【休載中】転生したら不思議なことが起こった件 (鉄血のブリュンヒルデ)
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第一話 目を開くと不思議な事が起こっていた件

何となく息抜き感覚で明るいのを書きたくなりました。
正直おふざけです。反省はしてる。だが後悔はしていない。(と言いつつも足はガタガタ震えてる)

何となく書いてるので、更新は非常に遅めかもしれませんが、どうかよろしくお願いします!


「ん?」

 

違和感に気が付いたのは、その時だった。

 

「ここ、何処だ?」

 

俺は確か、渋谷で………そうだ。刺殺事件の犯人を取り押さえていたんだ。その時に、道路に轢かれそうな女の子を見つけて、飛び出して………轢かれた。

そうだ。トラックだ。トラックに跳ねられたんだ。俺生きていたのか?

 

〈そう。その通り。彼、瀧 光太郎は、車に轢かれその命を落としたのだった〉

 

ん?なんだ?頭に声が、聞こえる。

 

〈しかしその時、彼の身に、不思議なことが起こった〉

 

ちょ、ちょっと待て。一体この声はなんだ。

 

〈困惑する彼の元に、近付く一つの影があった〉

 

「っ?!」

 

困惑しながらも振り返ると、そこにはあからさまに常識から逸脱した生物がいた。

 

「ワオォォォォォォン!」

 

「ぐっ!」

 

耳を劈く様な咆哮。そしてあの見た目。狼か!ていうかデカっ!

 

「ガルルルルルッ!」

 

まずいなこりゃ。完全にロックオンされてるぞ。ていうか、なんで俺森にいるんだ?渋谷にこんな森はない筈だ。車の音や工事現場の音。信号の音。何も聞こえない。聞こえるのは、風が草や気を揺らす快適な音と、狼の唸る声だけだ。

 

〈牙狼に見つかってしまった光太郎!絶対絶命!〉

 

「うるっせぇな!ちょっと黙ってろよ!」

 

「グオォォォ!」

 

「っ?!」

 

俺が苛立ちを口にした瞬間、あの狼………牙狼が俺を切り裂かんとその凶悪な爪を生やした前足を振り上げた。

 

「やば!」

 

〈その時、不思議な事が起こった〉

 

「え?」

 

爪が俺の体を引き裂く直前に、俺の下腹部が急に光りだした。

 

「な、なんだこれ!」

 

〈光太郎は転生した際に、一つの能力を得ていた〉

 

「て、転生?」

 

俺の体は次第に光に包まれていき、徐々に黒く染っていく。

 

〈今こそ叫ぶのだ。あの言葉を!〉

 

その時、直感で感じた。俺が叫ぶべき言葉を。

 

「変身!」

 

そう叫びながら、構えを取る。そうして、俺の体は異形へと変化……いや、変身した。

 

「ガルッ?!」

 

〈その名は〉

 

「…………俺は………俺は仮面ライダー!BLACK!」

 

咄嗟に叫んだ名前は、俺が憧れたヒーローの名前だった。

 

「アオォォォォンッ!」

 

牙狼も負けじと高らかに吠え、俺に向かって突撃してくる。

 

「ハアァ!」

 

俺は構えて、拳を突き出す。

 

「ギャウゥッ?!」

 

飛びかかってきた所で、腹をアッパーで突き上げた。牙狼は距離を取り、もう一度、今度は前足を振り上げて飛びかかる。

 

「キングストーンフラッシュ!」

 

その掛け声とともに、ベルトの中央のキングストーンから強烈な光が発せられた。

 

〈今だ!必殺技のチャンス!〉

 

俺は右足を前に構える。そこにキングストーンのエネルギーが蓄積される。

 

「行くぞ!」

 

俺は飛び上がり、空中で飛び蹴りの体制を取って、叫んだ。

 

「ライダーキック!」

 

「グオォォォ?!」

 

ライダーキックが炸裂すると、牙狼は消滅した。

 

「………………マジかよ」

 

今更だが、俺の体が異形となっていた事に、愕然とした。

 

〈戦闘が終わり、仮面ライダーBLACKの体は元の光太郎の体に戻るのであった〉

 

「この力も、この頭に響く声も………一体なんなんだよぉぉぉぉぉ!」

 

俺の叫びは、森に吹く風に流され、どこかへと行ってしまった。

 

俺はこの森で一人、途方に暮れていた。一匹のスライムに出会うまで。




さて、どうだったでしょうか一話目!
ここまで読んでくれた方はお気づきでしょう。そう!私には、文章力が低い!ですが、これからもお付き合い下さい!

2/16 内容微編集


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第二話 スライム

前回のあらすじ

光太郎が目を開くと、そこは美しい森の中だった。
東京のビル街に溶け、その景色ばかりを見ていた光太郎にとっては、初めて見る大自然。
突然変わった景色に困惑する光太郎の目の前に現れたのは、牙狼と呼ばれるモンスターだった。
襲い掛かる牙狼に対して、光太郎は丸腰!絶体絶命!



しかしその時、不思議な事が起こった!

