光の女神 (うどん麺)
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プロローグ 終焉、転移

 

 

 

俺は転生をした。

 

いきなり何を言っているんだ?と思うかもしれないが、したんだ。それが紛れもない事実。

 

しかし、転生した先が最悪だった。2110年。未来の日本に産まれた俺は河野観月(こうのみつき)と言うらしい。

 

それは別にいいのだ。ただ、未来に転生しただけと言うならば前世よりも暮らしは良くなると思っていた。その通り、確かに暮らしはよくなった。ただ、それは俺が富裕層と言われる階級に産まれたからであった。

 

それに、既に地球は有毒な空気で覆われており、専用のマスクをつけていなければまともに外にも出れない最悪な未来であった。

 

ここでだ。俺は気づいてしまった。ここが、オーバーロードの世界だと。

 

一瞬は歓喜した。そう。ほんの一時期だけは。しかし、俺は貧困層の暮らしを、いや、労働環境を見てしまった。

 

それを一言で表すなら、奴隷。それが一番相応しいと思えるような労働環境だった。俺は吐き気がした。

 

俺の生きていた世界ならば、ここまでは酷くない。それこそ、ブラック企業と呼ばれるような会社でさえ、ここよりは数倍もマシに思える。

 

しかし、やはり富裕層に産まれたが故の使命だろう。やはり、俺は人を扱う立場の経営者となった。そう、父親の後を継いだのだ。その時俺は20歳。つまり、2130年。その時、『ユグドラシル』は最盛期を迎えていた。勿論、俺もやっていた。自分の心を癒すために。

 

もう、オーバーロードの世界だとかそんなのはどうでも良くなっていた。ただ、ひたすらにこの地獄のような世界から逃げたくて、ゲームにのめり込んでいった。

 

そんな俺を父親は可愛いがってくれた。俺が不安にならないように最大限のサポートをしてくれた。俺の手腕もあってか、父親のサポートもあり、俺の会社は日本でも有数のものになった。何故?それはこの世界で食料を生産したから。この、死の大地では植物は育たないが、専用の外界から隔離した栽培施設で育てたそれは、より良い食を求める人々に瞬く間に広まり、それは世界に及んだ。つまりはそう言うことだ。人間は食べ物には言うことを聞く。

 

半ば逃避するようにゲームに入り込んだ俺は、ゲームでは女のアバターを使った。何故?それは、現実と切り離す為。少なくとも、違う世界であると自身が認識するため。

 

だから、金もつぎ込んだ。幸い、金なら腐るほどある。何せ、社長だ。それも大企業の。だからだろう。俺の心には不思議と余裕があった。

 

だって、父親も母親も、こんな俺をとても愛してくれたから。それだけで俺の心は支えられた。だから、ゲームに安心してのめり込めた。

 

そうして、所謂廃プレイヤーと呼ばれる、最初期からプレイするプレイヤーとなった俺のメイン種族は“女神”。この種族に至るまで様々な苦労があった。

 

人間種から初め、下級天使に転生し、更にそこから熾天使(セラフ)へと階級を上げた。この階級上げはとても苦労した。それこそ、最上位に至るまでにゲームを始めてから丸三年もかかった。これを、たった三年と取るか、三年もと取るか人により別れるだろう。しかし、このあと女神に転生するのが一番大変だった。

 

 

その条件、『七罪の魔王』の内、どれか一体の単騎討伐。

 

これが無茶苦茶だった。俺は原作の設定でこれらがワールドエネミーだと知っている。だから、これの単騎討伐がいかに無謀か理解している。今まで、俺が知る限りワールドエネミーは討伐されていない。

 

当初、女神への転生フラグを知った俺は舞い上がった。いや、正確には魂の昇華という設定だが。

 

だからこそ、俺はそのワールドエネミーを倒すために最大限準備と努力をした。

 

そのワールドエネミーと戦うに際して、一番幸運だったのは俺の主な職業(クラス)が信仰系で、相手の弱点だった事だろう。

 

