プレイヤーっていうやばい奴がいるんだよ (ビリオン)
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プレイヤーっていうやばい奴がいるんだよ

 おう! 兄弟。知ってるか?

 最近ハンターズギルドに良い新人が入って来たんだよ。

 

 おお! 知ってるか!

 そりゃ良い。兄弟も耳が早いな。

 そうそう、【K】っていう大剣使いでな。もちろん、初心者用の防具に簡素な大剣なんぞ背負っていたが、あれは良い。

 

 何が良いって? まず、身体だ。初心者用とはいえ、【K】が着ていたのは金属製だった。大剣も同様だ。

 普通の新人じゃあ、身体が潰れるってもんよ。

 だが! だが、だ。兄弟。

【K】はそれを着て、武器を持って、普段と変わらないへっちゃらな顔しているんだぜ?

 足運び一つ取っても、まるで普段と変わりゃしねぇ。

 

 あん? まるで普段の【K】を知っているようだって?

 ああ。知っているさ。だが、大した事じゃない。家がすぐそばなんだよ。

【K】も俺も、此処の出身じゃないからな。遠路遥々来たハンターが泊まるところなんて早々見つかるもんじゃない。こんな小さい村ならなおさらだ。

 家の場所は知っているだろう? 兄弟。

 あそこのすぐ隣だよ。【K】の住んでいるところはな。

 俺の時と同じく、空き家を改造したらしいぜ。

 つっても、装備を外しているところなんて、先ず見ないけどな。

 何故かって? 知らねえよ。【K】は殆ど装備を外さない。

 さっきの話は、ほんの僅かにある装備を外したタイミングを知っていただけさ。

 あ? ストーカーみたいだって?

 馬鹿なこと抜かすんじゃねえ! 俺は期待の新人に目をかけているだけだ。ちょっとした親切心からの行為だ。

 

 そうだ。この話は知っているか? 兄弟。

【K】なんだがよ。つい昨日、ジャギィの群れに囲まれたんだけどな。

 あ! おいおい、待て待て。

 なんだって? 一大事だって?

 ジャギィの群れに囲まれたのがか?

 そりゃ一大事だけどよ。もう済んだ事だ。つーか、昨日の事だって言ったろ。今日の朝、【K】を見てないとは言わせねえぞ?

 そうだそうだ。落ち着け落ち着け。

 思いやりに溢れるのは良いがな、兄弟。人の話は最後まで聞くもんだぞ。

 で、もう結論を言ってしまったようなもんだが。あいつは生還した。

 しかも、ジャギィの群れを半分以上倒してだぜ? ちゃんと証拠がギルドに届けられてる。

 ああ。兄弟の言う通りだ。そんな新人、普通はいない。

 しかも、俺はあいつの噂を聞いたことが今までなかったんだ。

 兄弟もか? そうだろうな。

 この村にあいつが来るまで、あいつは全くの無名だった。

 そんな奴が、ジャギィの群れを半分以上倒せるんだぜ。

 何処の秘蔵っ子だろうと不思議じゃないな。

 案外、明日くらいにはドスジャギィ狩ってるかもしれねえぜ?

 え? それはない?

 良いじゃねえか。それくらいの事期待したってよ。

 

 まあ、世界は広いって事だ。

 そうだ。本当に世界は広い。まだ見た事ないほど強いモンスター。それすらも退けるハンター。

 ああ。本当に世界は広い。馬鹿みたいに広い。

 

 知っているか? 兄弟。

 世界には、古龍と呼ばれるバケモンみたいなモンスターがいるらしいぜ。

 中には、天まで届くような巨体もいるとか。

 んなバケモン信じらんねぇな。それを倒すハンターはどんだけカッコいいんだろうな。

 

 あん? らしくねえって?

