個性?こう見えて『百々目鬼』なんです。 (れれれ)
しおりを挟む

第一幕 僕の楽しい入学試験


はい、この作品には以下の成分が含まれております。

キャラ崩壊
未熟者による駄文
ノリとテンションでゴリ押し
ヒャッハー!!!

それでも良いよ!というお優しい方、ありがとうございます。
許せる方のみお読み頂けると幸いです、はい。


……雄英高校、ヒーロー科の入学試験当日。

 

中学校と比べて遥かに大きな校舎、全国から集まった多数の受験生たち。

 

その光景を前に、僕はただ立っていた。

 

 

 

 

さて、まずは自己紹介でもしようか。

 

僕の名前は目頭 百鬼(めがしら ひゃっき)

個性は『百々目鬼』。内容は『体中に特殊な目が百個出る』というもの。

特殊な目は厨二病っぽく言えば魔眼。見るだけで石化もできるし、透視、千里眼、見た瞬間相手消滅とかもできる。

今少し実践してみると……

 

 

《なにあの子……包帯で目まで隠してる、あれで前見えてるのかな?》

 

《ちょっと薄汚いように見えるの私だけ?もし受かってたら、ああいう奴と一緒のクラスなのは嫌だな〜》

 

 

今使ったのが目を見た相手の心が見える《心理眼》。ちょっと近くの女子に使わせてもらいました。

 

 

って、これ完全に僕の事だよね!?

 

包帯を全身グルグル巻きにしてるのって僕ぐらいだし……

 

やっぱり心の中って他人に容赦無いから傷付く。

 

 

 

ちなみに女子が目の前見えてるのか〜とか言ってるけど、《心眼》という目で見えないものを感じ取る魔眼でバッチリ見えております。《心理眼》とは別物だよ。

 

 

 

あと包帯が薄汚いとか言わないで……全身目玉だらけで気持ち悪いから包帯で隠してるだけだから……

 

あれ、暑くも無いのに全身の目から汗が……

 

 

 

 

 

 

 

……うん、そろそろ時間も押してるし、さっさと会場に行こうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……はい、筆記試験は終わり、現在ジャージに着替えて実技試験を受けようとしておりま〜す。

 

え?プレゼント・マイクの説明?プレゼント・マイクのヘッドフォンに『HAGE』と書かれていたせいで集中できなかった。

何だよハゲって。

 

まあ大体の説明は聞いていたので大丈夫っしょ。

 

 

 

『ハイスタートー!』

 

 

あ、プレゼント・マイクの合図だ。

 

……っていきなりすぎねぇか!?周りぽかんとしてっぞ!?

 

周りの皆は口を開けてただ立ってる。

 

…かと思ったら一斉に飛び出していった。

 

お前ら仲良いな……

 

 

 

少し出遅れてしまったが、僕も急いで仮装敵に向かう……訳無いに決まってるよね!!

 

すぐに路地裏に入り、ビルの間を壁キックで登っていく。

 

 

 

 

「……視界良好、準備万端」

 

ビルの屋上に出て、周りを見渡す。

 

お、仮装敵がよく見える。

まずはあの3ポイントのロボからにしよう。

 

人間の通常位置にある目に巻かれた包帯をずらし、仮装敵を直視する。

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、仮装敵は鉄の塊ではなく石像と化していた。

 

 

 

 

 

説明しよう!!僕の個性は体中に目ができるが、目のできる位置は自由に設定可能なのだ!!

故に!先程まで《心眼》だった目の位置に!《石化の魔眼》を出すことが可能なのだぁぁ!!!

 

 

ちなみに包帯を取って今の光景を周りから見た場合、目玉が閉じたらいつのまにか位置が変わってる状態なので目玉が這いずり回ってるということは無い。

 

いややろうと思えばできるけど、瞬きをずっと我慢してるような感覚になるから嫌だ。

 

 

 

さてさて、この直視した物を石に変えられる《石化の魔眼》で仮装敵をどんどん石像へと変えていく。

 

 

一応《滅却の魔眼》という見た瞬間塵と化す魔眼はあるけど、滅茶苦茶調整が難しい。

 

調整ちょっとでも間違えると視界に入った建物ごと消える。

 

最悪の場合視界に入った人間も消える。

 

 

ハイ、一歩でも間違えると豚箱にブチ込められますねー!

 

という事で使わない。

 

 

 

一方《石化の魔眼》は、生物は石化できない。けど一度石化しても戻す事は可能。放置してたら石のままだけど。

 

でも靴とか服とか石にされたら、常人だったら流石に動けないと思うんだよね。

 

これから重宝しそうだなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイ石化石化ぁぁ!!!

 

そこの1ポイントも石化ぁぁぁ!!

 

今視界に入った3ポイント君も石化ぁ!!!

 

さっきギミックで出たそこの0ポイントのロボもなんか邪魔だから石化ぁぁ!!!

 

 

 

ヒャッハーー!!!石像のバーゲンセールだぁぁぁぁ!!!!

 

最ッッ高にハイって奴だぜぇぇぇぇ!!!!!

 

 

 

 

『終了〜!!!』

 

 

 

石化石化石化……

 

 

 

 

 

 

 

……おっと、いつのまにかテンションが限界突破を果たしてしまっていた。

 

えっと?僕何体石化したんだっけ?全然覚えてないんですけど?

 

 

 

 

まあいっか。どうせ通知とかで結果わかるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜どこかのモブ視点〜

 

 

この雄英高校の実技試験、正直俺には楽勝だと思った。

 

なんて言ったって俺の個性は『怪力』。あんな鉄屑すぐにスクラップしてやる!!!

 

 

……と思っていたんだが、俺含めて大勢の受験者がこの謎の現象を体験していた。

 

 

いきなり試験を始めやがったプレゼント・マイクにイラつきながらも、俺は近くにいた3ポイントの仮装敵に襲いかかろうとしていた。

 

しかし殴ろうとした瞬間、仮装敵が石になってやがったんだ!!

 

仮装敵を行動不能にすればポイントは入る、つまりこの石になった仮装敵をぶっ壊しても意味ねェって事だ!!!

 

 

それだけじゃあねェ!!周りの仮装敵もドンドン石像になっていく!!

 

つまり俺、全然ポイント取れてねェ!

 

ダッシュだダッシュ!!石になる前に仮装敵を殴らねぇと!

 

 

 

 

……結局俺はあまり仮装敵を倒せず、実技試験は失敗に終わってしまった。

 

あの石化の正体が何だか知らんが、一言だけ言わせてほしい。

 

 

 

 

 

 

少しは自重しろ!!!

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二幕 夢は所詮夢でしか無かったんや

ピピピッ…ピピピッ……

 

目覚まし時計を止め、ベットから這い出る。

 

 

 

……お腹空いたな。

 

 

現在日曜の午前6時、今日は多分雄英高校から試験の結果が届く日。

 

ぶっちゃけドキドキし過ぎて寝不足気味。

 

 

後から実技試験中にポイントを数えなかった事に後悔したが、まあ個性のデメリットの所為なので諦めた。

 

 

あ、デメリットは何故か個性を使っているとテンションがハイになる。

うん、デメリットとしてはちょっと微妙だな。

 

ただあまり使い過ぎると完全にヤバい奴になりそうなので気をつけた方がいい、じゃないとキャラ崩壊しすぎてしまう。

 

適当に食パンにチーズ乗せて焼いて食べる。手抜きの朝食になるが美味しいので問題無い。

 

 

 

 

 

 

 

……ハイ、ご馳走さまでした。

 

取り敢えず着替えて郵便受けを見に行きましょうか。

 

 

あ、ちなみに今の僕は包帯を巻いていない、つまり腕や脚に目玉が付いているのが見えている状態。

 

ちゃんと全部の目に能力オン/オフ機能は付いてるから、包帯取った瞬間世界が〜みたいな厨二的問題は全然無いよ。

 

まあそんな説明をしたばっかりだけど、外に出るし仕方ないので包帯グルグル巻き状態になり郵便受けを確認しにいく。

 

 

そしたら案の定ありましたよ、何かパンパンに膨らんでる『雄英高等学校』と書かれた手紙が。

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻って手紙を開けてみると、中に入っていたのは紙ではなく何らかの機械。

 

流石雄英、手紙一つだけでも機械を使うとは。

 

 

機械の電源っぽいボタンを押し、机の上に置く。

 

すると……

 

 

私が投影された!!

 

 

……No.1ヒーロー、オールマイトが映っていた。

 

『さて、私が何で映っているのかって?それは私が雄英に勤める事になってね……

……ってなんだい!?また巻きでって言いたいの!?』

 

…なんかオールマイトが急かされてる。

 

正直人が慌てふためいてる姿って面白いんだよね、いいぞもっとやれ。

 

『あー、目頭少年、手っ取り早く行こう。君は合格だ!!

 

筆記試験ではミスも少なく好成績だったぞ!

 

実技試験では 敵P(ヴィランポイント) は58P(ポイント)!!

しかしポイントは敵P(ヴィランポイント)だけでは無い!

 

完全審査制の救助活動P(レスキューポイント)で17P(ポイント)

 

合計で75P(ポイント)!入試2位の次席だ!』

 

 

『最後に……あの仮装敵をどんどん石像へと変えていった時は度肝を抜かれたぞ!ではまた雄英で会おう!!』

 

 

 

 

……よし、合格!!