そして、成し遂げた。プレイヤースキルを要求されるのは勿論のこと、様々な回復アイテムやバフアイテム。このワールドエネミー戦だけで課金額が十万を越える。

 

しかし、俺は女神、『神』に至ったのだ。勿論、ゲーム内であるため偽りの神と言うのは確かだけど。

 

それでも、この女神と言う種族はぶっ壊れだった。先ず明らかに可笑しいのがこれの種族スキル。

 

『聖光の女神』このスキルだけで、信仰系の位階魔法と超位魔法の威力及び効果範囲に250%の補正。しかもパッシブだった。

 

他にも防御系だと『天界の加護』これは、相手の合計レベルに関わらず全ての物理的、魔法的ダメージを問わず30%カットする。それは防御貫通の攻撃も関係ない。これもパッシブである。

 

そして、俺のメイン職業は『神聖の神子』これも、取得条件が面倒だったがそれはここでは割愛する。その効果は主に信仰系超位魔法の回数制限撤廃。その代わり元々の上限回数以降の超位魔法発動は魔力を消費するが。それでも異常に強力だ。それに、私はガチガチの後方能力構成(ビルド)なのだ。勿論魔力量の桁が違う。多分、モモンガのそれより多いだろう。いや、確実に多いと言える。他にも神器装備や世界級アイテムの効果でとてつもないことになっている。

 

神器『女神の御衣(ミュイア・ナ・バンディア)』胴防具であるこれは、完全に布であるが、その防御力は神器の名に恥じない。

 

武器はワールドアイテムを使わなくもないが、強力過ぎるため神器を普段使いしている。その名は『煌々の聖光(グリッター・カナ・ネオーミ)』。素材は何とも分からない光の集合体。

 

 

 

 

他にも多数あるが、多すぎるのでここでは割愛しよう。

 

既に2138年。今年でユグドラシルは正式サービスを終了する。俺は最後までかつての仲間と共に造り上げたギルドに居る。果たして異世界に転移することが出来るかは分からないが、俺はその時を待つ。

 

 

 

 

そして、その時は─────────過ぎた。

 

 

 

 

 



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1話 現状把握

 

 

 

ふ、ふふ。俺は、いや、『私』は賭けに勝った。

 

確証はなかったけど、やはり、転移できたようだ。既に、サービスは終了した。そして、私はここに残っている。心臓と言う臓器は種族ゆえか無い。でも、なんと言えばいいかは分からないけど、私は生きている。そう感じることができる。

 

しかし、まさか本当に転移できるとは・・・・興味深いが、まずはこの世界が何時なのか知る必要がある。モモンガと同時期ならばそれで良し。もし、六大神や八欲王かそれ以前の時期ならばやはり協調はしにくい。描写がほとんど無いからどうなるのかも予測が出来ないから不安だ。

 

「ミカエル、居ますか?」

 

俺はロールプレイを忘れずに丁寧な口調でこのギルド、『トゥワイライト・オブ・ゴッズ(神々の黄昏)』の『セクト・エンジェル(七天使)』の一人、四大天使の一人、ミカエルを呼び寄せる。

 

そもそも、このギルドはアインズ・ウール・ゴウンとは正反対の天使及び神官系の種族のプレイヤーのみのギルドで、最盛期ではメンバーたったの12人で『十二聖天』と名乗り、ギルドランキングでは10位に入ったトップギルドだ。それゆえ、集めたワールドアイテムは10を越えて、かのアインズ・ウール・ゴウンに伍するギルドまでに隆盛した。

 

そして、ミカエルとはその時に作成した私の子供だ。勿論、女である。

 

「お呼びでしょうか、我が主よ。」

 

そうして私の目の前に現れたのは三対六枚の羽を腰辺りから生やし、黄金の髪を腰まで伸ばした絶世の美少女。

 

三対六枚の羽は最高位の天使である熾天使の証。羽は純白に黄金が降り掛かったように少し黄金味を帯びている。

 

