ブサイク提督とイケメン提督 (ぽんこつ提督)
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ブサイク提督とイケメン提督
朝、俺はいつものように仕事に励んでいた。
退屈な書類仕事だが、雑にはできない。こういったことを疎かにすると、どこかで痛い目を見るからな。
大本営に送る用の書類を仕上げた後、大本営からの依頼に目を通していると、ふと見慣れない文言が目に飛び込んできた。
「……新しい提督?」
「はい。最近、その、横須賀鎮守府で艦娘の不当労働行為が発覚したことはご存知でよね」
「ああ。いわゆるブラック鎮守府ってやつだろ」
「さすがは提督です。耳がお早いですね。その騒動の折に鎮守府にいられなくなった提督のおひとりを引き取ってほしい、ということだそうです。はい」
「……大丈夫なのか? ブラック鎮守府で働いてたんだろ」
「悪党ならとっくに檻の中ですよ」
「それもそうか」
海軍の憲兵は優秀だ。
不正はほとんど見つける。
新しい提督は巻き込まれてしまった可哀想な人間か――憲兵でも証拠を見つけられなかったキレモノか。
普通に考えれば前者だ。ただなんとなく、悪い予感がする。こういう予感は不思議とよく当たるもので、前にも深海棲艦の大規模な攻撃を予見できた。
何か策を打っといたほうがいいかもしれない。
「大淀、鎮守府にいる艦娘達を集めてくれないか。一応の伝達をしておきたい」
「かしこまりました。歓迎会の準備はいたしますか?」
「そうだな。もしかしたら横須賀鎮守府の一件で疲れてるかもしれない。艦娘と打ち解ける機会にもなるだろうから、頼む」
「はい!」
大淀は花の咲きそうな笑顔で返事した。
真面目な風だが、大淀はああ見えて宴会好きなのだ。
◇
「初めまして。これからお世話になります!」
「ようこそ我が鎮守府へ。君を歓迎するよ」
やって来たのはびっくりするようなイケメンの好青年だった。
ちらりと窓に反射した自分の顔と比べると、本当に同じ生き物なのかと疑うくらいだ。
歓迎会では早速艦娘達にちやほやされていた。
まったく、羨ましい限りだ。
俺なんか最初、ブサイクなせいかまともに話せるまで相当苦労したってのに。
「どうしたのさー、提督。元気ないじゃん」
「辛気臭い顔をしないでください。ただでさえ暗い顔をしてるんですから。こっちまで辛気臭くなります」
「北上と大井じゃないか。いいのか、こっちに来て」
「んー? アタシ達と提督の仲じゃーん。よそ者が来たって関係ないよ。アタシ、結構提督のこと好きだしね」
「北上……」
「て・い・と・く?」
ニコニコした顔の大井が逆に怖い。
「まあ、今回は許してあげます。提督が信頼に足る人物だってことは私も理解してますから。私としても、あの新しい提督はなんか気に食わないんですよね。顔はかっこいいですけど、信用できません。まだ提督の方がマシです」
「大井っち!」
「マシ! ってだけですよ」
「大井っち今日はデレてんじゃーん。かわいいねぇ」
「もう、北上さんまで! からかわないでください」
「でも提督を譲る気はないからねー」
「わ、私は別に……北上さんがいるから提督のところにいるだけで……」
「二人とも、嬉しいことを言ってくれるな。よし、今日は俺が酒を注いでやろう」
「お、侘び寂びだねぇ〜。ありがとね」
「……一応、感謝しておきます。上官ですから。ありがとうございます」
北上は一気飲みして「かーっ!」っとおじさんくさいリアクションをした後「もう一杯!」とお代わりをねだった。もちろん注いでやる。
一方で大井は杯を両手で持ってチビチビと飲んでる。座り方も北上があぐらなのに対して、大井はキチンと正座だ。
間違いなく仲はいいんだが正反対で面白い。
「ささ、提督も飲みなよー。黒髪美少女の私がお酌してあげるからさー」
「お、悪いな。それじゃあお言葉に甘えて」
「そーれイッキイッキ! ははははっ!」
こいつ、出来上がってやがる。
まあ飲むけど。
「おー! いい飲みっぷり! 流石私たちの提督だねー。痺れるねぇ」
「お調子者なだけですよ」
「またまたそんなこと言っちゃってー。次は大井っちがお酌してあげなよ。きっと提督も喜ぶよ」
「えっ!? ……いえ。私なんかより北上さんの方が可愛いですから、そんなことはないと思いますけど」
「だって提督」
「いや、そんなことはないぞ。大井が注いでくれたら、嬉しく思う」
「ほらほらあ、提督もこう言ってることだしさ。ね、大井っち」
「北上さんがそう言うなら……ほら、提督! さっさと杯を下さい!」
