そこはまだ、俺の射程圏内だぜ? (おがとん)
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プロローグ

初めましての方は初めまして
久しぶりの方はお久し振りです。おがとんです。
前の二作が中々モチベーションが上がらないので書きます。
前の二作を楽しみにしている方々はすみません。
なんとか書こうとは思ってるんですが、筆が全然進みません。
なので少し休みます。本当にすいません‼


ーーーーーーーそれは、なんの前兆もなく突然現れた

 

 後に『近界民(ネイバー)』と呼ばれることになる白い異形の怪物が突如として出現し、出現付近で蹂躙を開始した。

 

 異次元の者たちであるが故か、現代兵器である銃などの攻撃はあまり効果は見られず、都市の壊滅は時間の問題だと誰もが絶望していた時だった。

 

 突然現れた謎の一団が近界民を撃退し、こう言った。

 

 

『こいつらのことは我々に任せてほしい。我々はこの日のためにずっと備えてきた』

 

 

 近界民の技術(テクノロジー)を独自に研究し「あちら側」から「こちら側」の世界を守るために戦う組織

 

 

界境防衛機関「ボーダー」

 

 彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ、近界民に対する防衛体制を整えた

 

 

 

 そして後に「第一次大規模侵攻」と呼ばれることになる、近界民が初めて「こちら側」に攻め込んできた時の一幕には、ある一人の転生者(・・・)の活躍もあった。

 

 

 

 

 

 

◎◎◎

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…っ!」

 

 

 一人の少女、綾辻遥は走っていた。

 

 家で昼食を食べ終え、さぁなにをしようかと席を立ったときにそれは起こった。

 

 近界民の大規模侵攻だ。

 

 見たことのない怪物、全体的に白い装甲をしており、顔らしき部分には『眼』のような何かまである。

 

 だがそれがなんであれ、自分にとって"よくないもの"であることはすぐに分かった。

 

 

「っ!!」

 

 

 気づいたときには家を飛び出し、走り出していた。幸いにも両親は買い物に出掛けており家にはいない。故になにも気にかけることなく逃げることが出来た。中学生にしてこの行動がとれるものはそうはいない。

 

 そして現在、なんとか人の多い方へ向かおうと周りの者と大通りへ向かっている途中に、不運にもそれ(・・)に遭遇してしまった。

 

 邂逅する確率としては低かった。遥が住んでいる辺りには被害らしい被害が見られず、周りにも多くの人が同じ方向を目指しているために、この辺りは安全なのだと警戒を怠ってしまった(まあ普通ならそこまで中学生に求めるのは酷なのだが)。

 

 だが現実は、時に残酷な運命を齎す。それが例え幼き少女であったとしても。

 

 

「……え?」

「な、なんだよあれ⁉」

「知るわけないだろ‼」

 

 

 およそ2~3階建ての家くらいの大きさを誇る怪物。捕獲用トリオン兵「バムスター」。特徴としてはでかい、堅い、でもそこまで強くないというものだが、あくまでそれは対等に戦える条件があっての話。そんな手段など有るはずがない者たちからしてみれば、それらは等しく化け物に該当する。

 

 20メートル程先にいたバムスターは、遥とその周りの人間を認識した途端、ズシンズシンと音を立てながら全力で向かってきた。

 

 

「うわーっ⁉」

「に、逃げろー⁉食われちまうぞ⁉」

 

 

 周りの者達は全力で反対方向へ逃げ出した。だが、トリオン兵という枠にあるバムスターと人間の足では、同じ一歩でも大きく差が出る。そしてそれは年齢が低いものほど(・・・・・・・・・)顕著になる。

 

 

「あっ」

 

 

 元々13歳という年齢でここまで判断し、行動できたことが奇跡そのものだ。その反動だろうか、いざ走り出そうと一歩足を踏み出すと同時に膝から崩れ落ちてしまった。

 

 足に力は入らず、後ろから迫る音はどんどん大きくなる一方だ。このままでは本当に食べられてしまう。

 

 

「……嫌だ……嫌だよ……」

 

 

 やがて音は止まった。後ろを振り返ると、そこにはあの化け物の『眼』があった。口を限界まで開けたバムスターは、目の前の少女を捕らえようと襲いかかる。

 

