白い兎は天然でマイペースな兎に懐かれる (ネム狼)
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プロローグ ―白兎と天然兎の出会い―
白兎は守ることを決意し、兎は白兎に恋をする


まさかの2作目です
おたえ書くのは初になりますので、文章がアレなところとかあるかもです。
最初は二人の馴れ初めをお送りします。
では、本編どうぞ。


 白雪白兎(しらゆきはくと)と花園たえとの出会いはウサギ小屋から始まる。

 

「そこで何をしているの?」

「ウサギを見ているんだよ」

 

 最初の出会いはとても印象的だった。

 

 小学3年の頃になるが、ウサギ小屋の前でウサギを見ている君を見て最初は「何だこいつ?」っていうのが第一印象だった。ウサギを見ているだけってもしかしてアレなのか?こいつは変人?それともただのウサギ好きなのか?

 

 

――君の最初の印象は本当にそれだけだった。

 

 

「ウサギ、可愛いでしょ?」

「え?可愛いの?」

「よーく見たら君もウサギの可愛さがわかると思うよ」

 

 そう言われるがままに君に「隣に座って見てみなよ」と言われてウサギ小屋の中を見ることにした。でも見てもその可愛さはわからなかった。

 

「どう?可愛いでしょー?」

「ごめん、わからないや」

「わからないかぁ。大丈夫だよ。そのうちわかる時が来るよ」

「そうかな?」

「そうだよ!ねえ、もしよかったらまた来てよ!」

「えっ、いいの?」

「もちろん!むしろ私は来てくれたら嬉しい!あ、まだ名前言ってなかったね。私は花園たえ!君は?」

「僕は……白雪白兎。よろしく……。」

「白兎?なんか白いウサギみたいだねぇ」

 

 白いウサギ!?急にこの子は何を言ってるんだ!?まあ、言われてもおかしくないか。僕の髪の色は白いし目が赤いから、本当にそう見えてしまった。

 

「白ウサギだなんて、呼ばれたこともないよ」

「いいじゃん。なんか可愛いし」

「可愛い?まあ、いいかな。それでもいいかも」

 

 でも、君に白ウサギと初めて呼ばれた時にはそんなに嫌な感じはしなかった。

 

「でも、白ウサギはあれだから……よし!ハクくん!」

「え?」

「君のことは今日からハク君って呼ぶよ!私もたえちゃんって呼んでいいから」

「でも、初対面だよね、僕達?いいの?」

「私は別にいいよ。ぜーんぜん気にしないから」

「そ、そう……。じ、じゃあよろしくたえちゃん」

「よろしくね!ハク君!」

 

 

――これが、僕……いや俺とたえとの出会いだった。

 

▼▼▼▼

 

 そして数日経って、僕とたえちゃんは友達になった。そんなある日たえちゃんと会ったとき、なにやら落ち込んでいる表情をしていた。今にも泣きそうな表情だった。

 

「どうしたの?たえちゃん?」

「あ、ハクくん……」

「大丈夫!?何かあったの?」

「ううん、何でもないよ……」

「何でもなくないよ!どうしてそんなに辛そうにしてるの?」

「これは……ね、目にゴミが入っちゃっただけだよ」

 

 どうしてそんな嘘をつくの?君が泣いている顔を見たら僕も辛くなっちゃうよ!

 

「たえちゃん、大丈夫。今は僕達だけだから」

「えっ、どう……いう……こと?」

「今は泣いていいんだよ?僕が側にいてあげるから」

 

 その時、たえちゃんの涙は決壊して僕に泣きついた。こんなに泣いたたえちゃんは始めてだった。

 

 しばらくしてたえちゃんは泣き止んだ。どうやらたえちゃんの言葉や性格が原因でクラスの人達が酷い事を言ったみたいで、たえちゃんは走って教室に出てその時に僕と遭遇したんだ。

 

 たえちゃんを泣かせるなんて……。絶対に許さない……!こうなったら……。

 

 

 

――僕がたえちゃんの側にいる。そして守るんだ!

 

 

「ねえ、たえちゃん」

「な、何……?」

「僕がたえちゃんの側に……側にいるから」

「ハクくん?何を……言っているの?」

「僕がたえちゃんを守るよ!」

 

 たえちゃんの側にいよう。いじめられたって構わない。たえちゃんの"友達"として……いや、"大切な女の子"だから守るんだ!

 

「でも……いいの?ハクくんもいじめられちゃうんだよ?そんなの、私一人で充分だよ!」

「いいんだ。それでもいいよ、たえちゃんを守れるなら大したことじゃないよ」

「ハクくん……」

 

 次の日から、僕はたえちゃんの側にいることを決めた。いや、もう気づいたらずっと一緒にいたのかもしれない。

でも、どうしてだろう。たえちゃんと一緒にいるとなんだか安心するような気がする。

 

 

 

――この気持ちは一体何だろう?

 

 

 少年はまだこの思いを知らない。そう、後にこの思いの正体に気づくのだから……。

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 昼休みになった。私にとって昼休みとは楽しみがある時間だ。その楽しみとは……。

 

 

――外からのウサギの観賞である。

 

 

 周りから見ればおかしな人って見られちゃうけど、私はウサギが好きだからどうしてもここに来てしまう。ウサギ小屋を見ていた時、一人の男の子と出会う。そう、これが君との初めての出会いだったね。

 

「何をしているの?」

「ウサギを見ているんだよ」

 

 私は男の子にそう言った。よく見ると、白い髪をしていてそれに目が赤い。まるで君は……。

 

 

――白ウサギ。それが君の第一印象だった。

 

 

 この人ならウサギが可愛いってことわかるかな?うーん……。ダメ元で聞いてみようかな。

 

「ウサギ可愛いでしょ?」

「え?可愛いの?」

「よーく見たらウサギの可愛さがわかると思うよ。隣に座って見てみなよ」

 

 男の子は私の隣に座ってウサギ小屋の中を覗いた。どうかなー、わかるかなー。ウサギの可愛さをわかってくれたら友達になれるかも!

 

「ごめん、わからないや」

 

 やっぱりそう言われた。最初はわからないよね。でももっとわからせてあげようかな。そう思った私は男の子をウサギ小屋に来てくれるように誘うことにした。

 

「ねえ、もしよかったらまた来てよ!」

「え、いいの?」

「もちろん!むしろ私は来てくれたら嬉しい!」

 

 そうだ、そういえば名前聞いてなかった。

 

「まだ名前言ってなかったね。私は花園たえ。君は?」

「僕は……白雪白兎」

「白兎……なんか白ウサギだね」

 

 そうだ。やっぱり白ウサギだよ!君は!白い雪に白い兎。うん、もう白ウサギとしか思えないよ。

 

「白ウサギなんて呼ばれたことないよ」

「いいじゃん。なんか可愛いし」

「可愛い?まあそれでもいいかも」

 

 うーん……。人だから白ウサギはちょっとあれかな。どうしよう、白……シロかな?いや、これも違うや。白……ハク……ハクくん!よし、これに決めた!

 

「白ウサギはあれだから……。よし、ハクくん!」

「え?」

「君のことは今日からハクくんって呼ぶよ!私もたえちゃんって呼んでいいから」

「でも、初対面だよね、僕達?いいの?」

 

 いいんだよ。私は構わない。君にウサギの可愛さをわからせるために友達になるんだから!

 

「私は別にいいよ。ぜーんぜん気にしないから」

「そ、そう……。じ、じゃあよろしくたえちゃん」

「よろしくね!ハク君!」

 

 

 

――これが私とハクくんの出会いとなる。

 

 

 

▼▼▼▼

 

 ある日、私はいじめられていた。原因はわかる。

 

 

――私の言葉や性格が原因なんだから。

 

 

「おい、花園!何なんだよ!その性格は!」

「お前は本当に変人だな!」

 

 どんどんと刺さってくる。一つ一つの言葉が私の心に刺さってきて、まるで自分自身を否定されているような感じがする。

 

 

――恐い、恐いよ。誰か……誰か……助けて。

 

 

 聞きたくない、聞きたくない!私は泣きながらも走って教室から出ていった。あそこにいたら私はもう耐えられなくなる!

 

 

 

――辛いよ。恐いよ。一人にしないで。

 

 

 

 

――助けて……ハクくん!

 

 

 

 気づいたら私は外にいた。私は涙で前があまり見えないけど、よく見たら目の前にハクくんがいた。どうしてここにいるの?

 

 

 

「どうしたの?たえちゃん?」

「あ、ハクくん……」

「大丈夫!?何かあったの?」

「ううん、何でもないよ……」

 

 

 駄目だ!ハクくんに知られたくない!ハクくんだけは巻き込んじゃいけない。隠すんだ!知られるわけにはいかない!

 

 

「何でもなくないよ!どうしてそんなに辛そうにしてるの?」

 

 知られたくない。私は初めてハクくんに嘘をついた。いや、ついてしまった。

「これは...ね、目にゴミが入っちゃっただけだよ」

 

 ハクくん、ごめんね。私、君に隠し事できちゃった。でもこれは君を巻き込みたくないから。

 

 

「たえちゃん、大丈夫。今は僕達だけだから」

「えっ、どう……いう……こと?」

 

 私はハクくんの言っていることがわからず次の言葉を聞いた。

 

 

――今は泣いていいんだよ?僕が側にいてあげるから

 

 

 ハクくんにそう言われて、私はもう耐えられなかった。辛かった。恐かった。あんなことを言われるなんて思ってなかった。

 

 

 

――ありがとう、ハクくん。こんな私に優しくしてくれて。友達になってくれてありがとう……。

 

 

 

 しばらくして私は泣き止み、さっきなにがあったかを全部話した。なんだろう、ハクくんの顔が恐い。

 

 

「ねえ、たえちゃん」

「な、何……?」

 

 どうしたんだろう?ハクくん。そして、彼の次の言葉に私は衝撃を受けた。

 

「僕がたえちゃんの側に……側にいるから」

「ハク君?何を……言っているの?」

「僕がたえちゃんを守るよ!」

 

 駄目だよ!そんなことしたらハクくんもいじめられちゃう!そんなの私一人でいいのに……。ねえ、教えてよハクくん。

 

 

 

――君はどうしてそこまで私に優しくしてくれるの?

 

 

「でも...いいの?ハク君もいじめられちゃうんだよ?そんなの、私一人で充分だよ!」

「いいんだ。それでもいいよ、たえちゃんを守れるなら大したことじゃないよ」

「ハクくん……」

 

 

 それから私とハクくんは一緒にいるようになった。私からしたら友達になった時から一緒だったのかもしれない。

 でも何なんだろう。ハクくんと一緒にいると落ち着くようになってきたし、なんだか暖かい。

 

 

 

――私は気づいてしまった。

 

 

――ハクくんに一緒にいると言われた日から、君に恋をしてしまったんだと。

 

 

 

 しかし、二人はまだ気づかない。

 後に関係が変わっていくことを二人はまだ知らないのである。

 

 

 

 これは、白いウサギと恋をしてしまったウサギの物語でもあり、甘酸っぱいようで騒がしいような日常を描いた物語である。




...ナニコレ?マジでやり過ぎたかも。
今回は小学編でした。次は中学編になります。
おたえ視点大丈夫かな?キャラ定まってないような気がする。
てか最初から小学生の言動じゃないし。
描写とかおかしいところとかあるかもですが、今回はここまでです。
次をお楽しみに。
感想をお待ちしております。


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白兎は兎のために弾き語りを始める

はい、中学編になります。
といってもまたダイジェストになりますけど。
おたえと白兎がギターに没頭するようになります。
今回から白兎の一人称が変わってきます。
ではどうぞ。



 それから時は過ぎ、俺とたえは中学生になった。たえはここ最近、中学生になってから楽器店に行くようになった。その理由がギターを好きになったからだという。

 

 たえは小学生の時、ピアノ教室に通っていて、そこで偶然ギターの音を聴いた。本人曰く「痺れたていうか、凄く衝撃を受けた」と言って、そこでギターを大好きになったという。

 

「ねえねえハクー」

「どうしたたえ?」

「ギターっていいよねー」

「そうか?俺はお母さんのギターやお父さんのピアノくらいしか聴いたことないからまあわからなくはないけど……」

「ないけど?」

「ギター持ってなくね?」

 

――そう。俺とたえはギターを持っていないんだ。

 

「でも楽器店にあるギターはお願い!私を弾いて!っていってるんだよ」

「そう言われても……」

 

 俺もお母さんから「楽器には魂が宿っている、弾いていれば楽器の気持ちがわかる」なんて言ってた記憶がある。今の俺にはまだわからないが、いつかやってみようかなって思うようになっているのはたえには言ってないし、内緒にしている。

 

 

「それにしてもたえ?」

「どうしたの、ハク?」

「なんかお前のところの兎増えてないか?」

「え?数えて22匹だけど……」

「22!?ちょっと待て、残り2匹はどこから来た。まさかお前……」

「ハクとハクの飼ってるエターくんかな」

 

 はあ、本当にこいつは……。

 

「たえ、お前まだ俺を白ウサギと思い込んでいるか?」

「え?違うの?」

「違うよ!いいか?俺は人間!エターはわかるけど、俺は違うから!」

 

 とまあ、最初は5匹くらいだったんだけど、気づいたら20匹になってて知ったときはびっくりした。たえ、お前の家は餌代とか大丈夫なのか?

 

「なんかごめんね?」

「疑問系で謝られても困るよ。てか泣きたくなってきた」

 

 たえは中学生になってもこういうところは変わらない。でも、急に背が伸びたから今にも抜かれそうなくらいだ。俺もまあたえと同じくらいだけど……。

 

 まあ俺も自然と兎を好きになっていた。たえのおかげかもな。因みに俺も一匹兎を飼っている。名前は「エター」っていう名前を付けた。

 名前の由来はたえを逆さにしただけ。なんで友達の名前にしちまったのか、俺もよくわからなかった。

 

 ただ、中学生になった俺はたえの気持ちがわかるようになってきた。まだなんとなくとしかわからないけど。最近たえは俺に甘えるようにもなってきたし、本当にたえは変わってしまった。こんなに甘えてるってことは...。

 

 

――もしかしてたえは俺に好意を抱いているのか?

 

 

 

 いや、まさかな。わからないけど、なんとなくそんな感じがしてきている。たえが甘えてくると、俺もなんか力が抜けてくるというか、心が暖まるというか...よくわからないけどそんな感じがした。

 

 その時、後ろから声が聞こえた。

 

「あらあら、相変わらずお熱いわねー」

「あ、お母さん」

「ああ、おばさん。お邪魔してます」

「どうも。いいのよ、ハク君。もしよければたえを嫁にもらってもいいのよ?」

 

 え?ちょっと待て、今なんて言ったんだ?

 

「ちょっと待って下さい。今……なんと?」

「たえを嫁にもらってもいいって言ったのよ?」

 

 

 

――たえを……嫁に!?

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺の顔は真っ赤になってしまった。待って、あなた自分の娘の前でなんてこと言うんだ!?

 

「お、お母さん!?そ、そんなハクのお嫁さんだなんて……」

「た、たえ!?なんでお前まで顔真っ赤にしてんだよ!?」

「だ、だって、ハクのお、お嫁さんなんだよ?こんなに嬉しいことってないよ」

「おい、待て。何告白染みたこと言ってんだよ。もしかしてたえ、まさか俺のこと……」

「い、言わないでー!」

 

 駄目だ、もう俺の知ってるたえじゃない。まさか俺のことを好きだなんて、でも本当に有り得るのか?おばさんにあんなこと言われてここまで焦るたえは初めてだ。

 

 

――やっぱり、たえの想いはわからないけど、この日から俺はたえの好意をなんとなくだけど感じとれるようになった気がした。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 私は中学に入ってから楽器店に通うようになった。ハクも一緒に来てくれて、「たえは放っておけない」なんて言ってくれた。やっぱりハクは優しいな、って思ってしまう。話を戻すけど、何故私は楽器店に通うようになったのか。その理由は……。

 

 

――ギターが大好きだからだ。

 

 

 私が小学生の頃にピアノ教室に通っていたとき、偶然ギターの音を聴いたからだ。なんかこう、ビリビリって痺れるような音を体に感じて私の中に衝撃を与えたのだ。誰が弾いていたのかはわからないけど。一体誰が弾いてたんだろう?

 

 

「ねえねえハクー」

「どうしたたえ?」

「ギターっていいよねー」

 

 

 私には一つ決めたことがある。それは、ハクにギターの良さをわからせるためだ。ハクはウサギを飼うようになったって最近知った。

 

 それはつまり、ウサギの可愛さをわかってくれたってことだ。本当にハクにウサギの可愛さをわかってもらえて私は凄く嬉しかった。

 

「そうか?俺はお母さんのギターやお父さんのピアノくらいしか聴いたことないからまあわからなくはないけど...」

「ないけど?」

「ギター持ってなくね?」

 

 そう。ハクのお母さんとお父さんは元バンドマンだ。お母さん名前は白雪霙(しらゆきみぞれ)さんでお父さんの名前は白雪康史(しらゆきやすふみ)さんだ。

 

 霙さんはギターを担当していて康史さんはキーボードを担当していた。康史さんは元はピアニストで作曲家だったんだけど、霙さんに誘われてバンドに入ったそうだ。

 

 霙さんはギタリストでボーカルもやっていた。今は作詞家で康史さんも作曲家として、二人で曲を作っている。

 

 

「でも楽器店にあるギターはお願い!私を弾いて!っていってるんだよ」

「そう言われてもなあ……」

 

 ハクにはやっぱりわからないかな?確かに私にはそう聞こえんだけど……。気のせいという感じでもなかったし……。

 

 

――ギター上手くなったら最初にハクに聞かせてあげよう。

 

 私はそう決意をした。最初にハクに聞かせて感動させよう!

 

「それにしても、たえ?」

「どうしたの、ハク?」

「なんかお前のところの兎増えてないか?」

 

 兎はもう20匹になるからね。そうだ!ちょっとハクをからかおうかな。

 

「え?数えて22匹だけど……」

「22!?ちょっと待て、残り2匹はどこから来た。まさかお前……」

 

 決まってるじゃん。白ウサギ(ハク)とエターくんだよ。

「ハクとハクの飼ってるエターくんかな」

「たえ、お前まだ俺を白ウサギと思い込んでいるのか?」

 

 なんか面白くなってきた。でもしょうがないよハク。今見ても白ウサギにしか見えないもん。

 

「え?違うの?」

「違うよ!いいか?俺は人間!エターはわかるけど、俺は違うから!」

 

 言うと思った。なんかからかいすぎたかな?

 

「なんかごめんね?」

「疑問系で謝られても困るよ。てか泣きたくなってきた」

 

 いいよ!ハク!私が抱き締めてあげるから甘えてもいいんだよ!

 

 そう言っても甘えてるのは私の方だけどね。あまりこんなことは言えないや。ハクは小学の頃から見ても凄く変わった。背も私と同じくらいになったし、もしかして抜かれるかな?

 

 なんだかんだ言って私はハクに前より甘えるようになっていた。動物に例えたら懐いてるって感じかな?でも最近になってこんなことを思ってしまう。

 

 

――ハクは私の想いに気づいてるかな?

 

 

 どうしてもこんなことを思ってしまう。けど不安に感じてしまう。でもハクに甘えているととても気持ちが良いし、包まれている感じがする。まるでお母さんみたいだ。

 

 

――ハクって実は私のお母さんだったのかな?

 

 そんなことないよね。私の好きな人がそういうわけない。側にいてくれるだけでも私は安心するしとても落ち着くから。

 

 ハクと色々話をしていると後ろから声が聞こえた。

 

「あらあら、相変わらずお熱いわねー」

「あ、お母さん」

「ああ、おばさん。お邪魔してます」

「どうも。いいのよ、ハク君。もしよければたえを嫁にもらってもいいのよ?」

 

 え?私がハクのお嫁さん?

 

「お、お母さん!?そ、そんなハクの嫁だなんて...」

「た、たえ!?なんでお前まで顔真っ赤にしてんだよ!?」

 

 そんなこと言われても、ハクのお嫁さんだなんて恥ずかしいどころか嬉しいよ!

 

「だ...だって、ハクのお、お嫁さんなんだよ?こんなに嬉しいことってないよ」

「おい、待て。何告白染みたこと言ってんだよ。もしかしてたえ、まさか俺のこと……」

 

 待って、今は言わないで、本当に言わないで!恥ずかしいから!!

 

「い、言わないでー!」

 

 私はそう言って自分の部屋へ逃げ込んでベッドの枕に顔を埋めて悶えてしまった。ハクのことは好きだけど、告白してもし関係が崩れたりしたら...、私はまた一人になってしまう。でも今はまだ……。

 

 

――今はまだこの関係を続けていたいかな。

 

 まだ告白するには早い。返事はせめてハクが私の想いに気づくまで留めておこう。ハクが誰かと結ばれないように私がハクのことを好きだとアピールしよう。バレないように気をつけてやらないと。

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 俺はあることを決意した。俺もギター弾いてみようって決めたんだ。

 

「お母さん、話があるんだけど」

「白兎?どうしたの?」

「俺にギターを教えてほしいんだ」

「どうしてだい?理由を聞くよ」

 

 やっぱりお母さんを前にすると言えないな。この人は見ている世界も違うし、音楽についてはバンド時代でもよくお父さんとも言い合いになることが多かったって聞いたことがある。

 

「理由なんだけど、声が聞こえたんだ」

「声?何の声だい」

「楽器の声がね。弾いてくれ!魂を込めてくれって聞こえたんだ」

 

 俺としても凄く恥ずかしい。たえにも言えないし、本当は言いたくなかった。でも今ならわかる。お母さんが言ってたように、本当に聞こえたんだ。

 

「ハハハハハ!そうかい、そうかい!聞こえたんだね!白兎にも。いやーよかった、よかった」

「やっぱり言いたくなかったな。絶対笑われるって思ったから」

「そんなことないよ!それは誰にも言えなくても誇りに思っていいことだよ」

「そうかな?」

「そうさ!康史だって言ってたよ。あいつはピアノを弾いてる時に声が聞こえるって言ってたから」

 

 そうか。お父さんもそうだったのか。やっぱりお母さんの言ってたことは間違っていなかった。

 

「まあ、正直に言うと上手くなったら最初にたえに聞かせたいって思ったからさ」

「たえちゃんに?そっか、あんたはたえちゃんの側にいるって決めたよね」

 

 俺がたえの側にいることはお母さんにしか言ってない。まあ相談した時に言ってしまったけど。

 

「上手くなってたえに弾き語りで聞かせたいんだ」

「てことはアコギになるね」

「アコギ?」

「アコースティックギターだよ。あれなら弾き語りにすごくいいからさ。よかったらアタシのスペアを貸してあげるよ」

 

 いいのか?そんな高価なもの……。

 

「いいの?お母さん」

「いいよ。アタシはそれでいい。息子が女の子のために弾き語りを聞かせたいっていうんだ。力になるよ白兎」

「お母さん、ありがとう!あ、このことはたえに言わないでね」

「もちろんさ!たえちゃんには秘密にするよ」

 

 この日、俺は決めた。たえに弾き語りを聞かせるためにギターを始めることを決意した。

 




2期7話でのレイヤとおたえが回想で弾き語りしていましたが、この作品ではオリジナル設定でお送りします。
後半蛇足になっちゃったかもですが、お許しを。
中学編はこれにて終了、次から高校編、本格的にストーリーが進んできます。
では次をお楽しみに。
というかおたえのコレジャナイ感が出てる気がする。


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白兎は兎の心に音楽を響かせる

高校編です。
投稿遅くなって申し訳ないです。
今回は少し短めになりますのでよろしくです。
では本編です。


 それからさらに時は過ぎて……。

 

 俺とたえは高校1年になった。本当に時が過ぎるのは早い。たえもお年玉を貯めたり、バイトを始めてお金を稼いでようやくギターを買った。どうやら独学で技術を磨いたみたいだ。

 

 そして俺もお母さんの指導の下、アコギとボーカルの技術を上げた。やってて一番に思ったことは、弾きながら歌うということ。こればっかりは本当に大変だった。上達したら最初はアコギで曲のメロディーを弾き、次に歌いながらアコギを弾いたりもした。やってる時に歌詞が飛んじゃう時もあった。

 

 練習してる時もたえにバレそうな時もあったし、指を切って絆創膏貼ってた時も「その指どうしたの?」って聞かれた時は「料理を始めたんだけど、やってる時に包丁で指を切った」って誤魔化した。その時のたえは心配そうな表情をしていた。もう泣かせないって決めたのに、俺ってバカだなって思ってしまった。

 

 

――もう泣かせないってあの日から決めたんだけどな……。

 

 

 それと、俺の家にウサギが2匹増えた。名前は「キル」と「ケー」だ。なんかまるでどこぞの敗北者の魔女のような名前だなって思ってしまう。この2匹はやけに俺に懐いてて、ペットショップで見たときに急に懐いたから気に入って買ってしまった。どうやら俺のウサギ好きは重症になりつつある。これもたえが原因だけど。

 

「なあ、たえ」

「どうしたの、ハク?」

「最近さ、ギターの調子どう?」

「うん、いい調子だよ!」

 

 凄いなたえは。独学で学んだんだからそりゃ凄いか。俺はなかなか上手くいかない。だいぶ上手くなったってお母さんからお墨付きをもらったけど、もう少し練習しようかな。

 

 今のままじゃたえに聞かせられないしな。最高の状態でたえに聴かせたい。路上ライブとかのためじゃなく、たえのために聴かせる、俺もたえと同じく変わり者になりつつあるのかもしれない。

 

 

――いや、それも悪くないか。

 

 

「さすがたえだな」

「ありがとハク。でもまだまだかな」

「そうか?」

「うん。私ももう少し練習が必要かなって思う時があるんだ」

 

 たえもそう思っていたのか。俺も頑張らないとな。だから、俺が弾き始めようとしていることは聴かせるまでバレちゃいけない。

 

「そういえばハクの部屋からギターの音がするんだけど、気のせいかな?」

「えっ!?き、気のせいだろ」

「そうかな?ハクなんか隠してない?」

「いや、隠してなんかないよ。多分お母さんが弾いてるんじゃないのか」

「んー、そうかな?なんか気のせいではないような……」

 

 あ、危ない。たえにバレそうになった。たえはたまに鋭い時があるからな。こんな性格をしていても核心的な事を言う時があるから、ここでバレたらおしまいだ。

 

 それから俺はただひたすら練習した。ピックも結構削れていって代わりのピックも何枚か減っていった。もう何枚使ったのかわからないくらいだった。とにかくがむしゃらに練習して、"たえのために聴かせる"、そんな目標を持ってもうどれくらい日が経ったのだろう。

 

「うん、今日はこれくらいでいいかな」

 

 俺は全く予想していなかった。

 

「ねえ、ハク」

 

 

――今日俺の部屋にたえがギターを持って俺の所に来るということを

 

 

「た、たえ?」

「あれ?ハクギターやってたんだ」

 

 マズイ、たえにバレた!どうする?どうしたらいい?どうするんだ!?ここで聴かせるか?それとも……。

 

 

――俺はこの状況をどう切り抜ければいいのかわからなくなってしまった。

 

 

「ハク?どうしたの?」

「い、いや。なんでもない。どうしたんだ急に」

「そうじゃないよ!ハク、なんで泣いてるの?」

 

 え?泣いてる?どうしてだ?なんで泣いてるんだ?

 

 たえに練習してるところがバレたからなのか?サプライズしようと思ったのにそれが失敗したからなのか?

 

 気づいたら俺の目から涙が出ていた。

 

「ハ、ハク!?大丈夫?」

「な、何でかな。よくわからないや。なんで泣いてるんだろ俺」

 

 俺は泣いてしまった。そんな時、たえはギターを置いて俺のことを抱き締めた。俺はたえの胸に顔を埋めて泣いていた。

 

 どうしてかな。よくわからないしなんで俺はたえがここに来たのかさえもわからなかった。でも今は泣こう。そうした方がいいって思った。まだまだだな。たえの前では大人ぶっていたけど、子供なんだな俺って。

 

 どれくらい経ったのか。気づいた時には昼になっていた。

 

「ん……あれ……たえ?」

「あ、起きた。おはよう、ハク」

 

 そうか……。俺泣いてたのか。恥ずかしいところを見せちゃったな。それにしてもなんで俺横になってるんだ?

 

「なあたえ。何で俺横になってんの?」

「それはね……。ひ、膝枕して……あげてるんだよ」

「えっ嘘!?たえごめん。なんか無理させたかな?」

「いやいいんだよ。私がしたいからしただけ。まだ寝ててもいいんだよ?」

「起きるよ。いつまでもこんな状態だと俺の身がもたない」

 

 そう言って俺は体を起こした。ごめんな、たえ。無理をさせて。

 

「そうだ。ハクなんでギターなんか持ってたの?」

「ああ、そのことなんだけど……」

 

 俺はたえに全て話した。なんでやり始めたのかだったり、練習のことや最初にたえに聴かせようとしたことも。我ながら恥ずかしいな。バレたとはいえ、話すしかないよな。

 

「フフ……なんかハクらしいや」

「わ、笑うなよ!俺だってこんな理由なのは恥ずかしいんだぞ」

「そんなことないよ。私も同じだったからさ。私も上手くなったら最初にハクに聴かせたかったからさ」 

 

 

――えっ?たえもなのか?

 

 

「何か...さ、俺達って似た者同士かな?理由とかもウサギが好きなところとかもさ」

「そうだね。私達って似た者同士かも。なんか嬉しい」

「そ、そうか?何か俺としては複雑なんだが...」

 

 いや、正直に言えば俺も嬉しいかな。こんなことたえには言えないけどな。

 

「そうだ。もしよかったらさ。たえも聴かせてくれないか?ギターをさ。俺も聴かせてあげるから」

「いいよ。ハクに最初に聴かせるって決めてたからね!」

「どんな感じなのかお互いに聴いて感想言おうぜ」

「いいねそれ!どっちが上手いか勝負だね!」

 

 そしてたえはギターを構えて弾き始めた。聴いていて本当にたえは凄いって思う。どうしてお前はそんなに上手いんだ?何がお前を動かすのか、俺はそれを知りたい。

 

 いつかわかることなのかな?俺の心を揺さぶる感じで、まるでたえの音から魂の鼓動を感じる、そんな音だった。

 

「どうだった?」

「うん、凄いよ。心を揺さぶられた、そんな感じだった。ごめん、なんか言葉にできないや」

「いいよ、ハクがそう感じてくれたなら私は充分だよ」

「じゃあ俺の番だな。アコギで弾き語りだけど大丈夫か?」

「いいよ。ハクの歌声聴いてみたい」

 

 なんか恥ずかしくなってきた。予定より違うけど今なら思える。今ならたえに聴かせられるかもしれない。俺の今の想いをこの一発に込めよう。たえのためにギターを弾くんだ、歌うんだ。たえのために!

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 とても懐かしい感じだった。ハクってこんなに歌えるんだ。こんな姿は今まで見たことなかった。聴いていて安心してしまうし、私はハクのこの音楽が好きになってしまう。君を好きになって六年経つけど、そんな君の必死な姿を見ているとさらに好きになってしまう。

 

 なんでかな……。なんか涙が出そうになってしまう。私ハクの音に感動してるんだ。自分でもこんなに涙を流すのはあの時以来だ。君が側にいるって言ってくれたときから好きになって……。ハクは私のために歌っているんだって感じる。ここまで聴いてしまうと離れたくないって思ってしまう。

 

 

――ありがとう、ハク。側にいてくれて。優しくしてくれてありがとう。私のために歌ってくれてありがとう。

 

 

 

――ハク、君を好きになってよかった。

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 そして俺は弾き終わった。なんだろう、喉もだいぶ枯れてきてる。たえのためとはいえ、やりすぎたかな。

 

 

 

「たえ、どうだった……、たえ?」

「な、何?グス……ハク」

「ど、どうしたたえ!?なんかあったか?その、俺の音楽なんかまずかったか!?」

 

 ヤバい、またたえを泣かせちまった。大丈夫かなたえ。

 

「ううん、違うよ。ハク」

「え?違うって……何が?」

「ハクの音を聴いて感動しちゃって...それで涙が出ちゃって」

 

 え?たえが感動……した?俺の音に?あれでなのか?

 

「……そっか。ありがとうたえ。なんかこれじゃ引き分けかな」

「そうだね。そうなるかな」

 

 俺とたえは笑い合った。なんだろうな。こんなことになっちゃったけど、それでもいいかな。

 

 

 俺とたえは疲れて寝てしまった。お互い肩に頭を乗せて寄り添うように寝ていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
これで終了で次から本編です。
次からポピパが本格的に出てきますのでお楽しみに。
感想お待ちしております


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本編 ―白兎と天然兎の恋物語―
白兎と兎の語った昔話はキラキラドキドキする?


これから本編です
白兎とおたえの物語はここからスタートになります
本編どうぞ


「これが俺とたえの出会いってところかな」

「なんか……すげぇなぁ」

「めっちゃいい話やったよ、白兎君、おたえちゃん」

「ある意味……バカップル?かな」

「凄いキラキラドキドキしたよ!おたえー、白兎君!」

 

 事の発端はポピパメンバー達が突然「白兎君とおたえっていつ知り合ったの?」って聞かれ、俺とたえは色んな話をした。話をするのはいいが、俺とたえは顔を赤くしつつ昔の話をしていた。

 

 俺とたえはギターの件の後、香澄がたえにバンドを組もう!って誘われたらしく、すぐ俺に相談したんだ。俺は入った方がいいって言ったけど、その時にたえは「ハクは入らないの?」って涙目からの上目遣いで言われてしまい、結果サポーターとして入ることにした。あんな顔をされたら断れないし、抱き締めたくなってしまう。

 

 有咲やりみ、沙綾も入って"Poppin'Party" というバンドを結成した。色々な困難があったけど、今では人気も出てきてバンド活動も充実している。

 

 俺はあの後ギターの技術も上達し、バンド全体のことも見れるようになった。どうやら自分でも気づいていなかったが、両親のギターやピアノの音を聞き続けていたら音の違いや音に込められた言葉というか魂?みたいなものも聞こえるようになった。

 

 なんていうかまあ、楽器に込められてる魂が聞こえるようになったのかな。言われるまで全く気づかなかった。本当に俺はたえのような変人になってしまった。ウサギのほうはたえの家のウサギに20匹が飛び掛かって来て懐かれるようにもなった。俺のウサギ好きが重症になってきたな。

 

 

――たえのおかげで変人になったのなら俺は大歓迎だ。

 

 

「なんていうか……お前らホントに変人だよな」

「え?そうか?俺とたえは多分普通だぞ?」

「た、多分って……」

 

 おいおい、そんなに引くことないだろ。りみもチョココロネを食べる手が止まってるよ。俺とたえは普通だと思うんだけどなあ。あれ?おかしいな。感覚が狂ったのか?

