃって〜」

「だから照れてねえーって!!」

 

 あーあ!いつもモカのペースに持ってかれるよな!?

 

 自分のクラスにやってきた。昨日と同じようにかなり繁盛しており忙しそうだな

 

「いらっしゃいませーあ!シン君とモカちゃんだ!」

「やっほー香澄〜」

 

 モカはそう言い手を振るが…なんで俺と手を繋いでる方で振るかな!?手を繋いでるところ見られるじゃねーか!しかも恋人繋ぎ!別に恋人でもないのにさ!

 

「あれ!?シン君とモカちゃんって付き合ってたの!?」

 

 ほらな!香澄は馬鹿だからこんな反応するんだよ!まるでどこぞの巨乳馬鹿と同じだな!……いや、まだ香澄の方がマシだな?だって実行委員として仕事こなしてたし!

 

「……うん、シン君からプロポーズされたの〜」

「えー!?そ、そーなの!シン君大人ー」

「嘘をつくな嘘を!」

「えーでもいつも結婚しようって言ってるじゃん」

「それはお前だよ!!」

 

 お前がいつもいつも何かある度に俺に言ってくるセリフだろ!?いかにも俺が言ってるような感じで言うなよな!

 

「香澄、こいつの話は信じなくていいからな!」

「とりあえず席に案内してくれ」

「うん!わかった!」

「新婚さん入りまーす!」

「だから違うって言ってんだろ!?」

「えへへーシン君結婚しちゃったね?」

「――……お前ちょっと黙れ」

 

 大きなため息をついて案内される席に座る

 

 座って知ったがパン食べ放題らしいな、どーりでモカが来たがるわけだ。

 

 モカのやつはトレイいっぱいにパンを乗せ席に戻り食べては次に、食べて次に、それを3往復ぐらいしてた。俺はと言うとパン5個でギブアップしました。

 

「はい、これ商店街の福引券ね」

「おー沙綾ありがとな」

「いやいやー店の売名にもなるしね!それに福引券渡せば客も増えるし」

「一石二鳥だよ!」

「――……商売人の知恵ってやつだな」

 

 商売人は頭が良くないと成り立たないって言うしな、きっと沙綾の父さんは頭がきれてるだろう

 

「もういっちょー」

「さ、さすがに食いすぎじゃないか?モカさん」

「えーまだまだだよ〜だってこれからライブするしね〜」

「あーたしかにな……ってそれでも食いすぎだろ!?」

「パンは別腹です〜」

 

 なんだよそれ…

 

 パンも食べ終わりその後はお腹がいっぱいになりあんまり動きたくなかったため屋上のベンチで休んでいた。

 

「いやー食った食ったーお腹いっぱいだ」

「モカちゃんはまだまだ入るけどね〜」

「――……腹八分目って言葉知ってるか?」

「一応知ってるよ〜」

 

 まあ知ってるならよかったよ

 

『…………』

 

 なんか沈黙が続く、別に話のネタがなくなったとかじゃないぞ?なんかーそうだな、たまにはモカといる時も静かに過ごすのもいいなって思えたよ

 

「――……モカ」

「んーなーに〜?」

「いや、なんで俺と制服デートしたいなんて申請書に書いたんだ?」

 

 申請書に書く必要どころかなんで俺なんかと文化祭を回りたいって思ったんだ?ひまり達と回ればその方が楽しいんじゃないのか?

 

「ねえ……膝枕してもいいー?」

「――……はっ!?」

 

 返事は予想を遥かに超えた返事だった。

 いや、まじでなんでそんなこと急に言い出すんだよ!膝枕ってあれだろ?こないだ蘭にしてもらったやつ!お、思い出すだけで恥ずかしい

 

「――……勝手にしちゃうね?」

「――……おいおい、なんだこれはなんかのご褒美か?」

「さっきの返事だけどーモカちゃんがシン君とデートしたいから書いたんだよ〜?」

「…………っ!?」

 

 こいつは、てか蘭といいこいつらはよくもまー恥ずかしがらずにそんなこと言えるよな…てかこないだ蘭に膝枕されたばかりだから比べてしまう…が、どちらもその、寝心地は最高です、はい

 

「膝枕……蘭にされたんでしょ?」

「――……なんで知ってんだよ」

「んーたまたま見ちゃったの」

 

「(蘭と同じ考えだったなんて言えないよー)」

 

「――……なに?嫉妬か?それとも俺に独占欲でも湧いたか?」アハハ

 

 いつもからかわれるからな!俺から攻撃しかけても別にいいだろ?さあ!どー返事するんだモカのやつは!

 モカの慌てふためく姿が見れると思ったが…

 

「――……うん、嫉妬ぐらいちゃうよ」

「――……は?」

「だってモカちゃんはシン君のこと……」

 

いやまって、待ってくれ!この流れってまさか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――……好きだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――……っ!?」

 

 はあ!?あのモカが俺の事を好き!?な、何言ってんだよ!え!?まじか、本当なのか?いやこいつはよく冗談を言う、いやでも今回だけ本音?ってことはあるのか…

 

「あ、いや、えっと!」

 

な、なんて返事すればいいかなんてわからん!

 

「――……うっそ〜」

「――……はぁぁぁ!?」

 

『午後に有志に参加する方はリハーサルを行いますので羽丘学園のステージに集合して下さい』

 

 俺達のタイミングを知ってたかのようにアナウンスが流れた。

 

「モカちゃんそろそろ行かないと〜」

「…………」

「あれれ〜?シン君まさか本当だと思ったのかな〜?」

「…………っ!」

 

 いや、あんな表情で言われたらちょっとはいや、ちょっと以上にドキってくるだろ…なんだよあのモカの顔…

 

「(可愛すぎるだろ……!)」

 

 あんな顔は反則級だ、くそ、一本取られたぜコノヤロウ

 

「悔しかったらモカちゃんを本気で惚れさせてみな〜」

「――……しねーよ、てかほら行くぞ?お前ライブするんだろ?」

「はーい」

 

 その後羽丘に戻るが…花咲に向かうように手を繋いで帰ることはできなかった…その悔しいが俺が意識しちまった。いや嘘だとわかってるのに!!!!なんであんなことするんだよ!!腹立つな!!

 

 少し以上に不機嫌な顔で本部に戻り仕事を再開した。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 文化祭最終日のメインである有志のバンドが始まった。俺達実行委員長はステージの裏でサポートを行っている、参加する人達は着替えてもう準備はできている。そしていざ始まろうとした時……事件が起きる。

 

「どうしよう!」

「どうしようもこうもねーよ!間に合うのか!?」

「どーした!?お前ら!」

 

 Poppin’Partyのメンツが何か話をしていた。気になったから話を聞いてみたら…

 

「おたえが間に合うのかわからねーんだ」

「そのーまだライブしてるみたいなの!電話にも出ないからきっとそうだと思う!」

「おたえちゃん大丈夫…かな?」

「――……おたえ」

「…………」

 

 なんかこーゆうことが起きるんじゃないかって思ってたんだよ…。はっきり言ってこの文化祭は今の今まで順調に話が進んでいた。不幸体質の俺がいる中こんなにも上手くいっていたんだ。そりゃーそのうち、いや最後の最後で不幸なことも起きるよな?

 

「――……おたえはどこにいるんだ?」

「……今はライブハウスでライブしてると…思う」

 

 沙綾が心配そうにそう答える。

 

「――……私迎えに行くよ!」

「お、おい香澄!」

「離して!早く行かないとライブに間に合わなくなっちゃう!」

 

 確かに今行かないと最後のライブには間に合わないと思う

 

「せっかく…今日は私達が結成して一年目だったのに…」

 

 そう言う沙綾の顔は今にも泣きだしそうな顔だった。

 

 その顔を俺は知ってる。俺の友達が……自分のことを話してる時に泣いてたその顔を知ってる…。知ってるからこそもう二度と見たくないとも思った。女子の泣いてる顔なんて誰が好き好んで見るんだよ、そんなのが好きなのはただのドS野郎だけだよ

 

「――……香澄、沙綾」

「――……シン?」

 

 そんな顔するなよ

 

「――……俺が迎えに行く、場所教えてくれるか?」

「で、でもお前実行委員長だろ!?……大丈夫なのか?」

「……なーに、これも歴とした仕事だろ?」

 

 後で事情を説明すればなんとかなるだろう

 

「――……シン……頼んでもいいの?」

「ああ、俺を頼ってくれ!だって実行委員長だからな!」

 

 そう俺は実行委員長だ。今回の文化祭最後を飾るのは俺達の誰でもない。この目の前にいるコイツら、Poppin’Party略してポピパが最後のトリなんだ。そのトリのメンバーがいなくてできませんでした…なんてオチには絶対させない!

 

「シン、私の携帯貸すね?ここにおたえがいるはずだから!」

 

 そう言い沙綾が俺に携帯を貸してくれる

 

「電源は消さないようにしてね?」

「――……ああ、わかった!市ヶ谷さん!紗夜先輩か会長に話つけといてくれ!」

「お、おう!わかった!」

 

 よーし、それじゃー!

 

「――……いって「まって!!」…」

 

 俺の気合いが入ったセリフを言おうとした時に牛込さんが止めに入った。

 

「つ、弦巻君!その、うち…じゃなくて私あんまり弦巻君と話したことないけど…」

「――……おたえちゃんをお願いします!」

 

 牛込さんが俺にそう言ってきた。確かに彼女とは一度も喋ったことはない。ないが

 

「――……おう!任せろ!なにがなんでも絶対に間に合わせるから!」

 

 だからと言って彼女の願いを聞かないってわけじゃないだろ?

 

「――……行ってくる!」

 

目 指すはおたえがいるライブハウス!普段あまり運動をしない俺にとっては地獄のような距離かもしれない。けど約束したからには果たすさ

 

「ほんと、俺って不幸だよなぁぁああ!!」

 

 自分の不幸体質がよんだであろうこの結果にイライラしながらライブハウスに向かった。

 




最後の話はバンドリの今期アニメが文化祭の話なんで丁度いいかなと思って最後に書きつけました。次回の更新で詳しい話は書きますのでよろしくお願いします!

次の更新がいつになるかわかりませんが……また次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと文化祭の最後

今回で文化祭編は終わります!それではどうぞ!

またまた急いで書いたので誤字脱字があるかもしれません、お許しを…見直ししたいけどする時間がないんです。


 人は走るとどうなる?息がキレ足が重たくなりもう動きたくねー走りたくねーってなる時が来るでしょ?

 

「はあ…はあ……はあ」

 

 それが今だ。両手を膝に置き肩で息をするように呼吸をおこない、その呼吸はとても荒れている

 

「クソ……!まだ半分も行ってないのに!」

 

 自分の太ももを叩く、普段運動をせずに体力がない自分をこれ程恨んだことはない今日の日

 

「……!電話だ」

 

 沙綾の携帯に電話がかかる、宛先もみずに電話に出ると…

 

『シン君ーモカちゃん達のライブ見れないの……?』

 

 どうやらモカのやつが電話を掛けてきたようだ。そう言えば彩先輩がオリジナルバンドを作ってライブするって話してたな…見ようと思ってたが

 

「……ごめん、モカ達のライブにはギリギリ間に合いそうにないな」

 

 それより本当におたえを連れて時間までに戻れるかすら少し以上に不安だ。

 

『……だったら電話!ライブする前に電話かけるから出て!それだと歌は聞けるでしょ?』

「――……彩先輩?」

『うん!この歌は是非シン君に聞いて欲しいの!だから...ダメかな?』

 

 いやいや、そんな感じで言われると断れるのも断れねーだろ!

 

「では電話よろしくお願いします!」

 

 電話料金がかかると思うが……金は後で払うから許せ沙綾

 

 その後また走る

 

「あと半分だ」

 

 あと半分でおたえがいるライブハウスに到着する

 

 少し休憩をしてる時後ろから見覚えのある黒塗りの高級車が俺の横を通り過ぎ止まった。

 

「お久しぶりです。シン様お探しました」

「…………」

 

 降りてきたのは黒服の人達だった。屋敷を出てから一度も会っていなかったからな?こころのそばにいることだけは知ってたが……なんで今ここにいるんだ?

 

「こころ様から事情はお聞きしました、我々の車をご利用下さい」

 

 なるほど…そーゆうことですか、まったくこころのやつは変な気を使いやがって

 んなもん頼るはずだろ?けど

 

「……ふざけんな!俺はもうお前らに!弦巻家の力を借りるなんて真っ平御免だ!」

「俺が行くって!連れてくるって約束をしたんだ!俺だけの力でなんとかする!」

 

 つぐみとの約束を果たせなかった。その話を蘭にしたら次頑張ればいいって言ってくれた。その次ってのが今じゃないのか!?俺はそうだと思う、だからこの約束は俺の力で、俺だけの力で約束を果たすんだよ!

 

「…………そうですか」

 

 でしたらと言い布にくるまれた何かを俺に渡してきた。

 

「あの、話聞いてた?あんたらの力は借りねーって言っただろ?」

 

 時々外国に行くからその影響で日本語でも忘れたか?ならシンジと一緒に国語の勉強でもしとけ

 

「とりあえず中身を確認して下さい」

 

 黒服の人達にそう言われ包まれていた布を外したら…そこには俺の見覚えのあるものが入っていた。

 

「――……こ、これは!」

「はい、シン様が幼い頃に使っていたスケートボードでございます」

 

 俺が昔屋敷に居る時幼い頃から使っていたスケボーだ。確かこれには!

 

「はい、某アニメ、コ〇ン君にシン様が憧れ我々が独自に作り上げた世界に一つのターボエンジン付きスケートボードです」

 

 おい!その俺がコ〇ン君が好きだったなんて話はやめろ!お前みんなの前で話すなよな!?てかんなことより!

 

「ふざけんな!これだとお前らの力を借りたもんじゃねーか!」

「ですから先程も言いました」

「我々はシン様の私物を返しに来ただけです」

「…………っ!」

 

 まったく、いいこじつけだな

 

「……ああ、俺のモノ返してくれてありがとな」

「――……この恩は必ず返す」

「いえけっこうです、我々は何もしてないので」

「――……あっそ」

 

 そう返事をして足元にあるボタンを踏む、踏むとスケートボードの中からすんごい機械音が鳴り響く、この音懐かしいなー久しぶりだけどちゃんと乗れるのだろうか

 

「自分を信じろ!弦巻シン君ならできる!」

 

 頬にビンタをかまし踏みかけのボタンをさらに踏む

 

「…………っ!」

 

 体が前に進む、スケートボードだけが前に進み振り落とされそうになるが体を前のめりにし姿勢維持をおこないスタートダッシュを決めることができた。

 

「いける!このスピードなら間に合う!」

 

 風を切りながら1人で叫んでいた。

 

 

 

 

 

「ここだ!」

 

 ライブハウスに到着し走らせていたスケボーから降りそれを手に持ちライブハウスの中に入っていった。

 

「すみません!おたえ知りませんか!」

「お、おたえ…さんですか?」

 

 ライブハウスの受付の人にそう聞くがおたえって言ってもわからねーよな

 

「花園!花園たえ!」

「あっ!HANAZONOさんですね!」

「ただいまアンコールを受けライブを行う寸前です」

「――……っ!ありがとうございます!」

 

 なんてこったまだライブが終わってないだと!そんな終わるの待ってたら間に合うものも間に合わねーだろ!

 

 控え室のドアを開け思いっきり叫ぶ

 

「――……おたえー!!!!!」

「…………シン君!どうしてここに!」

「お前の迎えに来た!」

 

 そう言いおたえの手をとり控え室を今すぐにでも後にしようとしたが

 

「まって!まだ終わってないの!」

「はあ!?んなこと言ってる場合じゃないだろ!」

「アンコールぐらいやらなくても大丈夫だろ!お前が来るのを待ってる友達がいるんだぞ!」

「……でもごめん、ここにいるみんなも私の大切な仲間だから……!」

「…………おたえ…!」

 

 何言ってんだよ!それだと間に合わねーだろ!?

 

「どこの誰か知らないけど私達のデビューライブの邪魔はさせないわよ!」

 

 猫耳のヘッドホンを付けた中学生ぐらいの女の子に言われた。言われたがそれを無視しておたえに問いただす

 

「でも、文化祭だぞ!?高校生活3回しかない文化祭を無駄にするって言うのかお前は!」

 

 お前だけの話じゃない!みんなの、沙綾達の話なんだよ!

 

「最後にもう一度聞く、本当に今からまたライブをするのか?」

「……うん、ごめん……終わった後にすぐに行くから…」

「――……勝手にしろ!俺は知らねーからな!」

「――……ごめん、行ってくる」

 

 そう言いおたえを始め他のメンバーは控え室から出ていく、そんな中何も出来ずにただ立っている自分がいる、無理矢理にでも連れていくことができたはずだ...アンコールライブが終わった後に間に合うなんてほぼ不可能だ……

 

「お前…カッコイイな」

「…………っ!?」

「花園の彼氏か?」

「んなわけねーだろ!てか早く行け!そして早く終わらせてこい!」

 

 俺と同じ金髪の目付きが少し悪い女子が急に話しかけてきた。イライラしてたから口調が荒くなってしまった。すまんな

 

「言われなくてもそのつもり」

「――……花園を待ってやってくれ」

「――……考えとく」

 

 控え室を後にしライブハウスも後にした。

 

「……!電話…もうそんな時間か」

 

 モカ達のライブが始まる時に電話をかけるって言ってたな…ってことはこれがポピパの前のバンド、つまり…

 

「――……ゲームオーバーか」

 

ピッ

 

『あー繋がったーそっちはどう〜?』

「――……おう!順調だぜ!なあ!おたえ!」

 

 隣におたえなんていないがいるふうに話しかける

 

『シン君……無茶してない?』

「…………っ!」

 

 彩先輩ってなんでわかるんだろうな…でもここで不安にさせちゃダメだよ……な?

 

「それより早く歌、聞かせてください」

『あ、うん!今から歌うよ!』

 

 その後数秒無言が続いたが急にMCが聞こえた。この声は彩先輩だな?

 

『今回はオリジナルバンドを組んでみました!』

『バイトを頑張る高校生に送る応援ソングです!それでは聞いてください!』

 

 彩先輩がそう言い終えると演奏が始まり出した。

 

 なんだろうなーその歌を聞いてると俺がバイト始めたての頃を思い出すような歌詞ばかりだった

 

「(だから俺に聞かせたかったのか...)」

 

 叱られて凹んじゃって自暴自棄...ね、確かにそうだったかも

 

 まあモカがいなかったら今頃あそこで働けてないと思うけどな…その点はモカにちゃんと感謝してるさ

 

 聞いてると自然と涙が出てくる曲だった。俺だけの俺に向けての歌詞じゃないってわかってるのに、わかってるのに自分のように感じてしまう……!

 

『無茶だけはしないでね……?』

『ひとりじゃないんだから』

「…………っ!」

 

 あはは、なんだよそれ、歌詞にまで持ってくんなよな

 

「ひとりじゃない…か」

 

 俺ひとりが間に合わないからって諦めてどーすんだよ!俺が諦めたら間に合うかもしれないものも間に合わないだろ!

 

『無茶だけはしないでね?』

 

 って言われたが…

 

「(すみません彩先輩……こんな悪い後輩をどうか一度だけ許してください)」

 

 先程後にしたライブハウスにまた戻りだした。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

 おたえのそんな声が聞こえた。もう終わったのだろうかすぐにここを通ると思う

 

「――……おい」

「――……っ!」

 

 ライブハウスから出てきたロングヘアの女子、間違いなくおたえだな

 

「走って間に合う距離じゃねーよ」

「えっ?ちょっとシン君……きゃっ!」

 

 いきなりでごめん、けどもう時間が無いんだよ

 

 おたえが驚くのも無理もないなんせ今は…そうお姫様抱っこってゆうやつやしてるんだからな

 

「――……飛ばすぞおたえ!」

「――……うん!」

 

 スケートボードの足元にあるボタンを踏み込み発進する、元々一人用のため二人分を動かすパワーはないのかもしれない。それに随分と前のモノだ。壊れてもおかしくない……けど!今だけは耐えてくれ!

 

「――……どうして待ってくれてたの?」

「はぁ!?」

「だから!どうして待ってくれてたの!」

「なんて言ってるか聞こえん!」

 

 なんせ風の音と機械音がすごくてまったく聞こえないんだからな!

 

「もういい!後で聞く!」

「――……ただ言えるのは」

「お前が俺の友達だからだよ!」

「なんて言ってるの!」

「あーもういい!!」

 

 友達も助けることは普通だよな?俺はただ普通のことをしただけなんだよ…

 

 彩先輩達のライブを聞き終え間に合わないだろって思ってるそこの君、俺は馬鹿じゃない。間に合わないことを想定して頼み事をしたんだよ

 

「10分だけ時間を伸ばしてくれ、それまでに必ず間に合わせるから」

 

 そう言い返事も聞かずに電話を切った。まあ切ったと言うより沙綾の携帯の電源が落ちたってのがただしいな

 

「――……あと2分!」

 

 このままだと確実に間に合わない!

 

「近道するぞ!」

 

 そう言い二人分の体重を乗せ飛び上がり家と家の間の塀の上に乗りスケートボードを走らせる迷惑だって、失礼だってわかってる、けどもうこれでしか間に合う方法はない

 

 幸い車が多い道ではないため事故などは起きる気配はない。

 

「――……あと1分!」

 

 もう学校は目の前だ!あとはそのまま突っ切れば!

 

「うわっ!(きゃっ!)」

 

 足元のスケートボードが急に止まった。恐らくだが故障だと思われる、なんせ無茶をさせすぎた。壊れてもおかしくないレベルだ…けど

 

「おい、おい!あと少しなんだよ!あと少しで間に合うんだよ!」

 

 あと50秒

 

 走れば着くかもしれないがそれは無理だ。目の前だと言っても150メートル近くある、俺の体力はもう残ってない。おたえに関してはライブをするための体力を残しておかないといけない。だから走る選択はなかった。

 

「頼む!エンジンかかってくれよ!」

「――……動け、動け動け!俺をまた弱い人にしないでくれ!たまにはカッコつけてもいいじゃないか!頼むから……エンジンかかれよ!」

 

 つぐみとの約束を果たせなかった。それだけで十分自分が弱くてダメなん人って気づいたんだよ、それがさらに今回もダメだっなんてそんなのはゴメンだ!

 

「――……シン君...」

「かかれかかれかかれ!かかれよ!!」

 

 何度も叩き足元のボタンを手で押す、何回押しただろうか…思いが伝わったのかまたあの機械音が聞こえだした。

 

「――……!かかった!おたえいけるぞ!」

「――……うん!」

 

残り30秒

 

 またおたえを抱え込みスケートボードの乗り足元のボタンを強く踏む、機械音は今にもまた止まりそうな音だったが…今はこいつに頼るしかない!

 

残り20秒

 羽丘には着くことができそのままライブ会場であるホールに向かう!

 

「(必ず間に合わせる!)」

 

 心の中でそう言った。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

「――……シン君とおたえ連絡つかないね」

「――……うん」

 

 最後の時間稼ぎで急遽歌ってくれたRoseliaの演奏もあと少しで終わりそうになっていた。

 

「みんな!笑顔になりなさい!」

「――……でもこころ…もう無理だよ」

「泣いてる暇なんてないわ!次は沙綾達がライブをするのよ?」

「――……でも」

「大丈夫!シンは必ず来る!だって私の自慢の弟だもの!」

 

 その場にいる誰もがシンの帰りを待ち望んでいた。特に沙綾は自分が頼んだせいで起きたこのことにたいして責任を感じていた。

 

「沙綾!シンが昔言ってたの!」

 

「ヒーローは遅れてやってくる!ってね!」

 

「――……っ!?」

 

 こころがそのセリフを言った瞬間

 

ドン!ドン!ドン!

 

 何かが壁に当たる音が聞こえる、そしてものすごい機械音も聞こえてきた。

 

『――……来た!』

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 学校に入ったのはいいが狭すぎて壁に何度も当たった。当たったがドアの目の前までやって来た。

 

あと5秒

 

ドアは押戸のためこのまま走りながら行けば開かれると思う!だと思ったからそのまま駆け抜け

 

「あと1秒ー!!!!!!!!」

 

『いっけぇぇえええ!!!』

 

 俺とおたえは気合を込めるようにそう言いドアにあたりながらドアを開け会場であるホールに着くことができた。

 

あと0秒

 

 ギリギリ間に合うことができた。

 

「――……弦巻君!?」

「うわ!シン間に合ったし!」

 

 ステージで演奏していたであろう紗夜先輩とリサ先輩が驚いた顔をしている

 

 会場入りできたのはいいが…そのまんまの速度で入ったからな?階段なんて降りることができずそのままの体制でステージに飛んでいった。

 

『うわぁぁぁあああー!!!』

 

 俺とおたえが叫んでいる。ま、まずい!このままだと着地できない!

 

「よっと!」

「うわぁぁぁあああー!なんで俺だけー!?」

 

 おたえは何故か着地ができたが…俺に関しては後ろの劇で使ったハリボテに頭から突っ込んでいった。

 

 会場はざわざわし始める、いやそりゃそうですよね!?こんな形で登場されたらそーなりますよね!俺だってもっとかっこよく登場したかったさ!

 

とりあえず

 

「――……弦巻シン、無地に生還しました!」

 

 なんかこれだけだとみんなが納得しないよな?

 

「……さあさあ文化祭最後を飾るのは本日で結成1周年を迎えるこのバンド!Poppin’Party!」

「彼女達の…奏でる……音楽に?酔いしれろコノヤロウ!」

『――……おー!!!!』

 

 その場に倒れ込んだ。もう足が動かねーよ

 

「シン!だ、大丈夫!?」

「リサ!とりあえずシンを運びましょう!」

 

 みんなから注目されるステージにてリサ先輩とこころに引きづられながらステージを退場した。

 

 その際にポピパのメンバーとすれ違ったが…うん、やっぱり5人いてのポピパだな

 

 裏方について真っ先に来たのは

 

『シン(シン君)!大丈夫!?』

 

 モカ、蘭、彩先輩、この3人が真っ先に来た。何か言おうと思ったが…疲れていて口が動かねーよ

 

「もーう!連絡つかないから事故でも起こしたんじゃないかって心配したんだよ!」

 

 彩先輩が泣きながら言ってくる

 あーその件はごめんなさい。携帯の電源が切れたんですよ

 

「――……でも、無事でよかったよー!!」

「…………っ!?」

 

 そう言い彩先輩は抱きついてきた。

 いやいやーこんなことは嬉しすぎます!なんですかご褒美ですか!?

 

「あ、彩さん!シンとく、くっつきすぎじゃないですか!?」

「まあーまあー蘭?今回は彩さんに譲ろうね〜」

「べ、別になんとも思ってない!」

「もーお互い素直じゃないな〜」

 

 なんでこっちを見て言うのかわからんが……

 

 抱きついてた彩先輩は離れ次は…

 

「その、枕必要だよね?膝枕だけど…これでいいかな?」

 

 昼間モカにされたばかりの膝枕を次は彩先輩にされていた。

 いや、その嬉しいんですが…向きが逆!今の状況彩先輩の太ももと太ももの間に顔が埋もれてるからな!?てかこんなにも頻繁に膝枕されると複雑な感情が芽生える

 

 だって誰もこんな短期間で3回も別の人の膝枕を体験するとかないぞ!?普通じゃねーから!

 

「うわ!シン君彩さんに膝枕されてる!」

 

 ひまりのやつがからかうように言ってきやがった。

 

「しゃ、喋れないからって中指立てないでよ!?」

 

 顔が埋もれて喋れねーから中指立ててやりましたよ

 

 てか息ができないから!?彩先輩!俺死んじゃう!

 

「し、シン君、その息がくすぐったいよー」

「んっ!ん!んっー!!」

 

 バンバンと彩先輩の太ももを叩くが

 

「そんなに膝枕されて嬉しいの?よかったー!」

 

 違うからー!!

 

 重い体を自分で動かし彩先輩から離れた。

 

「あっ!もーまだ休んでた方がいいよ?」

「い、いえ!もう、その!大丈夫です!」

 

 これ以上この状態だと色々と俺の精神が持たんは!

 

 その後……ポピパの1周年記念ライブは成功し、文化祭も最後の最後に大きなトラブルがあったが…間に合うこともできたし、成功したしな!終わりよければすべてよし!まさにこのことだな!

 

「最後に実行委員長挨拶」

 

 休憩したから1人で立てるようにはなったが…この最後の挨拶のことは完全に忘れていたよ!やっべ!何話そう!

 

「えーっと、実行委員長の弦巻シンでーす」

『…………』

 

 んーやっぱり話すことなんてなくね?あ、でも

 

「この文化祭は青春の1ページになることはできたでしょうか?」

「俺は……俺はこの文化祭で成長することができました」

「未熟者だった俺が今全ての日程を無事に終えここに立てているのは」

「実行委員のみんながいたからです、そして俺について来てくれた皆さんがいたからです」

 

 感謝の言葉が止まらない

 

「とりあえず…」

「――……最高でした、馬鹿野郎共!」

 

 自分でもわかるぐらい最高の笑顔だったんだろうな……終わった後みんなが俺を褒める言葉を投げかけてくれて嬉しかったよ

 

 こうしてシンの最後の言葉で文化祭は幕を閉じた。

 

「(これで実行委員長の仕事も終わりだな)」

 

 と、思ったが

 

「では今から反省会を行います!」

 

 あんな風に終わらせたのに約束通りの反省会を行っていた。外を見ればキャンプファイヤーの前に群がり踊っている男女のペアがたくさんいる

 

「(人が会議中になに踊ってるんだよ!)」

 

 って思ったが、これも実行委員になった人達の運命だったのだろうさ

 

「――……では反省会をはじめます、まずは...」

 

 最後の仕事の会議も無事に終わり迎え次はキャンプファイヤーで汚れたグランドの掃除を行うことになった。

 

「ねぇねぇ!片付ける前にさ!まだ木が残ってるから踊らない!」

 

 日菜先輩がそう提案する、もちろんそれに賛成する人がたくさんいた。紗夜先輩が困ったような顔をして俺の方に向くが……そうだな、みんな頑張ってくれたし

 

「よーし!踊りたいやつは踊っていいぞ!」

『わーい!!!!』

「って全員かよ!?」

 

 紗夜先輩や会長、つぐみや市ヶ谷さん以外の実行委員はみんな踊りに行った。

 

 俺は……グラウンドにある階段に1人で座っていた。なんだ?別に実行委員の中に俺と踊る人なんていないからな?ボッチは一人で待っときますよ

 

「あ、シン君こんなところにいたんだ!」

 

 後を振り向くと彼女達がいた。

 

「シンは踊る人いないの?」

「――……蘭?それ嫌味で言ってるの?」

 

 俺だって踊れる人がいたら踊ってるさ!

 

「モカちゃんと踊りたくて待っててくれたんだ〜」

「いや!なんでだよ!?」

 

 モカは相変わらずの調子だな

 

「じゃ、じゃー!私は!?」

「あ、彩先輩とはいろんな意味で踊れないですよ!」

 

 その、彩先輩と踊るのは緊張するし恥ずかしいです!

 

「てかみんなは?踊る人いないの?」

 

 とゆうか既に生徒が踊る時間は終わってるしな、もう踊り終えてお話でもしてたんだろう…てか

 

「なんでひまりはいるんだ?」

「…………」

 

 いや意味がわからん、なんでいるんだろう?

 

「あーそれはね〜ひーちゃんの意中の先輩にアプローチしたけど振られちゃったの〜」

「ふ、振られてないの!既に先約がいただけなの!」

「ぅーもっと早く誘えばよかったなー」

 

 あーはいはい、ひまりは先輩?に誘ったけど踊れなかったんだな

 

 あ、そう言えばなんか先輩達が言ってたな?結びの話がどうたらって…まあ別にそんなことは意識しないけど

 

「そーだな、みんな暇なら踊らないか?」

 

 みんなとなら彩先輩とも踊れるしな

 

『…………っ!』

 

 反応したのはひまり以外の3人だった。

 

「――……しょうがないなーシン君がどうしてもひまりちゃんと踊りたいって言うなら踊るよ?」

「あっそ、じゃーお前はいいや」

「じょ、冗談だよ!先輩と踊れなかったからその分は取り返させてもらうよ!」

 

 よーしまずは一人目

 

「もともとシン君誘う予定だったしね〜モカちゃんと踊ろうよ」

「まあーみんなと踊るんだけどな」

 

 二人目

 

「これって……そーゆうことだよね?」

「――……彩先輩?」

「あ!うん!踊り...踊ります!」

 

 はい三人目

 

「…………」

「――……蘭?」

「……し、シンが踊りたいなら踊ってあげる」

「ああ、俺が踊りたいんだ。だから一緒に踊らないか?」

「…………っ!」

「みんなでな!」

「……だと思った…いいよみんなで踊ろうよ」

 

 これで全員の許可を得たな!

 

「ちょっと待っててね〜」

 

 モカはそう言うと近くの木に走って行った。

 

「さあーやー沙綾も踊ろうよ〜?」

「あっははーモカにはバレてたか」

 

 なんとあんな近くに沙綾がいたのか!全く気付かなったよ…てかそれに気づくモカってなんだよ!

 

「いや…でもいいの?」

「一人増えただけで変わらねーよ、沙綾もみんなと踊ろうぜ?」

「…………っ!」

 

 それにみんなと踊ると楽しいし人が多い方が盛り上がるだろ?

 

「だったらお言葉に甘えて参加します!」

「――……おう!」

 

 こうして沙綾を加え

 俺、蘭、モカ、彩先輩、ひまり、そして沙綾、計6人で踊ることになった。楽しく踊れると思っていたが

 

「モカちゃんがシン君の隣ね〜」

「あ!モカちゃんずるい!私もと、隣がいいの!」

「モカも彩先輩も落ち着いて、シン?行こっか」

「なんでこーなるんだよ!!」

 

 隣が誰とかどうでもいいだろ!?てかなんで俺の隣に来たがるんだよ!

 

「早く決めないと木が無くなるぞー」

 

 そう言うがまだ揉めているようだった。

 

 

「沙綾はシン君の隣で踊らなくてもいいの?」

「え?あーまあー別にそんな気ないし...ね?」

「――……ふーん、そうなんだ!なら私と一緒だね!」

「…………そうかもね♪」

 

 

 なにやら2人で話してたようだが…まあ俺には関係ない話だろう、多分先輩の話とかじゃないか?

 

 ……で結果は

 

「えへへーシン君の隣ゲット〜」

「はいはい、何となくモカだと思ってたよ」

「やった!シン君の隣で踊れるね!」

「は、はい!俺も嬉しいです!」

 

 実際彩先輩と踊れて嬉しいしな!

 ん?なんか視線を感じるぞ?蘭とモカがジト目でこっちを見ている...なんだよその目は!

 

「モカちゃんの時と対応が違う〜」

「あーだって先輩だしな?普通だろ」

「…………」

「なんだよ蘭!?」

 

 そんな目で俺を見ないでくれ!

 

「――……今度ご飯奢ってくれるなら許す」

「わ、わかった!奢るから今回は許してくれ!」

 

 てかこのくだり長くないか!?早く踊りたいんだが!もうそろそろで木も燃え尽きちゃうよ!

 

「じゃーみんなで踊るよー!」

「えいえいおー!!」

『…………』

「シン君!そこは乗ってよ!?」

「なんで俺だけだよ!?」

 

 ひまりがコールをかけるが誰も反応しなかった。いやえいえいおーとか今どきやらねーよ

 

 その後みんなで踊るが

 

「……シン君踊るの下手すぎ〜」

「私も、うん、ちょっと驚いてる」

「だ、だって仕方がねーだろ!?初めてなんだから!」

「誘うなら少しは踊れないとダサいよ?」

 

 ぐは!!沙綾にそんなこと言われるとは……心に深いダメージをおったぜ

 

「あ!違うよ!そーゆう意味じゃなくて!」

「どーゆう意味だよ!?」

 

「あはは!シン君ださーい!ぷぷぷ〜」

「……てめぇの胸鷲掴みするぞ」

「きゃー!セクハラだ!!」

 

 はあーやっぱりこーなるオチなのか!?でも…な?こんな生活が最近は楽しいなって思えるよ、モカから始まり次に沙綾、そして蘭とひまり、最後に彩先輩...全て誰かがまるで仕組んでたようにうまく行き、友人を作ることができた。本当に……

 

「――……俺はいい友達を持ったよ」

『…………』

「――……ち、違う!今のは違うぞ!?」

 

 またまた考えてることが口に出ました。あーこの癖どうにかして治したい!!

 

「も〜相変わらずシン君は〜」

 

『素直じゃないな〜』

 

「だから違うって!!!」

「あー!クソ!やっぱり不幸だぁぁああ!」

 

 シンの叫びが羽丘のグランドにて響き渡った。

 

 花咲の結びの話、ここは羽丘のグランドだけど合同文化祭です。効力はあったような?なかったよな?後のふたりはこのことを語り続けているようでないような?

 

 信じるか信じないかは自分次第ですね。




はい、ヒロインが決まりましたね...今後はこの5人で話を進めて行きます。多分もうヒロインは増えませんよ?いや、5人が限界です。5人で許して!

これからが本題です!飽きずに最後まで見てくれると嬉しいです!

メッセージなど来るととてもうれしいです!くれる方ありがとうございます!感想もお待ちしております!

それとここ何日間で何人もの方が投票してくれました!ありがとうございます!

それでは次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンは連絡先を交換したいそうです

久しぶりの更新です。用事もだいぶ落ち着いてきたので更新することができました。
それではどうぞ!


 文化祭を大成功させた実行委員長弦巻シンこと俺はその後日の片付け、資料の制作に明け暮れていた。いやそれだけならいいよ?けどさ

 

 おたえを連れてきた時にドアを破壊して?演劇部の大事なハリボテを壊して?オマケに俺の大切なスケボーも壊れて?弁償代を請求されていた。まあ全部じゃない、9割学校が出すって言ってるけどさ…そこまで出すなら全部出せよ!?1割だけでも結構な値段だからね!?

 

 先生から聞いたが文化祭を成功させてなかったら全額負担になる所だったと言われた時、それはもー成功させてよかったって心の底から思いましたね

 

 スケボーはと言うと……実は三郎のおやっさんのやつが機械いじりが好きなんだとさ、相談したら是非中を見てみたいといい修理を引き受けてくれた。引きうけてくれたのはいいが…少し以上に不安だ。

 

「――……不幸だ」

 

 午前に金を払いに行き、その後おやっさんにスケボーを渡し夕方ひとり悲しく夕焼け色の空を眺めながら歩いていた。

 

「あー今日の夜飯なんもねーな」

 

 最近はバイトを文化祭のために休みをもらっていたからな、廃棄する食べ物を貰ってなくて、そして食欲なんてなかったから家に食べ物すらないことを忘れていたんだ。まあ今思い出したけど

 

「(ついでだし福引でもしていくか)」

 

 商店街で夕ご飯を買い帰りの際に文化祭で貰った福引券を使い福引をしようと思い商店街に入っていた。

 

 受付の婆さんに福引券を渡しあのガラガラを回す。回したところで不幸体質であるこの俺があたりを引くことなんてないさ、どーせ参加賞のポケットティッシュ貰って終わりだよ

 

「おめでとうございます!!一等の景品はi〇honeXです!」

「――……は?」

 

 結果はまさかの一等賞、いやいやありえないよな?何度も出てきた玉を確認した。きっと黄色と金色を見間違えてるんだ、そーに違いないと思ったが…何度も見ても金!金玉だ!いやそっちの金の玉じゃなくてだな!

 

 これはあれだな普段運がない俺のために神様がくれた幸運なんだと思った。いやそう思いたい!

 

「あ、あのーこれ契約しないと使えないんじゃ…」

「でしたら商店街のやわらか銀行かキノコ、英雄で契約することをオススメします!」

「ささ!こちらにどうぞー!!」

 

 腕を引っ張られ近くにいたやわらか銀行の店員さんに連れていかれ携帯の契約を済ませた。本体料金はさっき携帯を当てたため無料で月々の通信料を払えばいいとのこと、まあギリなんとかなるから大丈夫だろ

 

「……と、言っても何するんだ?これ?」

 

 正直いって携帯の使い方なんて知らない。てか思い出したけどこの携帯のおかげで俺と沙綾は友達になったんだよなーいや、携帯の進化には感謝しねーとな

 

「……とりあえず貯めてたパスパレの番組見るか!」

 

 文化祭準備期間中に放送されたパスパレが出演する番組は録画していた。そのため寝るまでテレビを見ていて携帯なんて全く触らなかった。

 

次の日

 

 未だに携帯の使い方が全くわからない。教室にていじるが全くわからん、この設定はなんなんだ?あとパスワード打つのめんどくさいんだが!

 

「あれ!?シン君携帯買ったの?」

「香澄か、まあ買ったって言うより当たった?がただしいな」

 

 だって俺は買ってねーし

 

「ふーん、あ!携帯持ってるならL〇NE交換しようよ!」

「な、なんだその線ってやつは!」

「違う違う!L〇NE!線じゃないよ!」

 

 話を聞くとアプリ?と言うやつらしい。ダウンロードして登録して

 

「はい完了!これで使えるようになるよ!」

「おー!助かる!これってメールより便利なのか?」

 

 いちいちアプリ入れなくてもメールでいいんじゃないのか?

 

「んーグループ作れたり、あ!無料で電話できるからね!色々と便利だよ!」

「――……なるほどねー」

 

 まあ俺にはそんなにたくさん友達がいるわけじゃないんですがね…あれ?自分で言ってて悲しくなってきたよ!?

 

「あ、沙綾もしてるのか?」

「うん!沙綾もしてるよ?」

 

 だったら

 

「香澄、連絡先の交換、少し待ってくれるか?」

「いいけど……どうして?」

「色々と事情があんだよ!これ以上聞くな!」

 

 そう言い俺はある所に向かう

 

「――……沙綾!」

 

 沙綾が座っている机を叩き名前を呼ぶ、まあこーゆうの勢いが大事だと思うからな!

 

「し、シン?何か用?」

「――……してくれ……」

「え?なんて?」

「だーかーら!俺と連絡先交換してくれ!」

 

 携帯の画面を沙綾に向けそう言う。なんで香澄より先に沙綾と連絡先を交換しようと思ったか、それは簡単な話だ。俺が高校生になって初めてできた友達が沙綾なんだ。やっぱり一番最初に追加する人は大切にしたいじゃん?だから沙綾にしたんだよ

 

 モカのやつは…中学の時からバイトで同じだったからな、つまりモカか沙綾の誰かを最初に追加したいなって思ったんだ。

 

「見たところ友達0人だけど…私が初めての友達でいいの?」

「ん?違うのか?」

「ん?」

「俺が高校生になって初めてできた友達は沙綾だろ?」

「…………っ!」

 

 だってそうだろ?あの時俺が沙綾に話しかけなかったら今の俺はいないと思う。モカ達とだけ絡んでクラスに馴染めない俺だったと思うからな!

 

「……うん!そうだね!私も男子の友達はシンが初めてだからね?」

「…っ!そ、そーですか!ほら早く交換しようぜ!」

「はーい♪」

 

 沙綾と交換して俺の友達はこのアプリででも、現実でも沙綾が初めての友達になった。いやなってくれたが正しいのかな?でも追加できてよかったよ

 

「あ!沙綾と交換終わったなら次私ね!」

「その次私ねー」

「お、お前らそう急ぐなって!」

 

 沙綾の後に香澄、おたえと来て

 

「私もつ、弦巻君追加してもいいかな?」

「――……ふぁ!?」

 

 今まで俺の事を軽蔑していた女子の1人がそう言ってきた。

 いやいや!気の所為だよな?だってずっとあの事件根に持ってたんだぞ!?

 

「え?いやーいいのか?俺のこと嫌いじゃないのか?」

 

 なんか後から色々言われるの怖いんですが…

 

「そのーね?」

「ちょっとね?」

「弦巻君のこと見直したって言うかー」

「――……お前ら!!」

 

 なんか実行委員長として働いた俺の姿を見てあの件は本当に事故だったんだって思ったらしい。でもなんでそれだけでそーなったのか少し以上に謎だな、まあ結果オーライだな!

 

 その後クラスの大半と連絡先を交換した。もちろん男子も何人か交換したさ!未だに男子とは遊んだことすらねーから遊びの誘いとか来るのか!?ちょっと楽しみだな!

 

 その日1日はるんるんな感じで過ごした。

 あ、今思ったけどこのるんるんって日菜先輩が言ってるんっ♪!ってやつなんじゃないか?世紀の大発見だ!って何言ってんだよ

 

 バイトに向かうため学校を後にしようとするが

 

「(……あいつら、何してんだ?)」

 

 花咲の正門に知ってるやつが3人いるぞ?いや羽丘の制服であの髪色だとあいつらしかいないよな?

 

「蘭とひまり、それに巴はここで何してるんだ?」

『シン(シン君)!?』

「俺の通う学校だからな?俺はいるさ」

 

 なんで俺を見てそんなに驚くんだよ!?

 

「……シン、来ちゃった?」

「おーまえはなーに言ってんだ」

 

 蘭のやつは何を言ってるんだが…

 

「で?お前ら何しに来たんだ?」

「ひまりは意中の先輩を見に、巴は…」

「あー!あ!あ!蘭少し黙ろうな!?」

 

 な、なんだ!?この巴の反応は!一体何をしに花咲に来たんだ!?少し以上に気になるよ!

 

「てかひまりは否定しないんだな」

「えー?だって好きな人ぐらい見に来るじゃーん!ね?とーもーえ!」

「な、何言ってるかわからないなーひ、ひまり」

「巴バレバレだよ?」

「う、うるさいなー!!」

「……さっぱりわからん」

『…………ん?』

 

 まあいいや、そのうち聞くとするか

 んなことより!

 

「見てみろこの黒くて光り輝くものを!」

 

 この携帯が目に入らぬかー!と、言わんばかりの見せ方をして蘭達に見せつける

 

「おー携帯買ったんだね!」

「まあ…うん」

 

 このバカに説明したところで意味なんてないからな?説明は省きます。

 

「でだ!俺と連絡先交換しないか!」

「いいよ、交換しようよ」

「おう!」

 

 真っ先に反応したのは蘭だった。いやでも蘭が反応するとか以外だな…俺の予想だと何度も土下座して手に入れるのかなって思ってたよ

 

「……はい、これで完了」

「……お!ありがとな!」

「ふふ、毎日連絡するね?」

「おう!いつでもウェルカムだ!」

「…………っ!」

 

 なんか一瞬蘭の反応がおかしかったがまあ気の所為だよな?

 

「私も追加していいよ!」

「お前のはいらねーが…まあ追加しとくよ」

「何その言い方!ひっどーい!!」

「冗談だよ、はいありがとうございますー(棒読み)」

「もーう!!」

 

 次にひまりの連絡先を手に入れた。でもひまりと話すことなんてなさそうだけどな?まあ一応だよ、一応

 

「最後はアタシだな!ソイ!」

「お、おう!ありがとな!」

「なーに気にすんな!」

 

 最後に巴か、てかソイ!ってなんだよ?なんかの掛け声か?

 

「シンはこれからバイト?」

「おう、蘭もか?」

「――……うん」

 

 そうか

 

「だったら一緒に行こうぜ!」

「――……いいよ、行こうよ」

 

 蘭と一緒にバイト先に向かう、なんかひまりと巴は用事があるからまだ残っとくだとさ

 

「結局蘭のバイトってなんだ?」

「絶対教えない」

「えーなんでだよ、なんか恥ずかしい仕事でもしてるのか?」

 

 例えば、例えばそーだな?

 

「メイドカフェとかか?……って蘭がそんなことしないよな!」

「――……もし」

「――……ん?」

「もしあたしがメイドカフェでバイトしてたらシンはさ、き、来てくれる?」

 

 赤面の蘭がそう言うが…何その言い方!?まるでバイトしてるみたいな言い方じゃないか!

 

 待てよ?蘭のメイド姿か…想像してみるとそれはそれはとても可愛いな!

 

 いや、でもメイドって言ったらあいつが頭に浮かんでくる、あれ?あいつって今でも生きてるのか?

 

「まあそんな所でバイトなんてしてないけどね」

「なんだよそれ!?」

「――……ヒントはね」

 

 そう言い蘭は俺に近づき

 

「シンが好きそうなところだよ」

 

 耳元で囁くように蘭が言う

 

「……な、なんだよそれ!?そんなのヒントじゃねーよ!」

「ふふ、そーかもね?それじゃ夜にね」

「お、おう、またな?」

 

 とりあえず別れの挨拶をしてお互いのバイト先に向かった。

 

 久しぶりのバイト、それはそれはキツかったよ?でも後半から感覚取り戻して前出しも接客も神対応でしたさはい!

 

 休憩になり携帯を付けてみるあら不思議ー通知の嵐ですよ

 

 ひまりからと巴からと蘭からだな?なんか昨日なんてなんもないロック画面だったけど急に賑やかになったな!

 

「あれー?シン君携帯買ったの〜?」

 

 同じく休憩していたモカから話しかけられた。

 

「ん?あーなんか手に入ったんだよな」

「へーじゃーモカちゃんと連絡先交換しようよ〜」

「いいぜ!元々モカとは交換するつもりだったしな!」

「おー嬉しいこと言ってくれますな〜」

 

 当たり前だろ?だってお前は

 

「だってお前は俺の初めての友達だからな?」

「…………っ!」

 

 そう言うとモカが泣いていた。

 

「も、モカ!?な、なんで泣くんだよ!?」

 

 モカの泣いてる姿なんて初めて見た。だってあのモカだぞ?

 

「い、いや〜なんか成長したな〜って」

「――……お前は俺の親かよ」

「うん、ママはいつでもシン君を愛してますよ?」

「そ、そーゆうことは嘘でも言うじゃねーよ!」

 

 泣いてたからなんか気を使ったが…いつも通りのモカに戻ったな

 

「――……モカ」

「なーに〜?」

 

 なんだ、こーゆうのってあまり友達に言うものじゃないけど

 

「俺と友達になってくれてありがとうな」

 

 笑顔で言ってるって自分でもわかる。人に感謝を言う時は真面目な顔だけじゃないんだよ、笑顔も大切なんだ。あれだな?俺もこころに影響を受けたのかな?

 

「友達じゃなくてもいいですよ〜?」

「いやそれは気が早いだろ」

「気が早いってことはそのうちはってことかな〜?」

「なっ!?ち、違う!違うぞ!」

「もーうシン君素直になりなよ〜」

「お前やっぱりダメだなー!!!!」

 

 バイトの休憩室にてシンがまたまた叫んでいた。その後はリサ先輩も現れ連絡先を交換して店長とも交換した。店長のやつ見てみたけど女ばっかりですげーって思ったさあはは!

 

 バイトも終わり家に帰り疲れ切ってたからすぐに寝ようとしたさ、したけど

 

「――……ん?通知だ」

 

 見てみると蘭からのメッセージだった。すぐに返事をして寝ようとするがまたすぐに返ってくる。それを何度も何度も何度も繰り返して時間は深夜まで続く。

 

 蘭には話をして寝ることになったが次は何故かひまりから連絡が来た。来たがもう眠くて無視してその夜は眠りにつく…と思ったところ

 

 ブーブーブー

 

 電話がかかってきた。

 

「――……なんだよ」

「あ、起きてたんだ〜おはよ〜」

 

 電話の相手はモカだった。

 

「――……なんだよ、眠いんだよ、寝かしてくれ」

「寝てもいいよ〜あ、電話は付けたまんまでね〜」

 

 意識がもうろうとしていた。

 モカのやついきなり電話かけてきて寝てもいいよって何考えてるのやら…まあ寝ていいなら寝るさ

 

「…………すー」

「……あれ?寝ちゃった?まあいっか、えへへ〜」

 

 どれぐらい寝ただろうか、目覚まし時計がなり眠い目を擦りながら大きな欠伸をして起きる

 

「……すー、すー」

 

 あ?なんか誰かの寝息が聞こえるんだが

 

「お、俺の携帯からだ!?なんでだ!?」

「……あ、シン君おはよぉー」

「は!?モカ!なんでだよ」

「だって〜寝落ち通話したからね〜」

 

 寝落ち通話…?まて昨日確か寝る直前にモカが電話掛けてきてそれで俺は寝て…

 

「つまり……は、ハメられた!?」

「えっへへ、シン君の寝息可愛かったよ〜?」

「んだよそれはー!?」

「寝言でモカ大好きだよって言ってたよ?」

「はっ!?」

 

 え!?なにそれ!俺ってそんなこと言ってたの?それはないな!絶対にない!言ってないからな!?(後日嘘だと言われました)

 

「シンくーん、結婚する〜?」

「だからしねーって!」

 

「あーもう!不幸だぁぁあああ!!」

 

 今日の日ほど最悪な出だしの日はないと思う瞬間だった。

 

「(あ、彩先輩の連絡先聞くの忘れてた!)」

「(――……今度聞くか)」

 




次回から話が進みます。今回はまー休憩回ってやつですかね!

そろそろシンの口癖もわかってきたんじゃないでしょうか?あ、不幸だ以外でですよ?わかった方は感想にて回答お待ちしております(笑)

少しでも面白いと思ったら感想と投票お待ちしております!それでは次回でお会いしましょう!


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弦巻シンは恋愛経験0である

お久しぶりです。実は免許を取るために勉強してて更新が遅れました。無事に免許は取れました!一発合格でよかったです(笑)

その後友達とドライブしてて更新が遅れたなんて口が裂けても言えない…

それではどうぞ!


俺はいつも朝は一人悲しく登校している。周りを見ると友達や恋人同士で登校している奴らがチラホラいる、俺も友達と登校してみたいなー誰でもいいから誰かと登校してー

 

「シンくーん!!!!!」

 

 誰でもいいと言ったけど…さすがにひまりはなー学校違うし行きたくても途中までだな

 

「――……なんだよひまりー」

「どうして連絡無視するの!?」

 

 連絡無視?あーあの時のやつか!あの時はそーだな?眠くて寝てしまったからな…やべ、あのことも思い出して恥ずかしくなってきた。

 

「シン君?私と話せて赤くなるのは嬉しいけど…もーう!照れるじゃん!」

「勝手に勘違いしてろ馬鹿野郎!?」

 

 なんで俺がひまりと話せただけで照れんだよ!お前と話して照れるレベルなら俺は彩先輩とお話なんてできてない。てか彩先輩の連絡先を知りたい所存であります!

 

「巴が話したいことあるから暇な日教えてって連絡したの!見てないの?」

「あーそれな、ちゃんと見たぞ?」

「今見てるじゃん!?」

 

 なんかあれだな?モカの気持ちがわかる気がするよ

 

「……で?話ってなんだ?」

 

 巴からなにか俺に話すようなことあったか?……もしかして!

 

「おうおうおう!てめぇうちのひまりおちょくってんのかあぁぁん?」

「ちょっとツラ貸せや」

「……は、はい」

 

 も、もしかしてこんなことが起きるのか!?

 

「それでー暇な日いつなの?」

「すまんひまり!俺が今までお前にとってきた態度は謝る!」

 

 その場に勢いよく膝をつき

 

「どーか命だけは勘弁してください!」

 

 財布から1000円札を取り出しそれを見せながら道端で土下座をしていた。

 

 いやだって巴にいや!巴の姉貴に締められるかもしれないんだぞ!?命がいくらあっても足りんは!

 

「きゅ、急にどうしたの!?」

「謝るからゆ、許してく」

「私はなんとも思ってないから!大丈夫だから顔を上げてよ!」

「そうか、ならいいや」

「反応早や!?」

 

 出した1000円札を財布にしまい。その場に立ちあがり膝に着いたら汚れを払っていた。

 

「暇な日なー今日は珍しく平日なのに暇だぞ?」

 

 なんか店長がお前働きすぎだから休んでいいぞって連絡来たからな、いやー携帯って便利ですな!

 

「だったら今日でいいかな!放課後迎えに来るから待っててねー!」

「――……途中まで登校するとかの考えはないんだな」

 

 今日も結局1人で登校することになった。

 

◆◆◆◆

 

 放課後。誰もが今日の授業を終え自由の時間。部活に専念するのもよし、早く帰って遊ぶのもよし、俺はそーだな

 

 ここから動きたくないです。

 

「(いやだなー巴からの話ってなんだよ)」

 

 ひまりは許してくれたが…もし巴の姉貴が許してなかったら?それとも朝の件は俺をはめるためひまりの罠か?

 

 あっはっはっー!と高笑いするひまりが頭によぎってしまう。

 

「(よし!逃げよう)」

 

 逃げるは恥だが役に立つって言うだろ?つまりそれだよ

 

 リュックを取り教室のドアを開け帰ろうとしたところ

 

「あ!もー遅いよ!」

「――……どーしているんだ?」

 

 あれれ〜?おかしいぞ〜?ここは花咲だから羽丘の生徒は入れないんじゃー

 

「部活の応援とかで入ってもいいんだよ!」

「なにそれ!?知らなかった!」

 

 なんで花咲生徒の俺より生徒じゃないひまりが知ってるんだよ!?まあ別にいっか

 

「よーし!それじゃつぐの家にレッツゴー!」

 

 あーはいはいもう逃げれないですもんね?締められるのは確定のようだが...

 

 ん!?つぐの家?つまりつぐみの家!?え!入れるの!あのつぐみの部屋に入れるのか!?

 

「はい!着いたよ」

「――……だと思いましたよ!」

 

 前に蘭からつぐみの家は喫茶店してるって聞いてからな!何となくわかってたさ!?けど最後まで信じたいもんだろ!

 

「いらっしゃいませ!」

「つぐー!巴は?」

「奥の席にいるよ!」

 

 そう聞き奥の席を見てみると腕を組んで悩んでいる巴の姿があった。

 

「(こ、怖えー!なにあれ!?完全にやられるやつやん!)」

 

 もう終わりだと思った時。マイエンジェルこと羽沢つぐみが話しかけてくれた。

 

「……シン君…巴ちゃんになにかしたの?」

「それがつぐみ…全く身に覚えがないんだよ!」

 

 ひまりと巴に聞こえないような声でヒソヒソと話をする。

 

「ここに来た時からずっとあんな感じで…時々「よーし!決めた!」とかいって」

「次には「やっぱり無理だ!」って言ってて…」

 

 それって…

 

「よーし決めた!お前は轢き殺しだ」

「いや?やっぱり無理だ。蒸し焼きな」

 

 って話じゃないの!?

 

「いやいや、巴ちゃんはそんな人じゃないよ?」

「ほ、本当か?」

 

 てかなんで俺が心の中で思ったこと否定してるんだよ、少し以上に恐ろしい方ですな

 

「シン!何してんだよ!は、早く来いよ!?」

『…………!?』

「と、とりあえず機嫌戻してくれると助かるかなー」

「死んだら骨は拾ってくれよな」

 

 縁起でもないことをいい巴とひまりが座っている席に座る

 

 座ると同時につぐみが来て注文は何にするかと聞いてきた時。ひまりのやつがブラックコーヒー3つでなんていいやがったから苦手なコーヒーを飲むハメになった。

 

「……で、話ってな、なんだ?」

 

コーヒーをゆっくり飲んでいる2人に飲めない俺はそう聞いた。

 

「あ……実はな、シンに話があるんだ」

「――……お、おう」

 

 とうとうこの時が来るのか…俺の命も今日まで、せめて卒業はしたかったです。何とは言わないけど

 

「あのな!アタシ、そのー」

「……おう」

「……実はだな!」

「……シンの……シンの!」

 

 あれ?この流れって俺が思ってたヤツと違う流れじゃないか?てかこの流れどーみても告白だろ!?え?俺にもとうとう春が来るんですか!?

 

 お、落ち着け、落ち着け俺…

 飲めないコーヒーを震える手で持ちながら口に運ぶ

 

「シンの……クラスメイトのやつが好きなんだ!」

「ぶふぉー!!!」

「ちょ、ちょっとシン君!コーヒー吹き出さないでよ!」

 

 ですよ、そーですよね!?俺に春なんてまだ来ませんよね!?

 

 悲しさの勢いで残りのコーヒーを一気に飲み干す。うん、やっぱりコーヒーは苦くて苦手だな

 

「巴!やっと言えたね!」

「ああ!これもひまりと場所を提供してくれたつぐのおかげだな!」

「いやー!スッキリした!」

「スッキリしたじゃねーよ!?」

 

 何考えてるんだよこいつらは!

 

「俺にその話をしてどーしろと!」

 

 なんだ?好きな人ができての自慢話か!?生憎だがこちとら好きな人なんていませんよ!なんだよそれを馬鹿にしに来たのか!?

 

「もーわかってないな!」

「つまりだ!」

『私(アタシ)達の恋愛成功のため力を貸してほしいの(んだ)!』

 

「――……は?」

 

 その後説明を受けた。

 

 巴は文化祭で知り合った男子生徒と仲良くなり最後のキャンプファイヤーを一緒に踊ったらしい。

 

 ひまりは前からサッカー部の先輩が好きなんだとさ、けど一緒に踊ることはできなかったとのことで...二人とも好きな人が花咲の生徒さんらしい。それで花咲の知り合いの男子が俺しかいないってことだから俺に頼んだってわけさ

 

 巴に関しては相手が俺と同じクラスだから尚更協力して欲しいとのこと

 

「お前らの意見はよーくわかった」

「けどこれだけはハッキリ言わせてくれ!」

『…………』

 

「――……俺は恋愛経験ゼロだぞ?」

 

 なんせ小さい頃はこころとばっかり遊んでいたため女友達どころか男友達すらいなかったぞ!それにさっき言ったよな!?好きな人がいないって!

 

「――……それは困ったな」

「シン君その顔だから女遊びしてるのかと思ってた」

「お前らと友達になる時に友達誰もいないって話したよな!?」

 

 それに女遊びって…そーゆうことはまだしてないですよ!あ、手を繋いだりとかモカや蘭でしたことあるけどね?

 

「だったらシン君には恋愛の勉強してもらわないといけないよねー」

「まて、俺って協力する前提なの?」

「え!?協力してくれないのか!?」

 

 と、巴!そのわざとらしいやり取りするなよ!……まあそんなふうに言われるとさ!

 

「いいさまかせろ!俺がお前らを幸せにしてやる!」

 

 おーと言いひまり達以外のお客さんも拍手をしていた。これはあれだな?なんか誤解されてるが…まあ別にいっか

 

「よーし!それでは早速勉強開始だね!」

「――……おう!」

 

 協力するからには真面目にやってやる!お前らの恋愛を俺が成功えと導いてやるさ!

 

「――……ってことでここに来ました!」

「……なんでTATSUYAなんだ?」

 

 恋愛の勉強をするって聞いたんだけどな?なんでTATSUYAなんだ?つたや?知らんならこっちはTATSUYAなんだよ

 

「わかってないなー!恋愛の勉強!」

「それはギャルゲーで勉強するんだよ!」

「――……へ、へー」

 

 ギャルゲーですか…そのーなんか乗るきしねーなてか値段高!?く、くそう!こないだ家具とか買ったばかりなのに!まあー貯金はあるけどさ!

 

「シン…そのー金ないなら無理しなくていいんだぞ?」

「いやいいよ、買うよ」

 

 せっかくあの巴が好きな人に告白しようとしてるんだぞ!?それにさっき約束したしな…俺はもう約束を破るようなことはしないんだよ

 

「あ、私みたい本があるから見てきてもいい?」

「別にいいぞー」

 

 そこら辺に飾ってあったゲームのカセットを見ながら返事をした。

 

「アタシも着いていくよ」

「巴サンキュ〜!」

 

 じゃー行っくるねー!といいひまりと巴は本のコーナーに向かっていった。

 

 1人取り残された俺はそのギャルゲーコーナーに足を運んだ。運んだはいいが…

 

「(ゲーム機本体がねーじゃん)」

 

 ゲームをするためには本体がなくちゃできませんよね?カセットだけ買ってもゲームはできないからな

 

 次はゲーム機本体が売られているコーナーに向う。どーやら本日に最新のゲーム機が発売されるそうだ。なになに?過去作のカセット全対応?よくわからんかすげーのか?てかどのカセットがどの機種対応とか知らねーしもうこれ買いますかね…

 

 本体を取ろうとしたとき同時に取ろうとしたのかわからないが人の手と触れた。

 

『…………!?』

 

 お互い慌てて手を引っ込めて顔を見る

 

「――……会長!」

「――……つ、弦巻君!?」

 

 まさかの会長こと白金燐子先輩!誰もが一度は見たことがあろうこの方!なんせ会長!そしてこの……!これだよこれ!?言わなくてもわかるだろ!?

 

「か、会長もこのゲーム機買うんですか?」

 

 話が詰まる前に聞くことがベストだと俺はいろいろ通して学んだからな!

 

「はい…私の分はもう買ったんですが……そのあこちゃん…じゃなくて友達のために」

「へ、へー凄いっすね」

 

 友達のためにゲーム機買うとかあなたはお金持ちですか!?って俺が言っちゃダメだな、完全に馬鹿にされてると勘違いしてしまう。

 

「つ、弦巻君は…どうして買うんですか?やっぱり…ゲームに興味があるん……ですか?」

「あーいやーゲームに興味があるって言うか…そのー」

 

 会長に説明をした。するとどーだろう

 

「わ、私!おすすめのギャルゲーあ、ありますよ!」

「――……へ?」

 

 手を握り大声でそう言う会長。あのですね…周りからの視線が痛いのでその言い方はやめて欲しいかもしれません!

 

「……!す、すみません…私つい」

「い、いえいえ!大丈夫です!」

 

 むしろ嬉しいです!

 

「えっと、紹介してもらえますか?」

「――……はい!」

 

 またまたギャルゲーのコーナーに戻る俺だった。けど…この人、白金燐子先輩を俺は甘く、いや甘々に見ていた。

 

「この作品はですね!マイナーのゲームであまり人気はないんですが主人公がカッコイイんですよ!」

「原作は小説なんですがゲーム化されて!」

「…………」

 

 な、なるほど

 

「あ!これはギャルゲーじゃないんですがヒロインが可愛いんですよ!」

「3つのルートがあってですね!ゲームの進行上でルートが変わるゲームなんです!」

「……は、はあー、なるほど」

「それでですね!?聖杯をめぐる戦い」

「そ、それ以上はいろいろとやばいので控えてくださいね!?」

「もともとはR18作品だったんですが全年齢版が出てですね!」

「い、いいから少し黙ってくださいよ!?」

 

 これはさすがにやばいよ!察しがいい方ならすぐにわかる!てか察しが悪い人でもすぐにわかるよこれは!?

 

「あ、会長、これはどーなんですか?」

 

 目の前にあったカセットを取り先輩に見せるが

 

「あーそれはやめた方がいいですよ?」

「主人公がクズなんですよ、クズ、みんな口を揃えて主人公の名前を呼んでタヒねと言ってますね」

「へ、へーそ、そーなんですか」

 

 会長さんがまさかあの性格を変えるぐらいに興奮するとは…それほどギャルゲーは凄いものなのか?てか会長が凄いだけなんじゃないのか!?ゲームを好きすぎないとこんなに詳しくはならねーだろ!?

 

「と、とりあえずおすすめ作品は全部買いますね」

「す、すみません!私……そのゲームのことになるとつい……!」

 

 あ、自覚はあったんですね

 

「大丈夫ですよ!会長のこと知れて俺は嬉しいです!」

「つ、弦巻君……!」

「……是非感想を聞かせて…くださいね?」

「――……はい!全クリして来ます!」

「…………」

 

 ん?会長が黙り込んだぞ?一体どーしたんだ?…まさか!

 

「ふっふっふっ!それはさすがに無理ですよ?」

「なんせ選択が難しいので時間かかりますし……それに」

「わ、わかりました!わかりましたから落ち着いて!?」

 

 会長を落ち着かせゲーム機本体とおすすめ作品、それと目に付いたカセットを買った。あー会長もゲーム機買ってたなーその後は会長が渡しに行くとのことでその場で解散

 

「(俺もひまり達のところ行くか)」

 

 さっきは本のコーナーに行ってたから今もいると思うが…

 

「あ!シン君いた!」

「探したぞシン!」

 

 向かおうとした時後ろから声をかけられ気づいた。

 

「あーすまん、結構時間かかった」アハハ

 

 誰かがギャルゲーについて熱く語ってたからな!会長とか白金先輩とか燐子先輩とかな!

 

「で?お前らは何買ったんだ?」

「あ!聞いちゃう?それはねこれを買ったんだー!」

 

 なになに?男を落とすテクニック100?いやそれ買うぐらいなら俺に協力してもらう必要なくないか?まあ今からだと遅いよなーだってゲーム買ったし!?

 

「――……で、巴は?」

「アタシはこれだ!」

 

 ラーメンの美味しい店特集?そんなの三郎でいいだろ!おやっさん巴に浮気されたって泣くぞ!?

 

「人が必死にゲームを選んでいる時にお前らは何してんだよ……」

 

 なんならもっと会長の話聞いてても良かったかもしれねーな!けどそれはさすがに話が……な?ここでは言えないレベルだよ

 

「あ!この一週間はちゃんと勉強してよね!」

「言われなくてもそのつもりだよこの馬鹿野郎が!」

 

 会長に終わらせて感想言うって言ったしな!やってやる!

 

「この作品全部終わらせる勢いでよろしくね!」

「ま、まて、ひまり!さすがにそれは無理だ!」

 

 いくらなんでもそれはシン君無理です!バイトとかバイトとかあるので無理です!

 

「えー協力してくれるって言ったのに…」

「…………!」

 

 ひまりのやつは少し泣き目なりながらそんなことを言う。

 

 そ、その言い方はやめろよな!?反則だろ…

 

「わ、わかったから!全部やるから泣くなよ!な!」

「本当!?いやーさすがシン君だね!」

 

 ひまりはすぐに笑顔になりそう言った。

 

「てめぇ嘘泣きじゃねーか!?」

「えっへん!騙された方が悪いんですよね?おっほっほー!」

「……巴、お前もなんか言ってやれよ」

 

 巴の方を向くがさっき買ったラーメンの本をずっと読んでいる。あのー君の恋愛を成功させるためにここまで来たんじゃないのですか!?

 

「とりあえずシン君!任せたよ!」

「お!ここのラーメン屋さん美味そうだな!」

 

 あのーもう言ってもいいですよね?TATSUYAの前とか関係なしにもうさっきからずっと

 

「あーいつもいつも不幸だぁぁあああ!!」

 

 近くの人は俺のことをどう思うのか、そんなことは一切気にせず走って帰ってやったさ、そしてその日から俺の家での生活は一気に激変するハメになった。まあその話はまた今度だな




巴がシンのこと好きだと思いましたか?残念違いましたね、期待させるような形になってしまいすみませんでした!

急いで書いたので内容がまとまってないかもしれませんがその点よろしくお願いします。

少しでも面白いと思ったら感想と投票をよろしくお願いしますね!


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弦巻シンは女を落とせない

先に言っておきます。りんりん推しの人達申し訳ございません!話は面白いと思うのでお許しを!!それではどうぞ!


 電気がついてない部屋に大きな明かりがひとつ、その前に布団を身にまといテレビの前で胡座を開きながら黙々とゲームを行う人がいる

 

「あのね…私転校しちゃうの…」

 

 女の子がそのセリフを言うと選択画面が出てくる

 

1.そっか…ならお別れだね

2.そんな!やっと仲良くなったのに!

3.それはダメだ。お前は俺の女だ

4.だったら!俺も一緒に転校してやる!

 

 この4つの中のうち3つがバットエンドルートになっており正規ルートは1つしかない。

 

 そう、このゲームは選択が多すぎるくせに正規エンドを迎えるためにはとても時間がかかる

 

「……くん、君が好きです!大好きです!」

 

 スタッフロールが流れた。どうやら俺は正規エンドまで行けることが出来たようだ。つまり、つまりだ

 

「――……終わった」

「――……終わったぞー!!!」

 

ピピピピピピピピ

 

「…………うるせぇ!!」

 

 近くに置いていた時計が鳴り響いたため蹴り飛ばして止めた。外は鳥の囀りが聞こえセミのうるさい音も聞こえてきた。

 

「あー学校行かないとー」

 

 この1週間はギャルゲークリアのためずっと徹夜をしていた。1日2日はまだ大丈夫だろうと思いサボっていたが後半になるにつれてまじで全部クリアは難しいと気づいた。でも俺はやらないといけないという強い使命感に縛られており何時間もかけ今日のこの日ついに全てのゲームを終わらせた。

 

 ……が、その最中に何度も地獄を見た。

 バイト先で死にそうになりモカが

 

「大丈夫?おっぱい揉む?」

 

 とか訳分からんこと言い出し危うく揉みそうになったところを店長に止められた。止められたあとはクズを見るような目で見られて泣きそうになりました。

 

 蘭は弁当を作ったから食べてくれとのことで食べてみたが…軽く死にそうになった。

 

 彩先輩は連絡先を聞こうとしたが囲いこと白鷺千聖先輩が近くにいたため諦め

 

 ひまりはひまりで呑気にやっててイラってきてモカで揉めなかった胸を揉んでやろうか!?って思ったがつぐの喫茶店だったからやめた。

 

 家に帰ればギャルゲーを行い。眠くなったら近くのコンビニでエナジードリンクを買う。何度も買ってたから店員さんに覚えられちゃったよ…

 

 そして今日、やっと終わりさすがに疲れたから学校をサボろうと思ったが

 

\ピンポーン/

 

「――……はい」

「おっはよー!学校一緒に行こうよ!」

 

ガチャ

 

 インターホンの受話器を取り返事はしたが聞き覚えのある声で急いで受話器を元の場所に戻した。

 

 何度かインターホンの音が聞こえたが諦めたのかもう鳴らなくなった。

 

「……これなら…いい夢でも見れそうだ」

 

 ベットに入って1秒で寝ました。寝ても数分後に叩き起される

 

「シーンーくーん!おーきーて!!」

 

 ひまりに布団を取られた。

 

「――……どーやって入ってきた?」

「千聖さんにフロント開けてもらったの!」

「あの人このマンションの住人かよ!?」

 

 長く住んでるけどすれ違ったことなんて一度もないぞ!?てか家の鍵を閉めてない俺が1番悪いんだがな

 

「てか寝させろよー俺は徹夜してキツいんだ」

「今日で一週間たったよ!成果見せてよ!」

「…………お前は鬼か?」

 

 目の前に疲れ果てて眠たい人がいるのに無理やり起こして学校に連れていくなんて…酷い。酷すぎる!

 

「わ、わかった!学校行ったらつぐのところでなにか奢るから!」

「――……まじ?」

「うん!一週間頑張ったしご褒美ぐらいはあげるよ!」

「――……よし、行く!」

 

 寝間着姿から制服にすぐ着替え学校に向う。その途中コンビニによりいつものエナジードリンクを購入した。

 

「……ごめんね?私達のせいで…」

 

 歩きながら飲んでいたら隣にいるひまりが急にそんなことを言ってきた。

 

「……んなこと言うなら最初から頼むなっての」

「…………だ、だよねー」

「……まあ、いい経験にはなったから」

「――……う、うん!」

 

 俺は疲れてるから話そうにも話せないだけだが…ひまりのやつは隣でずっと黙ってる。心做しか頬が少し赤くなっているような…ないような?あれ元からこんなんだったけ?てかこいつって…

 

 

 

こんなに可愛かったか?

 

 

 

「ち、近い!近いよ何してるの!」

「あ、ごめん、可愛かったから見てた」

「――……は、はあっ!?」

「…………あれ?俺今なんて言った!?」

 

 まじで今なんて言った!?可愛いとか言ってなかったか!?ち、違うぞ!そのアレだ!眠くて頭がぼーとしてて!だから違うぞ!

 

「し、シン君は眠たいとそんなふうになっちゃうのかな?」

「ご、ごめんひまり!違うんだ!違うんだって!」

 

 全力でさっき起きたことを否定する。

 

「はいはい私は可愛くありませんよーだ」

「い、いやそーじゃなくてだな!」

「はいこれ」

「…………?」

 

 なんだこれは?イヤホン?だけどケーブルがないぞ?

 

「ワイヤレスイヤホン、これ耳につけて昼休み待機しててね」

「…………お、おう」

 

 ひまりのやつさっきのと明らかに態度が違う。や、やっぱり怒らせてしまったか?普段ひまりに大しては雑にあつかってるが…別に嫌いなわけじゃないんだよ、そのなんて言うかこの方が絡みやすいって言うか…

 

「……じゃ、私こっちだから」

「……おう」

 

 その後ひまりと別れまたひとり悲しく登校していた。

 

 

 

「なにあれ……反則すぎるよ」

 

 そこには顔を赤くした少女がひとり

 

「ち、違う違う!意識するな私!私の王子様は先輩だけなんだから!」

 

 自分の頬を叩きその後目の前にいた幼馴染達と一緒に登校するのであった。

 

◆◆◆◆

 

 やらかした。午前の授業全部寝ていた。担任が担当する英語だけは寝たらめんどくさいから起きようと思ってたが…完全に寝てた。起きた時に沙綾から放課後居残りとだと聞かされた時、それはそれは悲しかったですよ

 

 それに寝過ごしたせいで昼飯忘れたため購買で何か買おうとしたが売り切れで、学食に行くにも全席埋まってる

 

「はあ、不幸だ」

 

 なる腹を抑えながら廊下を歩いている時

 

「…………っ!?」

 

 耳につけていたイヤホンから急に音が聞こえ出した。電話のコールのようだ。携帯を出して誰からの電話かと確認すると…

 

「……ひ、ひまりか」

 

 昼に付けててとのことだから電話かけてくると思っていたが本当に掛けてきたんだな

 

「……も、もしもし!?」

 

 朝の件もあったからひまりとは少し絡みづらくなってると思ったが

 

『あ、シンくーん!こんにちは!』

「お、おう、こんにちは」

 

 なんだ、普通のひまりだな!意識してるのが俺だけだったのか

 

『では早速貴殿の成果を見せてもらうじゃないか!』

「――……は?」

 

 急に何を言い出すんだ?

 

『だーかーら!ゲームで身につけた知識を生かして女の子落としてきてって話!』

「ちょ、ちょっと待て!?それは違うだろ!」

 

 待て待て待ってくれ!それはつまりあれだろ?ゲーム見たくに女子を落とさないといけないってことだろ!?んな無茶な!

 

『――……へーそんなこと言うんだ』

 

『――……みんなに朝のこと言うよ?』

「お、お前やっぱり覚えてたんじゃ!」

『みんなーじつはね、シン』

「わ!わーわーわ!わかった!わかったから!」

 

 ひまりが脅してきたもんだから急いで了承してしまった。てか知られてもどーでもいいんじゃないのか!?なんで止めたんだよ俺は!てか…これからどーすんだよ!?

 

『とりあえず今からあった女子落としてみようか!』

「――……簡単に言ってくれるな!」

 

 そんなやり取りをしている時だ。

 

「弦巻?ここでなにをしてるんだ?」

「――……せ、先生!?」

 

 よりにもよってなんで担任のあなたが来るんですか!?

 

『先生なの!?生徒と教師、秘密の恋愛!いいよいいよ!』

「なにがいいんだよ!」

 

 んなもんバレると厄介だし先生と恋愛なんてしませんから!するなら生徒同士でしたいっての!

 

「……ん?どうした弦巻?」

「…………っ!」

 

 な、なんだこの人は!?今日はいつもと違うような…あっ!

 

「せ、先生口紅…変えましたか!?」

 

 なんか唇の色がいつもと違ったから聞いてみたが

 

「ほう、弦巻は気づいたか、職場の馬鹿どもは気づかなかったのにな」

『ここで攻めるんだよ!』

 

 せ、攻めるってどーすんだよ!?

 

『私が言うことそのまま言って!』

 

『………………』

 

「はい、だって俺はいつも先生を見てますから」

「……ほーそうかそうか、私を見ているか」

 

 き、効いたか!?

 

「いつもいつも授業をまともに受けてないのによくそんなことが言えるな?な?弦巻シン」

「………………」

「……す、すみませんでした!!」

 

 走ってその場を後にする。多分あのままいたら説教されるところだったから逃げて正解だったな

 

『なんで授業聞いてないの!?』

「え、英語は完璧だからいいんだよ!」

『しれっと言って…次だよ次!』

 

 次って誰だよ、周りに人なんていねーぞ?

 

「あ!シン君だ!」

「……おーす香澄!元気にしてるか?」

 

 ここで香澄が出てくるのか…友達を落とすのはどーも気が乗らないんだが!

 

『香澄ちゃんなら案外行けるかも!頑張ってね!』

 

 他人ごとのようにいいやがって!いつか絶対痛い目見せてやる

 

「――……よ、よう香澄」

「……?さっきも挨拶したよ?」

「そ、そうだったそうだったな!香澄!」

「なんか今日のシン君少し変だよ?」

 

 うう、まさか香澄に変と呼ばれるとは…変なのはお前だろって言いたいが今は言えないんだよな

 

『何してるの!?早く次のステップに!』

「だー!何言えばいいかわからねーんだよ!」

「――……シン君?」

 

 はっ!?ひまりと通話してることを香澄は知らないんだ!だから俺がここでひまりと喋っていても独り言のようにしか聞こえない!つまり…

 

「(俺って変なやつじゃん!)」

 

 その場に膝をつく

 

『また私の通りにやってみる?』

「――……おう」

 

 この際もうどうでもいい!香澄を落とせればそれでいいんだ!

 

『…………』

 

「か、香澄!」

「うん!シン君なーに?」

 

『…………』

 

「俺な…ずっと香澄を見ていたんだ」

「…………ん〜?」

 

『…………』

 

「体育の授業で香澄の体操服姿を見たらさ?」

 

『…………』

 

「俺の息子は元気100倍になるんだよ」

 

『…………』

 

「俺と突きあってください」

 

 ん?

 

「すまん、漢字間違えた、付き合って」

 

「……この変態がー!!!」

「グハー!!」

 

 誰かに蹴り飛ばされ窓ガラスに直撃。バリンと音を立てガラスは割れ、俺の頭が突き刺さってる状態だ。あのー普通に死ぬレベルですよ!?

 

「とうとう本性表わしたな弦巻シン!」

「――……市ヶ谷さん!?」

 

 俺を蹴り飛ばした人は市ヶ谷さんだった。弦巻シンって前まで名前呼びだったじゃないですか!?

 

「ち、違う!これにはいろいろと深い事情があってだな!」

「知るかそんなの!事情とかで……」

 

 とかで?

 

「突きあってくださいとか…とか…学校でそんなことしちゃダメだろーが!?」

「ち、違う!漢字を間違えたんだよ!?」

 

 俺は必死に否定するが信じてくれない。そりゃそーですよね!あんな場面見たら誰でもそう思いますよね!

 

「えっと…シン君?」

「…………」

 

「……すみませんでした!!!!」

 

 その場に勢いよく土下座をして許しを得る前にその場から逃げだした。

 

「はあはあはあ……はあ」

『もー何してるの?』

「てめぇがわざと違う言い方したんだろ!?」

 

 こいつが付き合っての言い方を少しイヤらしく言ったためにこんなことが起きたんだよ!誰のせいだと思ってんだよこの馬鹿野郎!

 

『突きあってくださいだって!あはは!』

「……てめぇを突き上げるぞクソビッチ」

『は、はあー!?私ビッチじゃないし!処女…』

『…………』

 

 いやいや俺は何も言ってないよ?そこまで言った自分を恨むんだな?ひまりさんよ

 

『う、うるさいうるさい!シン君も童貞のクセに!』

「童貞でなにが悪い!こっちには女を選ぶ権利だってあるんだぞ!?」

 

 俺が悪いんじゃない!だって俺イケメンだし?本気出せばすぐに卒業できるさ!キットな!?

 

『うるさい!変態!スケベ!エッチ!』

「その単語全部同じ意味だろ!?」

 

 そんな誰かに聞かれたら死ぬほど恥ずかしいことを話しながら廊下を歩いている時

 

「あ…弦巻…君、こんにちは…です」

「か、会長!!」

 

 ここで登場花咲の会長こと白金燐子先輩!あなたのおすすめ作品は一通り済ませてきましたよ!

 

「会長!ゲーム!クリアしてきましたよ!」

『ちょ、ちょっとなんの話し!?』

 

 ひまりが何か言ってくる、えーいじゃまだこんなモノ!

 

 イヤホンを取りポケットの中に入れる

 

 こいつの言う通りにやったら間違いなく問題が起きてしまう。だったらひまりの意見など聞かずに俺一人でやるまでだ!なーに相手は会長だ!ゲーム通りのやり方で落ちて俺のハッピーエンドルートだ!これで決まり!

 

『シン君!シン君!?』

『ダメだ返事がない。ただの屍のようだ』

 

 ……なんか聞こえるが黙っておこう

 

ドン!

 

「――……会長」

「――……つ、弦巻…君?」

 

 ゲームであったやつ、壁ドンを会長にする、そのあとは顎を持ち甘い声でこう言う。

 

「――……俺のこと好きなんだろ?抱いてやるよ」

「…………」

 

 キタ!これは初日にクリアしたギャルゲーの主人公の行動そのものだ!ギャルゲーを愛する会長がこの作戦で落ちないわけがない!

 

「……全然違う」

「…………へ?」

 

ドン!

 

「全然違うと言ったんです!」

「…………ひぃ!?」

 

 会長に壁まで押されその後何故か俺が壁ドンされる始末に

 

「まずですね!手の角度が違います!こうです!こう!わかりましたか!」

「……は、はい」

「次に顎に添える手の位置!全然違います!」

「すぐに唇を奪える角度をとるんですよ!」

「…………」

 

 あのーこれってアレだね?ひまりの時と同じ結果じゃ…

 

ドン!

 

「聞いてるんですか!?」

「は、はい!聞いてるんですが周りの視線がですね……」

 

 そりゃーあの会長が叫んでいたらこーなりますよね!?しかも何故か男子の俺が壁ドンされてるからね!?絶対おかしいでしょ!?

 

「はい!では次は弦巻君がやる番です!今学んだことをそのまましてくださいね!」

「…い、いやでもそのー」

「いいですね!」

「…………は、はい」

 

 もう手遅れだ!こーなった会長を抑えるのには無理がある!こないだ言ってた会長の友達さん、あの人がこの人をどーやって落ち着かせているか少し以上に気になる!

 

 先程の指摘されたところを意識しながらやる

 

「――……俺のこと好きなんだろ?抱いてやるよ」

 

 きゃー!って周りから聞こえるが気にしない。気にしたら負けだ!

 

「――……弦巻君?」

「…………はっ!?」

 

 後ろを振り向くと紗夜先輩がいた。

 知ってるよな?紗夜先輩って風紀委員長でめちゃくちゃ頭がいいんですよ、みんな憧れる風紀委員長!なんちゃってね

 

「校内で不純異性行動をしている人がいるとの連絡が来たため来て見ると…」

 

 今の状況、それは俺が会長に壁ドンしながら顎クイしている状況。誰もがそう思ってもおかしくない…よな

 

「弦巻君!今のは合格です!私感動しました!ここまで表現でき「あー会長は少し黙ってください!?」…はい」

 

 会長は会長でスイッチ入ってて止めれないし

 

「……とりあえず会議室まで来てください」

「…………はい」

 

 どこから持ってきたかわからんが手錠をかけられ連行される。周りからの視線が痛いのなんの

 

 もともとこんなはずではなかったんだよ!ひまりのやつが成果を見せろとか言ったからこーなったんだよ!

 

「あーまじで不幸だぁぁああー」

「その口癖、直したほうがいいですよ?」

 

 あれ?この流れで終わるんじゃないの?

 

「不幸だと口に出すから幸運が寄ってこないのかもしれませんよ?」

「――……さ、紗夜先輩!」

「――……かと言って今回のことはちゃんと事情聴取しますがね」

 

 ですよね!

 

「あーやっぱり不幸だぁぁああー!!!!」

 

 その後事情聴取され会長との件はゲームが原因だと説明すれば紗夜先輩は頭を抑えながら「白金さんは…」と言って、市ヶ谷さんに蹴り飛ばされ割れた窓ガラスはもちろん俺が払うことになった。なんでだぁあ!?




ひまりとシンは仲良しです。

あのーシンの声ですが自分の好きな声優さんの声を脳内再生してもらえると助かります。まあ限られてくると思いますがね(笑)

四月から更新は遅くなると思います。そのーね?四月といえばわかりますよね?それです



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弦巻シンと約束(デート)の約束

いやー話の展開が遅すぎる…書きたいことがたくさんあるんですよ!
それではどうぞ!


 夏本番も近づいてきており、気温が高い日が続く。そんな中ひまりに呼び出され放課後に羽沢珈琲店にてアイスココアを飲んでいたが…

 

「――……暑い」

「ご、ごめんね、明日には直ると思うから!」

 

 羽沢珈琲店はただいまエアコンを故障中とのこと、少しでも暑さを和らげることができると思ってたがどうやら無理そうだな

 

「弦巻君すまない、お詫びにアイスティーもどうぞ」

「い、いやいいんですか?」

 

 つぐみのお父さん、つまりマスター?さんがアイスティーを出してくれた。でも、まあくれるなら貰っておくか

 

「――……頂戴いたします」

 

 その後アイスティーをちょびちょび飲みながらひまり達が来るのを待った。

 

「ごめーん!少し遅れちゃった!」

「……遅れすぎ、めっちゃ待ったぞ」

 

 待ち合わせ時間前に来ていて5分遅刻、結構待ったと思います。

 

「もー女子が待った?って聞いたら今来たところって言うのが定番でしょ!?」

「ふっ、俺はそんなのに縛られないのさ」

「うわ、なにそれ!きもーい」

 

グハー!!

 

「し、シン!?大丈夫か!?」

 

 き、きもいだと!?なにがきもいんだよ!待ったから待ったと答えただけでこれですよ!もうシン君立ち直れません

 

「じょ、冗談だって!気にしないで!」

「そうか、冗談か」

 

 その後話は落ち着き。

 

「…………で、何用だ?」

 

 ここまで待ったんだ、何も用はないけどとか言ったら許さんぞ

 

「えっとね?巴……パス」

「はー!?ひまりが言えよ!」

「と、巴が言うべきでしょ!?」

「お、お前が代わりに言うって!」

 

 あーあー俺の目の前で言い合いしてますよ、まあガチの言い合いとかじゃないから止める必要はねーけどさ

 

「あのー用がないなら帰りたいんだが」

『ちょっと待って!』

 

 なんだよ早くしろよ!?今日はパスパレの特番があるんだぞ!早く帰ってリアルタイムで見なければ!

あ!また彩先輩と連絡先交換するの忘れてた…こないだひまりの言うことなんてきかづに彩先輩の所に行けばよかったな

 

「……し、シン!」

 

 どーやら話はついたそうだな

 

「えっとだな、その、デートの誘いをだな」

「あーそいつらに予約しろってか?」

「そ、そうだ!いやー話がわかってて助かる!」

「ア、ハハハハ…」

 

 もう惑わされないぞ!俺だって学ぶんだよ、デートの誘い、前までなら俺にか!?とか言ってたがもーわかる!俺じゃなくてお前らの好きな相手についてだってことをな

 

 てか思った。これって全然普通じゃなくないか?みんなに聞くぞ?あなたは誰かの恋路のサポート、もしくはキューピットになったことありますか?多分いねーよな?つまり普通じゃないんだよな!

 

 でも…まあ受けたからにはやりきるけどな

 

「…でだ、これがその、そいつの顔写真だ」

 

 と言って俺に写真をメッセージで送ってきた。

 

 見た限り巴とそいつのツーショットだな、てかここまでできるなら俺に頼らなくても自分だけの力でいけるんじゃないか?

 

「てかクソイケメンだな、腹立つから消すか」

 

 トーク履歴を消してやりました。

 

「なっ!それだとシンは誰かわからなくなるだろ!?」

「そうだった、もっかい送ってくれ」

「……ったく、恥ずかしいからな」

 

 とか言いながら送ってくる巴はやっぱりいいやつなんだよ

 

「私のは送らなくてもわかるよね?」

「……あーあれか?サッカー部のモテモテ先輩か?」

「そう!てかその言い方やめてよ!私じゃ無理みたいに聞こえるから!」

「あーはいはいめんごめんご」

 

 帰りの時はサッカー部のところだけ以上に盛り上がってるからなー主に女子が騒いでる

 

「おっけー明日にでも話し付けておくから」

『ありがとう!(とな!)』

 

 よーし話も終わったし帰るとするかね!

 

「ねぇねぇ!」

「……なんだひまり?もう話はついただろ?」

「シン君は好きな人とかいないの?」

「…………!」

「あ!それアタシも気になってたんだよな!」

 

 ひまりのやつが急に言ってきた。俺の好きな人か?んなもん

 

「……いるわけねーだろ!?」

「だよねー!シン君あたり強いからいるわけないか!」

「それはお前だけだっての!」

 

 暑さも忘れてた羽沢珈琲店の中で騒ぐ、幸い客が誰もいなくて良かったがな

 

「えーシン君の好きな人はモカちゃんでしょ〜?」

「…………!?」

「モカ、それはないから、シンはあたしのことがす、すき、す」

「……ら、蘭?無理してモカの真似なんかしなくていいからな?」

 

 いつ来たのか知らんがモカと蘭が現れた。しかもよりにもよって俺の好きな人の話だけ聞かれてるってなんて不幸だな。

 

「モカちゃんはシン君が告白すれば即オッケーその日のうちにハッスルしちゃうよ〜?」

「あ、まじで?なら付き合うか?」

「そ、それはダメ!絶対にダメだから!」

 

 冗談で言ったんだが蘭のやつが本気だと勘違いしてるようだ。なんか…すまんな

 

「おーシン君素直になったね〜」

「なーに言ってんだ、冗談だよ!」

 

 その場から立ち上がり蘭のところに向かい

 

「――……だから心配するな蘭」

 

 心配してくれた蘭の頭を撫でてやる、これあれだよ、前にされたからそのお返しってやつだよ

 

 ボン!と音を出して蘭の顔が赤くなる、なんかこれ前にもあったよな?確かお母様と話してた時だっけか?

 

「し、知ってたし!恥ずかしいからやめてよ!」

「お、おい!?その仕打ちはないだろ」

「まったくー二人とも照れ屋さんですな〜」

『照れてない!』

 

 その後は仲良くみんなでお茶会するかと思ったがすぐに俺が帰ったのであった。

 

◆◆◆◆

 

 次の日、俺は早速昨日ひまり達に頼まれた仕事をこなそうとしていた。

巴から送られた写真を見ながらクラスの男子の顔を見る。同じクラスのはずだから目に付くと思うがなかなか見つからない。今日は休みなのか?

 

「……ねえ、弦巻少し話いいか?」

 

 前の席の確か…ダメだ名前が思い出せん、誰か知らんが邪魔をしないでくれ!俺は今忙しいんだよ!

 

「……ごめん、今忙し…い?」

「?どうしたんだ?」

 

 この顔見覚えあるぞ?

 携帯に映っている写真を見る、次に目の前にたってるやつ、また写真、うん!間違いない!

 

「…………お前だぁぁああ!」

「きゅ、急になんだよ!」

 

 ずっと探しても見つからなかったのは俺の目の前に座ってたからか!

その後少し席を外し階段の渡り廊下にて話をする。

 

「弦巻さ…巴さんと仲良いよな?」

「?まあそうだな、友達だよ」

「ほ、本当か!?」

 

 そう言い俺の手を握ってくる、えーい!離せ!なんで男に手を握られなきゃならんのだ!

 

「っと、すまない、実はだな……」

 

 話すのがめんどいから結論を言います。

 こいつも巴のことが好きらしいです。つまり両思い。よかったな!これで巴はの恋は成功を収めるぞ!

 

「で?デートしたいんだっけ?」

「ああ、あわよくば告白したいと思ってる」

 

 おっけおっけー巴もそーするって言ってたからな

 

「わかった。俺もできる限りサポートしてやるよ!」

「ほ、本当か!?」

 

 まあ元からデートをする時はサポートしてねってひまり達から言われてたからな…ん?だったら俺はひとり悲しくこいつらのサポートしないといけないのか?それはそれで悲しいな…

 

「とりあえずだ、俺が巴には連絡しとくから任せろ」

「ああ任せた!今日の昼飯は俺が奢るぜ!」

「…………流石だ!」

 

 そう言い握手を交わす。さすが巴が好きになった相手だ!巴よりも男気があるやつかもしれないな!だって飯おごってくれるんだぞ!?飯おごってくれるやつに悪いやつはいねえ!

 

 その日の昼は高校生活1番豪華な昼飯になったそうだ。

 

◆◆◆◆

 

 巴の件は終わった。次はひまりの相手だが…昼に話そうと思ってたが飯を食ってて忘れてた。そこ何してんだよとか言わない!久しぶりにまともなもの食ったんだからいいだろ!?

時刻は放課後、部活動が活発になる時間帯。ひまりの相手はサッカー部とのことでグランドに向かうが…

 

「きゃー!先輩カッコイイです!!!」

「……もカッコイイぞ!!」

 

 そこには花咲と羽丘の女子生徒の集団があり、その中に見覚えのあるやつが2名いた。てかあいつサッカー部だったんだな、あーあいつっての巴の相手だよ

 

「……お前ら何してんだよ」

「……し、シン君!?」

「おーシン!」

 

 はあーとため息をしながら頭を片手で抑えていた。

 

「……巴、お前の件は最高だ、よかったな」

「ほ、本当か!?まじで助かるぜシン!」

 

 まあなんだ、男子であそこまで仲良くなったやつはあいつが初めてだな、巴とあいつが出会ってなかったなら起こりえなかったことってことだな

 

「わ、私は!?」

「だーかーらー今から行くんだよ考えろこのバカ!」

「ば、バカって!シン君の方こそバカじゃん!」

「残念!俺は成績だけは優秀なんだよ!」

「うー!シン君のエッチ!」

「そ、それは今関係ないだろ!?」

 

 そんな話をしたあとはひまり達と距離を置き先輩が休憩に入るのを待っていた。いや部活中に話しかけるやつじゃないぞ?ちゃんと休憩の時に話しかけるっての

 

 隣を見るが女子生徒が先輩の行動一つ一つにきゃー!と叫ぶ、正直うるさいし先輩も苦労人だなと勝手に思ってしまう。

 

 すると先輩と急に目があった。指をさして場所を示していた。んーそこに行けってことかな?一応向かってみるか

 

 行く途中自販機でスポーツドリンクを買って行く。さすがになんか上げないとさ?失礼じゃん

 

 指された場所に行くと先輩がベンチに座って休んでいた。

 

「――……よく俺に気づきましたね?」

「珍しく男の視線を感じたからね?君は…実行委員長君じゃないか」

「――……元ですけどね」

 

 さっき買った飲み物を渡すと礼の言葉を言い飲み干す

 

「――……で?なんか俺に用があるんじゃないの?」

「話が早くて助かるっす」

 

「単刀直入に言います、彼女とデートしてください」

 

 そう言いひまりがいる方に指を指す。もちろんひまりはこっちに気づいてないぞ?なんか巴と話してるし

 

「……あっはは!そんなこと言ったの君が初めてだよ」

「でしょうね!」

 

 そんなこと言うやつなんて多分この世で俺ぐらいですよ!

 

「あのピンクの子かい?よく見に来てるんだよねー」

「なーんだ、知ってたんですか」

「…………まあね」

 

「……好意を持ってくれてることも知ってるよ」

 

「…………は?」

 

 なんて言った?好意を持ってくれてることを知ってるだって?

 

「……なら全部話しますが」

「ひまりと付き合ってください」

「…………どうして君が言うのかな?」

 

 確かに、俺はなんでそんなこと言うんだろうか…確かにそんなこと俺が言っちゃダメだよな?けどなんでだろ、口に出たんだよ

 

「約束したんです、ひまりの恋を成功させてやるって」

「だから付き合ってくださいよ」

 

 それに見たくないんだ。もしこの告白が失敗した時のひまりの顔を…誰かが泣いている姿なんてもう見たくもない。だったら無理矢理にでも成功させてやるまでだ。

 

「……わかった。デートだね?連絡先をひまりちゃんにあげといて」

「……じゃあ!」

「けど!……付き合うかはまだわからないから」

「…………っ!はい」

 

 まあそればっかりは一度デートしてみないとわからないよな?相性とかの問題もあるしな

 

 その後先輩は部活に戻り、俺もひまり達のところに戻る

 

「ど、どうだった!?」

「…………」

「……ねえ?ど、どうだったの……?」

 

 クックック、不安がってる不安がってるな!

 

「…………残念ながら」

「……っ!そっか、そうだよね」

 

「残念ながらデートの交渉成立だ!」

「…………へ?」

 

 ひまりのマヌケた声が聞こえる

 

「だ、騙したなー!」

「騙された方が悪いんだよ!前にお前が言ってたからな!」

「バカバカバカ!シン君のバカでオタンコナス!」

 

 ぽかぽかぽかとか効果音が聞こえそうな威力のパンチを俺にしてくるひまり

 

「……でも、ありがとう」

「…………っ!」

 

 パンチをやめ急にそう言ってきた。なんだよそれ、その顔やめろ!なんかドキって来るだろ

 

 その日は二人のデートの件に話をつけてきたが…デートできるからと言って成功ってわけではない!

 

「……さーてと、俺達の約束(デート)を果たそうぜ!」

 

 一人でバイトに向かっている時、誰かに聞かせる訳でもないに妙に気合を入れてシンはそう言ったのであった。

 




次回で巴は決着つくかな?でも更新が遅れるかもしれません、その点はよろしくお願いしますね!

その二次創作書いてるとベースの存在にとても助かってるなーって思う自分がいるんですよねーですのでそのうち自分で一から考えて小説を書いていこうかなと思っています。まあここで投稿するかわかりませんがね(笑)

でも結構考えてもネタが被るんだよなー検索すると案外出てくるんすよ…まあその点頑張りたいと思います(笑)

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!


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弦巻シンとデートらしきもの

お久しぶりです!ただいま絶賛研修中のオオルです!みんながこの作品を読んでくれると信じて携帯で投稿します!段落空けが携帯だとできなくて見にくいかもだけどよろしくです!

急いで書いたから誤字脱字、または読みにくいところとかあるかも知れません…

誤字めっちゃあったから訂正しときました。


『俺(アタシ)と付き合ってください!!』

 

 目の前で友達同士が同時に告白をしていた…その隣で口をわわわわ〜と動かしている馬鹿が一人…

 

「(なんでこんなことになったんだっけ!?)」

 

 俺は真顔だが内心とても驚いていたのだ。

 

 時は遡り数時間前

 

「ありがとうございましたー」

「しゃーしたー」

 

 土曜日はバイトのため朝から働いていた。その俺の隣で誰よりも腑抜けた挨拶をしたやつ、それは青葉モカだった。

 

「お前なーそろそろ真面目に挨拶したらどーだ?」

「いやいやー今は店長にバレずにどこまで省けるかの挑戦中なのだ〜」

「――……そーですか!」

 

 まあ実際はバレてるんだがな、まあ店長は可愛いからいいだろうとか言ってさ?俺なんて少しミスしただけで怒られるのに!?これが男女の差なのか…

 

「お前上がっていいぞ〜」

 

 店長がもう上がっていいと言ったため

 

「おつかれでーす」

「おっつおっつ〜」

 

 と、挨拶をするが…モカさん!?さすがにそれはやりすぎだろ!?

 

「おう、二人ともじゃーなー」

 

 店長はスルーするー、あはは何言ってんだろう

 

「シン君?大丈夫?おっぱ「わかった!わかったから口を閉じろ」…」

 

 毎回思うがなんでこの娘達は俺の心の中が読まれているんだ?前もつぐみにツッコまれたからね!?

 

「シン君この後暇〜?暇ならモカちゃんとデートしよーよ〜」

 

 普通なら喜んで遊びに行くさ、デートとかそんなの関係なしにな?モカと遊ぶことは別に嫌なわけじゃない。思った以上に楽しいぞ?けど今日も別件があるため遊べない

 

「……すまん、友達と遊ぶんだ」

「えーシン君って友達いたの〜?」

「傷つくからやめて!?てかモカは友達じゃないのか!?」

 

 友達と思ってたのは俺だけなのか!?

 

「違うよ〜だって婚約者だからね〜」

「あぁぁあ!!うるせえー!!!」

 

 俺は発狂しながら待機室から出ていき目的の場所にそのまま走って向かった。

 

 

「シン君の友達って…絶対女子だよね〜」

「――……よーすみるだけ、うん大丈夫」

 

 

 シンが待機室から出た後、一人の少女はシンが向かった先に歩いて向かった。

 

◆◆◆◆

 

「はあはあはあ……はあー」

 

 とある人物に呼び出され前にモカと遊んだ時に待ち合わせていたショッピングモールの噴水エリアに着いた。

 

 実はだな…今日は巴と俺の友達がデートをする日なんだよ、なんでもすぐにデートしたい!とかお互い言ってたからその週の土曜日にぶち込んだ。あ、ちなみに明日はひまりが先輩とデートなんだ。何故か俺も行くハメになったけどな、まあ一人(・・)じゃないからいいけどさ…

 

「……遅い、遅すぎる」

 

 そんなことを頭の中で整理しているとあっという間に約束の時間を過ぎている。巴とあいつは既にショッピングモール内にいるとのこと

 

「ごめーん!服選ぶのに時間かかっちゃった!」

 

 ウィンクしながら下をペロッと出して頭を自分で叩いていた。なにやってんだよ

 

「……お前なーなんで俺と遊ぶだけなのに服選ぶんだよ」

 

 彼氏でもねーのになんで服をいちいち真剣に選ばなきゃならんのだ。モカは着替えてきたけど時間より早く来たぞ!?

 

「……言われてみれば確かに!でも大丈夫!勝負服も下着も……」

 

 いやいや!前もあったけど俺は何もしてないからな!?また君が勝手に言ったんだよ!?

 

「し、シン君の変態!今私の下着姿浮かべたでしょ!?」

「んなことしねーよ!」

「……私ってそんなに魅力ないの?」

「…………はっ!?」

 

 この感じ、前も見たことあるぞ…そうあの時だ。俺が「可愛い」と言ったことを全力で否定した結果、元気が急に無くなったんだよ、けどその後電話では元気になってたんだけど…さすがに今の状況はやばい。

 

「ふんだ!どーせ私は可愛くなくておっぱいは!でかいけど魅力がない女ですよ」

 

 明らかにお怒りになられている状態だ。

 

「……い、いやーそんなことないぞ?」

「さっきの想像しないって言ってたじゃん」

 

 ううっ!もうこーなったら!

 

「な、なわけないだろ?めっちゃひまりの裸を想像したぞ?」

 

 この時点で気づけばよかったんだ。

 周りの人達の視線に

 

「はち切れんばかりのその胸に今すぐ飛び込みたい!」

 

「そして揉みたい吸いたい何かを離さみたい!」

 

「あー!もうまじで激アツファンタスティクベイベーだよ!」

 

 息継ぎを許すことなく一気に言い切った。最後の言葉なんて意味がわからん!

 

 周りからは

 

「あの人最低ね……」

「あそこまで性欲に飢えた人間初めて見たかも」

「まじひくわー」

 

 この中で俺の味方誰かいますかー?って投票したら絶対ゼロ票だよな?結果は目に見えてるよ!

 

「……シン君の変態!」

 

 そう言われビンタされる落ちもなんとなくわかってました。

 

◆◆◆◆

 

 一方そのころ

 

『…………あ』

 

 二人の少女は出会ってしまった。それは運命なのかはたまた偶然なのか…それはわからない

 

「あれ〜?蘭何してるのー?」

「モカこそバイトじゃなかったっけ?」

 

 そう、青葉モカと美竹蘭は道中で出会ったのだ。

 

「モカちゃんは午前で終わりました〜」

「じゃー今から帰る感じ?」

「……んーショッピングモールにお買い物〜」

 

 嘘です。

 

「……へーあたしもショッピングモールに用事あるんだよね」

 

 これは本当です。

 

「じゃー一緒に行きますか〜」

「うん、行こうか」

 

 そしてショッピングモールに着くが…

 

「はち切れんばかりのその胸に今すぐ飛び込みたい!」

 

「そして揉みたい吸いたい何かを離さみたい!」

 

「あー!もうまじで激アツファンタスティクベイベーだよ!」

 

 シンの例の発言を二人は聞いていた。

 

「……ねえ、聞いた?」

「……うんうん〜聞いた聞いたー」

 

 二人は聞いてしまった。

 

「……てかあれひまりだよね?」

「なんでシンと二人でいるの?」

 

 蘭は震える指で指しながらモカに聞く

 

「(あー友達ってひーちゃんか)」

「(にしても蘭の反応面白いな〜少し遊んでみようかな?)」

 

 小悪魔が悪さを始めるそうです

 

「……かもね〜」

「…………ッ!」

「そうか、シンは巨乳が好きなんだ」

 

 一人悲しくなっている蘭だったが

 

「まだ本当かどうかわからないし調べてみる?」

「……どーやって?」

「……あーやって」

 

 そう言いモカと蘭は外にある店の中に入っていった。

 

◆◆◆◆

 

 俺とひまりはフードコートにいた。目の前では大きなアイスにかぶりついている馬鹿がいた。

 あの後めちゃくちゃ怒られましたしビンタもされました。お前を元気にさせるためだ!って言ったが無駄でしたよ!?それで、まあーアイス買ってやって落ち着かせました。

 

「……ちゃんと巴達の行動見てるのか?」

「見てる見てるーあーん!んんー!美味しい!」

「…………はあ、不幸だ」

 

 そう言い後ろを向くと何個か先の席で巴とあいつが食事をしていた。

 

 言ってなかったな?俺とひまりはあいつらの恋が成功するように見守る係兼助っ人係なんだよ、戸惑った時にすぐアドバイスできるように待機する……そのはずだった。

 

 シンは前を向く

 

 この馬鹿が

 

「だったら私達も現地に行こうよ!ほら?その方が情報理解しやすいじゃん!」

 

 とか言い出し、ひまりと今の状況になるのです。

 

「シン君食べる?」

「…………食べる」

 

 元々俺の金で買ったんですけどね?俺が必死に汗水流して稼いだのになんでひまりだけで食べるんだ!?もちろん俺も食べます

 

「はい、あーん」

「……おい、それはさすがに「……うっ!」っておい!?」

 

 俺がさすがにまずいだろって言おうとした瞬間にひまりのやつがスプーンをねじ込んできた。

 

「どう?美味しいでしょ!」

「……ッ!ああ、美味しいよ」

 

 食べて気づいた。

 これ間接キスじゃねーか!?な、なんだろうな、ひまりに申し訳ない感があるんだが…

だってひまりの好きな人は先輩だ。なのに俺なんかと間接キスなんて…

 

「うん!やっぱり13アイスは美味しいね!」

 

 まあ本人が気づいてないようだし大丈夫かな?

 

 一人で意識していると

 

「あ!巴達動いたよ!」

「…………おっけー」

 

 ひまりはアイスを持ちその席を離れた。

 

 

 

 そのフードコートにはひまりとシン、巴とシンの友達、その他にもたくさん人はいたのだが…見知った顔の人もいたようです。

 

「………………」

 

 机に顔を伏せてるのは美竹蘭

 

 ひまりとシンがあーんをしていてさらに間接キスをした瞬間を目撃してしまったのだ。

 

「(あちゃー余程ショックだったのかな?)」

 

 その前にいる青葉モカはフードコート内にあるネックでシェイクを買いそれを飲んでいた。

 

「間接キス、間接キスしてたよあの二人」

 

 いつもの声より小さく蘭がそう言った。

 

「……んーけどまだわからないよ?」

「間接キスなんて蘭もしよーと思えばできるじゃん?」

「……それとも、蘭は間接キスより凄いことしたいのかな〜」

 

 と、モカが聞くと

 ボンッ!と音が出るぐらいに顔が一気に赤くなった。

 

「(蘭は面白いな〜)」

 

 と思うモカだった。

 

◆◆◆◆

 

 えっと、今の状況を確認します。ソファーがある待機所にいるのですが何個か先の店で巴とあいつがなにやら揉めていた。

 

「何してるだ?あいつら」

「んー何してるんだろう、電話掛けてみる?」

「いやそれはダメだ、二人が離れてしまう」

 

 俺達の目的は二人をくっつけさせること、そのため二人を離すような行為をしてはならない。つまり電話を掛けて離ればなれにさせてはならない。ならないが

 

 ブー、ブー、ブー

 

 と、ひまりの携帯に電話がかかる。

俺とひまりは顔を合わせてその後巴達達の方を向く。するとどうだろうか、巴がガッツリ電話ポーズしてんだよ

 

『巴からだ!』

 

 二人は声を揃え電話に出る

 

『もしもしひまりか!?』

「……うん!」

 

 その後なんか話をしていたが

 

『あのな!アタシ…に下着を選んで欲しいって言ったんだよ!』

 

 な、何言ってんすかあんたは!?

 

『なのに選ぼうとしねーんだよ!どうすればいいんだ!?』

「ちょ、ちょっと待ってねー」

 

 ひまりはそう言い消音にして俺に話しかける

 

「……どうしよう!」

「どうもこうもねーだろ!?今すぐにその選択は間違いだと言え!」

 

 そう言った瞬間に俺の携帯に電話がかかる。

あーもうなんとなくわかる、あいつだろ!?

 

「……もしもし弦巻か!?」

 

 ほらね!?電話を掛けてきたのは巴の想い人そして俺の友達だった。

 

「巴さんが下着を選んでくれって言うんだよ……どーすればいい?」

 

 く、クソ!こんなことになるなんて思いもしなかったぞ!?

 

「俺は選びたいが…さすがに下着売り場に行くのには抵抗があるんだよ…一人だと」

 

 な、なるほど、一応選ぶ気はあるんだな!

 

「……それだぁあ!!」

 

 ひまりのやつは急に大声でそう言い出し

 

「巴!今から私達もそっちに行くね!」

『は?おいひまり!ちょっと』

 

 巴が言いかけていたが電話を切り、俺の手を握り引っ張っていく。

これで手を握ったのは3人目、モカと蘭、そして今のひまり。別にひまりのことなんて意識してないが…まあなんだ。

 

「…………悪くないな」

 

 でも、この手は明日で先輩のものになる。ものって言うのは良くないが…てか成功するかもわからねーが、なんかな?一度手を繋いだことがある人が急に他の人と付き合うと思ったらなんか切なくなるな…

 

「(って何考えてんだよ俺!?)」

 

「んー?どうしたの?」

「……ッ!なんでもねーよ!てかまさかの本当に行くのか!?」

「うん!だって一人じゃ無理なんでしょ?だったら二人なら大丈夫!」

「やっぱりそーゆう考えですよね!?」

 

 引っ張られながら叫んでいるシンだった。

 

「お待たせ!」

「早!?」

「二人なら入れるんでしょ!だったら早く行こうよ!」

 

 おいやめろ!俺をそんな所に連れていくなよ!さっきの件とかもあっていろいろまずいからな!?

 

「弦巻……お前、俺のために…!」

「い、いや俺はまだ!」

「……!選んでくれるのか!?」

 

 あー!邪魔だ巴!

 

「シン君ついでに私のも選んでいいからさ?ね?」

 

 あーなんでいつもこうなんでしょうか

 

「…………不幸だぁぁあああ!!!!」

 

 巴、あいつ、ひまりに引きづられる形で下着売り場に連れていかれた弦巻シン、次回!一体どーなるの!?

 

 

 

 

 

 話はまだ終わらない。

 

「手、繋いでない?あれ?」

「…………うん、そーだね」

 

 物陰に隠れながらシン達の行動を見る少女二人組、何度も言うが青葉モカと美竹蘭だ。

 

 先程紹介しなかったがその様子はいつもの二人じゃない、ウィッグを付けた二人は普段ショートカットの髪型だがロングヘアになっていた。

 

 その髪型はなかなか様になっており周りの人達から一目おかれるほどだった。

 

 ……が、その二人は物陰に隠れて負のオーラを出している

 

「……さすがにひーちゃんやりすぎたよ」

「……ひまりに問いたださなくちゃ」

 

 その二人はシン達が入った下着売り場に向かったのであった。




次回で巴編は終わります!前に終わるとか言ってたけど終わりませんでした!許して!

僕は今から明日の研修でテストがあるためその勉強をします!皆さんが読んでる頃は必死に勉強してるかと…

明日か明後日にも投稿できたらします!それではまた!


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弦巻シンは下着を選ぶそうです

またまた携帯からの投稿です!
如月あやとさん修正の方ありがとうございます!自分で引くぐらい誤字脱字があって驚いています…今後は気おつけたい!と、言いたいところですが…どーしても見落としてしまうんですよね!何かいい案があるなら教えてください!
それではどうぞ!
ちなみにモカと蘭がメイン話です!


 皆さん、引かずに聞いてください。弦巻シンは今女性の下着売り場におります…いや俺だって好きでここにいるわけじゃないからね!?皆に引っ張られてここにいるだけだから!?

 

「……これなんか巴さんに似合うかも?」

 

 隣でそんなことを言うのは俺の友達だ。

そいつの手にはブラジャーをまじまじと見つめてそんなことを言っていた。近くにいる女性はめちゃくちゃ引いたような方でこちらを見ている。

あの!俺は何もしてないからね!?

 

「弦巻も上原さんの下着選べば?」

「…………んー」

 

 そう言われてもなーあいつの好きな人は先輩だろ?ただの友達の俺なんかが選んだ下着なんていらないんじゃないのか?

 

 それに先輩にも失礼だと思う。もしもだ。もしもの話だ。先輩とひまりがくっつきそういう行為をするとしよう、その時たまたま俺が選んだ下着をひまりが付けていたらどうなる?少なくとも俺は彼氏である自分以外の男子が選んだ下着を付けられてるとイラッとくる

 

「……決めた!これにしよう!」

 

 どうやら決まりのようだ。

 

「弦巻はどうすんだ?」

「あれ?……弦巻?」

「……先に行ったのかな?」

 

 少年が振り向いた時、既にシンの姿はそこになかった。

 

「んん!?ん!んんん!!!」

 

 下着がかけられた所の間から急に手が伸びて俺は引っ張られて声を出す隙もなく口を抑えられる

 

「ごめんごめーん」

 

 俺を引っ張ったであろう女性は口から手を離し謝ってくる

俺はというと急のことだったため息をした後咳き込んでいた。

 

「ちょっ!モカ!じゃなくてモナ!?それはやりすぎ!」

「えーりん()もそーしようって言ったじゃーん」

「こ、ここまでするなんて知らないし!」

 

 余談ですがモカと蘭はウィッグを付けており髪型が全く違います。そのためかシンは気づいておりません

 

 なんか俺の前で言い合いしてますが!

 

「なんですかあんたらは!?俺になんかようですか!?」

 

 いつもの調子で俺は叫ぶ

 いやだって怖くないか!?下着売り場で拐われる経験したの多分俺だけだよ!?こんなの普通じゃねーよ!

 

「いやいやー下着売り場にお兄さんがいたからさ?選んでもらおうかなーと」

「いや意味わかりませんから!?」

 

 下着売り場に男がいたから?全く意味わからん!

 

「下着を買う時は男の意見が必要なんだよ〜?」

「そ、そう!だからあたし達の下着をえ、選んでよ!」

 

 な、なんでこんなことになったんだよ!?

これも何もかもあの馬鹿のせいだ!クソう!今すぐ逃げたい!けど二人に手を握られ逃げられない!

 

 てかこの手…どっかで触ったことがあるような?ないような?てかなんか一人はめっちゃモカと話し方似てないか!?

 

「じゃー選んで〜」

「ちょ、ちょっと待ってくださいーい??」

 

 二人に手を握られ下着売り場を散策する。それはそれは周りからの視線はもちろんやばいですよ?だって両手は女子に取られそんな姿で下着売り場を歩いてるんですから!

 

「(一刻も早くこの状況から脱出しなければ!)」

 

 友達の下着を選ぶことには躊躇するが…まったく知らない人の下着なんて適当に選んで説明してはい終了だ!

 

「お!これなんかいいですね!着てみてください!」

「おーじゃー着させてー」

「…………!?」

 

 な、なんだそれは!?早く終わると思ったのがまさかのそーなるのか!?

 

「ダメだって、順番はちゃんと決めなきゃダメでしょ?…モナ」

「じゃーじゃんけんで〜」

 

 じゃんけんの結果

 

「モナちゃん最初がよかったな〜」

「……あたしが最初、ここで決める」

 

 で、俺はと言うとそこで待機してました。

 

「それじゃシン、行こっか」

「……俺名前教えましたっけ?」

「…………!」

 

 蘭は盛大にやらかしたそうです。だが

 

「えっと!さっき男の人がシンって呼んでたから!?」

「え?あいつは俺のこと弦巻って「いいから!言ってたの!」……はい」

 

 あいつ名前で呼んだのかな?まあ別にいっか

さっきも言った通りに適当に選ぶ、目に付いた黒と赤がベースの下着を選んだ。

 

「じゃ、じゃーその着させてよ」

「い、いやそれはさすがに……ね?」

 

 無理ですよ!俺は男子高校生だよ!そんなところ目の前にしたらどうなるかわかったもんじゃないぞ!?

 

「いいから!着させてって言ってるの!」

 

 近くの試着室に無理やり押し込まれ逃げようとするが

 

ドン!

 

「…………逃がさないから」

「……は、はい」

 

 あの、女子に壁ドンされるのはもう嫌な思い出なのであまりされたくないんですが!?

 

「お願い……着させてよ」

 

 少し涙目になりながらそう言うりんさん

 嘘泣きかもしれないし本当かもしれない。けど…どんな理由でも女子の泣く姿だけはもう見たくない。

 

「もう会うこともないと思うし…まあ、いいですよ」

 

 あー俺ちょろいなーって自分でも思ってしまう。

 

「……ありがとう!」

「…………ッ!」

 

 その顔、どこかで見たことがあるんだよなー

 

 その後着替えさせる作業に取り掛かる

 

「えっと、その……見ないでね?」

「見ずにどうやって着替えさせるんすか?」

 

 俺には心眼とかねーからそんなことはできません!

 

「や、やっぱり無理!着替えるから後ろ向いてて!」

 

 なんだそれ!?なら最初から頼むなよ!

 

 俺は言われた通り後ろを向くが場所が悪かった。だって目前に鏡があるもん、後ろで着替えてるりんさんの姿が丸見えです。

綺麗な後ろ姿、長い髪が動く度に揺れて今後ろで着替えてるんだなってわかる。俺はその光景に見とれていた。

 

「…………終わったよ」

「……はい」

 

 見てみるとそれはそれは思ったの以上に似合ってました。

 

「どう?似合う…かな?」

「お、おう!似合ってるよ!?」

 

 その、下着だけだと目のやり場に困る

 

「そう、似合ってるんだ、うん!」

 

 さっきから目が胸に行ってしまう。だってさ!?目の前に見えるなら見ちゃうでしょ!?

 

「…………胸触ってみる?」

「……はっ!?」

 

 ば、バレていたのか!

 

「シンならいいよ?触っても…うんうん、触って欲しい」

「い、いやーさっき知り合ったばかりだよ?」

「そ、それでもシンならいいよ?」

 

 いや、んーでもな?さすがにはじめて知り合った人にそれはちょっとねー世間は許してくれませんよ、なんつって

 

「あーもう!いいから触ってって!」

「…………ッ!?」

 

 手を無理やり胸に押し付け触らせてくる。それははじめての体験だった。柔らかくて、なのに形があって…凄かったです。それに今までに触ったことなんてないし?そんな場面なんてなかったからな

 

「……どう?」

「えっと、なんて言えばいいのやら…」

 

 なんせ初めてなんでシンさんわかりません!

 

「と、とにかく!あたしは少なくとも貧乳じゃないから!そこよろしく!」

「は、はい?」

 

 その後りんさんはすぐに服を着て

 

「選んでくれてありがとう、じゃーね」

 

 その後りんさんは出て行った。出ていく前に次はモナさんが来るから待っててとのこと、いやその間に誰か来たらどーすんだよ!?

 

◆◆◆◆

 

「蘭〜どうだった〜?」

「エッチなことしたの〜?」

 

 外にてシンには話が聞こえてないため普通に名前を呼ぶ。

 

「そ、そんなことしてないから!あ、あたしこれ買ってくるから!」

「……もーまあーモカちゃんも行きますかね〜」

 

 シンがさっき咄嗟に選んだ下着を持って試着室に向かった。

 

「(あー絶対痴女だと思われた…あたしの馬鹿馬鹿!)」

「(あ、ひまりと付き合ってるのか聞くの忘れてた)」

 

 目的を忘れてた蘭であった。

 

◆◆◆◆

 

「おまたせ〜」

「いや、全然大丈夫」

「モナちゃんの下着姿想像して何かしてないよね〜?」

「し、しませんから!早くしてください!一応友達を待たせてるので!」

 

 ひまりとか今何してるんだろうか、俺の事を探してるのかな?…ごめん、すぐに戻りたいけどあと少しかかりそう!

 

「じゃーシン君が選んでくれた下着着てみるね〜」

「はい……ってそれは!?」

「えー?シン君が選んだ下着だよ?」

 

 それは全く身に覚えがない下着。てかそれって

 

「セクシーランジェリーだよ〜」

「で、ですよね!?」

 

 ただでさえ下着なんて見たことないのにランジェリーって……刺激強すぎやしないか!?

 

「じゃー着替させて〜」

「さっきもだけど……」

「着替えさせて」

「いや」

「着替えさせて」

「…………はい」

 

 ま、負けました。

 

「……じゃ、脱がせるから」

「……うん」

 

 なんだろう、さっきの威勢はどこに行ったのやら、落ち着いたな

 

 てかさ?ランジェリーってどうやって着させるの?あれ?てか下着ってどうやって着させるんだけ?あれ?あれあれ!?

 

 一人で頭を抱えてな考えていたら

 

「……シン君にはまだ早すぎたかもね〜」

「……ご、ごめん」

「いやいいよーじゃー着替えるね」

 

 なんかめっちゃ申し訳ない感ある、だって着替えさせてって言われてはいって答えたのに結局できなかった。勉強不足って言うより経験不足って言うか…そもそもこんな経験なんてないしな!?

 

「はい、見ていいよ〜」

 

 モナさんが着替え終えたから見てみるが

 

「…………なっ!?」

「えへへ、どーう?似合うかな〜?」

 

 似合う似合わないと言うより完璧に着こなしてる感があった。なんて言うのかな?失礼かもしれないけど着慣れてるって言うか…うん、気の所為だよな?

 

「似合ってますよ、それを選んだかいがありました」

「……まあモナちゃんが選んだんだけどね」

「やっぱりそうですよね!?」

 

 まじで見覚えなかったもん!

 

「まあシン君が喜んでくれたなら嬉しいよ」

「…………ッ!」

 

 その笑う顔、絶対に違う人だと思うのになんかモカかな?って思ってしまった。

 

「(あいつ一人っ子だから姉とかじゃないよな?)」

 

「ねえ?肌触りとか気にならない〜?」

「…………へ!?」

 

 いきなり何り言い出すんですか!?

 

「ほら?触ってもいいんだよ?ここは誰もいないからシン君がしたいようにしていいんだよ?」

「…………」

「しないならお姉さんが近寄るよ〜」

 

 体に胸を押し付け足を絡めてくる。下着姿のモナさんは…その露出が高いので肌の感触が伝わりやすくてその……

 

「(やばいやばいやばい!)」

 

 理性がぁぁああ

 

「…………シン君」

 

 モナさんが顔を近づける寸前で

 

 ブー、ブー、ブー、ブー

 

 電話がかかってきた。

 な、ナイスタイミングだ!

 

「……電話だ、げ、ひまりだ」

「あちゃー……なになに彼女さん〜?」

 

 ひまりが俺の彼女だと?んなわけねーだろ

 

「違うよ、ただの友達」

 

 それにひまりの好きな人は先輩だろ?そもそも今日なんでひまりと遊んでいたのかも謎だからな

 

「……その人のこと好き?」

「なんすか?急に」

「いいから……どうなの〜?」

 

 んー好きか嫌いかか……

 

「好き……ですね」

「…………ッ!」

「友達として」

「……だ、だよね〜」

 

 多分モカの次に仲良いやつだと俺は思ってる。何も考えずに普通に接せれる、ひまりは馬鹿だけどそれを弄るのも楽しいって言うか…いや他のやつといるのももちろん楽しいぞ!?それにみんなのこともちゃんと好きだ!友達としてな?

 

 でも…そんなひまりが明日で先輩と結ばれると今まで通りに接せれるかわからない。

心のどこかでひまりとまだ馬鹿なことしたいんじゃないかと思う自分がいる

 

 けど……それは俺が思うだけでひまりは俺のことをどう思ってるかなんてわからないしわかりたいとも思わない。だけど俺は…俺はあいつを

 

「――……見守りたいんだ」

 

 友達の恋が成功するなんて素晴らしいことだろ?巴達もそうだ。今日成功すれば明日のひまりにも強いエールにもなると思うし

 

「シン君は友達思いなんだね」

 

 そうか?俺より蘭の方が友達思いが強いと思うが…俺は知らないうち蘭に影響を受けていたのかもしれないな

 

「……友達は大切なんで」

「うん、そうだねーこれからもあたし達のこと頼んだよ〜」

「…………?」

「……じゃーね」

 

 モナさんは最後にそう言い試着室をあとにした。その後俺はモナが言ったことが気になり考えていたが

 

「ダメだ、さっぱりわからん」

「あたし達ってことはりんさんを含むってことだろ?」

「……また会うってことでいいのか?」

 

 とりあえずそう思っておくか

 

 よーし!ようやく開放されたしひまりのところに戻って適当に理由つけて巴達のくっつけ作戦を成功させますかね!

 

 俺は勢いよく試着室のカーテンを空け出ていこうとしたが……

 

 よく思い出してね?ここは女性の下着売り場です。その中の試着室と言ったら普通は女性しかいませんよね?けど今の俺は…そう、さっきまでモナさんといたが今は男子一人だけ…つまりだ

 

「きゃー!!!変態よ!!!」

 

 偶然前にいた女性に目撃されそう叫ぶ

 

「待って!誤解だ!俺はさっきまで女の人と!」

 

 ざわざわざわざわ

 

「あーもう!なんでいつもこうなるんだよ!」

「不幸だぁぁあああ!!!!!!」

 

 走って下着売り場から脱出しようと試みるが

 

「お!シンはっけーん」

 

 走ってる途中で巴に襟を掴まれた。

あの!?走ってやつの襟を掴むのやめて!喉が、喉がめっちゃ痛かったぞ!?

 

「お前何してたんだ?みんなで探したぞ?」

「あ?いやーその、と、トイレに」

「もーう!連絡したんだから返事ぐらいしてもいいでしょ!」

「ご、ごめんって!許せ!」

 

 みんなからそれぞれ一言言われるが…なんとかトイレと言い訳してバレなくてすんだと思う。いやそう思いたい

 

「巴の下着買い終わっちゃったよ!」

「ご、ごめんって!もう用事も終わったし?早くここから出ようぜ?」

 

 早く出ていきたいからそう言うが

 

「ん?何言ってんだ?」

『まだ私(ひまり)(上原さん)の下着選んでないよ?』

「このクソ野郎どもがぁぁあああ!!!!」

 

 友達が大切だと思ったあの時の時間を返してくれと思うシンだった。




シンは二人に気づいていません(笑)
なんと投票者数が50人突破しました!僕の作品をこんなに読んでいただきありがとうございます!これからも書いていくので応援よろしくお願いします!では次回でお会いしましょう!
ちなみにまだ研修中です。


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弦巻シンは明日が怖くない

今回は短めです。前回と前々回長かったから許して!
それではどうぞ!


「ねえー!真剣に選んでよ!」

 

 前回に引き続き俺はまだ下着売り場にいた。なんでかというとこの馬鹿、つまりひまりの下着を選ばないといけないからだ。

 

 別に俺は選びたいとは思わないさ!なのに!巴達が無理やりさせるんだよ!?ただでさえさっきの件とかあってきついのにさ!?

 

「てかさ、俺なんかが選んでもいいのか?」

 

 無駄金になると思うぞ?あ、さっきのモナさんとりんさんも同じだがな

 

「別にそんなの気にしないよ」

 

 笑いながらひまりは答えるが…気にするのは俺なんだよ!?

 

「……先輩に選んでもらえよ」

「夢の国に下着って売ってるの?」

「…意味をわかってないなこいつ」

 

 選んで貰えるなら先輩に頼めって話だがどうやらわからないようだな

 

「まあこれも思い出だと思ってさ!選んじゃってよ!」

「…………」

 

 返事に困るな…てか巴達はもう下着売り場からは離れていて近くのベンチにいるらしいんだが…目的変わってるよね!?俺達の目的忘れてないか!?

 

「シン君……」

「なんだ?」

「私と出かけるの楽しく……ないの?」

「!?ち、違うぞ!ただな、そのー彼氏でもねーし、好きな人がいるのに他の人と遊んでって言うか…」

「デートみたいなことしてもいいのかなって…」

 

 俺が相手ってなんかひまりにも悪いし先輩にも…悪いと思う?

 

「そんなの気にしなくていいのにー」

「いや、でもな?」

「じゃーシン君は今日だけ私の彼氏ってことで!」

 

 は?

 

「いやいや!?なんでそうなる!?」

「彼氏ならいいの!だからはい!選んで!」

 

 なんでそこまでして俺に下着を選んで欲しいがわからん!てか1日彼氏!?てことはひまりは俺の彼女ってことか!?てか、明日告白するくせにそれはダメだと思うぞ……って言いたいが、まあ別に悪くはないし乗ってやるか

 

「……彼女が頼むなら仕方がないな」

「…………シン君!」

「めちゃくちゃスケベなの選ぶから覚悟しろよな!」

「…………うん!」

 

 とか言いながらスケベな下着ってさっき知ったばかりのあれしかないけどな!

 

「……これだ!これならひまりにも似合うと思うぞ!?」

「……も?」

 

 はっ!?し、しまった!モナさんが似合ってたもんだからつい口に出てしまった

 

「い、いやほら!あそこのマネキンが着こなしてるだろ!」

「なるほど!もーシン君照れるじゃん!」

「あは、あははは」

 

 苦笑いしかできませんでした。

 

「それじゃ着替えるから中に入ろっか」

「…………な、なんで!?」

 

 なんで入る必要があるんだよ!さっきそのせいで痛い目にあったんだからな!?

 

「でも一人で待っとくのも辛くない?」

「た、確かに言われてみればそうかもな…」

 

 試着室の前で男子が一人で待機って…そんな光景見られたらそりゃ驚かれるし引かれるし社会的に死んでしまうかもしれない。

 

「じゃーレッツゴー!!」

「…………不幸だ」

 

 3度目の試着室に入りひまりが着替え終わるのを待つ。服を脱ぐときのあの音、何度も聞いたがやっぱり聞きなれない。てか聞き慣れるのもどうかと思うけどな!

 

「……終わったよ」

 

 もうさすがに大丈夫だろう、動揺なんてしないからな!さあかかってこい!

 

「ど、どうかな?少しサイズ小さいかも?」

「…………なっ!」

 

 な、なんだこれは!?モナさんとりんさんと比べ物にならないこの破壊力!や、やばくないか!?胸の大きさでここまで変わるなんて…てかひまりデカすぎだろ!?

 

「あ、あんまり胸ばっかり見ないでよね!」

「す、すまん!そのデカいから目に入るんだよ!」

「そ、そうなんだ。えっへへ」

「…………」

 

 その顔を俺に向けんなよ…先輩の前でする顔だろ?

 

「んじゃーそれで俺先に出とくから」

 

 長居するのもあれだし出ていこうと思ったが

 

「…………待って」

 

 ひまりが俺の服を掴み出ていくことを阻止する

 

「……なんだ…よ?」

 

 なんだよと聞こうとした時、ひまりのやつは後ろから俺に抱きついていたんだ。それに下着姿のため胸の感触がじかに伝わりやすかった。

 

 すぐに離そうと思ったさ、だって俺はただの友達、今日一日だけの限定彼氏だ。でもだからと言ってこんなことしていい理由にならない。けど…ひまりのやつが震えていたんだ。

 

「ごめん…ごめんね?少しこのままでもいいかな?」

 

 なんで震えてるかなんてわからない。わからないけど…

 

「俺は胸の感触が伝わるから別にいいかな」

「……そっか」

 

 なんて馬鹿なこと言ってんだって自分でもわかってるさ

 

「あのね…私明日が怖いの、先輩に告白して成功するかどうかって」

「…………」

「ずっと今日が続いて明日が来なければいいのにって思ってしまうの」

「……それだと俺がずっと彼氏だけどいいのか?」

 

 今日だけの彼氏、今日がずっと続くなら俺はずっとひまりの彼氏ってことになるけどな

 

「……シン君なら別にいいかもね」

「おいおい冗談やめろよな?お前は明日告白して成功さえすればお前の望んだ結果になるだろうさ」

 

 でもまあ、俺でも別にいいって言うのは少し以上に嬉しかったな…って何言ってんだろうな俺は

 

「ひまり、明日は何がなんでもやってくる」

「…………」

 

 ひまりの方に向きなおして頭を撫でながら言う

 

「大丈夫だってひまり、お前ならできる、だから…」

「明日が来なければいいのにって縁起でもないこと言うなよ、な?」

「…………ッ!」

 

 今にも泣きだしそうなひまりは商品にシミを付けないように泣くのを我慢し、俺から距離を置く

 

「着替えるから出てって」

「……お、おう」

 

 さっきまで後ろで普通に着替えてたくせにな、なんだ?急に恥ずかしくなったのか?

 

「お待たせ!よし!買いに行こう!」

 

 なんだよ、やっぱり普通のひまりじゃないか!

 

「俺が奢るよ」

「え?でもこれ結構高いと思うよ?」

「だって彼氏……だからな?」

「…………ッ!」

 

 まあ今日だけだ。今日だけなら許してくれてもいいだろ?ひまりさんよ、明日成功すればその後先輩に奢ってもらえ…って無責任だな俺って

 

 その後会計をすませ巴達と合流、いよいよ最後のクライマックスの時間だな、確か噴水のところで告白する!ってあいつ言ってたしな

 

 てかさ!?巴達をくっつかせる話だったのになんで俺は今日いろんな目にあってるんだ!?おかしいだろねえ!?

 

 しかもなに?彼氏だからなとか言って買ってさ……今思うとめちゃくちゃ恥ずかしい!とりあえずひまりと先輩が付き合うことになったら先輩に謝ります。許してくれるよな!?

 

 と、思っていたがもう時間のようだ。

 俺とひまりは物陰に隠れて2人の様子を見る。え?展開早いって?知らん!ショッピングモールから出たらもう丁度いい時間だったんだよ!

 

「巴さん…話がある」

「……アタシも話がある」

 

 二人は同時に深呼吸をして

 

『俺(アタシ)と付き合ってください!』

 

 うん、どうしてこうなったの!?なんで二人同士にやってんだよ!?意味ねーじゃん!いや意味はあるか!えっと?なんて言えばいいんだろうか

 

「と、ということ……は?」

「あ、アタシ達両思いってことか!?」

『あはは!あはは!あっはは!』

 

 二人は笑いながら手を繋ぎ、晴れて本日から恋人同士となりました。

 

ひまりはと言うと口をわなわなと動かしているだけだ。まあ友達が成功したんだしな?それに初めて目の前で見たんだと思うぞ?

 

「よーし、これで作戦成功だな?ひまり」

「う、うん!巴も成功したし!次は私の番だね!」

 

 おーさっき言ってたことと真逆のことを言ってるな!巴のシーンを目の当たりにしてやる気が出たんだろう

 

「そうだな!俺も明日は夢の国に行くが…巴みたいな直接サポートは難しいと思う」

「うん、わかってる!明日は何がなんでも先輩を振り向かせてみせるから!」

 

 その目は何かが吹っ切れたようで見てるこっちも自然と頑張れと応援したくなる感じだった。

 

「(これでひまりが成功すれば完璧だな!)」

 

 心の中でそう思った。

 

「あ、そう言えばシン君は明日誰と行くの?」

「あーそれはな」

「…………秘密だ」

 

 本人が誰にも言うなって言ってた。それに()()()()()()()しな?

 

「よーし!明日は頑張るぞ!」

「えいえいおー!!」

「…………」

「シン君!今日こそ乗る時でしょ!?」

「いや、さすがにここでは無理だから!」

 

 いつものやり取りをして解散、お互い明日に向けて準備をするのであった…




次回!シンと…がデートします!ひまりは先輩とですがね
今週は投稿できるか危ういです!できれば短めで投稿するかも!?
それでは次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと夢の国VS花園ランド

研修生のオオルです!まだ研修中であります…
ではどうぞ!


 多分だけど高校生になって初めて私服でお出かけだと思う。昨日といい、前のモカと遊んだ時といい俺は制服姿で遊んでいたんだ。いや、私服より制服の方がなんかよくない?高校生感あるじゃん!DKだよ!……ん?おめえはDTだって?うっせえ!

まあ他にも理由とかあるけどな…

 

 でも今日の俺は少し違うぞ!ちゃんとこの日のために服を買ったんだ。店員さんがこれなら大丈夫!と言ってたからそれを信じて着てみた!うん、悪くないな

 

 夢の国に行くため電車で少し移動する必要があるため近くの駅で今日遊ぶ人を待っていた。

 

「シンくーん!!おまたせ!待った?」

 

 えっと、確かあれだよな?女子が待った?って聞くと

 

「……いえ、今来たところです!」

 

 って答えるってひまりが言ってたな!

 

「ならよかったー遅刻しそうだったからさ!」

「まだ5分も余ってますけどね」

「そ、それでも時間を無駄にしたくないって言うか…その!楽しみだった…からね?」

 

 なるほど

 

「夢の国って面白い物たくさんあるらしいですからね!」

「…………ち、違うのに〜」

 

 そう、俺の目の前にいる人は絶賛売れっ子中の人気アイドルバンドPastel*Palettes略してパスパレのボーカル担当丸山彩先輩だ。

 

 そして何故俺がそんな先輩と二人で夢の国に行くことになったのか……それには深海の底までは深くない話があるんだ。

 

◆◆◆◆

 

 ひまりに渡されたこの夢の国のペアチケット、なんかミスって余ったらしい。なんで余るんだよって思ったが本人曰く勘違いしたの!の一点張りさ、んで?俺にそのチケットやるから誰か誘って遊びにでも行けばって話になったから絶賛悩んでる途中なんですよ

 

「んーどーすっかね」

 

 放課後クラスに残り一人で考えていた。

 

「あれ?シン君まだいたの?」

「……おたえか」

 

 ひょこっとドアから顔を出しこちらを覗いていた。いや入れよ!って言おうと思ったがそれどころじゃなかった。

てかその後普通に入ってきたんだけどさ

 

「あ、夢の国のチケットだ」

「…そうなんだよ、友達から貰ってさー誰と行くか悩んでる」

 

 あ、こいつがいんじゃん!

 

「おたえ!今なら俺とセットだが無料で夢の国に行けるぞ!どうだ!?」

 

 おたえにチケットを見せつける形でそう言うが

 

「んー夢の国って喋るネズミが支配してるでしょ?」

「まあ、そうだな」

 

 ここではそうですがね

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 

「夢の国は私の敵なんだ」

「……なんでだ?」

「花園ランドの方が絶対楽しいと思うの」

「んなのしらねーよ!てかまだ開園してないだろ!?」

 

 夢の国とネズミの王様に謝ってこい!

 

「まあそれは置いといて」

「お前から始めたんだろ!?」

「ごめん、その日は行けない」

「……なら最初からそう言えよ」

 

 行けるじゃないかって期待しただろ!?でもよく考えたらおたえと丸一日一緒ってキツイな、モカよりきついぞ

 

「…RASのライブ、見に行くから」

「あーあれか、こないだのバンドか」

 

 おたえの修行先のバンドだった。そのせいでって言ったらあれだが…文化祭の最後のライブに間に合わなくなりかけたんだよ、まあ俺がなんとかしてギリ間に合ったんだけどな

 

「じゃー無理だな、他当たるは」

「有咲とか誘えば?」

「……ごめん、それは無理」

 

 市ヶ谷さんにこないだドロップキック食らわされて窓ガラス割ったので!もうあの人が怖いです俺は

 

「じゃ、バイトあるから帰るねーバイバーイ」

「……うーす」

 

 さてと、困ったな…おたえが潰れた今誰を誘うか

 

「まあ別にまだ決めなくてもいっか」

 

 それなりに時間はまだ余ってるしな!荷物を取り俺もバイトに向かおうと思った時

 

 隣のクラスで楽しく喋るポピパのメンツ、いやおたえさんバイトあるから帰るって言うてたやん…あれか?それとなく俺のこと嫌ってるんですか!?泣きそう

 

 無言で立ち去ろうとしたが…

 

「シン君だ!今から帰るの?」

 

 香澄さんが話しかけてくんすよ!こないだあんなこと言ったのに普通に接してくれるからな、いやまじ香澄天使です。いや神かもしれんつぐみが俺の天使だったわ

 

「香澄、お前夢の国に行きたくないか?」

「香澄騙されるなよーホテルに連れてかれるからなー」

「そ、そんなことしないから!?」

「黙れ変態男」

 

 グサッ!

 

 何かが…何が俺の心に突き刺さった。ガチトーンで言われるとか、なんですかそれは!?てかあれはひまりが紛らわしい言い方したからだろ!?

 

 最近関わってないが奥沢さんもそんな感じで俺に接するからね?クラスの中で彼女だけ連絡先教えてもらってないからね!?

 

「ありさー許してあげなよーシン君謝ってたじゃん」

「……まあそうだけど流石にあれはない」

「何されたか知らないけど許してあげなよ有咲」

 

 こ、この二人はまじでいい人すぎる!香澄!そして沙綾!君達と友達で本当に良かったです!

 

「あ、それ香澄から聞いたよ?私でよければ相手するけど?」

『お、お前は何言ってんだよ!?』

 

 市ヶ谷さんと同時にツッコんだ。

 

「ふふ、二人とも仲良しだね?」

 

「なわけないだろ!こんなやつと仲良いなんて嫌だぁあ!」

「そ、そこまで言うなよ!」

「てか香澄!俺と一緒に夢の国に行くのか?行かねーのかどっちだ!?」

 

 元々この話だったのになんですこんなに話がズレたんだ?おかしいだろ!?

 

「ごめんねーその日あっちゃんとお出かけなの」

「そ、そうですか…」

 

 香澄がダメなら!

 

「牛込さんは!?」

「ご、ごめん!その日はチョココロネ祭りがあるの…だからごめんなさい!」

 

 な、なぁぁにぃぃ!?チョココロネ祭りだと!?なら必然的にモカも無理そうだな

 

「おたえはさっき聞いたな」

「……沙綾は?」

「……………………」

「あのー沙綾さん?」

 

 あれ?声は聞こえてると思うんですが…なんで返事しないんだ!?

 

「なんで私が1番最後なのかなーって」

「……!?い、いやーそれはそのー」

「…………ごめん」

 

 なんで謝ってるの俺!?てかなんで沙綾怒ってるの!?

 

「……なんて冗談だよ」

「な、なんだ!冗談か!」

 

 いやよかった!沙綾に嫌われたのかと思っちまったぜ

 

「悪いけどその日は私もチョココロネ祭りがあるんだよね」

「主催会場は山吹ベーカリーでしたか!!」

 

 ポピパのみんなに振られちゃいました。

 

「……不幸だ」

 

 ある意味重い足を動かし下駄箱に向かい帰るための準備をする、その時だ

 

「……シン君?」

「あー!!彩先輩!!」

 

 彩先輩がなんと玄関の入口にいたんだよ!俺はずっと彩先輩に言いたかった!でも白鷺先輩がいて話しかけれなかったんだよ!

 

「彩先輩!俺と連絡先交換してください!」

「……え、えー!!!」

「な、なんすか!?お、俺と連絡先交換できないとかですか?」

 

 まあ確かにアイドルだから男子と連絡先交換するのは禁止とかあるのだろうか

 

「ち、違うよ!その…嬉しいの!」

「なら交換しましょう!」

 

 携帯を手に入れ彩先輩と連絡先交換しようとずっと思っててやっと今日できましたよ!いやーやっと願いがかなった!

 

「シン君は……これからバイト?」

「はい!コンビニに向かうところです」

「私もこれからバイトなんだ!途中まで一緒に歩かない?」

「行きます!行きます!歩きます!」

 

 彩先輩と途中まで一緒に歩けるとか御褒美すぎんだろ!

 

 その後彩先輩と一緒にバイト先まで歩く

 

「シン君は何してたの?」

「俺はーそのこれを誘ってました」

 

 ポケットに入れていた夢の国のチケットを彩先輩に見せる

 

「えー!?これって夢の国のチケットじゃん!なんでシン君持ってるの!?」

「そのひま、じゃなくて友達から貰って…誰と行こうか悩んでて」

 

 と、話をするが彩先輩は既に頭の中が夢の国状態だった。

 

「メリーゴーランドとかジェットコースターに乗って最後は……えへへ!」

「あ、あのー」

「はっ!し、シン君!誰とも行かないならさ…」

 

「わ、私と一緒に行かないかな!」

 

 え!?でもそれいいのかな?アイドルだしダメとかじゃ

 

「えっと、事務所は大丈夫なんですか?」

「友達と行くって言えば大丈夫!」

「いや、大丈夫なんすか?」

 

 友達ってそれは女子オンリーとかじゃないよね?男友達も可ですよね!!え?違うの?どうなんだろう!

 

「だ、だから私とデートしようよ!」

「……まあデートじゃないけど遊びましょう!」

「色々言いたいことあるけど…うん!一緒に遊べるなら嬉しいよ!」

 

 その後待ち合わせ場所と時間を決めそれぞれのバイト先に向かった。

 

◆◆◆◆

 

 そして現在に至る。

 彩先輩と二人並んで夢の国の入口に向かって行く。ん?行く工程の話はないのかって?

 

 それじゃ聞くか?何故か人が沢山いて俺と彩先輩が人間バーガーにされかけた話を…聞きたいと思いますか?聞きたくないよな!?つまりそういうことさ

 

「――……ねえシン君」

「なんですか?彩先輩」

 

 名前を呼ばれたからいつも通り返事をする

 

「あのさ?今日はその、先輩はなしで呼んでくれないかな?」

 

 え?いや、いいのかな?彩先輩は先輩で歳上だし…まあ先輩をつけなければいいだけだろ?

 

「……わかりました彩さん(・・・)

「ちーがーうーの!!名前で呼んでよ!」

 

 な、なんで!?てことはさんも取れってこと!?

 

「…………彩」

「……うん!シン君なーに?」

「いや、彩が彩って呼んでって言ったんじゃないですか」

「ついでにその話し方もやめようか」

 

 さ、さすがにそれは…

 

「モカちゃん、蘭ちゃんと同じ感じで接してよ」

「……?まあ彩がそう言うならそうするよ」

「……!うん!」

 

 なんでそんなことするかわからないが…まあ彩が喜んでるなら良しとするか!

 

 二人で入場ゲートを潜り夢の国の中に入る。よく考えたら今ひまり達もこの中にいるってことだよな?あいつちゃんとやれてるのだろうか…少し以上に心配だな

 

「シン君シン君!まず最初何乗る!?」

「あ、俺乗りたいアトラクションあったんですよね!」

 

 今はそうだな、ひまりのことは忘れて今この時を、この瞬間を彩と楽しもうと思った。

 

 思ったらあっという間、アトラクションの待ち時間なんかはお互いの起きた話をして、まあ彩が大半喋ってたが…俺が過去にあった「不幸」話をすると

 

「あはは!シン君って本当に不幸体質だね!」

 

 そう言う彩の顔は笑顔だった。その顔に俺もつられ思わず口角が上がってしまう。やっぱり彩と喋ることは楽しいなって感じる、もちろんアトラクションに乗って急降下する直前の彩と来たら…思い出しても腹を抱えて笑えるレベルで面白い。

 

 その後時間も丁度よくなりお互いお腹がすいたとの事でご飯を食べることになった。近くにいろんな店が集まって外で食べれるところがあったためそこで食べようと話になった時…事件は起る

 

「あれ?実行委員長君じゃないか」

「!?」

 

 話しかけられ後ろを振り向く

 

「やあ、こないだぶりだね?元気にしてたかい?」

「…………先輩か」

 

 その先輩の隣にはもちろんひまりはおりますよ?ひまりの方を見てみるとやらかしたーって顔をしてる、多分だけど俺も似たような顔をしてると思う。

 

「あれ?亜滝(あたき)君?え!?ひまりちゃんと付き合ってるの!?」

「丸山さんか、いやーひまりちゃんとは付き合ってないよ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 ん?いや、なんでもない…てか

 

「……二人は知り合いなんすね」

「あークラスが一緒ってだけだよ、全く喋ってないけどね」

「うん、なんかね?あはは、調子狂っちゃうなー」

 

 調子狂ってるのはそっちだけじゃないんだよ!俺とひまりだって今お互い表情で会話をしていた。

 

『なんでここにいるの!?』

『知るか!飯食おうと思ったらお前らがいたんだろ!?』

 

「そうだ、これも何かの縁だ。一緒に昼ご飯食べないかい?」

 

 先輩はそう言うが…

 

「いえ、二人の邪魔したくないので結構です」

 

 即答する俺

 

「俺は彩と二人で食べたいので」

「……へ!?」

「…………それじゃ」

 

 彩の手を取り別の料理が食べれる店に向かう。二人の邪魔はなるべくしたくねーしな、ひまりと俺が絡んだらいつもの接し方になるからさ?やめた方がいいかなと思ったんだよ

 

「ごめん、先輩達と一緒にご飯食べたかった?」

「う、ううん!シン君と二人で食べれるなら全然問題ないよ!」

 

 普通に恥ずかしいことあなたは言いますよね!?俺のさっきのセリフはその場を納めるために言ったんだけど違うとらえかたされたのか!?めっちゃ恥ずかしいじゃねーか!でもまあ、彩と二人だけでご飯食べれるのは少し以上に嬉しいかも

 

『いただきます!』

 

 近くにあったバーガーショップにてネズミ顔の形をしたパンのハンバーガー買い外で食べました。

 

「……ごめん、ちょっと席外すね」

「ん?俺もついて行くよ!」

 

 こんな人混みの中で離れたら厄介だからな!

 

「いや、その……ね?」

「なんだよ!一緒に行けば大丈夫だろ?」

 

 離れる心配ないしな

 

「だ、だから!」

 

 だから?

 

「……と、トイレに行くの!恥ずかしいこと言わせないでよ!シン君のエッチ!」

 

 ガハッ!

 ま、マジかよ…俺めっちゃ変態みたいなこと言ってんじゃん…やば

 

 そして…数分たったが未だに彩が帰ってこない。今は人が多い時間帯だからトイレが混んでいるのだろうか?でもさすがに長過ぎないか?

 

 もしかして!道に迷ってる…とかないよな?

 一応電話掛けてみるか

 

 ブーブーブーブー

 

 俺が座ってる前の席から携帯のバイブ音が聞こえる…

 

「(あれ?あれあれあれ!?)」

 

 女子のバックの中を見ることは礼儀知らずだと思うが…確認してみるとそこには彩の携帯があった。

 

「……まじで道に迷った可能性あるかもしれない!」

 

 彩の荷物を取り一番近くのトイレに向かう。店の中じゃないのかって?外で食べててな?彩が向かった先は外のトイレだと思うんだよ、だって店入ってなかったし

 

 近くのトイレに向かうが人がたくさん並んでいた。なんだよ、やっぱりトイレがこんでいただけなのか…

 

 トイレの隣のベンチで座って休んでいると彩が出てきた。

 

「おい彩おせーよ、心配したんだか……らな!?」

 

 出てきた彩の手を取りその場から立ち去ろうとした。だが彩だと思った人は全く違う人物だった。髪色が似てるから間違えたのだろうか、いやきっとそうだそうに違いない!

 

「し、シン君!?なんでここにいるの!?」

「ひまり!お前こそなんでここにいんだよ!?」

 

 そう、俺が手を握った人は彩ではなく、上原ひまりことバカの手を握っていた。




いかがでしたか?これから先輩は登場するんで名前つけようと思います。なんなら募集するんで感想とかメッセージください(笑)

ではまた次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンはみんなの味方になりたい

頭の中では話ができてるけどいざ書くとなると色々付け足しちゃうよね…書き手の人ならわかってくれると思ってる!

それではどうぞ!

※多分誤字脱字があるかもしれない…


 彩だと思って手を取った人は彩ではなくひまりだった。

 

「……なるほどねー彩さんと」

「頼むから誰にも話すなよ?バレたら色々とまずいから」

 

 アイドルが男子生徒と夢の国で遊ぶ、一般的に考えたらデートだと思われても仕方がないよな?まあ俺達はデートしてるわけじゃないけど

 

「てか彩見てないか!?」

 

 彩を早く見つけないとはぐれてしまう!てかもう既にはぐれてるけど!

 

「ごめーん!考え事しててそれどころじゃなかったの」

「……そうか」

 

 考え事っていうのは恐らくだが…告白のことだろう。今日告白するとひまりは言っていたからな、成功することを祈るしか俺にできることはない。だって決めるのは先輩なんだから

 

「わかった。じゃー俺は彩を探してくる」

「…………うん」

 

 その場から離れ彩を探そうとする…が、せめて一言ぐらい言ってても損はないよな?

 

「――……ひまり」

「…………頑張れよ」

「…………ッ!」

 

 その後のひまりの表情なんて見てない。余計なお世話で怒ってるのか、はたまた笑顔でありがとうと言ってくれてるのか……できれば笑顔であって欲しいと願うかな?

 

 その後さっきのハンバーガー屋に向かってみる…彩が店員さんにあたふたしながら身振り手振りで話をしていた。

や、やばい!やらかしたかもしれん!

 

「で、ですからここにいた人を!」

「……あ、彩!」

「!?シン君!どこ行ってたの!?もう心配したんだからね!」

 

 その後彩はさっきまで話していた店員さんに話をつけ終わり店から離れる

 

「ご、ごめん帰るのが遅かったから道にでも迷ったのかと思ったんだ」

 

 彩ってちょっとおっちょこちょいなところあるから!?そりゃ心配しますよ!

 

「さすがに帰り道ぐらいわかるよ!でも…」

「……心配してくれてありがとう!」

 

 そう言う彩の顔は100万ドル以上の笑顔だった。この笑顔がこんな近くで見れるなんて…彩ファンに殺されそうだなおい!?

 

 その後も夢の国を二人で堪能した。いやーまさかネズミの王様に会えるとはな!おたえがいたら喧嘩してたかもしれんな…

 

 彩はと言うとどうやら中身が人間だと知らないらしい。本当にあの生き物がこの世に存在すると思ってるようだった。噂では聞いていたがまじでそう思う人もいるんだな

 

 その後俺達2人は観覧車に乗ることになった。なんでかと言うと彩が

 

「夕焼け綺麗だから乗ろうよ!」

 

 と言ったから乗ることになった。

なんだ?夢の国には観覧車はないって?知らんな、こっちの夢の国にはあるんだよ、高さもちゃんとしたやつなんだよ!

 

「……夕焼けやっぱり綺麗だね」

 

 乗った俺らは窓から見える紅く燃える夕日を眺めていた。

 

 夕日というのは実に良いものだと俺は思う。なんか、そうだなー1日の終わりだけど俺にとってはなんかさ?今日も頑張ったなーって思えるんだよ

 

「…………ねえ、シン君」

「……なんですか?」

 

 夕焼けに照らされる彩が俺の名前を呼ぶ

 

「……話があるの」

「なに?」

 

 彩から話?何を聞かされるかわからんな!

 

「……もし、もしもだよ」

「私に好きな人ができて…その人と結ばれるためにアイドル辞めるって言ったら」

「……シン君は私を叱ってくれますか?」

 

 は?なにそれ…彩に好きな人ができて?その人と結ばれるためにアイドル辞めるって?

 

「も、もしもだから!もしも!まだ好きな人とかいないからね!?」

「…………わかってる」

 

 もしもだって知ってる、わかってる、けど彩がアイドル辞めるなんて想像もしたくない。

 

「前にも言ったけど彩は俺にとっては憧れの存在なんだよ」

「……うん」

「かっこよくて、可愛くて、努力家で…誰にも負けないその努力に俺は惹かれたんだ」

「…………」

 

 だからなー結局結論は

 

「辞めて……欲しくない」

「辞めるって言ったら俺が全力で阻止する…けど叱るまではなーその資格は俺にねーし」

 

 だけど俺も、俺ももしもの話をしよう。

 

「まあもし辞めてみんなが彩の敵になった時」

「――……それでも俺は彩の味方だから」

「…………ッ!」

 

 たとえみんなに嫌われようとも俺は絶対に、一度憧れた先輩を見捨てるようなことはしない。俺は彩の味方であり続けるさ

 

 けど…彩だけじゃない。俺はみんなの味方になりたいんだよ。モカに蘭、沙綾にひまり、香澄、おたえポピパのメンツにこころやみんな

 

「――……みんなの味方でいたいんだよ」

 

 そんなガチガチの正義の味方!とかじゃないぞ?俺にそんなに力はねーよ、でもさ?友達として、仲間として味方になってやりたい。俺が昔求めた存在(・・・・・・・・)…がいないなら俺がなればいいんだよ

 

「それにしても彩に好きになってもらえるやつってどんなやつなんだ?」

「…………ッ!?」

「羨ましすぎるしそいつは幸せもんだろ」

 

 いいなー彩に好かれてるんだろ?めっちゃいいじゃん!あーでもその人と結ばれても俺は彩の味方だ!とか言うのかな?やっべ、俺ってこころ以上にやばいやつじゃん!?

 

「……だったらシン君は幸せものだね」ボソ

「ん?なんか言ったか?」

「な、なんでもないよ!」

 

 ならいいが…なんか小声で言ってたような?まあ別にいっか

 

「ねえシン君、隣に座ってもいい?」

「!?な、なんで?」

 

 今は向かい合って座ってるが…彩のやつが隣に来たいと言い出した。

 

「……よいしょっと」

「許可してないけど!?」

 

 許可する前に彩は俺の隣に座ってきた。心做しか頬が赤く見えたが…それはきっと夕焼けのせいだと自分に言い聞かせた。

 

「…………ッ!」

 

 隣に座った彩は俺の肩に頭を預けるようにもたれかかってきた。

さ、ささささすがにこれは!?

 

「今だけ……今だけ許してくださいね」

 

 その敬語使うのなんなんだよ…俺には使うなとか言ったくせにさ!?

 

「誰かに見られても知らねーぞ?」

「さすがに地上から数十メートル離れてるところからは見られないよ」

「…………そーですか」

 

 確かにそうかもしれないな!なら、この思い出を忘れないようにしっかりと覚えておこう

 

◆◆◆◆

 

 観覧車も乗り終え、最後のフィナーレである花火が上がるのを待っていた。待っている間は近くの店で夜ご飯も食べ終えいつでも花火が上がっても大丈夫なように準備万端だった。

 

 ひまりは…この花火を見終わって告白するのか?いや、どうかは知らんが…ってさっきからひまりのこと考えすぎだろ!?

 

「シン君!そろそろ花火上がるよ!」

「……お、おう!」

「あー今別の女の子のこと考えてたでしょ!」

「え!?な、なんでわかるの!?」

 

 な、なんでわかるんだ!?もしかして彩も読心術持ち者か!?

 

「えー!?ほ、本当だったの!だ、ダメだよ!今は私のことだけ考えないと!」

「勘だったんかい!?」

 

 俺がツッコミをかましたと同時に花火が上がった。

 

 その花火はとても綺麗だった。花火なんて久しぶりに見たもんだからな…あ、小さい頃家で上がってたなーガチのやつが、去年は知らんが今年もするのだろう?まあいいや

 

 それはそうと女子と二人で見る花火は初めてだった。隣を見てみると彩は俺の方を見ていた。いや、花火見ろよ!?

 

「…………ッ」

 

 彩のやつは黙って下を向いているが…

 

「彩?花火見なくてもいいのか?」

「……み、見るよ!」

「その前にシン君に話があるって言うか…」

 

 俺に話?またさっきの続きか?

 

 彩は何度も深呼吸を行い何度目かで俺に話しかけてきた。

 

「シン君!私は………………ます!」

 

ドーン!!

 

 彩が何か俺に言おうとした時、今までの花火よりも花火が大きな音を立てて上がった。

 

「え?なんて!」

「…………もーう!!言わないから!!」

 

 なんで!?めっちゃ気になるんだけど!?

 

 その後二人で残りの花火を見ていた。

 

 花火を見終わり夢の国から出て駅に向かう。言うまでもないがもう時刻は結構遅い。だからな?

 

「彩、家まで送るよ」

「ほんと?ありがとね!」

 

 こんな夜中に女子一人では帰らせねーよ?

 彩が道を案内してくれるためすぐに彩の家に着く

 

「ここまででいいよ!あれが私の家だから」

「わかった。じゃあな!」

「うん!私今日はすーっごく!楽しかった!」

 

 まったく嬉しいこと言ってくれるよな!

 

「……ッ!そ、そうか!俺もすごく凄く楽しかった!また暇な時があれば遊ぼうな!」

「……うん!絶対だからね!バイバーイ!」

 

 彩と別れ一人で自分の家に向かう。最近買った結構な値段がするイヤホンを付けパスパレの曲を聴く

 

 暗闇というのは子供にとっては怖いのだろう。だって昔俺が怖かったしな…夜トイレ行く時によくこころと一緒に行ってたっけ?てか昔の俺らって仲良かったんだな

 

「(久しぶりに屋敷に顔出すか)」

 

 あんまり乗り気はしないが…まあシンジやお母様には顔を見せとこうと思ったんだよ

 

 どれぐらい歩いただろう…電車代をケチって歩いたから中々の距離を歩いた。夢の国で歩き回ってからのこれは相当キツイ、明日は筋肉痛確定だな

 

「…………イッター」

 

 ぼーとしながら歩いているとバス停のベンチで座っている女性がいた。いたんだが…その人物を俺は知っている

 

 

 

 

「……なーにやってんだよ、ひまり」

 

 

 

 

 俺はひまりが座っているベンチの隣に座りひまりに話しかける

 

「……シン君はどこにでも現れるね?」

「もしかして私のこと好きなの!?」

「……なに言ってんだよ」

 

 冗談を言うひまりだったが…足元を見ると怪我をしていた。履きなれないヒールを履いていたため靴擦れをしたのだろう。

 

「帰らなくていいのか?」

「……帰るよ、けど足が痛いのー」

 

 近くに駅はない。つまりひまりも歩いてここまで来たのだろう、ヒールでこの距離を歩くって凄いな

 

 てか…うん、ここに一人でいるってことはそういうこと…なんだろうな

 

「……じゃー帰るか…ほれ」

 

 ひまりの前に出て背を向けて屈む

 

「……ん?どゆこと?」

「足、怪我してんだろ?家までおぶってやるよ」

「……えへへ、ありがとう」

 

 そう言うとひまりは俺の背中に乗ってきた。

 

「お、重いとか言わないでよね!」

「いわねーよ、多分」

「あー!多分って言った!」

 

 少し黙れよ!?もう結構遅いんだから近所迷惑だろ!?

 

 ひまりをおんぶして立ち上がるが…

 

「……お、重い」

「な、なんでそんなこと言うのさ!?」

 

 重いが…背中に当たる胸は最高だな!

 

 ひまりをおぶり歩き始める。

 

「……結果、聞かないの?」

 

 ひまりはそう言うが…もうなんとなくわかるよ

 

「……言わなくてもわかるっての」

 

 結果は…そう、振られたんだろうな

 ここに一人でいる時点でもうわかってた。もし成功していたなら先輩がひまりを家まで送って行ってるはずさ

 

「――……ごめんね」

「――……なーにーが」

「協力してもらったのに……ごめん」

 

 ひまりは俺に謝ってくる、けどひまりはなんも悪いことはしてない。

 

「謝んなって、俺は大丈夫だから」

「……うん」

 

 でも…ひまりが先輩と結ばれなくて少しホッとしてる自分がいるんだ。別にひまりのことが好きってわけじゃないさ、でも仲のいいヤツが他の男子と付き合うとなると…なかなか受け入れられないだろ?

 

 巴は…うん、俺の友達が付き合ってるからいいんだよ

 

 俺はイヤホンを取り出した。取り出す時片手で抑えてて左手が逝くところだったよ

 

「あーやっぱりゆらゆら最高だよなー」

「……シン君?いくらなんでもそれはひまりちゃん寂しくなっちゃうよ!?」

 

 知らんな

 

「あー何も聞こえないなー」

「も、もう!私のこと馬鹿にしてるのかな!?」

「えっと、変態!馬鹿!阿呆!間抜け!」

 

 尽く俺を罵倒すんなよ!

 

「あーこれだと女の子の泣き声も聞こえないなー」

「…………ッ!」

 

 いや、聞こえてるけどさ?こうでも言わないと…な?

 

「……泣きたい時は泣けばいいんだよ」

 

 俺が言うんだ。なんせ蘭に膝枕されながら泣いたっていう黒歴史があるからな、泣くとスッキリするぞ?まじでな

 

「……なにそれ、カッコ……付けすぎっ!」

 

 うるせえ

 

「……なんで、なんでなの!?」

「なんで彼女がいるのにデートなんてしたの!?」

「おかしいじゃん!なんで……さんなの!」

 

 ひまりは先輩の文句を言う。

 やっぱり彼女いたんだな、あの時の発言の違和感はそれだったのか…まあ彼女さんは俺の知らない人なんだろうな

 

「私の方が可愛いじゃん!」

「私の方が胸も大きいじゃん!」

「……………………ッ!」

 

 その後ひまりは…そうだな、まるで赤子のように俺の背中に身を委ねながら泣いていた。

 

 泣きながら俺の服を強く握る、服が伸びるからやめて欲しいけど…今は許すよ

 

「――……頑張ったな、ひまり」

 

 俺が言える言葉はこれしかない。告白することなんて本当に凄いと思う。俺にも好きな人ができたら告白するのだろうか、その時はそうだな…

 

「(――……毎日美味しい味噌汁作ってください)」

 

 って言うのもありかな?…なんちゃって

 

「…………ここまででいい」

「……おう」

 

 ひまりにそう言われたからその場に下ろす

 

「こんな小さい声は聞こえるんだね」

「たまたま曲が終わったところだったんだよ」

「……そっか」

 

 あ、危ねぇ!普通に下ろしてたし!

 

「……シン君」

「ん?なんだ?」

「今は…彼女いないよね?」

 

 ん?

 

「今も昔も彼女なんていねーよ!」

 

 年齢=彼女いない歴だならな!?

 

「うん、そっか、そうだよね!いないよね!」

「なに?お前俺を馬鹿にしてんのか!?」

 

「違うよ!仲間だねってこと!」

 

 あー巴は彼氏いるからな、多分非リアって分類で仲間と言ってんだろう

 

「お互い恋人ができるといいな」

「…………うん!」

 

 そう言うとひまりは家に向かう

 

「送ってくれてありがとう、また今度ね」

「……おう!またな!」

 

 ひまりと別れ次こそ自分の家に向かう。

 

「(先輩彼女いたのか…なんでデートの件引き受けたんだ?)」

 

 ちょっと以上に先輩の考えが気になる、普通なら断るからな、あの人は一体何を考えてるのやら

 

「おい君!」

「!?」

 

 自転車に乗っていて警棒を備え付けている人に話しかけられる

 

 てか警棒持ってる人って…

 

「警察だ、こんな遅くに一人で何をしてるんだい?」

「ん?君は……前も会ったよね?懲りてないなー」

「す、すみませんでしたぁぁああ!!!」

 

 誤り走ってその場から逃げようとする

 

「あっ!待ちなさい!」

 

 警察の人は自転車ではなく走って俺を追いかけてくる

 

「あーもう!不幸だぁぁあああ!!」

 

 真夜中の住宅街にてシンの叫び声が響いたのであった。

 

 その後無事に逃げ切り家に帰ると同時に玄関で爆睡したのであった。




ひまりは…ね?なんとなくわかってた結果だと思います。

先輩の名前ですがいくつか案が来ました!ありがとうございます!そのうちの一つは巴の彼氏にも使おうかなと思っております!…よろしいですか?もし案があるなら受け付けます!

次回は彩視点です!多分短いけど許してね!


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弦巻シンと丸山彩の心情

クソ難しかったです。

ちなみにまだ研修中です。まだまだ頑張りますぞ!

それではどうぞ!


 いつからだろう、彼のことが頭から離れなくなったのは…きっとこの前の文化祭が原因だと思う。

 

 花咲にある結びの話、それは文化祭後のキャンプファイヤーにて一緒に踊った人とは永遠の愛で結ばれる…って言い伝えがあるの、そのせいで彼と踊って意識し始めちゃったのかな?

 

 でも彼と私、二人っきりで踊ったわけじゃない。他にも人はいたけど…期待はしても別にいいよね?

 

◆◆◆◆

 

「それじゃ彩ちゃん、私は仕事に行くからまたね」

「うん!千聖ちゃん撮影頑張ってね!」

「ええ、任せてちょうだい」

 

 違うクラスなのに千聖ちゃんは放課後うちのクラスに来てくれる。来た時男子の喝采が…ね?凄いの

 

 パスパレのレッスンがある時はよく千聖ちゃんと二人で行ってるけど今日はパスパレのレッスンは休み、だけど千聖ちゃんはドラマの撮影があるらしく今日も事務所に向かう。

 

 私はバイトがあるけどね

 

「(うーいつも一人になると彼が浮かんでくる〜!!)」

 

 千聖ちゃんやパスパレのみんな、友達といる時はこんなことは起きないけど一人になったり授業中とかはふと思い浮かんでしまう。

 

「(――……恋、なのかな?)」

 

 ……いやいや!ダメでしょ私!私はアイドルだよ?アイドルは恋愛禁止ってのが普通でしょ?

 

 でも…彼と、シン君ともっとお喋りしたい。シン君の顔が見たい。

 

「(わ、私は!私はなんでそんなこと考えるのさ!)」

 

 シン君のことを考えるとあの日の顔が思い浮かぶ

 

 あの日って言うのはこれもまた文化祭の話なんだけど…シン君がおたえちゃんの迎えに行き時間ギリギリで帰ってきた時の光景

 

 それは、それはとてもカッコよかった。スケートボードで来たシン君はおたえちゃんをお姫様抱っこしてホールのドアを思いっきり開けそのままステージに飛んで来た。

 

 こんなシーンはみんな一瞬のできごとだと思う。けどね私には…スローモーションのように見えたの、その時のシン君はとてもカッコよくて…お姫様抱っこされてる人が私だったらいいなって思ってしまった。

 

 その後は…うん、恥ずかしいことしちゃったなーって思ってる

 

「(……バイト行かなくちゃ)」

 

 ため息がこぼれる。なんせ最近はシン君とまったく会ってないから…見かけるけど、んー千聖ちゃんといるから話しかけにくいって言うか

 

 そんな考えをしてる時目の前にその人が現れた。

 

「……シン君?」

 

 そう、シン君がそこにはいたの話しかけたのはいいけど何を話そうか、そう思ってたらシン君が連絡先を教えてくれと言ってきた。

 

 驚いた反応するとシン君は慌てたようになる。だからその後急いで訂正し直す…

 

 どうやらシン君もこれからバイトに向かうところだった。だから私は一緒に行こうと提案した。

 

 シン君は他の男子とは違う。私をちゃんと見てくれている。一人の女の子として見てくれてる。それがどれだけ嬉しいことか…

 

 少し会話をするとシン君が夢の国チケットを見せてきた。

 

 私は夢の国が本当に大好きなの!ネズミの王様とかもう大好きでぬいぐるみとか部屋に飾ってるの

 

「(シン君と行けたら絶対楽しいだろうなー)」

 

 そう思った瞬間

 

「わ、私と行かないかな!」

 

「(な、何言ってるの私!?)」

 

 本当に何を言ってるのか…その後もシン君が色々聞いてくるけど事務所に許可を取らずに遊ぶこと…で、デートの約束をした。

 

◆◆◆◆

 

 当日はとてもウキウキ気分だった。家を早く出たけど道が混んでたため遅れると思ったけど時間ギリギリに着くことができた。

 

 シン君と合流して夢の国に向かう。

 

 私はずっとシン君に言おうと思ってことを言った。それは名前だけで呼んで欲しいって話なの、いつも先輩って付けられて嬉しかった。嬉しかったけど…モカちゃんや蘭ちゃんには呼び捨てで呼んでいる。同級生だからってのもあるけど…さ?私も名前で呼ばれたいの

 

 そう言うとシン君は私のことを彩と呼んでくれた。今日一日だけって話だけど…うん、嬉しいよ

 

 その時は夢の国でたくさんの乗り物に乗った。待ってる間はお互いの話をして待ち時間も飽きることはなかった。

 

 昼ごはんを食べる時に同じクラスの亜滝君とひまりちゃんに会ったけどシン君が私の手を取り二人で食べたいと言ってた。

 

 その後ちょっとした事件とかあり私がテンパったけど何も問題がなかったためよかったよ。

 

 もう時刻は夕方、太陽が沈みかけており夕焼けがとても綺麗だった。だから私は観覧車に乗りたいと言った。

 

 シン君は嫌と言わず乗ってくれる。

 

 乗ったのはいいけどここは密室で二人っきり。やっぱりシン君のことを意識してしまう。今のシン君は夕日を眺めてきっと何か考えてるんだろう…

 

「――……カッコイイなー」

 

 夕焼けに照らされるシン君はとてもカッコよかった。

 

「(やっぱり…うん)」

「(私はシン君のことが好きなんだよ)」

 

 いつから好きになったとかわからない。もしかしたら初めてあった時から私は恋をしていたのかもしれない。

 

 けど…ここで一つ考えが浮かんでしまう。

 

「(私は誰かを好きになっても大丈夫なのかな?)」

 

 私はアイドル、恋愛なんてしてはいけないしましてや誰かを好きになることもダメなことだとわかってる、わかってるけど

 

「(それでも私は…あなたが好きです)」

 

 未だに夕日を眺めてるシン君の横顔を見ながら心の中でそう言った。

 

「……もし、もしもだよ」

「私に好きな人ができて…その人と結ばれるためにアイドル辞めるって言ったら」

「……シン君は私を叱ってくれますか?」

 

 好きな人と一緒にいる…そのためにはアイドルを辞めないといけない。でも…私はアイドルを辞めたくない…だからシン君に聞いてみたの、辞めると言ったら私を怒ってくれるのか…

 

 シン君の答えは辞めて欲しくないだった。その答えを聞いた時はホッとしたよ、もし辞めてもいいって言われたら私は自分の夢を1つの為にめちゃくちゃにするところだったんだからね

 

「まあもし辞めてみんなが彩の敵になった時」

「――……それでも俺は彩の味方だから」

 

 この言葉を聞いた時私は…うん、やっぱり改めて思ったの

 

「(好きです……ううん、大好きです)」

 

 自分でも今は顔が赤くなっていると思う。

 

 少しでもシン君の傍にいたいと思ったから隣に座っていいかと聞く、聞いてみると返事を困らせてたけど私は躊躇なく座った。

 

 シン君の肩に頭を乗せ、寄りかかった。

 

「(この気持ちは間違いじゃない…よね?)」

 

 自分にそう言い聞かせた。

 

 最後のフィナーレで花火が上がる。私たちはそれを見るために移動する、いざ花火が上がるとそれはとても綺麗で美しくて…隣を見るとシン君がはしゃいでるような顔で花火を見ていた。

 

 その顔を見ると、うん、デートしてるなって気分をさらに思わせる感じだった。

 

「(もう……ここで言っちゃおうかな)」

 

 シン君に話しかけられ私はシン君に話があると言う。何度も、何度も深呼吸をしてやっと言えるようになったから言った。

 

「シン君!私はあなたが好きです!大好きです!あなたを愛してます!」

 

 でも、その言葉はシン君に届かなかった…今までで一番大きな花火が私の告白と同時に上がったんだ。だからシン君は

 

「え?なんて?」

 

 と、間抜けた感じでそう言う

 

「…………もーう!!言わないから!!」

 

 せっかく勇気を出して言ったのに……うぅタイミングが最悪すぎるよ!

 

 でも……うん、思いはちゃんと口で言えたからいいかな?でも今度は、今度こそは

 

「(ちゃんと、聞いてもらうからね!)」

 

 そんなことを考えながら大好きな彼と一緒に花火を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弦巻シン君………私はあなたのことが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――……頭の中からはなれません」




次回あの方と初絡み!ワンチャンアンチヘイト付けざるを得ない話になるかもしれませんが…まあ大丈夫だと思います!既にりんりんとかね?

投票者数が50人から一向に上がらない!今まで1週間で1人や2人は増えてたのに…頑張ります!

では次回でお会いしましょう!感想お待ちしております!


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弦巻シンに味方はいるのか

今回はそんな面白い回ってわけじゃないです。シンの暗い過去の話です。そんな彼を救う人は…

それではどうぞ

後で色々訂正加えるかも


「――……あ」

 

 起きたらそこは我が家の玄関だった。

 

「そうだった、昨日は家に着いてすぐ寝たんだった」

 

 床で寝ていたため痛めてる腰を叩き欠伸をしてシャワーを浴びる。

 

 夏服を着て今何時かを携帯で確認しようとした時

 

「――……19時!?」

 

 え!?俺は約19時間も寝ていたのか!?てかさ…

 

「――……学校サボったことになるじゃん」

 

 うわー無断欠席だから絶対に怒られるんだろうな!明日の俺は多分担任に怒られると思う

 

 色んなやつからも連絡が来ていた。大丈夫か?とかサボりか?とかさ…昔の俺だと想像もしてない光景が携帯の画面にある

 

「……暑いし風にあたるか」

 

 バルコニーへ向かい夜風に当たる。夏でも夜は少し涼しく感じるからな、あと夜はうるさい蝉どもは鳴かないからな!

 

「……っと、返事をしないとな」

 

 バルコニーの手すりの所から手を出し手を離せば携帯が下に落ちる状況だ。けど手を離すことなんておきないし?気にさずに返事を返す。

 

「香澄とかからも来てるし…」

 

 内心少し喜んでいる俺だったが…

 

 急にタバコの灰が手に落ちてきた。

 

「アッチィ!……あ」

 

 さっき手を離すことなんてない。と俺は言ったが…今は手を離し携帯がもう手元にありません!下を見てるとすんごい音を立てて俺の携帯が地面に衝突した。

 

「お、おおお俺の携帯がー!!!???」

 

 ここは結構な高さですよ?なんせ屋上の下の階なんでな…よく見えないが生きてないことだけはわかる

 

「おのれ!誰だ屋上でタバコ吸ってるやつは!」

「……俺が懲らしめてやる!!!!」

 

 部屋から出ていき屋上の階段を上る

 

「おい!おいおいおい!!」

 

 ドアを思いっきり蹴り飛ばして開け俺は叫ぶ

だってさ!?せっかく無料で手に入れた携帯がこうも簡単に壊れたんだぞ!?まだ契約してそんなに経ってないのにさ!?

 

「俺の携帯どう……する、んだ!?」

 

 目の前にて片手にタバコを持ちこちらに顔を向けてるのは女性だった。

 

 しかも俺はその女性を知っている。なんせその人が所属するグループのファンなんだからな

 

「……し、白鷺千聖!?」

 

 そう、俺の前にいる人は誰がなんと言おうと白鷺千聖、その本人だった。

 

「あなたは……弦巻シン君、ね?」

 

 白鷺先輩は俺の名前を呼んだ後タバコを吸い口から白い煙をはいていた。

 

「な、なんで白鷺先輩がタバコ吸ってんの!?」

「…………マスコミに晒せば金が入ると思うわよ?」

 

 いやんなことしねーよ!てかバレたらパスパレが危ういだろ!?アイドルがタバコ吸うっていいのか?てかそれより未成年が喫煙してる時点でダメだろ

 

「……みんなは知ってるんですか?」

「誰も知らないわよ…見られたのはあなたが初めて」

 

 なにそれ、なんか隠してたことを俺なんかにバレて……すんません

 

「……吸う?」

「吸いません!」

 

 未成年にタバコを勧めんなっての!

 

 俺は白鷺先輩の隣に行き話しかける

 

「なんで…タバコんなんて吸ってるんですか?」

 

 いやだってタバコって害しかないだろ?別に喫煙者を馬鹿にしてる訳じゃない!その人にだっていろいろとな?理由とかあるし…だから白鷺先輩の理由がなんとなくだが知りたかった。

 

「さあーね、なんで吸ってるのかしらね」

 

 そう言うとまたタバコを吸っていた。

 

「周りが吸ってたら吸いたくなった…ってのは嘘じゃないわね」

 

 あーハイハイなるほど、白鷺先輩の仕事ってアイドルと女優だろ?多分だけど女優としての仕事の時、周りの人達が吸ってるのを見てそれに影響を受けたのかもしれない。

 

「いい子に飽きた…悪いことをしてみたいと思った時タバコが浮かんだのよ」

 

 あーあれか?いい子ちゃんならではの悩みってやつですか?

 

「もう一年ぐらい吸ってるけど誰にもバレてないわよ?」

「いや、それは凄い」

 

 匂いとかでわかるくね?現に今タバコ臭いぞ

 

「大丈夫よ、ファ〇リーズあるから」

「そうゆう問題なのか!?」

 

 正直いってめちゃくちゃ衝撃を受けています。だって…な?多分俺だけじゃなくて読者のみんなも…ってなにもない

 

「携帯、私のせいで落としたんだっけ?」

「ん?あーいいっすよ、知り合いなら許します」

 

 まあ無料で手に入ったものだしな、損はしてねー…よな?

 

「別にいいわよ、携帯の一つや二つぐらい買ってあげるわよ」

「…………あなたは金持ちですか?」

 

 携帯って一つだけで相当な値段すると思うぞ!?それを一つや二つぐらい買うだと?やばいだろ!?

 

「それあなたが言うのかしら、弦巻君」

「……す、すみません」

 

 そうだった、俺の家超がつくほどの大金持ちだったな

 

「なんならサイン掘ってあげるわよ?」

「え!?いいんすか!?」

 

 あの型番に掘るやつだよね!?

 

「私のでよければね?」

「全然大丈夫です!」

 

 白鷺千聖のサイン入り携帯とか日本中探しても俺だけのものだろ!?

 

 そんな話をすると白鷺先輩はタバコを吸い終えた。

 

「……もう吸わなくてもいいんですか?」

「あなたに迷惑がかかるわ」

 

 ん?あー副流煙ってやつ?

 

「気にしないっすよ、白鷺先輩と話せるなら副流煙とか怖くない!」

「……ふふ、あなた変わったわね(・・・・・・)

「…………?」

 

 変わったわね?どゆこと?

 

「じゃ、お言葉に甘えて吸わせてもらうわ」

 

 その後俺と白鷺先輩は屋上にてお喋りをしていた。まあ大半は白鷺先輩が仕事の愚痴を言ってるだけだったんだがな、まあ俺は知らない世界の話が聞けたし…何より白鷺先輩の普通の生活とか聞けたからよかったよ

 

 数分話したら急に雨が降ってきた。

 

「――……ごめんなさい、そろそろ帰るわ」

「まあ雨が降れば帰りますよねー」

 

 と、言った瞬間パラパラだった雨が急にザーザー降り始めた。もちろん俺と白鷺先輩はびしょ濡れだよ!なんでこんな急に雨降ったんだよ!?

 

 俺と白鷺先輩は自分たちの家に戻った。戻ってきた俺はすぐにまた風呂に入りなおし、上がったあとで髪を乾かし携帯がなく何をすることがないためゲームをしようと思ったその時

 

\ピンポーン/

 

 この音はドアのインターホンの音だな?あれ?その前に誰か人とか来たっけ?来てないよな?……じゃあ誰だ?

 

 ドアを恐る恐る開けると

 

「――……白鷺先輩!?」

 

 服がびしょ濡れになっている白鷺先輩が目の前にいる、それは服が透けていて下着が見えるほどだった。なんせ夏だぞ?夜だぞ?薄着でいるだろ?俺は悪くない。

 

「……不覚、妹がコンビニに行ったらしく家に入れないのよ」

 

 妹がいるから鍵を持っていかなくてもいいと思い持って行ってなかったらしい。それで?びしょ濡れでさすがに限界が来たらしく俺の所に来たらしい。

 

 俺はそんな女性を追い返したりなんてことはしない!だからシャワーを貸してあげることにした。

 

「(え、てか俺以外でシャワー使う人って白鷺先輩が初じゃね!?)」

 

 モカとか蘭が泊まりに来るーとか言ってたからあの二人のどちらかと思ってたが…どうやら違ったようだな!

 

「白鷺先輩ー服がジャージしかないんですけどいいですか?」

「着れればなんでもいいわよ、ありがとう」

 

 今あの扉の向こうで白鷺先輩がシャワーを浴びてるんだよな?

 

「白鷺先輩!俺もシャワー入ってもいいですか!?」

「な、何言ってるのよ変態!」

 

 ってなるんだろうな!決して俺が今した訳じゃないぞ!?ただの考えだからな!俺にはそんなこと言う勇気ありません

 

「……一緒に入る?」

「!?」

「冗談よ」

 

 で、ですよね!?焦った

 

 その後は、そうだなーさすがにゲームしとくのもあれだしテレビ見とくのもなーだからソファーに座って待っていました。

 

「シャワー助かったわ」

 

 髪を乾かし終えた白鷺先輩がリビングに入って来た。あの、すみません、マジでなんもないんすよね

 

「……この服、中学のジャージよね?」

 

 あ、バレました?まあ刺繍されてるしな、弦巻って

 

「あーすみません、服がまったくないので」アハハ

 

 部屋着とか今度買うか

 

「いや、懐かしいなと思っただけよ」

「……私もここの中学だったから」

「……え?」

 

 聞き間違いじゃないよな?

 

「……あー、白鷺先輩もここの中学だったのね」

 

 あんまり同じ中学のやつには会いたくなかったんだけどなーまさか白鷺先輩が同じ中学だったとか知らねーよ

 

「ねえ、なんで途中から学校来なくなったの?」

「……ッ!」

 

 な、なんでそのこと知ってるんだ?

 

「私昔あなたにあったことあるのよ?忘れたかしら…まあまだ芸能界に復帰してない時だけど」

「????」

 

 まったく身に覚えがない、てかあの時その、恥ずかしいけど病んでたんで…

 

 かなり前にも話したはずだ。俺はまあ虐められてたんだよ、弦巻家だからって理由でな…最初は普通だった。友達になろうと言ってきたから俺はそいつらと友達になった。なったけど…そいつらは俺をいいかねヅラとしてしか見てなかった。毎日毎日金を渡したさ、だって友達だと思ってたからな?

 

 まあ今となっちゃどうでもいい過去だよ、あいつらが何してよーと関係ないしな

 

「さっき言ってた変わったわねはそのことを言ってたんすね」

「……なんて言うか、中学って別に通わなくていいからいいかなって」

「だったら自立するためにバイトして金貯めてる方がいいかなと思って…」

 

 そう、俺は学校に行かずバイトをしていました。なんか店長が許可してくれたんだよ!だから一日中バイトしてました。

 

 あ、あと俺がよく制服を来ている理由、それは中学の後半から来てなかったから少しでも多く着ておきたいから着てるんだよ

 

「……てか、なんで俺が学校来てないこと知ってたんですか?」

「縦割り掃除、班が一緒だったわよ?」

 

 へーマジか、まったく覚えてない。てか縦割り掃除とか懐かしいな!

 

「昔は今みたいな人じゃなかったのにね」

「すみませんね!変な方になっちゃって!?」

 

 遠回しに馬鹿にされてるよな!?

 

『………………』

 

 沈黙が続く

 

「――……俺はみんなの味方になりたいです」

「……味方?」

 

 その言葉に俺は頷く。

 

 俺がみんなの味方になりたい理由、それは昔俺が求めた存在だからだ。お父様でもお母様でもない、弦巻家の関係者でもない。俺は単純に求めたんだよ

 

「……誰か僕を助けてください…って」

「………………」

 

 でも結果は…誰もいなかった

 

「……だったら俺がなろうって」

「まあつい最近、てか昨日思ったんですけどね」アハハ

 

 まあなんだ、そんなな?アニメみたいな正義の味方になりたいってわけじゃない、誰にでも一人ぐらいはお前のこと理解してるぞって言いたいってこと

 

「……つまりただのカッコつけですよ」アハハ

 

 てかなんで俺は白鷺先輩にこの話をしてるんだろうな、同じ中学だったからか?

 

「素敵な夢だと私は思うわ…」

 

 白鷺先輩は立ち上がりテーブルの周りを歩く

 

「私ね、夢がないのよ」

「――……夢がない?」

 

 なんだそれ

 

「だからね、昔のあなたは私と同じ人だと思ってた」

「………………」

「あんな暗い顔してまでなんで学校に来るの?きっと彼にも夢がないのね…って」

 

 いやーそれはお門違いだよ、まああの時はそーだったかもしれんが今は違うぞ

 

「――……だったら、夢を探しましょうよ」

「……夢を探す?」

「そう!夢を探すんです!」

「俺も普通を探すって友達と約束してるんで」

 

 まあ未だに見つかってないが…ある意味それが答えって可能性もあるけどな、答えがないが答え……なんちゃって

 

「……それちょっといいかもしれないわね」

「でしょ!?なら!」

 

 ソファーから立ち上がり白鷺先輩に手を差し出して言う。

 

「……お互い頑張りましょう!」

 

 俺は普通を探す。白鷺先輩は夢を探す。俺達二人は見つかりそうで見つからないものを探す似たもの同士、だからかな?なんか急に親近感湧いてきた。

 

「ええ、あなたより早く見つけるわ」

「競争相手がいるとやる気は出ますからね!」

 

 笑顔で俺はそう答える。

 こうしちゃいられないな!俺も普通を探さねーと!

 

「てか白鷺先輩!昔の俺見てそう思うのはちょっと酷くないですか!?」

「そうね、あの時は私も自分のことでいっぱいだったから」

 

 それ答えになってないだろ!?

