インフィニット・ストラトス 白い流星の戦士 (雷狼輝刃)
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第0話 プロローグ

 


 最初のうちは一夏の扱いが悪いですが、アンチとまではいかない予定です。


 

 真道トモルという若者にとってISとは色々な意味合いを持っていた。

 

 

 ・・・家族を奪った悪魔の兵器

 

 ・・・姉と慕う人がやっているスポーツ競技

 

 ・・・幼馴染みの女性が開発に関わる機械

 

 ・・・幼馴染みの少女達が通う専門高等学校の主力科目

 

 ・・・自分が高校卒業後に就職する予定だった企業の主力商品の1つ

 

 

 そして・・・自分に世界で2番目の男性装着者という呼び名をあたえた物

 

 

 

 

 

 「はぁぁぁぁぁ~ーー。」

 

 車の後部座席で何度目になるかわからない溜め息をつくトモル。 

 

 「やれやれ、まだ不安なのかトモル?」

 

 そうトモルに聞いたのは助手席に座る女性、トモルが姉のように慕う美剣陽子、日本のIS国家代表だ。

 

 「そりゃそうだよ陽子姉さん。何の因果でもう1度高校1年生からやり直さなきゃならないんだよ。」

 

 「知識面はともかく、実技面ではエディフィで訓練したとはいえ、まだ素人同然なんだから仕方ないだろ? 一応高校卒業資格を持っているということで一般学科は試験も含めて免除なんだし、ISの操縦を習うために必要な3年と思えよ。」

 

 「でもその実技もエディフィで可能だったのに?」

 

 「それを言うなよトモル。エディフィでこれ以上やってしまうと色々と不味いんだよ。訓練時間20時間が精一杯の譲歩だったんだよ。いくらエディフィに就職が決まっていたとしても、情報の独占とかで他国やIS委員会が煩いんだよ。 とりあえず妥協案で3年間はエディフィの所属の上でIS学園に通わせて、学園での情報の1部開示、その後の進路に関しては本人の自由・・・というかエディフィでもOKにしたんだから。」

 

 陽子の説明に納得せざるおえないのは理解したものの、3年間の女子高生活に不安があるのは拭えない。

 

 

 

 

 IS学園の校門前に車が到着する。校門横にはスーツ姿の女性が立っていた。その女性の姿を確認した陽子は少し笑みを浮かべ、トモルに声をかける

 

 「ついたぞトモル。」

 

 陽子の声に促されて、トモルは車のドアを開けて外に出る。

 

 「真道トモルだな?」

 

 スーツを着た女性が近づいてきて、トモルに声をかけてきた。

 

 「はい、そうですが。貴女は?」

 

 「私の名は織斑千冬、お前のクラスの担任になる。」

 

 「おやおや、初代ブリュンヒルデのお出迎えとはたいそうな歓迎ぶりだな?」

 

 「ん? な?! 美剣陽子!! 何故お前がここに?」

 

 「決まっているだろ、トモルの護衛だよ。なんせトモルはあたしの身内だし、うちの会社の所属なんたからな。色々と融通を効かせるのは当然だろ?」

 

 助手席から下りてきた陽子が千冬に説明する。

 

 「なるほど、それで彼の寮の部屋が最優先で準備された訳か。」

 

 「そういうこと。 うちの会長からのお達しでね。セキュリティーも万全の部屋を準備した訳。」

 

 「陽子姉さん、どういうこと?」

 

 「どうせ寮に入れられる事になるなら、此方で作っちまえと会長が言ってな。 それで学園の寮にお前用の部屋を新築したんだよ。これはカギで荷物は既に送ってあるからな。」

 

 「あの人は・・・・」

 

 トモルの脳裏にエディフィの会長・・・久見・ジェファーソンの無邪気な笑顔が浮かぶ。

 

 「それじゃあ、御好意に甘えて使わせてもらいます。」

 

 そう言ってトモルは陽子の差し出したカードキーを受けとる。

 

 「それからもう1つ。明日の夕方、未知が学園にお前の専用機を持って来るから予定空けとけよ。」

 

 突然、エディフィでISの開発をしている幼馴染みの名前が出てきて驚くトモル。

 

