ポケットモンスター 侵食される現代世界 (キヨ@ハーメルン)
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プロローグ ポケモンが無い私の世界

『現代モノのポケモン増えろ』そんな思いを受け取って初投稿です。
クール系アルビノヒロイン増えろフエロ……
TS勘違い闇深系コメディ増えろフエロ……


 ━━ポケットモンスター。縮めて、ポケモン。

 

 そう呼ばれる彼らの誕生は1996年。『赤』そして『緑』そう題された二本のゲームから始まる。

 それからのポケモンは……最早語る必要もあるまい。無名の創作物だった彼らが、今や世界中で知られているのだから。それこそ知らぬ人など居ない、そう言っても問題無い程度には。

 

 斯く言う私もポケモンを知っている人間だ。

 赤、緑、黄、青、金、銀、クリスタル。残念ながらこれらは機会に恵まれなかった為に知識だけ。

 しかし、ルビー、サファイア、エメラルド、ファイアレッド、リーフグリーン、ダイヤモンド、パール、プラチナ、ハートゴールド、ソウルシルバー。これは私の歴史。私と共にあったポケモンだ。

 その後ブラック、ホワイトが出たが……私の歴史はそこで終わった。飽きた訳ではない。だが私はブラック、ホワイトをプレイして、その先へと進む事は無かった。

 なので私のポケモン経歴はルビー、サファイアからブラック、ホワイトまでとなる。後付けの知識だけなら赤、緑から。

 

 ……先へ進まなかった理由? まぁ、言い訳させて貰えるなら幾らか有るさ。仕事がいよいよ忙しくなったとか、日々の生活に手一杯で遊ぶ暇がなかったとか、な。

 けど一番の理由は、たぶん、私が年寄りになったからだ。身体ではなく、心が。先へと進むポケモン達について行けなくなった。もう充分だ。引退だ。時代の進化に付いて行けない……そんな風に、()()()()()

 

 

 

 ━━あぁ、そうさ! ホントは付いて行きたかった! 私とポケモンは十年以上共に居たんだ、当たり前だろう!

 ……だが、そんな事は今更だ。こんな気持ちに気づいたのだって、()()()()()()()()した後だった。

 

 全くもって馬鹿馬鹿しい話だ。バカは死ななきゃ治らないというから、私はバカだったのだろう。あぁその通りだ。私はバカだった。

 何せ、一度死んで転生して、()()()()()()()()()に生まれてやっと気づくのだから。

 

 ━━ポケモンは1996年にゲームとして生まれた。その後を知る者からすればそれは当たり前の事だったが、当時は多くの不確定要素があったはずだ。もし売れなければ? 何らかの社会的な動きにかき消されたら? そもそも……開発者が作ろうと思わなければ?

 それらは充分にあった可能性、ifであり、そして、私の転生した世界の……歴史だった。

 

 

 最初に疑問を持ったのは子供の頃。転生した事を現実として受け止め、今世の世界がファンタジー世界などでは無く、前世と同じごく普通の世界だと決め付けようとしていた頃。元花札作りな会社が出しているゲームの中で、髭の配管工やピンクの宇宙人は居るのに黄色ネズミことピカチュウが居なかったのが最初の疑問。

 そしてその疑問がやけに気になり、まだブラウン管を使っていた家のパソコンで調べて…………絶望した。ポケモンが居ない。ポケモンだけが居ない。

 

 何がどうなればそうなるのか不明だ。だがポケモンだけが居ないのは間違いのない事実だった。

 それからの私は……端的にいって、グレた。具体的に言うなら引きこもった。元々転生後の生活には不満があったのだ。間もなく高校生だというのに背は伸びないし、親は居ないし、けど金は毎月入るし、諸々の書類も確りやっているらしいから文句は言えないし━━しかし何故か()。前世は男だったのに、何故か女。それもアルビノ美少女、あるいは不思議系美少女だ。そんな存在にTS……いやもう慣れたケド。しかし不満は不満だ。せっかく転生したのに()()()()()()()とか笑えない。

 

 閑話休題(細けぇこたぁいい)

 

 そんなこんなな理由で日本の主神様よろしく引きこもったアルビノ美少女な私だが……当時の記憶が飛び飛びだったりする辺り、どうやら私は自覚が欠片も無かっただけで、狂信的かつ熱狂的なポケモンファンだったらしい。それこそ、些細な掛け違いで自殺するレベルの。

 

 あぁ、当時はかなりヤバかった。何がヤバかったかって無意識でロープを……いや、止めよう。ロクな話じゃない。

 兎に角、私は生き残った。そして自身が熱狂的なポケモンファンだと自覚した私の思考は、気づけば斜め上へカッ飛んでいた。

 

 ……え? 何をしたか? ポケモンの絵を描いたんだよ。そしてそれをネットに上げたり、某笑顔溢れる動画サイトで絵描き風景を雑談しながら配信したりした。

 それのどこが斜め上かって? ━━いいか、そもそもこの世界にはポケモンが居ないんだ。それを突然描き出してネットに上げたんだぞ? しかも、私は新世界の神になる!! とか言いかねないテンションで。

 まぁ、痛い子扱いされるよね。でも声はプリティーだし、お手ては綺麗だし、晒して無いけどたぶん顔も美少女だと思われるよね。絵描きの才能があったのか絵も上手いからそこそこ人気が出るよね。ズルズル続けるよね。そしたらある程度固定のファンも付くよね。そうすると存在すらしなかったポケモン達も認知されるよね。……私のオリキャラとして。うん、そこは不満だった。ポケモンはポケモンで、私なんかのオリキャラではないのだから。

 

 でも、まぁ、満足していたのだ。そこそこの人数の人がどういう形であれ、ポケモンを知っている状況に。

 だから。まさか、このポケモンの居ない世界が()()()()()()()だなんて事に、気づく事は無かった。そのときは、まだ。

 




以下執筆へ至った経緯。

(´・ω・`)そういえば幾つかの作品、更新止まっちまったなぁ。他のお気に入りも基本更新が遅いしなぁ……
( ゜Д ゜)どうしたものか。特にポケモンの現代モノは少ないし……シカシヨミタイ
━━それから一ヶ月後━━
(# ゜Д゜)ああ分かったよ! 書いてやるよ! どうせ人気なんか出ねぇんだ。書けば良いんだろ!!
途中にどんな地獄が待っていようと俺に! お前らに! 俺が書いてやるよ!!

……はい、お察し下さい。
なお主人公がTSしたのは作者がヒロインを考えるのが面倒で、だったら主人公をヒロインにブッピガンすれば良いだろぉ!? と発狂した為。公式キャラは殆んどカップリングが済んでるしね。
なおオリキャラ多めもそれが理由の一つです。悪しからずご了承下さると幸いです。
後、作者はTS闇深勘違いが大好きです(迫真の愉悦)

それと、あらすじにも書きましたが……
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
OK?


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第一章 侵食は始まった 第1話 最初の異変

 ポケモン大好きTSアルビノ美少女である私の朝は基本的に早い。……嘘だ。基本的に遅い。ものすごく遅い。具体的に言うと昼過ぎだ。

 

「くぁ……ぁぁ。おはよー、ポチ」

 

 昼過ぎに起きて、一通りのルーチンをこなした私。そんな私は最後のルーチンをこなすべく、欠伸をしながら人の居ないリビングへと顔を出す。

 

「わふぅ……」

 

 人の居ないリビングで、たった一人の家族である黒毛の日本犬が呆れた様子で声を返してくれる。

 五、六年前に拾ったときは小さな子犬だったのに、今や立派に凛々しく成長した彼女は今日も優しい。モフモフしてもうっとおしそうにするだけで吠えもしないのだから。仕方のない奴だと思われているのだろう。あー、癒されるぅー……よし。

 

「行こうか。ポチ」

 

 存分にモフモフした私はリードを手に取り、ポチを日課の散歩へと誘った。彼女は無言で、しかし尻尾をブンブンと振りながら立ち上がる。その姿は「別に私は行かなくていいんだがな。仕方なくだ」と言っている様に思える。ホント、凛々しくて可愛い……私の家族だ。

 

「うーんと、よし。出発」

「わふ」

 

 ポチに緩くリードを付け、並んで家を出る。

 最初に浴びるのは寝起きの私を焼く熱い日差し。実にウザイ。心底ウザイ。SLBブチコミたい。そんな転生特典無いケド。……あぁ、これだから外には出たくないのだ。転生した私のプリティーボディは日差しに弱いのだし。

 私は日焼けなんて論外だとフードを深くかぶり、リード片手に足を進める。フードをかぶっても中が蒸れないのは季節のおかげか、今は少し肌寒い三月だからな。基本的に温度の高めな九州地方であるここも、そこは変わらない。

 

「ポチは、元気だね……」

「わふ」

 

 焼く様な日焼しが上からカカト落としを、アスファルトからの照り返しが下からアッパーカットを、それぞれ放たれたそれらにノックアウト寸前の私は羨ましげにポチに語りかける。何時もの事だ。なので彼女の仕方のない奴めと言わんばかりの呆れた返しもいつも通り。

 テクテクと、全く持っていつも通りな散歩道を進む。寂れ気味の住宅街を抜け、土手沿いを歩き、小さな公園を横切り、お互いのルーチンをこなし、田んぼが見えたところで引き返し、草木が生い茂る小山を通り過ぎ、寂れ気味の住宅街へと戻ってくる。散歩コースもパターン化したうちの一つで大した変化もなく、全くいつも通りだった。

 ここまでは。

 

「おぉーい。シロちゃんや! ちょっと来てくれんか!?」

 

 唐突に私、シロを呼び掛ける年老いた老人の声。ふと声のした方を見てみると、近所の老夫婦が私を手招きしていた。何事だろうか?

 

「はぁーい! 今行きます! ……行こうか、ポチ」

「わふぅ」

 

 やれやれといった様子のポチを連れ、久々に大声を出した喉を撫でながら足早に老夫婦へと歩み寄る。

 古く、そして大きい日本家屋に住む老夫婦は、その家よりも広い庭先で私を待っていた。お互いに挨拶を交わし、ふとお爺さんの手元を見れば見慣れぬ青いナニカが手の内に。それが理由か?

 

「ごめんねぇ、シロちゃん。散歩の途中に爺さんが呼び止めてしまって」

「いえ、大丈夫です。……その青いのが私を呼んだ理由ですか?」

「うむ。婆さんがシロちゃんならと言うんでついな。ほれ、これじゃよ」

 

 気楽な調子でお爺さんから手渡された青いナニカ。手に取って見るとそれはナニカの果実の様だった。直径は4cm程。軽くつついた感じだとかなり硬い。見た目はミカンに似ているが、どうしようもなく青かった。……私の知らない果実だ。頭の奥の方がチリチリするが、こんな果実は聞いた事が無い。新種だろうか?

 ポチが下から興味深けに果実を見ているのを横目に私が思案する事数秒。老夫婦はこの果実について唐突に語り出した。

 

「その果実は今日朝起きたらそこの、ミカンの木に成ってあったたんじゃ。のう婆さん」

「えぇ。この木のミカンは少し前に全部取ってしまったからいったい何なのだろうと、お爺さんと首を傾げていたんですよ」

「うむ。それも五個も成っておったからな。一つはカラスに食われて、というよりアレはつつくだけつついて捨てたな。まぁ兎に角グシャグシャじゃ。一つはワシが食ったが……」

「え、食べたんですか? コレを?」

「うむ。不味かった。辛かったり、渋かったり、苦かったり、酸っぱかったりする、変な味じゃった」

「切るのも大変でしたよ。ものすごく固かったから……昨日研いでなかったら切れなかったでしょうね」

 

 不味かったって……こんな色だし、その味はもう毒では? それにこの家の包丁はそうとうな業物だったはずだ。以前自慢された覚えがある。それで大変? 少なくとも食べる物ではないのでは?

 薄い胸に込み上げる思いを苦笑いで封殺し、改めて青い果実を見る。━━やはり知らない。だが頭の奥の方がチリチリする。……知っているのか? こんな訳の分からない果実を?

 

「……お爺さん。この果実はこの一個だけですか?」

「いや、それと合わせて手付かずのが三つじゃ。なんじゃ、欲しいのか?」

「はい。家に持って帰って調べようと思います」

「そうか。婆さん、持って来ておやり」

「私は知りませんよ? お爺さんが持って行ったではありませんか」

「そうじゃったかの? ううむ、どこに置いたのか……」

 

 お爺さんが縁側から日本家屋の中へと力無く入って行くのを見送りつつ、私はお婆さんが「あの人はこの頃ボケが酷いのよ」などと言うのに相づちを打っていた。ポチは相変わらず私の手の内にある青い果実を眺めている。不思議そうに。

 

「あったあった。玄関に置きっぱなしじゃった。ほれ、これが残りの青いのじゃ」

「有り難うございます。……では、私はこれで。何か分かったら連絡しますね」

「あら、急がなくても良いのよ?」

「いえ、私も気になるので。では」

 

 私は青い果実をジップパーカーのポケットに突っ込み、名残惜しそうな老夫婦に一礼し、フードをより深くかぶってポチを連れて家へと戻る。頭の奥の方からチリチリとこちらを刺激する何かに急かされる様にして。

 

「疲れた……」

 

 家に帰った私はリビングの机にお爺さんから受け取った青い果実を転がし、ジップパーカーを脱いで手短な椅子に引っ掻ける。これでシャツとズボンという何時ものラフな部屋着に戻れた。パーカーを元の場所に戻すのは後でいいだろう。

 そうして相変わらず果実を見つめるポチからリードを取り外し、自由にしておく。彼女は賢いからこの状態でも家の中、あるいは庭に出るだけで、敷地の外から出たりしないのだ。それに大きく頑丈な柵もしてあるし。そう思ってリードを外したのだが、どういう訳か彼女はその場から動かない。いつもなら庭に出るか日当たりの良いところに行くのに……余程この果実が気になっている様だ。

 

「ポチも気になるの?」

「わふ」

「そっか、なら少し待っててね」

 

 私は一度自室まで足を動かし、そこからスマホを取ってリビングへと戻る。ポチは、お行儀良く待っていてくれた。彼女の為にもサクッと検索をかけてみるが……

 

「ヒットしない。調べ方が悪いのかな……ん?」

 

 某事典サイトにはそれらしい果実は載っていなかった。が、いつもならスルーするピックアップニュースに視線が釣られる。タイトルは『日本各地で起こる果実の異変』だ。

 

「これは、ふむ……なるほど」

 

 そこに書かれていたのは老夫婦の家で聞いた様な話が日本各地で起こっているという話。載せられた記事と写真を見るに、ミカンだけでなくイチゴや梨、サクランボや桃、その他多数の果実が似たような状況らしい。形や色がおかしかったり、桃を除いて酷い味になっているようだ。専門家曰く━━うん、言い訳がましい言い回しだが、要するに分からないらしい。この事例が最初に確認されたのは……関東地方との事。

 

「…………」

 

 チリチリと頭の奥が煩い。緑に変色した、苦いイチゴの写真を睨み付ける。

 私は知っているのか? この果実達を。

 いや、知らないはずだ。私はただの転生者。何の転生特典も持たない、ただの転生者だ。それが専門家もお手上げな果実を知っている? 酷い幻想だ。

 

「わふぅ?」

「何でもないよ。……ご飯にしよっか」

 

 不思議そうなポチの声を切欠に、私は幻想と頭の奥の煩いチリチリを脳内から蹴り出した。夢を見るなと。

 その変わりとばかりにポチのご飯を出し、自分のご飯もまた適当に済ませる。

 

 それから時間が過ぎていき、二度目の散歩も終わらせ、夜が来て、今日は庭の犬小屋で寝るらしいポチを見送り━━私は自室で最近新型に買い換えたパソコンを前に少しだけ緊張していた。パソコンの置かれた机の端には青い果実が三つ。頭のチリチリは煩いが……まぁ、話題作りだ。

 

「さて、始めますか」

 

 私はマウスを操作して、ポチりと。配信開始のボタンを押した。

 




 作者は絵も書かなければ配信をした事もないので……多少のガバや描写不足はスルーの方向で。はい。
 え? ならなんで描写したかって? そら今後の展開上、これが一番ご都合主義臭く無いからよ(当社比)


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第2話 配信、疑念の『きのみ』

「はい、皆さんこんばんは。シロです。今日は予定通り雑談しつつお絵描きしていきます」

 

 ポチも居なくなって一人ぼっちの部屋に私の声が響く。しかし虚しくはない。今の私は一人ではないからだ。

 

『わこつ』『待ってた』『初見』『ワイも初見』『ワシ古参』

『今日もシロちゃんの声がかわいい……』『お手てもな』『髪の毛勢のワイ、今は低見の見物』

 

「はい、わこつ有り難うございます。初見さんはゆっくり見ていって下さいね。可愛いですか? 有り難うございます」

 

 パソコンの液晶画面を流れていく無数のコメントの幾つかに反応を返し、返答していく。可愛い関連が多いが……まぁ、今世のボディはプリティーやからな! 仕方ない、仕方ない。礼は言っておいてやるZE。

 何気なくチラリと確認すれば既に千人近くが見ている様だ。あぁ、私は一人ではない。この数字に気圧されていた頃を懐かしむ暇もある。大丈夫だ。やっていこう。

 

『うっ、ふぅ……』『ふぅ……』

『お前ら何してんだ』『何ってそりゃナニだろ』

『貴様ら何をしとるか!』『ヤベーぞ、犬兵だ!』

 

 大丈夫だ! やっていこう! 自浄作用も働いてるしな!

 

「今日の一枚目は……そうですね。一通りのポケモンは二回づつは描きましたし、初心に帰るつもりでポッポを描きましょうか」

 

『ポッポか』『ポッポ?』『あぁ、あの鳥ね』

『誰か説明してクレメンス』『鳥だ』『鳥だな』『ちげーよ小鳥だ』『お前ら説明してやれよ……鳥だな』『草』

 

「あはは……皆さん中々酷いですね。まぁ鳥ですけど、ポッポはポッポですよ?」

 

『せやな』『セヤナー』『ポッポはポッポやからな』『鳩ポッポー』『ポッポー』

『誰か、説明を……』『分かったから待て』

 

 ポッポに対する視聴者さんの認識が酷かったが……まぁ鳥で間違いないのは事実だ。元ネタは鳩と、そして複数の小鳥を混ぜたモノだと言われていたからな。鳥としか言いようがないだろう。鳩にしてはイケメン過ぎるし。

 ささっと手を動かし、愛用の鉛筆で紙にポッポを描いていく。このとき絵に集中し過ぎると何故か微妙に下手くなるので、特に意識はせずに描き進める。

 

『はー、相変わらず上手いなぁ』『あれだよな。参考にならない上手さ』『シロちゃんのそれは才能やからね』

 

「あはは……有り難うございます。自分では良く分からないんですけどね」

 

 お礼を言いつつも、中々に痛い指摘だと噛み締める。何せ概ね事実だ。この身体に宿っている絵心というか、画力といのか、そういう才能が凄まじいからこそ、私はポケモンを描ける。他の人と共有できるのだ。

 

『お手て綺麗』『お手てちっちゃい』『ちっちゃい真っ白お手て……』『何を言うか、チラチラ映るロングの白髪こそ……うっ』

『う、ふぅ……』『ふぅ……』『ふぅ……』『貴様ら何をしとるか!』

『ヤベーぞ犬兵だ!』『ほーら骨だぞ取ってこーい!』『わうーん!』

 

 共有できるのだ! てか自浄作用要員買収されんな! 頑張れよ! もうちょっと頑張ってみろって! ネバーギブアップ!

 

『説明、を……』『おい初見が死にかけてるぞ』『あー、初見にはちとキツいわな』『シロちゃんが描くのは完全なオリキャラやからなぁ』

 

 オリキャラではないのだが……言っても仕方あるまい。それより初見が死にかけてるのを何とかしないと。

 

「ポッポはことりポケモンですね。体長三十センチほどの、小さな鳥型のポケモンです」

 

『せやな』『三十センチ……小鳥? 小さい?』『小鳥やぞ。ポケモン基準ではな』『家よりデカイのとか普通に居るからな』『アイエエエ!? ポケモンヤバいな』『ポケモンは忍者も居るぞ』『アイエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!?』

 

 頭の中にポッポの基礎プロフィールを思い出しながら、手はポッポを描き続ける。もうすぐ折り返しだ。

 しかし忍者のポケモンか……どの子を指して言ってるんだろうな。うん、もう一度忍者ポケモン特集をやるのも良いかも知れない。あのときのコメントの伸びは異常で面白かったし。

 まぁ、今はポッポだ。

 

『シロちゃんに先越されたか』『有能ニキ無能』『速報。有能ニキ無能だった!』『(´・ω・`)』

 

「タイプはひこう、ノーマル。穏やかな性格で戦いは好みません。生息数は多めで、あちこちで見かけるポケモンですね。……あぁ、説明しようとしてくれたニキ、有り難うございます」

 

『(`・ω・´)』『復活早過ぎィ!』

『俺もシロちゃんにお礼言われたい』『ワカル。俺もお兄ちゃん呼びされたい』『拡大解釈してて草』

 

 変態め。気持ちは分かるが、変態め。

 てかその手のバイノーラル作ってなかったか? ……業が深いな、なんだかんだで協力した私も。

 

『ちなみにこのポッポ、進化すると更にデカくなる』『進化とかあるんか』『初見はまとめウェキ見て来い。作り込み凄いから』『オリキャラとは思えない作り込みだよな。今何匹だっけ?』『ざっと650匹ぐらいじゃね? マジヤベェ』『!?』

 

 だからオリキャラではないのだが……っと、今抜けられては困る。

 

「あ、まとめウェキ見るのは後にして下さいね。ポッポも、もうすぐラフが描き終わりますから」

 

『せやな』『セヤナー』

『はー上手いな』『俺の絵とは大違いだぜ……』『涙拭けよ』

『懐かしのポッポ』『どこがポッポなんだよ……イケメンじゃねぇか!』『名前詐欺だよな』『俺ポッポ好きなんだよ。何となくだけど』『イケメンな鳩だもんな』『イケ鳩』『ポッポ』『ポッポー』『ポッポ?』『ポッポ!』『ポッポォ!』

 

 まだ色付けはしてないが、確かに名前詐欺なイケメンだ。しかもコイツの登場場所はスタート地点の直ぐだというのだから驚き。

 そして何やら謎の儀式が行われてるが……スルーしとこう。

 

「さて、ポッポ完成です。色付けは……どうしましょうか?」

 

『有り』『あり』『無しで雑談』『初見おるし蟻』『むしろ初見がいるからこそ雑談では?』『賛成。雑談で』『シロちゃんに話題があるなら雑談でエエんちゃう? 無ければ色付けで』

 

 完成したポッポに色付けするかどうかを聞いてみたが、だいたい半々のようだ。まぁポッポは三度目だしそんなものか。しかし話題……あぁ、そういえばコイツがあったな。

 

「では雑談にしましょう。実はご近所さんからこんなのを預かってるんです。……見えますか? 青い果実です」

 

 私はポッポを描いた紙を脇に退けて、カメラに映るように老夫婦から貰った青い果実を机に転がす。……頭の奥がチリチリする。やっぱり知っているのだろうか。

 

『青!?』『青いな』『見た目はミカンっぽいが……』『青い』『うん、青いな』

『てかこれアレじゃね? ニュースでやってた奴』『あぁ、あれか』『たしか日本の果実がおかしいってやつだよな?』『あぁ、ついにシロちゃんの近くにも生ったのか……』

 

 コメントを読む限り知っている感じの人は居なさそうだ。ならばこの頭の煩さは……そう思ったとき、一つのコメントが目に飛び込む。

 

『オレンの実か』

 

 オレンの実? ━━そうか、オレン! ポケモンの! あの『きのみ』か! それなら老夫婦が言っていた妙な味と固さも納得……いや待て、なぜオレンの実が現実に存在する?

 

『オレンの実?』『オレンジじゃなくて?』『オレンの実だよ。俺も食って確認したから間違いない』『!?』『食ったのか!?』『オイオイオイ、氏ぬはアイツ』『氏なねぇよ。クソ不味いけど』『不味いのか……』『甘さ以外全ての味がした』『なんぞソレ』『不味そう』『てか吐きそう』

 

 呆然とする私の目の前でツラツラとコメントが流れていく。どうやら老夫婦以外にも食べた人がいるらしい。……どうやら、私だけがおかしいという訳ではない様だ。

 

『なぁ、オレンの実ってなに?』『知らんのか?』『ポケモン世界のアイテムだぞ。シロちゃんオリジナル設定だ。詳しくはウェキな』『ほーん、そんなんもあるんか。後で見てくるわ』

 

「いえ、オリジナル設定では……無いんですが」

 

 呆然としていた私は目の前に流れたオリジナル設定云々につい反応してしまう。そりゃそうだろう。この世界ではオリジナルでも、本当は違う。違うのだ。このオレンの実は、ポケモン世界のソレなのだから。

 

『久々にシロちゃんのオリジナル否定発言聞いたわ』『どう足掻いてもシロちゃん発祥なんだよなぁ』『はいはいポケモンは実在する実在する』『やめないか! ポケモンは実在するんだよ!』『それは洒落にならんのでNG』『ギャラドスとかヤバいし、流石にね?』『正直スマンかった』『過保護犬兵敗北』

 

「…………」

 

 そうだ。この世界ではポケモンは私のオリキャラに過ぎず、オレンの実だって同様だ。……なら、なぜここにオレンの実があるんだ? なぜポケモン世界のきのみが、ここに? なぜ、なぜ、なぜ━━?

 

『おーい、シロちゃん?』『おこ? おこなの?』『てか手震えてない?』『大丈夫か!? シロちゃん!』『犬兵落ちち着け』『お前が落ち着け』

『おい、血色。流石にヤバくないか?』『え、そんなショックだった?』『謝れ! 今すぐシロ様に謝れ!』『本音出てて草』『いや、こんな事になるとは』『謝罪早よ』

 

 不味い。コメントの流れが不穏だ。落ち着け、落ち着くんだ。先ずは落ち着け。そしてコメントの流れを修正。その後……情報収集だ。

 

「ぁ、あー、すみません。少し驚いてしまって。固まってしまいました。私は大丈夫です」

 

『いや、大丈夫って感じじゃなくね?』『声震えてる』『シロ様! 大丈夫ですか!?』『ドM犬兵落ち着け。本音出てるから』『その大丈夫は大丈夫じゃない大丈夫だろ』

 

「いえ、大丈夫ですよ。本当に驚いただけですから。……それで、皆さんこのオレンの実について何か知りませんか?」

 

『俺は知らね』『俺もニュースで見ただけ』『食ったニキはどう?』『せや、食ったニキなら食レポもいけるやろ!』『クソ不味い。ウェキ通り。体力回復は良く分からんけど、何か元気になった気がする』『俺も知らないな』『体力回復?』『知らないのはウェキ見とけ。たぶん知っといた方がいい』

『てかシロちゃんが一番良く知ってるんじゃ?』『せやな』

 

 ふむ、どうやら目新しい情報を持っている人は居ないらしい。それどころか私が一番良く知ってるときた。……確かに、これがオレンの実ならば、この世界の誰よりも私が一番良く知ってる、か。

 ━━どうする? よく分からないが、どうやらこれはオレンの実らしいし……いや、そもそもオレンの実なのか? 見た目や味は間違いなさそうだったが、他の要素はどうなんだ? ホントにポケモンのオレンの実だといえるのか? ……検証が必要か。

 

「そう、ですね……」

 

 チラリ、と。残りの配信時間を確認。まだ半分ほど余っている。当たり前か。しかし早いところ検証したい。これが本当にオレンの実なのか。そうでないのか。もしオレンの実なら━━いや、流石に今からそれは視聴者さんに悪いか。……よし。

 

「この青い果実が、オレンの実なのか検証したいので配信終了後に例の鳥で……いえ、掲示板で話合いましょう。暇な人が居ましたら、一緒にお願いできますか?」

 

『任せろ!』『やったぜ』『一緒、お願い、うっ、ふぅ……』『おいさっきの奴、強制参加な。働け』『犬兵コワイ』『流石にこのご時世に強制は……』『エエで。暇やったし、やりたい。やらせて下さい』『罪悪感感じて草。あ、僕もやります。はい』『結構人数集まりそうやな』『なら今ある掲示板使ったら? 何かあったろ』

 

 気が急く。落ち着け、落ち着け。まだこれがオレンの実と決まった訳じゃないんだ。だから焦るな。先ずは検証だ。

 

『きのみ検証板だな。後でここのコメにURLとタイトル書いとくわ。好きな方法で来ると良いぞ』『りょ』『てかそれ元いた人迷惑しない? 大丈夫?』『元いた奴もシロ民と犬兵だけだから問題ない』『ok。なら安心だな』

『シロちゃんこれでいい?』『大丈夫? 気分悪い感じ?』『やっぱりショックだったのでは……』

 

「ぁ。いえ、大丈夫ですよ。URLとタイトルのコメントよろしくお願いしますね。…………それでは、残りの時間は、ポッポに色を塗っていきましょうか」

 

 私はオレンの実を脇に避け、ポッポを描いた紙を引き寄せて色鉛筆で色を塗っていく。簡単なはずのソレは何度も失敗しかけ、新しく到着した視聴者さんに『今日は無口だね』とコメントされてしまったが……しかし、なんとかショックの多かった配信を乗り切る事が出来た。

 だが休んでいる暇はない。掲示板へ行こう。そして検証し、ハッキリさせよう。これがオレンの実なのかどうかを。そしてオレンの実なのなら、私はきっと━━

 



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掲示板 シロ民達の雑談

【犬ども】お絵描き配信者シロちゃんについて語るスレ part153【集まれ】

 

101:名無しの犬

しかしシロちゃんも結構有名になってきたよな。スレの消費も早くなったし。

 

102:名無しの犬

>>101

せやな。ほんの一年前はそうでもなかったと思うんだけどなぁ……何かあったけ?

 

105:名無しの犬

>>102

あれだろ。どっかの芸能人だかアイドルがポケモンにハマってますとか発言して、ポケモンとは何かって何も知らない奴がまとめウェキ経由で流れて来た奴。

あと最近は絵で流れて来てるのもいるらしい。

 

107:名無しの犬

>>105

サンクス。そういえばそうだったわ。総理だったか、大臣だったかの孫が言い始めたやつだな。シロ民こと犬を量産してやったの思い出した。

けど、絵? 何だっけ?

 

108:名無しの犬

>>107

ほら、シロちゃん絵が上手いだろ? 特に風景画とかプロみたいじゃん。それをみたやつが他の作品であるポケモンとか、シロちゃん自身に興味が湧いて流れて来るんだよ。

 

109:名無しの犬

>>108

シロちゃんが鳥で万で売れたとか震えてたやつだな。

冗談半分でネットオークションで出してたとかいう。

 

112:名無しの犬

>>108

>>109

ほーん。そんなんがあったのね。サンクス。

 

113:名無しの犬

シロちゃん風景画とかの写実絵は上手いんだよなぁ。写実絵は。

しかし時代は現代アートだ。

 

115:名無しの犬

ぶっちゃけ写真で事足りるしなぁ。ポケモン絡ませずに想像で書くとスッゴく下手くなるらしいし。

 

117:名無しの犬

>>113

>>115

やめないか! ポケモン絡ませれば一枚で万行くんだから良いだろ!?

 

119:名無しの犬

>>117

それ、絵の価値が分からないやつが買っていった説があってだな……

 

120:名無しの犬

>>119

やめやめろ!

いや、マジでやめて差し上げろ。絵が上手いのは間違いないんだし。

 

122:名無しの犬

>>120

ほんそれ。アレだけ上手ければ充分凄いだろ。ポケモンの設定も凄いしさ。あの若さならまだ上もいけるだろうし。

 

124:名無しの犬

今シロちゃん何歳だっけ? 声と手からして、中校一年生くらい? 色々大丈夫なん?

 

125:名無しの犬

>>124

と、思うじゃん? 最低でも高校生やぞ。中学校の卒業式を思い出話として話してた事あるし。

つか場合によっては大学生ないし、社会人やぞ。

 

127:名無しの犬

>>125

嘘やろ? だとしたら声若すぎるし、手とか小さすぎひん? あれ子供の手じゃん。身長も相当低いだろ。

 

129:名無しの犬

>>127

嘘でも何でも無いんだよなぁ。雑談の感じ纏めると成人しててもおかしくないし。まとめ動画見てくるとイイゾ。

身長は……察してやれ。

 

130:名無しの犬

シロちゃん成長期にマトモにご飯食べれなかった説あるからな。低身長も仕方なし。

 

131:名無しの犬

>>129

>>130

マジか。てか、それネグレクトとかなんじゃ……

 

132:名無しの犬

>>130

>>131

やめないか! 暗い話を憶測でするのは!

 

134:名無しの犬

いうてシロちゃんナチュラルに闇吐くし……

 

135:名無しの犬

生まれてから一度も親の顔を見てないとか、会話の流れ次第で普通に言っちゃうもんなぁ。サラッと。

 

137:名無しの犬

>>135

しかもそれが当たり前だと思ってるところがあるから、わざとらしさとか欠片もないもんな。サラッと闇吐いて、サラッと流して、気づいた俺らが傷つく。

指摘とかしたらあぁそういえばそうでしたね、とか思い出した様にさ……アレから俺、パソコンの前でポテチ食いにくくなった。

 

139:名無しの犬

>>137

良かったじゃん。痩せれるぞ。

まぁシロちゃんは欠片も良くないんだがな!

 

141:名無しの犬

まだシロちゃんが子供だと思われていた頃。

コメ この時間、親御さんとか大丈夫なん?

シロちゃん 親はいませんから

コメ 外出中なのか

シロちゃん

(不思議そうな声で)いえ、そもそもいませんよ?

 

思えばこれが最初の闇だった。

 

143:名無しの犬

>>141

いや、最初の闇は「ポチは私の大切な家族です」だろ。文章的にはごく普通なのに、後々シロちゃんの状況を知ってから考えると……ヤバない?

 

144:名無しの犬

>>143

いや、流石に邪推し過ぎだろ。

 

145:名無しの犬

>>143

ワカル。あのときの流れならもっと別の名前が上がるべきなのに、ペットの名前が上がるのはヤバい。まぁ、ポチネキ頼りになるのは嫌というほど知ってるけど。

 

146:名無しの犬

>>145

流れ?

 

148:名無しの犬

>>146

アーカイブなりまとめなり見てこい。

そしてお前もシロ闇に染まるんだよぉ!

 

150:名無しの犬

シロ闇とかいう矛盾に見えるだけの現実。除草されるわ。

……思えばシロってあだ名だよな? 本名じゃないよな? ペットの名前みたいなんだけど。

 

152:名無しの犬

>>150

本名らしいぞ。調べたアホ(今は豚箱の中)がいた。

ペットの名前みたいなのは……まぁ、親がそういう奴だったて事だろ。

 

155:名無しの犬

一時期は身体売ってるとかいう噂もあったしなぁ。

シロちゃん家にまで行ったアホもいたしなぁ……

 

158:名無しの犬

なぁ、それシロちゃん大丈夫なん? ガチで。

特に名前バレと住所バレは洒落にならんやろ?

 

160:名無しの犬

>>158

ネグレクトされてたのは昔の話だし。今は自分でお金稼いで税金も入れてるみたいやぞ。

名前バレと住所バレは……まぁ、ポチネキが強いし。シロちゃん自身もあれで武道スキル持ちやから。多少はね?

 

162:名無しの犬

>>160

撃退したって事か? あの小さい手で?

 

164:名無しの犬

>>162

なんや、知らんのか? ポチネキとシロちゃんで少なくとも変態の二個分隊は潰したぞ。

シロちゃんの家族ことペットのポチネキは軍用犬として訓練された経験を持つ上に、番犬として名高い四国犬、闘犬として名高い土佐闘犬の血とかを引いとるから、何の訓練もされてない変態やチンピラなら余裕。なんなら武装した相手も制圧出来る。更にイケメン。

シロちゃんも護身術を習ってるから弱くはない。まぁ、握力はショボいから決定力はないけど……スルスル逃げてポチネキ頼るか、蹴り上げるかすればトロイ変態ぐらいなら余裕やし。後可愛い。

 

165:名無しの犬

>>164

アイエエエ……ナニソレ凄い。

てか護身術は分からんでもないけど、この日本で軍用犬? 警察犬じゃなくて?

 

167:名無しの犬

>>165

軍用犬。なんでも近所の元陸軍少佐のじーさんが仕込んだとか。昔なんかあったのか、軍用犬として仕込むのはだいぶ渋ったらしいけど……まぁ、シロちゃんあんな感じやから。結局ほだされてやったらしい。護身術もその人から教わったのが殆んどだって自慢してた。

ちなみにこのじーさんも一人で変態の半個分隊潰した強者ぞ。噂ではSATUMA民族らしい。

 

168:名無しの犬

>>167

ま た S A T U M A か

でも納得だわ。……いや、変態ども凸り過ぎだろとは思うけど。

 

170:名無しの犬

>>168

少なくとも一個小隊規模は凸って豚箱に叩き込まれたな。おかげで警察の見回りが厳重になったらしいぞ。やったな。

なおMVPはポチネキ。シロ民が何かと犬に関連付けられるのはこの辺の逸話からやで。

 

173:名無しの犬

ポチネキ最強伝説。

シロちゃんに寄って来た変態を撃退するのは当たり前、制圧して警察に引き渡した事も。

玄関前に陣取る番犬の鑑。

ポチネキにとって変態撃退は闘犬試合の練習。

固まっていた変態達をまとめて突進でひき倒すのも余裕。

一回の体当たりで変態が3人倒れる。

突進→吹っ飛んだ先で追撃の噛み付きは基本。

変態を一睨みしただけで失神させる。

突進も噛み付きも使わずに、吠えるだけで撃退させた事も。

夜間の警備も余裕、一晩中一睡もせずに警備していた事もある。

病院に運ばれたらポチネキがいた。

木の上に避難していても余裕でジャンピング噛み付き。

突進キャッチしようとしたデブと、それを受け止めようとした変態、ピザ、ガリ、筋肉、全てまとめて吹き飛ばした。

変態の愚痴に流暢な人語で反論しながら噛み付き。

噛み付きモーションをしただけで5人くらい気絶した。

吠え声の風圧で隣の町まで吹っ飛ばされることは有名。

変態が絶滅に瀕した切っ掛けはポチネキを怒らせたから。

家の水飲み場から駅に到着した変態を遠吠えで撃退した。

スタンガンの電撃を喰らっても平然としていた。

自分の先生である元陸軍少佐を連れて、近くに引っ越した変態の自宅まで行くというファンサービス。

これがだいたい事実という現実。

 

174:名無しの犬

>>173

こんなワンコが居れば変態なんざ怖くないよなぁ?

不意討ちしようにも本人自身体格の割に全然弱くないし、ポチネキずっと側に居るし。更に四国犬の血が強いのか忠実かつイケメンや。

うちにも欲しいぜ……

 

175:名無しの犬

>>174

お前には勿体ない。ポチネキはシロちゃんと共にいてこそ輝くのだ。

つまりポチ×シロこそ志向。

 

176:名無しの犬

>>175

シロ×ポチだろ常考。

 

177:名無しの犬

>>176

あ゛? やんのか?

 

178:名無しの犬

>>177

上等だぜ。来いよ異教徒! 戯言なんて捨ててかかってこい!

 

179:名無しの犬

>>177

>>178

喧嘩なら他所でな。

……あ、俺はポチ×シロ派です。

 

180:名無しの犬

>>179

貴様ぁー!

 

……………………

…………

……

 

 

「相変わらず賑やかだなぁ……」

 

検証板を探す中で時折覗いている板を見つけて軽くとはいえ、ついつい読んでしまったが、相変わらずだった。

スレまだ伸びてるし、読もうと思えばまだ読めるが……今は検証が先だろう。

 

「さて、と」

 

心のざわめきも、急く様な衝動もだいぶ収まっている。

だが、気になる気持ちは全く変わらない。もしオレンの実が実在するのなら、それは()()()()()()()()()()()()を示しているのだから。

 

「あった、これだ」

 

私は検証板を見つけて、その板の中に飛び込んでいく。

どうかこの検証で良い結果が出ます様にと、祈りながら。

 




以下今回の要点と伏線マトメ
シロちゃんのシンパは政界にも居る
絵の才能(現代では役立たず)
収入はある
年齢不詳系ロリ、シロちゃん
無自覚に闇を吐く主人公(ロリボイス)
ポチネキは強い(あからさまな伏線)
S A T U M A
異種間百合カップリング


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第3話 検証、オレンの実

 LEDの明かりが照らす部屋の中、私はパソコンにかじりつく様に椅子に座っていた。時刻は既に日を跨いでおり、今の私はきっとしかめっ面をしているに違いない。

 

『やっぱり新しい情報は無いですか?』

 

 愛用のキーボードを叩き、掲示板にそう書き込む。そして書き込んでから気づくのは、その文章がもう二度目だと言うこと。

 

『無いな』『無い』『ニュースサイト巡ったけど、どこも一緒だった』『やっぱりシロちゃんが一番詳しいで』『ポケモンの設定をまとめてるサイトが一番詳しく書いてる状況やからな』

 

 そう、きのみ検証板と名付けられたソコでの会議は堂々巡りになりつつあったのだ。新しい情報を求める私と、私に何かを期待するシロ民達で。

 私はこの件を徹底的に追究するつもりだが、このままでは追究し終わるより先にシロ民達が飽きてしまうだろう。彼らはあくまで善意の協力者、飽きてしまうのは仕方ないし、無理強いも出来ないのだから。……仕方ない。情報が足りないが、踏み込もう。

 

「はぁ、ふぅ……」

 

『今集まっている情報で、検証を始めます』

 

 深く、しかし短く深呼吸して、検証開始を宣言する。

 

『よっしゃ』『待ってました』『シロ様、我らに知恵を!』『おい犬兵、身内が暴走しとるぞ』『あれはドM犬兵だ。身内ではない』『見捨てられてて草』『シロ様ぁー!』

 

 スルスルと流れるスレを追いながら、私は何を話したものかと悩む。

 今集まっている情報は殆んどが知っている物ばかりで、検証も何もなくオレンの実だと言ってくるのだ。検証する事がない。しかし問題は私がそれを信じれない事。ポケモンが現実に現れるなんて、それこそ幻想だからだ。

 ならば検証の焦点は……私が信じるしかない情報を手に入れる事、これだろう。

 

『先ずはオレンの実からいきましょう。手元にある人はどれくらい居ますか?』

『持ってない』『俺も持ってない』『手元には無いな。近所で見かけたが』『冷蔵庫にあるわ。取ってくる』『俺はこたつの上に置いてたな。違和感しかなかった。ちょっと取ってくる』『手元に幾つかあるで。少しかじったけど……本当にクソ不味いんだな、コレ』『なぜ食ったし』

 

 私自身手元にあるオレンの実を引き寄せながらコメを読む。持ってない人も多いが……持っている人もまた多い様だ。案外手に入れ易いのか? ……聞いてみるか。

 

『皆さんどうやってオレンの実(仮)を手に入れたんですか? 私は配信中言ったように、ミカンの木を植えてる近所の人から譲って貰ったのですが……』

 

『取って来た。オレンの実は庭になってた。小さめの柑橘系の木で、ミカンの木ではなかったと記憶している』『取って来たで。俺はシロちゃんに同じく。近所の人から貰った』『食うんじゃなかったよ……あぁ、俺は公園になってたのを拝借した。……いや、シロちゃんの言ってた奴じゃね? って気になったら、つい』『つい、じゃないだろ……』『今は反省してる。だがシロちゃんの力になれるなら後悔は無い』『ワカル』『ワカルマーン』『犬兵、仕事しろ』『いや、逮捕状無いから……』『無能犬兵』『わうーん……』

 

 ふむ。どうやら比較的手に入れ易い様だ。全国的に発生しているせいもあるのだろうが……オレンの実がなる条件は緩いのか? 確かにゲームでは果実とは思えないスピードで成長するし、大した世話も必要無いが……

 

「案外、植えたら勝手に育ったりするかな」

 

 言ってから思う。ポケモンのオレンの実ならあり得ると。

 だが今は夜。やるにしても他の要素を試してからにすべきだろう。となると……

 

『なら、回復効果を試しましょうか。比較的手に入れ易いようですし、気軽にやりましょう』

 

『ok』『りょ』『OK!』

『でも回復効果ってもどうするんだ?』『設定では10回復、だっけ?』『10か、ショボいな』『ショボい言うな』『回復……やっぱ怪我を治す感じか?』

 

『私もよく分からないのですが、怪我を治すと仮定しましょう。オレンの実を持っている人で怪我をしている人は……居ますか?』

 

『してない』『俺もしてない』『擦り傷一つ無い』『軽く怪我してるがオレンの実が無い』『無能ばかりじゃねぇか!』『オマエモナー』

 

 まぁ、そうそう都合良くはあるまい。ならば。

 

『じゃあ先ず私が怪我をして食べてみますね』

 

 そう書いてどうやって怪我をしたものかと思案する。

 家の中でお手軽に出来る怪我……やはり道具を使うのがいいだろう。刃物とか。そうすると台所まで行って包丁を……ん?

 

『いやいやいや』『オイオイオイ』『待って、お願いだから待って』『女の子が怪我はアカンやろ』『シロ闇』『おい、誰か早く怪我して食え!』『お前がやれ、手元に刃物がない』『除草』

 

 何やらコメントが騒がしい。別にハラキリする訳でもないのだが……

 

『よーし、ここはリスカのプロである俺がリスカしてやるよ! カッターもあるしな!』『オレンの実は?』『ある。行くぜ!』『逝け。早よしろ』『シロ様は見ているだけでいいので怪我はしないで下さい! むしろ怪我をするなら私に! 私を!』『そうだ……いや、本来なら見るのも駄目だろ。後ドM犬兵は今すぐ黙れ。教育に悪い』『シロ民そのものが教育に良くないと思うのですがそれは』

 

 どうやらいつの間にか話が進み、善意の協力者が既にリスカに及んでいるようだ。怪我はしないでくれという声もあるし、ここは様子見かな。

 

『おい、どうだ?』『リスカの実況は要らんから、結果だけを言え』『おーい、返事は?』『……まさか切りすぎて逝ったのか』『オイオイオイ』『誰か、蘇生魔法』

『やったか?』『やったか!?』『やったか?』『バ○ス!』『やったかっ!?』『ファミキチ下さい』『やったか』『コイツ直接脳内に……』『おい、誰だ滅びの呪文唱えた奴』『ちくわ大明神』『おい誰だ今の』

『まだー?』『おい、ガチで逝ったのか?』『そんなことよりおうどんたべたい』『人選ミスか……』『カップラーメンでも食ってろ』『太るからヤダ』

 

「何かどんどん脇に流れてる……」

 

 まぁネットだしこんなものだろうとは思うが……しかし遅い。切り過ぎたというより、迷っているのか? やはり包丁を取って来るべきか。

 私はそう結論付けて席を立つ。部屋に置いてある姿見に映った自分の姿━━中学一年生で止まった身長と童顔。肩口を過ぎる伸ばしに伸ばした真っ白な白髪。いつもは死んでるが、今日はなぜか輝いている紅い瞳。眠そうな目元とゆったりとしたネルのパジャマ━━を横目に、足を踏み出そうとして一応とばかりにコメントを再度確認すると……あった。

 

『オレンの実ヤバイ。マジ、ヤバイ』

 

 そのコメントに心がざわつく。だってその物言いではまるで……いや、確認だ。確認が先だ。落ち着け。

 私は急く気持ちを押さえて再度席に着き、微かに震える手でキーボードを叩く。

 

『どうしたんですか? 何が、どう、ヤバイのか、落ち着いて書き込んで下さい』

 

『シロちゃん食い気味?』『そりゃ食い気味にもなるだろ。……おら、早よ書き込め』『食い気味シロちゃん可愛い。食い気味シロ民コワイ』『コワイ!』『いいから、早よ』

『オレンの実を一口食ったら、リスカした傷が秒速でふさがった。三度繰り返したが全く同じ。リスカの傷ぐらいなら秒速で治る。深めに切っても治った。ヤバイ、ナニコレ。ファンタジー?』

 

「━━っ!」

 

 間違いない。オレンの実だ。食べただけで傷を治すなんて、オレンの実の効果そのものだ。

 あぁ、あぁ……なんという事か。ポケモンが、ポケモンが、()()()()()()()()()()()

 

『え? マジ?』『冗談だろ?』『マジだ。お前らも確かめて見ろ。マジファンタジーだから』『ちょっと俺も試して見る』『なぁ、深夜テンションの冗談だろ?』『予感が当たったか……明日近所を巡らないとな』『ねぇ、マジなの?』『マジだって言ってるだろ? 嘘だと思うんなら試せば?』『オイオイオイ……え、マジ?』『ヤベェ、冗談かと思ったらマジだ。クソ不味いけど怪我が治った。ナニコレ』

 

「…………はぁ、すぅ━━はぁ……よし」

 

 コメント欄は大荒れだ。信じる者、信じない者、半信半疑な者……信じない者が一番少数派のようだが、直ぐにでも鞍替えする事になるのだろう。

 あぁ、断定しようこれは。

 

『間違いなく、オレンの実のようですね』

 

『え? シロちゃん信じるん?』『そりゃシロちゃんは一番信じたいだろうし……てかさ、今気づいたけど他の『きのみ』もこんななんじゃないか?』『他のきのみ……チーゴとか、ナナシか』『そういやチーゴぽいのが庭のイチゴに成ってたわ。明日収穫しとこ』『信じてる奴大杉ワロタ』『信じれないシロ民は間抜け面晒さない様にな』『お前は信じるのかよw』『薄々こうだと思ってたしなぁ』『だよな。嘘にしては規模がデカ過ぎるし、一致する箇所が多すぎる。シロちゃんがやった……訳じゃないだろうけど。預言者的な?』『マジか……』

 

 コメント欄はどんどん信じる者が増えている様だ。預言者云々は……今は脇に置いておこう。チーゴやナナシも恐らくポケモンのソレ。とはいえ検証は必要だし、手に入れておくべきか。……これでやれる事は全部か? 他に何か出来る事は━━そうだ。栽培。

 

『今日の検証はここまでにしましょう。取り敢えずオレンの実は本物、という事で。そして明日は本物だと思われるオレンで栽培を試みようと思います。興味のある方は各自で栽培に挑戦してくれますか? その後このスレで報告し合う……というのはどうでしょう?』

 

『ok』『任せろ!』『りょ』『賛成』『オレンって栽培できた? 時間かからない?』『確かだいたい半日で育つし、一個から二、三個生るはず。詳しくはウェキな』『水やりとか肥料は?』『あるに越した事はないが無くても育つはず。ウェキ見ろ』『ヤベェなオレンの実』『よし、今から植えて来る。庭で良いよな?』『良いんじゃね? 割りとどこでも育つっぽいし』『家に庭無いんだけど……』『近所の公園の端っこにでも植えてろ』『それだ!』『そして不審者として職務質問されるんですね分かります』

 

『では、宜しくお願いしますね。私は落ちます』

 

『乙』『お疲れ様』『おやすみ』『任せとけ! バリバリー』『やめて!』『シロちゃんおやすみー』

 

「ふぅ……」

 

 スレから出てパソコンの電源を落とした私は、深めに息を吐いて肩の力を抜く。

 だが、心はちっとも落ち着かない。急く様な気持ちは強くなった。……当たり前か。

 

「これが、本物……か」

 

 オレンを手に眺めながら、そうポツリと呟く。

 この世界にポケモンは居なかった。だが、今、こうしてオレンの実は現れた。ならば……今は居ないポケモン達も、やがて現れるのでは? そんな突飛な考えは、頭にこびりついて離れない。それどころか確信だけが強くなる。彼らが、ポケモン達が、近づいていると。

 

「考え過ぎ、かな。…………寝よう」

 

 果たして考え過ぎなのかどうなのか。それもやがて分かるだろう。そう思いを蹴り飛ばし、オレンの実を机の上に戻して布団に潜り込む。

 私が寝付けたのは、それからかなりの時間が過ぎた後だった。

 

 



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第4話 蠢くワガママな悪意

「しっかしシロちゃんって何者だろうなぁ?」

 

 丑三つ時を過ぎようかという暗い闇夜の中、真新しいLED照明が照らす公園の端でゴソゴソと蠢く影からそんな声がする。

 蠢く影の正体はまだ若いといっていい男だ。ラフな格好をした怪しげな男はぶつぶつと何やら呟きながら、手に持った小さなスコップで土を弄くっている。空いているはずのもう片方の手には青い果実……オレンの実が握られていた。

 

「黒幕? あの小ささで? 無いな。なら預言者か? いやいや、威厳なさ過ぎだろ」

 

 男はまるで鼻歌でも歌うかの様にぶつぶつと呟きながら土をいじくり、深さ5センチ程の穴を掘り上げる。

 

「んーと? で、どうするんだっけ?」

 

 そこまで掘った男はスコップを捨て置き、ポケットからスマホを取り出して何やら調べ始めた。

 それは暫く続いたが、男は唐突にスマホの電源を落としてポケットになおし、地に置いたスコップを手に取る。満面の笑みで。

 

「案外楽だなぁ。きのみ。んーと、これは少し深すぎるか」

 

 何が嬉しいのか、男は掘った穴を少しずつ埋め戻す。その有り様は警察に職務質問されてもおかしくはなかったが、しかし、ここが真新しいマンションに囲まれた公園とはいえ今は深夜。幸か不幸か、男の行動を問い質すものはいなかった。

 

「んで、きのみで土が膨らむ感じで埋めるんだな」

 

 いや、恐らく、問い質すものがいなかったのはお互いに取って最善だったのだろう。

 もし男になぜそんな事をしているのかと問えば、延々と『シロちゃん』について語られただろうから。それこそ、狂信者の様に。

 

「ふんふんふーん」

 

 もし仮に、男に『シロちゃん』の何が良いのか、一言だけ述べよと問えば……男は迷いに迷った挙げ句にこういうだろう。「夢を見させてくれる存在」と。男にとってシロちゃんは女神といっても良い、そんな存在だった。

 男とシロちゃんの出会いはもう三年以上も前。ネットの海を泳いでいるときに聞いた事の無い『ポケモン』という単語を偶然見かけ、ひかれて興味本位で生放送に飛び込んだのが始まり。それから先は……ただ、魅せられた。彼女の絵、彼女の声、彼女の語り。全てが素晴らしい。故に男はその全てに魅せられ、しかしその上で━━それ以外の要素で虜になった。彼女が夢見る、夢に魅せられたのだ。

 

「んー、こんなものか? いや、もう少し土を退けとくか」

 

 別に彼女が夢を語った訳ではない。

 だが、彼女の描いている絵から、絵を語る声から、『夢』が伝わってきた。ポケモンに対する深く、純粋で、しかしねじ曲がって淀んで、汚れたキレイな夢。男はそれにこそ魅せられ、そしてそれからは同じ夢を見た。ヒビ割れた宝石の様な、叶わない夢を。その時間は苦く、痛く、辛く、だからこそ、甘美で素晴らしい時間だった。

 男はいう。『シロちゃん』は夢を見させてくれる女神なのだと。

 

「……うん。完璧。よし、他のところにも植えるか」

 

 だから、だろうか? 女神が夢見た叶わない夢が、現実になったと聞いて、いてもたってもいられなかったのは。こんな夜更けに外に出て、やったこともない土弄りをする程度には、男は『シロちゃん』に尽くす事が出来た。

 

「ふんふんふーん」

 

 そんな男の有り様の一端を知るネットの仲間達は、男の事をこう呼ぶ。ドM犬兵、その鑑だと。

 まぁ、ネットは匿名環境故に、ドM犬兵も、その鑑も複数居るのだが……しかし、男が『シロちゃん』にかなり尽くせるのは事実だ。死ねと言われて死ねる程ではないが、戦地に飛び込めと言われたら喜んで飛び込む程度には尽くせると、男は自負している。

 

「……ん?」

 

 あぁ、控えめにいって男は変態だった。いつストーカーになってもおかしくなかった。頭がおかしかった。しかし、男には矜持があった。変態なりの矜持が。

 故に、男はスマホにかかってきた電話の相手を見て舌打ちする。忌々しいと。そのまま男の指は着信拒否を選択しようと動くが、すんでのところで心変わりしたのか、通話を許可する。

 

「なんだ? くだらない事言ったら殺すぞ」

 

 いきなり放たれる物騒な、いやに実感のこもった台詞。並の人間なら口元が引きつるだろう代物だったが、男の電話相手は胆が丈夫なのか慣れているのか、すぐに話し始めたらしい。男の表情がどんどんと険しくなっていく。

 そのまま一分が経ち、二分経ち。

 それから更に数分。電話相手が一方的に延々と話し続けているのか、男が一度も言葉を発さないまま時間が過ぎる。男の表情が険しさを増して鬼のそれになった頃、スマホが下ろされて電源を切られた。電話が終わったらしい。

 

「ゴミが……忌々しい。なぜあんな奴が刑務所から出てこれるんだ」

 

 男の電話相手は一年程前に刑務所にぶちこまれ、なぜかすぐに出てきた変態。一時期流れた『シロちゃんは体を売っている』という根も葉もない忌々しく愚かな噂を信じ、女神の個人情報を違法な手で集め、その身を汚そうとしたクズ。

 勿論クズの計画は失敗した。男が聞くにポチネキの体当たりをくらってそのまま制圧、呆気なく警察に引き渡されたそうだ。

 しかし、クズは諦めていない。刑務所にぶちこまれる前はハッキングが特技だったが、出てきた後は怪しげな催眠術を習得し、最近ではシロちゃんを襲う仲間を募り、刑務所から出てきた同類を雇い、更には汚い金で腕の立つ実働戦力を確保したらしいクズ。あぁ、微塵も諦めていない。現にこうして二年程前には既に頭のおかしかった男に声をかけてきていた。何度も。

 男は思う。あのとき、二年程前のシロ民オフ会と題された小さな集まりのときに、酔ったノリで電話番号など交換せずに……殺しておけば、と。

 

「言っても、仕方ねぇか」

 

 過去には戻れない。そう瞬時に割りきった男はきのみを植える作業に戻る。頭の中でクズの犯行開始時期を計算しつつ。

 

「…………」

 

 二年程前に会ったときからクズは臆病で慎重な質だった。一年程前に犯行へと及んだときにも、それはそこまで変わっていない。男は考える。それなりの準備はしたはずだと。そして思う。その準備全て、ポチネキが潰したのだと。

 そこまで思考して、男はクズの心境を考えた。吐き気がした。だが呑み込む。シロちゃんの為だと。

 

「……足りない。そう思ったはず。それもかなり。だから戦力を集めている」

 

 男は吐き気の中でそう結論付けた。問題は『かなり』が具体的にどれくらいなのかだ。今集めた戦力で充分……だとは思っていない。だからNoとは言っていない男を勧誘し続けている。それが情報収集の為とは知らず。……いや、知っている? なら今集めた情報はブラフ? いや、その可能性は低い。奴は慎重だが器用ではないし、戦術すら組めない奴なのだから。男はきのみを植えながらそう思考し、計算に入る。今まで集めた情報で犯行開始時期を割り出せるはずだと。

 きのみを植えていく。一つ、二つ、三つ。最後の一つを植えた男は公園のベンチに座って更に考える。間違える訳にはいかない、と。そして。

 

「まだ、先だ。少なくとも一ヶ月以上先。四月以降。だが六月よりは前だ」

 

 口に出して言ってから男は確信する。間違いないと。

 クズは現在戦力調達に行き詰まり、しかし欲しい戦力にはまるで届いておらず、しかしもう何ヵ月も我慢は出来ない。そういう状況で、そういう心理状態だと。

 

「なら、どうする?」

 

 残りの一ヶ月で何か手を打つ必要がある。男はそう考えた。

 確かに現在のシロちゃんの守りはかなり硬い。クズを潰したポチネキは勿論、ポチネキを鍛えたSATUMA人のじーさんも居れば、近所の人達もシロちゃんを守る為か不審者にはかなり注意を払っている。それに警察だって定期的に巡回しているのだ。並の人間に突破できる布陣ではない。

 だが今のクズには戦力がある。予定通り事が進めば……恐らく一個歩兵小隊の最大規模、50人近い戦力がシロちゃん一人に向けられるのだ。いかに犬離れしたポチネキと、人間離れしたSATUMA人でもシロちゃんを守りきれない。警察だって常に居る訳でもなく、居たとしても数人がせいぜいで、一個小隊の軍団を止めれるとは思えない。そして、あぁ、間違いなくシロちゃんはクズの手に落ち、汚される。……男が、何もしなければ。

 

「……警察に言う。駄目だ。動くとは思えない。仮に動いたとしても巡回を増やすぐらいが関の山だ」

 

 男は頭に浮かんだ考えを口にし、即刻切り捨てる。期待するのは危険だと。馬鹿をいうな、こっちは忙しいんだ……実にありそうな話だ。

 仮に話が上手く転びに転んで常駐の人間が出たとしよう。で? それは何人だ? 50人を止めれる数か? いや、ないだろう。それはあり得ない。出ても十人以下だ。勿論、その数人が拳銃を効率的に使用すれば話は別だが……これもまたあり得ない。発砲そのものすら行わないのがオチだ。

 

「…………ならこっちも人を、そう、シロ民達を集めて……駄目か」

 

 警察が駄目なら個人的な繋がりを。そう思った男はこの件に一番真摯になるであろうシロ民を頼る事を考えるが、早々に諦める。

 男は悟ったのだ。シロ民の半数以上を占める犬と呼ばれるエンジョイ勢には期待できない。奴らはノリが良いだけで、ここぞというときに逃げ出しかねないと。

 

「パスタ野郎どもめ……」

 

 男は犬達を腰抜けめと罵倒しつつ思考を続ける。

 そして思うのは自分と同じくドM犬兵と呼ばれるガチ勢は期待できるだろうという事。実際に会ったのは片手で足りる程度の人数だったが、少なくとも彼らは腰抜けではない。ならば期待しても問題ないだろうと。しかし。

 

「……彼らにも生活がある、か」

 

 男は頭のおかしさが災いし、定職には就いていないものの、それでもニートという訳ではない。それは他のドM犬兵にもいえるだろうし、中には定職に就いている者、外せない用事がある者もいるだろう。四月から五月の終わりまで、丸々一ヶ月もの間拘束するのは無理だ。そこまで男は思考して、深くため息を吐く。

 

「…………」

 

 手詰まりだった。クズが戦力調達に行き詰まっているのと同じ様に、いや、それ以上に男の手札は少なかったのだ。

 

「━━いや、まだだ。まだ諦める訳にはいかない。……そうだ。期間が一ヶ月というのがマズイんだ。実際の犯行日時は一日だけ。その一日を突き止められれば……!」

 

 男にはスコップ片手に足早に公園を後にする。

 クズが実際に動く一日。それを特定できればシロ民から有志の協力者を募る事も、警察を動かす事も容易になり、それどころか居場所の分からないクズにトドメをさす事も出来るだろうと。

 男は頭の中に日本地図を広げ、自分の居る関東地方から、シロちゃんとクズが潜伏しているだろう九州地方まで視線を動かす。

 

「やれる。やってみせる━━!」

 

 男の意識は遠く西、九州地方に向けられる。

 そこにいるだろう姫を守り、クズを潰す。男にはその道筋が見えた様な気がした。

 



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第5話 きのみ、ニュースにて語られる?

 きのみ検証掲示板での検証と雑談から一夜開けた昼。私は珍しく昼前に目を覚まし、ご飯も食べずに外に出ていた。

 理由は勿論、オレンの実を植える為だ。

 長袖のジップパーカーと長ズボンという、ファッション性よりも日差しを遮る事に重きを置いた衣服で外に出た私のポケットと手の中にはオレンの実が握られ、それは今や半ば以上土に埋まっている。

 

「ワフゥン?」

「あ、ポチ。おはよう」

「わふぅ」

 

 せっせせっせときのみを植える私が珍しかったのか、それとも昨日に引き続いてオレンの実が気になるのか、いつの間にか「何をしてるんだ?」と言いたげなポチが私の近くまで来ていた。

 お互いに挨拶を交わしたあとは特に何も言わず、何もせず。私はきのみを植え、ポチはそれを見守る。なんだか穏やかな時間だった。

 

「楽しみだね。ポチ」

「わふぅ?」

 

 きのみを全て埋め終えた私はポチにそういった後、古びたジョウロできのみに水をやり。テキトーな鼻歌を歌いながら、ポチを連れて家の中に戻る。あれがゲーム通りのオレンの実なら次の水やりは三時間後だなと思いながら。

 

「~♪」

 

 家に戻った私は暫く鼻歌を続行しつつポチのご飯を用意した後、自分の分として食パンにジャムを付けてもそもそと食べ始める。

 そうしてチビチビと食べていて思うのは、これが男だった前世なら朝に食パン一枚なんて耐えられなかっただろうし、そもそも考慮すらしなかっただろうという事だ。まぁ、今世のマイボディたるこのロリボディは燃費が良いのか、それとも単純に胃が小さいのか、食パン一枚で事足りてしまうのだが。

 

 もそもそモヒモヒ、喉が乾けば牛乳を一飲み。そしてまたチビチビと食べ進め……ふと何気なくテレビのリモコンを手に取って、そのまま特に考える事もなくテレビの電源を入れる。

 殆んどノータイムで起動した画面に映るのは……どうやらニュース番組、それもワイドショーの様だ。普段は絶対見ない、馴染みなんて欠片もないタイプの番組だ。

 

『では次の話題にいきましょう。次の話題は、こちら! 『日本各地でおかしくなった果実』です! 今回はこの件について日本各地に取材を行い、また専門家の方にスタジオまでお越し頂きました。先ずはVTRをどうぞ!』

 

 ニュース番組と気づいてすぐにテレビを消そうとした私の腕が止まる。今アナウンサーが言った『日本各地でおかしくなった果実』とは、きのみの事だからだ。……なにか新しい情報があるかも知れない。そう思ってしまい、私はテレビを消す事が出来なくなっていた。

 私が食パン片手に固まっている間にも番組は進行し、農家の人へのインタビューが始まっている。背景とテロップを読むに、今はリンゴ農家の人の様だ。

 

『えぇ、いつの間にかですよ。前触れなんて全然ありませんでした。……見てくださいこの木を。コイツの収穫はまだまだ先なんですが、いつの間にかこのサクランボみたいな小さいのが生ってるんです。━━味? 酷いもんです。うちのは甘さとホンの少しの酸味が自慢だったのに、何故か辛いし、渋みまである。たまったもんじゃないですよ。━━不安? そりゃこんな訳が分からないのが出来て、次の収穫が出来るのかは不安ですね。こんな訳分からないじゃ売れないし、早いとこ原因を突き止めて貰わないと、ワシらみたいな農家は廃業ですよ』

 

 質問のテロップを挟みながらも、心底困った様子でそう語ってみせるリンゴ農家のジーさん。その有り様は同情を誘うに価するだろう。だが、私は同情どころでは無かった。リンゴ農家のジーさんが訳が分からないと吐き捨てたその小さな果実、それは私の目と記憶が確かならポケモンの『きのみ』それもヒメリの実だからだ。

 

 ━━ヒメリの実。きのみナンバーは6。ポケモンのPP、技の使用回数を回復させるという、他には類をみない効果を持つ特殊なきのみだ。その特殊性からピンチのときにお世話になる機会が時たまあり、比較的印象に残り易いきのみだろう。斯くいう私もヒメリの実は印象に残っているし、それだけにテレビに映ったそれは衝撃だった。確かにナンバー7のオレンの実が存在したのだからあってもおかしくはないが……それでも実際にあると見せられると少なくない驚きがある。

 

『あぁ、うちは見ての通り西洋すももを主に育ててるんだよ。立派なもんだろう? ここまでするには苦労したんだ』

 

 私がヒメリの実を思い出していると、その間に番組が進んだらしく、別の農家の人が映っていた。育てているのは……西洋すももらしい。

 

『ところが見てくれよこいつを。……あぁ、緑さ。葉っぱが丸まってる訳でも、収穫が早い訳でもない。これで育ちきってるんだよ。うちで育ててる西洋すももとは色からして違う。味も……正直微妙だ。慣れりゃ上手い食い方が分かるかも知れねぇが、少なくとも今は売り物にはなりそうにない。商売上がったりさ。……しかもコイツ、ざっと二日おきに実をつけやがる。こうなると木がまるごと使い物にならなくなってる事を考えなきゃならねぇから……ははっ、腹が痛くなってくるよ』

 

 乾いた笑いを漏らす農家のオッサンの手に握られた緑のきのみ実。あれは……ラムの実か? テレビ越しでは確信までいかないが、そう見える。

 きのみナンバー9。全ての状態異常を回復するという特殊な効果を持つラムの実。あのきのみまで現実に現れた、か。これは他のきのみの存在にも期待できるかも知れない。

 

『はい。ご覧頂きました通り、日本各地で果実の異常が発生しています。味は勿論、その他様々なものが変わり、生産者の方は困惑するしかないのが現状のようです。……ではスタジオにお越し頂きました専門家の皆さんの意見を伺ってみましょう』

 

 私がヒメリの実とラムの実に衝撃を受けて少しばかり思案しているうちに番組が進んだらしく、アナウンサーの男が総括に入っていた。そして次は専門家の話らしい。……うーん、何か新しい情報があるといいのだが。

 

『ここはやはり病気と考えるのが自然でしょう。毒性こそ確認されていませんが、味の変化や色の変化はまさに病気のそれです。とはいえこの件以外に前例は見当たりませんから、新手の病気……もっといえば新種のウイルスが絡んでいる可能性が高い。勿論、温暖化の可能性もあり得ますし、早急に詳しい調査が必要でしょう』

『なるほど。確かに病気と言われれば納得ですね』

『えぇ、その通りです。病気と考えるのが一番自然なのですよ』

 

 どこか自慢げにそう語る白衣のオッサン。その後もアナウンサーにそれらしい事を二、三言っているが……ボンクラだな。ポケモンのきのみを病気とは、知らないにしてもずいぶんな話だ。

 私はヤブの専門家の話を右から左へ聞き流しつつ、手に持った食パンをかじる作業に戻る。モヒモヒもそもそ、牛乳を一飲み。そこで一応とテレビに視線を戻せば、違う専門家が映っていた。白衣なのは同じだが、先程のオッサンよりも一回り以上は若そうだ。選手交代らしい。テロップによれば先進気鋭の若手学者との事。

 

『先ほどの方は病気と仰いましたが……いささか性急に過ぎるのではありませんか?』

『と、いいますと?』

『私としては病気ではなく、新種の可能性……つまりは突然変異の可能性を提示したい。あれらの果実が今まさに進化しよ『新種の可能性……ふっ、学が無いのは幸せだな』……黙って頂けますか? 今は私が発言しているのですが』

『はて、何をいっているのか。サッパリ分かりませんな。……あぁ、どうぞ。先を続けて下さい。……ふんっ、田舎者のガキが━━

『……言いたい事があるならハッキリ言ったらどうです?』

『私は何も言っていませんよ? その歳で耳が悪いとは……いやはや、大変ですねぇ』

『━━私よりも貴方の耳の方が悪いでしょう。…………あぁいえ、悪いのは耳ではなく頭ですか? 病院に行くにせよ付き添いが必要ですね。なんなら今すぐ救急車を呼んで上げますよ。番組が終わるまで、そこで寝転んで休んだらいかがです?』

『小僧っ! 貴様ぁ!』

『ちょっ!? 待って、止まれぇ!?』

 

 若い男が多少マシな事を言っていると思ったら、なぜか乱闘騒ぎ寸前になっていた。いいぞもっとやれ。あー牛乳美味しい。

 しかし慌ててアナウンサーが止めに入ったのが良かったのか、激昂したオッサンは席に座り、若いのと睨み合いに入る。仲が悪いのだろうか。なぜ番組スタッフは一緒に呼んだし。……っと、どうやら次の専門家に移るようだ。オッサン、若いのと来て、次はそこそこ年のいった老人だった。テロップにはどこぞの大学教授で、植物学の権威だと書いてある。

 

『えー、はい。先生はどう思われますか?』

『そうですな。まずあの映像だけではなんとも言えません。病気か、突然変異なのかすら判別できない。となるとサンプルが必要ですが、あの小さな果実のサンプルはまだ私の手元に届いてすらいませんし、憶測で物をいう事もできません。そんな事をしてしまえば植物学とは言えませんからね』

『えー……つまり、分からない、と?』

『いえ、サンプルがあり、充分な研究が出来れば何なのかハッキリするでしょう。ただ現状では何とも言えない、そういう事です』

 

「……それは要するに分からないという事では?」

 

 モヒモヒもそもそと食べていた食パンがついに無くなり、口が空いた私は思わずそう声を漏らす。

 あの手の人間は「分からない」と言う事をとことこん嫌い、必ず前置きを置くか、遠回しに表現するとは聞いていたが……どうやら事実だったようだ。実にめんどくさい。

 

『えー……はい。先生方、貴重なご意見ありがとうございました。では次のコーナーに参りましょう』

 

 そしてどうやらそれはアナウンサーや番組スタッフも同じだったのか、ロクな意見も出てないのに話をぶった切って次のコーナーへと進んでいった。

 次のコーナーは……きのみとは関係なさそうだ。そう判断してテレビの電源を落とす。新しい情報は特に無く、強いていえば専門家はまるで何も分かってないという事だけ。時間と電力の無駄だったな。

 

「……私が一番詳しい、か」

 

 ふと掲示板で言われた事を思い出した。別に自分が一番だと自惚れるつもりはないが……自覚が必要なのかも知れない。そして、このアドバンテージをどうするのかも。

 

「…………どうしようかなぁ」

「わふぅ?」

「ん、何でもないよ。ポチ」

 

 食べ終わって空になったお皿を私のところまで持って来て、まるで「何か悩み事か?」と言わんばかりのポチの頭を撫でつつ、お皿を受け取って思う。もっと大規模に事を運ぶべきかも知れない、と。

 

「くぅーん━━」

「もふもふー……」

 

 とはいえそれは今ではない。だったら先でどう動くにせよ、今私がポチをどれだけもふもふしようが構わないはずだ。わしゃわしゃもふもふ、パタパタ。

 あぁ、そうだ。

 

「んー……そうだね。ポチ、今日はお風呂入る? それとも先にお散歩?」

 

 身振り手振りを交えながらポチにそう伝えれば、私から一歩離れる。どうやらお散歩の気分らしい。

 それならばと私はリードを取って来て、ポチとの散歩に出向く準備を確りと整える。ポチとの散歩は一日二回、昼過ぎと夕方だ。夕方は日が沈んでいるからいいのだが、昼過ぎの日差しはなかなかキツイ。アルビノとしては強めの日光耐性があるらしいが、それでもウカツな格好で外に出れば文字通り肌が焼けるのは間違いなく、準備は怠れなかった。

 

「よし、準備OK。行こうか、ポチ」

「ワン!」

 

 リードを手に取って、フードを深くかぶり、ポチと並んで家を出た。

 どの散歩コースを通ろうか、いや老夫婦のところには一度寄って報告をしなければ。そんな事を思いつつ歩き始める。風はまだ冷たく、春の芽吹きはまだ先の事の様に思えた。

 



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掲示板 植物学者、現る

【シロ民】きのみ検証板part21【緊急招集】

 

202:名無しの犬

なぁ、昼頃あった生放送モドキのワイドショー見た奴いるか? きのみを特集しようとして失敗してた奴。

 

203:名無しの犬

>>202

ここにいるぞ。

てかさ、あの挑発されてた若手研究者。あれ新米のシロ民じゃなかったか? 深夜、シロちゃんが寝た後にここに来てた奴じゃね?

 

205:名無しの犬

>>203

おぉ、いたか。

で、やっぱりそう思う? 実は俺もそう思ったんだ。深夜に来てた奴、自分は研究者で今日昼のテレビに出るとかなんとか言ってたし。

 

206:名無しの犬

>>205

だな。まぁ、二人も既視感感じてるんなら当たりだろ。

そうなるとそろそろ顔を出すはずだが……

 

209:名無しの犬

>>206

呼んだ? AA略

 

210:名無しの犬

>>209

お前じゃねぇ座ってろ。AA略

……違うよね? コテハン付けてないし。

 

211:名無しの犬

>>210

ぶっちゃけ知らない。ノリでやった。済んだ事。

……で、シロちゃんの後に来た奴って誰? 俺シロちゃんが落ちたタイミングでROMるの止めて寝たから、ガチで知らないんだよ。

 

212:名無しの犬

ちくわ大明神

 

215:名無しの犬

誰だ今の

 

>>211

で、研究者を名乗るXの話か? あれは今から三十六万……いや17、8時間程前の事だ。俺にとってはつい昨日の出来事だが……お前に取ってはたぶん、次の瞬間の出来事だ。

……まぁ、真面目に、かつ簡単にまとめていうと。

シロちゃん寝る。約2時ちょっと前。

有志と暇人は残って雑談、検証、推測を重ねる。約3時過ぎ。

自らを植物学の研究者と名乗る奴がスレに初カキコ。

>>自分は植物を専門に研究しているのだが、オタク気質の……シロ民? の知人からここに果実の異変に一番詳しい人物がいると聞いた。それは確か?

てな。

その後質疑応答を重ねていくうちに俺らはソイツをマジモンの植物学者だと判断し、ソイツは俺らの希望もあってコテハンに植物学者と入れる。

そこから専門的な質疑応答を行い、植物学者はきのみに対し理解を深め、そして当時研究室に居たらしくマウスを使って検証もやってくれた。チーゴ、クラボ、モモンの三つをな。結果? シロちゃんの設定通りだよ。無意識で預言者してたのか……それともおとぎ話的な話なのか。閑話休題。

その中で

>>明日テレビに出る予定がある。流石にこの知識をテレビで言ったところで真実とは思って貰えないだろうから、先ずは新種として世間に伝えるつもりだ。

若手の足を引っ張るのが趣味のコネしかない無能な研究者モドキのクズと、権力や立場に固執する様になった老人と一緒と聞いてやる気を無くしていたが、意義を見いだせた。聡明なシロ民の者達に感謝する。

とカキコし

>>収録と一通りの用事を済ませて、自分の研究室に戻ったらまたここに顔を出す。進展があったら教えて欲しい。私も協力は惜しまない。

>>戻るのは遅くても18時頃だ。19時には必ずここに来る。

と約束して去っていった。という話だ。長文になったけど説明の為だからね。仕方ないね。

 

216:名無しの犬

>>215

サンクス。そんな事があったんだな。

……てか、今18時どころか19時過ぎやぞ。しかもそろそろ20時いくぞ? その植物学者は来たん? それともテレビでやらかしたからキャンセル?

 

218:名無しの犬

>>216

連絡とかある訳ないし、正直分からん。

待ってたのも殆んど引き上げちまった。テレビでのやらかしで説教くらって掲示板来れないんだろうって。

 

219:名無しの犬

>>218

りょ。まぁ、そんなもんか。

案外、呼んだら来るかもなw

 

220:名無しの犬

>>219

待たせたな(イケボ)てかw

 

225:植物学者

すまない。遅れてしまった。

まだ誰か残っているか?

 

227:名無しの犬

キタ―――(゜∀゜)―――― !!

 

228:名無しの犬

>>225

イエ゛ァァア! 死体だけです。

にしても、遅かったじゃないか……

 

230:植物学者

すまない。

挑発にのって醜態を晒してしまった事について上からネチネチと責められていてな……庇ってくれる者も外に出ていたり、研究を任せたりしたから、気づけばこの時間だったんだ。本当にすまない。

 

231:名無しの犬

>>230

(ただのネタやから)気にするな!

 

232:名無しの犬

>>230

エエんやで。

まぁ、人はかなり少ないけど。

 

234:植物学者

そうか、ネタか。よかった。どうにもネットの空気というのは分かりにくいな。いや、新鮮でいいのだが。

あぁ、有り難う。人が少ないのは、仕方ないだろうさ。

ところで、何か新しい情報はあるか?

 

235:名無しの犬

>>234

新しい情報は特に無いね。夕方前に何人かが栽培に成功したってカキコしたくらい?

暇だったから植物学者のテレビでの活躍を話してたぐらいだよ。

 

237:植物学者

いやいや、あるじゃないか! 新しい情報! 栽培に成功したなんて話は初耳だ! 恐らく日本初、いや、世界初だろう。やはり君達シロ民に頼ったのは間違い等ではなかった。詳しく教えてくれ。いや、教えて下さい。頼む。

それとテレビでの事は言わないでくれないか? いや、君達の努力を少なからず世間に知らしめようとして失敗したのは申し訳ないと思う。思うが、言わないでくれ。あれは一生の恥だ。

 

239:名無しの犬

>>237

え、マジ? 俺らそんな凄い事やってたん? 俺なんか近所のジーさんから貰ったオレンの実を、シロちゃんの設定通りに埋めただけやぞ。水やりすらしてないのに。

テレビでの事は言わないで下さいってかぁ!? ……まぁそれもセヤナ。仕方ないから忘れておいてやるよぉ!

 

240:名無しの犬

>>237

必死過ぎて草。ビールでも飲んでリラックスしな。

俺は朝イチゴからチーゴ収穫して、その流れでそのまま植えたから……そろそろ生ってるかな? 確認してくる。

テレビでの事は……まぁ、忘れておいてやるよ。誰にでも失敗はあるからな。

 

241:植物学者

オレンの実。確かミカンの木を中心に出現した青い果実だな。栽培に成功したのか? できる限り詳しく教えてくれ。

それとチーゴの実、イチゴになる緑の果実だな。成功しているしてないに限らず、後で状況を詳しく教えてくれ。

あぁ、テレビでの事は忘れておいてくれ。助かるよ。思い出したくもないんだ。

 

242:名無しの犬

>>240

行ってら。植物学者の面倒は俺がしっかり見といてやるよ。

>>241

で、オレンの実だな。栽培には成功したぞ。ってもシロちゃんの設定通りやったから、あぁやっぱりーみたいな感じだけど。

ちなみに俺は深夜三時頃に庭に植えて、今日の六時過ぎに収穫。水やりは一度もしてない。けど実は生ってた。一本に二個だったな。ウェキの情報通りだったよ。

ただ家に帰って来て庭を覗いたら、朝にはなかった……こう、ヒョロっとした背が低めの木が出来てたのはビビった。しかもきのみを全部もいで取ったら、凄まじい速度で枯れて灰になったし。あれ植物じゃなくて、きのみという名のナニカじゃないのか? どう思う? 植物学者さん。

 

243:植物学者

すまない。理解し難いのだが……それは本当か? いや、疑う訳ではないのだが……

 

244:名無しの犬

>>243

マジやぞ。まぁ、理解し難いのはしゃーない。俺も訳ワカメだし、シロちゃんの存在でワンクッション置いてなきゃこんな冷静にカキコ出来ん。特に木が枯れた瞬間の衝撃の凄まじさよ。

 

246:名無しの犬

チーゴ収穫してきた。三時間おきの水やりが功を奏したのか、三つや。

それとだいたい>>242と同じ状況だったわ。ミカンから取れたオレンが木になるのはいいとして、イチゴから取ったチーゴが木になるのはマジ訳ワカメだけど。あと灰になった瞬間の焦りよ。まぁ>>242の感じと合わせると、これがきのみのデフォなんだろうな。

 

247:名無しの犬

きのみを持っていないワイ、低見の見物。

……明日休みだし、少し遠出して探してみるか。

 

249:植物学者

そうか。昼間、まとめサイトを見たときからそんな気は……まぁ、少しはしていたが……あのサイト通りになったのか。

ハッキリした事はまだ言えない。言えないが……恐らく『きのみ』は既存の植物学で図る事の出来ない代物だろう。論文をどうまとめたものか、今から悩ましいよ。

取り敢えず私もきのみを育てて見ようと思う。あのサイト通りというのが前提ならば、栽培そのものは簡単なようだからね。今すぐに、幾つかを下の者に植えさせよう。詳しい結果は、もう少し待ってくれ。

 

251:名無しの犬

>>249

植物学者さんウェキ見てたのね。まぁだいたいあんな感じや。

俺らじゃ検証とかは出来ても専門的なところとか、詳しい数値とかはきつかったから、その辺は任せるで。

 

252:植物学者

任されよう。

しかし、きのみが世に出るより先に、これらの設定をネットに打ち出したシロという人物は何者なのだろうか? 預言者か何かなのか?

 

253:名無しの犬

>>252

ちゃんを付けろよデコすけ野郎。もしくは様だ。

 

254:植物学者

すまない。それもそうだな。それで、その、シロちゃんが預言者なのかについての検証はあったのか?

 

255:名無しの犬

>>254

ねぇよ! いや、少しはあったけどさ……シロ闇考えると、預言者とかよりもおとぎ話的な話……こう、哀れな少女を哀れんだ神様が云々的な話だろうってなった。そして以後ノータッチ、というよりアンタッチャブルで行く事になった。だってその手の話って地雷多いし……

 

257:植物学者

哀れな少女を哀れんだ神様……あぁ、なるほど。子供の頃にそういう話を読んだな。スケールがいささか大きいが、確かに酷似してなくもない。

しかし、そのシロちゃんは神様に哀れまれる様な人物なのか? 直接見た事がないのでな……どうにも想像できない。

 

259:名無しの犬

>>257

ご存知、ないのですか……!?

まぁ、知らんわな。普通ならROMって来いって場面だけど、植物学者にはバリバリ働いてもらわなアカンから。ほれ。

━━URL━━

これはシロ闇をまとめた闇の深い動画や。

━━URL━━

こっちは今は使われていないシロ闇コピペが貼られ、その後もシロ闇についての雑談が長かったスレや。コピペは334やから、その前後さえ読めばいいと思うで。

 

261:植物学者

有り難う。いつかはシロちゃん氏とも話しがしたいと思っていたところだ。事前知識を入れさせて貰うよ。

 

262:名無しの犬

>>259

これは有能。シロちゃんもニッコリやろ。

 

264:名無しの犬

>>262

ニッコリシロちゃん……見たい。見たくない?

 

265:名無しの犬

見たい。

 

266:名無しの犬

ワカル。見たい。

 

268:名無しの犬

ワカルマーン。見たいです。

 

271:名無しの犬

ナニソレ見たいな!

ところで、今北産業。

 

273:名無しの犬

>>271

カワイイよ

シロちゃんカワイイ

カワイイよ

 

274:名無しの犬

>>271

植物学者が来た。

きのみ栽培成功の話をしたが、やっぱりよく分からん。

シロちゃんをすこれ。←今ココ

 

275:名無しの犬

>>271

江戸の町

あぁ江戸の町

江戸の町

 

278:名無しの犬

>>274

サンクス。お礼に一曲歌って上げてもいいわよ?

 

280:名無しの犬

>>278

ん? もしかしてジーさんが元政治家で、自分はキャラがブレまくる女優兼アイドルネキか? 仕事どうした。

 

283:名無しの犬

>>280

休んでやった。というより長期休みくれなきゃストライキするってマネージャーに泣き付いた。だってシロちゃんの周りが面白そうなんだもん。きのみも現実になったし、私も混ざりたい!

 

285:名無しの犬

>>283

憐れマネージャー……つかそんなんじゃまた仕事無くなるぞ?

 

286:名無しの犬

>>285

仕事よりシロちゃんでしょ常考。それに仕事無くなったら私シロちゃんのとこに永久就職するから。お祖父ちゃんの遺産持ってね!

 

288:名無しの犬

>>286

お、おう……流石シロちゃんガチネキ勢はヤバイな。マジヤバイ。ドM犬兵とガチ勢の勢力を二分するだけある。

てかお祖父ちゃん憐れな……昔はお祖父ちゃんっ子で、こんなグイグイ行く子じゃなかったんだよなぁ……(元ファン並み感)

 

290:名無しの犬

>>288

ファンは大事だけど、シロちゃんカワイイし、仕方ないよね。

 

292:名無しの犬

何だろう。そこはかとない、寝取られ(百合風味)を見た気がする。

 

293:名無しの犬

>>292

どうしよう。こんなとき、好きな子どうしの百合カプが出来たと笑えばいいのか、両方とも寝取られたと泣けばいいのか分からないの。

 

295:名無しの犬

>>293

泣けよ。

 

296:名無しの犬

(´;ω;`)

 

298:名無しの犬

>>293

>>296

正直、キモE

 

299:名無しの犬

。・゜゜(ノД`)ウワーン!

