新世紀エヴァンゲリオン -破壊の継承者- (歌音)
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序章/僕に『全て』を教えてくれたHERO《ヒト》達…

周りからたくさん人が叫んでいる声が聞こえてくる。

 

それもそうだろう。突然変な景色が現れて、そこからいろんな化け物達が現れて襲ってくるのだから…

 

 

 

妙な言葉を喋る化け物…

 

光と共に現れる化け物…

 

鏡の中から出てくる化け物…

 

人間を灰に変える化け物…

 

突然互いに殺しあう化け物…

 

妖怪みたいな化け物…

 

凄いスピードで動く化け物…

 

砂時計のような化け物…

 

人間から命を吸い出す化け物…

 

 

 

こんな奴等が襲ってくれば叫んで逃げ出すのは、子供の自分だって判る…

 

そして自分はここで死ぬんだって…事も自分はわかっていた。

 

でも…それでもよかった。

 

死んでよかったんだ…

 

僕は誰からも必要とされていない。

 

僕は捨てられたんだ…

 

そして化け物達は自分を見つけた。

 

化け物達が自分に近づいてくる。

 

(ああ、僕、今からこの化け物に殺されるんだ…)

 

化け物の腕が上がる。

 

(ママのところに…いけるかな…)

 

そして化け物の腕が僕を襲っ…

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

『ギャァァァァァァァッ!』

 

「えっ…」

 

何か急に化け物の悲鳴が上がったのに驚いた僕が見たものは…

 

明るい紫と黒の体、緑の目を持つ『HERO』だった。

 

 

 

『HERO』は凄い強さで化け物達を倒すと、自分に近づいてきた。

 

近づいてくる途中でベルトを外すと、『HERO』は男の人になった。

 

 

 

「おい、オコチャマ。こんな所で何をしている。早くパパとママの所に行かないと化け物に食われちまうぞ」

 

黒いコートを着た男がそういう。しかし僕は…

 

「ママは死んじゃった…パパは、僕を捨てたんだ…僕、いらない子だから…」

 

そう、僕にはもう居場所なんてないんだ。だから…

 

「だから化け物に食べられても…」

 

ゴンッ!

 

「いたっ!」

 

「まったく、これだからオコチャマは」

 

「うぅ…いたい」

 

「当然だ。化け物に食われたらもっと痛いぞ。ほらっ、よ」

 

ヒョイ

 

「へっ?」

 

男は僕を担いで歩き出した。

 

「ちょ、ちょっと何するの!お兄ちゃん人攫いなの!」

 

「人聞きの悪い事を言うな。お前は『いらない子』で『居場所の無い子』なんだろ」

 

「うっ…」

 

「じゃあ、人攫いじゃないな。丁度いい、俺は今から旅にでるんだ。ついでにお前の居場所も探してやるよ」

 

「た、旅…」

 

「ああ、様々な世界を旅する『らしい』…?」

 

「『らしい』って!?」

 

「俺もよく知らん。まあ、丁度良いからついて来い」

 

なんてアバウトな!?

 

「お、お兄ちゃん何者なの?」

 

「俺か?そうだな、俺は『門矢 士』…」

 

 

 

それから僕はいろんな『世界』を士お兄ちゃんと、お兄ちゃんと一緒にいたお姉ちゃんとお爺ちゃんと一緒に旅をした。

 

そして本当にカッコいい人達に出会った。

 

 

 

2000の技を持つ人…

 

天然で面白くない冗談を言うけど料理が上手な人…

 

戦いを止めようと純粋に思っていた人…

 

人の夢を守る為に戦う人…

 

『全ての敵』である者も受け入れる人…

 

体だけではなく、心も鍛えている人…

 

自分の事を本気で一番だと思っている俺様な人…

 

不幸から人を救おうとする、『本当』に強い人…

 

人の『音楽』を守る為に戦う人…

 

 

 

その人達は、時に無様で、バカにされ、否定されても自分の道を歩いていた。

 

その人達の笑顔は…最高にカッコよかったんだ。

 

そして、そんな人達の出会いと別れ…そして…

 

 

 

「これで俺とお前の旅は終わりだな」

 

「………」

 

士お兄ちゃんはそう宣言した。

 

そう、僕は戻ってきた。僕の世界に…

 

「士おにいちゃん…僕…」

 

「お前もこれまでの旅で判ったはずだ…自分が『いらない子』だと思うならまず、自分が自分を必要としろ。自分の居場所がないなら、自分で作ればいい」

 

「僕が…」

 

「お前も『アイツ』らと会ってわかった筈だ。ほらよ」

 

士お兄ちゃんが何かを投げてくる。僕はそれを何とかキャッチすると…

 

「こ、これ…」

 

「これから先のお前には必要…かもしれないからな。持っとけ。俺のとまったく同じものだぜ」

 

すると、突如シンジの前に、『ゆらぎのオーロラ』が現れ、気づくとシンジの目の前に、9人の『HERO』が僕の前に現れた。

 

「俺に負けないカッコいい技、会得しろよ」

 

「教えたレシピ。忘れないでね」

 

「戦いを止める勇気を忘れるなよ」

 

「…夢を持てよ」

 

「誰にでも手を取り合える力があるんだ」

 

「鍛えろよ、少年」

 

「俺が天の道を行き、総てを司るように…お前もお前の道を行け」

 

「自分にできる事をがんばってね」

 

「君の音楽をもっと美しく奏でてね」

 

そういって9人はゆらぎの中に消えていった。

 

「さてと、時間だ。じゃあな…『シンジ』」

 

「つ、士お兄…」

 

士お兄ちゃんは笑顔でゆらぎの向こうに消えていった。

 

その時の笑顔は…他の9人と同じように…最高に、カッコよかった。

 

僕はしばらく泣いて、泣いて、泣き疲れるまで泣いた。

 

そして、僕は自分の世界を真っ直ぐ見た。

 

「僕もこの世界でがんばるよ。だからどこかで見ていて、士お兄ちゃん…今まで、ありがとう」

 

僕は士お兄ちゃんから貰ったもの…『ディケイドライバー』を腰にセットする。

 

『ディケイドライバー』はベルトのように腰に巻きつく。

 

そして僕は『ライドブッカー』から士お兄ちゃんのカードを出す。

 

「通りすがりの…」

 

カードを『ディケイドライバー』セットする。

 

《KAMEN RIDE》

 

「『仮面ライダー』…」

 

《DECADE!》



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第壱話/使徒、襲来 ~『運命』との出会いと『破壊』の継承~

『本日12時30分、東海地方を中心とした、関東地方全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難して下さい』

 

ガチャン…

 

「ふぅ…」

 

学生服の少年は駅の構内でつながらない電話の受話器を置いた。

 

少年は先程も何度か同じ行動をしたが、もう一度周りを見渡す。

 

だが、それは駅なのに人っ子一人いない言葉通りの無人駅だという事を再確認しただけだった。

 

「まったく、リニアがここで止まるとは…電話も繋がらないし、どうしろってんだ?…でも」

 

カシャ…

 

少年は胸にかけてあるトイカメラで写真を撮り始める。

 

「無人の駅っていうのも珍しいな」

 

少年の持っているトイカメラは、昔『おじいちゃん』と『お姉ちゃん』から貰ったものだった。

 

自分が尊敬する人とまったく同じタイプのモノだが、唯一違うのはその人のはマゼンダで、少年のは白だという事だ。

 

(貰った時は、『お兄ちゃん』とお揃いだって喜んだな)

 

少年は一通り写真を取ると、改札口に向かう。

 

(とりあえず『迎え』を待つか…)

 

少年は一枚の写真を見る。

 

知らない女性が悩殺ポーズを取っており、ご丁寧に『ここに注目』なんて胸にチェックをつけている。

 

(いったい、今日何があるんだろうか?)

 

事の発端は数日前、少年宛に郵便が届いた。

 

今まで碌に郵便なんて届かなかった少年は最初は『お兄ちゃん』かと思ったが、それは簡単に打ち砕かれた。

 

郵便封筒の表には少年の名前…『碇シンジ』と書かれていて、裏の差出人には『碇ゲンドウ』と書かれていた。

 

(顔も碌に覚えてない父親から来るなんて、『お兄ちゃん』から来るより想像できなかったな)

 

入っていたのはこれまた父親が息子に送る内容とは思えなかった。

 

まず、入っていた手紙だが、これがふざけている。

 

ただ『来い ゲンドウ』と書かれていただけだった。

 

その時は、こんな人間と結婚したのかという母のキモチと、こんな人間の血を継いでいる自分を少し呪った。

 

次に真っ赤な無地のIDカード。

 

一体どこのカードなのかはわからないがこんなモノを送りつけたのだ。ロクデナシにはロクデナシなりの事情があるのだろう。

 

それと、今ここにいる、『第三新東京』までの片道切符。ご丁寧に日付・座席指定だった。

 

グリーン車じゃなかったけど。

 

最後に、この写真だ。なんでもこの写真の人物が迎えに来るらしかった。

 

「まったく…まぁ、いいか。写真も取れるし。今度は街を撮ってみよう」

 

シンジは改札を出て、駅の出入り口から出る。しかし、周りには人っ子一人いない。

 

「まったくの…無人か」

 

とりあえずシンジは写真をとってみることにする。

 

人のいない街の風景はどこか、おかしい。

 

やはり、『街』に人が存在しなければ、『街』も存在を失いかけるのだろうか。

 

カシャ…カシャ…カシャッ…

 

(え…!?)

 

シンジはレンズ越しに人影を見つける。

 

それは少女だった。

 

年はシンジと同じくらいだろう、どこかの制服を着ているから学校の帰りかもしれない。

 

薄いブルーの髪に赤い瞳という神秘的な魅力を持つ少女だった。

 

シンジはレンズから目を離して再び見ようとしたが、

 

ゴーーーーーー!

 

「むがっ!」

 

低空で戦闘機が飛び、突風で少女から目を離してしまう。再びシンジが見た時、そこには誰もいなかった。

 

「誰だったんだ、あの娘…でも、一枚撮ってみたかったな」

 

シンジは先程の戦闘機を見る。

 

「まったく、あの戦闘機のせいで台無しだな。一体なんでこんな所を…うぉ」

 

シンジはリアクションとしては薄いが、驚いた。

 

なんと戦闘機が向かう方向には巨大な怪獣…というかモンスターのようなものが立っていた。

 

それは人類の敵、第3の使徒…

 

 

 

第三新東京市、某所

 

その日、薄暗い発令所は喧噪につつまれていた。職員達はあわただしく動いている。情報報告と指示の通信が飛び交いあっていた。

 

『正体不明の移動物体は依然本所に向かって進行中』

 

『目標を映像で確認、主モニターに回します』

 

正面の巨大なモニターに第3使徒が映し出された。その黒い巨体に群がっているのは戦自の戦闘機だ。

 

「15年ぶりだね」

 

「ああ、間違いない…使徒だ」

 

発令所のすみで喧噪など関係ないかのようにサングラスの男と白髪の老人はあらかじめ決められたシナリオを確認する。

 

彼らにとってこれは予想された事態だ。

 

『目標は依然健在、第三新東京市に向かい進行中!』

 

『航空隊の戦力では足止めできません!』

 

「総力戦だ。厚木と入間も全部あげろ!」

 

「出し惜しみは無しだ!なんとしてでも目標を潰せ!」

 

その二人と対照的に戦自の制服を着た将校は大声で叫ぶように各所に指示を出していた。かなり興奮しているようだがその思いを無視するように第3使徒は歩を進める。

 

戦自の部隊は足止めにもならない。障害物として適当に排除されて行っている。

 

「なぜだ!?直撃のはずだっ!」

 

「戦車大隊は壊滅…誘導兵器も砲爆撃もまるで効果無しか…」

 

「駄目だ!この程度の火力では埒があかん!」

 

戦車や戦闘機の砲撃は確かに第3使徒に命中していたが第3使徒はまったく意に介さない。

 

それに比べて戦自の戦力は第3使徒が攻撃する度に確実に数を減らし、消耗するばかりで完全なワンサイドゲームの様相を呈していた。

 

「やはり、ATフィールドか?」

 

「ああ、使徒に対し通常兵器では役に立たんよ」

 

モニターに映る第3使徒はその言葉を証明していた。そして戦自将校達は一つの決断をする。

 

「…わかりました。予定通り発動いたします」

 

 

 

 

 

「おお、戦ってるな。あっ、打ち落とされた。戦っている人には悪いけど、まるで特撮だな」

 

シンジは飄々と言うが、頭の中では整理するのでいっぱいだった。

 

(あの化け物…『魔化魍』の『オロチ』、大型の『ギガンテス』や『サバト』並にでかい。しかも…)

 

シンジは確認している。あの化け物が張っている妙なバリアのようなものを。

 

(通常兵器がまったく役に立たないか。まったく…こんな所に呼び出していったい…ん?)

 

急に車の爆走音が聞こえる。

 

爆走した車は急ブレーキをかけて、助手席側をシンジの目の前にして止まる。

 

すぐにドアが開き、写真の女性が運転席にいる。

 

「乗っ(ドス、バン)…て。はれ?」

 

「初めまして、だ。確か、『葛城ミサト』さんだったな。出迎えご苦労。危ないから早く出せ」

 

「う、うす」

 

どこか反論をさせないシンジの言葉に女性はそのままエンジンを再びかける。

 

「遅れてごめんなさい…いいわけにするつもりはないけど、あそこで電車が停止するのは予想外だったの、しかも緊急事態で情報伝達されなかったからあなたの居場所が分かったのもついさっきなのよ」

 

「まあいいさ。お陰で写真を撮る時間はたっぷりあったし」

 

「写真?」

 

「趣味だよ。で、緊急事態ってのは『アレ』か?」

 

シンジはおもむろに『アレ』を指す。

 

「『アレ』、なんだ?」

 

「あれは使徒よ、人類の敵ってやつ」

 

「使徒?人類の敵?」

 

シンジはミサトの顔に殺意が走るのを見逃さなかった。

 

(なんか恨みでもあんのか?…ん?)

 

「おい、あの使徒って奴をほっぽって戦闘機がどんどん離れていくんだが、なんかすんのか?」

 

「え…?ま、まずいN2が!…シンジ君伏せて…」

 

そう叫んでミサトはシンジをまもるべくおおいかぶさった。次の瞬間、強烈な閃光と共にN2地雷が爆発し衝撃破がおこった。

 

 

 

 

 

 

 

「やった!」

 

閃光の中に第3使徒が消えた。

 

その瞬間UNの将校は勝ちを確信して叫ぶ。町一つを丸々吹き飛ばす火力だ。

 

生きていられるはずがない。

 

「残念ながら君たちの出番はなかったようだな」

 

すべて終わったとばかりに将校達はサングラスと白髪の男に勝ち誇った笑みを向ける。口調が横柄なのは自分たちの最大火力に対する絶対の自信だろう。

 

しかし男達は将校を無視するように無言…

 

『衝撃波来ます』

 

オペレーターの報告と同時にセンサーとメインモニターの映像が消えサンドストームになった。

 

『その後の目標は?』

 

『電波障害のため、確認できません』

 

「あの爆発だ。ケリはついている」

 

将校の声には勝利者の余裕が伺えた。しかし彼らの天下は一分と持たなかったが…さらにオペレーターの報告は続く。

 

『センサー回復します』

 

『爆心地に、エネルギー反応!』

 

「なんだとぉ~っ!」

 

さっきまでの余裕がどこかに吹っ飛んだ将校は信じられない思いでその報告を聞く。信じられないと言うより信じたくないと言った感じだ。

 

『映像回復します』

 

再びメインモニターが回復して映像が映る。そこに映った物は将校達を絶望させるに十分だった。

 

「わ、我々の切り札が…」

 

「なんてことだ…」

 

「化け物め!」

 

そこには多少表面に焦げ目を残して丸く蹲ってはいるが健在な第3使徒の姿があった。

 

致命傷どころか思っていたよりはるかにダメージが少ない。

 

 

 

 

 

 

シンジはひっくり返った車のドアから外に出る。

 

「いたた…まったくなんてサプライズだ。着いたそうそうこの日本でN2爆撃被害に逢うとはな。神様って奴は俺の事が嫌いなのか?」

 

「イタタ…シンジ君大丈夫!?」

 

「大丈夫だ。まったく、ここ確か遷都予定地だろ。なんで今更地図を書き換えるんだ」

 

「そ、それぐらい使徒は倒さなきゃいけないって事よ」

 

「じゃあ…」

 

シンジは指を刺す。

 

「なんで死んでないんだ?あんな威力の爆弾いくらするだよ。高い金払って変えなくていい地図変えただけじゃねぇか」

 

第3使徒はぴんぴんしていた。

 

「くそ、顔が二つになってお得感がでてやがる。コンパチ商品かっての」

 

「わかっていたけど…早く戻らなきゃ。ゴメン!車起こすの手伝って!」

 

「ん、そうだな。ちょっとどいてくれ」

 

「へっ?」

 

シンジは車を起こす為に頑張っていたミサトをどけると、

 

「ふんっ!」

 

ぎぎぎ…ドスンッ!

 

なんと一人で車をひっくり返して、元に戻した。

 

「な、ななな…」

 

「さてと…おい、行かないのか?」

 

「す、凄いわね。シンジ君」

 

「鍛えているからな」

 

と、気を落ち着けながらミサトは運転席に乗ると、車を発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国連軍の人が電話の受話器を置いた。

 

「碇君、本部からの通知だよ。」

 

そう言われ、立ち上がる男。

 

「今から、本作戦の指揮権は君に移った、お手並み拝見させてもらおう。」

 

「だが碇君、君なら勝てるかね。」

 

「ご心配なく、そのためのネルフです。」

 

中指でサングラスの位置を直しながら『碇ゲンドウ』はそう言った。

 

 

 

 

 

 

シンジとミサトは現在地下に向かっていた。ミサトの見事なドライヴィングテクニックの素晴らしい勢いで直通カートレインに突入してすぐのことだ。

 

「シンジ君お父さんからIDカード預かってない?」

 

「これのことか?」

 

シンジはポケットからIDカードを取り出してミサトに見せる。

 

「ありがと。じゃーこれ読んでて」

 

ミサトはシンジからIDカードを受け取ると一冊のパンフレットをシンジに渡した。

 

パンフレットには表紙に『ようこそネルフ江』とでかでかと書かれている。

 

まるで温泉地か観光地の案内が書いてありそうだが、隅にある『極秘』のスタンプがある程度重要書類なのを示している。

 

が…

 

「激しくツッコンでいいか?」

 

「駄目」

 

「極秘なのになんで『ようこそ』なんだ?」

 

「当方はツッコミを一切受け付けません」

 

「造ったのか?わざわざ」

 

「禁則事項です♪」

 

「それはもうちょっと可愛くて若い子がやるべきだ」

 

シュッ、ゴスッ…

 

鈍い音がシンジの頭に直接響く。見事な頬への一撃だった。見えなかった。

 

「ぐっ…」

 

「読んでね♪」

 

「イエッサー」

 

シンジはパンフを開いてゆっくり読み始めた。

 

「シンジ君はお父さんの仕事知ってる?」

 

「知らん」

 

パンプから眼を話さずにシンジは答える。

 

「第一、顔も覚えていない人間の仕事なんて知るわけないだろう」

 

「へっ?そうなの?」

 

「当たり前だ。金だけは送ってはくれているが、それ以外は何もしらねぇよ」

 

「お父さんのこと嫌いなの…?」

 

「それも知らん。まあ、一つ感謝しているのは…」

 

シンジは言葉をとぎり…

 

「まあいい。で、親父の仕事ってのはなんなんだ?」

 

「あ、えっと。『人類を守るための仕事』かな?」

 

「…環境局?このイカれた地球を元に戻そうとでもしてんのか?」

 

ミサトは何かを言い返そうとしたが、ジオフロント内に入った時、シンジが目の色を変えて写真を撮り始めたので、会話は中断された。

 

 

 

 

 

 

 

それから…

 

ネルフ本部通路。シンジは地図を片手に進むミサトの後について歩いていた。

 

シンジはさっきまで写真を撮っていたが、今は撮っていない。

 

さきほどから同じ場所を何度も通っているからだ。

 

前のミサトは同じ通路を何度も通っては地図を見直してる。

 

「おい、迷ったのか?」

 

その言葉にミサトはあわてて振り返り引きつった笑みを浮かべている。

 

「そ、そんなことは~」

 

「あるんだな」

 

「はい、ゴミンね~、まだ配属されたばかりでなれてないのよ~」

 

シンジはため息をついた。

 

いい加減同じ所をグルグル回るのは嫌みたいだ。

 

「こういうときはだれかに連絡を取って迎えにきてもらうのはどうだ?」

 

「そ…そうよね、システムは使うためにあるのよ」

 

そう言って内線に手を伸ばすミサトの後姿を見てシンジは『デパートの迷子の呼び出し』を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

10数分後、エレベーターが開き中から一人の女性が出てきた。

 

エレベーターを待ってたミサトは彼女の不機嫌を隠そうともしない表情に真っ正面から見つめられ一歩後ろに引く。

 

「何やってたの葛城一尉。人手も無ければ時間も無いのよ」

 

「ゴミン!」

 

そう言った後女性はシンジを振り返る。

 

女性は金髪に染めた美人だった。

 

「この子が例の子供ね?」

 

「そうよ。マルドゥック機関から報告のあったサードチルドレン!」

 

その言葉にシンジは訝しげな顔をする。

 

今の会話に聞きなれない単語が出てきたからだ。

 

(サードチルドレン…どういう意味だ。三番目の子供…どうやら、俺がここに呼ばれたのと関係ありそうだな)

 

「初めまして、碇シンジ君。E計画開発責任者の赤木リツコです」

 

「初めまして、碇シンジだ」

 

(E計画…ね。一体どんな計画なんだか)

 

「中学生にしては随分体格良いわね。まるで理想体って感じだわ」

 

確かにシンジの体が14歳にしては体格が良かった。

 

170ちょいの身長と細く引き締まった体が服の上からでもわかる。

 

「鍛えてますから」

 

そう、シンジはある人達の一人からの別れ際のプレゼントで『訓練表』を貰っていた。

 

それは当時のシンジの年齢から始まって、事細かに示している。

 

その訓練表に添えられていた手紙に『俺の三番目の弟子へ』という言葉を見た時は泣きそうになったのを今でも覚えている。

 

それを忠実に守っていると、こんな立派に育ったのだ。

 

筋肉密度なんかもうすごい。

 

「で、この後どこにいくんだ?この国家公務員(仮)の道案内とは違ってあんたの案内は信用できるんだろ」

 

「し、シンジ君ヒドイ」

 

「黙れエセ国家公務員」

 

「更に倍増!?」

 

「もちろんよ。さあ、こっちにきて。見せたいものがあるの」

 

二人はリツコの案内についていく。

 

「で、初号機はどうなの?」

 

パシャッ

 

「B型装備のまま現在冷却中」

 

パシャ

 

「それ、ほんとに動くのぉ~?まだ一度も動いた事無いんでしょう?」

 

パシャ

 

「起動確率は0.000000001%。O9システムとはよく言ったものだわ」

 

パシャ

 

「それって動かないって事?」

 

パシャ

 

「あら失礼ね。0ではなくってよ」

 

パシャ

 

「数字の上ではね。ま、どのみち動きませんでした。じゃもうすまされないわ」

 

「まったくだ。そんな確率の低いもんに頼るのは博打打ちかバカだけだな」

 

パシャ

 

その言葉にリツコはシンジを見る。

 

「ここ、機密機関なんだけど」

 

「堅い事言うな」

 

パシャ

 

改める気はないようだ。

 

「で、俺に何を見せてくれるんだ?写真に取る価値のあるものなんだろうな?」

 

「…少なくとも、今とってる廊下とかよりはね。見たら『フィルム使うんじゃなかった!?』って思うからやめなさい」

 

シンジはそれを聞いて、暫く止まると、カメラを下ろした。

 

「それ程のものならいいな。で、どこなんだそれは?」

 

「ここよ」

 

リツコは目の前の大きめのドアを指す。

 

扉が開くとシンジはわくわくして一番にはいるが…

 

「おい、真っ暗だぞ」

 

「今、照明をつけるわ」

 

灯りがつくと、シンジの目の前には

 

「なっ!!顔…ロボットか!確かに撮る価値があるな!デカしたぞアカギン!」

 

「赤木よ!」

 

シンジは驚いた後、カメラで写真をパシャパシャ採り始めた。

 

「厳密に言うとロボットじゃないわ、人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器・人造人間『エヴァンゲリオン』!我々人類最後の切り札、これはその初号機よ…」

 

「へぇ~、これが親父の仕事か」

 

「そうだ」

 

その声を聞き、声のした方にシンジは振り向く。

 

「久しぶりだなシンジ」

 

「…誰だ?オッサン」

 

コケッ

 

ミサトとリツコはズッこける。

 

「あ、あなたのお父さんよ。話の流れからそうでしょ」

 

「ふん。おいおい、ちょっと待てよ。俺を見てみろ。こう見えても俺は結構ないい男だ」

 

自惚れにも聞こえるが、確かにシンジの中性的な顔立ちでいい男に入る。

 

「そんな俺にあんな髭付き親父の血が混じってるわけないだろ。ましてや顔が似てない」

 

「100%親子よ。なんなら証明書みせましょうか?」

 

リツコのその言葉にシンジは跪いた。

 

「嘘だろ…なんて奴だ。いきなり俺の人生を半分の確率とはいえ、絶望に染めやがった。流石は俺の親父といったところか…」

 

シンジがぶつぶつ言っている間にシンジの父・碇ゲンドウは冷静に

 

「ふん…出撃」

 

「出撃!?零号機は凍結中でしょ!?まさか、初号機を使うつもりなの!?」

 

「他に方法はないわ」

 

「ちょっとレイはまだ動かせないでしょ?パイロットがいないわよ」

 

「さっき届いたわ」

 

「…マジなの?」

 

「碇シンジ君。あなたが乗るのよ」

 

シンジはまだブツブツいっている。どうやら聞いてないようだ。

 

「待ってください指令、レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったのに、今来たばかりのこの子にはとてもムリです!」

 

「座っていればいい。それ以上は望まん」

 

「しかしっ…!」

 

「葛城一尉!」

 

「おいおい、ちょっと待てよ」

 

シンジはゆっくりと立ち上がる。

 

顔色が悪いがどうやら復活したようだ。

 

「随分勝手だな。俺にこんな趣味の悪い紫超人に乗れだと?どうやって動かせってんだよ、髭…お、お、親父」

 

なんとか現実を受け入れたようだ。

 

「お前にしかできないからだ」

 

「『汎用』…なんだろ?他に動かせる人間はいないのか?」

 

「…あなたの他に二人いるわ。でも、一人はドイツ。ここにいるもう一人は…」

 

その時、使徒の攻撃によって本部自体が振動した。

 

「奴め、ここに気づいたか…」

 

そう言ってゲンドウは内線に手を伸ばした。

 

「冬月…レイを起こしてくれ」

 

『使えるかね』

 

「死んでいる訳ではない」

 

『…わかった』

 

ゲンドウ達の会話はこちらにも聞こえた。まるで『聞かせる』かのような大きさだ。

 

「シンジ君、何のためにここに来たの?」

 

「写真撮るため」

 

「悪…へっ?」

 

「だから写真撮る為だよ。遷都予定の第三新東京の写真がとれると思って、あの手紙の書き方も知らない男の誘いに乗った…」

 

シンジが言い切る前に扉が開いた。

 

見るとストレッチヤーに乗せられて一人の少女が運ばれて来る。

 

その少女は体中に包帯を巻かれていて遠目にも重傷だとわかる。

 

「レイ、予備が使えなくなったもう一度だ」

 

「ハイ」

 

レイと呼ばれた少女は痛みに顔をしかめながら体を起こそうとする。

 

蒼銀の髪に赤い瞳、シンジはその顔に見覚えがあった。

 

「あいつは…(ドスン…)ん?」

 

シンジは小さな振動を感じるとすぐにレイに向かって歩き出す。

 

ミサトとリツコが止めるまもなく、

 

グララララッ…!

 

さらに大きな振動が襲った!

 

レイの乗って利うストレッチャーが倒れる!が、

 

「よっと」

 

シンジはレイをタイミングよく抱きとめる。

 

「大丈夫か?しっかし、軽いな。ちゃんとメシ食ってんのか?」

 

「放して…」

 

「嫌だね。結構抱き心地がいい。それに君みたいな可憐で可愛い女の子があんな暗黒変態髭面親父のいう事を聞くのは間違っている。しかもその大怪我でだ」

 

「碇司令が乗れっていってるの。私は…乗る。それが…人形の私の存在理由…ぐぅ…」

 

激痛に顔が歪むレイ。

 

その言葉を聞き、顔を見て、シンジは…

 

「成程…これが俺の『試練』、って奴か」

 

「えっ…?」

 

「まぁ、その前に」

 

シンジはグラグラゆれている天井の罅割れをみる。

 

「次で来るな」

 

シンジはレイを抱えたまま、ストレッチャーを元に戻す。

 

そして、レイをストレッチャーの上に乗せると、ズボンのポケットからある物を取り出す。

 

「本当に使う事があるなんてな。練習しておいてよかったぜ」

 

それをバックルのように腹部につけると、ベルトのようにそれが装着される。

 

そして一枚のカードを出す。

 

「な、何を…するの?」

 

レイはそのベルトから異様な力を感じた。

 

「まぁ見てな…変身!」

 

シンジはカードを装着した『ディケイドライバー』にセットする。

 

《KAMEN RIDE》

 

その時、再び振動がケージを襲う。

 

振動で罅割れていた天井の一部が崩れ、シンジ達の上に落下してきた。

 

《DECADE!》

 

ドゴンッ!バンバンバンッ!

 

二人を襲う瓦礫が赤い冷却用のLCLから紫の手が現れはねとばされ、下から飛ばされるように出てきたビームのようなものが瓦礫を細かく破壊した。

 

『エヴァが動いたぞ…どういう事だ』

 

『右腕の拘束具を引きちぎっていますっ!』

 

「まさか!?ありえないわ!エントリープラグも挿入していないのよ!動くはずないわ!」

 

「インターフェイスもなしに反応している…というより、守ったの?彼を?…いけ…!?な、なに、あれ…」

 

ミサトがシンジ達を違う意味で驚愕しているのをリツコもシンジ達を見る…とリツコも口を開けて驚く。

 

そしてその驚きは伝染する。

 

それにはゲンドウすら目を見開いて驚いていた。

 

驚かせている張本人は、

 

「気が合うな、紫超人。やっぱり可愛い女の子を守りたいと思うのは種族を超えるもんだ」

 

と暢気に初号機に話しかけていた。

 

「あ、あなた…」

 

「ん?」

 

「あなた…誰?」

 

「俺か?俺は…」

 

マゼンタと黒の鎧のようなものを全身に纏い、緑の瞳でレイを見つめながら、

 

「俺は…通りすがりの、『仮面ライダー』だ。覚えとけ」

 

照れ臭そうに、憧れのセリフをシンジ…『破壊の継承者(ディケイド)』は言った。



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第弐話/超変身! ~『救い』の意味~

「俺は…通りすがりの、『仮面ライダー』だ。覚えとけ」

 

彼は照れ臭そうにそう言った…

 

 

 

周りに静寂が襲う。

 

誰もが突如出現した仮面の存在に驚きと警戒を向けている。

 

保安部の者達は装備を整えて突入の準備もしていた。

 

そんな中、この原因を創っている本人は、レイとストレッチャーを安全な所に移動させて、ストレッチャーの上にレイを寝かせる。

 

「まあ、寝てろ。後でその怪我治してやるから」

 

「え?どういう…」

 

ディケイド(シンジ)』はレイの言葉に止まらず、そのまま初号機の前に立ち止まる。

 

「おい紫超人。確かエヴァ…ヴァ…まあエヴァでいいか。どうやら俺の事も助けてくれたみたいだが、俺の事がそんなに好きなのか?」

 

好き勝手初号機に話しかけながら頭を人差し指でコツコツ叩く。

 

「モテル男はつらいな。どうやらお前は俺にパイロットになって欲しいみたいだな。いいぜ。今、俺の『試練』が判ったところだ。そこで呆けている奴等に言って、お前に乗ってやるさ。タダな…」

 

ディケイドは左腰の『ライドブッカー』からブランク状態のカードを数枚取り出す。

 

「お前もちょっとは力を貸すって言う証を見せろ」

 

それをエヴァに向かって投げると、カードは空中で止まり、はっきりとした絵が浮かび、ディケイドに帰ってくる。

 

そのカードを見て

 

「ふ~ん、なるほどね。大体判ったな」

 

ディケイドはライドブッカーにカードを直すと、ミサトとリツコに近づく。

 

「おいおい、いつまで呆けてんだ。俺が碇シンジって事くらい声でわかるだろ」

 

「あ、あなた…その姿は…」

 

「これか、まあ、後で説明するよ。まあこの姿の時はディケイドって認識しておいてくれ」

 

「ディ、ディケイド?」

 

「そう、仮面ライダーさ」

 

「かめん…?何ソレ?」

 

「おい、クソ親父」

 

シンジはライドブッカーからカードを取り出し、ディケイドライバーにセットする。

 

《ATTACK RIDE [BLAST]!》

 

音声が鳴るとライドブッカーが銃のような形をとる。

 

バンバンバンバンバンッ!

 

『!?』

 

ライドブッカー・ガンモードの銃口をゲンドウに向け、引き金を引いた。

 

弾丸は強化ガラスを貫き、総てゲンドウの横擦れ擦れを掠めていた。

 

「これはそこの女の子を無理やり働かせようとした罰だ。安いもんだろ」

 

と、すぐにブックモードに戻して、左腰に再び装着する。

 

動じないゲンドウを見て、

 

「ち、まったく動揺しねぇからやった意味ないな…さてと、喜べ。このエヴァとか言う紫超人に乗ってやるぞ。早く用意しろよ。ああ、乗ってやるんだからバイト代とかよこせよ」

 

「あ、アンタみたいな得体の知れないのを乗せられると思って…!」

 

「おいおい、乗らなきゃヤバイんだろ?バイト代払って乗ってもらうのとこのまま全滅っていうのどっちがいいんだ?それに得体の知れないのってのはなんだ?ちゃんと名乗ったぜ。仮面ライダーディケイドってな」

 

ミサトの反論を遠慮無しに返すディケイド。

 

「どうなんだ?アカギン」

 

「それはやめて頂戴…その姿である事は後でじっくり説明してもらうとして、乗ってもらうのはこちらからお願いするわ」

 

「リツコ!?」

 

「ミサトは黙ってて。バイト代ってのはちょっと…」

 

「問題ないだろ?さっき百億くらいする戦闘機バカスカ落ちてたし。問題ないよな」

 

ディケイドはゲンドウに振り向く。ゲンドウは無表情で

 

「問題ない」

 

「…だそうだ。つまり奮発しろってことだ。それじゃあ」

 

都合よく解釈してから、ディケイドは首を廻して、

 

「準備を頼むぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『冷却終了』

 

『右腕の再固定終了』

 

『ゲージ内全てドッキング位置』

 

『停止信号プラグ。排出終了』

 

『了解。エントリープラグ挿入』

 

『プラグ固定終了』

 

『第一次接続開始』

 

発令所では初号期の発進準備が進んでいた。メインモニターにはエントリープラグの中のディケイドが映っている。

 

「まったく、なんなのあの子…あの姿は一体…」

 

「私にもわからないわ。なんで只の中学生があんなオーバーテクノロジーを持っているのかしら…」

 

「何か情報ないの?」

 

「報告では『優秀』な中学2年生ってことくらいよ。あ、そういえば…」

 

「そういえば?」

 

「彼、過去に1年くらい行方不明になっているのよ。あの謎のままになっている大量行方不明事件の時に…」

 

『おい、まだかアカギン、ミサリン』

 

『それはやめて頂戴!』

 

『おお、シンクロ抜群だな。で、この筒みたいなのに入ったのはいいんだが、これからどうするんだ?』

 

「いまからわかるわ」

 

『エントリープラグ、注水』

 

ディケイドの足下から黄色い液体が注水され、どんどん量が増えていった。

 

『なんだこりゃ!おい!この気色悪い水はなんだ!?』

 

「それはLCLと言って肺に取り込めば呼吸ができるようになるわ」

 

『血みたいな匂いがするぞ!息が詰まる!』

 

「我慢しなさい男の子でしょう!?」

 

『性差別反対!』

 

「うっさい!お望みなら後で逆セクハラ地獄よ!」

 

 

 

とうとう頭部までLCLが来ると、

 

「うぇ、マジィ!」

 

とディケイドは当たり前の感想をいった。

 

(まったく、なんてこった。こんな不味いもん…ん?)

 

ディケイドは違和感に気付く。

 

(なんだろ、この感じ…この感じ…『僕』…知ってる)

 

そう、この感じは…

 

(そうだ、『真夜』さんみたいな感じだ)

 

ディケイドは『友達』のお母さんを思い出す。

 

(母親って…こんな感じかな…)

 

ディケイド…シンジはその感覚に、身を総て委ねた。

 

「主電源接続」

 

「全回路動力伝達」

 

「第2次コンタクト開始」

 

「A10神経接続異常なし」

 

「初期コンタクト全て異常なし」

 

「双方向回線開きます」

 

「せ、先輩!」

 

「どうしたのマヤ、何か問題が起こったの?」

 

メインオペレーターの一人、伊吹マヤが大声であわて、発令所全体に緊張が走る。

 

「シ、シンクロ率が…」

 

「どうなってるの?正確に報告しなさい!」

 

「は、はい…シンクロ率99.89%です」

 

一瞬の沈黙が発令所を通り、次に最大級の驚きに包まれる。

 

はっきり言って異常な数値だ。

 

「間違いないの?マヤ…」

 

「は、はい!何度測っても同じです!何ですこれ!?実験がバカにされているみたいです!」

 

「初めての搭乗で理論限界値まで…?」

 

リツコはモニターの数字を信じられない思いで見つめる。

 

「碇シンジ…ディケイド…何者なの?彼は」

 

「いいじゃない」

 

リツコの空気を読まずにミサトは

 

「最初ッからクライマックスのように大口叩いてるんだから。考えるのは生き残ってからにしましょう。初号機発進位置ヘ」

 

ミサトの指示により発令所があわただしくなる。

 

いろいろと疑問はあるがミサトの言う通りこの場をどうにかしてまず生き残らなければそれを解消するすべはない。

 

『発進準備!』

 

『第一ロックボルト外せ』

 

『解除確認』

 

『アンビリカルブリッジ移動開始』

 

『第2ロックボルト外せ』

 

『第1拘束具を除去』

 

『同じく第二拘束具を除去』

 

『1番から15番までの安全装置を解除』

 

『内部電源充電完了』

 

『内部用コンセント異常なし』

 

『了解。エヴァ初号機射出口へ』

 

『進路クリア。オールグリーン』

 

「発進準備完了」

 

リツコの言葉を最後に発進の準備は完了した。

 

「了解」

 

ミサトはそう言ってうなづくと背後を振り返った。その視線の先にいるのはゲンドウ…

 

「よろしいですね?」

 

「無論だ、使徒を倒さぬ限り我々に未来はない」

 

(結構色んな意味含めてんだけど…)

 

「エヴァ初号機発進!」

 

その掛け声と共に初号機は地上に射出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、勇んで出たのはいいが、目の前ってのはないんじゃないか?もっとこう、遠くから近づいてとか…」

 

ディケイドが見ているモニタには第3使徒が映っている。

 

自分の乗っている初号機の目の前にいるのだろう。

 

「まさか、さっきの銃撃のお返しか?面通りの陰険だな」

 

『無駄口叩かないで!』

 

通信からミサトの怒鳴り声が聞こえてくる。

 

『シンジ君まずは歩いてみて』

 

「おいおい、そんな生まれたての小鹿ちゃんじゃないんだから」

 

ディケイドはライドブッカーからカードを取り出す。

 

「とりあえず、武器は必要だよな。まずは…」

 

ディケイドライバーにセット。

 

《ATTACK RIDE [PALETTE GUN]》

 

するとエヴァの手に拳銃が現れる。

 

「銃だな」

 

『ちょ、ちょ、ちょっと待って!今どこから出したの!?』

 

「さあ、多分武器庫から一丁これが消えてるんじゃないか?」

 

ディケイドはモニタ越しに第3使徒を睨む。

 

「おい、間抜け面。今からお前を『破壊』する。悪く思うなよ…」

 

ディケイドは少しだけ声を静めて…

 

「俺は…『破壊者』だからな…」

 

初号機はパレットガンの引き金を連続で引く。

 

銃弾は一発の撃ち洩らしもなく第3使徒に命中するが、

 

「おいおい、全然気かねぇじゃねぇか」

 

まったくの無傷だ。

 

「しかたねぇ、今度は…」

 

もう一枚カードを出して、セット。

 

《ATTACK RIDE [PK-01]》

 

今度はナイフが現れる。

 

「まったく、もうちょっといいのないのか?まあ、いいか。そりゃ!」

 

そのナイフを第3使徒に向かって思いっきり投げると、エヴァが走り出す。

 

ナイフに気をとられた第3使徒は、

 

「そりゃ!」

 

エヴァの膝蹴りをまともに喰らった。

 

「うりゃ!」

 

今度は顔面にパンチ。

 

第3使徒は顔が半分へこむが、カウンターを狙ってか、手から光の槍を打ち出す。

 

「甘いっての」

 

それを絶妙なタイミングでかわしてスタンプキック…まあ893キックである。

 

第3使徒が蹴り飛ぶ。

 

「ははっ!これ面白いな。本当に思い通りに動きやがる。やほー」

 

と、くるっとターンしてポーズを決める。

 

「余裕綽々って奴だな」

 

『あ、あんたね!それ高いのよ!判る!おもちゃじゃないの!』

 

「いいだろ、ちゃんと目的果たしてるんだから」

 

第3使徒はすぐに立ち上がる。すでにディケイドには必勝のルートが見えていた。

 

「さあて、止めと…ん?」

 

その時、ディケイドの瞳…『DIMENSION VISION』に何かが写る。

 

この瞳は人間とは比べ物にならないほど優れており、その気なら数十キロ先の動く物体すら捕らえる事ができる。

 

しかも、ナイトヴィジョン機能も付いてるから、夜でもバッチシだ。

 

 

「なっ!?」

 

ディケイドは突然驚きの声を上げる。

 

その隙を狙って第3使徒は右手から光の槍を放つ。

 

「くっ、…がぁっ!」

 

それを止めようとした左掌を貫かれる初号機。しかし、右手でそれを捕まえる。

 

初号機の掌が煙を上げる。

 

「くそ!アチィ!」

 

熱さがエヴァを通して感じるが、ディケイドは放さない。しかし、第3使徒は左手を初号機の腹部に当て、

 

「おいおい、ちょっと待て…」

 

光の槍を打ち出した。

 

「ガァッ!」

 

それを、杭打ち機(パイルドライバー)のように何度も撃ち出す。

 

「グエッ!くそ!痛みが、モロニ、ガハッ!」

 

第3使徒は光の槍を初号機の腹部に撃ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうして?」

 

ミサトのつぶやきはその場にいる者達の総意だった。

 

メインモニターには第3使徒の槍に腹部を刺し貫かれている初号機が映し出されている。

 

さっきまでの初号機優位の展開が一変している。

 

「さっきまで余裕綽々だったのに!?」

 

「ミサト、何が起こったの?」

 

状況が理解できないリツコがミサトに聞いた。

 

戦闘に関してはミサトの方が専門家だ。

 

しかし、ミサトも何がなにやら分からず呆然としている。

 

「わ、わからないわ。彼は確実に使徒の動きを読んでいた。でもなぜか動揺して…今だってワザと腹部を撃たれているような…」

 

「じゃあ、彼は今、自分の意思で攻撃を受けているというの!?」

 

「だって、そうとしか思えないわよ!」

 

「こ、このままじゃパイロットの腹部が持ちません。シンクロ率が高い分!」

 

「マヤ!パイロット側のフィードバックを落として!」

 

「はい!」

 

ディケイド…シンジのシンクロ率は98.99%。これはエヴァを本当の手足のように操れるのと一緒だ。

 

しかし、その反面、受けた感覚も同じように感じてしまう。

 

そう、今受けているダメージでさえも

 

「ちょっとシンジ君!何をしているのよ!そのままじゃ大変なことになるわよ!」

 

『もう、なって、んよ。お、俺の、斜め、後ろのビルとビルの間、見て、グアァ!』

 

「!?モニターに出せる?」

 

「やってみます」

 

映し出されたモニターを見た全員が驚いた。

 

「お、女の子!?」

 

「まさか逃げ遅れ!?」

 

『この姿の、時の、目、は特別でね。よく見える。早く助けろ、ぐっ』

 

初号機の背後のビルの下にうずくまって怯えている女の子が映っていた。

 

腰が抜けているのか恐怖で動けないのか座った状態で初号機を見上げている。

 

ディケイドは女の子を守るためにあえて初号機で第3使徒の攻撃を受けているのだ。

 

『ガハ…マジ、はやく…』

 

ミサトはすぐに指令を出す。

 

「すぐに保安部に…」

 

「待て」

 

「…え?」

 

ミサトの指示を遮ったのはゲンドウだった。いつものポーズのままでじっとモニターのシンジを見ている。

 

「シンジ。その少女は気にせず使徒殲滅に集中しろ。くだらないものに惑わされるな」

 

それを聞いた全員が驚いた。

 

『なん…だと…』

 

「退避勧告は出ている。そこにいるのは事故だ。お前はお前のやることをやれ」

 

『この…子を…見捨てろ…と…?』

 

「お前のする事は、速やかに使徒を殲滅すること。そして…人類を全てを守るには、多少の犠牲はつきものだ」

 

『ふ…』

 

ディケイドの雰囲気が変わる。

 

『ふざけるな…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

それは碇シンジの記憶。

 

人攫いにあったように連れて行かれ最初の異世界での出来事。

 

そこでは未確認生命体・グロンギという存在と戦う青年がいた。

 

彼は警察の刑事や周りの人々と協力してグロンギと戦っていた。

 

そんな彼に出会い、シンジは彼をカッコいいと思った。

 

怖い化け物を倒せる力…弱虫で何もない自分には絶対に手に入れられない力を持つ『正義の味方(HERO)』をカッコいいと思っていた。

 

ある日、彼が士と一緒にグロンギを倒して『光写真館』に帰ってくると、

 

「おかえり!今日もカッコよかったねお兄ちゃん」

 

「あ、ああ。ありがとう、シンジ」

 

「お兄ちゃん?どうしたの?」

 

暗い顔の『HERO』をしていた。

 

「あ!わかった新聞やテレビでしょ。あいつらヒドイよね。助けてもらったのにお兄ちゃんの事を化け物だなんて…」

 

「ゴメン!ちょっと出かけなくちゃならないんだ。また後で遊ぼう!じゃ、行ってきます!」

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

そういって『HERO』は出て行った。

 

「どうしたんだろ…?」

 

「シンジ」

 

そんなシンジの後ろから声がかけられる。

 

「士お兄ちゃん」

 

「どうだ?ついていってみるか?」

 

「え?」

 

そのまま士のバイクに乗せられて『HERO』の後をついて行く。

 

すると、『HERO』は一つの家を影から見ていた。

 

その家では葬式の最中で、家族と思われる人達が泣いていた。

 

「お兄ちゃん?」

 

「!?シンジ!?どうして…」

 

「悪い。俺が連れてきた」

 

「士…」

 

「お兄ちゃん。どうしたの」

 

『HERO』は少し黙ってから…

 

「俺、助けられなかったんだ。あの人達の大切な人を…」

 

そう、今回のグロンギの犠牲者の中にあの家の家族がいた。

 

「…なんでお兄ちゃんが泣くの?お兄ちゃんカッコよく化け物を倒したじゃない」

 

「倒すだけじゃダメなんだ…助けなくちゃ…」

 

「なんでだよ!いいじゃないか!倒すだけで!」

 

『HERO』の言葉にシンジは関を斬った様に大声を上げる。

 

まるで溜まっていた物が爆発したように。

 

「みんな!みんなお兄ちゃんの事悪く言ってるんだよ!同じ化け物だって!すぐに本性を出すって!なんでそんな奴等の為にお兄ちゃんがつらい思いをするの!」

 

『HERO』は真剣な顔でシンジの言葉を聞く。

 

「あの人達が泣いているからだよ。大切な人を亡くして泣いている。わかるだろ?」

 

「わかんないよ!だって…だって…僕には…」

 

シンジの目から涙が溢れてくる。

 

(僕には泣いてくれる人なんて…)

 

ポカッ!

