ダークソウル3 ー落ちるバカ達ー (9933)
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灰の墓所

 灰の墓所

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

空を見ていた。

白い雲の向こう、普通なら青い空が広がっているものだろう……、だが見えている空に色はなく、色がない故にどんよりとした空だ。

そこまで感じて自分に意識があることに気付いた。

『目が覚めた』とは違う感覚の起床だった。

とりあえず重い体をお越してみる、なんと驚く事に私が寝ていたのは石の棺であった。

つまり私は死んでいたらしい。

直ぐに『死んでいた』という発想にたどり着いたこと、それらを含めて不思議と現状に違和感を感じていない。

私が寝ていた棺の近くには木が一本あり、さらに周りには墓が数えきれないほどある。

つまりはここは墓所だ。

とりあえず、これ以上ここで得られる情報は無さそうなので、離れることにした。

少し歩けば、黒のボロを着た人が見えた。

「もしもし」

ここはどこですか?そう聞こうと思ったが、いきなりナイフを振りかぶられ、下ろされる。

攻撃。

それを左手に持っていた円盾で受け、次に右手のハンドアックスで相手を屠った。

つまり相手は動かなくなった。

誰がやった?あ、私か。

攻撃を受けようとか、相手を殺そうとかそういった考えはなかった、だが体が反射的に動いていた。

「体が戦い方を覚えているんだ……」

2体目の暴漢も屠ってようやく理解した。いやもちろん話しかけたら襲われたからですよ?正当防衛っすよ?

「こっちの騎士は、正真正銘の死体かな、ん?何か持っている。」

水色の液体の入った瓶だ。

それは、久しぶりに見た色だ。綺麗な明るい水色、宝の様に思えた。

「綺麗…」

死体から人の物を剥ぎ取る事に抵抗はなかった、死体と一緒に転がしておくより、私が持っていた方が価値があるのだから。

瓶を仕舞おうと布袋を開けば、既に一本瓶があった。

私はこれを、この太陽色の液体の入った瓶を知っている。

エスト瓶、傷付いた体を癒せる不死人の宝。

はて?

私が、これを持っていると言うことは、私は不死というものらしい?

試しに腕でも切り落としてみれば、確信に変わりそうだが、どうなるか分からないので止めておいた。

「なにはともあれ宝が二つに増えたのだ、良いことだ。

それは良い。だが一向に現在位置が分からないのは問題だ…。」

現状と今まで思い出してみよう。

・死んでいた私は、墓所で蘇った。

・暴漢どもを屠りながら、道らしきものを進んだ。

・崖沿いを進んでたら、『篝火』を見付けたので休んでみた。

そして現状は、前方の坂を降っていけば広場?らしきものがあり、さらにその先には建物が見える。

後方には城が見える。随分と大きく高い城だ、見上げてると首が痛くなってくる。

残念ながら城への道は無く、前の坂を降るしかないらしい。

広場は広く明るかった。

いやさっきまでが暗かったのだ、高く積まれた棺や岩が、空の光を遮りなおかつ圧迫感を出していた。

ここには、遮るものが無い分明るく感じられる、が、やはり墓所の一部であるらしく奥に積み上げられている棺等が見える。

いやてか、明らかに人間様のサイズじゃないやたらと大きな棺も見えるのが不気味であった。

「それでもさっきまでの場所に比べたら幾分も増しだよね。

広い!明るい!あれが無ければ踊ってしまいたいぐらいに…」

あれ。

広場のど真ん中で片ひざを付いている大きな鎧。

右手には斧槍、左胸に剣が刺さっている。

最初は、触らぬ神に祟りなしと、無視して進もうとしたのだが、先に進む道の扉が開かなかったのだ!くそが!

来た道を戻った所で他に続いている道を見付けられるわけもなさそうなので、進むしかなく、だが扉が開かなくえーと?