 

300:名無しの犬

>>298

『おいうち』はヤメテ差し上げろw

 

……………………

…………

……

 

 

「へぇ、昼間の植物学者さんが来てたんだ……」

 

老夫婦への報告━━テレビでもよく分からないと言っていたし、急がないでいいと言われた━━と、二度のポチとの散歩や水やりを終わらせ、お風呂も済ませてポチにおやすみを言った後の夜の9時前。私は何気なしに掲示板を読んでいた。書き込みは引き続き続いており、好き勝手やる者、植物学者、アイドルネキの三つに別れて賑やかにやっているようだ。人もだんだん増えている様だし、そろそろ私も混ざるとしよう。

 

「どんな話を……じゃなかった。皆に大規模に事を進める事を相談しよう」

 

私は現状打破、人類の未来の為、そして転生してからずっと引きずっている事を解消すべく、大規模な計画を胸に秘めて掲示板へと飛び込む。

きっと上手くいく。そう願いながら。




要点まとめ
植物学者登場
テレビの事は忘れて忘れて
きのみの栽培成功!
だけどやっぱりきのみの事はよく分かんね
植物学者シロ闇へ……
政界への扉アイドルネキ登場
シロちゃん、動く


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第6話 関東へ向かうべきはいつか?

『皆さん、賑わっているみたいですね』

 

 先ずは普通に。そう考えてうちの決意が滲み出ない様に注意しつつ、ごく普通の書き込みを行う。反応は……直ぐだった。

 

『待ってた』『シロちゃんキター!』『おう植物学者、準備はいいか?』『シロちゃん今までのまとめいる?』『あぁシロちゃんだー! 久しぶりー!』『アイドルネキ落ち着け。マジで落ち着け』

 

 今までROM専してた人まで書き込みするものだから、一気に数十は進む。読み取れたのはごく少数だ。とはいえさかのぼっている暇はあるまい。一先ず読み取れたコメを幾つか拾おう。

 

『植物学者さん、ご協力有り難うございます。私に聞きたい事があったら何でも聞いて下さい。まとめの提案有り難うございます。けどちゃんと読んで来たので大丈夫ですよ。それとアイドルネキお久しぶりです。二週間くらいですかね?』

 

『ん? 今何でも答えるって』『植物学者限定でな。裏山しす』『ちゃんとROMシロちゃん。さすシロ』『さすシロ』『きゃー! シロちゃんに覚えて貰ってたー!』『アイドルネキそろそろ落ち着け……ていうか覚える云々は普通逆だからな……?』『黙れ犬』『(´;ω;`)』『憐れな……』

 

 いつもより人が多いのか、スレの消費がかなり早い。読み取るのも割りと一杯一杯だ。……これで動く提案なんて出来るのか? いや、人が多いのは必ずしも悪い事ではないんだ。大丈夫。やってみせる。

 ……けど、その前に。

 

『今日は皆さんに提案があるのですが、その前にきのみの栽培についてまとめ……というよりは総括しようと思います』

 

 私はそこまで書き込んだ後。ふぅ、と一息ついて、窓の方をチラリと見る。残念ながら角度がまるで足りず、庭で成長しているオレンの実は確認出来なかったが、それでも頭の整理には充分だった。

 

『先ず、オレンの実を始めとしたきのみはポケモンと同じ様に栽培、収穫が出来る。またその効果もおおよそ同一であり、変化は見られない。そして、現在確認されているきのみはナンバー10までである……これでいいでしょうか?』

 

 オレンの実の栽培と収穫。これは希望的観測が入っていたとはいえ、殆んど確信していた事だ。とはいえここで前提が崩れてはどうしようもないので一応確認を。効果も同じく。

 問題は現在出現しているきのみの種類だが……実はナンバー10のオボンの実だけ確認していない。ナンバー8のキーの実は今日の散歩中に姿だけとはいえ存在を確認できたのだが。

 

『シロちゃん食い気味?』『そりゃ食い気味にも……この台詞前にも言った気がする』『栽培、収穫、効果は植物学者と検証したから間違いない』『セヤナ』『植物学者有能』『なおテレビ』『なお煽り耐性』『やめやめろ!』『てかナンバー10って何だっけ?』『オボンやな。俺は見てない』『あの黄色のデコポンか。俺も見てないな。シロちゃんは見たのかな?』『俺も見てないなぁ』

 

「? 見てない人ばかり? そんなはずは……」

 

 栽培、収穫、効果はシロ民でも意見が一致しているようで反論はない。

 しかしオボンの実に関しては見てないという意見ばかりだった。ナンバー10以降が出てないのはまだ仕方ないにしても、オボンの実が出てこないのは不自然に思えるのだが……私が思っているよりも、まだまだポケモンは遠いのだろうか?

 

『あー、オボンならどっかで見たよ。どこだったかな……』

 

 いや、居た。これは、アイドルネキか。彼女は確か……いや、今は。

 

『アイドルネキ、どこで見たんですか?』

 

『えっとね、えっとね……ちょっと待ってね』『ほらアイドルネキ、シロちゃんが期待しとるぞ』『スッゴい期待してるよ(たぶん)』『頑張れ頑張れはーと』『シロちゃんからすれば長年の夢みたいなモンだろうしなぁ』

『思い出した! じいちゃんの部屋だ! ちょっと行ってくる!』

『いてら』『いてら』『いて……待て、アイドルネキのじいちゃんって確か……』『元総理やな。けっこう前だけど』『その部屋で見たって……大丈夫なん? 機密だったりしない?』『たとえ機密だろうと、問題なくね? アイドルネキは身内だし、ヤバイなら黙っとく様に言うだろ。つか、俺らが知ってるから機密もクソもない気が……』『つまりさすシロ』『さすシロ』

 

「そういえば、そうだった。アイドルネキは政界に繋がりがあったんだった」

 

 気安い感じなので失念していたが、彼女は中々に大物だった。現役の女優にしてアイドル。祖父はかつて総理の座まで上り詰めた御仁……始めるなら、彼女からになるか。

 いや、今はオボンの実だ。先ずはあのきのみが出現したかどうかを確かめる必要がある。もし現実に現れてないなら急ぐ必要は無く、しかし現れているのなら急ぐ必要があるのだ。恐らく、きのみの出現はナンバー10が一つの区切りだろうから。

 

『あった、あったよー。じいちゃんの机の上の書類に書いてあった。関東地方の、ザボン? を作ってる農家さんのところで確認されたらしいよ。まだ個数は少ないって書いてある。書類の日付は三日前だから、実際に現れたのは四、五日前じゃないかな?』

 

「っ! ……近づいてる。間違いなく」

 

 彼女が書き込んだ情報が確かならば、恐らく次に来るのはナンバー11か、あるいは『ポケモン』だ。……いや、ひょっとしたら同タイミングか? どちらにせよ、足音は近づいている。もうすぐそこまで。

 

『オボンまで現実に、か』『オレンの三倍の力を持つオボンが現れたのか』『色は赤色だな(違う)』

『なぁ、これそろそろ来るんじゃないのか?』『何がだよ』『ポケモンだよ! オボンより先のきのみってかなり特殊だし、それにこうなるとポケモン本体が出て来てもおかしくないだろ』『それは……』『確かに』『きのみが来たならポケモンも、か』『分からないでもないけど……ちょっと、なぁ?』『あぁ、流石に考え難い』『いや、逆にもう現れてるんじゃないのか?』『!?』『!?』『なん……だと……!?』

 

「━━ッ!」

 

 スレに書き込まれた可能性。それは私も考えていた可能性だ。……しかし、可能性は可能性でしかない。もし違ったら? もしきのみだけしか来なかったら? もし私の勘違いなら? 私は二度と立ち直れまい。

 ━━だが、もう足踏みなんてしてられない。彼らが来る。それはもう殆んど確信なのだ。そして最初にどこに現れるかも分かっている。ならば。ならば!

 

『関東に、私は関東に向かおうと思います。もしポケモンが現れるならば、最初の場所は、関東です』

 

『!?』『!?!?』『シロちゃんが、動く!?』『オイオイオイ、え? マジ?』『そうか、ポケモン最初の地方。カントー地方は、関東地方が元ネタだったな』『シロちゃんが、関東に……』『良かったな。関東民。合法的にシロちゃんに会えるぞ。会えるぞ……!(非関東民)』『憐れな……』『泣けよ』『。・゜゜(ノД`)』

 

『具体的にいつになるかは分かりません。しかし近日中に移動し、現地調査や……ポケモン知識の布教を開始したいと思っています。シロ民の皆さん、お願いがあります。暇な時だけでもいいです。協力して下さい』

 

 震える指がエンターキーを叩き、私の書き込みが上げられる。

 現地調査は最初にポケモンに会う為で、ポケモンの布教は……仲間を、増やしたいからだ。ポケモンバトルだって一人では出来ないのだし、私の持っているポケモン知識は多くの人が知っておいた方がいいだろうから。

 問題は、協力してくれる人がいるかどうか。私がこの決断を出来たのも、きのみの情報をスピーディーに集められたのも、ネットにいるシロ民あってこそ。もしシロ民の協力が得られないなら……その不安は直ぐに払拭された。

 

『よっしゃ、ワイに任せろ!』『これは協力せざるを得ないな!』『俺も参加するぞ!』『シロちゃんが関東に、行き違いにな……いや、その方が良いか。うん』『俺もやるかぁ』『シロ民の戦力を結集するのか……』『なんだろう。風が吹いている(以下略)』『大抵の事は出来そうだな』『祭りじゃ!』『シロちゃんが関東に……案内を……でも広報なら私が適任だし……むむむ』

 

「よかった……」

 

 どうやら最初のステップでつまずく事は回避された様だ。実際にどれ程の人数になるかは不明だが、最低限の人員は確保できたはず。後は……

 

『アイドルネキ。重ね重ねになるのですが、お願いがあります?』

 

『何々? なんでもいって!』

 

『その、アイドルネキのお爺さん……元総理にポケモンの事を話して貰いたいのです。そして本当にポケモンが現れたときの為に何か準備を、と』

 

 もしポケモンが現実に現れるなら、それは嬉しい事だ。これは間違いない。が、同時に問題も発生するだろう。例えばスピアーが現れれば被害はスズメバチのソレを遥かに上回るし、ギャラドスが出現すれば一都市が丸ごと灰になる可能性がある。そしてそれらを解決する為に機動隊や自衛隊が出動し、武器の使用を以てポケモンと戦闘に等なれば……確実に悲しい結末を生むだろう。そんな未来は早めに排除しておきたい。

 そうなると頼りたいのは権力のある政治家で、アイドルネキのお爺さんはその点では悪くなく、またアイドルネキを通じてとはいえ比較的頼り易い。もしアイドルネキのお爺さんが政界に働きかけ、前もってマニュアルなり法なりを準備していれば、悲しい結末は遠ざかっていくはずだから。

 

『駄目、でしょうか……?』

 

 私はポケモンが好きだ。そしてポケモンの良さを他の人にも知って貰いたいし、分かって貰いたい。その為には人とポケモンの争い、戦争は不要なのだ。ここでつまずく訳にはいかない。アイドルネキには頷いてもらわないとかなり困るが……果たして。

 

『んー……私はぜんぜんいいんだけど。じいちゃん私に政治の話したがらないからなぁ……難しいかも』

 

「っ……」

 

 駄目か。いや、そもそも虫が良すぎる話なのだ。駄目でもアイドルネキを責める訳にはいかない。それにまだ草の根活動は可能だ。そちらで何とかするしか……

 

『でも、頑張ってみる。たぶんここが踏ん張りどころだよね? やってみるよ。あ、そうだ! シロちゃんも一緒に説得しない?』

 

「……え?」

 

『お?』『流れ変わったな』『これはUC間違いない』『シロちゃんとアイドルネキのダブルおねだり……これには耐えられまい』『勝利確定』『勝ったな。ステーキ食って田んぼの様子見て風呂行ってくる』

 

 わ、私が、元総理に……じ、直談判? た、確かに悪い手ではないかも知れないがしかし私はロクに外に出た事もないし人と話すのも近所のじーさんばーさん相手だけだしいきなり元総理とかちょっとハードル高過ぎるけどポケモンの為にはこのくらいこのくらいこのくらいぃ━━

 

『分かりました。行きましょう。ポケモンの為です』

 

『やった! なら迎えの車をそっちに向かわせるね! 私も行くから! 待ってて!』

 

『えぇと、大丈夫なんですか? 色々。それに来るにしても私の住所は……』

 

『大丈夫! 全部何とかする! 住所は皆知ってるし大丈夫! 分かる!』『セヤナ』『ワカル』『あ、おい馬鹿。確かシロちゃんは……』『やりやがったな、この馬鹿ども……』

 

「……は?」

 

 え? 皆知ってる? しかも反論もなく受け入れられてる? ……あれ? もしかしてガチで住所バレしてる? これ? いやいや、そんなはずは……一応、確認しよう。

 

『もしかして、私、住所バレしてます?』

 

『してる』『うん、してる。てか知らなかったん?』『え? 常識じゃなかったの? え、私何かマズイ事言った?』『言ったな。シロちゃん、住所バレ気づいてなかったんだよ』『そもそもあれ、変態がハッキング仕掛けて掴んだ情報だしなぁ』『え? マジで? ……てか今まだ皆黙り決め込んでたの?』『最初は言おうと思ったけど、なぁ?』『うん。現地のシロ民からのポチネキ無双とSATUMA無双聞いてたら……わざわざ言って怖がらせなくてもいいかなって』『警察も気づいたし、大丈夫かなって。むしろ気づいてなかったのね』『その辺は俺らでも意見割れてたしなぁ』『えぇ……』

 

 う、嘘だろ……? いや、そういえば一時期やたら治安悪くなったときがあった。そのときはポチと鹿児島出身のじーさんがピリピリしてたっけ。あぁ、思えば最近散歩中に警察とすれ違う事が多くなったな。うん、そういうことか。そういうことかぁ…………よし。

 

『アイドルネキ。早く迎えに来て下さいお願いします』

 

 三十六計逃げるにしかず。とはいえ引っ越しなんてしようが無いので、さっさとアイドルネキに迎えに来て貰おう。それしかない。

 

『任せて! 今すぐ行く!』『それがエエやろな』『茶化そうと思ったが茶化せねぇ……アイドルネキ早く行ってあげて』『引っ越しとか出来そうにないだろうしなぁ』『取り敢えずシロちゃんはアイドルネキに迎えに来て貰う手順とか決めるべき。シロ民は……関東活動組は一回集合?』『シロちゃん手一杯だろうし、関東活動組の編成はこっちでやるべきやろうな。掲示板で何回か話して、シロちゃんが関東に来る前に一度現地集合って感じじゃね?』『シロちゃんはアイドルネキとゆっくりしてどうぞ』『セヤナ』

 

 幸いにもというべきか。アイドルネキとシロ民の反応は悪くない。それどころか現地戦力の編成までしてくれるそうだ。これならアイドルネキと計画を詰める事も出来るだろう。では。

 

『えっと、ではアイドルネキ。私の鳥で軽く話し合いますか?』『うん、そうしよっか。じゃ、一旦落ちまーす。シロちゃん鳥でまたね!』

『では、えっと、シロ民の皆さん後はお願いします。落ちますね』

 

『乙』『お疲れ様』『ごゆっくりー』『任せろ!』『任せろーバリバリー』『やめて!』『編成は進めとくでー』

 

 私はシロ民に見送られた後、鳥でアイドルネキと話し合う。途中から声が聞きたいと言われ、電話番号を教えて貰い、結果長電話の話し合いになったが……おかげで段取りは出来た。

 予定通りなら一週間以内に私は関東の地を踏む。ポケモンが最初に現れるであろう、関東へ。……準備を、進めなければならないだろう。

 

「…………あ、きのみの水やり」

 

 私が荷造りの準備を始めるのは、もう少し先になりそうだったが。



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第7話 お爺ちゃんはSATUMA人

 関東へと向かう事を決意し、アイドルネキと簡単に打ち合わせを行った翌日の昼間。私はポチの散歩の途中に、ある人物の家へお邪魔していた。

 目的は、主に挨拶だ。場合によっては長期間に渡って家を空ける事になるので、心配させないように事前に報告しておこうという話……なのだが。

 

「…………」

「…………」

 

 非常に、空気が、重い。

 家主も私も、それどころかポチすらも一言も喋らない。

 家主と私が喋ったのは私が家に上がる際にお互い社交辞令を交わしたときと、招かれた居間で交わした挨拶のみで、その後は畳の上の座布団に座ってお茶を飲んでいるだけ。ポチに至っては私の近くで行儀よくしているのみ。

 もう何度目か。沈黙に耐えかねて家主が出した湯飲みに手を伸ばし、冷めてきた緑茶を少しだけ啜る。それはロリボディ故なのか、甘党な私からすればいささか以上に苦味が強く、とてもではないが落ち着ける代物ではない。

 

「…………」

「…………」

 

 苦さで顔をしかめない様に注意する私とは打って変わって、低い机の向こう側に座る家主は落ち着いた様子で苦い緑茶を一飲み。その有り様は実に堂に入っており、貫禄や威厳すら感じさせる。あるいは『プレッシャー』なのか。

 凄まじい圧を発する家主を見つつ、流石はSATUMA人かと何度目かの変な納得をする。……そう、今私がお邪魔しているのはネットではSATUMA人で通っている人の家、鹿児島から移住してきたという東郷お爺ちゃんの家だ。

 

 思えば、東郷お爺ちゃんには本当にお世話になった。この辺りに住んでいる人達には軒並みお世話になったが、東郷お爺ちゃんはその中でも特に私が頼った人だ。

 例えば拾ってきたポチの躾を手伝って貰ったし、簡単にだが護身術を教えて貰ったりした。暇なときに話をしに来た回数も多く、まるで孫の様に可愛がって貰えたと……勝手ながら思っている。それと、これは推測になるのだが……私が住所バレしていたのに未だに無事なのは東郷お爺ちゃんが頑張ってくれたからだろう。ポチが番犬だったのもあるだろうが……東郷お爺ちゃんは警察にコネがあると聞く。巡回中の警察が多いのは、恐らくこのおかげだ。

 ……そう思えばこの重々しい『プレッシャー』もさして気にならなくなる。いや、いつもより重々しいのは気になるが、それは脇に置いておけるだろう。

 

「東郷お爺ちゃん」

「……何かな」

 

 厳格。そうとしか言い様のない声で、しかしどこかに優しさを持って東郷お爺ちゃんが私に声を返してくる。

 厳格さに食われかけた私は一拍息を飲み、優しさを頼って口を開く。

 

「私、関東に行こうと思う」

「関東」

 

 ふむ。と東郷お爺ちゃんは頷き、少し考えた様子を見せた後。

 

「引っ越すのか? それとも旅行か?」

「旅行、の予定。ただ、かなり長期になるかも知れないから。一応話しておこうと思って」

「なるほど。……他の者にはもう話したのか?」

「ううん。まだ」

「なら話しておきなさい。ワシが話しておいてもよいが、シロちゃんから話された方が彼らも嬉しいだろうからな」

「うん。分かった」

 

 私から話された方が嬉しいのかは正直分からないし納得し難いが、東郷お爺ちゃんがそういうならそうなのだろう。もともと私がやるつもりだったが、しっかりやっておこうと思った。

 

「して、出発はいつ頃かね?」

「だいたい、一週間後」

「シロちゃん一人か?」

「ううん。ポチも一緒の予定。迎えの人もそれが良いだろうって」

「迎え」

 

 妙な事でも言っただろうか? 東郷お爺ちゃんはそうポツリと呟いて目を閉じる。そうして十秒は悩んでいた様子だったが、やがて。

 

「それは、知り合いかね?」

「うん。知り合い。ネットでね。アイドル……と、女優やってる人」

「…………」

 

 私の言葉に東郷お爺ちゃんは一気に顔をしかめた。空気が、重くなる。まるで逆鱗に触れたかの様な反応。恐らく、引き金はアイドルや女優ではなく『ネット』なのだろう。しかし……東郷お爺ちゃんはネット嫌いという訳ではなかったはずなのだが。

 数秒たっても強まり続けるプレッシャー。この重さに反応したのは、今まで黙っていたポチだ。

 

「グルゥ━━」

 

 ホンの一鳴き。まるで「落ち着け」と言わんばかりのそれの効果は劇的で、東郷お爺ちゃんのプレッシャーはみるみる元の大きさに戻っていく。

 そうして平常に戻った東郷お爺ちゃんは少しだけバツの悪そうな顔を見せた後、私に質問を投げ掛け始めた。

 

「その人物は信用出来るのか? 事前に話はしたか? 不審な点は無かったか?」

「個人的にも社会的にも信用出来る人だよ。話はちゃんとしてある。段取りも決めた後。不審な点は無かった」

「ふむ。……ポチは連れていくんだな」

「うん。連れて行くよ」

 

 そこまで聞いて東郷お爺ちゃんは納得した……というより諦めた様子を見せ、ポチに視線を投げる。

 その視線はまるで相手を試すかの様な鋭いものだったが。

 

「ワンッ!」

 

 ポチはその視線に鋭く一鳴き。まるで「当たり前だ」と言わんばかりに答えた。どうやら先生と教え子で何かしらのアイコンタクトを交わしたらしい。内容は分からない。私も一応、東郷お爺ちゃんの教え子なのだが……

 

「ふぅ……まぁ、良いだろう。…………出発は、一週間後だったな。見送りたいから出発前に連絡をくれるか?」

「……いいよ。家に電話すればいい?」

「そうしてくれ。携帯電話は……どうにもな」

 

 東郷お爺ちゃんはポツリと溢すと湯飲みに手を伸ばし、緑茶を飲んで一息吐く。空気が弛緩する。

 そのまま数十秒。緩い沈黙が場に降りた。

 私の目的は既に達しているので帰っても良いのだが……何となくそのまま沈黙を感じていると、東郷お爺ちゃんが口を開く。

 

「実は、ワシも旅行に行く予定なのだ」

「東郷お爺ちゃんが?」

「うむ。……故郷の、何というか。教え子から相談されてな。馬鹿馬鹿しいと思ったが……事が事だったし、最近は何やら妙な空気だから、一応な」

「事が事……?」

 

 妙な空気というのは、恐らくきのみ等のポケモン化の事だろう。きのみの事は話してないが、東郷お爺ちゃんなりに何かを感じ取ったらしい。流石だ。……時期を見てポケモン化の事を話すのもありか。

 だが、今は事とやらを聞いてみよう。

 

「うむ。━━何でも『出る』んだそうだ」

「出る? ……まさか、ポケモンが!?」

「……ポケモン? あぁいや、違う。それではない」

 

 まさかカントーではなくホウエンからかと焦った私に、東郷お爺ちゃんが生暖かい目で否定してくる。……これは、恥ずかしい。あぁやめて! 見ないでぇ!? もう、続き! 話の続き行こう!

 

「と、東郷お爺ちゃん。……何が出るの?」

「うむ。……そう、そのな。奴がいうには、幽霊、だそうだ」

「幽霊」

 

 幽霊。おばけ、ゴースト、死者の魂。オカルト。そう、普通ならオカルトと、幻想だと笑える話だ。

 ……しかし、ポケモンもつい最近までその手合いだった。ならば、笑う事は出来まい。

 

「……笑わないのか?」

「笑えないよ。……それで、東郷お爺ちゃんは幽霊を見に行くの?」

「そう、だな。正直迷ってはいる。故郷には帰るし、話も聞いてくる。だが……彼らに会っていいのか、悩んでいるのだ」

「彼ら?」

「━━幽霊はな。私の、昔の仲間の姿だったそうだ」

 

 昔の、仲間。幽霊。東郷お爺ちゃんの年齢と、経歴。それを考えると……どんな姿の幽霊なのか、ボンヤリと浮かんで来た。

 だがボンヤリだ。それに……もう七十年以上が経っている。七十年だ。それも考えると……何となく気が進まないのも理解できた。少なくとも私なら、七十年もの長きに渡ってさ迷い続けた魂に掛ける言葉なんて、見つからないのだから。

 

「だが、そうだな。会わねばなるまい。シロちゃんも旅行へ行くというのなら……いや、そう、きっと、これも必然か」

「……東郷お爺ちゃん?」

「……いや、何でもないよ」

 

 自虐する様に、しかし柔らかに笑った東郷お爺ちゃんはお茶を一飲みして、どこか遠くを見る。

 その姿になんと言えばいいのか、私は分からなかったが……黙っているのはつらかったので一つ聞いてみる。

 

「ねぇ、東郷お爺ちゃん。その、幽霊が出たのってどこなの? 答えにくいなら、答えなくても良いんだけど」

「……うむ。それがな。不思議な事に、桜島だそうだ」

「桜島? 鹿児島にある、あの火山の?」

「そう、その桜島だ。……あぁ、そこもまた迷っている原因なのだ。彼らの遺骨はなんとか回収したから、ちゃんとした墓地に墓がある。そして彼らと別れたのは南方の島で、日本の大地、ましてや桜島ではないからな。どう考えても繋がりが無い」

 

 だから嘘臭いのだと疑問を口にする東郷お爺ちゃん。しかし直ぐに情報源が嘘を言う人物ではなく信用できる人物なので、どういう事なのかと思っているとも私に伝える。

 そうして思うのは……90度傾いた九州。つまりは、ホウエン地方の事だ。そこでの桜島の位置にあったのは……確か━━

 

「東郷お爺ちゃん」

「……何だ?」

「行った方が、良いと思う。たぶん、来てるから」

「…………そうか」

 

 不思議ちゃんか電波か、あるいは狂人か。そう取られてもおかしくない物言いだったのだが、東郷お爺ちゃんはすんなりと、見て分かる程に納得してくれた。

 良かった、というべきなのか。それとも眠りが妨げられたのか。それは……東郷お爺ちゃんが行けばハッキリするだろう。それに、もし桜島が変質しているなら……

 

「後、東郷お爺ちゃん。幽霊の話がホントだったら教えてくれる?」

「あぁ、構わんよ」

「……なんで、とか聞かないんだ」

「聞かんよ。シロちゃんは人の大事なところに土足で踏み込まんし、そういう顔をしているときは……何をどうしても退かないからな」

 

 誰に似たのか、と小さく呟いて。東郷お爺ちゃんは苦笑いしながら答えてくれた。

 旧友、あるいは戦友との話を笑い話にされるとは思っていないらしい。勿論そんな事をするつもりは微塵もないが、だとしても……信頼されている? まさか。今回だって桜島の変質具合で証拠にしようかどうか考えていたのだ。それこそまさかの話だろう。

 有りそうもない可能性を蹴飛ばし、残り少なかった緑茶を一気に飲み干す。苦い。帰ったらチョコでもかじるか。

 

「…………」

「…………」

 

 そのまま緩い沈黙が支配する事、数十秒。

 このまま雑談に入るか、それとも帰るか……いつもなら雑談なのだろうが、今日はやる事もあるし、考えたい事も出来た。今日は帰ろう。

 

「それじゃあ、東郷お爺ちゃん。今日は帰るね」

「そうか」

 

 小さく頷いた東郷お爺ちゃんは空になった湯飲みに急須から緑茶を入れ、一飲み、二飲み。

 

「ポチ、行くよ」

「わふぅ……」

「━━あぁ、そうだ」

 

 私が立ち上がり、ポチを連れて居間を出ようとしたとき、背後から声が掛かる。

 いったい何だろうと振り返って見れば、東郷お爺ちゃんが湯飲みを片手に口を開く。

 

「旅行。楽しいものになると良いな」

 

 それは祈りの言葉だろうか。あぁ、そうだろう。

 

「うん。たぶん、楽しいよ」

「そうか」

 

 今度の旅行は楽しいものになると、私はそう確信している。

 だからその確信を東郷お爺ちゃんに告げれば、何とも微妙な声が帰って来た。嬉しい様な、迷う様な。やはり……幽霊の件は悩みの種らしい。

 とはいえ私がどうこう言える話でもないので、その後東郷お爺ちゃんに挨拶してから東郷家を出る。背後を振り返れば古めかしい日本家屋。思い出すのは東郷お爺ちゃんとの話━━特に桜島の幽霊の事だ。もしこの世界にポケモンが来るならば、桜島は桜島ではなくなる。そう、ポケモンが来たなら桜島は━━

 

「━━おくりびやま、か」

「わふぅ?」

「ううん。何でもないよ」

 

 ポチの頭を一撫でし、フードを深く被って道を歩く。

 おくりびやま。ホウエン地方にある特殊な山。濃い霧と無数の墓、そして多くのゴーストタイプのポケモンが待ち受けるその場所は、死者の魂と関係深い場所だ。ならば、東郷お爺ちゃんの戦友が居ても……おかしくはない。それが良いことなのか、悪い事なのかは、分からないが。

 

「ポケモンが来ている。……けど、喜んでばかりもいられないか」

 

 ポケモンが来れば私は嬉しい。だが、事はそれだけではすまない。大きく変わり過ぎるのだ。

 故に、備えなければならない。今回の話だって人の幽霊で済んでいるが、もしゴーストタイプのポケモンが出現していたら? 彼らが町に出て悪さをしたら? 確実に死者が出る。そうすればポケモンを知らない人は、全てのポケモンを排斥しようとするだろう。殺そうとするだろう。

 

「それは、駄目」

 

 駄目だ。認められない。そんな現実はいらない。

 だから、備えよう。関東に行って、ポケモンを探して、元総理と話して……日本国として備えよう。そうすれば、きっと。

 

「……あぁ、きのみの栽培を頼んでおくのも良いかもね」

「わふぅ……」

 

 私は「やれやれだ」とでも言いたげなポチを連れて、オレンの実を貰った老夫婦の元へと向かう。そこで報告と、きのみの栽培を頼もう。他の近所を回って同じ事を頼もう。備えるのだ。そうすれば、そうすれば。

 

「仲良く、出来るよね」

 

 まだ見ぬポケモン達に語り掛ける様に、そう溢す。

 その私の声は……ずいぶんと、自信に欠けていた。

 




 人物ノート03


 東郷お爺ちゃん
 年齢 100歳超え
 見た目 筋肉の衰えていない厳格な爺さん
 服装 基本的に和服
 種族 SATUMA人※1
 特性 SATUMAの波動※2
 Sクラフト 奥義・SATUMA神剣※3

 ※1歴史が大きくかわるとき『SATUMA』は、その姿を現す。はじめには漆黒の悪魔として。悪魔はその力をもって大地に死を降り注ぎ、やがて死ぬ。しばしの眠りの後『SATUMA』は再び現れる。英雄として、現れる。

 ※2
 歴戦のSATUMA人のみが放つ事の出来る特殊な波動。
 その波は味方の士気を上げ、敵を押し潰し、歴史を造り出す。
 基本効果は敵味方無差別の『プレッシャー』と敵に対するすばやさの一段階減少をパッシブで。
 更に本気を出すと『プレッシャー』の効果が二倍に。減少効果がこうげき、ぼうぎょ、とくこう、とくぼう、すばやさの二段階減少になる。更に自身のこうげきとすばやさを二段階上昇させる。リアルチート。

 ※3
 目にも止まらぬ神速の剛剣を無数に放つ必殺の戦技。その刃に断てぬ物は無く、捉えられる者はいない。これを打ち破りたくば事象を改変する必要があるだろう。並の人間では斬られた事すら知覚出来ずに死ぬことになる。攻撃力SSS+


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第8話 お嬢様は人使いが荒い

 九州の片田舎でSATUMA人とTSロリっ娘の微笑ましい談笑が行われていた頃。関東は東京のある日本家屋の一室では、ピリピリとした嫌な空気が流れていた。その空気の中心にいるのは二十代前半か、それよりも手前だろう若い黒髪の女性……十人中八人は綺麗だと称賛するであろう美少女、あるいは美女だ。一言で形容するなら、現代版大和撫子か。

 彼女のネットでのアダ名はアイドルネキ。いわゆるシロ民の中でも、シロちゃんガチ勢と呼ばれる一人であった。

 

「……で? まだなの?」

 

 身長から察するに高校生か、あるいは大学生か、しかし若い女性だという事だけは間違いないはずの彼女の声は、信じられない程ドスが効いている。少なくとも彼女が今の声を本当に発したのか、二度は確認したくなる程度に。

 コワイ黒服のあんちゃん達を彷彿とさせるその声の原因は、多分に不機嫌さが混じっているのである程度は察する事は出来る。だとしてもその原因を暴くよりも逃げる方が得策なのは、誰の目にも明らかだった。

 

「はい。お嬢様のスケジュールは調整が終わり、歓迎の用意もいつでも始められます。ですが、足が確保出来ません」

 

 しかしその原因に立ち向かう勇者が一人。仏頂面か、鬼の面か、険しさが全面に出た顔付きの男だ。その身体付きはキチッとしたスーツ越しでも分かる程に頑強そうで、実際彼はかなり鍛えられていた。少なくとも戦士ではあるだろう。

 

「お嬢様は止めろと何度言えば……」

 

 美少女といっていい彼女はそこまで口にして小さくため息を吐く。それどころではないと。

 

「それで? 空いている機体は無いとでも言われた訳?」

「はい。こちらの条件を満たした機体で貸せる物は一つも無いと。またこれは船も同様で、条件が厳し過ぎるとの事です」

「私は九州から東京まで、ペットを一匹同伴しつつ、二人と一匹が快適に過ごせる物としか言ってないんだけど?」

「失礼ながら、そのレベルが問題かと。特にペット同伴が厳しく、次点で距離がありすぎます。この時点で車の全てと航空機の大半が使えなくなっているのですから、その上で快適さもとなると……」

「━━なに、あんたは私に出来ないと、そう言いたい訳?」

「いえ、そういう訳では……」

 

 絶対零度。そういっても過言ではない圧が、年若い大和撫子から強面の男へと叩き付けられる。男は彼女からの圧を柳に風と受け流し……ているように見えたが、よくよく見れば額に汗が浮き出ている。冷や汗だろう。どうやら彼も一杯一杯らしい。

 そんな男の様子を知ってか知らずか、彼女は続けて口を開く。

 

「いい? 私はシロちゃんに約束したの。私が貴女を東京まで連れて行って案内してあげると。快適な旅を約束すると。例えそれがネットや電話越しの口約束でも、他でもないこの私が、約束したのよ。あんたはそれを反故にしろと言うつもり?」

 

 マグマの様な熱と、吹雪の様な厳しさが男に突き刺さる。彼女のプロデューサー兼護衛である男からすれば比較的慣れた物ではあったが、だからこそ肌で分かる。内に秘める覚悟が違うと。元々プライドがエベレストの様に高く、しかも身内に対する約束には頑固だったが、今回は特に凄まじい。恐らくここで自分が下手を打てば、死人を出してでもシロちゃんとやらを迎えに行くだろうと男は確信した。

 だからといって状況は変わらない。出来ないものは出来ないのだから。……いや、そんな事は彼女も分かっているだろう。そう仮定して、ならばと男は妥協点の模索に回った。

 

「いえ、そんなつもりはありません。しかし、このままでは迎えに行く事すら困難です。ここは幾らかグレードを落とすべきだと考えます」

「駄目よ」

 

 キッパリと、あるいはハッキリと、彼女は男の提案を雷速で切り捨てる。取り付く余地なんて微塵も無い。

 この即断に男は内心でかなり驚きを感じていた。プライドが高く、頑固な彼女だが、頭は悪くない。むしろ非常に良い。グレードを落とさなければどうにもならない事は、とうの昔に分かっているはずなのだ。しかし彼女は首を横に振る。理性を上回ったのはプライドか、それとも頑固さか。男がプロデューサーとしての腕を見せるべきかと腹を括ったとき、彼女が口を開く。

 

「グレードダウン? シロちゃんを迎えに行くのに、グレードダウン? あり得ない。えぇあり得ないわ。あんた、私にとってあの子がどんな存在なのか……わかってるの?」

「……いえ、好意を感じている相手だとは思いますが」

「好意? まぁそうね。好意は感じている。けどそんなものじゃないのよ。……あの子は、シロちゃんは、私に夢を見せてくれたの。私の、恩人なのよ」

 

 噛みしめる様に、しかし朗らかな笑みを浮かべる彼女を見て、男は不思議な衝撃を受けていた。それがいったい何なのか分からなかったが……その代わりか、男はふと思い出す。

 あれは今から五年程前だっただろうか? よくは覚えていないが、生まれて初めて手痛い失敗を経験したお嬢様が暗く沈みきっていた時期があった。しかしそれは一年と続かず、直ぐに立ち上がり、それどころかより強くなっていたので流石はお嬢様と称賛したのだが……よくよく思い出せばその辺りから『シロちゃん』という人物を口にし出していたはず。

 男はそこまで思い出して、考え至る。あの暗く沈んでいた時期に助けとなったのが『シロちゃん』で、その助けは恩人といえる程なのだろうと。

 

「なる、ほど」

 

 内心をポツリと溢した男は納得しつつも、しかし現状どうにもならないと判断していた。

 シロちゃんが恩人なのは分かった。恩人を丁寧に、盛大にもてなしたいのも分かる。だが、どうにもなるまい。彼女は元旧家の人間で、資産もかなりある。しかし無理なものは無理だ。近日中に九州から東京まで一人と一匹を丁寧に、快適に連れてくる。この問題はどうにもならない。要求レベルが高すぎるのだ。

 ここは折れて貰うしかない。男がそう決心したとき、彼女もまた決心していた。全てを使う覚悟を。

 彼女はおもむろにスマホを取り出し、何やら調べ始める。男の目線からでは何をしているかは分からないが……しかし、彼女は調べ終わったらしい。

 

「リヴァイアサンを使うわ」

「……は?」

 

 彼女が何と言ったのか、男は一瞬分からなかった。

 リヴァイアサン。それは架空の怪物の名前だ。海を支配する最強の怪物の名。それを使うとは……と、そこまで考えて思い出す。その名を持つ存在を、彼女の家は保有している。

 

「ま、まさか……ギガヨット、リヴァイアサン号ですか?」

 

 リヴァイアサン号。それはラグジュアリーヨットの中でも特に大きいギガヨットの一隻だ。彼女が、というより彼女の家が所有する巨大な船。

 全長およそ140メートル。最大速力28ノット。船体後部に本格的なヘリ甲板と格納庫を持ち、軍用ヘリすら運用出来るという代物。勿論その内装は資産家のギガヨットらしいきらびやかさであり、そのレベルは一流ホテルにも匹敵する。優美な気品の中に確かな力強さを感じさせる、美しい船だったと男は記憶していた。

 なるほど、確かにかの船ならば問題を全て解決出来る。特に問題だった快適さも十二分だ。しかし……

 

「あの船は今ハワイ近海に居るのでは? それに、あの船はお嬢様が動かすには所有権が曖昧なのでは……?」

 

 問題を全て解決できるリヴァイアサン号だが、この船には別の問題があった。

 先ずそもそも日本に居ない。これはこの船がタンカーや軍艦並みの大きさの為、日本国内で停泊出来る港が少ないという問題があった事と、船長が風来坊気質で一ヶ所に居たがらないからだった。男が以前聞いた話通りなら、今頃ハワイ近海で金持ち仲間とクルージングしたり、大金が動く何らかのプロジェクトに関わっているはず。

 そして最も大きな問題として、所有権が曖昧だ。書類上では資産家でもある彼女の父親が所有者となっており、家として所有しているとも言っても問題ない。しかし事実上の所有者はリヴァイアサン号船長でもある外国人資産家で、リヴァイアサン号の建艦費も六割は彼の負担だ。なんでそんなややこしい事になっているのかは男の知るところではなかったが、風の噂に聞くに酒のノリだそうだ。絶対ロクでもない。

 

「久しぶりに日本が見たくなったから帰って来るらしいわよ。港まで後600キロを切ったと連絡があったらしいわ。それとあの船が私に動かせるかどうかだけど……あなた、私のプロデューサー何年してるの? 私が使うと言ったら使うのよ」

 

 どこから情報を掴んだのか、なんという横暴か。あぁいや、そんな事はもうどうでもいいのだろう。彼女の目を見てみろ、自信しかない。いや、確信だ。あれは自分なら出来るという確信だ。それも実力に裏打ちされたソレ。男はここに至って思い出す。あぁ、我が主はこういう人だったと。

 

「さぁ、出発するわよ。あなたはヘリを用意しなさい。私はリヴァイアサンに連絡を入れて、航路を変更して貰うから」

「ヘリ、ですか……? それはまた……いえ、まさか、寄港するのを待たないおつもりで……?」

「えぇそうよ。リヴァイアサンとは海上で合流するわ。船の中身はシロちゃんを迎えるに値するはずだけど……汚れてたなら『掃除』しないといけないしね。それに、早い方がいいわ」

 

 なんという無茶をするつもりなのか。彼女は自分が何者なのか分かっているのか、いや分かってやっているのだろう。スケールがハリウッドみたいになっているが、思えばだいたい何時もの事だった。

 ため息を飲み込んだ男は頭の中に使えるだろうヘリとパイロットを思い起こし、厳選する。何せこれからやらかすのは海上での合流だ。それも船まで500キロはあり、燃料的にギリギリになるはず。お転婆なお嬢様がこれ以上待つとは思えないので、それを考えれば航続距離の長いヘリと腕の良いパイロットが必要だった。

 あぁ、それと『掃除』の手配も考えておこう。事の次第とお嬢様の機嫌次第では船の内装を丸ごととりかえる可能性もある。一つ何百万という調度品をダースで手配するかも知れないのだ。自分の財布は痛まないとはいえ、心構えは必要だろう。

 

「あぁ、シロちゃんに渡すプレゼントとか用意した方が良いかしら? それとも案内中に買う? うーん、悩ましいわ。……あぁ、でも保護者役らしい近所のお年寄り達や、噂のSATUMA人に挨拶するときの土産は必要ね。……うん。プロデューサー、悪いけどヘリの手配が終わったら土産の品をお願いね。常識的な物で良いわ。お年寄りが喜びそうな物をダースで、シロちゃんの分は私が選ぶわ」

「了解しました」

 

 男は仏頂面のまま即答し、積み上げられたタスクに脳内でため息を吐く。年頃の少女に選ぶ品を考えずにすんだ様だが、それでもお年寄りが喜ぶ品とは何なのか? まだ若い男には想像しにくかった。

 男は暫しネットで調べてやろうかと思案し、結局彼女の祖父母が時折食べている銘菓を買ってくる事にする。とはいえヘリの手配もあるので、買ってくるのは男の部下になるだろうが……経費で落ちるのだろうか? 落ちないだろう。部下に払わせる訳にもいかず、彼女に金をせびる気にもならないので、男が出す他ない。諭吉に羽が生えて飛んでいく光景を幻視できる気分だった。

 

「それと船に持ち込む私物と……あぁ、お祖父様に挨拶とおねだりをしておかないと。アポは必要だったかしら?」

「……はい。最近は果実の異変騒動で忙しくされていますので、いくらお嬢様相手でもアポが必要かと。国会をまとめる地下活動の最中でしょうから」

「はぁ……アイツら、きのみぐらいで未だにギャーギャー言ってるの? もう何ヵ月経つのよ」

「最初の一つが確認されておよそ半年。異変が本格化したのがここ1、2ヶ月です。ちなみに最近与党が新しい特別法案を提案しましたが、野党がこれを再び蹴り、国会は機能停止状態に陥りました。何でも納得できない、与党に都合が良すぎる。何より国民への説明が充分でないと」

「ハッ」

 

 馬鹿馬鹿しい。そう言わんばかりの嘲笑を上げる彼女。

 男はその嘲笑に内心ではげしく同意しつつも、やっぱり政治家には向いてないなと感じていた。彼女が政治家になったらその圧倒的な自信と実力、そしてカリスマで国家を支配するか、凡人に袋にされるかのどちらかだろうからと。

 

「まぁ、いいわ。あれらクズのおかげでシロちゃんもこっちに来るしかなくなったのでしょうし。……いつかお礼をしてあげないとね」

 

 お礼。それは嬉しい物のはずだ。しかし男はそのお礼だけは欲しくないと直感で感じ取った。絶対にロクでもないと。そら、その証拠に彼女の圧が冷たく、重くなっている。彼女は間違いなく、キレていた。

 男はお礼内容とその後始末を考えないようにしつつ、ヘリとパイロットをまとめた脳内リストからMi-26を保有する個人資産家を外しておく。Mi-26の巨体ではリヴァイアサンのヘリ甲板に着艦出来ないだろうという至極全うな考えからだったが、果たして本当にそれだけだったのか。Mi-26から別の何かを連想しなかったかについては……男は忘却する事にした。今日は厄介事をこれ以上考えたくなかったのだ。

 

「━━そういえばシロちゃん、服って持ってるのかしら? あまりオシャレには興味ない感じだったし……幾つか買って持っていってみようかな?」

 

 勝手にしてくれ。そう半ば仕事を放棄した事を考えながら男は首と視線を動かし、窓から庭を見る。

 そこでは人を走らせ方々から集めた変異した果実が、昨日今日植えたばかりだというのに色とりどりの花や実を付けていた。あり得ない代物だ。今頃学者連中は自分同様頭を痛めているに違いない。そう思うと心が軽くなる男だった。

 

「うん。プロデューサー、車を用意しなさい。シロちゃんに何か買っていくわ」

「……了解しました」

 

 そのシロちゃんとやらが来れば自分の心労も減るのだろうか? 期待せずにはいられない男だったが━━この後、シロちゃんと連絡を取ったらしい主が何やら鬼気迫る様子で自分を連れて下着売り場まで突入し、仕舞いには荷物持ちにさせられて……男の淡い期待は切実な祈りに変わるのだった。

 




 書物ノート


 月刊ギガヨット。
 特集、リヴァイアサン号。

 リヴァイアサン号は日本人が所有する数少ないギガヨットの一隻である。
 優美な気品を漂わせる白い船(全体写真)ともすれば深窓の令嬢を思わせるが、彼女は力強さも備えている。全長140メートルを超える巨体は見るものを圧倒し、最大速力28ノットという駆逐艦並みの足の速さは他の追随を許さない。これに一流ホテル顔負けのきらびやかな内装やプール、果ては医療施設まであるのだ。流石はギガヨット。メガヨットとは訳が違う! そこに痺れる憧れるゥ!
 だがこの船の真髄はまだだ。そう、この船の真髄はヘリの運用能力にある。船体後部に備え付けられた広いヘリ甲板と、それに併設するように作られた大きな格納庫。この2つこそ、リヴァイアサン号の真髄だろう。
 詳しくは調べる事が出来なかったものの、リヴァイアサン号は最低でも3機のヘリを運用する事が出来る様だ。が、筆者の鼻が確かなら4機、あるいは5機の運用も不可能ではないはず。更に噂によれば軍用ヘリの運用も出来るというのだから驚きだ! 事実、アメリカに寄港したリヴァイアサン号のヘリ甲板にSH-60シーホークが着艦するのをカメラが捉えている(鮮明な写真)またこれはコラージュであるという噂があるが、AH-1コブラが着艦した写真もある(画質の荒い写真)残念ながら『オクトパス号』の様にウェルドック(船の中に船を停泊させるマジキチ設備)を備えてはいないが、それでも素晴らしい性能だろう。
 なお、アメリカに寄港したリヴァイアサン号の各部に銃架の様な物が見えるが(鮮明なズーム写真)気のせいである。ブローニングM2重機関銃が見えるが気のせいである。写真の端にアサルトライフルで武装した船員が見えるが気のせいである。よしんば気のせいでなくともアメリカなので問題はない。まぁ、ここまで来るとギガヨットというより強襲揚陸艦と言いたくなるが……これはギガヨットである。いいね?
 ちなみにリヴァイアサン号を建艦した2人の資産家は完成時に「米海軍よ、思い知るがいい……!」「神仏照覧!」と口にしたという噂がある。ギガヨットの素晴らしさ故の神仏照覧は分かるが、米海軍に恨みでもあったのだろうか? 実はリヴァイアサン号を建艦した二人の資産家のうち、外国人資産家の方は故郷の中堅政治家と激しくやりあい、結果故郷から離れざるを得なくなった逸話があるが、実は米海軍将校とも確執があり━━(次のページに続いている)


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第9話 見えない変化、見える変化

 東郷お爺ちゃんへの報告を済ませ、オレンの実をくれた老夫婦を含めた、近所のお爺ちゃんお婆ちゃん達にも報告し終わった夕方。

 私はポチとの散歩を終わらせ、テキトーな鼻歌を歌いながら上機嫌で夕御飯の準備をしていた。上機嫌の理由は……今手元にある桃色のきのみ、モモンの実が手に入ったからだ。

 

「~♪」

 

 近所のお年寄り達に挨拶するなかで、桃の木を植えている人から譲って貰ったのだ。突然出来てなんだか気味が悪いと言っていたから、簡単にモモンの実を始めとしたきのみについてレクチャーしたところ、最後には栽培も確約してくれた。他の人達も多くが栽培に賛同してくれたから、関東から帰って来た頃にはきのみが溢れかえっている事だろう。

 

「んー、そうしたらポロックやポフィンの試作も出来るかな?」

 

 機材はサッパリだが、材料には困らないはず。関東から帰って来たらそういうのに挑戦するのもありだろう。

 そんな事を考えながらモモンの実に包丁を入れて幾つかに切り分け、それを二つの皿に分けて盛る。私と、ポチの分だ。

 

「ポチー、ご飯出来たよー」

 

 私は自分の分を机の上に置き、ポチの分を目の前に差し出す。いつものメニューにきのみが追加されただけだったが、それはなんだか特別な物の様に思えた。

 ポチはその特別に躊躇したのか、私の方を見てくる。だが私が食べていいことを伝えると、真っ先にモモンの実に食い付いた。意外、そう感じる心。当たり前、そう感じる理性。

 

「……まぁ、これだけは食べやすいし、美味しいしね」

 

 私は席に着きながら、小さく切り分けたモモンの実を一つ口に放り込む。口に広がるのは素朴な、しかし純粋な甘さ。他のきのみではこうはいかないだろう美味しさだ。あるいは私が甘党だからか。

 そう思いつつご飯にも手を伸ばし、前世では考えられないスローペースで前世よりも少ない量のご飯を食べ進めていく。

 

「はむ。……んん?」

 

 半ばまで食べ進めたとき、ポチが私の側まで来ている事に気づく。お行儀の良い普段のポチからすれば珍しい動きだ。見ればポチの分はきのみ含めて空になっており……ポチの視線の先にあるのは日付が変わった深夜に収穫したオレンの実。まさか、食べたいのだろうか?

 

「えっと……食べる?」

 

 迷いは暫く。しかしポチの視線に負けた私はオレンの実を二つ、ポチのお皿の中に落とす。絶対美味しくない。そう思いながら。

 差し出されたきのみをポチが食べるか悩んだ様子だったのは、私の半分以下。彼女は実にアッサリとオレンの実に食い付いた。一かじり、二かじり。人間からすればマズイと言っていい代物をポチはさくさくと食べ進める。……美味しいのだろうか? いや、あんなデタラメな味覚パラメーターで美味しいはずがない。

 そう疑念を蹴飛ばし、私は私のご飯を食べ進める。

 

「グルゥ……」

「満足そうだね。ポチ」

 

 結局食べ終わるのもポチの方が早く、彼女は「満足だ」とでも言いたげに体を休めていた。実にリラックスしている。

 

「……ん? 何かポチ、変わった?」

「グルゥ?」

 

 気のせいだろうか? 心なし大きくなった様な、毛並みが良くなった様な……それとも声か? うーん……? 何か変わった様な気がしたんだが……何なのだろう?

 疑問がどうしても解消されず、お皿を片付けた私がポチを見ながら思考に潜ろうとした━━そのときだ。

 

 ━━プルルル……

 

「っ、と。電話?」

 

 何の前触れもなく私のスマホから機械音が鳴る。電話だ。しかし私の電話番号を知ってるのは片手で足りる程度だし、その殆んどとは今日会ったばかり……いや。

 

「はい、もしもし?」

『シロちゃん? 昨日ぶりね。元気にしてた?』

「あぁ、アイドルネキ。はい、元気ですよ」

 

 やはりというか、電話を掛けてきた相手はアイドルネキだった。しかし、手順は軽くとはいえ昨日打ち合わせしたばかりのはずだが……

 

「どうしたんですか? アイドルネキ。計画に変更でも?」

『んー、まぁ……そうね。それもあるわ』

「それも……?」

『えぇ。……んん、一先ず計画の変更について教えるわね。実は、移動手段の変更で当初の予定より早くそちらに着きそうなの。だいたい明後日の夕方過ぎにはそちらの近海に到着する予定よ。一週間と言っておいてなんなのだけど……変更出来るかしら?』

「明後日ですね。大丈夫ですよ」

 

 私は基本的に暇人なので計画はどうとでも変更出来るし、元々こういう事が起こるのはお互いに折り込み済みな話だ。強いていえば東郷お爺ちゃんに話を伝えるくらいか。これは後で電話しておこう。

 

「しかし近海……? もしかして、船ですか?」

『流石はシロちゃん。察しが良いわね。えぇ、船よ。少し不安はあるけど、きっとシロちゃんを迎えるに価すると思うわ。楽しみにしててね』

「はい。楽しみにしてます」

 

 私を迎える価する船……漁船かな? あるいは泥船か、イカダか。いやいや、アイドルネキの家は大きいと聞く。きっとお金持ちが乗っている様なボート……全長10メートルちょいぐらいのプレジャーボートとかいう奴に違いない。

 うん、楽しみだな。あの手の船には前世も含めて乗った事がないし、一度は乗ってみたいと思っていたのだ。あのボートから釣糸を……昼はキツイから夜釣りを楽しむのもありだな! 実に楽しみだ。

 

『あぁ、そ れ と。シロちゃんに何か買って行こうと思ったのだけど……シロちゃんって服、持ってるわよね?』

「? えぇ、持ってますよ?」

 

 当たり前だろう。服を持ってないとか、未開の蛮族じゃあるまいし。

 

『…………一応、聞くのだけど。どんな服を持ってるの?』

「んー……」

 

 どんな服ときたか。そういわれると困るな。

 何せ前世ではアウターとかトップスとか言われても分からないファッション知識ゼロ野郎だったし、今世でもそれは概ね変わらないのだ。それに興味もないとくれば、アルビノのせいで制限もあるときてる。だから私の手持ちの服は……えーと?

 

「…………パーカーと、ジャージと、ズボンと、ジャージと、下着が3、4枚に……後は、パーカーとジャージ? あぁ、それとパジャマの類いが3、4着ありましたね」

『━━━━』

 

 何故だろう。電話の向こうのアイドルネキが凄まじい顔で絶句しているのが見えた気がした。正直に手持ちを言っただけなのだが。

 

『━━し、シロちゃん? じょ、冗談……よね?』

「いえ。正直に言いましたが」

『━━━━ねぇ、それ服、というか下着からして足りないでしょ?』

「いえ? 足りてますよ? 洗濯込みでローテーションに余裕がありますし」

『━━━━』

 

 何度目かの絶句。なんだろう。私はそんなにおかしな事を言っただろうか? 普通だと思うのだが……

 

『いや、いやいやいや! おかしいでしょ!? 女の子がそれじゃ駄目だから!? ━━いや、待ちなさい。……ねぇ、洗濯込みのローテーションって……オシャレとかは?』

「あー、特に考えて無いですね。興味もないので」

 

 普通の女の子なら例え制限があってもオシャレするものなのだろうが……私は元男だし、その辺りズボラで当然興味も無い。服なんて着れりゃ良い、楽なら更に良し、オシャレは度外視……そんな人種だ。思えば、アイロン掛けも長らくやってない。必要性を感じなかったからなぁ。

 

『━━━━ねぇ。それ、誰かに指摘されなかった訳? というかオシャレしようと思わないの?』

「指摘なら、されませんでしたね。周りはお爺ちゃんお婆ちゃん達だけですし、家にはポチだけですから、指摘する人が居ません。それにオシャレも……特に誰かに見せる訳でもないですし、興味もないので」

『━━━━そう。えぇ、そうだったわね……ごめんなさいね。シロちゃん』

「? いえ、お気になさらず」

 

 正直に話していたら何故か謝られたでゴザル。それもガチなトーンで。解せぬ。

 

『━━決めた。私はシロちゃんにオシャレを教えるわ』

「え? いや、大丈夫です。私はオシャレとかそういうのは……」

『駄目よ。決めたから』

「えぇ……」

 

 何と横暴な。私は今のパーカーとズボンスタイルで間に合っているというのに……やはりアイドルとしてオシャレに興味が無いという台詞が許せなかったのだろうか? だったら謝るので、どうかオシャレ云々は放って置いて欲しい。私はオシャレとかよく分からないのだ。

 

「あの、アイドルネキ。本気ですか? 私、そういうのは分からないし、その、必要無いと思うのですけど……」

『本気よ。それに私が教えるのだから問題無いわ。後、シロちゃんに必要無いなら全人類必要無いわね。シロちゃんを差し置いてオシャレなんて……ねぇ?』

 

 何という自信か。何という横暴か。電話越しでも気迫が伝わってくる。こう、出来る女というか、女王様というか。あれだ、覇王の覇気だ。これは。

 

「いえ、あの、ホントに……」

『いいえ、やるわ。例えシロちゃんに嫌われてもやる。これは決めた事よ。…………それに、そんな格好ではお祖父様に会わせられないわ。元とはいえ、お祖父様は総理大臣だったのだから』

「ぅ……」

 

 アイドルネキの覚悟と覇気でお腹一杯なのに、更にそれを指摘されると反論なんて欠片も出来ない。私はオシャレに興味が無いだけで、ドレスコードとかは理解しているのだ。パーカーとズボンのズボラスタイルで総理大臣に会えない事ぐらい分かる。最低でもスーツだろう。……そうだ、スーツがあるじゃないか!

 

「あ、あの。アイドルネキ。ドレスコードならスーツとかでも良いのでは? 何なら中学時代のセーラー服出しますから……」

 

 これでドレスコードは解決! 不登校気味だったから大して着てないセーラー服だけど、取って置いて良かったぜ!

 

『…………えぇ、そうね。それならドレスコードは問題無いわ。……けどシロちゃん。貴女身長、何センチだったかしら?』

「えっと……150センチぐらいですけど」

 

 正確には150にギリギリ足りていない。下手すれば小学六年生レベルだ。我ながら実に低い。マイボディに不満があるならここだけなのだが……最早どうにもならない。牛乳では、どうにも、ならなかったのだ。……ならなかったのだ!

 

『その身長だとスーツは似合わないわ。えぇ、似合わない。それにセーラー服も……悪くはないけれど、外聞を気にすると控えて欲しいわね』

「外聞、ですか?」

『元総理の家に招かれる不自然に身長の低いスーツの女。あるいは中学生。……マスコミにその瞬間を撮られれば、さぞ面白おかしく書かれるでしょうねぇ』

「…………」

 

 ……あぁ、あれか。R-18的な関係だと邪推されると言いたいのか。それも非常に良くない関係だと。……うん。私の負けだ。負けでいいよ。別にアイドルネキやその家族に迷惑掛けたい訳じゃないし。

 

「はぁ……分かりました。私の負けでいいです」

『ふふ、それじゃあ色々と……教えて貰いましょうか?』

 

 その後私は妙にハイテンションなアイドルネキに根掘り聞かれた。身長から始まってスリーサイズ━━図り方を電話越しにレクチャーする気の入れよう━━まで……地獄だ。地獄でしかない。こうなるからファッションは面倒くさいんだ。

 と、いうか。アイドルネキ上機嫌過ぎやしないか? まさか外聞とかどうでも良くて、何か別の狙いが……な訳ないか。

 

『なるほど……うん、今から行けば間に合うわね。それじゃあシロちゃん。また明日電話するわね!』

「はい……あぁ、アイドルネキ」

『ん? なに、シロちゃん?』

「おやすみなさい」

『ふふ、えぇ。おやすみなさい。シロちゃん』

 

 お互いに挨拶を交わし、疲れきった私は上機嫌なアイドルネキとの電話を切る。長いため息。膝が笑う。肩が重い。

 

「あー……うー……疲れたよぉ。ポチぃ……」

「わふぅ……」

 

 慣れない事はするもんじゃない。精も根も尽き果てた私はポチをモフモフする事で英気を養う。それをポチは「あのくらいでだらしない……全く、仕方ないな」とでも言いたげな様子で受け入れてくれる。あぁ、今日も私の家族は優しい。

 

「あぁ~モフモフー……」

 

 それから暫くモフモフしていたが、ハタと思い出す。東郷お爺ちゃんに電話して予定変更を伝えねばと。

 

「……あ、東郷お爺ちゃん? うん。私だよ。それで東京行きの日程なんだけど━━」

 

 ポチに軽く寄りかかりながら、私は東郷お爺ちゃんに予定変更を伝え……その後は特に何もする事なく眠りにつく。

 ━━何か大事な事を忘れている様な、奇妙な焦りを抱えて。



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第10話 配信、序盤ポケモン達とモンスターボール

「はい、皆さんこんばんは。シロです。事前の告知通り、今日はお絵描き配信メインでいきますよ」

 

 東郷お爺ちゃんとアイドルネキとの話し合いから丸一日後。アイドルネキの迎えが明日に迫った夜、私は配信者として自分の机に着いていた。

 手元にはいつもの道具達。そして視線を動かせば……シロ民達の声がある。

 

『わこつ』『初見』『待ってた』『初見』『ワイも初見』『俺古参』『船の上で見る配信も案外いいわねー』

 

「はい、わこつです。初見さんはゆっくりしていって下さいね」

 

 各コメントに反応しつつ、視界に捉えたアイドルネキらしきコメから予定は順調らしい事を感じる。とはいえ配信中に話す話題でもないからスルーするしかないが。

 さて。

 

「今日はポケモンを二匹と、風景画を一枚書こうと思います」

 

 私はそう言いつつ手先を動かし、ポケモンを描いていく。頭に思い浮かべるのはポッポと同じ序盤鳥にも数えられる事のあるポケモン、オニスズメだ。

 オニスズメを選んだ理由は主に2つ。先日描いたのがポッポだという事と、オニスズメがカントー地方で比較的生息数の多いポケモンだと推測できる事。つまり、私の推測通りポケモンが現実に現れたのならば、人々が最初に遭遇する可能性の高いポケモンだからだ。

 

「ちなみに今日書くポケモンは、カントー地方でよく見かけるポケモンなんですよ。良かったら覚えて行って下さいね」

 

 そういう理由から選んだので当然こういう押し付けがましい事も言う。普段なら言っても疎外感しか感じれないから、絶対に言わない言葉なのだが……

 

『OK!』『なるほど、今日はそういうチョイスか』『まぁ、そうなるな』『むしろ有り難い?』『遠回しに備えろと……関東民は聞いてるな?』『聞いてる。有り難い』『関東活動部隊向けの内容になりそうだ』

 

 どうやらシロ民は概ね察してくれているようだ。関東で活動する有志の協力者達の助けとなればいいのだが……

 問題は。

 

『んんー予備知識いる感じかな』『カントー?』『ポケモン?』『あー、初見連中は混乱しかないか』『コメで補足してやるから読め、聞け、絶対損はしないから』『りょ』『ハードル高いのか低いのか分からんなw』

 

 初見の人達は置いてけぼりだと覚悟していたのだが、シロ民達が有能で助かった。これで初見の人達にも伝える事が出来そうだ。今は少しでもポケモン知識を持つ人を増やしておきたいからな。

 さて、そうこうしている内にも手はオニスズメを描き続け、まだ完成には遠いがオニスズメだと判断出来る程度には描き上がっていた。鋭い目付きに赤く小さな翼。我ながら、なかなか躍動感あるオニスズメが描けたと思う。……後で背景を付けてサイトに上げておくか。

 

『上手いな』『鳥?』『てか描くの早い』『まぁ、鳥だな』『オニスズメか。確かに出てきそうだ』『俺、ポッポも好きだけどオニスズメも好きなんだよな……』『浮気はよくないぞ』『ナイスボート』

 

 どうやら古参の人は概ねオニスズメの事を知っている様だ。そこそこ描いてるから不思議ではないのだが、覚えて貰えていると実感出来るのは嬉しい。刺されている人は……放っておこう。

 

『ナンバー21、オニスズメ。ことりポケモン。タイプ、ノーマル、ひこう。全長30センチ。鳥型のポケモンではあるが、羽が小さい為に飛ぶのは苦手。ナワバリ意識が強く、ポッポに比べて好戦的。食欲旺盛でむしポケモンを襲う事もある』

『有能ニキ有能』『速報、有能ニキ今回は有能!』『(`・ω・´)』

『へー、結構作り込んでるんだ』『そういえばそんなだったな』『鳥なのに飛ぶのは苦手なのか……』『てか大きい。大きくない?』『ポケモンにしては小さいぞ』『アイエエエ……』『むしポケモン好きのワイ。少し悲C』『アキラメロン。むしポケモンの宿命や』

 

 っと、どうやら今回はニキの仕事が間に合ったらしい。台詞を取られたと嘆くべきか、喋る手間が省けたと喜ぶべきか。まぁ、取り敢えず。

 

「ニキ、説明有り難うございます。初見さん達は楽しんで、シロ民は覚えて行って下さいね。……はい、オニスズメの完成です。色塗りは後日にして、次に行きますね」

 

『絵上手いな』『オニスズメイケメンやなぁ……』『なにせ鬼雀だからね』『それ語感が矛盾してないか……?』

『シロちゃん早足?』『今回は風景画も描くから、それやろ。まぁしゃあない』『てか今回は復習みたいな側面もあるからな』

『おら、初見はじゃんじゃんコメントで質問するんだよ。シロ民が答えるゾ』

 

「絵の上手さはちょっとした自慢なんですよ? 有り難うございます。オニスズメはイケメンさんですからね。……はい、今回は早足です。質問コメはシロ民の皆さんに任せますね」

 

 手早くコメントに答えて、次の紙にポケモンを描いていく。画面に流れるコメントを拾う事もせずに思い浮かべるのは……コラッタだ。

 紫色の体毛と突き出た前歯。手先はスルスルと動き、コラッタを描き出していく。スッスッと、あるいはシャシャっと。

 そうして特徴的な前歯を含む頭部を描き終えた私がチラリとコメントを覗いて見ると、意外と言うべきかシロ民は優秀だった。

 

『━━という感じでポケモンはシロちゃんのオリキャラゾ』『本人は否定するけどな』『なるほど』『りょ。後でウェキ見てくるわ』

『これはコラッタかな』『コラッタやね』『ネズミか』『ネズミだな』

 

 どうやら私がコラッタに集中している間に初見さんの質問に答えてくれていたらしく、何人かはまだ頭部だけなのにコラッタだと指摘してくる。こういうのは有り難いし、覚えて貰えているというのは嬉しい話だ。

 ……オリキャラ云々だけは、仕方ないとはいえ不満だが。

 

「シロ民の皆さん、質問への対応有り難うございます。えぇ、これはコラッタですよ。かなり数の多いポケモンで、1匹居たら40匹居るといわれるポケモンです」

 

『ナンバー19、コラッタ。ねずみポケモン。タイプ、ノーマル。全長30センチ。特徴的な前歯は一生伸び続けるので、定期的に削る必要がある。警戒心がとても強く、高い生命力と適応能力を持つ。放っておくとドンドン増える』

『有能ニキ有能……?』『たぶん有能』『速報、有能ニキ、たぶん有能!』『(`・ω・´)』

『まさにねずみ』『デカイねずみ』『作り込み凄いなぁ』『というかその説明だと台所の茶羽じゃないか……?』『あれよりは若干マシだろ。たぶん』

『ねずみ……そういえばねずみの遊園地、結構前に新しくなったんだっけ?』『あ、おい馬鹿ヤメロ』

 

 ニキが補足してくれたので、これ以上言う事が無くなってしまった。今回の目的上なら黙っていても問題無いが……ここはコメントを拾うか。うーん、そうだなぁ……G云々は触りたくないし、遊園地か? とはいえ。

 

「ニキ有り難うございますね。コラッタはニキのいった通りのポケモンですよ。……しかし遊園地ですか。楽しそうですよね」

 

 ニキを労い、遊園地に対して率直な感想を述べておく。楽し『そう』という推測なのは、今世では一度も行った事が無いし、前世でも学校行事なんかで片手で足りる程度しか行かなかったからだ。それに私は煩いところや人の多い場所は苦手だし、普通なら恐らく楽しいのだろうというのが正直な感想だった。まぁ、貸し切りとか人が少ないのであれば……

 

「ジェットコースターとか、面白そうですし……お化け屋敷とかもありですね。ゴーストタイプのポケモンとか出てきそうです」

 

 ジェットコースターは純粋な興味から。お化け屋敷はポケモン云々もそうだが、今のボディを勘案してのチョイスだ。前世のボディでは見栄えもクソも無いが、今世のボディならさぞ見栄えするだろうという安直かつ下世話な考えだった。

 

『セヤナ。ポケモンとか出てきそうやな』『ポケモンとかな!!』『ジェットコースターも楽しいと思うで!』『ゴーストポケモン見れるかもな!!』『なぁ、今何かニュアンスが……』『何で推測系……?』『黙れ、妙な事を言う奴は今すぐ黙れ』『闇に引きずり込むぞ』『ゴーストポケモンコワイヤッター』『闇深の気配』

『大丈夫。何の邪魔も無ければ遊園地行くから。何なら貸し切りでね!』『さすネキ』『流石はアイドルネキ。スケールが違うゥ!』

 

 ふむ、案外コメントが付いて来ていて驚きだ。幾つかよく分からないのはいつもの事だが……殆んどのコメが茶化してくるかと思っていたので、意外という他ない。

 しかしアイドルネキの貸し切り云々は……まぁ、流石にジョークだろう。ゲルマンジョークの親戚か何かだ。

 

「ゴーストポケモン、見てみたいですねぇー……はい、コラッタ完成です」

 

『相変わらず上手いな』『しかも早い』『安……くはないか』

『ねずみ?』『ネズミやな』『紫鼠や。出っ歯のな』『なお出っ歯過ぎると物が食えなくて餓死する模様』『不憫な……いや、アホなのか?』『アホ可愛いだろ?』『せ、セヤナー』

 

 ふむ、多少は印象付いただろうか? これでオニスズメやコラッタを含めたポケモンに理解が広がると良いんだが……その時になるまで何とも言えないか。

 さて、次は。

 

「では次の絵に行きましょう。次は風景画、モンスターボールを中心に描いて行こうと思います。」

 

 やはりポケモンといえばモンスターボールだろう。こいつに関する知識が無ければ、ポケモンを楽しむ事は困難だ。

 

『モンスターボール?』『あぁ、あの紅白玉か』『あれもよく分からん代物だよな……』『きのみみたいにアレが出てきたら……学者連中は失神するなw』『おら、説明ニキ出番やぞ』『(`・ω・´)』

 

 まぁ、きのみの様にモンスターボールがひょっこりと出てくれば、大なり小なり混乱は間違いなく起こるだろう。この絵とニキの説明で多少なりそれが緩和できると良いのだが……っと、そろそろ始めないと時間がキツいか。

 

「この絵は後でオークションに出すので、気になる人は買って下さいね」

 

 私はそう言って何時も使う紙よりも大きく、また上等な紙を取り出す。残りの時間では……全ての色塗りは無理か。仕方ない、さっさと取り掛かろう。

 鉛筆を手に取って、思い浮かべるのはモンスターボール。そしてその側で休むポケモン……そうだな、今回は序盤の虫ポケモンにしょう。ならばキャタピーとビードルだろうか? ━━よし。

 

「~♪」

 

 私はテキトーにチョイスしたポケモンの主題歌を歌いながら、スルスルと手を動かしていく。

 モンスターボール、キャタピー、ビードル。ならば背景は森。手は自然とそれを加味した動きになり、ラフではあるが大きな切り株を描き出す。そしてその上にポツリと置かれるモンスターボール。どこか寂しげだ。ならばと私はそれの側にキャタピーとビードルを描いていく。これで賑やかになった。後は背景に木々を描けば、ほら、優しげな木漏れ日が差し込んでくる。

 

『唐突に歌うなぁ……』『しかも完全新曲やぞ』『お歌シリーズがまた増えるな』『シロちゃん上機嫌やん』

『スッゴいなぁ』『ワカル。スゴイ』『上手いよね』『そして早い』『安くはないがな。また万行くだろ……コレ』『ラフスケッチでこれだもんな』『んー、今回は譲るわ。毎度私じゃ芸が無いし』『やはり買ったのは貴方か……』『あの値段じゃ安かったぐらいだけどね』

 

 チラリとずらした視線に入った情報によれば前回の絵はアイドルネキが買った様だ。7、8万の値がついたはずなんだが……そこまでの価値は無いと思うぞ?

 しかしニキの説明は終わったのか? それともまだか? そろそろ歌も品切れなんだが……

 

『モンスターボール。ポケモンをゲットする為に必要な球状の道具で、ポケモンを捕獲する能力を持つ。幾つか種類があり、最も基本的な物は紅白カラーをしている。ボールの中は快適な環境が保たれており、ポケモンの出し入れはスイッチやポケモン自身の意思に基づいて行われている様子。なおポケモンをボールに入れると縮小する様に見えるが、これはボールそのものの力ではない(シロちゃん&ポケモンまとめウェキより抜粋)』

 

「はい、モンスターボールについてはニキの書いた通りですね。詳しく知りたい方はまとめウェキへお願いします。長いので」

 

『セヤナ』『ニキ有能?』『かろうじて有能』『りょ、後で見て見ようかな』『(`・ω・´)』『関東活動部隊各員は必ずチェックしろよ。てか暗記しろ。俺はした』『俺もした。ていうかそれぐらいもうやってたよ』

 

 ふむ、関東で活動する有志の人達は思ったよりも本腰でやってくれる様だ。実に有り難い。……これならポケモンを、あるいはモンスターボールぐらいなら見付けれるかも知れないな。

 

「━━っと、一先ず完成です。ここから先は配信外で仕上げてオークションに出しておきますね。…………それと、この絵にあるようなボールを見掛けたらご一報……はしなくていいので、一つは確保しておくと良いと思いますよ」

 

『セヤナ』『ソレナ』『ワカル』『ワカル~』『まぁ、関東活動部隊の目的の1つはソコだからな』『政府より早くモンスターボールを確保し、シロちゃんに届ける……ハードなミッションだぜ』『やる意味しかないならやるけどな』

『なんかよく分からんけど、見つけたら確保しとくわ』『あれか、きのみ? みたいにコイツが出てくるって事か?』『気になった初見はウェキかスレに行け。そして仲間になれ。人手が足りん』『作戦エリアは関東全域だからなぁ……』

 

 うん? なんか思ってたより大規模にやるみたいなんだが……今回の配信は余計なお世話だったか? いや、結束を強め、新規を引き込むという意味では悪くないはずだ。

 

「んー、少しだけ時間が余りましたね。では、少しだけ雑談して終わりましょうか」

 

 私はそう言って描き掛けの絵を脇に置き、短い時間ではあったがコメントを1つ1つ拾って雑談していく。

 それが終わって配信が終了した後、私は描き掛けの絵を仕上げていった。バランスを整え、線を強くし、色を付け━━そうしているうちにも夜は更けていき……オークションに出す手続きを済ませて、ベッドに入り込んだ頃には日付が変わってしまっていた。

 ……アイドルネキとの合流まで、後数十時間。



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第11話 夜の海に浮かぶ城

 モンスターボールと虫ポケモンの絵をネットオークションに上げた日から一夜明け、アイドルネキが迎えに来るその日の夕方。私はいつものパーカーとズボンスタイルでアイドルネキの迎えを待っていた。本当ならスカートぐらい着た方が良いのだろうが、生憎持っていない。その辺はアイドルネキのオシャレ指導に期待? うん、期待するしかないだろう。

 ちなみに手持ちの荷物は一切無い。全てアイドルネキが用意すると豪語して譲らなかったので、渋々任せたのだ。まぁ、旅行カバンなんて持っていなかったから助かったけども。

 

「わふぅ……」

「…………」

 

 ちなみにアイドルネキを待っているのは私だけではない。アイドルネキの許可もあって連れていく事になっているポチと、見送りがしたいと言った東郷お爺ちゃんもアイドルネキの到着を待っている。

 ポチは暇そうにしつつも私の側で行儀よく待っており、東郷お爺ちゃんはどこかピリピリとした雰囲気を放っていた。私? 私は緊張もあるが、基本的にはポチ寄りだ。というかそろそろ来てくれないと肌が焼けてしまうのだが……まさか迷子か?

 

「……シロちゃんや。迎えはそろそろだったな?」

「うん。さっき連絡があって、あと10分もあれば着くはずだって」

「…………」

 

 焦れてきたのか、東郷お爺ちゃんが2度目の確認をしてくる。ちなみにその連絡があったのは約10分前。正確には7、8分前だろうか? どちらにせよそろそろのはずだが……っと?

 

「グルゥ……?」

「ふむ」

「お、おぉ……」

 

 何の前触れも無く曲がり角を曲がって現れたソレに、私達は三者三様の反応を示した。ポチは怪訝そうに、東郷お爺ちゃんは何かを思案する様に、そして私は感嘆の声を漏らす。

 約束の時間間近に私達の前に現れたのは……リムジンだ。それも大統領とかが乗っていそうな、黒くて長いアレ。まさか……?

 

 いや、いやいや、幾ら何でもそれは無いだろう。あのリムジンは偶然ここを通り掛かっただけに違いない。そう私が思案している間にも、リムジンはひび割れたアスファルトを蹴りながらこちらへと近付いて来て……私達の目の前で止まった。

 目の前に黒光りするリムジンの横っ面、映る犬と老人と少女。それらを呆然と見ていると、リムジンからずいぶんと体格の良い運転手だろう人が降りて来て、リムジンの扉を開けていく。

 一拍。私とは真逆の艶やかな黒髪がサラリと流れて、その綺麗な人は降りて来た。間違いない、テレビで見たことがある。アイドルネキだ。確か本名は……

 

「ふふ、こうして会うのは初めてね。伊藤結香よ。ユウカでいいわ。宜しくね? シロちゃん」

 

 本名、伊藤ユウカ。シロ民通称アイドルネキ。祖父に歴戦の政治家を、父に大企業の社長を持つ現役アイドルにして名女優。間違いなく有名人である彼女は、握手だろう手を差し出しつつ私に目線の高さを合わせてくる。

 彼女の挨拶は堂に入っているというのか、実に自信溢れる堂々たる物で、コミュ症気味の私からすればそれだけで飲まれてしまう様な物だった。……とはいえ飲まれてばかりもいられない。私は何とか手を伸ばして握手しつつ、挨拶を返す。

 

「ぁ、あ、はい。宜しくお願いします。えっと、不知火白です」

「えぇ、よく知ってるわ。……それで、その子がポチで、そちらの御仁が噂のお爺ちゃんかしら?」

「は、はい。この子がポチです。それでお爺ちゃんが……はい、噂のお爺ちゃんです」

 

 しどろもどろになりつつもポチを紹介し━━このときポチの視線が呆れた様子で「胸を張って、ちゃんとしろ」と言っていたような気がするのは気のせいだ━━次に東郷お爺ちゃんを紹介しようとして失敗した後、東郷お爺ちゃんが半歩前に出る。

 もしかしてフォローだろうか? フォローであって欲しい。いや、やっぱりいい。フォローされても恥ずかしいだけだ。なんだよお爺ちゃんはお爺ちゃんって……私のアホォ……これじゃコミュ症そのものじゃないかぁ…………

 

「どうも。自分は東郷といいます。シロちゃんからは東郷お爺ちゃんと呼ばれていましてね。……何でも、これからシロちゃんがお世話になるとか。伊藤さん、でしたな? 何とぞ、宜しくお願いします」

「━━えぇ。任されましたわ。東郷さん」

 

 なんだろう。ごく普通の挨拶のはずなのに、アイドルネキの後ろに龍が、東郷お爺ちゃんの後ろに虎が、それぞれ幻視できるのだが……気のせいか? うん、気のせいだな。気のせいということにしておこう。

 一拍、二拍。私が自分自身に必死に言い聞かせる事暫し。二人のにらみ合いは続いている。それはアイコンタクトにしては長すぎ、また空気も重い。まるでお互いの力量を測っているかの様だ。……あぁ、この重苦しい空気はいつまでも続くのだろうか? 耐えかねた私がそろそろ割って入るべきかと考えたとき、厳つい運転手らしき人が動く。

 

「お嬢様。そろそろ」

「……そうね」

 

 ふっ、と。空気が揺らぐ。チャンスだ。

 

「じゃあ、東郷お爺ちゃん。私行くね」

「…………あぁ。気をつけてな」

「大丈夫だよ。……さ、ポチ。行くよ」

 

 これ以上にらみ合いをさせる訳には行かないと、私は東郷お爺ちゃんに手早く出立を告げる。ポチも直ぐに反応してくれたので、私はそのまま一歩踏み出した。

 

「えっと、失礼します?」

「えぇ、どうぞ」

 

 一応というか、アイドルネキ……ユウカさんに断りを入れてリムジンの中に乗り込む。中はハリウッド映画に出てくる様な……いわばリッチな雰囲気に包まれており、一般平民でしかない私はある種の場違い感を感じるざるを得ない。とはいえ私に続いてユウカさんも乗り込んで来るので無理やり足を二歩動かしたが、そこでユウカさんが乗り込み終わったのか扉が閉められた。場違い感が増す。

 ……いや、しかしプレッシャーに負けてばかりもいられない。さしあたって、どこに座った物だろう? そう私が悩んでいるのが分かったのか、ユウカさんが軽く手を引いて席まで連れて行ってくれる。有り難い。が、人肌の暖かさ……それも綺麗な人の肌ときているせいが、感覚が酷く鈍く、やたら現実感が薄い。頬をつねるべきだろうか?

 

「ふふ、緊張してるの? シロちゃん」

「ぃ、いえ、大丈夫です」

 

 何が大丈夫なのか、私にも分からん。

 半ば混乱した思考をしている間にリムジンが動き出し、窓の外の景色が流れていく。あぁ、家が離れていく……いやいや落ち着け、私は今から関東にいくんだぞ? これくらいなんだというんだ。早くもホームシックなんて冗談じゃない。

 

「わふぅ……」

 

 私の足元でポチが呆れた様子で声を漏らす。そうだ、私にはまだポチがいる。何も問題はない。

 私は始めての場所にも関わらず落ち着いた様子のポチを軽く数回撫で、落ち着きを取り戻す。そうしてハタとユウカさんの方を見れば、何だか良い物を見たような、そんな表情をしていた。

 

「ぇっと、どうかしましたか? ユウカさん」

「いいえ、仲が良くて微笑ましいなぁーって。それだけよ」

「そ、そうですか……」

 

 嘘は言ってないのだろう。ユウカさんは微笑を浮かべながら私とポチを視界にいれ続けている。ずっと見ていたい、そういわんばかりに。

 ……しかし、あれだな。精神年齢はともかく、肉体年齢的には同年齢ないし同年代のはずなのだが……色々と違う。それは身長もそうだし、女性的な部分もそうだが、何より内面的なソレが違い過ぎる。こう、覇気の様な物を感じるのだ。会話にイマイチ慣れないのは……きっとそのせいだろう。そうでなければ私がコミュ症だという事になってしまうのだから。

 

「…………ねぇ、シロちゃん」

「はい。えっと、なんでしょう?」

「……撫でても良い?」

「? ……あぁ、はい。大丈夫ですよ」

 

 考え込んでいた事もあって一瞬何の事か分からなかったが、直ぐにポチを撫でたいのだろうと判断した。何せポチの毛並みは素晴らしく、撫でていると落ち着いてくる程。ユウカさんはきっとそれを見破ったに違いないと確信し、この幸福を分かち合うべく許可を出したのだが……何故かユウカさんは私に視線を合わせ、滑る様に近付いて来た。

 

「ゆ、ユウカさん……?」

 

 困惑。私の声はそれに尽きた。

 何せ、近い。物凄く近い。息の当たる距離だ。うっすらと花の香りがする。香水か? ほのかに甘いにおいだ。

 

「ふふ」

 

 アギトだ。龍のアギトが見えた。

 私が困惑のままにソレを幻視していると━━ユウカさんの手がポン、と。私の頭の上に乗せられる。そしてそのままゆっくりと手を動かして…………そこで私はようやく思考が追い付く。撫でられていると。あぁ、撫でたいのはポチではなく私かと。……いや、何故に?

 

「ん、っと。軽いわね。シロちゃん」

「? ……!?」

「わふぅ……? グルゥ━━」

 

 気づけば私はユウカさんの膝の上に乗せられ、そこでゆっくりと頭を撫でられていた。それこそ幼子の様に、子供の様に。

 あぁ、最早私の頭の中にはクエスチョンマークしかない。何故だ。何故そんな事を? 何故私を撫でるのだ? ふとポチに視線をやったが、顔を逸らされた。解せぬ。

 

「ぇ、ぇっと、ユウカさん」

「なぁに? シロちゃん」

「わ、私、なんで撫でられてるんですか?」

「それは━━っと、そうね。んー……シロちゃん。髪のお手入れ、ちゃんとしてる?」

「か、髪のお手入れですか?」

 

 質問を質問で返されたが、大した事でもないので軽く考えてみる。

 髪の手入れ。それはつまり、あれだろう。世の女性達がやっている事をしているかということだろう。コマーシャルで出てくる様な品々を使っているか、と。

 思考時間はホンの数秒。答えは直ぐに出た。

 

「いえ、何もやってないです」

 

 こちとら前世は野郎なのだ。その手の事に興味は無く、知識も無ければ必要性も感じなかった。そのせいか私の髪はちょっとばかりボサボサというか、何というか、そこまで綺麗ではない。当然洗ってはいるので汚い訳でもないが……まぁ、アイドルや女優としての顔を持つ人からすれば赤点間違いなしの状態だ。気になって仕方なかったに違いない。

 

「うん、そうよね」

「わふぅ……」

 

 知 っ て た とでも言わんばかりの軽い調子で声が2つ返ってくる。服を持ってない時点で察せられたのだろう。ポチが呆れた様に狸寝入りに入り、ユウカさんの私を撫でる手が強ばった気がするのは……たぶん、気のせいだ。

 

「船に着いたら……まずお風呂ね。簡単にでも整えておかないと」

「えっと、そんなに駄目ですか?」

「駄目。全然駄目。当然今のままでも可愛いけれど、磨いてないのは勿体無いわ」

「は、はぁ……そういうものですか」

「そういうものよ」

 

 欠点どころかマイナス表記だと言いたげなユウカさんの声に押され、もうどうにでもなーれと諦めにも似た境地に至る。アイドルで女優なのだから変な事にはなるまい、とも。

 そんな事を頭の端で流しながら、ユウカさんに頭を優しく撫でられ続ける事暫し。私はふと思った。

 

「あの、ユウカさん。船にお風呂……あるんですか?」

 

 疑問に思ったのはそこだ。私の思い浮かべる船はこう……漁船のデカくて高い版みたいな、金持ちのボートであり、それにお風呂が付いているとは思えなかったのだ。勿論フェリーとかなら付いているかも知れないが……今回の船はユウカさんがコネで引っ張って来た奴だと聞いている。幾らなんでもフェリーサイズではないだろう。そうなるとやはりお風呂の存在は疑問視されるのだが……

 

「えぇ、幾つか付いているわ。シロちゃんはどんなお風呂がいい?」

「……ぇ? いや、えっと、お任せします?」

「ふふ、任されたわ」

 

 ? ……気のせいか。何か幾つかお風呂があり、選べるみたいな事を言っていた気がしたが……うん、気のせいだ。幾らかユウカさんがアイドルで女優で、父親が大企業の社長で、祖父が元大物政治家でも限度がある。あれだ、ジョークに違いない。金持ちジョークだ。そうでないなら今回の船のサイズは━━

 

「ん、着いたみたいね」

 

 どうやら私がぼんやりとしているうちに目的地に着いたらしい。

 厳つい運転手さんが扉を開け、私とポチはユウカさんに連れられて外に出た。日はとうに沈み、電気の明かりが辺りを照らしている。潮風は……特に感じない。というか、辺りには背の低いビルが立ち並び、真新しい背の高いビルが両手の数程見える。

 

 ━━ここは港ではなく、市内ではないか?