 

「いたっ!」

 

ムギュッ!

 

「いひゃ!」

 

士がシンジの頭を軽く殴り、『HERO』がシンジの両頬を抓る。

 

「ほ、ほにひひゃん?」

 

「俺は泣くよ」

 

「ふぇ?」

 

「俺はシンジがもし死んじゃったら泣くよ」

 

そういいながら『HERO』はシンジを離す。

 

「お、お兄ちゃんが…?」

 

「俺だけじゃない。士だって、夏美ちゃんにおじいちゃん、一条さんに桜子さんにみのり、ジャンやおやっさんと奈々ちゃんだって、みんなみんな泣いちゃうよ」

 

「う、うそ…だ…」

 

「嘘なもんか。だって俺達、大切な友達じゃないか」

 

「いったろ。もうお前は一人じゃないってな」

 

その二人の言葉にシンジは大声で泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

「命が…どれだけ大事なのかわかってるのか…」

 

ディケイドの怒りが頂点に達する。

 

「何が人類を…守る為の…犠牲だ…」

 

それは『あの人』を侮辱する最大級の理由だ。

 

『あの人』の笑顔をなじる言葉だ。

 

「こんな奴を倒す為に…誰かが泣くなんて…許されるものか…」

 

『こんなヤツらの為に、これ以上誰かの涙を見たく無い!』

 

 

 

ライドブッカーから、数枚のカードが飛び出す。

 

そのカードに描かれているのは古代の戦士。

 

 

 

自分は教わった。人を救うのは、世界を守るのは、そんな免罪符のような理由の為じゃない。

 

ただ…誰かが大切な人を亡くして流す、その『涙』を止める為に。

 

それを自分に…何も無かった碇シンジに教えてくれたのは…

 

「手を伸ばせば、救えるモノを救わない人間が…誰かを助ける事はできなんだ!」

 

『みんなに笑顔でいてほしいんです!』

 

五代雄介。

 

「そこで見ておけ!」

 

『だから、見てて下さい!』

 

「『僕』の…」

 

『オレの…』

 

ディケイドライバーにカードをセット。

 

「超・変身!」

 

『変身!!』

 

《KAMEN RIDE》

 

またの名を…

 

《KUUGA!》

 

仮面ライダー・クウガ!



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第参話/超絶 ~破壊神の胎動~

「綺麗事だからこそ、現実にしたいじゃない。ホントは綺麗事が一番良いんだもん」

『仮面ライダークウガ 第41話/抑制 五代雄介』



「超・変身!」

 

《KAMEN RIDE 『KUUGA』!》

 

ディケイドライバーの電子音と共にディケイドの姿が変わっていく。最初は胴、次に腕、足…そして最後に仮面が変わる。

 

その姿は太古の力を受け継いだ戦士の姿。何かを殴る為に拳を握る事も大嫌いなのに、人を護る力を手に入れた為、戦い続けた戦士の姿。

 

シンジが出会った二人目のHERO…『仮面ライダークウガ』の姿だった。

 

D(ディケイド)=クウガは一枚のカードを取り出し、ディケイドライバーにセットする。

 

《ATTACK RIDE 『GOURAM』!》

 

それに合わせて、D=クウガは初号機を操縦し、第3使徒の光のパイルを叩き折り、自分から離れた所で蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女はビルの隙間で恐怖に震えていた。誰かに助けを求めたくても誰もいない。いつも自分を助けてくれる兄もいない。

 

(誰か、助けて…助けてよぉ…お兄ちゃん…)

 

そこで何か大きいものが倒れる音が響く。

 

「ひぃっ!」

 

少女はこれから来るであろう何かに身を屈めた…が、何も起こらなかった。

 

少女にもわかる。自分に何かが襲うはずだった。突然の大きな音共に大きな車も吹き飛んでいる。

 

自分なんか簡単に死んでしまうことぐらいわかる。それでも、自分には何も起こらなかった。

 

少女は恐る恐る目を開ける。

 

「えっ…」

 

少女の目の前にいたのは…

 

「クワガタ…さん?」

 

『………』

 

少女を護るように自分よりも大きな鋼鉄のクワガタが存在した。

 

「クワガタさんが…守ってくれたの?」

 

鋼鉄のクワガタは何も答えない。鋼鉄のクワガタは自分の体を地面に付ける。

 

「乗るの?」

 

少女は答えない鋼鉄のクワガタの背中を見る。

 

「…ありがとう、クワガタさん!」

 

少女は鋼鉄のクワガタの背にしがみつく。少女が背中に乗ると同時に、鋼鉄のクワガタの眼が輝く。自分の周りに光の保護壁を張り、そのまま空に飛んでいった。

 

古代人・リントが創りあげた意思を持つ『馬の鎧・ゴウラム』。与えられた使命は太古の昔より唯一つ…その使命をゴウラムは守り続ける。

 

例えそれが主以外の命でも、別の世界でも…それはその使命を違える理由にはならない。

 

人を護り抜く…それが『真なる主』と己の誓いと誇り…そして『やりたい事』なのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディ、ディケイドが…」

 

「さらに変身した!?」

 

ミサトとリツコはその変身に驚愕する。

 

変身する事自体デタラメなのに、さらに変身したのだから。

 

「マヤ!初号機への影響は!?」

 

まず第一に確認する事はそれだ。もし初号機になんらかしらの影響があれば一大事になるかもしれない。

 

「初号機に異常事態の反応はありません!ただ…」

 

「ただ!?」

 

「初号機の能力値が先程と微妙に変わっているんです!」

 

「バカな!それはいつ観測したの!?」

 

「ディケイドが変身した直後の戦闘です!」

 

先程とは違い、遠慮なく第3使徒を痛めつけている初号機…

 

そして戦闘の素人でもわかる。初号機の戦い方が先程とは一変していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、せっかく変身(カメンライド)したんだ。色々とためさせてもらうよ」

 

実はシンジはディケイドには何度か変身した事があるが、カメンライドをしたのは初めてだった。

 

いつか来るかもしれない『運命』の為に、シンジはディケイドになって訓練をしたが、カメンライドはしなかった。それはただの感傷だったのかもしれない。

 

ディケイドになった時も思っていた。そう易々と彼らの力を使っていいのかと思っていた。

 

でも、今は違う。全力で彼らの…HERO達の力を使う。人を救う…それは、HERO達と自分の最初にして最大の目的なのだから!

 

「まずは…これだ!」

 

D=クウガはカードをディケイドライバーに再びセットする。

 

《FORM RIDE『KUUGA DRAGON』!》

 

 

 

『邪悪なるものあればその技を無に帰し、流水のごとく邪悪をなぎ払う戦士あり』

 

 

 

突如、D=クウガの頭の中にその言葉が浮かび上がる。D=クウガが青く変化していく。

 

D=クウガは『なぎ払うモノ』をイメージする。すると初号機の手にある第3使徒から叩き追ったパイルが、長い棒状の武器・『ドラゴンロッド』に変化する。

 

「ハァァァァァァァッ!」

 

初号機はドラゴンロッドを回転させ、そのまま第3使徒を滅多打ちにする。

 

第3使徒は反撃に眼から光線を発射する。

 

「ハッ!」

 

初号機は大きくジャンプする。そのジャンプは初号機の能力値を遥かに超えたものだった。

 

「次いくぞ!」

 

再びカードをセット!

 

《FORM RIDE『KUUGA PEGASUS』!》

 

 

 

『邪悪なるものあらばその姿を彼方より知りて、疾風のごとく邪悪を射ぬく戦士あり』

 

 

 

D=クウガが緑色の形態に変化する。

 

初号機は着地すると先程の放り投げたパレットガンを拾う。D=クウガはすぐに『射抜くモノ』をイメージする。。

 

するとパレットガンの形状が変わり、『ペガサスボウガン』に変化。

 

初号機はペガサスボウガンの引き金を数回引く。ペガサスボウガンの光の矢が第3使徒に向かう。

 

第3使徒はATフィールドを張り、防御するが

 

ガスッ!

 

光の矢はATフィールドを貫き、正確に両手両足全ての間接部分を狙い、第3使徒の動きを封じる。

 

「くっ…」

 

D=クウガは少し頭を振る。

 

「くそ、このフォームは疲れる。『超感覚』はデフォルトか!よし次はこれだ」

 

《FORM RIDE『KUUGA TITAN』!》

 

 

 

『邪悪なるものあらば鋼の鎧を身につけ、地割れのごとく邪悪を切り裂く戦士あり』

 

 

 

D=クウガの体が変化する。今度は今までとは違い重厚な鎧を纏った紫の戦士。

 

初号機はナイフを拾う。D=クウガは『切り裂くモノ』をイメージするとそのナイフは大きな剣・『タイタンソード』に変わる。

 

初号機はタイタンソードを持って第3使徒に走る。

 

第3使徒はペガサスボウガンの矢で間接を捕らえられている為に動けないが、何度も光線を発射する。

 

しかし、初号機は光線をものともせずに第3使徒に向かってゆく。

 

そして、動けない第3使徒を、野球のバットのようにタイタンソードを振り抜き

 

ドガシャッ!

 

斬り裂くと同時に、吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

D=クウガが初号機で戦っている時、司令部は慌しかった。

 

「何が起こっているのリツコ」

 

「初号機の能力が変化していっている。これがあの子の力だというの!?」

 

赤木リツコは戦慄していた。

 

ディケイドが変身したのも驚いたが、あの変身した姿をベースとした変身もまた驚くべきものだった。

 

その変身に合わせて初号機の身体能力がガラリと変化しているのだ。シンクロとATフィールドによる影響だろうか?しかし初号機にあんな能力はない。

 

それに…あんなに頻繁に変身されると、正確なデータが取れない。

 

「ディケイド…いえ、碇シンジ。彼はいったい…」

 

そして碇ゲンドウは独り言を呟く。

 

「…まさか…『あの男』が言っていた…死海文書に記述されている『破壊の使者』…」

 

 

 

 

 

 

「まだ生きているなんて凄いな。いい加減決めさせてもらうぜ」

 

《FORM RIDE『KUUGA MIGHTY』!》

 

 

 

『邪悪なる者あらば希望の霊石を身に付け、炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり』

 

 

 

D=クウガは元の赤い戦士に戻る。

 

「これで最後だ」

 

D=クウガは光り輝く『クウガの紋章』が描かれたカードを手に取り、ディケイドライバーにセットする。

 

《FINAL ATTACK RIDE KU・KU・KU・KUUGA》

 

初号機の右足が赤く輝く。

 

「ハァッ!」

 

初号機は走り、勢いよくジャンプする。そしてそのまま空中回転を加え、

 

ガズンッ!

 

第3使徒のコアに必殺技・マイティキックを叩き込む。

 

第3使徒は派手に吹き飛ぶ。第3使徒は地面に苦しみのた打ち回る。見るとコアの上にクウガの紋章が浮かび上がっている。

 

ドパァア…

 

第3使徒は苦しみながら、全身から血を撒き散らし、十字架状の光を上げて第3使徒は消滅した。

 

「ふう…」

 

D=クウガはディケイドに戻る。

 

「これで仕事終わりって、ところか…」

 

ディケイドは一枚のカードを見る。そのカードに描かれているのは仮面ライダークウガ。

 

「『僕』は『僕』の試練を超える…あなたのように…」

 

(そう…あなたが本当の『伝説』を…超えたように…)

 

シンジは拳を握り、親指を立てて、空に…遥か遠くの世界にいる『究極の闇』を『優しい光』に変えた、あの人に誓った。

 

 

 

 

 

 

一人の男が初号機を見ている。

 

全身を黒いレザーコートとレザーパンツと全身を黒い服と銀細工で統一した着ていている美麗な男…

 

「『破壊神』が動き始めたか…」

 

男は笑みを浮かべる。その笑みは怪しく、美しく、そしてとても『無邪気』だった。

 

「僕も進めてきた『計画』を行うとしよう」

 

男は初号機に背を向ける。

 

「…君がこの『世界』をどう『破壊』するのか本当に楽しみだ…」

 

男は本当に楽しそうな笑みを浮かべ歩き出した。

 

カコーン…カコーン…

 

そして、突如現れたオーロラの中へ消えていった。<< 前の話 次の話 >> 目次

 

 




仮面ライダークウガ=五代雄介。

凄まじき戦士の伝説を超えた仮面ライダー。


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第肆話/『剣』の力、暗躍する『闇』

「保安部、総員戦闘配備完了!」

 

「ターゲットはサードチルドレン・碇シンジ!コード・『ディケイド』!」

 

「ディケイドに何らかの不振な動きがあった場合すぐに鎮圧・拘束を許可します!」

 

リツコに命令された保安部の準備が整う。

 

全員が最新装備をしており、ちょっとした戦闘もできるほどだ。

 

「ちょ、ちょっとリツコ!?いくらなんでも…」

 

「シンジ君の力がどれほどのものかわからない以上、できる対応は全てさせてもらうわ。あのディケイドの力…説明しろって言っても簡単に説明するわけがない。その為にもあの力に対抗できるようにしないと」

 

「そりゃそうだけど、この人数は…」

 

保安部のほとんどの人間を動員している。

 

「他にもどんな力を隠しているかしれないけど、これだけの人数と装備ならディケイド…シンジ君も相手にできないでしょう」

 

リツコはニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

「てな事になってんだろうな」

 

いくらなんでもやり過ぎたとディケイドは思った。父親の言葉に怒りを覚えたとはいえ、ディケイド自体の力で戦えばよかったかもしれない。

 

(まあ、やってしまったものは仕方ない。世の中前向き前向き…どうしようか?)

 

ディケイドはプラグ内を見渡し、

 

「仕方ない…」

 

ディケイドは一枚のカードを取り出してセットする。

 

《ATTACK RIDE 『BLACK OUT』》

 

すると、ディケイドの体を中心に暗い闇…『暗幕』が広がる。

 

「よし、これで向こうからは見えない」

 

(流石にまだ他の『絆』は見られない方がいいからな)

 

シンジはさらに2枚カードを出す。

 

「あんまりこういう事には使いたくないんだがな…まあ、仕方ないか…」

 

シンジは溜息をついてカードをセットした。

 

《KAMEN RIDE…》

 

 

 

 

 

『エントリープラグ、開きます』

 

マヤの声にミサトとリツコ、そしてその場にいた局員全てが身を引き締める。

 

(こちらは準備万端…正体を明かしてもらうわよ)

 

ドサッ…

 

「えっ?」

 

ドササササササッ!

 

「な、なに!?」

 

「どうしたの!?」

 

突然武器を持った保安部の人間が倒れていく。近くにいた者を見ると武器まで破壊されていた。

 

「い、いったいナニが…」

 

「俺の仕業さ、ミサリン」

 

『!?』

 

ミサトとリツコは振り向く。

 

そこにはまだエントリープラグから出てないはずの、ディケイドがいた。

 

「い、いつのまに!?」

 

「いいだろ別に。しかし酷いな。思っていたのより過激な人数と装備を用意しやがって。取りあえず全員ノしといたぞ」

 

ミサトとリツコはたじろぐ。

 

(まずい!今ここで命を握られているのは私達だ!?)

 

握るつもりだった主導権をこちらが握られてしまった。ミサトとリツコは顔をしかめさせるが、

 

ガチャッ

 

ディケイドはベルトを外して、シンジに戻った。

 

 

「え?」

 

「さあ、お話しようぜ。茶と菓子くらいだせよ」

 

 

 

 

 

 

シンジが案内された部屋で呑気に出された和茶菓子を堪能した後、緑茶をまったりと堪能しながら自分のトイカメラを弄っていると、部屋にミサトとリツコ、そして初老の男が入ってきた。

 

「誰だアンタ?」

 

「碇シンジ君だね。私の名は冬月コウゾウ、ネルフの副司令の地位に就いているものだ」

 

「あのマダオ(まるでダメなオヤジ)のかわりか?一発殴ってやろうと思ったのにな」

 

「だから私が進んで来たのだよ」

 

冬月は溜息を吐く。

 

「フォローも大変だな」

 

「ならば話はスムーズに進めてくれると助かるね」

 

「善処するさ」

 

そういって3人は椅子に座る。

 

「それでは碇シンジ君」

 

こうして碇シンジとネルフとの交渉が始まった。

 

 

 

ネルフ側の求めている事は、今後の使徒との戦闘の為にエヴァに乗る事と『ディケイド』の情報を開示することだった。

 

「なるほど、大体わかった」

 

そういってシンジは、まずエヴァに乗って使徒と戦う方のシンジ側の条件を提示した。

 

「俺の条件は…そうだな、まず俺を正式なネルフの所属としないこと」

 

「所属にしない?どうして?」

 

「はっきり言うと俺はあんた等の事を信用していない。特にあの親父に関してはな。あんな体がリンクするロボットに乗ってるんだ。後で人体実験にされそうになって逃げれなかったら困るからな」

 

「そ、そんな事する訳ないでしょ!」

 

ミサトが否定するが、

 

「単なる例えだ。まあ、パートタイマー、アルバイト…俺の事は雇っておいてくれ」

 

「あなたはバイト感覚で使徒と戦うつもり?」

 

「戦って勝てばいいだろ。まあ、それに基本的にはそちらの指示に従うさ。ただ俺は『今日みたいな事』は絶対に従いたくないんでな」

 

3人は眉を顰める。今日みたいな事…つまり、あの少女の件だろう。

 

先程確認したが、ディケイドが別の形態に『変身』した後、少女にクワガタムシの飛行物体が現れ、少女を連れてどこかに行ってしまったのを、録画モニターで確認している。

 

先程確認すると、少女は家族の下に戻っていたと報告があった。

 

あれはディケイドが呼んだ未知の存在なのだろう。そうじゃないと、あんな動力源も解らないような物体がバリアを張って空を飛ぶなどありえない。

 

「雇用の条件はそれだけだ。どうだ?」

 

「わかった。認めよう」

 

「いいんですか?副司令」

 

「ただでさえ、パイロットは少ないんだ。条件を受け入れるしかあるまい」

 

冬月はシニカルに笑って。

 

「ただしバイトなんだ。保険と労災は出さんぞ」

 

「そりゃ残念。じゃあ次に雇用の待遇について話し合おう」

 

「待遇?」

 

「もちろん、さっきのは『条件』だ。次のは『待遇』。まさかこれから危ない事をさせるのにあれだけですまそうとしてるわけじゃないだろうな?」

 

シンジはニヤリと笑う。

 

「まず、住む所の用意だ。まあ、人間らしい生活ができる所を一つ用意しろ。それにかかる経費は全てアンタ達ネルフ持ちだ。それから月払いのバイト料。ネルフで一番高い給料を出せ。後、使徒を倒す度に特別ボーナスを追加する事。まあ、それぐらいで勘弁してやるか。保険と労災がないのが辛いがな」

 

「結構ボるわねシンちゃん」

 

「それじゃあ、俺の変わりに戦闘機一機多く出動させるんだな」

 

「…わかったよ。条件を飲もう。戦闘機一機よりは安い」

 

「OK…後『ディケイド』の事だがそれは…そうだな、情報交換だ」

 

「情報交換?」

 

「そちらが俺の知りたいネルフの情報を教えてくれる度に、俺もディケイドの情報を教える。これでどうだ。条件は…『互いに嘘は言わない』こと。」

 

「そ、それはちょっと…結構機密事項が多いのよ」

 

「じゃあ、ナシだ。人の秘密を知ろうとするんだ。そちらも相応の秘密を出せ」

 

「…確かに全うな意見ね。相手が普通の子供の秘密なら価値はないけど、エヴァにまで影響を及ぼす『ディケイド』の情報なら釣り合いが合うかもね」

 

リツコにとってこれは僥倖だった。

 

ディケイドを調べたくても、保安部の局員全てをいつの間にか全滅させてしまう力を持った者に実力行使は通用しない。

 

それを情報交換で知る事ができるのは願ってもいないことだった。話せる範囲以内ならば…

 

「よっしゃ」

 

「でも、ネルフ一の給料とボーナスって酷くない?私だって薄給なのに…」

 

「ふん…」

 

シンジは遠い眼をする。

 

財布の中に小銭しかなく、子供にジュースを奢る事すら死活問題だった灼熱の赤龍の戦士と人々を救う醒剣の戦士…

 

毎月赤字だった世界中の洗濯物を真っ白にする予定のクリーニング屋…

 

「お金がないって…辛いからな…」

 

と溜息を吐いていった。そしてリツコの前を向き、

 

「じゃあ、ちょっとした情報交換をしようか。まず、こちらの知りたい情報は…そうだな、簡単なのから。『エヴァのパイロットは何人いる?』」

 

「あら、それは結構ランクの高い情報よ。S級の機密情報だから」

 

「パイロット本人が聞く場合格安だろ」

 

「それもそうね。貴方を含めて3…」

 

ここでリツコは何か思いついて、

 

「いえ、『4人』よ」

 

これにはシンジよりミサトの方が驚いていた。冬月も『何てこと言うんだ』といった顔をしている。

 

「リツコ!?エヴァのパイロットはシンジ君の他にレイと『アスカ』の3人のはずじゃ!?」

 

「これは作戦課長である葛城一尉も知らなかったちょっとした『本当』の極秘事項の一つよ。もっとも『3人目』になるはずだった『4人目』…についての詳細は本当に極秘事項で、いるっていう事を知っているだけで私達はまったく知らないとしか言えないわね」

 

「3人目になるはずだった?」

 

「いる事はわかっているんだけど完全な番外…だから貴方はフォースチルドレンではなく、サードチルドレンなの」

 

「副司令のおっさんも知らないのか?」

 

「私も『4人目』がいるということしか知らない…すまないね」

 

(なんせ『あの男』の秘蔵っ子らしいからな…)

 

冬月は、一人の人物を思い浮かべる。

 

「こちらの知りたい事はまず、『ディケイドって何なの?』」

 

「まさか試しに聞いてみた事が極秘事項の一つとわな。ディケイド…は『仮面ライダー』だ」

 

「その、『仮面ライダー』ってなに?」

 

「仮面ライダー…まあ、なんて言ったらいいかな…まあ、ああやって変身して戦う人かな?『ネルフは使徒を倒してナニをしようとしている。使徒が日本…いや、たぶんこのネルフだな。狙われる理由はなんだ?包み隠さず教えて』くれたらもっと詳しく話してやるよ」

 

「…それはまだちょっと言えないわね。『エヴァの中で全く違う形態に変身したのは何なの?』」

 

「そうか、かなりの極秘事項なんだな。あの『変身』については…そうだな、さっき極秘事項を教えてもらったしな~…そうだ!『さっきの大怪我してた美少女ちゃんの場所に案内する事を約束したら教えてやるぜ』」

 

リツコは心の中でシメたと思った。今一番知りたい事を知る事ができる。

 

それも結構…いや、かなり安く!

 

「約束するわ」

 

「OK。あの姿は『空我』…『仮面ライダークウガ』だ」

 

「仮面ライダー…クウガ?」

 

「あれもディケイドの形態の一つなの?」

 

「いや、クウガは古代人リントが創り上げた守護戦士だ」

 

『はい?』

 

急にナニをいいだすのかと3人は思った。よりにもよってオカルトSFでしか出てこないような『古代人』という単語を聞いたからだ。

 

「遥か太古の昔、古代人リントが文明を築いていた。しかしリントと同じ時代には戦闘種族・グロンギも存在した。それに対抗する為に作られたのが『クウガ』だ。しかし、リントには殺人の概念がなかった為、全てのグロンギは封印されただけだった。それが現在に甦り、大規模な殺人ゲーム『ゲゲル』を開始した。そのゲゲルから人を護る為にある一人の男がクウガに変身する霊石アマダムが埋め込まれたアークルを身に着けて、クウガとなりグロンギと戦った…それが仮面ライダークウガだ」

 

「ちょ、ちょっとシンジ君…」

 

「クウガには様々な形態にフォームチェンジする事ができる。『水のドラゴン』『風のペガサス』『大地のタイタン』…順番にエヴァの持っていた棒・弓・剣だ。それと自分の乗り物…バイクと融合して強力な力を発揮する『馬の鎧・ゴウラム』を使役している。まあ、こんなところかな」

 

リツコは少し納得いかないといった顔をする。シンジが大嘘を言っている可能性があるからだ。ミサトの方はチンプンカンプンと頭を回している。冬月の方も突然眼をしかめていた。

 

「いったいどういう事。リントやグロンギなんて聞いた事ないし、大量虐殺事件なんて私達はここ数年でも知らないわよ」

 

「俺が教えられるのは『クウガ』の事についてだけだ。これでも大サービスだぜ」

 

(ディケイド…?クウガ…?『仮面ライダー』…って一体何なの?)

 

「納得いかなくても話せるのはここまでだ」

 

「今度そのクウガの能力、実際に訓練室で使ってみてくれない」

 

「まあ信じて貰う為だ。今度見せよう」

 

「約束よ。今のところ聞きたい所はこんな所ね…ミサト。シンジ君をレイの所に案内してあげて」

 

「い、いいのリツコ」

 

「今、互いに最も知りたい事を話したわ。『ディケイド』の事、『クウガ』とかいう第2の変身の能力を知れただけでもね。シンジ君、また情報交換しましょ」

 

「いいぜ。こっちにも結構知りたい事があるしな。じゃあ、案内してくれよミサリン」

 

「いい加減やめないとハッ叩くわよ」

 

シンジとミサトは席を立つ。

 

「その『ディケイド』の力…手に入れたのは『謎の大量行方不明事件』の時かしら?」

 

シンジはそれを聞いて立ち止まり、

 

「そうだ」

 

といって部屋を出た。

 

 

 

 

『ここは…どこ…』

 

ファーストチルドレン=綾波レイは炎が上がる戦場にいる。

 

今でも爆音があがる戦場…地面には巨大な物体が転がっている。

 

『あれは…使徒…!?』

 

そう、まだ見たことはないがわかる。あれは…使徒だ。

 

『どうして使徒が…ハッ!』

 

レイは爆音が聞こえた場所を見る。

 

すると巨大な物体が何かと戦っているらしい。

 

しかし、すぐに巨大な物体が破壊され、レイの目の前に音を立てて残骸となった。

 

残骸となったのは…

 

『エ、エヴァ!?』

 

それは自分が以前起動実験で失敗した零号機。その他にも赤・黒・銀・緑・青・白・桃のエヴァが残骸と化していた。

 

レイがエヴァが戦っていたモノを見る。それは…

 

『初号機…』

 

と前で宙に浮き、光を放っている…

 

『ディケイド…』

 

 

 

「…あっ…」

 

レイは眼を覚ます。

 

眼を覚ましたのは当たり前の事だが、自分の病室だった。

 

「今のは…夢…?」

 

レイは頭の中を整理する。

 

(初号機とディケイド…今日、自分を助けた人…)

 

何故自分はあんな夢をみたのだろう。

 

「どうして…?」

 

レイは余計に考え込んでしまう。

 

「レイー。いる?入るわよ」

 

扉の向こうから声が聞こえ、扉が開いた。

 

「大丈夫?」

 

声の主は自分の上司である葛城ミサトだった。

 

ベットに近づくとレイを心配そうに見下ろしている。

 

「問題ありません…」

 

「そう?でも無理しないでね?」

 

(なんでこの人も自分を心配するのだろう。私には代わりがいるのに…)

 

「実はね、レイに会いたいって人が来てるの」

 

すると待っていた男が病室に入ってきた。

 

「よっ、痛くないか?美少女ちゃん」

 

「あなたは…」

 

「お前を助けたカッコいい男、碇シンジだ。今日からエヴァのパイロットとやらになった。よろしくな」

 

(碇…?)

 

レイはその『碇』に反応する。

 

「あなた…碇司令の息子?」

 

「まあそうだ。あの親父とは違っていい男だろう」

 

「私に…何の用?」

 

「その前にだ。俺は自己紹介したぜ?美少女ちゃんのお名前は?」

 

「…綾波、レイ」

 

「綾波レイ、か。よろしくな」

 

彼は満面の笑顔で笑う。それを何故かレイは暖かく感じる。

 

「じゃあ、さっき言った事をやろうか?」

 

シンジはディケイドライバーを取りだし、装着する。

 

「ちょ!?シンジ君」

 

「変身!」

 

ディケイドのライダーカードをセット。

 

《KAMEN RIDE『DECADE』!》

 

シンジはディケイドに変身した。

 

「こ、こんなところで変身なんて何考えてるのよ!?」

 

「まあ、見てなって。さぁてと、その体を美しくしようか」

 

そして一枚のカードを取り出す。そのカードに描かれているのは、不死者達と戦い続けた戦士。

 

《KAMEN RIDE『BLADE』!》

 

《TURN UP》

 

突如目の前にカブトムシのようなものが描かれた青い障壁が現れ、ディケイドに向かってくる。

 

ディケイドがその障壁をくぐると、ディケイドの姿が変わった。

 

その姿は様々な生物の始祖である不死者達と戦い続けた醒剣の戦士・仮面ライダーブレイドの姿だった。

 

「ま、また違う形態に変身した!?」

 

ミサトは驚きっぱなしだ。

 

「驚くのはこれからだぜ」

 

変身したディケイド…D=ブレイドは三枚のカードを取り出す。

 

そして三枚の立て続けにセットする。

 

《ATTACK RIDE『BLAYROUZER』》

 

《ATTACK RIDE『HEART 9 RECOVER CAMEL』》

 

D=ブレイドは一本の剣・醒剣ブレイラウザーと、2枚のトランプのようなカードを出した。

 

「ふう、これする場合、いちいちこうやって呼び出さなきゃならないんだよな…」

 

(…かず兄、はじめ兄…力を借ります)

 

『RECOVER』

 

D=ブレイドは『RECOVER CAMEL』をスラッシュ。

 

カードの中で駱駝の始祖・キャメルアンデットが体を輝かせる。

 

醒剣が突如暖かい光を放つ。

 

光がレイの全身と、何故かミサトの腹部を包む。

 

(あ、暖かい…これは…)

 

やがて光の輝きが収まっていく。

 

「どうだ?」

 

「え…一体ナニを…?あっ…」

 

レイは自分の体の異変に気付く。

 

「い、いたく…」

 

「ないだろ。綺麗に直しといたぜ。ほら…」

 

D=ブレイドはディケイドに戻り、シンジに戻る。

 

シンジはレイの眼帯を外す。

 

「よっし、痣もナシ。綺麗に治ってんな」

 

口をパクパクしていたミサトも自分の体の異変に気づく。

 

「おお!?私のお酒でチラしてズキズキしていた胃が全然痛くない!?」

 

「…予想外のまで治しちまった。まあ、これで退院できるだろ。一応検査してもらっとけよ。いくぜ、ミサリン改めミサトさん」

 

「え、ええ。シンジ君、今の姿は…」

 

「さあね。今度の情報交換の時にでも教えてやるよ。それ相応の情報と交換でな」

 

そういいながら二人はドアに向かう。

 

「あなた」

 

レイは無意識にシンジを呼び止める。

 

「あなた…何者なの?」

 

「ん?俺か。エヴァの格納庫でも言ったろ?」

 

シンジはにっこり笑って、

 

「通りすがりの仮面ライダー、だ」

 

パシャッ

 

トイカメラでレイの写真を撮る。

 

「今度は笑顔で頼むぜ」

 

 

 

 

「通りすがりの仮面ライダーねぇ…シンジ君はカッコつけね」

 

ミサトの言葉にシンジは『フフン』と笑って、

 

「カッコつけるのをやめた男に生きる価値はないだろ?」

 

「おっ、なかなか男前な事いうじゃない」

 

「当たり前だ。男前だもん」

 

ノリ良くシンジが答える。

 

「さてと、それじゃ『検査』にいきますか」

 

「検査?なんだそりゃ」

 

「あんたね~…あなたはエヴァを動かしたのよ。どこか体に異常がないかどうか調べるのも重要なのよ」

 

「…なんか背後に『データ取っときましょう』って思惑がプンプンするな」

 

シンジは溜息を吐いて、

 

「まあ、いいさ。健康診断だと思えば」

 

「まあまあ、検査受けている間に今日泊まる所手配しておくから」

 

「そうか。じゃあ、受けてくるわ。何処行けばいい」

 

「案内するわ。たぶん結構かかると思うから」

 

「ああ、それから…」

 

シンジはニヤッ、と笑うとディケイドライバーを取り出した。

 

急に見せられたそれを、ミサトはそれをお宝を見るような眼で見る。

 

「世の中最近物騒で泥棒さんがいっぱいだ。だから…」

 

いきなり極小のオーロラが現れたと思うと、ディケイドライバーが消えた。

 

「なっ!」

 

「俺専用の倉庫に入れておかなくちゃな」

 

「…なんであからさまに見せるの?」

 

「素敵な収納部屋に自慢のお宝を入れる所を自慢したかっただけだ。他意はないぜ」

 

ミサトは顔をムスッと膨らませながら、検査室に案内した。途中で写真を撮られて一悶着あった。

 

 

 

 

 

 

「そう…『ベルト』の奪取は無理か」

 

『ええ。彼はこちらの警戒を怠っていないわ。まったく用心深いたりゃありゃしない』

 

「それはこちらも同じよ」

 

問題は突如消えたベルトだ。もしかしたらあのオーヴァーテクノロジーの塊は持ち主以外に触れさせない機能でもついているのかもしれない。

 

『ねぇ、さっきの『変身』みてた?』

 

「…監視カメラで見てたわ。ディケイド第三の形態。まったく、カードを入れて変身する事以外全くの謎ね」

 

「今度の形態はレイの体の傷を治していたわ」

 

「あれだけがあの形態の能力とは思えないけど…何とかして彼の正体と力を事細かく監視できないかしら」

 

『う~ん…おっ!』

 

ミサトは急に何かを思いついたようだ。

 

『いい事思いついた~』

 

受話器の向こうでニンマリ笑っているのを、リツコは少し不安に思いながら溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

「ふ~、やっと検査が終わった。暫く病院は勘弁してもらいたいな」

 

「ご苦労様、シンちゃん」

 

突如、現れたミサトにシンジは眼を細める。

 

「ど、どったの?」

 

「いや…よく考えたらその呼ばれ方、ここに来るまではずいぶん久しぶりだな」

 

(昔…おじいちゃんと『キバーラ』に呼ばれてたな)

 

「ありゃそうなの?」

 

「ああ…そういえば、俺の住む所は決まったか?ちゃんといいところなんだろうな」

 

「ええ、ネルフの職員マンションなんだけど、三食御飯がついて…」

 

「ほう、そりゃ…」

 

「美人のお姉さん付」

 

「…ちょっと待て」

 

シンジはミサトの言葉をとめる。

 

「その『美人のお姉さん』てのはなんだ?」

 

「私」

 

「…別の部屋用意できなかったのか?」

 

「中学生の一人暮らしは教育に悪いと思って。やっぱり保護者は必要だし…それに寂しいでしょ。お姉さんがあっためてあげる♪」

 

「教育に悪い事いってんじゃねぇよ!あからさまに監視が目的だろ!?」

 

「…ソンナコトナイワヨ」

 

「眼ェ逸らして、カタコトで言ってる時点で大当たりだろうが!」

 

「さぁ行くわよ」

 

「話を聞け!それと拒否権は無しか!?」

 

その後ギャイのギャイの言いながら廊下を歩いていると、身長190㎝を超えるマッシブな看護士(女)が現れ、二人を猫のように掴み、駐車場で(勢い良く)ポイ捨てされた。

 

 

 

 

 

 

「まったく…結局はこうなるのか」

 

結局シンジはミサトの部屋に向かう事になった。

 

「いいじゃない。あなたが文句を言う所は何もないと思うけど」

 

「もうちょっと若(ゴシャ)…なんでもありません」

 

ミサトのパンチがシンジの面を抉る。

 

「で、そのマンションまでどれぐらいなんだ?」

 

シンジは夕日を見ながら、どのように撮るのがいいかトイカメラのレンズを除きながら言う。

 

するとミサトが車を止めた。

 

「…ちょっち付き合ってね」

 

「?」

 

二人は車から降りる。そこは街を一望できる小高い丘の上の公園だった。

 

「いい眺めだな(パシャ)。撮影には絶好だ(パシャ)」

 

シンジはすぐにトイカメラを手に持ち、レンズを調整して、撮影を始めた。その丘から見えたのは、殆ど平らな地面の第三新東京市だった。

 

「少し寂しいな…」

 

「そろそろ時間ね」

 

ミサトの言葉を合図のように今まで平らだった町の所々でハッチが開きそこからビルが出てきた。

 

「へえ…ビルが生えてくるな(パシャ、パシャ)」

 

「これが要塞都市第三新東京市…あなたが守った町よ…」

 

シンジはカメラから顔を外しながら

 

「俺は要塞都市なんて守った覚えはないぜ。守ったのは…ここに住んでいる人達とその人達の帰る場所さ」

 

「あはは。言うわね。ただの要塞だったら守らなかったわけ」

 

「さあな」

 

そういって、シンジは撮影を再開した。

 

途中でミサトが

 

「私も撮って」

 

と言ったので、ノリノリでポーズと表情をするミサトを何枚か撮った。

 

夕日に移る儚げな顔…写真はかなり絵になっていた。

 

これが後にちょっとした小遣いに化けたのはシンジにとって嬉しい計算外だった。

 

 

 

 

 

 

夕日の中、男は二人を…いや、シンジを見ていた。

 

その男は顔こそ崩していなかったが、どこか楽しそうだった。

 

「この街はある意味美しいな。人間が世界を破壊し、他の生命を滅ぼし続けた結晶…ふふっ、『この世界』は中々楽しめる」

 

男は微笑みながらシンジ達を見ている。

 

「さてと…『この世界』はどうなるんだろう。君が勝つのか?僕が勝つのか?それともこの世界の人間が勝つのか?『この世界』が破壊されるのか?それとも破壊されないのか?」

 

男は本当に楽しそうに…

 

「さぁ物語の始まりだ。『ゴラゲダヂ(お前達)』…」

 

男が人間とは全く違う言葉を喋ると、突如男の後ろにオーロラが現れる。

 

すると二体の異形が現れた。醜悪な蜘蛛と飛蝗が人間のような姿で立っていた。

 

「『|ゲゲル ン ジャグギ ゾ ギソ。バギギ パ ジャス。ススス パ…《ゲームの用意をしろ。開始は夜。ルールは…》』」

 

男はシンジを指し、

 

「『ボソギダゾグ ガ バヂダ ゾ ディケイド(ディケイドを殺したほうが勝ちだ)』」

 

男の言葉に怪人達は薄ら笑う。それは戦闘…殺し合い、破壊を楽しむモノの笑み…

 

『ズ・グムン・バ』と『ズ・バヅー・バ』は男の前から消えた。

 

 

 

 

 

「『バリ ン ヂバサ ダレギデガベ(君の力試してあげる)』」

 

男がそのままその言語で喋る。ちょっと楽しくなってきたらしい。

 

恐ろしい事にこの男、遥か太古の戦闘種族の言語を、流暢を超えて美しく喋っている。

 

「『バリ グ ジャパギ ド ヅラサバギバサ(君が弱いとつまらないから…)』」

 

そう、『悪』…この場合自分…が強いだけではつまらない。

 

昔、一時的に手を組んでいた『負けない悪の組織』を造る事を目指していた『彼』が聞いたら鼻で笑うだろうが、自分はつまらない事が大嫌いだ。

 

こうバランス良く、かつそれを勝利に持っていく。それこそが楽しい。

 

だが、今回の事はもうすでに自分は計画を立てて進行している。

 

はっきり言えばチートをしている。

 

ならば…

 

「『ヅジョガダベゼロ ヅシガパバキャ…(強さだけでも 釣り合わなきゃ…)

 

男は楽しそうに両手を広げて、

 

「『ゲゲル ン ザジラシザ ディケイド!(ゲームの始まりだディケイド!)』」

 



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第伍話/Ride the Wind -MODEL KUUGA-

 

「あいつは人の笑顔を護る為に戦っている」

 

僕は泣きそうになって『クウガ』を見る。

 

そんな僕の頭に、士おにいちゃんは手を載せて、

 

「安心しろ」

 

と、言った。

 

士お兄ちゃんは戦いの場に向かって歩き出す。

 

「あいつの笑顔は俺が護ってやる。あいつの笑顔は…悪くない。もちろん、お前のものな」

 

士お兄ちゃんは変身してグロンギに向かっていく。

 

(その背中を見て…僕は、この時…『仮面ライダー(この人)』達みたいになりたいって思ったんだ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

シンジは扉の向こうを見て絶句する。

 

そして自分の生活がこの先、ピンチだということに気づく。

 

(ちゃんと人間が住める環境を提供するようにって、条件出したんだけどな…)

 

来る時にスーパーによって購入した食材の袋がやけに重く感じる。

 

ちょっとしたモノを作ってやろうと思ったのに…

 

「遠慮する事ないのよ。あなたの家なんだから」

 

「…激しく拒否したい」

 

扉の先の惨状をもう一度見て、シンジはそう呟くと。

 

「片付けるぞ、このダメ人間」

 

宣言した。

 

 

 

 

 

「おい!さっきから言っているだろう!燃えるゴミと燃えないゴミは分けろって!」

 

「す、すいません!」

 

「ただでさえ地球全体がおかしくなってるのに少しは良くしようとか思わないのか!一人一人の自覚が明日の地球をよくするんだぞ!」

 

「お、仰るとおりでございます!」

 

「なんだこの冷蔵庫は!?食材が入ってないどころかビールギチ詰め!」

 

「お酒って、おいしいわよ」

 

「この生活無能者!」

 

「が~ん!」

 

「何だこれ…ペンギン!?なぜこんな保護対象生物がいるんだ!?」

 

「あっ、その子は温泉ペンギンのペンペン。可愛いでしょ?」

 

「ペット飼ってるんだったらもっと環境整えろ!このダメ人間!」

 

「ひ~ん!シンジ君がイジめる~!」

 

 

 

 

 

「ご、ゴミ捨ててまいりました」

 

ミサトは死にそうな顔で部屋に入った。

 

「ご苦労様…簡単なものだが、ちょっとした飯ができているぞ」

 

ミサトがキッチンに入るとそこには

 

「お、おお~!」

 

「幸い、米があって、海苔と味噌はさっき買っておいたからな」

 

模範的なおにぎり(三角に海苔)が10個と味噌汁という最高のタッグが措いてあった。

 

「わ~い!」

 

ミサトが手を伸ばすと、

 

ベチッ!

