ウチの姉がドストライク過ぎて辛いのだが (深き森のペンギン)
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1話

「たっくん、起きて?」

 

体を揺さぶられる。

心地よい朝の日差しが俺の部屋に射し込む。

姉さんの優しい声で、まだ眠気が残る俺をまた夢の世界に誘う。

 

「たっくん、もう朝ごはん出来てるよ?」

 

俺は今姉さんと二人暮らしだ。

姉さんと俺が通っている高校には実家からは通いづらく、近くのマンションの一室を借りている。

 

数日前に俺は姉さんの部屋で暮らし始めた。

なぜなら俺は小さい頃から姉さんのことが大好き過ぎて姉さんが高校に入学して独り暮らしをはじめても毎日姉さんと連絡を取らないと気がすまないレベルだ。

 

そして俺は両親にワガママを通して俺も同じ高校に進学させてもらった。

ただし条件が一つ。

俺もバイトをすること。

バイトさえすればいい。それだけで姉さんと一緒に居られるのなら。

 

「姉さん、おはよう。」

 

「おはよう、たっくん。朝ごはん、たっくんの好きなフレンチトーストだよ。」

 

「姉さんありがと!」

 

「これくらいいつでも出来るよ。でも、たっくんに喜んでもらえて嬉しいよ?」

 

「俺も、姉さんが喜んでくれて嬉しい。」

 

姉さんが部屋から出ていくと、俺は着替えてリビングに向かう。

この部屋は家賃の割にはそこそこ広く、2部屋とリビングにキッチンとトイレと風呂という有料物件だ。

 

俺は姉さんの向かいに座って好物である姉さんの作ったフレンチトーストを食べる。

 

通常のフレンチトーストよりも甘く味付けされているフレンチトーストが旨い。

さすが姉さん。俺の好みがわかってるなぁ。

 

「ご馳走さま。やっぱ姉さんの作ったフレンチトーストは旨いなぁ。」

 

「そう?たっくんの好みに合わせたつもりなんだけど…甘い方が好きだよね?」

 

「ああ。姉さんの作ったフレンチトーストが世界で二番目にすきだよ。」

 

「一番は?」

 

愚問だな。

一番好きなのは姉さんに決まっている。

俺は姉さんが大好きだ。

正直姉さん以外の女性は眼中に無い。

 

「愚問だな。姉さんに決まってるじゃないか。」

 

「私もたっくんのこと大好きだよ。本当に小さい頃からたっくんは相変わらずだね。」

 

俺達は朝食を食べ終えて、今から学校に向かう。

 

「たっくん、一緒に行こ?行く前に、いつものお願い?」

 

「わかった、姉さん。好きだよ。」

 

こうして俺は姉さんに口付けした。

 

「たっくん…」

 

姉さんの目がトロンとした目に変わっている。

スイッチ入っちゃった感じだ。

 

「姉さん、続きは後で。帰ってからだよ。俺も我慢するから、姉さんも我慢してて?」

 

「うん。たっくん、早く帰ってきてね?」

 

「わかった。なるべく早く帰って来るから。今夜も楽しみだよ。」

 

「たっくん、好きぃ……一年も我慢してたんだよ?」

 

俺と姉さんは回りには秘密にしていることがある。

実は俺と姉さんは実の姉弟ながら、恋人なのだ。

 

姉さんの高校入学で一年間離れ離れになって最近同棲し始めてから、姉さんが我慢出来なくなり、最近は毎晩姉さんに色々と搾り取られている。

 

今俺達は通学路を歩いている。

 

「たっくん、もう少し手繋いでてもいい?」

 

「学校もう近いしあと少しだけだよ?」

 

「意地悪。」

 

姉さんがかわいすぎる。

こんな姉さんがいてよかった。

 

「じゃあ最後にこれで我慢してね。」

 

姉さんと一緒に物陰に入る。

俺は姉さんを抱き寄せて口付けを交わす。

少し長めの口付けだったが、姉さんは満足してくれただろうか。

 

「たっくん、もう終わり?」

 