 

 私が疑問を覚えていると、ユウカさんは厳つい運転手さんに2、3話した後、私の手を引いて背の高いビルへと入っていく。ビルの内装は……かなり高級感があって、私の場違い感が凄まじい。

 しかしユウカさんはそんな事はどうでも良いとばかりに進んで行き、あろう事かポチまでそれに追従しだした。ユウカさんもポチも私を引っ張り過ぎない様に、置いていかない様に気をつけてくれてはいる様なのだが……私は付いていくのに精一杯だ。というか何故ポチは平然としていられるのか。

 

「遅いわ」

「申し訳ありません」

 

 気がつけば私とユウカさんはエレベーターの前で、背後に厳つい運転手の人が居た。何やらユウカさんと話しているが、耳に入らない。場違い感が凄まじいせいだ。

 

「わふぅ……」

 

 あぁ、こんな状況でも私の家族は頼もしい。ポチは平然と待っている。

 

「さぁシロちゃん、ポチちゃん、行くわよ」

 

 ぼさっとしているうちにエレベーターが到着し、私達はユウカさんに引っ張られる様にエレベーターに乗り込む。厳つい運転手の人も一緒だ。

 私は右手をユウカさんに握られたまま、空いた左手でポチを撫でる。そうして視線を動かせば……エレベーターはどんどん上へ上へと上がっている様だった。いったいどこで降りるのか、聞けないままエレベーターは最上階へ。

 

「こっちよ。シロちゃん」

「わふぅ」

 

 ユウカさんに手を引かれ、ポチに背を押されて私は進む。困惑しつつも通路を歩き、階段を上り、そして。

 

「……シーホーク?」

 

 辿り着いた先。ビルの屋上で私達を待っていたのはヘリポートと、ローターを緩やかに回転させる……SH-60シーホークらしきヘリ。いや、なぜ軍用の対潜哨戒ヘリがここに? というかいつの間に運転手の人はヘリの操縦席に移動したのだ? 疑問を抱く私達をよそに、ユウカさんは手を引いて、ポチは背を押してくる。

 いや、そんな、まさか。

 疑問を抱えたまま私はヘリの中へと押し込まれ、ローターの回転音が大きくなっていく。あぁ、扉が閉められた。

 

「では、飛びます」

「えぇ。シロちゃん、飛ぶわよ」

 

 待って、待ってくれ。なぜ私はヘリに乗っているんだ。船に乗るのではなかったのか。というかポチは落ち着き過ぎではなかろうか? ぇ、なんでそんな「やれやれ、落ち着きのないやつめ」みたいな目で見られてなけらばならないんだ!? いや、落ち着いてるポチの方がおかしいんだからな!? ……おかしいんだよな? あれ? わたしが駄目なだけなのか?

 グルグルと思考が頭を駆け回り、ポチには呆れられ、ユウカさんには微笑ましいものを見る様に眺められる。……あぁ、私が駄目なだけか。そう納得したとき、ヘリが飛んでいる事に気づいた。

 

「わあ……」

 

 歓声、だろうか。声が漏れる。今や市内のビル街は私の下にあり、眩い電気の明かりが眼下を流れていく。

 小さな窓にへばりつく様にして下を眺め、光が通り過ぎて行き……機体が海に出た。何気なく視線を動かして、瞬きを二回。目を擦って、もう一度瞬き。うん、いや、アレは何だ? 小さな港から程近い海の上に、建物がある。爛々とつけられた電気の明かりで海を照らし、そのナニカは存在感を放ち続けている。

 

「ふふ、紹介するわ。アレがシロちゃんがこれから乗る船。ギガヨット、リヴァイアサン号よ」

「リヴァイアサン……」

 

 神話の怪物の名を持つ海に浮かぶ城を見ながら、私は自分の心が浮き足立っているのをひしひしと感じずにはいられなかった。




 書物ノート


 月刊ギガヨット
 特集 リヴァイアサン号

 さて、ここまでリヴァイアサン号の魅力について語って来たが、ここでは視点を少し変えてリヴァイアサン号に搭載されているヘリにズームしてみよう。
 前のページでリヴァイアサン号に搭載されているヘリは3機だと言い、またSH-60シーホークが着艦している写真も提示した。そうなると気になるのは普段搭載されているヘリの種類だろうと思う。民間のヘリか、それとも独自のコネを利用して手に入れた軍用機か、実に気になるところだ。
 そこで筆者は過去と現在のリヴァイアサン号について調べに調べ、搭載ヘリの情報を集めた。
 そして分かったのは……過去のリヴァイアサン号は3機とも民間ヘリを使っていたが、SH-60シーホークの写真が撮られた以降は全てシーホーク系のヘリを搭載しているということだ。
 まずSH-60Bシーホークが1機。対潜ソナーやミサイル発射装置も持つマジモンの軍用ヘリだ。とはいえある程度カスタムされている様で、他のSH-60Bシーホークとは微細な違いが見られる(比較写真)
 そしてHH-60Hレスキューホークを2機。こちらは目立った武装は特にないが、本格的なカスタムが施されているのか、大元の機体からかなり解離している。しかしそれは主に機体内部からくる話らしく、外見はよくよく見比べないと分からない程度の差異の様だ(比較写真と注略)
 これら軍用ヘリをどうやって手に入れたのか、なぜ軍用ヘリを手に入れたのかは定かではないが、どうやら船長のコネと趣味であるらしい。とはいえリヴァイアサン号はその巨体故に港に入れない事もままあり、船を沖合いに停泊させて人員や物資をヘリで運ぶシーンも多い様なので(HH-60Hレスキューホーク・リヴァイアサンカスタムで移動している写真)少しでも性能の良い物が欲しかったのかも知れない。またリヴァイアサン号は過去海賊と戦闘になり、海賊の乗るボートに対して衝角戦闘……つまりはラム・アタックを敢行、見事海賊船を撃沈して見せた過去があり━━(次のページに続いている)


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第12話 お嬢様の手は広い

 side:伊藤ユウカ

 

「こちらリヴァイアサン・ツー。リヴァイアサン号管制へ、着艦許可を求む」

『こちら管制。了解だ、リヴァイアサン・ツー。着艦を許可する。それと、君のお姫様に艦長から伝言だ。受け入れと歓迎、それに出港の準備は終わっている。自分は船酔いしたので部屋にこもるから、船の指揮は自由にしていい……だそうだ。ククッ、散々この船で世界中を巡ってるのに今更船酔いとは、妙な話だとは思わないか? しかもさっきまではピンピンしてたんだぜ?』

「管制、了解した。伝言は必ずお嬢様に伝えておこう。それと、その件に関してはノーコメントだ」

 

 ようやく、ホントにようやく会えたシロちゃんを眺めていた私の耳にそんな会話が飛び込んでくる。念の為と小型のインカムを耳に付けていたせいだろう。良く聞こえた。

 私は同じ話を繰り返そうとするマネージャーに手振りで充分だと伝え、操縦に集中させる。このヘリにはシロちゃんが乗っているのだ。墜落は勿論、操縦ミスによる微かな揺れすら許すつもりは無い。

 

「わぁ……ふわぁ……」

 

 さて、私を恐れてか苦手なのか、船を放棄して自室に引きこもった船長の事なんてどうでもいい。

 私は直ぐに視線を元に戻し、ヘリの窓にへばりつく様にしてリヴァイアサン号を熱心に見るシロちゃんを見る。

 

「ふふ……」

 

 あぁ、思わず笑みが溢れる。我慢なんて出来ない。中学一年生程で止まった愛らしい身体、肩口を過ぎて伸びる長い白髪、爛々と輝く紅い瞳。まるで雪の精霊の様な、それら全てが可愛いらしく、いとおしい。

 私は今すぐシロちゃんを抱きしめたい衝動を抑えながら、キラキラと輝く紅い瞳に焦点を合わせる。今の今まで困惑を始めとした感情に揺れる事はあっても、基本的にジト目にハイライト無しがデフォだったその目に映るのは私ではなくリヴァイアサン号。そこにドロリした黒いものを感じるも、普段では見れないのだろうシロちゃんを眺めて洗い流す。シロちゃんが楽しそうなのだからいいじゃないか、無理矢理振り向かせるのはナンセンスだ、と。

 

「わふぅ……」

 

 シロちゃんの側から漏れる呆れた様子の鳴き声。毛並みも良く、体躯も立派な黒い日本犬。ポチ、通称ポチネキだ。私は非常に優秀な番犬である彼女をチラリと見やり、彼女もまた一瞬だけ視線を合わせてくる。

 

「グルゥ━━」

 

 何を言っているかなんて分からない。だが私が彼女のお眼鏡に叶ったのは間違いないだろう。同時に「妙な真似をしたら殺す」とも。

 私はその野性的な殺意を正面から受け止め、また同種の物を叩き付けておく。交差は一瞬。

 

「グルゥ……」

 

 彼女は興味を失ったかの様に私から視線を逸らして、狸寝入りに戻る。見ようによっては私の圧に屈した様にも取れるが、そんな訳が無い。マウントを取ったのは、あちらだ。

 

「ふふ……」

 

 本当に、シロちゃんは面白い。可愛いらしいだけでなく、様々な傑物を惹き付けるのだから。

 私はポケモンでいうところの『グラエナ』の様な日本犬を視界に入れつつ、彼女達の先生だという老人の事を思い出す。彼もまた傑物……いや、英雄だった。この私があまりの力量差に思わず見栄を張ってしまう程だ。おかげでマネージャーが土産の品を渡す暇を潰してしまったが……まぁ、彼ならどうとでもするだろう。今頃部下を走り回らせてるはずだ。どうせポケットマネーを出したのだろうし、後でボーナスを出してあげなければならないだろう。実に面倒だ。が、しかし……あぁ、全く。シロちゃんはズルい。シロちゃんを知らなければこんなミスをする事も、傑物や英雄と出会う事も、自分がこんなに欲深だと気づく事も無かったのに。

 

 彼女との出会いは偶然。完璧だった……いや、完璧だと慢心し、様々な物に興味を持てなくなった私が出会った未知、夢、そして欲。それが私に取ってのシロちゃんだ。

 私はシロちゃんが語り、描く夢と未知に魅せられ、自分にも夢がある事に気づいた。またその後で知った隠し撮り写真に写る、雪の精霊の様な美しく愛らしい姿に再度魅せられ、シロちゃんを自分のモノにしたいという……ドロリとした欲にも気づいた。それからの私は未知と夢を追い、シロちゃんへの欲を抑えて生きてきた。そして、それはこれからも変わらない。……まぁ、欲の方は今後チビチビ出す事になるだろうが。

 

「お嬢様、これより着艦します」

「えぇ、分かったわ」

 

 私は耳に付けていたインカムを外し、シロちゃんの乱れた白髪を軽くまとめた後、肩に優しく手を置いて席に着かせてシートベルトの確認をする。別にそのままでも良かったのだが……

 

「ぁ、有り難うございます。ユウカさん」

「ふふ、良いのよ。シロちゃん」

 

 あぁ! なんと甘美な響きか! しかし顔に出しては幻滅されるだろう。私はアイドルと女優業で鍛えた微笑を盾にしつつ、シートベルトを確認し━━然り気無くボディタッチを行う。

 ……ふむ。やはり全体的に線が細いというか、肉付きが悪いというか、酷く痩せている。胸の膨らみなんて皆無だ。生まれて直ぐにネグレクトを受け、殆んど一人で育ってきた家庭環境を考えれば仕方ないのかも知れないが…………不憫。そう思うのは、今まで独りぼっちでも生き抜いて来た彼女に失礼か。しかしこれはあまりに……

 

「ぇっと、どうかしましたか? ユウカさん」

「……いいえ。そう、お肌の手入れもしないと駄目だと思ってね」

「そ、そうですか……?」

 

 私は内心の動揺を直ぐ様押し殺し、咄嗟にそうウソぶいた。

 あぁ、勿論そんなものは必要無い。当然やれば更に輝くのは間違いないが、現状でもツルリと、あるいはプルリとしており、緊急性は無い。

 だが私はそれが重要な問題であるかの様な調子でシロちゃんに告げ、雪の様な白髪を揺らして小首を傾げるシロちゃんを置いて自分の席に戻る。……これで私がボディタッチしていた理由が付けられた訳だ。それが本当に真実かどうかは別として。

 

 私がねじ曲げた真実にシロちゃんが気づく前にヘリはリヴァイアサン号に着艦。うん、60点。微かだが揺れた。もしこれでシロちゃんが転んで怪我でもしたら……幾らマネージャーでも許す気はない。コンクリート詰めにして東京湾に捨ててやるところだ。

 幸いシロちゃんに怪我は無かった様なので、紅い瞳がジト目に戻りつつも、困惑と期待は隠せない様子のシロちゃんの手を引いてヘリから連れ出す。

 

「「お待ちしておりましたっ!」」

「!?」

「お出迎えご苦労様」

 

 驚愕か、ピクリと小さな手を震わせたシロちゃんを横目に、私は屈強な男達の出迎えにサラリと答える。キッチリ列を作って迎えるその姿は軍隊のそれだったが、私からすれば慣れた物だ。彼らを使う立場になるシロちゃんもそのうち慣れるだろう。確か彼らの殆んどは中東でならした傭兵や元アメリカ海兵隊員、あるいは軍や警察の特殊部隊経験者でクセや我が強いが……些細な事だ。この私が演出するシロちゃんの魅力の前に、彼らも直ぐに屈服する事になるのだから。

 私がそう確信し、彼らを元の場所に戻らせようと指示を出そうとした━━そのとき。私のスマホがマナーモードで着信を告げる。何気なく相手を確認すると……ドM犬兵の文字。

 

「……貴方達、私の代わりにシロちゃんを案内しなさい。不手際や無礼は許されないわ、いいわね?」

「「イエス! マム!」」

「ぇ、ぇっと、ユウカさん……?」

「ゴメンね、シロちゃん。急用が入っちゃって、私が案内する事は出来ないわ。その代わり彼らを自由に使っていいから、このリヴァイアサン号を楽しんで来てね」

「ぇ、いや、その、え?」

「大丈夫よ。彼らは犬と思えば良いの。ポチちゃんも連れて行っていいから……ね?」

「ふえぇ……?」

 

 何が何だか分からないのだろうか、あるいはオーバーフローしてしまったのか、シロちゃんが奇妙な声を上げて混乱する。その様も可愛らしくて、今すぐ抱きしめたくなるが……我慢だ。今は犬兵からの報告を手早く受け取らねばならないし、その報告をシロちゃんに聞かせる訳にはいかないのだから。

 ふむ、仕方ない。ここは心を鬼にすべきか。

 

「貴方達、シロちゃんをエスコートしなさい。不手際があれば……分かってるわね?」

「「い、イエス! マム!」」

「ぇ? あ、あれ? えぇ……?」

「わふぅ……」

 

 屈強な男達に囲まれ、困惑しきりのシロちゃんと落ち着いた様子のポチネキが船内へと消えて行く。あれらに一通りの日本語と礼儀作法を叩き込んだのは私だし、その辺り問題は起こらないと思えるが……一応とばかりにマネージャーを顎で送り込んでおく。これで万全だ。

 さて。

 

「なに? 妙な報告なら殺すわよ」

 

 私はスマホを通話状態にし、開口一番そう言い放った。普段なら絶対にしないが、相手はある種私の同類でもあるあのドMだ。遠慮は要らない。

 

『貴女から聞いた福岡の拠点だが……2ヶ所とも、もぬけのからだ。何も無い』

「……何ですって?」

 

 電話の向こうの困惑が伝わるかの様な報告を、私は疑問系で聞き返す。

 だってそうだろう。有志の協力者である犬兵に調べさせたあの場所は、間違いなくシロちゃんを狙う変態どもの巣窟だった。武器と思われる何かが搬入されるのも一週間前に確認している。だからこそ、有志の協力者である犬兵を含めたそれなりの人員と少数の警官を、シロちゃんの移動と同時に突入させたのに……もぬけのから? まさか、読まれた?

 

「そう。逃げられたのね?」

『恐らくは。しかし逃げたにしては綺麗に引き払われているし、2ヶ所ともこれだ。かなり前から準備が行われていたとみるべきだろう』

「……何か、痕跡の様なものは?」

『無いな。全くだ。貴女の私兵や俺の様な有志の人間はともかく、連れて来た警官連中は不満を抱えて早々に引き上げた程だよ』

「そう……」

 

 警官の事はどうでもいい。いざとなれば上からどうとでも出来る。だが、完全に逃げられたというのは問題だ。これで私達は不安要素を残す事になった……

 

「間違いなく、来る。……わよね?」

『あぁ、間違いなく奴は兵を連れてそちらに行く。シロちゃんが関東に行くと聞いて、迅速に準備したに違いない。……奴はシロちゃんの帰還を待たず、関東で事を起こすつもりだ』

「チッ、忌々しい……」

『同感だ』

 

 忌々しい。実に忌々しい。あのシロちゃんが他人に触れられるだけでドロリとした黒い物を感じるというのに、かのクソッタレな変態はそれ以上の事をしようというのだ。シロちゃんを、白を汚す? あの真っ白な、無垢な白を、私以外の誰かが汚す? 許せない。許せない許せない許せない! 絶対に許さない!

 

「奴らは、絶対に捕らえるわ」

『了解している』

 

 当たり前だ。奴らは即刻捕らえて、取り敢えず拷問だ。楽に殺してなどやるものか。シロちゃんの姿を見せる事は勿論、幻聴でも声を聞かす事すらおこがましい。絶対、許さない。

 

『それと、なんだ。俺の……その、アレも、意識的に活用してみたんだが……』

「えぇ、サイコメトリー能力ね」

『……言うなよ。それじゃ俺が厨二病みたいじゃないか……』

「事実でしょう?」

『…………』

 

 サイコメトリー能力。超能力の一種で、物体に残った残留思念や記憶を拾い、過去を透視する事が出来る能力。日本では馬鹿にされる能力だが、海外では事件解決や新たな発掘等に役立てられている力だ。

 とはいえここは日本で、当然以前ならオカルトと鼻で笑われるし、笑った話だが……きのみが出てきてからはそんな気も失せた。シロちゃんの夢の前には常識なんてゴミでしかない。だからこの犬兵が超能力者でも、今更だ。

 

「いい加減認めなさい。サイコメトリーの超能力者。この私が断言したのだから」

『……横暴だな』

 

 何とでも言え。それでこの犬兵が自身を認め、結果としてシロちゃんが守れるなら安い物だ。私が何の為に手早くシロ民を束ね、その中でも貴様を重用していると思っている。全てはこういうときの為だ。

 さぁ、どうだ? まだ足りないか?

 

『はぁ……自信なんて無いし、確証も無いぞ?』

「構わないわ。それを決めるのは貴方ではなく、この私なのだから。貴方は私の言う通りにすればいいの……さぁ、言いなさい」

 

 ゆっくりと、語り掛ける様に。

 優しく、染み込む様に。

 しかし、力強く。

 物心ついてからずっと続けて来た私の力は犬兵の不安を取り除けたのか、彼が語りだす。

 

『正直、ロクな情報は拾えなかった。部屋は空っぽだし、液体らしい液体もないしな』

「そう、確かサイコメトリーは液体相手が得意だったわね」

『あぁ、水は霊と深い関わりがあるらしいからな……っと、そうじゃねぇ』

 

 軽く咳払い。そして犬兵は「見えたのはざっと3つだ」と前置きして話し始める。

 

『先ず人数は2ヶ所だけで40人を突破してる。ロクに見えないし、出入りも激しかったから重複や誤認もあるだろうが……それでも、かなり強大だ』

「……想定以上、ね」

 

 マズイ。犬兵から話は聞いていたから、リヴァイアサン号の人員を投入する準備は終えているが……数が多すぎる。

 攻撃側は防衛側の3倍の戦力が要る、というのは防衛側が城に立てこもり、その城が壊れてもいいときだけだ。今回の様に立てこもる城が無く、護衛対象がいるなら、むしろ逆。防衛側が攻撃側の3倍の戦力を必要とするのだから。

 そう考えるとこの時点でシロちゃんを守る為に必要な人数は120人。この時点で難しいのに、現実は更に必要だろう。全く、ままならない。

 

『それとあのクソッタレ、どこかから支援を取り付けたらしい。拳銃を持ってやがった。他の奴らも何かしらの武器、だいたいは拳銃で武装してるし、少数だがサブマシンガンとアサルトライフルも確認した。スナイパーライフルは確認出来なかったが……恐らく見れなかっただけだ。持ってないとは思えない。それと、運び込まれた武器の中にRPG、対戦車ロケットランチャーを見た。流石に偽物だと期待したいが……この町は、前例があるからな』

「……そうね」

 

 軽く足を動かして船の欄干に身を預ける。そこから見えるのは船の光に照らされた黒い海……白さなんて無いのに、どこかシロちゃんを思い出した私はおかしいのだろうか?

 まぁ、落ち着く事は出来た。

 

「はぁ……」

 

 しかしため息ぐらいは吐きたくなる。あの町は最近幾らかマシになったと聴いていたが……やはり修羅の国という事なのか、それとも根っこまでは枯れてなかったのか、どちらにせよロクでもない。悪質な変態どもはいつの間にか過激なテロリストに変質していたのだから。

 これでは警察を呼んでも戦力不足だろう。自衛隊を呼んでやっと勝負になる。しかしそれは無理だ。自衛隊なんて動かせない。ならば手持ちの戦力に武装を……そう考えたいが、流石の私も銃器の入手ルートは持ってない。ここの船長なら密輸ルートの1つや2つはぐらい持っているだろうが……シロちゃんの為だからといっても何でもしていいと、悪事を働いてもいいという訳ではない。しかし、しかしこれでは対抗のしようが……

 

「今から関門橋とトンネルで警察に検問を張らせるのは……間に合わないでしょうね」

『あぁ、無理だろう。奴はすでに本州に上陸しているはずだ。水際での迎撃が出来ない以上はゲリラ戦になる。もしも全ての警察を動かせるなら、ゲリラ戦でも勝利する事は可能だが……』

「そんな力はお祖父様にだって無いわ。やるにしても時間が掛かる。……個人特定と、その証拠はある?」

『無いな。超能力者の透視が証拠になるならあるが』

「残念だけど、日本の法律は超能力者に対応してないの」

 

 お互いにため息を吐き、先行きの暗さを嘆く。

 しかし嘆くばかりは私のすることではないし、そんな奴を重用したりはしない。つまり。

 

『ただ、1つだけ手掛かりがある』

 

 そら、来た。

 私は期待を隠しもせずに先を促させる。すると犬兵は淀みなく報告し始めた。

 

『どうやら奴は九州にある拠点を軒並み引き払わせたらしいが……1ヶ所だけ、支援者と連絡をつける為に連絡員を残して設置したままらしい。見えたビジョンも曖昧だから確証も無く、場所も曖昧だが……』

「いいわ。追って。資金は引き続き出して上げる。私兵は……一人一人に確認を取って使って。あれはお父様の人員だから」

『了解した』

 

 自信ありげな犬兵に調査続行の許可を出し、私はスマホの電源を落とす。

 結局決着はつかず、安全も確保出来なかった。しかし前進はしている。どうにも評価しずらいそれを切り落とし、私はシロちゃんの護衛計画を練る。今のままでも出来る事を……そう考える私の背後からマネージャーが近づいて来るのを感じた。彼はシロちゃんにつかせていたはずだが……叱責しようと振り返って見れば、微妙な顔。何事だろう?

 

「お嬢様、関東で動かしていた、シロ民を名乗る一般人達から連絡があったのですが……」

「なに?」

「いえ、その……なんというか」

 

 普段ではあり得ない程に言い淀むマネージャーを視線で強く叱責し、先を促す。そうすると彼はやはり暫く言い淀んだが、やがて言葉を発した。

 

「モンスターボールを発見、確保した……と」

「っ!」

 

 何という事か、何という事か!

 私はマネージャーを置いて走り出した。普段なら絶対にしないが、今は時間が惜しい。この一報を早くシロちゃんに伝えたい。他でもない、この私が!

 

「ふふ、ふふふ……」

 

 笑みが溢れる。それはそうだろう。

 叶うのだ。

 シロちゃんの夢が。

 叶うはずのない夢が、ついに、叶うときが来たのだ。

 多くの者を魅せ、惹き付け、虜にしてきた、夜の海の様な夢が……独りぼっちの少女が描いた夢が、ついに━━



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掲示板 一般ネット民の対応

【シロ民が】最近の異変について答えるスレpart1【答えます】

 

1:名無しの犬

スレタイ通り。大抵の事は答えるから、知識共有していこう!

 

2:名無しの犬

シロちゃんは忙しいから、代わりにワイらが知識を広めに来たぞ! さぁ、何でも聞け!

 

……………………

…………

……

 

187:名無しさん

つまりお前らシロ民が言う事をまとめると、最近の異変は『ポケモン』とやらが現れる前兆でしかなく、本番はまだまだこれからだって事でok?

 

188:名無しの犬

>>187

セヤナ。それで合ってる。

だからお前らもきのみ植えて増やしたり、モンスターボール確保したり、ポケモン知識を頭に叩き込んでおくと良いぞ!

 

189:名無しさん

>>188

お、おう、セヤナー

 

191:名無しさん

>>188

ア ホ ク サ

寝るわ。

 

193:名無しの犬

>>191

アホクサって……何だよ。信じてないのか?

 

194:名無しさん

>>193

信じられる訳ないだろ常考。というか嘘つくならもっとマシな嘘つけよ。

変異した果実で傷がふさがるとか、ボールが突然現れたとか……仕舞いには未知の生物が出現する? 頭おかしいだろ。あと何? 土浦辺りで起きてる幽霊騒ぎもポケモン?の前兆? しかもマジモンの超能力者とかサイキッカーが出てくる? はぁーマジでア ホ ク サ。

 

196:名無しの犬

>>194

は? きのみはちゃんと映像で証拠出したろ。ちゃんと見たか? ボールも鳥でのリアルタイムの証言つきだしさ。嘘な訳ないだろ。

 

197:名無しさん

>>196

はいはい嘘乙。あんなん編集した奴に決まってるじゃん。鳥云々もやらせだろ? 認めろよw

 

199:名無しの犬

>>197

こ、こいつ、言わしておけば!

 

201:名無しさん

>>199

お? なんだよやるか?

 

202:名無しの犬

>>199

止めろ。信じない奴は放っとけ。ユウカ様……アイドルネキからも言われたろうが。ムキになるな、疑惑や疑念で充分だって。

そんな事より他に質問無いか? 答えるぞ。

 

204:名無しさん

>>202

じゃあボール発見時ってどんな感じだったん? 鳥見たらだいたい分かるけどさ、それをお前らが即行で気づいて取りに行ったのはちと都合良すぎね?

 

207:名無しの犬

>>204

あぁ、それか。待機してたんだよ。ざっと百人かな? 有志の人間がバラバラに関東中に散らばってそれぞれ待機してたんだ。だから即行で対応できたんだよ。あと鳥や掲示板に張り付く情報収集要員もちゃんと確保してたからな。

だから鳥にボールの写真がのせられたとき、直ぐに近場の奴に連絡が飛んで、ソイツが……まぁ、俺だな。俺が引き取りに行ったんだよ。スピーディーにな。まぁ、ゴミとして処理されるところだったのはビビったけど。

 

208:名無しさん

>>207

ほーん。なるほど。しかしそのボールは突然現れたって話だが、その辺どうなん? あとそのボールってのは設定通り動くんか?

 

210:名無しの犬

>>208

ぶっちゃけ何も分からん。分かるのはこれが間違いなくモンスターボールで、ポケモンが出てくる準備が整ったんだろうって事だけだ。

最初にモンスターボールを見つけたコンビニ店員に話を聞いたが、いつの間にか倉庫にポンッと置いてあったらしいからその辺一切不明。ただ俺らは突然現れたとしてもおかしくはないって考えてる。

あとちゃんと動くかだけど、植物学者を通じて専門の機関に調査を依頼した。最初に確保したモンスターボールはシロちゃん用に、その次はアイドルネキ用に確保したけど……今頃は追加で見つけられた分の殆んどが送られてるんじゃないか? 何だかんだ、八王子周辺のコンビニで一個か二個ずつ見つかって次々確保されてるからな。

植物学者は専門外だからってきのみに集中してるけど、最初見せたときに現代の科学で作れる代物なのかって2人で怪しがったなぁ……

 

211:名無しさん

>>210

ふーん。ホントにこれからって感じなんだな。

で、そのボールが見つけれるのはコンビニだけか?

 

212:名無しの犬

>>211

あぁ、今のところ八王子周辺のコンビニだけだな。けど範囲はきのみみたいに広がるだろうから、そのうち関東全域で見つかるはず。忙しくなるぜ。

あと考察班はポケモン世界のフレンドリショップと、こちらのコンビニの役目が同じだからだろうって考えてるみたいだな。

 

214:名無しさん

>>212

ポケモン世界、ねぇ……まぁ、だいたい分かったよ。

つまり俺らの世界は今、異世界と融合しつつあるって感じなんだな?

 

215:名無しの犬

>>214

そうなるな。

 

218:名無しさん

異世界と融合www

そうなるなwww

お前ら馬鹿過ぎだろw流行りのアニメじゃあるまいし、草生えるわw

つか幽霊騒ぎとサイキッカーの理由はどうしたしwえぇ?

 

221:名無しの犬

>>218

幽霊騒ぎは土浦がシオンタウン化してるんだろ。そのうちゴーストタイプのポケモンが出てくるはずだ。

で、サイキッカーとか超能力者は、ポケモン世界だとサイキッカーなんてゴロゴロいるからな。霊能力者とかもいるし。ポケモンが来るならサイキッカーや超能力者も生えてくるだろうってのが考察班含めたシロ民の考えだ。分かったか?

 

222:名無しさん

>>221

分かる訳ないだろカスかよwww

ポケモンとか超能力者とかwやっぱシロ民はキチガイの集まりだわwww

これじゃその親玉のシロちゃんとかいうビッチもキチガイだろうなwww

 

223:名無しの犬

>>222

○す。

 

224:名無しの犬

>>222

俺らをキチガイ呼ばわりはまだいいさ。だがシロちゃんをバカにしたのは許さない。見つけ出してブチのめしてやる。

 

225:名無しの犬

>>222

ファ○ク。

 

226:名無しさん

>>222

煽りはまだいいが、ここに居ない人間の誹謗中傷は止めとけよ?

 

227:名無しの犬

チッ、ハッカーの奴が居たらこの場で住所特定してやったのに……

 

229:名無しの犬

>>227

止めろ。居ない奴の事は忘れるんだ。というかアイツはもうシロ民じゃない。変態道に堕ち、今やテロリストだからな。

しかし元々黒い噂のある奴だったが……まさかあぁなるとは。

 

230:名無しの犬

>>229

福岡の拠点でアサルトライフルやロケランを海外から密輸、ないし買い集めて、関東に逃げたらしいな。ネキが高速道路や主要な道路に検問張らせたりして時間稼ぎしてるらしいが……

つかロケランってなんだよ。拳銃で充分だろ。それともあれか、ポチネキに瞬殺されたのがそんなにトラウマなのか……?

 

232:名無しさん

ハッカーwwwテロリストwwwロケランwwwやっぱシロ民頭おかしいわwww

あ、未知の生物が出てくるとか言ってる時点でお察しでしたねwww

こりゃシロちゃんとやらは相当な馬鹿に違いない。美少女とか言われてるけどそれも頭おかしいシロ民の想像だし、実際は相当なブスに違いないぞwwwうはw草生えるwwwww大草原wwwwww

 

233:名無しの犬

>>232

お前を○す。

 

234:名無しさん

テロリストとかロケランは流石に盛り過ぎだろ。ここ日本だぜ? そんな話聞いた事ない。

冗談にしても、そういうのは良くないぞ。

 

235:名無しの犬

>>232

今度シロちゃんを馬鹿にするような事を言ってみろ。貴様の居場所を特定し、便所まで追い詰めて口を縫い合わせてやる。

 

236:名無しの犬

>>232

そうか。ならお前の手ごと除草してやるから待ってろ。

 

238:名無しの犬

>>234

嘘でも冗談でもないんだよなぁ……日本でこの手の話を聞かないのは情報統制と、苦労して密輸しても使う奴が居ない=売れないから滅多に持ち込まれないだけで、持ち込もうと思えば幾らでも持ち込めれる訳だし。

とはいえ、いったいどんな支援者を取り付けたのやら……まぁ、日本の事が邪魔な国なんて数える程度しかないし、それこそお察しだけど。

 

240:名無しさん

>>238

は? おいおい、本気で言ってるのか?

 

242:名無しの犬

>>240

マジだぞ。まぁ、信じなくてもいいよ。ポケモンならまだしも、ロケランは俺もいまいち信じ難いし。

 

243:名無しさん

>>242

ロケランは信じれなくても、ポケモンは信じれるのか……煽り野郎じゃないが、お前ら大丈夫か?

 

245:名無しの犬

>>243

ちょっとおかしいかな? と思わなくもないけど……シロちゃんだし、俺らシロ民だし、多少はね?

というかあれだな。きのみショックで完全に信じちまったのが1つ、後は……俺もいつの間にかシロちゃんの夢に魅せられて闇に沈んでたって事なんだろ。

 

247:名無しさん

>>245

おぉう……そうか。

うん、流石はネットで最も闇が深くヤバい連中の集まりと言われるだけあるわ。

 

248:名無しの犬

>>247

それなぁ……俺らに自分達がヤバいって自覚はあんまり無いんだよなぁ。俺らにとっては常識つーか日常つーか……

でも確かにシロちゃんが黒を白と言うんなら俺らも黒を白と呼ぶって程ではないけど、灰色扱いはするしなぁ。うーん?

 

250:名無しさん

>>248

もういい、休め。なんかクトゥルフじみて来た。

 

252:名無しさん

>>250

クトゥルフ感ワカルマーン。

何回かアーカイブ見たことあるけど……あの配信者の声ってさ、なんかこう、心にスゥッて入ってくるよね。スルッ、じゃなくてスゥッと。壁を通り抜ける幽霊みたいな感じ。

気づいたら洗脳されててもおかしくはないと思うの。

 

255:名無しさん

>>250

クトゥルフワカル。

俺あの子の催眠音声愛用してるけど、ホントスゴいもん。オカルトでも納得していいぐらいマジぐっすり。不眠症が治ったし。

まぁ代わりに催眠音声手放せなくなったんだけどな! 別バージョン出して下さいお願いします何でもしますから!

 

257:名無しの犬

>>255

ん? 今何でもするって言ったよね?

取り敢えずシロ民になれ。そして関東に来てモンスターボールをかき集めるんだよぉ! 運が良ければシロちゃんに直談判できるかも知れんぞ!

 

259:名無しさん

>>250

クトゥルフというよりSCPじゃね? あの配信者。誰かがあの配信者の声は1/fの揺らぎだとか何とか言ってたが、影響力がそういうレベル越えてるしなぁ。

……うん、取り敢えずクラスは何だろうな?

 

260:名無しさん

>>257

それしかないかぁ……

まぁ今度関東に転勤するから丁度良かったのか? ブラック企業を辞めるタイミング見失いそうだ……あぁうん、モンスターボール? 見つけたら確保しとくよ。

 

262:名無しの犬

>>259

そりゃ害とかないしsafe(セーフ)……いや、影響力とか考えるとEuclid(ユークリッド)か?

まぁ詳しくは……言い出しっぺの法則な!

 

263:名無しの犬

>>260

社畜ニキ強く生きて……ポケモンが来たなら転職すればいいさ。うん。

 

264:名無しさん

煽りウザイ。スレの消費が早くなるだろうが。

てかブスだのビッチだの、キチガイだとか散々言ってるけどさ、あの年頃の子供にそういう事言えるお前の方がキチガイじゃん。鏡見ろよ豚。

 

266:名無しさん

>>260

イ㌔

 

268:名無しさん

>>262

あぁ分かったよ! やってやるよ! どうせ後戻りなんか出来ねぇんだ。やれば良いんだろ!!

途中にどんな地獄が待っていようとお前に! お前らに! 俺がやってやるよ!!

 

270:名無しの犬

>>264

正論だけど、もう相手しなくていいで。そろそろBANされるやろうし。

 

273:名無しさん

>>268

SCP好きのワイ。全裸待機。

……てかシロ民的にはこれはセーフなん?

 

275:名無しの犬

>>273

誹謗中傷してる訳でもないし、俺らも薄々そんな感じはしてるし……何より本人がそういうの割りと好きだからな。大丈夫やろ。

てかもうあったような気が……何番スレだったけ?

 

276:名無しの犬

>>275

さぁ? でもシロ闇まとめに合った気がする。

 

278:名無しさん

書こうと思ったら既にあったわw

シロ闇まとめにあったw

ワイ書かなくてすむぜw書いた人ありが……←パンパンパン

 

279:名無しさん

>>278

キボウノハナー

しかし煽り消えたな。ザマァw

 

281:名無しの犬

>>279

今頃ぐっすり寝てるだろうな。

あぁ頼みがあるんだが、煽り野郎を起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる。

 

282:名無しさん

>>281

(それだと煽り野郎は)死んでんじゃない?

 

284:名無しの犬

>>282

大丈夫(今のところは)生きてるよ。

 

285:名無しの犬

全く、煽り野郎なんて口ばかり達者なトーシローばかりだ。

ただのカカシでしたな。

俺達ならまばたきする間に(パチン)BANさせる事が出来る。忘れない事だ。

 

287:名無しさん

あぁ駄目。これじゃ異変を語るスレじゃなくてコマンドーを語るスレよ!

 

288:名無しの犬

>>287

だったら軌道修正すればいいだろ!

 

290:名無しさん

ここで空気を読まずにコンビニ店員の俺参上!

紅白カラーの、モンスターボール? を倉庫で見つけて、紛れ込んだゴミとして捨てるとこなんだけど……これいりゅ?

 

291:名無しの犬

>>290

いや、最高に空気読めてたよお前。

そしていりゅぅぅぅ!

で、どこのコンビニ? 一番近いシロ民行かせるわ。

 

293:名無しさん

>>291

八王子の※※※※ってとこ。直ぐ来れる? 来れるんなら店の前で掃除しながら待ってるけど。

 

296:名無しの犬

>>293

そこギリギリ八王子じゃねぇか……もう範囲が広がってるのか?

あぁ、今連絡した。直ぐに行ける場所に1人居るから向かわせるってよ。十分あれば充分だろ。

それと取りに行く奴は首に白いチョーカーしてるから個人特定に役立ててくれ。受け取り時の合言葉は『ポケットモンスター』それと代金兼手間賃兼合言葉代わりに200円を渡すから、好きにしていいぞ。

ちなみに一応聞くけど、お前自身が持たなくて良いのか?

 

298:名無しさん

>>296

りょ。

200円ショボいと思ったけど、俺何もしてねぇしな。ジュースでも買うわw

で俺? 要らん要らん。よく分からんし、欲しい奴が持っとくのが一番だろ。それに必要になったら自分で探すわw

 

299:名無しの犬

ok!

後で返してくれって言っても返せれないからな。心変わりするなら今の内だぞ。

 

301:名無しさん

>>299

(ヾノ・∀・`)ナイナイ

んじゃジュースゴチになりまーす。……てか何故に白いチョーカー?

 

303:名無しの犬

>>301

俺らはシロ民。要するに犬だ。つまりはシロちゃんの犬だ。つまり……

 

304:名無しの犬

>>301

もしかして 首輪

 

306:名無しさん

うん、やっぱりお前らシロ民は頭おかしいわ。

 

……………………

…………

……

 

 

 

「結構派手に動いてるんだ……」

 

 夜の海を進むリヴァイアサン号の中。今なお更新され続けている、罵声すらび交う賑やかな掲示板を見つつ私はそうポツリと呟く。シロ民が協力してくれるとは聞いていたものの、10人もいれば上等だと考えていたので、まさか100人単位が集まるとは思っていなかったのだ。

 他にも怪しげかつ物騒な話も驚きであるし、散々書かれた悪口はむしろ懐かしいというかマトモというか……まぁ、有意義な情報収集だった。

 

「ふふ、当然よ」

 

 そうやって私が一人満足していると、後ろから自慢気な声が耳をくすぐる。ユウカさんだ。

 私は何気なしに上を向き、私を膝の上に乗せて私の髪をすいているユウカさんの顔を見る。とても、とても得意気だった。掲示板の話では総指揮を取っているらしいし、お礼ぐらい言っておくか。

 

「……そう、ですね」

 

 そう思ったのだが……私は先ほどあった事を思い出してユウカさんの顔を見ていれず、顔を正面に戻して口をつぐんだ。

 お風呂から上がってだいぶ経ったはずの身体が火照てくる。ユウカさんに着せられた薄い……ネグリジェの一種なのか、ベビードールとかいうらしい、実に頼りない薄くヒラヒラとした服の裾を弄りながら、心を落ち着けようと努力してみるが……駄目だ。先ほどの事が頭に浮かんでしまう。

 

「━━っ!」

 

 声にならない声で叫びつつ、思い出すのは暖かさと柔らかさ。

 話があるのだと、なんとも嬉しそうな顔のユウカさんに連れられてバカデカイお風呂に入り、恥ずかしながらも必要だからと押されて髪を洗って貰い、流され言いくるめられて身体まで洗って貰って……二人で湯船に入った。うん、この時点で自分を殴り倒したいのに、問題はここから。

 そう、問題は湯船に入って……そこで言われた『モンスターボール』発見の報告。

 私はその報告に一拍、二拍と思考が止まり、湯の暖かさと同時にジンワリと喜びが上がって来て、そして、私は近くにいたユウカさんに飛び付いたのだ。ポケモンの足音が聞こえた、確かに聞こえたその喜びを、我慢出来ずに、あるいは誰かに分かって欲しくて、私はユウカさんに抱きついた。

 

 お風呂場で。

 

 当然、お互い真っ裸だ。というかタオルはマナー違反だとユウカさんにひっぺがされた。お互い()()なのだからいいじゃないかと。だから真っ裸だ。絵面だけなら女性二人。何の問題も無かった。

 あぁ、つまり、はい、柔らかかったです。

 

「ふふ……」

 

 ユウカさんは気にしていないのか、当たり前だと思っているのか、お風呂から上がってずっと私の髪を整え続けている。丁寧に、丁寧に。……本当に有り難い話で、だからこそ恥ずかしさはより一層強くなる。

 

「━━っ! ━━!!」

 

 声に出来ない声を発しつつ、私はまるで女の子の様に恥ずかしがる。男なのに。あぁ駄目だ。身体に引っ張られるな。私は男なんだぞ!?

 

 ━━そんな事を思う私を乗せて船は行く。関東まで、あと少しだ。





以下要点まとめ


シロ民煽られる
シロ民、煽り耐性ゼロな上に過激
一般ネット民、話半分に聞いておく
シロちゃんの知名度はネットではそこそこ
ポケモンの認知度は低め
ポケモンが来るとガチで信じてるのはシロ民だけ
コマンドー
シロ民はヤベー奴ら
首輪付き
サービスシーン全カット、からの回想
行動が女の子に寄っている事を自覚し、全力で抵抗する主人公の図

※ゲームの町の位置と、現代での町の位置の重ね合わせは、色々悩んだものの『日本地図をポケモン地図に置き換えてたらこうなるらしい』とかいう編集された写真を元にしました。そもそも公式がマサラタウンの位置をボカしているので……多少のガバや意見の相違に関しましてはご理解頂けると幸いです。


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第13話 集い始める力

 リヴァイアサン号がシロちゃんを乗せて一路関東へと進んでいる頃。東京都内のある大学の研究室では、一人の男が達成感に浸っていた。男のネットでの通称は植物学者。シロ民からきのみの科学的な検証について任された男だ。

 

「ふぅ……」

 

 まだ年若いといっていい男はゆったりと椅子に腰掛け、その背もたれに身体を預ける。いかにも疲れてますといわんばかりの男の視線の先にあるのは十数枚の紙……男の書いた論文だ。内容は当然、きのみについて。

 

「…………」

 

 男は今まで幾つもの論文を書いて来たし、それが人に認められた事もあれば、尊敬出来る教授に誉められた事もあった。植物学者として名が売れ、今では若くして講師の地位にまで上り詰めれてもいる。しかし、そんな彼をして今回の論文は期待と不安、その他諸々がごちゃ混ぜになって全く先が見えない代物になってしまっていた。

 勿論努力はしたと自負出来る。それこそここ2、3日は寝食を惜しんでやったと言える程度には打ち込んだのだ。尊敬する教授からの反応も悪くはなかった。どこぞのコネしかないボンクラ教授とは違い、ある種の叩き上げであるその教授からも及第点を貰えている。まぁ、懐疑的ではあったが……それは仕方ない事だ。男とて自分の目で見なければ信じなかっただろうから。

 

「……きのみ、か」

 

 一通りの仕事をこなしたという達成感が薄れ、本当にこんな論文で大丈夫なのかと不安が増してきた男の目に映るのは、大学の校内で大量に育てた青い果実……オレンの実と、それに関する自らが書いた論文の一枚。思い出すのはきのみに関する事だ。

 最初にきのみが現れたとき、実は男は見向きもしなかった。講師としての仕事が忙しかったし、何かの間違いか、仮に本当だったとしても自分が出る幕は無いだろうと。

 風向きが変わりだしたのは、その果実達を誰も解析できない状況が丸1ヶ月続いたとき。誰もが一番になる事(成功者の席)を争い、しかし最初(失敗の責任者)には成りたくないと奪い合いと押し付け合い、何より無能の足の引っ張りが続き……男がようやく舞台に上がったとき、誰もやらないなら自分がやると男が立ち上がったときに、風向きが変わりだした。

 そしてそんな彼に助言したオタク趣味なシロ民らしい友人の言葉、つまりシロ民なら答えを既に知っていると……その言葉を確かめにネットの海に潜ったとき、風向きが完全に変わった。向かい風でも、横風でもなく、追い風に。

 そこからはトントン拍子だった。あまりの調子の良さと事の簡単さに拍子抜けした程だ。何せ彼らシロ民の言う通りに、もっといえばシロちゃんの言う通りにすれば、その通りの結果が出たのだから。まるで、最初から答えが分かっているかの如く。

 

「……いや、事実分かっていたんだったな」

 

 自分の論文、その中の一文をチラリと見て呟く。男の論文の各所にはシロちゃんが描いたきのみの設定、その説明文が殆んどそのまま引用されていた。一応、自分の考えた事ではないと明言してはいるが……仕方のない事だった。まさかシロちゃんが論文を書く訳にもいかず、仮に書いたとしても誰も取り合わないだろうから。いや、場合によっては読もうとすらしないだろう。無名の、姿を見れば幼女並みの彼女を嘲笑するのがオチだ。……嘲笑した相手が元凶とも知らずに。

 

「ん? いや、この言い方は語弊があるな……」

 

 男は暫し考え込んだが、結局良い言い回しは見つからない。

 だがそれも仕方ないだろう。今の状況はどう考えても彼女が元凶としかいいようがなく、どうオブラートに包んでも今回の騒動の中心であるのは間違いないのだから。

 

「シロ民も、そこは否定しきれなかったしな……」

 

 彼ら曰く、シロちゃんはおとぎ話の主人公。

 今起きているのは、親に捨てられた憐れな少女の、儚い夢の具現化。

 なんともそれらしい話だ。男自身そういう話を子供の頃に読んだ覚えがある。日々の生活にすら苦しむ少女が夢を見て、少女を憐れんだ神様がそれを叶える……そんな話だったか。

 実際、シロちゃんは神様に憐れまれるような苦労をしている。物心ついたときには親は居らず、家に一人ぼっち。お金だけは無機質に払い込まれるが、まだ幼い少女……いや、幼女にそれでどうこうしろと言うのは無理だ。もし彼女が賢い子でなければ、近所の人が異変に気づかなければ、恐らくシロちゃんは……死んでいた。小学校に入る前に、だ。

 そして、更に悪い事に彼女の苦難はその後も続く。何せ体質的に身体が弱く、長時間日の下を歩けず、しかも学校でそれらに理解が得られなかったのだから、義務教育期間は苦痛でしかなかったろう。その上味方するはずの親は居らず、家に帰っても一人ぼっち……私なら苦痛に耐えかねて死んでいる。少なくともあんなに真っ直ぐには育つまい。そう男は考えを一度まとめる。……まぁ、いささか闇深いところがあったり、精神年齢にバラつきはあるが、それは仕方ないというものだ。むしろよく生き残ったと称賛されるべきだろう。

 

「そう、だからこそ……彼女を批判するのは間違い、あってはならない間違いだ」

 

 勿論苦労しているのはシロちゃんだけではない。男が知らないふりをしているだけで、不幸な子供なんて山ほどいるのだ。

 しかし、それでも。いや、だからこそ。彼女1人の夢ぐらい叶ったっていいじゃないかと、男は思う。シロ民も、概ね似たような考えの者が多い。今まで知らないふりをしてきたのだから、その様な事になっても文句を言える筋合い無し、と。

 しかし世の中は基本的に理不尽でクソッタレだ。男が、シロ民が予測するに、先ず間違いなくシロちゃんを元凶だ黒幕だと叩く連中が現れる。夢を願っただけの少女を、今まで憐れな子供を見捨ててきたクセに、偉そうに糾弾するのだ! 自分達こそ正義と胸を張って!

 あってはならない。そんな間違い認めていいはずがない!

 だが……ネットの掲示板でアイドルネキが語るに、一般の民衆は声の大きな者の考えに同調するものなのだという。自分では何も考えず、群れの流れに流されるのが民衆という生き物なのだと。男もその考えには同意した。専門ではないが、分かる話だったから。

 しかし、だからといって認めるつもりにはならない。それは男を含めたシロ民の総意だった。ようやく報われそうな憐れな少女を、再び地獄に落とす道理無しと。例え偽善だとしても、これ以上見て見ぬふりは出来ないと。ならば、どうするか? その答えの1つこそ、男の論文であった。

 

「シロちゃん聖女化計画……だったか?」

 

 作戦名はコロコロ変わるのでなんともいえないが、やることは同じだ。シロちゃんを騒動の元凶や黒幕ではなく、災いを予言した聖女に落とし込む……それが作戦の骨子である。男のオタク趣味なシロ民の友人曰く「シロちゃんを危険なKeter(ケテル)ではなく、友好的かつ利益を生むThaumiel(タウミエル)として世間に認識させる」との事。男にはその英単語がどういう意味を持つか推測しかねたが、言ってる事は同じだろうと察した。シロちゃんを聖女として神聖化し、悪口を言うことすらタブー化させると。多分にネット特有のノリがある様だが、悪い作戦ではない。少なくとも男はそう考えていた。

 そして、その一歩目こそ自分の論文を皮切りに打ち出される『きのみ』の有効利用。そして事前準備を兼ねた『モンスターボール』の確保、及び解析なのだと。男はそう考えている。

 もし、もし仮に━━いや、男は意地でも成功させる覚悟だが━━今回のこれが上手くいけば、民衆のシロちゃんのイメージは概ね良い方向を向くはずだ。それが預言者か、聖女か、あるいは可哀想な少女になるかは不明だが……少なくとも、民衆に利益をもたらした彼女を叩くアホは少数になるはず。そして少数ならば、どうとでもなる。それがシロ民の考えだった。

 

「論文の根回しは進んでいるし、近日中に元総理に説明出来る様にアポが取れている。モンスターボールも、第一陣は既に送った」

 

 男は自分の論文の一枚を手に取りながら、指折り数える様にして呟く。

 元総理とのアポはアイドルネキが取ってきた。ここで成功すれば政界への情報伝達がスムーズになり、場合によっては今後シロちゃんが動き易くなる様に風通しを良くする事も出来るだろうとの事だ。勿論失敗したときは腹切りものだが……男には失敗のビジョンは見えなかった。

 そしてモンスターボール。こちらは男の専門ではないので、他のシロ民同様自分用を確保した後は専門の研究機関等に送ってある。もっとも有名どころは十中八九門前払いされるので後回しにし、こういう新しい事に目がない人物や、男自身が事前に説明したり頭を下げれる場所を優先したが……だからこそ、話が通り易いはずだ。

 

 男はそこで1人頷き、何気なくオレンの実に関する論文を流し読みする。もう何度もやったので大方の内容は諳じていたが…………目につくのはやはり『傷が塞がる』とかいう非常識な文言や、『未知の物質』とかいう今時そうそう見かけない文言。そして『シロちゃんと呼ばれる人物の預言じみた知識』という色んな意味で危ない文言だ。男は思う。これ論文じゃねぇ、作文だ、と。しかしこうとしか書けなかったのだからどうしようもない。

 あぁ、これも全部『きのみ』が非常識過ぎるのが悪い。効果はファンタジーだし、成分は未知の物質だらけだし、そもそも自分で研究した部分なんて検証だけだ。研究とはいえないし、それで論文なんて書ける訳がない。そうだ、全部きのみが悪いんだ。さもなくばこうなるまでシロちゃんを放って置いた世間が悪い。皆悪い。男はそう現実逃避し、更に現実逃避を重ねてみた。つまり……

 

「フッ……きのみが世に出れば全てがひっくり返るな」

 

 男が軽く鼻で笑いながら出したのは、果実1つで世界が変わるという馬鹿馬鹿しい考え。しかし、事実だ。少なくとも植物学と、医学と薬学辺りは研究を1からやり直す事になるだろう。あぁそうだ。もう海外に珍しい植物を探しに行く必要は無くなる。何せ目の前でアホみたく生えてくるのだから。社会の、大学のあちこちで悲鳴が聞こえるに違いない。男はそう考えて爽快感と、何ともいえない感情を抱く。何アホな事考えてるんだろう、と。

 

「……仕事するか」

 

 一周回って冷静になったのか、男は自分の役目を果たすべく動き出す。男の役目は何もきのみやモンスターボールだけではない。大学の講師としての仕事もあるし、先々を考えば方々へのコネクションを手に入れておかねばならないのだ。休んでいる暇は、あまり多く無い。

 

「━━しかし、変態どもがテロリストになったらしいが……大丈夫なのか?」

 

 だが男の思考は隙あらばそんな方向にも飛んで行っており、まだまだ余裕はある様子だった━━

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 関東某所で植物学者が息抜き代わりに思考を遊ばせていた頃。

 兵庫県の某所……某高速道路への入り口を睨める場所でもまた、思考を遊ばせる者が居た。

 

「グヒュ」

 

 潰れたカエルの様な、しかし笑い声と分かる声が黒のハイエースの車内に響く。

 笑い声の主を探せば、そこにいるのはまだ年若い男だ。これといった特徴のない顔立ちに、特に太っている訳でもない肉体。しかし、その目は酷く濁っている。だからといって死んでいる訳ではなく、むしろ生き生きとしていた。その男の目は酷く濁りながらも、生き生きとしているのだ。多くの者はその男を、その男の目を見て口を揃える事だろう。醜い、気持ち悪い、と。

 

「グヒュ、グヒュヒュヒュ」

 

 男がまだ太っていた頃の名残である耳障りな笑い声を上げながら、男は凄まじい早さでノートパソコンのキーボードを叩く。その画面は凄まじい速度で流れていてよく分からないが……しかし、素人目にも何やら高度な事をしている事だけは分かるだろう。

 

「グヒュヒュヒュヒュヒュ」

 

 薄暗い場所で作業する男の後ろ、ハイエースの最後尾には幾つかのダンボールが積まれており、その中から入りきれなかったのか、黒い棒の様な物が突き出ている。

 察しの良い者か、知識を持つ者ならば分かるだろう。その黒い棒の様な者は銃身の先のほうだと。そしてそれが分かる者がダンボールの中を見れば絶句するに違いない。なぜ日本にAK-47(こんなもの)が、それも束になって……? と。

 

「グヒュヒュ、グヒュ!」

 

 悪い事に、ダンボールはそれだけではない。別のダンボールを見ればUZIマシンガンが、あるいは拳銃が、その凶悪な顔を覗かせる事だろう。そして別の車両に載せられたRPG-7を見たものは理解するはずだ。ただ事ではないと。ましてやそれらの重火器がたった1人の、気持ちの悪い笑いを漏らす男の物だと知ったなら……恐らく、命はあるまい。写真を取ってそれをネット上で公開しようものなら、なおさら。

 

「グヒュ!!」

 

 明らかに尋常ではない、これからテロでもやるのかと言いたくなる銃火器達。これがたった1人と1匹に対抗するために、男がハッキングと催眠術を駆使して揃えた物だと……誰が予測出来ようか。誰が信じようか? いや、誰も分からないだろう。男と、その仲間達以外は。

 あぁ、男とその仲間達は今も夢に見るのだ。黒い日本犬が自分を制圧するのを、年老いた老人が自分を取り押さえるのを、夢に、悪夢に見る。制圧され、突き飛ばされ、取り押さえられ、投げられる景色を見る。スタンガンを気にもしない黒い犬と、拳銃弾とはいえ銃弾を古びた軍刀で切り落とす老人の姿を、悪夢に。

 いつからか、誰かの敗北は自分の敗北だった。男の催眠術によるものか、それともそれ以外なのかは分からない。しかし、1つ確かな事がある。……それは、彼らに取ってポチネキとSATUMA人の強さは酷いトラウマで、アサルトライフルだろうがロケランだろうが、どんな武器を持っても全く安心出来ない相手だという事だ。

 

「グヒュグヒュグヒュヒュヒュ……」

「ボス、ここもダメです。警察が検問張ってます」

「下の一般道は行けます。かなり渋滞してますが……」

「グヒュ。んん、そうかぁ……仕方ない。もう3つ前に進んでみようか」

 

 意味不明な笑い声を上げていた男の前、車の運転席と助手席にそれぞれ若い男達が乗り込んで男へと報告してくる。男はその報告にホンの少しだけ思考した様子を見せた後、素早く指示を出し、その指示に男達は素直に従った。

 車のエンジン音が響く。黒のハイエースが動き出し、その後に普通車が2台。一拍開けて手頃なサイズのトラックが続き、また何台かの車が同じ道を走っていく。

 彼らは仲間だった。同じ目的の為に集った同志だ。便宜上もっともカネを持っていた男が臨時のリーダーをしているが……その結束は固く、同時に緩かった。何せ彼らはネジのトンだ犯罪者ども。マトモな結束なんてしてなかったのだ。しかし……

 

「どうやら関東でモンスターボールが見つかったそうだ。シロ民達が確保に走ってる」

「へぇ?」

「そいつは、また」

「あぁ、良い流れだ。先行した現地の奴に、シロ民に化けて幾つか収集するように指示を出した。……これでポケモンが来ればこちらもポケモンを使う事が出来る。勿論、ポケモンが来なくても現状保有している重火器で決戦を挑む」

「ククッ、こっちとしてはどっちでも良い訳だ」

「来るなら少し先が伸びるが最高なショーを、来ないなら銃火器で強襲して派手な花火が上がる……良いですねぇ」

「そういう事だね」

 

 男達は事1つの事では結束出来た。いかにしてあの無垢な白を汚せるかという、その一点に置いては。例え白を手に入れた瞬間にバラけるとしても、手に入れるまでは固く結束できると誰もが確信していたのだ。

 

「あぁ、楽しみだ。今すぐやるのも良いが……しかし、最高に幸せな瞬間から、一気に絶望の底へと引きずり落としてみたくもある。あの白を、白を、白、白シロ、シロシロシロシロシロ━━グヒュ。グヒュグヒュグヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ!」

「おい、また壊れたぞ」

「放っておけ。叩かなくてもそのうち直る」

 

 彼らは向かう。一路東へ、関東へ!

 白に対して異常なまでの執着を発露しながら、確かに前へ。なぜ執着したのかも忘れた彼らは、それでも前へ。何かに引き寄せられる様に、あるいは追い立てられる様にして、ただ前へ。白の元へ、やがて白を自分のモノにする為に!

 彼らの到着がいつになるのかはまだ、誰にも分からなかった━━



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第14話 最初のポケモン

 私がリヴァイアサン号に乗って早くも二日目。船は関東まであと少しのところまで来た……らしい。

 いや、らしいというのは私自身レーダーの見方なんて知らないし、陸地も見えないからだ。1つ確かに言えるのは、水平線というのは案外近い物だったという事か。

 

「わふぅ」

「機嫌良さげだね、ポチ……」

「わふ」

 

 昨日専門の人に毛並みを整えて貰ったのが嬉しいのか、心なし機嫌良さげに聞こえるポチの声をBGMに、私は船の通路横の窓から五キロ先の水平線を見る。勿論、海しか見えない。青く輝く海はそれだけでキレイだが……しかし、私の心は微塵も浮かなかった。何故か? 今着ている服のせいだ。

 

「うぅ……」

 

 私は小さく唸りながら、今着ている服の裾を弄る。

 別に着ている服が気に入らない訳でも、きわどい訳でもない。むしろそれらの逆。ユウカさんが進めて来た服が私によく似合い、また清楚な感じがするから断るに断れなかったのだ。具体的に何と呼べばいいのかは知らないが……恐らくワンピースの一種だろう。真っ白で膝下まで隠してくれるそれはかなり良い物の様に思えた。更に下着の類いから小物に至るまで買ってくれたユウカさんには、本当に頭が下がる思いだ。

 まぁ、その代わりとばかりに昨日は着せ替え人形にされたが……今日中に元総理に会う事を考えると、それも必要な事だったのだろう。最低でもセミフォーマルといえる格好をしておかないといけないのだし。

 とはいえ、いつもパーカーとジャージが基本だった私からするとこういう女の子女の子している服は馴染みが無く……ハッキリ言って落ち着かない。具体的にいうと足元がスースーして、心もとない事この上なかった。

 

「うぅ……!」

 

 しかし、ポケモンの為にはこの心もとなさにも慣れなければならないのだろう。このハリウッドにでも出るのかと聞きたくなるワンピーススタイルがセミフォーマルなのだとすると、これから着る機会は無数にあるだろうから。それこそ、お偉いさんに話をする回数だけ着るのは間違いなく……私の心はダイビング中だ。

 

「あら、シロちゃん。ここに居たのね」

「ユウカさん……」

 

 通路の向こうから歩いて来たのは、ユウカさんだった。彼女の服装も私と似たようなワンピーススタイルだったが、しかし私よりも遥かにハリウッド的な高級感と気品が溢れている。これが慣れか、それとも持って生まれた才能なのだろうか……? どちらにせよ、ユウカさんと私では比較にすらならないだろう。

 

「ポチちゃんも……うん、大丈夫そうね」

「グルゥ」

 

 しゃがんだユウカさんが何かを確認するかの様にポチの首もとを撫でて……それをボウッと端から見ていた私は、そこでハタと奇妙な疑問を持つ。

 ポチってこんなだっけ? と。

 黒い毛並みも、イケメンフェイスも変わってないように思えるし、この子が頼りになる私の家族なのは間違いない。しかし……ポチの牙や爪はあそこまで鋭かっただろうか? 特にあの眼光は、幾ら何でも圧がありすぎる様な気がする。……気のせいか?

 

「━━ちゃん、シロちゃん?」

「ぇ、あ、はい。どうかしましたか?」

「いえ、何だかボウッとしてたから……大丈夫?」

「あぁ、すみません。大丈夫です。…………その、ポチが何だか変わった様な気がして」

「グルゥ?」

 

 ポチは首をかしげ、ユウカさんは心配そうな表情を崩してポチへと視線を向ける。

 黒い毛並み、格好いい顔立ち、鋭い眼光や牙。それは以前からポチに備わっていたものではあるが、改めて見てもやはり変化しているような気がした。そう、まるで……

 

「うーん、グラエナみたいな子だとは思うけど……前からこうじゃなかったの?」

「━━っ!」

 

 そうだ、今のポチはまるでグラエナだ! 細部も違うし、違いなんて幾らでもあるが……その印象は日本犬というよりグラエナによく似ていた。まさか、まさかまさかまさか!? ポチがポケモンになったの!?

 

「━━━━」

 

 呼吸が止まる。

 一拍、二拍、動き出す。

 改めてポチを見て、グラエナを連想して…………ふと思うのはグラエナの登場世代。確かグラエナは第三世代からの登場だ。もしポケモンが現れるなら第一世代からだと思ったのだが……違ったのか? それともポチだけが特別? それともポケモンは既に第三世代まで現れた後? あるいは私の見間違いでポチはポケモンではない? ……分からない、分からないが。

 

「━━ユウカさん」

「ふふ、何? シロちゃん」

 

 恐らく、全ての答えは関東にある。既に用意されている!

 こうなれば最早足踏みしている暇すら惜しい。早急かつ完璧に元総理との会談を終わらせ、関東をひっくり返す勢いで調べつくさねば……! そうすればポチがポケモンになったかどうかも━━

 

「関東へは、まだかかりますか?」

「えぇ、この船の到着を待つのなら後半日はかかるでしょうね。……我慢出来なくなった?」

「はい。今すぐ行きたいです」

「ふふっ、そう言うと思って準備させたわ。さっ、こっちよ」

 

 スタスタと歩いて行くユウカさんの後に続くように私も歩き出す。意識すればするほどグラエナに見えてくるポチも私の横を歩き、リヴァイアサン号の中を進んでいく。私なら迷いそうな艦内をユウカさんは迷いなく進んで……確かこの先は。

 

「ヘリ、ですか?」

「えぇ。陸地まで届く距離になったからね。これからヘリで久里浜の別荘近くにあるビルまで移動。そこでモンスターボールを受け取り、車でお祖父様がいる別荘まで向かうわ」

「モンスターボール……!」

 

 シロ民達が複数のモンスターボールの確保に成功し、私の分も確保してくれたと聞いてはいたが……そうか、ついにモンスターボールをこの手に━━!

 

「ふふ、嬉しそうね?」

「はい。モンスターボールですから」

「グルゥ」

「そうね。モンスターボールだもの……夢が、叶うわね?」

 

 夢。そうだ。私の夢は叶う。ポケモン達が現れるのは確定し、後は時間の問題。だが、まだだ。まだ足りない。ポケモンを見たぐらいでは満足出来ない。私は一度死んでなお夢を見た……いや、死んだからこそ夢をみた強欲な人間だ。そんな奴がポケモンを見ただけで満足出来るはずがない。ポケモン達とふれあい、バトルし、コンテストもやり……それら全てを他者と共有し、広げ、世界にポケモンがなん足るかを知らしめて━━恐らく、それでもまだ満足出来ないだろう。

 だが、それでいい。もう離したりしない。離す気は無い。私は死ぬまでポケモンと共にあり、ポケモンの為に生きる。これは、その第一歩。だから。

 

「まだ、これからです」

 

 夢はまだ、始まったばかり……ここで満足なんて、してやらない。

 

「そう、そうね。そうだったわね。えぇ。ポケモンは、これからだわ」

「はい」

「グルゥ」

 

 差し当たって、先ずは元総理にポケモンがなん足るかを分かって貰おう。そして次は国会で、その次は日本国民に、ポケモンを広めるのだ。

 私は決意も新たに足を踏み出し、リヴァイアサン号の後部甲板に出る。大きなヘリポートの真ん中にレスキューホークが一機、ローターを回転させながら私達の事を待っていた。

 

「準備は、良さそうね?」

「はい。問題ありません。……行くよ、ポチ」

「グルゥ」

 

 私の言葉に笑顔を返したユウカさんが先に乗り込み、続いて私とポチが乗り込み……扉が閉められる。パイロットを見てみると、以前の運転手さんと同じの様だ。

 

「リヴァイアサン・ツーよりリヴァイアサン号管制。これより発艦する」

 

 その言葉から一拍してローター音が大きくなり、機体が浮き上がったのが窓から見て分かる。ヘリはそのまま止まる事なくリヴァイアサン号から発艦、進路を関東へと取る。

 過ぎ去る巨船、走る海原。私はヘリのローター音をBGMにそれらを眺め、ふとポチへと手を伸ばしてその頭をやわらかく撫でる。

 

「グルゥ……」

 

 どこか気持ち良さそうなポチを眺めながら、やはりグラエナに似ていると思う。言われれば気づかない程度の変化……いや、少しずつ変化して私が慣らされたのか? どちらにせよ、今はグラエナにしか見えない。

 

「関東についてモンスターボールを手に入れたら……ポチに使ってみようかな?」

 

 その思い付きはヘリのローター音にかき消されてポチにすら聞こえなかった様だが、私はその考えを悪くないと思っていた。長年連れ添った大好きな家族が、大好きなポケモンに変わったのなら……それを少しでも早く実感したいのが、私の正直な心情だった。

 それに、メリットこそあれどデメリットは特に無い。むしろポチがポケモンになっているのなら、モンスターボールに入れない方が危険だ。

 私はアレコレと思考した後、モンスターボールを手に入れたら直ぐにポチに試す事を決意する。確かアニメではスイッチ部分を押し当てていたなと思いながら、ポチを撫でて眺めて過ごす事、暫し。それまで黙って此方を眺めて微笑んでいたユウカさんが私の隣まで移動して伝えてくる。目的のビルに降りる、と。

 ━━いよいよだ。

 

「さ、シロちゃん」

「はい」

 

 私はユウカさんに連れられて、ポチと一緒にヘリの外へと出る。

 そうしてユウカさんの後ろを歩き続けながら辺りに視線を回すと……ヘリから少し離れた場所に数人の男性達が立っているのが見えた。モノトーンカラーな彼らが、シロ民だろうか?

 私が彼らに近づくに連れ、彼らの驚きと喜びは見て分かる程に大きくなり、首もとの白いチョーカーがよく見える位置まで来たときには……何というか、爆発寸前といった風だった。私が何か喋ったら文字通り爆発するんじゃないだろうか? そう思える程に。

 

「お疲れ様。モンスターボールは?」

「こ、ここに! はい!」

 

 私が喋ったものかどうか悩んでいると、その思考を読んだのかユウカさんがモンスターボールを彼らから受け取ってくれた。有り難い。

 そうしてユウカさんは手元のモンスターボール2つのうち、片方を私に渡してくれる。手に取って、軽く頭を下げる事で礼をして……そこからはただ、モンスターボールに視線が引き寄せられた。

 今や赤と白のボールは私の手の中にあり、その冷たく滑らかな感覚を指先で感じる事も出来る。あぁ、間違いない。今、私は、モンスターボールを、モンスターボールを手にしているのだ! 他でもない、あのモンスターボールを!! 夢に見たモンスターボールを、この手に! この手の中に!!

 

 それは歓喜か、狂喜か、少なくとも喜びであった。

 

「グルゥ?」

 

 それが中断されたのはすぐ側から聞こえた家族の声。ポチだ。

 うん、分かってる。喜ぶのはこれから……そうだよね? ポチ。

 

「ポチ━━いくよ」

「グルゥ」

 

 迷いは、無かった。

 私はモンスターボールを手にし、それをゆっくりとポチに近づけていく。ポチは動かない。私の目をジッと見つめている……うん、そうだね。大丈夫だ。

 ポチの視線に頷きつつ、私もまだ視線を返し。そして、ついにモンスターボールがポチに触れる。

 

「━━っ!」

 

 変化は劇的だった。モンスターボールがポチに触れた途端、ポチは光となってモンスターボールの中へと吸い込まれていく。

 私の手元で点滅しながら揺れるモンスターボール。あぁ……間違いない。ポチはポケモンになっていた。私でも気づかないうちに、ポケモンに! グラエナに!! ポケモンは、ポケモンは、既に現れている!

 驚愕と歓喜に揺れる私の手の中で2度、3度、モンスターボールが揺れる。私を落ち着ける様にゆらりゆらりと。そして。

 

 ━━カチッ。

 

 音が、する。それは聞き慣れた……ゲットの合図。

 

「っ━━!」

 

 私は我慢せずにポチの入ったモンスターボールを胸に抱きしめ、ポツリと呟く。

 ━━ありがとう、ポチ。これからも、宜しくね。

 

「━━おいで、ポチ!」

 

 ポチに感謝の言葉を告げ、私は確信を持ってモンスターボールを空に放り投げる。

 モンスターボールは空を舞い……重力に引かれて落ちる直前、光を外に出す。それはまさしく見慣れた光景で、光はやがてポチになる。

 

「━━! ポチ!」

 

 私は手元に戻って来たモンスターボールをキャッチし、ポケモンとなったポチに抱き付く。

 ポチは私のとっしんを受け止め、一度だけ頬を合わせてくれる。まるで「こちらこそ、これからも宜しく」そう言う様に。……あぁ、私の家族は今日も頼りになる……優しい家族だ。

 私は胸に熱いものが込み上げて来て、その衝動のままにより一層強くポチを抱きしめた。柔らかな毛並みが私を包み、暖かな鼓動が私を落ち着けてくれる。夢は叶った。ポケモンは今、目の前にいる。勿論満足なんて出来ない。出来ないけれど……今はもう少し、このまま━━




イイハナシダナー(目逸らししつつ)


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第15話 政界への第一撃

 私がポチをゲットした十数分後。私はユウカさんと共に何だか見慣れてきてしまったリムジンの中に居た。ポチはボールの中に居て貰うか悩んだが……そこにいると分かっていても、姿が見えないというのは案外不安を煽るものだったので、外に出て貰っている。サトシのピカチュウスタイルだな。

 ちなみにビルに居たシロ民とは結局一言も話さないまま別れた。私は何と言えば良いのか分からなかったし……恐らく、あちらも同じだったのではないだろうか? 何だか私を見て呆気に取られた風だったし。

 

「━━えぇ、分かったわ。では、この後も引き続き彼らと行動を共にして。以上よ。……シロちゃん。お祖父様の所にはもう既にモンスターボールの現物と、きのみに関する論文が届いているみたい。特にきのみの論文は著者自らが説明に来ていて、たった今別荘を後にしたそうよ」

「なるほど……」

 

 ユウカさんからの報告を聞いた私は、流れが自分に来ている事を察した。元総理がどの様な人物かは不明だが、例え堅物だったとしても何かが起きている事は把握したはずだ。ならば後はポチをモンスターボールに出し入れしたり、私自身が説明すれば……きっと、分かってくれるはず。大丈夫、大丈夫のはずだ。

 

「シロちゃん?」

「……何ですか?」

「緊張……してる?」

「緊張。……いえ、緊張はしてません」

 

 そうだ。緊張はしていない。今私の頭をかき乱しているこれは……不安。それと喜びだ。

 当たり前だろう。失敗すれば全てが駄目になるどころか、ポケモンと人とのファーストコンタクトが失敗し、戦争になる可能性すらあるのだ。不安にならないはずがない。

 しかしまた同時に喜びもあるのは……ポケモンを知る人が増えるからだ。ポケモンバトルも、コンテストも、語り合うのも、1人では出来ないのだから。それらは2人、3人と居て初めて出来て、多ければ多い程良いのだ。私とシロ民以外の人にポケモンを知って貰える千載一遇の好機……見逃す手はなく、喜ばざるを得ない。

 

「そう。……もしかして、嬉しい?」

「分かり、ますか?」

「何となくだけどね。何時もと違って、目が輝いていたから」

 

 目、目か。それはどうにもならないな。普段は死んでいる私でも、現実にポケモンと触れ合えるとくれば……輝かざるを得ないだろうし。

 

「━━っと、到着したわね。……覚悟は良い? シロちゃん?」

「はい。大丈夫です」

 

 やろう。賽の目がどう出るかは分からないが、ここで止まる事だけは有り得ないのだから。そして私の全力を持って、ポケモンの事を分かって貰おう。そうすれば、きっと。

 

 そんな思いを胸に私はポチをボールに戻し、ユウカさんにに連れられて車の外に出る。そして私を迎えたのは立派な日本家屋……故郷にあるそれらよりも遥かに立派なそれだった。

 

「さ、お祖父様は既に待っているわ。行きましょう?」

「……はい」

 

 一瞬飲まれかけたが、ユウカさんに声を掛けられて私は歩き出す。

 門をくぐり、石畳の上を歩き、屋敷の中へと入っていく。勝手知ったる様子のお嬢様スタイルなユウカさんの後をコソコソと歩きつつ、私はひっそりとユウカさんの選んだ服に感謝していた。

 何せこんな立派な屋敷の中で芋芋しいジャージなんて来ていたらそれこそ萎縮してしまう。ユウカさんが選んだお嬢様スタイルな服を来ているからこそ、軽く小さくなる程度ですんでいるのだ。とはいえ、このお嬢様スタイルに違和感があるのも事実だが。

 

「ここよ。……用意はいい?」

「━━はい。行けます」

 

 ユウカさんの問い掛けに一度だけ深呼吸し、答える。

 いよいよだ。いよいよ政界への道の入り口が見えたのだ。私は素早く何を言うべきか再度確認し……ユウカさんが一通りの事を行って扉を開ける。

 

「失礼しますね。お祖父様」

「し、失礼します」

「あぁ、久しいな。ユウカ。それと君がシロちゃんだね? ユウカから話は聞いているよ。……さ、座ってくれ」

 

 扉の向こうで私達を待っていたのは好々爺といった雰囲気の老人だった。東郷お爺ちゃんよりは若く見えるが……7、80はいっているだろう人だった。この人が、伊藤元総理か。

 私はユウカさんに習って高そうなソファーに並んで座り、伊藤元総理も私達の反対側に座る。その瞬間、微かに空気が重くなった。……始まりだ。

 

「さて、あまり時間もありませんし……手早くいきましょうか。お祖父様、資料は確認されましたか?」

「あぁ、見たよ。先ほど学者の方が来てね。説明までしてくれた。この紅白の……モンスターボール? と、果実……いや、きのみだったかな? それの実演までしてくれた」

 

 私が何と切り出した物かと思っていると、ユウカさんが口火を切ってくれた。

 話を聞くにどうやら噂の植物学者さんは実演までしてくれたらしい。有り難い話だ。まだ一度も、それこそ掲示板ですら会っていないが……そのうちお礼を伝えたいと思う。

 

「あら……ちなみに、何の実演されたのです?」

「青い果実……そう、オレンの実だったかな? それの実演をしてくれた。ここにマウスとメスを持ち込んだときは何事かと思ったものだが……納得したよ。あれは直に見て……いや、直に見れたからこそ半信半疑になれる」

「なるほど。論文だけでは信じれない、と?」

「信じれないだろうな。この目で見ても半信半疑なのだ。そんな論文なんて読んでも……信じようとは思うまい」

 

 私は手に持ったままのポチが入ったモンスターボールを撫でながら、2人の矢継ぎ早の会話を必死に聞く。

 恐らくこれはお互いにジャブを打っているのだと思うが……展開が早すぎる。とてもついていける気がしない……大丈夫だろうか?

 

「あぁ、それと彼は変異した果実達……彼が言うに『きのみ』の有効利用についても話してくれた。殆んどが荒唐無稽と笑われる話だが……仮にきのみの効果が本物であり、また安全であるならばそうでもない。むしろそれらは暫しの間とはいえ巨万の富を生み、その後一般に広がれば人々の生活を一変させるだろう。勿論、良い方へ」

「えぇ。それは私も同じ意見です。きのみを有効利用すれば大きく世界は変わる。その効果は図り知れません」

「うむ、彼は言っていたよ。半身不随や末期のガン、それどころか治療法すら見当のつかなかった難病すら治せる可能性がある。薬の殆んどはきのみに関連した物になり、その効果は今までとは比較にならず、事故にあったときにはAEDや救急車よりもきのみを食べれるか確認する事になる……とね。笑い話だよ……普通なら」

「しかし、今は普通ではない」

「その通りだ。事によれば有事なのやも知れん。━━さて。そろそろ、お嬢さんの話を聞かせてくれるかな?」

 

 2人の高速戦に付いていけず、半ば脱落仕掛かっていた私に元総理が声を掛けてくる。混乱は一瞬。語る事は決まっているのだ。ならば。

 

「伊藤元総理はきのみの事は分かっている、という事で良いでしょうか?」

「キミ程ではないがね。……この異常事態の、専門家さん?」

 

 元総理の眼光が圧を持って私を見据える。嘘は許さないと。元より嘘などつくつもりはないが……しかし、この程度の圧なら東郷お爺ちゃんで慣れている。あぁ、そう思えば一気に楽になった。さぁ……始めよう。

 

「専門家、といえば専門家なのでしょう。しかし、私はただ彼らが好きなだけの……ごく普通の人間です。ですから私から元総理にお話出来るのは、3つ。そのモンスターボールの使い方、ポケモンについて、これからの予測……これだけです」

「…………ふむ。そうか、では、先ずこのボールについて教えてくれるかな?」

 

 指を立てて説明し出した私に、総理はモンスターボールを指名してきた。

 モンスターボール。それの詳しい原理なんて知らないからその辺は説明しようがないが……私の知る限りの事を話すならば、そう。

 

「はい。その紅白のボールの名前はモンスターボール。ポケモンを入れておく為の入れ物……いえ、お家、ですかね」

 

 この表現が適切だろう。とはいえ知らない人に家だと言うのは突飛に過ぎたのか、元総理は見て分かる程に困惑していた。

 

「ポケモン、家。……そのポケモンとはこれに入る程小さいのかね?」

「いえ、ポケモン……正式名をポケットモンスターと呼ぶ彼らはそれに入る程小さくありません。しかし、彼らはその身体をある程度凝縮させる事ができ、モンスターボールはそれを応用した品になります」

「……信じ難い話だな」

 

 それはそうだ。私自身その辺はサッパリなのだし。とはいえ、見れば分かる程に分かりやすい話でもある。なのでここは……

 

「そうでしょうね。なので、実演します。━━おいで、ポチ」

 

 私は手に持っていたモンスターボールを部屋の空きスペースが多い場所に放り、ポチを呼ぶ。

 一拍、彼女はモンスターボールから光となって出てきてくれる。私に取っては見慣れた光景。しかし、元総理にとっては違うもののはずだ。

 

「グルゥ」

「有り難うね。ポチ」

「グルゥ……」

 

 私は近寄ってきたポチを撫でながら褒める。これで元総理はポケモンを信じるしかないだろう。少なくとも、既存の常識が通用しないナニカが現れた事は理解したはずだ。

 チラリ、と。元総理の様子を伺えば、その顔は驚愕で埋め尽くされていた。

 

「これは、驚いたな……手品、という訳でもなさそうだ。それにその犬……いや、犬ではないのか」

「えぇ。ポチはポケモン……種族名グラエナ、ですから。手品かどうかは元総理が信じられるかどうかの問題ですが……ご希望でしたら何度でもやりましょう。あるいは、元総理自身がやってみますか?」

 

 駄目押しとばかりにこれが特別な事ではないのだと宣言してみせる。事実これはポケモンをゲットしているなら誰でも出来る事だし、誰が持ってきたのか都合よくモンスターボールもあるのだから。

 だというのに元総理はその驚愕をより一層強めた。

 

「……出来るのかね?」

「流石にポチを、私の家族貸す事は出来ませんが……元総理ご自身が何らかのポケモンをゲットすれば、容易に可能かと」

「むぅ……」

 

 私がハッキリと言ったのが良かったのか、元総理は一瞬だけ微かに納得を見せ……そしてそれを素早く隠して疑念を表に出す。この辺りは流石元政治家といったところか。しかし最低限は信じて貰えたようだ。

 そう私が安堵していると、元総理はその疑惑顔のままユウカさんの方を向き……1拍、2拍、2人の視線がぶつかり合う。それはアイコンタクトに見えたが、それにしては剣呑に過ぎた。

 

「ユウカ、この子は……」

「お祖父様。先に言って起きますが、私は何があろうとシロちゃんの味方ですので」

「ぬ……そうか。━━シロちゃん、キミは……何者かね?」

「?」

 

 何を言っているのだろうか? 元総理には私が化け物にでも見えているのか? 私はどこからどう見ても人間、更に今の私は芋芋しさを完全に捨て去り、お嬢様スタイルで決めてみせているのだが……ボケたのか? いや、元々ボケていたのが露呈したのか?

 まぁ、いい。ここは真面目に答えておこう。そうだな……

 

「ポケモンが大好きな人間……では、駄目でしょうか?」

 

 これで充分だろう。これで尚お前は誰だと聞かれたら元総理はボケていると断定し、ユウカさんに全てを放り投げるしかない。その場合は政界への道が閉ざされてしまうので、出来ればマトモであって欲しいところだが。

 

「はぁ……分かったよ、ユウカ。キミの、キミらの勝ちだ。総理にも今日中に話しておこう」

「ふふ、有り難うございます。お祖父様」

 

 どうやらボケていた訳ではなく、私の何かを試したらしい。私には何を試されたのかサッパリなのだが……ユウカさんが分かっている様だし、政界への……それも総理大臣への道が開けたので良しとしよう。

 これで、今回の会談は成功。そう見て問題ないはず。私は隣に居るポチをスルリと撫で、嬉しさを発散させる。まだ騒ぐ訳にもいかないからだ。

 

「全く、誰に似たのやら……」

「お婆様とお母様かと」

「勘弁してくれ……」

 

 話が終わったからか、元総理は何ともアットホームな雰囲気でユウカさんと笑い合う。ちょっと疎外感。

 元総理はそのまま暫し苦笑していたが、やがて席を立った。総理への説明に言ってくれるのだろう。……これで、他の人を巻き込めるはずだ。

 

「ではユウカ、後を任せる。シロちゃん……聞きたい事も言いたい事も山ほどあるが、今日は休むといい。……では、失礼させて貰うよ」

 

 私が内心で未来に思いを馳せているうちに、元総理は退室していた。

 部屋にはユウカさんとポチと、私だけ。ある種身内だけとなったので私は肩の力を抜き、グダーとソファーに寄りかかる。流石、高そうなだけあって良い心地だ。

 

「ふふ、お疲れ様」

「グルゥ」

「はい。ユウカさんもお疲れ様です。ポチもありがとね」

「グルゥ……」

 

 疲れている私をみかねてか、ユウカさんが私の頭を撫でてくれる。多少、いやかなり気恥ずかしいが……これは悪くない。

 そんな事を思いつつ私はより一層力を抜き━━その調子のまま伊藤家別荘で半日を過ごし、眠りに付く。どうか今日の会談が、ポケモンと人が仲良く出来る第一歩になります様にと願いながら。




 要点まとめ
 ユウカネキの信用ロール……自動成功
 シロちゃんの説得ロール……補正値内成功
 元総理のSANチェック……成功 1b3……2減少
 シロちゃんの言いくるめロール……ファンブル
 ユウカネキとシロちゃんのAPPロール……ダブル1クリ☆
 元総理はシロちゃんに全面協力してくれます!