 

「でも凄いキラキラドキドキする話だったよ!(語彙力喪失)」

「そうかな?私とハクの話ってそんなにキラキラドキドキする?」

「そうだよ!むしろ歌にしたいくらいだよ!」

「やめろ!歌にするな!俺とたえが恥ずかしくなって死んじゃうから!」

「え?ハク死ぬの?」

「いや死なないけどさ……たえ!やめろ泣こうとするな!誤解生んじゃうから!悪かったから!俺が悪かった!だから泣くのをやめろ!」

 

 ああ、だめだ。こうなっちゃうとたえが泣きそうになるからな。泣き止むまで時間がかかるからな。

 

「あ~あ。白兎泣かしちゃったね」

「白兎、お前最低だな」

「白兎君、おたえちゃん泣かせちゃダメだよ」

「待て3人共!俺が悪いみたいにするな!確かに悪いけどさ。これは誤解、誤解なんだ!」

 

 俺は悪くないぞ。ていうか香澄!お前はいつまで顔をキラキラさせてんだよ!お前も充分変人だからな!ランダムスターを弾いてるやつは変態って本当だったんだな。

 

 それとたえ、お前嘘泣きしてるのバレバレだからな。敢えて言わなかったが後で1時間甘えるのを禁止にしてやろうかと思った。

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 それからしばらくして香澄達は有咲の家の蔵で練習を始めた。今やった曲は「ときめきエクスペリエンス!」だ。

俺もギターは持ってきているが、たえにギターを聴かせてしばらくしてリードギターを始めたんだけど、こればっかりはたえに見てもらいながら練習をした。まだ練習中だけど...。

 

「香澄はギターズレたな。弾きながら勢いに乗りたいのはわかるけど、ランダムスターは少し落ち着けって言ってるぞ」

「う、うん。わかった」

「りみと沙綾も少しズレたかな。ベースとドラムの伴奏とリズムはすごく重要だからズレると全体も影響くるから落ち着いてでいいから気をつけてな」

「OK!わかったよ白兎」

「わかったよ、白兎君」

 

 香澄とりみ、沙綾はズレたっていう面が目立ってたか。特に香澄はな……。曲の勢いに乗りたいってのはすごくわかるけど、もう少し落ち着きが必要なんだけど。

 

「あと、有咲とたえ。もうちょい表現欲しいかな。有咲あんまりリズムに乗れてなかったから曲に合わせて乗るといいかな。誤って音間違えないように」

「お、おう」

「あとたえだな。たえはさっき言ったように音に合わせながらでいいから表現しつつ乗るのがいいかな」

「わかったよ、ハク」

 

 こんなところかな。全体が見れるようになったと言ってもまだそんなにたってないからな。ここまで見るのは難しいな。

 

「練習はここまでにしようか」

「りょうかーい。やっと終わったー!」

「みんな、お疲れ様。差し入れだよ」

 

 そう言って沙綾は「やまぶきベーカリー」の袋からパンを出した。沙綾はやまぶきベーカリーの看板娘で、下に妹と弟、あと両親がいる。うちのドラム担当だ。

 

 沙綾はポピパのお母さんのようなもので本当にしっかりとした女の子だ。まあ、有咲に至っては苦労人だ。俺もたえのストッパーに回ってて苦労してるけどな。でも苦労はしてるけど、楽しいって感じてる自分がいる。

 

「りみはチョココロネか。やっぱりブレないな」

「チョココロネめっちゃ好きやもーん」

 

 りみはベースを担当していて香澄と沙綾からはりみりんと呼ばれていて、関西出身だという。普段関西弁は出ないけど、たまに出てしまうときがある。りみにとってチョココロネはもはや大好物でもある。いや、チョココロネといえばりみだな。

 

「香澄はメロンパンか」

「どうしたの白兎君?メロンパンは渡さないよー!」

「いや、狙ってはいないけどさ」

「あ、そう。変な白兎君」

 

 香澄はPoppin'Party、もといポピパのギターボーカルで、ランダムスターという凄い高価なギターを有咲から安値で買ったという。

 

 彼女は星を見たときにキラキラドキドキ?みたいなものを感じ、そこからバンドを組んだみたいだ。我らがリーダーで明るく天真爛漫な女の子だ。気になるけどあの髪型ホントにどうなってるんだ?香澄曰く星って言ってるけど、どうみても猫耳にしか見えないんだよなあ。

 

「有咲お疲れさん」

「白兎もお疲れ。バンド練習見るのいつもありがとな」

「どうも。珍しいな有咲がそんなことを言うのは」

「ど、どういう意味だよ!」

「そういう意味だよ」

 

 この家の蔵の主にしてキーボード担当の有咲。特徴的なツインテールでツンデレ。あとでかい。どこかは言わないけど。言ったら本人どころかたえにも殺される。怒りっぽい性格で、素直に言えないところもある、でも常に俺達のことを考えている優しいやつだ。ポピパの苦労人だけど、香澄のことを心配してくれている優しい女の子だ。

 

「お、たえクロワッサンか。やっぱりあれか?形がウサギの顔に見えたか?」

「うん!ウサギだよクロワッサンはよくわかったねハク!」

「まあ、わからなくもないからな」

「お前らおかしいぞそれ!ホントにお前ら似てるよな」

 

 たえは俺の幼なじみにして俺と同様の変人。自覚あるかはわからないけど……。リードギター担当で音楽バカなところがある。そしてウサギが好きという。黙っていれば美人なんだけど、天然マイペースがそれを台無しにしている。

 

 でもそこを含めても俺からしたら"可愛いウサギ"みたいなものだ。ギターを聴かせてからは俺に対して凄く甘えるようになってきたし、完全に懐いてるウサギにしか見えなくなった。簡単にいえば「不思議ちゃん」だな。

 

「じゃあパンも食べ終わったところで解散だな」

「じゃ、また来週月曜ってことで」

「お疲れ様!」

 

 

▼▼▼▼

 

 

その後俺は部屋で練習に没頭した。そう、たえが俺の肩に頭を乗せているんだ。やりにくいけどもう慣れた。

 

「なあ、たえ」

「なあに、ハク?」

「お前ってホント甘えん坊だよな」

「ハクもそうだよ」

 

 え?俺もか?そうだったっけ?

 

「なんていうか弾きにくいんだけど……」

「大丈夫だよ。ハクならこの状態でもできるよ」

「まあ弾けてるけどなんか恥ずかしいんだが」

「ハク可愛いね」

 

 やめろ可愛い言うな。照れるだろうが!

 

「あれー?もしかして照れてる?」

「い、いや照れてなんかない!」

「じゃあ、なんで耳が赤いのかな?」

「し、知らねぇよ」

 

 なんとか誤魔化そうとしたが、たえに左耳を甘噛みされた。

 

「っ!?ま、待ってたえ……ちょっとギター置かせ……て……」

 

 たえは一旦離れてくれた。俺はギターをスタンドに立てて座ったが、その瞬間にまた甘噛みされた。

 

「だ、だから!?やめろって!」

「やーだ。ハクはこうされるの気持ちいんでしょ?」

 

 い、言えない……。

 

 

――甘噛みされて気持ちいいなんて言える訳がない!

 

 

 たえは最近ドSになってきている。こいつを敵に回したらヤバい。な、何とか引き剥がさないと……。

 

「た、頼むたえ、ホントにやめて」

「ふっふっふー。どんどん蕩けて来たね」

「頼むから……やめて」

 

 

 その時、俺とたえは体勢を崩してしまった。

 

「きゃっ」

「った、たえ!?」

 

――そう、やっちまったんだ。俺は……。

 

 

 

 

――たえを……押し倒してしまった。

 

 

 

「大丈夫か?たえ」

 

 ああ、気づいてしまった。どうしてこんなことになったんだ。

 

 俺がたえを押し倒した体勢になっている。俺は咄嗟のことで唖然としていてたえに至っては……。

 

 

 

 

 

――顔を真っ赤にして口を開けたまま気絶していた。

 

 

 

「た、たえ?おーい?たえー?」

 

 駄目だ、気絶してる。うん、仕返しするなら今のうちかな。仕返しをするか。許せ、たえ。

 

 俺はたえの首筋に甘噛みをすることにした。

 

「――っ!?」

 

 

――ああ、いい表情をしている。

 

 

 ごめん、たえ。俺仕返ししないと、気が済まないもんだからさ、だから許せ。

 

 その後、たえはしばらくして目が覚めて俺が首筋に甘噛みされた跡があることに気づいてそのまま泣いてしまった。俺はその後抱き締めて慰めたがなかなか泣き止まなかった。

 

 その日は夕飯を一緒にすることになっていたが、俺の手作りのハンバーグを食べさせたら機嫌を直してくれた。

 

 あと、言い忘れてたけど、たえは外では天然マイペースだけど、二人きりの時は天然マイペースではなく、素の性格になって甘えん坊になる。

 

 甘噛みとかは幼なじみなりのスキンシップのようなものだけだ。

 

――これは俺とたえの二人だけの秘密でもある。

 

 




※まだ付き合ってません。
うん、やりすぎた。
これ以上やったらマジでヤバいので途中で止めにしました。リクエストあってもR18は書きませんのでご了承下さい。
ではさらばです。
感想お待ちしております。


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白兎は目覚め、兎と共に学舎に向かう

お待たせしました。遅くなって申し訳ない。
5話になります。
今回からポピパメンバーや他のキャラが何人か出てきます。
ではどうぞ。


 今日から平日。ああ、学校か。めんどくさいし家でギター弾きたいしエター達と戯れたい。でもしょうがない、学校のウサギもふもふしたいけどさすがに無理か。

 

「ハクー」

 

 なんだ?たえの声か?でもなんかギターの音するな。気のせいか?

 

「ハク、起きてー朝だよー」

「あ、あと...5分くらい...」

 

 寝させてくれ。昨日遅くまでギター弾いてたんだ。頼むから寝させて。

 

 いや、しょうがない起きよう。このままたえを待たせてられないし手作りのハンバーグを作れないしな。

 

「おはよう、今起き...た...ぞ?」

「何で疑問系なの?」

 

 いやそう言われてもなあ。なんでお前ギターなんか持ってんだよ。もしかして...。

 

「なあたえ、なんでギター持ってるの?」

「ああこれ?弾きながら起こしてたんだよ」

「弾きながらってお前...ホントにブレないな」

「いやーそれほどでもないよ」

 

 いや褒めてねえよ。

 

「さてとじゃあ...」

「おいちょっと待て。何俺の布団の匂いを嗅ごうとしてんだ」

「ええーこうしないと起きた気分にならないし一日中動けないよー」

「この変態!」

 

 俺はたえの頭に優しくチョップした。

 

「何するのさー」

「待てや匂いを嗅ぐ時点でアウトだ。それと着替えるから出てくれるか?」

「え?着替え見ちゃ駄目なの?」

「駄目だよ!お前襲ってくるから恐いんだよ!」

 

 朝からたえに襲われたら沙綾にからかわれるから嫌なんだよ!有咲からも「夕べはお楽しみだったな」なんて言われるから嫌だ!言われたら香澄とお楽しみだったなって言い返してやる!

 

「うーん、わかったよ」

「わかればいい。後でハンバーグあげるから」

「約束だよ?」

「もちろんだ。ハンバーグは逃げたりしないから」

「楽しみにしてるよ。あ、そうだ」

 

 どうしたんだたえ?朝からおかしいな。

 

「おはよ!ハク!」

 

 たえは笑顔で俺に言った。ホントに眩しいなお前の笑顔は。この笑顔を見ただけでも一日が充実するな。見てて飽きない。

 

「おはよ、たえ!」

 

 俺も笑顔で返した。するとたえの顔が赤くなった。

 

「あれたえ?照れてるのか?」

「て、照れてなんかないよ!ていうか見ないで!」

 

 全く可愛いなこのウサギは。抱き締めたくなるけど帰ってからにしよう。

 

 

 ▼▼▼▼

 

 

 俺が通っているのは花咲川学園だ。元は女子校だったがこの地域は共学が少ないらしく、校長が共学増やそう!ってなって共学になったみたいだ。あっさりしすぎだろ。

 

「たえ頼む。あまりくっつかないでくれ」

「えーいいじゃん」

「香澄達にあまり見られたくないんだ。帰ったらいくらでも甘えていいから」

「いいの!」

 

 たえその顔やめろ、抱き締めたくなるから。俺だって抑えるの大変なんだからやめてくれ。こういうことは二人きりの時にしたいからな。

 

「おはよー白兎君、おたえー!」

 

 香澄が見えた瞬間にたえは俺から少し離れた。少しだけかよ!

 

「お、おはよう香澄」

「おはよ!香澄!」

 

 あれ?有咲がいないな。どうしたんだ?あ、来た。

 

「は、早ええよ香澄!」

「有咲おはよ!」

「おはよ有咲」

「お...おはよ...って香澄ィ!置いていくな!」

「ご、ごめん有咲...」

 

 ホント有咲苦労してるな。ドンマイだ。

 

「ドンマイ有咲。あ、みんなおはよう」

「おはよう、みんな」

 

 りみと沙綾も来たようだ。てか沙綾がニヤニヤしてるし。

 

「はーくーとー」

「な、何だよ沙綾」

「夕べはお楽しみでしたね~」

 

 やっぱりだよ!やっぱり言われた!他の人に言われそうだなこりゃ。

 

「沙綾何のことだ?」

「惚けないでよ。イチャついたんでしょ?」

 

 え?待ってなんで知ってるの?俺とたえの秘密なんだぞ。

 

誰にも言わないからさ

何で知ってるんだよ

おたえの顔見たらわかるよ

 

 え~嘘だろ。たえ顔に出てたのか。弱みを握られたな。次から気を付けるか。

 

「沙綾秘密にしてくれよ」

「もちろん!わかってるよ!」

 

 今だけは沙綾が小悪魔どころか悪魔にしか見えなかった。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 そして学校について今は授業中。授業前にこころに「お楽しみだったわね!」とかイヴからも「これぞまさにバカップルと言うのですね!」とか言ってきた。だから待てや、イヴはまだしも弦巻家にも見られてんのかよ。つーかなんで言うんだよ。まだそんな関係じゃねえよ。

 

 そんなことを考えていたら隣から手紙みたいなものが来た。たえだなこれは。俺の隣はたえだからこのやり取りは日常茶飯事だ。

 

――今日のハンバーグは何が入ってるの?

 

 そういうことか。俺はたえから「ハクの手作りハンバーグ食べてみたい!と言われて料理を始めたんだ。やはり俺はたえに対しては甘すぎるな。まあいいか。今日はマヨネーズを隠し味にしてみたんだけどな。たえの口に合うか心配だ。

 

 俺は送られてきた手紙に書いてたえの方に投げた。ていうかこれ机の方に投げるのにコントロール大変だな。

 

――お楽しみだよ。待っててな。可愛いウサギさん♪

 

 

 あっやべ。最後変に書いちまった。これじゃ俺の心の声駄々漏れだよ。あ、返ってきた。

 

 

――白いウサギさん。今日は何の曲を弾くの?

 

 

 げ。ウサギで帰ってきたよ。まあいいかな。今日はどうするかな。最近俺は動画で曲を聞いて色んな曲を弾いている。これもたえにギターを聴かせてから始めたことだ。今日は『ハナミズキ』をアコギでやって『天体観測』をリードギターで弾くかな。リードギターは多少上手くなったからいけそうかな。

 

 

――アコギでハナミズキ、リードで天体観測だよ。

 

 

――楽しみにしてるよ!ハク!

 

 

 多分だけど弾き終わったらまた甘えてきそうだな。ま、いいけどな。甘えてるたえは可愛いからな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 そして昼になった。たえが楽しみにした時間だ。

 

「ハクー早く行くよー!」

「わかった。今行くから待ってな」

 

 早く行くか。早くしないと帰ってからまた甘噛みされる。急ぐか。

 

 

「ほーらたえ、ハンバーグだぞー」

「待ってましたぁ!」

「おたえ好きだねぇ」

「おたえちゃん可愛い」

 

 おいおいたえ、照れるなよ。ここじゃからかえないのが残念だけどいいかな。滅多に見れないからな。

 

「珍しいなおたえが照れるなんて」

「おたえ~、その顔キラキラするよ!」

「テレテナイヨ。ナンノコトカナ?」

 

 おーいたえー。普段の天然はどうしたー?

 

「たえ、ほらハンバーグは逃げないから」

「じゃ、じゃあもらうね?」

「どうぞ、召し上がれ」

 

 食べさせるのは家でしかできないからな。ごめんなたえ。それと弁当の中身は卵焼きとハンバーグ、野菜と餃子だ。といっても餃子は水餃子だけど。卵焼きとハンバーグは手作りだ。特にハンバーグは気合いを入れた。たえのためにな。

 

「ハク、これもしかしてマヨネーズ使った?」

「当たり。さすがだよたえ」

 

 やばい、撫でたい。撫でたいけど抑えないと...。帰ってから甘やかすか。

 

「すごいねおたえちゃん」

「幼なじみってすげぇんだな」

「おたえさすがだよー!」

 

 幼なじみすげぇよ。ここまでわかるなんてもう俺たえの旦那になるのか?いやまさかな。

 

「白兎これならおたえの夫になれるな」

「な、何を言ってるんだ!?」

「冗談じゃないよ。これはホントのことだからさ」

 

 え、待ってそんなん言われたら照れちまう。顔に出しちゃだめだ。また沙綾と香澄にからかわれちまう。

 

「ハクーもう一個いい?」

「あ、ああ。いくらでもどうぞ」

「やった!じゃあいただきます」

 

 あ、俺のハンバーグなくなった。まあいいや。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 そして学校が終わって俺とたえは俺の部屋で二人きりになった。ここからたえは天然マイペースではなくなり、素のたえとなり、甘えてくるようになる。

 

 俺は今ハナミズキと天体観測を弾いている。といっても弾いている途中でミスったところとかあるけどもう少し練習しないとな。人に聞かせられるものじゃない。でもたえはミスはしても許してはくれる。もちろんミスしたところは指摘してここを直すのがいいよって言ってくれる。まるで先生みたいだな。

 

「どうだったたえ?」

「うん、ハナミズキはいい感じだったよ。でも天体観測は少しいい感じだったかな」

「そっか、やっぱり練習しないとだめだな」

「でも前より上手くなってるよギターも"頑張れ!"って言ってるよ」

「言ってるか。頑張らないとな」

 

 それと俺はアコギの方は自分のを買ってお母さんから借りてたアコギは返した。リードギターのほうはあげるって言われてもらってしまった。ホントにお母さんには感謝してもしきれないな。

 

「たえ、大丈夫か?疲れてるみたいだけど」

「大丈夫だよ。でもちょっと眠いかな」

「膝枕してやるからこっちおいで」

 

 たえは俺の方に頭を膝に乗せて横になった。

 

「どうする?明日休みだけど今日泊まっていくか?」

「うん泊まっていくよ。それとハク」

「何?」

「さっきのハンバーグ美味しかったよ」

 

 やっぱり二人きりで言われると照れるな。それになんか耳が赤いような...。

 

「ありがと。また作ってやるから」

「ありがとハク」

「どういたしまして。たえそれと膝くすぐったいから頭回すなよ」

 

 膝に頬擦りされてるからくすぐったい。全くこのウサギは...。俺はたえの頭を撫でた。

 

「ハクこそ...頭くすぐったいよ」

「大変だったんだぞ抑えるの。一日中撫でたいって思ってたんだから」

「なんかハクらしいや」

「言ったな。そういうたえこそ甘えるの我慢してたんだろ?」

 

 どうだたえ?今頃赤くなってるはずだ。

 

「そ、そんなことないよ!?ハクこそ私にハンバーグあげたときに抱き締めたいって思ったでしょ?」

「な、何でわかった!?」

「そりゃわかるよ。私とハクは幼なじみだからね」

「やっぱり幼なじみってすげえな」

 

 仕方ない。明日の朝は髪梳いてやるかな。

 

「たえ、明日髪梳いてやるよ」

「ホント?嬉しい!久しぶりだよハクに梳いてもらえるの」

「わかったから頬擦りするなって!くすぐったい!」

 

 

――なんか俺らってイヴの言う通りバカップルかな?

 




曲名って小説大丈夫かな?
それと本編のおたえは白兎と二人きりのときの性格はオリジナル設定です。
では次お楽しみに
感想お待ちしております。


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白兎の土曜日、兎はもふもふするもの

休日回です。
ひたすら甘い展開しかありません。
ブラックおすすめします。
ではどうぞ。



「たえ、髪痛くないか?」

「大丈夫。むしろ気持ちいいよ」

「そっか、ならよかった」

 

 土曜日の朝。俺は今約束通りたえの髪を特製の櫛で梳いている。たえの髪ってサラサラだな。髪を痛めないように優しく梳いていく。特製の櫛といっても安物だけどな。たえの髪を梳くために買ったものだ。

 

 この沈黙...二人きりのこの時間は本当に好きだ。俺とたえしかいないこの時間、まるで聖域にいるような感じだ。

 

「よしできたぞ」

「ありがとハク!」

 

 たえは髪が梳き終わった瞬間に抱きついてきた。髪からいい匂いがする。

 

「ま、待て!抱きつくな!」

「いいじゃん、ハク嬉しいんでしょ?」

 

 嬉しいけどさ!そんなこと言えない。幼なじみにそんなこと言えるわけがない。やめろ、今度は抱き締めるんじゃねえよ。

 

「どう?嬉しいかな?」

「わ、わかった!わかったから!嬉しい!嬉しいです!俺の負けだからもうやめてくれ!」

「私の勝ちだねー。やった!」

 

 やっと離れてくれた。たえしれっとガッツポーズしてるし。ぞいって言えよ。

 

「じ、じゃあ俺エター達にエサあげてくるから」

「じゃ私も行くよ」

「いいよ。エター達も喜ぶな」

 

 

 今中庭にいるが最近キルとケーがたえに懐いている。それは嬉しいけどなんか嫉妬してしまう。エターにエサあげようとしたら突然腹に飛び付いて来た。ちょっと痛い。ホントにたえに似ているなって思ってしまう。たえが二人もいたら手に負えない。その時は有咲も呼んで止めてもらおう。

 

「キルとケーが懐いてくれない」

「どうしたの?」

「最近二匹が懐いてくれないんだよー」

 

 この二匹来た瞬間に睨んできて「キュ◯オ◯ンをお食べ」みたいなことを言ってきそうなくらいに睨んできた。おかしいな俺のウサギなんだけどなあ?なんかしたかな?

 

「構ってあげなかったからなんじゃない?」

「そうかな?でも俺たえのウサギにはほとんど好かれてるぞ?」

「それはまあハクが白ウサギだからだよ」

「俺ってやっぱりウサギなのか?」

 

 俺がウサギになったらたえに飼われちまうのか?それはそれで複雑だ。

 

「教えてくれたえ。俺はウサギなのか?」

「多分ウサギかな?髪は白いし目は赤いし...普通のウサギと変わらないね」

「マジかよ。ウサギの気持ちになればウサギになれるのか?」

「それは私にもわからないけど...ハクならなれるよ」

「いやさすがにウサギにはならない。ウサギの気持ちになるとかならまだわかる。俺人間だからね!?ウサギになったらたえが甘えられなくなるからそれは嫌だ」

 

 そうだよ。ウサギになったら人間ができることできないじゃん。もう後でオッちゃんの気持ちになろうかな?

 

「そ、そうだ!言われてみたら確かに...」

「そうだ。だから俺はウサギにはならないからな」

「ハクやっぱりウサギにならないでー!」

 

 たえがまた抱きついて来たので俺は抱き止めることにした。

 

「大丈夫。ウサギにはならないしずっと一緒にいるから」

「ありがとハクー!」

 

 なんかごめんたえ。てかなんでこうなったんだよ。

 

 その後俺とたえはたえのウサギの所に行ってエサをあげに行くことにした。エサをあげようとした瞬間、俺は20匹のウサギに飛び付かれて埋もれてしまった。

 

「ああ、幸せだ。ウサギに埋もれるなら死んでもいいかも...」

「死なないでハクー!?」

「たえも埋もれるといいぞ。もふもふが当たって気持ちいいぞ」

「ハク顔やばいよ!?」

 

 ウサギ達は離れていったが今度は俺の体にウサギの匂いが充満してしまった。やばい、堪能しすぎた。戻って体洗おう。すまないたえ、今度オッちゃんもふもふさせてくれ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 今度はやまぶきベーカリーに行くことにした。今日は昼はパンにしようってなって買いに行くことにした。

 

「いらっしゃいませー」

「おぉう、はーくんではないですかー」

「おはよ沙綾、と青葉さんか。常連さんだな」

「そうなのだよー。モカちゃんはやまぶきベーカリーの常連なのだよー」

 

 青葉さんパン好きだよなー。まあ俺はクロワッサンを選ぶ。ウサギみたいで形がなかなかいいからな。たえはチョココロネとメロンパンか。しかしあるのか?とくにチョココロネが怪しいが...。

 

「沙綾チョココロネってある?」

「ごめん、モカが買った物でもうないんだ。ごめんね」

「すまないのう、はーくんよ。また出直してくるとよいぞー」

「そっか、ならいいよ。青葉さん大丈夫だよ、別に取ったりはしないからさ」 

 

 じゃ仕方ないたえに電話するかな。

 

「ごめん沙綾、一回出るよ」

「うん、いいよ。いつでも待ってるからね」

「ではではー、モカちゃんはこれにて撤退しよう。じゃあ沙綾またねー」

 

 俺はやまぶきベーカリーを一旦出てたえに連絡することにした。たえ出るかな?

 

 1コール目。

 

「もしもし?」

 

 早っ!

 

「もしもし?今大丈夫か?」

「いいよ。どうしたの?」

「チョココロネなかったみたいだ。ごめんな」

「いいよ。ないならしょうがないよ」

「ホントにごめんな。もしよかったらさクロワッサンとメロンパン半分にしても大丈夫か?」

「いいよ。私はそれでもいいかな」

「ありがとな、たえ。じゃあまた後で」

「またねハク。愛してるよー」

 

 ブツッ!

 

 ...今なんて言ったあいつ。愛してるって...俺達"まだ"付き合ってもないのにそれを言うなんて...。通常運転だなあのウサギさんは。とりあえず買っていくか。

 

 

▼▼▼▼

 

 今度はギターを弾くことにした。今日はアコギで「六兆年と一夜物語」を弾くことにしてみた。やっぱりボカロは名曲が多い。宝物庫のようなものだな。それと俺は歌っていない。何故なら今俺は...。

 

 

――たえがまた肩に頭乗せているからだ。てか弾きにくいんだが。

 

 

「たえ、また頭乗せたな」

「この方が落ち着くからいいんだよ。いいでしょハク?」

「まあ...いいけどさ」

「やった!」

 

 まあいいか。慣れたからいいや。これ遅く弾いてるけどホントにいい曲だな。歌詞も意味が深いし考察しがいがある。やらないけど。

 

「たえ今度オッちゃんもふもふさせてくれないか?」

「駄目だよ。オッちゃんもうハクのこと嫌いみたいだよ。怯えてるし」

「マジか。やっぱりもふもふしすぎたか」

「ホントだよ。やりすぎだよハク。せめて落ち着くくらいにやらないと」

 

 そうだよな。高校に入ってオッちゃん見たら急にもふもふしたくなったからな。やりすぎて懐いてくれなくなった。今はたえがいるからまだ大丈夫。

 

「だったらたえ。お前をもふもh」

「ダーメ。それはさすがにハクでも駄目。だったら私がハクをもふもふするよ?」

 

 むう。駄目か。いいさ、だったらエターで我慢してやる。

 

「じゃあたえ、これならいいか?お前の髪を手櫛で触っていいか?」

「そ...それなら...いいよ」

 

 たえは顔を赤くしながら頷いた。髪ならいいか。まあ俺はたえの髪好きだからな。

 

「うん。たえの髪触り心地いいな」

「あ...ありがと...」

 

 今俺とたえは向き合っている。それもたえが今度はベッドの上にしようと言ったからだ。嫌な予感がするのは気のせいか?

 

「赤くなってるぞ」

「ハクが触るからだよ...。私も触る!」

「お、おい!もふもふするな!」

「嫌だ!お返しだー!」

 

 やめてくれ!もふもふするなー!もふもふされると俺は...。

 

「や、やめて...たえ...」

「ハクー、この前のお返しだからねー」

 

――弱くなってしまうんだ。

 

 そして俺はたえに押し倒された。またかよ。

 

「たえ...今度は何する気だ...?」

「どうしようかなー、ナニしようかなー?」

「ま、待って!?今なんか言わなかった!?怖いんだけど!?」

「何も言ってないよーハクー?」

 

 今度はたえは俺の肩を甘噛みしてきた。しかも歯形が残るくらいに噛んだ。

 

「た...たえぇ...」

「どう?気持ちいいでしょハク?」

「き、気持ちいいからもうやめて...」

「まだだよ...まだ終わらないよハク」

 

 あの後俺はたえによって色々とやられた。なんかたえがどんどんおかしくなってる。発情期なのか?しかも一緒に寝てるときに足絡めてきたし、俺の幼なじみおかしいよ。

 

 

 

 

 




ここまでにしておきます。
次からまた日常へ戻ります。
感想お待ちしております。


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白兎の日向ぼっこ、兎との二重奏

更新遅くなってすまぬ
今回はほのぼの?な日常回です



 今俺はエターを膝に乗せて中庭で日向ぼっこをしている。そう、もふもふしながらだ。ウサギの毛ってなんでこんなに触り心地いいんだ?ここにオッちゃんがいたら抱き締めて横になっていたかもしれない。でも俺はオッちゃんには嫌われているからな。もふもふしすぎて...。

 

 その結果たえに怒られて一週間も口を聞いてくれなかったり、肉で餌付けしても食べてくれなかったり、俺にとっては地獄も同然だった。そういえば俺の肩ってたえの歯形残ってたっけ?ほんとにあれちょっと血が出てたから大変だった。たえが舐めてくれたけど...。

 

「眠いなエター」

 

 反応なし。キルとケーも今は昼寝している。小屋の中で。嫌われているのか俺は?もうこのまま寝るかな。ちょうど後ろは壁だからちょうどいいし。

 

「ごめんエター少し寝るから、起こすときは腹に体当たりしてくれよ」

 

 よし寝るか。なんか遠くからたえが来そうなんだけど気のせいかな?うん!気のせいだな、よし寝よう!

 

▼▼▼▼

 

「寝顔が可愛いハク、レアだねこれは」

「香澄ー絶対起こすなよー」

「大丈夫!この白兎君はレアだから眺めているよ」

 

 確かにレアだし滅多に見れない。おばさん達は入っていいって言ってたから入ったけど...まあいいかな。

 

「エターくんもぐっすり寝てる...」

「なんかウサギが二匹いるみたいにしか見えないなあ」

 

 沙綾ナイス!上手いこと言ったね。というかハクギター置いてるし...さっきまで弾いてたんだね。なに弾いてたのかな?あとで聞いてみるかな。

 

「思ったけどさぁ...エターの名前の由来ってなんなんだ?」

「ああ思った。確かに気になるよね」

 

 有咲まさかそんなこと聞くなんて。由来が私の名前を逆さにしたのが由来だから、バレるかもだけどバレたら恥ずかしくなってしまう。

 

「私もめっちゃ気になってたんだ」

「なんだろ?エターナル?から取ったのかな?」

「うーん、どう...かなー?」

 

 ここはなんとか誤魔化そう!さすがにバレるとエターとハクに合わせる顔がない。それにバレたら香澄は作詞しそうでなんかヤバい。

 

「あれ?おたえなんか顔赤くない?」

「え?なんのことかな?暑くなったのかもね」

「ホントにそうかー?」

「おたえ、なんか怪しいね」

「おたえちゃんにしては珍しいね」

 

 め、珍しいって...。言われてみたらそうか。私は普段は天然を装ってるけど、ハクと二人きりの時は甘えん坊、こんなの香澄達にバレたらおしまいだ。

 

「エターって毛とかどうなってるかな?」

「多分だけど触り心地いいんじゃないかな?」

 

 香澄と沙綾が疑問に感じている。エターはハクが中学生の時から相当愛情を注いでる。ハクはエターにずっとブラッシングもしてあげてるからそれもあってエターはハクに凄く懐いている。

 

「なんかエターくん白兎君から離れないね」

「まるでおたえみたいだな」

 

 え?待って!?有咲なんでそんな鋭いの!?

 

「いや、違うよ」

「違うって...じゃあなんなんだ?」

「これはねハクを人参だと思っているんだよ」

 

 何を言っているの私!?誤魔化すとはいえハクを人参だなんて。ごめんねハク!

 

「人参って...」

「それ喰われるじゃん!」

「白兎君ってエサだったんだ...」

「もう人ですらねえよ」

 

 なんかごめんハク。こうするしかなかったんだ...。

 

「ん...なんか騒がしいな」

「あっ、起きた」

「いや起こしちまったの間違いだろ」

「ごめんハク起こしちゃったね」

 

――あとでハクに膝枕してあげようかな。

 

 

▼▼▼▼

 

 あの後俺は香澄達に昼御飯をご馳走して香澄達は帰って行った。んで今何をやっているのかと言うと...。

 

 ギターを弾いている。だが今回はたえと一緒にだ。試してみたいことがあるから一緒に弾くことにしたんだ。その試してみたいことは...。

 

 

――弾きながら一緒に歌う。つまりデュエットだ。

 

 

 今回はまたボカロからになる。曲は「magnet」だ。たえと一緒に聞いてやってみたい!って二人してハモってしまった。先週からずっと練習の合間にやっていた。

 

「たえいけそうか?」

「大丈夫だよ。リードギターでごめんね」

「いいよ。なら俺もリードギターでいくよ。アコギだとリズムがずれると思うからさ」

 

 リードにはリード、同じものでいけば上手くいくはずだ。今回は試しにやってみるだけだけどな。

 

――俺とたえは歌い始めた。初めての二重奏を奏でた。

 

▼▼▼▼

 

 何だろう、この気持ち。歌っていて歌詞にあった通り磁石のように引き合っているような気がする。ハクもいつもより少し高い声を出しているから無理をしているみたいだ。歌詞が歌っていてすごく恥ずかしいけど、なんだか心地良い感じがする。磁石みたいにくっついているなら私はハクとなら全然構わない。ずっと一緒にいられるからそれでもいいって思ってしまう。ハクはどんな気持ちなのかな?

 

 

▼▼▼▼

 

 たえと初めて一緒に歌うけど、この曲歌詞が凄いな。作曲した人はどんな気持ちで作詞をしたんだ?しかも俺とたえは今背中合わせで歌っている。こんなの香澄達には見せられないし、俺とたえが"特別な関係"だからこそできることだって思える。磁石は人と人を引き寄せて離さない。何だか恋人みたいだな。てか俺とたえが恋人ってどうなんだろうな。まだ俺はたえの想いがわからないからどう言ったらいいかわからないけどな

 

▼▼▼▼

 

「お疲れ様ハク」

「お疲れたえ」

 

 俺とたえはお互いに笑い合った。なんだろうなこの気持ち。終わってからなんかもう少し歌っていたいっていう気持ちが残ってしまう。ホント音楽っていいな。ギターも「楽しかった!」って言ってる。

 

「またやろうよ」

「ああ、またやろう。曲探しとくよ。見つかったらまたやろう」

 

 たえはいきなり額を俺の額に当ててきた。な、なんだいきなり!?どうしたんだ!?

