仮面ライダーSCIP (蒼かえる)
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プロローグ

作者の処女作のリメイクにめちゃくちゃ寄っていたのでプロローグだけリメイクしました。古いバージョンもデータとしては残っているので要望があれば復活するかもです。


死した若き人間は神の慈悲によって、その魂を世界、或いは時代を超えて転生する。転生する際に、創作物の能力や武器を持って。

 

転生すべき若き魂を管理するために神々は『転生省』と呼ばれる組織を立ち上げた。特典を持った多くの魂は転生者と呼ばれ、時に世界の物語に干渉し、時に元の運命から大きく狂わせる。

 

善意を持つ者もいれば、悪意を持つ者もいる。そして悪意を持つ転生者を重要視した神々は特典を使い害をなす転生者の魂と特典を回収するために『特典犯罪制圧課』を立ち上げた。この物語はその特典犯罪を解決する者の活動記録である。

 

__________

 

神々によってもっとも転生者を狩る素質が高いとして選ばれた少年『白神 蒼兎(しらかみ あおと)』

 

彼はこれまでいくつもの転生者と特典を回収してきた転生者狩りのエキスパートである。黒い髪と蒼い目をしたその少年は悪意ある転生者が蔓延る世界から魂と特典を回収し、神々が住まう天国とも呼ばれる場所に帰還した。

 

淡い光が世界全体を包みまるで雲の上に立っているかのような地面だが蒼兎の目の前には現代の高層ビルのような建造物が建っていた。

 

天国のような場所に建つ高層ビルというギャップにいつ見ても違和感が拭いされないと考えながらも、迷わずビルに入ると、頭に光る輪を浮かべる天使達が忙しなく動き回っていた。

 

蒼兎はそれを掻い潜りながら、エレベーターに入って自身の上司がいる階へ向かった。

 

目的の階へ到着し自動ドアが開く。少しの廊下を挟んで堅牢そうなデザインをした扉を3回叩く。

 

「どうぞ」

 

一言、鈴のような声で入るよう促されて彼は扉を開ける。

 

目の前には大きな社長机に座る人物が大量の書類やファイルに埋もれつつも真ん中を開けて顔を見えるようにしていた。

 

「今回の任務、ご苦労さまです」

 

蒼兎に労いの言葉をかけるのは背中まである赤い長髪と腰から生やした白い翼をたたみ、頭に先程見かけた天使よりも輝く光の輪を浮かべた女性だった。

 

蒼兎は名も知らぬ自身の上司からの労いの言葉に反応しつつも珍しく直接呼ばれた訳を聞く。

 

「仕事なので、当然です」

 

「それで、なぜ俺を直接呼んだのです?普段であれば電話などの連絡だけでは?」

 

「今回貴方を呼んだのは特典開発部が新しく作り上げた特典を新しく貴方に差し上げるためです」

 

「俺にですか?」

 

「ええ、日々転生者狩りに勤しむ貴方の業務に少なからず貢献できるようにと能力、汎用性共に高い高性能な装備です」

 

「光栄です」

 

「では、こちらを」

 

上司は社長机の横にあったアタッシュケースを机に置き、開いて蒼兎の方へ向ける。

 

アタッシュケースの中には、窪みの付いた緑のレバーがある黒いバックルと、横には青く『ライダー』の文字、黒い時計の針を思わせる角か描かれたデバイスが仕舞われていた。

 

蒼兎は近づいて手に取ってよく見てみる。

 

「『ビヨンドライバー』とこれは……ミライドウォッチですか?」

 

上司が蒼兎の質問に頷いて答える。緑のレバーに黒いバックル、これは蒼兎がよく知る戦士が腰に巻いていたベルトである。

 

もう1つは描かれている柄は違うがデバイスの形はよく知るものと完全に一致していた。柄についても先程のよく知る戦士のものと似ている箇所がある。

 

「このウォッチには一体なんの力が?」

 

「少し長くなりますが、宜しいですか?」

 

そう言って上司は、ミライドウォッチが秘めている力を説明し始めた。

 

__________

 

とある世界において我々と同じ現代科学で証明できない異常な存在、物品、現象があった。しかしその異常存在が公にされる事は無い。その世界では『財団』と呼ばれる組織が一般人から秘匿しているからである。

 

財団の理念は

異常存在を『確保』(Secure)

人々の目に届かない場所へ『収容』(Contain)

それらが逃げ出さないように『保護』(Protect)

 

財団の活動を知る別世界ではこれらの理念の頭文字を取り『SCP財団』と呼ばれた。

 

SCP財団が秘匿している存在は数多くいる。本部はアメリカだが、全世界に支部が存在し、日本以外にも韓国やフランスなど、様々な国々で異常存在が収容されている。本部だけでもその数は5000を超える。

 

そんな収容されている異常存在の能力は凄まじく、例を挙げるなら

 

人間の瞬きという一瞬の間に高速移動し目を離した隙に首をへし折る石像。

 

頭を撃ち抜かれても空気がなくとも止まらない異空間から剣を取りだし人間の殺戮を至上の喜びとし、死亡しても石棺から復活する悪魔のような男。

 

4ピクセルの写真だろうと顔を見られただけでその対象を例え深海だろうと殺害する怪物。

 

この他にも様々に危険な存在がおり、そのどれもが辛うじてSCP財団によって収容されていたりする。

 

__________

 

このまるで人間を殺すことに特化したかのような異常存在の能力を利用することはできないかとそう考えた特典開発部が神々の協力によって生み出されたのが、蒼兎の持つドライバーとウォッチである。

 

説明を終えた上司は最後に付け加えるように蒼兎に言う。

 

「貴方がよく知る仮面ライダーという器に異常存在の能力をつぎ込んで使いやすいようにしました、きっと役に立つでしょう」

 

「ありがとうございます」

 

礼を言ってお辞儀をして蒼兎はアタッシュケースにドライバーとウォッチを仕舞う。

 

「これから貴方にはまた悪意ある転生者の特典と魂の回収に向かって頂きます」

 

「よろしいですね?」

 

「了解しました」

 

上司の確認に返答し、蒼兎はアタッシュケースを持って上司の部屋をあとにする。携帯を確認して次なる仕事場は向かうため、蒼兎はビルの地下一階まで降りる。

 

自動ドアの先には人が入れそうなカプセル型の装置と、その横に操作パネルが取り付けられていた。パネルをいじりながら、装置に乗り込み蒼兎は次なる世界へ向かうために意識を手放した。

 

__________

 

新しい世界へ転生する形で訪れた蒼兎。どうやら小さなマンションの屋上に出現したように転生したので街を散策するために飛び降りる。

 

一般人以上の身体能力と耐久力を持つため、屋屋上で睡眠に似た感覚から目覚めた蒼兎。しかしそこで違和感を覚えた。

 

「(なんだ……体が前に重い?)」

 

自身の体を見てみる。腕や足が白く細い。

 

「胸元が膨れ………ん?」

 

いつも聞いている自身の声も高くなっており、まさかと思いつつもマンションのフロントの中に入り鏡を見つける。

 

自分自身の姿をよく思い出す。まず、いつもの自分は黒い髪に蒼い目した15、6才程の少年の姿のはずであるが

 

しかし鏡に映った自分は蒼い目こそ変わっていないものの髪はオレンジ色でセミショートヘア。そしてあるものが消えてないものが増えた。

 

「…な……な……なんじゃこりゃぁぁ!!?」

 

女体化した蒼兎の悲痛な叫びがフロントに響き渡った。




女体化蒼兎ははっきり言うと目を蒼くしたぐだ子です。リメイクした後もそこはかわってないです。


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インフィニット・ストラトスの世界
報告書1-1 調査


蒼兎(女になった)はとりあえず落ち着きを取り戻し建物の近くにあったカフェで状況を確認していた。

 

「(聞いたことはある……転生する際に天文学的な確率で性別が変わる可能性がある……と…。)」

 

別の世界へ向かう際のカプセル型の機材は、使用する際に使用者を記録してから行先の世界へ記録を写し転生をしている。基本性別や身体的特徴はそのままで別の世界に転生する。しかし何度も転生しているとバグが生じることがある。そのバグこそ、性別が変わったり身長体重が変わる等などである。

 

「(まさかこんな事になるとは……。)」

 

蒼兎は足元に置いたアタッシュケースに目を向ける。

 

「(それいいとしてしかし上司、いや神々が考える事はイカれてるな……)」

 

SCPオブジェクトは『オブジェクトクラス』と言いクラス付けがされている。

 

『Safe』故意に活性化させなければ問題無い物。

『Euclid』人間や生き物等、動きが予測できない物。

『Keter』人類、文明等を滅亡させる程の物。

 

蒼兎はSCP財団に勤務していた経験があるためSCIPの恐怖はよく知っていた。そして蒼兎はそのSCPオブジェクトの理不尽とも言える能力を使用できることに恐怖していた。

 

「(久しく感じていなかった感情をこんな事で感じるなんてな……。)」

 

蒼兎は過去に極度な、いじめを受けその主犯だった転生者に殺され喜び、楽しみ、感動等の感情は正常に機能しなくなってしまっていた。その他の感情もあまり機能していなかったがSCPオブジェクトの恐怖はそんな蒼兎でも恐ろしいと感じさせてしまうほどである。

 

カフェで状況確認を済ませ蒼兎はこの世界の調査と転生者の抹殺の仕事に取り掛かる。

 

「(とりあえずはここがどんな世界か、把握しないとな。)」

 

蒼兎が街中を歩くと路地裏からの聞こえてくる不穏な会話に気付く。

 

「お金、今すぐくれない?」

 

「困ってんだよねー」

 

「……む……無理です……」

 

「はぁ!?舐めてんの!?」

 

蒼兎が路地裏を除くと予想通り恐喝されていた。しかしそこで普通とは違う光景に気づく。

 

()()()()()()

 

二人の女が運動服を着ている男子学生を恐喝していた。

 

「(何故だ、女が男を恐喝なんて……男が女に迫るのはありそうだが……?)」

 

男子学生なら力量的にも振り解くなんて簡単に出来るはずだが、男子学生は何やら怖がっている。そこで蒼兎は辺りを見回してみると、路地裏を一目見た人間の反応は女はクスクスと笑いながら通り過ぎ、男はバツが悪そうに見て見ぬ振りをしていた。

 

「(もしかして…………。)」

 

蒼兎はとある創作物の世界である事を想定した。確認のためにその場を離れたかったが見過ごすことはできなかったので蒼兎は路地裏の恐喝の現場へ行き声を掛けた。

 

「(そうだ……怪しまれない様に女口調で言った方がいいか…?)」

 

「あの?」

 

「…………」

 

「……私が声を掛けたのは貴女達の方ですが?」

 

「え?私たち?」

 

蒼兎の言葉に女二人も男子学生も驚いていた。

 

「学生を恐喝するなんてあまり良いとは思えないですね。」

 

「ふざけんなッ!」

 

女の一人が殴り掛かる。蒼兎はその拳を片手で受け止め腕を捻る。

 

「痛っ!」

 

「(モラル的にこれはこれで便利……かな?)」

 

「なにすんのよ!」

 

もう一人の方の女も殴り掛かるが蒼兎は捻っていた腕を離し、体を押して二人の女を絡ませて転ばせる。

 

「次は鏡が見れなくなるぐらい殴りますよ?」

 

「「!!」」

 

二人は蒼兎の殺意に満ちた目を見て恐ろしくなり逃げ出した。蒼兎は二人が逃げて行くのを見ると路地裏から出ようとする。しかし恐喝されていた男子学生が声を掛けた。

 

「あ、あの!」

 

「……?」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

蒼兎はその言葉を聞き片手を軽く上げて別れの挨拶をした。

 

 

 

 

 

蒼兎はショッピングモールの様な場所で本屋に向かっていた。理由は自身の仮説を完全に証明する為。

 

「(女尊男卑、この世界を言い表すとしたら正にこれで、もし俺が知ってる創作物ならば……。)」

 

蒼兎は本屋に入りかなり大きく広告されていた本を見て確信した。

 

蒼兎「(IS(インフィニット・ストラトス)………やっぱりな)」

 

蒼兎の次の仕事場所。その世界は一人の天災が創り出した女性にしか使えないパワードスーツのせいで女尊男卑の世界となった『IS(インフィニット・ストラトス)の世界』だった。




SCP要素が全然ありませんでしたが次回からたくさん出します!


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報告書1-2 ISの世界

前回のあらすじ
ISの世界へやってきた蒼兎、しかし世界へやって来る際になんと体は女となっていた!蒼兎はこれからどうした物かと困っていたが生身の状態で女と戦えると言う意外な利点を見つけた。(そこじゃない)
体は女!心は男!そして彼女(?)は仮面ライダー!


作者「………黒歴史になりそう」
蒼兎「草」


蒼兎がISの世界へ到着したその日の夜。慣れない街で調査をしており若干迷いながらも何とか自宅に到着した。五階建てマンションでポストを見ると306に『白神』と書いてある。

 

自分の部屋に入ると玄関の奥はリビング。そのリビングにはテーブル、イス、テーブルの上に部屋の鍵と生活費、上司からのメモ、その世界でこれから通う学校の制服が置いてあった。

 

「(また高校生ですか……)」

 

カレンダーを確認すると3月。受験終了シーズンである。上司のメモには『IS学園へ転生した男女が居ますのでお気を付けて下さい。』

 

「(本屋でも見たがやっぱり主人公以外にも転生者で且つIS学園にいるのか……)」

 

インフィニット・ストラトスは女性にしか使えないパワードスーツによって女尊男卑の世界になってしまう。しかし男主人公が偶然ISを起動させ『世界で初めてISを起動させた男性のサンプル』として女子校状態の学園でラブコメするという砂糖を吐き出しそうな状態になるストーリーである。

 

そんな世界で男で学園に入れるということはISを起動させることができるということであり、それが転生者だという事だ。

 

「(俺が女になったのが偶然か疑うような状況だな……)」

 

蒼兎のポケットに入っていた携帯から通気音が鳴る。通知の内容は『近くの交差点で転生者二人が戦闘態勢になっています。向かって下さい。』と書かれ、近くの交差点へのルートが示されたマップが添付されたものだった。

 

「前は『グリス』だったが、アタッシュケースのライダーはどういうものだろうか……SCPが絡んでいるしロクでもなさそうだ……。」

 

蒼兎が『ビルド』、グリス、『ローグ』と言うライダーを使用していたが諸事情により使えなくしてしまっていた。現在持っているのは切り札であるナックル型の戦闘アイテム『グリスブリザードナックル』と金のキャップにロボット、城、フクロウ、クワガタの絵柄が書かれたボトル型のアイテム『ノースブリザードフルボトル』だけである。

 

蒼兎はアタッシュケースを開き、中の物を取り出す。アタッシュケースの中には蛍光色の緑のレバーが付いた黒く大きな画面があるドライバーとライダーと書かれた顔に黒いウォッチの様なアイテムが入っていた。

 

 

 

 

 

~交差点~

時間的にも車通りも人通りも少ない。しかしそこには二人の青年がいた。いや、戦っていた。

 

「お前、人間か?」

 

「はぁ、はぁ、何なんだよ……」

 

二人の周りの道路、レール、信号機には無数の傷が付いており生物が付けたとは思えない惨状が広がっている。一人の転生者は白と黒の短剣を構え、もう片方の転生者は背中の付け根から黒い尻尾の様な物を生やしていた。

 

「こっちは転生して喰種(グール)になってから腹が減ってんだよ!!いい加減食われろ!」

 

「何言ってんだよお前!?」

 

喰種(グール)の転生者は二本の尻尾をうねらせて短剣を持った転生者を襲う。短剣は流石に耐久に限界が来たのかひび割れる。

 

「!?」

 

「フハハ!」

 

喰種(グール)の転生者はその隙を見逃さず尻尾で畳み掛ける。数回攻撃を受け短剣は壊れてしまいその衝撃でレールに激突し転生者は追い詰められる。

 

「……ウッ……クソ……!折角転生してこのザマかよ………!」

 

『グレイシャルナックル!』

『カチカチカチカチカチーン!』

 

音声が鳴り響きながら転生者の目の前に茶髪の少女が喰種(グール)の転生者に何かを持って殴り付けた。

 

「!?」

 

「ぐはっ!」

 

喰種(グール)の転生者を見ると殴られた箇所が凍っていた。

 

「お、おい!ここは危ない!早く逃げろ!」

 

転生者は少女を見ると右手にナックル型の何かから筒状のアイテムを外していた。何かを解除したような音声が鳴る。

 

「貴方の方こそ逃げなさい。」

 

「何言ってんだよ!普通の人間じゃ無理だ!」

 

蒼兎は先程のドライバー『ビヨンドライバー』を取り出し腰に巻く。

 

「大丈夫ですよ、私、ただの人間じゃ無いので」

 

蒼兎はポケットからウォッチ型のアイテム、『SCIPミライドウォッチ』を取り出し、ボタンを押す。

 

『SCIP!』

 

 

ウォッチから電子音が鳴り響く。ウォッチをドライバーのレバーへ嵌めもう一度ボタンを押しウォッチのカバーを開く。

 

『アクション!』

 

近未来的な待機音が鳴り、蒼兎の後ろに電子時計の様な物、周辺には光の線が浮かぶ。

 

「変身」

 

ドライバーのレバーを曲げて画面に映っていた人の顔がライダーと書かれた仮面の戦士に変わる。

 

『投影!』

 

『フューチャータイム!』

 

電子時計の中からライダーの文字が飛び出し、蒼兎の周りを円が囲みスーツを形成する。

 

『確保!収容!保護!』

 

更にアーマーとマスクが空中に滞在し、直後蒼兎に装着される。

 

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

電子時計から飛び出したライダーの文字が蒼兎の仮面に元からそこにあるかのようにぴったりと嵌る。

 

その姿は全体の色は黒のメタリック、上半身の黒い肩アーマーの右側面には白い字で『カメン』と書かれている。左側面の肩アーマーは円とテトラポットの様な形に中に向かって矢印が描かれたマーク、SCP財団のロゴマークが描かれていた。仮面は銀の文字で『ライダー』と書かれている。

 

「これが『仮面ライダーSCIP』………か」

 

「うぅぅぁああ!!!」

 

喰種(グール)の転生者が襲い掛かる。蒼兎は転生者の尻尾の攻撃をジャンプして躱す。しかし喰種(グール)の転生者は止まらずに蒼兎を追い続ける。ドライバーからパスコード入力画面の様な物が出現しそれが銃を形作る。

 

『SCIPマグナム!』

 

蒼兎は引き金を引いて転生者の足元を狙う。銃弾は転生者の足を撃ち抜き動きを止める。

 

「(SCPオブジェクトには番号が振られてるから……入力しろってことか?)」

 

蒼兎はマグナムにあるパスコード入力画面に『SCP-』と書かれその横に画面があるので『SCP-076』となるように番号を入力する。

 

『Keter』

 

それだけ音声が鳴る。特に変化が感じられず転生者に向けて引き金を引く。そこで蒼兎は自身に能力が付与された事を感じ取る。そして『SCP-076-2』の能力である異空間から出現する無光沢の黒いブレードを出現させる。

 

「……シッ!」

 

蒼兎は俊敏な動きで喰種(グール)の転生者を圧倒した。転生者も攻撃を当てようとするが人間よりも早く動ける喰種(グール)でさえ、蒼兎に攻撃を当てるどころか目で捉えることすら出来なかった。

 

「クソ!クソ!クソォォォ!!」

 

蒼兎は転生者の背後に回りブレードで二本ある尻尾の一つを切り落とす。生身の転生者は切り跡から出血する。

 

「なるほど……」

 

蒼兎はドライバーのレバーを開閉させる。

 

『ビヨンドザタイム!』

 

『SCIPエクスプロージョン!』

 

蒼兎は足にエネルギーを纏わせ転生者へ向かって走る。ジャンプしその勢いに乗り転生者へ必殺の一撃を与える。転生者は残った背中の尻尾で防御するも耐えきれず、蹴りちぎり胸部へ蹴りが突き刺さり吹き飛ぶ。

 

「ま、マジかよ……」

 

短剣を持っていた転生者は驚きを隠せなかった。同じ転生者である自身ですら圧倒されたのに姿を変えた少女が圧倒的優位を保ったまま勝ったからである。

 

「では……」

 

ただそれだけ呟き、蒼兎は夜の闇に消えて行った。



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報告書1-3 入学

大規模収容違反が起きてしばらく投稿出来ていませんでした。お詫び申し上げます。一夏のあれこれ書いてないですね……


~IS学園~

この学校はパワードスーツ『インフィニット・ストラトス』について学ぶ学園である。インフィニット・ストラトスは女性にしか扱えないため女子校と化していたが今年のクラスには男子が数名混じっていた。現在はクラスの自己紹介の最中である。

 

「私が副担任の山田真耶(やまだ まや)です、皆さん一年間よろしくお願いしますね」

 

「(まずい………!)」

 

そして黒髪の少年、世界で初めてISを動かした男性『織斑 一夏(おりむら いちか)』は周囲の女子からの視線で緊張していた。

 

「(男子も何人か居るけど緊張する……それに幼なじみの箒(ほうき)は目を合わせてくれないし……。)」

 

「(ていうか、試験会場で迷子になって偶然IS触って使えたからって、こんな所に入学させられるなんて…………)」

 

「……くん!織斑一夏くん!」

 

「は、はいっ!?」

 

「あっあの…お、大声出しちゃってごめんなさい」

 

「お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンねゴメンね?」

 

「でもね、あのね、自己紹介【あ】から始まって今【お】の織斑くんなんだよね?」

 

「だからゴメンね?自己紹介してくれるかな?」

 

「は、はい!」

 

「えと、織斑一夏です、よろしくお願いします」

 

しかし周りの「それだけ?」という視線に織斑一夏は

 

一夏「以上です!」

 

周りはギャグ漫画のようにコケる。

 

「はぁしょうがねぇ……。」

 

「(あの人は……。)」

 

蒼兎は昨日助けた転生者を見つける。

 

「俺は『四宮 士郎(しのみや しろう)』趣味は機械いじりとか料理とかだ、まずは一年間よろしく!」

 

「イケメンじゃない?」

「好みかも!」

「織四……ぐ腐腐……!」

 

そして一夏の傍に忍び寄る影が一夏の脳天に人間からは鳴ってはいけない様な音が鳴り響く。

 

「痛ェ!」

 

「お前は満足に挨拶も出来んのか?」

 

「ち、千冬姉!?」

 

そしてまたしても鳴り響く轟音。

 

「学校では織斑先生だ」

 

「は、はい……。」

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな?」

 

このあと、女子からは音響兵器並の黄色い声援が上がる。

 

「キャァァ!千冬様!本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」 

 

騒ぐ女子達を、千冬はかなりうっとうしそうな顔で見る。

 

「毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ……感心させられる……それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 

「まぁいい、今回は男子があと二人居る、特例なので自己紹介しろ」

 

そこでもう一人の男が立ち上がる。

 

「えー、氷室 永徳(ひむろ えいとく)だ、趣味は鍛錬だな、よろしく頼む」

 

「宝条 零夢(ほうじょう れいむ)です!皆さん!よろしくお願いします!」

 

「お前を除いたこの三名が今したのが自己紹介だ、分かったな?」

 

「(なんで皆、自己紹介出来んだよ!)」

 

「(ここは転生者が分かりやすくていいな……)」

 

授業が開始する。

 

「(なんで皆分かるんだ? 男の方も難しそうにして無いし……?)」

 

「織斑くん、ここまでで分からない所はありますか?」

 

「あの……すみません……全部分かりません……。」

 

「お、織斑お前入学前の参考書はどした?」

 

「さ、参考書?確か……古い電話帳と間違えて捨てたような……。」

 

そこでまたしても轟音が鳴り響く。教室の端で授業を見ていた千冬が一夏の頭を叩く。

 

「必読と書いてあっただろう?」

 

「で、でも千冬姉!」

 

そしてまた轟音。

 

「織斑先生だ、再発行してやるから1週間で覚えろ」

 

「(学ばないな……。)」

 

そして一時間目が終わる。

 

「(1週間で覚えられる訳ねぇよ……)」

 

「………ちょっと宜しくて?」

 

「は?」

 

「(原作通りのイベントだな)」

 

原作通り、一夏がISの大会のイギリスの代表候補生である『セシリア・オルコット』に『代表候補生』についてを聞いているイベントが起こる。

 

「(転生者に寄る介入は無し……か)」

 

学校初日が終わり、蒼兎は全寮制であるIS学園の寮に向かう。しかし、蒼兎は驚愕する。

 

「何故、物置なんだ……」

 

蒼兎の部屋は物置部屋にベットを置いた程度の物だった。副担任の真耶は蒼兎の左でひたすら謝っていた。

 

 

 

 

 

次の日、寮内での朝食の時間。一夏とその幼なじみの『篠ノ之箒(しののの ほうき)』が共に朝食を取っていた。蒼兎は一人で朝食を取っている。そんな中、士郎が蒼兎に近付いてくる。

 

「(………?)」

 

「お前、一昨日の夜に俺と会ってるよな?」

 

「なんの事でしょう?」

 

「(覚えてる……当然か……記憶処理してないし……。)」

 

「とぼけんな、仮面ライダー……だったか?になったろ」

 

「(ああ…記憶処理しとけば良かった……。)」

 

そこで千冬が朝食を迅速に取るように催促してくる。

 

「私は一年の寮長だ!遅刻したらグランド十周させるぞ!」

 

「……また後で来る」

 

そう言い残して士郎は蒼兎の元から去って行く。寮から学校へ移動し、蒼兎は教室の自席に座る。数分したあとチャイムが鳴り、教室で話していた者達が席に戻る。

 

「これより、再来週行われるクラス対抗戦の代表者を決める」

 

「言ってしまえばクラス長の様な物だ、自薦他薦問わない、誰かいないか?」

 

「はい!私は織斑くんがいいと思います!」

「私も織斑くんで!」

「私は四宮くんがいいです!」

「私は宝条くんがいいです!」

「私は氷室くんで!」

 

「参ったな……。」

 

「あはは……。」

 

「うむ……。」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい、俺はそんなのやr「納得がいきませんわ!」

 

一夏の言葉を遮ったセシリアは日本を侮辱する言葉を並べながら自身が代表者になる方がいいと宣言する。侮辱された事に腹を立てた一夏はイギリスを侮辱し、セシリアは祖国を侮辱された事で言い合いになる。

 

「(原作通りだけど面倒だな……)」

 

蒼兎は二人の意識を自身に向ける為、机を殴り音をたてる。あまりの轟音にクラスの全員が驚き蒼兎の方を向く。

 

「いい加減にしなさい、両方とも国を代表する者と変わりありません、発言は考えてしてください」

 

蒼兎が殴った机は少し凹んでいた。

 

「(あ、威力加減するんだった……)」

 

「話は終わったな?では来週に代表者を決める」

 

「そして白神、お前は後で私の元へ来い」

 

「(目立たないようにしようと思ったのに………。)」

 

放課後、士郎は職員室にて厳重注意を受ける蒼兎の姿を見た。




更新遅れて申し訳ございません!