 ♪魔界4の次回予告テーマ♪
 次回予告

 シロちゃん?「突如現れたポケモン殲滅部隊! そして発覚する驚愕の事実!」

 シロちゃん?「なんと! アルビノヒロインがメインの作品はかなり少ないのだ!」
 生首作者「うん、まぁ。そりゃねぇ……」
 シロちゃん?「日光に当ててはいけない、視力が弱い等の理由で使いにくい。差別を助長しているとして酷く叩かれる等が主な理由らしいが、それは大きな間違いだ!」
 シロちゃん?「その白さと儚さからくる神秘性を最大限利用出来きる(この作品ではまだ機会が無いが)アルビノヒロインは夜、月明かりに照らす事が最も映える属性なのだ! こんなに少なくて良いはずがない! それと差別云々はそうして弾き、規制する事こそ差別と知れ!」
 シロちゃん?「つまり今日からアルビノは白くて神秘的で強い。つまり白強と覚えておけ!」
 生首作者「アルビノってロシア語で何て言うんだったかなぁ……」

 シロちゃん「えっと、次回『携帯獣武勇伝ポケモンロード』第1話『アルビノヒロインの偉大さを思いしれダス』次回の更新は4月1日だよ?」
 シロちゃん?「つまり、私の出番だ━━!」

 ※次はエイプリルフール企画です。ご注意下さい。


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エイプリルフール企画 IF崩れた日常

 彼らは、突如として現れた。

 始めは果実の異変として。それは全国で点々と発生し、やがて日本中を被い尽くした。……だが、殆んど人間は気にもしない。何かがおかしいとは思いながらも、他人事だったのだ。

 真剣に悩み、困るのは農家の人だけ。

 専門家は変異した果実があまりに規格外に過ぎ、結論を中々出せない。そうしているうちに声だけがデカイ無能がこれは病気だ毒があると騒ぎたて。

 そして一般人は変異した果実には毒があると思い込み、手も着けなかった。変異した木ごと焼いた人もいる。

 なにより……一部の人間が果実の有用性や特異性を指摘しても、誰も彼も耳を貸さなかった。変異した果実を食べた無謀な勇者は嘘つき呼ばわりされ、その有用性を論文にした植物学者はコネしかない無能に潰された。

 

 あぁ、誰も彼も思いもしなかった。これが、前兆だなんて。チュートリアルだなんて、考えもしなかったのだ。もし、もし仮に『彼女が』居たならそうでなかっただろうが……そこに『彼女』は居なかった。

 テレビは若き植物学者を潰した無能を持ち上げ、才を持て余し気味だったアイドルの失墜劇を面白しろ可笑しく取り上げる。

 新聞ではオタク系の人間がネットで犯罪を犯したと論点をすり替えてネットやオタクそのものを批難し、その脇に小さく偉大な鹿児島出身の元陸軍少佐と、その弟子だった元総理の死を悼む文言を書く。

 世界は回っていた。異物の無い世界は予定通り回り……予定通り壊れる。

 

 怪物……別の世界でポケモンと呼ばれた者達の出現だ。

 

 最初は大した事はなかった。生物が変異したとはいえ、それはごく限られた範囲、限られた種類だけで、日常が変わると思える程ではなかったのだ。そもそも数だって少なかった。

 ……しかし、それは最初の数ヶ月だけ。人々がその存在に慣れようとした頃、事件が起こる。

 通称『針蜂事件』

 多数の死傷者を出した、悲しい事件。最初の怪物事件だ。

 

 事が起こったのは寒さの出始めた秋。関東各地の森や林から大型の蜂らしき何かが一斉に出現したのが始まりだ。

 最初に犠牲になったのは、この蜂をSNSにあげようと刺激した大学生達。その襲撃……いや、惨殺劇を生き残りがSNSに上げたのが始まりだ。

 林に近づく彼ら、飛び出す大きな針蜂、そして━━次の瞬間、串刺しにされ、あるいは射出された針に撃ち抜かれる若者達。……世間は、彼ら大学生達に非があるとは考えない。むしろ虫ごときが人を殺したと怒りとパニックを生み出した。更に悪い事に被害はそこだけではすまない。関東各地で発生した針蜂達は人も動物も、同じ怪物すら襲って殺していくのだ! その被害者は最終的に、5万人近くまで増えてしまっていた。

 

 これに対する政府の反応は鈍かった。総理大臣が首脳会議の為に海外にいた事もあるし、野党が足を引っ張った事もある。結局、自衛隊の出動が行われたのは針蜂出現から丸2日たった後だったのだ。

 しかし、そうして出動した自衛隊にも被害が出た。意気揚々と出撃した歩兵は串刺しにされ、敵討ちだとその仲間が小銃を発砲するも中々死なない。事はどんどんと大きくなり、歩兵の火器では殲滅困難との報告が上がる。……が、これに対する政府と民間人の動きは鈍い。政府は野党が足を引っ張っており、マトモに機能していなかったのだ。更に民間人の避難が遅れていたのも問題だった。地震ならまだしも虫ごときで避難する人間は半数以下で、残った大勢の人々の為に、自衛隊はより強力な火器……戦車や対戦ヘリの投入が出来なかったのだ。

 結局、自衛隊は針蜂殲滅まで歩兵の火器で対処するしかなく……多数の殉職者を出すに至った。ある若手の自衛隊員は言った。政府がもっと早く動いてくれれば、民間人が直ぐに避難してくれていれば、と。

 しかし世間や民衆というのは勝手だ。そうやって悪条件の中で奮闘した自衛隊に彼らは、罵倒を叩き付けた! 煽った者がいたのは明らかだ。しかし、殆んどの民衆は本気で罵倒していた。武器を持っていながら蜂の駆除も出来ないのかと、おかげで何人死んだと思っているのだと。……被害が広がったのは、虫ごときと侮って避難しなかったのが原因だというのに!

 だが流れは止まらない。世論は流れに流され、煽りに煽られ、ついに自衛隊の解散まで話が進んでしまったのだ! 存続の危機に陥る自衛隊……しかし、そんな自衛隊を救ったのは、皮肉にも新たな怪物だった。

 

 識別名称『青暴龍』

 かの暴龍の出現により、再び関東はパニックに陥ったのだ。

 

 記録によればその龍は何の変わりもない池……いや、ドブ沼から現れたらしい。そして、針蜂同様直ぐに人を襲い始めた。違うのは個体数が一匹にも関わらず、針蜂よりも高い破壊力を持っていた事。その巨体で暴れたかと思えば、空に登って光線を撃ち、あるいは凄まじい水流を吐き出す。出現して僅か二時間で人工密集地にあるビル街が壊滅し、数千人が犠牲となった。

 これには虫ごときと侮った人間も我先にと逃げ出し、政府もある程度まとまって動いた。結果、暴龍出現から3時間後に自衛隊の出動、及び武器の無制限使用が許可される。……しかし、マニュアル通りの事にこだわる政府と民間の動きは遅すぎたのだろう。既に被害は甚大な物に拡大。後に記録された事によれば針蜂事件と同数の死傷者が出ていたらしい。

 

 だが、そんな事は現場には関係ない。暴龍と対峙した自衛隊に、死んだ者を気にかける余裕などなかった。

 何せ、邂逅一発目に放たれた光線により対戦ヘリが2機撃墜され、一拍置かれて放たれた水流で戦車3台が行動不能に陥ったのだ。……余裕を持って掛かれる相手ではない。死力を尽くした戦いだった。

 

 この戦いそのものは一時間以内に決着する。いかに暴龍といえど誘導弾と戦車砲による集中攻撃には耐えれなかったのだ。

 しかし、かの龍もただやられた訳ではない。攻撃を避け、反撃を撃ち込んでくる事も多く……最終的に対戦ヘリ4機、戦車10台、分散展開していた歩兵100名が犠牲となった。

 だが、我々は勝った。そう思った数日後……事件は更に起きる。暴龍に恐れをなし、自衛隊の戦力強化を打ち出した矢先の事だ。

 

『土浦幽霊事件』

 

 まるでバラエティーの企画であるかのようなそれは、どこまでも現実だった。

 死傷者数不明。行方不明者約2万人。意識不明者3万人。

 誰にも気づかれずに被害をだし、意識不明者に関しては医者も匙を投げるこの事態は、数ヶ月の混乱の末オカルト的なモノだと仮定される。行方不明者や意識不明者は神隠しにあったか、幽霊に呪い殺されたのだと。

 以前なら鼻で笑う事件。しかし、人々は既に常識というものがクソの役にも立たない事を察し始めていた。

 そして、悪い事は続く。

 

『地下鉄寸断事件』

 

 謎の怪物が掘った穴により地下鉄が突如として寸断、あるいは地盤そのものが崩落し、関東各地で多数の民間人が生き埋めとなった事件。

 死傷者数20万人。行方不明30万人。大災害だ。

 

『小規模地震多発事象』

 

 穴を掘った謎の怪物を含める複数の怪物達が時折おこす小規模な地震。これは日常的に起こり続けており、被害は増える一方。

 

『東海原発爆破事件』

 

 異常の中でも稼働していた原発が突如として爆発。辺りに放射性物質がバラ蒔かれた事件だ。回収された記録映像には新手の怪物が自爆する光景が収められており、事故ではなく事件となった。

 被害者数、不明。

 復旧の見込み、無し。

 またこの事件を切欠にアメリカ第7艦隊はその殆んどがハワイまで後退。事実上のアメリカ軍の撤退が始まった。

 

『伊豆半島消滅事件』

 

 それはこの異変の中でも極め付きといえる異常事件だ。ある日突然、何の前触れもなく伊豆半島が消滅した。そこにいた人々ごと消滅したのだ。行方不明者は数えきれず、推測としての数字があるのみ。

 直前に未確認の人形怪物が現れ、何かを伝えたとされるが詳細は不明。確かなのは伊豆半島が消滅したということだけだ。

 またこの事件がトドメだったのか、アメリカ軍はアジア方面から完全撤退。日米首脳による電話会談が行われ……関東全域に対する核攻撃が決定された。

 そこにどの様な取引があったのか、あるいはアメリカの横暴なのかは分からない。分かるのは……日本は3度目の核攻撃を受けるという事のみ。回避策は、無い。

 

 ━━関東全域に対する核攻撃まであと3日。この日、陸上自衛隊第3臨時戦闘群は避難民の護衛を行っていた。

 彼らはいつどこから何が出てくるか分からない状況で、パニック状態の避難民を関東から脱出させるのが任務だ。危険極まりなく高度で過酷な任務。しかし、それに従事している正規の自衛隊員は半数以下で、殆んどが入ったばかりの新兵ばかり。最低限小銃が撃てる程度の訓練された、敬礼すら覚束ない連中だ。

 迷彩服に慣れてないのが明らかに分かる彼らのそれは、末期戦のソレを思い起こさせるが……事実そうだった。関東にいた自衛隊の戦力の損耗は絶望的で、他の場所から人を回して貰ってもなお足りない。故に半ば徴兵する形で人員を増やし、それを適当な名前を当てはめて使っているのが、この陸上自衛隊第3臨時戦闘群だった。

 そして、その戦闘群も今や消滅の危機にある。

 

「第3小隊どうした!? 第3小隊! 返事しろ! おい!!」

「青暴龍の群れ、更に接近! 第1戦車小隊、壊滅!」

「上に支援要請だ! このままでは避難民ごと全滅するぞ!?」

「待ち伏せしていた第5小隊との交信途絶!」

「隊長! 第7小隊から援護要請!」

「後続の第4臨時戦闘団との通信、未だに回復しません!」

「第2戦車小隊前進を開始せよ! 残存する第1戦車小隊車両との合流を目指せ!」

「針蜂と交戦中の第2臨時戦闘団より通信! 我戦闘能力を喪失、援護は……不能!」

「こちらに向かっていた第5戦闘団より連絡! 岩サイの群れと遭遇し交戦中との事です!」

「せ、青暴龍、更に接近! 間もなくここも光線の射程に入ります!」

「クソッ、状況は最悪だっ……!」

 

 怒号と、悲鳴。第3臨時戦闘群の作戦指揮所は混乱のルツボにあった。辛うじて統制が取れているのは……青暴龍の群れ相手に逃げ場なんて思い付かないからか。少なくとも、誰も彼も絶望に顔を歪めている。

 この絶望に、予兆なんてなかった。充分に警戒しながら避難民を護衛し、一団が大きな池を通り過ぎ始めたとき、彼ら青暴龍は池の水面を割って現れ、一団向けて一斉に襲い掛かって来たのだ。

 先ず始めに近くにいた民間人が吹き飛び、続いて彼らを護衛していた新兵が消し飛ぶ。それからは被害を出しながら避難民を落ち着け、統率し、逃がし、そして……地獄の遅滞戦闘が始まったのだ。

 その結果は……指揮所を見るに明らかだろう。避難民は逃せたが、代わりに自分達が消し飛ぶ事になった。誰に恨み言を言えばいいのか、何が悪かったのか、それすら定かではなく、彼らはゆっくりと絶望に身を浸していく。

 

 しかし……そんな猶予すら許されず、絶望と相対する事になった者達もいる。今、前線で戦っている者達だ。

 

「う、うわぁぁぁ!? あ、足がぁぁぁ!」

「ジョージがやられた!」

「こっちも駄目だ! 助けてくれぇ!」

「チクショウ! 奴らアサルトライフルを豆鉄砲みたいに!」

「駄目だ、勝てる訳がない……!」

「後退! 後退しろー!?」

「慌てるな! 落ち着いて対応しろ!」

「隊長! 暴龍が光線を━━」

「なっ━━!?」

「た、隊長がやられた!」

「そんな! 俺達はどうれば……うわぁぁぁ!? こっちに来るなぁ!」

「バカ野郎! 騒ぐんじゃ━━ギイヤァァァ!?」

「ふざけるな! ふざけるなぁぁぁ!」

 

 怒声と悲鳴、怒りと絶望。思うがままに剥き出しのまま吐き出されるそれらは、間違いなく彼らの本音だ。何故、どうして、こんな事に、こんな事を、何故自分が。

 困惑する者は弾け飛び、絶望した者は瓦礫に潰され、怒りを持った者は……血に濡れた武器を手に取る。

 

「頭の中でギャンギャン煩いんだよっ……! この、ヘビ畜生どもがァァァ!」

 

 この騒動が始まってから無秩序に情報を頭に送り込まれ続け、また自分を肯定出来ない男は発狂していた。もし彼に夢があれば、理解者が居れば、仲間が居れば……それはもう、叶わないifだ。

 そして、男は手に取ったRPG-7を青暴龍向けて構える。真っ直ぐこちらに向かって来る暴龍を睨み、待ち、両者がぶつかりあうその寸前、引き金が引かれる。

 

 一瞬。爆発音━━

 

 青暴龍の口内に叩き込まれたRPG-7はその威力をいかんなく発揮し、暴龍を内側から粉砕してみせた。そしてその近くにいた男も。

 あぁ、男が最後に見た光景はなんだったのだろう? 最早それを知る者は誰もいない。

 

 暴龍達は自らの同族の亡骸を気にする事もなく、当然それを討ち取った戦士の生死も気にせず、怒りの表情のままに進撃を開始する。

 彼らの目的は何なのか、知る者は……ここにはいない。

 

 ━━この日、陸上自衛隊第3臨時戦闘群は文字通り全滅した。青暴龍に蹂躙されたのだ。更に第2、第4臨時戦闘群も壊滅しその損害は立て直しが絶望視される程。

 そして、彼らが辛うじて作戦を成功させた3日後。関東全域に対する核攻撃が実行され……その全てが未確認生物により迎撃された。

 

『やはり、人間は愚かな存在でしかなかった。甘い幻影に惑わされるのも終わりだ。……これより始まるは戦争。人とポケモン、お互い生存を賭けた戦いだ!』

 

 そう語った未確認生物により、その日から『ポケモン』との戦争が始まった。避けれたはずのそれはごく自然に受け入れられ、お互いの生存権を賭けた戦いへと発展していく。

 ━━人類は、選択を誤った。滅亡のカウトダウンが……始まったのだ。




 今回はエイプリルフールという事もあり、以前要望のあったifモノに挑戦しました(雑なのは許して許して)なお、こちらのルート分岐は『シロちゃん』が居ない場合にのみ発生します。


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第16話 加速する前進

 伊藤家に着き、元総理を説得した翌日。私は妙に不快な気分で朝を……正確には昼過ぎを迎えていた。

 

「んー? んー……?」

 

 何となく胸の辺りに何かが引っ掛かった様な、微妙な感覚が中々取れない。もしかすると忘れただけで嫌な夢を見ていたのか? それこそ、人とポケモンが争う夢とかを。

 

「……まぁ、いいか」

 

 何にせよ重要な事ではないだろう。そう判断した私は身支度を始め、慣れない環境ながら手早く終わらせる。私が何をどうしようが、どうせ後でユウさんに駄目だしされるのは変わらないのだから、アレコレやっても無駄だろうと。

 

「おはよう、シロちゃん。ふふっ、ようやくのお目覚めね?」

「おはようございます。ユウカさん。はい、やっぱり朝は起きられないので……」

 

 ようやく身だしなみを整えて一通りの準備が終わった頃、ユウカさんが私の借りている部屋に顔を出す。お互い簡単に挨拶した後、ユウカさんは私を上から下へ、下から上へと見て、一つ頷き。

 

「うん、駄目ね」

「駄目、ですか?」

「駄目よ。全然駄目。さぁ、椅子に座って。やってあげるから」

「……はい」

 

 私としては別に髪がボサボサでも気にならないのだが、アイドル兼女優であるユウカさんからすればどうしても気になってしまうらしい。リヴァイアサン号の中でも毎日繰り返された事が、今日ここでも繰り返される事になった。

 文字通り髪の先から爪の先まで、徹底的な身だしなみのチェックと修正が行われる。正直場所によっては流石に恥ずかしかったり、くすぐったかったりするのだが……仕方ないだろう。私にファッションセンスなんて欠片も無いのだし。

 

「……むぅ、まぁ。こんなところかしら」

「有り難うございます……」

 

 結局ユウカさんが満足したのはタップリ10分、あるいはそれ以上が経った後だった。その頃には私はすっかり気力を失ってなすがままになっていたが、その犠牲は無駄ではないのだろう。

 自覚できる程芋芋しかった身だしなみは、誰がどう見ても良家のお嬢様だと間違う程の完璧なお嬢様スタイルへと変貌。その変わりぶりや凄まじく、ナルシストのナの字も無い私が危うく自身の容姿を自画自賛しかける程だ。流石はユウカさんか。

 

「さて、行きましょうか」

「? えっと、どこにですか?」

「お祖父様のところよ。先程帰ってきたの。シロちゃんに話があるんですって」

「なるほど。分かりました」

 

 恐らく何らかの結果が出たのだろう。そう察した私はユウカさんと共に元総理の元へ向かった。ポチの入ったモンスターボールを撫でながら、できれば吉報が聞きたいと思いつつ。

 そして。

 

「あぁ、来たね。どうかな、昨日はよく眠れたかね?」

「えっと、はい」

「そうか。それはなによりだ」

 

 昨日と同じ部屋で好好爺といった雰囲気の元総理に迎えられ、私は軽く挨拶を済ませて席に付く。ユウカさんも私の隣に腰をおろし、一拍。元総理は私達に軽く視線を投げた後、その雰囲気を殆んど崩さないまま話を始めた。

 

「さて、例の……ポケモンの話だが。結論から言えば力不足だった」

「そう、ですか……」

 

 そう言って軽く頭を下げる元総理を見て落胆しつつ、それも仕方ない事だろうと納得もする。何せポケモンは既存の常識全てが通じない話だ。簡単に通るとは思えないし、ましてや相手は頭が硬い事がデフォの政治家。それが普通だろう。むしろ元総理が柔軟過ぎたぐらいだ。

 

「やはり私の言葉だけでは信じ難いらしくてな。懸念こそ共有出来たが、肝心なところはまるで詰められなかった」

「いえ、仕方ないと思います」

「……そうだな」

 

 私の落胆混じりの同意に、なぜか元総理は疑問がにじみ出る声で答えた。まるで私の同意は意外だと言わんばかりに。

 いったい何が意外なのか? 私がそれを考えようとする前に、今まで黙っていたユウカさんがグイッと前面に出る。

 

「とはいえ、ここで終わる訳にはいきません。そうですね? お祖父様」

「その通りだ。この問題と情報は早急に共有する必要がある。出来れば、国全体で。……総理には資料を渡して来た。一晩明けた今日ならば、ある程度整理出来ているはずだ」

「あら……では?」

「うむ。王手を打とうと思う。いささか性急に感じなくはないが……時間を掛ければ掛ける程後手に回り、それが甚大な損失、あるいは被害を生む可能性が出て来たからな」

「……ポケモン災害、ですか」

「あぁ。昨日ユウカから聞かされたときはまさかと思ったが……一晩明ければ可能性ばかりが大きくなってな。年甲斐もなく焦る事にした」

 

 高速のジャブ連打に割り込めずにいると、唐突に2人の視線がこちらに向けられる。

 ポチの入ったボールを握りしめ、一瞬ビクリと小さくなった私は悪くない。だって突然に過ぎたのだ。ポケモン災害とかいう、聞き慣れない単語にクエスチョンマークを浮かべていたときなので尚更。

 

「シロちゃん、お願い出来る?」

「? え、えっと……」

「あぁ、ごめんなさいね。目的語が抜けてたわ。……総理の説得よ」

「時刻は今日の夜を予定している。短時間だが時間を作ってもらった。なに、難しい事ではない。彼にもアレを見せればよいのだ。そうすれば嫌でも理解できる」

 

 待て、待って。ちょっと待って。なぜ私が現職総理の説得に? いや、話だけでは信じれないと言ってたな……つまり、これはあれか。ポチをモンスターボールから出すことで、証拠の提出をお願いしたいと。そういう事か。

 

「はい。大丈夫です。やれます」

 

 それならお安い御用だ。やる事もちょっとボールを投げるだけ。それでポケモンとの未来が手に入るなら幾らでもやってやる。むしろ昨日私がついて行かなかったのが悪いまであるだろう。

 

「うむ、助かる。これで未来の安全は確保されるだろう。……ではユウカ、時間まで宜しく頼む。私は私で動く事にするよ」

「えぇ、分かりました。任せて下さい」

「あぁ。シロちゃん、時間までユウカとゆっくりしていてくれ……では、失礼するよ」

 

 そう言って元総理は席を立ち、部屋を出ていく。恐らく何らかの準備をしに行ったのだろう。それらしい事をユウカさんと話していたし、間違いないはず。

 しかし、総理の説得か。だいたいのところは元総理が昨日終わらせているだろうから、私がするのは本当に最後の一押しなのだろうが……不安が脳裏をかすめる。もし失敗すれば、もし詰めきれなければ、とんでもなくマズイ未来に繋がる気がしたのだ。

 

「……シロちゃん?」

 

 湧き出るのは朝感じた嫌な感覚。視界を走るのは火の景色。……不快だ。そして、この感覚は些細な事で現実になりうる。そんな気がする。チリチリ、チリチリ、頭が騒ぐ。

 手先はボールを撫でる。一つ、二つ、フワリ、と。頭にぬくもり。見上げればユウカさんが私を撫でていた。優しく、ゆっくりと。

 

「大丈夫よ。シロちゃんだけじゃない。私も行くし、ポチちゃんもいるでしょう?」

「そう、ですね……」

 

 カタリ、と。小さくボールが揺れる。それはどこか呆れているようでいて、しかし励ましてくれていた。本当に、彼女は私の事をよく見ている。

 あぁ……不安は、ある。もし失敗すればという不安は尽きない。しかし不快さは無く、未来も見えた。むしろその点に関しては楽しみですらある。何せ今度の相手は現役の総理大臣だ。その影響力は元総理のそれを上回り、説得出来たときの前進具合は今までの比ではない。それは正しく王手と呼ぶに相応しい前進になるはずだ。

 

「……えぇ、楽しみです」

「ふふ、その意気よ」

 

 あぁ、楽しみだ。今回の前進が叶えば、日本各地でポケモンバトルが見れる日も具体的になるだろう。そうなれば私もポケモントレーナーとして戦えるかも知れない。ポチをパートナーに、様々な戦いを……!

 そんな風に夢想する事…………どれくらいだったか? ふとユウカさんがスマホに目を落としている事に気づく。その表情は、複雑だ。喜びが強くはあるが、悔しさも見れる。……何事だ?

 

「ユウカさん?」

「━━いえ、そうね。……シロちゃん、嬉しい報告よ。ポケモンが見つかったわ。ポチちゃんに続く、2匹目ね」

「…………!?」

 

 ポケモンが見つかった。2匹目。

 その情報が正しく脳ミソに伝わるまで数秒を必要とした。何せ、何せ2匹目のポケモンだ! この事実が意味するところは複数で、大きい。しかし一言でいうのなら……ポケモンが来た、そういう事だ。

 私はユウカさんが見せて来たスマホの画面を見る。そこに映っているのは掲示板と、そこに貼られた写真が複数枚。写真はどれも画質とブレが酷いが、どこかの住宅地で撮られた物のように見えた。そしてそれ共通して写る、一匹の鳥らしきナニカ……いや、あれは━━ポッポだ。

 

「ユウカさん、このポッポは……?」

「久里浜付近に展開させたシロ民からの一報よ。目撃場所は久里浜内。正確にいえばここから少し北側といったところで目撃したらしいわ。写真を撮った後直ぐ様捕獲に向けて動くも、かなり素早く逃げられたらしいわね」

「なる、ほど……つまり、そのポッポはまだ野生のまま、ですか」

「えぇ、そうらしいわ。現時点で30人近いシロ民が捕獲に動くも、逃げられ続けているみたい。ボールは当たらず、捕獲用にと用意された網は軽々破られ、飛び掛かれば砂をぶつけられ手酷く蹴散らされる……散々ね」

「…………」

 

 掲示板に書き込まれているのだろうユウカさんの声を聞きつつ、私はすんなりとボールに入ったポチは特殊な例だったのだろうと思う。

 ゲームならば楽々ゲットできるポッポも、現実になれば大捕物に発展してもなお捕獲出来ないのだ。これはシロ民が無能な訳ではなく、ポッポが強過ぎるから。ましてや彼らは手持ち無し。むしろ健闘しているぐらいだろう。とはいえ、このまま放っておくには惜しい話だ……ここは私が以外の誰かにゲットして貰い、ポケモントレーナー候補を増やしておきたいのだが。

 

「シロちゃん。彼らシロ民に何か助言はある?」

「助言、ですか……」

 

 普通に考えるのなら体力を削って状態異常にするのがベターだ。しかし件のポッポの体力を削ろうにもバトルで削れるポケモンがいない。グラエナであるポチではオーバーキルだろうし、生身の人間がポケモンの体力を削れるとは思えないからだ。ならば状態異常だといきたいがこれも同じく駄目。バトル以上にやれるポケモンがいない。八方塞がりだ。

 ……いや、待て。ならなぜ私はポチをゲット出来たんだ? ポチが特殊だった。なら、何が特殊だった……?

 

「……友情ゲット」

「友情、ゲット?」

「はい。友情ゲットです。戦う事ではなく、別のやり方でこちらを認めて貰う事でボールに入って貰う事です」

「……なるほど。シロちゃんがポチちゃん相手にやったのは、それね?」

「はい。……ただ、野生のポッポとどう友情を築けば良いのかは、サッパリですが」

「いえ、充分よ。後は彼らが上手くやるでしょう」

 

 そう言うとユウカさんは凄まじい速度でスマホを操作していく。恐らくシロ民に友情ゲットすべしと書き込んでいるのだろうが……私はそれに何も言えないし、それこそ祈る事しか出来なさそうだ。これ以上の助言は思い付かず、ポチと共に参戦する訳にもいかないのだから。それに、夜には総理の説得も待っている。……ここは、役割分担か。

 

「さ、て……シロちゃん?」

「な、なんですか……? ユウカさん?」

 

 シロ民に伝達し終わったのか、スマホをしまったユウカさんが私の肩を押さえる。その顔は満面の笑みであったが……しかし、嫌な迫力があった。まさか。

 

「総理と会うのだもの、おめかしは……必要よね?」

「そ、それは……」

「シロちゃん?」

「必要、です」

 

 負けた。3秒と持たなかった。即落ちだった。

 だって、仕方ないだろう? おめかしが必要なのは事実なのだ。……この格好でもお嬢様してるし、充分な気もするのだが。

 

「駄目よ。それは自宅でくつろぐ為の物で、出掛けるには不向き。事今回の様な話なら失礼にもなるわ」

「そう、なんですか……?」

「えぇ、そうよ」

 

 そうなのかぁー

 私は内心ため息を吐きながらそう納得する。ユウカさんの言う事だし、更にああもキッパリ言い切ったのだ。間違いないのだろう。

 とはいえ慣れない物は慣れないので、必要以上のおめかしは断ろう。そう思いながら私はユウカさんに背を押されて部屋を後にし、別の部屋に向かった。

 

 ━━化粧を進めるユウカさんに断固として抵抗するまで、あと数分。



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掲示板 やせいのポケモンがあらわれた!

【久里浜】ポケモンをゲットするスレpart2【大捕物】

 

333:名無しの犬

こちらチームアルファ2! ポッポの捕獲に失敗、負傷者……2名! 撤退の許可を!!

 

334:名無しの犬

>>333

こちら本部。撤退は許可出来ない。捕獲作戦を続行せよ。

 

335:名無しの犬

>>334

だろうな。治療費上乗せだ。

 

337:名無しの犬

こ、こちらチームベータ3。二重にした捕獲用のネットを突き破られた! 作戦続行は困難。撤退の許可を!

 

338:名無しの犬

>>337

よく聞こえないぞ。繰り返せ。

 

340:名無しの犬

>>338

撤退の許可を!!

 

341:名無しの犬

>>340

クソッ、通信妨害か……!

 

342:名無しの犬

ソースとケチャップ、どっち派だ?

 

344:名無しの犬

本部。どうやらポッポはかなり素早く、手強いようです。恐らく『でんこうせっか』と『すなかけ』を修得しているものと思われます。

 

345:名無しの犬

>>342

明日考えよう。

 

346:名無しの犬

>>344

今更そんな情報がなんだと言うんだ! 走って追いかけろ!

 

348:名無しの犬

>>346

(´・ω・`)

 

350:名無しの犬

こちらチームアルファ1。拠点までの後退に成功した。

 

351:名無しの犬

>>350

よし。アルファ1、5分後に再出撃だ。

 

352:名無しの犬

>>351

そんな!

 

353:名無しの犬

>>351

どうすればいいんだ!

 

354:名無しの犬

>>353

あきらめろ。

 

355:名無しの犬

>>354

了解!

 

357:名無しの犬

>>353

俺がなんとかしてやる!

 

358:名無しの犬

>>357

お前は俺の英雄だ。

 

359:名無しの犬

俺はギャンブルの天才だぜぇ?

 

361:名無しの犬

>>359

そういうことにしといてやる!

 

363:名無しの犬

分かったぞ。ポッポの弱点は持久力の無さだ。奴のスタミナを消費させ続ければ、いずれは接近出来る!

総員! 装備を放棄して、ポッポを追い掛けるんだ!

 

364:名無しの犬

>>363

ホントかよ!?

 

365:名無しの犬

>>363

確かなのか?

 

367:名無しの犬

>>364

>>365

そういう噂だ。

 

368:名無しの犬

>>367

俺もそう思う。

 

369:名無しの犬

クソッ、状況は最悪だ……!

 

370:名無しの犬

よし。敵の潜水艦を発見!

 

371:名無しの犬

>>370

駄目だ!

 

372:名無しの犬

>>370

駄目だ!

 

373:名無しの犬

>>370

駄目だ!

 

375:名無しの犬

……なぁ、流れを叩き切る様で悪いんだけどさ。お前ら実は余裕だろ?

 

377:名無しの犬

>>375

まぁ、いうてもポッポだしな……ギャラドス追い掛けてる訳じゃないし、ネタに走る余裕はあるよ。

 

378:名無しの犬

>>377

走りながらネタに走る……

 

380:名無しの犬

>>378

【審議中】( ´・ω・)( ´・ω・)(・ω・`)(・ω・` )ウワァ……

 

381:名無しの犬

>>378

審議拒否

 

383:名無しの犬

え? お前らダッシュしながらスマホ操作してんの?

 

385:名無しの犬

>>383

よう、昨日の俺。

 

386:名無しの犬

>>383

慣れれば余裕だぞ。走るのも、JK並みのスマホ操作もな。

 

388:名無しの犬

まぁ、ながら歩きってレベルじゃねぇから、流石に人通りのあるところではしてないけどな。……してないよな。お前ら?

 

390:名無しの犬

>>388

してない。俺のせいで民度が低いとか思われたくないし。

 

391:名無しの犬

>>388

する訳ない。犯罪者どもじゃあるまいし……

 

393:名無しの犬

……もしながらスマホしてるシロ民が居たら?

 

395:名無しの犬

>>393

ポチネキに突き出す。

 

396:名無しの犬

>>393

SATUMAおじじに通報。

 

397:名無しの犬

>>393

シロ民総出でリンチ。

 

399:名無しの犬

うん、気を付けるわ

 

400:名無しの犬

>>399

お前、まさか……?

 

402:名無しの犬

ところでさ、お前らアイドルネキから友情ゲットしろって言われなかった? なんでまだ追い掛けとるん?

 

404:名無しの犬

>>402

だってポッポ早すぎて友情どころじゃないし。先ずは足止めしないとパンの耳を投げる事すら出来ん。

 

405:名無しの犬

>>404

それな。

でもこのまま追い掛けても負傷者が増えるばかりでどうにもならん気がする。ポッポの機嫌もあるだろうし……ここは一度撤退も考えるべきでは?

 

407:名無しの犬

>>405

いやいや、ここまで来て撤退出来るか? 俺は無理。

鳥一匹捕まえれないとか、シロちゃんは勿論ユウカ様にも軽蔑される……いや、それはそれでありか。

 

409:名無しの犬

>>407

ドM犬兵怖いなぁ。戸締まりストⅣ。

けど実際撤退するかどうかは悩ましいよな。今の負傷者何人だっけ?

 

411:名無しの犬

>>409

軽症が20人くらいだな。重傷者は無し。殆んどがすなかけでムスカして蹴散らされた奴らで、何人かがでんこうせっか食らってゲロった。

 

412:名無しの犬

>>411

うーん、難しいよな。撤退するには被害が無さすぎるけど、ここで退いた方が賢明な気がするという。

 

413:名無しの犬

でんこうせっか痛かった。あばら骨折れたかと思った。

でもあれたぶん手加減してた気がする……

 

416:名無しの犬

>>413

人間には215本も骨があるんだぞ? 今更一本や二本折れたとして、それがなんだと言うんだ!

 

418:名無しの犬

>>416

ヒデェや……

 

420:名無しの犬

ポッポ発見!

 

421:名無しの犬

ポッポめぇ、とっ捕まえてやる!

 

422:名無しの犬

バイノハヤサデー

 

423:名無しの犬

突撃ィィィ!

 

424:名無しの犬

バンザァァァイ!

 

425:名無しの犬

урааааааааа!

 

426:名無しの犬

着剣せよ!

 

427:名無しの犬

着☆剣!

 

428:名無しの犬

あれ? ポッポを見失ってしまいました。

 

429:名無しの犬

馬鹿者ぉ! 貴様ぁ! 臆病風にふかれたかぁ!

 

430:名無しの犬

申し訳ありません。違う場所を、捜索しましようよ。

 

431:名無しの犬

いや、突撃だ。素手でもネットでも構わん。必ず捕獲するのだ。

 

432:名無しの犬

(^q^)リョウカイ

 

433:名無しの犬

(^q^)ジュンビハイイカ

 

434:名無しの犬

(^q^)オレニツヅケ

 

435:名無しの犬

(^q^)カレニツヅケ

 

436:名無しの犬

(^q^)ワー

 

437:名無しの犬

(^q^)モウコレイジョウソウサクデキナイ

 

438:名無しの犬

(^q^)テッターイ

 

439:名無しの犬

警告する。お前は戦いから逃げようとしている。逃亡者はポチネキに突き出される。

 

440:名無しの犬

(^q^)…………

 

441:名無しの犬

(^q^)モンスターボールヲナゲロー

 

442:名無しの犬

(^q^)ワー

 

445:名無しの犬

こ、こちらチームアルファ1! 本部、本部応答願う! 我々アルファ1はコラッタと遭遇! 繰り返す! アルファ1はコラッタと遭遇した!

『荒い画像』

 

447:名無しの犬

>>445

なんだと!? アルファ1、詳細に報告せよ!

 

448:名無しの犬

久里浜内の裏路地で、マズイ逃げるぞ! アルファ1はコラッタ追跡に移る!

 

449:名無しの犬

>>448

了解したアルファ1。健闘を祈る。

 

450:名無しの犬

>>448

本部よりアルファ1へ。コラッタは狂暴な側面もある。接近時は充分に注意せよ。

 

452:名無しの犬

しかしコラッタまで来たか……もうノンストップって感じだな。ボサッとしてたらおいてかれそうだ。

 

454:名無しの犬

>>452

実際そうなんだろうよ。この激動の時代に入ろうかという瞬間、シロ民だったのは幸運だった。この流れならブラック企業無理やり退職出来そうだし、ホントシロちゃん様々だわ。

可愛いってか、神々しかったし。もうね、一生付いて行くわ。

 

456:名無しの犬

>>454

ワカル。今まさに時代が変わろうとしてるのマジワカル。あれだよ、黒船からの明治維新みたいな激動を感じる。そんでシロ民な俺らは圧倒的なアドバンテージ持った転生者みたいな、そんな感じスッゴいする。

……てか、その口振りだとシロちゃんに会ったの? え、会ったの? くじ引き勝者なの?

 

459:名無しの犬

>>456

会った。ポチネキゲットシーンも見た。時代の変革を肌で感じました。

え? シロちゃん? もうね、マジ神々しい。ユウカ様もテレビ以上だったけど、シロちゃんはそれの更に上。アルビノだからか肌の露出少なめな清楚な格好してたけど、もう清楚通り越して神々しいもん。なにあれ、よく分かんないけどオーラ? うん、オーラが違う。顔は可愛いし、ちっちゃくて可愛いし、オーラ神々しいし、なんか全体的に儚い。うん、消えそうなくらい儚くて神々しいの。よく分かんないけどスッゴい。神秘的? うん神秘的だった。で、神秘的過ぎて声かけるの躊躇して最後まで喋れなかった。いや、だって声掛けたら消えそうなんだもんよ……

 

460:名無しの犬

>>459

ok。分かったから取り敢えず落ち着け。

 

461:名無しの犬

>>459

長文草。しかも語彙力微妙に低下してるし。

そんなに凄かったん?

 

463:名無しの犬

>>460

無理。思い出すだけでテンション上がる。

>>461

凄いとかいうレベルじゃない。言葉で表現するの難しいけど、可愛いくて神々しくて儚くて神秘的なんだよ!

クソッ、語彙力下がり過ぎて言葉が見つからねぇ! 取り敢えずお前らも会えば分かる! 会え! いや、やっぱり会うな! 人に会ったら消えそう!

 

465:名無しの犬

>>463

だいたい分かった。あとキレるな落ち着け。

そしてどっちだよw

 

467:名無しの犬

>>465

キレてねぇよ! テンション上がってるだけ!

あとどっちかは俺も分かんない!

でもポッポかコラッタ捕まえた奴はシロちゃんと会えると思うから、早く捕まえて俺と同じ思いして欲しい。この感覚は会わないと分からない。

 

468:名無しの犬

>>467

なるほどなぁ。

確かにポケモン捕まえたら会えるわな。合法的に。

……しかし、アルファ1はどうした? くたばったか?

 

470:名無しの犬

こちらアルファ1。コラッタを行き止まりまで追い詰めた。これより、餌付け作戦を開始する。

 

471:名無しの犬

>>470

了解したアルファ1。健闘を祈る。

 

472:名無しの犬

>>470

注意しろアルファ1。追い詰められたコラッタに余裕は無く、更にその前歯はかなり強力だ。

下手すると食い千切られるぞ!

 

473:名無しの犬

俺はこれでも誇り高きエリートシロ民! その程度の覚悟は出来てこの任務についておるのだ! シロちゃんの為なら! 手足の2本や3本、簡単にくれてやるわァァァ!

 

474:名無しの犬

良いぞエリートシロ民!

そして食らえコラッタ! 総額8万円! 職人の手によって丁寧に熟成された超高級チーズだ! 一口一口がお前を魅了するのだァァァ!

 

475:名無しの犬

食って欲しいのだァァァ!

 

476:名無しの犬

お、おぉ、食ったぞ!

あっ、ぶね。あと少しで勢いのまま腕に噛み付かれてたぞ?

 

478:名無しの犬

良いぞエリートシロ民!

我々はお前のような勇気ある者に\(・ω・\)敬意を表す(/・ω・)/ \(・ω・\)敬意を表す(/・ω・)/

 

480:名無しの犬

満足してる場合かぁー!

早くボールでゲットするのだ!

 

481:名無しの犬

エリートシロ民がボールを取り出して満足げなコラッタに……ナニィー!?

モンスターボールにィィィ! あぁ、あんなボールに! ホンの直径5センチ程の手のひらサイズのボールの中に! 自分の身体を凝縮して入って行ったァァァ!?

 

482:名無しの犬

なんというI☆KI☆MO☆NO!

 

483:名無しの犬

ゲット出来たのか!?

 

484:名無しの犬

どうなんだ!?

 

485:名無しの犬

コラッタゲットだぜ!

『コラッタを肩に乗せている荒い写真』

 

486:名無しの犬

良し!

 

487:名無しの犬

やったぜ!

 

488:名無しの犬

>>485

勲章ものだ!

 

489:名無しの犬

>>485

お見事!

 

490:名無しの犬

日本の勝利である。

大東亜戦争の終わりも近い。

 

491:名無しの犬

バンザァァァイ!

 

492:名無しの犬

流石は伊藤社長が父親の伊藤元総理へ晩酌時のつまみ用にと送ったのを、横からアイドルネキが掻っ払って転用しただけはある。余裕だぜ。

 

494:名無しの犬

>>492

え゛ナニソレ聞いてないんだけど。

 

496:名無しの犬

>>494

そりゃ言ってないからな。

 

498:名無しの犬

2人目のポケモントレーナーの誕生か……裏山しす。

 

500:名無しの犬

これでコラッタゲットニキはシロちゃんに報告出来るな!

裏山しいぞ!

 

502:名無しの犬

そ、そうか。これで俺はもう一度シロちゃんに会えるのか……いや、あわよくばそのままバトルとかしちゃったり? ポケモン談義とかで会話もワンチャン? ヤッベ。マジヤッベ。取り敢えずチーズ買ってコラッタにやりつつ、ポケモン知識入れ直すわ。

 

504:名無しの犬

>>502

逝てら。

さて、俺らはさっさとポッポ捕まえるぞオラァ!

3人目の栄光は俺のモンだァァァ!

 

506:名無しの犬

>>504

バカ言え俺だろ常考。

 

508:名無しの犬

>>504

>>506

お前ら喧嘩すんなよ……俺に決まってるだろ?

 

509:名無しの犬

>>508

貴様ぁぁぁ!

 

510:名無しの犬

ポッポ発見!

 

512:名無しの犬

こちら小隊長から大隊へ、次の地点へ支援願います。

目標東経105、北緯20、地点ロの2。繰り返す、地点ロの2。

 

513:名無しの犬

>>512

こちら大隊から小隊長へ。支援要請、却下されました☆

 

514:名無しの犬

まーじかよぉ。誰もこんなこと言ってなかったぜ。驚きだ。

 

515:名無しの犬

よし! 海軍の支援を要請する!

 

516:名無しの犬

>>515

駄目だ!

 

517:名無しの犬

>>515

駄目だ!

 

518:名無しの犬

>>515

駄目だ!

 

……………………

…………

……

 

 

 

 

「そっか、2人目のポケモントレーナーが……」

 

 まもなく総理との会談に出発しようという頃、私はユウカさんの部屋でネタまみれの掲示板を流し見していた。

 そうして目につくのは2人目のポケモントレーナー……ビルに居たシロ民の一人だ。コラッタとグラエナでは勝負になるか微妙だが、ポケモンバトルをしようと思えば出来る状況にはなった。

 そして、それはこの後の私の努力次第で加速するだろう。いや、そういえば……私は顔を出したユウカさんを見てふと疑問が出来た。聞いてみよう。

 

「シロちゃん準備は良い?」

「はい。……ユウカさん」

「なに? 悪いけれど、それ以上の妥協はしないわよ?」

「いえ、そうではなく」

 

 夜だから日光は気にしないで良いだろうと、今の私はヒラヒラピラピラのお嬢様スタイルMk-IIだ。華麗さやAPP値は上がっていると認めざるを得ないが、しかし、足元がかつてなく心もとなく、すんごいスースーする。今すぐ芋ジャージに戻したいし、もう勘弁して欲しかったが……化粧しないならこれが妥協点らしいので、もう諦めた。慣れはしないが。

 

「ユウカさんは、ゲットするならどんなポケモンが良いですか?」

「ん、そうねぇ……」

 

 私が何気なく聞いた疑問に、ユウカさんは暫し黙り込んだ後。いつも通りの力強い声で答えてくる。

 

「強い子が良いわね。そうなると、ドラゴンタイプかしら?」

「それは……似合いそうです」

「そう?」

「はい」

 

 脳裏に金髪の女性チャンピオンがチラついたが、脇に置いておく。……まぁ、それはそれで問題無さそうだが。

 

「んー……カントーでドラゴンなら、ミニリュウかな?」

「ミニリュウ。あぁ、あの龍みたいな子ね。進化するとハクリュー、カイリューになるのだったかしら?」

「はい。種族値も高いと聞きますし、強いドラゴンタイプかと。捕まえるかどうかは……かなりシビアですが」

「たしか生息数が少ないのよね? ……まぁ、それぐらいならなんとかなるでしょう」

「そうですね」

 

 力強く即答するユウカさんに釣られ、私は苦笑しつつも即時に同意する。居ないとか会えないとかならともかく、生息数が少ないくらいユウカさんならなんとでもするだろうという確信があったから。なんなら明日起きたときにユウカさんがミニリュウをゲットしていても、私は絶対に驚かない自信まである。

 ……っと、そうこうしているうちに時間が来た様だ。運転手の人が元総理と共に迎えに来た。

 

「さ、て……時間ね。行くわよ?」

「はい、行きましょう」

 

 私はユウカさんに連れられ、リムジンに乗って伊藤家を出る。

 ポチの入ったボールを撫でながら、私は思うのだ。ポチを使ってポケモンバトルする日も近いだろう、と。




要点まとめ
EDF新作記念を兼ねたEDFネタ特盛
万歳エディションネタ
ポッポ強い
(^q^)ワー
やせいのコラッタがとびだしてきた!
シロ民から見たシロちゃん
シュトロハイムネタ
コラッタゲット
3人目争奪戦
夜間用お嬢様スタイルMk-IIシロちゃん決戦へ

ネタを知らない人はニコニコで検索して見て来いカルロ。
New コマンドーネタ


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第17話 政界への第二撃

 日が沈み、電気の明かりが街を照らす夜。ある高級料理屋の個室では一人の男が頭を抱えていた。

 もしテレビや新聞を一切見ない様な世捨て人がその人物を見れば、恐ろしく疲れたサラリーマンだと判断するだろう。見た目よりもいささか後退した白髪混じりの前髪、覇気に欠ける雰囲気、何より手元の紙に落とされた視線は覇気どころか生気にも欠けていた……が、この人物はサラリーマンなどではない。下手な有名人よりもよっぽど知名度のある人物、彼は現役の日本国首相。つまりは総理大臣であった。

 

「むぅ……」

 

 信じがたい。そう言わんばかりに目頭をもみ、何らかの資料なのだろう紙に視線を走らせる総理。その仕草からは疲労しか感じなかったが、しかし何とか問題を解こうとしている意思は見える。

 そのまま視線を走らせ、ページをめくり、かと思えば元に戻し……数分が経過。

 

「参ったな……」

 

 降参だ。そう後に続く様に資料から目を離し、腕時計を確認する総理。彼はもうかれこれ10分以上は待っていた。あちらが事故で発生した渋滞に巻き込まれた事で時間がズレてしまっていたが為の暇であったが……その時間も後少し。そろそろ到着するはずだ。

 それを確認した総理は再度資料に目を落とす。そこに書かれた見慣れない文字……例えば『きのみ』だとか『ポケモン』だのに酷く集中力を奪われながら、しかし最低限は理解しなければ()()と話をするどころではないと。

 

 総理がその資料を受け取ったのはつい昨日の事で、本格的に読み始めたのは今日になってからだ。まだ自分が若い頃にお世話になり、今も先生と呼び慕う相手から手渡された資料。

 最初にパッと見たときは馬鹿馬鹿しいと思った。何かのジョークか、それとも先生もついにボケたのかと。しかしボケとは程遠い、現役の頃に戻ったかの様な覇気を持って説明する先生を見て……察した。事実だと。勝負所なのだと。しかし、だからといって直ぐに呑み込める代物では無く、結局総理は軽く読んだ後一晩休みを置き、今日になって本格的に読み覚えようとしているのだが……やはり、ファンタジーの様な文言が邪魔して中々覚えられない。

 

 食えば傷が一瞬で治るきのみ。ガンも治るかも知れないきのみ。

 一匹で火力発電所に成り代われる生物。戦車よりも強い生物。オカルトチックな生物。

 

 彼は総理としてはこの手の事に知識のある方だ。新しい時代を生きる為に、若い文化もある程度は知っている。だからこそか。彼はこの資料を、今時のファンタジーアニメか何かの設定だとしか思えないのだ。そしてそんなものを真剣に覚えようにも身が入らず……そして。

 

「総理、到着したようです」

「あぁ、通してくれ」

 

 資料を半分も理解出来ないうちにあちらが到着してしまう。こうなってはなるようにしかならない。総理は資料を脇に置き、潔く腹をくくった。

 そうして暫くして部屋に入ってくる老人と若い娘。先生と、その孫娘だ。彼らとは面識がある。問題は……

 

「うわぁ……」

 

 小学生……いや、中学生だろうか? まだ子供といっていいだろう年頃の、雪の様に白く、儚い印象を受ける少女。何も知らなければ家に帰る事を進めるところだが……総理は既に知っていた。少女が、この事態の専門家であることを。

 

「お待ちしておりました、先生」

「いや、待たせたようで悪かったね」

「いえ。……ユウカ嬢もお久しぶりですね」

「はい。お久しぶりですね、総理」

「あぁ、ユウカ嬢も元気そうで何よりだ」

 

 この手の店が珍しいのか辺りをキョロキョロと見回す白い少女を脇に、和やかとも取れる挨拶をしつつ総理は少女のプロフィールを思い出す。

 

 名前を不知火白。年齢は18歳。しかし戸籍に何らかの改竄が加えられた事が発覚しており、その年齢も当てにならない。むしろ見た目相応と見るべき。また先天性白皮症……いわゆるアルビノであり、日光に弱く昼間は外出しにくい。髪の毛と目の色が違うのはこの為。なお症状そのものは軽度だと思われる。

 親はおらず、また不明。戸籍が改竄されていた事から上流階級の人間の、酷く後ろめたい隠し子ではないかと推測されている。

 学歴は中退止まり。そもそも小学校に行っていたかすら怪しいところがあり、これはいじめを受けていたか、親が居ない為の弊害とみられる。

 趣味は『ポケモン』の絵を書くこと。彼女はこの事態以前から『ポケモン』を書いており、この事件の黒幕、あるいは何かを知っていると思われる。またこの関係か数回に渡って預言を行ったという噂もあり。

 更にシロ民と呼ばれる独自の戦力を多数保有しており、その総数は一万人に届き、実働戦力は千人以上と推測される。その実態はアイドルや有名人の追っかけよりも新興宗教のそれに近く、注意が必要。噂によれば彼らの中には重武装のテロリストも居るらしく、公安がそれとなく動いているとの話だ。

 ハッキリ言って、普通なら関わりたくない危険な素性の人物であると同時に、同情を感じずにはいられない少女だった。まぁ、どちらにせよ。

 

「シロちゃん」

「ぇ? あ、はい。不知火白です。宜しくお願いします」

「あぁ、宜しく」

 

 事態の打開の為には関わる他無い。そう決心して不知火白の自己紹介を受けるが、ただ一言で警戒心がガリガリと削れていく。ペコリと頭を下げるこの白い少女が危険? 何かの間違いではないだろうか、と。

 そう思考した総理だったが、ハッとして意識を切り替える。ただ一言で警戒を解くなんておかしい。いくら相手が小さいとはいえ、事前情報を考えれば警戒心を解ける要素にはならないのだ。にも関わらず自分は警戒を解きかけた……危険だ。どうしようもなく。

 

『不審なところは多く、信じるに値するかも難しいが……悪人ではないのだろう。少なくとも、私はそう思う』

 

 そう言って苦笑いを溢した昨日の先生を思い出し、総理はその記憶に同意する。確かに悪人ではないと。しかし、悪人でないからといって、それが悪い事にならないとイコールにはならないのが現実だ。

 ましてやこれだけのカリスマ性……それも麻薬並みのこれは居るだけで危険極まる。ただ一言で相手の警戒心を解き、同情、あるいは同調させるなんて能力は、危険だ。警戒心を解いてはならない。

 

「では、早速で悪いのだが……説明を頼めるかね?」

「あ、はい。分かりました」

 

 こういう手合いと長話は危険だ。そう判断した総理は4人がそれぞれ席に着くなり早々に本題に入る。

 そうして不知火白が唐突に取り出したのは、紅白のボール。ずっと手に持っていたらしいそれの名は確か……モンスターボール。先ほど総理の手元に届いた新しい資料によれば、未知の技術や素材が使われており、解明には時間がかかるといわれる代物。一説には、異世界の品といわれるそれ。

 

「おいで、ポチ」

 

 その不可思議なボールを不知火白は自身の近くに放り━━光が溢れる。眩しいのは一瞬だけ。光はすぐに形をとり始め、気づけば光は黒い犬の姿となっていた。

 不可思議な、非現実的な光景。総理は確かに先生から聞かされてはいたが……それでも信じがたいその光景に動揺せずにはおれず、黒い犬が不知火白の側に控えるのを横目に、先生とその孫娘の方をチラリと見る。

 先生の目には同情と、そしてこちらを伺う意志が。孫娘の方は不知火白とポチと呼ばれた黒い犬……ポケモンに熱い視線が釘付けだった。

 

「どう、ですか?」

 

 総理が内心を定めるより早く、不知火白が問いを投げ掛ける。勝ち誇った目でもしているのか、そう思いながら総理が視線を合わせると……白い少女の目は不安と期待に揺れていた。

 

 ━━やめてくれ。

 

 この状況で不安に揺れられると、まるで私が悪人ではないか。

 その期待を否定すれば、私は悪人の様ではないか。

 そんな風に総理が思考し、良心が痛んだのはホンの一瞬。しかし……それで勝負はついていた。

 

「いや…………なるほど。確かに話の通りのようだ」

 

 国を預かる者として冷静に、慎重に、そして確実に事を決める為、何とか相手の不備を指摘し、目の前の光景を否定しようと総理は頭を回そうとしたが……回らない。先ほど見た光景が事前に聞かされた話を裏付けており、白い少女の不安と期待がその思考を後押しするのだ。見た通りだ、聞いた通りだ、受け入れろ、現実逃避の為に年端もいかない少女をいたぶるのか、と。

 結局、総理は折れた。目の前の光景を認めるしかなかったのだ。昨日の時点で疑念を持ち、まさかと思っていたのが呼び水だったのか。少女の不安と期待、そして独特の雰囲気に気圧されたのがトドメだったのか。それらは最早どうでもいい事で、現実を認めた総理の頭の中では今後の動きが決まり始めていた。

 

「はい。……では、詳しい説明に入りたいと思います」

「あぁ。宜しくお願いする。先ずはこの、きのみについてお願いできるかな?」

「はい。それではきのみについてですが━━」

 

 だから、その後2時間に渡って行われたポケモン説明会はただの確認でしかなかった。勿論、それによって手に入った知識もあったが、総理がどうするかは既に決まっていたのだ。

 紅い瞳を生気と覇気でたぎらせ、ポケモンについて語りに語った白い少女がユウカ嬢と共に退室する。残るのは総理と、元総理の2人。

 

「…………」

「…………」

 

 部屋に残った政治家の間に重い沈黙が降りる。探りあい、思考をまとめ、先に口を開いたのは総理の方だった。

 

「あんな少女が、この異変の専門家ですか」

「信じがたい事に、な。しかし、信じる他無い。信じなければ……ロクな事になるまいよ」

「……確かに」

 

 言外に頭が痛いとため息を漏らす政治家2人。そこで両者ともに共感点を見いだすが、それについて語る事はない。語るべきは、未来の事だ。

 

「さしあたり、どうするかね?」

「党内で意見をまとめ、国会で法を……ポケモン特別法案を作る必要があるでしょう。それと並行して各種メディアを使った国民への周知も急務です」

「だろうな……それらは私も協力しよう。ツテを辿って説明と説得。国民への周知はユウカもやってくれるはずだ。しかし、法案が通るかはキミら次第だぞ?」

「分かっています。……あぁ、しかし」

「なにかね?」

「ポケモン……その存在を話して、それだけで信じろというのも難しいかと」

「……何度もあの少女を引っ張り出す訳にもいかん。確か新たにポケモンを捕まえた者が居たはず。その者を召集しよう」

「シロ民、でしたか」

 

 そこまで一気に打ち合わせ、2人は黙り込む。

 シロ民。そして誰にでも捕まえられるポケモン。この2つの事実に直したからだ。

 前者は気にするだけ無駄……とはいわないが、考えてもどうにもなるまい。一般人でありながら、同時に軍隊でもあり狂信者でもあると思われる彼ら。少なくとも常識的に考えてその思考と行動を読むのは不可能だろうし、そんな事をするぐらいなら頭……不知火白を抑えるべきだろうと総理は思う。少なくとも不知火白は悪人ではなく、それどころか不憫な子供であるのだし、場合によっては保護も考える必要があると。それこそ、VIPとして。

 そして後者は……非常に難しい問題だ。総理に不知火白が語った話ではポケモンはすべからく善性の生き物だが、持ち主によって悪にも染まる。そしてその力は近代兵器を上回るという。……馬鹿馬鹿しい話だが、真実なら大変な事だ。もし、もしもテロリストや悪人がポケモンを手に入れたら、それだけで街一つが消し飛ぶ覚悟が必要になる。……そんな事態に、今までの常識は通用しまい。そう総理は考え、目の前の先生と視線を合わせる。一拍。言外のため息。

 

「良くも悪くも、時代が変わろうとしているのだろうな」

「あの少女を中心に、ですか?」

「恐らくは。……我々に出来るのは、流れに逆らわない事。そして、流れに乗れる者を増やす事だろう」

「そうですね……」

 

 何度目かの言外のため息を吐き、政治家二人は頭を痛める。問題が難解に過ぎるのだ。仕方ない。……が、しかし、その目はむしろ燃えていた。問題は難解だがそれをやる意義、そして乗り越えたときに手に入るモノ。それらを考えればくすぶっている暇などありはしない。

 

「彼女は祝福の天使か、それとも終末を知らせる死神か……」

「……前者である事を祈りましょう」

「…………そうだな」

 

 しかし今日ばかりは、そう言わんばかりについにため息を外に漏らす政治家二人。……その後暫く、夜の料理屋の個室は陰鬱した空気が流れ続けたのだった。




 この作品に影響を与えた人が現代×TS×ポケモンの同志となったので記念の早期投稿。推薦書くのはまだ早いかな……?
 しかしバチュルか。EDF隊員としてはモチーフを気にせずにはいられないが……それを無視してもこの作品で出すには終章間近になるな。プロットを弄るか? しかしなぁ……いや、そうか!(テコリンッ!)これならばプロットを壊さずに出番を二章分は繰り上げられるっ! 行くぞ作者! 執筆だ!

最近地震が多い。家がボロいのか、腐ってるのか結構揺れるし……まさかな。


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第18話 配信、全国放送! ~裏方の親衛隊~

 現職総理との会談を終えて━━早三日。

 

 総理の説得は上手く行ったとユウカさんから聞かされたが、流石に三日で何かが変わる訳もなく。これといった進展を聞かないまま私は伊藤家に滞在し続けている。

 そして進展が無いのはシロ民達も同じの様で、彼らは三日経ってもポッポを捕獲出来ず、当然三人目のポケモントレーナーは現れていなかった。私としてはコラッタを捕まえたトレーナーとバトルでも……と思ったのだが、彼は私の代わりに国会やら議員先生達の説得に走り回っているらしいので、残念ながらそれも難しい。

 ハッキリ言おう。私は暇だった。あぁ、だった。過去形だ。今は……緊張している。何せ━━

 

「本番まであと一分!」

「説明用小道具の再確認は終わったか!?」

「おい、ここに置いてた機材どこにやった!?」

「予備のモンスターボールは丁重に扱え! 無くしたらただじゃすまないぞ!?」

「おい! 光の当て方には注意しろ! 下手な真似したらここにいる全員の首が飛ぶんだぞ!?」

「警備要員との連絡は絶やすなよ! テロリスト一匹見逃すな!」

「現場の協力者から連絡! 目標に動き無しとの事です!」

 

 満月の夜空の下で大声が飛び交う中、私はお嬢様スタイルでカメラの前に立っている。まるでテレビに映るタレントやアナウンサーの様に。……いや、まるでも何もその通りなのだが。

 

「ふふっ、緊張してるの? シロちゃん?」

「はい。少しだけ」

 

 嘘だ。ガチガチだ。緊張しまくりだ。

 何だってテレビに、それも生中継で映る事になったのか? それは分からない。気づいたらユウカさんと共にテレビに出る事になっていたのだ。なんでも民衆の意識を操作するのに仕込みが必要だとか何とかで……本当に、いつの間にかこうなっていた。予定では配信をするはずだったのに。

 

「リラックスよ。シロちゃん。普段配信するのと大して変わらないわ」

「でも、あれは顔は出さないので……その」

「シロちゃんは可愛いから大丈夫よ?」

「ぅ……」

 

 美人系のユウカさんにそう言われるとかなり気恥ずかしい。確かに今世の私はかなり可愛いだろうが……それとこれは別。そんな理由で緊張が取れるはずもない。むしろ気恥ずかしさで悪化するまである。

 

「それに、この放送が上手く行けば人とポケモンの仲はより近づくわ。勿論、良い方にね。そうなればシロちゃんが楽しみにしてたポケモンバトルやコンテストも出来る様になると思うわよ?」

「人と、ポケモンを……?」

「えぇ、間違いなく」

 

 そうか。この放送にはそんな力があるのか。……ならば、やるしかない。総理に話をつけたとはいえまだ動きは見えず、不安は残っているのだ。それが今回で解消されるのなら……緊張などしている暇はない。

 

「本番十秒前!」

 

 この放送でやるべき事は分かっている。ポケモンの説明と、ゲットだ。説明は私とユウカさん、そしてポチで。ゲットは他の人を交えてやると聞いている。

 

「五秒前!」

 

 手に持ったボールに指を這わせる。ツルリとした感触はいつも通り。そして中にいるポチも……きっといつも通りだ。

 

「三、二、一……」

 

 だから私も、いつも通りに━━!

 

「スタート!」

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 

『春陽麗和の好季節を迎えました今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか? ……皆様こんばんは。伊藤ユウカです。そしてこちらの子は━━』

『ぇ? ぁ、あ、はい。不知火シロです。宜しくお願いします』

『はい。今日はこのシロちゃんと私。そしてゲストの方々と共に、昨今発生している異常についての最新情報を、詳しく説明していきたいと思います』

 

 黒と白の二人の美少女が自己紹介をするところからその番組は始まった。

 黒髪の少女は『()()なお嬢様』として有名な女優兼アイドルの伊藤ユウカ。こちらについての説明はわざわざする必要を感じない有名人だ。産まれを鼻にかけない性格。清楚で、淑やかで、落ち着いた仕草等から正真正銘の大和撫子と名高い。

 しかし、もう片方の白い少女については多くの人が知らなかった。美しく、それでいて可愛らしい、まるで雪の妖精の様な白い少女。一度目にすれば早々忘れれないはずだが……芸能人ではないのだろうか? そうテレビの前の視聴者が首を傾げていた頃。そんな大衆の意思にシャケの如く逆らって盛り上がる集団がいた。

 

「シロちゃんキター!」

「俺らのシロちゃんがついに全国放送に……」

「俺らのかはともかく、快挙だな」

「飲むべ飲むべ?」

「酒! 飲まずには、いられないッ!」

 

 公園に備え付けられた街灯に照らされる、年齢も格好もバラバラの、しかし首もとのチョーカーの色だけは統一された十人程の集団。彼らの視線の先には大きめのノートパソコンが、そしてその画面には困り顔の『シロちゃん』がドアップで写っている。

 そう、彼らはシロ民。その中でもガチ中のガチ中。シロちゃん親衛隊と呼ばれる猛者達だ。

 

『では早速昨今の異変について説明を……と、いきたいですが、その前に。シロちゃんって誰? という皆様の疑問についてお答えしていきましょう。彼女は普段ネットで配信を行う絵描きの一人で━━』

 

 略すればSSとなる彼らが酒盛りを進める間にも番組は進行し、彼らにとっては今更の、しかし一般市民にとっては初耳となる『シロちゃん』についての情報が語られる。

 親衛隊は最初こそ耳を傾けていたが、それが既知の、それも初歩的な物だと把握して興味を失う。シロちゃんが普段何をしているのかなんて、彼らにとっては今更だったのだ。これが不知火シロの知られざる過去であるなら話は別だったろうが……それらが語られる様子はまるで無く、良くも悪くも当たり障りのない説明だった。

 

「なんつーか、普通だなぁ」

「そりゃイキナリ不憫設定出してもウザイだけだしな。あぁいうのは後から、自分の手で知るから利くんだし……おう、追加くれ」

「お前飲み過ぎだろ……で、やたらと実感がこもった意見だな?」

「祝い事だからしゃーない、しゃーない。そして実体験ですが、なにか?」

 

 ほぼ初めて会った面子だというのに、これといって緊張した様子も無く━━あるいは酒の力を借りて━━親衛隊の酒盛りは続く。それはビール缶片手に野球中継を見る様なオヤジ臭に溢れていたが……それを上回ってにじみ出るナニカが彼らを彼ら足らしめていた。

 それは恐らく、狂気だろう。

 何せ彼らは関東中を走り回ったのだ。久里浜を走り、八王子を走り、次はどこになるのかと関東中に散って走り回った。ポチネキがイレギュラーなのか、それともあれで正しいのか、念のためと関東外を調査した者もいる。それらを組織的に動かす為、ネットを泳いだ者もいた。……勿論彼らに利益はビタ一文も出ていない。完全なボランティアだ。にも関わらず彼らは今日まで走り続けた。止まる事なく、走り続け、そして、今日の放送までたどり着いたのだ。その有り様は狂気無くしてはあり得ない。

 

「おい、時間だ。代われ」

「マジかよ。ユウカネキの猫被りがイイところだったのに……」

「向こうで一人寂しくスマホで見てろ」

「まぁ良いけどよ……()()()()()に動きは?」

「無い。ありゃ寝てるな」

「そりゃ上々……んじゃ、行ってくる」

「いてら」

 

 そう、この放送は彼らの努力と献身と、何より勝利の証だった。彼らは関東中を走り回り『キャタピー』を発見する事に成功したのだ。その一報は直ぐにユウカ嬢に伝えられ、彼女のコネと力を持って今日の放送を行う事になった。

『ポケモン』を社会に見せつける為に。

 

『━━と、いったところですね。それではポケモン専門家であるシロちゃんに、ポケモンについて説明してもらいましょう。……シロちゃん』

『はい。今この世界にはポケットモンスター。縮めてポケモンと呼ばれる生き物達が、いたるところに現れ、住んでいます。そのポケモンという生き物はペットにしたり、勝負に使ったりする事が出来……そして、私はそのポケモンの専門家、という事です』

 

 手元に紅白のボールを持ちながら、小さく笑みを浮かべてそう語る白い少女。

 彼女を見ての反応は大きく分けて二つ。あぁ、可哀想な子なのだなと白けた視線を送る者。そして……

 

「ん? シロちゃんドヤ顔?」

「そりゃドヤ顔にもなるだろう。歴史的な最初の一ページだぞ、これ」

「今のシーンが教科書に載るのか……」

「そしてその裏側には俺らが居る訳だ。胸熱」

「ドキュメンタリーとかになる訳? 実感ねぇなぁ」

 

 事情を予め知っているが故に緩く、しかし熱い反応を返す者だ。

 画面を見る彼ら親衛隊の反応は実に緩い。酒が入っているせいか、それともやり易いからか、ノリなんて掲示板のそれからロクに変化していなかった。が、しかし、彼らは確かに聞いた。新たな時代の足音を。少女の声と共に。

 

『と……言っても信じられない人が殆んどだと思います。なので━━おいで、ポチ』

 

 白い少女がボールを放り、中から光が溢れる。それはやがて犬の形をとっていき……そこには黒い大型犬の姿があった。

 普通ならあり得ない光景。

 それに対する反応はバラけた。疑う者、信じる者、そして……

 

「あれがポチネキ? 噂通りのイケメンじゃん」

「しかも強いぞ。何せ進化済みだからな……レベルも相当だろうってさ」

「この間の『わざ』の検証じゃあ最低でも50レベだっけ? 推定個体値と努力値を加味すると、戦車持って来ても勝てるかどうかにハテナが付くってレベルらしいな」

「ワンコが戦車に勝つのか……マジファンタジー」

「ポケモンとシロちゃんだからな。悩んでもしゃーないしゃーない。酒でも飲んでた方が建設的だ」

「……お前、それ何本目だ?」

「さぁ?」

 

 ある種の納得を返す者達だ。これは特に親衛隊を中心にシロ民に多く、中には専門的な見解を持つ者もいた。

 あぁ、彼らがこの変化中で最も新しくアドバンテージを得た者達だという事は、まず間違いないだろう。だからこそ。

 

「うはっ、ネット大発狂中やで」

「あー? あぁ、散々否定してた連中か。んー……確かに発狂してんな」

「静観決め込んでた連中巻き込んで発狂か……てか、やつらこの番組見てんのな」

「事前の広報は鬱陶しい程したし、何だかんだ気になってはいたんだろ。……総理や官房長が出る前にこれ組んだのはファインプレーかもな」

 

 彼らはネットで発狂している者達を、常識が破壊された者達を、真偽を訝しがる者達を、冷ややかな目で見る事が出来ていた。それどころか冷静に評価までしている程。その有り様は勝者のソレであり、彼らの勝利をもたらした者が誰かなど……考えるまでもない。

 

『━━このポケモンが最初にこの世界に現れたのはごく最近。世間でいうところの異常な果実……ポケモン風に言うなら『きのみ』が現れたのが最初です。現在確認されているきのみは━━』

 

 今テレビの中でフリップを使いつつ、ポケモンやきのみについて笑みを浮かべながら説明している白い少女。彼女こそ彼らにとっての勝利の女神であり、信仰の捧げ先であった。

 

「おーい、スタッフさんが準備してくれってよ」

「お、もうか。んじゃ、キャタピーが逃げない様に本格的に囲むかね」

「やるべやるべ。……しかし、ついに生でシロちゃんを拝めるのか」

「遠目だけどな。……遠目だよな?」

「遠目だよ。万が一にも一般通過シロちゃん親衛隊員する訳にはいかないからな」

 

 彼らは影で動く。歴史的な瞬間が輝かしく迎える様に。

 

「それと、テロリストどもの警戒な。近くまで来ていてもおかしくない」

「あぁ、確か本拠地その他がもろもろもぬけの殻で、こっちに来てるんだっけ?」

「それと、俺ら以外の何者かがモンスターボール回収してたって話な。あの段階で動くとしたらシロ民か、元シロ民以外にない。つまり……」

「近くにいるって事か。それもポケモンを持ってる可能性有りで」

「現にキャタピーが見つかったのに、ビードルが見つからないままだからな……コラッタニキが居ないのが痛いぜ」

「政治家連中と飯食いながら番組見てるんだっけ? ……まぁ、それを言うならポッポ捕まえなかった俺らも俺らだしなぁ」

 

 万難を排する為に。

 ━━山場は、もうすぐだ。



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第19話 配信、全国放送! ~キャタピーゲット~

『━━さて、シロちゃんの説明で皆様もポケモンがどういう生き物なのか? ある程度はイメージが掴め始めた事でしょう。なので、今から実際にあるポケモンを見て、更にゲットしようと思います。……では、一度スタジオにカメラをお返ししますね』

 

 番組が始まってどれくらい経っただろうか? スタッフさんが用意したフリップを使い、指示のカンペを見つつ、ユウカさんにフォローされながらたっぷりと語った気がするが……具体的な時間や、説明の出来はサッパリだ。

 とはいえ、ユウカさんがサクサク進行しているので━━あまりの猫被りに驚いたのは言うまでもないが━━問題はないのだろう。

 そんな事を思いつつ、スタスタと歩いていくユウカさんに続いて私も移動する。チラリとカメラの方を見てみるが……どうやら今は撮っていないようだ。一安心。

 

「どう、でしたか?」

「とっても良かったわよ。これならポケモンを信じる人が出てくるのは間違いないでしょうね」

「そうですか?」

「えぇ。頑張ったわね」

「わっ、ぅぅ……?」

 

 ポフポフなでなでと頭を撫でてくれるユウカさんに気恥ずかしさを覚えつつも、説明が出来が良かったと聞いてホッと一息つく。

 なんというか、肩の荷が降りた気分だ。ホンの少しの説明に人とポケモンの未来がかかっていたからなぁ……

 

「さ、て……次はポケモンのゲットだけど、大丈夫?」

「えっ、と。確か相手はキャタピーで、説明は別にやるんでしたよね?」

「えぇ、CGなんかを使ってスタジオの方でね。モンスターボールの事から、ポケモンをゲットするにあたっての危険性。キャタピーの事も簡単にだけど説明しているはずよ。後は……呼んでおいたゲストに語らせたり、かしら?」

「ゲスト……」

 

 ユウカさんの話をふんふんと聞いていた私は、ふとその単語に嫌な感覚を覚える。テレビに出てくる専門家とか、ゲストとか、そういう輩はロクな事を言った記憶がないからだ。大抵テキトーな事しか言わないモノだろう。

 そんな奴らがポケモンに対してどう批判するか……考えたくもない。

 

「不安?」

「はい。そういう人達って、その……」

「大丈夫よ。ちゃんと選別したから好意的な事、あるいはマトモな疑問や注意点を話すはず。この現場に来ている子なんて……あぁ、居たわね」

「?」

 

 ユウカさんがそう言ってどこかに視線をやり、今の今まで私の頭上にあった手のひらを離す。暖かさが消えるのに合わせて、その視線を私も追ってみれば……女の子が見えた。周りのスタッフとは格好が、あるいは纏う気配が違う少女が一人。あの子がゲストだろうか? だとするとあの少女がキャタピーのトレーナーになる訳だが……

 

「あ! ユウカさん!」

 

 こちらに気づいたのか、ゲストだろう少女が手を振りながらこちらに走り寄ってくる。元気の良さそうな子だ。年頃は……高校生程か? 身長的には私より上だった。

 

「今日は来てくれて有り難うね」

「いえいえ! ユウカさんの頼みですし。何より、私もポケモントレーナーになれるんですから!」

「そうね」

「?」

 

 茶髪寄りの元気な子がユウカさんに機嫌良く話かけているの見ていた私は、ふと違和感を覚える。

 

 ━━少女と仲良さそうなユウカさん? 違う。では少女の方に?

 

 ホンの少しだけ考えて、やがて答えは出た。

 違和感の原因は少女が『ポケモントレーナー』という単語を使ったからだ。今その単語を使えるのは前々から私の配信を熱心に見ていたシロ民ぐらいで、つまりこの少女は……

 

「で、この子が『シロちゃん』ですね?」

「えぇ、貴女は見るのは始めてだったわね」

「はい! ユウカさんに進められてから、配信は時たま見てましたが……思ったよりも、可愛い子ですね!」

「か、可愛い……? て、わっ!?」

「わー! もう、可愛いです! それとちっちゃいです!」

 

 どうやら私の配信視聴者らしい少女は、パーソナルスペースが恐ろしく狭いらしい。なんと会って間もないうちに私を撫で回し始めたのだ。

 頭を撫で、抱き付き、頬ずりまで始めだす。

 疾風怒濤のボディータッチ。恐ろしいのはそれらに下心を感じられず、手慣れている気配すら感じられるところか。どうやらこの少女にとってこのくらいのボディータッチは日常茶飯事らしい。……根本的に、私とはタイプの違う少女だ。目が回ってくる。

 

「そこまでよ。そろそろ時間だから、準備して」

「あっはい。スミマセン。……じゃあシロちゃん、また後でね」

「はい。……はい? はい」

 

 私が目を回しているうちに顔見せは終わったのか、何がなんだかよく分からないままに少女は私達の元から走り去っていった。

 分かった事といえば少女が配信視聴者である事と、元気の良い事ぐらいだが……まぁ、充分だろう。

 

「キャタピーは、任せられそう」

 

 ポツリと小さく呟いて、一人頷く。あれだけ元気が良く、気持ちのいい性格をしているのだし、それは間違いないだろう。

 私はそう確信してカメラの前に立つ。番組の続きは……不安なく進められそうだった。

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 不知火白が一人のトレーナーの誕生を認めていた頃。

 都内某所の料亭。その大きめの個室で、ある男が胃を痛めていた。

 

『ご覧の番組は。新しい未来へ、イトウ自動車。と。ご覧のスポンサーの提供で、お送りしています』

 

 個室に持ち込まれた大型の液晶テレビに映るスポンサー━━軒並み伊藤家関連の企業という清々しさ━━を横目で見つつ、その男は胃の痛みに耐える。

 なぜそんな事をしなければならないのか? その答えは目の前にあった。

 

「うーむ。信じがたい。実に信じがたい」

「確かに。ポケモン? という生物は信じがたい生き物ですな」

「全く。眉唾物の生き物の話をああも真面目に喋られると、妙な気分になります」

「あれならツチノコの話をされた方がまだ真面目に聞ける」

「いや、全く持ってその通り」

 

 高そうなスーツを来た、自分よりも一回り以上は年上の男達。職業、国会議員。及びその関係者。もしくは強い影響力を持つ人物。……所謂、権力者だ。

 そしてその権力者達が男の胃を痛める切っ掛けであり、より決定的な原因は、男の身分にあった。

 

「しかし、現にそこにポケモンが居ますからなぁ」

「この紫色のネズミですか。チーズをむさぼっているあたりそうは見えませんが……」

「だが、あのボールに出入り出来る、奇妙な生き物にはかわりない」

「確か名前は……あぁ、キミ。何だったかな?」

「ぇ、あ、はい。コラッタです」

 

 権力者の疑問に、もう何度目かの返答を返す男。

 そう、男は世界で二番目のポケモントレーナーであり、ネットでコラッタニキと呼ばれる男だ。ポケモントレーナーになる前の職業はフリーター。それも二十代でしかなく……コラッタニキは場違い感を拭えない。なぜ自分が権力者とテレビを見ているのだ? と。

 

「そう、コラッタ。何とも可愛いらしい名前だ」

「元は少女が付けたらしいですから……そうだったな?」

「あ、はい。そうです。全てのポケモンの名付け親はシロちゃんです」

「シロちゃん……不知火白か」

 

 そうだ。シロちゃんだ。あの白いロリっ娘の為に自分はここに居るのだ!

 そう男は心の中で『きあいのハチマキ』を締め直し、何気なく目の前に並べられた高そうな料理に手を伸ばす。

 

 ━━味が分からない。

 

 間違いなく旨いはずの、高級料理。しかしなぜか味がしない。直ぐ近くでは相棒のコラッタがバリバリと、高級チーズを山程むさぼっているというのに……

 締め直したはずの『きあいのハチマキ』が、ほどけて落ちた気がした。

 

「不知火白。ポケモンの生みの親。年齢不明、家族関係も不明。両親の顔すら知らない少女……でしたか」

「愛に飢えた少女が何気なく見た夢が具現化したのがポケモン……でしたか?」

「余計な事をしてくれたものですな」

「全くだ」

「そこのネズミですら鉄板を噛み切って見せた……全てのポケモンが具現化したときの被害は想像出来ません」

「余計な事を━━」

「いっそ不知火白を━━」

「しかしそれは━━」

 

 口々に流れる不知火白への言葉。それの多くは悪意に濡れており、まるで不知火白こそ諸悪の根源と言いたげ。それどころか時間が経つにつれて極端な意見まで出てくる始末。

 普通なら、彼らに同意するのが正解だ。それがどんな内容でも、権力者には媚びておくのが利口なのだから。しかし……生憎コラッタニキは、シロ民だった。

 

「シロちゃんは! シロちゃんが、悪い訳ではありません……」

 

 勢い良く反論を述べ、しかし権力者の睨みに耐えかねて尻萎みになるコラッタニキ。しかし、彼に続く者がいた。

 

「彼の言う通りだ。あの少女が悪い訳ではない。仮にあの少女が悪いというなら、彼女を救えなかった我々も……いや、全ての人が悪いのだからね」

「確かに。それを言われては反論のしようがない」

「それに、彼女と彼らは新しい可能性も提示してくれています」

 

 総理と、その側近達だ。彼らによって個室の空気は完全に変わった。今目が向けられているのは不知火白への罵倒ではなく、彼女達が提示した……コラッタニキが持ち込んだ資料だ。

 きのみの医療活用。電気ポケモンによるエネルギー問題の解決。特殊技能を持つポケモンによる環境浄化等々━━

 他にも様々な資料が持ち込まれ、それらは全て権力者の前に鎮座している。それらがどう見えているか等、わざわざ考えるまでもない。間違いなく宝の山だ。巨万の富も、支持率アップも、不老長寿も思いのまま……これに食い付かない権力者がいるはずもなかった。

 

「とはいえ、これらもポケモンが誰にでもゲット出来て始めて実現出来る事だ。……先ずは、見守ろう」

「……そうですな」

 

 コラッタニキを含めた男達の目が、再びテレビへと向かう。

 胃を痛めていたコラッタニキは気づかなかったが、どうやら番組の企画は既に進んでいたようで、バカデカイ芋虫……キャタピーがテレビに映っていた。

 相対するのは、最近よくテレビで見かける可愛いらしいアイドルだ。確か現役の女子高生だったはず……そんな風にコラッタニキが思い出しているうちにも企画は進む。

 

『━━なるほど。では今ならあのキャタピーに、このモンスターボールを投げつけるだけでゲット出来るんですね?』

『はい。あのキャタピーは今は寝ていますし、キャタピー自体強い種族ではないので……恐らくゲット出来るかと』

『ふむふむ。そして万が一ゲット出来なくても餌で釣り、それでも駄目ならポケモンバトル! ですね』

『はい。その場合はポチだとどうやってもやり過ぎちゃうので、餌で釣られて欲しいところですが……』

『あー、ポチちゃんワンコ……というか狼ですからね。芋虫なキャタピー相手は手加減しようがなさそうです。でも大丈夫ですよ、シロちゃん! 何せ餌として高級ハチミツと、新鮮な生野菜を用意してますから!』

『確かに。それならゲットした後の関係もスムーズに進められそうです』

 

 見れば番組はキャタピーゲットの寸前まで進んでいたらしい。二人の少女と眠りこけるキャタピー。そして餌として高級そうなハチミツと生野菜が映されていた。

 どうやらあのキャタピーも、コラッタニキがゲットしたコラッタと同じ様にもてなされる様だ。

 

 ━━俺は飯の味も分からないってのに。

 

 コラッタニキがそんな愚痴を喉から胃へと戻しているうちに少女二人の話が終わったらしく、モンスターボールが高々と掲げられる。

 いよいよゲットの瞬間だ。

 チーズをむさぼるコラッタ以外の面々がテレビを凝視し、部屋の空気が一気に重くなる。

 

『ではっ! いきます!』

『はい』

『せぇーいっ!』

 

 デタラメなフォームから放たれるモンスターボール。外れるかと思われたそれは、以外にも弧を描いてキャタピーへと向かい━━そして。

 

『わぁ……』

『…………』

 

 キャタピーがボールへと収まった。

 だが、まだだ。まだ入っただけ。ゲットではない。現にボールは不安定に揺れており、今にもボールを壊して中のキャタピーが出て来てしまいそうだ。

 一揺れ、二揺れ、三揺れ━━

 

 ━━カチッ。

 

 音が、した。

 ゲット成功だ。

 

『や、やりました! 私やりました! シロちゃん、私やりましたよ!』

『はい。キャタピーゲット。おめでとうございます』

『イェーイ! これで私が三人目のポケモントレーナーですね! あっ、ユウカさん見てましたか!?』

『えぇ……そうね。三人目のポケモントレーナー誕生ね。えぇ、見てたわよ』

『あれ? 何か不機嫌……?』

 

 これで自分に続くポケモントレーナーが現れた。そうシミジミと思いを噛み締めるコラッタニキ。

 しかしそれも数秒の事。同室の空気が更に重くなった事で感慨にふける事も出来なくなる。権力者達の気配が、変わったのだ。

 

『さぁ、キャタピーを出してあげて下さい。顔見せをして、なついてもらわないと』

『はい。ではキャタピー! 出ておいで━━━━わぁ、感動ですね! キャタピー寝てますが!』

『のんびりした子なのかも知れません。……可哀想ですが、起きて貰いましょう』

『はいはい。キャタちゃん起きてーご飯だよー』

 

 権力者が権力を手に入れたのが偶然でないのなら、当然彼らはそれに見合うだけの力があるはずだ。特に、新しい()()の匂いには敏感だろう。

 例えばつい先ほどまでは利権に成りうるか微妙だったが、今この瞬間利権に成るのが確定した……ポケモン利権など。

 あぁ、 ポケモン達が生み出す利権は間違いなく膨大な数に上り━━そのポケモン利権を手に入れた者が次の時代の勝者になる事は、誰の目にも明らかで……権力者からすれば是が非でも手に入れなければならない物になったのだ。

 そして、それらポケモン利権には、二番目のポケモントレーナーであるコラッタニキ自身も含まれる。

 

『わぁー。いっぱい食べますねぇ……キャタちゃん』

『お腹空いてたのかも知れませんね。……でも、なついてくれそうで良かったです。ちょっとアレなゲットの仕方でしたから』

『普通は起きてるときに餌付けしたり、話したり、バトルで認めさせたりするんでしたよね? 確かに今回は……アレですね。前後逆になってます』

『まぁ、その辺りはスタジオで補足して貰いましょう……では、一旦CMです。この後はポケモンバトルをやってみましょう』

『え゛? キャタピーでポチちゃんに挑むんですか……?』

『その、手加減するので……宜しくお願いします』

『や、やります! やってみせます!』

 

 テレビの向こうで少女が悲壮な覚悟を決めたとき、コラッタニキもまた覚悟を決めていた。

 何せ権力者達の気配や目が違うのだ。既に料亭の個室は利権を奪い合う戦場となり、コラッタニキは解説役から獲物に成り下がる……コラッタニキが何も入ってない胃をひっくり返しそうになるまで、後数分の事だった。




 この作品は。新しい世界(性癖)を切り開こう、ハーメルン作家キヨ。と。読者の皆様の応援で、お送りしています。


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第20話 配信、全国放送! ~始めてのポケモンバトル!~

 キャタピーがゲットされて暫く。現場は和やかな雰囲気に包まれていた。理由はカメラが回っていない事と、ポケモンとのふれあいだろう。

 

「キャタピー、“いとをはく”!」

「ポチ、かわして!」

 

 キャタピーがシュッと吐き出した糸を、ポチは横に軽く飛ぶ事で避けてみせる。その動きに危なげは無く、流石といったところだった。

 

「んー、やっぱりポチちゃん相手はキツイ気がします……やってもやらせ感が出てしまう気が」

「ん、そうですね。コラッタニキが居れば良かったのですが……」

「彼は総理達と食事中よ。難しいでしょうね」

「むむー、キャタちゃんやれそう? ━━うん、ダヨネ」

 

 ポケモンバトル……とはいえない程度に“わざ”を撃ち、キャタピーとそのトレーナーは首を横に振る。キャタピーが弱いというより、ポチが強すぎるのだ。

 私としては家族が強いのは嬉しいが、バトルの相手が居ないのは確かに問題だった。これではポケモンバトルの魅力と必要性を伝えられない。……どうしたものだろう?

 

「ポケモンバトルは無しで、“わざ”だけ見せて説明する……?」

「でも、それだとインパクトが足りないと思います」

「う、ん……」

 

 私はポチの背中をゆっくりと撫でつつ、キャタピーを頭の上に乗せた少女と話し合う。といっても、あちらを立てればこちらが立たずで全く進展はないのだが。

 

「ユウカさんは……?」

「どうしたんですかー? ユウカさん」

「━━いえ、そうね。ちょっと問題発生よ」

「「?」」

 

 ユウカさんの意見を聞こうと声を掛ければ、何事か問題が起こったと聞かされる。その表情は非常に険しく、起きた問題の大きさが伺い知れた。

 

「ここを守る様に展開していたシロ民の何人かと連絡が取れなくなったわ」

「え?」

「連絡が取れなくなったシロ民はここから北東方向の者ばかり……恐らく、何者かが強行突破を敢行しているのでしょう。……来るわよ。二人とも、備えて」

 

 連絡の取れないシロ民。強行突破。何とも物騒なワードが並んでいる事に説明を求めようとしたのだが……ユウカさんはそれどころではないとスタッフの人達に指示を飛ばしている。カメラを何があっても回す様に、とか。関係のない者は直ちに退避、とか叫んでいる。

 明らかに、普通ではない。

 

「し、シロちゃん……? いったい何が……」

「大丈夫です。ね、ポチ?」

「グルゥ……」

 

 当たり前だ。そう言わんばかりのポチをキャタピー少女に見せ、私自身もポチを撫でて心を落ち着ける。大丈夫、ポチが居るから大丈夫。

 ……そういえば、昨日掲示板で元シロ民のテロリストが数名関東入りしたのを確認したとか何とか書いてあって、下手な冗談だと思ったものだが……まさかね。

 

「グルル━━」

「? ポチ?」

 

 突然毛を逆立て、滅多に聞かない唸り声を上げるポチ。

 何事かと驚き、ポチと同じ方向を見てみれば……人が居た。薄ら笑いを浮かべた男が三人。手には、モンスターボール。……まさか、本当に?