ぶつくさ文句を言っていた大井だったが、入れてくれたお酒を一気飲みするとわずかに笑ってくれた。
「それじゃあ次は北上さんが注いであげよう」
「いえ、北上さんの手を煩わせるわけにはいけません。次も私が……」
「大井っち?」
「はい、なんでしょう?」
「……」
「……」
「提督はどっちのお酒が美味しかった?」
「えっ? あー……神通!」
「ここに」
名前を呼ぶと、どこからともなく神通が現れた。
彼女は秘書艦とはまた別の意味で、俺の右腕とも言える船だ。
「杯をもうひとつ持ってきてくれ」
「かしこまりました」
まばたきする間に、机の上にもうひとつ杯が置いてあった。
「流石は神通だ。ありがとう」
「もったいないお言葉です」
また音もなく神通はかき消えた。
「二人から一杯ずつもらおうかな、なんて」
「むぅーー……まあそれでいいけど。ヘタレ提督」
「勘弁してくれ」
「わ、私は別にどうでもよかったんだすけどね!」
「そんなこと言っちゃってー。毎晩自己反省会開いてるの知ってるんだからね? この前も提督に厳しくしすぎたって――」
「き、北上さん!」
「はははっ」
その後も三人で楽しく過ごした。
途中で他の艦娘も来てくれたりして、何だかんだこっちの席も盛り上がってくれた。
「……」
ただ、気になることがひとつ。
見られてる。あのイケメンくんだ。目が合えば笑顔で手を振ってくるが、一瞬ドス黒い眼をしたのを俺は見逃さなかった。
波乱の予感がする。
◇
鎮守府の朝は早い。
今日も早朝から艦娘達の元気な声が聞こえてくる。
そんな中俺は書類仕事だ。つまらないわけじゃない。数字が大きくなってたりすると、この鎮守府の成長を感じられて嬉しかったりするしな。
「……ん、そろそろ休憩にするか」
「はい。今日のお昼ご飯はチキンステーキかビビンバみたいですよ」
「ほう。そりゃあ楽しみだ」
ウチの鎮守府では間宮さんの負担を減らすように、お昼はAコースとBコースの二種類しか出さないようにしてる。
食堂に行かないとメニューは分からないようになっているが、提督の特権というやつだ。
「提督、おはよう」
「提督さん遅いぽーいっ! 夕立もうお腹ぺこぺこっぽい!」
「こら。提督は忙しいんだから仕方ないよ。僕も寂しかったけどさ」
「ごめんごめん。さ、一緒にお昼ご飯を食べよう」
約束をしてるわけじゃないが、いつからか時雨と夕立の二人とお昼ご飯を食べるのが習慣になってしまった。
二人は元気が良くて楽しそうなので、見ていて飽きない。
お昼ご飯と一緒に元気までもらってる気分だ。
「夕立はAコースにするっぽい!」
「僕はBコースで頼むよ」
「俺もBコースにしようかな」
「ふふっ。一緒だね、提督」
「ああ」
「ふふん。どうだい夕立、僕と提督は以心伝心だ」
「ぐぬぬぅーー! あっ! 提督さん、一口ずつ交換しましょう? 夕立、そっちも食べてみたい!」
「なっ!?」
「別にいいぞ。俺もチキンステーキ食べてみたかったしな」
「提督さん、あーんっ!」
切り分けたチキンステーキをフォークで刺して、こっちに向けてくる。
大人しく口を開けてやった。
ちょっと照れるが、たまにはいいものだ。
……隣では、時雨がこの世の終わりのような顔をしていた。
さっきまではピンと張ってたアホ毛がふにゃふにゃになっている。
「提督さん! 次は夕立にも食べさせて食べさせて! はい、あーん!」
「ほれ」
「んーっ! いつもの数倍美味しいっぽい! ぽいぽいぽーーーい!」
「なんだその掛け声? は」
夕立はぴょこぴょこ跳ねて喜んでいた。
まるで犬みたいだ。
「て、提督!」
「ん?」
「その、僕とも交換してほしいな……なんて。迷惑じゃなければいいんだけど。無論、わかってはいるんだ。僕と提督は同じものを頼んだ。だから意味がないってこと、わかってはいるんだ。でも、そうしたいんだ。わがままを言ってすまない……」
「いいぞ。ほら、あーん」
「!? あ、あーん。……ん、美味しいな。僕のわがままに付き合ってくれてありがとう、提督。優しいね」
「有能な艦娘の士気向上のためさ」
「むぅ。その言い方はずるいよ。ちゃんと僕のためって言ってほしいな」
「ははは。ごめんごめん、時雨のためだよ」
「うん。それならいい」
「提督さん! 時雨だけじゃなくて、夕立にも構ってほしいっぽい」
「ああ、もちろん」
二人は食事より遊びが優先されるみたいだ。
子供っぽいのか女の子っぽいのか、俺には分からないが。
「そういえば、提督。昨日は北上と大井と随分仲良くしてたらしいじゃないか」
「ん? ああ。二人とも気を遣ってくれてな」