 せめてもの抵抗として、助けなどないと絶望しながらも、目を閉じて叫んだ。

 

 

「誰か……助けて…………助けて‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     任せろ」

 

 

 

 

 

 届くはずがなかったその声に、僅かばかりの抗いとして叫んだその想いに、その英雄(ヒーロー)は応えた。

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 目を開けてみれば、遥を食べようとしていた化け物(バムスター)は『眼』の部分が断ち切られて、遥と化け物の間には、遥より少し背の低い一人の少年(ヒーロー)がいた。

 

 黒のコートを靡かせ、手には刀身、鍔、柄までの全てが黒い、まさしく黒剣とはあのことを言うのだろうと思うくらいに漆黒の剣があった。

 

 そして少年は遥の方へと向き直り、問いかけた。

 

 

「怪我はない?」

「う、うん」

「そっか、良かった」

 

 

 遥の返事を聞いて、少年は笑みを浮かべた。

 

「ここは危ないから、早く逃げた方がいい」

「でも、あなたは……」

 

 

 遥は自分よりも少年の事を心配した。確かにバムスターを倒したとはいえ、身長からして恐らく同い年ぐらい。そんなまだ親に甘え盛りの子供が戦場に出るなど、遥には考えられなかった。

 

 

「俺は大丈夫。武器があるし、なによりあいつらと戦える人間は限られてる。なら、戦える俺が逃げる訳にはいかない」

 

 

 そんな心配を他所に、少年の意志は変わらない。それに彼が持っている武器(トリガー)は普通のものとは桁違い(・・・)の能力がある。生き残る可能性は充分に高い。

 

 

「……大丈夫だよ」

「え?」

 

 

 そんな事情は知らないだろうが、それでも少年は自分の事を心配してくれた遥の好意が嬉しかった。

 

 

「俺は必ず生き残る。だから、大丈夫。心配してくれてありがとな」

「……うん」

「よし、これでこの話は終わり。じゃあ逃げようか、立てるかい?」

「あ、ごめん。ちょっと無理……かな」

 

 

 先程までの逃走劇によって遥の体力は底を突きかけている。そこにバムスターの登場と襲撃、そして脅威からの解放という安心感により、遥には最早立つ気力すら残っていなかった。

 

 

「……了解。なら、ちょっと失礼するよ」

「え?きゃっ!?」

 

 

 少年は遥の状態を理解すると、右腕を遥の右脇の下を通し、反対の腕を膝裏から掬い上げるように持ち上げた。

 

 俗に言う『お姫様抱っこ』である。

 

 

「な、なななななっ!?」

「ごめん。悪いけど少しの間だけ口閉じててね?舌噛んじゃうかもしれないから」

 

 

 遥の返事を待たず、少年は全速力で駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、時間が経つに連れ「大規模侵攻」は終息した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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オリ主設定集

な、なんと……!!
一日も経たぬうちにUAが800を越えて、お気に入りに関しては20件も……っ!!
お気に入り登録ありがとうございます!!
今後ともよろしくお願いします!!



神崎(かんざき) 結城(ゆうき)

 

 

ボーダーA級ソロ隊員

 

ポジション:完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)

 

年齢:17歳

 

誕生日:1月2日

 

身長:177cm

 

血液型:O型

 

星座:かぎ座

 

職業:高校生

 

好きなもの:読書 射撃 ミルクティー

 

家族構成:父、母

 

 

《パラメーター》

 

トリオン:19(42)

攻撃:8(35)

防御・援護:9(20)

機動:9(11)

技術:13(13)

射程:13(15)

指揮:3(3)

特殊戦術:2(8)

 

TOTAL 76(147)

 

※()は黒トリガー使用時の数値

 

 

トリガー構成

 

メイン

 

弧月

旋空

メテオラ

バッグワーム

 

サブ

 

イーグレット

バイパー

シールド

グラスホッパー

 

※今のところこの構成で落ち着いている。他にも銃手(ガンナー)トリガーなどにも手を伸ばしていたりする。

 

自由に生きる完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)

 

なぜか前世の記憶を保持してワートリの世界に転生した。早々に生まれた場所が三門市であり、原作キャラとも多少交流があったことで転生したのがワートリであることに気づいた。