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報告書1-4 代表者

前回のあらすじ
クラス対抗戦のクラス代表を決める事になり、織斑一夏、四宮士郎、氷室永徳、宝条永夢の4人の男達が推薦された。しかし女尊男卑の典型とも言える思考に染まっているセシリアがそれを拒否する。男女差別や酷い言い様に一夏はセシリアの母国を侮辱し言い合いになる。その事に蒼兎は憤りを感じ場を収める為に机を殴るも目立たないようにしようとしているのに担任教師の織斑千冬に目をつけられるのであった。
物語の補足
インフィニット・ストラトス初見の人の為の補足。本来はISを扱える男は主人公の織斑一夏である。クラス代表者を決める際にセシリアが男達を拒否したのは自身がISの世界大会の代表候補生つまりエリートであるプライドからである。代表候補生には個別で専用のISを渡される。ISのコアの製作者であり、篠ノ之箒の姉である篠ノ之 束(しののの たばね)はコアを一定数以上作成することを拒絶しており国家、企業では割り振られたコアを使用、研究している。そんな中で数が少ないコアの1つ、専用機を与えられるのはエリートである証である。それなのに男性でISを使えると言う珍しさからクラス代表者にされると言うのはセシリアからすればたまったものではないのだろう。しかし織斑一夏はデータ収集目的の為に専用機を与えられるのだった。

作者コメント
更新が遅れて大変申し訳ありません!


一夏とセシリアのクラス代表者決めの件から三日程経った。一夏は幼馴染の箒にISについて教わろうとするが体力の無さを指摘され現在まで剣道でしごかれている。一方蒼兎は襲われていた所を助けた転生者、四宮士郎に寮の裏へ呼び出されていた。

 

「………来たか。」

 

顔を俯かせ影のせいで表情はよく伺えない。

 

「何の用でしょうか?」

 

「とぼけなくてもいい、お前転生者なんだろ?」

 

「はぁ……」

 

蒼兎はため息をついて観念したのか

 

「それを言ったらここの学園にいる男性は全員転生者でしょう?」

 

蒼兎の纏っている雰囲気が変わったことに少し動揺したらしいが、士郎は再度質問した。

 

「あ、あの力はなんだ?特典持ちの俺でも苦戦したのに……。」

 

「それについては教えられませんね。」

 

「………」

 

「もう用がないのでしたらここで……。」

 

蒼兎は立ち去ろうとし「ああ」と思い出したかのように、殺意を込めながら士郎に言い放つ。

 

「それから私が転生者である事は他の転生者に言わないように。」

 

喰種(グール)に襲われた時とは比べ物にならない程の殺気。士郎は今まで感じたことの無い寒気に身震いした。影で顔が隠れていても蒼兎は士郎が動揺している事に気づく。

 

「(こいつ……!本気だ……!)」

 

 

 

 

 

クラス対抗戦の代表者を決める為、自分を推薦した者、他の者に推薦された者、それぞれが想いを抱きながら戦いの火蓋は切って落とされる。

 

「なぁ、箒……」

 

「なんだ一夏……」

 

「俺、ISの操縦について何も教えられて無いんだが?」

 

「…………」

 

「おい!?」

 

もうすぐクラス代表決定戦が始まるが一夏の専用機がまだ到着していない為、始められない状況だった。一夏は箒にISについて教えてもらおうとしていたがこの数日で剣道しかしていなかったのでISについては全くの無知である。既にIS専用のスーツに着替え待機している。

 

『織斑くん!専用機が到着しましたよ!』

 

アナウンスで山田が一夏に呼びかける。一夏の隣にあった扉が開き、中から白いパワードスーツが現れる。

 

『織斑、アリーナを使う時間は限られている 時間が無い為フォーマットとフィッティングは実戦でやれ』

 

一夏は専用機に手を触れる。そこで一夏は感じ取る。IS(ソレ)が何なのか。何の為にあるのか。IS(ソレ)を理解する。一夏は専用機に乗り込み装着する。

 

『背中を預けるように、そうだ。後はシステムが最適化する。』

 

一夏が装着し終わると目の前に画面が表示される。

 

「………『白式』……」

 

『白式』

それが一夏の専用機の名である。アリーナへ射出され地上に降り立つ。そこには宝条零夢が立っていた。

 

「悪いけど勝負であれば負ける気はないよ?」

 

「こっちこそ、ところでISはどうしたんだ?」

 

零夢はISを身につけておらず代わりに腰周りに蛍光ピンクのレバーが付いた蛍光グリーンを基調としたカラーのベルトをしていた。

 

「ああ、いまから展開するよ」

 

そう言って零夢はピンクのゲームカセットのようなアイテムを取り出し起動ボタンを押す。

 

『マイティアクションX!』

 

電子音が流れ零夢の後ろに『MIGHTY ACTION X』と書かれたゲー画面が表示され、そこからチョコブロックの様なオブジェが散らばる。そして零夢は自身の姿を変える言葉を叫ぶ。

 

「変身!」

 

「!!」

 

士郎は蒼兎も呟いていた言葉に気付く。零夢はベルト『ゲーマドライバー』にアイテム『マイティアクションXガシャット』を挿入し、その姿を変える。

 

『ガシャット!』

『レッツゲーム!メッチャゲーム!』

『ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?』

『I.m a 仮面ライダー!』

 

そこに居たのはずんぐりむっくりした二頭身でピンクの髪に大きいゴーグルを付けたキャラクターの顔とゲーム画面のように体力ゲージが胸に付いていて、体が白いキャラクターの様な姿をしている零夢だった。

 

「『仮面ライダーエグゼイド』、『レベル1』!!」

 

「「「ええええええええええええ!!!!????」」」

蒼兎以外の全員が驚愕の声を上げた。




次回はエグゼイド対白式です!


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報告書1-5 究極の救済と夜の悪人

仮面ライダーエグゼイドレベル1

ゆるキャラの様な姿をしている戦士は自身の武器であるハンマーを呼び出す。

 

『ガシャコンブレイカー!』

 

ハンマーにはAボタンとBボタンがついていて正にゲームコントローラーそのものだった。

 

「行くぞ!」

 

「うおっ!」

 

二頭身の体とは思えないスピードで一夏に接近し、ハンマーを振り下ろす。一夏は箒の剣道の特訓の成果の反射神経でハンマーを避ける。零夢は構わず一夏のシールドエネルギーを削る為に殴り掛かる。直撃はしていないが着々とダメージが蓄積されていく。

 

「なにか武器は………これだけ!?」

 

一夏はISに表示されている地震の武装が一つしか無いことに驚きながらも対応していく。

 

「ウォッ!素手よりマシか!」

 

一夏はブレードを出現させ零夢に切り掛るが零夢は刀身が自身に到達する前にジャンプして上空に点在していたチョコブロックのオブジェに飛び移った。一夏はISの飛行能力でソレを追いかける。零夢は近くにあったチョコブロックのオブジェをハンマーで砕く。すると中から黄色いメダルの様な物が現れる。

 

「アイテム見っけ!」

 

零夢がメダルの元へ行くとメダルを体内に吸収したかの様に浸透していく。そして零夢の体が黄色い光を帯び、

 

『高速化!』

 

その音声が鳴った瞬間、一夏の機体はダメージを負った。

 

「な!?」

 

零夢は『エナジーアイテム』を吸収した事により一時的に高速で移動、攻撃が出来るようになっていた。圧倒的なスピードで一夏を攻撃する零夢だったがあと少しで勝利と言う所で、一夏の機体に変化が起きた。一夏の機体には青いラインが入り翼も青く一回り大きくなっていた。

 

「な、なんだ……?」

 

一夏のISに『フォーマット フィッティング終了』の表示がされる。

 

一次移行(ファースト・シフト)、今まで初期設定って訳か……」

 

「よく分からないけど……これでこの機体は俺専用になった訳らしいな?」

 

白式に『雪片弐型 使用可能』の表示が出る。

 

「雪片って千冬姉が使ってた奴か……」

 

「なら自分もレベルアップしようかな……」

 

零夢はドライバーのレバーを開く。

 

『ガッチャーン!』

『レベルアップ!』

 

零夢の二頭身の体が分離し顔だけになる。

 

『マイティジャンプ!』

『マイティキック!』

 

そして顔から手足が出てくるようにレベルアップした姿を現す。

 

『マイティマイティアクション!X!』

 

そこに居たのはずんぐりむっくりした二頭身ボディではなく、ピンクを基調としたカラーに胸アーマーはレベル1の時のようなゲージが付いてレベル1の時の顔に目のライトが消えた状態を顔を背中に背負い、ゴーグルを付けたピンクを髪のキャラクターを模した仮面の戦士。

 

『仮面ライダーエグゼイド レベル2』

零夢はまたガシャコンブレイカーを呼び出し、Aボタンを押す。するとハンマーの上部分から刀身が伸びる。

 

『ジャ・キーン!』

 

零夢は一夏にレベル1の時よりも早く接近する。一夏も主要装備の近接戦闘用武装雪片弐型のレーザーブレードを展開し肉薄するもそこで試合終了のブザーが鳴り響く。

 

『試合終了!勝者、宝条零夢!』

 

「え?」

 

コックピットにて一夏は箒、千冬、山田と共に試合と自身のISについて教えられていた。

 

「俺、なんで負けちゃったんだ?」

 

「『バリア無効化攻撃』を使ったからだ、自分の武器の特性を理解しないからこうなる」

 

「ISの本体に直接ダメージを、与えられる『雪片』の特殊能力だ」

 

「これは自分のシールドエネルギーも攻撃に転換する能力だ」

 

「俺の機体のシールドエネルギーがゼロになったから……」

 

ISの戦いはシールドエネルギー残量がゼロになった方が負ける競技。一夏は零夢との戦闘の際にエネルギーがゼロになったから勝負に負けたのである。

 

「今回は教訓として受け入れろ、そして次の戦いも見ておけ」

 

「(しかし、見た事もないISだったな……)」

 

一夏と零夢の戦闘後、直ぐにセシリアと氷室永徳の戦いが始まろうとしていた。セシリアは自身のIS『ブルー・ティアーズ』を纏い、上空で待機していた。氷室はコックピットから生身で降りてアリーナのセシリアがいる所まで歩いていく。

 

「貴方と戦うことになるなんて、まぁ誰が相手でもこのセシリア・オルコットとブルー・ティアーズの敵ではありませんわ!」

 

「ソレはどうかな?俺だって日々の鍛錬で鍛えてる、そう簡単に負けはしない」

 

「ですが貴方、ISを纏っていないではありませんの、負けを認めに来たようなものですわ!」

 

氷室はパイプや機械的な装飾が付いた黒い銃のような物を取り出す。

 

「ああ……お望み通り、俺のISを見せてやる!」

 

氷室はコウモリが描かれたボトル状のアイテムを取り出す。それは蒼兎が持っている『ノースブリザードフルボトル』と同じ形状をしていた。しかしキャップの色は灰色、本体の色は茶色と色自体は違っていた。

 

氷室はボトル状のアイテム『バットフルボトル』を数回振り、黒い銃『トランスチームガン』の窪みにバットフルボトルを嵌める。

 

『バット!』

 

不気味な音声を鳴り響かせながら氷室は引き金を引く。自身の姿を変える言葉を呟いて。

 

「蒸血……!」

 

『ミストマッチ!』

 

『バット……バッ……バット!』

『FIRE!』

 

銃口から黒い煙が吹き出し煙の中から姿を表したのは胸と仮面に黄色いコウモリを模したものが付き全身は黒く体にパイプが幾つも付いていた怪人。

 

「俺は…………『ナイトローグ』だ!」

 

夜の悪者。彼はセシリアをその視界に捉える。

 

「ッ!なんですの?そのIS?」

 

セシリアは主力武装である巨大なレーザーライフル『スターライトMKIII』で射撃する。更にブルー・ティアーズからビット型の飛行物が現れ、レーザーが氷室に追い討ちを掛ける。『ブルー・ティアーズ』機体名の由来でもある装備。4機から射出されるレーザービームとスターライトMKIIIのレーザーで砂埃が視界を遮る。

 

「さぁ!踊りなさい!私セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

しかし、その砂埃はまるで強風にあおられたように吹き飛ぶ。そこには目立った外傷が見受けられない氷室、ナイトローグが立っていた。ナイトローグの背中にはコウモリの様な羽が生えていた。

 

その羽でナイトローグの飛行能力を獲得しスチームガンでセシリアに向けて射撃する。セシリアの長年ISを操作してきた経験で射撃されたエネルギー弾を避けるも数発直撃しシールドエネルギーが減る。

 

「!?」

 

「意外と当たるな」

 

「余り長く続けても面倒だな」

 

氷室は高速で接近するもセシリアは

 

「甘いですわ!」

 

ビットはもう二機、ミサイルを射出する!タイプが残っていた。しかし

 

「シッ!シッ!」

 

氷室は懐に忍ばせていたバルブが付いた短剣『スチームブレード』でミサイルのビットを切り落とし、セシリアに至近距離てスチームガンを射撃した。上空でセシリアのISがダメージに耐えきれずに解除される。

 

「!!」

 

氷室はセシリアをお姫様抱っこする形で助けてそのまま地面に着地した。

 

「…え?えぇ!?///」

 

「悪いな、あのまま落ちたら死んでしまうかも知らなかったからな」

 

氷室はナイトローグの変身を解いてセシリアに言う。一部始終を見ていた蒼兎はとある予感をした。

 

「(原作ではセシリアは一夏に惚れるはずだが……あれを見る限り氷室とか言う奴に惚れた可能性が高いな……)」

 

蒼兎の予感の通り氷室に降ろされたセシリアは顔を赤く染めながらコックピットに戻って行った。




主人公の蒼兎が空気だった……


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報告書1-6 セカンド幼なじみ

代表者決めの戦いが終わり翌日。

 

「代表者は織斑くんになりました!」

 

「え!?でも俺、負けてますよ?」

 

「「「俺達は辞退した」」」

 

「そもそも俺、IS持ってねぇし……勝負する前に辞退してる。」

 

「セシリアもか!?」

 

「私もですわ。」

 

「なら俺も「選ばれた以上、責任を持ってやれ」……はい…。」

 

一夏も辞退しようとするが千冬が読んでいたのか言葉を遮って一夏に任命する。唐突にセシリアが席を立ち、山田先生に断りを入れて教卓の前に立つ。そしてクラス全員に向けて

 

「申し訳ありませんでした!」

 

突然の謝罪にクラス全員が困惑する。

 

「皆さんを侮辱する様な事を言ってしまい傷つけてしまいました、申し訳ありませんでした!」

 

その謝罪にクラスの全員はセシリアを許した。

 

「いいよ、気にしないで」

「これからよろしくね」

「ISの事、色々教えてね!」

 

「………はい!」

 

「なら俺も……あんな事言って悪かった……これからよろしくな!」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

こうしてセシリアとクラス全員は和解し授業が始まった。その後、全科目が終了し一夏のクラス代表決定のお祝いをすることになった。親睦の意味も含まれているため蒼兎も呼ばれた。蒼兎は転生者3人の情報収集の為に同行した。

 

「と、言う訳で!一夏くん!代表者決定おめでとー!」

 

「あ、ありがとう……」

 

「昨日のISの戦い、すごかったね!」

 

「見た事も無いISだったよ!」

 

「俺も聞きたいな、なんでお前ら二人専用機持ってんの?」

 

「えーと僕はお父さんから貰ったんだよ、IS適性があるって言ったら大急ぎで用意してくれたよ」

 

「俺はとある企業に渡されてな、まぁ調査みたいな物だと思うぞ?それなりに有名な起業だったよ」

 

「(信じさせやすい嘘を……でも神様から貰いました、なんて言える訳ないし……。)」

 

 

 

 

 

〜翌日〜

蒼兎は何時も通り情報収集の為に盗み聞きしていた。一夏の周りにはクラス代表対抗戦の激励をかける女子が集まっていた。

 

「そういえば、2組に転入生が来るらしいよ」

 

「あと、もうすぐクラス代表対抗戦だね!」

 

「俺、大丈夫かな……?」

 

「大丈夫だよ!専用機持ちの織斑くんなら!2組の代表者は専用機持ちじゃないし」

 

「その情報!古いよ!」

 

教室の入口で何やら話に入り込む者が現れる。ツインテールで緑の目をした低身長の少女が現れる。

 

「2組の代表はこの私!『凰鈴音(ファンリンイン)』よ!」

 

「鈴!」

 

『鈴』と呼ばれた少女は教室の入口で何やら自慢げに突っ立っている。一夏とは面識があるようだった。

 

「何やってんだ?似合わないぞ?」

 

「な、何言ってんのよ!?このバカ!」

 

そして後ろから鈴に近づく人影。

 

「おい……!」

 

「なによ!?」

 

声を掛けられた鈴が、後ろを振り向くとそこには眉間に皺を寄せた千冬が立っていた。

 

「授業が始まる、元のクラスに戻れ。」

 

「ヒッ…はい……。」

 

授業が終わり、鈴の関係を気にしたクラスメート達が一夏に詰め寄る。

 

「一夏くん、鈴音さんと知り合いなの?」

 

「ああ、幼なじみだ」

 

「なに?どういう事だ!?幼なじみは私では無かったのか!?」

 

「いや、箒もそうだが、鈴はセカンド幼なじみだよ」

 

蒼兎がそんなやり取りを見ていると自身の携帯から通知が来る。『転生者がIS学園に接近している』という旨のメールが届く。蒼兎は静かに席を外し、転生者の対処に向かった。

 

 

 

 

 

〜校門近辺〜

「フフフ……今日は推しの鈴が学校に来る日!」

 

「残念ですがらその推しと会うのはやめてもらいましょう」

 

「うわっ!なんだお前!?」

 

「? ぐだ子?人類悪顕現した!?」

 

蒼兎「失礼ですね、貴方は……」

 

転生者が蒼兎の姿を見てその姿に限りなく近いキャラクターの名前を叫ぶ。

 

「人類悪如きに俺の愛は抑えられるか!」

 

転生者は腰に差した黒い剣を抜き取り詠唱を唱える。

 

「顕現せよ、神々の血肉を喰らいし暴竜。黒雲の天を断て、〈バハムート〉!」

 

転生者はまるでISの様な漆黒のパワードスーツを纏う。とある世界にて『神装機竜』と呼ばれる古代兵器。剣のデバイスを鞘から抜いて詠唱を唱えることで自身の身に強力なパワードスーツを纏う。

 

「戦闘を仕掛けるという事ですね?」

 

『SCIP!』

 

ドライバーを巻いてウォッチのボタンを押して起動させる。

 

『アクション!』

 

ウォッチをドライバーのレバーに嵌めてもう一度ボタンを押してカバーを開く。蒼兎の後ろに電子時計、周りに光の線が現れる。

 

「変身」

 

レバーを曲げて蒼兎は姿を戦士に変える。

 

『投影!』

『フューチャータイム!』

『確保!収容!保護!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

蒼兎はシップマグナムを構え牽制で射撃する。転生者はスーツの剣でそれを防ぐ。しかし蒼兎の射撃はあくまで牽制。転生者が再び蒼兎の方を見ると既に姿を消していた。

 

「(便利アイテム、使ってみますかね!)」

 

蒼兎は転生者の後ろでシップマグナムの入力画面に番号を入れていた。[0710]と入れた後に入力画面の横部分にある窪みにキーの様なものをセットする。キーには『JP』という文字が描かれていた。そして入力された画面とキーの文字とを一緒に読むと[SCP-710-JP]と読めた。

 

『Keter』

 

そして、シップマグナムの照準を転生者に合わせる。転生者は背後の蒼兎に気が付くも既に遅く引き金を引く。防御しようと構えるもダメージも受けず音もしなかった。

 

「? 不発弾か?」

 

「いいえ、撃ちましたよ……未来に。」

 

「何を馬鹿な事を!」

 

転生者は剣を蒼兎に向けて振り下ろす。蒼兎はスーツの足の間に滑り込み攻撃を躱す。そしてまた銃を転生者へ向けて射撃する。しかし音も無く転生者もダメージを負わなかった。

 

「はっ!壊れたんじゃねぇか!?」

 

「いいえ………そこ!」

 

「うぐ!?」

 

突如、転生者の背後から火花が散る。まるで真後ろからゼロ距離で直接撃たれた感覚とそのダメージが転生者を襲う。

 

「な、なにした!?」

 

「言ったはずですよ、未来に向けて撃った……と。」

 

「ッ!?」

 

そこで転生者は思い至る。

 

「さっきダメージを受けた所は、ちょうどアイツが銃の引き金を引いた場所だ、そこからダメージを負っているという事は……」

 

蒼兎が入力したSCP。その能力は過去、現在、未来に向けて銃弾を撃つ事が出来るSCIP。『SCP-710-JP タイムマシンリボルバー』である。

 

「(ッ!?ヤバい!)」

 

転生者は蒼兎へ向かって再び剣を振り下ろそうと近づくも、目の前にいきなり銃弾が襲いかかる。その時蒼兎は一切の動作をしていなかった。

 

「ッ!さっき撃ってたやつかよ……」

 

「………!」

 

蒼兎は転生者の周りを縦横無尽に駆け回る。その間何のダメージも音もしなかったが転生者は理解していた。

 

「アイツッ!俺の周辺一帯に弾丸を撃ち込む気か!?」

 

そうはさせまいと転生者は自身の神装機竜に搭載されている特殊な能力を発動させる。

 

「〈暴食(リロード・オン・ファイア)〉!」

 

先の5秒間でエネルギーや現象を数分の1まで激減させ、後の5秒間でその力を爆発的に解放するという圧縮強化の能力。この能力でもはや瞬間移動に等しい高速移動で元いた位置から離れる。そして複数の銃声がけたたましく鳴り響き、転生者がいた場所は穴だらけの蜂の巣となる。

 

「あっぶねぇ………ッ!?」

 

転生者の左腕、左足から火花が散る。

 

「な、なんで……!?」

 

「私がただ我武者羅に貴方に向けて射撃する訳ないでしょう、戦場は如何に相手の先を読むか、ですよ。」

 

転生者の機体はダメージを負い膝を着き上手く動かない。

 

「畜生!」

 

蒼兎は転生者の頭に銃口を向ける。

 

「今すぐ立ち去れば、命は取りませんよ」

 

「今すぐ、そして今後、姿を見せなければ……ですがね。」

 

「ッ!?」

 

転生者は神装機竜を解除し速やかに逃げていった。蒼兎は変身を解除し校舎に戻った。時刻は7時。寮の自室(改造の物置)へ向かっていると、ベンチで人影が見えた。普通なら寮へ戻る時間なので蒼兎は不審に思いベンチへ近づく。

 

「………誰?」

 

「A組の白神です。」

 

「どうしたんですか、こんな時間に?」

 

「別に……なんでもないわよ……」

 

「横、失礼します、相談なら乗りますよ?」

 

蒼兎は鈴の横に座り話を聞こうとする。

 

「………実は……」

 

鈴の話によれば一夏は鈴が母国へ帰る時に約束を交わしており[毎日酢豚を食べてくれる]という俗に言う毎日味噌汁みたいな告白をしていたがどうやらタダ飯を食わせてくれると勘違いしていたらしく数年間想い続けてきた自分が馬鹿らしくなってしまっていたようだった。

 

「(まぁ、鈍感系主人公だからなぁ……)」

 

「私、どうすればいいんだろ……」

 

「そんなの決まってます。」

 

「え?」

 

「その思いは自分が心からそう思えるなら尊重すべきです。」

 

「で、でも……」

 

「自分の想いくらい、自信を持って相手にぶつけるんです。」

 

「(感情もクソもない自分が言うのもアレだけど……。)」

 

「!!」

 

蒼兎は不器用なりにも微笑んでみせた。その笑顔と呼ぶにはあまりに下手な微笑みでも鈴には綺麗に見えたという。

 

「………ありがとう!」

 

「はい」

 

「そう言えばまだ名乗って無かったわね」

 

「私は凰鈴音、中国の代表候補生よ」

 

「よろしくお願いします、鈴音さん」

 

「鈴でいいわ、て言うか鈴って呼んで!」

 

「り、鈴さん、よろしくお願いしますね。」

 

 

 

 

 

「チッ!」

「せっかくあのクソからハーレム要員奪おうと思ったのによ………」

 

どの世界にも不穏な影は消える事が無い。




蒼兎の持ち物
ビヨンドライバー
SCIPミライドウォッチ
グリスブリザードナックル
ノースブリザードフルボトル


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報告書 1-7 代表対抗戦

鈴との相談にのって数日。いよいよクラス代表対抗戦が始まろうとしていた。数奇な運命なのか一夏と鈴が初戦のようだった。

 

「(織斑と鈴は上手く話を付けた様で……。)」

 

クラスの噂によると鈴が一夏に勝ったら願いを叶えるそうで鈴には目に見えて気合が入っていた。

 

「一夏、約束忘れないでよ……。」

 

「そっちこそ手加減するなよ……。」

 

試合開始のブザーが鳴り響く。一夏が鈴に向って斬り掛かる。前回から学習し最初から切り札であるバリア無効化攻撃の『零落白夜』は使用していない。しかし単純な動きで鈴は後退して斬撃を避ける。突然一夏の機体はダメージを負って吹き飛ばされる。鈴の機体『甲龍』が持っている大型の刀のような2基の斬撃武器『双天牙月』は全く動いていなかった。しかし一夏の機体はダメージを受けていた。

 

「(確か……龍咆(りゅうほう)と言うものだったような?)」

 

「(肩に付いてる球体のようなアーマー?から空間自体に圧力をかけ砲身を作って衝撃を砲弾と撃つんだったか…。)」

 

「(砲弾だけではなく、砲身すら目に見えないのが特徴で、それのおかげで砲身の稼動限界角度はないから死角がないとか……。)」

 

「(何気に覚えてるものですね……。)」

 

一夏も謎の攻撃に気付き高速で鈴の後ろに回るも蒼兎が言った通り龍咆には死角が無い為、一夏はまたしても衝撃波を受ける。このままでは負けると考えた一夏は玉砕覚悟で鈴の元へ斬り掛かる。

 

「はぁぁぁぁ!!!!」

 

同時に零落白夜を発動させる。

 

「バカね!単純に突っ込んで来るなんて!」

 

鈴は龍咆で一夏の機体を攻撃する。しかし一夏は止まらない。ここで勝負を決しようとしたその時。突然アリーナのシールドエネルギーが破壊され三体の未知のISが侵入してきた。

 

「なんだあれは?」

 

管制室では生徒の避難を始めようとする。しかし

 

「織斑先生!至る入口にロックが掛けられています!」

 