 

「きゃん!」

 

その手をシンジが叩いた。

 

「何するのよ!?」

 

「それはこっちの台詞だ。ご飯を食べる時には重要な決まり事があるだろうが。幼稚園児でも知ってるぞ」

 

ミサトはちょっと考えて、ポンッ、と手を叩く。

 

ミサトはちゃんと椅子に座り、掌と掌を合わせ、食材に感謝し、

 

「いただきます」

 

「召し上がれ」

 

その言葉を聞くと、ミサトは高速でおにぎりを掴み、口に入れた。

 

「むぐっ!」

 

ほうばった瞬間、ミサトの口の中で革命が起こる。

 

「なっ、なにこれ!」

 

すばやく2個目を手に取り、再び食べる。

 

そして、味噌汁を手に取り、口に含むとまたもや革命が起きた。

 

ミサトは一気に飲み干し、味噌汁のおかわりをする。

 

僅か数分で10個のおにぎりはミサトの『胃の中(四次元)』に消え去り、ミサトは用意されたお茶を飲む。

 

「…ふぅ。ごちそうさま」

 

「おそまつさま」

 

「なんて美味いおにぎりなの…どうやって作ってるの?」

 

「別に簡単だ。食材に愛を込めて握ればいい。後は絶妙なる塩加減」

 

「まっ♪『愛』だなんて♪味噌汁の方は?」

 

「それも愛情と…味噌の微妙なる加減だ」

 

「そんなんでこんなに美味しくできるの?」

 

「現に出来てるだろ」

 

「むむ、深いわね」

 

シンジはミサトにおにぎりを全て食べられた為、新たに自分の分を作った、が、その作ったものの半分も再びミサトに食べられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初日からこれか…先が思いやられるな」

 

シンジはコンビニで簡単な日用品を買った帰りの道で呟いた。

 

瞳だけ辺りをジロリと見る。

 

(周りには監視の目か…犯罪者かっての)

 

結局、その後の家事の取り決めで、家事のほとんどはシンジが受け持つ事になった。

 

理由は単純…あの生活破綻者に神聖なる家事を任せられなかった。

 

シンジは夜空の月を見る。

 

「…俺の『使命』…あのエヴァに乗って使徒って奴を倒す事なのか?それとも…」

 

シンジは空を見上げていると…

 

「ん…なっ!?」

 

突然、シンジの周りに『歪みのオーロラ』が現れ、シンジを別の世界へと誘う。

 

ネルフの諜報部は監視対象をロストして、大慌てとなった。

 

 

 

 

 

シンジの目の前に、光が歪みが解けた時、そこは今までとは違った新しい空だった。

 

今は夜だった筈なのに明るい太陽がさしている。

 

「世界を『超えた』…!?一体どういうことだ!」

 

世界を超える…確かに自分は過去に『お兄ちゃん達』と様々な世界を旅した。

 

しかし…ディケイドであるシンジでもその世界を渡る術はない。

 

その理由は渡り方を知らないという事もあるが、一番の理由は、

 

(僕は『この世界』…『自分の世界』で『使命』を果たしていない)

 

おそらく誰かがシンジをこの世界に連れて来たのだろう。しかし一体誰が…

 

(世界を自由に渡る…そんな事ができるのは…いやでも…)

 

「はっ!?」

 

シンジは背後から殺気を感じ、襲ってきた『糸』を回避する。

 

「こ、これは…蜘蛛の糸…?」

 

バラジョ!(神よ!)

 

「!?」

 

ボボジョグバ(このような) ギンゲギバ(神聖なる) ギブガダ(戦場) () パガ(我が) ゲゲル(ゲゲル) () ゴガダゲブザガセ(お与えくだされ)バンシャギダギラグ(神よ、感謝いた) バラジョ(します)!』

 

蜘蛛が擬人化したような怪人がシンジの眼前に現れる。

 

「まさか…グロンギ!?それにこいつは…」

 

ギベ、ディケイド!(死ね、ディケイド!)

 

殺意を撒き散らし、蜘蛛のグロンギ『ズ・グムン・バ』は両手の爪で襲い掛かる。

 

「くっ!?なんでグロンギが…くそ!」

 

シンジはそれを辛うじて回避し、ズボンのポケットからディケイドライバーを取り出し、腹部に近づける。

 

ディケイドライバーからベルト部が出現し、シンジにしっかりと装着。それと同時にライドブッカーが腰に出現する。

 

シンジはライドブッカーから『DECADE』のライダーカードを取り出して構える。

 

その時、シンジに恐怖と緊張が襲う。目の前にいるのはグロンギ…シンジはディケイドでの変身し、エヴァを操り、使徒を倒したが、このグロンギと戦うという事は、自分自身で戦うという事…『あの人達』同じフィールドに立つと言う事…

 

シンジの眼にはいつもの自信に溢れた光が蔭り、揺れている。

 

(僕に…僕にできるのか…僕なんかに…僕なんかが本当に『仮面ライダー』を…)

 

『自分の強さを信じろ』

 

(!?)

 

『信じた瞬間、仮面ライダーは…』

 

(そうだ…そうだったね)

 

シンジはズ・グムン・バを睨みつける。シンジから『戦士の気迫』を感じ、ズ・グムン・バはその場で立ち止まり、構える。

 

ズ・グムン・バは確かに好戦的で、人間を残忍に殺す戦闘種族(グロンギ)。しかし、戦闘種族であるが故 ―――例外はあるとはいえ――― 殆どのグロンギは戦いの誇りが半端ではない。

 

ズ・グムン・バはそんな誇り高きグロンギの一人であった。

 

ゲゲルをし、楽しむのも大事だが、戦士同士の決闘はグロンギの誉れ。

 

決闘は正々堂々、真正面からの戦いしかない。

 

その為、ズ・グムン・バはシンジを『待った』。

 

(士お兄ちゃんは僕にディケイドライバーを渡した…僕を認めてくれた。僕は…)

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE『DECADE』!》

 

ディケイドライバーの電子音が響き、シンジの周囲に生じた10体の虚像が1つになってゆく。

 

それは世界の破壊者…または世界の再生者。

 

『最高に強くなれる』

 

「僕は!仮面ライダー…仮面ライダーディケイドだ!」

 

シンジ…ディケイドは高らかに名乗りあげた。

 

『|パセ パ ゾボシダバビ グロンギ ン ゲンギ、ズ・グムン・バ!《我は誇り高きグロンギの戦士、ズ・グムン・バ!》』

 

ズ・グムン・バも名乗り上げる。

 

『|バラ ジョシ ガダゲサセギ ボボ ゲゲル。ゾンヅンビ ダボギリ、バヂゾビ ゾ ガゲジョグゾ!《神より与えられしこのゲゲル。存分に楽しみ、勝鬨を上げようぞ!》』

 

ディケイドはライドブッカーをソードモードにし、刃を左手に走らせる(良い子の皆は決して真似しないでください)。

 

そして構え、ズ・グムン・バに向かってゆく。

 

それを見て、ズ・グムン・バも向かってくる。

 

ガキンッ!

 

互いの一撃!

 

ガキンッ!ガキンッ!ガキンッ!

 

ライドブッカーSMとズ・グムン・バの爪が激しい戟を繰り広げる。

 

ガギィィィィィィィッ!

 

二人は鍔迫り合いに持ち込む。

 

「|ゴギ ゴギゲソ ブロジャソグ。バラゼゼ バビロンザ?《おい、教えろ蜘蛛野郎。神って、ナニモンだ?》」

 

なんとシンジはグロンギ語でズ・グムン・バに話しかける。

 

バラ パ バラザ!(神は神だ!)

 

キィンッ!

 

両者は離れる。

 

『|バラ パ ゴシャシャダダ。ボボ ゲゲル ゾ ダゲゲギゲセダ、ギザギバス 『ン・ダグバ・ゼバ』 ド グロンギ ゾ ズババヅボグシンギ、ガサダバス ゲゲル ン ダ ドギデ ガダゲスド!《神はおっしゃった。このゲゲルを達成すれば、偉大なる『ン・ダグバ・ゼバ』とグロンギを復活降臨させ、新たなるゲゲルの場として与えると!》』

 

ズ・グムン・バは爪でディケイドを指す。

 

『|ボソグ ゾ ディケイド!ゴセ グ ゲゲル ン スースザ!《ディケイドを殺す!それがゲゲルのルールだ!》」

 

ズ・グムン・バはディケイドに勢い良く襲いかかる。

 

ゴグバ。バサ…(そうか。なら…)

 

《ATTACK RIDE『SLASH』!》

 

ライダーカードをディケイドライバーに瞬時にセットし、ライドブッカーSMを強化する。

 

ザシュゥゥッ!

 

『グゴァッ!』

 

ラベスパベビ パ ギババギバ!(負けるわけにはいかないな!)

 

ザシュッ!ドシュッ!ザッグッ!

 

『グガッ、グォラ…』

 

ズ・グムン・バの全身が斬り刻まれる。

 

「この世界は…」

 

ディケイドは金色で描かれたディケイドの紋章が浮かぶライダーカードをディケイドライバーにセット。

 

《FINAL ATTACK RIDE『DE・DE・DE・DECADE』!》

 

ディケイドは勢い良くジャンプする。

 

するとディケイドとズ・グムン・バの間にディケイドの紋章が浮かぶ光のカードが複数現れる。

 

ディケイドがキック体勢を空中で構えると、光のカードに向かってゆく。

 

光のカードを一つ潜る度、エネルギーがディケイドに集中し、勢いを増してゆく。

 

「俺が…僕が、守る!」

 

『グ、グァァァ…』

 

ズ・グムン・バが唸る。迫り来るディケイドに恐怖する。

 

「この僕が!」

 

『グギャアアアアァァァァ!』

 

ドガンッ!…ドガァァァァァァンッ!

 

ディケイドのFINAL ATTACK RIDE『DIMENSION KICK』によって、ズ・グムン・バは四肢をバラバラにし、爆発した。

 

するとディケイドの周りが再び次元のオーロラに包まれる。

 

次元のオーロラが晴れた時、ディケイドは元の場所にいた。

 

「…蜘蛛野郎の言っていた神様はどうやらトコトン楽しみたいみたいだな」

 

シンジは溜息を吐きながら、ディケイドライバーを見る。

 

「俺の…せいなのか…」

 

シンジはしばらく考えたが、

 

「考えても仕方ないか…しかし…」

 

シンジは周りを見る。いつの間にかコンビニで買ったモノを手放していて、コンビニ袋は消えていた。

 

「…明日、纏めて買おう」

 

そういって、帰路に着いた。

 

ネルフ諜報部はシンジが葛城宅に到着するまで大混乱だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お迎えに上がりました、お嬢様」

 

「………」

 

翌々日、シンジはネルフの医務練から出てきた制服姿のレイに笑顔でそういった。

 

「完璧に治したとはいえ、歩いて帰るのは辛いだろ。タクシーだと高いし。だから迎えに来た」

 

シンジは自分の愛車・マシンディケイダーを指す。

 

「この通り足も用意してある。なんと燃料が只の優れものだ」

 

「………」

 

「荷物無いのか?せっかくリュックも持ってきたのに」

 

「…どうして?」

 

「ん?」

 

「どうして私に係るの?」

 

突然のレイの質問。それにシンジはすかさず、

 

「仲良くしたいからかな。だから、仲良くしよう」

 

「…命令があれば「ストップ」?」

 

レイの言葉をシンジはさえぎる。

 

「いいか?そういった事は命令で動いちゃいけない。仲良くする…『絆』を創るのは自分自身で判断することだ。決して他人の言葉や力に頼っちゃいけない」

 

「きずな…」

 

シンジの真剣な瞳に、レイは吸い込まれる。

 

「だから、君が考えるんだ。僕と『絆』を創るかい?創るのはイヤかい?」

 

レイはその言葉を聞いて…初めて自分にできる感情を感じながら…

 

「…わからない」

 

「そうか。じゃ、保留って事だな。そりゃ、後ろ乗れ、後ろ。これかぶれよ」

 

シンジはマシンディケイダーにまたがって持ってきたヘルメットをレイに渡す。

 

レイは渡されたヘルメットを被り、とりあえずタンデムシートに座ると、

 

「…大型自動2輪免許は」

 

「………」

 

今度はシンジが沈黙した。

 

 

 

「なんだここ?」

 

シンジは目の前の物件を見て、唖然とする。

 

目の前にあるマンションは、第3新東京市市営住宅第22番建設職員用団地6号棟

 

確かに元は立派なマンションだったんだろう。

 

しかし、それはいつの話か?

 

マンションは半分倒壊しており、安全・衛星・治安面から考えて、年頃の女の子が住むような場所ではない。

 

レイはマシンディケイダーから降りると、タンデムシートにヘルメットを置いて、先々行ってしまう。

 

「お、お~い」

 

慌ててシンジはレイに着いて行く。

 

レイの部屋に到着し、

 

「お、お邪魔します」

 

「………」

 

部屋に入る。部屋も部屋で殺風景だった。

 

必要最低限の家具・電化製品しかなく、窓のカーテンから見える光が光源だ。

 

(女の子なんだからとか言わないが…もうちょっとな)

 

少し埃っぽい。

 

「綾波。少し掃除しようぜ」

 

「なんで?」

 

無表情で答えるレイ。

 

「け、健康に悪いだろ。体調管理も立派な仕事だぜ」

 

「そう」

 

そして二人は掃除を開始した。

 

シンジはできるだけ清潔になるように昨日以上にがんばる。その結果、レイの部屋には散り一つなくなった。

 

「ふう、完璧」

 

「これでいい?」

 

「OKだ。ところで綾波。さっき失礼ながら冷蔵庫の中覗いたんだが、食材が無いぞ。晩飯どうするんだ?」

 

レイは無言でテーブルの上にある大き目のピルケースを指す。

 

シンジがピルケースを開けると、各種栄養剤・サプリメントが入ってあった。

 

「…これは俺に対する挑戦か?」

 

「えっ?」

 

「これは俺が預かる。綾波、嫌いもしくは食べられないモノはなんだ」

 

「えっ?えっ、と?お肉」

 

「ベジタリアンなのか。よし今晩、葛城一尉の家に来い。このまま行くぞ」

 

「なんで?」

 

「肉などを一切使わない野菜料理をご馳走してやる。帰りも送ってやるから任せろ」

 

レイは言っている意味が分からなかった。

 

「私、食事をしなくても大丈…」

 

「ダメだ。病気になる」

 

シンジはレイを『ズビシッ!』と指した。

 

「ある人のおばあちゃんは言っていた」

 

物凄く真剣な眼だ。

 

「病は飯から。『食べる』とは、人が良くなると書く。だから人間しっかり食べなきゃ病気になる」

 

レイは『食』の字を思い出すと、

 

(本当だ)

 

「だからしっかり食べるんだ」

 

「…わかったわ」

 

「よし」

 

良くわからないやり取りにより、決定した。

 

 

 

「さぁ、行くか」

 

「うん」

 

二人はマシンディケイダーに乗って、出発準備は完了していた。

 

「じゃあ、出…な!?」

 

「なに!?」

 

ふたりは突然、次元のオーロラに包まれた。

 

「またかよ。しかもこんな時に…まさか、狙ってたのか」

 

「…碇くん」

 

「!?」

 

シンジはレイをびっくりしたような眼で見る。

 

「これは…何?」

 

「ちょっとした、ご招待って奴だ」

 

次元のオーロラが晴れる。その先にいたのは

 

「あれは…何?」

 

「『ズ・バヅー・バ』…まさかグロンギがもう一体いたとわな」

 

飛蝗を擬人化させたような生物、『ズ・バヅー・バ』…

 

「下がっていろ。ちゃんと守ってやる」

 

シンジはマシンディケイダーから降り、

 

「やっと固有名詞で呼んでくれたな」

 

「あっ…」

 

シンジはディケイドライバーを巻きつける。

 

「それが、『絆』だ」

 

ライドブッカーからカードを取り出し、『DECADE』のカード取り出し、

 

「変身!」

 

ディケイドライバーにセット!

 

《KAMEN RIDE『DECADE』!》

 

ディケイドライバーの電子音が響き、シンジがディケイドに変身する。

 

「ちょっと待ってろ」

 

そう言って、化け物に向かっていくディケイドの背中を、レイは眼を逸らせず、見ていた。

 

 

「|ラダゲダバ。ゴグギゲダ ゲゲル ン ガギチュグ パ ダギショグザベギバ ベサゲバギバサバ《待たせたな。そういえばゲゲルの最中は対象だけしか狙えないからな》」

 

『|ガダシラゲザ。ギンゲンバス ゲゲル ン スース パ ゼダダギザ《当たり前だ。神聖なるゲゲルのルールは絶対だ》』

 

ゾボシダバギバ…バシ!(誇り高いな…なら!)

 

ディケイドは再びカードを取り出す。取り出したるは

 

「お前の本当の相手で戦ってやる」

 

カードをディケイドライバーにセット!

 

《KAMEN RIDE『KUUGA』!》

 

 

『邪悪なる者あらば希望の霊石を身に付け、炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり』

 

 

ディケイドはD=クウガへとカメンライドした。その姿にズ・バヅー・バは驚く。

 

『|ダババ!ザド クウガ!?ビガラ パ ゼザババダダボバ ディケイド!?《バカな!クウガだと!?貴様はディケイドでは無かったのか!?》』

 

「|ガ ディケイド。ギラ パ ゼロガスベゾバ クウガ《ディケイドさ。今はクウガでもあるけどな》」

 

『クッ!』

 

ズ・バヅー・バは得意の跳躍力で翻弄しようとするがD=クウガは落ちていた錆びた鉄パイプを持ちながら、

 

「|パスギバ。ボボガドバパギボチャン ド ゼギババ バンザ。ググビビレガゲデロサグゼ《悪いな。この後カワイ娘ちゃんとディナーなんだ。すぐに決めさせてもらう》」

 

再びカードを2枚取り出し、その内の一枚をセット!

 

《FORM RIDE『KUUGA DRAGON』!》

 

 

『邪悪なるものあればその技を無に帰し、流水のごとく邪悪をなぎ払う戦士あり』

 

 

D=クウガがドラゴンフォームに変わる。

 

それと同時に持っていた錆びた鉄パイプもドラゴンロッドに変化する。

 

そしてもう一枚のカードをセット!

 

《FINAL ATTACK RIDE KU・KU・KU・KUUGA》

 

D=クウガDは高く飛び上がる。

 

それは凄まじい勢いで飛び、ズ・バヅー・バを追い越す。

 

『!?』

 

「デリャァァァァァァァァッ!」

 

ドラゴンロッドをズ・バヅー・バの脳天に叩き込んだ。

 

ズ・バヅー・バに封印エネルギーが一気に注ぎ込まれる。

 

『ガギャァァァァァッ!?』

 

ドガァァァァァッ!

 

ズ・バヅー・バは空中で爆散した。

 

D=クウガDが着地すると、次元のオーロラが現れ、元の場所に戻った。

 

「ふう…タイミングの悪い奴だ。悪くなければ見せ場を持たせてやったのにな」

 

D=クウガDはディケイドに戻り、ディケイドは変身を解除し、シンジに戻り、綾波の待つマシンディケイダーに近づく。

 

「おまたせ」

 

「………」

 

「どした?」

 

「あなたは…いったい…?」

 

「おいおい、三度目だぞ?」

 

シンジは不敵に笑って、

 

「通りすがりの仮面ライダーだ」

 

 



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第陸話/輝く笑顔。絆の力?

 

 

 

「学校?」

 

皿を洗っていたシンジはミサトの発言に振り向く。食後のビールを飲んでいるミサトと熱い緑茶を飲んでいるレイがいた。

 

あの日以来、レイはちゃんと毎日食べに来る。シンジの味付けが気に入ったのか、食事の量も少しずつ増えている。

 

(レイを納得させるなんて…流石、そー兄ちゃんのおばあちゃんの言葉だ)

 

そんな事を思ってると、ミサトが言葉を続ける。

 

「そっ、学校。明日から。シンちゃん中学生でしょ。義務教育はしっかり受けなきゃ」

 

「そうだな。ただ今、問題とすべき所は…」

 

手をちゃんと拭いて、ミサトに近づき、ビールを取り上げる。

 

「ああっ!?返して!」

 

「なんで前日にいうんだ!この『マダオ(まるでダメな女)』!」

 

「シンちゃん、オニャーノコに『マダオ(それ)』はシドイ!?」

 

ガガーンとなるミサト。

 

「そうかそうか、ではオニャーノコ。なんで前日に言うんだ。理由を聞かせてくれ」

 

「えっ…と…実は…その…あの…」

 

シンジはとてつもなく優しい笑顔で

 

「忘れてたのかい?」

 

「そうにゃの~」

 

「黙れ『マダオ(まるでダメダメなオバサン)』」

 

「な、なんか口調からランクアップしたー!」

 

「まったく…こっちも色々と準備が…」

 

「あっ、レイと同じ学校なのよ!レイも明日から復帰なのよね~」

 

ミサトはできるだけシンジの機嫌を回復しようとした。

 

レイはコクッと頷く。

 

シンジの怒りはさらにヒートアップした。

 

結局、レイを送った帰り、明日の昼食用弁当の材料を買った。

 

 

 

 

 

 

 

翌日、第一中学2-A組。

 

「第二から来た碇シンジだ。趣味はカメラと服装チェンジ。これからよろしくな。今日は機嫌がいいから質問タイムだ。なんでも聞いてくれ」

 

シンジは教壇に立ち自己紹介をして、不敵な笑みを浮かべる。

 

老教師は『活発的な子だな~』と思いながら椅子に座る。

 

教壇から窓際の席にレイが座っている。自分を見ているのを確認したシンジは見事なウインクをした。

 

基本的に派手な振る舞いだが、『旅』での経験とこれまでの自分を鍛えた事により、無意識に滲み出る雰囲気は並の大人では持ち得ない魅力。

 

高い身長、均整の取れた体、そして整った顔。それらが見事にマッチしている上での不敵な笑顔。

 

クラスの誰もが興味を持った。

 

「以前の学校での部活動は?」

 

「帰宅部だ。写真は完全な個人活動。服飾部でモデルはした事がある。何でも着こなすいい男だからな」

 

「彼女さんはいましたか?」

 

「いないな。どうも俺はまだ一人も射止められない未熟者らしい」

 

「そのトイカメラ。見た事ないデザインだけど何処のカメラ」

 

「よくぞ見てくれた眼鏡の男。名前は?」

 

「俺、相田ケンスケ。いや~、同じ趣味の奴が来て嬉しいよ。そのカメラちょっと見ていい?」

 

「後でな」

 

「ロボットのパイロットって本当?」

 

「この俺がしないで誰が…ってあれ?」

 

普通に答えそうになった。

 

(おかしいな…パイロットの情報はトップクラスの情報じゃなかったのか?まっ、いっか)

 

「この俺がしないで誰がやる?」

 

その言葉により更なる嬌声。

 

「ええ! 本当!?」 

 

「どうやって動かすの!?」

 

「なんで選ばれたの?試験とかあった?」

 

「あの敵はいったいなんなの?」

 

(本当に機密なのか?)

 

とりあえずシンジはある事無い事大げさに喋ってその場を収めた。

 

黒いジャージを着た少年の視線に気づきながら…

 

 

 

 

 

時間は経ち、昼休み…

 

「綾波~、ほれ弁当。お前の好きな野菜炒めと中華風ソースで味付けした春雨巻きも入れといたぞ」

 

レイはシンジをキョトンと見ている。

 

「どうして?」

 

「ん?弁当ぐらい作るぞ?」

 

「なんで入れてくれたの?」

 

「ああ…食べてた時の箸の進み具合で気に入ったのかなと思って」

 

しっかり観察しているシンジ。

 

その二人のやり取りを見て、周りの女子が近づいてきたが、それをさえぎるように

 

「…転校生」

 

黒いジャージの少年がシンジに声をかける。

 

「ん?なんだ」

 

「…オマエがあのロボット動かしとったちゅうのはほんまか?」

 

関西弁だ。

 

「?…そうだが、どうした?」

 

「ほうか…すまんがちっと顔貸してくれ」

 

「ふ~ん…かまわないぜ。綾波、残さず食べろよ」

 

シンジは黒いジャージの少年についていった。

 

 

 

 

 

 

 

「校舎裏か…もしかして、お前『番長』ってやつか?」

 

「ちゃんわ!なんやその『番長』って!?」

 

「『番長』を知らないのか!?伝説の男達の称号だぞ!」

 

「知らんわそんなモン。わいは鈴原トウジや」

 

「知ってる、名簿全部見たから」

 

「ほうか。ええか、お前に顔貸してもらった理由は…」

 

「お兄ちゃん」

 

小さな女の子が鈴原に声をかけた。

 

「おっ、ナツミ」

 

(なっ、夏海!?…て、同じ名前なだけだろ、俺)

 

シンジは目の前にいる小さな女の子を見る。

 

(あれ?この子…)

 

「おい、もしかして逃げ遅れてた子か?」

 

「そうや。実は礼をいいたかったんや。妹を助けてくれて、本当にありがとう」

 

鈴原は頭を下げる。

 

「ああ…それなら…」

 

「ちがうよ、お兄ちゃん」

 

少女…ナツミがトウジのジャージを引っ張る。

 

「ナツミを助けてくれたのはクワガタさんだよ」

 

「せやから、そのクワガタってなんやねん。クワガタが助けてくれるわけ…」

 

「ああ、その子を助けたのは確かにゴウラムだ」

 

鈴原が眼を丸くする。

 

「お兄ちゃん、あのクワガタさんの事知ってるの?」

 

「ああ、知ってるよ、ナツミカンちゃん」

 

「ナツミカンじゃないよ、ナツミだよ」

 

「…ごめん。ちょっと昔を思い出してね…あのクワガタさんの名前はゴウラムだ」

 

「ゴウラム…?」

 

「そっ、ナツミちゃんやナツミちゃんのお兄さんやお父さん、おじいちゃんが生まれる前よりもずーと昔から人を守ってきたクワガタさんだ」

 

「ふぇ~、そんなに昔からいたの?」

 

「ああ、きっとゴウラムも喜んでるよ。ナツミちゃんが笑顔でいるからね」

 

「うん!お兄ちゃん。わたしゴウラムさんにお礼がいいたい」

 

「う~ん、実はな。今はちょっとこれないんだが…そうだ」

 

シンジは一枚のカードを何処からか取り出す。それにはゴウラムが描かれている。

 

「このカードにお礼を言ってみろ。そうすれば伝わる」

 

「あっ、ゴウラムさんだ」

 

ナツミはカードを手に持ち、

 

「ゴウラムさん。ありがとう!」

 

素敵な笑顔でゴウラムのカードにお礼を言った。

 

「はい、お兄ちゃんもありがとう」

 

「はい、どういたしまして」

 

ナツミは笑顔で笑っている。

 

「よかったな…」

 

「ああっ、ホンマにありがとうな転校生」

 

「碇シンジだ。シンジでいいぞ」

 

「じゃあワイもトウジでええわ、これからよろしゅうな!」

 

「お兄ちゃんよろしく!」

 

パシャ…

 

そういって笑う二人をシンジはカメラに収めた。

 

「ナイスな笑顔だ」

 

 

 

 

 

遥か彼方の世界…

 

その世界の東京にある科学警察研究所では…

 

「まったく、ゴウラムが消えて動き出すなんてね」

 

「まあまあ、以前にも何度かあったじゃないですカ」

 

「そうね」

 

そんな中『ゴウラム』は感じていた。

 

少女からの暖かい気持ちを…

 

再びゴウラムは鋼の己に誓う。

 

人を護る事を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初日から友達ができるなんてよかったじゃない」

 

「ああっ、人を監視している不埒モンさえいなきゃもっと良かったがな」

 

「にゃはは…」

 

シンジはミサトとネルフの廊下を歩き、エレベータのボタンを押す。

 

「まあ、プライベートさえ邪魔しなければいいさ」

 

そういわれてもシンジのプライベートは結構監視できないでいる。

 

部屋に監視カメラと盗聴器をいくらセットしても妙なギターをどこからともなく出して『ギュイーン』と鳴らすと、監視カメラと盗聴器が破壊される。

 

トレーニングといっていつも夜等に出かけているが、走りこみの時点で見失うらしい。

 

車で追うと、中道に入られて見失うし、なんでも元マラソンマンで誇っていた監視の一人がぶっ倒れて、自信をなくしたらしい。

 

後でさりげなく聞いてみると、

 

「『鬼』の修行は半端じゃないからな」

 

とわけの分からない事を言った。

 

「今日は何をするんだ?『クウガ』の能力ならこの間測っただろ?」

 

「今日はシンクロテストよ。プラグスーツが届いたからそっちで観測したいんだって。『ディケイド』じゃなくて『シンジ君』本人でね」

 

「ふ~ん」

 

チンッ!

 

「お、来た来た」

 

プシュー…

 

エレベーターが開くと、そこにネルフの司令であり、シンジの父親でもある、碇ゲンドウがいた。

 

(あっちゃ~)

 

ミサトは少し顔を手で覆う。しかしシンジは、

 

「おいおい、親父殿。降りねぇのか。じゃあ、ちょっとそんな出口の所に突っ立ってないで、中にいれてくれよ」

 

「………」

 

そういうと、ゲンドウは少しだけ道を開けた。

 

(エェェェェェェェェェッ!)

 

ミサトはその行動を信じられないような眼で見ながら、エレベーターに入る。

 

「おっ、そういえば、初めて来た時以来だな。会うの」

 

「………」

 

「最初はこの間の命令に腹立ててたけど、やっぱり親子ってちゃんと真正面から会話をするべきだと思うな。さあ、こういう時は親子で色々報告しあうらしいぜ?まず親父殿が『学校はどうだ?』とか言って、俺が月並みにも『うん、うまくやってるよ』ってな具合で」

 

「………」

 

「そういえば、お袋の墓参りでも遭遇しねぇな。今年は一緒にいかねぇか?いい加減にしねぇとお袋が化けて…」

 

プシュー…

 

エレベータが開くとゲンドウは何も言わずにエレベータを降りた。

 

『………』

 

沈黙が流れる。

 

「あ、あのシンジ君…」

 

「あの親父、根っから暗いな。せっかく同じ職場になったから今までの事を水に流そうと努力したんだが…」

 

「…気を落とさないでね」

 

「そっちこそ、気にすんな。こっちは全然平気だ。まあ、そのうち何とかなんだろ。しっかし…」

 

シンジはエレベーターを見て、

 

「心配なのはあの親父殿だな」

 

「え?」

 

「ありゃ、たぶん…」

 

(目的の為にはとんでもない事をしでかす眼だ…)

 

 

 

 

『目標をセンターに入れて、スイッチ…っていつまでやりゃあいいんだ。いい加減眼が疲れたぞ』

 

プラグスーツを着たシンジがモニターの向こうでいう。

 

「訓練は大切よ、しっかりやりなさい」

 

『じゃあ、せめて標的変えるなり、動きを変えるなり色々アレンジしてくれ。今ので本当の百発百中だぞ』

 

「そうね。考えておくわ」

 

リツコはそれとは別の作業をしながら返事をする。

 

今、シンジの射撃訓練に付き合っているのはミサトとマヤだった。

 

リツコは頭を抱えて、別の作業をしている。

 

必死になって睨んでいるのは、ディケイドの資料だ。

 

ここ数日、シンジに頼み、『ディケイド』と『クウガ』のデータを取らしてもらった。

 

リツコはどうにかしてこのメカニズムを解析しようとしたが…

 

『まったくわからない。ハハハ…』

 

としか言いようが無かった。

 

なんであんなふうに変身できる。

 

なんで違う形態に変身できる。

 

まったくわからない。

 

「うううぅぅぅ…」

 

「先輩…溜め込んでますね」

 

「あそこまで煙吹いてるリツコを見るのは初めてよ」

 

『お~い。そういえば免許できてる?』

 

「え、ええ。申請は通してるわ」

 

『良かった。急いでる時に無免で捕まると逃げるのに大変だからな』

 

「それ以前に中学生が大型バイクに乗るんじゃないわよ」

 

『チチチッ、俺は仮面ライダーだぜ。バイクに乗らなくてどうするんだ』

 

「まったく…交通費でガソリン代はでないわよ」

 

『大丈夫。あれ、燃料のいらないバイクだから』

 

バッ!(リツコが突然勢い良く立ち上がる)

 

ビクウゥッ!?(二人がびびる)

 

「シンジ君!今のどういうこと!?」

 

『え?そりゃライダーだからバイクに乗らないと…』

 

「違う!その次よ!」

 

『あ、ああ。燃料の要らないバイクってとこ?』

 

「詳しく話しなさい!?」

 

『え~、情報交換が約束…』

 

「レイのスリー…」

 

『バイクの名前はマシンディケイダー。『クラインの壺』といわれる所から無尽蔵の次元エネルギーが供給されている上、あらゆる環境を走破できます』

 

リツコはその話を聞いて口を大きく開ける。

 

どうやら予想外の答えが返ってきて、驚いているようだ。

 

「し、シンジ君。バイク貸してくれない?」

 

『やだ。おいそれより早く教えろ!』

 

「あ、はいはい。レイのスリーポイントは無表情な所と、赤い瞳と、蒼銀の髪よ」

 

シンジは口を大きく開けてパクパクした後、唇を震わせて

 

『き、貴様騙したな!』

 

「あら、最後まで聞かずにベラベラ喋ったのはシンジ君じゃない」

 

『こ、こんなに酷い騙まし討ちにあったのは初めてだ!?この悪の科学者め!死神博士め!イカでビール飲んでろ!』

 

シンジがありとあらゆる限りの罵声を言って、今回の訓練は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、綾波」

 

「…碇君」

 

レイを見かけたシンジは声をかける。

 

「来てたんだな。学校で言ってくれてれば乗せてったのに」

 

と一緒にエスカレーターに乗る。

 

「今日…」

 

「ん?」

 

「碇司令とお話したの?」

 

「なんで知ってるんだ?」

 

「葛城一尉から聞いた」

 

シンジは頭を掻く。

 

「それには間違いがある。俺が一方的に喋っただけだ」

 

シンジはとりあえず話題を戻す。

 

「綾波とは喋るのか、あの親父殿?」

 

「…ええ」

 

「じゃあ色々聞いといてくれ。特に俺の事を嫌いなのかってとこは特に」

 

「…碇司令の事嫌いなの?」

 

「そうじゃない。第一、10年前に会ってない奴の事をどう好きだの嫌いだの言えと?まあ、昔、誤解とかで辛い思いをした人達を知っているから、できるだけ歩み寄ろうとは努力している」

 

「そう」

 

「まあ…」

 

140㎝くらいしかないレイの頭にシンジは手を載せて

 

「親子共々これからもよろしくな」

 

と頭を撫でる。

 

「……………………うん」

 

レイは何故かその手を心地よく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいは~い。今日の昼食は野菜類は金平に野菜春巻に野菜の春雨巻きと野菜ギョーザ、ナス水煮。肉類は贅沢にトンカツ・鳥の照り焼き・焼肉の牛豚鳥のセットだ」

 

『お~(パチパチパチ)…』

 

トウジとカメラ仲間のケンスケが拍手をし、レイは釣られて拍手をする。

 

「てか何で俺がお前らの分までメシ作らなきゃならん」

 

「いいやないか親友」

 

「いいじゃないか親友」

 

「くっ、なんて奴らだ。タダメシを集りやがる。ジュースぐらい用意しろ」

 

レイはさっそく野菜料理を口にしていた。

 

「どうだ、レイ。うまいか?」

 

「……………うん」

 

「そうかそうか」

 

シンジは満足そうに頷く。

 

『♪~♪♪♪~』

 

「ん?」

 

シンジとレイは携帯を見る。

 

シンジの携帯からなったのは勝手に設定を変えた『ELEMENTS』…この曲がなるって事は

 

「おい、2人とも。この弁当をやろう。食っとけ」

 

「おっ!ええんか!?」

 

「ああ、残すなよ。レイ行くぞ」

 

「うん」

 

二人は大急ぎで屋上から駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

レイをタンデムシートに載せたシンジの運転するマシンディケイダーがネルフ本部に到着し、シンジはすぐにプラグスーツを着る。

 

そしてディケイドライバーを腰にセット。

 

「よし、準備完了」

 

シンジが更衣室から出ると

 

「綾波?」

 

「………」

 

レイがシンジを待っていたように立っていた。

 

「激励か?」

 

「…なんでここに来たのか…私にも…」

 

シンジはそれを聞いて笑う。

 

「今はそれでいい。少しずつだ」

 

シンジはレイの頭を撫でる。

 

「…綾波。今日は最高の絆の強さを見せてやる」

 

「絆の…強さ?」

 

「ああ、俺の知ってる中でも最高のな」

 

ちゃんとモニターで見てろよ~、と言ってシンジは向かった。

 

 

 

 

 

 

ネルフ本部のメインモニターには第4の使徒が映っていた。

 

「司令の居ぬ間に第四の使徒襲来。意外と早かったわね」

 

「前は15年のブランク。今回は、たったの三週間ですからね」

 

「こっちの都合はお構いなしか…女性に嫌われるタイプね」

 

ミサトとオペレーターの日向マコトはいまいち緊張感にかける言葉で目の前の状況を評する。

 

発令所の扉が開いてケージでの作業を終えたリツコがレイをつれて発令所に入ってきた。

 

「リツコ?レイも来たのね。初号機の準備はどう?」

 

「後360秒ほどで準備できるわ。」

 

「わかった、シンジ君後5分ほど待って。」

 

『わかった』

 

モニターにシンジ…ディケイドの姿が写しだされる。

 

「結局変身するのね」

 

『そりゃあな。ホンの少しでも倒す可能性の高い方がいいだろ?』

 

「そりゃあそうね、油断なんかしないでよ?」

 

『油断?いつでも常在戦場がモットーですよ。』

 

初号機のモニターに第4使徒が映し出される。

 

いろいろな方向からミサイルや実弾がたたき込まれているが全く効果がない。

 

『しっかし、こうも無駄遣いされると給料上げろって言いたくなるな』

 

「まだ取る気なのシンジ君」

 

『いえいえ、月給の他に時給2000円まで加算していただける事には素晴らしく感謝しているぜ。ところで今日のボーナスにあのミサイル三発分程くれないか?』

 

「ミサイル一発いくらすると思ってんのよ!」

 

『いいだろ~、あそこでバンバン無駄遣いしてるんだから…それにしても』

 

ディケイドは第四使徒を見る。

 

『ビック・イカデビルと名づけよう。刺身にどうだ?』

 

「え、遠慮しとくわ」

 

「委員会から再びエヴァンゲリオン出撃要請が来ています」

 

「うるさい奴らね。言われなくても出撃させるわよ」

 

ミサトはディケイドを見る。

 

「シンジ君…がんばってね」

 

『ふん…頑張るだけじゃなく、勝って来るさ』

 

ディケイドの声が真剣みを得ている。

 

『仮面ライダーは…』

 

シンジはふと、トウジとナツミの笑顔を思い出す。

 

『笑顔を涙に変えようとするモノを、許さない』

 

 

 

 

第四使徒から死角になる位置に射出された初号機はリフトから開放された。

 

「いくぜ…最高の絆の力、見せてやる!」

 

ディケイドはライドブッカーから素早くライダーカードを取り出し、ディケイドライバーにカードをセット!

 

《KAMEN RIDE『DEN-O』!》

 

『SWORD FOME』

 

ディケイドの姿が、なり始めた音楽ともに、白と黒のスーツに変わる。

 

周りに赤い物体が回転し、それが装着される。

 

頭部に装着された赤い桃のようなモノが開き、マスクとなる。

 

そう、この姿は最高の絆で戦った戦士の姿。

 

その強い『心』で、何人もの他者を己に受け入れるという離れ業を行ったHEROの姿。

 

『声』と『声』が重なる度に奇跡が起きていた。

 

『彼ら』は誰よりも、最高に強くなっていたから…

 

なんども奇跡を起こした仮面ライダー…仮面ライダー電王である。

 

『まっ、また違う形態に変身した!?』

 

『せ、先輩!?倒れないでください!せんぱ~い!』

 

まあ、聞こえて来る声は置いておいて、ディケイドは第四使徒を睨みつける。

 

第四使徒は初号機から感じるただならぬ気配に気付き、こちらを見ていた。

 

剥き出しの肋骨のような部分が『キャラコラキャラコラ』動いて気持ち悪い。

 

赤いコアも見えていた。

 

「まずは手始めに…」

 

D=電王SFはライドブッカーから一枚のカードを引く。

 

「さあ、いくぜ!」

 

自信満々にカードをセット!

 

《ATTACK RIDE『ORE-SANJO』!》

 

エヴァが右親指で自分を指し、

 

『俺…』

 

両腕をそのまま大きく広げて

 

『参上!』

 

ど~~~~~~~~ん!

 

決まった。

 

「………」(ディケイド)

 

「………」(第4使徒)

 

「………」(レイ)

 

『………』(ネルフ一同)

 

『そ、それがどうしたの、シンジ君』(ミサト)

 

ディケイドはもう一度ポーズを取る。やはり何の反応もない。

 

ディケイドは無言でライドブッカーからもう一枚カードを引く。

 

「次はこれだ」

 

カードをセット!

 

《ATTACK RIDE『BOKUNI-TURARETEMIRU』!》

 

D=電王SFの体のパーツが離れて回転し、D=電王の姿が変わる。

 

青いボディのロッドフォームだ。

 

エヴァはクルッと優雅にターンし、爪を弄るような仕草をして、

 

「僕に…釣られてみる?」

 

キュン!

 

ディケイドの甘々ヴォイスによって紡がれたこの台詞を聞いたミサト・リツコ・マヤを含めたネルフ女性職員の皆様が胸をトキめかせて、クラッと来た。

 

『こ、こらぁシンジ君!使徒が目の前にいるのに何クドイてんのよ!?』

 

しかし、モニターの向こうのD=電王RFは…

 

「あ、あの、アホ共が…」

 

『ちょっとシン…』

 

「ウルセェ!」

 

D=電王RFはもう2枚カードを引く。

 

カードに描かれていたのは、

 

《『KOTAEHA-KIITENAI』!》

 

と…

 

「………」

 

シュバッ!ギャギンッ!ガギンッ!

 

「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

無言のまま、第4使徒は光の鞭を振るい、初号機を攻撃した。

 

シュバッ、ポイッ。

 

初号機は無残にも足首を掴まれ投げ捨てられた。

 

《『NAKERUDE』!》

 

 

 

 

 

 

その一部始終を見ていたレイは、

 

「今のが…絆?」

 

と首を斜めに傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あのアホ共…いつか会ったら憶えてろ…」

 

D=電王RFはディケイドに戻っていた。

 

もう、なんていうか、レイに申し訳が無かった。

 

「くそ!こうなったらさっさと使徒をぶち倒してフォローを(ぴぴー)ん?」

 

ディケイドがモニターを見ると、

 

「…悪い事ってのは重なるもんだ」

 

左手の人差し指と中指の間、すこしでもエヴァの落下点がずれていたら押し潰されている位置には、恐怖に怯えたトウジとケンスケがいた。

 

 

 



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第漆話/Ride the Wind -MODEL 555 & RYU-KI-

 

「シンジ君のクラスメート?」

 

メインモニターには初号機の足下にいる人物、鈴原トウジと相田ケンスケ人のプロフィールがでていた。

 

さっきの着地で踏みつぶされずにすんだようだが腰が抜けたのか2人とも動けないでいる。

 

「日向君、諜報部は…」

 

「やめなさいミサト!!」

 

「リツコ?」

 

「今あそこに人をやってもその人が危険になるだけでしかない。シンジ君の負担を増やすだけよ?」

 

「だ、だけど…」

 

モニターに映る第4使徒は再び初号機に攻撃を始めた。

 

 

 

 

「くそっ…なんでこんな所に…」

 

ディケイド(シンジ)は第4使徒の攻撃を防御しながら思考する。

 

今は初号機の傍にいる二人を助けなければならない。

 

見捨てて使徒と戦う事は絶対にありえない。

 

「考えろ…考えるんだ…」

 

この二人を助けた上で、使徒を倒さなくてはならない。

 

そんな事…

 

「できる…『僕』ならできる!」

 

そう、簡単な事だった。誰かに二人を助けに向かわせればいい。

 

その時まで時間を稼げばいいだけだ。

 

「いくぜ…」

 

ディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

 

描かれているのは夢を守る為に戦い続けた鋼の戦士。

 

ディケイドライバーにカードをセット!

 

《KAMEN RIDE『FAIZ』!》

 

『STANDING BY...COMPLETE!』

 

ディケイドの体に赤い光線…『フォトンブラッド』が走る!

 

『フォトンブラッド』は軌跡を描くと赤く輝き、ディケイドを包む。

 

そして赤い輝きの中から現れたのは、555…仮面ライダー555!

 

D=ファイズはすぐにライドブッカーから一枚のカードを取り出し、セット!

 

《ATTACK RIDE『AUTOVAJIN』!》

 

「こいよ、相棒!」

 

 

 

 

 

ネルフ駐車場…

 

シンジが乗ってきたマシンディケイダーの周りに数人の白衣を着た者達がいた。

 

彼等はネルフの研究員であり、リツコに言われてマシンディケイダーを調べにきたのだ。

 

リツコでなくてもエネルギーが無限供給のバイクと聞いては舌なめずりで調べたくなる。

 

そして今にも近づかんとした時、突然ギリシャ文字のΦの赤いマークが現れて、マシンディケイダーに走る。

 

すると、マシンディケイダーはまったく別のバイクになり、

 

ガシャン、ガシャーン!

 

ロボットに変形して、

 

ドガガーン!

 

天井を破壊しながら飛んでいった。

 

 

 

 

トウジとケンスケは恐怖に震えていた。

 

目の前のにいる紫の巨人があの化け物の攻撃から守ってくれている。

 

おそらく親友であるシンジが守ってくれているのであろう。

 

しかし、このままではいつ自分達が潰されるのかわからない。

 

その恐怖の中、

 

ドガーンッ!

 

なんと地面を破り、現れたのは一体のロボットだった。

 

「な、なんやコイツ!」

 

「ろ、ろぼっと!?ネルフはこんな人型ロボットも造ってたのか!?」

 

そのロボットは二人の服をネコのように掴むと

 

『ぐぎゅっ…』

 

高速で空に飛び、戦線を離脱した。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…行ったか。じゃあ、こちらも反撃…」

 

ブチンッ!

 

「げっ…」

 

『アンビリカルケーブル、パージ!』

 

『し、シンジ君!?』

 

カウンターが活動限界までの時を刻み始める…残り300秒…

 

「これが残り時間のカウントか…」

 

『こうなったら一端退いて態勢を立て直…』

 

「…有り余るほど、あるじゃないか」

 

『えっ…?』

 

初号機は素早く第4使徒を蹴りつける。

 

ソレと同時にバックステップで第4使徒と距離をとる。

 

D=ファイズは再びライドブッカーからカードを取り出す。

 

「やっぱり、『ファイズ』に変身してよかったよ」

 

ライダーカードをセット!