「無茶言わないでよ。もう学校なんだからさ。それに、今晩いくらでもできるから、ね?」

 

「そうだね。たっくん、楽しみにしてるよ?」

 

「俺も楽しみだよ。」

 

そこからは唯の仲の良い姉弟として学校に向かった。

途中で姉さんの友達の、千聖さんに出会った。

 

「千聖ちゃん、おはよう。」

 

「おはよう、花音。拓音君もおはよう。ふふっ、あなた達、本当に仲がいいのね。」

 

「別に、普通だよ?」

 

「普通ですよ。」

 

「そんなことないわよ。貴方達は回りから見ても仲の良い姉弟よ?」

 

「そうなの、かなぁ?」

 

「そうみたいだよ、姉さん。」

 

「拓音君って花音のことが好きなの?」

 

「大好きです。」

 

「私もこんなに優しい弟が欲しかったわ。」

 

こうしていると、学校にたどり着いた。

ああ、姉さんと離れ離れになるのか……。

 

少し憂鬱だが、教室に入った。

 

「あ、拓音君!おはよう。どうしてテンション低いの?」

 

隣の席の戸山さんが話しかけてきた。

 

「姉さんが恋しい……」

 

「拓音君ってお姉さんのこと凄く好きだね!」

 

「そうだよ。姉さんは方向音痴ですぐ迷子になるけど、優しくて可愛くてこれ以上の女性は存在しないよ。」

 

「なんか拓音君がお姉さんのこと話してるとき、すっごくキラキラしてる!」

 

「そう、なの?」

 

「うん、拓音君ってお姉さん大好き~ってオーラがキラキラしてるから!」

 

彼女とであってもう一ヶ月だ。

擬音を多様することにもなれてきた。

 

最初こそ何を言っているのかわからなかったが、最近は馴れてきてわかるようになってきた。

 

つまり俺は姉さんのことを話している時に生き生きしてるってことだろう。

戸山さんと話していると、始業のチャイムが鳴った。

 

午前の授業をなんとなく乗りきって、昼休み。

姉さんの待つ屋上に駆け足で向かう。

 

屋上のドアを開けると、姉さんが千聖さんと一緒に待っていた。

 

「お待たせ、姉さん。千聖さん。」

 

「たっくん、はい、お弁当。」

 

俺は姉さんに弁当を渡されて姉さんの隣に座る。

 

「たっくん、あーん。」

 

姉さんが卵焼きを食べさせてくれる。

毎日弁当は姉さんに食べさせてもらっている。

 

なぜなら俺が自分で食べようとすると姉さんが少しムスっとするからだ。

だから姉さんに食べさせてもらっている。

 

その様子を千聖さんが微笑ましそうに見ている。

ちなみに千聖さんは俺達の関係について気づいているだろう。

 

俺も肝心なところで隠せないし、姉さんは隠す気がない。

よって普段から近くに居る千聖さんにはとっくにバレているだろう。

 

「貴方達って、どんな関係なの?見る限り唯の姉弟では無さそうだけど。」

 

「千聖ちゃん、実はね…私達、付き合ってるの。」

 

「そうだろうと思ったわ。だって拓音君についての愛情が弟に対するそれではなかったからね。」

 

「軽蔑しちゃった?弟と付き合ってるなんて。」

 

「いいえ。凄く美しいと思うわ。応援する。だって、親友の恋くらい応援しないとね?」

 

「千聖ちゃん…ありがとう。」

 

「拓音君、花音を幸せにしなさいよ。わかったわね?」

 

「当たり前じゃないですか。俺にとって、姉さんは無くてはならない、何よりも大切な人なんですから。」

 

その後、屋上をあとにして午後の授業を受ける。

その後の放課後はバイトに励み、7時頃に家に帰る。

 

すると姉さんが夕飯を作っていた。

 

「ただいま、姉さん。」

 

俺は姉さんを後ろから抱き締める。

 

「たっくん、お帰り。今作ってるから、我慢してて。」

 