 「未知が?」

 

 「あぁ、お前に適性が有るとわかってからほぼ不眠不休で専用機を作り上げたんたぜあいつは。」

 

 陽子の言葉に未知がトモルは申し訳なく思った。そしてここ1ヶ月程未知とまともに顔を会わせていない事に気づいた。トモル自身、訓練等で忙しかったのもあったのだが、未知もまた忙しく擦れ違っていたのだ。

 

 「そんな顔すんなよ、あいつは人一倍お前の事を考えて動いたんだ。ちゃんと笑顔で答えてやれよ。」

 

 「わかりました陽子姉さん。明日未知にちゃんと言います。」

 

 「おう、分かればいい。それじゃあなトモル、休みにはちゃんと帰ってこいよ。父さんも母さんも待ってるからな。」

 

 陽子に言われ、トモルの脳裏には10年前に天涯孤独となった自分を引き取って、育ててくれた養父母の優しい笑顔が浮かぶ。

 

 「わかったよ陽子姉さん。」

 

 「それじゃあなったトモル、頑張れよ!」

 

 そう言って陽子は車に乗り込む。そして車は来た道を引き返していく。

 

 「さて、行くぞ真道。もう入学式は終わってSHRは始まっているからな。」

 

 「わかりました織斑先生。」

 

 そう言ってトモルは千冬の後をついていく。

 

 「ところで先程美剣の事を姉さんと読んでいたが?」

 

 「10年前に俺は両親を亡くして、その後で陽子姉さんの家に引き取られて育てられたんです。」

 

 「10年前?!」

 

 「はい、あの白騎士事件の時に落下してきたミサイルの破片が俺の両親の乗っていた車に直撃して、両親は亡くなりました。」

 

 「なっ?! あの事件では被害者はいなかったと聞いているが?」

 

 「表向きはそうなっていますが、実際には俺の両親をはじめ、かなりの死傷者がいたようです。もっともそれは無かった事にされましたが・・・・・」

 

 そう世間一般的には10年前に起きた白騎士事件では死傷者は全く出なかったと認識されているが、実際にはトモルの両親のようにミサイルの破片等でかなりの死傷者が出ていたのだ。

 

 だがISの有効目をつけた日本政府により、なかった事にされたのだった。 結局トモルの両親は単なる自動車事故で片付けられたのだった。

 

 その後、天涯孤独となったトモルは両親の友人で家族ぐるみで付き合いのあった美剣家に引き取られて育てられたのだった。

 

 「そうか・・・・・・・・・・・すまなかった。」

 

 「別に織斑先生が謝る事では無いですよ。日本政府がしたことにですから・・・・」

 

 トモルの話を聞いて何故か謝ってきた千冬。重い雰囲気の中歩き続ける。

 

 「そ、そういえば先程、美剣が言っていた専用機の件だが、受領したら仕様書等を学園に提出してくれ。学園側でもある程度のスペックを把握しておく必要があるのでな。それと引き換えに色々と書類を書いてもらい専用機持ち用の手引き書を渡すので確り読むように。」

 

 「わかりました。」

 

 話をしているうちに教室の前についた、 だが何やら中が騒がしい。 室内の様子に気づいた千冬は溜め息をつき

 

 「はぁ、全く彼奴は。すまないが先に入るので、呼んだら入室してくれ。」

 

 そう告げると千冬はドアを開けて中に入る。

 

 

  ズバァーーーーーン!

 

  ズバァーーーーーン!!

 

  ズバァーーーーーン!!!

 

 3度の凄まじい衝撃音の後

 

 キャアァァァァァーー!!!!