「何ッ!?直ぐに上級生に解除させろ……!」

 

「は、はい!」

 

そして千冬は通信で一夏と鈴に指示を出す。

 

「織斑、凰。増援はしばらく望めない、が奴を放置していたら何をするか分からん。増援が来るまでの間を頼む」

 

『わ、分かりました……。』

 

一方蒼兎は入口が開かず混乱状態の観客席で一夏達に加勢するか悩んでいた。

 

「ちょっと!早く開けて!」

「ドアが開かない!」

「ちょっと!押さないでよ!」

 

「みんな!落ち着いて!」

 

「慌てずに落ち着け!」

 

「(この状態をどうにかするか……。)」

 

蒼兎は全員を押し退けて入口の前に立つ。その手には喰種(グール)の転生者を攻撃した際に使っていたナックル型の武器『グリスブリザードナックル』を手にして。

 

「(材質……スチール……厚さは……そこまでじゃないが人間の腕力じゃ破れないか……。)」

 

蒼兎は同じく喰種(グール)の転生者に使っていた『ノースブリザードフルボトル』をナックルに装填する。

 

『ボトルキーン!』

 

ナックル正面のボタンを手の平で押す。すると待機音が鳴り響く。

 

「皆さん危ないから下がってください。」

 

それだけ言って蒼兎はナックルで施錠されたスチール製の入口を殴りつける。

 

『グレイシャルナックル!』

『カチカチカチカチカチーン!』

 

その音声と共に冷気を放ちながら振るわれたナックルはかなりの威力で入口を破壊した。壊れた入口は最早鉄の塊となり、所々凍っていた。

 

「さ、慌てずに逃げてください。」

 

蒼兎の言葉でゆっくりとしかし足早に生徒達は逃げてゆく。

 

「あれ、前にも……」

 

「何をやってる士郎!早く来い!」

 

「あ、ああ!」

 

蒼兎は最後まで残り続け全員が立ち去ったのを見てアリーナへ向かった。

 

アリーナでは一夏と鈴が謎のISと戦闘を繰り広げる。しかし一夏は先程の戦闘でシールドエネルギーが全く残っていなかった。対する三体のISは操縦席は黒い人形の様なもので腕が取り外し可能のようだった。手の平から放たれるレーザーはシールドエネルギーをかなり削ってくる。

 

「一夏、アンタはそろそろ逃げなさい……!」

 

「な!何言ってんだよ!?」

 

「今のアンタは足でまといなのよ!さっきの戦いでもうシールドエネルギー残ってないでしょ!?」

 

鈴の言われた通りである事が一夏を苦しめる。

 

「その点、私は大丈夫……!エネルギーも残ってるし、アンタより強い……!」

 

「(あれは……仕方ないか……)」

 

転生者の介入がある為この世界にどんな影響があるか分からない以上、原作通りにあの場を切り抜ける事が出来るか分からない。なので蒼兎はビヨンドライバーを腰に巻く。

 

「サービス残業……みたいなものとして。」

 

『SCIP!』




蒼兎について。
原作原作言ってますが蒼兎はアニメを、w○ki pi○iv等でしか情報を得ていない為それ以降は知りません。更に所々抜けている所がある為転生者等の介入で対応出来なかったりします。
次回、239


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報告書 1-8 侵入者

戦闘を多めにしてるので文が少量なのは許して下さい。(お慈悲)


『フューチャータイム!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

そんな電子音が聞こえ一夏と鈴は後ろを振り返る。そこには見た事がない仮面の戦士がこちらに向かって歩いて来ていた。

 

「だ、だれ……?」

 

「!?」

 

三体の内の一体のISが蒼兎へ向かっていく。

 

『SCIPマグナム!』

 

蒼兎は自身のマグナムでISの可動部分を的確に射撃して動きを止める。その様子を見た他の二体も危険と感じたのか一夏と鈴を放って蒼兎へ向かっていく。蒼兎は画面に239の数字を入力する。

 

『Keter』

 

そして蒼兎はこう呟く。

 

「『自分に向かってくる二体のISはエネルギーが切れて稼働を停止する。』」

 

すると二体のISは同時に停止し動かなくなる。蒼兎の言う通りにエネルギーが切れて稼働を停止したのだ。

 

『SCP-239 ちいさな魔女』の能力はどんな物でも念じれば現実を改変できる現実改変能力者なのだが精神年齢が低いため財団によっては暗示を掛けられ財団が作った呪文の中の物しか出来ないと思わされている。

 

「(残りも片す……!)」

 

蒼兎はSCIPマグナムを構えドライバーのレバー開閉させる。

 

『SCIPエクスプロージョン!』

 

マグナムの銃口にエネルギーが収束していく。動けていなかったISは未だにダメージが残り動けない。そこに蒼兎は寸分たがわずにエネルギー弾を打ち込みISを爆散させる。ISの破片からは人が乗っているような痕跡は見られなかった。

 

「(やはり無人機……。)」

 

「お、おい!アンタ!」

 

蒼兎は一夏の声に反応し目線を合わせる。

 

「ISに人が乗ってたらどうするんだ!?」

 

「無人機だったので大丈夫ですよ。」

 

「そういう問題じゃない!」

 

「仮に人が乗っていても構わず殺します。」

 

「(本来は原作に合わせるためだからこんなことする必要無いですし、ただイレギュラーが発生されても困るので。)」

 

『マイティ!マイティ!アクション!X!』

『FIRE!』

 

そこに仮面ライダーエグゼイドとなった零夢とナイトローグとなった氷室が加勢しにやってくる。

 

「流石に殺しは不味いでしょう……?」

 

零夢と氷室は武器を構え蒼兎と対峙する。

 

「………用は済みましたので、さようなら。」

 

蒼兎はSCIPマグナムで一夏達の周辺を射撃して撹乱する。一夏達がまた蒼兎の方を向くと既にその姿はなかった。

 

「(なんなのアイツ……でもあの声音は聞いた事が……?)」

 

試合は中止となりIS学園の周辺に警戒令が敷かれ謎の仮面の戦士は早くもこの世界に警戒されてしまうのだった。




今回まで出てきたSCIP達の能力解説。
SCP-076 - "アベル"
SCP-076-2の身体能力、異空間からブレードを出す能力を付与する。
SCP-710-JP - タイムマシンリボルバー
シップマグナム自体にタイムマシンリボルバーの様な時間をセットするつまみが無い為、脳内で念じて設定する。
SCP-239 - ちいさな魔女
財団に暗示を掛けられているため、本来はなんでも出来るが呪文の中の物しか出来ないと思わされている。その為口頭で明言しなければ能力を発揮できない。


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報告書 1-9 新しいクラスメートと休息

試合中に起こった謎の襲撃事件から数日。あの日には各国の重要人物等も観戦していた為、謎のIS三体を意図も容易く破壊した仮面の戦士は全世界で捜索されていた。そしてIS学園では根も葉もない噂が広まっている。

 

「あれは新しいISなんだよ!操縦者はきっと白騎士様ね!」

「いやいや案外、校内の人かもよ!?」

 

そして事件の当事者である一夏達はその仮面の戦士が放っていた言葉に恐怖していた。

 

『ISに人が乗ってたらどうするんだ!?』

『仮に人が乗っていても構わず殺します。』

 

「なんであんな事を簡単に言えるんだ……?」

 

「一夏さん?大丈夫ですか?」

 

「具合悪いのか?ちゃんと鍛えてるか?」

 

「ああ、大丈夫だ!」

 

「(流石に容赦が無さすぎたかな?)」

 

ホームルームが副担任の山田が転校生を紹介した。

 

「今日は二人の転校生を紹介します!二人とも入ってきて下さい。」

 

そこで全員は驚愕する。二人のうち一人が女性しか使えない筈のIS。それを学ぶ学園にまたしても男が現れたことに。

 

「では、自己紹介を。」

 

「はい。シャルル・デュノアです。フランスから来ました!」

 

「(いやぁ……バレバレでしょ……立ち振る舞い、仕草、細かい動き、骨格的にも男とは思えない……まぁ女になってる自分が言うのも変か……)」

 

もう一人は軍服の様に制服が改造されていて更に軍人の様な立ち振る舞いだった。無言なままだったが、千冬が声を掛けるとそれには応じた。

 

「ラウラ、挨拶だ。」

 

「はい!教官!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ………。」

 

周りは「え?それだけ?」と感じているが突如、ラウラが一夏を見つけて睨み付け「こいつが教官を………!」と呟く。そして一夏を殴った。

 

「………え?」

 

あまりの出来事に理解出来ていなかったのか一夏は困惑する。そしてラウラは

 

「私はお前を認めない………。」

 

そう言い残し席に着いた。シャルルも席に着いて授業が始まる。休み時間になると転校生特有の質問攻めにあう。シャルルは聞かれれば返すがラウラは無視の一点張りであった。

 

放課後に入ると一夏はシャルルを連れて学校の案内をしていた。士郎と零夢も一緒について行きながら案内する。同じ男子同士(シャルルが女であることに気付いていない)なので気軽に話しながら歩いていた。

 

蒼兎は三人の様子を知るためにたまたま通る道が一緒のように装いついていく。

 

「(一夏の方が気付かないのはいいとして転生者達の方も気付いてない?)」

 

「(転生者なら原作を知っていて女と分かっている筈……。)」

 

「(接触の理由は縁を作るためか……それとも何か別の理由が……?)」

 

もう一人の転生者である氷室は教室にいるため、戻ることにした蒼兎。途中、ラウラと通りすがり、突然声を掛けられる。

 

「待て」

 

「何か?」

 

「貴様からは歴戦の戦士……いや、それ以上のナニかを感じる、何者だ?」

 

「(ラウラに気付かれるって事は織斑先生も気付かれてる?)」

 

「ただの学生です……それ以上でもそれ以下でもありません。」

 

「嘘はよせ、平和ボケした連中とは思えない目をしていたぞ。」

 

「知ってますか?人の過去を、無闇に詮索しない方がいいって。」

 

「………」

 

ラウラは蒼兎の背中を見つめる。ラウラはやはりと思い身震いする。その蒼い目。その目からは死地を逃れ、敵を殺して生きてきた兵士の目。今襲われても相手を返り討ちにして殺す事ができる目をしていた。

 

「やはり貴様はソルジャーだ……。」

 

クラスへ戻っていく蒼兎。ラウラはそんな蒼兎の背中をただ眺めるだけだった。教室に戻ると氷室は握力を鍛える器具を握り締めて片手に本を読んでいた。

 

特に気になることもなかったため改造された物置である自身の部屋へ戻った蒼兎。転生者に関するメールも来ていないためスマホで仮面ライダーを視聴する事にした。

 

「(生前から今まで、唯一休息にしか使えない時間……感情が薄れてるとは言え、仮面ライダーは何にも変えられない娯楽だなぁ……。)」

 

蒼兎は過去にイジメに遭い、その主犯格である転生者に殺された経験がある。殺されるまでの間に両親からの虐待になんども友人だと思っていた人物から裏切られていた。そのせいで喜び、楽しみ、悲しみ、痛み等の感情が壊れていた。

 

しかし仮面ライダーは彼(?)の中では娯楽として成立していた。ここでの仮面ライダーの視聴は今後の転生者との有利な差となるため、上司からも許可されていた。

 

蒼兎は一通り見終えると時間は6時30分程となり夕食の時間となった。食堂へ向かおうとするがスマホから通知音が鳴る。

 

「次の仕事がもう入ってきた……」

 

堪えきれないため息が溢れ出た。




2023/12/10 蛇足と感じたエピソードを削除いたしました。


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報告書 1-10 学年別トーナメント

前話のあとがきにも記載致しましたが蛇足と感じたエピソードを削除いたしました。


学年別トーナメント。二人一組のチームで行われるトーナメント形式の試合。一夏はシャルルと組むことになっていたがラウラは箒と組むこととなった。

 

一夏は意外な組み合わせに驚くもセシリアと鈴はラウラによる怪我で出場出来ないため、その無念を晴らすため箒はシャルルに任せて戦うことを決意する。

 

対戦表を見る一夏とシャルル、すると偶然か、箒、ラウラのタッグと対戦する事となった。対戦まであと10分と言う所で一夏は数日前の事について思い出す。

 

 

 

一夏はシャルルの入浴中にボディソープが切れている事を思い出し、詰替パックを渡そうと浴室に入る。するとシャルルはハッキリ言って女性と同じ体付きをしていた。

 

その後シャルル改めシャルロットの境遇について聞かされた。シャルロットの父の会社が経営危機にあり世界初の男性IS操縦者である一夏のデータ収集及びISを盗むため来たこと。

 

自分が女である事が分かってしまったシャルロットは帰国しようとすると一夏はほぼ全員が詳しく覚えていないであろう学校の校則について話す。『IS学園での3年間ではいかなる国からの干渉を受けない。』この校則があるから学校にいてもいいと話した数日前の夜。

 

「(3年間ではいかなる国からの干渉を受けない………つってもどうすればいいんだ?)」

 

そんな思案をしているとシャルロットに声を掛けられる。

 

「一夏……?」

 

「ああ、シャルロ……シャルル。」

 

「もうすぐ始まるから準備しよう?」

 

「ああ!」

 

一方、蒼兎はアリーナの観戦席では無く、何時でも仮面ライダーSCIPになれるようにアリーナの選手のピットで隠れていた。

 

「今回の転生者の数はかなり少なかった……多分もう一仕事でこの世界は終わり……だと思いたい……。」

 

蒼兎は知っている転生者は残り36人。その内3人がこの学校の転生者である。そしてこの36人は今のところ問題な思想も行動も起こしていない比較的安全な転生者だった。

 

さらに上司が送ってきた(無理矢理連れてこられた)八幡も居る。上司曰く様々な世界を巡るうちに転生特典レベルの能力を備えているので問題無いらしい。

 

試合開始のブザーが鳴り響き一夏とシャルロット、箒とラウラと戦闘が始まった。一夏とシャルロットは即席の割にはかなり良いコンビネーションで箒とラウラを押していた。

 

ラウラは自分一人で何とかしようと思っているのか箒と全く連携しない。箒も量産機体と専用機の機体差に押され気味だった。

 

やがてシャルロットが箒の機体を強制解除まで追い込み、ラウラと2対1となった。その時ラウラのISに異変が生じる。ラウラが突然苦しみだし機体が変形して飲まれていく。

 

その姿は先程箒が纏っていた量産機体に酷似していた。そして独特の構えを取り一夏とシャルロットに対峙した。

 

「あれは、あの構えは………!」

 

「あれは……VTシステム……!?」

 

VTシステム。Valkyrie Trace System(ヴァルキリー・トレース・システム)の略で過去のISの世界大会であるモンド・グロッソの戦闘方法をデータ化しそのまま再現、実行するシステム。

 

国際条約違反のシステムであるため本来はある筈がないシステム。それを目にした千冬は動揺する。一夏とシャルロットはラウラを救うべく戦いを仕掛けるもこれは世界最強の千冬と戦ってるようなもので一筋縄では行かなかった。

 

そんな中、何者かが一夏とシャルロットの間を通り抜けてラウラに射撃する。その方向にはクラス対抗戦の際に謎の仮面の戦士が持っていた銃を構えた蒼兎の姿があった。

 

「あの銃は………!?」

 

「確か……同じクラスの………?」

 

「……………」

 

「(アレではないけど………何か不味いものを感じる……!)」




次回「VTシステム」


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報告書 1-11 VTシステム

一夏とシャルロットの間という精密射撃でラウラを攻撃した蒼兎はSCIPミライドウォッチを起動する。

 

『SCIP!』

 

ドライバーのレバーに嵌めてウォッチのボタンを押す。

 

『アクション!』

 

蒼兎はピットからアリーナに降りてレバーを曲げる。

 

『投影!』

『フューチャータイム!』

『確保!収容!保護!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

蒼兎はこの世界に最も警戒されている仮面の戦士。仮面ライダーSCIPとなった。辺りは騒然となりそれに構わず蒼兎はラウラの方へ進んで行く。SCIPマグナムに『1048』の数値を入れて。

 

『Keter!』

 

蒼兎はマグナムの引き金を引く。銃弾は発射されないが入力したSCPオブジェクトの効果は発動する。乗っ取られているようなラウラは攻撃された事により自ら攻撃を仕掛ける。

 

日本の量産機体の刀型のブレードが蒼兎に迫るも突如、そのブレードを遮る人型の物体が現れる。

 

その姿は形は蒼兎の仮面ライダーSCIPと全く同じでも鉄、どちらかというと廃棄された機材で出来ているようだった。ISのブレードならいとも容易く切れるはずの物体が蒼兎に代わって腕に当たる部分を交差して攻撃を防ぐ。

 

そして腕を上げてブレードを離し手についていた鉤爪でラウラの装甲を引き裂く。火花を散らしながら後退していくとその人型物体はラウラを追撃していく。

 

かなりの速さで鉤爪を使って装甲を削るがラウラはブレードを振り上げる。しかし蒼兎のSCIPマグナムでブレードを射撃し攻撃をさせない。その間にも人型物体は装甲を引き裂き続ける。

 

「押してる………。」

 

「さて、お片付けです。」

 

蒼兎はドライバーを開閉させる。すると人型物体はラウラに引っ付く。ラウラはブレードで人型物体を切り裂こうとするも全く離れない。やがて人型物体は赤くなり始め、どんどん熱を帯びていく。

 

そして大爆発を引き起こし、ラウラは必然的に巻き込まれ大ダメージを負う。ISはダメージを負い過ぎたのか、真ん中が裂けて中からラウラが出てくる。

 

生きているが気を失っているようだった。ISを解除した一夏とシャルロットが近付いていく。

 

「あーあ!!折角誰か手に入ると思ったのになぁぁ!!」

 

「零夢?」

 

「やぁクソ一夏、多数の女の子を手に入れた感想はどうだい?」

 

「な、何言ってんだよ……?」

 

零夢は一夏に近付いていく。ラウラはシャルロットに任せて一夏は零夢の方を向く。

 

「あ"あ"!」

 

零夢は一夏の顔面に蹴りを入れて地面に倒す。普段の彼からは想像出来ない行いにクラスの者達は驚く。そんな中、蒼兎は零夢の目的に気づく。

 

「貴方の目的はインフィニット・ストラトスのヒロインを獲得する事だったと?」

 

「お前転生者かよ、まぁそうだな、一人でも居ればいいと思ってたよ。けどよくわかんねぇ筋肉バカや天然クソたらしにゾッコンだしよぉ、しまいにはお前かよ。」

 

「理由としては貴方が積極的じゃ無かったから、としか言いようがないですね。」

 

「まぁそうだな、だから間に合うように来たのにお前が居るからよ、終わちまったろ!」

 

零夢はゲーマドライバーを装着し通常のガシャットよりもかなり大きい『マキシマムマイティX』と黄金のアイテム『ハイパームテキ』を同時に起動する。

 

「『ハイパー大変身!』」

 

零夢はマキシマムマイティXをドライバーに挿してハイパームテキをマキシマムの窪みに嵌める。そしてムテキのボタンを押してその姿は変わる。

 

『マキシマムガシャット!』

『ドッキーング!パッカーン! ムーテーキー!』

 

零夢の前に黄金のゲートが現れそれをくぐり抜ける。

 

『輝け!流星の如く!黄金の最強ゲーマー!ハイパームテキエグゼイド!』

 

そこに居たのは髪が長い黄金のエグゼイド。胸アーマーには星々見られ神々しさを感じる。

 

「お前は殺す。この最強のライダーで!」




次回IS編最終話『ムテキゲーマー』


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報告書1-12 ムテキゲーマー

『仮面ライダーエグゼイド ムテキゲーマー』

歴代ライダーの中でも最強クラスのスペックを誇り、最も特徴的なのはその能力。端的に言ってしまえばムテキであると言う点。ありとあらゆる物理攻撃をノックバックするが無効化し、瞬間移動を可能にし、自身の裁量次第で攻撃を多段ヒットすることが出来る。しかし蒼兎は動揺せずに対処する。蒼兎は『1009』と入力しSCIPマグナムに『-JP』のキーを差し込む。

 

「ムテキゲーマーですか……」

 

『Keter!』

 

「(明確なダメージは与えられない……でもノックバック程度は!)」

 

蒼兎は零夢の周辺に弾丸を撃ち込む。零夢はそんな物には怯まず蒼兎へ向かっていく。しかし撃たれた場所からフードを被った楽器を持った集団が現れる。

 

一人の指揮者と16人の奏者が現れチャイコフスキーの「序曲:1812年」の演奏が始まる。楽曲第五部のクライマックスが演奏され始め突如零夢の周辺が爆発する。その爆発は零夢の周辺にだけ起こり零夢はダメージは負わないものの後退せざるを得なかった。

 

「うわッ!この野郎!」

 

爆発によって少し怯む零夢だったがドライバーのハイパームテキのボタンを押して高速移動する。

 

『キメワザ!』

 

零夢の足に黄金のエネルギーが纏われ瞬間的に蒼兎の前に現れる。

 

『HYPER!CRITICAL SPARKING!』

 

エネルギーを纏った足で蒼兎に蹴りを何発も打ち込む。蹴り終わり着地すると蒼兎にヒット表示が幾つも現れ仮面ライダーSCIPの装甲にスパークが走る。

 

「ウグゥ………!」

 

「あれを食らったのにまだ戦えるのか?」

 

零夢が少し動揺しているその隙に蒼兎は別のSCPの番号を入力する。キーを差し込んだまま『120』と入力し、弾丸を爆発の中心に撃ち込む。

 

『Euclid!』

 

すると高さ約8m全幅約30mほどの5対10本の脚を持った、黒褐色の巨大なカニのような巨大生物が零夢を襲う。1対2本はハサミが付いていてそのハサミを零夢に振り下ろす。爆発も続いていて零夢は2つのSCPオブジェクトに攻撃されても傷一つ付かなかった。

 

「ウザってぇ!!」

 

零夢は巨大生物を殴りその一発から多段ヒットさせる。爆発を止めようと集団を襲うも奏者の体はすり抜けて攻撃を与えられなかった。

 

「(ノックバックさせても倒せないんじゃあ意味がない……!)」

 

口の中の鉄の味を噛み締めながらどうにかしようと思案する。そこで蒼兎はエグゼイドの攻略法を思い付く。その攻略法に一番適任のSCPオブジェクトについても思い出し、マグナムからキーを抜いて番号を入力する。番号は『106』

 

『Keter!』

 

ドライバーのレバーを開閉させ蒼兎は爆発と巨大生物に襲われている零夢に向けて銃口を向ける。

 

『SCIPエクスプロージョン!』

 

零夢の周辺の爆発が止み、楽団と巨大生物は煙のように消える。そしてい粘液のような弾丸が零夢のドライバーを襲う。蒼兎が狙っていたのはゲーマドライバー。そして黒い粘液はどんどん腐食を開始していく。

 

「なっ……これはッ!?」

 

ドライバーの腐食はかなり侵食しており変身も解除され生身の人間となってしまった。

 

「何をしたッ!?」

 

「『SCP-106 オールドマン』ありとあらゆる物を腐食させて捕食するSCPオブジェクト、その能力を貸してもらったまでです。」

 

「これで貴方は変身できない、しかし罪を犯していないので命までは取りません、というよりは取れません」

 

「………」

 

そう言い残し、SCIPマグナムを地面に撃って土煙を起こして姿を消した。その後、当然大会は中止され、零夢の処分はライダーの力を失ったがISにも適正がある為、学園が保護する事になった。

 

しかしそれよりも蒼兎が危険視されている仮面ライダーだったと言う真実がクラスの者達を驚愕させ、世界は再び蒼兎について捜索した。

 

その最中、この世界で仕事を終えた蒼兎。IS学園の島から少し離れたビルが立ち並ぶ都市にて零夢に受けた必殺技で頭や腕から血を流しながらもかなり高いビルの最上階で風に当たりながら上司に連絡する。

 

「もしもし、仕事は終了しました。」

 

『ご苦労さまです……声、変わりました?』

 

「機材の不具合で性別が変わってます、次に死んで転生するまでこのままだと思いますけどね。」

 

『そうですか……不便でなければ次の世界へ向かって下さい、そして貴方の仮面ライダーSCIPのデメリットについて言っておきます。』

 

「デメリットがあるのですか?」

 

『あれ程の性能を持ったライダーシステムをノーリスクで使える訳が無いでしょう?』

 

『次の世界へ向う途中のオーロラカーテンでそれ相応の対価を受けます、覚悟しておいてください。』

 

そう言って上司は通話を切る。

 

「そう言うのは先に言ってもらいたいものだなぁ……」

 

蒼兎は上司に悪態を付きながら屋上の真ん中に行く。すると灰色のカーテンのような物、あらゆる世界を行き来できる『オーロラカーテン』が現れ、その中に入っていく。

 

少し歩くと蒼兎は顔に何かついている気がして顔をさする。鼻あたりに液体がついており、触って確認すると血だった。地面にも垂れてくるが明らかにその量はおかしかった。。

 

「………?」

 

蒼兎は咳き込みそうになって口を抑える。手を見てみるとかなりの血がべったりとついていた。

 

「…ゴフッ……ゴホッ……!」

 

目眩がして地面に膝を付き、体内から込み上げてくるものを抑えられず口から吐き出す。全て自身の鮮血だった。かなりの量で出血している蒼兎は目眩が酷くなる。

 

これまで転生者に与えられてきたダメージ。零夢の必殺技。数多のSCPオブジェクトの使用とその代償。それらを受けて身体にダメージが無い訳がなく、こうして鼻血、吐血等でそのダメージが現れていた。

 

「こういう……グフッ……事………。」

 

しかし蒼兎は歩みを止めない。また次の世界へ向けて歩き出し転生者を狩る為に、蒼兎に信念や想いは無い。しかしそれでも転生者を狩り続けるのは過去の自分と同じ境遇の存在を生み出したく無いからか。その真相はまだ分からない。




次回『エピローグ』


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報告書1-13 完了

今回でアンケートは終了です。お答え頂いてありがとうございました!アンケート結果はこちらです。
(4) デート・ア・ライブ
(2) この素晴らしい世界に祝福を!
(1) 異世界はスマートフォンとともに
(3) ソードアート・オンライン
(3) 東方Project
という訳で次の次に蒼兎(仮面ライダーSCIP)がゆく世界はデート・ア・ライブの世界です。


蒼兎がインフィニット・ストラトスの世界を去った翌日。零夢は教員への事情説明の為来ていない。1年A組の面々は蒼兎が仮面ライダーであることに驚いていた。

 

「正直、話したこと無かったよね……。」

「でも、ずっと私たちの所に居たんだよね……。」

 

「…………」

 

氷室か士郎に話し掛ける。

 

「………なぁ士郎。」

 

「なんだ氷室?」

 

「俺も正直に言うからお前も正直に言ってくれ、俺は転生者だ。お前は?」

 