お互いにあまり我慢が出来ない。

そこはよく似ているんだろう、そう思った。

 

夕飯はとても美味しかった。

姉さんの作ったものならなんでも好きだ。

 

「たっくん、お風呂入ろう?」

 

「いいよ。」

 

姉さんと風呂場で色々な雰囲気にはなったが、お互いに我慢できた。

二人で寝室につくと、姉さんの我慢が先に切れて、ベッドに押し倒される。

 

「たっくん、もう我慢出来ない…」

 

「俺もだよ、姉さん。今夜は寝かさないからね?」

 

こうして二人の夜は、今夜も長いのであった。



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2話

目が覚める。

俺の横では姉さんがかわいい寝息を立てて寝ている。

 

「姉さんの寝顔、やっぱりかわいいな。」

 

姉さんの寝顔に見とれていると、姉さんが可愛く目をこすって起き上がった。

 

「たっくん、おはよう。」

 

ごく自然な流れで口付けを交わす。

今日は休日なので一日中姉さんと一緒に居られる。

 

「朝ごはん作ってくるね。」

 

「わかった。楽しみにしてるよ。」

 

姉さんは朝食を作りにキッチンに向かった。

さて、何が出てくるのだろうか。

 

まあ、俺は姉さんの作ったものはすべて好きだけど。

ふとキッチンを見ると、エプロンを着けて料理をしている姉さんが居る。

 

その姿になんとも言えない興奮を抱いた。

気づいたら後ろから姉さんを抱きしめていた。

 

「たっくん、今は我慢して。後でいくらでもできるから。」

 

「姉さん、今日もかわいいよ。愛してる。」

 

「ありがと、たっくん。」

 

俺は椅子に座って料理を待っている。

出てきたのはスクランブルエッグとベーコン、それとトースト。

ごくごく一般的な朝食だ。

 

ただし俺にとっては特別なものだ。

なぜなら姉さんが作ったものなのだから。

 

「たっくん、今日デート…しない?」

 

「いいね。どこ行くの?」

 

「水族館、かなぁ。」

 

「いいね。俺も水族館行きたかったんだ。姉さんと一緒に、だけど。」

 

今日は水族館デートか。

嬉しいな。

二人で水族館に行くのは久しぶりだ。

 

姉さんと一緒に水族館に行ったのは中学生の頃だったから、かなり久々だ。

俺達は姉さんが中学に入った頃から付き合っている。

 

そうなったきっかけは、数年前になる。

 

俺はいつも通り姉さんと寝ていると、姉さんに襲われた。

そこから付き合うようになったのだ。

 

その後も両親にバレないようになんとか隠し通した。

そして現在に至る。

 

「たっくんと二人で水族館って久しぶりだね。」

 

「ああ、そうだな。二年ぶり位か?」

 

「そうだね。二年と45日ぶりだね。」

 

正確な日にちまで覚えて居るのか。

嬉しいな。姉さんがそこまで覚えていてくれるなんて。

 

「さて、早く行こうか。」

 

俺は髪をセットして服を着替えた。

 

「たっくん、やっぱりカッコいいね。」

 

「いやいや、姉さんが選んでくれた服がカッコいいだけだよ。」

 

俺が姉さんの家に引っ越して来てすぐに姉さんに買って貰った服を着ている。

姉さんが選んでくれただけあって凄くオシャレだ。

 

「姉さんもその服着てるんだ。」

 

「うん。ペアルックだね。」

 

姉さんの着ている服は、俺の着ている服と上下の色が逆なペアルックだ。

俺達は家を出て駅に向かう。

 

その間にも手を繋いでいる。

 

「たっくん、楽しみだね。」

 

「そうだな。俺は姉さんと一緒に来ることが出来て嬉しいよ。」

 

「私も、嬉しいよ?」

 

「ありがと、姉さん。」

 

俺達は電車に乗り込んだ。

二人で並んで座っていて、姉さんが頭を肩に乗せてくる。

姉さんの甘い香りが鼻腔をくすぐる。

 

目的地に到着して、電車を降りる。

 