 

 これまた凄まじい女の子達の悲鳴が響き渡る

 それを聞きながらトモルは再び3年間の学園生活に不安を覚えた。

 

 

 

 




 
 久方ぶりの作品です。

完全に行き詰まった「月華の剣士」ではなく、リメイク予定のままだった此方を上げました。
 
 原作もずっと音沙汰無しの状態ですけど、スローペースで頑張っていきます
 


 仕事と私生活に追われてますので、エタらないように無理なく頑張って更新させていただきます。


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第1話  出会い

  

 

 

 「以上です!!」

 

 織斑一夏が自己紹介を終えた瞬間、教室中の女子生徒が崩れ落ちた。 それも仕方ないだろう、散々気を持たせたあげく、名前を言った以外は何も言わずに終わったのだから。 そしてそれらを見ていた千冬は頭痛を堪えながら静かに元凶となった自分の弟、一夏の背後に迫り右手に持っていた出席簿を振り下ろす。

 

  ズバァーーーーーン!

 

「いっ?! 痛ってーーーー!!!。」

 

 「馬鹿者!! 自己紹介くらいまともに出来んのか!」

 

 「げっ?! 織田ノブナガ!!」

 

 「誰が赤毛の戦国乙女だ!!」

 

 ズバァーーーーーン!!

 

 「痛ってーーーー!!!!!」

 

 「全く、高校生にもなってなんたる様だ!」

 

 「で、でも千冬姉!」

 

 ズバァーーーーーン!!!

 

 「織斑先生だ!!! 公私混同するな!」

 

 「$ヰ£%Å&£∂!!!!」

 

 三度振り下ろされた出席簿により声にならない叫びをあげて机に臥せる一夏。千冬はそんな一夏を尻目に教壇にむかい。

 

 「すいません山田先生、SHRを任せてしまいまして。」

 

 「いえ、お気になさらずに織斑先生。それで彼は?」

 

 「もう来てます。」

 

 千冬はそう言うとクラスを見渡し

 

 「さて、今更ながら自己紹介の必要も無いと思うが言わせてもらう。私がこのクラスの担当教師、織斑千冬だ。今日から1年に渡り、君たちにISの知識と技術、そして心構えを教えていく。確りと心して授業を受けてくれ!」

 

「キャアァァァァァーー!!!!」

 

 「ち、千冬様よ! 本物の千冬様よ!!」

 

 「感激ですわ、千冬様の教えを受ける事が出来るなんて!」

 

 「私、千冬様に会うために青森から来ました。」

 

 「私は鹿児島から来ました!!」

 

 「喧しい、騒ぐな!! これ以上騒げば退学させるぞ!!」

 

 千冬の言葉に一瞬にして騒ぎが収まる。

 

 「全く毎年毎年、学園はこんな奴らを私のクラスにまわして・・・ともかく、先程言った通り私の役目は君達にISの事を教える事だ。 先程私に会うためとか、言っていたが、その様な考えを持っている者は直ぐに立ち去れ!! ここはISについて学ぶ場所で私との面会場所ではない!」

 

 千冬の言葉にクラスの女子生徒達の顔が強張る。

 

 「さて、SHRの時間も残り少ないので自己紹介は各自でするように。それからもう1つ、このクラスにはもう一人加わる事になった。所々の事情により入学式には間に合わず先程着いたばかりだ。 真道、入れ!」

 

 千冬の声に答えるように教室のドアが開き、一人のの青年・・・トモルが入室する。 そしてトモルはそのまま千冬の横まで進み生徒達の方に顔を向けると

 

 「みなさん遅れて申し訳ありません。国の適性検査で発見された二人目の男性装着者の真道トモルです。みなさんより年上になりますが、どうぞよろしくお願いします。」

 

 そう言うとトモルは頭を下げる。 その瞬間

 

 「キャァァァァァーーーー!!」

 

 「ふ、二人目よ。二人目!!」

 

 「織斑君と違って、知的雰囲気を醸し出すイケメンお兄さんよ!」

 

 「このクラスになって良かった!」

 

 「騒ぐな馬鹿者共!!」

 

 千冬の一喝で騒ぎは修まる。 

 

 「ちなみに真道は既に高校卒業資格を有しているので、一般科目は免除となっている。その辺りは覚えているように。 真道の席は窓側の一番後ろだ。」

 

 千冬の言葉にトモルは自分の席に向かっていく。

 

 

 

 SHR後の休憩、トモルの元に一夏が近づいてきた。

 

 「よお、俺は織斑一夏だ。一夏と呼んでくれよトモル。」

 

 あまりの馴れ馴れしさにトモルは眉を潜めて

 