 

「た、たえ...?」

「なんかおでこ合わせたくなってね」

「そ、そうか。なんか恥ずかしいんだけど」

「大丈夫。私も恥ずかしいからお互い様だよ」

 

 えぇ...。こういう時って目を瞑ってればいいのかな?ここは目瞑ってるか。

 

「ハクどうしたの?」

「いやここは目瞑ったほうがいいかなと思ってな」

「じゃあ私も瞑るから笑い合おうよ」

「え、それでいいのか?」

「何となくだけどいいんじゃないかな」

「なんだそりゃ...」

 

 なんかおかしくなって笑うしかなかった。俺とたえは目を瞑りつつ額を合わせながら笑い合った。こんなことも悪くないなって思ってしまった。

 

 

――次はどんな曲にしようかな。

 




終わり!
今回は少し短めにしました。
なんか甘い展開ばかりで申し訳ない。
感想と評価お待ちしております。


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ウサギの花見と桜の二重奏

更新遅くなってごめんね
今回は花見やって白兎とおたえがポピパメンバーに演奏披露です



「ハクお花見行こうよ!」

「えっ花見?なんでまた?」

 

 たえが突然花見に行きたいと言い出した。確かに今は桜が結構咲いてるからいまの時期はちょうどいいかもな。

 

「俺とたえだけでか?」

「ううん。今回は香澄達も誘ってきたんだ。あとはオッちゃんも連れていこうかと思うんだけど......」

「ならおれもエター連れてくかな。エターにも桜見せてやりたいし」

「ハク、絶対オッちゃんもふもふしないでね?」

「さすがにしないよ。嫌われてるからな」

 

 そうか香澄達もか。エターは連れていくけど、あとどうするかな?あ、そうか!あと弁当だ。

 

「たえ。今から弁当作るから手伝えるか?」

「いいよ。あ、あとね、香澄がハクのギター聴いてみたいって」

「えっ、俺のギターを?それはいいけど、たえはいいのか?」

「たまには、他の人に聴いてもらうのもいいんじゃないかな。私はどっちでもいいよ」

「じゃあさたえもギター持ってきてもらっていいか?今回は一緒に歌おう。この前桜に因んだ曲探して練習しただろ?それをやろうかなって思ってさ」

「いいねそれ!やろうよハク!」

 

 たえ喜んでくれたな。まあやるのコ◯クロの「桜」とボカロの「桜ノ雨」をやるところだ。桜ノ雨は合唱とかだからできるか心配だけど俺とたえでやろうって決めたからな。頑張ろう!

 

▼▼▼▼

 

 弁当も完成して、エターもキャリーに入れたしギターケースも準備できた。思ったが明らかに香澄もギター持ってくるよな。あいつならやりかねない。

 

「もう着くけどたえ重くないか?」

「大丈夫だよハク。重くはないから問題ないよ」

「ならよかった。なんかあったら言ってくれよ?」

「うん!」

 

 言ってる間に着いたな。お、香澄達もすでに着いてたのか。ってやっぱりギター持ってるし!

 

「おっはよー!二人共!」

「お、おはよ。香澄お前やっぱり持ってきたんだな」

「香澄って変態なんだね」

 

 まだ言ってるのかよそれ。どんだけ引きずるんだよ。

 

「おたえ、白兎おはよう」

「おはよう白兎君、おたえちゃん」

「おはよ、白兎、おたえ」

 

 あれ、みんな揃ってたんだな。じゃあこれで全員か。

 

「おはようみんな。じゃあ花見にするか。演奏はあとにするからさ」

「わかった。ってお前らオッちゃんとエター連れてきたのかよ!」

「まあな。たまには散歩しようかなっていうもんだ」

「そうだよ有咲!連れていかないと可哀想だよ!」

 

 そりゃまあ、エター連れていかないと俺的には花見にならないからな。そこはたえと話して共感したし、ウサギは可愛いからな。たまには散歩に連れていってあげないとな。

 

▼▼▼▼

 

 レジャーシートを敷き、弁当を開けた。三段弁当で作ったみたいだけど、ハク気合い入れすぎだよ......。1段目は全部いなりで、2段目は野菜や唐揚げ、春巻き、さらに玉子焼きがある。3段目には何等分かに切った恵方巻きが入っている。ハクこれはやりすぎだよ。相当楽しみにしてたんだね。

 

「な、なあこれやりすぎじゃね?」

「これは...ねえ」

「白兎君すごいね!さすがおたえの旦那さん」

「これ食べきれるかな?」

 

 おい香澄今たえの旦那さんって言っただろ。なるかはわからねえよ。"まだ"なんだよそういうことは。てかたえは顔赤くしてるし。

 

「香澄そんなハクが旦那さんだなんてまだ早いよ」

「やめろたえ。誤解生むからやめて」

「えっまだなの!?」

「てっきり夫婦になるのかと思ったよ。なんか残念だな~」

 

 りみは驚いてるし香澄は「期待して損した」みたいな顔してるし。ああもう、耳が熱いんだけど!

 

「ま、まあご飯にしよ」

「そだな。まあ休み休みで食べるか」

 

 とりあえず食べよう。なんかオッちゃんとエターがじゃれてるんだけど...。ああオッちゃんもふもふしたい。あの毛を触りたい!

 

「ハ、ハク。駄目だよオッちゃんもふもふするのは...」

「やっぱ駄目なのか?」

「白兎お前、顔こええよ」

「さすがの私でも引いちゃうよ......」

 

 えぇ...。有咲はまだしもりみからも怖がられるなんて。悲しいなあ。ウサギ好きなのは俺とたえだけなのか。もふもふしたらウサギの可愛さとかわかると思うんだけどなあ。

 

▼▼▼▼

 

 ハクやばいなあ。オッちゃんをもふもふしたら駄目って言ってるけど、相当重症みたいだ。まあ毛をもふもふしたいのはウサギ好きの私でもすごくわかるけど、やりすぎたら嫌われるからねえ。その例が目の前にいるんだけど......。

 

 キルとケーも最初からもふもふされるのを察してハクを避けてるし、ハクはエターと私のウサギにしか好かれてないみたいだ。あの時のウサギに埋もれていた時のハクは幸せそうな表情をしていた。中学の頃からすっかり変わっちゃったけど、なんであんな変人になったのかな?あ、私のせいか。それなら仕方ないや。

 

「それにしても香澄、なんでギター持ってきたんだ?」

「いやー、なんか手放せなくてねぇ」

「えぇ...。なんかさすがの俺でも引くよ」

「そうかなあ?」

「そうだよ。香澄、お前ホントにおかしいからな」

「そんな有咲まで~、酷いよ有咲~」

 

 香澄はブレないなあ。弁当の方はだいぶ無くなってきたからいいけど、ハクやりすぎだなあって思ってそう。そろそろ演奏しようかな。

 

「ハク、そろそろ弾かない?」

「そっか、もうそんな時間か。よしやるか」

「どうしたの二人共?」

「これからギター弾こうと思ってな。聴きたいって言っただろ?」

「うん!聴きたい聴きたい!」

 

 ハクがポピパのみんなの前でギターを弾くのは初めてだよね。緊張してるかもしれない。でもハク、私も一緒に弾くから緊張しなくていいんだよ。

 

「今から弾く曲は桜と桜ノ雨だ。多分みんなも聞いたことはあるかもしれないけど、聴いてくれると嬉しい」

「今から弾くね」

 

▼▼▼▼

 

 な、なんか変な感じするな。人前で弾くのは初めてだから緊張してまともに弾けない。でも最後までやろう。桜が舞う中で弾くってなんか悪くないな。オッちゃんとエターは互いに体をくっつけて寝ている。癒されるけど、今は演奏に集中しよう。

 

 弾いていて人前で演奏するってこんなにいいんだなって初めて感じた。今まではたえのためだったけど、たまにでいいから人前で弾くのも悪くないって思った。今度また香澄達の前で弾こうかな。頼まれた時にやろうか。

 

 

▼▼▼▼

 

 演奏して何分が経ったのか。それはわからないけど、弾き終わってから名残惜しいっていう思いが心に残っている。この思いは桜が全部散ったら消えるのかもな。

 

「す、すごい!」

「白兎とおたえ、息ピッタリだったな」

「二人共めっちゃ良かったよ。感動したよ!」

「これが幼馴染みの為せる演奏なんだね」

 

 なんか恥ずかしいな。終わったらなんか肩の力が抜けてきた。

 

「た、たえ......。お疲れ様」

「ハクお疲れ様!楽しかったよ!」

「俺も楽しかった」

 

 すごい疲れたな。ここまで緊張するなんてな。もう少し練習するか。人前に慣れないとこんなの聞かせられないや。

 

「あ、あのさみんな」

「どうした白兎?」

「これから俺のことは"ハク"って呼んでいいぞ」

「えっ!そんないいの?」

 

 なんでかな?自分でもわからないけど、白兎じゃなんか壁があるなって感じだから、ハクって呼んでほしかったのかもな。もう少しみんなと仲良くなりたいのかもしれない。なんとなくだけどそう感じたんだ。

 

「私はいいよ。むしろ呼んであげて」

「お、おたえ!?いいのそんな......」

「いいんだよこれで。たえからのお墨付きだぞ?」

 

 遠慮しなくていいんだけどな。最初は難しいけどだんだんと慣れてくれればいい。

 

「じゃ、じゃあハク君!これでいい?」

「いいぜ香澄」

「改めてよろしくなハク」

「よろしくねハク君」

「ハクよろしく」

「よろしくな、みんな」

 

 最初どころか慣れてるかのように呼んでますやんみんな。まあこれでいいか。

 

 こうして俺達の花見は幕を閉じた。さあ明日はどんな日になるかな?次の日がどんな一日になるか楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 




花見回終わりです
これからもおたえと白兎は人前で演奏するようになります
追々とやっていきますので
感想評価お待ちしております


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黄金の連休、ウサギの耳は敏感である

更新遅くなってごめんなさい
久しぶりの本編です
今回は後半やべえ描写になってますので、お気をつけて


 今俺の家は俺一人という。何故かというと、お母さん達が仕事で遠くまで行くことになり、一週間家を開けると言ったからだ。その後狙ったかのようにたえがハクの面倒を見るとか言って泊まることになったのだ。

 

 たえがまさかこの連休に泊まりに来るなんて思わなかった。家が近いからいいだろって言ったけど、たえが泣きそうになったからやっぱり泊めようってことになった。泣きそうになるとかズルいだろ。

 

「たえ、やっぱりオッちゃんは連れてくるんだな」

「もちろん!私とオッちゃんは常に一緒だからね!」

「そっか。まあ上がってくれ」

「お邪魔します!」

 

 たえが元気そうだ。今日は何をして過ごそうかな?何も決まってないからたえと話し合ってどう過ごすか決めないと。あ、そうだ。学校で出てる宿題あったな。

 

「たえ、宿題一緒にやるか?」

「そうだった!そういえば宿題あったね。香澄達も呼ぶ?」

「そうだな。香澄達も呼ぶか」

 

 たえは香澄達に一緒に宿題をやろうと連絡をした。しかし、みんな来るのか?まだ来るかどうかはわからないけど......。

 

「どうだった?」

「来れないみたいだって。香澄とりみりんは旅行に行ってて、有咲と沙綾は忙しいみたいで無理だって」

「そうか。じゃあ二人で終わらせるか」

「そうだね」

 

 俺とたえは二人で宿題を終わらせることにした。結構多いから時間かかりそうだな。この量だと一日は掛かるかもな。

 

「たえ、わからないところあったら聞いていいからな」

「わかった。ハク、頼りにしてるよ!」

 

 そんな笑顔で言われたらやる気が上がってくるな。さあ早く終わらせて休みを満喫しないと!

 

 

▼▼▼▼

 

 

「ハク、ここわからないんだけどいい?」

「どれ、ああこれか。ここはな......」

 

 ハクが真剣に教えてくれてるけど、横顔を見るとかっこよく見えてしまう。ハクってこんなにカッコよかったっけ?それとも私がおかしいだけなのかな?

 

「ここがこうなるんだ。どうしたたえ、話聞いてたか?」

「う、うん!聞いてたよ!」

「本当に聞いてたか?なんか怪しいけど」

「そんなことないよ。怪しくもなんともないし、隠し事もないよ」

「そう......。なんかあったら言えよ。いつでも相談相手にもなるし、たえの味方になるから。悩み事は一緒に解決しような」

 

 ハク、それはズルいよ。私にはその言葉は聞くし、キュンとしちゃうよ。胸がドキドキしてきた。ハクはたまに無意識にキザなこと言う時がある。もう......。

 

 

――恥ずかしくなってるこっちの身にもなってよ、バカ。

 

 

 ハクっていつからキザになったんだろう。多分無意識に言ってるかもしれない。私はもう耳が赤くなって恥ずかしくなっている。今は隠すのに必死でハクの話も聞けなかった。そう、私は話が聞けないくらいに恥ずかしいのだ。

 

「たえ、大丈夫か?耳赤いけど、なんかあったのか?」

「ナンデモナイヨ」

「なんでカタコトなんだよ。たえ、一端休もう。こっちおいで」

 

 休もうと言ってハクは膝をポンポンと叩いた。えっ、そこで膝枕なの!?私を殺す気なのハク!?

 

「私は大丈夫だよ。ハクだけ休んでてよ」

「たえが休まないなら俺も休まない」

「ハクっていつからそんな性格になったの?」

「さあ、いつからだろうな」

 

 ホントズルいよハクって。そんなこと言われたら休むしかないじゃん。私は自分の頭をハクの膝に乗せた。ハクのことが憎いのに安心してしまう。ハクのヒザッテ人をダメにする枕だったっけ?

 

「たえ、耳掻きしてやろうか?」

「やってくれるの?」

「疲れてるかもだからやってげようと思ってな」

「ハク、今日はどうしたの?」

「こっちのセリフだ。たえの方こそどうしたんだ?」

 

 ハクのせいでおかしくなったんだよ!私がおかしくなったのは全部ハクが悪いんだからね!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 たえどうしたんだ?頬を膨らませているがなにかあったのか?まあいいや、耳掻きするか。たえに耳掻きするのは久しぶりだな。普段はしてもらってるが、今度は俺がやってやろう。

 

「たえ、今どんな感じだ?」

「気持ちいいよ。ハクにしては上出来だね」

「いや、俺はまだまだだよ。たえには負けるな」

「ふーん。じゃあ私の方が耳掻きは上手いってことだね」

 

 こいつ勝った気でいるな。だったら俺には考えがある。耳掻きが終わったら痛い目に合わせてやるからな。

 

「んぅ......はぁ、ハク気持ちいいよ」

「やめろたえ、変な声を出すな。いけないことしているみたいになるし、誤解を生むからマジでやめてくれ」

「だって気持ちいいんだもん」

「そんなこと言われたら何も言えないじゃん。たえ、ズルいぞ」

「ふふっ、仕返しだよ」

 

 たえは微笑んで言った。こういう所は可愛いけど、仕返しとか言われたら俺だってしたくなる。だがそれは耳掻きが終わってからだ。まだだ、まだ待つんだ!

 

「よし、片方終わった。もう片方やるぞ」

「はーい」

 

 もうちょいで終わるが、どんな仕返しをしようか?楽しみだ。こうやって二人きりでいる時の時間は俺は好きだ。たえとは小学3年からずっと一緒だけど、たえは幼馴染みというより相棒みたいなものだ。

 

「ねえハク」

「どうした?」

「耳掻き終わったら何やるの?」

「教えない」

「え~、なんか企んでるでしょ?」

 

 うっ、こういう時だけ勘が鋭いなあ。たえの好意や考えてることはなんとなくわかるが、本心はわからない。

 

「どうだかな。企んでるかもしれないし、企んでないかもしれないだろ」

「どっちなの~」

「当ててみろ」

 

 さあ、どうだ。これならわかるまい。

 

「じゃあ......。企んでるに1株!」

「ファイナルアンサー?耳掻き終わったぞ」

「終わったんだ。ファイナルアンサーだよ」

 

 

――たえ、正解だ。さすがだな、俺の相棒。

 

 

「結果は、正解だ。どわあっ!?」

 

 俺は正解と言った瞬間にたえにベッドに押し倒された。また襲うのかこいつ。発情期になってなきゃいいけど......。

 

「なにするんだたえ」

「やっぱり企んでたんだね。もしかして私の耳に甘噛みしようとしたんじゃないの?」

「ああ、そうだよ。甘噛みしようとしてたさ」

「ふうん。いいよ甘噛みして」

 

 え?何を言ってるのこの人?襲ってくるかと思ったら襲っていいって、なんでそうなるんだ?

 

「いいのか?」

「耳掻きしてくれたからね。私から甘噛みしていいっていうご褒美だよ」

「そうか」

 

 俺はたえを抱き締めて寝返り、たえの手首を掴んで逃がさないようにした。それなら容赦する必要はないな。

 

「遠慮はしないからな?」

「いいよ、ハク。私はいつでもバッチ来いだよ」

 

 俺はたえの耳に甘噛みをした。感じているなこいつ。俺とたえは耳が性感帯だからな。ここまで喘ぐのはしょうがないことだ。こんなのお母さんや香澄達に見られたらどんな目で見られるか、こんなこと思いたくないな。

 

「ハ、ハクぅ。手首、はぁん、は、離し.....て」

「わかった。今離すから落ち着いてな」

 

 俺はたえの耳元で囁いた。

 

 

――可愛い可愛いウサギさん。

 

 

 たえは俺の背中に腕を回して抱きついた。お前が逃がさないのなら、俺も逃がさないぜ。徹底的に骨抜きにしてやるよ。

 

 その後、俺とたえは互いの両耳を甘噛みしまくった。二人とも喘いで喘いで喘ぎまくって、夜になるまでやっていた。まさかここまでになるなんて思わなかったな。まあいいか、たえが可愛すぎたからよしとしよう。

 

 

 

 




※何度も言いますが付き合っていません
久しぶりの更新とはいえやりすぎました
反省はしていませんしする気もないです
これはあくまでハクとおたえのスキンシップです
感想と評価お待ちしてます


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白兎はウサギを乗せられ、癒されて昇天する

本編更新です。
今回はちょっとだけストーリーが進行します。


「ハク、ランニングしようよ!」

 

 それは突然のことだった。たえがいきなりランニングしようと言ったのだ。なんでまた走ろうなんて言ったんだ?

 

「どうしたんだ急に」

「ちょっと気分転換に走ろうかなってね」

「気分転換か......」

 

 最近休んでばっかりだな。エターと戯れてばかりだからたまには走るのもいいだろう。

 

 だがしかし、俺にはある欠点がある。

 

 

――その欠点とは、運動が苦手ということだ。

 

 

 小学の頃、それもたえと出会う前から運動が苦手なんだ。たえに知られた時は「ハク、大丈夫?」と心配そう、正確には哀れむような目で見られた。あの時は本当にショックだった。

 

 それ以来、俺は少しずつ体力をつけることにした。今はほとんどやっていなくて本当にヤバい状態にある。さっきたえが走ろうと言った瞬間に背筋が凍ったんだ。

 

「わかった。じゃあ準備してくる」

「ハク、無理してない?」

「そ、そんなことない!無理はしてないぞ!」

 

 たえは相変わらず鋭い時がある。こういうときが厄介なんだよなあ。あまり心配を掛けたくない。まあ走るだけ走ろう、その後休めばいいんだ。大丈夫だろう、多分......。

 

 ジャージに着替え、ランニングの準備をする。できるだけたえに着いていけるように調整しよう。体力のない奴が調整って言ってる時点で嫌な予感しかしない。本当に俺大丈夫かな?死なないよな?

 

「じゃあ走るよハク、遅れないでね?」

「遅れたりはしない、合わせるさ」

 

 不安を胸に抱えながら俺とたえはランニングを始めた。やっぱりたえは早いな。それに控え、俺はちょっと距離が空いてしまった。くっ、遅れるわけにはいかない!

 

「はあ、はあ。たえ早いな」

「そりゃあ毎日欠かさず走ってるからだよ。ハクも毎日走ったら?」

 

 俺はたえに着いていくことに精一杯で会話ができない。しかしたえは疲れ知らずなのか、走りながら会話ができてる。しかも息を切らさずにだ。運動音痴にも程があるな。

 

 走ってから数分後、ゴール地点の自宅にようやく着いた。俺が息を切らしてもたえはずっと待ってくれていた。着いていけるように調整しようって言っといてたえに合わせられるなんて、情けないな。

 

「たえぇ、どんだけ......体力......あるんだよ」

「はあ、はあ、ふぅ......。ハクよりは体力あるよ。じゃないとギターなんてできないからね」

 

 駄目だ、疲れた。何キロ走ったんだ?そんなのわからないっていうくらいに走ったな。ちょっと横になろうか。

 

「ハク、横になるの?」

「ああ。疲れたよ、しばらく走りたくない」

「ふーん。じゃあ私はアレを持ってくるよ」

 

 アレ?アレってなんだ?なんか嫌な予感がする。

 

 たえは小屋から何かを取り出して来た。おい待て、そこにいるのはエターとキルとケーがいるところだよな?まさか乗せるつもりか!?

 

 乗せるならエターにしてくれ。いるならオッちゃんにしてもいい。オッちゃんなら疲れ吹っ飛ぶし、モフモフできるから一石二鳥だ。

 

「お待たせハク、じっとしててね~」

「やっぱりか!つかエター乗せるんだな!」

 

 エターなら大丈夫だ。キルとケーなら嫌がられるし、俺の心にもダメージ来るから、エターなら安心する。たえはエターを抱えて近づき、俺の腹の上に乗せた。

 

「モフモフが服越しに当たって気持ちいい」

「ハク、顔ヤバいよ。なんか気持ち悪い」

「やめろたえ、傷つくからやめてくれ。せっかくモフモフで癒されたのにさらに傷つくのは御免だから」

「ハクってやっぱり変人だね」

 

 たえにだけは言われたくない。それを言うなら俺を変人にしたたえこそが変人だと思うが。ていうかモフモフ当たって昇天しそう。

 

「たえ、(モフモフ当たりすぎたから)あの世逝っていいか?」

「ハク、駄目だよ~。逝かせはしないよ?」

 

 モフモフがヤバい。やっぱウサギって神様だな。オッちゃんモフモフしたいんだけど、また頼もうかな?

 

「たえ、オッちゃんモフモフして......」

「言わせないよ。駄目だって、オッちゃんにまた嫌われるよ?」

「それならやめよう」

 

 

――オッちゃんモフモフできないなんて、ショックなんだけど。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクはあの後、ソファーで横になって昇天した。寝顔がすでにヤバい。ハクにウサギはもはや麻薬だ。一体誰がこんなことを?

 

 

――あっ、私だ。私がハクをウサギ好きに変えたんだった。

 

 

 ていうボケは置いといて、ハクの顔は幸せそうだ。エターは小屋に戻したから今は寝ている。エターごめんね。

 

 ギターは置いてきたからやることがない。ハクの寝顔を眺めていようかな。そうするしかないか。ハクって私のことどう思ってるかな?気になるけど、未だにわかってない。

 

「ハクは私のこと好き?」

「......」

 

 反応がない。寝てるから当たり前だ。ハクは寝てるから今ならファーストキスを奪うことだってできる。でもそんなことはしたくない。私としては雰囲気を作った上でやる方がいい。

 

 ハクにはいくつかスキンシップや好きだよアピールを何回かやったけど、なかなか気づかない。ここまで来ると私のやってきたことは無駄なのか?って思ってしまう。気づいてくれるまでやらないといけない。今度はもう少しやり方を変えよう。

 

 今度は大胆にやるとかがいいかな?大胆にやったら私の身が持たない。それなら音楽で語るか、いややめよう。音楽で語ってわかれば苦労しないし、そんなに都合よく上手くいくはずがない。

 

 恋愛って難しいんだなって痛感させられる。こんなこと考えてると心にグサグサと刺さってくる。なんか泣きたくなってきたな。泣かないようにしよう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 声がする。これは誰か泣いているのか?俺は目を覚まし、体を起こした。そうか、さっき疲れて寝ちゃったんだ。ソファーで横になってたのか。近くを見渡すとたえが泣きそうな顔をしていた。どうしたんだ!?

 

「たえ、どうした!?なにかあったのか!?」

「ハ、ハク......」

 

 目が腫れてる。なんで気づかなかったんだ俺は。また泣かせるなんて、もう泣かせないってあの時誓ったのに。どうして泣かせるんだ俺は!

 

 俺はたえを安心させるために抱き締めた。俺はここにいるから泣かないでくれ。

 

「たえ、大丈夫。もう大丈夫だから!俺はここにいるから!」

「ハク、私は......」

「なにかあったのか?」

 

 まだすすり声が聞こえる。まさかたえがここで泣くなんて思わなかった。普段は泣かないのに、なにがあったんだ?

 

「ねえハク......」

「何?」

「ハクはどこにも行かないよね?」

「離れないよ。前に行っただろ。ずっと一緒にいるって」

 

 そう、俺はずっと一緒にいるって決めたんだ。たえのことを守るって。なのに泣かせた。原因はわからないけど、しばらく離れない方がいいな。

 

「本当?」

「本当だよ。なにがあっても真っ先に駆けつけるし、側にいる。そう言っただろ」

「そう......だよね」

 

 たえが泣き止んだ。よかった、安心してくれた。バクバクしていた俺の心も収まり、肩の力が抜け始めた。たえも安心したのか、俺の胸元に寄りかかり、俺は受け止めきれず、後ろのソファーに倒れてしまった。

 

「ハク、今日は一緒に寝ていい?」

「いいよ、側にいてやるから」

 

 なんでたえは泣いていたんだ?原因がわからない。あの泣き顔を思い出すと胸が苦しくなる。こんな苦しい想いをしたくはないな。俺もしっかりしないと。

 

 

――白兎は気づいていない。

 

 

――兎に想いを寄せられていること、想いに気づかない限り兎が苦しい想いをしていることに白兎はまだ気づいていない。

 

 

 

 

 




後半にシリアスを入れてちょっとだけ物語は進行しました。
ここからの展開、お楽しみに。
感想と評価お待ちしてます。


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二匹のウサギの付き合っている疑惑とウサギの想い

久々の更新です
今回は白兎が初めてクッキーを焼きました
では本編どうぞ


 たえは膝枕で寝ていた。俺ってたえに何回膝枕してんだ?もう数えられないくらいしてるような気がする。

 

「ハク、耳掻きしてよ」

「またか?この前もやっただろ」

「いいじゃん。ハクの耳掻き上手いからクセになっちゃうんだよ。ねぇ、いいでしょ?」

「しょうがないなあ。今持ってくるから待ってくれ」

 

 俺の耳掻きって上手いのか?自分でやっててもわからないな。今思ったけど、香澄の星?みたいな髪が猫耳だったら耳掻きできるんじゃないのか?いや待て、猫に耳掻きは難しいから無理か。ていうかさぁ......。

 

 

――なんでこんなこと思い付いたんだ俺は?

 

 

 そんなことを考えていたらチャイムが鳴った。誰だ?

 

「はーい」

「私だよ!香澄だよー!」

「今開けるから待ってろ」

 

 香澄?なんで来たんだ?まさか俺が呼び寄せたのか?とりあえず耳掻きは後にした方がよさそうだな。ごめん、たえ。

 

「たえ、耳掻き後でもいいか?」

「香澄が来たんでしょ?わかった、後にするよ」

「ごめんなたえ。やってあげられなくて」

「大丈夫だよ」

 

 とりあえず香澄を入れるか。客は待たせてはいけないからな。お菓子とかどうするか?まああるものでいいか。

 

 俺は入り口のドアを開けて香澄を家に入れた。あれ?なんで有咲達もいるんだ?それにりみと沙綾までいるし。今日は賑やかになりそうだな。

 

「お邪魔しまーす!」

「お邪魔します。ごめんハク、香澄に誘われて来ることになった」

「そ、そうか。お疲れ様」

 

 有咲は今日も苦労している。まあ俺もたえに苦労させられてるからな。お互い様か。

 

「ハク君。突然でごめんね」

「ハク本当にごめんね。香澄を止められなかったよ」

「これは仕方ないよ。香澄はもう誰にも止められないんだ。沙綾もりみも悪くない」

 

 そう、香澄は暴走したら誰にも止められないんだ。止められる奴がいるなら有咲しかいない。何故かって?パートナーだからじゃないのか?

 

「今日はどうしたんだ香澄?俺の家に来たということはなにかあるんだろ?」

「そんなに急かさないでよハク!今日はね、ハクが星型のクッキーを焼いたって聞いたから来たんだ!」

 

 俺は香澄達に渾名で呼んでいいと言ったが、香澄と有咲と沙綾は呼び捨てになり、りみは君付けになった。香澄が呼び捨てで呼んできたのは驚いたが、もう気にしないことにした。気にしたら負けだ。

 

「ちょっと待て、なんで俺がクッキーを焼いたのを知っている?」

「え?おたえから聞いたけど......」

 

 たえ何故そんなことをしたんだ?俺は初めてクッキーを焼いたけど、香澄達に出すには難しいと思うんだけどなあ。

 

「た~え~?」

「ごめんねハク。香澄達に毒......。間違えた、味見してもらおうと思ったんだ」

「おたえ今毒味って言おうとしなかったか!?」

「気のせいじゃないの?有咲ボケちゃった?」

「ボケてねぇよ!」

 

 完全に毒味って言おうとしただろ。たえっていつから腹黒になったんだ?天然でマイペースで腹黒とか、怖すぎる。そして有咲ナイスツッコミ。今日も鋭いツッコミだな。

 

「へぇ、ハクがクッキーを焼くなんて珍しいね」

「初めてなんだけどな。作り方はリサ先輩から教わったんだ」

「リサさんからなんだ。どう出来映えは?」

「どうだろう。食べたら感想くれないか?今度また作るからさ」

 

 今回はバニラとチョコでやってみたが、大丈夫か?しかも形はポピパだから星にするかって軽い気持ちで決めたが、まあ喜んでくれるかもな。初めてだから不安定しかない。リサ先輩からは「大丈夫!当たって砕けろだよ!」なんて言ったけど、リサ先輩砕けたらアウトです。

 

 俺はさっき焼き上がったクッキーを皿に移してテーブルに置いた。感想なに来るかわかんないけど受け止めるしかないな。下手したら砕けるかもしれない。

 

 香澄達はクッキーを口に入れた。言っておくが、ロシアンルーレットは仕込んではいない。初めて作るのにそんなことやったらたえに嫌われるからな。

 

 俺は唾を飲み込んで香澄達に味を聞いた。

 

「どう......だ?」

「うん!美味しいよ!」

「ハクにしては上出来じゃねえか」

 

 香澄と有咲は美味しいと言ってくれた。あとはりみと沙綾だ。

 

「ハク、美味しいよ」

「ハク君、めっちゃいいよ!このクッキー美味しいよ!」

 

 沙綾とりみも喜んでくれた。初めてだったけど成功だ。やっぱ美味しいって言ってくれると嬉しいな。あとはたえだけだな。たえはなんて言ってくれるかな?

 

「あとおたえだけだよ」

「そうだった。ハク、いただきます」

「召し上がれ、たえ」

 

 なんてことを言っちまったんだ俺は!これじゃあいい雰囲気出してるのと同じじゃねえか!下手したらたえが甘えん坊だってことがバレそうだな。気をつけよう。

 

「美味しいよハク」

 

 たえは笑顔で言った。笑顔が眩しい、はたえに美味しいと言われて俺の心は嬉しいという気持ちで満たされた。

 

「ありがとうたえ」

「なあ、お前らって実は付き合ってるんじゃねえのか?」

「有咲なにを言ってるんだ?」

「わ、私とハクは付き合ってないよ?」

 

 有咲に付き合ってるんじゃないのかと聞かれたが、とりあえず否定した。たえも焦ったようだが、大丈夫か?

 

「おたえ今焦らなかった?」

「おたえちゃん顔赤いけど......」

「あのおたえが赤くするなんてねえ。これは貴重だよ!」

 

 おい沙綾貴重とか言うな。香澄達からしたら貴重だが、俺からしたらいつものことだ。まずい、たえの耳が赤くなってきてる。俺も耐えよう。甘噛みしたい衝動に駆られてるからヤバい。

 

「赤くないよ?多分暑いんじゃないかな?」

「暑くないよおたえ?」

「いや、暑いかもしれないが......」

 

 香澄、そこは暑いって言えよ!ああもう、俺は甘噛みしないように抑えるのに必死なのに、この状況どうすればいいんだよ!?

 

 それからはたえは顔を赤くしていないと何度も否定するが、今度は沙綾が俺とたえはなんか隠してるとまで言われてしまった。本当に隠してはいるがバレるわけにはいかず、俺とたえは必死に誤魔化すことにした。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 夕方になり、香澄達は帰っていった。まさか有咲に付き合ってるんじゃないのかって言われるなんて思わなかった。あの時のハクは顔を真っ赤にして否定していたけど、ちょっと傷ついたなあ。

 

「たえ大丈夫か?」

「なんのこと?」

「顔を赤くしてただろ。たえ大丈夫かなって思ってさ」

「心配してくれてありがとハク。私は平気だよ」

 

 付き合ってることを否定されて傷ついていたけど、私はハクに想いを伝えられるかな?ハクは私のことをどう想ってるかな?

 

 あまり考えない方がいいかもしれない。またあの時のようになるし、ハクに迷惑をかけてしまう。私はハクに抱き着いた。今はハクの側にいたい、ハクを感じていたい。

 

「どうしたたえ?」

「ごめん、しばらくこうさせて」

 

 ハクは私の頭を撫でてくれた。そうだ、告白はまだ待とう。私はまだ頑張れる。苦しい想いをしたとしても、ハクに想いを伝えるまで頑張ろう!

 

 

――待っててねハク!ハクに好きっていう想いを伝えるまで私頑張るからね!

 

 

 

 

 




ポピパメンバー久々の登場です
たえは未だに苦しい想いをしています
感想と評価お待ちしてます


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白兎は倒れ、ウサギは恩返しのために看病をする

看病回になります
本編ちょっと進みます


 身体が熱い。いつもより身体が動かないな。なんでだ?

俺は身体を起こして目覚めることにした。寝ていては駄目だ、学校に行かないと......。

 

「あ、たえ。おはよう」

「おはよう。ハク大丈夫?顔辛そうだけど、熱あるの?」

「熱?へ、平気だよ。早く学校に行こうか」

 

 ベッドから出た瞬間、よろけてしまった。あれ、倒れてない?なんでだ?俺は意識が混濁している状態の中、近くにたえがいることに気づいた。たえ、なんでいるんだ?

 

「た、たえ。どうして......?」

「どうしてじゃないよ!休んだ方がいいよ!」

 

 たえは俺に怒りながら言った。しかも泣いていた。どうしてお前が泣く?どうして泣く必要がある?そんな辛そうな顔をしないでくれよ。俺も......、俺も辛くなるよ。

 

「た、たえ?」

「ハクは無理しすぎだよ!なんでそんなに無理をするの?なんで自分を大切にしないの?私のために色んなことをしてくれるのは凄く嬉しいよ。でも......さ......」

 

 

――もっと自分を大切にしてよ!

 

 

 たえは涙目になって言った。自分を大切にか。確かに俺はたえのために色々なことをした。弾き語りや料理もできるようにした。俺はどうしてここまでたえのために動いていたんだろう。

 

 そんなことを考えていたら意識が薄れてきてしまった。頭がクラクラする。たえが泣いてる。また泣かせちまったな。駄目だ、意識が薄れてきた。ごめんたえ、しばらく寝かせてくれ。

 

 俺の意識はここで切れてしまった。起きるまで何時間かかかった。どれくらいかはわからない。

 

 

▼▼▼▼

 

 

「ハク、ハク!しっかりして、ねえ!」

 

 ハクが起きない。どうしたらいいんだろう?おばさん達は出掛けてるからいない。今この家にいるのは私一人。とりあえず寝かせよう。それから香澄に連絡しよう。今日は休むって!