 

「でも……元気になってくれて先輩は嬉しいわ」

 

 そう言う白鷺先輩は俺の頭を撫でていた。な、なんですかこれ?めちゃくちゃご褒美じゃないですか!?

 

「そうね、正義の味方さんにも味方が必要よね?」

「……私があなたの味方になってあげる」

「…………ッ!」

 

 なんだよそれ、俺は、俺は自分が正義の味方になるって言ったのに…なんでこの人は そんなことが言えるんだよ…!

 

「……辛かった…わよね?」

 

 誰にも助けてもらえなかった。その状況が辛かった。寂しかった。

 

「…………はい」

 

 昔のことを急に思い出す。ずっと思い出さないように心の奥底にしまっていたこと、

 

「あの時は…助けられなくてごめんなさい」

「……もう…遅いっすよ…!」

 

 これで女子に泣かされたのは2回目、マジでなんなんだよ、最近の俺涙腺弱すぎな

 

「……大丈夫、私はあなたの味方よ」

 

 抱きしめてくれた白鷺先輩は泣いていた。なんで白鷺先輩が泣いてるかなんて知らないけど…俺は

 

「ずっと…!ずっと…!欲しかった!」

「親でもない誰かに味方だって言われたかった!」

「今は…今はもう一人で大丈夫…だけど!」

「昔のこと思い出すと、おれ!…おれ!」

 

 さらに強く抱き締めてくれる白鷺先輩、その後は泣きに泣きまくって…な?

 

 その後泣きやみ、白鷺先輩が俺の隣に座っていた。座っていたが…その

 

 

「(めっちゃ恥ずかしいー!!!!!!!)」

 

 

 俺が慰める?はずだったのになんで俺が慰められるハメに!?白鷺先輩恐ろしすぎです。

 

「そろそろ帰るわ」

「……は、はい!」

 

「頑張りなさいシン(・・)私は応援するわよ?」

「あ、あなたも頑張るんですよ!?」

「ふふ、そうね!それじゃ」

 

 あーやばい、絶対に今後いじられる!俺の味方とか言いつつ俺を虐めてくるスタイルだろ!なあ!?

 

「あ、あなた携帯のチップは回収したの?」

「…………へ?」

 

 携帯のチップ?なにそれ

 

「あれがないと携帯は使えないのよ?」

「それ先に言ってくださいよ!?」

 

 もう雨がじゃんじゃん降ってたからもうヤベーよ!?

 

 あー!!いつもこうだよ!白鷺先輩と少しいい話をしたと思ったらこれだよ!?

 

「結局俺は不幸なんだよあぁぁあああ!!」

 

 その後携帯を回収した結果、チップは普通に生きていたそうです。その点は不幸じゃなかったみたいですね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆2年前◆◆

 

「ねえ、どうしてあなたはそんな暗い顔をしてるの?」

「………………」

 

 少女は聞くが少年は答えずに掃除を続ける

 少女は少年が返事をしなくても話しかけ続ける、そして最後は

 

「……いつか、あなたの笑う顔を見てみたいわ」

「……無理ですよ、多分」

 

 初めて喋った少年はちりとりを手にその場から離れるのであった。

 

 

 

 

 

 

「シンくん、今のあなたは楽しんでるじゃない」

 

 あの時少年に話しかけた少女は今何年かの時を経て少年の笑った顔を見ることができた。

 




この後シンは学校に行かずバイトをしていました。そのバイトの中でシンは徐々に心を開き、今現在の明るシンになったのです。詳しい話をここでは書きませんがとりあえず店長とモカに救われたってだけは事実ですね!

千聖はシンの味方です。ヒロインには…多分ならないかと、まあIfルートとかあるのならば書くかも?


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弦巻シンは嫉妬したそうです

やっと研修終わった!パソコンで投稿できる!家最高です!

それではどうぞ!!


「………………」

 

 テレビの前にて座ってゲームをしている人がここに一人

 

「……よっっしゃー!宝玉ゲット!これで頭作れるぞ!!」

 

 俺はあの後寝ることができずにずっとゲームをしていた。今してるゲームはーなんだっけ?なんかモンスターぶち殺すゲームだよ、会長に進められて買ったんだよ

 

「――……7時か」

 

 19時に起きてから一睡もせずに朝を迎えた。まああんなに寝て寝れるわけねーよな?

 

「……学校に行きますかー」

 

 怒られることは確定だが…逃げてなんかいられねえ!俺は立ち向かう!ちゃんと話をしてやるぞ!

 

「――……いってきまーす」

 

 誰もいないが律儀にいってきますの挨拶をするシンであった。

 

 家を出てすぐ近くにあるコンビニにてエナジードリンクを買う。これは前に徹夜でギャルゲーをクリアする時にお世話になった飲み物だ。

なんだかんだ言って美味しいぞ?まあ飲んだら眠れなくなる…けどそれは効力が効き初めてだけどな

 

 前にシンはそれを飲んだ直後で寝ることに成功したと語っていた。

 

 その飲み物を飲みながら歩いていると目の前に見知ったやつが現れたんだ。

 

「――……やあ、弦巻君」

 

 俺はその男を無視して素通りするが

 

「まー待ちなって、少し話をしないか?」

 

 俺の横で歩きながら話しかけてくる

 

「――……なんすか亜滝先輩」

 

 多分…いや、俺が今一番嫌ってる人物、亜滝光春(みつはる)先輩だ。なんで嫌いかって?

 

 んなのひまりの思いを踏みにじったからだよ

 

「――……あんたは話すことあっても俺にはないので」

「……まあまあ、学校同じなんだし途中まで一緒に行こうよ?ね?」

 

 とのことで途中まで一緒に登校することに…

 

「――……彼女いたのになんでデートなんてしたんだよ」

 

 この人は彼女がいながらひまりとデートをしてたんだよ…!まったく意味わからねーよな!?なんでそんなことするかわからねーよな!

 

「そのことはね?断ったら可哀想じゃん」

 

 断ったら…可哀想だって?

 

「――……ふざけんなよ」

 

「ふざけんなよ!断ったら可哀想だと?それはただあんたが自分にそう言い聞かせてるだけだ!」

 

「あんたはひまりの思いを踏みにじったんだよ…!そんな行為はただただひまりをさらに悲しめるだけだろ!」

 

 それぐらいわかってるだろ!と、言い終えるシンは息を少し切らしていた。

 

 デートにさえ誘えれば誰でもいけるかも?って思うよな?俺だって思うさ!けどな、けどこの人は…この人は!

 

「……そうだよな、そのことは悪いと思ってる」

 

 悪いと思ってるじゃない。お前が悪いんだよ…!

 

「……でもごめん、僕はひまりちゃんより彼女を選んだんだよ」

「彼女は俺に自分から告白してきたんだよ」

「……どこかの誰かさん(・・・・・・・・)みたいに人の手を借りずに……ね?」

「………………ッ!」

 

 あーはいはいなるほどなるほど

 

「つまり遠回しに俺が悪い……と?」

 

 はっ、なんだよそれ、俺が原因だった?知らんな、俺は頼まれたからやっただけなんだよ、自己満だったんだよ、成功すれば、いや成功するだろうと思ってたんだよ

 

「ひまりちゃんも可愛いよ、けど俺は彼女を選んだんだ」

 

 彼女彼女彼女さっきからうるせーな!なんだ?あんた俺の事も馬鹿にしてるよな?

 

「ハルおっはよう♪あれ?シンじゃん!」

「!?」

 

 俺と先輩に話しかける女子、それは俺がよく知る人物、なんせバイトも一緒だし友達だしな?

 

「……リサ、先輩?」

「うん!んー?なんでハルとシンが一緒にいるの?二人って面識あったけ?」

 

 ハル……?ってことは

 

「そう、僕の彼女リサだよ」

 

 リサ先輩の腰に手を巻きそう答える

 

「ちょ、ちょっとなーに?まだアタシ達付き合って日は浅いよ?」

「あはは、それぐらい僕はリサのこと好きだよってこと」

「……ッ!もーう!褒めてもクッキーしか出ないよ!」

 

 俺の前でいちゃつき始める二人

 

 なんだよなんだよなんなんですか?は?リサ先輩がこいつの彼女?ってことはひまりはリサ先輩に負けたってことか?

 

「(そんなの相手が……!)」

 

 違う!そうじゃない!そう思うんじゃない!何勝手に決めつけてんだよ…!なんでひまりがリサ先輩に勝てないって決めつけるんだよ!

 

 あと少しで俺は最低な発言をするところだった…ってもう遅いかもしれんが

 

「――……決めた」

「……何をだい?」

 

 俺は決めたよ、こいつに、こいつには

 

「お前に敗北者の気持ちを教えてやるよ…!」

「泣いて!詫びいて!苦しんで!もがきやがれこのクソ野郎が!」

 

 自分で今なんて言ってるかの意味なんてわからない。けどこいつにはひまりが思った気持ち、いやそれ以上の気持ちを味わらせてやる!

 

「え?なに、どーゆうこと?シン?」

「………………」

 

 リサ先輩が聞いてくるがあえて答えない

 

「確か…終業式の前日と当日に球技大会があるよな?」

「なんだっけ?男子はサッカーかバスケ」

 

 こいつはサッカー部で他校の女子からもチヤホヤされてるんだっけか?確か今回は羽丘とまた合同とか言ってたよな?

 

「……あんたをサッカーで、あんたが得意とする競技に勝ってみせる…!」

 

 自分が得意とする競技で負けたらそれはそれは辛いよなぁ?だったら俺はサッカーであんたに勝つ、勝ってみせる。

 

 なーに俺ならできる、できるだろ?いややれ

 

「……悪いけどサッカーで負ける気なんてないから」

「…………それじゃ」

 

 先輩から距離を置き学校に向かう。

 

◆◆◆◆

 

 学校についた途端急な腹痛に襲われトイレと友達になっていた。

 

「く、クソ…!昨日の刺身か…!さすがに賞味期限切れの刺身は食えねーのか…!」

 

 昨日ゲームをしてる時に腹が減ったもんだから冷蔵庫にあった刺身を食ったが…そりゃこうなるよな!?だってクソ不味かったもん!

 

 15分近くトイレと会話し教室に向う。

 

「(言うぞー俺は言うぞーあのセリフを!)」

 

 ドアを思っいっきり開けて言う

 

「みんな!サッカーしようぜ!!!」

 

 某超次元サッカーの主人公が言うセリフだ。あれ?今は主人公じゃないんだっけ?知らんな

 

「……今日は来たようだな」

「…………そんなことよりサッカーしようぜ!」

 

 先生がなんか言うが…

 

「あれー?みんなサッカー…」

『もういいよ!!!!』

 

 クラス全員からそう言われオレは押し負けてしまう。

 

「球技大会近いだろ!サッカー部門で目指せ優勝!打倒亜滝先輩だコノヤロウ!!」

 

 みんなのやる気を振る立たせるためにこう言う。男子なら亜滝先輩って言葉を言うだけでやる気を出してくれるはずだ!

 

「優勝を目指してくれるのは私自身嬉しい…」

「なんせボーナス3倍だからな!いつものボーナスがさらに3倍だぞ!もうやばいよこれ!」

 

 あの冷静な先生がこうもなるなんて!?金が関係すると人は性格が変わるって話だからな

 

「じゃあ優勝したら先生が焼肉奢ってくれるってことで!」

 

 そう言ったやつは川瀬(かわせ)蒼汰(そうた)、巴の彼氏さんだ。てかこいつって確かサッカー部だったよな?貴重な戦力だ!ん?俺一人で勝つんじゃないのかって?

 

 ごめん、さすがにそれは無理です。だってサッカーは一人でするもんじゃないし?あっちもチームで来るんだから…問題ねーよな!?

 

「いいだろう!焼肉なんて安いもんだ!なんなら準優勝でも2倍だから全然いいぞ!」

 

 なんだよそれ!まあ優勝できなくて二年さえ倒せれるなら全然問題ない。てかその前に一年で優勝しないと二日目の学年合同マッチに参加できないんだけどな

 

「よーし!だったら男子みんな!サッカー頑張ろうぜ!」

「……いや、弦巻」

 

 川瀬が急に真顔になって言う。

 

「――……お前バスケだぞ」

「――……はぁ!?」

 

 あとから聞いた話だと俺が来なかった昨日で球技大会のサッカーとバスケ分けは決まったようだ。んで、俺はサッカーじゃなくてバスケだろって…

 

「私が決めたの」

「……お前は何勝手にしてんだよおたえ!!」

「いらい、いらいよー(いたい、いたいよー)」

 

 俺はおたえの頬を引っ張りそう言う。なんで勝手に決めんだよ!?おたえさんはなんでそんな権限あるんだよ!?

 

「先生!俺サッカーがしたいんです!お願いします!サッカーに変えさせてください!」

 

 先生にDOGEZAをして頼み込む

 

「すまんな、もう決定したんだ。バスケで優勝目指して頑張りな」

「どうか!どうか!お慈悲を!お慈悲をぉぉぉー!!」

 

 泣きながら先生の服を引っ張る。

 だってあんなこと言っておいてはいサッカーできませんでした…なんてのはダサい!ダサすぎる!今もダサいかもしれんがそれ以上にダサい!

 

「ええい離せ!気持ち悪い!そんなに変えたいなら学長にでも頼んで来い!」

「学長だな!わかった!行ってくる!」

 

 学長に頼んで来いと行ったから教室を出て学長室に向かう。

 

「俺は絶対サッカーをするんだよ!!!」

 

 廊下を走るな!と、風紀委員による張り紙があったがそれを無視して学長室に無我夢中で向かった。

 

「――……ここか」

 

 学長室と書かれたドアの前に入る準備をしていた。準備も終わったためドアをノックしようとすると

 

「――……入りたまえ」

「……ッ!?」

 

 まだノックしてないよ!?なんでわかったの!?…まあ入っていいとのことだから入るか

 

「……やあ弦巻シン君、文化祭明けいらいじゃないか」

「……で、ですね」

 

 文化祭の後、ドアの件とか色々あって話をしたんだっけ?まあそのおかげで今話しかけれるんだけどな!

 

「で、何用かな?」

 

 学長先生は俺の用件を聞く

 

「……球技大会のエントリーをサッカーに変えたいんですが」

 

 余計な説明は省く、この人ならわかってくれる…はずだ!

 

「……いいだろう」

 

 え!?話早くないか!?なんかもっと土下座とかして成功するかと思ってた。でも学長先生が優しくてよかったよ!今思えば結構優しくしてくれてるしな!

 

「ただし、条件がある」

「――……で、ですよねー」

 

 そう甘く行かないよな!?

 

「……で、条件とは」

「なーに至極簡単なことだよ」

 

 し、至極簡単なこと?

 

「……私にチェスで勝ちたまえ」

「…………わかりました!」

 

 チェスか…昔屋敷で来るお客さん達と毎日やってたっけ?まあ何人かには勝ってたけど勝てない人とかたくさんいたな

 

 その後シンと学長とのチェスの戦いが始まった。出だしはお互い引けを取らない戦いだったが

 

「……んー???」

 

 ここからどう動けばいいんだ?

 

 シンは困っていた。今まで一度も体験したことがない攻め方で困惑している

 

 最初は食いついてたけど…もう無理だな

 

「……諦めるのかい?」

「…………ッ!」

 

 学長はシンを煽っていくスタイルのようだ。

 

「……しん(・・)は諦めない人だったぞ?」

 

 は?シン?シンって俺のこと…だよな?

 

「あー悪かった。しんってのは君のお父さんのことだね」

「……なるほど、お父様のことでしたか」

 

 俺のお父様の名前…弦巻慎之介(しんのすけ)、名前の一部をとりしんと呼んでいるのだろうか…てかさ!

 

「学長先生!お父様のこと知ってるんですか!?」

 

 なんでこの人がお父様のこと知ってんだ?

 

「知ってるさ、教え子だったしね」

「暇さえあればチェスの相手をしてやってた」

 

 な、なんだそれ!?そんなこと息子の俺は知らないぞ!?

 

「まあ僕は負けたんだけどね」

「え!?学長先生負けたの!?」

「うん、しんが高三の時ね、卒業まじかで負けちゃったよ、いやーあと少しで逃げ切れたのにね」アハハ

 

 へーお父様って高校の頃から凄いやつだったのか…いや学長先生にチェス勝っただけで凄いとかどうかは知らんがな!

 

「で、シン(・・)君はしんと似た攻め方をするんだね」

「あー昔お父様に教わったんで…その影響っすかね」

 

屋敷に居る時教わってたからな、そのせいだろうが…まあなんだ、子供は親に似るってやつなんじゃないか?

 

「あいつは変わっちまったもんな」

「……変わった?なにが?」

「んーそうだね、()が変わったな」

 

 眼?それって…

 

「目付きとかですか?」

「あはは、どうだろうねーしんに聞きなよ」

「……そ、それはちょっと無理かもしれませんね」アハハ

 

 お父様って目付きがめっちゃ鋭いんすよ!怖い!怖いです!今はまあ話せれるけど…まだちょっと怖い!

 

 と、いいつつシン本人も考える時や怒ってる時は似たような目付きになるが本人はそのことを知らないようだ。

 

「はい、チェックメイト」

「……なっ!?」

 

 気づいたらもう終わっていた。

 

「……もう一回!後一回だけお願いします!」

 

 ここで負けたらサッカーできないだろ!?そんなのやだよ!

 

「いいよ、午前中はオフだしとことん付き合ってあげるよ!」

「……絶対勝つ!」

 

 お父様が高校生の時に勝ったんだ!俺にだってできるはずだろ!てか勝たないとサッカーできないしな!

 

 その後何十戦とするも

 

「……チェックメイト」

「…………だはー勝てねー」

 

 時刻は昼過ぎだ。もう何時間も挑んでいるが勝てる気がしない。

 

「まだシン君には無理のようだね」

「…みたいっすね」

 

 悔しいけど…どうやらそのようだ。まっ、こればっかりは弱い俺のせいだよな?後で先輩に土下座でもなんでもして対戦形式変えてもらうか…って俺が勝手に勝負しかけただけなんだけどな

 

「まあ今回はいいよ、サッカーに変えるよう伝えとく」

「ほ、本当ですか!?」

 

 マジですか!?学長先生神かよ!

 

「ああ、だから午後からは授業に出なさい」

「出ます!受けます!寝ません!ありがとうございます!!」

「失礼します!!」

 

 お礼の言葉を言い学長室を後にする。

 

「さあ、君は彼と同じ眼(・・・)になれるかな?」

 

 そう言った学長の口は角度が上がりにやけてるように見えた。

 

◆◆◆◆

 

 よっしゃー!サッカーに変わったぜ!やったやったサッカーできる!

 

 と、言っても俺はサッカーのド素人だ。川瀬にでもサッカーを教えてもらわないとあの人には勝てねーよな!

 

 見た感じどうやら昼休みのようだ。ってことは川瀬は教室にいるよな!

 

 教室に着きドアを思いっき開ける

 

「――……川瀬!サッカー教えて…」

 

 が、そこにいた人は

 

「――……遅いわよシン?」

「し、白鷺先輩!?」

 

 腰に手を当ていかにも不機嫌ですよ感を出しながら立っていた。

 

「私言ったわよね?明日すぐ渡すから教室にいなさいって」

「…………はい」

 

 俺は今白鷺先輩の前で土下座をさせられていた。

 

 そう、昨日の夜、携帯を回収した後白鷺先輩が

 

「携帯がないのは不便よね?明日にはすぐ渡すから昼休み教室にいなさいよね」

「はい!待ってます!」

 

 って言ってたなー俺!

 

「まったく、これでみんなの味方なんて聞いて呆れるわ」

「……面目ないっす」

 

 言い返せねーよな!?

 

「彼女を待たせるなんて最低よ?」

「ですよね、彼女を待たせる…」

 

 ん?

 

「えー!?か、彼女!?え!俺白鷺先輩と付き合ってるの!?」

 

 マジか!夢か!?頬を引っ張るが痛い!痛いぞ!つまり夢じゃない!てかなんで白鷺先輩と付き合ってんだろう!?

 

「じょ、冗談よ!信じ込みすぎ」

「で、ですよね!!!!」

 

 だと思ってました!

 

「とりあえず席について説教の続きかしらね♪」

「そんな笑顔を俺に向けないでくださいよ!!!!」

 

 てかさっきから周りの視線が痛いんすよ!なんでかって?それはきっと俺が白鷺先生といるからだろうな!

 

 沙綾を見てみろ!口をポカーンと開けてそのまま動かずおたえに揺らされてぞ!

 

「シン君千聖先輩と付き合ってたんだね、私がいるのに」

「おたえ!お前は何言ってんだよ!?」

 

 やっぱりおたえこと花園ランドの住人は考えてることがわかりません!

 

「ほら早く、お説教の続きよ♪」

 

 あの!?あなた俺の味方って言ってたよね!?なのにそんなことするの!

 

「あーもう!不幸だぁぁあああ!!!」

 

 俺はただサッカーであいつを倒そうと思っただけなのに…なんでこんな目に遭うんだよ!?これもすべてあいつのせいだ!チクショウ!

 

 その後クラスのみんなから見られるならシンは千聖に説教されていた。

 

「し、シンと白鷺先輩が付き合ってる?あはは…」

「沙綾ちゃん!沙綾ちゃーーんん!!!」

 

 教室の隅では沙綾とりみがいたそうです。




千聖との立ち位置は…そうですね姉さん的な立ち位置かな?(笑)

シンのお父さんの話も今後チラホラ出てきます!今後に期待してくださいね!

速くて次回で決着つくかも?話は今から考えます!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンは特訓するそうです

今回で終わらせれなかった!!許して!

それではどうぞ!!


 千聖(・・)先輩に説教され机に座っていた。

 

「俺は、俺はサッカーがしたかっただけなのに…」

 

 めちゃくちゃ落ち込んでいた。

 あー千聖先輩と言うのはな

 

「私は名前で呼んでるのにあなたは呼ばないの?」

 

 と、ニコニコしながら言ってきたためこうするしか手段がなかったんだよ!

 

「ゆうてそこまで怒られてないだろ?」

 

 呑気に話しかけてるのは川瀬ことリア充さん

 

「だと思うだろ?けど怖いんだぜ…」

 

 でも!千聖先輩のサインが入った携帯は手に入れることができたら良しとするか!

てかなんか千聖先輩の連絡先が勝手に登録されてたんだけど…聞く手間が省けてよかったよ

 

「てか川瀬!サッカー教えてくれよ!」

 

 俺がなんで今日こんな目に遭ってたのかを忘れるところだったよ!

 

「…いいけどー俺部活あるぞ?」

「大丈夫!俺もバイトがある!」

 

 そっちが汗水流して部活をしてる中俺はバイトしてるんだよなー

 

「じゃ、夜に河川敷なーあそこならいつでも使えるし」

「助かる!ありがとな!」

 

 川瀬に礼の言葉を言うのと同時にチャイムが鳴り午後の授業が始まった。

午前の授業を受けてなかったため午後はちゃんと受けようと思った。てか学長先生に受けろって言われてたら真面目に受けてるだけなんだけどな

 

 学校も終わりバイトに向かう。途中沙綾に話しかけられた。

 

 どうやら千聖先輩が冗談で言った「彼女」ってことを信じ込んでいたようだ。違うと否定するとな

 

「だよね!シンが白鷺先輩と付き合えるわけないよね!」

 

 と、言われました。

 あの!?俺が千聖先輩と付き合えないことぐらい知ってますからね!?

 

 沙綾は違う意味で言ったのだが…シンにはわからなかったようだ。

 

「いらっしゃいませー」

 

 バイト先のコンビニにつきバイトを始める、無理を言って早く上がらせてくれと言ったら今すぐやれと店長に言われたため即やってます。この時間帯は花咲の生徒とか来るからさーなんか恥ずかしいよ

 

「こんにちは〜」

「おーモカ、いらっしゃいませー」

「どうもーシン君の愛するモカちゃんでーす」

 

 相変わらずだな、こいつは

 

「はいはい、俺の愛する可愛い可愛いモカ様ですよ」

「おーえらいえらい、モカちゃんがおっぱいを…」

「わかった!わかったから俺を性犯罪者にしないでくれ!?」

 

 てか触るならひまりの…って今は冗談でもこのことは言わない方がいいよな

 

 その後はモカもレジに入る、少ししたら客が減り少し話をする時間ができた。

 

「ともちんねー彼氏できたんだってねー」

「……へー、よかったな!」

 

 俺が巴と川瀬の間に入ってたことをモカは知らない。知らないから俺は今初めて知ったような反応をする

 

 てかそのこと知ってるってことはひまりのことも…?

 

「またまた〜シン君がどうせ一枚かんでるでしょ〜?」

「……知らねーな、だいたい巴が誰と付き合おうが俺には関係ねーよ」

 

 まあ嘘だな、俺はあの二人が付き合えてよかったと思ってるさ、思ってるけど目の前でイチャられたら切れるかもしれんな!

 

「…………嘘だね」

「…………ッ!?」

 

 な、何を根拠に!?

 

「だってシン君はこんな話する時はそんな顔してないもん」

「………………」

「また一人で考えごとですか〜?」

「それともモカちゃんは頼れないのかな〜?およよ〜」

 

 どうやらモカにはバレバレのようだな…てか俺ってそんなに顔に出るのか?

 

「まあモカちゃんはシン君の顔見てるからねー」

「……俺のこと好きすぎかよ」

「ん〜?そーかもねー」

「…………ッ!?」

「うっそ〜」

 

 だ、だよね!?ですよね!?てか自分で言っといてやられるとか俺もまだまだだな!

 

「実はだな……」

 

 話をしようとした時

 

「お疲れ様でーす」

「!?」

 

 リサ先輩がバイトに来た。あー今日はシフト入ってたのか、クソ、なんか会いたくないんだよな

 

 いやリサ先輩は何も悪くないよ?悪くないけど…なんか、な?

 

「……モカー店長が前だししてだって」

「そうですかーならシン君も」

「モカだけ!モカだけでいいって店長が!ね?」

「わかりました。またねーシン君〜」

 

 そう言った後モカは投げキスをして立ち去った。

いやなんだよそれ!?

 

 てか、リサ先輩絶対俺と二人っきりになるとためにモカを退かしたよな?何考えてんだ?

 

「……シン顔怖いよ?」

 

 あ、モカ以外にもバレるんすね、てことはどうやら俺は機嫌が顔に出やすい人間なんだろう

 

「カッコイイ顔が台無しだよ?」

「………………」

 

 昔の俺ならこんなことを言われたら凄く喜んでいただろう、けど彼氏持ちの人から言われたところでどうと思わないな

 

「……ハルとなにかあったの?」

「………………別に」

 

 まあ俺とあいつは別になにかあったわけじゃないけどな

 

「えー今日ハルにキレてたじゃん」

「………………まあ別に」

 

 適当に流す

 

「ハルがなにかシンの機嫌を損ねる行動をしたならアタシが謝る」

「――……ごめんなさい」

 

 違う、違う違う!俺は別にリサ先輩に謝って欲しかったわけじゃないんだよ!なのになんでリサ先輩が謝るんだよ!おかしいだろ!

 

「……もういいですって、怒ってませんから」

 

 頭を下げてるリサ先輩に俺はそう言う。

 

 俺が怒ってるのはあいつだけどリサ先輩にはなんとも思ってない、思ってないはずなんだ。俺がどうかしてたんだよ

 

「リサ先輩は何を悪くないですから」

「でも、ハルがシンになにかやったんでしょ?」

「……大丈夫ですって」

 

 でも、これだけは何も関係がないリサ先輩には一言言っておくべきだ。だってさぁ?あいつが負けたらリサ先輩が慰めるんだろ?

 

「でも…リサ先輩の彼氏さんは俺がボコボコにしますけどね」

 

 そう言ったシンの顔は今まで誰にも見せたことがない顔だった。笑っているのか、怒っているのか、本人すらそれはわからないのだろう

 

「…………え?」

「店長ー俺上がりますねー」

「おうーおつかれさん〜」

「おつカツカレ〜」

「なにがカレーだよ!じゃあな!」

 

 シンはいつも通りの感じでバイト先を後にしたのだった。

 

「リサさーんーどうしたんですか〜?」

 

 シンに自分の彼氏をボコボコにされると言われどういうことかを考えていた。

 

「……リサさん?」

「へ!?あーモカ?なに?」

「いや、シン君となにかあったんですか〜?」

「……別に!何もないよ!」

 

 そうですか〜とモカは答え日常の話へと切り替えた。

 

「(シン…ハルと一体何があったの?)」

 

 そのことを考えるばかりだっだ。

 

◆◆◆◆

 

 河川敷に行くと川瀬はいた。いたが…

 

「……なんで巴もいんだよ!?」

 

 そう、何故か巴がいたんだよ!なんでいるんだよ!?

 

「決まってんだろ!蒼汰の彼女だからな!」

「うるせえな!誰のおかげだと思ってんだよ!?」

 

 俺のおかげだろうが馬鹿野郎共!?

 

「まあ彼女がいた方がやる気出るだろ?」

「……お前はな!」

 

 クソう!まさかすぐにこうなるなんて思いもしなかった!

 

「とりあえずお前の実力見せろよ、亜滝先輩倒すんだろ?」

「……ああ!俺の力を見せてやるぜ!」

 

 気合い良く言ったものの

 

「……お前クソ雑魚ブロッコリーじゃねーか!」

「あれ?サッカーって難しいね!」

「お前こんなんで亜滝先輩倒すとか言ってたのか!?無謀すぎるだろ!」

 

 川瀬と1on1したがズタボロ、まあ川瀬は一年の中でのエースらしいしな!負けて当然だろ!?

 

「蒼汰…シンは強くなれるのか?」

「んーこれからに期待ってやつだな」

「なんだと!俺はぜってえ上手くなるからな!?今に見てろよ!お前なんて目を瞑ったままでも抜いてやるからな!?」

 

 シンは負け惜しみで訳の分からないことを言っていた。

 

「とりあえず走り込みだ!グランド10周な!」

「イエッサー!」

 

 グランドを走る、また走る、死にそうになりながらも走る

 

「……き、キッツー」

「試合だともっとキツイぞ」

 

 確かにサッカーってずっと走ってるからな!キツイだろうが…

 

「まあ所詮球技大会、10分ルールで助かったな」

 

 そう、前半10分後半10分の計20分間だけ、だからこそ勝ち目があるんだよ

 

「……ちょっとトイレ」

 

 トイレに向かう時巴が着いてきた。

 

「なんだ!?俺を馬鹿にしに来たのか!?」

「ち、違う!その、話があるんだよ」

 

 あ?話ってなんだ?

 

「その、ひまりの件は聞いたよ」

「…………ッ!」

 

 そうか、聞いたのか

 

「シンが先輩に勝つってやつ…ひまりのためにしてることか?」

「………………」

「……だったらそれを!」

 

 ダメだ、それ以上言うな

 

「俺が勝手にしてるんだよ、巻き込む必要ねーだろ」

「で、でもそれだとひまりは!」

「……あいつ変に気を使うからさ?黙ってた方がいいんだよ」アハハ

 

 ひまりのやつにこの話をすると絶対に止めてくると思う。だってあいつの強さを一番知ってるのはさ?ずっと見てたひまりだぞ?そいつに勝てないって言われたら俺は

 

「何を思って戦えばいいんだよ…!」

 

 ってな?てか俺カッコつけすぎてもうカッコよくなってんじゃね?

 

「いや、それはないな!蒼汰の方が100倍カッコイイぜ!」

「お前まで俺の心を読むなよ!?」

 

 わかった!Afterglowのみんなは心が読めるんだよ!うんそうだ!そうに違いない!

 

 トイレに行き済ませることを済ませ

 

「よっしゃー!練習再開だ!」

「俺がサッカーを一から教えてやる!この三日間である程度までできるようにしてやる!」

「お願いします!サー!」

 

 その夜から川瀬と巴によるシンの血のにじむような特訓が始まったのであった。

 

◆◆◆◆

 

 時は一瞬にして来る

 

「……とうとう当日だな!」

 

 クラスのみんなでグランドに集まり今日の球技大会に向けて気合を入れていた。

 

「準優勝以上で焼肉確定ルートだ」

「みんなーがんばろー」

 

 バタ…

 

「つ、弦巻ー!?」

 

 ごめんなさい、シン君もうヘトヘトです。

 

「おい川瀬!お前どんな練習させたんだよ!ボロボロじゃねーか!」

「大丈夫大丈夫ー今日は俺一人で勝つから!」

『そういうことじゃない!!』

 

 つまりそういうこと、今日俺に出番はないわけだよ

 

「女子は…大丈夫だよな」

 

 女子は全員バレーだろ?まあうちにはチートのはぐみさんとこころがいるから買ったも同然だろ

 

「ええ!任せてちょうだい!はぐみと一緒に練習したのよ!」

「うん!優勝してみんなで焼肉食べに行こうね!」

 

 よーし!その意気だ!君達ならバレー優勝は確定だな!

 

 てか今回は羽丘と合同だったな、てか文化祭と言い合同行事多くないか?まあ楽しいからいいけどさあ!

 

「女子バレーの一回戦を始めます、選手は第一体育館に集まってください」

 

 コールが入り女子はみんな体育館に向かう。男子のサッカーは午後からなんだよ、だから午前中は女子の応援ですね

 

 試合は始まり体育館が一斉に盛り上がる。うちのクラスはこころとはぐみのコンビネーションが炸裂しミス以外では点数を取られていなかった。いや、まじであの二人強すぎな

 

「(……?あれは)」

 

 コートの隅に座っている人がいた。恐らく試合が終わり疲れて休んでいるんだろう

 

 近くの自販機にてスポーツドリンクを買い

 

「……ひゃっ!?」

 

 その人のほっぺに冷たいドリンクを当てる

 

「おつかれです千聖先輩ー」

「シン…お説教が必要かしらね?」

「ご、ごめんない」

 

 噛んだしちょっと以上に調子乗ったね!

 

「ありがとう、頂戴するわ」

 

 そう言いドリンクを受け取りそれを飲む

 なんか女性が飲み物を飲んでる時の姿って、な?言わなくてもわかるだろ

 

「なに?飲みたいの?」

「逆に飲んでもいいんすか!?」

 

 ち、千聖先輩と間接キスだと!?

 

「イヤらしいからダメね」

「で、ですよねー」

 

 いつもこうだからね!

 

『………………』

 

「…………あっ!」

「急に何よ」

 

 俺が今千聖先輩が思ったことを当ててやろう!

 

「……今、こう思いましたね?」

「……ブックオンなのに本ねーじゃん?」

「ち、違いますから!」

 

 なんでそのセリフが出てくんだよ!?

 

「タバコ、吸いたいと思ったんじゃないですか?」

「……んー今は吸いたくないわね、むしろやめたいと思ってるわ」

 

 だはー外しましたか!

 

「てかやめたいと思ったらやめましょう!今すぐに!」

 

 やめたいと思った時にやめるって…誰かが言っていた!

 

「いやよ、私は旦那さんか子供がやめてと言わない限りやめないわ」

 

 なるほど、だったら

 

「俺と結婚してやめてください」

「…………ごめんなさい?」

 

 く、クソ!釣れなかったか!てかこんなんで釣れるわけねーよな!?アホか

 

「シンと結婚ねー」

「な、なんすか?嫌なんですか?」

 

 まそうですよね!?あれ?なんか目から鱗が…

 

「でも、そうねー優しい正義の味方さんが誰とも付き合わず「童貞」のまま私がアイドル卒業した時」

「…相手が誰もいなかったら結婚してあげるわよ」

「…………ッ!?」

 

 えっと、それはつまり俺は千聖先輩がアイドル卒業するまで誰ともエッチするなってことでおけ!?

 

「違うわよ、あなたは必ず誰かを好きになる(・・・・・・・・・・)、私以外の誰かを」

「ん?千聖先輩を好きになることはダメなんですか?」

 

 てかなんで普通にこんなこと言ってるの俺!?馬鹿か!?

 

「私はダメよ、せいぜい頑張ることね正義の味方さん」

 

 千聖先輩はその場で立ち上がり出口に向かう。

 

「…あなたの考えと同じ、誰もあなたを拾わなかったら私一人だけでも拾ってあげるってこと」

「…………ッ!」

 

 これは、一本取られたな

 

「(……恋かー)」

 

 未だに好きな人すらできていない俺が将来結婚することはできるのか?まあ少なくとも童貞のままだったら千聖先輩と結婚できるってことか

 

 でも、そんなのに頼らず自分で好きな人を探したいなー

 

 そんなことを考えシンも出口に向かう。

 

「ああ、言い忘れてたわね」

「…………!?」

 

 後ろをむくと千聖先輩がいた。

 千聖先輩は近づき俺の耳元で囁いた。

 

「――……私も処女だから」

「…………!!!???」

「ふふ、じゃーね♪」

 

 囁かれた耳を抑え

 

「な、なんて情報教えてんだよ!!!!」

 

 体育館の入口で一人叫ぶシンだった。

 

 




次回は前半イチャイチャ、後半バトルの二本立てでお送りします!

少しでも面白いと思ったら感想と投票待ってます!

では次回でお会いしましょう!


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弦巻シンは不幸代表である

今回で話をおらせました!長いです。飽きずに最後まで見てね!




 昼飯、それは学校での午前の授業頑張った!と思えば思うほど美味しく感じるものだ。

 

 まあ俺には関係ないけどな!なんでも美味いから!てか今日は授業なんてなかったしな!と、言ったものの

 

「ら、蘭さん?こちらはな、なんですか?」

「料理ができないからドリンク作ってきたの、飲んで」

「いや、これは…」

 

 昼飯を取りに教室へ戻ろしとした時蘭に捕まったんだよ、んで中庭のベンチにて今の状況ってわけさ

 

 てか蘭さん!?その飲み物なんなんですか!?

 

 蘭がシンに飲ませようとしてる飲み物、それは真っ黒な液、だった。

 

「元気が出るようにスッポンとかマムシとかいろいろ入れた」

 

 そう言い出てきたコップの中には黒い何かがあった。

 

「(こ、こんなの飲んだら死ぬ!)」

 

 俺の感が言っている、逃げろってな

 

「あぁあ!クソ!南無三!!」

 

 だが俺は逃げずに飲む道を選んだ。なんだ、苦くて吐くぐらいだろ

 

「………………」

「……グハァ!」

「ちょ、ちょっとシン!?大丈夫!」

 

 大丈夫だと!?お前な!可愛いから許してやるけど可愛くないやつがダークマターなんて作ったらやばいからな!?

 

 シンは蘭の飲み物を飲んだあと数秒は耐えたがどうやら無理だったようだ。

 

「お前もう料理はするな、俺じゃなかったら多分死んでるぞ…」

 

 俺はよく賞味期限切れのものとか食べていて腹が強くなってるかもしれん

 

「……また作るからよろしく」

「話聞いてた!?もう作るなって俺言ったよね!?」

 

 なんでそんなムキになるんですか!?

 

「料理できる人と結婚したいんでしょ?」

「ん?あーそうだな…ってそれ!?」

 

 ま、まさかのまさかの蘭さんは俺の!?

 

 蘭の顔がみるみる赤くなっていく

 

「か、勘違いしないでよね!あたしはただ今後のために料理の練習してるだけだから!」

「はい!これ全部飲んでね!それじゃ!」

 

 あの黒い液が入った水筒を渡された。全部飲めとか殺す気かよ

 

 次こそ教室にて飯を食おうとしたが

 

「シンくーん、お昼食べた〜?」

 

 どこからかモカが急に現れた。

 

「モカちゃんこれからお昼だけどどう〜?」

 

 あ?みんなと食わないのか?

 

「あれ?みんなは?」

「蘭はいないーともちんは彼氏とイチャイチャしててーひーちゃんは部活の人と食べててつぐは生徒会でテントにいるよ〜」

 

 見事に皆さん揃ってないようですね!

 

「教室で食おうと思ってたんだが…まあいいだろう」

 

 それに今すぐ口直ししたいからな

 

「じゃーんーモカちゃん特性BLTサンドです〜」

 

 うお!なんだこれ!めちゃくちゃ美味そうじゃないか!

 

 モカが開くサンドイッチケースの中には色とりどりで美味しそうなサンドイッチが揃っていた。

 

「こ、これ食べてもいいのか!?」

「いい「いただきます!」…も〜うせっかちだな〜」

 

 美味い!美味い!蘭の飲み物がさらに美味しくないと思ってしまうほど美味い!てかそんなこと言ったら蘭に失礼だな…でもごめん!さすがに料理はモカの方が美味しい!

 

「美味しい〜?」

「美味しい!美味い!完璧だぞモカ!」

 

 何個でも食えるぞこれは!?

 

「そーう?なら結婚する〜?」

「ブフッ!!」

 

 不意にそれを言うの辞めてくれよ!?

 

「だから結婚しねーっての!何回言わせんだよ!?」

 

 そろそろそのネタやめようよ!?

 

「も〜う、本当は可愛いモカちゃんと結婚したいくせに〜」

 

 ニヤニヤしながらモカは言う

 

「じゃあ結婚するか?」

 

 さっきの千聖先輩との話でな、結婚については…な?

 

「……それ本当?」

「な、なわけないだろ!信じ込むなっての!」

 

 急に真顔になってそんなこと言うなよな!俺まで恥ずかしくなるじゃねーか!てか俺がそうさせるようなこと言ったんだけどな

 

「あ、午後から試合始まるから…またな!モカ!」

 

 逃げるようにその場から離れる。

 

「いつか結婚しようね〜」

「だーかーらー結婚しないって言ってんだろ!!!???」

 

 後ろを振り向き大声で言うシンだった。

 

◆◆◆◆

 

 午後からは男子の部が始まる。うちのクラスの女子は一年部門優勝、つまり明日の学年マッチへの切符を手に入れたってこと

 

「女子が勝ったからには俺らも頑張らなくちゃな!」

 

 とある少年がそんなことを言うが…

 

「勝たないとあいつ倒せれないだろ?」

「へーシン(・・)のクセによく言うじゃん」

「うるせえなー蒼汰(・・)

 

 なんで名前で呼ぶかって?巴が友達なら名前で呼べってうるさいんだよ、だからこそ名前で呼ぶようにした。

 

 そうこうしているうちに試合はすぐに始まる

 

「では一年の部、四組対一組の試合を始めます!」

 

 審判は何故かつぐみだ。てかつぐみできるのか!?あ、四組が俺らな、ん?なんかクラス違うって?四組なんだよ

 

ピー!

 

 ホイッスルが鳴り響き試合が始まる

 

 でもまあ、今回俺の出番はないけどな

 

「……行くぜ!」

 

 ボールを持った蒼汰は勢いよく走り出す

 

「じゃまだ!俺に道を作れ!」

「ソイソイソイソイソイソイソイソイソイ!!!!」

 

 あ、言ってなかったな!蒼汰はボールを持つと性格が変わるヤツなんだよ、まあ許してやってくれ

 

 てかその掛け声やめよろ!?巴の掛け声だろ!?なに!彼氏は彼女に似るとかそんなのがあるのか!?

 

「ソイソイソイ…ソイヤー!!」

 

 ボールをおもっきり蹴りゴールネットを揺らす

 

「よっしゃー!まずは一点ゲットだぜ!」

 

 なあ?言っただろ?一年の試合なんて俺達が動かなくても蒼汰がなんとかしてくれるんだよ

 

「いいぜ蒼汰!さすがアタシの彼氏だ!!」

 

 しれっと自慢すんなよ巴!?

 

 その後俺達の出番はなく蒼汰が無双して一年部門は優勝をした。その時は、そうだなー

 

「四組の川瀬蒼汰はヤベーヤツ」

 

 と言われていた。

 

 一年部門で優勝、明日の学年マッチ進出が決定した。つまり、つまりだよ

 

「……やっとこの時が来たな」

 

 もちろんあいつのクラスは優勝して学年マッチに来る、しかもしかもで運がいいことに一回戦からあたる

 

「とか言ってるけどシン君まったく出番なかったね〜」

「う、うるさいな!?俺は明日に備えてんだよ!」

 

 また俺の心読むなよ!てかどこから現れた!?

 

「明日またドリンク作ってくるから」

「蘭!お前それだけはやめろ!今日はいいが明日はダメだ!」

 

 蘭のドリンク飲んで腹でも痛めたら試合どころじゃねーよ!今日の試合中お腹痛かったからな!?

 

 その後羽丘の生徒達は一度学校に戻り花咲の生徒でグランド整備を行った。その時の担任はとても機嫌がよくみんなにバーゲンダッツを奢っていた。

 

◆◆◆◆

 

 そして次の日、俺とあいつの戦いが始まる。今日は俺が活躍するぞ!蒼汰には悪いが黙っててもらう!…と、思ったが、な?

 

「――……シン君」

「!?」

 

 俺は朝早くからグラウンドにて一人で足を使いボールで遊んでいた。が、その後ろへ急にあいつが現れた。

 

「……なんだよひまり」

 

 そう、ひまりがいたんだ

 

「巴から聞いたよ?亜滝先輩倒すらしいね」

「…………ッ!」

 

 あいつ…ひまりに話すなって言っただろ!?

 

「……私のためにしてるの?」

「ちげーよ、俺はあの幸運野郎を見てるとイライラするからそれの腹いせだよ」

 

 まあたくさんの女子に告られるとか幸運すぎるよな?俺なんて一度も告白されたことねーぞ

 

「……勝てるの?」

「当たり前」

「……信じていいの?」

「なにを信じるかなんて知らんが…」

「まあ勝つから待ってろ」

「ッ!…ばーか、カッコつけすぎ」

 

 うるせえ自分でもカッコつけてることぐらいわかってるっての!

 

「私…待ってるからね」

「…………おう」

 

 ボールに少しでも触れとこうと思ったが…こんな状況で練習なんてできないよねー恥ずかしいからクラスのテントに戻りましたよ

 

「じゃーん!男子のみんな!山吹ベーカリーと!」

「北沢精肉店のコラボ!」

『コロッケパン!食べて優勝してね!』

 

 沙綾とはぐみが声を揃えてそう言った直後

 

『うぉぉおおおおお!!!!』

 

 男子のみんなは雄叫びを上げていた。てかバスケのやつら!お前らドベだったくせに何食ってんだよ!?

 

 四組のテントはどこのクラスよりも人一倍盛り上がっていた。

 

「ただいまより学年マッチを行います!二年代表と一年代表はグランドに集合してください!」

 

 本日もつぐみが審判を行います。

 

「そして!本日は実況がつきます!」

「どうもー!羽丘生徒会長氷川日菜でーす!るんっ♪てする試合を期待してるよー!」

「え、えっと、花咲生徒会長…白金燐子で、です!」

 

 なんと実況がつくらしい、てか日菜先輩と会長って、文化祭を思い出すメンツだな!

 

「やあシン君、本当にここまで来るとはねーまあ蒼汰のおかげだけど」

 

 気安く俺の名前を呼ぶのは俺が倒すべき人

 

「なんすか亜滝先輩?俺に負けるのがそんなに楽しみですか?」

「……いやいや、君が負ける姿が見れるから楽しみにしてるんだよ」

「……ッ!言ってくれますね…!」

 

「試合を始めます!両チームは所定の位置についてください!」

 

 つぐみがタイミングよく話を切ってくれた。多分だけどあのままだったらずっと言い合いになってたと思う。

 

ピー!

 

「……さあ、俺達の戦争(デュエル)を始めようぜ!」

 

 つぐみが鳴らしたらホイッスルの後にシンがそう言いゲームが始まった。

 

 最初は相手チームボールだ。もちろんボールを持ってるのはあいつ、だよな?

 

「おーおっとっと!シン君が亜滝君と1on1だー!勝てるのかな?」

「つ、弦巻君…だ、大丈夫なのでしょうか」

 

 俺はあいつの前に出て道を塞ぐ、実況がなんか言ってるが今は気にしないさ

 

「本気で僕に勝つ気かい?」

「勝つさ、勝つから今ここにいるんだろ?」

 

 お互い動かずその場で止まっている…が、先に亜滝が動き出した。それに食らいつくようシンが動き出す。

 

「いいセンスだ、けどね!僕には勝てないよ!」

「………………」

 

 シンはあっさり抜かれてしまった。

 その後亜滝がゴール前まで行き

 

「……はぁっ!」

 

 ボールをゴールまで運んでいた。

 

「決まったー!先制点は二年代表チームだ!」

「いやーシン君ダメダメだね!全然るんっ♪て来なかったよ!」

 

 う、うるさいな!いろいろ準備があんだよ!

 

「シン、行けるか?」

「ごめん、あと数回は取られそう」アハハ

 

 早いとこなんとかしねーとな

 

 その後もシンは亜滝の前に立つが…抜かれる、抜かれる、抜かれまくる

 

 点数は4-0、一年チームが0点だ。

 

「おい弦巻!お前全然できてねーじゃねーか!なにやってんだよ!?」

 

 クラスの一人がシンにキレるが

 

「ごめん、次から大丈夫だから(・・・・・・・・・)

「……ッ!遅いっての!」

 

 蒼汰だけが知ってるシンの凄さ、それは…

 

「もう諦めなよ、君じゃ僕に勝てない」

「…………と、思うじゃん?」

 

 亜滝がシンを抜こうとした時

 

「なっ!?」

 

 シンが亜滝からボールを奪い取った。

 

「はっ!ざまあみやがれ!」

 

 シンの凄さ、それは

 

「……動体視力だ。あいつは俺を二日で抜きやがったからな、ったく運動しねーやつが持っていい眼じゃねーっての!」

 

 どうやらシンは眼がいいそうだ。その動体視力を活かし相手の動きをよみ、相手の弱点を見つけ出す。蒼汰はシンに何度もボールを奪われていたんだ。

 

 蒼汰は悔しそうにそう言ってる間に

 

「どけどけどっけーどっけー!」

「弦巻シン様がお通りだぜー!!」

 

 シンはドリブルしながらゴールに向かう。

 

「……いかせな「どけモブキャラが!」…ぐは!」

 

「くらえ!ファイヤー〇ルネード!」

 

 心做しか炎が見えた気がする、うん!見えたよな!?

 

「き、決まったー!あの変態で馬鹿のシン君が決めたー!」

「……弦巻君、凄いです…!」

 

 おい!馬鹿は酷いだろ!?俺は成績だけは優秀なんだぞ!?

 

「よし!シンも本調子出たしこれから反撃開始だ!」

『おう!!』

 

 蒼汰がチームメンバー全員にそう言いチームのみんながやるやる気に満ち溢れていた。

 

「……これは、本気を出さないとね」

 

 亜滝は左足を抑えながらそう一人で言っていた。

 

 その後シン達の反撃は続きあっという間に同点、前半もあと少しで終わりそうだ。

 

「…………いかせないよ!」

 

 シンの前に亜滝が現れる

 

「いい加減気づけよ!あんたじゃ俺に勝てないんだよ!」

 

 なんか知らんが俺は眼がいいからな!あんたの動きはさっきので完全に把握したんだよ!

 

「あれが本気だと思うのかい?」

「…………なっ!?」

 

 次はシンが一瞬にしてボールを奪われる

 

「……悪いけどサッカーだけは誰にも負けられない…!」

 

 ボールを取った亜滝がゴールに向かって一直線で走る。みんながブロックに入るがすんなりと交わしそのままボールを蹴り点数を稼ぐ

 

「……僕が勝つ!これは決定事項だ!」

「…………ッ!」

 

 言ってくれるなこの野郎が!

 

ピッピッピー

 

 前半終了、5-4の一点差で負けている

 

「シン、やっぱり俺も動く、お前も体力持たないだろ?」

「……な、なわけないだろ?元気ビンビンだっつーの」

 

 と答えるシンは息を切らしていた。前半で、しかも10分間の試合で流す汗の量じゃなかった。

 

「大丈夫大丈夫、死んでも勝つから」アハハ

 

 元々蒼汰に頼るはずだったんだが思ったよりついていけてるからな、あと10分間ぐらい耐えられるさ

 

「おい!亜滝!その足なんだよ!」

「!?」

 

 隣のテントからそんな声が聞こえた。

 

「大丈夫だよ、僕は試合に出るから」

「そんな腫れてる足で何ができるって言うんだよ!たかが球技大会だぞ!無理する必要ないだろ!」

「……それでも僕は彼に勝ちたいんだ、なんとなくだけど彼に負けたら僕は…!」

 

 足が腫れてる?

 

「……やっぱり昨日の練習で痛めてたか」

「…………蒼汰?」

 

 話を聞くと昨日部活にて足を捻っていたようだ。それに左足、軸足を痛めた状態であんなにボールを器用に扱ってたって言うのかよ!

 

 俺はその場で立ち上がりあいつの所へ向かう。

 

「おいシン!亜滝先輩はお前との勝負を受けるために戦ってんだ!そうキレるなって!」

「……わかってる…!」

 

 足を怪我してた?そんな状態で試合をしてただと?ふざけんな!

 

 亜滝の元に向かったシンだったが亜滝のことは相手にせず後ろにある鉄棒に向かっていた。

 

「シン…!お前まさか!」

 

 シンは鉄棒を支えるところに思いっ切り自分の足を蹴り当てた。

 

「――……痛ってえぇぇええ!!!!」

 

 泣き目になりながらシンは足を抑える転がる。

 その光景を見ていた全員が唖然としていた。何故ならシンが自ら怪我をしに行ったのだからな

 

「これでチャラだからな!後で怪我してたから負けたとか言い訳できねーようにお前と同じ土俵に立ってやる!」

 

 同じ土俵とシンは言うが明らかにシンの方がダメージは大きい。彼は気づいてないがヒビが入っていた。

 

「……君こそ、言い訳するんじゃないよ?」

 

 二人はボロボロになりながらもコートに立つことを選択した。

 

「なんでだよ!なんでそこまでするんだよ!弦巻!お前は何が目的なんだよ!」

 

 目的?目的か…

 

「なーに、幸運と不幸どっちが幸せかを決める戦いだよ」

 

 何言ってんだろうな俺は…ひまりの味方だからって言えばよかった。

 

「こ、後半始めます!」

 

 つぐみがそう言いフォームに着く

 

「シン君…危険だと思ったらすぐ止めるからね」

「……止めたら多分一生恨むぞ」

「……ッ!」

 

 つぐみに対して酷いことを言ったと思ってるさ、でもごめん、後で土下座でもなんでもするから許してくれ

 

ピー!

 

 後半戦が始まった。痛い足を我慢しながら走り出す。

 

「……いかせない…!」

「チッ!どけよ!邪魔なんだよお前!」

 

 タックルをかます、がそんなファールになるような威力じゃないぞ?

 

「お前が、お前がひまりの思いを踏みにじったんだよ…!」

「………………」

 

 俺は相手を精神的に追い込ませるためにそう言う。

 

「お前さえいなければひまりはこんな思いはしなかった!違うのかよ!」

 

 そのセリフであいつがキレた。

 

「……僕が…僕が何も思わずにそんなことをすると思うのか!」

「ガハッ」

 

 亜滝にタックルされたシンはその場に倒れる、倒れるがファールの扱いにはならなかった。

 

「審判!あれはファールだろ!羽沢さん!」

「ご、ごめんなさい見えなかったから、その…!」

 

 蒼汰が審判であるつぐみに言うが見えなかったつぐみは審判をくだすことができない。

 

「僕だって苦しかった…!誰が好き好んで人の好意を断つと思ってるんだ!」

「君にわかるか!好きでもない人から毎日何回も何回も何回も告白される気持ちが!」

「……知らねーよ!!」

 

 二人はサッカーと言うことを忘れ言い合っていた。だが、その話をグランドにいるみんながみんな聞こえてたわけじゃない。

 

「でも僕は見つけたんだよ…!彼女を!リサを!」

「心の底から好きになった!誰かを守っあげたいと思ったのは初めてだった!」

「……だから僕はリサを選んだ!」

「……けど!それとこれは関係…」

 

 シンが言葉を言おうとするが

 

「関係ある!」

 

 亜滝が話を切る

 

「ひまりちゃんとデートの約束をしたその日、僕はリサに告られた…!」

「……ッ!」

「僕はそれが嬉しかった…!けど、一度ひきうけたデートは果たさないといけない!」

「だからリサに内緒でデートをした!」

「そして…僕の最後の責務としてひまりちゃんを振ったんだよ!」

 

 な、なんだよそれなんだよそれは!

 

「んなの最初から断ればよかっただろうが!」

 

 シンはサッカーのことを忘れ亜滝の胸ぐらを掴む。

 

「し、シン君!」

「笛を鳴らすなつぐみ…!こいつは!こいつだけは!」

 

 リサ先輩に告られて嬉しかった?にも関わらずお前は女子に告白されることが苦しかった?ふざけんなよ、ふざけんなよ!

 

「……君だっていろんな女の子に手を出してるらしいじゃないか!」

 

 は?

 

「僕のことを言う前に自分のことちゃんと見たらどうだよこの金持ちのボンボンが!」

 

 金持ちのボンボン…だと…!

 

「てめぇ…!」

 

ピー!

 

「……シン君…!イエローカードです!」

「……つぐみ!」

「ごめんシン君、レッドカードじゃないから…許してください」

 

 つぐみは泣いていた。なんで泣いてるかなんてわからなかったが…今の自分の状況、みんなからの視線を集め俺はあいつから手を離す。

 

「……ごめん、言い過ぎた」

「………………こっちも、悪かった」

 

 今はサッカーをしてるんだ。こんな喧嘩で勝負を決める話じゃなかっただろ?

 

「……皆さんすんませんでした!!!」

 

 その場で土下座をした。その隣であいつも俺と一緒に土下座をしていた。

 

「あんた…なんのつもりだよ」

「僕もついカッとなってしまった、反省してるよ」

「審判、僕にもイエローカードを」

「え?でも…」

「さっきのタックル、あれはイエローカードを貰ってもおかしくないよ」

「わ、わかりました…亜滝さんイエローカードです!」

 

 こいつ…何考えてんだ?俺はお前のことを殴ろうとしたんだぞ?なのに…なんで

 

「……サッカーで勝負決めるんでしょ?残り時間少ないけど全力で行くよ」

「……ッ!こっちのセリフだっての!」

 

 一応シンがイエローカードを取ったということで相手からのスタートになった。

 

「……みんな、ごめん、個人的な感情で…」

「いいって!それより勝つだろ?勝ってみんなで焼肉パーティー!目指せ叙〇苑…だろ?」

「……おう!」

 

 蒼汰がそう言い最後の戦いが始まった。

 

 お互いがお互いのプライドをかけた戦い。ボールはあっちに行きこっちに行きどちらもゴールネットが揺れることがない。

 

 亜滝にボールが渡りその前にシンが現れる

 

「……僕は負けない!僕自身のために…リサのためにも!」

「……ッ!」

 

 こ、こいつここに来てまでまだ精度が上がるのか!?本気ってのは嘘だったのかよ!

 

「……僕は君を倒してリサを守るんだ!」

「グハッ」

 

 吹き飛ばされた俺はその場に倒れる。俺を倒してリサを守るって…俺は悪役ですか…?

 

「(あーダメだ……もう立てないや)」

 

 右足は完全にイカれてる、もう痛すぎて逆に痛みを感じない。限界を超えた限界ってやつだな

 

 シンはその場で歯を食いしばることしかできなかった。長い前髪が目を隠し、シンの表情はだれにもよめない。

 

「(こんな、こんなところで終わるのかよ!)」

 

 今亜滝と蒼汰がボールの奪い合いをしてる所が目に入る

 

 俺にしては頑張った方だろ?なあ?許してくれよ、もうキツいんだよ…

 

「――……立って!立ちなよシン君!」

「!?」

 

 俺の名前を呼ぶのは…

 

「亜滝先輩に勝つんでしょ!待ってろって言ったじゃん!」

「そんな所で寝てないで立ってよ!立ち上がってよ!!」

「一度カッコつけたなら責任とりなよ!このバカ!!」

 

 バカはてめぇだろ…ひまり!

 

「あーあーマイクテスマイクテス」

「シン、あなたはこんなところで諦めるの?…あなたはなるんじゃなかったの?」

 

 千聖先輩…マイク使うとか…大声出したひまりが馬鹿みたいじゃねーか、あとみんなの前で正義の味方になると言わないところ感謝しますよ

 

「シン!蒼汰!亜滝先輩倒すためにお前らは何をやってたんだよ!まだ試合は終わっちゃいない!最後までやりきれよ!」

 

 巴…お前はただ見てて蒼汰だけにはタオルとか飲み物とか渡して俺には渡してくれなかったよな?

 

「シン君ーモカちゃんシン君のカッコイイ姿がもっとみたいなー」

 

 モカ…俺のカッコイイ姿っていつも見せてるだろ?あれが俺のベストだっての

 

「あたしのドリンク飲んで負けるとか許さないから」

 

 蘭…そう言えば飲んでたなーでも今日はお腹壊してないから褒めてやるよ

 

「シン君!亜滝君に勝つチャンスだよ!頑張って!」

 

 彩先輩…あーなんだっけ?彩先輩って亜滝先輩とあんまり仲良い感じじゃなかったなー

 

「シン!立って…!立ってよ私の正義のヒーロー!!!」

 

 沙綾…!私のって、俺はみんなの正義の味方になるんだよ

 

「そうよ!正義のヒーローは遅れてやってくるってシンの口癖よ!遅すぎるけどまだ間に合うわ!」

 

 こころ…お前は、そんなはるか昔の話を覚えてるのかよ、なんだ。まだ間に合うのか?

 

「そうだぞ弦巻!お前なら立てる!」

「早く立てよ元実行委員長!」

「お前ならあのクソイケメン野郎を倒せれる!」

 

 その言葉をあとにみんなが一斉にシンへエールを送ってくれる。

 

 こんな光景…まるで夢みたいだ。昔の俺はこんなことになるなんて想像もつかなかったと思う。ああ、俺はこの学校でやっと居場所を見つけたんだな、よかったよ

 

「シン、今はみんながあなたの味方よ」

 

 千聖先輩のそのセリフを聞き今にも泣きそうだった。けどな!

 動かない足を無理やり動かしその場に立ち上がる

 

「ああああああああぁぁぁ!!!」

「ここで立てなくて何が正義の味方だ…!」

 

 走って亜滝先輩の所へ向かう。

 

「……チッ!クソ!」

 

 ボールを奪い一気にゴールへ向かう。

 

「行け!シン!」

「これは俺の物語だ!邪魔するものは何人たりとも許さない!」

 

 邪魔するものを払い除け

 

「うぉぉおおおおお!!!」

 

 相手のゴールネットを揺らす

 

「決めたー!残り数十秒でシン君が立ち上がりゴールを決めた!これで同点!うん!るんっ♪て来た!!」

 

 忘れかけていた実況が聞こえた。

 

「……あと一点…!」

 

 あと一点決めるだけで勝てる

 

 一年も二年のみんなは息を切らし肩を揺らしていた。中でもシンはそれ以上に限界が来ていた。寧ろこの場で立ち続けているシンがおかしいのだ。

 

「……僕は負けない!何がなんでも絶対に勝つ!」

 

 亜滝が最後の力を振り絞り攻めてくる

 

『行かせるか!!』

 

 その前にシンと蒼汰が姿を現す

 

「負けたくない!サッカーで負ける訳にはいかない!」

「二対一で勝ち目なんてねーよ!」

 

 ずるだと思うがもう時間が無い。勝つためには手段を選ばない。

 

「ボールの取り合いだー!残り30秒!勝利の女神はどちらに微笑むのか!これ目が離せないー!ね!燐子ちゃん!」

「弦巻君!ラスト〇ゾートです!今すぐ打って!」

「おっと!燐子ちゃんは夢中になり解説ができないようだー!」

 

 亜滝が仲間にパスをする…が仲間がトラップミス、ボールは後ろに行く

 

『うぉぉおおおおおおおお!!』

 

 シンと亜滝が痛いはずの脚を動かしボールに向かう。

 

 亜滝の方が先にボールをとりロングシュートを放とうとする…が

 

「……さぁせぇるかぁああ!!」

 

 ボールをお互い同時に蹴った。ボールは動くことなくその場に留まり続ける。これからは正真正銘の力勝負、これに勝った方がこのゲームの勝者となるだろう

 

「……そろそろ負けを認めろよ!先輩…!」

「何度も言うが負ける訳には行かない!リサが応援してる中負けるのなんて御免だ!」

 

 亜滝先輩、あんたは確かにつえーよ、まさかここまでの試合になるなんて思いもしなかった。けどな…あんたと俺の大きな違いを教えてやるよ

 

「あんたが守る人はリサ先輩ただ一人…」

 

「けど俺はみんなの味方になるんだよ!!」

 

「あんたより守る人が多い俺は…背負ってるモノの大きさが違うんだよ!!」

 

ズキッ

 

「…………ッ!」

 

 左足を痛めている亜滝が少しだけ力を緩めた時、シンはその隙を見逃すことなく

 

「はあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「……俺の…!勝ちだぁあああ!!!」

 

 今できる最大の力を振り絞りボールを蹴る足に力を込める。

そのまま亜滝を跳ね飛ばし蹴ったボールは…見事に相手のゴールに入った。

 

ピッピッピー!

 

 試合終了のホイッスルが鳴る。最後のシュートはちゃんとゴールした扱いになっていた。

 

 シンは拳を高らかに上げて叫ぶ

 

「――……勝ったぞぉぉおおおおお!!!」

『うぉぉおおおおおおおお!!!』

 

 一年四組の全員がシンの所へ集まる。一人はシンの頭を叩き髪をクシャクシャとし、もう一人はシンを肩車して上にあげ、最後は胴上げだ。まだ次の試合が残っているのにも関わらずこの馬鹿の四組はそんなことを忘れ今を楽しんでいた。

 

「?」

 

 シンは少女の視線に気づき

 

 腕を前に出し親指を立てていた。ゲットサインってやつだな

 

 それをみた少女は泣き目になりながらもシンと同じように親指を立てていた。

 

「……どうやら今日の俺は」

「――……幸運だったようだな」

 

 その後シンは次の試合に出ることはなく保健室へと連れていかれ治療を受けたあと意識を失ったように寝ていたのであった。

 

 その寝顔は彼の中で一番いい寝顔だったとさ




主人公補正ありありの話でしたね!いやー話書くのムズすぎ、多分伝わらないところとかあるんだろうなーまあそこは今後勉強します。

さあ!いよいよ夏編!…と言ったもののあと1話?ぐらいはまだ話が続きます!

少しでもいいと思ったら評価と感想よろしくお願いします!

では次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンと友達について

いやー久しぶりです!リアルが忙しくて投稿が遅くなりました!その分長くしたから許して!

それではどうぞ!!


 シン達が先輩を含む二年を倒した時、歓声がなり止むことはなかった。なんせサッカーのエースである亜滝が率いるチームのため負けることはないと思っていた。しかし結果はシン達一年の勝ちだ。

 

「だけど、勝った方がボロボロとはね」

「うん…でもシン君は勝てたよ!」

 

「(そうね…大きな一歩は踏み出したんじゃないからしらね)」

 

 千聖は口に出さず自分の心の中でそう言った。

 

「いやーシン君はモカちゃんの応援があったから勝てたんだよね〜」

「違うから、あたしのドリンク飲んだから勝てたの」

『………………』

 

 この二人は仲良しです。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 シンは保健室にて眠りについていた。本人は寝る気なんてなく次の試合にも出ると張り切っていたが体が持たなかったようだ。

 

 と…言うよりたかが20分間を全力で走り回っただけでこのザマだ。だが勝てたからよしだと思ってるのであろう。

 

「…………知らない天井だ」

 

 俺は目が覚めると知らない天井を見つめていた。体を起こそうとすると重いがなんとかして起き上がりあたりを見渡す。

 

「なんだ、保健室か」

 

 前に何回か来たことがあるから周りを見ただけでわかった。時計を見ると長針が4を指している。

 

「もう終業式は終わったな」

 

 丁度いいタイミングで起きたもんだよ

 

 てか、俺って勝てたんだな、あの亜滝先輩に…だけど

 

ガラガラガラ

 

 そんなことを考えていると保健室のドアが開いた。

 

「――……シン君…起きたんだね」

「おう…ひまり」

 

 ひまりのやつがお見舞い?に来てくれた。

 いやー!シン君は嬉しいっすよ!君が一番乗りだよ!

 

「……体は大丈夫なの?」

「おう!もう大丈夫だけど…足はヤバいだろうな!」

 

 今は応急処置で棒をつけられ足を固定してもらってる。後で病院に行くか?でも金かかるし…んー!迷う!

 

「…………そっか」

 

 ひまりは歩いて俺のベットまで来てそのまま腰を下ろした。

 

「シン君…その、ありがとう?ってなんて言えばいいかわからないよ!」

 

 あー確かになんて言えばいいかわからないよね!?てか別にお礼を言うことでもないだろ?

 

「なに気にすんな、俺が個人的にあの人を倒したいからやったんだよ」

 

 まあひまりのためでもあったけど…勝ったからどうかとかじゃないしな

 

「でも…うん!これで私は先輩に対する未練は綺麗さっぱり無くなったよ!」

「これで心置き無く新しい恋を探せる」

「――……ひまり…!」

 

 そう答えるひまりの顔は窓から差し込む昼過ぎの太陽の光で照らさており、笑顔がとても似合っていた。

 

「(やっぱりこいつは可愛いな)」

 

 って何言ってんだよ俺は!?疲れすぎて頭おかしくなってんじゃないか!?

 

 ひまりにそんな恋愛感情とか持ってねーし!きっと何かの勘違いだ!可愛いと思うだけだっての!

 

「てかお前学校戻らなくてもいいのか?」

 

 羽丘の生徒は球技大会終了後は学校に戻り終業式をすると聞いていた。今の時刻は4時すぎ、もう終業式なんて終わってるはずだ。

 

「えへへ、サボっちゃった」

 

 下をペロッと出してそう答える。なんか前もこの反応あったよな?

 

「シン君が起きるまで待ってたけど…もう起きたし学校に戻るよ」

「直接帰らないのか?」

 

 わざわざ学校戻る必要ないだろ?

 

「ばーか、今の私は体操着姿、荷物も学校にありまーす!」

「うるせえな!バカはお前だっての!」

「なんで!?こんな簡単なことも気付けなかったクセに!シン君の変態!」

「な、なんでそこで変態が出るんだよ!?お前毎回毎回変態しか言えねーのかよ!?」

 

 二人は少し言い合いをした後

 

『…………ぷっ!』

『あははは!あはははは!』

 

 笑いあっていた。

 

 なんだ、やっぱりひまりはひまりだ!もう心配することなんてねえ、俺はこいつをまた笑わせることができたんだ。それだけで俺が足を怪我してでも頑張ったかいがあるよ

 

 まあ別に足は怪我しなくてもよかったんだけどね!亜滝先輩が言い訳しないようにしただけなんだけどな!

 

「じゃーね!私が帰ったあとは寂しいかもだけど泣かないでね!」

「あー泣くかも、ひまりー!どこにもいかないでくれー!!!」

 

 俺は冗談でそんなことを言う。ひまりのことだ!慌てふためいて面白い反応をすると思う!

 

「えっとごめんね?さすがに戻らないと怒られるから」

「…………ッ!」

 

 い、意外な返事だったな…

 

 その後ひまりが保健室から出ていきまた一人になる。

 

 不意に窓の方を見ると亜滝先輩が足を引きづりながら帰っていく姿が見えた。

 

 その姿を見た瞬間俺は保健室を抜け出し亜滝先輩の元へ向かっていた。まあ話したいことがあるんだよ、てかさ!?

 

「足がめっちゃ痛ええええ!!!」

 

 もう歩けないからけんけんして向かってるっての!

 

「――……おい!」

 

 なんとか追いつき学校の校門前にて呼び止めた。

 

「……なんだい?僕は今から病院に行くんだけど」

 

 亜滝先輩は俺の方を見ることなくそんなことを言う。

 

「……また、勝負しような」

「…………ッ!」

 

そのーなんだ、確かにあの時の俺は亜滝先輩のことをめちゃくちゃ嫌っていた。いたけど今日の試合の中でさ?亜滝先輩は俺と一緒に土下座をしていたんだよ、普通こんなことできねーだろ?

 

それにさ…?俺はみんなの味方になりたいんだろ?だったら亜滝先輩のことも許してやるほどの心の広さがねーとダメだろ?

 

 あとはそうだなー最後は俺と蒼汰二人で止めに入ったしな、実質俺一人で勝てたわけじゃないってこと…けど次は勝さ、俺一人の力でな?

 

「そのーあれです。昨日の敵は今日の友的な?」

「つまりさっきの敵は今の友ってこと!」

 

 俺新しい言葉考えたんじゃね!?

 

「…………僕はさ、君に負けてとても悔しいよ…!」

 

 先輩が力強く拳を握り締める。無理もないな、だってたかが三日間血反吐吐く練習をした俺には負けたんだからな…

 

それに眼がいいことを利用して勝った。俺にこんな力がなかったら勝つこと、いや、渡り合えることすらできなかったと思う。

 

「まさか本当に負けるなんて考えもしなかった」

「……僕もまだまだだなー蒼汰にも負けるかもしれない」

 

 亜滝先輩は相変わらず俺の方を見ることなくそのまま話を続ける。

 

「……んなことないっすよ、これからもサッカー頑張ってくださいね」

 

「言われなくてもそのつもりだ。来年の球技大会でリベンジするさ!」

 

 亜滝先輩は左足を引きづりながらこちらを向きそう答えた。

 

「……さあ?サッカーでは勝ち逃げするかもしれないっすよ?」

 

 勝負しようと言ったが誰もサッカーで!とは言ってないからな!はは!

 

「にしてもあそこまで僕は男子に嫌われてるのかな?泣きそうなんだけど」

 

 あーあれか!最後のエールのやつか、いやーそれはごめんな?俺が思った以上にみんなから期待されてたようなんだよ

 

「まあさんざん女子を振った罰が当たったんすよ」

「……だったら今後はもう嫌われることはないのかな?」

 

 んーどうだろうな

 

「亜滝先輩がリサ先輩だけを愛せばいいんじゃないんすか?」

「…当たり前だろ?僕はリサのことが大好きなんだから」

 

 まったく…!言ってくれますよね!?なに?彼女がいない俺のことをやっぱり馬鹿にしてますよね!?

 

 でもまあ

 

「……リサ先輩を幸せにしろよな」

 

 俺が言うセリフじゃないことぐらい知ってるさ、ただ同じバイト先の後輩としての願いだよ

 

「なに?シン君はリサのこと好きだったのかい?」

「なっ!?ち、ちげーよ!ただ…」

「…………ただ?」

 

 そうだよ、俺はただ

 

「……結婚する相手はリサ先輩みたいな人がいいなって思ってただけだよ」

 

 ほら?覚えてるか?あの黒毛和牛の話、あの時に俺が言ったろ?

 

 俺も将来こんな人と結婚したいぜ!ってな

 

 まあリサ先輩みたいな人を探せばいいんだよ、見つかるかわかんねーけどな!

 

「それは残念、リサと結婚するのは僕だから」

「…知ってますか?高校生カップルが結婚する確率」

 

 確かめっちゃ低かったと思う。だから高校で彼女彼氏がいなくても大丈夫ってことだろ!?なあ!

 

「そんなの関係ないよ、僕はリサと結婚するから」

 

 あーはいはい結婚してどうぞーもう亜滝先輩に何言ってもわからないよな!

 

「とか言ってるけど本人の前では言えないけどね」

 

 だろうな!でもモカは普通に結婚しようって言ってるぜ?あいつはやっぱりすげーな

 

「……そろそろ行くよ、君も足治すんだよ」

「じゃあどっちが早く治せれるか勝負します?」

「僕の方は軽傷、君は重症、やめてた方がいいよ」

 

 んなこと言われなくても知ってるっての!ネタで言ったんだし!

 

 亜滝先輩は学校を出て行った後

 

「……もう出てきてもいいんじゃないっすか?」

「――……リサ先輩」

 

 近くの大きな木の陰からリサ先輩が姿を現した。なんかしらんが最近感じるんだよなーあそこに誰かいそうとかなんとか、まあ蒼汰とサッカーの練習中に眼がいいことに気づいたように実は俺感もいいのか?

 

 出てきたリサ先輩の顔はもう真っ赤っか、まああの話を聞いたらそうなるよな

 

「結婚おめでとうございます?」

「も、もう!からかわないでよ!」

 

 なんでここにいるんですか?と聞くと亜滝先輩の迎えに来て木で待ってる時に俺が呼び止め出るタイミングがわからなくなり隠れていようになってたとさ

 

「最後までよくわからなかったけど…仲直りできてよかった」

「それと…アタシみたいな人と結婚したいと言ってくれてありがとね♪」

 

 やっぱりそこ聞かれてますよね!?まじクソ恥ずかしいよ!あークソが!!

 

「あはは!でもごめんね?なんかハルと結婚する前提らしいから」

「うるさいな!?俺にだって婚約者?一応いるんですからね!」

 

 千聖先輩が約束してくれたしな!でもそれはまあいろいろと条件があるけど

 

「あーモカかな?」

「いえ違います」

 

 即答する俺、なんかそれはそれで失礼だったかもしれんがな

 

「あ、そういえばさっきひまりとすれ違ったんだー」

「……そーすっか」

 

 ここから帰って行ったからそりゃあすれ違いますよねー

 

「なんかね?「リサ先輩はやっぱり可愛いですね!」って言って帰ってたの」

「あ!それと今度海行かないかって誘われてね!水着買わないとね♪」

 

 海かーまあ別に喧嘩してたわけじゃないし仲直りって言い方じゃないな、でも確かにリサ先輩は可愛いよな?けど彼氏いるので諦める俺

 

「ひまりはいいやつなんでこれからも仲良くしてやってくださいね」

 

 何様で言ってんだよ俺は…でもこの二人で仲良く話すところを俺は見て見てたいな、もう何も思わずに普通に接せれてる姿をさ

 

「あはは!なにそれー?シンはひまりのことも好きなの?」

「ああ、好きっすよ…友達としてね」

 

 ひまりだけじゃなくてみんな好きだけどな!

 

「それはー、いや!なんでもないよ」

 

 ん?なんか言いたいことでもあったのかな?でもなんでもないのなら大丈夫なのだろう

 

「アタシ、ハルの病院着いてくね!シンもちゃんと治療受けるんだよ!」

「……はーい」

 

 やっぱり病院行くか

 

 そう思うシンだった。

 

「あ!こんな所にいたのねシン!」

「……こころ?それにみんな?」

 

 四組のみんなが集団となり下校していた。いやお前ら仲良すぎんか…はっ!俺だけ仲間外れにしてどっか行くのか!?

 

「保健室行ってもいなかったからてっきり帰ったのかと思ったわ!」

「あーすまん、友達(・・)と話してた」

 

 二人ともちゃんとした俺の友達さ

 

「ほれ、荷物だよ」

「……おっと、サンキュー」

 

 蒼汰が俺の荷物を持ってきてくれたようだ。教室に戻る手間が省けたから助かったぜ!

 

「……えっと、結果は?」

 

 悪いが俺は寝てたから三年との試合には出れなかった。だから結果がどうなったのか気になる

 

「……すまん」

 

 蒼汰は下を向き低い声で謝る。

 なんだ優勝できなかったのかーまあ二年に勝ったし準優勝!焼肉は確定ですな

 

「お前抜きで余裕に勝てたわ!」

「…………は?」

「つまり優勝ってこと、私でもわかるよ?」

「だー!うるせえなおたえ!」

 

 俺抜きでとか言うなよ!なんか悲しくなるだろ!?それとおたえ!お前から馬鹿にされる筋合いはねーぞ!

 

「だから今からみんなで焼肉行くんだよ!もちろん来るよな?」

「……行くに決まってんだろ!」

 

 病院は明日行くか…まあ大丈夫だろ、うん、きっと大丈夫に違いない!

 

「まったく、無茶をするのね」

「……えー!?千聖先輩!」

「わ、私もいるよ!」

「彩先輩まで!?」

 

 四組集団の中から急に千聖先輩と彩先輩が現れた。てかなんでこの二人がいるんだ?

 

「今から先生にご馳走されるのよ」

「私達の元担任だからね!ねえ!先生!」

 

 彩先輩が先生にそう言う。

 この担任は前に千聖先輩と彩先輩の担任だったのか…それだと?

 

「去年はお前ら、今年は若宮ときた。なんで私はアイドルの担任ばかりやらされるんだ」

 

 やれやれと言い先生が話していた。若宮さんねーまだあんまり絡んだことないな

 

「ん?てことは彩先輩と焼肉食えるの!?」

 

 そうだよな?そうだよなあ!?

 

「うん!今から一緒に食べようね!」

「あぁー!嬉しいです!早く行きましょう!」

 

 彩先輩と焼肉食えるとか今日の俺は幸運すぎねーか!?

 

「あら?私と食べれるのは嬉しくないの?」

「いや千聖先輩は家でもご飯食べれますしね?」

 

 だってそうだろ?同じマンションだし外に出ることなく行き来できるじゃん?ご飯食べようと思えば食べれるし!

 

「…へーそう、シンはそうやって女子を家に連れ込む作戦ね」

「ふふ…なに?もう我慢できなくなったのかしら?」

「…………ッ!?ち、違います!まったく違いますから!」

 

 な、なるほど…!確かにこの感じだとそう思われても仕方がないよな!?

 

「ん?なんの話してるの?」

「な、なんでもないですよ彩先輩!?早く焼肉行きましょう!」

 

 一人で走って校門に向かうが

 

ズキッ

 

「……痛えぇええ!!」

 

 忘れてた…!今足怪我してたから走れねーんじゃん!

 

 その様子を見た蒼汰がシンの近くに向かう。

 

「ったく今日のヒーローさんがそんなんだとダメだぜ?」

 

 そう言いシンに方を貸す。

 

「……助かる」

「……まあ?これでチャラってことで」

 

 チャラ…?あー巴と蒼汰を恋人同士にさせたやつか、いやこれでチャラって…まあ別にいっか!

 

「よーし!みんなで焼肉行こうぜ!」

『おー!!!』

 

 蒼汰の肩をかりながらそう言うシンに対して四組全員が返事をした。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 焼肉屋に来たものの、さすがに叙〇苑は無理とのことで焼肉森林に来ていた。え?違うだろって?知らんな

 

 まあみんなはっちゃけてそれはそれはもう盛り上がりましたよ?でもさーこんなにも人がいるもんだから暑いんだよ!だから痛い足をこらえ外に出て夜風に当たることにした。

 

「うわ、星が全然見えねえな」

 

 ベンチに座った後空を見上げていた。恐らくだが商店街が明るいため星が見えないのだろう。しかしその代わりと言ってはなんだが丸い満月が見える

 

「……月が綺麗だな」

 

 このセリフはなんか好きな人に言う台詞らしいな?確か…

 

「……あなたが好きです的な?」

 

 俺にも好きな人ができたらこんな告白するのだろうか…まあ好きな人ができるかなんてわからないけどな

 

「……好き、恋……かー」

 

 まったく経験なんてしたことねーからわからないっての、俺の事を好きになる人とかいるのか?いやいないと困る

 

 千聖先輩…は俺のこと好きなのか?いややめとこう、調子乗ってると思われてしまう。

 

「……じゃーモカは?」

 

 あいつはどうだろうか…前に聞いたら小声でなんか言ってたな

 

「あいつ可愛かったなー」

 

 風邪を引いたモカはいつもと違ってな?なんか可愛かったんだよ、いつもあんな感じだとばりクソ可愛いのにな

 

「可愛いと言ったらあいつだよな?」

 

 今日俺がひまりのために勝負したようなもんだしな

 

 なんか新しい恋を探すとか言ってたが…次はまともなやつを選んで欲しいな!できれば俺が知らない人の方が助かるな

 

「他は…蘭、彩先輩、香澄におたえーえっと市ヶ谷さんと」

「――……沙綾だな」

 

 みんな可愛いし誰かに好意を持たれてんだろうなーいや、可愛いって本当ある意味無敵だよな

 

「私がどうしたの?」

「ん?ああ沙綾は可愛いなって思って……え!?」

 

 さ、沙綾!なんでここに!?てか…!

 

「……き、聞いてましたか?」

「んー月が綺麗だなからかな?」

「最初からじゃねーか!」

 

 は、恥ずかしい!!てか口に出てた俺が悪いけどさ!?あーもう!なんでいつもいつも思ってることが口に出るんだよ!これでどれだけ後悔したことか!てか今も後悔してるし!

 

「……ちなみに私はシンの中でどれぐらい可愛いのかな?」

「え?んー」

 

 いやそんなの決まってるだろ

 

「いや俺がそんなの決めれるわけないだろ?」

 

 誰か人を一番と答えれば必然的にドベが現れるだろ?だったら何も言わない方がいいんだよ

 

「……そっか!まあシンに可愛いって言われたからそれだけでいいよ」

「……な、ならよかった」

 

 友達やめると言われるかと思ったぜ…

 

「あ、今日の試合でさ?」

「うん」

「その、沙綾が言った言葉なんだけど…」

「…………ッ!」

 

 私の正義のヒーローってなんだったんだ?てかなんで俺がみんなの正義の味方…あ、味方か、ヒーローとは違うのか?

 

「あ、あれーはそのー!」

「そう!こころが前にシンの話しててね?ヒーローがなんかって…」

「だ、だからそう言ったの!別に深い意味はないから!」

「そ、そこまで否定しなくてもいいじゃねーか!!」

 

 なんだよそれ!?めちゃくちゃ泣きたくなるだろ!だけど…もし、私だけのってのが本当だったら

 

「……叶えられないかもな」

「……え?」

「なんでもねーよ、戻ろうぜ?少し腹減ったよ」

 

 俺は…そう、みんなの味方になるんだ。誰か一人なんてことはしない。じゃないと「平等」じゃないだろ?てか前も言ったがそんなガチガチじゃねーからな!期待すんなよな

 

「あ!シン君どこ行ってたの?足怪我してるんだから気をつけないと!」

「だ、大丈夫ですって!ちょっと夜風に当たってきただけなんで」

 

 席に戻ると彩先輩に注意される。いやー!彩先輩が俺の事を思ってくれてるなんて嬉しいよ!

 

「ほらちょうど肉が焼けたわ」

「千聖先輩助かります」

 

 千聖先輩が肉を焼いてくれてたためそれを食べる。

 

 ああ、言ってなかったな!なんか席決める時に俺の隣が彩先輩と千聖先輩になったんだよ、いやすげーよな!先輩に囲まれるって

 

 その後肉を食べる食べる食べまくる。

 

「……ギブです」

 

 普段飯なんてまったく食わないためそこまで胃が大きいわけじゃないんだよな

 

「私が焼いた肉よ?食べなさい」

「い、いや千聖先輩?誰も焼いてなんて…」

「私が焼いた肉よ?」

「さっきも聞きましたから!」

「……私が焼いた肉よ?」

 

 その目で言うなよ!説教されてると思うじゃん!てかもうされてるかもしれない!

 

「い、いやー!美味そうだな!!」

 

 肉を食べる…ヤバい、吐きそうなんですが!

 

「あ!こっちも焼けたよ!」

「……あなた達俺のこと殺しに来てますよね!?」

「え?そうかなー男子ならこのくらい食べると思ったんだけど…?」

 

 ふぅ…

 

 あのですね!この光景は誰がどう見ても羨ましい光景としか思わないだろう!

 

 右を見れば千聖先輩、左を見れば彩先輩、日本を代表するアイドルバンドのパスパレ主力と言ってもいいだろう!

 

 そんな人達と飯を食える俺はなんて幸運なんだって思うだろ?でもなあ!

 

「あーもう!!やっぱり不幸だあああ!!」

 

 ごめん、やっぱり不幸としか思えない!いやちゃんとしてたらめちゃくちゃ幸せだよ!?でもあなた達俺を殺しに来てるもん!!!

 

 その後肉は全部食べ終えトイレに駆け込もうにも足を痛めてるため急ぐことができず吐くのをずっと堪えていたらしい。




次回から夏休み編です!大きな話がいくつかあります。まあ期待してくれてると助かります!それと…八月といえば?彼女の誕生日ですね!

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと美竹家の訪問 前編

なんとかかけた!みんなお待たせ!今回は蘭の話だよ!!

それではどうぞ!!

急いで書いたので誤字脱字があるかもしれません


 夏休み…それは学生にだけ許された長期休暇だ。社会人になると盆休みの前に数日あるかないか程度…と店長が言っていた。てかあの人やっぱり休んでないよな?少し以上に心配なんだけど

 

 まあつまり学生時代の夏!この夏は楽しまないと損なのである。そんななか俺は

 

「……暑っつい」

 

 日陰のベンチに座りアイスを食べていた。

 なんでこんな所にいるのかって?それはだな…

 

 ほら?俺って足怪我したじゃん?それのリハビリでプール歩いてこいとのこと、誰が喜んで一人悲しく人がたくさんいるプールに行くんだよ!

 

 言われた通りのことしてすぐに上がり歩いて帰ってたんだ。あ、もう歩けるぐらいにはなってるからな?ただ激しい運動するなよってこと

 

「……アイス溶けるの早くね?」

 

 それほど暑いのだろう。暑いから前髪を上げ髪留めで髪をとめデコが丸見え、まあこの方が少しだけ涼しくなるからいいんだよ

 

「にしても予定全くねーな」

 

 あ、そう言えば三郎のおやっさんがスケボーの修理が終わったとか言ってたな…まあ今日はいいや、今度にしよう

 

 バイトも足が完全に治るまで休めだってさ、つまりお前がいなくても大丈夫だってことって言われた時は泣きそうになったな

 

 暇だから携帯を見る。携帯の連絡先を適当に見ており…

 

「蘭……暇してるかな?」

 

 結構前に飯奢る約束したから今日にでも奢るとするか!まあ蘭が暇しとけばいいんだけどさ!

 

 蘭にメッセージを送るためトークを開く。その瞬間に

 

「今暇?」

「…………ッ!?」

 

 と、蘭からメッセージ来たのだ。

あれだよ、俺がメッセージを見たってことはあっちに既読が着いたってことさ

 

 俺は急いでトークから出たが時すでに遅し、もう既読着いちゃってますよ!

 

「なに?あたしのトーク履歴眺めてたの?笑笑」

 

 と、返事が来た。もうやめよう、通話があるなら通話しよう!

 

 電話を掛けて1コールで蘭は電話に出る。

 

「――………もしもし」

「もしもし蘭か?いやさっきのは俺も連絡しようと思ってた所なんだよ」

「……そうなんだ。で?話ってなんなの?」

 

 よ、よかったー!蘭が物分りのいい子で!モカとかだったらネチネチ弄られてただろうな!

 

「えっと、蘭に会いたい?っていうか会わないか?」

「………………」

 

 あれ?蘭から返事がないぞ!?え、まさか嫌われた?気軽に会いたいと言っただけで嫌われたのか俺は!?

 

「…………うわっ!?」

 

 急に後ろから冷たいものを首筋に当てられた。急いで立ち上がり後ろを向くと

 

「そんなに驚くこと?」

 

 手に持ってる携帯からもその言葉が聞こえる

 

「ら、蘭!?」

 

 そこには蘭がいたんだ。

 

「なんでここにいるんだよ!」

「バイト帰り、てかベンチ座らないの?」

 

 そう言われ急いで日陰の中に入りベンチに座る。てか蘭のバイトってここら辺だったのか!

 

「……隣いい?」

「ん?あー全然いいぞ、むしろ座ってくれよ」

「…………ッ!」

 

 いや、だって俺だけ座って女子の蘭が座らないとかおかしいだろ?だから俺は座ってくれと頼む

 

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」

 

 座った蘭はさっき俺の首筋に当てた冷たいもの、アイスを開け食べようとしていた。

 

 どうやらそのアイスは二つに割るアイスのようだ。そのアイスを割り

 

「……はい」

 

 俺に渡してきた。

 

「いや、さっき俺アイス食ったから蘭食べていいぞ?」

「……いいの!食べてったら!」

 

 押し負けて食べる。うん!さっき食べたゴリゴリ君と同じ味だ!てか多分同じ会社が作ってると思う。

 

「なあ?なんで二人用のアイスなんて買ってたんだ?」

「……ッ!そ、それはー」

「し、シンの姿が見えたから近くのコンビニでアイス買ったの…」

 

 ら、蘭さーん!!!

 

「……蘭、抱きしめていいか?」

「は、はぁ!?だ、ダメだから!その、家とかでなら…って何言わせてるの!?」

 

 そう蘭に言われビンタをくらった。いやおかしいだろ!?なんでそこで手を出すんだよ!

 

「ご、ごめん!その!」

「いや別にいいって、大丈夫大丈夫」

 

 あ!そんなことより大切なこと忘れてた!

 アイスを急いで食べて蘭に言う。

 

「蘭!今日の夜は……ッ!」

 

 あー!!頭が痛い!あれか!アイスクリーム頭痛ってやつか

 

「……今日の夜は?」

「ああ、今日の夜……ないか?」

 

 今日の夜飯行かないか?と俺は言ったんだ。

 

「……え!?今日の夜やらないか!?」

 

 ち、違う!そんなこと言ってないから!?

 

「えっと、そのあたし初めてだしそんなに…」

「ち、違うから!飯食いに行かないかって言いたかったんだよ!」

 

 てか蘭!なんでそんな聞き間違いすんだよ!童貞の俺がそんなの誘えるわけないだろ!

 

「……ああ、そう」

 

 なんでそんな落ち込んだ顔すんだよ…なに?俺が悪いの?俺が悪いのか!?

 

「えっと、前にご飯奢ってくれって言っただろ?ほら文化祭の最後にさ」

「あー言ってたかも、覚えててくれたんだね」

 

 さっきまでの態度とは違い蘭は落ち着いている様子だった。それに隣を見れば蘭がこちらを見ながら答えていたんだ。

 

「…………ッ!」

「(や、やめろよ!可愛いじゃねーか!)」

 

 俺の周りの女子ってみんな可愛くないか?花咲と羽丘の顔面偏差値高すぎな

 

「ご飯ってどこ行くの?高級ディナーでも連れて行ってくれる?」

「んー連れていきたい気持ちは山々だがさすがにそれは無理だよ」

 

 金かかりすぎて無理っすよ!

 

 そんな話をしてる時蘭の携帯が鳴り出した。

 

「ごめん電話……もしもし」

「……え?今友達といるけど」

「誰って……シンだけど」

 

 誰と話をしてるのだろうか、てか俺の名前出してもいいの?大丈夫だよな?

 

「…………わかった。聞いてみる」

 

 どうやら電話は終わったようだな

 

「えっと、シン?今夜うちに泊まらない?」

「…………はっ!?」

「その父さんが泊まりに来ないかって」

「いや……行ってもいいの?」

 

 蘭の家に泊まるだと!?そ、そんなこと俺がしてもいいのか!?あ、でも蘭の親が言ってるのか…なら、いいのかな?

 

 いやいや!でも俺だって一応男子であるしついてるものはついている!たとえチキンでヘタレだとしても大丈夫なのかが心配だ…

 

「……行くぜ!」

 

 なーに大丈夫だろ!さすがに同じ部屋でなんて泊まるわけないしな!

 

「わかった、じゃうち行こっか」

「え?もう?早くないか?」

「そうかも…だったらショッピングモールでも歩いて時間潰そうよ」

「そうだな!ついでになんか買っていくよ」

 

 手ぶらで泊まるわけにはいかないだろ?だからなんか買っていくよ

 

 その後蘭とベンチを後にして少し歩きプールの前を通った時だ。

 

「――……あ!シン兄!」

「おー!シンジ!久しぶりだな!」

 

 俺と蘭に気づいたシンジが話しかけてきた。シンジというのは俺達姉弟の弟だ。

 

「あ!蘭姉ちゃん!こんにちは!」

「……うん、こんにちは」

 

 蘭はしゃがみこみシンジの頭を撫でていた。いやーいい光景だな!なんかこっちが嬉しくなるよな!

 

 てかシンジ!その蘭姉ちゃんって呼びやめろ!誰かと間違われるだろ!?

 

「シンジ、お前なんで屋敷の外にいるんだ?」

 

 付き人もなしに外なんかに出て大丈夫なのか?てかまだあいつのままなのか?あいつがシンジから離れるとは思わないんだけどな!まさか俺みたいなことしてるとかじゃないよな…?

 

 はるか昔の話だがシンは一時期弦巻家を嫌い家出をしたのだ。結果は黒服に捕まったがその後は今の家であるマンションに連れていかれてから今の今でも生活を続けているのだ。

 

「クラスのみんなでプールに来てたの!」

「あ、もちろん担任の先生付きだよ?」

「……なんだそうだったのか!ちゃんと友達と遊べたか?」

「うん!」

 

 そうかそうか、シンジは小学生の頃から仲のいい友達ができていいな!兄さん嬉しいよ

 

「……てかシンジ?お前まだ()のこと気にしてるのか?」

「……ッ!あ、うん」

「はぁー」

 

 シンジの眼はな少し以上に特殊なんだよ、左右瞳の色が違う。つまりオッドアイってやつなんだよ

 

 俺のお父様の瞳はルビーのように輝き、そして燃えるような赤色の瞳、お母様は俺達姉弟と同じでまるで琥珀のような輝きを放つ金色の瞳だ。

 

 シンジはその綺麗な瞳を持ち揃えているんだ。

 

 だが本人はそのことを気にして赤色の瞳、つまりお父様と同じ瞳は右側の前髪を伸ばし隠しているんだ。

 

 ちなみにだがその髪色は俺達と同じではない。シンジはお母様と同じ黒髪なんだよ、お母様は黒髪で金色の瞳、それに美人ときた。最強すぎねーか?

 

「シンジ気にすんなって、俺はカッコイイと思うぞ?」

 

 それにこのご時世瞳の色なんてすんごいもんばかりだろ?逆に黒が珍しいっての

 

「………………」

 

 蘭は話に入ってこようとしない。きっと気を使っているのだろう。

 

「おーい!シンジくーん!先生が呼んでるよー!」

「……うん!わかった!今から行くね!」

「あはは、シン兄ごめんね?また今度ね」

「お、おい!シンジ!」

 

 ったくシンジの野郎…今度あったら何がなんでもオッドアイのカッコよさを教えてやる

 

「シンジ君の眼がどうしたの?」

「あ?まあーうん、気にすんな」アハハ

「……やっぱり兄弟だと似るんだね」

「な、何が!?」

 

 俺とシンジが似ているところ?それはなんなんだ?

 

「笑って誤魔化すところ」

「………………」

「まあシンが話したくないなら別にいいよ」

「あー助かる」

 

 その後は他愛ない話をしてショッピングモールをぶらつき、その時蘭の家に泊まるためのお土産を買った。

 

 お土産は無難にカステラにしてみた。和風の家だしきっと喜んでくれるだろう。なんてったって五三焼カステラだからな!テレビでリポーターが美味しそうに食ってるのを見たことがある。

 

 お土産も買い蘭の家に向かっていた。時刻は19時前、ちょうどいい時間だろうか

 

「……ただいまー」

「お、おじゃまします…!」

 

 いややっぱり女子の家に上がる時は緊張しますよね!?前にモカの家にも上がったことあるが…なれるわけないですよね!

 

「蘭帰ってきたか、それにシン君も久しぶりだ」

「お久しぶりです…!あ、これつまらないものですが…」

 

 蘭のお父様にカステラを渡すと

 

「……カステラか!いやー私の大好物なんだよ、蘭にでも教えてもらったのかい?」

「……父さん、あたしがそんなことすると思う?」

「えっと、自分で選びました!気に入ってもらえてよかったです!」

 

 い、いやーよかった!まさかカステラが好物とは知らなかったけどな!

 

「蘭ちゃん帰ってきたの?まあ!カッコイイ彼氏さん連れてきちゃってもーう!」

「か、母さん!違うから!その…まだ」

「あはは、蘭のお母さん?俺が蘭と付き合えるわけないじゃないですか」

 

 だって蘭には他に好きな人、もしくは好意を寄せてる人がいるはずだろ?だってこんなに可愛いもんな

 

「そ、それより母さん料理作ってるでしょ?あたし手伝うから」

「…あんまり手伝わせたくないけど、いいよ、キッチンに来て」

 

 え!?ら、蘭が料理を手伝う!?大丈夫なのか?こないだみたいな黒い液体とか出さないよね!?

 

「蘭は最近料理の勉強をしてるみたいなんだ」

「へ、へー」

 

 なんか将来のために言ってたな、そのうち一人暮らしでもするのだろうか

 

「シン君、暇なら一勝負しないかい?」

「……一勝負?」

 

 その話を聞いたあと蘭のお父さんの部屋に連れていかれた。

 

「将棋はできるかな?」

「……まあ一応できますけど」

 

 チェスとルールは似てるんだろ?なんか話では将棋の方が難しいって話は聞くけどな!きっと大丈夫だろう。

 

 その後は黙々と将棋をする。最初はわからない駒とかあったが蘭のお父さんが詳しく説明してくれたため何となくだが理解できた。

 

「そう言えば、最近調子はどうだい?」

「調子ですか?まあ…ボチボチですかね」

 

 駒を動かしてそう答える。

 

「あはは、あいつも息子の世話に苦戦してるのだろうかね」

「……あいつ?」

 

 あれ?なんかこーゆう流れ前もなかったっけ?確か学長先生とチェスしてた時にも…

 

しん(・・)ちゃんは今元気にしてるのかい?」

「……蘭のお父さんも俺のお父様の知り合いか!」

 

 学長といい、蘭のお父さんといい身近に俺のお父様との知り合いが多くないか!?

 

「その言い方だと先生とも話をしたのかな?」

「え?あー学長先生ですか?話しましたね」

 

 先生ってことは

 

「お父様と同じ高校だったんですか?」

 

 だって学長先生はお父様の担任だったんでしょ?なら先生を知ってる蘭のお父さんは同じ学校だったてことになる。

 

「そうだ。なんなら卒アル見るかい?」

「あ、あるんですか!?」

「ああ、あるとも」

「見せてもらってもいいですか!?」

「……いいよ」

 

 お父様の過去ってめっちゃ気にならない!?あんなに怖い人がどんな高校生だったのか…気になるよな!?

 

「……はい、これは卒業生の集合写真かな?懐かしいな」

 

 そこには生徒がたくさんいるなかみんなが肩を組んだりピースしたり様々なポーズをとっていた。

 

「ほら、これがしんちゃんだよ」

「あ、これが……ッ!?」

 

 これは…!一体どうゆうことだ?なんで?なんでなんだ?……いやあの人がそんなことをする人だとは思わない。

 

「……一体何がどうなってんだ?」

 

 そもそもこの写真は本当にお父様なのか?今と見た目が全然違うぞ(・・・・・)

 

「もう何年も会ってないからなーそのうち飯に誘いたいが…」

「あいつは出世してもう私達が気軽に絡んでいい相手じゃないんだろうな」

 

 蘭のお父さんがそんなことを言ってるが何も頭に入ってこない。だって目の前の衝撃事実でかなり驚いてるんだからな

 

「(――……だと……は?)」

 

 そんなことを考えている時

 

「ご飯ですよー」

 

 どうやら料理が完成したようだ。

 

「じゃ、ご飯食べに行こうとするかね」

「この勝負の続きはまた今度」

「…………はい」

 

 よし!このことはあまり考え込まないようにしよう!考え込めばこむほど頭がこんがらがるしな!

 

 なんならそのうち屋敷に顔だしてお父様に聞けばいいしな!

 

 美竹家のリビングに行くと豪華な和風料理が並んでいた。そりゃ和風の家なんで蘭のお母さんが得意で当たり前だよな!?

 

 てかこれ蘭も手伝ったんだよな?普通にどれも同じに見えるけど

 

「……いただきます!」

 

 箸をとり目の前にあるおかずを食べる。

美味い!これほきっと蘭のお母さんが作ったのであろう!

 

「美味しいです!」

「あらそう?ふふ、ありがとうございます」

 

 うわーやっぱり蘭と似てクソ美人だな、蘭のお父さんこんな人と結婚できて羨ましいよ!

 

「シン…これ食べてみてよ」

 

 隣で座っている蘭が卵焼きを渡してきた。

 

「こ、これは蘭が作ったのか?」

「う、うん」

 

 いや見た目はめっちゃ綺麗だな!

 

「……美味い!美味いぞ蘭!」

「……ッ!本当に!?」

「ああ!めっちゃ美味いぞ!」

 

 丁度いい甘さ加減、甘党である俺にピッタリな味付けだ!

 なんだよ蘭!やればできるじゃないか!!

 

「よかった、だしの分量少し間違えたからさ」

「…………だし?」

「あの、甘い卵焼きだったんですが…」

「?」

 

 ど、どうゆうことなんだ!?蘭はだしと砂糖を間違えたのか?いやいやさすがにそれはないよな!?

 

「…………母さん!!!」

「もーうあと少しでシン君落とせれたのにね」

「勝手に私の卵焼きと母さんの卵焼き入れ替えないでよ!」

「でも…さすがにあれは出せれないわよ?」

「……うう!」

 

 ら、蘭さーん!!あなた一体どんな卵焼き作ったんですか!?

 

「ちょっと待ってて!取りに行ってくる!」

「い、いや蘭さん!?大丈夫ですよ!」

「持ってきた」

「早いっての!」

 

 ドン!と音を立て俺の目の前に皿を置く、その中には黒い固形物があった。

 

 あのーこれをどうさっきのと自分のを間違えるんですか?あなたの目にはこの黒いのが黄色く見えたのですか!?

 

「……その、食べてみてよ」

「…シン君、男は時に勇気を出す必要があるんだよ」

 

 蘭のお父さんがその卵焼きを食べるが…

 

バタッ

 

 ら、蘭のお父さんが倒れました。

 あの!そんな目の前で倒れた人が食べた料理を食べることなんてシン君にはできませんよ!

 

「……大丈夫、父さんは卵アレルギーだから」

「さっきバリバリ卵焼き食べてましたよね!?」

 

 蘭の母さんが作った卵焼きめっちゃ食べてましたよ!

 

「……大丈夫、食べてったら!」

 

 く、クソ!こないだのドリンクといい今回の卵焼きといい!

 

「く、クソう!南無三!!」

 

 パク

 

「………………」

「………………」

「…………グハッ!!」

 

 バタッ

 

 蘭の父さんと同じようにその場で倒れた。

 

「ちょ!シン大丈夫!?」

 

 大丈夫だと!?蘭のダークマターのせいでこうなったんだろ!

 

「ふ、不幸だあああ」

 

 倒れて力なく言うその不幸だはいつもの叫ぶ不幸とは違いさらに不幸さがましてるように見えたのです。




今回の話でも登場シンのお父さん、彼には一体どんな秘密があるんでしょうね!

次回は後編!蘭とお泊りです!乞うご期待を!

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと美竹家の訪問 後編

なんと今週の日曜かな?日間ランキングに載ってました!嬉しかったです!バンドリの中で二番か三番でした!シンプルに嬉しいです!

あととある方が僕の作品を推薦してくれました!推薦文はとても読みやすくてわかりやすいので是非読んでみてくださいね!

それではどうぞ!!



 蘭の家に泊まることになった俺は今…

 

「……風呂に入っている」

 

 そう!蘭のダークマターを食べ終え無事にあの世から帰還した俺は風呂に入らされていた。

 

 だが残念な報告もある…それは蘭のお父さんがまだ帰ってきていない!さすがに死ぬことはないと思うが早く戻ってきて欲しい!

 

 自分の娘が作った料理で亡くなるなんてニュースに絶対乗るからね?もう美竹家終わっちゃうからね!?

 

「それにしても風呂広いな」

 

 まあ屋敷には及ばないが…俺の住むマンションの風呂場よりかなり広い。浴槽なんて大きすぎて泳げるレベルですよ?けど人の風呂で泳ぐような馬鹿なやつではないので泳ぐことなんてない。

 

「よーし、体洗うか」

 

 ザバッ!と立ち上がりシャワーの方へ向かう。あ、皆さんは先に体を洗ってから風呂に浸かる派ですか?残念、俺は湯船に浸かってから体を洗う派なんだよな!

 

 その時奇跡(じこ)が起きる。

 

ガラガラガラ

 

「…………ッ!?」

 

 俺の目の前のドアが空いたのだ。

 

 俺は近くにあった桶で下半身を急いで隠す。なんでかって?

 

「し、シン!?なんで!上がったんじゃないの!?」

 

 何故蘭がここにいるのだろうか、そんなことは俺にとってどうでもよかったことなんだ。

 

 何故なら蘭は…そう、何も隠してない。胸にはついている2つの大きい何か、そして…これはやめておこうか

 

「…………ッ!」

 

 俺は急いで湯船に浸かり後ろを向く。

 

「なんでいるんだよ!俺一度も上がった素振りなんて見せてないぞ!?」

「…………騙された…!」

 

 あ!?な、何に騙されたんだよ!?

 

「母さんに騙されたの!もう!絶対許さないんだから!」

 

 後ろで足をズカズカとしている蘭の姿が音を聞くだけで思い浮かぶ

 

「わ、わかった!わかったから早く出ていってくれ!体を洗えないだろ!?」

「……じゃ、じゃあ洗いっこす、する!?」

 

 ら、蘭さーん!!あなたはなんでそんなモカみたいなことを言うんですか!?別に張り合わなくてもいいんですよ!?

 

「(これはこれでチャンスかもしれない!)」

 

 蘭は心の中でそう思っている中

 

「(女子と洗いっこだと!?男子なら誰もが喜ぶことだ…!だがいいのか!?)」

 

 シンは心の中で自分と格闘していた。

 

『………………』

 

 長い格闘の末

 

「……よし、洗いっこするか!」

「ただし背中だけな!」

 

 そう!背中だけなら何も問題は無い…はず!だから大丈夫だよな!?

 

 その後シャワーの所へ移動して椅子に座る。

 

「後ろ向いたらダメだからね!」

「はいはい、わかってますって!」

 

 後ろ向いたら俺の命が危ういからな!

 

「……じゃ、じゃあ洗うよ」

「……おう!」

 

 俺は何故か気合を込めて言う。

 

ザッ!

 

「いってえぇぇえええ!!!」

「ごめん!力加減間違えた」

 

 ら、蘭のヤツめ…力込めすぎな!?あーもう!めちゃくちゃ背中痛いじゃねーか!なんか暑くなってきたよ!

 

「お前もうやめろ、俺が背中洗ってやるから」

「…………ごめん」

 

 うう!後ろでそんな暗い声で言うなよ!

 

 まあその後は蘭と俺の立ち位置は変わり俺が蘭の背中を洗う番が来た。

 

「すーはー……いくぞ、蘭」

「……うん」

 

 体を洗うタオルを蘭の背中に置く。その時蘭が少しビクッ!って反応したが気にしない。気にしたらま、負けなんだよな!?

 

「………………」

 

 撫でるように洗うと

 

「……ひゃんっ!」

「…………ッ!」

「くっふ、あん…!ん、んん!!」

「だからその反応やめてくれよ!!!」

「いや、その、気持ちよくてつい…」

 

 なんでそんな勘違いさせるようにするのかな!?シン君は男子だからそうゆうのに敏感なんだよ!?

 

「シン君!一緒にお風呂に入らない…」

 

 急に蘭の父さんが風呂場に現れたが

 

「なんで父さんが現れるの!!!」

 

 蘭が近くの桶を取り蘭の父さんに投げつけ、蘭の父さんは本日二度目の気を失うはめになりました。

 

「(ら、蘭ってやつは恐ろしいやつばかりだな…)」

 

 どこぞの蘭さんを思い浮かべるのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「ったく、酷い目にあったぜ」

 

 風呂を上がり縁側に座って夜風にあたっていた。

 

 結局最後まで蘭と一緒に入っていたなんて口が裂けても誰にも言えるわけないな

 

 モカとか千聖先輩にバレたら弄られてしまう。てか千聖先輩に関しては約束がなくなってしまうかもしれないからな!

 

 風呂を上がった後は蘭と蘭の母さんが討論してたがその時の蘭は満更でもないような顔だったような気がする…恐らく蘭は俺よりは気にしてなかったんだろうか

 

「部屋戻ろ」

 

 もう体も冷めたし暑くて寝れねえ!ってことにはならないだろう。

 

部屋と言ってもここで寝てくださいと言われた所だ。そこへ向かうと

 

「………………?」

 

 何故か布団が二つありました。

 

 なんで二つあるんだ?俺はそんなに寝相は悪くねーぞ?変な気でも使わせてしまったのかな?

 

 と、思っていたが

 

「あ、シン来たんだ。もう今日は疲れたし寝ようよ」

「……!?」

 

 な、なんで蘭がここにいるの!?

 

「?ここあたしの部屋だけど?」

「な、な、なんですとー!?」

 

 なんでいい歳の男女を同じ部屋で寝かせるかな!?もしもだよ!もしも事故が起きたりしたらどうなるの!?俺は責任…まあなったらそりゃ責任とるよ!けどほぼないにひとしいよな!?

 

「あたしこっちで寝るからシンこっちね」

「お、おう」

 

 蘭に布団を指定されそこの布団へと入る。枕からは柔軟剤の匂いなのだろうか?とても甘い香りがする。

 

「シンが使ってる枕はあたしのだから」

「……ッ!な、なにやってんだよ!」

 

 枕を蘭に投げつけそう言う。

 

「シンが喜ぶかなって」

「あーあー喜びましたよ喜びましたとも!」

 

 めちゃくちゃいい匂いでしたよ!今でも鮮明に覚えてるっての!

 

「どの道この枕もあたしが今使ってたから同じだと思うけど?」

「……じゃあもうそれでもいいよ!」

 

 匂いがついてるのならどっちも変わらねーだろ?もうなんでいいっすよ!

 

 その後は特に話すことも無くお互いが黙っていた。いや昼に結構話したしなーもう話すことが?ないって言うか…

 

「――……なあ蘭」

「――……んーなに?」

 

 なんで話さすこともねーくせに話しかけてんだよ!

 

「えっと、最近調子はどうだ?」

 

 さっき蘭の父さんから言われたことを思い出して聞く。

 

「最近も何もいつも通り、変わらない毎日だよ」

「……そっか」

 

 それはそれでいいんだよ、蘭がいつも通りって思えるならそれが一番だろ

 

「シンは?普通は見つかった?」

「……普通なー」

 

 未だに見つかってない。てか俺が本当に探そうとしてるのかすらもうわからないな…最近は正義の味方になるとか言っちゃって自分のことなんて考えることがなかったな

 

 とか言ってるけど!千聖先輩に夢を探せって言ったのはどこのどいつだっての!んなこといってねーで探せよ!競走してるんだろ!?

 

 暗い雰囲気に行くところをなんとか自分で阻止するシンであった。

 

「まあ目標は決まった」

「……目標?」

「ああ、普通になるための目標だよ」

 

 普通になるための目標かどうかは知らんが「正義の味方」になるっていう目標はあるからな

 

「そう、ならよかった」

「……ッ!」

 

 横を見ると蘭が昼間と同じような顔でこちらを見ていた。

 

「(やっぱり可愛すぎんだよ…!)」

 

 いいよな、蘭と付き合えるやつって…試しに言うか?

 

「蘭……俺と付き合ってくれ」

 

 ってな……んん!?

 

「……え?」

 

 や、やらかしたぁあ!!だからなんで俺はいつも心の中で思ってることを口に出すんだよ!心の中に閉まっとけっての!

 

「えっと、違うぞー蘭、その…な?」

「いいよ」

「……は?」

「だから、付き合うよって言ってるの」

「…………えー!!!」

 

 なんだろう!え!?まじかよ!蘭が?あの蘭が俺と付き合ってくれる!?てことは今日から恋人同士?俺もリア充?卒業できるってことですか!?

 

「ほ、本当か蘭!?」

「……本当だって」

 

 なんだろう!めっちゃ夢見たいだ!頬をつねる…!

 

 あれれ〜?痛くないぞ?もしかしてだけど……もしかして?

 

バサッ!

 

「………………」

「………………」

「……夢じゃねーか!!!!」

 

 クソう!本当に付き合えたと思ったのに!もう二度とあんな恥ずかしい思いはしたくねーな!

 

「……おはよぉシン」

「お、おう!おはようだ蘭!」

 

 あれって本当に夢だったのか?

 

「蘭、昨日の話覚えてるか?」

「……話?」

「ほら!寝る前に話しただろ?」

 

 寝る前に俺が間違って蘭に告白するような形になってさ!

 

「……なんか目標ができたって話?」

「そう!その後の話だよ!お、覚えてないか!?」

 

 これで蘭が覚えてるって言えばあれは夢じゃなくて俺の勘違い!夢だと思ったことは夢じゃなかったってことになる!

 

「え?シンその後すぐ寝たよ?」

「…………は?」

「あたしがその目標はなんなの?って聞いても返事しなくてそのまま寝てた」

「……あ、そーですか」

 

 ほらね!?やっぱり夢でしたよ!!ふん!いいよ!もう気になんてしませんから!

 

 てか

 

「(く、クソ、変な夢見たせいか…息子が、息子が…!)」

 

 いや引かないでくれよ!男なら自然現象だからしょうがないだろ!?みんなだって朝は元気ハツラツなんだよ!ら、蘭にバレなきゃも、問題はない!

 

 俺は体を横にして寝とく、こうすることでバレることは100%ないな!蘭が俺の布団に入ってこない限り

 

「そういえば昨日母さんからチョコ貰ってたんだよね、二人で食べなさいって」

「…………食べる?」

「え?あーうん、食うよ」

 

 食べるよ!食べるけど!今の俺は動けないんだよ!動いたらバレる!何がとは言わなくてももうわかるだろ!?息子でわかってくれ!

 

「す、すまん、お腹痛いから動けん、そこにチョコ置いといてくれ…!」

 

 俺はお腹を壊した設定でその話をする。頼むから妙なことで気になんなよな?

 

「…わかった。ここに置いとくね」

「お、おーう!た、助かるぜ蘭」

 

 あ、あっぶねー!!あと少しで動くところだったよ!手の届く位置の枕元に置いてくれたからこのまま食べられる!お菓子なんて滅多に食わねーからな!貰えるのなら貰って食べるっての!

 

 手を伸ばしチョコを取り包み紙を外して口に運ぶ

 

 甘い!めちゃくちゃ甘い!俺はチョコを食べる時は噛まずにずっと舐める派なんだ。だから少しの間チョコを舐めていた。

 

「……ん!?こ、これって!」

 

 舐めてる時にチョコの中から何か液体が出てきた。独特な味であまり感じたことない味覚

 

 俺は包み紙を見てから気づく

 

「ウイスキーボンボンじゃねーか!!」

 

 蘭のお母さん俺達が未成年って知ってますよね?なんでこんなの出したんだよ!まあ別に食っても大丈夫だけどさ!

 

「……おい蘭、このチョコ酒入ってるからあんまり食べ過ぎない方がいいぞ」

 

 一応蘭にそう言っておく。まあさすがにな?こんぐらいの量で酔うなんてアニメじゃあるまいし起きるわけねーよな?

 

「……うん」

 

 おけおけーこれでもう食べ過ぎることもないだろう

 

「――……ねえシンー」

「なんだ……よ!」

 

 蘭が急に俺の寝てる布団の上に乗ってきた。

や、やめてろ!俺は今元気ハツラツ状態なんだよ!

 

「は、離れ「ねえ」な、なに」

「シンは……どうしてそんなにカッコイイの?」

「……はっ!?」

 

 な、何言ってんだよ蘭のやつ!俺がか、カッコイイ?喜ばせてくれること言ってくれるじゃねーか!

 

 てか蘭さん!?

 

「蘭!お前酔ってるのか!?」

 

 蘭の顔を見てみると目はトロンとしている。これは完全に酔ってますねー

 

「ねえってば!」

「は、はい!」

 

 や、やめてくれ!それ以上下に行くと…

 

「なんでそんなにカッコイイの」

「……い、いやーそう言われても…」

 

 まじでなんて答えればいいんだよ!てか酔ってる人の相手するのも初めてだから分からねーっての!?

 

「……あたしシンのこと好き」

「……大好き」

「……シンのことが頭から離れないの」

「……あたしもうどうすればいいのかわかんないよ…」

 

 こ、これはかなりやばい!完全に酔って恥ずかしいことも普通に言ってやがる!てか体をそんなに押し付けないで!布団の中からでもわかるからね!?

 

「ら、蘭?嘘でもそんなことは言っちゃいけないぞー」

「嘘じゃないよ」

「い、いやー酔ってる人はみんなそう…!」

 

 みんなそう言うと言おうとした時

 

「…………んっ!?」

 

 蘭が俺の口を自分の口で塞ぐ、そう俺達二人はキスをしていたんだ。はっきり言うが俺はまだ誰ともキスなんかしたことないしそんな場面になったことなんて一度もない。

 

 つまりこのキスが俺のファーストキスってこと…

 

 それがまさかこんな形でなんて誰が想像することか…俺だってもっと夜景がキレな所でキスするもんだと思ってたさ

 

「……ふふ、チョコの味がする」

「お、お前な!お前な!俺のファーストキスが!」

 

 いや待てよ…こんな可愛い蘭がファーストキスってのは別に悪い気分ではないだろ?てかむしろ嬉しい…って何考えてんだよ!?ダメだろ俺!

 

「シンの反応可愛かったよ?」

「…………ッ!」

 

 く、クソー!可愛すぎんだろ反則かよ!

 

「ねえ、シン……エッチしない?」

「ブフッ!!な、何言ってんだよ蘭!?」

 

 頼むから目を覚ましてくれ!後で絶対後悔するやつだからな!?シン君知らないよ!?てか絶対しないから!エッチだけは両思いの人としたい人生なんだよ!

 

 キスもしたかったけどな!?

 

「とか言ってシン準備万端じゃん」

「あっ!ちょ、こらやめろ蘭!」

 

 ら、蘭のやつが俺の何かを触ってくる。まって!まじでヤバいですよこれは!?え?俺マジで今日卒業するの?こんな朝っぱらだよ?

 

「だからダメだって言ってるだろ!」

 

 自分の頬を自分で殴る。さっき自分で両思いの人としかやらないって言ってよな!?

 

「えーいいじゃん、あたしも初めてだし」

「蘭、まじでやめとけ」

 

 本当に後悔するぞ!

 

「シンはあたしのおっぱいとか見たくせに自分のは見せないの?」

「ぐっ!そ、それを言われたら何も言い返せない…!」

 

 だからって

 

「よし!エッチするぞ!」

「わーいやったー」

 

 イチャイチャ

 

 ってならねーから!?そんな展開期待すんなっての!

 

「だ、だめなものはだめだ!諦めろ蘭!」

「なんで!あたしはシンのこと好きなの!だから大丈夫なの!」

「いいから目を覚ませ蘭!自分の言ってることそうとうやべーからな!」

 

 言い合いになる二人だが上を取られてる俺は圧倒的に不利なんだよ!

 

「いいから脱いでよ!」

「や、やめろー!ズボンを脱がそうとするな!!」

 

 蘭にズボンを引っ張られ脱がされそうになっている。タダでさえ蘭の父さんのズボンでサイズがあってなくゆるゆるのズボンなのにさ!

 

「(や、やばい!これは脱がされる!)」

 

 本当にやばい!だ、誰か!誰か助けて!

 

「蘭ちゃーん、シンさーん、ご飯です……よ?」

 

 き、キター!ピンチの時に現れる正義のヒーロー!

 

 この状況を打破できるであろう人物蘭の母さんが現れたのだ。

 

「ちょ!た、助けてください!!」

 

 俺は必死で蘭の母さんに助けを求める。

 

「……わかりました」

「母さん!邪魔しない「てい」」

 

バタ

 

「これで大丈夫ですか?」

「あ、ありがとうございます」

 

 ていってやば!蘭のうなじら辺打っただけで気絶しちゃったよ?そんなド〇ゴンボールみたいなこと起きるの!?

 

「女の子とする時は自分がリードしたいですもんね、わかりますよ?」

「違うけど助かったからそう言っておきます」アハハ

 

 蘭の母さんは恐ろしい人だと今日わかりましたよ…

 

 その後は朝ごはんを食べた後俺は蘭の家を出ていった。なんでかって?蘭が目覚めた時俺がいたら可哀想だろ?だって…な?言わなくてもわかるだろ?

 

 てかさー!

 

「あー!!これで良かったんだよな!?これで良かったんだよね!?」

 

 おそらく人生の中でのピークだったのではないかと思うシンであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 その頃彼女はというと…

 

「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!」

「死にたい死にたい死にたい死にたい!!」

 

 一人自分の部屋で後悔をしてる蘭の姿があった。

 

「ねえ何してるの!?ねえ何やってるの!?あたし馬鹿なんじゃないの!?」

「告白して!どうすればいいかわからない?そんなの知らないよ!自分で考えるんでしょ!?」

 

 自分のやった行動をどうやら鮮明に覚えてるようだ。

 

「なにエッチしようって!あたし淫乱じゃん!性欲にまみれた人みたいじゃん!」

「それにき、キスまでするなんて!」

 

 無理矢理キスなんてしてあたし最低じゃん!

 

「そして最後はし、シンのシンの…!」

 

 そう、蘭はその時の手の感触まで覚えてるのだ。

 

「け、結構大きかっ……だからあたしは淫乱女かよ!?」

「あー!!!死にたい死にたい死にたい!」

「本っ当に死にたいよ…!」

 

 普段のクールな蘭の姿はない。ただただ自分が起こした誤ちを後悔するだけの姿だ。

 

「絶対シンに嫌われたよ…!」

「もーう!!!不幸だぁぁあああ!!!!」

 

 シンがよく言うセリフだが…本日は蘭のセリフだった。




今回の回はぶっ飛んでましたね!これから二人はどうなるのか…乞うご期待!

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それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンは沙綾だけの正義のヒーローなのか

タイトルの通り沙綾の話です。意外な方も登場します!

それではどうぞ!!


 また俺はプールでリハビリをしていたが…ただ本日はいつものプールじゃなかったのだ。普通に市民プールって金取られるだろ?それに人が沢山いるわリア充がいるわでな?一人でいる俺が悲しくなってきたよ…

 

 で、先生に相談したら病院のプールを使えばいいと言われたから使ってみる、いやだったら最初からそこ勧めとけよ!なんで市民プールなんかにしたんだよ!

 

 だけど俺は知らなかった。病院のプールがどれだけ地獄絵図なのかな…

 

「……よーし、本日のメニューも終了っと」

 

 誰もいないからこのプールは貸切状態、誰もいないしリア充もいない!なんていい空間なんだ!と、思っていた矢先

 

 ドアが開き大量の、そうだなー言い方が悪いかもしれないが

 

 ババア共が現れたんだよ

 

 もーな?なんで年寄りの体なんて見なきゃならんのだ!

 

 俺は急いで上がろうとするが…

 

 やれ若い人がいるの、若い人から若さを貰わないととかいって近づいてくる。あのごめんなさい!俺は熟女とかまったく興味がないので!だから近づかないで!!

 

「あークソ!!不幸だよな!!」

 

 走るなと言われているが逃げるために走る!が、そこまでもう痛くはない、そろそろリハビリも卒業するんじゃね?

 

 更衣室に入り急いで着替えプールを出て病院を後にする

 

「先生の勧めない理由がわかった。あれは無理だってな!」

 

 時は今に戻り道端で一人叫んでいた。周りから見れば俺は変人だと思われるだろう、だが安心しろ!俺は変態じゃねー!

 

 てか相変わらず暑いな!なんだ?雨上がりだからか?さっきまで結構降ってたからなーまあ俺はその時プールにいたんだけど

 

 そんな事を考えてたらあっという間に目的地についた。

 

「……こんちゃーおやっさん」

「おーう弦の兄貴!こないだブリだな!」

 

 そう、俺が向かっていた先はラーメン三郎、俺が知ってる中で一番美味しいラーメン屋だ。まあ知ってるラーメン屋が三郎しかないだけだけどな!

 

「で、頼んでたやつ…直ったか?」

 

 俺が三郎のおやっさんに頼んでたもの、それは壊れたスケートボードの修理だ。文化祭後は見事に動かなくなったからな!

 

 弦巻家に頼めば早く直ると思うがあいつらの力を借りようなんてもう思わねーしな、このスケボーだって俺の私物じゃなかったら使ってなかったし

 

「あったりめーよ!中身は凄かったけどな!よくあんなもの作れるもんだぜ!」

 

 まあ弦巻家が総力を上げて開発した世界に一つだけのターボエンジン付きのスケートボードだからな!

 

「待てよ?俺もそのスケボーの中身パクって開発局に売りに行けば…」

「あはは、やってみろ、その時はおやっさんの首はなくなると思っとけ」

「じょ、冗談だって弦の兄貴…」

 

 弦巻家だけは絶対敵に回すな!あいつらはまじでやべーから、てか世界に一つだけのスケボーの名前が霞むだろ!?俺の持ってるやつだけでいいっての

 

「修理代はラーメンでいいか?」

「おう!今一万円ラーメンを開発中なんだ!それ一杯で許してやるよ」

 

 いや一万って普通に払うのじゃダメなのか!?

 

「拒否権はない、毒味ならぬ味見だ」

 

 ドン!と音を立て俺の目の前に大きいラーメンが置かれた。

 

「く、クソーがー!!」

 

 割り箸を雑に割ってラーメンをすすり始める

 

 感想は美味かったが…一万だして食べようと俺は思わないな!いや美味いよ?美味いけど量が多いんだよなー

 

「ご、ごちそうさん」

「おう!感想はどうだ?」

「……俺にはわからん、巴にでも食べさせろ」

 

 一万円を置き三郎から出ようとする際にそう聞かれたため巴にでも食べさせろと俺は答えた。いや巴の方が味とかには詳しいんじゃないのか?

 

「巴ちゃんは最近来ないんだよー!」

「あー他の店に浮気してんじゃね?」

 

 浮気っていうかあいつは蒼汰と付き合ってるけどな!てか彼氏と来ればいいんじゃないのか?

 

「う、嘘だろ!巴ちゃんは三郎しか愛さないって言ってたんだぞ!!」

「し、知らねーよ!俺からも頼んでおくから!もう帰るからな!」

「ま、待ってくれ!弦の兄貴!」

 

 そんな声が聞こえたが無視して家に向かう

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 早速スケボー乗って帰ろうとしたが一応俺は怪我人、だから乗ることはやめ歩いて帰っていた。

 

「まっ、これもリハビリの一環だと思えばいっか」

 

 そうだこれもリハビリだ!なんなら毎日歩いてるからな!最高のリハビリだぜ

 

「ん?あれは……沙綾?」

 

 橋の向こうから沙綾らしき人物が誰かをおんぶしながら走っている、その顔はとても焦っているような顔で真剣な表情になっていた。

 

 そんなこと気にもせず俺は普通に話しかけてしまった。

 

「おーす沙綾!なんだ?お前もリハビリか?」

 

 話しかけるが

 

「シン!」

「……え?」

 

 沙綾がそのまま俺に抱きついてきたんだ。何がどうなってこうなったかなんてわからない…沙綾は息を荒らげて俺にこう言った。

 

「純が…!弟が…!川に落ちたの!」

「……ッ!?ほ、本当かそれは!」

 

 か、川に落ちただと!?

 

「橋の手すりの上を歩いてて危ないから降りてきなって」

「言おうとした時に落ちちゃって…!」

「私!私はなんてことを…!」

 

 嘘だろ…!さっきまで雨が降ってたんだぞ!?川の水量は上がり流れも早くなっている!沙綾の弟が何歳かとかわからないが子供でも大人でも今の川がきつい状況には変わらない

 

「……わかった、俺が何とかする。沙綾は正義の味方を言い張ってる警察にでも連絡しとけ」

「で、でもどうやって…!」

「俺にはこれがあんだよ」

 

 またこいつの力を借りる日が来たようだ。こんな物にしか頼れない俺だけど…それでも沙綾の弟を助けれるのなら利用するまでだ!

 

「沙綾!荷物は預けた!あっちの方に流れたんだよな!」

「え!うん、でもシン!足は」

「大丈夫だってこのぐらい!だから沙綾!」

 

 今の沙綾には自分がしたこと、その事の後悔、そして弟が助かるかわからないこの状況…そんな複雑な事情が重なってる中でこんなことを言うのはあれだけど

 

「笑え沙綾!お前は笑顔が似合う可愛いやつだ!なーに弟は俺が絶対助けてやるよ!」

 

 安心しろ、弟は絶対助ける!

 

「――……はい」

 

 沙綾は泣きそうな顔を無理矢理笑顔に変える

 うん、やっぱり沙綾は笑顔が似合ってる

 

「よーしゃ!いっちょかますぜ!」

 

 気合い込めてそう言い足元のボタンを踏む、踏むと懐かしい機械音が聞こえだし身体が勝手に前え進み出した。

 

 修理したためなのか前回乗った時よりも早く走れてる…って前回はおたえがいたな!そりゃ俺一人分だとそう感じるよな!

 

 今は川沿いの道が補整されて走りやすい所を走っているため地面の石に突っかかるようなことは起きない

 今の状況を確認するため隣を見ると沙綾の弟らしき少年が川を流れていた。

 

「あれか!でもここからじゃ川に入れない!」

 

 川に落ちないように柵が付けられるため川に入れない!

 

「!あれだ!あの橋の上からなら行ける!」

 

 少し先に橋があるためその上から飛び降りれば川に入れる!

 

 だから俺は一気に加速して橋を目指す。途中で犬の散歩をしている人達がいたが綺麗に避け、前え進む。

 

「よし!このまま行けば!」

 

 その時だ

 

カンカンカンカンカンカン

 

「……タイミング悪すぎだろ!!」

 

 電車の踏切が目の前にあったがちょうど電車が来るようだ。この道をまっすぐ行けば橋についてすぐに行けたのに!!

 

「あーくそ!まったくついてねーな!?」

 

 俺は右に曲がり歩道橋を目指す。たまたま歩道橋がスロープ付きだったため一気に駆け上がるが

 

「なんで降りるところについてないんだよ!!」

 

 階段から飛び出し俺はあの文化祭の時と同じ状況になっていた。体は中を浮きジェットコースターのフワッと感覚が俺を襲う。

 

「……ここでくたばるわけにはいかねーんだよ!!」

 

 俺は体制を整え、見事に着地することが出来た。

 

ズキッ!

 

「……ッ!ま、まあ人がいなかったからよかった!」

 

 怪我をしている足が少し痛くなった。なーに少し痛くなっただけだ。大丈夫だっての!

 

「……クソ!次は赤信号かよ!」

 

 そこさえ渡れればもう橋があるのに…!待ってなんかいれられない!その橋が無理なら隣の橋に行くまでだ!

 

 だが…隣の橋を行く最短ルートは商店街を通らなければならない…!このスケボーで行けるのか!そもそもスケボーで通ってもいいのか?

 

「……ッ!考えるな弦巻シン!沙綾の弟を助けることが優先だろ!」

 

 後で警察に捕まろうがなんだろうがどうでもいい!俺は沙綾の笑顔を守りたい!そして…

 

「みんなまとめてハッピーエンドを迎えんだよ!」

 

 商店街の中にスケボーのまま入る

 

 案の定人は沢山いる、そのため

 

「すみませんー!通りまーす!!」

 

 俺は大声でそう言うと商店街を歩いている人達は道を開けてくれる、いや本当に申し訳ない!後で偉い人にでも謝るから許してくれ!

 

 何人も避けあと少しで商店街を抜けれる!そんな時だ

 

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!羊毛フェルトで猫作ってよ!」

「わ、わかったから走らないでよー」

 

 俺の目前に少女が現れたんだ。

 

「……ッ!危ない!」

「……え?」

 

 俺は急いで体を横に逸らして…八百屋の店に突っ込んでしまった。

 

 八百屋は俺が突っ込んだことで中はめちゃくちゃ、野菜なんて折れて汚れてもう売れるようなレベルじゃなくなってしまった…

 

「(俺の…!俺が選択を間違えたから!)」

「クソー!!」

 

 俺は地面は殴っていた。

 

 何が正義の味方だ!一人のことに夢中になって周りなんて全く見れてなかった!

 

 商店街の中通ればこうなることぐらい目に見えてただろ!

 

「おいてめぇ!何してんじゃ!俺の店が!野菜が!台無しじゃーねか!」

「…………ッ!」

 

 八百屋のおやじさんが俺の胸ぐらを掴みそう言う

 

 だってしょうがないだろ?俺は正義の味方になる以前に最低な行為をしてしまったのだからな

 

「すみません…全部買います」

「あったりめえだ!あいにく店自体には傷ついてねーが野菜はもうめちゃくちゃだ!」

「本当に…すみません…!」

 

 ああ、今頃何もなかったら間に合って沙綾の弟は助かってたんだろうな

 

「(本当、不幸だな、俺って)」

 

 もう諦めかけていた。この状況から抜け出すことなんてできやしない

 

「シン!立って…!立ってよ私の正義のヒーロー!!!」

 

 昔沙綾が俺に言った言葉を思い出す。沙綾自信特に意味はないと言っていたが…今だけは意味がなくても信じてみたいと思った…!

 

「……おやじさん!この件は本当にすみません…!でも俺は助けないといけないんです!」

「……助ける?」

「俺の友達の弟が川に落ちたです…俺は助けるって約束をした!だから俺は行かないといけない!」

 

 俺はその場に座り

 

「お願いします!俺に、俺に約束を果たすために時間をください!」

 

 土下座をしていた。プライドなんてものはもうない、今は今は沙綾の弟だけを助ける!

 

「俺は、今だけは沙綾だけの正義の味方だ!」

 

 そう、今だけだ。俺はみんなの正義の味方になりたいが今だけは沙綾だけの正義の味方だ。

 

「おやじー何かあったのか?」

「あ、ああ、このガキが突っ込んできて店がめちゃくちゃなんだよ」

 

 あれ?こいつって…

 

「あ?あー花園の彼氏じゃーねか、あんたが店をめちゃくちゃしたのか?」

「……お、お前は!」

 

 おたえが修行していたバンドのドラム担当だったやつだな?名前は知らんが…一応顔見知りの家だったなんて

 

「あたしはますき、みんなはマスキングって呼んでるな」

「ま、マスキング?」

 

 なんでそんな名前なんだ…ってそれより!

 

「すまん!ますき!お前に頼みがある!」

「……なんだ?」

「この件は必ず責任を取る…!だから今だけは見逃してくれ!後で戻ってくるから!……頼む!」

 

 次はますきに土下座をする。ったく正義の味方が聞いて呆れるな、土下座ばっかりしすぎじゃないか?

 

「……おやじ、今回は見逃してやってくれ」

「な、なんでだ!?」

「男の土下座を見てまで譲らないあたしじゃねーよ」

「ほら行け、花園の彼氏なんだろ?」

「……ますき!後で必ず戻ってくる!」

 

 おたえの彼氏ではないが今は否定してる時間なんてない!

 

「……これ俺の携帯と財布!ここに置いとくから!絶対戻ってくるから!」

 

 俺は今持っている中で一番高いであろう携帯とお金がそんなに入ってない財布を置いて八百屋から出ていく。

 

「おいこれどーゆう意味だ?」

「その携帯は千聖先輩のサイン入り携帯!世界に一つだけのものだ!」

「そんなの置いてたら嫌でも戻ってくるっての!」

 

「あいつ…可愛い携帯使ってんな」

 

 マスキングはシンが置いていった携帯を見てそう言った。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 商店街から抜け出してスケボーに乗り出す。はっきり言ってもうスケボー乗ることは恐怖にすら感じてきている。が、そんなことはどうでもいいんだよ!

 

「頼む…!間に合ってくれ!!」

 

 階段がない橋のためそのまま橋の上をスケボーで走り真ん中に着く

 

「どこだ……いたぁー!!」

 

 向こうから流れてくる少年の姿がある

 

「…………ッ!」

 

 橋の上から川までには結構な高さがあった。あったけど…もう戸惑っている時間なんてない!

 

「行くしかねえ!!」

 

 川から飛び下り

 

バッシャーン!

 

 川の中に入る。流れが強くて俺ですら流されそうになるが奇跡的に近くにあった岩にしがみつき流れに逆らう

 

「……おい!手を出せ!早く!」

 

 ちょうどよく少年が流れてきたが溺れないようにするのが必死のようだ。

 

 俺は自分で少年の手を取り川から出ようとする

 

 綺麗に流されながら川から出ることが成功した俺達は息を切らしていた。

 

「お、おい…!大丈夫か?」

「はあはあ、ありが、とう…お兄さん」

 

 話では長く感じるがそこまで時間は経ってない。本当5分あるかないかぐらいだよ、けど…

 

「助かってよかったー!」

 

 俺はその場で寝っ転がりそう叫ぶ。いや本当によかった!助けられなかったらどうなってたか…

 

「――……純!シン!」

 

 沙綾が俺の名前と弟の名前を呼ぶ

 

「純!無事でよかった…!本当に、本当に心配したんだから!」

「ご、ごめんなさいお姉ちゃん」

 

 沙綾の弟純は泣きながら沙綾に抱きついていた。そりゃ怖かっただろうな…俺たちからしたら数分かもしれないが本人にとっては長い時間だったはずだ。

 

「……シンも無事でよかった」

「……おいおい沙綾さん?俺びしょ濡れだから服濡れるぞ?」

「それでも大丈夫、今はこうしたいの」

「…………ッ!?」

 

 そう、沙綾は俺に抱きついていたんだ。濡れてるから濡れるぞって言っても離れない、まったくいいご褒美じゃねーか

 

「……沙綾、俺はお前の正義の味方になれたか?」

「……うん、シンはあたしの…正義のヒーローだったよ」

「ヒーローかー味方とは違うのか?」

「どうだろう、私はヒーローの方が好きかな?」

 

 なんすかそれは…

 

「だったら今回だけはヒーローってことにしといてやる」

「…うん、ありがとう」

 

 あれ?なんかいい雰囲気になってるけど俺なんか忘れてねえ?えっと…

 

「あああー!!忘れてた!!」

「ど、どうしたのシン!?」

 

 沙綾は急いで俺から離れてその場に立つ

 

 そうだ!忘れてた!八百屋に戻らないと!

 

「さ、沙綾!すまん!俺用事があるんだ!」

「え!?でもまだお礼とか何もしてないよ?」

「あーそんなの今度でもいいしお礼なんて別にいいから!」

 

 じゃあな!といい橋の上に戻りスケボーを取りに戻るが…

 

「……ない!ないぞ!俺のスケボーがない!」

 

 そう、俺のスケボーがどこにもなかったのだ。

 

 あれれ?もしかして

 

「ぬ、盗まれたのか!?」

 

 あの世界に一つしかない俺のターボエンジン付きのスケボーが盗まれたのか!?

 

「このクソがぁああ!!」

「やっぱり俺は不幸じゃねーかぁぁああ!!」

 

 スケボーを盗まれたことにより少し痛めた足を抑えながら八百屋に戻り掃除の手伝いをしていのであった。




書くのが難しかった…自分もまだまだですね、もっと勉強する必要があります。

途中で出てきた妹さんは誰の妹なのかな?

次回は沙綾視点…さあ、どうなるかな?

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと山吹沙綾

書くの大変だった…先に言っときます。ごめんなさい?

それではどうぞ!!


 彼の印象、そんなのは傍から見て普通の人だと私は思わなかった。なんでそう思ったのか…やっぱりこころの影響かなー

 

 彼は…シンはこころと姉弟の双子で弟なの、こころとは中学の頃からお互いバンド活動をしていたためよく話すようになりいつしか友達になっていた。

 

 何度か屋敷にも行ったことがあるけどシンの姿なんて一度も見たことがない、自分から話しかけようとしても何かと先生に呼び出されていた話す機会がなかったけ?

 

 そんな時宿泊研修でバスの席で隣がシンだった。シンはその時私に話しかけてきてそこから…うん、私達は友達になったんだ。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「お姉ちゃんー紗南足疲れたぁー」

「もーう、しょうがないなーおんぶしてあげるから乗ってね?」

「わーい!やったー!」

 

 私は弟の純と妹の紗南を迎えに行っていたの、迎えっていうのは純と紗南が通う小学校では夏休みに何度かクラスのみんなとプールに行くらしいの、担任がつくから大丈夫どのことだけどやっぱり迎えは必要になる

 

 お父さんとお母さんは店があるから迎えに行けない、だから私が迎えに行くけど…

 

「(お母さん……無茶してないといいんだけど)」

 

 前にお母さんが倒れてたことがあった…その時私は自分を責めたけどみんなが、ポピパのみんなが私を支えてくれた。だから私にとってポピパは最高のバンド、そして最高の友達…

 

「紗南は甘えん坊だなー俺を見習えよ」

「純くんは泳げなくてプールで遊んでないから疲れてないんだよー」

「う、うるせぇ!う〇こ!」

「こらぁー!そんな下品な言葉使わないの!」

 

 この年頃になるとそんな言葉ばかり言うようになるんだから…前に香澄達の前でも言ってた時は私も驚いたよ

 

「ふん!泳げなくても別に死なないし!友達のシンジくんだって泳げないっての!」

 

 純が言ってるシンジくんっての純の友達らしい。何かとよく家ではシンジくんの話を聞く、今日はシンジくんとこんな遊びした!とかシンジくんってカッコイイだぜ!とかね

 

「シンジくんカッコイイからね!私がお嫁さんになるの!」

「お?紗南ーもう旦那さん見つけたの?」

 

 こんな歳で旦那さんって…紗南も成長したなー

 

「うん!それにシンジくんの家ってね!すんごいお金持ちなの!」

「だからね!結婚したらお母さんお父さんお姉ちゃんに恩返ししたいの!」

「………………」

「……お姉ちゃん?」

 

 お金持ち…ね

 

 私の友達…シンは弦巻家って言う超がつくほどの大金持ち、そんな彼は自分のその状況を嫌い今は一人で生きようと必死だ。

 

「(やっぱりシンは凄いなー)」

 

 私達ができないようなことをやろうと挑戦する。シンって本当に凄いよ

 

「……紗南?」

「ん?なに?お姉ちゃん!」

 

 わかってると思うけど念のために言っておく

 

「紗南?人は金で選んじゃダメだよ?ちゃんと中身を見て選ばないと」

「?何言ってるのお姉ちゃん?」

「……あっはは、紗南にはまだ早かったかな?」

 

 そうだよね、まだわからないよね

 

 でも……私はちゃんとわかってるよ、中身を見てちゃんと人を選んでいるよ

 

「(私は……シンに好意を持っている)」

 

 そう、私はシンに好意を持っているの…多分この好意っていうのが好きって証拠だと思う。

 

 って好意と好きって意味は同じだと思うけどね

 

 でも…シンは私の好意をどう受け取ってくれるんだろうか…

 

 もし私が告白したらどうなる?

 

「は?どうせ金目的だろ?……そんなやつとは思わなかったな」

「待ってシン!違うの!違うから!!」

 

「――……私のことを嫌いにならないでよ!!」

 

 ってなるのかな…想像、したくないな…

 

 シン自信、自分の家が金持ちのせいで虐められたって言ってたし、こんな勘違いされても仕方がないことだと思うけど…

 

 今のシンを見ていてそうは思わない…かな?でもだからと言って告白するわけじゃないけどね

 

 だってシンだよ?最初はクラスの女子から嫌われてたけど今では普通に仲良く接している。誰か一人は私と同じように好意を持ってる人だっていると思う。

 

 それに…香澄やおたえ、他のバンドのメンバーとも仲がいい。シンが他の女子と話している時に思ってしまう

 

「…この気持ちはなんだろう」

 

 って…だって、だって私が最初なのに!初めてなのに!シンの高校生活始まって一番最初に出来た友達は私なのに!なんで私以外の人と話す時に…

 

「…どうしてそんな笑顔になるの?」

 

 あれ?私どうしたんだろう、こんなこと考えてさ…こんなのシンに知られたら嫌われちゃうよね

 

 でも…シンは私の、私だけの正義のヒーローになって欲しい。みんなとかじゃなくて自分だけのに…ね?

 

 あはは、私って独占欲が強いのかな?そんな私でも…

 

「弦巻シン君、あなたは許してくれますか?」

 

 そんなことを考えてる時点で私は汚い人だなと思ってしまう。思ってしまうなら考えるなって思うけど…やっぱりシンのことを考えちゃうね

 

「……だって好きなんだもん」

 

 ひまりごめんね?私はやっぱりシンのことが好きだからひまりとは仲間じゃないよ、私は私のやり方でシンを

 

「私だけの正義のヒーローにするから」

 

 と、言っても今まで言ったのは全部冗談、シンのことは好きだけどそんな、ね?私だけ抜けがけするようなこと

 

「……するわけないじゃん」

 

 みんなのシン、平等のシン、私だけが…なんてことシンが許さないでしょ、きっとね

 

「お姉ちゃん!俺泳げなくても足は早いんだぜ!」

「おー?だったらお姉ちゃんとかけっこする?」

 

 ダメダメ私!今は純と紗南といるんだから!シンのことは今考えなくていいの!

 

「…………お姉ちゃんおっそーい!!」

「こ、こっちは紗南おぶってるんだよ?」

 

 息が切れて肩が揺れる、紗南がいるためまったく走れなかったけど普通に純は足が早かった。

 

「……よっと、ほら!お姉ちゃん!俺今姉ちゃんより背が高いよ!」

 

 純は橋の手すりの上に乗り手を振っていた。

 

「純!危ないから降り「……うわっ!」純!」

 

 私が注意をする前に純は川に落ちてしまった。

 

「お、お姉ちゃん!純くんが!純くんが!」

「わ、わかってる!ちょっと走るけどいい!?」

「う、うん!」

 

 わたしは下に降りるために橋を駆け抜ける。早くしないと純が!私のせいで!私がシンのことを考えてるせいで…!

 

 そんな時前に彼が現れたんだ。

 

「おーす沙綾!なんだ?お前もリハビリか?」

 

 そう、シンが目の前にいたの

 

 私はシンに会った瞬間彼に抱きつき事情を話した。

 

 結局私はシンに頼ってしまったの、シンに頼めばなんとかなる…それと

 

 私の正義のヒーローなら大丈夫って…

 

 案の定シンは私に荷物を預け純をおうためスケボーに乗り走り出す。

 

 私達はシンが純を助けてくれると見込んで川沿いの道を走る。紗南をおんぶしたままで走りにくいけどそんなの関係なしに今だせる速さで走る

 

 私が色んな不安で複雑な表情をしてる時にシンは私に笑顔でいろと言ってきた。本当、そうゆうところだよ?そうゆうところに私は惚れたんだからね

 

「……お姉ちゃんこっちこっち!」

「あーはいはい、危ないから離れないでねー」

「はーい!」

 

 あれは…同じクラスの奥沢さん?奥沢さんって妹いたんだー

 

「い、今は純とシンを追いかけないと!」

 

 私達は急いで後を追いかけ無事に合流することができた。

 

 その前に橋の上に誰かいたけど…あの人は誰なんだろう?なんかしたを眺めて何してたんだろう?

 

 そんなことは無視して私は急いで下に降りる…純とシンは二人して地面に倒れていて私は急いで二人に近寄るけど

 

「助かってよかったー!」

 

 と、シンが大声で言い出し二人とも無事なんだってそこで確信したよ

 

「純!無事でよかった…!本当に、本当に心配したんだから!」

 

 私は純に抱きつきそう言う。だって本当に無事でよかったんだもん、もし純が亡くなるなんて考えたくもなかったから…今度からはちゃんと私がしっかり面倒みないといけないって改めて思ったよ

 

 次に私は

 

「……シンも無事でよかった」

 

 シンに抱きついていた。あはは、私って大胆だなーって思ったけど…純が亡くなると嫌だと思うぐらいシンが亡くなるなんて考えたくもない。

 

 それにもし亡くなったりしたら私のせいになっちゃうからね…そんなの嫌だよ

 

 それに…やっぱり思った。

 

「(シンは私の正義のヒーローだ…)」

 

 ってね

 

 シンが自分は沙綾の正義の味方になれたか?と聞いてくるもんだから私は

 

「……うん、シンはあたしの…正義のヒーローだったよ」

 

 味方ではなくヒーロー、別に意味なんてないけど私はヒーローの方がなんか、ね?好きかな

 

 どんなことも解決してくれる正義のヒーローなんてこの世にはいない…と思うけど私にはちゃんとシンがいる

 

 シンが一体何を考えてこんなに私達の問題に顔を出して解決さえてくれるのか、なんでお節介を焼いてくれるのか、そんなのはわからない、わからないけど…さ?

 

 

 

 

 

「弦巻シン君……あなたは私の」

 

 

 

 

 

「私だけの正義のヒーローになってくれますか?」




このヒロイン視点書くのクソ大変なんですよーまあ自分に文章力がないだけなんですけどね!

さあ残るヒロインは彼女一人!また書くのかー頑張ります!

ではまた次回でお会いしましょう!


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弦巻シンは海に行くそうです

どうもーGW最終日ですね、また明日からいつも通りの生活が始まる!!

それと投票者数が60超えました!!あと少しで赤バーになれる!頑張ります!

それではどうぞ!!



 あの日からどれぐらいたっただろうか、夏休みなもんで曜日感覚は狂い日付感覚も狂ってる、そのせいで何日経ったとか覚えてない

 

 がとりあえず足はの怪我は完全に完治しました!いやーあの時痛めたから悪化したか?って思ったが全然大丈夫でしたよ!なに!?どゆことなんや!?

 

 まあそれは置いといて治ったらな別にいいさ

 

 そして現在俺は…

 

「弦の兄貴!こっちは片付いたぞ!そっちはどーだ?」

「こっ……ちも!今ちょうど終わった」

 

 重い荷物を持ち上げ店の真ん中に運ぶ

 

 俺は今はこないだめちゃくちゃにした八百屋、佐藤八百屋内の掃除と商品の運びを手伝っていた。

 

「助かったおやっさん、まさか手伝ってくれるとはな」

「なーに、同じ商店街の店がピンチの時は助ける、当然のことだろ?」

 

 お、おやっさんー!!あんためちゃくちゃカッコイイじゃねーか!なんでこの人結婚してないのかな!?

 

「でもまさかお前が山ちゃんの息子助けるとはな!驚いたぜ!がっはは!」

「い、痛い痛い!佐藤さんやめてくださいよ!」

 

 俺の事を笑いながら叩くのはこの八百屋さんのおやじさんだ、まあ三郎のおやっさんみたく仲がいい訳では無いので佐藤さんと読んでるがな!

 

 そして山ちゃんというのは山吹ベーカリーの店主さんのこと、つまり沙綾のお父さんてことだな

 

「今じゃみんなから商店街の英雄(・・・・・・)なんて言われてるからな!」

「や、やめてくださいよ!?」

 

 そう、俺は山吹ベーカリーの息子を助けたってことを商店街のみんなから知られていたんだ。そのせいで俺は英雄なんて呼ばれているが…

 

 いざ呼ばれてみると恥ずかしいよな!?

 

 でもまあーうん、正義の味方みたいなことは出来てるんじゃないか?

 

「今回の件は水に流してやる!変わり野菜を買う時はうちを使えよな!」

「ま、マジですか!?あ、ありがとうございます!」

 

 本当にそれは助かる!!ただでさえおやっさんの1万ラーメンのせいで金が消えてったんだからな!

 

 あと最近全くバイトしてないから心配なんだよ!

 

「俺のラーメンもいつでも食べに来ていいからな!」

「いや、それは大丈夫、今月はもうぜってえ行かねーから!」

「んな冷たいこと言うなよ弦の兄貴!」

 

 いい歳したおっさん達と俺は八百屋の前にてみんなで高笑い状態。こうゆう歳が離れた人達とこんなふうに話せることが普通って言うのだろうか?

 

 まあ楽しいからいいんだよ!

 

「……じゃあ俺はそろそろ帰りますね」

「おう!今度来いよな!」

「はい!」

 

 俺は八百屋をあとにして次の目的地に向かう。目的地と言っても同じ商店街の店で友達の親が経営している喫茶店、そう

 

「……羽沢珈琲店」

 

 今日は仲良し5人集団から呼び出しをくらったんだ。なんでかって?知らんな、とりあえずひまりから集合!ってメッセージが来たから向かっただけ

 

「いらっしゃいませ!あ!シンさん!」

「お、おう若宮さん…いらっしゃいました?」

 

 羽沢珈琲店に入って俺を出迎えてくれたのは若宮イヴことパスパレキーボード担当のアイドルだ。

 

 パスパレの中で唯一…いや嘘ついた。まだ大和麻弥先輩とは絡んだことがなかった、てか話したこともないしリアルで見たこともない…かも?

 

「…………?」

 

 若宮さんは今首を傾げて俺を見ている。

 

 それよりこの若宮さんはな?俺が入学した当初の…覚えてるだろうか、俺の高校生活の出だしをめちゃくちゃにしたあの事件を

 

 俺は女子風呂をぞくに言う覗きをしたって扱いになってしまったんだ。実際は違うんだがまあもういいだろう、俺だってもう忘れたいことなんだよ!?

 

 その時棺桶で岩を破壊したのがこの人若宮さんなんだよ!

 

「シンさん!私前から思ってたんです!」

「な、なんですか!?」

 

 若宮さんは俺の手を取りこう言った。

 

「私を弟子にしてください!!」

「…………は?」

 

 俺がは?と言った瞬間

 

ガン!

 

「ら、蘭ちゃんどうしたの!?」

「な、なんでもない」

 

 奥側の席にいる仲良し5人集団の1人が飲み物を倒したようだ。

 

「シンさんの文化祭!そして球技大会!シンさんはブシドーの塊です!」

「ぶ、ブシドー?」

 

 よくテレビでブシドーって連呼してるのは知ってたがあれはキャラ付けだと思ってたが違うのか!

 

「それにシンさんとは裸を見せた仲です!」

「そ、そそそそれは違うぞ!?俺は若宮さんの裸見てないからな!?」

 

 あれ?俺って本当に若宮さんの裸見たっけ!?まったく覚えてないんですか!?

 

ドン!

 

「おいモカどうした?」

「いやいやー器が重くてちょっとね〜モカちゃん非力だから〜」

 

 どうやら5人集団のモカってやつが食べてたパスタを駆け込んだ後に器が重いといいだし置く際に音が出たようだ。

 

「わ、わかった!弟子にする話はまた今度な!今日はもういいか?友達を待たせてるんだ」

 

 さっきからひまりの視線がキツイんですが…だから早く俺はあそこに行かせてくれ!!

 

「はい!いい返事を期待しときます!」

 

 ふぅ、なんとか分かってくれたようだ…てか弟子ってなんだよ!何教えればいいんだよ!?

 

「よ、よう!待たせたな!」

 

 俺はひまり達と合流するが…

 

「アイドルと話せて嬉しかったのかな?」

「いやーそうだな!ってなるか!」

 

 アイドルとは普通に話せてるので!ってこんなこと言ったら怒られるよな

 

「もーうシン君遅いよ〜モカちゃん食べ終えたから食べさせっこできないよ〜?」

「いや別にしねーから」

「またまた〜本当は嬉しいくせに〜」

「…………お前を食うぞ?」

 

 俺は冗談で言うが

 

「いいよーシン君ならモカちゃん食われても全然大丈夫でーす」

「じょ、冗談っての!んなことしないから!?」

 

 いつもしてやられるんだよなーそろそろモカに勝ちたい頃だぞ?

 

ブー

 

「(ん?メッセージだ)」

 

 相手は今目の前にいる蘭だった。

 

「(表出て)」

 

 ん!?こ、怖!もっと別の言い方あるだろ!

 

 てか絶対こないだのことだよな…あのファーストキス事件、俺は鮮明に覚えているがあっちは果たして覚えているのか?てか覚えてたら気まずくないか?

 

 よし、もしもの時はあの作戦を実行しよう

 

「……ごめん父さんから電話」

「ん?珍しいね、もう仲直りしたんだよね?」

 

 つぐみが不安げに聞くが…恐らく嘘だろうな

 

「うん、けど時々華道の話で電話掛けてくるの」

「へー蘭も忙しいな!」

「……でも、嫌いじゃないよ」

 

 やけに落ち着いてるな…やっぱり覚えてないんじゃね?

 

「すまん、俺も電話だ」

 

 俺も蘭と同じ作戦で行く、席を立ち蘭の後について行こうとするが…

 

「シン君は嘘だね〜」

「…………なんで?」

 

 このモカが気づきやがった、一体なんでそんなのがわかるんだよ!?

 

 だがな、既に手は取ってある!

 

ブーブーブー

 

「……何が嘘って?」

「むぅ〜外れちゃった〜」

 

 モカ達に背中を見せ店を後にする。

 

「……助かった蘭、お前が電話掛けなかったら抜け出せれなかった」

「別に、抜けれなかったら話せないし」

 

 予め蘭に電話かけるよう伝えてたんだよなー!メッセージでな!

 

「えっと、そのこないだの件なんだけど…覚えてる?」

「………………」

 

 こいつめっちゃ冷静だな…やっぱり覚えてないんだろう!

 

「こないだ?あー俺はその日寝ぼけてて覚えてないな、何かあったのか?」

「……それほんと?」

 

 お、おい!そのめっちゃ睨むような感じで言うなよ!怖ーよ!

 

「まったく覚えてねーな、実は俺その日具合悪くてな、帰った後熱があったんだよ、そりゃー何も覚えてねーよな?」

 

 嘘を並べて言う…だってこの道しか俺が生還できるルートはないのだから!

 

「ふぅ…よかった、何も覚えてなくて」

 

 ごめん、めちゃくちゃ覚えてます

 

「もういいよ、早く戻らないとモカ達から色々言われるしね」

「……おーす」

 

 蘭は一人で中に入り席に戻って行った。

 

「(……思い出させるんじゃねーよ!!)」

 

 俺は一人心の中でそう思っていた。

 

 だってファーストキスだぞ!?そんなの嫌でも忘れられねーっての!

 

 でもあの時の蘭めっちゃ可愛かったな…普段からあれだと、いや、あの状態だとまずいよな?

 

 俺は赤くなった顔が治まるまで外で待ち

 

「……ただいまー」

 

 席に戻ったんだ。

 

「おかえり〜お風呂にする〜?ご飯にする〜?それともモカちゃんにする〜?」

「お前はまた何わけわからんことを言うんだ!」

 

 それは将来の奥さんから言われるセリフだろ!?

 

「あはは、相変わらずモカちゃんとシン君は仲いいんだね」

「わかってるねつぐーシン君とモカちゃんは将来結婚するのだ〜」

「あーはいはい、勝手にほざいてろ」

 

 なんかいつも蘭が突っかかってきてたけど今日は来ねーな、なんだ?まあいっか

 

「アタシはそうだなー蒼汰と結婚するのか?」

「知らねーよ!んなこと二人で考えとけ!」

 

 そのまま二人が何事もなかったら結婚するんじゃないんですか!?

 

「みんな!話を忘れてるよ!」

 

 ひまりがそう言いみんながひまりの方を向く

 

「あー本当に行くのか?アタシはいいけどみんなが…な?」

「ひまり、巴、何の話だ?」

「ふっふっふ!よくぞ聞いてくれシン君よ!」

 

 な、なんだこいつ

 

「夏休み!つまりみんなで海に行くんだよ!」

 

 ババアーン、と字幕が見えた気がする

 

「あたしはパス、暑いし日焼け痛いしやめとく」

「モカちゃんも暑いのかキツイかな〜」

「わ、私はいいよ!」

 

 ひまりと巴以外のメンツがそれぞれの意見を言う。蘭とモカは行きたくないようだ。

 

「なんでよ!海はお母さんだよ!盆は里帰りして親に顔見せるのと同じで海に行くの!」

「……どんな理論だよそれは」

 

 里帰りなー夏休み屋敷に顔出してみるか…

 

「で!シン君どう?海!行かない!?」

 

 お、おい!顔を近づけるな!ったく可愛いやつだなおい!?

 

「海かー海なー」

 

 この夏はリハビリでプールばかりだったしな

 

「いいぞ、行くよ」

『!?』

 

 それに海なんてもう何年もいってないしな!

 

「……やっぱりあたしも行く」

「夏休なのに海行かないとか勿体ないしね」

 

 そ、そうか!蘭は行く気になってくれたのか!

 

「モカちゃんも行く〜」

「よくよく考えれば海の中入れば涼しいしね〜」

 

 も、モカ!お前も行く気になってくれたのか!

 

「てことはみんな参加ってことだね!」

「よかったー!シン君誘えば蘭とモカは絶対来ると思ってたんだよね!」

 

 は?それはどゆこと?

 

「ひまり、その話詳しく」

「モカちゃんも聞きたいなー」

 

 いや意味がわからん

 

「ひまりのやつやらかしたな…」

「……巴、どゆことなんだ?」

 

 まじで意味がわからん!俺が来たら蘭とモカが来る?あれか?仲良いからとかそんなんか?いやーそれは嬉しいな!

 

「まあ、そーゆうことだな」

 

 だからさ!?勝手に人の心除くなっての!?

 

 ひまりはひまりで蘭とモカから質問攻めされて焦ってるし…

 

「なあ!蒼汰も誘っていいか!」

「あーいいんじゃね?俺も男いねーとキツイ」

 

 だって俺以外女子だぞ!?そんなの無理です!蒼汰がいるなら何とかなるからな!

 

 そして次は巴が電話をかけ始めて…

 

「……俺達おいてけぼりだな」

「……あはは、そうだね」

 

 つぐみと俺だけは何もせずに置いてけぼり状態だ。

 

「なーみんななんか好きな人いてな?羨ましいよな」

「え!?そ、そうだね」

 

 あれ?つぐみが目を合わせてくれないんだけど…なんでだ?

 

「つぐは彼氏いるぞ?」

「!?」

 

 巴は電話が終わったようで俺とつぐみの会話を聞いていたためそう言ってきた。

 

「な、なんかごめんね?騙してるような形で…」

「う、嘘だろ…俺のマイエンジェルつぐみが…!」

 

 マジかよ!つぐみは彼氏いないと思っていたのに!!いや、よく考えろ、こんなかわいい子に彼氏がいないわけないだろ?

 

 てことで俺のマイエンジェルは香澄になったな!

 

「つぐの彼氏は私達の幼馴染だよ!」

「ひ、ひまりちゃん!恥ずかしいから言わないでよ!」

 

 幼馴染?そんなの無理だっての、てか幼馴染と付き合うとかアニメの世界かよ!?

 

「あーでもあいつアタシ達には連絡しねーよな?」

「そうそう!つぐだけに連絡してね!」

「まあそれがあーくんらしいって言うか〜」

「あたしはもうどうでもいいけど」

 

 あ、君達の幼馴染なんすね…

 

 幼馴染なー屋敷にいたあのクソ野郎と俺は幼馴染ってことになるのか?

 

 てか今は海外にいるんだったな、なんか弦巻家の仕事かなんかでお爺様の屋敷にいるとかなんとか

 

「とかいって蘭は昔あーくんのこと好きだったくせに〜」

「そ、それは昔だから!?」

「えーじゃあ今は〜?」

「……ッ!も、モカー!!」

 

 おいおいあんまり店の中で騒ぐなよな?マスターさんに怒られるぞ?

 

 と、思ってマスターの方を見るがニコニコしてなんか楽しそうですな!?

 

 ん?なんかこっちに来るぞ?

 

「お待たせしました英雄君、デザートをどうぞ」

「……ッ!?」

 

 ま、マスター!?何を言ってんだよ!

 

「そうだったな!シンは英雄だったな!」

「いや〜婚約者として鼻が高いですな〜」

 

 だから結婚しねーって!?何度言わせんだよ!

 

「……まあシンはそれぐらいじゃないと困る」

「お、お父さんがからかうなんて珍しいね」

 

 だよな!?そんなことする人には見えないもんな!?

 

「英雄だって!よかったね!カッコイイね!英雄君!」

 

 こ、この馬鹿だけには絶対におちょくられたくなかった…

 

「で、でもカッコイイのは事実だよ…」ボソ

 

 最後もなんか小声で言ってるがどうせ弄ることでも言ってたんだろう

 

「あーまじで不幸だぁぁああ!!!」

 

 羽沢珈琲店は本日も通常通り営業中のようだ。




あーくんってのはわかる人にはわかります。出すか迷ったけどね?もう一度彼の話をここで書かせてください…!

もし嫌だったら感想で意見待ってます。次の更新までに話の内容変えときますので

次回から更新は遅くなると思います。いろいろあるんや…

それでは次回の話でまたお会いしましょう!

あ、新作案出てるけど書きません!(笑)


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弦巻シンとガールズバンド

今回は短いけど許して!忙しいの!

それではどうぞ!!

急いで書いたので誤字脱字があるかも


 海、それは生命の生みの親だ、この海がなかったら生き物なんて生まれるどころか地球がここまで豊かになることはなかったと思う。

 

 そもそも人類も生まれることはなかったな、いやまじで海ありがとう!君達のおかげで今の俺達はいるんだ!

 

『海だぁぁぁああああ!!!』

 

 俺とひまりは電車が駅に着いた直後真っ先に駆け出し海の方に行き二人仲良く叫んでいた。

 

 いやーまじで海とか久しぶりだしな!?テンション上がってしょうがねーぜ!!

 

 屋敷にも大きな池があるがあんなものとは比べ物にならないほど広い海が目の前にある

 

「もー二人ともはしゃぎすぎ〜」

「だって海だよ!それにAfterglowで海なんて本当久しぶりだよ!」

「あー確かにな!確か中一の時が最後だったか?」

「そうかも、確か蘭ちゃんが日焼けしてもう海なんて行かないから!って言ってたんだっけ?」

 

 え?蘭さんそんなこと言ってたの?

 

「つ、つぐみ!?それは前の話だから!今なんて日焼け止め塗れば大丈夫だから」

「そうだね〜モカちゃんはシン君に塗ってもらうけどね〜」

「……塗らねーよ!?」

 

 あっぶね、普通に返事するところだったよ!いくらテンション上がってもそんなことシン君はしませんとも!

 

 日焼け止めは仲良く5人で塗っとけ、あ、蒼汰がいるから巴は蒼汰にでも塗られとけ!?

 

「いやー俺も久しぶりに海来たな!」

「お前もか?お前なんてざ、陽キャ感あるからバリバリ行ってたかと思ってたぞ?」

 

 イケメンでクラスで人気、バリバリのバリ陽キャやんけ

 

「お前も変わんねーだろ?」

「……てかお前部活は?」

 

 俺は無視して話を振る

 

「なんか言えよ…部活か?亜滝先輩が休み作ろうって言って休みになった」

 

 あーそっか、三年は夏の大会で引退したのか、だから亜滝先輩がキャプテンになったのか

 

「シン、今からでもお前ならレギュラー取れるぞ!?どうだ!サッカー部入らねーか!?」

「入らねーよ!やらねーよ!サッカーなんて知らねーよ!」

 

 やめろよな!?せっかく海に来てウキウキ気分なのに俺の気を落とすことを言うな!!

 

 だけどサッカーなんて知らねーよ!は少し言いすぎたな、すまん

 

「それより海行くぞ!海海海!!」

 

 俺は一人で走って更衣室に向かっていった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 着替え終わった男子の俺達は浮き輪を膨らめせることに苦戦していた。

 

「はあ、はあ、はあ…これまじでキツくね?」

 

 俺は息を吹き込み浮き輪を膨らませていたが…

 

「お前遅くね?もう終わったぞ」

「お前バケモンかよ!?早くないか!?」

 

 浮き輪を手に持ち俺の方に来た蒼汰の浮き輪パンパンに空気が入っていた。

 

「あそこに空気入れあるぞ?」

「…………それ先言えよ!?」

 

 今まで一人で頑張ってた俺が馬鹿じゃねーか!?

 

「あ、巴達が先に行っとけだってさ」

「いやだよ!なんで男子と二人で海に行かないといけないんだよ!?」

 

 ここまで来てお前と二人で行くのだけはいやだぞ!?

 

「モカー!蘭ー!早く来てくれー!!!」

 

 俺がモカと蘭の名前を呼ぶと

 

「わ!た!し!は!」

「……と、ひまりも!」

 

 叫んだらちょうど来たよ!叫んでみるもんだな!てか安心しろ!ひまり!お前も後でちゃんと呼ぼうと思ってたからな!?

 

 てかみんなのみ、水着が…眩しい!なんなんだよこれは!?

 

 ひまりの膨らんだ胸、モカのあんなにご飯を食べてもまったく太らないお腹、蘭は、蘭はーうん!太ももがエッチぃな!

 

「そんなにモカちゃんに会いたかったのかな〜?」

「まじで会いたかった、抱いていい?」

 

 決してそっちの意味じゃないぞ?

 

「モカちゃんから抱きつきまーす」

「へ!?ちょ、モカさん!?」

 

 冗談で言ったがモカのやつは俺に抱きついてくる、その際には水着のため胸の感触がもろに伝わってき…あれ?なんか前もこんなことがあったような…

 

『い、いつまでくっついてるのかな!?』

 

 ひまりと蘭は抱き合っていた俺達を離しながらそう言っていた。まああんまり抱き合うってのはよくねーからな?彼氏でもないし

 

「蘭はわかるけどひーちゃんはなんで止めに入るのかな〜?」

 

 あー別に深い意味なんてないんじゃね?ひまりは…な?色々あったから目の前でこんな光景見たくないんだよ、きっと

 

 そんなこんなで俺達はやっとのことで海に向かった。向かったら向かったで人がうーじゃうじゃ、まるでゴミ…んんっ!このセリフはやめておこう

 

「よーし!泳ぐ「あぁ!お姉ちゃん!」な、なんだ?」

 

 俺が海に向かって走ろうとした時、誰かがお姉ちゃんと大声で叫んだんだ。

 

「おー!あこ!あれ?友達と海に行くってここだったのか!?」

「お姉ちゃん!なんでここにいるの!?」

 

 どうやら巴の妹さんのようだ。

 

「あこー急に走ってどうしたーってわーお!シン達じゃん!」

 

 次はリサ先輩!?

 

「あ、弦巻君…こんにちはです」

 

 その次はか、会長!?

 

 ま、まさかまさかの

 

「――……頂点に…狂い咲け!」

 

 ろ、Roseliaのメンツ集合じゃねーか!!てか湊先輩そんなこと言う人だったけ!?

 

「新曲の制作中なんですよ、それよりお久しぶりです。弦巻君」

「紗夜さん!まじで久しぶりですね」

 

 いや本当に久しぶりだな!あの時捕まって以来絡んでなかったからな!

 

「…………やあ、シン君」

「!?」

 

 俺の後ろから話しかける男性の声

 

「亜滝先輩!ちーす!」

「蒼汰も彼女と海に来てたのか」

「まあーそっすね!」

 

 ふぅ、いや、何かの聞き間違いだ。亜滝先輩がいるわけねーよ、さすがにRoseliaで海に来てリサ先輩の彼氏を連れてくるとか…ないよね?

 

「あはは、無視は悲しいなー」

「…………不幸だ」

 

 なんで海に来てまで亜滝先輩と会うんだよ…考えろよ?今ひまりいんだぞ?

 

「あ!亜滝先輩来てたんですね!」

「うん、ひまりちゃん達がいるのは計算外だったよ」

 

 えー!?なんであんたら仲良いの!?

 

「いろいろあったけど仲直りできたんだ」

「……そーすっか」

 

 なんだよそれは!?俺の頑張りが馬鹿みてえじゃねーか!?

 

「でも、いやーあの後リサには怒られたよ」アハハ

「でしょうね!?」

 

 怒らない彼女さんなんていねーっての!

 

 く、クソう、タダでさえ周りはリア充だらけなのにこの人達まで増えたらもうやべーだろ!?

 

 精神が持たんぞ

 

「あれ!シン君だ!」

「……次は誰だよ!?」

 

 横をむくとビーチボールを持った香澄とその後ろにはポピパのメンツが全員いた。

 

 てか香澄!お前…うん!さすが俺の新マイエンジェル!水着が似合ってて超可愛いぜ!

 

「ぐへへ、照れるよー」

「……マイナス100」

「えぇえー!冗談だよ!!」

 

 なんだよぐへへって!普段言わないことを言うんじゃねーよ!?

 

「おい香澄!あんまり弦巻シンに近ずくなよな!穴があったら入れたがるやつだからな!」

「ど、童貞の俺にそんな勇気ねーよ!?」

 

 んなことしてたら捕まるわアホ!

 

「なっ!?ほらな!すぐ下ネタを言う!」

「違うな!童貞は下ネタなんかじゃあない!」

 

 じゃあの言い方を某奇妙な冒険シリーズと同じイントネーションで言うが

 

「そんなの通じねーぞ!」

「クソう!!」

 

 こ、こうなったら俺の親友!って俺が勝手に親友と呼んでいるが!

 

「沙綾!お前は俺の味方だよな!?」

「……え?シンは私の正義のヒーローでしょ?」

 

 だー!そう来たか!でも今はその返事を待ってたわけではないんだよな!

 

「シン君……あの日を思い出さない?」

「お前は紛らわしい言い方をするな!?」

 

 おたえはモデルさんポーズを取り自分のボディを見せびらかして来る、だが俺は一度こいつの全ての姿を見たことがあるんだよなーまあ事故でだけどな!

 

 あの日ってのはそのことだ、決して変な意味ではない!

 

「あら?シンじゃない!」

「……次はお前かよこころ!?」

 

 四方から知り合いの奴らが来て俺の周りは人がたくさんいる状況だった。

 

「海に行きたいっていたら黒服の人にここをオススメされたの!」

「黒服め!わざとだな!?」

 

 いや、黒服じゃねーな?あの人だな!?

 

「あれ!?かのちゃん先輩は!」

 

 はぐみが焦ってるが…花音先輩はここでも迷子ですか!?

 

「やあ子猫くん、今日は暑い、じゃなくて儚いね」

「今普通に暑いって言いかけましたよね!言いかけましたよね!?」

 

 大事なことなので二回言いました。

 

「………………」

 

 な、なんだ?奥沢さんがずっと黙ってこっちを見てるが…

 

 はっ!?まさかあなたも市ヶ谷さんと同じようなことを言うつもりか…!

 

「……程々にしときなよ」

「……???」

 

 意味がわからなかったです

 

 てかさ!?Afterglow、Roselia、Poppin’Party、ハロー、ハッピーワールド…って来たらPastel*Palettesことパスパレも参戦!?

 

 まあそれはさすがにないな、てかいたら困るぞ?タダでさえ人が多いのにな!

 

「な、なんか人がたくさん増えたな」

「数人以外が知り合いってゆうね、いや世間は狭すぎるだろこれ…」

 

 湊先輩とか巴の妹さんとか一度も絡んだことねーけどな?それ以外全員知り合いとかヤバいだろ

 

「……やべ、人が多すぎて頭痛くなってきた」

 

 こうも俺の周りに人がいたらそうもなるだろ?それに外だからお構い無しに大声で話すしうるさいんだよ!?

 

「大丈夫?モカちゃんがまたハグしよっか?」

「いや、次はあたしだから」

「おー蘭が積極的だ〜」

「う、うるさいな!」

 

『……あれ?』

 

 蘭とモカが話してる時にシンはフラフラしながら海の家に向かっていた。

 

「な、なんなんだ、なんで今日はこんなに人がいるんだ?」

 

 なんでガールズバンドが集結してんだよ!てかなんでパスパレがいないの!?俺の一番好きなバンドなのにさ!

 

 あ、てもこんなこと言ったら蘭と香澄とこころと紗夜先輩に申し訳ねーな、撤回しとく

 

「泳いでもねーのにクソ疲れたぁああ」

 

 一人嘆いて海の家に到着したら

 

「あら?何をして疲れたのかしらね?」

「ん?あーガールズバンドに囲まれてな?いや、あの状況をキツいよ」

 

 誰かから質問されたから答えた。あれ?この声聞き覚えが…

 

「へーそれは随分とハーレム状態ね、よかったわね」

 

「――……正義の味方さん」

 

「!?」

 

 後ろを振り向いて気づく…

 

「ち、千聖先輩…!?」

「ええ、あなたの味方、白鷺千聖よ?」

 

 なんでここにいるんだ!?

 

「今日はここでイベントがあるのよ、それまで海の家のお手伝いしてるってこと」

 

 な、なるほど…

 

「千聖ちゃーん、次このドリンク四番席に……え!シン君!?」

「あ、彩先輩!?」

 

 てことは…!まさかパスパレでイベントってことか!?

 

「あっれ!変態を否定しなかったシン君だ!」

「日菜先輩!?そ、それは違いますから!あの時は色々あったんです!」

 

 あの時は馬鹿を否定することに一心だったんだよ!?てか日菜先輩もいるってことはこれはもう確定ですな!

 

「あっ!あなたが弦巻シンさんですか!?いつも彩さんやイヴさんから聞いてます!」

「え!?あ、ありがとうございます?」

 

 初めてリアルで大和先輩見たけど可愛くね!?やば、頭痛かったのが一気に吹っ飛んだぞ!?

 

「ところで文化祭でのあのスケボー!あれ仕組みはどうなってるんすか!?」

「…………へ?」

「……はあ、麻弥ちゃんのスイッチを入れたからには責任とりなさいよね?」

「な、なにが!?」

 

 と、言った瞬間

 

「あのスケボーはどうゆう仕組みなんすか!?」

「あ、あと法律とかは大丈夫なんでしょうか!?」

「それとあのコンパクトサイズであの力!やっぱり何か秘密があったりするんすかね!?」

 

 あ、あの!?ここまですんごい人だったんですか!?

 

「ふへへ、今度是非中身を見せて欲しいっす!」

 

 あー!!やめろ!!そのことを言うな!俺の思い出のスケボーは盗まれたんだよ!俺が放置してたのも悪いが盗むやつも悪いだろ!?

 

「シンさん!こないだの弟子にする話の返事がまだです!」

 

 あー今話しかけんな!!

 

「シン君!」

「シンくーん!」

「弦巻シンさん!」

「シンさん!」

「シン!」

 

 違う違う!俺はあそこから抜け出して平和を求めただけなのに!なんでこんなことになってんだよ!

 

「不幸だぁぁぁああああ!!!」

 

 海に家にてアイドルに囲まれている少年が「不幸だ」と言った瞬間、アイドルオタク達の目が変わったことにパスパレのメンバーとシンを含め、誰も気づくことはなかった。




次回から海の話かな?まあ期待してて!

えっと、新作書くか悩んでるます…ただでさえ忙しいのに書く暇なってないってな(笑)
週一投稿で書くのはありなんですかね?

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それでは次回の話でまたお会いしましょう!


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弦巻シンはついに友達になれた

九時までに書けなかった!遅くなったけど投稿するだけで許して!!

急いで書いたので内容が分かりにくいかも!ワンチャン後で書き直す!

それでどうぞ!!


 今日俺が望んだこと、それはただAfterglowのみんなプラス蒼汰と楽しく海ではしゃぐプランだったんだ…それなのに!

 

「…………不幸だ」

 

 俺は現在海に来てるにもかかわらず砂浜にブルーシートを引き、パラソルを立て体育座りをしていた。

 

 目の前には美少女であるガールズバンドのメンバーがキャッキャウフフしながらビーチバレーを楽しんでいる、こんな光景を見たら普通は元気ハツラツになるだろ?

 

 それに今は俺の大好きなパスパレも合流して嬉しいはず、はずなのに!

 

 けどなんか気が乗らない!?さすがに人が多すぎたか!?

 

「暑い、暑いわ……」

 

 俺の隣では今にも死にそうに暑いを連呼して寝っ転がってる湊先輩がいるわ

 

「日焼けは美容の天敵よ、私はここからでないのよ…」

 

 と言って俺の隣で同じく体育座りをしてる千聖先輩

 

「……なんか珍しいメンツですね」

「そもそもあなたは誰かしら?」

「そこからの話ですか!?」

 

 湊先輩それはないっすよ!シン君傷つきました…

 

「彼女は興味がないことには興味がないのよ」

「な、なるほどなー」

 

 うーん、深いなー

 

「モカちゃんもシン君以外の男子には興味ないけどね〜」

「のわ!?きゅ、急に現れるなよモカ!?」

 

 俺の後ろからモカが急に抱きついてきため俺は急いで立ち上がると後ろには蘭とひまりもいた。

 

「シンー日焼け止め塗ってよ」

「えー自分で塗れよ」

「……背中は届かないよ」

 

 蘭は俺に日焼け止めを塗ってくれと頼んでくる、でもな…今千聖先輩と湊先輩がいるしな!ここでは塗れねーよ!?

 

「あら?美竹さんは自分で日焼け止めも塗れないわけ?」

 

 おっと、ここで煽っていく湊先輩!

 

「……冗談やめてくださいよ湊さん、あたしができないと思いますか?」

 

 この軽い挑発に蘭は乗っていく!

 

『……勝負(デュエル)!』

 

 俺が言うのもあれだがあんたら大丈夫ですか!?暑すぎて頭おかしくなってんじゃね!?てかなんだよ日焼け止め塗り勝負って!聞いたことないぞ!?

 

 その後湊先輩と蘭は二人で揉めながら日焼け止めを塗っていた。

 

「まあまああの二人はほっといてモカちゃんの背中塗ってよ〜」

「……ッ!?も、モカ!ここで脱ぐなよ!?」

 

 モカは俺に背中向けた状態で水着を脱いでいた。だけど安心してくれ!前はちゃんと隠してるようだ、いやーよかったよ、露出狂とかじゃなくて

 

「で、ひまりはなんでいるんだ?」

「えっ!?えっと、そのーせ、背中に腕が届か……ない!」

 

 背中に腕を回すが塗りにくそうだな…

 

「ぷはぁー」

「………………」

 

 空気を吐いた瞬間と同時に揺れるたゆたゆな胸、あーそうだよな

 

「やっぱりひまりってデケーよな」

『………………』

「……ん!?」

 

 これはまたまた俺はやらかしたっぽい、だからさ!?なんで心に思ってることすぐ口に出すかな!?

 

「……そう、シンは巨乳(・・)!が、好きなのね」

「シン君大丈夫〜モカちゃんは着痩せするタイプだから胸もありますよ〜」

 

 や、やめろ!俺は巨乳好きなんかじゃねーよ!

 

「………………」

「ひ、ひまりさん?」

 

 いつもなら

 

「シン君のエッチ!スケベ!変態!」

「全部同じ意味だろそれ!?」

 

 って流れになるんじゃないの?なんで今日は違うんだ?

 

「そ、そんなにおっぱい好きならも、揉んでみる?」

『ッ!?』

 

 反応したのは俺とモカと千聖先輩だ。ちなみにだが湊先輩と蘭は未だに勝負をしているようだ

 

「い、いいんですか!?シン君揉んじゃうよ!?」

「いいよ「じゃーモカちゃんが揉みま〜す」こ、こらモカ!!」

 

 あーそっちなのか、俺に言ってたんじゃねーのか…てか目の前でそんな触るなよな!?触れないこっちの身にもなれっての!

 

「違うわよモカちゃん、もっとこうして…!」

「い、痛い痛い!千聖さん痛いですよ!」

 

 思いっきり鷲掴みしてるじゃねーか!?

 

「えーモカちゃんはこうすると気持ちいけどな〜」

 

 と言い出しモカはいやらしい手つきでひまりの胸を触り出す。

 

「ひっ!ちょ、モカ…や、やめて、あんっ!」

 

 あの!?ここ公共の場なのでそれ以上はヤバいですよ!?

 

「ッ!やるわねモカちゃん…」

「あなたは何を感心してるんですか!?」

 

 その後はモカとひまりも落ち着き強制的に日焼け止めを塗ることになった。

 

「シン君早く〜!モカちゃんにその白い液体を早く塗ってください〜!」

「だからね!?その紛らわしい言い方をしないでもらえる!?」

「シン君!私にも早く白い液かけてよ!」

「………………」

「シン、レディを待たせるの?早く白い液を出しなさい」

「……このクソがー!!!!」

 

 両手にお前らの言う白い液体(日焼け止め)を出し手に平に塗り広げ

 

「くらいやがれ!!」

 

 俺はモカとひまりの背中に同時に塗り始めると

 

『ひゃっん!!』

 

 どうだこれでいいんだろ!?お前らが塗れって言ったから塗ったんだよ!

 

「はあ、はあ、えへへ、シン君って激しいプレイが好きなんだね〜」

「モカ!だから変な事言うなよ!?」

「シン君腰の使い方上手すぎでしょ…」

「俺ただ上から塗っただけだよね!?」

 

 あーもう!この二人は揃うとめんどくせえな!?

 

「……シン、私には?」

「ぬ、塗りますよそりゃー」

 

 二人には塗って千聖先輩だけ塗らないとかないだろ?ちゃ、ちゃんと塗るさ…

 

「…………まだ?」

「……ッ!ま、待ってください!」

 

 え?いいのか?俺がこの綺麗な背中に触ってもいいのか!?女優兼アイドルのスベスベ肌に触りたいが…んー!!!

 

「大丈夫よ、モカちゃんやひまりちゃんと変わらないから」

「……わ、わかりました」

 

 よ、よーし!塗るぞ!塗っていいんだよな!?

 

「…………んっ!」

 

 俺が千聖先輩の背中に手をついた瞬間、千聖先輩は声にならない声を出していた。

 

「(な、なにこれ!?めちゃエロ…)」

「って何考えてんだよ俺は!!!!!」

 

 少しだけ千聖先輩の背中に日焼け止めを塗って恥ずかしさのあまり走ってその場から逃げました。

 

「……もう、本当にヘタレさんね」

 

 千聖の顔は少し火照っているようにも見えた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 一人で海まで走って飛び込み頭を冷やしところで海から上がる

 

 上がって気づくがすぐ間近でビーチバレーを楽しむガールズバンド集団、パラソルの中から見てたが近くから見ると迫力やべーな

 

「(くっそー!どいつもこいつも可愛すぎるんだよ!)」

 

 やっぱり花咲と羽丘の顔面偏差値は高いようだ。今後からソースは俺だと言い張るか

 

 服を着たまま海に入ったためシャツを絞っていた時だ。

 

「シン君危ない!!」

「……ヘブチ!」

 

 俺は声が聞こえた方に振り向くと同時にボールが顔面に飛んできた。

 

 なんでこんなことが起きるんだよ、誰か絶対狙ってるだろなあ!?

 

「し、シン君大丈夫?」

 

 そう聞いてくるのはマイエンジェル香澄、やはりこいつは良い奴すぎる!

 

「あ、ああ大丈夫……でも打ったやつだれ?」

 

 もし男子二人のどちらかだったら金的な

 

「シン君ごめーん!初めてで手加減できなかった♪」

 

 舌をペロッと出して日菜先輩はそう答える、可愛くなかったら許さねえーからな!?

 

「てかお前ら飽きずにずっとビーチバレーできるよな?」

 

 俺が見たがりもう1時間はしてるぞ?

 

「飽きないわ!みんなでバレーするのはとーっても楽しいことなのよ!」

「見てたらわかるはそんなもん!?」

 

 こころに言われなくても分かるっての!だけど…蒼汰達にとっては苦行じゃねーか?彼女以外に女子がこんなに…な?困るんじゃね?

 

「ビーチバレーねー俺はいいや、暑いし」

 

 海は泳ぐところだ!バレーをする所じゃねー!

 

 俺は元の位置、パラソルの中に戻ろうとするが…

 

「ねえねえ君達暇してる?」

「うひょー美少女ばっかり!」

「なあなあ俺らと遊ばねー?」

 

『???』

 

 あれだ、俗に言うナンパってやつだな

俺は急いで皆の元に戻って言う。

 

「おいおいみんなーそろそろ戻るぞー」

 

 逃げれば勝ちだ、やったね!

 

「なんだコイツ?」

「そんなの無視無視、ほら!あの子とかめっちゃ可愛くない!?ぜってえギャルだよ!」

 

 そう言って指をさしてる方にはリサ先輩

 

「ばか!見てみろあの体!女子の身体じゃねーよ!筋肉ゴリラだ!あっはは!」

 

 次は巴を指さしそう言っている

 

「……あー俺知らねーから」

 

 そこには二人だけ明らかに周りとは違うオーラを出しているやつらがいた。

 

「……誰の」

「……彼女が」

 

「……ギャルだって?」「…ゴリラだって?」

 

 うわーこっわ!そりゃー彼女馬鹿にされると怒るよな…

 

「可愛い人全員がギャルじゃないんだよ?リサは料理ができて彼氏思いでとてもいい子なんだよ?」

「……ハル!!」

 

「お前らに巴の良さの何がわかる!悔しかったら彼女の一人でも作るんだな!」

「……蒼汰!さすがにアタシの彼氏だ!」

 

 お前ら主人公すぎないか!?あれ?出演する話間違えたのかな俺?

 

「な、なんだコイツら」

 

 ナンパしてきた人達も若干引いてるぞおい

 

「とりあえず手を引いてください!警察呼びますよ?」

 

 奥沢さんが携帯を手にそう言うが…逆にそれがいけなかったのか

 

「おいおい自分がナンパされなかったからって僻むなよ」

「なんですか?自分がナンパされたとでも思ってるのか?」

「いるよねーそーゆう女子」

「なに?自分のこと可愛いとか思ってるんですか!?」

『あっはは!』

 

 うわ、マジごめん、無理だわ

 

「……ッ!?」

 

「おい、それは言い過ぎじゃないか?」

 

 俺は後先考えずにナンパ集団に話しかけていた。自分でもなんで奥沢さんのために動いたかわからない、わからないけど

 

 俺の知り合いが馬鹿にされるのはめちゃくちゃイライラするってことだけはわかる…!

 

「……弦巻、シン?」

「奥沢さんが可愛くない?ふざけんなよ!」

「奥沢さんにはめちゃくちゃいい所があるんだぞ!?」

 

 俺は奥沢さんと仲良くなるためだけに彼女を少し遠くから見ていた時期があるんだ、決してストーカーとかじゃないぞ?教室でふと目に入っただけだ

 

「奥沢さんはな!すげー友達思いの良い奴なんだよ!」

「………………」

「だから俺は友達になりたいと思ったし絶対友達にしてやる!って思ってる!」

「……やめて」

 

 いいややめない!

 

「羊毛フェルトが大好きで妹のために色んな動物を作ってる!」

「あと笑うとめちゃくちゃ可愛いんだぞ!」

「それとな!こころに振り回されて嫌な顔するけど最後は笑ってんだよ!」

「…………もういいって!」

 

 奥沢さんは止めに入るけどこれだけは最後に言わせてもらう!