 「先程も自己紹介させて貰ったが、真道トモルだ。ただ織斑君、君とは初対面で俺は年上にあたる。初対面の年上の人物に対してあまりにも礼節を欠いていないかい? ましてや下の名前で呼び捨てなんて。」

 

 あまり煩く言いたくなかったのだが、只でさえ望まぬ高校生活の初っぱなから、その原因を作った人物の言葉にトモルは少し苛ついてしまった。

 

 「俺さ、硬っ苦しいのは苦手なんだよ。それに別にいいじゃないか学園でたった二人の男性なんだし、それに俺たち友達だろ?」

 

 あまりにも馴れ馴れしい物言いにトモルの苛つきが増していく。

 

 「悪いが、君と友達になったつもりはない。もし、友人になりたければ礼を学んでから、最初からやり直せ。」

 

 「なんだよ! そんな事言うなよ、たった二人の男性なんだし仲良、イテッ! 何だよ! って箒?」

 

 トモルの言葉にイラつきをみせトモルに食って掛かろうとすると背後から一人の女子生徒が近づいて一夏の頭を叩く。 一夏が女子生徒を箒と名前で呼んだ事から知り合いらしい。

 

 「全く何をしているんだ一夏、目上の人に対する言葉使いがなっていないぞ。」

 

 「でもさ箒、俺は「でももへったくれも無い!」 なっ?!」

 

 一夏の反論を遮る箒。

 

 「全く、剣道をしているなら目上の人に対しての礼節の必要性を理解しているはずだろう?」

 

 「いや、俺は「グダグタ抜かすな!」」

 

 「全く言い訳ばかりして。それではあらためまして真道さん、私は篠ノ之箒と申します。礼節を弁えない一夏にかわりお詫び申しあげます。誠に失礼いたしました。」

 

 あまりにも古風なしゃべり方にトモルは苦笑しつつ

 

 「此方こそよろしく篠ノ之さん。それから篠ノ之さんが謝る必要はないよ、悪いのは織斑君であって篠ノ之さんでは無いんだからね。」

 

 まだ何かを言おうとする二人だったが、予鈴が鳴り席に戻る事になった。

 

 

 

 

 一時間目の授業が始まった。 内容はIS理論だが、入学前に渡された参考書を読んで予習していれば簡単にわかる内容だ。 

 だが、トモルの前の方の席に座る一夏は周囲を見回したり何かに怯えるように震えており挙動不審だ。

 授業を進める山田真耶は突然入学が決まった一夏とトモルを気にして

 

 「織斑君、真道君、これ迄の所でわからない場所はありますか?」

 

 「今の段階は最初の方なので全く問題ありません。」

 

 トモルの答えにに一夏は信じられないという顔をしてトモルを見る。

 

 「えっ?! いや、トモル嘘は良くないぞ! お前わかって無いだろ!」

 

 一夏が突然、失礼な事を言ってくる。

 

 「織斑君、先程も言った通り、下の名前で呼び捨てにしないでくれ。それから俺は嘘なんてついて無い。俺はエディフィにIS開発関係で就職が決まっていたんだ。最低限の知識は勉強した。そもそも入学前に渡された参考書を読んでいれば解る内容だぞ。」

 

 「えっ?!参考書?」

 

 「ちょっと待て織斑、お前は入学前に渡された参考書はどうした?」

 

 教室の後ろで授業を見ていた千冬が、一夏の席まで近づいて机の上に参考書がのっていない事に気づいて問いかける。

 

 「えっと、あのとんでもなく分厚いやつですか?」

 

 「そうだ、入学の手引き、制服と一緒に渡されたはずだ。」

 

 「えっと、その・・・・・・・・あの・・・・タ、タウンページと間違えて捨てました!」

 

 「なっ?! この馬鹿者!! す、捨てただと!! や、山田先生、直ぐに回収の連絡を!」

 

 「は、はい!」

 

 一夏の答えに慌てて真耶に回収を命じる千冬。事態が飲み込めない一夏。 いや、一夏以外にも大半のクラスメイトはわかっていなかった。

 