彼女は私の前に膝間付く。

 

そんな彼女に私はあくまでも冷静に事実のみを告げる。

 

「ミカエル。現在、我が界使の殿はユグドラシルではない別の場所に転移しました。ので、ミカエルに命じます。配下の智天使(ケルビム)以下数体を連れて周囲五キロ以内の調査を命じます。尚、他の生命体と接触したら攻撃は禁止。相手から攻撃された場合は殺さず無力化を命じます。出来るならばここに連れてきて下さい。分かりましたか?」

 

「委細承知致しました。我が主よ。このミカエルが必ず為し遂げますので、どうか今しばらくお待ちを。」

 

「分かったわ。それでは行ってきなさい。」

 

「はい。」

 

 

そう言いミカエルは飛び去った。

 

一人残った私は他の天使を呼び寄せることにした。

 

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

 

界使の殿最上階神界の間。

 

そこにはセクト・エンジェルのミカエルを除く全てが集まっており、その何れも女性であった。

 

「皆、良く集まってくれました。現在、我が界使の殿は異界に転移しました。ので、ミカエルに周囲を探索してもらっています。ミカエルが居ないのはそう言う理由です。さて、それではここに呼んだ訳ですが・・・・・・先ずはラファエル。」

 

そう言うと私の前に出てきて膝間付くラファエル。彼女の長い蒼い髪が揺れる。

 

「ラファエルには諜報を命じます。各眷属をこの世界の町に放ち情報を集めて下さい。」

 

「はっ。了解した。我が主よ。」

 

そして彼女は下がる。

 

「次はウリエル。」

 

そう呼ぶと出てくるのは少女を連想させる背の低い熾天使。

 

「あなたにはこの城の認識阻害を担当してもらうわ。魔法は出来れば効果の永続するものを頼むわ。」

 

「分かりましたぁ。主様ぁ。」

 

「さて、次はガブリエルよ。」

 

出てきたのは眼鏡を掛けている一見お姉さんの雰囲気を放つ熾天使。

 

「ガブリエルには全天使の統括を頼むわ。巧く纏めてね。」

 

「分かりました。この私にお任せください。」

 

さて、とりあえずはこのくらいかな。

あとはミカエルが帰還するのを待つだけだ。

 

「さて、残るカマエル、ヨフィエル、ザドキエルは各守護領域に戻り最大限の警戒体制を敷いて欲しいわ。」

 

『はっ。お任せを。』

 

「それじゃあ各自持ち場について下さいね。」

 

そう言った直後に天使達はこの場から消失、『転移』した。

 

彼女たちにはこの界使の殿を自由に転移出来るように設定してあったのでそれが効力を発揮したのだろう。

 

そういえばプレイヤー自身にも設定が出来た筈だ。尤も、ゲーム内では完全にロールプレイの為の設定作りに過ぎないが、ここでは現実となる。

 

そして、私が設定した中にこんな1文がある。

 

 

『全ての光を集約した至高の女神。』と。他にも六対十二枚と言う量の羽も設定した。今は展開してないだけで、ゲーム時代も見た目の為に羽は四対八枚の羽を着けていた。

 

そして、アイテムボックスから手鏡を出して改めて私の姿を見る。

 

装備と相まって少しのエロティシズムを生んでいるプロポーションに、左右対称に整っているお人形のような顔。本物のエメラルドを嵌め込んだかのような瞳。そして、見るだけで目を細めてしまいそうな眩しい金髪。

 

全てが整っている黄金比の身体は正に女神そのもの。

 

さて、と深く玉座に腰を沈めミカエルを待つ。

 

その姿はやはり神の威光を地上に知らしめるような雰囲気であった。

 

 

 



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2話 現状把握2

 

 

 

暫く私はこの世界について、物思いに耽っていたらミカエルが調査を終えて帰ってきたようだ。

 

「只今帰還致しました。早速ですがご報告させていただきます。」

 