 

 私はハクの肩を担いでベッドに寝かせ、布団を掛けた。ハク、重くなったな。成長したんだね。あと、熱を測らないと。

 

 体温計を持ってきてハクの腋に体温計を挟んだ。あと、香澄に連絡しよう。とにかく落ち着こう、落ち着かないと......。

 

「もしもし?どしたのおたえ?」

「もしもし?香澄、今大丈夫?」

「大丈夫だよ!なにかあったの?随分辛そうみたいだけど......」

「実は、ハクが倒れちゃって......」

 

 私は香澄に風邪で休むってことにしておいてほしいことを伝えた。香澄は「いいよ!お見舞いとかは大丈夫?」って言った。

 

「お見舞いは大丈夫だよ。看病は私の方でなんとかするから。香澄、ごめんね」

「いいよいいよ!ハクのことは心配だけど、私達が来ても邪魔になるかもしれないからさ!」

「そんなことないよ!」

「おたえ」

「な、なに?」

 

 どうしたんだろう香澄。香澄がこんなこと言うなんて、いつもの香澄じゃない。

 

「ハクの看病頑張ってね!」

「う、うん!ありがとう香澄!またね」

「またねおたえ!」

 

 電話が切れ、香澄との通話が終わった。そうだ、体温計何度だろう。私はハクの腋に挟まっている体温計を取り、何度あるかを見た。39℃、凄い熱だ。

 

 あとタオルを濡らしておでこに置くんだっけ?看病はやるのは初めてだからなにをしたらいいのかがあまりわからない。前にハクに看病してもらったことがあるけど、なにをやっていたかな?

 

 とりあえず、私がわかるなりにやろう。これまでハクに何もしてあげられなかった。だから恩返しをしよう。ハクを治してあげよう!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 まだ身体が熱い。でも、さっきよりは楽になったような気がする。誰か看病してくれてるのか?それに、額にタオルが置いてある。しかも濡れてる。

 

 俺は瞼を少しずつ開けた。少しずつだけど意識が戻ってきたな。たえの顔が見える、もしかしてたえが看病してくれてたのか?

 

「こ、ここは......」

「あ、ハク起きた!大丈夫?」

「た、たえ。なんでここにいるんだ?学校はどうしたんだ?」

「休んできた」

 

 休んできたって、なんでだ?俺のことは大丈夫なのに、どうしてここに......。

 

「どうして?」

「ハクを看病するためだよ。あんなハク、放っておけないよ」

「放っておけないって、俺は平気だよ」

 

 そんなことを言った瞬間、たえに抱きつかれた。え?なんで抱きつかれたんだ?そんなことをしたら風邪移るぞ?

 

「平気じゃないよ!あんなハクを見て私がそのまま学校に行くと思ってたの!?バカなの!?」

「た、たえ。風邪移るから離れて」

「嫌だ!ハク、今日はじっとしてて。ハクが治るまで私が看病するから!」

「たえ......」

 

 どうしよう、泣きそうになる。たえが必死になって、泣いてまで俺のことを看病しようとしてくれる。看病をしてくれるだけなのに、なんで泣きそうになるんだ?とにかく泣きそうになるのを堪えよう。

 

「......わかった。じゃあたえ、治るまで頼めるか?」

「頼まれました!ハク、熱測ってもらえる?」

「わかった」

 

 ハクは体温計を腋に挟んで熱を測った。さっきよりも良くなっている。でもまだ辛そうだ。熱大丈夫かな?

 

「何度だった?」

「38.6℃だな」

「少し減ったね。よかった」

「さっき何度だったんだ?」

「39℃あったよ」

 

 39℃!?俺は聞いた瞬間に血の気が引いたような気がした。ヤバいなこれは、落ち着いたら病院行こう。

 

 背中が汗で濡れてるな。こんなに汗掻いてたのか。しかも気持ち悪い。たえに拭いてもらうしかないな。頼むしかない、今日はたえに甘えようか。

 

「たえ、背中拭いてくれないか?」

「背中を?前も拭いてあげようか?」

「ま、前は自分でやるから!」

「ハク可愛いよ。顔赤くなってる」

「言わないでくれよ!気づかないようにしてたのに、たえのバカ野郎!」

 

 こんなに言い合ったのいつ以来だろう。たえもちょっとだけ赤くなってる。可愛いなんて言えない。心に留めておこうかな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクの背中久しぶりに見るな。相変わらず綺麗だけど、汗だらけだ。ハク、今拭いてあげるから待っててね!

 

「じゃあ拭くよ?」

「ああ、頼む」

 

 私はハクの背中の汗を拭き始めた。ハク気持ちよさそうにしてるけど、そんなに背中拭いてもらうのがいいのかな?

 

「ハク、気持ちいいの?」

「ごめん、たえが拭くの上手いからつい気持ちよくなった。気持ち悪いだろ?」

「そんなことないよ。ハクらしいなって思った」

「俺らしいってどういう意味だよ?」

「変人らしいなって!」

 

 変人らしい、それしか言い様がない。といっても私もハクも二人とも変人だから、どう言ったらいいかわからないや。

 

「拭き終わったよ」

「ありがと、後は自分で拭くから」

「いや、前も私が拭くよ!」

「ちょっと待て!さっき自分でやるって言ったよな!?」

「言ったけど、私が拭きたいから!お願い、拭かせて!」

 

 こうなったら拭かせてくれるまで粘ろう。私はハクに恩返しがしたいんだ。だから、そのためなら譲ってくれるまで粘らないと!

 

「わかった、わかったよ。じゃあ拭いてくれ!これでいいだろ?」

「ありがとうハク。拭いてあげるね」

「ああ。任せたよ」

 

 ハクって意外と筋肉あるなあ。ぷにぷにしたいけど、怒られるからやめておこう。やっぱり気持ちよさそうにしてる。ここまでくると可愛いというより気持ち悪い。ごめんハク、これじゃ可愛いなんて言えないよ。

 

 それから時間が過ぎ、ハクは眠りに就いた。さっきよりだいぶ良くなってきた。本当によかった。あの時はハクが死んじゃうって思ったから、怖かった。

 

 ハクは最近無理をしすぎていたんだ。弾き語りや料理をする時も本気だし、エター達の世話もしてたから大変だった。私は気づいている、ハクが私のために動いてくれていることを。

 

 今ハクは寝ている。今なら......。今ならいいよね?

 

 私は自分の顔をハクの顔に近づけた。寝ている。今しかない!ごめんねハク。こんな私を許してね。

 

 私は過ちを犯した。ハクの唇に触れるくらいのキスをした。そう、私が犯した過ちとは......。

 

 

――ハクの初めてを奪ったことだ。

 

 

 ハク、本当にごめんね。私はハクのことが好きということに気づいてくれないこの辛さをキスで補うしか方法がなかった。私にはそれしか思い付かなかった。

 

 自分でやっておいて泣きそうになってしまう。過ちを犯した私には泣く資格なんてない。でも、涙が出てしまう。ハクが私の想いに気づいてくれないことが辛くて......。胸が切なくて、胸が張り裂けそうで......。

 

 どうしてこんなにも辛いんだろう?好きな人に気づいてもらえないのがこんなに辛いなんて思わなかった。私の努力って無駄だったのかな?

 

 私は泣いてしまった。両手で涙が出るのを抑えた。でも涙は止まらなかった。

 

「ハク、ごめんなさい。本当にごめんなさい。私、私......」

 

 ハク、いつになったら気づいてくれるの?もう辛いよ、苦しいよ、死にたいよ。

 

 でも、ここで折れたらおしまいだ。なにがなんでも耐えないと!ハクに告白するって決めたんだ!私の想いを伝えないと......。例え......。

 

 

――例え、私の心が張り裂けそうになっても、最後まで耐えよう。ハクに想いを伝えればそれで終わりなんだ!それで......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――それで、私は楽になれるから。

 

 




おたえ苦しんでますが、作品の展開上こうせざるを得ませんのでお許しを
感想と評価お待ちしてます


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白兎はウサギに避けられ、ウサギは星に相談をする

二週間ぶりの更新です
弾き語りパートやってなくて申し訳ない



 たえの看病もあって、俺の体調は回復した。梅雨の時期も過ぎ、季節は夏になろうとしていた。

 

 最近、俺はたえに避けられているような気がする。なんでだ?俺はたえになにかしたのだろうか?香澄達に聞いてみようと思ったが、聞いたら色々とヤバいような気がする。

 

「はあ」

「どうしたのハク?」

「沙綾か。ちよっと色々あってな」

「色々って、なにかあったの?」

 

 沙綾に相談してみるか?いや、ここはいっそのこと香澄達に相談してみる、それもアリかもしれない。ヤバいかもだけど、こうなった原因は多分俺かもしれない。たえ絡みとなると俺しかいない、そうとしか思えない。

 

「あったちゃ、あったかな?」

「ふーん」

 

 沙綾はニヤニヤと笑った。なんだ?なんか嫌な予感がするな。

 

「なにニヤニヤしてんだ」

「なんでもないよ。ハクっておたえのこと好きだなって思ってね」

 

 え?俺がたえのことを好き?それはどういう意味だ?確かにたえのことは好きだけど、特別な関係だからこそ言えることだ。

 

「ちょっと待て。どういう意味だ?」

「そのままの意味だよ!」

 

 そう言って沙綾は去っていった。どういうことだ?俺の周りでなにが起きてるんだ?胸騒ぎがするな。悪いことじゃなきゃいいんだけど......。

 

 放課後になったが、たえと帰ることはなかった。家に着いたが、たえの姿はない。あいつ、本当になにがあったんだ?

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私は最近ハクを避けている。何故かというと、ハクが私の想いに気づいてくれないからだ。

 

 ハクを看病し、寝ている間に唇を奪った。なんであんなことをしたんだろう。後になって考えると、ハクには酷いことをしたなと思う。

 

 香澄達にハクの想いを打ち明けようか迷っている。そんなことをすれば私がハクと二人きりのときに甘えん坊になっていることがバレてしまう。でも、そんなことを言ってる場合じゃなかった。

 

 何かいい方法はないかな?やっぱり、香澄達に相談しよう。今度、練習の時に相談してみよう。

 

「おたえちゃん、なにかあったの?」 

「あ、りみ。なんでもないよ」

 

 顔に出てたかな。多分、今の私は暗い顔をしているかもしれない。周りからは珍しいね、と言われた。香澄や有咲にも言われた。確かに最近の私はおかしい。練習にも集中できないし、オッちゃんに餌をあげるのも忘れる。重症だ。

 

「おたえちゃん、それは嘘だよね?」

「そんなことないよ。私は至って元気だよ!」

 

 私は元気だ、と笑顔で言った。違う、本当は元気なんかじゃない。

 

 りみはたまに鋭い時がある。そりゃそうだ、私が落ち込むなんてことはまず無いし、落ちんでるってことはなにかあるに違いないって思われるに決まってる。私はそのくらいのことはわかっている。

 

「おたえちゃん」

 

 りみは私に近づき、耳元で囁いた。

 

 

――あんまり無理はしないでね。 

 

 

「りみ......。ごめんね」

「謝らなくてもいいよ、おたえちゃん。香澄ちゃん達も心配してたよ?」

「そう......なんだ」

 

 香澄達にまで心配を掛けてた。情けない、本当に情けない。私のせいなのに、ポピパに迷惑を掛けるなんて。ポピパだけじゃない、ハクにも迷惑を掛けてる。

 

「おたえちゃん、ハク君もなにかあったのかもしれないよ」

「え、ハクになにかあったの!?」

「なにかあったというかね、落ち込んでた......かな」

 

 ハクも落ち込んでた。やっぱり迷惑を掛けてた。どうしたらいいかな?ハクと仲直りしたいけど、どうすればいいかわからない。やっぱり、香澄達に相談した方がいい。

 

 チャイムが鳴った。次の授業が始まる。ハクとは隣だけど、頑張ろう!

 

「おたえちゃん、気をつけてね!」

「わかった。りみありがとう!」

 

 ここはハクと手紙で話合おう!それしかないんだ。話ができないのなら、手紙でやるしかない!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 たえから手紙が来た。隣の席のたえを見たが、授業を受けているふりをしつつ、俺を見ていた。早く読めってことか。

 

 

――ハク、後で話があるんだけど、いいかな?

 

 

 話?なんのことだ?もしかして、避けていることの件か?だが、その原因がわからない。俺は手紙を書いて先生にバレないようにたえの机に投げた。因みに、俺が書いた内容は......。

 

 

――わかった。後で話を聞くけど、家の中でいいか?二人きりで話をしたい。

 

 

 しばらくして手紙が帰ってきた。俺は紙を開いて書かれた文を呼んだ。

 

 

――いいよ。

 

 

 それだけだった。たえにしては珍しく短い文だった。たえの方を見ると、たえは俺の方を向いて微笑んだ。とても辛そうに微笑んでいた。こんな表情を見ていると、心臓が掴まれそうになった。きっと、俺が原因なのかもしれない。こんなに辛い想いをさせたたえに、俺は罪悪感を感じた。

 

 そもそも原因はなんだ?なんでたえはあんなに辛そうにしている?これまでのことを振り返ってみるか?

 

 弾き語りは最近していない。そう、花見以来やっていないんだ。じゃあなんだ?たえに耳掻きをしてあげていなかったからか?

 

 振り返ってみたが、駄目だった。原因がわからなかった。たえの気持ちは多少はわかる。あと、"好意は少しならわかる"。

 

 それから授業が終わり、昼休みになった。いつも通り中庭で昼食を済ませ、いつもより早く中庭から離れた。今の状態でたえと一緒にいると、たえは余計辛く感じてしまうかもしれない。それなら俺はいない方がいいと思った。

 

 

▼▼▼▼

 

 

「ハクの奴、どうしたんだ?」

「今日は珍しいね、ハク君が早く教室に戻るなんて......」

 

 有咲とりみりんは心配そうに言った。多分、ハクは私に気を遣ったんだ。一緒にいると、気まずくなると。それで私から離れたのかもしれない。

 

「ねえ、おたえ」

「なに、香澄?」

「......ハクとなにかあったの?」

 

 香澄からも心配された。やっぱり、ここで言った方がいい。私がハクのことを好きだっていうこと、今私が何を感じているのかを全部話そう。

 

 私は香澄達に全てを話した。その時のみんなの反応はというと......。

 

「ハクの奴、罪深い男だなぁ」

 

 全員が口を揃えて言った。私は顔を真っ赤にし、手で顔を覆った。これは気づかないハクが悪いよ!ていうか香澄達、みんな顔赤いし!

 

「思ったんだけど、香澄達は気づいてたの?」

「いや、最初から気づいてたよ」

「そうだよ。いつになったら付き合うんだって思ってた」

「さすがの私も気づいてたかなぁ......」

「おたえちゃん、元からバレバレだよ」

 

 実はみんな気づいていた。あの香澄でさえもだ。おかしい、私はハクに甘えてはいる、だけどバレているなんて思ってもいなかった。もしかして、私が実は甘えん坊だってこともバレてるの?

 

「まあ、話は変わるけど。おたえ、これからどうするんだ?」

「それは......。わからない」

「わからないって!?お前はハクのこと好きなんだろ!なんで告白しないんだよ!」

 

 有咲に怒られた。有咲が私のために怒っていることはわかるけど、まだわからないんだ。ハクが私のことをどう思っているのかを。

 

「告白はできないよ。ハクの想いがわからないから、告白しようにもできないんだ」

「おたえはさ、ハクが一緒にいるって言った時から好きになったんでしょ?」

「そうだよ」

 

 そう、私はハクに一緒にいるって言われてから好きになったんだ。それから、私はハクと一緒にいるようになり、一緒にギターを弾いたり、甘えるようにもなった。

 

「ねえ、私思ったんだけど......」

「どうしたの?香澄ちゃん」

「それならさ、音楽で想いを伝えるって言うのはどうかな?」

 

 音楽で想いを伝える。その手もあるかもしれない。でも、それでハクはわかってくれるのか、それが不安でしょうがない。

 

「音楽で?」

「うん、音楽で。ハクはおたえの気持ちがわかるんでしょ?音楽ならきっとわかってくれると思うよ!」

「音楽か......。ありがとう香澄!」

 

 よし、決めた!ハクにギターを聞いてもらって、それから告白しよう!私とハクを繋いでくれたのはギターやウサギがある。他にも色々あるけど、やっぱりギターとウサギが一番だ。

 

 

▼▼▼▼

 

 俺は教室の窓からたえ達を見ていた。なにかやってるな。気になるけど、行かない方がいい。

 

 香澄に相談しようか迷っていたが、やめることにした。この問題は自分でなんとかしよう。俺に原因があるんだ。

 

 たえが香澄達と話をしていた時、俺は聞いてしまった。たえが、俺のことが好きだということを聞いてしまったんだ。なんでたえは俺のことを好きなんだ?どうしてなんだ?俺のような変人のどこがいいんだ?

 

 

――今はやめよう。このことは帰ってからだ。帰ってから考えよう。

 

 

 

 

 

 




白兎がおたえの想いを知った回です
感想と評価お待ちしてます


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白兎は想いに気づき、ウサギは白兎のために動く

白兎がようやくおたえの想いに気づきます
今回は少し長いです


 帰ってからの放課後、たえから突然話はまた今度でいいかと言われた。俺は「いいよ、また今度で」と返事を返した。

 

 ちょうどよかった。たえの想いを知った上で話をしたら、気まずくて話ができる状態じゃない。しかし、どうしてたえは俺のことを好きになったんだろう。それが疑問だ。

 

 なにか理由があるのかもしれない。俺が小学生の時に「何があっても一緒にいる!」って言ったからか?それとも、一緒にギターを弾いていて好きになったからか?

 

 全くわからない。じゃあ、俺はどうなんだ?俺はたえのことは好きなのか?でも、それは親友としてなのか、パートナーなのか。もうわからなくなっているな。

 

「たえ、どうして俺のことを好きになった?どうして俺なんだ?」

 

 俺は一人、自分の部屋で呟いた。今日はたえはいない。いないというより、しばらく来れないと言っていた。たえがいないだけで寂しいと感じてしまうなんて、どうしてだろう。

 

 俺は思った。ギターや料理はたえのためにできるようにした。たえのためと言っても、何故やったのか。どうしてできるようにしたのか。あと、たえがなんで俺に甘えて来ているのか。どうして甘えて来る頻度が増えたのか。

 

 たえが俺の耳に甘噛みをしてくる理由は何故なのか、色んなことが俺の頭の中に浮かび上がっていく。様々な疑問や昔の思い出が交錯していった。

 

 あともう一つ、俺は何故たえを守る、側にいると言ったんだ?今になってこんなことを思い出すなんて......。

 

 俺はたえと出会った時、最初は変な奴だと思った。しばらくして、たえとギターを弾いたり、一緒に同じ音楽を聞いたり、一緒にウサギの気持ちになったり、たえのために料理を作ったり、色々なことがあった。

 

 俺は中学の時にこんなことを思っていたな。確か、おばさんもいた時だったっけ?

 

 

――たえはもしかして、俺のことが好きなのか、と。

 

 

 俺は思った。ギターや料理はたえのためにできるようにした。そんなこと、好きな人のためでなければできないことだ、と。そう、要するに......。

 

 

――俺はたえのことが好きだった。

 

 

 やっと気づいた。自分の想いにやっと気づけた。なんでここまで鈍感だったのか、情けないと思う。たえをここまで悲しませたのは、俺だ。答えを出した瞬間、俺の目から一滴の雫が流れた。これは、涙だ。

 

「たえ、ごめんな。本当に......ごめんな」

 

 ごめんよたえ。お前の想いに気づけなくてごめんな。待たせちゃって本当にごめんな。

 

「今なら言える。俺は......いや、僕はたえのことが好きだ」

 

 久しぶりに一人称が変わった。あの日から変わろうって決めたのに、昔に戻っちまったな。でも、過去には戻れないんだ。だから、この想いを伝えよう!たえに好きだって伝えよう!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 よし、今日はここまでにしよう。私はハクに音楽で想いを伝えると決めたあの日から、ずっと練習をしていた。ハクと一緒になった時はなるべく普通にしている。

 

 ハクも私と合わせてくれているのか、普通にしていた。香澄達は応援してくれている。もちろん、私はハクの家には行っていない。寂しそうにしているかもしれない、ごめんねハク。私はハクのために練習をしていた。

 

「ハク、今頃どうしてるかな?」

「元気出してよ、おたえ!」

「ハクのことだ、あいつなりになんか考えてんだろ?」

 

 香澄と有咲は言った。ハクもなにか考えているに違いない。ハクからはしばらくクラレンには来れないって連絡が来ていた。なにをしているんだろう?気になるけど、そんなことを気にしている場合じゃない。

 

「ここまで必死なおたえちゃん初めて見たよ」

「おたえとハクってロマンチックな関係だよね~」

 

 ギターを弾いている手が止まった。さ、沙綾!?なにを言ってるの!?私は焦ってしまい、ギターを落としそうになった。連れてきていたオッちゃんもビックリしてしまったようだ。

 

「沙綾!なにを言ってるの!?」

「ごめん、ごめん。ついからかいたくなっちゃってね」

 

 沙綾は手を合わせ、ウィンクをして謝った。許せないけど、どうしても沙綾が憎めない。なんなの?この複雑な気持ちは?

 

「おたえ、お前大丈夫か?」

「し、心配しなくても大丈夫だよ!私はこれでも大丈夫だから!」

「全然大丈夫なようには見えねーよ!」

 

 有咲にまでツッコまれた。なんか酷いなあ。私ってそんなに大丈夫じゃないのかなあ?なんかわからなくなってきたし、頭がクラクラしてきたよ......。

 

「おたえ、一旦休もうよ」

「でも香澄、私は止まれないよ」

「......はあ」

 

 りみが溜め息を吐いた。りみ、どうしたんだろう?

 

「おたえちゃん......」

「な、なに?」

「休めって、言うとんねん!」

 

 りみに関西弁で怒られた。私、なにかしたかな?

 

「りみりん!?」

「あのりみが......」

「マジギレした!?」

 

 あ、なんかヤバイかも。

 

「おたえちゃん!少しはみんなの言うこと聞いた方がええよ!」

「は、はい......」

「ハク君に想いを伝えるっていうのはわかるよ!でも、おたえちゃんが倒れたりしたら、ハク君は悲しむと思うよ」

 

 

――だから、おたえちゃん。冷静になろう?

 

 

 りみは怒りながら言った。そうだ、ここで私が倒れたりしたら元も子もない。

 

「ありがとう、りみ」

「それでいいんだよ、おたえちゃん」

「今日はこれで終わりにするよ。悪いけど、先に帰るね」

 

 私はギターをしまい、オッちゃんをケージに入れて帰る準備をした。蔵から出ようとした時、香澄に声を掛けられた。

 

「おたえ、頑張ってね!」

「おたえ、砕けるなよ!砕けたりしたら、承知しないか、な!」

「おたえ、ファイト!」

「おたえちゃん、頑張って!」

 

 香澄や有咲、沙綾、りみから応援の言葉を貰った。駄目だ、泣きそうになる。ここで泣いたら駄目だ!私は涙を堪え、言葉を紡いだ。

 

「ありがとう、みんな。行ってくるね!」

 

 さあ、ハクに想いを伝えよう。待っててねハク!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 たえが来なくなって一週間が経つ。この一週間の間は昼食は別で食べることにしていた。

 

 たえが隣にいないだけなのに、寂しく感じる。好きだと気づいて、俺はたえに何もしてあげられない。正直言うと、どう告白したらいいのかわからなかった。こんなこと初めてで、どうしたらいいのか、どうすればたえは喜ぶのか、考えていたが全く思い付かなかった。

 

 たえが恋しい。この寂しさをエターやキル、ケーと一緒にいても補えなかった。ウサギが駄目なら人か。たえがいないだけで胸がズキズキと痛む。弾き語りをする気が出てこない。

 

 はあ、と溜め息を吐く。俺がたえの想いに気づけなかったのが悪いのに、何故溜め息を吐くのか。じっとしている場合ではないのに、この状況をなんとかしなければいけないのに、体が動かない。

 

 後ろを振り返ると人影が見えた。あれは、有咲か?

 

「ここにいたのかハク」

「有咲、何故ここに来た?」

「お前を探してたんだよ」

 

 有咲が俺を?俺に用があるのか?俺は気になり、有咲に探していた理由を聞いた。

 

「俺に何か用か?」

「用というか、主におたえの件でな......」

 

 たえのことでか。そういえば、たえはどうしてるんだろう。心配になっていた。一週間も一緒にいないんだ。

 

「たえはどうしてる?元気にしてるか?」

「ああ、元気だよ。あと、ハク。これだけは聞くけど......」

 

 

――お前、おたえのことどう思ってるんだ?

 

 

 有咲の一言は直球だった。俺の心臓をナイフで刺したかのように直球だった。聞かれた瞬間、心臓が止まりそうになった。俺は心臓がバクバクと鳴っているのを感じた。息が止まりそうだ。

 

「......た、たえのことか?それはどういう意味でだ?」

「どういう意味って、その、恋愛的......な意味でだよ」

「'恋愛的な意味でか」

 

 俺の中では答えは出ている。たえを十年も待たせてしまった。俺の頭は待たせてしまったという罪悪感でいっぱいだった。

 

「もちろん、好きだよ」

「言っておくが、友達とかっていうのは無しだからな」

「わかってる。有咲が知ってるってことは、たえから聞いたんだな」

 

 そもそもおかしいんだ。恋愛的な意味でってことは、有咲はたえが俺のことを好きだと、知っている上で聞いたんだ。つまり、たえは俺のことを好きだということか。

 

「......ああ。おたえが自分で言った」

「そうか。たえにしては珍しいな」

「そうだな。なあ、ハク」

「なに?」

「ハクは、これからどうするんだ?」

 

 有咲はこれからどうするかを聞いた。わからなくなっているんだ。たえに告白するのか、このまま親友というままで終わらせるのか。

 

「もう、わからないんだ」

「はぁ!?お前、自分がなにを言ってるのかわかってんのか!?」

「ああ、わかってる。わかってるよ」

 

 わかってるさ。俺が何を言っているのか、言っている意味も。こんなことを言っている時点でたえを傷つけていることも、悲しませていることも。

 

「俺はさ、どうしたらいいかわかないんだ。告白するべきなのか、親友のままで終わらせるのか。どうすればいいのかわからないんだよ」

「ハク、おたえが待ってるんだぞ!お前がそんなんでどうするんだよ!」

「じゃあ、どうすればいいんだよ!有咲にはわからないだろ!俺がどういう気持ちなのか、たえを十年も待たせて、散々傷つけて......。あいつに想いを伝えたとしても、許してもらえないかもしれない」

 

 俺は息が切れるように言った。喉は枯れて、泣きそうになって、心は傷ついてボロボロ、俺の心は折れる寸前だった。

 

 きっと、無理なんだ。たえのことが好きだとしても、許してもらえない。俺は......。

 

 

――俺は、薄情者だ。

 

 

 逃げているのはわかっている。今更、どんな顔をして会えばいい?どうすればたえに想いを伝えたらいい?好きだと気づくのが遅すぎたんだ。

 

 パチンッ!

 

 頬に乾いた音がした。叩かれたんだ。叩かれて当たり前だ。当然だ。逃げるようなことを言って、駄々をこねて、たえを悲しませて、どうすればいいのかをわからないと言っている。俺には叩かれる資格があるんだ。

 

「バカ野郎!ハク、お前はなにやってるんだよ!」

「あ、有咲......」

「だったら......。おたえのことを幸せにしてやれよ!ハクしかいないんだぞ!お前がおたえのことを幸せにしないでどうする!」

 

 有咲は怒りながら言った。俺がたえを幸せに?でも、俺はたえを傷つけたんだぞ?俺にその資格があるのか?

 

「でも、俺は......」

「でもじゃねぇ!ハク、もうそんなこと言うな。おたえが待ってる。だから、行ってやれ」

「いいのか?今更会わせる顔がないのに、俺がたえに会っていいのか......」

「いつまでもウジウジしてんじゃねぇ!いいから、早く行け!」

 

 そうだよな。こんなところで止まっててもしょうがないよな。許してもらえないとかはどうでもいい。たえに想いを伝えよう。俺が幸せにしてやらないと!

 

「わかった。行ってくるよ」

「よし、行ってこい。落ち着いたら結果言えよな?」

「え、言うのか!?」

「当たり前だろ。同じポピパとしてっていうのもあるし、私がなんのためにここに来たと思ってるんだ?」

 

 結果まで言わなきゃいけないのか。まあ、そうだよな。有咲にここまで言われたんだ。とりあえず、俺のできる限りのことをしよう。当たって砕けろだ!

 

「行ってくるよ、有咲」

「おう、頑張れよ!」

「あと、さ。怒ってくれてありがとう」

「は!?な、なんだよ急に!?」

 

 ここで折れていた俺を有咲は怒ってくれた。もしここで止まっていたらこんな状況にはならなかった。だからお礼を言ったんだ。

 

「まあ、お礼だよ」

「そ、そっか」

 

 俺はたえの元に走った。たえが家にいると有咲から聞いた。走ろう、全力で走ろう。前へススメ!

 

 




最後蛇足気味になりましたが、読んでいただきありがとうございました
次で白兎とおたえが結ばれます
次をお楽しみに
感想と評価お待ちしてます


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六年の時を経て白兎とウサギは結ばれる

この回でようやく結ばれます
本編どうぞ


 まだ着かないのか、たえの家はこんなに遠かったのか、俺の心は色々なことでいっぱいいっぱいだった。たえに告白しないと!俺はそれだけのために全力で走っていた。

 

「はあ、はあ。待ってろよたえ!」

 

 俺はあいつを何年も待たせてしまった。精々十年くらいか?どうして俺はたえの想いに気づかなかったのか、どうしてもっと早くに付き合えなかったのか、俺は罪悪感に駆られていた。

 

 自分を責めてもしょうがない。過去は変えられないんだ。今が大事なんだ。俺はたえに何をしてあげられるだろうか、付き合ったら何をしようか、付き合ってからはどんな人生になるのか、これからのことを考えていた。

 

 それは付き合ってからにしよう。だから今は.....。

 

 

――前を進まないと!大切な人の元に向かわないと!

 

 

 走って走ってひたすら走り、ようやくたえの家に着いた。やっと着いた、早く......早く向かわないと!

 

 俺は家の前のチャイムを押した。さて、息を整えよう。あと、心の準備もだ。ここからが正念場だ。たえに何を言われようと覚悟はできてる。俺は想いを伝えてその後どうなるかが大事なんだから......。

 

 その時、ドアが開いた。迎えてくれたのはたえだった。明るい表情をしていた。待ってたと語りかけるかのように明るかった。

 

「ハク、こんばんは。一週間ぶりだね」

「そうだな。こんばんはたえ」

「さ、上がって。今日は家私だけだから」

 

 お邪魔します、俺はそう言ってたえの家に上がった。緊張する。告白ってこんなにも緊張するものなんだな。たえはコーヒーを淹れてくると言って台所に向かった。俺はそのままリビングで待つことにした。

 

「ここじゃなんだから、私の部屋に来てくれる?」

「わかった」

 

 俺とたえは部屋に向かった。

 

 告白の刻は近づいている。今日で俺とたえの関係は変わる。どうなるかはわからない、覚悟は出来てる。だからたえ......。

 

 

――お前の気持ちを聞かせてくれ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私はトレーにコーヒーを淹れたマグカップを二つ乗せてハクに部屋に来るように言った。準備は出来てる。ギターの方は一週間練習したから問題はない。だけど、告白の方が心配だった。何故かというと、告白は一切練習していないからだ。

 

 どうしよう、不安になってきた。でも、後戻りはできない。ハクを想い続けて十年、やっとここまで来たんだ。苦しい想いをしながらもがいてもがいてもがき続けて、私は耐えながらこの日を待っていた。私の心は壊れる寸前だ。

 

 もしハクと付き合えなかったら私はここで死のう。もちろん、本気だ。私はもう追い詰められてる。いや、正確にはマイナスに思い込んで自分で追い込んだんだ。

 

「なあ、たえ」

「なに?」

「外寒かったろ?」

「え?まだ6月末だよ、寒いはずないよ」

 

 違う、本当は寒い。私の心が寒いんだ。寒いどころか凍ってしまいそうなくらいに冷めている。私は早くハクの返事を聞きたい。その前にやることがある、まずは段階を踏んでからだ。

 

 ドクンドクンと鳴っていた心臓の鼓動はさらに増していく。ここで死ぬか、それとも結ばれるか。私の全ては行動によって決まるんだ。

 

 今更だけど、私がギターを聞かせるなんていつぶりだろう。私がポピパに入る前だよね。あの時はお互いに聞かせて、それからはハクが私に聞かせてくれた。今度は私がハクのために弾こう。

 

 

――私の想いを音楽に乗せよう!

 

 

「たえ、俺がここに来た理由はわかってるんだろ?」

「わかるよ」

「そうか。なら話が早い......」

「待ってハク。その前に聞いてほしいことがあるんだ」

 

 私はスタンドに立て掛けてあったギターを持ち、弾く準備をした。さあ、私の全力を込めよう。聞いてねハク。私の想いを聞いて!

 

「ギター?何をするんだ?」

「弾くんだよ。ハクのためにね」

「そうか。何を弾くんだ?」

「曲はね......」

 

 

――花園電気ギターだよ。

 

 

 今の雰囲気に合わないけれど、私がこれだ!って思って選んだ曲だ。私にとってこの曲はとても思い入れがある。私が自分で作った曲で、歌詞はハクが書いてくれた。だから、私はこの曲にした。

 

「花園電気ギターか。じゃあ俺は歌うよ」

「え、いいの?」

「いいよ。ギター持ってきてて正解だった。俺は常に持って来てたからな。たえ、一緒に弾きながら歌おう」

 

 一緒に歌う、要するにデュエットだ。花見以来だけど、私はできるかどうか不安になってしまった。手が震える。その時、ハクが私の手を握ってくれた。

 

「大丈夫だよたえ。俺も不安に感じてるから」

「ハク......」

 

 ハクは微笑んで言った。私の気持ちを分かってくれたんだ。嬉しい。こんな時でも君は優しい、私は改めてハクのことを好きになってよかったと心の中で思った。

 

 ハクは私の額にこつん、と合わせて指を絡めてきた。弾く前にこんなことされたら余計緊張しちゃうよ。後でやってほしかったな。

 

「大丈夫。大丈夫だよたえ」

「ハク、私の気持ちがわかるんだね」

「もちろん。俺とたえは幼馴染み......。いや、今はやめておこうか」

「そうだね」

 

 私とハクは口に出さなかった。口に出さなくてもわかっている。そう、私達はもう幼馴染みという関係ではないんだ。もう私達は......。

 

 

――恋人同士なんだ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 俺とたえは花園電気ギターを弾き始めた。そしてお互いの気持ちをぶつけて語りかけるかのように一緒に歌った。歌詞はほとんどたえのことだけど、たえのことが好きだから、作詞をやったんだ。まあ、好きといっても気づく前だけどな。

 

 俺はアコースティックでたえはリード、種類は違ってもギターであることに変わりはない。俺とたえは想いは届いたはずだ。デュエットする時もどこを歌うかはアイコンタクトをして即興で決めた。目を合わせて次はここだって、自分で言うのもなんだけど、こういうのってロマンチックでいいな。

 

「お疲れ様たえ」

「ハクもお疲れ様」

 

 俺とたえは互いに笑い合って言った。後は告白だけだ。この告白によって俺とたえの全てが決まる。もし断られたら俺は香澄達の前から姿を消す、たえとも会わないようにする。

 

 どうなるかはわからない。だから俺はこの告白に俺の全てを乗せる。だから何があっても、現実を受け止めよう。

 

「あ、あの!」

 

 俺とたえの言葉が重なった。

 

 どうしよう。どうする、俺が言うか、それともたえが言うかどっちにする?ここはたえに譲るか。

 

「ハクからいいよ」

「いや、俺は後でいいよ、たえからどうぞ」

 

 わかったよ、とたえは言った。先に言うみたいだな。とりあえず俺は心の準備をしよう。

 

 ......よし。心の準備は出来た。

 

「ハク」

「なに?」

「私ね、ハクに伝えたいことがあるんだ」

「わかった、聞くよ」

 

 心臓が鳴り止まない。俺は唾を飲み込み、たえの言葉を心に刻み込むように聞いた。

 

「私は......ハクのことが好き。私の側にいるって言ってくれた時から好きでした。私と......。私と付き合って下さい!」

 

 たえは目を閉じて次の言葉を待っていた。たえ、お前は本当に頑張ったよ。こんなに勇気を出してくれたんだ。俺も勇気を出して伝えよう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

――私と付き合って下さい!