 

大規模侵攻の際に両親を亡くすが、それは両親が(ブラック)トリガーを残したため。両親はボーダーとなんら関わりがないが【子供に生きてほしい】という想いと、一人ではなく二人ともが願ったことで黒トリガーが創られた。そのため、一人が創った黒トリガーより強力な黒トリガーになっている。

 

今世の両親にそこまで思い入れはなかったが、最後の最後で両親が本当に自分を愛してくれているんだと理解でき、黒トリガーを残してくれた両親に感謝し、二度と被害を出させないという決意を持ち、黒トリガーを使って大規模侵攻の被害を影ながら減らしていた。その途中に綾辻遥を救出する。遥はその際に結城に惚れており、トリオン兵と戦っているのを見てボーダー関係者だと判断しボーダーに入隊。だが結城はボーダーには所属しているが、黒トリガーを所有していることは上層部に話していない。なぜならそれを話せば、確実に面倒なことになると考えているから(と言いつつも遥に危害が及びそうになればなんの躊躇もなく使用するが)。

 

ボーダーで互いに姿を見たときは声を張り上げそうになったが、いち速く結城が阻止しセーフ。その後、遥には大規模侵攻の際に使っていた黒トリガーについては上層部に伝えないでほしいというと頼む。が、黙っている交換条件として時々買い物などに付き合ってほしいと主張。もちろん結城は快諾。周りから見れば互いに好き合っていることなど丸分かりなどだが、誰も喋らないでいる(まあ他人の恋愛なんて首突っ込むことじゃないし、なにより付き合った時にからかうのを心待ちにしているから)。

 

遥が結城に惚れているように、結城もまた遥に惚れている。だが互いに奥手ということもあってか、告白をできずにいる。それに結城には、元々この世界の人間ではないという負い目がある。もしかしたら、自分がいなければ将来綾辻は別の誰かと幸せになるのではないか。何度もそんな考えが頭を巡り、最終的には告白は流れている。

 

トリガー使いとしての実力は最上位レベル。扱っているトリガーの全てがマスタークラスであり、レイジ以来の完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)として上層部も注目している。派閥としては忍田本部長派閥になるが、結城本人と忍田本部長の意向もあってほぼ自由派閥状態。町の防衛に関しては忍田本部長の指揮下に入るが、それ以外は自由になっている。たまーに迅の暗躍に乗っかってたりする。

 

黒トリガー:星球(スタージェン)

 

形状は黒の指輪に青いラインが刻まれている。だが指には嵌めておらず、チェーンを通してネックレスにして首にかけている。使用した際は黒の野球ボール程の大きさで漂う(七つの大罪のマーリンの神器みたいな感じ)。あらゆる武器に変化させることが可能であり、剣、槍、斧、弓、双剣、短剣、大剣、刀、拳銃、突撃銃、狙撃銃などなど。見たことがあり、構造を知っているものならば殆どが再現可能。更に解析能力にも長けており、時間はかかるが、相手の使用しているトリガーの構成情報を知ることもできる。相手のトリガーを解析した上で何が弱点かを逆算し、それに合わせた武装を用意できる。まさしく初見殺しの黒トリガーである。

 

サイドエフェクト:座標認識

 

己を中心として、空間を立体座標平面として捉えることができる(言うなれば学戦都市アスタリスクの雨霧綾斗の"識")。このサイドエフェクトの前にはカメレオンなどの隠密トリガーは意味が無い。なんせ、姿が見えなくてもそこに存在している以上、このサイドエフェクトから逃れることは不可能だからだ。視覚ではなく、座標として認識しているため、誰が、何が、どこに、どんな風に存在しているのかを簡単に把握できる。これを使った狙撃などはまず防げない。例え射線を切ろうと、どこを動いているかが分かるため、例えば建物と建物の間にある細い空間を通りすぎる瞬間を狙撃可能。もはやチート以外の何物でもない。自らでオンオフを決められる。知覚範囲を広げれば広げるほど頭の中に入ってくる情報量が増えるため最悪の場合はその場から動けなくなる(意識はある)。戦闘を維持しながら使える効果範囲はおよそ1㎞が限界。

 

思考加速

 