「……俺も転生者だよ。しかも入学前日に知らない転生者に襲われて蒼兎っていうか仮面ライダーとかいう奴に助けられてる。」

 

「知ってたのか?仮面ライダーの正体を?」

 

「ああ。」

 

周りを見渡すと誰もその事に気がついていない。

 

「それで?どうする?」

 

「どうするも何も、生きて行くしかないだろ?こんな世界。」

 

「だろうな……」

 

 

 

 

 

蒼兎がオーロラカーテンを抜けると辺りは洞窟のようでしかし周りの石が発光していてそれほど暗くない所に出た。

 

「(ここは……なんだ?)」

 

蒼兎がしばらく歩いているとモンスターが現れた。RPGに登場するような巨大な蟻が蒼兎に襲いかかる。蒼兎は飛んできた蟻を回し蹴りで蹴り飛ばし壁に激突させる。

 

胴体を踏み付け動けなくして頭を踏み砕く。蟻が生命活動を停止すると爆発したかのように霧となって消えて変わりに小さい石が出てきた。蒼兎はその石に見覚えがあった。

 

しかし蟻のモンスターがまたやってきた。今度は大量に仲間を連れて。

 

「ああ、思い出した、魔石がモンスターから出てくるのは仕様か。じゃあそんなのがいるのこの世界は『ダンまち』って訳だ。」

 

蟻のモンスターが大群となって押し寄せてくるも蒼兎は冷静にこの世界について分析していた。蒼兎が知っているのは

 

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』少年が英雄になる為にダンジョンに立ち向かう物語。

 

空中の蟻を殴り飛ばし、地面に這いずる蟻を蹴り飛ばしながら蒼兎はどの時点で転生者の介入があるかについても検討している。

 

そんな中白い髪に紅い目をした少年が何かに終われるように逃げていた。その後ろには大きな角と巨体の牛の頭を持った人型のモンスター。『ミノタウロス』がその白髪の少年を追いかけている。

 

「(確定だな。)」

 

蒼兎は蟻の頭を全て的確に蹴り砕いてその後の様子を窺う事にする。少年は壁際に追い込まれてミノタウロスは大きな剣を振り下ろそうとしている。蒼兎が確認すると周辺には誰もいなかった。

 

「(おかしいな、普通ならヒロインが助けに来るはず……?)」

 

しかし誰も来る様子が無いので仕方なく蒼兎は右足を浮かせて左足だけでジャンプするようにミノタウロスに接近する。ミノタウロスは蒼兎に気付くよりも早く、剣を振り下ろすより早く蒼兎の右足で心臓を蹴り抜かれる。

 

絶命した事により魔石を落として消えてしまう。ミノタウロスの貫かれた場所から血が吹き出し白髪の少年へついてしまい真っ赤になってしまう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、あああああ!!!」

 

少年は恐怖からか逃げ出してしまう。その一部始終を一足遅れたパーティが見ていた。これが蒼兎とこの世界の主人公『ベル・クラネル』との初遭遇である。



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ダンまちの世界
報告書2-1 ダンまちの世界


『ダンまち』の世界と言うことが判明し主人公とも一方的ではあるが接触した蒼兎。この世界において存在するダンジョンは深くに行けば行く程、モンスターの強さと道の難易度が上がっていく。

 

現在3階層。しかしミノタウロスと言うモンスターは本来もっと奥の階層にいるため3階層の者が戦うことになれば死は免れない。だからベルは逃げていたのだろう。

 

そのベルを助けるために蒼兎はミノタウロスを殺した。しかし奥の階層にいるはずモンスターが何故3階層に居たのか。それは上級パーティがミノタウロスの集団を取り逃していたからである。

 

ミノタウロスの残党を処理するために来た上級パーティがたった一撃でミノタウロスを殺した、そんな蒼兎を見て警戒しないはずは無く、蒼兎は後ろいるであろうパーティに声を掛ける。

 

「なにか?」

 

白髪の目付きの悪い獣耳がついた少年が強気に質問する。

 

「なにか?じゃねぇよ、なんだお前……ミノタウロスを一撃で殺すなんざ、初心者じゃねぇだろ?」

 

「過去に様々な経験を積んだ賜物ですかね。」

 

丁寧そうな女性が蒼兎に質問する。

 

「すまないが、どこのファミリアか教えてくれないか?」

 

「(これ以上詮索されても面倒……もとい意味は無いし……それに仮面ライダーSCIPを使ってできた代償もまだ癒えていない……手っ取り早く退却しよう…。)」

 

「すみません、用事があるのでこれにて失礼。」

 

そう言って蒼兎はダンジョンを出ようとする。後ろから先程のファミリアが蒼兎を制止する声を上げていたが蒼兎は無視してその場を離れた。

 

帰り道は分からなかったがたまたま見つけたパーティの後を付いていき何とか地上に出ることができた。その時間帯は丁度夕暮れで蒼兎は噴水の石に腰掛ける。

 

「(転生者がいるとしても分かりずらい場所だな……インフィニット・ストラトスの世界が異質なだけかもだけど。)」

 

蒼兎は近場の宿を探して歩く。飲食店を兼ねた宿を見つけた為、中に入って部屋を借りる。料金は言いくるめて純金を渡して借りた。借りた部屋に入り服を脱いで体の様子を見てみる。

 

女の体になっていてもある程度の身体能力は出せる。能力の反動は主に体内にくるようで外的な要因では無さそうだ。しかしハイパームテキの必殺技をくらってるため至る所に血や打撃痕がある。

 

「治療したいけどSCPに頼ってもどっちみち反動がなぁー……。」

 

しかしこれからも転生者と戦うことを考えてあるSCPオブジェクトに頼ることにする。SCIPマグナムだけ取り出し『500』の番号を入力する。

 

『Safe!』

 

マグナムの銃口を自身に向けて引き金を引く。すると自身の傷が全て治っていく。『SCP-500 万能薬』はその名の通りありとあらゆる傷や病気を治すことができる。末期のガンでもアルコールの二日酔いでも。現在は47錠しか無い為使用が制限されている。

 

「SCPを使ったってことは、この世界を去る時も副作用があるのか?」

 

蒼兎はとりあえず明日から行動を起こすことにして簡易的なベッドで眠った。

 

〜数時間前〜

ベルはミノタウロスに襲われた後、狩ったモンスターから出てきた魔石を換金して助けて貰った少女について聞くため知り合いがいるギルドへ向かった。体中にミノタウロスの血を付けたままで。

 

「エイナさぁ〜ん!」

 

「ベルくん……!?」

 

ベルはミノタウロスの血を血を落としてギルドの知り合いでベルを担当している『エイナ・チュール』に自分を助けてくれた少女について聞いてみる。

 

「うーん、答えてあげたいけ冒険者は基本機密だし。」

 

「そうですよね……。」

 

「(見たことない人だったな……それにミノタウロスを一撃で倒すなんて………下層の人かな?)」

 

「それよりなんでミノタウロスなんかと遭遇したの!?言ったでしょう!?冒険者は冒険しちゃダメだって!?」

 

「す、すみません!すみません!」

 

 

 

 

 

道中、自身を助けてくれた少女について考えながらベルは廃教会の自身のファミリアに帰ってきた。

 

「ベ〜〜ルくぅぅぅん!!!!」

 

帰ってきた途端、体は小さいが『一部』はかなり成長した少女がベルに抱きつく。

 

「わ!神様!?」

 

ベルに抱きついて来たのはファミリアの主神である『ヘスティア』。

 

「大丈夫かいベルくん!?怪我とか無かったかい!?」

 

「だ、大丈夫です。」

 

「良かったぁ〜!君に何かあったらボクは悲しいよ!」

 

ヘスティアに歓迎されベルは夕食にする。廃教会に住んでいることを見てもかなりギリギリな生活をしている。このヘスティアファミリアにはベル以外には誰もいない。無名なファミリアなのである。

 

「さぁ!ステイタスを更新しようか!?」

 

ベルはうつ伏せになりその上にヘスティアが跨る。ステイタス更新とは地上に娯楽を見いだした神たちが自身の力を封印し代わりに人間達を眷属として背中に神聖文字を描くことで『神の恩恵』とし、眷属である人間が体験したことを元に成長するというもの。

 

「ん………?」

 

「僕にも早く魔法とかスキルとか欲しいなぁ………。」

 

魔法は詠唱することで発動する必殺技のような物。スキルは発現者に特殊な効果を与えるものである。

 

「(なんだ?この2つのスキルは……?)」

 

ベルについたスキル。『仮面の英雄』、『憧憬一途(リアリス・フレーゼ)』。仮面の英雄というスキルについては詳細が分からなかったが、もう片方のスキルについては

 

・早熟する。

懸想(おもい)が続く限り効果持続

・思いの丈により効果向上

 

ヘスティアは用紙にステイタスを写し、詳細不明のスキルを含めバレたら面倒な事になる可能性があるスキルを消しておいた。

 

「(これらは多分、レアスキルだ。下界に娯楽を求めてやってきた神達が黙ってない……彼は嘘が下手だし、黙っておこう……。)」

 

「ベルくん、今日は口頭でステイタスを伝えてもいいかい?」

 

「え……はい。」

 

「ベルくん、君は今、他の冒険者と比べものにならないに急成長している、だけど、約束して欲しいんだ……どんなに強くなっても無理はしないって……。」

 

「君が強くなりたいなら尊重もする、応援も手伝いも、力も貸そう。だけど無理はしないで欲しい……。」

 

「お願いだからボクを一人にしないでおくれ……!」

 

「…はいっ……!」

 

「もう、無理はしません。」

 

「それが聞ければボクは安心かな!」

 

「ベルくん、ボクは数日の間、留守にするよ。友人の開くパーティに出てくる。」

 

 

 

 

 

〜蒼兎side〜

蒼兎はとある確認をとる為、上司に連絡をしていた。

 

「もしもし」

 

『はい、なんでしょう?』

 

「また前回の世界のように誰かを送ってくるのですか?」

 

『この世界の主人公が既に転生者以上の能力を身につけているので問題ないかと、何故そんなことを?』

 

「この世界への天界の今後の対応次第でどうやって動こうか決めたかったので……そういう分別もあるんですね。」

 

『…………』

 

『引き続きよろしくお願いします。』

 

宿泊している宿の部屋の窓から街を見渡す。蒼兎は転生者が何十人も潜むその街を呆然と見ていた。



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報告書 2-2 ダンジョン

朝早くから宿を出てダンジョンへ向かう。途中で飲食店前でウエイトレスの少女に弁当を貰っているベルを見かけるも蒼兎の目的はそんなベルやその他の登場人物達を狙っている転生者なので無視してダンジョンへ向かう。ダンジョンに到着し周囲を見渡しておく。

 

自身が知っている既存の特典を堂々と持ち歩く転生者はいてもおかしくない。現代と違い武器の携帯が当たり前の世界で特典を見せていても違和感はあまりない。

 

しかし周囲にそれらしき物を持った転生者はいないようで蒼兎はダンジョンに潜る事にした。ある程度下まで降りるとこの世界に存在しない筈の銃声が聞こえた。

 

蒼兎が銃声を頼りに接近し近くにあった岩陰に隠れながら覗いてみる。すると銃火器を装備した男がモンスターごとパーティにむけて発砲して殺害していた。蒼兎はドライバーを装着しSCIPミライドウォッチを起動させる。

 

『SCIP!』

 

SCIPミライドウォッチをドライバーに嵌めてまたウォッチのボタンを押しカバーを開く。

 

『アクション!』

 

「変身」

 

レバーを曲げて自身の姿を変える。

 

『投影!』

 

『フューチャータイム!』

 

『確保!収容!保護!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

仮面ライダーSCIPとなった蒼兎は銃火器を装備した男の元へ近づく。

 

「なんだお前?」

 

「名乗るつもりはありません。これから倒す相手には。」

 

「ああ!?舐めてんのかぁ!?」

 

男はミニガンの銃口を蒼兎に向けて発砲する。

 

「(人に向けて撃つことに最早、躊躇いすら無いのか……。)」

 

「(いや自分が言えた事じゃ無いか。)」

 

蒼兎は洞窟のようになっているダンジョンの天井までジャンプして勢いに乗って天井を駆け抜ける。男もミニガンの銃口を必死に蒼兎に向けてくるも全く当たらない。

 

蒼兎はシップマグナムの銃口を男のミニガンに向け正確に狙い引き金を引く。ミニガンの接続部分や銃口に向けて撃ち込んで破壊する。

 

「チッ!」

 

男はアサルトライフル『M416』を取り出しまた蒼兎に向けて引き金を引く。蒼兎はシップマグナムに『106』と入力して銃撃を避ける。

 

『Keter!』

 

蒼兎は男に向けて弾丸を放つ。男は逃げられない事を理解し銃で防ごうとする。しかし自身の体も覆う粘液に銃を腐食させられてしまう。男は即座に装備を外して粘液から逃れる。蒼兎は逃げた先に銃口を向けて引き金に指をかける。

 

「はは、マジかよ。」

 

「来世は真っ当に生きてください。」

 

乾いた笑みを浮かべた男の額に銃口を向け引き金を引き、頭を撃ち抜く。さすがに戦闘の銃声がダンジョン内に響き渡り不審に思った冒険者たちが近付いてくる。蒼兎は変身を解除してそのまま奥へ進んで行った。しかし奥へ行っても不審な物を持っているような転生者らしき者は見当たらず今日はここまでと捜索を打ち切った。

 

 

 

 

 

「おい!何すんだよ!?離せ!」

 

談笑した冒険者パーティが食事を終え、帰る頃。細道で街灯はなく辺りは真っ暗。そんな場所から不審な声が聞こえる。

 

「な、なんだよ!?誰か!!助け………。」

 

声の主であった男の冒険者は影に飲み込まれた。翌日、所々体の部位が食いちぎられるように無くなっている冒険者の死体が街の中で見つかった。残っていた左腕には強力な力で握られた痕があった。



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報告書 2-3 食事

「本当にごめんなさい!!!」

 

昨日の夜、ベルはウエイトレスの少女『シル』にお弁当をもらったお礼に彼女が務める『豊穣の女主人』にて食事をしていた。しかしファミリアの団体の中にはベルが襲われ助けられたところを見た物がおりその話が笑い話にされている所で耐えかねて料金も支払わずに店を出てしまった。

 

そして翌日の朝、ベルは深く頭を下げている。そして店主の『ミア』は持ってきたお金をキッチリ回収して次はないと釘を刺す。

 

「シルがアタシらを止めてなきゃ、アンタもっと酷い目にあってたよ。」

 

 

 

 

 

場所は変わり、食いちぎられるようにバラバラになった死体があった場所には人があまり通れないようになっておりたまたま近くを通りかかった『ロキ・ファミリア』のメンバー達が死体を見ていた。

 

ファミリアの団長で小人族の『フィン』はこの死体の不可解な点に頭を悩ませていた。

 

「どうゆうことだ、こんな風に人間を殺すなんて……?」

 

蒼兎と接触した白髪の目付きの悪い獣耳がついた少年『ベート』は興味無さそうに言い放つ。

 

「どうもこうもあるか、弱ぇヤツが死んだだけだ。」

 

同じく蒼兎と接触した丁寧そうなエルフの女性、ロキ・ファミリア副団長の『リヴェリア』は何処が不可解かフィンに尋ねる。

 

「どこがおかしいのだ?」

 

「人間やほかの種族にはこんな芸当はできない。モンスターがやったとしてもわざわざ噛みちぎって持って行く必要が無い。そもそもモンスターはダンジョンから外に出ない……なぜ犯人は死体の一部を持って行ったんだ?」

 

通れなくなっている道から除くように見ている人影が一つ。フードを深く被り顔が見えないようになっいるも不気味な笑みを浮かべていることだけは分かった。

 

しかしそれに気付くものはいない、近くにいた蒼兎を除いて。深くフードを被った人物はその場から離れていく。

 

「(あの死体、食いちぎられるようにバラバラになったとか言ってるが食われてるだけ……。)」

 

「(本来ならそんなモンスターも人物も居ない、転生者である事が確定として人間を捕食して得するのは喰種(グール)とかその辺か。)」

 

喰種(グール)。人を食らう者。本来は別の世界の者達だがそれを特典にしてやって来た転生者が居るようだ。前回の世界で初めて倒した転生者の特典も喰種(グール)であった。

 

蒼兎は転生者と思しきフードの人物を追う。フードの人物は離れた宿の中に入っていった。どうやらそこで暮らしているようだ。

 

「(襲うのは人目につかない夜の時間帯のはず……待つとしますか……。)」

 

フードの人物はその日の夜に宿から出ることは無かったが蒼兎は数日に渡って監視していた。数日の間に変わったことは無かった。そしてとある日の朝方になるとベルがいる所を見かける。

 

「……!」

 

そんな中、ベルの元にフードの人物が近づいていく。蒼兎は直ぐにフードの人物の元へ向かう。

 

これからダンジョンへ潜るというところで不審なフードを被った人物がベル達に近づく。

 

「……りない……ない。」

 

「あ、あの?大丈夫ですか?」

 

「………りないんだ。」

 

「はい?」

 

「食い足りないんだよぉぉぉ!!!」

 

そう叫んでフードが取れてあらわになった白髪の男はベルに向かって拳を振るう。ベルは急成長で伸びた瞬発力でもギリギリで避ける。フードの男の拳は地面に突き刺さりクレーターを作る。

 

避けたことによって体制を崩したベル。しかしフードの男はもう片方の腕でベルを殴りつけようと構える。地面にクレーターを作る程の威力。それを喰らえば死は免れない。ベルが諦めかけたその時。

 

『グレイシャルナックル!』

『カチカチカチカチカチーン!』

 

冷気を発しながらフードの男を殴りつけベルの元から吹っ飛んでいく。フードの男を殴ったのはミノタウロスの時に自身を助けてくれた少女の(中身は男の時の)蒼兎だった。

 

右手にはグリスブリザードナックルが冷気を帯びながら装備されている。

 

「あ、あなたは………!」

 

「また会いましたね。」



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報告書 2-4 切望

前回のあらすじ
食いちぎられるようにバラバラになった死体で騒がれているオラリオ。その正体は喰種(グール)だった。更にその魔の手がベルに襲いかかるもその窮地を助けたのはまたしても蒼兎だった。


喰種(グール)を噴水の向こう側まで吹き飛ばしベルから遠ざける蒼兎。そこてベルが蒼兎に声を掛ける。しかし蒼兎は喰種(グール)を優先しベルの呼び止めに応じることは無かった。

 

「あ、あの!」

 

「すみません、先に彼を仕留めます。」

 

蒼兎は喰種(グール)の元へ向かう。ビヨンドライバーを装着しながらSCIPミライドウォッチを起動する。

 

『SCIP!』

『アクション!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

仮面ライダーSCIPに変身した蒼兎はSCIPマグナムに『076』の数字を入力する。

 

『Keter!』

 

異空間からブレードを取り出して起き上がった喰種(グール)をマグナムで牽制しながら距離を詰める。そしてブレードで喰種(グール)を切りつけようとするも腰から尻尾を生やしそれを腕に巻き付けてブレードを防ぐ。

 

「ウゥゥゥ!邪魔するなァァァ!!!」

 

蒼兎に蹴りを入れようとするもマグナムを盾で軌道をずらしてそれを防ぐ。少し後退してブレードを構える。喰種(グール)は親指で人差し指を押して鳴らし、まるでギアを入れたように動きが俊敏になる。

 

ベルは近くで見ていたがまるで捉える事が出来なかった。蒼兎も全く動いておらず動きが見えていないと思われていたが突如、銃口を虚空に構え引き金を引く。

 

するとそこから撃たれた痕がある喰種(グール)が現れる。

 

「動く時に音を立て過ぎです、聞き分けて狙うのが容易でした。」

 

「ッ!!」

 

ブレードを投げつけて喰種(グール)の腕を壁に貫通して刺さり動けなくする。尻尾を巻き付けた腕でブレード折ろうとするも頑丈な上に蒼兎がSCIPマグナムで腕を撃ってくる為、自由に動く事が出来ない。

 

もがいているうちに蒼兎はドライバーのレバーを開閉させまた異空間からブレードを取り出し、刃にエネルギーを纏わせる。赤黒いそれは例え頑丈な喰種(グール)でも簡単に命を刈り取ってしまうと思わせる程の禍々しさだった。

 

「はぁぁぁ!」

 

壁ごと切り捨てるように喰種(グール)を切り裂き壁にはとても大きな剣で削り取られたように跡が残る。喰種(グール)は当然絶命し蒼兎は変身を解除する。

 

「(すごい……あんな戦い見たことない……!)」

 

「ボクもあの人みたいに……強くなりたい……!」

 

蒼兎は面倒事にならないように姿を消し、この一部始終を見ていたベルを含めた冒険者達は蒼兎の圧倒的過ぎる能力と戦いで話題は持ち切りだった。

 

そして蒼兎の強さを見たベルはより強くなりたいと言う願望に拍車をかけスキルの成長を促すのだった。ダンジョンに潜りモンスターを狩るベル。そんなベルを観察する者が一人。

 

「いい傾向だな。怪物祭(モンスターフィリア)にはこれを渡してもいいかもしれないねぇ。」

 

ベルにスキル『仮面の英雄』を発現させ原作改変を仕組んだ人物は赤いタカのメダルを指で弾きながらベルの様子を見ていた。




今回まで出てきたSCIP達の能力解説。(andSCP解説)
SCP-1009-JP - はた迷惑な楽団
「楽団」と称される1体の指揮者と16体の奏者で構成され、チャイコフスキーの「序曲:1812年」楽曲第五部のクライマックスに到達した瞬間に集合地点からおよそ2km離れた地点で大規模な爆発が発生する。仮面ライダーSCIPはこの能力を戦闘に特化できるように演奏中は一定期間で爆発し続けるように改変が施されている。
SCP-120-JP - 世界で1番の宝石
SCP-120-JP-1と呼ばれる巨大な蟹のような生物を召喚する能力を付与する。このSCIPは本来は貝殻で周りに個人差はあるが概ね10億円以上の価値があると思われていないと上記の巨大生物を開口部から放ち、周辺を破壊する。
SCP-106 - オールドマン
ありとあらゆる物を腐食させる粘液とポケットディメンションと呼ばれる物による瞬間移動を得意とする。


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報告書 2-5 武器

怪物祭(モンスターフィリア)。それは大手のファミリア、『ガネーシャ・ファミリア』によって開催される祭り。ガネーシャ・ファミリアは腕の良いモンスター調教師を多数抱えており、年に一度観客の前でモンスターを調教するギルド公認の祭典、怪物祭(モンスターフィリア)を主催、運営している。

 

そしてその怪物祭(モンスターフィリア)でベルの為に装備を与えるため、ヘスティアは招かれた神達のパーティに来ていた。

 

「(うまい!ベルくんへのお土産にお持ち帰りだ!)」

 

「何やってんのよあんた……。」

 

「ヘファイストス!」

 

ヘファイストス、ヘスティアが下界に降りた時からお金を借りたり頼ったりするほどの親友。

 

「ふふ、相変わらず仲がいいのね。」

 

「フレイヤ?」

 

「すぐそこで会ったのよ。」

 

「お邪魔だったかしら?」

 

「うう……そんなことないけどボク、キミのこと苦手なんだよね……。」

 

「貴女のそういうところ、私は好きよ?」

 

「おーい!ファーイた〜ん!フレイヤ!どチビ!!」

 

「まぁもっとも、キミなんかよりもずっっと大嫌いなやつがいるんだけどね!」

 

「まぁいい、ロキ。キミのファミリアのヴァレン何某について聞きたいんだけど?」

 

「なんやいきなり藪から棒に?」

 

「あ、私も聞きたいわ【剣姫】について。」

 

「そのヴァレン何某には付き合っている男は?」

 

「アホ、アイズはうちのお気に入りや、嫁には出さんし誰にもくれてやらん。」

 

「あの子にちょっかい出すやつは、八つ裂きや。」

 

「(ちっ!想い人がいれば良かったのに!)」

 

「まぁええわ!うちはちと忙しい、もう失礼するで?」

 

「それじゃあ私も、確認したい事はしたし、ここにいる男は食べ飽きちゃったし……?」

 

「「ああ……」」

 

「それじゃあ、ヘスティア、あんたはどうするの?」

 

「そのぉ、ヘファイストスに頼みたいことが……。」

 

「あんた?この期に及んでまた私に頼みごと?」

 

「今回は本当にお願いなんだ!ボクのファミリアの子に、ベルくんに、武器を作って欲しいんだ!」

 

 

 

 

一方、そのベルはまだ名前も知らない蒼兎を目標として強さを求めてダンジョンでモンスターとの戦闘に励んでいた。ヘスティアが居ないのでステイタスの更新は出来ないがそんな日が何日も続いた。そして怪物祭(モンスターフィリア)当日。

 

「おーい!待つニャ!そこの白髪ー!」

 

「え?酒場の店員さん?」

 

ベルを呼び止めたのは豊穣の女主人にいた猫耳の店員だった。後ろには緑髪の店員もいた。

 

「おはようございます。それで、ボクに何か?」

 

「おはようニャ、いきなり呼び止めてわるかったニャ、はいこれ。」

 

そう言って猫耳の店員ががま口財布をベルに渡す。唐突なことにベルは困惑するが猫耳の店員は気にせず言う。

 

「これをあのおっちょこちょいに渡すニャ。」

 

説明を補足するように緑髪の店員が付け加える。

 

「アーニャ、それでは説明不足です。」

 

「リューはアホニャー?怪物祭(モンスターフィリア)を見に行ったシルに忘れた財布を届けて欲しいなんて見れば分かるニャ!」

 

「という訳です、クラネルさん。」

 

「(あっ、名前覚えててくれたんだ。)」

 

「分かりました、シルさんに渡せばいいですね?」

 

「お願いします。私達は店から離れられないので。」

 

ベルはシルを探して辺りを歩き始める。

 

 

 

 

 

ベルがダンジョンに潜っていた数日間。ヘスティアはヘファイストスにベルの武器を作って貰うために交渉していた。

 

「あんたねぇ?いつまでそうしてる気?」

 

神の宴が終わってからの2日間。ヘスティアはヘファイストスに頭を下げ続けたままであった。

 

「あのね?自慢じゃないけどウチのファミリアが作る武器は性能も価格も一流なの。それにあんたがそこまでする必要なないでしょ?て言うかさっきから何してるの?」

 

「相手にどうしても頼みごとをする時にする土下座というものらしい。タケミカズチから聞いた。」

 

「頼むよ!ヘファイストス!何もしてやれないのは嫌なんだ!」

 

2日間にも及ぶ交渉のおかげか、天界でも巨匠と呼ばれたヘファイストス自身が武器を作ることになった。

 

強すぎる武器を作れば初心者の成長の妨げになる。かと言って手を抜くのはポリシーに反する。そんな難しい仕事を始めたのは怪物祭(モンスターフィリア)が始まる2日程前である。