「頼んだわ。」

 

「先ず、周囲ですが少なくとも調査範囲の五キロ圏内は完全な草原でした。他に建造物もありません。ただ、私の索敵スキルでは更にその先に地上構造物を発見しましたが、生物が居るかは不明です。」

 

「続いて、生命体ですがこちらも五キロ以内では特筆した生物はおりません。居て小動物が少数でした。」

 

そうか・・・・・・と、なるとここはカッツェ平野の可能性が高いか。それに、その構造物というのがもしもナザリックだったならば今のところこちらから接触するのは控えたい。ま、やはり初手は情報収集に限る。

 

とは言え、これだけの距離なら直ぐに気付かれるだろうし、直ぐに向こうから接触してくるのは想像に難くない。その場合はこちらもそれ相応に対応するだけなのだが・・・・・・それよりもナザリックが転移してからの時間が気になる。もし、ナザリックが先に転移しているのなら少なくとも100年は経っている筈だ。もしかするともっと200年とか300年も後かも知れないが。私としては同時転移が一番望ましいのだけれど・・・・兎に角、ナザリックとの敵対は絶対に無しですね。未知の異世界なのだから敵対するよりは協力しないと。

 

「それで、他には?」

 

「はい。その、セバスと名乗るモンクと出合って、それで来て欲しいと頼まれたのですが・・・・流石に断りました。で、どちらにも創造主が居ることが分かりまして上奏した次第です。」

 

まさか!?もう会ったのか!!いや、いや、状況を考えればおかしくはない。それで、セバスか・・・・と言うことはナザリックも転移したばかりと考えるべきか?

 

「それで、相手の創造主の名前は分かったの?」

 

「いえ、そうかは分かりませんがアインズ・ウール・ゴウンと言ってはいました。」

 

ふむ、これで取り敢えず接触は確定だね。あとは、どちらから接触するかだけど、アポなんて取れやしないからな・・・・

 

「そうですか・・・・・・」

 

本当にどうしようか・・・・こちらから行って攻撃されるのはゴメンだからなぁ。まあ、モモンガも攻撃しないように言っている筈だが・・・・まあ、良い。こちらから行くとしますか。

 

「分かりました。こちらから接触しましょう。取り敢えずそのアインズ・ウール・ゴウンへの使者として下級天使にメッセージを届けさせますので用意してくださいね。」

 

「分かりました。直ぐに用意いたします。それでは失礼いたします。主よ。」

 

さて、私もモモンガ宛の書簡を書きますか・・・・

 

 

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

 

 

ナザリック地下大墳墓

 

 

 

「以上になります。」

 

そう言い終えるセバス。

 

「ご苦労だった、セバス。」

 

それにしても他のプレイヤーか・・・・やっぱり転移していたのか・・・・それにしても、ミカエル。

 

まさか、あのミカエルなのか?あのトゥワイライト・オブ・ゴッズ(神々の黄昏)の。

 

そうだな、やはり恐らく実力ではこちらより上だろうから、敵対は避けないとな。

 

「セバス、改めて命じる。そのミカエルと名乗った天使とその仲間への一切の敵対行動を禁止する。それを全ナザリック内部に通達せよ。もし、向こう側から接触があれば私の元まで直ぐに通すこと。」

 

「はい。モモンガ様。それでは私はこれにて。」

 

そうしてセバスは立ち去った。

 

「しかし、あの天使のギルドか・・・・確か、ギルド長だった“シエル”はワールドエネミーを単騎で倒した化け物だった筈だ。下手に敵対したらこちらが立ち直り不可能な打撃を被るかも知れない。さて、どうしたものか・・・・・」

 

 

モモンガもモモンガで悩んでいたようだった。

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

私はミカエルの元に転移して書簡を渡した。

 

「ではこれを天使に持たせて向こうに渡してきてください。もし、攻撃されたなら別に下級天使ですから構わないですが、最大限の警戒体制を敷くようにしておいてください。まあ、万が一ですから。」

 

「分かりました。主よ。」

 

そうして転移するミカエル。

 

「これで、上手く行くと良いのだけれどね・・・・」

 

シエルの呟いたその声は誰もいない空間に溶けるのだった。

 

 

 



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3話 接触



接触といいながらアインズさんは一切出てきません。




 

 

 

手紙はちゃんと届いただろうか?