 

多少自信はあったが、まさか次席で合格できるとは思わなかった。

 

今夜は赤飯……いや寿司食べよう、回らない方を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……時はあっという間に過ぎて、現在雄英高校入学の日である。

 

中学の卒業式は余り感動はしなかった。思い入れも何も無いし。

 

というか冷たい視線がちょっとキツかった。

 

 

 

…新しい制服に着替えて飼っている猫を撫でる。

 

 

「……行ってきます」

 

家には僕と猫しかいないが、やはり癖で言ってしまう。

 

僕はまだ見ぬクラスメイトや授業に思いを弾ませながら、雄英高校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「机に足を掛けるな!雄英の先輩方や製作者に申し訳ないと思わないのか!?」

 

「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」

 

 

……うん、夢を見ていた時期が僕にもありました。

 

バリアフリーの無茶苦茶デカイ扉を開けたら、ツリ目爆発頭のヤンキーとカクカク真面目眼鏡が言い争っていた。

 

「ボ……俺は私立聡明中学校出身の、飯田 天哉だ」

 

「聡明〜〜〜!?クソエリートじゃねぇか、ブッ殺し甲斐がありそうだな」

 

「君ひどいな、本当にヒーロー志望か!?」

 

……というか早く終わってくれ、後ろのモジャモジャ頭君が悟ったような目してるし眼鏡が道塞いでるから席着けない。

 

 

あ、やっと眼鏡改め飯田君がこっちに気づいた。

 

 

「俺は聡明中学校出身の……」

 

「……聞いていたので自己紹介はいいです。あと道を開けてください」

 

「ハッ、俺としたことが、まさか話し込んで道を塞いでしまうとは……」

 

なんかブツブツ言っているが、やっと通れるようになったので席に着く。

 

席はチビグレープ頭と暴走ポニーテール女の間。

 

ただチビグレープ頭の目が腐ってやがる。これ絶対女子を品定めしてやがるよ……

控えめに言って死ね。

 

 

あ、そうこうしている内にほんわかしてる女の子が追加で入ってきた。

 

「あ!そのモサモサ頭は!!地味目の!!」

 

どうやらモジャモジャ頭君とは知り合いらしい。

 

冴えない顔してリア充かよ……

 

 

 

 

「……友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 

キーンコーンとチャイムが鳴ると、廊下から寝袋に入ったホームレスおじさんが。

 

「ここは……ヒーロー科だぞ」

 

ジュッと某10秒でエネルギーチャージのゼリーを僅か1秒で飲み干すと、教室に入り寝袋から出る。

 

……この教室まで寝袋に入った状態でどうやって来たのだろうか。

 

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

 

(((先生‼︎?)))

 

 

皆の心の中で驚きが合わさってる。

 

「担任の相澤 消太だ、よろしくね」

 

 

(((担任‼︎?)))

 

 

また合わさってる……

 

僕も多少は驚いたが、雄英は自由が売り文句なのでこういうのもアリだと思う。

 

何よりクズの目はしていない。

 

 

「早速だが、体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ」

 

寝袋から体操服を取り出してそう言う。

 

体操服で入学式を行う文化でもあるのか?

 

 

取り敢えず更衣室に行き、得意の早着替えで体操服に着替える。

 

包帯で目玉隠してるとはいえ包帯グルグル巻きも十分に気味悪いからな。

 

体操服は半袖なので結局包帯見えまくりだし余り意味は無いがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個性把握……テストォ!?

 

……グラウンドで執り行われたのは、入学式ではなく身体能力検査だった。

 

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間無いよ」

 

 

いや、入学式やガイダンスは結構大切だろ。

一応入学式が現在行われているのか《千里眼》で見ておくか……

 

 

あ、《千里眼》はお察しの通り千里先、つまり約4000㎞先まで見通せるという目だ。僕の左手首の下くらいの位置にある。

 

《千里眼》は視点も自由に変えられるので包帯の下から見ても問題無い。

 

 

……うん、入学式普通にやってますね。

 

同じヒーロー科のB組も入学式に参加してる。

 

千里眼じゃ音は分からないけど、A組の皆が入学式始まっても来なくて焦ってる事くらいはわかった。

 

相澤先生、何やってるんですか……

 

 

 

《千里眼》の効果をオフにし、視点を元に戻す。

 

「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだったか?」

 

「67m」

 

「じゃあ“個性”を使ってやってみろ、円から出なきゃ何したっていい」

 

そう言って相澤先生はボールをツリ目爆発頭のヤンキー……いや、爆豪君に投げ渡す。

 

 

「んじゃまぁ……死ねえ!!!

 

ボールは爆発と共に飛んでいき、遥か遠くへ飛んでいく。

 

 

(………………死ね?)

 

声を出しながらやると力が出しやすいと聞いたことがあるが、もうちょっと他の言葉はなかったのか……

 

ピッ!

 

相澤先生が持っているスマホのような物を見ると、705.2mという記録が表示されていた。

 

 

「なんだこれ!!すげー()()()()!!」

 

「705mってマジかよ!」

 

「“個性”思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!!」

 

 

 

「…………面白そう…か」

 

次の瞬間、相澤先生から威圧感を感じた。

 

 

「ヒーローになる為の三年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?

 

よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

 

「「はああああ!?」」

 

入学して初日で除籍処分。

 

流石に嘘だと思ったが、あの目は本気である。本気と書いてマジと読むレベルである。

 

ちゃんと《心理眼》で相澤先生の思考を除いたが、本当に見込みゼロの奴は即除籍するつもりである。

 

 

 

 

 

あと相澤先生、なんでこの状況で猫の事考えてるんですか。

 

なんで野良猫を撫でる算段を立ててるんですか。

 

 

いや確かに猫はいい、めっちゃ可愛いけども……!

 

あのつぶらな瞳や愛くるしい仕草、毛の触り心地に肉球の感触とか最高だけども……!

 

猫じゃらしと猫缶とマタタビは持ち歩いてるくらいには好きだけども……!!

 

 

 

相澤先生とは仲良くなれる気がした瞬間だった。

 

 

 

 

 

……っと、それは兎も角!

 

 

「最下位除籍って……!入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても……理不尽すぎる!!!」

 

「放課後マックで談笑したかったのならお生憎、これから三年間雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。

 

Plus Ultra (更に向こうへ)”さ、全力で乗り越えてこい」

 

 

 

 

僕の個性は選択肢が多い、最下位になりはしないだろう。

 

でも油断は禁物。悪く言えば器用貧乏に成りかねない個性、クラスメイトの個性が分からない以上全力で良い成績を取りに行かなければ。

 

 

 

 

 

 

 




主人公のプロフィール


目頭 百鬼(めがしら ひゃっき)

誕生日:10月10日

好きなもの:良い目、猫

容姿:ボサボサの黒髪、全身包帯グルグル巻き
包帯が巻かれていないの口と指先、腰辺りくらい
目の色は魔眼によって違うが、個性が発現する前は赤色だった


個性:『百々目鬼』

全身に合計102個の目がある。その内100個は特殊な目。通称魔眼。
残りの二つは生まれつきある何の特殊効果も持たない目。
目は体の何処へでも移動可能。しかし顔に最低4つ目がなきゃいけない〜などの数量制限がある。
魔眼を発動させ過ぎるとテンションがハイになる。更に酷使すると常識やら何やら抜けてエグい事になる。

性格:個性の所為でキャラが定まらないが割とノリで生きてる
通常時の一人称は僕で敬語、テンションハイの時の一人称は俺で常時笑顔になる
生き生きした目、透き通った目が好きの既にヤバい奴
逆に腐った目、クズの目を見ると潰したくなるくらい嫌い
魔眼を使わなくても相手の目を見ればなんとなく視線や感情が分かる


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三幕 ドキッ!最下位除籍の個性把握テスト!!

第一種目:50m走

 

 

50m走、中学の記録は確か6秒25だったかな……

 

爆豪君が爆風でスピードを上げている光景を見ながら、自分の記憶を掘り起こす。

 

 

現在の50m走最高記録は、飯田君の3秒04。

 

彼の個性はスピード特化らしいので当然といえば当然。

 

 

 

……おっと、爆豪君とモジャモジャ頭君が走り終わってる。走るの次だな。

 

 

隣には目が腐ってやがるグレープ野郎。コイツと走るのか……うん、絶対嫌だ。

 

 

え?駄々こねたって走らなきゃ駄目だから無駄だって?

 

 

それはどうかなぁ。

 

 

 

「位置について……」

 

顔にある包帯を少しずらす。

 

 

「よーい…」

 

 

ピー!という音が聞こえた次の瞬間、僕は既に計測ロボの前にいた。

 

 

 

 

「0秒02!!」

 

 

 

 

「……き、消えたぁぁ!!?」

 

「瞬間移動の個性でしょうか……」

 

「すげー!あの飯田のタイムを余裕で抜いたぞ!」

 

 

 

説明しよう!

 

今使用したのは瞬間移動の魔眼、長いので略して《瞬動眼》!

見える場所ならどこへでも瞬間移動可能!

ただし失敗すると壁の中や地中に出現してしまい、死にはしないが身動きが取れなくなるぞ!

 

 

え?50m走なんだから真面目に走れって?

 

知らんな!!相澤先生も何も言ってこないし、大丈夫だろ。

 

 

第二種目:握力測定

 

残念ながら個性は使用しなかった。

 

というか個性は発現してもあまり使わなかったから、ざっくりとした魔眼の内容なら分かるけど詳細までは知らないんだよな……

 

 

 

握力測定の最高記録は暴走ポニーテールさん。

 

 

万力を腕から出して使うだなんて、そんなの握力関係無いじゃないか!!