「ふぅん……あの二人が気を遣うタイプとは思えないけどね。まあ、いいんだ。提督が誰と仲良くしても。だけど、ひとつ言っておきたいんだ」
「何を?」
「昨日、僕は任務でいなかったけど、いたら絶対に提督に寂しい思いをさせたりはしなかったよ。新しい提督の顔がいいってみんな言ってたけど、僕は全然興味ない。本当だよ。僕の提督は提督だけだ。他の奴になびいたりしない。鎮守府のみんなが敵になっても僕だけは提督の味方だ。信頼……してほしいな」
「夕立も! 夕立が好きなのは提督さんだけっぽい! 夕立を理解してくれるのは提督さんだけだよ。だから提督さん大好き!」
「うわっとと。そう言ってくれるのは嬉しいけど、もうちょい離れて。周りの目があるから」
他の艦娘達がチラチラこっちを見てる。
その視線に混じってイケメンくんも、な。
「とにかく僕が言いたいのは、昨日はたまたま北上達が隣にいたけど、それは僕でもよかったでしょ、ってことなんだ」
「そうかな」
「そうだよ」
北上と大井ならいいが、流石に駆逐艦の時雨と夕立とお酒を飲むのは少し抵抗がある。
艦娘である彼女達に年齢なんて概念はなく、アルコールにも強いということは分かっているのだが……。
◇
秘書艦は基本的に大淀だ。
しかし付きっ切りにしておくわけにもいかない。艦娘にだってプライベートな時間は必要だ。
だから夜は、一週間おきのローテーションで別の艦娘が秘書艦をしてくれる。
「提督、お茶は飲みますか」
「ああ。お願いしてもいいかな。ちょうど喉が渇いていたところだ」
「そう。少し待っていて」
今週の秘書艦をしてくれるのは正規空母の加賀だ。
無愛想に見えて、優しくて気がきく船だ。
「そういえば加賀、新しく入ってきた提督はどうだ? みんなに馴染めてるかな。俺はこうして執務室にこもりきりだから、あんまり外の様子が分からなくてな」
「私もあまり社交的な方ではないけれど……でも、そうね。仲良くやれているそうよ。ちょうど今日は赤城さんと出かけているわ」
「珍しいな。赤城が加賀以外の誰かと二人で出かけるなんて」
「食べ物に釣られたのよ」
「そりゃあ赤城らしい」
「そうね。でも私としては少し気に食わないわ。提督への敬意はないのかしら」
「別に俺は敬意とか要らないんだけどな……」
「だめよ。ここまで私達を導いてきたのはあなたよ、もっと自信を持って。少なくとも私はあなたを尊敬しているわ」
「なんかくすぐったいな。でもありがとう」
「いえ。私も少しはしゃぎすぎたわ」
そう言って、加賀は笑った。
いつもクールな加賀が楽しそうに笑うと、凄く美人に見える。
その後はまた、二人で仕事をした。
他の秘書艦相手だと話しながらやったりするが、加賀が相手だと黙ってやることが多い。
気まずいとかじゃなくて、これがお互い心地いいのだ。
◇
次の日。
朝はいつもと何も変わらなかった。外から艦娘の元気な声が聞こえる中、大淀と二人で書類をこなして、艦隊の編成や出撃のローテーションを組んだ。
「……そろそろお昼にしようか」
「はい。今日の献立はカレーと担々麺だそうですよ」
「それは楽しみだ」
食堂の扉を開ける。
いつもなら夕立と時雨が飛び込んでくるのだが、今日は何もなかった。
「提督、あれ……」
「なるほど」
「提督さん、あーんするっぽい!」
「あ、ずるいよ夕立。僕のも食べてよ提督」
「うん。二人からもらおうかな。順番にするから喧嘩しないで」
大淀が示した先では、二人とイケメンくんが一緒にお昼ご飯を食べていた。
両脇に侍らせたい二人の肩に手を回して、随分と仲良しそうだ。
「時雨、夕立」
「あっ……」
「て、提督さん。おは、よう」
「おはよう。今日はそっちでお昼ご飯を食べるのかな?」
「うん……誘われたんだ」
「そっか」
「すみません、先輩。お先に約束してらしたんですか?」
「いいや、いつも一緒に食べてただけで約束はしてないよ。二人が楽しそうならそれでいいんだ」
「そうですか、よかったです」
「ああ」
それだけ話して、俺は大淀と合流した。
たまには大淀と二人でお昼というのも悪くない。
「い、いいんですか提督!」
「なにが?」
「お二人のことです。あんなに提督のことを慕ってたのに……」
「いいんだよ。さっきも言った通り、約束してたわけじゃない。それより大淀は、俺と二人は嫌か?」
「そんな! 全然嫌なんかじゃありません! むしろ嬉しいくらいです!」
「よかった。仕事中いつも一緒だから、ご飯くらいは別がいいかと思ったよ」
「ふふふっ。提督ったら、意外とナイーブなんですね」
「そうかな」
「そうですよ」
大淀と二人でお昼ご飯を食べた。