第二話 スライム


〈牙狼との戦闘を終えた光太郎は、ジュラの大森林を1人彷徨っていた〉

 

「絶望的な状況の解説ありがとよ、ナレーター」

 

この世界?に来て約二日が経った。その間に、コイツが仮面ライダーBLACKのナレーターと同じ様なものだと分かった。そして、俺が仮面ライダーBLACKのチカラを使えるという事も。

 

「さて、食料調達しなきゃな」

 

この森には、食料となる果実が豊富だ。まぁ、食えないものはナレーターがそれとなく知らせてくれるから、そこら辺は大丈夫だ。

 

「そう言えば、昨日でっかい門があったな。行ってみるか」

 

〈昨日、光太郎は散策の途中で巨大な門を見つけていた。その巨大さは、まるで龍でも閉じ込めている様だった〉

 

龍か。この世界ならいそうではある。あんなデカい狼がいるくらいだからな。

 

ナレーターは基本的に先に起こることを事前に知らせてくれる。直前ではあるが。その性質的に、本当に龍がいるのかもしれない。

 

「さてと、まぁ、とりあえず行きますか」グニュッ

 

〈光太郎が足を踏み出すと、不思議な音が鳴った〉

 

どんな解説だよ……。ていうか

 

「グニュ?」

 

「オイ!いつまで踏んでんだよ!」

 

その時、俺の足元から声が聞こえた。

 

「全く!気をつけろ……よな?………人間?!」

 

〈光太郎が踏んだのは、スライムの様なモンスターだった〉

 

いや、見たまんまスライムでいいんじゃないのか?

 

「この世界スライムまでいんのか。いよいよRPGだな」

 

俺がふとそんな事を呟くと、目の前のスライムが反応した。

 

「RPG?まさか、お前も転生者なのか?!」

 

「ん?転生?…………どうなんだろうな。気が付いたらこの森に居たんだ。だから、よく分からない」

 

そう言うと、スライムは考える様に下を向いた(というより、傾いた?)

 

「俺は瀧 光太郎。お前は?ていうか、モンスターに名前なんてあるのか?」

 

俺がそう聞くや否や、スライムはやや不機嫌そうになった。

 

「俺には友達が付けてくれた大切な名前があるんだよ!俺はリムル=テンペスト!見ての通りスライムさ!」

 

「いやいや、そこは悪いスライムじゃ無いよ、だろ?」

 

「おぉ!やっぱりお前、俺と同郷なんだな!」

 

俺が言葉を返すと、それに興奮したように跳ねた。

 

「って事は、お前も日本から来たのか」

 

まさか、同じ転生者にこんなにも早くに会うとは。

 

「あぁ!転生する前は三上 悟って名前で人間やってた!」

 

「っ!三上、悟だと?」

 

「え?何か問題でもあったか?」

 

問題も何も、三上 悟って……。

 

〈三上 悟とは、光太郎がこの世界に転生する直前に取り押さえた通り魔に刺された被害者なのである〉

 

「…い。おー…!おぉぉぉぉい!」

 

俺が考え込んでいると、リムルが俺の耳元で叫んだ。

 

「うおあ!なんだようるせぇな!」

 

「お前が急に黙り込むからだろ?!っていうか、俺とお前って面識あったか?反応的に、俺のこと知ってそうだったけど」

 

「……………いや、なんでもねぇよ。本当に日本人なんだなって思ってさ」

 

なんで、隠してんだ?いや、確かに死んだ時の事を思い出させるのは良くないと思うが、隠す必要は無かったんじゃないか?

 

「あぁ、そういう事か。確かに見た目じゃ分かんないしな!」

 

重要な秘密を隠したままの俺に、リムルが明るく言った。

 

「まぁ、スライムに日系もなにもないだろうしな」

 

俺は不自然にならない様に、明るく返した。

 

「うっせぇ!」

 

もるで旧知の友の様に話し終わった頃、俺はふと、今まで抱えていた疑問を思い出した。

 

「なぁ、ここは一体、なんなんだ?」

 

「ンーーッ……俺も詳しくは分からないんだ。何せ俺が今まで話した相手といえば、三百年前に大暴れしたドラゴンだったり、自分のスキルとかだけだしな。他は知性の無い魔物だらけ」

 

「ふぅぅん。なるほどね………スキルと話すってどゆこと?」

 

「俺にもよく分からないんだけど、俺のスキルの大賢者は俺の補助をしてくれるんだ。それこそ、スキルの獲得のアドバイスとか」

 

スキル……この世界では、自分に宿る力をそう呼ぶのか。

 

「あと、他人のスキルを調べる事も出来るぞ」

 

「マジか。じゃあ、俺のも見てくれよ。正直俺もよく分からないんだよ」

 

「おう!いいぜ!」

 

そう言ってリムルが俺を見る。

 

「ええっと、ナレーター?って言うのがあるぞ」

 

「まんまだな、オイ……」

 

「それと、変身?」

 

俺がナレーターの名前の安直さに驚いている時、リムルがもう一つのスキルの名前を告げた。

 

「変身………出来るぞ」

 

「本当か?一体何にだ?」

 

コイツも同じ世界から来たなら、名前くらいは聞いた事あるだろ。

 

「仮面ライダー」

 

「っ?!仮面ライダー?!マジかよ!一体何になれるんだ?!なぁ、見せてくれよ!」

 

リムルが怒涛の勢いで(足下に)詰め寄ってくる。

 

「おう、見せてやるよ…………変っ身!」

 

俺がポーズをとってそう叫ぶと、体は光に包まれ、体は黒く染まり、大きな赤い複眼を持った姿に変わる。

 

「そ、その姿は、仮面ライダーBLACK!」

 

「おっ!知ってるか!」

 

これは有難い。正直、この世界でこの姿は不審がられるのでは無いかと思い始めていた所だが、コイツには理解を得られている。まぁ、同郷だからなんだけど。それでも、理解者がいると言うのは心強い。

 

「さて、それじゃあ適当に歩くか」

 

「そうだなそれじゃあ「強き者達よ!」ん?」

 

〈光太郎達が歩き始めようとしたその時、後方から声が聞こえた〉

 

ストレートだな。けど、誰だ?