「たっくん、手…繋ご?」

 

「いいよ。」

 

姉さんと手を繋いで駅を出る。

そこから水族館まではすぐそこだ。

 

「着いたよ、姉さん。この水族館も久しぶりだね。」

 

「二人で来るのは、久しぶりだね。」

 

この水族館には昔からよく来ている。

二人とも水族館が好きだったので、小さい頃から両親にねだってよく来ていた。

 

「先にどこ行く?」

 

「姉さんの行きたい所で。」

 

「うん。じゃあクラゲの所行こ?」

 

「そうだね。」

 

俺達は慣れた足取りでクラゲの所に向かう。

姉さんがずっと側から離れない。

 

それだけ嬉しいのだろう。

クラゲの所にたどり着いた。

 

「クラゲかわいい~。」

 

「確かに、このふわふわした感じがかわいいなぁ。まぁ、俺は姉さんが一番好きだけど。」

 

「ありがと、たっくん。」

 

俺達はクラゲを十分堪能した後、ペンギンの所に向かっていた。

ペンギンはかわいい。

あのペタペタ歩く愛くるしい歩き方に水の中ですいすい泳ぐそのギャップがとてもかわいい。

 

「たっくん、ペンギンかわいいね。」

 

「ペンギンかわいいな~。」

 

ペンギンのかわいさは異常。

まぁ姉さんには劣るけど。

 

姉さん以上のかわいさを持つものはこの地球上、いや、この宇宙にはいない。

 

俺達はペンギンの所を後にして、水族館の中にあるカフェにいる。

 

「ここのレモンティーが美味しいんだよね~。」

 

「そうなんだ。じゃあ俺もレモンティー頼もうかな。」

 

こうして、二人共レモンティーを注文して少し話しているとレモンティーがやってきた。

 

確かに、姉さんの言う通りここのレモンティーが美味しい。

少し甘めの味で俺の好みにちょうどいい。

 

「たっくん、次ショッピングモール行こ?」

 

「ああ、いいよ。姉さんの行きたい所なら例え火の中水の中、だよ?」

 

「優しいね。たっくんは。」

 

「姉さんほどじゃないよ。行こうか。」

 

俺達は水族館からさほど離れていないショッピングモールに向かった。

まず最初に服の売り場に来ている。

 

「たっくん、これなんてどう?」

 

「いいんじゃないかな。姉さんによく似合ってるよ。」

 

「たっくんもその服、カッコいいよ?」

 

「そうなんだ。じゃあこれにするよ。姉さんがそう言ってくれたんだし。」

 

俺達は服を購入して、ゲームセンターに向かう。

 

姉さんがクレーンゲームのぬいぐるみを欲しそうに見ていた。

 

「姉さん、あれほしいの?」

 

「うん。でも私じゃとれなくて。」

 

「なら俺がとってやるよ。ちょっと待ってて。」

 

こうして俺はぬいぐるみを取った。

タグがうんよく引っ掛かったので、一発で取れた。

 

「姉さん、これ。」

 

「たっくん、ありがと。大好きだよ。」

 

「俺もだよ。」

 

その後、レースゲームで姉さんが意外な才能を発揮したりなどゲームを楽しみ、今から家に帰る。

 

途中で公園に寄って休憩している。

姉さんは二人分の飲み物を買ってベンチにやってきた。

 

「姉さん、ありがとね。」

 

「ううん、いいよ。」

 

俺達はその後、結構な時間話し続けた。

 

「姉さん、もう暗くなってきたし、帰ろうか。」

 

「そうだね。じゃあ最後にこれだけ…」

 

姉さんは少し背伸びをして口付けした。

 

その様子を遠くから見ている者が居ることに、俺達は気づいていなかった。

 

「あれって、拓音君だよね?隣にいるのは、彼女さんかなぁ。でもすっごく似てる。まさか……お姉さんじゃないよね?」

 

そして瞳からハイライトを失う。

 

「どうして私の拓音君が……お仕置きだね。」

 

そしてジュルリと舌なめずりをして、帰っていった。



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