 

「へいへい……情報通りだ。悪かねぇ」

「溜まりに溜まってアレコレと怨み、ここで晴らさせて貰うぜ」

「邪魔するシロ民の腰抜けどもも、今頃三途の川の渡し賃金が無くて立ち往生してる頃だしなぁ」

「っ! 彼らに、何かしたんですか……!?」

「おうさ、コイツでチクッてな」

 

 そう言った男を皮切りに、男達がモンスターボールからポケモンを出していく。

 けむしポケモン、ビードル。

 ことりポケモン、オニスズメ。

 ぶたざるポケモン、マンキー。

 いずれも今確保されていてもおかしくないポケモン達で、シロ民が発見出来なかったポケモン達。そして、三匹のポケモン達の目は一様に━━

 

「っ━━! ポケモンは! そんな事をするための存在では!」

「知らねぇよ。俺らは俺らのやりたい様にやる」

「そうそう。だいたいアイツらバカだよなぁ? ポケモンも持ってないのにイキって突っ掛かって来てさぁ……何だっけ?『シロちゃんは俺らが守る!』だっけ? ははっワロス。守れてねぇし」

「全くだ。今頃ビードルの“どくばり”でくたばってる頃だろうよ」

「そ、そんな……」

 

 ビードルの“どくばり”。それは人を殺すには充分で、そして目の前の彼らならやりかねず。恐らく、彼らと相対したシロ民は、もう既に━━

 

「……許さない」

「へぇ、だったらどうするんだ? シロちゃんよ?」

「そうそう。守ってくれるジジイはお前を置いて故郷に帰り、シロ民は既に死んで、今は犬っころ一匹だけ。……なのにこっちは三匹も居る」

「くはっ、教えてやるよ。世間の厳しさって奴を、ぐちゃぐちゃにしてなぁ!」

 

 頭がスッと冷えていく。許さない。絶対に許さない。それは変わらない。けれど、思考はドンドンと冷えていく。そうして考えるのはどうやって目の前のポケモン達を鎮圧し、奴らを撃滅するか……薄汚い欲望をぶちまけ、私をこの後どうするか語る奴らを無視し、幾つかプランを考える。そこから安易に実行可能な物を選び、それぞれ点数を付け、そして。

 

「キャタピーのトレーナーさん。手伝って下さい」

「え? わ、私?」

「はい。後ろからで良いので、援護を。嫌なら逃げてくれて良いです」

 

 回されるカメラや、不安そうなユウカさんには視線を向けず、キャタピー少女にそう言って私は視線を奴らに戻す。

 別に逃げてくれてもいいのだ。ただ居てくれると保険になる。それだけだから。

 

「や、やります。よく分からないけど、ここで逃げたくないです……!」

「そうですか。では、お願いします」

 

 視線を向けず、それだけ言って後方を任せる。

 

「で、相談は終わったか?」

「そーそー待つのも飽きちまったぜ」

「よく言いますね。怖いくせに」

「……あ゛?」

 

 男の一人がガンを飛ばしてくるが不思議と怖くない。恐らく、怒りのせいだ。……あぁ、私はかつてなく怒っている。ポケモンが人を殺した事、それはいい。生物の生存競争だ。だが、人がポケモンに人殺しをさせた事は、許せない。悪事を押し付けた事は、許す訳がない。

 私は、怒っているんだ。

 

「怖いんでしょう? ポチが。だから貴方達はポケモンを出して動かない。勝てる未来が見えないから」

「だ、誰がそんな犬っころ!」

「そうですか? ならなんで足を震わせて……えぇ、そうやって確認する辺り、語るに落ちてます」

「こ、このガキ……!」

「えぇ、私は子供です。ならそんな子供にいいように言われてる貴方達はそれ以下ですね。ポケモンを出せば怖がると思いましたか? 人を殺せば怖がると思いましたか? そんな訳、そんな訳ないでしょう! 許さない。貴方達は許さない。絶対に」

 

 私の怒りを汲み取ったのか、ポチが一歩前に出た。

 ジリッ、と。男達と相手のポケモンが後ろへと後退りする。もう一押し。

 

「なぜ後ろへ下がるんですか? そのポケモン達を使って私を襲えばいい。骨を砕き、肉を裂き、泣きわめく私を犯したいんでしょう? ……それとも、恐ろしいですか? この私が」

「だ、誰がお前のようなガキ……!」

「えぇ、そうでしょうね。何せ犬一匹に恐れをなして逃げ出す腰抜け達です。弱い者どうし集まってイキがる事しか出来ない子供ばかり。だから貴方達はその程度なんですよ……この、臆病者」

「ガキが言わせておけばァ! やれ! オニスズメ、“つつく”だ!」

「お、おいっ!?」

 

 私の安い挑発に乗った男が一人、ポケモンを突っ込ませてくる。

 突出による孤立……ありがちなミスだ。そして今の私はそれを見逃したりしない。

 

「ポチ、迎え撃って。オニスズメに“かみつく”」

「グルゥ!」

 

 ポケモンに罪は無い。悪いのは人間。だから“わざ”は弱いものを選択し、指示を出す。

 ポチは私の意思を読み取ってくれたのか、突っ込んでくるオニスズメを真っ向から迎え撃ち、“つつく”が当たるその瞬間。身体を滑らせて“つつく”の焦点を逸らし、逆にオニスズメの翼に噛みついた。

 

「そのまま放り投げて」

 

 ブンッ、と。存外勢い良く放り投げられたオニスズメは体勢を立て直す間もなく飛んでいき、トレーナーへとブチ当たった。

 ダメージは……手加減もしてたし、そこそこかな? そう思う私とは別に、奴らは大きな衝撃を受けているようだった。あるいは、逃げる算段でも立てているのか。……許さない。

 

「私、怒ってるんです」

「え、は?」

「絶対に、許しません」

 

 逃がすものか。貴様らは逃がさない。ここで叩き潰す。

 幸いにも戦術や戦い方は薩摩隼人の東郷お爺ちゃんに教えて貰った事がある。ついぞ実戦は出来なかったが……こういう形なら、生かせるはずだ。

 

「キャタピーのトレーナーさん」

「へ? あ、はい! キャタピー! “いとをはく”!」

「対象の指示」

「あ、えっと、ビードル目掛けて!」

 

 多少もたついたが、キャタピーの放った糸がビードル目掛けて飛んで行く。

 奴らの対応は遅い。だが、畳み掛ける。

 

「ポチ、マンキーへ“とっしん”」

「なッ!?」

 

 マンキーはかくとうタイプ。あくタイプのグラエナであるポチとは相性が悪い。事故を防ぐ為にも、ここでノーマルタイプかつ強力な“とっしん”で落としておくべきだ。

 幸いにもあちらは対応出来ていない……やれるだろう。

 

「マンキー! あー“けたぐり”だ!」

「おい! ビードルかわせぇ!」

「遅い」

 

 指示が遅い。遅すぎる。何の為のトレーナーだ? レベルが低いにも程がある。見ろ、ビードルは糸を避けられず足を止められ、マンキーの“けたぐり”は不発気味。現にマンキーはポチの“とっしん”で吹き飛ばされ、ポチに大きなダメージは見えない。

 まぁ、“とっしん”は反動ダメージもあるし、後でオボンの実を手配しないといけないだろうが。

 

「キャタピー! 更にビードルに“いとをはく”! グルグル巻きにしちゃえ!」

 

 レベルの低い奴らとは打って変わって、キャタピー少女はかなり優秀だ。“どくばり”を持つビードル相手にキャタピーで接近戦はリスキーと捉えたのか、“いとをはく”の連射でビードルを封殺している。勿論それではトドメはさせないが……そこは私とポチがすれば良いことで、ポチが手透きになるまでビードルを封殺出来れば事実上彼女の勝ちなのだ。そう考えれば彼女は優秀だろう。

 

「クソッ、ビードルなにしてる!? さっさと振りほどけ!」

「キャタピー、あの煩いのにも一発入れちゃえ! “いとをはく”!」

「危っ!?」

 

 訂正。多少エグい。そしてトリガーハッピーの気があるようだ。トレーナーにダイレクトアタックとは……キャタピーのトレーナーにしたの、失敗だったかなぁ?

 

「オニスズメ“つばめがえし”だ!」

「マンキー“からてチョップ”! 叩き割れぇ!」

 

 そうこうしているうちにこちらにも攻撃が飛んで来るが……赤点だ。対象の指示を忘れているし、余計な単語を入れている。見ろ、そのせいでオニスズメとマンキーの初動が鈍い。おかげでいくらでも挽回出来る。

 

「ポチ、マンキーに“ふいうち”」

 

 “つばめがえし”は必中わざ。ならば先手を取れる“わざ”で先にマンキーを落とし、返す刀でオニスズメをやるしかない。

 その目論みは━━上手くいった。ポチの“ふいうち”は成功し、横合いから接近したポチはマンキーに対応させず、そのまま噛みついて放り投げる。相性は良くないが、“ふいうち”は両者から先手を奪ったのだ。後は。

 

「ポチ、“カウンター”」

 

 間に合うかは微妙だ。もし奴らの指示がスムーズなら確実に間に合わなかっただろう。だが━━オニスズメの“つばめがえし”がポチに刺さる。中々鋭い。そして。

 

「グルゥアァ!」

 

 決まった。オニスズメはポチの“カウンター”で地に叩き落とされ、そのまま噛みつかれて投げ飛ばされる。見たところ、落ちている様子だ。

 

「お、おい!? オニスズメ!?」

「クソがッ! マンキー“ちきゅうなげ”!」

 

 “カウンター”を出したというのに、相手は愚かしくも真っ向から物理わざで来た。“ふいうち”で落とされる可能性もあるのに……バカだろうか? バカなのだろう。マンキーが可哀想だ。

 とはいえ、どちらで攻めるべきか━━ポチと視線が重なる。そうか。なら。

 

「ポチ、“カウンター”。思うようにやって」

「グルゥ」

 

 思えばポチは東郷お爺ちゃんと何度も練習していた。特に『後の先』を取る練習を。“カウンター”は()()()()()()()()()()()()“わざ”。しかし彼女ならば、あるいは。

 

「いけや!」

「っ! ポチ!」

 

 マンキーがポチを掴む━━その瞬間。ポチがブレる。いや、高速で横に飛んだのだ。予備動作もなく、いつの間にか。東郷お爺ちゃんに教えて貰った事がある。あれは確か。

 

「無拍子……」

 

 ポチの奥義によってマンキーの“ちきゅうなげ”は不発。見えるのは、無防備な側面か。

 停滞はホンの一瞬。再びポチが動き出したときには、もう遅い。体当たりで初撃を入れ、すかさず鋭く噛みついて、地に叩き付け、投げ飛ばす。見るまでもない。マンキーは落ちているだろう。

 

「ま、マンキー!? バカな! 相性は良かったはず……!」

 

 確かに相性はポチに不利だった。しかし挑発に乗って連携せず、マトモな指示も出せない……そんなレベルの低いトレーナーではタイプ相性も何もないだろう。

 勝つべくしてポチは勝ち、負けるべくして貴様らは負けたのだ。現に……

 

「もう一度よ、キャタピー。“たいあたり”!」

「おい! ビードル! なんとかしろぉ!」

 

 キャタピー少女は勝っていた。ビードルを糸でグルグル巻きにし、動けないビードルに“たいあたり”を連発……エグい。実にエグい。しかし効果的だ。ビードルは得意の“どくばり”を撃てないまま封殺されている。“どく”は懸念事項だったので、やはりキャタピー少女は優秀だな。

 いや、ああなるまでロクな指示を出せないトレーナーが無能なのか? 無能だな。ビードルが可哀想だ。

 

「“たいあたり”“たいあたり”“たいあたり”よキャタピー!」

 

 ガスッドスッドコッと。そんな効果音が響く様な激しいタックルの連続は凄まじい。見ればビードルは既に目を回している様子……戦闘不能だ。

 

「よーし、もう一発「そこまでです」アッハイ」

 

 恐慌状態の新兵でもあるまいし、オーバーキルは駄目だ。絶対に。

 さて。

 

「これでそちらの手持ちは全滅……まだ、やりますか?」

 

 ポチはマンキーとオニスズメを落とし、キャタピー少女もビードルを落として見せた。

 私達の勝ちだ。ゲームならカツアゲの時間だが、彼らには警察が必要だろう。……そんな私の思考を読んだのか、男の一人が胸元から何かを取り出す。財布か? いや、あれは━━拳銃!?

 

「このクソガキがっ! お、大人をなめるなよ!? 死ね! 今すぐ死ねよォォォ!!」

「お、おいっ!?」

 

 向けられる銃口に思考が止まる。

 死ぬのだろうか? 私は。

 ここで? こんなところで? まだポケモン達との旅は始まったばかりなのに?

 

 ━━嫌だ。

 

 まだだ。まだ死ねない。ポケモン達との旅が終わるまで、死ねない! だから、ポチ━━!

 

「グルゥアアア!」

「ヒッ!?」

 

 私の思考を汲み取ったのか、ポチが男へと“ふいうち”し、拳銃を弾き飛ばす。

 拳銃はやがて私の足元までたどり着き……私はそれを拾って構える。

 

「ポケモンをモンスターボールに戻し、手を上に上げて……ひざまづきなさい」

「そ、そんな風に脅したって……」

「撃てないとでも?」

「……クソッ」

 

 そんなに私の脅迫は真に迫っていたのか、男達は大人しくポケモンをモンスターボールに戻す。

 後は手を上に上げて……いや、あそこの男はなぜ懐に手を伸ばしている? まさか。

 

「そこっ、何を━━!」

「はっ! オサラバだ!」

 

 遅かった。私が銃口を向けるより、ポチが反応するよりも先に、男は懐から取り出した何かを地面に叩き付ける。

 吹き出すのは煙。モクモクと広がるそれはこちらから視界を奪っていく。間違いなく、逃げるつもりだ。

 

「待て! くっ、ポチ━━」

 

 私が指示を出そうとした瞬間、煙の中から何かが複数転がってくる。丸く、黒い何か。それらは1拍して、破裂。辺りに光と音を撒き散らした。

 スタングレネードだ。

 

「━━くぅ、み、耳が……」

 

 やがて光が収まり、目を開くが……かなり霞んでいる。咄嗟に目をつむったつもりだったが、けっこう食らってしまったらしい。耳も酷く痛いし……私もオレンの実が欲しいかな、これは。

 

「……逃げられた、か」

 

 ある程度良くなった視界で辺りを確認してみるが、三人の男の姿はどこにも無い。間違いなく逃げられた。

 いや、それよりも周りが酷い。

 

「クゥン……」

「あ゛ー! イイッタイ目がァァァ!」

「耳痛、おぇぇぇ」

「目が! 目がぁぁぁ!」

「シロちゃんどこ? ここぉ? シロちゃぁぁぁん……」

「……追撃は、無理かな」

 

 感覚が鋭いのがアダになったのかポチは完全にダウン。キャタピーはひっくり返り、キャタピー少女は目を押さえて叫び、感覚器官が弱いらしいスタッフがゲロを吐き、ムスカが現れ、ユウカさんは幽霊の如くフラついている。

 どう考えても追撃どころではなく、警察より先に救急車が必要な状況で……初ポケモンバトルの結末は、酷い物に終わってしまったのだった。




 人物ノート01

 プロフィール
 不知火白(シロちゃん)
 年齢 ???
 見た目 つるーんぺたーんすとーんなアルビノロリっ娘 ジト目 普段ハイライトはあまり入ってないが、ポケモンの事になると目が輝く
 服装 基本的にジャージだったが、最近は清楚な可愛い系
 種族 ???
 特性 1 ??? 2 アルビノ幼女※1 3 SATUMA人の教え子※2

 項目
 1前世持ちアルビノ幼女
 2ポケモン生みの親
 3シロ民との関わり
 4自分を着飾る
 5最初のポケモントレーナー
 6冷徹な指揮官 New
 普段のふわーとした有り様からは想像出来ないが、指揮官としての彼女は非常に冷静沈着で、いっそ冷徹でさえある。
 これは彼女がSATUMA人に教えを受けた際、SATUMA人が身体の弱い彼女を気遣って戦士としてよりも指揮官として鍛えた事が原因。人を数として見るやり方や、効率的な殺し方に、効果的な攻め方等々を教えた結果、指揮官としての彼女は非常に冷徹な……どこまでも効率的に敵を殺し、排除する。優秀な指揮官になってしまった。またこの関係で相手を煽るのも得意になり、徹底的に相手の気にしている弱点を突く事で逆上させるのを得手としている。
 とはいえ、その冷徹な指揮官としての顔は滅多に表に出て来ず、心の底からキレないと冷徹な指揮官としての彼女は表に出てこないだろう。
 この彼女を知っているのは先生のSATUMA人と、同じ時期に共に教えを受けたポチのみ。……ポチがグラエナとなった今も弱々しい彼女に付き従うのは、この冷徹な指揮官としての彼女を知っているからかも知れない━━
 ちなみに、この形態のときは目のハイライトが完全に消え、底冷えするプレッシャーを放っている。コワイ。

 ※1 アルビノの儚さと、幼女の幼さが合わさり最強に見える。相手の庇護欲を掻き立て易いが、同時に邪な目にもつきやすい。
 ※2 SATUMA人にこれと見込まれ、教えを学ぶ事で会得出来る特性。武に対する全てに高いボーナスを得る事ができ、その範囲は個人戦闘から軍団戦における指揮能力。さらには政争までと幅広い。だが、この特性を持っていても有効利用できるかどうかは……また別の話である。


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掲示板 初バトルが終わって

【負傷者多数】お絵描き配信者シロちゃんについて語るスレ part187【メディィィク!】

 

112:名無しの犬

いやー、変態三銃士は強敵でしたね。

 

114:名無しの犬

>>112

お、そうだな。死人も出たしな。

 

115:名無しの犬

>>114

出てねぇよ。いや、出たけど出てねぇよ。

 

117:名無しの犬

>>115

どっちだよ。てか死人? 大事じゃねぇか。

 

120:名無しの犬

>>117

なんだ、知らないのか?

関東で精力的に活動してたシロ民が、テレビに出るシロちゃんの護衛任務中に変態三銃士ことテロリスト崩れに襲撃され、重症。どくばりで刺された奴とか、両足粉砕骨折させられた奴とか、色々死にかけだったが、全員がお守り感覚で持ってたオレンの実で一命を取り止め、どく状態の奴もその後急行した増援が所持していたモモンの実で死なずにすんだって話。

とはいえ三途の川まで行った奴がチラホラいるので、死ななかったとハッキリ言えない事実。

その後は……テレビ見てたら分かるだろ?

 

122:名無しの犬

>>120

サンクス。

あぁ、あの女王様シロちゃんな。見てた、ゾクッときた。ヤバい。

んでどくばりって事はビードルにやられたのか? シロ民。情けないのか、勇敢だったのか……まぁ、きのみのおかげなのは間違いないか。

 

123:名無しの犬

ひざまづきなさい無限ループですわ。

それ以外もイイ感じ。シロちゃんあんな雰囲気も出せるのな

 

124:名無しの犬

>>123

変態が居るぞ! つまみ出せ!

 

まぁ、分からんでもない。俺もゾクッときたし。あのモードのシロちゃんに死ねと命じられたら死ねる。

あと雰囲気云々は……死人が出たとか、ポケモンが悪事に使われたのが許せなかったんでない? 激おこシロちゃんがあぁなるのは、色々と予想外だったけど。

 

125:名無しの犬

>>122

悪人に渡ったポケモンは脅威だからな、勇敢だったと言えるんじゃね? これでポケモンの脅威度も政治家連中に知れるだろうし……そう考えると必要な犠牲だったな。その辺の対応急いで貰わんといけなかったし。

あときのみで助かったけど、きのみのせいで入院してる奴もチラホラいる。

 

127:名無しの犬

>>125

きのみで入院? どゆこと?

 

129:名無しの犬

>>127

きのみは傷は治すんだが、それ相応に身体中からエネルギーを使うらしくてな。大半が栄養失調で入院だ。

即日退院組以外は暫く病院に缶詰めだな。特に両足粉砕骨折させられ、更にどくばり食らってオボンとモモンの実にダブルでお世話になった連中は割りとヤバいらしい。点滴ものだとよ。

 

130:名無しの犬

>>129

植物学者の奴が人体実験をしたようで申し訳ないとか言ってたやつだな。ポケモンと人間とで効果に差異がどーのこーのとか。未知の成分がどーのこーのとか。

まぁ、別にそれぐらいならバッチコイなんだが。

 

132:名無しの犬

>>129

>>130

おぉう……便利なきのみにも落とし穴がって訳か。頼り過ぎは危険って事だな。

 

134:名無しの犬

>>132

そゆこと。

まぁ、シロ民の尊い犠牲のおかげできのみ研究は進んだ訳だ。リスクが無い訳じゃないってな。

 

135:名無しの犬

無茶しやがって……

(AA略)

 

137:名無しの犬

>>134

>>135

勝手に殺すなw まだ生きとるわw

ところで病院食マズイんだけど。米しか旨いのないんだけど。野菜味しないんだけど。肉出て来ないんだけど。誰か差し入れくれない? 肉食いたい肉。カリ城の大泥棒みたく食って治すから。

 

138:名無しの犬

>>137

よう英雄。おつかれ。

しかし食って治せ……るか。きのみあるし。

差し入れは、ポケモンと素手で戦闘したレポート出すなら考えてやろう(考えるだけ)

 

140:名無しの犬

>>138

レポートならコラッタニキに提出した後だよ……政治家連中に渡すんだと。

まぁ、感想をいうなら『無理ゲ』の一言に尽きるな。素手の奴は勿論、バリスティックシールド持ってた奴がシールドごとやられたのは絶望だったわ。ポケモンにはポケモンで対抗するしかねぇよ。アレ。

あ、病院は○○病院な。肉待ってるぜ。

 

142:名無しの犬

>>140

マジかよ。バリスティックシールドってあれだろ? 警察の機動隊が持ってるライオットシールドより硬い、鉄板だろ? それごとやられたのか……そうじゃないかとは思ってたが、ポケモンヤバいな。

んで肉な。OK! 良いぜ、生肉持っていってやるよぉ。肉には変わりないだろ?

 

143:名無しの犬

>>142

HAHAHA……OK、分かった。俺が悪かった。調理済みのをくれ。唐揚げとかジャスティス。

 

145:名無しの犬

>>143

トゥ! ヘァー! 良いぜ、ファミチキな。

 

146:名無しの犬

>>145

お前は俺の英雄だ。

 

147:名無しの犬

ファミチキで傷が治るのか(曲解)

 

148:名無しの犬

今更だけどスレタイこれでいいのか?

お絵描き配信したのだいぶ前やぞ? 今やちょっとした教祖やぞ?

 

149:名無しの犬

>>148

初心忘れるべからずってやつだろ。

たぶん。

 

150:名無しの犬

>>149

なるほどな。

 

155:名無しの犬

今録画してたポチネキ無双シーン見直してるんだけどさ、ポチネキマジ強いのな。被弾しつつも相手はキッチリブチのめしてるし、シロちゃん冷静だし、キャタピー少女エグいし……語るところ多くない?

 

157:名無しの犬

>>155

多い。語り切れん。

ポチネキが被弾多めなのはそういう戦闘スタイルなのか、短期決戦を狙ったのか。つかサラッと無拍子してたのはビビった。前に見た某野球選手の盗塁シーン思い出したわ。あれSATUMA仕込みじゃないよな……?

シロちゃんが冷静なのは激おこプッツンして一周回ったからだとして、俺もあのモードで命令されてみたいとか思ったのは内緒。

キャタピー少女は……まぁ、うん。頑張ったよね。エグいけど。

 

158:名無しの犬

>>157

つまりポチネキがレーザービーム放てば地球滅亡……?

てかキャタピー少女の事をエグいっていうの止めてやれよぉ! ちょっと糸でダイレクトアタックしたり、ちょいキツのグルグル巻きにして一方的に叩いただけじゃないか! ……いや、エグいな。

 

160:名無しの犬

>>158

ポケモンはガチでビーム撃てるのでその例えはマジでNG。

そして諦めんなよぉ。どうしてそこで諦めるんだよそこで! もう少し頑張ってみろって! だからこそ、ネバーギブアップ! ……いや、やっぱり諦めて良いわ。擁護出来ん。

 

161:名無しの犬

>>160

草。まぁ、恐慌状態の新兵だったと思えば……ねぇ?

 

162:名無しの犬

>>161

少佐殿! 大隊指揮官殿!

 

165:名無しの犬

うん? もしかして、女王様モードのシロちゃんなら大隊指揮官もワンチャン……?

 

167:名無しの犬

>>165

うーん? どうだろうな。それだと女王様というより、冷徹な指揮官じゃね? 何があろうと敵を殲滅するーみたいな。

……うん。言っててあの目のハイライトが消えたシロちゃんならやれると思ったのは内緒ダゾ!

 

169:名無しの犬

>>167

冷徹な指揮官。ピッタリじゃん。

……まぁ、そうなると何で普段ふわーとしてるのに、プッツンしたらそうなるのか? って謎が出来るんだけどな。

 

172:名無しの犬

>>169

知ってるか? 二重人格……解離性同一性障害ってのはな、幼少期に凄惨な過去があったりすると発症しやすいらしいぞ。そしてシロちゃんは親が居ない。近所の人が気づくまでそこそこ時間があった。……後は、分かるな?

 

173:名無しの犬

>>172

ヤメルンダ! 闇に引きずり込もうとするなぁぁぁ━━

 

174:名無しの犬

その後、173の姿を見た者はいなかった……

 

176:名無しの犬

>>174

オマエモコッチニコイヨォォォ……

 

178:名無しの犬

闇深民怖いなぁ。戸締まりストⅣ。

そしてキャタピー少女はエグいっと。メモメモ。

 

179:名無しの犬

>>178

メモるなw

 

180:コラッタニキ

まぁ、キャタピー少女じゃなくてバタフリー少女なんですけどネ。

『頭にバタフリー乗せた少女の写真』

あ、こっちは進化時の映像な

『URL』

 

182:名無しの犬

>>180

コラッタニキ? 胃薬コラッタニキじゃないか!?

てかもう進化? いくらなんでも早くね?

 

183:名無しの犬

>>180

コラッタニキ! ポケモントレーナーのクセに現場で戦力になれなかったコラッタニキじゃないか! 高い飯は旨かったか? ん?

 

185:コラッタニキ

 

 

187:名無しの犬

コラッタニキが(胃痛で)死んだ!

 

188:名無しの犬

この人でなし!

 

190:名無しの犬

>>182

普通に考えれば、経験値は充分に溜まってたんだろうな。それなりに鍛えただろうポケモン三匹分と、ポチネキとの模擬戦は大きいだろう。

で、コラッタニキと模擬戦でもやったのが刺激になって、二段階進化したってところだろ。

 

192:名無しの犬

>>190

なるほどな。

ならなんであの場で進化しなかったんだ? レベルはあの時点で上がってただろ?

 

193:名無しの犬

>>192

ヒント。スタングレネード。

 

195:名無しの犬

>>193

あぁ……スタングレネードの衝撃で驚いて、進化キャンセルしちまったのか。

納得だわ。

 

197:コラッタニキ

うぐぐ……胃が痛い。

バタフリー少女に関しては、上で考察してる通りだよ。仕事場がダブってな。軽く模擬戦したら進化するからビビったわ……あぁ胃が痛い。

 

199:名無しの犬

>>197

仕事場? なんかやってんの? 胃痛ニキ。

 

201:コラッタニキ

>>199

胃痛ニキ……いや、俺は権力者連中相手にしてるけど、バタフリー少女は民間人向けに広報活動してるんだよ。

ポケモンがどんなのかーとか、ポケモンバトルは野蛮ではないのかーとか。先日のドンパチはなんなんだーとかな。その辺の対応はバタフリー少女がやってるんだが……俺がテレビ局のお偉いさんに会う時間と、バタフリー少女が報道番組に出る時間がダブってな。それでせっかくだからってバタフリー少女と番組内で軽くバトったんだよ。ポケモンバトルは本来安全なんですよーコミュニケーションですよーってな。

ちなみに貼ったURLは報道番組のアーカイブだから。詳しくは見ろ。

 

203:名無しの犬

>>201

なるほどな。

普段マスゴミ見ないから気づかなかったわ。ちょっと見てくる。

 

204:名無しの犬

>>201

ちなみに、どっちの勝ちだったんだ?

 

206:コラッタニキ

 

 

208:名無しの犬

コラッタニキが(胃痛で)死んだ!

 

209:名無しの犬

この人でなし!

 

211:名無しの犬

いや、なぜこのタイミングで死ぬし。

 

213:名無しの犬

>>211

そりゃ負けたからだろ。

しかも負けた理由は……運動不足のせいとか、そんなオチで。

 

215:名無しの犬

>>213

あー……コラッタニキのコラッタ、マトモにバトルしたことないもんな。高級チーズ食ってばっかりで。

 

216:名無しの犬

>>215

胃痛と緊張で飯の味が分からないニキの横でなw

 

217:名無しの犬

HAHAHA

 

218:名無しの犬

HAHAHA

 

220:コラッタニキ

ヤメロォ。ヤメロォォォ……

 

223:名無しの犬

そういやポケモンバトルの反響ってどうなん?

面白そう? それとも野蛮? どっちに傾いてる?

 

225:コラッタニキ

>>223

お偉いさんの方はどっちでもないな。ポケモンは生態上バトルしないとヤバいってことは伝えてあるし、それよりも先日みたいなポケモン使った犯罪やテロを不安視してる感じだ。あの日の番組見てて半ば発狂してたし。

今はその対策とか、法案とか考えたり、根回ししたりしてる。あのテロリストを逮捕するのを手伝う確約を取られたりとかもしてる。うん、吐きそう。てか吐いた。中身カラだった。胃が痛い。もうお腹の中身があんこの連中の相手したくない……うっ胃痛が。

 

227:名無しの犬

>>225

強くイ㌔。まぁ、コラッタニキはユウカ嬢がポケモンゲットするまでその調子やろうな。適任いないし、ムカつくしのダブルパンチや。どっちの比率が高いかは知らんが……一つ言えるのは、女の嫉妬は根深いって事だな!

 

229:コラッタニキ

 

 

230:名無しの犬

コラッタニキ(の胃)が死んだ!

 

231:名無しの犬

この人でなし!

 

232:名無しの犬

もう誰かきのみで胃薬作ってやれよ……

 

233:名無しの犬

>>223

鳥を監視した感じだと、民間の方は野蛮寄りだな。

ポケモンで悪事を働く奴もいるし、なんか怖いって意見が多い。テロリストがバカやったし(あるいはこれが狙いか?)シロちゃん冷徹な指揮官モードでやっちゃったからなぁ。その辺も影響してる感じ。あと未だに信じてない奴。この辺はキャタピー少女……改め、バタフリー少女の活躍次第だわ。

ただ楽しそうって意見の奴もチラホラ居る事は居る。これはキャタピー少女が生き生きとやったのが良かった感じだな。シロちゃんは……うん。いつも通りなら良かったんだけど、プッツンしちゃったから……(目逸らし)

 

235:名無しの犬

>>233

シロちゃんプッツンはしゃーない。あの子ポケモン大好きやから。

で、なるほどな。奴らテロリストは狙ってあのタイミングでポケモンを使って襲って来たって事か……これ以上ポケモンを持つ人間が増えて、自分達が集めた銃火器が無駄にならないように。となるとあの三人組は捕まってもいいザコなのかも分からんね。

 

237:コラッタニキ

>>235

あの日番組見てた警察のお偉いさんもそんな見方してたよ。あれは切り捨て要員だなって。まぁ、拳銃まで持ち出したし捕まえる為に人員は割くらしいけど、それで本丸までは辿り着けないだろうってさ。

あとシロちゃんが警察に提出した拳銃、中華製のコピー品だと。密輸品としてはありふれてるから、これだけで追うのは厳しいってさ。

それにポケモン関連の法律がないから、ポケモンで犯罪を起こされても逮捕しにくいとかなんとか。あぁ、その件で話してこなきゃ……

 

240:名無しの犬

>>237

警察も役に立たない……というか、そうか。ポケモンの法律がないから、そっち案件では逮捕しにくいし、逮捕しても刑が微妙になるんだな。

そういう意味だと拳銃出してくれて助かったのか。

 

241:名無しの犬

>>240

代わりに一般人のポケモンへの目が微妙な事になったがな!

その辺バタフリー少女が頑張ってるけど……イメージの払拭にはちょっと時間がかかりそうだわ。

ホント、アイツら余計な事してくれやがった。

 

243:名無しの犬

>>241

それさ、シロちゃんにもう一回テレビ出て貰えば解決しない? 無理?

 

245:名無しの犬

>>243

そりゃ一般人視点からすればポケモン大好きな優しい子(怒るとコワイ)だからウケはそこまで悪くないだろうけど、それやるとテロリスト連中呼ぶ事になりかねないからな……

 

247:名無しの犬

>>245

難しいな……シロちゃんはポケモンとのんびりしたいだけで、俺らはそれを眺めていたいだけなのに、なんでこうなるのか。

 

249:名無しの犬

>>247

ほんそれ。

もう全人類シロちゃんバンザァァァイしてれば楽なのに……

 

251:名無しの犬

白様バンザァァァイ!

 

253:名無しの犬

Ураааааааа!

 

254:名無しの犬

着剣せよ!

 

255:名無しの犬

着☆剣!

 

256:名無しの犬

砲塔を、ゆっくり、動かして下さい。

 

257:名無しの犬

射撃用意よし!

 

258:名無しの犬

いよいよシロちゃんが世界一であることを世に知らしめる時が来た。

 

259:名無しの犬

アルビノ幼女の威力。現実逃避者どもよ、思い知るが良い……!

 

260:名無しの犬

神☆仏☆照☆覧

 

261:名無しの犬

第一射、撃ち方始めェ!

 

262:名無しの犬

バァン

『ポチを抱き締めるシロちゃんの写真』

 

263:名無しの犬

バァン

『ハイライトの消えた指揮官モードシロちゃんの写真』

 

264:名無しの犬

バァン

『ドレスアップしたシロちゃんの写真』

 

267:名無しの犬

>>262~264

お前らなんでそんな写真持ってるんだよw

てかシロちゃんこういう顔してたのな。スッゴい可愛いじゃん。知らんかった。

 

269:名無しの犬

>>267

あ゛? お前お前お前! シロちゃんの全国配信を見なかったのかァ!?

 

271:名無しの犬

>>269

仕事でな……今からアーカイブ探してくるところ。

 

274:名無しの犬

>>271

なんだ、そうか。兼業は大変だな。

ほらよ『URL』

 

275:名無しの犬

>>274

サンクス。助かるわ。

 

278:名無しの犬

和気あいあいとしてるところ悪いけどさ、お前ら気づいてるか?

 

280:名無しの犬

>>278

何が?

 

283:名無しの犬

シロ民捕獲ポケモン コラッタ 合計1匹

テロリスト捕獲ポケモン ビードル マンキー オニスズメ 合計3匹

俺 ら が 無 能 だ っ て 話 だ よ

 

285:名無しの犬

 

 

286:名無しの犬

 

 

287:名無しの犬

 

 

288:名無しの犬

きゃ、キャタピー見つけたの俺らやし(震え声)

うん、今やバタフリー少女やし?

 

289:名無しの犬

そ、それにポッポも見つけたじゃないか!

 

291:名無しの犬

で、即時投入可能な戦力は?

テロリストが暴れたときに鎮圧に迎えるのは何人いるんだ? 言っとくが、ポケモン相手じゃ警察は無力だぞ。バリスティックシールド持ち込んだシロ民が証明しちまったからな。

 

292:名無しの犬

正直、スマンかった。

 

293:名無しの犬

本当に、申し訳ない。

 

295:名無しの犬

更にいうと確認出来たのが三匹であって、相手の手札がそれで全部かはまた別の話だしな。

ポッポはまだ捕まってないのが確認されてるが……密かに捜索してるピカチュウが全く見つかってないし。

 

297:名無しの犬

 

 

298:名無しの犬

 

 

299:名無しの犬

 

 

300:名無しの犬

あれ? もしかして俺ら、マジで無能……?

変態テロリストどもに負けてる……?

 

302:名無しの犬

だ、大丈夫だ。まだ、まだコラッタニキが居る……!

 

303:名無しの犬

そうだ。まだコラッタニキがいる!

 

305:名無しの犬

コラッタニキ! シロ民の魂!

 

308:コラッタニキ

いや、無理。これ以上仕事増えたらマジでくたばる。

……おかしいな。なぜ俺は社畜時代に戻っているのだろう……? 関東に来る前に辞めたはずなのに。

 

310:名無しの犬

>>308

もういい……! 休め、休むんだ……!

 

311:名無しの犬

>>310

ところがどっこい。彼は休めません……!

今権力者との連携を怠る訳にはいかないからです……! 故に、彼の胃痛は、治らない━━っ!

 

313:コラッタニキ

グフッ……

 

314:名無しの犬

カスタム

 

315:名無しの犬

頼みがあるんだが、コラッタニキを起こさないでやってくれ。死ぬ程疲れてる。

 

317:名無しの犬

シロちゃんの面倒は俺が確り見といてやるよw

 

318:名無しの犬

>>317

面白い奴だな。気に入った。今すぐ前線へ送ってやる。

 

319:名無しの犬

うわああぁぁぁ……

 

321:名無しの犬

317はどうしたの?

 

322:名無しの犬

>>321

(ポケモン捜索の最前線へ)放してやった。

 

325:名無しの犬

口だけは達者なシロ民ばかりよく集めたものですな。全くお笑いだ。催眠術野郎が居れば、奴も笑うでしょう。

 

327:名無しの犬

325君。シロ民は皆(シロちゃん国の)愛国者だ。

 

328:名無しの犬

ただのカカシですな。現状の戦力ではテロリストどもにまばたきする間に(パチンッ)皆殺しにされる。忘れない事だ。

 

329:名無しの犬

寝言言ってんじゃねぇよw

 

331:名無しの犬

野性のポケモンを最初に見つけたのはシロ民です。元シロ民じゃありません。我々の功績です。暫し遅れをとりましたが、今や、巻き返しのときです。

 

333:名無しの犬

何が始まるんです?

 

335:名無しの犬

大惨事大戦だ。

 

337:名無しの犬

\デェェェェェン/

 

340:コラッタニキ

あー……流れぶった切って悪いが、本格的に俺ら無能っぽいぞ。

『ピカチュウとバタフリーのツーショット写真』

何か送られて来た。何でもバタフリー少女の友人がゲットしたらしい。その様子は夕方のワイドショーで流すってさ。

 

342:名無しの犬

アイエエエ!? ピカチュウ! ピカチュウナンデ!?

 

343:名無しの犬

ピカチュウゲットなんてベイビー・サブミッション。そう思ってたときもありました……

 

344:名無しの犬

こ、こんなのは欺瞞だ! 俺は詳しいんだ!

 

345:名無しの犬

ピカチュウ=サンをゲット出来ればキンボシ・オオキイでサンシタシロ民からカチグミシロ民になれる……そう思ってたのに。

 

356:名無しの犬

ゴウランガ! バタフリー少女の友人は実際奥ゆかしい人物だ。

しかし無能のシロ民は決断的にセプクすべきでは? シロ民はいぶかしんだ。

 

357:名無しの犬

ショッギョ・ムッジョ。これもマッポーの世の一側面か。

 

358:名無しの犬

ナムアミダブツ! ヤバレカバレの悪あがきすら許さない驚愕の事実のエントリーだ! おぉ、ブッタよ。寝ているのですか!?

 

360:名無しの犬

……なぁ、ヤバくね? 流石にヤバくね? このままだとガチで俺ら無能じゃん。

 

363:名無しの犬

>>360

だよな。ってもどうにもならんだろ。ポケモンとの遭遇は運次第だし……人員だってそう多くない。てかテロリストどもに相当数やられたから投入可能な人員はかなり減ってるぞ。

 

365:名無しの犬

>>363

何人やられたんだっけ?

 

367:名無しの犬

>>365

二桁はいったと聞いた。侵入時のアンブッシュで4、5人。追撃しようと功を焦ったのが返り討ちにあって更に追加……最終的に現場で活動していた戦力の九割近くがやられたと聞く。

しかもこのとき活動していたのは特にアクティブな連中だったから……関東活動中のシロ民は中核部隊を失った状態になってる。

控え目にいっても役に立つ状態じゃない。人員の補充しないとどうにもならないだろうな。

 

368:名無しの犬

>>367

マジかよ……あれ? このままだとテロリストどもがいいように暴れ回るんじゃないのか? 警察の力はまだ借りれないんだろ?

 

370:コラッタニキ

>>368

無理。銃云々はともかく、ポケモン云々は警察上層部がどう動くか決まってないから、ポケモンに関しては警察任せにしてたらテロリストが立て直す方が早い。

前例がないとか二の足踏んでる場合じゃないってのに……悪いけど、警察のポケモン部隊の設立はまだまだ先になる。

 

372:名無しの犬

>>370

なるほどな。

となると暫くは俺らシロ民でポケモンゲットして、テロリストに渡さない様にしないといけないが……次はどこになるんだ?

 

374:名無しの犬

>>372

ピカチュウが出て来たから、既にトキワの森まで来てると見ていい。

んで、シロちゃんの地図を見てみると……次に近いのはディグダの穴と3番道路。そしてオツキミ山だ。

 

376:名無しの犬

>>374

ディグダは穴を掘るし、マグニチュード持ってるし早めに捕まえておかないとヤバいな。なんとかこっちで抑えておきたい。それと3番道路はシロちゃんwikiによればニドランか……こいつら毒持ってるし、ゲットしとかないと死人が出かねないな。

 

378:名無しの犬

>>376

オツキミ山もヤバいぞ。イワークが居る。あの巨体が暴れ回れば……

 

379:名無しの犬

>>378

人とポケモンの共存は遠退く事を強いられるな。

 

380:名無しの犬

ちょっと待て。となるとこれはあれか? ディグダ穴、3番道路、オツキミ山に相当するだろう場所を推測し、そこに戦力を分散配置しつつ、ポケモンを必ず確保しろってのか?

無理じゃね? 明らかに人手が足りない。

 

381:名無しの犬

今までだってなんとかかんとかだったのに……人員が減った状態で、広い地域からポケモン一匹を見つけ出す? 無理だろ。

 

383:名無しの犬

>>380

>>381

だがやるしかない。我々には後がないんだ。人員を増員し、戦い抜くしかない……!

 

385:名無しの犬

>>383

関東に来れる奴はもう軒並み来てるだろ。むしろ引きこもりのネト民がこれだけ集まったのが奇跡だったんだよ……命懸けのボランティアだしな。皆が皆、コラッタニキみたいに家財引き払って来れる訳じゃない。

 

387:名無しの犬

畜生! このままじゃ皆死ぬぞ!?

 

388:名無しの犬

>>387

だが今日じゃない(開き直り)

 

390:名無しの犬

せめて日銭出るなら今やってるバイト即刻辞めて、関東行くんだけどな……流石にボランティアは餓死する。

 

392:名無しの犬

ワイ、ブラック企業のサラリマン。最低限の給料と休みをくれるんなら、即刻会社辞めて喜んで行ける。

 

394:名無しの犬

俺もだな。最低でも日銭ないと厳しい。二、三日ならともかく、長期で張り付けってなると尚更な……

 

395:名無しの犬

やっぱそういう奴は多いか……でも俺らも金が有り余ってる訳じゃないしなぁ。

 

397:名無しの犬

>>395

だが逆に考えれば、日銭さえ出せるんなら人手は一気に増えるという事でもある。……出せればの話だが。

 

400:アイドルネキ

良いわよ。出すわ。

私のボディーガード名目で、取り敢えず先着100名。給料はそこそこよ。

 

402:名無しの犬

!?

 

403:名無しの犬

!?

 

404:名無しの犬

アイドルネキ!? そうか、ユウカお嬢様なら……!

 

405:名無しの犬

行く! 行くます! 喜んで行きますお嬢様ァァァ!

 

407:名無しの犬

>>405

決断早いなw

 

408:名無しの犬

>>407

バヤカロウコノヤロウ! お嬢様の『そこそこ』と俺らの『そこそこ』が同じだと思うてか!?

 

409:名無しの犬

!?

 

410:名無しの犬

>>408

なん、だと……!?

 

411:名無しの犬

>>408

そ、そうか! という事はお嬢様のいう『そこそこ』の給料は……今の俺の給料より多い!

ヒャッハー! 栄転だァァァ! 俺は関東に行くぞぉぉぉ! ジョジョォォォ!

 

413:名無しの犬

>>411

いちいちジョジョに報告するなしw

……さて、やはり関東か。いつ出発する? 私も同行する。

 

415:名無しの犬

俺ら関東まで突っ走れ!

 

 

……………………

…………

……

 

 

「良いんですか? ユウカさん」

「良いのよ。頭数が足りないのは分かってたから、むしろ丁度良かったわ」

 

 冷えきった私が好き勝手やってしまったあの日から数日。私は相変わらず伊藤家に滞在し、ユウカさんのお世話になっていた。

 私は今日までポチの様子を見たり、東郷お爺ちゃんに報告したり、あの日のバトルの反省点を振り返ったりして日々を過ごし。ユウカさんはどこかに出掛けたり、偉い人と話をしたりして過ごしていたのだが、今日は二人揃って時間がとれたので、他愛ない話をしながらシロ民の様子を眺めていたのだ。

 するとユウカさんがシロ民に給料を出すと書き込んで驚いたのだが……ユウカさんにとっては何でもないようだった。

 

「それに、いつまでもボランティアで動かれると色々面倒事を呼び込みかねないしね。……あぁ、ついでにリヴァイアサン号の人員も降ろしましょうか。どうせ暇してるでしょうし」

「リヴァイアサン号の人達……そういえば、私はあまり見てないです」

「……良いのよ、シロちゃんが見るような連中じゃないから。アイツらは」

「は、はぁ……?」

 

 よく分からないが……どうやらポケモン捜索の人手は一気に大きくなる様だ。ディグダの穴、3番道路、オツキミ山。その全てをくまなく抑える事が出来るだろう。

 これなら。

 

「ポケモン。奴らより先にゲット出来ますよね」

「……えぇ。勿論よ」

 

 ユウカさんがそういうなら大丈夫だろう。

 ポケモンが、あんな奴らに使われるのは可哀想なのだ。それなら、私達が。……いや、いっそのこと奴らを撃滅してしまえば。

 

「━━次は、逃がしません」

「っ……そうね」

 

 先ずはポケモンをゲットしよう。

 そして、来るべき日に奴らを━━殲滅するのだ。




 以下要点まとめ
 初手霧
 シロ民は何度でも蘇る
 しかし人間はノーリスクできのみを使えない
 米以外の病院食はマズイ 肉も出ない
 EDF語録
 バトルシーンを語る
 闇深
 バタフリー少女とロビー活動をする胃痛ニキ
 初ポケモンバトルは陰謀に沈んでいた
 万歳エディション
 シロ民無能説
 コマンドー
 ピカチュウ確保(シロ民以外が)
 (見よう見まねで)忍殺語録
 今後について そして密かな強いられ線
 バトルシップ
 お嬢様は気前がいい
 ジョジョ
 シロ民総動員
 不知火白「茲ニ戦ヲ宣ス」


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第21話 某月某日、首相官邸にて

 私の……いや、人類最初のポケモンバトルから一週間と少しが過ぎたある日。私はユウカさんとポチと一緒に、伊藤家の居間に居た。

 

「後少しで、発表……」

「グルゥ……」

「そうね」

 

 この一週間と少しの間に起きた事はあまりない。ユウカさん主導で人員の増強が行われ、訓練と配置、そしてポケモンゲットが進んでいる━━通りすがりのカップルがニドラン♂♀を、シロ民がディグダとイシツブテを確保したらしい━━事。キャタピー少女改め、バタフリー少女がテレビに出て、ポケモンとポケモンバトルのイメージ改善に取り組んでいる事……それぐらいだ。

 後はコラッタニキや総理が頑張ってポケモン特別法案の草案が出来たぐらいか。

 

「……そろそろ、時間ね」

 

 そう、ポケモン特別法案。人とポケモンが共に生きていく為の基本ルールが、ついに出来上がったのだ。とはいえ、まだ可決した訳ではないのでやる事は多いが……それでも、私達は確かに前進している。

 そして今日この日、それを象徴付ける事が起きる予定だ。

 

「テレビ、つけるわね」

「お願いします」

 

 ユウカさんが居間の大きなテレビの電源を入れ、チャンネルを合わせる。映し出されるのは……政府の偉い人が何かを発表する例のあの場所だ。確か、首相官邸だったか。画面端のテロップには『ポケモンに関する政府公式会見』とある。

 

 ━━いよいよだ。いよいよ人とポケモンの歴史が始まる。

 

 今日あそこで行われるのは『日本政府がポケモンを認める』ただそれだけ。だが、それによって発生する問題は多岐に渡り、同時に始動するプロジェクトも多い。

 リスクと、メリット。

 普通なら日本政府はリスクを気にして素早く動けなかっただろう。そして動けないうちにしがらみが増え、邪魔をされ、人とポケモンの歴史は闇から始まる事になったはずだ。

 しかし、そうはならなかった。シロ民を筆頭に多くの人が人とポケモンの未来の為に頑張ってくれたのだ。

 人と人を繋ぎ、利を説き、準備を整えた人が居る。

 胃痛に耐え、威を示し、ポケモンがなんたるかを語り、理解を広めた人が居る。

 公の場でポケモンを語り、魅せ、人とポケモンの未来を示した人が居る。

 将来どの様な問題が起きるのかを考え、付き合わせ、思案し、法案を作った人が居る。

 ポケモンを探し、捕まえ、問題の発生を未然に防いだ人が居る。

 

 ━━皆の協力があって、今日がある。

 

 誰か一人でも欠けていたら、人とポケモンの歴史の始まりは今日ではなかっただろう。ずっと先、あるいは闇に沈んでいたかも知れない。

 だが、私達はやりきった。国民に事前に周知させ、法案を用意し、反対勢力を抑えきって……今日を迎える事が出来たのだ。

 確かに、私達の歩みはテロ行為により多少後退はした。だが、今国民のポケモンに向ける目は概ね改善されている。『なんだか怖い存在』ではなく『友達になれる存在』へと。正直、マスメディアを使ってプロパ……ではなく、事実の周知を行ってくれたユウカさんを筆頭とする伊藤家と、バタフリー少女やピカチュウ少女達、ポケモンの魅力を伝えてくれた人達には頭が上がらない。彼ら彼女ら無くしては、この日は決して来なかっただろうから。

 

「! 来た……」

 

 一度だけ会った事のある人物がテレビの画面に入る。総理だ。

 眩しいフラッシュ、総理は画面中央へと、そして━━

 

『本日、日本政府として、重大な発表を行う事となりました』

 

 歴史の一ページ目が、始まる。

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 総理の口から最初の一言が発せられ、会見は……いや、日本中が緊張に包まれた。誰も彼もが分かっている。何の発表かなど。テロップにも書かれているし、それこそここ数日はどのテレビも同じ事柄を扱っていたのだから。

 だが、それでも。いや、だからこそ、緊張が走った。まさか? 本当に? あれを政府が認めるのか? と。もし政府が公式に認めるなら、あの生物達は嘘でも幻想でもなんでもない、ただの現実だと確定してしまうと。

 

「本当に言うのか?」

「否定かも知れん」

「どちらせよ、ニュースにはなる」

 

 人々のざわめきは暫く。しかし制止の声も上げず、続きも発しない総理の様子にゆっくりざわめきは静まっていき……そして。

 

「現在日本国各地で発生している、異常な果実。並びに、関東地方で発見された複数の、新種の生物。日本政府はこれらの異常を『ポケモン』によるものであると、断定しました」

 

 あまりに突飛な、発表者の正気を疑って然るべき内容。しかし、連日の報道やバラエティー企画によって、人々は少なからずポケモンを信じていた。だから、だろうか? 静寂は一拍。直ぐにフラッシュがたかれる。歴史的な瞬間を捉えようと。

 

「現在、我々はポケモン特別法案を準備しています。近いうちに、ポケモンに関する法案が施行される事になるでしょう。それまでの間、各地でポケモンに関する勉強会や、既存メディアによる周知等が行われる予定です。国民の皆様に置かれましては、どうか怖がらず、彼らポケモンについて知って頂きたいと考えています」

 

 語られたのは眉唾物の、ファンタジーな存在に対して、日本政府が本気で対応しているという事実。そして前へ踏み出すべきだという流れ。

 人々は確信せざるを得なかった。彼ら『ポケモン』は現実で、ついに政府が動いたのだと。踏み出さなければ、置いて行かれると。

 

「……このポケモンについて、ここで語れる事はそう多くありません。連日のポケモン報道を聞いている方には耳タコな話だけです。ですので、私からポケモンについて言えるのはただ一言━━日本政府は、ポケモンとの協調路線を歩む予定です。敵対するのではなく、友人として。手を取り合って生きていく……そんな未来を目指し、歩いていく事になるでしょう」

 

 その瞬間、人とポケモンの歴史の一ページは決まった。人がポケモンと敵対せず、友人として手を伸ばす事が公に伝えられたのだ。

 それに対する多くの反応は……安堵だった。

 

『よかった……』『当然よね』

『大勝利!』『UC流しとくか』『コロンビア』『頑張った甲斐があったな……』『ちくわ大明神』『俺の胃痛、プライスレス』『慣れだしてて草』『誰だ今の』『人とポケモンの歴史がまた一ページ……』『これで俺らも教科書入りか』『幻想入りみたいに言うなしw』『歴史が始まったのか……』

『これで私もシロちゃん撫でたり出来るかなー?』『仕事多いから無理』『(´;ω;`)』『ほら、次の現場行く。最初期のポケモントレーナーの私達に休んでる暇なんてない』『。・゜゜(ノД`)』

 

 ネットで、あるいは個々の胸中で溢れる思い。それらはバラバラではあったが、人とポケモンが共に歩いていく事を喜ぶ一点においては、全く同じであった。

 

「━━では、このまま記者会見へと移りたいと思います。発言のある方は挙手をお願いします」

 

 予定でも詰まってるのか、公式会見はそのまま記者会見へと移り変わった。そうなれば血気盛んになる連中もいる。マスコミだ。

 

「一週間前にもポケモンを使った犯罪がありましたが、この点についてはどう考えているのでしょうか?」

「その件については私も知っていますが、一概にポケモンが悪いとは言えません。包丁は料理をする為にありますが、犯罪にも使えます。それと同じでポケモンは飼い主次第なところがあり、だからこそ法整備と国民の皆様の理解が必要だと考えています」

「それはつまりポケモンが危険な事に変わりないのでは? 隔離や駆除も必要ではないでしょうか?」

「確かにポケモンはライオンや熊よりも危険です。しかし同時にそういった動物よりも知性がある。であるなら隔離や駆除で遠ざけるよりも、友人として付き合っていく方が危険がないと考えます」

「その根拠はどこにあるのでしょうか!? 事実無根ではありませんか!」

「皆様も見たとは思いますが、一週間前の事件ではポケモンが悪事に使われると同時に、悪事に使われたポケモンを制圧したのもポケモンです。毒を以て毒を制す……とまでは言わないでしょう。しかし、ポケモンと友人関係を築いていれば、いざというときそうやって対抗する事も出来ると考えます」

「それは野蛮なのでは!? 何より動物虐待ではありませんか!」

「一週間前に行われたアレはポケモンバトルと言われる、ポケモンを飼うにあたって必要な物だと考えられています。全てのポケモンがそうだとは言えませんが、大多数のポケモンはああやって闘争本能を発散させる必要があり、動物虐待には当たらず、また野蛮というには理性的な面が多いかと思われます」

「その野蛮な行為に子供が参加していた事は! 危険ではありませんか!」

「勿論、自制心が育っていない子供がポケモンを持つのは危険です。ですので今後の法整備によって何らかの規制、あるいは資格制度等を設ける事になるでしょう」

「海外からポケモン被害による賠償要求が来ていますが、いつ賠償する気ですか!」

「その様な事実は現在確認されて居らず、今のところ賠償は考えておりません」

 

 騒然とぶつけられる様々な問いに、一つずつ答えていく総理。その歩みに迷いはなく、質問の内容をおおよそ予想していた事が伺えた。

 しかしその表情はどことなく暗い。否定的な意見ばかりである事に嫌気が差している様子だ。やはりまだ公式で認めるには早かったのか? そう総理が内心で思い出した頃。

 

「━━動画の者ですが……」

 

 その担当者が質問の機会を与えられる。その内容は……

 

「ポケモンをゲットしてバトルしてみたいが、どうすればいいのか分からない。今現在モンスターボールは手に入るのか? そういった声が上がっていますが……どうなのでしょうか?」

 

 ある種ポジティブな質問に総理の目に生気が戻る。そうだ、こう来なくては遣り甲斐がないと。そういった声の為に自分達は法案を煮詰めてきたのだからと。

 

「はい。ポケモンバトルに関しては法整備と同時にルール設定、及びそういった教育機関ないし学べる場所を……仮称名『ポケモンジム』を開設する予定です。ですのでポケモンバトルがしてみたい、ポケモンバトルで勝ちたい、という方はそこで勉強してもらう事になりますね。モンスターボールについては━━現在量産化を予定しています」

「なるほど。しかし量産化、ですか。アレはかなり高度かつ未知の技術が使われており、解析するのも難しいと聞きましたが……?」

「はい。ですので、今すぐ量産化する訳ではありません。しかし、一ヶ月以内には日本製のモンスターボールが一般向けに販売できる様に、官民一体となって準備を進めています」

「おぉ……それは素晴らしい」

 

 勉強不足らしい記者達……全体の約半数を置き去りにして進む話。着いていけてる者が熱心にメモを取る中、話は更に深みへと進んでいった。

 

「性能についての声も上がったのですが……お聞きできますでしょうか?」

「残念ながら全ての情報を開示する事は出来ません。しかし、ポケモンの家としての……いわば居住性能に関してはほぼ同レベルを維持出来る予定です。またデザイン等もそのままの予定です」

「なるほど。……ということは捕獲性能や、お値段の方は?」

「機密事項となります。……が、解析に酷く難儀しているとの報告もありますので、捕獲性能は下がってしまうやもしれません。価格については可能な限りの低コストを目指していますが……なにぶん始めての物ですので、それなりの価格となってしまう可能性があります。その場合でも中高生が頑張れば手に入れられる価格に抑えるか、何らかの制度を設ける予定です」

 

 語られたのはモンスターボールの性能。メモを取っている記者達は熱意凄まじく、置いていかれている者はつまらなそうに聞き流したソレだが……ネットの反応もおよそ二つに割れた。

 

『これで俺もポケモントレーナーになれるのか』『子供が買えるのは危ない』『有給の申請しとくか……』『一ヶ月はちと長いな』『俺、ブラック企業やめてポケモントレーナーになるんだ……』『よく分からんな』『性能下がるのか……まぁ、仕方ないか』『我が日本国の技術力は世界一ィィィ! 出来ん事は無いィィィ!』『万いくのか? だとしたら嫌だなー』『町工場もフル稼働中! 昨日まで暇だったのに!』『首相も頭がおかしくなったか。政権交代だな』『テレビで見たときから楽しみしてたワイ、後一ヶ月全裸待機』

 

 楽しみだという者、アレコレ理由をつけて忌避する者。その二つだ。どちらが正しいのか、利益が出るのか、主流なのかは……今、この日には分からない事だった。

 

「なるほどでは質問を……いえ、最後に一つ、宜しいでしょうか?」

「なんでしょう?」

「一週間前の事件でポケモンバトルを行った少女達のうち、白髪の少女の姿が見えない事に不安を感じている方も居るようなのです。今現在どうなっているのか、お教え頂けるでしょうか」

「機密事項です」

 

 取り付く暇もなく、バッサリと切り落とす総理。これに驚いたのは質問者や記者達だ。今までは噛み付かれるのをよしとしていたのに、この件だけ即座に払い落とした……

 

 ━━何かある。あの少女には何かある!

 

 そうマスコミが思うのも無理はなかった。

 それは総理の落ち度か、それとも…………

 

「ま、まさか、重症を負っているのでしょうか?」

「機密事項です。彼女に関しては何もお答え出来ません」

「せめて安否だけで「それはポケモンバトルで死人が出たという事では!?」え、ちょ……」

「やはりポケモンは危険なのではないでしょうか!?」

「今すぐ規制すべきかと思いますが、いかがですか!」

「彼女から危険なポケモンを取り上げる事も検討すべきでは!」

「政府としてはどう責任を取るおつもりでしょうか!」

「総理!」「総理!!」

 

 騒然と、アレコレと好き勝手な論調をぶちまける記者達。総理は怒号の中で視線を巡らし、批難の声を上げる者をザッと確認していく。

 

 ━━今までメモを取っていなかった者達が殆んどか。

 

 それを最低限確認した総理は進行役が制止させるのに任せ、ある程度場が落ち着いたのを確認して話始める。

 

「彼女に関しては現在その全てが機密事項であり、今お話出来る事は何もありません。……ですが、一つだけいうなら、特に怪我等はしておらず、彼女は彼女の夢に向かって歩いている。とだけお話しておきます」

「なるほど、有り難うございました」

 

 ホッとした様子で、しかしそそくさと席につく質問者。なぜそそくさとしたのかは……考えるまでもない。揚げ足を取ろうと必死な者達が噛み付いたからだ。

 巻き込まれてたまるものか。そんな考えが透けて見えており、事実マスコミの噛み付きはその後暫く続き……

 

「静粛に! 皆さん静粛に! お時間となりましたので記者会見を終了します!!」

 

 進行役のその声で、一旦打ち切りとなった。とはいえ騒ぐ人間は相変わらず騒いでいたが……総理が退出しては騒ぐ理由もなく。三々五々解散となる。

 

「政府はシロちゃん寄りか。それもガッツリと……一応、ボスに報告だな」

 

 そこにどんな思惑があったにせよ、どんなモノが渦巻いていたにせよ、政府からの発表は終わった。

 人とポケモンの旅が始まったのだ。




 これにて一章完結です。チュートリアルは終わり、各陣営が本格的に始動して行きますが……この後は閑話をどっさり挟んで二章の予定です。もうちっと続くんじゃ。


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閑話 ポケモン研究所所長はソウトウカッカしているようです

 首相官邸で歴史的な発表が行われた……その直ぐ後、とある一室では無数の人々が頭を付き合わせていた。彼らの多くは白衣を身につけており、医者か、さもなくば何らかの研究員である事を連想させる。そして、その連想は間違っていない。彼らはつい最近設立された研究機関……ポケモン研究所の研究員であり、今彼らが顔を付き合わせている一室は研究所の所長室だ。

 今また新しい研究員がガチャリと扉を開けて部屋に入って来る。そしてそれが切っ掛けなのか、彼らの中から一人の男が口を開いた。

 

「先程首相官邸で発表がありました。政府はポケモンを公式に認め、彼らと良い関係を築いていく事を正式に表明。これにより人とポケモンの関係が本格的に始まり、同時に多くのプロジェクトが始動、我々の活動も本格化していく事が予想されます」

 

 語られたのは先程行われた総理自ら行った政府公式の発表についてだ。研究員らしい男はタブレットに号外記事を映し出し、それを指差しながら説明する。

 その説明を受けたチョビ髭が特徴的な男……この研究所の所長は落ち着いた様子で頷き、指をクルクルと回しながら返答する。

 

「モンスターボールの生産もあと少しで可能になるからな。我々は安泰だろう」

「所長……モンスターボールは……」

「総理がモンスターボール発売時期を一ヶ月以内と発表してしまいました。このままでは間に合いません」

 

 言い淀んだ男の言葉を引き継いだスキンヘッドの男が、衝撃的な事実を告げる。それは総理の発言が間違いであり、その責任が彼らにあるという物。そう、総理はモンスターボールを発売出来ると言ったが、実際にはまだ完成すらしていなかったのだ。

 あまりに衝撃的過ぎる事実に、所長は言葉を失って沈黙。やがて再起動した彼はプルプルと震える手で掛けていた小さな眼鏡を外し、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「……モンスターボールを一ヶ月以内に発売出来ると思う者だけ残れ。アンポンタン」

 

 それは選別の言葉。その内容に合う人間が何人いるかと思えば……かなり少ない。何せ殆んどの人間が出て行ってしまったのだ。無理だと思っているのか、それとも逃げたのか……いずれにせよ、部屋にはスキンヘッドを初めとした数人しか残らなかった。

 そして所長は彼らをサッと見渡し、興奮した様子で怒声を発する。

 

「言っただろうが! モンスターボールを()()出来るのは()()で一ヶ月だと言っただろうが! 一体どこの誰が伝達ミスをしたのだ!? その結果がこれだ。あと一ヶ月でモンスターボールを()()など出来るか! そもそも誰だ、モンスターボールとかいう訳の分からない物を持ち込みやがった奴は! コイツの意味不明さに何度吐き気を覚えたと思っている……モンスターボールなんて大嫌いだ!」

「しかし所長。今多くの人々がモンスターボールを求めているのです。一刻も早くと……」

「うっさい! 大っ嫌いだ! バァーカ!」

「所長、お気を確かに!」

「こんなの解析させられて正気で居れるか!」

 

 立ち上がりながら罵声を部下に浴びせ、錯乱していると思われる様子を散々見せた後、所長は手に持っていた2本のペンを机に叩きつける!

 

「チクショーメェェェ!!」

 

 発せられた罵声。それが今の所長の心情の全てなのだろう。だが彼は止まらない。止まる事なく畳み掛ける様な怒声が続く。

 

「だいたいなんだ、あのモンスターボールとかいう訳の分からない技術で作られた代物は! ちょっと調べただけでウオッと驚く情報がゴロゴロ出てきおって! いや、今思えばあの若いのが私の先生と連名でコレを送って来たときに察するべきだった! 私の危機管理に対する判断力足らんかったぁ……! あぁ私もやっておくべきだった! 疑わしきは全て遠ざければ良かった……スターリンのように!」

 

 語られたのはモンスターボール解析の際の心情と後悔。しかし大きく腕を振って歴史上の人名を叫ぶ所長の目は……明らかに正気ではなかった。何かに取り憑かれたかの様な有り様━━

 そんな所長を見ながらまだ怒声が続くのか、そう研究員達が思っていると……所長は途端に落ち着きを取り戻して元の椅子へと座り、熱がこもった声を発し始める。

 

「私はポケモンについては全く知らなかった。だが私は一人の力でやってやった、モンスターボールの基礎研究を! シロちゃんを知ったのはその後だ……もっと早くに見れば良かったと思ったよ。あぁ今では私もシロ民だ。シロちゃんのおっぱいツルンペタン! だが元々日本では胸は慎ましい方が良いとされていたのだ。別に変な事など無い。私は日本古来の感覚を持っているだけだ!」

 

 胸を叩き、胸を語る。そんな彼もシロ民になったらしい。明らかに正気を失った彼に何があったのか? その答えは部屋の外に出た女性研究員の一人が、所長のあんまりな発狂具合に泣いている女性研究員に掛けた言葉にあった。

 

「所長、ここのところ全く寝てないから……」

 

 どうやら睡眠不足が原因らしい。目覚ましか、暇潰しか、それとも睡眠導入として見たのかは不明だが……そんな状態で人の心の揺れに入り込む不知火白の声を聞いたのは致命的だったろう。それではクトゥルフやSCPと噂される彼女の声に耐えれるはずがない。

 

「このままではモンスターボールは予定通り発売出来ない。シロちゃんも落ち込むだろう。終わりだ。我々は負けだ。だが諸君、私が諦めて逃げ出すと思っているならそれは大きな間違いだ。私は誇り高きシロ民として、最後まで戦い抜く!」

 

 彼は最早立派なシロ民だった。一人の少女の為に戦うと宣言するチョビ髭は……間違いなく男の鑑であり、シロ民の鑑だ。

 

「私は好きにする。君らも好きにしろ」

 

 そう沈み込んだ様子で言って、所長は沈黙する。

 ポケモン研究所。まだ出来て間もない研究所は、早速地獄へと出発する事になったのだった。全ては人とポケモンの未来の為に━━




元ネタ。総統閣下シリーズ。


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閑話 シロちゃん、インタビューを受ける~顔合わせ~

 不知火白。普段シロちゃんと呼ばれる少女についての情報は驚く程少ない。長い白髪が特徴的な、人の目を惹き付けるその見た目こそネットに広く上がっているものの、その生まれや育ち、果ては年齢すら分からないという謎の人物。一説にはそも純粋な人間ではないという話もあり……謎が謎を呼んで深淵と化しているのが現状だ。

 しかも政府が公式にポケモンを認めた発表の後、政府や巨大財閥等がその情報を率先して隠蔽しており、深淵は広がるばかり……今日、この日までは。

 

「お、お腹痛くなってきた……」

「胃薬、さっき飲んだでしょ?」

「効かない!」

「そう」

 

 誰もが知る日本の巨大財閥、伊藤家の保有する別荘の一つ。その一室で二人の少女が硬い表情で座っていた。

 美少女。そう言っていい二人の共通点はただ一つ。モンスターボールを持っている事だ。

 

「うぅ、胃痛のお兄さんから胃薬借りてきたのに……」

「その呼び名、止めてあげなさいよ」

「だってあのお兄さんいっつも胃痛でお腹痛めてるし……あ、お兄さんよりオジサン?」

「ホント、止めてあげなさい。まだそこまでの年じゃないんだから」

 

 まだ数少ないモンスターボールを持っている彼女達の職業はアイドル。伊藤家絡みの事務所に所属するアイドルのポケモントレーナーだ。片やバタフリーの使い手、片やピカチュウのトレーナー。幸運と、そして伊藤ユウカとの繋がり故に手に入れたただ一つのアドバンテージ。それが、彼女達がここに居る最も多きな理由だった。

 

「うーん、じゃあコラッタのお兄さん?」

「それもいいけど、コラッタはそのうち大量に出てくるでしょ……名前で呼んであげなさいよ」

「…………?」

「え、嘘でしょ?」

 

 哀れ。名前を覚えて貰えないのは彼の人物の宿命なのか。それとも胃痛が宿命の星か。今日もどこかでコラッタニキは胃痛に呻く。

 しかし彼女達にとってそんな事は他人事……でもないのかも知れない。何せ、今日の仕事が仕事だ。

 

「まもなく本番でーす。移動お願いしまーす」

「はーい!」

「はぁ……」

 

 部屋に顔を出して要件を告げ、直ぐに去っていくスタッフ。そんな光景を目の当たりにし、二人の胃痛が酷くなる。コラッタニキの呪いか? いいや、仕事が迫っているからだ。

 

「行こっかぁ」

「そうね」

 

 今日の仕事を一言で言えば『不知火白と喋る』これだけだ。年頃も殆んど同じに見える少女と喋るだけ、そう思えば簡単な仕事に思えるが……現実は非情である。

 先ず一つ、この仕事を頼んで来たのはあの伊藤ユウカだ。それもかなりの念押しを、酷く悔しそうにしてきた。彼女達にとっては先輩にあたり、ここ最近は所属事務所の実権も握っている、シロちゃんガチ勢の伊藤ユウカが、だ。やむにやまれぬ事情があるのは目に見えている話だろう。

 つまり、この仕事に失敗する事は伊藤ユウカの顔に泥を塗った上で唾を吐き掛け踏みつける事に等しく、そんな事をすれば彼女達の未来は東京湾でドラム缶にコンクリートだろう。ここ最近は海外から私兵を入れたとの話も聞いており、その突飛な想像に裏付けをしていた。嬉しくない。

 

「私、今度胃痛のお兄さんにあったら優しくするんだ……」

「そう」

 

 フラグ臭い事を言い、何気なく天井を見上げるバタフリー少女。そんな彼女の目に青い空と、そこにうっすらと浮かぶ胃痛から解放された苦笑するコラッタニキが見えた……気がした。末期である。そしてそんな相方にノータイムで塩対応するピカチュウ少女もまた、末期なのだろう。余裕があればそんな事はしまい。

 精神的にかなり追い込まれている少女は長い廊下を歩く。時折黒服グラサン白チョーカーの男達の前を通り過ぎながら……あぁ、精神力が削れる。彼らは何なのか? 少なくとも常人ではあるまい。まとう気配が狂気的に過ぎる。

 

 狂気、そう。狂気だ。

 

 彼女達がこの仕事で最も疲弊しているのにはこれが原因だった。先輩からの重圧で手一杯なのに、仕事先の屋敷は狂気に包まれているのだ。静かな、しかし普通とは全く異なる狂気に。

 黒服グラサン白チョーカー男達もそうだが、この屋敷の人間はどこか狂っていた。表面上はマトモに見えるのに、話す事と言えばポケモンかシロちゃんについてのみ。

 別に自分達について語れとは言わない。だが自分達がポケモントレーナーである事にかこつけてか、挨拶すれば必ずポケモンの事に話題が飛び、最後はシロちゃんについてで締める。目に、あるいはグラサンの奥に見て分かる程の狂気を宿しながら。誰も彼もがポケモンポケモンシロちゃんポケモンシロちゃんシロちゃんシロチャン━━狂気だ。ここまで人心を統一させるシロちゃんとは何者なのか? 知りたくなく、また踏み込むなんて考えたくないのが彼女達の本心だった。が、現実は非情である。残念な事に、彼女達の仕事は不知火白について踏み込む事だ。

 

「ねぇ」

「なに?」

「前にシロちゃんと会ったんでしょ? どんな子なの?」

「一度だけだけどね。んー……最初は凄い可愛い子だなぁと思って、次にポケモンが好きなんだなぁって思って……最後は、ちょっと怖かったかな」

「怖い?」

「うん。何という、その、性格が違うというか、印象が変わるというか、んー……顔が2つある感じ? かな?」

「……二面性があると?」

「そうそれ! 二面性! 全然違う二面性がある子だった! 目のハイライト消えてたし!」

「そう……」

 

 以前一度だけ会い、タッグを組んでポケモンバトルを行ったバタフリー少女はシロちゃんの印象をそう語る。二面性があると。

 それはポケモンを語る愛らしい少女としてのシロちゃんと、冷徹な指揮官としての不知火白の違いか。それとも……何にせよ、会った事のないピカチュウ少女にはイメージしにくい話だった。

 そうしてバタフリー少女が恐ろしくも楽しかった日を思い出し、ピカチュウ少女が首を傾げる中、二人はある一室の前にたどり着く。簡素な、しかし素人目に見ても上物と分かるふすまで仕切られた……不知火白が待っている部屋。ごくり、と。ほぼ同時に息を飲む。許可こそ貰ってはいるが、だとしても万が一の失礼も許されないと。

 

「し、失礼します!」

「……失礼します」

 

 口火を切ったのはバタフリー少女。続いてピカチュウ少女が後に続き、部屋の中へと入る。

 そうして目に見えるのは畳に障子(しょうじ)、ふすまやいおりといったいかにもな和室。そして、白い少女と黒い犬の姿……シロちゃんとグラエナであるポチだ。

 

「来ましたか……」

 

 一拍、部屋の空気が凍る。

 放たれた声は酷く冷たく、全てを拒絶する様なモノ。不知火白がグラエナを撫でていた手を止め、垂れていた白髪を後ろへとスッと回し、その視線を少女達に向ければ━━彼女達は背筋に冷たい物が走るのを感じずにはいられなかった。

 無だ。不知火白の眼には何も映っていなかったのだ。確かにこちらを見ているはずなのに、不知火白の眼は何も見てはいない。ハイライトの消えた生気に欠ける瞳をこちらに向けるのみ。

 

 ━━何がどうなればこんな少女が、そんな冷たい目を宿すのか。

 

 親の顔も知らぬ捨て子であるとは聞いていたし、その後の境遇に同情もした。しかし、ここまでとは聞いていない。

 そんな思いを抱きつつ、少女達が不知火白と対峙する事……数瞬。不意に不知火白の視線が動き、目に生気が戻り始める。視界に入ったのは恐らく、モンスターボールだ。

 

「あぁ、誰かと思えばバタフリーのトレーナーさんでしたか。お久しぶりです。バタフリーとは、仲良く出来てますか?」

「へ? あ、はい! あの子とは友達みたいな、その、仲良く出来てます!」

「それは良かったです」

 

 ニコリ、と。優しげな笑みを浮かべて相方とその相棒を祝福するシロちゃんに、ピカチュウ少女は内心驚きを隠せなかった。これは二面性というレベルではない、と。何せ先ほどの凍てつく氷の様な雰囲気と、今見せている雪の精の様な儚く可愛らしい印象。それが全く一致しないのだ。二面性というより多重人格の方が正しいだろう。

 恐らく今見せている顔は身内や仲間に対する物で、先ほどのは敵対者に対する物なのだろうが……しかし、それを分けたのは何なのか? いや、モンスターボールなのだろう。もっと言えばポケモンだ。つまり━━

 

 ━━不知火白にとってポケモンを認めるかどうか……いえ、ポケモンと共に生きていけるかどうか。それが大きな線引きになっている。

 

 その点でいえば我が相方は合格であり、彼女達に襲いかかったテロリスト達は失格だったのだろう。そんな事を内心考えながら、ピカチュウ少女は一旦考えを打ち切る。不知火白の視線がこちらを向いたからだ。

 

「噂は聞いています。確かピカチュウのトレーナーさんだと。……見せて貰っても良いですか?」

「はい、分かりました」

 

 緊張している。それを自覚しつつも、ピカチュウ少女は自分の相棒をモンスターボールから解き放つ。

 光が溢れ、小さく可愛らしい黄色のネズミが現れる。ピカチュウだ。その可愛らしいポケモンに対するシロちゃんの反応は……劇的だといえるのだろう。

 

「わあぁ……」

 

 最早最初の冷たさなどどこにもなかった。今ここに居るのは可愛らしいポケモンを愛でる一人の少女だけ。笑顔を隠す事もせず、赤い瞳に光を宿しながらピカチュウの頭をゆっくりと撫でているその姿は年相応だ。漏れた感嘆の声には喜びの感情がこれでもかと詰まっている。

 

 ━━これは、最初の冷たさの方が何かの間違いだったのでは?

 

 年下に見える少女の姿にピカチュウ少女はそう考え、頭にこびりついた警戒心を落とす。あんな人殺しの様な目をこんな年頃の少女が出来るはずがないじゃないか、と。

 そう思ってしまえば身構えるのも馬鹿馬鹿しくなるもので、ピカチュウ少女はいつも通り仕事を始める事にする。

 

「では、インタビューを始めても?」

「あ、はい。大丈夫ですよ。確か、私自身についてインタビューしたいとか?」

「えぇ。とはいえカメラは回さないから、あまり緊張する事もない。たぶん、気楽にやれる」

「了解です。……ふふっ、そっちの方がらしいですね?」

「……敬語の方が?」

「いえ、堅苦しいのはニガテなので、そちらで。……あぁ、せっかくなのでポケモンを出しながらしませんか?」

「そうですね」

 

 一万を越える新興宗教の教祖だの、重武装テロリストのボスだの、日本経済を裏から操るだの、人を容易く洗脳するだの聞いていたが……やはり噂は当てにならない。笑顔を溢しながら話す白い少女にそんな事を思いながら、ピカチュウ少女は相方に肘鉄を入れる。お前もポケモンを出せと。

 

「ふえ? な、なに?」

「ポケモン」

「見てみたいですね。生のバタフリー」

「あ、はい! 出て来て、バタフリー!」

 

 意志疎通に時間がかかったものの、バタフリー少女は自分の相棒を外へと出す。光が溢れ、やがて大きな蝶々の姿を取る。バタフリーだ。

 全長1.1メートルという巨大な蝶々は外へ出れた事が嬉しいのか、バサバサと羽ばたきながら軽く舞い、やがて自分の主の頭の上へと着地する。かつて自分がまだ飛べなかった頃と同じ様に。

 

「なつかれてますね……」

「グルゥ……」

 

 体重32キロという巨大な蝶々を頭に乗せている少女を微笑ましく見ながら、シロちゃんは自分の相棒の背を撫でる。ゆっくり、ゆっくりと。噛み締める様に。

 その少女の姿がここではない、どこか遠くにある様な、そんな違和感を感じたのは━━ピカチュウ少女だけだった。何せバタフリー少女は……

 

「ぬぐ、ぐぐぐ……」

 

 バタフリーの重さに悶絶していたのだから。それでも下ろさないのは優しさか、それとも意地か。ピカチュウ少女としてはその姿にアホを見る様な目を向けつつ、自身の相棒(6キロ)を肩に登らせる。この重さに慣れだしたのがごく最近なのは……彼女だけの秘密だ。

 

「では、始めていきます」

「い、いき、まず……」

「はい。宜しくお願いします」

 

 各々座布団に座り、頭に、肩に、隣に、三者三様の接し方で相棒を見せ合いつつ……伊藤ユウカがセッティングした少女トレーナー達の会話は始まるのだった。







2019年 7月16日(火)
なるべく人格をトレースしながらTSモノを書いてるせいか? 最近、自分の性別が怪しい瞬間がある。寝起きとかの、意識がハッキリしないときにたまにだが。
とはいえ趣味嗜好性癖なんかは既に変質してるし……まさかこんな副作用があろうとは。その証拠に男主人公の話全く書けなくなったし……ハハッ、このままだと朝起きたらキヨちゃんになってたりしてなwそうなったら大草原だわwww即刻ネタにしてやろうwwwww

わろす……


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閑話 シロちゃん、インタビューを受ける~月刊ポケモンより抜粋~

 昨今の異常をポケモンによるものであると断定する

 

 そう日本政府がポケットモンスター、縮めてポケモンを公式に認めたのは記憶に新しい。そしてそれが驚きを伴いつつも、スムーズに受け入れられていったのもまた同じだろう。

 あの発表から間もなく一週間。今我々の隣にポケモンはいない。だがテレビをつければポケモンを目にするし、ポケモントレーナーになろうとポケモンを探す人もそこまで珍しくはなくなった。今はまだ、我々の隣にポケモンはいない。しかしそう遠くない未来に、ポケモンは我々の隣に来る事になるだろう。直径5センチ程のボールの中に入ったり、姿形が大きく変わったり、物理法則に逆らって空を飛んだり……そんな不思議な生物が我々の隣に来る日はそう遠くないのだ。

 

 さて、そんな変化する状況で人々の助けとなるべくこの『月刊ポケモン』を発行する事になった我々編集部だが……一つ、疑問があった。

 

 ポケットモンスターとは何か?

 

 根本的な、酷く根本的な事だが我々編集部はそれを知らなかったのだ。

 いや、勿論ポケモンが不思議な生物である事は分かる。だが彼らがどこから来たのか? 彼らは何なのか? そんな哲学的とも言える、しかし根本的な事を我々は知らない。

 

 ポケモンはどこから来て、どこへ行くのか?

 

 哲学的かも知れない。だが重要な事でもある。

 この難題に対し我々編集部が出した答えは……専門家に聞く。これだ。まだ新しい存在故に数は少ないものの、だからこそ一流の専門家達に話を聞く事にしたのだ━━

 

 ・新進気鋭の植物学者は語る

 ・二人目のポケモントレーナーの苦労

 ・モンスターボール解析の裏話

 広告 これで胃痛ともオサラバ! きのみ成分を使用した最新胃薬!

 ・ポケモン求めて、今日も関東を走る

 ・来日した生物学の権威に聞く

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 さて、ここまで多くの専門家の声を紹介し、ポケモンとは何なのか? その答えがオボロゲながら見えてきた。

 しかし、まだ後一人、どうしても話を聞かなければならない存在が残っている。そう最初のポケモントレーナーにして最初のポケモン専門家、不知火白だ。

 だが彼女に今現在コンタクトを取るのは酷く難しい。そのポケモンに対する知識の深さと、幼いといっていい見た目からくる襲撃を恐れた政府と財界によって厳重な警戒が敷かれているからだ。

 

 しかし彼女に話を聞かずしてポケモンは語れない━━

 

 そう確信した我々編集部は独自のルートを通じて不知火白への単独取材の許可を獲得。彼女に話を聞く機会を手に入れた。

 とはいえ相手は幼い少女。あまり威圧的にインタビューする訳にもいかず、我々は彼女と同年代かつ同じポケモントレーナーをインタビュアーとして送り出す事にした。

 

 バタフリーのトレーナー 遊山(ゆさん) (かおり)

 ピカチュウのトレーナー 冷水(しみず) 紗輝(さき)

 

 ユニットを組んでアイドル活動をしている彼女達と、不知火白による少女三人のポケモントレーナーによるポケモン談義。そこで我々は驚くべき事実を知る事になる━━

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 不知火白(以下シロ)「よろしくお願いいたします」

 冷水紗輝(以下サキ)「はい、よろしくお願いします」

 遊山香(以下カオリ)「お、お願い、します……!」

 

『三人の少女とポケモン達の和やかな━━1名を除く━━写真』

 

 それぞれの手持ち外に出して始まった少女トレーナー三人による談義。最初こそ遠慮するような空気があったが、数分もすれば古い友人の様な気安さを感じる程に話は盛り上がっていた。

 

(中略)

 

 シロ「そういえば今回のこれはインタビューとの事でしたが、私は何を話せばいいのですか?」

 サキ「それならこちらが質問するから、それに答えてくれれば……カオリ」

 カオリ「はい。先ず最初の質問は『ポケモンとは何なのか?』です」

 

 少女達三人の談義が一段落し━━限界だったのかカオリも途中でバタフリーを降ろして━━いざインタビューへと入る。その最初の質問はポケモンとは何なのか? だ。哲学的ともいえる質問だったが、白氏の返答は早かった。

 

 シロ「ポケモンはポケモンです」

 カオリ「いや、それはそうなんだけど……もう少し詳しくお願いできるかな?」

 シロ「そうですね…………家族、ですかね」

 サキ「家族」

 シロ「はい。当たり前に、自分の一番近くに居てくれる存在。それが私にとってのポケモンですし、そういう存在の事を世間では家族とよぶと思うので」

 サキ「なるほど。ポケモンは人の家族に成りうる存在だと」

 シロ「はい。犬や猫よりももっと身近に、近くに居てくれる存在だと思っています。……これは、サキさんやカオリさんも実感しているでしょう?」

 カオリ「あー、確かに。この子と居る時間結構長いし……家族と言われても違和感ないかな」

 サキ「まぁ、ね」

 

 ポケモンは家族。それはつまりポケモンと人は隣人や友人を越える関係になるという事で、未だ多くの問題が山積している中でその考えを語るのは、流石最初のポケモントレーナーといったところか。白氏のポケモンへの愛は本物の様だった。

 

 シロ「他に何か質問はありますか?」

 カオリ「えーと……それじゃあ『今後ポケモンとの関係はどうなるのか?』について聞いても?」

 サキ「出来れば今後予定しているイベント等があれぱそれも」

 シロ「ポケモンとは仲良くなっていきますよ。間違いありません。そしてイベントですが……んー、言っても良いのかな? 良いか」

 カオリ「お、何かまだ発表してない情報が?」

 シロ「はい。今話していいのは『ジム』と『リーグ』の話ですね。『法案』や『関連商品』の話は駄目なので」

 

 さもありなん。しかし『ジム』と『リーグ』の話も興味深く、更に詳しく話を聞く事になった。

 

 シロ「ポケモンジムについては半年を一つの目処とし、先ずは関東に8ヶ所をオープン。その後様子を見て増設していく予定です。ポケモンの捕まえ方や育て方といった基本的なレクチャーから、ポケモンバトルに勝つ為の訓練まで幅広いニーズに対応する場所になるでしょう」

 サキ「ポケモンバトル、ね。これにはあまり良い声がないけど、シロちゃんとしてはその辺りどう考えてる?」

 カオリ「ちょ、サキ!?」

 シロ「構いませんよ。まぁ、最初が最初でしたから仕方ありませんが……やってみれば、あるいは見てみれば分かると思います。人もポケモンも、両者にとって楽しいものだと。とはいえニガテな人やポケモンもいるので、ジムの利用は強制ではありません。一度は訪れて欲しいですが」

 サキ「なるほど。食わず嫌いはするなと」

 シロ「ハッキリ言えばそうなります。見もしないで文句言われても困りますし」

 カオリ「あ、アハハ……」

 

 歯に衣を着せずにズバズバと物を言う二人に、カオリの胃は荒れる一方の様子。しかし談話はまだ始まったばかりだ。

 

 サキ「では『リーグ』とは?」

 シロ「リーグ、正式にはポケモンリーグですね。ポケモンに関する統括組織、そして人間でいうところの……オリンピックを開催する物になる予定です。地方ポケモンリーグ、全国ポケモンリーグ。行く行くは世界ポケモンリーグの開設、開催を目指しています。その先駆けとして半年以内にも全日本ポケモンリーグの開設、そして第1回関東ポケモンリーグを開催する予定です」

 カオリ「えっと、つまり大きい大会が近々にあると?」

 シロ「はい。関東中の腕自慢を集めた大会になる予定です。選考も予選もしていませんから、まだまだ参加のチャンスはありますよ。……ちなみに、お二人は参加されますよね?」

 カオリ「ふえ? え、えっと、出ても良いんですか?」

 シロ「出ないんですか?」

 サキ「予定が合えば、かな。シロちゃんは参加する予定?」

 シロ「勿論です。挑戦待ってますよ」

 

 ポケモンバトルなら受けてたつ。そう笑顔で語るシロ氏。とはいえ以前見せつけた圧倒的な技量に勝てる者が居るのだろうか? そんな疑問を抱えつつ次の質問へと移る。

 

 サキ「んんっ、では次の質問を……けど似たようなのを繰り返すのもあれだし、カオリ?」

 カオリ「えーと、これかな? 『シロちゃんについて』聞きたいです」

 シロ「漠然としてますね……私についてですか。私の経歴は聞いていて面白い物ではないと思うのですが……」

 カオリ「え、えっと、それは。あ、アハハ……」

 

 不知火白。彼女の経歴は謎に包まれているが、あまり面白い物ではないらしい。一説には過酷な幼少期を過ごしたらしいが……とはいえ、無理に聞く事もないので質問は変更された。

 

 サキ「普段何をしているか、とかでもいいと思う」

 シロ「普段……そうですね。絵を描いたり、お話したり、かな。後はポチと縁側でゆっくりしたり?」

 サキ「それは、なんというか……」

 シロ「ジジ臭い?」

 サキ「いや、まぁ。はい」

 カオリ「アハハ……シロちゃんはお買い物とかしないの?」

 シロ「あまり物に執着がないので、買い物とかは必要性を感じないんですよね。日光もニガテですし。それに育ての親の影響か、のんびり過ごすのが一番性に合うので」

 カオリ「育ての親……?」

 シロ「東郷っていうお爺ちゃんですね。後は近所の人達? まぁ、皆お年寄りなので自然と趣味もそちらに寄っちゃって。その辺り普通の子供とは違うかも知れませんね……」

 

 そう相棒を撫でながら語る白氏。その顔に陰りはないが、どこか寂しそうであった。

 

 カオリ「え、えっと、お友達と遊んだりとかは……?」

 シロ「居ませんし、無理ですね。それに同年代の子とはどうにも話が合わないんですよねぇ……気づいたら皆逃げてたりしましたから」

 サキ「ちなみに、何の話をしてて?」

 シロ「ポケモンの話を少々」

 サキ「あぁ……」

 シロ「でもお二人とは話が合いそうでなによりです。良ければこの後ポケモンバトルでもどうですか?」

 カオリ「え゛。シロちゃんとポチに挑めと?」

 シロ「んー……レベル差もありますし、そちらでタッグを組んで二対一とかどうですか?」

 カオリ「い、いやーどうかな? ね、サキ?」

 サキ「面白い話だとは思う。けれどまた何で急に?」

 シロ「前回含めてマトモなポケモンバトル出来てないので……機会を逃したくないんですよね」

 カオリ「確かに」

 サキ「なるほど」

 

 やはりというべきか。白氏は前回のポケモンバトルに不満があるらしく、本来のポケモンバトルを行いたいそうだ。

 当初の予定にはなかったが、ポケモントレーナー同士という事もあり変則的なポケモンバトルが行われる事となった━━(特典CDに続く)




 前々からやってみたかった雑誌風に挑戦してはみたものの……やりたい事とやらないといけない事を盛り込んだ結果再現度が中途半端な出来になり、クオリティもだだ下がりした。反省。たぶん二度とやらない。



 トランセル 9.9キロ バタフリー 32キロ
 コンパン 30キロ モルフォン 12.5キロ
 これ、やっぱりバタフリーとモルフォン取り違えてないか……? トランセルデブってるし、コンパンはダイエットってレベルじゃねぇぞ!? ……ん? いや、あえてバタフリーとモルフォンを取り違える事で齟齬を発生させ、侵食されないようにしている可能性が……?