 

「強き者達よ。この先に、何か用事がおありですか?」

 

〈そこに立っていたのは、貧相な体つきにボロボロの武器を持った、か弱き者達だった〉

 

コイツら、見た目的にゴブリンって奴か。ていうか

 

「「強き者?」」

 

「お前じゃね?光太郎」

 

「いや、ここは逆にお前ってパターンもあるだろ」

 

「いやいやお前だって」

 

「いやいやいや。お前だろ」

 

まぁ、スライムとBLACKなら、本来BLACKに軍配が上がる。しかしコイツは特別性だ。普通に俺より強いかもしれない。

 

「確か、言葉が思念を乗せて話せばいいんだっけか?」

 

「今俺と話しているのは違うのか?」

 

「んー、なんか違うらしいぞ」

 

そんな会話をした後、リムルが大きく息を吸った。

 

「えーっとォ!初めましてェ!俺はスライムのォ!リムルって言うゥ!………あれ?」

 

リムルが気がついた頃には、全員が地べたに土下座していた。この世界にも土下座ってあるんだな。

 

「貴方様の力は充分に分かりました!ですから、どうか声を鎮めて下さいぃ!」

 

「思念が強すぎたかな?………それで、俺達になにか用?

 

「強力な魔物の気配がしたので、警戒に来た次第です…」

 

「そんな物、俺には感じられないけど?お前は?」

 

「いんや全く」

 

まぁ、恐らくこのパターンは俺かリムル。又は両方ってパターンだな。しかし、俺は魔物とは違うし。

 

「ご冗談を!その様な姿をされていても、我々は騙されませんぞ!」

 

「やっぱり俺の事か…」

 

そりゃな。

 

「それに、隣に居る貴方様もです!魔物とは違いますが、人間とも違う。しかしながら強大な力を持っている!」

 

「あー、やっぱり俺も含んでたのか。まぁ、強き者達って言ったしな……」

 

俺がそう返すと、ゴブリンらしき魔物が、おずおずと告げた。

 

「強き者達よ。貴方達を見込んでお願いがあるのですが……」

 

「「ん?」」

 

唐突に告げられたその言葉に、俺もリムルも、頭にはてなマークを浮かべた。尚、リムルには実際に浮かんでいた。スライムだけど。

 

 

 

〈その後光太郎達は、ゴブリンの村に案内された〉

 

それにしても粗末な村だ。キングストーンフラッシュだけで壊せるんじゃね?

 

「ふんん…っ。ようこそお客人。私はこの村の村長をさせて頂いております」

 

こりゃまた随分とそれらしい奴が出てきたな。

 

「はい、どうもよろしく…それで、自分らにお願いとは、なんですか?」

 

リムルがそう聞くと、さっきのゴブリンと村長が頷き合い、そしてこちらに向き直り語り出した。

 

「実は最近魔物の動きが活発になっているのはご存知でしょうか?」

 

「いや?」

 

魔物の動きが活発になっている………。あの牙狼とか言うのもそうなのか?

 

「我らの神が一月前にお姿をお隠しになったのです。その為近隣の魔物がこの地にちょっかいをかけ始めまして……」

 

なるほど。それで警戒に来てたのか。

 

「我々も応戦したのですが、戦力的に厳しく…」

 

「それで!貴方様達に!」

 

「力を貸して欲しいってか?」

 

俺がそう言うと、ゴブリンは頷く。

 

「しかし、自分はスライムですので、期待されている様な働きは出来ないと思うのですが…」

 

「俺も人間だし」

 

俺達がそう言うと、ゴブリンとゴブリンの村長は笑いながら言った。

 

「ハハハハっ……またまたご謙遜を」

 

「ご謙遜を」

 

「「?」」

 

「ただのスライムにそこまでのオーラは出せませぬよ。相当に名を馳せる魔物なのでしょう。そちらの人間のお方も、オーラこそは発せられておりませんが、先程この者から聞き及んだ限り、何やら姿を変えられるとか」

 

なるほど、そういう事か。それに、オーラねぇ。

 

「オーラ?」

 

リムルはさっぱりみたいだな。

 

その後、少し間を置いてリムルは頬?を赤く染めて汗?をダラダラと垂らした。

 

「……フフフッ。流石は村長、分かるか?」

 

うわ、あからさまに態度変えやがった。

 

「勿論でございますとも。漂う風格までは隠しきれていません」

 

「そうかぁ。分かってしまったか。お前達は中々見所があるようだな」

 

調子に乗った、訳ではなさそうだな。場に合わせたのか。

 

「フゥーーンッ!」

 

リムルはそんな掛け声を発した。おっ、視界がスッキリした。こいつと会う前から視界が濁ってた気がしたんだが、オーラのせいだったのか。

 

「おぉ我々を試されていたのですね?そのオーラに怯える者も多かったので助かりますぅ…」

 

「そ、そうだな!怯えずに話しかけてくるとは、見所があるぞ!」

 

(何の見所だ。焦り過ぎだろ)

 

「ああありがとうございます。それで、お願いと言いますのは……」

 

〈ゴブリンは語った。この村が、以前光太郎を襲った牙狼と呼ばれる魔物の本体、牙狼族により襲撃を受けていると。そしてその戦いで、ゴブリンの戦士が複数犠牲になった事を。そして、唯一いた名持ちの戦士すらも、牙狼により命を絶たれ、ゴブリンの村は、危機に瀕しているという事を〉