 

 

今私の頭の中を占めているのはその思考ばかりだ。要するに、他のことを考えている余裕がない。

 

だからなのか、既に転移から1日が経とうと言う時間になっていることにも気付かなかった。

 

 

 

さて、今更ながらだけれど私は転生者なのだ。少なからずオーバーロードを知っている。ので、ある程度の出来事ならばまだ少しだが覚えている。とは言え既に数十年も経っているので微々たることしか覚えていないし時系列も曖昧だ。

 

しかし、どちらにしろ転移するという事実は分かっていたのだから私は望み薄ながらになるべく通貨や回復アイテムやスクロールを貯蓄するようにしていた。今としてはそれが役に立つと思いたい。少なくとも、お金に関してはこのままの消費で行っても数十年は持つ計算だが、早めにこの世界の通貨を手に入れる方法は確立しておきたいのが本音だ。と、言っても本当に転移したばかりだからそんなことを今心配しても意味がない。それよりも今はナザリックとの関係の構築が第一だ。

 

それと先ほど、偵察に向かわせたラファエルの眷属を通じて第一陣の報告を受けた。取り敢えずは一番近い町の名前とかだ。で、そこから分かったのが、ここが地図上ではバハルス帝国に属しているということ。確かナザリックはギリギリリ・エスティーゼ王国側の筈だ。それと、記憶している限りでは後にナザリックは帝国よりになる筈だからこちらとしても帝国に傾倒しようと思っている。別に国の後ろ楯があるのに関しては悪いことは無いと思うから。

 

まあ、別にそんなの無くても良いくらいに戦力はあるしね。それに、万が一なら“アレ”を出してしまえば大抵は直ぐに終わる。ただ、強すぎてこの世界が半分消えるかもだけど・・・・・・それだけがネックだね。まあ、私自身がこのギルドの最高戦力なのだけど、それは今は別にいい。

 

ああ、それと何でこんなにも情報収集が早いかと言うとね、ラファエルってこの時を見越して作成した天使だから、戦闘とかは60レベル並みだけど諜報とかに関したらそれこそ右に出るものは居ない。それに、その為に彼女の眷属も諜報に特化させてるんだしね。

 

他には今、この城に偽装してくれているウリエルは完全なサポート特化。味方に強力なバフや回復支援をしてくれる。敵にはデバフに回復阻害にのオンパレードだ。実は敵にすると一番めんどくさかったりする。特に、多対多の場合はその強さが一番発揮される。それほどに敵にしてみれば厄介で、味方にとっては頼もしい存在だ。

 

そして、全ての天使を統括しているガブリエルは智謀に秀でている。とは設定で、能力的には特殊性が高い。基本的に熾天使クラスの天使を複数同時に召喚したり、地形を操ったりとその戦い方は千変万化だ。それ故、私個人としては一番戦いたくはない相手だと思う。

 

そして、最後はミカエル。彼女は私が最も力を入れて創った。結果的に、その熾天使の名に相応しい圧倒的な火属性の火力を手に入れた。その最大火力は私ですらHPを一撃で半分を割られる威力だ。勿論、それは私が何もしてない場合だが、それでも種族スキルとかでダメージはかなり減衰させているのにも関わらずその威力なので中々侮れない。他にも回復も可能で、彼女自身も高い自動回復力を誇っている。

尤も私の場合はMPの自動回復力が異常になっている。それがどれだけかと言えば、職業スキルにより制限回数を魔力消費で超過できる超位魔法を一発撃てるようになるまでの時間がたったの10秒だ。その10秒という基準は私が使える超位魔法の中でも最も凶悪な効果を発揮する魔法で、その消費魔力は私の全魔力の5%にも及ぶ。