仕事で四六時中一緒だからと思っていたけど、プライベートだとまた違う方向で話が弾んだ。
かなり楽しい時間を過ごさせてもらった。大淀も楽しんでくれてたら、俺も嬉しい。
「……」
その間も、ずっと視線は感じていた。
◇
「……来ないな」
夜になったら一緒にお酒を飲もう、と北上と大井と約束していたのだが、いつまでたっても来ない。
約束の時間は8時で、今はもう11時だ。
「提督、失礼します」
「ん、加賀か。どうした」
「いえ。部屋の明かりがついていたので、まだ仕事中かと思ったのよ。今週の秘書艦は私だもの。もし提督が一人で働いてたら、秘書艦失格だわ。そうではなかったみたいだけれど」
「北上と大井と約束をしてたんだけどな、すっぽかされたみたいだ。はははは」
「笑い事じゃないわ。北上と大井ね。待っていて。今すぐ連れてくるわ」
「いや、いいよ。きっとなにか外せない用事でも出来たんだろう」
「提督のお誘いより大事な用なんてないわ――あっ」
「どうした?」
「いえ、その……提督を傷つけるかもしれないわ。だから……」
「いいよ。加賀は嘘をつくのが苦手だろう。正直に言ってくれていい。言いたくないならいいけどね」
「……北上と大井はさっき、お酒を持って歩いていたわ。方向は北棟の方よ」
「北棟って言うと、あの新しい提督の部屋がある方か」
執務室は鎮守府内の全てを見渡せるように、鎮守府で一番長い所に置かれている。
イケメンくんの部屋を覗いてみると部屋の明かりがついていた。
カーテンで遮られているせいで中は見えないが、人型の影が三つ見える。その中のひとつには、おさげのシルエットが見えた。
「提督、どいてちょうだい。爆撃出来ないわ」
「ちょっと、加賀さん?」
「安心して。鎧袖一触よ」
「ダメだよ、艤装の私的使用は。それに仲間を攻撃しちゃよくない」
「あんな奴らもう仲間でもなんでもないわ。提督を裏切った人は敵よ」
「加賀」
「……鎧袖一触よ」
「加賀」
「……はあ。提督はお人好しね。そんな優しい提督だから惹かれたのかもしれないけれど。まあ、いいわ。今日はあなたの顔に免じてあげる」
「ありがとう」
加賀は艤装を解除した。
危ないところだった。加賀に爆撃されていたら大変なことになっていたところだ。
「ところで提督。時間はまだある?」
「この後たっぷり開けてある」
「それじゃあ一杯付き合ってもらおうかしら。弓を構えた高揚が抜けないわ」
「もちろん、喜んで」
その後はゆっくり夜を楽しんだ。
思ってたのとは少し違うが悪くない。
◇
今日は任務で外に出ていた第一艦隊が帰ってくる日だ。
俺は防波堤に立って迎える準備をしていた。任務で疲れた彼女達を最初に出迎えて労うのは俺の仕事だ。仕事抜きにしても、そうしてやりたい。
ここ最近で色々と変わった鎮守府の説明もしてやらなきゃだしな。
「提督! いつも出迎えてもらってすまない。第一艦隊旗艦長門、ただいま――」
「ていとくううううぅぅぅぅ! あなたの金剛が今戻ったネー!」
敬礼をしようとした長門を押しのけて金剛が抱きついてきた。
手加減してくれているが艦娘だけあってすごいパワーだ。思わず身体がのけぞりそうになる。
「はははは。お帰り金剛。元気そうだな」
「提督に会えばラヴパワーで元気100セント満タンデース!」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、疲れているだろう。ドックが空いてるから休んでおいで」
「提督は優しいネー! 一緒にニューヨークする?」
「入浴な。嬉しいお誘いだけど遠慮しておくよ」
「残念デース。提督と一緒なら楽しいのに……そういえば、今日はお一人なのですか?」
「ああ。実はみんなが抜錨してる間に新しい提督が来てね。みんなそっちに行ってしまったよ」
「サウンズ・グッド! 私が提督を独り占めできるってことデスカ!? 私の時代がやっと来ました!」
「お姉さま、私もいますよ」
「おっとマイシスター! 榛名といえど、提督の横は譲れませんヨ!」
右から金剛が、左から榛名が腕を絡めてきた。
「そうと決まればドックなんて入ってられないヨ! デートに行くネー!」
「提督、榛名もご一緒してよろしいですか? ご迷惑でなければ……」
「そうだな。久しぶりに三人で遊ぼうか」
「さっすが提督! 話が分かるお人デース!」
「ああそうだ。長門、明日でいいから執務室に来てくれ。報告書を持って」
「無論だ。元々後で訪ねるつもりだったさ。私がいない間の鎮守府がどうだったか聞きたい」
長門と約束をした。