 

「お前らがな!奥沢さんのダメところを10個言ったらな!」

「俺は奥沢さん、いや、美咲のいいところ100個言ってやる!!」

 

 息継ぎせずに言ったもんだから息が上がってる

 

「な、なんだコイツら」

「……おい!ナンパしてるやつがいるって聞いたが君達か!」

「やっべ!ライフセーバーだ!逃げろ!」

 

 誰か連れてきたかわからねーけどライフセーバーが来たもんだからナンパ集団は逃げていくように帰ってた。

 

「……ごめん、呼び捨てした」

「……いや別にいいよ」

 

 そう答える美咲の頬は少し以上に赤かった…

 

 はっ!?ま、まさか俺の言ったことが恥ずかしかったのか!?それはまじでごめん!

 

 てか俺何言ってんの!?美咲とは友達でもないただの知り合いなのに!美咲のいい所100個言う?無理無理10個が限界っすよ!

 

 すぐに前言撤回するシンだった。

 

「シン!あたしの方が美咲については詳しいわよ!」

「そ、そりゃーそうだろう!?」

 

 お前はいつも一緒にいるだろこころ!?

 

「皆さん、スイカの用意ができました。いつでもスイカ割りができます」

 

 どこからか現れた黒服がそんなことを言っている

 

 てかスイカ割りってなんで!?

 

「あたしが頼んだの!みんな!行くわよ!!」

 

『わーい!!』

 

 ガールズバンド集団がこころの一言で案内される場所に向かう。わーい!とか言ってたが普通に言ってない人とかいたけどな!?

 

 パラソルの中にいる千聖先輩、湊先輩、蘭にモカとひまり、それと…

 

 その場に残っている俺と美咲以外の集団がスイカ割りをしに行っていた。

 

「――……俺達もそろそろ行くか」

「……待って」

 

 うう!き、気まずい!さっきのは…

 

「いいよ」

「……へ?」

 

 な、何がいいんですか?

 

「だーかーら!友達!なってあげるって言ってるの…!」

「なに?シン(・・)もこころと同じで一度で理解できないのかな?」

「…美咲!ほ、本当にいいのか!?」

 

 え!?今さっきの発言からのこれですか!?

 

「その、いろいろ言いたいことあるけど」

「――……ありがとう、ございます」

「ッ!!!???」

 

 や、やべー嘘みたいだ…!今まであんなに俺のこと嫌ってた癖に今は俺に頭を下げてるだと!?

 

 お、俺はついに、ついに美咲と友達になれたのか!

 

「それと…こないだは妹のせいでごめんね?」

「妹のせいで?なんの話しだ?」

 

 妹のせいで?本当になんの話しをしてるんだ?

 

「……もーう!知らないならいい!」

 

 美咲は落ちていた木の棒を拾い地面に何かを書く

 

「これ、私のメアド、登録したいならしていいよ」

「……!マジか!する!今すぐする!」

「…………打てるものならね」

「へ?」

 

 その瞬間大きなら波が来て俺達の足場に冷たい海の水が当たる

 

 なんだかんだでやっぱり海の水は冷たいものなんだと改めて感じたところで

 

「……ん!?め、メアドが消えてる!?」

「あはは!だから言ったじゃん、打てるならね?って」

「お、お前!俺をはめたな!?」

 

 地面に書くとかおかしいなーって思ったらこれが作戦だったのか!

 

「ふふ、メアドはお預けだね?」

 

 メアドはお預けだと?せっかく友達になれたのにか!?

 

「あーくそ!不幸だぁぁああああ!!!」

 

 本日二度目によりシンの叫びは周りの人達にも聞こえていたようで笑われていた。

 

 そのころパラソル内にいる組は海風に当たりながら眠っていたそうです。

 

 




美咲はヒロインじゃないよ、たぶん…これもifルートですかね(笑)

美咲と友達になるのに結構な時間使いましたね、シンよくやった。

それでは次回の話でまたお会いしましょう!


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弦巻シンと告白

誰かがシンに…

それではどうぞ!!


 時刻は夕方頃、どうやらパスパレがイベントにてライブをするそうだ!パスパレファンとして!彩先輩にあこがれる後輩第一号として!参加せざるを得ない!!

 

「シン君こっちこっち〜」

「わかったから待てって!人が多すぎるんだよ」

 

 モカが俺に手を振るが人が多すぎてモカの所にたどり着けない、案の定

 

「――……はぐれたあー!!」

 

 他のみんなは集団で行動しやがって!俺だけを除け者して!クソう…あの時、モカが離れるから手を繋ごう〜って言った時素直に答えていれば…

 

「はあ、不幸だ」

 

 俺はみんなと連絡をとるために携帯を取り出し手当たり次第に電話を掛けていた。

 

 が、よくよく考えればこんな所で携帯を使ってはいけなかったんだ…なんせ俺の携帯は

 

「おいみろ!あいつの携帯千聖さんのサイン掘られてるぞ!?」

「……し、しまった!」

「あんなグッズあったか?」

 

 や、やばい!そう言えば言われてるんだった!

 

「外でこの携帯を使う時は注意するのよ?」

「なんでですか?」

「もし私のファンに見られたら…ね?」

「あー了解っす」

 

 千聖先輩に気おつけろって言われてたのにやらかしてしまった!

 

「おい!なんか言えよあんた!」

「千聖さんと密かな関係とかじゃないよな!?」

 

 く、クソ!俺はただパスパレのライブを見たかっただけなのに!なんでこうなるんだよ!まじで本当に不幸だよな!?

 

「こ、こうなったらやるしかない…!」

 

 もう腹を括る!

 

「はっはっはっ!この携帯が目に入らぬか!」

「日本に一台、いや!世界に一台の白鷺千聖のサインが掘られた携帯だ!」

『……ッ!?』

「ど、どうだー!う、羨ましいか!じゃーな!」

 

 俺は言うだけ言ってその場から逃げようとするが

 

「なんだそれ!見せてくれ!」

「100万あげるから買わせてくれ!!」

 

 な、何言ってんだよあんたら!?そんなことしねー…まじで?100万?いやダメダメだ!そんなことしたら千聖先輩に嫌われちまう!

 

ざわざわ

 

 そんなことを考えている時周りがざわつく

 

「きゃー!!千聖様よ!」

「もうライブ始まるのにこんな所に来るなんて!」

「ファンサービス凄すぎな!!」

 

 千聖先輩!?まさか俺を助けに!?

 

「あらあら、こんな所で何をしてるのかしらね?……シン?」

「ち、千聖せ、千聖さん!いいところに!」

 

 千聖先輩と言えば俺が周りの人達に後輩だとバレるので千聖さんと呼ぶ、その後

 

「痛えぇぇえええ!!」

 

 耳を引っ張られ耳元ので囁く

 

「私言ったわよね?使う時は周りを注意してって…!」

「……は、はい!」

 

 自然と声が裏返ってしまう。

 

「――……お説教が必要かしらね?」

「……ッ!?そ、それだけは!」

 

 や、やだ!説教だけは許してください!

 

「ダメよ♪」

「だぁぁああああ!!!不幸だ!!!」

 

 千聖先輩にパーカーのフードを引っ張られ俺はその場を退場した。その際千聖先輩のファン達は

 

『いいなー』

 

 と、言っていた。何がいいんだよ!?俺はこれから説教だぞ!?

 

 ファンの気持ちがわからないシンだった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「で?こうなることぐらい分かってたはずよ?」

「……はい」

 

 俺は砂浜にて正座をしていた。

 

 千聖先輩は岩場に腰掛け足を組んで俺を上から見下ろして説教をしている

 

 自分が俺より身長低いため上から言えないから岩の上にでも座っているのだろう

 

「あら?そんなこと考えていいのかしら?」

「……しれっと心読まないでくださいよ」

 

 この人達はすーぐ人の心を読みたがる人ですからな

 

「はあ、とりあえずファンの人達には試作品を渡しただけと伝えて今後発売するってことにしとこうかしらね」

「えー!それだと世界に一台だけじゃなくなっちゃうじゃないですか…」

 

 ファンの人達に自慢したのに意味ねーじゃん!

 

「あなたが約束守らないからよ」

「……まあそうですね」

 

 確かに周りを見ずに使おうとした俺が悪いんだけどな!でも俺だけのデザインが欲しかったなー

 

「いいじゃない、あなたはそのうち私の処女が手に入るのだから」

「……ッ!」

「ファンの人達なら喉から手が出るほど欲しいわよ?」

 

 ま、まあそれはそのいろいろと条件があるけどな…

 

 千聖先輩はポケットからタバコを取り出し、口にくわえて火をつけタバコを吸っていた。

 

「いいんですか?ライブ前っすよ?」

「別にいいわよ、匂いがバレたら喫煙所の前通ったて言えばいいし」

「……てかここで吸っていいんすか?」

「…………知らないわよ」

「いやダメでしょ!?」

 

 喫煙所があるってことはそこで吸ってくださいって言ってるもんだろ!?そこはちゃんと守ろうよ!

 

「あんまりあなたの前では吸いたくないのだけどね…」

「……その点は大丈夫です。結婚したら即やめさせるんで」

 

 前に旦那さんか子供がやめてと言ったらやめるって言ってたからな、もし将来結婚したらやめさせるっての

 

「あら?もう私と結婚する前提なのかしらね?」

「千聖先輩も処女が貰えるってさっき言ってたじゃないですか?」

「まあ…それもそうね」

 

 そう答えるとまたタバコを吸って白い煙を吐き出す

 

「ねえシン」

「……なんですか?」

「私のこと好き?」

「え!?好きになってもいいんですか!?」

 

 前に私のことは好きになるなって言ってたような…

 

「ダメよ、あなたは私以外の人を好きになりなさい」

「条件だってあなたが誰とも付き合わず童貞のままって話よ」

「……それ今から千聖先輩と付き合うじゃダメなんですか?」

 

 ぶっちゃけそうだろ?このまんま千聖先輩がアイドル卒業するまで待っとけばいい話だろ?

 

「………その気持ちだけで十分よ」

 

 千聖先輩はそう答えるとタバコの火を消し、携帯灰皿に捨てていた。その点しっかりとするんだと感心したよ

 

「いいシン、私がいるからって他の女子に告白されてもすぐに断らないことよ」

「……いやいや!俺が告白されることなんてないですよ!」

 

 俺のことを好きになるやつなんているわけがないっての!だから俺はこのまま誰とも付き合わず千聖先輩と結ばれると思ってるんだけどな

 

「さあ?今日告白されるかもしれないわよ?」

「……またまた冗談を」

 

 まあもし告白されたら…その時はその時だな

 

「戻るわ、またね?正義の味方さん」

「…はい!あ、ちゃんとファ〇リーズするんですよ!」

「わかってるわよー」

 

 千聖先輩は手を挙げそう答えた後

 

 数分後には俺達の前でライブを行っていた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 ライブが終わり時刻は夕方、パスパレライブの感想はいやもうまじで最高だった最後にまさか彩先輩と千聖先輩のデュエット、ゆらゆらが聴けるなんて思わなかったぜ!

 

「シン君ゆらゆらの時興奮してたね〜」

「当たり前だろ!俺が一番好きな曲だからな!」

 

 なんてったって彩先輩と千聖先輩のデュエットだぞ!?やべーだろ!

 

「デュエットなら私と沙綾もしてるよ!」

「おー!まじか!今度聞かせてくれよ!」

「うん!今の時期にピッタリな歌なんだ!」

 

 なんだそれ!めちゃくちゃ楽しみだな!てか香澄!やっぱりお前は俺の天使だ!

 

「シン?楽しみにしててね♪」

「ああ!沙綾の歌、楽しみにしておく!」

「…ッ!あ、あはは、シンを虜にしちゃおっかな?」

「そうか?期待しとくぞ!」

 

 沙綾も気合が入ってるようで何よりだ!

 

「………………」

「ん?紗夜先輩どうしたんですか?」

 

 さっきから黙ってどうしたのだろうか

 

「いえ、特に何も」

「それより早く戻りましょう、もう夕方ですし皆さん帰ると思われますよ?」

「……そうですね、今日はもう帰りましょうか」

 

 今日は出だしからキツかったからなー海に来たらガールズバンド集団がいて、その後は日焼け止め事件にナンパ事件、俺がやらかす事件に千聖先輩の説教、一日がハードスケジュールすぎっての!この後は特に何もなければいいんだけどな

 

「みんなー!この後暇ならあたしの屋敷でご飯食べないかしら!」

「いいねこころん!はぐみ大賛成!」

「こころん!私も賛成だよ!」

 

 ガヤガヤガヤガヤ

 

 うわーこころのやつあの屋敷に人呼ぶのかよ、まあ勝手にしてろ!俺は屋敷には帰らねーからな!?

 

「シン!あなたも屋敷に行くわよ!」

「……まだ行かねーよ、お前らだけで楽しんどけ」

「それはダメよ!シンジもお母様もお父様もアレックス(・・・・・)も会いたがってるわ!」

「だあー!そいつの名前を出すな!」

 

 いやな思い出しかない!

 

「盆には帰る、それまではぜってえ行かねーからな!?」

「……そう、残念だわ」

「でもそのうち帰ってくるのならその日は家族みんなでご飯を食べましょう!」

「……ッ!ああ!待ってろ!」

 

 俺はこころにそう答え更衣室に向かおうとした。

 

「ねえシン君!」

「おーつぐみ、どした?」

 

 つぐみが話しかけてきたが…うん、水着ってやっぱりいいよな!水着の上から羽織っている生地が薄いパーカー、なんかいいよな!?

 

 まあ俺も羽織ってるんだけどな

 

「ひまりちゃん見てない?」

「ひまりか?見てないけど…どうした?」

「まだ戻ってきてないみたいなの!どこにいるのかな?」

 

 なんだ、まだ戻ってきてないのか

 

「わかったよ、俺が探してくるからつぐみ達は先に着替えてろ」

「う、うん!」

 

 内心めんどくせーと思いながらライブ会場に戻る。

 

 けどそこにはひまりのひ文字すらなく、ただただスタッフさんが掃除をしている光景しかなかった

 

「……海にでもいるのか?」

 

 俺は海の方に向かいあたりを見渡す。誰もいなくなった海、それはまるでプライベートビーチかのように思わせる静けさ、その砂浜にて一人座って海を眺める少女が一人

 

「……なーにやってんだ、ひまり?」

「……シン君」

 

 俺はひまりの隣に座り話しかける

 

「つぐみが心配してたぞ、戻ってきてないってな」

「あっはは、つぐは心配症だからね」

 

 まあそれは一理あるな

 

「いやね?海来たのに全然泳がなかったなーって」

「あーお前らお昼寝してたもんな」

 

 みんながビーチバレーをしてる時パラソル組は寝てたからな起こそうと思ったけど寝顔が可愛かったから起こさなかったんだよ

 

「起きたらパスパレのライブに連れていかれて泳げなかったよー!」

「でもライブ見れたからよかっただろ?」

「まあ、うん」

 

 パスパレのライブだぞ?それがタダで見れたんだ、有難いもんだろ?ああタダって言うのはチケットくれたんだよ

 

「そうだ!今から少し泳ごうよ!二人で!」

「い、今からか?もうみんな帰りの準備してるぞ?」

「いいの!五分だけ!お願い!」

 

 ひまりは手を合わせて俺にそう言ってくる、ここまで頼まれたら断れねーよな!

 

「……五分だけだぞ」

「……うん!ありがとう!」

「…ッ!」

 

「(だからね可愛すぎんだよ!!)」

 

 その後ひまりと海に入り二人っきりで遊んでいた。水をかけられかけ返し、どっちが向こうまで早く泳げるかとかガキみたいな遊びして楽しんでたよ

 

「……夕日、綺麗だね」

「そうだな、綺麗だな」

 

 俺達は少しだけ遊び海に入りながら夕日を眺めていた。ちょうど太陽が沈む瞬間、海の中に消えていく光景が目に入る。

 

「……ねえシン君」

「んーどうした?」

 

 こんなロマンチックな展開の時に何を話し出すんだ?

 

「私さ前に言ったじゃん?新しい恋を探すって」

「……ああ、言ってたな」

「……その、ね?恋が見つかったんだ」

「ッ!へ、へーそれはよかったじゃーねか」

 

 それはいいことだけど俺に話すなよ!まだ誰にも恋してない俺が虚しいだろ!?

 

「俺はもう手伝わねーぞ」

 

 もうあんな思いしたくねーしな

 

「わかってるよ、次は自分だけの力でこの恋を成功させる」

「ふっ、そうか」

 

 次は自分だけの力でやってみせろ、んでもってその彼氏さんを俺に紹介して見せろ、その時は俺切れるかもな?

 

「――……だからね」

 

バシャン!

 

「…………ッ!?」

 

 ひまりのやつが俺に抱きつき俺達は一瞬だけ海に沈む、浮き上がると俺が下でひまりが上でひまりは俺にまたがっていた。

 

「シン君…!私は君が、シン君が好きです…!」

「…………は?」

 

 頬を赤くして濡れた髪が俺の顔に当たるほど距離が近く俺はもう動ける状態じゃなかった

 

「う、嘘だろひまり、じょ、冗談よせよ」アハハ

「嘘じゃない、本当だよ…!」

「いやそんな無理し……な!」

 

 ひまりは俺の唇に自分の唇を重ねていたんだ。こないだの蘭とのキスとは違い甘いキスなんかじゃない。海の水のせいなのか、そのキスは…

 

 甘塩っぱかった。

 

「……これで嘘じゃないってわかってくれた?」

 

 ひまりはさらに頬を赤くして、いや頬だけでなく顔全体、耳まで真っ赤だ

 

「――……本当…なんだな、ひまり」

「…………うん」

 

 いやどうする?別に俺は…言っちゃ悪いがひまりに恋愛感情なんた全く持っていなかった。ただの仲のいい友達、それ以上でもそれ以下でもないと思っていた。

 

 だけど…な?さすがに可哀想だろ、だってこの前振られたばかりだぞ?だったら俺は

 

「……いいぜ、付き合「待って!」…」

 

 俺は付き合ってもいいと答えようと思ったがひまりは俺の返事も聞かずに話を止める

 

「返信はいいから…!」

「はぁ!?それだと意味ねーだろ!」

「だ、だから!」

「し、シン君には私を見て欲しいの!」

 

 

「だから、その、これから私を好きになってもらうからね!」

「と、とりあえずシン君のど、どど童貞は私が貰うから!」

「おい!勝手に決めつけんなよ!?」

 

 なんで告白の雰囲気からいつも通りの雰囲気に変わるかな?おかしいだろ!?……でも、それはそれで助かるよ、重い空気になるよりかはましだろ?

 

 それに…一人でも俺のことを好きになってくれるやつがいて俺は嬉しいよ

 

「……いいだろう!」

「俺のことを落とせるものなら落として見せろ!」

「……ッ!うん!」

 

 こうして俺達の五分間は終わりを迎えた。

 

「ねえ腕組んで歩いていい!」

「は!?だ、誰かに見られたら」

「いいの!恋人同士なんだし!」

「おい!……まだ付き合ってねーっての!」

 

 ひまりは無理やり俺の腕に抱きつき歩いている。その際はひまりの大きな大きな胸が俺の腕に当たって…ん?

 

「お前!わざと押し付けてるだろ!?」

「え、え?なんのことかな?」

 

 ひまりさんや!自分のその大きな胸を利用するとはいい考えだな!?まじで付き合おうかな、なんてね

 

「シン君が触りたいって言ったらいつでも触らせるからね」

「ほ、本当か!?じゃなくて!あークソ!」

 

 揉みたい!けど揉んだら揉んだで問題だ!

 

 あるのに!すぐそこにあるのに揉めない!なんて不幸なんだ!

 

「ひまり達どこいるんだ?」

「案外泳いだりしてんじゃね?」

 

 巴蒼汰カップルが俺達を探しに来たようだ

 

「ま、まずいひまり!巴達が来るから離れろ!」

「えーやだよ!もっとシン君とこうしときたい」

 

 ひまりは俺の腕に顔まで付けてきて…お前まじで俺を落としに来てやがるな!?

 

「でも悪いなひまり!」

「……あ!」

 

 俺は無理やり腕を離して

 

「よ、よう巴、蒼汰!」

 

 何事も無かったかのように振る舞う

 

「お!ひまりとシン!探したんだぞ?」

「お前…まさかひまりちゃんに手を出してたんじゃ…」

『……ッ!?』

 

 な、なんだコイツ!でも俺は何もしてないぞ!?

 

「聞いてよ蒼汰君!シン君ってね私の胸を触ろうとして…」

「おい!変なガセを流すな!」

「やっぱりシン君はおっぱい星人ですな〜」

「……も、モカ!?」

 

 巴達の後ろから現れたモカ達は私服姿で水着は着てなかった。もう着替えたのだろう

 

「まあシンは胸が好きなのはもう確定だけどね」

「ら、蘭さん!?全く違いますよ!?」

「あはは、シン君大丈夫だよ、男の子はそうゆうの好きだから」

 

 つぐみがそんなことを言うが

 

「フォローになってねーよ!!」

「あーくそ!不幸だぁぁああああ!!!」

 

 夕方、太陽が海に沈む時シンの叫ぶ声は海まで響いた。




ひまり本格参加です!まあ前の数はあたりから雰囲気出てましたけどね(笑)

さあヒロイン全員登場!これからどうなっていくのか…

次回はひまり視点です!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと上原ひまり

やっぱり難しいね

それではどうぞ!


「――……私と付き合ってください」

 

 私の王子様、それはずっと亜滝先輩だと思っていた。

 

 花咲でのサッカー部の練習をたまたま見た私は先輩に一目惚れした。それからも暇があれば花咲に行きサッカー部の応援を巴や他の子達としていたんだっけ

 

「――……ごめん、ひまりちゃんとは付き合えれない」

 

 亜滝先輩は私の告白を断った…けど

 

「――……知ってました」

 

 私は笑顔で先輩にそう言う。自分でもなんで笑顔なんだろうって思うけどなんでだろう…笑ってたの

 

 本当は泣きたいのに…なのに涙が出ない、なんでだろうね

 

「――……知ってることを知ってた」

「――……あはは、それは知りませんでしたよ」

 

 先輩が知ってるなんてさすがに知らないよ

 

「ひまりちゃんの好きな人って…僕じゃないでしょ?」

「………………」

 

 私はその問に答えることが出来なかった。だって私の好きな人は先輩のはず…なのになんで、なんで

 

「……彼の顔が思い浮かぶんですか?」

 

 わからないよ、なんで私は彼のことを考えてしまうのか…

 

「……弦巻君のことが好きなんでしょ?」

「………………」

 

 やめてよ先輩、名前は出したくなかったのに…なんで言うのかな?

 

「今日も暇があれば彼の話をしてたよね」

「…………ッ!」

 

 ああ、言われてみればそうかも、ずっとシン君の話をしてたっけ?私何やってんだろうね…先輩とのデートなのにシン君の話をするなんて

 

「……好き、なんですかね?」

「……どうだろう、僕はひまりちゃんじゃないしひまりちゃんの気持ちをフルで理解できないからね」

「………………」

 

 先輩が言っていることは正しい、だって先輩は先輩で(ひまり)はひまり

 

「……気持ちの整理はつけてた方がいいよ」

「…………はい」

 

 気持ちの整理…ね

 

「もう帰ろっか、時間も時間だし送るよ」

「……いえ、自分で歩いて帰ります」

「でも」

「いいんです、もし先輩と歩いてたらシン君に勘違いされちゃうので…」

「……こんな時でも彼のことを考えるんだね」

 

 先輩はそう言うと一人で歩いて夢の国を後にした。

 

 私はその後一人で歩いていたけど…やっぱり先輩に振られたことは悔しいかな?

 

 でもまさか彼女さんがいて、それがリサ先輩だったなんて…そんなのかなわないってね…

 

「はぁ、私って不幸だなぁ」

 

 一人で暗い夜道を歩いて帰っていた。

 

 途中でね?シン君に拾われたけど…うん、恥ずかしいし嬉しかったよ

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「お前に敗北者の気持ちを教えてやるよ…!」

 

 朝蘭達と合流するまで私は一人で登校してる時シン君の声が聞こえた。もの陰に隠れて様子を見てみると亜滝先輩、リサ先輩、シン君、この三人が何か話しをしていた。

 

「……あんたをサッカーで、あんたが得意とする競技に勝ってみせる…!」

 

 シン君がサッカーで先輩に勝つ?なんでそんなことに…

 

 ああ、そうか、そうだよね…シン君はお人好しだから私の気持ちを考えてそんなことを言ってるんだね…

 

「……でも無理だよ…!」

 

 先輩にサッカーでは勝てないし私はリサ先輩に負けた。もういいんだよそんなことしないで、結果は目に見えてるんだがら…

 

 でもシン君は本気だった。放課後は巴の彼氏さんと二人で練習をしていて私はそれを遠くから見ていただけ

 

 巴にさりげなく聞いてもはぐらかされる、これはもう確定だよね

 

 だから私は巴に知ってると伝えた、そしたら巴は素直に答えくれてね…次の日私はシン君に話しかけていた。

 

 シン君も全部答えようとはしなかったけど…やっぱり私のためだと思ったよ

 

「(やめてよ、そんなことされたら私…)」

 

「……君のこと本当に好きになっちゃう」

 

 シン君と先輩との試合、最後の最後にシン君は倒れてもう立ち上がりそうにもなかった、けど…!ここで諦めるシン君じゃないと思ったから

 

「………………!!!」

 

 私は叫んでいた。周りにどう思われようとどうだっていい、ただシン君に立って欲しかった…!

 

 やっぱりね、思ったよ

 

「私は……君が好きです」

 

 私の王子様は亜滝先輩なんかじゃなかった…

 

「君だったんだね…シン君」

 

 立ち上がり勝ったシン君は私の視線に気づきグットサインをしてきた。だから私もグットサインをシン君に向けた。

 

 その後シン君と話す機会があったけどその時私は新しい恋を探すって嘘をついてしまった。

 

 本当は君のことが好きなのに好きって言えない私を許してください…

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 太陽が海に沈む黄昏時、私は今までのことを思い出していた。

 

「シン君にはいろいろお世話になったなー」

 

 やっぱりシン君は凄いよ、いろんな人のためにね…私以外の人達だって救ってしまう。

 

「勘違い娘も程々だよねー」

 

 シン君は自分に気があるんじゃ!?って思った時期もあったけどそれは違う、シン君は誰にでも優しく接している

 

「……でも私は好き」

 

 そんな彼が好きで…大好き

 

「……なーにやってんだ、ひまり」

「……シン君」

 

 シン君が急に現れて私の隣に座った。

 

 私は平然を装ってるけど内心はバクバク状態、心臓が口から出るかと思ったよ

 

 つぐみが心配してるってシン君は言うけど…つぐは心配性だからね!

 

 私は少しでもこの緊張感を解すために泳ごうと提案した。我ながらいい言い訳をして泳げたんと思ってる

 

 でも海まで来て泳がないっての本当に損だよね?だから泳いでもいいよね?

 

 シン君と少し泳いで今度は二人で夕日を眺めていた。

 

「……夕日、綺麗だね」

「……ああ、綺麗だな」

 

 もう…そこは私の方が綺麗だねって言うところでしょ?相変わらず君は恋ってのがわかってないよね

 

「私さ前に言ったじゃん?新しい恋を探すって」

 

 前に言ったとか言ってるけどさっき思い出したんだけど…ナイショだよ?

 

「……その、ね?恋が見つかったんだ」

 

 そう、私は新しい恋を見つけた。

 

 その後少し話をしてたけど私はもう気持ちを抑えれずシン君に抱きついていた。

 

 もう君が好き、君がいい、君の隣にいたい…

 

「シン君…!私は君が、シン君が好きです…!」

 

 私はシン君に告白をしていた。ついこの前亜滝先輩に告白したのにね、私ってイケないこ?いやいや、私は本当に好きな人に告白しただけだよ

 

 シン君は信じようとしてくれない、こんなにも頑張ったのにそれは無いよね?

 

 だから私は…シン君の唇を奪った。ちなみにだけど私のファーストキスはこれだからね?シン君はどうだろう?ファーストキスだったら嬉しい…かな

 

 これだけしてやっと本気だとシン君は知った。

 

 でもシン君の返事なんてわかってる

 

 シン君はお人好しだからね、こないだ振られた私のことを気にして付き合ってもいいって答えると思う。

 

 だから私は返事なんていらないと答えた。

 

 だからシン君には私を見て欲しいの…!私は嘘じゃない本当の恋をしたいの、だから…

 

 とりあえずシン君の童貞は私が貰います

 

 好きな人とエッチなことをしたいと思うことは悪いことですか?違うよね、私もシン君に初めてをあげるから初めてをもらってもいいよね?

 

 この恋は複雑な恋、私の恋がこの恋を呼んだ。どんな形であろうとこの恋は間違ってなんかない。私は、私は好きな人をとことん愛します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弦巻シン君……私は君を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――……落としてみせます」




短かったかな?でも許してください、これまでの話から分かる通りひまりとシンは結構絡んでます、今後はどうなるんですかね...

話は変わりますが新作を投稿しました!あえてユーザーページは切ってます。誰かにばれたら公開しようかな...探してみてね!!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと実家帰りは突然に

リアルが忙しいんじゃー!!でも更新する僕!ほめてください(笑)

それではどうぞ!!

急いで書いたから誤字脱字があるかもだけど許してください


 夏休みだからこそできること…そう!夜更かしだ!俺は眠い目を擦りながらずーっとゲームですよ、なんせ明後日からバイト復帰、バイトに戻ったらゲームなんてする力すらねーだろ?だから今のうち進めるってこと!

 

「やっと逆鱗落ちたーいやさすが不幸体質の俺、ゲームでも運がねえな」

 

 ゲームですら運がないとかもう終わりだろそれ…

 

「……一時か」

 

 昼じゃないぞ?夜の一時だ。外はもう真っ暗で車なんて走ってもいない

 

「エナジードリンク買いにいこうかな」

 

 ソファーから立ち上がり財布と携帯、家の鍵を持って部屋から出て近くのコンビニに向かう。

 

 入店すると漫画コーナーには立ち読みをする人がチラホラ、なんならまじまじとエロ本を読んでいる人だっていた。この時間だから恥ずかしくないんだろうな

 

「……うわ、俺の好きな味ねーじゃん!」

 

 いつも買ってるエナジードリンクがない!店員さんに聞くと三時に来るトラックに商品が入ってるとのこと、俺は待てないから違うコンビニに向かうことにした。

 

 違うコンビニなんて近くにあるが…どうせ違うところ行くなら

 

「ここに来たいよな!」

 

 もう数週間と行ってないコンビニ、そう俺がバイトをしているコンビニだ!

 

 足を怪我した俺は治るまで治療に専念しろと言われバイトをしていなかった。多分店長のことだからこの時間もいるはずだ

 

「……店長ーお久しぶ…り?」

 

 お久しぶりと言うとした俺の目の前では

 

「…………シン?」

「お前ナイスタイミングすぎるだろ」

 

 サングラスをかけてるにも関わらずわかってしまうその姿、そんな人にタバコを渡している店長

 

「ち、千聖先輩!?」

「まさかシンが来るとわね…計算外だわ」

「へーお前ら知り合いだったのか」

 

 知り合いだったのか?いやいや!

 

「逆に店長は千聖先輩と知り合いなんすか!?てかお久しぶりですね!?」

 

 なんで店長と千聖先輩が知り合いなんだ!?

 

「久しぶりだな」

「なんでって、この人は私のお兄さんよ?」

「…………ええ!?」

 

 あ、あんたら兄妹だったのか!?いや全然似てないじゃん!

 

「ああ、俺と千聖は母親が違うんだ、腹違いってやつだな」

「ふ、複雑な関係なんですね…」

 

 それはなんか、ごめんなさい

 

「で、私はいつも兄さんからタバコを買ってたってわけ」

「……店長?それ犯罪っすよ?」

 

 未成年にタバコを勧めるだけでもやべーのに売るなんてもっとやばいだろ!?

 

「大丈夫、バレなきゃ問題ない」

「そうですね!?」

 

 やっぱり店長はその言葉を言うと思ってましたよ!?

 

「で?なんだ?お前は明後日から仕事だろ?あ、もう明日か」

「……エナジードリンク買いに来たんですよ」

 

 ドリンクコーナーに向かいエナジードリンクを手に取りレジに向かうが

 

「シン、これを忘れてるわ」

「ん?ああ、コ〇ドームな、いるいる、これないと妊娠しちゃっておい!?」

 

 なんでゴムを買わせるんだよ!使う場面なんてねーのに嫌味ですか!?

 

「ふふ、そうね童貞さんには無理だったかしらね♪」

「……将来待ってろよな!」

 

 クソ!馬鹿にしやがって!

 

「……ええ、あなたが来るのを待ってるわ」

「……ッ!それって、はぁなんで付き合ってくれないんですかねー」

 

 結婚してあげるとか言って付き合わないからな、おかしいよな!?

 

 てかそんな千聖先輩と結婚結婚とか言ってるが

 

「(俺にはひまりもいるんだよな…)」

 

 そう、先日の海にて俺はひまりに告白された。最初は嘘だと思ってたが…キスまでされたらそれは信じるよな!?

 

 いや本当にだよ!なんで俺なんかを好きになったのか、亜滝先輩とかけ離れすぎてないか俺は!?

 

 でもまあ、誰かに好意を持たれることは

 

「――……悪くねえな」

「ん?どうかしたのかしら?」

「……なんでもないっすよ」

 

 あいつが俺を落とすって言ってるのなら俺はその挑戦を受けて立つ、負けたら俺からひまりに告白するさ

 

「(……俺の負けだってな)」

 

 そんなことを考え会計を済ませた。

 

 その後は千聖先輩と仲良く二人並んで帰ってます。まあ同じマンションだし?一緒に帰ってもおかしくないよな?

 

「ねえ少し休憩しましょう」

「え?まだ少し歩いただけですよね?」

 

 コンビニから数分歩いただけ、てかもうそろそろでつく距離だよ?

 

「いいから、夜の公園って行ってみたかったのよね」

「……夜の公園ってなんか怖いじゃないっすか」

 

 小さい頃はみんな暗いところ怖かっただろ?そうゆうことだよ

 

 二人でベンチに座ってたが千聖先輩が急に問題発言をした。

 

「……私の言った通りになったでしょ?」

「……何の話ですか?」

 

 多分あの話だろうが…俺はあえて聞かない

 

「海行った時ひまりちゃんに告白されていたでしょ?」

「………………」

「それにキスもされてたわね」

 

 千聖先輩見てたんかい!?誰もいないと思ってたが見られていたのか…!てかなんでキスした所も見てんだよ!?

 

「反応が薄かったわよね…」

「……ッ!」

 

 千聖先輩は耳元で

 

「ファーストキスは他の子なのかしらね♪」

 

 と囁きふーと耳に息を吹きかけベンチから立ち上がる

 

 まったく、この人には本当にかないっこないよな、一番敵に回したくない人だ。

 

「……まあ誰とは言いませんがね」

「ふーん」

 

 素っ気ない返事をして俺の目の前にやってくる

 

「ねえ、今私があなたの口を奪うと…どうする?」

 

 そんなことを聞いてくるが…答えなんて決まってる

 

「――……結婚します?」

「…………ッ!?」

 

 そう答えた瞬間に千聖先輩は俺の口を奪おうとしてきた…咄嗟のことで目をつぶるが明らかに違う感触が口にはある

 

「……キスはまだお預けよ」

 

 千聖先輩は自分の手を俺の口に置きその上からキスをしていた。何このクソ焦らしプレイは!?

 

「はあ、もう帰りましょうか」

「ええ♪」

 

 千聖先輩とキスなんかしたらそれはもうあれだよな、結婚するって思ってもいいってことだよな?

 

 あーあーあー!考えるな!考え込むな弦巻シン!普段通りにでいいんだよ!千聖先輩はただの先輩!結婚するなんて話は一旦置こう、うん

 

「ち、千聖先輩…」

 

 彼女の名を呼ぼうとした時俺は意識を失いかけていた。

 

「シン?……ッ!あなたは!」

「…………………」

「……ええ、なるほどわかったわ」

 

 薄れていく意識の中で千聖先輩が誰かと話している光景が見える

 

「(――……千聖…せん、ぱい)」

 

 そこで俺は完全に意識を失ったのだ。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 どれくらい時間が経っただろうか、目を覚まし体を起こして数秒で気づく

 

「……家じゃない」

 

 そりゃそうだ、俺はなんせ気を失わされたんだからな?

 

 そして一秒で気づく

 

「って!ここ俺の実家やんけー!!!!」

「しかも丁寧に俺の部屋!よく残してたな!?」

 

 そう、何故か俺は屋敷にいる。しかも自分の部屋!そして隣を見ると何故か制服が綺麗に畳まれて机の上に置かれていた。

 

 制服に着替えてる時に今の状況を確認する

 

 俺のことを連れてきたのは黒服の連中ってことか?なら最後のあのセリフ…千聖先輩は知り合いにあったような話し方だった。

 

 自分の部屋から出て長い廊下を歩く

 

 黒服の人達の中で千聖先輩と仲がいいやつっていたか?てか千聖先輩は無事なのか!?

 

 色々考えた結果

 

「……よし、家に帰ろう」

 

 ここにいても何も意味が無い!だったら千聖先輩の家に行って安全かどうか確かめようじゃねーか!

 

「千聖なら無事だし帰れないと思った方がいいぞ」

「!?」

 

 階段を降りる時上から話しかける少年がいる

 

「――……有翔(ありと)

「俺達幼馴染だろ?再会できてちょっとは喜べよ」

 

 (あくつ)有翔、こいつと俺はどうやら幼馴染のようだ。幼馴染ってのはな、こいつが小六の時からこの屋敷にいるからなんだ。

 

 有翔はお父様に気に入られ黒服の数少ない男として採用されいろいろと教育されていたってわけ、だからこいつとの付き合いは結構長いってこと

 

「たくボスも容赦ねーよな?自分の息子を誘拐して来いって」

「お父様!?なんでそんなことするの!?」

 

 なんで息子をそんなめに!あ、ボスっていうのはお父様のことだ。

 

「お前海外の爺さんの所行ってただろ?」

「ん?ああ、休み貰った。たまにはあいつら(・・・・)に顔見せないとうるさいしな」

「?」

 

 まあいいや、どうせ俺が知らないメンツだろ

 

「……ボスが呼んでる、部屋に行くぞ」

「あーはいはいもう帰れないのは確定なんすね!」

 

 どうやら俺は帰れないようだ。

 

「……ふっ、お前変わったな」

「……うるせえ!」

 

 恥ずかしいからそんなこと言うなっての!?

 

 そこからあまり喋らずお父様の部屋に向かい

 

「俺はここまで、昨日はお前を誘拐してから一睡もしてねーから寝るわ、じゃーな」

「お、おう」

 

 なんかそれはそれで申し訳ねーな

 

 てか今思ったんだけどあいつ学歴はどうなってんだ?まさか中卒とかじゃないよな…ま、まああいつのことだから大丈夫なんだろう

 

「…………!」

 

コンコンコン

 

 ノックを三回

 

「……入れ」

「お、お邪魔します?」

 

 うわ、お父様の部屋とか久しぶりに入ったけど前とまったく変わらないな!ザ・書斎って感じだよな!

 

「どうやら有翔はちゃんとお前を連れてきたようだな」

「……まあ気絶させられましたけどね」

 

 容赦ないよね?てか気絶させるって何やったんだよ!?スタンガンとか使ってないよね!?

 

 バリバリ使ってます。ビリビリ

 

「シン、お前はなかなか屋敷に戻ってこないからな、無理矢理連れてきた」

「……そんなことしなくても盆には帰る予定でしたよ」

 

 まあ嘘じゃない。本当に帰る予定だったしな

 

「盆?それは遅い、今月は色々と忙しいからな」

「……だから帰ってきたくなかったんですよ」

 

 8月…そう8月、察しがいい人ならわかると思うが、いや分かるわけないか

 

「……俺とこころの誕生日会かー」

「そうだ、去年は祝えれなかったからな」

「え?そんなに祝いたかったんですか?お父様」

 

 お父様が俺の誕生日を祝いたい?なんか、うん信じられねー

 

「そのお父様って呼び方と敬語をやめろ、潰すぞ」

「……ご、ごめんなさい!じゃなくてごめん!」

 

 そ、そこまで怒る必要ありますか!?てか敬語使わなくていいとか清々するわ!

 

「お父さ、じゃなくてお父さん?父さん?いや…親父?」

「親父だ、なんだ?」

 

 親父が気に入ったのか?

 

「その、俺が連れてこられた理由はわかった」

「お前は当分帰れないぞ?」

「で、ですよねー」

 

 何となくわかってましたよ、俺は弦巻家のお世話になりたくないって何度も言ってるのにさ!

 

 だがこの屋敷に入ったら終わり時が来るまで帰れないのだろう

 

「いやそれもそうだけど」

 

 他にも聞きたいことがあるんだ。

 

「……なんだ?他に聞きたいことがあるのか?」

「………………」

 

 俺が聞きたかったこと、それは眼のことだ。前に蘭の家で蘭の父さんに見せてもらった親父の写真…それと目の前にいる親父の眼は全く違った。

 

「いや、なんでもない」

「…………まあ聞きたくなったらそのうち来ることだな」

「……はーい」

 

 まあこの数分でだいぶ親父との関わり方はわかったかな?そんなにビクビクせずに接していいのか

 

 親父の部屋を後にしてやることもないし帰れないし部屋に戻って何かないかな探すか

 

「シーーーーーーーン!!!」

「グハッ!!……い、いきなり抱きつくなこころ!?」

 

 長い廊下の向こうから勢いよく走って俺の胸に飛び込んできた弦巻こころこと俺の一応姉さん

 

 抱きつかれるとこころのこころが俺に当たるが…あんた知らないうちにめちゃくちゃ成長してるな!?

 

「おかえり!シン!」

「……ッ!おう、ただいま」

 

 そんな笑顔で言われたらさ?ただいまって答えたくもなるよなー

 

「シン兄ー!!!!」

「つ、次はシンジか!?」

 

 シンジが後ろから俺に抱きついてきて俺はこころシンジに挟まれたサンドイッチ状態だ。

 

「シン兄やっと帰ってきたんだね!」

「まあ数週間だけな」アハハ

 

 数週間経ったらこんな所すぐに抜けて帰るっての!

 

「数週間だけかーでもシン兄と遊べるなら嬉しいよ!」

 

 守りたい、この笑顔!

 

「シンジ私とも遊びましょう!」

「うん!こころ姉とシン兄と一緒に遊ぼうね!」

「そうね!こうしてあたし達が揃うの久しぶりだしきっと楽しいことだらけよ!」

「うん!こころ姉の言う通り!」

 

 おいおい、なーに勝手に決めつけてんだよ…でも、そうだな、たまには家族サービスをするのもありだな!何言ったんだろうな俺は

 

「……久しぶりですねーシン様♪」

「ッ!?」

 

 俺が屋敷に戻りたくなかった理由、それはこいつに会いたくなかったからなんだよ!

 

「あ、アレックス!?」

 

 俺はこころとシンジを無理やり離させアレックスと距離を置く

 

 こいつとは…まあ今は話さないでおこう

 

「大丈夫です、シン様はもう私の対象外ですので」

「お、おう?」

 

 ならよかった!もうあんなことされるのだけは嫌だからな!?

 

「シンジ様♪私と大人の遊びをしましょう!」

「えーアレックスの遊び全然面白くないもん」

「あーいいですその表情!早く食べちゃいたい!」

「アレックスきもーい」

「もっと、もっとですシンジ様ああああああああぁぁぁ!」

 

 こいつはもうダメだ!さっきの対象外の意味がようやく分かった。

 

 アレックスはクソがつくほどのショタコンなんだな!?

 

「ねえシン兄ーアレックスはシン兄がいなくなっておかしくなったらしいよ?」

「大丈夫だ、そのうちなんとかなる」

 

 まあ俺はこいつから逃げ続けたけどな

 

「アレックス!あんまりシンジを困らせないのよ!」

 

 めっ!とか言って珍しくこころが注意してる

 

「いいじゃないですかこころ様!シンジ様の専属メイドなんですからー」

「へー今はシンジの専属なのか」

「昔はシン様の専属メイドでしたが…チッ!食いそびれました」

「おい!お前シンジに手を出したら許さないからな!?」

 

 シンジを守るように抱きしめる

 

 何を隠そうこいつの原因もあって家出したってのもあるがな

 

「シンジ様でシン様の分のリベンジです!」

「だからさせねーっての!!!」

 

 シンジには後で対策方法の作戦会議を行うか!

 

「てか、もう疲れた、お前らの相手するのキツすぎな」

 

 アレックスといい、こころといい、いやアレックスの相手に疲れたのが正しいな

 

「こころーお前の友達がそろそろ来るらしいぞー」

「あ!アギト!ほらシンが帰ってきたのよ!」

「げっ!あ、アギトさん…」

 

 阿木津(あぎつ)夕刀(ゆうと)、略してアギトとこころが名付けた。アギトさんはこころ専属の黒服、まあシンジとアレックスのような関係と言えばわかりやすいだろう

 

「え?てか友達って?」

 

 友達って言ったよな?あれ?なんかめっちゃ嫌な予感がするんですけど!?

 

「ええ!ガールズバンドのみんなで合宿をするのよ!」

「やっぱりそうですよねー!?」

 

 友達って聞いた時からなんかそうだろうなって思ったよ!

 

「屋敷にいても俺はやっぱり不幸だぁぁああ!!!」

 

屋敷にいれば誰ともおわず平和に暮らせると思ったシンだったが…友達が来るのならそれはまた別の話です。




アギトさんの説明全然できてないから次の話で!

僕の新作は見つかりましたか?探してね!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと合宿

急いで書いたので内容が伝わらないかも…ほんと忙しいんすよ、許して!

それではどうぞ!!

なんと投票者数が70人超えました!ありがとうございます!あと少しで赤バーになりますぞ!!


 絶賛屋敷ぐらし中の弦巻シンこと俺だ。屋敷の間はこころやシンジ、アレックスの相手だけでなんとかなると思っていたが…

 

「う、嘘だろ!?本当に来てんじゃん!?」

 

 廊下の窓から外を見てみるとあのガールズバンド集団がぞろぞろ庭を歩いて屋敷に向かっていた。

 

「……僕部屋戻るよ」

「ん?お、おう、だったら兄ちゃんも部屋戻ろっかなー」アハハ

 

 シンジが部屋に戻ると言ったから俺も部屋に戻ろうとする

 

「……待て」

「……なんですかアギトさん?シン君は今精神的に病んでるんですよ!実家にいる時ぐらい平和に暮らさせてくれ!」

 

 一旦活動中止!休憩大事、うん大事!

 

「ほれ」

「っと、なんだこれ?」

 

 アギトさんが布に包まれた何かを渡してきた

 

「もう放置するなよ?お前が思ってる以上に高価なものだからな」

「……ッ!」

 

 中身を見てみると盗まれたと思っていた俺のスケボーがあった。いやまじで盗まれたと思ってたからな、アギトさんが回収してたのか?

 

 ん?待てよ……ってことは?

 

 嫌な予感がするぞ…!

 

「まあ頑張れよ、沙綾だっけか?そいつ正義の味方になるんだろ?」

「ち、違いますからぁぁあ!」

 

 そこだけ聞かれていたか!違うっての!

 

「シン!みんなをお迎えに行きましょう!」

「はあ、やっぱりそうなりますよねー」

 

 こころのやつはみんなが来るからウキウキ気分だしな

 

「では行きましょう!」

「だからアレックスはなんでいるんだよ!?」

「シンジ様が部屋に来るなと言いましたので…アレックスは泣きそうです」

 

 俺はあえて何も言わずに無視してこころの後ろを着いていく、よく良く考えればこいつの相手をするから疲れるんだ。必要最低限の話さえしなければ問題ない

 

「それよりシン様ー」

「………………」

 

 無視だ!

 

「シン様ってまだ童貞なんですかー?」

「……ッ!?」

 

 な、何言い出してんだよこいつは!?

 

「そうでしたか、やはり小さい頃に襲っとくべきでしたね…だったらこんな童貞に育つことなんてなかったんですかね」

「べ、べべべ別に悲しくねーし?俺にだって女を選ぶ権利があるんだよ!」

 

 あ、反応してしまった…!あークソ!こいつの相手は本当に疲れるよな!?

 

「シンジ様は大丈夫なので安心を!」

「なわけあるか!安心なんてできねーっての!」

 

 シンジ!何がなんでも絶対に俺の歳まで生き延びるんだぞ!お兄ちゃんはお前を応援しております!

 

「アギト!部屋の準備はできてるのかしら?」

「んー多分、俺ずっと本読んでたし」

「だったら大丈夫ね!」

 

 いや意味わからん!こころさん話聞いてた!?アギトさんはずっと本読んでたって言ってたよね!?なんでそこから大丈夫って考えが出てくんだよ!

 

「またしょーもない本ですよ、シンジ様には見せれませんね」

「いや知らねーよ」

 

 どんな本とか別に興味ないから

 

「……黙れショタコン、いい歳した女なんだからそろそろ卒業したらどうだ?」

「ふっ、どこぞの祖チンよりシンジ様の方が太くて硬いですよ」

 

 おいおいお前まだ手を出してないんだな!?

 

「黙れ貧乳、貧乳が祖チンとか言っていい単語じゃねーんだよ」

 

 や、やめろよそうゆうみっともないことで争うなっての!てかなんでそんな話になるんだよ!

 

「なにを!私だって上げて!寄せれば…!」

 

 変わらない胸

 

「…………ふっ!」

「わ、笑いましたね!?許しません!騎士の恥です!だいたい騎士に胸なんていらないんですよね!?」

 

 アレックスの家は代々から引き継がれている騎士の家系らしい、そのため小さい頃からブシドー間違えた、騎士道を叩き込まれているって話を小さい頃聞いたと思う。多分な!

 

「何が騎士だ?今はただのショタコンメイド、俺にすら勝てないだろ?」

「言いましたね!?我が家に伝わる流派、いや!アレックス流を見せてやりますとも!」

 

 どこから取り出したかわからんが木刀を手にしてアギトさんにそれを向ける。てか騎士とか言いながら木刀使うんすね

 

「俺はいいや、有翔とやってこい」

「……わかりました!有翔の所に行ってきます!!」

「だからなんでそうなるんだよ!?」

 

 今まで黙っていたが我慢の限界で突っ込んでしまった。

 

「あいつ今年で成人だろ?大丈夫なのか?」

「アレックスはいざとなれば頼れるから頼もしいのよ!」

「……そーすっか」

 

 まあ有翔、アレックスの相手を頑張るんだな

 

「それでは改めてみんなの迎えに行くわよ!」

 

 こころのその一言で俺とこころとアギトさんは玄関に向かっていった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「こころんの家は庭には入ったことあるけど屋敷の中は初めてかも!」

「そ、そうだな、あたし達が入ってもいいのか?」

「大丈夫だよ人間みんな一緒、私達が入っても問題ないよ」ドヤ

「で、でも大事なツボとか割ったら…」

「あはは、それは弁償かもね」

 

 香澄と有咲がそんな会話をしながらPoppin’Partyチェックイン

 

「(ここでシンは育ったんだろうなー)」

 

 そう思う沙綾だった。

 

「おーここが将来モカちゃんが住む家ですかー大きいな〜」

「それは無いから」

「そ、そうだよ!シン君が選ぶんだよ!?」

「つぐーあいついるかもな?」

「う、うん」

 

 上からモカ、蘭、ひまりが話しながら入ってきてAfterglowはチェックイン

 

「こ、これがシン君の実家かーあ!あ、挨拶とかしないといけないのかな…」

「確かにこの家だとシンが嫌になる意味も分かるかもしれないわね」

「やっぱりこころちゃんの家って凄いなー!もう玄関からるんって来るよ!」

「素晴らしいです!フィンランドの実家を思い出します!」

「ええ!?イヴさんの家ってこんなにも大きいんすか!?」

 

 それぞれかそれぞれの話をしながらPastel*Palettesチェックイン

 

「いやーまさか友希那が合宿のおっけーするなんてね!」

「……別に、たまには練習場所を変えるのもいいと思っただけよ」

「それもそうですね、確か設備も整えるとの話でしたので期待できま「おねーちゃん!」こ、こら日菜!」

「ねえりんりん!屋敷の探索とかしていいのかな!?」

「ふふ、ネル〇ガンテの痕跡とかあるかもね」

 

 最後はよくわからん話をしていたがRoseliaチェックイン

 

「わ、私達はもう慣れたよね?」

「うん!でもかのちゃん先輩今日も道迷ってたよね?」

「ふぇ、ふぇ〜」

「まあ花音さんは…うん、はぐみよろしく」

「ああ、やはりこの屋敷は落ち着く、屋敷が私を呼んでいるのだろうか…儚い」

 

 屋敷ではなくこころが呼んでいるがハロー、ハッピーワールドチェックイン

 

 あの一言いいですか!?君達話なげーから!

 

「みんないらっしゃい!ようこそだわ!」

「…………おーす」

 

 俺は元気がないような声で挨拶をする。

だってさ!?こんな屋敷出身のやつだと思われたくないじゃん!いやもうバレてるけどさ!けどそれは違うやん!?

 

「あれ!?シン君もいる!」

「お前屋敷には戻らないんじゃなかったのかよ」

「…………何も聞くな」

 

 市ヶ谷さんやめてください!恥ずかしいので!

 

「シン君の実家に来ちゃったね〜」

「……モカ、まあそうだな」

「やっぱり結婚する〜?」

「だからしないって!」

 

 なんで毎回毎回聞いてくるんだよ!?

 

「じゃーあ私は!」

「……ッ!?ひ、ひまりは…」

「……ごめん」

『(き、気まずい…!) 』

 

 こないだの件以来会ってなかったからな、その…な?なんて対応すればいいかわからないんだよ

 

「あらあら、大変ね」

「千聖先輩!よかった、本当に無事だったんですね!」

『……ッ!?』

 

 千聖先輩が俺のことをからかいに来たがそんなのはどーでもいい!千聖先輩が無事だったことに喜び手を握っていた。

 

「ええまあ会いたくない人にはあったんだけどね…」

 

 ん?有翔と面識があるのか?いや今思えば有翔のやつ千聖先輩のこと千聖って呼び捨てにしてたからな、知り合いの可能性大だな

 

「それといつまで握ってるのかしら?」

「……ッ!す、すみません!」

 

 俺は急いで手を離すが

 

「そうだよシンはあたしの手を握っとけばいいんだよ」

「ら、蘭さん!?そ、そうはならないかと!?」

 

 蘭が俺の手を握ってくる

 

 蘭も蘭でその、な?いろいろとあって…本人は覚えてないような感じだったしな、俺だけが意識してるだけのんじゃね?

 

「じゃーモカちゃんは抱きつく〜」

「お、おいモカ!?」

 

 こいつは行動が本当にわかんねーな!

 

「え!?じゃ、じゃー私は」

「無理すんなひまり!」

「……なに?私には近づくなって言いたいのかな?」

 

 そ、そうじゃないのに!あーもう!

 

「本当に不幸だぁー」

 

 両手に花?そんなの憧れねえっての!そうだな、香澄と香澄が両手にいたらソレは幸せだと思うけどこの状況はきついんだよ!

 

「………………」「………………」

 

 そんななか遠くからシンを眺める二人

 

「……彩先輩はいかなくてもいいんですか?」

「え!?え、えーと、そういう沙綾ちゃんは?」

 

 そう、彩と沙綾だった。

 

「彩先輩ってシンのこと好き…なんですか?」

「……ん!?きゅ、急になにかな!?」

「……あはは、冗談ですよ冗談!」

「も、もーう!沙綾ちゃんってそんな冗談言う人だってけ?」

「すみません、ずっとシンを見てたからそうなのかなーって」

 

「(本当は大好きだけどそんなこと言えないよ…)」

 

「(彩先輩は恐らくシンのことが好きなんだ…)」

 

『ふふ』

 

 二人とも頭の中で考えていたが不意に目が合い笑うことでその場を過ごそうと思っていた。

 

「みんな!それぞれ部屋があるからそこで練習できるわよ!」

 

 こころが大声で言い出した所で

 

「では向かうわ、早速練習開始よ」

 

 Roseliaは早速練習を行うようだ。

 

「僕は邪魔になるからここに残るよ」

「ッ!?」

 

 あ、亜滝先輩!?あんたいたのかよ!

 

「俺も巴達の邪魔になるしな、亜滝先輩と遊んどくか」

「蒼汰!」

 

 え!?お前ら揃っていたのかよ!

 

「にしてもシンの家ヤベーな」

「やめろ、本当はまだ帰ってくるつもりじゃなかったんだよ」

 

 本当は盆に帰るつもりだったんだよなー有翔さえいなければこんなことには…

 

 と、思っていたら

 

「だから近づくなってー!」

『!?』

 

 あいつの声がするんだけど

 

「何故です!そろそろどちらが上かを決めましょう!」

「俺は寝たいんだよ!休ませろこのクソショタコン女!」

「ああー!また馬鹿にしましたね!許しませんから!」

 

 屋敷を走り回る有翔とそれを追いかけるアレックス、てかアレックス本当に有翔の所行ってたんだな、なんかすまん

 

『有翔(あーくん)!?』

「え?」

 

 ん?なんでモカ達が反応してるんだ?え、もしかして…

 

「……!お前ら」

 

 有翔は逃げてる途中で止まり彼女達を見るけどさ…やっぱりそうだよね!?有翔が言ってたあいつらってモカ達のことだったのか!

 

「あーくん久しぶり〜元気してた〜?」

「あーくんだ!帰ってきてたんなら連絡してよね!」

「………………」

「おお!有翔久しぶりだな!」

「……ッ」

 

 モカとひまりと巴は有翔の元に行き話しかけるが蘭とつぐみはその場から動かない

 

 蘭に関しては興味なさげだったが…つぐみに関しては顔を赤くしてずっと下を向いている

 

「夏の間だけ帰ってきたんだ、まあそのうちあっちに戻るけどな」

「そうなんだ〜」

 

 やっぱり有翔はあっちの屋敷に帰るのか、あーあっちの屋敷ってのは爺さんの家な

 

「!」

 

 有翔のやつはつぐみのところに向かい

 

「……ただいま、帰るの遅くなったな」

 

 頭を撫でていたんだけど…まさかつぐみの彼氏って!

 

「……あ、有翔だったのか!?」

 

 う、嘘だろ!?なんで有翔なんだ!?もっと別のまともな人だっているだろ!?俺とか!は、さすがに冗談だ

 

「大丈夫だよ?そんなシン君でモカちゃんは結婚するので〜」

「今だけは助かったかもしれない!」

 

 普段は何言ってんだよ!ってなるけど今回だけはなんか助かった

 

 その後つぐみと有翔は二人で話していたがつぐみの笑顔見ると本当に有翔のことが好きだから付き合ってんだなって思ったよ

 

 でも遠距離恋愛ができるってすごくね?俺なんて多分だけどその人を好きになって付き合ったらずっと一緒にいたいって思うからな

 

「わかるぞシン、俺だって巴と離れたいとは思わないさ」

「……そーですか」

 

 リア充に同情なんてされたくねーわ!

 

「僕もリサとは離れたくないけど湊さんがね…厳しいから仕方ないよ」

「先輩も先輩で苦労してんだな!」

 

 湊さんがいたら練習中とか一緒にいられねーだろうな!

 

「あれ?あれあれあれ!なんと美竹さんじゃないですか!」

「……ッ!?あ、アレックスさん!?」

 

 今まで黙ってたアレックスが蘭を見た瞬間に声を上げ話しかけていた。

 

「へーシン様とお友達だったんですね」

「……喋ったら殺す」

 

 うわ!蘭さん怖いなおい!殺すとかそんなこと言うなよな!

 

「ら、蘭とアレックスはなんで知り合いなんだ?」

 

 だって接点がない二人だろ?知り合う理由って何があるんだ?

 

「それはですね、実は美竹さんは…」

「アレックスさん!」

「もう隠さなくてもいいじゃないですか!いっその事うちではたら」

「だから黙っててください!」

 

 んー意味がわからんな!

 

「……クッ!」

「な、なんですか蘭さん!」

 

 蘭がこちらを睨んでくるが俺は何もしてないぞ!

 

「シンはアレックスみたいなメイドがす、好きなの?」

「な、なわけないだろ!でもアレックスじゃなくて他のメイドなら行けるかも!?」

 

 何言ってんだよ俺は!?

 

「でしたら美竹さん!やはりうち」

「あーもう黙ってくださいアレックスさん!」

 

 だからさっきからなんの話しをしてるんだよ!モカはなにか察したようでずっとニヤニヤしてるしひまりはひまりで俺の手を握ろうと近寄ってくるし、巴とつぐみは彼氏とイチャイチャしてて!

 

「だから合宿なんて嫌だったの!」

「もう不幸だぁぁぁあああ!!」

「蘭さん待って!それ俺のセリフ!!??」

 

 頭を抱え叫ぶ蘭に対して大声でそのセリフは俺のだというシンだった。




登場キャラが多いと書きにくくなりますよねーこの合宿編は苦戦しそうです(笑)

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと双子の悩み

双子とゆうことで彼女の話です

それではそうぞ!

アンケートがありますのでお答えしてもらうと助かります


 合宿、とゆうことだからなのかみんなは真面目で部屋に入りバンドの練習をしているようだ。男子達はバンド活動のバの字もしてないため適当な部屋でくつろいでた。

 

「第一回男子恋バナ会議!!」

 

 と蒼汰が言い出して恋バナの話になった。

 

「…………不幸だ」

 

 参加者は恋人がいない俺とアギトさん、そして彼女持ちの蒼汰、亜滝先輩、有翔だ。

 

「やっぱり自分の彼女が一番だよな?」

「うん、リサは本当になんでもできる、結婚したいね」

 

 クッ!な、なんなんだよこいつらは!?

 

「つぐみはまじで可愛い、ずっと一緒に居たいが俺も仕事があるからな」

 

 腕を組んで有翔は答えるがこの歳でその話をするのは違うんじゃないかと思うぞ?

 

「あ、遠距離恋愛って実際どうなんだ?」

 

 それは俺も気になってたな!

 

 ん?なんで俺は会話に参加しないのかって?参加しても意味ねーだろ!俺には彼女がいないんだよ!

 

 見てみろアギトさんを!ずっと本を読んでるぞ!でも本は本でもエロ本だけどな!?

 

「俺はキツくないぞ、だって我慢すればそのうち会えるだろ?」

「……なるほど、距離があるこそ二人の仲が深まるのか」

 

 いや何納得してんだよ亜滝先輩!?てかこの男子の恋バナの需要性ありますか?いらないよね!?

 

「アギトさんは彼女いないんですか?」

 

 蒼汰がアギトさんに聞くと

 

 エロ本を閉じ真顔でこう答えた。

 

「……彼女はいないがセフレはいるぞ」

「こいつまじで何人もいるから」

 

 有翔は親指でアギトさんを指して言うが…彼女じゃなくてセフレがいるって

 

「お、大人ですね」

 

 亜滝先輩ちょっと引いてるぞおい!?

 

「てかシン、さっきからなんで話入ってこないんだ?」

「……ッ!」

 

 そんなの考えればわかるだろ!?

 

「やめてやれって、彼女がいない弦巻シン君なんだからさ」

「おい有翔!てめぇつぐみと付き合えてるからって調子乗るなよな!」

 

 俺の天使を奪いやがって!だが安心しろ、俺にはnew天使、香澄!がいるからな!?

 

「でもお前モカやひまりとは仲良さげだったじゃねーか」

「うぅ」

 

 痛いとこついてくるなこいつは

 

「そうだよ、ひまりちゃんとは今どんな感じなんだい?」

 

 亜滝先輩がなんでひまりのことを聞いてくるかわからんが…有翔が名前出したからか?

 

「……別になんでもねーよ」

 

 本当になんでもないんだ。ひまりは俺のことが好きで俺を落としてみせると宣言しただけ、別に付き合ってるわけじゃないし彼氏面する必要もないしな

 

「へー彼女作らねーの?」

「……作れるなら作っとるわ!」

 

 いや普通にひまりの告白を受け入れたら晴れて俺はひまりと恋人、彼女はひまりになるさけどそれは違うだろ!大体女子から告白されて付き合うとか俺は、うん、好きになった人には自分から告白するさ

 

「彼女いたらいたで面倒いだろ?俺はまだ女遊びしとくよ」

「アギトさんは程々にな…」

 

 病気とかになったらやべーだろ

 

「んじゃ俺はもう話すことないし適当にぶらついとくよ」

 

 なんだかんだ言って屋敷に帰ってきたのは久しぶりだしな、あいつにも顔見せておかないと

 

「じゃあ俺達はまだ少し話しとくぜ」

「リア充はリア充同士で仲良くしとけ!」

 

 俺は部屋を飛び出し外に向かったのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 弦巻家の庭はめちゃくちゃ広い、なんせ大きな桜の木があれば森林もあり、そして池もあるからな!昔はよく釣りをしてたもんだよ

 

「……うわ、ここクソ懐かしいな」

 

 そこだけ地面の色が少し違うところは俺にとっちゃ懐かしい思い出、てか思い出したくないな

 

 昔有翔と俺でめちゃくちゃ深く穴を掘って落とし穴を作ってアレックスを落とす予定だったんだよ

 

 ほら?アレックスってあれじゃん?だから俺らが呼べばすぐに来ると思ったから作ってたんだよ

 

 そした何故かアギトさんが落ちてな?俺らは出てきたアギトさんに穴へ落とされ上から砂をかけられていたんだ…

 

「今思い出すとめちゃくちゃ怖いな…!」

 

 思い出なんかじゃねえ、死にかけた話だな

 

 とまあなんだかんだ言ってここは俺が育った場所ってことにはかわりがないんだよ

 

「なんだお前帰ってきてたんか」

 

 この話してるやつこそ外にまで出て顔を見せてやろうと思ったヤツだ

 

「お前こそまだくたばってなかったのか…タマ」

 

 そう、俺の目の前にいるのは

 

 喋る犬だ

 

「まだまだ死なんわ、わしは世界一幸運の犬だからな!」

「……あっそ」

 

 何故喋るのか…それは過去の出来事だ

 

「犬さんに言葉を教えたらお話ができるわ!」

「さっそく犬さんに言葉を教えましょう!」

 

 小さい頃こころがこんなことを言い出したまたま産まれたばかりの犬、名前はあとから着いたがタマがいたため実験台となった。

 

 結果は言葉を覚えることがなくこころは諦め普通にタマを育てる話になった。てか犬なのにタマって…どこぞの声優さんが付けたのだろうか

 

 話は戻るが実験は失敗、と思ったがこいつがまた賢くてな?

 

「わしが喋れるのバレたら面倒いだろ?」

 

 とか俺にほざきやがり俺の前でしか喋らないんだ。だからこころやシンジと遊んでいる時は普通にワンワン!って犬みたいな鳴き方してたな、いや犬なんだけどさ

 

「……よっと」

「おい頭の上に乗るなよ」

 

 こいつは俺の頭の上が落ち着くとか言っていつも登ってくるんだ。

 

「わしが人間の年齢だとこのくらいの目線やろうな!」

「それは無い、お前は俺よりチビだろ」

 

 こう見えても結構俺は身長あるぞ?180はねえけどな!

 

「んで?久々にわしにあっての感想はないんか?」

「…まあ元気ならそれでいいさ」

 

 頭の上にタマを乗せたまま庭を歩く

 

「最近は旦那さんが餌を持ってくるんや、なんか怖へん?」

「あーわかる、なんか怖い人が動物に優しいとかなんかな、ギャップ萌え狙ってのかね」

 

 動物が好きとか可愛いかよ

 

「誰がギャップ萌え狙いですって?」

「……ッ!お、驚かすなよアレックス」

 

 この流れで聞かれたら親父だと思うだろ!?

 

「友達がいるのにお話しなくていいのですか?」

「ん?あーいやこいつの相手があるし」

 

 俺は上乗せているタマを指さして言うが

 

「そんなクソ犬なんてほっといていいんですよ」

「なんやて!?わしは立派な弦巻家の犬じゃ!」

「お、おい!?お前喋ってもいいのか!?」

 

 俺だけしか知らないんじゃないのか!?

 

「……それー」

「わーい♪」

 

 アレックスはポケットから骨を取り出し投げた先にタマは走っていった。

 

「あの犬が喋れることぐらい知ってますよ、私を誰だと思ってるんですか」

 

 腰に手を当ててドヤっているが

 

「……ショタコンメイド?」

「ああ!!シン様も馬鹿にしましたね!許しませんから!」

 

 木兎を取り出し俺に構えてくる。いや待って!さすがに俺に向けるのはやべーだろが!

 

「わ、悪かったから!その木刀をしまえ!」

「……わかればいいんです」

 

 その後犬の相手はアレックスがするといったため屋敷に戻ったシンだった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 屋敷に戻りぶらぶら歩いていたが

 

「……腹減ったな」

 

 腹が減ったもんだからキッチンに行ったらなに食べるものがあるんじゃないかと思って行ってみたが…なんか高級そうな肉やベーコン、何を食べていいかなんてわかりゃしない

 

「おっ、じゃがいもあるじゃん!」

 

 じゃがいもはさすがに食っても大丈夫だろう!じゃがいもで手軽に作れて小腹を満たすもの!

 

「あれしかねーよな!」

 

 家でも時々作るからな!料理できない俺でも作れる料理だってあることを教えてやるよ!

 

 じゃがいもいい感じに細く切り小麦粉を付けて油で揚げる、こんな簡単ことで

 

「フライドポテトの完成だ!」

 

 キッチンにて一人でフライドポテトを作り食べていた。まあ別に一人で食うことは慣れてるもんですよ、なんせ一人暮らしなんでね!

 

「……弦巻君?」

「さ、紗夜先輩!?」

 

 キッチンの出入口からひょいと顔を出して俺に見つかったからなのか顔を赤くしてキッチンに入って来た。

 

「こ、こんな所で何をしてるんですか?」

「……見ての通りっすよ、腹減ったからフライドポテト作って食べてたんすよ」

「ふ、フライドポテトですか…」

 

 いや待て

 

「なんで紗夜先輩はキッチンに?」

「……ッ!?」

 

 だって今Roseliaは練習中じゃないのか?いや休憩中か?それでもキッチンの来る理由にはならないかと

 

「た、たまたまです!偶然通りかかったらポテトの匂いがしたから寄ったわけではありませんから!」

「……そうですか!ならこのポテトはいりませんね!」

 

 何となくわかったぞ、紗夜先輩はフライドポテトが好きなんだろう!だってポテトの匂いがしたから寄ったわけでありませんってそれはもう好きって言うてるもんやん!

 

「つ、弦巻君一人じゃその量は食べれないと思うので私もて、手伝います」

 

 おいおいあんた可愛すぎんか!?

 

「……紗夜先輩可愛い一面あるんですね」

「……ッ!か、かか可愛いですか?」

 

 なー!!しまった!また心に思ってることが口に出してしまった…!もう何度同じミスすれば気が済むんだよ!?

 

「なんでもないです…早くポテト食べましょうか」アハハ

「そ、そうですね」

 

 二人で向かい合って座りポテトをつまんで食べていた。

 

「!驚きました、普通に美味しいですね」

 

 一本食べると紗夜先輩は驚き美味しいと言ってくれたがポテトなんてぶっちゃけ味変わらないだろ

 

「ま、まあ俺の料理テクニックがいいってことさ!」

「ふふ、そうかもしれませんね」

「……ッ!」

 

 そ、その反応はないっすよ紗夜先輩!?

 

 その後紗夜先輩はゾーンに入ったのかポテトをパクパク食べていて俺は食べることをやめその姿をずっと眺めていた。

 

 なんとゆうかこうゆう見た目の人が実は食いしん坊だってパターンはなんか可愛らしいよな?それに初めてじゃね?俺の料理美味しいって言ってくれた人は

 

 前蘭に飯作った時、あれはやばかったからな…

 

 紗夜先輩がポテトを全部食べ終え

 

「すみません…!私、そのポテトになるとつい…」

「別にいいっすよ、俺は少し食べれたんで」

 

 まあ言うて食べてないけど別にいいさ

 

「本当すみません…」

「だから大丈夫ですって!あ!」

 

 そうだいいこと思いついた!

 

「紗夜先輩!許しますから連絡先教えてくださいよ!」

 

 俺は携帯を見せつけ紗夜先輩に連絡先を聞く

 

「……それぐらいで許してくれるなら教えますよ」

 

 やったね!これで紗夜先輩の連絡先ゲット!連絡するかわからんけど持ってて損は無いだろ!

 

「その携帯…白鷺さんのサインが描かれているんですか?」

「いやこれは掘られてるんですよね!」

 

 今のところ世界にひとつだけの携帯だぜ!

 

「話は変わりますが…」

 

 ん?なんの話をするんだ?

 

「その、一つ相談をしてもよろしいでしょうか…」

「え!?別にいいですけど…」

 

 いいけど俺なんかでいいのか?もっと別の相談できる人がいるんじゃないのか!?

 

「日菜のことで、弦巻君も弦巻さんと双子ではないですが」

「はい、そうですね」

 

 それは君が俺でさんがこころってことでいいんだよな?

 

「同じ双子として育った弦巻君に聞きたいことがありまして」

「まあ俺達は双子の姉弟で紗夜先輩達は姉妹ですけどね」

 

 漢字にしないとわからねーっての

 

「弦巻さん、つまりこころさんのことを嫌いになったこと…などはありますか?」

 

 紗夜先輩はそう質問してきたが俺はその質問に対して具体的な意味はわからなかった。けど質問されたからには正直に答える

 

「……ええ、大っ嫌いでしたね」

「……ッ!」

 

 紗夜先輩は一瞬安心したような顔が見えたが俺が続けて答える

 

「でも今は嫌いじゃないっすよ」

「……そうですか」

 

 確かにこころは小さいころぶっ飛んでて俺は苦手意識があった。けど残念ながらこころの背中を見て成長してきた。この事実だけは変わらない

 

 いつしか俺はそんなこころを、弦巻家を嫌って屋敷を抜け一人で生活をしていた。

 

 でもな?いざ帰ってさ?こころとシンジと話してみてさ…やっぱり家族って大事なんだって、姉弟って大事だなって思ったよ

 

「俺は紗夜先輩とは立場が逆です」

「………………」

「俺は弟でこころが姉、紗夜先輩は紗夜先輩が姉で日菜先輩が妹」

 

 もし俺が兄でこころが妹だったらと考えよう。兄より勝る妹がいると思うと…な?多分だけど紗夜先輩はその話をしたくて相談したのかもな

 

「一度嫌いになったけど…」

「やっぱりこころのことを俺は嫌いになれなかった」

「………………」

「なんだかんだ言ってこころのことが好きなんすよ、俺は」

「…………ッ!」

 

 自分で笑顔で答えてるってわかってる。紗夜先輩から相談されたはずなのになんで自分語りなんてしてんだろうか、俺はアホか!てか恥ずかしいわ!?

 

「やはり双子でも育つ環境が違ったらそれぞれ思いは違うんですね」

「……紗夜先輩は日菜先輩のこと嫌いですか?」

 

 俺は似たような質問を返す

 

「私は、私は自分の真似をする日菜が本当に大っ嫌いでした…!」

「………………」

「なんで私が姉なのか、日菜が姉で私が妹だったらどれだけ気が楽か…」

 

 確かに姉には姉のプライドがあるだろうさ、けど俺は

 

「俺は紗夜先輩が姉だったからこそ今の氷川姉妹があると思いますよ?」

 

 他者が姉妹の問題に口を出すのはよくないと思うが…相談されたからにはいいよな?

 

「妹ってのは姉の姿を見て成長するんです」

 

 俺はこころの背中を見て成長してきたしな

 

「もし姉が日菜先輩だったら今の紗夜先輩はいないと思います」

「……ッ!?」

 

 あんなのが姉だったら紗夜先輩もワンチャンあんな性格になってたかもしれないだろ?

 

「だから紗夜先輩が姉でいいです、紗夜先輩が姉じゃなきゃダメなんですよ」

「……才能のない所詮秀才の私がですか?」

 

 秀才ね…そんだけでも十分すごいと思うけどな

 

「姉妹構成に天才も秀才も関係ない!先に生まれたのが姉で後に生まれたのが妹、それだけです!」

「……ッ!」

 

 本当にただそれだけ

 

「大丈夫ですって紗夜先輩、俺はどちらも凄いと思いますから」

「例え周りが紗夜先輩ではなく日菜先輩がすげーとか言っても…」

「俺は紗夜先輩の味方ですし紗夜先輩推しを貫きます!」

 

 俺何言ってんの!!??馬鹿じゃね!?

 

「そ、それは…あ、ありがとうございます」

「……は、はい」

 

 でもまあ紗夜先輩の味方とか言っちゃったら日菜先輩の味方になれないって訳じゃない、二人とも、いや日菜先輩はそんなこと考えなくてもあの精神力なら大丈夫だろう

 

「………………」

 

 その後紗夜先輩は黙り込み少し考え込んで口を開いた。

 

「……どうやら私も弦巻君と同じみたいです」

「いろいろ考えましたが血が繋がった妹を嫌うことなんて…やはりできませんね」

 

 紗夜先輩も笑顔でそう答える。

 

 双子は悩みが多いって話をよく耳にする。それは本当だ、どれだけ悩んだことか…けどさっきも言ったが結局は好きなんだよ、紗夜先輩も、俺達はそうやって成長するんだ。

 

「双子が生まれる確率なんてそうそう高くない、そんな中双子として産まれた俺達にはなにかあるんですよ、きっと」

「……ええ、私はこれから、いやこれからも日菜と真っ直ぐ向き合って話して行けたらいいなと思います」

 

 なんだろう、めっちゃ真面目な話をしてしまったな!?

 

「その言いにくいのですが…」

「なんですか?」

 

 まだ相談があるのか?

 

「実は私パスパレの方達とあまり面識がないんです」

「……ん?」

 

 えっと、彩先輩と千聖先輩とは同じ高校だよね?しかも彩先輩に関してはクラスを同じだろ

 

「日菜が所属しているバンドなのにまったく絡んでなくても大丈夫なのでしょうか」

 

 手を顎につき考える紗夜先輩だけど

 

「ま、まあそれは、ほら!この合宿中に仲良くなればいいんじゃないんですか!?」

 

 我ながらいい考えだと思うぞ!

 

「……なるほど、確かにその方が良さそうですね、暇があれば声をかけようと思います」

「はい!その方がいいですよ!」

 

 これで仲良くなったらいいんだけどな

 

「今日はありがとうございました。弦巻君のおかげでこれからは前に進めそうです」

「……いえいえ、俺も紗夜先輩のおかげで気づいたことたくさんありますしね」

 

 相談された側なのに色々と気付かされたしな

 

「またポテト作ってください、いつでも食べに行きますから」

「は、はい!ま、待ってます?」

 

 やっべ!フライドポテト作りの練習を本格的に始めなくては!

 

「では失礼します、実家生活を楽しんでください」

「……まあ楽しめれる範囲で」

 

 紗夜先輩はキッチンを後にして言ったところで

 

「……またやらかした」

 

 両手で顔を抑え完全に後悔モード突入、なんであんなセリフポンポン湧き出るかな?俺やばくね?なにこころのこと好きって!

 

「ほーへーシンはこころのこと好きなんだあー」

「……!?み、美咲!じゃなくてミッシェル!」

 

 キッチンの出入口に立っているピンク色のぬいぐるみ、つまりミッシェルが立っていた。

 

「み、美咲?いいか?今日聞いたことは絶対こころに話すんじゃないぞ!?」

 

 バレたら恥ずかしくて死んでしまう!

 

「美咲?誰かなそれー私はミッシェルランドからやって来たミッシェルだよー」

「わかった、わかったから一旦話を聞けミッシェル!」

 

 今にも走り出しそうなミッシェルさんを説得してその場に止めようとするも

 

「あー!もうこんな時間だーそろそろこころ達の所に行かないとー」

「……じゃーねー」

「お、おい待てミッシェル!ミッシェル!ミッシェルさーん!!」

 

 ミッシェルはそのまま走ってどっかいったが俺は諦めねーぞ!あんな着ぐるみ走って追いつくわ!

 

「追いついたぞミッシェル!……なっ!?」

 

 曲がり角を曲がったところでミッシェルを何故が見失ってしまった。

 

「……クソがー!絶対こころの所には行かさねーからな!?」

 

 屋敷を走り回り最後の最後にこころ達が居る部屋に着いた。ここで待ち伏せしてたら来るだろうしもう既に中にいるかもしれない、そのどちらか

 

「……俺は自分が幸運者だと思い込む!」

 

 そんなことを言ってドアを開けるが時すでに遅し

 

 ミッシェルのやつがこころに耳打ちでなにか話しているところだった。

 

「……まあ!シンがそんなことを!」

「そうだよーあ、ほら、会いに来てるよこころー」

「み、ミッシェルさん?ま、まさかね!そんなことしないよね!?」

 

 美咲!?お前俺の友達だよな!そんなことするわけないよな!?

 

「シン!あたしもあなたのこと大大大好きよ!」

「ああぁぁあー!!やっぱり不幸だぁぁぁあああ!!」

 

 姉にはバレたくないことをミッシェルにバラされたシンの声は屋敷に響くのであった。




どうだろう、紗夜さんもifルートですかね…ヒロインの話書けよって思いますよね!ごめんなさいいい!!

タマのせいでシンが後で地獄を見ることになるんですよね…乞うご期待!!

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンによる弦巻家の紹介

最近オリキャラが登場しすぎて誰が誰だとわからないと思ったので簡単にまとめました。

紹介だけなんで短いです!


 一旦落ち着こう、Staycool…

 

 俺の家、つまり弦巻家に関しての登場人物が多すぎる件についてだ。みんなにも、あ、みんなっていうのはモカ達を含めたガールズバンドのことを指してるからな?

 

 まず一人目

 

 弦巻こころ

 

 俺の姉であり思考がぶっ飛んでるやつ、今はだいぶ落ち着いたが昔は本当にやばかったからな?ちなみにだがこころは自分の島を所持しており時々船に乗り遊びに行くとのこと、その船もスマイルゴーとか訳分からん船の名前だけどな

 

 二人目

 

 弦巻シンジ

 

 俺の唯一無二の弟だ。こころとは違い俺に似たのか無茶なことは言わないいい子ちゃんだ。だがそれが故に引っ込み思案でな…

 

 シンジは生まれつき左右眼の色が違っていたんだ。オッドアイってやつだよ、シンジはそのことを意識して片方の髪を伸ばし親父の眼、つまり赤色の瞳を隠して生活をしているんだ。俺は気にするなって言うが…本人が気にするもんだからな、まあ何とかするさ

 

 三人目と四人目

 

 俺の親父とお母様?いや母さんでいっか、親父はとにかくやばい、本当にやばい、数ヶ月前なんてビビって生活してたレベルだからな!?あのいかつい眼、かないっこないっての…

 

 実は親父には秘密があるようなないような…蘭の父さんに親父が学生だったころの写真を見せてもらったが…眼が違ったもんだからな?それはそれは驚いたよ

 

 母さんとは最近絡んでないがとても仲がいい、俺が家を出ていく時も最後まで俺を止めようと頑張ってたが俺はそんなの気にもとめず家を出ていったんだ。

 

 まあ、なんだ、今は屋敷にいるしちゃんと顔見せるよ、それに久しぶりに親の味ってやつを再確認しときたいだろ?母さん特性のカレー楽しみにしてるぞ!

 

 五人目

 

 (あくつ)有翔(ありと)

 

 俺の幼馴染、簡単に言うと天才君だ。なんでもできて小さい頃から俺よりも何歩も先に行くすんごいやつだった。

 

 それを見込まれ、てかそれ目的で弦巻家に拾われ小六の時から俺達の屋敷にいるんだ。

 

 どうやら有翔はモカ達と幼馴染らしくてな?それにつぐみの彼氏、本当なんでコイツなんだ!?って思ったが…つぐみが選んだんなら有翔には俺の知らないよさがあったんだろう

 

 それに何やら千聖先輩と面識があるようだ。千聖先輩は会いたくないやつにあった的な発言をしていたから恐らくこの二人の関係性はなにか問題があるのだろうか…

 

 六人目

 

 阿木津(あぎつ)夕刀(ゆうと)

 

 こころ専用の黒服さん、通称アギトさんと俺らは呼んでいる。まあこころが名付けたんだけどな

 

 いつもスーツを来ているがいつもエロ本を読んでいる、それも堂々とな!けどさすがに外にいる時にはそのようなことはしないようだ。

 

 俺らがまだ小さい頃にこころがアギトさん拾い専用の黒服として雇ったようだが…俺にも知らないことだらけで謎の存在、とりあえず切れると怖いってことだけはわかる

 

 最後の一人

 

 アレックス・アラル

 

 元俺の専属メイド、現在はシンジの専属メイドだ。海外の大きな騎士の家系に生まれ小さい頃から剣の稽古を受けていたため剣の実力だけは確かなものだ。

 

 だけどこいつはクソが着くほどのショタコンなんだよ…俺も小さい頃は何度襲われかけたことか!だからシンジ!お前は必ず兄ちゃんと同じ歳まで生き延びるんだぞ!!

 

 あ、ごめん一匹を忘れてた。

 

 犬のタマ

 

 こいつは世にも珍しい喋る犬だ。こころが…確か小六頃か?有翔が君数日前家に来たような来てないような…んでこころがタマと名ずけ言葉を教えた喋らず実験?は失敗と思ったが…

 

 こいつがまた喋れることを隠していたんだよな!そして今では何故か俺とアレックスの前では話すようになった。

 

 歳はそうだな…まあいい歳なんじゃね?知らんけど

 

 まあこれが弦巻家だよ、そりゃー嫌になるよな?なるよね!?俺の気持ちわかってくれたかみんな!

 

「じゃあモカちゃんが結婚したら弦巻家の一人になるね〜」

「……お前が入ったらもう本当にやばいからな!?」

 

 たまたま部屋に来ていたモカがヤバすぎる発言をしていた。

 

「いやいや〜やっぱり結婚する〜?」

「だから結婚しないからぁぁあああ!!」

 

 部屋にシンの声が響くだけだった。

 

「その後モカちゃんとシン君はハッスルするのであった〜めでたしめでたし」

「やらねーよ!?てか童貞の俺に無理言うなよ!?」

「妊娠したら責任取ってよね〜?」

「お前もう出てけよー!!!」

 

 ちゃんちゃん




余談ですが有翔とアギトさんは僕の他作品のキャラです。詳しく知りたい人は見てみてください、まあ書き方とかは気にしないでね…

え?千聖さんヒロインなんですか?まじか…理由を感想で聞かせてください(笑)

いや六人はキツイと思いますよ!?僕やっていけるか心配です。意見待ってます!


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弦巻シンと兄弟

兄弟とゆうことで今回のスポットは…

それではどうぞ!!

誤字が多かったので訂正しました。


 こころ事件の後部屋にて待機していましたが途中でモカがやって来てな…相手をするのが大変だった。

 

 まあいくつか話をしてその後は

 

「パンがモカちゃんを呼んでいる〜」

 

 とか訳分からんことを言い出し俺の部屋をあとにした。

 

 まあその前から結構やばいこと言ってたけどな、あいつ…

 

※前話のことです

 

 部屋に一人でいるのも退屈だったためテレビの方へ向かうと何故かゲーム機があり、そして俺のゲームデータもあってだな!

 

「……だー!クソ!コイツ勝てねえよー!」

 

 家でやっているゲームを実家の屋敷でしていた。

 

「……ってちがーう!!」

 

 いや家と変わらんやんけ!?わざわざ戻ってきてまでゲームとかアホかよ俺!?でも暇なんだよ!

 

「まあコイツの攻略は会長にでも聞こう」

 

 幸い屋敷内の何処かにはいるからな!攻略方法さえ聞けばあんなやつ一落ちもせずに攻略できるっての!

 

「そうとなれば会長探しだ!」

 

 シンは勢いよく部屋を飛び出し屋敷内の何処かにいる会長こと白金燐子先輩を探すのだった。

 

「Roselia、Roseliaの部屋っと」

 

 Roseliaの部屋の前にやってきたが中からいかにも練習中ですよって音が聞こえてくるため今は諦め後で聞くことにした。

 

「……まあRoseliaの練習なんか止めれないよな」

 

 止めたら湊先輩からなんと言われるやら

 

 その後屋敷内をウロウロしていると

 

「……!こ、この匂いは!」

 

 昔の懐かしい匂いがした。この匂いは忘れない俺が小さい頃からの大好物

 

「お母様特性のカレー!」

 

 キッチンに付き俺はそんなことを言って姿を現すと

 

「あらシンさん、おかえりなさい♪」

「……ただいま、お母様、いや母さん」

 

 親父が親父と呼べって言ってたからな?お母様を母さんと呼んでも別にいいよな?

 

 母さんが料理を作る光景、俺とこころはいつも母さんの後ろから今日はどんな料理が作られるんだろうって楽しみしにしながら眺めていた。

 

 そんな光景が今も目の前にあるって言うのは俺達が変わっても母さんは変わらないって事なのかな?

 

「シン様遅いです!このカレーは私のものですからね!」

「お前はどこにでも居るなアレックス!?」

 

 さっきから毎回毎回お前は登場するよな!?なに!お前まだ俺に気があるのか!?

 

「アレックスいるところに弦巻家ありです!」ドヤ

「……逆だ逆」

 

 逆でもないかもしれん

 

「まあまあアレックスちゃんの分もあるから安心してね♪」

「わーい奥様大好きです!」

 

 お前はガキかよ!?

 

「てか今年で二十歳だろ!?そんなんでいいのかよ!」

「二十歳?知りませんね!私は永遠の十代なのです!」

「意味わからねーよ!」

 

 あーほんとコイツまじで意味わからん!!

 

「せっかくシンさんが帰ってきてくれたから私も気合い入れないとね♪」

 

 母さんは袖をまくりガッツポーズをしてカレー作りに専念する

 

「もう最近は黒服の人達に料理を作って貰ってたからだいぶ腕が鈍ってるわ」

「……まあ大丈夫でしょ、どんな料理でも喜んで食べますよーだ」

 

 久しぶりに母さんの料理が食えるならそれに越したことはない

 

「そう言えば蘭ちゃんは来てるのかしら?」

 

 そこでなんで蘭の名前が出るかをあえて聞かない

 

「……いるけどなんの話しをするんだ?」

「それはもちろん式の話しよ♪」

 

 で、ですよねー!まだ忘れてませんよね母さんは!

 

 ああ式って言うのはな?俺と蘭の結婚式の話だ。まあなんでこうなったかの原因は読んでくれればわかる、うん何言ってんだ俺は

 

「はあ…だから蘭とは結婚しないっての」

「なんでよ!蘭ちゃん可愛いじゃない♪」

 

 いや可愛いよ、可愛いけど

 

「……あいつ料理できねーもん」

 

 前にも言ったが俺は料理ができる人と結婚したいんだ!理由は単純、俺が料理できないからだ!

 

「わかったわ!じゃあ母さんが料理を一から叩き込むわ!」

「や、やめてあげて!蘭さんの作る料理は全部ダークマターになりますからね!?」

 

 母さんは知らないんだよ!俺が何度気を失いかけたことか、いや!気を失った時もあったな!

 

「ダークマターとかそんな二次元みたいなことがあるわけないじゃないですか、シン様はアニメの見すぎです」

「……いやお前は知らないんだよあの恐怖を」

 

 アレックス、お前も食べればわかる

 

「私はもう高級料理でしか腹を満たせれない体に改造されてしまったので無理ですね!」

「……あっそ」

 

 もうやだ、コイツの相手めんどいよ!

 

「あ、アレックスちゃん、シンジくん呼んできてくれる?そろそろご飯だってね♪」

「…………ッ!」

 

 ん?なんだアレックスやつ急に顔から元気が無くなったようにしゅんとなって

 

「……その実はシンジ様は部屋から出たくないと言ってまして」

「あらあらそれはどうして?」

「……なるほどな」

 

 何となく理由はわかった。

 

「……ガールズバンド集団がいるからだろ?」

「……恐らく」

 

 シンジは人見知りプラスあの見た目、オッドアイである自分が嫌だから周りに見られたくないと思ってるから部屋から出ないと言ってるんだろう

 

「今日の夜ご飯は家族みんなで食べようと思っていたのに…」

 

 母さんは見るからにとても落ち込んだようにそう言っていた。

 

 俺が屋敷を出ていき家族揃ってご飯なんてもう一年以上食べてないのだろう

 

「……それも伝えたのですが出たくないと」

 

 あいつ…どこまで頑固なんだ?って俺も言えたことじゃないか、俺は逃げたけどシンジは逃げてない、それだけであいつはまだ俺よりマシだな

 

「言っては悪いですがこのままだと前のシン様みたいに…なってしまうのではないかと」

「…………それはないな」

 

 俺は知ってるぞ、あいつには友達がいるってことをな

 

「俺とあいつは環境が違う、俺と同じになることはないだろう」

 

 前にプールであった時呼ばれていたからな、あれは友達だろう、だから…

 

 友達がいなかった俺とは違うってことだ

 

「……さてと、久しぶりにシンジと遊んでくるか」

 

 シンジとはまったく絡んでなかったからな、たまには兄貴らしいことしてやらないと嫌われちまうだろ?

 

「シン様…悔しいですがアレックスにもできないことがあるようです」

「ですのでどうかシンジ様を…」

「わかってるって、お前とは嫌な思い出しかないけど一応世話になったしな、そのお礼だよお礼」

 

 こうでも言わないとコイツは落ち着かないだろ?だからそう言ったんだ。

 

「じゃっ!行ってくる」

 

 キッチンを後にしてシンジの部屋に向かう。今夜は家族みんなで食べたいとのことだから何がなんでも俺はお前を連れていくぞシンジ!

 

「……あの子ったら本当にあの人似だわ」

「まあ旦那様の息子なんで」

「……さあ!私達は料理を作りましょう!」

「はい!私は机で優雅にお茶でも飲んで待ってますね!」

 

 おい!お前さっきまでのしょんぼりはどこいったんだよ!?と遠くからシンが叫んでいた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 シンジの部屋の前にやって来たが部屋からは特になんの音も聞こえない。何をしてるのか気になるがそんなことよりシンジを連れ出さないといけないな

 

コンコンコン

 

「……シンジー兄ちゃんが来たぞー」

 

 ドアをノックし話しかける

 

「……シン兄?」

「そうお兄ちゃんだぞ、シンジがかまってくれなくて拗ねそうなレベルまで来てるんだが」

 

 返事をしたシンジに俺はそう言う。まあ嘘ではない、シンジと絡んだのは挨拶して少しお喋りしただけだ。だからまじで絡んでないから拗ねるかもな?

 

「……母さんが家族みんなでご飯食べたいだってさ」

「………………」

「部屋にいないでさみんなでご飯食べようぜ?」

 

 これだけで出てきてくれたら気が楽なんだけどな

 

「いやだよ、今屋敷には他の人達がたくさんいるもん」

「……気にすんなってそれぐらい」

「気にするよ!」

 

 俺は気にするなって言ったが…シンジは俺が思ってる以上に気にしてるようだ。

 

「どうせみんな僕の眼を見て馬鹿にするんだ!ちゅうにびょう?なにそれ知らないよ!」

「僕だって好きでこんな眼になってるわけじゃないのに!」

「………………」

 

 やっぱりその眼のことか…どうしてシンジだけが左右対称の瞳を持って生まれたかなんて知らない、なんなら親父の眼も俺はかなり気になってるが…そんなのは後回しだ。

 

「あの人達だって僕の眼を見て笑うんだよ…!落ち着けるのは純君や紗南ちゃんといる時だけ!」

「……純?紗南?」

 

 どこかで聞いたような…って!

 

 沙綾の弟と妹とのことか!え!?シンジ面識あったのかよ

 

 いやそれは今どうでもいいんだよ

 

「……なんでそいつらといると落ち着くんだ?」

「……二人は僕の眼をカッコイイって言ってくれたんだ」

「だから、笑われないから落ち着く…」

 

 なんだよそれ…簡単なことじゃねーか

 

「シンジ、俺もその眼はカッコイイと思うぞ?」

「……嘘だ!話を聞いたらからそう言えばいいと思ったからそうい」

「違う!」

「……ッ!」

 

 俺がシンジの話を遮るように怒鳴ると話が止まった。

 

「急に怒鳴って悪かった、でも本当に違うんだ」

「……シンジ、お前のその眼はとてもカッコイイんだ」

「親父はカッコイイだろ?」

「……お父様はカッコイイよ」

「そうだろ?」

 

 親父のことカッコイイと思うなら話は早い

 

「だったらその眼を受け継いだシンジ、お前もカッコイイってことだろ?」

「……ッ!でも、片方だけ、どうせなら両方がよかったよ」

 

 まあ確かに両方の方がカッコイイかもしれない、けどさ

 

「ばーか、片方だけだから更にカッコイイんだよ」

「オッドアイが馬鹿にされる?ダサい?」

「アホか、そいつらも兄ちゃんと同じ歳になるとオッドアイカッケー!とか言うようになるんだよ」

「……本当に?」

 

 まあ一部の人だけだが嘘ではない!オッドアイがカッコイイってのは王道なんだよ!

 

「いいかシンジ!人と違うことを気にしてたって意味が無い!」

「その違いってのがお前を特別にするんだ!」

「……ッ!」

 

 そのあれだ、金持ちとか抜きでの話だぜ?

 

「そんな人の目ばっかり気にしてたら楽しくないぞ?」

 

 かなり前、モカに同じようなことを言われた気がする。

 

「……人生一度切りだ、楽しまなきゃ損だぞ?」

 

 ってな

 

「笑って、泣いて、生きていこうぜ?な?」

 

 これはそこから俺が見つけ出したことだ。人生笑って、時には泣いて、そうやって成長して生きていくんだ。

 

「……それに俺の友達はお前のこと馬鹿にしねーよ」

「……本当?」

「本当も本当!シンジのことを馬鹿にしたやつがいたら俺がそいつを馬鹿にしてやるしボコボコにしてやる!」

「兄ちゃんこう見えて結構強いんだぜ!」

 

 もし本当に馬鹿にするやつがいたら俺は許さないけどな?だって弟が馬鹿にされて切れない兄なんていないからな

 

ギイ

 

「……ほ、本当なんだよね?」

「シンジ!」

 

 シンジが自分で部屋から出てきてくれたんだ!もう無理だったら無理矢理連れていこうと思っていたが自分から出てきたくれて助かった!

 

「……ッ!シン兄その眼!」

「ん?ああ、なんか開眼した」

 

 ってのは冗談でカラーコンタクトを付けただけ、黒服さんに聞いたら何故か持ってると答えたから借りたんだ。

 

「どうだ?カッコイイか?」

「う、うん!シン兄のその眼カッコイイと思う!」

「だろ!だからシンジ!お前のその眼、本物の眼は更にカッコイイんだよ」

 

 所詮こっちはカラコン、だけどシンジ、お前の瞳は本物だ。ちゃんとカッコイイことを自覚するんだな

 

「ほらシンジ!久しぶりに肩車してやるよ!」

「……久しぶりにって初めてだよね?」

「さあ?いいから早く乗れよ!」

 

 俺はシンジの前で屈んでおりそういいかけシンジが俺の首もとに座る

 

「……じゃあ走るぞシンジ!」

「うわっ!?シン兄はやーい!あはは!」

 

 やば!俺めっちゃいいお兄ちゃんキャラじゃん!好感度上がりすぎて辛いわー

 

 すみません調子乗りました

 

「はあはあはあ、も、もういいかシンジ」

「えーもっと走ってよ!」

「さ、流石に兄ちゃんもう限界っすわ」

 

 シンジを下ろしてその場に座り込む、前にサッカーのために走り込みして体力そこそこついたと思っていたが少し間を開けるだけでこのザマか!毎日走れってことかよ!

 

「……よし!夕食食べに行くか」

「うん!」

 

 回復した俺は立ち上がりカラコンを外しシンジと手を繋ぎキッチンへ向かう。

 

「あ〜シン君だ〜」

「ッ!?」

 

 モカが俺の名前を呼んだ途端シンジのやつが反応して俺の後ろに隠れる

 

 目の前には何故かガールズバンドの集団がいやがる

 

「みんなでファミレスに行くの!シン君も来るよね!?」

 

 ひまりが俺に近づき話しかけてくるけど…ちょ、ち、近いから!?胸当たってますから!?

 

「……ひまりこころの話聞いてなかったの?」

「え?な、なにが?」

「今日は家族でご飯食べるんだよ、また今度な」

 

 前までひまりの目を見て答えることができていたのに今は目を合わせることすらできない…いやだから意識しちゃうんだって!?あ、あんなこと言われたら誰もがそうだろ!?

 

「そっか…じゃあ今度は二人っきりでご飯食べようね?」

「……ッ!そ、そうだな」

 

 俺ご飯食べれるのかな?

 

「……ら、蘭姉ちゃん」

「!シンジくん、こんばんは」

「……えへへ」

 

 後ろにいたシンジだがどうやら蘭とは仲がいいようだ。まあ前にあったしな

 

「あれ!もしかしてシン君の弟君!?」

「……ッ!」

「あっ」

 

 か、香澄ー!お前が叫ぶからシンジがビビって隠れただろ!蘭も自分が嫌われたのかって勘違いしてるぞ!?

 

「ああ、俺とこころの弟シンジだ」

 

 軽くシンジの自己紹介をした。

 

「こんにちは!じゃなくてこんばんは!」

「こ、こんばんはです」

「……へー珍しいな、オッドアイなのか?」

「……コク」

 

 市ヶ谷さんの問にシンジは頷く

 

「だったらオッちゃんと友達だねーあ、オッちゃんってゆうのはオッドアイのうさぎだよ」

「……オッドアイのうさぎ?」

「うん、今度見せてあげる」

 

 お、おたえー!お前結構子供を手なずけるのが上手いんだな!お、驚いたよ

 

「シンジ君…間違ってたら悪んいだけど純と紗南って子知ってるかな?」

「……!知ってる!友達!」

 

 あーやっぱり沙綾の所でもシンジの話を耳にするのか?

 

「やっぱりそうなんだ!いつも純と紗南がお世話になってます」

「……お姉ちゃん名前なんて言うの?」

「ん?私?私は山吹沙綾、純と紗南のお姉ちゃんだよ」

「……沙綾お姉ちゃん、お世話になってるのは僕の方だよ」

「……そっか、だったら今度伝えとくね♪」

 

 流石沙綾!同い歳の弟がいるだけ手馴れてる!

 

「な?みんないい人ばかりだろ?」

「……たまたまだよ」

 

 うう、まだ信じないのかよ!

 

「見てみてりんりん!あの子オッドアイだよ!」

「……ッ!」

「大丈夫だって、最後まで話を聞け」

 

 シンジはまた俺の後ろに隠れようとするがそれを止め話を聞くよう説得する

 

「とっってもカッコイイよね!いいな!あこもオッドアイになりたいなー!」

「こないだなってたよ?あこちゃん?」

「あれ?そーだっけ?」

 

 なんかよくわからん話をしてるがあえて無視しよう

 

 その後たくさんの人がシンジの存在に気づき話しかけてくる、だけど誰一人としてシンジの眼のことを馬鹿にすることは無く、逆にカッコイイの意見の方が多かった。

 

「これでわかっただろ?みんないい人達ばかりなんだよ」

 

 なんせ俺の友達と知り合いだ!いいヤツらに決まってるってな!

 

「……うん!みんないい人だし…僕なんか自信がついたかも!」

「そうか!?それは兄ちゃん嬉しいぞ!」

「もう……周りの目なんて気にしない!僕は僕でみんなはみんな!」

 

 シンジ…!お前成長したな!いやまじでさ!急成長すぎるだろ!?

 

 でも…本当によかったよ、もしこのまま行ってたら俺と同じになっていたかもしれない。俺はただ嫌なことから逃げて今とゆうこの環境を手に入れることが出来た

 

 けどシンジがそうとは限らないだろ?お前は現時点で友達がいる。俺とは違う環境だからこそお前は俺みたいになってはいけないんだ。

 

 今この時に友達がいることに感謝しながら生活を送りな、シンジ…

 

 

 

 

 

 

 その後少し落ち着いたところで

 

「シンジ君〜お兄ちゃんをモカちゃんにくださいな〜」

「お前はなーに言ってんだよ」

 

 モカがシンジに俺をくれと言っていた。シンジ一人で決める話じゃねーだろってな!?

 

「え?シン兄の婚約者って蘭姉ちゃんじゃないの?」

『………………』

 

 シンジはしまった!と思ったのか口を急いで抑えるが時すでに遅し、もうシンジが言った言葉はみんなに聞かれている

 

「よ、よーしシンジ、兄ちゃんと夕食食べに行こっか」

『待って(待ちなさい)』

 

 俺は制服を捕まれ動けない状況だ。

 

 恐る恐る後ろを見ると

 

 モカ、ひまり、沙綾に彩先輩、それと何故か千聖先輩もいた。

 

「シン君どーゆうことか説明してくれるかな〜?モカちゃんの脳がちょっと追いつけないって言ってるの」

 

 めっちゃ笑顔でいいますやんモカさん!?

 

「ら、蘭と結婚するってど、どどどうゆうことなのシン君!?」

 

 ひ、ひまり落ち着けよ!お前が動揺する理由は一番わかるけど落ちつけ!

 

「シン…私だけの正義のヒーローになってくれるんじゃないの?」

 

 な、ならないから!前にも言ったけど俺はみんなの正義の味方になるんですよ!?

 

「ちょっと、うん、モカちゃんと同じで私も理解できないかな…一から説明を要求します」

 

 そのアイドルスマイルで言うのやめてくれ彩先輩!?

 

「あらあら?まさか既に他の人と婚約してるとは聞いてないわよ?」

 

 顔が笑ってるが目は笑ってない。これはやばい、確実に説教確定だな!?

 

「てか蘭!?お前もなんとか言えよ!?」

「……なに?あたしとは結婚したくないの?」

 

 なんでお前までそっちの味方に!?

 

「か、香澄!助けてくれ!お前ならわかってくれるはず!」

「蘭ちゃんとお幸せに!」グッ!

 

 グッ!じゃねーよ!なにグットサイン出してんだよ香澄!助けてくれないのかよ!?

 

「おたえー!お前と俺との絆はかなり深いはず!助けてよ!?」

「そうだよ、なのにシン君はまた私以外の人達と浮気を、じゃなくて不倫を」

「だぁー!やっぱりお前使えねえ!!」

 

 そうだ!

 

「み、美咲!」

「……知りません」

 

 なっ!?お、お前まで俺を裏切るのか!?裏切るとかじゃないかもしれんがな!?

 

「シン!やっぱり蘭と結婚するのね!これで蘭も家族の一員ね!」

「ややこしくなるからこころは話に入ってくるなよ!!!!」

 

 く、クソ!俺の見方は誰もいないのか!?

 

「あーもう!!不幸だぁぁあああ!!!!」

 

 シンジの爆弾発言により一気に地の底まで落ちたシン、次回シンの運命はいかに!




さあ波乱ですね(笑)乞うご期待!

最近全くバンドリの二次創作が読めてないのでお勧めの作品を教えてくれると助かります。書き方の勉強にもなりますからね、まあ読む暇あれば書けって話ですけどね(笑)

あと少しで赤バーなんです!是非清き投票よろしくお願いします!!

では次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと花嫁候補

久しぶりです!なんと赤バーになってました!僕の作品に投票してくれた方達本当にありがとうございます!!これからもまだまだ続きますのでよろしくお願いしますね!

それではどうぞ!!


 捕まったシンはどこかの部屋へ連れていかれファミレスに行く予定だったガールズバンド集団はどうするかと話し合っていた。

 

「――……その!シン兄はえっと、違って!ぼ、僕が勝手に…」

 

 シンジがシンの好感度を下げないよう必死に言いかけるが…

 

「……わかってるって、あいつがそんなことできるわけねーだろ?…変態だけど」

 

 口を開いたのは他の誰でもない有咲だった。普段シンのことを嫌っているくせに何故か誰よりも早く発言をしていたのだ。

 

「まあ大方シンとこころのお母さんが勝手に言ってるだけですよ、あの人のことなんで…」

 

 美咲が更にフォローをする

 

「でもシン君不倫したよ?これは問題だよ」

「……花園さんは一体どっちサイドの住人なのかな?」アハハ

「え?花園ランドの住人だよ?」

「あーはいはい…」

 

 呆れた美咲がおたえの返事を流すように答える

 

「弦巻君はああ見えて結構頼れる人です、市ヶ谷さんの言ってることは確かですが流石に美竹さんに婚約をする…」

「おー紗夜詳しいね!もしかしてシンのこと好きなのかな?」ニヤニヤ

「なっ!?ち、違います!私は!」

「お姉ちゃんシン君のこと好きなの!?えー!意外だなー」

「……あなた達ー!!」

 

 シンのフォローをしようとした紗夜だったがリサと日菜にからかわれて顔を真っ赤にして二人を追いかけていた。

 

「大丈夫だよシンジ君!みんなそんなに気にしてないから!」

「……うん!香澄お姉ちゃんありがとう!」

「……ッ!!その香澄お姉ちゃんってもう一回言ってくれる!?」

「か、香澄お姉ちゃん」

「もう一回!」

「香澄お姉ちゃん!」

「……もう「もういいだろ!?」」

 

 お姉ちゃんと呼ばれる嬉しさを知った香澄はシンジに何度も呼ぶよう頼むが途中で有咲に止められる

 

「とりあえずご飯食べに行こうよ!後で彩ちゃん達に連絡すればよくない!わーい!」

「こら!日菜ー!待ちなさい!」

 

 日菜と紗夜はそのまま走って外に出ていき

 

「そうです!腹減っては戦はできぬ!ご飯を食べましょう!」

「イヴさんこの後一体何と戦うんですかね…」

 

 その後ガールズバンド集団はこころの屋敷を後にしてファミレスに向かった

 

「みんな!必ず帰ってくるのよー!」

「……さて、シンジ!私達も食事に行きましょう!」

「シン兄大丈夫かな…僕のせいで」

「大丈夫!あなたの兄さんを信じなさい!」

「……信じるもなにも、うーん」

 

 こころとシンジは手を繋ぎ屋敷のキッチンに向かって行った。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 何故こうなった!

 

 絶賛シンは6人のヒロイン(・・・・・・・)に囲まれ正座なうの状況

 

「……で、説明してもらってもいいかしら?」

 

 千聖先輩が笑顔で言うが前も言ったように目が笑ってない…!

 

「信じてもらえないと思うけどこれには色々と深い事情があるんですよ…」

 

 や、やばい!千聖先輩との結婚の話が無くなってしまう…!それだけは嫌だって、それもそれでおかしいと思うけどさ!

 

「話聞くから言ってみてよ?ね?シン」

「……話すぞ」

 

 俺はなんで俺と蘭が結婚することになったのか、それの話を一からしてやった。なんせ一から説明を要求します…って彩先輩から言われたからには全部話すさ!

 

「と、ゆうことで結婚することになったんだ」

『………………』

「俺は悪くない!俺は悪くないんだ!わかったか千聖先輩とひまり!?」

 

 一番切れているであろう千聖先輩とひまりに俺はそう答えるが

 

「なんでひーちゃんと千聖さんだけに言うのかな〜?」

「……何か秘密があったり?」

「確かに千聖ちゃんがここにいる理由って……なんだろう?」

 

 モカと沙綾と彩先輩がそれぞれ発言するがそこでやらかしたと思ったよ

 

「もしかしてひまり…シンに告白でもした?」

『!?』

 

 ら、蘭さん勘が鋭すぎやしませんか!?で、でもここでバレたら更に厄介になる!

 

「な、何言ってんだよひまりが俺に告白?するわけないじゃん、俺のこと好きになるやつなんてこの世にいないっての」

 

 うわ、自分で言ってて悲しくなってきた

 

「……モカちゃんはそうお」

 

 モカが何か発言しようとした時

 

「シンさーん!ご飯ができましたよ♪」

 

 母さんがこの部屋にやってきたんだ!どうやっていくつもある部屋から俺がいる部屋を引き当てたのか聞きたいがとにかく今は助かった!

 

「息子の居場所ぐらい把握できとかないとね♪」

「あらあら蘭ちゃん!!」

 

 母さんは蘭を見つけた途端抱きしめていた。

 

「お、お義母様く、苦しいです」

『お義母様?』

 

 この状況でその言い方は良くないだろ蘭…

 

「式はいつにしようかしらね♪」

「……そうですね、なるべく早い方が」

『待って!!』

 

 ま、まあそうなりますよね

 

「ん?まあまあこの可愛子達はなんなのかしら!」

「はっ!?もしかしてシンさんの花嫁候補の方達なのかな!?」

「か、母さん落ち着けって!」

 

 母さんが興奮しすぎてもう手に負えないかもしれない…

 

「みんな可愛いわね!でも私は蘭ちゃん推しかしらね…けどみんなも頑張るのよ!」

「そうだわ!蘭ちゃん今度料理の勉強をしましょう!私にかかればすぐに上達するわ!」

 

 お、おい!まじで蘭だけには料理を作らせるなよ!母さんの命が危なっての!

 

「……お願いします!」

 

 なんで乗る気なんだよ蘭のやつは!

 

「蘭だけいいな〜」

「……今のところ蘭ちゃんがみんなより一歩先に出てるってことだね」

「うう、蘭いいなーもう家族と仲良くなるなんて凄いよ」

 

 な、なんの話しをしてるんだよあんたらは!?

 

「シンジ君と仲良いし大丈夫だよね?」

「……俺に聞くなよ沙綾、てか今の若干おたえっぽかったぞ?」

「え?そうかな…その方がシンも絡みやすい?」

「なわけ!沙綾は今の沙綾が一番だっての!」

「……ッ!」

 

 沙綾が変わってしまったら困る、それにあんなおたえみたいなやつになったらなおさら困る!

 

「まあ最後に決めるのはシン、あなた本人よ?」

「誰も選ばなかったら私があなたを貰うだけ」

「……まあ考えときます」

 

 ひまりのこととかあるしな…一体どうなるのやら

 

「まあモカちゃんには奥の手がありますので〜」

「脅す考えとかやめとけよ?親父にはぜってえ敵わないから」

「大丈夫だって〜この世にはできちゃった結婚って言葉があるからさ?」

「や、やめて!何しようと考えてるの!?ねえ!」

 

 俺は自分の息子を抑えてモカに叫ぶが冗談冗談と言って笑っていた。いやまじで冗談だよな!?

 

「し、シン君はその、私とは結婚したくないのかな!?」

「あ、彩先輩までそんなこと言うんですか!?もちろん喜ん……はっ!」

 

 喜んでと言うとした時後ろから視線を感じて振り返る

 

「……ち、違うぞ!そんな、な?簡単に決めないってひまり!」

「キャラが被ってるから余計に拗ねちゃうよ?」

 

 な、何の話だよひまり!?

 

「まあ式の話はまた今度ってことで」

「なんで結婚する気満々なの蘭さん!?」

「……ッ!べ、別にシンのためじゃなくて、そう!お義母様のためにだよ!」

「なんだよそれ!?」

 

 本当に何それ!?母さんのために結婚?意味わからんわ!

 

「とりあえずシンさんモテモテね!」

「これのどこか、不幸だっての…」

 

 女子に囲まれた中で正座させられる?これのどこがモテモテなんだよ!?普通はすんごい椅子に座って、足組んで、片手にワイン持って周りに女子がいる!これがモテモテじゃないのか!?

 

「もうみんな可愛いわね!いっそのことみんなと結婚するって考えもあるわよシンさん!」

「……だからまだ結婚しないからー!!!」

 

 シンの叫びによりお説教?は幕を閉じた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 モカ達から最後は解放され今は母さんと一緒にクソ長い廊下を歩きながらキッチンに向かっていた。

 

 今更だけどキッチンで飯食うのか、あの飯食う専用の広い部屋はどうなったんだ?

 

 まああそこで食ったら広すぎて話なんてできやしないってな

 

「シンさんは友達がたくさん作れたのですね」

「……まあ」

 

 最初はあの高校に行って、こころと同じクラスになって終わりだー!とか言ってたけど…何だかんでクラスのみんなとは仲良くなれた。

 

 そして他校である生徒、主にガールズバンド集団とはこの数ヶ月で仲良くなったなって実感してる

 

「でも不幸には変わりないけど」

「……それでも楽しいんですよね?」

 

 楽しい、そうだな

 

「楽しい毎日っすよ」

 

 確かに不幸かもしれない、けどなんだかんだ言ってやっぱり楽しいんだろうな!

 

「シンさん、この世にはまだあなたが知らない楽しいことがたくさんあるわ」

「……楽しみなさい、あなたの人生なんだから」

 

 楽しいことがたくさんあるとか…やっぱり親子は似るんだろうな、こころと母さんの考え型は同じだな!

 

「……楽しむさ!」

「だったら蘭ちゃんと結婚したらもっと楽しいと思うの!」

「それとこれとは別だからな!?」

 

 母さんにツッコミをしたのと同時に目的地に着いた。

 

 大きな扉を開け中に入ると俺と母さん以外のメンツが揃っていた、親父にこころとシンジ、その後ろにはアギトさんと有翔、アレックスもそこにはいた。いや家族でご飯食べるんじゃなかったの!?

 

「遅いぞシン、俺を待たせるな」

「ご、ごめん、いろいろあってだな…」

 

 親父がめちゃくちゃ低い声でそう言い俺を睨んでくるから怒ってるのであろう。

 

「……冷めたら不味くなるだろ」

「な、なるほど」

「久しぶりに私の料理が食えるから喜んでいるのよ♪」

「…………否定はしないな」

 

 え!?ま、まあ夫婦ですしな、仲がいいこと

 

 俺と母さんが来たことにより食事が始まり各々母さんが作った料理、カレーを食べていた。

 

 このカレーがまた本当に美味いんだよ!母さん曰くこのカレーにはそんな、な?高級食材とか使わず普通にスーパーとかで手に入る食材のみで作ってるって前に言ってた。

 

 甘党の俺に合わせてくれて甘辛にしてくれておりシンジも食べれる辛さ加減、何度も言うが本当に美味くて俺の好物だな!

 

「あら?シンジ口の周りにルーがついてるわよ」

「……ッ!じ、自分でふくよこれぐらい」

 

 こころがシンジの口元をふいてあげたがシンジが少し恥ずかしがってたな

 

「ああ!私の仕事ですのに!」

「……お前は黙るのことができないのか?」

「んんっ!な、なんでもありません旦那様」

 

 親父がアレックスにそう言うと咳払いをして何も無かったように振る舞う、てかあんたらなんでいるんだよ

 

「ねえシン!あなた自分の家では何をしているのかしら?」

「……そうだな、バイトして帰ってきて飯食って寝る」

「…………それは楽しいのかしら?」

「う、うるせえな!バイト楽しいんだよ文句あんのか!?」

 

 社畜バンザイであります!

 

「シンさんちゃんと一人でやっていけてるの?」

「大丈夫だって、まあ心配してくれてありがとう」

 

 なんか心配かけて申し訳ないって思うけど…ここで生活しようとは思わないな、やっぱり家が落ち着くよね!?

 

「………………」

 

 親父のやつは無言でカレーをパクパク食べていてもう食べ終わっていた。

 

「俺はもう戻る、まだやることがあるからな」

「そう…それは仕方がないわ、もう少しみんなでお喋りしたかったわね」

「……気が変わった、お代わりを頼む」

「……ッ!はーい♪」

 

 母さんはこの家族みんなで過ごす時間が本当に好きらしいな、喜んでもらえてるから戻ってきたかいがあったよ

 

「シン」

「……なんすか親父」

「俺に聞きたいことがあるんだろ?」

「……ッ!?」

 

 な、何故バレてる!?

 

「明日の夜は暇だからな、話を聞いてやるよ」

「……わかった、明日の夜ね」

 

 ずっと聞きたかった眼のことが聞けるのか、ただの俺の勘違いだったって落ちかもしれないけど

 

 その後は家族団欒、それぞれの話をして楽しい夕食の時間は終わりを迎えた。

 

「凄く楽しかったわ♪シンさんの話も聞けて母さん安心した」

「俺も久しぶりに家族みんなでご飯食べれて楽しかったよ」

 

 それに母さんのカレーも食べれたしな!もう満足だっての!

 

「あ!それともうこころちゃんとシンさんの誕生日が近いわね!」

「……ッ!」

「今年こそはシンさんを祝いますよ♪」

「だ、大丈夫だって!無理しなくていいからね!?」

 

 そんな俺のために誕生日会とかしなくていいから!こころだけでいいからさ!

 

「俺が祝うって言ってるんだ、素直に祝われろ」

「…………はい」

 

 親父に言われたら断れねーっての!?

 

 クソーまたあの会が開かれるのかよ畜生!

 

「……アレックス、頼みがあるんだけど」

「ん?シンジ様どうしました?」

 

 なんだ?シンジのやつがアレックスの耳元で何か話してるぞ

 

「……ええ!?あ、アレックスは今のままでも大丈夫かと思いますよ!?」

「いいの!僕が自分で決めたんだからさ!」

「か、かしこまりました…」

 

 シンジのやつは何を話してたんだ!?お兄ちゃん気になるんですが!?

 

「んじゃ、俺達はお嬢の友達を迎えにでも行くか」

「そうね!アギト!アリト!行くわよー!」

「俺パス、アレックス行けよ」

「残念ながら私は今からシンジ様と楽しいことをするので無理ですね!」

 

 有翔は無理矢理こころとアギトさんに連れていかれガールズバンド集団の迎えに向かったのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 シンを説教していたヒロインズは黒服の車にてみんながいるファミレスに向かっていた。

 

『……………………』

 

 普通なら女子同士ワイワイ騒ぐのだろう、だがそんな空気はそこに全くなかった。

 

 それはみんなが気づいているから

 

『ここにいる人達はシンのことが好き』

 

 だってことを

 

「み、みんなはシン君への誕生日プレゼント決めたのかな?」

 

 彩がこの空気を打破するために発言した。

 

 そう、シンの誕生日はもうすぐ間近考えておかないと誕生日は来てしまう。

 

「……あたしはもう決まってます」

「あたしも決まってますね〜」

 

 蘭とモカはもう決めているようだ。

 

「私はまだ決まってないよ!どうしよう!」

「私はーうん、これから考えないといけないね」

 

 ひまりと沙綾は決まってなくこれから決めるとのこと

 

「ひーちゃん誕生日プレゼントは自分でーすとかテンプレしちゃダメだよ〜?」

「そ、そんなことしないからね!?」

「ひまりはしないよ、だってね?その気は無いんだもんね?」

「……ッ!」

 

 そう、ひまりは前に沙綾にシンに対してその気はないと言っていた。だがそれは沙綾も同じだったのだがお互いその事を隠している

 

「(沙綾にはちゃんと話さないと)」

 

 自分はシンのことが好き、なんなら告白までしてしまったことを伝えなければならい、そう思っていた。

 

「私は、そうね…ふふ、モカちゃんの言うテンプレのプレゼントでもしようかしらね」

「ち、千聖ちゃん!?じょ、冗談だよね?」

「冗談よ、もう決まってるわ」

「彩ちゃんはどうなの?」

「わ、私も考え中…」

 

 目を逸らし下を向いて彩はそう答える

 

「……ふーん、喜んで貰えるといいわね」

「モカちゃんのプレゼントを一番喜んでくれますよ〜」

「ないから、あたしだから」

「それはシン君が決めることだから!」

 

 誰が一番喜ばれるか、そんな結果は誰にもわからない、だが

 

 ここにいるみんなが一番になりたいと思っているのは確かだ。

 

『(喜んでくれるといいんだけどなー)』

 

 と思っていてもまだ誕生日プレゼントを決めていない人もいた。

 

「は、はっ!ハックション!!!」

「な、なんだ、風邪でも引いたか?」

「……ハックション!!!」

 

 さっきからクシャミが止まらないんですが!?

 

「……ハックション!!!クッソー!誰か俺の噂でも話してるのか!?」

 

 ご名答

 

「は、鼻が詰まったし…」

「――……あーまじ不幸」

 

 鼻声でそう答えたシンは部屋にてゲームの続きをするのであった。




誕生日会の前にも何かありそうですね…

最近投稿頻度が落ちてしまって申し訳ない、でも本当に忙しいんすよ!書ける暇があるときは書きますね!

それでは次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンは過去を変えたい

ちょーお久しぶりです。久しぶりに書いたから内容伝わらないかも…まあそうだったら書き直します

それではどうぞ!!


 やはりいつも寝ているところが寝やすいと皆さんは思いませんか?

 

 絶賛屋敷生活中の俺は普段寝ているベットより何倍も何倍も高い値段の高級ベットにて体を休めて、つまり寝っ転がっている

 

「なにこれやばい、体が沈むぞ」

 

 くっきり俺の跡でもできているのだろうか、おさまる感がある

 

「……はっ!このベットに浮気するところだった!」

 

 俺はニ〇リのベットが大好きだ!こんな高級ベットなんかには負けたりしないからな!?

 

 と思った数分後

 

「………………」

 

 無言で天井を眺めていた。

 

 今思えば俺は昔からずっとこの天井を見て寝てたんだろうな、今となっちゃそうだな…まるで高級ホテルの天井みたいだな!

 

 自分の実家なのに落ち着かない、もう俺自身あの家が俺の家だと認識してるんだろう

 

「あーあ、早く家に帰りてー」

 

 そう思い高級ベットに負けて寝るシンだった。

 

「…………寝心地最高かよ!?」

 

 起き上がり一人でそう叫ぶ、いやマジで寝心地良すぎ問題、もうあとに戻れなくなっちゃうからな!?

 

「それはそうと毎朝早起きだよな」

 

 俺よりも早起きをしている自分の息子にそう語りかける、いや男ってなんでほんと何もしてないのに朝は元気なんだろうな?

 

 まあ考えても意味は無いし普段できない二度寝でもするか…

 

 起きがってたから体を戻し頭を枕へ沈める

 

 天井はもう見飽きたため体を横にし寝返りを打つと

 

「スースー…」

「…………ッ!?」

 

 何故かひまりが俺のベットの中にいた。

 

 いやいやなんで!?なんでひまりがここに!?てかいつ来たいつ入ってきた!?

 

「……ん、あ、おはようシン君」

「お、お前!いつ入ってきた!?」

「ん?シン君が寝てる時に入ってきたよ?」

 

 ひまりは眠い目を擦り欠伸をしながら俺の問いに対してそう答えた。

 

「…………ッ!」

 

 それより今はやばい状況、これは蘭の時といいまずい状況だよな!?

 

 俺はひまりから顔を逸らすよう反対のほうへ向くし体も向ける

 

「ねえこっち向いてよー」

「や、やめろ体を揺らすな」

 

 ひまりは俺の体を揺らしてそう言うが…そっちは向けない!だってバレるから!?

 

 それにさ、今は顔が合わせずらいんだよ!そのこ、告白されてだな…

 

「目を合わせてよ!」

「……眠いんだよ」

 

 嘘ではないぞ!眠いのは確かなんだ!けどそれよりバレるのが嫌なんだ!

 

「もーう!!」

 

 布団から飛び出しひまりはもう部屋から出ていくのかと思ったが何故か俺の目の前の方に入ってきた。

 

 俺は急いで体を反対に向けようとするが

 

「ダメだよ」

 

 抱きつかれ体を動かせない…!や、やめて!抱きつかれるその、な!?

 

「…………あれ?」

「………………」

「し、シン君?」

「…………なに?」

「勃ってるの?」

「……………………」

 

 だぁぁあああ!!バレたバレたこのクソが!?よりにもよってひまりだぞ!?あ、もう最悪かよ!ぜってえ嫌われた…

 

「あ、あのだな、男子はみんな朝は元気ハツラツオ〇ナミンCなんだよ…」

「お、オ〇ナミンCみたいに硬いの!?」

「待って!違うから!」

 

 ごめん、オ〇ナミンCって言わなければよかったですね!

 

「………………」

 

 なんだよこいつ、なんかめっちゃ興味津々みたいにそわそわし始めて…

 

「……触っても「ダメ」……」

 

 な、何言ってんだよひまりのやつは!?触らせるわけないだろ!

 

「じゃ私のおっぱい触らせるからさ」

「……ダメだ」

 

 おっぱいには触りたい…触りたいけど!って何言ってんだよ俺は!?バカか!

 

「ほら、触っていいからさ!」

「……ッ!お、お前!」

 

 ひまりは顔を真っ赤にして俺の手を取り自分の胸に当てる、そう俺は今ひまりのおっぱいを触っているんだ。

 

「はい!シン君触ったから私も触るね!?」

「待てって!お前かなり無理してるだろ!さ、触らなくていいんだよこんなもん!」

 

 うわ、俺何言ってんだろう!?

 

「わ、私はシン君のことが好きなの!大好きなの!」

「……し、知ってるから」

 

 そんな間近で言うなっての!キスまでされたらそりゃ信じますしなんなら少し意識をするもんだろ!?

 

「好きな人とエッチしたいと思うのは普通だからね!?」

「ふ、普通……なのか!?」

 

 それが普通!?いやいやそれはいからひまりさん!

 

「それにシン君私のおっぱい触ったじゃん!」

「それはお前が勝手に…「触ったのー!!」あークソ!」

 

 ひまりは子供が駄々をこねるように言い俺は負けてしまった…

 

 えーい!こうなったらやけくそだ!

 

「もう好きにしろ!後悔しても知らないからな!?」

 

 俺はひまりに自分の息子を触ってもいいと言っていた

 

 考えろ、一瞬だ、一瞬触らせて終わらせればいい…なに、前に蘭にも触られたが大丈夫だった!あっちは覚えてないが俺は覚えてるぞ!?

 

「………………」

 

 ひまりのやつは急に静かになり手を出したら引っ込めたりして躊躇している様子だった。

 

「(触りたいって言ったやつ誰だよ…)」

 

 自分でそう言ってたくせにいざ触るとなると触れなくなるって、まあそれはなんかひまりらしいな

 

「――……触んないの?」

「…………ッ!」

 

 何言ってるの俺は!?

 

「さ、触るよ!……いくよ!?」

 

 く、来るのか!

 

ギュッ!

 

「痛ってぇぇええええええ!!!」

「痛い痛い痛い!離せよひまり!?」

「ご、ごめん!」

 

 ひまりはシンの息子を思っきり握っていたのだ。

 

 おま、おまおま、お前殺す気かよ!?女の子の胸は優しく揉めって言うだろ!?それと同じ感覚でよろしくお願いしますよ!?

 

「力加減なんてわからないよ…」

「いや、本当に痛かったから」

「……次は大丈夫だからね!?」

「もう触らせねーよアホ!」

 

 もういやだ!本当に恐怖だよ!あんな力強く握られることなんてありますか!?

 

「えーわかった、また今度ね」

「待って!また今度ってなに!?」

 

 この屋敷にいる中でまた来るってことか!?

 

「……だいたい誰かに見られたりしたら」

 

 そう言い部屋を見渡すと

 

「………………」

 

ドアが少し空いておりその隙間から見えるのはビデオカメラと…

 

 アレックスの姿だった。

 

「あ、お構いなく本番をどうぞどうぞ!」

「するわけねーだろがー!!」

 

 俺はベットから飛び出しアレックスの方へと向かう!

 

「なっ!残念!アレックスは退散します!」

「待ちやがれこのクソ女ー!!」

 

 あ!忘れてた!

 

「ひまり!このこと誰にも話すなよな!」

「俺達だけの秘密だからな!」

 

 こんなことが他の人にバレたらやばいだろ?特にモカとか千聖先輩に知られたら茶化される!

 

「……えへへ、二人だけの秘密ね」

「なんかとらえかた違うと思うけどそんな感じでー!」

 

 長い廊下を走りアレックスの元へと向かう。

 

 バスローブを来ているせいでめちゃくちゃ走りにくい!なんでバスローブなんか着て寝るのかな金持ちは!

 

 途中で湊先輩とリサ先輩とすれ違ったが気にしないぞ俺は!なんせあんなやり取りをビデオにおさめられてるからな!?死にものぐるいでも捕まえないと!

 

 アレックスは自分の部屋に入り扉を閉めて鍵もしてめていた。

 

「おいアレックス!このドア開けろよ!」

 

 俺はドアを思いっきり叩きアレックスにドアを開けるよう頼むが…

 

「いやです!私はこの動画を某動画サイトに上げ人気者になるのです!」

「広告収入でガッポガッポ、ぐへへ」

 

 声だけであいつが今どんな顔してるのかわかる。てかそんな動画上げちゃだめだろが!?

 

「頼むそれだけはやめてくれ!お願いだ!」

「……わかった交渉しよう!」

「……1000円で手を打とう」

「……………………」

「……………………」

「………………ダメです!」

 

 おーい!1000円ごときでどれだけ考えるんだよお前は!?

 

「わ、わかった!1万!1万でどうだ!?」

 

 俺だって金はないさ!けど!あんな動画がネットに上げられるより遥かにマシだろ!?

 

「もう遅いです」

「……だぁぁああ!!!」

 

 アレックスがドアを開け出てきたと思ったらパソコンを手に画面には動画のアップが完了しましたと表示されていた。

 

「に、人間じゃねえ……」

「褒め言葉です!……シン様!私は人間を辞めるぞー!!」

「うるせえ!早く消せ!」

 

 その冒険シリーズの敵役の真似しなくていいからさ!

 

「見てください!もう再生数が……んっ!?」

 

 この動画は運営により削除されました。

 

「なんで上げてすぐに消えるんですか!?」

「な、何か知らんが助かったY〇utube!」

「で、ですがまだSDカードにデータが!」

「させるか!」

 

 俺はアレックスよりも早く部屋に入りカメラを手に入れ

 

「……ふん!」

「あぁぁぁああああああああぁぁぁ!!」

 

 ビデオカメラを思いっきり床に叩きつけ最後にはSDを踏み潰した。

 

「恨むなら自分を恨むんだな!」

「わ、私の!私のカメラが……これからはシンジ様と夜の思い出を撮ろうと思ってましたのに…」

「お前マジでいっぺん捕まってこいや!!」

 

 シンの叫びがアレックスの部屋に響いてシンの目覚めの朝は幕を閉じた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「朝から酷い目にあったぜ…」

 

 ひまりから始まり次にアレックス、本当にアレックスには困るぜ、あいつはなんで弦巻家のメイドなんだよ!無能すぎるだろ!?

 

 朝飯を食う気が失せるほどだっての

 

「……久しぶりに釣りでもすっかね」

 

 この屋敷にはめちゃくちゃ広い池があるんだよ、昔はよく釣りしてたなー今もあの大きな魚入るのだろうか

 

「シン兄!」

 

 俺のことを大きな声で呼ぶシンジ、声が聞こえて方に顔を向けるとそこには…

 

「おはよう!シン兄!」

「……し、シンジ!?お前その髪どうしたんだよ!」

「ど、どうかな…シン兄みたいに切ってってアレックスに頼んだの」

 

 シンジの髪は今まで片目を隠すために伸ばしていた前髪かなくなり俺と同じ髪型で短髪がとても似合っていた。まあ俺と似てるって言ってもさすがにブロックまでは入れてないようだ。

 

 高校生になったら入れることだな!?

 

「似合ってるぞー兄ちゃんの次にカッコイイ」

「そうなの!?やったー!嬉しいな!」

 

 こうやって無邪気に喜ぶシンジを見るとこっちまで嬉しくなるな!

 

「今日は純君と紗南ちゃんと遊ぶんだー!」

「そっか、なら楽しんでこいよ?」

「うん!シン兄も蘭姉ちゃんや香澄姉ちゃんと遊ぶんだよ!」

「…………考えとく!」

 

 シンジは元気な笑顔で走り出し玄関の方へと向かって行った。

 

 シンジが遊びに行くってことはアレックスもいなくなるってわけだ、いやー助かった助かった

 

 俺は一人になって釣りに行こうと思ったさ

 

「おい、今暇か?」

「……暇じゃない、釣りに行くところだ」

 

 有翔のやつに捕まってしまった。俺と同い歳のくせにスーツが似合ってるイケメン君、そりゃーつぐみも惚れるっての

 

「それ暇だろ?今からパスパレの所行くけど来るか?」

「行く!行きます!行ってもいいの!?」

 

 ええ!?パスパレの部屋に行けるのか!?だったら行ってなんなら練習も見学したいぞ!

 

「……おっけおっけ、んじゃ行くか」

「今すぐ行こう!早く行こう!」

 

 俺は心をウキウキさせパスパレの部屋に向かう

 

「おーす、お前ら元気にしてるかー」

 

部屋の前につき有翔がそのドアを開ける、開けたあとは普通に話しかけているが…お前ら?元気にしてるか?はて、どゆこと?

 

『有翔(アリト)君!さん!』

 

 んん?なんでみんな有翔と知り合いなんだ!?

 

「言ってなかったな、俺は元こいつらのマネージャーなんだよ」

「…………えええええ!!!???」

 

 う、嘘だろ!?有翔がパスパレの元マネージャー!?いやいや……本当なのか!?

 

「本当だよ!いやーあの頃はお世話になったよ」

「アリトくん途中でどっかいっちゃったからねー今のマネージャー全然るんって来ないんだよね」

 

 軽く今のマネージャーディスらてるな、いや軽くじゃないな

 

「アリトさんも同じ学校に通うはずだったのに……一緒に行けなくて残念です」

「有翔さん有翔さん!海外のバンド間近で見たんすよね!?どうでしたか!?やっぱりこっちとは違ったっすか!?」

 

 若宮さんが少し落ち込んでたのに大和麻弥先輩の発言で一気に場は変わったな

 

「あ!シン君もいたんだ!昨日はどうだったの?」

「……き、聞かないでください」

「てか本当にマネージャーしてたんだな?お前」

「……まあ「半年だけよ」……」

 

 有翔が返事の途中に千聖先輩が口を挟んだ

 

「よく平然な顔で私達の前にこられるわね?」

「――……裏切り者の有翔君?」

 

 う、うわ、ガチキレモード突入してるじゃないっすか!?

 

「んな堅いこと言うなよ、お前らの基礎を作ったのは俺だろ?」

「基礎だけ、あなたがいなくても今の私達は立派にライブをこなしてるわ」

「ま、待って千聖ちゃん!有翔君にもいろいろあって、えっと」

「……いいんだ彩、こいつには何言っても信じて貰えないっての」

「今頃言い訳なんて聞きたくないわ」

 

 お、おいおいなんだあんたら二人!やっぱり知り合いだったんじゃねーか!?

 

 てか喧嘩しないでくれよ!

 

「……気分が悪いわ、風に当たってくる」

『………………』

「……俺様子みてくるから!」

 

 みんなが黙ってる中俺はそう言い千聖先輩の後をおった。なんで有翔とこんな関係かは知らないけど…今の千聖先輩を一人にしようとは思えなかった。

 

 千聖先輩は池の近くの岩に座っており海の時と同じように座り池を眺めていた。

 

「……どうしたんですか?」

「………………」

「千聖先輩らしくないっすよ…」

 

 あの千聖先輩があんな態度をとるなんて思いもしないだろ?それに…な?あんな本当に恨むような感じで発言する千聖先輩なんて初めてみた。

 

 初めてって言うか、俺が千聖先輩と絡むようになったのは最近だったからだろうな

 

「タバコ吸ってもいいかしら」

「…………許可します」

「ありがとう…」

 

 俺はため息をこぼしながら吸ってもいいと許可をした。イライラしてる時にタバコを吸うと落ち着くのだろう、だったら臭いとか関係なしに吸わせてやりますよ

 

 千聖先輩はタバコに火をつけ加えだす、数秒後には口から白い煙を出していた。

 

「彼、有翔との付き合いは結構長いのよ」

「……へー」

 

 千聖先輩は有翔との関係について語りだした。

 

「有翔の父、あの人がいなかったら今の私はいないのよ」

「……ッ!有翔の親父っすか」

 

 有翔がこの屋敷に来た理由、それは親父に気に入られたってだけじゃない

 

 有翔の父さんと母さんは不慮の事故により亡くなってしまったんだ…当時まだ小6だった有翔とその妹はこの町に住んでいる祖母のお世話になっていた。そこを親父が拾い弦巻家に招き入れたんだ

 

「あの人が私を見つけてくれた…だから今の私がいるのよ」

 

 タバコを岩に擦りつけ火を消し携帯灰皿の中にしまいながら千聖先輩は答える

 

「……なのに彼は父親とは違い私達を裏切ったのよ…!」

「………………」

「知り合いのコネで私達のマネージャーになったものの…」

「私達を日本一のアイドルバンドにするとか言ってくせに…!」

「最後は結局裏切った…!」

 

 千聖先輩はこっちを見ることをなくずっと語っていた。

 

「……有翔は裏切ってなんかないですよ」

「裏切ったのよ…!私達の気持ちを踏みにじった!」

「違う、違いますよ千聖先輩」

 

 この一言だけは違うと思った

 

「私達じゃない、あなただけですよ」

「……ッ!」

 

 これは俺の憶測だけど…言ってみる価値がある

 

「千聖先輩、いや千聖さん…あんたは」

「……やめて、それ以上言わないで…!」

 

 千聖先輩は嫌がるように、聞きたくないように耳を抑える、だけど俺は言う。

 

「……有翔のことが好きだったんですよ」

「……やめて、やめてやめてやめて!」

 

 首を全力で振りながら千聖さんは答える。俺の憶測は正解…だったのだろうか、だってこんなに千聖さんが嫌がってるんだから

 

 でも、そうじゃないだろ

 

「自分の気持ちに素直になってください」

「ち、違うの!私は、私は…違うのよ…!」

「違わなくない!」

「……ッ!」

 

「あんたは有翔のことが好きだった、大好きだった!」

「だから有翔が離れたことに対してメンバーの誰よりも悲しくて、苦しくて、そして辛かった…!」

「お願いやめて……これ以上私の心を読まないで!」

 

 俺の目の前にはいつものように冷静な千聖先輩(・・・・)はいない、そこにいるのは千聖さん、だった。

 

「……千聖さん、自分の気持ちを受け入れてください」

 

 千聖さんはその場にうずくまり聞こえるか聞こえないかの声量で答えた。

 

「………………好きだった」

「好きだったわよ…!初めて人を好きになったのよ!」

 

 千聖さんは泣きながら答えていた。本当に好きだったのだろう、だからこそさっき言った通り他の人より辛かったんだ

 

「私よりも才能があって、なんでもできる有翔に憧れて、焦がれて」

「…………好きになった」

「…………コク」

 

 下を向いたまま首だけを動かして答えた。

 

「でも、有翔にはつぐみがいる」

「……悔しいけどあんなお似合いのカップルは始めてみたかもしれない」

 

 巴と蒼汰、リサ先輩と亜滝先輩、このカップルよりもお似合いだと俺は思ってる。

 

 全く、いいよな?だってつぐみだぞ?俺の元エンジャル、可愛すぎだろ

 

「……有翔は千聖さん達を裏切ってない」

「………………」

 

 あいつだって本当は離れたくなかったに決まっている、誰が進んで海外に行くかっての…弦巻家の住人として責務を果たそうとしたんだよ…きっと

 

「そのことを1番知ってるのは千聖さん、あんたでしょ」

「そして、最後まで何処にも行くなって言ったのも千聖さん……だろ?」

 

 憧れていたのなら、好きだったのなら、大切な人がそばを離れるときは一番嫌がってに決まってる

 

「じゃあ私はどうすればよかったの…」

「……有翔に会うといつもあんな態度とって、自分の好意と違った行動ばかりで」

 

 千聖さんは今までの自分の行動を後悔していた。でも

 

「……過ぎたことは後悔しても意味がない」

「あんたは選択を間違えた、それだけだ」

「………………」

 

 きついことを言ってる自覚はあるさ、けど誰も過去なんて変えることはできない、できないんだよ…!

 

 俺だって変えれることができるのなら変えてやる!けどもう無理なんだ

 

「……でもこれからの未来は作れる」

「未来を作る…?」

 

 俺は千聖さんの前に腰を下ろし目線を合わせようとする

 

「有翔のことはもう無理かもしれない…でもその失敗を次に活かせばいい」

「……次、頑張って、お互いの明るい未来を作り上げましょう」

 

 その言葉を聞いた瞬間千聖さんは黙り込んでしまった。何を考えているのやら、はたまた有翔の未練をなくそうとしているのか否か

 

「シン、私があなたに抱いていた感情は…」

「……愛でも恋でもなんでもない」

「ただ、ただただ私は罪滅ぼしがしたかっただけ」

「近くであなたが苦しんでいる姿を見ていたのに…何もできなかった私を許せれるものなら許してたくてあなたに接していた…」

 

 千聖さん、いや千聖先輩は今までの俺に対しての話をしていた。俺はそんな気はなく普通に面倒見がいい先輩だと思っていたが…千聖先輩はそう思っていなかったようだ。

 

「そうだったとしても…それでも俺は全然嬉しいです」

「……これからもよろしくお願いします。千聖先輩」

「…………シン…!」

 

 千聖先輩は俺を抱きしめ泣いていた。

 

「ごめんなさい、あなたを早く見つけてあげれなくて……ごめんなさい!」

「……大丈夫ですって、今の俺はあの時の俺じゃなくて元気な俺です」

 

 何もできない俺だから…今できることは千聖先輩を思いっきり抱きしめることしかできなかった。俺がやる相手に相応しくないことぐらいわかってる、でも今は千聖先輩に対して優しく接してあげる人が必要なんだよ

 

 どれぐらい千聖先輩は泣いていただろうか、泣き止むと急に立ち上がり

 

「――……帰るわよ、シン」

「……ッ!はいはい」

 

 俺の方を見ることなく歩いて行き、その後を追うように俺はついて行く

 

「あ、忘れてたわ」

「なんすか?まだ俺の励ましが必要っすか?」アハハ

 

 まあなんだ、今なら千聖先輩をいじってもいけるだろうって気がしたんだよ、だけど…

 

「……そうね、必要かしらね」

「だったら……んん!?」

 

 千聖先輩は俺がなにか発言をする前にキスをしてきた。

 

 さっきまでタバコを吸っていたため少し臭いがするも、唇が重なり合っているため正真正銘のキスと言えるものだろう

 

「な!なっ!?ちちち千聖先輩!?」

「……私のファーストキスよ」

 

 えええ!?そ、そうなの!?てかなんで!

 

「さっきの俺に抱いてた感情は愛でも恋でもないって…!」

 

 さっき言ってたよな!?俺の聞き間違いじゃないよな!?

 

「……ええそうよ」

「い、意味わかんねえー!!!」

 

 千聖先輩は俺をあとにしてスタスタと歩いて行く、さっきキスされたからなのか急に千聖先輩と歩くのが恥ずかしくなってきた俺はその場で立ち尽くしていた。

 

「そう、だからこれからが本当の愛よ…シン」

 

 千聖は誰にも聞こえない声でそう言ったのであった。




ひまりに始めり千聖で終わる…もともと別々で書くはずだったんですがもうまとめました。

投票してくれた80人の方達本当にありがとうございます!これからも読んでくれると嬉しいです!

千聖視点はんー書いた方がいいですか?感想にて意見待ってます。
有翔とのやり取りはそのうち書きますからお待ちを

それでは次回の話でお会いしましょう!



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弦巻シンと白鷺千聖

メッセージにて書いた方がいいと意見があったので書きました。てかヒロインだから書かないといけませんよね(笑)

最初に言っておきますが書くのとても大変でした…

それではどうぞ!!


 私が芸能界に復帰する前、彼と出会った。

 

 その人は周りの誰よりも暗い顔をしており誰とも関わろうとせずいつも一人で行動していた。

 

 縦割り掃除というのがあり他学年でクラス同じもの同士で掃除をする、そんなことが私と彼の通う中学校にはあった。

 

 暗い顔して、夢がない人なんだと…私は勝手に決めつけていた。

 

 話しかけても無視するし、あっちからこっちに構おうとすることはなかった…

 

 だからこそ思ったわ

 

「……彼を助けたい」

 

 って、でも私にはそんな力がなかった。話しかけてもかけてもかけても、無視されたわ

 

 普通の人だったら怒るところよ?でも彼に対して怒るって考えがなかった。

 

 ここまで来たらヤケクソでいろいろ試したわよ掃除中にもかかわらずずっとお喋りして…

 

 でも彼は話なんて聞かずにずっと一人で掃除をしていた。

 

 サイズがあってないダボダボの学ランを着ながら掃除を行う様はさながら子供が頑張っている様子にも見えた。

 

 いつしか縦割り掃除が行われる度今度こそ、って意識していたけど…彼は学校にすら来なくなった。

 

「……いつかあなたの笑顔が見たいわ」

 

 それは私が最後に彼へ言った言葉だった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 私はみんなが思ってるほど完璧ではない、ただ私はみんなができることをこなせるだけ、それだけで周りの人達からチヤホヤされる自分に酔いしれていた。

 

 私はできるの、白鷺千聖はやろうと思えばなんでもできると

 

 でも実際はそんなんじゃない、私はたった一人の少年を変えることすらできない弱い人間なんだから

 

 芸能界に復帰してすぐに大きな撮影があった。その中で私は許されないミスを犯してしまった…

 

 主役ですらない、ただのモブ役だったにも関わらず私は目立とうとしてしまった。この行為を監督は気に入らなかったのか酷く怒られもうどうすればいいかなんてわからなかった。

 

 一人で泣いて、反省している時あの人は現れたの

 

「……、…………?」

「……あなたは?」

「…………、……!」

 

 私の前に現れたのはあとから知るけど有翔の父親だった。誰かもわからない人に励まされ私はもう一度立ち上がれた。

 

 あの時私を見つけてくれてなかったら今の私はいないかもしれない、いや確実にいないと思う。

 

 その後私は波に乗りすぐに主役の話も上がってきて絶好状態、そんな時事務所の方針でアイドルバンドに参加することになった。

 

 これがね…最初は失敗続き、正直言ってやめたいと思ったわね

 

 けどみんなが、パスパレのみんなは諦めることなくアイドルを続け

 

 その結果が有翔を呼び寄せた。

 

 その時初めてあの人が有翔の父親だと知ったわ

 

 彼は私の一個下、イヴちゃんと同い歳で性格の悪い少年だった。

 

 でも、何故かしらね?いつの間にか彼のことを好きになってたのかしら…

 

 彼に向ける感情とは違う感情、これが恋というのかしらね…

 

 でもそんな行動とは裏腹にいつも口論ばかり、私の方針と有翔の方針はいつも合わずメンバー達も今日は喧嘩しないでくださいねなんて言ってきたりもしてた。

 

 今思えば…そうね、きっと私は構って欲しかった。私を見て欲しかった。だから強い態度を取り続けたんだと思ったわね…

 

 でも、そんなことは起きることがなかった。

 

 有翔は私達のマネージャーをやめて海外の屋敷で勉強をしてくると言って私達の前から姿を消した。

 

 勿論私は止めたわよ…

 

「……その道を選んだところであなたになんのメリットもないわ」

 

 違う、私が言いたいことはそんなことじゃなかった。

 

「何処にも行かないでよ…!」

 

 なんでこのセリフが言えないのかしらね

 

 台本があれば言えたのかしら?カメラがあれば言えたのかしら?監督に見られてたら言えたのかしら?

 

「……クソ親父が言っていた」

「天は人の前に道を作らずてな、自分の道ぐらい自分で作って選ぶ」

「………………」

「……じゃーな、千聖」

 

 有翔はそんな言葉を言い私の前から姿を消した。

 

 そんな時私の中で生まれた感情、それは

 

 裏切られた、しかなかった…

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 高校二年になりパスパレの仕事も女優の仕事も絶えることなく仕事がやって来て忙しい毎日、けどそんな毎日が楽しいと思ってる

 

 そんな時、急に彼が現れた。

 

「――……弦巻シン…!」

 

 彼がこの高校にやってきた。

 

 真っ先に思ったこと、それは

 

「次こそあなたを笑顔にさせたい…!」

 

 けど、あってどうするの?

 

 私は彼を変えれなかった。何もできなかった。またあって次は何をするの?

 

 そんなことを考えると彼に会うのが怖くなって…逃げていた。

 

 遠くから見る彼は昔とは違い

 

 笑顔だった。

 

 私以外の誰かが彼を変えたんだろう、私にできなかったことを誰かがしたのよ

 

「……なのに、何よこの気持ちは…!」

 

 自分で変えれなかったこと、そして助けてあげられなかったこと

 

 そう、私は自分が犯した誤ちを償いたい思いで彼に近寄った。案の定彼は、シンは私の事なんて覚えてるわけなく初対面の反応だった。

 

 私がやったことは意味がなかったのか、だからシンが覚えてないのよ、きっと…

 

 こうして私の罪滅ぼしの生活が始まった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 夏休みの最中にシンの姉、つまりこころちゃんに合宿をしないかと誘われパスパレは参加することになった。

 

 でも…まさか有翔とシン、二人ともいるなんて思いもしないわよね?

 

 それに有翔に関してはつぐみちゃんと付き合っている様子だった。

 

 別にそのことについてはもう何も思ってないわよ、有翔のことはもう…わかってる

 

 何回か顔を合わせたけどやっぱり頭に浮かぶのは裏切られたの言葉だけ、だから話そうとする気すら起きなかった。

 

 でも有翔は私の前に姿を現した。しかもシンまで一緒にね

 

 だけど、相変わらず有翔に対する態度は変わらない、それにもう別に好きってわけじゃない、前よ前の話

 

 案の定有翔とは言い合いになり私は部屋をあとにして近くの池に向かっていた岩に座り心を落ち着くのを待っていた時

 

「……どうしたんですか?」

 

 シンが話しかけてきた。どうやら私のあとをついてきていたようね

 

「……タバコ吸ってもいいかしら」

 

 あまりシンの前では吸いたくない、こんな私を本当は見られたくない…けど吸いたくなったからには仕方がないじゃない

 

 このタバコだって嫌なことを忘れるため、そしていい子の自分をやめるために始めたもの

 

 タバコを吸って落ち着き私はシンに有翔の話をした。

 

 私達は裏切られて、捨てられて…そんな話を彼にしたわ

 

 けどシンからの返事は違った。

 

「私達じゃない、あなただけですよ」

 

 なんでシンがこのことを知っているのか…私は驚いたわよ、でもそんなことはどうでもいいの

 

 シンにだけは知られたくなかった…!

 

 この気持ちを知られたくなかったのに

 

「千聖先輩、いや千聖さん…あんたは」

「……やめて、それ以上言わないで…!」

 

 シンの口から聞きたくなかった…!なのにシンは話を続けようとする

 

「……有翔のことが好きだったんですよ」

「……やめて、やめてやめてやめて!」

「あんたは有翔のことが好きだった、大好きだった!」

「だから有翔が離れたことに対してメンバーの誰よりも悲しくて、苦しくて、そして辛かった…!」

 

 シンに言われなくても自分でわかっていた。私は有翔のことが好きだったってことぐらい…

 

 でも私は私の意思を無視して子供のように嫌がっていた。嫌がったところで意味なんてないのにね

 

 本当に初めてだった、誰かを好きになったのは…シンに対してはそんな好意を持っていなかったのか、だから私の初恋は有翔だったのよ

 

 でももうどうしようもない!もう過ぎたことなのよ

 

「私は一体どこで道を間違えたのよ」

 

 自分()で選んだ道を(自分)が後悔する。もっとちゃんと自分の気持ちに素直になって有翔に接していれば違う未来があったのかもしれない

 

 過去はもう変えることなんてできない、私も知ってるしシンはそのことをよく知ってるはず

 

「……でもこれからの未来は作れる」

 

 シンは私の前に来て腰を下ろして私を見る、その眼には過去のシンはいなくて私の知らないシンがいる

 

「(そう、あなたは本当に変わってしまったのね)」

 

 私がシンに抱いてた感情は愛でも恋でもなんでもなかった、罪滅ぼしのつもりだった…

 

 私が変えることができなかったシンを誰かが変えてくれた。

 

 でも

 

「(シン、私はあなたのことが好きなのよ)」

 

 多分、いやきっとそうだったのよ、愛でも恋でもなんでもなかったってのが私についた大きな嘘だったのよ

 

 どうして有翔からシンに移ったのかなんてわからない。

 

 私はシンに笑顔になって欲しかった、ただそれだけなのにいつの間にか結婚する約束までして

 

「(……私はあなたが好きなのよ)」

 

 過去は変えられない、でも未来は作れる。だったら私の作る未来、それは

 

「……同じ失敗はせずあなたの隣にいたい」

 

 正義の味方を目指すシンの味方であり続けたい。

 

 そのうち有翔にも私の気持ちは話そうと思うわ、次は逃げずにちゃんと全部話す。それから

 

「私達の本当の愛を始めましょう」

 

 私は何度も失敗を繰り返して来た。少年一人を変えることもできず、少年一人にずっと傍にいてって言うことができなかった。

 

 でも…これからはもう同じ失敗なんてしない、自分の未来は自分で作る…ってね

 

「弦巻シン君……私は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたのことが好きみたいです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、千聖さん正式加入ですね

今後ヒロインは増えないかも、あーでも増えるかも…まあ増えないと思っといてくださいさすがにきついです

次回はシンと親父の話です。ついにあのことがわかりますよ!

では次回でお会いしましょう!



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弦巻シンと弦巻家の特殊

バンドリ全曲FCしました!いや、Re:birth dayきつかった…(笑)

それではどうぞ!!


 とうとう夜が来てしまった。

 

 そう、今日の夜は親父と話をするんだ。何の話か、それは俺がずっと気になっていたことについてだ。

 

 俺は時間になったため部屋を出てお父様の部屋へと向かう。

 

 向かっている時の俺は一体どのような顔をしているのだろうか、やっと聞けたいことが聞ける喜びから笑みを浮かべてるのか、はたまたこれから話すことについて不安を抱いているのか

 

「……もーう!お父様強すぎです!」

「お前が弱いんだよシンジ」

「もう1回!あと1回だけ!」

 

 長い廊下の途中にある机にてシンジとお父様がチェスをしていた。

 

 そこは俺が昔よく親父や屋敷に来ている金持ちのヤツらとチェスをしていた場所、どうやら今はシンジがそこを使っているようだな

 

「もう寝る時間だ、俺みたいに大きくなれないぞ」

「……はーい」

 

 シンジはしょんぼりしながら部屋に向かっていった。

 

 俺はと言うと何故か隠れていたんだよ、いやなんで?

 

「――……俺に話があるんだろ?」

「……バレてたか」

 

 隠れてるの気づくとかさすが親父様様ですね、なんでわかるんだろうな!?

 

「まあいい、とりあえず座れ」

 

 親父が座れと言うからシンジがさっきまで座っていた椅子に座り、座ると目の前に親父がいる状況、懐かしいな

 

「久しぶりに1勝負でもするか?」

「……いや、別に俺は話をしたいんだけど」

「勝てば聞いてやるよ、負けたら聞かない」

「なにそれ!だったらやるよ!」

 

 でも俺が親父にチェスで勝てるわけないだろ!?

 

 親父と強制的にチェスをすることになり勝負をするも

 

「……ッ!お、親父!キングから動かしていいのかよ!?」

「俺の戦略だ」

「い、意味わかんねー」

 

 チェスってのはキングが取られると負け、つまりキングを取られないように、守るように勝負を進めていくゲーム

 

 なのに親父は、なんだ?俺へのハンデがなにかか?

 

「……まあお前もそのうち意味がわかるだろ」

「そんなもんなのか?」

 

 訳分からん攻め方をされ俺は戸惑い

 

「チェック」

「……いやいや無理だろ」

 

 もう打つ手がなかった。キング以外の駒はもう親父に取られキングは裸状態、チェックメイトされて終わりだな…てか親父に勝てるわけない!

 

「最初から負ける気しかないから負けるんだよ」

「……ッ!」

「……シン、自分より強いやつと勝負する時お前は何を考える」

 

 何を考える…?

 

「そりゃ、やっぱり勝てるわけないだろって思うな」

「違うな、その考えは間違っているぞ」

 

 親父はクイーンを手に持ち

 

「――……チェックメイト」

「負けることしか考えないやつが勝てるわけないだろ」

「……ッ!」

 

 た、確かにそうだよな…

 

「そんな考えしかできないお前は一緒誰にも勝てない」

「………………」

「少し言い過ぎたな」

「……別に、本当のことだしな」

 

 最初から負けを認めてて勝てるわけなんてないよな

 

「……親父」

「どうやったら勝てないと思うヤツに勝てるんだ?」

 

 勝ちたい人に聞くことじゃないけど俺が一生考えても答えは見つからず無駄な時間を過ごすことになるのなら俺は親父に聞くさ

 

「簡単な話だ」

「……勝つことを考えるな」

「……?」

「つまり負けないように戦えってことだ」

 

 負けないように…戦う?

 

「逃げてもいい、無様でもいい」

「結局勝ったやつが強い、それだけだ」

「……ッ!な、なるほど」

「まあ逃げたあと何もしなかったら意味はないがな」

 

 それはそうだろう、逃げただけならそれは本当に逃げただけ、つまりの所引くことも戦略のひとつってことだろう

 

「シン、俺に負けるのはいいが他の奴には絶対負けるんじゃないぞ?」

「……わかってる、親父以外には負ける気ないさ」

「……ほう、先生に負けたって話を聞いたけどな?」

「なっ!そ、それはー親父と学長以外には負けないようにします!」

 

 親父が先生って言うとはな、なんかもっと別の言い方すると思ってたけどそこは普通に先生って呼ぶんだな

 

「……じゃ帰るよ」

 

 負けたしな?話をしようと思ったができねーな

 

「まあ待て、今回ばかりは聞いてやる」

「ま、まじで?俺負けたよ?」

「……そうでも言わないとお前は俺と勝負しないからな?」

「だったら最初からそう言えよ!」

 

 椅子から立ち上がりその場を離れようとしてがまた椅子に座り話を振りだす。

 

「単刀直入に聞く」

「……おう」

「親父の眼はカラコンなのか?」

「何故そんなことを聞く」

 

 何故聞くか、それは…

 

「昔の親父の写真を見たんだ」

「どこで」

「……蘭の家で」

「苗字は」

「美竹だ」

「……そうか、美竹の娘だったのかあの女」

 

 やはり親父と蘭の父さんは知り合いのようだった。

 

「……写真の親父の眼は」

 

 そう、親父の眼は

 

「俺やこころと同じ色の瞳(・・・・・)をしていた」

「………………」

「今のその瞳の色、それはなんなんだ?」

 

 親父の眼はシンジの片目と同じ、燃えるような赤色の瞳だ。それに比べ俺達姉弟は金色の瞳、そう、写真に映る親父と全く同じ瞳だ。

 

「……まあいつかはバレると思ってたさ」

 

 親父はその場から立ち上がり大きな窓の前に立ち月を眺めだした。

 

「気づいたら瞳の色が変わっていた…」

「って言えば信じるか?」

「……いや、信じねーよ」

 

 この際だ、親父が隠してること、知ってることを全て喋ってもらおう

 

「弦巻家はそこら辺の家系とは違ってだな」

「……覚悟を決めた時、瞳の色が変わるってクソ親父が言っていた」

「……ッ!?」

 

 は、はあ?なにそれ、そんなアニメみたいなことがあるのか?てか覚悟を決めた時って…

 

「親父はなしかしらの覚悟を決めたってことか?」

「俺の話はどうでもいいんだよ、探ろうとするな」

「……はい」

 

 親父は少し以上に機嫌を悪くして答えたためこれ以上探ることはやめた。

 

 てか待って、なんか瞳が変わったら特殊な能力、つまり絶対命令権とかそうゆうのが手に入るのか!?

 

「それはない、お前頭大丈夫か?」

「……で、ですよねー」

 

 てか人の心勝手に読まないで!?恥ずかしいから!

 

 でも、俺にはここでひとつ疑問が浮かんだんだ。

 

「シンジ、そうだ!だったらシンジの眼はどうなってるんだ?」

「シンジのは完全にイレギュラーだ」

「……片目だけ、俺達の眼(・・・・)持って生まれてきたんだ」

「片目だけ?片方の目はなんなんだよ」

 

 見た感じ俺やこころと同じような瞳だと思うけどな?

 

「おそらくだがあいつの片方は、そうだなお前らの母親の眼だろうな」

「……そんなことってあるのか?」

「まあ見た感じシンジの片方はあいつの瞳に似てる」

「……ふーん」

 

 そうだったのか、だったらシンジのやつはその開眼?って言えばいいのか?開眼する前から少し色が違うオッドアイだったってことか?

 

 だったらあんま目立たない方が良かったのにな、なんで既に赤色の瞳なのやら

 

「まあお前もこころもそのうち同じ眼になるだろ」

「……いや、そんな展開ないっすよ」

 

 でも、そうだな…俺が本当の正義の味方になった時瞳は親父と同じ色になっているのだろうか

 

 まあそれはこれからの俺次第ってことだな

 

「こころは知ってるのか?」

「さあ?知らんだろ、有翔はクソ親父から話を聞いてると思うぞ」

「ま、マジかよ」

 

 なんで有翔が知る必要あるんだよ!

 

「俺的には今のままの方がいいと思うけどな?」

「……それは俺も思うさ!」

「ところでシン」

 

 親父は話を変えるかのよう俺に話しかける

 

「お前は弦巻家の当主になる気はないのか?」

「なるならない以前にこころが継ぐんだろ?」

 

 姉だからこころが当主になるって話が昔上がってなかったか?

 

「……それにハッキリ言うけど俺はこの家が嫌いだしな」

 

 家族は好きだけど弦巻家ってのがな…

 

「そうか、なら簡単だ」

「お前が当主になって弦巻家を変えればいい話だろ」

「……ッ!」

 

 この人は、本当に俺の親父なのか?考え方ば俺とは全然違うんですけど!?

 

「……まあ考えとく」

 

 その、なんだつまり!

 

「と、とりあえず確認はできた!もう寝るから!」

 

 俺は親父の瞳について知りたかっただけなのになんでいつの間にか弦巻家の当主になる話になってんだよ!?それに弦巻家の眼が特殊ってなんだよ!

 

 あ、でも親父の眼が特殊だったからなったことで…あー!頭がこんがらがる!

 

「よし、意識するのはやめよう」

 

 なんにも考えず普通に、そう!普通に生活しとけばいいんだよ

 

 瞳の色が変わるとか絶対普通じゃないからね!?

 

 シンは頭を抱えながら自分の部屋に向かったのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 廊下を歩き自分の部屋に戻ろうとした時だ。

 

「あ、弦巻君…こんばんは、です」

「会長ー!」

 

 会長が一人でトイレの前にいたんだ。なんでトイレの前にいたか…なんてこと男子が女子に聞けるわけないよな?

 

「……あこちゃんを待ってるんです」

「な、なるほどー」

 

 その待ってるんです、を何を待ってるの?なんて聞けない、だってその、な?目の前トイレだしわかるだろ!?

 

「りんりんお待たせーあ!シン先輩!」

「お、おーすあこちゃん」

 

 いやあなたと絡んだことあったけ!?なのになんでそんな親しいの?コミュ力高すぎだろ!?てか先輩って…初めて呼ばれた!

 

「気軽にあこって呼び捨てでいいよ!」

「じゃ、じゃあこで」

 

 今思えばあこは巴の妹だったな!姉があれなら妹もこうなるのか?

 

「あ、会長!ゲームのラスボスが倒せれないんですよ!」

「……あーあれですね、初見はキツイですよね」

「いや何回も行ってて勝てないんですけど…」

 

 うわ、俺ってゲーム才能ないんじゃね!?

 

てかなんのゲームって言わなくてもどのゲームの話か分かる会長凄くないか!?

 

「ち、違いますよ!ほら!苦手なタイプとかあるじゃないですか!?」

「大丈夫だよ!あこ達が手伝うからさ!」

「ええ!?いいのか!?」

 

 手伝ってくれるとかありがてえ!あのモンスターマジで倒せれないんだよな!

 

「あ、でもりんりんーゲーム機お家にあるよ?」

「な!た、確かに…」

「大丈夫です、弦巻君に攻略法教えながらやってもらえば勝てると思い…ます!」

「なるほど!だったら急いで俺の部屋に行きましょう!」

 

 俺は会長とあこを連れて自分の部屋に戻ってきた。中に入って思うが相変わらず無駄に広いよな?テレビがある所まで結構歩くぞ

 

「こんな所に住んでるなんてシン先輩すごーい!」

「……まあここには住んでないけどな」

「え!?じゃあどこに住んでるの!?」

 

 んんー!質問が多い!まあ中学生?だから仕方がないよな!?

 

「そ、それよりゲームしようぜ!」

「あ!そうだった、忘れてたよー」

 

 忘れないでよ!?ここに来た意味ちゃんと理解しててよ!

 

 その後会長とあこによりアドバイスを受けながらゲームをするも

 

「だぁぁあやっぱり勝てねえー」

「……こ、ここまでやって勝てない人あこ初めて見たかも」

「はめ技があんなに決まるなんて…」

『……不幸ですね(だねー)』

 

 や、やめろー!そんなことは俺が一番理解してるんだよ!?

 

「もういい、このゲームやらない、売る」

 

 俺は拗ねてゲーム機のコントローラーをその場に置き体操座りをしていた。

 

「つ、次は行けますよ!」

「はは、どうかな」

「んーん?」

 

 あこは腕を組んで何か考えている様子だった。もう考えても勝てる可能性なんてないだろ!?

 

「あー!じゃあ目標立てようよ!」

「目標?」

「そうだね……勝ったらりんりんがシン先輩にいい子いい子して頭撫でるってのは?」

『……!?』

 

 な、なんだと!?

 

「……俺やるよ!」

「つ、弦巻君!?」

「やったー!りんりん!シン先輩がやる気出したよ!」

「あ、あああこちゃん!?何考えてるの!?」

 

 会長は目をグルグルにしていかにもパニック状態であこに問いただしていたがそんなことは気にもせず俺はゲームと真剣に向き合っていた。

 

「やったあぁぁぁぁ!!勝てた!勝てたぞ!」

「おー!やっと勝てたねシン先輩!」

「………………」

 

 そのやっと勝てたねってやめてくれませんか!?こんなに頑張ったのにその言葉を言われると台無しだろ!

 

「ほらりんりんー頑張ったシン先輩には頭撫でないとね〜」

「……いや会長?無理しなくていいっすよ?」

 

 その、あれだよ、ノリに乗ってやっただけだよ?まあそのおかげで勝てたんだけどな

 

「……ねえ話変わるけどさ?」

「どうしたあこ?」

「なんでシン先輩はりんりんのこと会長(・・)って呼ぶの?」

「…………え?」

 

 あこは少し以上に不機嫌な顔をして俺に話しかけてくる

 

「いや、まあ生徒会長だし…」

「生徒会長ってだけで会長って呼ぶの?」

「……おう」

 

 えーなんか間違ってたか!?だって会長ってカッコイイじゃん!誰だって会長って呼んでみたいんじゃないのか?

 

「……そんなの可哀想だよ」

「可哀想?」

「あこちゃんだ、大丈夫だよ?私は会長って呼ばれて嬉しいから」

「りんりんが良くてもあこがやだー!」

『……!?』

 

 な、何がいけなかったんだ?

 

「ひなちんのことはなんて呼ぶの?」

「……日菜先輩」

「じゃりんりんは?」

「……会長」

 

 確かにおかしいなこれは

 

「違う、りんりんの名前は会長(・・)なんかじゃないよ!」

「ッ!」

 

 そうだった。簡単な話だよな?人を呼ぶのに名前じゃなくて役職で呼ぶとか…はっ、何がカッコイイだよ

 

 だせーじゃねーか

 

 どうやら俺の頭の中には変な考えがあったようだな、会長と呼ぶことをカッコイイと思ってることがさ

 

 りんりんってのはちゃんと白金燐子の燐をとりりんりんと呼んでいるのだろう、みんなには勘違いして欲しくないがこれは渾名だ。

 

 けど俺のは?役職…間違ってたの俺だったんだよ

 

「……悪かったなあこ、お前の大切な友達を役職呼びなんかして」

「ううん!わかればいいんだよシン先輩!」

「………………」

 

会長は、いや白金先輩何故か顔を真っ赤にして目をぐるぐる回していた。

 

「えっと、白金先輩?「!?」」

 

 あ、どうやらこの方がいいらしいな

 

「俺間違ってました…」

「今まで会長なんて呼んですんませんでした!」

 

 その場で大きく頭を下げ謝っていた。

 

「え、えっと、その…」

 

 燐子先輩は返事に戸惑っている様子だったが

 

「……ッ!?」

 

 何故か急に俺の頭を撫でてきた。なんでだ?あ、さっきのやつか?

 

「私は弦巻君がどんな呼び方でも大丈夫ですよ?」

「………………」

「けど、でも、その…白金先輩じゃなくて」

「――……燐子先輩とお呼び、ください」

「……ッ!」

 

 あこの方をむくが笑顔で早く返事してあげなよって顔をしていた。

 

 でも俺が馴れ馴れしく燐子先輩って…いや、呼んでもいいよな?だって俺達はあの文化祭を成功させた実行委員同士だ。だったら名前で呼んでも…

 

 別に変じゃないよな?

 

「……燐子先輩(・・・・)!」

「……はい、なんですか?」

「えっと、これからも俺達を引っ張って行ってください…?」

 

 俺は何言ってんだよ!?なんでここで急にそんなことを…俺はただ言い直したかっただけなのに!?

 

「私一人では…なので生徒会のみんなで頑張ります」

 

 燐子先輩はさっきまでのパニクってる様子はなくあこと同じような笑顔でそう答えていた。

 

 俺はふと思ったよ

 

「(こんな人が理想の生徒会長なんだろうな)」

 

 ってな、正直いって惚れてしまうレベルだろ?いや惚れってるそっちの意味じゃなくてだな

 

「あっ!あこ用事思い出しちゃったー」

「は?」

 

 あこは小悪魔のようにニコニコしながらそんなことを言っていた。

 

「じゃああとはお二人仲良くねー」

「お、おいあこ!?お前なんか勘違いしてないか!?」

 

 まさかね、あこに心の中読まれて惚れてしまう、を別の意味で捕えられたんじゃないのか!?

 

「……ではゲームの続きでもしましょう」

「え!?あ、はい…」

 

 べ、別に違うぞ!そんなことは考えてないからな!?俺達はただの先輩後輩って中でそんな関係ではないから!

 

「あ、このゲームしても…いいですか?」

 

 燐子先輩は赤くした顔を隠すようにゲームのパッケージを上げて俺にそのゲームを見せてくる

 

 あれ、そんなゲームあったけ…あ!そうだ!あの後少しハマって別のゲーム買ったんだった!

 

 でも色々あってやる時間なかったんだよな…サッカーとかサッカーとかバイトとかで!

 

「いいですよなんならクリアするまでしましょっか」

「……ッ!……はい!」

 

 今は夏休みだし多少の夜更かしどーってことないさ!あ、でも明日誕生日だったよな…まあ別にいいだろ

 

 その後燐子先輩とテレビの前に仲良く並びゲームをしていた。コントローラーはもちろん燐子先輩が持ってますよ?だって燐子先輩がしたいって言ったからな?やらせるさ

 

「……あっ!……くんのあそこ硬くなってる…」

「は?」

 

 テレビの画面に移るのは女子と男子がハッスル寸前の画像、それに字幕でさっき聞こえたセリフが映し出されていた。

 

「あ、あの、燐子先輩!?」

「す、すすすすすすすみません!わた、わたわたしこのゲームはじ、は、は、初めてで…!」

 

 さっきまでゲームしていた燐子先輩はパニクりだしゲームの画面が固まった状態だった。

 

「……でも、クリアしないといけないんです…よね?」

「……ッ!」

 

 う、嘘だろ!?序盤でこれなんだから後半とかもっとやばいだろ!だけど…俺は言ってしまったんだ!

 

 クリアするまでしましょうか

 

 ってな…!

 

「男に二言はない!いいですよ!やったりましょう!」

「や、ヤったりましょう!?」

「ち、違います!そんな意味じゃないですから!」

 

 その後燐子先輩とギャルゲーをしていたのであった…てかなんで俺このゲーム買えてんだよ!おかしいだろ!?

 

 んなことどうでもいいんだよ!女子の先輩とギャルゲーを一緒にするってどうなんだ!?

 

「あー!!不幸か幸運かわからねぇぇええ!」

シンくん(・・・・)!今いい所なんですから静かに!」

 

さっきまでの恥ずかしさは何所に行ったんですか!?ゲームにはまり込むとホント手が負えなくなりますよね!?

 

「……やっぱり不幸だ」

 

 その後は朝日が昇るまでゲームをしていた2人だった。




りんりんはゲーム友達です。これもifルートですかね?いやヒロインの話書けよってね!

次回以降書きますからお待ちを!

いまだにシンの声のイメージがついてないんだよね、結局どんな声なのか…皆さんの意見を聞かせてください

では次回でまたお会いしましょう!


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弦巻シンの誕生日会は普通じゃない

お久しぶりです。今回はシンとアレックスが活躍します!お楽しみに!

それではどうぞ!

急いで書いたので誤字脱字があるかもしれません、後で訂正しときます!


 徹夜ってマジでキツいんだよ?みんな知ってますか?

 

「――……痛えぇぇ」

 

 テレビの前にて俺は床で寝ておりました。

 

 いやな?燐子先輩とゲームするまで終われないってやつをしてたんだよ

 

 結果を言うが無事にクリア、最後なんてもう…な?やばかったですよ!

 

 あんなシーンを見てよく耐えた俺!凄いよ!燐子先輩の胸を何度見たことか…って違う!俺は変態じゃない!

 

「……んんー」

「!?」

 

 隣を見ると燐子先輩がまだ寝ている様子だった。

 

 可愛い寝息をたてながら寝るその姿はさっきまで興奮していた様子なんてものはなく、そこには普通の女子が寝ていた。

 

 いやいやいや!可愛すぎだろ!?数時間前あれだよ!あれだったんだよ!なのに今これかよ…

 

 俺は立ち上がりベットへ行き毛布を取り、燐子先輩に掛けようとした。

 

「いや、ベットに運んだ方が良くね?」

 

 さすがに女子を硬い床で寝させるのはいやだな…てかなんで俺ベット使っていいって言わなかった、いや言ったわ、言ったけど聞いてなかったんだろうな!?

 

「すー、すー、すー」

「燐子先輩…!ごめん!」

 

 燐子先輩をお姫様抱っこしてベットに運ぶ、いや胸!やべ、でけ!

 

 ここからベットまで結構距離があるからな、非力な俺にはきつい

 

「あと少し…」

 

 あと少しでベットに着く!

 

「シン様ー朝ですよー誕生日ですよー」

『あっ』

 

 どうやらアレックスが俺を起こしに来たらしい…てかお前はいつもいつもタイミングが悪い時に来るよな!?

 

「……これはこれは、シン様が女を連れ込んで」

「ち、違う!違うぞアレックス!」

 

 俺は全力で否定をする!床で寝ていた燐子先輩をベットに運んでいるだけだっての!

 

「昨日とは違いシン様自身から行動するとは…アレックス驚きました!」

「話を聞け!だから違うんだって!」

 

 話を聞けよお前は!?

 

「それよりもシン様は巨乳好きなんですね」

「あぁぁ!不幸ーだぁぁあああ!!!」

 

 もうやだこんな屋敷!アレックスにどんどん俺の恥ずかしいところを目撃されるよ!

 

 シンの叫びは自室だけで留まったのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 誕生日、それは誰しもが迎える記念日だ。普通の家庭ではバースデイソングを歌いケーキには歳の数だけロウソクがあり息を吹きかけて消す。まあこれが普通だよな?

 

 そんなこと一度もしたことないですけど何か!?

 

「只今より弦巻こころ様、シン様の誕生日パーティーを開催いたします」

「司会の…」

 

 なんでいるのかわからない司会の人が俺達の誕生日を祝うパーティ開始の言葉を述べていた。

 

「シン!誕生日おめでとう!」

「……そーゆうお前もだろ?こころ」

 

 俺の隣でめちゃくちゃ高そうな椅子に座り黄色のドレスを身につけているのは姉のこころだった。

 

 そう言う俺は普段絶対に着ないスーツを来ております。アギトさんや有翔みたいなやつらしか似合わないっての!?

 

「こころさんシンさん誕生日おめでとうございます」

「祝ってくれて嬉しいわ!ありがとうね!」

「あーはは、久しぶりですね」

 

 前からよく姿を見ける優しいおじさん、いつも誕生日プレゼントをくれてたんだよな

 

「今年はこころさんとシンさんどちらも同じプレゼントを用意しました」

「そうなの?一体どんなプレゼントなのかしら!」

 

 待って!嫌な予感がする!

 

「島でございます」

 

 スクリーンに渡すであろう島の様子が映し出されていた。

 

 いや島とかいりませんので!?

 

 てかこころはもうハワイ持ってますから!これ以上島は要らないだろ!?

 

「嬉しいわ!ならミッシェルランドを作りましょう!」

「や、やめろ!既に夢の国があるんだから作らないくていい!」

 

夢の国の方が絶対楽しい!あんなに楽しんだんだ、ミッシェルランドより勝ってると信じたい!

 

「じゃシン君が貰った島には花園ランドを…」

「お前は黙っとれ!」

「いたいー」

 

 おたえにチョップをかます。いや花園ランドこそ作らなくて大丈夫です、てか作るなら俺に関係ない所にしとけ!てかどっから湧いてきた!?

 

 んなことより!

 

「あはは、おじさん?俺にはまだこの島は早いよ」

「……そうでございますか?」

「俺が偉くなったら貰うよ」

 

 そう!こんな風に言えばなんとかなる!そうだろ!?

 

「ではシンさんが弦巻家当主になったあかつきには…」

「い、いやーまだ考えるの早いよ!?」

 

 てかなるのこころだろ!

 

 その後何とかおじさんを説得して島はまた今度とのことになり後日代わりのプレゼントを用意するって話になった。

 

 だから俺は普通のでお願いね!?って頼んだよ、てか別に無理してプレゼントなんて用意しなくていいんで!

 

「こころ様、シン様改めて誕生日おめでとうございます」

「あら?あなたも来てくれたのね!」

「はい、今回はシン様もご一緒なので是非と思って、前回は体調を崩されたとかで」

「あ、うん、お腹痛かった」

 

 この人は俺らが小さい頃からちょくちょく屋敷に来てた人、そしてチェスの相手も良くしてくれた人だな

 

 てかそっか、俺がいない間はこころだけ祝われてて俺は体調を崩した設定だったのか

 

「ではこころ様にこちらを」

「そしてシン様にはこちらを」

 

 紙袋を渡され中身を覗いてあらビックリ

 

「剣のキーホルダーです」

「いや小学生が修学旅行で買うやつやん!?」

 

 あの剣のキーホルダーだよ!俺は買ったことないけど良くみんなが買うやつだろ!

 

「お気に召さなかったですか?」

「いや、んーう、嬉しいです!」

 

 多分この人の中で俺の印象は剣が好きな子供のまんまなんだろうな!いや小さい頃はみんなそんなの好きだっただろ!?

 

 こころはなんかうん、凄いのもらってましたよ

 

 その後はいろんな人達が俺達の前に現れ誕生日を祝い、プレゼントを渡し一言二言喋ってその場から離れる、それの繰り返し

 

 いや、こんな誕生日会普通じゃないですよね!?

 

 結構時間がたちもう終わりだろうと思った時

 

「おーす、お嬢、シン、誕生日おめでとう」

「よっ、祝いに来てやったぞ」

 

 アギトさんと有翔が祝いに来たようだ。

 

「アギト!アリト!あなた達に祝ってもらえるなんてあたし嬉しいわ!」

「まあ俺はお嬢の付き人なんで」

「あら?私はそれ以上の関係でもいいのよ?」

「またまた冗談を」

 

 多分冗談で言ってるから信じなくていいぞアギトさん

 

 アギトさんはこころへなんだろう、多分ネックレスか何かをあげていたな

 

「ほれ、お前にはこれだよ」

「……サンキュー」

 

 なんか薄い箱みたいなやつにラッピングされてる物を渡され俺は紙を破って中を見てみるが

 

「エロ本じゃねーか!」

「いやーラッピングしてもらうの超恥ずかしかった」

「だろうな!?」

 

 エロ本ラッピングしてくださいってアギトさんが店員さんに言ってる光景が頭に浮かぶよ!

 

「俺はこれだ」

「なんだ?女を落とすテクニックその100?…いやこれひまりが男バージョン買ってたよ!?」

 

 夏休み前にひまりがTATSUYAで買った本のシリーズ物じゃねーか!

 

「これで彼女でも作るんだな」

「……黙ってろリア充が」

 

 俺は有翔にそう答えた瞬間

 

「シン様!こころ様!誕生日おめでとうございます!!」

「アレックス!あなたは一体どんなプレゼントをくれるのかしら!」

 

 来ましたよ問題のアレックス!こいつがまともなプレゼントをくれるわけなんてねえ!

 

 こころに対してなんか女子が喜びそうなものを渡してたな、こころが喜んでたし

 

「……では次にシン様ですね!」

「いや、お前のプレゼントはいらない」

「なんでですか!?アレックスは一生懸命選んだんですよ!?」

「うるせえ!お前の渡すものなんてろくなものがないだろ!」

「ふっふっふー!これを見てもまだ言いますか!」

 

 アレックスは後ろに隠していた箱を俺に見せてきた。その箱は綺麗にラッピングされており俺の予想を遥かに超えたものだった。

 

 だってアレックスだぞ?ヤバいやつ渡してくると思ったが…誕生日だけはどうも違うようだ。

 

「おーありがとう」

「中身を見てください!」

 

 俺は全く覇気のないありがとうを伝え中身を見てみた。

 

「……………………」

「……………………」

「……いやオ〇ホール!?」

 

 はぁぁぁぁ!?どこのアホが誕生日にオ〇ホ渡すやつがいるんだよ!ここにおったわ!?

 

「どうです!嬉しいですか!?」

「全然嬉しくねえよ!」

「またまた!嬉しそうにしちゃって!」

「お前マジで嫌いだわー!!」

 

 もうこいつとは絡みませんから!こんなもん渡すやつと知り合いとか、元専属メイドとかもういやです!

 

 シンの誕生日プレゼント配り最後の最後で大ハズレを引いたのであった。

 

「ほう…なかなかできが良いでわないか」

 

 一方その頃、シンの親父が何かを見つけたようだ

 

 弦巻こころ様、シン様、お誕生日おめでとうございます

 

 と書かれた看板が飾られている生け花がそこにはあった。

 

「そうか?そう言われてると嬉しいな」

「…………美竹、お前来てたのか」

「ああ、可愛い可愛い娘に来てくれと頼まれたら来るだろ?」

「あいつ、余計な真似を」

 

 そう、シンは蘭に頼んだのだ。

 

「明日蘭の父さんを俺の誕生日会に呼んで欲しい」

 

 と、理由は簡単だ。二人とも最近は会ってない雰囲気だったため会わせようと思ったのだ。

 

 シンの親父さんはそのセリフを言うのと同時に胸もとのポケットに入れていたサングラスを取り出しかけはじめた

 

「隠す必要ないだろ?」

「……何の話だ、電気が眩しいからかけたんだよ」

「……そうか、まあ眼以外は変わってなくて嬉しいぞ、しんちゃん」

「その名前で呼ぶな、潰すぞ」

 

 久しぶりの再会にも関わらずシンの親父さんは強気の口調、この二人にとってはこのやり取りが普通なのだろうか

 

「そう言えばお前の娘、シンに気があるようだな?」

「そうなんだよ、式はいつするんだ?」

「……お前は俺の女と同じことを言うな」

 

 シンの親父さんはため息をこぼしながら蘭の父さんにそう答えたのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 アレックスにあんなもの渡されプレゼントは全部受け取った…はず!だから俺はみんながいる所に向かっていた。

 

 ああ、みんなって言うのはガールズバンド集団な?合宿中に誕生日会があったため参加してるんだよ

 

「シンくん〜誕生日おめでとうなのだ〜」

 

 到着すると同時にモカが俺に話しかけてきた。

 

 そのモカはいつものモカではなく会に参加するため黒服が用意した白いパーティードレスを着ており、髪はいつもと違って巻き上げていた。

 

「……うわ、似合ってる」

「えへへー、今度はウエディングドレス着させてね?」

「遠回しに結婚するってことを言うな!」

 

 いやはっきり言ってめちゃくちゃ可愛かった。普段と違うからか?モカと結婚する時はあれがウエディングドレス姿に…

 

 いやいや!モカと結婚しないからな!?

 

「シン誕生日おめでとう」

「……ッ!ら、蘭か、ありがとな」

 

 モカだけじゃなくて他のみんなもドレスアップ、黒服の連中らもよく集めたもんだよな

 

 蘭は赤と黒がベースのパーティードレス、髪型は普通のようだかその普通さがまたいい味を出している!

 

「そ、そんなに見ないで!は、恥ずかしいから」

「んなことないって、可愛いぞ?蘭」

「……ッ!……シンのばーか」

「いやなんで!?」

 

 本当になんでだよ!

 

「じゃーん!ひまりちゃんのドレス姿だよ!それと誕生日おめでとう!」

「ん?お、おー!!す、すげえ!」

 

 ひまりは薄いピンクのドレスを着ており髪は下ろしいつもの二つ結びはしていなかった。

 

「……シン君が返事してくれたらウエディングドレス姿見せるからね?」

「お、お前までそんなことを言うなよ…」

 

 モカといいひまりといいな…てかモカのは冗談だけどこいつは本気だろうな、でも返事は待って欲しい…中途半端な恋なんてする方もされる方もいい気味じゃないだろ?

 

「シン誕生日おめでとう!」

「沙綾!いや沙綾に祝われるとかマジで嬉しいよ!」

「そう?ならよかったー」

「これからは毎年祝ってあげるからね♪」

「マジで!?いや嬉しい!ありがとう沙綾!」

 

 沙綾がずっと祝ってくれるとか嬉しすぎるだろ!ずっとってことはこれからも友達でいてくれるってことだよな!

 

 やっぱり高校生活初の友達は沙綾でよかったって心の底から思うな

 

「シンくーん!誕生日おめでとう!」

「あ、彩先輩!?」

「私もいるわよ」

「と千聖先輩!?」

 

 彩先輩と千聖先輩二人が俺のことを祝いに来てくれた。

 

 本当にこの先輩達にはいろいろとお世話になってるからな…これからは恩を返していかないといけないな!

 

「あ、誕生日プレゼントなんだけど後で渡すね!」

「えー今でいいじゃないですか」

「いろいろと事情があるのよ、察しなさい?モテないわよ」

 

 なっ!?なんだって!?こ、こう見えて俺告白されてるし!モテないわけないから…え?そうだよな!?そうだよね!

 

 その後はいろんな人達から誕生日を祝われたさ、いや、友達から誕生日祝われたの初めてでさ…正直言って

 

 マジで泣きそうになった。

 

 でも泣くわけにはいかないだろ?誕生日で泣くってそんな、な?みんなにも迷惑かけたくないし

 

「あ!シン君来た来た!」

「おたえちゃん行くよー!」

「はい!」

「お、おい!?な、なんだ!」

 

 日菜先輩とおたえに捕まえられみんながいる中央へと連れていかれ

 

『Happybirthday!!!』

 

 とみんなからそう言われた。

 

 そこにはみんなが作ったであろうバースデイケーキがあり、チョコペンでこころ!シン君誕生日おめでとう!と書かれていた。

 

 いや本当になんなんだよ…こころと一緒に祝われてるってわかるけどさ?本当に泣きそうになるんですけど…!

 

 シンは今まで誕生日会とかで祝われていたが本当の友達からは祝われたことがなかったのだ。

 

 そんな彼が今ではどうだろうか?見渡せば友達、またはまだ友達ではないがこれからなるかもしれない人達、今の彼を見て誰も独りだとは言わないだろう

 

「みんな……ありがとう、ございます」

 

 泣くのを必死に耐えて俺は礼の言葉を言う

 

「シン君泣いちゃうの〜?」

「なっ!な、泣かねーよ!」

 

 誕生日祝われて嬉しいからってさすがに女子の前では泣けねーよ!てかさ!?俺既に蘭とか千聖先輩の前で大泣きしてるからね!?

 

「みんな本当にありがとう!とーっても嬉しいわ!」

「私達姉弟をこれからもよろしくね♪」

 

 こころはウィンクをしながらみんなに言っていた。ついでに俺のことも言ってくれて助かるぞこころ!

 

 自分からだと恥ずかしくて言えねーだろ?

 

「それよりシン、みんなでケーキ作ったんだけど…食べてくれる?」

 

 沙綾がそんなことを聞いてくるが…もちろん答えは決まってる

 

「……食うに決まってんだろ!」

 

 俺は近くにあった皿とスプーンを手に取りケーキに近ずくも

 

「ふんっ!いかにも貧乏臭いケーキだな?おい」

「……は?」

 

 声がする方に顔を向けるも周りの人達はキョトンとしていた。

 

「貧乏臭いケーキだって言ったんだよ」

 

 俺が向いていた方の後ろからまた声が聞こえ次はその周りにいた人達が退けていきそいつが顔を見せてきた。

 

「あんた誰だよ」

「貧乏人とのハーフが俺に気安く話しかけるな」

「……あんたから喧嘩ふっかけてきたんだろ?」

 

 貧乏人とのハーフ?なんだ、お前は俺の母さんが貧乏人だと言いたいのか?

 

「全く弦巻家も落ちたな、こんなしょうもない貧乏人を会に呼ぶなんて、まあ俺とて来たくてきた訳じゃないがな」

「あんた、貧乏人って誰のことを言ってんだ?」

 

 場合によっちゃ許さないぞ、いやマジで

 

「?わからないのか?お前の周りにいるだろ」

「……ッ!てめぇ!」

 

 俺のことを馬鹿にすることは百歩譲ってやる、けど俺の、俺のことを祝ってくれた友達を馬鹿にすることだけは絶対に許さない…!