たったの5%?と思うかも知れないけど、ユグドラシルで“魔力お化け”と言われた私の魔力はレベル100になってからは尽きたことがない。それもこの異常なMP自動回復があることが大きい。

で、その最凶の超位魔法と言うのがユグドラシルの全プレイヤーを以てしてチートだと言わしめたもの。

 

その名も『終焉ノ神煌(エンドレス・グルーム)』。

 

内容は聞くに堪えないが、まあ、一言で言うならば世界を滅ぼす威力。とだけ。

 

多分、それを使ったらこの世界が半壊する。うん、冗談でも何でもないんだけど・・・・・

 

よっぽどの事がないと使わないよ。それに、使うにしてもちゃんと対策はある。別の魔法(超位魔法)と使えば多分被害は最小で抑えられる。それも物的だけ。人的は敵の事だから大丈夫。

 

 

さて、今頃モモンガはどうしてることやら・・・・

 

 

 

 

 

 

 



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4話 接触2

 

 

 

ナザリック地下大墳墓

 

 

ここ、第十階層の『玉座』には現在、ギルド長のモモンガを始め、第一~三階層守護者のシャルティア・ブラッドフォールン、第五階層守護者のコキュートス、第六階層守護者のアウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレ、第七階層守護者のデミウルゴス、守護者統括のアルベド、プレアデスのセバス・チャンを始め、ユリ・アルファ、ルプスレギナ・ベータ、ナーベラル・ガンマ、シズ・デルタ、ソリュシャン・イプシロン、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータと、ナザリックの主戦力が勢揃いだった。

 

そんな、迫力と圧力が頂点の中でモモンガがゆっくりと話し始めた。

 

 

 

「先程、セバスからあるものを受け取った。既にこの中には知っている者も居るかもしれないが、我々の他にここに転移してきた別のギルドから書簡が届いた。」

 

 

モモンガのその威厳たっぷり(魔王ロールプレイ)の発言にセバスを除いた守護者から驚きの声が漏れる。尤も、セバスも始めはたっぷりと驚いていたのだが、それを知るのは本人とモモンガの二人だけだ。

 

 

「うむ、驚くのも最もだが、ここにはそれ以上のことが書かれている。それは、もうひとつのギルド、『トゥワイライト・オブ・ゴッズ(神々の黄昏)』と言うのだが、そこの戦力は我がナザリックに匹敵する、あるいは上回っていると考えられる。」

 

 

守護者達はモモンガのその衝撃的な暴露に驚きの気配を隠そうともしない。特にアルベド等は強硬にそれを認めようとはしていないが・・・・・・

 

 

「落ち着け!!─────よし。皆のそのナザリックを思う気持ちはとても嬉しく思う。が、相手側の方の戦力がナザリックに伍するのもまた事実。しかも、相手が最上級天使、即ち熾天使クラスが少なくとも七体も居る。相手に回すのは得策ではない。それに、私としては同じく転移してきたプレイヤーとは事を構えたくないと思う。無論、相手が敵対するのならばその時はそれ相応の対応を取らせて貰うが・・・・この書簡を見た限りではそんなことはない。寧ろ我々にとっても歓迎すべき内容ではあった。そこで、皆に問いたい。相手側と義を結ぶか否か。」

 

モモンガのその意思表示に真っ先に反応を示したのは、ナザリックの頭脳でもあるデミウルゴス。

 

「意見具申宜しいでしょうか?」

 

「うむ、言ってみろ。」

 

「ありがとうございます。それでは、私としては義を結ぶのが宜しいかと思います。相手が熾天使なのも一応理由としては入りますが、現状、満足に情報も得ることが出来ません。それに、ナザリック内の資源にも限りが御座います。尤もこれはそうそう無くなることは無いですが。そして、相手方と義を結ぶに当たって有益なのは何よりも情報を共有できることです。もしかするとこちらの知り得ない情報を持っているやもしれません。私からは以上です。」