お互い忙しい身だが、大淀が上手く時間の調節をしてくれるだろう。
二人にどこに行きたいか聴くと、榛名は「提督が行きたいところ」金剛は「買い物がしたい」と答えた。
長い間海に出ていたから、新作の服をチェックしたいのだとか。
その辺は流石女の子という感じだ。
榛名も行きたそうにしていたので、鎮守府近くの街にあるショッピング・モールに行くことにした。
神通を呼んで外に出ると言伝を頼んでから、俺たちは鎮守府の外に出た。
「提督、榛名は今度はあのお店に行ってみたいです!」
「おっとと。行くけど、あんまり強く手を引っ張らないでくれな」
「あっ、ごめんなさい提督!」
実際に街に出てみると、金剛より榛名の方がはしゃいでいた。
普段は大人しい榛名がこうしているとすごく可愛らしく見える。もちろん普段から可愛いが。
「そんなことより提督、夜は――あっ」
「ん? ああ……」
「次はこっちに行きましょうよ!」
「はしゃぎすぎだよ大井っちー。提督も困るよね?」
「そんなことはないよ。二人が行きたいところに行こう」
北上と大井とイケメンくんだ。
三人も手を絡めて歩いている。
大井と北上は一瞬こっちを見たが、すぐに目をそらした。しかしそれに気がついたイケメンくんがこっちを見て挨拶してきた。
「こんにちは先輩」
「こんにちは三人とも」
「あははは……久しぶりだなー提督」
「……」
「あーっと、そっちの可愛らしいお嬢さん方はどなたかな? こないだの歓迎会ではお目にかからなかったけど」
「……提督、この人は?」
「最近、鎮守府に来た新しい提督だよ。自己紹介して」
「……金剛デス。よろしく」
「妹の榛名です」
「おっと。嫌われてしまったかな」
イケメンくんは爽やかに笑った。
横では大井と北上が乙女の顔で眺めてる。
「随分仲良くなったんだね」
「うん。美味しいお酒があるって言うからついてったらねー。本当に美味しいお酒でさ。つい朝まで飲んじゃったよ。そしたら次の日、大井っちがまた行きたいって言い出してさ」
「本当か? 前は信用できない、とか言ってたのにな」
「ちょっと! 提督の前でそんなこと言わないでください!」
「大丈夫だよ、気にしてない。今はもう信頼してくれてるんだろう?」
「それは……はい」
俺が大井に信頼してもらうのに、どれだけかかったっけな……。
「行こう、提督。大井っちも」
「そうだね。それじゃあ先輩、失礼します」
「ああ。良い夜を」
三人はまた手を繋いで、仲良く歩いて行った。
……なんとなく、姿見えなくなるまで三人を見送った。北上と大井は一度も振り返らなかった。
「……提督。榛名、なんだかあの人のこと嫌いです」
「嫌な感じネー。私たちのこと、変な目で見てた気がシマス。やっぱり提督が一番ネー!」
「まあ、確かにな。ちょっと腹黒そうだ」
「ウンウン。でも大井と北上を連れてってくれたことはちょっぴりプラスかな! その分、提督に甘えられるもんね!」
「そうだな。それじゃあ今日はめいっぱい楽しもう」
「はい! 榛名、がんばります!」
俺たちも別方向に向けて歩き出した。
◇
次の日の早朝、長門は報告書を持ってきた。
ざっと目を通したが問題ない。戦果は上々、むしろ想定してたよりいいくらいだ。
「長門、よくやってくれたな」
「なに、ビッグセブンの名は伊達じゃないさ。それに提督、あなたが本国を守ってくれているおかげだ。帰る所がある分、気楽に戦えるのさ」
長門は気さくに笑い、握手を求めてきた。
断る理由はない。
筋肉がつきながらも女の子らしい柔らかさを持った手と握手を交わした。
「それで、提督。お前の方からも何か言うことがあるんじゃないのか。今朝、時雨と夕立が見知らぬ男と一緒に部屋から出てくるのを見たぞ」
「新しい提督だよ。前の鎮守府で問題があったらしくてな、ここで預かることになった」
「ほう。しかし随分と男前だったな。提督とは比べ物にならんほどに」
「ほっとけ」
「だがこの長門、興味が湧いたぞ。ただ顔がいいだけの男になびく彼女達ではあるまい。どの様な男か見定めたくなった」
「そりゃあいいけどな。ひとつ忠告しておくぞ」
「敬愛する提督からの忠告だ。有り難く頂戴しよう」
昨日金剛と榛名にも言っておいたことを長門にも言っておく。
長門は全て聴き終えると、なるほどと頷いた。
「わかった。留意しよう」
「助かる。だけど、大丈夫か? お前はあんまり器用じゃないだろ」
「なに、安心しろ。あなたの期待には応えるさ」
そういうと長門は振り返り、執務室を出て行った。
これからイケメンくんのところに行くのだろう。
入れ違いで慌てた様に大淀が入ってくる。