 

 

 私はハクに告白した。そう、告白をしたんだ。ハクの想いを聞きたい。早く聞きたい!私の想いは届いてるかな?ハクは何て言ってくれるかな?

 

 私の心は限界だった。あとちょっとで壊れそうだ。言葉を伝えたのに、どうして壊れそうなんだろう?きっと私は怖いんだ。ハクがなにを言うのかに恐れているんだ。

 

「た、たえ!」

「なにハク?」

「お、俺もたえに伝えたいことがあるんだ!聞いて......くれるか?」

「うん。聞くよハク」

 

 ハクの口から言葉が出てくる。怖いけれど......怖いけれど聞こう。聞くんだ、ハクの言葉を!想いを聞くんだ!

 

「俺は......。俺はたえのことが好きだ!初めて会った時からずっとずっと好きだ!俺と......付き合って下さい!」

 

 

――やっと聞けた!やっと聞けたんだ!

 

 

――私の想いがハクに届いた!

 

 

 私はハクに告白され、嬉しさのあまりハクに抱き着いてしまった。

 

「ちょ、たえ!?」

「嬉しい、嬉しいよハク!」

「ま、待ってくれ!」

「私は六年待ったよ!ずっと待ってたよ!」

 

 そうだ、私はずっとこの時を待っていたんだ。あの日からずっと......!

 

「たえ、ごめんな待たせちゃって」

「いいよ。私の想いがハクに届いたならそれでいいよ」

「たえ......」

 

 そう、これでいいんだ。

 

 私はやっとハクと恋人になれた。やっと私は楽になれたんだ。私は安心し、ハクに寄りかかった。

 

「ねえ、ハク」

「なに?」

「キスしていい?」

「いいけど、お前一回キスしただろ?」

 

 え、なんのことかな?もしかして看病した時にハクが寝てた最中にキスをしたのがバレてるの!?

 

「たえ、あの時は実は半分起きてたからな」

「嘘!?」

「ホントだよ。まあそれはいいとしてキスしようか」

 

 結局この話は水に流された。なんか複雑だなあ。まあいいかな。

 

「たえ......」

「ハク......」

 

 私とハクは唇を重ねた。私にとっては二回目のキスだけど、今はこの雰囲気に浸っていたい。私はようやくハクと恋人になれたんだ。苦しかったけど、耐えてよかったって思ってる。

 

 ハクの唇は甘酸っぱい味がした。まるで私の心を溶かすような感じがした。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 たえと恋人になって本当によかった。好きになってよかった、君と出会えてよかった、俺は嬉しかったんだ。たえと会うことが出来て、たえと付き合えてよかったって。

 

「なんか静かだな」

「そうだね。でも、私は今のままがいいかな」

「同じく。俺もこの雰囲気がいいよ」

 

 俺とたえはもう一度キスをした。今はこの静かな雰囲気に浸っていようか。

 

 

――ウサギは六年の時を経てようやく結ばれ、白兎は六年かけて想いに気付き告白をした。

 

 

――どれくらい待ったのか、どれくらい苦しかったか。

 

 

――いや、もういいんだ。

 

 

――静寂は結ばれた二人を包み込んだ。まるで祝福をするかのように。

 




やっと結ばれました。
おたえは六年待って、白兎は六年かけて想いに気付いた
なにはともあれようやくここまで来ました
感想と評価お待ちしてます


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ウサギを落ち着かせようとしたが、白兎はお仕置きをされてしまう

リアルが忙しいため更新が遅くなってしまいました
ホントに申し訳ないです
付き合い始めの回になります
そして今日は平成最後です



 私は目が覚めた。ハクに告白をし、私達は付き合うことになった。六年経って私達はようやく結ばれた。

 

 あのあと、私はハクの家に泊まることにした。理由はお母さん達が仕事でしばらく帰って来ないからだ。ハクからも一緒にいた方がいいだろ?と言われ、泊まることにした。

 

 もちろん、昨日は普通に寝た。普通といってもハクと一緒に寝ただけだ。いや、一緒に寝てる時点で普通じゃないか。

 

 私は隣を見た。しかし、ハクは隣にいなかった。あれ?どこに行ったんだろう......。私を置いていくなんて、ハクにはお仕置きが必要だね。

 

 さて、ハクを探そうかな。とりあえずリビングに行こう。ハクはきっとリビングにいるかもしれない。なんでそう思ったのかというと、リビングにいるかもと確信したからだ。

 

 ハクを見つけたら抱き着いて耳許でおはようって囁こうかな。そうだ、それでいこう!ハクを驚かせてやらないと!

 

 私は部屋から出て階段を降りてリビングに向かった。やっぱりいた。朝御飯を作ってるみたいだ。しかも珍しくエプロンを着てる。私は後ろからハクに抱き着いた。

 

「な、なんだ!?」

「おはようハク!」

「お、おはよう。起きたか」

 

 いい匂いだ。もしかするとハンバーグを作っているのもしれない。私も料理始めようかな?

 

「なに作ってるの?」

「弁当だよ。俺とたえの分」

 

 そうなんだ、と私は納得した。さて、顔洗いに行こうかな。今日は香澄達に付き合い始めたことを報告しないと。緊張するなあ、なんでだろう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 たえの奴、いきなり抱き着きやがって......。しかも機嫌よさそうだったな。ハンバーグの匂いに釣られたのか?

 

 今日からなんだな。俺とたえが付き合い始めての一日目は。六年待たせたんだから、ちゃんと幸せにしてやらないとな!さてと、エター達に餌をやらないといけない。弁当はできてるし、朝御飯もできてる。準備万端だな。

 

「エター、キル、ケー。餌の時間だぞー」

 

 餌の時間と言った瞬間、エター達はすぐに駆けつけた。キルとケーは普段は俺に懐いて来ないのに、今日はやけに懐いて来る。おかしい、何故だ?

 

「キル、落ち着け!餌やるから落ち着いてくれ!あとケー、何突進しようとしてんだ?痛いからやめろよ!?」

 

 こいつらホントどうしたんだよ。後からなんかありそうで怖いな。エターは相変わらず落ち着いている。メスだから落ち着いているのか?

 

「よーしよし、エターいい子だ。今餌やるからなー」

「さすがだね。さすが私だ」

「どわあ!?た、たえいつからそこに......」

「キルに落ち着けって言った辺りからだよ」

「最初からじゃん!てか顔洗うの早いな!」

 

 たえがなんか引っ付いてくるし。嬉しいけど、当たってるからできれば朝はやらないでもらいたい。

 

「なあたえ。お前、エターの名前の由来知ってた?」

「知ってたよ。ハクが飼い始める前からね」

「マジかよ。このこと香澄達には言うなよ?俺とたえだけの秘密だからな?」

「わかってるよ。香澄達には言わないよ」

 

 こんなこと知られたら立ち直れない。名付けた俺が悪いけどな。それにしてもキルとケーがここまで俺に懐くなんて珍しい。どうしたんだろうか。

 

「キルとケーは私達を祝ってくれてるんじゃないのかな?」

「そうなのか?」

「そうだと思う。多分だけどね」

 

 多分かよ。たえらしいからいいか。さてと、早く朝御飯にしないと遅れちまう。急がないとな!

 

 

▼▼▼▼

 

 

「おたえ、おめでとー!」

 

 昼休み、香澄達に私とハクが付き合うことになったことを言った瞬間、香澄に抱き着かれた。突然のことだったから倒れてしまった。香澄ってこんなに重かったっけ?

 

「ちょ、香澄!?重いって!」

「重いとか言わないでよー!」

「何やってんだよお前ら......」

「なあハク」

 

 有咲がハクを呼んだようだ。何か話すのかな?というか香澄が頬をくっつけてきた。香澄、見られたら恥ずかしいからホントやめてよぉ。ハクの目の前でこんなことされてるだけでも恥ずかしいのに!

 

「どうした有咲?」

「その......おめでと......」

「ああ、ありがとな有咲」

「どういたしまして!ホントお前ら付き合うの遅いんだよ」

 

 香澄がやっと退いてくれた。ふう、疲れた。私はハクの隣に座り、息を整えた。

 

「まあ、おめでと二人共」

「おたえちゃん、ハク君。おめでとう」

「沙綾、りみありがと」

「私達、幸せになるからよろしくね!」

 

 あれ、私今なんて言ったの?幸せになるって言った?

 

 私は自分が言ったことを思い出し、顔が熱くなってしまった。やっちゃったよ私!香澄達の前でやっちゃったよ!どうしよう、ハクに抱き着きたいけど、見られたくないし、どうしたらいいの私!

 

「たえ、どうした?おーい、たえー」

「気のせいかな?おたえの顔から煙が出てるように見えるんだけど......」

「おたえにしては珍しい」

「おたえちゃん可愛い......」

 

 りみ、可愛いとか言わないでよ!どこが可愛いの!?そんなことを思っていたらハクに肩を掴まれ、抱き寄せられた。

 

「ちょっと、ハク!?」

「たえ、少し落ち着け」

「ハク、大胆だね!」

「お前ら真っ昼間からこんなことするなんて、恥ずかしくないのかよ......」

 

 充分恥ずかしいよ!あとでハクには怒らないといけない。これはやり過ぎだよ!

 

 

▼▼▼▼

 

 

「たえ、ごめんって!」

「ふーんだ。ハクなんて知らなーい」

 

 練習が終わり夜になった頃、俺はたえにひたすら謝っていた。原因はたえを抱き寄せたからだ。

 

 昼休みに抱き寄せたせいなのか、たえに怒られてしまった。落ち着かせようと思ってやったが、自分でもやり過ぎたと今になって思ってしまった。

 

「なあ、たえ......」

「......なに?」

「どうしたら、許してもらえる?」

「どうしようかなぁー」

 

 さっき久々に弾き語りをしたけど、ホントにヤバいことになった。そう、香澄達に練習終わりに弾き語りをしたのだが、弾いている間ずっとたえに睨まれていたんだ。たえは怒らせるとマジで怖い。

 

「じゃあ、ハクの耳を噛ましてくれたら許そうかなぁ」

「軽っ!まあ、それならいいか。許してもらえるなら耳を犠牲にしてやる!」

 

 たえが許してくれるんだ。耳がどうなっても構わない、甘噛みされるくらいなんだからどうってことないさ。

 

 

――しかし、俺は知らなかった。

 

 

――甘噛みどころか、それ以上のことをしてくるということを知らなかったのだ。

 

 

 俺はベッドに横になり、たえは俺の上に覆い被さった。なにこれ?普通逆だよな?まあいいや、今回のことは俺が悪いんだし......。

 

「じゃあ、噛むよ?」

「ああ、いつでもいいぞ」

 

 たえの吐息が耳の穴に掛かってくすぐったい。そして、たえが俺の耳を噛んだ。ああ、駄目だ。ホントに駄目だ。駄目になりそうだ!

 

「ひゃう!」

「あれぇ?どうしたのハク?」

「もう少し弱くしてくれ......」

 

 ああもう!変な声出ちゃったじゃん!というかたえの甘噛み上手くなってるような気がするんだけど、気のせいか?

 

 噛まれて数十分、今度は耳の穴を舐めて来た。へ?嘘だろ......。そこまでやるのか!?

 

「ちょ、待ってたえ!」

「ん~?どうしたのハク?」

「聞いてないぞ!舐めるなんて!」

 

 今まで耳を舐められたことはないのに、どうして今やるんだよ!てかもう許してくれ!

 

「私ね前から思ってたんだ。ハクの耳を舐めてみたいって」

「えぇ......」

「引くことないじゃん!」

「引くよ!いくら彼女でもそこまでやらないだろ!」

 

 やるよ!、とたえは強く言った。はあ、もういいや。好きにしてくれ。俺は口に出してしまい、たえは問答無用に俺の耳の穴を舐めて来た。

 

「ねえハク、今どんな気持ち?私はぞくぞくするよ!」

「もう、好きにしてくれ。気持ちいいからもっとしてくれ」

 

 そして俺は快楽に堕ちていった。たえに反撃をする間もなく。なんかたえがどんどん怖くなってきてる。十年待たせたからかな?

 

 




久々の更新終わりです
今後の予定としてはネタを交えつつ本編を少しずつ進めていく予定です
感想と評価お待ちしてます


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ウサギは襲い、白兎は滅茶苦茶にされる

久々の更新です
タイトル名の通りです
性的な意味なんてございません



 季節は夏に入ろうとしていた。この時期になるとエター達が小屋から出なくなることが多くなる。もちろん、キルとケーも同じだ。

 

 こんな暑い中でもたえはランニングをしていた。俺も一緒にランニングをするために初めてが、ついていくのに必死で大変だ。あいつ、体力有りすぎだろ。それに、俺は運動を全くしてなかったんだ。そのせいか走ってる時はたえとは差が開いてしまう。

 

「はあ、はあ......」

「ハク、バテるの早いね」

「そりゃあバテるよ。たえ、走るの早いんだよ」

「ランニングして体力付けたからね!」

 

 ランニングだけでそんなに体力付くかよ。俺の彼女ってこんなにすごかったっけ?まあいいか、とりあえず家に戻って涼むか。

 

 俺とたえは二人で家に向かった。お母さんとお父さんは忙しいらしく、二人で話合いながら作曲と作詞をやっていて、ここのフレーズはこうした方がいいとか歌詞はこういう感じならいいんじゃない?という話し声が聞こえた。

 

 二人のこんな姿を見たのは久しぶりだな。これは話しかけない方がいいかもしれない。

 

「たえ、エターに餌やるけど、一緒にあげるか?」

「いいの?エター大丈夫かな......」

「今は大丈夫。たえが来ると喜ぶから」

 

 餌を持って来るとエター達が近づいて来た。どうやら相当腹を空かせてたみたいだな。キルとケーも俺の足に頭を擦り寄せてる。

 

「やめろよ、くすぐったいって」

「ハク、楽しそうだね!」

「そりゃ楽しいよ。ウサギと戯れる楽しさを教えてくれたのはたえだろ?」

「そうだったね。私がウサギ好きにしたんだったね」

 

 エターはたえに懐いてる。言うのもなんだけど、エターお前浮気か?飼い主の俺じゃなくてたえに懐くって、なんか悲しいな。もしかしてオッちゃんだけじゃなくてエターにも嫌われたのか!?

 

 俺は悲しくなったのか泣きそうになったが、それに気づいたたえが俺の頭を撫でてくれた。情けないな俺って。ウサギに嫉妬するなんて......。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 餌をあげた後、私はハクと一緒に部屋に入った。ハク、なんか汗だくになってたなあ。ランニングで汗掻いてたかもしれない。汗、拭いてあげようかな?

 

「ハク、汗掻いてるけど大丈夫?」

「平気。大した汗じゃないから問題ないよ」

 

 そうかな?私から見たら首とかも汗がすごいんだけど......。それにしても気のせいかな、ハクの首を見ていると舐めたくなってくる。なんでだろう。

 

 舐めたらハクはどんな声を上げるんだろう、私はウズウズしてしまった。ハクの首、舐めてみたいな。

 

「確かに暑いかもな。冷房付けるから待っててくれるか?」

「あんまり寒くしないでね?」

「そこまでやらねえよ。低くしたら風邪引くだろ」

 

 ここで風邪を引いたら今度はハクに看病されてしまう。私としては看病されるならアリかなと思った。

 

 どうしようかな。ハクの汗を舐めるとなると、押し倒すことになる。もしやるとしたらベッドの上で押し倒そうかな。前にハクの耳を甘噛みした時もベッドの上で押し倒したんだっけ?

 

「23℃にしたけど大丈夫か?」

「いいよ。ねえハク、ベッドに座ってもらっていい?」

「いいけど、どうしたんだ?」

 

 どうもしないよ、私はそう言ってハクをベッドの上に座るように促した。そう、私は我慢ができなかったのだ。これはハクを押し倒すための準備である。

 

 ハクがベッドに座った。よし、準備は整った。待っててねハク。今私が楽にしてあげるからね!

 

 私は勢いに乗ってハクを押し倒した。ハクが狼狽えてる。いいなあこの表情、久しぶりに見た。私とハクが付き合い始めて以来かな。

 

「た、たえ!なにをする気だ!?」

「なにって、首元の汗を拭くだけだよ?」

「じゃあなんで襲うんだよ!?おかしいだろ!てか顔怖いし!」

 

 私はハクを弱らせるために弱点である耳を甘噛みしようと狙った。相変わらずハクの耳は噛み心地がいい。今ハクはどんな表情をしているのかな?

 

「た、たえ......」

「なに?」

「お前、俺を弱らせるために耳を狙っただろ」

「そうだよ。むしろ襲う前に弱点を狙うのは当たり前だと思うけど」

 

 私はキメ顔で言った。弱点さえ狙ってしまえば後は余韻に浸るだけだ。私は噛むのをやめて首を舐めることにした。舐めた汗はしょっぱかった、でも飲み込んだ瞬間、私は美味しいと感じた。

 

 ハクの顔はきっとアへ顔になっているかもしれない。ハクが悪いんだよ。ハクの首元の汗が私を誘ったんだよ。運が悪かったね。

 

 まあいいか。私はハクの首をなぞるように、ねっとりと舐めた。

 

「あ、あ......」

「ハク、どう?」

「ど、どうって......何がだよ」

「舐められてどんな感じかだよ」

「くすぐったいよ。もう何にもできない状態だよ」

 

 やり過ぎたかもしれない。私はハクをこんな状態にさせたことに対して罪悪感を感じ、それと同時にもっと滅茶苦茶にしたいという気持ちが沸き上がった。今度はどこを狙おうかな?

 

「ハク、唇舐めていい?」

「唇はやめろ。唇はやりすぎだ」

「駄目なんだ。じゃあどこがいい?」

「どこがいいって、どんだけ舐めたいんだよ?」

 

 駄目かあ。今日はここまでにしようかな。これ以上やったらハクが壊れそうだし、やめておこう。

 

「あれ、やり返さないの?」

「やり返す気が起きない。こんな状態でどうしろと?」

 

 今の状態は私がハクを押し倒して足を絡め、見つめ合ってる状態だ。よく考えたらまだ昼間だ。私は何をやっていたんだろう。顔が熱いような気がする。

 

「もう少しこのままでいるか」

「そう......だね......」

「どうした、たえ?」

「な、何でもない!何でもないから!」

 

 目を逸らして何でもないって言ったけど、本当はある。今のハクがセクシーすぎて抱き締めたいと感じたけど、本当に止めた方がいい。歯止めが効かないし私も壊れてしまうかもしれない。目に焼き付けておこう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 午後三時。壊れかけていたが、ようやく元に戻った。たえが俺の肩に頭を乗せて寄り添っているせいか、ドキドキしていた。

 

 さっきたえに散々やられたことが原因だろう。やり返さないと気が済まない俺だが、今回はそんな気も起きなかった。たまにはたえに滅茶苦茶にされるのも悪くないな、と感じたからだ。

 

 いくら変人とはいえ、ここまで来たら変人じゃない。ただのドMだ。

 

「ハクー、頭撫でてくれる?」

「いいけど、どさくさに紛れて耳舐めるなよ?」

「舐めないよ。さっきので私は満足だから」

 

 さいですか。俺はたえの頭を撫でることにした。今はとても静かだ。俺はこの雰囲気が好きだ。恋人と二人きりでいるこの時間、共有しているみたいでとてもいい。

 

 たえの顔を横目で見ると、とても気持ち良さそうにして微笑んでいた。手櫛をやったらどうなるかな?やってみるか。

 

「ハク、気持ちいいよ」

「そっか。気持ちいいならよかった」

「もしかして、私の髪そんなに触り心地いいの?」

「なんていうか、たえの髪ってサラサラだからさ。そのおかげで触り心地いいのかもしれないな」

 

 そうなんだ、たえは納得してくれたようだ。たまにはいいかもな。静かな時間や激しい時間、こういう日常も悪くないと俺は心の中でそう感じた。

 

 

 

 




七夕回は七月に入ってから執筆予定です
感想と評価お待ちしてます


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白兎の料理指導、ウサギの花嫁活動スタート?

二週間ぶりの更新です
おたえが料理始めます



「ねえハク、私料理始めたい!」

 

 それは衝撃の一言だった。たえが料理?俺はたえの一言を聞いた瞬間、頭からバケツに貯められた水を落とされたくらいの衝撃を受けた。

 

「料理?それは本気なのか?」

「本気だったら言わないよ。ハクだから言ってるんだよ」

 

 たえの顔を見ると本気のようだ。たえがこんなに真剣なのは久しぶりだ。こんなに真剣になったら教えるしかないじゃないか。俺はたえの頭に手を置いて撫でることにした。

 

「ハク、くすぐったいよ」

「ごめんごめん。真剣になったたえが可愛いかったからつい、な」

「つい、じゃないよ~」

 

 どうしてだろう、たえが愛らしく思えてしまう。こんなに可愛かっただろうか。毒されてしまいそうだ。

 

 それはさておき、料理を教えるところだが、何を教えようか。そこはたえに聞かなきゃだし、料理によっては材料も揃えないといけない。まずは冷蔵庫を確認しないと、最初はそこからだな。

 

 たえが作りたい料理ってもしかしてハンバーグなのか?大抵の人は好きな物を最初に作るというのが定番だ。何を作るか聞いてみるか。

 

「それでたえは何を作るんだ?」

「決まってるじゃん。もちろんハンバーグだよ」

「さすがたえ、ブレないな」

 

 相変わらずウサギは通常運転か。ハンバーグと肉、たえの好きな物はこの二つだ。肉に関してはりみも同じだが、どう教えようか。というか挽き肉あったかな?

 

「たえ、ちょっと待ってくれ。今冷蔵庫に材料あるか見るから」

「私も手伝うよ」

「ありがと、助かるよ」

 

 俺とたえは台所に向かい、冷蔵庫を開けてハンバーグの材料があるかを確認した。しかし、見たところほとんどなかった。

 

 これは買い物しないといけないな。今は八月、夏休みに入ってから三日しか経ってない。買い物に行くとなるとたえも行くって言うかもしれないし、こんな暑い中でたえに汗を掻かせる訳にはいかない。

 

「たえ、材料買って来るから待っててくれないか?」

「私も一緒に行く、ハク一人じゃ放っておけないよ」

「外は暑いんだ、たえに汗は掻いてほしくない」

「ハク......」

 

 たえが泣きそうになってしまった。安心させようとして言ったけど、なんかまずかったかもしれない。俺はたえが泣きそうになったことに対して罪悪感を感じた。やっぱり一緒に行こうかって言った方がよかったかもしれない。そもそもたえを一人にするという時点で駄目なんだ。

 

「......どうしても......駄目なの?」

 

 たえは俺の服を掴んで上目遣いで言った。あ、これ嘘泣きだな。たえの目を見ればわかる。ウサギが鳴き声を上げて"一人にしないで"と言っているのと同じだ。 

 

 これは一緒に行った方がよさそうだ。俺は昔からたえの上目遣いと涙目には弱いからな。見ているとウサギを虐めてしまった気持ちになってしまう。それはウサギ好きの俺からしても嫌だしな......。

 

「わかった。じゃあ一緒に行こう」

「ありがとハク!大好き!」

 

 たえはそう言いながら抱き着いて来た。全く、このウサギさんは......。たえの顔を見ると楽しそうに笑っていた。とても楽しみにしてるんだな、俺もしっかり教えてやらないとな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 材料を買い終えて私とハクは暑い中、なんとか帰ることが出来た。今回はハクの家でハンバーグを作るけど、正直言うと自信がない。こんなことを言ったらハクに迷惑をかけてしまう。

 

 でも、私はやるって決めたんだ。出来は悪くてもそれは少しずつ直せばいいし、問題は味なんだ。味さえ良ければ褒めてくれるかもしれない。そう、これは私にとっても重要なことなんだ。

 

「たえ、どうした?」

「なんでもないよ!震えてるとかはないから!」

「ホントにそうか?大丈夫ならいいが......」

 

 私は震えてはいないと言って誤魔化した。本当は初めての料理に緊張してるけど、多分隠せてないかもしれない。ハクは私のことはお見通しだって言ってるからこの想いはすぐにバレるかもしれない。

 

 私はエコバッグから材料の挽き肉と玉葱を出し、ハクはまな板とガラスのボウルを出して台所に置いた。確かケチャップとかも使ってたっけ?ソースとかで使ってるはずだけど、どのタイミングで作ってるのかな?

 

 ハクは材料と調味料を置いた瞬間、私の手を引いて額をくっ付け、両手を私の両肩に置いた。え!?ど、どうしたの!?

 

「たえ、緊張しすぎだ」

「そんなことないよ!?私は緊張なんて......」

「いやしてる。手が震えてただろ?俺も初めて料理をする時そうだったからわかるんだ」

 

 ハクもこんな気持ちだったのかな?前にハクの指を見た時、絆創膏を貼ってあったような気がする。あれを見て私は結構練習してるんだなって思っていた。今ならわかる、料理やギターをできるようにしたのは全部私のためなんだって。

 

 しばらく額をくっ付け合っていたら今度は抱き締めてきた。このままだと緊張が収まるどころか恥ずかしさが増してしまうし、私の身が持たない。

 

 私はハクの胸を両手で押して距離を離した。この先は後だ、できれば後にしてほしい。今やられたら私が発情してしまいそうだ。

 

「もういいのかたえ?」

「も、もう十分だよ。ていうかキスしようとしたよね?」

「バレたか。落ち着かせようと思ったんだけどな」

「とか言ってそのままディ、ディープキスしようって訳じゃないよね?」

 

 やろうと思ったけど、そこまでやらないよ。ハクは私に微笑んで言った。どっちなの!?そんなこと言われたら期待しちゃうじゃん!私はズルいと思った。

 

 ここまで期待させてくれるんだ、それならこの初めての料理が成功したらとことん甘えよう。うん、気合いが入ってきた。なんでかわからないけど自信がついてきたような気がする。

 

 その後、私は初めての料理を始めた。隣ではハクが私に包丁の使い方を教えてくれていた。玉葱は事前にハクが切ってくれたようだ。

 

「包丁は今度にしよう、最初だと切ったら大変だからな」

「じゃあ丸めるだけでいいってこと?」

「まあそうなるな。ごめんな、最初とはいえ丸めるだけになっちゃって......」

「いいよ。私はハクに従うから、教えてくれてるだけでも嬉しいよ」

 

 ハクは照れながらみじん切りにした玉葱を炒め始めた。大丈夫かな?油は少ししか入れてなかったけど、私の方に飛ばないよね?なんか心配......。

 

 結果、油は飛ぶことはなかった。よかった、私はホッとして息を吐いた。ていうか油飛ぶわけないよね、私は何を考えてたんだろう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 よしいい感じだ。俺はガラスのボウルに挽き肉と炒めた玉葱を入れ、塩と胡椒をかけて左手でボウルを抑えながら右手で挽き肉を練り混ぜる。まずはたえに見てもらってその後にやらせるか。練り混ぜるくらいなら簡単だからできるはずだ。

 

「ハク上手だね」

「そりゃ何十回もやってるからな。慣れるのは結構かかったけど」

「ハクって主夫の素質あると思うけど、ならないの?」

「なれたらなりたいけど、そうなったらたえを養うってことになるだろ」

 

 俺は何を言ってるのやら、こんなこと言えるのはたえだけだ。香澄達なんかに言ったら間違いなくたえに後ろから刺されそうだな。

 

 そろそろたえにやらせてみるか、俺はたえに見本を見せるために練り混ぜた挽き肉を一定の大きさで掴んでハンバーグのタネを作ることにした。

 

 簡単そうだね、とたえは言った。確かに他の人から見れば簡単に見える。やっているとわかるが、手が冷たいだったり爪の間に混ぜた肉が入るとかがある。これはあるあるだと思うし一時期豆腐ハンバーグを作っていた時も同じことがあった。今は慣れてるから気にしてないが......。

 

「初めてやるけど、意外と難しいね」

「最初はしょうがない、料理はギターと同じく慣れるしかないから。同じだと考えればいいさ」

「言われてみればそうだよね、手が冷たい!」

 

 頑張れ、お前ならできる。俺は心の中で応援した。でも初めてとはいえ出来てる。さすがだ、たえだって主婦の素質があるんじゃないのかと思う。

 

 とまあなんやかんやあって何とかハンバーグは完成した。見た目は綺麗にできていたようで、最初にしては凄いと感じた。さすが俺の彼女にしてパートナーだ。

 

 俺もまあソースに関しては今回は隠し味を入れて見たが、隠し味についてはたえが気づくまで秘密にしている。

 

「じゃあいただきます」

 

 俺とたえは一緒に作ったハンバーグを食べやすいサイズにして口に入れた。お、これはいい感じだ。うん、今回は成功だ。

 

「ハク、またマヨネーズ使った?今度はソースだよね?」

「正解。今度はソースに隠し味で使ったんだ」

「ハクってもしかしてマヨラー?」

「違うよ。ネットで調べてこれいけるなって思ってやっただけだから、マヨラーじゃないよ」

 

 俺は食器を片付けて食器を洗うことにした。たえも手伝うよ、と言って台所に入り、俺の隣で洗った食器を拭いてくれた。

 

 こうしてると夫婦みたいだね、とたえは言った。その言葉を聞いた瞬間、俺はドキッとしてしまった。なんてことを言うんだこいつは......。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私は食器の片付けを済ませ、互いに弾き語りをし合った後、二人してベッドに横になった。さあ、とことん甘えよう!私はハクの耳元に近づき、甘ったるい声でハクの名前を呼んだ

 

「ハク......」

「うぉ!?た、たえどうしたんだ?」

「なんでもない。呼んだだけだよ」

「そ、そうか。ていうか笑顔可愛いな」

 

 か、可愛い!?不意討ちを突かれた。でも、これは想定の範囲内だ。じゃあこれならどうかな?今度はハクの髪を触り、匂いを嗅ぐことにした。ああ、いい匂いだ......。

 

「ちょ、たえ!?くすぐったいからやめてくれ!」

「ハク、じっとしててよぉ。匂い嗅げない」

「嗅がなくていい、ホントにやめろ!マジでくすぐったいんだよ!」

 

 そうかぁ、ハクの弱点はもう一個あったんだ。髪を嗅がれるのが嫌だ、と。よし、覚えた。

 

 私はハクの耳を攻めて快楽墜ちさせた(イカせた)。しかし、私まで快楽に墜ちて(イカされて)しまった。まあwin-winだからいいかな。でも、理不尽だなと私は快楽に墜ちながら思った。




ラストの部分やりすぎたけど、謝らないからね!
今更ですが、この作品のおたえは原作と違って
恋する乙女な部分が含まれています


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ウサギ大戦争、第三勢力は襲来する

きのこたけのこ総選挙が起きてるようなので書いてみました


 みんなは知っているだろうか。

 

 それはとある戦争だった。同じチョコなのに形は違う、それだけのことなんだ。その種類は二種類、名前は「しいたけの里」と「ヤシの浜」だ。

 

 名前から見てダサいとしか言い様がないが、味は素晴らしいとのことだ。俺はしいたけの里を推しているのだが、たえはヤシの浜がいいと言っている。

 

「たえ、何故しいたけの里にしない?」

「いくらハクでも譲れないよ。私は断然ヤシの浜を選ぶね!」

 

 この小さな戦争は有咲の蔵で勃発していた。有咲は飽きれ、香澄は楽しそうに、沙綾は微笑んで見守っているという謎の風景になっていた。一方のりみはというと……。

 

 

――寝ていた。「チョココロネ……」と寝言を言いながら。

 

 

「お前ら、何やってんだよ」

「見てわからない有咲?これは私達にとって重要なことなんだよ?」

「有咲、お前はどうなんだ?何派だ?」

 

 とりあえず仲間を増やそう。一人だけでも増えてくれれば全然違う。さぁ有咲は何派だ、選べ!

 

「私はそうだな……。どっちかというとヤシの浜だな」

「やった!」

「なん……だと……!?何故だ有咲、何故ヤシの浜なんだ!?」

「味もそうだけど、盆栽に混ぜても違和感ないなぁと思ったからだな。私はそれが好きでヤシの浜にしたな」

 

 盆栽に混ぜる?ちょっと待て、その理屈はおかしい。そんな発想、誰も考えないぞ?いや、有咲なら有り得るか。

 

 じゃあ香澄だ。香澄ならしいたけの里にするはずだ!とにかく仲間を増やそう。沙綾だとどっちでもいいかななんて言うに違いない。沙綾なら絶対に言うに決まってる!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 残念だったねハク。私は有咲がヤシの浜を選ぶって信じてたよ。香澄ならどうだろう?何が好きなのかは私も気になっていたけど、聞いてみるしかないよね。

 

「聞くよ香澄、香澄は何派なの?ヤシの浜を選ぶよね?そうだよね?」

「え!?わ、私はそうだね……。やっぱり私は王道を往くしいたけの里かな」

 

 え?しいたけの里?なんで、なんでなの香澄!?香澄だけは信じていたのに、酷いよ!

 

 ハクが残念だったなという想いを込めて私を見つめた。そんな目で見るなんて、厭らしいよハク。

 

「残念だなたえ、これで2対2だ。残るは沙綾とりみだけだ。どうする?」

「ま、まだだよ!私は負けなんて認めないよ!」

「ほほう、じゃあ沙綾に聞いてみようか。どっちがいいのかをなぁ」

 

 今の私は天然マイペースを装うことを忘れていた。オッちゃんは連れて来たけど、エターくんの所にくっついていた。私もハクにくっつきたいけど、今はそれどころかじゃない。

 

「おたえ、ハク。やめようよ、こんな争い私は嫌だよ~」

「私も香澄に同感。てかどっちでもいいんじゃねえか?」

 

 有咲、それは失言だよ。どっちでもいいなんて、この戦争にはどっちでもいいなんていう意見はないんだよ?