 

デミウルゴスからの説明を聞き終わると、モモンガは鷹揚に頷いた。

 

「うむ。他にはあるか?」

 

「では私からも。」

 

そう名乗りを上げたのはアルベドだった。

 

「私としても、デミウルゴスには賛成ですね。」

 

それを聞いて一番意外に思ったのはモモンガだった。何故なら、先程相手の戦力がこちらに匹敵すると言ったときに一番激昂したのがアルベドだったからだ。

 

「相手の戦力もそうですが、やはり情報が足りていません。転移したばかりで分かりませんが、相手も何かしら情報があるのではないでしょうか?こうして書簡を送ってくると言うことはそれなりに余裕のあるものだと考えます。」

 

「確かに。」

 

そう言い、モモンガはふと思い出す。それはユグドラシルでシエルがワールドエネミーの単騎討伐を成し遂げた事だった。その時のその情報は瞬く間にユグドラシルのみならず、その攻略サイトやネットに広まった。なんせ、ワールドエネミーの単騎討伐だ。あの、ワールドチャンピオンですら不可能といわしめるワールドエネミーの単騎討伐だ。それで、ニュースにならないわけがなかった。その時、モモンガはまだアインズ・ウール・ゴウン内でギルド武器作りに仲間と奔走していた。その合間にネット上にアップされた彼女の戦いを見て、魅了された。

 

その、プレイヤースキルの高さ。恐らく、アインズ・ウール・ゴウンに所属しているワールドチャンピオンのたっち・みーさんですら及ばないだろうと思えた。それと、その魔法一発一発の威力の高さ。超位魔法が炸裂する度にあのワールドエネミーが仰け反っている。AIですら仰け反るのだからその威力は想像を絶する。

 

兎に角、モモンガは心のどこかでこう思っていたのだ。

 

『シエルさんに会ってみたい。』

 

と。

 

 

「他には?」

 

 

と、モモンガは問いかけるが名乗りを上げるものは居ない。流石に、守護者トップ2が賛成に回ると意思決定になるらしい。それに、モモンガが義を結ぶと言っているのだ。

 

モモンガに対して絶対の忠誠を誓っている彼等が反対する筈もなかった。

 

これにより、ナザリックは全会一致で義を結ぶ事に決定したのだった。

 

 



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5話 接触3

 

 

 

私が書簡を送ってから大体1日位が過ぎた。

その私の元にはモモンガからお返しの書簡があった。

 

それには要約すると、このような内容だった。

 

次の朝、両ギルドの丁度中間地点で話をしよう。と。その際の条件としては、勿論のこと敵対は禁止。他に連れてこれるNPCは各1人のみ。他にも魔法の使用禁止等があった。

 

これで漸くナザリックと協力していけると思うととても嬉しく思えた。流石に、他にプレイヤーがいてそれと協力出来なかったら少し哀しい。なので、無事に話し合いが出来るようでとてもホッとしている

 

さて、勿論、連れていく1人は決めている。ミカエルだ。恐らくモモンガはアルベドを連れてくるだろうと思う。

 

そうと決まったのだから取り敢えずは対談に向けて準備することにした。

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

モモンガは書簡を送り終え一息ついていた。

 

転移してから守護者及びプレアデスからとてつもない忠誠心を向けられているモモンガは気苦労が絶えないのだ。何故なら、わざわざ上位者ロールをしなければならないので、いつも気を張り詰めて気が気でないのだ。それに、アンデッドになった影響で気持ちの昂りは直ぐに抑制されるので落ち着かない。こうして、自室で一人でベッドに寝転んでいるのが至福の一時だった。

 

 