己の思考速度を加速させることで、他人の一秒が結城にとっての十秒になる。思考加速している間は見えている世界が灰色になる。一見メリットしかないように見えるがそうでもなく、オペレーターなどからの指示なども十秒遅れになるため、他者と共闘する場合などは攻撃する瞬間や、避ける瞬間などの一瞬だけ使用したりなどの方法を取っている。これも自らの意志でオンオフを決められる。

二つのサイドエフェクトの並列使用も可能だが、かなり脳に負担がかかる。並列使用する場合は、およそ十分が限界。それ以上に使用すれば、脳がオーバーヒートを起こし、強制的に気絶する。この程度で済むのは結城の情報処理能力が異常に高いため。そのため、並大抵の人間が使用すれば、十秒もしないうちに限界がくる。

 

 




ま、まさかプロローグより文字数が多い……だと……っ!!
オリ主はこんな感じです。
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第1話

((((;゜Д゜)))
UA1800にお気に入り50……だとっ!?
ヤベェイめっさ嬉しい!!!
お気に入り登録ありがとうございます!!
評価してくださった方もありがとうございます!!
頑張って更新していきます。


ーーーー俺はきっと忘れないだろう

 

 

ーーーーこちらの世界に来て、初めて自分を認めてくれた女の子のことを

 

 

ーーーー彼女(綾辻遥)という存在がいてくれたからこそ、今の俺があるのだから

 

 

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

 

 

「さ~て、防衛任務も終わったし、帰りますかね~」

 

 

 俺こと神崎結城の昼間任務がようやく終わりの時刻となり、今は缶コーヒー(結構甘め)を片手に帰宅途中だ。

 

 個人(ソロ)ランク戦に参加してきてもよかったのだが、生憎と今日は気分ではない。それに、最近は家に帰れてないから掃除やらなんやらなどの家事仕事が溜まっている。早めに片付けねば後でエライことになるのは既に経験済みだ。なので、ちゃっちゃと片付けるに越したことはない。

 

 

「さっさと片付けて、録り溜めたアニメでも消化しますかね~」

 

 

 さて、そうなればどの部分から掃除するか。最近浴槽は使ってないから洗わなくてもいいが、ベッドの下とかテレビ台の裏なんかはやってねぇな。そうするとその辺りから……

 

 そんな風に、俺が今後の予定を考えているときに

 

【緊急警報 緊急警報 (ゲート)が市街地に発生します 市民の皆様は直ちに避難してください】

 

 突如、ウーーーーーー!!!という危険であることを知らせる警報音と共に、避難警告が出された。

 

 

「おいおい、これが最近起こるっていう異常(イレギュラー)(ゲート)か?」

 

 

 最近起こりだした、ボーダーの門の誘導装置が効かない、所謂イレギュラーが発生しているらしい。

 

 まあおおよその見当はつくが(・・・・・・)、喋るわけにはいかねぇからな。俺が異端だと知られるのはまずい。

 

 

『神崎隊員、応答願います』

 

 

 そうこうしてるうちに、本部から通信が入る。

 

 

「はい、こちら神崎。異常門に関してですか?

『その通りです。現在嵐山隊が向かっていますが、あなたの方が距離的に近いのですぐに対処に向かってください。場所は三門中学校です』

「神崎、了解。直ちに対処に当たります」

 

 

 そして本部との通信を終え、トリガーを手に持ち

 

 

「トリガー、起動(オン)

 

 

 肉体をトリオンで構築された戦闘体へと変換し、そこからグラスホッパーを使用して全力で現場へ向かい始める。この調子なら一分もあれば到着できるだろう。

 

 

「お、見えた」

 

 

 グラスホッパーを連続で使用し、空中を飛ぶように移動して、見えてきたのはトリオン兵二体。

 

 

「両方ともモールモッドだな、あれは」

 

 

 どうやら一体は校内の廊下にいる。もう一体も生徒を挟んで廊下に入ろうとしている。このままでは一般人に被害が出る。それだけはなんとしても防がなければならない。

 

 二度(・・)と被害を出させないために。

 

 

「ん?」

 

 

 そう考えていると、いきなり廊下に入ろうとしていたモールモッドが弾かれた。それも校舎の内側(・・・・・)、つまり廊下から(・・・・)

 

 

(妙だな、あそこには正隊員はいなかったと記憶しているんだが……っ!そうか!三雲君か!!)