 

「有咲これだけは言っておく。この戦争は重要なんだ。どっちでもいいなんてないんだぞ?」

「そうだよ有咲、香澄。ハクの言う通りだよ」

「そんなぁ……」

「マジかよ、こんな戦争早く終わってくれよ。私の蔵で戦争起こすなよぉ」

 

 香澄は涙目になり、有咲は疲れ気味に言った。まだ終わらないよ。この戦争は数で決まる、だから私とハクは引き分けになってもいいから勝負する、そう決めたからね。

 

「私はどっちも美味しいからいいかな?」

「沙綾言ったはずだよ?どっちでもいいは無いって」

「えぇ……」

 

 沙綾はどうするかな?私とハクは沙綾を見守りながら

答えを待った。しかし、この時まで私とハクは気づかなかった。

 

 

――予想外の意見が出るということを想定していなかったのだ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

「その点チョココロネって滅茶美味しいよね~。最後までチョコたっぷりなんよ」

 

 それはまさかの第三勢力だった。ピンクのベーシストであり、関西弁を放つ少女、そしてチョココロネにとてつもない愛を持つといわれるあの少女だった。

 

 

――その第三勢力とは牛込りみだった。

 

 

「りみりん!?」

「チョ、チョココロネ!?何故だ!?」

「りみりん、聞いてないよ!チョココロネってそんなのアリなの!?」

 

 ていうかりみ、お前いつから起きてたんだよ。まさか沙綾が助けを求めたのか?いや、そんなことはないか。

 

「チョココロネはチョコたっぷりやでぇ!ヤシの浜もしいたけの里もどっちもええけど、私はチョココロネ一筋や!」

 

 りみは半ギレ気味に関西弁で言った。ああ、語り始めたよこの子。りみはこうなったら止まらなくなる。いや、止めることが出来ないんだ。沙綾でさえも投げ出すレベルだ。

 

「誰か止めろよ!おいハクおたえ、お前らのせいだからな!」

「なんで俺とたえなんだよ!おかしいだろ!」

「そうだよ!こうなったのは香澄がヤシの浜を選ばなかったからだよ!」

「何で私!?」

「もういいや、もうどうにでもなれだよ……」

 

 もう滅茶苦茶だ。 戦争どころか三つ巴になってしまった。チョココロネとかアリかよ!そんなの誰も聞いてないぞ。というか沙綾、お前も止めろよ。何投げ出してんだよ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 それから戦争は収束した。あの後投げ出していた沙綾だったけど、なんとか纏めてくれた。

 

「私がチョココロネに回るから引き分けでいいでしょ!」と言ったのだ。その結果、最終的に私とハクはそれで納得した。理由は切りがないからだ。

 

「なんか決着つかなかったな」

「そうだね……。なんかごめんねハク」

「いいよ、こればっかりは俺も悪い。やり過ぎたって思ってるから」

 

 あれ以上戦争が続いていたら切りがなかっただろう。よく考えると他の人は何派かな?聞いて勢力増やそうかな?いや、この戦争はポピパだけにしておこう。

 

「こんな戦争こころなら大規模になりそうだよね」

「言われてみるとそうだな。なんだろう、弦巻さんなら納得できるっていうのが怖い。というかやりかねないよな」

 

 それはこころだからやりかねないだろう。鶴巻家って本当に不思議だ。どうやったらあんな派手なことを出来るんだろう。黒服の皆さん、お疲れ様です。

 

 次の日、こころがヤシの木しいたけ戦争を大規模にやろうとしたが、美咲によってそれは防がれた。美咲もお疲れ様だよ。

 

 

 

 




頭空っぽにして書きましたが、つまらなかったかもです
しかもバカップル成分なしという


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白ウサギの体力作り、ウサギはコーチとなる

頭空っぽにして書きました
夏のランニングはアカンです
今回はネタを大量に入れました、おたえがボケまくります


「あぁ~、涼しい」

 

 たえとランニングを終えて数十分、エアコンの付いたリビングで俺はエターを腹に乗せて寝っ転がった。エターも涼しいあまりに気持ち良さそうに眠っている。うん、寝顔が可愛い。

 

 もういいや、このままウサギ小屋で暮らそう。それでエターとキルとケーに囲まれて暮らすんだ。その方がどれだけ気持ちいいことか。

 

「ハク、また寝っ転がってる!」

「たえ、エターを乗せて寝るのは気持ちいいんだぞ?オッちゃん乗せたいんだけどいいか?」

「だから駄目だよ、オッちゃんハクのこと嫌ってるから無理だと思うよ?」

 

 オッちゃんに懐かれることはもうないのか?たえには懐かれてもオッちゃんには懐かれない、こんなの理不尽過ぎるだろ……。

 

 今日はランニングしたんだ、もう走りたくない。今日はさすがに弾き語りする気も起きないし、このまま寝てようかな。

 

「ハク、弛んでる!」

「え?」

「明日から体力作りしよう!こんなことしてちゃ駄目だよ!」

 

 えぇ……。あのたえがこんなこと言ってるんだけど、何があったの?なんでこうなったの?寝っ転がってるだけなのに、何故体力作り?

 

「嫌だ!このままエターと寝るんだ!そんなのやりたくない!」

「じゃあハク、別れようか?」

「っ!?たえ、それはズルい!だったらやるしかないじゃねえか!」

 

 誰か助けて、ウサギさんが苛めてくるんだけど……。流星の戸山さん、助けて下さい。星をあげるから生け贄になって下さい。

 

 

▼▼▼▼

 

 

「へっくし!」

「どうしたのお姉ちゃん?」

「へ?何でもないよ、あっちゃん!」

 

 何だろう、誰かが噂をしてる。ハクの声が聞こえたような気がするんだけど、気のせいかな?生け贄になれーとかなんか言ってたような……。

 

 

――まあいいや!さてと、有咲の所行こっと!

 

 

▼▼▼▼

 

 

「ファイトだよハク!その調子!」

「ファイトだよじゃねぇっつーの!何で走らせんだよ!ウサギ!悪魔!おたえ!」

 

 ハクに別れ話を持ち込んで走らせることに成功した。私らしくないけど、あんなハクを見ていたらいつか真ん丸になるんじゃないのかと思い、走らせることにした。

 

 このままポピパのみんなも誘おうかな?その方が面白いかもしれない。まぁそれはまた今度にしようかな。

 

 私は後ろからハクを応援しながら走っている。一方のハクは汗だくだ。よし、後であの汗を舐めよう。そうしよう。

 

「たえ、今汗を舐めようとか考えてなかったか?」

「か、考えてないよ!?」

「そういうのは二人きりにしてくれよ?バレたらおしまいだからな」

「うん、わかった」

 

 二人きりということは舐めていいんだね!ハク、それはフリなんだね。どこかのダチョウみたいだ。

 

「はい、1・2・3・4……」

「待て待て、今度は何を言う気だ!?」

「え?ただの掛け声だよ?」

「やるのはいいけど、どっかから怒られそうだからやめとけ」

 

 あ、そうか。これあのCMでやってたな。なんだったっけ?まあいいか。

 

 それにしてもハクもう息切れしてる。走ってから二十分しか経ってないのに早すぎる。私なら何分か走れるのに、感覚が違うのかもしれない。

 

「もしかすると私はターミ……」

「やめろっちゅーに!このバカウサギ!」

「ぎゃふ!?」

 

 ハクからツッコミを喰らった。痛い……。

 

「たえ、頼むからやめろ!笑いを堪えてるこっちの身にもなれ!」

「あれハク笑ってたの?」

「そうだよ、笑ってたよ!あまりにもボケが激しかったからツッコミを入れたんだよ!走り辛いわ!」

 

 ハクが走り辛いならやめよう。私とハクは途中で沙綾に会い、パンを差し入れで貰った。中身はクロワッサン二つだった。何の偶然かな?沙綾は私達が来ることを想定していたのかな?

 

「頑張ってね二人供!特にハク、最後まで頑張れ!」

「ありがと沙綾!」

「沙綾も夏バテしないようにな!」

「はいはい、山吹沙綾夏バテしないように頑張ります!」

 

 なんだろう、沙綾がどこかのアイドルみたいに見える。パン屋のシンデレラかな?

 

 

▼▼▼▼

 

 

 やっと家に着いた。たえがボケまくったせいで走ってるときにむせるわ笑いすぎて腹筋が痛くなるわで大変だった。体力作りじゃなくて腹筋作りになったよ。

 

「たえ、お前は俺を笑わせに来てるのか?」

「ごめんねハク、走るついでに腹筋も鍛えられらばなと思ってついやっちゃったんだ」

 

 たえはウィンクし手を合わせて謝った。あそこまでやられたら笑うしかないだろ。てかなんでそこまでネタ知ってんだよ。そっちが気になるわ。

 

 ああもう疲れた。ベッドに寝っ転がり横になる、あんなに走ったら誰だって疲れる。何せ二、三時間も走ったんだ。体力がないからバテてしまう。

 

「ハク、汗舐めていい?」

「駄目だ。何ストレートに聞いてんだよ、こんなことを聞けるお前が怖いよ」

「そうかな?」

 

 そうかなって、それを聞く時点で変態としか思えない。たえってこんなにおかしかっただろうか、黙ってれば可愛いのに……。困ったものだ。

 

 俺は疲れているせいか眠りに落ちてしまった。あれ?首もとに何かザラザラしたものがあるんだけど、もしかしてたえに舐められてるのか?もうわからないや。

 

 なんか「ハクの汗美味しい」とかなんか言ってるんだけど、俺の彼女ってこんなに変態だったっけ?

 

 

――もう知らん、俺は疲れた。

 

 

 




流星の戸山さん、ステラするのかそれともどっかのキャスターに生け贄にされるのか、どっちなのやら



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二匹のウサギによるバニー論争

バニーの日なので投稿です
今回は有咲に対しての風評被害が強いです
主に胸が原因です


「……たえ、これは何だ?」

「何って?水着だよ?」

「これのどこがだ?ただのバニースーツだろ!どうすれば水着になるんだよ!」

 

 八月二十一日、今日はバニーの日らしい。先週ポピパのみんなと海に行ったのだが、その時のたえは普通の水着だった。だが、一人だけ例外はいた。その例外とは有咲だ。

 

 口には出してないが、さすがにビキニは卑怯だろ。何がとは言わないがでかいし。こんなことたえには言えない。言ったら殺される。

 

 たえが着ようとしているのはバニースーツだった。そもそもなんで持っているのか疑問だ。多分気にしたら負けだろうな。

 

「それにしてもたえ、何でこんなものを持っているんだ?いつからだ?」

「いつからって……。中学からだよ?」

「何でだよ!中学からって着るにははええよ!」

 

 さすがに早すぎるだろ。おばさんはたえに何をさせようとしてんだよ。これ以上は怖くて聞けない、てか聞きたくない。

 

「こんなこと、見せるのはハクだけだからね?」

 

 たえは恥ずかしがりながら言った。やめろ、そんなことされたら可愛さのあまり抱き締めたくなるからやめてくれ。

 

 たえってこんなに可愛かったっけ?おかしい、こんなのたえじゃない。いや、気のせいだ。気のせいであってくれ。

 

「まさか着るつもりか?」

「もちろん着るよ。ハクに見せびらかすし、そのために出したんだから!」

「何顔を赤くしながらドヤ顔で言ってんだよ!このバカウサギ!他の人には見せるなよ?香澄達にもだぞ?」

 

 今は二人きりだからまだいいが、有咲に見られたら変態って言われるのは間違いない。そうなったら一貫の終わりだ。口も聞いてもらえなくなるかもしれない。

 

 たえが暴走してるけど、こうなったら好きにさせるしかない。ここだけの話だが、正直言うと俺もたえのバニーは見たいと思っていた。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私はハクに目を瞑ってもらって着替えることにした。普通なら部屋から出てもらうけど、ハクになら見られてもいいかなと思っている。

 

 キツいけどなんとか着れた。いつかポピパのみんなにも着せたいな。特に有咲ならあのメロンを武器にできるかもしれない。

 

 あとはカチューシャを付ければ完璧だ。やっぱり恥ずかしい、でも前からやろうって決めたんだ。これはハクのためだ。ハクのためって思えば恥ずかしくはない。多分!

 

「い、いいよ。ハク……目開けていいよ」

「わかった。目開けるぞ?」

「う、うん」

 

 ハクは瞑っていた目を開けた。どんな感想が来るんだろう。可愛いって言ってくれればいいんだけど、どうなるかな?

 

「どうかな?」

「うん合格。可愛い」

「そ、そう!?よかった~」

 

 可愛いって言ってもらえた。私は嬉しくなり、口元が緩くなったのを感じた。やばい、ニヤケちゃう!

 

「たえ、どんだけ嬉しいんだよ。口ニヤニヤしてるぞ」

「言わないでよハク、これでも恥ずかしいんだよ……」

「ごめんごめん、可愛いから抱き締めたくなるな」

「抱き締めるの?まぁいいけど……」

 

 私がそう言った瞬間、突然ハクに抱き締められた。ちよっと待って、いいとは言ったけど、力強すぎだよ!

 

「待ってハク、力抜いて!」

「嫌だ、可愛いのがいけない。それに力抜いたら逃げるだろ?」

「逃げない!逃げないから!」

 

 なんかハクが怖いんだけど!さすがにやり過ぎたかもしれない。ハクの前ではバニーになるのはやめた方がいいかな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 一悶着あったが、たえはその後バニーから私服へと着替えた。もう少しバニーを味わいたかったが、これ以上はたえが可哀想だからやめておくか。

 

 再来週で夏休みは終わる。そういえば夏祭りに行ってなかったな。今年はポピパのみんなで楽しむとするか。今まではたえと一緒に行ってたが、今回はどうなるだろう。

 

「たえ、久々の膝枕は気持ちいいか?」

「気持ちいいよ。寝ていいかな?」

「待て待て、寝るにはまだ早いだろ。なぁたえ」

「何?」

「来週夏祭りだろ?今まで一緒に行ってたけどさ、今年はポピパのみんなと行かないか?」

 

 俺が聞こうとした時、たえが頭の向きを変えて顔を合わせた。うわ、くすぐったい。

 

「いいよ。私もそう思ってたから」

「そっか、今度の練習の時に話しとこうか」

「そうだね。ねえハク、キスしてくれる?」

「いいけどどうしたんだ?」

 

 たえの方からキスをしてくれって言うなんて珍しい。付き合ってからはしてくれとかしたいとかは言わないでやってたのに、こんなことを言うなんてどうしたんだ……。

 

「したくなったからかな。それだけ」

「それだけか。いいよ、するから目瞑っててくれるか?」

「わかった。焦らしはなしだよ?」

「もちろんだ」

 

 たえは目を瞑り、俺がキスをするのを待った。この時のたえって綺麗だなって思ってしまう。黙ってれば美人だけど、こんな天然でも可愛いがな。これを知っているのは俺だけかもしれない。

 

 俺は自分の唇をたえの唇に重ねた。今日は月が満月だ。俺の目は赤いから今からでも発情してしまうかもしれない。そうなったらたえを滅茶苦茶にしてしまうかもな。それは可哀想だからやらないけどな。

 

 

 

 

 

 

 




短いけどここまでにします
発情中のほうはご想像にお任せです


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夏祭りに花火はドーンと絢爛する

夏祭り回になります



 香澄達を夏祭りに誘うことにして三日、俺とたえは浴衣で夏祭りに向かうことにした。

 

 たえは青い浴衣に、俺は黒い浴衣を着るというお互いに渋い色にしたなと感じた。

 

 二人で恋人繋ぎをしながら有咲の蔵へと向かう。みんなはどんな浴衣だろう、もしかするとそれぞれのイメージカラーか、気になるな。

 

「たえ、足痛くないか?」

「大丈夫だよ。痛くなったらおんぶしてくれるんでしょ?」

「まぁするけどさ……。おんぶできるかわかんないぞ?」

「大丈夫!ハクなら何とかなるよ!」

 

 何か不安しかないな。まぁそうなったらやるしかないか。さて、そろそろ蔵に着くな。

 

「熱々だねハク、おたえ!」

「パンが焼き上がったみたいに熱々だねー」

 

 待て沙綾、その例えはおかしい。そして香澄、ストレートに言うのはやめろ。恥ずかしくなるからやめてくれ。有咲はニヤニヤ見てるし、りみは微笑ましくしてるし、みんなおかしいだろ。

 

「みんなイメージカラーなんだね。似合ってるよ!」

「香澄は赤、有咲は紫、りみはピンク、沙綾は黄色か。似合ってるじゃん」

「そうでしょそうでしょー、みんなで選んだんだ!」

「ちょ香澄!それは言うなって!」

 

 有咲はもしかすると香澄に選んでもらったのかもしれない。香澄は有咲のこと好きなんだな。まるで夫婦みたいだ。

 

「香澄と有咲も熱々だね」

「ば、ばか!おたえそんなんじゃねえよ!」

「そんなおたえ、私と有咲ばまだ゙……」

「まだ?え、香澄ちゃんと有咲ちゃんってまさか……」

 

 りみがストレートに言いやがった。さすが関西出身、鋭いツッコミだ!

 

「りみりん違うよ!今のは言い間違えただけだよ!」

「実は付き合ってるでしょ?香澄?」

「違うよ、沙綾まで言わないでよー」

「ああもう、この話はやめ!お前ら夏祭りに行くぞ!」

 

 この話は有咲にやめ!と言われて打ち切られた。まぁ香澄と有咲はお似合いだから付き合っていても違和感はない。きっと結婚してるのかもしれない。二人ならあり得るかもな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私達は夏祭りのやっている場所、もとい商店街に到着した。凄い賑やかだ、夏祭りだから人がいっぱい来るのは当然か。

 

 ハクが私の手を繋いで来た、香澄達の目の前でやるなんて大胆だ。恥ずかしくなるし耳が赤くなってしまう。

 

「ハク、恥ずかしいよぉ」

「ごめんたえ、迷わないようにしたかったからさ」

「それはズルいよハク!」

 

 香澄からなんか親指立てながらグッドされたんだけど、完全に見られてるよね!?

 

「大胆だねハク」

「お前よくそんな恥ずかしいことできるなぁ」

「ハクくん、それはアカンよぉ……」

 

 ハクがボロクソに言われてしゅんとしてる、こんなハクも可愛い。うん、レアだね。

 

 流石に手を繋ぐのは恥ずかしいから袖を掴もうかな。その方がまだマシだ。私はハクに手を繋ぐのは恥ずかしいからやめるように言った。

 

「たえ、どうした?」

「ハク、恥ずかしいからこのままでいいかな?」

「わかった。たえがそう言うならやめておく。ごめんな、強引なことしちゃって」

「そんなことない!私が恥ずかしかっただけだから……だからハクは悪くないよ」

 

 私がそう言うとハクは微笑んで私の頭を撫でた。待って、香澄達の前でまたこんなことするってズルいよ!反則だよ!ハクってキザなウサギだなぁ。

 

「そんなことない、たえがそうしてほしいって言うならそうするさ。今度手繋ぐ時は――」

 

 

――二人きりにしような。

 

 

 顔が赤くなるような感じがした。ハクが私の耳元で囁いたからだ。ああやばい、ニヤケちゃう、ニヤケちゃうよ~!

 

 ハクにはあとでお返しをしよう。私は心の中でそう決めてハクの浴衣の袖を掴んだ。手を繋ぐのもいいけど、こんなシチュエーションも悪くない。今の私はどう見えるんだろう……。ハクからしたら可愛いウサギだなって思われてるかもしれない。でも、それでもいいかな。

 

 

――その方が私らしいから。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 それからは皆で金魚すくいや射的、綿菓子、焼きそばと色々な屋台に行った。ほとんど定番なものばかりだったが、夏祭りだからそれでもいいかと俺は思った。

 

 隣にいるたえを見るといつも下ろしている髪は結ってあった。こうして見ると美人だなって思う。たえはいつからこんなに綺麗になったんだろう、昔とは大違いだ。

 

 皆と楽しそうにしているあの表情、小学生の頃は暗かったのに、今はこんなに明るくなってる。友達になって……いや、付き合うことができて本当に良かった。

 

「ハク、どうしたの?私の方を見て……」

「何でもない、たえが可愛いなって思っただけだよ」

「そ、そうなんだ……」

「そうだよ。そろそろ花火の時間だな、見れる所行こうか」

 

 俺は香澄達に花火の時間になることを伝え、花火が見れる所に向かうことにした。綺麗に見れる、それだけでいいんだ。

 

 その場所は商店街から少し離れた小川敷だ。ここなら花火は見れるし、一応持ってきておいたシートがあるからそこに座れば問題ない。

 

 香澄達をシートに座るように促し、俺はたえの隣に座った。たえの髪からいい匂いがする。気にしたら負けだ、気にしたらたえを押し倒すかもしれない。だから我慢しないと駄目だ。

 

「あ、花火だ!」

「たーまやー!」

「香澄、懐かしいこと言うね」

 

 確かに香澄のその言葉は懐かしい、沙綾の言う通りだ。たえは花火に夢中になっていた。どうしてだろう、たえの横顔を見ると本当に綺麗だって思ってしまう。それに、キュンとしてしまう。

 

 キュンとするって、それは女子が言うことなのに何で俺が言ってんだ。おかしい、本当におかしい。

 

「どうしたのハク?」

「な、何でもない!何でもないから!」

「そう。花火綺麗だから見ようよ!」

「……お前の方が綺麗だよ、バカ

 

 俺は聞こえないように小言で言った。花火で掻き消されてるだろうから聞こえてない筈だ。

 

 

――たえ、本当にお前は美人だよ。俺には勿体ないくらいだよ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 夏祭りを終えて皆と別れ、私とハクは二人で家まで歩いた。楽しかったなぁ、また皆と行きたい。私は名残惜しいと感じた。

 

「楽しかったなたえ」

「そうだね。また一緒に行きたい、ハクはポピパと一緒に行きたいよね?」

「もちろん!たえと一緒なら何処へでも行くさ」

「ハク、恥ずかしいよ。……痛っ!」

「っ!?どうしたたえ!足捻ったのか?」

 

 私はしゃがんで捻った足を抑えた。久しぶりに足を捻るなんて私らしくない。あはは、情けないや。

 

「たえ、俺の背中に乗って」

「え?もしかしておんぶしてくれるの?」

「それ以外に何がある?怪我してるんだから歩きにくいだろ?ほら」

 

 私はハクの背中に乗って肩に手を乗せた。大丈夫かな、私って重くないかな?心配だ。

 

「ハク、私重くないかな?」

「重くないよ。むしろ意外と軽いなって思ったけど……」

「意外となんだ。ハクがそんなこと言うなんて思わなかったよ」

「聞いたのはたえだろ。正直俺も抱えられるか心配だったがな」

 

 そうだ、私とハクは身長が同じだった。それにしてもハクってこんなに大きいんだな。あの時から一緒にいるようになってからもう六年経つ。

 

 この時間を噛み締めよう。短い間だけど、長く感じるようなこの間を大切にしよう。

 

 

 




いい最終回でした
でも続きます


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ウサギと月見、時々ジェイソン

令和初の十五夜なのにジェイソンが被るという謎の偶然


 九月十三日、今日は十五夜だ。ウサギにとっても大事な日で、エター達は今日は大人しくしていた。十五夜だけでなく金曜日、しかも十三日。これが示す言葉は……。

 

「たえ、それは何なんだ!」

「何がー?どうしたのハク?」

「どうしたのじゃねえよ、何でウサギに仮面とチェーンソー持たせてんだよ!しかも粘土で作りやがって!」

 

 そう、たえは今粘土でウサギを作っていたのだ。作ったのはいいが、何故仮面とチェーンソーなのか。理由は一つしかない。十三日の金曜日、つまりは"ジェイソン"だ。

 

 十五夜なのにジェイソンという、あまりにも酷いコンボだ。これには俺の白髪も抜け落ちるくらいに衝撃を受けたよ。たえなんて知った瞬間に粘土で作っちまったよ。ホントたえって粘土好きだよなぁ。

 

 まぁいいや、とりあえず月見団子用意するか。俺は下に降りて月見団子を作ることにした。市販にしてもいいが、たえがハクの手作りが欲しいと言ったので作ることにした。

 

「ハク、私を置いていくなんて酷いよー」

「ごめんごめん。お詫びにキスするから許してくれ」

「むぅ……じゃあ許す。でもおでこにしてね、唇は恥ずかしいから」

 

 俺はたえに言われて頭を撫でながら唇を額に付けた。たえは額にキスしただけなのに昇天してしまった。たえがこうなると元に戻るのに時間かかるよな。仕方ない、待つとしよう。

 

 待つこと二十五分、ようやくたえは元に戻った。その後、俺とたえは一緒に月見団子を作ることにした。たえと作るなんていつぶりだ?先月以来か。

 

「よし出来た!」

「いい感じだねハク」

 

 たえの言う通り今回はいい感じだった。前は上手く作れなかったが、今年は上手くいった。これなら上出来だな。あとは夜を待つだけだ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 夜になり、外は満月が映っていた。月の兎は何をしているんだろう。今頃餅でも突いてるのかな?わからないや。

 

 今回は香澄達も呼んで有咲の蔵で月見をすることにした。もちろんオッちゃんやエターも連れてきた。ハクは月見団子を持っていくことに精一杯だったから、エターを入れたケージは私が持っていくことにした。そして背中にはギターケースを背負っている。

 

「たえ、思ったんだが……ギターいるのか?」

「一応ね、まぁ念のためってやつだよ」

「それはわかる。だがなぁ香澄、お前はいつも通りだな」

「へへぇ!この子は手離せないよ!私にとっては相棒だもんね!」

 

 香澄はランダムスターを抱きながら言った。香澄にとっては思い入れはあるから説得力がある。私やハクもギターには思い入れがある。確かに相棒だ。

 

「ハク君、月見団子作ったんだね。何でも作れるなんて凄いよ」

「何でもって訳じゃないぞりみ。俺にだって作れない物はある。ハンバーグならお任せだが……」

「じゃあハク、今度パンでも作ってみる?」

「さすがにやめておくよ。朝は苦手だからさ」

 

 ハクがパン作り、何か似合いそうだ。ハクならクロワッサンを作り続けそう、私の中ではそんなイメージしかなかった。

 

 さて、そろそろ月見団子を頂こう。そう思っていると、有咲がお茶を持ってきた。月を背景に有咲が映った、意外と様になってる。これは有咲、いや皆バニースーツを着るべきだ。さすがに本人には言わないでおこう。

 

「おーい、お茶持ってきたぞー」

「ありがと有咲、好きだよ!」

「やめろ!何唐突に告白してんだ!」

 

 香澄って有咲ラブだよね。二人とも実は付き合ってるんじゃないの?私からしたらそうにしか見えないよ。今度二人にラブソング送ろうかな?ハクと一緒に作詞作曲してみよう。

 

 外が涼しい、私は隣に座ってるハクの手を繋いだ。皆には気づかれてないけど、ハクは手を繋がれたことに気づき、私の方を向いた。

 

「たえ、皆の前でこんなことは……」

「気づかれてないからいいでしょ?」

「そりゃそうだけど、出来れば二人きりでやろう」

「私達が付き合ってることは知られてるでしょ?それなら手を繋いでるところは見られてもいいと思うけど……」

 

 私は自分でも気づかずに大胆になっていた。ハク、固まってる。その顔、可愛いなぁ。私もハクにこんな顔されたいよ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 月見団子を食べ終え、俺はたえと一緒に花見以来の弾き語りをやることにした。ギターを持ってきたんだ、せっかくだからやろうかと思った。本当に久しぶりだ。

 

 今回弾く曲は二曲、「悠久の月に照らされて」と「想いが歴史に変わる時」だ。とある同人サークルが弾幕シューティングゲームの曲をボーカルアレンジしたらしく、最初に聞いてたえと一緒に弾こうって決めた。

 

 聞いてて歌詞も凄く良かった。しかし、歌詞について考えていたら俺とたえも二人して泣いちまった。聞きすぎたあまりに考察をしたからだ。あんな歌詞を書いたのが悪い。

 

「じゃあ始めるぞ」

「いつでもいいよハク」

 

 俺とたえはアイコンタクトをして弾き始めた。久しぶりに弾くけど、腕は鈍ってないようだ。練習期間は一週間だけだったが、上手くいってる。俺とたえは歌詞を吟味しつつ感情を込めて歌った。

 

 歌詞から伝わる悲恋を匂わせるかの想い、その人を好きであったとしても誰かに先を越され、想いを伝えることも出来ずに終わる。簡単に纏めるとこんな感じだ。もし俺とたえが結ばれていなかったらどうなっていた?

 

 いや、こんなことを考えるのはやめよう。今を楽しむんだ、過去はいい思い出だが、現在(いま)が大事だ。

 

 考えている内に俺達は歌い終えた。拍手が聞こえる、よし成功だな。五ヶ月ぶりとはいえ、失敗なく終わってよかった。

 

「相変わらずすげぇなお前ら」

「そりゃあ私とハクだからね」

「すっごいよ!キラキラドキドキしたよ!」

 

 香澄が語彙力失くなってる、もはやこうなるとこれしか言えなくなる。これが香澄だから仕方ないか。

 

 りみと沙綾からも称賛された。こればっかりは慣れない、照れちまうから慣れるなんて無理だ。まぁいいか、今日は楽しく出来たんだからよしとするか。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 はぁ疲れた、私は溜め息を吐いて肩の力を抜いた。ハクと一緒に弾き語りしたけど、凄く気持ちよかった。歌っててお互いに話し合ってるみたいで歌うっていいなって思ったな。

 

 私は窓から月を眺めた。今日は満月、とてもいい眺めだ。いい眺めだけど、なんで今日ジェイソン何だろう?

そこは不思議だ。いや、突っ込んだら負けだよね。

 

「さーて、今日は寝ようかな。ハクも今頃寝てるだろうし」

 

 私は部屋の電気を消して布団に入った。体がバキバキする、これは筋肉痛かな?しばらくランニングは控えよう。

 

 今日はハクの唇にキスしてなかったなぁ。今度キスをせがもう、うんそうしよう。おでこにやってもらったけど、ひんやりとした。唇にやったら首筋にもやってもらおう。

 

 そう思っていると、瞼が重くなった。ああ眠い、これは考えている内に寝落ちしそうだ。昨日徹夜してたからだな。もう寝よう、寝て明日ハクにキスをしてもらわなきゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 




ジェイソンは申し訳程度です


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大雨とウサギ、雨の中の日常

台風や雨に注意です
作者のネタ切れスランプ、未だ脱出出来ず


 九月中旬、突然の大雨、もとい台風がやって来た。朝起きて外を見ると大量の雨が降っていた。しかも風は強いときた。俺は部屋を出てレインコートを着て外のウサギ小屋に入り、エター達が大丈夫かを確かめた。

 

 エター達は何ともない、よかった。ニュースで台風が来ることは予報であったから、対策はしといて正解だったな。俺はウサギ小屋を出て家に戻り、私服に着替えることにした。

 

「これだけの大雨だとたえが心配だ。直接行った方がいいよな」

「私がどうかした?」

「た、たえ!?いつの間に……」

「今来たばかり。ハク、ドア開けっ放しだったよ」

 

 たえの奴、俺がウサギ小屋の様子を見終わった所を狙って入って来たな。開けっ放しにしたのはわざとだ。たえの所のウサギやオッちゃんは大丈夫だろうか。

 

「たえのところはウサギ、大丈夫なのか?」

「私は大丈夫、事前に対策しといたから問題ないし、この通りオッちゃんは連れて来たから」

 

 連れて来た、ということはケージの中か。俺はたえの手元を見ると、案の定だった。両手にケージの持ち手を持っている。中にはオッちゃんがいるようだ。しかもギターまで持ってきてるし……。

 

「さすがだな。俺なんて中に入れようととしたけど、三匹共出たくなかったんだ。はぁ、エター達が心配だよ」

「あの三匹なら大丈夫だよ。前の台風でも平気みたいだったし、大丈夫だと思うよ?」

 

 本当にそうだろうか。まぁエター達は前の台風の時、平気だったし、全く動じなかったからな。俺のところのウサギはメンタルが強いのか、そうだったら頼もしい。

 

 たえが俺の家に来た理由を聞いたところ、おばさんから今日は白兎君の所に遊びに行っていいと言われたらしい。おばさん、何を狙ってそんなことを言ったんだ。気になるが、聞かない方がいいかもな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私はオッちゃんをケージから出し、リビングに放った。ハクの家はウサギを中でも飼えるようにしてある。ハクは大抵ウサギ小屋に入れてる。本人曰く、家に入れるのはごく稀だそうだ。

 

 雨が降っているせいか、気分は憂鬱だ。私は気分を紛らわすためにギターを弾くことにした。弾いていればこの憂鬱を晴らせるかもしれない。わからないけど、試してみる価値はある筈だ。

 

「たえ、ギター弾くのか?」

「ちょっと憂鬱でね。ハクも弾く?」

「今はいいかな。隣で聞いてていいか?」

「隣で?い、いいよ……。前は私が隣で聞いてたけど、ハクが私のを聞くって、逆になったね」

 

 確かにそうだな、とハクは言った。うん、今度は私の番だ。前は隣で聞いてたけど、今度はハクに聞かせよう。ハクが側にいてくれるなら憂鬱は晴れる。私はそう信じながらギターを弾いた。

 

 今から弾く曲は「雨音ノイズ」だ。どうしてこの曲にしたのかは私にもわからない。雨の日だからこの曲にしたのかもしれない、それとも何だろう……。ハクに聞かせたかったからなのかもしれない。

 

 

――わからないや。ハクが満足してくれるなら、私はどんな曲も弾こう。それだけでも聞いてもらえる価値はあるんだから。

 

「ハク、どう……かな……?」

「綺麗な音だったよ。さすがたえだ」

「ホント?ありがとハク」

 

 面と向かって言われると照れる。ハクの顔が近いからかな?何か顔が熱いんだけど、気のせいかな?

 

 私はギターを置いてハクに寄り添った。あまり顔を見られたくない、ハクに見られたら蒸発しちゃう。顔を埋めて隠そう、そうしよう。

 

 

――そう、これは休憩だ。

 

 

「たえ、どうした?」

「ちょっと休ませて……。なんか疲れた」

「そっか、ならゆっくり休むといいさ」

 

 弾き終わってから甘えるのは悪くない、私はそう思いながらハクの胸に顔を埋めた。うん、いい匂いだ。安心するし、包まれてる。そんな気がするよ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 たえの奴、抱き着いたのはいいものの、そのまま寝ちまった。寝顔が可愛いから許すが、このままだと動けない。困ったウサギだな。

 

 このままたえが起きるのを待つか、たえを起こすか、どちらにするか……。だが、起こすと可哀想だ。機嫌が悪くなって一日中口を聞いてくれなくなる。それをされたら俺も嫌だし、たえも強引に起こされるのは嫌だ。

 

 起こすとしたら優しくだ。ウサギには優しく接する、それと同じだ。というか自分の彼女を強引に起こすって考えたことないな。いや、考えたくない。

 

「たえ、ぐっすりだな。これじゃあ起こそうにも起こせないじゃねえか」

 

 うん、これは待とう。こんな可愛い寝顔を見せられたら起こせない。罪深いウサギだよ、全く。

 

 たえが寝てから一時間、雨は未だに止まない。時間は午後の二時、もうそんな時間か。そろそろ昼飯にしないといけないな。とりあえずたえを優しく起こそう。

 

「たえ、飯にするから起きてくれー」

「……ハクぅ?」

「やっと起きたか。ほら、涎垂れてる。拭くからじっとしてて」

 

 俺はたえの口元をティッシュで拭き、涎を取り除いた。まだ寝惚けてる、ホント可愛いウサギだ。今日の夕飯はハンバーグにするかな。

 

 たえは目を擦り、欠伸をして両腕を上げた。欠伸が移りそうだ。寝そうになるが、寝たら昼飯が作れなくなる。飯を食い終わったら俺もギターを弾くかな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 お昼ご飯を食べ終えた後、ハクは二階からギターを持ってきて、弾く準備を始めた。今度はハクが弾くようだ。何を弾くのかな、楽しみだ。

 

「ハク、何を弾くの?」

「スモルワールドロップかな。聞いたことあるか?」

「一応聞いたことはあるよ。ハク、早く聞かせて」

 

 わかったよ、とハクはギターを構えて言った。そして、弾き始めた。綺麗な旋律だ。ギターを弾いているハクの表情は穏やかで、暖かい眼差しをしていた。ハクはどんな想いで弾いているんだろう。

 

 五分程してハクは弾き終えた。弾いてる間にハクの肩に頭を乗せちゃったけど、気づいてるかな?