 

50m走に瞬間移動使ってぶっちぎった僕の言えたことじゃないけどね!!

 

 

 

第三種目:立ち幅跳び

 

 

助走をつけて跳んだ瞬間に《瞬動眼》で転移する。

 

 

 

……あ、言い忘れていたが、僕の個性『百々目鬼』にはもう一つ機能がある。

 

『魔眼合成』というものなのだが、これは魔眼の効果をくっつけるというもの。

例えばこの《瞬動眼》と《千里眼》を合わせれば半径千里内だったらどこへでも行けるようになるし、実技試験の時も《石化の魔眼》と《千里眼》を合わせてロボを石にしていた。

 

ただ、これを使うとテンションがハイになるのが早くなる。

その結果が入試での石化三昧である。

 

 

まあ短時間でやる分にはあまり問題は無いので、《瞬動眼》と《千里眼》を合成使用する。

 

転移先は《千里眼》で見える最大距離の千里先、約4000㎞先である。

 

 

この4000㎞という距離は言い換えると地球の一周の約十分の一、沖縄から北海道まで行って帰れるくらいの距離である。

 

つまり僕が転移したのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

……太平洋のど真ん中だ。

 

 

 

 

 

地面に付いてしまわないように上空に転移したけど、このままじゃ海にドボン。

 

しかしそうなる前にまた千里先に転移、また落ちる前に転移の繰り返しである。

 

 

『……目頭、もういい。戻ってこい』

 

何故か相澤先生の声が聞こえる。

 

 

どうやら雄英の体操服には指示が出しやすいように超小型の無線機が付いているらしく、着替えの時あのモジャモジャ頭君が興奮しながら説明してたな……

 

 

 

 

……っと、そんな場合じゃない。

 

丁度地球一周するし、《千里眼》でしっかり元の場所を見てから皆の前に転移する。

 

 

「うわ!!?急に出てきやがった!!」

 

「お前どこ行ってたんだよ!!!」

 

なんかクラスメイトがビビったり興奮してたりしてるけどスルー。

 

 

 

「目頭、お前どこ行ってた?」

 

「……世界一周してました」

 

 

 

「お前マジでどこ行ってたんだよ……!」

 

相澤先生の問いに答えただけなのに何故か一部のクラスメイトのツボにハマったようで、数人吹き出してる。

 

 

「それどのくらい続けれるか?」

 

「……全力でやれば半日です」

 

テンションがハイになっても無理矢理やればこんなもんだろう。

 

「なら測定はもういい」

 

 

相澤先生のスマホには測定不能の文字が。

 

 

「測定不能って、すげぇけど……!」

 

「待って、まだ世界一周の笑いが収まらない…!!」

そろそろ収まってくれないか。

 

 

第四種目:反復横跳び

 

《千里眼》で視点を上空に固定、自分は仁王立ちになり、後は《瞬動眼》で自分を左右に転移させまくる。

 

腐れグレープ野郎みたいに残像ができるほどじゃないが、中学の頃よりは出来てた。

 

 

第五種目:ソフトボール投げ

 

 

勿論個性を使います。

 

《瞬動眼》は自分だけ転移するだけではなく、視界に入った物だって転移できる。

 

ただ転移先の光景と転移させる物を同時に見なきゃいけないため、目が結構疲れる。

 

 

包帯をずらしてなんの効果も無い目を出し、ボールを直視。

 

それと同時に《千里眼》で遠くを見る。

 

ただ視界が二つになっている所為か《千里眼》であまり視界を遠くに飛ばせず、転移先は僅か1000㎞先になってしまった。

 

 

ピッ

 

相澤先生のスマホには1000.5㎞と表示された。

 

 

「ちょ、お前の記録単位おかしくね!?」

 

「ボール消えたけどどこ行ったの!!?」

 

 

おお、驚いてるねぇ。

 

投げた時と同じ要領で投げたボールを手元に戻す。

 

 

 

二投目も同じような記録だった。

 

 

あと、投げた後に爆豪君と紅白おめでた髪君に睨まれた。

 

僕が投げる前まで爆豪君の記録が一番だったから拗ねてるのかな?

 

紅白おめでた髪君は知らんけど。

 

 

その後ほんわか少女が∞という記録を叩き出し、モジャモジャ頭君が指を破裂させながらもやっと大記録を出した。

 

あの時のモジャモジャ頭君は中々いい目をしていたね、彼には是非とも雄英に残って欲しいものだ。

 

 

あとモジャモジャ頭君が個性発動させたら、爆豪君が「デクテメェ!!」と名前言ってたけど知り合いだったのか?

名前も分かったことだし、モジャモジャ頭君改めデク君と呼ばなければ。

 

 

 

第六種目:持久走

 

 

直線の時は転移、曲がる所は流石に転移でなんとかならなかったので普通に走った。

 

デク君、指痛そうにしながら走ってる……

 

 

第七種目:上体起こし

第八種目:長座体前屈

 

 

どちらも個性未使用。

 

まあどうしようもなかったので仕方がない。

 

 

最高記録は上体起こしが地味尻尾君。地味に凄かった。

 

長座体前屈はカエル少女。体めっちゃ柔らかかったね。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、これで個性把握テストは終了。

 

自分のでも中々の成績を出せたんじゃないかと思う。

 

問題の最下位除籍だが……相澤先生の目がデク君のソフトボール投げの時から若干生き生きしてる。

 

これはまさか……

 

 

 

あ、 総合得点の順位は2位。入試の時も2位だったし、1位になれない呪いでもかかってるのかな?

 

最下位はデク君。ソフトボール投げの時はいい目をしていたが、今は絶望したような目をしてる。

 

 

 

 

でもデク君?そんなに落ち込まなくてもいいと思うけど?

 

 

 

「ちなみに除籍はウソな」

 

 

ほら、相澤先生もこう言ってる。

 

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

「「「はーーーーーー!!!!??」」」

 

はい、驚きの大合唱。

 

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない……ちょっと考えればわかりますわ……」

 

暴走ポニーテールさんが呆れたように言うが、残念ながら最初のあの目は本気だった。

 

 

おそらくデク君に見込みを感じなかったら、相澤先生は容赦なく除籍にしていた。

 

ただデク君が可能性を見せたからこそこの話は無くなったのだろう。

 

 

もしもデク君がいい成績出してそこの腐れグレープ野郎が最下位だったら即除籍だったろうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、入学初日なのにも関わらずに最下位除籍の個性把握テストは終わった。

 

 

ちなみに僕は隙間時間に《千里眼》で入学式を見ていたよ。

 

スクリーンに内容が丁寧に纏められていて音が無くても十分にわかった。流石雄英。

 

 

まあこんな締まらない終わり方だけど、正直今日一日楽しかった。

 

 

明日は何が起こるかな……

 

 

 




THE・補足

魔眼の色

《心眼》:薄灰色
《心理眼》:淡いピンク
《石化の魔眼》:蛍光色イエロー
《千里眼》:透き通った水色
《瞬動眼》:透明感がある緑

『魔眼合成』を使うと、目の色は元となる魔眼の色が混ざった色合いになる。

例:《千里眼》+《瞬動眼》=透き通った青緑

《千里眼》+《石化の魔眼》=蛍光色グリーンなど

色合いが綺麗であれば綺麗なほど相性がいい。
汚い色だと魔眼の性能が下がる。
また魔眼は使い過ぎるとハイライトが無くなる。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四幕 試合なんてオマケみたいなものです

さて、あの最下位除籍の個性把握テストが終わった後帰宅し、何事も無く就寝。

今日から本格的に授業が始まる。

 

 

とは言っても午前中の授業は他の科や学校と同じような普通の授業。

 

正直先生の脳内覗けば答えなんてすぐ分かるし、個性を使わなくても余裕で覚えられる内容だったので窓の外ずっと眺めてた。

 

 

昼食は食堂でランチラッシュが作った絶品料理を一人寂しく食べた。

 

何故か料理がしょっぱく感じたのは気のせいだと信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして待ちに待った午後!ヒーロー基礎学!

 

皆もこの授業を心待ちにしていたのか、ソワソワしている人が多い。

 

かく言う自分もその一人なのだが。

 

 

 

「わーたーしーがー!」

 

廊下から聞き覚えのある声がする。

 

 

普通にドアから来た!!