 

 

 そう、今回のあの場所こそが、三雲修の転換点(ターニングポイント)の一つ。

 

 ここからが、物語の本番(・・)だ。

 

 

(だが、今はそんなことを考えている場合じゃない)

 

 

 途中でワートリの原作の事が頭を過るが、そこで頭を左右に振って思考を中断。今は目の前のことに集中する。

 

 左手にイーグレットをトリオンで構築。それを即座に右手に持ち替え、左手で支え、右目でスコープを覗き、右手の人差し指を引き金に添える。ここまでに掛かった時間約1.5秒。

 

 グラスホッパーの使用を止め、上半身を少し後ろに傾け、逆に下半身は地面に対してまるで立っているかのように構える。

 

 この間にも地面に体は落下しているが、元々グラスホッパーでかなり高い位置を維持していたため、すぐに地面に接触するわけではない。

 

 そして狙撃手(スナイパー)が狙いを付けてから狙撃をするのに、時間は三秒もいらない。

 

 

「……座標認識、思考加速、開始」

 

 

 そう呟くと、俺の副作用(サイドエフェクト)が起動し始める。周囲の様子が手に取るように感じられ始め、見えている世界が灰色になる。地面に落下する速度も目に見えて落ち始める。そして空中からモールモッドまでの弾道、距離、撃つタイミングを計算を開始。

 

 狙うは三雲君と戦っている方のモールモッド。完全に意識が三雲君に向いていて、こちらには気付くそぶりもない。あとは機さえ合わせれば……

 

 

   ここ」

 

 

 三雲君の戦闘体が破壊され、モールモッドがブレードを振り上げようとする直前、『眼』に向かって狙撃。こちらの放った弾丸がモールモッドに吸い寄せられるように近づき、ブレードを最大まで振り上げた瞬間、弾丸は『眼』を貫いた。

 

 

「一体、撃墜完了」

 

 

 

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 廊下で生徒を逃がした修は、モールモッドと戦闘を始めたが、やはり現在の(・・・)修の力ではモールモッドには及ばず、前足が修に突き刺さった。

 

 

「っ~~~~⁉」

 

 

 前足が引き抜かれた直後、突き刺さった部分からトリオンが漏れだし、顔面に罅が走る。

 

 ドンッという爆発と共に、修の戦闘体は維持が出来なくなり、生身へと戻ってしまった。

 

 

(変身が……解けた……!)

 

 

 生身に戻った修になんの躊躇いもなく、モールモッドはブレードを振り上げる。

 

 そして振り上げたブレードを修に突き立てようとするが、その刃は振るわれる前にナニかがモールモッドの『眼』を貫く。

 

 モールモッドは自分を狙っていた狩人(スナイパー)に気付くことなく、床に沈んだ。

 

 

「……え?」

 

 

 何が起こったのかさっぱり分からなかったが、少なくとも自分の命が助かったことだけは理解できた。

 

 

「っ……はぁ~」

 

 

 そう分かると、さっきまで張り詰めていた緊張感が抜けてしまった。命懸けというのは、誰であろうと気が抜けないものだ。その状態で命を拾ったなら、多少気を抜いても仕方ないだろう。

 

 

「でも、一体誰が……」

「大丈夫か、オサム?」

 

 

 そう声をかけるのは、空閑遊真。「あちら側」からボーダーにいる知り合いに会いに来たという『近界民』だ。

 

 

「空閑!他の皆は⁉」

「全員無事だよ。怪我をしたって人もいないみたい」

「そっか。良かった……」

 

 

 修が他の生徒の安否を聞き、全員が怪我をすることなく避難できてよかったと安心するが、そうは問屋が卸さない。

 

 先程修が落としたもう一匹のモールモッドが懲りずに校舎の壁を登り、遊真に攻撃を仕掛ける。

 

 

「っ!空閑!」

   『盾』印(シールド) 二重(ダブル)

 

 

 しかし反射的に展開したシールドにより、モールモッドの奇襲は容易く防がれる。

 

 

「……空閑!!?」

「悪いな、オサム。お前のトリガー、ちょっと借りるぜ    トリガー、起動(オン)