 

これが、魔物の世界か。弱肉強食とは、まさにこの事か。ていう事は、あの牙狼もその一匹だったって訳だ。

 

「牙狼族は全部で百匹程度。」

 

「………こっちの戦力は?」

 

「戦えるのはメスも合わせて60匹くらい」

 

絶望的な戦力差だな。こりゃ、誰かに縋りたくもなる。

 

「その名持ちの戦士は、負けると分かっていて戦ったのか?」

 

「いいえ牙狼族の情報は、その戦士が命懸けで入手したものなのです」

 

命、懸け…………。

 

「戦士は私の息子で、これの兄でした……」

 

「クッ!」

 

二人は、今にも泣きそうな声で言った。

 

「そうか………悪いことを聞いた」

 

リムルはそう言いながら、出入口から覗くゴブリン達を見た。

 

「……村長、一つ確認したい」

 

「は、はいぃ…」

 

「俺がこの村を助けるなら、その見返りはなんだ。お前達は俺達に、何を差し出せる?」

 

その言葉に、俺は引っかかった。だが、この会話を止めるのは、良くねぇか。

それに、コイツはきっと本心では見返りなんて求めてねぇ筈だ。

 

「わ、我々の忠誠を捧げます!我らに守護をお与えください!さすれば我々は、リムル様に忠誠を誓いましょう!」

 

「っ!誓いましょう!」

 

二人のゴブリンが、地に頭を伏せる。この光景を、俺は何度も目にしている。

犯人を捕まえてくれと懇願する姿。今回だけ見逃してくれという、小さな犯罪を犯した犯罪者達の謝罪。捜査の失敗を上司や被害者、被害者遺族に報告する時。

それら全てが本意だという訳では無い。だが、この二人は心の底からの言葉を乗せて、地に頭を伏せた。

 

「分かった。引き受けてやるよ」

 

俺がそう言うと、ゴブリンは嬉しそうにこちらを見上げた。

 

その時だった。

 

ワオォォォォォォンッ!

 

「っ?!」

 

「ハッ?!」

 

若いゴブリンが、その咆哮に咄嗟に振り返った。そして弾かれる様に出口へと向かい、その方角にある岩山を見た。

 

「が、牙狼族だァァァ!」

 

「ヤバイヨヤバイヨォ!」

 

「おしまいだぁ!」

 

「俺達食われちゃうんだァ!」

 

一人のゴブリンがそう叫ぶと、他のゴブリン達にもその恐怖が伝播した。

 

「逃げようよ!」

 

「どこへ?!」

 

「おおおお前達落ち着きなさいぃ…」

 

その時、リムルが表に出た。

 

「ビビる必要は無い。これから倒す相手だ」

 

「あぁ、では」

 

村長の目に、希望の光が差し込む。

 

「お前達のその願い、暴風龍ヴェルドラに代わり、このリムル=テンペストが聞き届けよう!」

 

その言葉を告げると共に、全てのゴブリンがリムルの前に頭を下げた。

 

「はあぁあぁ………ありがとうございます…我々はリムル様達の忠実な下僕でございます!」

 

「任せておけ」

 

〈こうしてリムルは、ゴブリン達の主 兼 守護者となった。そして光太郎は、とある決意を固めるのだった〉

 

魔物がいる世界。コイツらが人間の存在を知っているという事は、共存、もしくは敵対しているのかもしれない。どちらにせよ、この世界に魔王的な奴が存在するのは確実だろうな。

俺がこの世界に転生した意味は、一体何なんだろうな。

 

〈こうして、リムルと光太郎。二人の転生者の物語が始まったのであった〉



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第三話 牙狼と月の影

前回のあらすじ

光太郎は一体のスライムと出会った。
そのスライムは、なんと光太郎と会話が出来たのだ。
そして、話していくうちに、光太郎が死ぬ直前に逮捕した殺人犯が起こした、殺傷事件の被害者の”三上 悟”である事が分かった。だが光太郎はそれ伏せ、リムルと名乗るスライムと行動を共にする事を決める。
そして、その直後に出会ったゴブリンを助ける事となる。

第三話 牙狼と月の影


「なるほど。こりゃ絶望的な戦力だな」

 

「おい、光太郎。ハッキリと言い過ぎだぞ」

 

俺がゴブリンの戦力に対してのコメントを告げると、リムルから非難の声が上がる。しかし、仕方ないだろ。

 

〈光太郎の視線の先には、貧弱過ぎる装備のゴブリン達が数十匹群がっていた〉

 

「プレッシャーだなぁ……」

 

リムルはそう言いながら天を仰いだ。しかしそれもすぐに終わり、またシャンとした姿勢(?)に戻った。

 

「皆、状況は分かっているか?」

 

リムルはそう言ってゴブリンのリーダーを見た。

 

「はい!生きるか死ぬかの戦いになると、覚悟は出来ております!」

 

ゴブリンのリーダーが敬礼の様なポーズをとると、近くにいた一匹のゴブリンもそれに習い、敬礼の様なポーズをとった。

 

ちなみに、さっきから敬礼の”様な”と態々言っているのは、あれが正しい敬礼と呼べないからだ。

 

まず一つ。あれは形だけで言えば挙手の敬礼と呼ばれる物だ。挙手の敬礼では、相手に掌は見せない。

二つ。挙手の敬礼をする最低条件。帽子を被っていること。

以上の二つの事から、あれは敬礼とは呼べない。

帽子を被っていない時は、10度の敬礼と言うものを行うのだが、まぁ、そこら辺は追追指導するとしよう。

 