 

そして当日、遂にベルの武器『神のナイフ(ヘスティアナイフ)』が誕生した。このナイフはベル自身のステータスに応じて性能を上げる効果が付与されており、ベル以外の人間が持っても唯のガラクタでしかない。

 

余談だが製作者のヘファイストス曰く「鍛冶屋の手を放れて勝手に成長する邪道な武器」であり、二度と造りたくないと語っている。

 

「ありがとう!ヘファイストス!」

 

「言っておくけど、ちゃんとお金は返すのよ?」

 

「ああ!何百年かかっても返すさ!」

 

「じゃあ、行ってきなさい、ベル?って子に武器を渡すんでしょ?」

 

「ああ、ありがとう!」

 

 

 

 

 

「ここであの神はベルに強敵を差し向ける。そうすれば仮面の英雄のスキルは覚醒する……楽しみだなぁ?」




怪物祭(モンスターフィリア)。あるものは子のためにプレゼントを。あるものは忘れ物を届けに。あるものは自身に見合う英雄にするために。そしてあるものは自身の力を高める為に。様々な思惑が錯誤しそしてそれは加速する。次回『怪物祭』


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報告書 2-6 怪物祭

「さぁて、そろそろ俺も準備を始めるか……流石に他のやつにはこの力の末端さえも渡したく無いからな……でも昨日、どっかに一、二枚落としたんだよなぁ〜。」

 

そういった黒髪に赤いメッシュが入った現代風の服装をした男は銀のメダルが何十枚も入った袋を抱えながらオラリオの人々を上空から眺めていた。

 

「………ふふふ、とても綺麗……もっとその輝きを私に見せて……?」

 

フレイヤは『バベル』の最上階からオラリオを見下ろして人々を眺めている。 そして眺める先にはベルがいた。

 

「あれ?シルさん何処だろう?」

 

ベルは忘れ物をしたシルに財布を届けに行く。

 

「ベルくん!今すぐこれを届けにいくよ!」

 

そんなベルにヘファイストスに作ってもらったナイフを届けに行こうとするヘスティア。一方、蒼兎は

 

 

 

 

 

「ッ〜〜!!」

 

伸びをして体を動かす準備をする。

 

「(上司から貰った情報によれば面倒な輩がこの世界にいる……特典は二つ…細かい内容は分からない、けど仮面ライダーオーズの力があることは明らか……らしい。)」

 

蒼兎は昨夜偶然見つけた銀のタカが描かれたメダル、銀のバッタが描かれたメダルを取り出す。

 

「(これは『セルメダル』……仮面ライダーオーズに登場したアイテムと全く同じだ……。)」

 

蒼兎は怪物祭(モンスターフィリア)でなにかが起こることを予期して向かうだった。

 

場所は変わりヘスティアは外に出ていて偶然会ったフレイヤにベルが何処に居るのか教えられる。偶然見つけたと言ってヘスティアは教えられるままにベルの元へ向かいフレイヤは調教されるモンスターが管理されている場所へ向かう。

 

「お〜〜い!ベルく〜ん!」

 

「神様!?どうしてここに!?」

 

「君に会いたいからに決まってるだろ?」

 

「あのすごくご機嫌みたいですけど何かありました?」

 

「ん〜?まだ内緒かな〜?」

 

「さて、ベルくん。デートしようぜ?」

 

「え!?でもボク、人を探してて「じゃあ人探ししながらデートしよう!」

 

その後、ヘスティアがベルを連れ回して様々な場所を巡って行った。怪物祭(モンスターフィリア)の本番会場まで来たがベルはシルを見つける事が出来なかった。

 

エイナと偶然会ったのでヘスティアに紹介し、ヘスティアはエイナに意味深な発言をした。何をとはあえて言わない。ベルとヘスティアは東のメインストリートを探しに行き、エイナと別れる。すると近くの冒険者がなにやら騒いでいる。

 

「どうかされましたか……?」

 

「モンスターを監視してる奴らが気を失うように倒れてた!何体か逃げ出してるぞこれ!」

 

「!?」

 

「逃げたモンスターはどこへ!?」

 

「東のメインストリートだ!」

 

「なにやらデートどころじゃないみたいやな?」

 

「神ロキ、『アイズ・ヴァレンシュタイン』……。」

 

アイズ・ヴァレンシュタイン、『剣姫』の名を持つ冒険者。ベルが本来、憧れとする人物。ヘスティアが勘違いしてベルの憧れの人物だと思われている。

 

「ふふふ………。」

 

フレイヤは隠していた顔を出すとモンスターは魅力されたように落ち着いていく。

 

「貴方がいいわ、出てきなさい。」

 

フレイヤは11階層のモンスターの檻を開ける。

 

赤いメッシュが入った黒髪の男はその様子をメダルを弾いて遊びながら眺めていた。

 

 

 

 

 

ヘスティアとベルは人探しという名のデートをしているとベルが不意に気づく。

 

「……悲鳴?」

 

突如、モンスターが周囲を破壊しながら現れた。モンスターはベルとヘスティアがいる方を向くと襲い掛かってくる。ベルがヘスティアを押して遠ざけるとモンスターはヘスティアに狙いを定めて拳を振る。

 

「ッ!?」

「(狙いは神様か!?)」

 

ベルはヘスティアを抱いて拳を受ける。

 

「ガハッ!」

 

口の中で鉄の味を感じながら、ヘスティアを抱いて逃げる。その近くに赤いタカ、黄色のトラ、緑のバッタがそれぞれ描かれた3枚のメダルを持つ少年がベルを追いかける。さらにその後ろを蒼兎が追いかける。




ベル、覚醒の時。


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報告書 2-7 覚醒

「神様!なんで狙われてるんですか!?」

 

「知らないよ!ボクはアレと初対面さ!」

 

ベルはいわゆるお姫様だっこでヘスティアをかかえて猿型11階層モンスター『シルバーバック』から逃げていた。やがて、オラリオでも有名な迷ったら出られなくなる住宅街を見つけてそこへ逃げ込むことにした。その様子を見ていたフードの男。さらにその後ろには蒼兎が居た。

 

「これは貴方の落し物ですか?」

 

そう言って蒼兎は2枚のセルメダルを取り出す。

 

「あ、俺の落し物、お前が持ってたのか?サンキュー。」

 

そう言ってフードを外して赤いメッシュが入った黒髪が特徴の顔を見せる。蒼兎に近づきメダルを受け取った瞬間、左回し蹴りを蒼兎の顔を狙って蹴る。

 

しかし蒼兎は体を後ろに逸らしてそれを回避する。ローリングの勢いで飛び蹴りを食らわせようとするもフードの男も後ろに後退して避ける。

 

「いい動きだな?なにか習っていたのか?」

 

「ピアノと書道なら。」

 

「おお、通じんだな、意外と。」

 

蒼兎はビヨンドライバーを腰に装着する。

 

「何?ビヨンドライバーだと?」

 

「(知ってるのか……)」

 

『SCIP!』

『アクション!』

『投影!』

『フューチャータイム!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

仮面ライダーSCIPとなりシップマグナムの銃口をフードの男に突きつける。

 

「質問にお答え下さい、そちらの質問は受け付けませんが。」

 

「お名前は?」

 

「もう前世の名前を使うつもりは無い。強いて言うなら『アンク』、だな。」

 

「ではアンクさん、貴方の目的はなんですか?それをハッキリして貰わないと殺していいのかどうか分かりません。」

 

「おいおい、随分物騒なこと言うじゃないか、俺はただ主人公を利用するだけだ。」

 

「利用?」

 

「俺の能力の成長を促して貰おうか、とね。」

 

そういって蒼兎から受け取ったセルメダルを割り蒼兎へ投げる。すると割れたメダルから顔に黒い丸が付いた包帯巻きの怪人が現れた。さらにアンクが行けと命令すると覚束無い足取りで蒼兎の方へ向かってくる。

 

「屑ヤミー……。」

 

蒼兎は4体の屑ヤミーに向けてシップマグナムを放つ。連射で屑ヤミーに撃ち込んで行くもその間にアンクは消えていた。倒れた屑ヤミーもそのまま消えていった。

 

一方ベルはヘスティアをシルバーバックから逃がすべく適度な場所を探していた。やがて鉄の引き戸を見つけてヘスティアだけを入れて自分は外でシルバーバックの気を引いて少しでも時間を稼ぐようにする。

 

「ベルくん!?何をしているんだい!?」

 

「神様すみません!少しでも時間を稼ぎます!」

 

ベルはシルバーバックへ向かっていく。轟音が響く方へ行くとシルバーバックを見つけ目が合う。ベルは誘導するようにシルバーバックの前を走る。シルバーバックもベルを追っていく。

 

しかし体格的にも筋力的にも大きく違いすぐに追いついたシルバーバックはベルに向けて拳を振り下ろす。ベルは間一髪で避けるも地面への衝撃で吹き飛ばされ壁に激突する。

 

さらにシルバーバックは追撃として腕についていた壊れた拘束用の鎖をベルに向けてムチのように振るう。鎖はベルに直撃し少し開けた場所にある木箱まで吹っ飛ばされる。

 

口から吐血しながらベルはヘスティアを守れたと思いながら倒れる。しかし近くの細道からヘスティアが現れる。

 

「ッ!?神様!?」

 

シルバーバックはヘスティアを見つけて鎖で薙ぎ払う。ベルは痛む体に鞭打ちヘスティアを庇いまた吹っ飛ばされる。

 

「ウゥ……神様!なんで戻ってきたんですか!?」

 

「だって約束したじゃないか……もう一人にしないって……」

 

「ッ!?でもこのままじゃ二人共……それに武器も……!」

 

ベルのナイフは先程のシルバーバックの一撃で砕けてしまった。

 

「大丈夫だ!」

 

ヘスティアはヘファイストスに作ってもらった『神のナイフ』を投げ渡す。

 

「攻撃できればアイツを倒せるんだね!?」

 

「おいおい、随分面白そうだな?」

 

ベルとヘスティアの上の建物から人影が話しかけてくる。

 

「その話、俺も乗った!」

 

人影がベルとヘスティアの元へ降りると人影はアンクだった。ベルとヘスティアは初対面なので困惑する。

 

「坊主、名前は?」

 

「ベル、ベル・クラネルです…」

 

「いいもんをくれてやるよ。」

 

そう言いアンクは赤いタカ、黄色いトラ、緑のバッタが描かれた3枚のメダルと3つの丸い窪みがあるバックルを取り出し、バックルをベルの腰に付ける。

 

するとバックルはベルトに変わりベルの腰に巻かれる。ベルは3枚のメダルを窪みに入れられベルトの右にある金の『オースキャナー』を持たされる。

 

「それをメダルと重なるように読み込ませろ。」

 

「あっ、はい。」

 

ベルは言われるがままにメダルを読み込ませる。そして不意に呟く。

 

「変身」

 

『タカ!トラ!バッタ!』

『タ・ト・バ!タ・ト・バ!タ・ト・バ!』

 

ベルの周りにメダル型のエネルギーが浮遊し空中で合体した直後にベルの胸に当たるとその姿を変える。緑の複眼にタカを模した赤い頭。黄色いラインが入る胴体。緑のラインが入った足。

 

欲望の王『仮面ライダーオーズ』

 

『神のナイフ』もオーズとなったベルのステイタスに反映され、刀身を変える。ベルが巻いているベルト『オーズドライバー』と似たような水色のラインが入る。

 

「それはオーズ、その姿でならどうな敵も倒せる、行ってこい!」



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報告書2-8 欲望の王

遅くなってしまい申し訳ありません。でも悪いのは3週連続でレジェンド出そうとするン我が魔王ですよ……


仮面ライダーオーズへと変身したベル。『神のナイフ』もベルのステイタスに反映され刀身を変える。ベルは湧き上がる力を感じながらシルバーバックがいる方を向く。

 

「神様。行ってきます。」

 

「あ、ああ。」

 

「あの、貴方は?」

 

「アンクだ、また会うだろう。今は行ってこい!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

ベルは駆け出す。シルバーバックはベルに気づくと右腕の鎖を振り下ろす。先程までは目で追うことが困難だった早さで振り下ろされた鎖はオーズを纏ったベルにはかなり遅く動いているように見えた。

 

ジャンプの構えを取ると両足に力が溜まっていくのが分かった。仮面ライダーオーズはメダルに描かれた動物の能力を組み替えて戦う。バッタの足の驚異的なジャンプで威力のついた斬撃で鎖の手枷自体から切り壊す。さらに空中左回し蹴りをシルバーバックの顔面に蹴り込み体制を崩して倒す。

 

「(切れ味が凄いことに……!)」

 

ヘスティア「(あのナイフはベルくんのステイタスに合わせて切れ味が上がるナイフだ………けどあの鎧を纏ってからベルくんのステイタスが以上に上がっているせいかナイフもとんでもない切れ味に仕上がってるじゃないか!?)」

 

『神のナイフ』にオーズドライバーと同じような青いラインが入っていた。オーズに変身した時からその状態に変化し今の切れ味である。ベルはこれなら倒せると再度シルバーバックと対峙する。

 

体制を直したシルバーバックは激昂し敵を殺そうと拳を振り下ろす。ベルはそれを右に反復横跳びの要領で避けて地面を殴りつけたままの腕をナイフで切り付け血飛沫が舞う。

 

「(今まで感じたことの無いような体の軽さだ……これなら!!)」

 

ジャンプで後退し、構えをとる。辺りに風を起こすほどのジャンプでシルバーバックに向かって行く。シルバーバックは直進してくるベルに拳を突き出すもベルは体を捻ってスレスレで避ける。

 

そのまま直進し首を切る。シルバーバックが切られた箇所を抑えながら片膝をつく。そしてベルはドライバーの右にあったスキャナーを取りメダルを再度読み込ませる。

 

『スキャニングチャージ!』

 

『神のナイフ』に光が纏わる。ベルの足がバッタのような足に変わり、姿勢を低くする。そしてシルバーバックの目に見えたのは『閃光』。

 

ベルが持つ『神のナイフ』に纏われていた光であまりの速さに残像ができるほどである。その閃光はシルバーバックの首を確かに通り抜けた。

 

そして空間が切られたようにズレたあと、元に戻りシルバーバックはその首を落として消えていった。消えたシルバーバックの後ろで着地していたベル。敵を倒したことを確認し変身を解除する。

 

直後、歓声が沸き起こる。一部始終を見ていた住人達がベルに賞賛の声をかける。そしてベルに抱きつくヘスティア。

 

「ベルくーーん!!凄いじゃないか!?あんなモンスターを倒すなんて!!」

 

「か、神様……このナイフのお陰です!ありがとうございます!!」

 

 

 

 

 

アンク「(よし、これでいい……!)」

 

歓声が沸き起こる中、それぞれの思惑が錯誤する。



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報告書2-9 理由

大分期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。今回から書き方が変わります。分かりづらい場所があるとは思いますがよろしくお願いします!


ベルが仮面ライダーオーズに変身し、シルバーバックを倒した後、『神のナイフ』を作るために奔走したヘスティアは疲労で倒れてしまい、財布を渡すために探していたシルが『豊饒の女主人』でヘスティアを看病させてくれた。

 

「すみません、シルさん。ありがとうございます。」

 

「いえいえ、私のために探してもらっていた訳ですからこれくらいは……。」

 

「むふふ、ベルく〜ん、どこへ行くんだ〜い……。」

 

「ふふ、では私はこれで、お店のお手伝いがあるので。」

 

「あ、本当にありがとうございます!」

 

「お〜い、ベルく〜ん……。」

 

「はい、神様。僕はココですよ。」

 

ヘスティアの手を握るベル。ヘスティアは幸せそうな顔をしながら眠っていた。

 

 

 

 

 

「(まさかベルが仮面ライダーオーズになるとは……でもなんでなれたんだ?持ち主はアンクなんて名乗った転生者だと思うが……。)」

 

夜のオラリオを見渡しながら蒼兎は思考する。しかし、なんのヒントも手掛かりも無いため、考えても無駄と思った蒼兎はこの世界に残存している特典を使って犯罪を犯している転生者を抹殺しに行った。

 

 

 

 

 

数日後の朝方、蒼兎がこれからダンジョンに入ろうとしている冒険者達の集まりを特に理由なく見ていると仮面ライダーオーズに変身したベルがそれなりにいい装備をした状態で誰かを待っていた。

 

ベルに近づいていくかなり小柄な人影がベルに挨拶をする。

 

「おはようございます!ベル様!」

 

蒼兎は知らなかったが数日前からベルは『サポーター』の『リリルカ・アーデ』のパーティを組んでいた。

 

サポーターとは冒険者たちがより動きやすく活動する為に収入源てある魔石の回収やモンスターの死骸を寄せる、荷物を持って負担を減らすなどをこなす者の事。

 

大手のファミリアは入団直後の者に任せるなどするがベルが所属するヘスティア・ファミリアは金銭的に余裕はない上に有名でもないためサポーターは雇うものである。

 

「おはようリリ、今日もよろしく。」

 

蒼兎はそのリリと呼ばれた少女になにか良くないモノを感じ取る。

 

「(女の勘って奴かね?中身男だけど。)」

 

何やら話しており、ベルに両刃短剣を渡している。気になった蒼兎はベルとリリについて行くことにした。ベルは蒼兎が見た最初に比べてかなり奥までダンジョンに潜れるようになっていた。無詠唱での魔法を発動しているところを見る限り、格段に成長していた。

 

十階層に到着したベル。十階層は迷宮の武器庫(ランドフォーム)と呼ばれ、通常のモンスターがどこにでもある木などを天然の武器として使用してくる階層。しかしベルはそこでもそれなりに対応できていた。

 

しかし、両刃短剣を使っていたため、足にしまっていた『神のナイフ』を狙撃され、落とされてしまう。拾おうとしたが何故か設置されていたモンスターを引き寄せるアイテムによって現れたモンスター達によってベルは足止めされてしまう。

 

リリはベルの『神のナイフ』をヘファイストス・ファミリアのケースが付いた状態で盗んでいってしまう。追おうとするがモンスター達によって足止めされているベルはリリの名前を呼ぶことしかできなかった。

 

蒼兎はリリについて行く。するとついていた獣耳が消える

 

「(小人族(パルゥム)……って奴か?)」

 

そこで一人の冒険者に足をかけられ転ばされてしまう。どうやら今までも先程ベルにしたように冒険者達を騙していたようだった。その冒険者はリリの装備を剥ぎ取り、更に奥から複数の冒険者が現れる。

 

現れた冒険者は巨大は蟻型モンスター『キラーアント』の半身を投げてくる。冒険者が叫ぶ。

 

「じ、冗談じゃねぇ!キラーアントはフェロモンで仲間を呼び寄せんだぞ!?」

 

冒険者はリリから剥いだ装備を全て置いて逃げ出すがその先から叫び声が聞こえた。

 

複数の冒険者達はリリから鍵らしき物を奪う。どうやら貸金庫の鍵のようだ。持た上げて出てきたキラーアントの大群に放り投げる。その後冒険者達はリリの装備全てを持って逃げていく。

 

自暴自棄となっているのか逃げようともしないリリ。その奥から両刃短剣とナイフと魔法でリリに向かってくる冒険者がいた。

 

「ベル様!?何故ここに!?」

 

「助けに来たよ!大丈夫!?」

 

キラーアントの大群はすぐさまベルによって片付いた。

 

「なぜ、見捨てなかったのですか?私はベル様を裏切ったんですよ?」

 

「え?えぇーと、女の子を助けるのは当然?だからかな。」

 

「女の子だったら誰でも助けるんですか!?」

 

「えぇ!?えーとじゃあ、リリだったから、かな。」

 

そんな会話の中、とある人影が現れる。

 

「あれ?嘘、リリちゃんもう取られちゃった?」

 

「あーあ、俺がもらおうと思ったのに……よぉ!!」

 

電流がベルを襲う。直撃はしなかったものの掠った威力で痺れるベル。それを耐えながらベルはオーズドライバーを腰に巻く。メダルを入れてオースキャナーに読み込ませる。

 

「変身!」

『タカ!トラ!バッタ!』

『タトバ!タトバ!タトバ!』

 

「リリ!僕のナイフを!」

 

「……分かりました!」

 

リリ大事に隠し持っていたベルのナイフだけは取られずにすみ、靴の横から取り出しベルに投げ渡す。『神のナイフ』はベルのステイタスに応じ、青いラインが入る。

 

ナイフを構え、また来た電流をジャンプで避ける。ジャンプは洞窟状のダンジョンの天井まで余裕で達し、天井を蹴って壁に移り、壁の次は転生者に斬り掛かる。

 

しかし転生者は静電気を利用してダンジョン内の砂の砂鉄で剣を作り出し、それで防御する。しかし砂鉄でできた剣は意図も容易く切り落とされた。

 

「うわっ!マジかよ!」

 

「てかベルってそんなのあったっけ!?」

 

もう一度斬り掛かるベル。しかし転生者は迫ってくるベルに向かって硬貨を投げる。不意に投げられた硬貨に気を取られ、転生者は投げた硬貨を指で弾く。

 

瞬間、硬貨は光の線となってベルに襲いかかる。跳躍で避けようと試みるが胸部に直撃し、そのまま壁際まで吹っ飛ばされてしまう。

 

「うぐぅ……」

 

「ベル様!!」

 

「リリちゃ〜ん、俺のところに来ればそいつは助けるよ〜?」

 

「ダメだリリ、行っちゃダメだ……!」

 

「そう、そんな奴に乗せられる必要なんてないです。」

 

不意にした女性の声に驚くリリ。転生者は邪魔者が入ったなと内心舌打ちし、ベルは自身が目指すその少女の声を聞き、驚く。

 

ビヨンドライバーを腰に巻いた状態で現れた蒼兎はSCIPミライドウォッチを起動させる。

 

『SCIP!』

『アクション!』

 

「変身……!」

 

『投影!』

『フューチャータイム!』

 

『確保!収容!保護!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

『シップマグナム!』

 

銃口を転生者へ向けながら蒼兎は言い放つ。

 

「アナタの特典と魂を回収します。」



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報告書2-10 改心

SCIPマグナムで牽制しながら近づいていく蒼兎、マグナムを鈍器代わりに肉弾戦に持ち込む。砂鉄の剣を作り出した転生者は蒼兎が振り下ろすマグナムの銃口を剣で受け止める。

 

剣を持っている手を掴みそのまま力任せに投げる。転生者は上手く受け身をとったがその隙に蒼兎はSCIPマグナムへ「106」を打ち込む。

 

『Keter!』

 

引き金を引き、能力を付与した弾丸が転生者に迫るが転生者は砂鉄の剣で弾丸を切り裂く。しかし弾丸は切り裂かれた言うより自ら崩れていったように見てた。弾丸からかなりの異臭がする液体がかかってくる。

 

液体の触れた部分が腐食しだす。転生者は慌てた様子で液体を払おうとするが蒼兎は既にマグナムを連射していた。

 

「クソ!」

 

悪態をつきつつも連射したマグナムの弾を避けるために横に動く転生者。マグナムの弾を避け切った直後に蒼兎へ肉薄し飛び蹴りする。蒼兎は腕でガードし至近距離でマグナムの銃口を向ける。

 

後退する転生者。しかし射撃されずそれがブラフであることに気づいた時には既に遅く、腐敗する弾が当たったダンジョンの壁が崩れた。瓦礫に埋もれる転生者。

 

直ぐに電撃波で吹き飛ばしその瓦礫が蒼兎へ飛ばされる。蒼兎はマグナムで的確に瓦礫を撃ち抜き、銃口を転生者に向ける。転生者は電気を身に纏い、砂鉄の剣が更に鋭利になる。

 

マグナムを撃ち込んでも纏っている電気で相殺されてしまう。転生者が肉薄し蒼兎に剣を振り下ろす。体を逸らしてギリギリ剣を避けて今度は蹴りを転生者の腹部に食らわせる。

 

蹴りは効いたのか、転生者は後退してしまう。その隙にマグナムに『076』の番号を打ち込む。

 

『Keter!』

 

異次元からブレードを取り出し、仮面ライダーSCIPから更に上乗せされた身体能力で踏み込む。超スピードで肉薄し、ブレードで転生者の首を狙う。

 

何とか反応できた転生者は砂鉄の剣で受け止めようとする。しかし蒼兎のブレードは砂鉄の剣をも切り裂き、転生者の首を切り落とした。

 

「ふぅ……」

 

変身を解除し立ち去ろうとしたその時、ベルに声のかけられる。

 

「あ、あの!!」

 

「また助けていただいてありがとうございます!お名前を聞いてもいいですか……?」

 

「……蒼兎です。」

 

「アオト……さん!」

 

「それでは。」

 

立ち去る蒼兎に向けて、ベルは憧れの視線を向けていた。自分もあれほど強くなりたい。その強い思いに反応するかのように、ベルの持つメダルが輝いた。

 

その後、ベルはヘスティアにリリを紹介し、二人は正式にパーティとなった。リリも改心し、ベルに尽くすようになる。ダンジョンに潜る際、よく二人でいる所を見た蒼兎は少し安堵しまだこの世界に数十人いるであろう転生者の特典と魂を回収することに専念した。



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報告書2-10-1 補遺

ベルのお話です、あの『剣姫』とは縁がないはずのベルがどうやって強くなるのか。時系列的には蒼兎がベルを助けた数日後の話です。


朝方、ダンジョンの入口近くに着いたベルは周りを見回す。

 

「(最近リリを見かけてないけど、でもきっとまた会える気がする……!)」

 

そんなことを考えていると見覚えのあるローブを来た見覚えのある少女があの時出会った場所にいるのを見つけた。ベルはその少女に近づいて話しかける。

 

「サポーターさん、サポーターさん、冒険者を探していませんか?」

 

「あ……!?」

 

少女は驚いたようにベルを見る。

 

「いきなりで混乱してますか?でも簡単な話ですよ?」

 

「サポーターさんの手を借りたい半人前の冒険者が自分を売り込みに来てるんです。」

 

その状況はリリがベルに初めてあった時と、立場が逆になったようだった。

 

 

 

 

 

ヘスティアによってベルを任されたリリは今まで以上にベルにサポーターとして尽くした。経済的にも余裕ができ始めてきた頃、もう少し下の階層を目指そうとしてエイナに質問に行ったベル。

 

ベルがギルドに来るとそこにはエイナと『剣姫』の名を持つ、本来ベルが憧れとする人物、アイズ・ヴァレンシュタインの二人がいた。

 

「あ、あの人は……!」

 

ベルが硬直している中、アイズの方が話しかける。

 

「君、シルバーバックを倒した噂の人だよね?」

 

「え!?ああ、はい!そうです!」

 

「冒険者になったのは最近なのにもう十階層なんだよね?どうしてそんなに強いの?」

 

「い、いえそんな!戦い方は我流というか素人ですし……剣姫である貴女の参考になるようなものなんて………!!」

 