「ちょ、ちょっと提督! いいんですか!?」
「なにがだ」
「長門さんを行かせてです! あの新人提督、普通じゃないですよ! この前までみんな提督にべったりだったのに、ここ数日でみんな向こうに行ってしまって……」
「顔がいい男に付いて行くっていうなら、そこまでの関係だったってことだろ」
「そんな! それに、提督もおかしいです。いつもだったら、盗られたらすぐに取り返しに行くじゃないですか。力ずくでも!」
「盗られた、なんてことはないよ。彼女達は俺の所有物じゃない」
「でも!」
「いいんだ大淀」
「提督……」
その時、執務室の扉が吹っ飛ばされた。
加賀だ。
随分と怒った様子で、ズカズカと歩いてきた。
「提督、鎮守府内で艤装を使用する許可をください」
「どうしたいきなり」
「どうもこうもありません。先程廊下を歩いていたら、金剛さんと榛名さんにすれ違いました」
「よくあることじゃないか」
「あの男と手を組んでいたと言ってもですか?」
「……ほう」
随分と手が早いな。
「な、なんで? 昨日お二人は、あの人が嫌いだって……」
「買い物に行っていたところ偶然出会い、荷物を持ってもらった後お礼に紅茶を一緒にしたとか。それ以来仲良くしているそうよ。まったく、とんだ阿婆擦れね」
「金剛さん、榛名さん……」
「しかもあろうことか、私と別れたあと保健室に入って行きました」
「それって!」
「ふぅん……なるほど。想定より随分はやかったな」
「提督?」
「いや、こっちの話だ。それより加賀、艤装の使用は許可できない」
「ですが――!」
「その代わり、後でデートをしよう」
「やりました」
加賀はガッツポーズした。
「今日の午後6時に鎮守府前で待ち合わせだ。いいな?」
「はい」
「ああ、そうそう。それとひとつ、お前に頼みがあるんだ」
「なんでも言ってちょうだい。私は提督のお願いならなんでも聞くわ」
「大淀も、いいか?」
「はい。お任せください!」
そのあと、二人とは一旦別れた。
久しぶりに一人で執務室で仕事をする。
昔、艦娘達とまだ仲良くできなかった頃はよくこうして仕事していた。
しばらく仕事をしていると、いつのまにか待ち合わせの時間になっていた。
待ち合わせ場所に行ってみたが――加賀はいなかった。
いつもなら30分前にはいるのに。
「電話してみるか」
コールしてみると、意外なことにすぐに出た。
「……んっ、ていとぁっ、ですか?」
「ああ。待ち合わせ場所にいないからかけてみたんだが」
「ごめんなさぃっ――ど、どうやら、んくっ、風邪を引いてしまったみたいなの……はあ、はあ」
「そうか。それなら今日はやめたほうがよさそうだな」
「え、ええ。そうね――はぁん! そうしてくれるの、助かる、わっ」
「どうした? 息が辛そうだが大丈夫か?」
「イ、イっっっくぅ! 大丈夫よ。し、心配しないで。赤城さんも、一緒にですから……」
「そうか、それなら安心だな」
「ええ。……えっ? 話をしろ……でも、それは。待って止めないで。お願い。言う通りにするわ。――提督、今日、新人の提督にお、お会いしました」
「どうだった?」
「す、ステキな方だったわ。キレた弦の張替えを手伝ってもらったの」
「そうか。それじゃあそろそろキルな」
「ええ。私ももうキそう――ああっ、ダメ!」
電話は乱暴に切られた。
これで後は大淀だけ、か。
◇
その日の夜、加賀は執務室に来なかった。
それだけじゃない。
次の日、大淀も執務には来なかった。
◇
「ん、ダメです……こんなところで、なんて………」
「いいだろ。ずっと我慢したんだから――」
執務室の扉に手をかけると中からイケメンくんと大淀の声が聞こえてきた。
どうやらお楽しみ中みたいだ。
「……ふぅ」
ため息をしてから扉を開けた。
「きゃあ!? て、提督!」
「失礼、お邪魔だったようだな。だがどうしても、そこにある書類が必要なんだ。とっていいかな?」
「ええ、構いませんよ。先輩。さ、はやく取ってちゃって下さいよ」
「そうさせてもらう」
引き出しを開けて書類を取る。
大淀の服は乱れていた。
本番はまだしてないようだが。
「待って下さいよ」
出て行こうとするとイケメンくんに呼び止められた。
「気がついているんでしょう、先輩」
「なんのことだ」
「嫌だなあ、とぼけちゃって。悔しいからですか? あなたの艦娘を盗ったことですよ」
「盗られた気は無いんだがな……」
いつもの好青年のような笑顔ではなく、そこにはドス黒い顔が張り付いていた。
「またまたぁ、見栄を張っちゃって。ケッコンカッコカリをしてないから……なんていうつもりかな?」