 

 歳上とかそんなの関係なく俺は胸グラを掴むも

 

「いいのかよ、お前本日の主役ってやつだろ?喧嘩なんかして誕生日会台無しだなおい」

「……もういいよシン、ケーキはしまうから」

 

 沙綾自身も自分達のケーキがこんな会には相応しくないのではないかと思っていたのであろうか、しまいだすと言い出した。

 

「!やめろ!こんなやつの話は聞かなくていい!」

 

 せっかく沙綾達が作ってくれたケーキだぞ!こんなやつの言葉でしまわせてなるものか

 

「あなたさっきから失礼よ!私達の誕生日パーティなんだからね!」

 

 こころも少しお怒りになり男に説教をする

 

「まあ待て」

「!?」

 

 話を切ったのは俺の親父だった。

 

「おい、そこの雑種、俺の女がなんて言った?」

「いやそれ俺の言葉」

 

 有翔が雑種と言葉に反応していた。有翔は切れると口調が変わり相手のことを雑種呼ばわりにするんだよ、雑種ってのはみんなが知ってる意味ではなく、雑魚の品種、略して雑種と呼んでるようだ。

 

 前から思ってたが雑種の品種ってなんだよ、意味わからん、てかなんで親父がその言葉を使うんだよ

 

「あんたもあんたもだろ?しんちゃん?」

「……調子こいてると潰すぞ」

綺羅(きら)財閥はキチガイだらけだろ?ほっとけよ」

 

 アギトさんが親父にそんなことを言った途端

 

「綺羅財閥!?」

「あの綺羅か!」

「どうりで性格が悪いのやら…」

 

 どうやら違う意味で知れ渡られてるらしいな

 

「なあ?あんたチェス強いだろ?俺と勝負しろよ」

「貴様ごときとか?」

「ああ、なに?負けるの怖いのか?」

「おいおいボス、こんな小学生みたいな挑発に乗るなよな?」

 

 次は有翔が親父にそんなことを言っていた。てかあんたら二人とも俺より馴れ馴れしいよな?なんでだよ

 

 てか、親父が出るまでじゃない

 

「親父の前に俺と勝負しろよ」

「……は、貧乏人とのハーフであるお前と?」

「ああ、悪いけど今の俺過去一で機嫌悪いかもな?亜滝先輩の時よりもな」

「……あんたは俺の友達を馬鹿にした…!母さんを馬鹿にした…!」

「絶対に許さない」

 

 亜滝先輩の時とは比にならないラベルだ。こいつら完全に俺を怒らせた。

 

「いいだろう、負けたら…そうだな?」

「弦巻家を俺が買収する、これでどうだ?」

「ああ、いいよ」

『!?』

 

 俺は即返事をする、その際は周りにいた人達が大きな反応を示していたものの俺はなんとも思ってなかった。だって勝てばいいだけの話だ

 

「その代わり俺が買ったら二度とこの屋敷来るな、そして俺を含む一般人を馬鹿にするな」

「自分が一般人であることを認めてるのかよ!」

 

 綺羅は大笑いしながら答える、だがその周りは誰も笑わず自分一人で笑っていることに対しては何も感じていないようだった。

 

「いいぞ、俺が負けるわけないからな!」

 

 誕生日会にも関わらず急遽始まったチェスの戦い、はっきり言って弦巻家がどうとかそんなのどうでもいいんだよ…!ただこいつが俺は許せないだけであって痛い目に合わせてやりたいんだよ

 

 チェスの戦い中周りは静かで俺達が駒を奥音が会場に響いていた。

 

「……チェック、追い詰めたぞ?」

「……………………」

 

 俺は早速追い込まれていた。

 

「シン様大丈夫なのですか?」

 

 おじさんが心配そうに聞くも

 

「……あいつ、遊んでいるな」

「うわぁ舐めプされてるのに気づいてないって可哀想だな?」

 

 どうやら親父と有翔にはバレていたようだ。

 

 俺の作戦、最初はいいように攻めれていたが…一気に逆転されて自分のプライドと地位をズタズタにする戦法、ゲスだと思うだろうがこいつはやってしまったんだよ

 

 俺を怒らせたんだよ!

 

「…………チェック、なんだっけ?こんな時は、そうだな、追い詰めたぞ?って言うのか」

「……ッ!!!???」

 

 綺羅は一気に形勢逆転され同様が隠せない様子だった。

 

「あ、ありえないありえない!この俺が!こんなガキに負けるのか!」

「まだ負けじゃないだろ?足掻けよ、最後まで、雑魚キャラみたいにな!」

 

 俺の悪い癖だ。切れると口が悪くなってしまう、普段滅多に切れないからこうなってしまうのだろうか…てか怒ると俺怖いよアピールとか痛いやつ感丸出しかよ

 

「ふざけるな!何かしたなお前!」

「んなことしねーよ、俺は正々堂々チェスをした」

「そしてあんたはその試合で負けそうになってる」

「違う!俺は強い!強いんだよ!」

 

 綺羅は苦し紛れの手を打つも俺はその動きを読んでいたためすぐに対策をとり

 

 相手のキングは裸状態になった。

 

「あんたさ、自分が強い、自分が1番だと思ってるだろ?」

 

 俺はあえてクイーンにプロモーションしたポーンを手に取り

 

「――……チェックメイト」

「けど残念、強いのは俺だ」

 

 おおー!と周りの人達は声を上げ拍手をおこなっていた。

 

「馬鹿な!ありえない!こんなガキに俺が負けるわけない!」

「相手が悪かっただけだ!次はお前だよ!俺と勝負しろ!」

 

 綺羅は親父に指をさして言うも

 

「シンごときに勝てないやつが俺に勝てるわけないだろ」

「……ッ!」

「おじさん諦めなよ、負けを認めないとか無様だよ?」

 

 口を開いたのはなんと日菜先輩だった。

 

「負けたヤツが弱い、それだけだ」

 

 俺は親父に昨日聞いた言葉をちょっと変えて言った。

 

「……この貧乏人共がー!」

 

 綺羅は近くにあったケーキを切るようの包丁を手にシンに襲いかかろうとしたものの

 

「……なっ!?」

 

 その包丁はシンに届くことはなく天井に突き刺さっていた。

 

「綺羅様困ります、そのような物騒なものをシン様に向けてはなりません」

 

 そこにいたのは俺と綺羅がチェスをしてる間ずーと一人でご飯を食べていたアレックスだった。

 

 アレックスの手にはいつもの木刀が握られ綺羅は右手を痛そうに抱えている、多分アレックスは綺羅が包丁を持ってる手を上に叩き上げ、その結果包丁が天井に突き刺さっているのだろう

 

「次同じようなことをしましたら」

 

 天井に突き刺さっていた包丁は垂直に落ち来て

 

「……ッ!」

 

 その包丁は綺羅の目の前に落ちてきた。あと一歩、いや半歩ほど前に出ていたら頭の上に落ちてきて死んでいただろう

 

「容赦しませんから♪」

 

 アレックスはいつも俺たちに向ける笑顔でそう答えていた。

 

「それと!そんな危ないもの持っちゃいけません!シンジ様が真似るかもしれないでしょ!?」

 

 おーい!お前相変わらずだな!?

 

「アギト、有翔、連れてけ」

「了解ー」

「おっけー」

 

 力なく答えた二人は綺羅を連れていき会場を後にした。

 

「アレックスちゃんさすがよ!シンさんを守ってくれてありがとね♪」

「いえいえ奥様!報酬金なんて大丈夫ですよ!いやー10万ぐらいでいいですよ!」

「あら!安いのね!」

 

 だからお前はなんなんだよ!てか母さんいたなら母さんも貧乏人って言われたことぐらい否定しろよ!

「いやー母さん超がつく元貧乏人よ?」

「そんなの初耳だよ!」

 

 聞いたことないっての!

 

「貧乏人とか関係ない、俺はこいつしかいないと思ったから結婚したんだ」

「……もう!あなたったら♪」

 

 さっきまで重かった空気はすぐに解放され誕生日会は開始早々の空気に戻っていた。

 

「あー!沙綾!ケーキは!」

「え?あるけど…」

「ずっと食べたかったんだよ!食ってもいいか!?」

「……ッ!うん!みんなで作ったから食べて食べて!」

 

 俺は甘い物がマジで好きなんだよ!金かかるからあんまり食ってなかったけど沙綾達が作ってくれたケーキなんだから食うっての!

 

「美味い!美味いぞ沙綾!」

 

 いやー!持つべき友はパン屋の友達だよな!

 

「シン!こっち側も美味しいわよ!」

「本当かこころ!」

「すげー!美味いし味が違う!どうなってんだ!?」

 

 こっち側とそっち側で味が違うんだけど!

 

「それはねーそれぞれのスポンジケーキを繋げてひとつの大きなケーキにしたのだ〜」

「何それ!じゃあこっちは!」

「あっ、そっちは…」

 

 俺はその言葉を聞く前にケーキを食べていた。

 

「………………」

「………………」

「…………グハッ!!」

 

 皿とスプーンを落とし俺は腹を抑えて倒れていた。

 

「そこは蘭が作ったところだよって言おうとしたのに」

「……遅いっすよ沙綾さん」

 

 や、ヤバい…!誕生日なのに腹を壊してしまう、いや意識が

 

「ふ、不幸だ」

 

 シンはまたまた蘭の料理によってあの世体験ツワーに参加したのであった。




いかがでしたか?アレックスはやるときはやるんです。シンはまああの性格だから怒りますよね?

綺羅はシンのこと相当恨んでいますでしょうね

それではまた次回の話でお会いしましょう!

あ、次回はヒロインズ回ですよ!お楽しみに!



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弦巻シンとプレゼント

いやー本当に久しぶりです。皆さん元気にしてましたか?僕は忙しい日々でした…今回ヒロイン回!

ではどうぞ!!

誤字脱字は後で訂正します

あとから気づきました、バーの色が変わってる!?グハッ!!


 あの世ツアーから帰還した俺はソファにいた。どうやら誰かが運んでくれたようだったな?大方アギトさんや有翔辺りだろう

 

「……目が覚めたか」

「お、親父!?」

 

 起き上がった直後、後ろから話しかけられ俺は振り返るとそこには親父が椅子に座っていた。

 

「美竹の娘、料理は破壊級のようだな」

「……ああ、実の親も死にかけてるからな」

 

 蘭の父さんも俺と同じで気を失ってたからな?

 

「だけどあいつは諦めず料理を教えるようだぞ?」

「蘭が料理上手くなるとは思わないけどな!?」

 

 あれから育て上げたら母さんを俺は尊敬するな!

 

「それとだ」

「……ッ!」

 

 親父は急に声を暗くし鋭い瞳で俺を睨みつけて言う

 

「お前は後先考えずに行動するな」

「勝ったからいいものの負けてたらどうする気だったんだ?」

 

 ああ、俺があのクソ野郎との掛けで弦巻家を掛けたことについて怒っているのだろう、いやあの時は本当に悪いことをしたと思ってるよ

 

「……ごめん、何も考えてなかった」

「まあ予想はしてた」

 

 じゃー聞くなよな!?

 

「とりあえず負けはしなかったから今回は水に流してやるよ」

「助かる…」

 

 負けてたら一体どうなってただろうか…てか負けるとは思ってなかったけどさ

 

「起きたなら早く女共の所へ行け、心配してたぞ?特に美竹の娘がな」

「あはは、生きてるって報告してくるよ」

 

 俺はソファから立ち上がり親父の横を通り部屋から出ようとするも

 

「気おつけろ、綺羅財閥はアギトの言う通りキチガイ集団だ」

「お前の友人達に嫌がらせをしてくるかもな?」

 

 嫌がらせ?俺への恨みを晴らすために友達に手を出すってことか…

 

「大丈夫だみんなは俺が守る、だって俺は」

 

「――……正義の味方になるからな」

 

 どんなヤツらでも俺の友達に手を出したら許さないからな…

 

 親父にそういい部屋を後にした。

 

◆◆◆◆

 

 少し重い空気になってしまったな…って俺が原因じゃねーか!?

 

 俺はみんながいると聞いている部屋に行くも

 

「あ!シン君来たよ!」

「おー無事に生きて帰ってきましたか〜」

「ああ、なんとかな!?」

 

 何故蘭にケーキを作らせたんだよ!結果がわかってるなら止めてやれよ!

 

「シン、その…ごめん」

「別にいいって、生きてるから大丈夫だよ」

 

 蘭は謝ってくるがまあ別に死んでないし?ただ一言言わせてもらうと

 

「……ただしもう料理はするなよな」

 

 このことしか言えませんよ!?

 

「ところでなんでお前達しかいないんだ?」

 

 他の香澄やおたえなどのメンバーはいなくてモカ、沙綾、蘭、彩先輩、ひまり、千聖先輩しかその場にはいなかった。

 

「他の人達はこころちゃんの所に行ったよ?」

「あーはいはい、なるほど」

 

 彩先輩が丁寧に教えてくれるが…大方こころが何か言い出してみんながそっちに連れてかれたんだろう、でもここにいる人達はなんでこころの所に行かなかったんだ?

 

「シン君に誕生日プレゼントを渡すためだよ!」

「まじでか!みんな俺にくれるのか!?」

 

 通りで誕生日プレゼント貰ってる時に来なかったわけだ!後からくれるとかサプライズすぎるだろ!?

 

「でも条件があるのだ〜」

「……条件?」

 

 なんだ?貰ったからにはお返しする時は貰ったものの3倍高い金額の品を返せってやつか!?

 

 もしそうだったら6人分払うのはシンさんキツいっすよ…

 

「一人一人渡したいから指定した場所に来て」

「いやいや蘭さん?ここでいっせいに渡すとかじゃダメなのか?」

「貰えるのだから変わらないじゃない」

「……まあ千聖先輩の言う通りだな!」

 

 貰えることには越したことはない!一人一人貰うために指定の場所なんてすぐに行ってやるさ!

 

「それじゃあ準備があるからしばらくここで待機しててね♪」

「お、おう!」

 

 みんなは部屋から出て行き俺だけが取り残された。いや、また一人かよ!?あ、さっきは親父が部屋にいたのか、忘れてたよ!

 

◆◆◆◆

 

「…………時間だ」

 

 時間、場所それと順番が書いてる紙を渡されていたためそれをもとに指定された場所へと向かう。

 

「一人目は彩先輩か」

 

 彩先輩が指定した場所、それは屋敷の屋上だった。屋敷に長く住んでるがあんまり屋上には行ったことはない、こころがあれだからな?危ないと言われ立ち入ってなかったんだよ

 

「来ましたよ?彩先輩!」

「お!シン君来たね!」

 

 彩先輩もパーティに参加するためドレスアップそ、しております、パステルピンク色のドレスがとても似合っていた。

 

 彩先輩からはどんなプレゼントを貰えるのだろうか!

 

「その、ね?プレゼントあげる前に少し話さない?」

「え?いいですけど…」

 

何それ焦らしプレイですか!?だけど彩先輩と話すことは楽しいし全然平気…だと思う!

 

 彩先輩は深呼吸を行い、息が整ったところで俺に顔を向ける

 

「……私ね、アイドルなのに恋しちゃったの」

「……ッ!」

 

 あーあれか、前に言ってた話のことか…大方はその話していた人のことを好きになったのだろう

 

「事務所とかは大丈夫なんですか?」

「うん、説明したら学生だからな仕方がないって認めてくれて…」

「…………付き合うんすか?」

 

 事務所が認めてるんだぞ?彩先輩がそいつに告白でもしたら即オッケー間違いなしだろ

 

「んーどうだろう?その人鈍感なんだよね」

「なんすかそれ!そいつ勿体ねえな」

 

 彩先輩から好意を向けられてるのに気づかないって…知った時は相当驚くんだろうな

 

「……でも私はそんな所の彼が好き、ううん大好きなの」

「……ッ!」

 

 彩先輩が今している笑顔はアイドルスマイルとかじゃない、一人の少女の笑顔であり恋する乙女の姿だった。

 

「でもさ…もし結ばれて、世間が、みんなが私のことを嫌って、見捨てても…」

「シン君は私の味方でいてくれますか?」

 

 前にも同じような話をしたことがある、いや、それは俺が決心した時だ。

 

 みんなの正義の味方になる

 

 だったら話は簡単、たとえ世間が彩先輩を嫌っても見捨てても…俺は!

 

「はい、俺は彩先輩の味方です」

「……ッ!うん!ありがとう!」

 

 俺は少しでも彩先輩の背中を押すことができたのだろうか、まあ最後に決めるのは彩先輩だ、彼女が彼女自身の道を決めるだろうさ

 

「これプレゼント!私とお揃いだよ!」

 

 彩先輩はオシャレな紙袋を渡してきてくれて中身を見てわかった。

 

「香水、ですか?」

「うん!とてもいい匂いなんだよ!」

「へーそうなんですか!ありがとうございます!」

 

 香水とか自分で買う機会とかないからな!こうやって人に貰って使ってみるってのが丁度いいのかもしれない!

 

「……これからも、その、よろしくね!」

「はい!よろしくお願いします!」

 

 よろしくと言われたが俺の方こそよろしくだってな

 

「……じゃ時間も時間なのでそろそろ行きますね」

「あっ!ちょっと待って…!」

「なんです……ッ!?」

 

 彩先輩は急に俺に抱きついてきたのだ。なんで抱きついてきたとかわからなかったがオレはどうすればいいのかわからず腕を上にあげているだけだった。

 

 それに、あの、めちゃくちゃいい匂いがする!こ、これがアイドルの匂いってやつなのか…!

 

「えっと、これが香水の匂いだけど…どうかな!?」

「え!?いやーめちゃくちゃいい匂い、です」

 

 うわ俺何言ってるの!?頭大丈夫ですか!てか好きな人いるのに抱きついたりして大丈夫なんですか!?

 

「匂いが確かめたのならよかったよ!」

「な、なるほど…」

 

 だったら大丈夫なのか?いや気にしたら負けだよな!?

 

 シンは屋上を後にして一旦部屋に彩から貰ったプレゼントを置き次の場所へと向かったのであった。

 

◆◆◆◆

 

「次はーひまりか」

 

 指定された場所は玄関前の大きな噴水場、ショッピングモールの噴水とは全然違うな

 

「もーう!遅いよシン君!」

「…………悪いな」

 

 ひまりに告白されて以来あんまり絡んでないんだ。いやこないだ絡んだよな?何故か俺の布団にいてそして俺達は…って思い出すなよ!

 

「ねえシン君…」

「な、なんだ?」

 

 ひまりが俺のことを呼ぶため返事をする

 

「私のこと、避けてない?」

「……ッ!ち、違う!」

「もう前みたいにからかえる関係には戻れないの…かな?」

「……ッ!」

 

 俺の何気ない行動がひまりを傷つけていたのか…

 

 別に避けてたり嫌ってたりしてるわけじゃないんだよ…!その、あーもう!

 

「あー!一度しか言わないぞ!」

「う、うん!」

 

「お前可愛いんだよ!可愛いやつから告白なんて初めてされたしなんなら告白だってされるの初めてで…」

「だから!その!わかんねーんだよ!」

「……わからない?」

 

 ああ、俺はどうすればいいのかわからない。告白されて?返事を待って欲しい、だったら俺は何をしてひまりと接すればいいんだよ

 

「それに、告白されたら少しは意識するっての!恥ずかしいこと言わせんなよ!」

「……ッ!」

 

 意識してしまうんだよ!ひまりを友達じゃなくて女子として!いや友達だけどさ

 

「……もうシン君のバーカ!」

「は、はぁ!?バカじゃねーし!お前こそバカだろ!?」

「バカじゃないよ!ひまりだよ!」

「だからひまりがバカなんだろ!」

「……ほら、前みたいにできるじゃん」

「ッ!」

 

 言われてみればそうだ…普通に前みたいな会話ができている

 

「意識なんてしなくていいんだよ、少しずつ私を好きなっていってね」

「……でもひまりはそれでいいのかよ」

「偽物の恋なんて私はいらないの、だから…」

 

「シン君が私に負けた時返事をしてください」

 

 俺が負けた時に返事をする、か

 

「俺がもし他の人を好きになったらどうすんだよ」

「んーその時はあきらめてまた恋を探そうかな?」

「……お前らしいな」

 

 なんだよ、簡単な話だった。意識してるのは俺だけでひまりは昔みたいに絡みたかったようだ。だったら俺はそれに答えないといけないな!

 

「はい!プレゼント!大切にしてよね?」

 

 ひまりから渡されたのはネックレスだった。こうゆうのはよく蒼汰が付けてる系のネックレスだな?いや欲しいと思ってたから丁度いいよ!

 

「ありがとう!大切にする!」

「ちゃんと付けてよね?」

「付けるつける!毎日付ける!」

 

 学校にだってつけて行くレベルだよ!

 

「もっとシン君といたいけどもう時間だからね」

「……おう、そろそろ行くよ」

 

 俺はひまりから貰ったプレゼントを部屋に持っていくため一旦帰る、いや他の人のプレゼント持ってるまま貰いに行くのってさ?なんか失礼感あるじゃん!

 

「……ひまり!」

「ん?どうしたの?」

 

 いや、そのあれだよ

 

「俺のことを好きって言ってくれてありがとな」

「……ッ!どういたしまして!」

 

 俺のことを好きだって言ってくれたんだ。それのお礼ぐらい言わないとな?

 

 ひまりのお礼の言葉を言いシンは部屋に戻って行った。

 

◆◆◆◆

 

「次は蘭だな」

 

 蘭が指定した場所は花畑だった。普通の家にはないが母さんは花が大好きなんだよ、趣味で育てておりそこだけ一面花で埋め尽くされている

 

 花畑につき辺りを見渡すとベンチに座り花を眺めている蘭の姿があった。

 

「悪いな、遅れたか?」

「シン…いや、全然大丈夫だよ」

「隣いいか?」

「どうぞ」

 

 蘭とこうして二人だけで話すとあの日のことを思い出してしまう…!

 

「なんか久しぶりだね、二人っきりってのは」

「そーだな!」

「……なんかあたし達本当に結婚する感じになってるね」

 

 あー母さんが言ってるやつな!いや母さんが言ってるだけなんで!信じなくて大丈夫だっての!?

 

「いやならいやって言ってもいいんだぞ?」

「…………別にいやじゃないよ」

「へ?」

 

 蘭はベンチから立ち上がり当たりを歩き出した。

 

「最近はシンといて楽しいって思えるし…別にこのまま結婚してもいいかな?」

「お、おおおお前は何言ってんだよ!?」

「ふふ、冗談だよ」

 

 な、なんだよ冗談かよ!?いやでもそうだな…蘭と結婚したら料理は俺が作らないといけないな!って違う!

 

「シンの母さんと今料理の勉強してるの」

「へ、へーそうなんだ」

 

 だ、大丈夫なのだろうか!?試食とかしたりしたらヤバいんじゃ…

 

「試食役はアレックスさんだよ」

「あ、まじ?なら全然大丈夫」

 

 アレックスがどうなろうと俺は知らんな

 

「ちょっと!?」

 

 えーい!話に入ってくるな!

 

「今度食べさせてあげるから」

「いや、今日ケーキ食べたし」

 

 なんなら死にかけたし!

 

「……あれは失敗、次こそ大丈夫」

「お前の次はいつくんだよ!」

 

 前も次とか言ってなかったか!?気の所為だったらすまん!

 

「まあいろいろ言いたいことあるけど…誕生日おめでとう」

 

 蘭は笑顔でそう言い俺にひまわりを渡してきた。花を貰うなんて生まれて初めてどうすればいいのかとかわからなかった。

 

「えっとありがとう!なんだ?育てればいいのかな?」

「うん、毎日水あげて日が当たるところに置いてて」

「……わかったぜ!」

 

 これからは毎日水をあげないとな!貰ったんだし枯れないように頑張るさ!

 

「花言葉は…」

「……花言葉は?」

 

 俺が聞き返すと蘭は顔をボンッ!と赤くして

 

「う、うるさい!調べたら怒るから!」

「お、おう!調べません!」

 

 な、なんだ!?そんな反応されると花言葉の意味知りたくなるだろ!

 

「なんだ、まあ次は蘭が作った生け花でもくれよな」

「……ッ!うん!」

 

 せっかく華道の勉強をしてるんだ、俺だって見てみたいっての!

 

 最後にそんな話をしてまた部屋に戻る、いやこの往復作業結構キツイな、てか今思ったけどだんだん遠くなっていってね?

 

 そんな文句を言いながらも部屋に戻り次の場所に向かうのであった。

 

◆◆◆◆

 

「……次は沙綾か」

 

 沙綾が指定した場所は庭にある大きな桜の木がある場所

 

 場所に行くと沙綾は今は咲いていない桜の木を眺めながら俺のことを待っている様子だった。

 

 その姿は黄色のドレスを着ており普段とは違い髪を下ろしていた。

 

「……ここね、こころ達とお花見したところなんだ」

 

 沙綾は俺が来たことに気づいたのか話しかけてきた。こころ達と言うのは花咲の一年メンバーの話なのだろうか

 

「まあ俺はその時屋敷にいなかっただろ?」

「そうだね」

 

 沙綾は笑いながら答えてくれる

 

「なあ沙綾、正直いって俺の印象ってどんな感じだった?」

 

 いや気になるだろ?今はこんなに仲良いけどさ最初はどう思われてたんだろうな

 

「そうだね、二日目で黒染めしてきて少し引いたかな?」

「シンプルに傷つくな!?」

 

 そう言えば髪染めてたな!文化祭前に戻したんだっけか?

 

「今はそんなことないよ?シンは私のヒーローだよ」

「……あー、その事なんだけどな」

 

 沙綾はよく俺に言うんだ。

 

 私だけの正義のヒーローってな…けど俺は違うんだよ

 

「沙綾、お前には言っとくよ」

「俺はみんなの正義の味方になりたいんだ」

「……ッ!み、みんなの?」

 

 ああ、一人だけの、沙綾だけのってのは俺がなりたい正義の味方じゃない

 

「昔俺が求めた存在、いないなら俺がなるって決めたんだ」

 

 沙綾ならわかってくれるはずだ。

 

「そう、なんだ…」

「……じゃ私だけの正義の味方にはなれないの?」

「……さあどうだろうな」

 

 もし俺が沙綾のことを好きになったのなら、好きな人が私だけの正義の味方でいてって言われたのなら、俺は一体どうするのだろうか…それでもみんなの正義の味方になりたいとでも言うのだろうか

 

「でも沙綾」

「………………」

「俺が味方になりたいやつの一人は沙綾も含まれているからさ」

「……ッ!そう、ありがとう!」

 

 また沙綾は笑顔で答えてくれる、何度も思うが沙綾は本当に笑顔が似合うやつだ。

 

「(この笑顔を守れればそれで充分なのかもな)」

 

 そう思ってしまう

 

「あ、忘れてた!はい!改めてシン!誕生日おめでとう!」

「おー!ありがとう沙綾!」

 

 中身も見てみるとそれはイヤホンだった。

 

 いつも音楽を聴く時は携帯に付属でついてきてるイヤホンを使っているためそろそろ変えようと思ってたんだよ!いやーまじで助かる!

 

「嬉しいよ!本当にありがとうな!」

「どういたしまして!」

「あ、シンに言わないといけないことがあったんだね」

「ん?なんだ?」

 

 なんか話があるのか?

 

「ほら?前にシンが純を助けてくれたじゃん?」

「あーあれな」

「それのお礼を母さんと父さんがしたいって言ってて」

「その、今度家来てくれる?」

 

 沙綾の母さんと父さんが俺にお礼をしたい!?いや別に俺は当然のことをしたまでなのに…まあお礼をしたいって言ってるし

 

「いいぜ!今度沙綾の家に遊び行くよ!」

「わかった!純も紗南も喜んでくれると思うよ」

 

 そうなのか!だったらシンジも連れて行ってやるか?仲良いらしいしな!

 

「おっとそろそろ時間だ、戻るよ」

「うん、また明日ね!」

「ああ!プレゼントありがとな!」

 

 沙綾にそう言い走って屋敷の自室に戻り荷物を置いて次の場所に向かった。

 

◆◆◆◆

 

「千聖先輩、千聖先輩っとー」

 

 次は千聖先輩だ。指定された場所は…あれだよ、俺と千聖先輩が有翔の件で話したあの池の岩場だ。

 

 紙には池とだけ書かれていたが何となくそこだと勝手に決めつけたが

 

「……やっぱりここか」

 

 池に映る満月、それを眺めるように岩に座りタバコ吸っては白い煙を口から出している千聖先輩の姿があった。

 

「遅いわよシン」

「そりゃープレゼント貰っては屋敷に戻ってますからね」

 

 これでも頑張って来た方なんだよ!許してくれ!

 

「みんなからプレゼントは貰ったの?」

「あとは千聖先輩とモカだけだな」

 

 モカが一番最後でその前が千聖先輩、つまり次が最後ってことか

 

「千聖先輩、タバコって美味しいんですか?」

「……さあね、よくわからない味だわ」

 

 なんだよそれ!じゃなんで吸ってんだよ!

 

「試しに吸ってみればわかりますかねー」

「……私は止めるわよ?」

「試すだけですって」

 

 千聖先輩からタバコを一本奪い火を浸かると見せかけて

 

「ふんっ!」

「ああ!何するのよ!」

「……これで千聖先輩が吸うはずのタバコ一本分は無駄にできましたね」

「まったく、あなたって人は」

 

 俺は千聖先輩から奪ったタバコを折り曲げ、引きちぎり吸えるものではなくしてやりましたよ!

 

「話変えるけどいいかしら?」

「いいすっよ」

 

 千聖先輩はタバコの火を消して携帯用灰皿に捨てる、岩から降りてきて俺の前に立つ

 

 言っていなかったがもちろん千聖先輩もドレスアップしている、色はパステルイエローのドレスだった。仕事でもその色の服を着ているため様になっており、髪型に関しては珍しくポニーテールにしていた。

 

「私ちゃんと有翔に気持ちを伝えるわ…」

「……その方がいいすっよ」

 

 千聖先輩は有翔のことが好きだった。そのことを伝えるのだろう

 

「でも今はもう好きじゃないわ、過去の話よ」

「はいはい、わかってますから」

「……わかってないようね?」

「いやわかってますって!?」

 

 今頃好きだって伝えたところで有翔には彼女のつぐみがいる、だから付き合えるってことはないんだよ

 

「次はちゃんとありのままの自分で話す、もう逃げたりしないわ」

「千聖先輩ならやり遂げれますよ」

「……ええ、そうね」

 

 今の千聖先輩なら有翔とまっすぐ向き合えるさ

 

「そう言えば誕生日プレゼント渡してなかったわね」

「……はい、誕生日おめでとう」

「こ、これって…!」

 

 千聖先輩が渡してきたプレゼントは以外も以外な物だった。

 

「ええ、ミサンガよ」

「……正義の味方になるって目標、叶うといいわね?」

「……ッ!あ、ありがとうございます!」

 

 ミサンガをつける時願いを込めて付けそれがちぎれた時願いが叶うって話…だったような?

 

「ほら、足出して、付けてあげるから」

「い、いいっすよ!これくらい自分でつけますから!」

「だーめ、いいから足を出して」

 

 その後は千聖先輩に無理やり付けられ

 

「はい、ここなら大丈夫だと思うわよ」

「どうせなら腕に付けたかったすよ」

「腕に付けてたら学校に行った時外されるわよ?」

「……なら喜んで足で!」

 

 外されたら意味ないっての!だったら足につけてもらいますよ!

 

「もう時間だわ、次は屋敷に戻らなくても直接行けると思うわよ?」

「……ですね、ならモカの所に行ってきます」

 

 俺は千聖先輩に別れの言葉を言いモカが指定した場所に向かおうとすると

 

「シン」

「……なんですか?千聖先輩」

「私も頑張るから、あなたも頑張りなさい」

「……ッ!お互い頑張りましょう!」

 

 その後はモカが指定した場所に向かっていった。

 

◆◆◆◆

 

 モカが指定した場所、それは弦巻家の敷地内にある森林の中だった。

 

 夜のため暗いと思うだろうが何故か街灯があり森林の奥に行く道は明るくなっている

 

「(にしてもこんな奥まで行くとか…大丈夫か?あいつ)」

 

 一人でこんな所にいるのは寂しくなるんじゃないのか?いや俺は寂しくなる

 

「……ッ!」

 

 奥にあるベンチにて俺がここまで来る羽目になった人物がおり、そいつはベンチに寝っ転がり寝ている様子だった。

 

「おいおい寝てんのかよ…」

 

 俺は呆れた感じでモカに近づく

 

 モカの寝顔は可愛くて呼吸をする度唇が動いている。まあ呼吸したら動くよな!?

 

 そんなモカの寝ている姿を見て俺は…

 

 モカに自分の唇を近づけていた。

 

「……いやいや、何してんだよ俺は!?」

 

 あと少しでモカにき、キスするところだったじゃねーか!?あ、危ねー!

 

「……キス、しないの〜?」

「……ッ!?も、モカ!起きてるなら起きてると言え!」

 

 起きてたのかよ!クソ恥ずかしいじゃないか!てか別にモカにそんな感情とか持ってないしな!

 

「もうシン君遅くて待ちくたびれちゃったよ〜」

「ごめん、待たせて悪かったな」

「ううん、モカちゃんがじゃんけんに負けたからしょうがないよー」

 

 な、なるほどじゃんけんで順番を決めていたのか…てかなんで!?なんで順番とか決める必要があったの!

 

「モカちゃんは運はいい方なんだけどな〜」

「俺は不幸だけどな?」

「それは大丈夫ーモカちゃんが幸運者だからシン君の不幸が来てもプラマイゼロなのだ〜」

「なんだそれは」

 

 俺は笑いながら答える。てかモカとこうやって二人っきりで話すのは本当に久しぶりだな!なんか前ってどんなふうに話してたっけ!?

 

「……少し昔話しよっか」

「俺とモカが出会った話か?」

「そうそうーいやー理解が早くて助かるよ〜」

 

 俺とモカが出会った話か

 

「バイトの面接が一緒だったな」

「シン君緊張して訳分からないこと言ってもんね〜」

「うるせえな!」

 

 他は…そうだな

 

「お前が俺のクビを繋いでくれた」

「あーあったね、そんなことも〜」

「そんなことって、俺はちゃんと感謝してるんだぞ!?」

 

 モカがいなかったら今の俺はあそこでバイトできてないだろうな!

 

「そして高校生になってみんなと出会った」

「……うん、モカちゃんはシン君に友達が沢山できて嬉しいよ〜?」

「お前は俺の親か!」

「違うよ、婚約者だよ〜」

「だから結婚しねーって!」

 

 ああ、これだよ、これがモカと俺との絡みなんだよな!この時間が結構楽しいって思う自分がいる

 

「まあいろいろ言いたいけど…シン君、誕生日おめでとう〜」

「……なんだこれ」

 

 モカから渡されたものは他のみんなとは違い封筒?のようなものだった。

 

「中身を見てみて〜」

「お前のことだからどうせ…!」

 

 その封筒を開けて見ると中には手作りのカードがあり、そこにはこう書かれていた。

 

 ずっと友達だよ券

 

 ってな

 

 これを見た瞬間今まで我慢していた俺の涙が一斉に溢れてきた。みんなから誕生日プレゼント貰い貰う度に泣きそうになって耐えていたが…このプレゼントだけは耐えることができなかった。

 

「その券があればモカちゃんとずーと友達だよ」

「なんだよこれ…!お前!手抜きすぎる…だろ!」

「けど喜んでくれて涙まで流してるじゃ〜ん」

「な、泣いてねえよ!これは、その、クシャミが出そうなんだよ…!」

 

 反則すぎる、嬉しすぎる、こんなもの貰えるなんてどこの誰が思うだろうか

 

 俺は空になった封筒を握りしめ涙をぬぐいモカに話しかける

 

「モカ…」

「シン君なーに?」

「俺は…俺は…!お前がいたから変わることができたんだ!」

 

 そう、モカがいたから俺は昔の自分から今の自分に変われた。成長できた

 

「お前が暗闇の中にいる俺を見つけてくれたから今の俺がいるんだ!」

「……うん」

 

 モカが俺のことを気にもとめず見捨てていたのならここに俺の姿はない

 

「だからモカ…!」

 

「俺を助けてくれて…本当にありがとう…!」

 

 また俺は泣いていると思う。人にお礼を言ってるのに泣くなんてな?

 

 モカはそんな俺を見てどう思ったのか分からないが強く抱きしめてくれた。

 

「……これからもよろしくね」

「……モカ!」

 

 俺もモカを抱きしめてしまう。だってさ…嬉しいんだよ

 

「ところでその裏側見てみて〜」

「……え?いいけど…!」

 

 涙を拭き裏側を見てみると

 

 モカちゃんと結婚できる券

 

 と、書かれていた

 

「……だから結婚はしないっての!!!」

「あちゃ〜今の流れだと行けると思ったのになー」

「お前はアホか!俺の感動の涙を返してくれよ!」

 

 やっぱりこんな感じなんですかね!?

 

「ほら?屋敷に帰ろう〜」

 

 モカは俺の前に手を出してそう言う。俺にその手を握れって言うようにな

 

「……はいはい、手を握りますよ」

「わーい、恋人繋ぎね〜」

「…………今夜だけだぞ」

 

 今日の今の時間、そう、今の時間だけ…な?

 

 モカと手を繋ぎ屋敷に戻っている途中

 

「見てみてシン君〜月が満月だよ〜」

「ん?ああ、そうだな」

 

 いや待て

 

「月が綺麗ですね、なんてセリフ言うなよな?」

「いや〜月が綺麗ですなー」

「おい!?」

 

 お前ってやつは…まあ冗談ってわかってるけどさ!こう言われるとドキッて来るだろ!?

 

「……チッ、モカの方が綺麗だっての…」

「……ッ!へー、へーありがとう」

 

 まあ本当だしな、悔しいけどモカは可愛いよ、いや待って!ここでこの言葉を言っちゃったら別の意味になっちまう!

 

「ち、違うぞ!その意味じゃなくて普通にお前は可愛いと思ってだな…!」

「綺麗だけでなく可愛いとは〜モカちゃん嬉しいな〜」

「だー!!だから違うっての!?」

 

 あークソ!なんで真面目に回答したのかな俺は!

 

「もう帰るぞ!」

「はいは〜い」

 

 俺はモカを引っ張りながら屋敷に向かう。その途中

 

ドン!ドンドン!ドン!

 

 太鼓のような音が聞こえ出したと思い夜空を見上げると

 

 花火が上がっていた。

 

「こころのやつ、まだ懲りずに花火を上げてるのか」

 

 俺とこころが小さい頃は夏が来たらいつも花火を上げていた。まあ小さい頃の俺はそれが普通だと思ってたんだよ、今お前ば普通じゃないってな

 

「花火が上がってる…」

 

 モカのやつが驚くとか以外だな

 

「ほら!花火が終わる前に行くぞモカ!」

「……うん!」

 

 モカの手を強く握りしめみんながいるであろう場所を目指す。

 

 予想通りみんなは庭の所におり空を見上げていた。

 

「あー!モカとシン君遅いよ!何してたの!」

「いやーイチャイチャしてたら時間忘れちゃってね〜」

「安心しろ、イチャイチャなんてしてないから」

 

 俺はため息混じりにそう答えるが…

 

「……でも手は握ってるよね」

「うわっ!?ち、違う!これは…」

 

 蘭に指摘され急いで手を離すが時既に遅し、みんなに見られてましたよ、あはは

 

「本当に二人って仲良いよねー」

「……まあ、そうだな」

 

 沙綾がそう言うが…モカは俺にとって最初の友達だ。仲良くて当然だよな

 

 あれ?誰だっけモカと友達になってやるって上から目線だったやつは

 

 俺ですよ!

 

「ああーシン君が不倫してる」

「俺はいつお前と結婚したんだよ!?」

「え?宿泊研修?」

「やめろ!思い出させるなー!!」

 

 もうみんな忘れた頃にその話をするんじゃない!今はちゃんとあれは事故だったってみんな信じてるからな!

 

「モテモテね、シン」

「モテモテだ…」

「モテモテだな」

「ああ、モテモテだ」

 

 上から千聖先輩、彩先輩、有翔、アギトさんがそう言うも…モテモテなんかじゃないっての!

 

「ダメだよシン先輩!昨日りんりんと一緒に寝たのにそんな浮気みたいなことしちゃ」

「あぁあああこちゃん!?」

『……………………』

 

 燐子先輩は慌ててあこの口を抑えるもそれはもうみんなに聞こえてますよね…!?

 

「……よ、よーし、誕生日だし?早く寝よっかなー」

 

 みんなに背を向け俺の後ろに花火が上がる

 

『待って』

 

 あれ?こないだと同じメンツの声が聞こえたような、気の所為だよな?だって俺は今日誕生日だし?さすがに誕生日に不幸みたいなこと起きないよな?

 

 恐る恐る後ろを振り向くと

 

 ニコニコ

 

 みんながとても笑顔でした。

 

「……ふっ」

 

「誕生日でもやっぱり不幸だぁぁあ!!」

 

 シンの叫びは途中まで聞こえていたものの花火の音にかき消されるのであった。




さあ、シンは誰と結ばれるんでしょうかね?アンケートしたくても5枠しかないからできない!!

あ!感想よろしくお願いしますね!

それではまた次回お会いしましょう!またね!!


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弦巻シンと別れの挨拶

どうもーなんとか更新できました。今回は有翔回ですよ

それではどうぞ!


「あ、ああーあーそうだったな」

 

 朝起きた瞬間に昨日の嫌な思い出を思い出してしまう。

 

 昨日の夜の出来事

 

「あぁああ!!不幸だぁぁあ!!」

『待てえええ!!』

 

 あの6人から追われてる途中

 

「アギト!アリト!アレックス!あなた達も鬼ごっこに参加してきなさい!」

「おい!こころ何言ってんだよ!?」

 

 走って逃げている俺はこころの方は向かず発言していた。後ろなんて振り向ける状況じゃないっての!

 

「まあお嬢が言うならー」

「んじゃ俺達が鬼ってことで」

「行きますよー!シン様ー!」

 

 弦巻家の中でも身体能力がえぐいトリプルAの奴らが来るとか勝ち目がない!

 

「うああああ!!」

 

 即追いつかれ即捕まり即縛られ即説教をくらい即寝室に行き即風呂入って即寝て

 

「今のこの状況」

 

 あんまり寝れてない感があるが、まあ誕生日会も終わったしな?そろそろもう家に帰ってもいい頃合いだろう。

 

 いや今日帰るか

 

 大きな欠伸をしてベットから出ようとした時

 

「モゾモゾ…」

「ッ!?」

 

 ふ、布団の中に誰かがいる…!?

 

「お、おい!誰だお前は!」

 

 俺は震えた声で言う。いや普通に怖くね!

 

「シン君やっほ〜」

「も、モカ!?お前なんで俺の布団の中にいるんだよ!」

「モカちゃんねー今ちょーご機嫌なの〜」

「は、はぁ!?」

 

 ご機嫌?いやなんのことだよ!てかこの感じ…俺は知ってるぞ!

 

 あの時だ!あの時の蘭と同じだ!目がトロンとして妙に色っぽく見えるこの状態

 

「モカ酔ってるのか!?」

「モカちゃんはよってませんよー」

「……ッ!どこ触ってんだよお前!」

 

 モカはなんの躊躇もなく俺の股に手を置いてくる

 

「いやいやー朝だし?お腹空いてね〜」

「お、おう…」

 

 お腹空いてるから?な、なんだ!?

 

「……食べてもいい〜?」

「ダメに決まってるだろ!」

「でももうこんなになってるよ〜」

「ッ!?」

 

 い、いやだってその、女子に触られたら仕方がないだろ!?

 

「じゃあ早速〜」

「ま、待てモカ!展開早すぎるしテンプレすぎるから!」

「いただきま〜す」

 

 ま、まだ卒業すらしてないのに初めての体験がこれって…

 

「うわわわわぁぁぁぁあああ!!」

 

 ベットから勢いよく飛び上がる

 

「はあ、はあ、はあ…な、なんだ、夢か…!」

 

 そうか夢か!夢だったのか!え?夢だったのか…

 

「べ、別にー!悲しんでなんかな、ないし!?」

「…………こんな夢見るとかもう終わってんだろ俺」

 

 ん?なんか枕の下にあるな?なんだこれ

 

 枕の下には本のようなものがあり取り出してみると

 

「……これ昨日誕プレでアギトさんから貰ったエロ本!?」

 

 い、一体いつの間に!?てかこんなものがあったからあんな変な夢を見たんだよ!

 

「……いや、待て…!嫌な予感がする!」

 

 嫌な予感、じゃなくて嫌な感触がする…!

 

 布団を上げてみると

 

 アレックスから貰ったオナ〇ールが俺の息子にぶっ刺さっていた。

 

「……あのクソアマー!!!!!」

 

 俺は勢いよく抜き取りその場に叩きつけ部屋を飛び出しアレックスのもとへ向かう。

 

「今回ばかりは許せない!あのクソ変態ショタコンメンイド!」

 

「……覚悟しろやぁぁああ!!!」

 

 バスローブ姿で廊下を全力疾走してながらアレックスの部屋に向かう途中…

 

「やっほ〜シン君〜」

「……ッ!?も、モカ」

「朝から元気だね〜」

 

 や、やばい!さっき変な夢見たせいでこいつの顔がまともに見れない…!

 

「……シン君〜?」

「……ッ!」

 

 その下から俺を見上げるな!

 

 クソ!こいつまじで可愛い…!こんなに可愛かったか?あれだ!あれのせいだ昨日のせいだ!

 

 あれがあったからこいつを俺は…

 

「…………モカちゃん今お腹空いてるんだね〜」

「へ、へー」

 

 さ、さっきの夢と同じセリフだ…!な、なんで!ま、まさか夢じゃなかったとかか!?

 

「だからウィンナー食べてくるね〜」

「……お、お前まさか!」

「……じゃーね〜」

「………………へ?」

 

 モカは普通に俺の横を通りご飯を食べる部屋へと向かっていた。

 

 な、なんだよそれ!?てっきり俺のウィンナーを…って何言ってんだよ俺!あークソ!これも全部アギトさんとアレックスのせいだ!アイツらがあんなものを…!

 

「シン君」

「……な、なに?」

「前は隠した方がいいよ?見せるのはモカちゃんだけね〜」

「……は?」

 

 何言ってんだモカのやつは、前は隠した方がいい?意味わか…はっ!?

 

 朝から元気元気な俺の息子が…

 

「ち、違うモカ!これには色々事情があってだな!」

「ま、まあー家の中だし?大丈夫だよ〜」

 

 その場に膝から崩れ落ちてしまう。みんなには誤解されないように言うが生で見られたわけじゃないぞ?その…うん、もりあがるだろ?

 

「それともモカちゃんを誘っていたのかな〜?だったら今すぐ」

「なんでもございませんから!!!」

 

 シンは逃げるように走ってその場をあとにした。

 

「もーう…えへへーシン君って大きいんだね」

 

 上機嫌な気分で朝食に向かうモカだった。

 

「アレックスー!!!」

 

 モカが上機嫌な中シンはアレックスの部屋のドアを思いっきり開け叫んでいた。

 

「すー、すー」

 

 まだ寝ている様子だった。

 

「このクソアマー人が酷い目にあってる中寝やがって」

「……んあ、シン様!?な、なんですか!アレックスを襲いに来たのですか!?」

「ざけんな!お前が俺に嫌がらせをしたんだろうが!」

 

 何をとぼけてるんだよ!?

 

「あーあれですか?人の誕生日プレゼントを使わない人がどこにいるんですか!?」

「それとこれとは別だろ!?」

 

 あんなもの誕生日プレゼントとで貰わなねーし貰ったとしても使わねーよ!

 

「どうでした?気持ちよかったですか!?」

「……なわけねーだろが!?」

 

 シンの叫びが普通聞こえるはずのないアレックスの部屋から聞えできたのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 あーまじ不幸、朝から酷い目にあったよ…いや昨日もだな

 

「朝食もみんなで食べるってなんだよ」

 

 部屋の端に椅子を持っていき一人で座っていた。辺りを見渡せばいくつか仲のいい人たちで集まりご飯を食べていた。

 

 どうやら今朝の朝食はバイキング形式のようだな、いや家なのにバイキングって…さすが俺の実家だな、あはは

 

「おうおう、元気ないんやない?」

「お前、今までどこ行ってたんだよ」

 

 犬のタマが一人でいる俺に話しかけてきた。ここに来て初日であっていらいこの犬とは会ってなかった?まじで何してたんだよ

 

「いやーな?貧乳の嬢ちゃんが投げた骨を今の今まで探してたんや」

 

 そう答えるタマの近くには骨が転がっていた。

 

「よっと、ここはほんま落ち着くなー」

「……だから頭の上に乗るなって」

 

 てか犬が飯食うところに入ってきて大丈夫なのか?まあ誰も注意しないからいいんだろうか

 

「ん?禿げてきてるな」

「は!?う、嘘だろ!?」

「嘘だ」

「嘘かよ!?」

 

 そんなビビらせる嘘つくなっての!お、男はな!髪が命なんだぞ!?

 

「見た感じおまんは禿げねーよ」

「そりゃどうも!」

 

 てかこいつの喋り方なんだよ!誰だよ教えてやつは!

 

「にしてもええ匂いやなーくんくん」

「その効果音自分で言うなよな…」

 

 やば、犬にまでツッコミし始めてるよ俺

 

「……はっ!」

「ど、どうした?タマ?」

 

 タマは驚いたような声を急にあげた。犬が驚く声って自分で言ってるけど何言ってんだろうな!?

 

「あそこの二人はカップルなんか?」

「ん?ああ、付き合ってるな」

 

 タマが短い前を使い蒼汰と巴を指していた。

 

「あの二人やってんな」

「……は?やってる?」

 

 いきなり何を言い出してんだよこいつ

 

「人間はこういうじゃないんか?あれや」

 

「……わしらで言うところの交尾ってやつやな」

「……はあぁぁぁああ!?」

 

 俺は勢いよく頭の上に乗っているタマを掴み俺と目が合う高さで腕を固定する

 

 いや待て待て待て待ってくれ!交尾だと!?そ、それって、え!?

 

「あそこだけやないで?あっちも、そっちも」

「や、やめろ!適当な嘘を言うんじゃない!」

 

 蒼汰と亜滝先輩は絶対童貞だよね!?俺達仲間で友達だよな!?う、裏切るようなことはしないよな!?

 

 あ、有翔…ま、まああのルックスだし?モテモテなんだろう、でも流石に…な!?

 

「嘘やない、わしは鼻がいいんや、匂いを嗅いだらわかるわ」

「……クソー!確かめてくる!」

 

 頼む嘘であってくれ!じゃないと、じゃないと…!

 

 この屋敷に居る男子の中で童貞は俺一人になってしまう!

 

「よ、よー蒼汰」

「ん?シンか、おはようさん」

「シンか!なんだ?アタシ達に用でもあるのか?」

「おーう…」

 

 いくらなんでもそんな真正面から昨日エッチした?なんて聞けないよな?

 

 てか人の誕生日になに新しい生命作ろうとしてんだよあんたら!?

 

「き、昨日の夜、何してましたか?」

『……ッ!?』

 

 ええ!?な、何この明らかに怪しい反応!まさか本当だったのか!?

 

「き、昨日はなー昨日は、あ、そう!サッカーの試合を見てたな!な!巴!」

「あ、ああ!いやーすんごい盛り上がったな!」

 

 もうやめてくれ!その嘘がさらに俺を傷つけるんだよ!

 

「蒼汰」

「……ゴムは付けような」

「はぁ!?お、おい!?ちょ、ちょっと待ってくれよシンー!!」

 

 ちくしょー!なんだよなんなんですか!?

 

 まさか蒼汰に先を越されるとは、いや彼女がいる時点で俺の負けだったな

 

「やあシン君、昨日の誕生日会は凄かったね」

「……亜滝先輩か」

 

 タマがこの人達のことも指していたな、聞いてみるか

 

「亜滝先輩、昨日夜何してましたか?」

「……ッ!」

 

 亜滝先輩は手に持っていたコップを落とし、落ちたコップは綺麗な音を立てて割れてしまった。

 

 割れた瞬間メイドの方達が直ぐに掃除をしてそこにはコップの割れた破片のひとつも残っていなかった。

 

「……昨日、昨日ねー」

 

 いや、もうこれは確定演出だろ!

 

「花火を見終わってすぐにリサと寝たね」

「……あーはいはい、そうですか」

 

 寝たって、それ絶対違う意味だろ!?

 

「急にどうしたんだい?昨日の夜の話なんてし始めて」

「いや、まあ別に、とりあえず亜滝先輩のことは嫌いってことで」

「な、なんで!」

 

 う、嘘だろ、こないだまで、いや昨日まで仲間だったヤツらはもういないのか!?

 

「よっ、シケたツラしてんな」

「有翔ー!」

「な、なんだよ!気持ち悪いから離れろ!」

 

 俺は有翔を見つけた途端しがみつき泣き目になりながら聞く

 

「な、なあ!?き、昨日の夜何してたんだ!」

「……あーヤったな」

「……ッ!」

 

 シンは声を失いました。

 

「あれ?お前ってまさかどう」

「待て!黙れ!」

 

 本当だったんだ!あいつの鼻は本物だったんだ!

 

 俺はヘロヘロになりながらタマがいる所へ向かっていく

 

「な?わしが言った通りだったろ?」

「……なんで、どうしてこんな目に」

 

 どうして昨日の夜にそんなことをするカップルが何人もいたんだ。

 

「どうしたんですか?シン様」

「……あーアレックスか、あはは笑いたきゃ笑えよ」

 

 いや、もしかして

 

「お前昨日の夜なんかしたか?」

 

 アレックスが何か至らんことをしたのかもしれん!

 

「昨日の夜、はて昨日の夜はー」

「あー加湿器の中身を媚薬に変えたことですかね」

「……それじゃねーか!!!」

 

 俺はいつもの様に大きな声で叫ぶ、いや媚薬ってなんですか!なんでそんなことするんですか!?

 

「いやーシンジ様に効くかなと思いましたら全く効かなくてですね!あはは!」

「……後で見てみたら女性にしか効かないよで」

「お前な!お前なー!!!」

 

 アレックスの肩を持ちお前な!と叫ぶ度に肩を揺らす。こいつがこんなことさえしなければ俺は!俺はー!

 

「あれ?まさか誰からも襲われなかったのですか?」

「んなことされ…!」

 

 あの夢、あれは本当に夢だったのか…?もし本当だったら俺は?いやいや!それはないない!

 

「だったら童貞のままですね♪」

「あああ!!!やめろ!!!」

 

 俺はまたまた叫びながら部屋を後にした。

 

 池まで走って、そして

 

「青春の馬鹿野郎ー!!」

 

 ザバーン!

 

 池で波なんて起きるはずがないのにその時だけ何故か大きな波が岩にあたり水しぶきを上げていた。

 

「なんでだよ!なんでこんなめに…!」

「まあしゃーない、これが現実や」

「タマ…!」

 

 こ、こいつどうやって来たんだ!?俺走ってたよ?

 

「わいはまだマシやで?わしなんか…」

「わしなんか…?」

「屋敷にメス犬の一匹もいないんやで!?」

 

 た、確かに!それに比べたら俺はめちゃくちゃ環境が整ってるじゃねーか!

 

「えっと、その、なんだ?今度ドックラン連れて行くように話しとくよ」

「まじで頼むで」

 

 なんだろう、なんで俺は犬なんかと同情してるんだろうか

 

「はあ…もうどうでも良くなったわ」

「さてと、家帰ってそろそろバイトも再開しないとな」

 

 もう今日帰ろう。こんな所いても疲れるだけだし?もう用も済んだと思うし帰るとするか

 

「なんやて!わしをドックランに」

「それー」

「わーい!」

 

 先程タマが持ってきた骨をポケットに入れて置いてよかったぜ!

 

「よし、家に帰るか」

 

 さっきまで走ってきた道を今度は歩きながら屋敷に向かう。

 

 今思えば今すぐに卒業、とかしなくてもいいんだよ、他の奴らが早かっただけ

 

「べ、別に負けてねーから」

 

 自分の心にそう言い聞かせながら屋敷に向かう。

 

 大きなドアを開け屋敷に入ると同時に

 

「シンさんどこに行ってたのですか?母さんは心配しましたよ♪」

「ちょっと風に当たってきた」

 

 母さんが玄関の掃除をしていた。いや掃除ってメイドの人がやるじゃないの?母さんがやっててもいいのだろうか

 

「玄関だけは母さんが掃除してるのよ♪」

「みんなが行き来する大事な場所だからね」

「……母さんらしいな」

 

 確かに玄関で家の全てが決まってしまう。汚かったなのなら中も汚いだろうと一目でバレてしまうからな

 

「そう言えば先程有翔さんが屋敷を出ていきましたよ?」

「ん?あー遊びにでも行ったんじゃない?」

 

 つぐみとデートだったりしてな

 

「いえそのようではなくもう爺様の屋敷に戻ると言ってましたよ?」

「……は?あいつもう帰るの!?」

 

 いや別れの一言ぐらい言わせろよな!

 

「今からちょっと行ってくる!」

「……まあまあ仲がいいこと♪」

 

 久しぶりに会ったんだから別れの挨拶ぐらいするだろ普通は!

 

 またまたさっきの道を次は走り屋敷の門まで向かう!さっき出たのなら間に合うと思う!

 

「……有翔ー!」

「!なんだよ、シンか」

「はあ、はあ、お前、もう帰るのか?」

 

 まだ1週間ぐらいしか滞在してないだろ?もう帰ったりして…つぐみはどうするんだよ

 

「ああ、元々盆に帰るのを無理言ってずらしてもらったからな」

「でもつぐみは…!」

 

 つぐみは、きっと残って欲しいって、まだ一緒にいたいって思ってるはずだ!

 

 いや俺は彼女とかできたことないけど多分そう思うだろう

 

「……悪い、つぐみがお世話になったな?」

「ん?何の話だ」

「文化祭の話だよ、つぐみから聞いた」

 

 あー!あれか!いや今思えばは、恥ずかしいな!つぐみを苦しませない仕事環境を作るだったけか?今思うとやばいな

 

「そんなお前に頼みがある」

「……つぐみを頼む、あいつすぐに無理するからな」

 

 有翔の顔を見てわかる。本当は自分がそばにいて無理をしないように見張っていたい、けどそれは仕事上できないため俺に頼んでいるんだろう。

 

 それに俺は、そうみんなの正義の味方になるんだ。だったらつぐみの味方でもあり有翔の味方だ。

 

「ああ、任された!もしつぐりそうになったら止めてやるよ」

「ふっ、助かるよシン」

 

 お前が戻ってくるまでは面倒見てやるよ

 

「あ、そう言えば爺からお前に言伝があったんだ」

「爺さんから?」

 

 ハッキリ言って爺さんとの面識は数回程度、幼い頃屋敷に来たぐらいと俺らが行ったぐらいだ。

 

「小さい不幸が続くか、大きな不幸が来るか、お前はどっちがいいか?だってさ」

「……はっ!?」

 

 いやどゆこと?

 

「あと近々お前に大きな不幸が訪れるとも言ってたな」

「…………何それ」

「とりあえず自分の身は自分で守れって話だな?」

「いやいや、そんな大きな問題?」

 

 いや待て、不幸って…俺だけの話か?

 

「それって俺に対しての不幸?それとも俺のせいで皆が不幸に?」

「さあ?」

 

 俺に対しての不幸なら全然いい、てかむしろ毎日が不幸だっての

 

「気おつけろ、綺羅財閥はアギトの言う通りキチガイ集団だ」

「お前の友人達に嫌がらせをしてくるかもな?」

 

 昨日親父が言っていたことだ。もしかしたらその事を言っているのかもしれない…だったら

 

 強くなってみんなを守らなくちゃならない!だって俺は

 

「――……正義の味方になるからな!」

「……だったらアギトさんやアレックスに頼んで稽古付けてもらえ」

「あ、ああ!」

 

 アギトさんに土下座かエロ本でも渡せば護身術の一つや二つは教えてくれるだろ。きっとな

 

「それじゃーな!最後にお前と話せてよかったよ」

「次はいつ帰ってくるんだ?」

「暇があれば帰る、またな」

 

 有翔は俺に背を向け門に向かって歩いて行った。その後振り返ることは無くそのまま出ていく姿を俺は後ろから眺めていた。

 

「よし、アギトさんを探すか」

 

 そんな時につぐみを見かけた。きっと最後に有翔と会おうと思ったのだろうか

 

「つぐみ、有翔ならもう出てったぞ」

「あはは、やっぱりそうだよね…最後にもう一度会いたかったかな」

 

 まあ彼氏とはずっといたいと思うんだろう。

 

「つぐみはさ、やっぱり有翔と離れるのは寂しいのか?」

「……寂しいよ」

「だよ「けど!」?」

 

 けど?

 

「また会えますから」

「……ッ!」

「頑張ればまた褒めてくれるから」

 

 つぐみの今の顔は俺相手だったら絶対にできないような笑顔でそう答える。有翔のことを思うからこそできるこの表情、元エンジェルが眩しいぞ

 

「へ、へーそれはそれは羨ましい限りだな」

 

 でもそれとこれは違う!このリア充め!

 

「あー!ち、違うの!別にシン君を馬鹿にしてるとかじゃなくてその!」

「わかってるって、有翔はいいやつだもんな」

 

 まあ有翔のことをよく知ってるのはこの仲良し幼馴染集団だよな

 

「ああ!私これから練習があるんだった!い、急いで戻らなくちゃ!」

「そうか!じゃーな!」

 

 練習のちょっとした前に有翔に会いに来ようとするなんて本当に好きなんだな

 

「さて、次こそ俺はアギトさんを探すか」

 

 アギトがいそうな場所を当てにシンは屋敷の外を散策した。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 有翔はシンと別れの挨拶をして弦巻家の門を潜り空港へ向こうとした矢先

 

「……まさか本当の最後のお別れがお前だったとはな」

「………………」

「なあ?千聖」

 

 呼ばれた瞬間、物陰に隠れていた千聖が姿を現した。

 

「……もう行くのね」

「ああ、なんだ?また俺に説教するのか?」

 

 有翔は昔海外の屋敷に行く時千聖に説教をくらっていた。その道を選んだところであなたにはなんのメリットもない…と

 

「別に説教なんてしないわよ、それにしてないわ」

「……そーかよ、話がねーならもう行くぞ」

 

 飛行機の時間もあるため有翔は早足でその場を後にしようとするも

 

「待って…!」

「……千聖?」

 

 千聖は何度も、それはそれは何度も深呼吸をしてシンに渡した手作りミサンガを自分にも作っておりそれを強く握り有翔に言う。

 

「有翔、私は、私は…!」

 

「あなたのことが好きだった…わよ」

「……ッ!そうか」

 

 千聖は今にも泣きそうな顔で言いながらも有翔は千聖の方を見ることなく前を見たまま返事をしていた。

 

「俺もお前のことが好きだった」

「……ッ!」

 

 そのセリフを言った時はちゃんと千聖の顔を見て答えていた。

 

「……なによ、それ」

「本当な、伝えるの早ければ付き合えたのかもな」

「あなたそんな素振り一度も見せてないじゃない!」

「それ言ったらお前もだろ?」

 

 互いが両思いだったがそんな素振りを見せなかったためすれ違い、選択を誤った。

 

「俺達はどこで道を間違えたんだろうな」

「……知らないわよ、けどもう」

「俺には今好きな人がいる」

「知ってる、つぐみちゃんでしょ?」

 

 もうつぐみと有翔が付き合っていることはみんなに知られていたのだ。

 

「……私も好きな人がいるわ」

「へーシンか?」

「ええ、そうよ」

 

 千聖はなんの躊躇まもなく答える。そう、これから本当の愛を始めるため過去の愛を断ち切るため今日のこの時間有翔に思いを告げたのだ。

 

「そうか、なあ?俺達もし付き合ってたらどうなってただろうな?」

「私とあなたよ?」

「だよな、成功なんてしないよな」

「違うわよ、とても愛し合ってたとお、思うわ」

「……ッ!」

 

 意外な返事で有翔は戸惑ってしまう。まさかそんなことが言われるなんて思いもしないからだ。

 

「へー意外な返事だな」

「最後だから素直に答えたのよ」

 

 それがシンとした約束だからだ。

 

「……悪い、そろそろ時間だ」

「そう、なら最後にもう一度言うわ」

 

「有翔、あなたを…愛していた」

「……俺もだよ千聖」

 

 そう答えた二人はほぼ同時にそれぞれが正面を向き始めた。

 

「じゃーな千聖!パスパレのみんなは頼んだ」

「ええ任されたわ、あなたがいなくてもやって行くわ」

「そうかよ…あばよ!」

 

 有翔は手を挙げもう片方の手でスーツケースを引っ張り前へと進む

 

 千聖は屋敷に戻るためまた門をくぐる

 

 そんな時お互いのこれからの道を祝福するかのよう夏の生暖かい風が二人を吹いた。

 

「――……私って彼と同じで不幸ね」

 

 中庭で口論しているシンを見ながら千聖は一言言いパスパレの部屋に戻って行った。




合宿編も残り一話で終わります。いやー更新してないから終わるの遅くなりましたね!

次回はアギトとシンが…乞うご期待!

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それでは次回の話でまたお会いしましょう!


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弦巻シンは強くなりたい

どうもー久しぶりです。今回はアレックスの過去とアギトさんの小話があります

今回は長くしたから最後まで読んでね!

それではどうぞ!

誤字脱字は今後訂正します


 俺は有翔から爺さんの言伝を真に受けアギトさんに稽古をつけてもらおうと思って探していた。

 

 部屋を見渡すもどこにもいない、外にでも居るのだろうか

 

「…………あ、いた」

 

 廊下の窓からアギトさんが外を歩いている姿を見かけた。

 

 中庭に出てあたりを見て見てみると昨日沙綾と待ち合わせていた桜の木に背をあずけ本を読んでいる様子だった。

 

 まあ本って言ってもエロ本だけどな!

 

「アギトさん、ちょっといいか?」

「ダメだ、今いいところなんだよ」

 

 お、おい!エロ本優先かよ!?

 

「お前も見るか?」

「見ねーよ!てか人が寝てる間に枕元にエロ本を入れるんじゃねー!」

「んだよ、そんなことでキレんなよ」

 

 キレるわ!あんた達のせいで変な夢見たんだぞ!?

 

「俺は止めたんだけどな?アレックスのやつかぶっ刺してな!いや久しぶりに大声で笑ったよ!あはは!」

「く、くっそー!」

 

 今拳を握りプルプル震えている中俺の目の前でエロ本を広げながら爆笑しているアギトさん、昨日の夜もアレックスと一緒に俺が寝ている時に笑っていたのだろう。

 

 そう思うとめっちゃイラってきた!

 

「……で?俺に何用だ?」

「あ、ああ!頼みがある」

 

 こんな人に今から頼むなんて…屈辱だよ、だけど、俺は強くなりたい!強くならなきゃらいけない!

 

 正義の味方って言っても俺はみんなにはお前の理解者に1人はいるぞって証明したかったんだ。

 

 けど…!今は違う!爺さんの言うことが本当だとすると、俺のせいで、みんなが!モカが!不幸にあってしまう!

 

 だったら俺が守らないと!強くならないと!

 

 だから、俺はこの人に頼むんだ。

 

「俺に誰かを守るための戦い方を教えてくれ」

「………………」

 

 アギトさんは黙り込んで返事をしない。

 

 と思ったらエロ本を閉じて答えた。

 

「え?やだよ」

「……は!?いや、いやいやいや!ここでそれはないでしょ!?」

 

 人が頭を下げて頼んでるのになんでだよ!

 

「強くなりたきゃ自分で鍛えな」

「……ッ!頼む!お願いだ!」

 

 自分で強くなれ?そんなの無理だよ!戦い方なんて知らない!鍛え方なんてわからない!

 

 誰かに頼らないと強くなれないんだよ…!

 

 ダメだって分かってる…!けどこればっかりはどうしようもないんだよ

 

「だって俺はお嬢に使える身」

「そこを…」

「本当は知ってんだろ?……俺よりお前に教えるのが適してる人物を」

「……ッ!」

 

 分かってた。知ってた。けど…

 

 俺のプライドがあいつだけには教えられたくないって言ってる

 

「アレックス、あいつ腕だけは確かだぞ?」

「それにお前の元専属メイド、相性抜群じゃね?」

「……だけどあいつは、あいつだけには」

 

 アレックスだけには教わりたくない。どうせ馬鹿にされて練習なんて相手もせずのうのうと時間を無駄にする、そうに決まってる

 

「お前さおこがましいんだよ」

「一人じゃ何もできない、守れない、強くなれない」

「のくせに教えてくれる人を選ぶのか?」

「……ッ!もういい!」

 

 くそ、図星で何も言い返せれなかった…

 

 あんなやつに、アレックスに戦う術を教わるなんて本当に屈辱だ…!

 

 そこら辺をブラブラしていると道場に着いた。昔から何故か屋敷にあった道場、今までなんであるかなんて気にしてなかったが中を見て分かった。

 

「…………ッ!」

 

 そこには剣道着を着たアレックスが正座をしていたんだ。

 

 窓から差し込む光がアレックスを照らす。外国人ってのもあるのがその光の景況で肌がさらに白く見えてしまう。

 

「(黙ってたら可愛いのにな)」

 

 本当は知ってる、こいつがどれだけ強いのかをけど日頃の行動のせいでそれが霞んでしまう。

 

 確かに非力な俺が素手や足を使って戦うのなんて向いてない、かと言って剣とかを振り回すのもどうかと思うけどな…

 

 でも確かにアギトさんの言う通りだ。力を得るために教えてもらう身として人を選ぶとか…

 

 てか強くなる必要あるのか?親父がただ言ってるだけだ、本当に嫌がらせをしてくるかなんてわからない…けど

 

 強くなることには越したことはない、強くなってこそ

 

「真の正義の味方になれるんじゃないのか!」

 

 道場に上がりアレックスの近くに行く

 

 強くなるのにプライドなんてどうでもいい!俺のそんな小さなプライドを捨てて強くなれるのなら…そんなもの俺は捨ててやる!

 

「……アレックス」

「なんですか、アレックスは瞑想という名の妄想中なのです」

「な、なんだそれ」

 

 人が今から剣術教えてって言うところでそんな事言うなよ、俺がさっき捨てたプライドを返せ

 

「お前いつもこんなことを?」

「ええ、数年程前から毎日してますね」

 

 毎日、ってことは俺がまだ屋敷にいた時からか、いや全く気づかなかったよ

 

 てかあんた騎士?なんだろ、なんで剣道着なんて着て稽古してんだよ

 

「その、えっと、アレックス」

「なんですか?童貞を貰って欲しいって話はお断りしますよ」

「ち、ちげーから!?」

 

 調子狂うよな!?

 

「……弟子、欲しくないか?」

「弟子?食べ物ですか!?」

「ちげーよ!だから、そのー!」

 

「俺に剣術を教えてくれ!」

「………………」

 

 アレックスは聞いた途端雰囲気が変わった。なんでそう思ったのかと言うと、いつものヘラヘラした感じがしなかったからだ

 

「……何故、急に剣術を習いたいと」

「ああ、俺はなりたいんだ」

「……なりたい?何に」

 

 それは決まってるだろ

 

「俺は正義の味方になるん」

 

 言い切る前に

 

「ガハッ…!」

 

 アレックスに腹を木刀で思いっきり突けられた。

 

「な、何すんだよ!」

 

 今日の朝何もくっていなかったため吐くことはなかった。もし何か食べてたら何かしらを吐いていただろう

 

「聞こえませんでした、もう一度」

「な、なんだよお前…!雰囲気変わりすぎだろ」

 

 アレックスはいつも雰囲気なんかじゃなかった。顔つきは変わり鋭い目が俺を上から睨みつける

 

「……だから、もう一度と言ってるんですよ」

「……俺は正義の味方」

 

 次は思いっきり木刀を頭に振りかかりそうになったため急いで後ろに下がる

 

「くそ!何度でも言うぞ!俺は正義の味方になりたいんだ!」

「……ッ!」

 

 自分に言い聞かせるように俺は大声で言う。

 

「そんな理由で剣術を習いたいというのならアレックスは協力しません」

「なんでだよ…!」

「正義の味方なんて、なれるわけがない…!夢見るだけ意味がないんですよ!」

「な、なんでお前が決めつけるんだよ!何も知らないくせに!」

「知らないのはシン様です!」

 

 知らないのは俺だと…!

 

「……昔話をしましょう」

 

 そこからアレックスは語り始めた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「姉ちゃん姉ちゃん!」

「おー!どうしました我が弟シン!」

 

 シン・アラル、それは私の正真正銘の弟です。3歳差のシンは可愛くて、そしてカッコイイ!二つをもつ自慢の弟ですとも!

 

「俺な!正義のヒーローになりたいんだ!」

「正義のヒーローですか、これまた急ですね」

「騎士道習って、んでもって姉ちゃん超えて!いろんな人助けて!」

「そして最後は騎士王になるんだ!」

 

 騎士王、それは騎士道を習うものなら目指す最後のゴール地点、騎士王が変わるのは現騎士王が引退した時です。

 

 騎士王戦が開催されそれの優勝者が次の騎士王、年齢は問われず勝てば騎士王、幼稚園でも学生でも勝てばなれる

 

「あなたは私の弟です、必ずいつかなれるでしょう!」

「でも騎士王じゃなくて正義のヒーローだけでもいいかもね」アハハ

 

 だから私、父上と2人が係でシンに稽古をつけた。

 

 そんな時こんな話が上がってきたのです。

 

「おい!騎士王戦が開催されるそうだぞ!」

「本当!?俺出たい!」

 

 誰かがシンにそのことを教えたためシンは家に帰ってくるなりずっと出たい出たいの連呼だった。

 

「正義のヒーローだけでいいって話してたじゃないですか、無理しなくても」

「いやいやーよく考えたらさ?騎士王こそが正義のヒーローだと俺は思うんだよね!」

「12歳のガキが何言ってんだよコイツ!」

 

 父上がシンの頭を掴みそう言うもシンはすぐに抜け出し近くにあったナイフを取り父上の首筋に置く

 

「12歳でも、小6でもやればできるって証明してやるよ!」

「……父上!一度試させるのはどうでしょうか?騎士王戦なんて次はいつになるのかわかりませんので」

「アレックスが言うのであれば…よし!行ってこい!シン!」

 

 私達はまだ幼いシンを騎士王戦に参加させた。この選択が私の間違いだった。

 

 騎士王戦、それは普通に死人が出るような戦い、なんせ使うのは本物の剣

 

 事件(まちがい)は起きてしまう。

 

「シン!……シン!返事をしてください!」

「やめろアレックス、シンはもう」

「な、何を言ってるんですか…?こんなに綺麗な顔をしてるんですよ?」

 

「……死んでるわけ、な、ないじゃないですか!」

 

 けど地面はシンのお腹から溢れ出る血で染まっていた。

 

 自分の服、手にはシンの血が着いているがそんなの気にもせず自分の涙を吹く

 

 周りの人達は可哀想に、とでも言うような目でシンの姿を眺める

 

 対戦して勝利した人は剣に着いた血を拭き取っていた。

 

「なんとも思わないんですか…こんな小さな子を殺して騎士王になって何も思わないんですか…!」

 

 そう、シンは最後の最後まで残り、最後に負けてしまった。

 

「……負けた人が弱いそれだけだよ」

「……ッ!貴様ぁぁああ!!」

 

アレックスはシンの剣を取り切り掛るも簡単に避けられ剣を取られる

 

「ごめんね、僕女の子には剣を振るわないんだ」

 

 騎士王の尊重であるマントを身につけ私達の前から騎士王は姿を消した。

 

 どれだけ自分を攻めたことか、なんで騎士王戦なんかに参加させたのか

 

 そもそも何故剣術を教えたのか

 

 可愛い弟の夢のため、そう言い聞かせ私はシンに剣術を教えたんだった。

 

 正義のヒーロー、そんなの夢のせいで、騎士王のせいで…!

 

「私はもう誰にも剣術を教えない…」

 

 正義のヒーローなんて夢を見たせいでシンは、シンは…!

 

「はあ、アレックスをですか?でも何故…」

「……ええ、わかりました。聞いてみます」

 

 部屋に篭っている私に父上はこんな話を持ち込んできた。

 

「アレックス、父さんの知り合いがお前を雇いたいと言ってるんだ」

「……私をですか?弟とすら守れなかった私にですか?」

「一度この環境から離れてみよう、そすればきっとお前は…」

 

 父上にそう言われ私は日本に旅立つことになった。

 

「気を落とさないのよ?シンが亡くなったのはあなたのせい…でわないわよ」

 

 母上が別れの挨拶でそう言ってくれて少しだけ心が軽くなった気がした。気がしただけです。

 

 私はこれから日本の屋敷に行くらしい、行って何をするかと思えば

 

「め、メイド?」

 

 メイドをすることになり、そして

 

「本日からあなたが担当する」

 

「弦巻シンさんよ♪」

 

 奥様が上機嫌に言いその目の前には私の弟そっくりのシン…様が一人で本を読んでいた。

 

 本当にそっくりで目を疑った。それは何度も何度も見直しましたとも、持ってるシンの写真と目の前のシンを

 

 

 

 

「まあ何やかんやで今の私になったんですけどね!」

「その何やかんやを説明しろよ…」

 

 急にいつものテンションに戻るなよな

 

「と、私の暗い過去を知っていただけたでしょうか?だから剣術は教えたくないのです。帰った帰った」

 

 アレックスはシッシッと言いながら手を振っていた。

 

「……ようはあれだろ?死ななきゃいい話だろ」

「いや、そう言うことでなくてですね…私の話聞いてましたか?一応言いますが嘘ひとつない真実ですよ」

「わかってるさ」

 

 嘘で弟が亡くなったとか言ってるやついたらそいつは頭おかしいだろ

 

「お前なー俺がそう簡単に死ぬようなやつに見えるか?」

「なっ!?ひ、人が心配してあげてるんですよ!」

「心配なんていらない!」

 

 そう、そんな心配はいらない!俺が死ぬ?不幸が訪れる?

 

 んなのかかってこいよ、こちとら毎日不幸続きだ。大きかろうが小さかろうが不幸には変わりねえ!

 

「それに、お前の弟、シン?って言ったな」

 

 俺と同じ名前でビックリだよ

 

「お前の弟の意志は俺が引き受ける、弟に教えれなかった分俺に稽古付けてくれ!」

「いや何勝手に決めてるんですか!私の弟をシン様と同じにしないで…ッ!」

 

「構え方はこうか?いやーアニメ見ただけなんだけどな」

 

 シンの構え方を見てアレックスが思ったこと

 

「姉ちゃん姉ちゃん!見てみて!新しい構えー」

「なんですかそのダサい構え方は!」

 

 思い出したアレックスは口の角度を上げニヤッと笑い

 

「シン様!なんですかそのダサい構え方は!」

「教えるからにはアレックス手を抜きませんからね!」

「……おう!頼むぜアレックス!いや師匠!」

 

 この人ならシン様なら…教えても大丈夫でしょう。シンはシンでもシンはシンじゃない、それを私に証明してください、シン様

 

 シン、どうか私を許してください。次こそはあなたのような間違いはしないよう

 

「バチバチに鍛え上げます!」

 

 

 

 

「正義の味方、ですか」

「どんな所にもそんな夢を持つ人がいるものなんですね」

 

 その日からアレックスとシンの稽古の日々が始まった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「うわ、シン様そんなヘタレで本当に正義の味方に?呆れますよ」

「はあ、はあ、はあ…う、うるせぇ」

 

 何これキッツー!そ、そりゃ楽なわけないよな…!体が、心が痛い!こんな稽古神体が持たない!

 

「どうします?初日で諦めますか?」

「あきら、めてたまるかよ」

 

 アレックスに渡された木刀を杖替わりにして立ち上がる、が

 

「……ッ!」

 

 膝に力が入らずその場で倒れてしまう。

 

「気合いだけでどうにかなる話ではありません」

「……今日はこの辺にしましょう、アレックスはこれからシンジ様の面倒を見ますので一人で帰ってくださいね」

 

 うわーこいつこんなボロボロの人ほっといて行くのかよ、てかこの程度で立てなくなるとか俺って本当に弱いやつだったんだな

 

 こんなんで誰かを守る?ふん、無理だっての

 

「――……はあ」

 

 いつもの台詞が出るかと思えば

 

「――……強くなりたいな」

 

 シンは道場で気を失うよに眠ってしまった。

 

 どれぐらい寝てただろうか

 

バシャ

 

「冷たっ!」

 

 誰かが俺の顔にバケツいっぱいの水を掛けてきた。大方アレックスが道場で寝ていた俺に対しての罰でかけたのだろう。

 

「どう?目は覚めたかしら」

「……ん?……ん!?ち、千聖先輩!?」

 

 寝起きで視界がぼやけていて目を何度もこすり確認した。そこにいたのは紛れもない千聖先輩だったが…

 

「どうしたんですかその髪型!」

「……どう?似合ってる、かしら」

 

 千聖先輩は髪を触りながら俺に聞いてくる、今まで伸ばしていた髪はきれいさっぱり無くなりショートヘアになっていた。

 

 今見れば髪型自体は変わってないが下の長い髪を切っている様子だった。

 

「な、なんでまたそんなことを」

「……そうね、未練を断ち切るって言うのかしらね?」

「……ッ!ああ、昨日有翔と話したんですね」

「ええ、そしてアレックスさんに髪を切って頼んだらあなたの話をしてくれたのよ」

 

 あいつ、何勝手に話してんだよ!誰にもバレないようにしようと思ってた矢先すぐにバレたじゃねーか!

 

「あなた馬鹿じゃないのかしら?」

「……へ?」

「体力もない、筋力もない、だから…初日でこんなボロボロになるのよ」

 

 千聖先輩は笑いながら俺の顔を触り

 

「……本当、馬鹿な人♪」

 

 今までに見た作り笑いなんかじゃない本当の千聖の笑顔が見れた気がした。

 

 そんな中

 

ギュルルルル

 

「……えっと、すんません昨日の朝から何も食べてないんすよね」アハハ

「だと思って弁当作って来たわ」

 

 な、なんですと!?

 

「甘いものが好きって聞いてたけどそれはまた今度、今は腹に溜まるものを食べなさい」

「……今度ってまた作ってくれるんですか!?」

 

 そ、それは本当ですか千聖先輩!

 

「ええ、なんならあなたの家で作ってあげるわよ」

「……とりあえず早く食べなさい」

 

 千聖先輩はバケットを開け大きなおにぎりを渡してきた。

 

「パンは少しだけで腹が膨らむけどすぐにお腹が空くのよ、だから米を食べた方が腹持ちがよく」

「いただきます!」

「……最後までききなさいよ」

 

 話の途中で我慢できずに食べたが美味い!この塩加減、そしてら中身はシャケの切り身!千聖先輩が焼いたのだろうか

 

 次にもう一つ取って食べてみると…同じだったが美味いから全然問題ない!

 

「あら?口元にお弁当がついてるわよ」

「ん?何の話ですか?」

 

 千聖先輩は俺の口元に指を伸ばして米をとり、それをぱくりと食べていた。

 

「弁当付けてどこに行く予定だったのかしらね」

 

 クスクスと笑ってる千聖先輩の姿を見てなんか恥ずかしくなってきたじゃねーか!

 

 まあ食べ終わり最後に千聖先輩が入れてきたハーブティーを呑んで心を落ち着かせていた。だけど落ち着くどころか昨日のことを思い出してしまう

 

 またこれからあの稽古が始まる。昨日の疲れが取れていないまま昨日よりさらに過酷な稽古、俺はちゃんとやれるのだろうか…

 

 クソ!自分が弱いって知ってからなのかマイナス思考しかできない!

 

「……シン……シン!」

 

 千聖先輩が俺の名前を呼んでいる、聞こえてるけど返事をする余裕が無い、これから、また!あの地獄が…!

 

パンッ!

 

「ひ、ひてええぇぇええ!!!」

 

 千聖先輩に両ほっぺ同時に叩かれ挟まれている状況、痛いって言葉も言えないよ!

 

「あなたはなるんでしょ、こんな所でへこたれてんじゃないの」

「……そんな弱いヘタレさんが旦那様なんて私は嫌よ」

 

 あれ?なんでだろう、酷いこと言われてるはずなのに緊張が解けて急にやる気が出てきた!

 

「ですね!待っててください千聖先輩!俺があなたを守ってみせます!」

「……ええ、待ってるわ」

 

 千聖は立ち上がり道場から出ようとする

 

「このことはみんなに黙っておくわ、それと私達は今日で合宿も終わりだから」

「…………あなたの合宿はこれからよ」

 

 そのセリフをいい道場を後にした。

 

「……はい!」

 

 シンは外にいる千聖にも聞こえるような声量で答えたのであった。

 

 その後道場の清掃を行いアレックスが車で昨日見たように星座をして瞑想を行っていた。

 

「……どうやら気合だけは充分のようですね」

「ああ、昨日の俺より今日の俺は手強いぜ?」

 

 昨日は考える時間、そして振り返る時間がなかったためアレックスの動きを観察出来なかった。

 

 でもこの時間で思い出しある程度の動きは覚えたと…思う!動体視力がいいのならそれを生かすまでだ!

 

「さあ木刀を持って!稽古を始めますよ」

「……よろしくな!師匠ー!」

 

 2日目のアレックスとの稽古が始まった。

 

「薄い!薄い薄い!0.01mmコン〇ームより薄い!もう生でやっちゃってますよ!」

「うるせぇ!その例えやめろ!」

 

 守っても守ってもすぐに弾かれ叩き込まれてしまう!

 

「少し休憩しましょうか」

「……お、おう」

 

 ヘロヘロっすよ、床に崩れ落ちるように座り少し休んではい次!休憩が休憩じゃない!

 

「あ、言い忘れてましたがアニメみたいに必殺!技なんてありませんから」

「そんなの放っから期待してねーよ!」

 

 逆に必殺技とかあったらやばいだろ

 

「それと〇の呼吸とか〇の呼吸とかもありませんから」

「それ隠せれてないから!」

 

 ほぼ言ってるんもんだろそれは!え?わからないって?ジャ〇プ読んでくれ

 

「あーアレックス食戟〇ソーマ好きだったんですよね、終わるのは寂しかったです」

「だから少しは隠せって…」

 

 これ大丈夫なのか!?てかなんで稽古からこの話になるんだよ!

 

「あ!そう言えば今日は月曜日!ちょっとコンビニ行ってきますね!」

「おい!散々言いまくりやがってこれはないだろ!」

「素振り1000回!アレックスが読み終わる前に済ませとくんですよ!」

「……本当に大丈夫なのだろうか」

 

 とりあえず素振り1000回!やれることはやって行く!強くなるのに近道なんてないんだよ!

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 あれから二週間、あんなやり取りがあったのは二日目と次の週の月曜日だけだ。それ以外の日は本当に地獄地獄

 

 雨のなか走らされる。池の中で稽古させれる。森林で稽古させられる。

 

 時にはアレックスの投げた木刀を拾ってくるとゆうタマと同じようなこともされたな、いやあれだけは本当にキレそうになったよ

 

 時にはアギトさんが見に来ては馬鹿にして帰る、そんな日もあったな

 

「……もう教えることはありません」

「アラル流、いやアレックス流の基礎を叩き込めることができましたとも」

「え?いや全然実感ないんですけど…」

 

 なんか本当に俺は剣術を覚えたのだろうか?そんな短時間で…だけどアレックスが言うのなら本当なのだろう。

 

「シン様が使っていた木刀、普通の木刀とはかなり重さが違いますよ、なんせ中身は鉛なんでね」

「お前そん木刀を相手にしてたのかよ!?」

 

 いやアレックス、お前やばくね?てか木刀何回か折られたんですが!?てか折れた時になんで気づかないんだよ俺は!?

 

「シン様も剣の流し方を覚えた途端折れることはなくなったじゃないですか」

「……あれか!」

「はい、確かに私は剣術を教えましたが全部均等になるように教えたのです」

「一つ一つだとアレックスのモチベが下がりますからね!」

「結局お前優先じゃねーか!」

 

 でもまあ、言われてみれば俺も一つ一つ丁寧に教えられてたら飽きていたのかもしれない、それにキツかったからかそ食いつこうとする意思が芽生えたんだろう

 

「これが普通の木刀です、もうわたあめ並みに軽いんで」

「うわ、まじだよ…!」

 

 木刀が軽い軽い!空も飛べそうなレベルだよ!そりゃー鉛なんか振ってたから木なんて軽く感じるよな!

 

 てか俺明らかに筋力ついてね?いや二週間でここまで変わるもんなんですか?

 

「変わるんですよ!我が弟シンなんて一週間でアレックス流を物しましたね!」

「……恐るべし兄弟子様」

 

 いや本当にすげーあの稽古を一週間とか、やばい思い出したら吐き気が

 

「てか稽古終わったなら帰るわ、色々本当にありがとな」

「……ええ、最初は乗る気じゃなかったのですが懐かしい感覚で、アレックスは感動いたしました」

 

 シンとの稽古でも思い出したのだろう、アレックスはいつもの顔なんかではなく大人の顔をしていた。

 

 ったく、流石今年二十歳になる大人ですな

 

 俺は部屋に戻り畳まれていた制服の袖に腕を通し服を羽織りいつも通りの制服姿で弦巻家を後にするため門に向かう。

 

 この二週間、ずっとあの道場で生活してたからな、外にこんな姿で出歩くのは久しぶりだな

 

「すみませんー!最後に教えることが一つ残ってましたぁぁああ!!」

「うお!?う、うるせえな!」

 

 遠くからいつものメイド服に着替えてたアレックスがスカートを握りあげ走ってきた。

 

「いいですか!アレックス流にとらわれるのでなく、自分がしたいように動く、これが一番大切なんですよ」

「は?でもそれって剣術覚え…ッ!」

 

 な、なるほど!そう言うことか!

 

「そう、アレックス流は進化を続ける流派なのです!私が教えたのは基礎だけ、これから作るのはシン(・・)!あなた次第です!」

 

 ビシッ!と俺に指を指しそう宣言する

 

「ああ!必ず強くなって、んでもって!」

「――……正義の味方になる」

「はい、シン様ならなれるかと思います」

 

 俺が求めた普通、今思えば俺が最初に求めた普通とはかけ離れた普通になっていると思う。だけど、それでいいんだよ、コレは俺の物語だ。

 

 俺が求める普通が俺の普通、自分の道なんて誰にも邪魔なんかさせやしない!

 

「あ、最後ですからって最終選抜なんてありませんから」

「行かねーしやらねーよ!」

 

 またみんながわからないネタをいいやがって!

 

「……それじゃ、もう次こそ行くからな、あばよ」

 

 シンはそのまま歩いていき弦巻家の門を潜り屋敷を後にした。

 

 アレックスはその背中を不安そうに眺めていた。自分のしたことは正しい選択だったのか、また自分の弟のように酷い目に合うのではないか…と

 

「なーに柄にもなく暗い顔してんだよ」

「……なんだ、あなたですか」

 

 アギトがアレックスに話しかけていた。何故アギトがここに居るかとか関係なく、二人は話を続けてる

 

「師匠のお前がそんな顔であいつを出していいのかよ」

「……でも」

「お前は間違ってない、あいつが証明してくれるさ」

「師匠は弟子を信じる、違うのか?」

 

 アギトはアレックスに言うだけいいその場を後にして外に出ようとする

 

「……また女のところですか?」

「いや、今日は完全なオフ、ちょっと美容院で髪染めてくるだけだよ」

「はあー金髪からの茶髪、赤髪、そして黒髪、次は何色ですか?」

 

 アレックスは自分のことは後にし、アギトに対して質問していた。長い付き合いのため過去の髪色とかもわかるため今からまた染めるといいだし興味が湧いたのだろうか

 

「……さあ?とりあえず地毛の色だけはにはしないな」

 

 そう答えたアギトのつむじ周りは地毛が目立っていた。

 

「あなたの妹さん(・・・)合宿に来てましたが話さなくてよかったのですか?」

「あー別に会っても話すことねーし?」

「とか言って本当は会いたいんじゃないんですか?」ニヤニヤ

 

 いつものようにからかう感じで話しかけるも

 

「黙れ、そんなわけないだろ」

 

 氷のように冷たい目付きでアレックスを睨みその場を後にし、予約している美容院に向かっていったのであった。

 

「さてとアレックスも仕事に戻りますかね!」

 

 シンジの元に向かうアレックスだが

 

「おい、シンはもう帰ったのか?」

「……旦那様、なんですか?その袋は」

 

 ドックフードの袋を片手にアレックスに話しかけるているシンの親父さん、タマに餌を上げた帰りなんだろうか

 

「あいつ俺になんの別れの挨拶もせずに帰りやがったな、今度会ったら潰すか」

「……そう簡単には行きませんよ?なんせ」

 

「アレックス自慢の弟子なんで!」

 

 さっきアギトに言われたからなのかアレックスは何の心配もなくそう胸を張って言えるのだ。

 

「ふっ、そうかお前の弟子ならそうだな」

「……いつもお前にはキツい役ばかり任せてすまない」

「ッ!そうですよ!雇われの身であるアレックスをいいように利用して」

「……旦那様は酷い方です」

 

 シンの親父が頼んだことは絶対引き受けなければない、それが雇われの身、メイドの務めだからだ

 

「――……これから(・・・・)もよろしく頼む」

「ええ、任された仕事はやり通しますとも」

 

 これから一体どんな仕事があるのか、そんなことを知っているのはアレックスとシンの親父さんの二人だけ

 

「あ!少しでも罪悪感があるなら給料上げてくれてもいいんですよ!?」

「……そうだな、10倍ぐらい上げてやるか」

 

 加減を知らない人であった。

 

 一方その頃シンは

 

「か、体がめちゃくちゃ痛えぇ」

 

 痛い体を動かして家に帰ってるが、俺ってバイトどうなったんだ?もう何週間も働いてませんが大丈夫なのだろうか!?

 

「……あれ?シン」

「ッ!おーす!蘭!久しぶりだな!」

 

 蘭の私服!久しぶりに見たがやっぱり太ももがエッチぃ!てかアレックス意外の女子と喋るのが久しぶりすぎる!

 

「久しぶり、今までどこ行ってたの?連絡しても返事なかったし」

「……あーすまん、少し遠出を」

 

 携帯を確認して見るといろんなやつからメッセージが来てて驚いたぜ!これは返事をするのがきつそうだな

 

「……笑ってない、嘘じゃないのかな?」

「嘘じゃないって」アハハ

 

 はっ!?

 

「どうして嘘ついたの?」

「いや、そのーうん、話したくないんだよ」

 

 言えない!アレックス(女子に)稽古付けてもらってたなんて口が裂けても拷問されても腹が減っても言えない!

 

「まあシンが話したくないなら話さなくてもいいよ」

「……た、助かるぜ」

「けど…その、女子となんか、い、いやらしいこととかしてないよね?」

 

 んん!?蘭さんは一体何を言ってるのだろうか!

 

「してねーよ!俺は彼女としかそーゆうことはしないんだ!」

「……じゃあこれは?」

 

 蘭は写真を携帯の画面に表示してシンに見せる

 

「なっ!な、ななななんでその写真を!?」

 

 そこにはシンがアレックスに貰ったオ〇ホールが床に転がっている写真が表示されていた。

 

「調べてみたんだけど、その男子が使う性処理道具だって…」

「そ、そんなに溜まってたの?」

「ち、違う!違うんだよ!これはその誕生日プレゼントで!」

 

 あークソ!よくよく考えればあの後からあの部屋には帰っていない!誰かに見られてもおかしくなかったよな!?

 

「えっと、誰にも言わないから…」

 

 それに話を聞いてくる蘭が体をくねくねしながら話している!よっぽど聞くのが恥ずかしいのだろう…申し訳ねえ!

 

 けどー!

 

「だぁぁああ!不幸だぁぁああ!!」

 

 女子にこんなの見られるなんて!不幸以外の言葉俺の辞書にはありません!

 

 久しぶりにそのセリフを叫んだシンだったが普段通りの大声が辺りに響いたのであった。




アレックスは問題発言しかしないな、まあそんな彼女にもあんな過去が…

アギトさんの妹はまあ彼女ですよ

僕の新作ですが匿名外します!今度更新するから是非読んでみてね!いや面白いと思うはずだから!僕のマイページから読んでみてください!意見待ってます!

あとついでに僕の駄作のオリジナル作品もマイページから読めるようにしますね!

ではまた次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと花火大会

今回はRASが登場します!

それではどうぞ!


 夏休み、あんなに長い休みのはずだったのに気づけばあと数日だけ、宿題は初日で終わらせていたからいいものの…

 

「……バイトがなー」

 

 もう夏休み明けまで来んなって怒られたよ!もうシフト作ってるからお前の席はねえ!って言われて金が稼げれねえ!

 

「あ、今月三郎行ってない……しゃーない、行くかね!」

 

 床で死んだように寝っ転がっていたが勢いよく起き上がり、制服を着て三郎に向かった。

 

 三郎に行くにも

 

「あれ?店が閉まってる」

 

 なんだ!やっと潰れたか!いやー助かった助かった、いつも馬鹿みたいに新作食わせて1万ぼったくりやがるからな!もう金を払う必要がねえ!

 

「なんだ?弦の兄貴じゃねーか」

「えー!?潰れたんじゃないの?」

 

 店の中からおやっさんがシャッターを開けて出てきた。いきなりだったもんで驚いたじゃねーか!

 

「潰れてねーよ!今日は花火大会があるからそれの準備してんだよ!」

「……そっか、なら今日はラーメン食えないね」

「ところがどっこい祭りで食えるんだよな!」

 

 なに?そんなに俺にラーメン食わせたいのか!?

 

「ごめん、今月バイトしてなくてさー来月キツいんだよ、だから許してくれ!」

 

 今月働かず、けど体は動かしていたからな、バイトしていた時より疲れているぜ

 

 まあ貯金があるし?来月は生活出来るな!

 

「なら丁度いい、今日人手が足りないからよー手伝ってくれよ」

「……金出るならやる」

「任せろ!時給1500円!どうだ?バイトよ」

「やる!早く行くぞ!」

 

 金が入るなら働く!いや時給1500円とかやばいだろ!?まあ今日だけだと思うけど

 

「てか俺見込みないって前に言われたような」

「……なーに、弦の兄貴がいるだけでバンバン金が入るからな」

「なんて?」

「なんでもねーよ、ほれ行くぞ」

 

 おやっさんのトラックに乗り花火大会が行われる会場に向かう。商店街の近くで行われるため客も含め店を出すのも商店街のメンツばかりらしい

 

「……だからこーなるのね!」

 

 俺の周りに群がる人だかり!

 

「商店街の英雄って君だろ!?」

「いや若いねー!さぞプレイボーイなのかしらね!」

「こら!商店街の英雄に失礼でしょ!」

 

 やめろ俺は童貞だ!てかなんでこんな人だかりが!?沙綾の弟を助けただけで英雄呼ばわり、てかそれわかってて俺を連れてきたなおやっさん!?

 

「ガッハッハッ!ぼろ儲け!ぼろ儲け!」

 

 バンバンとシンの背中を叩き高笑いをしているが

 

「ラーメンくださーい」

「あいよ!少々お待ちを!」

 

 おやっさんはすぐにラーメン作りに取り掛かる中俺はお客さんの相手、いや正直キツイっすよ!

 

「お、おやっさん、そろそろ休憩を…」

「そうだな!お客さん!これ以上話をするなら俺を通そうか」

 

 お前はどこぞのアイドルのマネージャーかよ!

 

 ま、まあ解放されたしこれで大丈夫だろ

 

「はあ、夏休みもあと数日で終わるって言うのに、思い出が海と実家だけかー」

 

 まあこれだけでも十分いい思い出だけどな、あとはあの稽古…キツかったなー

 

「……けど、もっとあいつらと思い出作りたかったなー」

 

 店の裏で一人で呟いていた。

 

 くそ、モカの笑った顔が頭に浮かんでしまう。なんであいつなんだろうな?たくさん友達はいるのに

 

「おやっさん!ラーメンくれよ!」

 

 この声は!あいつ本当にラーメン好きなんだな

 

「おー巴ちゃ…えー!!!」

「うるせえぞおやっさん」

「シン!お前今まで何してたんだよ!」

「……少し遠出を」

 

 笑ってない、大丈夫!

 

 てかおやっさんが驚いた理由がわかったよ

 

「シン!俺はお前が死んだんじゃないかと思ってな!」

 

 巴の隣にいた蒼汰が俺に話しかけるも

 

「貴様ー!巴ちゃんとどんな関係なんだぁあ!」

「な、なんだこの人!」

「おやっさん!蒼汰はアタシの彼氏だよ」

 

 そのセリフを聞いたおやっさんはと言うと

 

「………………!!」

 

 固まっていた。いや、そりゃー常連さんの高校生様様が彼氏連れてきたらな?驚くよな

 

「おやっさん?どした?」

「……巴ちゃん、成長したなー」

 

 おやっさんはどこか遠くを見ながら答えていた。多分昔の思い出でも思い出してんだろう

 

「はい、ラーメンいっちょー」

 

 なんの覇気もない声でラーメンを出して店の裏に行くおやっさんだった。

 

「え?俺が悪いの?俺が戦犯なのか?」

「いや蒼汰は悪くないだろ、おやっさんどーしちまったんだ?」

 

 お前のせいだよ!お前が彼氏を見せびらかすからだよ!老若男女問わずリア充は人を傷つけるのかもしれん

 

「……はあ、巴ちゃんに彼氏かどおりで店にこねーわけよ」

 

 いやガチで落ち込んでじゃねーか!

 

「巴ちゃんな?小学生の頃から来てるが…毎度毎度おやっさんと結婚するって言っててな?俺信じてたんだよ…」

「あんた頭大丈夫かよ…」

 

 そんなの小学生の頃お父さんと結婚するってやつの延長戦だろ?真に受けんなよ!

 

「……えっとーなんだ?ほら!あこがいるじゃん!」

 

 俺も俺で何を言ってんだろうか!

 

「そうだな!あこちゃんがいたな!なら大丈夫だぜガッハッハッ!」

「こうしちゃいられねー!ほれ!再開するぞ!」

 

 元気出たならいいや、あこ、先輩である俺を許してくれ!

 

 だけど巴と会ったことで環境が一気に変わった。

 

「シン君!どこ行ってたの!?もう心配したんだから!」

 

 ひまりが泣きながら俺に抱きついてきた。

 

 あー巴のやつひまりにいいやがったな!まあ予想はできていたけどまさか抱きつくとは、俺は平然を装っているがめちゃくちゃ心臓がバクバクしておりますよ!

 

「いやー本当にどこ行ってたのかな〜?バイトも来なかったしね」

「……ちょっと遠出を」

 

 やめて!俺の顔をそうじっと見ないでよモカさん!嘘ついているのがバレたのか!?

 

「まあいいや、それより一緒に屋台回らない〜?」

「悪いな、今日はおやっさんの手伝いしてんだよ」

「……いや、俺だってその、お前と回りたいぞ?」

 

 ッ!何言ってんだよ俺!?

 

「へーやっと素直になったのかな〜?」

「ち、ちげーよ、そのそう!ひまりと回りたいと思ったんだよ!」

「え!?わ、私と?し、シン君まさか!」

 

 なあー!こいつもダメだったな!?いやひまりには冗談でも言っちゃいけないことだった!

 

「弦の兄貴ーもうだいぶ落ち着いたから回ってきてもいいぞ」

「……じゃ、じゃあ三人仲良く回ろうぜ!」

 

 いい案だろ!?なあ!いいと言え!

 

「モカちゃんはいいよ〜」

「……私もーそれでいいかな!」

「よーし!なら行こうか!」

 

 2人の背中を押し祭りの屋台に向かうのであった。

 

 あったが…

 

「ねぇねぇ!次はあれ食べようよ!」

「えーさっきも似たやつ食べたじゃーん、モカちゃんはこっちがいいなー」

 

 周りから見れば両手に花?とでも言うのだろうか、なわけ!両手に大食いですけどね!?

 

 モカのやつはもとからよく食べるがひまりはなんだ!?スイーツは別腹ってやつか!?

 

「えーシン君はこっち食べたいよね?」

 

 ひ、ひひひひまりさん!?その、胸を押し付けないでください!?

 

「わかってないな〜シン君は甘いものが好きなんだよ?」

 

 も、モカも押し付けるな!

 

 や、やばい!さっき言ったのは嘘かもしれない!

 

「こっちも甘いよ!」

「……いやどっちも食べればいいだろ!?」

 

 最終結論!これで問題は無い!

 

 てかさ

 

「蘭とつぐみは?」

 

 巴は彼氏と回ってるからいいとしてあの2人は何してるんだ?

 

「2人で回ってるよ〜」

「そっかー」

 

 蘭には誤解されたままだからな、何とかして誤解を解かなければ!

 

「他の人達は来てないのか?」

「んーモカちゃんはいろんな人見たけどなー」

 

 モカが目撃した人はRoselia、ポピパ、のメンツは全員見たって言ってたな

 

「……まあこんな多人数、会わねーよな」

「3点で900円になりますー」

 

 いや屋台ってたけーよな?まあ金はあるから払うけど…ん!?

 

「あれ!あれあれ!?ない!ないぞ!」

「――……財布がない!」

 

 さっきはちゃんと払ったぞ!?な、なのに…なんで!?

 

「シン君どうしたの?」

「財布がないんだよ!」

「……あのー900円」

「え!?どこかで落としたのかな!?」

「だな!ちょっと探そう!」

 

 3人はその場を離れ元いた場所に向かう。

 

「えっとー、まあバイトだしどうでもいっか、店長!バナナ3本落としちゃいました!」

 

 バイトの少女はそんなことを言っていた。

 

 

 

 

 くそ!俺の財布!あの中学生や小学生が使うビリビリする財布!恥ずかしいからいつか変えよう変えようと思ってたら落としちまった!は、恥ずかしい!

 

「シン君の財布ってどんなのだっけ?」

「ひーちゃんあれだよ〜あのビリビリーってする財布」

「そ、そんなの使ってたんだ…誕生日プレゼント財布にすればよかったのかな?」

 

 変な気を使わなくていいから!

 

「あー!シン君!久しぶりだね!」

「香澄!」

 

 俺のマイエンジェルここに降臨!ああ!あの稽古の途中なんどお前の笑顔が見たいと思ったことか!

 

「こら!香澄に近づくな!」

「ちくしょー相変わらずガードが固いぜ」

 

 市ヶ谷さんが阻止するように前に出てくる

 

「抱きつくなら私で良くない?」

「いや何言ってんのお前?」

 

 おたえは相変わらずですな!?

 

「シン君こんばんはー」

「おう、牛込さんこんばんは」

 

 唯一普通に喋れる人!ポピパは彼女がいないと成り立たないだろう

 

「シン本当に久しぶりだねー何してたの?」

「……だから遠出を」

 

 みんななんで俺がどこで何をしていたのか聞きたがるんだよ!

 

 ってそんなことより!

 

「モカ、ひまり、財布見つかったか!?」

「んーないね〜」

「こっちも見当たらないねー」

「……やっぱりか」

 

 いやー結構きついよ?銀行のカードど学生証、それに家のカードキーまで、あと現金!嘘だろおい!?

 

「はあー野宿か」

 

 カードキーないなら家に入れない、やばい

 

「あれ!財布がない!」

「僕もない!」

「私も!」

 

 あちこちで一気に財布がない!のセリフが聞こえだした。

 

「俺以外のやつも落としたのか!?」

「……ちげーよ、これ見ろ」

 

 市ヶ谷さんが携帯を俺に向けてくる

 

 なんだこれ?T〇itter?の投稿にこう書かれていた。

 

「〇〇商店街の花火大会!みんな馬鹿だよな!盗まれたことも知らずに祭り楽しんでるし!乙〜wwwwwwwwwwwwwww」

 

 の投稿と一緒に写真もあった。

 

「って俺の財布写ってる!?」

「……どうやらやられたみたいだな?」

「あれ!この財布私のと似てるね!」

 

 香澄がそんなことを言うが…嫌な予感がする!

 

「……あれ?私の財布がない!」

「お前もかよ!」

「と、とりあえずみんな今の時点で財布があるか確認しようよ!」

「そうですな〜」

 

 みんなで財布の確認を行うと…

 

「盗まれたのは俺と香澄だけか、まあよかったよ」

「良くないよ!バイト代の半分近く持ってきたのに!」

 

 な、なんで祭りでそんな大金持ってくんだよ!?

 

「……よし、犯人捕まえよう」

「できんのかよ」

「できる、できるさ」

 

 この二週間俺が何をしてたか知らないだろ?

 

「シン、無茶しちゃダメだよ?」

「沙綾、大丈夫だって!香澄!俺がお前の財布を取り返してくる!待っとけよ!」

「ちょっと!シン君!?私達と回るんじゃ!」

「ごめーん!すぐ終わらせるから!」

「……まあ気長に待っときましょうよ〜」

 

 モカの間が抜けた言葉が聞こえたが長くはしない、すぐに捕まえてくる!

 

「おやっさん!ちょっと厄介ごとがおきてる」

「ん?なんだ?」

 

 おやっさんに今起きてる状況を伝えた。

 

「なんだと!俺は祭りの進行役の人達に伝えてくる!弦の兄貴は佐藤さんに伝えろ!あの人顔広いからな!」

「わかった!」

 

 おやっさんに頼まれ佐藤さんの屋台に行くが…

 

「らっしゃいらっしゃいーチョコバナナはいかがっすか〜」

「ますき、お前店番か?」

「ん?あー弦巻シン、久しぶりだな」

 

 よくよく考えれば佐藤さんの屋台だからますきもいるよな

 

「……あれ?君は」

「レイヤ、あれだよ、花園の彼氏さんだよ」

「はなちゃんの!?そ、そう言えばライブの時来てたね」

「あのー違いますからー」

 

 なんでおたえの彼氏なんだよ!?

 

「え?違うの?」

「お前はどこから湧いてきた!」

 

 この一大事に呑気ですな!?

 

「レイヤー何してるの?」

「マスキングの屋台の手伝いだよ、お世話になってるしね」

「あたしはいいって言ったんだけどな」

 

 そう言えばそうだな、もともと修行先だし仲はいいですよね

 

「はなちゃんは何を?」

「……デート?」

「離せ!なんでデートしてんだよ俺達は!?」

 

 腕を組んで来てデートと言うもんだから急いで離して突っ込んでしまう!

 

 てかそんなことより!

 

「実はだなこの祭り「あー!!」今度はなんだよ!?」

 

 俺が今起きてる事情を話そうとした時

 

「つ、弦巻シン!よくも堂々と私の前に顔を出せたものね!」

「……あれ?どこかで声が」

「ここよ!here!下を見なさい!」

「あ、ごめん小さすぎて見えなかった」

 

 馬鹿にされて足をずんずんしているやつ、猫耳のヘッドホンを付けているいかにも中学生感が出てるやつ、名前は確か…

 

「チュチュ様!大丈夫ですよ!パレオはちゃんと見えております!」

「……それはどーも」

 

 あれ?すぐに落ち着いたな

 

「チュチュ久しぶりだね」

「……はなぞの、ポピパでは楽しんでいるのかしら?」

「うん、楽しいよ」

 

 おたえが抜けたことあんまり気にしてない様子だな?

 

「にしても弦巻シン!なんでアンコールの場面で来るのよwhy!?」

「……文化祭優先なんだよ」

「なによそれ!結局湊友希那も教えてくれなかったわ」

 

 湊先輩と面識あるのか!まあ音楽していたら会うのだろか

 

「まあ今ははなぞのの穴埋めになるギターを探し中よnow」

「見つかるといいですねー」

「人事のように言うんじゃないのよ!」

 

 いやだって他人だし!?

 

 てか次こそ言うぞ!……と思った矢先

 

「ただいま窃盗の被害が多く出ております、貴重品は肌身離さず持ち歩くようお願い致します。繰り返します…」

 

 俺が言いたいことをアナウンスしてくれた本部の方、ありがとう!

 

「ってわけだ、もともと佐藤さんに伝えるように頼まれたんだが…」

「窃盗?クソみたいなやつもいるもんだな」

 

 ますき口悪いけど本当のことだ!

 

「はなちゃんは大丈夫?」

「……うん、大丈夫だよ、でもシン君取られたみたい」

「いらんことを言うな」

 

 テイ、とおたえにチョップをかますと

 

「ふっふふ!弦巻シン!あなたは相当の間抜けねStupid!」

「……チュチュも盗まれてたりして」

「何言ってるのよレイヤ、私は財布をパレオに預けているのよgive you」

 

 give youって…

 

「パレオ!喉が乾いたわ、財布を出して!」

「はい!チュチュ様!……あれ?あれ!あれあれあれあれれれれ!?」

 

 パレオと呼ばれている少女は自分のバックを何度も探す。途中でいろいろ私物を外に放り出しているが見つからないようだ。

 

「チュチュ様!財布を盗まれました!」

「why!?何故よなんでなのよ!」

「パレオにもわかりません!」

「……どうやら同じ被害者のようだな」

「くっ!あなたと同じとは屈辱よHumiliation…」

 

 そのさっきからちょくちょく英単語言うのなんなんだよ!?

 

「とりあえず取り返してくるわー」

「いやお前、いくら英雄だからって」

「そそそ、それは関係ないだろ!?」

 

 普通にみんなが困ってる、友達が困ってる、なら助けるのが当然だろ?だって俺は正義の味方なんだからな!

 

「……よし、犯人捕まえてボコボコにしてくるわ!」

 

 RASのメンバーとおたえがなんか、言ってるがそれを無視して本部に向かう。

 

 っとその途中

 

「木刀、木刀…あった!」

 

 いやー屋台にまさか木刀を売ってる店があるとはな!でも金はないから

 

「後で払います!」

 

 と言い承認を受けたため木刀を握り走り始める

 

「……おやっさん!」

「おう!弦の兄貴!どうした?木刀なんか持って」

「いや、ちょっと乗りで買ってな」アハハ

 

 まあどう使うかわ伏せとこう。

 

「で?被害は増えたか?」

「いやーよーそれがピタット止んだんだ」

「それは放送を言ったからだな、だとすると犯人はもう…」

「お、おい?弦の兄貴?」

 

 犯人を確実に捕まえる方法!

 

「……おやっさん、もう一つ頼めるか?」

 

 シンはおやっさんに頼み事をしてその場をあとにした。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「くっくっく、みんな馬鹿だよなー特に弦巻シン、あいつはすぐに抜き取れたよなー」

 

 森の中で一人笑いながらたくさんの財布を眺めているやつが一人

 

「ガールズバンド?ってのはよく知らねーから適当に取ってきたけど十分な仕事だよな?」

 

 一体こいつは誰になにを頼まれたのだろうか

 

「これで俺は…」

 

 そいつはその場から離れようとその場を立ち盗み上げた財布をリュックに詰め始めた。

 

「……外が騒がしいな、普通に出口から出るのは難しそうだな」

 

 適当に森を抜けて外に出ようと思ったのか、森に入って数分後

 

「よお、窃盗犯ってあんただよな?」

「……ッ!?」

 

 木の影から現れたのは木刀を片手に持っているシンだった。

 

「な、なんでお前が!」

「なんで俺がここに居るか?簡単な話だよ」

 

 時は少し遡る

 

「はあ!?祭り会場の出入口に屋台を移動しろ!?」

「ああ、出入口が騒がしくなれば出れるものも出にくくなるだろ?」

「だからってその後どうなるかは…」

「まあ任せろって!」

 

 その言葉を信じておやっさんは屋台を出入口まで運び普段しないような客商売を行い盛り上げていた。

 

「(頼んだぞ!弦の兄貴!)」

 

 そこからは簡単、森に入ってきたら道無き道を進むほど馬鹿じゃないことぐらい犯人の手口を見てわかる

 

「いやーよかったよ、あんたがちゃんと正規ルートを通る馬鹿正直でさ?」

「……畜生!!」

 

 犯人はけもの道でも通ればよかったと後悔していた。だけどパンパンになったリュックがそれの邪魔をしてしまう。だから正規ルートを通っていた。

 

「なんでこんなことをした」

「……てめぇにはわからんねーだろうな!金待ちのお前に貧乏人の気持ちなんて知らないだろうな!」

 

 貧乏人?だと…?見たところそんな風には見えない、高そうな服に高そうな靴、サングラスまでして金持ちの雰囲気が出ていた。

 

「金が必要!成果が必要!だからやった!それだけだなんだよ!」

 

 男はリュックを下ろした瞬間シンにナイフを向けて走ってきた。

 

「……金持ち、ねー」

 

 金持ちは金持ちでも俺は金なんて全然持ってない、来月生活できるのかすら危うい状況

 

 金持ちの俺に貧乏人の気持ちがわからない?馬鹿か

 

「――……痛いほどわかるっての」

 

 シンは男がナイフを刺す前に手の甲を木刀で打ち付けナイフを手から落とさせる。その後ナイフは拾い上げ相手が拾えないところえ置きに行った。

 

 犯人はと言うと叩かれた手が痛かったのかまだ抑えていた。

 

「なんでこんなことをした?」

「……ッ!ーッ!」

 

 まだ痛がっている様子だったため

 

「片方の手も痛めたくなかったら正直に話せ!」

「ひ、ヒィ!違うんだ!違うんです!俺は命令されただけで!」

 

 命令された?

 

「……誰に」

「それは、その」

 

 まさか!あいつか!

 

「綺羅、か?」

「……コク」

 

 犯人は怯えたように頷く

 

 くそ、こうもすぐに嫌がらせをやってくるとは…それにタチが悪すぎる、俺だけならまだしも関係の無い人達まで巻き込んで…!

 

「お、俺は借金まみれで、ホームレス生活をしていたんだ…!」

「そしたら、綺羅様がこれとあんたの写真を見せてきて」

 

 これと言って自分の服を指さしていた。

 

「こいつらにいらがらせをしてこい、成功したらお前の借金全額払ってやるよ」

「ただ…失敗したらお前の命はないと思えよ?」

「これは前金だ、携帯を使って挑発でもしてろ」

 

「……って言われて!」

 

 あいつホームレスを利用するとかクソすぎるだろ

 

「ところがどっこいスリが簡単なもんで調子こいていろんな人の財布を取ったと?」

「本当はガールズバンド?ってヤツらの財布を取ってこいって言われたがわからなくて…」

「チッ!どこまでもクズだな…!」

 

 綺羅…たかが俺にチェスで負けただけでこんなことをするのか?

 

「俺は終わりだ、綺羅様に見つかったら消される」

「…………目をつけられたお前が悪い」

「……ッ!ですよね」

 

 俺はホームレスが持っていたリュックの元に向かう、中身を見たらたくさんの財布があった。盗んだ財布だろうな

 

 その確認がシンの油断だったのだ。

 

「……なわけねーだろ今までのは全部作り話だよばーか!何簡単に信じてんだよ!」

 

 犯人が遠くに置いたナイフを手に取りシンの元に来るが…そのナイフはシンに届くことなく粉々になってしまい刺すことさえ、怪我をさせることさえできない鉄の塊へとなっていた。

 

「な、なんなんだ!?」

「普通にナイフを打って粉砕しただけだ」

「……お前が嘘をついてたことくらいすぐに分かったよ、なんせ俺がよく嘘をつくからな?」

 

 まあ嘘っていうかその場しのぎがバレてしまうってやつだけど

 

「なあ?人の財布奪って楽しかったか?」

「ヒィ!?」

「随分と調子こいた文をツイートしてたな」

「……やられる覚悟はあるよな!」

「ああぁぁぁぁぁあ!」

 

 シンが木刀を顔面に振りかざす瞬間に恐怖で気を失ってしまったようだ。

 

「………………クソ!」

 

 シンが木刀を木に振ったところ木刀はその衝撃に耐えることができず折れてしまった。

 

「綺羅!あいつ!俺だけじゃなくてみんなまでターゲットにしやがって!」

 

 今回はこの程度で済んだが今後これ以上のことをされたら…!

 

「……あいつの屋敷ってどこだったけ」

 

 犯人とリュックを引きづりながら祭りの本部会場に戻るのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 犯人を捕まえたため引きづりながら本部に連れていく、拘束はしていないため気絶から目が覚めたら暴れそうだな?けどそれまでにつくだろう

 

「な、なにあれ?」

「知らねー喧嘩後とかか?」

 

 いや視線が痛い、てかなんで?なんでそんなこと言うんだよ

 

「……俺は犯人を捕まえたんだ、いいことをしたじゃねーか」

 

 なのに、なんで?なんで!なんで!?

 

「どうしてそんな目で俺を見るんだよ」

 

 それもそのはず周りの人達が窃盗犯を捕まえたなんて誰もわからない

 

「ねえ見たあの人の目」

「見た見た、ちょー怖かったね」

 

 俺の目が怖い?どーゆうことだよ

 

「……ッ!」

 

 かき氷屋の大きな氷に映る俺の目はいつもの目なんかじゃない。目つきは鋭くなりまるで親父が切れた時なような目だった。

 

「……そりゃ怖がられるな」

 

 一人で納得したところで

 

「弦の兄貴!そいつはまさか犯人か!」

「……おーすおやっさん、おう!見事に捕まえてやったぜ!」

 

 それを聞いた瞬間周りの人達は

 

「え!さっき放送してた窃盗の犯人!?」

「あんなガキが捕まえるとはなー警察も落ちたもんだな」

 

 周りの人達はさっきまでの反応とは違い驚いて褒めるような反応をしていた。てかジジイ何言ってんだよ!あとおやっさんありがとう!

 

 次に自分の目を見てみるといつもの目、きっといろいろあって考え込みすぎて目付きが鋭くなったんだろう。いや親子って似るんだな

 

「いやすげーな弦の兄貴!さすが商店街の英雄だな!」

「だろ!?クソ余裕だったぜ!」

 

 まあこいつはクズだったけど

 

「……とりま犯人頼んだ、俺友達待たせてるから」

「お、おう?でも弦の兄貴が捕まえただろ?手柄とか…」

「手柄とかそんなの俺いらないから」

 

 手柄が欲しいから稽古を受けたんじゃない。俺は正義の味方になりたいから強くなったんだよ

 

「シン君〜」

 

 モカのやつがユラユラと手を振っている、そんな光景を見た瞬間さっきまで綺羅のことでイライラしていたがそんか気持ちはモカの笑顔で消えていった。

 

「――……本当、悔しいけど可愛いな」

 

 まあこんなこと本人の前で言ったら調子に乗るから言わねーけどな!?

 

 いや勘違いするなよな!?モカだけじゃなくてみんなだからな!そこんとこよろしく!

 

「もー可愛いとか照れちゃうよ〜」

「人の心の中を勝手に見るな!」

「おー可愛いと思ってるのは本当なんだ〜」

「……うるせえ!」

 

 またまたハメやれた!いつになってもモカには勝てない!

 

「他のメンツは?」

「みんなはモカちゃんを置いていったんだよ〜およよ」

「……それはお前が迷子になってんるんだな」

 

 まあいいさ

 

「ほら、祭り回るんだろ?離れるから手、つ、繋ぐか?」

「……ッ!う、うん」

 

 これはあれだ、そう!離れたら厄介だからな!離れないようにだ!決してモカて手を繋ぎたいとか思ってないから!?

 

「えへへ、デートみたいだね」

「みたいじゃなくてこれはもうデートだろ…」

 

 だんだん抵抗が無くなってきてるのかもな

 

「おや、兄さん兄さん、木刀はどうしたんだい?」

「……あ」

 

 さっき木刀を買った屋台のばあちゃんが俺を見つけて言ってきた。

 

 木刀は俺の八つ当たりでへし折れたなんて…

 

「あ、あー!あれね!男の子が欲しがってたからあげたんだよ!」アハハ

「(嘘ついてる〜)」

 

 モカはそう思うのであった。

 

「まあいいさ、それよりお金、早く払ってねえ」

「はいはい、いくらですか?」

「2万」

 

 ばあさんは指を2本立ててそう答えた。

 

「に、2万!?そんな嘘だ!」

「コレがけっこうな業物でね、結構高いんだよぉ」

「まあ買っちゃったからには払うしかないよね〜」

 

 えっと、いやこれは俺が100悪いよな?値段も見ずに買った俺が悪い、けど!そんなに高いのなら大切に使いましたよ!

 

「やっぱり俺は不幸だぁぁぁああ!!」

 

 シンは財布から2万丁度取り出し所持金残り5000円となったのであった。

 




チュチュの話し方って書くの難しいね、夏編は後1.2話?ぐらいあるかと、まあ次で終わるって可能性も無きにしも非ず…

綺羅関係は今後も…

少しでも面白いと思ったら感想と投票お願いします!

ではまた次回お会いしましょう!


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弦巻シンと花火の見方

お久しぶりですー今回はヒロインになっていたかもしれないキャラ達メインの話です。
多分ヒロインにはならないかと…

今回も誤字脱字があるかもしれません、後日修正します!

それではどうぞ!!



 花火大会、窃盗の事件とかはあったがどこかの誰かが犯人を捕まえたらしく元の花火大会へと戻っていた。

 

「モカすまん、少し離れる」

 

 トイレに行きたいですよ

 

「そっかーならモカちゃん先に蘭達と合流しとくね〜」

 

 後で来てね〜と言いながらモカは先に人混みの中へと消えていった。

 

 俺は神社にあるトイレにて済ませることを済ませ手を洗っている時ふと自分の目と合ってしまう。

 

「……普通、だよな?」

 

 さっきのあの目付き、自分も怒るとあんな目付きになるなんて知りもしなかった。

 

「ま、まあ?怒った時って誰もがそうなるよな?うん」

 

 自分にそう言い聞かせ合流しようと思うが…

 

「よくよく考えれば合流場所聞いてないや!」

 

 ベンチに座っていたよ、まあ連絡すればいいんだけどね

 

「……弦巻君?ですか!?」

「おー紗夜先輩」

 

 紗夜先輩は両手に大量の食べ物を持っていた。俺が座っていたベンチで食べようとでも思ってたんだろうか

 

「こ、これはその違いまして!」

「まあまあ立っとくのもあれですし座りませんか?」

 

 俺はベンチから立ち上がりどうぞ、とベンチを指す

 

「ではお言葉に甘えて…」

 

 紗夜先輩が座りその後に俺も座る、いや座ってもいいよね!?

 

「えっとですね…」

「はい」

「……実は日菜と来てたんです」

 

 これは以外、いや普通だな、だって姉妹で祭りを回る、普通だよ

 

「で?その日菜先輩は?」

「途中で弦巻さんと会ってしまいそこから離れ離れに」

「で、その間に食べれるだけ食べようと」

「……ッ!ち、違います!」

 

 いやーさすがにそれは無理があるでしょ!?

片手にはいっぱいいっぱいのポテト!もう片方にはジャンボドックにアメリカンドック!そして腕に吊るしてる袋の中にはたこ焼きとはしまき?だよな?

 

 この歳になってもわからないもんもあるんだよ、許せ

 

「その、たくさん食べる女子は嫌いですか?」

「……ッ!?」

 

 え!?何その可愛い聞き方!

 

「俺はたくさん食べてくれる女子が好きですね、あはは」

 

 財布はもう誰かさん達のせいで泣いてますけどね!?

 

 はっきり言おう!あんまり好きではない

よ!?でもそんなの言えないじゃん!

 

「そ、そうですか」

 

「(わ、私はなんて質問を!?…これもあれも今井さんと日菜があんなことを言うから)」

 

「えー!?お姉ちゃんシン君が好きなの?以外だなー」

 

 昔日菜が紗夜にからかったことが原因で少し意識してしてる紗夜だった。

 

「ポテト、早く食べないと冷めますよ?」

「……言われなくても食べます!いいですか!ポテトだけはあげませんからね!」

「別に奪いませんよ!」

 

 なんで俺が紗夜先輩のポテトを奪わないといけないんだよ!

 

「……ですが、そうですね、前に屋敷でいただいた分ぐらいは食べることを…ゆる、し、ま…す」

 

 いや無理すんなよ紗夜先輩!可愛いかよ!?

 

 俺はポテトを一つつまみ取り口に運ぶ

 

「ふーごちそうさん、もうおなかいっぱいだーあ、紗夜先輩残りは全部食べていいですよ?」

 

 紗夜先輩は目を見開いて驚いた顔をしている、なんで驚いてるの?

 

「いやいいんですか?私あの、結構食べましたよ?」

「……いいですよ別に、それに」

 

 まあなんだ

 

「紗夜先輩がポテトを食べる時は幸せそうな顔をしてますから」

「……ッ!?」

 

 いや、俺何言ってんだろう!?

 

「なーに先輩口説いてるの」

「……別に口説いてねーよ!」

 

 後ろを見るとわたあめを持った美咲がいた。み、美咲もそんな大きなわたあめ食べるんだな、でもわたあめって見た目に比べて全然ないからね!

 

「はい、紗夜さん」

「ええ、ありがとうございます」

「やっぱり紗夜先輩のか!」

「やっぱりとはなんですか!私だって甘いもの食べます!」

 

 誰もジャンクフードオンリーなんて決めつけてませんから!

 

「てか珍しい組み合わせだな」

「こころと日菜さんがねーあれは手に負えないよ」

「で、ですよねー」

 

 俺の姉と同等の力を持っている人、それが日菜先輩だ。そりゃあの二人は手に負えない

 

「てか久しぶりだな?美咲さんや、そろそろ連絡教えてくれてもいいんじゃない?」

 

 俺は携帯を手に取り美咲に話しかける

 

 紗夜先輩はと言うと手に持っていた物をバクバク食べている様子だった。

 

「……だったら一つ質問に答えて」

「いいよ」

 

 もちろん即答だ。

 

「シンさ、合宿の後も屋敷いたよね?」

「……………………」

「ハロハピってこころの屋敷で練習するんだよね」

「…………何してたの?」

 

 み、見られていた!なんで!屋敷と道場なんて距離は離れている!ずっと道場にいた俺は会うはずもないし目撃されることもないだろ

 

「屋敷にいなかったぞ?」

「……じゃあこれ」

 

 美咲は写真を表示した携帯の画面を俺に見せてきた。

 

 そこには雨の中死にものぐるいの顔をしながらアレックスと稽古をしている俺の写真だった。

 

 転げ回ったせいで泥だけになった剣道着、ボロボロになった木刀、よく見ると鉄みたいなやつが中に見えるなおい

 

 って!それじゃなくて!

 

「まさか見られていたとは」

「……たまたまだよ、たまたま」

「たまたまなんて言うなよ、下品だぞ?」

「いいから質問に答えて」

 

 何してた、ねー

 

「稽古してた」

「……なんで?」

「なんでって、そりゃー」

 

 正義の味方になりたいからと言おうとした時

 

「あー!シンジ様!次あれ食べましょう!そしてこれも!あれも!」

「あ、アレックス!ちょっと待って!」

「なんですかなんですか!この花火大会って言うのは!美味しい食べ物をばかりじゃないですか!」

 

 アレックスがシンジの手を引っ張り屋台を回っている様子だった。通りの人達から見ればメイド服の人が子供を連れ回し屋台を回っているというシュールすぎる光景により目が点になっていた。

 

「はあ、聞く気失せた……はい、私のメアド、次はちゃんと打ちなよ?」

「悪いな、美咲」

 

 質問に答えてないが連絡先はゲットできたしよかったよな?

 

「よく考えればシンが何しようが私には関係ないしね」

「……まあそうだな」

 

 俺は美咲が苦しんでいたら助けるけどな、だって正義の味方なんだから

 

「ご馳走様でした」

「もう食い終わってるし!?」

 

 隣から声が聞こえ見てみると紗夜先輩が全ても食べ物を食べ終えていた。いや紗夜先輩やべー!!

 

「腹八分目、ですかね?いつもは二割三割だけなんですが」

『お、恐ろしやー』

 

 美咲と俺の声が重なったのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 モカに連絡したところ巴が太鼓を叩くため、その周りに集まるとのこと、そのため太鼓がある場所に向かうが

 

「シンくーん!!」

 

 俺の事を呼ぶのはマイエンジェル香澄!なんでお前はそんなに可愛いの!

 

「どうした?香澄」

 

 心の中ではそう思ってるが表には出さないシンである

 

「あ、ありさが、ありさがどこにもいないの!!」

「わかった!わかったから泣くなって!」

 

 うわわわんと大泣き状態、慰めるために頭を撫でる。これが妹を持つ感覚なのだろうか!

 

「……………………」

「あの、なんすか沙綾さん」

「いや、私も泣いたら頭撫でてくれるのかなーって」

 

 何言ってるの沙綾!?

 

「別に泣かなくても撫でて欲しけりゃ撫でるぞ?」

「じゃあ今」

「……はいはい」

「えっへへー」

 

 俺に頭を撫でられて何が嬉しいのだろうか…

 

「あ、見たレイヤ、あれが浮気だよ」

「え?3股?つ、弦巻家って…」

「違うぞ!」

 

 何を言うか何となくわかるからやめてくれ!

 

「てかおたえ、何度も言うがお前と付き合ってない」

「見たレイヤ、あれがツンデレだよ」

「へーこれがツンデレ」

「だからあんたもなんでそんなのに騙されるんだよ!?」

 

 ほ、本題に入れない!

 

「有咲ちゃんと連絡が取れないの、多分…」

 

 牛込さんがその発言をしたあと息を吸って

 

「あーくそ!充電が後10%しかねえ!蓄電器忘れたぁぁあ!!」

 

「んっん!……って言ってたから充電が切れたかもしれないの」

「お、おう」

 

 う、牛込さんあれは市ヶ谷さんの真似かな?結構似てて驚いたな

 

「んーとなるとなーどっか市ヶ谷さんが行きそうな場所知らないの?」

「それがわかりゃないのー!!」

 

 だから香澄!お前可愛いかよ!?大事なことだから2回言ったぞ!?

 

「あ、もしかしたら…」

「レイヤ?」

 

 レイヤさん曰くこの近くに小さな神社があるらしい。大きな神社の近くに小さな神社って小さい方可哀想だな

 

「とは行ったものの結構離れてるぞ?」

 

 友達とはぐれたからってレベルで行くところじゃないだろ、でも行っていなかったら戻って近くを確認すればいい

 

 遠くから潰したほうが効率いいだろ?多分

 

ヒューーードーーーン ドンドン

 

 どうやらもう花火が上がっているようだ。

 

「あ、アイツらに連絡するの忘れてた」

 

 モカ達と合流するはずが今では市ヶ谷さん探し、まあ後で怒られることは確定のようだな?

 

 いや巴の太鼓って花火のあとじゃなかったけ?いや前だっけ?どの道怒られるね!

 

「これでいなかったら泣くぞ俺は」

 

 若干泣きそうな目をしてる中神社の前に行くと

 

「……………………」

 

 花火を見ながら泣いている市ヶ谷さんの姿があった。

 

バキッ!

 

 俺は黙っとこうと思ったが兄元にあった木を踏んでしまった。

 

「……ッ!誰だ!」

「俺だよ俺」

「なんだお前か」

 

 俺で悪かったですね!

 

「みんな探してたぞ?戻らなくていいのか?」

「……別にいい、元から黙ってここ来る予定だったし」

 

 えー市ヶ谷さんパピパ大好き人間だよね?友達を置いてまでしてここ来たいのか?

 

「にしてもここから見る花火は絶景だな」

「……だろ?ここはな、あたしの母さんと父さんとの思い出の場所なんだよ」

「……ッ!それは、その…悪いな」

 

 何となくわかってた。香澄がよく市ヶ谷さんのばあちゃんが作る卵焼きは美味いって話をしていた。

 

 つまり、あれだよ、ばあちゃんが弁当作ってるんだなって、両親が居ないんだろうなと勝手に決めつけていたが…どうやらそのようだな

 

「花火が上がる時はいつも一人でここに来て、来ては泣いてたなー」

「ほらあたしさ?ポピパが結成するまで友達いなかったし…」

 

 なんかそうらしいな、女子の何人かが市ヶ谷さんは変わったーとか言ってて気になって話聞いたら休み時間はいつも一人だった。って話をしてくれた。

 

「両親は事故で亡くなったんだよ、まだあたしが小さい頃な」

「……その後はばあちゃんが、育ててくれてて」

 

 もういいだろ

 

「最近はさ?友達ができてきて、それで…」

「――……もういいから!」

「……ッ!」

 

 頼むから…その今にも大泣きしそうな顔で話を続けないでくれ…!

 

 失ったものはもうどうすることもできない。それを一番わかってるのは市ヶ谷さんであって、アレックスもそうだな

 

「これ以上強がってどうするんだよ」

「素直になれよ!本当はここで何をしたかった!なんでいつも一人で来てるんだよ!」

「本当は友達と来たいんだろ!本当は友達を見せびらかしたいだろ!」

 

 思い出の場所に友達を連れていき両親に見せてやりたい。そう思ってるだろう

 

「でも、それだとみんなが…!みんなに迷惑かけちゃう!悲しい空気になっちゃうよ…」

「だったら今から俺が友達になる!俺のことを両親に自慢しろ!」

「……ッ!」

 

 悲しい気持ちにさせてしまう?ならねーよ!お前の友達は!ポピパは!俺は!そんな気持ちには絶対ならない

 

 俺は市ヶ谷さん、いや有咲の近くに行きその場に座る

 

「馬鹿にしてもいい、変態だって罵ってもいい、有咲(・・)はもう一人じゃないし両親だってわかってる!」

 

 天国とやらがあるのならそこから有咲を見守っているはずだ。きっとそうに違いない

 

「……母さん、父さん」

「有咲には、有咲には……!友達が沢山できました…!」

「もう一人じゃないよ!……ポピパがいる!」

「ごめんなさい…!次は必ず!」

 

「――………ポピパのメンツ全員連れてきますから!!」

 

 その言葉を最後に花火は終わりを遂げた。

 

 有咲はその後大きな声を出しながら泣いていた。周りに聞こえていても気にしないほどにな

 

「……落ち着いたか?」

「最悪、お前にこんな、泣いてると、ころ見られるなんて、なんて!」

「お前じゃねーよ、弦巻シンだ」

「うっせえ!」

 

 うう、やはり勢いでは友達になれなかったか

 

「ほら、行くぞ!……来年はポピパを連れていかないといけーねからな?来年なんてすぐきちまうぞー」

「そうだな、あっという間だな」

 

 有咲が前を歩き俺は後ろを歩く、有咲が近道を知ってるとのことだから道案内を頼んだんだよ

 

「(こんな奴だからあの2人はシンのことが好きなんだな、何となくわかったよ…)」

 

 そう、有咲は聞いてしまったのだ。

 

 それは、シンの誕生日の日に起きた出来事…

 

「はあ、弦巻家の屋敷広すぎだろ」

 

 有咲はなれない屋敷生活の疲れからか新鮮な外の空気を吸うため外に出ていた。

 

「?あれは…」

 

 そこにいた2人は

 

「沙綾とひまり、ちゃん?……何してんだ?」

 

 興味が沸いた有咲は2人にバレないよう近づいていた。

 

「ねえ沙綾」

「どうしたの?そんなにかしこまって、ひまりらしくないよ?」

 

「(一体何の話をしてるんだ?)」

 

「……ごめん!私、沙綾に嘘ついてた」

「私は、私は…!シン君が好き、ううん、大好きなの!」

『……ッ!』

 

 沙綾と有咲、2人驚いていた。有咲に関しては急すぎる展開だ、驚くのも無理はない

 

「(は、はあ!?ひ、ひまりちゃんがあいつ(シン)のことを好き!?ななな、なんでだ!?)」

 

 有咲が知る限りシンは変態であることしか分かっていなかった。有咲自信がシンと絡もうとしてないため知らないのが事実だ。

 

「そう、なんだ」

「……でもごめんね?私もシンのこと好きだから」

『……ッ!』

 

 次はひまりと有咲が反応をした。

 

「(さ、沙綾まで!?なんなんだよマジで!)」

 

 ひまりの時と同じよう驚く有咲だった。

 

「だと思ってた!……でも、負けないから」

「私も、シンを私だけの正義のヒーローにしてみせるから」

『……………………』

 

 沈黙が続く

 

「あはは、お互い頑張ろっか」

「んーでも私シン君に告白したけど返事まだなんだよねー」

「ええ!?ひ、ひまりシンに告白したの!?」

「(まじかよひまりちゃん!?)」

 

 だからなんであんなやつにー!と心の中で叫ぶ有咲だった。

 

「私はそんな勇気ないなー」

「でも私も勢いだったから大丈夫だよ!」

「(勢いでも凄いだろ!?)」

 

 さっきからツッコミしかしてない有咲だ。

 

「は、はあ、もういいや部屋に戻ろっと」

 

 その後ヘロヘロに動きながら屋敷に戻る有咲だった。その後の2人の話はひまりと沙綾しか知らない

 

 

 

「……ありがとうな、シン」ボソ

「え?なんて?」

「だぁぁぁあ!なんでもねぇぇ!!」

 

 有咲が走っていく、離れたら森から抜け出せれなくなるため急いであとをついて行き

 

「な、何とか帰ってこれたー」

 

 てか俺が来た道なんだったの!?5分ぐらいで着いたんですか!?

 

「てかここって…」

 

 祭りは花火を上げ終わりもう終了モード、当然屋台の人達は片付けを始めてる。

 

 その中には太鼓を戻している赤髪の少女もいて

 

「あ、やばい」

 

 俺は直ぐに察してその場から離れよとするも!

 

「どこ行くのかな?」

「……ひまりさんや、そのベルトから手を離してくれませんか?」

 

 ズボンに巻いているベルトに指を通しガチガチに固定して逃げられないようになっています。

 

「せっかく親切なモカちゃんが集合場所をわかりやすく教えてあげたのにね〜」

「……有咲と森の中から出てきて何してたの?」

 

 モカに続き蘭も俺の前に現れてそう言う。

 

「私はずーっと待ってたんだよ!」

 

 後ろからはひまりの声!

 

「……あーあたし知らねーから」

 

 おい!?唯一有咲の力があれば打破できたこの状況であなたは裏切るのですか!?

 

「つぐみ!」

「あ、あー!有咲ちゃん!二学期の行事なんだけど…」

「あー!まだ学長に申請書出してねえ!!」

 

 生徒会の話はしなくていいからさ!

 

「この後まだ時間あるよね?」

「な、ないと言ったら?」

「えーそれはないよ〜バイトも休みだし〜?」

「それにさ!まだ」

 

『夏休みだよ?』

 

 神様、僕の思い出は海と屋敷だけでよかったです。思い出を思い求めた俺をどうか、どうか許して…うう!涙が…!

 

「どうして俺は不幸なんだぁぁぁぁああ!」

 

 夏休み終了まであと1日と数時間!この数時間は説教へと時間を費やしたのであった。




今回は短いですがお許しを、次回は夏編最終話です。さあどんな終わり方をするのでしょうかね!

あと少しで感想が100件超えます!そして評価も赤に戻れそう!

なのでどうかすこしでも面白いと思ったら感想と投票お願いいたします!!

ではまた次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと夏休み最終日

久しぶりに平日に更新できました!夏編最後!別になにか特別なことがあるわけじゃありませんよ!

それではどうぞ!!


 夏休み最終日、バイトもなくすることもなく1人部屋で録画していたパスパレのバラエティー番組をモカに唆され買ったソファーにて体操座りをしていて見ていた。

 

 番組はパスパレのみんなが水着にて様々なチャレンジを行うという企画、案の定彩先輩が可愛い行動ばかりして俺的にとても有難い番組ではあったが…

 

「それにしても千聖さん!髪!バッサリ切りましたね!」

 

 髪を切った千聖先輩に対して司会者がそう聞いていた。

 

「ええ、暑いのでサッパリしたいと思いまして」

「千聖さん似合ってる!!」

「ショートでも可愛いよ!!」

「結婚してくれぇぇぇぇええ!!」

 

 と、千聖先輩が答えた後にバラエティー番組収録の際の観客席にいたファン達が叫んでいた。

 

「あはは、知ってる?俺この人と結婚する約束してんだぜ」

 

 無気力な笑い声と共に1人でテレビを指さしいた。

 

「……何言ってんだが」

 

 彼女を作らず千聖先輩がアイドル卒業するまで俺が童貞だったらの話だけどな、まあほぼ確定だと思っていたさ

 

 けど、こんな俺にも好きになってくれる人がいたからな?そりゃ悩みますよ

 

 クソ、1人の時間はこれがあるから嫌いだ。昔は1人の方が気楽だったのにな

 

「俺も少しずつ変わってきてるのかもな」

 

 喉が乾いたため冷蔵庫に飲み物を取りに行く途中

 

\ピンポーン/

 

 インターホンが鳴った。

 

 最終日に一体誰が俺に何用だ?

 

「……はい」

 

 受話器を取り返事をした。

 

「あ!シン様!おひさ」

 

 知ってるやつがいたためすぐに受話器を元に戻した。

 

 いやなんでアレックスが俺の家に来るんだ?おかしいだろ!

 

\ピンポーン/\ピンポーン/\ピンポーン/

 

 ああー!うるせえな!

 

「なんですぐ切るんですか!?」

「いや見知った顔だったので」

 

 マンションの鍵を開け中に入るよう話をする。

 

「お久しぶりです、シン様」

「はい、お久しぶりでーす」

 

 俺は床に寝っ転がりながらアレックスに話しかける、いや急に来たからおもてなしなんてできないっすよ

 

「実は渡すものがありまして」

「……渡すもの?」

「はい、無事に最終選別を突破したので日〇刀をですね」

「もういいだろそのネタ!?」

 

 そろそろ怒られそうだからやめてくれ!

 

「てのは冗談でこれを」

「木刀の柄?」

「はい!これを、こう!」

 

 木刀の柄を持ち思いっきり振り下ろすと

 

「あら不思議!木刀の完成です!」

「す、すげえ!どうゆう仕組みなんだ!?」

「ええ!私も気になり黒服の人達に聞いたのですが…よいしょっと」

 

 アレックスはポケットからサングラスを取り出し

 

「それは企業秘密ですので」キリ

「まあ折り畳み傘的な感じかと」

 

 今の黒服さんの真似か?全然似てないぞ

 

「……へー、てかこれどうやったら戻るの?」

「ああ、それはボタンを押せば直りますよ?」

 

 ボタンって、なんすかそれは

 

「まあ持ち運び良さそうだしな、助かるよ」

「ええ、私も常に装備してますので!」

 

 なるほど、だからあの時とかに木刀が急に現れていたのか!

 

「ではでは、私はこれからシンジ様とデートがございますので!」

「あっそ、シンジに手を出したら殺すからな」

「へへん!シン様が私に勝てるとは思いませんけどね!」

 

 う、うぜえー!確かに勝てないけどさ!

 

 アレックスは玄関に向かい靴を履き家から出ようとした時

 

「……これは」

 

 アレックスが手に取った物、それは先日の祭りにて購入した木刀…の成れの果て、まっぷたつに折れてたがシンは律儀に回収をしていたのだ。

 

「シン様、私言いましたよね」

「んーなにがー」

 

 シンは知りもせず間抜けた返事をする

 

「剣などは大切に扱うようにと、私言いましたよね?言いましたよね!」

「……まさか!」

 

 シンはその場に勢いよく起き上がり玄関に向かうと木刀の成れの果てを手に持っているアレックスがいた。

 

「いやその…ごめん、弄ってきてへし折ってしまった」

「はあ、怒るのは仕方が無いことですが物に当たるのは良くないとも話をしましたよ?」

「……はい」

「それにシン様は怒りで判断する考えを放棄している傾向があります」

「前に綺羅様とのやりとりも負けてたら大変でしたよ?」

 

 なんだろう、アレックスに正論言われてるんですが!でもまあ確かに俺が悪いけどさ

 

「……いつか判断を間違えないよう気おつけることですね」

「……うす」

「では!これからデートに行ってきます!」

「お、おう」

 

 その急にテンション上げるやつなんなんだよ!?てかデートじゃなくて付き添いだろ!

 

 でもアレックスの言う通りだ。怒ると物にあっていた。それに判断を正確にできていない、確かにこれは治すべきところだよな

 

 けどどーするもんかね

 

 コップに麦茶を注ぎちまちま飲んでいた。

 

\ピンポーン/

 

「なんだ?アレックスなんか忘れ物でもしたのか?」

「……もしもし」

「やっほ〜遊びに来たよ〜」

「モカかよ!?」

 

 アレックスかと思えばモカでしたよ!

 

 まあ適当に入っていいと伝え鍵は開けたものの、何しに来たのだろうか

 

「相変わらずの部屋ですな〜」

「でも前来た時と全然違うよ!」

「確かに、家具が増えてる」

「でも広すぎだよなー!」

「さ、さすが高級マンション」

 

 またもAfterglow全員集結ですか!

 

「いやーシンの家初めて来たぜ」

「蒼汰もいるのかよ!」

「当たり前だろ?巴いる所には俺もいるさ!」

 

 はいはい、消えろリア充

 

「で?俺の家に来て何をしようと?」

「夏休みの宿題!まだ終わってないからやろうかなって!」

「だったらつぐみの家でもいいだろひまり!?」

「ごめん!今日に限ってお客さんが多くて…」

 

 そのいつも少ないみたいな言い方やめなよ!マスター悲しむぞ!?

 

「夏休み最終日に1人で何してたの?」

「1人じゃねーし!さっきまでお客さんいたからな!?」

 

 アレックスがいましたから!

 

「いやー1人で寂しそうにしてないかなって〜」

「ま、まあー寂しかったのは事実だな」

「おー素直ですな〜結婚しちゃいます〜?」

「……うるさいな!てか結婚しないから!」

 

 寂しかったのは事実だったからな?嘘は言わないよ!てかそれより!

 

「なんで俺の家で宿題するんだよ!」

「前にシンが場所ぐらい貸してやるよって言ってたじゃん」

「…………言ったかもしれん!あと最終日まで宿題を貯めるなよ!」

 

 確かに昔言ったかもしれんが宿題ぐらいちゃんとやれよ!

 

「だってー!夏休みだよ!?夏休みは遊ばないとダメじゃん!」

「ひまり!やっぱりお前は馬鹿だな!いいか!遊んでいいやつは宿題をちゃんとしたヤツらだけだ!」

「ば、馬鹿じゃないもん!宿題なんてしなくても遊んでもいいもん!」

 

 こ、こいつー!もん!とか言って可愛いやつかよ!

 

「現に宿題せずに遊んでいるから最終日痛い目にあうんだろ!?」

「い、痛くないもん!こんなの簡単だもん!」

「あーそうですか!だったら一切!誰にも!助けを求めることなく!1人で終わらせることだな!」

「うう!ご、ごめんなさい!シン君手伝ってよぉぉおおお!!」

 

 ひまりのやつは俺にしがみつき手伝ってもらいたさそうにするも

 

「お願いします!あと数学と英語と国語が残ってるんです!!」

「あとのレベルじゃない!おい!お前らもなんで放置してたんだよ!」

 

 ひまり以外のメンツに話しかけるが

 

「だって、な?」

「ひーちゃん言ってもしなかったし?」

「私もやるようには言ったんだけどね」

「……自業自得」

 

 ひまり、君のバンドメンバーの方々はめちゃくちゃ親切な人ばかりじゃないか!なのにお前と来たら!

 

「お願いします!おっぱい触らせますからぁぁああ!」

「や、やめろ!俺がそんな誘いに!そんな、さそ、いに…!」

 

 ッ!ひ、ひまりの胸が視界に入る!宿題手伝うだけで触れる!?つまりあれか!?揉めるのか!

 

「って馬鹿か俺は!」

『シン(君)!?』

 

 俺は自分で自分に思いっきり腹パンをかましてやって触りたい衝動を無理やり抑えた。

 

「……あぶねー、ひまり!その手には乗らないぞ!てかそんなことホイホイ男の子に言っちゃいけません!」

「うん、だからシン君にしか触らせないよ?」

「お、おおおお前はまたなんてことを!?」

 

 こ、こんなみんなの前で堂々といいやがって!ひまりは恥ずかしくなくても俺が恥ずかしいよ!

 

「おーひーちゃん言うね〜だったらモカちゃんはーんーひーちゃん見たくおっぱいお化けじゃないから〜好きなところ触っていいよ?」

 

 も、モカさん!?

 

「何言ってるの?シンは前にあたしの胸…いや、太ももぐらいなら、ゆるす…」

 

 ら、蘭さんまで!?

 

「だあああ!わかった!手伝うから!手伝うけど体なんて触らないからな!?」

 

 な、なんなんだよこいつら!そんなこと!そんなこと…!触りたかったさ!モカのあのお腹!蘭のエチエチの太もも!それにひまりのおっぱい!

 

 って俺は変態かよ!(変態です)

 

 まあ何やかんやで宿題を終わらせる会が始まった。

 

「んーわからないよー」

「そこはなこの公式使うんだよ、いい加減覚えろ馬鹿」

「ば、馬鹿じゃないもん!だ、だいたい手伝ってくれたら触らせるって言ったのに!」

「手伝っても触らないシン君は?飛んだチキン野郎だよ!」

 

 なんだと…!?

 

「うるせえ」

「……ッ!えっと、その、ごめん言い過ぎた」

 

 謝るなら最初からからかうなっての

 

「ひまり」

「は、はい」

「俺の事を色仕掛けで落としたいのなら、もっとこうそそるようにしろ、よな?」

「……うん!うん!私頑張るよ!」

「その前に宿題な」

「うん!」

 

 ち、畜生!こうでも言わないとひまりがやる気出さないだろ!?

 

 はあ、これからこれまで以上に色仕掛けに会うのか、耐えろよ俺の息子!

 

「っと、すまんちょっと席外す」

 

 ひまりと俺は2人でテーブルに座っており他のメンツはソファー周辺で食べっていた。

 

 つまりさっきの会話は誰にも聞かれてないってわけだ、安心したか?

 

 バルコニーに向かい洗濯物を取り込む、この作業にも慣れたもんさなんせもう数年近く一人暮らししてんだから

 

「手伝うよ」

「蘭、ありがとな」

「……別に、暇だっただけ」

 

 このツンツンしてる所がまた

 

「可愛いよなー」

「へ!?な、なにが!?」

「別にーなんでもないよー」

 

 あ、あぶねー!また心に思っていることが勝手に口に出てた!

 

「……なんか懐かしいね」

「だな、あれは確かまだ出会ったばかりの頃だよな?」

 

 昔俺の家で黒毛和牛を食べた時、蘭が洗濯物を取り込む時手伝ってくれたんだよ

 

「あれからまだ数ヶ月しか経ってないのか、なんか長いようで短いな」

「ふふ、かもね」

 

 蘭も感情が表情で現れやすくなったよな?今までずっーとムスッとした顔だったのに

 

「その、なんだー蘭と友達でよかったよ」

 

 照れくさそうにシンは蘭にそう伝えた。

 

「……うん、あたしもあんたと友達でよかったよ」

「それはよかったよ」

 

 いやもし違う答えだったらどうなっていたか!

 

「あたしは別に友達以上の関係になっても…」ボソ

「ん!?それはあれか!」

「は、はい!」

 

 俺は蘭の肩を掴み答える

 

「そ、それってさ!それって!」

「……う、うん、あたしは!シンと恋人「親友ってやつだよな!」……え、あ、うん」

 

 いやマジですか!?蘭と親友!?やばい嬉しい!初めてだよ親友なんて!

 

「いや嬉しい、蘭とまさか友達以上の関係になれるなんて」

「そ、そうだね、あはは」

 

 蘭は嬉しいような、嬉しくないような複雑な感情が頭の中でグルグルしているのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 洗濯物を取り込み終えひまりの元に向かうと

 

「何してんだよお前」

「え?夏休みの宿題だけど?」

 

 その、絵日記が宿題?おいおい羽丘はそんな小学生みたいなものを宿題にしてるのか!

 

「これだけは毎日書いてたんだよ!凄いでしょ!」

「それやるなら宿題もやれよ!」

 

 ったく、少しずつやればいい話だろ?まあ俺はめんどくさいから宿題は全て終わらせたんだけどな!

 

「てかお前らも絵日記やったのか?」

「当たり前だろ?恥ずかしいけど宿題だからな」

「モカちゃんもちゃんとやってますよ〜褒めて褒めて〜」

「はい、偉い偉い」

 

 心にもない言葉を言い拍手をしているのであった。

 

「私は今日の分書いたら終わりだよ」

「あたしもだね」

 

 さすがひまりと違い優秀なメンツ達だ!

 

「俺もめんどくさかったけど終わらせたぜ?全くどこの高校が絵日記なんて宿題に出すんだよ」

「それな!羽丘の生徒は可哀想だな!…いや、待て蒼汰」

「ん?なんだよ」

「お前、終わらせたって、え?」

 

 待って、思い出してきたぞ…!

 

「何って俺らも絵日記宿題で出てただろ?」

「嘘だ!」

「嘘じゃねーよ、本当だよ」

 

 夏休みのしおりを見せてくる蒼汰から奪い取り確認を行うと

 

「ほ、本当だ、書いてある」

「……まさかシン、お前」

「な、なわけないだろ!?」

 

 そう!やってないわけが無い!俺の事だ、ちゃんと毎日書いてて今日の分以外埋まってるはず!

 

 学校で使うカバンの中身を見ると新品の日記帳、名前すら書かれていないものが奥底にあった。

 

 中身を開けると新品同様、何も書かれていない、てか新品だしな

 

「シン君〜これは1日でこれからやるにはきついよ〜?」

「徹夜確定だな」

「で、でもほら!思い出を振り返るいい機会だよ!」

「ひまりと同じ、自業自得」

「シン、ドンマイ」

 

 夏休みの宿題でまさかこんな目に遭うとは、全部終わらせてるのにこの訳分からん絵日記だけやってないなんて!

 

「シン君宿題やってなかったの!人に言えないじゃーん!」

「……黙れ、お前と一緒にするな!」

「絵日記なんてしなくてもいいんだよこんなもの!」

 

 床に思いっきり日記帳を叩きつける。

 

 はっ!さっきアレックスから物に当たるなって言われたんだった。

 

 日記帳を拾い上げ大きな溜息をつく

 

「夏休みの宿題しなかったら居残りだって先生言ってたぞ?」

「……いやそれ絵日記も入るの?」

「入るんじゃねー?」

 

 ああ、なんで俺はいつもいつもいつも!

 

「不幸なんだぁぁぁあああ!!!」

 

 ひまりの横に座りペンを握り夏休み最終日に宿題をする子供のように真剣にノートに取り組むシンの姿と、その横で同じ状況のひまりがいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃー私帰るから…うう」

「おーす、じゃーな」

「モカちゃんはもー少し残ります〜」

「私は家帰ったらシャワー浴びてすぐ寝るよ」

 

 ひまりはフラフラしながら俺の家を出ていった。その際ドアに頭突きをしていたのは内緒だ。

 

「他のヤツらは帰ったのにお前帰らなくてもいいのか?」

「えへへーシン君と2人っきりだね〜」

 

 他の人達は相当前に帰ったけどな、てかなんだろう。モカのやつがめっちゃくっついてくるんだが!

 

「やめろよ、書きにくいだろ」

「えーいいじゃん、バイトを来てなくて寂しかったんだから〜」

「俺は行きたかったっての!」

 

 来月ピンチだぞ!?

 

「シン君がどこか遠くに行きそうで、なんかいやになって〜」

「……別に遠くになんて行かねーよ」

「でもでもモカちゃん寂しくて…」

 

 な、なんだコイツ?こんなんだったけか?

 

「わかったよ、今だけ今だけくっつくのを許すからな」

「わーい、モカちゃんの演技が勝った〜」

「……ッ!はあ、俺もまだまだだな」

 

 モカの野郎にまんまとはめられ左腕にずっーとしがみつくモカさん、でも可愛い!こいつも黙ってとけばいいんだよな

 

「なあモカ」

「んーなーに?」

「えっと、そのーコンビニでパンでも買ってくるか」

「……うん!」

 

 少し休憩がてらモカの好物のパンでも買ってやりますか!それとコーヒーでも買うか、最近はコンビニでもそれなりに美味しいからな

 

 コンビニにつくも

 

「これと、あれとーあとこっちもーあ!これ新作〜あとこれ」

「も、モカさん!?か、買いすぎなんじゃ」

「えーこれぐらい普通だよ〜」

「普通…はあーあーまじ不幸だな」

 

 そう言うシンの顔は少し笑っているのであった。




次回から新学期!あの人がちょー久しぶりに登場!たぶん誰も覚えていないオリキャラです!てかこんなに話書いてついに二学期ですよ、いや話の展開遅くて申し訳ない…

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

ではまた次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンの新学期初日は普通じゃない

どーも久しぶりです。今回話を長くしていますのでどうかお許しを!

あの人とは文化祭の人です。


 本日からまた学校生活が始まる。昨日までは夏休みという長期休暇であったがそれも昨日で終わり、本日からまた学校に通い出す。

 

 いや別に学校は嫌いじゃいよ?むしろ楽しい、だから別に苦ではないさ

 

 けど!さすがに徹夜したあとはキツくないですか?

 

「ありがとうございましたー」

 

 コンビニの店員さんに行ってらっしゃいの代わりにありがとうございましたと言われ学校に向かう。

 

 買ったのはもちろんエナジードリンク、これを飲まないと本日は生きて帰れないっての

 

「おーす!シン!今日からまたよろしくな」

「……蒼汰か、そうだな、よろしくー」

「おいおいすんごいくまだぞ?寝たのか?」

「寝てるわけねーだろ!絵日記ってなんなんだよ!」

 

 そう、俺は絵日記と言う訳分からん宿題をしていなかったため徹夜で夜な夜な書いていたんだ。

 

 もう後半の残りとかアレックスと稽古していたからさ?思い出なんてないっての!だから嘘の情報を書きまくったが…まあ大丈夫だろ

 

「てかお前巴と登校しなくてもいいのかよ」

「いやしたいけどさ?ほら?男子がいたら話しずらいこともあるだろ?」

「……ふーん」

 

 飲み終えたエナジードリンクを自販機の近くにある缶捨てに投げ入れる

 

「すっげーよく入ったな」

「たまたまだろ」

 

 大きな欠伸をしながらシンは適当に答えるのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「おはようございます」

「……おはよう、ございます」

「おはようございまーす」

 

 花咲の玄関前には生徒会の人達が並び挨拶運動を行っていた。夏休み明けだと言うのに仕事熱心なことですな

 

「弦巻君、おはようございます」

「おはようございます紗夜先輩、初日から大変っすね」

「いえ、これも生徒会の仕事なので」

 

 めちゃくちゃいい人だな!けど実は中身はポテト大好き星人なんすよねーポテト欲なめたらダメっすよ

 

「シン君おはよう、ございます」

「燐子先輩眠そっすねー」

「はい、昨日も深夜までえ…ゲームをしてたので」

「……ほどほどにすっよ?」

「そーゆうお前もくま凄いぞー」

「有咲、俺はいろいろと事情があったんだよ」

 

 まあ宿題をしていなかった俺が悪いけどな

 

「大方宿題にでも追われてたんだろ?」

「……まあ否定はしない」

 

 てか蒼汰どこ行ったんだ?生徒会の人達と話してたらいなくなってんだが…いやいた

 

「じゃ、俺そろそろ行くんで」

 

 その一言を伝え蒼汰の元へ向かう。

 

「お前置いてくなよ」

「シン、彼女作らねーの?」

「作れるものなら作るわ!」

 

 こいつ自覚してねーなーと思う蒼汰だったがその事を黙ろうと決意もした。

 

 教室に入るとめちゃくちゃガヤガヤ状態、そりゃー久しぶりに会うメンツとかいるだろうからな

 

「シン君こないだぶりー!」

「香澄か、おう」

 

 マイエンジェルだから高テンションで接したいがさすがにきつい!明日からでよろしいでしょうか

 

「シン君元気ないよ?おっぱい揉む?」

「……そのセリフ誰から教えてもらった」

「モカ」

 

 あ、あいつー!おたえにその事は教えちゃいかんやろ!

 

「シン!!久しぶりね!」

「グハッ!!だ、抱きつくなこころ!」

「全然会えてなかったから寂しかったわ!」

「……そうか、悪かったな?」

 

 てかもっと長い期間会ってない時期があったと思うが…

 

「連絡先交換したのに一言も送らないってなんですか?」

「美咲!?いや、違う!忘れてたって言うか…」

「あーはいはい、私の連絡先なんてどうでもいいと」

「違うって!その、なんて送ればいいとかわからないだろ!?」

 

 今まではあっちから連絡来てたけどこっちから初めて送ったことはねーからさ!わからないっての!

 

「そんなの適当でいいよ」

「わ、わかった、今日何か送るよ」

 

 なんて送るかは後で考えよう

 

「シンおはよー」

「沙綾か、おはよー」

「凄いくまだね?大丈夫?」

「……まあ少し徹夜しただけだよ」

 

 絵日記は許さんからな!?

 

「ちゃんと寝ないと、眠れるように添い寝してあげよっか?」

「いやそれは別の意味で寝れないとゆうか」

「寝かせない!?し、シンったらもーう!」

「え、え!?」

 

 沙綾さん!あんたそんなキャラじゃなかったでしょ!?どうしたのさ!

 

「はい、席付けー」

 

 先生が現れみんなは席につき教室は静かになった。

 

 その後は体育館に移動して長い校長の話だ。

 

「えーと、つまりですね」

「えーと、そーゆうことなんですよ」

「えーと、えーと」

 

 えーと多いぞ校長!てか早く終わらせろ!眠たいんだよ!

 

「以上校長先生の話でした。今までありがとうございました」

 

 教頭先生切れちゃって勝手に校長辞めさせてるよ

 

「次に学長先生からです」

 

 まだ話しあんのかよ、長いよ!

 

「1年4組の弦巻シン君が凄く睨んでくるのでもう話しません」

「おい!?」

 

 いらんところで俺の名前を出すなよ!てか睨んでない!眠いだけなんだよ!

 

「シン、お前何してんだよ」

「何もしてない、眠いだけだ」

 

 今までなら悪い噂が広がっていたがまあいろいろあってその場でみんなが笑って終わる状況だった。

 

 まあその後何やかんやで宿題を提出し、午前解散、本日はまだバイトも始まっていないため即帰って寝る!

 

「シン、この後巴達がカラオケに行くけどお前も来ないかだってさ」

「無理。寝る」

「あはは、おっけー」

 

 金もねーしな、早く帰って寝たいですよ

 

 1人で眠い目を擦りながら下校中

 

「やっほー久しぶりだね!後輩君!」

「……え?誰っすか?」

 

 制服の胸元を開けその大きな胸を強調させるように制服を着崩している先輩なんて知りませんな

 

「もー!一緒に文化祭を盛り上げたなかでしょ?」

「あんたは最初から使えなかったでしょ!」

「酷い!いくら後輩君でも許さないぞ!」

 

 そう、俺の前にてぷんぷん怒っている可愛い先輩は文化祭実行委員として共に汗を流した中…とは言いにくい

 

 なんせこの人が実行委員長やるとか言いながら仕事が出来ず、つぐみに負担をかけ、挙句の果てには実行委員長が俺に変わるという前代未聞のことを成し遂げた先輩

 

「で、俺に何用ですか?篠崎先輩?」

「気軽にあいな先輩って呼んでもいいんだよ?」

「呼びませんから」

 

 篠崎(しのざき)愛奈(あいな)、羽丘女子学園3年、俺が唯一知ってる3年の先輩、だな?

 

「いやー久しぶりに後輩君の顔が見たくてね!元気にしてたかい?」

「元気元気ーってことでさよなら」

「ちょっと、ちょっーとお待ちを!」

「……なんですか」

 

 シンさんは早く家に帰って寝たいんですが!!

 

「ほら私って3年じゃん?」

「ですね、見えませんけど」

「うう、そうじゃなくて!夏なんて毎日学校で勉強させられて海なんて行けなかったんだよ!?」

 

 篠崎先輩の水着だと?

 

 あのひまりよりも大きな胸が…そしてボディがー!

 

 っと危ない危ない!想像してた!

 

 はっきり言おう、この人体つきが妙にエロいんだよ!おまけに可愛い、でも性格が馬鹿で勿体ない!

 

「でねーもう私決めたの!」

「なにを」

「もー勉強に縛られるのはやだなの!私は大学に行かず就職して働くわ!」

「そう!それも楽して稼ぎたい!」

「……………………」

「そう!楽して稼ぎたい!」

「2度も言わなくていいから!」

 

 誰もが1度は夢見るだろ、まあ許してやってくれ

 

「でも羽丘って進学校でしょ?就活とかしていいの?」

「……うん、でも先生は一切協力しないだって、あはは」

「そ、それはきついな」

 

 つまり自分で会社を探してエントリーして試験を受けないといけないのか、いやキツ!って言おうとしたが大学とかこんなもんなんだろ?多分な!

 

「で、それをなんで俺に話すのですか」

「よくぞ聞いてくれた我が後輩君!これを見てくれ!」

 

 篠崎先輩は怪しげな紙を俺に渡してきた。そこにはこんなことが書かれていた。

 

「……メイド募集中!条件、顔に自信がある人、楽して稼ぎたい人!メイドなんて簡単です!一緒に汗を流しましょう!」

 

 って、あいつの顔が思い浮かぶ文力なのですが!

 

「あ、」

 

 でも小さく下に書かれていた。

 

「なお巨乳は受け付けません、来た場合もぎ取ります」

 

 あいつ、騎士に胸なんて要らないとか言いながらやっぱり気にしてるじゃねーか

 

「ねえ!可愛い!そして楽して稼ぎたい!私にピッタリじゃない!?」

「……そ、そーっすね」アハハ

 

 どうやら下の文は見てないようだな

 

「でもなんで俺に?」

「いやほらここ」

「詳しい話は花咲学園1年4組弦巻シンまで連絡を…」

「あのクソ女ー!!!!」

 

 何が師匠だ!そんなの知らん!あの女め!いつもいつも俺を振り回しやがって!!

 

「ねえシン君お願い!お姉さんを養って?」

「自分で爆弾発言してるってわかってる?」

「もうこの道しかないの!私頑張るから!メイドと旦那様との間違いが起きて子供が出来ても育てますから!」

「そーゆう話をするな!」

 

 な、なんなんだよこの人!先輩としての威厳はないのかよ!

 

 まああれだな、親父に連絡して適当に無理っぽいと伝えれば大丈夫だろうさ、なーに親父のことだ

 

「そんなやついらん」

 

 と言って終わりだっての!

 

「……ちょっと待っててください、親父に確認しますから」

「ほんと!?いやーありがとうございますご主人様♪」

 

 う、うぜえーアレックスよりなんかウザイ音符が見えたのですが!?

 

 俺は少し離れ親父に電話をかけてみた。

 

「出るのか?」

 

 今はお昼です。普通のサラリーマンだったら仕事をしているため電話になんて出れない…よな?でも残念、うちの親父さんはサラリーマンとかじゃないんだよ

 

「……もしもし」

「あ、親父、少し話があるんだけど」

「ワンワン!……なんだ」

 

 待って!電話越しだとタマの鳴き声がワンワン聞こえるのか!てかタマが言ってたことは本当だったんだな

 

 前にタマ本人が旦那様が餌をくれるって話をしてたんだよ

 

「その、メイド募集中ってアレックスが張り紙しててさ」

「……ああ、そう言えば許可したな」

「その、俺の先輩がやりたいって言ってるんだけど?」

「……………………」

「いや!無理だよな!無理だよね!?うん!ダメだって伝えとくよ!」

 

 お願いしますお願いします!無理だってダメだって言ってよ親父殿!!

 

「そいつの名は?」

「……篠崎、愛奈」

「んーいいだろう?」

「……は?」

 

 間の抜けた俺の返事が自分の耳に入ってきた。

 

「メイド担当は俺の女だ、あいつ可愛い子が欲しいって話をしてたらしいからな?アレックスが募集したんだろう」

「……いやいや、まじで?」

「それにAがついてる、大丈夫だろ」

「採用条件そこですか!?」

 

 愛奈のAか…クソ!有翔、アギトさん、アレックス、AAAがAAAAになるな…これなら怒られないね!ってそこじゃない!

 

 てかアギトさんに関しては渾名だろ!

 

「とりあえずアレックスには報告しとけ、アレックスは今別の仕事に行ってるからな、アギトに迎えいかせるからそこら辺で待機しとけ」

「いやだよ、自分で行くから場所教えて」

「黙れ、次はむかったら潰すぞ」

「は、はいっ!」

 

 な、なんでそこまでしてあの高級車に乗せたがらせるのやら

 

 俺はとぼとぼ篠崎先輩の元に向かう

 

「ねえねえどうだった!大丈夫だった!?」

「あーとりあえず名ずけてくれた親に感謝することですね」

 

 愛奈って名前だけで採用って、なんだよ!

 

「なんか自称メイド長の所に行くからーここで待ってろだって」

「あ、迎えきてくれるんだね!」

 

 こんな楽に就職先が決まっていいのでしょうか、全国の就活生に土下座してこいよ!

 

「いやーこれで将来も安心だね!一緒に暮らせるね!後輩君!」

「後輩君じゃない」

「えっと、ご主人様?」

「ご主人様でもなーい!弦巻シンだ!」

「そっかそっか!じゃーシン君!」

 

 まあ後輩君ってより全然いいよな

 

「てかメイドになるのはいいけど俺屋敷にいないっすよ?」

「ん?別にそんなこと聞いてないけど?」

「……ッ!うっざ!」

「なになに!?まさかシン君私がシン君目的で来たって思っちゃってた!?」

「あぁぁぁぁああ!!何も聞こえない!!」

 

 そんな意味で言ったわけじゃないのに!なんでこんなとらえかたするのかな!?やっぱりこーいう系の人は苦手だよ!

 

 いじられること数分、アギトさんが高級の黒塗り車に乗ってやってきた。

 

「って、母さん!?」

「ええ!母さんよ!新しいメイドさんが入るって話だから見に来たの!」

「……てことは、奥様!?」

「あら!その子ね!可愛いわ!可愛いわ!採用よ!」

 

 な、なんでそんな簡単なことで採用を…

 

「てかアギトさん、母さん連れてくるなら連絡してよ」

「俺お前の連絡先なんて知らねーよ、てか勝手に着いてきたんだよ」

「母さんらしいな」

 

 親父も言っていたがメイド担当は母さんらしいし?確認ぐらい来ますよね

 

「んじゃ、アレックスがいる所に行くか」

「あいつどこいるの?」

「まあとりあえず車乗れ」

 

 車に乗ると母さんと篠崎先輩は意気投合してずっと話をしていた。息子である俺が入る隙なんてないな、あはは

 

「おいシン、いいのか?あんな巨乳の子連れてきて」

「本人がやりたいって言ってるからな?まあ連れて行ってアレックスから痛い目にあって終わりだろ」

 

 アレックスが絶対何かやらかす!いや切れるよな

 

 その後俺はアギトさんとしょうもない話をしてたら目的の場所に着いた。着いたんだけどさ!

 

「いやここ?」

「ここだ」

「ここよ!」

「メイド喫茶じゃねーか!」

 

 そう、何故かメイド喫茶の前に来ていた。

 

「アレックスちゃんはここで働いてるのよ?」

「う、嘘だ!あ、あんなやつがメイドなんてできるわけないだろ!」

「あれ?メイド長なんじゃ…」

「ッ!い、いやー驚きだな」アハハ

 

 あいつ何考えてんだ?メイドのメの字もないやつがメイド喫茶で働けるわけないだろ!

 

「奥様、くれぐれもご注意を」

「アギトさん大丈夫よ?…ゴホッ…」

「か、母さん!?」

「大丈夫大丈夫、先日まで風邪をこじらせてたのよ」アハハ

「……ならいいけどさ」

 

 母さんは笑いながら返事をしていた。母さん風邪引いてたのか、大人が風邪をひくと子供の時よりきついって話を店長がしてたな

 

 それと風邪と言ったら…あの時のモカだな、悔しいけど可愛すぎた。いや今も可愛いけどさ!?あの時の顔は忘れられねーよ

 

「何想像してたの?」

「……篠崎先輩の裸」

「なっ!ど、堂々と言うなんて!シン君やるねー」

「なわけないでしょ!冗談だっての!それより行きますよ!」

『はーい!』

 

 もうこの2人めちゃくちゃ仲良いじゃん、一体なんの話しをして仲良くなったのやら

 

「シンさんの高校生活での話よ!」

「はい!奥様ね、シン君はなんときょにゅ」

「ストーップ!要らんことは言わなくていいから!?」

 

 てか別に巨乳が好きとかじゃないから!全然違うから!てか心を読むな!

 

 否定しながら店に入った瞬間

 

『お帰りなさいませご主人様!』

 

 メイド服を着た女性の方達から一斉にその言葉をあびせられる

 

「まあ!みんな可愛い!」

「こ、これが本物のメイド!す、凄いです!」

 

 うん、本物ではないな!所詮店で働いている人達だから!屋敷とかいるような人じゃないからね!?

 

「おい、アレックスのやつは?」

「はい!アレックス姉様なら奥で指導しています」

 

 アギトさんの問いかけに近くにいたメイドさんがそう答えた。

 

 てか指導ってなんだよ、なんだ?メイドに剣術でも稽古つけてるのか?

 

 やばい、稽古のこと思い出したよ

 

「アレックスちゃんは奥にいるのね!愛奈ちゃん!行くわよ!」

「はい!お姉様に挨拶しないといけませんよね!」

「……やる気満々じゃん」

 

 まあ篠崎先輩はこれから酷い目に合うと思うけど

 

 奥の部屋に行くとそこには確かにアレックスはいた。いたけど…

 

『お帰りなさいませご主人様!』

「全然ダメです!もっとご主人様を興奮させるように!はい、次!」

『お帰りなさいませご主人様ぁ!』

「全然なってない!あなた達メイド舐めてるんですか!?」

「舐めてないのならジャンボパフェのお代わりを持ってくることですね!」

『はい!』

 

 ドタドタドタ、と音を立て部屋からメイドさん達が部屋を出ていく、出ていく際にすれ違うが見たところみんな、うん言っちゃダメだけど胸がそこまでなかったな…

 

 つまりアレックスが無理やり胸のない人を選んでいるんだろうか、いや待てよ?けどさっき巨乳の人いたぞ!?

 

「あれ?シン様!と…奥様!?だ、大丈夫なのですか!?ここまで黙ってきたら私が旦那様に怒られるのですが…!」

「大丈夫よ!彼には伝えているし…それにいつまでも風邪で寝込んでちゃいけないわよね♪」

 

 やっぱり寝込んでいたのか、風邪は引きたくないもんだな

 

「風邪…?あ、ああ!そうでしたね!な、治ったのなら大丈夫ですね!」

 

 ん?アレックスが一瞬こっちを見たような気がしたけど気のせいだよな?

 

「てかアレックス、お前こんな所で何してんだよ!」

「はい!アレックスはここでメイドの指導をしております!」

「なんでだよ!」

「いやーそれがですね」

 

 アレックスはここで働く経緯を教えてくれた。

 

「いやー町を歩いてたんですよ、この格好で」

「そしたらスカウトされましてね!そして弦巻家のメイドだと伝えましたら」

「指導して欲しいと言われましてね!」

 

 お前ら目が腐ってんのか?こんな奴に教わりたいとかアホか!

 

「適当に嘘教えても金入るし食べ放題なんで!がっぽがっぽ稼げますよ!」

「うん、クソ野郎だな」

「ところでそちらの方は?」

「……アレックスが作ったポスター見てメイドしたくなったらしいよ」

 

 篠崎先輩を指さしながら言う。

 

「……えっと、その…本当ですかシン様!?」

「はい!弦巻家のメイドになりたくて面接を受けに「受けに来ましたじゃない!なんですかこの胸は!?」い、痛い!痛いですっ!」

 

 アレックスは篠崎先輩の胸を握っていた。まだ潰していないからこれから潰すんだろうか、いや潰しちゃダメだろ!?

 

「私書いてましたよね?巨乳が来たら握りつぶすって!」

「し、知りませんよ!いいから早く離してください!痛いです!垂れます!私垂れちゃう!」

「うるさい!巨乳なんだからそのうち垂れる運命ですよ!」

「痛たた!さらに強めないでくださいよ!」

 

 なんだろう。可哀想な師匠が目の前にいるんですけど、だいたいあんた前に自分で騎士なんだから胸いらないとか言ってたけどやっぱりポスターに書くプラス今の行動だから恨んでんだろうな、いや言い方悪いな!

 

「言いなさい!この胸を使ってどれだけの男性を虜にしてきたのか!?」

「え、ええ!?そんなのしてませんよ!私まだ処女ですからぁ!」

 

 篠崎先輩処女だったのかー!?ってそこじゃない!篠崎先輩がさらに色っぽく見える!ってそこでもない!

 

「まあ!仲がいいこと♪」

「これのどこか仲良いと」

「……うるさいし俺車戻っとくわ」

「あ、ああ」

 

 母さんは仲良いとか言うしアギトさんは呆れて帰るし、はあ、俺も戻ろっかな

 

 奥の部屋から出て行き俺は車なんか乗らずに帰ろうしたが

 

「弦巻さん!せっかく来たなら何か食べて行きませんか!」

「え?い、いやー俺今月ピンチだし?」

 

 メイドの人に話しかけられるが本当に金がないので遠慮しときたいです!

 

「金なら問題ないですから!あ!なんなら一番人気のあるメイドさん相手にしますから!ね!」

「ち!な!み!に!胸もちゃんとありますよ?」

「だから巨乳好きじゃねーって!」

 

 なんでメイドの人達からも巨乳好きだと思われなきゃならんのだ!

 

 ああ!いいよ!受けてやる!どんなやつが来ても絶対同時ねーからな!?

 

「あ、ちょうど今入ったみたいなんで待っててくださいね!」

「Ranちゃん!お客さん来たよ!!」

 

 Ran?いやいや、蘭のわけないよな?前にバイトしてるって聞いたが…ないない!さすがにメイド喫茶でバイトはないだろ!

 

「はーい!お姉ちゃんに任せなさーい♪」

「………………」

「………………」

 

『えぇぇぇぇええええ!!!???』

 

 何故か俺の予想は的中した。目の前にいるのは俺の知っている美竹蘭、だった。

 

 蘭の姿はメイドの姿、とても似合っているしむしろ似合いすぎている。胸は谷間が見えるしスカートは短い、うん、最高のメイドさんの姿じゃないですか!?

 

 てか何してんだよ!?

 

「………………死にたい」

「えっと、さー」

 

 蘭は俺の前の席に座り机に伏せながらそう呟いていた。

 

「……お姉ちゃんに任せなさい、ね」

「うるさいうるさいうるさい!真似ないでよ!」

「あーもう最悪!まだ誰にもバレてなかったのに!なんで!なんで一番知られたくない人に知られるのかな!?」

 

 そ、そこまでして俺にバレたくなかったのか!?なに!俺嫌われてるのかな?

 

「あ、だからアレックスと知り合いだったのか!」

 

 夏休み合宿の時面識のあるはずがないアレックスと蘭が喋っていたからな?おかしいと思ってたんだよなーそしたらこれだよ!?

 

「ああ、死にたい」

「だ、大丈夫だって!誰にも言わないって!」

「そ、それにさ?そのーめちゃくちゃ似合ってて…可愛いぞ、蘭」

「……ッ!う、うっさい!」

 

 なんでさ!褒めたのに!なんで!?

 

「まあー!蘭ちゃんー!!」

「お、お義母様!?」

「あー可愛い可愛い!メイド姿似合ってるわ!もう!メイド喫茶で働いてるなら教えてくれたら毎日来たのに!!」

「か、母さん落ち着けって、てかアレックス達は!?」

 

 母さんは登場と同時に蘭に抱きつき可愛いの連呼、確かに可愛いしな!

 

「もうシンさん早く結婚して子供の顔見せてくださいよ!」

「だから結婚しないって!」

「こ、子供はたくさん欲しいかな…?」

「ら、蘭さん!?」

 

 な、何を言ってやがりますか!?子供欲しいって、それって!それってさ!?

 

 え、ええええ、エッチするってことですよ!?いくら親友でもそれはダメでしょ!?

 

「でも蘭さん?子供作るのは大変ですよ?」

「ッ!そ、そうですね!?」

 

 蘭は顔を赤くして返事をする。今頃気づいたのかよ!

 

「いいですか愛奈さん?弦巻家のメイドたるもの巨乳は許されないのです」

「で、でも育ったものは仕方が無いとゆうか…」

「ッ!け、喧嘩売ってるんですかね…まあいいでしょう!今後さらしまいて生活することですね!あっはは!」

 

 アレックスと篠崎先輩…は仲直りしたのか?でもさらし巻けってアニメの世界もしくは弓道とか剣道とかするのかよ!?

 

「嫌です!この胸だけは育ててくれた親に感謝しないといけないのでそんなことできません!」

「まあまあアレックスちゃん、許してあげて?愛奈ちゃんもう勉強したくなくてメイドになりたいみたいなの」

『クソみたいな理由だな(ですね)』

 

 珍しくアレックスと意見があってしまったな、てかさっきも同じようなこと言ってたかも

 

「え?篠崎先輩って成績良かったような…」

「ん?そうなのか?蘭?」

「うん、3年でトップだよ?確か」

 

 えー!?馬鹿そうに見えて頭いいのかよ!?

 

 てか成績いいくせに大学行きたくないとか…先生達がそりゃー協力しないわけだよ

 

「てか蘭、その衣装がさ」

「ッ!み、見ちゃダメ!あ、でも前に触らせたことあるし…って!何言わせるの!?」

「痛っ!び、ビンタするなよ蘭!」

 

 なんでビンタされないといけないんですか!?

 

「まあまあみんな落ち着いて!そうだわ!愛奈ちゃんと蘭ちゃんどっちもうちで雇いましょう!そしたらシンさんも屋敷に帰ってくるわ!」

「あたしは絶対屋敷に雇われたくないです、アレックスさんと同じ職場とか無理なんで」

「なんでですか!?」

 

 アレックスさん蘭に嫌われてるし

 

「だったら愛奈ちゃんだけでも採用しましょうね♪」

「お、奥様が言うのなら仕方が無いですね、はあ、巨乳なんてうちにはいなかったのに」

 

 あ、もう篠崎先輩は雇うの確定なんすね

 

「やったよー!巨乳とか因縁かけられて採用できないのかと思ったよ!」

「これで今日からご主人様とメイドの関係だね!シン君!」

「いやそれはないんで、シンはあたしの親友なので」

 

 2人がなんか言ってますけど全く聞こえません、いやさすがに今回ばかりは情報が一気に来すぎですよ

 

「あれ?シン君?シン君!?」

「ちょっと、返事してシン!」

 

 2人から揺らされますが全く聞こえない

 

 篠崎先輩が新しく弦巻家のメイドになって?アレックスがメイド喫茶で指導?そして蘭がメイド喫茶でバイト、そして一番人気?

 

 あはは、今思ってもやっぱり一気にくる情報が多すぎるだろ

 

「ふ、不幸だなぁぁぁああ〜」

 

 今までにないほどの力が抜けた声はメイド喫茶の人気のせいで周りは賑わっており近くにいた2人にしか聞こえないのであった。




この話数にしてまたオリキャラが増えていくー!!今後も話に登場するかと思われます。

あと少しでまた赤バーに戻れる!少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!!

今後はもう週一投稿とゆうことだと思っていてください、時間も不定期かもです。

それではまた次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと進路調査

赤バーになってたー!!おそらく今週は投稿できないため本日投稿しました!

それではどうぞ!!

急いで書いたので誤字脱字があると思いますが後日訂正いたします


「それじゃーHR始めるぞー」

 

 こないだは色々あったが何やかんやで普通の高校生活を遅れている。

 

 何も問題なく楽しく学校生活を送っております。

 

「あーお前らもそろそろ進路を考えるってことで進路調査を行う」

 

 先生ははい、とか学級委員長にプリントを渡しみんなに配っていた。

 

「……進路、ねー」

 

 全く考えていないな、正義の味方になりたいってのは確かなことだ。

 

 けどましては進路調査書に

 

「正義の味方になる」

 

 なんて書いてみろ、小学生みたいなやつだなって思われちまうだろ!?

 

「先生できたわ!」

 

 真っ先に先生にプリントを提出したのはこころだった。

 

「弦巻姉、お前はもー少し真面目に考えろ」

「?なんでかしら?世界を笑顔にすることなんてものすごーく素敵なことじゃない!」

「進路調査!それお前の夢にすぎん」

「夢じゃないわ!現実にするのよ!ね!美咲!」

「……ええ!?こ、ここで振るの!?」

 

 美咲、お前も大変ですな!

 

 てかあいつ普通に世界を笑顔にって書いたのかよ、いややべーよ、あいつと姉弟とか絶対バレたくないな、いやもうバレてるけど

 

「シン、お前進路決まってるか?」

「……いやー蒼汰は?」

「俺は……巴と結婚するだな!」

「消えろリア充」

 

 言っときますけど!俺も千聖先輩と一応結婚する約束はしてますから!?何度も言ってしつこいと思いますが!

 

 あとひまりからも告白されているからな!?へ、返事はしてないけどさ

 

「んじゃ次俺行ってくるわー」

 

 と、言った蒼汰は先生にさっき俺に言ったセリフそのものを書いて提出したところ

 

「……幸せにしてやれよな」

「うっす!」

「いやなんでだよ!?」

 

 まじでなんで!?まだこころの方がいいと思うんですけど!

 

「シン君進路決めてる?」

「どうした俺のエンジェル香澄」

「エンジェル?えっと、進路は?」

 

 いかんいかん、口に出てた。

 

「決まってないよ、香澄は?」

「私はねー大学行くって決めてるよ!」

「……その頭でか?」

 

 数学が絶望的な香澄が大学行けるとは思えんな

 

「私も大学行くよー」

「おたえ、お前もか」

 

 大学行くのなら花咲ではなく羽丘に行けばよかったのではないだろうか

 

「私はーどうだろう、まだ決まってないなーあはは」

「沙綾、俺もだな」

「待って、シンと結婚して新婚生活送るってのも…」

「冗談は程々にな!?」

 

 そうゆうことは簡単に言っちゃダメですよ!信じ込む人だっているんだからな!?

 

「あはは、冗談冗談……多分」

 

 その後何人もの人が先生に提出していた。

 

「っともう時間か、出てないやつはーおい弦巻弟、お前だけだぞ」

「ま、まじで?」

「5時間目の英語までに考えとけよな、んじゃHR終わりなー」

 

 5時間目までに進路調査書を先生に提出しなければならない、かー

 

 みんな進路がある程度決まってていいですな、いや俺も無いわけじゃないさ、けどどうしても書くことを躊躇してしまう。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 昼休みを知らせるチャイムが俺の思考を停止させた。どうやら午前の授業中は進路のことを考えていたようだな、全く授業の記憶が無い

 

「シン飯食おうぜ」

「いや俺今日学食ですませるよ」

「あーそうか、なら別メンツと食うよ」

「わりーな」

 

 男友達が少ない俺のためにいつも蒼汰は昼飯を食べてくれる、部活のメンツと食べたいはずなのに俺の事を気にしてくれて…いいやつじゃねーか!

 

 学食は今学期からできたんだ。夏休みに改装を行いとても広い学食エリアができているらしい

 

 らしいというのも今日行くのが初めてなんだよなーなんもないから学食すませるってこと、まあ金もないんだけどね!

 

 学食に向かうため席を立つ時

 

「シンも学食?」

「そうだよー美咲もか?」

「うん、あたしは友達と食べるけど」

 

 や、やめろ!これから一人で食べに行くやつの前でそんな事言うなよ!?

 

「美咲ちゃーん」

「あ、きたきた花音さーん」

 

 なんだよ友達って松原先輩だったのか

 

「あれ?後ろの2人は…?」

 

 めちゃくちゃ見覚えのある先輩2人がいた。

 

「久しぶりねシン、合宿以来かしら?」

「シン君こんにちは!本当に久しぶりだね!」

 

 2人が来た瞬間教室はザワつく、なんせアイドルの2人が来てるんだからな?男子共は興奮するっての

 

 それに千聖先輩は髪型も変えているためさらにみんなからの視線を集めてるのさ

 

 そんなこと気にもせず千聖先輩、彩先輩、松原先輩は俺と美咲の元に向かってくる

 

「いや久しぶりっすねー元気にしてましたか?」

 

 まあこっちはテレビで見てたりしてたけどね

 

「それはこちらのセリフよ、少しは連絡してくれてもいいと思うのだけれども」

「そ、そうだよー!シン君夏休み後半何してたの?」

「……少し遠出を」

 

 千聖先輩はふーんとか言ってるがこの人は俺が何をしていたのかを知っているんだけどな、彩先輩が知らないってことは黙ってくれているんだろう

 

「ところでシン、ひとつ質問いいかしら?」

「なんですか?」

「これなんだけど…」

 

 彩先輩が携帯を出して俺に写真を見せてくる

 

「……なっ!?」

 

 その写真に写っているのは

 

 俺と篠崎先輩が高級車な黒塗り車に乗り込んでいる瞬間の写真だった。

 

 そう、3人は目撃していたのだ。

 

「オシャレなカフェ見つけたんだー!今から行かない?」

「電車は?」

「大丈夫!乗らなくても行けるところだよ!」

「ふぇぇ、道に迷ったりしない?」

「大丈夫大丈夫!ちゃんと携帯で事前に調べているから!」

 

 3人はオシャレなカフェに行くため仲良く歩いている時

 

「あれは…?」

「弦巻家の車ね」

「こころちゃん何かしてるのかな?」

 

 興味を持ち近くに行くと

 

「シン君の声がする!」

「……彼がそう簡単にあの車に乗るとは思わないけど」

 

 楽しく会話をしている篠崎先輩とシンの姿がそこにはあり、2人は焦り、焦った結果写真を撮り話を聞こうとことになり写真を撮ったようだ。

 

「どうゆうことか」

「説明してくれないかしら」

 

 彩先輩と千聖がそう俺に聞いてきた。

 

 いやいやどう説明しろと!?てか千聖先輩に関してはやばい!変に誤解されたらはあの話がなくなってしまう!

 

「あちゃーすんごいことになりましたね?花音さん」

「ふ、2人はなんでお、怒ってるのかな?」

「……花音さんのそーゆうところが色々と助かるんですよねー」

 

 2人が何か話をしているけど今はどうでもいい!

