SCP-835 (ヨシヒデ)
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1話

最近、SCPをよく見ていて面白いなと思い書いてみました。続けられると良いのですが・・・とにかく、頑張ります!良かったら、コメントなどをお願いします!


『我らの崇高なる使命を邪魔する財団を攻撃せよ』

 

物心が着いた頃から、その言葉と共に育った。

敵の施設で右手に持つ鋭利な包丁から流れ出す赤い液体を何の感情も無く、見つめて闇子は人知れずに息を着く。

目の前には床に倒れ付した白衣を身に待とう中年の男が赤い水溜まりを作って倒れている。

先程まで自分が殺されるとは思わずに大きな欠伸をかいて自身の寝室に来た瞬間に彼の影から『侵入』し、心臓を一突きして殺したのだ。

多分、苦しまずに逝けただろう。

 

「沈みなさい・・・」

 

闇子は静かに呟く。

すると、血溜まりに伏せた男に部屋の中のベットの下や閉めきられたタンスの隙間はてには写真立ての裏などから、あらゆる影が近寄ると男を包むようにまとわりつくと黒い闇の膜となり地面に沈んで消えていく。

男が完全に沈むと、あとには毒々しい赤い水溜まりだけが残される。

それを見届けると彼女はフゥと息を着く。

これで今夜の『彼ら』からのノルマが終わった。

不意に男の物と思われる机に視線をやる。

幼い少女を抱き抱えて屈託なく笑う男の写真が目に入る。

闇子の形の良い細い眉が僅かに動く。

そして、早く帰ってシャワーを浴びたいという欲求が頭をよぎる。

 

「・・・貴方が悪い」

 

誰に言うでも無く、一人呟く。

世界中の異常なオブジェクトを奪い、利用して世界に混乱と破壊をもたらす狂った組織に入った時点で、この男は世界から排除すべき敵なのだ。

まるで誰かに言い訳をするように頭の中で自分を納得させる。

 

「・・・早く、帰ろう」

 

そう呟くと後ろを向く。

すると闇子の前に闇が集まり出して、小さな黒い染みを作る。

そして、一歩足を踏み出すと先程の男の様に闇へと自分を沈めて行く。

そして、下半身が完全に沈むと顔だけを写真に向ける。

 

「もしかしたら、貴方は自分の組織の事は何も知らなかったのかもしれない。それでも、私は・・・」

 

闇子は言い掛けて口をつぐむ。

しまいに闇子は完全に闇へと沈んで行き、全ての気配は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、6件目か・・・くそ!」

 

何人もの白衣を着た男達の集まる会議室でダンッと、会議室中に響く音を響かせて苛立った様に一人の男は机を叩く。

 

「薪中博士、落ち着いて下さい」

「やかましい!これが落ち着いていられるか!良いか、我々は原因不明、正体不明のSCPからの攻撃を受けとるんだぞ!」

 

薪中と呼ばれた研究員はまだ怒りが収まらない様子でドカッと椅子に座り直す。

 

「ハァ~、とにかく報告を聞こう」

「はい。被害に会ったのは山西博士。昨夜、0300時頃に新たに収用されたSCPの一次報告書を作成した後に仮眠を取る為に仮眠室に行ったところで消息が途絶えました」

「犯行いえ、異常気象発生現場には大量の血液が残されており、現在DNA検査を実施中です」

「ハッ!十中八九、山西博士のだろうよ!」

 

薪中は苛立った様子で言う。

 

「現在の状況は?」

「現在は周辺エリアを封鎖し、Dクラス職員により現場の清掃活動中で他の職員にはサイト内の配管システムの異常により封鎖中と達しています」

「そうか、わかった。引き続き、情報管理を徹底して対応をしてくれ。こんな事が広まれば我が財団の士気は崩壊する。次に今後の対応策だが」

「すみません!遅れちゃいました!」

 

薪中の話の途中で会議室の扉が開き、慌ただしく新たな人物が入室して来る。

センスのない黒渕メガネを掛け、無精髭を剃らずにセットもしないまま伸ばされたボサボサの髪を輪ゴムで無造作にまとめ、クリーニングされてもいない白衣はシワだらけの青年は申し訳なそうに頭を掻いている。

 

「ハァ。吉川くん、もう良い。今回は臨時会議だったからな、座りたまえ。次は早く来るんだぞ」

 

薪中は呆れた様に言うと吉川と呼ばれた青年はあからさまにホッとした様子で近くの椅子に腰を掛ける。

 

「いやー、終わるまで立っておけって言われたらどうしようかと思いました!あ、すみません」

 

余計な事を言う吉川を一睨みで黙らせて薪中はオホンと咳払いをする。

 

 

「今後の対応だが、諸君の忌憚ない意見が聞きたい」

「はい、私は二名行動を前よりも増して徹底すべきかと思います。絶対に単独行動をしない様にすべきです」

「トイレや風呂までかね?いや、無理だろう。絶対に一人になるタイミングがある筈だ。それよりもサイト内の監視カメラを増やして死角を無くそう。そうすれば、ヤツの犯行を捕らえることが出来る可能性が高くなり、このSCPの正体を掴む突破口になるはずだ」

「何!君は職員を犠牲にする積もりか!」

 

しばらく、会議は続くが新しく決まる事は一つとして決まる事は無い。

結局、警戒レベルを引き上げて一人での行動を控えるという事しか決まらなかった。

 

「では、この件は新しい進展があるまで引き続き、警戒を怠らない様にしてくれ。あと、今回のSCPのオブジェクトレベルについてだが暫定的にではあるが『Keter』とする」

 

薪中の言い放った一言に会議室は重い空気に支配される。

科学では説明出来ないオブジェクトの確保、収用、保護して世界的なパニックや予想される混乱を避け、人類の文明を正常に機能させる為に財団では三つのクラスに分類して収容をしている。

 

Safe

現時点において完璧かつ確実で永続的な収容下にあると十分に判断できるか、あるいは故意に活性化させない限りはその異常な影響が発現しないクラス。

 

Euclid

オブジェクトは性質が十分に解明されていないか、本質的に予測不能である異常存在。

信頼できる収容が常に可能とは限らない一方で、Keter分類に値するほどの脅威を有しない。

 

Keter

財団の職員および人類全てに対する敵対的な脅威をもたらす異常存在で、なおかつ収容のためには広範で複雑な手順を必要とするか、現時点における財団の技術と知識では完全な収容が不可能であるものが該当する。

 

「諸君、とにかくどんな小さい事でも構わない。この『SCP-835』を特定または収容する事のできる手掛かりを探すんだ!以上、解散!」

 

薪中の宣言で各職員は重い雰囲気で席を立っていく。

案外、SCP-835って可愛い女の子だったりしてと、独り言を呟くと吉川も席を立つと欠伸を噛み殺しながら会議室を後にする。



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