 そうかも知んねえな。世界の広さを改めて知って、驚いてんだよ。

 ああ。良いなぁ。見てみてえよ。そんな奴ら。

 

 ハッ! 笑いたきゃ笑えよ兄弟。今日はいい酒が飲めそうだ。

 

 

 ん? 何の用だ? 受付の姉さん。

 え? 【K】の事話してたから声かけた?

 

 

 

 ――え? あいつ、ドスジャギィ倒したの?



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イャンクックっていうやばい奴がいるんだよ

 

 よぉ……、兄弟。

 ……あ? 「元気がないようだが、どうした?」って? そんなにわかりやすいか、俺は。

 

 そうだよ。兄弟の言う通りさ。今の俺はまるで元気がねえ。

 いつものように酒を呑もうとするが、まるで進まねえ。

 

 理由? 

 ……自分でもバカだって、思うんだがよぉ。

 

 聞いてくれるかい? 兄弟。

 

 

 あいつが――【K】がドスジャギィを倒して今日で一週間ほど経つ。

 ……なんで【K】の名前が出てくるかって? 関係あるからだよ。

 

 なあ、兄弟。今朝、【K】の奴を見たか?

 そうか……見たか。なら、気づいただろう?

 

 何が? 何がって言ったのか兄弟!?

 決まっているだろう!?

 

 ――あいつ、全身イャンクック装備だったんだよ!

 

 イャンクックだぞ? あのイャンクック!

 調子に乗ったハンター達を数多地獄へ叩き落としたイャンクックだ!

 あの怪鳥に挑んだハンターがどれだけ命を落としたことか……。

 

 いや、今重要なのはそこじゃない。……率直に言ってしまおう。

 

 ――なんであいつ、もうイャンクック狩っているの?

 

 おかしいよな? 絶対におかしいよな?

 いや、不正だとか言う気はねえよ。だがよ……。だが――。

 どう考えても釈然としない……!

 

 俺がイャンクック狩れたのいつだと思っているんだ!?

 一年後だ! ハンター始めて一年後だよ!

 その前だって火に強いって聞いたモンスターを狩って、準備万端で挑んだんだ!

 あの時だって、村中大騒ぎだ! 揃いも揃って、俺が負けて帰ってくるって思っていやがったからなぁ!

 

 ……すまん、興奮しすぎた。

 だが、【K】の奴はおかしい。最近はモドリ玉があるからいいが……。

【K】は自分の命がまるで無限であるかのように行動しやがる。死なないとでも言うような確信があるかのようだ。

 クエストから帰ってきて、即座に次のクエスト受けるだなんて日常茶飯事になってきやがる。

 もう既に、初心者どころかこの村のハンター全員を超えてるように思えるんだ。

 

 でさ、【K】の奴がどんどん先へ進むのを見て、俺は焦るんだ。怖くもなる。そのうち、憎たらしいくらいに思ってくるんだ。

 思い出したよ。

 これは、嫉妬ってやつだ。

 

 俺に出来ないような事を簡単にやってのける【K】に、嫉妬しているんだ。

 最近まるで感じることのない感情だったが、【K】が思い出させてくれた。

 

 なあ、兄弟。久しぶりにクエストに行こう。

 後ろから、凄いスピードの後輩がいるんだ。

 先輩として、それに負けないぐらい進まなきゃな!

 

 久しくクエストを受注してないからな、勘を取り戻すところからだ。

 付き合ってくれるか? 兄弟。

 

 そうか。なら、行くぞ!

 ボヤボヤしてると、【K】に追い越されてしまう!

【K】の奴、来週にはボルボロスの一体も狩っていそうだからな!

 

 

 受付の姉さん、クエスト見せてくれ。

 あと、【K】の奴はどうだ? 今日は、なんのクエストを受けて行ったんだ?

 

 ――え? ()()()()リオレイア? 






――次回。

――老山龍、襲来!!


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老山龍(ラオシャンロン)っていうやばい奴がいるんだよ

《今回のあらすじ》

――老山龍(ラオシャンロン)(にプレイヤーが)、襲来(した)!