 

 

 修から借り受けた(許可はもらってない)トリガーを起動し、生成された両刃の剣の武装を展開。そのまま流れるような動きでモールモッドまでの距離を詰め、剣を突き刺す。モールモッドは顔面(?)部分の装甲を破壊され、校庭に落下していった。

 

 

 

 

 

 

△△△

 

 

 

 

 

 

(やれやれ、どうにか無事に終わったな)

 

 

 先程の狙撃を終えた後、サイドエフェクトを解除し、なんとか三雲君達がもう一匹のモールモッドを倒すまでは現場に到着すまいとグラスホッパーを使わず道路を走っていた。三雲君達の様子は狙撃銃のスコープを通して見えていたし、途中からは肉眼でも捉えられていた。どうやら、なんとか死傷者を出さずに乗りきることができたようだ。

 

 

(ほんと、無茶するよね~。訓練用(・・・)のトリガーで、『戦闘用』(・・・)のモールモッドに立ち向かっていくなんてさ。俺だったらそんなこと出来るかな?)

 

 

 そう、三雲君はトリオン兵と戦うことを許可されているB級以上の正隊員ではなく、まだ訓練用トリガーしか渡されていないC級隊員だ。

 

 にも関わらず彼は立ち向かった。空閑君から止めるようにも言われただろう。そこで少し迷いが生まれたようだが、それでも最後には自分の意志で決めて、モールモッドと戦うことを選んだ。

 

 けれど俺は、三雲君の戦闘体が破壊させると知りながらも(・・・・・・)戦闘に手を出さなかった。なぜなら、ここで二体目まで俺が倒してしまえば、物語に悪影響が出かねないと判断したからだ。

 

 そして最終的には、空閑君の助けもあったがモールモッドとの戦闘を乗りきり、生還を果たした(かなり肝を冷やしたが、この際それは置いておく)。

 

 

(この頃からすでに、片鱗は出始めていたのか。やれやれ、先が思いやられるね~)

 

 

 そんな風に呆れながらも、俺の口許には笑みがあった。

 

 

(さて、グズグズしてると嵐山隊が来ちゃうし、とっとと三雲君達と合流しよう)

 

 

 嵐山隊より前に三雲君と空閑君に接触するため、俺は走るスピードを上げて駆け出した。

 

 

 

 

 

 




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第2話

やべぇよ……超やべぇよ……っ!!
UAの伸びが凄まじいんだが!!まだ三日しか経ってないのに4000超えたんだが!!
え?そんなに凄くない?その程度で調子に乗るな?
全くその通りです。はいすみませんでした‼(土下座
でもお気に入り登録してくださった方、ありがとうございます!!


 

 

 走り出して十秒もしないうちに、俺は現場に到着した。てか結構近くにいたな俺。

 

 

「こちら神崎、現着しました。が……」

『どうしました?』

「……沢村さん。俺の前にここに現着した部隊はありますか?」

『いいえ、一番早く現着したのが神崎君よ。それがどうかしたの?』

「そう、ですか。分かりました。ありがとうございます」

『?ええ』

 

 

 忍田本部長達には悪いが、ここは嘘を通させてもらおう。俺が一番近くに居たんだから、俺より先に到着する部隊なんてあるはずがない。にも関わらず"自分より先に到着した部隊はいるか"という問いをすることで、俺が少し困惑している様子を出せただろう。これで上手く騙せるといいんだが……

 

 

「到着が遅れてしまい申し訳無い。負傷者はいますか?」

「すいません、今確認してる途中でして」

「分かりました。結果が分かり次第、報告をお願いします」

「分かりました」

 

 

 そう言って職員の方は、先生方が集まっている方へ走っていった。それで俺は改めてモールモッドを確認するわけだが……ぶっちゃけ結果知ってるとめっちゃ白々しいなこれ。なんか罪悪感まで出てくるわ。

 

 まあこれも仕事だと割り切って、演技開始!!