 「織斑君、IS学園の参考書というのは一般には出回っていません。 何故なら部分的とはいえ機密指定されている内容が記載されており、外部の人間への閲覧が制限されているからです。」

 

 トモルの話に一夏の顔色が変わる。

 

 「ともかく織斑、今日の放課後までに再発行しておくので、今週中に予習しておけ。来週の月曜日にお前にだけ特別にテストするからな。 それから真道、織斑に絶対助力するなよ。今回の一件は織斑の自業自得、自分の力だけで解決させるのでな。」

 

 「わかりました織斑先生。」

 

 トモルは千冬の言葉を了承した。 この時点でトモルは気づいていた、千冬はトモルには手を貸すなと言っていたが他のクラスメイトには言っていない事に。 最も当の一夏は全く気づいていないようだったが。

 

 

 

 

 「ト、トモル!助けてくれ! 俺に勉強を教えてくれ!」

 

 「織斑君、君は何回言えば覚えるのかな下の名前で呼び捨てにするなと!」

 

 「そんな事、どうだっていいだろ!ともかく助けてくれ! このままじゃ千冬姉にどやされてしまう!」

 

 「はぁー、それも先程、織斑先生に言われていただろう!俺は君に助力することを禁止された。生憎と織斑先生に逆らってまで君に力を貸す所以は無い。」

 

 「そ、そんな事言わずに頼むよ。黙っていればわかんないだし!」

 

 「何度言ってもダメなものはダメだ!」

 

 いい加減トモルは、一夏のこの図々しさに嫌気がさしていた。そこに

 

 「少々宜しいでしょうか?」

 

 声がした方を向くと金髪をロール状にセットした女子生徒がいた。

 

 「はぁ?」

 

 「はい、どういった御用件でしょうか?」

 

 確りと対応したトモルと無愛想な一夏の返事、女子生徒は一夏の対応に少々眉をひそめながら

 

 「お話し中に申し訳ありません。私はイギリスの代表候補生序列第3位を勤めますセシリア・オルコットと申します。先程の休憩中にご挨拶が出来なかったので遅ればせながら御伺いいたしました。」

 

 「それはどうも御丁寧に。では此方もあらためて自己紹介を、俺は真道トモルです。二人目の男性装着者でエディフィの所属になっております。 最低限の知識は有しておりますが実技の方は経験不足なので、よろしければ代表候補生である貴女に御指導の方をお願いしたいのですが?」

 

 「私でよろしければ何時でも構いませんわ。所でエディフィの所属と仰有られましたが本当ですか?」

 

 「えぇ、元々エディフィに就職予定でしたので、その縁でそのままエディフィ所属のパイロットという運びに。」

 

 「まあ、あの世界でもトップクラスの企業に就職が決まっておられたとは。貴方の有能さが伺えますわ。」

 

 トモルとセシリアの会話に目を白黒させる一夏はおもわず

 

 「なあ、代表候補生ってのなんだ? それにエディフィってなんだ?」

 

 この一夏の発言にクラスメイト達は膝を崩した。

 

 「あ、貴方、本気で仰ってますの?」

 

 呆れるセシリア。

 

 「い、一夏、お前は一般常識すら無いのか?」

 

 何時の間にか来ていた箒が一夏に突っ込む。

 

 「えっ? 箒は知っているのか?」

 

 「当たり前だ。代表候補生とは読んで字の如し、ISの国家代表の候補生のことだ。代表候補生になる為にはまず予備候補生になるための試験を受けて合格し、更に予備候補生内での序列つまりは順位をあげて候補生補欠になり、代表候補生の序列入れ換え試験で合格して初めて代表候補生になれるんだぞ。」

 

 「へー、詳しいんだな箒。でも代表候補生なんていっぱい入るんだろ? 別に珍しくないんじゃ?」

 

 「馬鹿者!! 各国で人数にばらつきはあるが、代表候補生になれるのはごく僅だ。例えば日本なら代表候補生の数は10人。イギリスは7人。」

 

 「へーそれじゃあエリートなんだ。スゲーな! それじゃあエディフィってのなんだ?」

 