 

「ふぅ終わった。たえ、頭乗せてどうしたんだ?」

「気づいてた?」

「弾いてることに集中してて気づかなかったな。まぁいいや、どうだった?」

「とっても綺麗だったよ。曲もハクも綺麗だった」

「俺もか……。ありがと」

 

 ハクは私の頭を撫でてお礼を言った。くすぐったい、ありがとうって言われるのはいいけど、撫でられるのはくすぐったいな。でも、悪くない。

 

 窓を見ると、雨は止んでいた。きっと、ハクがギターを弾いたから雨が止んだのかもしれない。自分でも言ってることはわからないけれど、私にはそう感じた。

 

 今日はハクの家に泊まろう。それで夜は雨のことについて語り合おう。私はそう思いながら、胸を弾ませながらハクに笑顔でまた聞かせてね、と言った。

 

 

 

 




雨が止んだら目の前に虹がかかるなんていうのは滅多にないかもしれない


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ウサギは先輩となり、白兎はバイトを始める

白兎バイト始めます!
そしてキャラ壊れます、てか壊します!
今回は駄文だらけの怪文書になります


 十月、季節はとうとう秋になった。俺は最近あることをしていないことに気づいた。それは、アルバイトだ。バイトと言ってもどこで働くかは既に決まっている、場所はガールズバンドの聖地、circleだ。

 

 バイトをすることはたえにはまだ言っていない。サプライズで驚かそうかな。知った時の反応が楽しみだ。

 

「という訳で、これから宜しくね。白雪君」

「こちらこそ宜しくお願いします、月島さん」

「私のことはまりなでいいよ。そんなに畏まらなくてもいいし」

「いや、いきなり名前で呼ぶのは失礼ですよ。申し訳ないですが、苗字で呼ばせて頂きますね」

 

 今俺が話しているのは月島まりなさんだ。この人はcircleのスタッフで、リーダーみたいな人らしい。俺は面接を受けたのだが、月島さんはいきなり採用するね、と言ったのだ。理由は男性スタッフが足りないから、とのことだ。

 

 俺はそれを言われて思った。面接をした意味はあったのだろうか。これは突っ込んだ方がいいのか、突っ込んだら負けなのか。わからなくなってきたな。

 

 まぁ採用されたのなら期待に応えよう。そのうち、他のバンドにも遭遇するんだ。驚くだろうな。特に俺はさっきも言うように、たえの反応を楽しみにしてる。

 

 そんなことを思っていると、ドアの開く音がした。さて、誰が来るんだ?

 

「いらっしゃいませ!」

「練習する……ぞ……?」

「……」

 

 そこにいたのは我らがPoppin'Partyのリーダー、戸山香澄だった。え?練習に来るなんて聞いてないぞ!?どういうことだ!?

 

 つまりそういうことさ、とどっかの儚いさんの声が聞こえたような気がした。いやいや、気のせいだ。誰かが言うわけないよな。あはは……。

 

「つまり……そういうことやで!」

「言うのかよ!てかりみ、人の心を読むなよ!」

「ごめんねハク君、何か言わなきゃなぁって思ってね」

 

 

――この関西コロネさん、怖いんだけど誰か助けてくれますかねぇ!?

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私は香澄達と練習をするためcircleに入った。入った瞬間に目に入ったのはハクだった。あれ?何でここにハクがいるの?どういうこと?

 

 りみが突然瀬田先輩の真似を始めた。りみのキャラが壊れた!?何が始まったの!?これは私もボケた方がいいのかな?いや、ボケたら有咲が壊れそうだ。たまには私も大人しくしよう。うん、そうしよう。

 

 私は周りを見ることにした。香澄も有咲も沙綾も固まってる。そりゃそうだよね、誰もハクがここにいるの聞いてないもんね。

 

「ハク、これはどういうことなの?」

「あ、たえ。黙っててごめんな。今日からここでスタッフとしてバイトを始めたんだ」

「え?嘘だよね?」

「嘘じゃない。まぁ詳しいことは月島さんから聞くといい。俺も話すからさ」

 

 ハクやまりなさんから話を聞いたところ、始まりはハクがバイトを始めようと咄嗟に言ったからだ。その理由が自分でお金を稼がないとまずいという。まりなさんもそれを聞いて大人だね、とハクに言った。

 

 あれ?よく考えるとハクがここで働く、私もバイトをしている。ということは、私は先輩になる?そしてハクが後輩……。

 

「それってつまり、ハクが後輩になるってことだよね?」

「へ?ま、まぁそうなるな」

「私は先輩になる。何かいいかも!」

「おたえ、お前先輩になるの夢だったんだな」

「よかったねおたえ!」

 

 有咲は半分飽きれで、香澄は私を祝福してくれた。ハクには私がcircleでバイトをしていることは伝えてある。ハクは後輩になるんだから、先輩である私がリードしてあげないといけない。そう思うと練習が捗る、そんな気がする。

 

 私はハクに抱き着きそうになった。ああヤバイ、ここでは抑えないといけない。まりなさんには私とハクが付き合ってることは秘密にしてあるんだ。ここでバレたら私の身が持たない!

 

「ねぇ白雪君。君とたえちゃんって付き合ってるの?」

「っ!?」

「は、はい!?な、何のことですかねぇ……」

 

 ハクが惚けようとした。いいよハク、そのまま隠し通して!この状況を乗り切ったらご褒美あげるから!

 

「惚けても無駄だよ。まりなさん、ハクとおたえは付き合ってますよ」

「無駄だぜ二人共、逃げられるとでも思ったのか?」

「あらら、御愁傷様」

「残念だったね、二人共」

 

 香澄があっさりとバラした。あ、終わった。終わったよ私。

 

 その後、私とハクはまりなさんに根掘り葉掘り聞かれた。いつ付き合ったのか、いつ知り合ったのか等、過去まで聞かれてしまった。それを聞いたまりなさんは感動したよー、と大泣きで言ったそうだ。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 あぁ疲れた。まさか香澄がバラすなんて、全く予想してなかった。月島さんは大泣きするし、たえにはポカポカ叩かれるし、まぁあのたえは可愛かったからいいか。

 

「ハク、事前に教えてくれたらよかったのに……」

「ごめんって。驚かせようと思ってやったんだよ、だからこの通り、な?」

 

 俺は両手を合わせてたえに謝った。これは許してもらえないかもな。そう思っていると、たえが顔を近づけて来た。顔が近いし、これから何が来るか予想出来るな。

 

 キスをしてくれたら許してあげる、とたえは言った。キスだけって、何か怪しいな。そのまま沼に堕とすつもりだろうな。俺は警戒しつつ、目を瞑り、たえに近づいて唇を重ねた。

 

「んっ……。よし許す!」

「これだけでいいのか?」

「私はハクがキスしてくれるだけでいいから。言っとくけど、沼には堕とさないよ?」

 

 俺の思ってることがわかってたか。顔に出てたからかもしれない。俺は今後はたえに隠し事をするのはやめた方がいいな、と心に誓った。

 

 俺は後輩でたえが先輩か。何か新鮮な感じがするけど、俺なりに頑張るか。




白兎の胃が持つのか持たないのかどっちなのやら


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二度目のランニング、ウサギの強化作戦

アプリのイベントに集中しすぎて更新が遅くなってしまいました
読者の方々、申し訳ないです


 秋なのに寒いな。俺はエター達に餌をやりながらそんなことを思った。バイトを始めたのはいいが、月島さんから体力付けた方がいいんじゃない、と言われた。機材を何個か運び終わった後にバテたのが原因だ。

 

 ギタリストなのに体力が無いのはまずいかもしれない。弾き語りをやるのにそこまで体力は使わないだろうと思ったのが仇となった。そうなると、たえにどうすればいいかを相談するか。今月は体育祭があるんだ。それまでに少しでも体力は付けとかないと……。

 

 俺はジャージに着替えて家を出る。たえはいるかもしれない。今日は練習はないと言ってたから、相談は出来る筈だ。俺は入り口のチャイムのボタンを押してたえを呼んだ。

 

「はーい。あ、ハクおはよう。ジャージなんか着てどうしたの?」

「おはようたえ、実は相談があるんだ。今時間空いてるか?」

「今は大丈夫だよ。入ってどうぞ」

 

 俺はたえに手招きされ、靴を脱いでたえの部屋に入った。兎と戯れたいが、今日は目的が違う。体力作りのためにどうするか、何をしたらいいのか相談して、そっからスタートしていくんだ。

 

 たえがコーヒーをトレーに乗せながら部屋に入って来た。俺はお礼を言い、コーヒーを飲んだ。最初は熱くてちょっとしか飲めない。話ながら冷めるのを待とう。

 

「それで今日はどうしたの?」

「今日はだな、体力を作るにはどうしたらいいのかについてなんだが……」

「体力作りかぁ……。ランニングとか筋トレ辺りが妥当かな」

 

 俺はたえに月島さんに体力付けた方がいいんじゃないのかを言った。筋トレやランニングか。前はバテちまったが、少しずつ体力付けていけば着いていける筈だ。

 

 たえは立ち上がり、ランニングをしようと言った。いきなりランニングって、急過ぎるな。まぁすぐにでもやらないと時間が惜しいからな。俺はたえと話をし、冷めたコーヒーを飲んで走る準備を整えた。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクが体力を付ける。確か夏の時だったかな、ランニングしてすぐバテちゃって倒れちゃったのは。あの時のハクは不安だった。けど、こうして体力を付けようってなったのはまりなさんに言われて悔しいって思ったからかもしれない。

 

 小学の頃もハクは運動オンチだった。本人はあまり気にしていなかったけど、機材の準備ってなると体力を付けておかないといけない。circleでバイトをするんだから、ここでやっておかないといつか後悔するかもしれない。

 

「お待たせハク、準備運動してから走ろっか」

「わかった。走ってる途中でバテたらごめんな」

「そうならないようにペースは合わせるよ。無理だけはしないでね」

 

 わかってるよ、とハクは言った。準備運動を終え、家を出て私とハクは走り始めた。まだ大丈夫だけど、いつバテるかわからない。隣にいながらサポートしよう。この前は笑わせちゃったけど、今回は真面目にやろう。

 

 

――なんかフラグ?みたいなことを言ったかもしれないけど、気にしないでおこう。

 

 

 私はハクと歩を揃えながら走り始めた。外が冷えるから上着を着たけど、大丈夫かな?私はいいけど、ハクが心配だ。走ることに集中しすぎて倒れなきゃいいけど……。

 

「なぁたえ」

「何?」

「たえはさ、走ってて疲れたりしないか?」

「疲れたりはしないかな。私は走るのが好きだから、そういうことはあんまりないんだ」

 

 凄いな、とハクは引き気味に言った。ここまで引かれるのは傷つくなぁ。まぁ引かれてもしょうがないか。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 走り続けて早三十分。俺は走っている途中で息切れを起こし、公園で休憩をすることにした。たえは飲み物を買いに行って来ると言って自販機の所に向かった。

 

 頬から汗が垂れる、首に巻いたタオルで汗を拭き、深呼吸をして息を整えた。少し休憩したらまた走ろう。今の俺はたえに着いていくことに必死になってる、このままだと体力を付けることを忘れそうだな。

 

「ふぅ……はぁ……。走るのってこんなにキツかったっけ?こんなことは考えても無駄か」

「お待たせハク、スポーツドリンクでよかった?」

「冷たっ!たえ驚かすなって心臓に悪い」

「ごめんごめん。ハクボーッとしてたからさ、元気出してあげようかなって」

 

 今のはたえなりの気遣いだろう。だが、冷たい物を当てられるのは心臓に悪いから、それだけはやめてほしかったな。今回は気遣ってくれたから、よしとするか。

 

 たえに渡されたスポーツドリンクを飲み、乾いた喉を潤す。あと五分程したらまた走ろう。今度はたえに着いていけるように、足を引っ張らないように頑張ろう。ここでギブアップしたらおしまいだ。

 

「ふぅ……よし!」

「ハク、まだ走れる?」

「もちろん、ここでギブなんかしねえよ。たえ、よろしくな」

「頑張ってハク。私もサポートするから、力付けていこうね」

 

 たえはそう言った後、ドリンクを飲み干してゴミ箱に捨てた。俺もスポーツドリンクを飲み切り、ゴミ箱に捨て、深呼吸をして息を整えた。ここまで言われたんだ、力を付けて月島さんを見返してやろう。

 

 

――ここで諦めたら負けだからな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 二週間後、私とハクは機材の準備に入った。ハクは前よりも成長した。まりなさんからも「さすが男の子!」と褒めてくれた。褒めてくれたのはいいけど、私の目の前でハクの二の腕をぷにぷにするのはやめてほしかった。さすがの私も妬いちゃうよ。

 

「月島さん、くすぐったいんでそろそろやめてもらえませんかね?」

「ごめんごめん、白雪君の反応が面白かったから、手が滑っちゃった!」

「マジで頼みますよ!たえに何か言われると怖いのでお願いしますね!」

 

 やだなぁ、私は何も言わないよ?私は妬いてたけど、そこまでやったりはしないよ?私は機材の準備に戻り、後でハクの二の腕を堪能しようと考えた。でも、あんまり鍛えすぎるとどうなるんだろう?マッチョになったりしないよね?

 

 私は一瞬、ムキムキの兎を想像してしまった。へ!?何でこんな兎を想像しちゃうの!?いやいや、これはおかしい。私は頭を左右にブンブンと振って忘れよう、これは忘れようと、心の中で誓った。

 

 そろそろ秋が終わる。まだ十月末だけど、今年は異様に寒い。まるで秋を越して冬が来ているんじゃないのかと、私は白い息を吐きながら思った。

 

 

 




久しぶりの更新で内容が無茶苦茶になりましたが、次もよろしくです


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指を切ったウサギ、白兎の癒しのクリーム

スランプに嵌まったりとかで投稿遅くなったりしてますが、今年もよろしくです


 隣でたえのギターを聞く。いつもと変わらない、変わらないけれど心地の良い音でもある。俺は目を瞑りながら余韻に浸った。うん、良い音だ。

 

 たえはギターを弾き終えるとギターをスタンドに立てた。その時、俺の視界にある物が入った。俺の視界に入った物、それは指だった。そう、たえの指が切れていたのだ。

 

 指が荒れていたり、マメが出来ているのは努力をしているという証でもある。だが、俺から見ればたえの指は荒れているというよりも切れているようにしか見えない。何だろう、見ていると痛々しくて俺の心もズキズキしそうだ。

 

「たえ、ちょっと指いいか?」

「指?いいけど、どうかした?」

「ちょっとな。もしかすると指切れてるのかなと思ってな」

 

 俺がそう言うと、たえは無口になり固まった。これは図星だな。たえは天然であっても核心を突かれると固まる癖がある。こういうところは変わらないな。まぁ、こういうたえも好きだが……。

 

 それはさておき、絆創膏とハンドクリームを探すか。まだ十一月なのに、空気は乾燥している。多分、指の切れは乾燥が原因かもしれない。たえの手がカサカサになるなんて洒落にならない。

 

 机の引き出しを開け、絆創膏とハンドクリームを探すが、見つかったのは絆創膏だけだった。ハンドクリームが無い、そういえば使い切ったんだ。忘れていたなんて、俺は何をしているんだ。

 

「ごめんたえ、絆創膏しかないんだけどいいか?」

「いいよ。その顔はハンドクリームが無いってことだよね?顔に出てるよ」

「え、顔に出てたか!?俺って分かりやすかったっけ……」

 

 顔に出てる、たえに言われるって相当だな。そんなことを思いながらたえに絆創膏を渡した。とても痛々しいけど、今の俺にはこれくらいのことしか出来ない。とりあえず、ハンドクリーム買いに行くか。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクはハンドクリームを買って来ると言った。ハクに絆創膏を貼ってもらったけど、これは応急処置でしかない。指がカサカサになって来ているのは気づいていた。ハクには黙っておこうと思ったけど、彼に隠すことは出来なかった。

 

 

――やっぱり、ハクは何でもお見通しだ。

 

 

 私はそう思いながら口元を緩ませた。そんなことを思っていると、手が包まれたような気がした。もしかして、手を繋いでくれたのかな?そうだったら、私はどうしたらいいんだろう……。

 

「ねえハク、手……繋いでくれたの?」

「ま、まぁそうなるな。たえの手、見てて痛々しいっていうか、包んであげなきゃなって思ってな」

「そうなんだ……あ、ありがと……」

 

 どういたしまして、とハクは恥ずかしげに言った。どうしよう、気まずい。こんな時どうしたらいいだろう。香澄だったら何て言うかな。いや、香澄を例にしてもしょうがない、ここは話をしよう。話をすればこの状況を切り抜けるかもしれない。

 

 

 話をしようとしたけど、何も思いつかなかった。頭が真っ白になっていた。はあ、私何やってるんだろ。普段はこんなことにはならないのに、今日はおかしい。調子が悪いのかな?そうだ、調子が悪いだけなんだ。

 

 私は調子が悪いだけ、と自分に言い聞かせ、ハクの手を握った。大丈夫、大丈夫だ。私は大丈夫!

 

 

――多分……。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 薬局でハンドクリームを買った後、楽器店に寄ることにした。たえが買う物があると言ったからだ。買う物と言っても弦とピックだけだ。俺は店内に飾ってある楽器を見ながら待つことにした。

 

 待つこと五分、たえが会計を済ませて来て戻ってきた。後は家に戻るだけだ。戻ったらたえの指を何とかする、もう少しの辛抱だから耐えてくれよ。

 

「たえ、指痛むか?」

「今は大丈夫かな。ほら、この通り」

「どれ……」

 

 たえは両手を開いて俺に見せた。人差し指の第一間接がぱっくりと開いている。早く手当てしてあげないとまずいな。これじゃあ練習するのは厳しい。治るのは結構掛かるが、絆創膏を貼るなりしてどうにかするしかない。応急処置程度でしかないが、無いよりは増しだろう。

 

 家に着き、部屋に入る。ビニール袋からハンドクリームと絆創膏を出して机に置いた。たえが見つめている。何だ?一体どうしたんだ?

 

 

――何だろう、いやな予感がする。気のせいじゃなさそうだな。

 

 

「たえ、俺を見つめてどうしたんだ?」

「ねえハク。ハンドクリームなんだけど、ハクが塗ってくれないかな?」

「え?」

 

 今なんと言った?何を言ってるんだこのウサギは……。俺がたえの手にハンドクリームを塗る?普通自分で塗るよな、なのに人に頼むって、こいつは俺を殺す気なのか?

 

 俺はたえに塗ってくれと言われて約五秒くらい固まってしまった。こんなこと言われたら固まるに決まってる。それも彼女に言われたのだ。ここで断ったら別れるからねとか言われるに違いない。それだけは回避したい。

 

 別れると言われたくない、俺は意を決して承諾した。こうなったら自棄だ。もう、どうにでもなれ!

 

「わ、わかった。じゃあ手、出してくれるか?」

「ありがとハク。大好きだよ!」

 

 

――それは反則だろ。ああもう、このウサギは!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 正直恥ずかしかった。だって、ハクにこんなこと言うのはやめた方がいいかなと思ったからだ。現にハクの耳は赤くなってるし、手が震えてる。そもそも人にクリームを塗るって、私はどうかしてる。

 

 ハクの手が私の手に触れる。冷たい。冷たいけど、包まれてるようで暖かい。暖房は付いてるけど、心が暖かいから問題ないかな。

 

 暖かいのはいいけど、くすぐったい。人にクリームを塗ってもらうのは初めてだ。今ならハクの耳を舐められるかもしれない。いや、私は何を言っているんだ。

 

「ハク、くすぐったいよ」

「ごめん!初めてだからどうやればいいのかわからなかったんだ。痛くない……よな……」

「大丈夫、痛くないよ。むしろ冷たいかな」

 

 よかった、とハクは言った。安心してるけど、ハクの手は未だに震えている。こういうことは初めてって言うけど、本当はわかってるんじゃないかな?わかってるとしたら酷いことだ。

 

 二分くらいしてハンドクリームを塗り終えた。一言で言うと恥ずかしかった。恥ずかしかったけれど、気持ちよかった。口に出したらハクにからかわれそうだ。口に出さないように気を付けよう。

 

 とりあえず練習する時は用心しよう。ハクからも怪我はするなよ、と言われた。指切れたらまた頼もうかな。たまにはハクにやってもらうのも悪くない。

 

「たえ、何ニヤニヤしてるんだ?」

「へ?ニヤニヤなんてしてないよ!ハクの見間違いなんじゃいかな。アハハ……」

「いや、ニヤニヤしてたな。口元隠せてなかったぞ」

 

 隠せてないってそれを言われたら私の負けだ。それに反論も出来ない。ハクの前でニヤニヤするのはやめよう。やめようって言ってもまたやるかもしれないから無理かも。

 

 私はもう少しポーカーフェイスを出来るようにしよう。これ以上ハクに言われたら心が折れちゃいそうだ。せめてニヤニヤは隠さないといけない。下手したら沙綾に色々聞かれそうだ。

 

 

 

 

 




おたえはポーカーフェイス上手そうだけど、不器用なおたえもいいよね


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白兎は焼き芋に誘われ、ウサギは仕返しをされる

十一月でも寒い時は寒い
もはや暖かいのか寒いのかわからない


 ようやく暖かくなった。今日は快晴、この前までは寒かったが、今日は暖かい。周辺には紅葉も出来ている。紅葉の木の下で弾き語りをしたり、兎と戯れるのも悪くないな。

 

 エターは遊び回り、キルとケーは互いにくっつき合っている。あいつら、楽しそうだな。生まれ変わるなら兎に生まれ変わりたい。こんなことはたえには言いたくない。だが、あいつも同じことを思っているかもしれない。

 

「紅葉を見ていると思い出すな。紅葉の下でギターの練習をしていた頃だったか……」

 

 あの頃が懐かしい、ギターがある程度上手くなった辺りで弾こうって思った。たえにバレるんじゃないのかと、焦ったが、バレることは無かった。あの時の俺はたえのために上手くなろうと必死だった。

 

 今は前よりも上手くなった。母さんからも認められるようになって、ポピパからも上手いって言われて、ギターを弾けるようになってよかったって感じている。

 

 俺がギターを始めてから二年か。昔は自分のことを僕と呼んでいたが、中学から俺と呼ぶようになった。たえの前ではカッコよくいたいからなのか、変わりたいからなのか、今ではもう覚えていない。覚えていないというより、自然とそうなったのかもしれない。

 

「ハクー、何してるのー?」

「たえか。エター達を眺めながら寛いでるが、何かあったのか?」

「香澄が蔵で焼き芋焼いたからハクを誘おうって言ったんだ。それで、私がハクを迎えに来たってこと」

 

 焼き芋か、蔵で焼いてるってどうしたんだ……。誘われ他のなら断る訳にはいかないな。今回はエター達も連れていくか。ケージが三つに増えるが、まぁいいか。

 

 俺は立ち上がり、仕度を始めた。ギターをケースに入れ、ケージを三つ用意する。エター、キル、ケーをケージに入れ、靴を履く。ドアを開けようとした時、たえにこっち向いてと言われた。

 

「ハク、ちょっといい?」

「どうしたたえ……」

 

 たえの方を振り向くと、唇が重なった。そう、キスをされたのだ。振り向き際にやりやがったよこのウサギ。全く、何てことをしてくれたんだこいつは……。

 

 キスだけでは終わらなかった。たえは舌を絡め、俺の唇を蹂躙しようとしてきたが、俺は蹂躙される前に後ろに離れた。危ない、蔵に行く前にイカされたら身が持たない。

 

 

▼▼▼▼

 

 

「ハク、何で離れたの?酷いよー」

「酷いもクソもない。舌を絡めて来るとかおかしいだろ。発情するには気が早いぞ」

 

 発情するって、そんなことを言われたら返す言葉もない。確かに私はキスをした。しかもディープキスまでしようとしたんだ。私が悪いけど、ハクだって悪い。ハクは無意識に私を誘っている。

 

 何故かというと、最近のハクが魅力的だからだ。どうしてかは私も知らない。私は自分の唇を舌を出してジュルリと舐めた。

 

「たえ、怖い。お前どうしちまったんだ?変なモノでも食べたのか?」

「へ?何ともないよ?私は至って普通だし、平常運転だよ?」

「それで平常運転って時点で怖いわ!ケージからもエターが怯えてるのが伝わってくるし、オッちゃんも若干震えてるぞ」

 

 あ、やばいやり過ぎた。キルとケーは平気みたいだ。この二匹って色々と不思議なところがある。何でかな……。

 

 そんなことを思っていると、有咲の家に着いた。蔵の前ではりみと沙綾が待っていた。香澄と有咲は蔵の地下にいるみたいだ。

 

 私とハクはりみと沙綾におはようと言い、蔵に荷物を置きに向かった。階段を降りると、香澄と有咲が何かをしていた。あれ、これは入るのはまずかったかな?

 

「有咲ー待ってよー」

「やめろ香澄!離れろ!」

「おはよう……どうしたんだ二人共?」

「聞いてよハクー!有咲がねー」

 

 香澄がハクに話をした。どうやら、香澄が有咲に抱き着こうとしたのだ。有咲は香澄を避けたが、それでも香澄は諦めなかった。これは理由を聞いた方がいいかもしれない。じゃないと有咲が持たない。

 

「香澄、一応聞くが、何で私に抱き着こうとしたんだ?」

「寒かったから!」

「は?もしかして寒かったから私に抱き着こうとしたのか?」

 

 香澄が理由を言うと頷いた。有咲は香澄を抱き締めた。目の前で見ると恥ずかしくなる。有咲って大胆な所もあるんだね。私も後でハクに抱き着こうかな?

 

「そんなことなら、最初に言えよ。言ってくれたら抱き締めてやるからさ……」

「ありがと有咲!だーい好き!」

「アハハ……有咲大胆だね」

「私これ見てるとめっちゃ恥ずかしい」

 

 香澄と有咲によるイチャイチャが終わり、私達は焼き芋を食べることにした。熱かったけど、ポピパの皆で焼いた焼き芋はとても美味しかった。ハクも誘ってくれてありがとう、とお礼を言われた。照れるけど、言われるのは凄く嬉しいな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 俺は誘ってくれたお礼として、ギターを弾くことにした。曲は秋に相応しい曲をチョイスして三曲弾いたくらいだ。それでも、たえから誘ってくれたのは嬉しかった。もし誘われてなかったら、あのまま寝ていた。

 

 キルとケーは香澄達に紹介するのは初めてだった。三匹飼ってたのは初めて聞いたと言われたが、俺が単に言ってなかっただけだからな。

 

 時間はあっという間に夕方になった。寒い、夜は寒くなるから憂鬱になる。たえと歩き、色んな話をした。オッちゃんの調子とか、ウサギは大丈夫かとかの話だけだった。それでも、俺にとっては充実した時間だ。

 

「たえ、今日はありがとな」

「お礼なんていいよ。私はハクと一緒に食べれて嬉しかったから」

「それを言うなら俺もだよ。ホントにありがと」

 

 家に着き、ケージを開けてエター達を小屋に入れる。三匹の顔を見ると、とても満足しているような表情だった。連れてきてよかったな。キルとケーを連れてきたのは久しぶりだった。さっきは俺の腹に頭を当ててたから嬉しかったんだろう。

 

「ハク、また明日ね」

「また明日。そうだ、たえちょっといいか?」

「何?」

 

 俺はたえを抱き寄せて唇を重ねた。さっきのお返しだ。俺は唇を離し、たえの頭を撫でた。顔を赤くしてるな。今のたえは凄く可愛い。

 

 俺は抱き締めていた手を離し、たえから離れた。また明日ともう一度言い、家に入った。今日はたえに朝から散々やられたが、仕返しをして別れる。こういうのも悪くないな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクは何てことをしたんだ。あんなことをされたら恥ずかしくなる。私は赤くなっている顔を枕に埋め、足をジタバタとさせた。普段の私はこんなことはしない。でも、今日は……今日だけはこうしていたい。

 

「ハク、あれは反則だよ。あんなことされたらもっと好きになっちゃうよ……」

 

 私は真っ暗な部屋の中、誰にも聞こえないように呟いた。こんな顔はハクに見られたくない。もし見られたら恥ずかしさのあまりに襲っちゃうかもしれない。

 

 そういえば、ハクはいつも私達にだけ弾き語りをしている。いつかは、ライブハウスとかでやるのかな?もしやるのなら私は全力で応援したい。ライブとかで一緒に弾きたい、ハクの力になりたい。

 

 私はそんなことを思いながら深い眠りに就いた。近いうちにハクに聞いてみよう。彼に聞けば、弾き語りをどうするのかわかるかもしれないし、力になれるかもしれない。

 

 

 




白兎、終盤に近づいております
三話くらい書いて終わりにする予定です


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二匹の兎の弾き語り、初めてのライブ

バレンタインなんて滅べばいい
今回は文字数多めです


 ああ寒い。俺は悴んできた手に息を吹き掛けて暖めようとした。その場しのぎでしかないが、寒くなるより増しだ。冬になればエター達は小屋に籠りっきりになる。

 

 冬になれば兎は冬眠に入ってしまう。エター達が冬眠に入るのは下旬だ。それまで、凍えないようにしてあげないといけない。とにかく、温度に気を付けないと。

 

「ふう……。そろそろ俺もライブハウスで弾き語りやろうかな」

「ハク、ライブやるの!?」

「た、たえ!いつからいたんだよ、ビックリしたぁ」

「いつからって最初からいたよ。ところでさぁ、いつやるの?」

 

 たえは嬉しそうに聞いた。こんなに嬉しそうにするなんて、どうしたんだ?俺がライブをやるのがそんなにいいことなのか、まぁ聞いてみるか。

 

 たえに何故そんなに嬉しそうにしているのかを聞いたところ、珍しいとのことだった。普段はポピパにしか弾き語りをしないのに、客の前でやるというのは凄いじゃんという。

 

 言われてみるとそうか。今まで俺は弾き語りはたえやポピパに聴かせていた。だが、ライブでやるということは客の前で弾くということだ。前の俺だったらこんなことを思うことはなかったな。

 

「いつやるかはまだ決まってない。まぁ、やるならクリスマス近くがいいかな」

「じゃあさ、商店街でやらない?」

「商店街で?」

「商店街ならさ、ハクを知ってる人いっぱいいるでしょ?ライブハウスでもいいって思ったんだけど、外でギター弾くのもいいかなってね」

 

 なるほど外か。よく考えると、衣装も用意しないといけなくなる。いや、衣装じゃなくて私服でも問題ないか。私服となると、気合いを入れないと駄目だ。

 

 俺は商店街で弾き語りをすることに決めた。初めてだけど、今の俺なら出来る筈だ。失敗は許されない、成功させないといけない。

 

「ハク、手震えてるよ。寒いの?」

「震えてたのか?寒くはないが、力入ってたかもな」

 

 いや、緊張してたのかもしれない。俺はたえにバレないように力が入っていただけだ、と嘘をついた。しかし、その嘘はすぐ見抜かれた。たえの前では嘘はつけないようだ。

 

 

――俺のことはなんでもお見通しなんだな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクは嘘をついてる。私は震えている手を包み、自分の額をハクの額にくっつけた。安心させてあげよう、一人だと怖いんだ。失敗が怖い、それなら私が一緒にいてあげないと!

 

「大丈夫だよハク。私が一緒に弾いてあげるよ」

「え?弾くって、なんのことだ?てか、何でこんなことするんだ?」

「ハク、嘘ついてるよね?バレバレだよ?私に嘘をつけるなんて、大間違い。怖いんでしょ、失敗するのが」

「……たえにはお見通しか。ああ、そうだよ。怖いよ。一人で弾くのが怖い。人前で一人で弾くのが怖いさ。だからたえ、一緒に弾いて、一緒に歌ってくれないか?」

 

 ハクは目に涙を浮かべ、私に言った。ハクの悲痛の叫びなんだ。私の想いがハクに届いているのか不安だった時、私が虐められてた時にハクは助けてくれた。だから……だから今度は――

 

 

――今度は私がハクを助ける番だ!

 

 

 私は包んでいた手を離し、ハクの頭を撫でた。今は安心させたい。それで、後でライブについて話し合おう。私はハクに恩返しをしたい。ハクに出会えたから、ハクと付き合えたからここまで来れたんだ。

 

「いいよハク。私もハクと一緒に歌いたい。ハクと一緒にライブを成功させたいよ」

「ありがとうたえ。俺とたえなら成功する。二人なら怖くないよな」

「うん、怖くないよ。だから、頑張ろうハク」

 

 私は励ますように言った。ハクは涙を拭い、私から離れた。頬が赤い、私に撫でられて恥ずかしかったんだ。元気になったのなら私は満足だ。

 

「よし、そうと決まればセトリ組もうか。たえ、よろしくな!」

「よろしくされました!頑張ろうねハク!」

 

 私とハクはライブに備えてセトリを組むことにした。ポピパの曲をアコースティックにアレンジしたり、他の曲を入れる等をしていくことにした。衣装は今からだと大変だし、香澄達には迷惑を掛けたくない。そのため、当日は私服でやることに決めた。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 セトリが組終わり二日経過、俺とたえはライブに向けて練習を始めた。ライブをやる日はクリスマスより近く前、12月14日に決まった。

 

 商店街でライブをやるということは香澄達に伝えてある。伝えたのはまだいいが、香澄は俺達のためにとポスターを書いてくれた。俺は予想してなかったが、たえは予想していたようだ。

 

 ゛香澄なら゛やってくれる、何て言っていたが、言われてみる確かにそうだなと納得した。そうだ、あの香澄だ。なら仕方ないか。

 

「ハク、そこ間違えてたよ。もう少し練習してみる?付き合うよ」

「マジか……。ありがと、気づかなかった」

「ハク、気合い入れすぎるのもいいけど無理しないでね」

 

 気合い入れすぎてたな。当日に体調崩しましたなんてなったら水の泡だ。無理はしないようにだ。俺は息を整え、練習を再開した。

 

 12月13日ライブ前日、練習をしていたらあっという間に時間が過ぎた。早いな、もうライブが近い、本番が迫っているってことを実感させられてる。

 

 この練習期間中、たえは側にいてくれた。一人では無理でも二人なら乗り越えられる、俺は何としてでもライブを成功させなければならない。とにかく、失敗しないようにしないと。

 

「いよいよか。とうとうここまで来たんだ。人生初のライブなんだ。感動させられるような……人の心を動かせるような演奏にしたい。何を言ってるんだ俺は」

 

 こんなこと言うなんて俺らしくない。いつも通りにやればいいんだ。緊張なんてしたら意味がない。いや、するかもしれない。

 

 明日は早い。部屋の電気を消して布団に入り、眠りに就く。初めてのライブは思い出に残るような物にしたい、たえと一緒に、二人で成功させよう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私ギターケースを背負い、ハクと商店街に向かった。私とハクにとって大事な日で、ハクにとっては初めてのライブだ。商店街でライブ、まるでストリートライブみたいでいい。

 

「ハク、大丈夫?固まってるけど、緊張してる?」

「ああ、若干緊張してる。本番はまだなのに、落ち着かなくてな。そういうたえこそ、ソワソワしてるぞ」

「そうかな!?私は平気!至ってノーマルだよ!?」

 

 いや、説得力ないだろ、とハクは怪しげに私を見つめた。私も人のこと言えないや、ハクに隠し事は通用しない。嘘は見抜けてもこれじゃ意味がないな。

 

 ライブの時間は昼からだ。今は午前だけど、準備もあるし、最終確認もある。香澄が書いてくれたポスターは商店街中に貼られており、周りの人からも応援された。ここまでされたら期待に応えないといけない。

 

 ハクと今日の事で話し合っていると、商店街に到着した。私はいつも使っているリードギターを、ハクはアコギを持ってきている。弾き語りはアコギがメインだけど、リードでも出来る。音響機器は小さい物しかないけど、今回は使わないことにしている。

 

「ハク、今日のライブ成功させようね」

「ああ。成功させるっていっても、俺とたえ、二人でだからな?」

「うん、二人でだよね。何か私達一心同体だね!」

「ばっか!恥ずかしい事言うなよ!ドキッとしたじゃねえか!」

 

 ドキッとするなんて可愛い。私は緊張を和らげるつもりで言ったんだけどなぁ。こういう僅かな時間でも、上手くいけるっていう確信が持てる。余裕を持たせたい、ハクに笑顔でいてほしい、だから私は緊張を和らげることも兼ねて一心同体だねって言った。

 

 ギターを弾き、私とハクは最終確認を始める。リハーサルも兼ねての練習だ。弾いていると、周りには商店街の人達が集まっていた。香澄や有咲、りみ、沙綾。ポピパだけじゃない、はぐみやつぐみも来ていた。

 

「何か……集まっちまったな。ハハ、なんか恥ずかしい」

「ううん、恥ずかしくないよ。こんなに集まってくれるなんて、嬉しいことだよ」

「お二人さん。イチャイチャしてるのはいいけど、人前だからね?あと、時間だよ!」

 

 ハクと話していると、沙綾から時間だと言われた。ううん……私はイチャイチャしているつもりはないんだけど……。また噂になっちゃうよ。しばらく商店街に行けないかもしれない。ああもう、切り替えよう!弾いていれば忘れる!いや、"今だけは"忘れよう!