「……じゃあ、私が教えてあげようか?」

 

 

 

 

 

「ぶふぇ!」

 

アイズは教えるのがあまり得意ではなかった。なので1番手っ取り早い方法として対人戦として戦うことになった。そこからベルは何度も何度も気絶させられ実力の差を見せつけられた。

 

しかしそれも数日続けば少しずつ埋まっていった。まだまだ差はあるもののそれなりに動きについていけるようになった。

 

「動きが良くなってきてる、ナイフだけじゃなくて蹴りとかもできるようになってるし、前より強くなったね。」

 

「はい!ありがとうございます!アイズさん!」

 

「名前……。」

 

「あっ!す、すみません!」

 

「いや、いいよ。アイズで、他のみんなもそう呼んでるから。」

 

「分かりました……アイズさん、今まで特訓に付き合ってもらってありがとうございました!」

 

「いいよ、私もいい練習になった、と思う。」

 

「はい!ではボクはこれで!」

 

特訓場所からダンジョンへ向かっていくベル。その様子は理想の人物へ少しずつ近づいていくことへの喜びがあるように見えた。



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報告書2-11 克服

ベルとリリを助けてからしばらく経ち、蒼兎は生活資金を得るためにダンジョンへ潜っていた。かなり下層のモンスターを大方狩り尽くし換金しようと上へ戻っているとベルとリリを見かけた。

 

「(うまく仲直り? ができたようで……)」

 

他の一流冒険者と比べるとまだまだではあるもののベルの強さは最初見た時と比べてかなり上がっていた。

 

「(思い返してみると朝方あの『剣姫』と一緒にいる所を見た気がするなぁ……。)」

 

「(特訓でも付けてもらったんだろうな、あの調子なら問題無さそう。)」

 

上へ戻ろうとすると、上層では見かけることがありえないはずのモンスターが現れた。ベルが自身のトラウマである存在に対して恐怖を混じえてその名を呟く。

 

「ミ、ミノタウロス……!?」

 

「(変色してる……普通のやつとは違う……確か赤色だったはずだが……あんな模様まであったか?)」

 

ベル達が遭遇したミノタウロス。その姿はいつもは黒いその強固な皮膚は赤く変色している上に禍々しい炎のような模様までもが浮かんでいた。

 

「ベル様逃げましょう!今の私達では敵いません!」

 

ミノタウロスは獲物を見つけたと言わんばかりの眼光でベルとリリを睨みつける。ベルはその眼光に気圧され、リリの撤退の提案も耳に入ってこない。

 

「……ッ!!」

 

ベルはオーズドライバーを装着しメダルを入れてスキャナーを手に取る。

 

「変身!!」

 

スキャナーでメダルを読み取り『神のナイフ』を引き抜く。

 

『タカ!トラ!バッタ!』

『タトバ!タトバ!タトバ!』

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

「ベル様!」

 

リリの制止の声をも無視しベルはミノタウロスに挑む。しかしベルのナイフの一撃をミノタウロスは持っていた大剣で受け止める。『神のナイフ』は少しだけ大剣を削る、しかしミノタウロスの振り上げによってベルは胸部の装甲を削られながら飛ばされる。口の中の鉄の味を噛み締めながらベルは構える。

 

「リリ……逃げて……!」

 

「で、でも!」

 

「いいから!早く!」

 

リリは目に涙を浮かべながら、しかしベルから離れようとしない。

 

「(リリが逃げてくれなきゃこいつをどうにかできない!)」

 

「フゥゥ………!」

 

「リリ……逃げて……!」

 

「嫌です!」

 

「逃げろよ!」

 

ベルの強い口調で言われリリは泣きながら走り去る。一度深呼吸をしてベルはミノタウロスを見据える。明らかに自身の身の丈より大きいその凶器に恐怖しながら、それでもなお挑もうと構える。

 

「(これは階段だ……あの人に近づくための……!)」

 

オーズとしての能力であるバッタの跳躍力、それにより一気に相手に肉薄するつもりでベルはミノタウロスへ駆け出す。

 

「(一歩一歩踏みしめて……登りきってやる!)」

 

圧倒的なスピードで迫ったベル、しかしミノタウロスはそのスピードにすら反応してみせた。振り上げた大剣は寸分違わずベルに向けて振り下ろされる。自身のスピードに反応したミノタウロスに驚くベル。

 

驚きながらも体を少し逸らしてギリギリで大剣を避ける。しかし振り下ろされた大剣の圧倒的な威力と風圧でベルは再度吹き飛ばされた。

 

「(なんて力だ……!あれに当たったらいくらこの頑丈な鎧でも直ぐに消える!)」

 

オーズを頑丈な鎧と考えいるベルだか、そのオーズでさえ一撃で変身解除に追い込まれると思わせる程の威力。近距離では通用しないと感じたベルは手を突き出して、無詠唱で魔法を放つ。

 

「ファイアボルト!」

 

『ファイアボルト』ベルが本を読んだことで習得した魔法。本来は魔法は詠唱を必要とするがベルは無詠唱の魔法を習得したことにより手を突き出し、唱えるだけで魔法を放つことができる。

 

火球を放ちミノタウロスが接近しないようにする戦法であったがミノタウロスは煩わしそうに手を前に出してくるだけでダメージが通っていないようだった。

 

「(やっぱり近づいて戦うしかないのか……!?)」

 

「(でも、この『神のナイフ』は警戒されててなかなか攻撃できない……!)」

 

思考している間にミノタウロスがベルに肉薄する。反応できなかったベルの上半身を大剣が襲う。鋭い痛みを伴って吹き飛ばされたベルはダンジョンの壁に激突して埋まる。オーズの変身が解除してベルは血反吐を吐きながらも立ち上がろうとする。その時、蒼兎がベルの前に立つ。

 

「(さすがに分が悪いか……)」

 

「あとは任せてもらっていいですよ。」

 

「アオト……さん……!」

 

不意にベルは自身が初めて蒼兎に助けられた時のことを思い出す。

 

『「大丈夫ですか?」』

 

その時と場面が重なった気がした。蒼兎がウォッチを構えるがベルがその手を掴む。

 

「もう……もうアオトさんに助けられるわけには……」

 

「助けられるわけには……いかないんだ!!」

 

立ち上がりベルはミノタウロスを見据えて構える。

 

「(ボクは知ってる……アイツより速い人(ヴァレンシュタインさん)を知ってる!)」

 

走って接近し、ミノタウロスが振り払う大剣をジャンプと空中で体をひねることで回避し大剣の持ち手を『神のナイフ』で切りつける。深く切り裂くことができたのかミノタウロスは大剣を手放しかける。

 

そこを見逃さず着地したベルはミノタウロスの顔面に手を突き出し魔法を放つ。

 

「ファイアボルト!」

 

火球が顔面に直撃したミノタウロスは大剣を手放し、顔を手で覆う。腕を振り回しベルに近づけさせないようにするも大振りで狙いも何もない攻撃を避けるのはベルにとっては簡単だった。

 

手放した大剣を奪うが、重さで持ち上げることができない。ミノタウロスは大剣が無くなり顔面に直撃した魔法により激昂する。腕を地面に付けて頭の角で突進する構えを取る。

 

大剣を持ち上げることができないベルに対しミノタウロスは突進する。持ち上げることを諦めたベルは大剣を力一杯振り上げてミノタウロスにぶつける。

 

大剣は轟音と共に砕けるがミノタウロスは左肩から大きく切り裂かれたことにより頭を上げる。『神のナイフ』を切り口の上から突き刺し、詠唱する。

 

「ファイアボルト!」

 

「ウガァァァ!!」

 

ミノタウロスの体内に炎が巡る。しかしミノタウロスはまだ動けるのかベルをその巨腕で捕まえて握り潰そうとする。ベルはもう一度詠唱しミノタウロスの体内に炎を巡らせる。

 

絶叫しながらもミノタウロスは再度ベルを捕まえようとする。ベルは自身の限界を感じ取りながらも最後の力を振り絞り詠唱する。

 

「ファイアボルト!!!」

 

ミノタウロスの切り口から炎が吹き出し、ベルを捕まえようとする。しかしすんでのところで塵となり、

 

 

 

 

 

ベルはミノタウロスに勝利したのだった。



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報告書2-12 真相

ミノタウロスを撃破したベルはその場で倒れる。丁度その時、リリが連れて来たと思われる『ロキ・ファミリア』のベート、フィン、リヴェリア、アイズが現れる。

 

「これは………どういうことだ?」

 

「ベル様!」

 

リリが倒れているベルに走り寄る。

 

「おい!ホントにミノタウロスが居たんだろうな!?」

 

ベートがリリに問う。その問いに答えたのは蒼兎だった。

 

「確かにミノタウロスはいました、そこの少年が倒しましたが。」

 

「ああ!?」

 

「君は確か……」

 

「あの時、ミノタウロスを一撃で倒した少女か?」

 

「そうじゃねぇか!思い出したぞテメェ!」

 

「ベル様がミノタウロスを倒したというのは本当なんですか……?」

 

「そうです、じゃなきゃそこの少年は死んでミノタウロスは徘徊したままですよ。」

 

「確かにドロップしたハズの魔石まである……どうやら本当らしいな……。」

 

「テメェが倒したんじゃねぇのかよ?」

 

「彼が倒したと言っているでしょう…?」

 

「その通り、彼がミノタウロスを撃破したのさ。」

 

蒼兎の言葉に同意したのはベルにオーズドライバーとコアメダルを渡した転生者、アンクだった。

 

「キミは……?」

 

「俺はアンク、ベルにオーズの力を渡した者だ。」

 

「何の用でここに来たんです?」

 

蒼兎がアンクを睨みながら問う。

 

「そんな怖い目するなよ、貸したものを返してもらいに来たのさ。」

 

「……?」

 

アンクはベルに向けて手を突き出す。嫌な予感を感じた蒼兎はウォッチを起動しSCIPマグナムだけを取り出し、アンクに向けて射撃する。

 

「おおっと、いきなり撃ってくるなよ……。」

 

上手く体を逸らして回避したアンク。

 

「何をするつもりだったのですか?」

 

「だから言ったろ?貸したものを返してもらいに来たってよ。」

 

「貸したもの……?」

 

「そもそもなんでベルは変身できると思う?」

 

「…………」

 

「それはな、俺が変身できるように能力を与えたのさ。」

 

「……え?」

 

「アナタの特典はなんです?」

 

「俺の特典?知らなかったのか?」

 

「俺の特典は『ワン・フォー・オール』好きな相手の能力を奪ったり与えたりできる能力と、オーズのアイテムと変身資格だ。」

 

「………?」

 

「変身資格があるのに何故アナタが変身してないのですか?」

 

「この世界が実に厄介だったんでね?特典はこの世界で言うスキルとして反映されるみたいでな。」

 

「ワン・フォー・オールは問題なく使えたんだが、オーズの変身資格にレベルが付いててな、タトバと亜種にしか変身できなかったのさ。」

 

「だから能力を奪う、与えることができるワン・フォー・オールでベルに『仮面の英雄』としてオーズの変身資格を与えてベル本来のスキルで俺のスキルのレベルを上げてもらっていたのさ。」

 

「今回収すれば俺は色々なコンボに直接変身できるのさ、だから回収させてもらうぜ。」

 

「回収したあと、どうするつもりで?」

 

「どうするかねぇ……とりあえず『欲望の王』だし、ここを支配でもしますかね?」

 

「………自分が言えた立場じゃありませんが……あえて言わせてもらいます。」

 

「ライダーの力はそんなことのために使われるものじゃないですよ。」

 

「そうか、だがそんなことは俺の知ったことじゃない。」

 

「能力の回収を邪魔するなら容赦しないぞ?例えライダーの力が無くてもこっちには転生者から奪ってきた能力やスキルがあるんだ。」

 

「なら、戦闘を仕掛けられた、という理由のもと、防衛させてもらいます。」

 

『SCIP!』

『アクション!』

 

「スキル『攻撃力上昇』×4『反応速度上昇』×2『耐久上昇』×2」

 

「変身」

『投影!』

『フューチャータイム!』

 

「『レベルブースト』×2『軽量化』」

 

『確保!収容!保護!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

互いに能力を展開し、相手の動きを見逃さないように見つめ合う。先に動き出したのアンクだった。踏み込みで蒼兎へ肉薄する。蒼兎は後ろにベルやリリ、ロキファミリアの面々がいることを思い出し、すぐにその場から離れる。

 

蒼兎を追うようにアンクが詰め寄る。SCIPマグナムで射撃するが突然止まったアンクは腕を突き出し、エネルギー弾は見えない何かに弾かれてしまった。

 

「『バリア』×3」

 

「厄介な……!」

 

「そう言うなよ、まだ始まったばかりだぜ?」

 

蒼兎はSCIPマグナムに「143」の番号を打ち込み、銃口を地面に向けて引き金を引く。

 

『Euclid!』

 

その音声が鳴り響くと共に蒼兎はドライバーのレバーを開閉させる。

 

『ビヨンドザタイム!』

『SCIPエクスプロージョン!』

 

突如、蒼兎が引き金を引いた場所から桜の木が現れる。舞い散る花弁が不覚にも美しいと感じたアンクはそれを見てなんの意味か理解しかねていた。

 

「おいおい、いきなり花見か?」

 

蒼兎はそんな軽口を気にすることなくSCIPマグナムの銃口を引く。弾丸ではなくダンジョンにも関わらず突風が吹き荒れて桜の花弁がアンクの方へ向かっていく。

 

アンクはその花弁になんの警戒もしていなかった。その花弁がどの天然、人工物質で最も硬い物質よりもはるかに硬く、花弁の縁がカミソリのように鋭いことを知らずに。

 

突風によって嵐のようにアンクを襲う桜の花弁。なんの警戒もしていなかったが故に体の至る所を切り削がれる。途中からバリアを張ったものの、バリアの隙間から花弁が入り込み、アンクの体を切り裂いていく。大量に切り刻まれたアンクは思わず片膝を地面につけて肩で息をする。

 

「ああ……クソいてぇ……」

 

蒼兎は構わずSCIPマグナムに「-JP」のキーを差し込み「710」の番号を打ち込む。

 

『Keter!』

 

まずは三発、アンクに向けて未来に撃ち込む。銃口を向けられたアンクはローリングで回避するがいつまで経っても現れないエネルギー弾に困惑する。

 

蒼兎は動き回りながらアンクに向けて射撃する。バリアやある程度動いてエネルギー弾をかわしながら背中を撃ち抜かれる感覚に襲われ地面に手をついた。

 

「こ、れは……カフッ!」

 

「畜生!」

 

振り抜いた拳は空振り、蒼兎はアンクの眉間を狙ってエネルギー弾を撃ち込む。なんとか身体を起こして回避したアンクだが既に満身創痍、出血によって動けているのが奇跡という状態である。

 

さまざまなスキルによって格段に上がっているはずの攻撃力もSCPの能力を駆使して戦う蒼兎に全く歯が立たないアンク。

 

「そろそろ苦しいでしょう……終わりにしてあげます。」

 

「まだだ……俺はまだ……ソイツから……能力を……」

 

立ち上がり、蒼兎と対峙するアンク。しかし真上から現れたエネルギー弾がアンクを貫く。タイムマシンリボルバーの能力によって放たれたエネルギー弾がアンクを撃ち抜いた。膝をついて最早立つことさえままならない。

 

蒼兎はドライバーを開閉させてこれを最後の一撃としてアンクに銃口を向ける。

 

「何か言い残すことは?」

 

「はは、何ね、これからやろうと思っていたことができないって分かりきってるからな。」

 

『SCIPエクスプロージョン!』

 

凝縮された白いエネルギー弾がアンクを撃ち抜く。これにてこの世界にいる問題のある転生者の特典と魂を全て回収したことになった蒼兎。次の仕事ということなのか、変身を解除した直後すぐに右からオーロラカーテンが現れた。

 

「(少しは休息があってもいいのでは……?)」

 

そんなことを思いつつオーロラカーテンに入ろうとした時、声をかけられた。

 

「アオトさん!」

 

振り返るとボロボロになっていたベルは蒼兎へ何かを伝えようとしていた。少し戸惑いながら何を言うかを考えながら、最後はハッキリと言葉にする。

 

「ボクは!アナタみたいに強くなります!」

 

「………なれるといいですね、その時を楽しみにさせてもらいます。」

 

「はいッ!」

 

不器用ながらに微笑んで返してみた蒼兎は、踵を返してオーロラカーテンを潜る。それを見届けたベルはダンジョンを後にしようとして、肩を掴まれる。

 

「おいお前、このまま返してもらえると思ってんのか?ああん!?」

 

 

 

 

 

オーロラカーテン、その中を奥へと進み続ける。やがて前回と同じ感覚に襲われる。

 

「……ゴプッ、ゴフッ、ゴフッ……!」

 

かなりの量を吐血しながら、奥へと進んでいく蒼兎。次の世界にも転生者は存在し、そして転生者によって不幸になる者がいる。仮面ライダーの力を使うと決めたその時から『仮面ライダーと同じ信念のもとで、その力を行使しよう』を決めていた蒼兎。

 

「(まだ……まだここで倒れる訳にはいかない……。)」

 

「少なくとも……今はまだ……!」

 

そうして彼は次の世界へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

ベルは今日も今日とてリリと共にダンジョンへ潜る。憧れの人、その人と同じ強さを目指して。自身のトラウマであるミノタウロスを倒してからベルは自身の心が軽くなっていた気がした。

 

ステイタスの更新の時にヘスティアに驚かれると共に「ヴァレン某か……!?」と何か言っていたような気がするがベルは自身が強くなっていることに実感が持てていた。

 

オーズの力が貰い物であることに多少ショックやら驚きがありつつも現在も使っている。憧れの人に近づくことができる力であり、最近はその力の本質についてぼんやりと理解し始めていたから。

 

「(この力の名前……これは誰かを守るためにあるんだ、だったらボクはみんなを守れる英雄になりたい!)」

 

その心の成長によって劇的に強さも成長していくベル。その後に現れる困難も、これから増えていく仲間と共に乗り越えるだろう。



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デート・ア・ライブの世界
報告書 3-1 精霊


アンケートにお答えいただいていた皆様……大変……大変お待たせいたしました!


蒼兎はオーロラカーテンを移動している途中、ふとSCP財団に勤務していた頃を思い出す。天界がSCIPという異常存在、そしてその能力について知るために財団内で最高の権限を持つ『O5評議会』と接触し、協力と信頼の証として二年契約で財団に務めていたことを。

 

表向きは新しく雇われた研究員兼戦闘員として、裏向きではO5評議会と同じ、つまり最高の権限を持ち、SCIPについての情報を知り、その知識を蓄えていった。

 

もちろん知識を得させてもらった財団にも貢献した。特にSCP-076とSCP-682の再収容にはかなり貢献した。

 

そんな記憶を思い出しつつまた勤務する羽目になったらもっと楽な役職につきたいと考えながら、新たなる世界へ向かっていった。

 

 

 

 

 

オーロラカーテンを抜けて見えた景色はいきなり街が破壊されたあとのようなものだった。自分を中心にブラックホールが現れたように破壊の痕跡があった。

 

しかし見たところ妙だった。まるで二度ほぼ同じ場所を破壊したような違和感が感じられた。そして飛行する何かが近づいてくる音が聞こえてきた。

 

「……?あれは……」

 

パワードスーツのようなものを来た女性が数人。全員なになら険しい表情で蒼兎を見ている。なにやら話しているようで会話の内容が少し聞こえた。

 

「全く同じところに『空間震』……それも今日で二人目の『精霊』なんて………!」

 

「(今なんて言ったの……?)」

 

『精霊』と、確かに彼女らはそう言っていた。蒼兎がこの状況で、更に『精霊』という言葉を聞いて思い至る作品は一つしかない。そして蒼兎はこの世界にとって最悪な認識のされ方をしたらしい。

 

「(ここは『デート・ア・ライブ』の世界で……よりにもよって精霊扱いですか……。)」

 

デート・ア・ライブという世界において、精霊という存在は秘匿されている。一般の人にとっては地震と同じようなものと認知されている空間震と呼ばれる災害、その原因は精霊であるとされている。その精霊の対処法、その一つは武力を以ってこれを殲滅する、そしてもう一つはデートしてデレさせる。

 

そして精霊と認識された蒼兎は今、正に武力を以って殲滅されそうになっていた。

 

 

 

 

 

なんとか蒼兎は精霊を殲滅するために結成された『AST (Anti Spirit Team)』からの追跡を逃れて元はファミレスと思われる店の残骸に隠れてやり過ごしていた。

 

「(まさかこんな羽目になるとは………いや確かに精霊は女の子だけれども……性別が変わったことがこんな裏目にでるとは……。)」

 

あまりいい事ばかりではないと思わされつつ、この世界に存在しているであろう転生者を探すことにした蒼兎。

 

「(服装は……まぁあまり普通ではないな……。)」

 

オラリオで適当に調達した今の服装は現代と近い文明のデート・ア・ライブの世界には向いていない。なんとか変えたいものだが近くに服が揃えられる場所もなさそうである。

 

「(精霊と認識されても精霊ではないからなぁ……服とか自由には変えられないんだよなぁ……はぁ……。)」

 

追跡を逃れることに集中して警戒する必要がなくなったせいか、仮面ライダーSCIP使用の反動が思いの外響いた。SCIPマグナムを取り出して「500」の能力を使って反動を帳消しにする。

 

「(あまり多用したくはないが……それにこの状況……仕方ない。)」

 

その場で留まっても仕方ないと立ち上がり、服やその他諸々を揃えられることができそうな場所を探してみることにした蒼兎。幸いなのか空間震によって付近の人々は全員避難しているようである。

 

「(この服装が見られるとかいう面倒は起きないように……。)」

 

 

 

 

 

なんとか無事に服装や食料を調達できた蒼兎は転生者を探し始める。少し前は上司からのバックアップによって転生者がすぐに見つかったものだが普段はないことがほとんどなので支障はない。

 

人目につかない場所やデート・ア・ライブの主要人物がいる高校付近を見たが転生者らしいものを発見することはできなかった。

 

「(おかしい……この世界に送られたってことは転生者がいるはず……)」

 

人数が少ないのか動きが消極的なのか全く情報もなにもない蒼兎は途方に暮れた。

 

「(どうしようか……)」

 

 

 

 

 

なんの戦闘の音もなにもない静かな夜。蒼兎は一人、月を見ながら缶コーヒーを飲む。今は4月のようで夜はまだ寒さがある季節、缶コーヒーの温かさは身に染みた。

 

「(まさかとは思うけど……自分と同じ登場の仕方っていうのはない……かな?)」

 

そんな予感をしつつ当たって欲しくはないと思いながら、蒼兎は缶コーヒーを飲み切った。



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報告書3-2 同一視

デート・ア・ライブの世界と思われる場所に来てから約一週間が経ち蒼兎は転生者の有無を調査していた。主人公とそのヒロインが通っている高校を見ているが現在は発生した空間震により半壊している。

 

登校している生徒は当然いるはずがないため蒼兎は人目を気にせず立ち入り禁止のテープを無視して高校の中へ入っていく。主人公とヒロインが接触するのは夕方、そして今は午後三時。いつ何がどこで起きるか分からないため事前に余裕を持って物語の分岐点となるであろう場所に来た蒼兎。

 

崩壊している学校の教室で椅子に座り足を組む。手持ち無沙汰になってしまったと思いながら虚空を眺めていると複数の何かが上空から接近してきていた。

 

「(まるで気にしていなかったな……自分が精霊と同一視されているなんて……はぁ……。)」

 

ASTの隊員達が上空から飛行して接近してきていると分かった蒼兎は無抵抗にやられる訳にはいかないのでビヨンドライバーを装着する。

 

『ビヨンドライバー!』

 

AST隊員達は上空から蒼兎の動向を見ている。

 

「隊長、あの精霊何も仕掛けてきませんね。」

 

「そうね、でも確かに前回いたもう一人の精霊と酷似しているわ、逃げてばかりで何もしてこなかったけど、精霊であることに変わりない。」

 

「総員!攻撃準備!」

 

AST隊員全員がパワードスーツに搭載されたレーザーガンの銃口を蒼兎に向ける。その様子を見た蒼兎も、SCIPミライドウォッチを起動し、ドライバーにセットする。

 

「(交渉の余地なしか……)」

 

『SCIP!』

『アクション!』

 

仮面ライダーSCIPへの変身シークエンスを見たAST隊員達はその変化に危機感を感じ、蒼兎に向けて攻撃を開始した。レーザーが迫り来る中、蒼兎は素早くSCIPミライドウォッチを押してカバーを開き、レバーを閉める。

 

『投影!』

『フューチャータイム!』

 

電子時計の中からライダーの文字が飛び出し、発射されたレーザーは周りの円が防御しながら蒼兎のスーツを形成する。アーマーとマスクが空中に滞在し装着される。

 

『確保!収容!保護!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

変身シークエンスを完了した蒼兎はSCIPマグナムを取り出し、JPと書かれたキー『JPキー』をセットしマグナムに『120』と入力する。

 

『Euclid!』

 

ISの世界でムテキゲーマーとの戦闘で使用したSCP-120-JP-1を召喚し、レーザーを防いでもらう。その間にJPキーを外し、『2501』と入力する。

 

『Safe!』

 

蒼兎の左腕に鉤爪のようなガントレットが装着される。

 

「(いつ見ても思うけど、仮面ライダーバースのショベルアームみたいだよな……。)」

 

そんなことを考えながら蒼兎はそのガントレットをAST隊員達に向け鉤爪で挟む動作をする。その瞬間、AST隊員達が蒼兎に向けて乱射していたレーザーガンは強力な圧力をかけられたようにひしゃげた。

 

「「!?」」

 

隊員達がその能力を見て驚く中、一人だけ蒼兎に向かってくる隊員が居た。短めな銀髪の美少女は装備されたレーザーブレードのような近接武器で蒼兎へ重力と体重を乗せた重い一撃を与えようとした。。

 

その蒼兎の胴体へ切り込もうとするも腕で弾かれてしまう。それでも諦めずに一度距離を取ってからもう一度蒼兎に切りかかる。しかし蒼兎はバックしてそれを避けるが銀髪の美少女は追って蒼兎に切りかかる。

 

何度か斬撃が蒼兎のアーマーを掠めたが全くダメージにならなかった。それでもお構い無しに切り込んでくる少女。蒼兎は少女の足元にSCIPマグナムを撃ち込んで足を止めさせる。

 

「貴女……一体何者なの……?」

 

「そちらが精霊だと認識してるなら、私は精霊なのでしょうね。」

 

「なら、精霊なら消えてもらうわ……!」

 

強く踏み込み、蒼兎にブレードを叩きつける少女。しかしブレードの刃は全く通らず、傷一つつけることはできなかった。

 

「どうして……!?」

 