……あまり考えたくはなかったが、あれな鎧君に接触するしかないようだ。

とりあえず、刺さっている剣を抜いてみよう。

案外、良い鎧君で「剣を抜いてくれたお礼に扉を開けてあげるヨロイー」とかいう展開になるかもしれん。なったらいいな。なれ。

もし、戦うことになったなら、これまでの暴漢どもとは違い一筋縄ではいかないだろう。

右手に火を起こす。

「呪術の火」

呪術とは、火を使った術。敵も己も焼いてしまう危険な術、だが故に協力な攻撃手段。

これで戦う準備は整った、いざ鎧君に刺さった剣を抜いてみる。

……

抜いた剣が灰となって消えたんですけど……なに怖い。

ガタ。

鎧君が動き出した。

あー、斧槍を抜き、あー…、こちらに振りかぶってきますね……。

やっぱりか駄目か!

「ひい!?」

横にローリング!初撃はかわした!

斧槍が地面の石タイルを砕いている。明らかに人が受けて良い威力ではない。

距離を取り手の火を投げつける。

呪術「火球」、飛んだ火の球は、鎧君に当たり弾ける。

火は鎧を焼き、熱は中の肉を焼いていく。

しっかり効いているらしく、よろける鎧君であったが、すぐさま体勢を整え、こちらに走ってくる。

私の2倍はある大きさの癖に、軽快に走ってくるため一瞬で距離を詰められる。

当然、こちらも近寄らせまいと二球目を投げつけている、当たる。

鎧君は、それを想定していた様で左手で受ける。弾け鎧を焼いていくが今度は止まらず突進してくる。

呪術、効果はあるが決定打にはならない!駄目じゃん!

こちらに向かって放たれる斧槍の刺しが目の前に迫った。

私は恐怖で目をつぶったつもりだったが、実際体は思考とは別で動き、攻撃から目をそらさず計り、

ーー左手の円盾で弾いた。

斧槍はあらぬ方向へ弾き上がり、鎧君は大きく体勢を崩した。

次の動きには思考が追い付いてきた。

「火が決定打にならないならこれはどうかな鎧君!」

鎧の間、腹部に向かって全力でハンドアックスを打ち込んだ。

それは、避けることも受け流すことも出来ない鎧君の腹に深々と突き刺さった、誰がどう見ても致命傷だろう。

ハンドアックスを抜き、一息。

「こ、怖かった!だが私はやった!」

とりあえず空に向かって叫んだ。いや本当に怖かったしでも嬉しかった、勝利の雄叫びというやつだ、何でも良いから叫びたかっただけだ。

ガタッヅルヅル

あ、やだ鎧君の方から音がするぞ。

 

 

数分後。

開かなかった扉を押して開ける私がいる。

正直駄目かと思った。

鎧君から『黒い膿みたいな何か』が溢れ、上半身が何倍にも膨れ上がったような『別の何か』なって彼は再び襲ってきた。

正直死んだと思った。

幸い、以前ほど軽快に走ってくるなんて事はなく、距離を保ちながら火球で焼きまくった。

焼いては逃げ、焼いては逃げ、たまに飛んで来るので回避してハンドアックスで切りつけまた逃げた。逃げまくった。

1つわかった事がある。

一度 『黒い膿みたいな何か』に吹き飛ばされた事があった。この時は、エスト瓶を飲み傷を癒すことで解決できた、これは分かっていた事だ。

次に、呪術を使い続けると意識がぼんやりしてくるとでも言えば良いのだろうか?呪術を使うための集中力が削れていくのだ。

正直やばいと思った、呪術が使えなくなれば確実に押し負ける。

「どうにかしなければ、このまま負ける!」

何かないかと布袋に手を突っ込んだ結果、ひんやりとした感触が返ってきた。エスト瓶?違う。そういえば、効果不明の瓶があった!

一か八か、水色の瓶を飲んだ。

それは冷たく心地よく、体の熱と共に意識に掛かっていた靄を取り払った。

理解できた。これは集中力を回復するもう1つの『宝』なのだと。

そんなこんなで辛うじて勝利した私は、いつの間にやら手元にあった剣、鎧君に刺さっていた螺旋の剣を戦利品とし扉をくぐったのだ。

ついに、広場の先に見えていた建物の入り口にへとたどり着いた。

 

 

 



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