 

 

ドアを見ると、テレビでよく見かけるNo.1ヒーロー、オールマイトが立っていた。

 

 

「本当に教師になってたんだっ!」

 

「画風が違いすぎて鳥肌が……」

 

 

皆の憧れであるオールマイトの登場に、クラスメイト達は興奮が隠しきれてなかった。

 

 

僕?それほど興奮はしてないよ。

 

だってこれから扱かれそうだし、相澤先生のあのテストからして除籍とか普通にしそうだし。

 

そう考えると興奮なんてしていられないよね。

 

 

 

「我々ヒーローが受け持つこのヒーロー基礎学では、ヒーローとしての土台を作るため、様々な訓練を行う。今日は早速……戦闘訓練だ!」

 

 

オールマイトがBATTLEと書かれたカードを突き出す。

 

 

「それに伴い、学校側に提出して貰った書類からスポンサー企業の協力の下、君達の戦闘服(コスチューム)を作って貰った!!」

 

 

オールマイトがそう言うと、教師の壁のギミックが作動して番号が書かれたアタッシュケースが出てくる。

 

あれが各自のコスチュームなのだろう。

 

 

「格好から入ることも、気持ちの面でも大切なことだぞ、少年少女!! 自覚しろ、今日から自分は、ヒーローなんだと!!」

「「「はい!!」」」

 

僕は自分の名簿番号である20番のアタッシュケースを取り、すぐに更衣室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、得意の早着替えで一番に集合場所であるグラウンド・βに着きました。

 

僕の今の格好は、顔の上半分を覆う黒に近い灰色の仮面に黒いぴっちりスーツ、その上に仮面と同色の軍服のような半袖の服と長ズボンを着ている。

腰には多収納ウエストポーチがあり、中には巻いてあった包帯やピッキング用品など色んな物が入ってる。

 

あ、仮面や服のお陰で全身の目玉を隠せてるから包帯は取ったよ。

というかそうなるように僕が要望を出した。

 

少し待っていると、各自個性的な戦闘服を着たクラスメイト達が次々と登場してくる。

 

 

皆戦闘服似合ってる。

 

 

 

全身ダイナマイトみたいな人、露出度多過ぎて痴女みたいになってしまってる人、手袋とブーツだけ着て全裸になってる人……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……え、ちょっと待ってくれ、なんであの子全裸なの!!!?

 

 

見た瞬間思いっきり首を回したので首が痛い。

 

いや全裸なのに他の皆はなんで慌てないの!?

 

女子達なんで止めなかった!?

 

 

 

 

 

あっ……念のために他の目で見ると、この子が透明人間だったことがようやくわかった。

 

ずっと《心眼》使ってたから分からなかった。

 

 

でもいくら透明人間だからって、女子が全裸になっちゃいけない気がするのだが……

 

 

ともかく、ヒーロー基礎学では《心眼》を使わないようにしないと。

 

 

 

透明少女の全裸は、僕の記憶から即座に抹消されたのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあそんなこんなで始まった戦闘訓練。

 

内容は2対2の屋内対人戦闘訓練で、設定としては『核爆弾を屋内に隠したヴィランを捕まえるヒーロー二人組』といった感じ。

 

「勝敗のシステムはどうなるのですか?」

「ぶっ飛ばしてもいいんスか?」

「また除籍とかないですよね?」

「分かれるというのはどういう分かれ方でいいのですか!?」

「……早くあの透明少女に服を着せてあげてください」

 

「んんん~~聖徳太子ぃぃぃ!!!???」

 

 

次々と来た質問にオールマイトがカンペを見ながら説明する。

 

あと透明少女には暴走ポニーテール痴女さんがマントを渡してた。

 

 

 

 

ペアはくじで決まり、僕のペアは……

 

「私、芦戸 三奈!ヨロシクね!!」

 

ピンクの肌に黒い目、ギャルのような格好をした芦戸さんだった。

 

 

「……僕は目頭 百鬼。よろしくお願いします」

 

「個性把握テストの時凄かったよ!私の個性は『酸』!何でも溶かしちゃうよ〜!」

 

 

「僕の個性は……テスト見てたならご存知でしょう」

 

 

僕の正式な個性はやんわりと隠しておく。

 

全身目玉だらけで覗き見し放題な男って分かったらどう思われるのかわからん。

 

 

「うん、『瞬間移動』だよね!それなら訓練すぐに終わっちゃうんじゃないの?」

 

「……はい、核のところに速攻転移してしまえばすぐに終わります」

 

「強い!これじゃあ私の出番無いかも〜!」

 

 

僕のペアはヒーロー側、核にタッチするか捕縛テープを相手に巻けばクリアとなる。

 

相手の個性が何であれ、転移して核に触ってしまえばこっちのもの。

 

バリアを張っても中に入れるし、なんなら火の中にあったとしても他の魔眼で対処できる。

 

この戦闘訓練のルールでは無敵みたいなものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腕バッキバキのデク君に倒壊寸前の建物、紅白おめでた髪君の建物丸ごと凍らせる光景など、モニターから物凄い試合を見ていた。

 

特にデク君!強い意志と希望と必死さを詰めたような目!!爆豪君のいつも余裕そうなのに今必死になっている目も良かったけど!あの諦めない目は中々拝めないよ!!写真撮ってもいいかな!?

 

 

え?僕はもうただの変態?アブナイ人とかそういう類いじゃないのって?

 

 

 

 

……興奮しちゃうんだから仕方ない!

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、現在建物の正面玄関に芦戸さんと試合の準備をしていた。

 

とは言っても準備なんてすることも無い。

 

ただ僕が転移するだけなのだから。

 

 

 

『では訓練、スタートだ!!』

 

小型無線機からオールマイトの試合開始の合図が聞こえる。

 

 

 

 

 

《千里眼》で核の隠し場所をすぐに見つけ、核の側へ転移。

 

核の周りに対戦相手が立っていたが知ったこっちゃない。

 

というか転移したことにすら相手に気付かれていない。

 

 

核に触り、この試合は僅か2秒で終わりを迎えた。

 

 

『……しゅ、終了!ヒーローチーム、WIN!!』

 

相手が核にタッチする僕をやっと見つけ、驚きの表情を浮かべる。

 

 

相手の間抜け顔を拝めて内心笑いながらも、僕はモニター室へと向かっていった。

 

 

 

 

 




THE・雑談


試合が速攻で終わりすぎ?

しょうがないね!!そういう魔眼があったんだから!作者も当初はこうなると思ってなかったから!




……はい、当初は試合はあと5、6分は伸びてたんですがね、『もう転移でいいやん』と作者が思い至ったために2秒で終わる試合が出来上がりました。


試合の相手は砂藤君と口田君です。

ただ主人公は相手に対しての興味がなかったので完全スルーされてます。



あと主人公の個性についてちょっと補足させて頂きますと、魔眼は一種類につき一対(目玉二つ)、正確に言っちゃうと魔眼は50種類あるということになります。

魔眼を百種考えるなんて無理や……

まあ過去話に矛盾が生じるかもしれませんが、そこは華麗にスルーしてくれれば幸いです。



あ、主人公の挿絵ってあった方がいいんですかね?

自分で描いた拙い絵になりますが……

画風もめっちゃ違うし、自分じゃこの絵が下手なのか上手なのか判断できないし。

感想にてお声頂いたら出しますし、『こんなきったねぇ絵出すなカス』というようなお声を頂いたら消しますので。



では以上、作者の雑談でした〜。






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五幕 僕は皆が羨ましい

感想にてお声を頂きましたので、主人公の挿絵を公開させて頂きます。

・ 原作と絵柄が違うのはちょっと……

・自分の想像と違ったらヤダ

・そんなの見てる暇ねーよカス!!

という方は見ない事をお勧めします。



【挿絵表示】



前話でも言った通り『こんな汚い絵見せんなカス』というお声をいただいたら消します。

では、本編どうぞ〜




試合を速攻で終わらせてしまった僕たちは、皆が待つモニター室へ戻っていた。

 

 

「今回のMVPは……申し訳無いが、誰とも言えないな!」

 

オールマイトが今までのようにMVPを言おうとしたが、結局誰とも言えてなかった。

 

 

「なんせ戦闘訓練で一度も戦ってないから、評価のしようも無いってことだ!」

 

「まあ……個性が個性でしたからね。個性のデメリットを考慮しなければ、どう足掻こうとこうなる事はあの個性把握テストを見た限り明白でしたわ。まだこの訓練のルールや個性のデメリットが違えば結果も変わっていたかもしれませんけど……」

 

 

まあそりゃそうなるな。

 

オールマイトも言ったが、転移一発でこの試合が終わってしまったのだから戦闘力が見られない、戦闘訓練としての評価が得られないという訳だ。

 

 

例えば紅白おめでた髪君は建物を氷漬けにして敵の行動を封じたので戦闘では使えるが、僕の転移だけでは敵の攻撃を避けれるが敵の鎮圧はできない。

 

自身の身体能力が高ければ別だが、そういった事もあって戦闘とは言い難くなっているのだろう。

 

 

 

 

 

「ただそのやり方が全くダメという訳ではないぞ!君の個性は様々な状況で役立つだろう!今後のヒーロー基礎学での活躍を期待しよう!」

 

そのオールマイトの言葉で、僕の試合の評価付けは終わった。

 

 

 

ただオールマイト、何故僕の本当の個性を知らなかったんだ?

 

もし僕の個性をしっかりわかっていれば、こういう評価にならないと思うのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから全ての試合が終わり、生徒全員がモニター室へ集まっていた。

 

 

「みんな、お疲れさん!! 緑谷少年以外は大きな怪我をしなかったのはとても嬉しい事だ。初めての訓練にしちゃ上出来だったぜ!」

 

オールマイトはそう皆を褒める。

 

「相澤先生の後にこんなまっとうな授業……なんか、拍子抜けと言うか……」

 

確かに相澤先生と違い、爆豪チーム対緑谷チームの試合で中止にしなかった程のゲロ甘加減だったからなぁ。

 

まああの除籍騒動も心を覗き見たかぎり相澤先生の優しさっぽいし、どっちもどっちな授業だと僕は思う。

 

 

「むむむ……相澤君はどんな訓練を……まぁそれぞれ個性的な授業があるさ。それもまた教師の自由という事さ。それじゃすぐに着替えをして教室に……お戻りー!」

 

 

そう言ってオールマイトは猛ダッシュで去って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コスチュームから制服に着替え、僕はまた一番乗りで教室に着いていた。

 

包帯巻きも、なるべくロッカーの中でクラスメイトから見えづらいようにダッシュでやったし、目玉は見られていないと思う。

 

……まあ、多少服の下部分の包帯が雑だったり、あまりにも着替えが早くて不審がられたりしたが。

 

 

 

そ、それはともかく!