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掲示板 シロ民は雑誌に目を通す様です。

【シロ民の戦いは】お絵描き配信者シロちゃんについて語るスレ part198【始まったばかりだ】

 

201:名無しの犬

いやー、イワヤマトンネルは強敵でしたね……

 

202:名無しの犬

>>201

正確にはイワヤマトンネルに該当する場所、だけどな。

 

203:名無しの犬

wikiには暗いとか書かれてたがそんな事はなかったな。まぁ、町が暗くなったらホラーだしそれで良いんだけど……まさかイワークがあそこまで脅威だとは、予想外だったぜ。

ところで、イワークの生息位置をオツキミ山と間違えてたニキは?

 

205:名無しの犬

>>203

決断的にセプクしたんじゃね?

 

206:名無しの犬

(ポケモンの生息位置を間違えるなんて)ただのカカシですな。

 

207:名無しの犬

エリートシロ民なら瞬きする間に覚えられる。忘れない事だ。

 

209:名無しの犬

(イワークが)居たぞ! 居たぞォォォ!

 

210:名無しの犬

うわぁぁぁああ!!

 

211:名無しの犬

撃ち方やめェ! 見てこいカルロ。

 

213:名無しの犬

何が始まるんです?

 

214:名無しの犬

大惨事大戦DA!

 

215:名無しの犬

あぁ駄目。こんなのポケモンバトルじゃないわ。ただの大怪獣決戦よ!

 

216:名無しの犬

だったらゲットすればいいだろ!

 

218:名無しの犬

入れこのデカブツが。入れってんだよ!

 

219:名無しの犬

この手に限る。

 

221:名無しの犬

\デェェェェェン/

 

223:名無しの犬

まぁ、そんな感じで重症を負いつつもイワークゲットしたんだから誤報ニキは許してやれ。

 

225:名無しの犬

>>223

しょうがないニャア……

 

226:名無しの犬

>>223

両足粉砕骨折だっけ? よくやるよ……

 

228:名無しの犬

しかしそれでも彼は輝いていた。

 

230:名無しの犬

>>228

実際満面の笑みだったからな。そのあと気絶して救急車で運ばれたが。

 

231:名無しの犬

大健闘だったのは間違いない。

 

232:名無しの犬

お見事!

 

233:名無しの犬

凄いぞ!

 

235:名無しの犬

たいしたもんだ!

 

236:名無しの犬

よくやった!

 

237:名無しの犬

勲章ものだ!

 

240:名無しの犬

しっかしテロリストどもの妨害があると思ったんだが、無かったな?

 

243:名無しの犬

>>240

筆頭犬兵曰く奴らのボスが一時的に関東から退いてるらしい。前回のアレでボロ負けして準備不足を痛感したんだろうな。で、奴ら全体としても動きが鈍ってるらしい。ポカやらかして警察のご用になる奴もチラホラいるし、所詮は烏合の集だな。

ちな犬兵はソイツを追って関東から離れてまーす。

 

245:名無しの犬

>>243

無茶しやがって(AA略)

 

251:名無しの犬

何にせよこれで4、5、9、24、25番道路が終わり、次は10番道路って訳か?

 

254:名無しの犬

>>249

そういう事だな。無人発電所は俺らの管轄じゃなくて国とリヴァイアサン号乗員の管轄で、ハナダの洞窟は未確認だし。

 

256:名無しの犬

>>254

あー、電気ポケモンでエネルギー問題を解決しつつ(金と支持率を)一儲けだったか? まぁ場所が場所だしなぁ。でもリヴァイアサン号の乗員は何でOKが出たんだ? 原発だろ?

 

258:名無しの犬

>>256

アメリカとの政治的取り引きらしいぞ。あそこの艦長向こうの政治家やスパイと繋がりがあるらしいし、大方船員にCIAの現地協力者でも居たんだろ。

というかシーホークと元海兵隊員載っけてる時点で普通じゃないし……

 

259:名無しの犬

俺も欲しかったなぁ。電気ポケモン……サキたんとお揃いだったのに。

 

261:名無しの犬

>>259

掛け持ち、だとっ……!?

 

262:名無しの犬

>>259

以前なら背教者だが……シロちゃん親衛隊曰く、最近あの三人は仲が良いそうだからセーフにしといてやるよ。

 

265:名無しの犬

シロ民の規律キツすぎんよー

 

266:名無しの犬

>>265

身内からテロリスト出したし、多少はね?

 

267:名無しの犬

けどさ、ハナダの洞窟は正直助かったよな。高レベルポケモンだの最強のポケモンだのの相手なんかしてられないって……

 

268:名無しの犬

>>267

まぁ、な……

 

269:名無しの犬

>>267

いくらポチネキでも一匹じゃキツイだろうし、危うく日本沈没の危機だったからな……

 

272:名無しの犬

ポチネキを筆頭にポケモンのデータ取って調べた自衛隊の試算だと、近代兵器はおよそ役立たず(理由未公開)なんだっけ? つくづくヤバいよな……

 

274:名無しの犬

戦闘機不要論(ガチ)

 

275:名無しの犬

軍艦不要論(ガチ)

 

276:名無しの犬

戦車不要論(ガチ)

 

277:名無しの犬

なんなら歩兵も銃も要らなくなるぞ。何せポケモン一匹で全部薙ぎ払われる訳だからな……場合によっては持つだけ無駄になりかねん。

アメリカがこんな早々に慌てる訳だ。

 

279:名無しの犬

ポケモンヤバ過ぎワロエない……

 

285:名無しの犬

落ち込んでるところ悪いが、その次は皆 お 待 た せ シオンタウンとゴーストポケモンだぜ?

 

288:名無しの犬

アイエエエ!? オバケ! オバケナンデ!?

 

290:名無しの犬

ナムアミダブツ! モータルシロ民は恐怖に耐えきれずしめやかに失禁!

 

291:名無しの犬

実際ゴーストポケモンは人を死に追いやる事もあり、非常に危険だ。

 

292:名無しの犬

ドーモ、ゴーストポケモン=サン。エリートシロ民です。ポケモンゲットすべし、イヤーッ!

 

293:名無しの犬

イヤーッ!

 

294:名無しの犬

イヤーッ!

 

295:名無しの犬

イヤーッ!

 

297:名無しの犬

しかしこうかはいまひとつのようだ。

 

298:名無しの犬

効果がいまひとつだからといって一発の力に頼ってはならない。百のモンスターボールを投げるのだ。

 

299:名無しの犬

>>298

ハイッ、センセイ!

 

302:名無しの犬

という訳で、シオンタウンと思われる場所にイクゾー

 

303:名無しの犬

デッデッデデデデ! カーン!

 

305:名無しの犬

予測だと今日頃だっけ? 確か全戦力を投入するとか。

 

306:名無しの犬

>>305

イワーク並みにヤバい案件だからな。投入可能なポケモントレーナーは全て投入。リヴァイアサン号でハートマン軍曹式で鍛えられた奴らも投入だ。シロ民的には総力戦になる。

 

307:名無しの犬

いよいよ決戦か……

 

308:名無しの犬

全体の流れとしては中ボスですらねぇけどな……そういえば二匹目以降に関する対応は?

 

310:名無しの犬

>>308

全く。そっちは政府にブン投げてる。まぁ、一匹目のレポートとか前例があるから大丈夫だろ……たぶん。

 

312:名無しの犬

ポッポ以外はな。

だとしてもモンスターボールの量産はまだ先だから、今来られても困るんだが……

 

315:名無しの犬

>>312

それな。いくら日本の技術力が世界一ィィィ! で、研究所も頑張ってるとしても、やっぱり早々容易く量産は出来んだろうし。

ポッポは……まぁ、ね?

 

316:名無しの犬

あのポッポ何者だよ、マジで。プリンですら捕まったというのに。

 

318:名無しの犬

通りすがりのラスボスがシロ民からモンスターボール借りてアッサリ捕まえたのは笑った。

後日『プリンと一緒に歌ってみた』をネットに投稿したのはマジワロス。

ワロス……

 

319:名無しの犬

流石ラスボスだわ……確実に時代についてきてる。マジヤベェ。

 

320:名無しの犬

そういえばモンスターボールの回収はどうなってる? 管轄が政府に移ったんだっけ?

 

323:名無しの犬

>>320

せやで。研究名目で回収してる。相手が駄々捏ねたら危険だからとか言って回収。更に捏ねるなら放置……そんな感じや。

今んとこ回収はスムーズらしいがな。

 

324:名無しの犬

後で買えるの分かってるからなぁ。政府の役人が出て来て説明して、それでも駄々捏ねるのはよっぽどアレな奴だけだろ。

 

326:名無しの犬

まぁ、そうやって政府主導で回収してるから俺らシロ民の残存モンスターボールは心許ない事になってるんですがね……

 

327:名無しの犬

まだだ。まだ終わらんよ……!

 

328:名無しの犬

取り敢えずシオンタウン乗り切りゃ後は何とかなるだろ。たぶん。

 

329:名無しの犬

>>328

セヤナ。

 

330:名無しの犬

ソヤナ。

 

333:名無しの犬

知らんけどー

 

334:名無しの犬

な阪神

 

335:名無しの犬

>>333

知らんのかいっ!

 

337:名無しの犬

>>335

良いツッコミ。座布団をやろう。

 

339:名無しの犬

わーい……てかなぜ俺らはこんなところで下らんコメ打ってるんだ?

 

340:名無しの犬

だって暇だし。

 

341:名無しの犬

暇だからなぁ。

 

343:名無しの犬

基本待ってるだけだから(震え声)

 

344:名無しの犬

待ちぼうけか。

 

345:名無しの犬

辺り一面荒れ地になりそう(童謡並感)

 

346:名無しの犬

草。

 

347:名無しの犬

草。

 

349:名無しの犬

荒れ地じゃなくて草原になりそうですね……

 

351:名無しの犬

www

 

352:名無しの犬

wwwww

 

353:名無しの犬

wwwwwwwwww

 

355:名無しの犬

草を生やすなw

 

357:名無しの犬

>>355

( ´∀`)オマエモナー

 

360:名無しの犬

お前らそんなに暇なら今日発売の月刊ポケモンの話しようぜ!

 

363:名無しの犬

あー、そんなんもあったなぁ。あれ今日だっけ?

 

365:名無しの犬

>>363

今日だな。コンビニから書店まで、あちこちで売ってるぞ。世間のポケモン熱がじわじわ上がってるのもあって、注目度も悪くない。

 

368:名無しの犬

世間の熱ってのは基本的に一度冷めたら二度と上がらないからな。じわじわと熱を上げていくやり方は流石だよ。アイドルネキ……

 

371:名無しの犬

>>368

民衆相手のアレコレはユウカ嬢の十八番だろうしなぁ。実家の力もあって万事問題なく進めてるよ。

 

372:名無しの犬

世間のあちこちでポケモンポケモン。ポケモンは友達、仲間、皆仲良く! 栄光の未来! ……だからなぁ。分かりきってる俺らからすりゃぶっちゃけ耳ダコ。

 

375:名無しの犬

『宣伝効果のほとんどは人々の感情に訴えかけるべきであり、いわゆる知性に対して訴えかける部分は最小にしなければならない』『宣伝を効果的にするには、要点を絞り、大衆の最後の一人がスローガンの意味するところを理解できるまで、そのスローガンを繰り返し続けることが必要である』って奴だな。ある程度以上の人間なら大抵実戦してるプロパガンダの基本だが、だからこそそれをシレッと大規模にやる辺り、ユウカ嬢の本気が見えるって話だ。

 

379:名無しの犬

>>375

伍長閣下かよ……

 

381:コラッタニキ

その当人は忙しさからシロちゃんと会えなくてイライラしてるけどな。シロちゃんの友達候補として、自分で送り込んだ後輩に嫉妬するレベルで。

うっ胃が……

 

382:名無しの犬

>>381

お前は休め。というか胃薬どうなった? きのみ使った新作出たろ。雑誌の広告にあったアレ。

 

383:コラッタニキ

>>382

アレまだ未完成だぞ。端っこに小さく書いてるだろ? 予約受付中ってな。あぁ、さも完成してるかのように書いてるけど、実際は予約受付してる間に完成する予定だ。

 

385:名無しの犬

>>383

せけぇ……けどなんでそんな事を?

 

388:名無しの犬

>>385

演出の一環だろ。この広告はその一例でしかないが、世の中はポケモン一色ですよー、これからどんどんポケモン関連の話増えますよー、ポケモン当たり前になりますよー、着いて来て下さいネー……って感じにしてるのさ。

実際には全く間に合ってないんだけど、演出上は世の中はポケモン! ポケモン! 時代の変わり目! ポケモンを受け入れないのは異端! 時代遅れ! 仲間外れも仕方ない! ってしてるんだろ。プロパガンダの応用編だな。あるいは人の集団心理か?

 

390:名無しの犬

>>388

うわぁ……ドン引きだわ。いつからユウカ嬢はチョビヒゲになったんだ?

 

391:名無しの犬

>>390

最初からだろ。あそこの家デカイしな。

もっとも、本格的に頭角を現したのは最近なんだろうが……

 

393:名無しの犬

>>391

親御さんもまさかだったんだろうな。出なきゃ最初っから芸能界に入れずに家を継がせてる。

まぁ芸能界の第一線からは引退しつつあるし、これから家を継がせるのかもだけど。芸能界で培った人脈を手土産代わりにな!

 

394:名無しの犬

上流階級怖いなぁ。戸締まりストⅣ。

 

395:名無しの犬

あそこの家が特殊な気もするがな……

 

398:名無しの犬

で、だ。当然シロ民はゲットしたよな? シロちゃん出てるし。

 

400:名無しの犬

>>398

はい。

 

401:名無しの犬

>>398

当然だ。

 

402:名無しの犬

>>398

問題ない。

 

403:名無しの犬

>>398

当たり前だ。

 

404:名無しの犬

>>398

お前は間違ってない。

 

405:名無しの犬

え? シロちゃん出てるの?

 

407:名無しの犬

>>405

お前……

 

408:名無しの犬

異端者だ! 異端者が居るぞ!

 

409:名無しの犬

異端者審問に掛けろ!

 

410:名無しの犬

テロリストか? なぁ、お前テロリストだろ?

 

412:名無しの犬

いや待て。ただのニュービーシロ民かも知れん。

 

415:名無しの犬

そもそもシロちゃんの取材決まったの直前で、特に告知もしてないしなぁ。発売前に載ってるの知れたのはシロちゃんの肉盾してた親衛隊だけだろ。

 

418:名無しの犬

>>415

それもそうか。という訳で、持ってない奴は今すぐ買ってこいカルロ。特典はシロちゃんとアイドル二人のポケモンバトルを収めたDVDだぞ!

 

420:名無しの犬

>>418

ホントかよ!

 

421:名無しの犬

>>420

確かにそうだ。

 

422:名無しの犬

>>420

間違いない。

 

423:名無しの犬

>>418

シロ民は仲間を見捨てない。本当だな。

 

425:名無しの犬

>>423

そういう噂だ。

 

426:名無しの犬

ちょっとコンビニ行ってくる(AA略)

 

427:名無しの犬

俺もちょっと行ってくるわ。

 

429:名無しの犬

んじゃ俺も。

 

430:名無しの犬

俺も俺も

 

432:名無しの犬

よ、よし。なら俺も。

 

433:名無しの犬

>>432

どうぞどうぞ

 

435:名無しの犬

ちくわ大明神

 

436:名無しの犬

譲るなw はよ行け。

 

437:名無しの犬

>>435

誰だ今の

 

440:名無しの犬

さて、持ってないのが旅立ったが……どこから話す?

 

442:名無しの犬

耳ダコ部分は流していいだろ。やはりここはシロちゃんについてだな。

 

443:名無しの犬

>>442

ま、俺らシロ民だし。それが妥当だろう。となると……インタビューの部分か。

 

445:名無しの犬

だな。DVDは長くなるし後回しだ。

 

447:名無しの犬

そうなると……やっぱり目立つのは闇深さか。

 

449:名無しの犬

一見当たり前に見えるインタビュー。しかしそこには深淵が隠れていたっ……!

 

452:名無しの犬

ジムやリーグの話は昨日親衛隊がリークしたからもう知ってる話だしな。現状じゃ計画の中身スカスカなのも含めて。

そうなるとやっぱりシロ闇が目につくんだよなぁ。

 

453:名無しの犬

ここしばらくはシロ闇無かったのに……

 

455:名無しの犬

だからこそグサッと来るのさ……そしてソレがクセになる。

 

456:名無しの犬

闇深民ヤバイなぁ、戸締まりストⅣ。

 

458:名無しの犬

戸締まりし過ぎてサウナみたくなってそう。

 

459:名無しの犬

>>458

クーラーつければ万事解決よ。

 

461:名無しの犬

>>459

文明の利器万歳!

 

462:名無しの犬

なんなら氷ポケモンでも可。

 

463:名無しの犬

>>462

ポケモン万歳!

 

467:名無しの犬

さて。現実逃避もそこまでにして、そろそろ語るか。

 

468:名無しの犬

時系列順に行けば『ポケモンは家族』か。

 

470:名無しの犬

ペットを家族という人もいるし、今の風潮を考えれば何の不自然もないごく普通の言葉……だがちょっと待って欲しい。ここでシロちゃんの過去を振り返ってみよう。

 

471:名無しの犬

独り暮らし。

 

472:名無しの犬

捨て子。

 

473:名無しの犬

親の顔も知らない。

 

475:名無しの犬

孤児院にも入れられず、近所の人が気づくまで半死半生で過ごす。

 

476 :名無しの犬

近所の爺さん婆さんは居る。だが家族と言える人間は……

 

479:名無しの犬

そう、シロちゃんにおよそ家族といえる()()は居ないのだ。ポチネキは家族枠だが人間ではない。つまり……

 

480:名無しの犬

ゴクリ……

 

481:名無しの犬

ン。

 

482:名無しの犬

ガチでポケモンが、ポケモンだけが自分の家族だと思っている可能性があるんだよぉ!

 

483:名無しの犬

? どういう事だってばよ?

 

485:名無しの犬

>>482

なるほど、世間に取ってポケモンが家族になるのはファンタジーだが、シロちゃんからしてみれば人間が家族になる方がファンタジー、幻想、幻だと。そういう事か?

 

486:名無しの犬

>>485

Exactly そのとおりでございます。

 

489:名無しの犬

ぇ、いや、つまりシロちゃんに取って空想上のポケモンは昔から家族で、だからポケモンは家族だと答えたと? イマジナリーフレンドみたいな? んで、人間は敵? というか深い関係にはなり得ないと? え? 嘘だろ?

 

490:名無しの犬

いやいや流石に、流石に……ないよな?

 

493:名無しの犬

あー、これあれだな。狼に育てられた子供みたいだ。俺らからすれば異常だが、その子にとってはそれが普通だってやつ。なんなら自分は変わった狼だと思ってるとかいうアレ。

シロちゃんの場合狼がポケモンで、しかもそのポケモンはイマジナリーフレンド……もうこれ衰弱系BADENDが見えるな。

 

495:名無しの犬

うわぁ、うわぁ……

 

497:名無しの犬

ガチじゃねぇか。草も枯れたわ……

 

498:名無しの犬

精神科医! 精神科医はどこだ!?

 

499:名無しの犬

手遅れだろ。こうなると……

 

500:名無しの犬

いや、流石に自分が人間だという事は分かって……分かってるよな?

 

502:名無しの犬

下手すると近所の爺さん婆さんやユウカネキの事も変わったポケモンとか思ってそう。逆に関係ない奴やテロリストは人間だと思ってそう……

 

505:名無しの犬

落ち着けお前ら。ラマーズ法だ!

 

508:名無しの犬

スゥ……ハァー

 

510:名無しの犬

>>508

それラマーズ法ちゃう。深呼吸や……ん? それでいいのか?

 

514:名無しの犬

よし、落ち着いたところで次のシロちゃんの発言を拾って助けとしよう。ここの『私の経歴は聞いていて面白い物ではないと思うのですが……』という部分をな!

 

516:名無しの犬

>>514

何が助け……あぁいや、そうだったな。シロちゃんは客観的に自分の境遇を見れてたわ。危ない危ない。

 

517:名無しの犬

そうか、シロちゃん自身が自分の境遇が面白い物ではない=良くない方向で普通ではないと言ってるのだから、その手の勘違い系の可能性は否定されるのか。

 

518:名無しの犬

まさかシロ闇に助けられるとはな。俺も想像力が足りなかったのか……

 

520:名無しの犬

>>518

むしろ有り余ってる可能性。

しかしシロ闇に落ちてシロ闇に助けられるとかこれもう分かんねぇな。

 

522:名無しの犬

まぁ、客観的に見て分かってるってことは自分が不幸だと気づいてしまうという事でもある。

まぁ、シロちゃんその辺気にしてないっぽいけど。

 

525:名無しの犬

『あまり物に執着がないので、買い物とかは必要性を感じないんですよね。日光もニガテですし。それに育ての親の影響か、のんびり過ごすのが一番性に合うので』

『東郷っていうお爺ちゃんですね。後は近所の人達? まぁ、皆お年寄りなので自然と趣味もそちらに寄っちゃって。その辺り普通の子供とは違うかも知れませんね……』

『居ませんし、無理ですね。それに同年代の子とはどうにも話が合わないんですよねぇ……気づいたら皆逃げてたりしましたから』

この辺全部それだな。客観的に見て自分が不幸であるとは分かりつつも、それを苦にしていない訳だ。SATUMAの教えのおかげかね……

 

524:名無しの犬

代わりにボッチという悲しみを背負ったけどな。

 

525:名無しの犬

変に虐められるよりは……まぁ、ね?

 

527:名無しの犬

綺麗な子だしなぁ。余程上手く立ち回らなきゃ虐められるだろ。その点マシだったと思うか……いや、ボッチの寂しさはどうにもならんか。

 

529:名無しの犬

>>527

そしてボッチの悲しみからポケモンへとより傾倒していく、と。

 

531:名無しの犬

負の連鎖じゃねか!?

 

533:名無しの犬

何連鎖出来ましたか……?

 

534:名無しの犬

>>533

あの様子だと48連鎖は余裕では?

 

536:名無しの犬

>>534

地震学者もビックリの連鎖数だな……

 

537:名無しの犬

そしてボッチの気配に釣られたボッチがまた一人シロ闇へと落ちていく、と。

 

539:名無しの犬

自分もそうだったという親近感と儚い少女への同情、そしてポケモンという逃げ道……アリ地獄かな?

 

540:名無しの犬

実際事実だから何とも言えん……

 

549:名無しの犬

思えばシロ闇案件もだいぶ増えたよなぁ……そういえば買い物云々も前あったっけ?

 

553:名無しの犬

>>549

あったぞ。放送事故でシロちゃんの自室が映ったときにな。あの子の部屋ってサッパリしてるんだよね……言っちゃ悪いけど囚人並み。

 

555:名無しの犬

>>553

マジで必要最低限の物しか置いてないからな……ホント数えられる程度しか物がない。ベッドの下を探っても出てくるのは埃だけだろうな。

 

557:名無しの犬

これでポケモングッズが売ってればポケモンのぬいぐるみとかポスターとかで埋め尽くされ……いや、どうだろうな。当人物に執着しないっていうか興味がないからなぁ。

 

558:名無しの犬

物が無い状態が長く続き過ぎて、それがデフォになってるんだろうな、アレ。物に価値を見いだせないんだ。

 

562:名無しの犬

それに比べてお前らの部屋と来たら……

 

565:名無しの犬

ちょ、ちょーと本が多いだけやし? な、なんもねーよ?

 

568:名無しの犬

セヤナ。俺の部屋にあるのはパソコンぐらいな物よ。シロちゃんと同じさー

 

569:名無しの犬

>>565

タイトル音読してみようか?

 

570:名無しの犬

>>568

おう、そのパソコンのフォルダ全部見せて見ろよ。

 

573:名無しの犬

ホテル暮らしの俺に死角はなかった。

 

574:名無しの犬

リヴァイアサン組の俺に死角はない。

 

575:名無しの犬

肉盾の俺にも死角はなかったな。

 

577:名無しの犬

>>573~575

実家の掃除してやろうか?

 

579:名無しの犬

>>577

やめやめろ!

 

580:名無しの犬

フッ、家財を引き払った俺に死角などあるまい……

 

582:名無しの犬

>>580

うん。じゃあスマホ見せてみ?

 

590:名無しの犬

何か静かですねー

 

592:名無しの犬

>>590

あぁ、シロ民は軒並みノックアウトされたんだろ(以下詠唱破棄)

 

595:名無しの犬

だからよぉ、止まるんじゃねぇぞ……

 

596:名無しの犬

キボウノハナー

 

600:名無しの犬

ふと思ったがシロちゃんの趣味嗜好って年寄りな感じなん? ポケモン以外。

 

603:名無しの犬

>>600

当人が雑誌で言ってる通りやぞ。ジュースよりお茶。洋菓子より和菓子。ジャンクフードより和食。カラオケよりお昼寝。誰かと騒ぐよりひなたぼっこ……は出来ないから月光浴か? まぁ、そんな子や。

 

604:名無しの犬

>>603

何というか、おばあちゃんなのな。

 

606:名無しの犬

>>604

まぁ、育ての親が年寄りばっかやったしな。それも田舎の年寄り。さもありなん。

 

609:名無しの犬

……ふと、思ったが、シロちゃん年齢不明だよな? ロリババアの可能性ってあるのか?

 

601:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

602:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

603:名無しの犬

( ゜Д ゜)!?

 

604:名無しの犬

なん、だと……?

 

605:名無しの犬

>>603

コッチミンナ

 

606:名無しの犬

なるほど、確かにそれならババ臭い趣味にも納得がいくが……

 

607:名無しの犬

ほう、まさかリアルロリババアを見る事が出来ようとはな……

 

608:名無しの犬

いやいや、お前ら落ち着けよ。シロちゃんは確かに年齢不明だが、十代前半から二十代前半の間と判明してるだろうが。

 

610:名無しの犬

>>608

なんだツマラン。

……ところでその判明したっていうソースは?

 

612:名無しの犬

>>610

近所の爺さん婆さんの証言を考察した結果だな。……あと催眠術テロリスト野郎のハッキング。

 

615:名無しの犬

>>612

うわぁ……素直に受け入れたくないソースだな、おい。

 

616:名無しの犬

だよな。アイツのおかげとは口が裂けても言いたくないわ、ホント。

 

620:名無しの犬

ところで、誰か特典DVD見たやついりゅ?

 

623:名無しの犬

>>620

いりゅぅぅぅ! 凄いよな。アレ。何が凄いって……もう過ごい。

 

624:名無しの犬

>>623

え? そんなに凄いのか?

 

627:名無しの犬

>>624

マジ凄い。見てないなら見てこいよ。

 

628:名無しの犬

>>624

マジか……まさかシロちゃんがサービスシーンとはな。ちょっと見てくる。

 

630:名無しの犬

>>628

あ、いやそういう方の凄いじゃないんだが。

 

633:名無しの犬

(脳ミソが)腐ってやがる。汚れ過ぎたんだ。

 

634:名無しの犬

アニメのブルーレイとかじゃないんだし……いや、ブルーレイでも無修正なんざないが。

 

635:名無しの犬

エロ脳って怖いよなぁ……帰ってきたらリヴァイアサン組に放り込んだろ。

 

637:名無しの犬

>>635

やめやめろ! ハートマン式の犠牲者が増えるだけだ! 皆死ぬぞ!?

 

638:名無しの犬

>>637

だが今日じゃない(他人事)

 

640:名無しの犬

>>638

チキンブリトーかな?

 

641:名無しの犬

チキンブリトーをくれェェェ!

 

642:名無しの犬

>>641

うるせー! 今日は店仕舞いだ!

 

644:名無しの犬

(チキンブリトー下さい)

 

646:名無しの犬

(コイツ直接店内に……)

 

650:名無しの犬

……で、結局特典DVDは何が凄いんだ?

 

653:名無しの犬

>>650

ポチネキ。ポチネキ無双。いや、レベル的に無双は確定なんだけど、前回とは違って魅せるバトルっていうのかな? そういう事してくれてるから、素人目に見ても凄い。

同じ事が出来るとは思えんけど……憧れる人増えるんでね?

 

655:名無しの犬

セヤナ。バタフリーとピカチュウも悪い訳ではないんだが……いかんせんポチネキが相手ではな。

 

656:名無しの犬

凄いよな。各種“こな”系列の技と“まひ”を誘発する攻撃の全てをことごとく避けまくるんだもん。あれ普通ならハメられてボコられるで。

少なくともコラッタニキは手も足も出ずに完敗やろ。

 

658:コラッタニキ

 

 

659:名無しの犬

コラッタニキ(の胃)が死んだ!

 

660:名無しの犬

この人でなし!

 

662:名無しの犬

マトモにトレーニングする暇すら無いもんなぁ。コラッタニキのコラッタ。

 

663:名無しの犬

>>662

それはいわゆるコラテラルダメージというものに過ぎない。目的達成の為の、致し方ない犠牲だ。

 

665:名無しの犬

そもそもアイドル組の連携が取れてるのもあって、イワークニキも下手すりゃハメられて一方的にボコられる可能性があるレベルだからなぁ。恐ろしや恐ろしや。

 

667:名無しの犬

それを易々と避けるポチネキよ……

 

668:名無しの犬

“わざ”を使ってないのに残像が見えてるレベルだもんな。場合によっては引きのカメラすら捉えられてないし。

 

669:名無しの犬

ポチネキ凄すぎだろ……あれもうレベル100いってんじゃね?

 

700:名無しの犬

あるいは噂の6Vという奴かもな。

 

702:名無しの犬

あぁ、wikiにただ一文の概要だけ書かれたアレか。

 

705:名無しの犬

そのポケモンが理論上持ちうる最高の才能を持つ個体。それが6V個体である……だったか? 突然出て来た6Vの単語が何を意味するかすら不明だが……確かにポチネキはグラエナの限界点に到達してるんだろうな。

 

706:名無しの犬

しかもSATUMAの教えも受けてる。

 

708:名無しの犬

まさしく強靭! 無敵! 最強! だな。

 

709:名無しの犬

流石ポチネキ。そこに痺れる憧れるゥ!

 

711:名無しの犬

見てきた。サービスシーンなんてちょっとしかなかった。ポチネキ格好いい……そしてそれに挑む勇者達の活躍も悪くなかったと思う。うん。

 

713:名無しの犬

>>711

? サービスシーンなんてあったか?

 

714:名無しの犬

>>711

そんなもんなかったろ。終始ポチネキ無双と頑張る二匹だったはずだが。

 

717:名無しの犬

ポチネキの“はかいこうせん”とピカチュウの“十万ボルト”がぶつかって相殺した瞬間に衝撃波が出たじゃん? あのときシロちゃんの履いてたロングスカートが軽くめくれて、少しだけどおみ足が見えましたん。

頑張ったピカチュウと、火力を調整して手加減してくれたポチネキに感謝。

 

718:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

719:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

720:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

721:名無しの犬

ちょっと再確認してくる(AA略)

 

722:名無しの犬

ちょっとDVD見直してくる(AA略)

 

723:名無しの犬

ちょっと書店に行ってくる(AA略)

 

724:名無しの犬

ヽ(0w0)ノエンゲージ

 

725:名無しの犬

オイオイマジか。マジか。

 

726:名無しの犬

普通なら健全。ヒワイは無い。しかしただでさえメディア露出の少ないシロちゃんの、更に露出があり得ない生足となれば……!

 

727:名無しの犬

今宵。犬は狼となるのだ。

 

728:名無しの犬

普段抑圧されてるからなぁ、シロ犬ども。こんな些細な事でも血気盛んになってしまう。……さて、もう一度見直すか。

 

729:名無しの犬

ヽ(0w0)ノイジェークト

 

733:名無しの犬

ちょっとコンビニ行ってくる(AA略)

 

734:名無しの犬

ちょっとコンビニ行ってくる(AA略)

 

735:名無しの犬

ちょっとコンビニ行ってくる(AA略)

 

737:名無しの犬

>>733~735

ジェットストリームネタ被り

 

738:名無しの犬

ヽ(0w0)ノエンゲージ

 

741:名無しの犬

財布忘れた(AA略)

 

743:名無しの犬

>>741

おかえり

 

744:名無しの犬

>>743

ただいま

 

745:名無しの犬

ヽ(0w0)ノイジェークト

 

749:名無しの犬

ちょっとコンビニ行って買い占めしてくる(AA略)

 

750:名無しの犬

俺も行ってくる(AA略)

 

751:名無しの犬

先ずは確認してくる(AA略)

 

752:名無しの犬

ヽ(0w0)ノエンゲージ

 

754:名無しの犬

じゃ俺も(AA略)

 

755:名無しの犬

俺も俺も(AA略)

 

756:名無しの犬

ヽ(0w0)ノイジェークト

 

760:名無しの犬

トム猫が無くなっちゃったわ。

 

761:名無しの犬

>>760

だったら他ので行けばいいだろ!?

 

763:名無しの犬

>>761

そんなぁ……

 

766:名無しの犬

俺はガン○ムで行く。

 

768:名無しの犬

シロ民、行きまーす!

 

……………………

…………

……



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閑話 我輩はポッポである~その壱~

 吾輩はポッポである。名前はまだ無い。

 どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でクルポークルポー鳴いていた事だけは記憶している。吾輩はここで改めて人間というものを見た。

 

「居たぞ! ポッポだ!」

「ポッポめェ、取っ捕まえてやる!」

「突撃ィィィ!」

 

 不思議と()()よりもハッキリと知覚できるその人間達は我輩の事を『ポッポ』と呼び、網やボールを持って追い掛けまわして来たのだ。

 

 ━━なんという迷惑。我輩は飛んでいただけだというのに。

 

 しかしアレらによって分かった事もある。

 先ず我輩は『ポッポ』であり、かつての同族『鳩』とは一線を画す存在……つまりは『ポケモン』になっていた事。そして今の我輩は人間よりも強いという事だ。肉体的に、あるいはその頭脳さえ。

 

 ━━うむ。あのときの事は何度思い出しても痛快だ。

 

 我輩を捕まえようと紅白のボールを投げ、それが外れれば網を広げる者共。それらをポケモンの力で薙ぎ払ったのは痛快としか言いようがない。

 “たいあたり”“でんこうせっか”“すなかけ”自然と理解出来たそれらの“わざ”を使い、あるいは純粋なスピードで抜き去り……あのときの我輩は正しく無双であった。

 

 ━━しかし、長くは続かなかったな。

 

 我輩を捕まえようとする人間を蹴散らし、自由に空を飛び回り、好きなように食って、寝て……この世界に我輩よりも強い者などいない━━そう思い始めた瞬間、その考えは木っ端微塵に砕け散った。

 

 ━━そう、我輩は見てしまったのだ。真の強者というものを。

 

 あれはよく晴れた月夜の晩。かつての同族達が巣へと引き込もっている中、悠然と空を飛んでいたときの事だ。

 自慢の翼をバサリバサリと動かして空を飛んでいた我輩は突然、そう突然凄まじい圧を感じた。殺気ではない。しかしなんの意味もない訳ではない。いや、意味はないのか。恐らくその圧を発している者にとっては特段意味のある行為ではないのだろうから。そう、いわば……強者の圧(プレッシャー)というべきものだ。我輩はそれを感じとった。突然に。

 なぜ? そう考えたのはホンの一瞬。しかしそれで充分であった。簡単な話だからだ。

 

 ━━我輩が、相手のナワバリに入り込んだから……!

 

 いや、あるいはただたんに射程範囲に入ったから感じとれたのかも知れぬ。ともかく、命の危機に変わりはなかった。

 

 ━━あぁ、以前の我輩ならこんな失態は犯さなかった。

 

 以前の鳩である我輩なら、こんなナワバリには絶対に近づかないだろう。近づくのはこの圧に気づけない愚か者か、あるいはこの圧の主に気に入られた者だけ。

 そして我輩は……前者だ。増長した我輩は前者に過ぎない、愚か者だった。

 

 ━━なんたる増長! たかが少数の人間に勝った程度で王者気取りとは!

 

 今さら後悔しても遅い。最早あるのは死のみ……そう思って覚悟するも、攻撃は飛んで来ない。それどころか圧が一段引き下がっていた。

 

 ━━これは、招かれているのか。

 

 それとも取るに足らぬと捨て置かれたか。どちらにせよ我輩の中に好奇心というやつが出てきた。実に厄介なアレが。

 もし好奇心に釣られてホイホイ圧の主の様子を見に行けばどうなったか分かったものではない。しかしだからといって好奇心は静まってはくれないのだ。厄介な事に。

 

 ━━話に聞くと人間は好奇心は猫を殺すというが、どうやらポッポも殺すらしい。

 

 そんな事を思いつつ我輩は高度を下げ、圧の主の様子を見に行く。ゆるりゆるりと高度を下げ、目を凝らせば……そこに一匹の黒い犬の姿が見えた。

 

 ━━否、あれは犬ではない。

 

 では噂に聞いた狼という奴か? 違う。全く違う。あれはそんな生易しい存在ではない。もっと恐ろしく強大で、それでいて美しい存在だ。

 そう我輩が()の存在に圧倒されていると、チラリと一瞬だけ視線がぶつかり……元に戻される。どうでもよいと。

 

 ━━見逃された。

 

 悔しさは、ない。あるのは安堵のみ……いや、微かに喜びがあった。彼の存在に一瞬とはいえ注意を向けられたのだと。あの王者の様な、それでいて噂に聞く騎士の様な高潔で美しき存在に!

 そうやって我輩が心一杯の安堵と、微かに溢れた喜びを手土産に帰ろうとした━━その瞬間。我輩は手土産を取り落とした。

 

「ポチー? お風呂入ろうかー」

 

 彼の存在が居た家の中から、そう言いながら人間の少女が出てくる……いや、アレは果たして人間なのか? 我輩が今まで散々蹴散らして来た人間と、同じなのか? 我輩には分からなかった。

 肉体的には、弱いだろう。最低限の動きは心得ている様だったが、鍛えているとはお世辞にも言えない。だが大きさが、放たれるナニカの大きさが、あまりにも大きすぎた。もし黒い犬の様な彼の存在を騎士とするなら、あの少女は王者か、神か……間違いなく絶対者のそれだろう。

 

 ━━錯覚か? 我輩がおかしいのか?

 

 その場から逃げる様に飛び去りながら、我輩は自問自答する。彼の騎士の様な存在を強者と見たのは間違いではない。しかし人間を絶対者だと、彼の存在を従えるに相応しい存在だと見たのは、何かの間違いだろうか? ……答えは、出ない。

 肉体的には弱いのだ。強者ではない。しかしあの放たれるナニカはあまりに大きかった。強者のそれに似ていた。……結論は出ない。

 

 ━━強いていうなら、何か切り札を持っているのは間違いない。

 

 普段は守られる必要がある程脆弱だが、一度切り札を切れば真の強者を上回る絶対者となる……それが我輩の出した結論だ。勿論間違いかも知れない。だが、我輩はそれ以上考えたくはなかった。

 

 ━━そうだ、二度と近づかなければ良い。噂に聞く、見ざる聞かざる言わざるだ。

 

 あれほどのナニカ。放って置けば自然と引き寄せられるが、意識していれば避けようもあるというもの。そう考えついた我輩はそれからというもの、あの少女とその騎士を避けて空を飛ぶ事とした。そして彼の存在達に目をつけられぬよう、人目を気にする様にも。

 

 そうして見えてくるのは人の営みだ。いや、正確にいえば変化した人の営みというべきか。我輩がまだ鳩であった頃とは━━とはいえあの頃の事は霞がかっていて不明瞭だが━━様々な物が少しずつ変化していたのだ。例えば……そう、カラスどもの餌場にたむろする年のいった肥え太った女性達の話など様変わりしている。以前なら自分のつがいの不平不満を口々に叫んでいたものだが、今となっては……

 

「ねぇ、昨日のテレビ見ました?」

「えぇ見ましたよ。アレよね?」

「あぁ、アレですね」

「えぇアレですよ。何でもポケモン? とかいう生物について特集してたアレ」

「あぁ、アノ俳優さんが出てたやつね。分かりやすかったわね」

「以外ですね。アノ俳優さんが出るなんて」

「そうかしら? アノ俳優さん新しいの好きだから、そうでもないわね」

「あぁ、それもそうですね」

「それにしても不思議よねぇ。あんな生物がこれから当たり前になるなんて」

「ホントねぇ。危険なのもいるみたいだし、散歩も出来ないわね」

「確かに。でも犬が火を吹くというのは面白そうですし、番犬として頼もしいですよね。うちの子もそうなるのかしら……?」

「え、えぇ。そういえばそういう子もいましたね。ほら、アノ子」

「えぇアノ子の事ですね。あぁ、そういえば便利な子もいるとか。何でも家事の手伝いをしてくれるとかいう……アノ子とか。そういう子は助かるわねぇ」

「あぁ、アノ」

「えぇ、アノ」

 

 なんというか、軽く聞いただけだというのに驚異的な事だ。何せ彼女達は『アレ』だの『アノ』と言い合っているだけなのに通じているのだ。まるでエスパーの如く。

 ポッポになってから出来る事が増えた我輩だが、流石にそこまでの力はない。そう考えるとあの女性達の何と凄まじい事か。彼の存在には及ばないが、彼女達もまた我輩を超える恐ろしい存在なのだ……

 

 ━━高度を下げるのは止めておこう。

 

 好奇心に任せて観察したいところだが、万が一という事を考えるとそんな気は直ぐに消え去った。我輩は学んだのだ。好奇心にホイホイ負けてはロクな事にならぬと。

 そうしてその場をバサリバサリと離れて暫し、今度は別の集団が見える。首に揃いの白い首輪……あれは、以前我輩を捕まえようとした連中ではないだろうか? どうやら巨大なポケモンに勝負を仕掛けているようだが……

 

「あぁ! コラッタニキがやられた!」

「だが奴はシロ民四天王の中でも最弱」

「カビゴンごときにやられるとは四天王の面汚しよ」

「ん? カビゴンがこっち向いたぞ? なにする気だ?」

「擬人化かな?」

「ぬふふ……」

「おい、あれは“はかいこうせん”じゃないか?」

「おいおいおい待て、ヤバいぞ!」

「退避! 退避ィィィ!」

「撤退しろォォォ!?」

「撤退は許可出来ない。戦闘を続行せよ」

「言ってる場合か!? 逃げるぞ!」

「マズイ、間に合わない……!」

「う、うわぁぁぁ!?」

 

 我輩が空から首輪付きの奮闘を眺める事暫し。機嫌が悪そうなポケモン……カビゴンというらしい者が“はかいこうせん”を放ち、首輪付きを蹴散らしていた。とはいえ退避が間に合ったのか頭数は減っていなかったが。

 

「なんて威力だ。勝てる訳がない……!」

「諦めるな! 最後まで戦い抜くぞ!」

「PDFの誇りを思い出せ!」

「え、ガチで設立するの? アレ」

「シロ民親衛隊も行くぞ! エリートトレーナーの力を見せてやれ!」

「おぉ! SS隊員の力を、見せてやるぜェ!」

「デュフフ。では、ここは拙者に任せて貰うのですぞ」

「あ、あんたは……」

「うわ、お前居たのか……」

「フォカヌポウ」

 

 何だ? 奴は。いささか肥えた男……という訳ではない。鍛えてないのに鍛えている。一人なのに一人ではない? 見れば見るほど恐気がする。あれは……複数が一つになっているのだろうか?

 

「オウフ、ヤビゴンとは……拙者の敵ではありませんな。行くのですぞゴース!」

 

 珍妙怪奇な男が繰り出したのはガス状のゴーストポケモン。ゴースというらしい……が、あの男に軽く取り憑いていないか?

 

「……なぁ、アイツ、あんなに変な喋り方だったっけ?」

「あぁ……何か霊的才能があったのか、ゴースを捕まえるときに複数の幽霊に取り憑かれたらしくてな」

「え゛」

「確か今は、論者とかいう異界のオタクと、この世のオタクの集合無意識に取り憑かれてるんだっけ?」

「あと遠縁のご先祖様らしい江戸時代の侍な。なんでも身体の動きを常々指導矯正してるらしい。ときどき会話もしてる」

「コポォ」

「カオスゥ……」

 

 これは、何というべきか。やはり世の中は恐ろしく知らぬ事ばかりだ。他者に精神を侵食されながら、それでも生きているとは……我輩の想像を絶している。あれらもまた、彼の存在に及ばないまでも恐ろしい存在なのだ。高度を上げるべきだろう。

 

「ドフォ! ゴーストタイプにノーマルタイプの“はかいこうせん”を撃つ気とは、無知とは恐ろしいものですな」

 

 我輩がバサリバサリと高度を上げた、その時。我輩の直ぐ側をビッと光線が貫いていった。カビゴンの“はかいこうせん”だ。

 

 ━━恐ろしい、何と恐ろしい事か。

 

 流れ弾だろう。狙った訳ではない。だが流れ弾でこの威力……やはり増長など出来そうもない。

 そう改めて心に思い、我輩はその場から全速力で離脱する。羽ばたき、風に乗り、“でんこうせっか”を使って距離を取り……今度はまた別の集団を目撃してしまう。あれは、テレビ局というやつではないだろうか?

 

「さぁ、いよいよポケモンゲットの旅へ出発です。最初に狙うはポッポとコラッタ。二匹目、三匹目が発見されている種ですが、どこにいるのかは全くの不明……佐藤さん、心境はいかがですか?」

「正直自分に出来るか不安ですが、でも不思議と同時にワクワクもしています! ……子供の頃カブトムシを捕まえに行った頃を思い出しますね」

「なるほど。確かにポケモンゲットと夏のカブトムシ取りは通じる物があるかも知れませんね。大人も童心に帰って楽しめる事でしょう」

「えぇ、私もそう思います。ここはバシッとゲットして、テレビの前の皆さんにポケモンバトルをお見せしたいですね!」

「それは良いですね! 中々見れないポケモンバトル、素晴らしいものになるでしょう。……では、そろそろ出発して頂きましょう!」

 

 ふむ、どうやらあれは噂に聞く番組作りの真っ最中らしい。若い二人が年寄りに駄目出しされているのが見える。

 しかし何でもあれらは我輩の同族を狙っているらしいが、その様子を他の人間に見せてどうしようというのか? 自慢か? やはり人間というのはよく分からない……む、あちらが我輩に気づいたな。高度を下げ過ぎたか。

 

「さ、佐藤さん! ポッポですよ! ポッポ!」

「え!?」

「いかん、カメラを回せ! 本番だ!」

「り、了解です!」

 

 人間達が何やらバタバタと慌ただしくなる。恐ろしい我輩を捕まえようというのだろう……だが捕まってやるつもりはない。我輩は今の気楽な生活が好みなのだ。

 

『いや、人間に捕まった方が楽っしょ。飯タダで食えるし、飼い主がダメならボコって逃げればいい』

 

 そんな風に言って若い人間の女に捕まった同族とは違う。我輩はあの者の様に安定を手に入れる為に、人間に捕まり束縛される気はないのだ。

 そう思いつつ我輩は高度を上げ、テレビ局の人間達から距離を取る。年寄りが発狂しているが……知った事ではない。

 

 ━━風が心地好い。やはり自由は良い。

 

 人に捕まれば衣食住に困る事はないだろう。しかし我輩にはこの自由が性に合っていた。例えば自分で日々の糧を得ないといけないとしても。

 

 ━━そろそろ、食事とするか。

 

 空腹を感じた我輩は糧を得るべくルートを変更し、餌場としている場所へ向かう。以前鳩だった頃と同じ物を食べても良いのだが、この身体となってからは別の物が口に合うようになったのだ。

 

 ━━見えた。

 

 人の町に囲まれた、しかし確かに生い茂る森の中。我輩はそこに目当ての物を見つけた。緑色のイチゴの様な果実……チーゴの実だ。

 

 ━━ふむ、では早速。

 

 辺りに驚異足り得る存在がいないのを軽く確認し、我輩はモシャリモシャリとチーゴの実を頬張っていく。苦い。しかし旨みもある独特の味を楽しみながら口を進める。そうして一つの木が消えるまで口を進めた我輩は軽く辺りを見渡す。

 雑木林。しかしそこにデタラメに生えているのは無数の“きのみ”の木だ。そのデタラメ具合と数の多さには人為的な物を感じる。そして、実際それは正しい。

 

「あんなきのみを育ててどうするんだろなーうちのボスは」

「俺が知るかよ。さっさと回収すんぞ」

「ういーす」

 

 人の話し声。それを聞いた我輩は即座に飛び上がって木の枝に止まって身を隠す。そうしてソロリと視線をやれば……なんとも頭の悪そうな人間が数人居た。

 

「つかよーあんだけ銃があるんだから銀行強盗でもすりゃいいんだよ。一生遊べんだろ」

「だからさーボスの目的はそこじゃねぇんだよ。つか金ならじゃぶじゃぶ持ってんだろ」

「俺らにみてえな木っ端にもポンッと気前よくくれるからなぁ」

「でもそこまでなってやりたい女って、どんな美人なんだ?」

「最近はそれ以外もあるっぽいけどなー。ほら、えらそーなのと話してんじゃん?」

「あぁ……そういや最近はイカツい連中も金で雇ったからな。なんだっけ? ちゅーとーで暴れてたんだっけ?」

「人殺した事もあるってスゲーよなぁ」

「それにボスはすぽんさー? からまた何か貰うらしいしな。今九州に行ってんだっけ?」

「あぁ、あのガイジンか。ほにゃほにゃ何言ってんだろうな、アイツら」

「知らね。どうでも良くね?」

「だよな。金あるしヨユーだろ」

 

 何と恐ろしく、そして頭の悪い会話か。少なくとも我輩はあそこに混じりたいとは思わない。むしろさっさと場を離れていた。

 そうしてその場から離れて……思う事が一つ。平穏は、長くないという事。世界は変わり、人々もそれに順応しつつあり、その反発ももう間もなく起こる。

 

 ━━退屈は、しないだろうな。

 

 今日も、明日も、その先も、我輩は空を飛ぶ。自由に、気ままに空を飛ぶのだ。



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閑話 排水溝ピエロがポケモン図鑑アプリをオススメするようです

 降りしきる雨の中、白いカッパを着た少女が小走りで駆けていく。彼女の視線の先にあるのは……歩道と車道の間に出来た小川を流れるモンスターボール。白い少女はまだ新品のそれをトテトテと追い掛けるが、ついに間に合う事はなかった。

 

「新品のモンスターボールが!」

 

 何という事か。貴重品のモンスターボールは道路脇の排水溝へと吸い込まれてしまった!

 思わず排水溝を除き混む白い少女だが……その先には暗い闇しか見えない。

 

 ━━またユウカさんにおねだりするしかないか……

 

 そんな事を思いながら、残念そうに排水溝から視線を外す白い少女。たれてきた長い白髪をカッパの中へと回し、白い少女がその場を後にしようとした━━その瞬間。

 

「はーい、女児?」

 

 いったいどういう事か!? まるで仲の良い友人に呼び掛ける様な気軽い声が、排水溝の中から聞こえてきたではないか!

 思わず白い少女が再度排水溝を除き混み、その紅い瞳を向ければ……暗闇の中からニュッと人影が現れた。赤い鼻、白い顔、赤いアフロ髪、ギラギラとした目……それはまさしくピエロのそれだ。しかしなぜか首に白いチョーカーを身に付けている。どうやらシロ民の様だ。

 

「ポケモンゲットしてる?」

 

 いったいコイツは何なのか? ピエロなのか? それともシロ民なのか? そんな疑問と恐怖を感じつつも、ポケモン絡みの質問という事もあって白い少女は律儀にも首を振って返答する。直した白髪がカッパの外に出て来る程に勢いが激しかったのは……動揺の証か。

 

「oh……最初のポケモントレーナーなのに……」

「ほら、ポケモン図鑑もあるよ?」

「そんな事言ってまたパチモンなんでしょ? だまされんぞ」

 

 白い少女自身気にしている痛いところを━━というか独り占めはよくないからと我慢している部分を━━突かれ、少女が前々から欲しかったアイテムを見せられて思わず排水溝の中へと手が伸び……ギリギリで正気を取り戻して反論する。その手の詐欺にはもうあったと。

 

「いや、これは俺が頑張って作ったスマホアプリでね。先日話題になったパチモンなんかじゃない」

「今回のは取り敢えずシロちゃんの作ったポケモンwikiからカントー地方のデータだけを搭載しているが、それでも151匹分の基本データを入れてある」

「日本政府も伊藤グループもまだ作ってないポケモン図鑑を、スマートフォンのアプリにする事で実現したんだ」

「どうよ?」

 

 なるほど、ピエロの格好した男はかなりの努力をしたらしい。そして何より素晴らしいのはポケモン図鑑の形に囚われず、スマートフォンを最大限利用するという発想だろう。現代人らしい素晴らしい発想だ。間違っても趣味が爺臭いロートルには思い付かない発想である。ギラギラとした目は………睡眠不足のそれだろう。代償だ。

 そうして努力した究極のアイテムを引っ提げて、排水溝からドヤ顔を決めるピエロ。その一撃は正しく“いちげきひっさつ”当たれば白い少女のバイタルパートは貫通していただろう。だが……

 

「面白そう! じゃ、帰ってユウカさんに商品化して貰おう」

 

 渾身の攻撃は空しく外れる。白い少女が独りだった頃なら命中しただろうが、生憎今の少女には頼れる保護者や協力者が沢山居るのだ。さもありなん。

 そして、これに慌てたのはピエロ。このまま帰られてはマズイ━━その思いから咄嗟に大声で呼び止める!

 

「待てや!!」

「これを、見るんだ……」

 

 最早ピエロに余裕はない。闇の中から切り札を取り出す。それは……

 

「私のモンスターボール!?」

 

 なんと、闇の中から現れたのは諦めるしかないと思った新品のモンスターボールだ! これには白い少女も思わず排水溝に食い付くざるを得ないっ……!

 

「イグザクトリー。今アプリを入れるなら返して上げよう」

「さぁ、ダウンロードしろ」

 

 何という脅迫か。最早後がないピエロはモンスターボールを人質に脅迫してきたのだ!

 これには白い少女も━━その手の趣味の人が喜ぶだろう━━嫌な顔を叩き付け、ピエロを侮蔑する。このゲスめ、と。

 

「oh……」

「このアプリに盗聴盗撮用のウイルスが仕込まれるって顔だね」

 

 幸か不幸か、ピエロはMではなかったらしい。そうして放たれるのは予想斜め上の懸念。

 これには白い少女もドン引きしつつ━━その手の趣味なら豚の鳴き声を上げるだろう━━嫌な顔を“たたきつける”他ない。なんならこのままポケモントレーナーらしくポケモンバトルでボコってやろうかと手持ちのモンスターボールを取り出すまである。

 

「おっと、ポチネキは勘弁」

 

 白い少女が取り出したモンスターボールの中身を察したのだろう。ピエロの勢いが弱まる。現状最強のポケモンを相手取りたくはなかったらしい。

 しかし、勢いは弱まれど口は止まらなかった。

 

「でも大丈夫。このアプリにウイルスは入ってないよ」

「純粋な思いと徹夜テンションで作ったからね。当たり前さ」

 

 ギラギラとした明らかな睡眠不足の目を向けつつ、ピエロは語る。大丈夫だ、問題ない……と。

 

「それデータ重くない?」

「えっ、うん……」

 

 ありがちな不安点を指摘され、言葉につまるピエロ。副音声で内心の言い訳が聞こえきそうだが……

 

「ポケモン図鑑はいいぞ……シロちゃん」

「とってもいいぞ……」

 

 あろうことか、ピエロはそのままゴリ押しに入った。いいぞ、いいぞ、と相手を洗脳するかの如く繰り返し、白い少女の意識を引き込む。

 相手に喋らせず、一方的に喋り続ける事で勝利を引き込もうとしているのだ……そして、その結果。

 

「このアプリを入れたスマホ片手にポケモンを探すといい……」

 

 白い少女は手を伸ばす。ポケモン図鑑片手にポケモンゲットの旅は、白い少女の長年の夢だったのだ。殺し文句にも程があり……今度は確りと命中してしまっていた。正しく“いちげきひっさつ”だ。

 

「俺はその姿を激写して一儲けだ!」

 

 白い少女のカン高い悲鳴と、男の野太い雄叫び、そして獣の遠吠えが響き━━

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 雨の中、一つ棺を取り囲んで葬儀が行われていた。白い少女の物か……いや違う。参列者には白い少女の姿もあり、その傍らには尻尾をパタパタと振るグラエナも居た。

 ではこれはいったい誰の葬儀か? それは直ぐに分かった。

 

「欲を出した開発者は死んだ。ポチネキの“ほえる”を受けたのだ」

「大人しく別の方法で開発費を回収すれば良かったのに、シロちゃんに手を出すからこうなる」

 

 哀れ、ピエロの格好した男の葬儀であった。まぁ、そのうち勝手に生き返るだろうから無駄な儀式だが……

 

「やはり徹夜テンションで行動してはいけないのだ」

「アプリの出来映えは良かったんだから、他に売り込めば良かったのに……そんな事も分からなくなってきたのだろう」

「ところで何で俺がコイツの葬儀やってんの? モウヤダ」

 

 実に哀れなり。同志からさえモウヤダと言われた男の葬儀は悲しみの欠片もありはしない。人によっては『シロちゃんの写真集出ないかなぁ……』等と考えている始末だ。

 さらば開発者。まぁ、次の瞬間生き返ってそうだが。

 

 ……………………

 …………

 ……

 

「ん、ぅうん……?」

 

 目覚めの瞬間というのはいつも突然で、曖昧だ。そしてそれは今回も変わらない。どうやらいつの間にか眠っていたらしい身体を起こし、辺りを見渡せば……伊藤家が持つ別荘の居間だ。日は沈み始めており、かなりの時間居眠りしていた事が分かる。

 しかし……

 

「変な、夢……」

 

 最早ボンヤリとしか思い出せない夢。しかしその夢の中に『ポケモン図鑑』が出て来た事は覚えている。

 

 ━━そんなに先日のパチモンがショックだったのかな?

 

 どこかの業者が一儲けしようと、上っ面だけを似せた粗末なパチモン。なまじ本物のポケモン図鑑を期待しただけにあれは本当にショックだった。そのせいで妙な夢を見たのかも知れない。

 そんな事を考えつつ私は何気なくテレビの電源を入れる。映しだされたのは……ワイドショーの様だ。テロップには『ポケモン図鑑アプリ完成!』とある。……ん? ポケモン図鑑アプリ? どこかで聞いた様な……? どこだったかな。

 

『では、このアプリをインストールすればスマホがポケモン図鑑になると』

『はい。まだ荒削りな部分もあって若干重いのが欠点ですが、その性能は本物です。例えばこのようにコラッタをカメラに映せば……はい、アプリ側で検索された結果コラッタの基礎データが表示されます。そしてここから専用ページに飛べば確認された習性や“わざ”を確認する事が出来る訳です』

『なるほど。これならポケモンの事に詳しくなくても、そのポケモンがどんなポケモンなのか分かるという事ですね』

『その通りです。勿論使うには周囲の安全が必要ですし、まだまだ足りない機能も多い。その辺りは使い手に求めたり、あるいはこちらの課題だと思います』

『なるほど、今後も進化していくと。……しかし、これだけの機能となると利用料もかかるのでは?』

『それも考えました。しかし我々シロ民は人とポケモンの共存を何より望んでおり、その為には多少の損は呑み込む覚悟でいます……えぇ、このアプリは基本無料で使えます。今のところ課金要素もありません。今後追加される機能は全て無料で使用出来る様に取り計らっていく予定です。仮に課金要素を入れるとしても、それはポケモン図鑑とは直接関係のない……いわば着せ替え機能の部分になる事でしょう』

『それは素晴らしい! これで人とポケモンがより手を取り合える事になるでしょうね』

『えぇ、そうなる事を我々は望んでいます』

『では、具体的なダウンロード方法について━━』

 

 そこまで聞いた私はポケットからスマホを取り出し、早速ダウンロードに入る。何せポケモン図鑑だ。迷う必要もない。しかし……そこはかとなく不安があるのは、まぁ気のせいだろう。

 何にせよ、今のところポケモンは順調に世の中に受け入れられている様だ━━




 元ネタ。ペニーワイズがオススメするシリーズ。
 ポケモン図鑑アプリ(ネタを提供してくれたのは読書さんです)を排水溝ピエロ風にお送りしました。


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外伝Ⅰ 再会

 ━━ザザァン、ザザァン。

 

 遠くから波の音が聞こえる。穏やかな波の音。海の音が。

 

 ━━ザザァン、ザザァン。

 

 少しだけ音が大きくなり、スッと潮の香りが鼻に入ってくる。どうやら案外近くに海があるらしい。

 

 ━━ザザァン、ザザァン。

 

 暫く波の音を聞いていた私だったが、何気なく指を動かして……ハタと気づく。サラッと指に当たった砂。つまり、どうやら自分は砂浜で横たわっているらしいと。

 

 ━━何だって砂浜なんかに……

 

 相も変わらず響く波の音を聞きながら、私はそんな事を思いながら目を開けて身体を起こす。そうしてグルリと辺りを見渡して……頭の上にクエスチョンマーク。

 

「ここ、どこ……?」

 

 目の前に広がるのは綺麗な海だ。濁りもゴミも無い、深く青い大海原。そして私がペタリと座った周りと左右はこれまた綺麗な砂浜で、背後を振り返れば海岸らしい木々と植物が森を作っている。

 ハッキリ言おう。大自然のド真ん中だ。

 

「なんで、こんなところに……」

 

 いったい何がどうなれば、こんな大自然のド真ん中で居眠りする事になるのだろう。そう疑問に思いつつ起きる前の記憶を遡ってみるが━━

 

「……? あれ?」

 

 無かった。全然、これっぽっちも、欠片も無かった。私に起きる前の記憶は存在していなかった。

 

「そんな、はずは……」

 

 ない。そう思って再度記憶を引っ張り出してみるが、やはりそれらしい記憶は見当たらない。道具の使い方とか、ポケモン? の事とかなら分かるのだが……自分が何者で、どういう経歴を持っていて、なぜここに居るのか? それが分かる記憶は全くありはしなかった。

 いや、強いて言えば自分の名前だけは覚えていたが……

 

「不知火、白」

 

 だからどうしたというのだ。存在しない幻と、白、そんな名前が分かったところでどうにもならない。現にこの名前を名付けただろう親の顔すら出て来ないのだ。なぜここに居るのかを名前から推測するのは困難だろう。

 いや、こじつければ全ては夢幻と言えなくもないだろうが……

 

 ━━それは、あんまりかな。

 

 そう現実逃避を叩き潰しつつ、私は改めて身体を調べる。ペタペタと触ってみるにどうやら私は白髪の少女らしい。着ているのは……ワンピースだろうか? 靴なんかの小物から察するに、どこかのお嬢様と思えなくもない。

 

 ━━少女、お嬢様。何か違和感がある。まるでそうではないような……

 

 とはいえ、まさか男という訳もあるまい。そう感じていた違和感を切り離し、私はゆっくりと立ち上がって辺りを見渡す。

 夕日に彩られ始めた海、岩礁、砂浜……そして先ほどは気づかなかったが、左手の先に洞窟の入り口を、右手の先にそれなりに使われているのか踏みならされた道を見つけた。

 

 ━━無人島……という訳ではなさそう。

 

 パッと見てそれと分かる程度には使われている土の道があるのだから、少なくとも無人島ではないだろう。そうボンヤリと考えていると……道の先から誰か歩いて来た。あれは、人か?

 

 ━━綺麗な人だな。

 

 スタスタとこちらに近づいてくるその女性を見て、最初に思ったのはそんな事だ。

 長く綺麗なストレート黒髪と、どうにも本物に見えるケモミミと尻尾。年頃は……年上のお姉ちゃんといったところだろうか? ピクピクと動くケモミミのせいか、悪い人には見えない。

 

 ━━というより、前に会ったような……?

 

 気のせいだろうか。いや、気のせいのはずだ。何せ私には記憶がない。にも関わらずこうも会った事のあるような、懐かしい既視感を覚えるのは……やはり会った事があるのだろうか? 記憶を失う前の私と。

 だとすればどうすれぱいいのだろう? そんな事を思っていると、あちらは私に話し掛ける事にしたのか視線があった。

 

「やぁ、アンタも海を見に来たのか?」

「ぁ、ぇ、えっと……」

 

 ファサリと尻尾を動かし、そう訪ねてくるお姉さん。やはりコスプレではない。そんな事を頭の端で考えたせいか、返す言葉につまってしまった。だって、どういえばいいのだ。記憶喪失なんて。

 

「そ、その、ですね」

「うん」

「えぇと……」

 

 どう言えば良いのか? それを悩む私に、ケモミミお姉さんは相づちを打ちながら軽く膝を追って視線を合わせてくれる。目と目が合う。優しげな赤色の瞳……あぁ、もう、言ってしまおう。きっと大丈夫だ。

 

「その、よく分からないんです。何で自分がここにいるのか……サッパリで」

「……なるほど。じゃあ、何か分かる事はないか? 些細な事でもいいよ」

「えっと、自分の名前だけ。不知火白です」

「うん。うん? シラヌイシロ? 随分長い名前だな」

「いえ、その。不知火が名字で、白が名前です」

「あぁ、家名持ちか。珍しいなぁ」

 

 うんうんと頷きながらそういうお姉さん。どうやらこの辺りでは名字は珍しいらしい……どういう文化なのだろう? まだそれほど人口が増えてないという事だろうか?

 私がそう考えているうちにお姉さんは満足したのか頷くのを止め、すんだ赤い瞳をこちらに向ける。なんだろう?

 

「じゃあ、私も自分の名前を名乗ろうか。アタシの名前はポチ。グラエナのポチだ。宜しく、シロ」

「グラエナ……あ、はい。宜しくお願いします」

 

 ポチ。そういうらしいお姉さんに頭を下げながら、私は『グラエナ』という単語に凄まじい既視感を覚える。そして『ポチ』という名前にも。グラエナのポチ……なんだろうこの感覚。とても懐かしい……けど、悲しい? 嬉しい? 不思議な感覚だ。やはり彼女と私は以前会った事があるのかも知れない。

 

「んじゃ、行こうか」

「えっと、どこにですか?」

「プクリンのギルド……は今は閉まってるし、取り敢えず一杯やりに行かないか? 最近出来た店なんだが、結構良い感じなんだ。一緒にどうだ?」

 

 私がポチお姉さんに感じる不思議な既視感を考えていると、お姉さんが背後を親指で指しながら私を誘ってくる。一杯、という事はお酒だろうか? だとすると誘いは嬉しいが、断らなければならないだろう。何せ私自身自分の年齢は分からないが、とてもお酒を飲める年には思えないのだから。

 

「いえ、その、私は……」

「あぁ、カネなら気にするな。私が持つからさ、ドリンクでも飯でも好きに食ってくれていい」

 

 うぅ、押しが強い……しかしドリンク? お酒ではないのか? いや、ポチお姉さんはお酒で、私はジュースという事? だとするなら断る理由は無くなる。そうなると……

 

「じゃ、じゃぁ、お願いします」

「あいよ。さ、こっちだ。特に道が複雑な訳じゃないが……この辺りの事はよく分からないんだろう? はぐれないようにな」

「あ、はい」

 

 私が返事をするとポチお姉さんは微かに笑みを浮かべた後、クルリと振り替えって来た道へと戻って行く。スタスタと歩いていくお姉さんを小走りになりながら追い掛け、その綺麗な黒髪とふわふわな尻尾の後へ続き、砂浜が土へと変わり、周りに生える植物が変わって、坂を登る事暫し。視界が開ける。

 別に何か目立つ物がある訳じゃない。そこそこ広い土の道の交差点と、更に上へと続く自然に溶け込む階段。後は井戸と立て看板か幾つかあるだけ……いや、もう一つあった。これは、地下への階段?

 

「目当ての店はその階段の先だよ。ドリンク屋と、交換クジ屋だったかな? まぁ、入れば分かるよ」

「は、はぁ……」

 

 地下への階段という突然の存在に、思わず曖昧に頷く私。

 そんな私にポチお姉さんは苦笑を返して「じゃ、お先」と階段を降り始めてしまう。

 

 ━━うぅ、ちょっと怖いけど……

 

 でもポチお姉さんは悪い人? グラエナ? ではなさそうだし、大丈夫だろう。そう考えて私はポチお姉さんに数歩遅れて地下への階段を降り始める。

 そうして数段降りてみると予想した様な怖さは無く、むしろワクワク感が強まっていくのがハッキリと分かった。原因は……なんだろう? でも、この先は悪い場所ではないと、なんとなく分かるのだ。きっと大勢の人達が楽しめる場所なのだろうと。

 そんな事を考えているとどうやら行き着くところまで着いた様で、パッと視界が開けて光が溢れる。ここは……

 

「ダアァッ! またハズレたァ!」

「でだ、そこで俺はこう言ってやったのさ。残念だったな、トリックだよってな!」

「ふむ。これもなかなか美味しいですわね」

 

 かなり大きく、明るい木のホールには大勢のポケモン(・・・・)達が居て、各々賑やかに騒いでいた。ある者はギャンブルにでも負けたのか打ちひしがれ、ある者はコップ片手に己の武勇伝を語り、またある者は静かに場に溶け込み……なんといか、楽しげな場所だ。

 

 ━━しかし、ポケモンとは。

 

 パッと見るだけで様々なポケモン達が見える。ヘラクレス、オクタン、ジグザグマ、バリヤード、パチリス、キレイハナ、パッチール、ソーナノ、ソーナンス……他にも様々な、それでいていずれも覚えのあるポケモンばかりだ。いや、今覚えばグラエナもポケモンだな。なぜかポチお姉さんは萌え擬人化されたそれだが。

 

 ━━? 何で私、ポケモンの事、知らないのに知ってるんだろ……?

 

 はて、おかしなものだ。私は何もかも忘れていると思っていたのだが……どうやらこのポケモンと呼ばれる生物の事についてはかなり詳しく覚えているらしい。

 とはいえ、ポケモンが具体的に何なのかはイマイチ不明瞭だが……まぁ、こうして覚えているのだ。恐らくポケモンが居るのはごく当たり前の事なのだろう。

 

「おーい、シロ? 大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です」

「そうか? んー……じゃあ、こっちに来てくれ」

 

 ポチお姉さんはボーとしていた私を暫し見つめていたが、直ぐに視線を切ってホールの奥へと歩いて行く。それに続く様に私も奥へと進めば……どうやらポチお姉さんはパッチールに用がある様子。あれがドリンク屋だろうか? お酒が置いてる様には見えないが……

 

「おや、これはポチさん。ご注文ですか?」

「あぁ。私はくろいグミで……そうだな、しろいグミでもう1つ頼めるか?」

「はい。くろいグミとしろいグミ入りました~」

 

 ポチお姉さんから何かを受け取り、まるでカクテルを作るかの様な動きをフラフラと始めるパッチール。その動きは危なっかしいが、同時に手慣れている感もある。さしずめ気安いバーテンダーか。

 そして、材料にしたらしいグミがあのお菓子のグミならお酒云々は私の早とちり。そこは一安心……ではないな。何せお菓子で作られたドリンクだ…………色々と、大丈夫か? 不安になる。

 

「できあがりっ!」

 

 おっと、そうこう言っている間にドリンクが出来上がった様だ。ポチお姉さんがパッチールから木のコップを二つ受け取り、振り返えって片方を私に渡してくる。中身は……美味しそうに見えるが、しかし。

 

「あっちでゆっくり飲もうか。聞きたい事もあるだろう?」

「そう、ですね」

 

 ポチお姉さんの言葉に私はコップの中身の不安を一度置き、お姉さんに続いて店の端の方にあった席に二人で着く。

 周りは賑やかだが、この席だけは静か……そんな状況でお姉さんはコップを煽り、一気に半分を飲み干す。美味しいのだろうか? 美味しそうだ。

 

 ━━ま、先ずは少しだけ……

 

 そう思い少しだけ、チビチビと飲んでみれば━━これは、意外というべきか。かなり美味しい。そして好きになれそうな味だ。とてもお菓子から作ったとは思えないドリンクだ……

 

「な? 結構良いだろ?」

「はい。美味しいです」

 

 追加でドリンクをチビチビと口に含めつつ、私はコップ片手に自慢気に微笑むポチお姉さんに言葉を返す。思えばこれは彼女のおごりなのだ。後でお礼を言わねばなるまい。

 

「さて、落ち着いたところでシロが聞きたい事に答えようか。何でも聞いてくれ。答えれるだけ答えよう」

「ん、そうですね……」

「ゆっくりで良いよ。そうポンポン出てくる物でもないだろうし。……あぁ、ちなみに私の姿が他のグラエナと違うのは詳しく聞かないでくれよ? 前に遺跡のトラップに引っ掛ってからこんな感じなんだ」

「えっと、それは、なんというか」

「あぁ、気にしないでくれ。別に不便してないし、私自身あんまり気にしてないんだ。身体の調子が悪い訳でもないしね」

 

 んー、それは、大丈夫なのだろうか? 調子が変わらないとはいえ、早めにどうにかした方が良いような気もするが……しかしそのままで居てくれた方が良いような。

 

 ━━まぁ、私がどうこう言う話ではあるまい。

 

 今はポチお姉さんの気遣いを受け取り、何か分からない事を質問すべきだろう。

 そう考えた私はウンウンと質問を考え始める。そんな私をポチお姉さんはコップ片手に微笑ましそうに眺めていて……それは、なんだかとても懐かしい感じがするのだ━━




 ポケダン風外伝。最初は救助隊にしようかとも思ったが、バーでカクテルをオシャレに飲んでるポチネキを描写出来ないので空の探検隊ベースです。……思えばこの世界の住人全員ベジタリアンだな? 唐揚げ無いとか作者は耐えれんわ。
 あ、ちなみに最終回まで回収する気のない伏線を山ほど放り投げてたり、資料が足りてなかったり、一章につき1話更新だったりします。許して許して。


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一章終了時の設定まとめ

 人物ノート01

 

 名前 不知火白(通称シロちゃん)

 年齢 ???

 見た目 つるーんぺたーんすとーんなアルビノロリっ娘 ジト目 普段ハイライトはあまり入ってないが、ポケモンの事になると目が輝く

 服装 基本的にジャージだったが、最近は清楚なお嬢様系

 種族 ???

 特記技能 ポケモンへの狂愛 SATUMA人の教え子 APP18 先導者の声 ■■■■■の加護

 

 解説

 本作の主人公にしてヒロインであり、全ての元凶。その見た目は美しく可愛らしいアルビノ少女だが、中身は元野郎のポケモン狂人である。元々そうだったのか、死を経験して歪んだのかは不明だが、ポケモンに対する思いは狂人のソレであり、行動指針もポケモン中心となっている。また元男の為か、かなりのズボラで自身の事にも頓着しない。この予想しようのないギャップが闇深勘違いを生むのだが……本人は欠片も気づいていないのが現状。更に目がデフォルトで死んでいるので勘違いを更に助長させている。ちなみに育ての親の影響か趣味嗜好が年寄り臭い。

 一章初期では世の中に絶望したちょっと信者の多い配信者でしかなかったが、一章終わりでは独自のツテを駆使して人脈を構築、財界や政界にまで首を突っ込める様になった。

 特技はポケモンのお絵かき……そして他者の魅了と洗脳。とはいえ彼女の魅了が力を及ぼすには幾つかの条件━━ストレスや睡眠不足等で精神の均衡が崩れている等━━があり、誰でも彼でも堕とせる訳ではない。更に魅了洗脳共に能力については無自覚である為、効率的な運用はされていないのが現状。また何に由来した能力なのかも不明。

 なお、一見完璧に見えるが割りと欠点は多い。特にポケモンバトルの知識やそれに向けた育成の知識があまり無く、この為ゲーム通りのルールに乗っ取った戦いはニガテ。ただ指揮官としての彼女は非常に冷静沈着でいっそ冷徹でさえある為か、現実的なバトルの腕前は決して悪くない。

 最近は人とポケモンが上手くやっていけてる様子にご満悦な模様。

 

 

 人物ノート02

 

 名前 ポチ(通称ポチネキ)

 レベル 1??

 種族 グラエナ

 特性 SATUMA式いかく

 特記技能 SATUMA人の教え子 6V個体

 

 解説

 主人公の相棒にして現状最強のポケモン。歴戦のSATUMA人の教え子であり、およそグラエナとは思えない戦闘能力を有している。その強さは凄まじく、並みのポケモンでは本気にさせる事すら不可能。間違いなくグラエナとしての限界に達しているのだろう。なおカウンターがスマブラ仕様だったりと、通常のグラエナとは能力に差違が見られる。

 シロちゃんとの付き合いは長い様で、時折シロちゃんを姉の様な視線で見ている。

 

 

 人物ノート03

 

 通称名 東郷お爺ちゃん

 年齢 100歳超え

 見た目 筋肉の衰えていない厳格な爺さん

 服装 基本的に和服

 種族 SATUMA人

 特性 SATUMAの波動

 特記技能 Sクラフト 奥義・SATUMA神剣

 

 解説

 主人公とその相棒の育て親であり師匠。大戦を生き抜いた歴戦のSATUMA人であり、変態が編隊を組んでいた頃は警備員の真似事もしていた。現在は不穏な噂の真偽を確かめるべく故郷に帰省中……彼が戻るとすれば、それは戦いの最中だろう。

 IF時空では生きる意味を見失い、本編開始時期に老衰で死亡している。

 

 

 人物ノート04

 

 名前 伊藤ユウカ

 年齢 二十代前半

 見た目 大和撫子系

 服装 落ち着いた雰囲気を好む

 職業 お嬢様

 特記技能 お嬢様 プロパガンダの知識 シロちゃんガチ勢

 

 解説

 元THEお嬢様。現エリートシロ民。それが彼女の全てである。

 生まれ持った家柄と才能を振り回し、芸能界で好き勝手していた彼女はある日人生初の挫折を経験。そのまま下り坂を転げ落ちていった彼女を救ったのがシロちゃんであり、シロちゃんの夢だった。白い少女の純粋にして狂気の夢に触れた彼女は何かを思い至り、それまでの全てを捨てシロ民へと転進。結果芸能界でも有数の存在へと駆け上がるが……シロ民となった彼女にとってそんな事は些事に過ぎず、いつか少女と会える日を心待ちにし━━ついにギガヨットを引っ提げて登場する事となった。

 その後は自身の持つ能力、家柄、コネ……ありとあらゆる物を駆使してシロちゃんの夢を叶える為に奔走している。全てはあの日共感した夢の為に━━

 IF時空ではシロちゃんに会えなかった為、落ちるとこまで落ちきり、最終的には行方不明となっている。

 

 

 人物ノート05

 

 名前 ???(通称筆頭犬兵)

 年齢 二十代

 見た目 鋭利な刃物の様だと言われるらしい

 服装 コートを好む

 職業 筆頭犬兵 超能力者

 特記技能 サイコメトリー能力

 

 解説

 シロちゃんガチ勢の中でも秩序と規律を重んじるのが犬兵であり、彼はその中でも筆頭格の存在である。それなりに回る頭脳と、シロちゃんの為なら生活を投げ出すアクティブさ、何より秩序に準じる覚悟は筆頭犬兵の名に相応しい。

 また彼はシロ民の中でも最も早く変態テロリストの動きに気づいた存在でもあり、以後その動きを追い続けている。とはいえ不規則に過ぎる動きに当初の予想は外れ、後手後手になっているが……それでも、何かを掴んで帰ってくるだろう。

 基本的に個人で動くが、スポンサーの言う事に従う事も多い。またシロ民初の超能力者でもあり、そのサイコメトリー能力はかなり強力だ。とはいえ最初から自覚していた訳でもなく、本人も能力には懐疑的……もし彼の超能力を肯定してくれるシロちゃんの知識や人物がいなければ、彼の能力は暴走していだろう。

 IF時空に置いては志願兵となり戦闘に参加するも、戦いの中でサイコメトリー能力が暴走。強化人間染みたムーヴでギャラドスと一騎打ちをする事になり、その後MIA判定を受ける。

 

 

 人物ノート06

 

 名前 ???(通称コラッタニキ)

 年齢 二十代後半

 見た目 疲れきったサラリーマン

 服装 セミフォーマル、あるいはスーツを好む

 職業 ポケモントレーナー

 特記技能 胃痛

 

 解説

 二人目のポケモントレーナーにして胃痛のお兄さん。それがコラッタニキである。

 以前は社畜として過ごしていたが、ポケモンの登場を気に退職。家財を引き払って関東へと向かい、そこで二人目のポケモントレーナーとなる。……が、それこそが彼の胃痛の始まりだった。

 シロちゃんが警護やその他様々な問題から表に出れない為、お偉いさんへの説明を中心に駆り出される事になったのだ。勿論元社畜にそんな状況への耐性などなく、あっという間に彼は胃痛と友達に、胃薬と親友になるはめになった。最近は胃痛が慢性化しているらしい……また、相棒のコラッタと共に胃薬のコマーシャルにも起用された。

 そんな二人目のポケモントレーナーだが、ポケモンバトルの腕はあまり良くない。というか悪い。これもお偉いさんとの会食ばかりで、実戦経験が少ないからだが……今後改善されるかは甚だ疑問だ。

 IF時空に置いては蚊帳の外。何だか分からないうちに事が始まり、気づけば日常は崩壊していた。

 

 

 人物ノート07

 

 名前 ???(通称テロリストのボス)

 年齢 三十代前半

 見た目 ダイエットに成功したデブ

 服装 だらしない

 職業 ハッカー テロリスト 催眠術師 ???