 ……よぉ、兄弟。今日はお互い疲れたな。

 そうだな、兄弟の言う通りだ。誰が思うんだって話だよ。

 兄弟は考えたことあったか? 

 自分がまさか――古龍狩りに参加するだなんて。

 

 ――老山龍(ラオシャンロン)。恐ろしく巨大な、天災か何かのようなやつだった。

 俺は一眼見て、思ったね。

 

『……俺は今日、死ぬんだ』ってな。

 

 理解(わか)るだろう!? 終わった今でも生きた心地がしねえよ。

 ……本当に俺たち生きてんのか?

 老山龍(あのデッカいモンスター)にプチっと潰された先の天国だったりしないよな?

 

 本当に今、宴なんぞしていていいのか?

 いや、酒はうめえよ! 今まで呑んだ物よりずっと高級ないい酒だ。

 

 ……だが、本当に信じられねえ。あんな巨大な奴に勝てるだなんて。

 奴が足を進める地響きだけでも、恐ろしかった。奴と対峙して(ランス)を突き出すだなんて事、もうやりたくもねえ。

 大砲撃っているだけでも、逃げたくなったんだ。

 最後に、奴が倒れた時は――本当に現実なのかと自分の頬を(つね)ったね。

 

 理解(わか)ってくれるだろう? 共感(わか)ってくれるよな? 

 

 なあ、兄弟。

 

 ここにいるのは、あの天災を生き残った戦友達なんだよな……。

 

 ……戦友。これだけ見れば、心躍(こころおど)る言葉なんだがなぁ。

 

 あん? 相変わらずビビリだって?

 そうだよ! 悪いか!?

 そんな事俺は知っている! そうだよ、俺が一番、よく知っている……。

 だから俺はランスを使っているんだ。何かあった時、一番自分を守れるのはそれだからな。

 やれ一番槍だの、やれ勇敢だの言うが――俺がランスを使うのは、一番堅いからだ。

 

 例えば大剣なんかじゃ、防御と攻撃を同時にできない。

 ガンナー? あれこそ気が知れねえ! あんな薄っぺらい装備で、どうやって自分の命を守るんだよ!?

 何故、ガンランスじゃないかって? あれは高いだろう、火薬なんかが。それに、俺がハンターになった時にはガンランスなんて無かったからな。

 

『じゃあ、今日の【K】を見てどう思ったか』だって?

 ……正気じゃねえって言うのが、正直なところだ。まるで恐怖なんか感じてねえみたいだった。

【K】は本当に人間か?

 ……本当に俺たちと同じ人間か?

 

 しかも今日は弓を使っていやがった。最初、大剣だったよな?

 たまに【K】は武器変えているが、それでよく戦えるよな……。同じ武器種だって、武器を変えれば重量や重心が変わるんだ。慣れるまでに時間だってかかる。

 それなのに、全く違う武器だと……! それだけ見ても正気を疑うほどだ。

 

 だが、【K】は今日で一番の働きをした! 

 時に弓を番え、時に大砲を撃ち、時にバリスタを放ち、時に背に爆弾を仕掛けた。

 あの老山龍(ラオシャンロン)を恐れないその姿は、俺には真似できねえ。

 

 俺は思ったね。あいつこそ、この街一番のハンター。

 天災(モンスター)を超える、英雄(ハンター)だってな!

 

 お、噂をすれば影だ。この宴の時に、あいつは忙しなく走ってどこ行くのかね?

 

 なあ、兄弟。賭けをしないか? 

【K】が何処に何しに行くのか。宴には良い余興だろ?

 

 俺は恋人にでも逢いに行くと思うね!

 こんな生きるか死ぬかの戦いを越えたんだ。【K】の奴も、人恋しくなるんだろうさ!

 

 兄弟はどう思う? 

 ……あん? 『モンスターを狩りに行った』?

 馬鹿言うなよ! こんな戦いの後だ。誰だって、ワイワイ騒ぎたいに決まっている!