 

《FOME RIDE『FIZE AXEL』!》

 

D=ファイズの胸部アーマー『フルメタルラング』が展開して肩の定位置に収まる。

 

胸部に心臓ぶらしきものが、丸見えになる。

 

フォトンストリームが耐久値限界まで上がって輝きを増し、銀色の『シルバーストリーム』が流れ、瞳もイエローからレッドに変色する。

 

仮面ライダーファイズ最速形態=アクセルフォームとなる。

 

待機形態(アイドリングモード)のままD=ファイズは余裕に腕を振る。

 

「10秒で決めてやる」

 

『な、何言ってるの!?バカな強がりはよしなさい!そんなの無理に…』

 

『Start Up』

 

D=ファイズはミサトの声を無視して、腕時計…ファイズアクセルのスイッチを押す。

 

「はぁぁぁぁ…はっ!」

 

 

 

 

 

「え、エヴァが…!?」

 

「き、消えた!?」

 

エヴァが突如消えてしまった。ちゃんとモニターにはエントリープラグ内のD=ファイズが映っているのに…

 

司令部のメンバーが疑問を解く前に、

 

ドガンッ!

 

「なっ!?」

 

第4使徒が空高く上空へ吹っ飛んだ。何が起きたのか、凄まじい威力の一撃を喰らったような吹っ飛び方だった。

 

「いっ!?」

 

すると空中に円錐状の赤い光がいくつも現れ、第4使徒を取り囲む。

 

赤い光はそのまま槍の如く、

 

第4使徒の体を貫き、最後にはコアを貫いた。

 

この間、約10秒!

 

『Reformation』

 

モニターから音声が聞こえると、突如エヴァが現れた。

 

それと同時に、

 

ドガァァァァァァァァァァァァッ!

 

第4使徒は十字架の光と共にこの世から消えた。

 

「ま、まさか…」

 

リツコはD=ファイズを見ながら戦慄する。

 

「目にも止まらない超速で動いたっていうの!?」

 

リツコはモニターに映るD=ファイズを見る。

 

D=ファイズは元の形態に戻っていた。

 

「ディケイド…ああ、調べたい…」

 

現代の科学では開発できないテクノロジーを多種多様に操るディケイド…

 

それは科学者にとって最高のご馳走だった。

 

 

 

 

 

「ふぅ…まっ、こんなもんか」

 

D=ファイズのフルメタルラングが閉じ、アクセルフォームから通常形態に戻ると、D=ファイズはディケイドに戻った。

 

ディケイドは一息吐く。

 

「アクセルフォーム…使えるけど、結構エネルギー喰うな」

 

ディケイドはカウンターを見る。

 

まだ一分も経っていないのに、残り活動限界が一分以下になっていた。

 

『アクセルクリムゾンスマッシュ』を使ったのも原因だろうが、結構な燃費の悪さだ。

 

「この調子じゃ『クロックアップ』も結構使いそうだな。エヴァに乗ってる時はあまり戦闘は期待せずに、退避手段として考えたほうがいいか…」

 

ディケイドは少し頭を垂れ、

 

「助けられて良かったけど…二人とも…」

 

 

 

 

 

 

 

数時間後…シンジはレイと共に多少ゲッソリとしてネルフを出た。

 

ゲッソリとした理由はリツコの質問攻めのせいだ。

 

もう、ファイズの事を根堀葉堀聞かれた。

 

「シンジ…」

 

シンジは声のした方を振り向く。

 

そこにはトウジとケンスケがいた。

 

「シンジ。助けてくれてありがとな」

 

「ホンマ助かったわ!」

 

二人はシンジに感謝の言葉を送る。

 

そんな二人に、シンジは近づき、拳を握って、

 

ドガッ!

 

「がっ!?」

 

ドゴッ!

 

「ぐっ!?」

 

「碇君!?」

 

レイは驚く。

 

シンジが二人を思いっきり殴ったのだ。

 

「碇君…なに…を?」

 

レイはシンジの顔を見て再び驚く。

 

シンジが…泣いているのだ。

 

「二人とも…なんであんなところにいたんだ」

 

「そ、それは…」

 

「その…」

 

「死んじゃったら…」

 

シンジは目から流れる涙を拭きもせず、

 

「死んじゃったらどうするんだよぉ…」

 

泣いている子供のような声を出した。

 

 

 

 

 

 

 

それはシンジが初めて、『死』による別れを経験した時の記憶。

 

三番目の世界を旅した時だった。

 

自分と同じ『名前』を持ち、『バカ』と『チビ』というコンビと言われていて腹を立てていた世界。

 

その世界は仮面ライダー同士が戦う世界だった。

 

最後に生き残った者にはたった一つだが、どんな願いも叶える…そんな願いに集まった人達。

 

 

恋人の命を救う為…

 

己の罪を隠し、頂点を掴まん為…

 

消えそうな己の命を、永遠に変える為…

 

己の『占い』を外す為…

 

命を弄ぶ為…

 

暴力の渇きを癒す為…

 

姉の新しき命を手に入れん為…

 

更なる『力』を手に入れん為…

 

英雄にならん為…

 

幸福を手に入れん為…

 

『己』を手に入れる為…

 

妹の命を救う為…

 

 

 

何も関係ない人間が聞けば、それは間違っていると止めるような願い…

 

しかし、彼等はそれに縋るしかなかった。

 

それは望んだ者もいれば、望んでいなかった者もいたが、絶対に避けられぬ願いの礎(たたかい)

 

その戦いの中、たった一人の男は戦い続けた。

 

 

戦いを止めたい…

 

『俺は戦いを止める!』

 

この戦いを馬鹿にしているかのような願いを彼は叶える為に戦い続けた。

 

『人を助ける為にライダーになったんだから!ライダーを助けたっていい!』

 

戦いを止める為に戦う。

 

そんな矛盾した己の願いを叫び続けた。

 

そして最後には…

 

「やっと、ちょっとは答えらしいもんが見つかったかもしんない…でも。なんか俺…だめかもしんない…」

 

「城戸!おい!城戸!!おい、どうした!」

 

倒れるシン兄に駆け寄る『仮面ライダーナイト』である『レン兄』と士お兄ちゃんと僕。

 

車のドアについた大量の血…

 

「俺さ…昨日からずっと考えてて、それでも解かんなくて…でも、さっき思った。やっぱりミラーワールドなんか閉じたい。戦いを止めたいって。きっと、すげえ辛い思いしたり、させたりすると思うけど、それでも、止めたい。正しいとか正しくないとかじゃなくって。俺も、ライダーの一人として…叶えたい願いが、それなんだ…」

 

「ああ…だったら、生きて、その願いをかなえろ!!死んだら終わりだぞ!!」

 

「そうだ!お前は戦いを止める姿を俺に見せるんじゃなかったのかよ!おい!」

 

「そう、なんだよな。蓮、士…それに、チビシン」

 

僕は泣きながらシン兄を見る

 

「お前等はなるべく生きろ…生きて…」

 

「おまえが生きろ!!城戸!!死ぬな!!死ぬな!!」

 

「目を閉じるな!おい!」

 

「シン兄!死なないで!『お願い』だよ!シン兄!」

 

手を握るレン兄。もう片方の手を僕は握る。

 

「もっと…」

 

それが…仮面ライダー龍騎、『城戸 真司』の最後の言葉だった。

 

 

 

 

「こんな事で死んじゃったら…すごく、お互いに辛いんだ」

 

キィィィィィィィィッ!

 

周囲にいた全員に耳に響く音が聞こえる。

 

「な、なんや…これ…」

 

「…!?」

 

「ひっ!?」

 

全員が警戒する中ケンスケが悲鳴を上げる。

 

「な、ナンだよこれ!?」

 

それは『鏡』のようになっているガラス壁。

 

その向こうには…

 

『カカッ…』

 

『カカカッ…』

 

『カカカカカカカカカカカカカッ!?』

 

なんと数匹の化け物が笑っていた。

 

シンジは『鏡』睨む。

 

「今度はミラーモンスターか…しかもゼール軍団」

 

そう、鏡の映るのは『ギガゼール』を筆頭に『メガゼール』『オメガゼール』『ネガゼール』『マガゼール』だった。

 

ミラーモンスター…『命』を補う為に『命』を喰らう者達…

 

「俺は…僕は守り続ける」

 

シンジは三人を見る。

 

「だから…大切にしてくれ…」

 

シンジはカードを取り出す。

 

「その『命』を…」

 

《KAMEN RIDE『DECADE』!》

 

ディケイドライバーにカードをセットして、シンジはディケイドになる。

 

初めて見るトウジとケンスケは腰を抜かした。

 

「シン兄…僕はシン兄みたいに戦いを止めるなんて事はできないかもしれない…」

 

ディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

 

「でも…僕は守り続けるよ。だから…」

 

《KAMEN RIDE》

 

「力を貸して」

 

《『RYU-KI』!》

 

鏡の中からいくつかの鏡像が現れ、それがディケイドに覆い重なる。

 

重なった鏡像が割れるとそこには別のライダーがいた。

 

最後まで戦いを止める事を『願い』とした仮面ライダー…仮面ライダー龍騎の姿に!

 

すぐにD=龍騎はカードを取り出し、セットする。

 

《ATTACK RIDE『ADVENT DRAGREDER』!》

 

『ギャオォォォォォォッ!』

 

咆哮を上げて一匹の赤龍…『無双龍ドラグレッダー』が現れる。

 

「また後でな」

 

その声には万感の想いが篭っていた。

 

D=龍騎はそのまま鏡の中に入っていった。

 

《FINAL ATTACK RIDE『RYU・RYU・RYU・RYU-KI』!》



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第捌話/それぞれの思惑と困惑

「ふふ~ん…こいつが『5番目』か」

 

男はニヤニヤ笑いながら『5番目』を見る。

 

「まあ、ディケイドにまたあっさり殺られるのも面白味がないし…」

 

男は一枚のカードと

 

「力をあげるよ。ほんの少し…ね」

 

『それ』を取り出して、『5番目』に近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんていうか…でっかいな」

 

シンジの呑気な声が仮設テントの中に響く。

 

「なに言ってんの?何度もエヴァの中から見て戦ってんじゃない?」

 

「こっちもでかくなった様なもんなんだぜ。実感わくかよ」

 

「そうなの?」

 

シンジ達の目の前には第4使徒の腕の部分があった。

 

ここは死んだ第4使徒の死骸の解体、および調査現場だ。

 

以前の第三使徒は跡形もなくなってしまったが、エヴァの『アクセルクリムゾンスマッシュ』により千切れたいくつかの部分が爆発による消失を逃れていた。

 

使徒の初のサンプルとなる。

 

赤木リツコ博士狂喜乱舞している。

 

「まったく…血を爆発時に撒き散らすなんてな。爆発してはい終わりって訳じゃないんだな」

 

シンジは使徒の腕と海のように溢れる血を眺める。

 

「…背負ってやるさ。お前を殺した罪もな」

 

 

 

 

テントの中を一通り見終わったシンジとミサトは現場の指揮をしているプレハブに入った。

 

「リツコ?何かわかった?」

 

「ミサト?シンジ君も来てたの?」

 

「おう。調査は進んでんのか?」

 

「今度からもっと考えて戦ってくれない?原型をとどめて欲しいわ」

 

「文句言うなよ。少しブツが残ってるだけでも感謝してくれ」

 

シンジは呆れた顔でリツコを見る。

 

「それで、なんかわかったんでしょうね?」

 

「…これを見て」

 

リツコが見せたパソコンのディスプレイには『601』と表示されている。

 

「…何、これ?」

 

「解析不能を示すコードナンバー」

 

「つまり、訳わかんないって事?」

 

「そう、使徒は粒子と波、両方の性質を備えるような光のモノで構成されているのよ」

 

ミサトが難しい説明に頭を悩ませている。

 

「…使徒は生物じゃないのか?」

 

「さっぱり理解不能だけれどね…とかくこの世はわからないことだらけよ」

 

シンジはリツコの言葉を黙って聞いていたが…

 

『嘘つけよ』

 

リツコに見せ付けるように口を動かす。

 

『あら?根拠はなに?』

 

『さあな』

 

シンジは興味なさそうに周りを見る。

 

(この死神博士モドキは何かを掴んでいる…のは間違いないな)

 

「でもわかった事もあるわ、見てこの使徒独自の固有波形パターン」

 

「これって…」

 

「そう、構成素材の違いはあっても信号の配置と座標は人間の遺伝子と酷似しているわ…99.89%ね」

 

「それじゃ…」

 

「そう、エヴァと同じ」

 

シンジはソレを聞いて目を見開く。

 

(まるで『オルフェノク』や『ワーム』だ。もしかして…)

 

シンジはテントの方を見る。

 

(あいつ等も、『人間』のお仲間って可能性もあるのか?それとも別の可能性の何か…か?)

 

シンジは眼を細める。

 

「あれ?もしかして親父か?」

 

「あ、ホント。司令も来ていたのね」

 

「ええ、司令が現物を見たいっておっしゃってね。」

 

シンジの目にはゲンドウがいつもつけている白い手袋を外し素手でコアの破片をさわって周りの人間に何か言っているのが見えた。

 

「ん?手が酷い火傷してるな。なんかあったのか?」

 

「ああ、それはね」

 

リツコの話では零号機の機動実験時、零号機が暴走し、さらにオートイジェクションが作動してエントリープラグが射出され室内を飛び回ったそうだ。

 

レイの怪我はその時のもので、ゲンドウがレイを助ける為に自らを省みずレイを助けたらしい。

 

「そうか…まあ、本人の真意はどうあれ、綾波を助けた事には変わりないな」

 

「お父さんを見直した?」

 

「さあな」

 

シンジは父親の目を思い出す。

 

(一体何を企んでるんだ。親父は…)

 

シンジは一人の男を思い出す。

 

昔…数えるほどしか会った事はないが『彼』の印象は今でも焼きついている。

 

そう、妹を救う為に全てを犠牲にしようとした『金の翼』を持つ、神の名を冠したライダーを…

 

(あの人と同じ眼をしている…一体なんなんだ?親父の企みは…?何を…何を求めているんだ?)

 

 

 

 

 

「よう、綾波。おはようさん」

 

「…おはよう」

 

シンジはマシンディケイダーをマンションの出入口から出てきたレイの前で止める。

 

「乗れよ。今日は零号機とやらの機動実験なんだろ。送ってく」

 

「学校は?」

 

「サボタージュ。トウジ達は残念な事に昼ご飯抜きだ」

 

後ほどシンジの携帯電話に『鬼!悪魔!冷血人間!』というメールが2通来ていた。

 

「…どうして?」

 

「ん?」

 

「どうして一緒にいられるの」

 

「ああ」

 

この間シンジはトウジとケンスケを殴った。

 

理由はあの時の二人の行動からだ。

 

その後でも3人はつるんでいる。

 

(伝わってよかったな…これでもうあんな事はないだろ)

 

シンジはその事が少し嬉しかった。

 

「まっ、これが『絆』って奴さ」

 

「絆…」

 

レイは少し俯いて…

 

「私の絆…絆…私には…」

 

「俺とこうやって話をしている」

 

「えっ?」

 

「それも『絆』だ」

 

シンジはニコッと笑う。

 

レイは少し動揺していたが

 

「ホレ乗れ。遅れるぞ」

 

「…うん」

 

シンジはマシンディケイダーにレイを乗せて、走らせた。

 

「まあセンパイにこう言うのもなんだが緊張しないようにな。今度は親父だけじゃなく俺もいるとはいえ、安心しろとはいわねぇ。気をつけてな」

 

「………」

 

ここ暫く、レイのシンクロ率は安定していない。不安定な形で上がったり下がったりしている。

 

(…この人が来てから…私はおかしくなっている)

 

今時分に背中を見せている男の事が…レイは知りたい。

 

様々な絆を見せてくれる彼を…

 

そして…

 

(私には…本当にあるの…『代わりがいる』私に…)

 

 

 

 

 

 

実験場に緊張が満ちる。

 

「レイ、聞こえるか?」

 

『はい』

 

ネルフ司令・碇ゲンドウの重たい声が響く。

 

横にいる副司令である冬月コウゾウも真剣そのものだ。

 

「これより零号機の再起動実験を行う」

 

その言葉により、さらに周りの雰囲気が変わる。

 

「第一次接続開始」

 

「主電源コンタクト」

 

その言葉を皮切りにリツコとマヤを筆頭とした技術部があわただしく動くのをシンジはミサトの隣で真剣な目で眺めていた。

 

目の前の実験場には黄色くカラーリングされた単眼のエヴァンゲリオン零号機が拘束具に固定されて起動準備にある。

 

シンジはレイの映るモニターを見る。

 

エヴァに載っている時のレイは真剣そのもので、迷いはなさそうだが、

 

(最近、綾波のシンクロ率の上り下りが激しいって聞く…油断ならないな)

 

シンジはポケットのディケイドライバーを確認する。

 

いざという時は全力を尽くして零号機を破壊してレイを助けるつもりだ。

 

(綾波…ガンバレよ)

 

起動準備は着々と進んでいる。

 

皆、前回のような暴走はごめんなのだろう。

 

室内にはピリピリした空気が張り詰めている。

 

「主電源コンタクトっ!!」

 

「稼働電圧臨界点を突破!!」

 

「了解!!」

 

「フォーマトフェイズ2へ移行」

 

「パイロット、零号機と接続開始」

 

「回線開きます」

 

「パルス及びハーモニクス正常」  

 

「シンクロ問題なし」

 

「オールナーブリンク終了。中枢神経素子に異状なし」 

 

「1から2590までのリストクリア」

 

「絶対境界線まで、あと2.5…1.7…1.2…1.0」

 

起動実験は最終段階に入った。

 

前回はこのあたりで異常が出たためにいっそうの緊張感が全員の間に走る。

 

「0.8…0.6…0.5…0.4…0.3…0.2…0.1突破っ!!ボーダーラインクリア、零号機起動しました」

 

零号機の単眼に光がともる。

 

それを見た全員が喜びの声をあげた瞬間!

 

ぱ~~~~~ん!

 

とてつもない破裂音がなり、音の衝撃により何人かは倒れる。

 

当たりにチャフのようなに銀紙とリボンが飛ぶ。

 

何事かと周囲の者達は周りを見る。

 

音の発生源は…碇シンジだった。

 

カラーコーン並の特大サイズクラッカーを持っていて、満面の笑顔でレイを見ている。

 

音の直撃を受けたミサトは倒れていた。

 

レイもスピーカーから聞こえる音に驚いていたがシンジはお構いなしに、

 

「ナイスだ!綾波!よくやったぞ!」

 

グッと親指を向ける。レイは突然の事に戸惑っていると、またもや特大クラッカーを出して第2撃を放とうとするシンジを止めようと職員が向かうが、

 

『♪♪~』

 

実験場の電話が電子音を奏でた。

 

冬月が受話器をとる。

 

電話の内容を聞いた冬月の表情が険しくなった。

 

 

 

 

 

「碇、未確認飛行物体が接近中との事だ。恐らく第5の使徒だな」

 

実験場の空気がさっきまでと別の意味で緊張する。

 

「テスト中断。総員、第一種警戒態勢。零号機はそのまま待機!!」

 

「零号機はつかわんのかね?」

 

「まだ実戦にはたえん…初号機は?」

 

「400秒で準備できます」

 

「…出撃だ」

 

周囲が初号機の準備で慌ただしくなる。

 

そんな中でゲンドウはまだクラッカーを鳴らそうとし、職員に取り押さえられているシンジを見つけた。

 

「何をしている?」

 

「こら!祝砲の邪魔を…あ?祝砲まだあげてないんで取り敢えず上げようと…」

 

「…出撃だ」

 

「わかってるって、すぐにいく。その前に…親父」

 

シンジは真剣な眼差しはゲンドウを貫く。

 

「正直な所…俺は親父が何を企んでいるのか、今の所全く分からない」

 

「………」

 

「ずっと放りっぱなしにしていた息子を呼び出して、エヴァに乗せて使徒と戦わせる。そしてあんたは間違いなく俺がエヴァを動かせる事を知っていた。マルドゥック機関だが何だかしらんが、そいつらが必死に探して俺の他にたった『3人』しか見つかっていないパイロット。エヴァなんて特殊なモンのパイロットにするなら、普通早々に呼び出して様々な実験を繰り返すんだろうな。だが、あんたはいきなり俺を初号機に載せた。何故かって?動かせる事を知っていたからだ…企んでいないと思う方がおかしい」

 

シンジはディケイドライバーを取り出す。

 

「だがな…俺はエヴァンゲリオン初号機パイロットである以前に『仮面ライダー』だ」

 

シンジはディケイドライバーを装着する。

 

「人を護る為にエヴァに乗って使徒と戦う。だが!」

 

《KAMEN RIDE》

 

「あんたがもし、とんでもない事を企んでいたら…その時は俺が止める!」

 

《『DECADE』!》

 

シンジの周りに9体の鏡像が現れるはディケイドに変身する。

 

そして緑の瞳はゲンドウを貫く。

 

「俺が『破壊』する…それが、『ディケイド』だ」

 

そういってディケイドは実験場から出て行った。

 

 

 

 

 

正面のモニターにはクリスタルのように美しい光沢を持つ正八面体が映っている。

 

「こいつが…5番目の使徒、か。おい、これホントに生きもんか?」

 

おおよそ生物とは無縁のその姿は第三新東京市の真上に浮かんでいた。

 

『使徒の反応はちゃんとあるわ。それに目の前にある事が事実よ』

 

「全くもって…ところで、ミっちゃんにリッちゃん『はたくわよ』この使徒はどうやって攻撃してくると思う」

 

『えっ?』

 

「攻撃方法だよ。『使徒』なんだろ。なんかしらの攻撃しかけてくるんだろ?見た感じ手も足も出せそうにないが、奴にも手段がある筈だぜ」

 

『そうね~…』

 

「超高速で突っ込んでくるとか?」

 

『あら、体の一部を分解させて飛ばしてくるかも?』

 

『え、っとそうね。そうだビームとか!単純にビーって遠くの敵を攻撃…まっさかね~』

 

そのミサトの言葉に全員がミサトを見る。

 

『あ、ありゃ?みんなどうしたの』

 

「…おい、電池は満タンなんだろうな」

 

『ええ、普通に稼働して五分間分…満タンよ』

 

「そうか…間に合うかな」

 

ディケイドは一枚のカードをライドブッカーから取り出す。

 

描かれているのは『太陽の神』…

 

「いくよ…『僕』も天の道を…」

 

《KAMEN RIDE『KABUTO』!》

 

『HEN-SIN』

 

ディケイドの姿が変わり、銀色の装甲に覆われた姿となり、

 

『CAST OFF』

 

装甲が全身から浮かび、飛び散り、別次元へと消える。

 

そして顔面に一本の角が装着され、

 

『CHANGE BEETLE』

 

カブトムシを象った姿のライダーとなった。

 

『ま、また違う形態…いったい何種類あるのよ!』

 

「秘密だ」

 

そう、その姿こそは己の道を…『天の道』を往き、総てを司り、己の正義を貫いた仮面ライダー…

 

『光を支配せし太陽の神』…『仮面ライダーカブト』!

 

D=カブトはライドブッカーから一枚のカードを取り出し、

 

「さあ、上げてくれ。準備は万全だ」

 

その言葉により、ミサトは表情を引き締め、

 

『エヴァンゲリオン初号機…発進!』

 

ミサトのかけ声とともに初号機はリニアレールで射出された。

 

目指すは地上…

 

『!?目標内部に高エネルギー反応っ!』

 

『なんですって!』

 

初号機が地上に出る直前、使徒をモニターしていたマヤから悲鳴のような報告が入る。

 

第5使徒が…美しく、まるで神の芸術のように…変形していく。

 

『円周部を加速!収束してゆきます!』

 

『…まさかっ…荷粒子砲?ミサトがいうから!?』

 

『あ、あたしのせい!?』

 

第5使徒のエネルギーの収束は止まらない。

 

ビカッ!

 

暴虐なる『光』が放たれる!

 

『だめっ!よけてっ!』

 

「当たり前だ!」

 

《ATTACK RIDE『CLOCK UP』!》

 

ミサトの悲鳴とD=カブトの合いの手、初号機が射出され、第5使徒から加粒子砲が放たれるのはほぼ同時だった。

 

その光は途中にあるビルを貫きながら初号機に迫っていく…が、初号機に命中する寸前、初号機が消えた。

 

『えっ?』

 

 

 

 

「まったく、なんてもん持ってんだ。ミサトさんのせいだぞ。ビームとかいうから」

 

D=カブトの乗る初号機は第5使徒に向かって走る。

 

「さあてと、とっととこんな物騒な奴を退治…ん」

 

D=カブトは第5使徒が変形していく…この『世界』で!

 

「なっ!?」

 

(『クロックアップ』に対応しただと!?)

 

ビカッ!

 

そして二度目の『光』が放たれた。

 



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第玖話/偽りの神速、本当のターゲット

D=カブトは自分に向かって砲台形態のカタチを取っている第5使徒を見て、驚愕する。

 

(『クロック・アップ』に対応しただと!?バカな!)

 

D=カブトの驚きを無視し、第5使徒は加粒子砲を放つ。

 

「ちいっ!」

 

D=カブトはそれを回避し、すぐに残りタイマーを見る。

 

D=カブトとのシンクロのおかげか、クロックアップの影響下にあっても動いているが残り時間は

 

『2:00』

 

(減りすぎだ!)

 

すぐさまD=カブトの操る初号機は辺りを見回し、要塞都市のマニュアルに乗っていた地下に繋がるブロックを破壊して、飛び降りた。

 

地面に着地と同時に

 

『CLOCK OVER』

 

元の『時間(せかい)』に戻り、

 

ヒュン…

 

画面が真っ暗になった。

 

「ふぅ…ギリギリだったぜ」

 

『ちょ、ちょっとシンジ君どうやってそんな所に来たのよ』

 

「まぁ、色々だ。ところで作戦会議を開いてくれ。近距離戦はあの使徒には無理だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某国・某所での出来事。

 

 

「おや?君かい」

 

男は自分の執務室に入ってきた『彼』に柔らかい笑顔で迎える。

 

そこは男の専用の執務室。近代的な造りになっており、どこかの社長室のような部屋だ。

 

部屋には応接セットから仮眠室にキッチンまであり、この部屋で生活もできる。

 

男は彼が昔協力した『組織』の一端から届いた『計画』の報告書を読んでいたところだ。

 

「君なら大歓迎だよ。どうだい、いい豆を『持ってきた』んだ」

 

男は『彼』を最上級の応接椅子を薦める。男は自ら立ち上がり、最高性能の珈琲メーカーを操作して、珈琲を造り、自分の分と『彼』の分をいれる。

 

そして応接テーブルの上に置いた。

 

男はまず一口飲むと

 

「…ふぅ。やはり『愛理さん』と『マスター』の足元にも及ばない。熟練した技術を機械に設定するのは難しいものだ」

 

『彼』も珈琲を飲み、『充分美味しいですよ』と男にいった。

 

そして『彼』は男に今日の用件をいった。

 

「ああ、『アレ』に不完全な『クロックアップ』を付けた理由かい?なぁに、『ディケイド』がズルをしないようにだよ。ほら、第4使徒を『アクセル』で倒しちゃったからね。そうしないとつまらないから」

 

男は本当に楽しそうにいう。

 

『彼』は何故完全な『クロックアップ』を付けないのか、と男に問う。

 

「別に僕は『使徒の味方』じゃない。僕の目的は完全な…」

 

『彼』はそれを聞き、表情を変える。

 

「おや、君が表情を変えるなんて珍しい。まあ、今回の最優先はあの無駄な感情を持ちすぎた『人形のリセット』だからね。狙いはそっちさ。その為の能力も与えている。たぶん『排除』する時にあの使徒はディケイドに殺されるよ。だから『ディケイド』がもし目論見が外れて負けたらその時はその時。でも…ちゃんと勝ったら」

 

男は爽やかだが…どこか獰猛に笑って、

 

「早過ぎるかもしれないけど、君にも表舞台に立ってもらうよ。それが…無理矢理君を引き摺りだした『僕の計画』なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジはモニターに映っている第5使徒の映像を見ている。

 

ドリルのようなもので地面を掘りながら、迎撃をしていた。

 

初号機のバルーンから戦闘機までバリエーションは様々だ。

 

それら全てを撃ち落している。

 

加粒子砲を撃つ時、コアが丸見えなのだが、それに攻撃できないのが現実だ。

 

しかし…

 

「おかしいな」

 

「なにが…おかしいの?」

 

「うぉ!?」

 

周囲を薙ぎ払うように目標を撃ち落す第5使徒を見ていた時に声をかけられ、シンジは驚く。

 

声の主は…

 

「綾波」

 

「使徒の何処がおかしいの?」

 

「あ、ああ。なんで使徒は『クロックアップ』しないんだろうって」

 

「クロック…アップ?」

 

「あっ、『クロックアップ』っていうのは僕がさっき変身した『カブト』の反則的な能力でね、自分のタキオン粒子って奴を操作して時間の流れを操作するして、物凄い超高速で動く事ができるんだ」

 

レイはそれを黙って聞く。

 

「普通は対応できない。でもね、あの使徒は『クロックアップ』に対応したんだ」

 

(必要ないからか…)

 

それは初号機の精巧なバルーンがあがった時だ。

 

(もし第5使徒に防衛本能とか学習能力があれば、初号機を見た瞬間『クロックアップ』をして対応する)

 

が、それもしていない。

 

(見破れるだけの知性があるのか…それとも…)

 

「試してみるか」

 

「え?」

 

シンジはディケイドライバーを取り出し、

 

「変身」

 

《KAMEN RIDE『DECADE』!》

 

カードをセットし、ディケイドに変身する。

 

素早くカードを2枚取り出し、次の『実験』の開始音を聞き、カードを1枚セットする。

 

次は最新型の戦闘機を2台出すらしい。

 

オートパイロットなのでスペック限界速度だそうだ。

 

《KAMEN RIDE『KABUTO』!》

 

『HEN-SIN』

 

ディケイドの姿が変わり、銀色の装甲に覆われた姿となり、

 

『CAST OFF』

 

装甲が全身から浮かび、飛び散り、別次元へと消え、顔面に一本の角が装着され、

 

『CHANGE BEETLE』

 

D=カブトとなる。

 

それを綾波は集中してみていた。

 

そして

 

《ATTACK RIDE『CLOCK UP』!》

 

D=カブトは『クロックアップ』をする。

 

そして暫くしてから

 

『CLOCK OVER』

 

『クロックアップ』を解除。

 

暫くすると映像が流れてきた。

 

流れてきた映像は…

 

「どうして…?」

 

レイは映像を見て疑問を浮かべる。

 

第5使徒は何もしていないのに、戦闘機は急に爆発したからだ。

 

「なるほど。だいたい分かったよ」

 

シンジは変身を解く。

 

「え?」

 

「あいつ…自分の力では『クロックアップ』できないんだ」

 

そう第5使徒は『クロックアップ』に『対応』できるだけ。

 

誰かが『クロックアップ』すれば、自分も反応して『クロックアップ』をする。

 

(じゃあ、『アクセル』で…いや、それにも対応されていたらかなりやばい。リスクが高すぎる)

 

そしてもう一つシンジは疑問を持っていた。

 

(…何故あの使徒は『クロックアップ』に対応できるんだ?)

 

クロックアップは『別の世界』のチカラ…それに対応するのは…

 

(まさか…)

 

シンジは最初に戦った2体の『グロンギ』と『ミラーモンスター』のゼール軍団を思い出す。

 

(…『神』って奴の仕業か?そいつが別の世界の『奴ら』と『チカラ』をこの世界に…でも、どうして使徒にちゃんとした『クロックアップ』能力を装備させないんだ?その方が確実なはず?)

 

プシュー…

 

ドアが開き、ミサトが入ってきた。

 

「作戦が決まったわ」

 

 

 

 

「目標のレンジ外超長距離からの直接射撃?」

 

シンジが半ば呆れた様に声に出す。

 

「そう。目標のATフィールドを中和せず、高エネルギー収束帯による一転突破による殲滅…って作戦よん。名づけて!八島作戦!」

 

「具体的にはどうすんだ?前に見るだけ見たうちのポジトロンじゃあ無理だろ」

 

シンジは書類に書かれていたポジトロンライフルのスペックを思い出す。

 

「実はね、戦略自衛隊の研究部で自走陽電子砲の開発が進められてるものがあるのよ。プロトタイプなだけに高出力の実験も出来るように設計されているの」

 

「それならあのフィールドを貫くこともできるってわけだ」

 

「で、弾はどれぐらいかかるんだ?」

 

「最低1億8千万キロワット」

 

「…なんだそりゃ?現実的な数字見ろよ。充電だけで数日…」

 

「大丈夫。日本中から持ってくるから♪」

 

「は?」

 

「まずネルフの権限を使い日本中の電力を徴収して陽電子砲の充電をする。それと同時に使徒に対し反対方向から煙幕弾を搭載した無人機をオトリにするの。使徒の荷粒子砲の威力から、連続しての使用は難しいってリツコからの太鼓判をもらっているわ。使徒が無人機に攻撃をした瞬間、反対方向からの陽電子砲でズドン!…よん」

 

「暴動が起きそうだな。作戦自体は無茶だが理にかなってる…が、大丈夫なのか?」

 

「成功確立8.7%」

 

「ふざけるな…といいたいが、一番高いのがそれ、なんだろ」

 

「理解力のある子は大好きよ」

 

「今すぐ馬鹿になりたい。でもよく通ったな、そんな作戦。親父と副指令は反対しなかったのか」

 

「あなたが決めてよ」

 

「俺?」

 

シンジは疑問を浮かべる。

 

「あなたの変身…『クウガ』の『ペガサス』。あれなら成功確立が跳ね上がるから」

 

「なるほど…でもな、それでも危ないぜ。『クウガ』の『ペガサスフォーム』には物凄い弱点があるからな」

 

「ふぇ?」

 

ミサトが固まる。

 

「実はな…『クウガ』の『ペガサス』にはタイムリミットがある。50秒くらいがリミットだ」

 

「どうして!?」

 

「どうしてって…考えても見ろよ。視力と聴力を人間の数千倍にあげて『紫外線』から『赤外線』も可視領域にし、超音波すらも聞く事が出来る状態…中の人間が耐えられると?」

 

「…も、もし超えちゃったら?」

 

「約2時間は俺が使い物にならない」

 

ゴクッ、とミサトは喉をならす。

 

「もちろん外すつもりはないが…俺だって万能じゃない。覚悟はしておけ」

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、いたいた。なんだもう着替えたのか?ほれ、オロ○ミン○とU○Cオリ○ナル。どっちがいい」

 

「…私に?」

 

「他に誰がいる?誰もいないぞ」

 

レイはオロ○ミン○を受け取った。

 

シンジはすぐにU○Cオリ○ナルのプルトップを開けて、飲み始める。

 

レイも栓を抜いて飲み始めた。

 

「…シュワシュワ」

 

「元気出るだろ。ハツラツに」

 

シンジがニッコリ笑うとレイの胸が何故か痛み出した。

 

レイはそれを押さえ、

 

「今日の作戦は結構難しいな。まあ、お互い頑張ろうぜ」

 

「………」

 

「ん?なんだ不安なのか?大丈夫俺が一発で…」

 

「…あなたは…死なないわ」

 

「え?」

 

そう、この先例え何があっても

 

「私が守るから」

 

今日の作戦でのレイの役割は『盾』だ。もしも使徒がシンジを攻撃した場合、自分が盾となり、シンジを守る。

 

僅か十数秒しか持たない盾で…

 

「あなたは…死なない」

 

「そうか…じゃあ、安心しろ」

 

シンジはニッコリ笑って

 

「お前は死なないぜ」

 

「え?」

 

「俺が守っちゃうからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなもん役に立つのか?」

 

ディケイドの言葉にミサトはビクッとなる。

 

現在エヴァ初号機が持っているものは二子山に設置された陽電子砲だった。

 

その姿は精密機械の部分が露出していて有り合わせなのが一目でわかる一品だ。

 

「突貫工事って結構失敗多いんだよな。そこんとこどうだアカギン」

 

『大丈夫。自信あるわ』

 

リツコはキッパリといった。

 

「じゃあ信じんぜ。俺はあの使徒を撃ち抜けばいいんだな」

 

『そう。いいシンジ君。陽電子は地球の自転、磁場、重力に影響を受け直進しないわ。その誤差を修正するのを忘れないでね。正確にコア一点のみを貫くのよ」

 

「ほう、具体的には」

 

『真ん中のマークが揃ったらスイッチを押せば、あとは機械がやってくれるわ。そこに『クウガ/ペガサス』の超感覚を付け加えれば完璧よ。あなたの言葉を信じるなら『太古と現在の合作』よ』

 

「ふ~ん」

 

ディケイドは自分の前方で待機している零号機を見る。

 

「まあ、念の為…な」

 

ディケイドはD=クウガに変身してペガサスの準備をした後、2枚のカードをライドブッカーから取り出す。

 

取り出したのはブレイドと『スペードの10』…

 

「さてと…じゃあ」

 

『23:59:52』

「作戦」

『23:59:57』

「開始といきますか!」

『23:59:58/23:59:59/00:00:00』

 

『作戦スタートです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5使徒は探していた。自分の帰るべき場所を…それがここより深い場所にある事に気づき、そこに進んでいた。

 

『………』

 

突如、何かを感じる。

 

第5使徒はそれを探してしまう。

 

探して探して探して…もっと遠く、今よりも遠くまで探して…

 

時間をかけてやっと見つけた。

 

『なんでか殺さなきゃならないモノ』を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一次接続開始!」

 

「第1から第803間区まで送電開始」

 

「電圧上昇中。加圧域へ」

 

「全冷却システム、出力最大へ」

 

「温度安定。問題なし」

 

「陽電子流入、順調なり」

 

発令所はあらかじめ決められた手順をふみ、陽電子砲に電力を供給する。

 

「第一次接続開始!!」

 

「第1から第803間区まで送電開始」

 

「電圧上昇中。加圧域へ」

 

「全冷却システム、出力最大へ」

 

「温度安定。問題なし」

 

「陽電子流入、順調なり」

 

発令所はあらかじめ決められた手順をふみ、陽電子砲に電力を供給する。

 

モニターには二子山に続く道路にケーブルが這い、電圧機が頂上の陽電子砲に電力を供給しているのが映っている。

 

「第二次接続!!」

 

「全加速器運転開始」

 

「強制収束器作動」

 

オペレーター達の報告が悲鳴のようにやり取りされるなか、作戦の第二段階である無人機が発進した。

 

それと同時にミサトの激がとぶ

 

「無人機到達時刻は!?」

 

「あと五分!!」

 

「了解、シンジ君!日本中の電力、あなたに預けるわ!!」

 

『無駄遣いにしないように気をつけるよ』

 

D=クウガはカードをセットし、

 

『超変身!』

 

《FORM RIDE『KUUGA PEGASUS』!》

 

「よし…シンジ君。ガンバ…」

 

『やばい!』

 

D=クウガがカードを出し、

 

《KAMEN RIDE『BLADE』!》

 

いきなりD=クウガがD=ブレイドに変身した。

 

「え?」

 

第5使徒の姿が映ったディスプレイで第5使徒が変わり始めた。

 

「目標に高エネルギー反応!!」

 

『間に合え!』

 

「なんですって!?」

 

《ATTACK RIDE『BLAYROUZER』!》

 

「そんなバカな!?」

 

《ATTACK RIDE『SPADE 10 TIME SCARAB』!》

 

「予想攻撃地点…!え!そんな!?」

 

D=ブレイドはブレイラウザーに現れたカードをセット。

 

「使徒の攻撃目標は零号機です!」

 

「なっ!?」

 

第5使徒は加粒子砲を放つ。

 

初号機が零号機に向けて走り出した。

 

『TIME』

 

突然、初号機と零号機が消え、零号機がいた場所を加粒子砲が薙ぎ払った。

 

その時、切り札であった陽電子砲も残骸となってしまった。



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第拾話/FINAL FORM RIDE ~絆の力~

 

「超変身!」

 

《FORM RIDE『KUUGA PEGASUS』!》

 

D=クウガは『マイティフォーム』から『ペガサスフォーム』へと超変身する。

 

(よし、速く決めないと時間が…ってあれ?)

 

ペガサスフォームの超感覚…遠く離れた敵の気配すらも感じ取る事ができる力が、第5使徒からの『気配』を感じた。

 

(こ、これは…)

 

『よし…シンジ君。ガンバ…』

 

「やばい!」

 

すばやく用意しておいたカードをセットした。

 

《KAMEN RIDE『BLADE』!》

 

D=クウガ/ペガサスからD=ブレイドに変身して、

 

『え?』

 

『目標に高エネルギー反応!』

 

「間に合え!」

 

『なんですって!?』

 

《ATTACK RIDE『BLAYROUZER』!》

 

『そんなバカな!?』

 

《ATTACK RIDE『SPADE 10 TIME SCARAB』!》

 

ブレイラウザーと『TIME SCARAB』のカードが現れる。

 

『予想攻撃地点…!え!そんな!?』

 

D=ブレイドはブレイラウザーに現れたカードをセット。

 

『使徒の攻撃目標は零号機です!』

 

『なっ!?』

 

第5使徒は加粒子砲を放つ。

 

D=ブレイドは初号機を零号機に向けて走り出さして。

 

『TIME』

 

ラウズカードの読み込み完了。

 

その瞬間、D=ブレイドと初号機以外の時が止まった。

 

1秒…初号機は零号機を担ぎ上げる。

 

2秒…別の山の方へ疾走。

 

3秒…別の山の影に到着し、隠れる。

 

そして時が動き出し、零号機がいた場所を加粒子砲が薙ぎ払った。

 

陽電子砲もついでの如く薙ぎ払われた。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、大丈夫か」

 

『い、碇君?』

 

「危ない危ない。もうちょっとで蒸発だぜ。『タイム』はあんま長く止められないんだ。まったく、なんで零号機を狙ったんだ」

 

D=ブレイドはディケイドに戻りながら呟く。

 

「もしもし…くそ、ノイズが酷くて連絡が取れねぇ。まったく、あいつらは謎ばかりだな。さて…これからどうするか…」

 

『どうして?』

 

「ん?」

 

『どうして私を助けたの?助けなければ、使徒を倒せた…』

 

そう、ディケイドには使徒を倒すチャンスがあった。

 

もともとオトリ作戦なのだ。

 

無人機から零号機に変わるだけ。

 

零号機が攻撃されている間に使徒を倒せばいい。

 

しかし

 

「阿呆。そんな訳にいくか」

 

『私には…代わりがいるのに…どうして…』

 

「馬鹿をいうな。お前の代わりなんてどこにも…」

 

『違うの…』

 

レイは悩む…

 

これをいったら何かが終わってしまうかもしれない。

 

彼が…自分を嫌いになるかもしれない。

 

この間の化け物達みたいに自分を殺すかもしれない。

 

でも…

 

それでも…自分を犠牲にすれば今からでもディケイドが…シンジがなんとかしてくれる。

 

そう思ったレイは…

 

『本当に私には…』

 

彼には生きてほしい。

 

それは何故だかわからない。

 

でも…彼には…

 

生きて…

 

『代わりがいるの』

 

レイは決心して『真実』を話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから…私には代わりがいるの」

 

レイは全てを話した。

 

自分の代わり…自分の存在…その全てを…

 

「あなたにとって私は守る存在じゃない。殺す存在…」

 

『…そうか』

 

「だから、私をオトリにして使徒を…(バチコン!)…キャン!」

 

突然頭に衝撃が襲う。

 

みると眼前の初号機の右中指が自分に向いている。

 

初号機が零号機に溜めたデコピンを食らわしたのだ。

 

『このオタンコナス。まったく何くだらない事言ってるんだか。正真正銘のバカか』

 

ディケイドが呆れたような口調でため息を吐きながら喋る。

 

『お前はお前だ。代わりなんているかオタンコナス波』

 

「でも…」

 

『『僕』のバイクに乗って実は結構はしゃいでるのも』

 

「え?」

 

『いくら野菜ベースでもデブるぞ?って思うくらい『僕』の造ったメシ食ったのも』

 

「碇君?」

 

『『僕』と喋って、知り合って、仲良くなったのは!紛れもなくお前だ『綾波レイ』!』

 

その言葉にレイの心を捕らえる。

 

『変わりがいる?いるわけないだろ!誰かがなろうとしたって誰にもなれない!』

 

(『そんなの悲しいだけだ『剣お兄ちゃん』だって…最後には…』)

 

『人間じゃない?それがどうした!人間より優しい『化け物(ヒト)』だっている!』

 

(『『たっくん達』に『始にい』、『モモタ達』、『渡君』…人間よりも優しい人達…』)

 

 

誰がなんと言っても俺は言ってやる』

 

ディケイドは大きな声で

 

『お前だけが『綾波レイ』だ。『綾波レイ』はお前だけだ』

 

「碇君…でも…」

 

『じゃあ、お前は『そいつら』にやってもいいのか?』

 

「え?」

 

『お前が築いてきた『絆』を誰かのモノになってもいいのか』

 

それを聴いた瞬間、レイは絶望した。

 

自分の『絆』が他者のモノとなる…

 

シンジが助けてくれた事も…

 

シンジが自分に微笑んでくれた事も…

 

シンジとの思い出も…絆も…全部…

 

「いや…」

 

レイは自分の身を抱く。

 

「いや…!」

 

『そうだろ…それが『お前』が『お前』の証だ』

 

「碇君…」

 

レイは初号機を…その先にあるディケイド…碇シンジを見る。

 

「またバイク…乗せてくれる?」

 

『いいぞ。弁当持ってツーリングだ。あまり遠くにはいけないが天気のいい日にいこう』

 

「またご飯…食べていい?」

 

『おお、しっかり食って、しっかり太れ』

 

「私は…一緒にいてもいいの」

 

『それこそ当たり前だ。勝手に消えたら世界の向こうまで探しに行く。好きなだけ一緒にいろ』

 

「うん…うん。碇君」

 

『ん?』

 

レイは初めて感じる気持ちを胸に

 

「ありがとう」

 

自分をまっすぐ見て話してくれた人に

 

そう、…

 

「通りすがりの…『仮面ライダー』…」

 

できれば…

 

(このまま通り過ぎないで…)

 

 

 

 

 

 

ブォォォンッ!