 

 

「しかし、これは……すごいな。一体誰が……」

 

 

 俺がそんな割りと上手い(本人はそう思ってる)演技を続けていると、ちょうど役者が揃った所だ。

 

 嵐山隊の到着だ。

 

 

「これは……もう終わってる……⁉どうなってるんだ……⁉」

「嵐山隊、現着しました」

「……」

 

 

 どうやら、向こうはまだこちらに気付いていないらしい。早めに行かないと面倒なことになるな。やれやれ、嫌だね~。

 

 

「嵐山さん。予想より早かったですね」

「神崎か‼俺達より早かったんだな」

「神崎先輩ですか……」

「おい待てコラ。なんだその嫌そうな顔は」

「普通に嫌ですね」

「もう少し躊躇えよ……」

「先輩に対して躊躇う理由が無いですから」

「ホントに生意気だな、お前は」

「ハイハイ、じゃれあってないで。ちょっとはこっち手伝って」

「なっ‼時枝先輩‼これはじゃれあってる訳では……⁉」

 

 

 などと木虎が言い訳しているのを隠れ蓑に、俺は空閑君が倒したモールモッドの傍にいる嵐山さん達に近づく。

 

 

「いやしかし凄いな、これは。これも神崎がやったのか?」

「いや、俺がやったのは校舎の中にいるもう一匹の方だ。こっちについては何も分かってない」

「え⁉そうなのか⁉しかし、じゃあこれは一体誰が……⁉」

 

 

 そんな事を嵐山さんと話していると、一人の生徒がこちらに近づいてくる。

 

 

「きみか……?」

「C級隊員の三雲修です。ほかの隊員を待ってたら間に合わないと思ったので……自分の判断でやりました」

「C級隊員……⁉」

「C級……⁉」

 

 

 嵐山さんと木虎がひどく驚いている。無理もない。戦闘用トリガーを持たないC級隊員が、戦闘用トリオン兵と戦い勝ったと言っているのだ。驚かない方がどうかしている。かくいう俺もわざと呆けた顔をしている。

 

 周りの生徒は何を言っているのか理解できないという顔をしている。まあボーダーの仕組みを知らないから仕方ないのだが。三雲君は俯いて顔色を悪くしている。そんな三雲君に近づいて行く嵐山さんは………

 

 

「そうだったのか!よくやってくれた!!」

 

 

 三雲君の右肩をガッと掴み、そう言った。

 

 

「……えっ?」

「君がいなかったら犠牲者が出てたかもしれない。うちの弟と妹がここの学校の生徒なんだ!」

 

 

 そう三雲君と話した嵐山さんは、名前を叫びながら走りだした。恐らく弟と妹の名前だろう。なんと言うか、さすが嵐山さんとしか言えない空気になってるな。

 

 そして改めて嵐山さんは空閑君に倒されたモールモッドの状態を確認し、感嘆の声をあげる。

 

 

「いやしかしすごいな!ほとんど一撃じゃないか!こんなの正隊員でもなかなかできないぞ!」

「いえそんな……」

「いえいえそんな」

 

 

 おい空閑君、そこで君が謙遜してどうする。

 

 

「お前ならできるか?木虎」

 

 

 そう言われた木虎が、右手にスコーピオンを展開し、一瞬の間に空閑君に倒されたモールモッドをバラバラにした。

 

 

「「「「「おお~」」」」」

「ほーう」

 

 

 生徒達は賞賛の声をあげ、空閑は中々やるな、というような呟きを漏らす。

 

 

「できますけど、私はC級のトリガーで戦うような馬鹿な真似はしません」

 

 

 そこから木虎の三雲君への非難が始まり、嵐山さんが結果的に市民の命を救っていると言うが、それでも木虎は何かと理由をつけて三雲君は処罰されるべきだと説いた。

 

 うーん、間違っているわけではないんだがな~。致し方なし。ここは少々割り込ませてもらおう。

 

 

「残念ながら木虎。それはお前個人の意見でしかないだろ?」

「なっ……‼」

「!」

「ふむ?」

 

 

 木虎は俺が話に入るのが意外だったのか、えらく動揺してる。三雲君も意外そうな顔してるし。そこまで俺おかしなことしてるか?