「……別に、そういうわけじゃないが」
「ははははっ。強がりもここまでくると立派なものですね。ああそうだ、先輩のために彼女達に僕が何をしたのか話してあげますよ」
「好きにするといい」
「ええ、そうさせてもらいます。先ずは時雨と夕立。あの二人は随分と僕に懐いてくれましてね。性的な知識がなかったので今は添い寝しただけですが、まあ、そのうち可愛がってあげる予定ですよ。知ってます? あの二人、寝るときは口を開けちゃうんですよ」
「そうか。気がつかなかったな」
「お次は北上と大井だ。つい酔っ払い過ぎたせいで立てなくなってしまいましてね……それを言ったら、二人は目の前でレズビアン・ショーを披露してくれたんですよ。せめてものお詫びとしてね」
「……」
「おや、ついに無言になってしまいましたか。まあいいでしょう。勝手に続けさせてもらいますよ。長門は流石ビッグセブンだけあって最高の体つきだった。特にあの胸と来たら最高だ」
「……」
「金剛と榛名には左右から責めてもらったよ。声が可愛いからね。囁き声だけで先輩ならイっちゃうんじゃないかな」
「……」
「加賀のことは流石の先輩も気づいていたでしょう? せっかくだから、愛撫しながら電話に出てもらったのさ。あの時の加賀の表情と言ったらもう……泣きながら先輩に謝ってましたよ」
「……」
「大淀は見ての通りさ。執務室でヤルのって、最高に興奮するだろう? ってわかりませんか」
「……」
「ああ、それで、ひとつ提案があるんですよ。実はね、まだ僕はひとりの処女も奪ってないんですよ。せっかくだから同時に奪ってやろうかと思ってね。みんなー、入ってきていいよ」
扉をあけて、みんなが入って来た。
夕立、時雨。
北上に大井。
長門。
金剛と妹の榛名。
待ち合わせに来なかった加賀。
みんな一列に並んで――最後に大淀が加わった。
「ごめんなさい、提督さん……」
「提督……僕、この人に付いて行くことにしたんだ…………」
「ごめんね提督ー。でもカッコいいからさー」
「……」
「ふっ。この男、なかなか面白い男だったぞ」
「アイムソーリー……」
「は、榛名は……」
「ごめんなさい、ごめんなさい………」
「……提督」
謝ったり、無言だったり。
気まずそうに俺を見てくる。
「先輩、見てていいですよ。オカズくらいにはなるでしょう? これからもこうやっておこぼれをあげましょう。前の鎮守府でもね、そうしてたんですよ。僕は艦娘と仲良くするんで、先輩は書類仕事だけしてて下さい。幸いあなたはそれなりに優秀だ。戦果をあげたらその分ご褒美をあげますよ。たまになら一人くらい抱かせてやったっていい。ああっ、だけど、前の提督みたいに壊れないで下さいね」
そういうと奴は艦娘の肩を抱いて、執務室を出て行こうとした。
他の艦娘達も付いて行く。
「その前に、ひとついいか」
「なんですか、今さら」
「いや、お前じゃない。もういいだろ――大淀」
「はい! バッチリです!」
「ん。じゃあお前達、
「……は?」
その瞬間、艦娘達は嬉しそうに笑って左手の薬指を掲げた。
艤装が装着される時のように、そこに白いリングが装着される。
「やったー! やっと指輪着けれるっぽい! これがないと夕立、寂しいっぽい!」
「……はあ。ようやくだね。提督のことは信じてたけど、もう僕は不安で仕方なかったよ。君のそばにいないとダメなんだ」
「む、なんだ。もうネタバラシしてしまうのか。もうすこし遊んでもいいと思ったがな」
「長門さんは元気だねー。アタシはもう疲れたよ。大井っちがそっちのやつ殺しちゃいそうでさー。止めるの疲れた」
「だってそこの汚物! 私だけじゃなくて北上さんにも手を出そうとしたんですよ!? ああっ、思い出しただけで気持ち悪いっ! 提督、責任とって下さい! 今夜は寝かしませんからね!」
「まったくね。提督以外の人に触られるなんて、流石に鳥肌が立ちます。私なんて吐きそうになるのを堪えて演技したんですから、今日はたっぷり構って下さい」
「私なんて神聖な執務室で脱がされかけたんですよ! ここは私達と提督の想い出の場所なのに……」
「みんなすまなかったな。証拠を取るためとはいえ、嫌な思いをさせて」
「問題ナッシング! やっぱり提督がナンバー・ワン! ってことを再確認できるいいチャンスでした!」
「はい。榛名には提督しかいません。それに、その……こういうプレイも悪くないかな、なんて」
女三人寄れば姦しい、なんていうがその通りだった。
せっかくのネタバラシなのに会話にならない。
「みんな、俺はこのイケメンくんと話があるから、先に寝室に行っててくれないか」