 

ライドブッカーから2枚のカードが飛び出す。

 

黒いブランクカードだが、金色に光り輝き、絵が浮かび上がる。

 

一つは金色の零号機のマーク。もう一つは零号機と…

 

「これは…」

 

『碇君?』

 

「綾波、使徒を倒すぞ」

 

『え、うん。でもどうやって…』

 

「こうやって」

 

ディケイドは零号機の絵の入った方をディケイドライバーにセットする。

 

《FINAL FORM RIDE『ZE・ZE・ZE・ZERO』!》

 

初号機と零号機は立ち上がる。

 

「綾波、ちょっとくすぐったいぞ」

 

『え…?』

 

「てい」

 

ぺたん

 

『あっ、ん…!』

 

レイが可愛らしい声をあげると零号機が宙に浮き、どんどん変形していく。

 

そして最後には大型殲滅銃『ゼロバスター』となった。

 

 

 

「な、何あれ」

 

「わ、私のエヴァが…」

 

エヴァの変形をみたリツコが横に倒れていく。

 

「り、リツコ~!?」

 

 

 

 

『こ、これ…!?』

 

「これが俺とお前の絆の力だ」

 

第5使徒が変形していく。目標を見つけて排除しようとしているのだ。

 

「いくぜ綾波」

 

『わかった』

 

ディケイドはもう一枚のカードをセット!

 

《FINAL ATTACK RIDE『ZE・ZE・ZE・ZERO』!》

 

『ゼロバスター』に未知の高エネルギーが集まり、凝縮していく。

 

「いくぜ」

 

『一撃必殺…』

 

「くらえぇぇぇぇっ!」

 

ドキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 

第5使徒の加粒子砲と『ゼロバスター』から放たれた『ディケイドバスター』はほぼ同時の発射だった。

 

互いの光線が相対し、接近する。しかし!

 

ヴァァァァッ!

 

『ディケイドバスター』は加粒子砲を簡単に吹き飛ばし、

 

ドキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 

ATフィールドも物ともせず、第5使徒を撃ち貫いた。

 

ビキャンッ!

 

第5使徒の体が撃たれた反対に弾けた。

 

それが第5使徒が完全に沈黙した合図だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュウッ…

 

初号機と元に戻った零号機のメイン電源は、ほぼ同時に落ちた。

 

変身を解いたシンジはエントリープラグを排出させ、外に出る。

 

「ん~、つっかれた」

 

軽く伸びをする。

 

「おっ、お疲れさま。綾波」

 

「うん。碇君も…」

 

「ああ…おぉ」

 

「なに?」

 

「いや、なに…」

 

レイは今、

 

「カメラがないのが残念だ」

 

とても素敵に…笑っていた。



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第拾.伍話/いんた~みっしょん

 

 

 

「…なんでそんなに怖い顔してるんだ?」

 

「それは自分の胸に聞きなさい、碇シンジ」

 

赤木リツコ博士は底冷えする恐ろしい声を出す。

 

「相変わらずトンでもない事を仕出かしてくれるわねアナタは…今回で私の堪忍袋の緒はデットヒートよ」

 

「だからなんで?」

 

ダンッ!

 

リツコは両手をテーブルにたたきつける。

 

「あなたは零号機に何をしたのよ!?零号機にあんなシステムなんて欠片もないわ!」

 

「あぁナルホド。FFR(ファイナル・フォーム・ライド)の事か」

 

「FFRとな!?」

 

「まぁ気にスンナよ。これからも稀に使うかもしれないけど、エヴァにも綾波にも害はないから」

 

「私をここまで怒らせるのはあなただけよ!」

 

そこからピーチクパーチクと言い合いが始まった。

 

ミサト・マヤ・日向はそれを後ろで見ていた。

 

「先輩…溜まってたんですね」

 

「そりゃあねぇ…次々変身していって、自信作の装備を遥かに超える武器やら能力を次々出された挙句、今回の零号機を変形させて…そりゃあ爆発するわ」

 

「でも、凄いですね。『ディケイド』って」

 

「確か日本語で『10』だったよな」

 

「『10』ね~。あっ、もしかして変身できるのディケイド含めて10種類だったりして」

 

それを言った瞬間リツコがミサトを睨みつける。

 

ミサトがその眼力に怯える。

 

再びシンジを見る。

 

シンジは視線を外した…外してしまった。

 

「そうよ…どうしてこんな本当に単純な事を私は気付かなかったのかしら!そう!あなた少なくとも後『4種類』変身できるわね!」

 

「の、のーこめんと」

 

「とっとと吐きなさい!楽になるわよ」

 

さらにヒートアップした。

 

「9種類か…『仮面ライダー』って結構種類があるな」

 

「あっ、確認します?」

 

マヤはキーボードを操作して、映像を出す。

 

「まず『No.000/ディケイド』。まあいつもの形態ですね」

 

「カードを使って様々な能力や『変身』を可能とする…か」

 

「まだどんな能力があることやら」

 

「次に『No.001/クウガ』。初めて『KAMEN RIDE』した形態ですね」

 

「かめんらいど?」

 

「ディケイドのベルトがカードを読み取った時に響く声から確認しているんですが、変身を『KAMEN RIDE』、攻撃などを『ATTACK RIDE』、変身した形態からのフォームチェンジを『FROM RIDE』です」

 

「へぇ、クウガだけでも結構種類があるわよね」

 

「はい。基本となる形態の『マイティ』に、中間距離(ロッド)の『ドラゴン』、遠距離(ボウガン)の『ペガサス』、近距離強化(ソード)の『タイタン』です」

 

「僕はこいつが一番好きだな。あの『超変身』がいい」

 

「次に『No.002/ブレイド』。ディケイドのように様々なカードを使って能力を使うタイプですね。確認できているのは『サンダー』『リカバー』」

 

「私の胃痛も治してくれたわ」

 

「『No.003/電王』…よくわからないです」

 

(不覚にもあの決め台詞には食らってきたわ)

 

「あの『俺、参上!』ってカッコよかったですね」

 

日向がいう。

 

(こういうの好きですね男の人って…)

 

「『No.004/ファイズ』です。他のライダーと比較してもメカニカルな部分が多いですね」

 

「あの『アクセル』だっけ。視認できないくらいのスピードってどんだけよ」

 

「それなら…この『No.005/カブト』ともです。少なくとも一度超速で動いています」

 

「む~、こうみると物凄いわね。『仮面ライダー』って」

 

「現在のテクノロジーを遥かに超えた能力ばかりです。いったい彼はどこでこの力を手に入れたんでしょう」

 

「さぁ…」

 

まだ言い合っている二人。

 

「知ってるのは彼だけだしね」

 

 

 

 

「ほれ、こっちでいいんだな」

 

「ありがとシンちゃん」

 

「しっかし…」

 

シンジは持ち上げた家具を置いて肩を鳴らす。

 

「なんで今更引越しなんだ?『一人』増えたくらいでするもんでもないだろ」

 

後ろから新たな同居人が軽いダンボールを持って入ってきた。

 

綾波レイだ。

 

~回想~

 

『あれ?綾波どうしたんだ?』

 

『………』

 

無言でボストンバックとスーツケースを見せるレイ。

 

『えっと…まさか…』

 

『一緒にいてもいいって言った』

 

『た、確かに言ったが…』

 

レイは一冊の本を取り出し、タイトルは『男を絶対に従わせる言葉100選』。

 

『責任とって一緒になってください』

 

『それは別の時に使う言葉だ!』

 

 

 

 

「綾波の荷物は買い揃えなきゃいけないくらいなのに、なんでだ?」

 

「実はね…」

 

 

 

 

 

司令室にはゲンドウ・冬月・リツコの三人がいた。

 

「碇…これはどう思う」

 

「………」

 

ゲンドウは自分の下にある電子書類に眼を通す。

 

その内容はこの場にいる3人に取って信じられないものだった。

 

 

 

『使徒殲滅の為、全世界の所有・建造中のエヴァンゲリオンの優先所有権を全て日本に優先するものとする』

 

『これは常任理事国・非常任理事国全ての可決が通った決議であり、ヴァチカン条約より上位とするものである』

 

『近日、ユーロ連邦所有であるエヴァンゲリオン2号機、南極で建造中のエヴァンゲリオン5号機(仮設)を輸送する』

 

『それと同時に『セカンド』・『フォース』・『フィフス』チルドレンをネルフの所属とする』

 

『アメリカで建造中の『3号機』『4号機』、月で建造中の『6号機』も完成次第ネルフに輸送する』

 

 

はっきり言っていたせりつくせりの内容だ。

 

これが本当ならネフルにとって絶大な戦力アップとなる。

 

「あの男か…」

 

(あの男…?いったい誰かしら。常任理事国を含む各国の首脳達を丸め込んで説得できるだけの力を持つなんて…『悪魔』みたいな奴ね)

 

「『ご老人』方もほとんど奴のいいなりだ。『協力者』を名乗っているが、実質全てを仕切っているのは奴だ」

 

「…計画に支障はない…いや、『なさ過ぎない』」

 

「奴の目的はいったいなんだ?」

 

「………」

 

「それに『ディケイド』の件だ。いつまでご老人方を騙せる。奴は世界の…」

 

「ならば使徒を破壊させればいい。利用できるものは全て利用した後、排除すればいい」

 

(ディケイドが『世界の』?『破壊』?何なの?シンジ君…いや、この場合『ディケイド』には何か秘密があるのかしら」

 

 

 

 

 

 

「なるほど、いっぺんにパイロットが3人ね。大盤振る舞いだな」

 

「そうなのよ。でも完成しているのはセカンドチルドレンの2号機だけで、フォースチルドレンの5号機は動けるけどまだ仮設状態なのよね」

 

「ん?フィフスチルドレンとやらは?」

 

「なんでもどっかで建造中の6号機のパイロットのようだけど、こっちはまだまだ見たい」

 

「やれやれ…っで?2人のチルドレンの保護者であるミサトさんにお鉢が回ってきたと?」

 

「そうなの!見なさいこの高級住居!第三新東京一の超高級マンション!以前の私の部屋が霞むわ!」

 

マンションのワンフロア全てを一つの部屋にしているここは広すぎるくらいだ。

 

「そうだな。風呂も広くて、ペンペンも大喜びだ。しかし…誰が掃除をするんだろうな」

 

ピクッ…

 

ミサトが頬を引き攣らせる。

 

「誰が育ち盛り5人分と大食漢1人の分を誰が作るんだろうな」

 

ピピクッ

 

「もしかして、普段の食事は自分が作ってるって報告書書いてねぇだろうな…で、あまりの好条件に『安心お任せください。チルドレンには健康で清潔な生活を心がけさせます』とか言ってねぇよな」

 

「………」

 

「答えろよ。この間の運動訓練の時の一本背負い、この素敵なフローリングでくらいてぇか?」

 

「ご、ごめんなさい!(ダッ!)」

 

「逃げんなこら!いくら貰らいやがった!?」

 

 

 

某所…

 

 

「初号機が第5使徒を撃退し、シナリオも順調に進んでいる」

 

「しかし、見過ごせない案件もある」

 

それは…

 

「そう、『ディケイド』だ。死海文書にも記されている『世界の破壊者』。事を起こす前に排除すべきかもしれん」

 

「…『ディケイド』は暫くの間、様子見だ」

 

「しかし!」

 

「これは『彼』の言葉でもある」

 

その言葉に全員が黙り込む。

 

「もしディケイドが事を起こした場合自分も動くそうだ」

 

「しかし、キール様…大丈夫なのですか」

 

「安心しろ…何せ彼も…」

 

 

 

 

 

 

 

「日本にね~。ふんいいわ。エコヒイキのファーストと七光のサードに本当のエリートの実力を見せてやるわ」

 

辞令を読んで、若干14歳のユーロ空軍大尉・エヴァンゲリオン2号機パイロットである『セカンドチルドレン』は高らかに胸を張った。

 

 

 

 

 

「と、いうわけで君には『フィフス』として『セカンド』『フォース』と共に日本にいってもらうことになった。『セカンド』とは海上で合流。日本の『ファースト』と『サード』にも合流してもらう」

 

「…わかったよ。ここでのコーヒーが飲めなくなるのは残念だ」

 

「ディケイドに頼むといい。僕より遥かに美味く煎れられるはずだ」

 

男は少年の紅い瞳を見ながら言う。

 

「ディケイドに会うのが楽しみかい?」

 

「そうだね…彼の瞳がいったいどんなものを見てきたのか…僕には楽しみだよ」

 

彼は楽しそうに微笑む。

 

「ところで『彼女』は?」

 

少年は『フォースチルドレン』の事を聞く。

 

「ああ、『彼女』は今最終訓練中だよ。まったくあの問題児は…5号機をあの多重スパイと結託して自爆しようとした時は流石に驚いた」

 

「あなたは拳骨一つで許したね」

 

「あんなのでも私の『秘蔵っ子』だ。今はまだ『ディケイド』に勝てなくても…」

 

彼はニヤリとして

 

「私でも作成できない『9 RIDER'S CARD』を手に入れるくらいはしてもらわないとね」

 

「多重スパイの方は?」

 

「あれはあれで役割がある。今は好きにさせる」

 

 

 

フォースチルドレンは訓練室に立っていた。

 

そして目の前にいる『目標達』を見る。

 

大小様々な化物がいる。

 

その化物全てが本来、この『世界』に存在しないモノ達であった。

 

彼女は持っていた『銃』に一枚のカードを入れる。

 

《KAMEN RIDE》

 

『銃』はカードを読み取り、スタンバイOK。

 

『フォースチルドレン』は銃口を上に向けて、

 

「変身!」

 

《『DIE-END』!》

 

青い物体が上空に散らばり、戻ってきた時には…

 

「にゃ♪」

 

一人の…『仮面ライダー』がいた。



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第拾壱話/海上での出会い

 

 

「海か…この世界の海は…やっぱり赤いな…」

 

シンジは取り返しのつかない物を見る眼で眼下の『海』を眺める。

 

「『僕のいる世界』は…何を間違ったのかな?」

 

「碇君…どうしたの?」

 

「あ、ああ。ごめん綾波。いや…海が、赤いな…って」

 

「何言ってんだよ碇。海が赤いなんて当たり前じゃん」

 

「そうやそうや。昔は青かった見たいやけど、今はまっかっかやろ」

 

ケンスケとトウジが入ってくる。

 

「…そうだな。お陰で、美味い鯖味噌が食えない」

 

シンジは再び落ち込む。

 

別れの時、『ひより姉ぇ』が

 

『私は大切な人に作ったから、シンジも大切な人が出来たら作ってやれ』

 

と渡してくれたレシピをこの世界では使えない。

 

(ソウ兄ちゃん風にいうのなら…美味い鯖味噌も食べれない世界にまでして、この世界の人間は何を考えてたんだろう)

 

「サバミソ?あの缶詰の?」

 

「あのあまりウマない奴な」

 

「サバミソ…ってなに?」

 

「へぇ~、シンちゃんはサバミソ知ってるんだ。昔のサバミソ知ってると、今の缶詰なんて食べれたものじゃないけどね」

 

5人を乗せた軍用高速ヘリは目的地である『国連軍正規空母オーバー・ザ・レインボー』に向かった。

 

 

 

 

 

数時間前…

 

「いよ、いらっしゃい」

 

「おーセンセ、お邪魔するで。これ引っ越し祝いや」

 

「はい、俺のも。しかし凄いじゃないか!第三新東京一の高級マンションの最上階『ロイヤルルーム』なんて!家賃凄いんじゃないのか!?」

 

2人はキョロキョロしながら入る。

 

2人は引っ越し祝いをかねて遊びにきたのだ。

 

「さぁ…払ってるわけじゃないしな。早すぎるかもしれないが、打った蕎麦茹でるから、食堂で座っとけ」

 

『おぉ~!』

 

シンジは2人を食堂に案内する。と、すでにレイが座っていた。

 

「もう座ってんのか?すぐ茹でるからな」

 

「うん」

 

「お、綾波も来てたのか?」

 

「センセも隅に置けんな~」

 

「?何言ってんだ?綾波もここに住んでんだよ。チルドレン全員が住む予定だといったろ」

 

それを聞いて二人は

 

「な、同棲!?」

 

「ま、まさかもういや~んな感じに!?」

 

「…どちらかというと…家政夫の気分だ」

 

 

 

 

「ほれ、出来たぞ。邪道だが、大ザルから取って喰え」

 

物凄い大きなザルに蕎麦を山盛りに乗せて、シンジが食堂に入ってきた。

 

実はシンジもこの部屋の巨大で素敵なキッチンが物凄く気に入っている。

 

調理道具一式も経費で落ちるから最高だ。

 

『わーい!』

 

「…なんでいる。仕事はどうした」

 

そう、名目上の保護者・葛城ミサトがいた。

 

「お蕎麦食べに帰ってきたの」

 

「…また赤木さんにどやされるぞ」

 

「冗談よ(ずず~)うぉ!美味い!何これ!本当に蕎麦!?」

 

「美味いよコレ!」

 

「さ、最高や!」

 

「………(ずずずずずずずずず~)」

 

遠慮無しに餓鬼のように喰う4人。

 

シンジはサイドメニューを取りにキッチンに戻り、聞こえるくらいの声で話す。

 

「ふふん。そりゃ美味いさ。汁を作るのにどれだけ苦労したか。蕎麦粉だって無茶苦茶探したんだぞ。だから味わって…」

 

『ごちそうさまでした!』

 

「…え?」

 

シンジは驚いてメニューを乗せた盆を持って、食堂に戻る。

 

15人前前後あった蕎麦が麺一本残らずなくなっていた。

 

まだシンジは食べてなかった。

 

「シンちゃ~ん。蕎麦湯は?シンちゃんなら用意してるでしょ?」

 

「蕎麦湯…」

 

「センセ、蕎麦湯」

 

「シンジ、蕎麦湯まだ?」

 

(ふ、フードファイターかこいつら!?)

 

シンジは美味いといいながら喰ってくれた喜びと、一瞬でそれが消えた喪失感に浸りながら、熱々の蕎麦湯をみんなに注いだ。

 

「ずず~、あ~、最っ高!シンちゃんがいてくれて嬉しいわ!」

 

「ずずず~(コクコク)」

 

「あ~、美味い」

 

「美味いもん喰うと幸せって本当なんだな」

 

好き勝手いってる4人を尻目に、自分は悲しくオニギリと吸物を食べようとキッチンに戻ろうとすると、

 

「さあ、みんな。お出かけの準備よ。シンちゃんお弁当よろしく。超特急で」

 

「はぁ?」

 

急に言われてみんな驚く。

 

「出かけるって…どこに行くんだ?」

 

「大きなお船でクルージング」

 

 

 

 

 

 

 

 

『オーバー・ザ・レインボー』に到着した5人は艦内の通路を歩いていた。

 

「で、こんな所か…まさかとは思ったが、弁当多めに作ってよかったよ」

 

シンジは担いでいる風呂敷を見る。

 

「ふぇ?なんで。まさか私の為?」

 

「他のチルドレンの分だよ!あんたどれだけ喰うつもりだ!」

 

チルドレンが3人、弐号機と共に来る事は前に聞いていた。

 

で、今回のクルージングと聞いて、とりあえず多めに作ったのだ。

 

大型五段積み重箱にギッシリに具別のオニギリと漬物をいれ、大型ポットに味噌汁もいれている。

 

「育ち盛りだからな。まぁ…」

 

(残ってもこの『食欲魔人』と…)

 

シンジはレイを見る。

 

(食欲旺盛な娘が食べてくれるからな)

 

最近のレイの食事量は凄い。

 

なぜ太らないのか知りたいくらいだ。

 

「で、チルドレンと弐号機は?」

 

「今案内するわ。弐号機が見れる部屋で待ち合わせだから。でも、さっきの艦長。変な奴だったわね」

 

「…そうだな」

 

 

実はシンジ・レイ・ミサトはこの艦の艦長に挨拶をしにいった。

 

ミサトの話では

 

「こういうとこの偉いさんって結構文句言うのよね」

 

といっていたが、以外にも

 

「貴殿らの要請は聞いている。弐号機の譲渡は書類通りに行う。安全に運ぶ努力をするので信用してもらいたい」

 

「え…あ、はい」

 

「この艦に昨日、弐号機の電源ソケットが届いた。マニュアルを読んで対応できるようにしているので、有事の際にはそちらに優先権を回す」

 

「は、はぁ」

 

「それでは良い海上の旅を。オーバー・ザ・レインボーにようこそ」

 

 

 

「確かにおかしかったな。友好的過ぎるだろ」

 

「最近おかしいのよね。今までネルフに反発的だった偉いさん方が『人が変わった』ようにネルフに協力的なのよ。逆に気持ち悪いわ…と、ここよ」

 

ミサトは扉の前に到着し、事前に聞いているパスコードを入力してロックをあける。

 

部屋に入るとすぐ目の前には

 

「おお、コレが弐号機か」

 

「すっげー、新しいエヴァだ!」

 

シンジとケンスケは2人は早速カメラをセットし、様々な角度からパシャパシャとシンジが写真を撮る。

 

「弐号機って赤いんだな」

 

「エースの色だね」

 

ケンスケも負けじと撮る。

 

「3倍速いってか?それなら俺も楽なんだがな」

 

「正義のヒーローがそんなんでいいのかよ」

 

「いいんだよ。どこの誰が倒そうと、みんなが平和になるんならそれで万々歳じゃねぇか。この弐号機のパイロットのセカンドとかいう奴が使徒をバンバン倒してくれりゃあいいんだ」

 

「はっ!所詮は親の七光でなったチルドレンは碌な事考えないわね」

 

突然、良く通る女の子の声が響いた。

 

シンジ達が振り向くとそこには別のドアから現れた一人の女の子がいた。

 

赤い髪、青い瞳…そして、ビックリする位の美少女だった。

 

服装はレモンイエローのワンピースだ。

 

しかし、仁王立ちが似合う美少女というのも珍しい。

 

「それに違うのはカラーリングだけじゃないわ!!」

 

少女は高らかに声を上げる。

 

「これが実戦用に作られた世界初の本物のエヴァンゲリオン!、所詮本部にあるのはプロトタイプとテストタイプ、訓練もしてないサードチルドレンにいきなりシンクロしたのがその良い証拠よ!」

 

それはシンジも知っていた。レイの乗る試作零号機(プロトタイプ)、シンジの乗るのは試験初号機(テストタイプ)、そしてこの目の前の少女が乗るこの赤い弐号機は初の『正規実用型』であり、『先行量産機』でもある。

 

(この間渡された資料じゃ、アメリカで建造中の3号機は弐号機と同じで『正規実用型』。同じくアメリカ製の4号機は『次世代試験型』。そして…隣の艦にある5号機は現在仮設だが『局地仕様』…だったな。6号機はまだ非公開で書いてなかったな)

 

実はこの弐号機にはシンジは結構興味があった。

 

なんでも零号機や初号機とは違って、追加装備(アタッチメント)があるらしい。

 

と、シンジはそのまま弐号機を写真に収めていく。

 

ケンスケは少女の方にフレームを移した。

 

「久しぶりね。アスカ」

 

「ヘロー、ミサト!元気してた!?」

 

「ま~ね~、あなたも背が伸びたんじゃない?」

 

「そっ!!他の所もちゃぁ~んと女らしくなってるわよ?で、エコヒイキのファーストは…女だからコイツね!で、親の七光のサードはどいつ!このメガネ?ジャージ?」

 

「あそこで貴女をガン無視して弐号機の写真取ってる素敵なカレ」

 

アスカと呼ばれた少女は無視されたのが気に食わなかったのか、シンジに近づき、

 

シュッ、

 

足払いをかけるが、

 

ヒョイ

 

シンジは軽くよける。

 

シュッ、ヒョイ。

 

二回目もよける。

 

シュバッ!

 

グーパンチ。

 

ヒョイ。

 

コレもよける。この間、写真をベストショットで撮り続けている。

 

「なんで当たんないのよ!」

 

「当たると痛いからだよ。はい、チーズ」

 

「え?」

 

パシャ。

 

シンジはアスカを一枚撮る。

 

「現像したらやるよ。結構スットンキョな顔してたぜ。今度は笑った顔、撮らしてくれよ」

 

シンジはにっこり笑って、

 

「せっかく可愛いんだからな」

 

「な、なな…!」

 

突然の言葉にアスカは顔を真っ赤にする。

 

「あ~、姫が面白そうな事してる~!」

 

「ホントだね。楽しそうだ」

 

さらに知らない声が出てくる。

 

声の主達はアスカと同じ扉から入ってきた。

 

一人はまたもや美少女で、赤い眼鏡をかけている。白いシャツに黒いジーンズとシンプルだが、そのシンプルさが見事にマッチしていた。

 

そしてもう一人は美少年。白い髪に赤い瞳…街を歩けば、10人中10人の女性が振り返るだろう。

 

「やれやれ、もう飛ばしてんのか?」

 

もう一人誰かが入ってきた。20代後半の男性だ。

 

「げっ!?」

 

その男を見て、ミサトは声を上げる。

 

「よう、葛城ひさしぶりだな」

 

「あんたがなんでここにいる!」

 

もう掴みかからん勢いでミサトが男に問い詰める。

 

「なんでって…この3人の護衛さ。大事なパイロットだからな。ま、とりあえず向こうの専用室にでもどうだ」

 

 

 

 

 

「ほれ、自己紹介もかねて、食事会だ。初めて会う方々、お近づきの印にどうぞ」

 

「あ、こりゃご丁寧に」

 

シンジのススメで、男は頭を下げる。

 

案内された部屋のテーブルには重箱に入ったオニギリが広げられていた。

 

1段目・白結び

 

2段目・高菜

 

3段目・昆布

 

4段目・梅干

 

5段目・漬物各種と卵焼き

 

と量も種類も豊富だった。

 

「じゃあ、まず俺から。俺は加持リョウジ。よろしくファーストチルドレン綾波レイちゃん、サードチルドレン碇シンジ君」

 

「サードチルドレンのバイトをしている碇シンジだ。綾波、ほら自分で挨拶」

 

「…はじめまして」

 

レイはうずうずオニギリを見ている。

 

どうやら楽しみのようだ。

 

「で、俺の友達の…ジャージの方が、鈴原トウジ。眼鏡が相原ケンスケだ」

 

「ども」

 

「はじめまして」

 

「で?そっちは?」

 

「ふん、アルバイトに名乗る名前なんてないわ!」

 

膨れるアスカに加持は苦笑し、

 

「すまんね。この娘は『式波=アスカ=ラングレー』。ユーロ空軍の大尉で弐号機のパイロットだ」

 

「か、加持さん!?」

 

「同じパイロットなんだしちゃんと名のとけって」

 

「…式波=アスカ=ラングレー大尉よ」

 

「おお、よろしくな式波大尉。アルバイター碇シンジだ」

 

「…ふん」

 

「はいはーい。あたしも挨拶するにゃ~!」

 

声と手を上げたのは、眼鏡の美少女。

 

「あたしは『真希波=マリ=イラストリアス』!よろしくねワンコ君」

 

初対面でいきなり人を犬呼ばわりした。

 

「よろしくな、ニャンコちゃん」

 

「ノリい~ね。じゃあ、自己紹介したからこれ頂いちゃうね。ライスボール初めて!いっただきま~す!」

 

ガブッ

 

「こらこら…あれ?」

 

口に入れて、いきなり喋らなくなるマリ。

 

オニギリを口の中で噛みまくる。

 

「ど、どうしたのよフォース。まさかそんなに不味い…」

 

ごくん

 

「う、うま~!」

 

再びオニギリを掴むマリ。

 

「こ、こんなに美味しい物があるなんて!あ、これ草(高菜)入ってる。これもうま~」

 

「だめ…」

 

とレイも懇願する瞳でシンジを見る。

 

「…いいぞ」

 

を合図に負けじと食べ始めた。

 

ここにフードファイトが始まった。

 

「妙な光景になったが…」

 

シンジは少年を見る。

 

(綾波と同じ…紅い瞳…か)

 

「碇シンジだ。よろしくな」

 

と手を出す。

 

「よろしく。僕は『渚カヲル』。君とはいい関係を作れそうだ」

 

「握手もしたし、もう友達でいいじゃねぇか」

 

「え?」

 

少年…カヲルは驚いた顔をする。

 

「自己紹介したし、これから一緒に戦うんだろ。じゃあ、友達だ」

 

「………」

 

「いやか?」

 

「そ、そんなことはないよ」

 

「じゃあ、どうだ。オニギリ」

 

「…頂くよ」

 

「ほら、式波もどうだ」

 

「ふん。食べてやろうじゃない。私の舌を納得させれるかしら」

 

とここで食事会が始まった。

 

「美味いじゃないか。このオニギリの塩加減が絶妙だ。中の具もかなり手が込んでいるな。漬物もグーだ」

 

「ああ、そこの保護者(名目上)が急に言い出すもんでな。冷蔵庫の中にあった具になりそうなもんと糠壷からすぐに取ったんだ。浅漬けだがいけるか」

 

シンジは味噌汁を配りながら答える。

 

「俺の好みだよ。まったく、葛城の事だから君に任せっぱなしだろ」

 

「ちょ!ちょっと加持!そんな訳…」

 

「あるだろうが。今ならの釜戸(リフォームしてつけて貰った)なら兎も角、炊飯器でご飯もマトモに炊けない癖にいうな」

 

「葛城…」

 

「ちょ、誤解よ誤解!ちょっと失敗しただけで…」

 

「本気で早くすむと思って洗剤で飯洗おうとした女がいうな」

 

「………」

 

「ちょっと!なんで黙るのよ」

 

「寝相の悪さも相変わらずか」

 

「脱いだ物も脱ぎっぱなしだよ。いい加減洗濯物はちゃんと出してくれ」

 

ガタッ!

 

「し、シンジ!?もしかしてミサトさんの洗濯物を!?」

 

「し、シンちゃん!すと…」

 

「ん?当たり前だろう。そうじゃなきゃ着るもんなくなるぞ。まったく、ちゃんと洗濯籠に入れろってんだ」

 

「センセー…妹を救ってくれたお前やけど、わいはお前をシバかなあかん…」

 

「なぜ!?」

 

トウジの拳を受け止めて、押さえていると、

 

「おかしいな…よく出来る人が生活の面倒を見てくれるって言ってたけど?」

 

カヲルが首を傾げてたずねた。

 

「それは俺だ渚」

 

「じゃあじゃあ、これもワンコ君が作ったんだよね!こんな美味しいモノ毎日食べれるの」

 

「ああ、食べれるぜ」

 

「やた~」

 

マリは喜びの声を上げる。

 

ミサトは机に突っ伏している。

 

そして…

 

(くそ…おいしーじゃん)

 

オニギリと味噌汁を口に入れて、アスカは思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうだい?碇シンジ君は?」

 

「ふん!あんなオサンドンがサードチルドレンなんてね!務まる訳ないわ!」

 

「そうかにゃ~、結構面白いじゃん」

 

「そうだね。芯も強そうだ」

 

「ふん!眼がおかしいんじゃない!あんな雑魚っぽい奴に…」

 

「…雑魚でもないさ。初搭乗時のシンクロ率が99.89%。しかもいまだにそのシンクロを保っている」

 

「はい?」

 

信じられない数値を聞いてアスカが止まる。

 

「しかも」

 

「しかも!?」

 

「噂では彼は『変身』するらしい」

 

「ヘンシン?」

 

それを聞いてアスカは怪訝な顔をするが、他の2人は互いを見て、『ニヤリ』、『ふふっ』と笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あっかいなぁ…」

 

シンジは海を見ながら、呟く。

 

(結局、オニギリも食べれなかった)

 

空腹がさらに感傷に浸らせる。

 

横にはレイがいて、同じように海を見ている。

 

「青い海が懐かしい…」

 

「碇君は知ってるの?」

 

「ああ、そうだな…綾波には話しいていいか。俺は様々な…この世界じゃない、別の世界を旅したことがあるんだ」

 

「別の世界…?」

 

「今度色々話してやるよ。その世界の事…その世界を守る為に戦った、『仮面ライダー』のことも」

 

「仮面ライダー…ねぇ、碇君。『仮面ライダー』って何なの?」

 

「仮面ライダー…か。そうだな。簡単に言っちゃうと『お人好し』かな」

 

「お人好し?」

 

「そう。望めば神や悪魔、支配者にでもなれるほどの力を…」

 

(雄介お兄ちゃん、翔一にいちゃん、シン兄、たっくん、かず兄、ヒビキ先生、そー兄ちゃん、リョウちゃん、渡君…)

 

「悩んだり、責められたり、否定されても、その力を、人の為に使った…お人よし。それが『仮面ライダー』だよ」

 

「ふん、バッカみたい」

 

突然後ろから声が聞こえた。

 

「何デタラメ話してんのよ。カメンライダーなんての聞いたことないし、そんな力持ってたら世界中に自分の凄さを見せている筈でしょ」

 

声の主はアスカだった。アスカの罵倒とも取れる言葉を聞いてシンジは

 

「はは、そうだな。でも…いるかもな、そんなバカが」

 

そのまるで褒められたような顔をするシンジを見てアスカは怪訝な顔をしたが、

 

 

グラララララッ

 

 

船に衝撃が走り、揺れる。

 

「え?あっ、キャァァァァァァァ!!」

 

「くっ」

 

その大きな衝撃にレイとアスカはバランスを崩してそのまま海に落ちそうになるが、

 

ガシッ!

 

「ふっ!」

 

近くにいたレイを捕まえて抱きかかえ、

 

バッ!

 

落ちそうになったアスカを抱きとめ、ギュッ、と抱きしめる。

 

ガンッ!

 

「ぐっ…!」

 

そのまま転んで背中を殴打するが、2人は護るように抱きしめていた。

 

「ふぅ…」

 

「あ、あんた。なんで…」

 

「碇君…」

 

2人を助けたシンジの顔は真剣そのものになっていた。

 

(なに…こいつ…こんな顔してたっけ?)

 

そう、今のシンジの顔は『護るモノ』の顔をしていた。

 

アスカは初めて見る『カッコいい顔』にドキマギする。

 

「水中衝撃波…まさか…」

 

(あ、こいつの体…)

 

抱きしめられているアスカはシンジの体を感じる。

 

(凄い…相当鍛えてる)

 

「おい、鯨とかでもこの空母揺らす事はできるか?」

 

「え、あ、えっと…鯨って海洋生物は絶滅してるわ。ってか、いつまで抱きしめてんのよ!」

 

「ああ、すまん。ほれ」

 

「…まったく」

 

「ほれ綾波も…おい、何してる」

 

綾波はシンジに抱きついている。

 

「ポカポカする」

 

「はぁ?」

 

「抱きついててもいい?」

 

「別にいいが…」

 

「良くない!離れなさい!破廉恥よ!」

 

アスカは無理矢理レイを引き離す。

 

「………」

 

本当に残念そうな顔をするレイ。

 

「じゃあ…こんな死んだ海で生きているって事は…」

 

「使徒…」

 

レイが断言する。すると大きな海洋生物みたいなのが、悠々と…高速泳いできた。

 

「使徒…あれが…」

 

アスカは最初は驚いたが、すぐに不敵な笑みを出して、

 

「ちゃ~んす!」

 

「おいおい…」

 

 

 

 

 

 

「で、弐号機であのお魚を下ろすってか?」

 

「そう、それで私の凄さを見せてあげるわ」

 

プラグスーツを着て来たアスカが胸をはる。

 

「そうか、頑張れ。応援してるぞ」

 

「何いってんのよ。はい」

 

シンジは何かを渡される。赤いプラグスーツだ。

 

「どういうことだ?」

 

「あんたも乗るのよ」

 

シンジは流石に大口を開ける。

 

「おい…」

 

「私の優秀さを目の前で見せてやるわ。ありがたく思いなさい」

 

「これ、女性用(レディース)だろ?」

 

「男が気にするんじゃないわよ!私だって自分のプラグスーツ貸すの嫌なんだから!」

 

どうやらアスカは本気でシンジを乗せるらしい。

 

「仕方ない…わかったよ。サポートでもすりゃあいいんだろ」

 

少しレイとアスカから離れて、シンジはディケイドライバーを出す。

 

「ちょっと、何よそれ。オモチャ?」

 

「まあ、見てな」

 

シンジはディケイドライバーを腰にセット!

 

アスカに『ディケイド』のカードを見せると、

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE『DECADE』!》

 

9つの虚像が現れ、一つとなり、シンジは『ディケイド』になる!

 

「な、なによ…それ…」

 

アスカは後ずさりする。眼の前で起こった事が信じられなかった。

 

「な、なんなのよ、アンタ!」

 

「なぁ~に、通りすがりの仮面ライダーだよ」

 

これが、式波=アスカ=ラングレーとディケイドの出会いだった。

 

 

 



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第拾弐話/共闘

「使徒とはね…まさか、目的はこれかね?」

 

加持は自分の持っているアタッシュケースを見て呟く。

 

「ボスに言われて碇指令に渡せって話だけど…とっとと先に行かせてもらいますか」

 

加持が部屋から出ると一人の軍人がいた。

 

「…お待ちしておりました…」

 

「…まったく、手回しがいいこって」

 

「はい。我等の『指導者』は常に先を見ております」

 

「『指導者』…ね」

 

加持がボスといっている人間は様々な呼ばれ方をしていた。

 

『神』『調停者』『管理人』『COO(最高執行責任者)』『クリエイター』『研究協力者』『副総監』『改竄者』『魔人』…

 

「ま、ちゃんと届けないと今度こそ俺の首がいろんな意味でとんじゃいそうだし、行こうか」

 

ここは大丈夫だろう。

 

そう、何せ…

 

「ボスと同じ『彼』がいるんだから」

 

 

 

 

 

 

「な、なんなのよ、アンタ!」

 

「なぁ~に、通りすがりの仮面ライダーだよ」

 

「だからカメンライダーってなんなのよ!」

 

「…う~ん?何だろ。とりあえず」

 

ディケイドはアスカに手を伸ばし、

 

「お前の味方だ」

 

「…!?」

 

その言葉にアスカは…

 

「あ、あたしに味方なんていない!あたしは一人で十分なのよ!」

 

拒絶の姿勢を見せるが、ディケイドはそ知らぬ声で、

 

「そう?んじゃ、これから味方だ」

 

とても優しい声で言われて、アスカの心が揺らぐ。

 

「弐号機にとっとと乗ろうぜ。お手並み見せてくれるんだろ」

 

心の揺らいだアスカはそのまま頷いてしまった。

 

 

 

『各艦、艦隊距離に注意しつつ回避運動』

 

「状況報告をしろ」

 

『再び戦艦沈黙!目標確認出来ません!』

 

「各艦、そのまま回避運動に専念。無理な攻撃は控えろ」

 

ブリッジで、艦長が的確な指示を行って使徒に対処している。

 

そこにミサト・トウジ・ケンスケがブリッジにやってきた。

 

「お待ちしていた、葛城一尉殿。どうやらあの正体不明の敵は君の管轄のようだ。的確な対処を頼む」

 

「は、はい。お任せください」

 

ミサトは肌寒いものを感じた。

 

この艦長の目…目の前で部下の乗る船…いや、自分の乗る旗艦さえ、危険なのに…やけに冷静だ。

 

そこには人間味が一切ない。

 

(なんなの、この艦長…)

 

 

 

 

 

弐号機/エントリープラグ内

 

アスカとディケイドはLCLで満たされたエントリープラグの中にいた。

 

アスカの口からドイツ語の起動シークエンスを示す言葉が流れる。

 

その言葉はよどみなく続いたが起動寸前にエラーの警告が来た。

 

「バグか?」

 

「あんたっ!日本語で考えてるでしょうっ!?」

 

「…お前は何語で考えてるんだ?」

 

「もちろんドイツ語よ!!あんたもドイツ語で考えなさい!」

 

「流石に急にドイツ語って言われてもな。『英語なら何とかなるんだが(英)』、『ドイツ語はちまっと無理でガンザンス(独)』」

 

『滑舌悪る!喋れてるけど喋れてない!』

 

『理解できやがりましてよござんすわ』

 

アスカは仕方なく言語を日本語に変換して再起動させた。

 

(…やっぱり誰かいるな)

 

ディケイドは自分に感じる『何かの意識』を感じ取る。

 

(また『真夜さん』のような感覚…でも、今回は俺に向けられていない)

 

ディケイドはアスカを見る。

 

(…こいつを…『求めている』?いや、こいつを…いやいや、もしそうだとしたら…初号機には…)

 

「ちょっと、何黙ってんのよ!」

 

「あっ、ああ。すまんすまん」

 

「もう、気合入れなさいよね。あたしの気が散るじゃない」

 

 

 

 

 

『オデローより入電!!エヴァ弐号機起動中!!!』

 

「了解…葛城一尉。聞いたとおりだ。」

 

「ナイスっ!!アスカっ!!!」

 

「アスカ、発進して!!!」

 

「事前に伝えた命令通り、これよりネルフ所属葛城一尉に作戦権を譲る」

 

「し、しかし、弐号機はB型装備のままです!」

 

「えっ!?」

 

B型装備とはエヴァの基本的な装備であり、両肩にプログナイフとニードルを装備した状態で主に陸上戦用だ。

 

『水中戦』の出来る装備ではない

 

 

 

 

 

 

「それでどうするだ?時間も無いぜ?」

 

カウンターが時を刻んでいる。

 

「しかもB型装備か…エヴァって泳げんのか?」

 

「落ちなきゃいいのよ!」

 

アスカが自信満々に答えた。

 

同時に艦橋からの通信と映像が入る。

 

『アスカ?それに…ディケイド!?シンちゃんもいるの?」

 

「ああ」

 

『試せるか…アスカ、出してっ!!』

 

「来たっ!!」

 

「行きますっ!!」

 

真正面に使徒が猛スピードで突撃してくる。

 

それを確認したアスカは弐号機を宙に躍らせる。

 

次の瞬間、弐号機を輸送していた船はガギエルの体当たりで真っ二つになった。

 

 

「くそ!今すぐ救助寄越せ!一人でも多く助けろよ!」

 

 

 

 

 

『くそ!今すぐ救助寄越せ!一人でも多く助けろよ!』

 

「艦長、船員の救助の専念を…艦長?」

 

なんとさっきまで氷のように冷静だった艦長が脂汗をかいている。

 

まるで心の底から恐怖しているようだ。

 

「わ、わかっている。総員、目標の殲滅は弐号機に任せ、船員の救助を最重要としろ」

 

艦長の脂汗は納まらない。

 

「なぜ…仮面…ライダーが…いる」

 

(え?)

 

ミサトはその掠れる様な声を聞いてしまった。

 

(『仮面ライダー』を知っている?どういうこと?)

 

 

 

 

「てりゃぁぁぁっ!」

 

「おいおい!うわっ!」

 

弐号機は電源ソケットのある艦に着地する。

 

甲板を拉げると同時にいくつもの戦闘機が海に落ちる。

 

「あぁ…環境破壊だ。自然を何だと思ってるんだお前は」

 

「こんな赤い海に今更…」

 

「そんな事は無い!一人一人の心がけが明日の地球を…」

 

「うるさい!あんたも今は使徒に集中しなさい!私の気が散る!」

 

弐号機は用意されていた電源ソケットを接続する。プラグ内のカウンターも止まり、一息吐く。

 

そして徐にプログナイフを取り出す。

 

「おいおい、ちょっと待て。何をするつもりだ」

 

「使徒を倒すに決まってんでしょうが!?あんたバカなの?」

 

「バカはそっちだ!ちょっと考えてみろ!」

 

「なっ、あんた私に…!?」

 

「いいから考えるか俺の意見を聞け!後で俺に好きなだけ言ってもいいから!」

 

「な、なによ」

 

「あの使徒…第6使徒の泳ぐ速度ははっきりいって異常だ。たぶんATフィールドを利用して水の抵抗を減らしている。あの巨体とあの速度で突進されたらどうなる?」

 

「うっ…」

 

慣性の法則によって、物質の速度が速いほど衝撃力は…

 

「弐号機はもっても、船がもたねない。沈むぞ」

 

「じゃあどうすればいいのよ!?」

 

「式波…提案がある」

 

ディケイドの真剣な声にアスカはドキッとなる。

 

「な、何よ」

 

「ほんの少し…この戦闘の間だけでいい。俺と『シンクロ』してくれないか?」

 

「なっ!あ、んた何破廉恥な…」

 

「この際だ。破廉恥でも何でもいい。この戦い…勝つぞ」

 

「むっ…」

 

「安心しろよ…俺は絶対に仲間を見捨てたりはしない」

 

「…ナカマ…アタシが…?」

 

「当たり前だろ。こうして一緒に戦うんだからな」

 

(アタシにナカマなんか…ナカマなんか…)

 

ぽんっ…

 

アスカの頭にディケイドが優しく手を置く。

 

「いこうぜ」

 

「…わかったわよ。今回だけだからね!」

 

アスカは弐号機だけではなく、ディケイドともシンクロするように意識した。

 

 

 

(さてと…いくか。しかし、使徒は何故こちらを襲ってこない。まるで…何かを探しているみたいだな)

 

実際に使徒は探していた。

 

先程まで存在した大きな『意識』を探していたのだ。

 

己を引き寄せたあの『意識』を…

 

「まあ、倒せばいいか。いくぜ式波!驚くなよ!」

 

ディケイドは2枚のカードを取り出す。

 

その内の1枚を持ち、ベルトにセット!