 

教室には皆が集まり、先程の戦闘訓練の反省会が行われていた。

 

 

ただ僕はこの容姿が原因なのか、少し避けられている様子だった。

 

でも中学の頃の方が酷かったし、このくらいだったら余裕で耐えられる。

 

中学では包帯も付けてなかったから、長袖だったとはいえ手の甲や首まで目玉がある光景は誰でも気味悪いと思うし、そのせいでガッツリ引かれていじめにまで発展したし。

 

 

さて、皆が話し合ってる横で帰る支度をするふりをしながら盗み聞きをしてると、あの試合で腕バッキバキにしたデク君が戻ってきた。

 

何やら自己紹介やら怪我が治らないやら話しているが、残念ながらクラス全員の名前を覚えれなかった。

 

そんなに矢継ぎに話されても覚えれないよ!

 

 

……いや、僕に話しかけてる訳じゃないんだけどね?

 

 

やっぱりクラスメイトとは仲良くしたいでしょ?

 

僕もみんなの名前覚えて色んな話したいでしょ?

 

 

 

 

 

……試合でペアになった芦戸さんはなんとか大丈夫だったけど、他はどうなるのかわからない。

 

とりあえず今は様子見て、いつかは仲良くなろう。

 

今度こそ、上手くいきますように。

 

 

 

 

僕は皆が集まる扉と反対側の扉から静かに帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羨ましい。

 

正直に言ってしまうと、僕はデク君が羨ましかった。

 

 

皆に話しかけられて。

 

個性でボロボロになってしまうのに嫌われなくて。

 

あんな頼りないような性格でも受け入れられて。

 

純粋にヒーローになるという夢を追いかけられて。

 

 

 

 

 

 

もしも僕にこんな個性が無ければ。

 

みんなと気兼ねなく仲良くなれたのかな?

 

こんなに苦しまずに済んだのかな?

 

 

 

 

……羨ましい。

 

 

 

 

 

……高校生になれば何か変わるかもと思ったけど、結局は変わりそうに無くて。

 

デク君みたいに皆と仲良くなる勇気も、爆豪君みたいに誰にも左右されないような精神も僕には無くて。

 

ずっとずっと中途半端なところで右往左往して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……いつもはこういった感情を軽く受け流すんだけど、時々こんな感じで失敗してしまう。

 

そろそろ克服しないといけないか。

 

 

 

でも。

 

 

何故羨ましいと思うのが駄目なの?

 

 

そう思う自分も居て。

 

結局克服しようと努力もしない。

 

 

いつもこの感情を抑えて、人知れず苦しんで。

 

助けを求めれる人すら僕の周りから消えてって。

 

ただ羨ましい気持ちと自分に対する諦めの感情だけがぐるぐる回って。

 

もう自分でも何考えてるのかわかんなくなって。

 

 

 

 

 

 

ああ……

 

 

 

 

 

羨ましい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほんと、僕って何考えてるんだろう」

 

 

一人自室の中、包帯を取りながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六幕 マスゴミってマジウゼェ

「少しお話しいいかな!?」

 

「オールマイトの授業どうでしたか!?」

 

 

あのオールマイトの授業があった次の日。

朝登校しようとすると、校門前でガヤガヤとマスコミが登校してきた生徒たちに群がっていた。

 

その姿は僕にとってはアリが砂糖に群がっているようにしか見えなかった。

 

 

 

そして群がられるのは僕も例外じゃない……訳なかった。

 

思い出して見てほしい。

今の僕は全身包帯だらけのミイラマンである。

 

そんな気の毒な負傷者なのか、それとも訳の分からない変人なのか区別のつかない僕を見ると、取材出来ずに手持ち無沙汰になっていた後方のマスコミは苦笑いをしていた。

 

 

まあそういった感じなので僕は取材なんか関係無しに学校へと向かった。

 

校門前で堂々と群がっていたマスコミの中を突っ切る形になってしまうが、マスコミは僕に接したくないのか道を作るように避けていく。

なんかちょっと悲しい。

 

 

マスコミの取材が止まり、これ幸いとマスコミの中を抜け出していく生徒が見える。

 

少しはこの容姿も役に立ったのかねぇ。

 

僕はマスコミに見られながらも校門をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早めに登校してしまったため、教室にはあまり人は居なかった。

 

居るのは爆豪君と紅白おめでた髪君くらい。

どちらもお世辞にも友好的と言えない性格なので、教室は自然と静まり返った。

 

ちょっと寂しい。

 

 

 

 

 

 

 

……しばらくすると、他のクラスメイト達も登校してきた。

 

皆仲良く談笑している。

 

少し寂しいが、仕方ない事なので家から持ってきた本を読む。

 

ちなみに本の題名は『にゃんこの冒険〜それいけニャン太郎!〜』である。

ただの三毛猫が密輸船に乗ってしまい他国へ、そこからヒーロー対ヴィランの戦いを真近で見たり、世界のヴィランがひき起こそうとした事件を影ながら防いだりする話だ。

 

え?題名と本の内容が微妙にズレてる?

 

そのギャップが面白いと今結構話題になってるのがこの本だ。

 

あとこれ僕が自己満足でネットに載せたらヒットしちゃった物語だし、題名も結構気に入ってるので後悔はない。

 

 

 

……話が大分逸れてしまった。

 

いや、誰かと話している訳じゃないんだけどね?

 

そもそも僕に話しかけようとしてくる奴なんていないし……

 

 

「おーい、目頭君!おっはよー!」

 

 

ほらやっぱりいない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……って、話しかけてくる奴居たー!

 

 

「……芦戸さん、おはようございます」

 

「反省会の時、目頭君いつのまにかいなくなってたからちょっとびっくりしちゃったよ!」

 

「いえ、緑谷さんと何やら話していたものですから……」

 

デク君の苗字は昨日の反省会の会話から聞き取った。

 

今後はデク君ではなく緑谷君と苗字で呼んでおこう。

 

 

 

というか、久々に授業外で誰かと普通に話したかも。

 

僕大丈夫?普通に話せてる?

 

 

「お、お前が昨日瞬間移動してた奴だな!!」

 

 

……な、なんか増えたー!

 

 

 

現れたのは赤いツンツンヘアーの男子。

 

反省会の会話からして男前な性格をしていた奴だな。

 

 

「よう!俺は切島 鋭児郎!これからよろしくな!」

 

「…こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 

切島君は個性把握テストでもあまり個性使ってなかったし、戦闘訓練でも腕がカチカチになっていたところを目撃したくらい。

多分個性は『硬化』って感じかな。

 

それにしても、この見た目の僕に話しかけるなんて結構チャレンジャーなんだな。

 

いや、話しかけてくれて僕も嬉しかったし、なんなら他のクラスメイトと話してみたいしそういうの全然ウェルカムだけど。

 

 

嫌な顔一つせずに話してくれる、僕にとっては初めてのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あの後戦闘訓練の事を少し話していると、相澤先生が来てホームルームが始まる。

 

 

相澤先生は戦闘訓練の映像を見ていたようで、緑谷君と爆豪君にコメントをしていた。

 

まあヒーロー志望が私怨丸出しで戦ったらダメだろうね。

 

 

 

「それじゃ今回のHRでの本題だが、急で悪いがお前らには……」

 

ん?抜き打ちテストとかやるのか?

 

 

 

 

 

 

「……学級委員長を決めてもらいたいと思う」

 

「「「学校っぽいのキター!!!」」」

 

まさかの学級委員長。

 

学級委員長なんて雑務を押し付けられるだけの絶対になりたくない奴だと他校では思われるだろうが、ここはヒーロー科。

皆を導くリーダーの座として、学級委員長は大変人気なのである。

 

皆揃って手を挙げ委員長に立候補するが、僕は委員長とか忙しそうなのでやらない。

 

なるべく家に居て猫を愛でたいからね。

 

 

 

 

……というか、皆立候補してるから全然決まりそうにないんだけど。

 

 

とその時、

 

「静粛にしたまえ!多を牽引する責任重大な仕事だぞ!やりたい者がやれるものではないだろ。周囲からの信頼あってこそ務まる聖務!!

民主主義にのっとり真のリーダーをみんなで決めるというのならこれは投票で決めるべき議案!」

 

飯田君がそんな事を提案する。

 

 

 

ただ……

 

「思いっきりそびえ立ってるじゃねぇか!」

 

クラスメイトの一人が代弁してくれたが、飯田君も手を挙げ立候補しているのである。

 

飯田君も「信頼もクソもないわ」とカエルっぽい女の子に反論されてる。ザマァ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ結局委員長決めは投票により決まる事となり、箱と紙は暴走ポニーテールさんが腕から出していた。

 

僕は委員長をやるつもりは無いので、紙には誰の名前も書かずに箱に入れといた。

適当に名前を書くなんて無責任な事は出来ないからね。

 

 

肝心の結果は、緑谷君三票に暴走ポニーテール……いや、八百万さんが二票となり、委員長と副委員長が決まった。

 

 

あと飯田君は0票だったので他の人に投票したのだろう。

一体何がしたかったのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、午前の授業が終わり、現在昼放課でございます。

 

昨日のように食堂でボッチ飯……と思いきや、

 

 

「目頭!一緒にメシ食いに行こうぜ!」

 

と切島君がご飯に誘ってくれたのである!めちゃ嬉しい!