「気負うことはない。気楽にな!最善を尽くす。その事だけを考えろ!」

 

リムルがそう言うと、ゴブリンから歓声があがった。

 

「んんっ!まずは負傷者の所に案内してくれ」

 

そう言ったリムルに対して、一匹のゴブリンが「自分が案内します!」と名乗り出てきた。そして、これもやはりボロボロの建物に案内された。この中に負傷者がいるらしい。

あの牙狼の戦闘力とコイツらの戦闘力。この二つは比べるまでもなく圧倒的だ。一体どの程度で済んだのやら。

 

「出来るだけの手当はしましたが…」

 

その言葉に偽りは無いのだろう。

 

〈負傷したゴブリン達には、汚い布ではあるが、出血部はある程度と覆われていた。骨折しているであろう者のその部位には、しっかりと接木も当ててある〉

 

ナレーターの言う通りだ。だが、恐らく知識も技術も足りていないんだ。回復薬もない。医療器具なんて以ての外。その中で、出来るだけの手当は施してある。

 

そんな事を考えていると、突然リムルが一匹のゴブリンを飲み込んだ。

 

「っ?!」

 

「リムル様?!一体何を?!」

 

村長がおどおどしながら問う。恐らく何か策があるんだろうが、せめて先に説明を入れろ。

 

「んべっ!」

 

そして今度は、さっきのゴブリンを吐き出した。

 

「うぐっ!………あれ?俺……」

 

「ホアァァァァ?!き、傷が?!」

 

「治っている!」

 

村長が枯れた声で驚く。なるほど。アイツ体の中で何かしやがったのか。

 

「おいリムル。一体どういう仕組みだ?」

 

俺は小さくそう聞いた。

 

「ん?あぁ、一回捕食して、そんで体の中に貯めてある回復薬をぶっかけたんだよ」

 

「なんじゃそりゃ」

 

〈光太郎のその言葉を聞かずに、リムルはそれと同じ作業を全てのゴブリンに行った〉

 

「うげっ!」

「へぶぅ!」

「あう!」

「はぎぃ!」

 

いや、せめて、そっと置いてやれ。投げるな。

 

「さ、流石はリムル様!」

 

「「「「「ははぁぁぁ!」」」」」

 

それを見ていた村長を含むゴブリン達は、深深と地に頭を伏せた。そしてリムルは、そのゴブリン達の頭を上げさせ、言った。

 

「柵を作る!村の防備を固めるぞ!」

 

〈リムルのその言葉に、ゴブリン達は力強く頷くのだった〉

 

 

 

「え?光太郎は戦わないのか?」

 

その後、ゴブリン達にある程度の指示を出して暇になった俺達は、少し今後の方針について語り合っていた。

 

「あぁ、そうだ。考えてみろ。俺は人間だ。魔物の長になるのは、同じ魔物の方がいいだろ」

 

リムルの問に対して俺は、そう答えた。

 

「確かにそうだけど、それと今回戦わないのって何か関係あるのか?」

 

まぁ、普通その疑問が浮かぶだろう。予測はしていた。だから俺は、自分の考えの通りに答えればいい。

 

「いくらお前が強くても、実績がなきゃ誰もついてこねぇ。だから、今回はお前一人の手柄にした方が、都合がいいだろ?」

 

「なるほど。そういう事か。じゃあ光太郎は、ここでの立ち位置はどうするつもりなんだ?」

 

そこだ。俺が今回リムルに話したかった事の中で、一番重要な部分だ。

 

「この戦いが終われば、この周辺のゴブリン村にも噂が広まるだろう。恐れていた牙狼族が討たれたってな。そうなった時、お前の元に下ろうとする者が多く現れるはずだ。その時、お前の威光だけで全てを治める事が出来ないかもしれない」

 

「ふむふむ。それで?」

 

リムルがしっかり聞いている事を確認し、俺は話を再開した。

 

「それに、外からの襲撃とかが無いとも限らない。だから俺は、この村に防衛機関を作りたいと思っている」

 

これは俺が、先の戦力の確認の時に思いついた事だ。

 

「防衛機関?」

 

少し押しが弱いか?なら、もう一押しするか。

 

「そうだ。例えば警察の様な、兵団組織を作れればいいと思っている」

 

「なるほど。それなら、戦闘員と非戦闘員をある程度は区別できるって訳だ」

 

「あぁ、そうだ。襲撃時には、少し徴兵制をとるが、それは自由に選ばせる。お前は村の主。俺は村の守護者って訳だ」

 

守護者とは、少し飾った言い方だがな。実際、俺達警察は常に市民を守れる訳じゃなかった。俺達は、事件が起こってからじゃないと動けない。

 

疑わしきは罰せず。

 

俺達の国の美徳とも言える言葉だが、それと同時に、俺達警察を縛る言葉でもあった。

怪しい。アイツが犯人だ。そう確信しても、疑わしいだけでは俺達はソイツを検挙出来ない。

もし証拠が揃っても、金持ちなら慰謝料や保釈金を払ってすぐに出ていく。そもそも、警察上層と繋がりのある政治家の違法行為だって、俺達は捜査を途中で中断させられた。それに反発して、俺は巡査に降格したわけだ。

 

「分かった。それじゃあ、戦いが終わったら詳しく話そうぜ。これからよろしくな!」

 

リムルはそう言って、体の一部をの伸ばして、手を作り出した。握手を求めているのか。

 

「おう」

 

俺は迷うこと無くその手をとった。

 

ヌニュッ

 

だが俺は、変な効果音が出る程柔らかいその手をすぐに離した。

 