 「本当に知らないのか一夏? エディフィとはいうのは日本でもいや、世界でもトップクラスのISメーカーだ。 いや、ISだけどじゃなく日本の自衛隊が国防に採用しているパワードスーツ【エクテアーマー】の製造会社だ。」

 

 「なんだ、そのエクテアーマーってのは?」

 

 ここまで無知だと説明していた箒ですら疲れてしまい言葉が出て来ない。 箒のあとを次いでトモルが説明を続ける。

 

 「ISが登場してからというもの、各国の防衛はISに傾倒しつつあったんだ。だが、ISは絶対数がないのでいざという時に大丈夫なのかという問題点が出てきた。」

 

 そこで言葉をきり、一夏を見ると何とか理解しているようだったので、続けるトモル。

 

 「そこで最初に注目のされたのが国連主体で開発されたパワードスーツ【EOS】だった。だけど、これは扱いも難しい上にISには遠く及ばない物だった。その時に発表されたのがエディフィのエクテアーマーなんだ。このエクテアーマーはEOSより性能が上でしかも扱いやすい、といった点が評価され日本が防衛の柱として次々と採用していったんだ。ちなみに今、他の国が自国の防衛用として採用の申し込みが次々ときている。」

 

 「へーすげえ会社だな。」

 

 更に説明しようとしたが予鈴がなった為にそこで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

 代表候補生の設定に関しては、此方のオリジナルとなってます。


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第2話  再会とクラス代表

 

 

 二時間目の授業も終わり、トモルはクラスを後にして図書室に向かった。 三時間目四時間目は一般学科の為、授業を免除されているトモルは図書室で自習することにしたのだ。

 図書室に入り窓側の席に座るとトモルは参考書とノートを取りだし勉強を始めようとした瞬間だった。

 背後から伸びてきた手で目をふさがれ

 

 「だーれだ?」

 

 女性特有の柔らかい手の触感に、聞き覚えのある少女の声。

 

 「どういうつもりだ更識さん?」

 

 「ぶーーー、昔みたいに刀奈って呼んでよトモル!」

 

 「ハイハイ、わかったよ刀奈。」

 

 後ろを振り向くとそこには幼馴染みの少女、更識刀奈がいた。 

 

 「それで、授業をサボってきてどういうつもりだい刀奈?」

 

 「残念ながら生徒会長は生徒会の仕事があるときは授業が免除されるの。だからサボリじゃないの! ここに来たのはトモルに会いに来たの。」

 

 「そう言えば、最後に会ったのは正月だったな。 刀奈は全寮制のIS学園だし、簪も受験ということで、遊びに行くのを控えたんだよな。」

 

 「ぶーーー寂しかったんだからね! でもトモルがここに来たから、何時でも会えるから嬉しい。」

 

 「俺としたら、ここに来たくはなかったんだけどな。それでワザワザ再会の挨拶をしに来たんじゃないんだろ?」

 

 「用件はふたつ。ひとつは今日の昼食の御誘い、生徒会室で一緒に食べましょう。虚ちゃんに本音ちゃんに簪ちゃんも呼んであるから。」

 

 「わかったよ、みんなで食べようか。」

 

 「やったーーー! それからふたつめは、トモルに生徒会に入って欲しいの?  生徒会って私と虚ちゃんと本音ちゃんしかいなくて人手不足なんだ、お願いトモル。」

 

 「しょうがないな、刀奈の頼みとあっては断れないな。」

 

 「やったーーーーー!!!だからトモル大好き❤」

 

 そう言って抱き着いてくる刀奈。

 

 「お礼といっては何だけど、ISの操縦を教えてあげるわよ。」

 

 「助かるよ刀奈。クラスにイギリスの代表候補生が居たから指導を頼んだんだが、彼女も自分の訓練もあるだろうし、ずっと頼るのも悪い気がしてたんだ。」

 

 「そんなトモルに朗報よ、ロシアの国家代表である私に加えて日本代表候補生の簪ちゃんも力を貸すわよ。」

 

 「簪が日本代表候補生になったのか、凄いな。」

 

 「しかも序列第3位よ、専用機も与えられる事になって今開発されているのよ。」

 