 

《KAMEN RIDE『KIVA』!》

 

ディケイドの姿が変わる。

 

それはある世界の『王』の姿。

 

人間と異形との間に生まれ、幾多の困難に合い、人間と異形との共存を望んだ『王』の姿。

 

混血の救世王『仮面ライダーキバ』の姿。

 

「な!また変身!?」

 

「まだまだいくぜ!」

 

そしてそれに従うは…

 

《FOME RIDE『BASHHA』!》

 

『♪~♪♪~』

 

魔性なる笛の音が辺りに響くと同時にD=キバと…弐号機の体が変化する。

 

D=キバと弐号機の右腕に鎖(カテナ)が巻きつき、緑の腕となる。

 

弐号機のその腕には緑の水銃『バッシャーマグナム』が存在した。

 

「わ、わたしの弐号機が!」

 

「これでよし…ヤツもとうとう標的を俺達に定めやがった所だ」

 

第6使徒は『本命』を諦め、もう1つの『意識』である『弐号機』に狙いを定めて突進してきた。

 

「跳べ式波!」

 

「えっ、ちょ、どこに!?」

 

「どこでもいい!」

 

「どこでもいいって!?うわっ!キタァッ!?」

 

第6使徒の突進を避ける為、弐号機はジャンプした。

 

ケーブルも外れてしまう。

 

が、着地地点が無い。

 

「ど、どうすんのよ!」

 

「いいから、エヴァにシンクロするみたいに、俺にシンクロしろ!焦らずにやればできる!」

 

「わ、わかったわよ!見てなさい!」

 

アスカはエヴァと同じようにD=キバBと同時にシンクロする。

 

(何…これ)

 

アスカはいつもと違う感じに戸惑う。

 

(とても…あったかい…)

 

弐号機はそのまま水面に…

 

 

 

 

 

「ちょっ!シンジ君!何考えてんのよ!」

 

弐号機が海に落ちた。

 

これではますます使徒の思う壺ではないか。

 

「くっ…どうすれ…ば…って、ええ?」

 

「…嘘だ」

 

「…出鱈目や」

 

3人は確かにシンジが『ヒーロー』だと思っていたが、目の前のモニターに映る光景は信じがたい物だった。

 

 

 

別の場所で直接戦闘を見ていたマリとカヲルは『ディケイド』の力を見て驚いていた。

 

「あれがワンコ君の力…!」

 

眼を爛々と輝かせて弐号機を見ている。

 

「凄いね。『9 RIDERS』のチカラは」

 

「あの力(カード)…欲しいにゃ~」

 

「カードを使うにはかなり精神力がいるんだろ?君の『ドライバー』では大変なんじゃないかな?」

 

「それでも!『ボス』だって作れない『9 RIDERS』のカード…絶対手に入れてみせるにゃ~!」

 

そう、『海の上に立つ』弐号機を見ながらマリは決意した。

 

 

 

 

 

 

「う、嘘でしょ…」

 

「さあ、時間もないし、一気に本番だぜ」

 

D=キバBはカードをもう一枚セットする。

 

《FINAL ATACK RIDE KI・KI・KI KIVA》

 

それと同時に周囲に変化が起こる。

 

「な、何よこれ!日蝕!?」

 

辺りがどんどん昼から夜へと変化する。

 

天に怪しく輝くは半月、その輝きの中、海に竜巻が舞い起こる。

 

艦隊を避けるように現れた竜巻は高速移動している使徒を捕らえる。

 

竜巻は使徒を海上より上へ、上へ、と押し上げ、宙へと舞い上がらせた。

 

そして遥か空に舞い上げると、

 

「式波!ロックオンだ!」

 

「OK!って何で私使い方わかるの!?」

 

弐号機はバッシャーマグナムの引き金を引く。

 

キュゴォォォォォォォッ!

 

すさまじい威力の魔水弾は標的である第6使徒に向かい、

 

バシャァァァァァァァァァッ!

 

直撃する。

 

水の属性を持つ使徒である第6使徒には、この一撃ではダメージを与えられなかったが、魔の水により、第6使徒の身体は飽和状態となった。

 

「式波!全力でジャンプだ!」

 

「わかってるわよ!」

 

弐号機が電源ケーブルを外して、水面を蹴って高く跳び上がる。

 

その間にディケイドはカードを4枚出す。

 

「次はこれだ」

 

カードをディケイドライバーにセットする。

 

《KAMEN RIDE『DEN-O』!》

 

D=キバBはD=電王Sと姿を変える。

 

「ま、また変わった!?」

 

弐号機もカテナが外れ、普段の腕に戻る。

 

「さらに変わるぞ!」

 

アスカも驚きの連続でタジタジになっている。

 

弐号機は思いっきり水面を蹴って飛び上がる。

 

その間にD=電王Sは再びカードをセットし、

 

《FOME RIDE『DEN-O ROD』!》

 

D=電王Rに変わり、すぐにカードをセット。

 

《ATACK RIDE 『DENGASHER ROD MODE』!》

 

弐号機の手にデンガッシャー・ロッドモードが出現する。

 

「さぁって、時間もないし、とっとと決めるぜ」

 

時間がもう30秒しかない。

 

《FINAL ATACK RIDE DE・DE・DE DEN-O!》

 

デンガッシャーRMがフリーエネルギーを纏いう。

 

丁度その時、弐号機が第6使徒より上に到達する。

 

第6使徒はあまりの事で口を開けながら体を震わしている。

 

そして…口の中に紅く輝く核(コア)があった。

 

「式波!口に向かって槍投げだ!」

 

「OK!」

 

弐号機はデンガッシャーRMを思いっきり第6使徒の口の中に放り投げる。

 

すると第6使徒の体が亀甲型のエネルギーでバインドされる。

 

「いくぜ!」

 

「くらいなさい!」

 

『デンライダーキック!』

 

そのまま凄まじい蹴りを食らわし、第6使徒を貫いた。

 

「ふん、楽勝ね」

 

「おいおい、俺のお陰だろ」

 

「うるさいわね。黙ってなさいよ」

 

ヒュン…

 

『えっ?』

 

弐号機の電源が落ちる。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

このままでは海に落下して…

 

「ダメ、どうすれば…な、何とかしなさいよ!」

 

「はいはい」

 

最後のカードをセットする。

 

《ATACK RIDE『ISURUGI』!》

 

カードが読み込まれたのと同時に、空中に光のトンネルが開き、巨大な亀型のメカが現れ、

 

ドシンッ!

 

弐号機をキャッチした。

 

「これでよし」

 

D=電王Rは一息吐く。

 

「頑張ったな式波。俺ともシンクロして疲れたろ」

 

D=電王Rが笑いながら言う。

 

そんな言葉を余所に、アスカはわからない事だらけだが、少しずつ頭で整理していく。

 

(サードチルドレン…ディケイド…こいつ…一体…)

 

「…『碇シンジ』…あんた、何者なの?」

 

アスカの疑問を

 

「俺か?通りすがりの仮面ライダーだ。覚えとけ」

 

軽く答えた。

 

 

 

 

「碇君。大丈夫だった」

 

「お、みんな。見てただろ、式波と俺の大活躍」

 

イスルギが弐号機を下ろし、エントリープラグから変身を解いたシンジとアスカが降りると、そこにはレイ・ミサト・トウジ・ケンスケがいた。

 

「相変わらず凄いわね。ディケイド…いえ、それを使いこなせるあなたがね」

 

「さっすがセンセや。大活躍やな!」

 

「なあ、碇。ちょっとそれ貸してくれないか?俺も『変身』…」

 

とシンジをレイ・トウジ・ケンスケは取り囲む。

 

少し離れたところでアスカはそれを見る。

 

「アスカも初陣なのによく頑張ったわね。これからも…」

 

「なによ…」

 

「アスカ?」

 

「私は今日は何にもしてないじゃない!今日使徒を倒したのは『ディケイド』じゃない!」

 

アスカはシンジを睨みつける。

 

「そんな変なモノの力使って!そんなもの使って戦うなんてアンタ弱い証拠じゃない!」

 

アスカはシンジに向かって言い放つ。

 

「私はそんなもの無くったってアンタより強いわよ。弱いアンタとは違って…!?」

 

突然、アスカの前にレイが立つ。

 

「な、何よファースト」

 

「取り消して」

 

「えっ…?」

 

「碇君は…弱くない」

 

レイはアスカをまっすぐ見て言う。

 

「そうや!シンジはこの中でいっちゃん強い!」

 

「そうだよ!人の為に戦えるこいつが弱いわけが無い!」

 

三人の言葉にアスカは

 

(なによ…なんでこいつら…こいつに…?)

 

「式波。じゃあさ、勝負しようぜ」

 

「しょ、勝負?」

 

シンジの提案にアスカは警戒する。

 

「簡単な事さ。これからお前は自分の強さを見せる。そして俺も対抗する。それで使徒を倒しまくって、どちらが強いか決めよう」

 

シンジは単純に言った。

 

「そうだな。俺が勝ったら個人撮影会だ。一日中可愛く撮らせてもらうぜ」

 

「んなっ!」

 

「なんてな。まあ深く考えるなよ。ようは一緒に使徒を倒そうって事さ」

 

シンジは手を出す。

 

「改めてよろしくな式波」

 

シンジは笑顔でそういった。

 

(な、何よこいつ…なんでこんな笑顔ができるの…)

 

アスカは少し気がそれてしまい、

 

「ふん、見てなさい。私が強いトコとことん見せてあげるわ。『シンジ』」

 

思いっきり手を握ってシェイクハンド。

 

「ぐぉ…!」

 

「私の事は『アスカ』でいいわ、通りすがってない仮面ライダー」

 

「それ言わない約束…」

 

「やっほ~、ワンコ君、姫。頑張ったね~」

 

突如、マリがひょうきんな声を出してマリが現れた。

 

「真希波?」

 

「ぶー、私は『ニャンコちゃん』か姫みたいに『マリ』って呼んで」

 

笑顔でシンジにそう向ける。

 

「どうしたのよフォース。何かよう?」

 

「ヒドイなー。使徒に勝ったからお祝いしにきたんジャン。バンッて祝砲挙げようと思って」

 

マリは一丁の『銃』を『じゃーん!』といいながら取り出した。

 

「なっ!?ちょっと!子供がそんな銃なんでもってるのよ!」

 

「自慢の一品だにゃ~」

 

「ほら!危ないから渡し…」

 

「…おい」

 

『!?』

 

全員がシンジに振り向く。

 

シンジが警戒心を高め、マリを睨む。

 

「女の子を睨みつけて聞く事じゃないんだが…どうして『それ』を持っている」

 

「んっふっふ~」

 

マリが一枚の『カード』を取り出す。

 

「ワンコ君が『9 RIDER'S CARD』をくれたら…教えてあげてもいいかにゃ~」

 

マリが『カード』を『銃』に入れる。

 

《KAMEN RIDE》

 

『えっ!?』

 

その音声は、この場にいた者達はよく知っている。

 

「にゃにゃ~」

 

マリは銃口を天に向けて、

 

「変身!?」

 

《『DI-END』!》

 

「きゃっ!」

 

「うわっ!」

 

「くっ!」

 

「な、なに!?」

 

「ふぉ、フォース…?」

 

音声と同時に銃口から青いエネルギー体が跳ぶ。

 

それに眼を奪われ、上を向き、再びマリを見ると

 

「今日は驚きまくりや…」

 

「マジかよ」

 

「まさか…」

 

「あ、あんたも…」

 

それぞれ皆が驚き、

 

「仮面…ライダー…」

 

「ああ、『ディエンド』だ」

 

レイにシンジは返した。

 

「そう!あたしも!通りすがりの仮面ライダーだにゃ~!」

 

マリ…いや蒼き射手・仮面ライダーディエンドは銃口をシンジに向けた。



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第拾参話/PRECIOUS -『龍騎』ノ記憶 -

新しいPCで復活。

とりあえず新作データはまっさらになったんで、更新から。


 

 

 

 

 

 

「さぁ!ワンコくんも変身して!楽しくやろうよ!」

 

真希波=マリ=イラストリアス…ディエンドはシンジに銃口を向けて楽しげに言う。

 

周りの乗組員達もいきなり登場した仮面ライダーに驚いている。

 

しかし、事前に何らかしらの命令が届いていた為、周りで傍観しているだけだった。

 

「…ミサトさん。皆を連れて下がっててくれ」

 

「ちょ、ちょっとシンジ君…」

 

「もし、真希波の変身した『ディエンド』が俺の知る『ディエンド』なら…正直、戦ったら余裕が無いんだ」

 

いつも以上のシンジの真剣な顔にミサトは

 

「わかったわ。みんなコッチに」

 

「碇君」

 

「シンジ!」

 

「安心して向こうで待ってろ」

 

シンジはレイとアスカに笑顔で答えながら、ディエンドに向かう。

 

《KAMEN RIDE》

 

「まさか俺がディエンドと戦うなんてな…変身!」

 

《『DECADE』!》

 

9つの鏡像が1つになり、シンジはディケイドに変身した。

 

オーバー=ザ=レインボーの上に2人の仮面ライダーが向かい合った。

 

ミサト達や周りの海兵隊員もその光景にタジタジになっている。

 

「さぁって…」

 

ディケイドはライドブッカー・ソードモードの刃を手でなぞり、

 

「ニャンコちゃんにゆっくり聞かせてもらうぜ。ディエンドライバーをどこで手に入れたのか、をな」

 

「にゃにゃ~、怖いにゃ~…えいっ!」

 

 

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

 

ディエンドはディエンドライバーの引き金(トリガー)を引き、蒼いエネルギー弾をディケイドに放つ。

 

ディケイドはそれを紙一重で回避(かわ)し、

 

「てりゃっ!」

 

ライドブッカーの刃を連撃で繰り出すが、ディエンドはそれを同じように紙一重で回避(かわ)す。

 

ディケイドは流れるような動作でライドブッカーをガンモードに変形させ、カードを取り出す。

 

ディエンドの方もカードを取り出し、

 

《ATACK RIDE 『BLAST』!》

 

 

『ドドドドドドンッ!』

 

 

2人のドライバーからまったく同じ音声が流れ、互いに複数のエネルギー弾を撃ち合う。

 

エネルギー弾は相殺され、その瞬間ディケイドは一気に間合いを詰めて、蹴りを放った。

 

 

ブンッ!

 

 

しかし、ディエンドはそれを回避し、

 

 

シュバッ!

 

 

ディエンドライバーを左手に持ち替え、右手でパンチを放つ。

 

 

ガッ!

 

 

ディケイドはそれを受け止め、掴む。

 

「やるな!」

 

「それはコッチのセリフにゃ!」

 

 

バンバンッ!

 

 

ディケイドにエネルギー弾を放つが、ディケイドは寸前に手を離して、避けた。

 

「凄いねワンコ君!あんなに訓練を受けた私と互角以上に戦えるなんて!」

 

「はっ!これでも『鬼の修行』と各種格闘技で鍛えてきたんだ!ニャンコに遅れを取るかよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で繰り広げられているディケイドとディエンドの戦いは熾烈を極めていた。

 

人間以上の能力を持つ仮面ライダー同士の戦いは、周りの人間に圧倒的な力を見せていた。

 

「これが…仮面ライダー同士の戦い…」

 

ミサトは兵隊に持ってきてもらったカメラで映像録画している。

 

「すげぇ…」

 

ケンスケは一心不乱にカメラを構えてシャッターを押す。

 

「ゴツイで」

 

トウジもそれを凝視してみていた。

 

レイとアスカはその戦いから眼を離さない。

 

「碇君…」

 

「これが…仮面ライダーの力…」

 

レイとアスカはその戦いから目を逸らさない。

 

『力』の持つ者達の戦いをそれぞれの瞳で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

『はっ!』

 

2人のライダーが戦い続ける!

 

「はぁはぁ…ま、まさかココまで梃子摺るなんて」

 

「おいおい、スタミナはコッチが上か?息があがってんぜ」

 

そういうディケイドも息が少し上がっていた。

 

(向こうも結構、尋常じゃない訓練してんな。まさか軍隊訓練より厳しい『鬼の修行』なのにな)

 

(なんなのかにゃ、『鬼の修行』って…あの強烈な訓練をしてきた私と張り合うなんて…)

 

2人は間合いを取る。

 

「やっぱり、出し惜しみはいけにゃいか」

 

ディエンドは2枚のカードを取り出す。

 

それを見てディケイドは対策を取る前に、

 

「おい、お前ら!今すぐもっと離れろ!」

 

ミサト達に叫ぶ!

 

「ちょっ、どういう…」

 

「考えなくていいから早く…」

 

「人の心配してる場合かにゃ!」

 

ディエンドは一枚カードをセットし、

 

《KAMEN RIDE『OUJA』!》

 

さらにもう一枚…

 

《KAMEN RIDE『TAIGA』!》

 

そして、

 

「おいで…『仮面ライダー』!」

 

トリガーを引いた。

 

『!?』

 

目の前に突如、鏡像が現れる。

 

そのいくつもの鏡像は2つの人型を作り、最後には人を作った。

 

そして現れたのは…

 

「祭りの場所はここか…?」

 

「英雄を呼んだのは誰かな…?」

 

2人の…

 

『仮面ライダー!?』

 

全員が驚くのも無理はない。

 

突然その場に『仮面ライダー』が現れたのだ。

 

「『仮面ライダー王蛇』に『仮面ライダータイガ』…」

 

その『最悪』のコンビに、ディケイドは動揺を隠し切れない。

 

「お前達の相手はディケイドにゃ!」

 

ディエンドがディケイドを指す。

 

すると2人の仮面ライダーは、

 

「ディケイドか…喰いっぷりがありそうだな」

 

牙召杖べノバイザーのカードリーダーを開く王蛇。

 

「ディケイド…君を倒せば、僕は英雄だ」

 

白召斧デストバイザーのカードリーダを開き、それぞれ一枚のカードを入れる。

 

『ADVENT』

 

シャァァァァァァァッ…

 

『!?』

 

先程の戦いで出来た水溜りの中から、恐ろしく巨大な蛇が王蛇の後ろに現れる。

 

ガァァァァァァァァッ!

 

鏡のようなステンレス部分から剛重な白虎が現れ、タイガの横に叫び立つ。

 

「ベノスネーカーにデストワイルダー…」

 

「くくくっ…はっはぁっ!」

 

王蛇は狂喜に塗れて、ディケイドに襲い掛かる。

 

《SWORD VENT》

 

王蛇はべノバイザーにカードをスロットする。

 

するとベノスネーカーの尻尾を象った剣『べノサーベル』が王蛇の手に現れる。

 

ガキィンッ!

 

「くっ!」

 

シンジは辛うじてライドブッカーSMで王蛇の攻撃を防ぐ。

 

「さぁ、楽しませろよ」

 

「あ、浅倉…!」

 

その凶暴さにシンジは自分の出会った『仮面ライダー王蛇』の名前を口にした。

 

そう…戦いのペースが遅い事に危機を感じたゲームマスターである『神の名を冠したライダー』が参入させた『凶悪犯罪者』…

 

シンジが生まれて初めて出会った…『純粋な悪』…!

 

「どうしたディケイド…ああっ!」

 

「くぅ!てりゃっ!」

 

シンジは純粋に『王蛇』に恐怖を持つ。

 

人の命を奪う事に躊躇いどころか、快楽を得る者に…幼い頃のシンジは恐怖した。

 

でも…それでも…

 

(逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ!)

 

「僕は…逃げないと誓ったんだ!浅倉…それを見せてやる。お前が…」

 

 

 

それはかつて、『浅倉威』がシンジを恐怖に陥れた言葉…

 

『お前も『人助け(バカ)』をやってると…喰い殺されるぜ』

 

しかしシンジは、

 

 

「お前がバカだと言った事を続けてきたバカの力…みせつけてやらぁっ!」

 

《ATTACK RIDE『SLASH』!》

 

カードをセットしてディケイドは王蛇に向かった。

 

その2人を他所に、

 

「世界の破壊者に犯罪者…英雄はどっちも倒さなきゃ…」

 

《STRIKE VENT》

 

タイガがデストバイザーにカードをいれると、タイガの両腕に凶悪な鉄爪『デストクロー』が装着される。

 

「ふっ…!」

 

タイガが2人に向かって走る!狙いは…

 

ザシュッ!

 

「ぐぁっ!」

 

王蛇を背後から一撃!

 

「せりゃぁぁ!」

 

ガキンッ!

 

「ぐぐっ!」

 

そのままディケイドに一撃を喰らわしたが、ディケイドはその一撃を受け止める。

 

「な、なぜ王蛇を…!?」

 

「アレも『悪人』だからね…『英雄』なら倒さなきゃ」

 

「くっ、『悟兄ちゃん』…」

 

英雄に憧れ…狂った仮面ライダーがここにいた!

 

「やってくれたな…」

 

王蛇はベノスネーカーに命じ、毒液をディケイドとタイガに吐かせた。

 

2人は寸での所で回避する。

 

「くそ、やれ!」

 

タイガはデストワイルダーに王蛇を殺すように命じるが、

 

『シャァァァァァァァッ!』

 

『ガルルルルルルルッ!』

 

ベノスネーカーとデストワイルダーが対峙し、そのまま戦いに発展した。

 

「お前達何やってるにゃ!相手はディケイド!勝手に戦うな!」

 

しかし、2人の仮面ライダーはお構いなしに攻撃を始める。

 

(なんだ?もしかして、あのディエンドライバー…俺のと同じで『大樹兄ちゃん』のとは違うのか?)

 

しかし、ディエンドが動揺しているのと、王蛇とタイガが戦っている間に

 

「ミラーモンスターに対抗する為には…ミラーモンスターで」

 

ディケイドは『龍騎』のカードを取り出す。

 

しかし、その瞬間をディエンドは見逃さなかった。

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE『RYU-KI』!》

 

「今にゃ!」

 

《ATTACK RIDE『REPRODUCE』!》

 

ディエンドは素早くカードをセットし、引き金を引く。

 

ディエンドライバーの銃口の前に、魔法陣のようにディエンドのマークが蒼く映る。

 

「うわっ!」

 

ディケイドから何かエネルギーのような物を吸収する。

 

《COLLECT》

 

と数枚のカードが現れ、ディエンドはそれを手にすると、

 

「よっしゃ~!」

 

ディエンドは喜びまわる。

 

「どういう事だ…『変身』していない。はっ!」

 

ディケイドは急いで『龍騎』のカードを探す。

 

「…あった」

 

てっきり『盗まれた』かと思っていたが、無事あるようだ。

 

じゃあ…

 

「まさか…!?」

 

「そう!ボス特製のこの『REPRODUCE』のカードはライダーカードをコピーする事ができるんだよ。例え、『9 RIDER'S CARD』でもね!」

 

高らかに見せびらかし、そのまま

 

《KAMEN RIDE》

 

ディエンドライバーにセットする。

 

「おいで…『仮面ライダー龍騎』!」

 

ディエンドはトリガーを引いた。

 

《『RYU-KI』!》

 

 

 

 

「んん?」

 

気づくとディエンド…マリはまったく違う場所にいた。

 

「ここは…どこ…?」

 

(確か私はディケイドと戦って…『龍騎』のカードを…)

 

「テリャァァァァッ!」

 

「!?」

 

その声と爆音を聞きつけ、マリが振り向くと、2人の仮面ライダーがいた。

 

一人は黒い仮面ライダー。もう一人は…

 

「『龍騎』!?それにあれは『ナイト』!」

 

そこからマリの目の前に『龍騎』の軌跡が流れていく。

 

黄金の仮面ライダーと対峙し、

 

「消えていったライダーの重さが、2倍になった、これ以上は増やさない!」

 

(な、何言ってんのコイツ…?)

 

「人を守る為にライダーになったんだから、ライダーを守ったっていい!」

 

「!?」

 

その言葉にマリは驚愕した。

 

仮面ライダー龍騎の世界。

 

その世界にいる仮面ライダーはミラーワールドと呼ばれる鏡の世界で戦う。

 

マリが『ボス』に渡された資料に拠れば、ゲームマスターである『仮面ライダーオーディン・神崎士郎』は、他者の命を踏み台にしてでも自分の願いを叶えたいという、『心』に深い闇を抱えている者達を選び、仮面ライダー同士の戦いを作り上げた。

 

『カードデッキ』の開発に協力した『ボス』の話では仮面ライダーは『苗床』のような物であり、仮面ライダーがミラーモンスターを倒し、契約モンスターにその魂ともいえる『エネルギー』を捕食させ、モンスターの力を上げる。

 

そうする事によって、仮面ライダー自体の攻撃力・防御力への力を上げていく。

 

そして仮面ライダー同士が戦い、仮面ライダーと契約モンスターを殺すと、仮面ライダーと契約モンスターの『魂』を契約モンスターが喰らう。

 

そうする事により、最後の一人となった時、その仮面ライダーの契約モンスターは莫大なエネルギーを持ち、それにより願いを叶える。

 

『神崎士郎』はある目的の為に動いていたようだが、『ボス』の計算上、戦いを終えた時のエネルギーを考えると、大抵の願いは叶える事は可能だという。

 

そう…『龍騎』の世界の仮面ライダーは『どんな願いでも叶う権利』のチケットを手に入れている者達なのだ。

 

それなのに…今、自分の目の前で戦っている『龍騎』は、

 

「俺はッ…助けたいから助けただけだ!」

 

「なんで…なんでコイツ…」

 

『龍騎』は最後の最後まで願いの事なんて考えてなかった。

 

そしてモンスターによって致命傷を負わされても、最後の言葉は…

 

「やっぱりミラーワールドなんか閉じたい。戦いを止めたいって…」

 

その言葉を聴き終えた時、マリの頭の中は真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

ディケイドは目の前に現れた『仮面ライダー』に怯んだ。

 

「シン…兄…」

 

もう『二度と会えない』と思っていた仮面ライダーを見て、ディケイド…シンジの心は揺らぐ。

 

(くそ、考えるな。あれはディエンドが呼び出した『仮面ライダー龍騎』だ!シン兄じゃない!)

 

ディケイドが首を振り、構えると

 

「なに!?」

 

ディエンドが『龍騎』に銃口を向けていた。

 

「あんた…」

 

ディエンドはつぶやくようにいう。

 

「どうしてあんた戦わなかったの。偶然でも、どんな願いも叶える権利を手に入れたんでしょ。なんでそれを捨てられるの」

 

 

ドンドンドンッ!

 

 

トリガーを引き、エネルギー弾を撃つディエンド。

 

その攻撃に倒れる龍騎。

 

「答えてよ…それ以上に楽しい事…凄いモノって…戦いよりも、願い事よりも大事な物って…なんなのよ」

 

「真希波…」

 

立ち上がる『龍騎』は何も答えない。

 

ただ…立ち尽くしているだけだった。

 

「はぁ…何やってんだ」

 

《UNITE VENT》

 

「はっ!?」

 

ディケイドはその音声が聞こえた先をみる。

 

タイガとデストワイルダーが無残な姿をし、消えていく。

 

まるで次の遊び相手を求めるように、べノバイザーにカードを入れて、王蛇が歩いてきた。

 

『グォォォォォッ!』

 

二足歩行のサイ型モンスター・『メタルゲラス』が壁を砕いて現れる。

 

パッシャァァァァァァン!

 

海を鏡面代わりにして、エイ型モンスター『エビルダイバー』が現れ、

 

『シャァァァァァァァッ!』

 

ベノスネーカーの元に集結すると…

 

「な、なんなのよアレ?」

 

ミサトの声が恐怖で震える。

 

三体のモンスターが…交じっていくからだ。

 

「ば、ばけもの!?」

 

「………」

 

(こ、こわい…)

 

 

 

 

 

「獣帝、『ジェノサイダー』…」

 

そう、ベノスネーカーの頭と尻尾、メタルゲラスの体、エビルダイバーの翼装甲…悪魔の権化ともいえるキマイラ型モンスター『ジェノサイダー』である。

 

「やれ…」

 

王蛇はディエンドを指差し、

 

《FINAL VENT》

 

『グォォォォォォォォォッ!』

 

「拙い!」

 

ディケイドは一気に走り出す。

 

バリッ!

 

ジェノサイダーが自らの腹部を食い破る!

 

キュゴォォォォォォォッ!

 

突然唸り音が聞こえる。

 

ジェノサイダーの腹部に小型のブラックホールを出現したのだ。

 

「なにっ!?くぅ、にゃ!」

 

「………」

 

ブラックホールは辺りにあるもの、備品や窓ガラス、さらには近くにあった戦闘機すら吸い込んでいく。

 

ディエンドと『龍騎』は必死に耐えていた。

 

(あそこに吸い込まれたら終わりだ!)

 

ディケイドはジェノサイダーの背後に回りこみ、走りながらカードをセット!

 

《FINAL ATTCK RIDE『DE・DE・DE DECADE』》

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「はぁ…邪魔するなよ」

 

《ATTCK RIDE 『ILLUSION』!》

 

新たにカードをセットし、効果が現れた瞬間、ディケイドは突如3体に分身した。

 

「なにっ!?」

 

『でりゃぁぁぁっ!』

 

ガガキンッ!

 

「グガァァァァッ!」

 

その内、2人が王蛇を攻撃し、もう一人はジェノサイダーに向かっていき、

 

「ゼリャァァァァァッ!」

 

ザシュゥゥゥゥッ!

 

『グォォォォォォォォッ!』

 

ジェノサイダーの足を叩き斬り、攻撃を無理やり止めた。

 

のた打ち回るジェノサイダー。

 

ディケイドは一人に戻ると、ディエンドと『龍騎』の側まで駆けつけた。

 

ディエンドは、ディケイドが来ても反応はなかった。

 

「真希波…どうした?」

 

「こいつ…なんで願い事を捨てたの。願い事が…ないなんて信じられない」

 

「!?」

 

(シン兄の『世界』の事を知っている!?まさか、カードを読み込んだせいか?)

 

「………」

 

ぐいっ!

 

「きゃっ!」

 

ディケイドは項垂れるディエンドを手を引っ張って、『龍騎』の前に立たせる。

 

「…初めてシン兄が変身した後…僕より小さかった女の子が泣いてたんだ」

 

「え…?」

 

「その女の子のお母さんはミラーモンスターに捕食されて、女の子の前から消えた。その後、シン兄は決めたんだ。まだ、その時、『望みが叶う』事を知っていなかったけど…人を助ける為にライダーになるって」

 

それは些細なきっかけ。

 

先輩ジャーナリストに紙に羅列されている『犠牲者』の名が、『ただの文字』ではない事を突きつけられ、決めた誓い。

 

「人を助けるなんて…消えてもいい人間なんていないなんて…本気で言える人だった。だからあの人が最後にいった言葉は…あの人の本当に心の底からの願いだよ」

 

『龍騎』を前にディケイドは思い出す。

 

昔、『あくとく』が『悟兄ちゃん』に向かって言っていた。

 

『英雄っていうのはな、なろうと思った瞬間失格なのよ…つまりお前は最初からアウトなわけ』

 

(『あくとく』も知ってたんだ。英雄なんてモノがいるんだったら…)

 

「まあ、要するに『バカ』だったんだよ。本当に…」

 

ディケイドは龍騎を見て、

 

「もうちょっと自分の事を考えてろよ…バカ兄」

 

仮面の下に、一筋の涙を流しながら『龍騎』に言った。

 

「ぐぅぅっ…まだ、だ。まだ祭りは終わってないぜ。やれ!」

 

王蛇が立ち上がり、ジェノサイダーに指示をだす。

 

ジェノサイダーは怪我した足何のその、ディケイド達に突進してきた。

 

ディケイドは一枚のカードを取り出す。

 

「力を…貸してよ」

 

《FAINL FOME RIDE『RYU・RYU・RYU RYU-KI』!》

 

そういって、カードをセットすると、龍騎は無言のまま王蛇達の方に…ディケイドに背を向ける。

 

「ちょっと…くすぐったいよ」

 

バンッ!

 

ディケイドが『龍騎』の背中を叩くと、『龍騎』の体が変化していく。

 

龍騎は完全に変形し、『RYU-KI DRAGREDER』となる。

 

《FINAL ATACK RIDE 『RYU・RYU・RYU RYU-KI』!》

 

カードが読み込まれると、鏡の中から、もう一匹のドラグレッダーが現れる。

 

『ギャォォォォォォォォッ!』

 

双龍は全身に炎を纏わせ、王蛇とジェノサイダーに体当たりをする。

 

「ぐぉっ!」

 

『ゴォォォォッ!』

 

そのまま踊り狂うように牙・爪・鱗で攻撃していき、王蛇とジェノサイダーを宙に運んでいく。

 

完全に王蛇とジェノサイダーを無防備にした後、ディケイドが龍騎がしていた必殺のタメポーズを決めた後、飛び上がった。

 

双龍はディケイドの周りに踊り、

 

「はぁぁぁっ!ゼリャァァァァァッ!」

 

ディケイドがキックの構えを取ると、双龍は地獄の業火の如き炎を土王子に吐き放った。

 

炎に包まれたディケイドはそのまま王蛇とジェノサイダーに突進していく。

 

「ウオォォォォォォォッ!」

 

ドガァァァァァァァァンッ!

 

『ドラゴンライダーキック』の2倍以上の攻撃力を誇る『ツインドラゴンライダーキック』が決まった時、王蛇とジェノサイダーはこの世界から消えた。

 

「ふっ」

 

「………」

 

ディケイドが着地すると、『龍騎』も元に戻り、ドラグレッダーは鏡の中に戻った。

 

ディケイドは『龍騎』を見つめる。

 

「ありがとう…」

 

「………」

 

『龍騎』はそれを聞くと、拳を握り、顎位まで持ってきて、さらにギュッと拳を握り、頷いた。

 

「!?」

 

(その仕草は…!?)

 

そして、『龍騎』はそのまま消えていった。

 

「シン兄…」

 

ディケイドは少し呆然とするが、すぐに己を取り戻して、ディエンドに近づく。

 

「…『龍騎』の世界の記憶…みたのか?」

 

「…うん…」

 

ディケイドは変身を解く。

 

それと同時にディエンドの変身も解けた。

 

「『仮面ライダー』って…なんなの?」

 

「それは真希波がこれから知っていく事だ。チャンスがあればいつでもカードをコピーすればいい」

 

「え?」

 

「カードから見える記憶…それを見て真希波がどう感じるのかはわからない。でも…」

 

シンジは眼を閉じ、思い出す。

 

9つの世界でもの記憶を…

 

「少しはわかるかもしれないぜ。『仮面ライダー』の意味が…」

 

「私にわかるわけない。私は…ただ楽しく…」

 

「わかるさ」

 

シンジは言葉を遮る様にいう

 

「お前も『仮面ライダー』なんだからな」

 

その言葉にマリはキョトンとした。

 

(さて、問題は…)

 

向こうで眼を点にして見ているギャラリーにどう説明しようかとシンジは悩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

『そうか。碇司令にちゃんと『アレ』を渡してくれたかい』

 

「ええ。ちゃんと確実に渡しておきました」

 

『これで君の首の皮は繋がった。どんどんぱふ~』

 

「本当ですか?」

 

加持は心底安心した声を上げる。

 

『まあ、ドコのドイツに頼まれたか知らないけど、5号機を破壊するなんて大それた事考えるなんてね。面白かったよ。お陰で仮設状態でも5号機を日本に送れる口実が出来た。それについては感謝している』

 

(あなたなら口実ぐらいお茶の子さいさいで創れるでしょうよ)

 

電話の向こうの『今現在の雇い主』に心の中で突っ込む。

 

正直、この電話の向こうの男はエヴァシリーズを『全て』送りたがっている。

 

この男が行おうとしている『計画』には、エヴァシリーズ『全機』が必要だ。

 

男のお陰で、エヴァシリーズの建造費が増加され、どこからとも無く優秀な人材を男が連れてきたお陰で、予定より早くエヴァシリーズは完成するだろう。

 

それに…自分の以前の雇い主の一人は…雇い主と『同じ姿と記憶を持ったモノ』になっていた。

 

『そうそう。マリ坊のヤツ、もう『9 RIDER'S CADE』を一枚手に入れたよ。さっきデータが転送されてきた。『龍騎』のカードだ』

 

「へぇ、そりゃ凄い。もう1枚目を」

 

『いやいや、それが問題でね。もうディケイドと一戦交えちゃったみたいで、碇君にメールで命令しちゃう破目になっちゃったよ。今回の件不問にする為にね。赤木博士にディエンドライバー取られちゃわないように』

 

「だからいつもの面がさらに無愛想になってたんですね」

 

『まあまあ、ディケイドの事だからもう許しているだろう。あの子はそういう子だ。お詫びとしてチャンと『引っ越し祝い』も贈ったよ。全員がマンションについたら届くはずだ』

 

「…シンジ君の事知ってるんですか?」

 

『知ってるとも。なにせ…』

 

加持は受話器の向こうで、

 

『僕の『弟』と一緒に、僕を倒した一人だからね』

 

男が物凄くいい顔をしているのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、つっかれた~」

 

シンジはマンションのドアを開けてそういった。

 

あの後、全員に説明して、副司令からメールが来るまで真希波をかばって、ヘリで帰ってきたりして疲れた。

 

今日はゆっくり休みたいとシンジが思っていると、

 

「シンちゃ~ん、ご飯」

 

「ばんごはん…」

 

「シンジ、今日のディナーは何?」

 

「おなかペコペコ。ワンコ君」

 

「僕も楽しみだな」

 

「………」

 

世の『お母さん』の気持ちが良くわかる。

 

シンジは溜息を吐いてから、

 

「なんにするかな…」

 

ドサッ

 

「ん?」

 

キッチンに入ると見慣れない発泡スチロール製の箱があった。

 

「なんだこりゃ?」

 

《引っ越し祝いです。ウチの子をよろしく。 『4』と『5』のボスより》

 

触るとヒンヤリ冷たい。

 

パカッ

 

蓋を開けて中を見る。中身は…

 

「…どこの誰だか知らんが…感謝します!」

 

最高級の鯖だった。

 

 

 

その日、悲鳴が轟き叫び、多めに炊いたご飯が綺麗さっぱり無くなった。

 



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第EX-01/超電王トリロジー ゼロのスタートウィンクル公開記念

※注意※


これは『超電王トリロジー ゼロのスタートウィンクル』をリアルタイムで見た時の作品です。


 

 

 

 

 

(カヲル)「ふぅ…やっぱり君のいれるコーヒーは美味しいね」

 

(レイ)「おいしい」

 

(マリ)「ほんとだにゃ~、砂糖抜きでも飲めるなんてすごいにゃ」

 

(シンジ)「ふん、ポレポレ・ミルクディッパー・カフェ=マル=ダムールのコーヒーを子供の頃に味わったからな。あれに近づきたくて頑張った…反面教師にデンライナーのナオミさんの珈琲もある」

 

シンジ・カヲル・レイ・マリがコーヒーブレイクを楽しんでいると、

 

バンッ!

 

突然勢い良く扉が開く。

 

犯人はアスカだった。

 

アスカは勢い良く歩いてきて、

 

バンッ

 

テーブルに手を思いっきり叩きつける。

 

(アスカ)「シンジ!聞きたいことがあるの!」

 

(シンジ)「一見違う種類に感じる『緑茶』『烏龍茶』『紅茶』は実は同じ種の『茶の葉』を使っている。そのままが『緑茶』、半発酵が『烏龍茶』、完全発酵が…『紅茶』だ」

 

(アスカ)「…違うわよ!聞きたいのはこれよ!」

 

バンッ!

 

アスカが出したのは、

 

(マリ)「んにゃ?『超電王トリロジー』のポスター?」

 

(カヲル)「電王の新作だね」

 

(レイ)「…俺、参上?」

 

(アスカ)「そうよ!なんなのこの『仮面ライダー電王』って!?どうしてこいつの奴だけたくさん映画がでてるのよ!」

 

(カヲル)「そうだね。放映中の映画『俺、誕生!』から始まって、仮面ライダーキバとのクロスオーバー『電王&キバ クライマックス刑事』、『さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』、そして『超電王』シリーズの最初の作品『鬼ヶ島の戦艦』もあるね。他にも『オールライダー対大ショッカー』、『仮面ライダー×仮面ライダー W & ディケイド MOVIE大戦2010』に、ミニアニメまであるね」

 

(シンジ)「それに加えて今回放映される、三部作の連続公開『超電王トリロジー』だ。人々の記憶という名の『時間』を護る為に戦う絆の戦士…子供の頃の俺はリョウちゃんとモモタ達に絆の大切さを教えられた。俺達も絆を大切にしていこうな」

 

(レイ)「シンジ君…」

 

(カヲル)「君は…本当に強いね」

 

(マリ)「むむ…なんか、カックイイ…」

 

(アスカ)「シンジ…ん?って!私が聞きたいのは『電王』の事よ!電王ってどんな仮面ライダーなの!?」

 

(シンジ)「そう言われてもな、話すと長くなるぞ」

 

(カヲル)「そういえば、『彼』から預かっているもので…こんなものがあるよ」

 

ドンッ

 

カヲルがテーブルの上においたのは、

 

『仮面ライダー電王DVD Vol.1~Vol.12・劇場版』

 

(シンジ)「…いいのか?」

 

(カヲル)「さあ?」

 

(アスカ)「ふふん、こいつを見ればわかるわけね。見るわよレイ!マリ!」

 

(レイ&マリ)『お~』

 

 

 

この後、シンジに食事やらなんやらの世話をやらせながら、テレビに齧り付く4人のチルドレン。

 

 

 

(アスカ)「…終わった」

 

(レイ)「うん…」

 

(マリ)「切ないにゃ」

 

(カヲル)「人間は…こんなにも強いものなのか…」

 

(シンジ)「お、見終わったか?どうだったリョウちゃんとモモタ達の活躍…」

 

(アスカ)「愛って…なんて切ないの!愛理さんがかわいそうよ!」

 

(シンジ)「へっ?」

 

(レイ)「私も…あんな風に人を愛せるの?」

 

(マリ)「桜井侑斗…もっと愛理さんと一緒にいたいと思わなかったのかな?消えるのを怖くなかったのかな?」

 

(カヲル)「それでも彼は彼女のいる時間を守りたかったんだろうね。愛してるが故に…」

 

(アスカ)「こうしちゃいられないわ!」

 

アスカは勢い良く立ち上がる。

 

(アスカ)「今すぐコレ観に行くわよ!」

 

『超電王トリロジー』のポスターを持って、アスカは叫ぶ。

 

(アスカ)「この『ゼロのスタートウィンクル』では侑斗(若)と愛理さんが主役よ!愛理さんは侑斗を選ぶの!それとも…ああ!気になって仕方ないわ!映画館行くわよ!」

 

(レイ&カヲル&マリ)『おー!』

 

ドタドタドタドタ…

 

4人はそのまま出て行った。

 

(シンジ)「…俺も行こ」

 

シンジはエプロンを外して、後を追いかけた。

 

 

 



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第拾肆話/混じられた天使

 

 

 

「これこれ、『七番目』発見」

 

『男』は、眼下に存在する『七番目』を見ながら、満足そうにうなずく。

 

『男』はまるで当たり前のように宙に浮いていた。

 

ただ『男』が普段と違うところは…『男』が『仮面』と『鎧』を身に着けていたことだ。

 

「さってと、今回はコレコレ」

 

『男』はここに来る前に、協力者である『洋装の男女』からもらった、『トゲトゲの物体』を出す。

 

それは、『妖怪と呼ばれる存在でもあるモノ』の卵だった。

 

「さってと、どれがいいかな…『土蜘蛛』の方が、いや『一反木綿』かな、『塗壁』…」

 

ツルッ

 

「あっ」

 

ぼと、ぼと、ぼと…ぐにゃんぐにゃん

 

のんびりとした音で落ちた十個以上の『トゲトゲ』は『七番目』に触れると、すぐに『七番目』の『中』に侵入し、『七番目』の体を変化させていった。

 

「………まっ、いっか」

 

そのまま、『男』は帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嵐のような時代も…」

 

ここは第3新東京の最高級マンションの一室。

 

一室といっても、階層丸々一つの部屋となっている為、他の住人はココにはいない。

 

部屋に使われているものは過度な派手さはないが、質は一級品で、キッチンも最上級のものだった。

 

「ハタからみればただのクロニクル…」

 

一人の少年が料理をしている。

 

少年の手際の良さは素人目から見てもプロ並みで、料理がどんどん出来ていく。

 

作っているのは和食…朝食としての栄養とカロリーを完璧に計算し、何より美味しく作っている。

 

ご飯を釜で作り、軽く海苔を焙り、現在は卵焼きを焼いている。

 

「…よし、いいかんじ」

 

卵焼きを皿に移して、少年…碇シンジは軽く達成感を感じる。

 

次の行動に移そうとした時…

 

ギュッ、むにゅ…

 

「…マリ、何をしている?」

 

自分の背中に抱きついてきた人物…『真希波=マリ=イラストリアス』にシンジは尋ねる。

 

「ん~、ワンコ君をじゅ~でんちゅ~」

 

マリはシンジの背中に頬擦りをする。

 

「充電って、なにを?」

 

「ワンコ分、とか?ん~、良い匂い…ワンコ君の匂い、LCLだけじゃなくて…こうなんか違う良い匂いがするにゃぁ」

 

「朝飯の匂いだろ。ほれ、邪魔だから離れろ」

 

なんか蕩けてるマリを引っぺがそうとシンジ。

 

が、これが妙に強い力で抱きついている。

 

下手に暴れると朝食に被害が出るかもしれない。

 

「いいじゃん、代金は払ってんだし」

 

「代金?」

 

「こ・れ」

 

ぽにゅ、ぽにゅ

 

「気持ちいいっしょ」

 

「やめなさい!教育に悪い!」

 

シンジが再びマリを引っぺがそうとすると、

 

トテトテ、ギュッ、ぽにゅ。

 

「…レイ?何をしている?」

 

シンジはレイの事をこの間から名前で呼んでいる。

 

理由は単純明快。

 

アスカとマリの事は名前で呼んでいるのに自分だけ違うのは嫌だ、ということだ。

 

「充電中。代金は支払い済み」

 

「やるね、レイ」

 

マリはグッと親指を立てる。

 

「ほら見なさい!真似しちゃったでしょ!」

 

オカン口調になったシンジは2人を引っぺがそうとすると、

 

「…朝っぱらからやってくれるわね」

 

「はっ!?」

 

そこには物凄い形相のアスカと

 

「…羨ましいね」

 

羨ましそうな顔をするカヲルがいた。

 

「よ、よう。アスカ、カヲル。おはよう」

 

「おはよう。で、朝っぱらから肉欲獣の破廉恥な活動を見る事で台無しになっている私の朝の気分をどう責任とってくれるのかしら、Mr.肉欲獣?」

 

「に、肉欲獣って」

 

「んにゃ。姫も充電する?」

 

「…ここ、空いてる」

 

「するか!」

 

「じゃあ、僕が…」

 

「あんたはちょっととまれぇぇぇ!」

 

こうしてチルドレンズの住む、葛城家の一日は始まる。

 

 

 

 

 

 

 

アスカ・マリ・カヲルがシンジ達と同じ学校に転入してから約一週間。

 

この3人の転校生は暫く話題をさらった。

 

最初は猫を被り捲くっていたアスカだが、マリの言動につられて、本性を出しているが、マリと共に全男子生徒の注目になっている。

 

(しかし、ラブレターを踏みつけるのは酷いよなぁ)

 

同じようにラブレターをもらっているマリの場合は、

 

「ね!ね!ワンコ君見て見て!こんなに手紙もらったよ!嫉妬する?大丈夫!優先的にワンコ君のモノになってあげるから心配しないでね。にゃ♪」

 

この調子である。

 

(最近、闇討ち多いな。それと…)

 

「シンジ君。次の移動授業なんだけど」

 

ギュッ…

 

と腕を絡めて来るカヲル。

 

この男は妙にボディタッチでのスキンシップを取ってくる。

 

いったい、いつデレたんだろう。

 

ていうか、男同士だろ?