 

「そうだわ、せっかくのお昼だもの、ご飯を食べながらお話しましょうか」

「せっかく学食もできたしね!」

「……は、はい」

 

 ま、まあ元々学食には行く予定だったからいいけどさ

 

「だからってなんでこうなるの!?」

 

 右には千聖先輩、左には彩先輩、2人とも俺の腕に抱きついておりその、む、胸が当たっております!

 

「いいじゃない別に、両手に花とはまさにこのことよ?」

「うう、少しは、恥ずかしい…」

「彩ちゃん無理しなくていいのよ?」

「無理じゃないよ!やるもん!」

 

 俺的にはかなり嬉しいことでしょうさ、けどね!?周りからの視線!特に男子の視線が痛すぎる!

 

「花音さん迷わないようにシンの後ろ歩きましょうか、なんなら服掴むのもありかもですねー」

「そ、そうだね、シン君お願いします…」

「何故松原先輩まで!?」

 

 み、美咲…!やりやがったな!後ろを振り向くと美咲のやつがニヤニヤしてやがる!

 

「3人に囲まれて嬉しそうねシン」

「……ま、まあ美女3人なんでね」

「び、美女!?」

 

 彩先輩が驚いているが実際そうだろ?千聖先輩、彩先輩、それに松原先輩、それに美咲もだな?全員可愛いじゃねーか!

 

 階段とかを降りる時は苦戦をしたがなんとか学食に着くことができた。

 

「シン君何食べるの?」

「んー今月結構ピンチなんで…や、安いやつですかね」

 

 バイトしてないんでな、いや貯金はあるけど使いたくないだろ?なんか前も言ったなこのこと

 

「あ!私1番安い定食知ってるよ!」

「なんなんですかそれ!?」

「それはね!「焼肉定食焼肉抜きで」あっ…」

 

 彩先輩が定食を言う前に俺達の前に並んでいた人がそんなことを言っていた。

 

「焼肉定食焼肉抜き、肉ねーじゃん」

「……彩ちゃん?漫画の影響受けすぎよ」

「うう!だ、だって一度言ってみたいじゃん!なのに先に言われちゃったよー!」

 

 なんの話しかよくわからないがこの世界には5つ子なんていないし馬鹿みたいに頭いい人もいません

 

 てかこれ大丈夫なのか?大丈夫だよね!?

 

「案外私達が住んでるマンションにいたりしてね?」

「それは完全にアウトですよ」

 

 もうこの話終わり!普通に焼肉定食焼焼肉ありで頼みましたよ!

 

「席は…あ、6人席が空いてますね、あそこに座りましょうか」

 

 あ、美咲と松原先輩も一緒に食べる感じなのね!

 

「……じゃあ食べましょう!いただき」

「待って、まだ話をしてないでしょ?」

「く、クソ!忘れてると思ってたのに!」

「わ、忘れないよ!ちゃんと聞くからね!?」

 

 別に怪しい関係とかじゃないしな!ちゃんと話せばわかってくれる!はず!

 

「篠崎先輩、文化祭実行委員だったので知り合いなんすよ」

「知り合いはわかったわ、じゃあなんで同じ車に乗ってたの?」

「いやそれは」

「どうせ胸に目を奪われて鼻の下伸ばしてえへへしてたんでしょ?」

「べ、べべべ別に!?鼻の下とか伸ばしてないし!巨乳好きでもないから!?」

 

 千聖先輩はそうだったな、胸には敏感な反応だったな、いやそっちの意味じゃなくてな!

 

 前にひまりの胸めっちゃ鷲掴みしてたし

 

「そうなのシン君!?」

「だから違いますから!」

「そのー篠崎先輩は新しい弦巻家のメイドなんですよ!アレックスに挨拶行くため一緒に車乗っただけですって!」

「だから篠崎先輩と恋人とかそんな中ではないので!」

 

 言うことを言ったあとは水を一気に飲み呼吸を整える

 

「あ、そう言えば新しいメイドいましたね?」

「う、うんアレックスさんと一緒にいた人…だよね?」

「……2人が言うのなら本当なのね」

「ならよかったよー」

 

 彩先輩はほっと胸をなでおろし千聖先輩は顎に手を置き何か考えている感じだったがすぐに戻り戻り頼んでいたスパゲッティにフォークを進めていた。

 

 そうゆう俺も誤解が溶けたため頼んだ焼肉定食を食べていた。

 

 そんな時だ

 

「奥沢さーん、先生に頼まれてたやつもういかない?」

「ああ!忘れてた!す、すぐ行くから先行ってて!」

 

 同じクラスの女子が美咲に話しかけていた。どうやら先生になにか仕事を頼まれていたようだ。

 

「すみません!ちょっと抜けます!……ごちそうさまでした!」

 

 トレイを持ち美咲は急げ急げーと言いながらトレイを返却し職員室がある方へバレないよう小走りしながら向かっていった。

 

「あ、なんだろう、先輩しかいないな」

「それは私達が先輩だからよ」

「いやそうですけどね!?」

 

 でもこんな美人さん達と食べれることは嬉しいけどな!

 

「これは弦巻君」

「……シン君、こんにちはです」

「紗夜先輩と燐子先輩?」

 

 ここで登場紗夜先輩と燐子先輩!てかこれまた先輩さんじゃねーか!

 

「すみませんが、席が空いてませんから相席してもよろしいでしょうか?」

「いいよ!一緒にお昼食べようよ!」

「ええ、みんなで食べた方が楽しいわ」

 

 普通に受け入れてるんですけど、前に紗夜先輩彩先輩と同じクラスだけどあまり喋ったことがないって言ってたような…?

 

「シン君は大丈夫です、か?」

「大丈夫大丈夫!むしろ一緒に食べたいですよ!」

 

 けど待ってくれ、6人席で5人女子、男子が俺の1人…ってことは!?

 

 一般男子からしたら夢のようなシュチュエーションじゃねーか!

 

 やばい全然箸が進まない!

 

「そう言えば皆さん進路調査はどうしましたか?」

「……ってことは先輩達も進路調査あったんですか?」

「はい、この時期はどの学年も進路調査を行うんですよ、3年生はもう急がないといけない時期でもありますが」

 

 へーどこぞの3年の先輩は楽して稼ぎたいとか言ってうちのメイドになりたいとかほざいてたな

 

「私はアイドルと女優、どちらも両立させるわ…今以上にね」

「私もアイドル続けるよ!いや続けていたい!」

「わ、私は…大学に行こうかな?」

 

 千聖先輩と彩先輩はアイドルを続けて?松原先輩は大学に行くと、先輩の成績がどうとか知らないけど多分行けるだろう

 

「わ、私も大学に行きます」

「私もそうなりますかね」

「……2人とも大学進学かー」

 

 千聖先輩と彩先輩以外は大学進学、だったら羽丘…ってもういいや

 

「ひとつ問題があるのですが…日菜が、日菜が私に合わせて大学に行くと言い出さないか不安でして」

「確かに日菜ちゃん紗夜ちゃんのこと好きだからねーついてきちゃうかも」

「日菜には…パスパレに専念して欲しいんです」

「紗夜先輩?」

 

 紗夜先輩は下を向きながら俺達に話をした。

 

「日菜が今まで何事もこんなに長く続いたことがないんです…私の真似をして飽きたらすぐに辞める、そんな日菜が…」

「そんな日菜が毎日楽しくパスパレのみなさんの話をしてくれるんです」

「ですからこのまま日菜にはパスパレに専念して欲しいと思ったのです」

 

 なるほど確かに姉として今でも続いているアイドル、パスパレを辞めて欲しくないと思うのは普通のことだな

 

「紗夜ちゃん、大丈夫日菜ちゃんは話せばわかってくれると思うわ」

「……ええ、今度さりげなく話してみます」

 

 さりげなくかよ!?

 

「燐子先輩はどんな大学に?」

「私は、進学だけは決まってるんですがまた行きたい大学とかは決まってなくて…」

「まあまだ時間はありますからね」

 

 3年までに決まれば大丈夫、なのだろうか?まあまだ何も決めてない俺よりかはましだってことはわかる

 

「私もまだ決まってないです」

「花音大丈夫よ、シンもさっき言ってたけどまだ時間はあるのだから」

「そう、だよね、でも早く決めないとね」

「……ところでシンは進路どう考えているのかしらね?」

「…………ッ!」

 

 俺の、進路か…

 

「まだ考え中ですね」アハハ

「それはいけませんね、1年の頃からある程度は決めておかないといけませんよ?」

「わ、わかってますよ!けどそんな簡単に決めれないっていうか…」

 

 決まってはいるさ

 

 正義の味方になりたってことは確かだ!けど!それとこれとは別っていうかなんとゆうか

 

「彩ちゃんはアイドルを卒業した後はどうするの?」

「ええ!?ど、どうするとかまだ決まってないよー!」

「……ふーん」

 

 千聖先輩がチラっとこちらを見て口を開いた。

 

「私は女優業に専念するわ、それか…」

「それか?」

「ふふ、秘密よ♪」

「もー何それー!!」

 

 あ、危ねー!みんなの前であのことを言うのかと思ってしまったじゃねーか!?

 

 でも言えば確実に結婚できたのかな?ってそれは今考えなくていいんだよ!

 

「あ、あのそろそろ時間が…」

『……はっ!』

 

 気づけばもう30分すぎ、もう昼休みの残り時間がない!まだ全然お昼を食べていない!つまりだ

 

『………………』

 

 残り時間はあまり喋らず無言で食べ終えていた。

 

 その後はそれぞれの教室に戻るように学食を後にした。

 

 進路について色々聞こうと思ってたけどもう無理そうだな、てか5時間目に提出しないといけなかったな、間に合わないし先生に土下座でも何でもして明日までって変えてもらうか

 

「シン、聞きたいことがあったんじゃないの?」

「……千聖先輩、授業間に合わなくなりますよ?」

「別に大丈夫よ少し遅れたぐらい」

 

 2人で並び階段を登っていた。俺のクラスは2階で千聖先輩のクラスは3階、途中までは同じルートなんだよ

 

「実は進路のこと悩んでて」

「……正義の味方になることじゃないの?」

「いやそうなんですけどそれは進路と別と言うか…それに先生に知られるのが恥ずかしいんだよ」

 

 こころみたく俺はそんな簡単に言えるような性格じゃない、そんなことは他でもない自分が一番わかってる

 

「あなたにとって正義の味方になりたいってことはその程度の覚悟だったのかしら」

「……ッ!」

 

 千聖先輩は俺より早く階段に登り上から俺に話しかけてくる

 

「……違いますよ、俺は!俺は…!」

 

 続きを話そうと思ったさ、けど話すことはできなかった。なぜなら

 

 千聖先輩は俺にキスをしていたからだ。

 

 屋敷でしたキスなんかとは全然違う、舌まで入れくるそのキスは完全に俺の思考を停止させる、そんなキスだった。

 

 誰かに見られているかもしれない、けど…なんでだろう。口を離すことができなかった。

 

「……落ち着いたかしら」

「だ、誰かに見られてたらやばいっすよ!?」

「もう授業始まってるから大丈夫よ」

「そーゆう話じゃなくてですね!」

 

 俺の精神の話ですよ!キスはまだしたことあるよ?けどそんな、ディ、ディープキス?なんてしたことなんてねーよ!?

 

「ほら、いつものシンに戻った」

「ッ!こ、これが目的ですか」

「わ、私も恥ずかしかったんだから」

 

 目を逸らし頬を赤めて千聖先輩はもじもじしていた。

 

 千聖先輩だって恥ずかしかったんだな…ならするんじゃないですよ!?

 

「本当はあなたがしたいこと、それはわかってるはずよ」

「……だけど俺は」

「だけどじゃないわ、私はキスまでしたのよ?」

「……ッ!」

 

 た、確かに!千聖先輩だってそんな好きでキスをした訳じゃない、俺を落ち着かせるため?だったら俺はそれに応えないといけない

 

「……ふんっ!」

「ちょ、ちょっとシン!?どうしたのよ」

「いや、情けない自分を殴っただけですよ」

 

 元から決まっていたんだ。考えれば簡単な話なんだよ

 

「千聖先輩ありがとうございました!先輩のおかげで俺自信が持てました!」

 

 恥ずかしい?知らねーよ!夢は夢なんだよ、馬鹿にされようがなりたいもんになる!

 

「それじゃ俺授業戻ります!千聖先輩今度料理食べさせてくださいね!」

「ええ、リクエストがあるなら早めにね♪」

 

 シンは廊下を普通に走って自分の教室に向かっていった。

 

 一方千聖はと言うと…

 

「ッ!はあ、私は何をしてるのかしらね」

 

 ダメだってわかってるのに、我慢しなきゃいけないのに…自分が抑えきれなかった。

 

「……トイレ、行こうかしら」

 

 千聖は教室には向かわなかったようだ。

 

 

 

 

「やべー!完全に授業遅刻だよ!」

 

 千聖先輩と話をしてたからな、ま、まああの時間帯だからできたこととかもあるけどさ…ってそれは今どうでもいいんだよ!

 

「先生!お手洗いに行ってました!」

「うるさい、早く席につけ、そして進路調査書を提出しろ」

 

 席につき急いで用紙に進路を書く

 

「はい、先生」

「早いな」

 

 先生に用紙を提出し席に戻ろうとする時

 

「おい、弦巻弟、お前真面目に書いたのか?」

「……ええ、真面目も真面目大真面目ですよ」

 

 俺が書いたこと、それは…

 

 その日学校が終わり久しぶりのバイトに向かう途中親父に電話を掛けていた。

 

「……なんだ」

「もしもし親父?言いたいことがあるんだけどさ」

 

 弦巻家の当主、それは姉であるこころがなるべきそう思っていた。

 

 でも前に親父が言っていた。

 

「お前が当主になって弦巻家を変えればいい話だろ?」

 

 ってな

 

 あいにくこちとら正義の味方になりたいもんでな?大学とか就職とかしてたらなれないからな

 

「……弦巻家の当主になる話、今のところ目に入れてるから」

「そうか、まあそう言うと思っていたがな」

「まだ決まったわけじゃない、こころもいるしな?仮だよ仮、仮進路ー」

「楽な道ではないと思っとけ、じゃあな」

 

 親父との話は1分もせず終わりを迎えた。息子が電話をしたのに全然話をしないとはあの人らしいっちゃらしいよな?

 

 

 

「先生、1年4組の子達の進路どんな感じですか?」

「ああ、頭おかしい連中ばかりだよ」

「あはは、そ、そうですか」

 

 進路調査プリントの束の一番上に置かれているプリント、それは紛れもなくシン本人のものであり、そこには…

 

「正義の味方になる、ねーこれまたド直球だな、あいつ」

 

 

 

 あぁぁぁぁあ!弦巻家の当主になるって書けばよかったのかな!?でもでも千聖先輩に励ましてもらったし?裏切る形でなんか嫌だなと思って直球で書いたけど大丈夫だろうか?

 

 てか俺こころと同じじゃねーか!クソ!やっぱり弦巻家はやばいメンツなんだよな!?

 

 一人後悔している中バイト先のコンビニに到着した。

 

「こんにちは!お久しぶりです店長!」

 

 バイト先につき店長に大きな声で挨拶をするも

 

「来たなら早く着替えて入れ」

「はいはい!今日からバリバリ働きますよー!」

「おーシン君復活だ〜」

「よっしゃー!社会に貢献するぞー!」

 

 気合を込めて更衣室に入りすぐに着替えてバイトの仕事を行う。

 

 その後超久しぶりにバイトを行い作業なんて忘れていると思っていたが体は覚えてくれていたため復活初日から普通に仕事をこなしていた。

 

「ありがとうございましたー」

「…………したー」

「はあ、モカ、お前相変わらずだな?」

「うん、シン君が戻ってきてもこんな風にやり取りできるようね〜」

 

 いや絶対嘘だろ!そんな気を使う意味がわからん!

 

「……そう言えばお前最近結婚する〜?って言わなくなったな」

「えーそうかな〜?」

 

 あんまり聞いてないような?いや俺の勘違いか?

 

「まあモカちゃんとシン君は結婚する運命なんで〜」

「運命なんかじゃねーよ」

「またまた照れちゃって〜もーシン君は可愛いですな〜」

「それやめろ、俺は可愛くない」

「……シン君はかっこいいよ〜」

 

 うう、な、なんなんだよこいつ!?

 

 まあ何やかんやでバイトも終わり帰りの時間

 

「シン、夏も終わって暗くなるの早いからモカちゃんを家まで送ってやれ」

「わかってますよ!」

「とかいって本当はモカちゃんと帰りたかったんじゃないのかな〜?」

「……うるさい、悪いかよ」

「……ッ!し、シン君が…素直に〜?」

 

 なんだろう。今日はモカと帰りたいって思ったんだよ!何かとこいつには世話になってるしな?それに一緒にいて楽しいし

 

「手、繋いでくれる〜?」

「……はあ、喜んで?」

 

 恋人でもないのにまた恋人繋ぎをしながら帰る

 

 モカのやつは俺なんかと手を握って嬉しいのか腕をおおきく振りながら歩いている。合わせるのが大変だっての!?

 

「ねえシン君」

「なんだモカ?」

「えへへ、結婚しようね!」

「……………………」

「ん〜?」

 

「だから結婚しねーから!!」

 

 結婚する〜?から結婚しようね!は意味が違ってくるだろ!?もうそれは付き合ってる人が言うセリフですよね!?

 

「なあモカ、前から言おうと思ってたけどさ?」

「なーに?」

「俺と付き合うとかじゃダメなのか?」

 

 だってそうだろ、結婚以前に付き合っとかないとダメだろ

 

「……ッ!え、え〜とも、モカちゃんその、あ!今日は夜ご飯シチューだから帰ります!」

「ぱ、パンがモカちゃんを呼んでいるー!」

「お、おいモカ!あいつ急にどうしたんだ?」

 

 って待ってくれ!モカを家まで送らないといけないんですけど!?

 

「モカー!待やがれー!」

「む、無理〜モカちゃんいち早くお家に帰ります〜」

 

 なんでバイト後で疲れているのにモカを追いかけるために走らないといけないんだよ!?

 

「あーもう!不幸だぁぁぁああ!!」

 

 その後モカを後ろから追いかけていたが家に着いた途端鍵を閉める音が聞こえたためもう大丈夫だろうと思いその場をあとにした。

 

 ちなみにカレーの匂いがしておりました。

 




このキャラとの絡みが読みたい!またはもっと読みいたい!などございましたら感想やメッセージにて伝えてもらえば話を書きたいなと思っています。まあその人メインの話になるかわかりませんが(笑)

あとこの人ヒロインにしてなどの意見もあるならお聞きします。これもなるかわかりませんが…

100話までに話を終わらせる予定だったのですが無理そうですね、頑張ります

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それでは次回の話でまたお会いしましょう!


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弦巻シンと健全な本について

ドリフェス10連で限定の彩さんと千聖さんとはぐみ、クール美咲、星4を4枚抜きしたことは内緒の話です。

それではどうぞ!!

誤字脱字があると思いますが後で訂正します



 キーンコーンカーンコーン

 

 昼休みのチャイムが学校に響いた。その瞬間

 

『昼休みだァァァあ!!!』

 

 クラスのヤツらは大はしゃぎ

 

「俺!俺午前の授業を乗り越えた!」

「これも努力のおかげだな!」

「よっしゃー!学食行くぞー!」

 

 クラスの大半は教室を後にし学食に向かっていた。

 

 まあ残った人は大半が女子だけどな

 

「あいつら張り切ってんなー」

 

 と、ゆうのも原因はシンにあったのだ。

 

 数日前6人席にてシン以外女子、しかも学校ではかなりの美女である人達に囲まれたことにより

 

「俺達も6人席座って何席か空けとけば来るんじゃね?」

 

 とゆう訳分からん理論ができ男子はみんな頑張って出会いを求めているわけである

 

「学食無駄にたけーし?コンビニの残り物でいいっての」

 

 店長に貰った賞味期限が近くなっているパンや弁当をリュックから取り出し食べ始める

 

「でもコンビニ弁当とかも飽きるだろ?」

「タダで食べるからいいんだよタダだから!」

 

 タダ、つまり無料だぞ!?無料でおなかいっぱいになるとかもう最高じゃねーか!

 

「てか弁当だって飽きるだろ?親だって好きで作ってねーだろ?……多分だけど」

 

 毎日学食や購買で済ませてたら金かかるしな、弁当だと原価は安いからな

 

「いやいや俺のは巴が作ってくれてるから」

「クソ!タヒね!」

「もろに言いすぎだろ!?」

 

 彼女特製弁当?羨ましいにも程がある!これはあれだな、千聖先輩へのリクエストは弁当だと伝えよう

 

「巴の唐揚げひとついるか?」

「……いやいいそれはお前が食べろ、巴もお前に食べて欲しくって作ってるだろ」

 

 俺が食べたら蒼汰が食べる分減るし

 

「そーですか、うめえー!」

 

 うん、イラッときたな!?

 

「悪いトイレ行ってくる」

「おーす」

 

 食べるもんも食べたし後は出すもん出すだけ、それが終わったら蒼汰と適当に話して午後の授業受けて…っと今日は金曜日だったな!

 

 ひとつ言い忘れていたが土曜日出勤、あれが無くなりました。なんか店長が学生はもっと遊べだってさ、俺だけ適用されないかと思えば普通に適用、よって土曜日は働けなくなったのです

 

 いや金ー、貰える量減る!

 

「ねぇねぇ学食行った?」

 

 トイレが終わり教室に戻ろうとした時女子生徒が話をしていた。

 

 大方男子共が6人席占領してるって話だろ?なんでか知らんけど

 

 シンは自分が原因だと知っていない模様

 

「行った!なんか凄いイケメンの人がその、エッチな本ガン読みしてたね」

「……ッ!」

 

 いや、まさかな?

 

「それもスーツ着ててさ?なんだろう新しい先生なのかな?」

「えーでも赤髪だったよ?教師って髪染めていいっけ?」

 

 いやー赤髪かどうかは知らんがあの人しか頭に浮かばないんですが!?

 

 学食につくと辺りはザワザワしており2人席に1人で座っておりエロ本を読んでいるアギトさんの姿がそこにはあった。

 

「……はあ」

 

 みんなはそんなアギトさんを見るように集まっている、いや見てるんだけどさ

 

 そんな人混みをかき分けアギトさんの元へ向かう。

 

「何やってんだよアギトさん」

 

 俺が口を開いた途端

 

「なんだ弦巻家の関係者かよ」

「なんだなんだー」

 

 とかいって周りの人達は消えていった。いやー恐るべし弦巻家!

 

「よおシン、奇遇だな」

「奇遇じゃねー!ここは俺が通ってる学校だからいるっての!」

「それよりなんでアギトさんがいるんだよ!」

 

 だっておかしいだろ!?普通入れないっての!

 

「いやな?いつもお嬢を守るため学校の屋上で待機してたんだよ」

 

 お、おう、そんなことしてたのか…知らなかったな

 

「んで今暑いだろ?そしたら学長が来てな?暑いから中入ってよだってさ」

「だからって堂々とエロ本を読むなよ!」

「知るか俺は読書をしてるだけだ」

 

 そう答えるとまたエロ本に目を通す。こんな奴がいるから勘違いされるんだよ

 

「あーそれとお前に伝えることあったな」

「……なに?」

 

 俺に伝えること?なんかあるのか?

 

 アギトさんはエロ本を閉じ机に置いて話をした。

 

「綺羅財閥が動きを見せた」

「ッ!と言うと?」

「何やら海外から馬鹿みたいな筋肉ゴリラ雇ったらしい…これは本格的にかなりまずいな?」

 

 筋肉ゴリラ?んなもんただのゴリラだろ

 

「それがどうしたんだよ、そんやつかかってきたら倒せばいいじゃん」

「まあ話は最後まで聞け」

 

 終わってなかったのかよ

 

「実は黒服の奴らに調べさせたんだ、どーやら過去に殺してるらしい」

「……虫を?」

「いや人をだよ」

「ッ!」

 

 さ、殺人犯ってことかよ…!そんなやつを雇うってことは…

 

「わざわざ釈放金を馬鹿みたいに払って雇ってんだ、お前の件じゃなくても相当やばいぞ」

「……まあみんなに手を出したら許さないから」

「そんな簡単な話じゃねーよ、お前死ぬぞ?」

 

 確かにそんな殺人筋肉ゴリラ相手だとかなり危ういな?

 

「大丈夫だっての!アレックス流は最強無敵、負けは許されないんだからな?」

「……あっそ、まあ死なねーよにな」

 

 アギトさんは話が終わるとまたエロ本を読み始めた。

 

 いや重い話からこれかよ!?

 

「そこのあなた!」

 

 ほら来ちゃいましたよこの人が!こんなに人が集まってたらそりゃー来ますよね!?

 

「………………」

 

 案の定アギトさんは無視してエロ本、ってもう本って言えばわかるよな?本を読んでいる

 

「あなたですよあなた!」

 

 紗夜先輩は指を指しながら呼びかけるも返事をしない

 

「おいシン、呼んでるぞ」

『あんただよ!』『あなたですよ!』

「あ、俺?」

 

 この場面で呼びつけるとしたらあんたしかいないだろアギトさん!?

 

「で、俺になによう?」

「その本!校内で卑猥な本を読んではいけません!そもそも部外者ではありませんか」

「卑猥って失礼な、保健体育の本ですよ、メインは子作りの勉強だけどなあっはは」

 

 からっからの笑い声が聞こえた。これ程何も感じない笑いは初めて聞いたな

 

「と、とにかく没収です!」

「ちっ、いい所だったのにな」

 

 いい所ってどんなところなんだろうな?わかんないや、あはは

 

「そもそもあなたなんなんですか!なんで学校にいるんですか?いざとなれば先生方をお呼びしますが?」

「うるせーな、生理か?」

「ッ!あ、あなたって人は!」

「ま、まあまあ落ち着いて紗夜先輩!?」

 

 く、クソう!アギトさんが余計なこと言う紗夜先輩キレちゃったじゃねーか!そんなこと嘘でも言っちゃダメだろ!?

 

「とりあえずだいぶ涼めたから戻るわ、お嬢によろしくな」

 

 普通に学食を後にしていくアギトさんだった。

 

 一方紗夜先輩は

 

「なんなんですかなんなんですかなんなんですかあの人!」

「じょ、女性に対してあのようなセリフを意図も簡単に言うなんて…!」

「ゆ、許してやってくれよ、あの人心がアレなんだよ、多分」

 

 その場しのぎで適当なことを言う。すまんアギトさん、なんか病んでる人みたいな言い方して

 

「ほら?今度ポテト作るんで、ね?」

「…………はあ、弦巻君の知り合いなら大目に見ますか」

 

 なんだろうポテトが勝ったのか?俺が勝ったのか?わからないんですが!?

 

 まあその後は紗夜先輩が本は没収ですと言って何故か俺が反省書を放課後までに書き生徒会室にいる人なら誰でもいいから渡しなさいって言われました

 

 うんなんで!?なんで俺が反省書書くの!?

 

 午後の授業なんて聞いてるフリしながら反省書(俺は悪くないのに)書いていた。

 

 書くことなんてないからアギトさんの話を書いたが大丈夫だろうか…まあ大丈夫だろ!

 

 とは言ったものの担任には昼の件で呼び出されもう終わりかと思ったら学長が助けてくれました。

 

 いや学長やっぱり神だ!けどあなたのせいでこんな目にあっているんですけどね!?あなたがアギトさんを入れなければこうはならなかったよな!?

 

 職員室も後にして反省書を提出するため生徒会室に向かう。

 

 生徒会室の前につきドアを数回ノックする…だけど返事はない、そのため何故か俺はゆっくーりドアを開けたんだ。いや何故か知らんけど

 

 でも、俺はそのことを後悔した。

 

「ふふ、えへ、えへへ…」

 

 俺は目撃してしまったんだ…

 

 燐子先輩がエロ本を読みながら女子高生が見せてはいけない表情をしてるところを!

 

 いやこっちに背を向けてるけどさ!窓に燐子先輩の顔が写ってるんだよ!だから、その見てしまった。

 

 そのまま見なかったことにしてその場を後にしようとした。

 

 けど俺は持っていたドアの取手を離してしまい古いドアからなる嫌な音が生徒会室に響いてしまった。

 

 その音を聞いた燐子先輩は体をビクッ!と反応させてゆっくーり後ろを振り向いた。

 

 俺と目が合った瞬間手に持っていたエロ本は大きな音を立てて燐子先輩の手から落ちていた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「………………」

 

 沈黙が続く、いやそりゃそうでしょ!?

 

「……燐子先輩、いやあれは…ダメですよ」

「ち、違うんです!」

「いやあの場面は言い逃れできないですよ…」

 

 完全にあれはハマっている目だった。興奮してたやつだよ!

 

「…………全部」

「はい?」

「……全部シン君のせいなんですよ!?」

「なんで俺!?」

 

 確かに大きな音を立てて「こんにちはー!」とか言いながらドアを開けていれば燐子先輩は気づき本を隠せれたかもしれない!けど見てたことには変わりないだろ!?

 

「その話じゃないです!もっと前の話ですよ!」

「じゃあなんですか!?それと勝手に人の心読まないでくださいよ!」

 

 なに?君達超能力者かなにかなのですか!?

 

「前に屋敷でその、シン君が…」

「なんすか」

「そのシン君がエロゲーさせたから!私ハマっちゃたじゃないですか!」

「……ぇぇえええ!!!???」

 

 う、嘘だろ!?あ、あれだけで?あの一作品だけでそんなにハマるの!?

 

「もうエロゲーしとかないと落ち着けない!どうしてくれるんですか!?」

「ちょっと落ち着いて!」

「落ち着けませんから!?バンドの練習にも集中できないし頭の中ずっとエロゲーだしもうどうしたらいいのかわかりません!」

 

 お、おいおい!これが俗に言うキャラ崩壊じゃないのか!?こんなこと言う人じゃないでしょ燐子先輩!?

 

「もうあれです!あれですよ!」

 

 燐子先輩は俺に顔を近づけこう言った。

 

「せ、責任…取ってもらいますからね!」

「……いやどうしろと!!」

 

 責任って、まじでどう取れと!?

 

「やはり、何か原因があると思っていました」

『……ッ!』

 

 こ、この声は!?

 

『紗夜先輩(氷川さん)!?』

 

 てか話聞かれたらまずいんじゃ…

 

「最近練習に集中できていない理由がまさかそんなこととは…驚きました」

「ひ、氷川さんお願いします!友希那さんだけには言わないでください!」

 

 普段大人しい燐子先輩はどこへ行ったのだろうか、泣きながら紗夜先輩に頼んでますよ

 

「……いいでしょう」

「ッ!さすが氷川さんです!」

「でも条件があります」

 

 で、ですよねー前から思ってたけどそんなうまい話ってないもんな

 

「ゲームのデータ、全て消してカセットも売りましょう」

「……ッ!い、いくらなんでもそれは…」

「ではRoseliaを辞めますか?」

 

 いやすんげー選択されてるじゃん!Roseliaを選ぶかエロゲーを選ぶか、そんなの答えは決まってるよな?

 

「……Roseliaは辞めたくないです!」

「ならゲームを売りましょう、なに全てのゲームではありません、NFOはRoseliaで時々息抜きで行いますので大丈夫です」

「え?紗夜先輩?まさかゲーム全部ってことですか?」

「当たり前です、このようになったのは全てゲームが原因ですので」

 

 完全にゲーム悪者扱いされてますやん…

 

「ま、待ってください!せめて、せめてエロゲーだけで許してくださいお願いします!何でもはしませんからぁぁああ!!」

 

 もう燐子先輩完全に自分の性格忘れてますよね!?生徒会室にいるメンツがこんだけでよかったよな

 

「……わかりました、その、え、エロゲーだけで許しますから、ほら今日は練習日ですので行きますよ」

「……はい」

 

 俺は紗夜先輩に反省書を出そうとしたが本当に書いてきたんですか?と訳分からんことを言われ俺のアギトさんの話は無駄になってしまった。

 

「そうでした、そう言えば白金さん今日は両親がいないと言っていましたよね?」

「?はい、今日は仕事の飲み会でいないと…」

 

 大人しくなったな燐子先輩

 

「では私と弦巻君が家に行きます、いえ泊まります」

『!?』

 

 な、なんで!?なんで泊まることに!?

 

「私達の前でデータを消し、そして翌日売りに行きましょう」

「で、でもゲームカセットを売るには親御さんがいないと…」

「弦巻君、あの人呼べますよね?」

 

 あの人?ああーアギトさんね

 

「呼ぼうと思えば来れますけど」

「それでは大丈夫ですね、安心してください白金さん」

 

 めちゃくちゃニッコリとして言っているが目が完全に笑ってない。あまり表に出てないが相当怒ってるんだろうな

 

 よし!だったら俺も心を鬼にしよう!

 

 そうだよ!先輩が道を外したら後輩は元に戻す!これは普通だ!

 

「よーし!今日は燐子先輩の家に泊まってゲームデータ消し大会行いましょう!」

「や、やめてくださいー!」

「白金さん?」

「は、はい…」

 

 はい、だったら俺は…

 

「俺今日バイトなんで」

「私達も練習がありますので」

「あー俺迎えいきますよ、CiRCLE?でしたよね?」

「ええ、今日は遅くまで練習してるのでゆっくりめで大丈夫です」

 

 とのことで急遽本日燐子先輩の家に泊まることになりましたーってことでバイト頑張るぞおー

 

「おーいらっしゃいませー」

 

 今日はモカもリサ先輩もいませんよ、Roseliaは練習って言ってたからわかるがモカは?Afterglowも練習なのだろうか

 

「シンなんかやる気あるな」

「あーバイト後友達の家に泊まるんですよ」

「……女か?」

「なっ!?ち、違いますよ!」

 

 なんで店長は当ててくるんだよ!?

 

「モカがお前には友達が女子しかいないって言ってたからな」

「ひ、酷い!」

 

 一応蒼汰とかいるからな!?あ、あと亜滝先輩も!

 

 そんな時コンビニの入店音が鳴り響き入口に向かって言う。

 

「いらっしゃいませー」

 

 作り笑顔でそう言う俺の目に入った人物

 

「あ、シン君だ」

「……おたえ、お前か」

 

 誰が来たかと思えばおたえかよ、てかおたえが来るとか初めてじゃないか?見た覚えがないぞ

 

「散歩の途中で寄ってみた」

「散歩って一人でか?」

「いやおっちゃんと」

 

 そう答えたおたえは手に持っているうさぎキャリーの中には左右目の色が違ううさぎがいた。

 

「……いやコンビニに連れてくるなよ!?」

 

 とりあえず奪いあげ店長に説明し休憩室にて一旦預かることになった。

 

「で?おたえさんや何用で?」

「特に用事はないかも?」

「ないのかよ!?」

 

 じゃあなんで来たんですかね!?

 

「あ、これ知ってる、授業で習ったやつだ」

「そんなもん持って言うなっての」

 

 おたえが手に取っていたのは避妊具、コン〇ームだ。ま、まあ授業があったから知れてるわけだから…保険の授業は大切だってわかるな

 

「私使ったことないんだよね」

「だろうな!?」

 

 あなたには俺についてるものがついてないからな!?付けるところなんてないし…いや待て!

 

 つ、使ったことがない!?つまりはあれか?あれなのか!?

 

「お、おおおおおおたえさんあなたもしかして!?」

「うん、女子だからついてないよ?」

「紛らわしい言い方すんなよ!?」

 

 てっきり今まで使わずにしてたのかと思ってしまったぜ、いやさすがに嫌だよ!おたえが経験済みなんて思いたくもない

 

「シン君は使わないとダメだよ?」

「使うに決まってんだろ!」

「うん、私は持ってないけどシン君持ってそうだから」

「だからなんでお前とする前提!?」

 

 てか持ってるって、性病なんて持ってないし持つような行為すらしてない童貞だぞ!?

 

「なんで?シン君私の事好きでしょ?」

「俺が!いつ!お前のこと!好きだと!言った!?」

『……………………』

「えー」

 

 えーじゃねーよ!なんで俺がおたえに惚れなきゃならんのだ!てかそんな場面すらなかっただろ!?

 

「だって私の裸見たよね?しかもナイスボディ」

「やめろ思い出させるな!」

 

 宿泊研修の嫌な思い出とか思い出したくないわ!

 

「それと私の事助けてくれたよ?」

「……それは、あれだ!友達が困ってたら助ける、普通のことだ」

 

 そう、これは普通のことなんだよ、そんなことしてやってやったぜとか言ってたらいつまで経っても俺はその程度、それ以上のことが出来なくなってしまう。

 

「そう言えばかなり遅れたけど」

「な、なんだ?」

 

 おたえはその場で正座をして

 

「あの時は助けてくれてありがとうございます」

「……おいおい嘘だろ?」

 

 いやあのおたえが、あのいつも何を考えているかわからないおたえが…!俺に土下座をして感謝の言葉を述べているだと!?

 

 信じがたい光景がそこにはあるため目を何度もこするが変わらない、現実なんだ。

 

 けどさ…

 

「いやな?感謝の気持ちを表すのはいいよ」

「けどここコンビニの中、なんすよ…俺がなんか悪いやつみたいに思われるからやめろ!!」

 

 なんでコンビニの中で土下座すんだよ!するならせめて誰の目にも入らないところでしてくれよ!

 

「そう?私は気にしないよ?」

「俺が気にするんだよ!てかそのコン〇ームをはよ元の場所におけよ!」

 

 持ったまんま土下座すんな!

 

「てかお前もう用事ないなら帰ってくれ…」

 

 おたえの相手はきついっすよ!バイトもきついのにさ!?

 

「じゃあ帰ろっかな」

「素直でよろしい、うさぎを回収して帰れよな?」

「わかってるよ」

 

 一応俺も念の為休憩室に向かう。そこには元気よくうさぎが飛び回っている光景が目に入った。誰がコンビニの休憩室にうさぎがいると思うだろうか

 

「おっちゃん帰るよー」

 

 飛び回っていたうさぎは主様に気づいたのかすぐおたえの胸へと飛び込んできた。

 

「にしても珍しいな、オッドアイのうさぎとはな」

 

 俺はうさぎに触れようとしたが

 

ガブ

 

「痛!こ、こいつ!噛みやがったぞ!?」

「うそーん、おっちゃん人になつきやすいのに」

 

 うさぎを見てみるとすんごく俺を睨んでいた。あれだろうか、俺におたえを取られるとでも勘違いをしたのだろうか?

 

 安心しろおたえに興味なんてない!って言い方悪かったな、付き合うとかそんな気はないってことだな

 

「ほらおっちゃん?謝らないと」

 

 おっちゃんは頭を撫でていられているも俺に向ける目はさっきと変わらない

 

 こいつ!今度タマを連れてきて内心どんなことを考えているのか暴いてやる!

 

「指大丈夫?」

「ん?あー平気平気、こんなの唾つけとけば治るだろ」

 

 痛いとか言ったけどただのオーバーリアクション、痛くなかったのでどうでもいいですが噛んだおっちゃんは許さんぞ

 

「パクッ」

「……えーと、おたえさん?」

「ふはつけへばなほる(つばつければ治る)」

「いやだからって指をくわえるなよ!?」

 

 俺の噛まれた指をおたえはくわえていた。それはそれで唾をつけすぎて…な?

 

 机に置いてあったティッシュにて拭き取り

 

「……はよ帰れ!」

「あっ、待って、うさぎの餌とか売ってないの?」

「売ってねーよ!」

 

 なんでコンビニで売られてるんだよ!ペットショップ行け!

 

「犬とかネコの餌は売ってるよね?」

「あれは特別だ、犬とかネコは飼ってる人が多いんだよ」

 

 まあ多分だけど、詳しい理由とかは知らないから店長に後で聞いておくか

 

「うさぎ飼ってる人も多いよ」

「……犬、ネコより少ないんだよ!」

「でも」

「でもじゃない!無いものは無いんだよ!?諦めろよ!」

 

 そろそろしつこいぞ!無いものは無い、諦めてくれよ!2回言うはめになっただろ!?

 

「全然近くて便利じゃないね」

「そうゆうことを言うんじゃねーよ!」

 

 うちの店のキャッチフレーズじゃないからいいが別のコンビニでそのことを言うなよな、絶対だぞ!?

 

「そろそろ帰るよ、シン君バイト頑張ってね」

「お、おう」

 

 散々色々言ってたが急に帰るのね、なんか反応が薄くなってしまったな

 

 その後は時間まで働き

 

「おつかれでーす」

「シン、これやるよ」

 

 店長が袋に入った何かを渡してきた。

 

「ってこれは!?」

「お泊まり会だろ?楽しんでこい」

 

 袋に入ってたのはさっきまでおたえが手に持っていたもの、つまりコン〇ームを渡してきたのだ。

 

「こ、こんなの使いませんから!」

「いや使えよ、お前馬鹿か」

「だあー!そっちの意味じゃねー!!」

 

 扉を思っきり開け

 

「それではさようなら!お疲れ様でした!」

「おう、二度と来んな」

「はいはい来週また来ますからね!」

 

 店長とのこのやり取りも久しぶりだがもう慣れたもんだな、まあいうて数ヶ月休んでたんだけどね!

 

 とりあえず今日はこの後燐子先輩の家でお泊まり会だな

 

 いや別にいやらしいことなんてしませんからね!?店長が嫌がらせで渡してきただけなので!

 

「あ、遅いよシン君」

「ッ!お、おたえ!お前なんでここに!?」

 

 コンビニを出たらなんとおたえがおりました。いやいや帰ったんじゃないの!?

 

「夜道暗い、襲われちゃう」

「……はあ、わかった途中まで帰ろう」

「家まで送って?」

「へやーふ、不幸だ…」

 

 訳分からんことを言いおたえを家まで送っていた。おたえの母さんから質問攻めされ大変でしたよ!

 

 携帯を見てみるとまだ時間に余裕があったため一度家に帰りシャワーを浴びて待ち合わせのCiRCLEに向かった。

 




次回のお泊り会、の前に修羅場がありそうですね…その点は是非期待していてください!

感想が100件超えていました!ありがとうございます!このままどんどん感想書いてくれてもいいんですよ!?

それとまたバーが戻っていた…道は厳しいですな

それではまた次回でお会いしましょう!!


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弦巻シンとCiRCLE

お久しぶりです!盆前急な出張が入り執筆が進みませんでした。申し訳ない…盆もいろいろと用事があり遅くなっていました。書きましたので投稿します!

それではどうぞ!!

誤字脱字は後日訂正いたします。


 ライブハウスCiRCLE、かなり前に一度だけ訪れたことがあるこの場所、確かあれは…そう、モカにライブに来て欲しいと言われ行った時だな

 

 あの時俺は彼女達とは友達になれない、住む世界が違うと思っていたが…今はこうして友達となり楽しく過ごせている

 

「(なんだかんだでこのCiRCLEってのは大切な場所なのかもしれないな)」

 

 だってそうだろ?まあ別にCiRCLEじゃなくてもライブハウスがあったらどの道ライブには行くはめになってたと思うけどな

 

 結論はモカがいたから今の俺がいるってわけですな、マジ感謝だよ

 

 CiRCLEのドアを開け中に入る。紗夜先輩曰く中に入って待ってても大丈夫とのことなので涼しむためにも中に入る

 

「ねえねえ亜滝くーん、いい男いないの?」

「またその話ですか?」

 

 中に入ると知ってる先輩がいるですけど!

 

「……あっ!いらっしゃいませー!って君は確か?」

 

 この人は!俺が初めてCiRCLEに来た時場所を案内してくれた人!やっぱりここで働いている人だったんだな!

 

「モカちゃんの彼氏君!」

「違いますから」

 

 今の今までずーとモカの彼氏だと思ってたのかよ!なんかごめんなさいね!

 

「あ、髪戻したのかな?綺麗な金髪だね!」

「……それは、どうも」

 

 昔はこの髪の色が普通じゃないからって言っ黒染めしてたんだっけ?もう結構前だな

 

「てか亜滝先輩は何をしに?」

「リサを待ってるんだ」

「あーはいはい」

 

 相変わらず仲がいいこと、この人達本当に結婚するんじゃね?

 

「で、えーと」

「まりなだよ!」

「……そのまりなさんと亜滝先輩は何の話を?」

 

 なんかいい男いないの?的な話してたよね?一体どんな話をしていたのか気になる!

 

「あーまりなさん彼氏がいなくてね?いい男紹介して欲しいって話だよ」

「そ、そーなんですか」

「そうだ、シン君は紹介する人とかいないの?」

「いたら教えてね!」

 

 いやマジか!紹介する人、んークラスにいるモブキャラ共はまりなさんみたいな可愛い人紹介したら取り合いになってしまう。

 

 だったら

 

「い、いないっすね」アハハ

「だよねーそうだよねー」

 

 てか高校生と付き合うとか大丈夫なのか!?手を出したら捕まるぞ!

 

「いや待って、一人いますね」

「それって本当に!?」

 

 まりなさんは目を輝かせながら俺の手を両手で握ってきた。

 

 アギトさんを紹介しようと思ったがやっぱりやめとこう。あの人は女遊びにしか目がないからな!?

 

「やっぱりいませんでした」アハハ

「もー!期待して損したなー」

 

 そもそも男子高校生に男を紹介して欲しいということ自体がよくないからね!?

 

「ところでシン君こそここに何しに来たんだい?」

「俺は…」

 

 紗夜先輩達を待ってると話をしようとした時だ。

 

「シンくーん」

「お、おい!いきなり抱きつくな!」

 

 モカのやつが急に現れ俺に抱きついてきた。俺はカウンター席に座っていたため後ろから抱きつくモカの胸の感触が背中に伝わる。

 

「やっぱり付き合ってるんじゃん!シン君の嘘つきだ!」

「ち、違「そーですよ〜モカちゃんとシン君は結婚するのです〜」おい!」

「結婚!?も、もうそこまで考えてるの!?」

「はい〜」

「だから結婚しないって!!」

 

 何度も言うが付き合ってもねーのになんで急に結婚するんだよ!?

 

「いやーこないだの告白は急すぎて戸惑いましたな〜」

「こ、告白!?」

「だあああ!違う!あれは質問しただけだろ!?」

 

 俺と付き合うじゃダメなのか?って質問したらお前急に走り出して家に帰ったじゃねーか!

 

「次はもっといいシチュエーションで頼むよ〜?」

「うるさい、もうこの話終わり!」

 

 まりなさんがめちゃくちゃワクワクしててもっと聞きたいみたいな顔を見せてくるけど無理ですから!

 

「モカ!急に抜け出して何してるの…って!ええ!し、シン君!?」

「う、うるさい俺がここにいるのがそんなに驚くことかよ」

 

 ひまりのやつが驚き大きな声で俺の名前を呼ぶ、まあ亜滝先輩とまりなさん以外誰もいないから迷惑ではないと思うけど

 

「シン君の気配がしたから来てみればいたんだ〜」

「お前は超能力者かよ!てかそろそろ離れろよ!?」

 

 モカのやつは未だに俺の後ろにくっついたままだった。

 

「むーもっとくっついときたかったな〜」

「お、お前はまたそんなことを」

 

 言ってて恥ずかしくないのかよ!

 

「シン君は何しに来たの?まさか!私に会いに来てくれたとか!?」

「そーだな、うん、そうしようか」

「え、え?それ本当?」

「…………アハハ」

「嘘じゃん!嘘つき嘘つき!嘘つきシン君だ!」

 

 や、やめろ!確かに嘘は着いたかもしれんがそこまで言うなよ!

 

「あ、亜滝先輩もいたんですね」

「うん、ひまりちゃんこんばんは」

「こんばんはです!」

 

 普通に話してるし、海でも話してたから本当に仲直り?って言えばいいのか?まあ仲がいいならいいや

 

「シン君はいろんな女の子と仲がいいんだね」

「友達なだけですよ」

「友達〜?いやいやー婚約者ですよ先輩〜」

「おっと、そうだったね」

「何真に受けてるんですか!?」

 

 なんでこの人も信じるのかな?馬鹿なんじゃないの!

 

「ダメだよ!シン君は!シン君はー!」

「まだけ、結婚しないって、だから落ち着けってひまり」

「……本当?」

 

 上目遣いで俺をしたから見てくる。いや可愛い、可愛すぎる!

 

「おう!」

 

 もしもだ、もしも俺がモカと結婚することになったとしても今は絶対にしない!だからこれは嘘ではないぞ!?

 

「えーモカちゃんと結婚するじゃん〜」

「それは違うからー!シン君が決めるの!」

 

 モカが右から、ひまりが左から俺の腕に抱きついてきてはそう口論していた。

 

「……3人で何してるの?」

「ッ!ら、蘭!」

 

 で、ですよねーモカとひまりがいるってことは蘭もいるしなんならAfterglowのメンツ全員揃っていますよね!

 

「これは違う!その!」

「女子2人に抱きつかれてそんなに嬉しい?」

「いやだからね!?」

「…………シンなんてもう知らない」

 

 え、えー!そんなこと言うなよ蘭さん!?俺達親しい友と書いて親友だろ!?

 

 俺は2人から無理矢理手を離し蘭の所へ向かう。

 

「2人が抱きついてきただけなんだって」

「……へー」

「ら、蘭?やっぱり機嫌悪い?」

「……別に、練習で疲れてるだけ」

「えっと、なんか…ごめん」

 

 なんで謝ってるんだろう!?

 

「もー蘭も抱きつきたいなら抱きつきなよ〜」

「ちょっ!モカ!うわっ!」

 

 モカは蘭の後ろに行き蘭の背中を押していた。その押したせいで蘭は俺に抱きつくような形で前に倒れてきた。

 

「おっと、おいモカ!急に押したら危ないだろ!?」

 

 俺がいたから良かったものの誰もいなかったら危なかったぞ!

 

「大丈夫か?蘭?」

「ッ〜〜〜!!」

 

 蘭のやつは顔を真っ赤にして俺と目を合わせようとしてくれなかった。

 

 あれ!?も、もしかして俺嫌われたのか!?こんなにことを理由にして抱きついたのがダメだったのか!

 

「……シン」

「な、なに?」

「あたしその、練習で汗かいてて…その臭くない?」

 

 な、なんだよそんなこと気にしてたのかよ

 

「全然大丈夫、むしろ蘭と抱き合えて嬉しいよ」

「……ッ!へ、へーそ、そうなんだ」

 

 やば俺何言ってんだろうね!?

 

「いやー青春だねー」

「青春ですね」

「私もあんな学生生活を送りたかったよ、あはは」

 

 まりなさんと亜滝先輩が何か話していたがきっと俺達とは関係の無いさっきの男の紹介の話でもしてるのだろうか

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 蘭も落ち着き巴とつぐみも合流しAfterglow全員が集結していた。

 

「ところでシン君はなんでここに〜?」

「ああ、実は今日は」

 

 話をしようとしたらまたタイミングよく練習部屋のドアが開き中から人が出てきた。

 

 そうRoseliaである

 

「燐子今日は練習に集中していたわ、これからもこの調子で頼むわ」

「は、はい」

「よかったねりんりん!友希那さん怒りで頂点へ狂い咲くところだったよ」

 

 お、きたきた俺が待ってる人が!

 

「弦巻君もう来てたんですか、早いのですね」

『??』

 

 その場にいる燐子先輩と紗夜先輩以外の人達は首を傾げていた。

 

「バイト終わったんで来ましたよ」

「えっと?紗夜とシン?どうしたの?」

 

 亜滝先輩の隣にいるリサ先輩が俺と紗夜先輩に質問をしてきた。どうしたの?って言われてもなんて答えればいいのやら

 

「今日は白金さんの自宅に泊まるんですよ」

「あはは、それって紗夜が燐子の家に泊まるってことだよね…?」

「?何言ってるんですか?弦巻君もですよ?」

『ええ!!??』

 

 大きく反応したのはモカ、蘭、ひまりこの3人だった。燐子先輩なんてもう目が死んでるぞ!?ま、まあこれからゲームのデータが消えるから萎えるよな

 

「ちょ、ちょっとシン君どうゆうこと!?」

「いやいろいろ事情があってだな…」

 

 エロゲーのデータ消すために行くなんて言えるか!?

 

「紗夜先輩までシンを狙ってる…?」

「な、何言ってんだよ蘭!?」

 

 訳の分からんことを言うな!

 

「紗夜先輩ー風紀委員的に異性同士のお泊まり会ってありなんですか〜?」

「そ、それは確かに問題がありますが…こればっかりは仕方がないことなのです」

「それってなんなんですかー?別にいやらしいことないなら話してもいいんじゃないですか〜?」

「うう…」

 

 い、言えませんよね!?さっきも言ったけどエロゲーのデータ消すためとかね!

 

 だから俺は最終奥義を使う!

 

「モカ、実は俺がお願いしたんだよ」

「……シン君がー?」

「ああ、今回のテスト自信が無いから教えてくれって頼んだんだよ」

 

 我ながらいい案だと思うぞ!どうだ紗夜先輩!

 

 俺は顔を向けると紗夜先輩は頷く

 

「だから別にいやらしいことなんてないぞー」

「……でもそれって泊まる必要なくない?」

「ッ!い、一夜漬けしてくれって頼んだんだよ」

「そうなんだ」

 

 蘭のやつが素直に信じてくれたぞ!?

 

「私もお泊まりしたいー!」

「悪いな、燐子先輩の家は3人用なんだ」

「なんかの〇太君の気分だよ」

 

 はは、俺はス〇夫の気分だよ、ってそこまで俺は性格悪くねーよ!

 

 でもごめんひまり!流石にエロゲーのデータを消す場面に連れて行ってやれないよ!

 

「だったらこんどお泊まり会しよーよ」

「勝手にしてろ」

「シン君の家で」

「なんで!?」

 

 モカがお泊まり会をしようと言ったあと俺の家でするとか言い出しやがった!

 

「いいねそれ、シンの家広いしね」

「シン君の家でお泊まり会?やったー!」

「お、おい!俺は許可してないぞ!?」

 

 なんか勝手に話進んでするし!?

 

「まあまあ今回のお泊まりは許してあげるんだからいいじゃん〜?」

「なんで俺はお前に許可を貰わないといけないだよ!」

 

 お前は俺の親じゃねーだろ!?

 

「そう!モカちゃんはシン君の婚約者なのだー」

「ああ!!うるせえー!!」

 

 なんなんだよこいつは毎回毎回!?

 

「もうわかったから、俺の負けだから、で?いつ泊まるの?」

「明日」

「……いやいや蘭さん?冗談でしょ?」

 

 明日とか!俺は今日燐子先輩の家に泊まるんだぞ!?

 

「流石にそれはシン君キツそうだから日曜日にしようよ」

「いや次の日学校!?」

「大丈夫大丈夫!ちゃんと制服持っていくからさ!」

「そーゆう話じゃない!」

 

 なんでそこまでして俺の家に泊まりたがる!?い、意味がわからん!

 

「じゃあ日曜日で決まりだー」

「わかった」

「……はあ、もう勝手にしてくれ」

 

 なんでこんなことに…土曜日の夜は楽しく過ごそうかな

 

「いいなー!あこもりんりんのお家泊まりたい!ねえお姉ちゃんいいでしょー?」

「んーアタシはいいけど母さんがな?」

「えー!お姉ちゃんだって蒼汰先輩の家に泊まってるじゃん!」

「あ、あこ姉ちゃんはいいんだ」

「なにそれー!?」

 

 こいつらめ…泊まって何をしてるのだろうか

 まあそれは置いといて

 

「……ほら!今日飯食い終わったらアイス買いいこうぜ?な?」

「なら我慢するー!」

 

 か、可愛い!流石中学生!いや別にそーゆう意味じゃないから!?

 

「では勉強をするため白金さんの自宅に向いますかね」

「………………」

 

 燐子先輩完全に落ち込みモード入ってるじゃないですが

 

「紗夜、ちょっと待って」

「湊さん?」

「……あなたは誰かしら?」

「弦巻シンですよ!弦巻こころの弟との!?」

 

 いい加減覚えてくださいよ湊先輩!俺悲しくて泣いてしまうよ?

 

「弦巻、ああ弦巻さんの弟なのね」

「だからさっき言いましたよね!?」

「あなたちょっと声が大きいわよ、少し静かにしなさい」

「なんで俺が注意されてるの!?」

 

 そっちから話しかけてきたのに対して俺が返事をしたら声が大きいとか…酷い!

 

「あれ?湊さんひよっとして」

「美竹さんなにかしら?」

 

「異性の人とあんまり絡んだことがないんじゃないんですか?」

「…………………」

 

 お、おい蘭!そんなこと言わなくてもいいだろ!?

 

 湊先輩は急に俺の腕を掴み言い出した。

 

「そんなわけないじゃない、この通り普通に接せれるわ」

「いやこれは普通じゃないですよ!?」

「…………ならキス?」

 

 この人はあれだ!絶対異性の人とあんまり絡んだことがな人ですね!?ならキス?とか普通は言いませんから!?

 

「なっ!み、湊さんシンから離れてください!」

「……へー、美竹さんは弦巻「友希那ストップー!」……リサ」

「今日は早く帰って新曲の案考えるんでしょ?それにもう遅いし友希那の父さん心配すると思うよ♪」

「そうね今日はもう帰るわ」

 

 そう言い湊先輩はその場を後にした。一体何を言いかけていたのだろうか…少し以上に気になりますよ!?

 

「シンもハルの次にカッコイイからって調子に乗らないの、わかった?」

「いやカッコよくないっすよ」

 

 その亜滝先輩の次ってやめろ!俺が惨めじゃないか!?それに?調子も乗ってませんから!

 

「はい、イチャイチャしてないで学生は早く帰った帰ったー私はこれから仕事があるからね!残業確定だよ」

「それはそのーお疲れ様です」

「同情するなら休みをください!」

 

 それは俺がどうこうできる問題じゃないだろ!

 

 その後モカ達とはわかれ紗夜先輩と燐子先輩と一緒に歩いていた。

 

「すみません、着替えなどを取りに一度家に寄りたいのですがいいですか?」

「全然いいっすよ、ね?燐子先輩」

「はい、なんならお泊まりも無しにしてもいいんですよ?」

「それはダメです」

 

 燐子先輩はガクッと音が聞こえるぐらいの勢いで頭を下ろしていた。

 

 なんやかんやですぐに紗夜先輩の家に着く、すぐに終わらせてくると紗夜先輩はいい家の中に入っていた。

 

 俺と燐子先輩は外で紗夜先輩の帰りを待っている。燐子先輩は相変わらず顔色は悪くかなり焦っている様子だ。

 

 てか紗夜先輩の家ってことは日菜先輩もいるってことだよな?会いたいけど会いたくない人だよな…

 

 いやほらな?パスパレ大好き星人として日菜先輩に会えることは嬉しいことだ。でもこの状況、なんて説明すればいいのやら

 

 でもまあもう遅いし?会うことねーだろ

 

「あ!シン君!」

「…………まじかよ」

 

 なんでこう運がいいのだろうか

 

「燐子ちゃんもいる!ねえねえ!二人してうちの前で何してるの?」

「いや紗夜先輩を待ってて」

「お姉ちゃんを待ってるの?なんで?」

 

 だ、だから嫌だったんだよ!絶対質問攻めされるからさ!?

 

「もしかしてお姉ちゃん襲いに来た?」

「なんでですか!」

「なんでってそれはお姉ちゃんがシン「日菜!」ああ!お姉ちゃん!」

「……ちょっと来なさい」

「?わかったー!」

 

 そう呼ばれ日菜先輩は家の中に入っていた。その時の紗夜先輩は着替えの途中だったのか肌着と制服のスカートとゆうよくわからない格好をしていた。

 

「日菜、あなた弦巻君になんて話をしようとしたのかしら」

「え?お姉ちゃんシン君のこと好きだよって」

「ッ!日菜、それは違うから、違うのよ」

「そうなの!?」

 

 全く、やはり今の今まで勘違いしてたみたいね、誤解が解けてよかったわ

 

「ちぇーなんだつまんないなー」

「弦巻君をそんなふうに見たことはないわよ、ま、まあいい人だとは思うけど」

「……ふーん、あ!ならさ!……」

 

 日菜先輩が家に入ってから結構時間経つなー何してんだろうか?

 

「あはは、私はもう終わりですよ」

 

 燐子先輩病みモード入ってますし!?これはこれでなんか可哀想だよな?んー他に何か手があればいいんだけど…なさそうですね

 

「お、お待たせしました」

「お姉ちゃんから聞いたよ!勉強会なんだってね!」

 

 そんなことを考えていると紗夜先輩は荷物を手に持ち家から出てきた。もちろん日菜先輩も一緒だ。

 

「すみません、少し長話をしていました」

「……姉妹の仲がいいことはいいことですよ」

 

 やっぱり紗夜先輩も日菜先輩のことが好きなんだな

 

「とりあえずもう遅いですしい、行きますよ!……シン(・・)さん」

「ッ!は、はい!」

 

 紗夜先輩が俺のことを名前で呼んでくれた!こ、これはかなり嬉しいことだぞ!?弦巻君からかなりレベルアップしているぜ!

 

 何故紗夜がシンのことを名前で呼んだのか

 

「お姉ちゃんシン君のこともなんだけどさ?人の事よく苗字で呼ぶよねー」

「ッ!そ、それはその、なんとゆうか…」

「そうだ!試しにシン君って呼んでみなよ!きっと喜ぶよ?」

「私が呼んで喜ぶとは思わないけど…呼んでみるわ」

 

 そんな会話をしていたためである。紗夜が勇気を振り絞りシンのことを名前で呼ぶと案の定喜んでいる様子だったためこのまま名前で呼ぼうと思う紗夜だった。

 

「あっ!そうだ!シン君連絡先交換しようよ!」

「え?連絡先?準備万端ですよ!!」

 

 日菜先輩が連絡先と言った瞬間ポケットから携帯を取り出し既に準備をしていた。

 

「その携帯千聖ちゃんのサインが掘られてる!」

「ふっ、今のところ世界に1台だけの携帯ですよ」

 

 そう今のところはな!昔俺がやらかして騒動を起こしたがなんとなっていた。そのうち本当にサイン入の携帯が発売されるのだろうか

 

「だったらアタシはー」

 

 と言い出しポケットからペンを取り出し俺の携帯カバーに日菜先輩のサインを書いてくれた。

 

「ちゃんと千聖ちゃんのサインと被らない位置に書いたから大丈夫だよ!」

「うぉぉおお!!すげ!絶対大切にします!」

「うんうん!るんっ♪来るよ!」

 

 世界に1台の携帯と世界に1台の携帯ケース、もうこの携帯絶対手放さない!

 

 てかなんでペンとかポケットに入れているのだろうか?

 

「なんかアタシのファンがサイン欲しいとか言うからねー」

「あ、はい」

 

 だから心を読むな!君たちやっぱり怖いよ

 

「ではそろそろ向かいますかね」

「そーですね、行きますか!」

「勉強会楽しんでねー!」

「あれ?日菜先輩来ないんですか?」

 

 紗夜先輩が来るから日菜先輩も来るのかなって思ってたけど来ないようだな

 

「アタシは久しぶりに1人でゆっくり過ごしとくよ!」

「はあ、いつもゆっくりしてるじゃない」

「ええ?そうだっけ!」

 

 アイドルの家での生活…き、気になる!

 

「なんか燐子ちゃん元気ないね、大丈夫?」

「だ、大丈夫ですよ、あはは」

「んー?そっかそっか!じゃあ勉強会楽しんできてね!」

 

 そう日菜先輩が言った後俺達は氷川家を離れ白金家へと向かった。後ろを振り向けば最高の笑顔で腕を振っている日菜先輩がいたけど…いや可愛すぎる!

 

「……ひ、氷川さん」

「どうしましたか白金さん?」

「今ポテト全サイズ150円みたいですよ」

 

 燐子先輩は近くのハンバーガーショップに指を指しそう言っていた。大方少しでも家に戻るのを遅くするための作戦なのだろうか

 

「くっ…!ぽ、ポテト…ポテトがそこにある…!」

 

 だけどこの弦巻シン、そんなことも考えて準備をしていたのだ!

 

「紗夜先輩大丈夫っすよ、俺じゃがいも買ってきてるんで」

 

 俺はリュックから取り出しじゃがいもを見せつける。CiRCLEに寄る前にスーパーで買っておいたのだ!

 

 まあ調理器具とかいろいろ借りないとできないけど貸してもらおう、いや貸してもらわないと作れない!

 

「流石です弦巻、シンさん」

「ですよね!」

 

 燐子先輩の方を見ると何してくれてるの的な目を向けてきた。許せ燐子先輩!あなたのためだと思ってくれ!

 

「もう、もうもうもう!」

「白金さん!?」

「なんでこんな目にあうことに!私が何をしたって言うんですか!?」

「エロゲーをしました」

 

 燐子先輩は我慢ができなくなったのか普段絶対出さないような声でそう言っていた。

 

「ああー!不幸ですよぉぉぉおお!!」

「お、おー!」

 

 何故か俺は燐子先輩と同情する形でおー!と声を揃えていた。その後燐子先輩はもう一言も喋ることなくて先輩の家に着いたのであった。




すみません今回でお泊り会まで話を書けませんでした。次回以降ですね

それとそのうちシリアス展開になるかと…自分的に書きたくないですがそろそろ綺羅とも決着をつけないといけませんのでね

ではでは!少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それでは次回の話でまたお会いしましょう!


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弦巻シンと女の気持ち

何とか間に合いました!今回はお泊り編最終回です!

それではどうぞ!!


 燐子先輩の道案内の元無事に家に着くことが出来た。

 

「……どうぞ」

「お、おじゃましまーす」

「お邪魔します」

 

 俺と紗夜先輩はちゃんとマナーよく一言いい家に上がった。

 

 上がるときに思ったのだがやはり燐子先輩の家は大きかった。何となく予想はできていたがそれを超える豪邸で驚いたな、紗夜先輩も上を見て少し苦笑いしてたし!

 

 てか俺が言ったらダメだよな…俺の実家この家の倍以上の大きさだし?なんなら家じゃなくて屋敷だしな、あはは

 

 け、決して自慢ではない!自慢したところでなんも意味が無いからな?てか家が広いとか無駄なんで!?ちょうどいい広さが一番いいんだよ!

 

「リビングで休んでいてください…私はお風呂に入ってきますので」

「あ、はーい」

「氷川さんもお風呂入ってもいいですよ」

「……ではお言葉に甘えて」

 

 そう言えば紗夜先輩風呂入ってなかったんだな、あの時入っていればよかったのに

 

「シン君も汗かいてると思うので入ってもいいですよ?」

「いや俺入ってきてるんで」

 

 シャワー浴びたし大丈夫だろ、多分!

 

「そんなこと言わず入った方がいいですよ?……その、少し汗臭いです」

「………………入ります!」

 

 汗臭いとか…そ、そんな汗かくことありましたっけ!?まあどうせ制服から部屋着に着替えるし入っておくか

 

「料理も作って大丈夫なので」

 

 燐子先輩はそう言うと部屋に戻って行った。階段の登る音が聞こえたため戻っているだろう、うん戻ってるはず。

 

「そう言われても作るのってポテトぐらいだけなんすけどね」

 

 あいにく野菜はじゃがいもしか持ってきていないからな!それに料理していいと言っていたが俺はプライドポテト以外作れないぞ

 

「困りましたね、お腹がすきました」

「で、ですよねー」

 

 バンドの練習をした後何も食べていないから紗夜先輩ならお腹すきますよね!?だってあんなに食べるし

 

「今失礼なこと考えていませんでしたか?」

「……いえ別に」

 

 あ、危ねえ!バレなくてよかったぜ!

 

「とりあえずフライドポテトだけでも作っておきますかね」

「そうしましょう」

 

 2人で台所に向かいそれぞれの準備を進める。紗夜先輩はじゃがいもカットし俺は油の準備をしていた。

 

 これはあれだな…台所で男女2人並んで料理をするって

 

「……夫婦みたいだな」

「何か言いましたか?」

「い、いえ!なんでもございません!」

 

 また口に出てたよ俺の馬鹿!何度言えばわかるんだよ!?

 

 その後はポテトを揚げてはキッチンペーパーで油を拭き取る、それの繰り返しで…

 

『完成(です)!』

 

 2人ではじめての共同作業は大成功ですな!

 

「さあ紗夜先輩!冷めないうちにどうぞ!」

「い、いいのですか?シンさんも食べた方が」

「いやいや紗夜先輩のために買ってきたじゃがいもなんで!」

「ッ!そ、そうですか…なら、いただきます」

 

 うおー!クソかわええ!紗夜先輩に対してこんなこと言えませんな!

 

 紗夜先輩が幸せそうにポテトを食べている。俺はこの光景を見られるだけで幸せだよ、ああ癒される!

 

 いやでも香澄の方が一歩上手?結構いい線いってるんじゃないか?実は紗夜先輩俺のエンジェル候補だったりして

 

 ならもし香澄に彼氏ができても大丈夫だな!

 

 俺達は燐子先輩も分は取り分けており自分たちの分はもう食べ終えていた。紗夜先輩は沢山食べたため自分で皿を洗うといいだし洗い始める。そんな中暇になった俺は携帯を取り出しメッセージの確認でもしようと思った 。

 

 しかし指は先程のポテトのせいで油まみれ、このままだと携帯が汚れるため台所で手をあろおうとしたさ、けど紗夜先輩が皿を洗っており邪魔になると思った俺は洗面所で手を洗うことにした。

 

 そう、この選択は間違いだったのだ。俺はまだ燐子先輩が風呂から上がってないと勝手に決めつけていたんだ…

 

 ドアを開けるとそれはそれはバスタオルからもはみ出るほどの何かが俺の目に突き刺さる

 

「し、シン君!?」

「わ、わ、わわわ!私!その、風呂上がり…はっ!まさか襲いに!?」

「ち、違います!」

 

 燐子先輩は胸だけにとどまらず他の部位もスタイル抜群である、巻いているバスタオルがその事をさらに主張しているかのように思えてきたぞ

 

「シンさんー?何かありましたか?」

 

 皿を洗い終えたのか、紗夜先輩は俺にそう聞いてくる。聞いてきてもこっちは返事なんてできるの状況じゃないですよ!

 

 さっきから燐子先輩は手で顔を隠してるし変にここで助けを呼んでも誤解が生まれる!一番いいことは紗夜先輩がこちらに来なければいいこと!

 

「シンさん大丈夫ですか?」

 

 スリッパのかすれる音が聞こえる!やばい、やばいやばいやばい!こっちに向かってるぞ!ど、どうする弦巻シン!

 

 もしだ、この状況を紗夜先輩に見られたりしたら!

 

「…………最低ですね」

 

 と、氷のように冷たい目でそう言われるに決まってる!

 

 そうならないためのには隠れないと行けない!でも隠れれない!

 

 紗夜先輩の足音が近くになってくる!えーい!もうこの手しかない!

 

「燐子先輩!」

「ええー!?」

 

 燐子先輩の手を取り風呂のドアを開け中に入る。しかしこのままだと中に2人の影があることを外からバレるため

 

「す、すみませんちょっと我慢してくださいね」

 

 風呂のふたを上げその中に2人してはいる。もちろんそのあとは隠すように中から被せ直す。浴槽が思ったより広くて助かったが服はびしょびしょ、なんなら燐子先輩なんか体を拭いただろうにまた濡れてしまった。

 

 いや待て…!今覚えば俺だけ隠れればよかったじゃん!?なんで燐子先輩と一緒に入ってんだよ!

 

 こ、これだと俺が変態みたいじゃねーか!(変態です)

 

「ここからシンさんの声が聞こえたと思ったのですが…見たところ白金さんもお風呂から上がっているようですね」

 

 よし!俺と燐子先輩がいないことに気づいたようだ!早く戻ってくれ!

 

「その、し、シン君!あ、当たってます…!」

「いや本当にすみません…!」

 

 なんでこんな時に元気満々なんだよ俺の息子!だ、だって今の状況は俺が燐子先輩の上にいる体制だ、胸なんて目に入るしなんなら顔だってめちゃくちゃ近い…

 

 興奮しない男子がどこにいるのだろうか!つまり俺は悪くない!悪くないと言ってくれー!!

 

「こうゆう、し、シチュエーションはエロゲーでもありませんよ……」

「で、ですよねー」

 

 そんな返事しかできないぞ今の俺は!だから早く帰ってくれよ紗夜先輩!

 

「白金さん上がっているのなら次は私が入ろうかしら」

『!?』

 

 う、嘘だろおい!

 

 紗夜先輩は一度着替えを取りに行ったのか洗面所を後にした。けどそこからすぐに動けるわけもない、俺たちはびしょ濡れだし出れば廊下は水滴でびしょびしょになる

 

 つまりは動けないってことですよ!!

 

 紗夜先輩は戻ってきて風呂場に入ってくる音が聞こえる

 

「(もうおしまいだー!!)」

 

 そう思った瞬間風呂のふたは開けられ

 

「こ、こんばんは紗夜先輩…」

 

 先輩の方は向かず浴槽の底を見てそう言った。

 

「…………何やってるんですか!?」

 

 反応は予想とは全然違ってとても焦っている様子であったが…それは今だけ、後になれば先程予想した通りになるのだろう。

 

 俺の人生終了ですよねーあはは

 

「と、とりあえず早くそこから出てください!」

「わ、わかってますって!」

 

 俺はバット立ち上がるが少し前かがみだ、それは言わなくてもわかるだろ?

 

 く、クソ!あの時紗夜先輩の邪魔になるけど台所で手を洗っておけば!

 

 燐子先輩がまだ風呂から上がっていなと知っていれば!

 

 後悔しかないよね!?

 

「白金さん立てますか?」

「は、はい……」

 

 燐子先輩はのぼせているのもあるかもしれないが顔がめちゃくちゃ赤かった。いや本当にすみません!!

 

 紗夜先輩は燐子先輩に手を差し伸べ燐子先輩を立たせようとするが…

 

「きゃっ!」

 

 燐子先輩が浴槽の中で足を滑らせたらしい

 

「わっ!」

 

 それに続き手を取っていた紗夜先輩もつられて紗夜先輩が転けそうになり

 

「なんで俺までー!!??」

 

 転けそうになった紗夜先輩は俺のびしょ濡れの制服を掴み転けるのを阻止しようとするが俺は踏ん張ることができずに転けてしまい

 

バシャーン!

 

 俺たち3人は仲良く浴槽の中に入ったのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 リビングで俺は…正座をしていなかった。

 

 なんなら普通にソファーでくつろいでいたのだ。

 

 いや普通怒られると思うよね!?けど何故かまだ怒られていないんだよ!

 

 俺はすぐに言い訳をしたんだよ、いや言い訳しちゃダメだけどさ!

 

「そのいろいろ不幸が重なったてこうなって決して燐子先輩を襲おうとしたわけじゃないんですよ!」

「……着替えますので出て言ってください」

「あの紗夜先輩?かなりのお怒りで!?」

「いいから出て行ってください!!」

「は、はい!」

 

 俺はびしょ濡れのまま廊下に追い出されその後タオルだけ渡されたのであった。

 

 と、ここまでそーゆうことがあったんだ。その後は濡れた体を拭き寝巻きに着替えソファーで待機している状況なんだよ

 

 今覚えばこれから怒られるってことなんだろうな!

 

ガチャ

 

「……ッ!」

 

 ドアの開く音が聞こえ紗夜先輩と燐子先輩が着替えて登場してきた。

 

 先程までソファーでくつろいでいたが音が聞こえた瞬間ソファーの上で正座をした。

 

「白金さん、ポテト作りましたのでどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 

 あ、あれー?俺のことに全く触れないなーいやそうやって油断した所で怒ってくるに決まってる!

 

 気を緩むことなくずーと正座をしているがこっちを向きもしないし話しかけてこない

 

 これはあれだな、完全に嫌われたやつだな!

 

「あのー先輩方?」

「白金さんお腹がすきましたね」

「そうですね、練習の後ポテトしか食べてませんので」

 

 そう言うがポテトもそこそこ腹持ちはいいと思うぞ?

 

「ではそうですね、ピザでも頼みましょうか」

「おー!いいっすね!」

『………………』

 

 俺は返事をするが2人共無視をする。いやー!流石にそれはシン君キツイですよ!?確かに俺が悪いけどさ!?

 

2人分(・・・)頼みましょうか」

「それは俺と燐子先輩2人合わせて1人前ってことですね!了解です!」

『………………』

 

 こ、これでも反応無しかよ!やっぱり嫌われたのかな!?もう帰ろうかな!?

 

「何やら先程からうるさいですね」

「……で、ですね」

「見たよね?今一瞬こっちみましたよね!?」

 

 燐子先輩はこちらをチラッと見た後にそう答えていた。

 

 その後紗夜先輩はデリバリーピザを頼む際にちゃっかし4人前でと言っていた、1人で2人前分食べるのか、はたまた俺を無視してるため3人前分食べるのか、どっちにしろ大食いには変わりねーな!

 

 頼んだ後も先輩達は2人でRoseliaの話をしていた。あのー俺が言うのもあれですが燐子先輩のエロゲーのデータ消すって話はどこいったんですかね!?

 

\ピンポーン/

 

 デリバリーのピザが届いたようだ!

 

「お金は私が…」

 

 紗夜先輩が財布を取り出している途中に!

 

「俺が行ってきます!」

 

 ここで俺が金を払えば何がなんでも俺をもう無視することはできなくなる!はは!俺の勝ちだー!

 

「りんちゃんやっほー!あいなちゃんが遊びに来たよー!」

「へ?」

 

 扉を開けたらピザなんて来てなくて来てたのはなんと篠崎先輩だった

 

「あれシン君!どーしてシン君がりんちゃんの家に!?それに風紀委員長までいるじゃーん!」

「し、篠崎さん…いきなり来るのはいつも驚くのでやめてとあれほど…」

「えー!いいじゃんいいじゃん!家近いんだしさ!それに仲もいいじゃん!」

 

 状況が全く読めない!あれか?篠崎先輩と燐子先輩は知り合いでよく遊ぶ中だと思えばいいのかな?

 

「ま、まさか!さ、3Pでも…!」

「なっ!?さ、3Pですか!?」

「でも私が来たから4P?もー!シン君ったら大人ー!」

「3Pもしないし4Pもしねーから!てか燐子先輩俺を無視する設定は!?」

「は!忘れてました!」

 

 ドジっ娘かよ!でもそこが可愛い!

 

「はあ、もうシンさんを無視することは無理そうですね」

「それもうイジメの領域ですよね!?」

「そ、それは、シンさんが悪いんじゃないですか…」

 

 確かに俺が悪いけど無視するのは流石に酷くないか!?まだ説教の方が楽だよ!

 

「ところでみんなは何してるの?」

「まあお泊まり会ってやつですね」アハハ

 

 何度も言うがエロゲーのデータ消すためなんて言えないっての!

 

「だったら私も泊まる!いや泊まりたい!」

「な、なんでですか!?」

「いいじゃんいいじゃん!私の愚痴も聞いてよおおお!!」

「篠崎さん1人ぐらいなら大丈夫かと…」

 

 燐子先輩許可していいの!?あんたの秘密バレるぞ!?

 

「その点大丈夫!りんちゃんの秘密は既に知っております!」

「なっ!」

「弦巻家のメイドたるもの、そのようなことには気づいていないといけないのです!」

 

 なんだろう、アレックスが一瞬頭の中に浮かんだのは気のせいだろうか

 

「はあ、とりあえず中入りましょうか」

 

 その後ピザが届きもちろん金は俺が払ったよ

 

 テーブルにピザを置き4人仲良く食べ進める。俺はそんなに食わなくても平気だから少しだけ、燐子先輩もそのようだな?

 

 あとの2人はもう食べてたな、特に紗夜先輩はたくさん食べてて金を払ったかいがあったと思ったよ

 

「もうギブー!お腹いっぱいいっぱい!」

 

 篠崎先輩がお腹をさする様子はなかなか様になっていたな

 

「?別に赤ちゃんとかいないよ?」

「わかってますよそんなこと!」

「母乳も出ないから吸っても意味ないよ!」

「吸わねーし!あんたさっきから何言ってんだよ!?」

 

 本当に何を言ってるのやら、なんかアレックスに似てるようになってきてないか!?

 

「………………はあ」

 

 紗夜先輩は燐子先輩と篠崎先輩の胸を見たあと自分の胸を見て大きなため息をついていた。

 

 ま、まあ気にする事はわかるさ、けどこの人達が以上だけ、決して紗夜先輩が小さいわけではないんだぞ!

 

「てかみんな目的忘れてませんか?」

「………………」

「そうですね、では白金さん早速準備を」

「なんでそのこと言うんですか!?忘れていたのに!」

 

 やっぱりその作戦だったのか!でも残念!俺がいる限り忘れるなんてことはさせないからな!

 

「どうしたどうしたー!」

「それはその…」

 

 紗夜先輩が篠崎先輩に事情を話した。するとどうだろう

 

「流石にそれはりんちゃん可哀想だよ!」

「で、でもRoseliaを続けるためには」

「自分の好きなことして何が悪いのさあ!」

「ッ!」

 

 確かにそれは言えている、けどさ

 

「燐子先輩はRoseliaも続けたい、エロゲーもしたい、でも両立ができていない、どーしたもんかね」

 

 今覚えばやりたいことをさせなければそのせいでストレスが溜まりRoseliaの練習に集中できなくなってしまうかもしれないな

 

「ではこうしましょう、最後にエロゲーをしてデータを消す、これで悔いは残りません」

 

 そーゆう問題じゃないだろ!?

 

「うん!それならいいかも!」

 

 篠崎先輩あんたもそれでいいのかよ!?

 

「白金さん、確かにその、エロゲーはあなたにとって大切なのかもそれない、しかしこのままではあなたは本当に取り返しがつかなくなってしまう」

「……氷川さん」

「私はあなたとRoseliaで頂点を目指したい、そのために…覚悟を決めて言っています!」

 

 なにこれ、急展開すぎだろ!

 

「いいね暑い友情、お姉さんもこんな青春を送りたかったよ」

「あんたもまだ学生だろ」

 

 高3なんだからギリ学生だよ!

 

「私エロゲー卒業します!」

『おー!』

 

 燐子先輩はどうやらエロゲーを卒業することにしたらしい、まああんなこと言われたら嫌でも卒業しちゃうよな?

 

「でも……最後にお願いが、あります!」

「最後ぐらいなんでも聞きますよ」

「だったら最後にプレイさせてください!」

「……ッ!ま、まあいいでしょう」

 

 最後ぐらいはやらせてもいいと判断したのだろう、紗夜先輩は許可をした。

 

「とか言って風紀委員長本当は興味あるんじゃないのー?」

「なっ!?あ、ありません!なに馬鹿なこと言ってるんですか!」

「えー私結構成績いいんだけどなー羽丘のトップだし?」

「それとこれとは違います!」

 

 ち、違うのか!?てっきり同じレベルかと思ってた自分がいたぞ!

 

 燐子先輩は自室に戻ったため部屋でそのままプレイするのかと思えばゲーム機本体を下に持ってきた。

 

「普段は親がいるためいリビングのテレビでできなかったので…えへへ、してもいいですか!」

「ほらほらー風紀委員長ー」

 

 篠崎先輩は紗夜先輩を肘でグリグリして返事を要求する

 

「わかりました、わかりましたから!許可します!」

「氷川さんありがとうございます!」

 

 準備をしてゲームする燐子先輩だったが…それはそれはもうすんごいよ

 

 イヤホン付ければいいものを付けずにやるためリビングには喘ぎ声が鳴り響く、画面には男と女がなにかし合ってるし、まあしてるから喘いでるんだけどさ

 

 燐子先輩はあの時と同じような顔をしながらゲームしてるし

 

 紗夜先輩は両手で顔を隠しているが地味に隙間から見てるし

 

 篠崎先輩はほうほうとか言いながらどこから持ってきたわからないノートにメモをしていた。

 

 俺は、まあ聞くな、察してくれ

 

「あれがだいしゅきホールド、勉強になるなー」

「何を勉強してるんだよ!?」

「そうだ、シン君1回してみる?」

「…………へ!?そ、それってその俺が篠崎先輩と?」

「うん」

 

 な、なんだとー!それはつまりここでするってことなのか!?いやいやダメだろ人の家でやるとか!

 

 てかそれに今勃ってるし!いやそれは準備万端ってことか!?

 

「って!なんでこうなるんだよ!?」

 

 普通は俺が上で篠崎先輩が下、なのにそれが逆だった

 

「ほらほらー背中のところで足を組まないと!」

「これ立場逆だよね?」

「……女の子の気持ちを知るのも大切だよ?」

「こんな気持ち知らんくていいわ!」

 

 何させんだよ気持ち悪いな!

 

「じゃー次は逆かー」

「いやなんでだよ、もうしないから!」

 

 てか誰か止めてよ!って言うとしたら紗夜先輩はノックアウトしてるし燐子先輩はゲームに集中している様子だ

 

「別にいいじゃん減るもんじゃないしさーそれにメイドだし大丈夫だよ!」

「それは関係ないから!」

 

 床に寝っ転がってしてるわけじゃないんだ。ソファーの上でしており隣には紗夜先輩が寝ているんだ。

 

 そんな隣でできるわけないだろ!

 

「それに勃起してることはバレバレだよ、押し付けないでよ」

「そっちが上から乗ってんだろ!?」

 

 今の状況は完全にあんたから俺に押し付けてるよな!?

 

「処女の私でもわかるけど結構大きいんだね」

「……はいはいそりゃどうも!」

「きゃっ!」

 

 無理やり起き上がり篠崎先輩をどかす。流石にあの体制は俺の精神が持たん

 

「辛そうだねー」

「男はいつも辛いんすよ」

「そんなー女子の方が辛いよ?生理とかあるし!」

「男の負けです、すみませんでしたー」

 

 じゃあ辛そうだねって言うな!

 

「ね、姉さんが抜いてあげよかっか!?」

「そこで動揺するなよ!言うならちゃんと言え!」

 

 さっきまでは普通に言えていたが急に動揺すんなよ!

 

「そーいえばさ屋敷でメイドの稽古受けてるんだけどアレックスさんが酷くてさーそして厳しくてさー」

「だろうな」

 

 アレックスの稽古が厳しいってことは俺が1番知ってるからな?まあ俺が付けてもらったのはメイドの稽古じゃないけどさ

 

「こないだなんてバナナ持ってきてちょっと挟んでみてくださいよって言ってきたり」

 

 あいつ自分で挟めないからって篠崎先輩で挟もうとするなよ!?

 

「あと昨日なんてシンジ君に話しかけようと思ったらさ?」

 

「シンジ様!見ては行けません!」

「うん、アレックスの手で見えないよ」

 

 アレックスはシンジの目を隠すように手でおおっていた。

 

「シンジ様があのような娘の胸を見てしまうと石化してしまいます、どこがとは言いませんが」

「アレックスの言ってる意味がわからないんだけど」

「シンジ様はアレックスと戯れる時だけ固くなればいいのですよ!!」

 

「って言われたよ、実際私の胸見てシン君勃起、じゃなくて石化してたし本当なのかな?」

「なわけないだろ!?」

 

 そんなんだったらあんたが歩くだけで男どもは石化してどこもかしこもやばい光景になるだろ!

 

 なに?あんたは歩くメデューサとでも自分のことを言いたいのか!?

 

「アギトさんには悔しいけど俺のセフレより大きいなって言われたし」

「うん、それは通報していいよ」

 

 あの人高校生に何言ってんだよ!?てかうちの屋敷はどんな会社よりもブラックすぎるのかもしれないな、メンツがメンツだから

 

「でもなんだかんだで楽しいからいいよ!」

「……あっそ、ならよかったですね」

「でもでもさらし巻くのはキツイかな?」

「本当に巻いてたのかよ!……俺が許可するからもう巻かなくていいっすよ」

 

 なんか辛そうだろう?俺が許可したって言えばアレックスも渋々納得するだろうさ

 

「うおーどれだけ楽になるか!ありがとうございますご主人様♪」

「やめろう!そうゆうプレイしてるみたいだろ!?」

「あああー!このシーン!とてもいい!ふふ!」

「……はあ、不幸だな」

 

 紗夜先輩は未だにノックアウト状態、篠崎先輩は目の前にいるわ燐子先輩は叫ぶしこのお泊まり会めちゃくちゃきついな

 

「りんちゃん正常位が好きなの?」

「おいその変な質問するな!」

 

 この人あれだろうか、夜になるとテンション高くなる人?つまり深夜テンションの人なのだろうか!てかそうだよね!?

 

「りんちゃんって、燐子先輩達そんなに仲良いんですか?」

「もちろん!もう何回も泊まってるよ!」

「文化祭で知り合って仲良くなったんです……あと正常位大好きです」

「この人達もうダメだ…!」

 

 何も無いお泊まり会だと思っていたのに蓋を開けてみるとこの有様だ、なんなら俺が火種だったのかもしれない…こんなお泊まり会なるはずじゃなかったのに!

 

「考えてみて?目の前に巨乳の美人な先輩が2人物欲しそうにシン君を見ています」

「び、美人な先輩ってそれは篠崎さんだけじゃ…」

「もー!りんちゃんも美人でエロエロなボディーしてるの!」

「お前が原因で燐子先輩がこうなったんじゃねーのか!?」

 

 勝手にそう思ってしまう!いや絶対そうだろ!?

 

 てか篠崎先輩は自分で美人とか言うのね、まあ美人だから言い返せないのが悔しい!

 

「むむ、あんまり乗る気にならないねー勃起してるくせに」

「う、うるさいな…ほら、そろそろ寝ましょうよ!」

 

 何度も言うが男だったらこんな光景見たら誰でも元気になりますから!

 

 おいそこ!こいつ変態じゃんとか言うなよな!?自分が俺と同じ立場になってみろ!キツさがわかるからな!?

 

 誰に何を言ってるのか自分でもわからないシンだった。

 

「だったら愛奈ちゃん達はここで寝ちゃおうかなー」

「なっ!」

 

 篠崎先輩と燐子先輩は2人してテレビの前に仰向けで寝っ転がる、そうして次には

 

「今ならヤリたい放題、りんちゃん3Pだよー」

「こ、ここここれがですか…!」

 

 何ちょっと感動してるんだよ!

 

「……あの」

『ッ!?』

 

 俺達はこの人がいることを完全に忘れていたんだ。

 

 そう、あの恐怖の風紀委員長こと氷川紗夜が目を覚ましたのだ。

 

「私も寝ます」

「はい?」

 

 紗夜先輩は篠崎先輩と燐子先輩が寝ている隣に行きまた寝始めた、どうやら寝ぼけていたようだな

 

 ノックアウトかと思えば普通に寝ていたのかよ!?そこに驚きだよ!

 

「今ならおっぱいも触らせるよ?」

「わ、私もその、し、シン君になら…」

「おっとりんちゃんはご主人様ならいいって?」

 

 なんだこれ

 

「はやくはやくご主人様ー!もう焦らさないでくださいよ!」

「…………は、早く」

「……………………」

 

 篠崎先輩は俺を挑発しているってわかってる、紗夜先輩は寝てる、燐子先輩はわからん!

 

 何俺本当に襲っていいの?やっていいの?触っていいの!?なにこれ、どゆこと!?

 

 ……いろいろ考えたけどやっぱり無理ですよー!

 

「だあああ!もうなんでいつもこうなるんだよー!」

『シン君!?』

 

 俺はリビングから出て行きなんなら燐子先輩の家から出て行った。

 

「あークソー!不幸だぁぁぁぁぁあああ!」

 

 そのままやれば流れで童貞卒業できたのかもしれない!けどこれは違うじゃん!全然不幸だよ!

 

 シンは玄関でそう叫びコンビニにて人数分のアイスを買いに行くのであった。そこからは特に事故もなく無事に一夜を開け

 

 その次の日はちゃんとゲームのデータは消されカセットは売った。けど売った際の燐子先輩は昨日までの絶望したような顔ではなくとても笑顔だったのであった。




次回はモカ達とお泊り会…の前にあの人の話をします。

後数話でシリアス編に入りますがその前に楽しくさせてやってくださいな!

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

ではまた次回でお会いしましょう!


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弦巻シンと初めての気持ち

すみません変更します。今回からシリアス?編です。やっぱり楽しいことを後にした方がいいかなと思い先にこちらの話を書きました。

それではどうぞ!!


 今日は日曜日、優雅に過ごそうと思っていたがそうはいかない…何故なら、そう今日はモカ達が泊まりに来るのだ。

 

「よしっと、部屋の掃除はこれぐらいでいいかな」

 

 家具が少ないおかげであまり手間をかけずに掃除ができたぜ、まあ家具は必要最低限だけでいいってのは掃除を楽にするためなのかもな

 

「でもさすがに掃除機欲しいよなー箒しかねえや」

 

 ホームセンターで買ってきた箒とあのテープのコロコロだけ、まあコロコロがあればある程度の掃除はできる

 

「よーし!夜見れない分パスパレのバラエティー番組見るぞー!」

 

 多分今日の夜は見れない絶対、わかるから

 

 その後はためてた番組を見ていた。するといきなり電話がかかってきた。

 

「……千聖先輩からだ、なんだろう」

 

 俺は何かやらかしたのかもしれないと言う恐怖が襲ってきたがここで電話を取らない方が後々怖いと思いその電話を取ってしまう。

 

「もしもし、千聖先輩どうしましたか?」

「……………………」

「千聖先輩?」

 

 電話に出るけど千聖先輩からの返事がない、一体どうしたのだろうか

 

「千聖先輩ーもしもーし、千聖先輩?」

「……シン、話があるの」

「話?何の話ですか?」

「電話じゃなくて直接会って話せないかしら」

「別にいいですけどどこで?」

「そうね…羽沢珈琲店でいいかしら?」

「わかりましたー今から向かいます」

 

 千聖先輩…何かあったのだろうか、そのなんかいつもの千聖先輩の雰囲気じゃなかった。

 

 いやあれは千聖さんだった、ような気がするが気の所為だろうな

 

 そう自分に言い聞かせたシンは制服に着替え夕方は少し冷えるかと思い薄めのパーカーを羽織って羽沢珈琲店へと向かった。

 

 途中商店街を歩けば

 

「よ!弦の兄貴!うちよってけよ!」

「わるいな鈴木さん俺盆栽には興味ないんだよ」

「そっかーでも花も売ってるぞ!」

「花も友達が専門家だから大丈夫でーす」

 

 まあ蘭のことなんだけどさ、寄っていって何か買ってやりたいが俺は今月ピンチなんだよ!許してくれ!

 

 後俺は花を育てるのが苦手らしい、蘭から貰ったひまわりに1日水をあげ忘れて焦ったりもしたからな

 

「おー弦の兄貴!野菜、買って行ってくれるよなあ?」

「その脅し方やめろ!ますきにチクるぞ佐藤さん!」

「馬鹿野郎!娘に怖がる親父じゃねーよ!」

 

 んなこと言って怒られてそうだよなー

 

「親父ーあたしのドラムスティックどこやった?」

「あー悪い悪い!落として踏んでしまったわー」

「あぁぁん?舐めてんのかてめぇ」

『え?』

 

 案の定ガチギレですよ

 

「てめぇドラムスティックがどれだけ大切か分かってんのかゴラァー!」

「ご、ごめんなさーいい!!」

 

 俺は関わらない方がいいと思いその場をすぐ後にする。多分関わってたらとばっちりくらってたと思う。

 

「弦の兄貴今月…」

「悪い、金ない、さよなら」

「お、おーい!俺への恩は忘れたのか!?」

「もう返したよ、何倍にもしてな!?」

 

 毎月毎月1万円ぼったくりやがって!確かにあの時貰った1杯には助けられたし感謝もしてる!けど俺はその恩を返すぐらい金も払ったし手伝いもした!許してくれよ!?

 

 いろんな所から声をかけてもらいながら羽沢珈琲店に着く

 

「いらっしゃいませー!」

「日曜も働くとかお勤めご苦労様、つぐみ」

「シン君!私は家の手伝いだけどね」アハハ

「えっと、目的は千聖さんかな?」

「おーそうそうどこいる?」

 

 なんで俺が千聖先輩目的で来たことを知ってるのか知らんがそう言うならそう答えるしかない

 

「千聖さんは1番奥の席にいるよ」

 

 奥の席を見てみるも肘をつき窓の外を眺めている千聖先輩の姿があった。

 

「ありがとう」

 

 そう答え俺は千聖先輩の席に向かう。

 

「相席いいですか?」

「……………………」

「もしもーし、千聖先輩?いや千聖さん?」

「……いいわよ」

 

 いいと言われなくても座ってたけどさ、てかなんだろうやっぱり千聖さん?なのだろうか

 

 千聖先輩は時々子供のような雰囲気になる、その時俺は千聖さんと呼ぶようにしてるけどそんなの普通の人気づけないよなっての

 

「で、話ってなんですか?」

「…………ねえ、シン」

「はい」

 

 千聖さんはさっきまで外を眺めていたが俺の方を向き口を開いた。

 

「私を抱いて欲しいの」

「ッ!」

 

 だ、抱いて欲しい?抱いて?抱く?つまりあれか、その

 

「えっと、エッチしてってこと?」

「ええ、そうよ」

「ッ!」

 

 何だこの人さっきと違って千聖先輩だ、てかなんだよ抱いて欲しいって

 

「シン、私のこと好き?」

「千聖先輩が好きになっちゃダメだって言ったじゃなですか?」

「じゃあそれがなかったら好き?」

「いや急に言われても…」

 

 ひまりの返事すらできない俺が今ここではい好きです、なんて返事はできなかった。

 

「ねえシン、私の処女欲しいんじゃないの?」

「いやそれは結婚する時って」

「今すぐ手に入るなら別にいいじゃない」

「そんな簡単な話じゃないんですよ」

 

 別に千聖先輩が嫌いってわけじゃない、けどヤるって話になるもそれは別になってしまう…

 

 付き合ってもないのにエッチをする。それはおかしいと俺は思う、世の中にはどうでも思わないやつがいると思うが俺はそう思わない、思いたくもない…!

 

「……抱いて」

「無理ですよ…」

『……………………』

「抱いて…!」

「だから無理ですって」

「……ッ!どうしてよ…!どうして抱いてくれないのよ…!」

「ちょっ!千聖さん!静かにしてくださいよここ店の中ですよ!」

 

 あの時と同じだ。有翔の時とだ、自分のことで精一杯になるとこうだ、千聖さんになってしまう。

 

 先程雰囲気を変えたのは無理やり変えたのだろうか…

 

「……シン、お願いだから、正義の味方になるんでしょ…?」

「なりたいですよ、だから何があったんですか?」

「……………………」

「千聖さん、言わないと俺わかりませんよ」

 

 千聖さんは頭を抱えたまま動くかず話をしてくれない…この人がこんなにもなってるんだ。相当な何かがないとここまで狂わない

 

「言えない、言えないのよ…!」

「理由を知れないと俺はあなたの望みに答えてあげれない」

「言えないものは言えないのよ!」

「……だから俺も理由なしに抱くなんてそんなことはできないって言ってるんだよ!」

「ッ!」

 

 少し言い方がきついかもしれないがこうでも言わないと説得してくれないと思ったからそう言う…

 

「どうしてよ…!初めて(・・・)をシンにあげたいのに!」

「なんで抱いてくれないの!?なんでなの!結婚するって言ったじゃない!」

「あ……」

「処女だって欲しいって言ってたじゃない…!ねえ、お願いだよ…!」

 

「お願いだから私を助けてよ…!!」

 

 目の前で狂える千聖さんを俺はどうしようもできなかった。つぐみの父さんがやって来て千聖さんの対応をして何とか治まらせて他の客はつぐみが帰らしていた。

 

 後から聞いたが無理にではなく金を払わなくていいと話をつけて店をあとにしてもらったらしい。

 

 

「白鷺君、紅茶を飲むといい、紅茶には人をリラックスさせる効果があるんだよ」

「……はい、いただきます」

 

 俺は何もできなかった。つぐみの父さんはすぐに大人の対応をしてつぐみはすぐに客を退場させた。そんな対応なんて俺にはできないよ…

 

「つぐみ、ちょっと席を外そうここからは僕達が関与していい話じゃないと思う」

「う、うん、わかったよお父さん」

 

 つぐみはすぐに裏に行き喫茶店から出ていった。

 

「後は頼んだよ英雄君」

「……………………」

 

 英雄?笑わせるなよ、目の前でおかしくなる女の子を救ってやれなかった俺ごときがか?

 

 いや今はそんなのどうでもいいんだよ…!目の前だ、目の前のことだけに集中しろ弦巻シン!

 

「スゥーハァースゥーハァー」

 

 その場で何度も呼吸を整える。アレックス曰く呼吸さえ整えれば痛みも和らげるし集中もできるって稽古の時言っていた。

 

 だから俺はそのことを信じて呼吸を意識して続ける

 

「……よし」

 

 準備ができて千聖さんの元へ向かう。もうさっきみたいなことはさせない

 

 それにもう千聖さんのあんな顔なんて見たくない…!

 

「さっきは取り乱してごめんなさい」

「……いえ、大丈夫ですよ」

 

 大丈夫、ちゃんと次は話を聞こう。

 

「千聖さん、言えないことはわかりました」

「……………………」

「でも俺はあなたを抱くことなんてできませんよ…」

 

 俺の童貞が欲しいって言ってくれたひまりは?あいつは俺を落とすって言って頑張ってるのに、そんな中俺は簡単に貞操を捨てていいのか?

 

 

 

 

 

 

 ああ、ダメだ、もう何もわからないよ、何が正しいのか、どの行動がみんなのためなのか…色々あって頭の中でこんがらがってしまってもう

 

 わかんないや

 

「ちょっと」

「?」

「ちょっと考えさせてください…」

「……ええ、いい返事を待ってるわ」

 

 千聖さんなのだろうか、いや千聖先輩?もうそれすらわからなくなってしまったよ

 

 もういっそのこと呼び捨てにしよう、千聖は少し複雑な表情をして紅茶をまたすすっていた。

 

「ごちそうさま、今日はもう帰るわ…本当に取り乱してごめなさい…私先輩失格ね」

「……………………」

「……お金は置いていくわ、それじゃ」

 

 まただ、また何も言えなかった。

 

 もう急になんなんだよ抱いて欲しいとか、そんな事言われても俺は何も出来ないってのは

 

 こんな場面になって思うよ

 

「正義の味方って楽じゃないな」

 

 その前から知っておくべきだったのだ、この正義の味方になるって挑戦がどれだけ無防だったのかを

 

「……シン君?千聖さん帰ったの?」

「…………ああこれ千聖の分」

「別にお金払わなくても…」

「あいつが置いて行ったんだよ」

「千聖?あいつ?ダメだよシン君、ちゃんと先輩かさんをつけないと」

「……ごめん」

 

 どっちで呼べばいいかもわからないんだよ、なんてつぐみに言ってもわからないから俺はごめんって謝ることしかできなかった。

 

「つぐみ、また来るよ、次は今日みたいなことはないと思うから……多分」

「う、うん!」

 

 つぐみにも迷惑かけてしまったな、落ち着いたら謝っておこうか

 

 羽沢珈琲店を出て空を見上げれば夕焼けに染まる空が広がっていた。その光景はとても綺麗なはずなのに綺麗と思えない自分がいる

 

 来た道を戻るがその道も行きと全く違って見える。

 

「弦の兄貴!夜飯まだだよな?新作ラーメン食わねーか?」

「……………………」

 

 シンはそのまま無視して三郎のおやっさんの前を素通りする。

 

「おい無視はねーよ弦の兄貴」

 

 おやっさんがシンの肩に手を置き止めようとした時

 

「……離せよ」

「あ?」

「お前に構ってる暇はないんだよ、離せ…!」

「ど、どうしたんだ?」

「ッ!ごめん」

 

 考えて、考えて考えて考えてると俺はそのことしか考えれなくなってしまう、これも悪い癖なんだろうな

 

 そしてさっきはおやっさんに酷い態度まで取ってしまう。

 

 なんなんだよ、なんなんだよ…!この気持ちは、初めての気持ち、わからない

 

「……シン?」

「沙綾?」

 

 下を向いて歩いていたら目の前から名前を呼ばれ前を向くと沙綾がいた。

 

「どうしたの?凄い顔だよ?」

「ッ!なんでもない」

 

 来ていたパーカーのフードを被り逃げるように沙綾の横を通り過ぎようとしたら

 

「こ、こんばんは…」

「ッ!」

「純、偉いね、ちゃんと挨拶できて」

 

 純、あーあれか、俺が助けた沙綾の弟か

 

「えっとそのこないだはありがとう、シンジ君のお兄ちゃん」

 

 純は笑顔でそう感謝の言葉を述べる。俺があの時助けた時のことのお礼なのだろう、だけど今の俺にはさ…

 

「やめろ…やめてくれ…!」

「……シン?どうしたの?」

「な、なんでもない」

 

 そんな笑顔を今の俺に見せつけないでくれよ!とても受け止めきれる状態じゃないんだ

 

「僕なんかしたかな?うんこって言ってないよ?」

「こらそんな言葉使わないの!」

「た、例えばの話をしたのにー!姉ちゃんのうんこ!」

「こらー!また言って!」

 

「(シン、何かあったの?)」

 

 沙綾は心の中でそう思いながら逃げた純を追いかけるのであった。

 

 商店街を抜けた後は誰とも話すことなく家のマンションまでたどり着く、もう今日は何も考えたくない、とりあえず何も考えたくない

 

「シン君遅いよ〜」

「結構待った」

「シン君いないから入れなかったじゃん!」

 

 そう言えば今日泊まるとか言ってたな…けど

 

「ごめん今日はお泊まり会なしで」

「えー!準備してきたのに!」

「急すぎる、理由は?」

「シン君どーしたの〜?機嫌悪いの?」

 

 機嫌悪い?ああそうか、俺は機嫌が悪かったのか

 

「そうそう機嫌悪いからさ」

「だったらモカちゃん達が癒してあげよう〜」

「いやそうゆうのいいからさ」

「で、でも何かあったなら相談とか「いいからさ!」……ッ!」

「今日は1人にさせてくれ、頼むから…!」

 

 そう言いホールのドアをカードキーで開けてシンだけが中に入っていく

 

「シン君どうしたんだろう…」

「……そっとして欲しいならそっとしとこうよ」

「でもどうしよう…モカちゃん今日友達の家に泊まっちゃって親に言っちゃったよ〜」

「あ、私も」

「……はいはい、うちは広いから泊まってもいいですよ」

 

 蘭はため息混じりにそう答え3人は蘭の家へと向かって行った。

 

 シンは家に着くなりベッドに入り込む考えるのをやめて深い眠りについたそうだ。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 次の日、いつもよりかなり長く眠っていたようだ…今日は月曜、学校がある日だが行く気になれない、むしろ行きたくない

 

「サボろう」

 

 と思った矢先電話がかかってきた。でも出る気なんてなく放置していたら自然と音は止まった。次にはメッセージが来たことを知らせる通知が届いた。

 

 メッセージを見てみると

 

「学校はちゃんと行きなさい」

 

 と千聖からのメッセージが来ていた。

 

「……誰のせいでこんなに悩んでると思ってるんだよ」

 

 全ては千聖先輩が抱いて欲しいとか訳が分からないことを言ったせいなのに…重い足を動かして学校へと向かう。

 

 クラスに着いた時にはもうHRが始まろうとしていてギリギリの登校だった。

 

「お前が遅刻ギリギリとか珍しいな」

「……おう」

 

 蒼汰からそう言われ答えた後は席につきすぐHRが始まりそこから授業へと続く、俺がボーッとしてる間に午前の授業は終わっていたようだ。

 

「シン飯食おーぜ」

「……ああ、そうだな」

「あ、リュック家に忘れてた」

「お前手ぶらで来たのかよ」

 

 完全に忘れてたよ、まあなくても別に死なねーしいいか

 

「んじゃ学食行くのか?」

「金もないし今日はいいや」

「おいおい大丈夫か?」

「大丈夫、食欲だってねーしな」

 

 そう言えば昨日の夜何も食べてないな、けど何故かお腹はすいてないし食欲もない

 

「……お前がそう言うならいいけどさ」

 

 蒼汰は俺の目の前で弁当を食べる。多分だけど今回の弁当も巴が作ったんだろう、美味しそうに食べていた。

 

「……なあ蒼汰」

「どーした?」

「セックスって気持ちいのか?」

「ブフォー!……ゲホゴホ!」

 

 どうやら不意打ちで噎せたようだな、すまん

 

「な、なんだよ急に!」

「お前俺の誕生日の日巴としてただろ?しかも俺の実家でさ」

「そ、それは…すまん、そっかバレてたのか」

「……いーや、うちのバカメイドが加湿器に媚薬入れてたからな、しょうがないよ」

「通りで巴が色っぽかったのか」

 

 蒼汰は手で顔を抑えなるほどなと理解せんばかりの回答をしていた。

 

「それで?気持ちいのか?」

「……それはーその、すげー気持ちよかった」

「あっそ」

「お、おいどこいくんだ?」

「気が変わった、パンでも買ってくるよ」

 

 シンは席をたちもうの何も残ってないと思う購買に向けて足を運ぼうとする。

 

「お前は気楽でいいよな…」ボソ

「なんて?」

「んでもねーよ」

 

 まあ蒼汰達は愛し合ってるからいいんだよ、だけど俺は?ただただ抱いて欲しいって話だよな…理由も説明してくれないし、なんなんだよ

 

 購買に行くがパンなんてものはもう何もない、今頃になってお腹が鳴りだし空腹感が俺を襲ってくる。

 

 もう時間も時間だし学食も混んでるだろうな、いいや今日はもう夜になにか食べればいいや

 

 教室に戻り適当にすごし午後の授業も終わる。

 

「シンー!今日よかったら正門まで一緒に「こころ」沙綾?なにかしら?」

「その…今シンのことはそっとしといてあげて」

「確かに言われてみればいつものシンじゃないわ」

「シン君今日ずっーとあんな感じだったね」

「おたえもそう思った?私もなんかーんー全然キラキラしてないなーって感じた!」

 

 シンと同じクラスの彼女達はシンがなにか変だということに気づいていた。しかし今はそっとしといてあげた方がいいと沙綾が行ったことでみんなはそのまま教室を後にした。

 

「……バイト行くか」

 

 気づけば教室には誰もいない、日直は鍵を教卓の上に置いていて最後に出る人は窓閉め確認してくださいと黒板に大きく書かれていた。

 

 特に窓閉めとか確認せず鍵をかけ職員室に鍵を変えてして学校をあとにしてバイトに向かう。

 

「こんにちはー」

「おーす、お前がギリギリとは珍しいな」

「そのセリフ2回目」

「???」

 

 店長はこいつ大丈夫か?って感じで俺を見ていたが横を通り更衣室へと向かい着替えて仕事をする。

 

 今日はやけに客が少ないな…なにかあったのか?

 

 1人でレジをしていたため話す相手もおらず昨日のことを考えてしまう…考えても結果なんか出ずにずっと詰んでるままなんだけどな

 

 そんなシンを影から見つめる3人

 

「シンどうしたのかなーいつにも増してカッコイイような?」

「いやいやーシン君はいつもカッコイイので」

「カッコイイからイラってきた、殺していい?」

「そ、それダメだよ店長!」

 

 店長もイケメンの分類に入るが本人はあまり自覚していない様子だった。

 

「(あの顔はなにか考えている時の顔、忘れもしないよモカちゃんが惚れた顔なんだからさ…)」

「(別にその顔だけがってわけじゃないけどね〜)」

 

 モカは誰にも聞こえない心の中でそう言った。

 

「ここは先輩であるリサ先輩〜頼みます」

「こんな時だけ先輩呼びってなんなのかなー?」

「いえいえーいつもモカちゃんはリサ先輩って呼んでますよ?」

「すぐバレる嘘を言わないの」

「はーい」

 

 リサは1人でレジをしているシンの元に向かい話しかけた。

 

「シンどうしたの?何かあった?」

「……別に」

「ハルの時と同じだよーシンは次にまあ別にって言うね♪」

「……まあ別に」

「ほらー!何があったのかお姉さんに相談してみて」

 

 相談、ねー

 

「リサ先輩」

「うん」

「……リサ先輩処女じゃないですよね?」

「ッ!!??いきなりな、なに!?」

「あの日はすみません、うちのメイドが馬鹿して」

 

 リサ先輩のあの日に起きた出来事を俺は話した。

 

「……そ、そっかーそっかー!あはは、通りでね」

 

 この人達はやっぱり否定しないんだな、あの時は恥ずかしくて言えなかったから今なら言えるってやつだろうか

 

「やっぱり初めてって大切だと思いませんか?」

「……質問の意味がよくわからないけどアタシはハルとできてそのー」

「そのー?」

「う、嬉しかった、です。はい」

 

 リサ先輩は下を向き耳で赤くなった顔を隠しながらそう答えてくれた。

 

「ですよねーやっぱりそうですよね」

「あはは、お姉さんちょっとお手洗いに行ってくるね」

 

 やっぱり愛し合ってないとそうゆうことっとするべきじゃないよな?

 

 その後はバイトを終わらせ早く家に帰ろうとするが店長からモカを家まで送ってやるよう頼まれた、まあ前からのことだから別にいいけどさ

 

 俺はすぐに着替えてたがモカがまだ着替えているようだ。コンビニの前にて1人で数分待ったところで

 

「シン君待った〜?」

「すげー待った」

「それはごめんー帰ろっか」

「……おう」

 

 モカと並んで一緒に帰る。モカは俺のことを察してくれてるのからいつもみたいに手を繋ごう、なんてことは言ってこなかった。

 

「シン君さ」

「……………………」

「ううん、シン君が話したくないなら別にいいや」

「……ありがとうモカ」

「いえいえーモカちゃんはシン君の理解者なので〜」

 

 まったく、冗談で言ってると思うが今の俺にはそのセリフがとても助かるよ

 

「……なあモカ」

 

 歩いていた足を止めその場でモカに質問をする。

 

「もし俺とセックスしてって言ったら…どうする?」

「……ッ!それはー誰でもよくて?」

「わからない、モカしかダメなのかもしれないな」

 

 千聖が俺に頼むってことは頼れる人が俺しかいなかった…ってことになるのだろうか、だったらこの質問は誰でもないモカしか頼めないってことになるな

 

「今すぐしたいの?」

「そうゆうのじゃないんだよ…」

「んーよくわかりませんな〜」

 

 まあそうだよな

 

「確かに毎日モカちゃんを見てて興奮するのはわかるけどまさかこんな急とはね〜」

「確かにモカは可愛いよ、超がつくほど可愛い、けどこれは例え話だ」

「ッ!?」

 

 そう、例え話だ。モカの返答次第でモカを抱いたりなんて決してしない

 

「別にモカちゃんはシン君のこと……」

「……俺のこと?」

「す、好き…」

 

 とモカが言うとした瞬間

 

ブーブーブー

 

 携帯のバイブ音が静かな夜に鳴り響く、音の先はモカの携帯からだった。

 

「ごめん電話〜」

「もしもしお父さん?……もーう大丈夫だって子供じゃないし〜?それにシン君もいるしさー」

 

 モカは父さんと話をしているようだな、なんだろう帰るのが遅くて心配になったのか?

 

「……えーはーい、コンビニから四個先の曲がり角で待ってるから」

「ごめんねーお父さんが迎えに来るだってさ」

「確かに不安にはなるよな」

 

 娘の帰りが遅くなると不安にならない親はいないさ、それにあの人だモカのこと好き好ぎてるからな

 

「モカ、さっきの質問だけど忘れてくれ」

「……うん」

 

 そう言った後俺達は一言を喋らなかった。モカの父さんが待ってるという場所につけば車が止まっており中からモカの父さんが降りてきた。

 

「貴様ー、相変わずモカたんに近すぎるんだよなー!」

「別に近くないですよ」

「いーや!貴様はそうやってモカたんを誘惑して…貴様だけにはモカたんを渡さないぞ!?」

「わかりましたから、モカのこと頼みましたよ」

「うるさいわ!当たり前よことを言うな!」

 

 うるさいのはあなたですよ、結構夜遅いんだから静かにしないと

 

「まあモカちゃんとシン君は結婚するんだけどね〜」

「……………………」

「おろ?2人ともどうしたの〜?」

 

 モカよ、さすがに親の前ではそのこと言うなよ

 

「まさか、お前…!」

「も、モカたんに手を出したのか!?」

「……出してないですよ」

「ほ、本当なの?モカたん?」

「……うん」

「ならよかった」ホッ

 

 その後モカは車に乗り俺に手を振りながら家に戻っていた。

 

「……はあ、俺って本当に不幸だよなー」

 

 夜空を見上げて天にそう呟く、その声はいつもより小さく本当に不幸なんだ伝わりそうだった。

 

 

 さてあなたは一度に大きな不幸が来る方がいいですか?

 

 それとも小さい不幸が続く方がいいですか?

 

 そう、この時から始まっていたのだ。シンの人生の中にて過去一番の不幸の連鎖…シンはこれからどう立ち向かうのかそれはまだ誰にもわからない。




ここからシンの苦悩は続きます…正義の味方を目指す彼はここからどうなるのか、自分の書きたいことを100%伝えれるがわかりませんが少しでもわかりやすく伝えられるよう頑張ります!

それではまた次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと昔話

お久しぶりです!来週は更新できずに申し訳ない…

今回はシンの話です。それではどうぞ!!


 あの日から数日経った今、俺はまだ返事をしていない。

 

 なんて返事すればいいのかわからないしどうすればいいのかもわからない。

 

 誰かのために動けば誰かを傷つけてしまう。そんなことは…最初からわかってた。

 

 誰かを救うには誰かを犠牲にしなければならい

 

 それが今の状況だ、千聖先輩を助けたらひまりが悲しむ、かと言ってひまりに俺の童貞を上げたところではい解決、とはならない

 

 これがもしひまりがいなかったらどうなってたと思う?俺は千聖先輩が救われるのなら抱いていた…と思う。

 

 別にひまりが悪いとか言ってるんじゃない、この選択がとても難しいんだよ…!

 

「シン?」

「……なに?沙綾」

 

 一人で考えている時沙綾が話しかけてきた。

 

「次移動教室、もうみんな行ったよ?」

「あ、ああ」

 

 次の授業は理科で実験するから理科室に行くって話だったな

 

「……その、何かあったの?」

「なんでもないよ、それより先行ってくれ後で行くから」

 

 沙綾が質問をした後間も開けずすぐにそう答えた。

 

「シン…わかった、ちゃんと来るんだよ?」

「……はいはい」

「はいは1回だけ」

「わかったって」

 

 沙綾は理科の教科書を机の上に出してその上に可愛らしい筆箱を置き教科書を抱え込むように持ち教室を後にした。

 

 さっきまでの授業なんて聞いてすらいない、テストも近いってのに感心しねーな全く

 

「はあ、一体俺はどうすればいい」

 

 千聖先輩はもちろん助けたい、けどそれをするとひまりは

 

「……ひまり出るかな」

 

 花咲では次の授業がそろそろ始まろうとしてるんだ、だったら羽丘も授業が始まるんじゃないのか?

 

 そう思いながらもひまりに電話を掛けてしまう。出るわけないのにな

 

「もしもし?シン君どうしたの?」

「ッ!」

 

 驚いた…ひまりのやつ電話に出やがったぞ

 

「お前授業は?」

「今トイレ…って!ちゃんとスカート履いてるからね!?」

「……そっか、それは残念だな」

 

 なにってんだろうか俺は

 

「で?どうしたのー?もうそろそろで授業…」

 

 とひまりが言いかけた時

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 授業の開始を知らせるベルが鳴り出した。

 

「えへへ、授業始まっちゃったね」

「ああ、そうだな」

 

 俺はなんでひまりに電話を掛けたんだろうか、このことをひまりに話そうと思ったからか?

 

 そんなじゃんない、シンプルに俺は…

 

「なあひまり」

「ん?どうしたのー?」

「……ひまりに会いたい」

「……………………」

 

 ひまりに会いたいと思ったんだ。会って話をしたい、そこで…今回の件を伝えるのもありかもしれないって思ってるだけだ。実行には移さないだろ

 

「そっか、わかった!じゃあ今から会おっか!」

「……だ、大丈夫なのか?」

 

 今から会うって学校から抜け出すってことだろ?ひまりのやつ大丈夫なのか?

 

「いいよいいよ、それにさ…」

 

「好きな人から会いたいなんて言われたらこっちまで会いたくなるよ」

 

「ッ!……わるい、頼んだ」

「なんで謝るのー!私が会いたいから会うの!それじゃあ商店街近くの公園で待ち合わせね!」

「……わかった」

 

 急遽俺がひまりに会いたいとか言ったせいで俺達は学校から抜け出すことになった。まあ俺が悪いんだけどさ?ひまりにも無茶させたな

 

 俺は普通に階段を降りて外に向かう、その途中で会ってしまう。

 

「何処へ行く」

「ッ!先生」

 

 まさかこんな時に限って先生と会うとはな

 

「授業、もう始まってますよ?」

「それはこっちのセリフだ、階段の前で何をしてる、まさか下ろうとしてたのか?」

「……下ろうとしてない、屋上に行こうとしただけですよ」

「屋上は反対だぞ?」

 

 くっそ、こんな所で時間食われていたら抜け出すことなんてできないぞ

 

「屋上は行ってもいいんですか?」

「授業中だが……まあ休憩がてらなら許してやる」

「ありがとうございまーす」

 

 屋上に行くなんて言わなければよかったな、嫌でも屋上に行かないと行けなくなったし、てか屋上着いてちょっと休んで外に出れば大丈夫か

 

 俺は携帯を取り出しひまりにちょっと遅れるとメッセージを送った。

 

 屋上に着けば誰もいない、まあ授業だからな?てか屋上って初めて来た。結構綺麗なんだな

 

 先生は屋上に着くなりタバコを取り出し火をつけていた。

 

「悪いな、屋上に来たらいつも吸ってるんだ」

「……別に、知り合いがよく吸うんで大丈夫です」

 

 千聖先輩とか俺の前で吸ってるしな、慣れちゃいけないけどもう慣れたよな

 

「あー白鷺か?」

「ッ!……違いますよ」

「白鷺がタバコを吸ってるのは知ってる、あまり教師を舐めるな」

 

 そっか…バレていたのか、千聖先輩は学校で知ってるの俺しかいないって言ってたが先生にはバレてたってわけか

 

「ガキがいきがるなって伝えとけ」

「先生が言ってくださいよ」

 

 俺は今そんな話をできる状況じゃないっての

 

「……なあ先生、俺の進路調査に書いたこと見たよな?」

 

 俺がそう聞くと先生はタバコの火を消しもう一本のタバコに火をつけ一服したあとに答えた。

 

「……正義の味方になる、か」

「笑わないんすか?」

 

 こんなこと堂々と書くのは小学生の低学年とかだろ、高校生にもなってこんなこと書いて笑わない教師なんているのか?

 

「別に私は笑わないな」

「……そっすか」

 

 その点は助かるな、担任があんたじゃなかったら笑われてたな

 

「私の知り合いにも正義のヒーローになるって言ってたやつがいてな」

「……いやーもう何年前の話だろうか」

「……先生?」

「なに、少し私の昔話を聞いてくれ」

 

 先生はタバコの火を消しもうタバコには吸わないのだろうかライタをポケットの中へと入れ話し出した。

 

「昔海外へ旅行しに行ったんだ、1人でな」

 

 1人でってよく行けるな

 

「そこで私はあいつと会った」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「Hey、嬢ちゃんいい体じゃん?俺らと遊ばねーか?」

「……悪いな、処女なんでそんなことわからないんだ」

「処女!?尚更ヤりてーな!」

 

 英語でそう話しかけてくる外人に私は英語で返す。これでも英語の教師だからな?

 

 せめてカフェにいる時ぐらい静かに過ごさせてくれ

 

「なあいいだろって、金なら払うからさ」

「ふざけるな、私は癒されるために旅行してるんだ」

 

 様々な理不尽から開放されるため日本を出て海外でのんびりしようと思い来てるのにこんなヤツらに絡まれたら時間を無駄にしてしまう

 

「俺達が癒してるからさ?快楽ってやつによ!」

「なあ、俺も混ぜてよ!すげぇ楽しそうだな!」

「……ッ!」

 

 その時あいつは現れた

 

「あ?ガキが知っていい遊びじゃねーんだよ、失せろ」

「そっか…残念、だったらあんたらが失せろよくそやろうー!!」

 

 少年は男の股に思いっきり蹴りかまし

 

「逃げるぞ」

「お、おい!待て私は!」

 

 まだ料金を払ってないんだけどー!?

 

 結構走った先で少年は手を離し私の正面を向き話しかけてきた。

 

「ダメだぞ?あんな所1人で行ったら!あと少しで無理やり襲われるところだったぞ?」

「……ふん!そんなことに屈したりしない」

「姉さんおっぱいでかいから狙われたんだよ」

「なっ!?き、貴様ー!」

 

 まだ小学生ぐらいの少年は私の胸を揉みながらそう言っている。

 

「すげえちょー柔らかいな」アハハ

「……小学生じゃなかったら許してないぞ」

「俺はガキじゃねーよ」

「なんだ?その歳でもう童貞卒業したのか?」

「してないな、俺は童貞だー!あ、姉さんが卒業させてくれるの?まじで!?」

「調子に乗るな!私だってまだ処女だ!」

 

 こんな感じで私とあいつは何故か仲良くなりお互いの話をするようになった。

 

 なんで話すことになったかわからないがたくさん話した、学校で起きた理不尽なことやいろいろな?

 

「ふーん、姉さんが教師とか生徒は幸せもんだな」

「なぜだ?」

「おっぱいでかいから!」

「……ッ!?だ、だから貴様はそう簡単に触るな!この変態め!」

「いや姉ちゃん(・・・・)胸ないし?揉める時に揉まないとね」アハハ

「ったく、これだからガキは…」

「とか言って喜んでたりして」モミモミ

「あぁぁぁぁああ!!」

 

 動きが俊敏すぎる。一体こいつはなんなんだ?明らかに態度とかも小学生とかではない、なんだろうか…学生の相手してるみたいだ

 

「次はお前だ、お前の話をしろ」

「あ、俺?俺はそーだな」

 

「正義のヒーローになりたいな」

 

「……ふっ、ガキだな」

 

 そのことを聞いた時私は思わず笑ってしまった。雰囲気は小学生じゃなくても夢は小学生みたいなんだな

 

「いーや、本当さ、俺は正義のヒーロー、んでもって騎士王になるんだ」

「お前は馬鹿か?騎士王とかそんなメルヘンな話があるわけないだろ」

「私は全てを話した、胸も触らせた、そんな嘘を言うなら時間の無駄だったな」

 

 なんでこんなガキに全てを話したのだろうか、頭に来た私は茂みに腰を下ろしていたが立ち上がりその場を後にしようとした

 

「嘘じゃないよ、俺は騎士王になるために生まれてきたんだ」

「……だからそんなこと」

「あるんだよこの国には、あんた日本人だろ?美人だしおっぱいの形いいし」

「そ、それは関係ないだろ!?に、日本人なのはあってるが…」

 

 胸を隠すように言うと少年は立ち上がり近くにやってくる

 

「なんだ?胸はもう触らせないぞ」

「……はい、姉さん携帯は?」

「?携帯ならポケットに…!?な、ない!携帯がない!まさか…スられたのか!?」

 

 でも確かにさっきまでポケットに入れていたはず

 

「違うよ、俺が今取ったからさ」

 

 少年は携帯を手に持ち真顔でそう言う。だがそんな素振りを見てないぞ

 

「……な、何をした!あれか?マジックか何かか!」

「そんな事しないって」モミモミ

「ああ!!だから胸を揉むな!」

「本当に形いいよね!まあこんな巨乳揉んだことないけどね!」

 

 本当になんなんだこのガキは!?正義のヒーロー?騎士王になる?ただの変態王じゃないか!?

 

「……もういい、ホテルに戻る」

「それって俺ついて行っていいの?は!もしかして俺今日で卒業!?」

「なわけあるか!着いてくるな!」

 

 私は少年に背中を向け帰ろうとした時

 

「探したぞーさっきはよくもやってくれたな?」

「……いや私は何もしてない、したのはあの少年だろ」

「ふざけんな!てめぇらグルだな?」

「こんな変態王と一緒にするな」

「あれ?俺馬鹿にされてる?されてるよね!?」

 

 こいつとグル?ふざけるな、こんなすきさえあれば胸を揉んでくるガキだぞ?もうかかわりたくないっての

 

 てかブラすこしズレてるし…この男共が消えたら戻そう。

 

 そう思っていると

 

「てめぇはぜってぇ許さねえから、アジトに連れてって遊んでやる」

「だからな?わたしは処女なんだ、旅先で失うわけにはいかないと…」

 

 話してる途中に男の仲間であろう奴らから囲まれ腕を掴まれる。離そうとしても相手の力は私より強い、なんせ男だ、女であって何もしてない私の非力な力が通用するわけがない

 

「クソ!えーい離せ!」

「暴れんなって、無駄なんだからさ!」

 

 嘘だろ?私はこんなヤツらに捕まって処女を失うのか?

 

 いやだ、いやだ!私はこんなことをするためにここに来たんじゃない!退屈な日常から少しでも抜け出したくて来たのに…私が抜かされるハメになるのか?

 

 抵抗しても無駄だと知った私はもう連れていかれるしか選択が残されていなかった…

 

「助かりたい?」

 

 あの変態王がそう私に聞いてきた。

 

「助かりたいさ、けどもう無理だよ、私はこいつらに処女を奪われておしまいさ」

 

 日本に帰れるのだろうか?…でもそれも悪くないのかもしれないな、戻ったらまた教師生活の始まりだ。毎日毎日男子生徒からエロい目で見られる日常、だったらいっそのことこの国に永住するってのもありなのかもしれないな

 

「それはダメだよ、そんなヤツらに姉さんの処女あげるならさ?」

「俺にちょうだいよ」

 

 そう言ったら変態王は近くにあった木の棒を拾い私を両隣から掴んでいた男共の頭に木を振り、倒させた。

 

「このガキ!何もしてこないから放置してたのに!」

 

 他の男共が小学生相手に顔色を変えて襲いかかるも少年はなんともないように木を振るい男共を蹴散らす。

 

 私はただその場にいてその光景を見ることしかできなかった。

 

「なあ、姉さんのおっぱいってすげー柔らかいんだよ」

「俺だけのものだからあんたらは手を引きなよ」

 

 少年はリーダー格であろう男に木を向け恥ずかしいセリフを言っている。

 

「ふざけんな!てめぇみたいなガキに…!」

「……手を引けって言ってるだろ?」

「ヒィィィィ!?」

 

 木を男の股元に当たりそうな近い位置にぶっ刺して脅迫するような形になると

 

「お、覚えてろよぉぉおお!!」

 

 男共はその場から離れまた少年と私の二人っきりになっていた。

 

「あ、ありがとう」

 

 乱れた服装を戻そうとするが少年はすぐさま私に近づき

 

「すっげー!生おっぱいだ!さっきのと全然違う!!」

「だぁかぁらぁ!勝手に触るなー!?」

「じゃあ触っていい?」

「いや、それはそのだな」

「返事が遅い」モミモミ

「まだ何も言ってないだろが!」

 

 私はその場からすぐに離れ胸を隠すようにして少年を睨みつける。いくらガキだからとてこんなに揉まれたら話は変わってくる

 

「な?嘘じゃなかっただろ?」

「ッ!そ、それはだな」

「でも実際に俺は姉さんの正義の味方、いや正義のヒーローってやつじゃないの?」

「ッ!?」

 

 確かにそうだ。私はこのガキに救われた…私はこいつを正義のヒーローだと言うざるを得ない

 

「……一度しか言わないぞ、そのだな…ありがとう、ございます」

 

 こんなガキに頭を下げないといけないとは、人生どんなことが起きるのかまだわからないな

 

「……………………」

『……………………』

「……あのだな!返事ぐらいしても!」

 

 私は顔をあげたら目の前に少年はしゃがんでいた。一体何をしていたのだろうか

 

「いやー擬似的に上からおっぱい見れてよかったよ」

「こ、こんな時でも貴様は胸を優先するのか!?」

「だって姉さんさんでかいもん!目の保養になる」モミモミ

「目だけでなく手の保養にもなってるんだが!?」

 

懲りずに毎回毎回触ってくる。でもなんだろうか、こいつは嘘をついてないって知れて何となくよかったと思えた。

 

「なあ姉さん?俺さっきからずっと揉んでるけどいいの?」モミモミ

「……助けてくれたお礼だ、今だけはさ、触ることを許す」

 

 こんなもんで済むなら胸ぐらい触らせてやるさ、なーに今まで異性に触られたことなんてないからその分だと思えば安いものだ

 

「だったらついでに処女も」

「調子に乗るなー!」

「痛!俺姉さん助けてやったのに!それに俺にくれるって!」

「言ってないだろ!お前が勝手に言っただけだ!」

「ちぇー卒業できると思ったのになー」

 

 揉みほぐされた私は乱れた服を戻しまた少年と話を始めた。

 

「貴様が言ってた正義のヒーローになるってことは信じてやる、けど騎士王はさすがに…な?」

「まっ、それはそうだな、見に来る?」

「見に来るって何をさ」

「騎士王戦、見に来てよ」

「????」

 

 騎士王戦?こいつは一体何を言ってるんだ?

 

「はい、これ、誰にもあげる予定なかったから姉さんにあげるよ」

「……いや、なんだよこれ」

「騎士王決める戦いだよ、なに人なんて死なないよ!まあ少し血は出るかな?」

「すまないな……明日で帰るんだ」

 

 見てやりたいが…もう空港のチケットも予約しているため変えることはできない、それに来週からは学校も始まるし

 

「そうなのかーまあこれで優勝すれば騎士王ってわけさ」モミモミ

「……なるほど、だから騎士王になると言ってたわけか」

「あれ?怒らないの?」

「…………べ、別にもうなんとも思ってない」

 

 彼とはその後夕方になるまでずーと話をしていた。私の小さい頃の話や学生時代の話をだ。さっき話したのは教師生活についでだったからな

 

「へーそれでそれで!いつからおっぱいは大きくなってきたの!?」

「高校の後半だな、急に大きくなってきた」

「ってことは17ぐらいかー姉ちゃんも大きくなんねーかな」

「姉さんは貧乳なのか?」

「それはもう板よ板!」アハハ

 

 恐らくだが姉さんはそのこと絶対悩んでるだろうな…私の胸を少し分けてあげたいぐらいさ

 

「そう言えば名前を聞いていなかったな」

「ん?俺の名前?俺は…」

 

 彼が名前を言うとした時だ

 

「あー!探しましたよシン!こんな所で何油を売ってるんですか!」

「げっ、姉ちゃん!?」

「明日は騎士王戦があるのに何してるんですか!?」

「まあそう怒るなよアレックス」

「姉に向かって呼び捨てはいけません!せめてアレックス姉と呼びなさい!」

「はいはい」モミモミ

「何故私が揉まれるのだ…」

 

 本当に謎だ、でも…彼は本当に胸が好きなんだろうか、まあ大人になればあの時は子供だったと気づいてくれ

 

「何人の胸を揉んでいるのですか!?揉むならアレックスの胸を揉みなさい!」

「姉ちゃん胸ねーもん」アハハ

「もーう!騎士には胸なんていらないんですよ!ほら!迷惑になりますからもう行きますよ!」

 

 姉さんは先にスタスタと歩きこの場から離れて行く

 

「じゃあ俺帰るよ」

「……そうか」

 

 今日1日で随分と仲良くなったものだ。別れが寂しく感じる。

 

「俺の名前言ってなかったな」

「俺はシン・アラル、正義のヒーローになって騎士王になる男だ」

「……私は秋山由純(ゆずみ)だ、さっきも話したが日本で教師をしている」

 

 彼が自己紹介をした後に私も自己紹介をした。されたなら答えるのが当たり前さ

 

「……ゆずみ、かー」

「呼び捨てで呼ぶな」

「いいじゃんいいじゃん!」モミモミ

「……はぁ、本当に胸が大好きなんだな」

 

 呆れたように言うがそれがシンの良さなのだ

 

「おうさ!あ、俺が騎士王になったらゆずみは俺の女になるってのはどう!?」

「……ふん!なれるものならなってみろ」

 

 なれるかどうかわからないが…シンといることに不満はない、ま、まあ胸は触りすぎだけど

 

「まじか!俺の女ってことは処女も差し出すってことだぞ?」

「んーだったらそれまでに教え子でも犯して処女紛失しとくか?」

「それはダメだ!ゆずみのおっぱいと処女は俺の物だ!王の言うことは絶対なんだぞ!?」

「私の価値は胸だけなのかー!」

「なわけ、ゆずみは美人さんだよ」

 

 な、なんだろうか小学生に口説かれてるんだが

 

「シンが結婚できる歳になったらな」

「結婚してくれるの!?ゆずみって結構グイグイ系?」

「あーああ、ウザイな」

 

 本気にした私が馬鹿だったよ、所詮小学生が言っていた冗談だったのさ

 

「待てシン、最後に写真でも撮らないか?」

 

 最後にシンと2人で写真を撮り本当に最後のお別れとなった。

 

「じゃあな、そのうち迎えに行くから待っててくれ」

「ガキが調子に乗るな……でも、えっと、そのだな」

「あれー?ゆずみ?」

 

 こ、こんなガキにドキドキしてしまうとは私はおかしいのだろうか!いや私は違う、この少年、シンがおかしいだけなんだ

 

「ッ!待ってるから…騎士王とやらになってこい」

「ッ!ああ!俺は絶対負けねえ!結婚できる歳になったら迎えに行くからな!」

「あ、それまでにおっぱい垂れとくなよ!今の形すげー好きだから!」

「……貴様は一言余計なんだよ!!」

「あはは!じゃーな!」

 

 シンは最後に笑い姉の元へと走って行った。明日には騎士王戦とやらが始まりシンも参加するとのこと、きっと彼なら勝ち進むだろう

 

 なんせ私の正義のヒーローなんだからな

 

 私もホテルに向かうためシンとは反対方向に向かってる時

 

「ゆずみー!!」

「……なんだ?もう私に会いたくなったのか?」

 

 可愛いやつだな、と思っていたのに

 

「最後におっぱい触らせてくれー!」モミモミ

「……ッ!だ、だから私のことは身体目的なのか!?」

「これで明日は頑張れる!じゃーな!」

 

 また走って行き元の場所へと戻っていくシンであった。

 

 

 

「シン、何をしていたのですか?」

「別にーただ勝たないといけない理由ができただけだよ」

「ほほう、アレックスは気になりますね」

「……姉ちゃんは胸のことだけ気にしとけよ」

「ッ!こらー!シンー!」

「姉ちゃんも姉さん(ゆずみ)見たく大きくなれるといいな!」

 

 姉弟はかけっこをするかのように2人して走って帰っていた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「って話だ、長くなってすまないな」

「……いや別に、少し驚いただけだ」

 

 まさか先生が兄弟子(シン)と知り合いだったなんて…でも兄弟子はもう

 

「でもそいつはな、亡くなったんだ」

「ッ!?」

 

 なんだよ知ってたのか…

 

「昔の勤務先の学校に手紙が届いたんだ」

「……………………」

「まあー驚いたな…本当に、あいつは……面白いやつだったさ」

 

 先生は泣きたいはずなのに生徒の前だから涙を必死に堪えている。少ししか絡んでいなくてもあの短時間で2人は驚くほど仲良くなっているんだ。

 

「……っと、話がズレたな」

「私が言いたいこと、それは1つだ」

 

「私はシンに救われた、シンは私にとって正義のヒーロー、つまり正義の味方ってわけ」

「つまりの所助けられた人は助けてくれた人を正義の味方って思うわけさ」

「ッ!」

「お前は胸を張って困ってる人を助ければいい、それだけだ」

 

 で、でもそれだと俺は…!

 

「みんなを同時に助けるなんて、味方になるなんてそんなことは出来ないさ」

「……それはわかってる!でもそこからどうすればいいかがわからねーんだよ!」

 

 出来ないってわかっていた。けどそこからどうすればいいのかわからない、こんなに考えても何がどうすればいいかなんて…わからない

 

「1人ずつ助けていけ」

「ッ!」

「シンも私以外の人を助けていたはずだ、だからあいつ私だけではない、みんなの正義の味方だったに違いないさ」

「兄弟子が…みんなの正義の味方だった?」

 

 1人ずつ問題を解決させてみんなをハッピーにさせる、か、同時に両方を助けることばかり考えていたが別の考え方があったのか

 

「それは思いつかなかったな」

「お前は頭が固いんだよ…」

 

 まさか先生に相談して解決してしまうとはな、俺はいい教師を担任として引き当てたのかもしれない、こんな所で運を使ったんだろうな

 

「どこか行きたいところがあったんだろ?」

「……抜け出そうと思ってたけど見つかったからな」

「今回だけは早退ってことで許してやる、なに長い話を聞いてくれたお礼だよ」

「先生…!ありがとうございます!」

 

 先生から許可が出たため急いで下に降りて学校を後にしひまりの元へと向かう。ちゃんと説明してそこから考えよう。

 

 同時に2人は無理でも1人ずつなら…!俺でも行ける気がする!

 

 シンは急いで学校を後にしひまりの元へと向かっていた。

 

 

 先生はシンがいなくなった後まだ屋上に残っていた。

 

 携帯を取り出しシンと別れ際に撮った2人の写真を眺め昔のことを思い出していた。

 

「はい、チーズ……って胸を触るな!」

「この揉んでる時に撮るのがいいんだろ?ほら!ゆずみ少し顔赤いぞ!」

「そ、それはシンが揉むからだろ!?」

 

 

「懐かしいなー本当に…」

 

 その言葉を言った瞬間さっきまで我慢していた涙が溢れ出す。

 

「なのに、なんでさ…」

「迎えに来るんじゃなかったのかよ…!」

 

 急すぎる展開で本当に困惑した、けど手紙に書かれていることは事実なんだと信じるしかなかった。なぜならシンがそんな嘘をつくようなやつじゃないってあの数時間で分かる。

 

 どうして私の元に手紙が届いたのか謎だったが文の最後にシンが伝えるようにと言っていた、と書かれていた。それと報告が遅れたのは私の勤務先を探すに苦戦したとのこと

 

「なあシン、お前と同じ名前の教え子が正義の味方になりたいって言ってるんだ」

 

 弦巻弟と初めて会った時からシンに似てる雰囲気があったな、実は生きていた?と思ったが違うよな…歳も変わらないくらいだろうか?

 

「もしあいつ(弦巻弟)が困ってたりしてたら助けてやってくれ…って私は何言ってるんだろうな」

 

 死人に口なし、シンがあいつに何かしてやれることなんてないのにな…

 

「……私って馬鹿だなー」

 

 人並外れた小学生にあの短時間で恋をした女は今も彼のことを思っているのだろうか、それとももう克服して次に踏み出せているのか、それは彼女にしかわからないことなのだ。

 

「まりなと婚活パーティーにでも参加するか」

 

 授業の終わりを知らせるベルが鳴り、職員室に戻る変態王が好きになった巨乳教師は今日もチョークと言う名の剣を振るうのであった。




今後話に関係しますので書きました。次回からはひまりとのお話回です。シンは一体どんな選択をするのか、そして千聖さんを助けれるのか…なるべく早く投稿できるように頑張ります!

投票者数があとすこしで100人になります!少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それではまた次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと大事な話

みなさんお久しぶりです!ここ最近更新できずに申し訳なかった!仕事とかいろいろ忙しかったんすよ!許してくれると嬉しいです!

それではどうぞ!!

誤字脱字があると思います。後で訂正します。

アンケートがありますので協力をお願いします。


 先生の話を聞いていたら結構遅れてしまった。ひまりのやつ待ってもらってて申し訳ないな

 

 走って商店街の近くにある公園に向かう。そもそもひまりは本当に抜けたぜたのだろうか、それとも俺みたく先生に捕まっているのか

 

 公園につくとブランコに座って携帯をいじっているひまりがそこにはいた。

 

「……悪いひまり、遅くなった」

「うん、すごーく待ったからね」

「その…な?先生に捕まってたんだよ」

「私は普通に抜け出せたけど?」

「羽丘は楽だなー」

 

 女子校だから?ってわけではなさそうだな

 

「それで?どうして私に会いたくなったのかな?」

「……ッ!そ、それは」

 

 なぜひまりに会いたくなったのか、それは話をしないとけないからだ。

 

 今回の件を話して俺は、俺は千聖先輩を…

 

「……ひまり」

 

 深呼吸してひまりの名前を呼ぶと

 

「ッ!ちょ、ちょっと待って!まだ心の準備が…」

「…………わかった」

 

 ひまりは多分返事の話だと勘違いしてるんだろう、けど悪いがその話じゃないんだ。でもそれが原因でもある、俺が答えを出さないままだったからだ。

 

「そのー先にお昼食べない?」

「……そうだな、お腹すいたから何か食べるか」

 

 ここ何日間もまともなご飯なんて食べてないしな、話をする前に腹ごしらえと行くか

 

「じゃ、じゃあ行こっか」

「おう」

 

 俺とひまりはご飯を食べるために公園を出てる。するとひまりは

 

「ひまり?」

 

 ひまりは腕を組んで来た。それは本当に急にだ、何か前振りとかそんなのはなくな

 

「ごめん、今日だけ許して…もしかしたら最後かもしれないから」

「ッ!そ、そうか」

 

 何度も言うが別にその件について話をしようとは思ってない、けど…そんなこと言えないよな

 

「お昼何食べるんだ?」

「んー三郎とかどうかな?」

「ッ!さ、三郎ねー」

 

 こないだおやっさんに酷い態度とってしまったから会うのが気まずい、けどあれは完全に俺が悪い、だから謝らないといけないよな

 

「……よし、三郎行くか」

「うん」

 

 今月行ってないしな

 

 商店街に向かう途中に気づいたんだが…

 

「ひまり、このまま腕組んで歩いてたらまずい気がするんだが」

「ッ!そ、そうだね、うん!離れよっか!?」

「いや別にひまりのことを」

「ご、ごめんねーあはは」

 

 ひまりはすぐに俺から離れ作り笑いをする。

 

 俺のせいだ、俺がこんな雰囲気にしているんだ…

 

 その後特に喋ることなく三郎についた。

 

「らっしゃいーって弦の兄貴とひまりちゃんじゃねーか」

「どうもー!学校抜け出して来ちゃいました!」

「2人して抜け出すとはーこれは?お二人さんまさかの?」

 

 おやっさんがからかうように俺達の関係を探ってくるが別にそんな関係を持ってない、ひまりは俺と付き合いたいと思っているが俺は返事をしていない、だから

 

「なわけねーだろ」

「そ、そうですよ!仲良くて一緒に食べに来ただけですよ!」

「……そかー」

 

 俺達はカウンター席に座ると

 

「今日も新作食ってくれるか?」

「悪いが手持ちがない、安いので頼む」

「いや今回は金いらねーよ」

「??」

 

 金がいらない?それはあれか?無料ってことか?

 

「弦の兄貴ー何か、あったのか?」

「……別に、なんでもない」

 

 おやっさんはラーメンの準備をしながら俺に話しかけてきた。

 

「お前さんがそんなんだからひまりちゃんは余計な気を使ってるんだぞ」

「……………………」

「ッ!わかってる」

 

 俺がこんなんだからひまりに迷惑をかけてしまっている。そんなことはわかってるさ

 

「なあひまり」

「う、うん」

「……後でちゃんと話すからさ、今だけはいつも通りにしてくれないか?」

 

 おやっさんの前で話すにはちょっと無理な話だからな、後で絶対話す。だから今だけは許してくれ

 

「……わかった!よーし!今日はたくさん食べちゃうぞー!」

「その意気だひまりちゃん!」

「おじさんラーメン特盛ね!」

「そ、それは食べすぎだろ」

 

 明るくなってくれてよかったよ、あんなひまりはひまりらしくない、まあ俺が原因だったけどな

 

「なあ弦の兄貴…お前に今何が起きてるかなんて知らねーが人に当たるのはよくねーな」

「……あの時は悪かった、ごめん」

「別に怒っちゃいねーよ、ただそーゆうのは人としてよくないって話だ」

 

 確かにそうだ。正義の味方になりたいやつが人にあたってどうする?物にあたってどうする?

 

「シン様は怒りで判断する考えを放棄している傾向があります」

 

 昔アレックスに言われたことだ、おやっさんにも言われるとかこれもう完全な癖?ってやつなのかもな

 

「ラーメンいっちょ、おあがりよ!」

「わー!美味しそう!」

「確かにこれは美味しそうだな」

 

 目の前にあるラーメンは久しぶりにご飯を食べる俺にとってそれはそれはご馳走に見えた。

 

 ひまりは…まあなんでも美味しそうに見えるんだろうな

 

「違うだろ?」

「美味そうじゃなくてー?」

 

 おやっさんとひまりは腕を上げそう言い

 

「ほら!シン君も!」

 

 俺とおやっさんとのやり取りなのになんでひまりが知っているのか、まあそんなことは考えても意味がないか!

 

「美味い!」

 

 三人で仲良くてハイタッチしてラーメンを食べ始める。

 

「なあ弦の兄貴と俺の出会い覚えているか?」

「忘れるわけないだろ、おやっさんは命の恩人さ」

「がっはは!だよな!俺はお前の恩人だもんな!」

「なんだろう、イラッときたな」

 

 早くラーメン食べたいのに話しかけてくるせいで食べられないじゃないか

 

「俺はなーあの時はお前に救われたんだ」

「……俺がおやっさんを?」

 

 違うだろ俺がおやっさんに救われたっての

 

「あの時お前さんがすごく美味しそうにラーメンを食ってくれたからな」

「……それで俺はー毎月新作作ってお前に食わせてな、今では色んなメニューが増えたさ」

「……………………」

「ありがとうな弦の兄貴、お前のおかげで店も繁盛してるのさ」

 

 だ、だから毎月俺に新作を…なのに俺は

 

「ごめん、そんな思いがあったなんて知らないで俺は…」

「いやいや俺も度が過ぎた、毎月1万は流石に痛かったか!がっはは!」

「痛いっての」

 

 おやっさんは笑いながら俺を叩く、そんな中思う。俺は知らないうちにおやっさんを助けていたのか…こんな俺でも誰かの役に立てていたんだって

 

 だったらやっぱりなりたいよな

 

「(正義の味方ってやつにさ)」

 

 隣を見ればひまりが美味しそうにラーメンをすすっている。

 

「(やっぱりこいつ可愛いよな)」

 

 ほかの人達もみんな可愛いさ、けどひまりの可愛さはなんか、うん、違く感じてしまう。

 

「…………恋、ねー」

「ん?シン君どうしたの?食べないの?」

「……ひまりが可愛すぎて箸が進まないんだよ」

「……え!?そ、それってどうゆうこと!?」

「なんでもねーよ」

「ちょ!し、シン君!話してよ!?なんで無言でラーメンすするのかな!?」

 

 まあ嘘ではないしな、実際ひまりに見とれて食べれてなかったし?

 

「弦の兄貴味の方はどーよ?」

「……ばーか、無料で食えてるんだから美味いに決まってんだろ」

「がっはは!そうかそうか!これも今日からメニュー入だな!」

 

 無料で食えるものはなんでも美味しいんだよ、賞味期限が近くても切れていても無料なものは美味い、ただし蘭、お前の料理はダメだ、死んでしまう。

 

「まあ頑張れよ弦の兄貴!お前さんは商店街の英雄なんだからな!」

「……い、痛いっての」

 

 背中を思っきり叩かれ食べていたラーメンが口から出るかと思ったよ

 

 けど…この背中に伝わるジリジリ来る痛い感覚、これからひまりに話すためにはこれくらいに気合い入れが必要だな

 

「おやっさんごちそうさん」

「ごちそうさまでした!」

「おう!また来月来てくれるか?」

「……行くけど次も無料でな」

「がっはは!考えとくぜ!巴ちゃん達によろしくな!」

 

 巴ちゃん達ってのは蘭達のことか?それとも蒼汰のこと?

 

 てか蒼汰やリサ先輩にはすんごい恥ずかしい質問したな、今度謝っとくよ

 

「シン君、少し行きたいところあるんだけどいいかな?」

「……ああ、全然いいよ、けどそこで話はするからな」

「わかってる、ありがとね」

 

 商店街を抜けるとひまりは手を握ってきた。モカとよくしてた恋人繋ぎってやつだ、モカとは違う手の形…ってそれはそうだよな

 

 駅に向かい電車に乗る。その時もずっとひまりと俺は手を繋いだままだ。

 

「次の駅で降りるよ」

 

 ひまりが一言だけそう言い俺達は次の駅で降りた。

 

「ってここは…!」

 

 そう、そこは俺の夏の思い出であるあのガールズバンド集団達と遊んだ海だ。

 

 そして俺はここでひまりに…こんな所であのことを話さないと行けないとはな

 

「ねえ覚えてる?私達ここでキスしたんだよ?」

「……忘れもしないな」

 

 肌寒い潮風が吹きひまりの髪が揺れる。もう9月も後半、日によって少し肌寒くなる日があるが…今日はそのような日なんだろうか

 

 それともただたんに風が冷たいだけなのかもな

 

「なあひまり話がある」

 

 俺はひまりに千聖先輩のことを話した。彼女が急に壊れて俺に抱いてと言ってきたこと、全ても話した。

 

 千聖先輩は知られたくないと思うがひまりに話さないと俺は動けない…

 

「……そっか、なんだ返事じゃなかったんだね」

「勘違いさせて悪かったな」

 

 とりあえず誤解が解けたのはいいことだ。けど問題はこの先

 

「俺は、俺は…千聖先輩を助けたい」

「…………そうだよね、シン君は正義の味方(・・・・・)になりたいもんね」

「ッ!な、なんでそのことを」

 

 まだ千聖先輩と沙綾、それにアレックスとアギトさんにしか話していない、なのになんでひまりが?

 

「あはは、私と沙綾結構仲良いよ?」

「……それは知らなかったな」

「知らないことを知ってたよ」

 

 でもなんでそんな話をしたんだろうか…まあ今はそんなことどうでもいい

 

「俺は正義の味方になりたい、だから…千聖先輩を助けたい」

「それは千聖先輩を抱くってこと…だよね?」

 

 ひまりは俺の童貞を貰うって、俺のことを落とすって言ってくれた。なのに俺はひまりではない他の人に童貞をあげて助けたいと訳の分からないことを言っているんだ。

 

「……でもひまり、俺は千聖先輩を抱く以外で助けたいと思ってる」

「ッ!だったらなんでその話を私に?」

「それは…もう本当にどうしようもなくて抱く以外選択がなかった時、俺は千聖先輩を抱くかもしれない」

 

 だから俺はひまりにそのことを話したんだ。最初ひまりに俺の童貞をあげてその後千聖先輩を抱けばいいって思った。

 

 けどそれは違う、千聖先輩は少なくとも処女である、ひまりも処女だったら?そんな2人も初めてを奪うようなこと俺はできない

 

「私が今抱いてって言ったら?」

「……抱いてもいいがそこにはひまりの言う本当の愛ってのはないと思う」

「あはは、だよね」

 

 なんでこんな冷たい返事をしてしまうんだろうか、ひまりを抱いて千聖先輩も抱けば簡単にすむ話かもしれない、けどそれは違うんだよ

 

「そっかーシン君の童貞は千聖さんの物かー」

「違うさ、ただ本当にどうしようもなくなった時だけだ」

「……本当?」

「ああ約束する」

 

 流石に返事をせずに他の女を抱くようなクズではない

 

「ねえシン君、私はシン君が大好き」

「好きな人とエッチなことしたいと思う私ってイケないこだと思う?」

「……なわけ、俺だって好きな人できたらしたいっての」

 

 だいたい俺は好きな人で卒業したいと思っていた。だから考えは同じだから気にしないで欲しい

 

「話変わるけどさ、シン君はなんで正義の味方になりたいの?」

 

 俺がなんで正義の味方になりたいのか…そんなのは昔俺が求めた存在がないのなら自分がなる、そんな考えだったっけか?

 

 けど今は違う。みんなに不幸が来るなら俺はそれを守りたい。

 

「大切な友達は守る、だから正義の味方になるんだ」

「……君は本当に優しいね」

 

 ひまりは俺に抱きついてきた。離れる理由もないからその場で立っているだけ

 

「千聖さんを絶対に救ってね」

「ああ、必ず助けてみせる」

 

 千聖先輩の身に一体何が起きているのか、まずはここから調べないといけないな

 

「さて、重い話も終わったし普段通りに戻りますか!」

「……いやでも俺は」

「こーら!さっき三郎で無理やり私を普段通りにした人はどこのどの人かな!?」

 

 これは…やられましたな

 

「……だよな!いつも通りにやらねーとな!」

「うん、それでこそシン君だよ」

 

 これが俺の普通、なのだろうか

 

「よーし!千聖先輩抱きまくるぞー!」

「ちょ、ちょっとさっき言ってたことは!?」

「冗談、冗談、必ず助ける。そしていつか返事をするから待っててくれ…」

 

 冗談だんでも言っちゃいけないことだったかもな

 

「……どんな返事でも待ってるからね」

「……………………」

『……………………』

「何か言ってよ!?」

「いやーなんて返せばいいかと」アハハ

 

 言いたいこと全部さっき言ったからな!今頃また何か言ったところで話が永遠ループになっちまうよ!

 

 そんな時ひまりの携帯に電話がかかってきた。

 

「ら、蘭からだ」

「出ればよくね?」

「だって学校抜け出したんだよ!?絶対そのこと心配して電話かけてきてるよ!?」

「?だったら電話に出て話すればいいだろ?」

「……だから、そのー」

 

 さっきからひまりは何を言ってるんだ?心配してくれてるのなら電話に出て無事だってこと知らせるべきじゃないのか?

 

 とシンは思うが

 

「(学校抜け出してシン君と会ってたなんてバレたら…絶対いかがわしいことしてるって勘違いされちゃう!)」

 

 ひまりはシンとは違う考えがあるのであった。

 

「えーい!貸せ!俺が出る!」

「ま、待ってってば!」

 

 ひまりの携帯を取り電話に出る

 

「蘭か?俺だ」

「……どうしてシンが出るの?」

 

 ま、まあそうなるよな

 

「悪い、ひまりは俺が呼んだ「ら、蘭!」おい!」

 

 事情を話そうとしたらひまりのやつが携帯を奪い蘭と話をし始める。

 

「ら、蘭違うの!シン君に呼び出されたのは本当だけど何もしてないから!」

「……何もって何を?」

「それはーその…ごにょごにょ」

 

 さっきから何をしてるんだろうかひまりのやつは

 

「へーひーちゃんは学校を抜け出してシン君とイチャイチャするとんだビッチの巨乳女子だったとは〜モカちゃん悲しいなーおよよ〜」

『……ッ!?』

 

 遅いかもしれないがこの時初めて気づいた。こんな時間に抜け出して男女が出会っているんだぞ?勘違いされても仕方が無い!?

 

 だからひまりのやつは焦っていたのか!く、クソ!俺が電話に出らず黙っておけばすぐ話は済んだってのに!

 

「まあ?シン君は童貞さんだからねーひーちゃんのおっぱい見ただけで勃つ人が襲えるわけないよね〜」

「う、うるさいな!黙ってろ!?」

 

 この野郎なんで今日に限ってその童貞をネタしていじってくるかな!?

 

「え、本当に何かしてたの?」

「してないしてないってば!2人とも誤解だよ!」

「えーでもひーちゃんビッチだから…」

「ビッチじゃないから!?処女だか…」

 

 いやーこの流れはかなり前にもあったぞ?なんなら巴と蒼汰のデート作戦の時ぐらいだってのも覚えてる。

 

「って何言わせてるの!?」

「俺は何も言ってねーだろ!」

 

 このくだりは何回目だよ!

 

「とりあえず何もしてない、ラーメン食べに行っただけだ」

「だったらモカちゃんも誘ってよ〜」

「あたしも」

「そ、そんな簡単に学校抜け出せれないだろ!?」

 

 とは言うが本当は違う理由だけどこの2人に話したらまずいと思ったから話ない、ひまりも知られたくないだろうしな

 

「とりあえず…元気になってよかったね」

「ッ!……あーなんか心配かけたな」

 

 モカのやつやっぱり気づいていたのか…まああんな態度だったらバレても仕方がないよな

 

「何かあったの?」

「ふっふっふ〜それはモカちゃんとシン君2人だけの秘密なのだー」

「……あっそ」

 

 さっきから蘭さんの対応が冷たいんですが大丈夫なのか?なんか機嫌悪いとか?でもここでさらに機嫌悪い?とか聞いたら…んー

 

「あ、ひまり、先生が本当怒ってるから、多分ヤバいよ」

「……え?」

「しかもー会ってたのが男子となるとねーひーちゃんどんまい」

「う、嘘だよね!?」

『嘘じゃないよ』

 

 珍しくモカと蘭の声が揃ったな、てかこれって俺のせいじゃん、いやまじでごめん

 

「これは反省書の提出ですなー」

「……ひまり、ごめん」

「あーもう!不幸だよぉぉぉおお!!」

 

 でも内心シンと2人で居られて嬉しかったと思っているひまりだった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 ひまりを学校まで見送った後俺は千聖先輩に電話をかける。

 

「…………出ない、か」

 

 まあもう夕方だ、パスパレの練習にでも行ってるのだろうか

 

「とりあえず一旦家に帰ろう」

 

 仕事中なら連絡とっても意味が無いからな連絡が取れるまで時間を潰すしかない

 

 と言ったが…

 

「明らかにおかしいぞ」

 

 もう時刻は20時、パスパレの練習が終わっていてもおかしくない時間なのに未だに連絡が取れない

 

\ピンポーン/

 

 誰かが家のチャイムを鳴らした。

 

 もしかしたら千聖先輩か!?

 

 俺は走って玄関に向かい扉を開ける。

 

「千聖先輩!」

「……?姉さんを知ってるんですか?まあ有名人なので知ってますよね」

「……じゃない、どちらさま?」

 

 雰囲気が千聖先輩に似てるが…まさかの!?

 

「白鷺千聖の妹、白鷺千歳(ちとせ)です」

 

 妹がいるってことは知ってたが初めて見た、姉妹で美人さんって氷川姉妹かよ

 

「で千歳ちゃんはなんで俺の家に?」

「回覧板を持ってきました」

 

 あ、ああ、回覧板ね、いつも持ってくる人はバラバラだからな、こないだなんて変な婆さんが来て話を聞いてやってたな

 

 回覧板を受け取ると

 

「……では私はこれで」

「ちょっと待ってくれ!」

 

 俺は千歳ちゃんの手を掴んでしまった。いや本当は違くてだな話をしたかったんだよ!

 

「なんですかその手、汚い手で私に触らないでください」

「ど、毒舌だな君は!」

「離してくださいこれから大事な用事があるんです」

 

 大事な用事があるなら仕方がない…で済まされる状況じゃないんだ。

 

「千聖先輩と連絡が取れないんだ、何か知らないかな?」

「……姉さんと?あーあなたが後輩君ですか」

「?多分その後輩君です」

 

 妹さんには俺の事後輩君とか言ってるのか?なんか意外だな

 

「姉さん今日は仕事で遅くなるって言ってましたね」

「ッ!そ、そうか」

「……なんなら家で待ってますか?」

 

 え?家?ってことは…?

 

「千聖先輩の家に上がっていいってこと?」

「まあ私の家でもあるので大丈夫ですよ」

 

 大丈夫なのか?一応男女が同じ屋根の下で千聖先輩の帰りを待つ状況になるんだぞ?

 

「姉さんの話だと巨乳の女子見て興奮するいかがわしい人って話は聞いてますが…残念ながら私には胸がないので心配いりませんね」

「……長く話して説明ご苦労さまですね!?」

 

 べ、別に興奮なんかしてないし!?てか自分で胸がないとか言って恥ずかしくないんですかあなたは!?

 

 鍵と携帯をポケットに入れて千歳ちゃんの後ろを着いていく、エレベーターで数回降りればすぐに着き近くに住んでいるんだなって改めて自覚させられた。

 

「ではどうぞ」

「お、お邪魔します」

 

 中に入ってみるとすーげえ綺麗に片付いているおしゃれな家、俺の家は家具なんて全くないのに千聖先輩達の家は家具も設備も揃っていてうん、凄いな

 

「……あれ?親御さんは?」

「母達とは別居ですけど何か?」

「ッ!そうなのか」

 

 千聖先輩達も別居してたのか

 

「理由を聞いてもいいかな?」

 

 ほら?俺も別居してるし?俺はまあ今はそんな理由はないけど許可が出てるからしてるんだけどさ?

 

 最初は理由があっただろ?だから気になって聞いてみたが

 

「あなたごときに話す必要がありますか?」

「で、ですよねー」

 

 まあそうなるよな!さっき知り合った赤の他人に話す必要ないよな!?

 

「俺って親と喧嘩?して一人暮らししてたんだよな」

「……へー」

「もしそうなら仲直りとかはした方がいいと思うよ?」

 

 先輩からの助言だ!あれ?先輩だよな?千聖先輩の妹さんだから俺と同い歳、もしくは年下だよな?……大丈夫だよな!?

 

「はあ?あなたさっきから何言ってるんですか?」

「……へ?」

「私と姉さんがここに住んでいるのは事務所が近くにあるからですけど?」

「ッ!?」

「あなたみたく親から逃げるために別居してる訳ではありませんので、同じにしないでください吐き気がします」

「そ、そこまで言わなくても…!」

 

 勘違いしてた俺も悪いけどさいくらなんでもそこまで言わなくてもいいんじゃないでしょうか!?シンさんは心が傷つきましたよ

 

「適当にくつろいでいてください」

「……はい」

 

 でもこれが千聖先輩の妹さんなんだろうか、まあ千聖先輩より口が酷いけどな

 

 千歳ちゃんはずっと椅子に座って携帯を睨んでいる。それは凄くだ、さっきみたいに何か言ったら言い返されるから黙ってその光景を俺は見ていた。

 

 数分後

 

「ッ!」

 

 携帯が音を出しながら大きく揺れた。電話が来たんだろう

 

「もしもし!……はい、ほ、本当ですか!?はい!頑張ります!あ、ありあり、ありがとございます!」

 

 何があったんだ?目の前でさっきまで携帯と睨めっこしていた千歳ちゃんはすんごい笑顔ではしゃいでいる

 

「やったー!やったー!やりましたよ先輩(・・)!」

「な、何が?」

 

 ごめん状況が全くわからない!

 

「オーディション!通ったんですよ!ドラマの主演が決まりました!」

「……おー!それは凄い!」

 

 妹さんも女優だったのか?いや女優への道を一歩踏み出せたってところかな?

 

「先輩!私凄くないですか!?ないですか!?」

「凄い!すげーよ!」

「もっとです!もっと私を褒めたたえてください!」

「もう神です千歳さん!」

「…………はあ?何言ってるんですか、神は姉さんに決まってるんじゃないですか、口臭いので喋らないでください」

「す、すみません」

 

 なにそれ、俺めちゃくちゃ褒めたのになんでそんなこと言うのかな!?

 

「……すみません少し気が緩んでしまいました」

「あはは、大丈夫ですよ」

「とりあえず私は両親へ報告しに行ってきます」

「……えーそれだと俺は「残っていいですよ」……いやでも」

 

 千歳ちゃんは残っててもいいって言うが女子の家に一人で待つってのはいけない気がするですけど

 

「ああ、大丈夫ですよ、けど私達のクローゼットとか開けたりしたら…ましてや姉さんの部屋に入ったりしたら…」

「わ、わかったから!入らないって!大人しく待っときます!」

「……なら全然大丈夫ですよ」

 

 千歳ちゃんは自分の部屋に入って着替えて出てきた。その服装はとても似合っていて可愛らしかった。

 

「(やっぱり千聖先輩の妹さんだな)」

 

 可愛すぎるっての!?

 

「なんですか?先輩は巨乳も好きなのに小さい子も好きなんですか?とんだ変態さんですね、キモイので見ないでください」

「……あ、もういいですよ、あはは」

 

 この子は本当に口が酷い!なんでそんなことばかり言えるのかわからない、てかもしかしたらこれが普通の女子なのか?俺の仲良くなっている女子がいい人達ばかりなのか!?

 

「あ、その隣の部屋が千聖先輩の部屋ね、わかった入らないよ」

 

 妹さんが出てきた部屋の隣を指さしそう言うと

 

「違いますよ、姉さんの部屋はこっちです」

「……あれ?そっち千歳ちゃんの部屋じゃ?」

 

 だってさっき着替えて出てきたよね!?

 

「……こっちは姉さんの部屋です、服を借りただけですよ」

「あ、おけ」

 

 てことはそっちの部屋に入るなよってことね

 

「ではタクシーがそろそろ来ますので、さようなら」

「はい」

 

 千歳ちゃんは家から出ていき自分の家でもないのに一人で千聖先輩の帰りを待っていた。

 

「……2人とも遅いなー」

 

 もう22時だぞ?千歳ちゃんは親の元にいるからいいが千聖先輩は?明らかに遅すぎる

 

 電話をかけてみると数秒後家にコール音が鳴り響く

 

「……まさか!」

 

 千聖先輩の部屋の前に行くとその音は大きく聞こえる、千歳ちゃんに部屋に入るなって言われたがこれは確認しないといけない!もしかしたら千歳ちゃんが携帯を忘れてなくしたと思ってかけているかもしれないしな

 

「ごめん千歳ちゃん!」

 

 ドアを開けるとベットの枕元に携帯が置いてあり画面には俺からの着信であることを知らせるようになっていた。

 

「携帯置いていってたのかよ」

 

 電話を止めると画面はいつものロック画面に戻る、がそこで俺は見てはいけないものを見てしまった。

 

「……な、なんだよこれ…!」

 

 メールの通知が来ておりその会話の内容が一言でわかるような文が送られていた。

 

 急いで中身を見ようとするがロックがかかっている。中を見て本当に俺が想像しているメールなのか確認できない。

 

「ねえ、先輩、何してるんですか?」

「ッ!千歳ちゃん」

 

 こんなタイミングで帰ってくるのかよ

 

「姉さんの部屋で何してるんですか?私言いましたよね?入るなって、臭いから早く出ていってくださいよ、てかなんで携帯持ってるんですか?ねえ?早く離れてよ先輩、汚いですって」

 

 千歳ちゃんはさっきと同じ態度で俺に接してくるがそんな状況じゃない

 

「千聖先輩のパスワードを教えてくれ」

「はあ?なんで先輩なんかに」

「いいから教えろよ!」

「ッ!きゅ、急になんですか?」

「頼む千聖先輩の身に危機が迫ってるかもしれないんだよ」

「はっ!そんな嘘「嘘じゃない!」ッ!信じろと?」

「ああ、頼むから教えてくれ」

「……誕生日、大切な人の誕生日だと言ってました」

「わ、私だって知らないですよ!もういいでしょ早く部屋から出ていってください!」

 

 部屋から追い出されて千歳ちゃんは千聖先輩の部屋にこもる。

 

「……さっきのことは嘘じゃないから、ちょっと千聖先輩探してくる」

「………………早く消えてください、臭いです」

 

 

 千歳のそのセリフを聞き取ることなくシンは家から飛び出し自分の家にてスケボーを回収しすぐに千聖先輩を探しに行った。

 

「ああ、俺達って本当に不幸だよな」

 

 シンが一体どんなメールを見てしまったのか、それはメールを見たシンしかわからないのであった。




次回で千聖さんの件がわかります。まあ大方検討はついていると思いますが…まだ不幸は続くかと…自分だって早く面白い話書きたいですよ!ですがしばしお待ちを!

それではまた次回の話でお会いしましょう!!


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弦巻シンは覚悟を決めた

どうもお久しぶりです。今回で千聖さんの話は終わります。

もう二週間に一話ペースで投稿のペースになってますね、今後もそうなるかと

それではどうぞ


「……やばい!やばい、やばい…!」

 

 あのメールの内容が本当なら今頃千聖先輩は…

 

「ッ!クソが!」

 

 シンはスケボーを走らせ千聖先輩が恐らくいるであろう事務所に向かう。いるであろうって言うが向かっているシンは本当にいるかなんてわからない。

 

 ただそこにいて欲しい、まだ何もされてない状況でいて欲しい、それを願うばかりだ。

 

「もーひーちゃんが反省書書くの遅くて練習時間も遅くなっちゃったじゃんー」

「ご、ごめーん!」

「まあつぐみの父さんが迎えに来てくれたからいいだろ?それよりアタシは疲れてねみーよ」

 

 羽沢珈琲店の前にはAfterglowがお話をしていた。話の通りひまりのせいで練習時間が変更になりいまさっきまで練習していたのだ。

 

 しかし時間も時間、つぐみが親を呼び今からそれぞれの家に向かう…ってところで彼が来る。

 

「ねえ、向こうから来るのってシンじゃない?」

「蘭ーいくらシン君が好きだ……って本当だーシン君だ、やっほ〜」

 

 モカ達はシンが向こうからやってくるのに気づいたようだ。

 

 だけどシンは彼女達に見向きもせずにその横を通ってしまう。その速さはあっという間だ、人がいないことをいい理由に精一杯の速度を出し事務所に向かっている。

 

「……シン君、まさか、ね」

 

 ひまりは事情を知っている、けどその事はみんなには言えない、むしろ言ってはいけないと思っているはずだ。

 

「なあシンの顔みたか?」

 

 シンの顔が今どんな状況か、そんなのにはみた彼女達にしかわからない

 

「……珍しくガチギレモードでしたな」

「……シン」

 

 モカや蘭、そしてひまりはシンが切れた時の顔や目付きは知っている。それは亜滝先輩の時に見たりしていた。

 

 しかし彼女達が今できることは何も無い、ただ後日話を聞くことしかできない…

 

「とりあえず帰りますかー」

 

 モカのその一言によりさっきまでの空気は変わりいつも通り、のAfterglowに戻るのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 事務所は都内にある、それまでスケボーで行くか、電車で行くか、電車の乗り方がよくわからないからもうスケボーで行くことを選択する。

 

「……結構距離あんな、いなかったらやばいぞ…!」

 

 千聖先輩がそこに居ないってこと、つまりそれは

 

 夜も遅くにシンはスケボーにて夜の街を駆け抜ける。歩道にはまだ人がいるため車道を車に当たらないスレスレの位置で走っていた。

 

 それでも多少は邪魔になってしまいクラクションを鳴らされ注意を受ける。

 

「あークソ!こんなことになるなら電車を選ぶべきだった!」

 

 スケボーを手に持ち走り出す。前のシンとは違いアレックスとの稽古で体力もかなりついている、事務所まではノンストップで走り抜けた。

 

「着いたのはいいがまずい状況だな」

 

 ビルの入口には警備員が2人見張りをしている。無関係者の俺がそう簡単に入れるわけがない

 

「……事情を説明するか?」

 

 だけど俺がここで

 

「千聖先輩が危ないんだ!助けさせろよ!」

 

 なんて言っても信じてくれない、なぜなら証拠がない…訳でもないがこのことが知られたらまずいから見せられない。

 

 もっと考えてから行動するべきだった、あーなんでこんな簡単なことにも気づかなかったんだよ俺のバカ野郎!

 

 と思ってたらビルからちょうど知ってる人物が現れた。

 

「……彩先輩!」

「え!?し、シン君!こんな時間に何してるの!?」

 

 なんでか知らないが彩先輩がちょうど現れてくれた。

 

「事情を話している暇がない!千聖先輩知らないか!?」

「え?千聖ちゃん?なんで?」

「……話せない、だけどとりあえず千聖先輩は!今日見てないのか!?」

「……話せないって、何か理由が」

 

「いいから黙って俺の質問に答えろよ!」

「ッ!」

 

 し、しまった!俺の悪い癖が…!

 

「ご、ごめん、でも話せないんです。とりあえず千聖先輩見てませんか?」

 

 話せないって…千聖先輩もあの時こんな気持ちだったのか?話せないけどこっちの要件を受けいれて欲しい、だからあんな態度になってしまった。

 

 今の俺もそうだ。千聖先輩の居場所が知りたくて彩先輩に酷い態度をとってしまった。

 

「……千聖ちゃんは今日見てないよ」

 

 彩先輩はそれだけ言ってその場から離れてすぐにタクシーに乗っていなくなってしまった。

 

「もうなんなんだよ!なんで俺ばっかりこんな目に合わないといけないんだよ!」

 

 不幸なことが俺の身に起こりすぎている。彩先輩の件に関しては俺が100悪い、けど千聖先輩の件は

 

「クソ!今は千聖先輩が優先だろ!」

 

 後で彩先輩には謝る、土下座もする。けど今は、今だけは千聖先輩を探さないと…!なにもかも手遅れになる前に!

 

 走り出してさらに街に出る。

 

「見て白鷺千聖よ!」

「ッ!」

 

 その言葉に凄く反応する俺だが誰かわからない人が指している指の先には大きな画面に映るのは千聖先輩が出ているCM、だった。

 

 ふと千聖先輩の携帯を見てみるとまだあのメールがロック画面に通知として表示されている。

 

 ロックは解除してないから見ることはできない

 

「大切な人の誕生日だと言ってました」

 

 千聖先輩のパスワードは大切な人の誕生日、それだけだと全くわからないっての

 

 そんな時メッセージが届いた。どうやら千歳ちゃんからのメッセージ、だった。

 

「大切な人ってのはもしかしたら先輩かも知れませんね」

 

 そのメッセージを信じて俺の誕生日、8月8日であるため0808を入力すると

 

「ッ!開いた!」

 

 開いたため急いでメールの本文を読んでみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ、終わった」

 

 その場で膝から崩れ落ちてしまう。俺はこのメールの内容を全て見てから後悔をした。

 

 まだメール全体を見ずに少しだけだったら希望をもって千聖先輩を探すことができたかもしれない、なのに、なんで

 

「どうして千聖先輩がこんな目に会わなきゃいけないんだよ…!」

 

 俺が原因なのに、なんで…!なんでさ、どうして!無関係の千聖先輩が!

 

 絶望の中また一通のメッセージが来た。

 

「姉さんは落ち込んだりした時はよく展望台に行ってるって話してました、探すならまずはそこからどーぞ」

 

 展望台、ねー、あの学校の近くの展望台か?こんな町中からあそこに迎えって言うのかよ

 

 歩いている人達が不思議そうにシンを見つめている。道路で四つん這いでいる人がいたらそれは見てしまう

 

「……一度あって話をしよう」

 

 もう終わっている、そうに決まっている、だけど会わなきゃいけない、そう思ったシンは立ち上がり展望台へと向かった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 タクシーから降りたシンは展望台に続く道のりを登っていく、途中には雨が降り出し気温も下がり夏服のシンにとっては寒い状況になってしまった。

 

 心も冷めているのに雨はシンの体までを冷やしてしまう。

 

「……あ、」

 

 登り終えた目の前に彼女がいた。

 

 俺が探していた先輩

 

 大切な先輩

 

 俺を助けてくれようと努力してた先輩

 

 いつも俺を説教する先輩

 

 笑うと可愛い先輩

 

「先輩、先輩…!千聖、先輩…!」

 

 そして……俺の正義の味方

 

「……何してるんですか?千聖先輩」

「………………シン?」

 

 俺は千聖先輩に話しかけるが千聖先輩は振り向かずに俺であるかのように確認の返事をした。

 

「……はい、あなたの大切な(・・・)後輩、弦巻シンです」

「ええ、そうね、大切な後輩よ」

 

 千聖先輩は一向にこっちを見る気すら見せない。

 

「すみません、千聖先輩の携帯のメール見ちゃいました」

「あら?女子の携帯のメールを勝手に見るなんて最低よ?」

 

 最低、ねー

 

「ええ、俺は最低のクソ野郎ですよ」

 

 本当になんでなんだろうな、どうして千聖先輩だったんだろう。

 

「……わかってるじゃない」

 

 そのセリフを後に千聖先輩はこちらを振り向いた。

 

「ッ!」

 

 それはもう顔がめちゃくちゃになるくらいに崩しながら、泣きながら俺にこう言った。

 

「ごめんなさい、あなたにあげる処女…他の人にあげちゃったわ♪」

 

 無理やり明るく言っているが無理がある、いつも見えてる音符なんかじゃなくてズタボロの音符だ。

 

「……だと、思ってました」

 

 メールの内容、それは脅迫だった。

 

 簡単に言うとパスパレのデマ情報を流されたくなければ体を売れってな、そしてそのことを誰にも話すなとも書かれていた。話したら…言わなくてもわかるだろ?

 

 メールの相手は分からないがもう分かる、絶対アイツらだ、アイツらじゃなかったとしても俺は絶対に許さない…!

 

 だけどアイツらよりも自分に切れている、なんであの時すぐに抱かなかったのか、抱かないにしてももっと早く返事ができたはずだ。なのに…俺は…!

 

「俺が選択を間違えたせいで…!」

 

 千聖先輩は体を売るはめになってしまった。デマ情報ってのはかなり痛い、ないことを在るように流され今後の活動にかなり影響が出てしまう。

 

「ごめんなさい、あなたに迷惑をかけたわ」

 

 違いますよ、迷惑をかけたの俺です

 

「私のせいであなたには苦しい選択をさせてしまったわ…もう関わらないから、許してください…」

 

 千聖先輩、いや千聖さんは自分のせいだって勘違いしている。本当は違う、アイツらにとって千聖さんを犯すことなんて俺をキレさせるためにすぎない。

 

 だから俺が原因なんだ。千聖さんは悪くない、そのことだけは伝えないといけない…!

 

 俺はその場から一歩踏み出して千聖さんに近づく

 

「ッ!な、なによ、こっちに来ないで!」

「……いえ、行きますよ」

 

 ちゃんと近くに行って話をしないと

 

 前へ

 

「それ以上はダメ…!私はもう汚れているの!あなたの知ってる白鷺千聖じゃないのよ!」

「……それでも俺は千聖さんが必要なんです」

 

 いつも俺を叱ってくれる人は誰だ?

 

 俺を助けてくれようしてくれた人は誰だ?

 

 俺に正義の味方になれって背中を押してくれた人は……誰だ?

 

 さらに前へ

 

「ッ!まだ薬だって効果が切れてない!それに汗臭いし、汚されてるし…!」

「……構わないですよ」

 

 薬ってのは媚薬ってやつなのだろうか、本当に酷いことしてくれたもんだよ

 

「それ以上来るなら私はあなたのことを嫌いになる!二度と関わらないわよ…!」

 

 俺はそのセリフを聞いて進んでいた足が一瞬止まった。けど、また動き出す。

 

「……俺を嫌いにはなれないって自分がよく知ってるはずです」

 

 だって俺は大切な後輩、なんだからさ

 

「ッ!き、嫌いよ嫌い!助けてくれてなかったじゃない!何もしてくれなかったじゃない!」

「……それは本当にすみません」

 

 そして千聖さんの目の前に着く、千聖さんは手すりのそばに居るためそれより奥には行けない、だから逃げれなかった。いや、そもそも逃げる気なんてなかったと思いたい

 

「……ッ!」

 

 俺は千聖さんを抱きしめた。今頃こんなことして済む話じゃないけどさ…少しでも彼女を温めてあげたいと思ったんだ。

 

「帰りましょう千聖先輩(・・・・)、こんな所にいたら風邪をひいてしまいます」

 

 そう言いさらに強く抱きしめると千聖先輩は

 

「……あぁぁぁああ!ごめんなさい…!あなたに、あなたにあげたかったのに…!」

 

 泣き出し、俺に謝ってきた。

 

「千聖先輩は悪くないですよ」

 

 悪いのアイツらであって、千聖先輩を助けれなかった俺だ。

 

「大切なあなたに、大好きなシンにあげたかった…」

「ッ!そう、だったんですか」

 

 大切な後輩、だけでなく大好きだったのか、なのに俺はその気持ちに気づきもせず、答えることもできなかった。

 

「千聖先輩、でも俺は…」

 

 あなたを守れなかった、そして俺はアイツらの策にまんまとやられた。つまり負けたんだんよ、敗北者さ

 

「ねえ、シン、私のことぐちゃぐちゃにしてくれる?」

「何もかも忘れるぐらいに…してくれますか?」

 

 千聖先輩はそう言うも俺はそんなこと…

 

「そんなこと出来ないって千聖先輩が一番知ってるはずですよ」

「……そう、よね」

 

 なんでここではいって言えないんだろうか、言おうと思ったけどふと頭の中にひまりの泣いている姿が浮かんでしまった。

 

 だから俺は千聖先輩の気持ちに答えてあげれなかった。

 

「でも千聖先輩、これだけは約束します」

「約束?」

 

 ああ、これは約束と言うより決心ってやつだ。

 

「俺は…もう、誰にも負けませから、千聖先輩と同じ目に遭うような人を今後絶対出しませんから」

 

 誰にも負けない、こんなことは二度と起きさせないようにしなくちゃならない

 

「……覚悟が遅いのよ、それは私があう前に決めとくことよ…!」

 

 千聖先輩は俺の胸に顔を沈めながらそう答えた後はずっと、ずーと泣き続けていた。

 

 雨はさらに酷くなり俺達二人は雨に打たれながら温もりを求めるよう抱き合っていた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 千聖先輩が少し落ち着いたところで展望台を後に下の道路まで暗い夜道を歩いていた。

 

 それはもちろん今の千聖先輩をほっとくことなんでできないから手を繋いだまま歩いている。

 

 千聖先輩の方を向くと目の周りは赤くなっている、それはまああんなに泣いてたからな、仕方がないよ

 

 下道に付きタクシーを拾うため立っているもタクシーなんて全く通らない。

 

「千聖先輩、ちょっと電話してタクシー呼びますね」

「……わかったわ」

 

 千聖先輩から許可も降りたためタクシー会社を適当に調べ電話かけた。

 

「すぐ着くそうです、それまでの辛抱ですよ」

 

 千聖先輩は自分の体を抱いて震えていた。雨降ってるし俺も寒いって思ってる、だから寒いんだろう。

 

 少したって向う側から車がやってきた。すぐって言ってたがこんなにも早くつくものなのか

 

 そう思っていた矢先、目の前に止まった車はタクシーなんてものじゃなかった。

 

 俺達の目の前に止まっている車、その黒塗りの高級車は俺の実家にあるあの車にとても似ている。

 

「よお、偶然だなー弦巻シン君?」

「……綺羅…!てめえ!」

 

 綺羅のやつは車の中から窓をあけ俺に話しかけてきた。

 

「おいおいこんな夜中にどうした?傘はどーしたんだよ、なあ?」

 

 千聖先輩は俺の後ろにて身を隠していた。

 

「……お前だよな、千聖先輩に酷いことしたのって」

「千聖?…ああ、あの小娘か」

 

 ッ!やっぱりこいつが!

 

「やっぱりお前が…!」

「俺がどうした?」

「お前が、お前が…千聖先輩を犯したんだろが!」

「……ふはははは!俺が?あんな小娘を?なんで貧乏人なんて俺が抱かなきゃならんのだ」

「なん、だと…!」

 

 こいつ以外に誰がいるんだよ!

 

「犯したのはこいつだよ、こいつ、俺は何もしてねーよ」

 

 こいつだと言って隣に座っているやつを指さしてそう言っていた。

 

 そいつは以前アギトさんが言ってたやつだろう、見た感じからわかるがクソゴリラだ、体がデカすぎる。

 

 そいつは車から降りて俺の目の前にやってきた。

 

「俺がそいつを犯したけどなんだ?」

 

 上から俺を見下ろしてきてはそんなことを言う。身長ですらこんなにも差があるのかよ

 

「……お前は許さない、絶対!許さない…!」

「なんだタイマンか?いいぜ殺してやるよ」

「やめろアイク、まだ時じゃない、なーに、やるなら最高の準備ができた時にするべきだろ」

「……うす、ボス」

 

 外人の見た目のくせにやけに日本語が上手いなこいつ

 

「なあ綺羅さんよ」

「……なんだ弦巻シン?」

 

 恐らく暖かいであろう車内から声が聞こえそっちを向きながら俺は言った。

 

「俺さ、お前のこと一発ぶん殴れば心開き直してこんなこともうしなくなるんじゃないかって思ってたんだよ」

「ほーう、面白いことを言うんだな、貧乏人とのハーフごときがな、ふはは!」

 

 本当に思ってたさ、

 

「けど…もう無理そうだな、お前達は絶対に許さない」

 

 千聖先輩にしたこと、それはごめんで許されるレベルなんかじゃない、千聖先輩の処女を奪っておきながらそんなこと許すわけがないだろ…!

 

「次からこんなことするな、俺が目的なら正々堂々正面からかかってこいよ」

「ほー言うではないか、死にたいならそのうち殺してやろうか?」

「俺は死なねーし、絶対にもう負けない」

 

 シンは話しながら目をつぶっていた。何故シンがつぶっていたかわからないが

 

「……俺がお前達を成敗する!そして…みんなは俺が守る!」

 

 そう答えたシンの目は今までと違っていた。シンの父親と同じような赤く燃える紅色の瞳へと変わっていた。

 

「ッ!お前らのその目、見てて本当にイライラするんだよなぁ…!」

「だったら潰してみろよ、俺だけを見ろ、俺だけに手を出せよ」

 

 だったら好都合だ、俺の目なんかにイライラするのなら俺だけに手を出せばいいだろ?俺の友達には手を出さずにさ

 

「チッ!おい、車を出せ」

 

 アイクってやつはいつの間にか車に戻っていたようだ、俺との話が終わり綺羅達は俺達から離れていった。

 

「千聖先輩大丈夫ですか?」

「え、ええ、私は大丈夫よ、それよりあなたその目は何?だ、大丈夫なの?」

「目、ですか?どうかしてるんですか?」

 

 シン本人は自分の瞳が変わっていることに気づいていなかった、千聖は続きを話そうと思ったところ丁度タクシーが来てその話をすることはできなかった。

 

 俺達のマンションに着き千聖先輩の階層に向かう時話しかけられた。

 

「シン、私、そのまだ薬の効果が切れてなくて…」

「……そういえば言ってましたね」

 

 でも俺が手伝ってあげるってことはできない…

 

 そのまま千聖先輩の部屋の前まで行き

 

「それでは千聖先輩、悪いけど俺はこ…」

 

 ここでって言おうとした時、千聖先輩はいきなりキスをしてきた。

 

 こないだ学校でしたキスなんかとは違う、もう抱きしめられながら俺はずっとさせられていた。

 

「私はシンが好き、大好きよ」

「……さ、さっき聞きましたから」

 

 恥ずかしいこと何度も言えるよな、千聖先輩もひまりも

 

「前に千聖先輩私のこと好きになっちゃダメって言ってませんでしたっけ?」

「……そんなこと言ってないわ」

 

 そう答えるとさっきの続きが始まった。千聖先輩はさっきまで酷い目にあっていたから癒し?って言えばいいのかな?癒しが欲しいんだろう。

 

「……これを思い出して一人で(・・・)頑張るわ」

「ッ!」

 

 そう答えた千聖先輩はさっきまでとは違い火照っている頬と、トロンとした瞳、彼女は本当は違うことを頼みたいはず、だけど俺がそんなことをしてくれないって知ってるから言わない。

 

「それじゃあまた明日」

「……ええ、また明日」

 

 その言葉をあとに俺達はお互いの家に戻るのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 昨日の夜、いや今日の夜か、雨で濡れたからシャワーを浴びてすぐに眠ったが今洗面台の前に来て気づいた。

 

「……なんだ、これ」

 

 自分の瞳が自分のものになくなっていた。いつもなら金色の瞳が今では全く違う。

 

 あれか、親父が言ってたことなのか、まさかあの出来事で瞳の色が変わるとはな

 

「親父に聞くか」

 

 戻らないと学校では不便だろ?昨日までこころと同じ瞳の色だったやつの色が変わってたらそりゃーな?カラコンだって言われる落ちだろ

 

 昨日は体が冷えきったため今日は制服のブラザーを羽織って家を後にする。

 

 後にしてものの今の千聖先輩を一人で登校させるのもあれなもんでマンションの入口に立ち待っていた。

 

 するとどうだろうか

 

「……姉さん、あの人がいるんですけど」

「ええ、シンがいるわね」

「……姉妹仲良く登校っすか」

 

 しかも制服が同じだな、って?

 

「千歳ちゃんって同学年?」

「はあ?何言ってるんですが、中3ですけど何か?そんなのわからないなんて死んだ方がマシですよ」

「……相変わず口ひでー」

 

 昨日といい今日も絶好調だよな、姉より口悪すぎ問題だろ

 

「こら千歳、口がすぎるわよ?」

「……ごめん姉さん」

「謝るならシンに謝りなさい」

「チッどうも、すみませんでした」

「別になんとも思ってねーよ」

 

 てか千聖先輩…は大丈夫なのか?昨日あんなことがあったのに普通に接しててさ…

 

「ん?どうかしたの?」

「い、いえ…なんでもないです」

 

 千歳ちゃんの前で昨日の話なんてできないしな、聞けないっての

 

「それよりシン、その瞳は何?大丈夫なの?」

「……あれです、目を擦って充血しちゃったんすよ」

「そんなことで済まされるようなことじゃないと思うのだけれども」

 

 はっきり言うが俺のことより自分のことをもっと心配して欲しかった。けど千聖先輩は、そうだよな、あなたって優しいですもんね

 

「今度病院行ってきます」

「先輩なんですかその目ー、厨二病ってやつですか?」

「俺も知らねーよ」

 

 それを今から聞きに行こうと思ってたんだよ

 

「シン、少しいい?」

「なんですか?」

 

 千聖先輩が俺に耳打ちにて小声で話す。

 

「千歳には心配かけたくないの、だから昨日のことは忘れなさい」

「……いや忘れろって言われても」

「いいから忘れなさい、その、あの時私どうかしてたは……は、恥ずかしいことも言ってたし」

 

 あーそのことを忘れろってことか、いやでも忘れられないっての…!