 結局トモルは勉強することなく刀奈と話し込んで三時間目を過ごした。

 

 

 

 

 三時間目が終わり休憩となり、刀奈が生徒会室に移動しようと誘ってきたので、図書室を出ようとした時だった

 

 「ここにいたのか真道、と更識? 何故お前がここにいる?」

 

 「私とトモルは幼馴染みなんです。暫く会ってなかったので顔を見に来たんです。」

 

 「まさか更識と幼馴染みとは驚いたな・・・・と、すまないが真道、四時間目は最初の内は教室にいてほしい。クラスの代表を決めなければならないのでな。」

 

 「その事ですけど織斑先生、トモルには生徒会に入ってもらう事になりました。」

 

 「何? 相変わらず抜け目が無いな更識。 それならば真道は除外しなければならないな。」

 

 「と、いう事で織斑先生、お願いします。」

 

 「わかった。それでは、真道遅れるなよ。」

 

 千冬はそのまま図書室を後にした。 残されたトモルと刀奈も図書室を後にした。

 

 

 

 

 「なあ、さっき言っていたクラス代表何だけどクラス委員長みたいなものか?」

 

 「そうね、概ね役割は一緒よ。 ただ1つだけ特別な事があるのIS学園ならではの。 1学期と3学期に学年別にクラス対抗戦があるの、それにクラス代表として出場するの。」

 

 「なるほど。それだと代表候補生、それも専用機持ちがなるのが適任というか有利だな。」

 

 「たぶん殆どのクラスはそうなると思うけど、トモルのクラスはわからないわよ。一応、専用機を持つイギリス代表候補生と簪ちゃんと同じ日本代表候補生はいるけど、何せトモルと織斑君がいるから。」

 

 「なるほど、男性装着者をたてて注目を集めようとするわけか。それで刀奈は俺を生徒会にいれた訳か。」

 

 「そういう事。」

 

 「なら、刀奈に感謝しないとな。」

 

 そんな会話をしながら二人は途中まで一緒に歩いていく。

 

  

 

 

 

 トモルが教室に戻ると一夏が近付いてきて

 

 「どこに行っていたんだよトモル! 初日から授業をサボるなんて!」

 

 相変わらず呼び捨ての一夏に顔を顰めて

 

 「最初に織斑先生が言っていただろう、俺は既に高校卒業資格を持っている。だから一般学科は試験も含めて免除だと。」

 

 「えっ! そんなのズルイぞ! 入学した以上はみんなと同じく授業を受けて試験を受けないと!」

 

 「ズルイもなにも俺が決めた事じゃない。学園が決めた事だ。つまり学園からすれば俺は既に一般学科に関しては問題無いと判断したんだ。」

 

 一夏はまだ何かを言おうとするが、ここでもまた予鈴が鳴り一夏は渋々席に戻る。 何度も一夏に絡まれてトモルはうんざりしていた。 そこに千冬と真耶が入室してきた。

 

 「さて授業を始めるが、その前に再来週に行われる学年別クラス対抗戦を踏まえて、クラス代表を決めなければならない。クラス代表とは簡単に言えばクラス委員長と同じだ。ただ、先程言ったクラス対抗戦にクラス代表として出場してもらう事になる。」

 

 そう千冬が告げる。そして真耶が補足するように

 

 「クラス代表になりますと特別な理由が無い限り1年間続けてもらいます。 それから参考までにこのクラスには2名の代表候補生がいます。イギリス代表候補生セシリア・オルコットさんと日本代表候補生篠ノ之箒さんです。」

 

 「先に言っておくが、篠ノ之は篠ノ之束の妹にあたるが決して束の意向を傘にきて代表候補生になった訳ではない。本人の血の滲むような努力が実り掴んだ地位だ。くれぐれも勘違いするなよ。自薦他薦は問わない、なお他薦されたものは辞退できないからな。誰かいないか?」

 

 と千冬がそう言った所でトモルは挙手をし

 

 「織斑先生、申し訳ありませんが俺は 「そうだったな。」」

 

 「もう1つ言っておく事があった、真道は生徒会役員に任命されたのでクラス代表にはなれないので除外する。」

 