「うっわ」

 

「やめろよ!そんな声出すな!スライムなんだからしょうがないだろ!」

 

「ハハハッ!冗談だって」

 

流石に本気では無いがな。少年時代にスライム作って遊んだ事あるから、まぁまぁ慣れてるし。

 

その時だった。

 

「リムル様!コウタロウ様!牙狼族がこの村に近付いています!」

 

一匹のゴブリンが、俺達に駆け寄りそう言った。

 

「っ!分かった!」

 

「俺は一応奴らの後ろに回って退路を塞いでおくが、俺の仕事を増やすなよ?」

 

「安心しろ。今回の手柄は全部俺が持っていくから!」

 

俺達はその言葉を合図に別れた。

 

〈そして光太郎は、森の中に入り気配を消しながら、牙狼族の後ろに回ったのだった。だがその時、何者かが光太郎に近付いていた〉

 

「っ?!誰だ!」

 

俺は気配がした方へと視線を向けた。

 

「…この気配、牙狼なんかじゃねぇな?」

 

「よく気が付いたな。あと一瞬でも遅れていれば、俺の刀の錆にしていた所だ」

 

ガチャッガチャッ

 

まるで、鎧を纏っているかの様な足音だ。暗闇から聞こえる足音に、俺は感覚を研ぎ澄ます。だが俺は、目に映った姿に、呆気にとられてしまった。

 

「シャドームーン、だと?」

 

〈そこに立っていたのは、BLACKの敵役として登場した、シャドームーン。この世界に存在する筈の無い存在だ〉

 

「ほう。俺の名を知っているのか……貴様まさか、転生者か?」

 

シャドームーンは、少し驚いた様な仕草の後に、こちらを見ながら見ながら言った。

 

「さぁな。そういうお前こそどうなんだよ」

 

「質問に答える義理は無い」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すぜ」

 

俺のその言葉と共に、シャドームーンが自身の武器であるサタンサーベルを取り出して、赤い斬撃を飛ばして来た。

 

「っ!変身!」

 

俺はブラックに変身しながら、その攻撃を躱した。

 

「ほう。貴様、ブラックサンか。面白い。互いに運命の出会いという訳だ」

 

コイツ、ブラックを知ってやがる。てことかこいつも転生者か?いや、この世界に同質の力があるのかもしれない。迂闊に喋ると、向こうに情報が行くだけだ。

 

「避けてばかりではつまらんぞ。真面目に戦え」

 

「よく言うぜ。こっちは身一つなのに、そんな武器使ってしかも遠距離技。真面目に戦えよ」

 

挑発に乗るにしても乗らないにしても、まだ策が浮かばない。とにかく今は、攻撃を喰らわない事だ。

 

「そうか。なら、これで平等だな」

 

シャドームーンはそう言いながら、サタンサーベルを地面に突き刺した。

 

「はんっ。後悔すんなよ?」

 

「する筈もないだろう。俺が勝つというのに」

 

確かに奴の言う通りだ。俺と奴じゃ、力の差があり過ぎる。

 

ザッ!

 

俺は地面を蹴って、一気に間合いを詰めた。そして拳を引き、遠心力を加えてシャドームーンの横っ面に拳を当てた。

 

「………その程度か?」

 

オイオイ、マジかよ。今の割と力込めてたんだが。

 

「んな訳!」

 

俺はそのまま体を反転させながら腰をひねり、後ろ回し蹴りを胴体に命中させた。

 

「効かんな」

 

コイツ、硬すぎるだろ。こうなったら初っ端から本気の一撃当てるしかねぇか。

俺はとにかく距離を取ろうとした。だが、それを許す程、奴は甘くない様だ。

 

「フンッ!」

 

ガチャンッ!

 

奴は地面を蹴り、こちらに迫って来る。俺の倍に近い速度で。体制は不安定だが、やるしかねぇか!

 

「ライダーパンチ!」

 

奴が俺に追いつくタイミングを見て、右の拳を突き出した。

 

「グッ?!」

 

流石に奴も、不安定な体制ではまともな防御は出来なかったらしく、後ろに飛ぶ。

しかし俺も、その反動で勢いを増して、そのまま近くの樹木に激突した。

 

ドカァァァンッ!

 

「フフフッ。中々やるようだな」

 

奴は不気味に笑う。まだまだ余裕綽々って感じだな。

 

「だが残念だ。お前はまだ実戦経験が少ないらしいな」

 

「なんだと?一体何の」

 

何の事だ。そう聞こうとしたその時だった。

 

ザクッ

 

何かが、俺の腹部を貫いた。

 

「な、あ、ガァ?!」

 

それは、サタンサーベルだった。

 

「何故これが、こんな所に?!」

 

「俺の力さ。それを操って、お前に飛ばした。それだけさ」

 

「ふざ、けんなぁ!グアァ?!」

 

ふらつきながらも、奴に近付こうとした。だが、勢いよく引き抜かれたサタンサーベルと共に、俺の体から血が溢れ出した。そしてあまりのダメージに、俺の変身が溶けてしまった。

 

「お前の力、中々だったぞ。だが、このまでだ。そこでじわじわと襲ってくる死の恐怖に怯えながら、尽き果てろ」

 

シャドームーンは、そう言いながら森の暗闇に消えていった。

 

〈光太郎は暗闇の中で、シャドームーンの背中を睨みながら、意識を手放したのだった〉




ここで説明です。

これから、リムルなどの漢字を知っている者が光太郎を呼ぶときにはそのまま「光太郎」と書き、それ以外の者が呼ぶときは「コウタロウ」とカタカナで表記します


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第四話 話し合い

前回のあらすじ

牙狼との戦闘が始まる頃、光太郎にある一つの影が迫る。
その者はシャドームーンと名乗る。その名は、光太郎が知る、仮面ライダーBLACKの宿敵に酷似しており、光太郎は動揺しながらも戦闘を開始。
だが、シャドームーンの圧倒的な力を前に、光太郎は倒れてしまう。
光太郎の運命や如何に!