 

「愛に性別なんて関係ないよ」

 

…さいでっか。

 

こら、そこの女子。なぜ顔を赤くしてこっちみてキャーキャー言っている。

 

ケンスケ。この状態の写真を取ってどうするつもりだ?

 

ギュッ…

 

「…レイ」

 

「どうしたんだい?」

 

「ズルイ…私も…」

 

「ふふっ。どうやら僕と君は同じようだね」

 

とここでマリが再び乱入して抱きつき、アスカが怒鳴りに来た。

 

「…はぁ」

 

シンジは溜息を吐きながらも、

 

「平和だな」

 

少し…一人じゃない事がうれしかった。

 

 

 

 

 

 

「まさかマリが『マシンディエンダー』を持っているとはな」

 

「へへ~、いいでしょ。ワンコ君のと色違いの御揃いだね」

 

「それ以前にあんたら、中学生がバイク運転するんじゃないわよ」

 

「うん、確かに3人乗りは危ないな。今度から考えるか」

 

「そうじゃなくて!」

 

本部に来たチルドレンの五人はプラグスーツに着替えていた。

 

「ところでマリのプラグスーツだけ違うな」

 

マリの緑で結構メカニック部分の目立つプラグスーツをみてシンジは言う。

 

「いやん♪どこみてんのえっち♪」

 

「碇君、えっちなの?」

 

「この肉欲獣」

 

「君も好きだね…僕をみて」

 

「おいおい」

 

最近妙に集中攻撃が多いシンジ。

 

「まっ、これは仕方ないんだよ。5号機はまだ仮設状態だからね。新しいプラグスーツができるまでここままにゃんだ」

 

「完成してから持ってくりゃいいのに。3号機と4号機はまだアメリカで造ってんだろ?」

 

「いろいろあるんだよ。い・ろ・い・ろ」

 

「ふ~ん」

 

シンジはマリに近づき、小声で、

 

『5号機に何がセットされている?』

 

『う~ん…ワンコ君のサポートメカ?』

 

『なに?』

 

『ま、ワンコ君は私が『9 RIDERS CARD』を手に入れるまで死んでもらっちゃこまるからね~』

 

「私にお・ま・か・せ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い一室で赤木リツコはパソコンのモニターに向き合っていた。

 

仕事の内容は第六使徒戦の資料整理であるが、半分はライフワークだった。

 

(この間、変身した意味がわからなかった『電王』と新しい形態『キバ』…見たかったわね)

 

リツコはミサトがまとめた報告書に目を通し軽く口を噛む。

 

「『電王』に『キバ』…何とか詳しく調べる事は出来ないかしら。それに…」

 

リツコはもう一つの資料を見る。

 

「ディエンド…それにディエンドが呼び出した3人の『仮面ライダー』…」

 

これはどういう事だろうか?

 

シンジが変身するディケイドは違う仮面ライダーに変身する。

 

しかし、ディエンドは仮面ライダーを呼び出す。

 

「でも…この今回召還された仮面ライダー…形態が似ているわ」

 

ミサトの取ってきたビデオ映像を思い出しながら考える。

 

これはリツコの推測だが、この3人、『王蛇』『タイガ』『龍騎』は同じテクノロジーで作られた仮面ライダーではないか?

 

今までシンジが変身した仮面ライダーに同じ技術を使われたものはなかった。

 

いったい、『仮面ライダー』は何人存在するのだろうか?

 

「そして零号機に使われた『FFR(ファイナル=フォーム=ライド)』…まさか、仮面ライダーに使われるものだったなんてね」

 

『龍騎』が赤龍に形態変える映像を見た時は驚いた。

 

「仮面ライダー…」

 

少なくとも、この仮面ライダーを作り上げた人物は少なくとも自分より遥かに天才だ。

 

いったいその人物は何が目的で仮面ライダーを作り上げたのだろうか?

 

(謎は深まるばかりね…あの『噂の四人目』のディエンドライバー、まきあげる事できないかしら)

 

「フゥ…」

 

キーボードから手を離し、一息入れた瞬間、後ろから伸びてきた手が、リツコの首に絡みついた。

 

「少し、痩せたかな…」

 

「…そう?」

 

「悲しい恋をしているからだ…」

 

「どういう意味かしら?」

 

「それはね…涙の通り道にほくろがある人は、一生泣き続ける運命にあるからだよ…」

 

「…言ってくれるわね?これから口説くつもり?」

 

「お望みとあらば…」

 

そう言って目の前に回りこんできたのはやはり加持だった。

 

加持の顔が視界の中で大きくなってくる。

 

唇はこちらの唇に……

 

「…でもダメよ、怖ぁい、お姉さんが見ているから」

 

「え?」

 

加持がリツコの視線を辿ると、ガラス越しに『般若』がいた。

 

「や、やぁ、葛城じゃないか!こっちこないか!?」

 

その形相に流石の彼も冷や汗をかいている。

 

プシュウ~

 

自動ドアが開くと共に大股でミサトが加持に迫った。

 

目の前に立つと『般若』腕を組んで加持を見下ろす。

 

「……えらく手の早い事で……」

 

「び、美人を口説くのは、お、男としての義務だと思うぞ?」

 

「あら、光栄ね」

 

「けっ!あんたチルドレン達の護衛できたんでしょう?いつまで本部にいるのよ!?」

 

「いや~、今度本部詰めになったんだ。これからもチルドレン達の護衛って事で!」

 

(まっ、『監視』もあるけどな)

 

「また三人でつるめるな、昔みたいに…どう、今夜あたり三人で飲みに行かないか?」

 

「ゲッ!!リツコ!!あんた知ってたの!?」

 

「ま~~ね」

 

「何で言わないのよ!!」

 

「聞かなかったでしょう?」

 

ミサトが頭を抱えているのを見た加持が苦笑する。

 

「それにしてもちょうどよかった。葛城がここに来てくれて、手間が省ける。」

 

「あら?加持君、私の後にミサトも口説きに行くつもりだったの?生憎そんな趣味はないけれど若いわね~~」

 

「な、なななな何言ってんのよ!!リツコ!!」

 

「ハッハッハ、実はな、二人に聞きたいことがあったんだよ」

 

「聞きたいこと?」

 

「そう…碇シンジ君…『ディケイド』がどういった存在かネルフは知っているのかい?」

 

その質問に2人は顔を見合わせる。

 

「…あなた、ディケイドが何か知ってるの?」

 

「彼が俺が手に入れた情報どおりのディケイドなら…君達はそうとう危ない橋を渡っているな」

 

「どういうこと…」

 

ミサトは恐る恐る聞く。

 

「ディケイド…彼は『世界の破壊者』という情報がある」

 

「世界の?」

 

「破壊者?」

 

「そう、ディケイドは何らかの形でこの世界を破壊するそうだよ。どんな破壊の仕方をするのかは、わからないがな」

 

ミサトはそれを聞いて、

 

「…なるほどね。それなら彼は確かに『破壊者』だわ。でも、心配ないわよ」

 

「え?」

 

「どういうことミサト?」

 

「だって、今までのシンジ君の行動を考えてみて」

 

彼は一人の少女の『絶望』を『破壊』した。

 

彼は心を閉ざすレイの心の壁を『破壊』した。

 

彼は人類の敵『使徒』を『破壊』した。

 

「彼は間違っても私達を『破壊』しないわ」

 

「…その根拠は?」

 

「女の勘よ」

 

「そりゃあ的中率が高そうだ」

 

彼はリツコが開いていたディケイドの資料を見る。

 

(世界の、破壊者…そういえばボスはどういう風に破壊するかはいってなかったな」

 

そこで警報音が鳴り響く。

 

『使徒?』

 

三人は急いで発令室に向かった。

 

 

 

 

 

 

「先の戦闘によって第三新東京市の迎撃システムは大きなダメージを受け、現在までの復旧率は26%、実戦における稼働率はゼロと言っていいわ…したがって、今回は上陸目前の目標を水際で一気に叩く!! エヴァ各機は目標に対して波状攻撃、近接戦闘でいくわよ!!」

 

『了解!』

 

今、エヴァ4機は輸送機に乗って使徒の上陸地点へ空輸されていた。

 

シンジ=ディケイド、レイ、アスカ、マリ=ディエンドはすでにエントリープラグに入って戦闘へ意識を向けている。

 

「いやふ~!使徒相手のデビュー戦!」

 

マリの言葉と共に輸送機からエヴァ4機が落とされる。

 

パラシュ-トもなにもないがエヴァにとってはたいした高さじゃない。

 

ずさー、がちゃんっ!

 

初号機・零号機・弐号機の3機ともうまく衝撃を殺して無事着地し、5号機は四本足をがちゃんとならして着地。

 

「う~ん、四本足なのにバランス悪いニャ~」

 

ディエンドは着地の時の衝撃で文句をいう。

 

「そりゃあそんな構造じゃあな。いくら手段を選ばない殲滅戦とはいえ、仮設の5号機出すことなかったんじゃねぇのか?そりゃあ、色々後付け装備満載みたいだけど」

 

「そうよ!私一人で十分よ!」

 

ディケイドは苦笑した。

 

「こっちもこっちだな。いいじゃねぇか、みんなで巨大な敵を倒す。戦隊モノだぜ」

 

「そうそう、このちゃんと完成していないくせに改良した5号機の強さ見ててよ」

 

「まったく、私も日本でビュー戦なのに…」

 

『わたし達は選ぶ余裕なんて無いのよ、生き残るための手段をね』

 

『みんながんばって』

 

アスカをたしなめるディケイドとミサトの声と今回は留守番のカヲルの応援を聞きながら、アスカは自分に用意されたソニックグレイヴを弐号機に持たせた。

 

零号機も後方支援の為のポジトロンライフルを用意している。

 

5号機も装備されているドリルを回転させ、調子を見ていた。

 

4機が車で運んできたアンビリカルケーブルを背中に接続し、準備完了。

 

「そういえばどうやってこの浜に誘導したんだ?」

 

『戦自の協力。ほら、第5使徒の時、ポジトロンライフル役に立たなかったでしょ。んで、戦自もあせって、ぜひ一緒にって』

 

「世知辛いな」

 

『原因がいうな』

 

ディケイドはさらに苦笑していた表情を引き締めた。

 

「来やがったな」

 

おだやかな海に水柱が立つ。

 

そしてその中から現れたのは異形…第七使徒だった。

 

人型に近い造形をしているが、手が異様に長く『ヤジロベー』という言葉がぴったり来る姿だ。

 

全体的には黒で腕などは白、顔は片方が青、反対は赤でそれが対極図のようになっている。

 

そして一番の特徴は…『コア』と呼ばれる物体が胸の真ん中に二つあった

 

第7使徒はそのまま一歩一歩岸に近づいてくる。

 

「あれが、第7使徒か…さて、まずは様子見…」

 

と、いきなり初号機の横に赤い風が走る。

 

『先手必勝!!シンジ、ちゃんと援護しなさいよ!!』

 

「お、おい!!」

 

いきなり弐号機が前に飛び出したのでディケイドはあせった。

 

「あのおてんばは!レイ!マリ!援護すんぞ!」

 

「わかった」

 

「姫ずるい~!」

 

零号機がポジトロンライフルの照準を定める。

 

5号機は型からガトリングを出す。

 

初号機は弐号機へと向かう。

 

それを見て気を良くしたアスカは半ば水没しているビルを足場に飛び跳ねながら第7使徒に接近する。

 

「もらったわ!」

 

最後の踏み込みで大きく跳躍する。

 

「はああああああああああ!」

 

弐号機は空中でソニックグレイブを振りかぶり、一気に振り下ろした。

 

が…!

 

ガキンッ!

 

「え!?」

 

「なっ!」

 

なんとほんの一瞬で第7使徒の体が『鎧』を纏い、その『鎧』はソニックグレイヴを完全に防いだ。

 

いや、それは『鎧』ではない。

 

それはまるで、

 

「『蟹』の甲羅!?」

 

「アスカ下がれ!」

 

みると第7使徒の横腹がグニグニ動いている。

 

「はっ!」

 

バシュッ!

 

アスカは間一髪でよけたが、第7使徒から生えたものは…

 

「こ、今度は『蜘蛛』の足!?」

 

「まさかこいつは!」

 

「『魔化魍』だね」

 

「!?マリ、知ってんのか」

 

「うん、訓練で何度か倒したよ。今の『バケガニ』と『ツチグモ』だよね」

 

すると使徒の体から何か色々なものが出てくる。

 

「お、おい。あの貝、『ヌリカベ』じゃないか?」

 

「あのぶっとい足、『ヤマビコ』じゃね?」

 

「ちょ、ちょっと2人とも!さっきから何いってんのよ!」

 

「アスカ。プラン変更だ。俺が思いっきり弱らすから、トドメをさせ」

 

「ちょ、何しきって…!」

 

ディケイドは一枚のカードを取り出す。

 

「…鍛えてきたよ、ヒビキ先生」

 

カードをディケイドライバーにセット!

 

《KAMEN RIDE『HIBIKI』!》

 

ディケイドの体が紫の炎に包まれる。

 

「はぁっ!」

 

ディケイドが紫の炎をなぎ払うと、ディケイドは違う形態になっていた。

 

体を極限まで鍛え上げ、清めの音で人を助けてきた戦士の一人『仮面ライダー響鬼』の姿に!

 

D=響鬼は2枚のカードを取り出し、その内一枚をセット。

 

《ATTACK RIDE『DISC ANIMAL』》

 

すると初号機の手に様々な色のディスクが9枚現れる。

 

初号機はそれを円盤のように投げると、ディスク達は『変形』した。

 

茜鷹(アカネタカ)瑠璃狼(ルリオオカミ)緑大猿(リョクオオザル)黄蘗蟹(キハダガニ)鈍色蛇(ニビイロヘビ)浅葱鷲(アサギワシ)黄赤獅子(キアカシシ)青磁蛙(セイジガエル)黄金狼(コガネオオカミ)の9体のディスクアニマルは使徒を翻弄しながら攻撃する。

 

「今のうちに!」

 

もう一枚カードをセット!

 

《ATTACK RIDE『ONGEKIBOU REKKA』!》

 

初号機の手に響鬼武器である『音撃棒《烈火》』が収まる。

 

「はぁぁぁ…ハァッ!」

 

初号機は《烈火》で

 

グシャッ!

 

『ツチグモの足』を潰す。

 

ボカボカッ!

 

次に『バケガニの甲羅』を砕き、

 

「今だ!」

 

ドンドンドンドンドンッ!

 

《烈火》で叩きまくると、上空に蹴り上げ、

 

「ちぇすとぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

ザシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 

再びアスカがソニックグレイヴで切り裂き、真っ二つにした!

 

「よっし!よくやったアスカ!」

 

「まっ、当然よ」

 

(よし、後はこのまま響鬼のファイナルアタックライドで…へ?)

 

第7使徒の真っ二つにされた部分が…

 

「ま、まさか!アスカ下がれ!」

 

「え、な、なにっ…!?」

 

変化を続け…

 

「うっそ~ん」

 

「使徒が…分裂した」

 

「なんてインチキ!」

 

そう第7使徒が2体となった。



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EX-02/超電王 ~派遣イマジンはNEWトラル~ 公開記念作品

 

 

 

(シンジ)「ほれ、オヤツだ。今日は色んなクッキー焼いたからな。美味しくいただけ」

 

(アスカ・マリ・カヲル)『お~』

 

様々な形のクッキーが盛られた皿を見て、喜びの歓声をあげる3人。

 

『いただき…』

 

ガチャッ…

 

静かにドアが開く。

 

シンジ「遅かったな、レイ。クッキー焼けてるぞ」

 

レイはツカツカ歩いてきて、空いている椅子に座る。

 

そして

 

「いただきます…」

 

パクパクパクパク…

 

静かだが物凄い勢いでクッキーを食べ始める。

 

「シンジ君(モグモグ)聞きたい事が(モグモグ)あるの(モグモグ)」

 

「大人も子供も大好きなメロン。フルーツによく分類されるが…あれはスイカと同じ『野菜』だ」

 

「(モグモグモグモグ)…違うの」

 

クッキーを食べ続けるレイ。

 

「ちょっとレイ!あんた食べすぎ!」

 

「あたし達の分が~!」

 

「ひどいよ」

 

レイは3人の事お構いなしに食べる。

 

その勢いは、You tube某アニメのキャラクター、ヒューマノイド型インターフェイスちゃん並みだ。

 

(レイ)「次の電王の事」

 

(シンジ)「次の…?ああ、次のトリロジー『BLUE・派遣イマジンはNEWトラル』か」

 

(レイ)「変わった電王が出てる」

 

(シンジ)「うん。あれは『NEW電王』っていって、『さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』から出てきた仮面ライダーで、未来から来た良ちゃんのお孫さん、『野上幸太郎』って人が変身しているんだ」

 

(カヲル)「今度の話は彼と彼のイマジンの話らしいね」

 

(アスカ)「桜井侑斗と愛理さんで気を取られちゃったけど、電王って凄い仮面ライダーよね」

 

(シンジ)「ああ、最初はバラバラだった心が、絆を一つにしていく。モモタ達も最後には『自分』を手に入れたんだ」

 

最後には自分達の『記憶(じかん)』を手に入れて存在した6人…

 

(カヲル)(あの金色のイマジン…キンタロス君の言葉…)

 

カヲルはモールイマジンの大群と戦うキンタロスのセリフを思い出す。

 

 

 

 

キンタロス『気にするな!俺はとっくに、消えるはずだったって言うたやろ!お前のおかげでここまで居れたんや!』

 

キンタロス『凄い事なんや!命だけの事やない、俺は時間も持てたんやからな!』

 

キンタロス『ああ、カイのアホが言うとったように、俺らには思い出すような過去はない。せやけど、良太郎に拾われてからの事は全部思い出せる!俺は自分より、この時間を守りたいと思うとる!!」

 

 

 

 

(カヲル)(今の僕ならわかる。記憶こそが時間。そして、それこそが人を支える。彼女も僕も…)

 

カヲルはクッキーの取り合いをしている皆を見て、

 

(カヲル)(シンジ君達と出会ってからの記憶は全部思い出せる。この共に過ごした時間の記憶が…彼女と僕に『存在(いて)』いいって、いってくれている)

 

(シンジ)「よっし、映画館行こうぜ。トリロジー・ブルーを見に行こう」

 

(アスカ)「言いだしっぺなんだからオゴリなさいよ。レイ行くわよ!」

 

(レイ)「うん。キャラメルポップコーンも」

 

(マリ)「やった!ワンコ君のおごり♪カヲルンもいこ!」

 

(カヲル)「そうだね。僕は純粋に塩かな」

 

(シンジ)「酷いぞお前ら!」

 

(レイ)(この記憶(じかん)…)

 

(カヲル)(決して誰にも…)

 

(レイ&カヲル)(消させない)



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第拾伍話/双命の堕天使 ~『右手』に誓った想い~

 

 

 

 

 

 

D=響鬼は息を呑み、神経を更に引き締める。

 

それと同時に初号機が『烈火』を強く握り締める。

 

「まさか分裂するなんてな。しかもご丁寧に色違いってだけで魔化魍の能力まで一緒か」

 

しかも…

 

ぐにゃ…ぐにゃぉん

 

「どんどん、魔化魍の力を引き出してるな」

 

第7使徒の互いの右手がバケガニの鋏になる。

 

他にも胴体に四本ずつ生えたツチグモの足。

 

体を覆うバケガニの甲羅。

 

背中にあるヌリカベの貝。

 

恐ろしくぶっといヤマビコの足。

 

「使徒っていうより、『キメラ』だな。しかし…」

 

第7使徒の動きが鈍い…というより、苦しんでいるように見えた。

 

「どうやら、無茶な合成で体の方がついていかないようだな。馴染む前に…叩く!」

 

初号機が『烈火』を交差させる。

 

「アスカ!一匹任せる!」

 

「う、うるさい!?命令しないで!」

 

ズガンッ!

 

初号機が第7使徒に一気に詰め寄り、2体の胴体を『烈火』で『同時』に殴る。

 

その攻撃により第7使徒の体がへこむ。

 

よろけた瞬間に一体の第7使徒を蹴飛ばし、自分の相手とする(以後第7使徒(甲))。

 

ガンガンガンガンガンッ!

 

初号機はそのまま反撃できないくらいの勢いで第7使徒(甲)に『烈火』を撃ち込みまくる。

 

しかし…

 

(おかしい…)

 

確かに自分が押しているほど、攻撃している。

 

が、何故か『手ごたえ』がない。

 

(まるで回復し続けてるような…『烈火』で殴っているはずだからダメージはあるはず)

 

『な、なによこいつ!全然攻撃が効かない!』

 

「なに!?」

 

初号機はジャンプし、第7使徒(甲)の頭に右足を乗せ、

 

ズガンッ!

 

一気に飛び上がり、第7使徒(乙)の上空まで飛び、

 

ドガンッ!

 

そのまま『烈火』を頭に叩くこんだ。第7使徒(乙)は地面に沈む、が…

 

むくり

 

何事もなかったように立ち上がる。

 

「くそ。まさかと思ったが…『効いて』ねぇ」

 

『烈火』で叩いているのに、第7使徒達はダメージを受けてなかった。

 

『烈火』で叩けば『魔化魍』にはダメージが与えられる。しかし…

 

(まさか、この使徒本体の能力…ん?)

 

D=響鬼はある箇所を発見する。

 

それは、一番最初に『同時』に攻撃したところだ。

 

(あそこだけ、治りが遅い…まさか!?)

 

D=響鬼は第7使徒の『攻略』に気づいたと同時に、今現在では絶対に第7使徒を倒せない事に気づいた。

 

「ミサトさん!リツコさん!出来るだけ強い火力をほぼ同時に与えて、この使徒を暫く封じる方法はないか!」

 

『し、使徒をほぼ同時に強力な火力を与える!?』

 

『どういう事!?』

 

「こいつらは『ふたつ』で『ひとつ』なんだ!リツコさんなら『意味』がわかるな!」

 

『…はっ!?わかったわ!?最悪の事態を考えて用意した『モノ』があるの!4人とも使徒の動きを止めて!』

 

「了解!」

 

『えっ?どういうこと?』

 

『どういうことよシンジ!?』

 

「いいから今回はいう事聞いてくれ!後で説明して納得させてやるから!」

 

『わ、わかったわよ』

 

「レイ!マリ!今日好きなもん作ってやるからいう事聞いてくれ!」

 

『やりぃ!唐揚げ!』

 

『しゃきしゃきの野菜炒め』

 

『ちょっと!とんかつよ!とんかつ!』

 

四体のエヴァが後方に下がってゆく。

 

第7使徒達は追いかけこようとするが、

 

『えい!鬼石弾!』

 

5号機の肩のガトリングガンのマガジンが変更され、放たれる。

 

第7使徒達にあたると、第7使徒達の動きが止まる。

 

「おいおい、なんでそんな弾丸持ってんだよ」

 

『ボス特製だにゃ』

 

「お前のボスとはいつか会いたいよ」

 

「はい!これみんなの分!」

 

初号機・零号機・弐号機に一丁ずつパレットライフルを放り渡される。

 

「一斉射撃!」

 

『ファイヤー!』

 

四体のエヴァの一斉射撃に第7使徒はその場から動けない。

 

しばらくすると、輸送機やってくる。

 

「よっしゃ来たか!」

 

初号機はパレットライフルから『烈火』に持ち替え、

 

「はぁぁぁぁぁっ!はぁぁっ!」

 

『烈火』に気を送り込み、火炎を生み出して、第7使徒達に放つ。

 

気の炎は燃え上がり、第7使徒達は動きを止められる。

 

「全員!全力で後ろに向かって前進!」

 

エヴァ全機が第7使徒達から離れる。

 

そして、用意していたモノ…N2が落とされ、第7使徒達を中心に、その場が滅びの光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネルフ本部の一室…5人のチルドレンは座って第7使徒との戦闘記録をスライドで見ていた。

 

暗くした室内の白いスクリーンにホームシアターのように映写機の光が第7使徒の写真を映し出している。

 

「おいおい、なんでこんなレトロなもん引っ張り出すんだよ。もしかしてあれか?副司令はパソコン駄目な人なのか?」

 

「しっ!ワンコくん駄目だよ。老人の繊細な部分ついちゃ。それに、こいうのって『悪の組織』みたいでいいじゃん」

 

「それなら副司令には黒いマントを着てほしいね」

 

「被り物…」

 

「ディテールがしょぼいのが似合いそうね」

 

5人の毒舌が走る。

 

「あなた達お願い。黙って」

 

泣きそうな顔のミサトを見て、初めて5人の会話が止まった。

 

「本日、午前10時05分、ネルフは使徒にたいし攻撃を開始」

 

マヤが映像の内容を報告し始めると同時に、エヴァの戦闘シーンがスライドで映された。

 

「しかし有効な効果が認められず午前10時25分、待機していた国連第二方面軍にN2の使用を要請」

 

「同10時30分、N2爆雷により目標を攻撃」

 

「あの弾丸はなんなの?他の支部から送られたものだけど、見たこともない弾丸だったわ。それに…あの炎凄いわね」

 

「企業秘密にゃ~」

 

「『響鬼』の力です」

 

冬月がN2でえぐれた海岸線の映像を見ながらつぶやいた。

 

「構成物質の28%の焼却を成功」

 

「まあ…こんなもんでしょう」

 

マヤの報告を一通り聞いたリツコがつぶやいた。

 

「やったの!?」

 

「足止めにすぎん!再度侵攻は時間の問題だ!」

 

冬月が多少いらついた声で答える。

 

「おいおい落ち着けよ副司令さん。いっとくが今出来る事のベストを俺達はやったんだぜ」

 

「これから方々に頭を下げる事になる我々の苦労も考えてほしいものだな」

 

「また戦わなきゃいけない俺達の苦労も考えてほしいね」

 

「…すまん…」

 

冬月はシンジの言葉に素直に引き下がった。

 

「パイロット5名…」

 

無言だが全員立ち上がって背後のゲンドウに向き直った。

 

「君達の仕事は何か解るか?」

 

「エヴァの操縦です」

 

「泣く人を増やさため、人を護る事」

 

「碇君を護ること」

 

「9 RIDERS CARDを集めること」

 

「見守ることかな」

 

「使徒を倒す事だ」

 

ゲンドウは強調していった。

 

「まっ、現状それだろうな。さてと、次の作戦であの使徒を倒さなきゃな。と、言うわけで碇司令殿と冬月副司令殿は責任者らしく責任とってください」

 

シンジは悪びれる事無くいう。

 

(ちょっ、ちょっとシンジ。言い過ぎじゃあ…)

 

「いいんだよ。ぐちぐち愚痴言われるのはいやだからな。さってと、リツコさん」

 

シンジはリツコに振り向く。

 

「戦闘中にもいったんだけど、多分あの使徒、分裂していても『ふたつ』で『ひとつ』なんだ」

 

「ええ、それならまったくダメージを受けないのも納得いくわ。コピーでありオリジナル。片方に不備があった場合にもう片方が自分の情報を相手に送りそれをもとに復元する」

 

その言葉を聴いてシンジとリツコ、カヲルを除いた者達が驚く。

 

「し、シンジ。どうしてそんなことわかったの?」

 

「ん?最初に2人同時に『烈火』で叩いた所…そこ、ほとんど偶然に同じ所を攻撃したんだ。それでかな、アスカのところに行った時も回復していなかったんだ」

 

「両方の情報が欠損していれば、確かに直るのには時間はかかるわね」

 

「そういう事だ。つまり2体同時にほぼ同じ所を攻撃すれば、ダメージを受ける」

 

「や、やっかいね」

 

「まだまだ、厄介な事が一つある」

 

「え?」

 

「実はな、あの使徒の急激なキメラ部分…あれは『魔化魍』だ」

 

「マカモウ?」

 

「何それ?」

 

「魔化魍。妖怪の原型となった存在達の事だ。マリと話したんだけど少なくとも4体の魔化魍を確認している」

 

「バケガニ、ツチグモ、ヌリカベ、ヤマビコだにゃ~」

 

「こいつらは、僕の変身する『響鬼』でしか倒せない」

 

「なっ!?」

 

それを聞いてミサトとリツコが驚愕する。

 

「あいつらは『清めの音』で浄化しないと死なないからな。だから弱点であるコアに同時に攻撃し、オリジナルとコピーを同時に弱らせ、俺が『強烈』なのを叩き込むしかないな」

 

「つまり同時攻撃で弱らせて、あなたの必殺をお見舞いするって事ね」

 

「これを元に有効な作戦を立てられるか?」

 

「もちろんよ!!期待しててねん!」

 

 

 

 

 

 

「今回の作戦…よかったら、これを使ってくれ」

 

加持は男から一枚のディスクを受け取る。

 

「まさか最初の雇い主である『あなた』が現れるなんて思いませんでしたよ。でもまたなんで」

 

「今の君のボスに用があるだけだ。それに…」

 

 

 

 

 

『どくんだ。その男は大ショッカーの大首領だ。今この場でケリをつける』

 

自分の『レーザーアーム』を向けられても首を横に振る少年。

 

『何故だ。何故そんな男を庇う』

 

『…お兄ちゃんが…『仮面ライダー』だから…』

 

『なに?』

 

『…お兄ちゃんは僕を助けてくれた!僕に色んな世界を見せてくれた!僕に…僕にここにいてもいいって!生きていてもいいって言ってくれた!』

 

自分を盾にして『ヤツ』を庇う少年…

 

『士お兄ちゃんは!僕の…僕の『仮面ライダー』なんだ!』

 

 

 

 

 

「彼には教えられたからね」

 

そういって男は加持から去っていった。

 

加持もすぐに本部に戻る。

 

男が暫く歩いていると

 

「ん?」

 

『次元のオーロラ』が現れ、様々な異形の怪物が現れる。

 

「やれやれ。嗅ぎつけたか…」

 

男の右腕が緑色に光る。

 

「たった一人でも、自分を信じているモノがいれば…」

 

男はどこからか『ヘルメット』と『マガジン』を取り出し、

 

「命ある限り、戦う事ができる」

 

男は『ヘルメット』を被り、『右手』にマガジンをセットする。

 

「それが…」

 

右手が変化し、その先端から光が漏れる。

 

「『仮面ライダー』…だ」

 

その言葉と共に、『仮面ライダー』の右手から、強力なレーザーが放たれた。



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第EX-03話/超電王トリロジー お宝DEエンド・パイレ~ツ公開記念作品

 

 

 

(シンジ)「ほーれ、ご飯だぞ。今日は中華だぜ」

 

テーブルの上には様々な料理が並んでいた。

 

レタスチャーハン・拉麺・肉饅・シューマイ・春巻ナドナド…

 

(レイ・アスカ・カヲル)『おー!』

 

レイ・アスカ・カヲルは歓声をあげる。

 

(シンジ)「ありゃ?マリは?あのニャンコ、飯時には絶対に帰って…」

 

バンッ!

 

勢い良く扉が開く。

 

犯人はここにいない最後のチルドレン、マリだった。

 

(シンジ)「おっ、マリ助。飯だ…」

 

つかつか歩いてきたマリはいきなり、

 

バンッ!

 

テーブルを叩く。

 

料理が浮くが、

 

ガチャン!

 

再び皿が割れずに、元通りの位置に落ちる。

 

どこかの副料理長のような技工だ。

 

(マリ)「ワンコ君!」

 

(シンジ)「世界三第スープは…」

 

(マリ)「違うにゃ!今日変にゃ奴に会ったにゃ!」

 

(シンジ)「変な奴?」

 

 

 

 

 

遡る事、数時間前…

 

(マリ)「きょっうのご・は・ん・は何かにゃ~♪…ん?」

 

マリがルンルン気分で歩いていると、

 

(男の子)「ぐす…ぐす…」

 

子供が泣いていた。

 

(マリ)「どうしたにゃ?」

 

マリは声をかけてみる。

 

(男の子)「ぐす…あれ…」

 

子供は指を上に指す。

 

見ると…木に飛行機が引っかかっていた。

 

簡単なペーパークラフトだが、結構高く飛ぶものだ。

 

(マリ)「ありゃ~。まっ、諦めてるんだね」

 

(男の子)「あ、あれじゃなきゃ…だめ…」

 

(マリ)「いいじゃん。あんな安物。そっだ、新しいの買ってあげよっか?」

 

(男の子)「あ、あれ…あれ…」

 

トンッ…

 

(?)「よっ!」

 

トス…

 

突然、一人の男が現れ、木に引っかかった飛行機を取る。

 

(?)「ふ~ん、確かに安物だね。でも…」

 

男は飛行機を見ながらそういったが、まるで『宝物』を扱うような手付きで

 

(?)「ほら、君の『お宝』。大事にしなよ」

 

と子供に優しく渡した。

 

(男の子)「ありがとう、おじちゃん!」

 

(?)「…お兄さんだよ」

 

(男の子)「これ…これパパと一緒に作ったんだ。パパ忙しいから滅多に遊べないから…だから、これ僕の『宝物』なんだ」

 

(?)「そうかい。『お宝』は決して失われてはならない。気を付けなよ」

 

(男の子)「うん!」

 

そう言って子供は走っていった。

 

それをマリは呆気にとられ、見ていた。

 

(?)「…まったく、君はまだまだだねニャントラスちゃん」

 

(マリ)「にゃ、にゃに~!誰がニャントラスだ~」

 

(?)「いいかい、君も『ディエンド』なら、知っておくことだ」

 

チャキッ

 

男は『拳銃』回転させて、マリに向ける。

 

(マリ)「!?」

 

それはマリもよく知っている『拳銃』だった。

 

(?)「僕達に取っては安物で価値がなくても、人によっては『お宝』という存在がある事をね」

 

(マリ)「にゃ、にゃ?」

 

男は『拳銃』を再び回転させて外すと、違う黒とシアンの『物体』に手をとり、

 

(?)「未熟者の君にはまだまだこれは渡せないね。ああ、シンジ君に伝えておいてくれたまえ」

 

男はマリに伝えるとそのまま走り去った。

 

マリは追いかけたが結局逃げられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

(マリ)「何なのあいつ!なんで私と同じもん持ってるの!」

 

(カヲル)「気になるね。『ディエンドライバー』を持っているなんて…」

 

(アスカ)「なによ、ディエンドってもう一人いるの?」

 

(レイ)「何者なの?」

 

(シンジ)「いや、俺は知っているよ。その人を」

 

(レイ・アスカ・マリ・カヲル)『え?』

 

(シンジ)「マリ。その人が言った事…忘れるなよ」

 

(マリ)「ワンコ君?」

 

(シンジ)「自分達ににとってはガラクタや紙切れでも…誰かに取っては『最高のお宝』かもしれない。これを覚えておいて」

 

(マリ)「…ん」

 

(シンジ)「さぁて、その人の正体を知る為に、明日映画館に行こうか。取り敢えずご飯だご飯」

 

そう言われて、マリは嬉しそうに座る。

 

そこで、ふとシンジが思い出す。

 

(シンジ)「そういえばその人俺に伝言ってなんだったんだ?」

 

(マリ)「え?ん~と…」

 

マリは思い出しながら

 

(?)『気を付けたまえ。『最後』はこの世界の『BE』を望んでいる』

 

(マリ)「だっけ?」

 

(シンジ)「………」

 

(アスカ)「どうしたのシンジ」

 

(レイ)「シンジ君?」

 

(カヲル)「………」

 

(シンジ)(まさか…あいつなのか)

 

そして食事が始まった。



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第拾陸話/一時の休息

 

 

 

 

「ってどうすりゃいいのよ!」

 

「無様ね…」

 

葛城ミサトは自分の執務室で机に顔を落とした。

 

彼女が突っ伏した机には苦情を中心とした書類が山のように存在する。

 

執務室に到着後、苦情の書類を後回しにして使徒を殲滅する為の作戦を考えているのだが、既に暗礁に乗っかっている。

 

「気分転換に目を通したら?関係各所からの抗議文と被害報告書、UNからの請求書、広報部からの苦情と凄い量ね…」

 

「読まなくても、解かりきってるわよ。喧嘩をするならココでやれって言うんでしょぉ~…?」

 

「ご明察」

 

「言われなくったって、ココでやるわよ!!使徒は必ず私が倒すわ…」

 

「そりゃあんなにタンカ切ったんですもの、倒せなかったらなに言われるかわかんないわよ?」

 

「あ~う~…リツコ~、親友よ~…私の首がつながるアイディアぷりーず…」

 

「はい」

 

リツコが差し出したディスクをひったくるように受け取った。

 

「さっすが!赤木リツコ博士!持つべきものは心優しき親友ね!…俺達そろそろ一緒になるべきだと思うんだ」

 

「馬鹿な事言ってるけど、残念ながら親友のピンチを救うのは私じゃないわ、このアイディアは加持君よ」

 

ディスクの表面に『マイスゥイートハニーへ』と書かれている。

 

「え…か~じ~?」

 

ミサトは嫌な顔をしたがさすがに自分の首にはかえられず。

 

素直にディスクをパソコンに挿して、内容を見た。

 

「…これ、本当にあのタラシが考えたの?」

 

「…なんで私達も今日初めて知った事をしっているのかしら?」

 

 

 

 

 

 

カンカンッ!

 

葛城邸にお玉でフライパンを叩く音が響く。

 

「おーい、晩飯だ~」

 

『はーい』

 

部屋からレイ・アスカ・マリ・カヲルが出てきて、席に座り、

 

『いただきます』

 

「召し上がれ。今日は全員のリクエストに答えた。野菜炒め、とんかつ、唐揚げ、マリネ、中華風冷ややっこだ。アスカ、マリ。肉だけじゃなく野菜も食べろよ。レイ、カヲル、最近食が進むのはいいが、よく噛んでな」

 

「本当に作ったんだ」

 

アスカは目の前の料理に対してボソッという。

 

「当たり前だ。約束は守る。特別製のソースをかけてくれ。日本のとんかつを味わえ」

 

「唐揚げうまっ!どうやってんの?鶏肉揚げるだけじゃないの!?」

 

「味付け色々するんだよ。下拵えが大事だ」

 

「おいしい…(もぐもぐもぐ)。しゃきしゃき…(もぐもぐもぐもぐ)」

 

「最初に油でサッと揚げるのがコツだ」

 

「マリネも美味しいけど…この豆腐も美味しいね。朝に食べたモノに似てるけど、味付けが全然違う」

 

「朝は日本風に醤油。その中華風の味付けはある人直伝ので自信作だ」

 

5人は夕食を食べ続ける。そして結構多めに作った食事がテーブルから綺麗さっぱり消えた。

 

シンジは空の皿を片づけていく。

 

「う~、お腹一杯。太ったらあんたの責任だからねシンジ」

 

「う~、余は満足じゃ~」

 

リビングに大の字で寝転がるアスカとマリ。レイとカヲルはマイブームのオセロを開始する。

 

「ほらほら、喰ってすぐ寝ると牛になるぞ。風呂出来てっから入ってこい」

 

そう言われて二人は立ちあがる。

 

「マリ…近づかないでよ」

 

「ひ、酷い姫!私、何かした!?」

 

「毎回毎回お風呂入る度にセクハラされちゃぁたまんないのよ!」

 

「いや~、丁度手に収まるナイスなサイズがグット!」

 

親指を立てて太鼓判を押す。

 

「ひとりで入る!」

 

アスカはマリを置いてそのままいってしまった。

 

「も~、つれないんだから」

 

「まあ、お前もやりすぎだ。ところでマリ」

 

「ん?」

 

「お前…『鬼』は何体呼び出せる?」

 

「ん~、言うと思った。ジャンっ!」

 

マリは胸ポケットから数枚のカードを取り出した。

 

「…揃ってんな。まさか『響鬼』以外全部揃ってるとは思わなかった」

 

「ボスが造ったらしいよ。でもその世界の『主軸』となる『9 RIDER'S』だけは造れなかったみたい」

 

「で、だから俺から『複製』するか。まっ、俺としては歓迎だ」

 

シンジは一枚のカードを取り出す。

 

「マリ。5号機には『鬼石弾』の他に何かあんだろ。協力してくれたら、『響鬼』をやるぜ」

 

「………」

 

マリは普段とはうって変り、シンジを睨む。

 

「どうして協力するの?9 RIDER'Sが悪用されたらどうするの?」

 

「その時はその時だ。今はそれよりもマリには『仮面ライダー』を知ってほしいからな」

 

「…何?ワンコくんのクセに先輩面かにゃ?」

 

「そんなつもりはないんだが…まあ、はなし半分でもいいから聞いとけよ。これでも俺は…」

 

シンジは優しく笑い、

 

「マリよりもずっと前から、『通りすがりの仮面ライダー』なんだからな」

 

 

 

 

「…『ヒビキ』ってなに?」

 

レイはオセロをひっくり返しながらカヲルに問いかける。

 

「『響く鬼』…『仮面ライダー響鬼』。今日彼が変身した『仮面ライダー』さ。僕も詳しくは知らないけど、『聖なる音で邪を清める者』らしいよ」

 

「聖なる音で…清める…」

 

レイは小さく…儚い声で…

 

「その音を聴けば…私達も清められるの…」

 

「…わからない。もしかしたら僕達も消えてしまうかもしれない」

 

(それでも…)

 

「聴いて…みたい…」

 

「…そうだね」

 

 

 

 

「イイコト!これが!私が!考え出した!『作戦』よ!」

 

パソコンと液晶テレビを接続して、加持から貰った『作戦』を自分の手柄として叫んでいた。

 

『………』

 

『作戦』の内容を見て、全員がミサトをジト目でみる。

 

「何よ?」

 

「…本当にミサトさんが考えたんですか、この作戦?」

 

「も、モチのロンよ。さぁ皆!」

 

ミサトは拳を上げて、

 

「さあ、明日から特訓よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、ワンコくん?どうして私をこんなところに呼び出したのかにゃ?」

 

ここはネルフのジオプラント。

 

「お、来たかニャンコ。ほれ、トマト。美味いぞ」

 

シンジはタンクトップに麦藁帽子姿だ。

 

「なんでこんなところに…」

 

「ん?看板見てみろよ」

 

これ見よがしに立っている看板には、

 

『碇農園』

 

「せっかくのジオプラント。何か育てなきゃな。翔一にいちゃん仕込みの菜園造りだ」

 

隣には『加持農園』という、まだ耕しただけの土地があるが、今は関係なかった。

 

「で、何すんの」

 

「わかったわかった。こっちだ」

 

採れたてのトマトを齧りながらシンジについて行くマリ。到着した場所には、

 

「こ、これって…!?」

 

「実は結構前から鍛える為に用意してたんだ。さてと…」

 

そこにあったのは巨大な太鼓。

 

シンジは一組の撥をマリに渡す。

 

「『音撃』の訓練も受けてるんだろ。俺がマリの心を清めるから…」

 

シンジは楽しそうに笑って、

 

「マリは俺の心を清めてくれ」

 

 

 

 

 

 

「さぁ、二人とも」

 

カヲルは黒いジャージ姿で、黒いサングラスをかけていた。

 

「特訓開始だ」

 

おそろいのレオタード姿で互いを睨み付けているレイとアスカにそういった



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第拾漆話/自分の価値を知りたい時、人は世界を見る

 

 

「ふわぁ~…すごいわね、ここ」

 

「そういえば委員長は初めてやったな」

 

トウジ・ケンスケ・ヒカリの3人はシンジ達のマンションのロビーからエレベーターに乗る。

 

「そういえば委員長はなんできたんや?トリオの分もプリントならトリオの分も持ってったのに」

 

「…ちょっとね」

 

ぴんぽ~ん!

 

エレベーターが到着する。

 

「本当にワンフロア全部なんだ」

 

「毎度思うけど金持ちやなぁ」

 

「まあ、エヴァのパイロット5人分と思えば当然かもしれないよな」

 

ぴんぽーん

 

3人はインターフォンを鳴らす。

 

しばらくして…

 

「いらっしゃい」

 

「渚君?」

 

「おお、渚が出てくるなんて意外や…って、なんやそのカッコ?」

 

黒ジャージにサングラスをかけたカヲルの姿にトウジはツッコム。

 

「失礼だね。君も似たような姿じゃないか」

 

「グラサンはかけてへんわ」

 

「シンジ達は?」

 

「レイ君とアスカ君は部屋で倒れてる」

 

『倒れてる?』

 

「シンジ君は…」

 

ピンポーン!ガチャンッ!