 「先生、何故クラス代表になれないのですか?兼務することは出来ないのですか?」

 

 一人の生徒が質問する。

 

 「残念ながらIS学園の生徒会というのは少し特殊でな、各イベントでは運営等にほぼ掛かりっきりになるので兼務は不可能なのだ、そこは理解してくれ。」

 

 そう織斑先生が言って殆どの生徒が納得する。

 

 「それなら織斑君を推薦します!」

 

 「私も織斑君!」

 

 「私も!」

 

 と次々と一夏の推薦が上がる。 推薦されている当の本人に理解していないのか、キョトンとした表情をしている。

 

 「先生、俺はイギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんを推薦します。彼女は専用機を所持してますので、適任かと思います。」

 

 「推薦ありがとうございます、真道さん。それでは私からも篠ノ之箒さんを推薦させていただきます。以前イギリスで模擬戦の映像を見せていただきましたが彼女の近接戦闘の素晴らしさは息を飲みました。」

 

 こうして一夏とセシリアと箒がクラス代表として推薦された。 ようやく事態を理解した一夏が

 

 「ちょっ、ちょっと待ってくれよ千冬姉!俺はそんなクラス代表なんてやらないぜ!」

 

 シュッ! キュルキュルキュル、バシッ!「痛ってーー!」 キュルキュルキュル パシッ!

 

 千冬が投げた出席簿はブーメランの如く回転しながら一夏の頭に命中すると再び千冬の手に戻る。

 

 「馬鹿者、織斑先生だ!それに他薦された者に辞退する権利はない。」

 

 「くっそー、それなら、えーーーと、そうだ俺はトモルを推薦するぜ!」

 

 「織斑、お前は私の話を聞いていなかったのか? 先程言ったであろう、真道は生徒会への所属が決まったので代表にはなれないと。」

 

 「何だよそれ! 何でトモルだけ優遇されるんだよ!」

 

 「優遇? なんの事だ? クラス代表になれない理由は確りと説明したではないか? ちゃんと聞いて理解していなかったのか?」

 

 「それだけじゃねえよ!授業をサボっていいとか、おかしいじゃねえか!」

 

 「サボる? 何の事だ? もしかして一般学科のことか? それも今朝説明したはずだ、真道は高校卒業資格を既に有しているから一般学科の授業と試験が免除されたと。 それとも織斑何か、お前は真道を留年生のような扱いをしてもう1度授業を受けさせろと言うのか?」

 

 怒気を含めた千冬の言葉に口を閉じる一夏。 実際に一夏は心のどこかで無意識にそう思っていた。

 年上の男性でありながも、自分と同じ学年にいる=留年というイメージを自分の中で確立させていた。

そうすることで、2対多数という男性の不利的状況下の中で少しでも自分の優位性を確立させて、自我を保とうとする無意識の行動があったのだ。

 そして千冬に指摘されたことで、無意識におこなっていた行動をようやく自覚した、だがそれを公で認めれば自分の卑しさを露呈することにもなるので黙るしかなかった。

 

 「織斑、あえて言わなかったが真道が卒業した高校はなK成高等学校だ。そして真道はそこを首席で卒業した。ここまで言えば真道の学力の高さは理解できるだろう。」

 

 千冬の挙げた高校の名前にクラスメイトの殆どがざわめく。そう日本でも有数の偏差値を誇る高校なのだから。 流石の一夏もその高校の名前は知っておりトモルと自分には既に学力というものに差があることをようやく実感した。

 

 「さて、話は逸れたが候補者は織斑、篠ノ之、オルコットの3人か。ここはIS学園らしく模擬戦で決めようと思う。ついでと言っては何だが真道、お前も代表決めとは無関係に参加してくれ。」

 

 「織斑先生どういう事でしょうか?」

 

 「男性装着者の実戦データを早めに出してくれと要請が来ていてな、情けない話だが学園の方では強く拒否出来なくてすまない。」

 

 「わかりました、そういうことなら仕方ありませんので参加させていただきます。」

 

 「他の3人もいいな!試合は1週間後の月曜日の午後からだ。それまでに各自準備をしておくように。」

 

 

 

 

 

 

 



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