 

「千歳ちゃんには黙っておきます」

「ま、まあそれで許すわ」

 

 昨日のあの出来事より俺に告白したことを心配してるのかよ…あの出来事はなんだったんだよ、あんたは最低なことされたのにさ

 

「……起きてしまったことは仕方がない、向き合って、前を見て進むのよ、後ろは決して振り返ってわならないわ」

「…………って有翔とあなたが教えてくれたことよ」

「ッ!」

 

 昨日あんなに泣いていた千聖さんはもういないのだろうか、俺の目の前にいるのは花咲学園の俺の先輩、千聖先輩の姿しか見えない。

 

「何度も言うけど俺はもう誰にも負けません」

「…………うん」

「みんなは俺が守るから」

「……守りなさい、あなたの大切なものは」

「はい」

 

 この人は傷つきながらも俺の背中を押してくれる。やっぱり千聖先輩はこうでなくちゃな

 

「いつまで姉さんとくっついてるんですか?匂いが移るので離れてください、汚いです」

「うわー傷ついた、千聖先輩癒してください」

「……よしよーし、いい子いい子」

「なっ!?ね、姉さん何してるんですか!」

 

 千聖先輩は俺の頭を撫でていてその光景を見た千歳ちゃんが止めに入る。

 

「あなたもドラマの主演が決まったそうね、今まで頑張ってきてよかったじゃない」

「…………そうですね、ありがとうございます」

 

 そう言えば昨日喜んでたな、姉妹そろって女優ってのはすげーな

 

 その後仲良く3人で登校してた。途中で

 

「では私は事務所に顔出さないといけないのでこちらへ」

 

 と、千歳ちゃんが言い出し別のルートを進み出したところで俺も屋敷に行かないといけないってことを思い出す。

 

 今の千聖先輩なら一人で登校しても大丈夫だろ、あいつらはもう千聖先輩を狙うことは無い、目的は俺に嫌がらせをすることだったからな?

 

「俺も今日は屋敷に顔出すからこっちで」

「……そう、なら彩ちゃんとでも登校しようかしらね」

「…千聖先輩」

 

 特に話すことはないが呼び止めてしまった。

 

「……えっと、俺のこと好きですか?」

 

 前に千聖先輩が自分のことを好きかって聞いてきたことがあった。そのことを思い出し、俺もそのような質問をしたら

 

「ええ好きよ、誰よりもね」

「……でも返事をしてくれないのがあなたでしょ?」

「……わかってるじゃないっすか」

 

 返事をしたくても今は千聖先輩の望む返事ができない、なぜなら俺はひまりの返事もできていない、返事をするのならまずはひまりが優先さ

 

「じゃあ俺こっちなんで」

「ええ、また今度」

 

 千聖先輩に別れをつげ屋敷に向かうが

 

「へーやっぱり姉さんの大切な人って先輩だったんですね」

「盗み聞きとは感心しないな」

「やだなー先輩、飲み物買ってたんですよ」

 

 自販機で買ったばかりのお茶を手にして千歳ちゃんはそんなことを言う。

 

「……なんで返事しないんですか?あ、やっぱり姉さんには胸がないから興味ないんですか?」

「そんな理由じゃない、先輩には先輩なりの理由があるんだよ」

 

 理由なんて千歳に言うまでもないよな

 

「……何勝手に先輩ぶってるんですか、姉さんに気に入られているからって調子に乗らないでください」

「だったら俺のこと先輩って呼ぶなよ」

「勘違いしないでください、名前で呼びたくないから先輩呼びしてるんですよ先輩」

 

 はあ…相変わらず口が悪いなー千歳ちゃんは

 

「まあ別に姉さんが誰を好きになろうと私には関係ないんですけど」

「そうだな、千歳ちゃんには関係ないよな」

 

 千歳ちゃんは千聖先輩じゃない、妹さんだ、だから彼女は関係ない

 

「でもてっきり俺は千歳ちゃんが怒ると思ったな」

「……なんでですか?」

「だって姉さんのこと、千聖先輩のこと尊敬してるだろ?」

 

 昨日神は千聖先輩だって千歳ちゃんは言ってた、だから尊敬してるはずさ

 

「私が白鷺千聖を尊敬している?……冗談じゃない…!」

「ッ!それはどうゆうことだ?」

 

 あの発言からこのような返事が来るなんて思いもしなかったな

 

「私は姉さんのことは尊敬している、けど…」

 

「白鷺千聖は世界で一番嫌いです」

 

「……はあ、めんどくさい姉妹だな」ボソ

 

 どうしてでの家庭も姉妹どうし仲良くできないのか、まあ俺もそんなんだったから言えないけどさ

 

「このこと姉さんには黙っててくださいね」

「わかってる」

「……それでは私は先に行きます」

 

 千歳ちゃんはそう言うと駅の方へと向かっていった。

 

「それと先輩、その目は綺麗だと思いますが目付きをどうにかしてください、怖いですよ?」

「ッ!気おつける」

 

 目を逸らしてそう答えシンの眼は変わらない、その代わり表情だけが申し訳なさそうな顔つきになる。

 

「……本当俺って不幸だよな」

 

 シンは顔をおろして誰からにも眼を見られないよう下を向きながら屋敷へと足を動かしたのであった。




結果ですがシンは千聖さんを助けることが出来ませんでした。でも彼はもう二度と誰かを同じ目に合わせることはないはずです。

まだシリアスは続きます。なるべく早く終わらせるよう頑張りますのでお許しを…

千歳ちゃんはまあそうですね、そのうち話を書きます。

あと少しで投票者数が100人になりそうです!すこしでもいいなと思ったた評価と感想をお願いしますね!

それではまた次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンの幸せとは

お久しぶりです!遅くなって9時までに投稿できなかった!

久しぶりに話を書きましたが難しいですね

それではどうぞ!

誤字脱字は後日訂正します。


 みんなが学校に登校してる中俺は一人逆方向へと向かっていた。なぜなら屋敷に行くからだ、そりゃーみんなとは逆方向になるよな

 

「……………………」

 

 俺は下を向きながら歩く、こんな瞳今はまだ誰にも見られたくないっての、まあ白鷺姉妹には見られたけどさ

 

「……シンジのやつ、こんな気持ちだったんだろうな」

 

 オッドアイのあいつはいつもこんな感情だったのだろうか、いざ自分の身になってみると気持ちが理解できる

 

 伸びてきた前髪がちょうどよくシンの目を隠し同じ高校の生徒や他校の生徒に目を見られることはない。

 

「本当、不幸だよな」

 

 一度立ちどまり空を見上げてそう呟く、空は雲ひとつない快晴で秋の初めを感じさせる冷たい風が吹きシンの髪を揺らす。

 

 空は青いのにシンの瞳はその逆、つまり夕焼け空模様の紅い瞳だ。

 

「…………シン、君?」

 

 そんなシンに話しかける人物は誰なのか

 

「なんだ、ひまりか」

 

 登校中のひまりがシンを見つけたらしく話しかけていた。

 

「お前1人で登校してるのか?」

「……今日はたまたまだよ」

 

 そんな会話をするが話はすぐに切り替わる。

 

「シン君その目…」

「ッ!」

 

 ひまりにそう聞かれた俺は隠すように片手で両目を隠す。シンジにあんなことを言っていたのに今では俺が気にしてさ…何やってんだよ

 

「……ちょっといろいろあった」

「大丈夫なの?…それ」

「多分だけど大丈夫」

 

 そう答えたシンはさっきと違いちゃんとひまりの目を見て答えていた。

 

「綺麗な瞳だね、シンジ君の片目みたい」

「まあシンジは俺の弟だしな」

 

 兄弟は似るもんなんだよ

 

「あ、そう言えば」

 

 ひまりは突然何かを思い出したかのように言い出し

 

「童貞卒業おめでとうございます?」

 

 首を傾げながら俺にそう言ってきた。

 

 ひまりは…そうか、俺がもう抱くって決めつけてたのだろうか、でも実際は違う。

 

「……そう見えるお前の目は節穴だな」

「だよねーやっぱりしたん…え!?今なんて!?」

 

 は、恥ずかしいこと言いたくないからそう答えたのにさ

 

「だからしてないって、童貞のままだよ」

 

 そう答えたシンはさっきまで表情ではなく、少し穏やかな表情だった。

 

「そ、そうなだ…よかったぁ」

 

 よかった、ねー

 

「ッ!ごめん!でもそれって…」

 

 ひまりは気づいたようだな、ああその通り、その通りさ

 

「……ごめんなひまり、千聖先輩守れなかったよ」

「……なんで私に謝るの?」

 

 さあなんでだろうな?一応話したし?報告はするべきだろ

 

「だから童貞だよ」

「う、うんそうだね」

 

「(本当はダメなのに…ダメなのに少し喜んでいる自分がいるのが嫌になっちゃう)」

 

 ひまりはそう思うが顔には決して出さない、しかしさっきは喜んでしまった。つまりはシンにバレてるはずだろう

 

「なあひまり、俺さ、俺…悔しいんだよ」

「……………………」

「なんで抱かなかったんだって、どうして早く返事をしなかったのかって」

「……でも、それは」

 

 ひまりは続きを言うことなく下を向いてしまう。

 

「負けた、負けた、負けたんだよ、俺はアイツらに負けたんだよ…それが何よりも悔しいんだよ」

 

 ひまりは黙って俺の話を聞いてくれる。こんな話聞きたくないって思うよな

 

「……でも、正義の味方になりたいんでしょ?」

 

 そうだ、俺は正義の味方になるんだ。もう負けなんて今回だけ、そうしないといけないんだ。

 

「ああ、だから俺はもう誰にも負けない」

「……誰にも負けない、ね」

 

 ひまりの横を通り過ぎて屋敷に向かう。

 

「シン君!」

 

 ひまりに呼ばれシンは足を止めるが後ろを振り向かない。

 

「誰にも負けないなんて許さないから!」

「シン君は私に負けて私と恋人になるんだからね!」

「ッ!」

 

 そう言えば前に言ったけ?ひまりに負けた時に返事をしようかなって

 

「私には負けないとダメなんだから!」

 

 登校中の生徒のみんながひまりたシンを見ている。道端でこんな光景があればそれは見てしまう。

 

「撤回する、ひまり、俺はお前には負けてもいいや」

 

 ひまりの方を向き笑顔でそう答える。誰にも負けないって言ったけどひまりにはちゃんと負ける時は負けて返事をしないといけない

 

 だから俺はひまりだけには負けてもいいってことにするよ

 

「ぜっーたい!負かせてやるんだからね!」

「やれるもんならやってみな、俺はそう弱くないぞ?」

 

 だってまだひまりには負けてねーし

 

「ふん!シン君なんておっぱい触らせればイチコロだよ!」

「なっ!?お、お前ー!」

 

 ここには俺達以外の人もいるんだぞ?なのに何を言ってんだよひまりのやつは

 

「ッ!そ、そろそろ学校行くね!シン君も遅れてもいいからちゃんと行くんだよ!」

 

 さよならー!と叫びながらひまりは学校に向かう。あんなことを大声で言ってたからそりゃ目立つし恥ずかしいよな

 

 ひまりには本当に何度も助けられる。さっきまでとは違いなんか心に余裕がもてた気がする。

 

 その後は誰とも会うことなく、そして下を向くことなくシンはいつも通りに歩き屋敷へと向かった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 屋敷につきインターホンを鳴らす。屋敷だけどこうゆうのはちゃんと着いてるんだよ、ここだけは普通なんだよな

 

「はい」

「あー俺だ、シンだけど開けてもらっていいか?」

「かしこまりました」

 

 黒服の一人が出てくれて問を開けてくれた。中に入ると数ヶ月前と何も変わらない広い庭がそこにはある。

 

「なんやわい生きとったんか」

 

 屋敷まで向かっている途中喋る犬、タマに話しかけられた。その姿は芝生に寝っ転がり顔だけこちらを向けている。まるでじじいだなおい

 

「お前こそ生きてたのかよ」

「あほ!童貞のまま死ねんわ!」

「……犬にも童貞って概念案のかよ」

 

 これは初耳だな、てか普通は犬と会話なんてしねーよな

 

「まあ待っとけ、そのうちドックラン連れてってやるよ」

「明日連れてけや」

「……それは無理だな、諦めろ、じゃーな」

 

 タマに言うだけ言ってその場から離れて親父がいるであろう部屋に向かう。

 

ドアの前につきノックをしようとした時

 

「入れ」

 

 何もしてないのに気づき俺に入れと言ってきた。

 

「何用だ、俺は今忙しいんだが」

 

 親父は俺に目を向けることなく手元の資料に目を通しては印鑑を押し次にはまた別の資料を見ている。

 

 親父の仕事はあれか?なんか印鑑押すだけなのか?

 

 ってのどうでもよくて

 

「綺羅の家、教えてくんね?」

「……教えてどうする」

「……別にーちょっと世間話するだけだよ」アハハ

 

 そう、世間話をするだけ

 

「すぐに分かる嘘をつくな」

「……へー言うね、親父」

 

 一向にこっちを見て話をしようとしないところには少しイラッとするけどな

 

「なんだ、綺羅のヤツらになにかされたのか?」

「……別に」

「注意したはずだ、ヤツらはキチガイ集団って話もしただろ?」

 

 話は聞いていたさ、けどこんなことするとは思いもしなかった。

 

「はっきり言うぞ、復讐なんて考えは捨てておけ」

「ッ!復讐?なんの「とぼけんなよシン」ッ!」

 

 親父は食い気味に話しかけてきては

 

「お前じゃヤツらには勝てない、下手したら死ぬぞ?」

 

 そんなことを俺に言ってきた。

 

 そんなこと親父に言われなくてもわかってる。アイクってやつは俺よりも背が高くて筋力だって桁違いだ。剣術でどうこうできる相手だって思わない…さ、けど

 

「そんなのやってみなきゃわからねーだろ?」

「……誰かを守るってことは素晴らしいことかもしれない、けどまずは自分を大切にしろ」

 

 自分を大切にしろ?……何言ってんだよ親父

 

「自分なんて、俺なんてどうでもいいんだよ!」

 

 誰かを助けるには誰かを捨てなきゃならない、だったら俺は自分自身を捨ててやる

 

 俺が犠牲になってみんなは助かる。ほら、こんなにも素晴らしいことはないと思わないか?

 

「そんな考えしかできないお前は誰も守れないぞ」

「ッ!なんでさ!」

 

「自分も大切にできないやつが他人を大切にできるわけないだろ」

 

「ッ!……うるさい、俺がやらなきゃダメなんだよ、俺があいつらを成敗しないとダメなんだ…!」

 

 俺は千聖先輩と約束した、もう負けないって、それに千聖先輩の前であいつらに成敗してやるとも言った。

 

「そんなの誰が頼んだ?」

「お前の友人はお前がどんなにズタボロになってでも綺羅財閥を潰せと言ったか?」

「ッ!それは」

「いいかシン、誰もお前になんか頼んでないんだよ、行くのは勝手だがただの死に損になるのが落ちだ、なに俺が言ってる。今は(・・)そうなるんだよ」

 

 なんだよそれ…!俺が勝手に決めつけてる?そんなのは当たり前だろ!

 

「俺は、俺は…正義の味方になるんだよ…!」

「頼まれなくてもやってやる、じゃないと正義の味方なんかじゃない!」

 

 何度も言う、俺は正義の味方になる。だったらお節介だって、誰かのために助ける行為は当たり前のことだろ!

 

「……だったら尚更自分のことは大切にしろ、お前がいなくなって悲しむやつはいるはずだ」

「ッ!な、なんだよ、それ」

「なあシン、お前こないだまでは幸せだっただろ?」

 

 幸せ、だった?親父のやつは急に何を言い出すんだよ

 

「その幸せが奪われてお前は怒ってるんだ」

「ち、違う!俺は千聖先輩のために!」

「……本当はその千聖と言う小娘のためじゃないだろ?」

 

 だから親父はさっきから何を言ってるんだよ!こっちもみずに適当な言葉を並びやがって!

 

「お前は怖いんだよ、友に手を出されることを怖がっている」

「だから原因の綺羅を潰したくて仕方がない、違うか?」

「ッ!」

 

 違う…とは言いにくい、親父が言ってることは半分が事実だ。

 

 確かに俺はもうこれ以上被害者を増やしたくないから早めに綺羅をぶっ飛ばそうって思ってる。

 

 でも半分は本当にみんなの正義の味方になりたいから、守りたいからやろうとしてるのに

 

「…………だったらなんだよ…!」

「まあ急ぐ気はわかるが今はやめとけと言うんだ」

「……待っとけば勝算があるのか?」

「さあ?とりあえず今はやめとけと言ってるんだ」

 

 なんだよさっきから今は、今はって

 

「とりあえず今日は帰った…いや、待てシン!」

「?なんだよ」

 

 親父は急に顔を上げ俺と目を合わせる。さっきまで見向きをしなかったくせに急になんだよ

 

「ククッ!そうか、そうか!お前開眼したのか、あーあ、どうりで、いや待て?これはこれでめんどいな」

 

 てか忘れてた。目のことを聞きにここに来たはずなのにいざ来ると綺羅の家を聞いてたな

 

 やっぱり相当焦ってんだろうな俺は、だから綺羅の場所を教えろって真っ先に出たんだろう

 

「喜べシン、お前が歴代の中で最も若くして開眼した人物だぞ」

「……そりゃどーも、てかシンジはどうなんだよ」

 

 あいつは生まれた時から開眼してたんだろ?だったらシンジの方が早いだろ

 

「あいつのは前にも言ったがイレギュラーだ、お前は後天的なものでで、シンジは先天的なものだ」

「それはわかった、でこの目って戻らないの?」

 

 戻らないと学校とかでいろいろと不便になるんだけど…いやシンジにはあー入ったけどさ?

 

 俺は親父も言ってたが後天的に目の瞳が変わってしまった。だったら前のような瞳じゃないから先生やみんなから聞かれてるのが落ちだ。

 

「戻らん、なってしまったものはどうしようもない」

 

 多分だけどカラコン使えばなんとかなると思うけど…まあいいやシンジには上から言ってたしな?

 

「……わかったよ、親父と同じ瞳としてこれからは生きていくよ」

「それでいいんだ、ところでシン」

 

 なんだよ、親父のやつまだ話があるのか?

 

「開眼したからにはお前が次期弦巻家の当主となるだろうな」

「……先の話だろ、今は考えたくない」

 

 今から当主になることなんて考えたって意味無い、それにこころもそのうち開眼するかもしれないだろ?

 

「じゃあ俺戻るよ」

「……まてシン」

 

 後ろに振り向き、ドアに手をかけた時に親父が俺を呼んだ。

 

「お前が手を出さなくても時は来る、喧嘩と同じだ。先に手を出した方が負けだからな、そのことは肝に銘じとけ」

「……当たり前だ、やられたらやり返す」

 

 そう答え俺は親父の部屋から出ていった。

 

 親父が言いたかったのは俺本人に手を出されてからやるならやれって話だと思う。

 

 千聖先輩がやられてるのに本人じゃなく他人の俺が手を出したのなら、それは俺から先に手を出したことになってしまう。

 

 多分だけどそんな意味で言ったんだと思う。

 

「でも何もできないってのは悔しいな」

 

 あんなにも千聖先輩に酷いことをしたのに今は手を出せないってのはな

 

 だけどいいさ、今はこの怒りを貯めて、いつかあいつらに…

 

「……なーんて、冗談だよ」アハハ

 

 そう言い、シンは不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 屋敷を出る前にせっかく帰ってきたから母さんと会おうと思い部屋に向かう。

 

「……………………」

 

 部屋に着くもなんて声をかけて入ればいいかわからなかった。瞳は変わってる。母さんに事情を話せば納得してくれると思うけど…

 

 んーなんか言いにくいだろ?

 

「失礼します」

 

 中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 母さんの部屋からはアレックスが出てきては

 

「なっ!?し、シン様!?な、なぜここに!?」

「うるさいな、母さんに会いにきたんだよ」

 

 まあ本当は別の理由があるけどな、アレックスに話しても意味ないだろ

 

「奥様…にですか?」

「ああ、だからちょっと失礼「待ってください!」……なんだよ」

 

 アレックスに制服を捕まれ母さんの部屋に入るのを阻止される。

 

「……奥様は今体調を崩しています」

「だったらなんだよ、移らないって」

 

 この数年病気にかかったことはないからな、自信を持って言える。

 

「だからそうではなくてですね、その、えっと…」

「?なんだよ、言いたいことあるなら言えよ」

「いやだから、その、ですね…奥様はい「シンさん?いるんですか?」ッ!」

 

 アレックスが話をしてる途中に母さんが部屋の中から話しかけてきた。

 

「母さんは今部屋の中で着替えてますけど……入りますか?」

「なっ!?は、入らねーよ!」

「あらあら、シンさんは入ってくると思ったんですけどね♪」

「……もういい!からかいやがって!」

 

 人がせっかく帰ってきたから話そうと思ってきたからこれかよ、なんか話す気失せたよ

 

 部屋には入らず用事もすんだから屋敷を後にしようと玄関へと向かう。

 

「奥様は巨乳ですからね、シン様は興味ありありかと」

「親で興奮してどうすんだよ」

 

 後ろからついてくるアレックスにそう言われるもすぐに返事をする。

 

「巨乳好きは否定しないんですねー」

「……うるさい、黙れ」

 

 てかこいつなんでついてくんだよ

 

「シン様瞳の色変わりましたね、カラコンですか?厨二病ですか?」

「……ちげーよ、話すとめんどいから親父に聞け、あとシンジには厨二病とか言うなよな、気にしてんだから」

 

 人に瞳の色が変わる家系なんですよ、なんて言えないだろ普通

 

 てかさ、瞳の色が変わるとか普通じゃないじゃん

 

「まあその話は置いといて、本日は何故屋敷に?」

「……親父に用があった、それだけだよ」

 

 嘘ではないしな

 

「あ、アレックス、お前にも用事あったは」

「ほーう、童貞を貰って欲しいって話ですか?残念ながらアレックスにはシンジ様と言う心を決めた人がいますので!」

「そんなことじゃねーよ!」

 

 こいつと話すと調子狂うなーモカと同じじゃねーか!

 

「木刀さ、ストックいくらか欲しいんだけど」

「なんですか?いくら折っても変えがあるように欲しいと?」

「……別に八つ当たりして折る予定とか今後ない、だけど、そのーな」

「ほら、コンパクトすぎてよく無くすんだよ」アハハ

「はあ、まあアレックスも何本か持ち歩いてるのでいいですが」

 

 体の至る所からあの折りたたみ式の木刀を数本取り出し、はいと言って俺に渡してきた。

 

「クッ!胸さえあれば谷間に挟んで隠せれましたのに…!」

「はいはいそうですねーあと木刀ありがとな」

 

 くれたしちゃんとお礼を言う。

 

「はっ!アレックス本日はお花の手入れをしないいけないんでした!」

「ってことなんでアレックスはこれにて退散します!木刀は大切に使うんですよぉぉ!」

 

 花畑に向かいながら俺にそう言いアレックスは消えていった。

 

「これで楽になるな」

 

 あいつの相手はめんどくさいしな、こっからは1人で学校行って授業受けてバイトしていつも通りの日常を送るんだ。

 

 だけど…警戒はしとかないと、な?

 

「よおシン、乗ってくか?」

 

 と思った矢先アギトさんが門の前に車を止めていてそこにはいた。

 

「いやいい、歩いていくよ、それに弦巻家のお世話にはあんまりなりたくないからな」

 

 親父には住む場所とか提供してもらってるからな、これ以上はお世話になりたくないっての

 

「じゃあ1人の知り合いとして送って行ってやるって言ったら?」

「…………乗る」

 

 シンは少し考えていたが乗ると返事をした。

 

「俺も丁度学校に向かうところだったからな」

「なんか曲とか流さないのか?」

 

 車に乗って発進したのはいいが無音なんだけど

 

「んじゃAV見るか」

「おい!」

 

 なんでそこでAVになるんだよ!てかもう再生されてるし!てか最初からほぼクライマックス展開なんですが!?

 

「普段はお嬢が乗ってるからな、再生なんてできないっての、お、胸でかいなおい」

「てか3Pかよ!」

 

 そこにはピンク色の髪をした巨乳の女性と、金髪の胸は普通ぐらいの女性が何やら楽しそうなことをしていた。

 

「お前の友人に似てるヤツらいないか?」

「ッ!そんなやつらいない」

 

 やめてくれよ、その2人とも俺に告白してくれた大切な人達なんだからさ

 

 似てるとか言われると恥ずかしいし俺が困るっての

 

 てか3Pとか燐子先輩が見たら興奮するだろこれ

 

「お前瞳の色変わったな、まるでボスみたいだ」

「……まあ親父の息子、だからな」

 

 AVをBGMにして話をする。てかこれ理由になるのかな?

 

「ふーん、似合ってんじゃねーの?知らんけど」

「なんだよそれ」

 

 知らんけどってだったら言うなっての

 

「てかボスから聞いた、綺羅財閥からなんかされたらしいな」

「らしいじゃない、されたんだよ」

「まああいつらはキチガイ集団だからな、目付けられるとめんどくさい」

 

 きっとあいつらは気に入らないことがあれば力でねじ伏せてきたんだろうな

 

「あの筋肉ゴリラ凄かった」

「……だろ?かなわないって思っただろ」

 

 思ったさ、けど俺はいずれあいつに勝たないといけない、勝って成敗しないといけない。

 

「っと、もう着いたみたいだな」

「……じゃあ俺はここで」

 

 車から降りて急いで教室へと向かう。何も連絡無しの大遅刻、授業が担任の担当している英語じゃないことを祈るしかない

 

「…………まあそうだよな」

 

 教室のドアを開けると担任の秋山先生が授業をしていた。前のドアから堂々と開けたシンはみんなからの視線を集める。

 

「大遅刻だぞ弦巻弟」

「すみません、背中が痒くて遅れました」

「……もっとマシな言い訳を考えろ、もういい席に着け」

 

 俺は席に向かおうとしたが

 

「まて、その目はなんだ?お前」

 

 ですよねー聞いてきますよね!

 

「……昨日悲しいことがあったんですよ、泣いてたら目が充血しちゃいました」

「…………そうか、病院には行けよ」

 

 嘘だろこれで通じちゃったよ、まあ嘘はついてない、実際昨日は悲しいことあったし

 

 授業が終われば

 

「シン!あなたこんな時間に登校するんなんてダメよ!めっ!」

「悪いこころ、ちょっと用事があったんだ」

 

 こころが俺に話しかけてきては怒ってきた。めっ!ってお前可愛すぎるだろ

 

「あら?シン屋敷に行ったのね!」

「ッ!なんでわかった?」

「アギトの匂いがするわ!」

「……お前はタマかよ!」

「タマは犬よ!」

「だからそれに似てるからタマかよって言ったんだろ!」

 

 なんか、こうゆうやり取りをすると入学したての時を思い出すな

 

 前までこの2人のやり取りを見てたクラスメイト達は弦巻家には関わらないようにしよう、と思っていた。

 

 しかし今はこの光景が楽しいと思い、4組の雰囲気をさらに明るくしてくれる存在となっていた。

 

「あはは、こころとシンは本当に仲いいよね」

「……まあ姉弟、だからな」

「そうよ沙綾!あたしとシンとシンジは仲のいい姉弟なのよ!」

 

 まあ否定はしないさ

 

「じゃあ私も姉弟の1人だね」

「おたえ、何故そうなる」

「だってシン君の嫁ならこころの姉でしょ?いや妹?」

「俺はいつお前と結婚したんだよ!」

 

 あーくそ!こいつらといるといつもの調子になってしまう!

 

「お、おたえ面白い冗談言うね…」

「沙綾?どうしたの?」

「え?な、なんでもないよーあはは」

 

 2人でなに話してんだか

 

「ところで師匠!その、目は大丈夫なのでしょうか!」

「多分大丈夫、てか弟子にした覚えはない!」

 

 いつイヴは俺の弟子になったんだよ

 

「それにしてもお父様やシンジの片目と似てるわね!」

「本当だ!シンジ君の目にそっくりだ!」

 

 こころと香澄にそう言われる。

 

「……知らね、家族だからじゃね?」アハハ

 

 そう答えるとこころ達は納得した、馬鹿で助かったよ

 

 その後は適当に1日を過ごし放課後となった。

 

 放課後となりバイトに向かおうと思ったら

 

「ッ!…彩先輩」

「し、シン君…」

 

 曲がり角で偶然彩先輩と出会ってしまった。昨日酷い態度を取ってしまったことについて誤解だと話をしないといけないと思ってたがこうもすぐに出会すとは

 

「彩先輩、昨日の事なんですけど…」

「……ごめん、仕事があるから」

「ちょ、彩先輩!」

 

俺は咄嗟に彩先輩の手を握って止めてしまう。

 

「急いでるの、離して…くれないかな?」

「ッ!す、すみません、呼び止めてしまって」

 

彩先輩はその後後ろを振り向くことなく過ぎ去って行った。

 

「シン、彩ちゃんになにかしたの?」

「うわ!千聖先輩!?いつからそこに」

「あなたが彩ちゃんの手を握った瞬間ぐらいかしら」

 

すんごいところで来ますな

 

「それより彩ちゃんに何かしたの?」

「……えっと」

 

俺は千聖先輩に昨日のことを話した。すると

 

「はあ、それはあなたが100悪いわよ」

「だから話そうと思ったんですけどね」

「……私からも話はするように伝えとくからちゃんと話なさい」

「……はい」

 

 明日ちゃんと話すさ

 

「ふふ、あなた今朝より大分様子が戻ってきたわ」

「……あなたには明るい方が似合ってるわよ」

「…………そうですかね」

 

 確かに今朝よりかは心の持ちようも楽だと思う。まあそれは今のところ押さえつけてるだけだど

 

「ねえシン」

「な、なんですか千聖先輩」

 

 千聖先輩は俺に抱きついてきた。学校で誰かに見られてるかもしれないのにそんなこと気にせず抱きついてくる。

 

「私ね今はあなたにこうして甘えないと白鷺千聖を演じられないの」

「ッ!」

 

 確かにあんなことがあっていつも通りにできるなんて普通できないよな

 

「俺に甘えて保てれるなら…俺は利用されます」

「……じゃあキスしてもいい?」

「いやさすがにそれは…!」

 

 って言おうとしてもしてくるのが千聖先輩ですよねー

 

 少し離れてから千聖先輩は

 

「好きよ、シン」

 

 とだけ言い教室に向かうのか、玄関に向かうのかわからないがどこかへと行った。

 

「不幸だな、なんて言ったらファンに叩かれるよな」

 

 別に千聖先輩とキスしたことに対して不幸だと言ってるわけじゃない。こうなってしまった俺達のことを指して言ってるんだ。

 

「…………不幸だな」

 

 そうは思っても口に出てしまうシンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰にも見られてない、2人はそう思ってた。けどそれを目撃したアイドルのセンターである彼女は一体どう思ったのか

 

 それは本人しかわからないことである。




いずれシンは綺羅達と…まあその話はそのうち書きます。

次回は彼女の話です。

それでは次回の話でお会いしましょう!またね!


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弦巻シンは鈍感野郎である

投稿できました!褒めてください!

それと小説用のTwitterを作ったんですけどフォローしてくれますか!?
もしそうなら今度ID書きます!

それではどうぞ!!


 朝、いつもは1人で登校するけど今は違う。

 

 あの人を待たないといけない、待ってくれって頼まれてないけどさ?昨日あんなこと言われたら少しでも一緒にいてやりたいって思うよな…まあだからって告白の返事をして付き合うって訳ではないけどさ

 

 マンションの出入り口にて待っていると1人の女性が現れた。

 

「おはよう千歳ちゃん、姉さんは?」

「……なんですか先輩、姉さんのストーキングですか?キモいんでやめてください」

 

 千歳ちゃんはいつ通り口が悪いですな

 

「いや一緒に学校行こうと思ってたんだよ」

「姉さんは仕事があるって行って先に出ました」

「……そっか、そうなのか」

 

 だったらいいや、千聖先輩のことは諦めよう、それより千歳ちゃんのことが気になる。

 

 この前のあのセリフ

 

「白鷺千聖は世界で一番嫌いです」

 

 姉さんのことは尊敬しているのに同一人物の白鷺千聖を嫌うってどうゆうことなんだ?

 

「なんですか、着いてこないでくださいよ」

「学校、同じだからルートも一緒だろ」

「……このルート遠回りなんですけどねー」

「そうか?俺はこのルートしか知らないな」

 

 そう答えるとあとから聞かれることはなかった。咄嗟に出たこの嘘が効いたんだろうな

 

「聞きたいことでもあるんですか?」

「……まああるな、聞いてもいいってこと?」

「ダメです」

「いや即答かよ!」

 

 思わず突っ込んじゃったじゃねーか!

 

「……こないだ言ってたこと、ちょっと気になってさ」

「何か言ってましたっけ?」

 

 いや普通に受け答えしてくれてるやん、なんでダメって言ったんだよ

 

「姉さんのことは尊敬しているの白鷺千聖は嫌いってどうゆうこと?」

「……あーそのことですか、別にそのままの意味ですけど?」

 

 いや、だからそのそのままの意味がわからないんだっての!

 

「姉さんは尊敬してますし大好きです」

「でも白鷺千聖と姉さんは違うんです」

「だから同一人物だろって」

「違います!」

 

 さっきまで俺の前を歩き背中を見せていたが今は違う。振り返り俺と向かい合って違うと言った。

 

「何が違うんだ?」

「姉さんは姉さん、白鷺千聖は私の姉さんじゃないんです」

「……さっきから言ってる意味がわからん」

 

 だからそれって同じだろ?俺の姉はこころだ。そしてこころは俺の姉だ。どう考えても千歳ちゃんたちも同じだろこれ

 

「白鷺千聖のせいで私は…!」

「……なんでもないです。とゆうかなんで先輩が知る必要あるんですか?他人の家庭事情知りたがるとか変な趣味してますね」

「俺は千聖先輩と千歳ちゃんが仲良くなって欲しいから言ってるんだよ」

 

 嘘ではないさ、姉妹は仲がいいほうがいい、俺が言うんだから絶対だ。

 

「……余計なお世話です」

「いや、だか……ら!」

 

 話の途中で奥に彩先輩が見えた。

 

「ッ!」

 

 彩先輩は俺に気づくと走ってどこかに行ってしまった。

 

「ッ!悪い千歳ちゃん!この話はまた今度!」

「はあ!?ちょっと先輩!」

 

 千歳ちゃんには悪いが今は彩先輩優先だ。こないだ酷い態度をとったことについて謝らないと!

 

 走ってる彩先輩を追いかける、追いかけて、追いかけて

 

「……追いつきましたよ、彩先輩」

 

 途中で彩先輩は息が切れたのか止まってくれたためすぐに追いつくことができた。

 

「はあ、はあ、はあ…シン君足速いんだね」

「……まあ男子ですから」

 

 男は女より足が早くないといけないんだよ、まあアレックスとの稽古のおかげで体力面や筋力面は鍛えられたけどな

 

「どうして逃げるんですか?」

「…………なんでだと思う?」

 

 なんで、か、あれかこないだ怖い思いをさせたから…かな?

 

「こないだの件はすみませんでした。俺あの時、色々あって、その」

「色々ってなに?」

「ッ!そ、それは」

 

 このままだと前回と同じだ。千聖先輩にあんな出来事があったなんて言えるわけがない。ましてや同じアイドルグループの彩先輩には持っても他ならない。

 

 でもここで言えないって言えばまたこないだと同じ結果になってしまう…!

 

「千聖ちゃんのことだよね?」

「ッ!ど、どこでそれを!」

 

 まさか!綺羅やつら情報を事務所に!いや、もう要は済んだはず、でも俺や千聖先輩に嫌がらせをするためにわざと!

 

 頭の中で色々と考えていたがそんなこと何ひとつも起きてなく俺の憶測、だった。何故なら

 

「……やっぱり千聖ちゃん関係だったんだね」

「なっ!」

 

 クッ!考えすぎた!自分で墓穴を掘るなんてなんてことしてんだよ俺は

 

「いいよね千聖ちゃんは、シン君と同じ中学だったし家も同じマンション、いつでも会える」

「あ、彩先輩?」

 

 彩はそのセリフを言ってる時昨日の光景を思い出していた。

 

 目の前で好きな人が、親友と抱き合っていてキスまでしていたところを

 

「見せびらかすようにあんなことして」

「……ちょ、さっきから何言ってるんですか?」

 

 明らかに彩先輩の様子がおかしい、いつもの可愛らしい様子なんてなくてとても落ち込んでいる。俺が何かやったに違いないけど…何をしたんだ?

 

 こないだのことだよな、だったら

 

「……こないだは本当にすみませんでしたさっきも「そんなのどうでもいいよ!」ッ!」

 

 彩先輩が怒鳴り出した。アイドルらしい可愛い声なんかじゃない、顔を見てみると彩先輩は

 

 泣いていたんだ。

 

「どうして2人して私を除け者にするの!?」

「見せびらかすようにあんなことしてさ!」

 

 除け者?見せびらかすように…

 

 まさか!昨日のあれを見られていたのか!

 

「いや!あれは違って…」

「何が違うの!」

「2人だけで秘密の話しててさ!だから私に話せないんでしょ!除け者にして…!」

「それも違う!違うけど…言えないんだよ!」

 

 あークソ!いっそのこと早く言って楽になりたい、けどダメだ、このことは誰にも言えない!隠し通さなくちゃならない!千聖先輩のためにも!

 

「言えない、言えないってさっきからなんなの!」

「……それは別として別に除け者なんかにはしてない!」

「してるの!現に目の前でキスしてたじゃん!」

 

 やっぱり見てたのか…

 

 てかそれよりここで話をしたのがまずかった。通学路でこんな大声上げて喧嘩みたいなことしてたらそりゃギャラリーだって集まるよな

 

「なんだなんだ、喧嘩か?」

「彩ちゃんと、実行委員長君?なになにどったの?」

 

 とりあえず最善の策はここから立ち去らないといけない。

 

「彩先輩落ち着いてください、ここで話してても埒が明かない、人気がないところで」

「そうやって話さないつもりなんでしょ!?」

「そ、そんなことないってちゃんと話すよ」アハハ

 

 なっ!し、しまった!俺が嘘ついてる時に笑う癖をバレてたら

 

「嘘つき、嘘つき!嘘つき!」

「シン君は嘘しか言わない!私の味方になるってのも嘘だったの!?」

「ち、違う!それは本当に違う!」

「それはって他のことは嘘だって言ってるのと同じだよ!」

 

 もうなんなんだよ!結局何が言いたいんだよ彩先輩は!

 

「俺が嘘つきだってのは認める、けどそれとこれは別だ、彩先輩は何が原因で怒ってるんですか?」

「だ、だからそれは…!」

「……言えないならそれと同じで俺も」

 

 俺も言えないって言おうとした、けどそれを言う前に彩先輩は

 

「シン君のことが好きだから、好きな人が友達とあんなことしてたら傷つくよ…!」

「ッ!う、嘘だ、そんな、だって好きな人がいるって…!」

 

 前に何度もその人の話をしていた。全然気づいてくれない鈍感野郎で…

 

 気づいてくれない、ああそうか、俺のことだったのかよ

 

 彩先輩は俺のことが好きで?目の前で俺と千聖先輩が抱き合ってキスしてるところを見て、2人だけで秘密の、言えない話をしてる

 

 それは除け者にされてるって思っても仕方がないよな

 

「シン君のことが好きだから、シン君のこと理解しようって頑張ったのに!あれは何かの間違いだって思いたかった…!」

「……………………」

「けど嘘はつくし除け者にするし私は理解できない!」

「これっぽっちも理解できないしわからない!」

 

「私はシン君のことが全然わからないんだよ!」

 

 言うだけ言って彩先輩はその場から走ってどこかへ行ってしまった。

 

「ねえ何あれ、彩ちゃんものすごく怒ってたよ」

「弦巻のやつなにかしたのか?」

 

 ギャラリーどもがこうもまーうるさいこと

 

「おいお前ら、このことネットにでも晒してみろ」

「……お前らのこと許さないからな…!」

『ビクッ!』

 

 弦巻家のシンが言ってるんだ。バレないと思って晒しても弦巻家の力で特定される。そう思った彼らは何もすることはなかった。

 

 何やってんだよ俺は…!俺が彩先輩の思いに気づいてなかったから、鈍感野郎だったから!彩先輩は俺のことが好きだからもっと知ろうって!頑張ってくれてたのに!

 

 あんな所目撃してしまったらこうなっても仕方がない、別に千聖先輩のせいなんかにしたりしない

 

 元々あの事件さえ起きなければ今回こんなことも起きなかったんだ。全ては千聖先輩を守れなかった時点で起きてることなんだよ

 

「やあー随分と凄いことになってましたね先輩」

「……………………」

「アイドル2人に気に入られてさぞい羨ましいことですよ」

「……あんなクソ女より姉さんを選びますよね?ねえ?ねえ?」

 

 見ていた千歳ちゃんは俺にそう言ってくる。選ぶも何もそんな権利俺にはない、誰かを選べばその時点で1位、その他が同着2位、って順位がついてしまう。

 

 そんなのは嫌だ…!だから選べないんだ!

 

「彩先輩はクソ女なんかじゃない!」

「いやいやどう考えてもただの嫉妬剥き出しの負けヒロインじゃないですか?それに姉さんの方が可愛いですし」

「……うるさい、だったら俺は白鷺千聖を選ぶぞ?」

「ッ!勝手にすればいいんじゃないですかね」

 

 千歳ちゃんは白鷺千聖とゆう単語が出てきた瞬間に態度が変わりそのまま一言言い残してその場から後にした。

 

「……俺が今するべき行動は」

 

 携帯を取り出してとある人物に電話かける。

 

「もしもし、俺です。彩先輩が学校に来たら連絡ください、あ、来なかったら連絡しなくて大丈夫ですので」

「ちょっ!」

 

 伝えるだけ伝えて電話を切り走り出す。なーに、前の千聖先輩見たく時間が限られているわけじゃない、それに昼間だしみんな学校行ってるし仕事だってある。

 

 だから町中を走り回れば見つけれる。まあ1番は学校に行っててくれると助かるんだけどな

 

 シンは走り出したのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「…………はあ」

 

 河川敷にて座り、ため息をこぼす少女が1人いた。

 

「なんであんな態度取っちゃったんだろう」

 

 自分がさっきしたことを後悔していた。

 

「私のバカ、嫉妬したぐらいであんなに叫んで…シン君は悪くないのに」

「悪いのはちさ……ッ!」

 

 少女は急いで口を両手で塞ぐ、このことを言ってはならない、彼女がそう思い言うのをやめたんだろう。

 

「……でも本当にシン君のことわからないよ」

 

 さっきも私が怒ってるのに嘘つくし…千聖ちゃんと2人だけで秘密の話もするし

 

「あんなこと目の前でされたら、し、嫉妬しちゃうよ…!」

 

 少女は泣きながらそう言っていた。

 

「もうシン君に嫌われちゃったよね、あはは」

 

 決して少女が異常なわけではないはずだ。人間誰しもあんなのを目の前にして平気で入れないものだ。

 

 その愛が真実であればあるほど

 

「……好き、だったよ」

「ずっと前から、出会った頃から君のことが、シン君のことが…」

 

「大好き、でした…!」

 

 少女は泣きながらそう言った。それはそれは子供が大泣きした時と同じほど泣いては泣いて、涙が頬を何度も通るほど

 

「……俺も彩先輩のこと好きですよ」

「………………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんて、言うわけないだろ?」

 

 話しかけたのはシンではない別の誰かだ

 

「ボスが次はお前だって言ってたからさあ?探してみたら面白い展開になってじゃねーか」

「……いや!だ、誰…!こ、怖い」

 

 目の前に現れた身長が2メートル近くある巨人に対して少女は腰が抜けてしまった。

 

「なんだあ、弦巻シンにでも振られたのかあ?だったらあんな男のことなんて忘れて俺と楽しいことしないかあ?」

「こ、こないで…!」

「いーやあ、行くねえ!」

 

 巨人が少女に手を出そうとした瞬間に

 

「させるかあぁぁぁぁああああ!!!」

 

 シンが思いっきり駆けつけて木刀で少女の、いや彩の前に出し男の手が彩に届かないよう阻止する。

 

「クソ野郎が!なに彩先輩に触ろうとしてんだよ…!」

 

 紗夜先輩から連絡来なかったからその辺走り回ってたら遠くからこのクソ野郎と彩先輩の2人が見えたから急いできてみれば…

 

 本当、ギリギリのところで駆けつけれたな

 

「……なーんだあ、お前来んのかよ」

「ッ!」

 

 男は握っている木刀をへし折った。特に力も込めずただの普通に、軽く握っただけでシンの木刀は粉々となる。

 

 は?う、嘘だろ!まじでバケモンゴリラだろこいつ!

 

 でも今は…そんな反応をするわけには行かない、彩先輩に心配をかけてる暇なんてないぞ

 

「……し、シン君?」

「言っただろ?俺は彩先輩の味方だって、この事は嘘じゃないって信じてくれましたか?」

 

 だから俺はそう言う。すると彩先輩は

 

「……うん、うん!うん…!シン君は私の味方だ、よ…!」

 

 そう答えている途中彩は自分を責めるかのようにまた泣き始めた。

 

「これ以上彩先輩に近づくなら俺はお前に剣を振るう!」

「そんな壊れたぼうきれで俺には勝てねえよ!」

 

 巨人ことアイクが走って突っ込んでくる時に電話がかかる。

 

「チッ!いいところになんだよ!」

 

 アイクは電話に出てはなにか揉め、次には

 

「命拾いしたな弦巻シン、次会った時その命はないと思えよなあ」

「それはこっちのセリフだ」

 

 赤くなったシンの瞳がアイクの目を睨みつけそう答え、アイクはその場を後にした。

 

 アイクの後ろ姿が見えなくなるまで油断はできない、彩を抱きしめ守るように折れた木刀を構え続けた。

 

 見えなくなったところで

 

「……ッ!はあ、はあ、はあ」

 

 緊張が解けたのかシンは息を切らしていた。

 

「なんだよあの化け物、今回は完全に命拾いした…!」

 

 あのまま突っ込んできてたら俺は確実にやられていたぞ、あんなこと言ってたけどあれはただたんに威勢だ。

 

 あのセリフで引いてくれないかと思って言っただけなんだ。

 

 体の震えが止まらない…!あの感覚、あれが殺気ってやつなのか、息を止めとかないと体が震えて彩先輩に伝わるところだったぞ

 

それにあの握力、あれはやばいぞ、もし頭を掴まれたら…!

 

「うっ!」

 

 想像するだけで吐きけがする!

 

 アギトさんと親父の言う通りだ。今の俺で太刀打ちできるどうこうの話じゃない、あんなのは相手にしちゃいけない存在、だろ

 

 だったら俺はやつに勝てない、みんなを守れない?だったら俺の存在価値は、正義の味方になりたいってことは?

 

「……シン君!し、シン君!」

 

 やつに勝たないと、俺は、俺は…!

 

「シン君!だ、大丈夫?」

「……はっ!だ、だだ大丈夫です」アハハ

「………………あ、違います!これは心配をかけないためについた嘘で…」

 

 彩先輩とさっきまでこの嘘つきのことで揉めていたのに何やってるんだよ!今はあんなやつのことより彩先輩優先だろ!

 

「守ってくれた、シン君は私を守ってくれた…!私の正義の味方だよ…!」

「ッ!俺が彩先輩の正義の味方?」

「うん、誰でもない、シン君が私の正義の味方です」

 

 そうか、俺は彩先輩の正義の味方になれたのか、だったらよかったよ

 

「……彩先輩、俺ごめんなさい、彩先輩の気持ち全然気づいてなくて」

「ううん、仕方がないよ、シン君鈍感野郎だもん」

「真正面から言われると結構傷つくな」

 

 あの時から、夢の国に2人で行った時から、彩先輩は俺に好意を持ってくれていたのか、今までの行動を思い出すとわかるよな

 

「……シン君、私の方こそごめんなさい、あんな酷いこと言って…!私、もうシン君とは」

「そんなことないっすよ」

「…………えぇ?」

 

 彩先輩は泣きながら俺の目を見て話してくれる。俺が自分の瞳を気にして人の目を見ていなかったってのもあるけど

 

 この瞳になって初めて目を合わせた人は彩先輩だった。

 

「俺には彩先輩が必要です。前にも言いましたが彩先輩は俺の憧れの存在なんですから」

「……うぅぅぅう!シンくーん!」

「っと!そ、そんなに泣くことですかね?」

 

 彩先輩は俺の胸に飛びついてきた。

 

「だってぇ!絶対に嫌われたと思ったんだもんん!」

「ないですよ、俺は彩先輩のこと嫌いになったりしませんから」

「……だったら私のこと好き?」

 

 好き、か…

 

「はい、好きですよ」

「ッ!そ、それって」

「友達としてですけど」

「も、もーう!ここでそんなこと言うなんて!」

 

 このタイミングでこのことを言うのはまずかったか?ま、まあ和解できたし大丈夫だろ、多分な!

 

「でも私はシン君のこと異性として好きだからね!」

「……はい、知ってます」

 

 さっき聞いたしな

 

「でも怒鳴られて告白されたのは初めてでしたよ」

「あ、あれはなし!なしだから!えっと、だから!」

 

 彩先輩は俺から離れてから

 

「シン君…私はあなたのことが大好きです」

「……えーっとそのことなんすけどね」

「???」

 

 俺は彩先輩にひまりと千聖先輩の2人か告白されていることを話した。

 

「えぇぇぇえええええ!?」

「だ、だから返事はまだ待ってて欲しいって言うか」

 

 彩先輩は急に黙り込んでしまった。

 

 

 ってことはあれは!?シン君を落とすためにしていたことで!?私はシン君と千聖ちゃんが付き合ってると思って2人して除け者にしてって言ったのに!?

 

 付き合ってて除け者にされてるって考えは私の憶測で事実じゃなかったってこと!?

 

「私はなんてことを…!」

「だからそれはもう大丈夫ですて!誤解は解けてますから!」

「で、でもー!」

 

 これは彩先輩引く気ないぞ…

 

 だったらひとつ試してみるか

 

「じゃあひとつ俺の要求を受けてください」

「……し、シン君にならどんなことされても私はい、いいよ」

「いやそんなことしないからね!?」

 

 確か彩先輩の誕生日は12月下旬頃、つまりは

 

「彩先輩って俺と今同い歳ですよね?」

「う、うん、それが?」

 

 俺が彩先輩に要求すること、それは

 

「今から彩先輩の誕生日まで、同級生として接してもいい権利を要求します」

「ッ!」

「だから、その…よろしくな、彩」

「………………はい!」

 

 こうして俺は彩が17になるまで、同級生として接せれる権利を手に入れた。

 

 思い出せば前デートした時蘭や、モカ達と同じように接して欲しいって言われたしな、

 

 それに俺のこと、その、す、好きならその方が彩も喜ぶだろ

 

「それじゃあ学校に行きますか!」

「ま、待って!」

「ッ!な、なんですか?」

 

 制服を捕まれ前に進もうとしても止められる。

 

「シン君さ…千聖ちゃんとキス、してたよね…?」

「し、しましたけどそれが…なにか?」

 

 でも俺からはしてないからね!?千聖先輩からだから!

 

 さすがに自分からやるのは好きな人とキスする時だけだよ

 

「私もしたい!」

「……い、いやーあれは千聖先輩が無理やり…」

「し!た!い!のー!」

 

 あー!可愛い叫び方をするなよな!さっきまでの叫びがかすんで聞こえるぞ!?

 

 だけどここでしないって言ってもまた彩に誤解が生まれるし…だけどそんな簡単に色んな人とキスしたいってわけじゃないし

 

 それともうひとつ重要なことがある。

 

 彩とキスなんかしたあと平常でいられる気がしない!

 

 だって憧れの人だぞ!?もう嬉しすぎて…な?どうなることやら

 

 だから俺は

 

「む、無理です!早く学校行きますよ!」

 

 そう答える。それにただでさえこないだ早退して昨日は大遅刻したしな、まあ今日も遅刻だけど昨日ほどではない

 

「……もーう!シンく、きゃっ!」

「ぬわぁっ!?」

 

 彩が俺に付いて来ようとして歩いた瞬間河川敷の土手から俺達2人は転がりながら下まで降りていった。

 

『ッ!』

 

 俺が下で彩が上の状態で下まで着いてしまった。それはそれは彩の髪が俺の顔に当たるほど、お互いの息は聞こえるほどの距離で顔を見合わせる。なんなら俺は自分の心臓がどれだけバクバクしているのかわかる。

 

「……キス、しちゃう?」

「ッ!だ、だから俺は彩のこと…!」

 

 ああ、いつもこうだ。俺が何か言ってる途中でキスをしてくる。なんでさ、もっとこういい雰囲気の時にしてくれないんだよ

 

 彩の唇は今までキスしてきた人達とは違う感触、見る限り柔らかそうだったけど…いざ、こう、な?やってみると凄いよ

 

 って!長いよ彩!

 

「ッ!も、もういいでしょ!」

 

 さっきから自分の心臓の音ばかり聞いて気がおかしくなりそうだ。いや彩のキスでもおかしくなりそうだけどさ!

 

「……すごい、ねえもう1回しない!?」

「ッ!」

 

 また彩が上から俺にキスをしてくる。さすがにこんな短期間で2回もされるなんて思いもしなかったな

 

「……ッ!ご、ごめんなさい!私」

「い、いえ大丈夫…!」

「ええ!?し、シン君鼻血が!」

 

 そりゃ憧れの人からキスなんかされたら嬉しいし興奮もするだろ!?

 

「だからキスしたくなかったんだよ!」

「……あ、憧れの人からキスなんかされたら嬉しいに決まってんだ、だろ!」

 

 やばい久しぶりに動揺したかもしれない。

 

 てか告白された時点で喜ぶべきだろ俺は、キスされてから喜んでんじゃねーよ!

 

 まあでもそれはそれ、これはこれだ。確かに彩は憧れの人、だけど憧れの人だから簡単に付き合います。とはならないんだ

 

「鼻血止まらないね…そんなに嬉しかった?」

「あ、ああ」

 

 多分耳まで真っ赤っかになってんだろうな俺は…めっちゃ恥ずかしいな!?

 

「こんなシン君初めて見れたよ!」

「からかうんじゃねーよ!」

「これからキスしたらこんなシン君が見られるんだね」

「ッ!もうしないからな!?」

 

 もし今されたら本当にやばいと思う!

 

「えっへへ!キスしてよかったー!」

「あークソ!こんなところ見られたくなかったあぁぁぁぁああああ!!!」

 

 シンはこの時はさっきのことなど忘れていつものように叫んでいた。

 

 そしてその後2人は一緒に学校に行くもシンが後ろで彩が前を歩くという立場が逆になって向かっていた。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「じゃあ俺はこっちなんで」

「うん!シン君お昼一緒に食べようね!」

「そ、それはまた今度で」

 

 いや、今日はもう無理です。彩の顔なんかまともに見れないっての

 

 てかまた遅刻だよ、怒られるな、いっそのこと学校なんて休めばよかったよ

 

 でも彩とキスできたのは嬉しかったな、こんなのが千聖先輩やひまりにバレたらやばいけど…

 

「やばい、ニヤニヤが止まらん」

 

 思ってみろよ!憧れの人にだぞ!?キスされたら嬉しいだろ!さっきも言ったけどさ!

 

 と思ってた矢先

 

「彩ちゃんとキスできたのがそんなに嬉しかった?」

「はい!さい…え?」

 

 咄嗟に返事をした曲がり角から千聖先輩が現れた。なんでいるの!?てかなんで知ってるの!?

 

「……まさか本当にしたのね」

「ッ!すみません!俺は、あんなことあったのに浮かれてしまって…!」

 

 あんなことがあったのに何してんだよ俺は、千聖先輩があんな酷い目にあってたのにさ…

 

 千聖先輩は俺に甘えないとやっていけないって言ってたのに…!

 

「別にいいわよ、前から彩ちゃんがシンのこと好きなのは知ってたから」

「え?」

「気づいてないのはあなたぐらいよ」

 

 千聖先輩は彩が俺のこと好きなの知ってたのかよ

 

「それで?シンは彩ちゃんを選ぶの?」

「違う!俺は…まだ答えを出せれない」

 

 そんな簡単なことじゃないんだよ

 

「まあいいわよ、シンが私以外を選んだのなら私は素直に負けを認めるわ」

「でもね、シン」

 

 千聖先輩は近づき俺の胸を指して言った。

 

「私は他の人に負ける気なんて、なんなら彩ちゃんに負ける気なんてさらさらないから」

「ッ!」

 

 この人もこの人で本気なんだな

 

 てかなんで俺なんかを好きになったのだろうか?…ってそんなの考えても無駄だよな

 

「先輩だからって容赦しませんよ?」

「あら、言うわね」

「だって俺は千聖先輩の好きな人ですから」

「ッ!否定できないのが悔しいわ」

 

 こんなセリフを人生の中で言うなんて思いもしなかったな、もうこの時点で普通じゃないよな

 

「あなた昼はどうするの?」

「あー適当に購買ですませます」

 

 他はあれだな、学食行ってすませるかだな

 

「だと思って弁当持ってきたの、食べてくれる?」

 

 千聖先輩は後ろにずっと隠していたバックから弁当を取り出し俺に渡してきた。

 

「ありがとうございます」

 

 礼の言葉をいい受け取ろうとするが

 

「……30点よ」

「な、何が?」

「そんなかしこまってる旦那様には嫁の愛妻弁当はあげません」

「だ、旦那様!?愛妻弁当!」

 

 あー何となくわかったよ、かしこまらず…いつも通りに

 

「千聖先輩の愛妻弁当とかまじ嬉しっすよ!」

「彩ちゃんにキスされたのとどっちが嬉しい?」

「そ、それは決めれないっすよ!」

 

 どっちも嬉しいに決まってんだろ!?

 

「ふふ、そうね、そのうち1番になるから待ってなさい」

「ッ!」

 

 投げキスをして立ち去る千聖先輩は先輩と言うより女優としてのオーラが強すぎてる感じだった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 教室に着くも今回は担任の授業じゃなかったからよかったものの来たなら職員室に顔を出せって怒られましたよ

 

 まあなんやかんやでお昼になった。

 

「シンー飯食おうぜ」

「ああ、いいよ」

 

 蒼汰が話しかけてきては弁当を取り出す。それは巴が作ったものだろう、そして俺も負けじと弁当を出す。

 

「あれ?お前自分で作ったのか?」

「いや知り合いに頼んだ」

 

 ここで千聖先輩の弁当なんて言えるわけないよな

 

『いただきます』

 

 そう言い弁当を開いて見ると

 

「うわ!すげえな!」

 

 多分これが普通の弁当だと思う!家の弁当とか食えないぐらいの10段弁当だったからな!この家庭的な弁当は初めて食べるかもしれない!

 

 コンビニ弁当はカウントしないぞ?あれはコンビニ弁当だからな!何言ってんだろう俺

 

「シンーうちのパン食べる?」

「沙綾!食べる食べる!」

「はい!あげ…ねえ、その弁当シンが作ったの?」

 

 沙綾が弁当を見てそう聞いてきた。さっきも言ったけど千聖先輩に作ってもらったなんて言えない

 

「いやー知り合いに頼んだけど?」

「……誰、なの?」

「?気にすることか?」

 

 なんでそんなに気にするんだ?

 

「……から」

「へ?」

「今度弁当作ってくるから!」

「お、おう!」

 

 沙綾はパンを置いていきどこかへ行ってしまった。

 

「俺何かしたか?」

「……お前はもっと女心を学べ」

「えー」

 

 蒼汰にそう言われたシンは数分ほど真面目に考えたが思い当たる節がないため考えるのをやめ千聖の愛妻弁当を食べていた。

 

 

 

 一方その頃

 

「ち、千歳…その弁当なに?」

「姉さんが作ったんだけど…何よこの量は」

 

 まるで育ち盛りの男の子が食べそうな弁当、唐揚げにハンバーグ、スパゲッティと高カロリーなものばかりだ。

 

 そう、千聖はシンに渡す弁当と千歳に渡す弁当を間違えていたのだ。

 

「千歳の姉さん気合い入れすぎでしょ」

「……はあ、明日香、私達友達なら2人で食べるべきだわ」

「あはは、協力してあげない」

 

 そうは言うもの

 

「(これは白鷺千聖の新手の嫌がらせだわ)」

 

 そうとしか捉えられない千歳だった。

 

 

 その数分後には

 

「やってしまったわ…!」

「ど、どうしたの千聖ちゃん!?」

 

 お昼を千聖と一緒に食べていた花音は突然そう言った千聖を心配していた。

 

「……妹に渡す弁当間違えたのよ」

「でもそれって問題あるのかな?」

「ありよ、ありありのありよ」

「よくわからないよ」

 

 千歳は私以上にスタイルについて気を使っている。だからヘルシーな胸肉の塩茹でとか油をあまり使わないようにしてるのに…

 

 まさか彼女に渡した弁当がシン用の弁当とかじゃないわよね?

 

「ち、千聖ちゃーん、花音ちゃーん、お昼一緒にどうかな?」

「彩ちゃん!うん!いいよー!」

「……ち、千聖ちゃんもいいかな?」

 

 彩は昨日のこともあって今日のこともある。千聖にちょっと遠慮と言うのか、少し距離を置くと言うか…

 

 それでもご飯は食べたいと思うところ、やはり彼女は千聖のことを嫌いになれないってことだろうか

 

「ええいいわよ♪」

 

 千聖もそれは同じだ。シンが彩とキスをして喜んでいたとしても…やはり嫌いになれない、だけど

 

「……彩ちゃん、私はあなたに容赦なんかしないわよ?」

「ッ!わ、私だって負けないからね!」

 

 向き合う2人は現実では絶対に見えない火花がバチバチとなっていた。

 

「ふぇ、ふぇぇ2人とも一体どうしちゃったんだろう…」

 

 と、花音は心配していた。

 

 しかし心配しているのは花音だけじゃない。

 

「……やべ、弁当箱返そうと思ったけど無理そうだな」

 

 2年の教室の前にてシンは返すタイミングを伺っていたが無理そうだと判断したが

 

「ど、どうしよう!俺のせいで2人の仲が悪くなったら!」

「……あークソ!なんで嬉しいことがあったのに不幸になってんだよぉぉぉおお!!」

 

 教室の前で叫んだシンは2人に見つかり、千聖が弁当を作ったこともバレてしまいました。

 

 その後彩も今度弁当を作るなんて言ったことは言うまでもない。

 




次回はあの人の弟が登場します。あの人はあの人です。原作で出番がないのなら自分がこの作品にて出番を作ります。

あと少しで赤バーと投票者が100人になります!少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それではまた次回の話でお会いしましょう!

あ!次回は来週に投稿します!


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弦巻シンと思い出の場所

どうも!!今回は過去一長い話です!

それとTwitterのID載せます!

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です!みんなフォローしてね!

誤字脱字は許してください、後日訂正します!


 まさかまさかの出来事から数日経った。未だに彩や沙綾から弁当を渡されない。忘れてるわけではないと思うけど…

 

 って!何期待してんだよ俺は!?確かに彩からは告白されたけど沙綾は違うだろ!ま、まさか沙綾も俺のこと好きなのか?

 

 いやいやないな!自意識過剰すぎるよな!少しモテてるぐらいで調子乗るなっての

 

 いや…でも待ってくれ、超人気アイドルの2人から告白された俺は果たして普通なのか?いや全然普通じゃない!

 

 てか告白してきた人達がみんな美人するぎるんだよな

 

 そんなことをシンは考えながら1人バイト先へと向かっていた。

 

「……?」

 

 その途中、あの彩とキスした河川敷に、そうだな人生に絶望したような負のオーラを放ちながら1人体操座りしている学生がいた。

 

 一瞬素通りしようとシンはその傍を通った時

 

「……もう僕の人生終わったよ」

「……………………」

 

 近くで見ればわかったことだが中学生だ。まるで昔の自分を見てるような感じだった。

 

 その時思ったんだ、俺がなりたいもの、それは正義の味方である。と、もともと誰か一人はお前のことを理解してるぞ、って言いたくてこの夢を目指した。

 

 だったら俺は?この少年に寄り添って話を聞いて理解者にならないといけない。

 

 だってそれが俺の望んだ最初の正義の味方、なんだから

 

 俺はその少年の隣に座り声をかける。

 

「どうした少年、悩んでるなら俺が相談に乗ってやるよ」

「…………ありがとう、ございます」

「おう、ッ!」

 

 返事をした時冷たい風が強く吹いた。もう秋に入って本格的に寒くなる途中、なんなら夕方なんて寒い。

 

「ちょっと飲み物買ってくるけど何かいるか?」

「…………ココアで」

「おっけー」

 

 近くの自販機にて暖かいココアを2人分買って少年の元に戻り

 

「はい、どーぞ」

 

 とココアを渡した。

 

「……ありがとうございます、これが最後の晩餐です」

 

 ん、んんー結構病んでるな…

 

「まあ、そのーなんだ、さっきも言ったが悩みなら俺が聞くからさ、話してみろよ」

「……僕には姉さんがいるんです」

 

 俺が聞くと少年は話をしてくれた。

 

「その姉さんが彼氏を紹介してきたんですよ」

「……おう」

「……もう、ね、僕の人生は終わりましたよ、あはは」

 

 な、なんでそうなるんだよ!?姉さんが彼氏を紹介した?それだけで人生終わるってなんだよ!

 

「僕は姉さんと結婚する気だったんです」

「うん、何言ってるの?」

「僕は姉さんと結婚するために生まれてきたんです!」

「……………………」

「姉さんにウェディングドレスを着させてウェーブを上げて、そして誓いのキスを…」

「ちょ、ちょっと落ち着いて!」

 

 待て待て待て!え、なに?つまりのところ簡単に言うとさ

 

 重度のシスコンってことか!?

 

「……あのな、姉とは結婚できないんだけど」

「そんなの愛の力で何とかなりますよ」

「…………そうだな!」

 

 否定できない!今ここで否定したら少年がまた病んでしまう!

 

「……でも姉に彼氏ができたんで僕はもう結婚できないですよ」

 

 結局病むのかい!

 

「俺も姉はいるがそんな、な?恋愛感情なんて持ったことないぞ?」

「なんでですか!?一番近くにいる異性ですよ!?好きにならないわけがないですよ!」

「わ、わかった!わかったから一旦落ち着け少年!」

 

 こんなやつ初めて見たぞ、てか話しかけたこと少し後悔してるレベルだ。

 

 姉をか…こころをそんな目で見たことなんてないな、確かに可愛いけど…ってあいつ彼氏いるのかな?いたら紹介されるのか…うん、確かに少し抵抗はあるかもしれんがないと言おう。

 

 それに俺はシスコンなんかじゃない。

 

「ほら?姉さんだってその人と結婚するかわからないだろ?」

「……はっ、わかりますよ、制服見る限り花咲の生徒ですよね?」

「ああ、その制服どっかで見た覚えがあると思ったらうちの中等部の制服か」

 

 話しかけたこのシスコンがうちの後輩だったのかよ、まあこの辺にいるってことは花咲の方が可能性高いか

 

「なら知ってるはずですよ、彼氏さんは高等部、サッカー部のキャプテンでエースなんですから」

「…………はあ!?」

 

 俺は持っていたココアを手から離してしまい下へと転がって落ちていく。

 

「ちょ、ちょっと待て少年、お前の名前は?」

「今井リオです」

「リサ先輩の弟かよ!?」

 

 まさかこんなところで出会うとは!

 

 前に1度だけ聞いたことがあった。

 

「今日弟の誕生日だから少し早くあがりますね♪」

 

 特に触れなかったさ、思ったのは

 

 へー弟いるんだ、いいなー羨ましいなー姉さんをって立場こころと変わってくれ

 

 って思ったな、いや!別にこころを嫌ってるんじゃないむしろ好きだ!あ、好きってのは恋愛感情の好きじゃなくてだな…

 

 じゃなくてあの時は弦巻家のこと嫌いだったしな?そう思っただけなんだよ

 

「姉さんこないだ家にあがらせてたんですよ…僕と姉さんだけの領域にあんなヤリチン野郎を連れ込むなんて!」

「……んん」

 

 連れ込むってそれは…まあ察してくれ

 

 あと亜滝先輩はヤリチンじゃないぞ、さすがにそこまでは言わないよ俺は

 

「まあ、なんだこれを機に脱シスコンってのはどうだ?」

「……姉さん以外を愛せと?」

「そうそう!誰か一人は…」

「ああー!もう1人姉さんいます!」

 

 こいつは何を言ってるんだ!?まさかリサ先輩にも姉がいたのか!

 

「向かいに住んでる人です!小さい頃から名前には姉を付けて呼んでます!」

「お、おう、そうか」

「姉さんですし愛せます!」

 

 姉さん?ま、まあリオがそう言ってるなら姉さんなんだろうさ

 

「だったらその人とデートして口説いて恋人になろうぜ!」

「はい!俺頑張ります!」

 

 俺達2人は何故か握手をしていた。なんでしてるかわからないけどしていたんだ。

 

「あ、今気づきましたが弦巻先輩じゃないですか!」

「へ?俺のこと知ってるの?」

「知ってますよ!」

 

 そ、そうかそうか!あれか、あれだよな!文化祭の実行委員したかだよな!

 

「あのヤリチンと仲良いって評判です!」

「……あー、そうか、そうなのね」

 

 なんだよそれ、結局亜滝先輩絡みやないかい!

 

「ところでシン先輩」

「なんだいリオくんや」

「……僕、女の子の口説き方なんて知りません」

「…………まあそうだよな」

 

 俺なんてギャルゲーして学んだからな、学んだ結果全く意味なかったけど

 

「……先輩、あそこに女性いますよね」

「ああ、いるな」

 

 河原で本を見ている黒髪ロングの生徒さんかな?制服着てるしなんならうちの制服着てるな

 

「手本見せる代わりにあそこの女性落としてきてくださいよ」

「……リオ、いいか、シンさんは3人の女性から告白されても未だに返事ができないチキン野郎なんだ、だからそれだけはできない!」

 

 返事してなくて他の生徒口説いてたなんてバレたら殺されるしクソ野郎だろ

 

「そんな妄想はいいんで早く行きましょう!」

「い、いやー事実なんだけどな」

 

 まあこんなこと言っても信じてくれないよな、だって普通ではありえないんだし

 

「シン先輩!先輩ならできます!僕に手本を見せてください!」

 

 俺のことを先輩と言ってくれる男子の後輩はリオが初めてだよ、そんな後輩1号が目を輝かせてそんなことを言っているんだ。

 

 先輩の俺が答えなくてどうするんだよ!?

 

「ああああ!!クソ!いいぜ口説いてやるよ待っとけ!」

「さすがシン先輩です!」

 

 あんなことがあった後になのに俺は何をしてんだよ!

 

 近くにいた生徒の方へ向かっていき話しかけようと思った。

 

 どうやら本を読んでいるようだ、興味本位で覗いてみると…

 

「……なっ!な、何読んでるんですか!?」

 

 それはエロ本、だった。

 

 俺がそう大声を出すと女子生徒は体をビック!っと反応させてこっちを向いた。

 

『……あ』

 

 その人を俺は知っている。

 

 目の前には絶望したかのような顔でこちらを向いている女性、その人はとあるハンドの練習に集中するためエロゲーを卒業したはずの人

 

 そう、白金燐子がエロ本を片手にしてそこにはいたのだ。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「さあ、言い訳を聞いてやるよクソ変態女」

「……………………」

「じょ、女性に対して容赦ないんすねシン先輩」

「こんな変態にはいいんだよ」

 

 今のシンの顔つきは怒ってる時なみの顔だ。あの赤い瞳が燐子を酷く睨みつける。

 

「あの日エロゲー卒業しましたよね?」

「……はい、でも!エロ本は卒業してないとはい、言ってないです」

「同じだろ変態女、何口答えしてんだよ」

 

 あーあれだ、千歳ちゃんのせいで口が悪くなってるのかもしれない

 

「い、言い訳させてください!」

「……聞いてやろう」

 

 その後燐子先輩、いや変態女は話し出した。

 

「河原で1人本を読んでいたんです。いや!エロ本じゃないですよ!?ちゃんとした本ですよ!」

「……それで?」

「そ、それで読んでて帰ろうとしたんです…」

 

 

「……ふう、今日はこれくらいにして家に帰ってエロ、おっとバレたらまずいんでした」

 

 手で口を押えニヤニヤしていた燐子だったが

 

「…………はあ」

 

 その後ろに大きなため息をこぼしながら座る1人の少年、そうリオがやってきたのだ。

 

「(えぇぇええ!な、なんですか!?なんで私の後ろに!?)」

「(まさか私試されてますか?それともこの人は私のことを襲いに来た!?)」

 

 ここで訳の分からない取ら方をする燐子である。

 

「(お、落ち着いて、落ち着いて私の理性…た、ただの勘違いですよ、早く帰ってゲーム…を!)」

 

 と立ち上がろうとした瞬間目の前にエロ本を見つけてしまった燐子、誰かが捨てたであろうその本を読んでて

 

「今の今まで読んでいたんです…」

「……てめえエロゲー!してんじゃねーか!」

「ひ、ひぃー!ご、ごめんなさい!」

 

 あの俺達が泊まった意味はなんなんだよ!てかそんなに日にち経ってないのになんでまたやってんだよ!

 

「……これは紗夜先輩に報告するからな」

「ッ!そ、それだけはやめてください!」

「うるさい、約束破ってエロゲーしてたやつはどこのどいつだよ」

 

 そう言った瞬間変態女は当たりを見渡して

 

「……わ、私ですか?」

「お前しかいないだろ!」

 

 ここにいる変態女はお前だけだっての!

 

「だって」

「だってじゃない!約束破ったのが悪い」

 

 携帯を取りだし紗夜先輩に連絡する準備は満タンだ。

 

「変態女、ここでお前は終わりだな」

 

 酷いやつだと思うかもしれない、けどこればっかりは俺は味方になってやれない。

 

 だって約束を破った燐子先輩、もとい変態女が悪いんだからな!

 

「…………そうですよ」

「そうだ、こればっかりはあんた「そうですよ私は変態女ですよ!」ッ!」

 

 開き直ってどうするんだよ!?

 

「変態女だから仕方がないじゃないですか!?」

「それにですよ!エロゲーしててもエロ本見ててもRoseliaの練習には集中できてますので!」

 

 そ、それは…そうかもしれないけど

 

「…………はぁぁぁああ」

「わかったよ、今回は許してやるから…」

 

 なんで俺はこんなに甘いんだろうかね、もし紗夜先輩に目撃されてたら絶対許されてないからな

 

 てか俺が今日ここに来たのも偶然だったけど…悪事って簡単にバレるんだな、学んだよ

 

「……でもやっぱり変態女ってのはよくないですよね?」

「よくないけどやめれないだろこの変態女!」

「ンッ!」

 

 あれ?今なんか興奮してたよね?してたよな!?

 

 まさかマゾにまで目覚めたとか言うなよな!?

 

「し、シン君、お、お願いがあります」

 

 顔を赤らめはぁはぁ言っている燐子先輩が俺の名を呼び頼み事をしたいと言ってきた。

 

「私1ヶ月間エロゲーもエロ本もやめます!」

「…………嘘だな」

「嘘じゃありませんから!?」

 

 嘘ついてたやつのことなんて信用出来ないっての!

 

 あれ?なんかブーメランが帰ってきてるような?まあそれは置いといて

 

「……こんな私のお願い事聞いてくれますか?」

「ま、まあ本当に我慢できたから聞いてやる」

 

 ってどうやって本当か調べるかだな

 

「とりあえず今からエロゲーはまた売りに行きます!」

「それは当たり前だろ!」

「エロ本も、官能小説も捨てます!」

「あんた官能小説にも手を出してたのかよ!?」

 

 それは初耳だぞ!

 

「いや、でも証明できる人が」

「それは、ほら!私って目標あれば頑張れる子なので」

 

 そうなのか?てかもう前の清楚な燐子先輩の面影が完全に俺の中から消えていて変態女になってるんですけど……

 

 これって怒られたりしないよな!?

 

「それで?1ヶ月間我慢して俺に求めるのはなんだよ」

 

 リオのやつは空気読んでずっと黙ってくれてる。うんありがとう!

 

「……い、1ヶ月間我慢できたら」

「できたら?」

 

「わ、私とエッチしてください!!」

 

「………………は?」

 

 エッチ?エッチってセックス?

 

 おいおい待て待て、なんだよ俺の人生は、なんでこんな短期間で2人の女性から性行為をしてくれと頼まれてんだよ

 

 前も言ったけどそんなことは俺にはできない、だから

 

「無理に決まってんだろ!?」

 

 だいたいなんだよ我慢できたらエッチしてって、おかしいだろ馬鹿か

 

「それじゃないと私は頑張れません!」

「……そんなにしたいならお、俺以外としとけよ」

「し、シン君だから言ってるんですよ?」

 

 俺だから?

 

 ははーん、そうか、そういうことか

 

「燐子先輩は俺のこと好きなんすね」

 

 まあ?こう見えてもアイドルに告白されるほどの人物だからな、モテても仕方が…

 

「いや違いますよ?何言ってるんですか」

「………………ぷっ!」

「おいリオ!何笑ってんだよ!?」

 

 今日初めてあった後輩に笑われましたよ、つらたにえん

 

「じゃあなんで俺と」

「……責任とってもらうためです」

「俺が何をした!?」

「私を変態女に仕上げました!」

「あぁぁぁあああ!!してませんから!」

 

 なんでさ、どうしてこうなったんだよ!

 

「でもシン先輩?聞いてやるって言ってましたよね?」

「そうです!言ってました!言質取ってました!」

 

 こ、こいつー!何言ってんだよ!?

 

 やめてくれよ、ただでさえその関連で酷い目にあったのにさ…千聖先輩は抱かずに燐子先輩は抱く?そんなのダメだろ何やろうとしてんだよ俺は!

 

「ってことなんで売ってきます!」

「ちょっ!」

 

 燐子先輩は荷物を持ち走って遠くに行き

 

「1ヶ月後楽しみにしてますからー!」

「……だからしないからな!?絶対しないからな!?勝手に勘違いしてろクソ変態女!」

 

 俺は何がなんでも絶対燐子先輩を抱かない。あっちがどんなに誘ってこようと俺は屈しないぞ、いや本当に、抱いたりしたらシャレになんないから

 

「シン先輩……僕凄いところに出くわしてしまいました」

「まさか姉さんのバンドのメンバーがあんな人だったとは」

「…………まあ黙っててやってくれ、少なくとも1ヶ月間は我慢してくれるだろ」

 

 まあしたとしても絶対にしないけどな、何度も言うけど

 

「とりあえず僕は姉さんがそろそろ帰ってきますので帰ります」

「お、おう」

 

 さっきまで病んでたけど俺はリオを助けれたようだ。燐子先輩のことは放置するとして

 

「でも不幸だぁぁぁあ」

 

 その後バイト先へと行くもモカとリサ先輩はいなかったため1人黙々と作業をこなすシンなのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 さらに数日経った。けど弁当はまだいただいておりません、いやー忘れてるわけじゃないよね?

 

「シン!一緒に帰ろう♪」

「……沙綾、ああ帰ろうぜ」

 

 沙綾が一緒に帰ろうって誘ってくれた。こんなにも嬉しいことなんてあるのだろうか!?

 

 いや彩とのキスの方が良かった?って今はそんなことどうでもいいんだよ、沙綾が誘ってくれたんだシンプルに嬉しいに決まってる!

 

「そう言えば弁当…」

「ま、まだ待って!」

「ッ!お、おう?」

 

 小声で弁当…って言ったのに反応してきたよ、そんなに弁当作りたいのか?女子って弁当作るの好きなんだな、多分だけど

 

 そんなことを思いながら沙綾と2人で生徒玄関に向かっている時にだ。

 

「彩ちゃん何してるのかしら?」

「ち、千聖ちゃんこそなにを?」

「シンを待ってるのよ?」

「へー奇遇だね、私もなんだ!」

 

 何してんだろうな、あの二人

 

「……そ、まあシンと帰るのは私ね」

「いーや、私だね!」

「彩ちゃんそんなにシンと仲良くないでしょ?」

「うう…な、仲良いもん!」

 

 そんな会話を聞きながら俺達は自分の靴を下駄箱から回収する。

 

「そうかしらねー、たかが1回キスしただけでそこまで言えるのかしら?」

「1回じゃないから!?2回したよ!?」

「所詮唇と唇を重ねた程度のキスなんてカウントされないわよ」

「ッ!そ、それって」

「ええ、私はシンとディ…」

 

 千聖先輩がその言葉を言う前に彩は俺に気づき

 

「うわぁぁぁん!千聖ちゃんがいじめてくるよぉぉぉ!!」

「っと、まさかいきなり抱きついてくるとは」

「……………………」

 

 まあ会話からして彩のやつそろそろ限界かなって思ってたけどさ

 

「千聖先輩、あんまり彩いじると泣いちゃいますよ?」

「ふふ、楽しいからからかったのよ、ごめんなさいね?……彩ちゃん♪」

「うう、め、目が笑ってないよ」

 

 顔は笑顔だが完全に目が笑ってない。んー俺のせいで2人の仲が悪くなるのは嫌なんですけど

 

 てかこんなこと言う俺も俺だよな!?普通言わないからな!

 

「えっと、シン?」

「うわっ!ご、ごめん沙綾!これはその、あれでだな」

「ッ!さ、沙綾ちゃん」

 

 そう、前に沙綾は彩にシンのことが好きなのかと聞いたことがある。けど彩は違うと否定した。

 

 けど今はどうだろうか、どこに好きでもないの異性に抱きつく人がいるだろうか…いるかもしれないが彩はそんな人ではないと沙綾は思っている。

 

「……やっぱりそうだったんですね」

 

 沙綾はあの時から好きだろうなと思っていた。でもこうも目の前でイチャイチャされてると少し同様すると思ったが

 

「シンー?アイドルと仲良くできて嬉しいのかなー?」

 

 ほれほれーと言いながら肘でシンの横腹をグリグリする。

 

「や、やめろよ沙綾、からかうんじゃねーよ」

「……………………」

「……なんですか千聖先輩?」

「…………いえ、別になんでもないわ♪」

 

 千聖はすぐに気づいた。沙綾もシンのことが好きなんだと、彼女の勘は無駄に鋭い、だからこそわかったことなのだ。

 

「ところでシン、一緒に帰らないかしら?同じマンション(・・・・・・・)だし」

「グサッ!」

 

 彩がなんかダメージ受けてるようなんですが、何があったんだろうな

 

「……い、いや今日は沙綾と帰ろうと思ってたんすけど」

「私はいいよ?みんなで帰れば楽しいと思うし?」

「ま、まあそうだけどさ」

 

 言っちゃ悪いけど俺は今日沙綾と2人で帰る気満々だったんですけど…

 

 いや彩と千聖先輩と帰ることが嫌ってわけじゃない。嬉しいけどさ

 

 ほらあれだよ、たまには2人で帰って積もる話もあるだろ?

 

「じゃあ帰ろっか!」

 

 急に元気になった彩が先頭を歩き校門へ向かうと

 

「な、なんだ?なんか騒がしくないか?」

 

 校門の前で男子達が何やらざわついていた。

 

「見ろ!Roseliaの湊友希那だ!」

「うっわすげぇ!こんな近くで見たのなんて初めてだ!」

「俺声掛けてみようかなー!」

 

 と、話を聞く限りどうやら湊先輩がいるらしい。確かに見てみると湊先輩でイヤホンを付けて誰かを待っている様子だった。

 

 大方メンバーの紗夜先輩か燐子先輩こと変態女のことだろう

 

「!」

 

 と思ってたら

 

「失礼、どいてくれないかしら」

「ど、どきますどきます!」

 

 前にいた男子集団が道を作り湊先輩がこちらに向かってくる。

 

「やっと来たわね、待ちくたびれたわ」

「…………へ?」

 

 シンは力なく間抜けの返事をした。

 

 それもそうだ。いつも友希那はシンのことを覚えていなかったのだから、そんな友希那が話しかけたのは誰でもないシンだった。

 

「あらあら、シンになんの用かしら?」

「……別にあなたに用はないわ」

「……そう」

 

 千聖先輩が話しかけるも流される。

 

 あれ?2人って仲悪いの?悪くないよね?絡みが少ないだけだよね!?

 

「それより私はあなたに用があるわ」

「あ、やっぱり俺なんすね」

 

 俺に用って…一体なんなんだ?

 

 そう思っていたら湊先輩が腕を上げ、勢いよく下げたと思えば俺を指さしてこういった。

 

「あなたは今日から私の彼氏よ」

「へ?」

 

 さっきの間抜けな返事よりさらに間抜けな返事をしていた。

 

「早速デートに行くわよ」

「……いや、ちょっと待って!」

『シン(くん)ー!!』

 

 だぁぁー!やっぱりこうなりますよね!?

 

「ど、どどどどういうことなの!?」

「まさかそんなわけないわよね?」

「ち、違います!誤解ですよ!湊先輩も何か言ってください!」

「……今日からあなたは私の彼氏よ」

「さっきと同じじゃないっすか!?」

 

 正確に言うと同じでないな、今日からとあなたはが逆ですね!ってんなことどうでもいいんだよ!

 

「私行きたいところがあるのよ、連れてって?」

「……いや、だからね、俺達は別に」

「連れてって」

「……………………」

 

 周りを見たら千聖先輩と彩がすんごい顔してるし、なんなら沙綾もだ。

 

「連れていきなさい」

「はい!喜んでぇぇぇぇえええ!!!」

『こらー!シン(くん)!』

 

 湊先輩をお姫様抱っこしてその場から逃げる。だって逃げないと捕まるから!

 

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 友希那をお姫様抱っこしながら走るシンは過去一長い不幸だと叫びながら校内を後にしたのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「はあ、はあ、はあ…そ、それでどこに行けばいいんですか?」

「とりあえずここまで連れてきてくれてありがとう、後は自分で歩くから降ろして?」

「ッ!は、はい!」

 

 湊先輩とあんまり絡んだことないからこう間近で見たことないけど今見てみると本当に可愛いよな

 

 それに今さっきからまでお姫様抱っこしてたから下からの上から目線で少し以上にドキッとしてしまった。

 

「……では行くわ、着いてきて」

 

 そう言い俺は湊先輩の後ろをついていくと…

 

「着いたわ」

「……えっと、猫カフェ?ですか?」

 

 目の前には猫カフェがある。そう猫カフェだ。誰がなんと言うと猫カフェさ

 

「行くわよ」

「ちょっ、え?入るんすか!?」

 

 なんで湊先輩が猫カフェに行くんだろう?わからないんですけど!?

 

「いらっしゃい♪」

「約束通り彼氏を連れてきたわ」

「……まさか1日で作るなんてねー」

「私に落とせない男子はいないわ」

「何言ってるのこの人」

 

 店内を見渡してわかったけどどうやらこのカフェはカップルしか入れないそうだ。

 

 いや意味がわからないんですけど、なんで猫カフェがカップル限定なんだよ、ぼっち入れないじゃん

 

「あー!なるほど!そうゆうことか!」

 

 湊先輩はここに入るために俺を彼氏(仮)として来たわけか…!

 

 く、クソう!この弦巻シンさんがそんなことのために利用されるとは!

 

「ふふ、にゃーん、にゃんにゃん」

 

 数分後、湊先輩はたくさんの猫に囲まれてそれはそれは幸せそうな顔をして猫と戯れておりまりました。

 

 やっぱり可愛いよな、湊先輩って

 

 そう思っていると

 

「ねえねえ君ー本当は彼女の彼氏さんじゃないでしょー?」

「な、何を言ってるのシンさん理解できないんですが!?」

 

 バレるの早すぎだろ!

 

「彼女ね、いつも店の前に止まってずーと猫ちゃん達を眺めていたのよ」

「だから悔しかったら彼氏作りなさいって行ったらすぐ来たからね」

「……質問いいですか?」

「まずは私の質問に答えようねー」

 

 で、ですよねーまあ本当のこと話した瞬間出ていけ!とは言われないと思う、え、そうだよな?

 

「本当の彼氏じゃないっすよ」

「あはは!だよね!だよねー!」

「い、痛いですよ!」

 

 バシバシ背中を叩きながら笑っていた。叩いてるせいなのか胸にある大きなものが揺れる揺れる、うん、ひまりや篠崎先輩、燐子先輩には及ばないが凄い胸だな

 

「てかなんでカップル限定とかにしてるんですか?」

「なんかさ?こうした方が客少なくて助かるかなーって思ったけど…」

「よくよく考えれば2人で来るからこっちの方が儲かるって気づいたんだよね!」

「あんたぼっちを殺しに来てるだろ!?」

 

 ぼっちなめんなよ!あの体育とかで2人組作ってーって言われた時のあの絶望感!あんた1回味わいやがれよな!?

 

 シンはそう言うが今では彼はぼっちなんかではない。

 

「私君知ってるよー、英雄君でしょ?」

「ッ!」

 

 商店街以外のところでも知られてるのかよ、でも俺は

 

「英雄なんかじゃないですよ」

「……友達の1人も守れなかったやつが英雄なんて呼ばれる資格はないですよ」

 

 俺は英雄になんてなれなくてもいい、だけど正義の味方ってやつにはなりたい、いや、なってやる。

 

 だから俺は英雄なんて肩書き捨ててやる。

 

「君って結構自分を責める人なんだね」

「……そうですね」

「そんなんだったらいつか自分で自分を壊しちゃうよー?」

「き、気おつけます」

 

 確かに少し自分を責めすぎているのかもしれない、千聖先輩はもう吹っ切れたみたいなことを言ってるのに俺はいつまでも引きづっている。

 

「さて!暗い話もなんだしお姉さんが何か飲み物サービスしちゃうよ!」

「おー!ありがとうございます!」

「ちょっと待っててね♪」

 

 サービスってことは無料ですよね!?ありがたく頂戴いたします!

 

「はい、コーヒーです」

「あ、ありがとう、ございます」アハハ

 

 お姉さんの機嫌は音符が見えるぐらいに超ご機嫌な様子で受け付けへと戻って行った。

 

 けど俺の機嫌はよくないよ!だって俺コーヒー苦手だもん!

 

 震える手でコーヒーカップを手に取り、一口飲んでみると

 

「うへー!に、苦いー」

 

 ミルクか砂糖のひとつでもくれれば済むのになんで持ってきてくれないんだよ!?

 

「クッ!南無三!」

 

 一気に飲み干しカップを少し荒く置いてしまう。やはりコーヒーは苦手だな

 

 その後は湊先輩がに猫と戯れている様子を眺めていたら蘭からメッセージが来ていた。

 

「外を見て?」

 

 一体何を言ってるのだろうか、外を見て見てそこですぐに理解した。

 

「ッ!ら、蘭…!」

 

 が、窓の向こうの建物の中にてメイド服を着てニコニコしながら俺を見ていた。

 

 ま、まさかこの猫カフェの向かいの店が蘭のバイト先のメイド喫茶なんて思いもしないだろ!?

 

 蘭のやつはニコニコしながら携帯を取りだしそっと耳元に当てると…俺の携帯が鳴り出した。そう、蘭が電話をかけてきたんだ。

 

「も、もしもし」

 

 と答えると向こうにいた蘭はニコニコから急に真顔になって

 

「何してるの?」

 

 って聞いてきた。

 

「いやーちょっと頼まれごとで」

「湊さんとカップル限定の猫カフェに入って何してるの?」

「なっ!?こ、これは本当にですね、あの深い話があって」

「それにさっきの店員さんの胸ずっと見てたし」

「それは違う」

 

 それだけは否定させてくれよ!俺が巨乳好きみたいになるじゃないか!?

 

「……………………」

「えっと、ら、蘭さん?怒ってる?」

「……シンにはどう見える?」

「可愛いメイド服を着てるため谷間と太ももがエッチぃと思います」

「そ、それは違うでしょ!?」

 

 向かうで蘭の顔が赤くなってこっちに向かって叫んでいるのが見て分かるよ

 

 本当、可愛いよな

 

「弦巻弟さん、そろそろ帰ろと思うんだけど」

「あ、はい、帰りますか」

 

 後ろを振り向き電話の終了ボタンを押す。ま、まあ後で理由を説明したら大丈夫だろ

 

「あら?あれって…」

 

 湊先輩は体を斜めにして向かいの店の様子を伺う。まさか蘭のことに気づいたのだろうか

 

「美竹さんに見えたけど気のせいね」

「ら、蘭があんな店で働くわけないじゃないっすか」アハハ

 

 バレなくてよかったー!バレてたらなんとなくだけど俺のせいにされそうだったよ

 

「ところでお二人さん?付き合ってるなら名前呼しないとねー」ニヤニヤ

「ッ!こ、この人ー!」

 

 知ってるくせに何言ってんだよ!?

 

「……そうね、えっと、名前なんだったかしら」

「弦巻シンですよ!これ3回目ですよ!」

 

 多分だけど3回目だったと思う!

 

「そう、シンね、よろしく」

「こ、こちらこそよろしくです。友希那先輩…?」

「あれれー?付き合ってるのに先輩呼び名のー?」

「あぁぁぁあああ!友希那さん!」

 

 こうして俺は湊先輩から友希那さん呼びになり、友希那さんも俺のことを名前で呼んでくれるようになった。

 

「今日は助かったわ、また彼氏役頼むわ」

「あ、やっぱり役だったんですね」

「私があなたと付き合うわけないじゃない」

「シンプルに傷つくな!?」

 

 こうも目の前で言われるとか傷つきますよ!

 

「てか俺以外の人とかいたでしょ?」

「1回リサの彼氏を貸して欲しいって言ったら怒られたわ」

「そりゃ怒られるますよ!」

「それにもう1人は…」

「もう1人は?」

「なんでもないわ、とりあえず今日はありがとう、さようなら」

 

 友希那さんはそう言い1人で帰って行った。彼氏役もここで終了、つまりこれ以上関わるのはやめとくとするか、あの人達に誤解されるし

 

 帰るかと思ったがさっきの蘭の件があるため

 

「いらっしゃいませご主人様♪…って弦巻さん!また来てくれたんですね!嬉しいです!」

「ど、どうもーRanちゃんいますか?」

「いますよ!あ!もしかして気に入りましたか!?」

「ち、違いますから」

 

 Ranちゃんを指名して待つこと数秒、不機嫌な顔の蘭がやってきた。

 

「ら、蘭さーん?さっきの件で話をしたくてきました」

「……へー」

 

 その後説明したら

 

「なんだ、そんだけの理由だったんだ」

「ああ、だからな?友希那さんと付き合ってたりしてるわけじゃないからな」

「…………友希那さん?」

 

 し、しまったー!ここで下の名前でさん呼びとかしてたらひたしくなったってわかることじゃないか!

 

「へー、名前呼びね、仲良くなってんじゃん」

「違うんだって!誤解だって!」

「……シンなんてしらない」

 

 プィッと効果音が出そうな勢いで顔を逸らしてしまう。

 

 てかなんで俺は怒られてるんだろう、ちょっと以上にわからないですが、でも蘭は現に怒ってるし…

 

「今度さ」

「……………………」

「俺とデートしないか?」

「ッ!」

 

 別に蘭のことが大好きだからデートに誘ったわけじゃない。ただ普通に遊びたかったんだけど…ほら?今蘭さんキレてるじゃん?だからデートって言った方がいいかと思ってだな

 

「こんなんで機嫌治してくれっては言わないけどさ、普通にたまには蘭と二人っきりで遊ぶじゃなくてデートはどうかなって」

「……じゃあ許す」

「ありがとう蘭!」

 

 なんでありがとうって言ってんだろう、でもまあ蘭とデートの約束できたしこれで良かったのかな?

 

「その時は本当に二人っきりだからね?」

「わかってる、蘭と俺の二人だけだ」

「ッ!へ、へーシンが相手なんて不安しかないけどた、楽しみにしとく」

「一言多いんだよ!?」

 

 そこは楽しみにしとくだけでいいだろ!?せっかくデートに誘ったのにシンさん泣いちゃうよ!?

 

「それじゃああたし仕事に戻るよ」

「終わるまで待っとこうか?」

「嬉しいけど今日は最後までするから帰り遅くなるから…先帰ってて」

「で、でも暗くなるの早いぞ?危ないだろ!」

「店長が近くまで送ってくれるから大丈夫だよ」

 

 て、店長?それって男性だったら!?

 

「いや女性だけど?」

「そ、そうか…あと勝手に人の心読むな」

 

 なんでこう蘭は俺の考えていることがわかるのだろうか、謎だよな

 

「じゃあ俺帰るよ、仕事頑張ってな」

「うん…それと心配してくれてありがとう」

「ッ!おう!気にすんな!」

 

 って言ったけど蘭から素直にありがとうが聞けるとは、今日はいい日かもな

 

 金を払おうと思ったけどアレックス姉様にはいつもお世話になっていますから大丈夫です、と言われたから払わなくて良くなった。

 

 いや本当にすまん、あいつ適当なこと教えてるはずだよ?早く気づいて!

 

「ご、ご主人様!」

「……な、なんだ蘭」

 

 急にご主人様とか呼んでどうしたんだよ

 

「お、お別れの挨拶です!」

 

 と蘭はいい投げキスをしてきた。

 

「……………………」

「な、なに?」

 

 シンは蘭の投げキスを受けたあと何も返事をすることなくずっとぼーと立っていた。

 

「……もう1回」

「するわけないでしょ!」

 

 シンの口から出たもう1回を聞き取った蘭は恥ずかしさのあまりシンをビンタしてそのままメイド喫茶を後にしたのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「いたた、蘭のやつ思っきりビンタしやがって」

 

 普通に痛かったよ、多分だけど赤く腫れてんじゃね?

 

 1人悲しく家に帰ってる途中ふと通った公園に知り合いが1人ブランコに乗ってニコニコしていた。

 

「……あいつ1人で何してんだ?」

 

 興味を持ちそいつの近くによる。

 

「何してんだよ、モカ」

「おー!シンくんじゃないですか、会いたかったよ〜」

「奇遇だな、俺もお前に会いたかった」

 

 バイトで会ってるだろ思ってる君達、残念ながらモカと俺のシフトは違うためそう毎日会っていたわけではないんだよ

 

「1週間?ぶりかなー?」

「そうだな、店長俺達が話しすぎるからシフトずらしてんだよ」

 

 そういった後モカに隣いいかと聞き、ブランコに座る。

 

「なんかロミオとジュリエットみたいですな」

「なーにが」

「あたしがロミオでシンくんがジュリエットねー」

「逆だろ逆」

 

 なんで俺が女のジュリエットなんだよ、普通モカがジュリエットだろ!?

 

「だったらシンくんはモカちゃんを連れ去ってくれますか?」

「それとこれは別だろ!?」

 

てかなんでこの話になってんだよ!もうこの話終わり!

 

「んで?1人でニコニコして何してたんだよ」

「えーモカちゃんニコニコしてたー?」

「してたしてた、超してた」

「超してたのか〜んーそうだね、昔のこと思い出してたんだ〜」

「昔?」

 

 モカはその昔話のことを話してくれた。どうやらこの公演は今のAfterglowのメンツと出会った思い出の公園らしい。

 

 巴、ひまり、つぐみ、この3人と出会い次に蘭、そして有翔に出会い、仲良く6人組は完成した…って話を聞いた。

 

「蘭は昔はあたし達の背中に隠れてうじうじしてる子だったんだよ〜」

「それ言っていいのか?怒られるぞ」

「……まあ大丈夫でしょー」

 

 んー大丈夫だとは思わないけどな

 

「あーくんはね実はともちんが見つけたんだよ」

「つぐみじゃないのか?」

「つぐはーまあ、そうだね中学2年の時ぐらいかな?付き合ったのは」

「…………まじか!」

 

 え?思ったより付き合ってる歴ないんですね、あなた達

 

「俺は有翔のやつとは小6から知ってるけどなー全然モカ達のこと話してないから知らなかったよ」

 

 なんなら有翔のやつ途中でどっか行ってたし、俺もどっか行ってたな

 

 その時な…まさか今こんな人生を遅れているなんて想像もつかなかった。

 

 俺が今ここでこうやって元気に楽しく生活できているのは…モカのおかげなんだ。

 

「なあモカ」

「んー?」

「俺さ、今人生が楽しいよ」

 

 こないだ酷い目にあったさ、けど、それでも今の俺の人生は充実していると思う。

 

 千聖先輩に失礼だってわかってるけど…それでも今は楽しいと思ってる。

 

「本当にさ、モカが初めての友達でよかったよ」

「……それは嬉しいことですなー」

「あたしもシンくんと友達でよかったよ?モカちゃんも今楽しいし」

 

 モカも俺と友達でよかったって言ってくれた。それだけで俺は十分嬉しいよ

 

 って話がそれたな、戻してと

 

「……でもなんかいいよな」

「いいって?」

「こうゆう思い出の場所があってさ、俺なんて小さい頃から遊ぶとしても屋敷の中か庭だったからな」

「……………………」

「だから、俺には思い出の場所とか特にないんだよ」

 

 まあ強いて言うならあの宿泊学習で行った宿かな?高校生活の初めをめちゃくちゃにしてくれたいい思い出の場所だよ、いやあるじゃんか

 

「だったら思い出の場所作ろっか」

 

 モカはブランコから降りて俺の前に来る。

 

「作るってどうやって?」

「……こうやって」

「ッ!」

 

 モカのやつはそっと俺に顔を近づけ、そのあと自分の唇を俺の唇へと運び重ね合わせてきた。

 

 誰がなんと言うと本当のキス、だ。

 

 モカとのキスなんだろう、甘いとか苦いとか、酸っぱいとかそんなのはなかった。

 

 これが純粋なキスと言うやつなのだろうか

 

 ゆっくりとずっと、長くキスをしてくる。

 

 お互いの鼻息がだんだん荒くなっていってるのにずっと続ける。

 

 俺が逃げればいいけど逃げるよりモカを受け入れている気の方が強い…気がした。

 

 さすがにモカもきつくなったのか離れるていく。

 

『……………………』

 

 俺達は2人して黙っていた。いや、急すぎるだろ

 

「ね?思い出の場所になったでしょ?」

「ッ!お前、これが目的かよ」

 

 確かにここはモカとの思い出の場所、になったな

 

「あたしにとってここはみんなと出会った場所、そして…」

「シンくんと熱いキスをした場所ですな〜」

「ですな〜ってお前!そんな軽い話じゃないだろ!?」

 

 俺だけ緊張してて馬鹿みたいじゃねーか!

 

「もしかしてシンくんファーストキス?」

「……モカは?」

「あたしはどうやら小さい頃父さんにしてたようなんだよね〜」

「残念ながらファーストキスではありませんな」

 

 まあ小さい頃にはそんなことがあるんだろうな、きっと

 

「残念だけど俺も違うよ…」

「…………へー、それは残念だね」

 

 残念とか言ってるけどそれほど気にしてないだろモカのやつは

 

「それじゃあモカちゃん帰るね」

「あ、ああ」

 

 モカはリュックを取り、その場から離れては

 

「シンくん」

「……なんだ?」

「結婚、しようね〜!」

「ッ!」

 

 さっきのキスの件もあり動揺した俺はブランコから落ちてしまう。

 

「ば、馬鹿!するわけないだろ!」

「あちゃー今日こそいけると思ったんだけどねー」

 

 そんな簡単にはい結婚します!なんて答えねーよ!モカのやつは一体俺に何を期待してるんだよ!

 

「それじゃあね、シンくん」

 

 モカはそう言い今度こそ公園を後にした。

 

 しかし公園にはまだシンが残っていた。

 

「……あ、あいつってまさか俺のこと?」

「それともそう考える俺が?」

 

 1人で長く悩むこと1時間

 

ヒュー

 

「ッ!寒!ってもうこんな時間!」

 

 夜の冷たい風が吹きシンは時間を確認して慌てたようにブランコから立ち上がり公園を後にした。

 

「今日はパスパレの特番がある日なのにー!」

 

 リアルタイムで見ようと思ってたのにギリギリまだ間に合う!

 

 が、帰りの途中全ての信号に引っかかり家に帰ると

 

「は、始まってるし!」

「あぁぁぁぁあ!不幸だぁぁー!」

 

 家のドアを開けっ放しにしてそう叫んだシンはお隣さんに心配されたそうでした。

 

 

 

 

 その頃

 

「シンくんにキスしちゃったー」

 

 風呂の中でモカは1人でそう呟いていた。

 

「ッ!」

 

 ふとその時の光景を思い出し顔を赤くしたモカは湯船に頭の口あたりまで沈まり

 

「ブクブクブクブクブク」

 

 と恥ずかしい思いを何とかしてかき消していたのであった。




次回からまたシリアスです。そろそろ綺羅との決着も付きます。そうですね5話までには頑張って終わらせます!

それで今回はその決戦?前に少しはシンにいい思い出をと思い話を書きました。

リサさんの弟の件、本当に悲しかったです。ので自分の作品に登場させました。まあここではあまり話しませんよ

ではでは!次回からシリアス展開ありありだけどまたお会いしましょう!

あ、投票者100人ありがとうございます!


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弦巻シンは夢を…

お久しぶりです!今回からまたシリアスです…話は長いですが是非最後まで読んでいただきたいです。

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フォローしてね!

それではどうぞ!

今回でアギトの妹が判明します。


 幸せ、とは一体なんだろうか。

 

 毎日が楽しくて充実した生活?それは間違いじゃない、けど

 

 そんなものは…一度失わないと本当の意味でわからない。

 

「……………………」

 

 いつものように目覚まし時計により朝は起こされて賞味期限が切れてたパンを食べる。

 

「行ってきます」

 

 誰もいないのにシンはそう言い、学校に向かうがその途中

 

「シン、おはよう」

「……先輩、おはようございます」

「おはよう、千聖先輩、千歳ちゃん」

 

 2人して俺を待ってくれてたのだろうか、いや嬉しいよ

 

 そうして3人で登校する。別に何か特別な話をするわけじゃない。今日なんかはこないだあったパスパレの特番の話をしてたりしたな

 

 まあその時千歳ちゃんは機嫌悪そうな顔してたけど…

 

 学校については下駄箱で自分のスリッパに履き替え教室へと向かう。

 

「よ!シン、おはようだな」

「蒼汰、おはよう」

 

 蒼汰とおはようと挨拶を交わして席につくとそれからはお互いの最近起きた出来事などを話していては

 

「シン君おはようー!」

「おはようシン」

「おっはようシン!」

 

 香澄、おたえ、沙綾と順番に挨拶をしてきた。

 

「みんなおはよう」

 

 この朝の何気ない挨拶ってやつがもしかしたら幸せってやつなのかもしれない。

 

「シーン!おはようー!!」

「おはようー」

 

 次にこころと美咲が挨拶をしてきた。まあこころに関しては…

 

「お、おはよう、いつも急に抱きつくなよ!」

「とか言って喜んでるくせに」

「んなわけないだろ美咲!?」

 

 そうこうしているうちに

 

「よーし、HRを始めるぞー」

 

 担任の秋月先生が来たところでHRが始まる。

 

「来月行われる体育祭のチーム分けを行う」

「男女それぞれ均等になるよう別々でくじを引くからーあ、赤組と白組にわかれるからな」

 

 体育祭か、あー中学の時まともに参加したの中1の時だけだな

 

『うぉぉおおおおお!!』

「えーい黙れ男子共、特に弦巻弟」

「なんでだよ!俺叫んでないだろ!?」

 

 俺と蒼汰以外の男子共が叫んでいただけなのになんで俺が注意されるんだよ!?

 

「すまんな、お前も一緒に叫んでいるかと思ったんだ」

 

 普段叫んではいるけど一緒にしないでくれないか!?

 

「とりあえず早く決めてくれ、あ、今回は羽丘と合同だからな」

「……いやまじかよ!」

 

 俺は驚くも他のやつはあまり驚かない。文化祭、球技大会と来てみんな体制ができているのだろうか…

 

 男女各々くじを引き

 

「蒼汰ーお前何組?」

「俺は赤組だ!」

「……奇遇だな、俺もだ」

 

 くじを見せつけ同じ組だと蒼汰に話をする。いやーまさか蒼汰と同じ組とはもう勝ち確だろこれ

 

「シン何組?」

「俺は赤組だな」

「やったね!同じだよ♪」

「沙綾もか!いやー!これは楽しいチームになりそうだな!」

 

 沙綾がいるだけで俺は頑張れる!絶対いいところ見せるしかねえな!

 

「シンくん赤組かー」

「か、香澄は!?香澄も赤組だよな!」

 

 俺のマイエンジェル香澄!頼むから同じ組であってくれ!

 

「私は白組なんだよねー」

「よかったねシン君、私と同じ組だよ」

「なんでだぁぁー!」

 

 く、クソう!香澄と違う組みなのかよ!てかおたえとは同じ組なのね!?

 

「シン!あなたも赤組なのね!私もよ!」

「……先生!」

「なんだ弦巻弟」

 

 俺は先生を呼びこう言った。

 

「くじのやり直しを要求します!」

「拒否する」

「香澄と!香澄と同じ組がいいんですよ!」

「そ、そんなに私と同じ組がいいの?て、照れるなー」エヘヘ

 

 か、可愛い!さすがマイエンジェル香澄だぜ!

 

「……………………」

「ッ!さ、沙綾?」

「そこまでして香澄と同じ組になりたいの?」

「い、いえ!今の組で大満足であります!」

「それじゃあ決まりだな」

 

 とほほ、おたえとこころと同じ組なんて絶対きついだろ

 

「大丈夫だよシン君!はぐみもいるよ!」

「あーあたしもいるからこころに関しては大丈夫、花園さんは任せたよ」

「はぐみ!美咲!…って俺におたえを押し付けるな!」

 

 美咲のやつ助けてくれるかと思えば違うのかよ!?

 

「師匠!敵となったのなら容赦しません!優勝に向けて猪突猛進です!」

「私も頑張っちゃうよー!」

「うう、か、香澄ー!俺はお前と「シン!」ぐへ!」

 

 話の途中でまたこころのやつが抱きついてきた。なぜいつもこう抱きついてくるの!

 

「同じ組ね!頑張りましょう!」

「……まあ?このチームだったら優勝間違いなしだよな!」

 

 よくよく考えれば運動神経だけが取り柄の蒼汰とはぐみ、それとこころがいる!勝ち確だろこれは!

 

 あ、おれ?俺はほら、能ある鷹は爪を隠すってやつさ…何言ってんだろう

 

「んじゃ5時限目にチームごとで出る種目決めるからなーはい、HR終了」

 

 HRが終わり午前の授業が始まる。それはあっという間に終わり昼も終わる。

 

「では種目を決めましょう!」

「まてこころ、なんでお前がしきってる!?」

 

 今は赤組と白組とわかれ教室の後ろと前の黒板を利用して綺麗に別れていた。

 

「なんとなくよ!」

「なんとなくじゃない!ちゃんとリーダー的なやつを決めてた方がいいだろ?」

 

 文化祭実行委員ならぬ体育祭実行委員的な感じのさ!

 

「だったらシン君がやりなよ、文化祭実行委員長だったし?」

「おたえお前は馬鹿か、俺が体育祭委員なんてやってみろ、モテモテのモテになって学校中の女子が俺に惚れてしまう」

「それは大丈夫、シン君の彼女は私だから」

「付き合ってないから!?てかツッコめよ!恥ずかしいだろ!?」

 

 ボケてやったのになーんでツッコまない!いやまて、こんな馬鹿に求めた俺が馬鹿だったぜ

 

「んん!ま、まあ俺より適任なやつはいる」

「それってもしかして?」

「察しがいいな沙綾!」

 

 運動神経抜群でみんなを指揮れる!

 

「蒼汰しかいないだろ!」

「お、俺か!?」

 

 指で自分を指して驚く蒼汰、まあ急に言われたら驚くよな

 

「別に俺は運動はできるけど指揮を執るには…」

「まあ聞けよ」

 

 蒼汰に肩を組み小声で話す。

 

「巴にいいところ見せるチャンスだぜ?」

「ッ!」

「体育祭の後は…」

「あ、後は!?」

「まあそこは、ほら?自分で考えてくれ」

 

 体育祭の後はとか言ったけど俺は特に何も考えていない。蒼汰が何を考えるのか自由だけど何を考えるんだろうな

 

「……よーし!俺が指揮を執る!」

「とりあえずみんな4月にあった体力テストで測った50メートル走の記録を教えてくれ!」

 

 蒼汰が指揮を執ることになり話を綺麗に進んでいく

 

「シンは…借り物競争とかでいいか?」

「なんでもいいよ」

 

 蒼汰が決めるのなら間違いはないだろう。あの時は足遅かったしな、速さを求める系の競技には出ないってことはわかってたさ

 

「おたえは何になったんだ?」

「パン食い競走」

「そ、そんなのあるんだな」

 

 なんかモカが好き好んで出そうだな!

 

「はぐみは1000メートル走だよ!持久走は得意だから任せて!」

「それははぐみにしかできないことだぜ!頼んだ!」

 

 女子ではぐみが出るのなら?

 

「男子は俺しかいないよなー」

「……まあ好き好んで走るヤツなんてはぐみぐらいだろ」

 

 蒼汰で決定と

 

「沙綾とこころは?」

「あたしは50メートル走よ!」

「私は障害物競走だよ!弟達も来ると思うからいいところ見せないとね♪」

「……そうだな」

 

 弟か…ってことはシンジとかも来るのかな?それだと母さんやアレックス、そして親父も来るのか

 

 なんかいいな、屋敷以外で家族が揃うのって、昔は…親父のことが怖かったから来て欲しくないって思ってたけど今は来て欲しいって思うな

 

 他の男子や女子も普通に決まり時間が余ってたため雑談をしていた。

 

 正直言ってこの時間が楽しくてずっと続けばいいと思っていた。

 

 いや、この時間だけじゃない。今の俺の人生自体が楽しいからずっと…ずっとこのままで誰も傷つくことなく過ごせれたらいいなと思ってる。

 

 

 

 

 

 

 けど、人生はそんなに上手くいかない。

 

 

 

 

 

 

「師匠!今度行われるパスパレのワンマンライブ!チケット確保出来たのでお渡しします!」

「い、イヴさん!?急になにを!」

「はい!師匠には私達のライブ()を見届けて欲しく用意しました!」

 

 ワンマンライブってあれだよな?パスパレしか出ないやつだよな!?

 

 それがイヴから貰える?それって無料だよな!

 

「い、イヴ様ー!あなたは女神様ですが!」

「いえ仏様です!」

 

 イヴからチケットを渡されたシンは感極まってチケットに頬擦りをしては幸せそうに笑い、ライブ当時が来るのを楽しみにしていた。

 

「もちろん皆さんの分もありますよ!」

 

 イヴはそう言いチケットの束を手にクラスのみんなに話しかける。

 

「クラス分の確保は難しかったですが…皆さんにも見て欲しくて私頑張りました!」

「……俺だけじゃないのかよ!?」

 

 シンは自分だけが渡されたと思っていたらそうではなく、ただイヴがクラスのみんなに来て欲しいって理由で渡して来たと知った時、クラスのメンツは喜んでいるのにシンは悲しみ場違いな存在になっていた。

 

「まあまあクラスのみんなで行けるし結果オーライでしょ?」

「沙綾…そうだな」

「ところでシン、席はどこ?」

「あーAの18だな、最前列じゃん!いやイヴ様、仏様様ですな」

「……そうなんだー私はAの19だよ?隣だね!」

「本当か沙綾!いや偶然にしてはスゲーな!」

 

 と、シンは言うが、沙綾は先にシンの席を確認してチケットの回収を行っていたのだ。

 

「シン君Aの17?私の隣だね!」

「香澄もか!?パスパレのライブを香澄と見れるなんて嬉しいよ!」

「私もシン君と見れて嬉しいな!」

 

 シンと香澄は男女の仲であるにも関係なく、お互いの手を、指を絡み合い一緒に喜んでいた。

 

 それはまるで恋人繋ぎのように…して

 

「……………………」

 

 沙綾はその光景をただ近くで見ていることしかできなかった。

 

「…………私のなのに」

「沙綾?どうかしたの?」

「……ううん!なんでもないよ、それより2人は手なんか絡めて恋人同士なのかなー?」

『ッ!』

 

 その発言にシンと香澄は自分達がしている行動を確認して咄嗟に繋いでいた手を離す。

 

「か、香澄ごめん!」

「う、ううん!わ、私こそごめん!」

 

 まるで付き合いたてのカップルのような仕草をお互いが行う。

 

「ダメだよ香澄ー?シン君は私の彼氏なんだから、でもー3Pって言うんだけ?楽しそうだよね」

「おたえ…いい加減俺と付き合ってないって事実を認めろ」

「……………………」

「さ、沙綾?」

 

 沙綾はさっきのこともあり下を向く、いや斜め下をずっと無言で眺めていた。

 

 彼女が今どう思っているのか、それは彼女自身しかわからない。そのためシンなんかにわかるはずがないのだ。

 

 話し合いは終わり5時限目も終了間近

 

 そんな時、運命(試練)がシンを襲う

 

「?」

 

 廊下から数人が走ってこちらに向かっているような足音がする。

 

「こころ様!シン様!」

 

 教室のドアを開けたのは黒服の人だ。

 

「……部外者は校内立ち入り禁止なんだが?」

 

 秋山先生はパイプ椅子に深く座っていたが黒服が来たためなのか立ち上がりそう言った。

 

「申し訳ございません、許可はいただいております」

「…………でしたらどうぞ」

 

 黒服は予め学長に許可をいただきこちらに来たのだ。

 

「それよりあなた達どうしたの?」

「適当な用事だったら許さないぞ」

「……適当なんかではありません」

 

 黒服はそう答えると深呼吸を数度行い、口を開く

 

「奥様の病態が悪化しました」

「……んだよそれだけかよ、風邪をひいてることは知ってるよ」

 

 数日前に訪れた時体調を崩していると話を聞いた。勝手に風邪だと思い込んでいたけど…なんだ?インフルか?

 

「やはり知らされてなかったのですね…」

『?』

 

 こころと俺は黒服の言っている意味がわからなくて首を傾げていた。

 

「驚かずに聞いてください…は、無理そうですね」

 

 

「正直に言いますが…………、…………ます」

 

 

「は?」

 

 シンはとても低い声でその言葉発した。発したと言うより勝手に口から出た行った方がいいかもしれない。

 

「なに冗談言っているのよ、そんなこと信じられるわけないじゃない!」

「こころ様、我々が一度でもあなた方に嘘をついたことがございますか?」

『ッ!』

 

 黒服の言う通りだ。あいつらが俺達に嘘を言ったことなんて一度もない、でも証拠が…

 

 いいや、そんなことはどうでもいい!黒服の発言が嘘か本当か自分の目で確かめればいいだけだ。

 

シンは教室のベランダに出てそのまま下へと飛び降りた。

 

 着地の際は前転受け身、と言うのだろうか、転がるように前に出て落下のさいの負担が体に来ないよう行い、屋敷向かって全速力で走り出した。

 

「ッ!先生!屋敷に行ってくるわ!」

「…………ああ、わかった」

 

 秋山先生はすぐに許可をしてこころは黒服の車で、シンは己の足でそれぞれ屋敷へと向かう。

 

「せ、先生よかったんですか?」

「ん?あーなんだ、あれだよ」

 

「大切な人が……時は近くで見届けたいもんだろ」

『ッ!』

 

 クラスメイトのみんながその言葉を聞いてわかってしまった。シンとこころの身にこれから何が起きるのかを

 

「…………シン」

 

 沙綾は教室から見えるシンの走る姿を見て名前を呼ぶことしかできなかった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 シンが学校を抜け出して走ること数分、すぐに屋敷につく

 

「!」

 

 黒服達の車は止まっており門も空いている状態だ。

 

 そこから入り全速力で母さんの部屋目掛けて走ると

 

「ッ!な、なんだよこれ…!」

 

 目の前には…

 

「離しなさいアレックス!あなた自分で何してるかわかってるの!?」

「アレックスさん痛いって!は、離してください!」

 

 アレックスが片手でこころの両手首をつかみ、もう片方の手では篠崎先輩をこころと同様につかみ拘束していた。

 

「……何してんだよ」

「ッ!」

「何してんだって聞いてんだぁぁぁああ!!」

 

 シンは叫びながら懐のポケットから木刀を取り出し大きく一振し、アレックスに木刀を向ける。

 

「……シン様、もう来たのですね」

 

 アレックスも同様に木刀を取りだしシンの一撃を防ぐ

 

「なんでこころと篠崎先輩にあんなことした!」

「……あんなこと?ああ、ちょっと手首を掴んでただけです」

「んなこと聞いてんじゃない!なんで拘束するように掴んでたんだよ!」

 

 アレックスが理由なしにこんなことをするやつじゃないことぐらいわかる。けどなんで、なんでさ!

 

「簡単です。奥様にあなた方を部屋に入れるなと言われているからです」

 

 その言葉を聞いて一瞬空気が揺れたような気がした。

 

「そんなこと母さんが言うわけないだろ!」

 

 シンは力を込め防がれていた木刀を振り払いもう一撃与えようとしたところで

 

「ッ!」

 

 木刀を止め後ろへと下がる。

 

「……こころ、篠崎先輩」

「……なにシン?」

「俺がアレックスを引きつけるから先入っててくれ」

「む、無理だよ!アレックスさん強すぎるよ」

「いいから入ってろ!」

『ッ!』

 

 こころと篠崎先輩はその場から立ち上がり母さんの部屋へと入る。アレックスは抵抗すると思ったがすることなくずっと俺を見つめ木刀を構えていた。

 

「いいのかよ、入れるなって話はどこいったんだ?」

「……まあ彼女達ならいいでしょう、なんせ特にシン様だけは入れるなと言われていましたので」

「ッ!だから…そんなこと母さんが言うわけないだろ!」

 

 またもしてシンはアレックスに木刀を振るも

 

「なっ!」

 

 呆気なく避けられてしまう。

 

「前にも言ったはずでシン様は怒りで考えを放棄する傾向があると」

 

 アレックスはシンの背中に思っきり木刀を振り壁へとぶっ飛ばす。

 

「ガハッ!」

「……あなたは私に勝てない」

 

 上から見下ろすアレックスはいつものようではなくまるで騎士のような立ち振る舞いでそう言う。

 

『お母様!』 『奥様!』

 

 こころと篠崎先輩の声が聞こえる。

 

 その声は普通に母さんを呼ぶような声ではない。まるで驚いた時に人が出すような声音だ。

 

「……………………」

 

 シンは無言のままその場に立ち上がり木刀を構え出す。

 

「悪いけど俺はもう誰にも負けられないんだ」

「……そう、ですか」

 

 千聖先輩と約束した、もう負けないって…稽古じゃなくてアレックスの剣を交えるとなるとそれは勝負と言って他ならない。

 

 だったら俺に負けは許されないんだ。

 

「行くぞアレックス、俺はなんとしてもここを通る」

「いいでしょう、あれからどれほど強くなったかアレックスが見定めて差し上げます」

 

 アレックスも構えだしお互いが同時に地を蹴り剣を振るった。

 

「ッ!」

 

 アレックスの一手が早くてシンに攻撃が当たりそうになるも、シンはその攻撃を受け流す。

 

「……アレックス、悪いな」

 

 シンが小声で言うと

 

「はぁぁぁああああ!!」

「……ッ!」

 

 シンはスライディングする形でアレックスの足と足の間を通り抜け部屋の前のドアにつく。

 

「……ふざけるな、ふざけるなふざけるな!」

「放っからアレックスと戦うつもりなんてなかったのですか!」

「……ああ、だって俺アレックスに勝てないもん」

 

 振り向き笑ってシンはそう言い、部屋のドアを開ける。

 

「ッ!……シン、あなたは優しすぎです」

 

 アレックスは一瞬木刀を握る力を強くしたがすぐに緩めてしまう。

 

「なに笑ってんだよ」

「……アギト?」

「ったく、てめぇらが勝手なことしたせいで台無しじゃねーか」

 

 アギトの後ろにはシン達を迎えにきた黒服のメンツがいた。

 

 そう、アギトは黒服にこころ達にはこのことを知らせるなと命令していたのだ。しかし黒服はその命令を破ってでもこころ達を連れてきたのだ。

 

「……申し訳ございませんアギト様、しかし我々が知らせるべきだと判断して行った行動です」

「後悔はございません」

「どんな罰でも受けます」

 

 アギトは頭をかいた後に口を開く。

 

「覚悟はできてんだよな?」

「…………コク」

「……だったら門の閉鎖をしろ、簡単に人が入ってこれるだろ、後は普段の警備に戻れ」

『ッ!はい』

 

 黒服は普段の仕事に戻れと命令されたため戻りそれぞれの作業を行うようだ。

 

「あなたのことだからエロいこと要求するかと思いましたよ」

「そんなことしねーよ」

「それよりシンは行ったのか?」

「……ええ、行ってしまい、ましたよ…!」

 

 アレックスは肩を震わせ、木刀を強く握ってしまう。彼女は…泣いていたのだ。

 

「私と同じ目にあって欲しくないから、だからあんな態度取ったのに…最後なんて笑ってたんですよ?」

「……こんな所で泣くな」

「わかってます…!」

 

 アレックスはメイド服の袖で涙を拭き2人でシンの入った部屋へと足を運んだ。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「母さん!」

 

 部屋に入ると同時に俺は母さんと叫ぶ

 

「ッ!……な、なんだよ、これ」

「シンさん、来ちゃった……のね♪」

 

 目の前にいるのは紛れもなく母さんだ。だけどその様子はいつもと違う。

 

 様々な機械から管が出ておりそれが母さんの体に刺さっている。つぐみの時に病院で見たような機械なんかじゃない。

 

 素人の俺がみても全く違う機械だってわかってしまう。それによくドラマとかで見るような心拍数を測る機械だって置かれてる。

 

 こころと篠崎先輩は母さんの左側に膝をつき手を包み込むように握っていた。

 

「嘘だ…!こんなの嘘に決まってる!」

「……………」

「ほらドッキリ大成功の看板は!?どこか隠してるんだろ!なあ!」

 

 こ、こんなのドッキリに決まってる。手の込んだ芝居しやがって、あんまり俺を舐めるなよな!

 

「そんなわけないだろ」

「ッ!」

「シン様…紛れもない事実なのですよ?」

「……嘘だ!」

 

 後ろからアギトさんとアレックスが事実だと言ってくる。

 

 やめろ、やめてくれ…!あんたらが言ったら俺は認めざるを得ないじゃないか!

 

「……ごめんねあなた達、迷惑かけたくないから黙ってたの」

「迷惑なんてないわよ!話してくれれてたらあたし!あたしはもっとお母様と!」

「私もです奥様!迷惑なんてこれっぽちかかりませんよ…!」

「俺は、俺は…?」

 

 どうして俺は母さんが病気と戦っていたなんて気づいていないんだ?俺は何をしてたんだ?

 

 ああ、そうだ、そうだよ、俺は屋敷にいなかったんだ。弦巻家のことが大っ嫌いで抜け出していたんだ。

 

 久しぶりに会っても様子が変わってなくて安心しきっていた。

 

 でもそれは当たり前のことだったんだ。母さんは俺達に迷惑をかけないために黙ってたって言ってた。

 

 つまりバレないよう仕草をしていた、ってことになる。

 

「……………………」

 

 シンは無言のままこころと篠崎先輩がいる反対側の手元に行く

 

「俺のせいだ」

『……ッ!』

「俺が……気づいてなかったから…!」

 

 シンはそう言うがそれをシンの母さんが納得するだろうか、否、するわけがない。

 

「何言ってるのよシンさん、私は生まれた時からこうなる運命だった、のよ♪」

「違う!俺が母さんに色々、たくさん迷惑かけたから!」

「……シンさん」

 

 シンの瞳からは涙が止まることなく頬を流れ床へと落ちてしまう。顔を下げて自分が悪いと自分に言い聞かしていた。

 

「馬鹿ねシンさん、私は一度もあなたのせいなんて言って……ないわ♪」

「……でも俺が!」

「あなたの悪い所よ、自分を責めるのは小さい頃から変わらないわね」

「…………だって、だってさ…!」

 

 シンは一度言うと口が止まることなく言い続けた。

 

「俺が悪いじゃん!俺が屋敷が嫌いだったから!金持ちの家が嫌いだったから!だから屋敷を抜け出して…」

「たくさん迷惑かけた!連絡もしなくて生きてるかもわからないって不安をかけた!」

「俺が初めからいい子で入れば…!いずれその時が訪れたとしても!今日にはならなかったはずなんだ!」

 

 シンは泣きながらそう言う。自分が悪い、自分が家を抜け出してたくさん迷惑かけたから今日、母さんが亡くなるまでになったのではない、かと

 

「……シンさん、こっちに来て」

「………………はい」

 

 シンは涙を拭き、母親の元へと近づく

 

 シンの母さんは手を伸ばしシンの顔に近づける。

 

「ッ!」

 

 シンは怒られると思い顔に力を入れた。だって自分が原因だと思っていたから、ビンタされるの当然だと思ったからだ。

 

 でも、それは違った。

 

「ッ!か、母さん?」

 

 そっと優しい手でシンの頬を撫でる。

 

「私は一度もあなたを恨んだり、憎んだり、嫌いになったりしたこと…ないわ♪」

「……シンさんよく「不幸だ」って言うわよね?」

「…………う、うん」

 

 頬を撫でながら話はまだ続く、その手は今にも重力にしたがい下ろされてもおかしくない細腕なのにずっと、シンの頬を撫で続ける。

 

「これだけはちゃんと聞いて…」

「私はあなたが……シンさんが生まれてから一度も不幸だと思ったことないわ♪」

「ッ!」

「いいシンさん、私はあなたが思ってる以上にあなたを愛しているのよ」

 

 その言葉を聞いた瞬間今まで止まっていたシンの涙腺が動き出す。頬から離れそうになる母親の手を取り言葉を発した。

 

「ッ!ッ!ごめん!今まで迷惑かけてごめん!わがまま言ってごめん!家族が、家が嫌いだって言ってごめん!」

「ごめん!ごめん!ごめん!」

「シンさん…」

「何度だって謝るからさ…!なんだってするからさ!」

 

「俺の前からいなくならないでくれよ母さん!」

 

 シンは怖いのだ。自分の前から誰かがいなくなることを怖がっている。

 

 それは千聖の件でわかったことだ。まだ千聖が戻ってきてくれたからよかったもののあのまま帰ってこなかったらシンはどうなっていたか

 

「もう嫌なんだよ誰かが酷い目に遭うのは耐えられない!だから…頼むよ母さん!」

「私もよ…!お母様が亡くなるなんて考えたくもない!」

「私もです!奥様と過ごした時間はみんなより少ないかもしれない!けどそれでも私は奥様を愛しています!」

 

 子供達がそれぞれの思いを母親に言う。それを聞いたシンの母親は

 

「……嬉しいわ、私こんなにもみんなから愛されているのね」

「ああ、愛してる!家族だって愛してる!もう嫌いなんて思わない!」

「…………うん」

「だから逝くなよ…!」

 

 最後にシンはそう言うも

 

「ごめんね、母さんもう眠たくなってきちゃった……♪」

「ッ!何言ってんだよ!まだ寝ちゃダメだ!」

「そうよ!今寝たらそれはもう起きないかもしれないわ!」

 

 シン達がそう言っても変わらない。今にも閉じそうなまぶたが何度も閉じそうになる、だけどそれをシン達が許さない。

 

「そうだ!今度体育祭があるんだよ!」

「……それは、楽しそうね♪」

「楽しいわよ!あたしとシンは同じ組なの!姉弟揃って優勝目指して頑張るのよ!」

「文化祭と同じさ!楽しい…楽しい学校行事なんだよ…?」

「……だから、お母様見に来てくれるわよね?」

「……ええ、見るわよ、場所は違っても私はあなた達の母さんよ♪」

 

 場所は違っても、すなわちそれはこの世のどこでもない場所を指している。それに気づいたシンはまた声を上げる。

 

「違う!母さんはちゃんと俺達の前で見るんだ!そんなこと言うなよ!」

「……それにまだ孫の顔だって見せてない!見たいんだろ!」

「…………え?ごめんなさいね、なんて言ったのかしら?うまく…聞き取れないわ」

「ッ!」

 

 もう、母さんには俺の声が届かないのか?もう本当に亡くなってしまうのか?

 

 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!母さんが亡くなるなんて嫌だ!

 

「ッ!そうだ、そうだよ!」

「俺さ!今から蘭と結婚するよ!子供だってすぐに作る!後少し生きてくれたら見れるからさ!」

「見れるからさ……、見れるから…!」

「……そうね、蘭ちゃんとこころちゃんのウエディングドレス姿見たかったわね♪」

 

 ああ、もうダメなんだろう。何も言っても母さんが生き残る術はないのだろう。

 

 例え魔法があったとしても人を生き返らせる術はない。

 

「最後に、みんなにそれぞれ言いたいことがあるの」

「な、何言って「愛奈ちゃん」ッ!」

 

 そうだ、もう俺の声は聞こえない。何も言っても母さんは口を止めることなく話し続けるに決まってる。

 

「……なんですか?奥様」

「愛奈ちゃん、今からでも遅くないわ…大学、行くべきよ」

「ッ!」

「私も行きたかったけど、貧乏だったから……諦めたけどあなたは行くべきだわ、家庭の事情とかあると思うけど、頑張ってね」

「……はい、奥様!」

 

 篠崎先輩はそう答えると握っている手を強く握り返した。

 

「こころちゃん、いえ、こころ(・・・)

「……………………」

「あなたはこれからずっと笑顔でいるのよ?母さんが教えたことは間違いじゃないの、人は笑顔があれば幸せになれる」

「みんなと一緒に世界を笑顔にしてね?」

「……お、お母様…!」

 

 こころも同様に握っている手を強く握る。

 

「次にシン…」

 

 と、話をする瞬間に

 

「お母様!」

「シン、あなたは」

「お母様お母様お母様!」

 

 シンジが駆けつけ手を握る。それに気づいたのかシンの母親は一瞬驚いたが、すぐに笑顔に戻り

 

「シンジ、まだあなたの夢を聞いてなかったわね」

「嫌だよお母様!僕まだ読んでもらってない本だって沢山あるんだ!」

「…………どんな夢でもあなたならなれる。自分を信じて進むのよ♪」

「あぁぁぁああ!お母様!」

 

 シンジは泣け叫び母さんの寝ているベットに顔を埋めてしまう。

 

「……次に、シン」

「あなた聞いたわよ、正義の味方になりたいんですって?」

「ッ!……うん」

 

 聞いたってのは恐らく親父、もしくはアギトさんから聞いたんだと思う。

 

「……………………」

「か、母さん!」

 

 母さんの話が途中で止まり俺は慌てて握っている手に力を込めてしまう。

 

「ごめんなさいね、話が途中で……途切れたわね」

「シン、あなたは優しい人よ、誰かの傍に寄り添ってその人の味方になってあげて?」

「……そしてあまり自分を責めないようにね、あなたはもう…………じゃないわ」

「……ッ!母さん!」

 

 途中何を言っているかわからなかったけど母さんは俺に言いたいこと言えたのだろうか

 

 いや、言えてないはずだ。俺だって言いたいことは沢山あるんだ。なのに、このまま何も伝えられなくて終わってしまうのか?亡くなってしまうのか?

 

「…………母さん」

「…………ん?」

「ッ!母さん!母さん!」

「はーい、なんですか?」

 

 俺がボソッと言った母さんって声を聞き取れていたようだ。

 

 たくさん言うことがある、だけど言う時間なんてない。だから…

 

「今まで本当にありがとう…!」

「……ええ、みんな愛してるわ」

 

 その一言を最後に心拍数を測る機械の一定を刻むリズム音が別の音へと変わる、その音が鳴り響き……シンの母親は他界した。

 

「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 その後シンの叫びが部屋中に響く、無理もない、自分の親が亡くなってしまったのだ。冷静でいられる人なんているわけがない。

 

 辺りを見ればシンだけではない、愛奈もシンジも顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた。

 

「……なあ、アギトさん、アレックス!」

「なんですか、シン様」

「どうして教えてくれなかったんだよ!」

 

 シンはアギトとアレックスを睨みつけ言うもただそれは逃げているだけだ。

 

 亡くなったことから目を背けたい、だから思ってもないことが口から出てしまった。

 

「……教えてたらどうしてたんだよ」

「アギト、やめなさい」

「自分から屋敷を出ていったやつは誰だよ」

「ッ!」

「お前前も言ったがおこがましいんだよ、自分から好き好んで出ていったくせに教えろ?ふざけんな教えるわけないだろ」

「やめなさいアギト!」

 

 アレックスの怒りを買ったアギトはその後口を開くことなく明後日の方を向くかのようにシンと目をそらす。

 

「……生まれつきの難病だ」

「親父…!」

「よくここまで生きてくれたもんだ」

 

 シンの父親は静かに母親に近づき

 

「まったく…俺を飽きさせない女だったよ、お前は」

「…………式の準備をしろ、早く弔ってやるぞ」

『はい』

 

 黒服の人達が準備に取り掛かろうとしたその瞬間

 

「やっーとくたばったかあの貧乏人め」

『ッ!』

 

 みんなが反応する。それは当たり前だ、なんせここにはいない別の誰かが言ったのだから

 

 廊下から靴の足音が聞こえて

 

「どーも、久しぶりだな」

「……綺羅、なんでお前が!」

 

 姿を現したのは他でもない綺羅、だった。なぜこのタイミング現れたのか、はたまた亡くなることを知っていたのだろうか

 

「お前…!まさか!」

「待て待て、俺はただ話をしに来ただけだお前が想像していることなんて何もしてねーよ」

「…………何の用だ、こっちは忙しいんだ」

 

 シンが考えたことは綺羅が何かして母さんの死を早めたのでないかと思った。しかしそれは違うと否定された。

 

「まあすぐ終わるから待っとけ」

「……おい、警備の奴らはどうした?」

「あーあれか、なーに殺してはないさ」

「……………………」

 

 アギトが氷のような鋭い瞳で綺羅を睨みつける。同僚が酷い目にあって何も思わないやつなんていない。

 

「そう睨むなよ夕刀(ゆうと)

「気安くその名で呼ぶな、今はアギトで通してる」

「……まあどうでもいい」

 

 アギトを無視して綺羅はシンの元へと向かっていく。

 

「よお、こないだぶりだな」

「のこのこと俺の前に現れやがって、何が目的だ!」

「なあ、あの貧乏人が死んだのはお前が原因だろ」

「ッ!なんだと…!」

 

 何を言うかと思えば綺羅はそんなことを言い出した。それはさっきまでシンが自分で母親に行っていたことだ。

 

 しかしそれは違うと言われていた。つまりシンのせいではないのだが

 

「全部お前のせいなんだよ」

「ッ!違う!母さんは違うって言ってくれた!」

「はあ、考えてみろよ」

「そんなの嘘に決まってるだろ?」

「ッ!そ、そんなわけ」

「お前に心配かけないためについた嘘なんだよ」

 

 綺羅はこれでもかとシンに精神的に苦痛を与えるために言葉を発する。

 

「あいつ相当お前のこと恨んでるぞ?」

「……そ、そんな、違う、俺は!」

「いーや、違わないさ」

「お前のせいでたくさん苦労した。お前のせいで家族が離れ離れになった。お前のせいで病気が悪化した。」

「…………ああ」

 

「お前のせいで死んだんだよ」

「あぁぁぁああ!あぁぁぁああ!」

「お前は何も守れない、白鷺千聖と一緒さ!あの貧乏人もまた守れなかった!」

「やめろ、やめろ…やめてくれ!」

 

 シンは聞きたくないよう両手で耳を塞ごうとしたが、それを綺羅は阻止して

 

「お前はだーれも守れない、正義の味方になんかなれないんだよ」

 

 真顔でそう言う綺羅に対してシンは

 

「うわぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」

 

 その場でシンは崩れ落ちてしまう。自分のせいではないと母親は言ってくれた、だけどそれを綺羅が否定した。

 

 そして何より正義の味方になれないと言われたことが一番のショックだろう。

 

「シン様!」

 

 そんなシンのアレックスは抱きつき

 

「大丈夫、大丈夫です!シンは正義の味方になれます!だから…どうか!どうか絶望だけはしないでください!」

「……………………」

 

 シンは何も返事をしない。瞳のハイライトはなくなりずっと一点を見つめたまま黙り込んでいた。

 

 その光景を見てアレックスは思い出したのだ。昔の自分を…だからシンには母親の死に直面して欲しくなかった、だから嫌な役をかってでてシンを行かせないと止めていた。

 

 しかし…結果はあの時と同じだ。

 

「ッ!綺羅!貴様ぁぁ!」

「そう吠えるな雌犬が、姉の方は…ふん、あっちは勝手に壊れているからほっとくか」

 

 こころも同じよう瞳のハイライトは消え女座りというやつだろうか、座りながら下を見ては拳を握りしめていた。

 

「ッ!お嬢…」

 

 シンジは誰の気にもとめず大声で泣き叫んでいた。

 

「これで弦巻姉弟は片付いた、いや結構簡単で助かったよ」

「……おい雑種、貴様らの目的はなんだ?俺の子供に手を出すとは覚悟はできてるんだろうな?」

「目的?そんなの決まってるだろ」

 

 綺羅は指を高らかに上げては弦巻家のメンツに向かって指を指した。

 

「お前らを潰すことだ」

「……俺に喧嘩を売るのか?」

「ああ、もちろん買ってくれるよな?」

「貴様みたいな雑種は俺の相手にもならん」

 

 シンの父親は部屋を出ようとする。

 

「まあ別にあんたは最後だからいいんだよ」

「とりあえず弦巻姉弟は潰した、次は…そうだな」

 

「夕刀、お前だな」

「……お前じゃ俺に勝てないってこと一番知ってるはずだ」

「貧乏人に俺が直接手をだすわけないだろ」

 

 綺羅の後ろにいたアイクが不気味な笑みを浮かべていた。綺羅自信は消して手を出さない、なぜならこちらにアイクがいる限り負けはない…と思っているからだ。

 

「……と、言ってもお前のことを甘く見てるわけじゃない」

「……………………」

「いやいや、親友(・・)のことを素直に評価してやってんだぜ?」

「黙れ!お前なんて親友にした覚えなんてねーよ」

「水臭いな、だったら共に過した仲間(・・)だろ」

「てめえらと同じにするな…!」

 

 珍しくアギトが声を荒らげて綺羅の放つ言葉を全て否定する。

 

「……そか、まあ別にいいさ」

「ただしお前のことを素直に評価していることは嘘じゃない」

「だからお前には手を出さい」

「ッ!お前!」

 

 綺羅は狂気じみた笑顔を見せては

 

「妹達、ちゃんと守れよ?」

「あ、でもあれだよな?気まづいよなー」

 

 綺羅はアギトに、いや夕刀に近づき肩に手を置いて一呼吸後に

 

「俺が妹達との仲を取り戻してやるよ」

「……あいつらに手を出したら俺は自分を制御できん、お前を殺すぞ…!」

「ふん!やれるならやってみろ」

 

 夕刀から離れた綺羅はドアに手をかけ

 

「アレックスと言ったか、お前と圷有翔は後回しだ」

「ッ!」

「じゃあな夕刀……いや」

 

 

 

 

 

 

 

「――……氷川夕刀君?」

 

 

 

 

 

 

 帰り際に衝撃的発言をした綺羅に対して夕刀は叫ぶ

 

「ッ!正義(まさよし)!てめえ日菜達に手を出してみろ!もう一度同じ目にあわしてやる…!」

「チッ、嫌なこと思い出させるな」

 

 綺羅はそう言うと部屋を後にしてどこかへと向かっていった。恐らくだが自分の屋敷に帰ったのだろう。

 

「……………………」

「どうしたアイク」

「……アレックスってやつどこかで見たことあるんだよなあ」

「そうか、調べてみるか?」

「ああ」

 

 そんな会話を聞いてる人なんて屋敷には誰一人といなかった。

 

◆◆◆◆

 

 数日後、すぐに葬式は行われた。弦巻家に関係しているであろう人達が続々と訪れシンの母親に花束を添える。

 

 しかし…そこには綺羅財閥に関係している人達の姿なんてものはなかった。

 

 シンは椅子に座っているものの光を失ったその瞳からは生気を感じられないほどのものとなっていた。

 

 また変化した紅色の瞳は金色の瞳へと戻っていた。覚悟によって瞳が変わる…とシンの父親は言っていた。

 

 元に戻る、ということは覚悟を失った、とでも言うのだろうか

 

「……………………」

 

 ずっと黙ってるだけで何もしない。服装は式のため花咲の制服を着ているものの上手く着こなしていない。誰が無理やり着替えさせたのか、はたまたあの日からずっと着替えていなかったのか

 

 こころはアギトが面倒を見ており同様その瞳、顔からは生気を感じ取れない。

 

 姉弟揃ってこの状況、それは弦巻家のこれからにとって厳しい状況となってしまう。

 

 もしこのままだとすると弦巻家の次期当主は誰になるのだろうか

 

「弦巻家の双子姉弟は大丈夫なの?」

「無理もないだろ、まだ成人してない歳で母親をなくしたんだ」

 

 そんな会話が辺りから聞こえるがシン達の耳には入らない。

 

「……………………」

 

 しかしシンの父親には聞こえていた。だけどここからどうするか、どう立ち直るのかは息子達のシン次第だ。

 

「だからあの小娘と結婚するのはやめとけと言ったんだ」

「……親父」

「ボス……ご愁傷様です」

「有翔、お前も来たのか」

「爺さんが行くなら着いてくるだろ」

 

 シンの父親の前に現れたのは実の父親、そしてその父親の付き人有翔の姿があった。

 

「わかってたはずだ、すぐに亡くなると」

「うるさい、あいつは最後まで頑張った」

「……こころ達はどうする?あれから元に戻れるとお前は言うのか?それとも無理やり戻すか?」

 

 いい歳なのに杖もつかず背中も曲がっていないシンの祖父は息子に対して、そして孫に対してきつい言葉を言う。

 

「あいつらなら心配ない、すぐ戻る」

「ほう、その根拠は?」

「……根拠、か」

「俺とあいつの子供だからだな」

 

 そう答えるシンの父親には迷いがないような、清々しい顔でそう言う。

 

「……ふん、帰るぞ有翔屋敷に戻ってすることはまだあるぞ」

「爺さんちょっと待ってくれ」

 

 有翔はシンが座っている所へ向かい話しかける。

 

「シン」

「……………………」

「お前の気持ちすげーわかる。俺も両親なくしたときはかなり落ち込んだ。けどここで止まってたらお前は一生そこから動けないぞ」

「……………………」

 

 シンにはその声が聞こえているはずだ。しかし返事をしない。

 

「綺羅が俺になにかするとしたらつぐみに手を出す以外考えられない」

「……俺との約束は果たせよ?……じゃあな」

 

 有翔の約束、それはつぐみの面倒を見てくとの約束だ。つぐみがつぐりそうになったらシンが止めること、しかしつぐみが危ない目に遭うのならシンは守らないといけない。

 

 否……正義の味方を目指すシンならば守らなければならないのだ。有翔との約束関係なしに

 

「…………無理だよ有翔」

 

 誰にも聞こえない声でシンはそう言い、式は終わりを迎えた。

 

 外に出ると先程まで雨が降っていたのかアスファルトの濡れた匂いが辺りに広がり、秋の夜の寒さが雨によりさらに強くなっていた。

 

「シン様、こころ様、どうぞこちらへ」

『……………………』

 

 黒服が車のドアを開け車内に案内するもシン達は動かない

 

「……お嬢、外は寒いです。中で温まりましょう」

 

 アギトがこころの手を取り車の中へと連れていく。

 

「シン様?我々も入りましょう、身体まで冷えてしまいますと風邪をひきます」

「…………………」

 

 シンはその言葉を聞いては車の横を通り歩いて式場から出ようと門へと向かっていた。

 

「し、シン様!車で帰りましょう、夜道は危険です!」

「………歩いて帰る」

「ッ!シン様」

 

 アレックスは止めるよう手を伸ばす。だけどその手をすぐに引っ込めてしまう。

 

 今のシンは昔のアレックスそのものだ。大切な人をなくし自分のせいだと自分を責め続ける。

 

「もう……彼女達に頼るしかないのでしょうか」

 

 アレックスはスカートを握りしめそう呟く

 

「ほっとけ、一人になりたいんだろ」

「ッ!私シン様と帰ります!」

「……シンジはどうする」

「お前は今シンジ専属のメイドだ、自分の仕事を全うしろ」

 

 アギトがそれを言う終わるのと同時にエンジンをかけた。

 

「早く乗れ、帰るぞ」

「…………はい」

 

 アレックスは車に乗りシンジの隣へと座る。まだシンジはこころやシンより精神的なダメージを受けているようには見れない。

 

「…………シンジ様だけでも私が…!」

「?アレックス?」

 

 アレックスはシンジを抱きしめる。しかし

 

「……アレックスも辛かったんだね」

「はい…!」

 

 シンジを抱きしめながら泣き始めたアレックスに対してシンジ、慰めるよう頭を撫でる。それを始めアレックスの涙は止まらず車内にはアレックスの鳴き声が響き渡る。

 

その頃のシンは一人で歩いて家へと向かっていた。

 

「……………………」

 

 得に何もなかった。段差や石が転がっていたわけでもない、にもかかわらずシンは急に転けだした。

 

 転けた先は運が悪く水溜まりへと身を投げ込む形になった。

 

「……なんでさ」

「なんでさ…!なんでさ、なんで!」

「どうして俺は母さんの言葉より綺羅の言葉を信じてしまうんだよ…!」

 

 頭の中でずっとあのセリフがリピートされる。

 

「正義の味方になんかなれないんだよ」

 

 ……と、気にしないと思ってもずっと考えてしまう。それと同時に自分を責め続ける。

 

「……ああ、ダメだ、ごめん皆」

 

右手を胸の中心に持ってきてはシャツを握りしめ

 

 

「俺は正義の味方に…なれない…!」

 

 

 そう告げるシンは自分で自分の夢を捨てびしょ濡れのまま重い足取りで自宅へと向かって行った。




シンはこれからどうなるのか、立ち直れるのか…

アギトさんの妹は驚きましたか?実は前作の時から決めてたんですよね、やっと話が書けますね

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弦巻シンと変わった日常

お久しぶりです!今回は話書くの滅茶苦茶大変でした…早くシンには元気になって欲しいですね

それではどうぞ!

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フォローしてね!あと誤字脱字は後日修正します!



 いつもと変わらない日常がそこにある。とは言いずらかった。

 

「……今日も弦巻姉弟は休みか」

 

 花咲学園1年4組のクラスには空席が2席あった。それは他ならない弦巻姉弟の席だ。

 

「こころんとシン君もう何日も学校来てないけど大丈夫かな…」

「香澄連絡はしてるんだよね?」

「……うん」

 

 おたえに聞かれた香澄は携帯を取り出しシンとのトーク履歴を見せる。そこには電話をかけたあとがたくさん残されていた。

 

「こんなに連絡してるのに気づかないって…携帯の電源落としてるよね、これ」

「美咲ちゃんこころんの様子はどうだった?」

「ッ!」

 

 美咲を含めハロハピはあの後こころの部屋へと向かったが…そこにいたこころはこころなんかじゃない別人のような変わり果てたこころだった。

 

「こ、こころ?」

「……………………」

 

 ベットの上で体操座りをしているだけ、美咲の問いかけにも応えようとしない。目は光を失い、表情からは生気を感じ取れない。

 

「こころのあんな姿は初めて見たね」

「ど、どうしよう、こころちゃん前みたいに戻るかな?」

「戻るかなじゃなくてはぐみ達が何とかしないと!」

「……でも、どうやって?」

「そ、それは…」

 

 いつも明るくて元気で笑顔だったこころはそこにいない。

 

 それにすぐ元気出しなよ、なんて無責任な言葉をかけることも出来ない。

 

『……………………』

 

 みんなは分かってるのだ。自分の母親がなくなったらどうなるか…と、自分もそうそうすぐに立ち直れないことも

 

「……こころ、今日は帰るよまた来るね」

「……………………」

 

 返事もせず表情も変えず、こころはそのままの姿で美咲達も見送ることもなく美咲達はこころの部屋を後にした。

 

 そして今に戻り

 

「……こころ、うんまた前みたいに戻ってくれるって信じてる」

「そんな状態なんだ…」

「あのこころがね…」

 

 香澄とおたえはそれぞれの反応をする。今まであんなに元気だったこころがそんな状態なら驚くのも無理はない。

 

「……じゃあシン、は?」

「アギトさんの話によるとこころより酷いって」

「ッ!私達で何かできないの?」

「山吹さん、私達でできることがあるならとっくにやってますよ…」

「……そう、だよね」

 

 シンの家を知っている人は極わずか、沙綾は知らないため何かをしてあげれない。それにシンは学校に来ようとしない。話すことさえできないのだ。

 

「シン…お願いだから戻ってきてよ…!」

 

 沙綾の携帯にはシンとのトーク履歴が表示されていた。そこには香澄とは比べ物にならないほどの電話をかけた履歴が残っていた。

 

 そしてそのまま弦巻姉弟は来ずにその日が終わった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「……………………」

 

 千聖は無言でシンの家のドア前にて深呼吸をしていた。

 

 息を落ち着かせ、集中するかのように

 

 意を決した少女は扉を開け中に入る。廊下を歩きリビングのドアを開けると

 

「ッ!」

 

 わかっていた。彼のことだからこうなってるんじゃないかって、だけどいざ目の前にその光景を目の当たりにすると精神的にキツくなる。

 

 千聖の目にはシンの姿がある…がシンもいつものままではない。

 

 制服を着たまま壁によっかかって座り下を向いたままだった。

 

 こころと同様その姿から生気を感じれと言われても無理があるものだ。

 

「……………………」

 

 千聖はそっと近づき手を伸ばした。

 

「シン学校に行きましょう、もう何日も来てないわ」

「……………………」

「あなたお風呂には入ってた?念の為お風呂に入りましょうか」

「……………………」

「……お風呂沸かして来るから待っててね」

 

 千聖は立ち上がりお風呂場へ向かい準備を始める。風呂か沸くまでに時間がかかるためその間に軽食を作る。しかしシンの家に食材があるかと言われたら少ないため一旦自宅に戻り材料を運びシンの家で調理をする。

 

「お風呂が湧きました」

 

 電子声がお風呂が沸いたと知らせてくれたためシンの元へ行き

 

「お風呂が沸いたわ、入りましょう」

「……………………」

「そうだお風呂上がったら何か食べましょう、お腹、空いてるでしょ?」

「……………………」

 

 彼女がこんなにも話しかけているのにシンは返事なんかしない。普通の女子ならこんなに態度取られた時点で話しかけないと思うだろう。

 

 しかし千聖は違う。彼女は他の誰よりもシンに無視され続けていたのだ。中学時代何度千聖が話しかけてもシンは返事しない。だけど千聖は諦めることなく話しかけていたからこそ今こんな状況でも平然と話すことができるのだ。

 

「はいバンザイして」

「……………………」

 

 シンは無言のまま千聖の問に答える。千聖は少し驚いたがすぐに制服を脱がす。

 

「……ズボンはどうする?」

「…………いい」

 

 小さい声でシンは答え一人で脱衣所へと向かう。そのままシャワーの音が聞こえだしたところで千聖はご飯の準備へと取り掛かる。

 

 シンはすぐに風呂から上がってきたが髪は濡れたまま、ドライヤーなんてせずに来たもんだから髪の毛から雫が垂れる。

 

「髪、乾かしましょうか」

 

 千聖がシンの手を取り洗面所にて千聖がシンの髪をドライヤーにて乾かし始める。

 

「……小さい頃よく千歳の髪を乾かしてたわ」

「最近は帰って来る時間が違うから今みたいなことはできないわ」

「……………………」

 

 千聖は千歳との思い出を語るがシンは返事なんてせずただ黙って髪を乾かされてるだけだ。

 

 そのあとご飯を食べるもシンは千聖が作ったサンドイッチを一口だけ食べると

 

「……ごちそう、さま」

「…………もう少し食べないといけないわ、せめて一つだけでも食べとかないと」

 

 シンは首を振って拒み千聖も諦め二人で学校に行くことになった。

 

 しかしシンがそう簡単に行こうとしない、千聖が来る前までずっと居た壁際に戻りまたそこに座り出したのだ。

 

「学校に行くわよ」

「…………行かない」

「ッ!また前に戻るの?あなたは過去を克服したんじゃなかったの?」

「……………………」

「はあ、行くわよ」

 

 千聖はシンの手を取り無理やり家から出させ学校へと連れて行った。

 

 連れていくのはいいがその光景を登校中の生徒には見られてしまう。

 

 千聖がシンの手を握って一緒に歩いている。こんな光景を見た生徒達は

 

「な、なんだあれ」

「千聖さんがなんで実行委員長君を?」

「あの二人の関係ってなんだ?」

「前も彩ちゃんとなんかなかったけ?」

 

 と、思っても仕方が無い。なんせ千聖はアイドルであり女優でもある、そんな彼女が男子生徒と、シンと手を繋いで歩いているなんて週刊誌の人達にでも見られていたら騒動になるだろう。

 

 

 

 

「……やっぱりシン君今日も来ないのかな?」

「どうなんだろうね…」

 

 香澄とおたえが教室にてそんな話をしている時教室のドアが開く

 

『ッ!シン君!?』

 

 シンが学校にやって来た、けど千聖の手に引かれてだが

 

 香澄やおたえだけでは無い、クラスのみんなが驚いていた。それはシンが学校に来たからという理由もあるが別の理由もある。

 

 あの白鷺千聖がシンを連れてきたこと、そしてシンの表情を見て驚いているのだ。

 

 何度も説明するが瞳には光がなくその表情からは生気を感じられない。

 

 そんな様子を千聖は気に求めずシンの席へ向かい座らせる。

 

「昼にはご飯持ってくるからここで待っとくのよ?」

「……………………」

「……それじゃあね」

 

 千聖は教室から出ていくが誰も止めようとしない、香澄やおたえは話しかけようと思ったがシンがシンなだけにすぐに言葉を発せれなかった。

 

「……千聖さん、ちょっといいですか?」

「…………なに?沙綾ちゃん?」

 

 教室ではない廊下で沙綾は千聖を呼び止め話しかけた。

 

「なんであんな状態のシンを無理やり学校にこさせたんですか?」

「……なんで、ねー」

「ねえ沙綾ちゃん」

「……なんですか?」

 

「あなたシンのこと好きなんじゃないの?」

「ッ!……だったらなんですか」

 

 千聖からの質問はあまりにも直球すぎた。しかし沙綾は素直にシンのことが好きだと答えた。

 

「私もよ」

「……え?」

「私もシンのことが好きなのよ」

「ッ!」

 

 彩とひまりがシンのこと好きだってことは知っていた。けど、まさか千聖までがシンのことを好きとは知らなかったようだ。

 

「私は好きな人があんな状態でほっとくなんて無理なのよ」

「……でも」

「でもじゃないわ、あなたシンのこと好きなのよね?」

 

 千聖は沙綾に顔を近づけ問いかける。

 

「本当に好きだったら無理矢理でも彼を元に戻したいって思うはずよ」

「……………………」

「あなたのシンへの愛はその程度だったのかしらね?」

「ッ!」

 

 何も言い返せなかった。沙綾はシンのことが好きだ、しかし千聖なみの愛はそこにはなかったのだろうか…

 

「シンは私のヒーローなんです」

「……そう」

「……だからシンは私だけの正義のヒーローになって欲しいんです」

「頑張ることね」

 

 千聖はシンがみんなの正義の味方になりたいことを知っているから頑張ることねと言ったのだ。

 

 しかし沙綾もそれは知っているが、知っていても自分だけの正義のヒーローにさせたいのだ。

 

 彼女が一体どういった経緯でシンにそこまで執着するのか…それはただ単に独占したいだけなのか、それは沙綾自信しか知りえないことなのだ。

 

 沙綾は教室に戻るとシンの周りに人だかりができていた。

 

 興味本意に近づくものがいれば心配して近づくものも、色々あったがシンは何も返事をせず一点を見つめたまま

 

「シン」

 

 話しかけようとした時にちょうどよくチャイムが鳴り

 

「よーす、HR始めるぞ」

『……………………』

 

 担任の秋月先生が来てHRが始まる。

 

「弦巻姉弟は本日も休み……じゃないみたいだな、弟の方は来たのか」

「……………………」

 

 シンを見るが特にこちらを見返す様子がない。

 

「……今日は特に伝えることは無い、1限目の準備しとけよー」

 

 HRはすぐに終わり午後の授業が始まる。各授業の担当教師達はシンが来ていることに一瞬驚くも何事もなく授業を始める…が、シンが当てられることは1度もなかった。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 昼休みの開始のチャイムが校内に鳴り響き生徒達が活発に行動し始める中シンはやはり動かない。

 

『……………………』

 

 そんなシンを見つめるのは香澄、おたえ、美咲、りみ、イヴ、はぐみ、そして沙綾の同じクラスのメンツ達だ。

 

「昼には千聖さんが来るって言ってましたよね?」

「でも遅いね」

「はぐみ嫌だよ…!こころんとシンくん元気になって欲しい」

「それはみんな同じ気持ちだよ」

 

 美咲の発言にみんなが頷く、でもどうやればシンが元通りになり笑顔になるかなんてわからない。

 

「よーす、シンのやつ来てんだろ?」

「有咲、うん来てるけど、ね」

「…………ふーん」

『有咲!?』

 

 有咲はすぐにシンの元へと近づこうとした。

 

「久しぶりに来たかと思えば元気ねーじゃん?」

「……………………」

「お前の気持ちよく分かるよ、前にさあたしの両親が亡くなった話したよな?」

「あたしも当時はすごく落ち込んだ、なんであたしだけ生き残ってるんだろうって」

「……………………」

「えっと、そのーなんだお前みたいに誰かを励ます力は持ってないけどさ」

「お前のことあたしはちゃんと理解してるから」

「……ッ!」

 

 シンが少し反応した。それに対してみんなはやった!と、思ったが

 

「……違うんだ有咲」

「ッ!な、何がだ?」

「……………………」

「おい!なんとか言えよ!何が違うんだよ!おい!」

 

 有咲がシンの方を握り揺さぶるがそれ以降シンは話さなくなってしまった。痺れを切らした有咲はみんなの所へ戻ると同時に

 

「皆さんこんにちは」

「こんにちは、です」

 

 紗夜と燐子がシンの様子を見に来たのだ。

 

「あれがシンさん、なのですか?」

「べ、別人に見えます…」

 

 燐子に関してはついこないだあんな話をしてた人が目の前にいるにも関わらず別人に見えると言っていた。

 

「……事情は聞いています」

「何とかして元に戻って欲しいですけどね」

 

 燐子がなんで戻って欲しいと言っているのか理由は置いといて、みんながそう思っているはずだ。

 

「あのーシン先輩いますか?」

「……り、リオ君!?」

「ぬあー!燐子先輩!?は!氷川先輩!実はこの」

「リオ君!し、シン君にようがあるんじゃな、ないんですか!?」

「……そうでした」

 

 リオが突然現れ戸惑う燐子であったが咄嗟にリオの組に手を置き喋らせまいと止めだし話を無理やり逸らした。

 

「えっと、誰なんですか?燐子先輩?」

「今井さんの弟さんです」

『えー!?』

「そ、そんなに驚くことですか?」

 

 まさかのリサの弟登場で驚く一同そんなことは気にせずリオはシンの様子を見ては

 

「あれはやばいっすね、あはは」

 

 などと言い帰ろうとするが

 

「どこ行くのよリオ」

「げ、明日香」

「あっちゃん!?」

 

 リオに続き香澄の妹との明日香、そして

 

「あらあら、先輩とんでもないことになってますねー」

 

 明日香の後ろにいた千歳が教室の窓に手をかけシンの様子を見てそう言っていた。

 

「千歳の言う通りとんでもないことになってるわね」

「ッ!姉さん」

 

 次は千聖が現れ教室の前ではシンの関係者だらけが集まっている形になっていた。

 

「みんなは何してたの?」

「シン君を元に戻せないかって考えてて」

「……それはそうね」

 

 千聖は弁当を手にシンの元へと向かい何やら話している様子だった。

 

「…………つまんないの」

 

 千歳は誰にも聞こえない声でそう呟く

 

「帰りましょう明日香」

「う、うん、お姉ちゃんまたね」

「……うん、あっちゃんまたね」

「…じゃ、じゃあ俺も帰ります。燐子先輩さ、さようならです」

「はい、さようならです」

 

 千歳を含む中学メンツは中等部の校舎へと戻って行った。

 

「白鷺ってシン先輩と知り合いだったん」

 

 話の途中で遮るように千歳は思いっきりリオの胸ぐらをつかみ

 

「白鷺って誰?私のこと言ってるの?ねえ?」

「千歳!落ち着いて!」

 

 明日香が助けに入りリオは助けられた。

 

「千歳は苗字で呼ばれることを嫌ってるって知ってるでしょ?」

「だけど急に下の名前で呼んでも…」

「じゃあ私もあなたのことリオって呼ぶから気安く千歳さん、いや千歳様と呼ぶことね」

「……やっぱり女子って怖い」

 

 リオは改めて女子が怖いということを感じたのであった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 午後の授業なんてものはあっという間に終わってしまう。学校なんてそんなものなのだろ。

 

 帰りのHRも終わり生徒は帰宅、もしくは部活へと足を運ぶものだ

 

 シンは朝とは違い自分で席から立ち上がり一言を発することなく下駄箱に行き靴に履き替え帰ろうとする。

 

 校門をくぐろうとしたその時だ

 

「シン君!」

「……篠崎、先輩?」

 

 現れたの篠崎愛奈、弦巻家の新しいメイドの彼女がシンの目の前に現れたのだ。

 

「みんな元気がないの」

「……………………」

「確かに奥様が亡くなって悲しくなるのはわかるよ、私だって悲しい…!」

「けどさ!ずっとクヨクヨしてたって何も変わらないんだよ!」

 

 愛奈は周りのことなぞ気にせず大声で話し続けた。

 

「アギトさんはアギトさんで何考えてるかわからないしさ!」

「アレックスさんはこころちゃんとシンジ君の面倒見ててさ!」

「もう弦巻家のみんなが、みんながさ…!」

「……………………」

 

 愛奈は泣いていたのだ。ついこないだ弦巻家の一員になったばかりなのかもしれない、だけれど愛奈誰よりも弦巻家のことを心配してくれてるのだ

 

「私達で何とかしようよ!シン君と私でみんなを元気にさせようよ!ね!」

 

 手を取り愛奈は言うもシンは返事をしなかった。

 

「私実はシン君達が羨ましかったの」

「奥様に愛されてて、家族が仲良くて羨ましかったの」

「でも最後に奥様が私を愛してるって言ってくれたからさ、私も愛されてたんだって思って嬉しいかったの」

「……………………」

「奥様が亡くなって家族が減ったことは悲しいけど乗り越えないと何も始まらないよ!」

「ッ!」

 

 やっとシンが反応を見せたかと思った愛奈は一瞬嬉しそうな顔になるも

 

「……そうだ、家族が減ったなら増やせばいいんだ」

「ッ!し、シン君?」

「ありがとう篠崎先輩、ちょっと行ってくるよ」

「ちょっとシン君!」

 

 シンは振り返ることなくどこかへと向かって行ったのであった。

 

 

 

「はあ、面倒くさ」

 

 美竹蘭は日直であるため1人教室にて日報を書いていた。1限目がなんで2限目がなんで、と6時限目までの授業を書きその感想、そして1日の感想と聞くだけで書くのが面倒臭いとわかるだろう。

 

「今日は練習もないし、みんなバイトだし帰りは1人、だね」

 

 別に1人が嫌だってわけじゃない。ただみんなと帰る方が楽しいから少し寂しいだけ

 

「…………シン、大丈夫かな」

 

 書く手は止まりふと好きな人なことを考えてしまう

 

 母親が亡くなってからシンが学校に来てない話はつぐみがイヴから聞いたらしくその話をつぐみが蘭達に話していたのだ。

 

「また前みたいに戻って欲しいな」

 

 そんなに独り言を言い少し雑に書いた日報を担任に提出し帰宅しようと校門をくぐると

 

「ッ!シン!」

「よお、蘭」

 

 シンが羽丘の校門付近に立っていたのだ。それはまるで誰かを待っているかのように

 

「もう大丈夫なの?」

「……蘭」

 

 蘭の質問に答えることなくシンは蘭に抱きついていた。

 

「え、え?ちょ、ちょっと何!?」

 

 顔を赤くした蘭が慌てふためく

 

「蘭」

「は、はい」

「……俺と結婚してくれ、ないか?」

「ッ!え?」

 

 シンから放たれたのその言葉は衝撃すぎたのだ。

 

「俺頑張るよ、蘭にはあまり負担かけないように頑張るからさ」

「は?いや、ちょっと話が読めない」

「子供は1人でもいいよ母さんに見せれるなら人数なんて関係ないさ」

「…………あのさ、ひとついい?」

 

 蘭はシンから離れ質問をした。

 

「それってさ私のことが…す、好きだから結婚したいの?」

 

 少し期待していた。自分のことが好きでそう言っているのではないかと、だけどシンの返事は

 

「?別に母さんが蘭のこと気に入ってたからだけど?」

「……あっそ、ならあたしはあんたと結婚なんてできない、いやしたくもないね」

「ッ!なんでさ」

「なんでって、あんた本気で言ってるの?」

「…………さよなら」

 

 蘭はシンの横を通りすぎ家へと向かう。

 

「私が好きになったシンはあんなシンじゃない…!」

 

 1人でそう呟く蘭は悲しそうに表情で家へと向かったのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「……………………」

 

 蘭に振られた、とで言っておこうか、蘭に振られたシンは公園のベンチに1人で座っていた。

 

 自分がなんで蘭に嫌われたのさわからなかったのだろうか、今のシンにはそんなことを考える余裕がないのだ。

 

「……シン、君?」

「…………ひまりか」

 

 バイトの帰りであろうひまりが偶然シンと出会ったのだ。

 

「どうしたの?こんな所でさ」

「…………別に、なんでもない」

「話、聞いたよ」

「……………………」

「元気出しなよ、シン君らしくないでしょ?」

「じゃあひまりが何とかしろよ」

 

 シンは立ち上がりひまりの前へと移動してひまりの顎に手を当てて

 

「俺の事好きなんだろ?だったら俺を癒せよ」

「し、シン君…」

 

 ひまりはシンとキスしようと一瞬思った。だけどすぐにそれはダメだと判断した。

 

「ッ!離して!」

「ッ!」

「しっかりしてよシン君!シン君はそんなことする人じゃないでしょ!?」

「私が好きなったシン君はそんな人じゃない!このバカ!」

 

 断られなおかつバカにされたシンはその場から動くことが出来なかった。

 

バシャ!

 

「……これで少しは頭を冷やせれると思うよ!じゃあね!」

 

 近くにあった子供が忘れたであろうバケツに水を入れシンに頭からかけていたのだ。

 

「…………なんだよ、本当になんだよ」

 

 1人で立ったままそんなことを嘆いていたら

 

「し、シン君!?どうしたの!?ずぶ濡れだけど!?」

 

 突然現れたの彩が焦りながらシンに近づく、ひまりと彩はバイト先が同じため終わる時間が一緒だったんだろうか、彩もその公園を通った際にシンを見かけたのだ

 

「このままだと風邪ひいちゃうし、え、えーと!」

「そうだ!私の家近いからシャワー浴びよっか!」

 

 彩に手を引っ張られる形で公園を後にし彩の家へと向かった。

 

「なんで濡れてたの?」

「……ひまりに水をかけられた」

「な、何かしたの?」

「………………別に、なにも」

「気になるんだけど!?」

 

 そんな話をしてたらすぐに彩の家に着く

 

「ちょっと待っててタオル取ってくる」

 

 シンは玄関にて立って待っていたら

 

「ただいまー!……あれ?お兄さん誰?」

 

 彩と似ている女の子が丁度よく帰ってきたのだ。

 

「シン君タオル持ってきたよー!って!彩音!か、帰ってきたの?」

「うんさっき帰ってきたの」

「……………………」

 

 彩音はシンと彩を交互に見て何かひらめいたような反応をして

 

「姉ちゃんが彼氏連れ込んでるー!」

「ち、違うよ!いや違わないかも?んー!わからないよー!」

「お兄さん姉ちゃんの彼氏なの?」

 

 彩はタオルで顔を隠しているが内心では彼氏だよって言って欲しいと期待していた。でもシンは

 

「俺が彩と付き合えるわけないだろ」

 

 と、言っていた。

 

「……ごめん、俺帰るよ」

「髪ぐらい乾かさないと風邪ひ」

「おじゃましました」

 

 彩の話を聞くことなくシンは家を出てどこかへと向かって行った。

 

「……もしかしてギスギスしてるの?」

「……そうじゃなくて!あと帰ってくるの遅いよ!母さんがいないからってこんな遅くまで遊んでたら危ないよ!」

「彼氏連れ込んでた姉ちゃんに言われたくないよ!」

「な、何も言い返せない!」

 

 丸山姉妹は仲がいいようだ。

 

 シンはまた1人になりどこかを歩いていた。家に帰る様子もなければどこかに向かっている様子もなかった。

 

 ただただ適当に歩いている、そんな感じだった。

 

「シーン君」

 

 そんなシンを呼び止めたのは

 

「モカ?」

「うん、シン君の大好きなモカちゃんですよー」

 

 モカはバイト後にシンを偶然見つけたため話しかけたのだ

 

「ねえ、少し話さない?」

 

 モカはシンの手を取って公園に連れて行った。

 

「そう言えばここはモカちゃんとシン君ここでキスした思い出の場所ですなー」

「…………そうだな」

 

 でもそこはひまりにバケツいっぱいの水をかけられた公園でもあるがシンはその事に気づいていなかった。

 

「もう1回キスする?」

「…………そうだな」

 

 シンは適当に返事をしたのだがモカは本気だと捉えたらしく

 

「ッ!」

 

 モカとシンはまた同じ場所でキスをしていた。

 

 シンは最初抵抗しようとしたがモカがそれを逃がすまいとシンの頭に手を置きずっとキスをしていた。

 

 シンもシンで先程ひまりとキスをしようとしていたためその分を取り返すかのように2人で濃厚な時間を共有していた。

 

「……えへへ、シン君ノリノリだったね」

 

 夜中の公園でそんなことはしてはいけないがこの2人は気にせずに行っていた。

 

「また新しい思い出できたねー」

 

 とモカは言うがその顔は耳まで赤くなっていた。

 

「…………なあ、モカ」

「んー?」

「俺さ、もうわからないんだ」

「……何が?」

 

 モカとのキスで目が覚めたのか、シンは普通にモカへと話しかけていた。

 

 なんでモカに打ち明けたのだろうか、他の人達にも、なんなら最初に話しかけてくれた千聖先輩に言えばよかった。

 

「俺は正義の味方になりたかった、なのにもうなれない、これから俺は何を目的にして生きていけばいいのかわからないんだよ…!」

「……そうだったんだ」

「俺は母さんを守れなかった!母さんの変化に気づけていなかった!」

「……そんな俺が正義の味方を目指すことはおこがましいこと」

「いや、そもそももうなれないんだよ…!」

「……シン君」

 

 正義の味方になりたい気持ちの半分、もうなれないと諦めている。その気持ちがシンの眼に現れたの左右瞳の色が異なっていた。

 

「シン君、今日家泊まってく?」

「ッ!な、なんでさ」

「いいから泊まるの!レッツゴー!」

「お、おい」

 

 またモカがシンの手を握り次はモカの家へと向かって行った。

 

 着いてモカが親に事情を話せがモカの父さんが怒ったがモカとモカの母さんが沈め強制的に許しを得たうえで急遽モカの家でお泊まり会が始まった。

 

「な、なんだよ俺をこんな所に連れ込んで」

「こんな所ってモカちゃんの部屋だけどねー」

「……まあ男女が同じ屋根の下で2人っきりになったらすることはひとつだよねー」

「な!?まさかお前!」

「ゲームしようか」

「……そ、そっちか!」

 

 徐々に調子を取り戻したシンはいつも通りモカにツッコミをする形で楽しくゲームをやり始めていた。

 

「……シン君さ」

「んー!な、なんだ!」

 

 ゲームをしてる途中にモカが話しかけてくるが集中してるから少し口調が強くなってしまう。

 

「元気になってよかったよ」

「…………元気、ねー」

 

 その話をした途端シンの指が止まり敵キャラにやられ画面にはゲームオーバーと英語で書かれていた。

 

「ねえシン君」

「なんだよ」

「……エッチしたらさ、元気でる?」

「なっ!え?な、なんて!?」

「うっそー」

「なんだよそれ!?」

 

 モカがゲーム機を片付けているなか携帯を見てみる。その時気づいたが千聖先輩のモバイルバッテリーを借りていたことを思い出した。

 

 けどあのひまりにかけられた水のせいでモバイルバッテリーは壊れており充電されているマークが表示されていなかった。

 

 少し罪悪感がある中通知を見ると沢山電話がかかってきておりつい先程にも電話がかかっている様子だった。

 

 何故かマナーモードになっていたため気づくことがなかったため急いで千聖先輩に電話をかけなおした。

 

 って、特に話すことないのに何してんだろう、俺は

 

「もしもしシン!今どこにいるの!?」

「……あーもしもし、その色々迷惑かけました」

「……そう、元に戻ったのね」

「いや、んーまあ、はい」

 

 まだ解決したわけじゃないが千聖先輩にこれ以上心配をかけないように嘘をついた。

 

「それで?今何処にいるのかしら?」

「……モカの家です」

「ッ!……へー、そう、元に戻ったならいいわ、さようなら」

「?は、はい」

 

 シンとの電話が終わった千聖は

 

「……またあなたなのね、モカちゃん」

 

 千聖は悔しそうに枕に顔をうずめてそう呟いていた。

 

 そんな中モカもひとつ行動をしていたのだ

 

「……あ、もしもし蘭?」

「モカ、こんな時間に何?」

「少し頼みがあるから力を貸して」

「ッ!わ、わかった」

 

 いつものモカではないと気づいた蘭はモカの話を真剣に最後まで聞いていた。

 

「……わかった、みんなに伝えとくよ」

「あたしもできるだけ連絡するからよろしくね」

「……モカ、あのさひとつ聞いていい?」

「ん?なーに?」

 

 いつものようにモカは気の抜けた返事をする。

 

「モカってシンのこと好きなの?」

「…………さあ?どうでしょうねー、それじゃあ蘭殿ー頼んだよ〜」

「ちょ!モカ!」

 

 電話が切れたことを確認してモカは口を開いた。

 

「誰よりも先にシン君に恋してるよ」

 

 そんな独り言を言った直後にシンが部屋に戻ってきたためモカは少し驚いたがすぐに元に戻った。

 

「(なるべくシン君に悟られないようにしないと)」

「シン君ーもう夜も遅いし寝る?」

「……そうだな」

 

 ベットがひとつしかないため一緒に寝る2人だが向かい合うことなく背中合わせで寝ていた。

 

「シン君明日休みだしさ?デートしない?デート」

「いや明日はみんなに謝るよ、色々迷惑かけたし」

 

 謝るのは当然さ

 

「その前にちょっーと行きたいところがあるの」

「……まあ少しだけなら」

「やったーシン君とデートだ」

 

 その後モカは静かにすーすー寝息を立てている中シンは寝ることなんてせずずっと考え事をしていた。

 

 モカの前では普通に振舞っていたがまだ完全に調子を取り戻したわけではない。

 

 だけど、なんでだろうモカの前だけでは普段通りにしたいと思ったんだ、本当になんでだろうな

 

 まだ立ち直れてない、正義の味方になりたいけどなれない、母さんは俺が原因で亡くなってしまった。それにしても正義の味方を諦めることにしてもこれからどうすればいいのかもわからない。

 

 ああいつもこれだ、このことがずっと頭の中にあるから寝ることなんてできないし他の人の話なんて全然聞こえない。

 

 なのに、なんでだ?

 

「なんでモカのいるとこんなに落ち着くんだ」

 

 今は寝てるからなのかさっきよりも心細く感じてしまう。

 

 ダメだ、気が緩むとまた考え込んでしまう…!

 

 1人で悩んでいる時

 

「んーシン君ー」

「ッ!も、モカ?」

 

 モカが急に後ろから抱きついてきた。

 

「シン君ーえへへ、結婚しようねー」

「……また寝言で言ってんのかよ」

 

 前にモカが風邪を引いた時もそう言えば言ってたな

 

「……シン君、大好きだよ」

「ッ!も、モカ今なんて!」

「すー、すー、」

 

 モカが抱きついてくれているからなのだろうか、落ち着いて来てだんだん眠くなってきた。

 

 思い返せば母さんが亡くなってからあんまり寝ていなかったけ?

 

 思考が止まり急に睡魔が襲ってきて久しぶりに気持ちのいい寝にはいることができたと思った。

 

「(モカに対するこの気持ちってなんなんだろうな)」

 

 寝る前にシンはそう思ったのであった。




モカがしようとしているこては何なのか、それは次回でわかります。シンの時間で完全復活ってところですね

あと少しで綺羅との話も決着がつきます!後2.3話ぐらいかな?お待ちください!


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弦巻シンと正義の味方

お久しぶりです!今回はシン復活のお話になります!そして最近話が長いんですが綺羅編までは長くなるかもですね、なんせ後3話で終わらせたいんで!

それではどうぞ!

Twitter:https://twitter.com/oo_ru3


「……んあ?」

 朝、だろうか、起きたのはいいが視界に光が入ってこない。布団の中にでもいるのだろうか

 

「……なんだこれ」

 

 手を伸ばしてみると柔らかい感触が手に伝わってきた。

 

 それはパンとかゴムボールとかの柔らかさなんかじゃない、もっとこう柔らかくてずっと触っていられる感じだ

 

「……………………」モミモミ

 

 なんだろうこれは、ずっと触ってられるぞ

 

「あっ…!ん、」

「ッ!?」

 

 モカが何か声を出したから慌てて布団を上げると

 

「モカ!ど、どうしたんだ!?」

「……い、いやー、あはは」

 

 頬を少し赤くしたモカが視線を下に向けると、モカが頬を赤くした理由がすぐにわかった。

 

 そう、俺がさっきまでずっーと握っていたのはモカの胸、つまりおっぱいだったのだ。それに今も片手で片乳を触っていたためすぐにわかったと言えるだろう。

 

「ッ!す、すまんモカ!これはわざとじゃなくてだな!その、触ってて感触がよかったって違う!」

 

 何素直に感想を述べてんだよ!俺は馬鹿か!?

 

「触りたいなら素直に言えばいいのにねー」

「い、いや、それはないから」

 

 頬に汗を流しながらシンはそう返事をした。

 

「でも凄かったな」

「でしょでしょー?モカちゃんのナイスボディーに惚れちゃいました?」

「……でも1箇所だけなんか固くなってきたんだよな、先端辺り、あれって」

「ッ!」

 

 モカは枕を俺の顔に思いっきり押し付けてきた。そのせいで途中まで話していたことを妨害され最後まで話すことができなかった。

 

「そこまでの感想をモカちゃんは求めてません」

 

 プイッ、と視線を逸らすモカは頬を膨らませていた。

 

 見る感じ怒ってるぞ、これは…あれをやるしかない!

 

「胸を揉んです、すみませんでしたぁぁああ!!」

 

 ベッドから勢いよく飛び出し床に転がり最後は土下座のポーズを取り謝っていた。

 

「……………………」

 

 だけどモカからの返事は来なかった。それもそうだ、あんなことをしたからにはそう簡単に許されるわけがない。と思ったが

 

「ほほーう、モカたんの胸をね」

「ッ!」

 

 その声を聞いた瞬間全身から変な汗が滲み出る感覚が襲った。

 

「モカのお父さん!?」

「だから貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!」

「だから意味が違うんですよー!!」

 

 朝からモカのお父さんに絡まれ少し以上に気分が下がったシンであった。

 

『……………………』

 

 その後朝食を取ろうとモカの母さんに誘われたため食べていたが食卓に話で団欒することなんてなく無言で食べ続けていた。

 

「おいモカ、空気が重いから何か話をしてくれ」ボソ

「んーほうけーい(んーおっけーい)」

 

 口の中に食べ物があって上手く話せなかったのだろうか、その言葉は女子が言っていいような気はしなかったが口の中に食べ物があったのなら仕方がないことだ、そうだよな!?

 

「……いやー昨日の夜は楽しかったですな〜」

『ッ!?』

 

 その言葉に反応したのはモカ以外の俺を含む3人だ。

 

「あらあらーまさかと思ってわいたけど本当にしてたんですねー」

「……………………」

 

 いや違うんですって言いたい!だけどモカのお父さんがすんごく睨んでくるよ!?

 

 だが!ここで負けるわけには行かない!誤解を解くのは今しかない!

 

「そんなことしてないですって!昨日のゲームは盛り上がったよな!」

「なんとなんと、ゲームでしたかー早とちりしちゃった」

 

 てへぺろ、とでも言うように舌を出してウィンクをする様はさすがモカのお母さんだなと思った。

 

「ご馳走様」

 

 モカのお父さんはすぐに食べ終えカバンを手に持ち食卓を離れた。

 

「あらあらーもう行かれるのですか?」

「……今日は大事な会議があるんだ」

「えっと土曜日ですよね?…仕事あるんですか?」

 

 失礼な質問かもしれないが土曜日も働いてるなんて凄いなと思ったから質問したんだ

 

「お父さんは公務員だからねー土曜日も仕事あるところはあるよ〜」

 

 公務員!?す、すげーな!

 

「今日は会議だけだ昼には帰ってくるから」

「わかりました、昼ご飯の準備しときますね」

「……ああ、頼むよ」

 

 そのままリビングのドアを開け出ていくが数秒後

 

「おい、ちょっと来い」

「ッ!」

 

 ドアがまた開いたと思えば俺を呼んできた。恐る恐る向かうと案の定不機嫌そうなモカのお父さんが腕を組んで立っていた。

 

「貴様の話は昨日聞いた」

「ッ!それって」

「……ああ、気の毒だったな」

 

 モカのやつ俺を泊めるために話してくれたのか、まあ話さないと泊まることなんてできないよな

 

「モカたんに頼って回復できたのなら別にいいさ」

「そ、そうなんですか?」

 

 この人のことだから怒られると思ったが違うみたいだな

 

「……けどこのままずっとそれでいいのか?」

「ッ!」

「貴様はモカたんの傍にずっといるのか?そんなことモカたんが許しても俺が許さないぞ」

「それは…わかってます」

 

 そんなのわかってる。俺のことだ、モカと離れたらまたこないだみたいな状態になってしまうだろう。

 

 だからモカと離れても平然としていられるようにならないといけない、なれないというのならなれるように何か策を考えないといけない。

 

 つまりの所は人に頼らず自分の力で元にもどれとこの人何りに伝えたかったんじゃないかと俺は思った。

 

「まあモカたんは天使だからな、頼るのも無理はないよ」

「は、はい、そうですね」アハハ

 

 俺の天使が香澄のようにこの人の天使は自分の愛娘のモカなんだろうな

 

「とにかくだ!これ以上モカたんに近寄るな仲良くなるな!貴様がどんなにもがいてもモカたんは絶対にやらんからな!」

「わかりましたから!遅刻しますよ!?」

 

 やっぱりこの人はこの人だ、いつも俺と顔を合わせるたびこんな話になって…でも少し助かったよ

 

 リビングに戻るとモカとモカのお母さんが紅茶?を飲んでいたが…

 

『はぁ♪』

 

 飲み終えた後にこぼす息は2人が親子であることを示すように重なり、表示も全く同じだった。

 

「……ただいま戻りました」

「おーおかえり〜あ、今の新妻ぽかったかも?」

「相変わず何言ってんだよ」

「でもでもシン君モカちゃんのこと可愛いと思わないんですか?」

「……それはまあ、思いますけど」

「ふふ、ですってモカちゃん」

「まあモカちゃんは超絶美人JKだからねー」

「そうですか!」

 

 本当に可愛いから否定できないのが辛いぜ、可愛いから言えることだけど可愛くなかったらお前引かれるからな!?

 

「っと、そろそろ時間だーシン君?デート行こうよ」

「で、デート?」

 

 そう言えば昨日寝る前に約束したな、でもデートの後はみんなに謝る予定でもある。

 

 まずは千聖先輩、次に蘭、そしてひまり、彩…も途中で家出てったし謝ろう。

 

「でもモカ、俺服ないんだけど」

 

 今着てるのはモカのお父さんの寝間着だ。結構サイズはピッタリだから着ごごちは悪くない

 

「大丈夫大丈夫、制服はちゃんと洗濯して乾いてるわ」

「ッ!」

 

 洗濯して乾いてる、それは昨日俺がモカの家に来てから洗濯して、乾燥機をかけ、部屋に干してたから乾いている…わけだろ?

 

「す、すみません!俺のせいで寝る時間遅くなってしまって…」

「いえいえー昨日の夜はどの道眠れませんでしたので、うふふ♪」

 

 あ、ああこれは聞かない方がいいですね、いや…まあ、うん自分の家だし?夫婦だし?普通だよな

 

「とりあえず服は手に入ったしデートに行こうよー」

「……いやでも」

 

 デートするなら謝った後の方がいいのではないかと思ったが

 

「デ〜ト、デ〜ト、デ〜ト、デ〜ト!シン君とデ〜トー!」

「わかったから!恥ずかしいからあんまり言うなよ!?」

「まあまあお若いこと」

 

 あなたも十分お若いと思いますけどね!?理由は言わないけどさ!

 

「……着替えたら玄関で待っとく」

「はーい!モカちゃんお洒落してきま〜す」

 

 モカが着替えている間に制服へと着替え玄関に向う。

 

「……着替えるの早いんですね」

「ッ!き、着替え慣れてるので」

 

 急に話しかけられてビクッたー!階段のところで待機してるって何してたんだろう

 

「シンさん」

「は、はい」

「…………辛くなったらまた家に来てもいいのよ?」

「ッ!」

「夫は私が説得するからね、またいつでもいらっしゃい」

 

 そう微笑みながら言うモカの母さんはモカが笑った時と凄く似ていた。

 

 いや、本当にあなた達は似てますよ、似すぎです。

 

「ありがとう、ございます」

「いえいえ、また遊びに来てくださいね」

 

 そして急にいつものようになる。これもモカと似てるよな

 

「お邪魔しました、これ洗ってくれてありがとうございました」

「ではでは、モカちゃんとのデート楽しんでくださいね」

「……はい!」

 

 そう答えたシンはドアを開けモカが来るのを外で待っていた。

 

「お待たせ〜」

 

 出て数分後にモカが来るが

 

「あれ?そのパーカーは」

「そうだよ、シン君がくれたやつで〜す」

 

 胸の部分にA08と書かれたまるで青葉って苗字の人専用とでも言えるようなパーカー、これは俺がモカと初めてのデートの時に買った物だ。

 

「今日はデートだからねーお洒落してきちゃいました」

「パーカーはお洒落なのか?」

「お洒落なの〜」

「そ、そうか」

 

 そして昨日急遽決まった俺とモカのデートが始まった。

 

 のはいいが…

 

「モカちゃんお腹すいたなー」

「いやいやさっき朝ごはん食べたよな?」

 

 なんならモカのやつ食パン3枚食べてなかった?あれでお腹いっぱいになるだろ!

 

「そうだーつぐの家に行こうよシン君」

「まだ営業時間外だろ?確か10時からだろ?」

「つぐはあたしの幼馴染だから大丈夫だよ〜」

「どゆこと!?」

 

 そのままモカに手を引かれつぐみの家が経営している喫茶店、羽沢珈琲店へと向かう。

 

 その途中商店街を通るがまだ店のシャッターあげてない店がチラホラと目に入る。

 

 八百屋さんの佐藤さんの家は開いてるが三郎は閉まってる。飲食店だしやはり開店は遅いんだろうな

 

 だったらつぐみの所もそうだと思うんだけどな

 

 と、思った矢先

 

 closed、と書かれた看板が入口のドアにかけてあった。

 

「ほらな、やっぱり早すぎたんだって、腹減ってるならさ沙綾の所空いてるからそこでも」

「ここじゃないとダメなの」

 

 食い気味にモカが発言する、だけど閉まってたら意味なんてないだろ、腹を満たすどころか入ることすらできないぞ

 

「つぐーモカちゃんとシン君が来たよ〜」

「っておい!?」

 

 看板を無視したモカがドアを開け無理やり入らされると

 

「え?」

 

 入った店の中にはガールズバンド集団のみんながそこにはいた。

 

 Poppin’Party、Roselia、AfterglowにPastel✽Palettes、そしてハロー、ハッピーワールドのこころ以外のメンバーが勢揃いしていた。

 

「も、モカこれって」

 

 話しかけようとしたがモカは小走りでAfterglowの元へと向かいニカッ、と笑っていた。

 

 一体何がどうなってるんだ?なんでみんながいるんだ?

 

 考えること数秒後

 

「予約していた弦巻シンさんですね!」

「い、イヴ?別に予約なんて」

「弦巻シンさん来店しました!つぐみさん接客お願いします!」

「お、おい!」

 

 勝手に話が進んでいく、あいにくだが手持ちをそんなに持ってないぞ?みんなの分奢るとなったら金下ろさないと行けないんだけど

 

「お席に案内しますね、こちらへどうぞ」

「は、はあ」

 

 そのまま案内されるがまま席に着くと

 

「こちらメニューになります」

「…ありがとうございます」

「ご注文が決まりましたら声をかけてくださいね♪」

 

 そう答えたつぐみはモカと同様にAfterglowのメンツの所に戻って行った。イヴもパスパレの所にいたな

 

 メニューを見たら大きく「本日オススメ!マスターの愛娘が教える絶品メニュー!」と書かれたページしかない。

 

「あのメニューこれしか」

「ご注文は決まりましたか?」

「いやだからメニューがオススメしか」

「マスターの愛娘、オススメメニューですね!少々お待ちください!」

「え、えー」

 

 な、なんなんだよこれ、本当に何が目的なんだ?

 

「あ、あのー」

『……………………』

 

 えー?無視って酷くない?そんなに俺みんなに嫌われるようなことしたのかな?

 

 んー思い出しても蘭とひまりしか該当がないな…はっ!まさかあの二人がみんなに話してるとか!?