「(これ以上ここにいたら分岐がどうなるか分からないし……一時退却としますかね……。)」

 

「もう十分です、では私はこれで。」

 

破壊されている場所へジャンプし、その場を離れる蒼兎。追跡を振り切るために高校の後ろの森に身を隠し、そのまま退却した蒼兎。しばらくして校舎からもASTが退却したようなので蒼兎は変身を解除した。

 

「ふぅ……。」

 

一息ついている間に陽は落ち始め、もうそろそろ物語の分岐となる時刻である。蒼兎は校舎に向かった。



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報告書3-3 接触

蒼兎が隠れながら学校の中へ入り、廊下で目的の教室の前まで来ると話し声が聞こえる。既に誰かいるようだった。ドアを少し開けて中を確認するとここの学校の制服を着た男子生徒と紫のドレスと鎧が合わさったような格好の少女がいた。

 

蒼兎は2人の素性を知っていた。男子生徒の方は五河士道。都立来禅高校二年四組の少年でありこの世界の主要人物、主人公である。心を開いた精霊の力を口づけすることで封印する能力を知らぬ間に有していた。

 

現在はその能力を使うために相対している精霊と会話し心を開いてくれるようにしている。順調に話は進み精霊は士道に自身の名前を名付けてくれと言う。

 

士道は精霊に十香と名付け2人は会話を続けた。しばらく経つと精霊の存在を感知したASTが現れる。十香は攻撃してくるASTからバリアを貼り士道と会話を続けようとする。

 

しかし蒼兎の時と同じように銀髪の少女が急接近してきた。銀髪の少女 鳶一折紙はレーザーブレードで切りかかる。十香は大剣で防ぎ互いに距離が開く。

 

精霊は空間震の原因であるとされているが精霊自体も高い戦闘能力を有している。十香は自身の半身である大剣を用いて切りかかる折紙の斬撃を防ぐ。

 

しかし士道がいることに驚き気を取られてしまう。十香はその内に消えてしまい。ASTも撤退していくようである。折紙がAST隊員であることに驚く士道だが、折紙にこのことは秘密にしておいて欲しいと言われ、折紙も撤退していった。

 

ことの顛末を見届けた蒼兎はその場を離れ、転生者が現れなかったことに安堵と疑問を抱く。

 

「(原作を知ってるクソッタレ転生者なら十香は俺のものだとか行って割り込んでくるものだと踏んでいたが……現れないとなると今回は来ないのか?)」

 

転生者か来ないことを不審に思いつつも士道と十香の次の接触の際に現れる可能性も危惧して蒼兎はその日までこの世界にいる転生者を探ることに注力した。

 

翌日、士道と十香の接触のその日まで転生者を探ると考えていながら2人の接触は思ったよりも早く来ていた。

 

「(会って翌日なんだけど……全然転生者のこと調べてないんだけど……。)」

 

そんなことを考えつつ、蒼兎は2人の様子を見ている。十香が現れる際、空間震が発生していたがこの日は何も起こらずに出現した。さらにそこへ士道も現れる。2人は何かを話し合っており十香の紫のドレスのような鎧であった姿は士道の学校の女子制服に変わる。

 

「(あれ楽でいいなぁ……。)」

 

2人は街の方へと向かっていった。その後、2人の様子を見ていたが特に何も無く十香が現代の食べ物を堪能しているだけだった。

 

「(何も起こらない?転生者はこの世界にいないのか?)」

 

「そこの貴女」

 

唐突に声をかけられた蒼兎は後ろに振り返る。そこにいたのはASTの隊員、鳶一折紙だった。

 

「(ちょくちょく影が見えてたけど気づいてたのか……ていうか忘れてた。)」

 

「なんで士道をつけていたの、精霊である貴女が……?」

 

「精霊?なんのことです?」

 

「とぼけないで!」

 

十香の戦った際のレーザーブレードよりも刀身が短いレーザーナイフを突きつけてくる。服装は普段着なため緊急時のための装備であることが伺える。

 

「そんなものを突きつけて、一体なんなんですか?」

 

「やっぱり、貴女は精霊。こんなものを突きつけられて動揺しないはずがない。」

 

「………。」

「………。」

 

しばらく無言でいると折紙は耳につけている無線機から何かを聞いている。

 

「はい、了解しました……。」

 

「急用ができたから今ここでは見逃すけど、次は逃がさない。」

 

そういってどこかへ立ち去ってしまう。今の自分が完全にストーカーであること、そしてそんなつもりは無いと思っていても言い訳にしか聞こえないことに項垂れつつも2人の後をつけていった。

 

日が落ち始めた頃、2人は公園で夕日を眺めていた。クレーンゲームで彼女が初めてこの世で食べたきなこパンのぬいぐるみを抱えながら2人は話し合っている。

 

「(なんの音沙汰もなし……どうしたもんかな。)」

 

そこへ突然、士道が十香を押し退けた。突然の行為に怒る十香だが士道の体は穴ができ、そして倒れた。誰かに狙撃されたと理解した時、顔を俯けた。

 

「士道がいてくれたらもしかしたらと思った。でもだめだった、世界は私を否定した!!」

 

震える声でそう言って紫のドレスのような鎧を展開し、周辺に斬撃を飛ばしていった。辺り一面を破壊し狙撃手であるAST隊員を見つける。狙撃手だったのは折紙だった。

 

「そこか!!」

 

怒号を飛ばし、大剣が収納されていた玉座が細分化され大剣と一体化した。遠くから見ても明らかに膨大なエネルギーを帯びているそれは、狙撃手である折紙に向けられようとしていた。

 

折紙は近くにいたASTの隊長である人物に避難を促しているが士道を狙撃してしまったショックで全く動けない。

 

「(アレどうするんだ……?)」

 

エネルギーが放たれようとしたその時、士道が上から降ってきた。それを受け止めた十香は訳が分からず困惑していた。

 

「シドー!?」

 

訳が分からないままの十香に士道は先程の十香の言葉に対して答えた。

 

「他の奴らがお前を否定するなら俺はそれよりずっと強くお前を肯定する!!」

 

その言葉に十香は涙を浮かべる。しかし臨界状態に突入している自身の剣はもう制御が効かないようだった。

 

「十香!これを止めてくれ!」

 

「む、ムリだ!もう止めることはできない!」

 

「どうすれば……!?」

 

士道は耳に付けられた無線機から何か指示を受けて十香に提案する。

 

「十香、それを止められるかもしれない方法があるんだが……」

 

「本当か!?何をすればいい!?」

 

「えぇっと……キスをするんだが……!」

「キスとはなんだ!?」

「えっと……唇と唇を合わせるんだが……!」

 

「分かった!」

 

そう言った直後、2人は口づけをする。瞬間エネルギーは霧散し、十香の紫のドレスを思わせる鎧も消滅した。空を飛んでいた2人は中を浮くように着地し、裸になってしまった十香に対し士道は自身の上着を着せた。

 

「(なるほど……アレが封印か……。)」

 

そんな2人に対して近づいてくる。人影が現れた。

 

「いやぁ、士道くん。お見事お見事、凄いね封印、てかホントにキスして封印するのかぁ!」

 

「君は……?」

 

士道よりも幼く見えるその少年は2人に対して拍手を送りながら近づく。へたり込む十香と膝をつく士道に近づいてやがてしゃがんで2人と同じ目線になる。

 

「いやぁ士道くん、ありがとう、封印してくれて……おかげでボクは……君から力を抽出できる。」

 

赤い銃口と紫のチェーンソーが付いたゲームパッド、そのパッドの赤い銃口がついた方を士道の肩に当て、何かを吸い出していく。

 

「う、ぐぁあ!!」

「シドー!?」

 

全てを吸い出したのか少年は2人から下がってパッドに表示された画面を見て満足そうに頷く。

 

「うんうん、君が封印した後に能力を抽出しなくちゃいけないのが厄介だけど、まぁデータが得られるならなんでもいいや!」

 

「そういう事でしたか。」

 

少年の目的を聞き出したところで蒼兎が現れる。

 

「……だれ?」

 

「転生省特典犯罪制圧課、白神蒼兎です。この世界を乱す貴方の特典と魂を回収します。」

 

「えぇ……今更来たの?」

 

「なんですって?」

 

「もう既に滅ぼした世界なんていくつもあるのに、今更この世界でボクを殺そうっての?遅すぎだよ。」

 

そう言って少年はゲームパッドの銃口を地面に向けてオレンジの粒子を放つ。

 

「ボクはこの精霊のデータを早く見てみたいからコイツの相手でもしてて!」

 

そう言って放たれたオレンジの粒子は徐々に人の形を形成していき真っ黒な鎧に身を包んだ黒い仮面を顔につけている金髪の騎士だった。鎧と同じく真っ黒に染った剣を携えている。

 

「セイバーオルタ、やっちゃって。」

 

少年の指示を受けたセイバーオルタは無言で剣を構えて蒼兎へ向かってきた。




今回まで出てきたSCIP達の能力解説NO.3
SCP-143 刃桜
外見はソメイヨシノに似通っているがこのSCIPの異常性は花弁である。花弁は淡紅色でなめらかなガラスの質感を持っており、縁はかみそりのように鋭く、取り扱いを誤れば容易に肉を切り裂く。仮面ライダーSCIPは周辺に1~3本の143を発生させ、風を巻き起こし相手に花弁を送り付ける。
SCP-2501
人間の手と前腕に適合するように設計された機械的なガントレットでその異常性は、使用者がソケットに腕を挿入し内部から鉤爪状機構を駆動させた時に発生する。使用者の顔の前に保持されている間、SCP-2501は鉤爪状機構の動きに連動して使用者の視界内の物体に極度の圧力を加えることができる。仮面ライダーSCIPは自身の左腕に軽量化、簡略化されたSCP-2501を装着し、選んだ対象に一定の圧力を加える能力を与える。


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報告書3-4 偶然

無言で剣を構えて接近してくるセイバーオルタに対し蒼兎はドライバーに素早く起動したウォッチを装着する。セイバーオルタの首を狙った切り払いをギリギリで避けてウォッチのカバーを展開する。

 

『SCIP!』

『アクション!』

 

ドライバーのレバーを閉じてセイバーの上段切りを先に展開した右腕の装甲で受ける。

 

『投影!』

『フューチャータイム!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

左に持ったSCIPマグナムの銃口をセイバーの腹に当ててゼロ距離で放つ。数度引き金を引いて後退させる。しかし後退しただけでダメージはあまり無いことが見受けられる。

 

「流石にこんなんじゃダメか……。」

 

JPキーを取り出しマグナムに装填、素早く「910」の数字を打ち込み能力を解放する。蒼兎の付近に出現したのは『一時停止』の道路標識だった。

 

その様子を見ていた少年は困惑する。

 

「なんで道路標識なんか……?」

 

出現した道路標識、『シンボル』は一時停止の標識部分が()()()()()()()()()()。するとセイバーの頭上に巨大な岩が降ってきた。セイバーは携えている剣の刀身に膨大な魔力を纏わせて降ってくる岩を粉砕した。

 

標識が変わったことで何かが起こると直感で感じ取ったセイバーはシンボルの軸部分に切りかかる。切り上げで軸部分を切断しようとした。しけし軸部分は切れるどころか折れることも傷つくことも全くなかった。

 

シンボルは再度、標識部分を変形させる。高電圧の標識に変形し、下に矢印の補助標識が追加されていた。矢印の方向は真下、セイバーを指していた。

 

直後、雷にうたれたかのような超高電圧がセイバーを襲う。セイバーの剣や鎧からは電流が走り、行動不能になる。

 

「マジか……。」

 

サーヴァントであるセイバーオルタが道路標識にやられるとは考えもしなかった少年は目の前の光景に絶句していた。そしていつの間にか消えていた人物の存在を後ろで銃口を突きつけられ、そこで初めて気づく。

 

頭を横に倒すと、自分の頭があった場所にエネルギー弾が通り過ぎる。すぐさま赤い銃口と紫のチェーンソーが付いたゲームパッド『ガシャコンバグヴァイザー』のチェーンソー部分を向けてグリップにセットし後ろにいるであろう人物に振るう。

 

バックステップでよけたその人物はセイバーオルタを圧倒する道路標識を出現させた蒼兎だった。

 

「ねぇ、アレ何?サーヴァントを圧倒する道路標識とか見たことないんだけど?」

 

「知る必要はありません、貴方の魂と特典は回収されるのだから。」

 

「それにあれは元より秘匿されるべきものでしてね。」

 

「へー、なら。お前を解体すれば分かるかな!?」

 

「それは不可能です、解体できても動力も何もかも、何一つ理解できないでしょうね。」

 

バグヴァイザーのチェーンソーを蒼兎に突き出し突進する少年。蒼兎はマグナムで軌道を逸らす。

 

「チッ!」

 

少年は舌打ちをしながら地面をローリングで転がりバグヴァイザーをグリップから取り外し、赤い2つの銃口がついた方の向けて装着する。

 

『チュ・ドーン!』

 

蒼兎へバグヴァイザーを向けてエネルギー弾を発射する。しかしそのエネルギー弾を蒼兎はマグナムで撃ち落とす。

 

「えぇ……そんなことできるの……?」

 

少年はバグヴァイザーを蒼兎に向けて、セイバーオルタの時のようなオレンジの粒子を放出した。現れたのはインフィニット・ストラトスの世界で見た自動操縦型のISだった。しかも現れたのは一体ではなく4体。

 

「なぜISを……しかも4体も……!」

 

「それで遊んでてね!」

 

少年はバグヴァイザーをセイバーの方へ向ける。セイバーはオレンジの粒子となってバグヴァイザーに吸収された。蒼兎はマグナムからJPキーを抜いて「914」の数字を入力した。

 

能力を帯びたエネルギー弾をISに向けて撃つ。1番手前に居たISを狙ったがISはエネルギー弾を回避した。搭載された人工知能の性能を甘く見積っていた蒼兎は驚く。

 

さらに「914」の能力を帯びたエネルギー弾はシンボルの道路標識部分に着弾してしまう。瞬間、シンボルから光が放たれる。その場にいた全ての人物があまりの光の強さに目を瞑る。

 

やがて発光が収まり発光源の方を向くと、シンボルがいた場所には1()()()()が地面に刺さっていた。

 

何が起きたのか理解が追いつかない蒼兎は向かってくるISの攻撃をかわしながらシンボルがいた場所にある剣の方へ向かう。

 

剣を手に取ると柄の部分には小さな画面が表示されていた。画面の左側には一時停止の標識が映っていた。

 

「どういうことだ?」

 

ISがエネルギーソードを用いて蒼兎に切りかかる。蒼兎は仮称シンボルブレードで受け流し、距離を取る。4体のうち2体がエネルギーソードを構え、もう2体はレーザーガンを持ち蒼兎へ銃口を向けていた。

 

「チッ!」

 

舌打ちをしながらシンボルブレードを構えると画面の映像が変化した。画面には一時停止の標識から『レーザー』のハザードシンボルに切り替わっていた。

 

直後、レーザーガンを持ったISにどこからか飛来したレーザーが直撃する。一体はレーザーガンが破壊され、もう一体は操縦席部分にあった制御部分を破壊され、動かなくなった。

 

シンボルブレードは再度変形し始める。画面に映されたのは『爆発性』『酸化剤』『腐食性』さらに右の画面に補助標識が現れ、そこにはISの簡略化された標識が映されていた。

 

そして蒼兎の前にいたIS 3体はそれぞれ内部から爆発し、酸化したよう錆び付き動かなくなり、停止した機体の操縦部分は腐食していた。

 

「能力が完全にシンボルだ……標識で能力を行使して、補助標識で行使する対象を指定する……。」

 

「もしやこれは最強の武器なのでは……?」

 

Iシンボルブレードの性能に驚愕していた蒼兎は同じくIS4体をほぼ無傷で無力化させられたことに怖気付いて逃げた少年に気が付かなかった。

 

いつの間にか五河士道と十香も消えており、ASTが隊列を組んでこちらに向かってきていることに気が付く。

 

「(派手に動き過ぎたか………)」

 

士道達をストーキングするように隠れていた森の中に向かいその場から去った。




今回まで出てきたSCIP達の能力解説NO.4
SCP-910- JP シンボル
標識部分が変形し、それに準じた超常現象の発生させる。通常は一時停止の状態だがたまにイタズラに能力を使用している。

SCP-914 ぜんまい仕掛け
重さが数トンある巨大なぜんまい仕掛けの装置で、2つの大きなブースが存在し 入力 と 出力 と書かれたラベルがそれぞれ貼ってあります。ブースの間にはノブがついた銅のパネルが存在し、『Rough』『Coarse』『1:1』『Fine』『Very Fine』の5つの設定に矢印を合わせる事が出来る。入力ブースにものを置き5つの設定のうち一つに合わせて起動すると、入力ブースに置かれていたものを改造する。仮面ライダーSCIPがこの能力を使用する際は『Very Fine』固定である。


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報告書3-5 不明

士道と十香のデートから数日。しばらく雨が降る日々が続いていた。蒼兎は士道達のデートの日に現れた数多の作品の登場人物を出現させる転生者について考察、捜索をしていた。

 

「(どういう特典なんだ?バグヴァイザーを持っていたから幻夢か?それならデータをバクスターウィルスで収集、解析、再現って形で呼び出すこともできそうだが…。)」

 

「(しかも既にいくつかの世界を滅ぼしてるとも言っていたな…。)」

 

雨にうたれながら思考に耽っていると神社で緑色のフードを被った少女を見つける。

 

「(こんな雨の日に遊んでるのか…?)」

 

「(いや、そういえばここの主人公が次に封印する精霊って確か…。)」

 

しばらくその少女を眺めていると声をかけられた。

 

「あの……?」

 

「(ヤバ、不審者だと思われたか?)」

 

声をかけられた方を向くとそこにいたのは五河士道だった。

 

 

 

 

 

「じゃああの子は知り合いじゃないんですか?」

 

「ええ、勘違いさせてしまいましたね、すみません。」

 

少女の方を見ているのが不審だったようで声をかけてきた士道に対し蒼兎は知り合いに似ていたと嘘をついて誤魔化す。

 

「じゃああの子はこんな雨の中一体何を?」

 

「さぁ?」

 

「……あの」

 

「はい?」

 

「あの時……公園にいた人ですよね?」

 

「なんの事ですか?」

 

「あ、いえ……人違いみたいです……。」

 

「(絶対確信してるだろう……あの夕陽の中じゃ姿を隠すこともできなかったしな……。)」

 

士道と蒼兎が会話をしている間に、いつの間にか少女はどこかへ行ってしまっていた。

 

「あれ?あの娘は……?」

 

「いなくなってしまったようですね、それでは私もこれで……。」

 

会釈してその場から離れる蒼兎、士道は引き留めようとするも理由がないため蒼兎をこの場から離してしまった。

 

 

 

 

 

しばらく降っていた雨も止み、引き続き転生者の捜索と考察に耽っていた蒼兎。しかしあれほど派手に動いていたのにも関わらず転生者に関する情報も手がかりも全くなかった。

 

出現した公園に設置されていた監視カメラの、改変前の映像を見ても突然消えるようにいなくなっていた。余談だがその映像は転生省の天使達が改変し、さらに士道をサポートするための組織『ラタトスク』によって精霊に関するものも改変された。

 

そんな改変前の映像を何度も確認してみるも全くと言っていいほど手がかりはない。

 

「消え方がバグスターに似てるといえば似てるんだよな。」

 

『バグスター』インフィニット・ストラトスの世界に居た転生者が持っていた『仮面ライダーエグゼイド』の本来の世界に存在する人に感染するように進化したコンピューターウィルス。

 

バグスターは人に感染し、感染者から分離するとゲームを模した怪人になる。感染者を消滅させれば完全体となる。

 

そしてあの公園に居た転生者が持っていたゲームパッド ガシャコンバグヴァイザーも仮面ライダーエグゼイドの世界に存在するデバイス兼武器である。

 

「(もしかして……アイツは俺がいたISの世界から来たのか?)」

 

突然、空間震警報が鳴り響く。街の人々は慌ただしくシェルターに避難していく。蒼兎は転生者が精霊の元にいる可能性を考え、空間震の発生源へ向かった。

 

向かう中で路地を通っていると先には空間震警報が鳴っているにも関わらずシェルターに避難せず、蒼兎を通らせないように立ち塞がっている3人の男がいた。

 

「早く避難した方がいいですよ。」

 

そう言って通ろうとするも男達は蒼兎が通ろうとした道を塞ぐ。後ろに回り、横に立ち、蒼兎を囲む男たち。不意に後ろの男が手のひらを鋼のように硬化させて蒼兎に突き出す。

 

蒼兎はしゃがんで回避と同時に足払いを掛ける。それを皮切りに前の男が靴に仕込んでいたナイフで蹴りあげるように足を振り上げる。

 

しゃがんでいた蒼兎はバク転のように後ろに下がって回避する。足払いを掛けた男を踏んづけながら向かってくる男2人を見る。仕込み靴で再度蒼兎を切りつけようとしてくる者と拳に黄色いガントレットを装着した男が足を突き出し、拳を構える。

 

「(あの転生者の手先か?)」

 

拳を突き出した男の腕を掴んで後ろに引っ張る。足を突き出してきた男は足先のナイフが届く前に脛を蹴って防ぐ。3人を無視して精霊の元へ向かうが男達は追いかけてくる。

 

「本当に厄介な……!」

 

全速力で走って振り払い、目的地である精霊の出現場所に着いた蒼兎。そこには能力を封印されたはずだが、大剣を持った制服姿の十香が士道を守るように剣を構えていた。

 

十香の後ろには士道と雨の日の神社にいた少女が士道の上着を1枚着ている状態で座り込んでいた。

 

剣を向けられているのは目的の転生者だった。

 

「ありゃりゃ、随分と嫌われちゃったかなボク?」

 

「それに、面倒な人も来ちゃったし。」

 

蒼兎に目を向けながら呟く転生者。十香から視線を外し、蒼兎に声を掛ける。

 

「もう振り払っちゃったの?手持ちの転生者あれだけだったんだけど。」

 

「面倒な者を寄越してくれましたね、足止めのつもりなら英霊の方がまだやりやすかったのに。」

 

「そうなの?じゃあ次からそうするね。」

 

「いえ、次はありません、ここで貴方を消すので。」

 

「おお怖いなぁ、でもまだ彼から精霊のデータを貰ってないし死ぬつもりもないから」

 

十香は士道と少女を抱えてこの場から離れていく。転生者はバグヴァイザーをチェーンソーにして構え、蒼兎もドライバーを腰に装着し、SCIPウォッチを起動する。

 

転生者が駆け出し蒼兎に向かってくる。先程振りほどいた筈の転生者達も後ろから迫ってくる。蒼兎は冷静にドライバーにウォッチをセットし変身シークエンスを終わらせる。

 

『フューチャータイム!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

手元に現れたシンボルブレードでバグヴァイザーを受け止める。チェンソーで刀身からガリガリと火花が散らされているが削られてはいなかった。

 

シンボルブレードを振り上げてバグヴァイザーを引き離し距離を開ける。しかし転生者のほうからすぐに詰め寄りバグヴァイザーを振るう。

 

「なぜ精霊のデータを欲しがるのですか?」

 

「え?だってこの世界を象徴する力なんだよ、欲しがるに決まってるじゃないか!」

 

「ではなぜ力を欲するのですか?」

 

蒼兎の質問に答えながらも攻撃の手を緩めない転生者。バグヴァイザーをグリップから外し銃口がついた方を蒼兎に向けて装着する。

 

『チュ・ドーン!』

 

「僕はそういうゲームのバグスターだからさ!」

 

バグヴァイザーの銃口からエネルギー弾が吐き出される。

 

「貴方が……バグスター?」

 

「そう、僕はとある学生が作った侵略ゲームのバグスターに転生したと言うわけさ。侵略ゲームだからね、当然自分が生まれ変わった世界はもちろん、女尊男卑が蔓延る世界、願いを叶えるために魔術師同士が殺し合う世界、その他にも世界を巡って破壊してきた訳さ。」

 

「その世界にいた転生者もみんな利用して破壊してね。」

 

「今まで自由にやってきたのに今更君みたいな邪魔者が来られてもねぇ……」

 

「(一昔前の悪役のような自己紹介しやがって…!)」

 

「(でもバグスターってところは予想通りだったな…。)」

 

「なるほど、ならばここがあなたの終着点です。潔く散りなさい!」

 

「いやだね!まだ暴れ足りないよ!」

 

バグスターの転生者が上げた腕を振り下ろし後ろから迫ってきた転生者達三人が蒼兎に飛びかかる。二人に蹴りを入れて一人をシンボルブレードで両断する。

 

両断された転生者はオレンジの粒子となって消えて行き、バグスターの転生者のバグヴァイザーに吸収されていった。残り二人も起き上がり再度蒼兎を襲おうと飛びかかる。

 

知性はあまりないNPCのような動きで蒼兎へ真っ直ぐ突っ込んでくる。蒼兎はドライバーのレバーを開閉させ、解放したウォッチのエネルギーをブレードと足に込める。

 

不用意に突っ込んできた転生者を回し蹴りで爆散させ、続いてやってきた転生者を上下に両断する。倒した転生者はバグスターとして回収されていった。

 

「ふーん、やっぱり転生者狩りを生業にしてるだけあってやっぱり強いね。」

 

「この力は割と最近に手にした物ですがね。」

 

「そっかぁ、じゃあその便利そうな力も根こそぎ貰おうかな!」




失踪から帰ってきました。
失踪している間にゼロワンとセイバー、キャメロットの映画を見てきました。あと『岸辺露伴は動かない』も今見終わったところです。脚本が小林靖子さんなので安心していましたが予想以上に面白かったです。露伴先生役の高橋一生さんの演技には『凄み』がありましたね……。
つまりなにが言いたいかと言うと最近面白い作品多すぎますね。


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報告書3-6 降臨

「そっかぁ、じゃあその便利そうな力も根こそぎ貰おうかな!」

 

『ギュ・イーン!』

 

バグスター転生者はバグヴァイザーをチェーンソーモードに切り替えて突撃してくる。蒼兎の持つシンボルブレードにはまだウォッチから放出されたエネルギーを纏っている。一撃でもその斬撃を喰らえばバグスターでもただでは済まない。

 

カウンターを決めるつもりで突撃してくるバグスター転生者に構えていた蒼兎だが2人の間に割って入るように銃撃の嵐が起きた。即座に2人はその場から後退し撃ってきた相手を目線で追う。上空にはASTの隊員達がレーザー銃を構えた状態で滞空していた。

 

追撃で更に銃撃が2人の間で起こるが蒼兎はブレードを振り上げて纏ったエネルギーで相殺する。バグスター転生者は自身をデータ化して転移することで回避した。

 

「おっと、邪魔が入ったみたいだ。」

 