第四話 話し合い


「…い………オイ!光太郎!起きろ!」

 

「っ?!」

 

突然、俺の耳元で、大声が響いた。

 

「おっ、目を覚ましたか!」

 

その声の主は、リムルだった様だ。

 

「ここは?」

 

「ゴブリン村だ。お前、腹から血を流して倒れていたんだ。一体何があったんだ?ここら辺の魔物なら、お前に勝てる奴なんて居ないはずだぞ」

 

腹から、血を……。そうか。俺は、奴に負けたんだ。

 

「大した事じゃねぇさ。たまたま牙狼と一緒に強い魔物が流れて来てたんだ。追い払ったが、腹に一発貰っちまってな」

 

無論嘘だ。リムルも気が付いているだろう。だが、ここで無用な心配をかけても仕方が無い。それより……。

 

「その牙狼なんだよ」

 

「あぁ。牙狼族改め嵐牙狼(テンペストウルフ)族の新リーダー、嵐牙(ランガ)だ」

 

「あなたがコウタロウ様であられますか。我は先日からリムル様の眷属となった、ランガと申します。以後、よろしくお願いします!」

 

そう言ってランガは尻尾を振っていた。僅かだが、風が吹いた。尻尾で風を起こすとか、どうなってんだよ。

 

「おぉ!コウタロウ様!目をお覚ましになられましたか!」

 

俺がランガに呆気にとられていると、入口から大きな声が聞こえた。

 

「誰だよお前!」

 

そこに立っていたのは、筋骨隆々とした、ゴブリンの様な奴だった。

 

「リグルド。村長だよ」

 

「どうしてこうなった?!」

 

俺が眠ってる間に、一体何がありやがったんだ。

 

「リムル。説明頼めるか?」

 

「おう!」

 

それからリムルに、俺が眠っていた四日間の事を聞いた。というより、俺が四日間も眠っていた事に驚いた。

どうやら、俺が負った傷は特殊な呪いの様な物らしく、リムルの回復薬を持ってしても、完治に時間がかかったという。サタンサーベルの力か。

 

「しかし、まさか牙狼族が仲間になるなんてな。予想外だったわ」

 

「俺も、リーダー討ち取って他の仲間は逃げ帰るって言うのが目標だったんだが、まぁ、これはこれでありだろ」

 

まぁ、戦力としても防衛力としても、そして足としても活躍が見込めるってんなら、俺としても文句はない。

 

「そう言えば、俺はリグル達と一緒にドワーフが住むドワルゴンという国に行こうと思うんだが、お前はどうする?」

 

ドワーフね。多分、さっき言ってた街作りの為だろう。しかし、俺は俺で、今の話の中で決めた事がある。

 

「悪いな。俺はこれから人間の国に行こうと思っている」

 

「人間の国?どうして突然」

 

突然、という程でもない。俺は最初からそのつもりだったからな。まぁ、目的は違うが。

 

「一応この世界の人間の技術も見ておきたいんだ。それと、色々調べたい事もある」

 

もしアイツが…シャドームーンが俺達より早くこの世界に来ていたなら、何かしらの記録が残っている筈だ。

そして何より、俺達はこの世界を、まだ魔物の視点からしか見ていない。それだと考えに偏りが生まれる。それはあまり好ましくは無い。

 

「なるほどなぁ。それじゃあ、留守はリグルドに任せるとしよう。俺達はそれぞれ出来る事を」

 

「あぁ」

 

〈かくして光太郎は、一番近くにある人間の国、ブルムンド王国に出向く事となった〉

 

そして翌日、俺は村の出口に、リムルと共に立っていた。

 

「お前が出るのはあっちだろ」

 

俺はもう一つの出口を指す。まぁ、大した距離は無いが。

 

「いや、お前が人間の国に行くってのに牙狼を連れてないから、不思議に思って。ここからじゃ結構かかるらしいぞ?」

 

「フッ。俺が何も考えてない訳ねぇだろ?お前には知らせて無かったが、俺は昨日の夜、ある物を手に入れたんだよ」

 

「ある物?」

 

リムルが不思議がっているのを、少しニヤりとしながら見る。そして俺は、近くにある木の葉で作ったマントで隠していた、ある物を日の目に晒した。

 

「そ、それは!」

 

「そう!バトルホッパー!」

 

その名もバトルホッパー。仮面ライダーBLACKに登場した、専用マシンだ。昨日突然、俺の目の前に現れた。確か本編じゃ意思があったが、コイツにもあるらしい。

 

「これで、ブルムンド王国まで行く。動力は、まぁ問題ないだろ」

 

「しかし、この世界にもバイクってあるんだな」

 

それは、どうだろう。これ一つって可能性もある。

 

「まぁ、そこら辺は向こうで調べるか。とりあえず、行ってくる」

 

「あぁ、道中気を付けろよ」

 

〈リムルの言葉を背に受けながら、光太郎はバトルホッパーに跨りフルフェイスのヘルメットを被る〉

 

そして俺は、ハンドルを捻り、バトルホッパーのエンジンを起動。そしてブルムンド王国へと走り出した。




分かってるんです。投稿が遅いってことくらい……


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第五話 憲兵

ブロロロロロロロロロロロロロロ…………ッ

 

〈光太郎が旅立って五時間。

光太郎の目に写っているのは、人が住まう国、ブルムンド王国だ〉

 

俺はバトルホッパーのエンジンを止めて、車体を覆う様に迷彩マントをかける。

 

「ここからは徒歩か。まぁ、五分もあれば着くだろ」

 

〈光太郎の言葉通り、そこからブルムンド王国までは五分程で到着した。そしてそれから、ブルムンド王国の入口に辿り着いた〉

 

あれは、憲兵か?