 

 だったら嫌われても仕方が無いな、あはは

 

「お待たせしました!蘭ちゃん特性のカレーライスになりまーす!」

「ッ!蘭ちゃん特性!?」

 

 待て待て待ってくれ!それって!

 

 蘭の方を見るが黙ってこっちを見てるだけだ。

 

 これはあれだ、完全に俺を殺しに来てるだろ

 

 カレーを見てみると

 

「あれ?案外普通かも?」

 

 見た目は普通だ、匂いも普通、本当に普通のカレーだ、あの蘭が作ったのか信じられないぐらい普通のカレーだ

 

「い、いただきます」

 

 スプーンを手に取り一口分すくい口に運び食べてみると

 

「ッ!これは」

 

 忘れるはずがない。小さい頃よく食べたあのカレー、亡くなった母さんが作ってくれたあの好物のカレーそのものの味だった。

 

「なんだよ…これ!」

 

 一度口に運んだら手を止めることができずカレーをかけこんでしまう。

 

 もう食べられない。そう思っていたのにまさかすぐにまた食べられるなんて思いもしなかった。

 

「クソ…クソ、クソ、クソ!」

 

 クソ!蘭が作ったカレーなのに…!蘭が作ったカレーなんて不味いはずなのに!

 

「どうしてこんなに美味いんだよ…!」

 

 シンは自然と涙を流していた。それは蘭の料理が美味しすぎて屈辱をあじわって泣いてるわけじゃない。

 

 久しぶりに母特性のカレーを再現されたカレーを食べれたことに喜びを感じて、そして亡くなった母のことを思い出して泣いていたのだ。

 

「……どう、今回は本当に自信作なんだけど美味しい?」

 

 蘭が近づきシンに話しかける。彼女が自信作と言っているのだ、きっと美味いのだろう

 

 その言葉は聞いたシンはまた一口と食べた。

 

「……ばーか、お前砂糖と塩間違えてるだろ、塩っぱいっての」

「ッ!うん、シンがまた調味料加えるなんて想像してなかったよ」

「うるさい!」

 

 蘭が言う調味料とは涙のことだ。シンが泣きながら食べているため涙が入ってしまい塩っぱくなっているのだ。

 

「…………ごちそうさま」

「うん、お粗末さまでした」

 

 未だに泣いているシンをみんなは優しげに見守ってくれている。

 

「実はさ、アタシ達が集まったのには1つ理由があるんだよねー」

「……理由?」

 

 リサがそう言うとみんなが頷き始めた。

 

「……シン覚えてる?シンとハルが激闘したあの球技大会、あのおかげでハルがアタシに隠してたこと知れたし…色々知れた」

「知れたからこそ今のハルとアタシの関係があると思うの、だからその、ハルに説教してくれてありがとね♪」

 

 今井リサの彼氏、亜滝との勝負(デュエル)、ひまりの思いを踏み躙った亜滝に対してシンが勝負をしかけ得意とするサッカーで勝ち、敗北者の気持ちを味あわせた戦い。

 

 そのおかげで2人の絆は深まり、そしてリサと亜滝の仲も深まった。

 

「私はつい最近ね、あなたのおかげでずっと入りたかったカフェに入れたわ、その……ありがとう」

 

 湊友希那との恋人ごっこ(彼氏役)、彼女の彼氏役となりカップル限定のカフェへと入ることができた。なお役はまだ続いている。

 

「私もシンさんには色々とお世話になりました。特に家族絡みでは本当に助かりました。ありがとうございます」

 

 氷川紗夜との家族関係(双子の悩み)、双子のシンと紗夜だからこそ人に話せない相談などを気楽に行えれた。その行為に紗夜がどれだけ助けられたことか

 

「わ、私もその…いろいろとありがとうございます!」

 

 白金燐子との秘密(R18)、シンが紗夜にちくれば燐子は即Roseliaを脱退となるだろう。そんな彼女はシンには感謝してもしきれないのだ。

 

「あこはねーあー!シン先輩のおかげでお姉ちゃんに彼氏ができたことかな!」

「あこ!そ、それはアタシが言うことだろ!?」

「……えっと、そのあれだシンのおかげで蒼汰と付き合えれた。だから、あ、ありがとな!」

 

 宇田川あこ、そしてその姉の宇田川巴との約束(デート)、シンが巴と蒼汰の間に入り2人の仲を良くして晴れて恋人同士へとさせた。それに関しては巴だけでなく蒼汰も感謝しているのだ。

 

「私もそれ関係だね、あの時私のために立ち上がってくれてありがとう……そして昨日はごめんね、やりすぎたよ」

 

 上原ひまりとの恋物語(ラブストーリー)、ひょんなことから彼女の恋のキューピットとなったシンは試行錯誤させるもひまりの恋は実らなかった。

 

 しかしその行為がきっかけでひまりはシンに好意を持ち告白までしてきたのだ。

 

「……あたしも、家のこととかみんなと喧嘩した時とかシンがそばで支えてくれたこと今でも忘れてないよ、ありがとう」

 

 美竹蘭との家族問題(共感)、家が嫌い。その事で2人は自分達が似ていると思い絡むようになった。

 

 そしてシンが蘭の父親に怒鳴りつけ、そのおかげで蘭は勇気を出して父親を説得してシンに手本を見せてあげた。

 

 そして…その時から蘭はシンに恋をした。

 

「モカちゃんはシン君のおかげでたくさんの思い出ができたよ〜?友達になってくれてありがとうね」

 

 モカとの思い出(過去)、本来ならシンが彼女に感謝するべきなのだが…モカ曰くシンがいたからこそ今が充実していると言いたいとのこと

 

そして…誰よりも早くシンに恋をした人だ。

 

「わ、私も文化祭の時助かったよ!私のために実行委員長にまでなってくれて助かったよ!本当にありがとね!」

 

 羽沢つぐみとの文化祭(決意)つぐみが倒れた時シンがすぐに対応しつぐみが起きるまでずっとそばにいた。

 

 そして励まし、つぐみは自分が今までしたことは間違いではないと知ることが出来た。

 

「文化祭と言ったら私だね、前も言ったけどシン君のおかげで本当に助かったよ、ありがとう」

 

 花園たえとの時間勝負(タイムアタック)、文化祭最後の鳳は結成1周年を迎えるポピパだったがおたえが間に合わない状況だった。

 

 しかしシンは諦めることはなく、いや一度あきらめかけたが彩達の歌を聞き諦めることなく、無事におたえを連れて文化祭終了ギリギリに連れてきて何とか間に合わせたのだ。

 

「シン君、私はそんなに絡みないけど…いつも沙綾ちゃんからパン貰う時チョココロネ残してくれてありがとう、ございます」

 

 牛込りみとのパン選択(思いやり)、シンがチョココロネに手を向けると沙綾の後ろにいるりみが小さな声であ、と言うものだから取るに取れず必然的に譲る形となっていたが彼女はその事に感謝しているのだ。

 

「あたしは、まああの日の夜は助かった。サンキューな」

 

 市ヶ谷有咲との夏祭り(自慢話)、1人で両親との思い出の場所にて花火を見ていた有咲に対してシンは両親に友達を自慢しろと言い出した。

 

 そのおかげでシンは有咲と友達になり、そして有咲自身もシンを見直す機会となった。

 

「シン…私はシンに純を助けて貰った、本当に心から感謝してる」

「あの日シンが話しかけてくれたから、友達になったから今の関係があるんだよ、本当感謝してもしきれないよ」

 

 山吹沙綾との出会い(勇気)、シンが勇気を出して初めて話しかけた人、それが沙綾だったから、そこから2人の関係は始まり今の2人にいたる。

 

 そして沙綾の弟、純が川に溺れていた時幾度の不幸がシンを襲うが最後は助け出した。

 

 そして…シンは沙綾の正義のヒーローになった。

 

「シン君!今思えばシン君とは異性の中でも1番接しているかもしれないね!っと、それじゃなくて…」

「いつも数学の小テスト前に勉強教えてくれてありがとうね!」

 

 戸山香澄はシンの天使(エンジェル)、助けられてるいるのシンの方だ。天使と呼ぶほど仲が良い(シンが勝手に呼んでる)

 

 その小テスト前に勉強を教える行為も香澄が泣きながらやってくるため、その行為が可愛いから行っているだけだとは言えない。

 

「それを言ったらはぐみもだよ!英語の授業の時わからなくなったらいつも代わりに答えてくれてありがとう!」

 

 北澤はぐみとの英語の授業(助人)、英語の授業で秋山先生に当てられたはぐみが答えに迷っている時シンが答えてくれるのだ。

 

 と言うのもシンははぐみの助人係となっているため答えざるを得ないだけなのだが…香澄と同様それは言えない。

 

「あー私もその、海の時は助かったよ、てかあの後シン私のいい所100個言った?言ってないよね?今度聞いてみようかなー」

「……って冗談は置いていて、そのーなに?その件と言いこころのブレーキとなってくれてありがとね」

 

 奥沢美咲との苦悩(戦い)、美咲はずっとシンのことを敵視していて友達になること、いや近寄ることすら躊躇していた。

 

 しかしあの海での出来事、ナンパされた時美咲が馬鹿にされたがシンが否定したことにより心を開いた。

 

 そしてなんと言っても姉のこころのブレーキとなってくれるシンには本当に感謝している。

 

「シン君、私は本当に君に助けられたよ、あんなことがあった後なのにすぐに駆けつけてくれて…本当にありがとう、シン君のおかげで今の私がいるよ」

 

 丸山彩はシンにとっての憧れの存在(憧れる後輩1号)、彩自身シンに憧れの存在と言われたことにより彼女自身その事が嬉しくてたまらなかった。

 

 そしていつの間にかシンのことを好きになっていた。

 

「……そして、私ね」

 

 千聖がそう言うと

 

「シン君、私達ね千聖ちゃんの話聞いたの」

「ッ!な、なんで!」

「……そのうちバレるのなら話してた方がましよ」

「でもそれだと!」

「もういいのよ…私のために悩んでくれてありがとね」

 

 あの事件を彩達に千聖は話したのだ。その事を聞いたシンはすぐさま反応した。しかし

 

「でもその話を聞けてジブン達少しほっとしたんです」

「そうそう、千聖ちゃん最近元気なかったし?何か隠してる雰囲気満々だったから聞いてみたらさ」

「千聖さんは有無言わずすぐに話してくれたんです」

「……そしてシン君が最後まで悩んでいたことも話してくれた」

 

 パスパレのメンバーがそれぞれの思いを語り出す。シン自身は守れなかったとしか思っていなかったのに、責められるとばかり思っていたのに予想とは違う言葉ばかりだ。

 

「シン君のおかげで今の千聖ちゃんのままでいられる」

「子犬君、いや…この呼び方は君に相応しくないね」

「……そうだ、騎士君と呼ぼう、君がいたから千聖はまたこうして私達の前に立ってられる」

 

「あなたがいるから私がいる、だから…あなたは私にとってかけがえのない存在よ」

 

「……ッ!みんな…!」

 

 俺は一体なんて言えばいいんだ、こんなにも急に、一度にみんなからありがとうなんて言われたことなんてない…!

 

 それに俺なんかにありがとうって、それは正義の味方になりたかった俺がやってた行動で、その夢を捨てた俺なんかに向けられても

 

「……ほらやっぱりシンは勘違いしてる」

「ッ!……蘭?」

 

 蘭は俺の手を握って、目を見て話してくれた。

 

「シンは正義の味方になれないんじゃない」

「……もうみんなの正義の味方、なんだよ?」

「ッ!お、俺がみんなの正義の味方…?」

「うん、だってシンはみんなのことを助けてくれた、だからありがとうって言ってるの」

「たとえ小さなことでもありがとうって言葉に重さなんて関係ない、感謝されてることに意味があるんだよ」

「ッ!」

 

 その言葉を聞いた途端今まで頭の中で巡っていた考えは綺麗さっぱりと無くなっていた。

 

「正義の味方になれない」

 

 違う、そうじゃない…なるなれないの以前にもうなってたのだ

 

 大層なことはしてないかもしれない、世界を救うようなことをした訳では無い。

 

 しかし…こんな些細な出来こどだとしても彼女達は(シン)をこう呼ぶ

 

『シン(君)は私達の正義の味方だよ』

 

 と

 

 最後に母さんが俺に言おうとしてくれたことが何となくわかるよ、あの時母さんは言っていたのかもしれない。ただ俺がそれを受け入れようとしてなくて上手く聞き取ってなかったのかもしれない。

 

「シンさん」

 

「シン」

 

あなた(あんた)はもうひとりじゃない』

 

 蘭の声と母さんの声が重なって聞こえた気がした。

 

 そうだ、俺はひとりじゃない。俺のことを正義の味方と呼んでくれるみんながいる。

 

 ああ、本当に俺って…

 

 涙を拭い下を向いていた顔を上げ、シンは今まで誰にも見せたことがないほどの満面の笑みを浮かべて

 

「俺は最高の友達と巡り会えたよ…!」

 

 笑った顔から元に戻ったシンの瞳は先程まで左右対称のオッドアイではなく両目同じ瞳にへと戻っていった。

 

 しかしその瞳は今までの金色瞳や紅色の瞳とは違い、その2つを混ぜ合わせたような紅緋(べにひ)色へと変わっていた。

 

 紅色の主張が強い気がするも微かに金色、つまり黄色のような色が見て取れる。

 

 そしてその瞳はまるで夕焼けのよう、さながらスカーレットアイとでも呼ぶのだろうか

 

「これでシン君完全復活ですなー」

「ああ!モカも色々ありがとな」

「いえいえーどちらかと言えば蘭が主役ぽかったしね〜」

「それを言ったらこのこと自体考えたのはモカでしょ?」

「もーう、蘭ったら素直に喜べばいいのに」

「う、うるさい!…ッ!何見てるの?」

 

 こう蘭とモカが言い合ってるのは久しぶりに見た気がするからさ、いやなんか嬉しいよ

 

「別にーただ仲良いなと思っただけだよ」

 

 これにてシン完全復活!となり彩と香澄は泣き出し、他のメンバーは泣くまでとは言わないが喜んではいた。

 

 だが…

 

「復活早々で悪いが騎士君、君に頼みたいことがあるんだ」

「……わかってる、こころだろ?」

「ああ、すまないが私達もできることはしたつもりだ」

「だけどうちのプリンセスは本当に厄介でね、私が直々にエスコートしようと誘ってもこのザマさ」

 

 やれやれと言わんばかり瀬田先輩がそう言う。

 

「まっ、そうだな、そうなったらしゃーねーよな!」

「弦巻こころの弟、弦巻シンさんが直々にあいつの目を覚ましてきてやるよ!」

「ああ、それでこそ騎士君だ」

 

 あのこころが笑顔じゃないなんて普通じゃない、だったら俺はあいつを普通に戻して毎日笑顔を絶やさない可愛いこころに戻してみせる

 

「……っと、その前に大事な話があるんだけど」

「えっと、蘭、ひまり、モカ、彩、千聖先輩…そして」

 

 名前を呼ばれた人達は反応する、もちろん最後に呼ぶ人は

 

「有咲、話があるから残ってくれないか?」

「……は、はあ!?なんであたしなんだよ!」

「いや話があるって言うか」

 

 シンは頬をかきながらそう答える。

 

 別に深い理由とかないし、ただ謝りたいだけなんだけどな

 

「……有咲、話ぐらい聞いてあげれば?」

「ッ!さ、沙綾!あたしは違うぞ!?な、何か呼ばれてそのー」

「わかってる、今回は仕方がないよ…」

「沙綾…」

 

 みんなはシンがそう言うと先程まで名前を上げたメンバー以外は出ていこうとするが

 

「流石にそう簡単に話は終わらないでしょ!」

「ひ、日菜さん!?」

 

 日菜さんが急に俺に言ってきた。一体なにをさせる気なんだ!?

 

「こんなにみんなに迷惑かけたしさー?何か恩返しとか欲しいよね?欲しいなー!」

「……ね!おねーちゃん!?」

「ちょ、何よ日菜!な、何が目的なの?」

 

 姉妹で盛り上がってるのはいいんですが俺の危険センサーが警報なってるのだけはわかるんですが!

 

「そ、そうです…ご褒美欲しいです」

 

 頬に両手を当てながら燐子先輩が弱々しく言っているが…内心高らかにガッツポーズしてるんだろうなって思う。

 

「これあれだね!シン君はみんなとデートしよっか!」

『ッ!?』

「ちょっと待ってください!で、デート!?」

「あ、約束(デート)ね!」

「言い直さなくていいから!」

 

 てかなんで知ってんの!?巴とひまりーにも話してない、勝手に俺が作った単語?なのになんで知られてんだよ!?

 

約束(デート)って言ってもそれ以外でもいいよ!」

「だったらデートじゃなくていいじゃないですが!?」

「ちっちっちっ、シン君?デートじゃなくて約束(デート)だよ」

「意味変わんねーだろ!?」

 

 全員ってあんた25人とデートしないといけなくなるだろ!?あほか!馬鹿か!んなのみんなが良いって言うわけないだろ!

 

「み、みんなは嫌だよなー俺との」

『別にいいよ』

「……あー本当最高の友達に巡り会えたよ!?」

 

 日菜さんのせいで全員とデートならぬ約束(デート)の約束をする羽目になってしまった。

 

「でも流石にアタシはー」

「それはアタシもだな」

「わ、私も」

「彼氏持ちの3人は対象外にして欲しいですよ、俺がな!?」

 

 流石に彼氏持ちの人となんてしたらあいつらに殺されちまうよ

 

「はい!決まりだね!曜日とかは後日適当に決めるからよろしく!」

「……アハハ」

 

 財布が吹っ飛び貯金もなくなるな、あはは

 

「よかったねおねーちゃん!」

「ッ!だから何が目的よ日菜!?」

「ご褒美、シン君のご褒美、ふふ」

「ッ!」

 

 な、なんだろう急に寒気を感じたぞ、何か恐ろしいことでも起きるのか!?

 

「ってそれより話があるから!」

「わかったって!アタシも話し終わったしみんなでファミレス行こうかー!」

 

 多分だけど丁度よく開店してくれると思う、時間も時間だし?

 

 そしてみんなは日菜さんに着いていく形で羽沢珈琲店を後にした。

 

 無理言って話をしたいって言ったし……みんなに恩返しとして約束(デート)しますかね、ってやばいな俺

 

「それで話って何かしら?」

「ああ、みんなにその謝りたくてだな」

「いやそれもだけどありがとうって言いたくて」

『ッ!』

 

 純粋に感謝してる。千聖先輩が俺を連れ出してくれたから、そして有咲が話しかけてくれたから、蘭には振られたけどそれでも感謝してる。ひまりもまあ似たようなもんだ。

 

 そしてモカ…いつものように接してくれていつの間にか普段通りのやり取りができていた。

 

「本当みんながいなかったら俺はここにいない……だから」

「…………ありがとう、な」

 

 その言葉を聞いた途端

 

「当然よ、だって私はシンの味方だもの」

「はは、でしたね」

「あ、あたしはただ過去に似たようなことがあっただけであってべ、別にシンのためじゃねーからな!?勘違いするなよな!?」

「わ、わかってるって」

 

 なにを勘違いするのか知らんが感謝してる。

 

「それとあの時言った違うんだ、なんだけどさ」

「あれはその確かに母さんが亡くなったことでも悲しんでた、けど正義の味方になれないってことに対してすごく悩んでいたんだ」

「……あっそ、べつに気にしてねーよ」

 

 そ、それはそれでシンさん傷つくな

 

「私って特に何もしてないけど」

「いやいや彩に会えただけで助かったよ」

「ッ!えへへ、そうなんだ」

 

 あの時拾ってくれたからあの後モカに会えたんだ。

 

 それに優しくしてもらったことには変わりない、体調を気づかってくれたからな

 

「私に関して水かけただけなんだけど…」

「ひまりは……その、ごめんな」

「ッ!う、ううん!大丈夫!大丈夫!」

「でも、次はちゃんとやってよね…?」

「お、おう!」

 

 何返事してるの俺!?流石にもうあんな無理やりにキスするようなことはないですよ!

 

「蘭もその悪かったな、いやもうぶん殴られてもおかしくないレベルだ!まじでごめん!」

「……本当最低だったよ」

「ああ」

「あたしじゃなかったら許してないからね」

「ッ!そ、そうか…今後絶対同じことしないよ」

 

 こ、怖いよ蘭さん!?でも許してもらえたのならよかったです。

 

「……それとモカ」

「うん、うん」

「お前はほんっっとに助かった」

「ッ!」

「俺ってお前に助けられてばかりだな」

 

 本当モカは俺の世界を変えてくれた、そして今回も助けてくれた。本当に返しても返しきれない恩がある

 

「いえいえーシン君の婚約者なので〜」

「……まあそれとこれとは別で結婚はしないけどさ」

「またまたー本当は結婚しようって決意したくせに〜」

「あーうぜぇ!」

 

 でもまあ

 

「モカのそゆう所俺は好きだぞ」

『ッ!?』

 

 シンのその発言に一同同様する。

 

 モカがこんなんだから今回助けられたし、いや…今回だけではない、昔もこうやって俺を今の俺に変えてくれたんだろう。

 

「モカちゃんもシン君のそんな所も」

「それよりシン?次はこころちゃんの所行くんじゃないの?」

「……………………」

 

 モカがなにか言おうとしてたけどなんて言おうとしてたんだろうか…まあ後日聞くか

 

「こころは俺が何とかするから」

「ふふ、今のあなたなら大丈夫そうね」

「みんなのおかげですけどね」

 

 そのせいで約束(デート)することになったんだけどね、ってせいでとか言っちゃ悪いな

 

「それじゃあこころの所行きますかね!」

「うん!シン君頑張ってね!」

「こころちゃんちゃんと元気にさせてよね!」

「ああ任せろ!」

 

 こうして俺が呼び止めたみんなと一緒に羽沢珈琲店を後にした。

 

 恐らくだがみんなはそのまま日菜さん達が行ったファミレスに行くんだろう。

 

「それじゃあシン君、またね〜」

「おう、またな」

 

 俺の予想通りみんなはまとまってどこかに行くそうだ。

 

 そして俺はこころがいる屋敷へと向かう、か

 

「さーてと、馬鹿姉貴の目を覚ましてやりますかね!」

「シン、ちょっといい?」

「ッ!ら、らら蘭さん!?いきなり現れるなよ!?」

 

 カッコつけてたのに急に現れるなよ!は、恥ずかしいなもう!

 

「シンに言うことがあったの」

「な、なんだ?出来れば早めにしてくれよな」

 

 これから屋敷に行かないといけないからさ?できるだけ早めにこころ復活させてハロハピのメンツに合わせてやりたいんだよ

 

「あのプロポーズだけどさ」

「ッ!い、いやーあれはさっきも言ったけど」

「知ってる、だからさ…」

「?」

 

 蘭はもじもじしながら、そして顔を真っ赤にして俺にこう言った。

 

「その、次はちゃんとプロポーズして…ね?」

「ッ!えっとそれって…!?」

「だから次のプロポーズはちゃんとしてくれたら……け、結婚してあげるから!」

 

 そ、それって!?え!いや急すぎるだろ!?

 

「んーあ、え?」

「だ、だから!」

 

 蘭はシンの制服のネクタイを掴み自分の顔に近づけさせて言った。

 

「シンのこと好きだから結婚してもいいって言ってるの…!」

「あんなクソみたいなプロポーズじゃなくて次はちゃんとしてってこと!」

「同じこと何度も言わせないでよ、は、恥ずかしいんだからね!?」

 

 う、嘘だろ!あの蘭が?親友の蘭…が?

 

「も、もしかして友達以上の関係って」

「……そう、恋人って意味だったの」

「勘違いしてた、すまん…」

 

 蘭と恋人か…想像もしたことないが悪くないのかもしれないな

 

 でも

 

「悪いけど俺はすぐに返事出来ないんだ」

「知ってる、シンのことだから他の人の返事もまだなんでしょ?」

「な、何故バレてる!?」

 

 相変わらず蘭さんはすげーですな!?

 

「言っとくけどあんたのファーストキスの相手はあたしだから!」

「ッ!?お前覚えてたのかよ!」

「他の人達なんかに負けないから!」

 

 そうか…蘭も蘭で俺のことが好きだから誰にも渡したくないんだ。だから負けないって

 

「……だったら次は俺の童貞でも貰うんだな」

「なっ!?」

「ファーストキスと来たら次は童貞だろ!?」

 

 どうだ蘭!この弦巻シン!告白されて終わりじゃないってことを教えてやるよ!

 

 さあ!なんて答える!?

 

「じゃ、じゃあ今日エッチする?」

「なっ!?」

 

 なんて返事をするんだよ蘭!そんなの、そんなの!

 

「やるわけないだろ!?」

「冗談だし!信じないでよ!」

「……ま、まああれだな」

「ん?」

「次プロポーズする機会があればその時はちゃんとするから」

「ッ!うん…待ってる」

 

 する機会があればって…それは俺が蘭の告白に返事してそこから何年か経てからの話だろ

 

「そ、それじゃあ俺こころの所へ行くから」

「う、うん」

「……またな!」

 

 走って屋敷に向かう。あの自慢のスケボーだが無くしてしまってな、またアギトさんが回収していると願うしかないな

 

「……さてと、こころ!俺がお前を救ってやるからな!」

 

 走りながらそう宣言したシンは一度も止まることなく屋敷に向かっていった。




次回はこころの話、その次は…なるべく早く投稿できるように頑張ります!

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

ではまた次回でお会いしましょう!


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弦巻シンとこころ

お久しぶりです!いやー話書くの難しかったです。今年中に綺羅編終わりませんでしたー!申し訳ない…!

今回は弦巻家関係者メインの話です!それではどうぞ!

今年最後の投稿になるかな?


 みんなと別れたあと俺は1人で屋敷に向かっていた。

 

 道中特に何か起きることなんてなく普通に屋敷に着いた。強いていえばこころになんて声をかければいいかを考えてたぐらいだな

 

「……あいつ大丈夫かな」

 

 母さんと過ごした時間は俺よりこころの方が圧倒的に多いはずだ。

 

 なんせこちとら家出なんかして2年近く姿すら見せてなくて心配かけてたからな

 

 ってすーぐまたそんなことを考えて落ち込もうとしてるな俺は!?せっかくみんなが励ましてくれたんだぞ?無駄にすんなよこの馬鹿野郎!

 

 屋敷の門につきインターホンを鳴らす。

 

「……はい」

「俺」

「どうぞ」

 

 メイドの1人が門を開けてくれたため中に入る。

 

 俺って言って通じるとかすげーな、あれだよ、オレオレ詐欺?引っかかるわけねーよな!?

 

 庭を歩いている途中

 

「よ、久しぶりやな」

「タマ!お前生きてたのか!?」

「阿呆!こっちのセリフや!」

 

 そっちのセリフでもないと思うがな

 

 このタマっていう犬は世にも珍し日本語を喋る犬なんだ、説明は何度目かになるから省くぞ

 

「なんや、そのー残念やったな」

「……ああ」

「わしはあんまり奥さんと絡んだことねーへんけどなー遠くから見てても女神様みたいやったな」

「さすがタマ、わかってる〜」

 

 母さんはもうあまり屋敷から出れない状態だったんだろう。けど無理して文化祭に来たりメイド喫茶に来たりして

 

 本当、無理してでも俺に会いに来てくれてたんだって思うと母さんはやっぱり俺の母さんなんだと自覚されられるよ

 

「ドックラン?だったけっか?」

「せや!覚えてくれたんか?」

「今度連れてくから覚悟しとけよ〜?」

 

 タマの頭を雑に撫でながらそう言うとタマは思ってた以上に喜んでいた。

 

「よっしゃー!これで雌犬と交尾し放題やー!」

「ドックランを風俗かなんかと勘違いしてないか?お前」

 

 風俗とか言ってるけど俺何も知らないからな?興味なんてないからな!?

 

「じゃあな、強く生きろよ」

「おう!お前もな!」

 

 タマに別れの言葉をいい屋敷の中に入る。

 

「玄関綺麗だなおい」

 

 ここは母さんが掃除をしていたと夏頃に聞いた。なんでもみんなが出入りする大切な場所だからとのこと

 

 母さんが亡くなったあと誰がここの掃除をしてるんだろう?

 

 そう思ってた時

 

「シン君!?」

「……篠崎先輩?」

 

 箒を手にメイド服を着てる篠崎愛奈先輩がそこにはいた。

 

 メイド服からはみ出そうな大きな胸は現在箒の持ち手が押さえつけられていて挟んでいるように見えた。てか挟んでるだろこれ

 

「シン君!シン君!シン君!」

「な、なんですか」

「戻ってくれて…本当によかった」

「ッ!あーすみません、篠崎先輩にも色々迷惑かけましたね」

 

 話しかけてくれたの全然相手にせずに変な態度取ってしまったな

 

「ううん、そんなの気にしてないよ」

「……そう、ですか」

「でも本当によかった!もうみんなかなりきてたみたいだからな」

「ッ!」

 

 無理もない、弦巻家にとって母さんの存在は大きすぎたんだな、そんな人がなくなったらみんな悲しむに決まってる。

 

「篠崎先輩は大丈夫なんですか?」

「私はーほら、1番絡み少ないし?悲しむ資格なんてないよ」

「あの時だけだよ、私が泣いていいのは」

 

 何を思ってそんなことを言ってるかわからない。

 

「絡んだ時間が短いからとかそんなの関係ないだろ」

「ッ!」

「悲しいと思ったら泣いてもいい、別に誰かが怒鳴り散らかすわけじゃあるまいし」

「大体そんなこと言ったら…」

 

 と話をしている途中篠崎先輩が急に抱きついてきた。

 

「ッ!……ッ!」

 

 抱きついてきたと思えば次は泣き出した。きっとずっと泣いてはいけない、と思って泣いてなかったんだろう。

 

 そんな中俺が泣いてもいいだろなんて言ったらそりゃあ泣くよな

 

「……初めてだった。この人が自分の母さんだったらいいなって心の底から思ったのは」

「ッ!」

 

 その言い方だと今の親が悪いみたいな言い方じゃないか、でも俺の母さんは確かに母さんレベル高いと思うけどな

 

「私あんまり両親と仲良くないからさ」

 

 なるほど仲悪かったのか

 

「篠崎先輩、うちの母さんをそんな風に言ってくれてありがとうございます」

「本当改めて俺って幸せ者だなって思いましたよ」

 

 他人から親にしたい母さんなんて言われる機会普通はない。つまりそれほどうちの母さんが素晴らしい人だったってことさ

 

「……ありがとう、ちょっと心が楽になったよ」

「ならよかったです」

 

 俺から離れた篠崎先輩は目を擦りながらそう言っていた。

 

「あと余計なお世話かもしれませんが」

「?」

「両親とは仲良くしてた方がいいですよ?……いついなくなるかわからないので」

「ッ!そ、そうだね、頑張ってみるよ!」

 

 本当に心から思うよ、家族は大切にしとかないといけないなって

 

「じゃあ俺こころに用があるので」

「……やっぱりこころちゃんのために来たんだ」

「当たり前ですよ、あいつ柄にもなく落ち込んでるようなんで」

 

 今あいつは部屋にいるのかな?まあその点はアレックスに聞けばいいか、多分だけど篠崎先輩知らなさそうだし

 

「シン君は本当に優しいんだね」

「……ああ、だって俺は」

 

「正義の味方、だからな」

 

 そう答えたシンは振り返ることなくこころの部屋へと向かっていった。

 

「さてと、私もお仕事頑張りますかね!」

 

 シンがいなくなったあと愛奈は玄関の掃除へと勤しむのであった。

 

◆◆◆◆

 

 こころの部屋に向かう途中の長い廊下、そこであいつと出会った。

 

「おや?シン様ではありませんか」

「よーアレックス、元気にしてたか?」

「それはこちらのセリフです、あんな絶望した主人公みたいな顔してた人がよく言いますね」

「主人公みたいなじゃなくて主人公なんだよなー」

 

 自分の人生なんだ、他人が主人公じゃない。俺自身が主人公だろ?え?違うの?知らんな

 

「シンジは?」

「シンジ様ならただいまお昼寝中です、丁度今から襲いに行くところでした」

「何真顔で言ってんだよ!」

 

 真顔で真面目にいえばいけると思ったのか!?残念無理でした!いかせねーよ!

 

「イかせないとは…!なんて焦らしプレイ!」

「うるせえな!てか人の心を勝手に読むんじゃねー!」

 

 もうやだこの人達!人の心見放題の人達ばかりじゃねーか!

 

「で、シンジはその、大丈夫なのか?」

「んーシン様とこころ様より遥かにマシですね」

「ま、まじか」

 

 シンジのやつ強いな、これは将来に不安ないな

 

「アレックスは大丈夫なのか?」

 

 さっきの篠崎先輩みたいに抱え込んでないといいんだが

 

「アレックスはこれを機にシンジ様に抱きつき泣いたので大丈夫です」

「……なんかお前らしいな」

「ええ、アレックスはいつものアレックスです」

 

 確かにさっきのからの発言を振り返るといつも通りのアレックスだ。

 

「シン様も見た感じもう大丈夫かと」

「まあな、みんなが励ましてくれたし?」

「うわぁ、ハーレムじゃないですか」

「う、うるさいな!」

 

 ハーレムとか言うな!なんか俺がそんな目でみんなを見てるみたいじゃねーか!見てないから安心してくれよな!?

 

「とりあえずお前が大丈夫そうでよかったよ」

「……もしかしてこころ様のために来たのですか?」

「当たり前だろ、馬鹿姉貴の目を覚ましに来てやったんだよ」

 

 弟が説得するってなんかあれだよな、てか説得するってわけじゃないけどさ

 

「んじゃこころの所行ってくるよ」

 

 アレックスに手を振り横を通り過ぎこころの元へ向かう。

 

「シン様……よいご友人をお持ちになりましたね」

 

 小さい頃のシンを知っているアレックスだから言えることだ。シンになかなか仲のいい友人が出来ず困っている中、トラブルが起きそこからシンは家を出行った。

 

 その頃に比べて今はシンを助けてくれる友人がいる。そのことがアレックスにとってどれだけ嬉しいことか

 

「私の出る幕はありませんでしたね」

 

 彼女達に頼ってよかったと思うアレックスだった。

 

「さーて!私もシンジ様の秘蔵コレクションを見て午後のお仕事も頑張りますぞー!」

 

 なお後日シンに見つかりデータを抹消され写真も没収されたことは言わなくてもわかることなのだ。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 こころの部屋の前に着いた。前の俺ならいきなりドアを開けて目の前には着替えの途中のこころがいて

 

「な、何見てるのよシン!」

 

 っていいながら哀れもない姿のこころは目に浮かばねーよ!

 

 何考えてんだよ俺は!?こころは姉だぞ!俺はリオじゃないから姉に恋愛感情なんて持たん

 

 コンコンコン

 

 ドアをノックするが返事が来ない。

 

「こころー」

「……………………」

「返事しないなら勝手に入るぞー」

「……………………」

「着替えてたりしても事故だからなー」

 

 ってよくよく考えれば今のこころがそんな着替えているところを目撃されただけで普通の女子の反応なんてしないか

 

 てかこころは普通じゃないんだった。異常者だったな!

 

 実の姉を異常者呼ばわりするシンはまさに弟の鏡だろう、きっとね

 

 ドアを開けるとベッドの上で体操座りして顔をうずめているこころの姿がある。

 

 最初その姿を見た時なんて声をかければいいのかわからなかった。

 

 千聖先輩も今の俺と同じ気持ちだったんだろう、こんな状態の人を目の前にしてそうそう話しかけようとは思わないよな

 

「何してんだよ、こころ」

 

 そんな考えてたって意味がない。普通に話しかければいいんだよ

 

「…………シン?」

「ああ、こころの弟、弦巻シンだよ」

 

 顔を上げて俺に話しかけてくれがやっぱりいつものこころじゃない。返事をしてくれただけマシだよな

 

「……シンは凄いわね」

「なーにが」

「あたしは母さんが亡くなって凄く悲して…何もやる気起きなくてこんな風になってるのに…」

「シンはいつも通りで凄いわ」

 

 俺が凄い、か

 

「全然すごくねーよ」

「俺だってこころみたいにかなり落ち込んだ」

 

 落ち込んだせいでみんなに迷惑かけたし蘭やひまりに酷いことをしてしまった。

 

「でも俺はみんなが助けてくれたんだよ」

「みんな、が?」

「ああそうだ、お前もハロハピのみんなが来てくれただろ?」

「……あまり覚えてないわ」

 

 覚えてない…か、それはそれで美咲達が可哀想だな、でも

 

「覚えてないなら仕方がないな」

「…………ええ」

 

 今のこころに思い出せよとか言っても思い出さないだろうし、てか覚えてないって言ってたな

 

「なあこころ、母さんいい人だったな」

「……うん…!」

「でももう」

「わかってる…!そんなの、わかってるわよ!」

 

 そう、母さんはもういない。母さんは亡くなったんだよ、俺達の目の前で

 

「わかってるから悲しんでるのよ!」

「お母様はあたし達を育ててくれた!愛してくれた!なのに、なのになのになのに!」

「あたしはこれっぽっっっちも恩返しができてない!」

「……ああ、そうだな」

「…………どうしてなのよ、お母様」

 

 どうしてか、そんなの俺が答えを言えるわけじゃない。俺だってこころと同じだ。

 

 今まで沢山お世話になった。迷惑だってかけた。なのに恩返しなんて何もできなかった。

 

 もちろん悔しい、悪いがこころより悔しいよ、でも俺達は

 

「こころお前の気持ちすげーわかる」

「でもなこころ?」

 

「俺達はもう失ったんだ」

「ッ!」

 

 母さんを失った。俺達を産んでくれた人を失った。別に誰かが殺したわけではない、けど失った。

 

「失っても俺達は生きないといけない」

「……いやよ、お母様がいない世界なんて!」

「こころ!」

「ッ!」

「いいかこころ、失った俺達には大事なことがひとつあるんだ」

「……なによ」

 

 そんなのはとうに決まってる。最初から俺も知ってたはずだ、だけどそのことから目を逸らしていない母さんにすがっていたんだ。

 

「失っても俺達が生きてる以上前に進まないといけないんだ」

「ッ!」

 

 そう、俺達は前に進まないといけない。ずっと立ち止まってクヨクヨしている暇なんて俺達にはないんだ。

 

「でも無理よ、どうすればいいのわからない…!」

「無理なんかじゃない!わからないなんてこころは嘘をついている!」

「……あたしが、嘘を?」

「ああ!こころは嘘つきだ!嘘を自分に言って言い聞かせてるんだ…!」

「あ、あたしがいつ嘘を言ったのよ!」

「じゃあお前の夢答えてみろよ!」

 

 こころの夢、それは

 

「あたしは音楽で世界を笑顔にさせる!これがあたしの夢よ!」

「だったら知ってるじゃないか!」

「ッ!」

「お前が生き続けて!前に進む理由はその夢を叶えるためでいいじゃねーか!」

「みんなと一緒に世界を笑顔にするんじゃないのかよ!」

「そのみんなって誰だよ!お前は1人じゃないんだろ!?なあ答えろ姉さんよ…!」

「ッ!」

 

 初めてこころを姉さんって呼んでみたが違和感しかなかった。いつもこころや冗談でこころ姉とか呼んでたけど姉さんって呼ぶには少し以上に抵抗があった。

 

 言ってみてわかったけどやっぱり違和感しかないな

 

「あ、あたしには……みんなが、いる…!」

「はぐみ、花音、薫、美咲、そしてミッシェル…!」

 

 こころは泣きながら一人一人顔を思い出すように少し間をあけ名前を呼び始めた。

 

「こころは確かに大切な人を、母さんを失った、だけどそれ同等の大切にしているみんながいるじゃないか!」

「なのにお前がそんな状態でどうするんだよ!そんなんで世界をどうやって笑顔にするんだよ!」

「ッ!そんなの決まってるわ!音楽で笑顔にするのよ…!」

「だったらクヨクヨしている暇なんてないだろう!悔しかった音楽で世界を笑顔にしてあの世の母さんに胸張れるように生きろよ!」

「ッ!」

 

 もしあの世で母さんに会えるとするのなら俺は胸を張ってこう言いたい。

 

「俺は正義の味方になれたよ」

 

 って、だから俺は生き続ける!正義の味方になるために生き続けてやる!

 

 みんなは俺のことを正義の味方と呼んでくれた!だけど俺はそれだけでは満足しないぞ、どこの誰もが俺を正義の味方と言えるようになる!これがこころにも負けない俺の夢だ!

 

「俺は夢を叶えるために生き続けるぞ!母さんがいようがいないか関係ない!俺は俺の夢の叶えるために生きる!そして誰かのために生き続けてやる!」

 

 正義の味方になるって夢のために俺は生きる。そしたら必然的に誰かを助けながら生き続けるって意味になるだろ?だから俺は誰かのために生きるんだ!

 

「……あたしも、よ!あたしは世界を笑顔にしてみせる!あの世のお母様にも届けられるほどの笑顔で満ち溢れた世界にしてみせるわ!」

 

 言ってくれるじゃないかこころ、もうそんな顔見せられたらさっきまで落ち込んでて絶望していた様子は見るかげもなくどこかえ消えていたように思えるよ

 

 いやもう完全に消えてなくなったようだな

 

「だったらどっちが先に夢を叶えるか勝負だこころ!」

「望むところよ!弟に負ける姉なんて存在しないって美咲に聞いたわ!」

「……よし!だったら俺達は母さんに!」

「ええ!お母様に!」

 

『胸を張れる人生を送る(わ)!』

 

 例え会えなくても母さんは俺達の生き様を最後まで見届けてくれる。いや何がなんでも見届けてくれるさ…だって母さんは俺達の母さんなんだから

 

 こころは母さんいなにも恩返しができなかったと言っていた。でも俺は思うよ、俺たちがこうして元気に生きていることが母さんにできる最高の恩返しなんじゃないかってさ

 

「こうしちゃいられないわ!早速みんなを集めて作戦会議よ!」

 

 部屋のカーテンを開け太陽の光が暗かったこころの部屋を照らす。それは先程のこころの心を表すかのように、な

 

 そして部屋を出ようと走り出した。きっとハロハピのみんなにこれから会いに行くんだろう

 

「……っとその前にシンに言わないと言わないといけないことがあるわ!」

「おう、なんだ?」

 

「ありがとうシン!愛してるわ!」

 

 ニカッと笑ってそう言うこころは本当にいつものこころだった。

 

「ッ!ああ!俺もこころのこと愛してるぞ」

「…………姉としてな!」

「あたしも同じよー!」

 

 こころは廊下を走りながらそう言いいつの間にかもう視界からはいなくなっていた。

 

 てかそれは弟として愛してるってことでいいんだよな?

 

「……ってこころにあんなふうに言ってたけど俺も俺だったよな」

 

 みんながいなかったら俺は今ここにいない、そしてこころを助けることもできなかった。

 

 まあ助けたって言うか無理やり起こさせたって言うか…まあ結果オーライでしょ

 

 こころが母さんの死を乗り越えたかなんかはわからない。だけど…この世界で生き続けてくれることだけは確かだ。

 

 だから俺はそれだけで十分嬉しいよ

 

 ふと外を見てみるともう門まで笑顔で走っているこころが見えた。もうあそこまで行ってるとか足早すぎだろ

 

「……あれ?シン兄?」

「ッ!シンジ!お前大丈夫か!?アレックスに変なことされてないか!?」

「え?う、うん何もされてないけど?」

 

 よ、良かったー!俺の弟の貞操は無事に守られていたようだ!いや特に俺は何もしてないけどさ

 

「あれってこころ姉だよね?」

「ん?ああ、こころのやつみんなの所に行ったよ」

 

 みんなの所って行ってもみんながどこにいるとかわかるのかな?まあこころのことだから走り回って見つけて屋敷に連れ込んで作戦会議をするんだろう

 

 相変わずこころはぶっ飛んでるよな

 

「こころ姉元気になったんだ…よかった」

 

 ほっと胸を撫で下ろすシンジに対してなんだが自分が情けなく感じだ。

 

「シンジはさ」

「ん?」

「……母さんが亡くなって悲しかった、よな?」

「……うん、悲しかったよ」

 

 だよな、さすがにここで悲しくなかったと首を振られたら驚きを隠せきれなかっただろう

 

「でも決心もついたよ」

「……僕はお医者さんになる!」

「もう僕達みたいに急にさよならなんかさせない!少しでも長く生きらせるように頑張りたいんだ!」

「シンジ…!」

 

 そう言えばまだシンジのやつ夢を母さんに話していなかったんだったな、最後に母さんが確かそう言ってた。

 

「……お前ならなれるよ、なんせ俺の弟で…母さんの息子だからな!」

「ッ!うん!」

「よーし!弦巻家兄弟の夢実現のために作戦会議でもするか!」

「おー!」

 

 シンジは腕を高らかに上げておー!と答えた。この光景をひまりが見たら喜ぶんだろうな

 

 作戦会議と言っても特にすることはなくシンジと遊ぶだけであった。だけどシンジは医者になるためこれからは沢山勉強するって言ってた。これは将来が楽しみで仕方がないやつですな!

 

「……すー、すー」

 

 作戦会議からどれぐらい時間がかかっただろうか、シンジのやつが寝始めたから俺は部屋を後にして家に帰ろうとした。

 

 いくつか空きのある部屋からはこころ達の笑い声が聞こえてきたため無事に合流出来たんだなと判断できた。

 

 様子を見ようと思ったが…今は彼女達の邪魔はしないようにしよう、なんせ久しぶりにこころと話せたんだから話したいことも沢山あるだろ

 

 屋敷を出るために長い廊下を歩き続けると

 

「久しぶりだな、シン」

「ッ!なんだ親父か」

 

 急に話しかけられたから驚いたじゃないか!

 

「戻っていたのなら一言声をかけろ潰すぞ」

「今から行こうとしてたんだよ」アハハ

「秒でわかる嘘をつくな、お前はあいつに似て笑ってる時は嘘をついてるか誤魔化そうとしてる時なんだよ」

「……へーこの癖って母さんに似たんだな」

 

 母さんの癖と似てるってなんか嬉しいな

 

「あと心の中で言ってると思ってても口に出してることもあるな」

「その癖だけは似たくなかったかな!?」

 

 そのせいでどれだけ痛い目にあったことか!

 

「……まあなんだ、お前達が普段通りに戻ったのならそれに越したことはない」

「そうだな」

 

 みんな元に戻ってハッピーってまさかにこのことだ。

 

「ところでお前のその目」

「ん?俺の目がどうしたんだ?」

「……色が変化したなんて話は聞いたことがないからなクソ親父に知られたら面倒だからこのことは話すんじゃないぞ」

 

 あまり話の内容が理解できなかったため携帯のインカメを使い見てみるとそこには今までとは全く違う瞳の色になっていた。

 

「な、なんじゃこれ!?」

「お前は歴代の中でも異質な存在だ、厄介事には巻き込まれるなよな?」

「……それはどうかな、自分で首を突っ込むかもな?」

「……ふっ、そうだったな」

「ああ、だって俺は正義の味方になる男だからな!」

 

 親指で自分を指して大声でそう言うと親父は何も言わず横を通り過ぎようとした。

 

「俺とあいつの息子なんだ、下手な人生送ってみろ?その時は俺がお前を潰してやる」

 

 えー何それ親父クソ怖いんだけど!?なんでそんな怖い目で睨んでくるのか謎なんだけど!

 

「……っと、そろそろ帰るか」

 

 親父もスタスタと廊下を歩いてどっか向かってるし帰ってもいいだろ

 

 ってなんか嫌な予感がする!

 

「よっ!シン、奇遇だな…今帰りか?」

「奇遇どころか待ち合わせしてただろアギトさん!」

「んなことねーよ、てか帰るだろ?送ってやるよ」

「AVが流れる車なんて乗らねーよ!?」

 

 あの3PのAVは印象が強すぎてよく覚えてるよ!?巨乳のピンク色をした髪の女性とパステルイエローの髪をした女性なんて!

 

 ま、まるで誰かと誰かさんじゃねーかよ!?

 

「今日はちげーよ、ちょっと最近アイドルにハマってな?」

「なに?パスパレ?」

「…………ああ」

 

 まじかパスパレかよ!ついにアギトさんも彼女達の良さがわかったのか!いやー!嬉しいよ!

 

「まあ帰りながら話そうぜ?」

「おう!」

 

 急いでアギトの車に乗るとパスパレの曲が流れていた。いや本当にハマってますやん!?

 

「……いいよなパスパレ、みんな可愛いし」

「だろ!実は俺全員と友達なんだぜ!」

 

 ファンの前で言ったら絶対殺させるから言えないことだがアギトさんは前に何度かパスパレのメンツと会ったりしてるから大丈夫だろ

 

 ほら?夏の合宿の時とかさ

 

「……お前誰推しなんだ?」

「お、推しか…!」

 

 そんなの決まってる!

 

「全員に決まってるだろ!」

 

 彩と言いたいところだったがとある人からなんかものすごーく怒られそうな予感がしたから間をとってみんなと答えよう!

 

「へー、そうなのか」

「……アギトさんは?」

「日菜」

「即答!?てか呼び捨て!?」

 

 そ、それほど日菜さんのことを推してんだろうな

 

「日菜は俺の妹だからな」

「……?あーあれか、俺の嫁的なやつね」

「…………まあそんなところだな」

「あとは紗夜もだな」

「いやなんでだよ!?」

 

 紗夜さんは関係ないだろ!?てかどこで知った!てか妹じゃないだろ!

 

 あれか?日菜さんを妹と呼ぶにあたってその姉で紗夜はんも妹的なことを言いたいのか?

 

「パスパレは俺達で守ろうな?」

「この人ファンの度を超えてるんですけど!?」

「よし、気分がいいから風俗連れてってやるぞ」

「いや!それはやめてー!」

「もう高速乗ったから降りれねーよ」

 

 な、なんで!?なんでだよ!俺はまだ未成年だぞ!?そんな店入れないだろ!

 

「俺の知り合いが働いてるから大丈夫だろ」

「ふ、不幸だぁぁぁあああ!!」

 

 窓ガラスに頬をあてながらそう叫んだシンは夜街に繰り出すのであった。

 

 が、目的地についた途端走って逃げた話はしない方が良かったのかもしれない。




綺羅編もあと2話で終わります。最初に言っておきますがそう簡単に勝てる相手ではないです。察しがいい人ならわかるかと

そして次回はなんと沙綾の話です。期待してお待ちを!

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それではまた来年の話でお会いしましょう!またね!


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弦巻シンと短編集

あけましておめでとうございます!今回は新年初投稿なので短編から入ります!重い話も一旦リセット!楽しんで読んでいただきたいです!

先に言いますがタグが何個か増える話ですが今回だけなので許してください!

パロディ?回です!それではどうぞ!

今回真面目なアンケートがあるので回答をお願いします


 燐子と付き合いだして1ヶ月が過ぎようとしていた。

 

 いや、そりゃー最初みんな驚いてたさ、沙綾なんて

 

「またまた冗談を〜、え…?本当なの!?」

 

 千聖先輩と彩に関しては

 

「そうやはりシンは巨乳!が好きなのね」

「わ、私まだ未来があると思うの!今からでも考え直さない!?」

 

 そして蘭とモカは

 

「あっそ、二度と話しかけないで」

「いやーモカちゃんも鼻が高いですな〜やはり決めては胸でしたか?」

「へー、ほー、やはりシン君はおっぱい星人でしたか〜」

 

 なぜこの5人が話に上がったのか謎だけど他の人達からは祝福の言葉をいただいたもんさ

 

 まあ紗夜さんに関しては

 

「シンさん気は確かですか!?相手はあの白金さんですよ!?」

「わかってます、それでも俺は燐子を愛してるんです」

「……し、シンさんがそう言うのなら私は止めませんが、くれぐれも食べられないように気おつけてください」

「あっはは!食べられることなんてないですよ!」アハハ

 

 もちろんガールズバンド集団を含め学校のみんなも知っている。

 

 よくよく考えろよ、相手はあの白金燐子、花咲の生徒会長さんだぜ?

 

 そして俺は元文化祭実行委員長として知られていたからこの2人がまさか付き合うとはって話で大盛り上がりさ

 

「よかったなシン!これでお前も卒業だ!」

「やっと僕達と真の意味で友達になれたのかもしれないね」

「いや前から友達じゃなかったの!?」

 

 彼女持ちの蒼汰と亜滝先輩は俺のことをバカにするのと同時に喜んで?いたがバカにされてる方がでかいと思ったよ!

 

「シン、君……か、帰りませんか?」

「ッ!燐子(・・)、帰ろっか」

「はい…!」

 

 蒼汰と亜滝先輩と教室にてだべってる途中に生徒会の仕事を済ませた燐子が迎えに来た。

 

 これが彼女持ちの気持ちか!あの二人は彼女が他校だからこうして彼女が教室に迎えに来るなんてことはないもんな!

 

 ここだけは勝ってると自負してるぞ俺は!?

 

「シン君今日家に行ってもいいですか!?」

「ッ!そ、それって」

「それはもちろん!うふふふふ!」

 

 みんなは白金燐子のことを大人しくて優しい性格の人間だと思うが実際はそうではない。それは表の顔であって裏の顔は

 

「私今日ずっとシン君のこと考えてたんですよ!?」

「早く家に行ってエッチしましょう!」

「ちょ、燐子、待ってってー!」

 

 そう、エッチが大好きな変態少女、毎日相手をするのが本当に大変だけど

 

「えへへ、シン君とエッチ、シン君とエッチ♪」

 

 可愛いから抵抗できないんだよな!?

 

 家につけばもう燐子は止まることを知らない、燃料(性欲)が尽きるまで俺は燐子に付き合わなければないらない!

 

 と、思ったら違うんだよな!

 

「ほら燐子?何が欲しいか言ってみな?」

「そ、そのシン君の……が欲しいです」

「ああ?聞こえないなー」

 

 今の燐子は首輪つけその首輪にはりんこと書かれたネームプレートがぶら下げていてとても女子がしていいような格好ではなく俺の何かをせびっていた。

 

「だ、だからシン君のお……んを!」

「俺言われないとわかんないんだよなー」

「ッ!」

「だからシン君のピーてピーてピーなピーを私のピーをピーにしてください!」

「おっしゃぶち込むぜー!」

 

 2人の夜はまだ始まったばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにこれ」

「そして!ここでOPです!」

「デレデレデレ、デッテ、じゅーんど」

「あんたが歌うんかい!?」

 

 何がOPだよ!この作品はアニメ化なんかしてねーよ!バカかよ!?

 

「大丈夫です!私のCVは志〇さんです!」

「あんまりそゆうこと言うなよな!?」

「ってそれよりもさっきの話はなんですか!」

「私とシン君のラブラブ恋人生活になります!」

「な!わ!け!ないだろ!」

「あー!せっかく頑張って書いたのに!」

 

 書いた、というのも燐子先輩が適当な妄想をノートに書いてきたものを先程読まされたんだ。

 

 まあ内容がクソだったから破り捨ててやったさ!てか後半!?俺ドSみたいになってんじゃねーか!

 

「安心しろ、こんな未来は絶対にやってこないから」

「ううー!ですが約束はあります!」

「なんですか」

「1ヶ月エロゲーも、エロ本も官能小説も我慢した私にはご褒美があります!」

 

 えっへん!と言わんばりに胸を張るその仕草は年頃の男子にとってそれはそれはとても目の保養になりましたな

 

「……こんな妄想してたのにか?」

「よく思い出してくださいよ?」

「お、おう」

 

 なんだよ急に雰囲気を暗くしてさ

 

「私はエッチのシーンを書いてません!」

「は、はぁ」

「これは全然エッチではないんですよ!」

「ッ!た、確かに」

 

 言われてみればそうだな、その前までしか書いてないしちゃんと規制もかかってた、うん、エッチじゃないな

 

「では明日!デートの後にホテルでちょめちょめしましょう!」

「ちょっとまてーい!急すぎるだろ!?」

「心の準備は万端です!」

 

 燐子先輩の準備なんか知らんがな!俺の準備が第一優先だろ!?

 

「私明日は楽しみにしてますね!あ!待ち合わせは後でメッセージ送るので!さよなら!」

「……ど、どうしよう!」

 

 さあ!どうなる弦巻シン!シンの貞操を守る戦いが今!始まる!

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「実は俺……なんだ」

「あ……」

「俺の息子は恥ずかしがり屋でな、いつもタートルネックを被ってて本当に困ったもんさ」

「俺がなんて呼ばれてるか知ってるか?」

「お〇ん〇んボーイカワサキさ!」

「なんでかって!それは先まで……からだ!あっはは!あっはは!あっはははは!」

 

 ショッピングモールないのちょっと洒落たカフェなんかでは無くネックにて俺は燐子先輩に衝撃発言をしていた。

 

「でもそれって手術すればいい話ですよね?」

「ッ!そ、そうですね!?」

 

 実際は違うからな!本当に違うからな!勝手に勘違いしないでよくれよな!?

 

「おい!全然ダメじゃねーか!」

『困りましたね、この程度の下ネタでは歯がたちません』

『りんちゃん下ネタ体制大だからね!しょうがないよ!』

「だったら恥ずかしいこと言わせるなよな!?」

 

 ワイヤレスイヤホンを片耳につけ、燐子先輩に聞こえないよう小声で電話先のアレックス、そして篠崎先輩と話をしていた。

 

 なんでこうなったのかと言う昨日に戻る。

 

「本当にどうしよう、まじでどうしよう」

 

 1人で悩んでいること数秒後

 

「悩める少年!私が解決させて見せよう!」

「いえ間に合ってるので、それじゃあ」

「ま、待って待って待ってってー!話だけでもしようよ!ね!?」

「……はぁ」

 

 篠崎先輩に絡まれたため説明をする。てかどこから現れたんだよ!なんでこうタイミングよく現れるんだよ!?

 

「なるほどなるほど、シン君の貞操の危機かー」

「そうなんですよ!助けてください…ってあんたは燐子先輩派閥だったな」

「そんなことないよ!私だってわかるよー?さすがに初めては好きな人としたいもんね!」

「……あれ?なんかまともなこと言ってんだけどこの人」

 

 この人がそんなこと言うとは思わなかったな、てか篠崎先輩もまだそのしてないって言ってたし?

 

 先輩も好きな人としたいってことなのかな?

 

「ってことは俺を助けてくれるんですか!?」

「もちのろん!シン君の貞操は私達(・・)が守るよ!」

 

 初めてこの人が女神様かと思えた瞬間だよ!てか、あれ?

 

「私達?」

「うん!」パンパン

 

 手を叩くとどこからか黒服の人達が現れた。いやこころの所にいるのはわかるけどなんで篠崎先輩の所にも現れるんだよ

 

「旦那様が付けた方がいいって言ったからね!」

「親父ー!!??」

 

 思いやりがあっていい親父ですね!

 

 てか私達が黒服で終わるわけがない!嫌な予感がするんですが!?

 

「なるほど!シン様の童貞を守ると!あれ?卒業したくないんですか?もしかして魔法使い目指してますか?」

「目指してねーよ!てか初めてぐらい好きな人としたいわボケ!」

 

 やっぱりこいつも来るよなアレックス!篠崎先輩とアレックスがそろうとかもうこんなの終わりだろ!俺絶対明日燐子先輩に食われて終わりだよ!

 

「そんなことはありません!この急遽作ったドキドキ!デート大作戦!支援ルームにてシン様のデートをサポートさせていただきます!」

「やめろー!なんか見たことある光景だろ!」

 

 あの屋敷の一部屋がなんということでしょう、大きなモニターが壁に付けられ司令官が座るような椅子も用意されてるではありませんか

 

「にしても作り込まれてるな」

「はい、我々少々張り切ってしまいました」

 

 いやなんでだよ!なんで張り切る必要があったの!?

 

「あのシン様の役に立てるなんて我々…!」

「もうこれ以上嬉しいことはありません!」

「あっああああ!シン様!」

 

 な、なんだよこいつら!俺の役に立てて嬉しいのか泣き始めたんですけど!?

 

「とりあえず今回は私が司令官よ!」

「司令官ってなんだよ」

「うるさいわよこのミーデラゴミムシ!」

「口悪!?」

 

 篠崎先輩のやつ司令官席に座ったら急に態度変わったな、なんなんだよ

 

「なー!なぜ巨乳娘がその席に!貧乳の私が座るべきです!」

「チッチッチッ、私のCVは竹〇さんよ」

「くっ!それは敵いませんね」

「さっきから何言ってんだよあんたらは!?」

 

 CVとか出さないでよ!これ以上出したら怒られちゃうよ!誰かがさ!

 

「シン君、今だけはあなたはCV島〇さんと言う権利を与えるわ」

「要らんわそんな権利!」

 

 いやそのいらないって言うのは違う意味ででな!別に嫌ってるとかじゃなくてあー!日本語って難しいね!

 

「いいじゃないですか、イケボですよ?」

「あ、ちなみにアレックスのCVは川〇さんです!騎士の私にピッタリだと思いませんか?」

「もうやめてくれー!!」

 

 これはやばいよ!く、クソ!これ以上声優さんの名前を出しては行けない!これ以上はタグを付けないと行けなくなってしまう!

 

「って何言ってんだよ俺は!」

 

 自分で自分の顔面をぶん殴りいいか聞かせるがこれと言って変化なんて何も無い

 

「おーす、お前ら何してんだ?」

「アギトさん!みんながおかしいんですよ!自分のCVはなんちゃらだって言ってて!」

「へー、そうなのか」

「アギトさんのCVは誰なんですか?」

 

 し、しまった!CVとか言わなければ篠崎先輩がアギトさんに話を振ることもなかったのに!クソ!やらかした!

 

「俺かー俺はな」

「言わなくていいからな!?」

「ふっ、これが梅〇さんなんだよなあ!」

「だぁぁぁああ!!不幸だぁぁぁああ!」

 

 豪華すぎる!なんだよこれは!?こいつらこんないい声してたか?

 

 ああ、ダメだもうそのような声にしか聞こえない!みんなカワボとイケボすぎますよ!?

 

「てかこんなルーム作って何すんだよ、言っとくが俺は燐子先輩とまともなデートする気なんてないぞ?」

 

 なんなら最終奥義!デートをしないって作戦がある!お腹痛いとか言えばなんとかなるだろ、多分!

 

「そんなのでりんちゃんの性欲が収まるわけないでしょ?(竹〇ボイス)」

「そもそもりんちゃんさんとは誰ですか?(川〇ボイス)」

「あの黒髪ロングの巨乳だよ(梅〇ボイス)」

「どんな覚え方だよ!?」

 

 てかもう声優ネタやめてくれよ!?シンさんちょっとついていけませんから!

 

「あーあの巨乳娘ですか!」

「そうそう、可愛い子だよ!」

「……まあそれは否定しないな」

 

 可愛いけど変態で性欲バケモンだけどな!

 

「つまりあれか?」

「?」

「最悪なデートを送ればそのりんちゃんもヤるきうせんじゃね?」

「あー!なるほどね!」

 

 確かにそうだ!最悪でクソみたいなデートだと好意すら失せてくる!そしてやる気だって無くなるはずだ!

 

「最初からそう言ってるじゃん!」

「言ってねーよ!いつ言ったんだよ!?」

「シン様大丈夫です!我々が最悪のクソみたいなデートプランを立ててみせます!」

「ふ、不安しかねぇー!」

 

 こうして俺は一生忘れられないほどのクソみたいなデートを送るはめになるのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 デート当日、俺はショッピングモールの噴水エリアにて1人で待ち合わせの2時間前から待機していた。

 

『ちゃんと2時間前に着いたわね!偉いね!』

「やめろー!そうゆうことを言うのは!」

 

 今はワイヤレスイヤホンを片耳につけているため篠崎先輩の声が聞こえてくる。

 

 彼女達は衛生がどうたらーとかなんか知らんがこちらの様子はモニターにて見れるようだ、うんわけわからん

 

「てかさっきから人の視線が痛いんですけど!?」

『それもそのはず!なんせシン様の服装は私が揃えましたからね!』

「……だと思ったよ」

 

 肩から力が抜けたようにだらーんとなった後改めて自分の服装を確認した。

 

 黒服の長袖に半袖のカッターシャツを羽織っていてズボンは所々穴が空いている。

 

 ダメージジーンズなんかじゃない、普通の穴だ。そして足元は学校の保護者などが履くあの緑色のスリッパ

 

 そして先程長袖を着ていると話したがその胸元には「I♥貧乳」と書かれている。

 

 そしてタバコではなくココアシュガレットを片手に、そしてもう片方にはワンカップ酒と見せかけてのサイダーを手にして待っている。

 

 まあこれだと注目されるよね!?

 

 なんだよこれは!こんなんで同級生にあってみろ!俺が今まで積み上げてきたステータスが一気に崩れ落ちるぞ!?

 

 1人でそんなことを考え1時間50分後

 

「シン君お待たせしました」

「……………………」

「えっと、シン君?」

「あのー、遅すぎません?」

「へ?」

 

 燐子先輩は全然遅くありませんよ?なんならちゃんと10分前に来ていい子ちゃんさ、けど…!ここから最悪のデートプランは始まってるんだよ!

 

「俺2時間前から来てんだけど?まじ2時間時間潰したわー」

「そ、それは!……ごめんなさい」

 

 そう、わざと2時間前に来ていかにも待ち合わせ遅れたねと思わせる作戦、いやー考えたやつクズだろ!

 

『この見た目で理不尽なことを言われたら1発KO!巨乳娘滅ぶべし!』

 

 私情が出てくるが無視しとこうか、できればこれで終わらせたい!たのむよ燐子先輩!

 

「ごめんなさいですむなら正義の味方なんていらねーんだよ」

「だったらどうしたら許してくれますか?私なんでもします!」

「ッ!え?あ、え?なんで、も?」

 

 ここで終わらないのかよ!適当になんか言って

 

『選択しよ!シン君!』

「そこまで忠実に再現しますか!?」

 

1.土下座して一生肉〇器になって償うと言わせる

2.ノーブラ、ノーパンにさせデートをする

3.ヤらせてくれたら許す

 

『シン、1と3…お前はどっちが好きだ?』

「いや知らねーよ、てかこっちは何も見えねーよ」

 

 選択しよって言われても何もわからねーんだよ!

 

『とりあえず童貞を守るためには2ね、シン君ごにょごにょ』

 

 くっ!こ、これも俺の童貞を守るため、仕方がないことなんだ!

 

「の、ノーブラノーパンでデートしてくれたら許そうかな!?」

「ッ!」

 

 流石にこれはやばい…!もう友達って関係も終わりを迎えるレベルでやばい!

 

 流石に引いてくれたか?

 

「ならよかった」ホッ

「え?」

「その程度で許されるなら…」ヌギヌギ

「ちょ!ストップ!ストーップ!」

 

 まさか受け入れるなんて思いもしないよな!?

 

「嘘です!嘘なんで!だから脱がないでください!お願いします!」

「でも許してもらえ」

「許しますから!」

 

 ここで脱がれなんてしてみろ!今の俺の見た目ですらこんなに痛い視線を浴びてるのにそんなことされたらもっと酷くなるので!

 

「と、とりあえずネック行きますかね…」

「はい♪」

 

 上機嫌な燐子であったがシンは更に気分が悪くなるだけだった。

 

 

 

 

 

 ってなわけでネックではあのやり取りがあったんだよ、あんな下品な下ネタを言いまくったにも関わらずまだ引かないからな…恐るべし燐子先輩

 

「シン君その胸元に書かれてるのは」

『食いついた!今です!』

「ふっ、俺は貧乳しか愛せない男なのさ」キラッ

 

 うわー気色悪、俺何言ってんだろう。いやそれよりもこの言葉を聞いたら巨乳の燐子先輩はどう反応するのか!

 

「へーそんなんですねー」

 

 おっと燐子先輩はスルーしていくー!これはこの服着た意味無いな

 

「そろそろ……い、行きませんか!?」

「ひっ!?」

 

 行きませんか?それはホテルに行きませんかですよね!?

 

 嫌だよ!行きたいくない!俺まだ死にたくないよ!

 

『もう打つ手がありませんねーいっその事抱けばいいんじゃないんですか?』

『でもりんちゃんのことだから張り切ってていざ本番!ってなると気絶しそうなんだよね』

「じゃあなんでしたがるんだよ!」

 

 本番で気絶しそうならする意味ないだろ!?てか何が目的だよ、なんで俺なんかとしたがるんだよ!?

 

『シン君大きさだけは誇ってもいいからね』

『え?』『あ?』

『……しまったぁぁ!』

 

 篠崎先輩が爆弾発言をした後弦巻家のメンツとの通信は途絶えてしまった…きっとアレックスとアギトさんに尋問されてるんだろう

 

 ちなみにだがなぜ篠崎先輩が俺の大きさを知ってるのかは説明しません

 

「誰かに見られたらまずいので早く!」

「いや無理っすよ!?……はっ!」

 

 ここで現れるか救世主!君が今日この場所に来てくれてたことにありがとう!

 

「あこぉぉぉぉおおおおおお!!」

「ぬわっ!?シン先輩!?」

 

 あこを見つけた途端駆け寄るがその前にシャツのボタンを閉めて胸元の言葉を見られないようにして背中に隠れる。

 

「あ、あこちゃん!?」

「りんりんまで!なーに?お二人さんデートだったのかな〜?」

「違うからな」

 

 こんなのはデートだと思いたくもねーよ

 

「あ、あこ?シンさんと遊ばないかい?」

「あこはいいけどりんりんは?」

「………………えっ?あ、うん、いいよ」

 

 なんであこがここにいるのか知らんが助けられたことには変わりない、何か奢ってやろうか

 

「あこちゃん、これからホテルに行くんだけど来る?」

「ホテル?」

 

 ふっ、あこに言ったて意味ないだろ!3Pを狙おうと思ったかもしれないがそう上手くいかねーよ!

 

「あー!あのNFOとリアルコラボしてるホテルだね!行く行く!」

「……」グッ!

 

 あこに見えないようにガッツポーズしてるけど俺は見落とさないぞ、てかコラボって…コラボしてる限りラブホではないんだろうけどさ

 

「でもシン先輩してないよね?特典貰えないよ?」

「……特典を貰うだけじゃないんだよ?」

「ッ!こ、こいつやっぱり!」

「そうですよ!あこちゃんも加えれば怖いものなんてないんですよ!あっはははは!」

 

 く、狂ってやがる!?これはもうキャラ崩壊で許される度を超えてますよあんたは!?

 

「では特典(童貞)を貰いに行きましょう!」

「うん!あこすっごく楽しみだな!だってSSRの装備ゲットできるなんて凄いしそれに」

「ふ、不幸っっっだぁぁぁああ!」

 

 純粋なあこだが後に燐子派閥に汚染されていくことをまだ知らないのであった。もちろんシンもまさか燐子に奪われるとは…ね?

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「……3Pは嫌だ!」

「はぁ、はぁ、はぁ……あれ?」

 

 目が覚めると自分のベットの中にいた。カレンダーを見てみるとあの出来事の人は偉く日が離れている。

 

要するに?

 

「ゆ、夢だった!」

 

 よかった!本当によかった!まじで俺燐子先輩にやられたのかと思ったよ!?

 

 で、でも夢であんな……いや何も見てない、忘れよう

 

 時計を見てみると朝の6時、普段ならまだ寝てるが早起きは三文の徳、って言葉信じて今日は朝から山吹ベーカリーにてパンを買い優雅な朝食としようじゃないか

 

 学校に向かう準備をして家を出て山吹ベーカリーへ向かう。

 

「朝一だから沢山残ってるだろ」

 

 そんな気分で商店街を歩いているその途中

 

「おーい!遅いぞシ〇ー!きなこパンがなくなってしまうでわないか!」

「わかったわかった、今行くから待ってろよな」

「おにーちゃん!帰りはコンビニでチュッパチャプスのニューフレーバー買ってね!」

「買ってあげるから少し落ち着こうな?ほら、なんかすんごい目で見られてるから」

「………………へ?」

 

 この世界に空〇震なんて起こりませんので安心していつも通りの生活を送ってくださいね

 




キャラ崩壊の度を超えていましたね…アレックスとアギトさんの声ですがわかりましたかね?答え合わせは感想にて!

個人的には今回みたいな短編集を沢山投稿したいな

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!

それと今年もよろしくお願いしますね!ではまた次回の話でお会いしましょう!


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弦巻シンと沙綾の思い

どうも!お久しぶりです!前回の話は完全に本編とは関係ないので!勘違いしないでくださいね!

それではどうぞ!


 あれから数日がたった。あの日の後学校に登校してみるとクラスのみんなから声をかけられた。

 

 まさか自分のことを心配してくれてたなんてことをしれて嬉しかった。だってそうそうないだろ?クラスのみんなが心配してくれるようなことなんてさ

 

 まあでも

 

「みんなー!迷惑かけてしまったわね!」

「でももーう大丈夫!あたしは平気よ!」

 

 と、こころが教室に入った瞬間にそんなことを言ったからこころを含め俺も言われた気しかしないけどな!

 

 と、まあ学校生活を順調に送れております。

 

 そして約束(デート)の件だけど今週末にパスパレのライブがあるためそれが終わってからにしようって話が上がったためそうすることにした。

 

 やっぱり単独ライブとなると準備が忙しいようだ、彩も千聖先輩もイヴも学校に来ていなかった。

 

 大和先輩も日菜さんも学校に行かず準備をしているんだろう。

 

 そしてライブまでの平日に特に話すようなことは起きずすぐにライブ当日がやってきた。

 

「……やば、凄い人数だな」

「こ、これは凄いね」

 

 都内のライブ会場に着くのはいいが会場の入口には長蛇の列ができていた。

 

「いやーさすがパスパレ、人気すぎだろ」

「こんななかクラス分のチケット確保するなんてイヴは一体何をしたんだろうね」

「何をって普通にくださいってお願いしたんじゃないのか?」

 

 他にどうやって手に入れる方法があるんだよおたえさん

 

「……アイドルだよ?」

「おう」

「枕営業…とか?」

「それは冗談でも言うなよ!?」

「はーい」

 

 イヴがそんなことするわけないだろ!あとそう言うことは言っちゃいけないだろ、ただでさえ千聖先輩は…ってやめとこうか

 

「他のみんなは?」

「ん?私とシン君がデートするって言ったらみんなどっか行ったよ」

「いらん嘘をつくなー!」

 

 前にも好きじゃないって言った覚えがあるが何を聞いてたんだよこいつは!

 

「って普通に後ろにいるじゃねーか!」

「だってシン君が興奮して1人だけ早く行くから着いてきてあげたんだよ」

「…………それは、すまん」

 

 だってライブだぞ!あのテレビで見てたパスパレが生で見れるんだぞ!?

 

 いやみんな学校で会ったり見かけたりはするけどさ!このなんだ?パスパレのライブ衣装を纏った所を生で見たりするのは初めて…ではなかったー!

 

 そう言えば夏休み海行った時たまたまライブしてたな、思い出したよ

 

 でもでも!今回は規模も違うし!衣装だって違う!楽しみにして何が悪いんだよ!?

 

「シン君はパスパレと私どっちが好き?」

「もちろんパスパレだな!」

「えー私じゃないの?」

「お前ちょっと黙れよ!?」

 

 なぜにおたえのことを好きにならないといけないんだよ!?何度も言ってるが好きなんて1度も言ったことないぞ!?

 

 これからパスパレのライブが始まる。嫌なこととか考えてることとか全部捨ててこのライブを楽しもうと思ってる人は少なからず沢山いるはずだ。

 

 もちろん俺もその1人だ。だけど…

 

「♪」

「?シン君電話来てるよ」

「あっ!いっけねー電源消してなかったな」

 

 携帯を取り出して画面を見てみると

 

「……千聖先輩?からだ」

 

 一体俺に何用だ?なんか手伝って欲しいことでもあるのかな?だったら頼ってもらって嬉しいな!

 

「もしもし、どうしましたか?」

 

 元気な声でそう言うが帰ってきた返事は俺がまったく想像もしていなかった声だった。

 

「……よー久しぶりだな、弦巻シン」

「ッ!……は?」

 

 シンのかなり低い声が口から出ていた。

 

「貧乏人は亡くなったが大丈夫なのかよ、なあ」

「綺羅!てめぇ!千聖……先輩に何をした!」

 

 ここで千聖先輩なんて大きな声で呼べない。だってここにいるのはみんなパスパレのファンの人達だ。

 

「何をってちょっとかっさらってきただけだろ?」

「……お前自分が何してるのか分かってるのか…!」

「いいねその声!ああーお前の表情が見れないのが辛いぜ」

「お前頭おかしいだろ」

 

 千聖先輩が拐われた?何やってんだよイベントスタッフ!なんでこうも簡単に!

 

 まさかアイクか!あいつがスタッフをねじ伏せて、いやでもそんな感じは周りのスタッフを見てわかる。

 

 もしそんなことが起きてたら平然な顔して仕事なんてしてられないだろ

 

「……白鷺千聖だけだと思ってるだろ?」

「ッ!お前まさか!」

「あっはは!全員集合ーなんちゃってな」

「ッ!」

 

 シンが握ている携帯のガラスケースが割れてしまった。怒りを抑えきれず握っていた携帯を無意識のうちに強く握りすぎていたようだ。

 

「何が目的だ」

「俺さお前のこと嫌いなんだよ」

「安心しろ俺も嫌いだ」

「……お前のあの絶望した顔は最高だったよ!ふはは!」

「ッ!」

 

 俺の絶望した顔は最高だった?あーはいはいそうですか、そんなのどうでもいいよ

 

「みんなは何処にいるんだよ」

「おいおい話は最後まで聞こうぜ?」

「……問題、でーれん」

 

「ここで白鷺千聖達を犯したらお前…どんな表情になる?あの時と同じ顔になるよなー!」

「…………やめろ」

「だがな?アイクがどうしてもお前と戦いたいって言うもんだからチャンスをやるよ」

 

 俺と戦い?違うだろ、ただ殺したいだけだろこの殺人鬼が、それにチャンス?なんだよそれ

 

「今から30分だけ待ってやるよ、それまでに俺達が何処にいるか探し出すんだな!ふはは!」

 

ッー、ッー、ッー

 

 電話が切れた後シンはその場からすぐに動き出した。

 

「ちょ、シン君?」

「……おたえ、悪いけどちょっと急用ができた」

 

 それだけおたえに言いシンは走り出した。

 

「ライブは1時間後に始まるからー!それまでに戻ってくるんだよー!」

「……ああ、必ず戻ってくるよ、みんなで!」

「?」

 

 みんなが並んでいる中シンだけ会場とは逆方向に向かって走っていた。当然他の人達をからは不思議そうな目線で見られる。

 

 そんな中彼女は見つけた。

 

「ッ!シン!」

 

 沙綾はシンに話しかけてもシンは止まることなくて沙綾の隣を走りすぎて行った。

 

「あの顔」

 

 沙綾にとってシンの怒った顔を見るのは初めてだった。だから…余計に心配になった。

 

「ごめん香澄!用事思い出した」

「え!?さ、沙綾ー!」

 

 沙綾は列から出てシンの後を追いかけた。だけど沙綾の足がシンの速さに勝るわけがない。それでも沙綾はシンの追いつくために走り出した。

 

 

 

 今から30分でみんなのいる場所を見つけ出すなんて不可能に近い!走ってても間に合わないし…スケボーはどっか行ったし!

 

「……クソ!」

 

 どうやって探し出せばいいのかわからない!時間だって限られているのに…!

 

「もう頼るしかないのか?」

 

 黒服のみんなに頼れば見つかるかもしれない。だけどそれは俺一人で見つけ出したことにはならないだろ

 

「……いやそんなの関係ないだろ!」

 

 自分のプライドとかクソ喰らえだ!俺のプライドを捨ててみんなが助かるのならそれに越したことなんてないんだよ!

 

 こないだアギトさんと連絡先を交換したため電話をかける。

 

「シン!電話かけてくると思ってたぜ」

「?そんなことよりパスパレが!」

「ああわかってる!クソが、あいつらスタッフ全員買収してやがった…!」

「パスパレが拐われたのは知ってる、こっちで調べてるからお前は今から送る場所に向かってくれ」

 

 ちょ、ちょっと待ってくれ!話が読めない!

 

「とりあえず何処にいるのか探してくれんだよな?」

「ああ、必ず見つけ出すから待っとけ」

「だったら話がある!あと28分以内に見つけないと千聖先輩達が」

「日菜がどうした」

「……犯される」

 

 アギトさんは日菜さんのことを妹と呼ぶほど推している。そんな推しメンが犯されるなんて聞けば

 

「……正義の野郎、また懲りずに日菜に手を出すのかよ!」

 

 言ってる意味がわからないがとにかくアギトさんが珍しく切れていることだけはわかった。

 

「お前はとりあえず絞った場所に行ってくれ、スケボーなら何とかなる」

「……それが無くしたんだよ!」

「は?お前無くしてないだろ」

 

 またまた何を言ってるのかわからない。もうさっきから何言ってるかわかんないんだけど

 

「お前のスケボーなら……の家にあるだろ?」

「……は?なんで?」

「なんでってGPS埋め込んでるから場所ぐらいわかるっての」

「てかわざと置いてんじゃないのか?シンジと弟仲良いだろ?」

 

 し、知らない!なんで、どうして

 

「……沙綾が俺のスケボー持ってんだよ」

「とりあえず回収できるならしとけ、俺達は時間までに必ず見つけ出す!」

「ッ!あ、ああ!頼んだ」

 

 考えること数秒、その間シンは動いていなかった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 走り続けていた沙綾はシンの姿を捉えることができた。だから

 

「シン!」

 

 と大声で叫んだ。

 

「ッ!沙綾?」

「……や、やっと追いついたよ」

 

 肩を揺らし息を切らした沙綾が俺に話しかけてきた。

 

「シン?急に走ってどこ行くの?ライブ始まるよ?」

「……………………」

「……シン?」

「ッ!ご、ごめん」

「?」

 

 沙綾がどうしてここにやってきたのわからなかったから考えてみたが…まさかスケボーのことを話に来た?

 

 そもそもスケボーの件についても別に盗んだりしたわけじゃない。

 

 そうだよ、拾っててくれたんだ。後で俺に渡すために1度家で保管しているだけだ、そうに違いない。

 

「……シン?」

「ッ!…………なあ、沙綾」

 

 だけど…!

 

「俺のスケボー、返してくれないか?」

 

 こう聞いて素直に返すと言えば好意的にスケボーを拾って保管していたってわかる。でもここで別の反応をしたら…調べるためにあえて俺はこう聞いたんだ。

 

 さあ、どう出る

 

「……そっか、シン知ってたんだね」

「あ、あれだろ?俺がなくしたから探して見つけてくれたんだよな!」

「なかなか返すタイミングなくて返せなかっただけなんだよな!」

「……………………」

「……なんか答えてくれよ」

 

 沙綾はずっと下を向いたまま応えようとしなかった。だけど急に俺にこう聞いてきた。

 

「シンはスケボーを返してもらって何をするの?」

「ッ!」

 

 そんなのは決まっている。

 

「……みんなを助けに行く」

「みんなって?」

「……パスパレだよ」

 

 俺は沙綾に今の状況を全て話した。パスパレが拐われて助けに行かないといけないと言うことを

 

「だから沙綾!俺は助けに行かないといけない!スケボー…返してもらってもいいか?」

「…………嫌だ」

「ッ!なんでさ!」

「だってシンは今から危ないところに行こうとしてるんだよ!?」

「ッ!」

「わかっててスケボーなんて渡せない!」

 

 渡せないって!それは違うだろ!

 

「沙綾は預かっててくれただけだろ!だったら返してもらってもいいだろ!」

「違う!」

「さ、沙綾?」

 

 沙綾は今までで一度も聞いたことがない声音で違うと言ってきた。そのため俺は少し以上に驚いて咄嗟に名前を呼んでしまった。

 

「私はシンのスケボーを預かってたんじゃないの」

「……もう二度とシンの元に帰らないように隠してたの」

「ッ!なんでそんなことを!」

「だって、だって…!」

 

 沙綾は泣きながら俺に叫ぶように言葉を述べた。

 

「シンはあのスケボーがあるから無茶をする!」

「確かにあのスケボーのおかげで純は助かったよ?」

「でも…!あの時シンはとても危ないことをしてたんだよ!?」

「そんなのは、わかってる!」

「全然わかってない!」

 

 一度思いをぶつけた沙綾は口を止めることなく俺に思いをぶつけてきた。

 

「みんなから聞いたよ、千聖先輩の件の時も無茶したって!」

「それは助けるために!」

「でも助けられなかったでしょ!?」

「ッ!」

 

 確かに沙綾の言う通りだ。俺は千聖先輩を助けられなかったさ

 

「やっぱりスケボーを回収してて正解だった、だってシンはこれからまた無茶しようとしてるから」

「無茶、だって?」

 

 確かに無茶かもしれない。あいつらの目的は俺であって千聖先輩達は俺を呼ぶための言わば餌だ。

 

 もちろんそれは罠でもある、みんなの所に行けば俺はアイクと戦うことになって勝つか負けるの究極の結末を迎えてしまうだろう。でも!

 

「……行かないとダメなんだ…!」

「俺が行かないとダメなんだよ!」

 

 他の誰でもない俺が行かないと解決しない問題なんだ。時間だってないのにまだ場所すら掴めていない!

 

「あのスケボーがあればまだ間に合うかもしれないんだよ!」

「……手を伸ばせば助けられる希望があるんだよ!」

「だから沙綾!スケボーを返してくれ!……頼む!」

 

 こうしている間にも千聖先輩達は何かされているのかもしれない!ここで時間を潰している暇なんて俺にはないんだよ!

 

「……嫌だよ…!」

「ッ!沙綾!」

「だってそこに行ったらシンがまた壊れちゃう」

「……私はシンがおかしくなった時何も出来なかった…!」

「他の人達は話しかけるのに私はなんて声をかければいいのかわからなくて何も出来なかった!」

「シンが苦しんでるのに何も出来なかった私ができること、それは!」

「シンがひどい目にあう前に止めることしか考えが浮かばない!」

「…………沙綾」

 

 でも俺は、それでも俺は助けに行かないといけない、だって

 

「正義の味方だから?」

「ッ!」

「もういいよ、シンは私達の正義の味方だよ、これ以上無理なんかしなくていいんだよ?」

「そうゆうことじゃないんだよ、俺が助けにいかないと!」

「そんなの行かなくていい!アイドルが拐われてるんでしょ?そんなの警察に任せればいいよ!」

「だけど俺は!」

 

 警察が行けばいいとかの話じゃないんだ。これは俺と綺羅達の戦いだ。横から警察が入ってきたところであいつらは止まるなんてことは無い。

 

 俺が直接成敗しないとあいつらは無関係の人を巻き込み俺に嫌がらせをしてくる!

 

「たとえ叶わない相手だったとしても正義の味方は立ち向かわないといけないだ」

「……どんなにボロボロになっても立ち続けないといけないんだよ」

「どんなにボロボロって…!私は嫌だよ!」

 

 確かに沙綾のことだからそう思うに違いない。でも…正義の味方になりたいと目指した以上悪には立ち向かわないといけないんだ。

 

「私はもう無理だよ」

「なにがさ」

「私は、もう!シンがこれ以上ひどい目にあうのは耐えられない!」

「自分の大好きな人がひどい目にあうのはもういやなの!」

「ッ!」

 

 自分の大好きな人?……そっか、沙綾も俺のことが好きだったのか、のに俺は沙綾の前で他の人達と仲良くして?

 

 今までたくさん我慢させてきたってことかよ…!

 

「お願いだから…もう、どこにも行かないでよ」

「………………あ」

 

 沙綾は俺に抱きついてきた。それは言葉通りどこにも行って欲しくないように

 

 抱きついてきた沙綾は震えていて、本当に怯えているようだった。

 

 これほど俺に対して心配しているのにここで俺が無理やり引き剥がしてパスパレの所に向かったとしても沙綾はそれを許さないだろう

 

 でも、俺は

 

「……ごめん沙綾」

 

 俺は沙綾はから離れて目を見て話す。

 

「ッ!どおして!なんでそこまでして助けようとするの!?」

「今回は今までとは違うんでしょ!本当に死ぬかもしれないんでしょ!」

「ああ」

「だったらなんで行くの!」

 

 そんな理由はひとつしかない、だって俺は

 

「正義の味方、だからな」

「ッ!……もう何を言っても聞いてくれないの?」

「私は帰ってくるかもわからないシンのことをずっと待っとかないといけないの…?」

「何言ってんだよ沙綾」

 

 そう言うと沙綾は驚いたように反応する。そりゃ急に否定されるようなことを言い出そうとすると驚くさ、でもそうじゃないんだ。

 

「俺はみんなの正義の味方、つまり沙綾の正義の味方でもある」

「……俺はお前を守るために絶対戻ってくる」

「ッ!」

「返事は必ずする、だから…」

 

 沙綾のこれ以上辛い顔は見たくない、いや原因は俺だけどさ?原因が俺ってことだからこそ心にダメージってのが大きいんだよ

 

「笑え沙綾!何度も言うがお前は笑顔が似合う可愛い子だからな!」

「……うん!うん…!」

 

 無理矢理感があるけど…そこはごめん

 

「スケボーは純とかにあげとけ!俺は走って行くからさ」

「……じゃあ助けてくる」

 

 そう言い出し沙綾に背を向けてその場から立ち去ろうとした時

 

「シン!」

「?」

「いってらっしゃい」

 

 沙綾はとても不安がっているはずだ。でもそんな中沙綾は笑顔でそう言ってくれた。これはもう戻ってこないとダメだな

 

「おう!」

 

 シンは答えると後ろを振り向くことなく走り出したのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「後5分ってところか、弦巻シンは来るのかぁ?」

 

 廃ビルの中にてアイクが綺羅にそう問うた。

 

 その廃ビルは簡単に崩れそうで来月取り壊しが決まっているビルだ。

 

 そんな中に綺羅が入ると思わないが…何があってここに決めたのかは綺羅本人しか知らない。

 

「知らんな俺に聞くな、そこの女共ならわかるんじゃないか?」

 

 綺羅の視線の先には腕と足を縛られたパスパレのみんながいた。

 

「こんなことしてタダで済むとは思わないことね」

「おいおい固いこと言うなよ白鷺千聖ぉ」

「あなたとなんて喋る気ないわ」

『……………………』

 

 他のメンバーは千聖とアイクの間で何があったのかを知ってるため話に入ってこようとしなかった。

 

「……シン君、助けに来てよ」

 

 今にも泣きそうな彩が小声で言うと

 

「大丈夫です彩さん、師匠は必ず来てくれます」

「でも後数分で来ないとジブン達は」

「考えても意味ないでしょ?それにシン君だけじゃなくてスタッフの人達も探してるはずだよ」

 

 日菜の話は普通のスタッフ共だったらの話だ。しかしスタッフは全員買収されている。そんなことを知らずにパスパレのファンはライブ会場で彼女達を待ってると思うと複雑な気持ちにさせられる。

 

「日菜さんやけに冷静っすね」

「んーよくわからないけど助かる気しかしないんだよねー」

「ねえねえおじさん、シン君に恨みがあるならあたし達利用しなくてもよくない?」

「……貴様は昔と何も変わらんな」

「…………どゆうこと?それ」

 

 綺羅は顔を片手で隠したかと思うと綺羅ではなくアイクが声を荒らげだした。

 

「おぉーい!こねじゃねーかぁ!」

「ふん、後2分か、もう間に合わないだろ、好きにしろアイク」

 

 あと2分で登場!なんてことは起きずアイクはパスパレのみんなの所へ行く

 

「白鷺千聖ぉまたお前が相手とはなぁ」

「あら?処女ではない私から襲うなんてよっぽど私のことが気に入ったのね」

「なわけねーだろ、てめぇのあの時の声と顔が忘れれねーからまたやるんだろうがぁ」

『ッ!』

 

 流石のパスパレのみんなもそこまでの話は知らない。その言葉を聞いた時一同は何も言葉が出なかった。

 

「…………ふふ」

「あ?」

「ふふふ!ふふ!あはは!あっははは!」

「千聖ちゃん!?」

「ちょ!大丈夫っすか!?」

 

 千聖は大声で笑い出した。いきなり大声で笑い出すもんだからみんなが心配するのは当然だ。

 

「ふふ、久しぶりにお腹を抱えて笑えたわ、お腹は抱えてないけど」

「……何が言いたい?」

「わからないの?なら頭まで筋肉になっているあなたにわかりやすく教えてあげるわ」

「……私は女優よ?感じてる演技の一つや二つぐらいこなしてみせるのよ…!」

「ッ!」

「あなたのよりシンの方が大きくて立派で気持ちよかったわ♪」

 

 女優の千聖が言ってはいけない言葉だがアイクを挑発させるには持ってこいだ。

 

「てめぇは殺す、じゃなあな」

 

 と千聖に己の拳を振りかざそうとした時

 

「へー俺っていつの間にか千聖先輩で卒業してたんすね」

『ッ!』

「…………そうよ、違うかしら?」

「全く記憶ないですねーったくいい思い出だと思うんですどねー」

「ええ!?シン君と千聖ちゃんほ、本当なの!?」

「本当よ」

「嘘だから大丈夫だぞー彩」

 

 急に現れたシンに対してみんなは驚いていた。彩に関しては別件で焦っていたが誤解だとしれてホッとしたがすぐに自分の状況に気づくアワアワしていた。

 

「まさか本当に来るとはな?お前一人か?」

「そうに決まってるだろ、ほら俺が来たんだからみんなを解放しろ!」

「勝手にしろ」

 

 勝手にしろ、なんて言うからみんなの縄を木刀で切り解放させる。

 

「よお弦巻シン!ここに来たってことはやるんだよなぁ!?」

「ああ、やってやる!やってやるぞー!」

「あ?」

 

 シンは縄を切るために出した木刀をしまいこう言い出した。

 

「よーしっ!お前ら逃げるぞ!」

『へ!?』

「ほら走れ!捕まったら犯されちまうぞ!」

 

 ビルの最上階、から逃げるとなれば階段を駆け下らないといけない。

 

「逃がすわけねーだろ弦巻シン!ここまでやったんだぁ!正々堂々戦いやがれぇ!」

「ちょいろいろあるんだよ!察せ!」

「待ちやがれぇぇぇええ!」

「どうせなら女の子に追いかけられたい人生だったぁぁぁああ!」

 

 生と死をかけた鬼子ごっこ、そしてアイクとシンの戦いは始まるのか、シンの人生を大きく左右する戦いが今、始まる。

 




時間がなくてあまり詳しく書けなかった。次回でシンが戦ってない理由など説明しますのでお待ちを!

そして次回でアイクとの決着はつきます。ちょっと残酷な描写があるかもですがお許しを、そう簡単に終わる相手ではないので!


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弦巻シンと綺羅:アイク編

お待たせしました…昨日は投稿できずにすみませんでした!

今回で終わりです!まあ…一部残酷な描写とかありますが今回だけなのでお許しを

それではどうぞ!

誤字とかは後日訂正します


 無事にパスパレのみんなと合流はできたがかなりまずい状況に変わりわない。

 

「待ちやがれぇ!弦巻シンンンー!」

「ッ!」

 

 みんなで逃げてる最中に柱の一部を壊し、コンクリートの欠片を投げてきた。もちろん木刀にて叩き落とすが全てってわけじゃない。

 

 致命傷にならない程度の欠片は振り払ってない、そのため窓ガラスの割れる音が辺りに響く

 

 そして怯えるみんな、無理もない人生でこんな勢いで殺しに書かれることなんてそうそうない、てか普通じゃない

 

「……あ!」

「ッ!麻弥ちゃん!」

 

 大和先輩が不意に転けてしまい俺達の集団と離れてしまった。それにいち早く気づいた日菜さんが大和先輩に手をかそうとする、でも

 

「ちょうどいいぃ!まずはお前からだぁ!」

 

 当然アイクが手を抜いてくれるようなサービス精神のさの字もない。

 

「麻弥ちゃん立って!」

「こ、こ腰が、腰が抜けたっす…!」

 

 アイクはもう拳を振る寸前、日菜さんが大和先輩を庇うように覆うがあいつのパンチなんてまともに受けられない。

 

 なんせコンクリートの柱を壊すほどの破壊力、あんなのまともにくらったら即死レベルだ。

 

「ッ!……クソがー!」

 

 俺は助けに行こうとした、2人をどうやって同時に助けるか考えたけどそんな1秒で考えが浮くわけがない!

 

「日菜は俺に任せろ」

「ッ!?」

 

 どこからが声が聞こえた…気がした。それを信じるかのように俺は大和先輩に飛びつく、するとアイクの拳は誰にも当たることなく大きな音を立て床にめり込んでいた。

 

「………………チッお前も来るのかよ、夕刀」

「当たり前だろ、こちとら妹の命の危機なんだぞ」

 

 上から見下ろすかのように階段の上から話しかけてきたのは綺羅だ

 

「正義、お前はまた懲りずに日菜達に手を出すのか?」

「……うそ…………お、お兄ちゃん?」

「ッ!……………………」

 

 お、お兄ちゃん?日菜さんは一体何を言ってるんだ?てかそのお姫様抱っこなんだよ!こっちなんて飛びついて助けたもんだから俺が抱きついてるみたいな状況だぞ!?

 

「…………本当は会う気なんてなかった」

「お前達は俺の知らないところで幸せになって欲しかったんだ」

「お嬢の付き人なんかしてたら会うことだって何回もあった。その時は他人のフリして、知らないフリしてやり過ごしてた」

「でも……妹がこんな危険な時に助けなくて何が兄だよ…!ふざけんな、笑わせんな!」

 

 あ、この流れはガチの兄貴のパターンですか?

 

「お前が日菜に手を出すのなら俺はそれを全力で阻止する!それだけだ」

「……お前ら兄妹は本当に見てて不愉快だな」

 

 まさかアギトさんが妹と呼んでいたのは本当に妹だったからなのか、てっきりファンの度を超えた人かと思ってたよ、いやすまん

 

「お兄ちゃん!ゆうお兄ちゃんなの…?」

「…………ああ、今まで連絡のひとつもせずに黙ってて悪かった」

「ッ!ううん!あたしはそんなの気にしない!お兄ちゃんが生きてるって知れてただけで、あたし…!」

 

 日菜さんはアギトさんの胸に顔を収めて泣き嘆いていた。勝手だが日菜さんは泣かないイメージがあったけど…日菜さんも人間だ、泣きたい時もある。

 

「俺も再会できて感動の涙を流したいところだが」

「……そんなことを俺が許すわけないよなぁ!」

「……シン!」

「人をこき使うなぁぁああ!」

 

 木刀にてアイクの拳を防ぐも木刀からは嫌な音がミシミシと聞こえてくる。後一二発であるこの木刀は折れるな

 

「ほー前よりかわやるそうだなぁまえなんてビビってやがったのになぁ?」

「……バレてたんかい」

 

 彩の時必死に隠してたつもりだけどアイクにはバレてたか、いやー恥ずかしいな!?

 

「シン、わかってるよな」

「……おっけー、とりあえず逃げよう!」

「ッ!だから待ちやがれぇ!」

 

 その最上階から逃げる俺達だったが何度もアイクに邪魔をされた。

 

 アイクのやつは所構うことなく拳をぶんぶんフルコンもんだからコンクリートの欠片は辺り一面に吹き飛び俺達にも当たってくる。

 

 このまま逃げ続けてもいつかは捕まる、それに外に出たところで逃げれたって訳にはならない。

 

「チッ!お前ら耳を塞げ!」

 

 舌打ちをしたアギトさんは懐より拳銃を取りだした。

 

 俺は拳銃とか興味ないから種類とかは知らないけど階段上の天井目掛けて構え、引き金を引くと、硬い金属音と爆竹とは比にならない轟音がなり響いた。

 

 すると天井は見事に落ちきて階段には瓦礫の山が俺の目の前にできた。

 

「これで時間稼ぎはできた、早く車に乗って会場に行くぞ」

「お兄ちゃんすっごーい!その拳銃はなんなの!?ねえ!なんなの!?」

「ひ、日菜ちゃん今の状況わかってるの!?」

「こんなピンチの時に興奮しないで欲しいっすよ!?」

「でもこの普段通りがこの窮地を抜け出す鍵になるかも知れません!」

 

 ならねーだろ!?と突っ込みたい気持ちともう1つ大きな気持ちが俺の中にはある。

 

「(ここで逃げて終わりなのか…?)」

 

 と、今の状況なら確実に逃げられる。いくらアイクでもあの瓦礫の山を数秒で蹴散らしてやって来ることはできないだろう。

 

 その隙に俺達が逃げてライブも終わらせ普段通りの日常が戻ってきても、またこの非日常がやってくる。

 

 なぜなら綺羅達がまだいるから

 

 そう、こいつらを蹴散らさないと俺達、いや彼女達の平穏な日常は帰ってこないんだ。

 

「変なことを考えているならやめておきなさい」

「ッ!」

 

 千聖先輩がまっすぐに俺を見てそう言った。でもその顔はとても不安そうで、泣いてもおかしくない程の顔だった。

 

「……変なことって?」

「ここであいつを倒せば全ては済む、なんてこと考えてるんでしょ?」

「…………………………」

 

 どうやら千聖先輩にはお見通しのようだなこれりゃ

 

「はっきり言うけどあなたでは勝てない、積み上げてきた歴って物があれとは違うわ」

「お前はここに来る前に俺と話をしたよな?……誰も傷つかず救い出すって、お前が言い出したよな?」

 

 アギトさんと合流した時車の中でそんな話をした。みんなが無傷のままここを抜け出す、それがハッピーエンド、だった。

 

「でもルートは1つじゃない、トゥルーエンドや……バットエンドだってあるだろ?」

「何馬鹿なこと言ってんのよ!」

 

 確かにこんな馬鹿げたことを今言うかって思うよな、いや正直自分でも何言ってるかわからないや

 

「あなたは自分の命を安く見ている!あなたの命は他の人の命同じ、いや自分ならそれ以上の価値があると自覚するべきよ!」

「……守る命の中に自分を入れなさい!」

 

 前に言ってたけ、俺なんてどうでもいいんだ、なんてことを言ってた親父に怒られたっけ?

 

 また俺は千聖先輩に同じように怒られるのか、でも

 

「正義の味方ってのはなれる瞬間があるんすよ」

「ッ?」

「どんなに毎日ヒーロー活動的なことをしても認められなきゃ意味がない」

「だからそれが今なんすよ」

 

 かなり怖い、あんな化け物俺がどうこうできる話じゃないってわかってる、前の体験で嫌ってほどわかった…!

 

 だけど、それでも

 

「立ち向かうってのが正義の味方なんですよ」

 

 木刀を取り出し構えて言う。

 

「…………そんな震えた手で勝てるわけないじゃない」

「ッ!これは違いますよ、武者震いっすよ」アハハ

「すぐわかる嘘をつかないの」

 

 いやー怖い、何度も言うけど怖い!今もアイクが瓦礫に拳を何発も当ててるであろうあの低い音が聞こえる。

 

「…………わかったわ、でもかないっこないと判断したらすぐに外に出なさい、人混みの中ではさすがにやり合わないはずよ」

「はい」

 

 あいつらならやりそうだけど黙っとくか

 

「し、シン君、本当にあの人と戦うの…?」

「……ああ、ここで倒さないとずっと彩をビビらせて夜も眠れなくてトイレにも行けなくなってしまうからな」

「そ、そこまでビビらないよ!?」

 

 こんな状況でよくそんなことが言えたもんだ、よく言葉を捻り出したよ俺は

 

「別れる前にひとつだけお願いがあるの」

「……なんだ?」

「私をぎゅっと抱きしめてください」

『ッ!?』

 

 先程日菜さんに対して今の状況わかってるの!?って言ってた人の発言だとは思えないな

 

「…………これで、い、いいか?いや走り回ってたから汗臭いと思うんだけど…?」

 

 彩を引き寄せ抱く、もちろん俺は恥ずかしいし心臓だってバクバクなってる。多分だけど彩には丸聞こえだな

 

「これが最後なんて言わせないから」

「ッ!……わかってる」

 

 戻ってくるように、とでも言うようにそう言った彩は泣いていなかった。

 

 いつもの彩なら泣くところだけど…なんだ、成長したってところかな?

 

「…………シン、これ使え」

 

 アギトさんは俺に先程使っていた拳銃を渡してきた。

 

「打つ時は脇に力を込めろ、じゃねーと肩吹っ飛ぶぞ」

「…………肝に銘じておくよ」

 

 この道具を手に取るとなんか普通の人じゃないと感じざるを得ないな…普通こんなの手にするわけねーから!

 

 どんどん音が近づいてきた、アイクはもうすぐここにやってくる

 

「早く逃げろ、あいつの目的は俺を殺すことだ……みんなはライブ成功させろよな」

『…………………………』

 

 みんなは何も言わなかった。早く逃げろ、なんて言葉は男が人生の中で1度は言ってみたいセリフだと勝手に思ってる。

 

「……それじゃあ行くぞ、時間がないからな」

「……シン君!」

 

 彩が俺の名前を呼んだ時、それはもう遅かったんだ。

 

「手間かけさせやがってぇ!」

 

 怒りの頂点に達しそうなアイクが唾を吐き散らしながら俺に文句を言う。

 

「ッ!早く逃げろ!」

「ッ!」

 

 そのままみんなは何も言わず階段を降りていく、少し見届けてすぐにアイク達に視線を移す。

 

「なんだぁ?白鷺千聖達は逃げたのかよぉ」

「……ああ、お前を倒すのなんて俺1人で充分だからな」

「大口叩くではないか、その自信はどこからやってくるんだ?」

「…………………………」

 

 綺羅正義、アギトさんから下の名前を聞いた時は驚いたさ、こんなやつの名前が正義(せいぎ)と読める漢字なんてな

 

「あんた名前と真逆の人間だよな」

「ほざけ、貧乏人ごときが俺のことを馬鹿にするのか?」

「…………まあいい、夕刀のやつは逃げたしお前はアイクが処理をする」

 

 綺羅は階段を降りながらそう言っていた。そのまま俺の横を通り過ぎるとまた階段を降りようとした。

 

「……アイク、弦巻シンは好きなように料理しろ、なーに後処理は俺らがしといてやるよ」

 

 ふはは!と笑いながら綺羅は降りていくも俺は止めようとしない、あんなやつアイクがいなければただの金持ち野郎だ

 

 今は目の前のこの筋肉ダルマ(アイク)を倒さないといけない、その事だけを考えないと

 

「やけに好戦的だなぁ」

「……まあお前を倒さないと平穏な日常が戻ってこないからな」

 

「さあ…俺達の戦争を始めようぜ?」

 

 デートではない戦いが今、始まる。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「アギトさんすみません…このまま行ってライブはできるんでしょうか?」

「間に合わなかったとしてもライブはするだろ、てかしないのか?」

「します!ライブは絶対します!……シン君が成功させろって言ったから!」

 

 廃ビルから抜け出したアギトとパスパレは車にて会場に向かっていた。

 

「イベントスタッフ全員買収されてたなんてね、気づかなかったよ」

「それはそれで社長はお怒りね」

「しゃちょーさんは私達のこと知ってるんでしょうか…」

「確か海外行ってたでしょー?知り合いがどうたらーって、知らないんじゃない?」

 

 呑気なことを言ってるが彼女達は先程まで監禁されていた。なんてことを言っても誰も信じてくれないだろう。

 

「買収されたのなら倍の金で買収すればいいだけの話、金なら無限と言っていいほどあるからな」

「きゃー!さすがお兄ちゃん!お金持ち!」

「よせやい……財布の中に100万あるから持ってけ、あ、紗夜の分も合わせて200万か」

「お小遣いのレベルを超えてるよ!?」

 

 シンがいない中のツッコミ担当はどうやら彩のようだ。

 

 シンが深刻な状況なのに何呑気なことしてんだって思うかもしれない、がシンにとってはみんなが悩む姿なんて見たくないはずだ。

 

 だから彼女達はこうして空元気を出しているのだ。

 

 そうこうしているうちに会場についた彼女達はライブの準備をするのであった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 アイクに強い口叩いたが俺の強さが一気にレベルup、なんてことはない

 

「どうしたどうしたぁ!その程度かよ弦巻シン!」

「ッ!この野郎ぉぉおお!」

 

 思いっきり木刀を体に叩きつけるも

 

「だから効かないって言ってんだろうがぁ!」

「ッ!」

 

 木刀はアイクの体に当たればそこから砕け散ってしまう。要するにアイクの筋肉が硬すぎるんだ、いやこれは本当に筋肉ダルマだな

 

「ほらほらほらほらぁあ!避けないんと死ぬぞぉ」

 

 強力な一撃一撃を綺麗に避けるもその動作一つで体力をかなり持ってかれる。

 

 正直体力には自信が無いからかなりキツイ

 

「……避けるのだけは人一倍だなぁ」

「こちとら目だけはいいんでな」

 

 そう、何度も見たそのパンチはもう避けれる。ならばそこから次のステップに進まないといけない!

 

「ッ!取った!」

 

 避けてたどり着くのはアイクの目の前、振っても効かないのなら突くのみ!

 

「くたばりやがれぇ!」

 

 シンの突きがアイクの体に刺さる前

 

「……残念でしたぁ、そんな攻撃効きませーん」

「なっ!?」

 

 木刀の先端を握っり攻撃されるのは防いでいた。よくそんなことができるもんだと感心するがしてる暇なんてくれやしない

 

「俺が本当の突きってやつを教えてやるよぉ」

 

 木刀をへし折りその先端を俺に向きつけ突きつけてきた。

 

 逃げようと後ろに下がるも

 

「逃がすかよぉ」

 

 アイクは俺の足を踏みつけ身動きが取れない状況、そのままアイクは俺の腹目掛けて木刀の先端を突き刺した。

 

「……あ、あぁぁぁぁああ!」

 

 今までに感じたことない痛みが俺を襲った。腹からは生暖かい血が、まるでポンプのよう吹き出してくる。

 

「いいなぁ!いいなぁ!その声いいなぁ!」

「て、てめぇ!」

 

 笑いながら俺を見下ろしているアイクに向け木刀を顔に投げつけた。その瞬間隙ができたもんだから急いで柱に隠れる。

 

 刺さっている木刀を引き抜くと更に血は出てき始める。

 

 制服のシャツは一部分だげが赤く染まりブレザーには黒血が染み付いていた。

 

「……さてとぉお前の血はどんな味だぁ?」

 

 アイクは床に落ちたシンの血をすくうと舐め始めた。普通の人間がするような行動ではないがアイクは人の血が好きなんだろう。

 

「はは、あははぁ!やっぱり金持ちの血は味がちげーなぁ!」

「なぁ!お前の姉と弟と親父はもっと美味いのかぁ!なぁどうなんだよぉ!」

 

 この殺人鬼め…!人の血を舐めて叫びやがってくそ怖いやつじゃねーか!

 

 いや俺の血が美味い?金持ちの血は美味い?笑わせんな

 

「……はは、そんなに俺の血は美味いのかよ」

「悪いけどこちとら毎日コンビニ弁当食ってんだよなー……お前味覚おかしいんじゃね?」

「…………なんだとぉ」

 

 言葉を借りるのなら、体はコンビニ弁当でできているってところかな?

 

「……んじゃぁ訂正するよぉ」

「白鷺千聖の処女膜破った時の方が美味しかったなぁ?」

「……………………は?」

「他にはぁ…ああ、お前のところのメイド、アレックスだったか?」

「あいつの家族全員を殺した時の血も最高だったよぉ」

「…………………………」

 

 こいつは今なんて言った?千聖先輩の処女膜破った時の血の味?

 

 

 

 

 その次なんて言った?

 

「……なんて言ったんだよ」

「あぁ?」

「だからなんて言ったんだよ!お前!」

 

 ストックの木刀を取りだし構えて柱から飛び出す。

 

「……だーかーらぁ、アラル家は俺が滅ぼしたんだよぉ」

「ッ!?な、なんで」

「なんでだぁ?……そんなの騎士を名乗る家系なんて殺すに決まってんだろぉ」

 

 騎士を名乗る家系?それだけでアレックスの家族はこんな奴に殺されたのか?

 

 いやそんなはずない!アラル流、いやアレックス流は最強無敵、負けるはずがない…!

 

「騎士ってのは殺すのは簡単さぁなんせ自慢の剣を折れば何もできないただのカスだからなぁ!」

「あの様子じゃまだ知らないんだろうなぁまぁ?知らない方があいつに取ってはいいことなんじゃないかぁ?」

「まぁお前を殺した後殺すけどなぁ!」

 

 ああ、ダメだ。ごめんアレックス、俺さすがにこればっかりは

 

「てめぇぇぇぇぇぇ!」

 

 怒りに身を任せてアイクに飛んでいった。木刀を体に叩きつけるも折れる。また取り出して叩くも折れる。

 

「お前の負けだぁ」

 

 アイクの拳、ではなく蹴りが俺の溝に入りそのまま壁に叩きつけられる。

 

「(い、意識が…)」

 

 あまりにも強力すぎる一撃は耐えることがなく全身が悲鳴をあげた。

 

 そのまま俺は…まるで亡くなったかのように意識を失った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、青葉さん…」

「ん?なーに?」

「ひっ!ご、ごめんなさい僕なんかが話しかけてすみません、ミジンコ以下ですみません…!」

「モカちゃんはまだ何も言ってないよー?」

「じゃ、じゃあこれから言うんですか!?」

「そんなこと言わないって」

 

 なんだ、これ?ああ、確かバイト入りたての時だったけ?こん時はまだモカのことを青葉さんなんて呼んでたんだっけ?

 

「まあまあ聞きたいことがあるんでしょ〜?」

「あ、はい、あのー青葉さんってなんで生まれてきたんですか?」

「へ?」

「い、いえ!違うんです!そう言う意味じゃなくて、その…」

「生まれてきた意味を知りたい的な?」

「は、はい」

 

 なんだよ俺の話し方、気持ち悪すぎる、てかモカのやつは優しすぎるだろ…今と全然違う、こんな感じで接してくれてもいいのにさ

 

「シン君はなんでそんなこと聞くの?」

「僕わからないんです、なんで生まれてきたのか…僕なんかいてもなんも役に立たないじゃないですか?」

「…………そんなことはないと思うけどなー」

「まあモカちゃんが生まれてきた理由はひとつだけ」

 

「幸せになるために決まってるじゃん」

 

「シン君もそうでしょ?」

 

 ニカッと笑ったモカの顔には見覚えがあった。そうだ、その時に俺は

 

「あ、ああ、な、なるほど…簡単なことだったんですね」

 

 当時いろいろあって病んでいた俺にとってその一言は命を救ってくれたような言葉だった。

 

「え、ええ!な、なんで泣くの?モカちゃんなんか変なこと言った?」

「…………店長ーモカがシン君泣かせましたー」

「り、リサさん冗談やめてくださいよ〜」

 

 そうだ、そうだよ…俺はモカに教えてもらったんだよ

 

「幸せになるために生まれたんだ」

 

 って、何を忘れてたんだろうか…

 

 幸せになるために生きる、そのためにはこいつ(アイク)は邪魔だ…!

 

 ここでこいつを倒さないと俺は幸せになれない…!

 

「のびてるなぁ、まぁお前の負けだぁ…!」

 

 気絶していたシンの顔面に向けて拳を振るうも

 

「ッ!」

 

 寸前のところで意識を取り戻したシンは跳ね起き、何とか攻撃を回避することができた。

 

「……なんだぁ意識あんじゃねーかぁ」

「ばーか、気絶した振りをしてたんだよ」

 

 今の今まで戦ってわかるが勝てる相手なんかじゃない、ここにある物全てを利用しよないと勝てる相手なんかじゃない!

 

「ッ!逃げんなぁ!」

 

 確かに逃げてるが逃げてるだけじゃない、柱に隠れて息を整える。

 

「そこにいるのはわかってんだよぉ!」

「ッ!」

 

 柱を破壊するほどの拳……本当に当たったら終わりだと思わせてくれるよ

 

「なんだぁなんだぁ?愉快にケツ振りやがってぇ!」

 

 喋りながら柱を破壊してくれる優しいアイクさん

 

「ッ!」

 

 最後の残りの一本の柱の前で木刀を取り出して構える。ストックを合わせてあと2本、この2本のうちに決着をつけないといけない

 

「追い詰めたぞぉ……死ねぇ!弦巻シン!」

 

 強力な拳が俺を襲おうとした。だが…ワンパターンすぎるその攻撃はもう見切っている!

 

 あとは避けて反撃、だが体に木刀を叩きつけてもダメージなんて入らない、だから

 

「……ここだ!」

「ッ!な、なぁ!」

 

 避ける際、じゃが見込み顎に向けて木刀を振り上げる。舌でも噛んでたらダメージが入ると思う。

 

「て、てめぇ!」

「ッ!」

 

 痛がっている隙にそこから逃げ出す。もちろん柱は綺麗に壊してくれた。

 

「これもくらえ!」

 

 逃げながら木刀を投げつけるもアイクの体に当たった木刀はその場に転がるだけだ。

 

 上の階に行くため階段を目指す。アイクが道を作ってたもんだから簡単に上に行き

 

「……確か脇に力を込める」

 

 拳銃を取り出し1発アギトさんが狙った場所とは違う天井に向けて打ち込む、すると崩れ落ちて階段には瓦礫の山ができ道を防ぐ

 

「ッ!……ッ!ッ!」

 

 声にならない痛みが腹にやってくる。拳銃を打った時の反動が何故か腹の傷に響いた。

 

「……残りの弾丸は」

 

 床の一点めがけて数発、弾切れした拳銃なんか使えないからそこら辺に投げ捨てる。

 

 下からはあの時と同様アイクが拳にて瓦礫の山を蹴散らしている。

 

 その間に休もうとするも1度出た血は止まることを知らずにずっと出続ける。

 

 先程の戦いの最中もずっと抑えてたもんだから手のひらには血がこびりついていた。

 

「……そろそろか」

 

 立ち上がりアイクが来るのを待つこと数秒

 

「てめぇ!また同じようなことをしゃがってぇ!」

「ここで問題、でーれん」

「あぁ?」

 

 アイクの言葉を無視して俺は問題を出した。

 

「お前みたいな筋肉ダルマがなんで外国の刑務所で生活してたか…」

「…………………………」

「……お前は誰かに負けたから刑務所の中で生活してたんだよな?」

「それってさ……騎士王じゃないのか?」

「ッ!」

 

 これは俺の憶測だ、何故アレックスの家族が殺されたのか…簡単な考察だがアイクは騎士に対して恨みを持っている。

 

 のならば騎士王に恨みでもあるんじゃないか?だから騎士にちょっかいを出していた…?ってなったけどどうだろうか、俺の名推理は当たってるだろうか、って適当に話てるだけだけどな

 

「……騎士、王……だと?」

「ああ、騎士王様様だよ」

「ッ!俺はあんな奴に負けてねぇ!あんなカス次戦えば瞬殺だぁ…!」

「へー、負けてないね」

 

 それはつまりの所負けたと言ってるようなもんだ。

 

 納得できるよ、こんなやつまともに戦えるのなんて騎士王くらいだろ、いやそれ以外の人でも勝てるかもだけどさ

 

「負けたから刑務所生活送ってたんだろ?」

「違ぇなぁ!」

「違わない!お前は負けを認めれない哀れな人間だ!」

「騎士王に恨みがあるのに勝てないからそこら他の騎士を、アレックスの家族を殺した…!」

「ッ!……お前は徹底的に殺す、何がなんでも殺してやる…!」

 

 そうだ、その意気だ、俺にもっと殺気を向けろ、あの床をも壊す一撃が俺は欲しいんだ。

 

「かかってこいよ……騎士王じゃなくてもお前に勝てるって俺が証明してやるよ」

「……弦巻シンンンン!!」

 

 アイクが俺は目掛けて今までの中で1番の威力であろう拳を振るってきた。

 

 これをくらえば骨を砕け折れて俺は完全に勝機を失う。でもそれは当たらなければいいだけの話

 

「(己の目を研ぎ澄ませ!限界まで見極めてギリギリでかわせ…!ならば勝機がやってくる!)」

 

 あと2秒、いや1秒!

 

「死ねええええええええええええええええええええええええええええ!」

「……今だ!」

 

 後ろに下がるとアイクの一撃はギリギリで俺に当たることは無かった。標的を失ったアイクの拳はそのまま床にめり込み

 

「ッ!なぁ!?」

 

 そこから連鎖るようにヒビがはいり床が綺麗に抜け落ちた。

 

「さっきは柱を壊してくれてありがとな、いや初めてお前に感謝の気持ちを持てたよ」

 

 そしてさっきまで立ってた位置には拳銃の残りの弾丸全部を同じ箇所に打ち込んだ。

 

 下の階の柱を無くし床には数発弾丸を打ち込む、そして最後はアイクの拳、そりゃー床は抜け落ちる…!

 

 まあ……俺も落ちるけどさ

 

「さあ!一緒に落ちようか!」

「……この程度ぉ!」

 

 空中戦ならば体を支える足場はない!ならば拳に力が入らないはず!

 

「くらえぇぇえ!」

 

 思いっきり頭に木刀を振りかざす。元のな人間ならばこの一振だけで気絶するはずだ。

 

「……ッ!痛えじゃねえかぁ!」

「グハッ!」

 

 当たったと思えば木刀はへし折れた。筋肉ダルマで石頭ってなんだよ…頭も弱点じゃないのかよ…!

 

 それにカウンターくらう瞬間左手で塞いだが左手の感覚が痛みだけで汚染されていく。

 

 落ちるというのはあっという間、もう地面に着く……そして俺のストックの木刀はもうない

 

 戦う道具を全てなくした俺はただ着地して逃げることを全力で考えるしかない、でも逃げたくない、てか逃げさせてくれない

 

「……終わりだ弦巻シンー!空中じゃ避けられねーぞぉぉ!」

 

 アイクの方が体重は重い、ならば先に床につくのもアイクの方が早い、俺はあの一撃で全てが終わると思っていたから次の策を考えていなんだ。

 

 そう、考えていなかった…が、目の前には無傷に残っている木刀が床に転がっていた。

 

「(さっき投げた木刀…!)」

 

 まだだ、まだ勝機はある…!

 

「くらえぇぇぇ!」

 

 アイクの拳が俺の腹に深く入る、傷は先程よりも痛く感じ今にも悲鳴を出したいがそんな暇は俺にない!

 

「くっ!ば、馬鹿なぁ!?」

「…………………………」

 

 アイクの手にしがみつき吹っ飛ばされるの阻止した、そして床に落ちてる木刀目掛けて走り出す。

 

「しぶてぇやつだなぁ!?そんな見にくい面を晒してまで戦いてぇのかあぁん!」

 

 必死すぎで何も考えられない、もうこの一本、これが最後の戦い

 

 あんな化け物に弱点なんてあるのか?

 

 

「(………………いや、ある!)」

 

 

 ならばそこを狙うしかない!

 

「…………今度こそ終わりだ弦巻シン!」

 

 俺はアイクにとってはぼけーと立っているだけの屍にしか見えてないんだろうか、実際に立ってるだけだ。

 

「…………………………」

 

 そのストレートを綺麗に交しその場にしゃがみこむような体制になる。

 

 そう、これだ、これから全てが始まる…!ここで足に全ての力を込めて床を蹴る。

 

「男の弱点ー!」

「ぬぁ!?」

 

「金玉だぁぁぁぁあああ!!!」

 

 人生で最強の威力をもったシンの突きは綺麗にアギトの又に当たり

 

「………………ッー」

 

 アイクは泡を拭きながら倒れていた。

 

「……………………ああ」

 

 たった一撃、されど一撃、シンの方が受けたダメージは多いはずだ。のに最後に立っているのは紛れもないシン一人だけだった。

 

 それは……シンが勝者であることを証明する事実

 

「あぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁ」

 

 シンは吼えていた。それは勝てたから吼えていた、のもあるが……死という恐怖に打ち勝ち見事に生き残れたことと生きてる喜びから吼えていたのだ。

 

「勝った!勝った…!俺勝った、あれ?」

 

 や、やば、血が?血が足りてない…?頭がクラクラする。いやグワングワンする

 

 吐き気がする。あれ?……なんかお腹の周りが暖かくなっていく

 

「(あ、ダメだこれは)」

 

 腹からは血は出続けて止まることはない、抑えても抑えても……止まらない。

 

 よく最後まで戦えたもんだよ、まあ最後は運が良かったってのもあるけど

 

 呆気ない終わりかと思うだろうけど……怖かった、死ぬかと思ったよ

 

「まだみんなに返事してないのに」

 

 ひまり、千聖先輩、彩、蘭、沙綾…みんな大好きなのに返事ができてない。

 

「…………行かないと」

 

 みんなの所に帰らないと、勝ったよって言わないと、俺が帰らないと安心しないだろ

 

 でも体に力は入らない。もう動かないんだ。

 

「…………はは、不幸だな、本当にさ」

 

 アイクの後に倒れたシンはその後……立ち上がることはなかった。




次回…はどうなっているか、皆さん予想してみてください。

いや流石に最悪なことは起きませんので!


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弦巻シンと戦いの後

くそお久しぶりです!いや…燃え尽きてました。

ですがなんと!この作品投稿して一年たってました!うん!みんなの言いたいことはわかります!話の展開が遅いんだよね!すみません!

許してくれた方から続きをどうぞ!!

誤字脱字は後日訂正します


「……………………あ」

 

 目が覚めるとそこはあの廃ビルとの光景とは全く違った場所にいた。

 

 知らない天井、そしてふかふかのベット

 

「……ここは?」

 

 左手に変な違和感があったもんだから上げてみるとギプスがぐるぐる巻かれていた。

 

 あの時やっぱり骨折してたのか…てかよく骨折で済んだものだよ

 

「そうか……俺生きてるんだ」

 

 あの時は完全に死んだと思ったのに…なんか俺は恥ずかしいことも言ってなかったけか?

 

 ま、まあいいや一時の迷いだろ

 

 でも誰が助けてくれたんだ?

 

「失礼します…ッ!つ、弦巻さん!?せ、先生!弦巻シンさんが目を覚ましました!」

 

 看護師さんが部屋に来たかと思えばすぐに出ていきやがった。そして数秒後にはこの病院で1番偉そうな先生がやって来ては話しかけてきた。

 

「んー元気だねー、君ってタフな子?」

「い、いえ力ないって馬鹿にされてました」

 

 アレックスからは絶望的に筋力が無い的なこと言われて気がする。

 

「左手はあれだけど…その他は大丈夫だね、もう明日には退院できそうだね」

「は、はぁ」

 

 早くね?昨日色々あったはずなのにもう退院か

 

「弦巻さんよかったですね、ここ2週間近く目を覚ましてなかったのでご友人さん達も心配していましたよ?」

「ッ!に、2週間近く!?」

「は、はい!」

 

 き、昨日じゃないのか!……通りで元気なわけだ、いや2週間近く寝てたなんて、学校は?体育祭は?

 

 いや…ギリ体育祭は間に合うかもしれない…!

 

「とりあえず今日までは絶対安静ですよ?傷口は塞がってますが左手の骨はまだ完全に繋がってないんですからね!」

「わ、わかってますて」

 

 看護師さんがもうひまりや燐子先輩並の巨乳なもんだから目が勝手にそっちに行ってしまう!

 

 てか寝てたくせに性欲だけは有り余ってるってなんだよ、俺は変態じゃない!

 

 てかあの後何がどうなって俺がここにいるとか、綺羅達がどうなったのか知りたいんだが

 

 部屋には何もないもんだから暇してたらさっきの看護師さんが奢りだと言ってテレビカードをくれた。

 

 だからずっとテレビを見てた…誰が来たようだ。

 

「………………………………」

「……よ、アレックス」

「……シン様」

 

 先程まで巨乳の看護師さんが行き来してたが次に来たのは貧乳のアレックスか…なんてこと考えてる場合じゃないか

 

 アレックスは近くにあった椅子に座り俺に話しかけてきた。

 

「……先週手紙が届きました」

「ッ!」

「どうやらアレックスは一人ぼっちになったそうです」

「子孫を残すためにはもうシンジ様と結婚するしか方法がないようです」

「…………そんな顔で何言ってんだよ」

 

 アレックスは今にも泣き出しそうな顔で普段言いそうなことを言っていた。

 

 でも見ててわかる、完全に無理してるなって…でもアレックスは決して泣くことなく話だした。

 

「だって、だってぇぇ…!また私のせいじゃないですか!」

「私がシン様に剣術教えたから!また…シンと同じ目に…!」

 

 シンがここに何故いるのか、簡単な話しアレックスがシンをここまで連れてきたのだ。

 

 今から2週間近く前の話

 

 あの廃ビルの周りには人だかりが出来ていた。近くを通った人が中から発砲音らしき音がした、と警察に連絡したらしい。

 

 来ればビルは崩壊寸前、急いで近くにいた人達は避難するよう命じられた。

 

「…………そ、そんな」

 

 そんな中アギトの連絡を受けたアレックスが到着したが…時すでに遅し、もういつくづれてもおかしくない状況だった。

 

「ダメです、ダメなんですよ?……し、死んじゃ」

 

 脳裏に蘇る、あの日の記憶が

 

「ッ!」

「おい君!中は危ないぞ!」

「……………………!」

 

 アレックスは警官の言うことを聞かずそのまま崩壊寸前のビルの中へと入っていった。

 

「おいこの人重症だ!」

「本当だな、でもなんで睾丸が潰れてるんだ?」

「おーい!他にも怪我人がいないか探すぞ!いつ崩れてもおかしくねーんだからな!」

『うす!』

 

 中にいた救急隊員が中で怪我人を捜索している中

 

「おいなんだよあのメイド!」

「君!ここから先は危険」

「どけてください!」

 

 倒れているアイクをちらりと横目で見てアレックスはすぐに気づいた。シンがいないと

 

「(どこですか!どこにいるんですか…!)」

「ッ!あれは!」

 

「階段が崩れてる、上に行けないぞ」

「今から…っておい!?」

 

 登れないはずの階段をアレックスはいとも簡単に飛び移り上の階へと向かう。

 

 さらに上え、もっと上へ

 

「シン様!」

 

 着いた階ではシンは倒れていた。

 

 シンは立てないまま地面を這いずりながら上へと向かっていたのだ。

 

 階段は登りきったあと見事に崩壊し戻ろうにも戻れなくなった。

 

 そもそも戻る気力すらなかった。

 

 そうまでして最上階を目指した理由

 

「シン様!シン様…!」

 

 シンは己の血溜まりの中携帯(・・)を抱え込んだまま倒れていた。

 

「シン様!ダメです!死んではいけません!」

「あなたはアレックスに死なないって言ったじゃないですか!」

「………………………………」

「何か答えてくださいよ!」

 

 あの時と同じだ、手には血がつき服も血だらけ、鉄のような匂いが鼻を刺す。

 

「………………ない…と」

「ッ!」

「つた、え……な、と」

「シン様!」

 

 シンが最上階を目指した理由、それはパスパレのみんなの携帯を回収する為に地を這ってでも目指したのだ。

 

 目指して…みんなに勝ったことを知らせるため

 

 シンは千聖の携帯のパスワードを知っている。そしてアギトの連絡先も知っている。

 

 みんなの携帯がないなかアギトに連絡をすれば近くにいるみんなに知らせることが出来る。

 

 なら自分の携帯で連絡すればいいじゃないか、と思うだろうけどシンの携帯は戦いの最中に壊れていたのだ。

 

 だから上を目指したのだ。

 

「…………あ、アレック、す」

「はい…!」

「みんなに、つた……え」

「いやです!自分の口で伝えてください!アレックスはそんな伝言絶対に伝えません!」

「…………………………」

「……シン様!?し、シン様!」

 

 返事をしなくなったシンを抱え下に降りたアレックスは周りの人達からなんと思われたのか

 

『…………………………』

「助けて下さい」

「…………お願いですから…!シンを助けてください!」

 

 その願いが叶いシンは都内でも有名な病院へと運び込まれたのであった。

 

 

「そんなことがあったんだな」

「……はい」

 

 ええ、俺全く記憶ないんだけど…てかよく最上階まで行けたな、いや凄いよ

 

「…………………………」

 

 ってそんなこと考えてる場合じゃないよな

 

「とりあえず…ありがとうアレックス」

「……あと俺は別にお前から剣術を習って後悔なんかしてない」

「ッ!」

「確かに痛い目にはあったけど…お前のせいじゃない、俺が勝手に動いただけで」

「ちーがーいーまーす!」

「な、なんだよ」

 

 子供みたいな駄々をこねるアレックスはさながら様になっているように見えた。

 

「アレックスはそんなこと言って欲しいんじゃなくてですね!」

「……もっと責めて欲しいのか?」

「…………………………」コク

 

 ええ、どゆこと?ここに来てM設定を追加ですか?

 

 だからそうじゃなくて!

 

「俺が言えたことじゃないけどさ…あんまり自分を責めんな」

「ッ!で、ですが!」

「だーかーら!もう俺が生きてるからいいじゃねーか!」

「で、」

「ですがじゃねえ!俺が大丈夫って言ったら大丈夫なんだよ!」

 

 確かにアレックスにとってはまた剣術を教えた弟子がこんな目に、いや同じ目にあったら自分を責めるのは凄くわかる。

 

 でも俺は生きてる!

 

「確かにお前はまた弟子を失う、そうだな、ミスをしたかもしれない」

「でもほら!俺は生きてる!だからお前は失敗なんかしてないんだ」

「だからはい!この話終わり!」

「……………………ッ!」

「アレックスがまさかシン様に励まされる日が来るなんて」

「なんだよそれは」

 

 励ました?のうちに入るのだろうか、まあアレックスがこれで救われたのならそれに越したことはない。

 

「でも……家族の件は残念だったな」

 

 こればっかりは俺がどうこう言えた話じゃない、でも誰かを失うって悲しみは知っている。

 

「アイクのことはもちろん恨んでいますよ」

「ッ!」

 

 誰がやったのかを知ってたのか

 

「アイクは過去に騎士王に成敗され海外の牢屋で生活してたようです」

「…………そか」

 

 本当に騎士王にやられてたんかい、あの時の俺はよく当てれたな

 

「でも……まあ愛弟子が倒してくれたので少しは心持ちが軽くなりましたよ」

「……いやそれですませていいのか?」

「そうですね、アレックスは大切な人を失いすぎて感覚が麻痺してるのかもしれません」

「ッ!」

「本当、オリキャラだからっていいように使いすぎです、なんでアレックスがこんな目に合わないといけないんですか作者!」

「お、おおお落ち着けアレックス!?」

 

 何を言い出すんだ!作者って誰だよ!なんだよ!

 

「冗談は置いといて、です」

「とりあえず済んだことはもういいんです、よね?」

「ッ!いやそれは」

「はい、アレックスが大丈夫と言ったから終わりです!」

 

 こ、こいつ…!やりやがったな

 

「あ、でもこれだけは言わせてください」

「アレックスはまだ母上に胸を張れる人生を送れてませんので!」

「ッ!てめえ!聞いてたのかよ!?」

「はっはは!メイドを舐めちゃいかんのです、では元気も出ましたしアレックスは本職に戻ります」

「とっとと失せろ!」

「…………はいはい、それでは失礼します」

 

 なんなんだよ、入りたての時は元気なかったくせに…はーあ、なんか調子狂うな

 

 シンは左手の位置を整えベッドを倒して横になったのであった。

 

 アレックスが部屋を出た後病院の廊下を歩いていた。

 

「アレックス、来てたのか」

「ッ!旦那様」

「……シンのやつは目が覚めたのか?」

「…………ええ、つい先程」

『…………………………』

 

 お互い言葉が出なくなる。

 

「話は聞いた、お前には本当に辛い役ばかりさせたな」

「……なのに次は自分の両親まで」

「やめてくださいよ旦那様」

「…………………………」

「アレックスはもう、泣かないって決めてたのに…!」

 

 顔をぐじゃぐじゃにしながら泣き出すアレックスに対してシンの父親は頭に手を置き撫でながら慰めることしかできなかった。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「シン」

「うお、親父か」

 

 急に親父がやってきたもんだからはね起きてしまった。そのせいで左手に激痛が走る。

 

「途中でアレックスとすれ違ってな、お前が目を覚ましたって聞いた」

「……そう、か」

 

 なんか親父と久しぶりに話た気がする。いやそもそも俺は2週間近く寝てたらしいから…ってそれはアレックスも同じだろ

 

「綺羅は今逃亡しているようだ」

「ッ!捕まってないのか!」

「ああ、アイクがバラしたらしいが既に屋敷には綺羅の姿がなかったそうだ」

 

 アイクがバラした?口を割ったってことか!でもなんであいつが?

 

 そもそも生きてたのか…それは、よかった。

 

 いやこの歳で人殺しの罪を背負うのはキツイっすよ

 

「今はうちと警察で調べ尽くしてる」

「なーに俺の大事な大事な息子に手を出したんだ、簡単に逃げれると思うなよ」

 

 どっちが悪党かわからないセリフを言うんじゃねーよ!まあ親父は俺の味方だと信じてるけどさ

 

「しかし本当によかった」

「?」

「お前が無事で本当によかった」

「ッ!お、親父からそんなこと言われるなんて思いもしなかったよ」

 

 え?雨でも降るんじゃね?いや普通こんな親父が言うわけないだろ!

 

「俺はお前の父親だ、たまには父親らしいこともさせろ」

「…………そうか、ありがとう」

「ッ!ふ、ふん」

 

 ふんって可愛いかよ親父

 

「あ、親父!俺親父に謝らないといけないことがあるんだ」

「なんだ?」

「あの日、母さんがなくなった日…俺達のせいでろくに別れの挨拶もできなかったんじゃないかって」

「…………なんだ、そんなことか」

「そ、そんなことなんて!」

 

 俺はずっと思ってたんだぞ!?俺達のせいで親父がってさ!

 

「別れの挨拶なら前夜にすませてる」

「ッ!」

「あいつは…本当に俺を飽きさせない女だった」

「…………なんで親父は母さんを名前で呼ばずに俺の女、とかあいつとか呼ぶんだ?」

「それは、あれだ……恥ずかしいからだ」

「な、何その乙女チックな理由」

 

 まさかそんな理由だったとは思いもしなかったよ

 

「安心しろ、2人っきりの時はちゃんと名前で呼んでた」

「……なら、うんいいや」

 

 愛し合っていたのなら俺は特に言うことなんてない、親父は俺が思っている以上に母さんのことを愛していたんだ。

 

「お前今から少し抜け出さないか?」

「へ?」

「よし、外の空気でも吸うか」

「いや今日安静っ!」

「いいから行くぞ!ほら、着替えろ!」

 

 制服を渡させ着替えろと命令されて拘束された左手を器用に避けながら服を着るとすぐに外へと連れていかれた。

 

「まずは髪切りに行くぞ」

 

 親父の高級車に載せられ親父が通ってるという美容院へと連れていかれた。

 

「あらしんちゃんの息子さん?これまたイケメンだねぇー姉さんが貰ってもいい?」

「黙れ、潰すぞ、早くやれ」

「はいはーい」

 

 と、速攻で髪を切られ丁度いい髪の長さになり今までとは違う髪型ってやつになったな

 

「次は学校行くぞ」

「いや平日だから授業中!?」

 

 そう言っても連れてかれて付けば見知った人が待っていた。

 

「やあシン君、それにしんも…本当に久しぶりだね」

「学長先生!」

「すまないね、最近仕事が忙しくて勝負できてなかったね」

「い、いや別にそれは大丈夫っすよ」

 

 チェスは…うん、学長に勝てるとは思えないよね!?

 

「学長か、俺にとっては先生なんだけど」

「美竹は?」

「平日に暇してるのは俺と先生だけだろ」

「…………話は聞いたよ、本当に行けなくてすまない」

「いやいいんだ、あいつもわかってくれる」

 

え、ええ?なに、学長って母さんのこと知ってるのか?蘭の親父さんは苗字呼びなのね

 

「お前は女共のところにでも行ってこい」

「ッ!……はあ、これが目的かよ」

 

 やれやれ…本当、いい父親だな

 

「しん久しぶりだ、一勝負と行こうか」

「ふん、望むところだ」

 

 親父は学長の後ろについて行く、多分だけど学長室でやるんだろうな

 

「……女共か」

 

 んーまずはクラスに顔出さないといけないよな…行くか

 

 教室についてなんの躊躇もなくドアを開けるけと

 

「誰もいない!?」

 

 ってよくよく考えると今は体育祭間近、全体練習とかやってるのか?

 

 グランドに行くとなんか練習してたな、俺は結局種目はなんになったんだっけ?てか出れないだろ

 

「……シン?」

「ッ!」

 

 後ろから声をかけられ振り向くと体操服姿の沙綾がいた。

 

「え、その、よ!元気にしてたか?」アハハ

「……心配、したんだから…!」

「……ごめん沙綾、帰ってくるのに少し以上に時間がかかった」

「遅すぎ!遅すぎる!……まったくもう!」

 

 沙綾は泣いているのか、笑っているのか、わからないけど俺に抱きついてきた。

 

「さ、沙綾さん!?あ、当たってます!」

「いいのこれぐらい!今はシンに抱きつきたい!」

「だ、だからそれはその、んー!」

 

 腕を上げてわなわなするけど…なんて言ってるか伝わるかな?伝わってくれ

 

「あ、シン君また浮気してる」

「ッ!違うよ、シンは私のだもん!」

「ええ、沙綾何言ってるのわからないんだけど」

「お前が何いってんのかわかんねーよおたえ!てか久しぶりにあってこれかよ!」

 

 どこからか現れたかわからんがいつも通りの態度ですな!?

 

「だって変わってたら困らない?」

「そ、それはそうだな、助かる」

 

 おたえに正論言われてるんだけど…なんか腑に落ちない

 

「あー!シン君!」

「……………………」サッ

「え、さ、沙綾?」

 

 いきなり離れるもんだから嫌われたと思うったが…多分おたえ以外の人に抱きついてるところを見られたくなかったんだろうか

 

「香澄!おー!香澄だぁ!」

「うん!シン君ずっと学校来なかったから心配してたんだよ!」

「……いやーちょっと色々あってたな!」アハハ

 

 この感じだと知ってるのは沙綾とパスパレのメンツだけか、他の人達には話さなかったんだろうか

 

「おいシン!お前大丈夫だったのか!」

「蒼汰、おう!大丈夫だよ」

 

 まあお腹に穴あけられて左では複雑骨折してるけどな!

 

「にしても弦巻も不幸だよな」

「ん?」

「道歩いてたら廃ビルが崩壊して巻き込まれるなんてな!」

「……へ?」

「でも無事で何よりだ!んで?いつから学校来れるんだ?今日からか!?」

「ちょ、ちょっと落ち着けお前ら!」

 

 え、俺って事故に巻き込まれたって設定なのか!?なにそれ!クソダサいじゃねーか!?

 

「学校は多分明後日?からだと思う、その他は……ッ!」

 

 聞かれたことに対して返事をしてる途中、ふと彼女達が目に入った。

 

 残り2名は他校だからここにいない、と思ったが何故かいた。

 

 今は理由なんてどうでもいい、俺は彼女達に話さないと!

 

「ごめん!」

 

 みんなの輪から抜け出し彼女達のもとへと向かう。

 

「みんな!……ッ!」

 

 急に腹の傷が痛み出す、走り出したからただろうか、でもいかないと

 

「千聖先輩!彩!みんな!」

『ッ!シン(くん)(さん)!?』

 

 俺が心の底から初めて守りきったと言える人達、そう…パスパレのみんながそこにはいたんだ。

 

「シン!」

「ぬお!」

「あなたって人は!本当に無茶して…!」

「ち、ちち千聖先輩!?み、見てる!みんなから見られてる!」

 

 沙綾どうよう抱きついてきたところで

 

『シンくん(さん)!』

 

 といいみんなが俺に飛びついてきた。

 

 周りから見ればアイドルに囲まれてチヤホヤされてるやつだと思われるが実際そうだ、そう思われても仕方がない!

 

「シン君が!シン君が生きてる!」

「そりゃ生きてるよ、あそこで亡くなられたらアタシは困るよ」

「で、でも本当によかったっす!ジブン!もう感動っすよ!」

「うぁぁぁあんん!師匠!無地で何よりです!」

 

 まさか彩よりイヴが泣くなんて思いもしなかったよ、彩のやつはよく泣かずに耐えたもんだよ

 

「ッ!て!い、痛い!痛たた」

「ご!ごめん!」

 

 お、お腹が…!めちゃくちゃ痛い!穴は塞がってんだよね!?なんで痛いんだよ!

 

「……でも本当によかったわ」

「千聖先輩」

「あなたが戻ってこなかったら…多分、私は一生自分を責めてたわ」

「…………………………」

 

 あの時止めていれば、って思ってるのだろうか。

 

 誰だってそう思うに決まってる。結果はわからない、やってみないとわからないんだ。

 

 今回はやってみた結果俺は無事に戻ってくることができた。

 

 もし…違う未来があるのなら、って考えても意味がない。それよりも

 

「…………俺、凄く怖った…!」

『…………ッ!』

「本当に、死ぬかと思った…!」

 

 人生の中で一番死、と向かい合う長いようで短かったあの時間、俺は死にものぐるいで戦い抜いた。

 

 それは正義の味方になりたい、って夢があったから切り抜けたもの、もし…この夢を目指していなかったら彼女達の、いや俺達の人生は大きく変わってたはずだ。

 

「もう怖くて怖くて、俺…!」

 

 みんなに囲まれた中俺は泣いていた。

 

 男のくせにみっともないと思われてるはずだ、だけど本当に怖かったんだ。一度でいいから俺と同じ目にあったらわかるはずだ。

 

「よく頑張ったわ」

「……本当、シン君正義の味方だよ」

「……うん、アタシもそう思う」

「うぅ、なんかやっぱり涙でてきたっす」

「泣きたい時は泣きましょう!うぁぁぁん!」

 

 外から見られたら俺達は変な集団だと思われるだろう、それでも俺達はそんな周りの目を気にせず泣き続けた。

 

「そうだ!みんなシン君に言うことあるじゃん!」

「?」

 

 日菜さんが思い出したかのように言うとみんなは俺から離れ並んでいっせいにこう言い出した。

 

『シン』

『シン君!』

『シンさん!』

 

『……おかえりなさい!』

「ッ!」

 

 ああ、この言葉だ。この言葉を聞いて俺のあの戦いは終わりを迎えるんだ。

 

「……ただいま、みんな!」

 

 涙を拭いそう答えたシンは誰が見ても清々しいと思えるほどの笑顔だった。




次回はその他のメンバーが登場します。今回の話に入れると長すぎるため次回で

あと一周年記念でこの人の話が読みたいとかあれば書きます。絶対書きます。感想もしくはメッセージにて教えてください!

ではでは!また次回お会いしましょう!


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弦巻シンとその後

どうも!今回は早い期間で投稿することが出来ました!

それではどうぞ!

あとヒロイン増えるかも?しれませんね

Twitter:https://twitter.com/oo_ru3


 パスパレのみんなと感動的な再会を果たした後俺は他のみんなも心配してたと話を聞いた。

 

 そんな話を聞いたら…まあ挨拶ぐらいはいかないといけないよな!

 

 と思っていたが

 

「シン」

「……千聖先輩!」

 

 さっき別れたはずの千聖先輩がいたもんだから驚いてしまった。

 

「約束…守ってくれてありがとう」

「ッ!はい、俺ちゃんと勝ちましたから」

「ええ…でももう少しカッコよく勝ってもよかったんじゃない?」

「そ、そんなこと言わないでくださいよ!?」

 

 本当に怖かったんだよ!?そんな、な!カッコつける暇なんてないだろ!?

 

「ふふ、冗談よ、本当にありがとう」

「……敵は取れましたか?」

「もういいのよ、敵とかそんな話は…あなたが戻ってきた。それだけで私は十分よ」

「ッ!」

 

 全く恥ずかしいこと簡単に言えるよな

 

「それとさっきはあんなこと言ったけど」

「?」

「今も昔もシンはカッコイイわよ」

「ッ!?」

 

 そ、それはズルいですよ千聖先輩…

 

 シンが赤くなった顔が収まるまで少しの間手のひらにて風を送っていたのであった。

 

「……よし!」

 

 顔の熱も冷めたし、さっき聞きだした情報をもとにみんなの場所に向かうか

 

 と、思った矢先

 

「おいこら弦巻シン!!!」

「!あ、有咲!?」

 

 有咲が大きな胸を揺らしながらやってきたと思えば到着した途端ぜえぜえ言いながら肩を揺らしていた。

 

「お、お前…!」

「な、なに?」

「お前!目覚めたなら教えろよな!どれだけ心配したと思ってんだよ!」

「いやー有咲さん?皆さんから見られてますけど…?」

 

 前に聞いたが有咲は隣のクラスでは優等生ぶってる話だったんだけど…いや明るくなった的な話は聞いたな

 

 でもそれとこれは別だろ!?

 

「んなのどうでもいいんだよ…!」

「お前がもう起きないかと思って、あたし本当に心配したんだぞ!?」

「…………ごめん」

 

 えー、な、何故そんなに心配してくれたんだろう。でも考えても意味ないか、心配してくれてるだけで有難いよな

 

「友達がこんな目にあったら心配するだろ!」

「……とりあえず目が覚めたならよかった。じゃ、じゃーな!」

「ちょ!有咲!?」

 

 俺の話何も聞かずに有咲は言うだけ言って帰ってった。俺も心配してくれてるありがとうって言いたかったんだけど

 

「弦巻君」

「……ビクッたー牛込さんか」

 

 急に制服を引っ張られ苗字を呼ばれたもんだからそっちを向くと牛込さんがいた。どうやら有咲が来た時と同じタイミングで来てたようだ。

 

「有咲ちゃん本当に心配してたんだよ?」

「ッ!」

「バンドの練習も集中できないぐらい心配してて…さっきの顔みたけどもう大丈夫そうだね」

「……有咲のやつそんなに心配してくれたのか」

「……うん、あ!うちもちゃんと心配してたよ!?いやうちじゃなくてわ、私ね!」

「…………うん、ありがとう牛込さん」

 

 有咲だけじゃなくて牛込さんも心配してくれてたとはな

 

「有咲からは後で俺からお礼の言葉を言うよ」

「……じゃあ俺他の人にも挨拶あるからそろそろ行くよ」

「うん、また教室で」

「ああ!」

 

 牛込さんと別れた後は聞いていた場所に向かう。向かう途中他クラスの人や他学年の人から大丈夫だったの?って聞かれた。

 

 話によるとどうやら俺はあの廃ビル辺りを歩いてたら崩れて巻き込まれ怪我をして入院していた。

 

 って設定になってるらしい、いや俺ださくね!?もっとましな設定にして欲しかったですよ

 

「あー!!!シン先輩!」

 

 大きな声でそう言われ向いてみると大悪魔こと、宇田川あこが目の前にいた。

 

 いやー変なこと考えてると周りが見えないもんだな!

 

「シン、よかった。退院したのね」

「いやまだしてないっすけどね」アハハ

 

 あこと一緒にいた友希那さんにも話しかけられ返事をした。

 

 この2人が一緒にいるってことは?

 

「友希那ー飲み物買ってき、ええ!?し、シン!もう退院したの!?体は大丈夫なの?ねえ!?」

「り、リサ先輩!少し落ち着いてくださいよ」

 

 体を触ってくるリサ先輩、あなた彼氏いますよね!?そう簡単に異性の体を触ってはいけないと思いますが!?

 

「もう本当に心配したんだからね!」

「すみません、迷惑掛けちゃいました」

「本当…正義の味方もほどほどにしなよー?」

「あ、はい…体が完全復活するまでは…ん?」

 

 あれ、おれって事故った設定なんじゃ?

 

「日菜から話は聞きました。あなたって人は…本当に無茶をする方ですね」

「…………みんなには話してくれてたんですね」

 

 あの時香澄達はクラスのみんなに知られないように俺に話さなかったのか、納得

 

「紗夜はアタシ達以上に心配してたもんねー♪」

「そうそう、お姉ちゃんってばさ!」

「あなたにはまだ伝えてない」

「わー!わ!わ!わー!わー!!」

 

 何処からか現れた日菜さんとリサさんの口を塞ぎ普段絶対に言わないようなことを紗夜さんが言っていた。

 

 一体俺にまだ伝えてないこととはなんだったのだろうか?

 

「氷川さん…気持ち、わかります」

「あ、あなたに一番の思われたくないですよ!?」

「……シン君、無事でよかったです」

「あ、はい」

「いえ本当に思ってるんですよ…?本当の本当に心配したんですからね」

 

 そ、そこまで言われると認めざるを得ない…

 

「みんなに迷惑掛けちゃいましたね」

 

 こんなに迷惑掛けて正義の味方なんて言ってもいいものなのだろうか。

 

「んー確かに心配したけど」

「……アタシ達助けられたし?心配したのもアタシ達だから…シン君は迷惑かけてないと思う!」

「そ、そうですか!」

 

 日菜さん含めみんながそう思ってくれるのならいいんだろう、な?

 

「ところでシン君ずっと入院してたから溜まってない~?」

「ッ!え、え?」

 

 日菜さんが腕を組んできたかと思えばしれっと胸を腕に押し付けてきた。

 

 体操服だからもう布は1枚、いや下着含めば2枚か…だからなんか感触がすげーわかる。

 

「……アタシがー、してあげー」

「な、何してるのよ日菜!」

「えー、何ってなーに?」

「そ、それは…ごにょごにょ」

 

 待て、この予感は

 

「はっ!3P!」

「ふん!」

 

 ボソッと燐子先輩が一言言った途端紗夜さんが燐子さんの口を思いっきり塞ぎに行った。

 

 さ、流石に親子丼ならぬ姉妹丼…ってわけないよな!

 

「と、とりあえず挨拶も済んだので他の人達に所に」

「シン君」

「……約束、覚えてますか?」

「……………………ちょ、ちょっと何言ってるか分からないのでまたこんどぉぉおお!!」

 

 全速力で走れないため気持ち早歩きでその場を後にした。

 

 その数分後

 

「シンンンンンン!!!!」

「ッ!こころ!」

「シン!」

「ぐへ!」

 

 思いっきり走ってきたこころの抱きつかれ訳分からない言葉と共に尻もちを着く

 

「こ、こころ仮にも俺は怪我人なんだぞ」

「シン!シン!シン!」

「ッ!…………はーい、シンさんですよ」

 

 いつもの様に考えなしに突っ込んできた訳ではなかったようだ。

 

 それを証明するかのようにこころは俺の胸を借りて泣いていたんだ。

 

「……お母様が亡くなって次はシンも亡くなると思ったら辛かったわ」

「心配させたな」

 

 こないだ母さんが亡くなったばかりなのに…本当にこころには辛い思いさせてしまったよ

 

「……ただいま、こころ」

「ええ、おかえりなさい!シン!」

 

 そう笑顔で答えたこころは一切不安なんてく純粋な笑顔だった。

 

 こころのことだ、俺が入院している時は誰よりも1番心配していだろうけど、その分誰よりも笑顔でいてみんなを励ましていたに違いない。

 

「いつまで抱き合ってんのよ」

「美咲!」

「はいはいこころ、シンは退院したばかりなんだからね」

「そうだったわ!ごめんなさいね、シン」

「大丈夫大丈夫」

 

 土を払いその場に立ち上がる。と、こころと美咲とはぐみもいるな

 

「みんな揃って何してたんだ?」

「体育祭の練習よ!」

「そりゃ見たらわかるよ!」

「見てわかるの!?シン君頭いい!?」

「お前が馬鹿なんだろはぐみ!?」

 

 さっきのテンションからこれかよ!?あなた達はなんか心配したよとかなんか一言はないのですか!?

 

「と、とりあえずお前らはいつも通りでよかったよ」

「なに?私も馬鹿あつかい?」

「そんなこと言ってねーよ!?」

「あと私のいい所100個早く言ってよ」

「ッ!い、痛たた!痛たたた!お、お腹痛いからまた今度!」

 

 またまた気持ちだけ早歩きしてその場を後にした。

 

「……ったくもーシンはいつもこうだよね」

 

 そう言う美咲の顔はやれやれと言ったように、こころと同じ世話がやける人を相手にしている様子だった。

 

 こころ達と少し話をした後は

 

「騎士君!」

「シン君!」

「…?おー瀬田先輩!松原先輩!」

 

 意外な2人が声をかけてくれたもんだ、あんまり絡みはないが話しかけてくれてありがとう!

 

「花音が道に迷ってたからね、話を聞いたら君が戻ってきたと」

「ち、千聖ちゃんから話を聞いて、お礼をしたいなって思って、それで…」

 

 それで俺を探してくれたのか!

 

「……いやお礼なんて…俺は自分が助けたかったから助けただけっすよ」

 

 それに千聖先輩からは最後まで止められたけど無理言って残ったのは俺だ。

 

 でも…それで守れたのなら問題ない、よな?

 

「君はこころだけでなく千聖まで…本当、君には頭があがらない」

「そんなことないですって!全部当たり前のことなんですから!」

「……それは正義の味方、だからかい?」

「…………そうですね、俺は正義の味方ですから」

 

 助けるのに理由なんていらない、そこに助ける価値があるのなら…俺は全力で助ける。

 

「でも千聖ちゃんを助けてくれたことにはかわりないよ」

「……ありがとうございました」

 

 松原先輩はペコりとお辞儀をしながら俺に感謝の言葉を述べていた。

 

 別にそう言ってもらいたくてやったわけじゃないけど…言われて損は無い、むしろいい気分になる

 

「ところで私達のこと名前で呼んでくれても構わないさ」

「……そうですか、なら薫先輩、花音先輩」

『ッ!』

「こころのことこれからもよろしくお願いしますね」

 

 何故このタイミングで言ったのかわからないけど今言うべきかなと思ったんだ。

 

「騎士君の望みであれば受け入れないといけない、ね」

「それよりも私達の方がこころちゃんには助けられてるよ」

「はは、そうだとしてもこころのこと頼みますよ?」

 

 その後少し話した後は俺はまだ挨拶に行ってない人達がいることを伝えたらそれは行くべきだと言われその場を後にした。

 

「次はあいつらか」

 

 沙綾や千聖先輩、彩とは違い何も話してなかったから…かなり心配させたはずだ。

 

「あ、シンだ」

「ぬあ!?ら、蘭!?」

 

 蘭達のところに向かおうと思ってたら後ろから話しかけられたんですけど!?

 

「……その久しぶり、だな」

「うん、久しぶり」

「…………………………」

 

 え?な、なんか話しかけない感じですか?心配したよーとかはないんですか!?

 

 なに!俺と蘭の友情はその程度だったのですか!?

 

「別にシンなら戻ってきてくれるって信じてたから」

「ッ!」

「ふふ、そんなにあたしが慌てふためく様を見たかったの?」

「いや別に……ッ!?」

 

 蘭のやつはさっきの様子からは考えられない行動に出た。

 

 それは俺に抱きついてきたんだ。さっきからこころと言い抱きつかれてばかりだが…蘭はその、なんと言えばいいんだろうかわからない感情があった。

 

「……嘘心配してた…!」

「ッ!そうか」

「…………うん…!」

 

 蘭はそう短くしか言わなかった。でも泣いてるし抱きしめる力もどんどん強くなっている。

 

 そう、蘭は俺が思ってる以上に心配してくれてたんだ。

 

「ほらもう泣きやめよ、可愛い顔が台無しだぞ?」

「……うるさい、もっと別の言い方で慰めてよ」

「って言われてもなー」

 

 そう言えばこんな約束してたな

 

「蘭、デートの約束覚えてるか?」

「え?う、うん」

「いや約束(デート)じゃなくてその前にしてた約束だ」

「……それがどうしたの?」

「いや…だからその楽しみに?しててくれ」

 

 な、何言ってんだ俺は!?今言うことじゃないだろ!てか金!バイトしてないから金ないっての!?

 

「うん!楽しみにしとく!」

「お、おう」

 

 無駄にハードルを上げてしまった。これは蘭とのデートはプランを考えないとな

 

「他のみんなは?」

「もうそろそろで帰ってくると思う」

 

 と、蘭が言うのと同時に

 

「シン君ー!!!!!」

「ひまり!」

 

 ひまりのやつが有咲同様その大きな胸を揺らしなが俺の元へと走ってくる。もちろん後ろには巴やつぐみ、そしてモカの姿もあった。

 

「あぁぁあ!シン君だ!シン君だよぉ!」

「そ、そんなに泣くなって、顔すごいぞ?」

「だっでぇぇ!毎日心配してたんだもん!」

 

 泣きながら言うひまりはまるで子供が親に説教されながら話してるような様だった。

 

 でもそれだけ俺のことを心配してれてたんだなってわかる。

 

「お見舞いに行っていくら話しかけても返事がないからぁ!」

「それは……すまん」

「すまんじゃないののー!」

「こーらひまり、シンのやつ困ってるだろ?」

「あ!やーだぁ!まだシン君に抱きつきたいのに!」

「ひ、ひまりちゃん周りから凄く見られてるから……私が恥ずかしいよ」

 

 それは俺も言える。なんなら男子から殺意剥き出しの瞳で俺を睨んでるやつだっている。

 

 なに?お前らおっぱい好きなのか?やっぱり男子は好きだよな!?

 

「にしてもシン目が覚めてよかったぜ」

「見ての通りひまりと蘭のやつがめちゃくちゃ心配してたからな」

「と、巴!あたしは別に心配なんかしてない!」

「えーそんなこと言っていいのかな~?シン君に嫌われちゃうよ?」

「ッ!」

 

 ま、まあ蘭さんは恥ずかしがり屋だからみんなに知られたくないってことだろうか

 

「俺はわかってるから大丈夫だぞ」

「……な、なら大丈夫」

 

 多分だけど嫌われるんじゃないかと少し心配したと思うが俺はわかってるから大丈夫だ

 

「シン君戻ってきてよかったよ」

「つぐみも心配してくれたのか!?」

「?うん!友達のことは心配しちゃうよ!」

 

 流石元マイエンジェル!わかってるう!

 

「でもシン君も随分無茶するんだね…文化祭の時も無理してたんじゃ…?」

「ッ!そ、それはない!体力が保てる範囲でやったから!」

「そ、そうなんだ!ならよかった」

 

 めちゃくちゃ無理してたなんて言えねー!後蘭に膝枕されながら寝たことも絶対言えねー!

 

「有翔君も心配してたよ?」

「ッ!あの有翔がか!?」

 

 あいつが俺のことを心配するとか、なんかうん怖いな

 

「……後で連絡してみるか」

 

 連絡先知らないからアギトさんに聞かないとだけど…まああの人のことだから学校のどこかにいるだろ

 

「シーン君」

「お、モカ…背中から抱きついたのはお前だけだよ」

「えへへ、正義の味方の背中を取ったのはモカちゃんが初めて?」

「ん?まあそうだな」

 

 その言い方だと背中に傷をつけたみたいな感じになるんだが…あと何度も言うが体操服だから胸の感触が!

 

「モカくっつきすぎ」

「えー蘭もくっついてたじゃん~」

『見てたのかよ!?』

 

 あの距離で見えるって!モカのやつ目がいいのか

 

「ッ!モカ」ボソ

「ん?なーに?」

 

 俺はモカに話したいことがあるから後で2人で話そうと小声でそう言った。

 

 いや、ほかの人達の前で話すほど俺は勇気がないからな、んーしょぼいな

 

「とりあえずみんなも元気そうでよかった」

「他人よりまずは自分の心配でしょ?」

「ま、まあな」

 

 正論言われたからこれ以上何も言えないっての

 

「で、でもよかった、本当によかった」

「…………流石にまだ死ねない、からさ」

「ッ!えへへ、だね」

 

 ひまりに返事をしないまま死ぬことなんてできない、いやひまりだけじゃないけど

 

「ッ!そろそろ合同練習始まっちゃうよ!」

「やべ!行くぞみんな!」

 

 つぐみが時計を持ってたため見ると女子の合同練習が始まる時間になってたそうだ。

 

「モカ、行くよ?」

「……んー先言ってて」

「…………わかった、ちゃんと来るんだよ?」

「あいあいさー」

 

 ちょうどいいタイミングで2人きりになれたもんだ、本当にタイミング最高だな

 

「2人きりで話したいなんてーまさか愛の告白ですか~?」

「ち、ちげーよ!」

「えっとだな…」

 

 俺はモカにアイクと戦っている時にふと昔のことを思い出したと話をした。

 

 昔モカが俺を助けてくれたから、生きる意味なんてことを知らなかった俺に意味を教えてれたこと。

 

 全てを話してこの一言に思いを込める。

 

「モカ…ありがとうな」

「ッ!い、いやー照れますな」

 

 本当に、心の底から思う。

 

「俺はお前に出会えて本当によかった」

「友達になれて良かった」

「…………友達以上でもいいんだよ?」

「そ、それは」

 

 友達以上とは親友のことか、それとも蘭と同じように恋人になりたいって意味なのか…どっちかわからないけど

 

「俺ってさ」

「ん?」

「モカのこと好きなのかもしれない」

「ッ!?な、何言ってるのかも、モカちゃんわからないんだけど!?」

「いやお前の笑顔すげー可愛いし、あの時ふと頭に浮かんだし…?」

 

 なんかよく言うじゃんこーゆうの?

 

 あれ、でも香澄の笑顔可愛いよな、もう一度見たらそっちの方が勝る可能性も?

 

「すまん今のなし、恥ずかしいから忘れてくれ!」

「う、ううん!」

 

 モカのやつは顔を赤くして髪をいじっている。

 

 なんだよ、笑顔以外でも可愛い一面持ってんだな

 

「可愛いぞ!モカ!」

「ッ!も、モカちゃんそろそろ行きますからぁー!」

「?今日のモカなんか変だったな」

 

 いつもなら結婚するー?とか言ってくるくせに今日は言わなかったな

 

 本人は気づいていないがシンは初めてモカを負かしてやったのであった。

 

◆◆◆◆

 

 モカと別れた後特に用事なんてないため1人でその辺をぶらついていた。

 

「?おや、シン君じゃないか」

「……亜滝先輩」

 

 スポーツドリンク片手に立っているのは亜滝先輩、リサ先輩の彼氏さんだ。

 

「君退院したのかい?」

「いえ今日はその親父に連れてこられて」

「……ふーん」

 

 なんだよその興味がなさそうな返事は!興味がなかったのなら話しかけないで欲しいっすよ!?

 

「とりあえず元気そうでよかったよ」

「……それ本当に思ってます?」

「思ってるよ、ああ思ってる」

「…………君は随分みんなと仲がいいようだね」

「……………………何が言いたいんですか?」

 

 亜滝先輩の言いたいことがわからん、何を言いたいんだろうか

 

「別になんでもないさ、すまないが僕はこれから合同練習が始まるから抜けるよ」

「……はい」

「体育祭、君と何か勝負できると思ってたんだけどね」

「ッ!」

「じゃあまた今度」

 

 なるほど…あの時のリベンジを密かに企んでいたってわけか、亜滝先輩結構根に持つタイプの人間なんだな

 

 とシンは思っているが別の話だったことをまだシンは知らない。

 

 亜滝先輩とも話したしそろそろ親父の所に

 

「し、シンくーん」

「うわ!し、篠崎先輩!?ここで何を」

「運動苦手だから…うう、吐き気が」

「大丈夫っすか!?」

 

 顔色が真っ青なんですけど!?

 

「あ、そう言えば退院したんだね、よかったよかった」

「俺より今は自分の心配しましょうよ!?」

「いや…本当に体育なんて大っ嫌いだよ」

「胸でかいし、花咲の男子には鼻の下伸ばして見られるし…いっそのことおっぱいむき出して走ってやろうか、ふふふふ」

 

 極限状態すぎて普段あんまり言わないようなことまで言うようになってる篠崎先輩、本当に大丈夫か!?

 

「あはは、この状況他の男子が見たら真っ先に私犯されてるよね、シン君がいてよかったよ(cv竹〇さん)」

「ちょっと!?最後に変なこと言って気絶しないでくださいよ!?」

 

 あとなんか最後の最後で声優さんの名前が…うう!あ、頭が!頭が痛い!なんか思い出しては行けない記憶を思い出すかのような感覚だ。

 

 篠崎先輩を保健室に連れて行き次こそ親父の所に戻ろうとした時

 

「シン先輩!え!怪我は大丈夫なんですか!?」

「ッ!リオ!なんだ?中等部とも合同体育最なのか?」

「そうですね、うちは毎年そうですよ」

 

 毎年そうとか言われても俺は今年からここに通ってんだよ!?

 

「リオー先輩がって弦巻先輩!?」

「…………えっと、誰だ?」

 

 どこかで見たことあるような瞳、そしてどことなく天使感をただ寄せてる雰囲気…もしかして本物の天使か!?

 

「初めまして、いつもお姉ちゃんがお世話になってます」

「?」

「戸山香澄の妹戸山明日香です」

「……ああー!!香澄の妹の!確かあっちゃん!」

「あ、あはは、あっちゃんです」

 

 やば、初対面であだ名呼びとか俺やば、てかさっきからなんか俺やばい的なことばっかり言ってないか!?

 

「明日香、リオなんてほっといて早く行きましょうよ」

「でもでもリオ友達私しかいないし」

 

 ちゃっかり爆弾発言してるぞあっちゃん!?

 

「ふん!僕は友達がいなくても姉ちゃんがいればいいんだよ!」

「あのねーそんなんだから友達いないんでしょ?」

「グサ!」

 

 その場に蹲るリオ…とても可哀想に見えた。

 

「……なーんだ、先輩生きてたんですか」

「そりゃ行きてるっての」

「死んだ方が臭い息も治るし不潔感もなくなるからよかったのでは?」

「…………相変わらず口悪いな」

 

 さっきまでここに来ただけでみんなから心配してたなど色々心から感謝するような言葉をいただいていたのに千歳ちゃんと来たらこう来た。

 

「あの1ついいですか?」

「姉さん達を守ったからって調子に乗らないでもらいます?」

「ッ!」

「あなたはたまたまあそこにいただけです、警察が来とけばすぐにすんだ話なんですから」

「…………まあ千歳ちゃんの言う通りかもな」

「でしょ?なら」

「でも」

 

 これだけは言わせてもらいたい。

 

「調子に乗ってない、後悔もしてないし反省もしてない、俺は自分が正しいと思ったことをしただけだ」

「ッ!」

 

「え、シン先輩って事故に巻き込まれたんじゃ…」

「リオは黙ってて!」

「は、はい…女子怖いよ…!」

 

 正義の味方として俺は取るべき行動をしたと思っている。俺が正しいと思うならそれが正しいんだ(暴論)

 

「ッ!本当に面白くない!全部つまらない!」

「明日香、行きましょう」

「う、うん」

「……リオ、何してるの?あなたも来るのよ」

「ええ!?白鷺さんぼ、僕も!?」

 

 お、おいリオ!それだけはあまり言わない方が…

 

「だーかーら!誰が白鷺って?」

「す、すみません千歳さん、いや千歳様」

 

 リオのやつ今にも泣き出しそうな顔して俺に助けを求めてる。

 

 ここはリオを助けてやらないと行けないよな

 

「リオは俺と少し話があるんだよな?」

「は、はい…」

「…………勝手にしなさい!」

 

 ったく黙っていれば可愛いのに…まあ大方彼女の周りの環境が今の千歳ちゃんを作り出したんだろう。

 

「うう、怖い、女子怖い…いや千歳様怖いよ」

「ああ、俺もあんなのが先輩だったら泣くよ」

 

 リオに新しい恐怖を植え付けられた後は優しい対応してやりクラスの元へと帰らせてやった。

 

「次こそ親父の所に」

「よーシン」

「ッ!アギトさん!」

 

 木の上にいたアギトさんは降りてきて真っ先に口にしたことは

 

「紗夜が口を聞いてくれないんだ…」

「……あ、はい」

「やっぱり第一印象って大事だよな」

 

 あーあの時か!

 

 食堂で堂々とエロ本読んでたやつ!

 

 確かにあんな人が急に実はお兄ちゃんでしたーてってれーって言っても信じてもらえるわけないか

 

「なあシン!俺は一体どうしたらいい!」

「日菜さんがいるからいいじゃないっすか」

「日菜だけで満足できるか!」

「約10年だぞ!?10年もあってなかったら日菜成分と紗夜成分どっちも枯渇するだろ!?」

「そんなの知らねーよ!?」

 

 なんだよ紗夜成分と日菜成分って!俺で言うところのこころ成分ってやつか!?やかましいわ!

 

「っと、アイクの話なんだが」

「……それは気になってた」

 

 口を割ったて話は本当なのだろうか…簡単に割るようなやつとは思えないが

 

「どうやら綺羅にも恨みを持ってたらしい」

「……だから情報を漏らした?」

「後は俺の予想だが…騎士王といい、お前といい、格下に2度も負けてプライドはもうズタズタなんだろうさ」

「…………なるほど」

 

 騎士王は流石に俺より格上だろ…アイクに取っては格下だったのか、なら俺はどれだけ格下なんだよって話だよな

 

「とりあえずお前とあいつらの戦いは終わったも同然、後は俺らに任しとけ」

「…………これ以上深追いする必要も無いし…うん、任せる」

 

 綺羅本人に関しては…アギトさん達が捕まえて何とかするだろ

 

 まあ許したわけではないけど

 

「んじゃお嬢と日菜と紗夜の護衛の続きに入るか」

「後の2人は程々にな!」

 

 下手すりゃ紗夜さんにストーカーって言われて警察のお世話になっちまうぞ

 

 アギトさんと別れたあとに気づいたが有翔の連絡先を聞くとを忘れていたのは内緒の話だ。

 

 ようやく親父の元に戻ればまだチェスをしているようだ。

 

「強くなったな、しん」

「何言うか、卒業前に俺に負けただろ」

「そっちこそ何言ってるんだい?わざと負けてあげたんだよ」

「ふん!まだ言うか!ならここでねじ伏せてやる!」

 

 あのー帰りたいんですが!

 

「シン!お前はタクシーで帰れ、何金ならお前の口座に振り込んでる」

「はっ!?」

「ほれ、お前の財布だ、とっとと帰れ」

「それが親父のやること!?」

 

 自分で連れてこさせてその仕打ちはないですよね!?

 

「小遣いやったんだ、父親だろ」

「へ?あ、はい」

 

 何素直に受けてんだよ俺は!?

 

「……じゃ、じゃあ俺帰るよ」

「シン君安心したまえ、しんは僕が倒すから」

「親父の勇士を病室から見とくんだな」

 

 な、なんなんだよこの人達…混ぜるな危険的なあれでこの2人は揃っては行けないって今日でハッキリわかりましたよ!

 

 学校を後にして渋々銀行へと向かう。

 

 向かってる途中左がめちゃくちゃ痛くして死にかけたが到着し、カードを差し込み残高を確認した。

 

「小遣いっていくらなんだ?」

 

 と言いながら見てみると

 

 残高100096000円、と表示されていた。

 

 俺の記憶が正しければ96000円しか残高はなかったはず。つまりの所親父のお小遣いは1億円になるってことだ。

 

「……ごめん母さん」

「やっぱり金持ちって不幸だぁぁああ!!」

 

 密かに自分だけの力で100万貯金しようと思ってたシンだが父親の小遣いによって桁をはるかに上回る残高となり残念がっていたのであった。

 

 なんて羨ましいやつなのだろうか!




次回からは日常編…ではなく体育祭編、ですが!最後に出てきた彼女を救う話です。
シンは果たして彼女を救えるのか…乞うご期待!

彼女って誰かわかりますね?

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いします!あと少しで赤バーに戻れる!よろしく!


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弦巻シンは女たらし

最近投稿頻度やばくないですか?感想とかたくさんくれていいんですよ!?

それではどうぞ!

Twitter:https://twitter.com/oo_ru3


 本日から学校に通っていいとの事、みんなもお気づきだと思うがあの後普通に先生に抜け出したのがバレてました。

 

 病室に戻ると巨乳のナースの人が腕を組んで待ってた時は…もう怖かったです。

 

 とまあ普通に動けたし?もういいでしょうって感じで昨日の夜退院したんだ。

 

「ふぁぁぁ…!」

 

 2週間近く寝てたもんだから体が寝たくないって言ってるかのように俺は昨日の夜なかなか寝付けなかった。

 

 エレベーターを待つこと数秒、乗り込み一階のボタンを押して下ること数階で止まる。

 

『ッ!』

 

、乗ってきたのはタイミングよかったのか、それとも悪かったのか、千歳ちゃんだった。

 

「……朝一からあなたと密閉空間を過ごすと思うと吐き気がします」

「あ」

「待ってください、喋らないでください…息が臭いです」

 

 えー俺ってそんなに息くさい?歯磨きしたぞ?

 

 口を両手で塞ぎ息を吹きかけ匂いを確認するが…うん、普通だ。

 

 エレベーターから降りたし話してもいいだろうと思い、話しかける。

 

「今日千聖先輩は?」

「…………姉さんは仕事です」

「ふーん、大変なんだな」

「ッ!なんですか…?私は仕事がない暇人にでも見えますか?見えるんですか?」

「いやそんなこと言ってないだろ」

 

 息くさいとか言いながら顔を近づけてくるのかよ!てか近くで見ると千歳ちゃんめちゃくちゃ可愛いな!?

 

「それに千歳ちゃんもドラマの仕事あるだろ?」

「あーあれですか、断りましたよ」

「ッ!はっ!?」

 

 断ったって…!あんなに喜んでいたじゃないか!なのに、なんで断ったんだよ!

 

「……あなたみたいな人に私の気持ちなんてわかりませんよ」

「……………………俺でよければ相談に乗るけど?」

 

 千歳ちゃんのこんな顔は白鷺千聖が世界で1番嫌いだと話を聞いた時と同じような顔だ。

 

 こんな可愛いが…こんな顔をしていいわけがない

 

「はぁ?何言ってるんですか、あなたみたいなミジンコに相談するわけないじゃないですか」

「ッ!」

「微生物らしくそこら辺の川で遊んでてくださいよ」

 

 その後千歳ちゃんはスタスタと歩き花咲へと向かって行った。

 

 俺はとう言うと…

 

「そ、そこまで言わなくていいじゃんか!?」

 

 少し以上に悲しい気持ちになり俺は1人悲しく花咲へと向かった。

 

◆◆◆◆

 

 時は昼休み、クラスのみんなから学校に来た時はそりゃ昨日並みに驚かれた。

 

 沙綾に関してはまた抱きついてきておたえが浮気だと行ってきたもんだ。

 

 だから俺はお前と付き合ってないっての!?

 

 何回言えば彼女は理解してくれるのだろうか!もういっその事早く誰かと付き合えば言われなくなるのだろうか

 

 いや……おたえのことだからそんなことあるわけないか

 

「シン」

「?千聖先輩?」

「ちょっとこっち来て」

 

 教室のドア前から手招きして俺を呼んで近くの空き教室へと足を運んだ。

 

 人目につかないところに連れてきて一体何をすると言うんだ!?

 

「……はあ、ごめんなさいね、ため息なんてついて」

「一体どうしたんですか?」

「実は千歳について話があるの」

「千歳ちゃん?」

 

 千歳ちゃんの話ってなんだ?口が悪いって話しなら…確か千聖先輩の前ではいい子ぶってたはずだ。だったら何の話だ?

 

「あの子ドラマの出演断ったのよ」

「……その話は今朝聞きました」

「そしてその話が私に回ってきて…妹が迷惑かけたから出演することにしたんだけど」

「だけど?」

「……それから千歳が私の話を聞いてくれないのよ」

「ッ!そ、それは」

 

 タイミングが悪すぎるだろそれは…!

 

 自分が勝手にやめたけど…やめた後に、世界で一番嫌ってる人に役を取られるなんて!

 

 そんなの死ぬほど嫌に決まってるじゃないか!

 

「シン?」

「ッ!」

 

 でも妹さんあなたのこと嫌ってますよ?なんて言えない。

 

 言ったとしても千歳ちゃんは白鷺千聖が嫌いであって姉さんは好きだって訳分からんこと言ってるし

 

「…………俺が話聞いてみます」

「ごめんない、こないだあんなことがあったのに退院そうそう頼ってしまって」

「仕方がないことですよ、千歳ちゃんのこと知ってるのは俺ぐらいですし」

「…………それに俺は千聖先輩の正義の味方なので!」

「ッ!」

 

 そう、俺は千聖先輩の正義の味方であってみんなの正義の味方、そしてみんなってことは千歳ちゃんの正義の味方でもある。

 

「……今すっごくキスしたいわ」

「ええ!?」

「誰もいないしいいわよね?」

「ちょ、ちさ、あ、い、いやぁぁああ!」

「い、いやって何よ!」

「そっちのいやじゃなくてですね」

「じゃあ…いいのね?」

 

 うう、その上目遣いはずるいですよ…

 

 負けた俺は静かに誰にもバレずに人気アイドルと学校でキスをしたのであった。

 

◆◆◆◆

 

 放課後、早速千歳ちゃんの所に

 

「シーンくん!」

「あれ?日菜さん!なんで花咲に?」

「お姉ちゃんのお迎えだよー!」

 

 お姉ちゃんのお迎え、紗夜さんと帰るってことか…いやー良かった良かった。俺が思ってる以上に仲がいいようで

 

「今日こそお姉ちゃんにゆうお兄ちゃんを信じ込ませないと!」

「あたし的には兄妹仲良くなるとどるるるんな気分になると思うんだけどなー」

「は!シン君もアタシかお姉ちゃんと結婚すれば家族に…」

「あはは、何冗談言ってんすか」

 

 冗談だとしても結婚すればーとかモカみたいなこと言いますな

 

「えー冗談じゃないよー!だって」

「ひーなー?」

「ッ!お姉ちゃん!今ねシン君とお姉ちゃんが結婚すればって話をしてたんだよ!」

「だからあなたは何が目的なのよ!そろそろ本当に怒るわよ!」

「ええー怒らないでよお姉ちゃん、自分の気持ちには素直にならないとるんってならないよ?」

「ッ!と、とにかく帰るわよ」

 

 日菜さんは紗夜さんに制服を捕まれずるずると引っ張られだんだん俺と距離が離れていく。

 

 その様子を見てた生徒達だがみんなして口をポカーンと開けていた。

 

 まあ人気アイドルのあんな有様を見るとそうもなる、よな?

 

「あ、シン君!今日は薫君と約束(デート)の日だからね!忘れちゃダメだよー!」

「こら!叫ばないの!」

「えへへ、お姉ちゃん!今日ゆうお兄ちゃんがポテト買ってくれるってさ!」

「ッ!あ、あんな人は夕刀兄さんなんかじゃありません、兄を語る変態不審者です」

「だーかーらー本当にお兄ちゃんなんだってぇー」

 

 とだんだん声は聞こえずらくなるもそんな会話が聞こえた気がした。

 

「っと、一番目は薫先輩か」

 

 ちゃんとみんなの約束(デート)は守る。

 

 なら今日は千歳ちゃんに構う時間が無いか…まあ明日の朝話せばいいか

 

 てか待ち合わせ場所とか聞いてないんだが!

 

「ねぇねぇ聞いた?薫様が花咲の食堂でティータイム中だって!」

「えーそれ本当なの?来る意味なくない?」

「なんか人を待ってるらしいの!」

「……行くだけ行ってみようかな!」

「………………………………」

 

 ま、まさかな、本当にいるわけないよな?

 

 半信半疑で食堂に向かうと

 

「い、いるぅぅ!?」

「!やあ騎士君、待ちわびたよ」

「……ッ!あれ?」

「………………どうも」

 

 何故か亜滝先輩もいた。通りでギャラリーが多いわけだ、薫先輩と亜滝先輩の2人が揃えば人は必然と集まってくる。

 

「騎士君を私のティータイムにご招待、ってわけさ」

「だったらもっとこういい店とかにしてくださいよ」

「すまない、光春は部活があるんだとさ」

「ふ、シェイクスピアも言ってる…」

「ところでなんで薫先輩と亜滝先輩が?」

「……やれやれ、飛んだせっかちな騎士君だ」

 

 わからんことを聞くよりも早く薫先輩と亜滝先輩の仲がいい理由を知りたい。

 

 まさか浮気…?なんてことないよな?

 

「何を隠そうリサに光春を紹介したのは私さ」

「薫とは中学の頃から絡みがあったんだ、その流れでね」

「つまり私はリサと光春の恋のキューピットなのさ、ああ…なんで儚いんだ」

 

 なるほど…なんで知り合ったとか詳しい話を聞きたいけど今は辞めておくか

 

「でも亜滝先輩のいる意味がわかりません」

「僕はそんなに君に嫌われてるのかな?」

「別にそんなことは言ってませんよ!」

「……そうかい」

 

 なんか嫌われてるの雰囲気出てたけど今はそんなに昔ほど嫌いってわけじゃない。

 

 なんならあの後仲直りして友達にもなったし、でも仲良しだと言ったら嘘になるかもしれん

 

「いつも月一でお茶を飲んでるのさ、どうだい?騎士君もこれから毎月参加するかい?」

「い、いえ結構です」アハハ

「そうか、それは実に残念だね」

 

 でも待てよ?中学の時仲がよかったってことは?

 

「もしかして亜滝先輩は千聖先輩とも仲良い感じですか?」

「……いいや、僕は彼女のことを全く知らない、絡んだこともないね」

「千聖と私は君が知っての通り他校、ならば光春は絡むタイミングがないのさ」

 

 だったらあんた達はどうやって知り合ったの?って聞きたかったがそれよりも聞きたいことがあった。

 

「だったら……薫先輩は千歳ちゃんのことも知ってますよね?」

「!……まさか君から彼女の名前が出るとはね」

 

 薫先輩は手に持っていたティーカップをゆっくりと下ろし、組んでいた足を組み替え話の続きに入った。

 

「どうして彼女の話を聞きたいんだい?」

「……その、千歳ちゃんを助けたいんです」

『ッ!』

 

 ここで適当に誤魔化したって意味が無い、ならば正直に話した方が手っ取り早い。

 

 彼女には俺の知らない何か大きなものを抱えて生活している。

 

 俺はそれが何か知りたい、そして助けてあげたいんだ。

 

 例えどんなに罵られようと、貶されようと、それでも俺ら彼女に笑顔で接してあげたいんだ。

 

「千歳を助ける、か」

「単刀直入に言うがそれは少し厳しいと思う」

「ッ!」

「すまない、私もそこまで千歳ちゃんのことを詳しいわけじゃないんだ。でもこれだけはわかる」

 

「彼女は私よりも分厚い仮面を被ってるのさ」

「……自分というものを隠して、もう何年も生きている」

「…………本当、誰かにそっくりさ」

 

 その誰かが誰なのか俺は知らないが…薫先輩よりも分厚い仮面、というのは演技が上手いって捉えていいのだろうか

 

「千歳はね、周りに認めて貰いたい娘なんだ、何かできたら凄いでしょ?って笑顔で自慢してきてたよ…昔はね」

「ッ!」

「おや?その反応は知ってる顔だね」

 

 そう、俺は知ってる。

 

 千歳ちゃんのドラマ出演が決まったあの夜、あの時の千歳ちゃんの笑顔偽りのものなんかじゃない。本物の笑顔だった。

 

 そして俺に褒めてほしそうに言葉を並べていた。

 

「……あれが本当の千歳ちゃんの顔なんだ」

 

 あんな無邪気に笑う顔を、いつも…もう何年も、何年も白鷺千聖の妹だから、って理由で完璧を演じ続けていた?のかもしれない。

 

「それでも君は……千歳を助けるつもりかい?」

「……例え本人に頼まれていないとしても、俺は千歳ちゃんを助けます」

「…………俺は正義の味方ですから」

 

 何度も言うが理由なんて関係ない、千歳ちゃんが心のどこかで苦しんでるはず、ならば俺は助けたい。助けたいんだ。

 

「チッ……僕は反対だね」

「ッ!光春!」

「君は一体いつまで彼女(・・)を待たせるんだい?」

「…………な、何言ってるんですか」

「これでわからないなんて君は僕よりも最低な人間だよ」

 

 亜滝先輩が言いたいことはひまりのこと、なのだろうか?でもなんで亜滝先輩が知ってるんだ?

 

「彼女の好きな人が君だったから…僕は振ったんだ」

「…………僕なんかより君のことをずっと思ってたはずだ」

「う、嘘だ…」

 

 だってひまりは亜滝先輩のことが好きで…だから俺が協力して!夢の国でデートまでしたのに

 

「球技大会の時に言ったことも嘘ではなよ、それに僕は彼女が自分の口で言うべきことだとも思っていた」

「君の悪いところ、それは他人の心の根につきすぎてるんだよ」

「……何人もの人が君に恋をするのと同じように、ね」

「ッ!」

「君が言うその正義の味方って夢が…色んな人を虜にしてしまう」

「全く僕のことを女たらしなんてよく言えたもんだよ」

 

 俺の、俺の今までの行動が?みんなを虜にしていた?

 

 ひまりで始まり、彩、千聖先輩に沙綾、そして蘭?

 

「ッ!でもその行動は間違いなんかじゃない!」

「違うよ、君は全くわかってない」

「君が誰かに構えば他の人は嫉妬する…それを君はずっと続けてるんだよ?」

「次はその千歳ちゃんかい?千歳ちゃんを虜にするのかい?」

「………………違う」

「いいかい?」

 

「誰かの味方をするってことは誰かの味方をしないってことなんだよ」

「ッ!」

「肝に銘じておくことだね…それじゃあ僕は部活に行くよ」

「………………………………」

 

 悔しいけど亜滝先輩の言うことは正論だ。

 

 俺が他の人に構いすぎたせいで…俺に好意を持つ人が増えて…ひまりに迷惑をかけている。

 

 紛れもない事実だ。

 

「……騎士君、光春は君に嫉妬してるんだ」

「嫉妬?」

「リサは君が入院している時とても心配していたんだ」

「…………彼女が他の人に、それも自分が負かされた人のことを心配してるとなると…嫉妬もするさ」

「光春は完璧人間じゃない、君と同じ人間なんだ」

 

 嫉妬する気持ちは嫌ってほどわかる。

 

 だって俺だって亜滝先輩に嫉妬して勝負してさ…次は俺が嫉妬される立場か

 

「ここで言うのもあれだが…」

「?」

「次の約束(デート)はひまりちゃんだよ」

「ッ!」

「では私はそろそろ戻るよ、今度はちゃんとしたティータイムにしよう」

「…………お願いします」

 

 次はひまり、かータイミング悪いな

 

 ってそんなこと言ったら失礼だよな…この気にちゃんと確かめないと

 

 注がれた紅茶を飲み干しシンは教室に向かい荷物を持ち、シンは学校を後にした。

 

◆◆◆◆

 

「シン君!」

「ッ!ひ、ひまり…驚かすなよ」

「薫先輩とのお茶会はどうだった?楽しかった?」

「…………まあ楽しかったよ」

「シン君…元気ない?」

「ッ!い、いやー!久しぶりの学校で疲れただけだよ」

「………………そっか」

 

 少し以上にひまりに接するのが気まずい。

 

 ずっと待たせてるくせに俺はまた別の人、つまり千歳ちゃんを助けたいなんて考えてるんだ。

 

「私とのデートなんだけどさ…?」

「うん」

「うち来ない?」

「……つまり、家か?」

「うん!そう!」

 

 な、なんで家なんだ?

 

「一緒に勉強したいなーって、ほら前したことあるじゃん」

「…………懐かしいな、期末テストの時だっけか?」

「そうそう!今日もよろしくお願いします!シン君先生!」

「………………おう!」

 

 でも俺はこの時やけに勉強する気があるひまりに対して違和感なんて持つことがなかったんだ。

 

 それよりもひまりに対しての罪悪感が強かったというのか…俺にもわからなかった。

 

「ここだよ!」

「うわでけぇー」

「何それ嫌味!?」

「……いや普通の家にしては大きいだろ!」

 

 俺の屋敷が馬鹿みたいに大きいだけでひまりの家は普通の中では大きい方だろ!