 こんな宴ほっぽって狩りをしたいと誰が思うんだよ!?

 

 ……あん? なんの騒ぎだ?

 どいつもこいつも酔いが覚めたかのように慌てふためいて。

 

 おい、受付の姉さん! これはなんの騒ぎだ?

 

 

 ――は? 二体目の天災(ラオシャンロン)

 



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番外編:■■猫っていうやばい奴がいるんだよ


・この話は番外編です。

・本編のギャグとは異なり、ホラーな内容になります。

・この話において、笑えるギャグ要素はありません。


――ご注意ください。







 おう! 兄弟、知っているか?

【■】のやつが連れているアイルーのことなんだがな。名前を()()()()って言って――。

 

 ん? どうした?

 あん? 『俺が変だった』って?

 変ってどういう事だ? 『まるで壊れているみたいだった』?

 ……言っている意味がよくわからないぞ、兄弟。

 

 まあ、話を戻すぞ。そのアイルーっていうのが、まるでアイルーとは思えない強さでな。

 あのリオ■■スを一瞬で倒すだけの強さを誇るんだそうだ! 信じられないか?

 そうだろう! 俺だって正直言って信じていない。

 だが、みんな噂しているし、何よりギルドが証人だ。

 どういうことかって? 観測隊が戦闘中を見たらしい。しっかりとアイルーが戦っていたそうだ。

 

 どう思う? 証人はたっぷりだ。だが信じ■■ない気持ちもわかる。

 確かにアイルーの中にはハンターに匹敵する奴らもいる。

 だけれども、俺たちの■■がなくなるほど強力なアイルーっていうのもおかしな話だと思う……。

 

 最近はオトモアイルーの質も向上しているら■■からな。

 知っているか? ギルドはハンター代わりとして、オトモアイルーだけでクエストに向かわせるニャンター制度を作ろうとしているらしい。

 つまり、ハンターがい■■てもニャンター(オトモアイルー)がいれば十分とすら思われるかもしれ■■■■ことだ。

 

 確かに、ハンターにも常識を無視したような奴は多い。【■】なんかがいい例だ。

 それが■■モアイルーにも適用さ■■というなら、あな■■間違いじゃないんだろうな。

 あの()()()()も。

 

 ■■、兄弟■信■■■?

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――……

 

 

 ――? おい?

 

 ――おい!?

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 ――おい! 兄弟!? 大丈夫か!

 

 ――おい!

 

 ――起きろ! 兄弟!

 

 

 お、起きたか……。びっくりしたぜ。いきなり倒れるんだもんな。

 うん? どうした? 俺をじっと見つめて。俺の顔になんかついてるか?

 ん? 『見てるのは俺じゃない』? 

 

 ……おいおい、大丈夫か? そんな()()()()()()()()()()

 は? 『壊れている』? 何を言ってやがる?

 どこも壊れていやしねえよ。いつもの酒場のままだ。

 

 

 

 

 

 ……本当に大丈■■? 頭を■■た■か?

 さっき■■意味のわから■■■■■■きやがって。

 

 うん? ■■■■? 

 ■■俺が()()()()()

 何を言って■■る。そんなわ■■■■■■■■……

 

 今■■もう■■み■■■■。■■にお■■■■、兄■。

 ■■怯■■■■る。

 ■■、【■】が連■■■■()()()()の話■■よ■■■■■■に。■弟■■■■■■、無■■な。

 

 ■■、心■■■■。■■る■■■いつ■■■■る■■。

 ■■■ゆ■■■休■■、明日■■■■■■。

 ■■■■ら、■■■家■■■っ■。

 

 

 ■、【■】■■■■■。■■■■■■■■。

 ■■、■■■。■■■■■■■■■■■■■【■】。

 

【■】■■■■■■■、■■■■■■■■――――…………

 

 

 

 






 改造、ダメゼッタイ




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