 

今日の昼食はヒレカツ定食。

ランチラッシュ特製のとんかつソースをかけて白米と一緒に食べる。

超美味。

 

 

 

「なあ、次のヒーロー基礎学何やるんだろうな?」

 

食事中、切島が話を僕に振ってきた。

 

 

「……そうですね、昨日は戦闘の基礎を学ぶための授業でしたし……今度は戦闘ではなく救助の訓練をしそうですね」

 

「救助か〜、俺の個性って思いっきり戦闘向けだしなぁ。その点お前は『瞬間移動』だろ?すぐに巻き込まれた人のところに行けるし……あ、そういえば、お前の個性で他の人を転移させられるのか?」

 

「できるのですが……集中してやらないと、失敗した時人が瓦礫や地面の中に埋まってしまう形になるので時間がどうしてもかかってしまいます」

 

「でも、それでも集中して転移させる方が早い時もあるだろ?お前の個性スゲーじゃねぇか!!」

 

「……あ、ありがとうございます…」

 

 

う、初めて個性褒められたよ!やんわり個性偽ってるけどさ!嬉しいもんは嬉しいよ!今日は赤飯炊こう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『セキュリティ3が突破されました、生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』

 

その時、そんな放送が流れた。

 

セキュリティ3、確か侵入者が現れたっていう合図みたいなものだったな。

 

 

 

「うわぁぁ!!」

 

「侵入者!?早く逃げないと!」

 

「助けて、助けてくれぇ!!」

 

 

皆侵入者が出たという状況が初めてだったためか、パニック状態になり出入り口に向かって走っていく。

 

 

 

……侵入者って誰だ?

 

ちょっと気になったので《千里眼》を使って学校中を見る。

 

 

しばらく手当たり次第に探してやっと見えたのは、破損しているように見える校門と群がるマスコミ……いやマスゴミ。

 

 

「チッ……人騒がせのマスゴミが……」

 

おおっと、思ったことが口に出てしまった。

切島君に聞かれてないよね?聞かれてたら絶対嫌われる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……みなさーん落ち着いてください!!大丈ーーー夫!!

ただのマスコミです!!

何もパニックになる必要はありません!!」

 

 

人の波に揉みくちゃになりながら見えたのは、非常口のようなポーズをしながら浮いている飯田君。

 

 

「「ブフゥ!!!」」

 

 

あの飯田君のポーズで吹き出す人が続出。

 

かく言う自分もちょっと吹いた。

 

 

しかし、笑いで足を止める人もいたようで、動きは段々と収まっている。

 

 

……飯田君、結果オーライだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後委員長の座は緑谷君が飯田君に渡し、他の委員決めも無事終わった。

 

ちなみに僕は飼育委員会という誰もやりたがらなかった委員会に入った。

 

この委員会、どうやら校長先生が作ったようで活動内容に『根津校長のブラッシング』というものが入ってる。

それ以外にも保護された実験動物のお世話もあるが、『動物達とは対等に接するように』と赤文字で書かれていた。

 

 

あとちょっと気になって相澤先生の脳内覗き見たけど、根津校長は“飼育”委員会という名前を気に入らなかったが、他の言葉にしちゃうと委員会の内容がイマイチわかりにくいという理由で他の先生方に多数決で負けたらしい。

 

 

 

……まあいい。

これで動物達をモフれるなら問題ない。

 

 

……ちょっと根津校長に家の猫達連れてきてもいいか聞いていいかな?

 

 





〜THE・閑話〜


『にゃんこの冒険〜それいけニャン太郎!〜』

第2巻 7話 『暗躍するにゃんこ』


「誰だ!!」

真夜中のビルの中、黒装束を着た男性が懐中電灯を向ける。

「にゃ〜ん!」

物陰から出てきたのは、ただの三毛猫だった。

「なんだ……ただの猫かよ……こんなおんぼろビルにいやがって、人騒がせな猫だぜ……」

黒装束の男は警戒を解き、再び歩き出す。






男がたどり着いたのは、一つの金庫。

おんぼろビルには似合わない壁に埋められた、いかにも厳重そうな金庫だった。

男は懐から一枚の紙切れを取り出し、金庫のダイヤルを回す。


ジ……ジジ……という音だけがこの部屋に響く。


(あと……あと少しでこの金庫のお宝が俺の手に……)

そう、この黒装束の男は、金庫内のお宝を狙うヴィランだったのだ。

男の個性は『隠密』であり人から認識されにくくするだけの個性だが、この男の仲間が金庫のパスワードを調べ上げたためにこの作戦が実行された。


ジジ……ジジジジ…カチッ

金庫から鍵が開いた音がする。

「よし!!」

思わず男は声をあげてしまうが、個性の影響で人には聞かれにくくなっているため問題はない。


重い金庫の戸を開け、お宝を目にするその瞬間……


「……にゃ〜ん」

男の背後から、猫の鳴き声が聞こえた。




『立ち読み版はここまでです!続きは製品版にて!』

==========


「いや、イラスト可愛いのに内容シリアス過ぎない!?」

「う、麗日さん、落ち着いてください!イラストの絵師さんは著者さんと別人ですよ!」

「ケロケロ、八百万ちゃん、この本の絵師と著者は同一人物よ」

「な、なんですって……!?」


本屋では、雄英のヒーロー科の制服を着た女子高生達が何やら驚いていた光景が目撃されたそうな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七幕 入学して数日なのにヴィランと戦ってしまうの!?

 

 

 

あのマスゴミ襲撃事件があった午後、みんな大好きヒーロー基礎学のお時間です!

 

 

「今回のヒーロー基礎学はオレとオールマイトともう一人の三人体制で見ることになった」

 

教室で相澤先生が授業について話し始める。

 

「ハーイ!何するんですか?」

 

「災害水難なんでもござれ、レスキュー訓練だ」

 

おっと、昼食の時に話してた予想が当たったようだ。

 

というか雄英の授業、とりあえず実践で慣れろって感じが多い気がする。

 

「レスキュー・・・・今回も大変そうだな」

 

「バカおめぇ、これこそヒーローの本分だぜ!?鳴るぜ!腕が!」

 

「水難なら私の独壇場、ケロケロ」

 

どうやら皆乗り気らしい。

かくいう僕もちょっと乗り気だったりする。

 

「今回コスチュームの着用は自由で構わない。

中には活動を制限するものもあるからな」

 

まあ動きにくかったり救出には不向きだったりする場合があるからなぁ。

 

そのコスチュームを注文する人もちょっとおかしいと思うけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らはほぼ全員がコスチュームに着替えて、指定された場所に集まっていた。

 

コスチュームを着ていないのは、昨日コスチュームがボロボロになってしまった緑谷君くらい。

 

あ、勿論透明少女のために《心眼》は発動していないよ!

 

 

 

「バスの席順でスムーズにいくように番号順で二列で並ぶようにしよう!」

 

飯田君が早速委員長の仕事をしている。

 

それにしても、学校内をバスで移動ってどんだけ敷地が広いんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうタイプだったか、クソー!!」

 

飯田君が悔しがっている。

 

そう、このバスは座席が縦に割れていないタイプだったのである。

結局名簿順二列で並んだのは無駄になってしまった。

 

 

順番なんか関係無くなってしまったので適当に座っておく。

勿論隅っこの方の席だけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……暇なので皆で雑談していると、ヒーロー志望だからか個性の話になった。

僕こういった話あんまり好きじゃないんだけどな……

 

「私、思ったことなんでも言っちゃうの。緑谷ちゃん」

 

「あっ!?ハイ!?蛙吹さん!」

 

どうやらカエル少女は蛙吹さんというらしい。

よし、クラスメイトの名前を覚えてきたぞ……

 

「梅雨ちゃんと呼んで。

あなたの個性、オールマイトに似てる」

 

お、下の名前までわかった。

 

僕はとりあえず蛙吹さんと苗字で呼ぶ。

下の名前で呼べる気がしない。

 

 

……それはそうと、今は個性の話だった。

 

「確かに緑谷の個性はケガしなかったらオールマイトそっくりだね」

 

「まあそうだが同じ増強型だからだろ?

しっかし増強型の個性はいいな!!派手で出来る事が多い!!

オレの硬化は対人戦じゃ強いけどいかんせん地味だしなー」

 

いや、硬化使ってる時は腕ガッチガチになってたし、十分カッコいいと思うけどなぁ。

 

「僕はかっこいいと思うよ!!