 

「じゃあ入ろっか」

「おう」

 

 ひまりの部屋は2階らしく玄関にて靴を脱ぎ階段を上がる。

 

「ッ!」

「ん?どうしたのー?」

「な、なんでもない!」

 

 ひまりの後ろをついて行き、ふと上を向いた時ひまりの下着が見えてしまった。

 

 それも俺があの時に選んだやつ…だ。

 

 部屋に入り荷物を置き

 

「よーし、勉強するか」

 

 と意気込んで言う、それもそのはず俺は勉強しにひまりの家に来たんだ。

 

 なのに……なんで俺はひまりは急に俺に抱き着き、二人同時にベットへ倒れた。

 

 いや、倒されたといった方が正しいか。

 

「……ごめんシン君、私嘘ついた」

「ひ、ひまり?」

「勉強じゃなくて…シン君とエッチしたい」

「お願いシン君……私、もう我慢できないの…!」

「ッ!」

 

 ひまりが俺の上に乗り逃げられない状況からキスをしてくる。

 

 今までにした唇と唇を合わせるキスなんかじゃない、まるで愛し合うかのように濃厚な、暑いキス…。

 

「……ひ、ひまり!」

「ねえシン君、私今凄くドキドキしてるの、ねえ?伝わるでしょ…?」

「ッ!」

 

 ひまりは俺の手を自分の胸に押し当てる。それはもう柔らかいひまりの胸からは確かにドクドクと普段とは違う早いリズムの鼓動を感じる。

 

 ああ、俺はひまりにこんな思いをさせるまで我慢させてたんだ。

 

 ずっと…期間は短いかもしれないけど好きな人から1ヶ月以上も返事を貰えないとこうなってもおかしくない。

 

 だから、俺は自らの罪を償うかのように言葉を発した。

 

「…………ひまりの好きにしていいよ」

「ッ!」

 

 これは俺が未熟すぎた罰だ、俺がもっとちゃんとしてれば、付き合えたとしても!付き合えないにしても…!早く返事をするべきだったんだ。

 

 ひまりはその言葉を聞くと泣きながらまたキスを再開させた。

 

 何故泣いているのか、それは嬉し涙ってやつなんだろう。と俺はとらえていた。

 

 俺もこの時はひまりを受け入れるように…抱きながら、まるで恋人のようなひと時をすごしていた。

 

「……い、挿れていいの?」

「言ったろ、ひまりの好きにしていいって」

「だったらシン君から挿れて欲しい、かも」

「ッ!」

 

 そう、何度も言うがこれは俺への罰なんだ。

 

 そう自分にいいように言い聞かせ、欲望のままひまりを押し倒してショーツを下ろす。

 

「ッ!は、恥ずかしいよ…」

「……じゃあ、やめる?」

「…………いやだ、やめたくない」

 

 俗に言う正常位ってやつだ。ひまりの胸、そしてひまりの部分は丸見え、そしてあと数ミリ、いやもう触れてる。

 

「ッ!や、やっぱり恥ずかしからコッチで」

 

 ひまりは動き出し、恥ずかしいからって理由で俺に顔を見けることなくケツを突き出してきた。

 

「……もう、いいんだな」

「う、うん」

 

 と、またひまりに近づきひまりの部分と俺の部分が触れ合う。

 

「ひゃっ!」

「ッ!」

 

 そんな声を聞いてしまうと俺もびっくりしてしまう。

 

 それは無理もない、だって目の前には夢のような光景が、あるんだ。

 

 俺じゃなかったら男子のみんなは真っ先に突っ込むのだろうか、でもふと周りを見てみると

 

「……し、シン君、まだ…?」

「ひまり姿鏡で結局顔見えてるぞ?」

「ッ!……もーう!だ、だったらこれで大丈夫だよね!?」

 

 また俺と向かい合うように仰向けになる。先程同様正常位ってやつだ。

 

「手、繋ぎたい」

「…………ああ」

 

 次こそ、もう後戻りはできない。ここで後は俺が前のめりになり、ひまりに俺のを挿れれば

 

「ッ!」

 

 ひまりは身構えて目をつぶる。

 

 が、俺はそこから先動けなかった。

 

 なんと言うか…千聖先輩のことを思い出してしまった。

 

 忌まわしきあの事件、あれは俺が千聖先輩を真っ先に抱いておけばすんだ話、のに俺は抱かなかった。

 

 のに今、俺はひまりに生で直接押し当てて、もう挿れる寸前まで来てる。

 

「……ッ!」

 

 くそ、童貞だからどこがどうとかわからないってな

 

「……ここ、ここだよシン君」

「そ、そのままで…んんっ!」

 

 ひまりはわかりやすく教えてくれ俺はまた身構える。

 

 次こそ覚悟を決めたようにひまりの手を強く握りしめて腰を下げようとし、先がもう入る寸前で

 

「ひまりー!帰ってきたよー!」

『ッ!?』

「……あ、えっとーお、お邪魔しました」

『…………………………』

『…………………………』

『ちょっと待って!?』

 

 まさかのこのタイミングで誰かがひまりの部屋のドアを開けたらしい。

 

「お、おま、おまおまおまおまおお前!今日だ、誰もいないって!」

「そ、そうなんだよ!なのにお姉ちゃんが!?」

『ッ!』

 

 お互いの今の状況を見て恥ずかしくなってしまう。

 

 俺の立派な息子は元気フルマックス、戦闘状態、ひまりも胸をさらけ出してて…もう説明するのも恥ずかしい

 

 でもそれよりも自分がこれから何をしようとしてたかと思うと…今までとの比にならない程の罪悪感が俺を襲った。

 

「…………ごめんひまり、俺どうかしてた」

「ッ!な、泣かないでよ」

「あと少しで俺は…本当に取り返しのつかないことをするところだった…!」

「………………それは私もだよ、1人だけ抜け駆けして私ってずるいね」

 

 ここで俺がひまりとエッチをしてたのなら俺は他の誰でもない、ひまりと付き合っている人生になってた。

 

 でも……それだと彼女に疑問が残る。

 

 私はあんなに必死に頼んだのになんで抱いてくれなかったの?

 

 って…だから俺はひまりとエッチをしなくてよかったんだ。

 

「ほらシン君泣かないの」

「ッ!」

「生乳に顔うめれるなんて人生でそうそうないよ?」

「…………でも俺、ひまりに我慢させてたから、俺が悪いからいいように使わせようって」

「確かに我慢してたけど…今日でわかったよ」

「?」

「エッチって凄くドキドキするんだね」

「……そう、だな」

 

 俺はひまりのその柔らかい生乳に顔をうずめながら…そう答えたのであった。

 

 その後は

 

『……や、やってしまった…!』

 

 と2人は後悔していた。

 

「(何言ってるの俺!?てか普通に直で当ててましたよね!?てか先っちょ入ってないよな!?え、大丈夫だよな!?)」

「(い、挿れて欲しいかも…って!私は乙女か!いや乙女だけどさ!)」

 

 これも青春の1ページと言うのだろうか、シン達は同じ部屋で同じような内容で後悔してた。

 

「(でも…キスだけでもすごく気持ちよかった)」

 

「ね、ねえシン君!?」

「な、なななんだいひまり!?い、言っとくが俺は挿れてないからな!?」

「そ、それはわかってるよ!?その、ほら!あれ!」

「もう一回キス、しない?」

「ッ!?」

 

 な、何故だー!あんなことがあったのにか!?

 

「ほら!するのー!」

「ちょ!ひまりさん!?」

 

 ひまりは座っている俺の上に座り唇を近づけてくる。

 

 そこでさっきのことを思い出しふとドアの方を向くと

 

「……あ、私のことは気にしなくていいので続きをどうぞ」

「って!気にするわ!?」

 

 その後場所は移りリビングにて話をしていた。

 

「で、なんで急に帰ってきたの?」

「いやー妹の成長がみたくなって、うん…今日でひまりは大人の階段を昇ったんだね」

「………………してないもん」

「へ?」

「だから俺達あの後何もしてないんですよ」

 

 ま、まああの場面を見られたらそりゃーうん、そう思われても仕方が無い

 

「ええ!?あそこまでしてしてないの!?英雄君!」

「英雄君?……もしかしてその呼び方!」

 

 知ってる!よく見たら見たことある人!そして胸!間違いない!

 

 猫カフェの定員さん!

 

「まさか英雄君とひまりが付き合ってたのはねーうん、君も大変だね、ほれほれー」

「ち、違います。俺とひまりは付き合ってません」

「あはは!もういいってあの子のこと今は気にしなくていいからさ」

「いやだからその人も含めて俺は誰とも付き合ってないんですって!」

「…………まじか!」

 

 そんな嘘ついて意味ありますか!?虚しいだけだろ!もうやめてくださいよ!

 

「て言うか姉ちゃんの店ってカップル限定なんじゃ…?どうゆうこと?シン君」

「これは泥沼だね」

「はあ…」

 

 俺はひまりに全ても話した。

 

 友希那さんの彼氏役として入っただけで本当に付き合っていないということを、そう正座しながら説明した。

 

「な、ならいいけどさ」

「にしても英雄君のあんな姿を見れたのは私とひまりだけだね」

「姉ちゃんは見なくてよかったの!」

「……でも、ありがとう」

「それは俺も思います、本当にありがとうございました」

「え、ええ、なんで私お礼言われてるの?」

 

 確かにあんな場面見られたなら普通怒って恥ずかしくて気まずくなる。

 

 俺達だって気まずくなったけど…怒ってない、むしろ感謝してる。

 

 もし俺があそこでひまりとしてたら、もしえっと名前知らないからひまりのお姉さんと呼ぶけど来なかったら俺達…2人して取り返しのつかないことをしていた。

 

「そう言えば自己紹介がまだだったね」

「上原ひよりです。年齢22歳!スリーサイズは上から8」

「それは言わなくていいの!」

「ひまりさっきからなんなのさー、あ、もしかして英雄君取られるの警戒してるのかなー?」

「ッ!するよ!だって姉ちゃんすぐ男に手出すもん!シン君の童貞は私のだもん!」

「のわりにさっきはチキってしなかったのにね」ヘッ

「ッ!これには色々と理由があるからぁー!」

 

 それは俺にもダメージが来るからやめてくれ!てか男の俺がやめたんだから俺の方がチキンだろ!?チキンボーイだよ!

 

「てゆうかひまり私のこと酷く言い過ぎー」

「……こないだセフレがどうたらって言ってたじゃん」

「ギクッ!」

 

 一瞬にしてやられてますやん…もうちょいしっかりしろひよりさんや

 

「い、今はセフレって関係なだけだから!?」

「そうだとしてもエッチしてることには変わらないじゃん!」

「もーう!なんなのよ!」

「ぎゃ!ぎゃー!ぎゃー!!」

「ぎゃー?ぎゃ!ぎゃぎやー!」

 

 こ、これが優しい姉妹喧嘩っていうやつなのだろうか

 

「わ、私だって色々頑張ってくるんだからそんな風に言わないでよ」

「ッ!」

 

 ひよりさんはひよりさんなりに好かれようと努力しているんだ。そんな風には言われると確かに嫌な気分になるよな

 

「ひまり、もうやめてあげようぜ?」

「う、うん…言い過ぎた、ごめんね姉ちゃん」

「うん、許す」

 

 その腕組んで胸を持ち上げてるのはわざとなのか?わざとなんですか?でかいアピールしてんじゃないよ!

 

 というより流石は血を分けた姉妹、うん出るところは大きく出てるな

 

「ところで英雄君!ご飯食べていくかい?お姉さんが何か作ってあげよう!」

「私が作るの!」

「一人暮らし舐めんなよー?姉の力を見せてあげる!」

結局ひまりはひよりさんに負けてひよりさんが夜ご飯を作ることになった。

 

 ひまりはと言うとソファにて俺の隣でぶうぶう言っていた。俺に手料理を食べさせる機会だったから気合が入ってたんだろうか

 

「ひまり」

「ッ!手なんか握ってどうしたの?」

「……言いたいことがある」

 

 俺はこれから自分がしたいことを素直に話した。

 

 千歳ちゃんを助けたいと、そして

 

「俺は必ず返事をする」

「ッ!」

「それがひまりの求めてる返事か、はたまた別の返事になるか…わからない」

「シン君」

「こんな周りのことばかりみてひまりを見れてなかった俺を許して欲しい」

 

 ひまりは思った。

 

 確かにシン君は色んな人を助けて、そのせいでまた一人、二人とシンのことをすきになっていく人が増えていた。

 

 でも

 

「もう今日みたいなことはしないよ、私もシン君もいい気分じゃないしね」

「……それにさ、正義の味方の彼女になるならそれぐらいのこと耐えないと…だよね?」

「ッ!……ありがとう、ひまり」

 

 そう答え、2人は自然と顔を近づけるが

 

「ひゅーお熱いねー」

『ッ!』

「本当はお互いしたいんじゃないのー?」

「ひまり、俺が言いたいこと…わかる?」

「シン君こそ、いつものセリフだよね?」

 

 俺達は一度大きなため息をつき

 

『……不幸だぁぁぁあああ!!』

 

 と、叫びひよりはと言うと仲良いですなーと微笑んでいたのであった。




今回は生々しい話でしたね、有翔の話を知ってるかたにとっては久しぶりのこーゆう話になります。

人って時には間違ったこととかしちゃいますもんね、だって生きてるから

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくです!

次回から千歳編本格的に始まります。


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弦巻シンと後輩の話

お久しぶりです!今回はタイトル通り彼女の話です。オリキャラですがシンが成長したところ見せるために必要の話になります!!それとオリキャラ多くてすみませんでした!

それではどうぞ!

Twitter:https://twitter.com/oo_ru3

誤字脱字は後日訂正します


 次の日、本日は金曜日、次の日曜が体育祭…だな

 

 期限は今日と明日だろうか。いや別に期限とかは決まってないが…うん、俺が決めた。

 

 今日も今日とて昨日と同じ時間にエレベーターに乗る。すると

 

「ッ!」

 

 あの階でエレベーターは止まりまた千歳ちゃんが乗ってきた。

 

「……2日連続朝一であなたと会うとは、臭いが移るのでやめてください」

「…………………………」

「何か言ったらどうです?」

「……何か言ったら息くさいって言うだろ?」

「……へー、ようやく自分の匂いに気づきましたか」

 

 だから俺は臭くないっての!?

 

 と心の中でしか言えない、ここで言ったらさっき言った通り息くさいって言われるオチだよ

 

 1階に着き、エレベーターから降りて俺は話しかける。

 

「千歳ちゃんっていつからそうなの?」

「……はぁ?いきなり何言ってるんですか、話のネタがないなら話しかけないでください」

「いーや、一体いつから仮面を被ってるのか気になったんだよ」

「ッ!」

 

 千歳ちゃんは驚いたように目を見開き後ろにいる俺を見る…も数秒後その目は俺を睨みつけていた。

 

「ちょっと何言ってるのかわからないんですけど」

「本当は知ってるんだろ?」

「ッ!知ったような口を!」

 

 知ったように、なんて言うが俺は全く知らない。ただ俺は薫先輩から聞いた話をそのまま言ってみただけだ。

 

「俺、決めたから」

「…………なんですか」

 

「俺は君を救う、もう決して苦しませない」

 

「ッ!?」

 

 先程と同じように驚くもまた数秒後目付きが変わる。でもそれはさっきとは違い、もっと鋭く俺は睨まれていた。

 

「あなたなんかに救われる意味がわかりません、大体あなたと私の関係は百歩譲って他人…のくせに何言ってるんですか」

「……他人じゃない」

「はぁ?」

「俺は千歳ちゃんの、いや千歳の正義の味方だ」

 

 それを聞いた時は呆れたかのように適当な返事をしてた。

 

「……余計なお世話です、あなたを見てると目が腐りますので視界から消えてください」

「消えない」

「ッ!なら…私が目を逸らします」

 

 その後千歳は走り出しまるで俺から逃げるようにマンションを後にした。

 

「……てな訳なんで、俺の好きなやり方でいいですか?……千聖先輩」

「ええ、あなたの好きなようにしていいわよ」

「……ありがとうございます」

 

 千聖先輩の許可も得たし、後はやることをやるだけか

 

「(千歳は必ず俺が助ける)」

 

 そう心に決めたシンはやるべきことをやるため学校へと向かったのであった。

 

◆◆◆◆

 

 体育祭間近になると授業は全て体育になる。男子は組体操、女子はダンスなどの練習、後は個人種目の練習だな

 

 俺は左手を骨折してるもんだから……借り物競争に駆り出された。

 

 そんなにスピードを問わない競技、簡単に言えば運が良い奴が勝つ。

 

 いや待て!この不幸の代表弦巻シン様がいいカードを引くわけないだろ!?

 

「よーし、お昼休憩入れー」

 

 ムキムキの体育教師がそう言うとグランドにいた生徒達はみな体を休めるためにクラスへと戻る。

 

 そんな中俺はある人物に声をかけていた。

 

「……っと、見つけた、おーい!彩!」

「……ッ!し、シン君?ど、どうしたの?」

 

 同じ赤組だから赤いハチマキを巻いている彩だが予想を超えるほどハチマキが似合っていた。

 

「彩、ハチマキ似合ってるな、可愛いよ」

「も、もーう、なに?口説きに来たの?」

「ち、違う違う!別にそんな意味で言ったわけじゃない!」

「本当ー?」

「本当も本当!似合ってたから可愛いって言ったんだよ……恥ずかしいこと言わせるなよな」

「ッ!う、うん」

 

 お互い言葉が出なくなり気まずい雰囲気が漂う。ここは俺の一言で急値を出ないと

 

「実は頼みがあるんだ」

「頼み?」

「ああ、ごにょごにょ」

「……ええ!?私あんまり仲良くないのに!」

「頼むよ彩ー!」

「……貸しだからね!」

「ッ!お、おう!」

 

 そこまできつい頼みじゃないのに何か凄い貸しを作った気分になったんだが…ま、まあ彩のことだから昨日のひまりみたいなことは…

 

 あーあーあー!思い出すなよ!ダメだろ弦巻シン!彩が目の前にいるのにあんな光景思い出しちゃ!?

 

「じゃあ行ってくる!ちゃんと覚えててね!」

「ッ!お、おう!」

 

 よく聞き取れなかったが返事をしとけば大丈夫だろ、俺は彩に頼み事をしたあと待ち合わせ場所へと向かったのであった。

 

◆◆◆◆

 

 場所は体育館裏、なんか体育館裏に呼び出すなんて喧嘩しようとしてんのかと思われるがそういう訳じゃない。

 

 つくこと数分後、足音が聞こえ出した。

 

「……来たか」

「誰かと思えば君かい、シン君」

「丸山さんを使うとは君も随分と好かれているようだね?」

「もうそうゆう話は俺に効きませんので」

「ッ!」

 

 何故亜滝先輩を呼び出したのか、それは昨日の続きの話をするためだ。

 

「あの後ちゃんとひまりと話をしました」

「……それで?」

「ひまりにはたくさん迷惑かけてる。そしてこれからも俺はかけてしまう」

「…………わかってるじゃないか」

「でも、それでもひまりはいいって言ってくれた」

「ッ!」

 

 ひまりはいいと許可してくれたことを亜滝先輩に伝える必要があったんだ。

 

 もし伝えずに千歳を助けようと行動してたらまた昨日と同じように説教されると思ったから話したんだ。

 

「それに、やっぱりほっとけないんですよ」

「…………僕も君がそういう人間だってことを忘れてたよ」

「?」

 

 また否定されるのかと身構えていたが違った。しかも亜滝先輩からの返事は全く考えもつかなかった返事だった。

 

「昨日はすまなかった。僕も言い過ぎてた」

「……君がひまりちゃんのことを弄んでいると思ってたが…肝心なことを忘れていた」

「君は正義の味方だ、困ってる人がいたら周りなんて気にせず助けちゃうだろうね」

「…………そうですね」

 

 確かに俺は周りが見えてない、それは間違ってないな

 

「だからってしていいことと悪いことだってある」

「わかってます、ちゃんとひまりのことは考えてます」

「じゃあここで答えてくれ」

 

「君はひまりちゃんのこと好きかい?」

「ッ!」

 

 そんなこと聞く意味がわからなかった。でも冗談で言っているような様子ではない、亜滝先輩の目は本気だ。

 

 どう答えるか、で変わる話なんかではないと思ってる。だから俺は本当の気持ちで答える。

 

「俺はひまりのこと」

「いやいい、すまない、今の質問は忘れてくれ」

「…………はい」

 

 真面目に答えようとしてたのにこれかよ…じゃなんで聞いてきたんだよって話だよな

 

「……げっ!亜滝光春…!と、シン先輩!?」

「ッ!リオ!お前なんでここに!?」

 

 リオのやつが弁当箱片手に体育館裏にやってきた。はっきり言うがこんな場所好き好んでやってくるやつなんて居ないだろ?

 

「え?い、いや…その一緒に食べる友達いないので……あはは、どうせ僕はゴミですよ、あ、でもゴミはリサイクルできるけど僕はできませんね、消えます」

「ま、まてーい!何故そうなる!」

 

 立ち去ろうとするリオの首根っこをつかみ阻止する。

 

「大体なんで僕のベストポジションの体育館裏にいるんですか!」

「なんでって…な?」

「うーん、なんでだろうね」

「ッ!」

 

 リオのやつは亜滝先輩が口を開いたとたんすんごい反応を見せた。

 

 まあシスコンのリオに取って姉ちゃんの彼氏さんとなれば敵視するのは必然か

 

「亜滝先輩!あなたは姉さんのなんなんですか!」

「姉さん?……あー君がリサの弟君か」

「そ、そうだすよ!」

 

 こいつ緊張して噛んでやがる!何故そこまでして話しかけたんだよ!?

 

「どうもリサの彼氏(・・)、亜滝光春です」

「ッ!!!!???」

「シン先輩!この人喧嘩売ってます!買ってもいいですか!?」

「買ってもいいけどお前じゃ勝てないぞ」

「そ、そんなこと言わないでくださいよ!?」

 

 亜滝先輩スポーツ万能だし…うん、なんか空手とか柔道とか普通強そう、いやてか絶対強いだろ!

 

「ぼ、僕だって尿をたしてる時に後ろから揺らすことぐらいはできるんですからね!?」

「それして意味あるのか?」

「辺りに飛び散ります」

『…………………………』

 

 だから何?なんてことを俺と亜滝先輩が後輩に向かって言えるわけがなかった。

 

「……あ、死にます」

「っと、死ぬ前に少し話をしたいんだ!」

「え、な、なんですか?死ぬなら臓器よこせって話ですか!?やですよ!僕の臓器なんて売れませんからぁ!」

「そんなことしなくていいから話を聞け!?」

 

 俺達が冷たい態度をとってしまったからなのかリオのやつの俺の知ってるネガティブを超えるような発言ばかりしてるぞ!?

 

「千歳について聞きたい」

「ち、千歳様ですか?」

 

 もう様呼びが定着しちゃってるじゃん

 

「ああ、クラスでもやっぱりあんな感じか?」

「そのー、なんと言いますか」

「おう」

「……はは、僕と同じですよって言えばわかりますか?」

『………………………………』

 

 またまた俺と亜滝先輩は言葉が出なかった。もうなんて声をかけてやればいいかなんてわからんねーっての!

 

「……リオ君、これも何かの縁だ、僕と友達に」

「いえ結構です」

「……ぼっちも友達を選ぶ権利があるんすよ」

 

 経験者は語るってやつだ、俺も昔は蘭達と友達になれないとか言ってたっけか…

 

「リオ、これから雨降るみたいだから中で食べた方がいいぞ?」

「え!?ほ、本当ですか!?」

「おう」アハハ

「じゃあ中で食べようかな」

 

 まあ嘘だ、これを機にリオのクラスに行きたいから適当な嘘をついたんだ、許せリオ

 

「それじゃあ亜滝先輩!また今度!」

「………………………………」

 

 散々な目にあった光晴だったが…特に何か言うわけでもなく少し微笑むと彼も体育館裏を後にしたのであった。

 

◆◆◆◆

 

「失礼しまーす」

『ッ!』

 

 初めて中学棟にきて教室に入ってみたが随分と様子が違っていた。

 

 中学生あるあるなのだろうか、学級目標的なやつが後ろの壁に貼り付けられていた。

 

 俺が知らないだけであって俺が通っていた中学もそんな感じだったんだろうと思ってしまうよ

 

「し、シン先輩やっぱりやめましょうよ」

「別に飯食うだけだろ?お前の席どこだよ」

「……あ、あそこです」

 

 リオが指を指した先にはなんとまあ…千歳が座ってパンを食べていた。その隣にはこちらを向きながら弁当を食べている明日香ちゃん

 

 うん相変わらず可愛い、香澄と同じ血が流れてるとはっきり分かる!今すぐ香澄と同じように話しかけたい!

 

 が、そんなことをここでしたら俺は紗夜さんで言うところの変態不審者さんになってしまう。

 

「……なあ千歳、リオが困ってるからそこどいてやってくれないか?」

 

 俺は千歳に近づき話しかける。

 

「気安く名前を呼ばないでください、あと臭いので帰ってください」

 

 いつもの返答、もうずっと臭いって言われ続けてるもんだから慣れたいところ、しかし言われてみるとやはり心にグサッ!って何かが刺さる。

 

 だけど俺だってずっと同じ対応ですませない。

 

「話があるから少し席を外して欲しい、頼んでいいか?」

「……なんであなた」

「いいから、ちょっと来い」

「ッ!」

 

 否定しようとする千歳の手を無理やりとり教室から連れ出す。いや悪い事だと思ってるがあそこで行動しなかったらズット口論になってただけだ。

 

 なら、動いた方が話はすぐにつく

 

「あ、忘れてた」

「リオはいいやつだぞ、話してみたら案外面白いからな」

『…………………………』

 

 千歳のクラスメイトと奴ら何も言わなかったが明日香ちゃんが少し笑ったような声は聞こえた気がした。

 

「いつまで握ってるんですか!?早く離しなさい!」

「ッ!ご、ごめん」

「全く臭いが手に着きました、納豆とくさやとシュールストレミングを混ぜた臭いが」

「そこまで臭くねーよ!!!???」

 

 そんなやつこの世にいたらもう終わりだろ!?なんてことを言ってるんだ君は!

 

「そうだ、千歳に話がある」

「今朝の話ですか?あなたに私のことなんてわかるはずがありません、なので諦めてください」

「いいや、諦めない」

「ッ!」

「確かに俺は千歳のことをあまり知らない、だから」

 

 そう、だから俺は千歳を知らないといけないんだ。知るために一番手っ取り早いことは

 

「明日俺とデートをしよう」

「ッ!…………はぁ?」

「今朝も言った通り俺はお前を助ける、それにあたって千歳のことをもっと知りたい、だから…デートしよう」

「…………………………」

 

 千歳のやつはこいつ本当に頭大丈夫か?とでも言うような顔で首傾げながら俺を眺めていた。

 

「返事がないんだが?」

「……する理由がわかりません」

「俺が千歳とデートしたいから」

「…………明日は無理です。今日の放課後なら……空いて、ます」

「ッ!わかった!なら放課後な!絶対な!絶対の!絶対だからな!」

「ッ!空いてると言っただけです」

「HR終わったら校門で待っとくから!」

「ちょ!せ、先輩!」

 

 一瞬だけ千歳は隙を見せてくれた、やはり彼女自身自分を助けて欲しいと思ってるんだ。

 

「……今日の放課後で決める…!」

 

 俺に何がどうできるかなんてわからない。だけど、それでも俺は俺がやれることは全部やりきる。それでも無理だったのなら…そんときはそん時だ。

 

「待ってろよ千歳!俺がお前を救ってやる!」

 

 そう意気込んだシンは午後の授業の体育は誰よりも意気込んでいたのであった。

 

◆◆◆◆

 

「師匠!今日は私との約束(デート)です!」

「すまんイヴ!また今度にしてくれるか?」

「そんな…楽しみにしていたのに残念です」

「イヴのデート断るなんてシン君罪だよ?」

「ついでにおたえもすまん、今日は無理だ」

「…………浮気?」

「ちげーわ!?」

 

 いや浮気って言えるものなのかもしれん、てか普通にデートなんてしてたら沙綾達に勘違いされるだろ!?

 

「とりあえずすまん!また今度!」

「(別の女の子と用事でも入れてるんだろうねー)」

 

 と、教室の隅っこにいた美咲はこころの相手をしながらそう思うのであった。

 

 その頃シンは急いで花咲の校門へと向かっていた。

 

「ッ!千歳!」

「…………あなたから誘ったくせに遅れるんですか?遅刻です、罰金です、死んでください」

「いや重いだろ」

 

 遅刻で死んでくださいは流石に笑えないだろ、それにまだ死にたくねーし

 

 てか死のことなんてもうあれ以来考えたいとも思えない!

 

 でも今はそんなことより千歳だ。

 

「……それじゃあ行くか」

「……はーい」

 

 とは行ったものの何もプランなんて考えてなかった…!

 

 ど、どうしよう。千歳のことだ変なところに連れていったらいつも見たく暴言の嵐が俺を襲ってしまう。

 

 夕方、この時間に行く場所となれば!

 

「よし、飯食いに行くか?」

「ご飯ですか?大丈夫です、家で食べます」

「……そこをなんとか、ほら俺と食べると美味しいかもしれないだろ?」

「あなたと食べて美味しいわけが…グゥー」

「……………………体は正直らしいな」

「ッ!」

 

 まさかあの千歳の腹の虫がなるとはな…完璧みたいに振る舞ってるけどやっぱり女の子なんだ。

 

「早くエスコートしてくださいよ」

「気が変わるの早すぎ」

 

 とは行ってもどこに行くもんか…俺は普段外で食わないから店とか知らんぞ

 

 三郎?はダメだろ体型を気にしている千歳にはキツすぎる。

 

「…………………………ジー」

「?」

 

 千歳が無言でとあるポスターを眺めていた。

あれはネックのポスター?なになに、ごはんバーガ?あーライスバーガーってやつか

 

 あんなに見つめてるってことは?

 

「ネックに行くか?」

「……私パンは嫌いなんです」

「ごはんバーガーってやつがあるらしいぞ?」

「ッ!……今回だけですよ」

 

 なんだろう、なんかあれから千歳のやつ少し優しくなってないか?

 

 所々暴言は言うが普段よりは大人しい、気がする。

 

「てか今日の昼パン食べてただろ!」

「仕方がないじゃないですか、購買にパンしか売ってなかったんですから」

「……それに、なんか姉さんの弁当は食べたくなかったので」

「…………そうか」

「……何勝手に共感してるんですか、うざいのでやめてください、蒸発してください」

「あーはいはい」

 

 どこからすぐにそんなこ言葉を考えつくんだろうな、これも女優として生きてたから勝手に身についたとかってやつか?

 

 その後は特に会話もなく近くのハンバーガーショップのネックについた。

 

 が、ここで俺は肝心なことを忘れていたんだ。

 

『いらっしゃいませー!』

「ッ!ひまり!?あ、彩!?」

 

 そう言えばネックで働いてるとか言ってたな…あれ?これやばくね?

 

 ひまりのやつは俺のことは知ってるけど……いや、あ、あれのせいでひまりのあれを思い出してあぁぁぁぁぁぁ

 

「……ご注文はこれでもかコースでしょうか?」

「ちょ!ストップ彩!これには深い事情が!」

 

 彩のやつは俺のネクタイを手に取り引っ張って顔がくっつくスレスレまで引き寄せた。

 

「……じゃあ私は席で待ってますので」

「お、おい!」

「…………店長ー仕事余ってませんかー?」

「ひまりも!?」

 

 放課後すぐってこともあって店内にはあまり人がいない、それを好機に彩のやつはレジにて堂々俺に話しかけてきた。

 

「あれ千歳ちゃんだよね?なんで一緒なの!?」

「……いやデートと言うか」

「でででで、でででデェト!?まだ私だって1回しかしてないのに!?」

「待て彩顔近い、近いよー」

「じゃ、じゃあキスする?」

「ッ!?」

 

 彩のやつあれからこれぞとばかりにキスする?的なことをよく言うようになったよな

 

 よっぽど凄かったのだろうか?いや確かにキスは凄いけどさ

 

「…………………………ジー」

 

 うう、ひまりの視線を感じる。あともう1人の視線も、千歳?ではない、誰だろう。

 

「お前アイドルだろ、こんなところでそんなことしたら炎上するぞ?」

「それはやむー」

「そのネタやめろー!」

 

 あなたは炎上することなく人気者になってくださいよ!?

 

「と、とりあえずネクタイから手を離してくれないか?そろそろキツい…」

「えーダメ♪」

「で、ですよねー!」

 

 俺はこのレジに腰を押し付け顔だけ前に出た状態で彩に説明を始めた。

 

 普通に息をすればいいがなんせ彩の顔が近い、そんな鼻息を荒くして息なんかしてみろ、変に思われるだろ

 

「……それはシン君らしいね」

「亜滝先輩と同じこと言ってますよ?」

「うそ!?なら撤回!撤回するよー!」

 

 彩はなんでこんなに亜滝先輩のこと嫌ってんのかな?今度それとなく亜滝先輩に理由を聞いてみるか

 

「私もシン君には助けられたし…同じように千歳ちゃんを救って欲しい、かな」

「芸歴で言えば千歳ちゃんは先輩だけど人としては一応先輩だからね!後輩を思うのも先輩って感じじゃない?」

「……いや、あいつは彩より人間性も上だと思う」

「それ本人の前で言うの!?」

 

 何とか彩の手から逃れた俺はその後食べ物注文を始めた。

 

「えっとチーズバーガーと」

「単品ですか?セットですか?」

「セットで、あとごはんバーガー…セットで」

 

 俺だけセットを頼んでいると怒られそうだからな、今回は千歳を怒らせることなく過ごすことで彼女と向き合いたい。

 

「飲み物は何にしますか?」

「……アイスティーで」

「ミルクティーですか?ストレートですか?」

「す、ストレートで」

「ストローはお付けしますか?」

「いやいるだろ」

「サイドメニューはー」

「ポテトで!もういいだろ!?」

 

 あんまりネックにきなれてなきんだからあんまり質問攻めしないで!

 

「では丸山彩はお付けになりますか?」

「それは……欲しいけどまた今度で」

「ッ!し、シン君……それは反則だよ…?」

 

 そっちから初めて来たのに見事にカウンター食らってんな、かましてやったぜ!

 

 っとだいぶ人が増えてきたな

 

「彩最後に1つ」

「?」

「スマイルください」

「…………はい!」

 

 後ろに並んでいた人が「おぉ」と声が出るような笑顔を見せた彩はその後長蛇の列ができたそうだ。

 

「お待たせー」

「遅すぎです、本当に使えない方ですね」

「……うるせぇ」

 

 どうやら店員さんが席までバーガーを持ってきてくれるらしい、ひまりと彩ではないこと

祈る。

 

「お待たせしましたー、ご注文は以上でしょうか?」

「……巴か、いやよかった」

「黙れ浮気野郎」

「えぇ!?」

 

 ひ、ひまりの野郎!話やがったな!?てか浮気野郎ってなんだよ!ひまりのやつ…まさか自分の好きな人が俺とか話してないよな?

 

ま、まあ巴は後日ちゃんと話そう。無理なら蒼汰に相談だな

 

「ご、はんバーガー……美味しそう」ボソ

「俺の奢りだ、食べてみな」

「はっ!せ、先輩ずらしないでください、キモイです」

 

 そう言いながらごはんバーガーを食べた千歳の顔は、それはそれは幸せそうに食べていた。

 

 やっぱり彼女の本当の笑顔はこれなんだ、嘘偽りなんてないこの純粋な笑顔を何も考えずにずっとして欲しいものだ。

 

「千歳はご飯が好きなのか?」

「……別に、パンより好きなだけです、あむ」

 

 米ぐらいならちゃんとやれば炊けるだろ、今度ごはんバーガーを自分で作ってみるか。

 

 いやさすがに蘭見たくベチャベチャな米にはなりませんよ!?

 

 俺は自分の分で注文したチーズバーガーを口へと運んだ。

 

 久しぶりに食べたジャンクフードは体がコンビニ弁当でできている俺の体を変化させるような衝撃が舌を襲った。

 

「……美味いな」

 

 流石紗夜さんが好む食べ物だ、でも本人に言っても認めないんだろうな

 

「先輩、私ポテトはいりませんので食べちゃってください」

「……はいはい」

 

 待たせるのもあれだったから急いで食べた。ポテトに関しては家で作ったやつより何倍も美味しかったからちょっとだけ嫉妬した。

 

 絶対これより美味しいもの作ってやるからな!?

 

「それで先輩?次は何処に行くんですかー?」

「……そ、そうだな」

 

 千歳を知りたいといいデートに誘ってみたものの彼女は少ししか素の自分を見せてくれない。

 

 もっと彼女の素を知る気っけはないのだろうか?

 

 映画?は、今はあんまりドラマとかそうゆう系のはやめていた方がいいよな

 

 ゲーセン?千歳のことだ、ゲームしてるヤツらを罵倒するに決まってる。

 

 ならば

 

「か、カラオケとかどうだ?」

「ッ!?」

 

 おー!大きく反応したぞ!カラオケに反応したよな!?

 

「歌はあまりいい思い出がありません」

「……そっか、なら諦めるか」

「…………先輩がどうしても行きたいと言うなら私は行きますけどね」

「ッ!なら付き合ってくれるか?」

「し、仕方がないですね…今回だけです」

 

 歌にはあまりいい思い出がない?それは一体どうゆうことなのだろうか?

 

 それに今回は結構乗る気でカラオケの提案を飲んでくれた。

 

 それに向かっている時も心做しか機嫌が良さそうに見えたし音符マークも見えてる気がする。

 

「学生2人で」

 

 慣れたように店員さんそう言うとなんかポイントカード的な物を出していた。千歳のやつポイントカード作るほど歌うの好きなのかよ!?

 

 でもまて、さっきのあまりいい思い出がないってのは本当になんなんだ?

 

 嘘…だったのか?

 

 部屋に入ってから思ったけど俺って歌える歌パスパレしかないんですけど!?ここでもし歌ったら怒られるじゃないか!

 

「先輩が歌わないなら私から歌いますね」

 

 先程と同様に慣れた手つきでパッチパネルの操作を行い1曲選択していた。

 

「なんの曲?」

「…………先輩が知らない曲です」

「いいから飲み物取ってきてください、歌った後に飲みたいので」

「へいへい」

 

 前奏が流れてる途中で俺は部屋を出て近くのドリンクバーに足を運んだ。

 

「〜♪」

 

 近くであったため千歳の歌声が聞こえる。その声をBGMにしながらドリンクを注ぐ。

 

「あー!この曲あれじゃん!昔アニメしてたやつ!」

「本当だ、てか歌上手すぎ!?」

「?」

 

俺と同じくドリンクバーに用があったであろう女子生徒?かな、制服着てるから多分そうだと思う。

 

 がなんか言っていた。

 

「待って…?この声Tisaじゃない?」

「え!?あのネットに歌ってみた上げてた人?」

 

 Tisa?ってのは千歳のことを言っているのか?……あいつ歌ってネットなんかに動画あげていたのか?

 

「うん、でも1年ぐらい前から動画出てないよねー」

「……まああんなこと言われたらね」

「ッ!その話詳しく聞かせてくれ!」

『ッ!?』

 

 俺はいきなり声をかけ彼女達にそのTisaについて話を聞き出したのであった。

 

◆◆◆◆

 

「あー歌いました歌いました!」

「ああ、たくさん歌ってたな」

「はい!私100点いくつも取ってたんですよ!?凄くないですか!?」

「……本当、凄いよ千歳は」

 

 あの後俺達は仲良く並びながら同じマンションを目指し歩いていた。

 

「ッ!……なんでもないです、今のは忘れてください」

「………………………………」

 

 千歳は薫さんの言う通りの子だ、誰かに認めてもらいたい、そして凄いと褒められたい子なんだ。

 

 でもそれを今は必死に隠して白鷺千聖の妹として…完璧ではいけないと思いそのことを隠している。

 

 ならばそれを自由にしてやることで彼女を助けたことになるんじゃないか?

 

「Tisa…って千歳のことだろ?」

「………………知りません、そんなこと」

「とぼけなくていい、俺は本当のことが聞きたいんだ」

「……それがどうかしましたか?」

 

 やっぱり……千歳はTisaだったか

 

「歌、好きなんだな」

「……嫌いですよ」

「じゃあなんでネットになんか動画上げてたんだ?」

「……………………………」

「誰かから凄いって、認めてもらいたかったんだろ?」

「ッ!」

 

 千歳はまるで図星かのように大きく反応した。そして握っているリュックの取っ手に力を込めて俺にこう言い出した。

 

「私歌だけは上手だったんです」

「……でもあることが起きて活動をやめたんですよ」

「あること?」

「……ネットってのは恐ろしいんです。嘘の情報にも関わらずすぐに拡散されますもんね」

「ッ!」

 

 拡散された?俺は気になりその拡散された内容を聞き出した。

 

「Tisaは実際音痴で声を加工して上手く聞かせてるだけなんだ、って」

「別に歌手の人でも加工している人は何人かいるかもしれません」

「けど…私は何もしてないのにそんなことを言われたことが凄くショックだった」

 

 唯一得意とする歌で加工している、なんてことを言われると自分の自身というものはなくなってしまうって気持ちは痛いほどわかる。

 

「それからなんです、アップロードする前提で歌を歌うとなると調子が狂って…」

「それに事務所からも勝手に活動するな、って怒られていてたし…潮時かなって」

「だから活動しなくなったのか」

「……はい」

 

 嘘というものは怖いものだ、上げてもそう言われるという恐怖が千歳を苦しめたんだ。それに加え事務所からの活動禁止も相まって活動しなくなったのか

 

「違法だけどさ千歳の歌聞いたよ」

「ッ!」

「綺麗な声だった、のめり込むような歌い方で心に響いた」

「…………そう、ですか」

 

 もう今しかない。ここで俺が千歳を助けないともうこんなチャンス二度とやってこないぞ?

 

 俺が思っている気持ちを素直に全部今彼女に伝えよう。

 

 と思ったのに

 

「でも私はもう誰かの前で歌う気なんてありません」

「……私芸能界でなんて呼ばれてるか知ってますか?」

「?」

 

 な、なんて呼ばれているんだ?

 

「白鷺千聖の代用品…って呼ばれてるんですよ?」

「……は?」

「私は物なんですよ、代用品なだけまだマシです、そのうち劣化品なんて呼ばれ始めますよ」

 

 芸能界がどんな世界とか俺にはわからない、だけどこれだけは絶対わかる…!

 

 千歳は物なんかじゃない!道具でもない!生きてる1人の人間なんだ!なのに、なのになのに!たったその一言で千歳の人生が大きく変わってしまったんだぞ!

 

「私は白鷺千聖の妹として生まれた時から物だったんですよ」

「…………………………」

「ネットで叩かれたのも物が目立とうとしたからなんです」

 

 だから白鷺千聖を嫌っていた、嫌う理由に関しては何となくわかってるつもりだったが…それは千聖先輩が悪いわけじゃない。

 

 それだけでも俺はわかって欲しいと思った。

 

「白鷺千聖が…姉さんは悪くないってわかってます。それでも…恨んじゃいますよ」

「……それは押し付けてるだけだ」

「かもですね」

 

 千歳自身わかっていた、でもそれを白鷺千聖のせいにしないと生きていけなかったんだ、だな

 

「千歳、俺はお前の味方だ、何がなんでも絶対裏切らない」

「……無理ですよ、白鷺千聖の代用品の物の私なんか」

「物なんかじゃない!千歳は人間だ!」

「そう言ってくれる人は先輩だけですよ」

 

 そう答えた千歳は俺に背を向け1人でマンションへと向かって行く

 

「待ってくれ!まだ話は終わってないぞ」

「もういいんです、私の事なんてほっといてください」

「ほっとけるわけないだろ!そんな話聞いたら尚更心配するだろ!」

 

 心配するし助けたいとも思う!当然のことで普通のことだ!

 

「じゃあ先輩は私を愛してくれますか?」

「ッ!?」

「死ぬまでずっと、ずっと私と一緒にいてくれますか?」

「人間として私と結婚してくれますか?」

「そ、それは…!」

「……ほら、その程度の覚悟で私を助けたいなんて二度と言わないでください」

 

 何も言えなかった。無責任で好きだ、愛してるなんてことを俺は言えない。

 

 数人に対して真面目に向き合うことを恐れて返事を伸ばしている俺に千歳の言葉を受け入れる覚悟なんてなかったんだ。

 

「結婚してくれますか?ね」

 

 よく耳にする単語だ、普通なら普段結婚なんて単語を聞くことなんてないが誰かと誰かのせいでよくその言葉を耳にしてしまう。

 

 結果的に俺は千歳を助けることが出来なかった、でも……俺はこんなことで諦めない…!

 

 他のやり方で!千歳が千歳らしく自由に生きていけるように俺は何か手がないか探す!

 

「……お互い不幸だな」

 

 小さな声で呟いたシンは1人でマンションとは別の場所に向かっていたのであった。

 




シンの活躍は次回になります。一体どうやって彼女を助けるんですかね…あと次回は久しぶりに?みんな登場予定です!

それと残念ですが大きな話としてあと約束編と2章分?ぐらいで話を完結させる予定です。まだ続きますが報告させいてもらいます!あと少しの間よろしくです!

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弦巻シンは誰かの真似がしたくなった

今回で千歳編は終了です!長いですが最後まで見てね!あと2日連続投稿すごくないですか!?

それではどうぞ!

Twitter:https://twitter.com/oo_ru3

誤字脱字は後日訂正します


 やって来ました体育祭、空は雲ひとつない晴天、絶好の体育祭日和とはまさにこの日のことだな

 

「生徒代表、2年亜滝光晴」

「はい!」

 

 おお、開会式の選手宣誓は亜滝先輩だったのか、ならちょうどいいや右から入れて左から出す感覚で聞き流せばいっか

 

「続きまして校長先生挨拶」

 

 これまた聞き流して

 

「ただいまより競技を始めまーす!」

「実況はアタシ羽丘生徒会長氷川日菜と!」

「花咲生徒会長…白金燐子です」

 

 またまた実況はこの2人か、球技大会を思い出すな!

 

「よし!赤組優勝目指して頑張るぞー!」

『おー!』

「優勝して焼肉ゲットだぜ!」

『おー!』

 

 蒼汰が高らかにそう叫ぶと赤組のみんなは返事をした。

 

 今回も秋月先生が優勝したら焼肉を奢ってくれるらしい!なんせ俺が入院していた時に決まったらしいから俺はいまさっき知った!

 

 ちなみに秋月先生は俺達紅組側の先生らしい、だからこの条件がついたってわけさ

 

「頑張ろうねシン!」

「おう!優勝したら一緒に焼肉行こうな!」

「うん!」

 

 クソ可愛ええー!沙綾と焼肉か!一緒に食べられるなんてなんと嬉しいことやら

 

「もちろんその隣は私だよね?」

「おたえ…あー勝手にしろ」

 

 しかし勝手に俺の彼女って言うのはなしな

 

「あれ?美咲達は?」

「みーくんとこころんは50メートル走に出るよ!」

「お、初っ端からこころ達か」

 

 聞いての通り体育祭は始まってしまった。

 

 土曜日俺は白鷺家の部屋を訪れたが千歳ちゃんは実家の方にいると言われた。

 

 何も出来なかった、金曜日の後俺はやれることをしたつもりだったけど本当の彼女を知った途端動けなくなってしまった。

 

「位置について…よーい、どん!」

 

 何も出来ないまま今日を迎え俺は体育祭に参加している。

 

 こんな気持ちを表に出してしまうとまたみんなに心配をかけてしまう。だから俺は隠し通してやり過ごさないと…

 

「シーン!!」

「ぐはっ!」

「こころちゃんゴールと同時にシン君にダイブだー!」

「羨ましい…」ボソ

 

 燐子さんの羨ましいって多分別の意味だろ!?

 

「てかこころ!?いきなり抱きつくな!」

「シン!あたし1位よ!褒めてくれるかしら!」

「ッ!」

 

 褒めて欲しい、か…

 

「私凄くないですか!?先輩!」

 

 千歳の笑った顔が脳裏に浮かぶ

 

 いやいや今はこころだ、目の前のこころの対応をしなければ!

 

「よ、よーしよし、凄いなこころ」

「……お母様も天国から見てくれてるかしら」

「ッ!ああ、見てるさ絶対にな」

「ええ!」

 

 あの人のことだ、太陽のように笑いながら空から俺達を見守ってくれてるはずだ。

 

「ほら早く並んでこい、点数入らないだろ?」

「そうね!並んでくるわ!」

 

 こころはそう答えると1位の列に並びに行った。

 

 っと、こころの後は美咲か

 

「はあ、はあ、はあ……はあ、ミッシェルのバイトしててよかったー」

 

 美咲も1位か!初っ端からこころと美咲のダブル1位は結構点数でかいぞ!

 

 次は蘭?蘭のやつ50メートル走だったのか!

 

「Ranちゃん頑張ってー!」

「ここでも1位取るのよ!」

「さあ!あなたのメイド魂を見せて!」

「みんな来ないでって言ったよね!?」

 

 はは、バイト先の人達が応援に来てやんの、なんやかんやあそこで楽しくバイトできてんだな蘭のやつ

 

 そんな蘭はみんなの応援があったおかげで無事に1位をもぎ取っていた。

 

「ご指名、待ってるから」

「ッ!お、おう」

 

 俺に指を指して言う蘭はその後ボンと音が聞こえるぐらい赤くなったと思えばすぐ列に並びに行ったのであった。

 

「戸山香澄!頑張ります!」

「はい、頑張ってください」

 

 次は香澄かマイエンジェル!お前は本当に可愛いな!?

 

「ぐす、2位だったよー」

「……ドンマイ、香澄」

 

 宣言したのに2位だったなんてな!可哀想だがその表情がまた可愛いな!

 

「はあ、なんであたしがこんな目に、運動苦手なのに…!」

 

 有咲のやつ大丈夫か?スタートする前から顔色が悪いんですけど!?倒れたりしないよな…?

 

「い、市ヶ谷さん!?」

「おっと有咲ちゃんぶっ倒れちゃったねー、救護班!介護を!」

 

 担架に載せられ運ばれる有咲の顔を口から魂らしきものが抜けてて口がぽかーんと空いていたな、後でお見舞いにでも行くか

 

「続きまして2年の部に移ります」

 

 2年ってことは彩と千聖先輩が走るのか

 

「ふっ、私は白鷺千聖よ?50メートル走なんて1位を取って当然」

 

数秒後

 

「ぜぇ、ぜぇ……ぜぇ、み、みんな早すぎよ」

「千聖ちゃん最下位!来年は頑張ってね!」

 

 見事に晒されてますやん!日菜さん容赦ないな

 

「ッ!な、なに見てるのよ?今回は本気を出してないだけなんだから!」

「はい!そうであります!」

 

 こうでも言わないとなんかまた言われそうだから適当に返事をしたがバレてませんよね!?

 

「次は彩か」

 

 それとずっと黙ってたが俺は今1人で観戦しているんだ。沙綾は次の競技だからもう集まってて香澄は一応敵チームだから観戦してないとして

 

 おたえに関してはわからん、後は誘ってないってところだ。

 

「千聖ちゃんは最下位だったけど私はそう上手くいかないよ?」

「1位を取ってシン君に頭を撫でてもらって…えへへ、ついでにキスも…」

「ダメだよシン君!ここは学校だから」

「……あの丸山さん?」

「でもシン君がどうしてもって言うなら…」

「丸山さん!?もう始まってますよ!?」

「えぇ!?う、うそだー!」

 

 もう最下位確定の彩だったが必死に泣きながら走る姿は言っちゃ悪いがなかなか様になっていた。

 

 可哀想だから後で頭でも撫でてやるか、本人が要求すればの話だけど

 

「私が華麗に1位を取ってしまう。これは運命だったんだね……ああ、儚い」

 

 1位のカードを掲げそう言う薫先輩を見て薫先輩らしいなと思ってしまうよ

 

「続いて3年の部に移ります」

 

 3年は誰も知り合いがいないから見なくていいかな

 

「ちょっと待ってよぉぉおおお!!」

「おお!?な、なんだ!?」

 

 後ろから物凄い音が聞こえてきたかと思えば!

 

「なんで私を無視するのー!」

「い、いやすみません忘れてました、後服引っ張らないでください伸びちゃいます!」

 

 ちなみにだが篠崎先輩の先輩が大きく揺れていて男子共はそれに釘付けになっていたそうだ。

 

「次は中学生の部」

「ッ!」

 

 急いで後ろを振り返ると千歳がスタートラインに立っていた。

 

「よーい、どん!」

 

 姉とは違い他の人達と圧倒的な差で見事に1位を独走していたが

 

「きゃっ!」

 

 途中で転けたようだ、後ろにいた人達にどんどん抜かされ気づけば最下位、近くにいる生徒も倒れてるんなら助けに行けよ

 

 俺は急いで千歳の元に近寄り声をかけた。

 

「大丈夫か千歳!立てるか?」

「ッ!私のことはもうほっといてください…!これぐらいどうってこと、ありませんから…」

 

 よろよろと立ち上がり最後まで走り切る千歳を俺はただ見届けることしかできなかった。

 

◆◆◆◆

 

「次はパン食い競走か」

 

 うちからはおたえと牛込さんと?同じ組にはモカとひまりがいたな

 

「よし、私の番だね!」

「おう、1位取ってこいよ?」

「1位とったらデートだね」

「うるさい黙れ!はよ行ってこい!?」

 

 赤組のテントにて待機してる中おたえがそう言うもんだから周りからなんか変な目で見られただろうが!

 

「決勝で会おうね!」

「決勝なんてない!それに俺の種目は違うしは同じチームだろ!」

「じゃあ」

「さっさと行けぇぇぇ!!!」

 

 おたえ1人の相手をするのがキツい!はよ行ってくれよ!?

 

 無事に合流できたおたえは他の生徒達と同じように待機していた。

 

「続きましてパン食い競走になります」

「位置について、よーい、どん!」

 

 1番目は牛込さんか

 

「ッ!チョココロネ!」

「牛込さん!?それ私のパンですよ!?」

 

 牛込さん自分のレーンのパンがチョココロネじゃないからって人の奪ってるし…流石牛込さんだ

 

「次はモカちゃんでーす」

 

 おお次はモカか、牛込さん以上にパンが好きな人は一体どんな行動をとるのか見ものだな

 

「山吹ベーカリーのパンは全部モカちゃんのだよね〜!」

「えぇ!?隣の人にパン奪われたんですけど!?こ、この場合どうなるの!?」

 

 も、モカー!お前何してんだよ!?他のレーンのパン全て奪い去るなんてどんだけパン好きなんだよ!

 

「次は私、絶対決勝に勝ち進むよ」

 

 おたえのやついつまで同じこと言ってんだよ…

 

「よーい、どん!」

 

 パン食い競走ってのは袋に入ったパンを取ってゴールすればいい、のにおたえのやつはパンを取ったあと口にほおりこんだのだ。

 

「口がすげー形になってんぞあいつ」

 

 それにとどまらずまさかの1位、いやすげー

 

「やって来ました私の番!シン君見ててね!」

 

 クラウチングスタートの構えがなんかエロく見えるの気の所為として…

 

「えい!あれ?えい!えい!……と、取れない!」

 

 腕を後ろで組んでぴょんぴょん飛び跳ねせるひまりだが上手くパンが取れないようだ、でもその取ろうとしている際に揺れる揺れる。

 

「……流石ひまり、俺を落とそうとしてやがるな」

「ち、違うからぁぁぁああ!」

 

 その後ひまりは無事にパンを回収できたが当然最下位であった。

 

「続きまして」

 

 もういい!2年生だろ?誰が出るんだ?

 

「練習は本番のように、本番は練習のように…!」

 

 さ、紗夜さん!?目がガチってる!

 

「目指すは焼きそばパン、カレーパン、菓子パンに興味なんてありません!」

 

 モカと同じことしようとしてる!?あんた練習で何を練習してたんだよ!?

 

 練習通りにやり遂げだ紗夜さんは2位とかなりの差をつけゴールイン、なんか食べ物って人を変えるんだな

 

「よっこらしょっとーみんな元気だねー姉さんちょっとついていけないよ」

 

 姉さん口調で言ってるつもりかもしれんがよっこらしょは違うだろ!それはもうおばさんとかの領域だろ!?

 

「リサ…!頑張ってくれ!」

 

 いつの間にか隣いた亜滝先輩が必死に応援していた。そのかいもありリサさんは何とかギリギリ1位をもぎ取った。

 

 蘭の件もあるけど応援って結構重要なんだって知らされちゃうよ

 

「これにて…」

 

 パン食い競走は終了、次はなんだったけ?

 

「続きまして障害物競走になります選手の皆さんのご入場です」

 

 確か沙綾が出るって言ってた、頼むぞ沙綾!お前の点数で赤組の未来が変わるかもしれない!

 

 赤組の未来はお前に託したぞ!

 

「うう、なんかプレッシャーを感じるんだけど…?」

「さ、沙綾ちゃん大丈夫?」

「大丈夫大丈夫!それにしてもつぐみと同じ組なんて…絶対負けないからね!」

「こっちだって負けられない理由があるからね!絶対負けないよ!」

「ッ!つ、つぐってるねー」

 

 何か話してるけど何話してるんだろう?気になるけど聞きに行けないしな…後で聞くか

 

「よーい、どん!」

 

 障害物競走だがネットをくぐるやつとハードルと最後はバットでぐるぐる10回回るヤツだ。いや結構キツー

 

「おっとつぐみちゃんネットのコースが早い!ね?なんで早いの!」

「ひ、日菜さん!嫌がらせですか!?」

 

 走りながら良く答えれるもんだ。まあ日菜さんが言いたいことって

 

「胸がないからだろ」

「ッ!お前なんてことを!?」

 

 と言い聞こえた方に体を向けて言うと

 

「……あーアギトさんか」

「今なんて言ってた?つぐみに胸がないとか言ったか?おい殺すぞ雑種」

「あ、有翔…お前来てたのか!」

 

 自分の彼女の酷い言われように対してた有翔君げきおこじゃないですか!ちなみに有翔の言う雑種はみんなの知ってる雑種ではないぞ

 

「悪かった、お前の彼女すげー可愛い」

「ふん、わかればいいんだ」

「てかお前ら!目立つからテントの中来るな!」

 

 赤色の髪なんて派手なんだよ!あとどう見て同学年の人がスーツ着こなしてたりしたら目立つだろ!?

 

「1位はつぐみちゃん!続いて沙綾ちゃん!」

 

 あー沙綾負けちゃったか…ま、まあ俺が変に言いすぎたのが原因なのかもしれん、すまん

 

「師匠に私の全力をお届けします!」

 

 なんか向こう側でイヴが手を振ってる。そう来たら俺も答えるように大きく手を降らないと

 

「イヴちゃん1位!流石イヴちゃん!大和撫子とはまさに君のことだァ!」

「えっへんです!」

 

 それにしても日菜さん実況上手いよな…天才ってやつはなんでもこなせるって本当のようだ。

 

 てかイヴって白組だろ!?敵じゃん!何応援してんだよ俺は!?

 

「続きまして」

 

 もういいって!2年生だろ!?

 

「おっとここで登場花咲生徒会長白金燐子!」

「が、頑張ります!」

 

 と意気込んだ結果

 

「うぅ、は、吐きそうです…!」

「10回バットのダメージが思った以上に来たようだ!実況は私に任せて休憩してて!」

「そ、そうさせてもらいます」

「……まあドンマイ」

 

 なんて声をかければいいかわからなかったよ、てかここら何か言ってもあっちに聞こえないか

 

 2年はどうやら燐子先輩だけだったようだ。

 

 その次の中学生の部のあこと来たら

 

「とう!あた!……とう!あた!」

 

 ハードルを上手く飛び越えることが出来ずまさかの最下位、あこのことだから1位とか取ってふっふっふ我の力が(省く)って言ってそうなのにな

 

「ふ、ふん、今回は大目に見ておこうぞ、来年は我の闇の力で貴様らを根絶やしに、いやぶち」

 

 危ない言葉なのでカット!!どこで覚えたそんな言葉!?女子がましてや中学生が言ってはいけない言葉ですよ!

 

 さ、さっきからつっこんでばっかりだ…そろそろ休みたいところだよ

 

「続いて1000メートル走になります。選手の皆さんの入場です」

 

 次は1000メートル走か、いやいや鬼畜だろ、体育祭でまさか持久走とか…うちは蒼汰とはぐみが出てたな

 

「蒼汰!亜滝先輩なんてぶっ倒して1位取って見せろ!」

「ああ!巴も勝ったら後で頭撫でてやるからな!」

「ッ!それはここでは言うなよ!?恥ずかしいだろ!?」

 

 あらまー仲良いこと、本当は頭撫でるより楽しいことしちゃってんじゃないの〜?

 

 って失礼だったか

 

 1000メートル走は三学年合同種目、男女にわかれてそれぞれ走るんだ。

 

「はぐみちゃん負けないよー!」

「はぐみも負けないからね!」

 

 おー日菜さんとはぐみがバチってる!これは目が離せない戦いになるぞ!

 

「借り物競争に出る方ーそろそろ集合場所に集まってください」

 

 ここに来て集合かよ…見れないじゃん!?

 

 く、くそー後で結果を聞くしかないのか

 

 ま、俺は今俺ができることをしないといけない。

 

「千歳大丈夫だろうか」

 

 転けたあと手当しただろうか、これから(・・・・)ちょっと動いてもらう必要があるんだけど…まあその時はその時だ、俺が何とかする。

 

 悪いが俺はそう簡単に諦めるほどやわな人間じゃないらしい、誰が苦しんでいるのを見過ごすことなんて俺はやっぱり絶対できない。

 

「シン!」

「ッ!千聖先輩!」

「あなたの言われた通りしたから」

「……ありがとうございます」

「どうしたのよ、これから可愛い可愛いうちの妹を助けようとしてるのにその顔は何?」

「ッ!」

 

 はは、やっぱり千聖先輩にはバレバレだよな

 

「まず最初は運勝負なのでねー」

「不幸なあなたならあなたなりの引き方があるでしょ?」

「うう、ま、まあそうですけど」

「……頼むわよ、あなたが最後なんだから」

 

 千聖先輩は俺の手を強く握って祈るようにかがみこんだ。自分の妹を他人に助けて欲しい、なんてこと普通は言わない。

 

 多分千聖先輩は俺の事を信用してくれてるから頼んでいるんだ。だったら俺はそれに答えよう。

 

「はーい、借り物競走のみんな入場してー」

「ッ!もう行かないと!それじゃあ!」

 

 急いで列に戻る。どうやら借り物競走は中学生の部、高等部の順番でそれぞれ学年が早いものかららしい、それに午前最後の種目

 

 そしてそれの1番最後の組とは…不幸だな

 

 中等部では明日香ちゃんが走ってたな、後ろからちらっと見ただけだから本当かどうかわからないけど

 

「高等部!2年の部始めます!位置について、よーい、どん!」

 

 3年はあっという間に終わり2年へと来た。

 

 後ろから見てたけど最初から友希那さんとは、あの人運動はどうなんだろう、走りきれるかな?

 

「!」キョロキョロ

「?」

 

 借り物競走とはカードを引きそのカードに書かれている条件に合うものを持っていきゴールをするって競技だ。

 

 例えそれが物でも人間でも、動物でも構わない、条件にあってたらいいのだから

 

「シン」

「おお、な、なんすか?」

「ちょっと来て欲しいのだけれど」

「え!ちょ、俺まだ競技終わってない!」

「だからよ」

 

 友希那さんが引いたカードはまだ競技にでてない男子生徒、と書かれていた。

 

 な、なるほどだから俺なのね

 

 友希那さんと手を繋ぎ仲良くゴールイン、結果は残念ながら3位、まあ無難な順位だよな?

 

「ありがとう、戻って結構よ」

「俺は執事かなんかですか」

「私の彼氏役よ」

「ッ!そ、そうですね!それじゃあ!」

 

 普通に恥ずかしいこと言えるから困るよな…あの人なんで恥ずかしくないのだろうか

 

 戻ったらちょうど次のレースが始まったようだ、次は大和先輩が走ってるようだ

 

「ッ!え、えぇ!ちょ、これ本当っすか!?」

「書かれているなら本当です」

「な、なら変えるっすよ!」

 

 言い忘れてたがこのカードは引き直すことができるんだ、1度伏せてまだ拾われてないカードなら拾うことが可能だ

 

「え!もう恥ずかしいカードしかないじゃないっすか!?」

「諦めてください」

「世界は厳しいっす!」

 

 大和先輩は若干泣き目になりながら後ろの方に走ってきた。

 

「シンさん!助けて欲しいっす!」

「…………今度はなんですか」

「異性で仲良いのなんてシンさんぐらいっすよ!」

「あー!はいはい!」

 

 本日2度目!カードに書かれているのは異性とか!コミ障がこんなの引いてたら地獄だぞ!?

 

「麻弥ちゃんゴールイン!いやー1枚目のカードが気になるね!」

「多分、私が仕込んだカードです」

『ッ!?』

 

 この言葉に大きく反応したのは俺と大和先輩、そして恐らく紗夜さんとリオ、篠崎先輩辺りだろう。

 

 あの人のことだ、えげつないやつ入れてんだろう。

 

 てかリオのやつ見てないんだけど?あいつちゃんと競技出てんのかな?

 

「とりあえず助かったす、ありがとうございます!」

「い、いえ、じゃあ戻ります!」

 

 自分が走る前に何回走らせるんだよ!次はもうないよな!?

 

 次は花音先輩?んー不安しかない

 

「ふぇ、ふぇぇ、もうこのカードしかないよ」

 

 走るの遅くてカードを回収するのに出遅れたんだろう、慌ててめくってキョロキョロするとこっちに来たぞ…!?

 

「あー!俺ですね!俺ですよね!?行けばいいんでしょ行けばー!」

「ふぇぇ、ありがとうシン君」

 

 ちらっと見えたカードには弟と書かれていた。弟なら俺じゃなくてリオもいたと思うんだが!?

 

「シン君モテモテだねーひゅうひゅーう」

「や、やめてください日菜さん!?」

 

 日菜さんにからかわれながらゴールイン、もう1年の部が始まるもんだから急いで自分の所へ戻る。

 

 あのアレックスとの修行がなければ多分ヘタレてて自分の時なんか走れてなかったと思う。

 

 ありがとうアレックス、あんたのおかげでこれからのことも何とかなりそうだ。

 

「続いて1年の部……」

 

 1年の部が始まりあっという間に最後の俺のレーンの番になった。

 

「位置について、よーい!」

 

 足に力を込めて

 

「どん!」

 

 解き放て!

 

『ッ!』

「は!シンのやつ足速くないか!?」

「……あー、あれのおかげか」

「美咲ー?あれとは何?」

「なんでもないよ」

 

 美咲は知っていた。シンが夏休み屋敷でアレックスと稽古をしていたことを

 

「まずは1枚目!」

 

 誰よりも早くつくことでカードを引き直すチャンスがやってくる。

 

「これじゃない!次だ!」

 

 その次も

 

「違う!」

 

 クソが!こんな時に不幸を引かなくていいんだよ!

 

 ああ後ろのヤツらがもう来てる!これが最後!頼むから出てくれ!

 

「ッ!来たぁぁあ!!」

 

 目的のカードを引き当て高らかに掲げる。

 

『ッ!』

「え?これって!?」

「嘘だろ!」

「ま、まじかーい!?」

「天国は本当にあったんだ…!」

 

 他の男子が驚くのも無理はない、そう、何故なら!

 

「おー!スペシャルカード!パスパレのカードだ!引いた男子諸君!アタシ達の誰かと一緒に走れるよ♪」

 

 そう、パスパレのメンバーのみんなにお願いしたんだ。

 

 借り物競走に参加して欲しいと

 

 決してパスパレのみんなを物扱いしていわけじゃない!でも、これで俺は彼女を救うことができるんだ。

 

 目指すは中等部(・・・)のテント!そこにいるのは

 

「よっ千歳、ちょっと協力してくれないか?」

「……なんですか、何用ですか」

「お前を救いに来た」

「ッ!」

 

 こないだとは打って違った反応、敵意むき出しの目ではなくもうどこか諦めているような目で千歳はこう言った。

 

「もういいんですよ、私のことなんか気にしないでください」

「いや、このカードを引いたからには俺はお前を連れていかないといけない」

 

 俺は引いたカードを千歳にわかりやすく見やすいように立てて見せてやった。

 

「ッ!白鷺、千聖…?」

「あぁ、なんですか…?やっぱり先輩も!私のことなんか白鷺千聖の代用品として見てたんですね!」

「違う」

「何が違うんですか!」

 

 そう違うんだ、千聖先輩は千聖、そして千歳は千歳なんだ。

 

「このカードで俺がお前は白鷺千歳だって証明してやる」

「白鷺千聖ではない別の誰かを連れて来たら…点数なんて入らないよな?」

 

 こうすることで嫌ってほど自分が白鷺千聖ではないことがわかるだろ?

 

「……そんなことなんてしても意味がありません」

「意味はある。千歳自身が自分のことを認める」

「ッ!もういいんですって!余計なお世話です!だいたいなんで私なんかを」

「余計なお世話をするのが正義の味方ってやつなんだよ」

「ッ!?」

 

 例え助けなんていらない言いながら困ってる所が目に入ってしまうと余計に助けたいと思ってしまう、それが正義の味方だろ…!

 

「千歳、俺な中学の時いじめられてたんだ」

「は、はぁ?」

「……金目的で仲良くするやつがほとんどでもう幾ら金を渡したのかわからないぐらいだよ」

「………………………………」

「そんな中俺は自分の家が嫌いになって、生きてる意味がなんなのかよくわからなくなって」

 

 あの時の俺は自分でもどうかしてたと思う。何もやることなくただたんとバイトの仕事をこなすだけ、生きてる意味なんて感じ取れる毎日なんて送れてすらいなかった。

 

「そんな時俺を見つけてくれた人がいるんだ」

「……?」

「そいつには本当…返しても返しきれない恩があるよ」

 

 暗い闇の中にいた俺をあいつは…モカは見つけてくれてこの世界に引っ張り出してくれた。その後も色々…まあめんどくさいこともあったけど構ってくれた。

 

 そんなモカを一時期嫌ってた俺は本当の恩知らずってやつだと思う。

 

「だから次は俺の番だ」

「ッ!」

「俺が、お前を…!千歳を見つけてやる!」

 

 くさいセリフだなんてわかってる。でも一度は言ってみたい言葉だと思わないか?

 

「握れ千歳!そんな退屈な世界から俺がお前を引き出してやる!」

「……わ、私は」

 

 千歳は震える手で俺の手を握ろうとしてきた、でも急にはっ!となり手を急いで引っ込めてしまった。

 

「無理ですよ、私は物なんです。先輩の気持ちは嬉しいですが手を取れません」

「お前は物なんかじゃない!命を持ってる一人の人間だ!」

「……それにしたいことなんて特にないし、今のまま演じていた方が…い、いいのかもしれない…!」

「したいことならあるじゃないか!」

 

 好きすぎて動画をネットに上げてしまうほど千歳には大好きなことがあるだろ!

 

「歌が好きなら歌えばいい!歌手になればいい!」

「な、なったところで私の歌なんて!誰も聞いてくれませんよ!」

「俺がいるだろ!」

「ッ!?」

 

 俺だけじゃない!千聖先輩含むパスパレのみんな!千歳が実は歌が、音楽が好きだって知れば香澄も友希那さんも!こころに蘭も興味を持つに決まってる!

 

「先輩だけでも」

「俺から初めて1人!次に10人、その次に100人!1000人!そこから1万10万100万人ファンにすればいいじゃないか!」

「そんなこと私にはできません…」

「あーもう!いいか千歳!」

「は、はい」

 

 こんなうじうじしているのは千歳らしくない!お前はもっと笑顔で可愛く笑って!誰かに褒めてもらいたくて!近寄ってくる優しいやつだ!

 

「お前の本当の声を聞かせてくれ」

「ッ!」

 

 千歳はこの時思った。

 

 なんでこの人はこんな私を助けようとするの?どうしてそんなに恥ずかしいセリフを幾つも言えるの?

 

 なんで…あんなに酷い言葉を言っていたのにこの人は、この人なんでこんなにも清々しいように、自分がいかにも正しいかのように堂々として手を差し伸べてくれるの?

 

「わた、しは」

 

 私はどうなりたい?このままずっと白鷺千聖の代用品として…物していき続けるの?

 

 なんなんだろう。この人なら本当に私を変えてくれるかもしれないと思ってしまう。

 

 でも私はたくさんの人を傷つけた、クラスのみんなには酷い態度をとって、リオにも強い口調で話してたりもした。

 

 そんな私は…許されるの?

 

「人間誰にでも消えないいやな過去、過ちだってたくさんある。それを…償って生きていくのが人間ってやつだろ?千歳」

 

 ああ、なんで忘れてたんだろう。私は人間なんだ、物じゃない、そうやって私は成長して生きていくんだ。

 

 なら私は罪を償いながら、でもちょっとは贅沢に

 

「せん、ぱい」

「おう」

千歳(・・)は、千歳は…!」

 

「自由に、なりたいです…!」

 

 よくできました。白鷺千歳()

 

「なら俺がその自由の一歩を一緒に踏み出してやる!さあ!手を取れ!」

「…………はい!」

 

 千歳は涙を拭い本当の笑顔を俺に向けてそう答えてくれた。

 

 なら俺が次にとる行動は!

 

「よし千歳!揺れるけどちょっと我慢だぞ!」

「はい!」

 

 千歳をおぶり走り出す。

 

「ま、丸山さん!俺と走れてう、嬉しい?」

「え?う、うん……う、嬉しいなー」

「(本当はシン君と走りたかったなんて言えない!)」

 

 そんな彩の横を通り過ぎ

 

「えい!やあ!とーう!」

「どうです私の剣さばき!惚れ惚れしましたか?」

「木刀振ってなくてもイヴちゃん最高!」

 

 次はイヴの横を通り過ぎて

 

「え!?じ、ジブンのファンですか!ふへへ、う、嬉しいっす!」

「生ふへへいただきました!」チーン

 

 大和先輩と倒れた男子生徒の横を通って

 

「ほらファイトー!アタシに追いつかないと手、繋げないよー!」

「ちょ!は、早すぎます!」

「あはは!おっと!?」

 

 その日菜さんよりも早く走り抜けて

 

「おっとシン君1位!後ろに担いでいるのは…?」

「なんと!白鷺千歳ちゃんだ!千聖ちゃんじゃないぞ!?」

「ふう……燐子先輩!」

「あ、はい!」

 

 燐子先輩がマイクを俺に投げてくれてそれをキャッチする。

 

「すぅぅ」

 

 空気を大きく吸って

 

「あっれぇー?間違えたー!これは白鷺千聖じゃなくて白鷺千歳だぁー!」

「うん、紛れまない千歳だ、確かに目元とか口元とかめっちゃ似てるけど近くで見る全然違う!」

「ホクロがあるのかないとか、うん!色々違う!」

『………………………………』

 

 観客のみんなは何が言いたいの?とでも言いたげそうな雰囲気が漂っていた。

 

「だから……全くの別人だから点数、入んないよね?」

「……せ、先輩!?」

「大丈夫だって」

 

 そう答えた瞬間

 

「そうだそうだ!白鷺千聖と千歳は別人!シン君には点数が入りませーん!」

「……うぅ」

 

 千歳は怖がるように身をかがめるが

 

「何やってんだ弦巻シン!1位とったのに台無しじゃねーか!?」

「お前やる気あんのか!?確かに似てるけど間違えんなよ!?」

「別人連れてきてどうするんだよ元実行委員長!?」

「…………へ?」

 

 なんて間抜けな返事なことやら

 

 誰かが言った言葉がきっかけでみんながそう言い出した。

 

「いやまじごめん!みんな許してくれえーい!」

「……ま?こうゆうのがあって体育祭?って言うしな!」

「まさか有名姉妹使ってこんなことするなんてな!」

『あっはははは!!』

 

 会場が笑いに囲まれた、誰かさんが馬鹿なことをしたおかげで起きた笑いは

 

「ッ〜!ッ〜!」

 

 千歳にとっては周りの人達から自分と白鷺千聖が全くの別人と捉えてくれたという証明になった。

 

「先輩」

「んー?」

「千歳はどうやら白鷺千聖じゃないみたいですよ?」

「ッ!ああ、だから点数が入らないんだよなーまじショック、てな?」

「ふふ、あはは!もう、先輩ったら!」

 

 ああ、やっとだ、やっと心の底から本当の笑顔で笑ってくれたね、千歳

 

「はーい!次は昼休み!みんな羽目を外さないようにね!ではかいさーん!」

 

 日菜さんのアナウンスのおかげで生徒達は一時解散、グランドの真ん中には俺と千歳、そしてガールズバンドのみんなが集まっていた。

 

「千歳」

「ッ!姉さん!ごめんなさい!千歳は姉さんのこと」

「いいのよ、あなたのことを気づいてあげられなかった私にも非があるわ」

「うぅぅ!ごめんなさい!千歳は姉さんのこと好きだけど白鷺千聖のことを」

「もういいの、今のあなたはもう前の千歳じゃないでしょ?」

「……ね、姉さん!」

 

 千歳は千聖先輩の胸に抱きつき顔をぐしゃぐしゃにしながら泣き付いていた。

 

 これで姉妹の仲も元通り、一件落着ってやつだな

 

「千歳ー!千歳!千歳ー!」

「あー!明日香!明日香もごめん!いっぱい酷いこと言って…」

「ううん、私はなんとも思ってないよ?」

「千歳にとってあれが白鷺千聖だったから…つい悪い口になって」

 

 おい!あの暴言は千聖先輩の真似をしてたのかよ!?流石にあそこまで酷い言葉を言いませんよ!?

 

「あーちゃんー!私も混ぜてぇー!」

「ちょ!お姉ちゃん!」

「明日香の姉さんとは少し話をしてみたかったんですよ!」

「本当!?」

 

 マイエンジェルが千歳を……コミ力高いよな、本当

 

 その後香澄に引かれガールズバンドの大半が千歳を囲うように集まり何やら楽しそうな話をしていた。

 

 そんな中俺は輪から離れ遠くからそれを眺めていた。

 

「シン君お勤めご苦労さーん」

「……モカ、お勤めなんかじゃない、俺がしたいからしただけだ」

「……シン君のしたいことかー正義の味方ってやつ〜?」

「まあそんなところだな」

 

 それもあるけどさ

 

「……俺はどっかの誰かさんに助けられたからな」

「ッ!?」

「ちょっと真似したくなった」

「え、えへへーその人ってどんな人なのかな〜?」

「…………可愛くてウザイ」

「可愛いって言ってくれたーモカちゃん嬉しいな」

『ッ!』

 

 ふと近寄ってきたモカの手が俺に当たる。

 

 ちょっとぐらい…俺から行ってみてもいいだろうか?どんな反応するかな?……でもやってみたいと思ったなら自分の気持ちに素直になってみよう。

 

 シンはモカの手を取り自ら恋人繋ぎをし始めた。一体何がどうなって彼が動いたのかは本人しかわからない。

 

「ッ!……素直になりなよ」

「うるさいバカ、こ、こっちみんな」

 

 そう答えたシンはモカから顔を逸らして耳まで真っ赤になっているのはモカから見てもわかる。

 

 モカは心底嬉しそうな顔をしながらシンの手を強く握り返した。

 

 お互い誰にもバレないように端で手を繋ぎながら千歳を囲う輪を眺めていたのであった。

 

「あ、彩先輩」

「ん?なーに千歳ちゃん!先輩!の私に何か話があるのかな?言ってみなー?」

「あ、彩ちゃん…いばれる後輩がいないからって」

 

 千聖はやれやれと言わんばかりに手で顔を隠していた。それとは裏腹に千歳は

 

「彩先輩のこと影で負けヒロインとか嫉妬の塊的なこと言ってました、本当にすみませんでした」

「……へ?」

 

 千歳の爆弾発言をもろにくらった彩はその後何も返事が出来ずに突っ立っていた。

 

「あ!ごめんなさい、言わない方がよかったですか?でもやっぱり謝らないと」

「うわぁぁん!白鷺姉妹で私を虐めるよー!!」

「ちょっと!私は虐めてないわよ!?」

 

「あぁぁぁぁあ!不幸だよぉー!!!!」

 

 シンではなく彩の叫びがグランドに響きみんな仲良く笑いあっていたのであった。




いかがでしたか?シン君の成長はみなさんの目から見てもまるわかりだと思います。本当に成長したよ君は

次回はみんなの約束(デート)編!そしてその次はアギト(○○○○)編!かな?

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくです!目指せ赤バー!

それでは次回の約束(デート)編でお会いしましょう!


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弦巻シンはデートをするそうです

どうもお久しぶりです!今回は約束(デート)編!イヴ、はぐみ、麻弥、おたえの四人です!その他の子も少しだけ登場します!

それではどうぞ!

Twitter:https://twitter.com/oo_ru3

フォローよろしく!あと少しで100人!

誤字脱字は後日訂正します


 月は10月、朝起きる時少寒くなってきた近頃、俺はそれを見越し長袖を着てたもんだから温かいままベットの中ですやすやと寝息を立てていた。

 

「お……て……ぱい」

 

 ん?おっぱい?おっぱいがどうしたんだ?

 

 声がした方に手を伸ばすと

 

「ひゃっ!?」

「…………ち、千歳!?」

 

 制服の上にエプロンを羽織っているよくわからない状況の千歳がそこにはいて、俺は普通に千歳の胸を触っていた。いや握っていた。手のひらに収まるそのサイズ感、んーすごいじゃなくて!

 

「すまん!てかなんでいる!?」

「……全く先輩は飛んだ変態ゲス野郎ですね、死んでください」

「ッ!はい?」

 

 千歳の様子がおかしいぞ?前みたいな酷口ぶりだ。な、なんで!?

 

「もう!普通の女の子なら胸を触られたら怒りますよ?」

「す、すまん…」

「さっきのは冗談なので早く起きてください、先輩が亡くなったら千聖(・・)姉さんが悲しみますので」

 

 そう言うと千歳は寝室から出て行き何処かへと行ってしまった。

 

 なんで俺の家にいるのか聞きそびれたが起こされたなら起きて顔洗って着替えてのんびり過ごすとしよう。

 

 今日は土曜日、昼からイヴ、はぐみ、大和先輩、おたえの4人とデートをすることになってる。

 

 デートと言っても約束(デート)であって本当のデートではない。

 

 なんと言うか、亜滝先輩のこと言える側じゃなくて言われる側になってしまったな、はは

 

「てか本当になんでいるんだ?」

 

 パーカーに着替えリビングに向かうと

 

「先輩!朝ご飯できてますよ?」

「ッ!お、おう」

 

 普段使わないお茶碗にご飯が盛られ焼き魚と味噌汁と言う普通の朝食が用意されていた。

 

「……これ千歳が作ったのか?」

「はい!是非食べてください!」

 

 本当何が起きてるんだ?てか俺鍵開けてたっけ?あー開けてたな、うん…いや、まずこのマンションに入るのにカードキーが必要だからさ?家の鍵はかけなくていいなって

 

「!美味い!千歳!美味しいよ!」

「それは何よりです!」

 

 魚の火加減もちょうどいい!秋刀魚は秋が旬、少し早いのかな?でも美味い!

 

 ご飯もほくほくだし味噌汁も美味い!しじみがいい味を出してる!

 

「えっと、千歳?そう言えばなんでいるの?」

「……その、この間のお礼を兼ねて」

 

 左右の人差し指をつんつんと押し当て恥ずかしそうに千歳はそう答えた。

 

「実は千歳、事務所辞めました」

「ッ!」

「これからは自由なので千歳の好きなことをしたいと思います」

「…………ああ、お前の人生だ、もう誰も邪魔なんてしない」

「えへへ、ですね!」

 

 事務所を辞めたってことは必然的に女優も引退したってことか、もう白鷺千聖の代用品なんてことを呼ばれることはない。

 

 今まで酷い目にあってきたんだ、これからの千歳の人生に幸せが訪れることを俺は心の底から願ってる。

 

「それでですね、その千歳にはやりたいことがあって…」

「?歌手にでもなるのか?」

「んー?歌手?と言われれば歌手ですけど…複雑と言いますか」

「なんだよーハッキリ言えよ!」

 

 姉妹揃って焦らしプレイが好きな様子ですな

 

「声優、なんです」

「はーい?」

「だから!ゲームのキャラクターが歌を歌うんです!」

「うん」

「だから声優兼歌手みたいな…役のオーディションを受けようと思ってるんです!」

「おー!それはすげぇ!」

 

 あれか?ゲームのキャラ的に言うと歌手役でそのゲームの声をあてて、歌も歌う!

 

 普通に凄い!どっちもできるなんて美味しい役じゃないか!

 

「オーディションは何時なんだ?」

「今日です」

「今日!そっかそっか!って今日!?」

「はい!今からです!」

「…………まじか」

 

 本当に今からなの?いや話の展開くそ早!

 

「あ、だから制服だったのか」

「はい!では千歳はそろそろ行ってきます!それではよい休日を!」

 

 千歳のことだ、きっとそのオーディションも合格するに違いない。

 

 俺は声優業界とか知らないけど白鷺千聖とは無関係な世界だってことだけは絶対わかる。

 

 なら白鷺千聖の代用品なんて呼ばれることは絶対にない、きっと千歳に優しい世界だろ

 

 少し風に当たろうとバルコニーに出るとちょうどマンションから出て行く千歳の姿が目に入った。

 

「……頑張れ千歳」

 

 手すりに頬ずえつきながら眺めながら俺はそう小声で言っていた。

 

「さてと片付けでもするか」

 

 お皿を台所に持っていき綺麗に洗うシンなのであった。

 

◆◆◆◆

 

「1人目はイヴか」

 

 待ち合わせの公園に向かいながら俺は一人そう呟いていた。

 

 少し早めに着いたけど携帯…は壊れてから買ってないし、暇を潰すことが公園の遊具で遊ぶことしかない!

 

 ブランコに乗ること数分後

 

「師匠!」

「お、イヴ5分前に来るなんて流石だえぇぇ!?」

 

 公園にあった時計を見ながら答えイヴの声がした方に目を向けてみるとサングラスをかけマスクをつけたイヴらしき人物がいた。

 

「千聖さんに変装するように言われましたので!」

「だからってそれは違うだろ!?」

 

 ほら見てみろ!あとそこおばさんすごい目でイヴのこと見てるぞ!?

 

「と、とりあえずマスクだけでも外そう」

「師匠がそう言うのなら…」

 

 サングラスだけでもなんか凄いが素顔のまま俺と歩いていたらイヴがネットでなんて言われるのやら…

 

「それでは師匠!デェトに洒落こみましょう!」

「おう、デートな」

「はい!デェトです!」

 

 この子は話を聞かないのだろうか?

 

「師匠!時は急げです!行きましょう!」

「ちょ、イヴー!」

「あはは!なんだか本当にデェトしてるみたいで楽しいですね!」

「ッ!?」

 

 イヴに手を引っ張られ公園を後にした後イヴがそんなことを言っていた。

 

 は、恥ずかしくなるからそーゆうことはあんまり言わないでくれー!

 

「い、イヴどこ行くんだ?」

「はい!実は行きたいお店があるんです!」

「お店?」

 

 イヴについて行くことその目的の地にたどり着く

 

「え、ここ?」

「はい!骨董品店です!」

「……デートで来るような場所ではないと思うんですが?」

「?そうなんですか?師匠なら喜んでくれると思ったんですが…嬉しくなかったですか?」

 

 えぇ、何その反応!なんかこっちが悪いみたいじゃないか!

 

「いやー!流石イヴ!さ、最近日本刀欲しいと思ってんだよなー!」アハハ

「ッ!そうなんですか!」

「おう!早速入ろうぜ!」

 

 苦し紛れの嘘が通用するとは…もう金輪際イヴに嘘をつくのはやめよう、簡単に信じ込んでしまう!

 

 中に入ると日本刀だけではなく、壺や包丁、など日本の歴史的文化的なやつがちらほら商品として売られていた。

 

「ほほーう、これは中々」

「????」

 

 料理人なのだろうか?包丁を手に持ちなにか言っていた。

 

「ほ、ほほーう、これはな、中々」

 

 適当に日本刀を見ながら言う。これはあれだ、雰囲気を楽しむってやつだ

 

「おやお前さん祭りの少年」

「ッ!あの時のババァ!」

「?師匠は店主さんと知り合いなんですか?」

 

 忘れもしない!夏休みの祭りの時木刀買ったらめちゃくちゃ高かったやつ!?金のないやつから巻き上げた金で食う飯は美味しかったか!?

 

「あれは業物でなー相当値段するんよ、ほれ」

 

 指さした先には木刀が並べれており値段を見ると確かにいい値段をしていた。

 

「業物ですか!?師匠!私あれ買いたいです!」

「やめとけ、簡単にへし折れるぞ」

「それはあんたの使い方が悪いんやさかい」

「ッ!……ひ、否定はしない」

 

 しないというよりできない!確かに気に打ち当てて俺が自分でへし折ってたな

 

「てかイヴ木刀が欲しいなら俺がやるよ」

「え?いいんですか!?」

「言いも何も師匠、じゃなくてアレックスに頼めばくれるし」

「では師匠とお揃いのものをいただきたいです!」

 

 今思ったけどこーゆうのってあんまり店の中で言わない方がよかったよな?

 

「それでは店主さん!今度会いに来ます!また日本の文化を教えてくださいね!」

「はいよ」

 

 イヴはこの人から色々話を聞いていたのか、どうりで仲がいいのやら

 

「私のお気に入りのお店はいかがでしたか?」

「……ああ、雰囲気は悪くなかった、寧ろ少しだけ居心地がよかった」

「気に入ってくれたなら何よりです!」

 

 また先程の公園に戻り俺は制服のポケットからあの折り畳み式の木刀を取り出した。

 

「……あ、イヴすまん、せっかくのデートだったのに俺制服で来てたよ」

「いいえ、私は気にしませんよ?それに師匠が制服を着られているだけで私は嬉しいです」

「ッ!それはどういうことだ?」

 

 制服なんて学校で着てるし?着れてるだけで嬉しいとは一体どういうことなんだ?

 

「……師匠長いこと眠ってましたので、またこうして制服姿が見れて、えへへ、恥ずかしいですね!」

「…………イヴ、ありがとうな」

「ッ!い、いえ!お礼を言うのは私達の方です!」

 

 お礼か、別に俺はお礼を言われるために助けたわけじゃない。ただ俺が守りたいと思ったから動いただけだ。

 

「師匠があの方との戦いを制した時は流石私の師匠だと思いました」

「はは、俺はいつイヴの師匠になったのやら」

「何言いますか!師匠はブシドーの塊です!」

 

 どちらかと言うと武士道より剣術を極めてるんですが

 

「……俺はアイクに勝ってないよ」

「ッ!」

「あれは本当に運が良かったんだ、アギトさんから拳銃渡されてなかったら、廃ビルで戦ってなかったら?」

 

 そう思うと確実に負けていて今の俺はこの世にいないと思う。

 

 本当散々不幸と言いながらあの時だけは運に守らていた感が半端ないよ

 

「そんなことありません」

「……イヴ?」

「運も実力のうち、シン(・・)さんの勝ちには変わりません」

「ッ!」

 

 初めてイヴに名前で呼ばれた。

 

「あの時私達を守ってくれたこと…心より感謝しています」

 

 ここまで言われるんだ、だったら素直に

 

「守られたならよかった!」

 

 そう答えた俺にイヴははい!と大きく返事をしてくれた。

 

「っと忘れてた、ほい、木刀!大事に使えよ?」

「これ?ですか?」

「あー使い方教えるから見とけよ」

 

 木刀の柄を手に取り思いっきり振る、すると手元には丁度いい長さの木刀が完成していた。

 

「戻す時はここを押してっと」

「こ、これは凄いです!どこで売ってるんですか!?」

「ふっふっふ、企業秘密だ!」

 

 俺は木刀をイヴに投げつけ渡した。するとイヴのやつはすぐに木刀を振り構えだした。

 

「師匠!いざ尋常に勝負です!」

「……いや、流石に女子とは戦えないよ」

 

 アレックスとか戦わないといけない場面じゃない以外は女子と戦おうとは思わんだろ!

 

「へー、お兄ちゃん騎士王と同じこと言ってる!」

「は?」

 

 後ろからそんな声が聞こえ振り向きざまにシンは不意をつかれたように返事をしたのであった。

 

◆◆◆◆

 

「次ははぐみか」

 

 はぐみと待ち合わせの河川敷に向かうと

 

「あ!シン君ー!こっちこっちー!」

 

 大きく手を振りながら俺を呼ぶはぐみを見つけ俺は階段をおりて近くに行く

 

「はぐみ?それはユニフォームか何かか?」

「うん!午前中ソフトボールの練習してたから!」

「……あーすまん、もっと早く来るべきだったな、その色々あって遅れた」

「ううん、はぐみ素振りしてたから大丈夫!こないだコーチに言われた所修正するいい時間になったし!」

 

 は、はぐみから修正なんて単語を聞くことになるとは…!スポーツする時だけ性格が変わる系の人なのだろうか!

 

 色々あって遅れた俺が悪いんだが…はぐみが大丈夫というのなら大丈夫なんだろう。

 

「(今ははぐみのデートに専念しないと、な)」

 

「それで?俺は何すればいいんだ?」

 

 まさか100本ノックの刑とか言わないよな!?

 

「そう!色々考えたんだけどはぐみとキャッチボールしようよ!」

「おーキャッチボールか……でもすまんはぐみ、見ての通りなんだ」

「あっ!」

 

 左手にはまだ痛々しくギブスが巻かれており俺は見せるように手を挙げてはぐみにそう言った。

 

「んー何しよっか」

「あ、バットなら片手で振れるぞ?」

「ならはぐみが投げるからシン君打って!」

「お、おう?」

 

 果たしてそれは楽しいのだろうか?そもそもデートなのか?

 

 いやまあ本当のデートじゃないし、約束だし?……はぐみがしたいことに付き合えばいいんだよな!?

 

「それじゃあいっくよー!」

「ばっちこーい!」

「ふん!」

 

 はぐみの投げた球は轟速で気づけば球は俺の足元に転がっていた。

 

「お、おいおい嘘だろ」

「ダメだよシン君ーこれくらい打てないと」

「ッ!?」

 

 た、確かはぐみさっきソフトボールの練習してたとか言ってたよな?

 

 え、女子ソフトボールのレベル高くね?これくらい打てないとってことは他の人達は打ってるってことだろ!?

 

「こ、これからだ!これから!」

「ふん!」

「次こそ!」

「ふん!」

「ッ!まだまだー!」

「えい!」

「だはぁー」

 

 な、なんだこれ!全然打てねえ!

 

 バットを杖がわりにして息を切らしながら雑く呼吸をする。

 

「えーこころんなら簡単に打ってくれるんだけどなー、シン君には無理だったか、それに片手だしね」

「ッ!……なんだって?こころが打ってるだと?」

 

 俺がこころより劣っているというのか!弟より勝る姉なんてこの世にいねーんだよ!?(双子に限る)

 

 普通の人なら逆にとらえる発想がシンの頭の中をめぐり一気にやる気が出てきたようだ。

 

「はぐみ10球だ、それまでに蹴りをつける!」

「え?う、うん!いくよー!」

「よっしゃこーい!」

 

 何俺はこう見えて眼がいいんだ!はぐみの球なんてすぐに見切って…!

 

 何球か目でシンのスイングがボールに当たり見事なヒットを繰り出した。

 

「よし!ヒットー!」

「とう!」

「ッ!?」

 

 はぐみの上を越えようとしたボールをはぐみはジャンプをし見事なキャッチをしてみせた。

 

「ワンアウト!あ、でもさっきまで三振何回もしてたからスリーアウトだね!」

「…………ちぇ、チェンジで」

 

 その後俺が投げても打たれて、また打たれ、球がなくなり回収してまた打たれて

 

「今日はすっごく楽しかった!ありがとねシン君!」

「……お、おう、はぐみが楽しめたなら何よりだ」

 

 もうキツいよ!やっぱり左手使えないとなると厳しいよな!

 

 でも悪い気分ではなかった、こうやってスポーツで体を動かすってのはいいものだな

 

「はぐみ」

「どうしたの?」

「あーギブス取れたらキャッチボールでもするか」

 

 頬を掻きながらそう照れくさそうに言うシンに対してはぐみは

 

「うん!」

 

 はぐみは太陽のような笑顔でそう答えたのであった。

 

◆◆◆◆

 

「次は大和先輩ー」

 

 待ち合わせの江戸川楽器店に向かうと壁に背をつけ音楽を聴きながら待っている大和先輩がいた。

 

「おいあれ大和麻弥だろ!」

「嘘!ほ、本物だ!」

「眼鏡かけてても可愛いぃー!」

 

 あーゆう声をシャットダウンするために音楽を聞いているんだろうか

 

 それよりもタートルネック姿が妙にエロいよな…大和先輩って自覚ないと思うけど、いやもうやめよう。俺が変態みたいだ

 

 でもどうするかここで俺が話しかけたら注目の的になってネットに変なこと書かれるかもしれないから…

 

「…………………………」チラ

「ッ!」

 

 お店に入る前に大和先輩をチラチラとまるで変態のように見ること数回、気づいた大和先輩は俺がお店に入ったあとに続いて入ってきた。

 

「すみません、ジブンやっぱり目立ってましたか?」

「もうめちゃくちゃ目立ってましたよ、あと上になにか着ましょうね」

「な、なんすか急に!」

「いえ本音が…」

 

 いかんいかん、つい本音が出てしまった。ここは何とかして立て直さないと!

 

「そ、それで俺は何をすれば?」

「ああ、そっすね、買い物に付き合って欲しいっす!と言ってもここで何か買うだけなんすけどね、フヘヘ」

 

 おおか、可愛い!

 

「ジブンドラムスティック見たいんすよ!いいですか!?」

「いいですよ、俺は大和先輩に合わせます」

「フヘヘ、助かるっす!」

 

 大和先輩の話し方なんだけど俺は大好きだ。先輩って立場も悪くないがもし後輩だったらと思うと…うん、いい!実に最高だ!

 

「ってあれ?や、大和先輩?」

 

 しまったー!少し目を離したらはぐれてしまった!ど、どうしよう!

 

「あれ?」

「ッ!大和先輩!」

 

 声が聞こえた方に180度ターンを決めると

 

「…………レイヤ、さん?」

「弦巻シンさん、ですよね?花ちゃんの彼氏の」

「おい待て!なんでそうなってる!?」

「祭りの時に」

「あの話を信じてたのかよ!?」

 

 この人はあれか!天然か!?おたえと同じで天然なのか!?そんな見た目してませんよね!?

 

「……でも花ちゃんが」

「だからそれが嘘なんだよ、俺は付き合ってないしそれに好きな人が」

「好きな人が?」

「好きな、人?」

 

 俺は何を口走ってるんだ?好きな人が?好きな人がな、なんなんだよ

 

「ッ!とりあえずおたえとは付き合ってないんだ!信じてくれよ!」

「わかった、そこまで言うなら信じるよ」

「ここまで言わないと信じてくれないのか」

 

 ガクッと方を落とし嘆いたシンに対してレイヤはその隣に飾ってあるベースの弦に手を伸ばした。

 

「……少し話さない?」

「ッ!お、おう」

 

 こ、これが俗に言う逆ナンと言うやつなのだろうか!?

 

 店内にあるちょっとしたイスと机に座り俺はレイヤさんの会計が終わるのを待っていた。

 

「お待たせ、はいコーヒー」

「ッ!ありがとう」

「……もしかしてコーヒー飲めなかった?」

「い、いやそんなわけないじゃないですか!」アハハ

 

 俺はコーヒーを一気に飲み干し苦そうな顔を見せることなくポーカーフェイスを装い話し出した。

 

「で、で話って?」

「あ、そうなの、君入院してたんだって?もう体は大丈夫なの?」

「……なんだRASにも知られてたのか」

 

 まさかこの人達にも知られていたとは情報源はどこだ?おたえとかか?

 

「うちのメンバーにパスパレ推しの子がいるの」

「?だとしてもあの事件は公には」

「それでも嗅ぎつけるほどなのよ」

 

 何それ怖い!?俺のパスパレ愛ってのはその人に比べたら比にならないレベルなのだろうか

 

「珍しくチュチュも心配してた」

「ッ!あいつがか、まじか」

「最初はその程度で寝込むなんてへなちょこ弦巻シンねーみたいなこと言ってたけど」

「……けど?」

「マスキングが結構本気で怒ってさ」

 

 レイヤさんは笑いながら言ってるけどそれ本当に大丈夫なのか?ますきのことだぞ?怒ったら絶対怖いだろ!

 

「えっと、ギターは見つかったか?」

「……私は今でも花ちゃんとライブしたいと思ってるよ」

「ッ!」

「でも君がそれをさせてくれないでしょ?」

「人聞きの悪いことを言うなよ」

「ふふ、冗談だよ」

 

 冗談で言っているのか、本気で言っているのか俺にはわからないんですけど

 

「今チュチュが新しいギターの子を探してる」

「へー」

「私的には青髪で眼鏡っ子でライブの時だけコンタクト付ける人だとベストかな?」

「………………………………」

 

 なんとなくだけど返事がしずらかったです。

 

「と、とりあえずRASも順調みたいでよかったよ」

「今度暇があるならスタジオ来な、きっとチュチュもいやいやながら相手してくれるから」

「いやいやながら相手されることを知ってて行くやつがいるわけないだろ」

「ふふ、だね…それじゃあ私はそろそろお暇するよ、またね」

「おう」

 

 レイヤさんはベースケースを背負い江戸川楽器店を後にした。

 

「って!大和先輩はっ!?」

「…………………………」ジー

 

 商品の棚から除くようにこちらを見ていた大和先輩の顔は少し以上に機嫌が悪いように見えた気がした。

 

「シンさん酷いっすよー!今は自分と約束(デート)中なのに他の女子とお茶会なんて!」

「いやお茶ではなくコーヒーで」

「まだ何か言うんすか?」

「…………何か奢ります」

 

 負けた俺は大和先輩にドラムスティックを奢ることになったのであった。

 

 商品を購入した後外に出ると人は少なくなっていたためそのまま2人で歩いて大和先輩の家まで送ることにした。

 

「いやー練習用のドラムスティック代が浮いたっす!」

「……いやまて?俺が買ったものが練習に使われるなんてそれはもう最高なんじゃ?」

「?どうかしたんすか?」

「ッ!いえ!なんでもありません!」

 

 これはかなり嬉しいことだぞ!だって中々いや!絶対いないだろ!大和先輩の練習用ドラムスティックを買ってあげたやつなんてな!

 

「そう言えばちゃんとしたお礼がまだでしたね」

「はい?」

「あの時、腰が抜けて動けなくなっていたジブンをおぶってくれてありがとうございました」

「ッ!」

 

 大和先輩が深くお辞儀をした後不意に目と目があってしまう。

 

 夕焼けをバックにした大和先輩の表情はそれはそれは素敵で見とれてしまう程だった。

 

「……助けれたのならよかったです」

「ッ!はいっす!」

 

 イヴのこともあったけど彼女達は俺がいなかったら本当に酷い目にあっていたに違いない。

 

 そもそも俺と関わらなければこんなことにはならなかったんだ。

 

 でも誰もそんなこと言わず彼女達は逆にありがとうと言ってくれる。

 

「……本当、パスパレは最高だな」

「ッ!?な、なんすか急に!?」

「いーや?単に俺はパスパレの皆が大好きなだけですよ」

 

 恋愛感情の大好きとはまた別の話だ。

 

 ほらアイドルとかを大好きとかよく言うだろ?あれの延長的なやつでちょっと違う物だと捉えてくれ

 

「フヘヘ、それなら」

 

「ジブン達もシンさんのこと大好きっすよ!」

「ッ!へ?」

 

 え、えっとー大和先輩?い、今のってアイドル側からしたらそれは一体どういう…

 

「あわわわ!ち、違うっすよ!?深い意味じゃなくてですね!」

「いやでも違わなくてー!えっとそのーあれー!?」

 

 手をわなわなさせ焦ってる感がもろに伝わってくる。

 

「ちょ、大和先輩落ち着いて」

「ッ!こ、これ以上変なこと言わないようにジブン退散するっす!さ、さっきのこと決して嘘ではないっすよ!?皆さんシンさんのこと多分大好きなので!」

 

 泣きながら帰っていく大和先輩に俺は声をかけることが出来ずそのまま彼女の背中を見ているだけだった。

 

◆◆◆◆

 

「今日の最後はおたえか」

 

 おたえが最後とは、しかも待ち合わせ場所がおたえの家とは…

 

 うん、大丈夫だよな?ひまりみたいなことには…な、ならないよな?

 

「あ、シン君」

「ッ!ああ、おたえ」

 

 家の塀の所にいたおたえが俺に気づき近づいてきた。

 

「どれぐらい待った?」

「んー1時間ぐらいかな、凄く待った」

「……いや俺ちょっと早く来たんですけど!?」

「それより早く家にレッツゴー」

「ちょおたえさんー!?」

 

 おたえに手を引かれ家に入るとそこには

 

「あらいらっしゃい、おたえから話は聞いてるよ」

「ど、どうも……あ、これつまらないものですが」

 

 ショッピングモールの地下で買ってきたお菓子だけど気に入ってくれるだろうか?

 

「まあこれ私が大好きなお菓子!流石おたえ、いい男見つけたわね」

「でしょ?」

「えぇ!?」

「ささ、中に入って彼氏(・・)さん」

 

 お、おたえのやつ親に俺のこと彼氏とか言ってたのかよ!?

 

 思い込みもここまで来るとちょっと恐怖を感じるぞ

 

 リビングに行くとうさぎがうじゃうじゃ、あのおっちゃんもいたから近くに行くと

 

「…………………………」ガブ

「痛ってぇー!こ、こいつまた噛みやがった!」

「あらあらーおたえを取られて嫉妬してるのよきっと」

「そうなのおっちゃん?ならシン君別れよっか」

「……あーはいはい」

 

 もうなんなんだろうこの家族、おたえがおたえなら親も親だよな!

 

「そう言えばご飯できてるの、食べていきますか?」

「母さんの作るハンバーグは最高だよ?」

「……いただきます」

 

 流石にここでいえ結構です、帰りますなんて言えないだろ!?だから俺は大人しく言うことを聞いた。

 

「ごちそうさまでした」

 

 ハンバーグも食べ終わりそろそろ帰ろうと思った時だ。

 

「それでおたえとシン君はいつからくっついたの?」

「いやさっき別れましたよ?」

「そんなのおたえのジョークだよ、ジョーク」

「は、はぁ」

 

 覇気のない返事をシンがしたがおたえの母親の口は止まらなかった。

 

「おたえからは色々と話を聞いてるわよ」

「ッ!あの聞いてもいいですか?」

「ええいいわよ」

 

「まず初めて会った時がお互い全裸でそれを思い出してシン君が〇〇〇ーしたって聞いて、文化祭の時はお姫様抱っこして会場にやってきたり」

 

 間違ってはない!いや流石に〇〇〇の部分はしてない!してないけどそれ以外はあってるから否定しずらい。

 

でも

 

「あぁぁぁぁああ!不幸!だぁぁぁー!!」

 

 久しぶりのその言葉を口に発したシンはなんとなくだがしっくりときたそうだ。




次回のまたデート編、その次は別編でまたデート編て感じですね!終わりがだんだん近くなって悲しくなりますよ…でも最後までシンの話を見届けてください!

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いします!そろそろ赤バーになりたいです!

ではでは!また次回の話!もしくは別作品でお会いしましょう!またね!


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弦巻シンとアギトさんの過去

どうも!お久しぶりです!今回はアギトさんの過去編です…後半オリキャラばっかの登場ですけど紗夜、日菜関係の話でもあるのでお許しを…あとはそうですね、こころも関係してます。

それではどうぞ!

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フォローよろしく!

誤字脱字は後日訂正します


 別れというものは突然やってくる。それを誰よりもよく知ってることを俺は知ってる。

 

「シン君、わ、私絶対シン君のこと忘れないから…!」

「……ああ、俺も彩のこと絶対忘れない」

「ッ!やっぱりやだ、行きたくない!」

「ダメだろ?行かないと」

「うぅぅー」

 

 泣きながら答える彩に俺は少しきつい様な返事をした。

 

「シン」

「ッ!千聖先輩…」

「……ダメね、あなたと別れるとなると心が痛くなるわ」

「もう大丈夫なんですか?」

「ええ、大丈夫…多分」

 

 大丈夫、と言うのは千聖先輩が酷い目にあったためそれを乗り越えるためには俺が必要だと言ってくれたことに対してだ。

 

 これから離れ離れになるのに千聖先輩は大丈夫ですか?の意味で俺は聞いた。

 

「そろそろ出発だろ?」

「……うん」

「ええ」

 

 スーツケースを手に取り2人はバスに向かって歩き出す。その後ろ姿からはアイドルと言うオーラがとても見えるとは言えない背中だった。

 

 俺と離れ離れになるのがよっぽど寂しかったのだろうか?

 

「シン君!毎日連絡するからね!」

「私は毎晩電話するわ」

「千聖ちゃん!それはずるいよ!?」

「あら早い者勝ちよ?」

「…………いやまあ」

 

 ここまで引っ張って言うのもあれだけど

 

「修学旅行に行くだけでなんでこんなに重くなるんだよ!?」

 

 そう、離れ離れになるというのは花咲と羽丘の2年の生徒が1週間近く修学旅行に行くのだ。

 

「だって1週間も離れるんだよ!?」

「普通に夏休み全然あってなかっただろ!?」

「あ、あの時はまだ告白してなかったし…」

「そ、それはー」

 

 頬をぽりぽりかきながら答えたシンはなんとも言えない表情をしていた。

 

 改めてこう言わられると恥ずかしい気持ちになる。

 

「同じマンションから離れるのよ?」

「いやそれは他の人達も同じですし」

「夜一緒に寝ることもできないのよ?」

「一度も一緒に寝たことなんてないから!?」

「あら、釣れないわね」

 

 やめろ!彩のやつオドオドしながら俺と千聖先輩を交互に見てるじゃないか!

 

「そろそろ出発しまーす!生徒の皆さんは早くバスに乗ってください!」

 

 学年主任がそう呼びかけ今度こそ2人はその場を後にしてバスへと乗り込んだ。

 

「し、シン君…」

「ッ!?燐子先輩?」

「あの約束って…」

「え?約束?知りませんよそんなの、てか早く乗らないと行けなくなりますよ?」

「い、いやです!イきたいです!」

「は、はぁ」

 

 気の抜けた返事をしたあと燐子先輩はぴゅーんと効果音がつく勢いでバスへと乗り込んだ。

 

「あ、おーい!紗夜さん!」

「ッ!シンさん?」

 

 バスに乗り込む寸前の紗夜さんを見つけたもんだから勝手に声をかけてしまった。

 

「……困ります、もっと早く声をかけてください」

「あはは、その言い方だともっと早く声をかけてくれって聞こえちゃいますよ?」

「ッ!べ、べべ別にそんなことはありません!」

 

 っと、本当はこんな話をするんじゃなかった。

 

「修学旅行も羽丘と一緒なんですってね」

「……はい、あっちでも日菜には振り回されそうです」

「満更でもないように見えますけど?」

「まさか、大変ですよ、ふふ」

 

 大変と言いながら最後には快く笑ってる紗夜さんを見ると内心旅行先でのことが楽しみなんだろうな

 

「………………あの紗夜さん!あぎっ!」

「すみません、もうバスに乗らないと行けませんので…それではしばしの間お別れです」

「ッ………………楽しんできてください」

「はい」

 

 花咲に全2年生の生徒を乗せたバスは空港に向けバスは発進した。

 

 俺はただそれを眺めることしか出来なかった。

 

「馬鹿だろ、聞くタイミング完全に間違えただろ」

 

 早く来すぎて誰もいない校舎に1人で向かい教室で適当に時間を潰すシンなのであった。

 

◆◆◆◆

 

「えー数学の先生が修学旅行の引率でいないから自習な、先生はちょっと適当にしとくわー」

「プリントは後で提出するように、それじゃー」

 

 秋月先生はプリントを教卓に置き、話すだけ話して教室を出ていった。

 

 あれは多分屋上でタバコでも吸うんだろうな

 

 俺は数学のプリントを速攻で解き終え蒼汰にプリントを渡していた。

 

「いやー助かるシン!」

「プリントぐらい自分で解けよな」

 

 でも頼まれたから断れないんだよなー

 

 流石になんでも請け負ってしまうのは正義の味方として違うのだろうか?

 

 いやいや、俺を頼ってくれてるって証拠か

 

「シン君ー!!!!」

「おう香澄!どうした?」

「数学教えてぇー!」

「教えるんじゃない!俺の答えを丸写せ!」

「わーいありがとう!」

 

 か、可愛い!流石マイエンジェル香澄!お前のためなら俺はいくらでも答えを写させてやる!

 

「俺の時は適当に渡したのにな」

「それ、あれだ、香澄は特別なんだ」

 

 マイエンジェル香澄なのだからな!

 

「特別ってお前…戸山さんのこと好きなのか?」

「ッ!は、はぁ!?」

「思ったより面白い反応するな」

 

 俺が香澄のことが好き?いやいやないない!だって香澄は俺の友達でマイエンジェル!それだけだ。

 

「じゃあお前の好きな人って誰?」

「……俺の、好きな人?」

「え?私でしょ?」

「だからお前はどこから現れるんだよ!?」

 

 私でしょとか言いながら現れたのいつものことおたえであった。

 

 毎回思うが急に現れるのは一体なんなのだろうか

 

「だってこないだ挨拶来たよ?」

「ただ遊びに行っただけだろ!?」

「ご飯も食べた」

「食べてけって言ったからだろ!?」

「懲りないなーはい、婚約書」

「書くわけねーだろ!」

 

 ルーズリーフに婚約書と書かれてた適当な紙を渡して来てもんだから俺はビリビリに破り捨ててやった。

 

「それで結局どうなんだ?」

「まだ続けんのか?男共の恋話とか需要ないだろ?」

「俺的には山吹さんいいと思うぞ」

「ッ!」

 

 な、何故そこで沙綾の名前が出てくるんだ!?

 

「山吹さん今かなり人気出てるらしい」

「……あっそ」

「まあ巴の方が可愛いけどな!」

「はいはい言ってろ」

 

 でも沙綾のことだ、確かに可愛い、それに性格もいい、男子から目を向けられないわけがない。

 

 そんなことを考えながら香澄達と話をしている沙綾の方を見ていた。

 

「……!師匠が沙綾さんをずっと見つめてます!」

「!おいイヴ!」

「これまた猛烈なアピール、狙ってるの?」

「美咲までそんなこと言うなよ!」

 

 あーあー忘れてた、女子ってのは男子の視線に敏感だったな、それにイヴのことだすぐに気づきますよな

 

「シン…流石に私も気づいてた、見すぎ」

「ッ!」

 

 くそ恥ずかしいやつじゃないか!

 

「シンは沙綾のことが好きなのね!」

「馬鹿!違う!いや違わないけど複雑というか…」

「違うの?」

「い、いやー」

 

 そうまじまじに見られても答えれないっての!

 

 それに違うって言ったのは好きなことを違うと否定したのではなく嫌いではないと言いたくて言っただけでー日本語って難しいな!?

 

「……す、好きな人ってのはちゃんと考えないとダメだろ」

「ッ!うん」

「お、おう」

 

 わかってる。ちゃんと決めないといけないことを

 

 ひまり、彩、千聖先輩、蘭、そして沙綾、この5人に対して俺は返事をしないといけない。

 

 全員誰にも引けを取らない魅力があるから尚更考え込んでしまう。

 

「(今年中には絶対答えを出さないと、な)」

 

 そう心に近いながらふと視線を沙綾達に向ける。

 

「忍法隠れ身の術!さあ皆さん!私がどこに隠れているかわかりますか!」

「い、イヴちんが消えたー!」

「いやカーテンにくるまってるだけじゃん」

「ッ!流石美咲さん!すぐにバレちゃいました」

『あははは!』

 

 同じクラスのガールズバンド集団達はイヴの術を見てみんなで笑っていた。

 

 あんなことがあったのにイヴは笑顔で、誰とも引けを取らないその笑顔を見た時

 

「(これが守ったものか……)」

 

 上からすぎるがちょっとぐらい思うのを許して欲しい。

 

 自分で勝手に助けたけどやはりこうやって普段通りに生活を遅れているんだと改めて知ると自分のやったことは正しかったと思う。

 

「シンー!!」

「ぐへ、こ、こころ!いきなり後ろから抱きつくな!」

 

 薄々気づいていたが…こころのやつ結構胸あるんだよな、背中に胸が当たってる。

 

「ねえシンはアギトの秘密を知ってる?」

「……アギトさんの秘密?」

「ええ!」

 

 アギトさんの秘密ってのは紗夜さん達と兄妹だってことか?

 

「実はね…アギトの本名は氷川夕刀って名前なの!」

「お、おう」

「ここで何かに気づかない?」

「……あー」

「そう!アギトと日菜達は兄妹なのよ!」

「まじか」

 

 知ってたけどこんなにも大発見をしたかのように言われたのなら俺は知らないふりをしよう。

 

 知ってたと思われたらなんかこころが可哀想だ。

 

「あたしアギトと初めて会った時名前を聞いてたのに忘れてたわ」

「安心しろ、俺なんてアギトさんってしか知らなかった」

 

 あの人と初めて会った時の記憶なんてうっすらとしか覚えてない。なら本名も覚えてるはずないだろ!

 

「日菜に聞いたらやはりアギトは日菜達のお兄さんだったのよ!」

「それで最近はよく日菜とアギトがお喋りをしているのよ」

「…………こころ?」

 

 さっきまでハキハキと喋っていたこころは急に大人しくなり胸元を抑えながら続きを話し出した。

 

「……その2人を見ているとなんでわからないけど…胸の所がきゅーってなるの」

「ッ!」

「この気持ちって何なのかしら…?」

「…………こころ、それって…!」

 

 2人をみて胸がきゅーってなる?

 

「……いやまじでなんなんだろうな」

「やっぱりシンもわからないのね!」

 

 この姉弟2人揃って超がつくほど鈍感なのであった。

 

 もしこころがこの話を他の人にしたのならみんなが求めているような回答が聞けると思うが…聞く人が悪かったようだ。

 

「私ひとつ心当たりがあるの!」

「日菜とアギトが兄妹なら紗夜とアギトも兄妹のはずよ!」

「そうだろ、てか自分で言ってただろ」

「だからね!日菜とアギトは仲良しだけど紗夜とアギトの仲が悪いからこんな気分になるのよ!」

「……つまり仲良くさせたいと?」

「ええ!仲良くさせてあたしのこの気持ちが本当にそれなのかを調べるのよ!」

 

 確かに俺も紗夜さんとアギトさんとは兄妹だから仲良くして欲しい気持ちはある。

 

 だから俺は今日の朝紗夜さんにそのことを話そうとした。

 

 けどタイミングが悪かったな

 

「まあ?今紗夜さん達修学旅行中だからなー帰ってきたら話そうぜ?」

「修学旅行に行ってるのならあたし達も行けばいいのよ!」

「……はぁ?」

「紗夜がいないなら会いに行けばいいのよ!ちょっと待ってね!今からアギトを呼ぶわ!」

「ちょ!こ、こころ!?」

 

 こうと決めたら一直線、例え障害物があろうとそれをぶち壊してでも叶えようするの精神力、俺の姉さんは昔からこうだったよな

 

 でも…

 

「だからって今から行こうとはならんだろ!」

「だって早く確かめたいじゃない!」

 

 自習中の教室から場所は移り花咲の校門にて俺達姉弟は言い合っていた。

 

「それで目的地は?」

「えーっと、京都よ!京都!」

「……アギトさんもよく普通に受け入れるよな」

「まあお嬢の頼みは聞かないといけねーし」

「そうでしたね!」

 

 でもこころのことだ、馬鹿正直にアギトさんに対して仲直りさせます!的なこと言ってんだろうか

 

「シン様ー!!」

「ッ!アレックス!」

「私もいます!」

「と篠崎先輩!?」

 

 な、なんだなんだ?弦巻家のメイドの黒服のトップが揃ったぞ?ま、まさか有翔も!

 

「いえ有翔は来ません、なんでも今日は妹と祖母に会わないといけないとかで」

 

 クワトロAからトリプルAとなった!でもなんでこの人達がいるんだ?

 

「全員揃ったわね!それじゃあ!弦巻家の慰安旅行に行くわよ!」

「いやー!まさかこころ様が我々の疲れを癒すために旅行を提案していただけるとは…!アレックスは感動します!」

「私も旅行に行けると聞いて学校なんてサボって来ちゃったよ!」

 

 お、おいおいおい!いくらなんでも慰安旅行とか急すぎるだろ!?てかそれって俺達家のものがついて行くのはおかしいんじゃないか!?

 

「おいこころ?この人達はいいが黒服の人達はどうするんだ?」

 

 このトリプルAだけ特別扱いってわけには行かないだろ…?

 

「大丈夫!他の黒服達ならお爺様の屋敷を案内したわ!あそこならのびのびできるもの!」

「さ、流石我が姉、金で全てを解決させてやがる…!」

 

 そこに痺れる憧れるってな、いや憧れないけどさ!

 

「てかアレックス!お前シンジはどうすんだよ!?」

「シンジ様はそろそろ独り立ちさせろと旦那様に言われて…ぐすん、アレックスは半強制的に旅行に行けと言われたのです」

「ですが!京都には入れば胸が大きくなるという伝説の温泉があるので是非入りたいかと!」

「結局それ目的かい!」

 

 お前やっぱり巨乳に憧れてんじゃねーか!?

 

「篠崎先輩は?学校あるよね!?てか俺達もあるよな!」

「羽丘トップを舐めないでよね!授業なんて聞かなくてもいい点取れますぅー!」

「う、うぜぇー!!」

 

 点数よりも出席日数を心配して欲しいんだが!出席日数は大切なんだぞ!?まあもう2週間以上休んでいる俺は進級できるかどうかわからないんだけどね!

 

 わからないのに俺はまたサボるのか!

 

「それじゃあ出発よー!!」

「あぁぁぁぁあ!ふこっ!」

「はよ乗れ」

「ぐへ!」

 

 不幸だと言おうとした俺は言う前にアギトさんに蹴られ無理矢理高級車に乗る形になってしまった。

 

「アギト、運転任せても大丈夫?」

「ええ、お嬢の頼みなら俺はなんでも聞きます」

「……そう、なら頼んだわ」

「了解!」

 

 車が発進しもう後戻りができない状態になったようだ。

 

 後ろにはアレックス、俺、篠崎先輩の順番で綺麗に並び俺は真ん中に座ってるもんだから自由なことなんてできるはずがなかった。

 

「あ、アギト!アレックスせっかく京都に行くのにメイド服は抵抗があります!」

「あたしも制服より私服の方がいいわ!」

「私もいいですか!」

「何言うか!学生は黙って制服着てなさい!」

「んじゃこころはどうなんだよ!?」

 

 なんと言うか、このうるさい奴らが大っ嫌いだったから俺は家を抜け出したはずなのに…いつの間にかこの時間が楽しいと思ってしまうようになってきた。

 

 嫌っていた自分をぶん殴りたくなるほどにな

 

「じゃあちょっと服屋にでも寄るか?」

「ええ!頼んでもいいかしら!」

「了解っと!」

 

 高速に入る前ギリギリで急遽服屋に行くことになり、車線を変更し近くの服屋に足を運んだ。

 

 この都会でもかなり値段が高い服屋に来た途端女子共ははしゃぐように店内へと入っていく

 

「布ごときがこの値段…!た、高ぇ!」

「何言ってんだよ、お前も買えるだろ?」

「い、いや買えるけどさ」

 

 買えるけどあれはお小遣いで貰った金だからさ…ちなみにだがあのお金はまだ一銭も使っておりません!

 

「お前は服買わなくていいのか?」

「んー俺はいいや、制服の方が動きやすい」

「……なるほど…ほれ、なんか飲むか?奢ってやるよ」

「お、あざーす」

 

 店の前にある自販機にてお茶を買いアギトさんと一緒にベンチに座ってこころ達が帰ってくるのを待っていた。

 

『………………………………』

 

 き、気まずい!何となく気まずい!何を話せばいいのやら!?

 

「……はぁ紗夜が口を聞いてくれない」

「まああんなことがあればな」

「エロ本ぐらい男子なら読むだろ?」

「勝手に決めんな!?」

 

 アギトさんと紗夜さんの再会?した時は花咲の学食エリアでエロ本読んでて注意された時だからな

 

 そ、そりゃーそんな人が自分の兄貴だなんて思いたくもないよな

 

「日菜さんとはよく会ってるってこころから聞いたぞ?」

「ああ、日菜から俺に会いたがって屋敷に来てくれるからな、まじ天使だ」

 

 やはり男子ならば一人ぐらい天使が必要なものなのだろか?

 

「なあアギトさん」

「どうしたー風俗でも行きたくなったか?」

「ちげーよ!くそ、調子狂うなー」

「??」

 

 今から聞くことは本当に聞いて正しいかどうかわからない。だけど知っとかないと紗夜さんの気持ちもアギトさんの気持ちも知ることは出ない、と思った。

 

「アギトさんさ、なんで紗夜さん達と離れ離れになったんだ?」

「……それ聞くか?」

「話したくないなら話さなくていい」

「そうだなー、まあ俺的にはもうどうでもいい過去だから話してもいいぜ」

「ッ!おう」

 

 コーヒーを一口飲んだアギトさんは語り出した。

 

「お前……人って殺したことあるか?」

 

◆◆◆◆

 

「よぉ落ちこぼれ、お前ってあの姉妹と違って出来損ないなんだろ?落ちこぼれ」

「うるさい黙れ」

「あーゆうと君がまさよし(・・・・)君殴ったー!」

 

 小6の頃俺は周りの人達から落ちこぼれと呼ばれていた。

 

 理由は簡単、俺の可愛い、もう1つついて可愛い妹達紗夜と日菜がこの学校に来てもう10ヶ月経とうとしいた。

 

 俺の可愛い天使な姉妹は天才姉妹と校内では呼ばれその兄、俺こと氷川夕刀は姉妹と違って出来損ないの落ちこぼれと呼ばれていた。

 

 かと言って俺はみんなが思ってるほどの落ちこぼれではない。

 

 やろうと思えば何度もできる、が所詮小学校、目立つ意味もないし俺はそんなにガキでもない。

 

「って思うんだ、父さんはどう思う?」

「そうかもしれないけど友達を殴っちゃダメだろ?」

「……あいつは友達じゃない」

「夕刀ーそんなこと言うなよ」

 

 俺が正義に手を出したせいで保護者召喚、親父が正義の父親に頭を下げている姿を見た時は罪悪感というのが俺の中にはあった。

 

 それと同じぐらいの気持ちで情けない人とも思ってしまった。

 

「なんで父さんは正義の父さんにあんなにペコペコしてんの?」

「……大人には大人の事情があるんだ」

「へー、大人ね」

 

 2人して並んで帰ってる時にふと店の前に立ち止まる。

 

「どうした夕刀?ネックに行きたいのか?」

「いやポテト買っていったら紗夜と日菜喜ぶかなって」

「……そうだな、買っていくか!」

「ッ!おう!」

 

 ネックでポテトを買うがお金は俺が払った。特に使う予定なんてないから小遣いが溜まりに溜まり、最近は紗夜と日菜にお菓子を買ったりポテトを買ったりとそっちに使うのがメインになってる。

 

「夕刀はしたいこととかないのか?」

「?特にない、なんでもそつなくこなせるし」

「だったらそれをやりなよな」

「えーだって小学校だよ?そんなことしたって意味ないっての」

 

 したところで正義達に調子乗んなとか言われてさらにめんどくさくなりそう。

 

「でもずっと言われっぱなしはいやだろ?」

「それはまあ嫌だけどさ…」

「だったら父さん達は何をしたら夕刀は真面目になってくれるんだい?」

 

 真面目に、か?ちゃんとするってことでいいんだよな?ちゃんとした所で意味があるとは思わないし…俺は

 

「俺は…学校の奴らより父さんとキャッチボールしたり紗夜と日菜と遊んだ方が楽しい」

「……そっか、なら次のテストいい点取ったらピクニックに行こう!」

「ッ!いいの?父さん休み取れるの?」

「うっ!こ、子供はそんな心配しなくていいんだよ」

 

 貴重な日曜日と言う休みが無くなるのは父さんにとってキツイんじゃないのか?

 

 でも…それよりも父さん達や紗夜と日菜とピクニック行けるとなれば

 

「うん、俺真面目にやるよ」

「……ああ、それでこそ夕刀だ」

「それと今回だけじゃないぞ?これからも真面目にすれば父さん達はお前の頼みをなんでも聞いてやる」

「ッ!本物?ならもう一個お願いしてもいい?」

「おう!なんでも言っていいぞ!」

 

 この歳では何かと不便なことばかりだからな…こればっかりは見た目が大人の父さんに頼るしかない。

 

「コンドーム買って?」

「ぶっ!ゆ、夕刀!?今なんて!?」

「あれ?避妊具って言うんだけ?友達とやる時に必要なんだけどさ…」

「ちょ、ちょちょちょっと夕刀!」

「?うん」

 

 父さんは急にしゃがみこみ俺と同じ目線になったかと思えば強く肩を握って来た。

 

「……お前、ま、まさか付けずにやってたりしないよな?」

「いや付けてないから欲しいって言ってんだけど?」

「…………ッ!!」

 

 まるで雷が落ちてきたような反応をした夕刀の父親、まさか自分の息子がこの歳で卒業していたと、しかも生だと知ったら衝撃がやってこないわけが無い。

 

 そしてそこからあるひとつの考えにたどり着いてしまう。

 

「(さ、さすがに出してないよな?)」

 

 しかしこのまま聞いたら普通にうんとひとつ返事が来る気がした夕刀の父親は

 

「いいか夕刀…女の子とそう言うことをするのはまだ早い」

「俺って大人?」

「大人よりもタチが悪いような…いやいや、大人だけど…金輪際はやめよう、な?」

「?うん」

 

 父さんがやめろって言うならやめるか…明日友達の女の子にそう言わないと

 

 でもそうなると遊ぶことがなくなるような?いや、もっと別の遊び方を探すべきか

 

 その後父さんは口を開くことなく俺達は無言のまま家にたどり着く

 

「ただいまー」

「ゆうお兄ちゃんおかえりなさいー!」

「兄さんおかえりなさい」

「おーう!ったく可愛いヤツらだな!ほら、帰りに父さんとネックよってポテト買ってきたぞー」

「わー!ポテト!ポテトだよお姉ちゃん!」

「……ポテト」

 

 実はポテトが好きなのは紗夜であって日菜は紗夜と同じものを好む癖があるから惹かれて日菜もポテトを好むようになったんだ。

 

「後おもちゃもあるからな、ちゃんと喧嘩しないように選べよ?」

「はーい!」

「わかった」

 

 袋を手に取りリビングの机に広げそれぞれがおもちゃを取り出し遊び出す。

 

 セットで頼むと着いてくる安いおもちゃだけど喜んでくれたなら何よりだ。

 

「夕刀…あなたちょっとこっちに来なさい」

「……母さん、なに?」

 

 リビングで紗夜と日菜と一緒にいたら母さんから隣の部屋に来るように呼ばれる。その後ろには父さんもいる。

 

「あなたまた綺羅君に手を出したって?」

「……いやあいつが悪いし」

「……もう先に手を出した方が負けって何度も言ったはずよ?」

「俺は負けてない、あんなヤツら何人来ようと余裕で勝てる」

「はぁ…もういいわ、紗夜と日菜の面倒見てて」

「…………わかった」

 

 なんで父さんも母さんも正義に手を出しただけでなのに気にするんだ?

 

 もう何度もあるしいつものことじゃないか

 

「私もうあの子の考えてることがわからないわ」

「もう5回目よ?そろそろ親御さんから目をつけられてもおかしくないわよ…」

「逆に黙ってくれてる方が不自然…だよな」

「次は絶対ないわ…もし綺羅家に目をつけられたあなたの仕事は」

「それは大丈夫、今後は真面目にするように今日話した」

「…………変わるといいんだけど」

 

 夕刀の父親の仕事先は大元は綺羅財閥、ならば自慢の息子が平社員の息子にやられっぱなしと知れば?

 

 ただでさえタチの悪い財閥が氷川家に何をしでかすかわからない、常にそれを脅えながら氷川夫婦は生活をしていた。

 

「夕刀」

「……父さん?」

 

 次は父さんにまた呼ばれた。何度も呼ぶなら一度に話をして欲しいものだ。

 

「この機会だ、父さんと約束しよう」

「……約束?」

「ああ、もう二度と人を殴らない、蹴らない…何があっても絶対に暴力を振るわないって」

「……俺が何かされたなら我慢する、だけど紗夜達に何かあった時はわからない」

「だったら暴力以外で助けなさい、いい?約束できる?」

「…………わかった」

「よし!なら庭でキャッチボールするか!」

「ッ!うん!」

 

 こうして今日俺はもう誰にも暴力を振るわないと父さんと約束をした。

 

 その後はキャッチボールをして、夜は寝るまで紗夜と日菜と遊んで…あっという間に次の日が来る。

 

 

 学校に行くと昨日のこともあってみんなが俺を見ながらヒソヒソと話していた。

 

 まあ昔からよくあることだから慣れたっての

 

「おっはよー!夕刀君!」

「……ひよりは本当元気だよな」

「えへへ、元気だけが私の取り柄だしね、あ、あと胸も!」

「…………………………」

 

 小学生にしては大き胸、成長期が一部分だけ早いようだ。恥ずかしいが何度もお世話にはなってるからな…。

 

「そうだ!今日妹と母さんも父さんもいないんだけど家来る?久しぶりに気持ちいことしよう…?」

「あーその件なんだけどさ」

「??」

 

 俺はひよりに当分そう言うことをするなと言われたことを話した。

 

「なんで言うのさ!夕刀君の馬鹿!」

「…………す、すまん?」

 

 何故俺が怒られる?意味がわからん

 

「おいおい貧乏夫婦は朝からイチャイチャしてんぞー」

「……正義、お前な」

 

 懲りないやつとはまさにこのこと、昨日痛い目にあったくせにまだ俺のことをからかうのかこいつは

 

「ふ、夫婦って言うな!」

「おっぱいは黙ってろ」

「おっぱいでかいからって変な渾名で言わないで!」

「渾名か?それ」

 

 まあひよりも俺なんかと絡んでいるからクラスでの立場ってのはかなり低い、でもこいつが友達でいてくれるから俺は少しだけ学校に行こうと思える。

 

キーンコーンカーンコーン

 

 チャイムが鳴り立ってた生徒達はみんな席へと座り朝の会が始まる。

 

 適当にどうでもいい順番は数時間受けたら

 

「では今日はテストをします!筆記用具以外のものを机の中に入れて席を離してくださいね」

 

 どうやらカンニング防止のため席を離すらしい、正直言ってこの行動がめんどくさい。

 

「でははじめ!」

 

 いつものテストなら適当に50点以上取れるように上半分だけ時いつもなら寝ている。が、今回から真面目にするって約束したから解いた。

 

 テストが終わればすぐに採点、その日のうちにテストは返却される。

 

「なんとクラスの中に100点の人がいます!」

「誰だろー?」

「まさよし君だよ!」

「だよねー!頭いいもんね!」

「おいおいやめろって」

 

 まあいつものやり取りだよな?でもその時ってのは大半1位のやつが正義ってだけだけど

 

「なんと氷川夕刀君!100点おめでとう!」

「ッ!は?」

 

 残念、お前じゃない。俺が1位だ

 

 まあ当然の結果だ、今まで手を抜いてやってたんだ、有難く思って欲しいな

 

「…………先生ー夕刀君が100点なのはおかしいと思いまーす」

「お前な…」

「でも先生採点間違えてませんよ?」

「普段50点前後しか取れない人が急に満点取れないと思いまーす」

 

 確かにそれは言えてる、がそれは普通の人は、だ。俺はそんなヤツらとは違う、なんせ手を抜いていたのだから、わかっていても解いていなかったからな

 

「それにカンニングしてる所見たってこいつが言ってまーす」

「ッ!は、はーい夕刀君カンニングしてました」

「…………夕刀君、本当なんですか?」

 

 あーはいはい、出たよ、ちょっと本気出しただけでこれだ。

 

 クラスは一瞬にしてざわつきみんなが正義の言ったことを信じ始めた、ここで俺が何を言っても説得力なんてないと思うだろうがそんなことはない

 

「だったら次のテストは俺だけ別部屋でしてくださいよ」

「なんなら先生がずっと俺を見張っててくださいよ」

「はっ!信用出来ないなら見張り役の先生を10人でも20人でもつければいいんじゃないんですかね?」

 

 そんな人数から見られている中テストを解いてでもカンニングしたと言うならそのカンニング方法を教えてくれってな

 

「……そ、それは」

「いいじゃん先生、やりなよ」

「でも」

「いいからやれよ、消されたいの?」

「ッ!……はい」

 

 綺羅財閥も息子がこんなやつとは…未来が心配だな?こいつの代で潰れるんじゃないか?

 

「夕刀君?次のテストは別室で受けてもらいますからね」

「はーい」

 

 その日の運が良かったのかまたテストがあったもんだから俺は早速別室で問題を解くように言われた。

 

 恐らく暇をしているであろう先生共が俺の見張り役としてやってきたようだ。

 

 まあ見張り役が来ようと変わらないけどさ

 

「……なっ!」

「はい、どうぞーどうやってカンニングしたか教えてくれよ?」

 

 満点の用紙を正義に見せつけ俺はそう言った。

 

 流石の正義もこればっかりは何も言うことが出来なかったのかすぐに引いてくれた。このままずっとこの調子だと助かるんだけどな

 

「覚えてろよ貧乏人が…!」

 

 そう言った正義は何かよからぬことを考えているような顔だった。

 

 

 学校も終わり帰ろうとした時

 

「夕刀君帰ろ!」

「帰ってもいいけど気持ちいことはしないぞ?」

「えー手伝うのもダメなの?」

「……わかんない、聞いてみる」

「き、聞かなくていいの!」

「?」

 

 確かに気持ちいけどさ…なんだ?まさかひよりのやつ俺よりもハマってるとかか?

 

「そんなに好きなら俺以外とすればよくね?」

「……ダメだよ夕刀君じゃないと」

「ッ!お、おう?」

 

 どう言う意味なのだろうか、俺にはよくわからん

 

 そんな話をしながら下駄箱に向かいシューズを直したところで

 

「きゃぁー!は、離して!」

「離してください!兄さん呼びますよ…!」

 

 見知った声が聞こえた。

 

「ッ!紗夜!日菜!」

「おっと、これはこれは夕刀君じゃないですか」

「正義!日菜と紗夜を離せ!」

 

 小6と小1、この時点で体の大きさは異なる?それに男と女とではかなりの体格差がある。

 

 1人で幼女2人を取り押さえることぐらい簡単なことなのだ。

 

「捕らえろ」

「ッ!」

 

 隠れていた正義の手下、とでも言おうか、その4人が俺を取り押さえ俺は地面に押さえつけられる。

 

「はな、せ…!」

「お前は本当に懲りないからな、お前が悪いんだぞ?素直に俺に虐められるおもちゃになればいいものを」

「ざけんな!誰がお前なんかのおもちゃに…!」

「だよな、だからお前(・・)じゃなくて」

「ッ!やめろ!妹達に手を出すな!」

 

 くっ!力を入れてもビクともしない…!流石に4人同時から全力で抑えられると動けないのか!

 

 クソ!自分の力がここまで弱いだなんて知りもしなかった…!

 

「は、離してよ!ブサイク!クソデブブサイク!」

「ッあ?貧乏人が何俺に罵倒言ってんだよ…!」

「きゃっ!」

「日菜!正義…!お前…!」

 

 日菜は正義に思いっきり殴られるも正義が手を強く抑えててるもんだから飛んでいったり倒れることはない。

 

 それを言いように利用したのか正義はこれでもかと日菜の顔面を殴りに殴り続ける。

 

「あっ、ッ〜、い、痛い」

「だったら謝れよ、なぁー?」

「もうやめてください!私が日菜の代わりに謝ります!ごめんなさい!だからもう日菜を殴らないでください…!」

「……わかった、じゃあお前を殴るわ」

「ッ!」

 

「ッ!ッッッッ!正義ぃぃぃいい!!!」

 

 紗夜が数発殴られた所で…

 

 俺の頭の中でプツンと何が、まるで制御してするの必要とされていた何か糸のようなものが切れたような感覚が起き、全身を奮い立たせる。

 

「あぁぁぁぁぁああああ!」

 

 妹達が目の前で酷い目にあっていることに耐えきれなくなった夕刀は怒りに身を任せ本人も知りえない馬鹿力を引き出した。

 

『ッ!』

 

 抑えてた4人が吹き飛ばされ夕刀は立ち上がり正義目掛けて走り出す。

 

「お、おい!抑えとけって言っただろ!」

「ッ!はい!」

 

 1人が立ち上がり夕刀に向かうも

 

「邪魔を、するなぁぁあー!!」

「グフ」

 

 腕を振り相手の顎に拳をぶち当てる。骨がズレるような嫌な音が聞こえたかと思うと殴られた少年は吹き飛んでいく。

 

「ち、ちちち近寄るな!妹達がどうなっても」

「黙れクソ野郎」

「グチャ」

 

 夕刀の重いストレートが正義の顔面に当たり、当たりどころが悪かった鼻からは絶対に聞こえないであろう骨と骨がゴリゴリと擦れる音が聞こえた。

 

「お前は絶対許さない…!」

「殺す、殺してやる…!」

「ひっ!?」

 

 正義の上に乗った夕刀はもう止まるという言葉を知らない機会のように休む暇なく正義の顔を永遠と殴り続ける。

 

 自分の妹達に手を出したこともあるがずっと我慢していた正義の思いが爆発しこれをいい気にと殴り続けた。

 

 拳は血で赤く染まり、返り血が顔に着くも気もとず殴り続ける。殴られている本人はもう意識などないがそれも気にすることなく、ずっと

 

 嫌な音が周りの人達の耳に入るも、夕刀の顔が怖すぎて誰も動くことが出来なかった。先生が気づき来る頃にはもう正義の顔は血でどうなっているのかも確認ができないほどになっていた。

 

「ッ!離せ!まだだ!まだそいつは死んでない!殺す、殺す…!絶対殺す!」

「もうやめてよゆうお兄ちゃん!もうアタシ達は大丈夫だから!やめて!やめてよ!」

「ッ…………………………」

 

 日菜の鳴き声で自我を取り戻した夕刀、目の前には顔が分からないぐらいボロボロになった正義、そして痛い手を見てみると血に染っていた…

 

「俺がやった…のか?」

 

 血に染った手だが気にすることなく髪をクシャッと握ってしまう。そのためか頭から血の匂いがする。

 

「ッ!違う、俺は!」

 

 周りからすごい目で見られていた夕刀は必死に否定しようとした。

 

 言葉を言うも目を背けるもの、小学生がこんな光景を見たんだ、泣いている生徒だっていた。

 

「ひ、日菜、さ、紗夜…?お前達は俺のこと…!」

「………………人殺し」

「ッ!」

 

 他の誰でもない、自分の自慢の妹に…紗夜にそう言われた夕刀はその後何も否定はすることなくただその場に座り込んでいるだけだった。

 

◆◆◆◆

 

「てな過去があったんだ」

「…………綺羅と同じクラスだったのか」

「……まあ話した通りのクソ野郎だった」

 

 でも一つだけ疑問点があるんだが?

 

「綺羅は生きてる、殺してはないだろ?」

「……もーいいだろ?ここからさらにクソみたいな話だぞ?」

「このまで聞いたら聞きたいだろ」

 

 ここまで聞いて後はなしってないだろ!?

 

「だってまだ弦巻家に来た理由がわからないし?」

「アレックスはちゃんと話してくれたぞ?」

「……はぁ、聞いて後悔してもしらねーぞ?」

「…………あぁ」

 

 その後俺はアギトさんの過去の話を聞くことになった。

 

 その過去は俺が思っているよりも残酷で、そして苦しくて…自分の人生がどれだけ恵まれていたのかを思い知らされたのであった。




なんとアギトさんの過去の続きは次回に持ち越しです。その後は…です。アギトさん関係も次回で終わりですね。

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弦巻シンと幸せの漢字

どうもー!こちらではお久しぶりです!アギトさんの過去ですが書いてて流石に重すぎたので投稿は延期させていただきます…今後またちょこっと話を出します。

それではどうぞ!

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 夕刀が放った自分の過去の話、それを聞いたシンはとてもじゃないが楽しいまま旅行を続ける気分にはなれなかった。

 

「……ちょっと席外す」

「…………だから言ったろ?後悔しても知らねーぞって」

「でも!それにしても…!アギトさんの過去は酷すぎる…!」

「まあ……否定はしない」

 

 俺は逃げるようにその場から離近くの見慣れない商店街へと足を運んでいた。

 

 自分の人生なんか激温イージーゲームすぎた。

 

 俺が不幸な人だと思うならアギトさんの方が俺よりよっぽど不幸な人間だと思う。

 

 アギトさんがこころに尽くす理由もわかる。俺もあんな後でそう言われたら…

 

「おっ!お前さん見ない顔だな!」

「…………すみません、肉まんひとつください」

「はいよ」

「って財布ないわ」

 

 屋台を出してるおじさんに話しかけられたから自然と並べられている肉まんをひとつ買おうとしたら財布を車の中に置いてきていた。

 

「……ならじゃんけんだ、じゃんけんに買ったらタダでやるぞ」

「?」

「じゃーんけんぽん」

 

 相手がグーで俺はパー、つまりの所俺の勝ち

 

「あちゃーほら、お前さんの勝ちだ、受け取りな」

「……いただきます」

「もしすぐ食うなら隣のベンチにでも座ってろ」

 

 言われるがまま俺はベンチに座りアッツアツの肉まんへかぶりつく

 

「……!お、美味しい!」

「だろー!それをタダで食えるお前さんが羨ましいぜ!」

 

 あまりの美味しさに感動しすぐ食べ切ってしまった。こんなに美味し肉まんは食べたことがないぞ

 

「へへ、どうだ?暗い気分もどっか吹き飛んでっただろ?」

「ッ!あはは、そっすねー」

「あんま聞きたかねーけど何に悩んでたんだ?女関係か?」

「……まあそれもあるけど今回は別件というかなんと言うか」

 

 シンは頬をかきながら照れくさそうに語った。

 

「その、友達の思い過去の話を聞いて……どうしても受け止められないというか」

「ほーう、お前さんの友達のか……俺はどんな過去かは知らねーがそんな複雑そうな顔だと辛いってことだけはわかる」

「……やっぱり俺って顔に出やすいんですかね」

「ああ、顔に辛いって書かれてらー」

「そこまでかい!?」

 

 そんなにわかるほどくっきり書かれているのか!それは嫌だな!

 

「……人間誰にでも人に言えない罪や隠し事だってある」

「…………でもそいつはーお前さんのこと信用して話してくれたんじゃないのか?」

「どうですかね」

 

 俺が無理やり聞き出したようなものだ。しつこく言わなかったらアギトさんは話してれてないと思う。

 

「話したってことは心のどこかで知って欲しいかったと思ってんだよ」

「……だといいんすけどね」

 

 アギトさんが俺に知って欲しくて、か

 

「幸せって漢字はわかるよな」

「?はい」

「幸せってのは辛いに一を足して幸せになるんだ」

「……でも上の棒は出ませんよ?」

 

 付け加えても工の漢字で上と下の一の長さが等しいものになって棒は出てないぞ?

 

「だーかーら!お前さんがそいつを少しでも幸せにしてやりたいと思ってんならさ」

「一を足してやって、辛いこと少し削ってやって、素直になれよって頭出してやればいいんだよ」

「ッ!」

「これでほら、幸せの完成だ」

 

 凄い、確かにこの人の言う通りだ。本に幸せが完成してしまった…。

 

 一を足す、つまり俺がアギトさんに何かをして、削ってやって、背中を押して頭を出してやれば…!

 

「……ほれ、サービスだ、もう一個食え」

「!で、でも」

「いいってことよ、次来た時は金払って食ってくれればいいからよ!それに……うちのこと他の人にも紹介しとけよ!」

「ッー!おう!」

 

 2個目の肉まんは1個目の肉まんとは少しだけが味が違うように感じた。

 

 これはきっと俺の気分の話なんだろう。だってさ…こんなにもやる気に満ち溢れてたら食べ物だって美味しく感じちゃうよな!

 

「おじさんありがとう!俺頑張ってみる!それじゃあ!」

「……あいよ!次は彼女と来てくれよな!」

「必ず来る、彼女もそれまでに決めるからー!」

「…………あれ?今決めるって言ったか?……気のせいか」

 

 屋台のおじさんは一瞬首を捻ったが自分の勘違いだと思い、その後は商売に専念したそうだ。

 

 

 

「ただいまアギト!どうかしら!似合ってる?」

「……ええ、お嬢のスタイルに合ったよいセンスだと思います」

「えへ!そうよね!アギトならそう言ってくれると思ってたわ!」

 

 こころの服装はワンショルダー、と長いスカート、そしてその上には七分袖の羽織りを羽織っていた。

 

「……ねえアレックスさん、私本当にこの格好で京都行かないといけないの…?」

「良いではありませんか!童貞殺しのセーター!」

「良くないよ!?てか背中寒いんですけど!?」

「そーゆうアレックスはちゃんとした格好をしてますがね!」

 

 愛奈は例のセーターに普通の黒いズボン、その上に露出されている背中を隠すようにジージャンを羽織っている。

 

 アレックスに関してはどこぞの騎士王がとある女子からいただいたであろう服を着こなしていた。

 

 ちなみに髪も綺麗なシニヨンヘアになっている。

 

「?シンはどこに行ったのかしら?」

「……あいつはーまあその辺ほっつき歩いてるんじゃないですかね」

「それは困りましたね……早く京都に言って愛奈の姿を男子共に見ていただきたいのですが!」

「もうやめてよー!だ、大体今だって結構見られてるんだからね!?」

 

 嫌なら脱げばいいと思うだろうが愛奈はアレックスに制服を奪われていたのだ。

 

「この制服はアレックスとシンジ様が制服プレイをする時に使います」

「変なことに使わないで!?てかアレックスさんが着ても胸元寂しいだけですよ」

「…………みなさーん!ここに変なニットを来てる変態がいまーす!襲ってくださいって言ってますよ!」

「私が悪かったですごめんなさいぃぃー!!」

「何やってんだよ」

 

 丁度悪いタイミングでやって来たシンは気づかないままアレックスと愛奈のやり取りに突っ込んでいた。

 

「ほら!シン様が釣れましたよ!」

「釣られてない、てかなんだよその格好は!」

「ち、違うの!アレックスさんと店員さんに騙されたの!」

 

 だからってそんな格好で出歩くなよ…羽織ってる物なかったら背中丸見えだぞ?てか風吹いただけで背中見えそう

 

「アレックスはちゃんとした格好ですから!エッヘン!」

「はいはい、胸張ってもないからねー」

「なっ!?」

 

 アレックスの格好は……まあ、なんだ、怒られないか心配です。

 

「シン!どこに行ってたのよ!心配したのよ?」

「あはは、悪いこころ、待つの暇すぎてちょっと散歩してた」

「そうなのね!ところであたしの服は似合ってるかしら!」

「……んーよくわからんが似合ってるんじゃないのか?」

「んもーう、シンはアギトと違って女心がわかってないのね」

「うっせぇ!」

 

 女心がわかってないぐらい嫌ってほどわかっとるわ!てか傷つくからやめてくれーい!

 

「ほら早く京都に行こうぜ、俺眠いから早く寝たい」

「……それじゃあ服も買ったし!改めて京都に向けて出発よー!」

『おー!』

 

 俺達はこころに続いて声を上げ車へと乗り込む

 

「アギトさん」

「……なんだ、まだ話でもあんのかよ」

「いや、ただ聞いて欲しいことがあってさ」

「?」

「俺決めたよ、アギトさん、いや氷川夕刀さん……俺があんたに一を足して、削って頭を出させてやるから」

「……何言ってんのかわからないが…何となくわかったよ」

「ほらはよ乗れ、車出せないだろ」

「おう」

 

 その後俺は車に乗ることものの数分で夢の中へと入っていったのであった。

 

◆◆◆◆

 

 あの時の光景は今でも覚えている。

 

 日菜(・・)が目の前で殴られてて私は必死になって日菜を殴るなら私を殴りなさいと言ってみた。

 

 すると矛先が私に変わって……私はあの人に何度も殴られた。

 

 殴られて、殴られて、殴られて…軽く意識が飛びそうになっていた。

 

 そんな時兄さんが私を助けてくれた。

 

 なのに…私は兄さんが怖かった。

 

 自分の自慢の兄さん、大好きな兄さんなのにあの時はまるで別人のように見えた。

 

 怖くなった私は両手で顔を隠して兄さんとあの人を見ないよう逃げた。

 

 でも逃げた結果、最後に兄さんを見た時には…

 

「さ……よ、……よさん!」

「紗夜さん!」

「……ッ!な、なんでしょうか」

「京都、着きましたよ?」

「……これは失礼しました」

 

「はぁ、なんで今頃になってあんなこと思い出すのでしょうか…!」

 

 前髪をぐしゃりと握りながらそうつぶやくとバスの中で深呼吸をいつもの氷川紗夜に戻るのであった。

 

◆◆◆◆

 

 夢を見た。

 

 まるで雲の上で寝ているような心地良さ、柔らかい物が俺の頭を包み込む。

 

 あれ?次はなんか硬い地面のような所で寝てるような感触だ。

 

 んん?また柔らかくなったぞ?

 

 かれこれ数回雲の上と地面を行き来して目が覚める。

 

「あ!シン様起きられましたか?」

「…………何やってのアレックス」

「?何って膝枕ですけど?」

「膝枕ですけど?じゃねーわ!」

 

 俺は勢いよく飛び起きる。何普通に膝枕なんかしてんだよ!?てか枕硬!柔らかくなかったわ!

 

「アレックスは筋肉質なので仕方がないのです!」

「お前胸もなくて太ももも硬いとかやばいじゃんか」

「……お尻があります!触りますか?」

「い、いい!てか柔らかい思いもしたよな?」

 

 夢の中では雲と地面、いや天国と地獄を行き来していた。地獄がアレックスとしたら天国は…?

 

「私もしてました!」

「あんたもかよ!?」

「それと途中寝てるシン君の顔に胸を押し当てろってアレックスさんから言われて」

 

 包み込むような柔らかい感触はこれ原因だったか…!てか何モジモジしてんだよ!こっちが恥ずかしいだろ!?

 

「もうそろそろで京都だぞー」

『おー!』

「ちょ、し、篠崎はん!?」

 

 高速道路から見える京都の街並みを見ようとアレックスと篠崎先輩が窓に顔を着けるように見ていた。

 

 もちろん俺は真ん中に座ってたけど愛奈さんは俺のことは気にもとめず窓に顔をつけていた。

 

「(む、胸がもろ目の前に…!)」

 

 しかも脇なんかもあのセーターだから露出してるし生の横乳が目の前に!

 

「……よかったな、シン」

「うるせぇー!早く下ろさせてぇー!」

 

 シンの願いはかなったのかすぐに高速から降りて車を停められる場所探し兼本日の宿を調べることになった。

 

 篠崎先輩が適当にググり評価のいい旅館にて泊まることになりそこに車を停める。

 

 手続きとかあれやこれや完了してっと

 

「それじゃあ京都の探検よ!」

「ではいざゆかん!約束の地へ!」

「温泉!温泉ですよ!」

 

 果たして京都は温泉が有名な県なのだろうか?少なくとも入ると胸が大きくなると言われている温泉があるのは本当らしい。

 

「こころ、ちょいちょい」

「んー?なにシン」

「お前目的忘れてないか…?」

「あー!忘れてたわ!」

「っておい!」

 

 お前から言い出してここまで来たんだろうが!何忘れてただよ!?学校サボったのにどうしてくれんだよ!

 

「……じゃあアギトさんのことは俺に任せてくれ」

「いいや!あたしがやるわ!」

「さっきまで忘れてたやつに任せれません!」

「お前はアギトさんと大人しく京都でデートしとけ」

「で、デート!?」

 

 まあ忘れてたのもわからんことではないかもしれん…こころにとってこのメンバーで旅行に行くのは初めてだから楽しいと思って忘れてたんだろう。

 

「俺は適当にその辺歩いとくよ、じゃーねー」

「……ですってお嬢、俺と2人でまりましょう」

「そ、そうね!これわ列記としたデートだわ!……エスコートよろしくね?」

「はい、俺でよければどこまでもお供します」

「そうとなればすぐに出発よー!」

 

 聞いた感じこころのやつ上手くアギトさんと2人で回るようにできたらしいな

 

「とは言っても俺もここからどーすっかねー」

 

 全く知らない土地で携帯なし、旅館は覚えているから最悪タクシー使えば戻ってこられる。

 

「紗夜さんが何処にいるかなんて知らねーがな!」

 

 紗夜さんにアギトさんと話をするように説得しようと思ったが…探すのに時間がかかりそう。

 

「……後は俺も聞きたいことあるしな」

 

 だからこそ探したいが無理そうだ…流石に携帯があれば何とかできたのにー!

 

「くそー不幸だぁー」

 

 京都での初不幸は静かな不幸なのであった。

 

◆◆◆◆

 

 シン達が京都に着いた頃、修学旅行中の羽丘と花咲の生徒達は自由行動をしていた。

 

「友希那ー京都の猫だよ」

「ね、猫ちゃん…くっ!そ、それより燐子が行きたがってた伏見稲荷大社に行くわよ」

「は、はい…千本鳥居は京都に来たら行きたいと思ってたので」

「みんなも一番に行きたい場所って言ったもんねー」

「あこちゃんも行きたがってました」

「……こればっかりは学年の差ね」

「だねー紗夜もそう思うでしょ?」

「………………………………」

 

 京都での自由行動は班別…とかではなくそれぞれ学校問わず好きなメンツと歩いていいそうだ。

 

 そのためRoseliaはこうしてRoseliaで集まり目指すは伏見稲荷大社、千本鳥居を見に行くそうだ。

 

「……紗夜?」

「!そうですね、宇田川さん早く2年生になれるといいですね」

「…………いやうちに飛び級とかないから」

「は、はい…すみません、話を聞いてなかったので適当に返事をしてしまいました」

「あっはは!紗夜〜もしかして楽しみすぎて眠れなかった人かなー?」

「紗夜にも可愛いところがあるのね」

「ッ〜!い、行きますよ!」

 

 こうしてRoseliaは伏見稲荷大社へと足を運ぶ、が紗夜の心は修学旅行だと言うのにあまりの楽しい雰囲気ではなかった。

 

「……紗夜さん大丈夫ですか?」

「白金さん…ええ、問題ありません、千本鳥居は私も行きたいと思っていたので楽しみです」

「……今日バス乗る前シン君と何か話してました、よね?」

「…………何も話してません、そんなことより白金さん前をちゃんと見て歩いてください」

「?きゃっ!」

 

 燐子は前から歩いてくる人に気づかないままぶつかってしまい尻もちを着く

 

「す、すみません!前を見てませんでした…!」

「いやいいってことよ……うひょーすげー美人さん、君達修学旅行生?」

「……そうですが何か?ほら白金さん早くたってください、その下着が丸見えで、ですよ」

「ッ!!!???」

 

 燐子は紗夜が差し伸べた手を借りて立ち上がる。その後は急いで服装を整え改めてぶつかった人に謝っていた。

 

「俺大学生なんだけどさ?サークル旅行で京都来てて……あんまり詳しくないから観光スポットとか教えてくんね?」

「は、はぁ」

「白金さん相手にするだけ無意味です、この様な物言いとは随分とナンパになれてない様子ですので」

 

 紗夜は挑発も込めてその一言を言ったが…

 

「あぁん?」

 

 まんまと挑発に大学生は乗ってしまったようだ。どうやら知能レベル的にFランク大学生かもしれないと疑ってしまう。

 

「可愛いからって調子に乗るなよ」

「ちょっとストーップ!いやごめんね兄さん♪修学旅行で浮かれててアタシの友人がそそしちゃって」

「……気が失せたわー達者で」

 

 どこからか現れたリサによって窮地を突破した燐子と紗夜

 

「こーら、あんまりあーゆう人をからかっちゃダメだよ?見るからに知能低そうじゃん」

「……今井さんサラッと酷いこと言いますね」

「まあ白金さんのことだから喜ぶと思ってました」

「わ、わわわ私はそんな人じゃあ、あ、ありませんから!?」

 

 燐子とて股が軽い訳では無い、何故か知らないがシンにエッチをしたいと言っているだけなのだ。

 

「もー気おつけな?友希那ー終わったみたいだから行こっか」

『………………………………』

 

 3人は息を飲んだ。そう、なぜなら

 

「ゆ、友希那が消えた!?」

「これは一大変です!早く探しましょう!」

「け、携帯携帯!」

 

 そんな中3人の気にもとめず友希那は近くの隅っこで猫と遊んでいるだけなのであった。

 

◆◆◆◆

 

「ありがとうございましたー」

「……どうも」

 

 とりあえず旅館から場所を移し街にやってきた。手ぶらでいるのもなんかあれだからきゅうり漬けをかじりながら散策する。

 

「でさでさ次なんだけど」

「あーあたし彼ピッピいるからそこはキャンセルでー」

「うぅー!釣れないやつだなぁー!」

 

 あの制服は羽丘か、ってことはここら辺を散策してるのだろうか?

 

 それとも自由行動か何かでたまたまこの人達がいるのか?

 

「ねえ地主神社行かなーい?」

「行くも何も俺達恋人だろ?」

「だからこの愛が永遠に続きますよーに的な?」

「……よし!行くか!」

 

 あれは羽丘と花咲の生徒?他校の生徒の男女でさっきの話を聞いたところ恋人同士だよな?

 

 だとすると学校関係なく自由に行動出来ているってことか…となると紗夜さんはRoselia、もしくは日菜さんと一緒にいる可能性が高い!

 

 そう意気込みながら歩くこと数分

 

「なああの猫と遊んでた子可愛くないか?」

「見ない制服だな……修学旅行生だろ」

「でも俺あの子どっかで見たことあるんだよな…」

 

 ん?猫と遊んでいた子?

 

 んーなんかふわーってあの人の顔が俺の頭の中で浮き上がってくるんですが!

 

 進行方向的に俺が進んでいる先にその人がいるんだろう。騙されたと思って進むと

 

「にゃーん、にゃにゃにゃ、にゃーん?」

「……旅行先でも猫と遊んでるんですか?」

「!シン……これは違うわ、この子が道に迷ってたそうなのよ、?リサはどこに行ったのかしら」

「道に迷ってんのは友希那さんですよ…」

 

 はぁと息抜き頭を抱える。まさか一番最初に会う人が猫と遊んでいた友希那さんとは…何が起きるかなんてわからんな

 

「ところでシン、その手に持っているのはきゅうり?」

「あーこれっすか、なんか流れで買ったやつです、食べますか?」

「それよりリサはどこかしら」

「聞いててスルーですか!?」

 

 この人は相変わず自分のペースがしっかりしてていいこと、将来社会に出てもこーゆう人が案外上手くいくのかもしれない。

 

「……リサからだわ」

 

 友希那さんの携帯に電話が掛かってきた。どうやら電話をかけてきたのはリサ先輩らしい

 

『友希那ー!今何処にいるの!?』

「どこ?……シンといるわ」

『え、シン?え、えっとーなに?地元に帰っちゃた感じー?なわけないよね、あはは』

「京都よシンといるのは本当よ」

「……あー!本当だ!シンがいる!」

『ッ!』

 

 声がした方を向けばリサ先輩、燐子先輩…そして紗夜さんが仲良く3人で歩いていた。

 

「し、シン君がなんで京都に…?まさか私との約束を?」

「いやそれはないです」

「あ、日菜からメッセージ来た、こころちゃんとお兄ちゃんが京都にいた…?こころも京都に来てるの!?」

「……弦巻さんとあの人が?」

「………………………………」

 

 まさか早いとこ紗夜さんを見つけることができるなんて!

 

 でもどうしよう…ここで俺が紗夜さんを無理やり引き抜いて2人で話そうなんて言い出したら説得の修学旅行に水を指すことになってしまう…。

 

「なるほど…大方シンさんが私とあの人の仲を戻そうって魂胆でここまで来た、ですか?」

「い、いやー流石紗夜さんお見事」

「…………私はあの人と仲直りする気はありません、もう私のことはほっといてください」

「ッー!」

 

 なんだよその言い方…!あの人と仲直りする気はない?違うだろ!あなたが!……いやここでそれを言う必要なはない、か

 

「ほっといていい人はそんな顔しませんよ」

「ッ!?」

 

 そんな悲しい顔でほっといてくださいと言われたなら尚更ほっとくことなんて出来ない。

 

 それに紗夜さん自信も薄々、いや気づいているはずだ。

 

 気づいていないとこんなことになっていないのだから

 

「友希那さん、リサ先輩、燐子先輩」

「……少しの間紗夜さんを借りてもいいですか?」

『…………………………』

 

 3人は顔を合わせ頷くと

 

「いいけど明日はダメよ?」

「ま、日菜からは何となく話聞いてたしーアタシはいいかな?」

「……紗夜さんこれで貸し借りなしですよ?」

「ちょ!?なに勝手に話を決めてるんですか!」

「紗夜さん!」

「ッ!」

 

 よく考えろ、俺は一体何しに京都にやってきた、アギトさんを、そして紗夜さんを仲直りさせて幸せにさせるためにやってきた。

 

「……俺と京都でデートしましょう」

「ッ!」

 

 シンにより紗夜とアギトの仲直り作戦が京都の街で行われるそうだ。

 

 果たしてシンは2人も無事に前のような仲のいい兄妹に戻すことができるのか、

 

 そしてこのデート、シンはあの2人に見られずに全うすることができるのだろうか…。

 

 紗夜とアギトを幸せにするデートが今始まる。




次回紗夜さんとデート、そして紗夜さんアギトさん編は完了からのまた約束編ですかね…もうこの話の結末は考えております。

少しでも面白いと思ったら感想と投票よろしくお願いしますね!


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弦巻シンと氷川兄妹

どうも、本当にお久しぶりです…言い訳する言い訳すら思い浮かびません。失踪してました。ちょっと面白い話を書きたくてずっともう一つの作品を進めていました。

久しぶりに書いたんですけど大丈夫ですかね…

あとこの作品ですけどあと数十話で完結の予定です。ネタ自体はかなり前から考えていますので!

それではどうぞ!

Twitter:https://twitter.com/oo_ru3

誤字脱字は後日訂正します


 紗夜さんと合流した後俺は特にデートプランなんて考えてなかったもんだから京都の町を2人で並んで歩いていた。

 

「……紗夜さん行きたいところとかありませんか?」

「………………………………」

「紗夜さん?」

「!はい、そうですね…金閣寺なんてどうでしょうか」

「知ってる!金の屋敷ですよね!忘れてた俺行ってみたいと思ってたんすよ!」

「善は急げ!早速向かいましょう!」

「ちょ、シンさん!」

 

 紗夜さんの手を取り俺は表通りに出でタクシーを拾う。

 

「シンさんタクシーだと料金が…」

「大丈夫大丈夫、俺親父から小遣いもらって来たので!」

 

 誰もが想像する金額ではないけどな…1億円とか普通に考えて息子の口座に入れるわけないだろ

 

「おふたりさんカップルですかい?」

「なっ!ち、違います!私達はそのような関係ではありません!」

「そ、そうかい…カップルだったらおじさん安くしようと思ったんだけどね…目的地はどこだい?」

「金閣寺っす、頼んでもいいですか?」

「喜んでー!」

 

 止めてた車を走らせ俺達を乗せたタクシーは金閣寺へと向かう。

 

「いやーにしてもお姉さんべっぴんさんだねー兄さんもそう思わんか?」

「……………………………………」

「……まあそうですね、美人で美しい人じゃないんですかね」

「そういう人を美人と言うんですぜお客さん」

 

 タクシードライバーの問いかけに答えたくない訳ではないと知っている。

 

 それでも紗夜さんは暗い顔で京都の町並みを眺めているだけだった。

 

 俺は紗夜さんがアギトさんギクシャクしている理由は何となくわかってる。

 

 でもそれは…!そう簡単に本人に問いただしてもいいのだろうか?

 

「おふたりさん着きましたぜ」

「ッ!あ、ありがとうございます」

「すぐ終わるなら待っといてあげますよ」

「……あーよろしくです」

「了解!」

「ほら紗夜さん行きましょう」

 

 タクシードライバーさんは懐からタバコを取り、車を降りてタバコを吸い始めた。

 

 ただ単にこじつけしてタバコ休憩に入りたかっただけかい!

 

「……シンさんあなたわかってますか?」

「何がですか」

「だからこんな所にいたら…見られますよ?」

「見られる?」

「はぁ…あなたはどこまで鈍感なのですか」

「???」

 

 何を言ってるかわからないが深いおいするのはやめとくか、とりあえずここまで来たんだ金閣寺を見て行こう。

 

「おー!すっげ!本当に金だ!」

 

 池の真中付近に聳え立つ金閣寺、それは金箔に覆われた美しい建物、見る人を虜にするその建物の周りには人目見ようと観光客で群がっていた。

 

 もちろん学生もちらほらと

 

「銀閣寺ってやつも銀色なんですかね?」

「……紗夜さん?」

「…………いやっ!」

「紗夜さん!」

「ッ!」

 

 何かに怯えだし逃げようとした紗夜さんの手を咄嗟に握ってしまった。

 

 何が彼女をここまで怯えさせるのだろうか…。

 

「ねえアギト!今度屋敷の池に金閣寺建ててみたいわ!」

「それ面白そう!るんってきた!」

「ではボスに頼みましょうか、お嬢の頼みなら聞いてくれるはずですよ」

 

 なるほど…こんな人混みの中アギトさん達をピンポイントで見つけてしまったのか。

 

「!シン!あなたも金閣寺を見に来たのね!今ね屋敷に金閣寺を作ろって話をしてたのよ!」

「……こころ、金閣寺を作るのはやめよう、せめて似てるやつにしよう」

「だったら建物の構造も考えなくちゃね!」

「あっはは…」

 

 相変わず引かないやつだな、そこは残念でもう諦めてくれてもいいだろ

 

「お姉ちゃん!シンくんと一緒にいたんだね!」

「………………………………」

「……さ」

「話しかけないでください!」

『ッ!』

 

 普段聞かない紗夜さんのその声はとても震えていた。でも負けないぞとばかりに荒らげるその声はさながら子供が頑張って見栄を張っている様子だった。

 

「……私はあなたを兄さんと認めませんから、私はあなたの妹ではありませんから…一緒にしないでください…!」

「お姉ちゃんそんな言い方ないよ、ゆうお兄ちゃんはアタシのために戦って」

「ならずっと日菜だけの面倒を見ててください、私はあなたと関わるなんて御免です!」

「…………俺が人殺しだからか?」

「ッ!い、いや…!違うんです…私は…!……くっ!」

「紗夜さん!」

 

 紗夜さんは俺の手を離しどこかへ走り去ってしまった。紗夜さんがおかしくなった時から手をもっと強く握っておけばよかった…。

 

「お姉ちゃん!もう!なんでお姉ちゃんとお兄ちゃんは仲直りしないわけ!アタシ全然わかんないんだけど!」

「……ちょっと紗夜と喧嘩しててな」

「じゃあその喧嘩の内容教えてよ」

「あたしも知りたいわアギト…だって今回の旅行はあなた達2人を仲直りさせるために来たんだもの…少しだけ別の理由もあるけど」

 

 俺は大方内容知ってるからいいけどさ…あの話を女子にするとなればかなりキツイだろ…俺もキツかったし

 

「……俺は紗夜さんを探しに行く」

「ああ、頼んだ」

「それと一つ、わかってても口にしない方がいい時もあるだろ」

「……その通りだな」

 

 紗夜さんは何処にいるんだ?あまり遠くには行けないと思うんだが…。

 

「!あれ!シンさんじゃないっすか!」

「……大和先輩!」

「騎士君……どうして君がここにいるんだい?」

「えっと、こころに無理やり連れてこられというか…」

「なるほど、うちのプリンセスをエスコートするのも大変だね」

「だとしても奇遇っすね、何をしてたんすか?」

「ッ!そう!紗夜さんを探してるんです!見ませんでしたか!?」

「紗夜かい?紗夜ならほら、すぐそこにいるよ」

「ッ!」

 

 人混みで全然気付かなかった…。小粋なちょっと洒落た気のベンチに座り泣いている紗夜さんの姿があった。

 

「俺行ってきます」

「ああ、幸運を祈るよ」

 

「また人助けっすかね」

「……そうだろうね、なにせ彼は正義の味方なのだから」

「……さて!次は何処行きますか?演劇部の人達がここがおすすめだって」

「おや?ここは興味深い場所だね」

 

 今日の観光パンフレットを開いて仲良く話をする薫先輩と大和先輩だった。

 

「……紗夜さん」

「…………シンさん」

「ここは人目に着きます、ちょっと離れましょうか」

 

 紗夜さんの手を取り少し歩いて多分入って行けないであろう茂みの奥に行き泣いている紗夜さんの背中をさする。

 

「俺なんとなくわかってました。紗夜さんがアギトさんを兄と認めない理由」

「……………………………………」

「認めないんじゃない…あなた自身が妹に相応しくないと思ってるんですよね?」

「……そう、ですね」

「……紗夜さんはあの一言だけで」

「一言だけ?一言だけでここまでなると思いますか!」

「ッ!」

 

 紗夜さんは声を荒らげ俺を睨みつけて語り出す。

 

「私はあの人に人殺しだって言ったんですよ!?」

「言ってはいけないそのセリフを私はあの人に言ったんですよ…?」

「一度人殺しと言われた人を自分の妹だと思って接してくれますか…?私には無理です!」

「紗夜さんに無理だとしてもアギトさんはあなたを妹として見てる」

「ッ!違うんです…。本当にあの時は気が動転していて軽く口から出てしまっただけなんです…嘘じゃないんです…。」

「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!ごめんなさい!!」

「紗夜さん落ち着いて!」

 

 だんだんおかしくなっていく紗夜さんを抱きしめ俺は紗夜さんを宥める。

 

 確かにその言葉は軽はずみに言っていい言葉じゃない。

 

 当時のアギトさんには妹の紗夜さんにそう言われた誰よりも深い心に大きな傷を負った。

 

 紗夜さんだって本当にわざと言ったわけじゃないんだと思う。少なくともこの様子では

 

 でも言ったことには変わりはない。言葉ってのは一度言ったものを取り消すことができない、心に残る。

 

 でもアギトさんは…それでも紗夜さんと仲直りしたいって思ってる。でも紗夜さんがこの調子だと…。

 

「シンさん…私はどうすればいいんでしょうか…?」

「…………私はあなたとなら構いません…ここから遠い何処かで一緒に暮らしませんか…?」

「ッ!」

「もう全て何もかも捨てて私は楽になりたい、あなたがいれば私は」

「ダメだ紗夜さん」

「私シンさんのことが…」

「紗夜さん!」

 

 泣き疲れ、考えることを放棄した紗夜さんは口を開けば逃げよう、なんて意味のことをいいだす。

 

 確かに俺も紗夜さんとなら上手くやっていけるかもしれない。このまま2人で逃げて暖かい家庭を作って、幸せに普通に生活する。

 

 ってのも悪くない話かもしれない、でもそれは

 

「紗夜さん?それは逃げてるだけです」

「……逃げて何が悪いんですか」

「……紗夜さん、あなたは日菜さんがギターを始めた時辞めようとしましたか?」

「…………負けないようにと必死でした」

「それですよ紗夜さん」

「???」

「あなたは大の負けず嫌いだ、なら逃げないで戦ってください」

 

 日菜さんに負けないようにギターの練習を沢山した。その結果Roseliaに入って、みんなと出会って、少しずつ変わって、日菜さんと仲直り出来た。

 

「日菜とはわけが違います…これは私が全部悪いんです、だからもう…」

「いいですか?アギトさんはあなたと仲直りしたいと思ってるんですよ」

「嘘、ですよ、そんなの」

「だったら嘘か本当か自分で確かめてください」

「……嘘だとわかりきっているのにですか?」

「決めたんです…俺は紗夜さんとアギトさんを仲直りさせるんだって」

「どうしてそこまでして他人のことに一生懸命になれるんですか…?」

「それは俺が…正義の味方だからだ」

「ッ!」

 

 紗夜さんはその言葉を聞いた途端泣き止んでいた涙が溢れ出し頬を何度も通す。

 

 しかし先程のような悲しい涙、ではなく笑いながら優しく微笑みながら泣き出した。

 

「あなたになら私は騙されてもいいかもしれません…」

「ッ!」

「でも…覚悟ができるまでもう少しこのまま……抱きついてもいいですか?」

 

 紗夜さんが今どんな気持ちかはわからない。だけど向き合ってくれると決めてくれた。

 

 なら俺はそれを応援しないといけない。仲直りさせるって言ったけど最終的には本人達に任せないといけないもんな…。

 

「……はい、いいですよ」

 

 抱きついてきた紗夜さんを俺は思いっきり抱き返し、秋の少し冷たい風が俺達2人の髪をなびかせた。

 

◆◆◆◆

 

「では行きましょう!大丈夫ですって、アギトさんは話せばわかってくれますから」

「そう、ですね…」

 

 んーやはりまだ緊張?してるのだろうか、それとも許してくれるのか不安とか、また前みたいに戻れるのかわからないから怖いって感じか?

 

「シンさん、手を握ってもいいですか?」

「え、まあいいですけど…?」

「ありがとうございます」

 

 俺がそう答えると紗夜さんは手を握ってきた。

 

 先程俺に抱きつき覚悟を決めたと思ってたがやはり今でも不安のようだ。俺の手を強く握り小刻みに震えていた。

 

「ねえ紗夜さん、そう言えば昔紗夜からは相談されましたよね?」

「日菜の件ですか?」

「はい、こころのこと嫌いになったことないですかーって」

「ありましたね、そんなこと聞いた覚えがあります」

 

 日菜さんとの差が気になっていた紗夜さん、俺に相談してきた時はそこまで酷く嫌っていたわけでなかった。

 

「俺はこころが嫌いで苦手だった。でも今はかけがえのない家族で、大好きなやつ」

「前も言ったと思いますけど、一度嫌っても血が繋がってる家族なんだからまた好きになれると言うか…?」

「ッ!」

 

 語彙力語りんな、ちゃんと伝わってくれるかな…?

 

 要するに家族なんだから切っても切れない縁があって、自然と仲直りさせてくれるだろってことさ

 

 現に俺とこころは特別何があって仲良くなったりしたわけじゃないだろ?

 

 ただ生きて、何度か同じ時間を過ごしただけで昔の俺が嫌ってたこころを大好きになっていた。

 

 友達とかとは時の重さってのが家族とでは違うんだろう。多分……きっとそうだ。

 

「シンさんは弦巻さんのことが本当に大好きなんですね」

「え!?や、家族としてですよ!?」

「本当ですかー?」

「ほ、本当も本当です!」

 

 大体俺何人もから告白されて返事を保留してるのにこころなんか選んでみろ!集中砲火食らうっての!

 

「ふふ、そうですか…また好きになれる」

「だったらあの人…兄さんとまた昔みたいに仲良くできるんでしょうか?」

「できますよ」

 

 なんなら昔以上にくっついてくると思うぞとは言えないよな

 

「素直に自分が思ってること言えばいいんですよ、家族なんだから水臭いのはなしにしましょう」

「そうですね、私が今思ってることをすべて兄さんに伝えます…。」

 

 握ってる手も力が緩みかけていた。

 

 そこを俺があえて強く握ると紗夜さん一瞬驚いた反応をしたが微笑みながら強く握り返してくれた。

 

 どうやらもう心配しなくても大丈夫なようだ。後は俺が直接アギトさんに連絡して待ち合わせ場所とか決めれば全ては上手く行く!

 

 と思った矢先

 

『……………………………………』

「ッ!?」

 

 真正面を向いた時、2人の女性から俺はガン見されていた。

 

 1人は人気アイドルパステルパレットに所属するふわふわピンク担当丸山彩、もう1人は同じアイドル事務所に所属しながら女優界でも有名な人、白鷺千聖の姿があった。

 

 ちなみに後ろには花音先輩もいたが2人の雰囲気が怖くておろおろしていた。

 

「ッ!…………………………」

 

 彼女達に話をしないと誤解されるだろう。しかし今はそんなことをしてる暇はない。

 

 俺は紗夜さんの手を強く握り歩き出す。

 

「行きましょう紗夜さん」

「で、でもお2人が」

「2人は今、関係(・・)ないでしょ?」

『……………………………………』

 

 千聖先輩は腕を組み、彩は頭が悪い人かのように口開けぽかーんとしていた。

 

 今はまだ事情が説明できない、終わったらすぐに説明をするから…今は見逃して欲しい。

 

「……なんだかシンに似てる人を見た気がするわ」

「え?千聖ちゃん、あれってシン君なんじゃ…」

「気のせいよ、それより花音?金閣寺見たかったのよね?」

「う、うん」

「なら行きましょう、私達はアイドルだから人目についたらまずいわ」

 

 千聖先輩は気を使ってくれたのか?

 

 全てが終わったらちゃんと話そう。

 

 はあ、正義の味方を目指したいがみんなにも返事をしないといけない…難しい立場に自分がいるのはわかってる。

 

 でも、それでも一度夢見たなら叶えたいだろ…?

 

「正義の味方ってやつにさ」

 

 タクシー乗り場に行くと先程のタクシードライバーがタバコを吸って辺りで休憩をしていた。

 

「お2人さんお戻りですかい、また乗ります?」

「はい、お願いします」

「了解ー次は何処へ行きます?」

「……そうですね、清水寺なんてどうです?」

「清水寺?もう営業時間終わりますよ?」

「だからいいんですよ」

「???」

 

 俺はタクシーに乗り携帯を取り出す。京都に向かう前に車内でとある場所に連絡をする。

 

 さあ、舞台は用意した。後は…アギトさんと紗夜さんの2人で話し合って欲しい。

 

 俺達ができるのはここまで、今の紗夜さんならアギトさんと話すこともできるだろう。

 

 でも貸切とか、俺も悔しいけど弦巻家の血筋を受け継いでるんだろうなー随分と金遣いが荒いこと

 

 まあ瞳の色が変わった時点で弦巻家か…どんな家庭だよ

 

「紗夜さん、頑張ってくださいね」

「……ここまでしてもらったんです、頑張り、ますよ…」

 

 アギトさんには清水寺に来るように、とだけ伝え俺と紗夜さんはタクシーにて清水寺に向かうのであった。

 

◆◆◆◆

 

 清水寺に着くももう営業時間外だ。

 

「だから言ったじゃないですかーもう終わってるって」

「大丈夫、貸し切ってるので」

「貸切!?はっ!?兄さん何者!?」

「そうだな…弦巻家って言えばわかってくれるかな?」

「ひっ!?」

 

 タクシードライバーさんは気づいたのかすごく驚いた反応をしていた。京都でも知られてるとはやはり弦巻家ってのはそれほど大きい財閥なのか

 

「貸切って!わざわざ私のためにですか!」

「ええ、まあ安かったので…」

 

 こちとらお小遣いで1億円貰ってんだぞ?たった数百万とか安いものだ。それにそんだけの金で2人が仲直りできるのなら尚更

 

 あと自分のために使ってないからまあいいだろう。

 

 こころのこと言えねーや、やっぱり俺も俺だなぁー

 

「アギトさんもういるみたいですよ」

「ッ!」

 

 アギトさんから着いたと連絡が来たことを紗夜さんに報告する。一瞬驚くもすぐに首を振り、最後は両手で両頬を叩く

 

 清水寺の舞台に続く階段の前には先に到着していた日菜さん、そしてこころの姿があった。

 

「…………行ってきます」

「……はい、頑張ってください」

 

 紗夜さんは階段前に立っている日菜さんとこころの間を通り上に昇っていく、その後ろ姿を見たところ先程まで兄と会話することを拒んでいた彼女とは思えない背中

 

「ありがとね、シンくん」

「……いえ俺は普通のことをしただけですよ」

「普通?ううん違うわ、シンは誰にもできないことをしたのよ」

「誰でもできないは言いすぎだろ、こころだって紗夜さんとアギトさんを仲直りさせたくて急遽旅行を提案してたじゃないか」

「あたしは提案しただけ、でも実際に行動に出たのはシンよ…」

「だとしても俺は今日というこの日に動こうとはしなかった、きっかけを作ってくれたこころのおかげだよ」

「ッ!」

「うおーこころちゃんの照れ顔初めて見たかも!」

「き!きき気の所為だわ!気のせいよ!弟に照れるわけないわ!」

 

 俺もこころの照れ顔なんて初めて見たかもしれない。見たところ女の子らしいその顔にドキリとしたがすぐにいつものように話し出す。

 

「こころちゃんもう1回さっきの顔して!お願い!写真撮りたい!」

「い、いや!いやよ!そもそもシンに照れてないもの!」

「いやいや姉さんーあれは完全に照れててたよ」

「ッ〜!もう!なによなによ!早く上に行くわよ!」

 

 こころは恥ずかしくなったのか腕を可愛く振り回しスタスタと階段を昇っていく

 

 久しぶりに姉さんと呼んでからかってみたがスルーかい、完全に照れたと思われたことをからかれて気づいてなかったのかな

 

「……シン君とこころちゃんは仲良いんだね」

「どうでしょう、仲良くなったのは最近ですよ…もう俺は家族の誰かがいなくなってから後悔なんてしたくないので」

「だね、やっぱりそうだよね、家族は大切だよね…」

「……はい」

 

 母さんはもうこの世界にいない。どこを探してももういない。俺は母さんに何か恩返しができただろうか?

 

 いや、できてない、だからこそ俺はもう後悔したくない。今生きてる家族全員を俺は愛す。

 

 そしてそれ以外の人達も愛したい…でも人間というのは浮気や不倫には敏感だ。

 

 誰か一人しか愛せないなんて…なんて世界は小さいだろうか。

 

 それともこう考えてしまう俺がおかしいのだろうか…?

 

 俺は恐れている。誰か一人を愛したらどうなるのか、答えなかった相手がどうなるのか。

 

 多分俺はそれが怖くて答えれないんだ。答えたくてもそのことを考えて、怯えて、答えれない…。

 

「日菜さんは好きな人いますか?」

「んー?お姉ちゃんとお兄ちゃんかな?」

「……違いますよ、家族以外で」

「家族以外?パスパレのみんな!」

「いや異性で」

「異性?異性かーあんまり興味ないんだよねーあ、男性のファンのみんなとか?」

「……いいです、聞く相手が悪かったです」

「あ、シンくんって言った方がよかったのかな!」

「別にそういう意味で聞いたわけじゃないから!」

 

 日菜さんに聞くのはまずかったか、この人恋愛とかにあんまり興味なさそうだし…

 

 やっぱり自分のことは自分で解決させよう。

 

 今年だ、今年中に絶対決める。

 

 ひまり、彩、千聖先輩、蘭、沙綾…この5人に返事をして、俺は…!

 

「着いたよ」

「ッ!」

 

 気づいたら着いていた。清水寺の舞台の奥側、手すり付近で話す紗夜さんとアギトさんの姿がそこにはあった。

 

◆◆◆◆

 

 階段を一段一段登るごとに鼓動が早くなるのを感じる。

 

 氷川紗夜は今清水寺の階段を昇っていた。登る理由は実の兄と話をするため、一度縁を切ってしまった兄とよりを戻すために…。

 

「……紗夜」

「…………兄さん」

 

 兄を見つけた紗夜は兄さんと呼び、兄に近づく、そして謝ろうとした。

 

 話すべきことはある。だが先に謝らなければならない…兄に対して、気は動転していが確実に人殺しと言ってしまった、そのことを

 

「紗夜」

「……はい」

 

 アギトさんは振り返り、紗夜の顔を見て意を決したかと思えばとんでもないことを言い出した。

 

「…俺は人殺しだ」

「ち、違います!確かに私はそう言いました、でも兄さんはあの人を殺してなんかいません、だから…人殺しなんかじゃ…!」

「違うんだ、正義の話じゃない…俺はたくさん人を殺したんだ」

「殺した…?」

「……お嬢と出会う前、俺はな綺羅(・・)家の養子だったんだよ」

「ッ!?」

 

 アギトはあの正義との事件のあと、その強さを当時の綺羅家当主であった正義の父親が何故かアギトのことを気に入り養子として迎え入れた。

 

 もちろん氷川家の両親は全力で反対した。しかし綺羅家にかないっこなんかなかった。

 

 最終的に綺羅はアギトではなく紗夜、日菜の双子を貰うといいだしアギトが自ら養子になると発したのだ。

 

 それは2人を守るため、2人は離れ離れになってはいけない、そう判断したアギトは自分を犠牲にして紗夜達、可愛い双子の姉妹を守った。

 

 もとより連れていかれることはほぼ決まっていた。こうして綺羅家の養子となる人生を選んだ…。

 

 養子になったものの他県の金持ちが通う学校通わされたと思えば卒業したと同時に身につけたくもない暗殺術を強制的に学ばされた。

 

 もとより身体能力が高かったアギトはすぐに仕事の話がやってきて…人を1人殺めてしまった。

 

 1人殺すと、次に、またその次に…次第に命というものに興味がなくなり次第に感情も薄れていく

 

 昔妹に言われた言葉、人殺し…と、今はどうだろうか?自分はもう何人も殺してしまった。正真正銘誰もが認める人殺しなんだなと自覚してしまう。

 

 今の自分がどうな顔して妹達のところに行けばいい?自分には会う資格がない、ならばもう…このまま一度やってしまった罪を償うのではなく、重ねることでやり過ごすことにした。

 

 何人殺しただろうか?ある日アギトの元に弦巻家の双子の姉弟を殺害しろと命令が来た。

 

 もちろんその命令には従い、当時バカンスとしてハワイにいた弦巻家の双子の姉妹、弦巻こころと弦巻シンの命を狙おうとした。

 

 なんなくと弦巻家全員が泊まっているか別荘に侵入できたアギトはこころを殺害しようとした、が

 

 こころは目の前に現れたアギトに対してなんの恐怖を持つこともなく、家族と接するかのように暖かくアギトに話しかけていた。

 

「ねえあなた、そんなところから抜け出してあたしの黒服になってみない?」

「え、」

「弟にね、最近専属のメイドが着いたの…ちょっと羨ましいからあたしも欲しいわ!」

「あなたの事情はよくわからないけどあたしがあなたを笑顔にするわ!だって、あなた誰かに助けてもらいたいって顔してるもの!」

「ッ!」

 

 こうしてアギトはその言葉あっさり受けいれ弦巻家の、こころ専属の黒服になった。

 

 そこからは罪償うかのようにこころに優しく接して、人助けも何度かしたこともある。

 

 でも…それでも妹達に会う気にはなれなかった…。

 

「今でも日菜と話してる時に俺は話していいのかって不安になる……紗夜の反応こそが正しかったんだ」

「シンには気にしてないような素振りを見せてたけどさ…やっぱり不安になるよな」

「私は、私は兄さんのことを人殺しと言ってしまった、だからそれに負い目を感じて兄さんとは他人のフリをしようって思ってたんです」

 

 紗夜がアギトから距離を置いていた理由、それは自分をアギトが妹として認めてくれないと思ったからだ。

 

 なんせ人殺しと言ってしまった。なら?そんな妹を妹と兄は認めてくれるだろうか?

 

「あの時は本当にごめんなさい、謝っても許されることじゃないけど…ごめんなさい!」

「俺の方こそ悪かった、あの後色々あったんじゃないか?」

「……いえ、特に何も、初めの週は騒いでましたがすぐに収まりましたよ」

「…………そうか」

『…………………………………………』

 

 お互い気まずいのか終始無言な時間が続く、それに耐えかねたのか言葉を発したのは…

 

『あの!ッ!?』

 

 まさか2人同時に声を出す。やはり兄妹なんだろうか、妙に話すタイミング似てしまったようだ。

 

「あのさ紗夜」

「……はい、兄さん」

「こんな人殺しのどうしようもない兄貴だけどさぁ…前みたいに、とは言わない…けど!もう一度、お前らを愛してもいいか…?」

「…………もちろんですよ、だって…紗夜(・・)は兄さんが大好きなんですから…!」

 

 紗夜はそう言うとアギトの胸に飛びつき、子供のように大きな声で泣き出す。自分のことを紗夜と呼んだのは昔の自分がそうだったからだろう。

 

 今この瞬間、抱き合っている2人が幼い頃のアギトと紗夜に見えてしまったのは気のせいだろうか…?

 

 京都の夕焼け空、その下には数年ぶりに兄妹同士で抱き合う男女のペアが1つ

 

 それを優しく見守るようにシン達は遠くから眺めていた。

 

「………………はっ」

「どうしたこころ?」

「あたし、わかったわ」

「んー?」

 

 急にどうしたんだ?こころのやつ…。

 

「日菜とアギトが仲良くしてたらあたし…心がきゅって苦しくなるの」

「……言ってたな」

「それは紗夜だけ仲良くなかったからだと思ってたわ」

「でも違ったの、紗夜とアギトが抱き合ってるところを見ても心が苦しいの…!」

「……何が言いたいんだ?」

 

 こころは数秒目を閉じ、自分に何かを言い聞かせこくこくと頷き出す。

 

「シン、あたしはアギトが好き…、ううん、大好きなのよ!」

「ッ!?」

「アギトが他の女の子と仲良くしてるところを見て心が苦しくなってたのよ…」

「それってもう好きってことじゃない?現に今あたし、口に出してわかったけど本当にアギトのことが大好きなのよ!」

「え、ちょ、こころちゃんいきなり何言ってるの?」

「この気持ち伝えないと!」

「待てこころ!」

「ん?」

 

 今にも突撃しそうなこころの腕をつかみその場に止めさせる。

 

「今は兄妹の時間だ…邪魔しちゃダメだろ?」

「うぅ、そうね…家族は大切にしないといけないものね」

「アタシはいいよね!ちょっと混ざりに行ってくる!」

「え、ちょっと!?」

 

 って、日菜さんもアギトさんの妹、確かに兄妹だ…なら邪魔もあるか、兄妹なら合流しても問題ないもんな

 

「……ねえシン」

「ッ!な、なんだ、こころっ…!」

 

 こころのやつが急に手を握ってきたもんだから動揺してしまう。少し声が裏返ってしまった。

 

「……お母様が昔言ってたの、アギトは幸せにならないといけないって」

「過去に酷いこと、辛いことが沢山あったのに救われないのは可哀想だわって…確かにね、アギトは神様に謝っても許されないことをしてきたわ」

「でもね、あたし思うの!あたしもその罪を背負ってあげられるならアギトは助かるんじゃないかって!」

「……あたしはどんなことがあっても生涯、アギトと生きるって決めたわ」

「……………………そ、うか」

 

 アギトさんの罪は決して許されない…それはそうだ、なんせ人の命を奪っている…例え神様でも許すことは無い。

 

 そんな人と生涯共に過ごすと言い出すこころを俺は素直に尊敬した。

 

 だってそうだろ?罪人の罪を背負って一緒に歩く、なんて…俺でも少しは躊躇してしまうぞ。

 

「(正義の味方ってのは本当に大変だな)」

 

 言うなればこころはアギトさんだけの正義の味方、ってところか?

 

 なにそれ、カッコイイじゃん、流石俺の姉、やっぱりこころには叶わないな

 

「俺も頑張るからこころも頑張ってくれ」

「……ええ!任せてちょうだい♪」

 

 京都の営業時間外の清水寺には仲睦まじい様子の姉弟と兄妹の姿があったのであった。

 




氷川兄妹編完結です。アギトさんの阿木津って苗字なのですがシンの母親が付けてくれた苗字です。戸籍とかは簡単にいじれるので、この人達はね笑笑

次回はあの人達に事情説明しないとシン君がやばいのでその話を!その後は約束(デート)して最終章かな。

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