 空閑君?あれは俺が何したいか分かってないだけだ。

 

 

「どういうことですか⁉」

「今回の一件は、そもそもボーダーの正隊員である俺たちが間に合わなかったせいだ。俺達が間に合っていれば、三雲君がトリガーを使う必要は無かった」

「だからと言って、三雲君はルールに則って処罰されるべきでしょう‼」

「確かにそうかもしれんが、それは俺達ではなく上層部が判断することだ。間違っても俺達が下していい判断じゃないと思うんだがな?」

「くっ……‼」

 

 

 すまんな木虎。ここでお前を論破しとかないと、後で空閑君がお前の心を折りに行きそうだからな。これで勘弁してくれ。

 

 そんな中、パンパンと手をならす音が響く。

 

 

「はいはい、そこまで。現場調査は終わった。回収班呼んで撤収するよ」

「時枝先輩……!でも……」

「木虎の言い分もわかるけど、神崎先輩の言う通り、三雲君の賞罰を決めるのは上の人だよ。オレ達じゃない。ですよね?嵐山さん」

「なるほど!神崎や充の言うとおりだ!」

 

 

 そんなこんなで話は進み、三雲君の賞罰については上層部の判断を仰ぐこととなり、三雲君はボーダー本部に足を運んでもらうことになった。その際に俺と木虎が三雲君に同行(という名の監視)することになり、三雲君の学校が終わり次第向かうということで話は決着した。

 

 

 

 

 

 

◎◎◎

 

 

 

 

 

 

 三雲君達と別れた後、ボーダー本部へ戻ってきた俺は暇を持て余していた。そのため、俺は嵐山さんに許可を貰って嵐山隊の作戦室にお邪魔することにした。この時、木虎は俺が作戦室にお邪魔するのをあの手この手で妨害しようと奮闘していたが、嵐山さんの鶴の一声のおかげでその熱意溢れる努力(妨害)は、いとも簡単に無に帰した。木虎が尋常じゃない程睨んできたが、逆にドヤ顔してやった。

 

 そして作戦室にいるのは防衛任務に当たる戦闘員だけでなく、部隊の支援などを行うオペレーターもまた存在する。そして俺が嵐山隊の作戦室にお邪魔した目的は     

 

 

「あ!神崎君!!」

 

 

     俺が(ブラック)トリガーを所有しているという秘密を唯一知る存在にして、前世(記憶だけだが)も含めて初めて好きになった女の子。

 それが彼女、嵐山隊にてオペレーターを務める綾辻遥だ。

 

 

「よ、久しぶり、ってほどでもないか。昨日ぶりだな」

「うん、昨日ぶり。今日はどうしたの?」

「あ~実はな…………………………………………………………………………………ってことがあったんだ」

「そうなんだ。C級隊員が戦闘を………」

「ああ、だから悪いんだけど、それまでここで待たせてもらってもいいか?一応嵐山さんから許可は貰ってるからさ」

「私は全然問題ないよ。ただ……」

「皆まで言わなくてもいい。分かってるから……」

 

 

 遥が躊躇いがちに話すのも無理はない。先程から俺の背中には『もうそれ視線で人殺せるんじゃない?』というくらい凄まじい殺気が突き刺さっている。

 もちろん、その視線(殺気)の発生源はーーーーーーー

 

 

「なにか言いたそうだな?木虎」

「…………………………………………………………………………………………いえ、特に何もありません」

「間が長いわ。何かあるって言ってるようなもんだろ………」

 

 

 俺が嵐山隊の作戦室にお邪魔させってもらっている間は、こんな風に毎度毎度木虎の機嫌は最低値にまで移行する。ただ、俺が作戦室にいることを木虎以外が承認している上に、その全員が俺のことを好意的に思ってくれているため、表立って文句は言ってこない。

 

 ただ、その分視線(言外の暴力)を向けてきているわけだが…………

 

 

(やれやれ、面倒この上ないが仕方がない。遥ともう少し話していたかったが…………)

 

 

 この後、遥との会話(楽しい時間)を泣く泣く切り上げ、木虎を模擬戦に誘った。木虎も自分より格上との模擬戦の機会(チャンス)を捨てるつもりはなかったのか、渋々ながらも応じてくれた。これで多少なりとも機嫌が良くなってくれると助かるんだが………

 

 

 

 

 なお、模擬戦に熱中し過ぎたせいで三雲君の学校に行く時間に気付くのが遅れて、慌てて作戦室を出ていく羽目になったのは、止むを得ないだろう。

 

 

 




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