「オーケー提督! でも、はやくしてくれなきゃノー! なんだからね?」
「アタシと大井っちのこともちゃんと労ってよ」
「はいはい。今日はみんなでやろうな」
「えー、長門さん目が怖いからヤダっぽい」
「えっ……?」
みんなはわいわいと出て行った。
俺の寝室に行ったはずだ。
残されたのは俺と、ぽかんと口を開けたイケメンくん。
「ま、そういうわけだ。理解できるか?」
「ちょ、ちょっと待て。なんだこれ、お前……おまえ!」
「混乱してるみたいだな。順を追って話してやろう」
話は彼が着任してくる、ほんの数日前に遡る。
イケメンくんが来るって聞いた時、俺は艦娘を集めて「指輪を外しておけ」と言った。
建前上は「新人提督を萎縮させないため」だ。
実際はもちろん違う。
こいつがちょっかいをかけた艦娘は後で個別に呼び出して、色目をかけられたら乗るよう提案した。
そうすればボロを出すと思った。
結果は見ての通り。
「流石に嫌がった艦娘は外したけどな。赤城とか、いきなりいなくなっただろ? ご褒美やるっていったんだけどな、そんでも無理だってよ」
「そんな、まさか……」
「ああそれと、俺のことヘタレって言ってたけどな。この鎮守府は艦娘の数こそ少ないけど、その分全員とケッコンカッコカリ済みだ。練度も最高。もちろん夜戦も経験済みだ」
「……」
「だんまりか? まあ、勝手に話してやるよ。自慢じゃないが、この鎮守府は日本じゃ一番強い。第一艦隊が帰ってくるのを見たろ? みんなボロボロだったはずだ。あれはな、海外に行ってたからなんだよ。日本付近の深海棲艦はとっくに叩きのめした。今は世界を股にかけて戦ってんだよ。そんな鎮守府にお前みたいなやつが来たって時点でなんとなく察しはついてた。大方、怪しんだ元帥が左遷したんだろうよ。俺の鎮守府は絆のレベルが違う、分解することなんてあり得ないからな」
「……」
「おまえは目にしてないだろうが、うちには龍田と隼鷹っていうキレものがいてな。お前の履歴を全部調べてくれた。そしたら出るわ出るわ、怪しい噂の数々。だからちょっとみんなに一芝居うってもらったんだ。参加してくれたら、一日なんでも言うこと聞いてやるって条件でな」
「……」
「案外みんな乗り気でな。楽しかったよ。本当はもっとゆっくり楽しむつもりだったんだが、お前、手早すぎ。おかげで一週間くらいで実行する羽目になっちまった。まあ、大井あたりはもう我慢できなさそうだったからちょうどいいけどな」
「……なんで」
「ん?」
「なんでそこまでわかってて!!!」
「ああ、簡単だよ。最近マンネリ化しててな。こういう――NTRっいうの? もいいかと思ったんだよ。そんだけだ。実際いい刺激になったよ。今夜は楽しめそうだ」
「おまえ――!」
激昂したイケメンくんは、隠し持っていた懐の刀を抜いて俺を刺した――いや、正確に言うなら刺そうとした。
刀の刀身がつかの部分から消えている。
「ありがとう、神通」
「提督の御身を守るのが私の務めですので」
「紹介するよ。こちら神通。この鎮守府最強だ。実はお前が深海棲艦のスパイで、怪しい機械で艦娘を洗脳されたりしたらやばいと思っててな。気配を消して俺の周りにいてもらった。鎮守府内の全員が裏切っても、最悪神通がいればなんとかなるからな」
「もったいお言葉です」
神通は手に握っていた刀の刀身を捨てて、俺に跪いた。
俺も膝をついて、神通の耳元で囁く。
「お前の忠義を嬉しく思う。一番働いてくれたお前には、一番の褒美をやろう」
「は、はい。ありがとうございます、提督」
神通は真っ赤な顔をして頷いた。
「証拠は揃ったが、お前を憲兵に突き出したりはしないよ。いつか出所して、また同じことを繰り返すだろう? だからここに置いてやる。変な気は起こさない方がいいぞ……って言わなくてもわかるか」
「ぐっ!」
イケメンくんは悔しそうに歯を食いしばりながら、俺を睨みつけてきた。
すこし可哀想と思う……いや、全然思わないが、自分から手を出したんだから仕方ない。
「ああ、俺はお前と違って優しくないから一人も抱かせてやらん。見るのも禁止する。それじゃあな。行くぞ、神通」
「はい」
俺は執務室を後にした。
後ろからは恨みのこもった咆哮が、横からは嬉しそうな神通の吐息が、そして前からは――俺を待つ艦娘たちの声が聞こえてくる。
今夜は忙しくなりそうだ。
このssはなんてジャンルなんでしょうか。
偽装寝取られ?ハーレム返し?
タグをつけるとか迷いました。
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