手を挙げて……止まれってことか。

 

「ここから先はブルムンド王国の領土だ。ただいま国境付近で商人の襲撃が頻発している。念の為に身分証の提示を願おう」

 

丁寧な物腰の憲兵だ。

しかし拙いな。俺は身分証なんて持っていないぞ。

 

「……悪いな。俺は身分証を持っていないんだ。辺境から出てきたもんでな」

 

嘘を言ってもバレる。なら初めから本当の事を言った方がいい。

だが、話の半分は少し危うい。間違ってはいないのだが、魔物の村とまでは言えない。

まだ交番勤務に落とされる前に捕まえた詐欺師が言っていた。

『本当にバレない嘘をつく方法は、本当な話とありそうな話の中にそっと嘘を添えることだ』

犯罪者の考えに同調するようで気乗りはしないが、これも目的の為だ。仕方がない。

 

「では、何をしにこの国へ?」

 

流石にこれだけでは通されないか。当たり前だ。

だが、今ので少し緊張がほぐれたようだ。本物の盗賊なら、ここで攻撃を繰り出す。

俺は少し前まであちら側だったんだ。その位は分かる。

 

「この国に、大きな資料館があるって聞いてな。以前俺を襲った野郎の情報が無いかと思ってきたんだ」

 

そう言って俺は、服をめくり腹部の傷を見せた。

リムルの回復薬でも傷跡までは消せなかったらしい。最初に聞いた時は嫌な感じだったが、ここで役立たせて貰おう。

 

「なるほど。しかし、身分証を持っていないとなると、そう簡単に通す訳にはいかんのだ」

 

そりゃそうだわな。けど、こっちも奴の情報は掴みたい。例え小さくても。

 

「そうだ。この国でその身分証の発行って出来るのか?」

 

俺が聞くと、憲兵は頷きながら答える。

 

「しかし、結局持っていないと入れないのだから、どこか別の入国が簡単な国で作る訳にはいかんのか?」

 

普通ならその手もあるが、俺はなるべく早く情報を手に入れたい。だから、この国に今入る必要があるんだ。

 

「…………あ、だったらアンタが着いてくればいいじゃん。ここは他の兵に任せてさ。あの小屋の中にいるんだろ?」

 

「え?」

 

俺の提案に、憲兵は間の抜けた声を出した。

 

「見た所アンタ、中々の腕の持ち主だろ。そんなアンタが一緒に行くなら、俺が悪人であっても取り押さえられるはずだ。違うか?」

 

「……まぁ、確かに腕に自信はある。だがしかし…」

 

んー、これはどうしたものか。完全な堅物タイプだ。

一か八か、これに賭けるか。

 

「仲間の事、信じてないのか?」

 

「っ?!そんな訳が無いだろう!」

 

よし、食いついた。

 

「なら、任せてもいいんじゃねぇか?それか逆に、アンタが残って他の誰かを付けてもいい。

俺は身分証をとって、資料館に行って、そんで帰るだけだ。そんなに時間はかけねぇよ」

 

「………………分かった。私が同行しよう」

 

これで第一関門は突破だ。

 

「少し待っていてくれ。他の兵を呼んでくる」

 

「あぁ」

 

さてと………身分証か。咄嗟に理由にしていたが、案外いいかも知れない。これから人間の国とリムルの村。交流が全く生まれないはずが無い。

その時に身分を証明されている者がいれば、少しは役立つはずだ。

 

「すまん。待たせたな」

 

「いや、そんなに待ってはいな…………え、アンタ女だったのか?」

 

想定外だなオイ。

 

〈光太郎の前に現れたのは、先程同様甲冑を着込み、唯一兜をとった女性を姿だった〉

 

俺が驚いていると、目の前の女は真面目な顔のまま答える。

 

「女の冒険者は多くいるが、兵となると少ない。女と言うだけで舐めてかかる様な連中もいる。

だから、兜を被っている時のみ、魔法で声を変えているのだ」

 

そんな魔法まであるのか。

リムルに聞いて魔法がある事は知っていたが、この世界の魔法は某RPGの様に戦闘向きの物ばかりという様な感じではないみたいだ。

 

「力で黙らせるってのもあるが、職業的に無理だしな」

 

「そうだ。で、行くのだろう?支度はできているのか?」

 

憲兵は頷きながらそう言った。

 

「出来てないわけないだろ?………あ、いや、一つだけ聞いておこうか」

 

「なんだ?」

 

後々の事を考えると、憲兵の知り合いは貴重だ。

 

「アンタの名前だよ」

 

俺がそう言うと、憲兵は一瞬驚いた様な顔になり、また真面目な顔に戻って背筋を伸ばし言う。

 

「私はブルムンド王国自警団第一部隊 カナリア=アストレイ。これより貴殿を、自由組合の支部へと招待しよう」




4・ヶ・月・ぶ・り

今回オリジナルの組織を作りました。


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