 特記技能 ハッキング 催眠術 共産圏へのコネ

 

 解説

 元シロ民。現テロリスト。それが彼の全てだろう。

 極まった変態であり、同時に自己中心的である彼はシロちゃんへの襲撃を敢行し、あえなく撃退。そのままブタ箱行きだったのだが……いつの間にか大規模なテロリストのボスとなっていた。

 その背景には極まった変態性と、天才的なハッキングと催眠術の腕があり、それによって確保された共産圏へのコネが上げられるだろう。しかしそれだけの戦力を確保しておきながら積極的攻勢には出ておらず、極まった変態性とは裏腹に慎重さを持ち合わせている。

 とはいえ悪としてのカリスマ性は欠片も無く、悪役として三流も良いところ。このままでは出番すらなくブタ箱行きは目に見えている。現在は更なる戦力増強の為に関東を離れているらしいが……

 IF時空に置いては蚊帳の外。何だか分からないうちに事が始まり、気づけば日常は崩壊していた。

 

 

 人物ノート08

 

 名前 遊山(ゆさん) (かおり)(通称バタフリーのトレーナー)

 年齢 十代後半

 見た目 元気系アイドル

 服装 動きやすい物を好む

 職業 アイドル

 特記技能 アイドル ポケモントレーナー

 

 解説

 元気系アイドルなバタフリーのトレーナー。日本政府が公式に認めた三人目のポケモントレーナーであり、本人の職業と相まってメディアでポケモンの事を語る事が多い。また伊藤ユウカは同じ事務所の先輩であり雇い主で、無茶振りスレスレを要求されたり、便利に使われる事が多い様だ。

 現在は同じポケモントレーナーになった同期の冷水紗輝と共にユニットを組んで活動しており、アイドル兼ポケモントレーナーとして様々な広報やデモンストレーションを行っている。胃痛のお兄さんとは友達。

 最近はキレ気味の先輩からシロちゃんの友達枠に入る様に無茶振りされた。が、実際会ってみるとそこまで無茶振りではなく、スムーズに友人関係を結ぶ事に成功。人徳。とはいえシロちゃんからは闇のオーラを感じずにはいられず、どう仲良くしていくか悩んでいる様だ。

 ポケモンバトルでは各種“こな”を使って相手の動きを制限し、一方的に打ちのめす戦術を得意とする。またこの戦術を確かな物とする為か、彼女のバタフリーは回避技術を高められている様だ。腕前はそこそこ。

 

 人物ノート09

 

 名前 冷水(しみず) 紗輝(さき)(通称ピカチュウのトレーナー)

 年齢 十代後半

 見た目 無口系アイドル

 服装 落ち着いた物を好む

 職業 アイドル

 特記技能 アイドル ポケモントレーナー

 

 解説

 無口系アイドルなピカチュウのポケモントレーナー。他の人物に遅れつつも早い段階でポケモンをゲットした人物であり、遊山香とユニットを組んでからはポケモン関連の広報デモンストレーションに引っ張りだこ。バタフリー(32キロ)を頭に乗せる相棒をアホの子扱いしつつも、邪険には扱わない。なんだかんだ気が合うらしい。

 最近はキレ気味の先輩から相棒と一緒にシロちゃんの友人枠に入れと言われ、仕事ならと覚悟を決めて望んだが……案外アッサリ友人枠に入れた事に拍子抜けしている。しかしシロちゃんから感じる闇のオーラに嫌な予感を感じずにはいられず、ポケモン談義で盛り上がりながらも警戒心が解けない日々が続いている。

 ポケモンバトルではやたら動きのいいピカチュウを巧みに指示し、隙を見ては“まひ”状態に陥れて一気に叩く戦術を得意とする。またこの戦術を確かな物とする為か、彼女のピカチュウはかなりの練度を誇るようだ。腕前は悪くない。

 

 その他

 

 シロちゃん家の近所の爺さん婆さん

 基本的にのんびりとした人達であり、シロちゃんの事は孫のように思っている。またシロちゃんとしても割りとなついている様子。最近はきのみ栽培に凝っている模様。

 

 シロ民

 ある意味この作品の主役といえる存在。ニートからお嬢様まで幅広い層を持ち、中には霊能力者や超能力者も居る。基本的にノリが良い連中(ノリが10年、20年古いのは作者の責任だ。だが作者は謝らない。というかどうしようもない)

 ポケモンへの知識はかなりの物があり、数百のポケモンの名前を全て暗記している者も多い。とはいえそのレベルや忠誠心はバラつきがあり、派閥も多岐にわたる。

 モータルシロ民、一般シロ民、犬兵、シロちゃんガチ勢、エリートシロ民、シロちゃん親衛隊……と自称他称は多岐に過ぎるので、その場のフィーリングで誤魔化す者も多い様だ。最近は異世界から論者の生き霊が生えた。

 

 元シロ民

 シロ民から追放認定を受けた者達。その殆んどがテロリストとなっている。シロ民曰くシロ民の恥。

 ポケモンの知識はあまりないものの、全く無いという訳ではない。とはいえポケモンバトルの腕は赤点の様だ。

 

 植物学者

 “きのみ”学の第一人者。学者としてはかなりの若手であり、分からない事は人に聞く素直さと柔軟な発想力を持つ。

 友人にシロ民がおり、その関係で“きのみ”やシロちゃんの事を知り、“きのみ”を中心に世間へポケモンを知らせる事に一役かった。現在はポケモン研究所で研究室の室長を努めている。

 

 ポッポ

 自分の事を我輩と呼ぶ特異なポッポ。ちょいちょい勘違いしてはいるものの、人の世を冷静に見つめる等、かなりの知能を持っている事が伺える。

 今日も彼は空を飛びながら、人の世を見るのだろう。

 

 伊藤の爺さん

 元大物政治家であり、現役引退後も各所に強い影響力を持つ人物。孫に甘い。

 SATUMAのお爺ちゃん事東郷氏に教えを受けていた事があるらしく、彼にとってSATUMAお爺ちゃんは先生らしい。

 IF時空では死にそうになかった恩師の死にショックを受け、更に孫の目を疑う失態が続き、そのまま引きずられるように老衰した。

 

 総理大臣

 一般的に見て日本で一番偉い人。自分の任期中に来た特大の厄介事に頭髪を減らしながらも、確かなやりごたえを感じている様だ。伊藤の爺さんは先生にあたるらしい。

 IF時空では突然の災害の責任を追及され、叩かれ、頭ハゲ散らかしながら対応したもののどうにもならず、最終的に内閣総辞職ビームを受け行方不明となった。

 

 リヴァイアサン号艦長

 ギガヨットの持ち主。普段は日本に寄り付かないが、偶然立ち寄ったところを捕獲された。伊藤父とは仲が良いが、ユウカ嬢はニガテ。

 最近はCIAとの関係が噂されている。なお船酔いもしなければ“いあいぎり”も使えない。

 

 ポケモン研究所所長

 短時間で未知の技術の基礎研究を済ませるなど、非常に有能な人物。とはいえそれに比例するかの様にSAN値が低く、時折発狂する様子が見受けられる。

 霊能力者曰く、チョビヒゲの伍長閣下が背後に見えるそうだ……

 

 

 

 用語解説

 

 SATUMA人

 歴史の節目節目に現れる謎の存在。頭角を表したのは戦国時代辺りからで、戦国時代の終わりには『島津の退き口』を披露しその名を後世まで知らしめた。

 その後も事ある事にその名を残し、日中、日露、第一次、第二次と戦いの場には必ず彼らの名が残されている。また戦いとは直接関係なさそうな場面……例えば戦後日本においてもちょくちょく名前を残している。万能かよ

 作者は一度薩摩の地を踏んだ事があるが……さもありなんといったところか。人生で一度は行ってみるのをオススメする。二度行きたいとは思えないが(薩摩人パワフル過ぎんよぉー)

 

 リヴァイアサン号

 ギガヨットという名の海の城。お前のようなヨットがいるか

 豪華客船顔負けの内装を持ちながら、軍用ヘリの運用能力と軍艦並みの抗堪性を備える海の要塞。今後海で何か起これば真っ先に駆り出される事だろう。

 ちなみに世界にはステルス性能を持つギガヨットが存在するらしい。そんなもん何に使うんだ……所有者はロシア人? あぁ……(納得)

 

 

 

 外伝人物ノート01

 名前 不知火 白

 レベル 1

 年齢 ???

 見た目 アルビノロリっ娘

 服装 お嬢様スタイル

 種族 ■■■■■

 特記技能 ■■■■■の■■ ポケモンの知識 ■■■

 

 解説

 外伝時間軸のシロちゃん。どういう訳か様々な記憶を失い、ポチダン世界に迷い込んでいた。

 失われた記憶には元野郎だった事や、ポケモンに関する狂愛等が含まれている様で、本編時間軸よりも女性的でマトモ。結果目のハイライトも普通になり、萌えレベルが上昇している。

 目覚めた後は最初にあったポチお姉さんに強い既視感と安心感を覚え、ホイホイ着いていってドリンクを奢られる始末。今後彼女はどうなるのか……それは神ですら分からない。

 

 

 外伝人物ノート02

 名前 ポチ

 レベル 60

 年齢 人間換算で二十代前半

 見た目 萌え擬人化したグラエナ

 種族 グラエナ

 職業 賞金稼ぎ 探検家

 特記技能 6V個体 ■■■■■ウイルス感染個体

 

 解説

 外伝時間軸のポチネキ。腕利きの賞金稼ぎ兼探検家として日々を過ごしていたが、何気なく海を見に行ったらやたらなつくのが早いアルビノロリっ娘を拾う。仕方なしにドリンクを奢り、落ち着いた状況で話を聞いていく事にした。面倒見が良いお姉さん。

 萌え擬人化しているのは遺跡のトラップに引っ掛かったからだそう。




 ちょくちょく言われるのですが……シロちゃん=作者ではありません。シロちゃん≒作者ですらなく、むしろシロちゃん≠作者だと言っていいぐらいです。というかシロちゃんは皆様の見立てによって萌えが強化されるキャラなので、そもそも作者と=で結べないんですよね。なので悪しからずご了承のほど、宜しくお願いします。

 ◇


 次回予告
 シロちゃん?「ポケモン達とのファーストコンタクトを無事に終え、人類滅亡シナリオを回避した我らの前に信じがたい現実が立ちふさがる!!」
 変態テロリスト「グヒュヒュヒュ。そう……! いよいよ我らテロリストが本格攻勢を仕掛けるのだ! 驚け! そして、ひれ伏すがいい!」
 シロちゃん?「なんとアルビノヒロインという素晴らしい属性がありながら、それがロクに使用されてないという現実があるのだ!」
 シロちゃん「え、信じがたい事実ってその事ですか……!?」
 シロちゃん?「ちなみにこの作品でアルビノヒロインの魅力を引き出せていないのは作者のせいだ。だが作者は執筆の反動で灰になった。謝れない」
 シロちゃん「えぇっと……」
 変態テロリスト「グヒュ、グヒュヒュヒュ! 我らが生きてたことに驚けよ、君達! ちなみに魅力を引き出せていないのはアルビノ描写が少ないせいだ」
 シロちゃん「……そして貴方も、なぜか詳しいんですね」
 シロちゃん?「問題はアルビノヒロインの素晴らしさが未だ広まっていないという事実だ! これは一体、どういうことなのだ!? そんなことでいいのか、紳士達よ! 胸の事ばかり語ってないで、アルビノヒロインの神秘性について語るべきだろう。というか場合によってはアルビノヒロインと白髪ヒロインの違いすら微妙だと? そんな曖昧な定義では、私が泣くぞ! その涙で、更に業界がしょっぱくなるぞ! しっかりせんか、紳士達!!」
 シロちゃん「しっかりするのは貴女ですよ!? このアルビノおバカ!」
 シロちゃん?「次回『携帯獣探偵シロちゃん』第3話!『ポケモンリーグ殺人事件』真実はいつもポケモンとは限らんッ!」
 変態テロリスト「グヒュ!? グヒュヒュ! 殺人事件? 誰か死ぬのか?」
 シロちゃん?「お前だァァッ!!」


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第二章 決戦! カントー! 第22話 動き出すモノ

 ━━政府公式会見より、一ヶ月。

 ━━九州本土より北へ約130キロ。

 ━━北緯34度25分。東経129度20分。

 ━━対馬。

 ━━内陸部、洞窟内。

 

 この日、普段人が寄り付かないとある洞窟内には多くの人間が居た。懐中電灯で暗闇を照らしながら二、三人で一塊となって注意深く足を進める者達……背丈も服装もバラバラな彼らだが、その動きは悪くない。むしろ良く訓練されているといえるだろう。

 それもそのはず。一人を除けば彼らは警察官であり、あるいは普段SPの真似事をしている警備員や傭兵なのだ。そして除いた一人もただ者ではない。

 

「……間違いない。つい先程までここには複数人の人間が居た」

「サイコメトリー能力って奴ですか。確かなので?」

「さぁ、な。俺自身能力には半信半疑だ。……が、少なくとも能力はそう言ってる」

「それは、なんとも……」

 

 現在確認されている唯一の超能力者にして、サイコメトリー能力の使い手。通称、筆頭犬兵。

 テロリストを追っている彼がなぜ対馬の洞窟に多数の人と共に居るのかといえば……この洞窟がテロリストの拠点だと推測されたからだ。そして、その推測は彼の超能力によって━━それを信じるならだが━━裏が取れた。凡そ間違いないと。

 

「まぁ、何にせよ、調べてないのは後少しです。居るとしたらそこでしょう」

「あぁ、充分に注意して……ん?」

 

 筆頭犬兵を含む一団が先へ進もうとしたところ、背後から足音が響く。すわテロリストかと身構えて振り返り、各々が懐中電灯を向けて見れば……そこに居たのは自分達と同じ、しかし別の道を調べていた一団だった。どうやら別の道を調べ終わり、こちらへと合流したらしい。

 

「その様子だと、そちらは外れか?」

「あぁ、こっちはちょっとした居住区で、人は居なかった」

「となると……」

「この先だろうな」

 

 一団が合流し、各々が頷いて先へと足を進める。慎重に、しかし確実に。その中で筆頭犬兵は妙な違和感を覚えていた。

 

 ━━おかしい。静か過ぎる。

 

 恐らくそれは他の者も思っているだろう。だからこそ警戒して進んでいるのだ。しかし……筆頭犬兵のそれは彼らより一歩前に進んでいた。

 

 ━━何だ? この徒労感は……?

 

 それは今まで引いて来たハズレと同じ感覚。バカな、そんなはずはない。この洞窟の出入り口は少数とはいえ武装した警官隊が塞いでいるし、内部に先程まで居たのは能力で確認済みだ。それこそテロリストのリーダー格である変態が居たのも確認している。ハズレなはずがない。

 筆頭犬兵はそう思ってはみるが、それでも徒労感は無くならない。まるでここもハズレだといわんばかりに……

 

「これは、扉か?」

「重厚だな……鉄なのか?」

「各員、装備の点検。居るとしたらここだぞ」

 

 そうこうしているうちに一団はそれらしい扉の前にたどり着く。重厚な、しかし最近後付けされたと見える鉄の扉だ。他の場所に居なかった以上、居るとしたらここに立て籠もって居るのだろう……そう全員が確信し、各々装備を点検していく。

 それが終われば隊列の変更。バリスティックシールドを持った者が前に、拳銃を持った者がその後ろに続き、徒労感に悩まされる筆頭犬兵は最後尾だ。

 そして、遂に準備が終わり、突入の瞬間が訪れる。

 

「よーし。各員突入用意。分かっていると思うが我々の装備ではポケモンに勝てない。万が一テロリストがポケモンを出してきた、あるいはいた場合は直ちに後退。催涙弾と麻酔銃、及びスタングレネードによる無力化を試みる。……良いか? 良いな? よし。先頭、扉を開けれるか確認してくれ」

 

 不幸にも彼らの中にポケモンを持つ者は一人も居ない。しかし居ないなら居ないなりにと効果的と推測される作戦を練っており、突入の準備は万端だった。

 そうして先頭が扉に手を掛ける。大方鍵が掛かっているだろうと思いながら━━しかし。

 

「これは、開く……?」

「何?」

 

 ギッ、と。微かだが扉が動く。まさかテロリストども、鍵を掛け忘れたのか? そう各々が隣の者と目を合わせる中、筆頭犬兵は酷い徒労感に襲われていた。間違いなく、ハズレだと。

 

「隊長、突入を」

「そうだな、各員━━突入!」

 

 これ以上嫌な感覚に襲われたくない筆頭犬兵は一団の隊長の背中を押し、結果として一団は一斉に前進を開始する。

 先頭が鉄の扉に盾をぶつけて押し開いてそのまま突っ込み、後に続く者がその先を照らせば━━誰も居ない。見えるのは洞窟の岩肌、そして幾つかのコンテナだ。

 

 ━━どこかに隠れて居るのか?

 

 そう各々が目を凝らし、懐中電灯を動かすが……人が居る様には見えない。かといって他の道がある訳でもなく、完全な行き止まりだ。

 おかしい、ここに居るはずだ━━そう一団が警戒する中、筆頭犬兵がスルリと盾持ちの横を通り抜けて先へと進む。

 

「あ、おい!」

「大丈夫だ。ここもハズレだからな」

 

 うんざりだ。そう言わんばかりにスタスタと歩き、部屋の中央まで歩いていく筆頭犬兵。そうして進んだ彼を襲う者もおらず、一団も各々警戒しつつも先へと進んで筆頭犬兵と合流する。

 そうして全員がハズレを確信し……興味が移るのはコンテナだ。

 

「居ない様ですな」

「ハズレ……いや、こんなものがあるのだから逃げられたか。抜け道でもあったか?」

「洞窟ですからね。なんとも。しかし、こんな大きなコンテナをどこから……」

 

 部屋に幾つか置かれたコンテナは、貨物船やトラックで運ぶタイプなのだろう。かなり大きい。少なくとも彼らが通って来た場所から運べるとはとても思えない大きさのものばかりだ。

 そうして一団が頭にクエスチョンマークを浮かべつつ、何気なくコンテナの扉に手を掛けてみれば……開いた。やはり鍵は掛けてないらしい。そう呆れつつ中身を見てみれば、呆れは吹っ飛んだ。

 

「バカな、何だこれは!?」

「銃が、こんなに沢山……!」

「AK47にM16、トカレフに……お、M700もか」

 

 そこにあるのは乱雑に、しかし無数に置かれた銃器の数々だ。どうにも銃に詳しいらしい警察官の一人言を信じるなら、種類も様々に用意されているのだろう。

 

「凄まじい物だな」

「えぇ、全く。西側東側問わず揃えられています。とはいえ、全て中華製コピー品の様ですが……ん?」

 

 銃に詳しい警察官はこれらの銃をコピー品だと断じた後、何かに気づいたのか手に取っていたライフル銃をおろして別の物を取る。それは鉄の筒。そのままでは役に立ちそうにもないが、少しでも知っている者にはそれが何なのかはおよそ想像がついた。つまり。

 

「バズーカか?」

「いえ、RPG7。ロケットランチャーですね。その発射機の部分です」

「……要するに、物騒な物って訳だろ?」

「まぁ、そうですね」

 

 確かに物騒には変わりないと銃に詳しい警察官が苦笑しつつRPG7を床に下ろしていると、別の警察官が慌てた様子で走り寄ってくる。どうやらロクでもない物を見つけたらしい。

 

「隊長! こちらに来て下さい」

「どうした? 何か見つかったか」

「はい。その、自分では判断しかねる物が……こちらです」

 

 いったい何を見つけたというのか? そう疑問を持ちつつ移動してみれば……なるほど、確かに判断しかねる物が別のコンテナ内に転がっていた。

 

「これは……砲弾か?」

「ふむ…………戦車砲弾ですね。以前ロシアの博物館でみたのとそっくりです。これは、T-34の砲弾か?」

「T-34?」

「戦車ですよ。ソ連が生み出した傑作戦車にして、現役の骨董品です」

 

 現役の骨董品というのはある意味矛盾した言葉だが、事実だから手に負えない。

 そう苦笑する警察官の横を筆頭犬兵はスルリと通り過ぎ、コンテナ群の奥へと進んでいく。面倒な事になったと思いつつ。

 

 ━━戦車とはな。確かに慎重な奴ではあったが……やり過ぎだろう。

 

 いくら何でもこれはない。奴め、目的と手段が入れ替わったんじゃないのか? そう内心で吐きつつ他のコンテナを覗いてみれば、そこにも銃や砲弾、あるいは砲そのものが放置されている。

 恐らく運び込んだまでは良かったが、他に良い隠し場所も無く、そのまま今日を迎えて放棄せざるを得なくなったのだろう。その点でいえば今回はアタリだった。

 もっとも、大元を絶たなければまた同じ事が繰り返されるだけだが。

 

 ━━まぁ、どんな手段で手に入れ、どうやってここに運んだかはだいたい想像がつくけどな。

 

 そう鼻で笑って先へと進む筆頭犬兵だが、やがて完全な行き止まりにぶち当たる。抜け道も見られないし、やはりテロリスト自体は逃がしたか……そう思ったとき、脳ミソがふと何かを感じ取った。

 その感覚に導かれてみれば━━

 

「なんだ、この紙切れ……?」

 

 そこにあったのは落としてから間もないのだろう、まだ真新しい紙切れだった。何気なく拾って見れば……どうやらメモ用紙の切れ端らしく、幾つかの震えの酷い走り書きが書いてあった。

 

「壁画、神、ポケモン。存在しない。過去……人類史の否定。不知火白、特異点。インベーダー? 消えた存在、概念。取り戻せない。そして、全ては侵食され消え失せる━━何だ、これは?」

 

 意味不明。そう言って間違いない文字の羅列を一通り読んだ筆頭犬兵は、そのあまりのデタラメ具合に紙を捨てようとする……が、ふと自分の能力を思い出して改めて意識を集中する。

 サイコメトリー能力。いつの間にか覚醒していたこの能力を使えば、コレが書かれた当時の事を見れるのではと期待したのだ。

 

 ━━さて、上手くいくか……?

 

 サイコメトリー能力は固体に対しては効きづらく、また思念が残らないゴミに対しても効果を発揮しない。しかしこのメモの切れ端が所謂『たいせつなもの』ならそれなりの情報を見れるはず……そう意識を集中していけば━━

 

『洞窟』『奥へと続く通路』『先にある壁画』

『荒れ狂う大地』『荒れ狂う海』

『メモに書き殴る推測』『焦燥』『勘違い』『改変』『自我が崩れ━━

 

 ブツリ。

 そこで記憶の再生は止まる。ニガテな固体、それも紙切れ相手である事を考えればかなり健闘したが……何がなんだかサッパリ分からない。

 強いていえば変態テロリストが━━今までもそうだったが、これからはそれ以上に━━発狂し、その原因がこの洞窟の奥にある壁画だという事だろう。

 しかし……

 

「どこにもそんな道は……いや、崩れたのか」

 

 記憶で見た壁画の間へと続く通路はどこにも無く、あるのは岩肌ばかり。しかしよくよく懐中電灯で照らして見てみれば、どうにも崩れたらしい場所を見つける事が出来た。恐らくこのメモが書かれた後に崩れたのだろう。道は完全に塞がっており、幸か不幸か、壁画を見る事は出来なさそうだ。

 

「お前は、いったい……何を見たんだ?」

 

 今は討つべき敵となったかつての同胞が見たナニカ。それに激しく嫌な予感を感じつつ……しかし、何も出来ずに筆頭犬兵は警官隊と合流する。ここで得るべき情報は他にないと判断して。

 

 ポケモンが世間に広まって一ヶ月。事態は大きく動き始めていた━━




 現代×ポケモン×TSの作品が増えてきて嬉しい限り……


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第23話 不可視の思惑

 日本政府がポケモンを認めてくれて……一ヶ月と少し。私は相変わらず伊藤家別荘に用意された自室でのんびりと過ごしていた。

 いや、何せポケモンが順調に出現していっている以外には特に変わった事もないので、自然と私も暇になるのだ。まぁ、ここ数日は女の子特有の理由で体調が悪かったけど……それも治ったし、本格的に暇だ。

 

 ━━思えば、アレにも慣れちゃったなぁ……

 

 最初こそ突然の出血と体調不良に酷く困惑し、ダルい身体でネットを駆け回る事になったが……今となっては冷静に対応出来る。強くなったと誇るべきか、男の心が消し飛んだと嘆くべきかは分からないが。

 

「んー……何しよっかなぁ」

 

 終わった事はさておき、この状況での暇というのは良くない。何せ周りがいそいそと働いているのに自分だけのんびりしているのだから、罪悪感が凄まじいのだ。コラッタニキの話なんかを聞くと特に。

 なので私も何かしたいところだが……手に職は無く、まさか毎時間配信する訳にもいかない。どうしたものか。

 

 ━━んー? ……リモコン、どこに置いたっけ?

 

 特に何も思い付かないし、差し当たり暇潰しにテレビでも見よう。そう思い至った私は部屋からリモコンを探し出して、何となくテレビの電源を付ける。

 普段見ないからこの時間に何があるのかサッパリなのだが……ふむ、どうやらどこかのライブ映像の様だ。演者は……おぉ、あの二人か。

 

『バタフリー! “ぎんいろのかぜ”!』

『ピカチュウ、“十万ボルト”』

 

 バタフリーが広く散らした銀のリンプンに、ピカチュウの十万ボルトが次々と突き刺さって激しく稲妻を散らす。出来上がるのは雷の神殿、幻想的にしてエレクトリックなステージの出来上がりだ。流石に何日も練習しただけはある……生で見ている人達は圧倒された事だろう。何せ未完成のソレですら凄まじい迫力だったのだから。

 

『さぁ! 早速一曲目に行きましょう! 最初は━━』

 

 そして雷の神殿が消え去り、元のステージに戻った舞台で二人は歌を歌い始める。歌の良し悪しは分からないけど……たぶん上手いのだろう。少なくとも聞いていて嫌になったりはしないし、むしろ楽しくなってくる。流石はアイドル。

 

「こうして歌ってるの見るの、始めてだけど」

 

 彼女達との出会いはバラバラだ。バタフリーのポケモントレーナー……カオリとは悔いの残る最初のポケモンバトルの日で、ピカチュウのポケモントレーナー……サキとは私が雑誌のインタビューを受けた日。最初は仲がいいとはお世辞にもいえない仲だったけど、今ではよくポケモンの事━━主に自分達の相棒の事━━について話す仲だ。先日も先ほどのパフォーマンスの練習に付き合っていたし、むしろ仲が良いのではないだろうか……?

 

 ━━その割には彼女達の仕事には一切興味を持たなかったけど……

 

 アイドルの仕事が何なのかはサッパリだが、少なくとも私から歌をねだった覚えは無く、せいぜい鼻歌を耳にしたくらい……いや、ポケモンの事を話せるからついついその辺りの気遣いがスッ飛んでいたのだ。彼女達のプライドを傷つけてなければ良いのだが……

 

『フリフリャー』

『ピッ、ピカチュー!』

 

 そうこうしてるうちに二人の歌はサビに入ったらしく、曲のテンポが上がり、バタフリーとピカチュウによる演出もより一層強いものになっていた。

 バタフリーが様々なリンプンを撒き、ピカチュウが電撃でそれを強調し、ときに利用する……息のあったコンビプレイだ。トレーナーが口頭で指示を出せず、身振り手振りで指示を出している事を加味すれば、この演目の技術評価点はストップ高間違いなしだろう。少なくとも私なら10点満点中10点を付ける。

 

「……コンテスト、か」

 

 そんな素晴らしい舞台を見て、私が思うのは『ポケモンコンテスト』の事。ユウカさんを通じて政府や財界の上層部にポケモンリーグ設立の必要性を訴えている私だが、ポケモンコンテスト開催には消極的だった。

 やるのならホウエン……九州にポケモンが出てから。そんな思いが無かった訳ではないが、一番の理由は演者が居ないのではないかという不安からだ。そもそも私がコンテストに詳しくないし、フィーリングでやろうにもポチの“わざ”はコンテスト向きとは言い難い。少なくともあの二人の様な舞台を作り出すのは不可能だろう。

 だが。

 

 ━━あの二人を中心にすれば……?

 

 出来なくはない、はすだ。あの二人は既にポケモンと協力してパフォーマンスを行っているし、観客の受けも良いように思える。テレビの向こう側の熱狂ぶりを見る限り、ポケモンとのパフォーマンスが一般化するのも時間の問題だと思える。

 

 ━━そしてそうなれば、ポケモンコンテストの開催も自然に……

 

 悪くない。そう内心で笑みを浮かべながら、私は脳内のメモにポケモンコンテスト開催についての草案を殴り書く。偉い人達を頷けさせる利益や利権等はユウカさんに相談するとして、それがどういった物なのか? その根本的な部分の説明は私の役目だろうから。

 

「……うん、二人にも手伝って貰おうかな」

 

 友達、そう言えるかも知れない二人のパフォーマンスを見ながら、私はそう呟く。それなら説明の手間が大きく省けるし、ポケモンの魅力をより一層知って貰える。二人だって悪い顔はするまい。そう思ってテレビをボンヤリと眺めていると、突然画面が切り替わった。

 ハッとして見れば、どうやらCMの時間らしい。なんと幸先の悪い……

 

「むー」

 

 興味も無いCMを見る気は無い私は、何気なくリモコンを操作して他のチャンネルを回して見る。

 バラエティー、教育番組、CM、バラエティー、CM、スポーツ中継……どれもこれも興味が湧かない内容ばかり。やがてはこれらの番組もポケモンを扱うのだろうか? そんな事を思いながらチャンネルを二人のライブ中継に戻そうとして━━別のポケモンを扱う番組を見つけた。これは、バラエティー番組か? どうやらトークショーの形を取ってポケモンの事を語っているようだが……おや?

 

『━━以上の様な事実が既に立証され、臨床試験も完了。後は細かい法整備を待つだけという状況です。“きのみ”由来の薬効が不治の病を治す。そんな日も近い事でしょう』

 

 テレビに映っているのは“きのみ”を語る若い男性の姿。テロップを読めばきのみ学の権威だと書いてある。直接会った事は一度もないが、恐らく彼が噂の植物学者だろう。そんな気がする。

 

『なるほど、ファンタジーだな。それに副作用もあるとある。実際に導入するのは危険じゃないかね?』

『懸念はごもっともです。しかし今回発生した副作用はいずれも同じ物……体内の栄養が急速に消費されるという物で、これらは事前に栄養を取っておくか、“きのみ”の接触と並行して栄養剤を投与する事で充分解決出来ると考えています』

『遅効性の毒物が含まれている可能性は?』

『ありません』

『未知の成分があると聞いたが? よくそれで断言できるな』

『確かに未知の成分は存在します。しかし同時にそれが毒物でない事も判明しているのです。……これは公開した資料にも明記されています』

 

 ふむ、どうやら賛成派と反対派に分かれて討論を行うタイプの番組らしい。見たところ植物学者さんは賛成派で、反対派は旗色が悪いといったところか。さもありなん。

 そう私がウンウン頷いている間にも植物学者のターンは暫く続き、やがてカメラが切り替わる。別の話題に移るらしい。

 

『━━では、続きましてポケモンに関しての事柄に移りましょう。……誰か、あぁどうぞ』

『私からはポケモンの危険性についてです』

 

 むぅ、危険性か。テレビに映る……どこぞの大学教授らしいジジイの懸念は分からないでもない。ポケモンの力は強大で、普通の人間ではコイキングにすら負けかねないのだ。現に一ヶ月以上前のテロリストの襲撃では、ポケモンの攻撃で危うく死人が出掛けた……

 

 ━━けど、あれは人間が悪い。

 

 銃だろうと包丁だろうと、なんなら言葉や素手で人は人を殺せる。しかしそれらが危険だからといって、自分の手足をもぐ様な奴は居ないし、銃だって持ってる人は持ってるのだ。

 ポケモンも同じ話。付き合い方や知識を考えればどうとでもなるし、それらを考えなければ酷い事も出来れば、痛い目にも合う。現にテロリストどもはポケモンで人を傷つけたが、シロ民は“きのみ”の知識で難を逃れたのだ。結局は人次第で、だからこそ拒絶せずに、一度じっくりと考えて━━

 

『ハッキリ言って、ポケモンは危険です。今すぐ隔離し、遠ざけるべきかと』

 

 …………は?

 

『よく考えてみて下さい。我々の身の丈を越える生き物が、炎を吹き、雷を落とし、光線を吐くのです。果たしてそれは安全でしょうか? いいえ。安全ではありません。危険です。現に一ヶ月程前には犯罪に用いられ、多数の人々が病院へ救急搬送される事になりました』

『その通り。政府は友好関係を強調していますが、それは嘘です。実際には多くの人々が傷ついているのです。そして、それは皆さんも例外ではありません。筑波では道路が寸断され、土浦では幽霊騒ぎが起き、多くの海岸では毒性生物を危惧して海水浴を楽しめなくなっています。……これはホンの一部。政府は躍起になって隠蔽していますが、あの異常な生物達は多くの被害を我々に与えているのです。そして、彼らと関係を続ける限り、この被害は拡大する事でしょう』

 

 …………嘘は、言っていない。確かに一ヶ月前の騒ぎでは多くのシロ民が救急搬送されたし、ポケモンゲットまでにそれなりの被害が出ているのも事実だ。その被害が拡大するだろう事も。

 しかし、しかしだ! ポケモンはそれだけじゃない! 危険なだけがポケモンではない! ポケモンは、ポケモンは人と共に歩んでいけるパートナーだ! だいたい奴らは被害被害危険危険というが、ポケモンはちゃんと被害以上の利益を出しているし、怪我人こそ出したが死人は出していない。充分、充分共存可能な範疇だろう! 人間だ。人間次第なんだ━━

 

『そして、こちらをご覧下さい。これはポケモン出現前後の為替レートを比較した物です。ポケモン出現前はこのように一般的にもよく見られる円高でしたが……ポケモン出現後は大幅な円安に陥っています。これは海外資産家が日本のポケモン出現に不安を感じ、資金を引き上げた為に起こったと考えられます』

『……それが、どうしたというのですか』

『研究職の方には分かりにくい指標かも知れませんが……これは日本が外国から信用されてない、危険だと思われた証拠です。ポケモンは日本に取ってプラスにならない。経済的に、あるいは国家そのものに打撃を受ける……この下がり幅を見るに、日本の滅亡を感じた人も居るのでしょう』

『そうですな。実際今の日本は以前に比べて非常に危険です。いつどこから危険なポケモンが現れるか分からず、子供を一人で出歩かせる事も出来ない。テロリストや危険思想を持った人間が辺りをうろつき……世紀末さながらの状況。彼らの不安はもっともでしょう。そして、彼らが資金を引き上げた事によって起きる混乱は酷いものになる恐れがある。大企業は勿論、中小企業も倒産の危険性があります』

 

 う、うぅ……? よく分からない。私が詳しいのはポケモンであって、経済や為替なんてサッパリだ。彼らの言ってる事は正しいのか? ポケモンは受け入れられてない……?

 い、いや、でも、海外の資産家が乗ってるらしいリヴァイアサン号はまだ日本に居るし、やっぱり嘘? 分からない。こういうのに詳しいのはユウカさんだが、彼女は最近忙しくしてるし……テレビの向こうの植物学者さんや、その同業者さんも難しそうな顔をしている。彼らも、分からないのだろう……

 

『皆さん、流れに流されず、一度よく考えて下さい。本当にポケモンは危険ではないのか? と。こういう状況だからこそ、一人一人がしっかりと考える事が大事なのです』

『そうですな。……まぁ、少なくとも私は安全だとは言えませんね。身の丈を越える生き物が炎や雷を出してくるですよ? そういうのは生き物ではなく、怪物と呼ぶのですから。彼らの気分次第で殺される……ゾッとしない話です』

『その通り。ポケモン、等と可愛らしく歌ってはいますが、その実情は怪物のそれで━━』

 

 ブツリ、と。私はテレビの電源を切る。

 これ以上聞きたくなかった。ポケモンはポケモンだ。人と共に歩んでいけるパートナーで、私の友達。そんな子達を貶す言葉なんて、聞きたくない。

 

「うぅぅぅ……」

 

 けれど、奴らは嘘は言っていない。全て事実だ。ポケモンが強い力を持つのも、危険性があるのも事実。だが、それでも、私はポケモンが好きなのだ。

 そして、出来れば他の人達にも分かって欲しい。触れて欲しい。危険だからと遠ざけず、分からないからと目を逸らさず、そしてあのアイドル二人の様に、素晴らしい関係を築いて欲しい。ワガママかも知れない。けれど……

 

「むぅ━━」

 

 私は再びテレビの電源を付け、直ぐ様アイドル二人が映っているチャンネルのボタンを連打。討論番組を欠片も見ず、アイドル二人の素晴らしいパフォーマンスを見ながら考えを深める。

 ああいう反対意見が出るのは分かっていた事だし、それら全てを圧殺しようとは思わない。それは私が夢見た世界ではない。なら、やる事は決まっている。その為に手始めにやるべき事は……

 

『いよいよこのライブもクライマックス! 最後はお二人の代表曲で締めて頂きましょう━━』

 

 見せつける事だ。



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掲示板 シロ民は情報操作に気づいた様です

【テロリストの】お絵描き配信者シロちゃんについて語るスレ part236【見えざる手】

 

39:名無しの犬

バンザァァァイ!

 

41:名無しの犬

バンザァァァイ!

 

42:名無しの犬

Ураааааааа!

 

43:名無しの犬

着剣せよ!

 

45:名無しの犬

着剣!

 

48:名無しの犬

突撃ィィィ!

 

55:名無しの犬

今北産業。

 

58:名無しの犬

>>55

東経一〇五

北緯二〇

地点ロの二

 

60:名無しの犬

>>55

米海軍よ

思い知るがいい

神仏照覧!

 

61:名無しの犬

>>55

左舷に被弾!

火災発生!

駆逐艦大破ァ!

 

64:名無しの犬

誰か説明……してるのかw

 

67:名無しの犬

なん……だと……!?

 

68:名無しの犬

まるで意味が分からんぞ!?

 

69:名無しの犬

意☆味☆不☆明

 

71:名無しの犬

あー、もう分かりやすく要約したのを誰か書いてやれよ。

 

74:名無しの犬

テロリストどもに攻撃されてる。

前スレでそれに気づいたシロ民が一同総発狂。

万歳エディションに突入。

 

76:名無しの犬

>>74

なるほどな。

 

77:名無しの犬

>>74

お前は間違ってない。

 

79:名無しの犬

>>74

勲章ものだ!

 

82:名無しの犬

え、いや、は? テロリストに攻撃されてるのか!? それなら一大事じゃないか! いったいどこに攻撃されたんだ!? まさか、シロちゃんが狙われたんじゃないだろうな!

 

85:名無しの犬

あー……狙われたと言えば狙われたな。

まぁ、狙われてないといえば狙われてないが。

 

86:名無しの犬

どういう事だってばよ?

 

88:名無しの犬

まぁ、気づかんよなぁ。これが奴らの一手だとか、普通は。

 

90:名無しの犬

実際俺らもシロ闇してなかったら気づかなかったし……奴らめ、思ったより策士だぞ。

 

91:名無しの犬

まさかの情報戦だもんなぁ……

 

93:名無しの犬

情報戦?

 

98:名無しの犬

取り敢えず、この辺のを見てこいカルロ。

URL

URL

URL

 

99:名無しの犬

>>98

りょ、逝ってくる。

 

100:名無しの犬

流れる様に死亡フラグ立てるなしw

 

102:名無しの犬

何かと思えばニュースのアーカイブか……まぁ、まさかだったよなぁ。

 

104:名無しの犬

マスゴミが い つ も の をしてるだけかと思えば、その裏で思惑が動いてるんだもんなぁ。そんなん誰が気づけるよ?

 

105:名無しの犬

フリーメイソンとか陰謀論が好きな人ならワンチャン……

 

107:名無しの犬

>>105

逆にいえばそのレベルの話だという事でもある。……厄介だぞ、これは。

 

109:名無しの犬

俺らシロ民がテロリストの攻撃だと騒いでも『陰謀論乙』で片付けられるし、テロリストの情報戦で俺らやシロちゃんの味方は減り続けるからな。

 

112:名無しの犬

ぶっちゃけシロちゃんを信じれない奴とか要らねーんだけど……

 

113:名無しの犬

>>112

戦いは数だよ、狂信者!

 

115:名無しの犬

>>113

それな。

歩の無い将棋は負け将棋。例えコウモリでも構わんから今は支持者を増やす事が先決ぞ。

 

116:名無しの犬

だからこそポケモン賛成派を増やすべく、日夜コラッタニキを筆頭にお偉いさんに利権をちらつかせて説得し、アイドルズが一般向けにパフォーマンスしてるんだが……こうも情報操作で対抗されるとなぁ。

 

119:名無しの犬

おのれテロリスト。おのれマスゴミ。そんなに金が好きかぁ!

 

122:名無しの犬

我が世の春が来たぁぁぁ!

 

124:名無しの犬

庶民は! 騙されていればいいのだ!(byマスゴミ&テロリスト)

 

125:名無しの犬

この情報操作凄いよぉ! 流石アカのお兄さん!(の得意分野)

 

126:名無しの犬

シロ民になぁ! 情報操作の対策などぉ! 出来るわきゃねぇだろぉぉぉ!(自虐)

 

127:名無しの犬

(マスゴミが)絶好調である!

 

128:名無しの犬

(ポケモン賛成派の)何が不調なのだ!?

 

131:名無しの犬

(マスゴミが)ポケモン賛成派を金縛りにする!

 

133:名無しの犬

ユニバァァァス!

 

136:名無しの犬

オ・ノーーーレ!

 

145:名無しの犬

見てきた。い つ も の マスゴミだったけど、あれらにテロリストが関わってるなら……察するにあの識者(笑)がテロリストの手先か?

 

148:名無しの犬

>>145

イグザクトリー、その通りだ。

だからこそ奴らは多少無理筋でもポケモン反対の気運を作ろうとしてたんだ。どう考えても無理な排除論や、検討違いの為替レートとかいい例。

 

150:名無しの犬

まぁ、あの識者(笑)も本気でポケモンをどうこう出来るとは思ってないやろ。金貰ったから頼まれた事をそれらしく喋っとるだけか、あるいは感情任せに口先だけの威勢を見せとるだけや。

……いや、本気で勝てると思ってるなら頭の病院に無理やり突っ込まんとアレやろ。

 

151:名無しの犬

ポケモンの隔離とかどう考えても無理ぞ。シロちゃん筆頭にシロ民は反対に回るし、この時点でポケモントレーナーの過半数が不参加。となると自衛隊の出番なんやが……まぁ、ムリダナ(・×・)

 

152:名無しの犬

基本的に人間<ポケモンだからなぁ。シロちゃんが事前に知識をくれたから共存の道が残ってるけど、それがなけりゃ人類滅亡ルートオンリーぞ?

 

153:名無しの犬

シロちゃんを崇めよ。

 

155:名無しの犬

しかも奴らがいう為替レートに至っては具体的にいつのデータか言ってないしな。

あれ、ポケモンテロ直後のデータやぞ。今では投資する奴と逃げ出す奴でバランス取れて元に戻ってる。

 

156:名無しの犬

むしろ目敏い奴こそ大量の金を投資に突っ込んでるんだよなぁ。国レベルでは地雷を危惧して様子見してるけど、個人レベルならこの動きに一枚噛もうしてる連中は多い。

 

158:名無しの犬

まぁ、その間抜け識者も次は無いだろ。

中々尻尾を出さなかったが、公安が尻尾を掴んだという噂があるからな。少なくとも奴らの一人はテロリストから金を貰っていたとさ。

 

159:名無しの犬

噂(真実)

 

164:名無しの犬

公安にポケモン指導しに行ったニキ生きてるかな……

 

166:名無しの犬

>>164

リヴァイアサン号研修組だからヨユーやろヨユー

 

170:名無しの犬

……なぁ、これヤバくね? 俺らとかマスゴミ信じてない連中は問題無いけど、こうも煽られると支持者減らない?

 

173:名無しの犬

>>170

ヤバい。というか既に増減を繰り返してる。

しかもこっちにとっては死活問題だけど、あっちにとってはただのジャブだし。

 

175:名無しの犬

俺らはポケモンを広めて、その上で皆仲良く楽しもうぜ! ってのが目標だけど、奴らはシロちゃんさえヤれればいいからな。難易度の落差が酷い。

 

178:名無しの犬

おのれ猿どもめ……ポケモンを撫で撫でモフモフしたり、ポケモンバトルしたりする楽しみが分からんとは。

 

179:名無しの犬

>>178

猿に失礼定期。

 

180:名無しの犬

しかもこれに関しては俺らは何も出来ねぇんだよなぁ。頼りの政府は野党の妨害をはね除けて法案可決させるのに手一杯だし、ぶっちゃけ手詰まり。

 

185:名無しの犬

いやー、久方ぶりに起きた大乱闘国会ブラザーズは胸熱でしたね……

 

188:名無しの犬

進退窮まってどうにもならず、ついに野党議員の一人がヤロウオブクラッシャーしたと思ったらそのまま乱闘だもんな。いいぞもっとやれ。

 

193:名無しの犬

あの議員テロリストの手先だったんだろうなぁ。ガチか金の繋がりか……あるいは催眠術に掛けられてたのかまでは知らんが。

まぁ、なんにせよ即行で場外行きだったけど。

 

196:名無しの犬

勿論俺らは反対するで? 拳 で

 

197:名無しの犬

そういう事するから……

 

200:名無しの犬

国会議事堂が一瞬にして魔界の議事堂になった瞬間である。

 

203:名無しの犬

ファルコーンパーンチ!

 

205:名無しの犬

ショウタイムダ

 

209:名無しの犬

ハドウケン!

 

214:名無しの犬

俺首相がファイアボール出すの期待してたのに……

 

218:名無しの犬

ヤヤヤヤヤヤヤヤヤッフー!

 

221:名無しの犬

ケツワープ止めろ。

 

228:名無しの犬

配管工(TAS)の力を手に入れた首相……最強では?

 

235:名無しの犬

なお法案は可決され、乱闘でも勝利した模様。

 

239:名無しの犬

多数決の原理。

 

243:名無しの犬

まぁ、怪我したから慰謝料寄越せとか辞職しろとか言われてるけどな。

 

247:名無しの犬

お前らから仕掛けたクセに何を……

 

250:名無しの犬

それも含めて時間稼ぎやろ。民間をかき回し、政府の足を止めて、その間に何かをやってるんだろうよ。

 

254:名無しの犬

国会にまでテロリストの手先がウジャウジャ居るのか……状況は最悪だ。

 

258:名無しの犬

善戦を続けて来たつもりでした。しかし、奴らにとってこれはジャブに過ぎないようです。テロリストは底知れない戦力を持っています。

 

259:名無しの犬

それでも戦い続ける。出来る事は、それだけだ。

 

262:名無しの犬

あちらさん、最悪催眠術でいくらでもどこにでも駒を作れるからな。いたちごっこにすらならんよ……

 

265:名無しの犬

苦労して取っ捕まえた奴が催眠術に掛けられてただけで構成員ですらなく、当然何も知らない上に罪にも問い難いとかザラだしな。

しかも国会議員とか、芸能界の大物とか、以外な人物が催眠術に掛けられてたりするからマジ厄介。

 

267:名無しの犬

かと思ったらガチな構成員が催眠術に掛けられてたふりで逃げようとしたり、この流れに便乗する詐欺やら犯罪やら愉快犯やら……警察の処理能力は既に飽和状態やぞ? 今関東で何か起こっても即応出来るかどうか……

 

268:名無しの犬

まぁ、催眠術自体はグーで殴ればだいたい解けるからまだ何とかなってるんだけどな。

 

270:名無しの犬

一時期国会で挨拶にお互いクロスカウンター決め合う法案が検討されたという事実。

……後世では国会でUFOへの対応を考えた話とどっこいどっこいに語られるな。間違いなく。

 

272:名無しの犬

結局様子がおかしかったら周囲に了解を取り、相手の了承の上腹パンするという暗黙の了解が出来上がりましたとさ。

こんなんだから国会で大乱闘がおきるんだよ……

 

273:名無しの犬

あちらも相当混乱してんなぁ。

 

276:名無しの犬

今ではカゴの実が効くんじゃね? というシロ民の鶴の一声で議員全員がカゴの実を持ち歩き、怪しい奴には無理やり食わせるというものに変わったけどな。

……何で常に食わないか? 味がゲロマズだからだよ。シロ民でもキツイって、あれは。

 

285:名無しの犬

しっかしよぉ。実際常に後手後手なのはつらいぜ? 早いとこなんとかしたいが、無理か?

 

288:名無しの犬

>>285

無理。ポケモンリーグの設立すらままならないのに、こんな複雑な案件を早々にどうにかするとか無理ゲーもいいところ。

警察のポケモン部隊も中々上手くいかんし。

 

290:名無しの犬

しかも大乱闘して通した法案もまだまだ手始め感のある奴で、肝心要なのはまだ審議中だからな。いったい法案が通るのはいつになるやら……

 

291:名無しの犬

先行きは暗い、か。

 

294:名無しの犬

状況は絶望的だぞ!?

 

295:名無しの犬

もう駄目だ、おしまいだ……!

 

296:名無しの犬

勝てる訳がないYO!

 

298:名無しの犬

皆死ぬぞ!?

 

300:名無しの犬

だが今日じゃない(諦め)

 

305:名無しの犬

取り敢えず、なんか明るい話するか。

 

307:名無しの犬

セヤナ。

間接的にテロリストをヨイショするのも飽きたし。

 

308:名無しの犬

ってもなー何かあったか? 明るい話題。

 

310:名無しの犬

ないから万歳エディションで空元気出してたんだよなぁ……

 

314:名無しの犬

あー、強いていえば関東のほぼ全域でポケモンが確認された事ぐらい?

 

317:名無しの犬

残るはハナダの洞窟とセキエイ高原ぐらいのものだったけ? 行き着くとこまで行き着いたんだなぁ。なんというか、なんというかだな。

 

319:名無しの犬

最初にシロちゃんと出会ってどれ程の月日が流れたか。まさかこんな事になろうとは微塵も思ってなかったが、それでもワクワクが止まらない……シロちゃんに感化されたかな?

 

322:名無しの犬

>>319

それはあるんでない? 俺らは普段気配も抑揚も死んでる子が、ポケモンの事になるとワクワクキラキラしだすのをずっと聞いて見てきた訳だから……メディア露出してからは尚更な。

 

323:名無しの犬

シロちゃんの写真集でねぇかなぁ。健全なので良いから欲しいわ。

 

324:名無しの犬

そう思うとここまで来たのは感慨深いな。

最早味方はシロ民以外にもいて、政府も動いてる。それでも俺らに出来る事があるってのは……もう、ホント。ホントなぁ! やるしかねぇぜ!

 

326:名無しの犬

>>324

禿同。

ちな、シロ民だから感慨深いで済んでる定期。

 

327:名無しの犬

シロちゃんを崇めよ。

 

328:名無しの犬

まぁ、俺らからすれば推しと一緒に騒いでた事が現実になってヒャッハーだけど、知らない人からすれば下手なゾンビモノより怖いだろうしなぁ。

 

330:名無しの犬

あるいはサメ。

 

331:名無しの犬

もしくは宇宙人。

 

333:名無しの犬

B級映画!? B級映画三銃士じゃないか! 自力で脱出を?

 

334:名無しの犬

な阪神

 

335:名無しの犬

>>333

(無言の腹パン)あれらはB級映画ではない。Z級映画だ。

 

337:名無しの犬

悪化してて草。

 

342:名無しの犬

そしてその恐怖を煽ってポケモンを排斥しようとしてるのがテロリストで、恐怖を和らげて友好の道を指し示すのが我らがシロちゃんな訳だ。

 

344:名無しの犬

ホント、アイツらあの手この手で恐怖を煽ってポケモンを排斥させようとするからなぁ。集めた銃火器をパーにしたくないんだろうが、マジクズ。

 

350:名無しの犬

止め止め、テロリストの話は止めようぜ?

あー、そうだ。ユウカ嬢のポケモン何だったけ?

 

353:名無しの犬

>>350

ミニリュウ、もといハクリューだな。イワーク以上の大捕物だったからよく覚えてる。

 

355:名無しの犬

>>353

それマ? 例の最強のミニリュウを?

 

357:名無しの犬

>>355

ご存知、無いのですか……!?

まぁ、知らんわな。捕まえたのつい最近だし。

で、そのミニリュウで合っとるぞ。最初のミニリュウ、6Vミニリュウや。今の今まで誰にも捕まえられず、見つけられなかったのを投入可能な全戦力を投じて確保したんやで。戦いの中でハクリューになったのをな!

 

359:名無しの犬

流石にシロちゃんやその護衛は動かさんかったけど、手透きのシロ民と連絡の取れるポケモントレーナーは強制参加。対ポケモン用にチューニングされた対人レーダーまで引っ張り出した戦いだったからなぁ。

 

360:名無しの犬

その激しさといったら、最初にコラッタニキが相棒もろとも即行吹っ飛ばされるレベルや。

 

362:名無しの犬

い つ も の

 

363:名無しの犬

あのニキ、最近その手のパターンが板についてきてる感あるんだよなぁ。

 

364:名無しの犬

ある意味プロ。

 

365:名無しの犬

プロ(かませ)

 

366:名無しの犬

パワーインフレについて行けてないからね。仕方ないね。

 

368:名無しの犬

原因はコラッタの運動不足と高級チーズの食いすぎだけどな!

 

370:名無しの犬

>>368

胃痛に慣れだしたニキの横でな!

 

371:名無しの犬

HAHAHA

 

372:名無しの犬

HAHAHA

 

375:コラッタニキ

ははは……

 

377:名無しの犬

>>375

コラッタニキ!? 最近胃薬CMのレギュラーになったコラッタニキじゃないか! 調子はどうだ?

 

378:名無しの犬

>>375

よう、コラッタニキ。高い飯は旨いか?

 

381:コラッタニキ

……シロちゃんの次のメディア露出の内容持ってきたけど、そうか。要らないか。

 

383:名無しの犬

え?

 

384:名無しの犬

ゑ?

 

385:名無しの犬

( ゜Д゜)マ?

 

387:コラッタニキ

>>385

マ。

 

390:名無しの犬

要ります! 要りますコラッタニキ様ぁぁぁ!

 

391:名無しの犬

何とぞ、何とぞお許しをォォォ!

 

392:名無しの犬

我らに恵みをぉぉぉ!

 

395:名無しの犬

この手のひら返しである。

 

396:名無しの犬

クルックルッやな、お前らの手のひら。

 

398:名無しの犬

おう、手のひら燕返しやぞ。

 

399:名無しの犬

全く、胃痛に呻くだけだったコラッタニキが(したた)かになりやがって……

 

400:名無しの犬

基本的に飢えてるしなぁ、シロ民。ここのところシロちゃんの新情報なかったし、配信もなぁ。

 

401:名無しの犬

それにシロ民は手のひら返しには慣れてるしな。さっきまでの常識が崩れる事はよくある事や。

 

403:名無しの犬

>>401

ポケモンとかまさにそれやな。あとシロ闇もだいたい同じか。

 

405:名無しの犬

どうせオッサンやろと思ったら ガ チ 美 少 女

 

406:名無しの犬

親とか普通に居るやろと思ったらまさかの 捨 て 子

 

407:名無しの犬

当然愛された事なんてないので 愛 な ど 知 ら ぬ

 

408:名無しの犬

ほんわかとした上手い絵を見て優しい子かなぁとか思ってたらまさかの ナ チ ュ ラ ル 闇

 

410:名無しの犬

可愛い感じやし学校では人気者かと思ったら イ ジ メ ら れ て る

 

411:名無しの犬

俺 ら と 一 緒

 

413:名無しの犬

なお理由は話が合わないから。特に ポ ケ モ ン の事

 

415:名無しの犬

ポケモンはシロちゃんの イ マ ジ ナ リ ー フ レ ン ド

 

416:名無しの犬

かと思ったらそれが 現 実 に 出 て く る

 

420:名無しの犬

何度シロちゃんの“つばめがえし”を受けた事か分からぬ。

 

422:名無しの犬

そうしてシロ民もまた“つばめがえし”を取得したのだ……見とり稽古かな?

 

423:名無しの犬

ひでぇ稽古だ……

 

425:名無しの犬

ミンチよりひでぇや。

 

427:名無しの犬

そういえばシロ闇も新しいの無いなぁ。いや、あっても困るけど。

 

429:名無しの犬

>>427

まぁ、これ以上増えようがないやろ。それに今のシロちゃんはメディア露出どころか引きこもりも同然だからな。警備の関係上仕方ないといえば仕方ないんだが……

 

431:名無しの犬

けどそうやって引きこもってやってる事といえば……ポチネキをなでなでモフモフしたり、縁側でお茶飲みながら鹿威しがカポーンしてるのを眺めてるぐらいやぞ?

あれ田舎のお婆ちゃんと何が違うんだ……

 

432:名無しの犬

>>431

育ての親が揃って田舎の爺さん婆さんだから、多少はね?

 

434:名無しの犬

にしても落ち着き過ぎだけどな。見た目年齢とやってる事のギャップが酷い。

この間なんかポチネキと精神統一みたいな事やってたゾ。……あれ、SATUMA人の教えだよなぁ。絶対。

 

435:名無しの犬

良いなぁ、親衛隊員ども。シロちゃんの様子見れて。

 

438:名無しの犬

ポケモンを持ち、理解し、仲良くなり、その上で身辺調査され、リヴァイアサン号に放り込まれて研修受けさせられるけどな……クッソ長い契約書も書かされたし。結構キツイぞ? ガチ勢の中のガチ勢じゃないと無理。

 

439:名無しの犬

でも給料は良いんでしょ?

 

440:名無しの犬

>>439

勿論さぁ。

 

442:名無しの犬

まぁ、シロちゃんの近くに居れる事も考えれば……ちょっとしたアメリカンドリームくらい?

 

443:名無しの犬

チクショウメェェェ! こんなブラック企業止めてやる! 俺は関東でポケモントレーナーになるぞぉぉぉ! ジョジョォォォ!

 

446:名無しの犬

あー、今ならポケモントレーナーに補助金出るんだっけ?

 

448:名無しの犬

>>446

大会で結果出せれば死なない程度の生活費を申請、受給出来るはず。

まぁ、その肝心の大会がまだ一度もないし、申請を審査するポケモンリーグが未設立なので貰ってる人間はゼロですがね。

 

449:名無しの犬

通すべき法案の順序間違えてね……?

 

450:名無しの犬

>>449

それだけ政府も混乱しとるんやろ。というか通すべき法案の数が多すぎるんだよ……

 

453:名無しの犬

というか一番要のポケモン危険等級はまだ審議中か? いい加減にしないと違法所持もクソもないぞ……?

 

456:名無しの犬

>>453

ヤバいポケモンの所持に制限をつけるあれか。確かに二匹目が出る範囲は急速に拡大しとるし、規制基準は早目にしたいよなぁ。

 

459:名無しの犬

コイキング10匹はOKでも、ギャラドス10匹はアウトとかな。

当たり前といえば当たり前だけど、色々難しいよなぁ。

 

462:コラッタニキ

ちなみに、次のシロちゃんのメディア露出はそれ絡みぞ。

 

463:名無しの犬

な、なんだってー!?

 

464:名無しの犬

ハラショー。それは良いな。

 

465:名無しの犬

こいつは力を感じる。

 

466:名無しの犬

というかお前らコラッタニキに懇願したと思ったら別の話し出すなよ……ニキ絶対困っとったぞ。

 

467:名無しの犬

ネト民だからね。仕方ないね。

 

469:名無しの犬

ボケ老人じみた諸行。しかし実際よくある事だ。

 

471:名無しの犬

相手の事を気にして喋れるなんてチャメシインシデント。そう言えたらこんな場所にはいないのである。

 

472:名無しの犬

ネタを投げる事ならベイビー・サブミッション。しかし聴き手に回るのは実際難しい。

 

475:名無しの犬

そんなんだから他スレでシロ民は10年古いとか時代遅れとか叩かれるんだぞ……?

 

477:名無しの犬

俺らもロートルって事か……

 

479:名無しの犬

ロートル(SATUMA人含む)

 

480:名無しの犬

まぁ、崇めてるシロちゃんがロリババアだから、多少はね?

 

482:名無しの犬

年齢不詳のロリババア(20代前後と推測される)

 

483:名無しの犬

推測されてなかったら、ロリババア説をガチで信じれるところがなんとも……(のんびりモードシロちゃん見つつ)

 

485:名無しの犬

しかしそこがシロちゃんらしい! そこに痺れる! 惹かれていくゥゥゥ!

 

487:名無しの犬

>>485

はーい、狂信者はシロ闇行きよー

 

488:名無しの犬

(´・ω・`)やったー

 

490:名無しの犬

染まってやがる。遅過ぎたんだ……

 

491:名無しの犬

ほらまた話が逸れる。

 

492:名無しの犬

はーい、今はコラッタニキの報告を聞きましょうねー

 

493:名無しの犬

wktk

 

495:名無しの犬

全裸待機

 

496:名無しの犬

ヽ(0w0)ノエンゲージ

 

498:名無しの犬

待てが出来るシロ民……

 

499:名無しの犬

閃かない。

 

500:コラッタニキ

といっても詳しくは知らないけどな。伊藤家の影響下にあるテレビ局で、危険等級について説明と理解を求める感じにするらしい。あとついでにポケモンバトルもするってさ。

 

501:名無しの犬

ソースは?

 

502:コラッタニキ

ユウカ嬢。

 

506:名無しの犬

ほーん。真面目路線やけど、見応えはありそうやね。しかしそのタイミングでポケモンバトルって、危険等級の説明代わりか? なんというか、乱暴じゃね? シロちゃんのほんわかお友達路線とは反する気がするんやけど……

 

510:名無しの犬

いや、なるほど……そういう事か。

 

513:名無しの犬

>>510

どういう事だってばよ?

 

516:名無しの犬

推測だが、全て踏み潰すつもりなんだろう。シロちゃんという専門家にして一人の少女に解説、懇願させて理性と情に訴えかけつつ、ふるいにかけ、その上でポケモンバトルによる圧倒的戦力差も感じさせる。

ポケモンと友好関係を結ばなければ滅ぶのみだと、ついて来ないのは見捨てて進むぞと、理解させる為に。

 

518:名無しの犬

ふむ、ある種の最終宣告をするつもりか。死ぬ気でついて来いと。ポケモンバトルで勝てないのを理解させて、その上でポケモンとの融和を頼むとか……ある種の脅迫だな。この条件を飲めなければ勝手に滅べと言ってる様なもんやぞ?

その上説明しとるのが少女やから、変にバッシングするとかえってソイツが悪者に見える。悪辣な一手や。

 

519:名無しの犬

シロちゃんは普通にポケモンバトルエンジョイするだけやろうから、その辺りは演出次第でどうとでもするつもりかな?

 

521:名無しの犬

よく分からんが、いよいよクライマックスなのは察した。

 

522:名無しの犬

まぁ、猶予期間というか、チュートリアルを終了するつもりなのは間違いない。

 

524:名無しの犬

にしても強引な一手だなぁ。伊藤家らしくない手だ。あそこは混乱の隙をついて巨大化した分家らしいし……

 

526:名無しの犬

>>524

やっかみも凄いらしいな。……あぁ、だからこそ一切合切踏み潰すつもりか? 反対させる時間を与えずに?

だとしても随分大胆な手だが、ユウカ嬢主導かね?

 

529:名無しの犬

>>526

シロちゃんかもよ? あの子今の状況に満足げではあるけど、この間のポケモン反対派のテレビ見たとき相当苛立ってたし。

 

531:名無しの犬

暫くしゅーんと体育座りしたと思ったら、突然の覇王の覇気。いやー、流石シロちゃんですわ。ギャップというか、二面性が凄い。

 

533:名無しの犬

>>531

なにそれ知らない。……写真とかとってない? 特にしょげて体育座りしてる方。

 

534:名無しの犬

>>533

生憎そういうのは禁止されるのだ。

 

535:名無しの犬

安全の為だからね。仕方ないね。

 

536:名無しの犬

(´・ω・`)そっかー

 

537:名無しの犬

アキラメロン。

 

538:名無しの犬

ヽ(0w0)ノイジェークト

 

543:名無しの犬

まぁ、シロちゃんお願いしたらヌードも撮らせてくれるだろうけど。

 

545:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

546:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

547:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

550:名無しの犬

あぁ、シロちゃんポケモン以外割りとどうでもいいってスタンスだからなぁ。ポケモンの為なら文字通り脱ぎかねん。

 

553:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

554:名無しの犬

( ; ゜Д゜)!?

 

555:名無しの犬

( ゜Д ゜)

 

557:名無しの犬

>>555

コッチミンナ

 

558:名無しの犬

ヽ(0w0)ノエンゲージ

 

561:名無しの犬

いやー、長く警備してると薄々分かるんだけどな? シロちゃん根本的に自分に興味が無いんだわ。それは過去の経験のせいなんだろうけど……どうにも極端でねぇ。

 

562:名無しの犬

それにポケモンへの愛が加わる事で、ポケモンの為なら本当に何でもしちゃう女の子が生まれる訳です。はい。

 

563:名無しの犬

シロちゃん、ポケモンを人質に取られたら迷いなく腹切るぞ? たぶんだけど、そんくらい自分を大切にしないし、ポケモンへの愛が凄い。

 

564:名無しの犬

ポケモン愛が溢れ過ぎて描いた絵とかヤベーぞ?

配信してないだけで絵は描きまくってるから……あれ総額幾らよ。

 

566:名無しの犬

>>564

ユウカ嬢が買うなら軽く億いく。

 

568:名無しの犬

ホント、ポケモンの情報や絵に熱中してポチネキが促さないと風呂や飯を取らないなんてザラだし。

 

570:名無しの犬

部屋は相変わらず殺風景だし。

 

571:名無しの犬

ポケモンの事なら延々喋ってるし。

 

572:名無しの犬

というか基本ポケモン関連の事しか喋らないし。

 

573:名無しの犬

ポケモンバトルの練習をすれば巻き添えを食らいかねない位置で指揮するし。

 

575:名無しの犬

飛んできた破片とかで怪我しても言われるまで放置するし。

 

576:名無しの犬

オシャレに興味が無いのか、いつの間にローテーション組んでてアイドルズに矯正されたりするし。

 

577:名無しの犬

かと思えば女の子として自覚がないのか、ミニスカート履いた日はパンチラ連発だし。

 

578:名無しの犬

マジ無防備。お願いだから女の子の自覚持ってクレメンス……

 

580:名無しの犬

某大先生は幼女がパンチラ気にしたら云々とかなり熱弁したという都市伝説があるらしいが……

 

582:名無しの犬

それにしても、なぁ?

 

583:名無しの犬

うん。

 

584:名無しの犬

おい、おい待て。

見たのか?

 

585:名無しの犬

見た。

 

586:名無しの犬

見ました。

 

587:名無しの犬

あの日別荘にいた連中は殆んど見たんじゃないか……?

 

590:名無しの犬

些細な動作でもそうだったし、ポケモンバトルの練習が重なってたから特にな。

取り敢えずミニスカートを進めて、バトルの練習相手になってたアイドルズにはグッジョブと言いたい(予想外&不名誉だろうけど)

 

593:名無しの犬

俺らから一言いえるとしたら、シロだったな。

 

595:名無しの犬

あぁ、白だった。

 

598:名無しの犬

色気がないといえばそこまでだが、シロちゃんらしい選択でもある。

 

600:名無しの犬

くぁwせdrftgyふじこlp!!!

 

601:名無しの犬

ヽ(0w0)ノFOX4! イジェークト

 

602:名無しの犬

ヤロオォォォブックラッシャァァァァァ!!

 

603:名無しの犬

眉間なんて撃ってやるものかぁ、へへっ。ボールを吹っ飛ばしてやる!

 

605:名無しの犬

パンパンパン

 

606:名無しの犬

キボウノハナー

 

608:名無しの犬

頼みがあるんだが、そこのシロ民を起こさないでやってくれ。死ぬ程疲れてる。

 

609:名無しの犬

パンチラは日本で進化しました。アメリカの功績ではありません。我が国の功績です。暫し遅れを取りましたが、今や、巻き返しのときです。

 

610:名無しの犬

面白い奴だな、気に入った。殺すのは最後にしてやる。

 

611:名無しの犬

怖いか? 当然だぜ。シロちゃん親衛隊の俺に勝てるもんか。

 

613:名無しの犬

試してみるか? 俺だってエリートシロ民だ。

 

614:名無しの犬

お前を殺すのは最後にすると言ったな。あれは嘘だ。

 

616:名無しの犬

うわぁぁぁぁぁ━━

 

620:名無しの犬

あなたを名誉毀損罪と迷惑防止条例違反罪で訴えます! 理由はもちろんお分かりですね? あなたがシロちゃんのパンツを拝み、シロ民の心を破壊したからです! 覚悟の準備をしておいて下さい。近いうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい! 貴方は犯罪者です! 刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい! いいですね!

 

623:名無しの犬

>>620

アッハイ。

 

625:名無しの犬

>>620

アッハイ。

 

626:名無しの犬

アッガイ。

 

627:名無しの犬

ちくわ大明神。

 

628:名無しの犬

おい今水泳部居たぞ。

 

629:名無しの犬

誰だ今の。

 

645:名無しの犬

うーん、ユウカお嬢様に土下座でシロちゃん写真集を頼み込もうかなぁ……

 

648:名無しの犬

>>645

これだけメディア露出すればワンチャンあるやろ。なければ切り貼りMAD作れば良いし。

 

655:名無しの犬

何にせよ、これから忙しくなりそうだ。

 

660:名無しの犬

色んな意味でな。

 

……………………

…………

……



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第24話 ポケモンリーグ設立に向けて

 ポケモン賛成派と反対派が激しい情報戦を繰り広げる中、夜のとばりが降りた街の一角にある料亭の一室で、数人の人間が顔をつき合わせていた。

 その内訳は殆んどがそれなりに年を食った男達であり、中には老人といっていい者もいる。そして、少しでも世間の事を知っている者なら、彼らが皆大きな影響力を持つ権力者である事に気づくだろう。元総理大臣や各担当大臣、大企業の代表取締役に研究所の所長等……そうそうたる面子。そんな彼らが電話で終わらせず、わざわざ集まって話し合う事など今の状況では一つしかない。

 

「やはり、ポケモンの出現は止まりませんか」

 

 そう、ポケモンの事だ。

 一部の者に取っては既知の、しかしそれ以外の大多数にとっては全く未知の異常存在の出現。最初の一匹が確認されてそれなりの時間が経ち、一般市民への理解も進んではいるが……それでも思わずにはいられないのだろう。その一言を皮切りにチラホラの愚痴の声が上がる。

 仕事が、予算が、支持率が、出世が、利権が。

 そうやっていよいよ薄汚い愚痴大会となるか。そう思われたとき、一人の人物が「失礼だが」と前置きして流れを叩き切った。

 

「逆に聞かせて貰うが、止まると思っているのか?」

「いえ。しかし……」

「そうですね。正直、期待はしていました。どこかで収まると」

「ならその下らない期待は捨てておけ。世界は崩壊した」

 

 ピシャリ、と。チョビヒゲの研究所所長が不満タラタラな議員達の言葉を切り捨て、手元の資料を軽く叩いて改めて注目を集める。

 

「資料を見れば分かると思うが、ポケモン関連の基礎研究は概ね終了した。きのみは医療現場での臨床試験を終了し、生の状態での医療活用を開始。成分抽出の実験も始まっている。モンスターボールの試作品は数量限定とはいえ販売に成功し、量産型も間もなく生産が開始。また自衛隊と警察から依頼のあった対ポケモン用特殊弾頭弾の研究も一段落がついた……これ以上のおさらいは省くが、その他の研究も一段落がついた状況だ。勿論、この崩壊の原因についての研究も」

 

 ザワリと大の大人達が色めきだつ。ポケモン出現の原因。それは誰もが知りたいと思い、しかし同時に関わりたくないと思っていた案外だ。

 科学的な根拠があるのか、それともポケモン同様ファンタジーな理由なのか、まさか関わったら死ぬ様な案件か……そんな不安と期待を一身に受け、しかしチョビヒゲは平然と言葉を続ける。

 

「これに関してハッキリと分かる事は少ない。なにせデータがないからな。研究しようがない。……が、それでも分かる事が一つ」

「一つ。……それは?」

「シロちゃん……不知火白はポケモン出現の直接的原因ではないという事だ」

「は? いえ、しかし、今まではあの少女がこの事態の原因だと思われていたのでは?」

「そうです。というか、彼女が元凶でなければいったいなにが原因だと?」

 

 不知火白はポケモン出現の原因ではない。ハッキリと言葉にされた考えに方々から批判と質問が相次ぐ。

 ポケモンを知っていたのは彼女だけ、広め始めたのも彼女、最初のポケモンは彼女の飼い犬だった、ポケモンの出現は彼女の言う通りに行われている、今まで彼女の予言から外れているのは何一つとしてない、この事態で最も得をしたのは彼女とその協力者だ━━

 暫くそういった声を黙って聞いていたチョビヒゲだが、やがて反対の声が一通り出終わった頃、唐突に軽く片手を上げて相手側の言葉を制す。そうして生まれた静寂をサッと眺め、彼は説明を始めた。

 

「不知火白はポケモン出現の直接的原因ではない。これはここ暫くの間不知火白を調査、観察した結果だ。全ての過去を洗い、ありとあらゆる手段で彼女を観察したが……彼女が何かをした、あるいは何かをしている様子は皆無。むしろ彼女は見た目相応に純粋で……あー、それなりに可哀想な子供だという事が改めて強調されただけに終わった」

「では、彼女は何の関係もないと?」

「……いや、それはない。不知火白は直接的に何かをして、ポケモンを呼び出している訳ではないが、しかし同時に無関係でもないのだ。恐らく間接的に影響を与えていると推測され……あぁ、資料の23ページ目を見てくれ」

 

 上げた片手をクルクルと動かして感情を表現しつつ、チョビヒゲはハキハキと言葉を紡いで他の大人達の目を資料に落とさせる。そこに書かれているのは複雑で、様々なデータだ。不知火白がまとめたポケモンの資料から、空間放射線量のデータまであり……その最後には一つの結論が書かれていた。

 

「不知火白は方向性を示す案内人である……?」

「あー、これはどういう事でしょうか?」

「簡単な事だ。彼女は何もしていない。だが彼女が居るからこそ事態は暴走せずにすんでいる……ふむ、あるいは巫女の様な存在なのかも知れんな」

「巫女……荒ぶる神を宥める、ですか?」

「そうだ。ポケモンという荒ぶる神を宥め、共存の道を示す巫女にして案内人。それがシロちゃ……不知火白だと、我々ポケモン研究所はそう結論を出した」

 

 静かに、しかし自信満々にそう言い放ったチョビヒゲの言葉に、思わず大人達は配られた資料に目を落とす。意味不明に過ぎる。自分達は何か重要な説明を見逃したのではないか? と。

 しかし資料に書かれているのは複雑なデータだけだ。ポケモンの出現状況、それぞれの推定される平均レベル、不知火白のデータとの兼ね合い、任意の地点の電波状況、発生した電波障害の数と場所、任意の地点の距離の変動、局地的地震のデータ、空間放射線量の微量な増減等々……しかもそれらに説明は殆んどなく、ただデータだけが連ねられている。知りたければ質問する他ない程に。だが……

 

「ハッキリ言おう。彼女を排除すればロクな事にならない。もし彼女が排除されれば、今は関東だけでゆっくりと発生しているポケモン出現が、一気に日本中に……あるいは世界中に広まる事になりかねない。順番を踏まずに、一気に、無秩序にな。そうなればどうなるか、分からないボンクラはここには居まい?」

 

 チョビヒゲは質問する暇を与えず畳み掛けてくる。まるで考えずに、受け入れろといわんばかりに。

 過半数の人間がそれに流されそうになったが……しかしこの場にいるのはただ者ではなく、ましてや無能ではない。そんな奴は一連の事態中で失態を演じて消えていった。故に、当然質問が飛んで来る。

 

「その根拠が、このデータだと? 随分と散らかった考えに思えるが?」

「いや、そのデータはあくまでも一部でしかないし、不完全だ。しかし電波障害のデータや、今後取られる重力場の変動データがあれば完璧に証明出来るだろう。彼女は直接的原因ではなく━━故に、彼女を殺してもこの異常事態は止まらないとな」

 

 配られた資料のとある1ページ━━不知火白を排除する事で事態の沈静化を図る提案が書かれたページ━━を強く叩きながら、チョビヒゲは責める様に視線を走らせる。

 自分に積極的、あるいは消極的に同意する者、興味なさげな者、目を逸らす者、一瞬だが反抗的な態度を取った者……そこまで見てチョビヒゲは目を閉じて腕組みをし、拒絶を示す。後は好きにしろといわんばかりに。

 

 ━━次の会合ではまた顔ぶれが変わりそうだ。

 

 他の者達がお互い目配せし合うのを薄目で確認しつつ、チョビヒゲは内心そんな事を考えていた。彼らがこの場にいるのは権力者だからで、それを失えばこの場には来られない。少なくともポケモン利権を得ようとしない者、得ようとするがトップのご機嫌伺いもしない者、それらに明るい未来が来るとはとても思えないのがチョビヒゲの正直な思いだった。

 

「まぁ、彼女を本気でどうこうしようという者はこの場には居まい。そんな下らない妄言より重要な事がある……ポケモンリーグの設立だ」

 

 元総理大臣である伊藤元総理の一声により、場の流れが変わりかける。話題転換だ。この流れに乗るべくチョビヒゲも組んでいた腕を解き、行うべき報告を始めた。

 

「ポケモンリーグ設立にあたって、我が研究所は最大限の支援を行う準備がある。つい先日とある病院の倉庫から発見されたメディカルマシンの解析、運用、量産の検討は勿論。モンスターボールの性能向上や、より高い量産性の検討。ポケモンの生態や、トレーナーに要求される技能の数値化、項目化も行っている最中だ。そして……抑止力としての対ポケモン用特殊弾頭弾の研究開発もな」

「対ポケモン兵器は聞いているが……メディカルマシン?」

「シロちゃ……不知火白曰く、ポケモンの『回復』が出来る便利な機械らしい。詳しくは研究中だが、恐らく使うだけなら何とでもなるだろう。これでポケモンバトルはより気軽な物になる」

「……初耳だ」

「今日初めて外部に出した情報だからな。当たり前だ。総理とて今頃アメリカで報告を受けている話だぞ」

 

 メディカルマシン。ポケモンを知っている者からすれば待ち望んだ物であり、知らない者からすれば意味不明の塊だ。少なくとも科学者の三桁は卒倒するだろう代物であり、ポケモンバトルを広めるにあたって必要不可欠な機械で……現にポケモンリーグ設立の条件の一つが、このメディカルマシンの一定数の確保だった。

 そして、それは間もなく成し遂げられようとしている。最初の一つがとある病院の倉庫から見つかって以来、あちこちの大型病院の倉庫から次々と見つかって回収されているのだから。勿論動かせるかは別の話だが、チョビヒゲを信じるなら動かす事は問題ないのだろう。

 

「あー……ところで、対ポケモン用特殊弾頭弾はどの程度完成しているんだ?」

 

 各々がメディカルマシンについて書かれたページを探して読む中、体格の良い一人の男が急かす様にそう問い掛けてくる。

 対ポケモン用特殊弾頭弾。それはポケモンに対して全くの無力だった人間が作り出した剣だ。その存在すら極秘とされている代物だが、事この場においては秘密もクソもなかった。

 

「開発可能な物について初期研究は終了し、幾つかは試作品が完成している。書類と部隊を寄越してくれれば受け渡しを行おう」

「了解した。明日にでも輸送部隊を派遣する」

「こちらも人をやろう。……で、完成した弾頭はどんなのになったんだ?」

「最初に言っておくが、ポケモンを直接殺傷する弾頭の開発は不可能だ。ポケモンが常時発生させている……そう、生体バリアとでも言うべき防御膜を突破出来ん。そして国際条約の事もある。故に新規開発出来たのは条約で規制されているBC兵器すれすれの麻痺弾と催眠弾だけ。毒弾に関しては条約違反に相当する為、開発を凍結している」

 

 資料の一部を指し示し、チョビヒゲは渋々といった様子で自衛隊と警察の担当に説明を始める。それを聞く彼らは真剣その物……何せポケモンが出てからというもの彼らは抑止力を失い、無駄飯食らいと馬鹿にされてきたのだ。さもありなん。

 

「知っての通りポケモンは異常なまでの防御力を有する。我が研究所はこれを彼らが持つ特殊な生体エネルギーを利用した生体バリアが理由だと考えた。故に彼らはビルを粉砕する様な攻撃を受けても無傷で居られるし、ダメージが蓄積されたときに気絶するのだとな」

「……そして、その生体バリアは銃弾を弾く程の強度があり、個体によっては戦車砲にすら耐える、と」

「その通りだ。付け加えると効果的に生体バリアを削るなら同じ生体エネルギーを持つポケモンで削る必要があるという事か。……だが、何事にも例外はある。特にポケモンの状態異常だ」

 

 生体エネルギー、生体バリア、なんともファンタジーな文言ではあったが、ここに居るのはポケモンの非常識さを嫌という程叩き付けられ、その上で少なからず状況を飲み込んできた者達だ。そこに突っ込む様な者は居ない。むしろ変わりとばかりに資料に目を落として飲み込める物がないか探す程……そんな中チョビヒゲの説明は多少の強弱を付けつつ進行していた。

 

「どく、まひ、ねむり、こおり、やけど、こんらん……例を上げればかなりの数になるが、これら状態異常をポケモンに発生させる際、生体バリアを破って傷つける事は必ずしも必要ではない。言い換えれば、生体バリアを破れなくても問題ないという事だ」

「……なるほど。この麻痺弾と催眠弾はそこに着目したと?」

「そうだ。状態異常を起こさせるだけなら生体バリアは殆んど無視できる。例えば最初のポケモン犯罪の際、現状最強のポケモンがスタングレネードで動きを止められた様にな。……一応、成分はポケモン由来の物を主成分にしているし、まず問題はあるまい」

 

 新開発された対ポケモン用特殊弾頭弾は、ポケモンの生体バリア……ポケモンを知っている者風にいえばHPを削る事なく状態異常を与えられる。少なくともチョビヒゲはそう考えていた。万が一自分の理論が間違っていたとしても、この麻痺弾と催眠弾はそれぞれポケモンの“こな”系列の成分を抽出使用しており、ポケモン相手に充分な効果が期待出来ると考えていたのだ。

 実際シロちゃん親衛隊員協力の元行われた実験では、親衛隊員もろともポケモンを状態異常にさせる事に成功しており、その後の解毒にも問題なかった。国際条約にも配慮した兵器……いや、暴徒鎮圧用の武器だといえるだろう。強いて問題点を上げるとすれば、特殊弾頭及び、専用ランチャーの生産コストぐらいだが……それは研究者であるチョビヒゲの知った事ではなかった。

 

「感謝する。これでいざというときに動ける」

「こちらもだ。これでようやくシロ民に頼らずにポケモン犯罪を処理する準備が整った」

「ふんっ、ならばさっさとポケモンリーグを設立すべきだろう。いつまでバラバラにポケモン案件を処理するつもりだ、えぇ?」

 

 自分はやるべき事をやった。ならば後は貴様らの番だ。

 そういわんばかりのチョビヒゲに促されてか、元総理大臣が仕方ないとばかりに重い口を開いて音頭を取る。

 

「そうだな。人員や予算の確保はすんでいるし……例のメディカルマシンは動かせるのだろう?」

「動かすだけならな。仕組みや改良、ましてや量産は不透明だ」

「動かせるならリーグ設立に問題はない。抑止力、警察力としては……警察と自衛隊のポケモン部隊は?」

「警察のポケモン部隊は……量産型モンスターボールか対ポケモン用特殊弾頭弾のどちらかの配備が完了すれば、一先ずは警察としての仕事は出来ます」

「自衛隊も同じく。どちらかあれば抑止力を発揮できるかと」

「ふむ……となると残りは法案だけか」

 

 ポケモン法案。その数は十を越えて百に届かんばかりの数であり、前例のない事も相まって政府の動きは酷く鈍かった。特にポケモンを犯罪に使っても的確な罪状がない、子供が凶悪なポケモンを所持しても違法にならないといった歪な部分はかなり問題視されており、早急な対応が望まれているところなのだ。

 

「なに? まだ通らんのか?」

「いや、不思議な事に反対派や無能が次々と醜態を晒して失脚してくれてな。そのおかげというか、今週中には粗方のポケモン法案が施行出来るはずだ。総理がアメリカから帰ってくるのが合図になるだろう」

「アメリカか……」

 

 どうやらようやく法案が施行されるらしい。そんな事実から一安心といった空気が部屋に流れ……やがて一人の大企業の社長が手を上げた。質問だ。

 

「そういえば、諸外国の動きはどうなのだ? 私の方では酷く鈍い様に感じているが……」

「そちらもか? あぁいや、実はこちらも外国の動きが鈍いと感じているのだ」

「ふむ……?」

 

 諸外国の動き。それは日本人としてはどうしても無知になりやすく、同時に酷く気になる部分でもあった。政治、軍事、経済……そういった物は日本単独で完結する物ではないのだから。

 そして、大企業の社会にまで上り詰めた男の感覚は正常だった。

 

「あぁ、その感覚で間違いない。あちらさんも混乱しているらしくてな……まぁ、総理がアメリカに行った事でホワイトハウスも方針をある程度固めるだろうし、他も動きを決めるだろう。彼はその辺りが得意だからな」

「なるほど、外交屋の面目躍如という訳か?」

「変わりに国内はガタガタだがね。まぁ、リーグさえ設立できればそれも落ち着くだろう」

 

 殆んど国内に居ない総理ではあるが、その分諸外国の動きはある程度まとめてくる予定らしい。その情報を改めて共有し、更にその後二、三言葉交わされ……権力者達の方向は固まった。

 

 ポケモンリーグは何としても早期に設立すると。

 

 そこには新たな利権を狙う一手、自身の保身、純粋な発展を願う考え等様々な思惑が絡んでいたが……しかし、ポケモンリーグの設立が本格的に開始される事に決まる。それに一番喜ぶのは誰か……少なくともこの場には居ないと、元総理やチョビヒゲは考えずにはいられなかった。

 

「では、他の話題と行こう。何か報告のある者は━━」

 

 会議は続く。利権、保身、願い、様々な思惑がぶつかり合いながら━━



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第25話 ステイツ、介入

 都内某所でお偉いさんの悪巧み会議が進行していた頃、別の場所でも会議が行われて……いや、こちらの方を会議というのは少し難しいかも知れない。何せ片方に話し合う気がまるでないのだ。

 

「貴方のご託は聞き飽きたわ。ハッキリ言いなさい。ホワイトハウスはシロちゃんを殺す気があるのか、否か」

 

 礼儀正しくソファーに座り、その後ろからまるで巻き付かせるかの様にドラゴンポケモン、ハクリューを従えた黒髪の女性……伊藤ユウカは脅す様に相手を問い詰める。いや、実際脅しているのだ。ふざけた事をいえばハクリューを暴れさせるぞ、と。

 

「いや、私にそんな事を聞かれてもね……?」

 

 その怒りを一身に受けるのは対面のソファーに座った中年の━━しかし美容に大金でも使っているのか、まだ若さの見える━━金髪の男だ。ユウカの怒りをなんとか受け流そうとする彼は資産家であり、リヴァイアサン号の艦長であり……

 

「ハッ。貴方がCIAのエージェントから協力を依頼され、複数の仕事を請け負った事は掴んでるのよ。私達をあまりなめないでくれるかしら?」

 

 CIAの協力者だった。

 男はユウカ言葉に引きつった笑みを浮かべつつ、ダラダラと汗を流す。その有り様はとても演技には見えず、もし演技なら彼は仕事を間違えているとしかいいようがないだろう。具体的にいえば、ハリウッドに行くべきだ。

 

「Shit……! これだから気の強い女はニガテなんだ」

「あらそう。うやむやにする気ならこの船沈めるわよ? この子の力を知らない訳ではないでしょう? それと、次汚い……いえ、そうね。日本語以外を使ったら沈めるわ」

「ぐっ、く……」

 

 脅迫の上に恐ろしく横暴、だがぐぅの音しか出ない……男がそんな様子になるのも仕方あるまい。何せユウカの手持ちであるハクリュー……それも6Vハクリューの力は本物だ。

 

 最初にミニリュウとしての姿が確認されてから幾人ものシロ民やハンター達が挑むも、その手は全てはね除けられ続け、誰の手持ちにもならなかった一匹。

 やがてユウカによる大捕物が企画、実行され、大勢のシロ民に囲まれてそれでも落ちない。

 戦いによってポケモン持ちの一般シロ民が50名、エリートシロ民10名が戦闘不能判定。公共物、車、持ち込まれた備品の損壊及び破損が多数発生。

 やがて戦いの中でミニリュウはハクリューへと進化し、局地的な竜巻及び暴風が発生。遂に歴戦のシロちゃん親衛隊所属シロ民5名が撃破。

 そんな攻防が半日近くに及び、いよいよシロちゃんの出陣が願われだして……すんでのところでユウカが淑女にあるまじき()()でゲットしたのは界隈では知られた話だ。

 

「あ、あー……私ニホンゴワカリマ「ハクリュー?」分かった! 話す! 話すから沈めるのは止めてくれ!」

「ふん、最初からそうすればいいのよ」

 

 ちなみに。ユウカとハクリューの仲は当初あまり良くなかったが、今では上下関係が確立されたのかそれなりに従順だ。少なくともこんな茶番に付き合って、瞬間的かつ局所的な風雨を起こす程度には。

 とはいえ、ハクリューの目には常に試す様な色合いが浮かんでおり、少しでも自分の主に相応しくないと判断されれば主従関係は壊れるだろうが。

 

「さぁ、さっさと話しなさい。貴方が知っている事を洗いざらいね」

 

 しかし、この自信に満ちた高圧的な態度で相手を気圧せている間は問題ないだろう。何せそれは自身が強者だと確信しているからこそ出来る事で……それにハクリューは一先ずは満足しているのだから。

 

「そういわれてもね……正直私が知っている事はあまりないんだよ。確かに君の言う通り私はCIAの協力者だが、それだって熱心に協力にしている訳でもない。だからそちらに提供出来る情報も大した物は「さっさと吐け」オーケー、分かったらポケモンをけしかけるのを止めてくれ」

 

 高慢なお嬢様とプライドの高いドラゴンポケモンというある種最悪のタッグを前に、遂にリヴァイアサン号艦長はポッキリと折れた。

 そうして彼はシブシブといった様子で口を開く。知りうる情報のうち、喋っても問題無いものを選びつつ。

 

「まずホワイトハウスが不知火白の殺害を……あー、悪かった。言い換えよう。彼女の排除をするかだが、今のところ不明だ。が、特にイレギュラーが起きなければ放置されると思われる」

「放置? 随分消極的ね?」

「ホワイトハウスは……というよりステイツとしては今回の騒動には前向きなんだ。しかしどの程度のリスクが潜んでいるかも分からないのに突っ込む気もないらしくてね。故に様々なオプションを考えつつ、介入の瞬間を待っているのが現状だ」

「……随分と鈍い動きだこと」

 

 どこかなじる様なユウカの発言に、艦長は苦笑しつつステイツも一枚岩ではないんだと返す。

 

「勿論全体としては乗り気さ。我々ステイツは常に新しいフロンティアを目指す開拓者だからね。ポケモンが生み出す利益や市場にはホワイトハウスも財団も、事によれば一般市民さえ興味津々だ。しかし……どこにも変化を嫌う者は居るし、敵対する者も当然いる」

 

 艦長はそこで一度言葉を切り、揃えていた足を崩して足組みをする。その一連の動作は慣れと、余裕を感じさせる物だ。事実艦長の額から出ている汗は格段に減っていた。

 

「アジア地域の不安定さを嫌う者、推し進める者。現政権の支持率向上、あるいは下落を狙う者。新たな紛争を望む者、望まない者。現状に満足している者、してない者。何よりポケモンを良しとする者、しない者……そういった者達の対立と衝突。これがある程度沈静化されない事には、いくらステイツといえどあまり強引な事は出来ないんだよ。他の国々と同じ様に、ね」

「ハッ……つまり、そちらに動く気はないという訳? 火中の栗は日本に拾わせ、肝心な部分は自分達が横取りすると? なめてくれるわね」

「そうは言わないさ。事態が落ち着けばちゃんと同盟国として支援もするだろう。現にCIAのエージェントが数人とはいえ、人とポケモンとの友好関係の為に動いてくれている。君達の望みは叶うと思うけど? ミス・ユウカ?」

 

 相手を落ち着かせる声音で淡々と語り掛ける艦長。その姿に当初の焦りはまるでなく、ギガヨットを所有する資産家として相応しい余裕が見えた。

 一方でユウカの方といえば……自信と高圧的な態度は変わらない。だが、その姿にはイマイチ余裕を感じられなかった。

 

「えぇそうね、おかげで予想以上にスムーズなポケモンリーグ設立が出来そうだわ。勿論、その後の事も。ただ━━」

 

 お礼……というにはいささか以上に気持ちのこもっていない言葉を投げた後、ユウカはそのキツイ視線で艦長を睨み付ける。一辺の嘘も許しはしないとばかりに。そして。

 

「テロリストのクズどもと接触したのは、どういうつもり? 説明して貰うわよ」

 

 そう言ってユウカは壁際で気配を消していた付き人のマネージャーに指示を出し、お互いのソファーの間にあった高級感溢れるテーブルに数枚の紙をぶちまけさせる。

 そこに記されているのはシロちゃんを狙うテロリストと化した変態どもと、CIAないし米国の人間が接触していたという報告だ。写真の一枚すらなく、裏付けは超能力を使ったというファンタジーな物だったが……現状、それで問題はなかった。信じようと、信じられまいと、どちらでも。

 

「……随分と、ファンタジーな報告書だ。こんな妄言を信じると?」

「えぇ、信じるわ。なんとも貴方達らしい話でしょう? 対立する両者にそれぞれ接触するなんて。それに……超能力が信じるに値する物だと、貴方は認めているでしょうに」

「なんの事かな」

「惚けなくて結構。貴方が超能力関係に多額の投資をしたのは掴んでるのよ」

「…………なるほど。随分と鼻の良い犬を飼っているらしい。それとも、君自身が犬かい?」

 

 あくまで穏やかだった目を尖らせ、嘲る様に疑問を投げる艦長。それは犬と呼ばれる事もあるシロ民を揶揄している様であり、同時にユウカの立場を問う物でもあった。誰かの下に居るのか、それとも独立しているのか?