 

 

▼▼▼▼

 

 

「えっと、皆さん!今日は来てくれてありがとうございます!は、初めてのライブですが、聴いてもらえると嬉しいです!まず一曲、聴いて下さい」

 

 俺は噛まないように言った。リハやっていたら本番の時間になっていた。突然だったけど、しょうがない。やるしかないんだ。

 

 最初に俺が弾き、途中でたえが弾く。最初の曲は前にやったmagnetだ。前は背中合わせでやってたけど、今は隣だ。弾いている途中で俺とたえは歌いながら向き合った。甘い雰囲気を出していると思われているが、これはアイコンタクトだ。

 

 次の曲は桜、季節外れではあるが、それでも聴いてもらいたい。今回のセトリはこの1年で弾いた曲から何曲かを選んでいる。桜だけじゃない。ハナミズキ、天体観測、花園電気ギター、いくつかあるが、挙げるとしたらこのくらいだろう。

 

 3曲弾き終わり、次で最後の曲となった。次に弾く曲は走り始めたばかりのキミに、ポピパの曲だが、たえが前に弾いていたのを見ていつか一緒に弾きたいと思った。セトリの事で話し合っていた時に最後に弾きたいとたえに言った。

 

「次の曲で最後になりますが、どうか聴いて下さい。走り始めたばかりのキミに」

 

 最後の曲だと言った後、俺とたえはアイコンタクトをして弾き始めた。ポピパのアコースティックの曲はいくつかあったが、俺はたえが弾いていたこの曲が好きだ。

 

 俺は弾いている途中に目が潤んだような気がした。気のせいではなさそうだ。涙を堪えつつ俺は弾き続ける。弾くのを止めるな、このライブを成功させるんだ!ここで止まったらおしまいだ!

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ライブが終わり、私達は拍手に包まれた。曲が終わった瞬間、ハクが泣き始めた。どうやら弾いてる途中で涙が出たんだ。私はライブに慣れてるけど、ハクは初めて。よく頑張ったねハク。

 

 ライブを終えた後、私達は楽器をしまい、帰路に着いた。香澄達からもカッコよかったよ、頑張ったね、凄かったぞと言われた。ハクは皆にありがとうと泣きながら言った。

 

「ハク、どうだった?」

「どうだったっていうか、何だろうな……。やって良かったっていう気持ちもあるけど、たえと弾けて良かったって気持ちが強いかな」

「何それ、まぁハクらしいからいいか」

 

 私はハクの隣に行き、指を絡めて手を繋いだ。私もハクと弾けて良かった。ハクと出会えて、恋人になって、一緒にライブをやって成功させれた。1日だけなのに、いろんな事があったような気がする。

 

 今は冬、これからハクとどう過ごそうかな。クリスマスや大晦日、色々なことがある。でも、私が一番楽しみにしているのは、来年、これから先のことだ。明日からまた学校だけど、どんなことをしよう。またハクと人前で弾けたらいいな。

 

 

 




残り1、2話で白兎は完結します
最後までよろしくです


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聖夜のライブの後、兎は感謝を伝え合う

タイトル名のセンスの無さは気にしないで




 あっという間に12月下旬になった。クリスマスが近づきつつある。俺は冷えた手にはぁー、と息を吹き掛け手を暖めた。暖めてもすぐ冷える。その場しのぎでしかないが、寒いとどうしてもやりたくなる。

 

 たえの誕生日が過ぎて大体15日程か。俺はたえと一緒に買い物に向かっていた。クリスマスプレゼントに備えてっていうのもあるし、クリスマスライブに向けてどうするか等々、色々な準備をしていた。

 

「なぁたえ、本当に俺が来てよかったのか?」

「何のこと?」

「クリスマスライブのこと。俺が来るって場違い過ぎないか?」

「場違いじゃないよ。ハクだから来てほしいんだよ。私の頼み断るつもり?」

「いや、そんなことは……」

 

 そう、俺はクリスマスライブに出てほしいと頼まれたのだ。先日の商店街ライブの後、俺の評判は色んな所で広まった。つぐみがAfterglowに、はぐみがハロハピに俺のライブのことを言った。その結果、俺の評判は羽女にまで伝わってしまったのだ。

 

 遂にはファンまで出来てしまった。たえからこのことを聞いた時には若干引いた。ああ、俺はなんてことをしたんだ、と少しだけ後悔している。

 

「どうなの?」

「わかった!わかったから顔を近づけないでくれ!やるよ!クリスマスライブ出るから離れてくれ!」

「ありがとうハク。大好きだよ」

 

 だから耳元で囁くな!照れるだろうが!はぁ、たえって本当にこういうこと好きだよなぁ。今度やり返してやろうかな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 クリスマスライブに向けて練習を始める。ポピパはクリスマスのうたとWhile Afternoonの2曲、ハクはクリスマス関連の曲を2曲やる。ハクは何の曲をやるかは教えてくれなかった。何をやるか気になるけど、本番までに楽しみにしておこう。

 

 今日はハクの家に泊まることにした。12月に入ってからハクの家に泊まってなかったからだ。一緒に寝る時はハクを抱き枕にして寝よう。ハクは抱き心地いいし、耳を甘噛み出来るし、私に得しかない。

 

「そういえばたえ」

「何?」

「クリスマスイヴはどうする?」

「クリスマスイヴ?うーん、どうしようかな。練習に集中してて考えてなかったなぁ」

 

 そういえばクリスマスイヴのこと全く考えてなかった。いつも通りハクと過ごす、ここまではまだいい。大事なのはクリスマスプレゼントだ。

 

 ハクに何を渡すかまだ決めてなかった。クリスマスまであと少し、急いで決めないと間に合わない。何がほしいか聞いてみよう。聞いて、明日辺りに買いに行こう。

 

「ねえハク。ハクはクリスマスプレゼント何がいい?」

「クリスマスプレゼント?そうだなぁ……たえのプレゼントなら俺は嬉しいよ。何でもいいかな」

「何でもいいって……。じゃあさ、明日一緒に決めない?」

「一緒に?別にいいけど、もしかして互いにプレゼントを決め合うとかか?」

「ご名答!その通りだよ!」

 

 何でもいいのなら本人に決めてもらおう。それが一番かもしれない。何でもいいは困る、だから二人で決めて、プレゼントし合った方がお互いにいい。明日が楽しみだ。今日はハクにとことん甘えよう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 買い物に来たのはいいが、まさか二人で決めることになるなんて予想してなかった。まぁ本当にたえからのプレゼントはどんな物でも嬉しいんだ。これは事実だし、嘘でもない。伝え方が下手だったかもしれない。不器用な俺を許してくれ、たえ。

 

 そんなことを思っていると、たえが腕を絡ませてきた。な、急に何をするんだこいつ!?しかも胸が当たってるし、頬が肩に当たってるし、くっつきすぎだろ。てかなんで急にこんなことを……。

 

「たえ、お前大丈夫か?」

「へ?大丈夫って何が?」

「いや急にくっついてきたからさ、寂しいのかなと思ってな」

「寂しくなんかないよ。私は普通にくっつきたかっただけだよ。一応言っておくけど、当ててるからね!」

 

 たえはドヤ顔で言った。ドヤ顔なのはいいが、顔を赤くしてる時点で意味ないだろ。

 

 ということで互いにプレゼントを決め合い、ギターケースを背負って蔵に向かった。香澄からリハやるよ、と連絡が来たのだ。俺もリハやらないとな。やる曲もまだ言ってなかったから、ここでバラシちまうか。

 

 やる曲は恋人たちのクリスマスと恋人がサンタクロースの2曲に決めている。たえ達に言った瞬間に少し引かれた。2曲共恋人のワードがあるからだ。有咲からは彼氏がいない私達に対する当て付けか、と言われた。解せぬ。

 

 そんなこんなでライブ当日を迎えた。ライブをやる場所はまさかのcircleだ。俺はスペシャルゲストという枠で参加する。頑張っていこう。

 

 今回は俺がボーカル、ポピパがバックで演奏という形となっている。とうとうボーカルをやるなんてな、香澄からボーカルをやってよと言われた時は焦った。ここまで来たらやるしかないか。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ポピパとハクによるクリスマスライブを終えた後、アンコールが起きた。アンコールに応えて恋人たちのサンタクロースを私とハクで歌うことにした。周りからは暖かい目で見守られているような視線を感じた。

 

 何だろう、何て言えばいいのかな……。これじゃあ付き合ってることバレてるみたいでムズ痒いなぁ。学校でもハクといること多いし、噂になってるよね。うん、これはしょうがない。もうバレてるだろうから吹っ切れてもいいかもしれない。

 

 ライブが終わり、皆と別れた後、私はそのままハクの家に入った。それはもう自然に、まるで住み着いているかのように。

 

 まだやり残していることがある。ハクにクリスマスプレゼントを渡す、これを逃してはいけない。今日のクリスマスライブのお礼で、私の想いを込めた贈り物だ。

 

「ハク、渡したい物があるんだけどいいかな?」

「奇遇だな、俺もたえに渡したい物があるんだ」

 

 

――ハクもか。もしかすると渡す物は一緒かもしれない。

 

 

 私は赤い包みで包装された箱をハクに差し出した。すると、ハクも一緒だった。タイミングは同じ、けれどそれが同じかはわからない。こんな偶然ってあるの?いや、これは偶然じゃなくて運命かもしれない。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 これはどっちから言った方がいいんだ?たえが先か、それとも俺が先か……。

 

「たえ、先いいぞ」

「いや、ハクからでいいよ。私は後ででいいから」

「先に出してきたのはたえだろ。俺は次に言う」

 

 ここで言い合いになったら時間が過ぎる。そうなっては先に進まないし、このチャンスを逃してしまう。だから、たえからだ。先に出した人に譲るというのが筋だ。

 

「じゃ、じゃあ言うね。メ、メリークリスマス……」

「何顔赤くしてんだよ。まぁ俺からも、メリークリスマスたえ」

 

 俺も顔を赤くしている。人のことは言えないが、こんなことは久しぶりなんだ。それも二人きり、しかも付き合って初めてという。今見るとよく恥ずかしがらずに渡せたなと思う。

 

 俺とたえは互いに渡した包みを開けた。中身はウサギのネックレスだった。ちょっと待て、プレゼントが同じってどういうことだ?こんなことあるのか……。

 

「ハク、私とプレゼント同じなんだね。もしかして狙った?」

「狙ってはいない。たえだって俺が渡すプレゼント知ってたんじゃないのか」

「まさか。私は知らなかったよ。でもこれだけは思った、ハクってウサギ好きなんだなって」

 

 たえは俺に近づき、ありがとう、と言って頬に唇を重ねた。俺は咄嗟のことで焦ってしまった。それはズルすぎるだろ。俺はたえに仕返しをしようと、額にキスをした。

 

 たえも顔を真っ赤にし、俺に抱き着いた。顔を隠してるつもりだけど、その赤くなった顔は充分過ぎるくらいに俺の胸に伝わった。たえの熱は俺の心を暖めてくれるくらいに熱かった。

 

 

――メリークリスマス、ウサギさん。

 

 

 




次で最後となります


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ウサギ小屋の大掃除の後の大晦日は共に過ごそう

今回で最後です



 年末年始、それは1年の終わりと1年の始まりである。しかし、年末にはやらなければならないことがいくつかある。まず1つは大掃除だ。

 

 大掃除なのはまだいい。だが、一番大変なのは小屋の掃除だ。エター、キル、ケーを外に出して小屋の掃除を始める、更に藁を変えたりとかもあるから大掃除で最もキツイのだ。しかも、俺の方が終わったらたえの所も手伝わないといけない。早く終わらせてエター達と戯れたい。

 

 ウサギ小屋の大掃除が終わるまでに3時間程掛かった。クリスマスプレゼントで貰ったウサギのネックレスを付けてその後、昼食を済ませてたえの家に向かう。オッちゃんをモフリたいけど、嫌われてるからもういいか。この先どうせ嫌われるんだ。

 

 

――俺に懐くのはたえだけ、それだけでもまだ救いはある。

 

 

「たえ、お待たせ。遅くなってごめんな」

「そんなに待ってないよ。私も今始めたばかりだから」

「今にしては随分と汚れてるな。顔拭いてやるからじっとしてろ」

「ハクー、そこは突っ込んじゃだめだよ。あと、顔は掃除終わってからでいいよ。気持ちだけ受け取っておくから」

 

 何かたえの当たりが強いような気がする。気のせいだよな?いや、時間を合わせてくれたんだ。さっきの突っ込みはまずかったか。

 

 ウサギ小屋に入った瞬間、オッちゃんが俺に向かって突進を仕掛けてきた。柔らかい、毛が胸に当たって気持ちいい。なんて言ってる場合じゃない。危うく昇天しそうになった。俺にとって兎は危険な物だな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクとウサギ小屋の掃除を2時間掛けて終わらせ、二人でのんびりと休憩を始める。今年の大晦日はハク一人らしい。おばさん達は仕事のため今年は過ごせないとのことだ。

 

 隣でハクが歌を歌っている。曲は粉雪、ん?粉雪?待って、ハクは前も粉雪を歌っていた。歌っているということは……。

 

「ハク、何で粉雪歌ってるの?」

「何でって?また雪降らないかなーと思ってな」

「前歌ったら雪じゃなくて吹雪だったよね!?ハクのせいで吹雪いたんだよ!?ハクのせいで寒い想いしたんだよ!」

「そうだったのか!?今まで気づかなかった。道理でキルが震えてたわけだ」

 

 キルは震えてたけど、ケーは喜んでいた。エターは慣れているのか、全く震えてなかった。もしかしてハクは白兎じゃなくて雪男だったのか。多分雪兎かもしれない。

 

 ハクと話をしていると、オッちゃんがハクの膝の上に乗ってきた。え!?あのオッちゃんがハクに懐いた!?これは明日吹雪になるかもしれない。ハクの頭を見るエターが乗っていた。エターいつの間に……。

 

「オッちゃん、とうとう懐いてくれたのか。たえ、どうしよう俺泣きそうなんだけど、泣いていいか?」

「な、泣かなくてもいいんじゃないのかな。きっとオッちゃんはお礼を言ってるんだよ!小屋を掃除してくれてありがとうって」

「そうか?本当にそうならモフモフしてやりたいんだけどなぁ」

 

 いやそれやったら余計嫌われるって。今年最後にオッちゃんにここまでされるのはハクにとって人生最大のサプライズだろう。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 母さんと父さんが仕事で戻れないため、今年はたえの所で年を越すことになった。俺も料理を手伝うことにし、今年は肉をガッツリ使った料理にした。エター、キル、ケーの三匹も連れてくることにした。置いていってしまっては寂しい想いをさせてしまう。たえの所の小屋に入れると紛れてわからなくなるからたえの家に入れてもらうことにした。

 

 今日は本当に色々とあった。といっても、昨日の大掃除の方がインパクトは大きい。オッちゃんが俺の膝の上に乗ったことだ。あれだけのことなのに、俺は危うくあの世に逝きそうになった。

 

 これまでオッちゃんに嫌われてたのに、ついに俺に懐いてくれたんだ。だが、それは昨日だけで、今は普通に警戒している。あの日の感動を返してくれ。

 

「ハクそんなに泣かなくても……」

「オッちゃんに好かれたと思ったんだぞ!?でも今日は何だ、何であんなに警戒してんだよ!俺がナニしたっていうんだよ!」

「ナニっていうかさぁ、またモフろうとしたでしょ?モフろうとするから嫌われるんだよ?」

「いいさ、オッちゃんに嫌われても俺にはたえがいるんだ」

 

 そうだ、俺にはたえがいる。オッちゃんが無理ならたえならどうだろう。さすがにモフるとかやったら間違いなく口聞いてくれなくなるからそういうことはしないが……。

 

 この茶番は約2時間程続いた。茶番の後はたえの部屋でゆっくりと、ゆっくりと次の年が来るのを待った。二人で年を越そうということで夜遅くまで起きていることにした。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクと夜遅くまで年を越すってなんかいい。オッちゃん達は寝てる。でも、私達は起きている。今日は満月、ああ綺麗な月だ。

 

「ハク、月が綺麗だね」

「そ、そうだな。でもたえだって綺麗だぞ?」

「そ、そう!?それは嬉しいな」

 

 私はハクに綺麗だと言われ、心臓がドキッとした。ハクだって綺麗だ。白い髪に赤い瞳、その姿は正に白兎。ハクのことをじっと見ていると、彼は口を開いた。

 

「けどこれだけは言える」

「へ?」

「俺、たえのためなら死んでいいよ」

「えっ、し、死なないでよハク!死んじゃ嫌だよ!」

 

 ハク、いきなり死ぬなんて言わないでよ!私を独りにするなんてもう嫌だよ。私はハクの一言に涙を流した。こんな所で泣くなんて、私って泣き虫だな。

 

 そう思っていると、いきなりハクにキスをされた。突然のことで私は固まってしまった。どうしたんだろう、どうしてこんなことしたんだろう。私は不安に包まれながらもハクに理由を聞いた。

 

「ごめんたえ。いきなり変なこと言っちまったよな?けどこれには理由があるんだ」

「理由?」

「その……なんていうかな。告白みたいな物だ」

 

 ハクから理由を聞くと、私は恥ずかしくなった。私が言った月が綺麗とは、I love youのことだった。それに答えたハクは死んでもいいと言った。この死んでもいいとはYoursという意味、つまり私はあなたの物ということ。

 

 ハク、それは教えてほしかったよ。知らなかった私が言うのもあれだけど、それはあまりにも反則だ。無意識に言った私が馬鹿だ。そのせいで恥ずかしい想いをした。後でハクにはお仕置きが必要だね。

 

「ねえハク」

「何?」

「これからもよろしくね。あと、目瞑って」

「こちらこそよろしく」

 

 ハクはそう言いながら目を瞑った。私は自分の唇をハクの唇に重ね、指を絡めた。兎は寂しくなると死んでしまうけれど、今の私は独りじゃない。ポピパがいて、ハクがいて、他の人達がいる。

 

 あの時ハクに出会えてなかったら私はどうなっていたか、ずっと独りのままだったかもしれない。でも、ギターの音に釣られて音楽に出会って、ハクとギターを弾けるようになって、ハクのことを好きになって、恋人になれた。

 

 

――今の私は充分過ぎるくらいに幸せだよ。

 

 

――これからも、ずっと一緒だよハク。

 

 




更新止まったりとかありましたが、最後まで読んで頂き、ありがとうございました
他の作品も随時更新致しますので、よろしくです
あと、最後の月が綺麗ですねの方はやりたかっただけです


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番外編
ウサギの作ったチョコの味は濃厚かつ甘すぎる


更新遅くなってごめんなさい
時期的に早いですが、ホワイトデー回になります
あと、今回のハクとおたえは付き合っています
後半はとてつもない描写になっています


 もう3月14日になる。この日は男にとって大事な日だ。通称"ホワイトデー"だ。たえに渡すとしたらウサギの形がいいかな?チョコレートを作るのは初めてだったが、事前に上原さんや羽沢さん、今井先輩から教わったからなんとかなると思うんだけど......。

 

 たえには作ってることはバレてるからな。こいつ隣で見てるから、すげえ緊張するんだけど......。

 

「たえ、緊張するからあまり見ないでくれるかな?」

「ハクがどんなチョコレート作るか楽しみだったからさ」

「た、楽しみって......。まあその気持ちはわかるけど......」

 

 とりあえず最後まで作らないとな。一応ウサギの形を作ろうって今決めたがどうするか?たえにはゆっくりしてほしいけど、せっかくだから見てもらうのも悪くないな。

 

「ハクっチョコ作るのは初めてだよね?」

「作るのは初めてだよ。上手く作れるかはわからないし、不味かったらごめんな」

「いいよ。ハクが作ってくれるなら私は嬉しいから」

 

 たえって天然だけどたまにこんなこと言うよな。甘えん坊の時のたえとは思えない。たえのために頑張って作ろう!

 

 

▼▼▼▼

 

 ハクがチョコを作っているところを見ているけど、ハクはお菓子作りはやったことはないみたいだ。もしりみりんがいたら数時間かけて教えるかもしれない。うん、りみりんならやりかねない。

 

「ハクケーキ作ろうとしてない?」

「お、気づいたか。ケーキとあと、クッキーを作ろうと思ってな。クッキーはどんな形がいい?」

「やっぱりウサギかな!」

「言うと思ったよ。まだ時間かかるから待っててな」

 

 「ウサギさん!」とハクは微笑んで言った。私は聞いた瞬間に顔が徐々に赤くなり、手で顔を覆って悶えてしまった。ハク、それはズルいよ!反則だよ!

 

「ハクぅ~」

「どうしたたえ?」

「ウサギさんってズルいよ~」

「ズルいってなにが?」

「そういうところだよハク~」

 

 だめだハクには伝わってない。どうしよう......。今ハクと一緒にいると恥ずかしくなる。でも完成まで見ようって決めたし、ハクには休んでていいって言われてるし、私どうしたらいいの?教えてよオッちゃん!

 

 うん、決めた。頑張って最後までハクのところにいよう。ハクがお菓子作ってるところは滅多に見れないんだから近くにいなきゃ!

 

 しばらくしてケーキがもう少しで完成するところだった。ケーキのおまけにイチゴを乗せようっていってイチゴを切っているんだけど私はハクの切っているところに夢中になっていた。

 

「たえ釘付けだな」

「だってハクの初めてのお菓子作り見てみたいからさ」

「そっか」

「そうだよ。私はハクの成長を見たいからね」

「お前は俺のお母さんかよ。よしケーキできたぞ」

 

 ケーキは出来たみたいだ。次にクッキーを作るってなると結構時間かけてるんだなって思った。私がお菓子作りとか出来たら手伝えたんだけど......。今度お菓子作りやってみようかな?

 

 

▼▼▼▼

 

 

 あとはクッキーだけだな。チョコクッキーしかもウサギの形でやってみたからな。たえの喜ぶ顔を見てみたい。俺の心はそんな気持ちでいっぱいだった。初めてなのに自分でもここまで上手くいくなんて思わなかった。隣でたえが見てるけど、釘付けになりすぎだろ。あ、焼けた。

 

「たえオーブン開けるから少し離れてて」

「わかった」

 

 俺はオーブンを開けてクッキーを皿に移した。ウサギの形ができたけど、これを食べるってなると罪悪感が湧いてしまう。こんなこと思いたくないのに、つい思ってしまう。

 

 ケーキはたえにしか作ってない。本人には言えないが、俺なりの本命だ。クッキーは香澄達にお返しとして作ったから今度渡しておくかな。

 

「たえ」

「なにハク?」

「その......。1日早いホワイトデーだけど、お返しで作ったからさ。食べてみてくれないか?」

「わかった。じゃあいただきます」

 

 どうかな、成功してるか?初めて作ったとはいえちょっと味見したからいい感じだと思うんだ。たえはなんて言ってくれる?どんな表情をする?喜んでくれるか?今の俺は色んな感情が混ざっていて不安でいっぱいだった。頼む美味しいって言ってくれ!

 

「どう......だ?」

「美味しい......よ、ハク」

「ホントか?」

「うん、ホントだよハク」

 

 たえは笑顔で言った。よかった、喜んでくれた。俺はホッと胸を撫で下ろした。不味いって言われたらどうしようかと思ったけど、たえが喜んでくれたならよかった。俺は美味しいって言ってくれただけでも十分だ。

 

「ハク私が美味しいって言ったの嬉しいんでしょ?」

「そりゃ嬉しいに決まってるだろ。美味しいって言ってくれたら嬉しいよ」

「喜んでるハク可愛いかったよ」

「たえだって、美味しいそうに食べてた顔可愛いかったぞ

「そ、そう?」

「そう......だよ。可愛かったよ」

 

 たえが耳を赤くしてる。甘噛みしたいけど"今は"やめておこう。

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 ハクは私に本命のチョコもといケーキとクッキーを渡したあと、片付けをしてから二人きりでハクの部屋でのんびりとしていた。

 

 私とハクはベッドに寄りかかって座ることにした。私はというと、自分の頭をハクの肩に乗せて寄り添い、ハクの腕を絡めている。ふう、落ち着くなあこの感じ。ずっとこうしていたいよ。

 

「ハク今日はありがとね。私のためにここまでやってくれて」

「大したことはしてないよ。俺はたえのためにやっただけだからさ」

「それでも嬉しいよ。ハクのこともっと好きになったかも」

「好きになったって......。俺だってたえのことは大好きだよ」

 

 ハクは私に急にキスをした。突然のことで驚いてしまった。これって確か唇を奪うって言うんだっけ?まさか私がこんなことされるなんて思わなかった。ハクって大胆なんだな。私とハクは目を瞑り、幸せな余韻に浸った。心が満たされるけど、もっとハクが欲しいという欲求に私の心は満たされてしまいそうだった。

 

 

――だめ。もう我慢できない!

 

 

「っ!?」

 

 私は我慢ができなくなり、ハクの口の中に自分の舌を入れた。ああ堪らない!もっとハクを感じていたい!私はハクに寄りかかり、両腕をハクの頭の後ろに回した。

 

 

――逃がさないよハク?

 

 

 ハクは今どんな顔をしているのかな?喜んでくれてるかな?ああハク、大好きだよハク!

 

 

▼▼▼▼

 

 一言言いたい、どうしてこうなった?

 

 俺が唇を奪ったのは悪いけど、なんでディープキスされなきゃいけないんだ!?でも悪くないな。もっとたえを感じていたいって思ってしまう。ダメなのにどうしてもそう思ってしまう自分がいる。俺とたえは息が切れるまで舌を舐め合い、キスを数えきれないくらいにした。たえに腕を回されているが、俺に至ってはたえの腰に腕回してるからな。

 

 俺って思うんだけどたえのこと好きすぎるよなって思う。いや、今更かそれは。脳が熱を帯びてショートしてしまうんじゃないかっていうくらいにキスをしていた。

 

 そして数時間が経ち、俺とたえは唇を離した。互いの唇には銀の糸が出て、名残惜しいという思いと共に垂れていった。たえの顔が恍惚な表情をしている。俺は襲ってしまいたいくらいに興奮していた。抑えよう。これ以上やったら戻るのに相当時間がかかるかもしれない。

 

 

「はあ、はあ......。ハクがっつきすぎだよ......」

「たえだって......同じ......だろ。はあ、はあ」

「そう、だね」

「ああ、ホント......だよ」

 

 落ち着いたところで俺とたえは笑い合った。毎日が幸せだ。たえ、お前のこと絶対に幸せにするから。

 

 

――これからもよろしくな、ウサギさん。

 

 




言っておきますが、今回の話は本編とは別の世界線となっています
本編では二人が付き合うのはまだですのでご了承ください
後半やり過ぎた。ごめんね!
感想と評価お待ちしてます


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白兎のお祝い、ウサギへの贈り物

一ヶ月ぶりの投稿、そして四日遅れの誕生日回です
おたえ、誕生日おめでとう!


 寒い。十二月二日、もう一年が終わろうとしているのか。時間ってこんなに早かっただろうか、まあいいか。

 

 十二月四日はたえの誕生日だ。俺はたえの誕生日プレゼントについて色々と考えていた。香澄達ポピパはお肉のブランケットにするらしい。探しても見つからない、なんて有咲は愚痴ってたな。

 

 俺も早く決めないとな。そう言っても、俺は今立ち上がれない。何故かというと、たえが俺の膝を枕にして寝っ転がっているのだ。呑気なウサギだよ、全く……。

 

「おーい、たえー」

「んー?」

「足が痺れそうなんだけど、退いてくれるか?」

「もう少しこのままでいたいよ。ハク、何か考え事?」

 

 考えてることがバレたか。確かに考え事だが、それはお前の誕生日のことについて考えてるんだよ。たえは惚けた顔をして俺を見つめている。撫でてやりたいが、俺も動かないといけない。ポピパがプレゼント決まってて俺だけ決まってないのは非常にまずい。

 

 しかも付き合って初めての誕生日だ。たえが喜ぶような、そんな一日にしたい。俺はたえに後でまた膝枕をしてあげるからと言った。それを聞いたたえは起き上がり、わかったよと笑顔で言った。さて、誕生日プレゼントを決めないと!

 

「ハク、出掛けるの?」

「ちょっとな。夕方までには帰って来るから、今日はここまでになるかな。ごめんな」

「いいよ。ハク、忙しそうだし。明日があるから私は平気だよ」

 

 じゃあまた明日ね、と言ってたえは部屋を出ていった。バレてないよな?バレてない筈だ。俺はスマホと財布をポケットに入れ、上着を着て家を出た。とりあえず買い物をしよう。買い物をしないと何も始まらないからな。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 私はハクの家を出て自分の部屋に戻った。ギターを持ってソファーに座る。私は明後日が誕生日であることに実感が湧かなかった。湧かなかったというより、私にとってば初めての誕生日゙だ。

 

「付き合って初めての誕生日か……。ハクはどんな誕生日にしてくれるかな?ポピパからのプレゼントも、ハクからのプレゼントも楽しみだよ」

 

 でも、少し落ち着いた方がいいかな。ギターを弾いていれば落ち着くかもしれない。私は適当にギターを弾いて弾む心を落ち着かせることにした。

 

 

――けど、ギターを弾いてもこの心は落ち着くことはなかった。

 

 落ち着かないどころか気になるという気持ちが強くなった。何でかな?私ってこんなに気にするような性格だったかな?

 

 私はギターをスタンドに置き、部屋を出て中庭に向かった。オッちゃんと戯れていようかな。ギターが駄目なら兎だ。兎と遊んでいれば忘れるかもしれない。忘れちゃ駄目だけど……。

 

 この時の私はそわそわしていることにさえ気づいていなかった。楽しみにしている、そんな想いが強すぎたのかもしれない。ハクなら……ポピパならいい誕生日にしてくれるに違いないから。私はそう信じながらオッちゃん達と戯れた。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 俺はスーパーに行き、誕生日に作る料理の食材を買うことにした。とりあえず肉は必要だ。そういえばりみも肉好きだったよな。そうなると今回は多めに買った方がいいかもしれない。

 

「あれ、ハク!今買い物なの?」

「沙綾か、見ての通りだ。たえの誕生日に備えてって所だよ。沙綾こそ買い物か?」

「同じくだよ。お母さんから夕飯の買い物頼まれてね」

 

 よく見るとカゴには食材が置いてある。沙綾に誕生日プレゼントの状況聞いてみるか。俺もそうだけど、ポピパも心配だ。明日までに買えてないと間に合わない。

 

「そういえばさ、プレゼントの方はどうなってるんだ?」

「プレゼント?今日買えたよ。今は有咲の蔵に置いてあるから大丈夫かな。ハクはどう?」

「それがな……未だに決まらないんだ。迷ってるというか、色々ありすぎて決まらない」

 

 ポピパはプレゼント買えて俺は決まってない。何だろう、この差は……。俺が先に決まっていればよかったのに、ポピパは既にプレゼントを決めていた。悔しいけれど、仕方ないか。いや、仕方ないって言ってる場合じゃないか。

 

 落ち込んでいると、沙綾から顔を上げてと言われた。沙綾は俺を見守るかのように見つめ、微笑みながら口を開いた。

 

「決まらないならさ、弾き語りとかでもいいんじゃない?」

「弾き語り?」

「うん。ハクはさ、おたえのためにギターを始めたんでしょ?私は音楽をプレゼントするのもいいんじゃないかなって思うんだ。個人的なアドバイスになっちゃうけど……」

 

 音楽か。それもいいかもしれない。音楽とあと一つだ。俺はたえと出会ったことで変われたんだ。だから、もう一つプレゼントしたい物がある。そのもう一つは、今決めた物だ。

 

 俺は沙綾にお礼を言い、彼女と別れた。材料を買ってスーパーを後にし、俺はある場所へと向かった。楽器店、ここでもう一つのプレゼントを探そう。ここなら見つかる筈だ。俺はそう確信して、ある物を購入した。

 

 

▼▼▼▼

 

 

 十二月四日、私の誕生日当日だ。午前はハクとポピパの皆で有咲の蔵でパーティーをし、午後はハクと過ごす、 今日はそんな予定だ。ポピパからはお肉のブランケットをプレゼントされたけど、そんなブランケットもあるんだなと不思議に思った。

 

 ハクが肉をメインにした料理を作ってくれたけど、とても美味しかった。有咲のおばあちゃんからもお墨付きを貰った。それを言われたハクは、顔を赤くしてしまった。多分照れてるのかもしれない。

 

「ハク、今日はありがとね」

「急にどうしたんだ?お礼何か言うなんて珍しい」

「言った方がいいかなって思って……」

「そっか。それならそう捉えとくよ」

 

 香澄達と別れ、私とハクは歩を揃えながら帰路に着いた。ハクの家に戻りながら、私は彼にお礼を言った。付き合って初めての誕生日、それを祝ってくれてのは私にとってとても嬉しいことだ。

 

 ハクの家に着き、中に入る。部屋に入った瞬間に、私はハクに抱き着いた。今は彼の温もりを感じていたい。この冷えた心を暖めたい。ハクはそのまま動くことはなかった。動くことはなかったけれど、一言だけ言われた。

 

「たえ、冷たい」

「私ってそんなに冷えてた?」

「今も冷えてる。とりあえず離してくれるか?今からプレゼント渡すから」

 

 そう言われた私はハクから離れた。もう少し抱き着いていたかったけど、渡すって言われたのなら仕方ない。

 

 ハクはクローゼットから袋を出して私の前に差し出した。今日は初めてが多いような気がする。誕生日だけじゃない、プレゼントもそうだ。初めてってこんなにいいことなんだ。

 

「改めて言うが、誕生日おめでとうたえ」

「ありがとハク。凄く嬉しい」

「そ、そうか」

 

 ハクがまた顔を赤くした。ハクってこんなに顔を赤くすること多かったかな?私はそう思いながら袋から渡されたプレゼントを出した。渡されたプレゼントは青いヘッドホンだった。

 

「ハク、私がヘッドホン欲しかったこと覚えてたんだ」

「先週から言ってただろ。ボソッとだったけど、聞こえてたぞ」

「耳がいいだなんて、ハクはやっぱり兎だね」

「それを言うならたえも同じだろ。俺とたえは兎、OK?」

 

 私とハクは兎か。何か私達らしくて心地良い感じがする。私は嬉しさのあまり、ハクの唇を奪った。ここまでやるなんて、嬉し過ぎだ私は。

 

 ハクは私のためにここまでしてくれた。いつか私もハクに恩返しをしよう。だから、来年から他のことも出来るように、ハクの隣にずっといられるように頑張ろう。

 

 




投稿遅くなりましたが、また投稿出来るように致しますので、改めてよろしくです


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