「ふぅ~。やっぱり、守護者達の忠誠心が重すぎるんだよなぁ。あれじゃあ俺が死ねと言ったら絶対自害するんだろうなぁー。それよりも、シエルさんに会うの楽しみだな。やっぱり敵対しなくて良かった。俺じゃ、多分太刀打ちすら出来ないからなぁ。やっぱりワールドエネミーの単騎討伐なんてヤバすぎなんだよなぁ。」

 

 

と、このように普段は見られない姿のモモンガがみられる。今は愚痴とかをこぼしているが。

 

 

「うーん。やっぱりアルベドを連れていくか、デミウルゴスを連れていくか・・・・・・アルベドでいいかな?いや、やっぱりデミウルゴスか?うーん、やっぱり安心出来るデミウルゴスにするか。アルベドには悪いけど・・・・後で俺が行ってあげれば大丈夫かな?」

 

と、デミウルゴスを連れていく事に決めたようだった。

 

 

 

 

■■■■

 

 

 

 

そして、次の日の朝。ここ、カッツェ平野のあるところ。ナザリックと界使の殿の丁度中間地点では不自然な事に4つの純白の椅子と1つの長机が用意されており、そこには人為らざる者が4名集まっていた。

 

その4人とは勿論、シエル、ミカエル、モモンガ、デミウルゴスの4名である。ここには話し合いのために集まっていた。

 

 

「初めまして。私がアインズ・ウール・ゴウンギルド長のモモンガです。こっちは守護者のデミウルゴスです。」

 

「ご丁寧にどうも。私はトゥワイライト・オブ・ゴッズ(神々の黄昏)のギルド長のシエルです。こちらはセクト・エンジェル(七天使)の一人のミカエルです。」

 

「ありがとうございます。さて、こちらに来ていただいたと言うことは賛成ですね。」

 

モモンガが確認するようにシエルに問いかける。

 

「ええ、勿論です。現状私が確認している中で出会えたプレイヤーはあなただけです。モモンガさん。そして、プレイヤー同士で争えば被害が想像が付かないのは明白。それも、過去に10位以内に入っていた両ギルドが争えばそれはもう・・・・後は分かりますよね?」

 

「はい、はい。それはもう。ですから、このように対話で解決できてとても良かったですよ。さて、このような話しはここまでにして少しは雑談でもしましょう。私、こう見えてシエルさんに会うのを楽しみにしていたんですよ。」

 

モモンガのその発言はシエルに取っては意外なものだった。てっきり、シエルはモモンガはただ単に有名なだけの自分を知っているだけと思っていたからこのようにモモンガに興味を示されるのは想定していなかったのだ。尤も、有名さで言えばモモンガも負けていない。かの有名な1500人の対ナザリック連合。そしてそれを退けたナザリック。そのギルド長のモモンガともなればユグドラシルでも知らぬものは居ない。まあ、悪名高いが。

 

「へぇ!そうだったんですか!私も実はモモンガさんに会うのを楽しみにしていたんですよ!その、1500人の大部分を殲滅したモモンガさんに会ってみたかったんです。」

 

と、このように嬉々として会話の弾んでいる両者を見たミカエルとデミウルゴスはさぞ驚いた顔をしていた。両者ともここまで友好的に進むとは思っていなかったのだろう。だからか、二人に感化されたのか二人も話し始めた。

 

「デミウルゴスさん。私はあのように主が楽しそうに話すのは他の主と話す時だけだと思っていましたが・・・・デミウルゴスさんの主と話している主はとても楽しそうに見えます。」

 

「ええ、私も同じくですよ。ミカエルさん。我が至高のモモンガ様がここまで楽しそうに会話する所を見るのは他の至高の御方々と話している時以来ですよ。私としても、やはりこのように成功して良かったと思います。」

 

「同意します。やはり、協力していけると思いますね。両者がこのように友好的に出来ました。なのでこのまま上手くいきますよ。主を信じていますから。」

 

「ええ、同じく私もモモンガ様に忠誠を誓っておりますから。」

 

と、両名も中々ウマの合うようで会談はとても良い雰囲気で進むのだった。

 

 



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