 

「ただいま」

 

「おお、シン…何かついでんねん?」

 

「ニャンコ」

 

「…って、真希波さん!?どうしたの!」

 

「うう~…ワンコ君ダメェェ…激しすぎ…」

 

「ワンコ…碇君が何かしたの?」

 

その時、マリのメガネが妖しく光る。

 

「うう…ワンコが激しく(腕を)振るからぁ…私もつい(腕を)振っちゃって…私はもうダメェェって言っているに…でも、気持ちよかった…」

 

そこまで聞くとヒカリの顔が真っ赤になっていた。

 

「こ、このハーレム男!女の敵!不潔よ~!」

 

「激しく誤解をするな!」

 

 

 

 

「なんだ特訓だったんだ」

 

「ああ、今度の使徒はかなり変わっていてな。キメは俺とマリなんだか…」

 

用意したひやしあめを飲んでいるマリを指して、

 

「このニャンコ、肝心な処の修業をサボってやがった」

 

「だって~、ドラム叩いてなんになんの~」

 

「ドラムじゃねぇ!太鼓だ!」

 

マリが口を曲げる。

 

「なんで私がやんなきゃなんないの?『七人』呼び出せばいいじゃん」

 

「あのな、『清めの音』を出すには本人も理解しなきゃならんだろ」

 

「うう~」

 

シンジの言葉にマリは項垂れる。

 

「じゃあ、あの二人は?」

 

何やらカヲルの指導の元、ツイスターゲームのようなものをしているレイとアスカに全員の目が行く。

 

「今回の使徒を倒す為にはまず最初にエヴァ2体のタイミングを完璧に合わせた攻撃を行って、あの魔化魍使徒を元の状態に戻さなきゃならん。その為にはあの二人の協調、完璧なユニゾンが必要だ。あれはその訓練だ」

 

「ま、あたしらは確かにトドメ刺す係だけど、二人が成功しなきゃなんもできないんだにゃ~」

 

「そう!つまり今回の主役はあたし達!」

 

アスカが仁王立ちで二人を見下す。

 

「ライダーコンビは黙ってお零れを貰えばいいのよ!」

 

「そうする」

 

「がんばってね~」

 

「何なのよ!少しは悔しくないわけ!」

 

二人の反応にプンスカしながらアスカは練習に戻っていく。

 

「うっし、ニャンコ。こっちもこっちで打合せだ」

 

「え~?」

 

「え~?、じゃない。やるぞ。3人はその手作りアイス食っといてくれ。美味いぞ」

 

こうして併行して

 

「いいか、この位置から俺がな…」

 

ブ~

 

「え~、こっちの方がよくね?最速で行けるじゃん」

 

ブ~~

 

「いい案だな…でも、二人の邪魔にならないか?」

 

ブ~~~

 

「それなら一度ジャンプすれば…」

 

ブ~~~~

 

「おお…お前結構スゴイな」

 

ブ~~~~~

 

「すごい?撫でて撫でて」

 

ブ~~~~~~~

 

「なでなで」

 

ブ~~~~~~~~

 

「えへへ…」

 

ブ~~~~~~~~

 

「ん~…」

 

「だめじゃん…」

 

 

シンジとマリがあきれた顔で振り向く。

 

みるとアスカが不機嫌そうにレイを見ていた。

 

「2日で50点以下か…」

 

「まずくねコレって」

 

「う、うるさいわね!ファーストが鈍くさいからいけないのよ!」

 

レイは何も言わないが顔を膨らましている。最近妙に可愛い行動をとる。

 

「じゃあ、やめとくか?」

 

「他に人、いないんでしょ?」

 

「…カヲル」

 

「ふ…」

 

カヲルがサングラスを外し、レイの隣に立つ。

 

音楽が流れ、二人は息ぴったりに動く。

 

結果、

 

『82点』

 

『おぉ~!』

 

 

「すごいなカヲル」

 

「ふふ…」

 

ピト…

 

「ご褒美は何かな…今晩、君の部屋に行ってもいいかい?」

 

女子がかけられたら一撃の台詞をシンジに柔らかく抱きついて言う。

 

べリッ!

 

レイとマリに剥がされる。

 

「2号機ってカヲルでも動かせたよな。アスカ、変わるか?」

 

「…!?」

 

アスカは顔を沸騰させて、

 

「っく、やってらんないわよ!!」

 

玄関から飛び出していった。

 

「ワンコ君、怒らせちゃったね」

 

「そうだな」

 

「い~か~り~くん!!」

 

「ん?」

 

ヒカリが大声でシンジの名前を呼んだ。

 

シンジが見るとヒカリが詰め寄ってきて玄関を指差す。

 

「おいかけて!女の子泣かしたのよ!責任取りなさい!」

 

「まあ、待てって」

 

「なにしてんのよ!おいかけなさいよ!」

 

「お、おちつけや委員長」

 

「い、碇もどうしてそんなに落ち着いているんだよ」

 

シンジは頭をかいて、

 

「レイとアスカ達が失敗しているのは、アスカが率先して合わせようとしていなかったからだ。一人舞台じゃで踊っていたからレイもついていけなかった」

 

「姫はプライド高いからね~、ワンコ君もだからカヲリンに協力してもらったんだよ」

 

「で、でも…」

 

「これからもアスカは使徒と戦う。それは命のやり取りだからな、中途半端な状態は危ない…死んでほしくないからな」

 

シンジの言葉に誰も何も言えない。それは、大事な人の死を見た人間の顔だからだ。

 

「ま、アスカはアレで頭いいからな。ちゃんとわかってんよ。さてと…」

 

シンジは立ち上がる。

 

「そろそろ言ってくる。レイ、カヲル。ニャンコを抑えといて」

 

『らじゃー』

 

「え、ちょ、ちょっと!こんな面白そうな事を!ワンコ君がジゴ論いうんだよ!ちょ、二人がかりは卑怯…きゃー、おかされる―!これぞ嬲るという言葉の原型ー!」

 

パタン…

 

後ろを一度も振り向かず、シンジは部屋を出た。

 

 

 

 

 

「ほらよ。元気ハツラツの元だ」

 

シンジはオ○ナ○ンCをアスカに渡す。

 

「ちょっとは落ち着いたか」

 

「何も言わないで、言いたい事はわかってる…」

 

アスカはシンジを見ずに

 

「結局あたしにはエヴァしかないのよ…」

 

「はぁ…何言ってんだか。おい」

 

「きゃっ!」

 

シンジはアスカの顔を無理矢理つかんで自分の視線を合わせさせる。

 

「な、なによ…!?」

 

「お前…誰かに自分を見ていてほしいんじゃないのか?」

 

「!?」

 

アスカが激しく動揺する。

 

「いつも人の目を自分に向けるような派手な行動してるな」

 

「…う…さい」

 

「自信満々なのはその裏返しか?」

 

「…うるさ…」

 

「自分に価値がなくなるのが怖い。だからエヴァにすがるんだろ?」

 

「うるさいっていってんでしょう!」

 

アスカは拳を握り、シンジに殴りかかる。

 

ボグッ!

 

「あっ…」

 

アスカは呆然とする。

 

シンジはアスカのパンチをよけようともせず、わざと殴られたのだ。

 

「あ、あんた…」

 

「殴って気が済んだか?済まないだろう」

 

シンジはアスカの拳を優しく握る。

 

アスカが…震えてるのがわかる。

 

「いいか、お前の価値はエヴァだけじゃない。少なくとも俺はお前を『エヴァのパイロット』だけでみてはいない。オテンバ娘だと思っている」

 

「なっ…!?」

 

「だから…笑った顔が魅力的なんだ」

 

「…!?」

 

アスカが顔を真っ赤にする。

 

「昔、『士お兄ちゃん』から言われた言葉なんだか、アスカ。『世界』を見てみろ」

 

「せ、世界?」

 

「ああ。今俺達がいる世界…ほんのささいなことでもいい。まずは見てみろ。手始めに俺達だな」

 

シンジは優しく笑う。

 

「そうすれば、『自分の価値』が、絶大だって事に気づくぜ」

 

 

 

 

 

「ありゃ、戻ってきた」

 

シンジとアスカが部屋に戻ると、残ったメンバーはシンジお手製のお菓子をみんなで食べていた。

 

「おい、それ明日の分だぞ」

 

「いいやないか」

 

「美味いよコレ」

 

シンジは溜息をつく。

 

それをよそにアスカはレイに近づく。

 

「ま、待たせたわね」

 

「うん」

 

「と、特訓を再開するわよ…『レイ』」

 

シンジ以外のその場にいた全員が驚く。

 

レイも少しキョトンとしてから、笑顔になって、

 

「よろしくアスカ」

 

「さ、さあやるわよ!」

 

二人で特訓を再開し始めた。

 

 

 

 

 

「一体どんな魔法を使ったんだい?」

 

カヲルはアスカの豹変を訪ねる。

 

「なぁに、視野を広げてやっただけだよ」

 

「ふ~ん、流石ワンコ君。見事なジゴロぶり」

 

「何言う。お前達もちゃんと見ろよ」

 

シンジは笑って、トイカメラを操作し、

 

「『世界』をな」

 

カシャ!

 

レイとアスカの特訓姿を写真に収めた。



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第拾漆話/心重なる時、清めの音が打ち鳴らされる

数年ぶりの投稿…皆覚えてるかな?


「こんの…セクハラおとこ~!」

 

「うほらぁぁぁぁっ!」

 

ドシンッ!

 

ネルフ本部のエレベーターの中で、加持リョウジがミサトに床に叩きつけられた。

 

そのまま朝まで寝てしまいたい苦痛に悶えていた所、

 

「ごふっ!?」

 

なんと顔を足で踏まれた。

 

「いきなり乙女の唇を奪うなんて…加持君とは何でも無いんだから…こういうの止めてくれる!?」

 

「…ふふふ、でも君の唇はやめてくれとは言わなかったよ。ぐっ…君の唇と君の言葉と行動…あいた!、どっちを信用したら良いのかな?」

 

ミサトは加持の頭をグリグリとふんづけながら書類を拾う。

 

「…よくその格好でいえるわね。無様を通り越してカッコいいわよ」

 

「惚れなおしたかい?ふふ、今日の下着は黒…ぶへぐっ!」

 

踏みつける脚にちょっと回転を加えた。

 

「じゃあね。セクハラ代金に今日の飲み代出しなさいな、ふんっ!」

 

「ぎゃぼっ!」

 

最後に足に捻りを加えて、屍をほったまま、ミサトは立ち去って行った。

 

 

 

「はい」

 

「ありゃ?ありがと。気が利くわね」

 

ミサトはリツコが差し出したコーヒーを受け取る。

 

 

リツコからコーヒーを受け取り口をつける。

コーヒーの風味が口全体に広がった。

 

「今日は珍しくシラフじゃない?」

 

「う~ん、保護者になると、ちょっちねぇ~…」

 

「ほとんどシンジ君に丸投げしている女が何言ってるのよ」

 

「わ、私だっていろいろあんのよ…いろいろ…」

 

「ふ~ん、まだ好きなのかしら?」

 

「べっつに~、あのセクハラ男にはさっきも天誅を喰らわせたわよ。リツコも後できたら。アイツが破産するくらい呑みましょ」

 

「私が言ったのは加持君がよ?あなた何したの?」

 

「ちょっと制裁をね…だいたい、もう8年よ」

 

ミサトはちょっと遠い眼をして、

 

「8年って、結構長いのよ」

 

 

 

 

 

「風にめくられーたカード。占うよーにわらーう」

 

シンジは大量の食器を軽快な鼻歌交じりに洗っている。

 

本日も特訓のおかげで、皆の食べる量は多かった。

 

レイとアスカはカヲルの指導の元、メキメキと息を合わせ、文句なしの合格点をたたき出した。

 

「こぼーれそーなーごぉじゃーすは!」

 

「ぷりーんすゆえーとめーらーれなーい!」

 

シンジが特訓に付け加えた『DOUBLE―ACTION』全曲カラオケだが、最初に恥ずかしがってたアスカも今ではノリノリで熱唱している。

 

レイも普段では考えられない声を出している。

 

(その内、専用曲できちゃうんじゃないか?)

 

「ふん…プリンスってのは気に食わないけど、中々私にあった曲ね…さて!次は軽快ににGUNでいくわよ!」

 

「…SWORDがいい」

 

「なにいってるにゃ!?ここは味のあるAXEでしょ!」

 

「ふっ、僕はリリンの心理を歌うRODがいいな」

 

ぎゃいぎゃい騒ぐチルドレン達。

 

(なんでマリとカヲルまで歌ってんだろ?)

 

そして…明日は魔化魍使徒との決戦だ。

 

シンジもマリに太鼓の技術を叩き込んだので、明日は大丈夫だろう。

 

そしてマリ自身の『切り札』に、シンジはマリに、もうひとつ『切り札』を渡している。

 

(やれる準備は全てした。後は戦うだけだ)

 

4人のぎゃいぎゃい騒ぐ声を聞いていると洗い物が終わった。

 

「よしっと」

 

シンジはエプロンをはずして台所を出た。

 

「あれ?ワンコくん、もう終わったの?」

 

「ああ、問題なくな…さてと、お前達に最終試験を渡す」

 

シンジは一枚のCDを取り出す。

 

「なに?まだ何かあるの。相変わらずドゥSの女ったらしね」

 

「おんなったらし」

 

「おんなったらし~」

 

「ぼくったらし」

 

「はっはっはっ、事実無根の中傷をありがとう諸君。いい加減傷つくぞ。まあ、いい…さて、この曲を聴け」

 

シンジはCDをセットする。

 

流れてきたのは、最後の『DOUBLE―ACTION』。

 

そうシンジは信じている。

 

同じ時を重ねている今、自分達の力が合わされば最高に強くなれること…

 

曲が流れ終わった後、全員で熱唱した。

 

 

当日、復活した第七キメラ使徒との決戦日…

 

「目標は絶対防衛戦を突破!!」

 

「来たわね今度は抜かりないわよ」

 

報告が発令所の隅々にまで届く。

 

緊張が空間を満たし、モニターに再び一体になったキメラ使徒が映る。

 

「レイ、アスカ…一番手は頼むぜ」

 

「まかせて」

 

「ふんっ、私達の雄姿見て、お零れ拾いなさいシンジ」

 

「音楽スタートと同時にATフィールドを展開。後は作戦通りに、2人とも良いわね?」

 

『了解!』

 

レイとアスカの声が重なり、リズムを取り始める。

 

「目標は山間部に侵入」

 

使徒をモニターしていた日向が報告した。

 

決戦が近い。

 

「いいわね!!最初からフル可動、最大戦速で行くわよ!」

 

「解ってる、62秒でケリをつける…」

 

「マリ、『戦鬼』達での音撃フォローは任せた」

 

「まっかせてー。でも、ホントにいいの?」

 

「ああっ…本当に『響鬼』が召喚されるわけじゃないからね…」

 

「ふ~ん、まあそうだよね~」

 

シンジは落ち着いているが、どこかしょぼくれたようすで、『響鬼』のカードをセットする。

 

「会いたい?やっぱり」

 

「…先生には迷惑かけっぱしだったから…ありがとうを言いたいな…」

 

《KAMEN RIDE『HIBIKI』!》

 

 

☆☆☆

 

 

‐遥か彼方のとある世界‐

 

 

ここは甘味処『たちばな』…

 

「た、大変!大変よー!」

 

「どうしたの、みどり?」

 

「あぁ!ちょうど本当に良かった!■■■君!ディ、ディケイドがまた何かやらかしてるみたいなの!」

 

「なに?」

 

■■■は研究室の方に入ると、そこには『次元の揺らぎ』があった。

 

「…『士』のヤツ、また何か…ん?」

 

■■■は『揺らぎ』の向こうにいる少年を見る。

 

「シンジ…」

 

 

☆☆☆

 

 

「発進!!」

 

次の瞬間音楽が鳴り出して青と赤のエヴァがリニアレールで打ち出された。

 

「派手に行くわよ!レイ!」

 

「動き出したらクライマックス…」

 

「続いて初号機・5号機発進!」

 

『了解!』

 

 

 

2体のエヴァは第七キメラ使徒の前に立つと同時に臨戦態勢に入る。

 

「敵前方に確認!さあ、迷う暇はないわよ!」

 

「心を落ち着かせる…練習の成果を出すために!」

 

『よーい!スタート!』

 

ふたりの声が重なると同時に、零号機・弐号機が同時に動き出す。

 

シンクロした二人の動きはどんどん第七キメラ使徒を追い詰めていく。

 

零れ堕ちる砂を止めることができないように、二体…ふたりの攻撃をだれも止めることはできない。

 

ふたりは同時に第七キメラ使徒を吹き飛ばし、ぶつかった二体の第七キメラ使徒は強制的に融合させられる。

 

「レイ!」

 

「アスカ!」

 

ふたりは同時に飛び上がり、

 

「ダブル!」

 

「アクション!」

 

「キィィィィィィクッ!」

 

二体の強烈な跳び蹴りに、第七キメラ使徒は衝撃に耐えかね、そのまま吹き飛ばされる。

 

「シンジッ!」

 

「碇君!」

 

「二人ともすごくよかった!次は俺だぁぁぁぁぁっ!」

 

《FINAL ATACK RIDE 『HI・HI・HI HIBIKI』!》

 

初号機は第七キメラ使徒に『音撃鼓』を叩きつける。

 

『音撃鼓』は回転して、第七キメラ使徒の躰に侵入しようとするが…

 

「なっ!?」

 

第七キメラ使徒の『元の躰』が『音撃鼓』の侵入を阻止する。

 

「くそっ、これならどうだ!」

 

シンジはさらに力を込めた。

 

 

 

 

 

ブォンッ!

 

「ンニャァッ!?」

 

ほんの数秒前、突然ディエンドのライドブッカーから数枚のカードが飛び出す。

 

「にゃ、にゃんで?」

 

まるで自分を今すぐ呼べといっているようなカードを、ディエンドは恐る恐るディエンドライバーにセットした。

 

 

 

 

 

「くぅ…おぉぉぉっ!」

 

初号機は食い下がらず、『音撃鼓』を押し付けている。

 

「くそ、ダメだ…なんで…『僕』が…本当の弟子じゃないから…」

 

シンジの心に不安がよぎる。

 

それでも引くわけにはいかない。

 

それはレイとアスカの想いを無駄にするだけではない。

 

「僕は、もう、逃げない…って、決めたんだ!」

 

『その意気だ、シンジ!『音撃鼓』を放した瞬間、思いっきり殴れ!』

 

「えっ…」

 

シンジはその声を聴いた瞬間、初号機は『音撃鼓』を放し、思いっきりぶん殴った。

 

『音撃鼓』からの衝撃で吹き飛んだ第七キメラ使徒を空から現れた存在が掴んだ。

 

巨大な『茜鷹』…それは第七キメラ使徒を上空に連れていき、地面にたたき落とす。

 

そのまま、『茜鷹』はディスク状になって、仰向けになった第七キメラ使徒に埋め込まれる。

 

その姿は巨大な『音撃鼓』だった。

 

「え?まさか…そんな…」

 

『さあ、お前の『音』を響かせろ!シンジ!』

 

「…!?」

 

 

 

《ATTACK RIDE『ONGEKIBOU REKKA』!》

 

 

 

「はぁっ!」

 

初号機は第七キメラ使徒の上の立ち、

 

「いよぉぉぉぉっ、はぁっ!とりゃっ!せいやっ!」

 

『音撃鼓』を打ち鳴らす!。

 

一撃一撃から響く太鼓の音は、まるですべてを浄化するようだった。

 

 

 

 

「これが…太鼓。ジャパニーズドラム」

 

「…キレイな音…」

 

響く音にレイとアスカが心を打たれていると…

 

「ダブルヒメーズ!」

 

ディエンドから通信がやってくる。

 

「なっ、マリっ!?どうしたの?」

 

「これ受け取ってぇっ!」

 

「へっ?」

 

ディエンドのいる方角から二つの物体が飛んでくる。

 

零号機と弐号機はそれぞれ受け止めると

 

「うわっ!?」

 

「んくっ!?」

 

突然頭に『情報』が流れ込んでくる。

 

「使い方わかったよね!?後よろしく!」

 

「まったく…」

 

アスカは弐号機が受け止めた『ギター』を見ながら凶悪に笑う。

 

「私好みじゃない!いっくわよー!」

 

弐号機が第七キメラ使徒に突撃する。

 

「私で…いいの?」

 

レイは零号機の持つ『特殊な銃と円環』を手に取り、射撃に適した位置に移動する。

 

「シンジっ!」

 

「アスカ!?どうして!」

 

「何って…セッションよ!付いてきなさいよ!ぜりゃぁぁぁぁっ!」

 

弐号機は『ギター』…『音撃弦・烈雷』を第七キメラ使徒に斬り刺す。

 

「音撃斬・雷電激震!イッヤハァァァッ!」

 

激しい『清めの音』が第七キメラ使徒の体内に走る。

 

「目標セット…」

 

零号機越しにレイは『銃』…『音撃管・烈風』か鬼石弾を第七キメラ使徒に撃ち込み、『音撃鳴・鳴風』を取り付ける。

 

「音撃射・疾風一閃…」

 

ATフィールドを利用して風を送り込み、『清めの音』を響かせる。

 

「さって、トリは私!いでよ『関東十一鬼』!『伝説の戦鬼』!清めの音をカキ鳴らせぇぇぇぇっ!」

 

5号機から光と共に『鬼』達が現れる。

 

『威吹鬼』『轟鬼』『斬鬼』『裁鬼』『弾鬼』『鋭鬼』『勝鬼』『剛鬼』『蛮鬼』『闘鬼』『歌舞鬼』『凍鬼』『煌鬼』『西鬼』『羽撃鬼』

 

「さあ、5号機を巨大なアンプにして、放て『音撃』!」

 

 

 

ミサト達はエヴァ達の響かせる『清めの音』に聞きこんでいる。

 

「なんて…きれいなおと…」

 

マヤは漏らすように声をだす…

 

それは司令室全員の代弁でもあった。

 

「これが…音楽、リリンが生み出した文化の極み…」

 

カヲルはまるで、決して手に入らないものに憧れる子供のように、エヴァ達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

「いぃぃやぁぁぁぁっ!」

 

 

『弐』!

 

 

「これが…私の音楽…」

 

 

『零』!

 

 

「ノリノリで行くにゃぁぁぁっ!」

 

 

『五』!

 

 

「はぁぁぁぁぁっ…」

 

初号機が『烈火』を掲げて、

 

「はぁっ!」

 

叩きつけた!

 

 

『初』!

 

 

そして、第七キメラ使徒は爆散した。

 

 

 

電源が落ちたエヴァからディケイドが出ると、そこには

 

「か、『仮面ライダー響鬼』…」

 

ディケイドに気づいた『仮面ライダー響鬼』は薬指と小指を若干曲げた状態で、手首をスナップを利かせて一回まわしたあと前に軽く振った。

 

 

「『ディケイド』になっても、ちゃんと鍛えてたみたいだな、シンジ」

 

「そ、そんな…」

 

「さすが『俺の弟子』。これからも鍛えろよ~」

 

『じゃあな~』と軽く言って『仮面ライダー響鬼』は消えていった。

 

ディケイドはその場で立ち尽くす。

 

「シンジ~、あんた返事しなさいよ」

 

「碇君大丈夫?」

 

「ね~、ワンコ君。なんかリッちゃんからモノごっつい質問攻めされてるんだけど…」

 

そんな皆の声を聴いて、ディケイド…シンジはホッとする。

 

ディケイドの仮面が、自分の涙を隠してくれているから…

 

「これからも鍛えるよ…貴方の弟子として、恥ずかしくないように…」

 

そして、ディケイドはみんなの元へ向かった。



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第EX-04話/S.H.Figuarts 仮面ライダーオーディン&ゴルトフェニックス購入記念作 /願いの残夢

これは俗に言うエクストラです。

もしかしたらオーズの《ガラ》くらいのものと考えてお読みください。


ネルフ司令室に2人の男がいる。

 

一人はこの部屋の主である碇ゲンドウ。

 

そしてもう一人は…

 

「これが…あなたに協力させるための『カード』だ」

 

男は仰々しく机の上にそれを置く。

 

「…これは、なんだ?」

 

ゲンドウは表情を変えずに言う。

 

「これは、俗に言う『願いを叶える』ものだよ。望むなら…」

 

男は笑って、

 

「『新しい命』すらも叶うものだ」

 

「なに…!?」

 

ここで初めてゲンドウは表情を変えた。

 

「ふふっ…これを創ったヤツもあなたと同じ目をしていたよ。まあ、彼は『妹』に諭されてしまったがね…協力した代わりに2枚ほど貰ってきたんだ」

 

男は色違いのモノを見せる。

 

ゲンドウに渡したのは『漆黒』…

 

男の持っているモノは『鳳凰の紋章』だった。

 

「まあ、使うかどうかはあなたに任せるよ…そうだな、『ディケイド』を倒せば必要な『魂(ぶん)』は手に入るんじゃないかな」

 

男は指を鳴らして、司令室の鏡面部を刺す。

 

「!?」

 

流石のゲンドウも驚く。

 

そこには、『漆黒の暴虐龍』が存在した。

 

「躾が出来ているから、あなたを決して襲わないよ。望むなら鏡に『それ』をかざして『契約』しなよ」

 

そういって男は突如現れたオーロラの中に消えていった。

 

ゲンドウは『漆黒の暴虐龍』を確認した後、手の中にある…『黒いカードデッキ』を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「さてと…」

 

男は自分の部屋に戻ると電話をかける。

 

すると、すぐに一人の黒服が部屋にやってきた。

 

「命令…」

 

男は持っていた『鳳凰のカードデッキ』を黒服に放り投げる。

 

「第三新東京で『ゴルトフェニックス』を『育てて』おいて。ディケイドに遭遇したら戦ってもよし。倒したら…その時から君は最高幹部だ」

 

黒服はそれを聞き、破格の報酬に喜び、意気揚々と出て行った。

 

「さてと…次はどうしよう」

 

 

 

 

 

 

「失踪事件?この第三新東京に?」

 

「そうなのよ…ちょっち無視できない数のね。今、緘口令を出しているわ」

 

ミサトはシンジに深刻な顔で告げる。

 

「なんでバカシンジにそんなこと言うのよ。第一警察の仕事じゃない」

 

「まあ、そうだな。正直警察の仕事で、チルドレンの聞く事じゃないな。あれか、学校のみんなに気をつけるようにって言っておけばいいのか?」

 

「そうもいかないのよ。偶然見た目撃者の話じゃ…」

 

ミサトはシンジを観て、

 

「鏡の中から『黄金の鳥』が出てきたって…」

 

それを聞いた瞬間、シンジの表情がガラリと変わった。

 

「やっぱり何かしってるのね!?」

 

「何かの間違いだ!」

 

シンジは声を荒げる。

 

「存在するわけがない!そんなわけが…」

 

「んにゃ、それってもしかして『オーディン』じゃね」

 

会話にマリが乱入する。

 

「マリ…まさか、『召喚』したのか?」

 

シンジは恐ろしい眼でマリを睨みつける。

 

流石のマリもビビり、

 

「ち、違う違う!私、喚んでない!『オーディン』なんて、私喚んでにゃい!」

 

「じゃあ、なんで『オーディン』がいる!?」

 

「ぼ、ボスが持ってたんだ…その、」

 

マリは言いにくそうに…

 

「『オーディン』の…カードデッキ」

 

 

 

 

 

 

「碇君、待って」

 

「バカシンジ!待ちなさいよ!」

 

物凄い形相で部屋を飛び出したシンジをレイとアスカは呼びとめた。

 

「どうしたのよ、そんなにらしくもなく怒って。その、マリが言ってた『オーディン』ってのに何か恨みでもあるの?」

 

「違う!恨みなんてない!」

 

声を荒げるシンジにアスカも少し怯える。

 

「…『オーディン』って、『仮面ライダー』なの?」

 

「…ああ、純粋に、大切な人を救う為に狂った、残酷で…優しい仮面ライダーだよ」

 

 

 

 

 

 

 

「で?オーディンってなんなの?マリ」

 

「………」

 

「うう…ミサっちが怖い、カヲリンも無言ですごまないでよ。話すから」

 

マリは気を取り直して話し始めた。

 

「仮面ライダーオーディン…ええっと、私もボスとワンコ君からの情報だから実際知ってるってわけじゃないんだけど、『龍騎の世界』の『仮面ライダー』を創った奴だよ」

 

「!?『仮面ライダー』を創った!?」

 

その言葉にミサトは絶句する。

 

リツコがどれか一つでも解明しようとしても断念しているテクノロジーの一つを創った人物…

 

「確か…その世界の仮面ライダーは『願い』の為に戦っているんだったね」

 

カヲルの言葉にマリは頷く。

 

「そう、『ミラーワールド』っていう鏡の中の世界に住むモンスターと契約して、仮面ライダー同士で殺し合い、モンスターを苗床にして『どんな願いでも叶える力』を手に入れる…それが『龍騎の世界』の『仮面ライダー』」

 

どんな願いも叶えるチャンスを手に入れたモノたち…それが『龍騎の世界』の『仮面ライダー』…

 

「…その、『オーディン』ってのはどんな願いを叶える為に『仮面ライダー』を創ったかマリはしらないの?」

 

ミサトは真っ先に思いつく質問をマリにした。

 

(まあ…そんなモノ創る人間にはロクな奴はいないでしょうけど…)

 

「『オーディン』の願いは確か…」

 

 

 

 

 

「新しい…『命』?」

 

「そう…」

 

シンジはマシンディケイダーのアクセルを噴かす。

 

「『妹』を救う為に…『神埼士郎』はたった一つの『キボウ』にすがったんだ」

 

そのまま、レイとアスカはシンジから『神崎士郎』の事を話す。

 

幼い頃に命を亡くした妹が20歳の誕生日に尽きてしまう為、カードデッキを創った事…

 

その為にとてつもない犠牲を出した事…

 

本当なら愚かな行為…

 

優衣姉ちゃんは戦いを望まなかった。

 

神崎士郎だって戦いなんて望んでいなかった。

 

でも、神崎士郎には戦う(それ)しか道がなかったんだ。

 

「だから許さない…」

 

確かに、あのカードデッキを使って、最悪な行動に移った『仮面ライダー』はいた。

 

己の願いを叶えるために…

 

そして、あのカードデッキこそ、初めて碇シンジの心に、人の求める『願いの重さ』を叩きつけた存在だった。

 

「だから…はやく見つけなきゃ…」

 

《KAMEN RAIDE》

 

 

 

 

 

「さてと…餌を食わしてデカくなってきやがったな。なかなかいうこと聞かねねぇからこまんだよ。くそっ、出世の大チャンスだってのに」

 

男は悪態を吐きながらも、ボスから託されたゴルトフェニックスの力と、変身した時の力の漲りには、羨望と恐怖を感じていた。

 

「ひひっ、この力…ディケイドなんて目じゃねぇ。全くなんて存在だ、《ミラーモンスター》と《仮面ライダー》ってのは…」

 

しかし、資料によると、このオーディンは同じ世界の仮面ライダー…《仮面ライダーナイト》に敗北したらしい。

 

「もっとだ…もっと人間を喰わせれば強くなる…そうすれば、俺は…」

 

「見つけた…」

 

突然の背後からの声に、男は振り向く。

 

「て、テメェは《仮面ライダー龍騎》!…いや、ディケイドか!?」

 

「同じミラーモンスターの《ドラグレッダー》を使えば、お前を見つけるは簡単だったよ」

 

男は身構える。

 

仮面越しでもわかる。

 

自分を完全に敵と見做して、睨み付けていることを。

 

「オーディンのカードデッキを寄越せ。それを使って良いのは、この世でたった一人だ」

 

心の底から震える声に、男はたじろいだが、すぐに下品にニヤけてる。

 

「はっ!そんな途中で負けたヤツの姿で俺に勝てると思ってるのかよ!」

 

男は手鏡を取り出して、オーディンのカードデッキを翳す。

 

鏡からベルトが出現し、男は笑いながら

 

「変身っ!」

 

カードデッキをベルトに装着する。

 

鏡の鏡面姿が幾十にも重なり、割れた時、そこには存在した。

 

《龍騎の世界》の世界で最強の仮面ライダー、神の名を持つ、《仮面ライダーオーディン》がいた。

 

「ふうぅ…この漲る力最高だぜ。ガハハっ、まさかバケモンに人間を喰わせれば喰わせただけ強くなる《仮面ライダー》…どうやらこいつを創ったヤツは最低のクズ野郎みたいだな!」

 

「………」

 

「へへっ、こんなスゲェ力…誰でも欲しがるぜ」

 

オーディンは《鳳凰召錫ゴルトバイザー》を取り出し、カードデッキから一枚のカードを取り出す。

 

《SWORD VENT》

 

オーディンの手に、二刀一対の剣《ゴルトセイバー》が現れる。

 

「ディケイド!俺はお前を倒して、最高幹部になり、いずれ《組織》の頂点に立つ!どうでもいい人間を喰わせまくってどんんどん強くなりゃあ俺は最強だ!」

 

「う…さい…」

 

「さぁ、お前もバケモンの餌になれ!俺の最強伝説は始まったばかりだ!そうだ、いずれカードデッキを全部使って叶えてやる!」

 

「うるさい…」

 

「俺の《願い》をなぁ!」

 

「うるさい!」

 

《STRIKE VENT》

 

一瞬でD=龍騎は間合いを詰め、オーディンの体に《ドラグクロー》を叩き込んだ。

 

「グギャッ!?」

 

一撃でオーディンの装甲が破壊される。

 

オーディンは地面にのたうって苦しむ。

 

「ば、馬鹿な!そんな途中退場の負け犬に、このオーディンが…!」

 

「…簡単な事だ」

 

D=龍騎はオーディンを睨みつける。

 

「お前は確かに《オーディン》だ。でもなぁ…」

 

D=龍騎…《碇シンジ》は確信を持って告げる、

 

「《仮面ライダーオーディン》じゃない!」

 

 

 

 

それからはD=龍騎の独壇場だった。

 

一撃一撃でオーディンの装甲は砕け、その度にオーディンは地面に崩れる。

 

オーディンが反撃してD=龍騎に一撃を喰らわしても、それを物ともせずに反撃する。

 

「お前に…!そのカードデッキを使う資格はない!」

 

(『僕』にはわかる!神崎士郎はカードデッキを創りたくなかったんだ!)

 

でも…それでも生きていて欲しい人間がいる。

 

たとえ世界中を敵に回しても、死なせずに生きていて欲しい人間がいる。

 

それが間違っていても、そのためだけに彼は決断した。

 

そして、碇シンジは

 

(『僕』は羨ましかったんだ…)

 

(自分を命がけで護ってくれている兄がいる《優衣お姉ちゃん》が…!)

 

(命をかけてでも護りたいという妹がいる《神崎士郎》が…!)

 

(互いに命をかけてでも救いたいと願う二人が…!)

 

(それがたまらなく、どうしようもないほど、うらやましかったんだ(・・・・・・・・・・)!)

 

気づけば、D=龍騎はオーディンを撃破していた。

 

《fFINAL VENT》のカードを掴み、痙攣しているオーディンを見下ろして、ベルトのカードデッキを踏み砕いた。

 

オーディンの黄金の装飾は消え、灰色の姿となり、砕けて、変身していた男の生身の姿が現れる。

 

「はぁ…はぁ…」

 

男の落とした鏡から黄金の鳳凰・ゴルトフェニクスが現れる。

 

獲物は勿論カードデッキを失くした者…

 

(このまま…喰われてしまえ…えっ?)

 

D=龍騎…シンジの前に二人の兄妹がいる。

 

二人はシンジを嗜めるように、そして、優しく微笑んでいた。

 

(ああっ…なんだ。あなたはそんな、優しい顔だったんだ…)

 

「帰れ!」

 

ゴルトフェニックスはシンジの声に立ち止まる。

 

シンジはベルトを外して、変身を解き、ゴルトフェニックスを真っ直ぐ見つめる。

 

「ここにお前の主人はいない!」

 

ゴルトフェニックスはそれを聞くと、神秘的な鳴声を発し、《鏡の世界》に帰っていった。

 

シンジは携帯電話を取り出して、短縮ダイヤルでミサトにかける。

 

「ミサトさん、事件の犯人を捕まえたから、警察でも特務部隊でも回してくれ。見張っとくから場所は…」

 

電話を終えて、シンジは優しく微笑む二人を見る。

 

「僕にもできたよ…命がけで守りたい人達が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーれ、今日は全員のリクエスト全部作ったぞ〜、たんとお食べ」

 

「山菜天ぷら…」

 

「うっしゃ、牛カツ!」

 

「やったー!麻婆だ!」

 

「豆腐御膳美味しそうだ」

 

「シンちゃんつまみセット!ビールを持てい!」

 

シンジは自分の料理を美味しく食べるみんなの姿をみて思う。

 

「あぁ、『僕』にはやっぱりカードデッキは必要ないや」

 

そう誇らしく思う。

 

この先、《カードデッキの力》に縋る者との死闘があるとも知らずに…



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第拾漆話/人《アク》が造りしもの 前編

この話の元ネタが好きな人に最初に断っておきます。

ギャク回です。


 

 

 

「こちらの計画は以上です。あなた方の計画とは違いますが、こちらにも計画に乗っていただきたいのです」

 

「…これは『あの男』の計画なのか?」

 

画面の向こうの男はニコッリ笑う。

 

「はい。プロデュースは私ですが、承認いただいております」

 

「…あまりシナリオに無い行動は慎んでもらいたいのだが」

 

ゲンドウの言葉にも男は動じず、

 

「もちろん心得ております。ご安心ください。あの方の目的はアナタと同じ、『完全な形での人類補完計画の達成』…貴方方の敵ではありません」

 

「………わかった。好きに…」

 

「ところで、ご子息様はお元気でしょうか?」

 

「なに?」

 

「シンジ様はお元気でしょうか?こんな環境が悪い『世界』にいてとても心配なのです。あぁ…お風邪をひかないでいてくれたらよいのですが…あぁ、そうそう、シンジ様もご招待いたしますので、了承いただけると嬉しいのですが、お会いするのがとても楽しみなのです」

 

先程までの会話とは違い、楽しそうに話す男にゲンドウも困惑する。

 

「今回の件でシンジと何の関係がある?」

 

「何って、あのお方は…」

 

 

 

 

 

 

 

「お披露目パーティーねぇ…」

 

「そう、日本重化学工業共同体、通産省、防衛庁がNERV(ウチ)に対抗して共同開発したモノらしいけど、情報が全くつかめてないのよね。前々から何か作ってるって情報自体は入ってたんだけど、どんなものなのか全くわからない。この…」

 

招待状には

 

『KD完成式典 招待状』

 

と書かれている。

 

「この『KD』ってのが、開発した兵器の名前か?」

 

「そのはずよね~問題はね…」

 

その招待状は2通あった。

 

一つはNERVに届いた招待状で、いかにも機械的に作成し、プリントしましたという、普通の招待状。

 

もう一つは、シンジ個人に届いたもので、装飾は金箔でそれでいて品がある最高級の招待状。

 

「なにこの差?内容もあたし等宛には『きたけりゃどーぞ』なのにシンちゃんのは『ぜひいらっしゃってください。おもてなしは万全です。お友達もどーぞ』よ」

 

「…うーん?」

 

シンジは首をかしげながら、

 

「マリー、カヲルー、なんか『保護者』から何か聞いてないか?」

 

夕食の献立の決定権を賭けてババ抜きをしているレイ・アスカ・マリ・カヲルに声をかける。

 

「僕は聞いてないな」

 

「ワタシもー、ボスってば意外と手広くやってるからねー。兵器開発の担当は別にいたみたいだけど」

 

「完全に悪の組織じゃない。なに、エヴァに対抗して巨大ロボでも作ってんの?」

 

「…怪人とかも?」

 

ババ抜きをしながら、キャイキャイと四人は会話をする。

 

仲良くしていることにシンジは満足すると、招待状を眺めて、

 

「こういうのは、手を出しても、放っておいても、碌なことにならないから、ご馳走が出る分、こちらから出向こう。おーい、ご馳走喰いたい奴、手を上げろ」

 

四人とも手を上げる。

 

「んじゃ、返信するか。えっと、学生服でいけばいいかなっと」

 

とシンジはチルドレン達の名前を用紙に記入して、返信封筒にいれて、ミサトに渡した。

 

 

 

 

 

 

「喜んでください『アテナ』!」

 

男が大声をあげて、机の上で黙々とキーボードを叩いて仕事をしている少女に喜びを伝える。

 

「どうしたんですか、キャイキャイキャイキャイ叫んで?発情期ですかコノヤロー」

 

少女はPCから背けず、仕事をしながら毒舌を放つ。

 

「あいかわらず仮にも上司に向かって何たる暴言!まぁいいでしょう。なんとシンジ様が我々の成果を見に来ていただけるのですよ!」

 

それを聞いて少女は立ち上がる。

 

「それを先に言いなさいよ顔だけ(メン)!役立たずの給料ドロボー」

 

少女も叫ぶように喝采を上げる。

 

「あぁ、シンジ君。陰ながら可愛いシンジ君から逞しくなっていくシンジ君を見てたけど、ようやく貴方に会えるのね!『クソ社長』とクソ上司のせいで会えなかったけど、シンジ君の為に磨いたこの美貌と躰!ようやくシンジ君にあげられる!」

 

「まったく、下品な!これだから上司として会わせられあなかったんですよ!」

 

「うっせぇ!二股男!上司もくそも肩書は同格だろうが!」

 

「言わせておけば!」

 

「なによ!」

 

派手に言い合っている二人をよそに、別にいた二人は溜息を吐き。

 

「じゃあ、俺は警備の計画を練るわ」

 

「備品の発注早めにやっとくよ」

 

黙々と真面目に仕事をした。

 

 

 

 

 

 

 

「会場…ここか?金あんなぁ」

 

「マジか…第28放置區域になんでこんなもんがおったってんのよ」

 

制服姿のシンジとキッチリとしたスーツ姿のミサトの疑問はもっともだった。

 

旧東京都心の第28放置區域になぜか巨大な古代ギリシャを思い浮かべるようなビルが建造されていた。

 

「へぇ、いいとこじゃない。ここなら私に相応しそうね」

 

フリフリなピンクのドレス姿のアスカが満足そうに笑みを浮かべる。

 

「美味しいモノ…あったらシンジ君に覚えてもらう」

 

黒いタイトなドレスのレイもウキウキしている。

「もう、姫達はおこちゃまなんだから~」

 

チャイナベースのドレスのマリに

 

「いいじゃないか。リリンの創ったおもてなしを味わおう」

 

むっちゃカッコイイスーツを着ているカヲル。

 

「…なぁ、なんで俺だけ制服なんだ?」

 

「うちのボスが仕立ててくれるっていうから、全員仕立ててもらったにゃ」

 

「俺のは?」

 

「『シンジ君は真面目だろうから、断るだろう』って」

 

「なんて、過大評価な、俺だって…」

 

 

 

シュンっ…

 

 

 

「…んなっ!『次元の歪み』が今通ったよな!?」

 

シンジがマリに問おうとすると、ミサトとチルドレン達がシンジを怪訝そうな顔で見ていた。

 

「どうしたみんな?」

 

シンジが尋ねると

 

「シンジ…あんた、王様願望あったんだ」

 

「王様になるの?」

 

「にゃるほど…ハーレムを築くわけだ」

 

「似合ってるよシンジ君」

 

「シンちゃんってば、破壊者やって王様になるわけ?」

 

善人の言葉にシンジは恐る恐る自分の姿を見る。

 

「…俺は何でも着こなすいい男だが、これは予想していなかったな」

 

シンジの今の服装はファンタジー作品に出てくる王族の服装だった。

 

「ふふっ、とても似合ってるよ。シンジ君!」

 

「だ、誰だ!?」

 

シンジは突然聞こえたきた女の声のする方を見る。

 

ホテルの玄関の上に何者かがいた。

 

「誰って、貴方の御妃様の声を忘れたの!?トウッ!」

 

空中を跳び、錐揉み回転して着地したのは、美少女といっても過言ではないプラグスーツに似ているが鎧のようなスーツを着た少女。

 

「久しぶり、ダーリン」

 

その言葉を聞いてチルドレン達はシンジを見る。

 

「なに…あんた他所で女作ったの?」

 

「…浮気者」

 

「もう…あたし達だけじゃ足りない?」

 

「僕ならいくらでも受け止めるのに」

 

責める言葉に汗をダラダラかきながらシンジは首を振る。

 

「おいおい、ちょっと待て!俺にこれ以上疑惑の知り合いは…って、なんで…あれ…」

 

少女の顔を見るとシンジの思考が過去に飛ぶ。

 

それは別の世界で出会った少女。

 

自分の事を意地悪い言葉で責めていたけど、

 

『私が奥さんになって、シンジ君を守ってあげる!』

 

『絶対!会いに行くから!その時にお嫁さんにしてね!」

 

そう言っていた、少女…

 

「……マナちゃん?」

 

「そう、貴方の奥さん、『霧島マナ』ちゃんよ。ぎゅー」

 

とシンジを抱きしめた。

 

動揺するレイとアスカ。

 

「ちょ、アンタバカなの!?こら離れろ!」

 

「シンジ君から離れて」

 

ふたりに引っぺがされると、マナはやれやれといった顔をして、

 

「まったく…まぁ、これも男の甲斐性。私は責めないわよ。と、いうわけで『2号さん(レイを指す)』に『3号さん(アスカを指す)』、『4号さん(マリを指す)』と『5号さん(カヲルを指す)』と共に身の程を弁えてくれないかしら。お零れならいくらでも…」

 

「待てい!誰が3号か!?」

 

「2号ってなに?」

 

「まったく、側室の分際で…」

 

「マナちゃん」

 

「なに、シンジ君。ハニーって呼んで」

 

シンジは再開こそ喜んでいるが、それよりも疑問があった。

 

「どうやって、『この世界』に…」

 

「それは私が彼女をスカウトしたからです。そして、今や彼女も私と同格なのですよ、シンジ様」

 

シンジの声を遮った男を認識すると、驚愕と共にシンジはマリを引き離し、ミサトやチルドレン達より前に出る。

 

「うわっは、スッゴイイケメン…ポっ」

 

ミサトは彼を見て心を奪われる。

 

金髪碧眼に甘い顔といった表現がピッタリの美男子。三つ揃えの白のスーツだが、ベストとネクタイは黒い。

 

気候以上のこの世界で、手には黒い手袋を付けている。

 

シンジはすでにディケイドライバーを装着している。

 

「なぜ、お前が生きている…」

 

そんなシンジに彼はにっこりと笑って、

 

「お久しぶりでございます、大首領(・・・)様。貴方の忠実な(シモベ)、《大ショッカー秘密警察第一室長》…」

 

「アポロ…ガイスト…」

 

「同じく…」

 

先程とはトーンが違った声でマナが名乗る。

 

「《第三室長》ダクネス・アテナ。大首領様に拝謁いたします。貴方様の為に、駆け上がりました」

 

 

 

 

 

 




この二人は改変しまくりです。

ごめんなさい。


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