プロでも充分通用する個性だよ!!」

 

緑谷、それは僕も同感だ。

 

 

 

「……そういや派手で強いと言ったら轟と爆豪だよな!!」

 

…紅白おめでた髪君の名前は轟君……っと。

順調に覚えてきてる。

 

 

……あ、確かに爆発と氷は見た目的にもカッコいいし、見た目だけじゃなく威力も強い。

 

「でも爆豪ちゃんはキレてばっかりだから人気でなさそ」

 

「んだとゴラッ!!出すわ!!」

 

 

……爆豪君、怒ってばかりじゃ人気も出せないぞー。

 

 

「この付き合いの短さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるのはスゲェよ!」

 

「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!」

 

いや、コイツの性格はクソと下水を三日三晩煮込んで残飯ブチ込んだくらいには酷いと思うぞ……多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういや目頭、なんで普段包帯付けてるんだ?」

 

…切島君が話しかけてくる。

 

 

「コスチュームの時は包帯付けて無いよな」

 

「ケロケロ、目頭ちゃんの素顔って見たこと無いわね」

 

「そういや着替えの時もめっちゃ早く終わっちまうし、いや何か言えない事情があれば別にいいんだけど!」

 

他のクラスメイトも便乗して話しかけてくる。

 

 

「……いえ、少し肌に問題がありまして……コスチュームは肌がなるべく隠れるようにしてもらったので、今は包帯を取っています」

 

これは包帯の件を聞かれた時に言う言い訳。

これ言えば大体の人は引っ込んでくれる。

 

……まあ、たまに包帯を取ろうとする馬鹿もいるけど。

 

 

 

「おいお前らいいかげんにしろよ。そろそろ着くぞ」

 

…五月蝿過ぎて相澤先生に叱られてしまった。

 

いや、僕一言しか喋ってないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スッゲー!!USJかよ!!?」

これが一番乗りでバスを降りた人の第一声。

 

 

「水難事故、土砂災害、火事、etc・・・あらゆる事故や災害を想定し、僕が造った演習場です。

その名も、ウソの災害や事故(USJ)ルーム!!」

 

 

…名前が色々とアウトな気がする!!

 

 

今話しているのは宇宙服のようなコスチュームを着た13号先生。

確か災害救助のプロフェッショナルだったと記憶している。

 

 

「えー、始まる前にお小言を一つ二つ三つ四つ……」

おー増える増える……

 

お小言じゃなくて普通の話になっちゃうよ!

 

 

「皆さんご存知だと思いますが僕の個性はブラックホール、どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

「その個性でどんな災害からも人を救い上げるんですよね!!」

 

ほんわか少女が興奮しながら首を振る。

どうやら13号先生のファンだったらしい。

 

 

「しかし簡単に人を殺せる個性です。

皆の中にそういう個性の方もいるでしょう」

 

…僕の個性だって見ただけで人を殺せる。

 

それだけじゃない。

爆豪君や轟君だって簡単に人を殺せるし、それを言えば、使い方によってはどんな個性でも人を殺す凶器になる。

 

 

「超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。

しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる、いきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないで下さい。

 

相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。

この授業では心機一転、人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう。

君たちの力は人を傷つける為にあるのではない。助ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。

以上、ご清聴ありがとうございました!」

 

 

13号先生が話し終わると、周りで拍手喝采が巻き起こる。

それにつられて僕も手を叩いた。

 

 

 

「そんじゃあまずは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、僕は気味の悪い視線を感じた。

 

喜びのような、憎しみのような、妬みのような。

 

色んな感情が混じった視線が、沢山。

 

 

 

「……全員構えて!戦闘準備を!!」

 

思わず叫んでしまう。

 

 

 

 

……その瞬間、辺りに黒い霧が立ち込めた。

 

 

 

「ッ!?皆、一塊りになって動くな!!」

 

相澤先生も異常事態に気づいたようで、僕らに指示を飛ばす。

 

 

「なんだアリャ!入試の時みたいにもう始まってんぞパターン?」

 

「……いや違います。あの視線はそんな嘘っぱちじゃありませんでした」

 

「じゃあまさか……」

 

 

「動くな!!アレは……(ヴィラン)だ!」

 

 

ようやくクラスメイトたちは事態を把握する。

 

 

そして黒い霧の中から現れたのは……例外なくこちらに敵意を向ける、無数の敵たちだった。

 

 




THE・予告


入学して数日でヴィランと戦う主人公たち!

戦闘訓練はたったの1回!技術も経験も圧倒的に足りねぇぜ!!

原作通り黒霧に飛ばされ、飛ばされた先に待ち受ける壁とは!?


個性の影響で発狂する主人公!主人公に倒されていく哀れなヴィランたち!

次回!第八幕……『後先なんて知ったこっちゃねぇ!!』

不定期更新だけどお楽しみに!




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八幕 後先なんか知ったこっちゃねぇ!


THE・謎報告


やっと主人公の魔眼全て考えましたよ!ちゃんとメモもしてバッチリだよ!




……はい、なんか全部考え切ったので調子乗って前書きに書き込んでしまいました。ただそれだけです。

ちなみに能力は原作で出ている個性と被らないようにはしました。
例えば相澤先生とか心操君とか。

そういえば、他作品を参考にしようとネット漁ってましたが、案外魔眼って見つかるものなんですね〜。
ちょっとパワーバランス崩壊しそうなやつありましたけども。




……あ、これ以上話すことも無いですね。


では、本編どうぞ〜!




(ヴィラン)ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるだろ!」

 

金髪黒メッシュのチャラ男君がそう言う。

まあハナから見れば馬鹿な行為だろうが……

 

 

「先生、侵入者用センサーは!」

 

「もちろんありますが……!」

 

 

そう、センサーを切り本舎から離れたこの場所で僕らが来るタイミングをピンポイントで襲ってきた。

随分と作戦に自信があるようだ。

 

 

「現れたのはここだけか学校全体か……何にせよセンサーが反応しねぇのなら、向こうにそういうことが出来る個性がいるってことだな」

 

「だよな、校舎と離れた隔離空間にそこに入るクラス。あいつらはバカだろうけど、ただのバカじゃねぇよな。目的を以て用意周到に来てんだろうからよ」

 

おっと、僕が考えていた事を先に言われてしまった……

別にこの状態だと誰が言おうが関係ないけど。

 

「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサー対策も頭にある敵だ、電波系の個性が妨害している可能性がある。上鳴、お前も個性で連絡試せ」

 

「っス!」

 

 

 

……ここでチャラ男君の名前が判明するか〜。

 

知れたのは普通に嬉しいが、そんな事言っている場合じゃない。

 

 

「あと目頭!本舎に行って助けを呼んで来い!」

 

「……残念ながら先生、連絡どころか個性による建物外への干渉自体出来ません。よって建物から一旦出ないと転移は無理です」

 

さっきから何度も試しているが、《千里眼》で外の風景を見ることすら出来ない。

多分相手にそういう個性があるんだと思う。

 

 

 

 

 

相澤先生は僕の言葉を聞いた後、首元の捕縛布を掴みながらヴィランの集団に向かって歩いていく。

 

 

「先生は!?一人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性を消すって言っても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……!!」

 

どうやら緑谷君は先生の戦闘スタイルを知っていたようだが……時にヒーローは、不利な状況でも戦わなきゃいけないんだよ?

 

ヒーローは逃げられない。

 

 

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号、生徒を任せたぞ」

 

そう言うと相澤先生は攻撃しようとしてきたヴィランの個性を消し、捕縛布で的確にからめ取り対処していく。

 

 

個性も凄いが、一番凄いのはあの捕縛布の操作技術と身体能力だろう。

 

 

体格差があろうと捕縛布でヴィランを捕まえ引っ張り、他のヴィランに頭をぶつけて気絶や戦闘不能に陥らせている。

流石プロ、戦闘スタイルとは違っても鮮やかな戦闘だ。

 

 

 

「さぁ!行きましょう!皆さんこっちへ!!」

 

 

…少し相澤先生の戦闘を見てると、13号先生は指示された通り僕らを出口に避難させようとする。

 

 

この施設から出れば転移は出来ると思う。

なるべく早くしないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……させませんよ」

 

 

 

僕らが出口に近づくと……今度は出口前に黒い霧が発生する。

 

その霧はぼんやりと人の形をとっており、声の低さと推定身長からして男性。

このヴィラン集団を連れてきた実行犯だろうか。

 

 

「初めまして、我々は(ヴィラン)連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは平和の象徴……オールマイトに息絶えていただきたいと思っての事でして」

 

 

 

……は?

 

 

黒い霧のヴィランは、オールマイトを殺すと言うとんでもない目的を話してきた。

 

 

 

 

 

……これは……うん、ヴィランにはお生憎様だけど、まだオールマイトは死なないなぁ。

 

 

 

 

だって僕一人でも鎮圧出来る程に雑魚なんだもん。

 

それにオールマイトの力は衰え気味だけど、まだまだ現役で活躍出来るくらいだし。

 

オールマイトを殺したいなら、まだ力が著しく衰えるまで待ってないと。

 

 

 

 

 

「本来ならば、この中にオールマイトがいらっしゃる筈、ですが何か変更があったのでしょうか…。まぁそれとは関係なく、私の役目は……」

 

「…オラァ!!!」

 

 

 

ヴィランが霧を蠢かせる瞬間、二人の影がヴィランに襲いかかる。

爆豪君と切島君だ。

 

 

爆豪君が出した爆発により、辺りには土煙が舞い視界が悪くなる。

 

……えっと爆豪君……ちょっとそれは愚策だったかな…

体が霧でできているようでダメージが入った様子も無い。

その上唯一個性が効きそうな13号先生は、ヴィランの近くに二人が居る所為で個性が使えそうに無い。

 

 

ちょこっと相手の心を覗き見てみるが、体が霧になってて見づらい為か心も霧がかった状態でしか見れない。

 

 

『散らして』……『嬲り』…?『オール…イト……何処』?それに『脳…無……対オ…』??