 そんな疑問に対しユウカはハッと鼻で笑った後、お生憎様と断りを入れて言葉を繋げる。

 

「どちらかといえば私は狼よ。……犬は、貴方でしょう?」

「…………」

 

 自身を狼だと主張し、犬は艦長の方だと薄く笑うユウカ。その言葉に艦長は冷たい視線を返す。

 彼が犬。何の? 誰の? それは恐らく……

 

「故国を捨てて飛び出した貴方が、今更国家の犬とはね。笑い話だわ」

「……賢い選択を、したまでだ」

「ならこの船を沈めなさいな。国や権利者に尻尾を振るのは愚かしい事だと、そう言ってた頃に造ったこの船を。あれは若さ故の過ちだと……そう言えばいい。違うかしら?」

 

 国家の犬となったのなら、さぞ忌々しい記憶でしょう? と。相手の神経を逆撫でる様な笑みを浮かべ、ユウカは笑う。

 それに対する艦長は……最早睨み付けているのと変わらない有り様だ。ユウカの肩に暇そうに顎を預けているハクリューがいなければ、懐から銃を抜き取って脅し出してもおかしくない形相。とてもではないが余裕がある様には見えず……その状態のまま彼は反論の為に口を開く。

 

「ステイツは本気だぞ。大きさ故に直ぐには動けないが、一度動き出せばあっという間だ。個人なんて簡単に叩き潰される。君のお気に入り……いや、信仰している不知火白とてそれは変わるまい」

「……そうね。それは否定しないわ。国家という大集団と正面から戦えば負けるでしょう」

 

 国家というのは強大だ。ましてやそれが地球最強の超大国ともなれば、いくらポケモンが居ても勝てるビジョンは思い浮かび難い。だが……

 

「けど、戦う必要があるの? 国家と? 否よ。その必要はない」

「……何?」

「ふふっ。勘違いしているようだけど、私は聞きに来ただけよ」

 

 その報告書は差し上げるわ、と。なんとも優雅な笑みを浮かべながら告げ、今までの高圧的な態度も消し去ってユウカはスッと席を立つ。それに釣られる様に目を閉じていたハクリューも覚醒し、やっと終わったかーとでも言わんばかりにゆるゆるとユウカに続いて……一人と一匹は部屋の出口へと向かう。

 そこまで事が進み、そこでまさかと艦長は顔を改める。

 

「……謀ったな」

 

 苦々しく、艦長はその言葉を捻り出す。謀られたと。今の今までに至るやり取りで、彼女は必要な情報を自分から抜き出したのだ。何一つ交換せず、こちらの情報だけを抜き取っていった……それが具体的に何かは艦長には分からなかったが、謀られた事だけは確信出来た。

 それに対するユウカの返答はない。ただ自信に満ちた笑みを艦長に向け、ごきげんようと優雅な礼を見せて退出していく。

 

「あぁ、最後に一つ。言わせて貰うわ。……貴方達、ポケモンをなめすぎよ」

 

 そう言ってユウカは今度こそ部屋から出ていった。ハクリューと付き人のマネージャーを連れ、勝ったといわんばかりの余裕と自信を見せながら。

 そうして彼女が出ていった後の部屋に、暫く沈黙が降り……

 

「Shit! やってくれるじゃないか。……なるほど、母親に似たな? 忌々しい」

 

 ギリッ、と。凄まじい歯ぎしりの音を響かせ、艦長は心底忌々しそうにユウカが出て行った扉を睨み付ける。

 そんな彼の様子を見かねたのか、壁際の影となっていた護衛らしい大柄な男が艦長に近づき声を掛けた。何か手を打ちますか? と。

 

「ふむ……」

 

 護衛の提案に艦長は普段の平静さを取り戻し、軽く思案する。彼はいささか精神やテンションが安定しない嫌いはあるものの、決して無能ではなく……短い時間で結論を弾き出す。

 

「いや、必要ない。この船に滞在しているシロ民への教育も引き続き……いや、より濃密に行いたまえ」

「しかし、宜しいので?」

 

 シロ民からはリヴァイアサン号研修と呼ばれるそれは、ユウカのゴリ押しと艦長の打算から行われてきた物だ。既に多くのシロ民がこの船で軍事的な知識や経験を積んでおり、それをいきなり取り止めるとなればそれなりの嫌がらせになるのは間違いない。

 それを今回の報復にする事も可能だが……しかし、艦長はそれを含めた報復の全てを腹の中にしまい込んだ。勿論、打算からだ。

 

「恐らく、彼女は幾つかの確信が欲しかっただけだ。後は我々への警告、私の立場の確認。そしてオペレーションの時期を計りに来たのだろう。それぐらいならとやかくいう事ではないし……シロ民への影響力確保はCIAの希望でもある。切り上げる訳にはいかない」

 

 人は善意では動かない。暇な日本人ならいざ知らず、艦長はアメリカンドリームを掴んだステイツの人間だ。当然誰かへの支援の裏には理由がある。それも利益に繋がる理由が。

 今回でいえばリヴァイアサン号を通じてシロ民とCIAエージェントを結び付ける事であり……その行動には既に利益が出ていた。

 

「それより、ホワイトハウスからのオーダーを片付けなければなるまいよ。……例の特殊弾頭の輸送時間は?」

「口の軽いシロ民がおおよその時間を漏らしました。一般車の少ない早朝に行う様です。具体的な事は漏らしませんでしたが……」

「充分だ。直ぐにでもエージェント達に教えてやりたまえ。後は彼らが好きにやるだろう。結果がどうなろうと、それで最低限オーダーには答えられる」

「yessir!」

 

 ビシッと敬礼を返し、指示を受けた男が退出していく。

 あぁ、口を滑らせたシロ民は夢にも思わなかっただろう。まさか酒場で退役軍人に漏らした情報がCIAエージェントに届けられ、それがまた別の━━自分達の敵の手に渡るとは。リヴァイアサン号艦長の、そして米国の利益に使われるとは。

 だが現実とはそんな物であり、既に事は起こった後。覆水盆に帰らず……手遅れだ。

 

「ステイツの軍人ども程ではないが……私も興味はある。遠くから聞かせて貰おうか。ポケモンが現代兵器にどの程度耐えうるのか? その序曲を」

 

 様々な人の努力、思惑、暗躍……それらが重なり、激突は決定した。開幕は、間もなくだ。



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第26話 特殊弾頭輸送任務(前編)

 対ポケモン用特殊弾頭弾。

 それは人がポケモンと戦う為に作り出した剣だ。ポケモンの“こな”系の成分を抽出凝縮する事で高い状態異常発生率を誇る、BC兵器すれすれの武器。

 まぁ、ポケモンからすれば“きのみ”や“わざ”で充分対抗可能な、傷一つ付かない鬱陶しいだけの物だが……それでも今まで全く無力だった人間が、ポケモンに対して有効な攻撃方法を手に入れた事に違いはなく、方々から注目されている特殊弾頭に変わりはない。最初の一歩としては、大きな前進だと。

 

 そしてこの日。研究所に併設された工場で少数生産された特殊弾頭の試作品が、駐屯地や警察施設へ輸送される日がやってきた━━

 

 

MISSION

「特殊弾頭輸送任務」

 

 

 集まったかね?

 落ち着いてくれ。静かにしてくれ!

 

 諸君らはシロ民実働部隊の一員として、今日までポケモンが出現した地域の平和を維持してきてくれた。……今日まで。

 

 先ほど、我がシロ民実働部隊の先行偵察班が不審な動きをする不審者集団を通報してきた。

 直後、当該偵察班からの通信が一切途絶えた。不審者集団による攻撃を受けたものと判断する。

 

 任務を伝える。

 

 この関東地域における膠着状態が約一ヶ月ぶりに破られた可能性がある。

 シロ民実働部隊特殊弾頭輸送任務班はただ今をもって第一種戦闘態勢に移行。各隊員は担当車両へ各自乗車し、不審者集団の発見、捕捉、威嚇射撃をもって敵の狙いを阻止せよ!

 もし敵から反撃を受けたその時には━━

 

「部隊長、間もなく出発時間です」

「特殊弾頭の積み込み完了。今のところ妨害はありません」

「先行偵察班より連絡! 攻撃を受けて退避中、負傷者多数。不審者集団……いえ、テロリストは見失ったとの事です」

 

 出撃だ!各員は直ちに乗車、輸送部隊へ攻撃を行うと推測されるテロリストを排除せよ。

 これは訓練ではない。

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 まだ日が出てすらいない早朝、ポケモン研究所から暗闇に紛れて2つの車列が出発する。

 片方はオリーブドラブに塗られた装甲車やトラックで構成された自衛隊の車列、もう片方はパトカーや特型警備車で構成された警察の車列だ。

 

 そして、そのどちらにもシロ民が護衛として随伴していた。

 

 彼らはそれぞれのトラックや特型警備車の中で各々時を過ごす。モンスターボールを手のひらで転がす者。全員が正式装備しているシロ民専用大型特殊防弾盾や防弾チョッキ等の自分の装備を確認する者。そわそわと落ち着かない者、寝ているのではないかというレベルで静かな者……様々だ。

 とはいえ元ネト民だけあってか会話らしい会話はなく……それに耐え兼ねたのか、やがて特型警備車に乗っている一人のシロ民がポツリと声を出す。こんな噂を知ってるか? と。

 

「今回のコレ、色んな国がスパイを使って見てるらしいぜ?」

「あぁ、それなら聞いた事がある。中露はテロリストに武器を横流しして、米国も一枚噛んでるとか」

「うわぁ、米中露が揃い踏みかよ……あれ? 欧州諸国は?」

「お嬢曰く、ブリカス含め欧州連中は足の引っ張り合いの真っ最中らしい。こっちを見るだけ、調べるだけならともかく、極東の島国相手にマジになって動くには後一週間はかかるだろうってさ」

 

 警察車列を担当しているシロ民達の話題は、今回の任務の裏側だ。中露が武器を、米国が情報を、それぞれテロリストに引き渡した事実を噂話として知る彼らは、大国の思惑をあーでもないこーでもないと話し合う。

 とはいえそこに真剣さや深刻さは殆んどなく、大国の思惑は馬鹿話の一つとして扱われ……やがて彼らは大国が自分達とテロリストをぶつけ合わせ、ポケモンの戦闘能力をはかろうとしているのではないかという結論に達した。今回の輸送任務も、その為に用意された舞台、演目だと。

 

「ったく、俺らは見世物か何かかよ」

「見たいのは俺らというより、ポケモンだろ。どういう存在なのか、どのくらい強いのか、友好関係とかそもそも可能なのか、必要なのか、新たな奴隷に出来ないかとか……まぁ、根本的に対岸の火事って感覚だろうな。海一つは挟んでる訳だし」

「あー……そうなるとこの微妙に無駄な感じがする、芝居がかった輸送任務もしっくりくるなぁ」

「用意された戦場、か」

「身体は闘争を求める」

 

 大国の思惑をおおよそ把握し、それでも気の抜けた様子でシロ民達は車に揺られる。彼らからすれば今更、ようやくなのだ。ようやく大国がポケモンに注目しだした、動き出した。……遅い動きだと、内心嗤う者すら居る程だ。

 何より、自分達はそういう手合を含めた障害に対処する為、各々ポケモンを手に入れ、関係を深め、経験を積み、シミュレーションと訓練を重ね、今日に至る。今更慌てたり、逃げ出す様な腰抜けはここには居ない。そんな奴はエリートや親衛隊員を名乗れないのだから。

 

「ま、一つ言えるのはポケモンが最初に日本で登場したのは正解だったな。シロちゃん居るし、こんな方法で調べようとするあたり、他国だったら今頃ポケモンとドンパチ始まってるだろ」

「日本人。その辺り柔軟つか、一旦は受け入れるからなぁ……」

「そらもう、KAWAIIで全部解決よ」

「進んでるのか、馬鹿なのか……」

「まぁ、平和的ではある」

「お、そうだな」

 

 和気あいあい……とまではいかず、お互い殆んど目も合わせないが、シロ民達は比較的リラックスした様子で車に揺られる。渋滞もなく、順調に車列は進み、一団が郊外から都心部へと入ろうとした━━その時。ドゴシャァ! と、車の外から凄まじい衝突音が聞こえ、直ぐ様急ブレーキがかけられる。

 身体が浮き上がる様な慣性。その中でシロ民達は唐突に起こった幾つかの出来事を頭の中で組み合わせ、二秒と掛けずに答えにたどり着く。即ち。

 

「敵襲!?」

「奴らめ、来やがったか!」

「小型ポケモン持ってる奴は出せ! 大型はまだ出すなよ!」

「サンド、出番だぞ!」「来い、マダツボミ!」

「運転手! 状況は!?」

 

 敵襲だ。テロリストが襲って来たのだ!

 予測されていた非常事態に、シロ民達は怯むことなく立ち向かう。素早く敵襲を確信し、サンドやマダツボミ、シェルダーやクラブ等の小型ポケモンを車内で出し、運転手に状況を確認する。淀みなくそこまで動きを終わらせ、各々が自分の装備を改めて確認していると……運転席から怒鳴り声が響く。前の車がやられたと。

 

「トラックに、改造トラックに突っ込まれてる! こっちの進路を塞いで……いや、中から人が、銃を持ってるぞ!?」

「お前ら行くぞ!」

「「応!」」

 

 それだけ分かれば充分だ。そう言わんばかりに声を合わせ、ほぼ同時にシロ民の一人が扉を蹴破る様にして外への道を開き、そこからサンドを先頭に小型ポケモン達が外へと飛び出す。一拍、シロ民達も盾を構えながら隊列を組んで外へ進み、ポケモンを前に出しつつ警備車の左右に展開。

 車内のゆるゆるとした雰囲気とは打って変わって機敏な彼らを出迎えたのは、鉛弾の壁だ。

 

「構えぇ!」

 

 暗闇を引き裂く曳光弾(えいこうだん)の光を見る暇もなく、シロ民達は大型の盾へと身を隠す。

 カンッ、キンッ、と盾で弾かれる鉛弾。だがそれも長くは続かない……それを知識で知る彼らは直ぐ様次の一手を打つ。シロ民らしく、ポケモンと共に。

 

「サンド! 前へ進んで、“スピードスター”! 応射しつつ照らせ!」

「行け、ポニータ! “ひのこ”だ! 撃ち返せ! 照らしてやれ!」

「シェルダー、“みずでっぽう”。撃ち据えろ」

「クラブ“バブルこうせん”。武器を狙え!」

「マダツボミ“しびれこな”。撃ってくる奴らを動けなくしてやるんだ!」

「行ってこい、タマタマ! “タネマシンガン”! 片っ端から、吹っ飛ばしてやれ!」

 

 盾に身を隠しつつ、暗闇の中自分のポケモンに指示を飛ばして応射を開始するシロ民達。追加でポニータとタマタマが場に出され、星が、火が、水が、泡が、粉が、種が、次々とポケモン達から放たれ、テロリスト達を撃ち据えていく。

 勿論テロリスト達も黙ってはいない。車や街頭、ときには暗闇まで遮蔽物とする事でポケモンの攻撃を遮り、アサルトライフルで射撃。ポケモンの撃破を狙うが━━

 

「サンド! “まるくなる”! 前に出て攻撃を引き受けるんだ!」

「シェルダー、サンドの横に付いて“からにこもる”だ。奴だけにいい格好させるなよ」

「クラブ! “かたくなる”。そしてお前もサンドの横に付くんだ! 前進しろ!」

「ポニータ。“なきごえ”そして“ひのこ”だ。飛んでくるのは出来るだけ避けろ、お前出番はまだ先だからな!」

「あれは……? ちっ、ガスマスクとは小癪な……大丈夫だ、マダツボミ。その場から“ねむりごな”。手間を増やしてやれ」

「タマタマ。お前は引き続き“タネマシンガン”だ。顔を出した奴を吹っ飛ばしてやれ!」

 

 小銃ではポケモンを殺傷出来ない。流石に小石が当たった程度にはダメージがある様だが、それでは十発当てようと百発当てようと殺す事は出来ないのだ。現にテロリスト達は一方的に撃たれ、吹き飛び、ジリジリとその数を減らしていく。

 そうこうしているうちに警察官達もポケモンを出し、ライトを照らし、あるいは拳銃片手に車の影に隠れ、こちらもテロリスト達に圧力をかける。相手はシロ民だけではないと。

 

「運転手の人は早く後ろに、この警備車は盾として使います!」

「了解した、健闘を祈る!」

「っ、ロケラン注意!」

「言ってる側から……運転手の人は退避を! サンド━━」

 

 このままやられるつもりはないといったところか、テロリスト達はRPG7を複数持ち出し……シロ民が止める暇もなく、斉射。

 それに対するシロ民の動きは早い。防御力の低い個体には回避を、耐えれる個体には迎撃を指示。“スピードスター”、“みずでっぽう”、“バブルこうせん”。星、水、泡の“わざ”が放たれ、その幾つかがロケット弾に命中、爆発、迎撃に成功した。

 

「良しっ!」

「まだだ! まだ来るぞ! クラブ! 撃ち続けろ!」

「ポニータ! “ひのこ”! 撃ち落とせぇぇぇ!」

 

 だが全てを落としきれず、数発の弾頭がシロ民達へ迫る。今更逃げれはしない。今までのものに加えて“ひのこ”や“タネマシンガン”等々、焦りを含んだ声で更なる“わざ”が指示され、即座に弾幕が形成される。

 複数の爆発。しかし僅かだがすり抜けられ……そして。

 

「駄目だ、伏せろぉぉぉ━━!」

 

 その声に反応出来るか否か━━そんなタイミングで凄まじい爆発音と共にシロ民達が乗っていた警備車が爆発炎上。パーツを撒き散らして吹き飛ぶ。対戦車弾頭が突き刺さったのだ。警察の車両ではひとたまりもない。

 更に前へ出たポケモン達が居る付近にも着弾し、サンド、シェルダー、クラブが至近弾を受ける。が、こちらはそれほどのダメージではなさそうだ。しかし、生身のトレーナー達、シロ民は違う。

 

「退避! 退避ぃ! サンド、一旦下がれ!」

「訓練通りやれば生き残れる。落ち着いてフォーメーションを組むんだ! シェルダー、サンドの後ろに付け!」

「クラブ! お前も下がるんだ!」

「マダツボミ! こっちは大丈夫だから、火から離れろ!」

「タマタマ、お前もだ! 離れておけ!」

「ポニータ、一度戻ってくるんだ!」

 

 シロ民達は指示を出しつつ、盾で自分と仲間を庇いながらゆるりと撃破された車両から距離を取る。しかしその隙を逃しはしないとばかりに放たれる鉛弾。普通なら死者を出さずにはいられないタイミング……だが。

 

「サンド!」「シェルダー」「クラブ!」

「「「“まもる”!」」」

 

 空いた穴は即座に三匹が連携した“まもる”の壁によって塞がれ、直ぐに戦線が立て直される。そして直ぐ様飛び交う鉛弾と無数の“わざ”。キルレートはシロ民優勢ではあるが……

 

「サンド、“スピードスター”! 牽制射! ……どうする? このままじゃ決め手に欠けるぞ?」

「クラブ! “マッドショット”! 連中の足元を薙ぎ払え!……なら突っ込むか? 先頭はお前とお前のポケモンな」

「ポニータ! “ほのおのうず”! 閉じ込めろ! ……これで準備は出来たぞ。まぁ、俺らは無理だな、盾がイカれだした」

「わーお、えっぐい。まぁ、死者無しを目指すと、どうにもな」

「それがいいんならガスマスク焼いて“どくのこな”で片付くだろ。……で、実際どうする? 危険承知で突っ込んでケリ付けるか?」

 

 難しいところだ。そうため息を吐くシロ民。何せお互い死者無しで終わらせたいシロ民は、決め手に欠けているのだ。かといって王手を指そうとすればどちらかに、あるいは両方に死人が出かねない。

 それは、人とポケモンの共存の流れにヒビを入れてしまう事になる。だがこのままではどっちみち……そんな考えが全員の脳裏に浮かんで暫く、一人のシロ民が声を上げる。ここは俺の、俺達の出番だと。

 

「イワークニキ……運転手さんは?」

「他の警官にパスしてきた。で、ついでに許可も取ってきた。イワークで暴れる許可をな」

 

 イワークニキ。それは最初に出現したイワークを両足粉砕しながらもゲットした男の通称名だ。そのクソ根性を根底に積み上げられた実力は確かな物で、今回の特殊弾頭輸送任務では切り札の一人として随伴していた。

 とはいえ、何せイワークは巨大だ。空き地が広がっているならまだしも、建造物が密集する都心部ではモンスターボールから出しただけで被害が出かねない。その為イワークニキは自分の手持ちと共に後ろに控え、警備車の運転手や、その他警官隊の支援やアドバイスに回っていたのだ。……上から許可が下りる、この瞬間まで。

 

「……よく出たな。許可」

「これ以上町中でロケランブッパだのポケモンバトルだのはヤバいって判断らしい。多少なら壊しても構わないから、SATの出動より早くテロリストを取り押さえてくれとよ。……妙な指示だが、まぁ、悪くない」

「うん? ……あぁ。なるほど、これも演目か。鬱陶しい」

 

 同胞の言葉にそういう事だな、と。そう苦笑しつつイワークニキは腰のベルトからモンスターボールを取り外し、宙へと放り投げる。高く、高く。そして。

 

「来い、イワーク!」

 

 ポンッ、と。独特の音と共に光が溢れ、巨大な蛇を形作り、やがて巨大なポケモンが姿を現す。いわへびポケモン、イワークだ。

 たかさ8.8メートル、おもさ210.0キロ。その怪獣さながらの巨大さは見る者を圧倒し、敵対する者の心をへし折る。━━仮にポケモンに詳しい人間、例えばシロちゃんがこの場に居たならば、このイワークが意外と脆い事を指摘してくれたかも知れないが……生憎彼女はまだ夢の中だ。

 

「さぁ、チェックメイトだ」

 

 鮮やかな朝焼けがビルとイワークを照らす中、戦いは次の段階へ進もうとしていた。



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第27話 特殊弾頭輸送任務(後編)

 朝日が差し込み始めたビル街の端で、突如として始まった戦闘は既に終わりを見せ始めていた。

 警察車列を強襲したテロリスト一党はアサルトライフルやロケットランチャーで護衛部隊を攻撃するも、それを全て無力化された上にポニータの“ほのおのうず”に囲まれて身動きが取れず。一方のシロ民達は新たにイワークを加えて戦列を組み、突入の瞬間を待っていた。

 

「各員準備は良いな? “ほのおのうず”が消えたら突入するぞ」

「盾は使用限界だ。イワークを盾にして接近する。誰か、警官隊にもそう伝えろ」

「俺が行ってくる。手錠を連中にはめるのはあちらさんの仕事だしな」

「よーし、よし。いつでも来い……!」

「さて、俺はポニータに乗っていくか」

「なにそれ格好いい」

 

 次の攻防で勝負が決まる━━それはこの場にいる全員が確信している事。元ネト民らしくゆるゆるとしたシロ民達もそれは同じで、ふわふわとした態度の裏で密かに息を飲む。

 一拍。遂に“ほのおのうず”が霧散し始めた。

 

「突撃ィィィ!」

「イワーク、突っ込め! 突撃だ!」

「Ураааааааа!!」

「うおおおぉぉー!!」

「GO! GO!」

「突撃だぁぁぁ!」

 

 炎が消えたのを合図とし、各々が声を上げながら前へ踏み出す。

 先ずイワークが地を滑る様に前進。それを盾にポケモン達が続き、シロ民達も使い物にならなくなった盾を投げ捨てて走り出し、警官隊もその後に続いた。全軍突撃だ。

 

「撃ってきたぞぉ!」

「怯むな! 突撃しろぉぉぉ!」

「イワークの後ろに続くんだ!」

「イワークは鉄壁だ。この程度の攻撃では、びくともせんわ!」

 

 破裂音、金属音、爆発音。凄まじい音が響く道を、シロ民達はイワークを盾に前へ進む。シロ民達からはイワークの巨体で見えないが、辺りに響く凄まじい跳弾音とそれに混じる爆発音を聞くに、テロリストは全力でイワークと相対しているのだろう。

 そして、それは明らかにイワーク優勢だ。ライフル弾も、対戦車弾頭も、イワークを撃破するにはまるで足りていない。どう見ても豆鉄砲以下の効果しか与えれていないのだから。

 

「よーし、イワーク! 奴らを取り囲め! 動きを封じろ!」

 

 そうしているうちにイワークはテロリスト達に取り付き、トレーナーの指示に従って彼らをグルリと取り囲む様にとぐろを巻く。いつでも押し潰せるぞと。そんな圧力をかけながら。

 

「決まったな……テロリストどもに告げる! お前達は完全に包囲されている! 大人しく武器を捨てて投降しろ!」

 

 勝負は決まった。誰もがそう確信し、降伏勧告が始まる。武器を捨て、投降しろと。お前らは負けたのだと。繰り返し、繰り返し告げる。各々が反発に備えて銃を構え、ポケモンに指示を飛ばす準備を継続しつつ。

 それを知ってか知らずか、イワークのとぐろの中からまだ戦えると罵声混じりの日本語で反発の声が上げられ、連続した銃声が響くものの……悲しいかな、それに続くのは虚しい跳弾音だ。どうやらテロリスト達はポケモンを持っていないらしく、イワークのとぐろを突破出来ないらしい。

 

「……連中、武器を捨てんな。まだ撃ってるぞ」

「まさか、この段でまだ勝てると思ってるのか?」

「いや、どっちかというと発狂してるんじゃないのか……? あれ」

「あー、まぁ、どっちにしろ時間の無駄だな。お巡りさん方にも言ってくるわ」

「りょ。んじゃ、それで終わりだな。」

 

 これ以上は時間の無駄だ。それを感じたシロ民は警官隊に話をつけに行き……やがて双方納得の上で協力して次の段階へと移る。つまり、突入だ。

 

「話つけて来た。早期突入に賛成、タイミングはこっちに合わせてくれるってよ」

「そりゃ、意外だな。素人には任せられない! ……とか言われなかったのか?」

「いや、まぁ……普通ならあるんだろうけど、俺とあちらさん顔馴染みだし。一時期教官だったし、俺」

「あぁ、ポケモン教習の関係か……」

「コネの力だな。お嬢様々だ」

「なるほどな。んじゃ、前準備と行くか」

 

 シロ民と警官隊の一部がお互い顔馴染みである事、準備がポケモンに関する専門家であるという世間風潮……そういった要素が噛み合って、シロ民主導の突入がスムーズに開始される。

 その最初の一手はイワークニキ。彼がイワークに指示を出した事で、イワークがテロリストを囲ったままグルグルと身体を動かし始めたのだ。それはまるで、回転する石壁。

 

「良いぞイワーク。回れ、回れ。圧迫し、かき乱せ……!」

 

 グルグル、グルグルと、しかし地響きを立てながらイワークは回る。その圧迫感たるや凄まじく、中にいるテロリスト達は混乱の極みにあった。

 このまま磨り潰されるのではないか、押し潰されるのではないか、もし当たればひき肉にされるのは間違いない……あぁ、これは一体いつになったら止まるのか、止まったとして突入してくる方向はどちらなのか。自分達は、どうなるのか?

 

(やっこ)さん、酷く混乱してるな……そろそろじゃないか?」

「そうだな。そちらの準備は?」

「終わってる。後は訓練通りにやるだけだ」

「よーし……イワーク、“いやなおと”! そろそろ決めるぞ!」

 

 テロリストと呼称されてはいるが、彼らは歴戦の傭兵でもなければ狂気に染まった信仰がある訳でもない。ただのチンピラに毛が生えた程度の連中だ。故にイワークが恐怖を煽る度に容易く戦意が削れ、“いやなおと”による精神ダメージが刺さり、統制は崩壊寸前。

 やがて恐怖からデタラメに撃っていた銃が弾切れになり、あるいは跳弾で自分を撃ち、味方に撃たれ、戦う力を失っていく。

 そして。

 

「イワーク! ポケモン達の前に穴を開けろ!」

 

 イワークニキの声でイワークの回転が止まり、一ヶ所だけ包囲に穴が空く。それも人が並んで通れる程の穴が。

 これに戦意が崩壊したテロリスト達が遮二無二飛び付く。我先にと包囲から抜け出そうとし……

 

「サンド、“たいあたり”! 突入だ!」

「シェルダー、“たいあたり”! 続けぇ!」

「ポニータ! “たいあたり”だ! 行くぞっ!」

 

 包囲の直ぐ側で待機していたポケモン達の“たいあたり”を食らって薙ぎ倒され、直ぐ様シロ民か警察に捕縛された。武器を取り上げられ、拘束された彼らに反撃の手はない。

 一方、まだ武器を持っている者達は反撃を試みるが……やがて等しく反撃の手を失った。シロ民一番乗り! 手錠を振り回しながらそう叫ぶポニータに乗ったシロ民を先頭に、素早く接近してきたポケモン達の“たいあたり”を避けきれず、吹き飛ばされ、武器を破壊、もしくは取り上げられたのだ。狙いを定める暇すら与えない速攻で。

 

「突入! 突入! 抵抗する者はポケモンに制圧させろ!」

「手錠をかけてパトカーの後部座席に突っ込んでやる!」

「こら、大人しくしろ!」

 

 文字通りポケモンに薙ぎ払われたテロリスト達に、打てる手は最早なかった。元が一般人に過ぎない彼らは体術に優れる警察や、囲んでポケモンで抑えるシロ民に抵抗出来ず次々と捕縛される。

 やがて警察車列を強襲したテロリスト十数名は全員捕縛され、自体は終息を迎えた。警察車列側の死傷者0。テロリストは全員捕縛済み……圧倒的な勝利だ。

 

「終わったな……」

「あぁ、勝った」

「他愛ない」

「まぁ、これでポケモンが最強だってのはハッキリしたろ。これで終わりにして欲しいもんだ」

「それな。今回のはシロちゃん的にも、俺らとしても完全に寄り道……というか、どうでもいい結果だからなぁ」

「ほんそれ」

 

 人間は銃を持ったくらいではポケモンに勝てない。

 それはシロ民や政府機関では周知の事実であり、日本国においては精度の高い噂話で……この瞬間、世界の常識となった。ポケモンに銃は効かず、接近されれば狙いを定める事すら困難だと。

 

「この、化物どもめ! インベイダーの手先どもめ! 滅びろ、死に絶えろ、貴様らのせいで人は死ぬんだ!」

「ボスさえ、ボスさえ来れば貴様らなんぞイチコロだ!」

「ポケモンがなんだ、ポケモンがそんなに偉いか! 貴様らのせいで、どれだけ消えると思ってる! 狂人どもがぁ!」

 

 だからテロリストとは名ばかりの連中の……その中の数人がそんな事を叫んでも、誰も聞きはしない。敗者の()れ言、負け犬の遠吠え、狂人の妄言。誰も、本気にはしない。他の有象無象と喚き声と同じと片付けてしまう。

 だって、ポケモンに勝てるのはポケモンだけなのだから。こちらの有利は絶対なのだから。そう、ポケモンに勝てるのはポケモンだけだ。ならば━━

 

「スリーパー、イワークへ“ねんりき”。締め上げつつ、ビルに叩き付けろ」

 

 その“わざ”が、辺りに響く。狙われたのはイワーク。200キロを越える巨体が突如として持ち上がり、地面から離れ、ブンッと近くにあった廃ビルへ叩き付けられる! 凄まじい衝撃と揺れが響き、廃ビルの外壁が吹き飛ぶ。

 

「イワーク!?」

「何だ!? 何が起こった!?」

「誰だ! どこからの攻撃だ!?」

 

 突然の事にポケモンもトレーナーも混乱し━━

 

「スリーパー、“サイケこうせん”。イワークを落とせ」

 

 次の瞬間には追撃の光線が刺さる。それはイワークに向けるにはお世辞にも相性がいいとはいえないエスパータイプの“わざ”。だが、放たれた二つはいずれも“とくしゅわざ”で、イワークは“とくぼう”が低い。そして何より、その“わざ”はかなり鍛えられた一撃だった。

 イワークが、沈む。ズルズルとビルを背に崩れ落ち、地響きを立てて地面に横倒しに。その目は……完全に回っている。戦闘不能だ。

 

「ば、馬鹿な。イワークが……?」

「あり得ない! 対戦車弾頭すら弾くんだぞ!?」

「いや、今のはエスパータイプの……そもそもどこから撃ってきたんだ!」

「確かあっちの……おい、あれを見ろ!」

 

 一人のシロ民がビルの屋上を指差す。逆光でよく見えないが、それは一人の男と……シロ民の知識と目が正しければ、さいみんポケモン、スリーパーに見えた。

 

 ━━まさか、奴らが?

 

 そう彼らが思考した次の瞬間、男とスリーパーの姿が突如としてかき消える。まるでそこには誰も居なかったかのように。

 そして。

 

「これが、インベーダーの精鋭戦力か? 思ったより脆いな」

「なっ!?」

「馬鹿な!?」

「瞬間、移動……!?」

 

 シロ民達の背後、そこから聞こえた声に思わず振り替えれば、そこにはビルの上に居たはずの一人と一匹が居た。声に出るのは動揺と疑念。

 そんなシロ民達に男は薄笑いを返しつつ、指を向ける。

 

「クヒッ、アタリだ。スリーパー、“サイケこうせん”。薙ぎ払え」

 

 放たれたのはポケモンへの指示。スッ、と動かされた指先に従う様に強力な光線が走り、無双を誇ったポケモン達を薙ぎ払う。

 突然のポケモンバトル開始に、対応出来た者は半数。ポニータがトレーナーを庇い、タマタマとマダツボミは逃げ遅れ、それぞれ一撃で撃破されたのだ。生き残ったのは咄嗟に“まもる”を指示された三匹だけ……その結果に満足しているのか、いないのか、男は曖昧な頷きを打つ。悪くないはないと。

 

「しかし、足りない。スリーパー、“ねんりき”。まとめて締め落とせ」

「っ! サンド、スリーパーに“ころがる”だ!」

 

 手加減の欠片も見えない、押し潰すかの様な連続攻撃。“ころがる”で突っ込んだサンドを除いたシェルダーとクラブが地面から浮き上がり、苦しそうに悶え始める。このままでは数秒で落とされてしまうだろう……だが、そうなる前にサンドの“ころがる”がスリーパーに刺さる!

 そうサンドのトレーナーが笑みを浮かべ、期待通りにサンドの“ころがる”がスリーパーにドスリと当たる。だが、当のスリーパーは何の痛みも感じていないのか、平然と“ねんりき”を使い続けていた。

 

「シェルダー! スリーパーに“みずでっぽう”」

「クラブ! スリーパーに“バブルこうせん”!」

 

 このままではやられる。そう確信した二人のトレーナーは、サンドの二次攻撃を待たずに自身のポケモンに指示を飛ばす。例え接近出来なくとも、遠距離系の“わざ”でスリーパーを落とそうと。

 その目論みは━━半分上手くいった。ポケモン達は棒立ちのスリーパーに水と泡をぶつける事に成功したのだ。しかし、やはりスリーパーに目立ったダメージは見られない。多少鬱陶しそうにするだけで、“ねんりき”を止める事すらしなかったのだ。

 

「スリーパー、その二匹に止めを差せ」

「サンド、行けぇぇぇ!」

 

 サンドの二回目の“ころがる”がスリーパーに刺さる━━その寸前、“ねんりき”によってシェルダーとクラブがガツンッと激しくぶつけ合わされ、両者共に目を回して戦闘不能に陥ってしまう。これで、残るはサンドのみ。

 その頼みのサンドは二回目の“ころがる”に成功し、一回目より激しい体当たりをスリーパーに敢行。僅かだかよろめかせる事に成功した。そしてそのまま第三次攻撃への準備へと走り抜ける。

 

「ふむ、“めいそう”を事前に積んでいたのが功をそうしたな……さて」

「何……?」

 

 “めいそう”を事前に積んでいた。そうポツリと溢す男にサンドのトレーナーの注目が向くが、男はその注目に薄笑いを返すだけでそれ以上は何も言わない。

 疑念、不審、推測。

 シロ民達の脳裏に様々な思考が走る中、サンドの三回目になる“ころがる”がスリーパーへ向かい出した。……“ころがる”は成功する度に威力が上がり、最終的にはロマン砲じみた火力を発揮する“わざ”。その三回目ともなればそれなりの威力がある。当たればそれなりのダメージが見込めるが……

 

「スリーパー、”ドレインパンチ“だ」

 

 流石に黙って見る気はないらしく、男はスリーパーに指示を飛ばす。向かい討てと。

 その指示に男と似たような薄笑いを浮かべ、スリーパーは持っていた振り子を握った拳の中にしまいこむ。そのまま腕を引いて、転がってくるサンドを睨み、そして。激突。

 

「っ!」

「ふん……」

 

 凄まじい衝撃音と共にぶつかった両者の拮抗は、一瞬。

 互角に見えた次の瞬間にはスリーパーの拳が丸まったサンドを押しきり、そのまま殴り飛ばしたのだ。ブンッと空に叩き上げられたサンドは、やがてボールが落ちるかの様に地面に叩き付けられる。その目はまだ回っておらず、闘志に燃えていたが……

 

「止めだスリーパー、“ねんりき”」

 

 間髪入れずに放たれた追撃によってあえなく意識を刈り取られ、そのままトレーナーに向かって放り投げられた。

 

「なっ、サンド━━!?」

 

 ドスッ、と。想像よりも重い衝撃を受け、サンドは受け止めたトレーナーを巻き込んで地面に転がる。その目に闘志は無く……どう見ても戦闘不能。全滅だ。

 

「ば、馬鹿な。こんな事が……!?」

「ぜ、全滅? 六匹のポケモンが全滅? 五分も経たずにか?」

「化け物め……!」

 

 たった一匹相手に六匹が戦闘不能……それも僅か数分で全滅したという現実にシロ民へ動揺が広がっていく。負けた、勝てない、強すぎる、レベルが違う。まるで“めのまえがまっくらになった”かの様な感覚に打ちのめされる。

 その一方で活気に湧くのはテロリスト達だ。

 

「良いぞ! やっちまえ!」

「流石ボスだ!」

「ボスが助けに来てくれたぞ!」

 

 手錠をはめられてなお歓声を上げ、男をボスと呼ぶテロリスト達。その様子にシロ民達の脳裏に一人の人物か浮かび上がっていく。

 テロリストの、ボス。まさか、奴が。

 

「まさか、元シロ民のハッカーか?」

「! 変態から犯罪者に、犯罪者からテロリストになったあの豚か!? いや、だが……」

「顔が違うぞ。痩せてる」

 

 口から出てくるのはやはり一人の人物だ。シロちゃんに邪な考えから凸を敢行し、ポチネキとSATUMA人に阻止され、敗北。そのまま刑務所に叩き込まれるも脱獄し、今日まで密かに戦力増強と情報戦に励んでいた男。元シロ民のハッカーにして催眠術師、現テロリストのボス。その男だと。

 しかし、その男の顔や体型は事前に周知された物とはだいぶ違っていた。具体的にいうと痩せてる。それどころか鍛えてすらいるのだろう。手足は力強く、顔立ちも精悍……とまではいえないが、それなりに鍛えている男の顔つきだ。

 

 ━━聞いていた話と違う。

 

 敵のボスは豚だと聞いていたのに、会ってみれば細マッチョだった。そう思わずシロ民達が互いの顔を見合わせれば、男はその顔に似合わぬ気味の悪い薄笑いを浮かべて告げる。それも仕方ないと。

 

「あんなモノを見れば、少しは鍛えようという気にもなるさ。クヒッ」

「あんなモノ……?」

「クヒヒッ。この世の……いや、人間の歴史の終わりだ。インベーダーども。お前らがそうと知らずに人間を消し去る未来だよ」

「……は?」

 

 何言ってんだ、フジャケルナ! そうシロ民から声が上がるが、男は薄笑いをより一層強くするばかりで、訂正する気配は見られない。それどころかやはり分からんか、と言葉を繋げてくる。

 

「ポケモンと人との共存? 大いに結構! 今見たように人はポケモンに勝てん。それが最善の道だろう……だが! お前らはそれに固執するあまり多くの者を見捨てている! 大事な事に目をつむっている! 知らず、聞かず、分からぬと逃げ。それが何を招くか考えもせずに!」

 

 両手で天をあおぎ、高らかに歌い上げる様に声を上げる男。その姿は控え目にいってマトモではなく……しかし、その言葉はどこまでも真摯だった。

 

「少し考えれば分かる話のはずだ。このまま進めば人はどうなる? えぇ? インベーダーども、答えてみろ」

「……ポケモンと、共にある。彼らと共に前へ進む。そのはずだ」

「クヒッ、違うぞ。ポケモンに食われるのだ」

 

 ポケモンと共に。シロ民の、元を辿ればシロちゃんの願いを男はバッサリと切り捨てる。それは違う。あり得ないと。

 狂気に沈んだ、しかし冷静な目でシロ民達を睨み、男は続ける。確かにシロちゃんに従えばポケモンとの友好関係は不可能ではないだろうと。だが。

 

「シロちゃんが導くのは、人を切り捨てた、ポケモン優位の友好関係だ」

「ポケモン優位……?」

「分かるか、シロ民ども。やはり分からんか。だから貴様らはインベーダーなのだ。人間を辞めた化け物が。その怠慢と狂信が人を、人間の歴史を、人類史を、忘却の彼方へ追いやるのだ!」

「……?」

「クヒヒッ、傑作だなぁ? 彼女は、シロちゃんは人など見ていないぞ? 長く調べ、観察したからこそ分かる。シロちゃんは人に感心がない。感心事は常にポケモンのみだ! ……まぁ、当たり前だな。シロちゃんが一番ツラいときに隣に居たのは人ではなく、ポケモンなのだから」

 

 そこで男は言葉を切り、ギョロリとシロ民達を見回す。そうして口から出てくるのは一つの問い。貴様らなら助けてくれた者と助けてくれなかった者、どちらを取る? と。

 

「簡単だ。助けてくれた者を取る。信頼する。優遇する! そして、シロちゃんを助けたのは人ではなく、ポケモンだ。……分かるだろう? 彼女はポケモンを取るぞ。千人の人間を見捨てても、一匹のポケモンを取るぞ、シロちゃんは。何度でも、何度でも人を見捨てるぞ。彼女にとって人間は、価値がないからな」

「何を、馬鹿な……」

「そう思うか? 思うだろうな。私もそう思った。……しかし、違うのだ。それでは説明がつかない。普段の行動や言動は勿論、死を初めて向けられた少女が……いや」

 

 疑問符を浮かべるシロ民を置き去りに、そこまで一気に喋った男だったが……はたと思い至った様に口を閉じる。喋り過ぎたと。

 

「そろそろ仕事をするとしよう……スリーパー、“さいみんじゅつ”。細部は私が調節する。やれ」

「くっ……!?」

 

 “さいみんじゅつ”を指示した男はスッと手をかざし、スリーパーは振り子を降り始める。ゆっくり、ゆっくり、独特のリズムで。

 これにシロ民は慌てて目や耳を閉じ、辺りへ警戒の声を飛ばそうとするが……もう遅い。ドサリドサリの次々と警察官達とテロリストの大多数が眠りに落ち、崩れ落ちる。そしてシロ民達も強烈な眠気に教われ……その景色の何が不満なのか男は不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

「やはり信仰心の厚いシロ民は人間を辞めているか。私も貴様らも、哀れだな。気づかぬうちに人間ではなくなっているのだから……」

「何を……クソッ……」

 

 自分も含めて哀れだと嗤う男にシロ民は噛み付こうとするが、激しい眠気がそれを許さない。一人、また一人と崩れ落ちていく。

 

「俺らを倒しても、シロちゃんはお前の物にはならんぞ……!」

「ん? あぁ……そうだろうな」

 

 負け惜しみ。そう自覚しながらもこれだけはと放った言葉は、サラリと流される。どうでもいいとばかりに。

 これに驚くのはシロ民達だ。事前情報と違い過ぎる。彼らはシロちゃんを狙う悪質な犯罪者ではなかったのかと。そんな彼らを置き去りに、男はゆっくりと首を振って言葉を繋げる。仕方ない事だと。

 

「非常に、非常に残念だが、仕方ない事だ。それに、前の私ならともかく今の私にとって彼女は最優先目標ではないし、固執する事でもない」

「何っ……!?」

「勿論、手に入れれるなら好きにさせてもらうさ。私の好きに、使わせて貰う。だが、今やるべき事はシロちゃんの、特異点の確保でも、排除でもない。……戦力を増強し、防波堤を作り、最終的に、決定的なタイミングで、流れを変える事だ」

 

 そうでもしなければ人の世界が終わるのだからと。薄笑いを浮かべながら男は肩をすくめる。そこに狂気はなく、真摯さと疲れが見えるのみ。

 だが、やはり男はどうしようもなく狂気に落ちていた。

 

「最早ポケモンの侵食が止まらない以上、ポケモンとの友好関係は必要不可欠だ。それに関しては裏から手を回してやろう。……だが、作られるべきはポケモン優位の世界ではない。人間優位の世界だ。シロちゃんには悪いが、ここは人間の世界だったのだ! ならば、作られるべきは人間優位の世界であるはずだ。残されるべきは我々の世界の歴史だ!」

 

 高らかに人の世界を守るのだと、壮大な事を語るその有り様は狂気に満ちているとしか言いようがない。そして“さいみんじゅつ”で眠らず、いつの間にか手錠を外し、男の背後についたテロリスト達もまた、狂気に落ちているのだろう。男の演説を止める事もせず、もっともだと頷いているのだから。

 

「さて……諸君らはよく健闘したが、現代兵器の前に敗北した。ポケモンは現代兵器でダメージを受ける。その結果少数のテロリストを逃してしまい、手持ちポケモンは全滅した。当然テロリストのボスは居なかったし、何も聞いてはいない……ここであったのは、そういう事だ」

「な、に……?」

「そういう事になるんだよ。その為の“さいみんじゅつ”だ。だいたいそうでもなければ、国外勢力を割れないじゃないか」

 

 実際あった事実と別のストーリーを語る男は、一層笑みを深めるとスリーパーに指示を飛ばす。仕上げの“さいみんじゅつ”だと。

 そうしてリズムを変えてスリーパーの振り子が振られ、男が何やら集中し、遂に全てのシロ民が眠り落ちる。その後も暫く“さいみんじゅつ”が続き……やがて一人と一匹が“さいみんじゅつ”を切り上げたとき、そこにあったのは相も変わらない薄笑いだ。

 

「クヒヒッ。今頃あちらは完全に失敗した頃合いだろう。これで現代兵器が効いたグループと、効かなかったグループの二つが出来る……これなら、割れるな」

「割れますかね?」

「割れなければ困る。だが、人は信じたい情報を真実だと思う生き物だ……割れるだろう」

「そして、割れてしまえば動きは鈍くなり、各個撃破も行えると」

「必要とあれば、な。クヒッ、笑い話だなぁ。人類は団結しないといけないというのに、誰も彼もまとまらない。まとまる気がない。あぁ、残念だ。残念だなぁ」

 

 心底残念そうに、しかしどこか嬉しそうに笑う男。ある種矛盾した感情だったが……狂気に沈んだ男からすれば大した事ではない。ただ残念なのも、嬉しいのも真実なだけだ。

 

「さて、そろそろ先に片付けた観客が起きる頃だ。撤収するぞ。次のターニングポイントまで潜む。……よし、スリーパー、“テレポート”だ」

 

 “テレポート”。その“わざ”が使われたのか、テロリスト達が突如としてかき消える。後に残ったのは“さいみんじゅつ”に掛けられた人々のみだった……



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ハロウィン企画 魔女っ娘シロちゃん!

 ある程度タイミングを合わせれたのでハロウィン企画。多少雑なのは許して許して……作品内時間はカントー編が終わった後です。一応。


 ━━10月31日。

 ━━渋谷スクランブル交差点。

 

 ハロウィン当日となったこの日、日本各地で様々な催しが行われており……その中でもここ渋谷スクランブル交差点は特に凄まじい喧騒の中に包まれていた。

 理由はただ一つ。祭りだからだ。

 

「凄まじい人と喧騒だな……吐きそう」

「人酔いか? ラムの実でもかじってろ。……てか誰か持ってない? 俺も吐きそう」

「やっぱ元来非リアネト民のシロ民にハロウィン警備は無理があるってー」

「仕方ないだろ。ポケモントレーナーが暴れだしたら警察だけじゃ人手足りないんだから」

「祭りだなぁ……」

 

 祭り。それは本来神聖かつ荘厳で、厳粛な物だ。豊穣を感謝し、神々を祀り、ときには供物をもってこの先の豊穣と安定を願う……本来、そういうものである。

 しかし、良くも悪くも日本人というのは祭りというのが好きな━━あるいは理由がないと騒げない━━人種なのだろう。根暗を自覚するネト民ですら祭りとなれば騒ぎに騒ぎ、一時的とはいえ情報戦で勝利するのだから、これはもう種族のDNAに刻まれた宿命だ。

 そのせいか時代を重ねる事に荘厳さや厳粛は消滅し、神聖さに至っては欠片も残っておらず……その代わりに年々増えているのは、賑やかさだ。

 

「にしても煩いな。誰だよ、ドゴーム連れてきてる奴は……」

「ドゴームというよりバクオングだろ。この喧騒は」

「こんな中でそんなの出したら即行捕縛案件なんだよなぁ」

「都会のハロウィン。キツい」

「というかハロウィンって何だっけ?」

「菓子メーカーの陰謀」

 

 さもなくばリア充とウェーイ系の巣窟だと、軽く鼻で笑うシロ民は恐らく間違っていない。

 この騒がしいハロウィンも元はといえば神聖かつ荘厳で、厳粛な物だった。何せ━━古い事なので諸説あるが━━古代ケルトを発祥とする収穫祭だ。ついでに大みそかだったり、お盆だったり、悪霊避けだったりする。本来騒げという方が難しい祭りなのだが……何をどう間違ったのか。菓子メーカーのせいか。そこまでして騒ぐ理由が欲しかったのか。そんなにストレスが溜まっているのか。千年変態の歴史のせいか。日本におけるハロウィンは盛大に騒げる物になっている。

 簡単にいえば、仮装パーティー。

 もっといえば、変態百鬼夜行だ。

 

「ゾンビ、ミイラ、狼男、フランケンシュタイン、吸血鬼……西洋妖怪の行列だな」

「コスプレも多いぞ。アニメキャラからネタに走ったのまで……お、完成度高い奴発見」

「全く、ここはいつからコミケ会場になったのやら」

 

 前々から準備していた者、やり慣れた者、既製品や有り合わせで場に合わせただけの者……各々の事情や仮装のレベルは様々だが、この場に居る者の過半数が何らかの仮装やコスプレを行っているのに変わりはなく、なんともサブカルチャー発祥の国らしいカオスな光景が広がっていた。

 そして特に、というべきか。今回はそのカオスの度合いが酷い。何せ……

 

「おっ、ピカチュウ発見」

「どこに……いや、あれはピカチュウというより黄色いゴーリキーじゃね?」

「付け耳してるのならチラホラいるし、それぐらいで良いと思うんだよなぁ。うん」

「目を逸らすな。あれが現実だ」

「ピカチュウバリエーション多すぎんよぉー」

 

 ピカチュウを筆頭に様々なポケモンモチーフと分かるコスプレをしている者が居るのだから。その上小型系とはいえポケモンを連れ歩いている者も多く、そのカオス度合いは例年を大きく上回っいた。

 そして、そんな状況にもなれば当然トラブルが発生する。

 

「おーい。地点ロの二でまたポケモン絡みのトラブルだと。俺らの方で対応してくれとさ」

「またあそこかよ。だからグリッドはアルファベットとアラビア数字で割り振っておけと……」

「今更言っても仕方ないだろ。じゃ、行ってくる」

「行てら」

 

 ポケモン絡みのトラブル。それは対応を誤るか、あるいは人員の到着が遅れれば戦術核兵器クラスの被害が出かねない非常に危険な物。だからこそ、今年のハロウィンではポケモンのスペシャリストであるシロ民が警備に駆り出され、対応させられていた。万が一でも被害を出してはならないと。とはいえ……

 

「ったく、ポケモンの面倒みれないなら資格返納しろよ、ゲットするなよと。資格取得の難易度上げるべきだろ、これ」

「それな」

「っても、今でも結構キツ目なんだよなぁ。これ以上やるとポケモンへの理解が低くなって、不理解が広まるし……」

「分かる」

「あ゛ーめんどくせ。もう意識高い系トレーナー様にやらせろよ……」

「ほんそれ」

「ゆうてアイツらクソショボじゃん。鎮圧も考えるならやっぱ俺らしか……あーダルい」

「そやな」

 

 面倒、キツい、ダルい……流石はリア充イベントクソ食らえなネト民であるシロ民達というべきか。望まぬ労働への不満は凄まじく、本格的な警備開始から一時間も経つ頃には愚痴も不満もタラタラで、やる気やモチベーションは超低空飛行。控え目にいって頼りになる状態ではなかった。

 だが、それは前もって予測されていた事。ならば、当然手は打ってある。

 

「しかし、これをパーフェクトクリアしないとシロちゃんのハロウィン姿を拝めないという現実」

「悪魔だわ。このやり方悪魔のそれだわ。しかも釣り餌が上等過ぎるから……」

「釣られるクマー」

「どうしたらオタクが動くか、よく知ってるよなぁ。ある意味ご恩と奉公の関係性だぜ」

「オタクは千年前にも居た……?」

 

 シロちゃんのハロウィン姿。それは今回のオペレーションに参加し、シロ民が仕事を完璧に仕上げたときのみ配布される超レアアイテムだ。それは写真だとも、絵だともいわれるが……

 なんにせよ、こういった形になる物が殆んど出回らない推しのアイテム。それも限定品。シロ民としてはなんとしても、それこそ身内から殉職者を出そうとも手に入れたいアイテムだった。

 

「っと? あれ、トラブルか?」

「んあ? ……おいおい。まさか、こんな人混みでポケモンバトルする気か? 死人が出るぞ」

「鎮圧対象だ。手早くやるぞ」

 

 ハロウィンの夜。犬から狼となったシロ民達に、手加減の文字は無い。トラブルは起きる前に、あるいは起きて直ぐに鎮圧消火される。

 

 ━━全ては限定レアアイテムの為に!

 

 人の業であった。しかし、その業のおかげで被害の大きいトラブルは無かったのだから、一概に悪いといえない。

 ……とはいえ、件の少女は前日に着せられた複数のハロウィン衣装姿が描かれたブロマイドが、大量に配られていくのを死んだ目で見送る事になるのだが……それはまた別の話。

 

 ちなみに、彼女が何を着せられたかだが━━それは時間の針を戻さねばなるまい。

 

 ……………………

 …………

 ……

 

 ━━10月30日

 ━━久里浜某所

 ━━伊藤家別邸

 

 ハロウィン前日となったこの日、私……不知火白はユウカさんに呼び出されていた。なんでも大事な用があるから指示した部屋まで来て欲しいと。

 それに私は少し妙な話だとは思いつつも、これといって警戒もせずに指示された部屋に向かい……入った瞬間察する。罠だと。

 

「来たわね、シロちゃん」

「あ、お久しぶりですねぇ……」

「ん……」

 

 部屋で待っていたのはいやにギラギラとした目のユウカさんと、疲れきった様子のカオリとサキのアイドル二人組……そして、大量の服。

 もう、それだけで私がこれから何をされるか分かってしまうというもの。私は慌てて後ろに下がろうとして……既に扉が閉められている事に気づく。どうやらユウカのマネージャーさんが外からソッと閉めたらしい。まずい、逃げられない。

 

「わ、私に何か用ですか……?」

 

 大量の服……それもよく見ればドレスだのネコミミだの、間違いなくコスプレに分類される品々を視界から追い出しつつ、私は会話を試みる。例え無駄だとしても、先延ばしにするぐらい出来るだろうと。着せ替え人形なんてごめん被ると。

 しかし、残念な事に目がギラついたユウカさんにはこうかがないみたいだ……

 

「ハロウィンよ。シロちゃん」

「はい。外国の、収穫祭ですよね?」

「……えぇ、そうね。でも、日本ではまた事情が違うの。……分かるわよね?」

「はい、いいえ。分かりたくないです」

 

 言いたい事は分かる。私にコスプレしろと言いたいのだろう。まぁ、確かに今の私は客観的に見てそれなりの美少女なのだから、この手のイベントに参加し、姿を見せ、愛想を振り撒き、新たなファン獲得に動くのが道理と言われれば道理だ。

 しかし、しかしだ。分かりたくない。やりたくない。だって、気恥ずかしいし━━つい忘れがちになるが、私はこれでも男なのだ。元とはいえ野郎なんだ。だいぶ自覚が薄まってしまったし、ポケモンが居るならもうどっちでもいいやとか思ってるが、それでも根っこの部分は野郎のままなのである。少なくとも普通の女の子とは嗜好がだいぶ違うし、性的対象なんかも元のまま。

 そんな私が、あ、あんなフリフリしたのやらネコミミを着けて写真を取り、それを無作為にばら蒔く? 却下だ。却下! そんな事をアッサリ受け入れては男としての自覚が今度こそ、完全に、不可逆的に崩壊する。そうなれば私はただのポケモン好きの女の子になってしまう! もし、どうしてもというなら……

 

 ━━ポケモンバトルで私に勝ってから言え!

 

 そうモンスターボールを突き付けようと、モンスターボールを収めている腰のベルトに手を回そうとして……ガシッとナニカに足を捕まれる。

 

「ヒゥッ━━!?」

 

 突然の事に思わず女の子そのものの悲鳴を上げ、バッと足元を見てみれば……そこには私の足を掴むゾンビ染みたカオリの姿があった。充分以上に美少女で、普段は元気一杯な少女がゾンビ染みているのは恐怖しかない。

 助けを求めて彼女の相方を見てみれば……こっちもゾンビ染みている。寝ているのか気絶しているのか、一切の動きがなく、とても頼れそうにない、普段は冷静沈着な少女の姿が。

 

「ど、どうかしましたか? カオリ?」

「ぅ、うぅ……」

 

 私が自分でやるしかない。そう諦めてゾンビとの対話を試みてみたが、やはりマトモな反応は帰って……いや。

 

「お願いします。シロちゃん。コスプレを、して下さい……」

「いえ、その……」

「テレビに出ろとか、コンテストとか、そういうのは私達がやるので、形だけでも、写真だけでいいので……」

 

 息も絶え絶え。そんな有り様で私に五体投地モドキ━━あるいは止まるんじゃねぇぞ━━を敢行するカオリの姿に、思わず私は心が揺らぐ。忙しい仕事や学業の間にポケモンの話を聞いてくれ、コンテスト方面での活動もしてくれている……頼りきりの、友人といっていい少女がここまでしているのだ。断るのは、悪い。

 だが、私がコスプレした程度で彼女達が助かるとも思えないのだが……

 

「えっと。ちなみに、それでカオリさん達は助かるんですか?」

「はい。助かります……」

「具体的にいうと、シロ民の煽動とかの手間が消えますね。えぇ。後は不必要なミステリアスさの消去、そこからのギャップ萌えや緩いとはいえ支持獲得に広報、話題性獲得等々。やってくれると非常に有り難いです。……私は、疲れたので」

 

 む、うぅ……どうやら助かってしまうらしい。あろうことかゾンビ染みているカオリだけでなく、激務から寝落ちしていると思っていたサキからも肯定━━その後また気絶モードに戻ったが━━されてしまった。私の気恥ずかしさ一つで、彼女達が助かる事が。

 もうこうなってしまうと断るのは悪いし、コスプレぐらいならという気にもなってしまう。……そんな私の内心を察したのだろう。ユウカさんがズイッと一つの服を差し出してくる。これは……

 

「なんか、魔女っぽいドレスですね」

「製作者曰く純真魔女っ娘ドレス……だそうよ。まぁ、先ずはベターなところからね?」

 

 先ずは、という事はこの後も幾つか着せ変えられるのだろう。そんな事を察しつつ私は力なく頷き、ユウカさんからフリフリの服を受けとる。……なるほど、これは確かに魔女っ娘ドレスだろう。ハロウィンイラストでよく書かれるタイプの衣装だ。露出も少ないし、これぐらいなら着てもいいかな……?

 

「で、では着替えますので、えっと……」

「そこに仕切りがあるわ」

「……準備、いいですね」

「私だもの」

 

 そうですねーと力なく返事を返し、その間にカオリが足を離してくれたので、私は仕切りの中へと入って着替え始める。

 早着替えこそ出来ないが、ユウカさんのところに来てからこの手のフリフリの服の着方にも慣れてしまったので……む、これ案外良い生地使ってるな。暗色系を使って落ち着いた感じでまとめられてるし、普段使いも行けそう。お、パーカーも付いてる……ネコミミパーカーだけど。んんっ、まぁ、ともかくそう時間を掛けずに着替え終われた。

 いよいよお披露目……いささか以上に気恥ずかしいが、待たせるのも悪い。私は潔くパッと仕切りを払い、三人に着替えた姿を見せる。

 

「おぉ、流石シロちゃん。可愛い……ねぇ、やっぱりうちに入らない? 一緒にコンテストしない?」

「そうだね。可愛いと思う。けど、カオリはいい加減諦める。……ユウカ先輩?」

「…………ハッ! な、なんでもないわ。いえ、可愛いわよ。シロちゃん。とっても!」

 

 三者三様の言い方で可愛いと、そう言ってくれる女性陣。それは嬉しいのだが……うぅ、そういう反応をされると余計に恥ずかしくなる。そのせいで頬に血が上ってしまうし……思わずネコミミパーカーを被ってしまった。

 ここは罵ってくれるぐらいの方が元男としては気楽なのだけど、なんて、そんな事を深くフードを引っ張りながら思う。けど。

 

 ━━悪い気はしない。うん。

 

 ……そう、ちょっと気分よくしてしまったのがバレたのか。ユウカさんとサキが素早い動きで複数回写真を取り、ポーズを指示され、それが終われば更にズイッズイッと追加の服を手渡そうとしてくる。

 半ば諦めてそれを手に取って見れば…………なんか、こう、微妙に露出が多い。ハッキリ言えば、エッチだ。

 

「ユウカさん、これは……?」

「ん? あぁ、それはサキュ……ンンッ! あれよ。吸血鬼ね。きっと。ハロウィンだもの」

 

 ナニカ言いかけた様に聞こえたが……そうか、吸血鬼か。確かにそういわれればそれらしい装飾がチラホラと見える。……にしてはいささか露出が多いし、この尻尾の先がハートマークになっているのは疑問だが。

 

 ━━まぁ、良いか。

 

 別に真っ裸で外に行けと言われてる訳ではないし、これぐらいなら気恥ずかしいだけで済む。これで彼女達の仕事が減るなら安いものだろう。……ついでに、元男のクセに穀潰しという状況からも脱却だ。うむ。

 

「では、着替えて来ますね」

「えぇ、えぇ」

 

 何故か鼻の辺りを手で隠すユウカさんに見送られ、私は仕切りの中に逆戻り……

 

 ━━まぁ、これとあと数枚で終わりにしてもらおう。うん。

 

 そんな考えが甘かったと知るのは……吸血鬼コスだと言われた、露出多めの服をお披露目した後。鬼気迫る彼女達に押されに押され……結局、私は一通りのコスプレをさせられる事になってからだ。

 

 ちなみに、そのコスプレは幾つかがお蔵入りとなったものの、殆んどがブロマイドカードに加工され、シロ民を中心に外へとばら撒かれる事になったのは……また、別の話だ。




 ・シロちゃんのブロマイド(ハロウィン限定品)
 不知火白がハロウィンで仮装した姿が写されているカード。ハロウィン当日に行われた警備任務にボランティアとして参加した者に優先的にプレゼントされた。
 SRやR等の等級が存在し、それによってコスプレの内容やアングル、ポーズ等が異なる。また一説にはかなり際どい物もあるとか……
 滅多に出ないシロちゃんグッズ、それも限定品。更に狂信的なファンや、シロ民間では高レア所持が一つのステータスになる等が理由となって日々値段がつり上がり、最高レアは宝石とイコールとまで呼ばれる事になった。実際SSR表記の魔女っ娘シロちゃん(テレ顔ネコミミフード被り)がオークションにかけられ、非常に高額で取引された例がある。


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第28話 返しの一手

 ポケモンリーグの設立が間近に迫りつつある今日この頃。私はポケモンに詳しい人間としての責務を果たす為に、伊藤家別荘に用意された自室で無数の書類と向き合っていた。

 時刻は午前10時。まだ朝といっていい時間で、私からしてみれば少し早起きしての作業だが……だからといって劇的に何かが変わる訳ではない。体調も、そして書類の内容も。

 

「むー……」

 

 口から出るのは迷いから来る唸り声。原因は勿論目の前の書類、そこに書かれた案件のせいだ。それは例えばポケモンの生態に関する事であり、ポケモンバトルに関する事であったりする。

 それらの殆んどは報告書……つまりは終わった事を報告しているだけなのだが、中には私に、世間ではポケモンの第一人者だと認識されている私に意見を求めて来る物もあるのだ。例えばポケモンの危険等級や、犯罪利用の可能性だとかがそれだろう。

 

「私に聞かれてもなぁ……」

 

 個々のポケモンの危険度は━━最近見易さなどがアップグレードされた━━ウェキ見てどうぞ、としか言いようが無いし、犯罪利用の可能性に関しても同じくだ。

 ポケモンはポケモン。トレーナー次第で様々に変わる存在で、それを一般化して言えと言われても困る。

 

 ━━まぁ、この人達もマトモな答えなんか期待して無いだろうけど。

 

 真摯に悩んでるのは全体の一、二割程度。後のは私をなめ腐ってるか、取り敢えず送っとけ的な気配が漂っていて仕方ない。恐らく、あちらとしてはポケモン第一人者の私に聞いたという大義名分が欲しいだけなのだろう。

 ユウカさんや会った人に名前を使われるならともかく、会った事もない、ポケモンを新たな利権としか見てない人達に集まられても……嬉しくない。嫌になる。

 

「はぁ……これもポケモンリーグの為、かぁ」

 

 ポケモンリーグ。これが無くてはポケモンバトルの大会を開けず、個々のバトルが過度になったときに仲裁出来ない。他にもこれが無ければ話にならない事は山程あり、なんとしてもポケモンリーグを早期に設立しなければならなかった。

 だが……その為にはあちこちに頭を下げ、協力を取り付けなければならない。ポケモンリーグの巨大さを考えれば、政界は勿論、財界や旧家の協力も必要だろう。あるいは海外からの理解も必要かも知れない。

 そう、お願いしなければならない場所は幾らでもあり、かといってこれを面倒くさがって強引に進めれば妨害を受けかねず、今私がしているような細かな作業が山程積み重なってしまうのが現状だった。

 

「取り敢えず、真面目に聞いてきてる人達のから……」

 

 片付けよう。そう思って書類を選別しようと手を伸ばし━━バンッ! と勢い良く扉が開かれる。

 何事かと視線を投げれば、そこにはバタフリーのトレーナーであるカオリが肩で息をしながら立っていた。

 

「たい、です……」

「?」

「大変です! シロちゃん!」

 

 一度喋るのに失敗し、その後は大変なんです大変なんですと焦った様子を見せるカオリに、クエスチョンマークを浮かべつつ、私は腰のモンスターボールに伸ばした手を元に戻しながら対応する。取り敢えず落ち着いて? と。

 

「何があったんですか?」

「えっと、あの、あれです! シロ民の人達が!」

「? 彼らが何かしましたか?」

 

 シロ民。それは所謂私の……その、ファンの人達の通称だ。今はネット上だけでなく関東で実際に活動している人達もおり、その数は千人を越え、その全てがポケモントレーナー。更にその過半数が人にポケモンの事を教えれるエリートトレーナー級の腕前という頼もしい人達だ。

 正直自分にファンが居るというのは恥ずかしいのだが……これもポケモンのおかげだろう。

 で、その頼もしいシロ民がいったいどうしたのだろう? 何かやらかすとも思えないが……いや、そういえば確か今日は━━

 

「襲撃されたそうです! 沢山の人が病院に運び込まれたって!」

「! それは、どういう事ですか?」

「えっと、えっと……ぁ、さ、サキィ……」

「はいはい。詳しくは私から説明するから」

 

 シロ民が襲撃され病院に運び込まれた。その報告にどういう事かと詰め寄り、後から来たピカチュウのトレーナーことサキが補足を入れ始める。事件は特殊弾頭の輸送中に起きたのだと。

 

「本日早朝、特殊弾頭輸送部隊が襲撃された。それも自衛隊と警察、両方の車列が。襲撃したのは以前から問題視されていたテロリスト集団」

「テロリスト」

 

 テロリスト、か。テロリストと一口に言っても色々居るが、ここで言うテロリストは……なぜか分からないが私をつけ狙い、ポケモン反対の声を上げている人達だろう。正直関わりたくもないのだが……しかし、そうか。遂に直接的な妨害に出たという訳か。

 

「それぞれの車列で護衛部隊とテロリストが激しく衝突。相手がポケモンを使用してきた場合を想定して、民間協力者として同乗していたシロ民達もこれに参戦した。けど……」

「けど?」

「その、ここから情報が錯綜してて、どうもシロ民を含めた警察車列の護衛部隊は敗北したみたい。自衛隊車列はテロリストを全員捕縛した様みたいだけど……」

 

 敗北? ポケモンを持ったシロ民が、テロリスト相手に敗北? それは、有り得ないだろう。ポケモン相手に銃火器は通用しない。だからこそ特殊弾頭なんてその場しのぎの物が開発、輸送された訳であって……にも関わらずシロ民が敗北? 銃に?

 ……いや、待て。まさか━━!

 

「サキ、まさか、テロリスト側もポケモンを?」

「うん。自衛隊側ではテロリストがポケモンを出してきたから、偶発的なポケモンバトルが発生。シロ民が勝利した。……けど、警察車列の方は情報が錯綜してる」

「? どういう事ですか?」

「ポケモンが居たとも、居ないとも。勝ったとも、負けたとも……とにかくその場に居た人達の意見がバラバラ。そしてポケモンは銃に撃たれて傷ついたとも証言してて……」

「……はい?」

 

 ポケモンが、銃に撃たれて傷ついた? それは有り得ない。ポケモンが銃火器どころか戦車砲にも耐えうるのは既に確認された事実だ。

 あくまでも秘密裏に行われた実験だが、()()コイキングですらアサルトライフルの弾丸を弾いたんだぞ? イワークに至っては戦車砲による一撃が直撃したにも関わらず、全くの無傷で平然としていた程だ。直接見てはいないが━━というか現場に居たら止めに入っている━━記録映像を確認したから知っている。ポケモンは銃では倒せない。これは覆しようのない事実だ。

 だいたい、落ち着いて考えれば分かる話だろう。“はかいこうせん”の一撃に耐えれる生物が今更銃ごときで傷つくはずがない。それが傷ついた? それは……

 

「何の、冗談ですか?」

「ひぅっ……」

「っ━━冗談じゃ、ない。そういう報告が、上がってる」

「…………そう、ですか」

「うん」

 

 質の悪い冗談。そう思いたいが、残念ながら違うらしい。そうなると、これはどういう事なのだろう? 銃で傷ついた……それが真実だと? 自衛隊の検証では不可能だったのに?

 ……あるいは、何か特殊な弾丸が使われたのか? 日本政府が非殺傷の特殊弾頭を開発した様に、テロリストを支援する団体が殺傷力のある特殊弾頭を開発した?

 

 ━━可能性は、ある。

 

 だがそんな事が可能なのか? もしそうならその銃弾は戦車砲以上の威力があるか、ポケモンの生体バリアを貫通出来るという事になる。それは、いささか現実的ではないのでは?

 いや、というか、そもそも誤認という可能性は? ポケモンバトルでやられたのに、銃でやられたと誤認した可能性は?

 

 ━━分からない。

 

 分からない。分からないな。

 私は現場を見てないし、その場には居なかった。ここで考えても出てくるのは推測だけで、一連の流れは想像する事しか出来ない。襲撃、戦闘、敗北。そして輸送中の特殊弾頭を奪われ……いや、待てよ?

 

「サキ、輸送中だった特殊弾頭は? 特殊弾頭は、全て持ち去られたんですか?」

「んっ、と……ううん。そんな話は聞いてない。ここに報告を入れた人は、そんな事は言わなかった。たぶん、無事だと思う」

「……襲撃されたのに?」

「それは……確かに、変。言い忘れただけかも」

 

 言い忘れ。確かにそれはあるかも知れない。相手も人間だし、どんな状況であれヒューマンエラーは発生しうる。だが、本当にそうだろうか? この襲撃、何かが妙だ。

 具体的に何が妙なのか聞かれると困るのだが……何か、こう、モヤモヤする。重大な何かを見過ごしてしまっている様な、そんな感覚が。

 

『物事には目的と手段がある。これを間違ってはいけない。それは作戦立案でも同じ事。良いか、シロちゃんや。これを取り違えてはならぬぞ』

『目的と、手段』

『そうじゃ。例えば……そう、厳重に守られた敵拠点を攻略したいとしよう。これが目的じゃな。であれば手段は何でも良い。バカ正直に真っ直ぐ行っても、迂回しても、夜間に忍び込んでも良い。空から行っても構いはせぬし、ありったけの砲弾で更地にしてやっても良い。しかし……もし目的と手段を取り違えると酷い事になる』

『?』

『そこを攻略する為に前へ進んでいるのに、いつしか前に進む事そのものが目的にすり変わったとき、他の方法は試せなくなる。前に進む為に前に進む。そんな間抜けを晒してしまう。……別に迂回するなりなんなり、やり方が他にあるにも関わらず、な』

『お爺ちゃん。その、よく、分からない』

『ん、む……例えが悪かったか。そうじゃな、他の例えをするなら━━』

 

 思い出したのは東郷おじいちゃんの戦術講義。目的と、手段。

 そうだ、彼らの目的は何だ? なぜ襲撃という手段を取った? 特殊弾頭を奪う為? それとも━━

 

「サキ、今すぐ連絡を。特殊弾頭が奪われたかどうか、上に確認して。……はい、私のスマホ。ロックはかけてないから。早く」

「ぇ、あ、うん。……誰に連絡すればいい?」

「ん……先ずは、ユウカさんに」

「了解」

 

 戸惑うサキに私のスマホを押し付け、なぜか絶句しながらスマホを操作する彼女を視界の端に見つつ、もう一度良く考える。

 テロリストの目的が特殊弾頭の奪取なら別にそれでいい。確かにあれは画期的な物だし、トレーナーがポケモンに頼らず状態異常を起こせるという面白いアイテムだが……奪われて致命傷になる物でもない。せいぜいが手数を増やし、こちらに手間を強要させる程度のアイテムだ。使ってくると分かっていれば対抗策は幾らでもある。

 

 ━━けれど、そんなものに興味なんてなく、別の何かが目的だったなら。

 

 つまり、襲撃し、奪取する事が目的ではなく、手段だったなら。襲撃はあくまでも手段。奪取も手段。目的が別にあったなら……

 

 ━━そうか、これか。違和感の正体は。

 

 全く、落ち着いて考えれば分かる話だというのに、たどり着くのに時間がかかってしまった。やはり、ポケモンがやられたというのは結構なショックだったらしい……

 

「あ、ユウカせんぱ━━はい。スミマセン、サキです。シロちゃんではありません。ゴメンナサイ。……いえ、違います。そんなつもりは、全く。……はい、はい。それは覚悟しています。…………はい、実はシロちゃんが聞きたい事があると…………はい。はい。そうです。是非ユウカさんに聞きたいと、シロちゃんが━━」

「き、聞いてない。わたし何も聞いてない……」

 

 なぜか顔を青ざめたサキと、ナマハゲでも見た子供の様にプルプル震えるカオリを見つつ、私は結果を待つ。

 仮に特殊弾頭が奪われているのなら、その目的は大方特殊弾頭を使用したテロだろう。だが、もし奪われていないのなら……その場合は、かなり厄介だ。

 

「はい。有り難うございます。シロちゃんに必ず伝えます。……はい。それは、勿論。……はい。はい。了解しました。では、失礼します」

「━━どうでしたか? 特殊弾頭は、奪われてましたか?」

「奪われてはいる。ただ、ホンの数発が奪われただけで、非殺傷という事もあってさほど問題にはならないと考えている……らしい」

「…………なるほど」

 

 それは厄介ですね。そう吐き出した私はどうしたものかと頭を捻る。これは、一番分かりにくいパターンだ。

 特殊弾頭は奪われている。だが直接使用してどうこう出来る数でもない。警察と自衛隊の車列を同時襲撃して、片方は成功しておきながら、結果がこれ?

 

 ━━有り得ない。

 

 それだけ奪うのが限界だったという事はあるまい。同時襲撃するような手際の良さがあるのだ。予備のトラックの二台や三台は用意出来たはず。だがそれがなかったという事は……彼らにとって特殊弾頭はオマケだったのだろう。本命は別にあった。

 

 ━━それは、何?

 

 襲撃、奪取。これらはあくまでも手段。目的は別にある。そしてその目的に特殊弾頭は必須ではない……ならなぜ輸送部隊を狙った? 特殊弾頭がオマケなら、襲撃するのは別のところでも良かったはず。なぜ輸送部隊を狙った? 輸送部隊でなければならない理由があるとしたら、それは何?

 

「なぜ、輸送部隊を襲撃した……?」

「? シロちゃん?」

 

 分からない。全く分からない。というよりも絞り切れない。候補が無数にあるのだ。極論ムカついたから、なんてのも目的になってしまう。

 

 ━━落ち着け、私。冷静に一つずつ詰めるんだ。

 

 ここは、英語でいうところのWhy done it?(ホワイダニット)も考えてみよう。何故それが成されたのか? 犯人の動機は何か? その辺りからも考えてみればどうだ?

 

「ポケモン、反対……目的? 違う。これも手段」

 

 テロリストはポケモン反対を掲げ、ポケモンを排斥する為に死力を尽くしている。普通に考えればテロリストの目的はポケモンの排斥、排除だ。

 ならWhy done it?(ホワイダニット)はポケモン排斥の為。その一手だと仮定したら。今回の目的は……いや、今回の襲撃を手段として、何を得たのか?

 

 ━━今回のはあくまで一手。一手でしかない。更に先を読まなければ……

 

 まるで将棋だな。腕の良い打ち手と将棋をやってる気分だ。相手の一手から次の一手を予測し、それに対抗する一手を打たなければ負ける……神経が磨り減る戦いだ。

 しかし、今回の一手がどんな一手なのかが分からない。間違いなく重要な一手だというのは分かるのだが……それがどんな意味を持つのか分からない。これは、一番マズイぞ。気づいたらいつの間にか王手をかけられていたーなんて可能性も出てしまう。

 

「ぅー……うぅー……!」

「し、シロちゃん……?」

「だ、大丈夫……?」

「ぬぅー……」

 

 思わず唸り声が出てしまい、アイドルズに反応されるが……言葉を返す余力がない。読まなければ。相手の思惑を全て━━いや。

 

『物量の差というのは、残酷じゃ。どんなに精強な兵を揃え、どんなに素晴らしい作戦を立てようとも、圧倒的な物量の差には負けざるを得ん。良くて引き分け、時間稼ぎ。それが限界じゃ』

『……島津の退き口』

『ふふっ、そういう特例もあるがの。だがあれも勝ちというのは……いや、勝ちではあるが。少なくとも殲滅勝利は難しかろう。いつだって数の多い方が強いものよ。基本的にな』

 

 物量の差。そうだ、こちらはあちらよりも駒は多いんだ。これを利用しない手は無い。勿論油断すれば敗北する可能性があるから、決して油断は出来ないが……あえて今回の一手をノーガードで受け、物量の差を生かして無理矢理殴り返す。そんなノーガード戦法も可能ではないか?

 

 ━━そうだ、相手の一手を、思惑を、読みきる必要なんてない。策ごと踏み潰せばいい。

 

 戦術としては下策も下策だが……戦略的に見れば、局所的敗北は許容範囲だ。最終的に勝てるのなら。

 その為に必要なのは━━大きな力、殴り返す一手。

 

「━━うん。お爺ちゃんに、来て貰おう」

「お爺ちゃん? でもシロちゃん……」

「カオリ、そっちじゃなくて、ほら、ね?」

「あぁ! SATUMA人の!」

「……カオリ、シロ民の思考に染まってない?」

 

 取り敢えずお爺ちゃんに来て貰って、アドバイスを貰おう。可能ならポチにやったようにポケモンを鍛えて貰うのもいい。所謂“育て屋”だな。これで戦力を確保出来るはず。

 あとは……ポケモンリーグの設立を急ごう。ついでに独立行動権を握りたい。今回の一件、ちゃんとケジメをつけたいし。

 

「……うん、勝てそう」

 

 何だか不安そうな、悲しそうなアイドルズに横目に、私は鼻歌を歌い出す。一時はどうなるかと思ったけど、気分は上々。勝てる戦いなら気分もそう悪くないし、ポケモンを排斥しようとする人達を片付けれるかもしれないのだ。

 

 ━━そうなれば、人とポケモンの繋がりはより加速するはず。

 

 そうなったら何をしよう? ポケモンバトル全日本大会? 悪くない。同じくコンテストでもやるのもありだな。

 そう楽しい未来に思いをはせながら、私はスマホを取り出してお爺ちゃんに連絡を取る。お爺ちゃんにもポケモントレーナーになって貰おう。そう思いながら。

 

「━━もしもし、お爺ちゃん? うん、私。シロだよ。……え? ポケモン捕まえた? たぶんあぶそる? ぇ、アブソル!? ホントに!? き、聞かせて! どんな子? どんなゲットだったの!?」

 

 予想外の情報に思わず驚きと喜びの声を上げ、祖父にオモチャをねだる子供の様に言葉を繋げてしまう。そんな私にアイドルズが驚きと微笑ましげな視線を向けてくるが……うぅ、今はポケモン! アブソルの事を聞くんだ! 恥ずかしがるのは後!

 

「━━うん、うん、うん? 真剣で、アブソルとサシでやり合った? 勝った? 良い勝負だった? お爺ちゃん、なに言ってるの……?」

 

 ちょっと突拍子もない話を聞きながら、思う。やはり、ポケモンは良い。ポケモンが広まれば、もっと楽しくなるはずだ、と━━





 以下、新作ポケモン発売に関しての作者コメント。作者が嫌いな方はブラウザバック推奨です。





 ポケモンの新作が発売されて暫く。皆さん遊んでますか? 今作はかなり自由度が高く、とても面白いそうですよ。
 ポケモンバトルのアニメーションは進化し、ストーリーも良く、なんとKAWAIIヒロインまで確保。噂ではワイルドエリアなる謎の場所で、最初のジム前に高レベルのバンギラスにケンカを売る事ができ、結果『⊃天⊂』されてチリ一つ残さず消滅させられるとかなんとか。更にはキャラメイクの自由度は恐ろしく高く、本作の主人公と同じアルビノ美少女が作れる程とか。凄まじいですね。思わずやってみたくなります。

 ……えぇ、作者は遊べてません。全部ツイッターで拾った情報です。お金も時間も無いんだから、当たり前だよなぁ?
 はぁ……一日一食はツラいです。常にお腹がギュルギュル言ってます。早くアマゾンで個人出版する作品書き上げて、売り上げでラーメンとピザをお腹いっぱい食べて、更に剣盾買って遊びたい……(叶わぬ願望)

 あ、アマゾンで出版する作品は作者十八番のTS闇深勘違いの予定です。お値段600円。一月末までには発売予定。損はさせない内容になるはずですよ(ダイマ)
 ちなみに600冊売れないと な ぜ か 赤字です(樹海案件)私に600人もファンが居るはずないのになぜこんな計画を……(アホ)

 えー……話がズレてしまいましたが、作者はそういうゴミカス以下の状態なので、お金と時間に余裕がある人は作者の代わりに剣盾を満喫して下さい(血涙)そして感想は聞かせないで下さいお願いします(土下座)

 以上、作者からのコメントでした。次回更新? 年末までにもう一回やりたいですねぇ……(絶望的な活動費を前にしつつ)
 ツラみ。


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