 

 

ダメだ、解読不能。

 

《心理眼》ははっきり相手の姿が見えてないと正常に使えない。

こういうヴィラン相手だとまともに使えやしない。

 

 

 

「危ない危ない、生徒と言えど優秀な金の卵……私の役目は、貴方たちを散らして嬲り殺す!!」

 

効いてすらいないのに危ないなどとほざく。ウザい。

 

 

 

 

……そんな事を考えていると、次の瞬間に黒い霧があっという間に広まり、僕らを包む。

 

反射的にクラスメイトを見ようとするが、既に霧に囲まれてしまって誰の姿も見えない。

 

 

 

クラスメイトの小さな悲鳴が聞こえたかと思うと、突如浮遊感に襲われる。

 

まるで突然床が抜けたような、そんな感覚。

 

浮遊感が強まると共に霧が晴れていく。

 

次に見えた光景は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……この施設を覆うガラスと遠く離れた地面、個性を使って飛んでいるヴィラン達だった。

 

 

情景反射で視界に入るものを自由に動かせる《念動眼》と《千里眼》を合成し、宙に浮く。

 

これ、他の生徒だと死んでしまうぞ……。

 

 

 

 

 

 

……さて、このヴィラン達をどうしようかな。

 

今僕が地上にいくと多分このヴィラン達もついてきちゃうし、ここで倒しておくか囮になっておくかした方がいい。

 

 

「ラッキー!!コイツすぐ落ちて死なねぇじゃねぇか!これで俺らの報酬もたっぷりだな!」

 

「ハハ!そうだな!飛べるのはいいが、どうせそれだけだろ?精々俺たちに嬲り殺しにされるんだなぁ!!」

 

 

流石チンピラヴィラン、僕の予想を裏切らないクズっぷりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツら程度なら、僕も後先考えずに個性が使えるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ヴィラン視点〜

 

 

俺らは空中での戦闘が可能な個性を持ってる。

 

それを生かそうと空中に配属されたはいいが、これで空中に出た生徒が死んだら俺らの報酬はどうなるんだ?と疑問を抱いた。

 

そしたらこの作戦のリーダーが『もしも生徒が落下死したら空中にいた全員に平等に報酬を渡す』と言ってくれた。

 

俺らはただの報酬欲しさでやってきたチンピラだ。生徒が落下死したら全員に報酬、生徒が飛べる個性を持ってても大人数でボコれば楽に殺せて報酬ゲット。

そんなうまい仕事、快く引き受けたさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、やっと生徒が一人来た。

 

 

そいつはモノクロなヒーローコスチュームを着ており、個性で宙に浮けるようだった。

 

勿論生徒が落下死した時よりも直接殺した方が報酬も良かったし、他の奴もラッキーだと喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あの時までは。

 

 

 

 

 

早速仲間の一人がナイフで生徒を刺そうとした時、ソイツのニヤニヤと浮かべた気持ち悪い笑みはこちらへ向き……何故か俺らを襲ってきた。

 

 

訳がわからない。

ソイツの目の前に標的は居たのに、何故か仲間である俺らを刺そうとこちらへ飛んで来る。

 

何人かは混乱してソイツから逃げられずに殺されてしまったが、ソイツはこの中でも弱い方だったのですぐに他の仲間に殺される。

元仲間だろうが、攻撃してくるなら慈悲は無い。

 

 

 

 

 

殺された元仲間達は、重力に逆らえずに落ちていく。

 

最初に生徒に近づいた奴はとんだ裏切り者だったが、今度は確実に標的を仕留めてやる。

 

そんな思いで俺は自分の武器である鉈を構える。

 

 

そして標的を睨みつける……が、すぐに驚きの表情へと変わった。

 

 

 

 

 

 

なんせ元仲間が死んだ所を目撃して、楽しげな笑みを浮かべていたからだ。

 

 

 

 

今回の標的は少々狂っている。

ヴィランの中でも、殺しを見てこんなに楽しげに笑う奴は少ない。その上コイツはヒーローの卵だ。

 

 

その事を理解したら、今の仲間にも怖気付いてしまった奴がしばしば出てしまった。

 

 

 

 

今回はラッキーだったんじゃ無い。

逆に不運だった。

 

 

 

 

 

「……ねえねえ、ヴィラン達?折角倒されちゃうんだからさ、ちょっと実験に付き合ってくれない?」

 

 

標的は笑みを浮かべながら楽しげな口調でそう言う。

 

 

「まあ強制なんだけどさ、言っておくのが様式美って奴じゃない?」

 

嫌な予感しかしない。

 

 

 

 

「……じゃあ、まずはこれから試そうっと!!」

 

 

……標的は近くの仲間に手をかざすと、

 

 

 

「あああああぁぁぁぁぁぁ冷たいつめたいツメタイぃぃぃ!!!」

 

「熱いアツイアツイア゛ヅイ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

 

 

 

一人は冷たいと叫び、もう一人は熱いとひたすらのたうち回った。

 

 

「……《灼熱眼》と《氷結眼》、あんまり使ったことなかったけど、こういった感じになったねー!」

 

あははと少し笑いながら、餌食になった仲間を見る。

 

早く逃げ出したい思いに駆られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ、逃げ出すんだ?じゃあこんな感じはどう?」

 

耐えきれずに仲間の数人が逃げ出すが、ソイツらは氷漬けにされてその場に留まる。

 

 

 

「僕もヒーロー志望だし、そんな落下させて殺すような真似はしないよ?ただちょっと動けないだけだからさ。

 

…アハハ!!楽しいねぇ、実験は!もっと楽しもうよ?遊ぼうよ?」

 

 

標的……いや、その生徒は標的とは呼べない。

 

 

ソイツはただ笑う。

狂ったように。

 

 

「まだまだやる事は一杯だよ!ほらほら!絶望して個性止めて落下死とかツマラナイよ?

 

時間は有限、ちゃっちゃとやろうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからは地獄だった。

 

肌が紫色になりコポコポと肌から泡が出ている奴、突然強い恐怖に身を襲われて気絶する奴に、耐えられなくてアイツの個性を受けても尚逃げ出そうとする奴。

 

 

 

 

特に発狂して個性を暴走した奴は悲惨だった。

 

 

奴は足から炎を出して飛んでいた奴だったんだが、手のひらからも出せたようで炎がソイツを襲う。

 

 

 

何か個性でガードしたようで火傷はなかった……

 

 

 

 

 

 

……が、焼けたコスチュームから見えた肌には、びっしりと目玉が埋まっていた。

 

 

 

「……あはははははは!!見えました?見えましたよねぇ?ミチャッタねぇぇ!!」

 

 

ソイツの笑いは増していった。

 

 

目玉はずっと俺らを見ているようで、ぎょろぎょろと目玉は活発に動いている。

 

その目玉の色はそれぞれ違うように見える。

 

その目玉は果たしてソイツのものなのか、それとも他の奴のものなのか。

謎の恐怖が芽生える。

 

 

 

 

「アハハハハ!本っ当に…………笑えねぇよ」

 

 

ソイツはこのままずっと笑っているかと思えば、急に笑いが止まっている。

 

「なあ、俺が嫌いな事ってわかるか?」

 

ソイツはずっと笑みを浮かべていたが、相当キレているようだ。

目は仮面で見えないが、俺ら以上に濁っているのだろう。

 

 

「俺は、俺の目を見られるのが…………一番大っ嫌いなんだよ!!」

 

 

先程までの楽しげな笑みは狂気の笑みに変わり、個性を暴走させた奴の元へと飛んでいく。

 

 

「地雷踏んじまったなぁ?踏んじまったねぇ?なら先の事は見えてるねぇ!!」

 

 

ソイツは奴の頭を掴むと、奴の目は虚になる。

 

 

 

「…………あああああぁぁぁぁぁごめんなさいぃぃぃぃ!!!?!??!」

 

奴は何を見ているのかはわからない。

 

けれど、俺が見てきたどんな悪夢よりも酷かったのはわかった。

 

 

 

「そのまま眠っとれ…………さあて、まだヴィランは残ってるよね?」

 

 

動けるヴィランは大分減ってしまったが、それでもまだ数人残っている。

 

 

「もうこの際後先なんて考えない事にしましたー!!間違えて死なねぇようにしとけよ?」

 

 

……残ってしまった俺はどうなるのだろうか。

 

わからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、ただこの地獄が終わるまで神に生き残れるよう願っていた。

 

 

 

 





THE・補足


新しい魔眼


《念動眼》:視界に入った物全てを自由に操れる。生物は自分以外動かせない。動かす物が多いと操る精度が下がる。

《幻覚眼》:目が合った相手に幻覚を見せる。今回はヴィランに『主人公が怖がりながら逃げ惑う』という幻覚を見せて同士討ちを仕向けた。

《氷結眼》:視界に入ったものを凍らせる、又は温度を下げる。使用時は何故か二つある内の一つの目玉が発光し、冷気を帯びる。

《灼熱眼》:視界に入ったものを燃やす、又は温度を上げる。使用時は何故か二つある内の一つの目玉が発光し、熱気を帯びる。

《透視》:しれっと《氷結眼》と《灼熱眼》と合成して使っていた。使用するとご察しの通り壁や物を無視して色んなものが見える。今回は透視して体内の一部を冷たく、又は熱くしていた。

《毒眼》:見た生き物を毒状態にする。物に毒を仕込む事は出来ない。毒は弱いため死にはしない。ただどんどん体力を奪いめっちゃ痛い。毒状態になると肌が紫色がかった色になり、何故かコポコポと泡が出る。

《精神眼》:精神の回復から汚染までなんのその。目が合った人にだけ有効。動物には使えないらしい。精神が強い人には効き目が滅茶苦茶薄い。というか効かない。



魔眼は殺傷性の低いものがほとんど。

実は魔眼は睨み返すと威力が少々弱まる。
対象の意思が強くても大体の魔眼は弱まる。

結論:かっちゃんが弱点




目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 50~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。