蒼兎はシンボルブレードにまだ残っているエネルギーを斬撃としてASTに向けて放出して距離を取らせる。

 

「この程度の横槍があるだけで撤退するつもりですか?」

 

蒼兎はバグスター転生者を逃がすつもりは全くなくブレードを相手に向けて構える。

 

「このまま続けるにはちょっと戦力不足かな、悪いけど今日のところはお開きにしよう。大丈夫、次会う時には全力を出すからさ?」

 

蒼兎は上空と目の前の獲物を交互に見てどうするか考える。

 

「(今ここで仕留めればこの世界での使命は終わって次の世界に行ける。この世界にいる面倒な住人を相手しなくて済むんだが……相手の方は既に撤退する気だし、ASTの相手をしながら戦うのも不可能ではないが正直なところ面倒だな……)」

 

「(……だが面倒なだけだ)」

 

「貴方は罪を犯した転生者です、見逃す訳には行きません、今ここで殺します。」

 

「んふふ、じゃあしょうがないね……!」

 

バグヴァイザーの銃口を空高く向けてバクスターウィルスを放出する。ウィルス達は集まっていき巨大な人型を形成していく。現れたのは頭のない目の付いた胴体、両腕らしきリボルバー式の巨大な大砲が付いた巨人『バクスターユニオン』だった。

 

召喚した当人は空間転移でこの場を去ってしまったようで、蒼兎もそれを探すために動きたいもののこの場に残ったバグスターユニオンを放っておくことはできないため、ASTの相手をしながらもユニオンを倒すために動き出す。

 

「(面倒な相手を残していきやがって……!)」

 

巨大な大砲を蒼兎に向けて放つユニオン。蒼兎はシンボルブレードで巨大な球を両断し直撃を防ぐ。ドライバーのレバーを開閉させて足へエネルギーを溜めて纏う。

 

『ビヨンドザタイム!』

『SCIPエクスプロージョン!』

 

今まではブレードと足などでエネルギーを分散させて使っていた必殺技を今度は全て足に向ける。バクスターユニオンも大砲は無駄と判断したのか蒼兎に向かって突貫していく。

 

蒼兎もユニオンへ向けて走り出し、互いに距離を詰めていく。ユニオンは腕に当たる大砲を突き出す。

 

蒼兎はジャンプと同時に突き出された大砲を足場にして更に跳躍する。重力に従って落下し、足を突き出してライダーキックを放つ。

 

防御の姿勢をとるが一瞬の拮抗もなくユニオンの腕は砕ける。胴体をも蹴り抜かれ蒼兎が着地した瞬間に爆炎を上げて消滅した。

 

しかし蒼兎には次の問題が待っていた。空間転移や瞬間移動といった技を使えない状況の蒼兎はASTを撒く必要があった。既に何度もやってきたことだが手間取ることは変わりなかった。

 

 

 

 

 

「ふぅ……。」

 

30分程かけてASTからの追跡を逃れた蒼兎は次の戦いがこの世界で最後になると考えていた。

 

「(奴は次合う時は全力を出すと言っていた、こちらも何かしら策を考えるか……。)」

 

その言葉から数週間の時が経ったが、その間は蒼兎もバクスターの転生者も両者全く動きは無かった。不自然な静けさにASTもラタトスクも混乱を極めていた。

 

特にラタトスクはその間に『時崎 狂三(ときさき くるみ)』通称ナイトメアと呼ばれる精霊が士道の学校に転校してきた際にかなりの一悶着がありその影響で士道の妹である琴里が精霊イフリートの力を持った人間であることが分かってしまった。

 

更にイフリートの力を琴里が使えば制御できなくなるという。ナイトメアとの一悶着の際に暴走してしまった琴里の力を封印するために士道は義理の妹ではあるが、封印のためにデートすることになった。

 

現在の蒼兎は士道と琴里の遊園地デートを見守りつつ、周辺にバグスターがいないか探していた。

 

「(外面が明らかにストーカーのそれなんだよな……もし他人に見られたら誤解されそうだ……実際もうされてるが。)」

 

突如、状況は一変した。2人のデート中に琴里が精霊だと知った鳶一折紙がASTの強力な試作装備を持ち出して攻撃を仕掛けてきた。

 

ミサイル、エネルギー弾、攻撃の数々がデート中であった2人と遊園地に来ていた客達を見境なく襲う。しかしその攻撃は突如現れたバグスターユニオンの出現によって阻まれた。

 

「アハッ!間一髪だったなぁ!」

 

そんなことを言いつつ危機感を感じているようには全く見えない様子で現れたのはバグスター転生者であった。

 

「ほら、五河士道?さっさと封印しちゃいなよ、あの女の子の攻撃は止まらないぜ?」

 

「なっ、何言ってるんだ!?」

 

悪魔の囁きのように唆す転生者。しかし転生者が言っているように鳶一折紙の攻撃は止まらない。それでも士道は無理やり自身の妹に封印のためのキスを行うことが出来なかった。

 

「おいおい、俺は親切で言ってやってるのに……悲しいなぁ?」

 

そう言って腕に取り付けたバグヴァイザーの銃口を2人に向ける。

 

「まぁいいよ、気絶させて2人から無理やり取るから」

 

士道が琴里を庇い転生者が行動しようとした直後に士道達とバグスター転生者の間にエネルギー弾が通り過ぎる。

 

「そろそろやめにしましょうか?」

 

SCIPマグナムを向けたまま向かってくる蒼兎。その様子をいい加減飽きたと言うような表情を浮かべるバグスター転生者。

 

「相変わらず最悪のタイミングで来るね、転生者狩りさん?」

 

「貴方を消すためですよ。観念してください。」

 

「はぁぁー……何回も消す消すって!聞き飽きたんだよ!」

 

「私もいい加減、仕事を終わらせたいです」

 

蒼兎はビヨンドライバーを腰に装着し、SCIPミライドウォッチを起動する。流れるように装着したドライバーにウォッチを取り付ける。

 

『SCIP!』

『アクション!』

 

ウォッチのカバーを開き蒼兎の背後に浮かぶ電子時計と光の線がバグヴァイザーから放たれたエネルギー弾を防ぐ。

 

「変身」

 

『投影!』

『フューチャータイム!』

『確保!収容!保護!』

『仮面ライダーSCIP!SCIP!』

 

全身を光が包み、変身を完了させた蒼兎はSCIPマグナムとシンボルブレードを両手に持ち、バグスター転生者と対峙する。

 

「いい加減、ボクも君の相手をするのはうんざりだよ……。」

 

「でも実はいい機会だとも思ってるんだ。ボクの進化後の実験台としてはさ!」

 

バグスター転生者はバグヴァイザーから大量のウィルスを撒き散らして蒼兎の周辺に黒いスーツを着た特徴的な頭を持った兵達を召喚した。

 

それぞれのバグスターの兵達が剣や銃、槍や斧などといった武器を有しており、立ち姿からもただの雑魚ではないと感じさせるものがあった。

 

蒼兎はSCIPマグナムにJPキーを装填して「120」を打ち込む。

 

『Euclid!』

 

マグナムのトリガーを引いて黒褐色のカニ型巨大生物を出現させる。2本のハサミを振り回し武器を持ったバグスター兵達を一斉に屠る。ただ動くだけでかなりの数を召喚されていた筈のバグスター兵達も、もう数体しか残っていない。

 

しかし蒼兎が対応するその間にバグスター転生者は既に目的を果たしていた。不敵な笑みを浮かべるバグスター転生者の足元には倒れた士道と琴里がいた。

 

バグスター兵達が倒されたことに気づくもバグスター転生者は不敵な笑みを崩さない。

 

「もう終わった?やっぱり雑魚じゃこんくらいだよね?」

 

「次は貴方ですよ」

 

マグナムをバグスター転生者に向けて遠慮なく撃つ蒼兎。バグスター転生者の方はバグヴァイザーから1体のバグスター兵を召喚してエネルギー弾を防いだ。

 

消えていく兵をバグヴァイザーで回収しながらもバグスター転生者は笑みを崩さない。まるで既に勝利をしていると誇っているような表情に蒼兎は違和感を抱き、バグスター転生者に問いかける。

 

「なにがそんなにおかしいのですか?」

 

「いやいや、この世界の精霊という存在に対するデータ採集が終わってね。ようやく俺は次のステージに進化ができるんだ。」

 

「そうなればもう、なにも恐れることは無い。」

 

そういってバグスター転生者はバグヴァイザーの銃口を自身の胸に突き刺しなんらかのデータを自身に出力した。

 

「グゥッ、ウゥゥッ!!」

 

出力している間にはバグスター転生者がもがき苦しみながらもバグヴァイザーの画面に様々な図面やキャラクターが表示され、それらは全てバグスター転生者へと出力された。

 

「ハァ…ハァ……ハハ!」

 

バグスター転生者が項垂れていた頭を上げてその手に表したのは蒼兎がISの世界で見たゲーマドライバーと1つのガシャットだった。

 

ガシャットはISの世界で最後に戦った転生者が持っていた内の1つと酷似していたが、色は金ではなく紫だった。

 

バグスター転生者はゲーマドライバーを装着し、その手に持っていた『ゴッドマキシマムマイティXガシャット』を起動する。

 

『ゴッドマキシマムマイティX!』

 

壮大な起動音と共にバグスター転生者の背後にゲームのスタート画面が表示され、周辺にゲームエリアを展開していく。

 

「レベルビリオン、変身」

『マキシマムガシャット!』

 

ガシャットをゲーマドライバーにセットしてピンク色のレバーを開く。

 

『ガッチャーン!』

『不ー滅ー!』

『最上級の神の才能!バグスター!バグルアップ!』

『最上級の神の才能!バグスター!バグルアップ!』

 

壮大な待機音と口上が繰り返し流れ、バグスター転生者の姿が代わり、ゲームスタート画面から巨大な顔が現れる。

 

バグスター転生者は黒を基調としたスーツに紫の軽量アーマーを身に纏う、ISの世界で見たエグゼイドと似て非なる戦士『仮面ライダーゲンム』に変身し、その頭上にある顔はゲンムの仮面と全く一緒だった。

 

バグスター転生者がドライバーにセットされたガシャットにあるゲンムの顔が造形されているスイッチを押し込み、壮大な待機音が止まる。

 

『ゴッドマキシマムX!』

 

ゆっくりと空中浮遊をしたゲンムは顔型の巨体に包まれ、そこから太い腕と足が飛び出し、顔型の巨大ロボアーマーに変形した。

 

少しエコーがかかった声でバグスター転生者は名乗り上げた。

 

「仮面ライダーゲンム……レベルビリオン……。」



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報告書3-7 超常

二話連続投稿です!前話を見ていない方はそちらからご覧下さい!!


仮面ライダーゲンム レベルビリオンへ変身したバグスター転生者は腕を上げて掌を蒼兎へ向ける。その挙動だけで蒼兎の仮面ライダーSCIPの装甲にヒビを入れるほどの衝撃波を放った。

 

勢いよく吹っ飛んでいった蒼兎はジェットコースターのレールを支える支柱と何本も激突しながらようやく止まった。

 

仮面がヒビ割れ、胸アーマーは円のような窪みからヒビが入り、まるで弾丸を受け止めた強化ガラスのようであった。吹っ飛ばされた蒼兎の元にバグスター転生者が瞬間移動で現れる。

 

「おいおい、ボクを消すって息巻いてたあの頃の君はどこにいったのかな?」

 

蒼兎を持ち上げて顔を近づけるバグスター転生者。心底勝ち誇ったような声で蒼兎を投げ飛ばそうとしてSCIPマグナムを頭に向けられていることに気づく。

 

今更どんな攻撃も通用しないと考えていたバグスター転生者は余興のようなつもりでその攻撃を受けることにした。蒼兎の持つSCIPマグナムには「3001」の番号が入力されていた。

 

『Euclid!』

 

マグナムの引き金を引いてもエネルギー弾が撃ち出されることは無かった。代わりに起こったのはバグスター転生者を囲うように穴が現れた。

 

バグスター転生者を飲み込んだ穴はそのまま閉じるように消えた。蒼兎を掴んでいた巨大な腕ごと吸い込まれたため蒼兎は地面に倒れる。

 

「(くぅ……予想外だ……まさかゴッドマキシマムに変身するとはな……)」

 

「(クソッタレなあの空間に送った程度じゃ倒されねぇだろうが時間稼ぎにはなってくれよ……)」

 

バグスター転生者が居ないうちに蒼兎はSCIPマグナムであらゆる異常物品を召喚することにした。

 

 

 

 

 

先程穴の中へと消えたバグスター転生者がいた場所、空間から亀裂が走る。次第に亀裂は大きくなり黒い腕が亀裂を殴り壊した。

 

「ふぅ……なんとか戻って来れたよ!」

 

ため息をつきながら現れたのは巨大なロボアーマーを失ったバグスター転生者。

 

「まさかゴッドマキシマムのアーマーを失うことになるとは……まぁいいよ、いいインスピレーションになった!」

 

バグスター転生者が体験した空間は財団のある世界では人間が入れば語るも恐ろしい結末になる空間だった。財団世界においてヒューム値と呼ばれるものが存在する。ヒューム値の高いものは低いものを塗りつぶせる。

 

財団における現実改変の能力を持つ者はヒューム値が高いので現実世界を改変できる。蒼兎がバグスター転生者を送り込んだ空間はヒューム値が極度に低く、あまりに低すぎるため自身という現実が()()()()()()空間であった。

 

バグスター転生者はアーマーを失う代わりに現実世界へ戻ってきた。目の前に広がる光景は本当に現実なのか疑う光景であった。

 

先程バグスター兵を屠った巨大な蟹。自身の顔を覆う人型をした化け物。ワニのような姿の、しかし明らかに普通の生物ではない爬虫類。不気味な顔をした石像。石棺に収められた20代後半の嫌らしい目つきで睨む悪魔のような顔の形の刺青がある男。

 

全てを蒼兎が召喚したのであろうSCPオブジェクト達。それはバグスター転生者の方を向き一斉に襲いだした。物理的な攻撃で反撃の暇なく攻撃を加えられていくバグスター転生者。

 

もはや誰が自身を攻撃しているのか分からない状態だった。

 

「ぐはっ!なんっ!だよこれ!!」

 

打撃、斬撃、その繰り返しはしかしバグスター転生者に対する決定打にはなり得なかった。しかし攻撃の手は増えていた。いつの間にか現れていたのはペストマスクを付けた人型の者とその周囲にいるゾンビ達。

 

他の化け物に巻き込まれながらもしかし、バグスター転生者の攻撃を始めた。段々と恐怖を感じ始めたバグスター転生者は掌を頭上に向けて、すぐに振り下ろした。その合図とともに空から大量の隕石が降り注ぐ。

 

バグスター転生者が変身する仮面ライダーゲンム、ゴッドマキシマムマイティXは自身が想像したゲームを即座に現実にすることができ、隕石を落とすこの現象もバグスター転生者が考えた独自のゲームの能力である。

 

しかし降り注ぐ隕石は、まるで外からの圧力を掛けられたようにして粉々にされた。

 

「なんで!?」

「ッ!?」

 

魑魅魍魎の攻撃の手が再開し、またもや攻撃を受けるバグスター転生者だがチラリと目撃した先には鉤爪のようなアーマーを装着した蒼兎が立っていた。

 

鉤爪の能力で隕石を圧縮して破壊した蒼兎はISの世界においてエグゼイドのムテキゲーマーにすら通じた最後の一手を打つ。SCIPマグナムに打ち込む数字は「106」。

 

「クソ!クソッ!」

 

バグスター転生者は恐怖のあまりに反撃に出ることが出来ない。目の前の化け物達にはどんな手も通用する気がしなかった。どんなに攻撃して倒したと思っても即座に再生して襲いかかってくる爬虫類。そして再生した状態でまた石棺から現れる異空間から剣を取り出す男。

 

どんなに攻撃を加えても一向に止まる気配のない顔を覆っていた人型の化け物と攻撃が通じている様子のない巨大な蟹。

 

比較的倒すことができるのにいくらでも湧いてくるゾンビを使役するペストマスクを付けた人型の医師。更に気づかない内に背後へと回り込み、普通の人間なら簡単に首の骨を折ることができる打撃を打ち込んでくる石像。

 

どれもこれもバグスター転生者の理解を超えた化け物だった。逃げ出したかったがしかしバグスター転生者はどこがで安心していた。このレベルビリオンとなった仮面ライダーゲンムを変身解除まで追い込むことができる存在はいないと。

 

追い詰められているが死にはしないとタカをくくっていたバグスター転生者。しかしその希望は打ち砕かれることとなった。足元から推しに縋り付くように現れたのは全身が腐敗した男の化け物。化け物の腰あたりにはワープホールのようなものが見られた。

 

しかしバグスター転生者はそんな分析をする余裕がなくなった。ゲーマドライバーに触れていた化け物。黒い粘液が付着しそこからゲーマドライバーはどんどんと腐食して言った。

 

「ッ!!?」

 

すぐに化け物を振り払い、蹴り飛ばす。しかしドライバーの腐食はどんどんと進行する。バグスター転生者の焦りは止まらなかった。

 

「マズイ!待て!ダメだ!止まれ!!」

「嫌だ!!止まれ!!止まって!!」

 

バグスター転生者の悲痛な叫びを上げるがドライバーの腐食はそのまま続き、完全に広がった時点でバグスター転生者の変身は解かれた。そしてバグスター転生者に迫るのは先程まで襲いかかってきていた全ての化け物達であった。

 

「ウ゛ワ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!」

 

 

 

 

 

「……あまり気分のいいものではありませんね。」

 

変身を解除したことで周辺に召喚していたSCPオブジェクト達は最初から居なかったように消えていた。

 

そしてバグスター転生者は見るに堪えない状態になっていた。人間では無いため血が流れるといったことはなかったが四肢は無くなり辛うじて胴体と頭が繋がっている状態だった。そんな状態であったがすぐにチリのように霧散して消えた。残っていたのはバグヴァイザーだけであった。

 

任務を完了した蒼兎は次の世界へ向かうべくその場から離れる。

 

「ちょっと待って!!」

 

しかしそれを呼び止めたのは五河士道だった。

 

「なにか?」

 

「アナタは一体……何者なんだ!?」

 

「精霊と同じ反応なのに十香や四糸乃もと違う……」

 

「だから教えてくれ!アナタは一体……」

 

士道からの質問に蒼兎は少し考えて答えた。

 

「私は特典……強力な力を持つ悪事を働いた転生者から霊とその特典を回収するために来ただけの者です。」

 

「転生者……?特典……?」

 

「この世界は修正され、貴方達の記憶も修正されるでしょう。」

 

「何を言って……!?」

 

「ですからここで起きたことは夢だと思って忘れることをおすすめしますよ。」

 

蒼兎は再度、この場を離れるために歩き出した。次なる転生者の特典と魂を回収するために。




ほぼ1年ぶりの投稿になって失踪していた自分にガッカリですが次の世界のプロットは固めてあるのですぐに書けるようにしてあります!!
待っていた方は大変申し訳ありませんでした!!!


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ソードアート・オンラインの世界
報告書4-1 開始


アンケートにお答えいただいた皆様、ありがとうございました!!
次にゆく世界はソードアート・オンラインになりました!!
この世界を巡れば蒼兎の活躍は一先ず終わりです…
それまでどうぞお楽しみください!!


前の世界の主人公である五河士道に別れを告げて、世界や次元を超える銀色の幕オーロラカーテンを歩き次の世界への向かう間。

 

いつまでも慣れることは無いであろう仮面ライダーSCIP変身への副作用もSCP-500の効果で打ち消し、次に向かう世界がどこであるか予想……というよりは願望を考える。

 

「(できれば転生者がすぐ見つかって分かりやすい世界がいいな……)」

 

そんなことをぼんやりと考えつつ次の世界へ到着した蒼兎。目の前に広がった光景は石やレンガでできた家が並び、中央に広場がある街中だった。

 

現代的ではなく、どちらかといえばオラリオの街に似た雰囲気だったが様子は少し違った。広場ではそれなりに多くいる人々が談笑しているが所々によく見れば青い光の板のようなものが浮かんでいる人が居た。

 

それはまるでゲームウィンドウのようだった。

 

「これは……」

 

ともかく情報を集めるために歩き出そうとした直後、鐘の音が響き渡った。それが合図であるかのように続々と広場を埋め尽くすほどの大量の人間が光の中から突如現れた。そして夕日がきれいであった空は赤のシステムウィンドウに染まり、その間から溢れ出た赤い液体が大型の顔の見えないマントを羽織った人型のウィンドウを構成した。。

 

大音量のスピーカーのような響く声で広場に集められたであろう人々に告げた。

 

『「プレイヤー諸君、私の世界へようこそ」』

 

ここまでのこの異様な状況で蒼兎は自身がどの世界にやってきたのかを理解した。2025年の未来にVRMMOを舞台に起きたゲーム内の死亡が同時に現実への死へと繋がる遊びではないゲーム。

 

『ソードアート・オンライン』の世界だった。

 

巨大な人型ウィンドウは続けて話し始めた。

 

『「私の名前は茅場晶彦」』

 

茅場晶彦、それはこの世界を作り出した張本人であり黒幕の名前である。広場に集められた人々はこの世界を作り出した作者が現れたことに驚く声をあげる。

 

『「プレイヤーの諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う」』

 

手を下に下げてメインメニューであろう画面を表示させる巨大人型ウィンドウの茅場は操作を続けてログアウトボタンがあったであろう位置を見せる。しかしそこには言葉通りログアウトボタンが消えていた。

 

『「しかし、これはゲームの不具合ではない」』

『「ソードアート・オンライン本来の仕様である」』

 

そして続けて茅場は驚愕の事実を口にする。それは外部からこのゲームに接続している機器『ナーヴギア』を強制的に外す、または電源が落ちた場合、高出力マイクロウェーブで接続者の脳を焼き切るというものだった。

 

外部の人間が既にそれを行おうとし、すでに213人が犠牲になっているという事実も伝え、続けて茅場は語る。

 

『「今後、ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HP(ヒットポイント)がゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に……」』

 

『「諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される……。」』

 

広場に集められた人々が全員、言葉を失った。ゲームの死が現実に繋がる。それは今までの人生で体験したことがないであろう生命の危機。嘘だと断定するにもすでに死んだ人間がいるという証拠が開発者本人の口から告げられた。

 

そんな人々が驚愕と恐怖で震える間、茅場はゲーム解放の条件を告げた。

 

『「諸君らが開放される条件はただ1つ、このゲームをクリアすればいい」』

 

『「現在君たちが居るのはアインクラッド層の第一層である。各フロア層のフロアボスを攻略し上へ向かい、第100層のボスを攻略すれば、ゲームクリアだ。」』

 

ゲームクリアの条件を聞いた人々は口々に非難する。

 

「適当なこと言ってんじゃねぇよ!!」

「第100層をクリア!?できる訳ねぇだろ、ベータテストじゃろくに上がれなかったんだろ!?」

 

『「それでは最後に……諸君らのアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある、確認してくれまえ。」』

 

広場の人々が一斉に手を下に下げてアイテムストレージを確認する。蒼兎もそれに習ってアイテムストレージを確認する。項目にあったのは『手鏡』だった。その項目をタッチすると目の前に手鏡が現れた。

 

そして周辺の至るところから光が発生し、それは広場にいた人間全てを包み込んだ。光が収まると周囲にいた人々はアバターのような姿から現代の現実世界の顔に変わっており、所々に女性用の装備をした男性なども現れた。蒼兎は前の世界から変わらなかった。

 

『「諸君は今、何故と思っているだろう。」』

『「何故ソードアート・オンライン及びナーヴギアの開発者茅場晶彦がこんなことをしたのかと。」』

『「私の目的は既に達せられている。この世界を作り出し、鑑賞するために私はソードアート・オンラインを作った。」』

 

『「そして今、全ては達成せしめられた。」』

 

『「以上で、ソードアート・オンラインの正式サービスのチュートリアルを終了する」』

『「プレイヤーの諸君、健闘を祈る。」』

 

そうして大型人型ウィンドウであった茅場はゆらゆらと煙のようなものを出し、ノイズを走らせながら空の赤いウィンドウの吸収された。そして先程までの事象が全て嘘だったかのように空のウィンドウは消え、景色は夕日に戻った。

 

僅かな沈黙、しかし今の状況を受け入れられない人々が少しずつ現れ始めた。悲鳴をあげ、辺りは絶望と嘆きに染まる。

 

蒼兎は状況を把握し終えて自身のメインメニューを確認する。レベルは1でアイテムストレージには『ビヨンドライバー』と『SCIPミライドウォッチ』が表示されていた。

 

「………問題なし」

 

もしアイテムストレージに無ければ蒼兎はレベルを上げてまだ詳細の分からない転生者に対応しなくてはならなかったがその心配は無いようだった。狂乱の最中にいる人々の間を通り抜けて蒼兎は広場から離れた。

 

「(この世界本来の道筋に逆らうなんてことはしなくていい……主人公の葛藤もこの世界の住人の死も決められている……それを必要以上に乱す転生者を)」

 

「倒せばいい……!」



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報告書4-2 剣士

書きたかったところまで書こうと思ったいつもより文章が多くなってしまいしました……楽しんでいただければ幸いです……


広場での一件から2ヶ月後と少し。蒼兎はアインクラッドの最前線の攻略組にそれなりの頻度で参加していた。理由は転生者が攻略組に紛れていないかを確認するためである。

 

しかし参加した全てに転生者らしき能力を持った人物は居らず、現時点で第九層まで攻略までできているアインクラッド内全てを確認してきたがどのプレイヤーも転生者らしき能力をもった人物は居なかった。

 

ゲーム外に存在する可能性を考慮したが転生省で管理している上司がそんなミスをするとは思えないのでまだ活動していないと思われた。

 

「(だとしたら、今回の転生者は別に邪なことを考えてないんじゃないのか?)」

 

転生者の約半数が力を手に入れた全能感で序盤から主人公やヒロインに干渉する。殺害しての成り代わりやヒロインを奪おうとする行為などは最初期に行われるケースが殆どであるがなにかしらの計画をしてから行動する転生者も当然居る。

 

そして力を手に入れたとしても悪感情を抱かず、原作で犠牲になる人々を救うために四苦八苦する転生者もいる。

 

「(でも上司が指定するってことはやらかす奴がいるってことだしなぁ……)」

 

蒼兎の上司が指定した世界はどういう理屈か不明だが確実に犯罪行為に走る転生者が現れる。一種の予言のようなものだと蒼兎は考えているがその予言が今まで外れたことは無い。

 

確実に面倒な手合いがいることは間違えないが今回は計画的に動いていると予測できるためため息をついてしまう。

 

「はぁ………。」

 

粗方捜査を終えてしまい、やることが無くなってしまった蒼兎は仕方ないとゲーム内の依頼を受けることにした。最前線の攻略を形だけでも進めている蒼兎はその攻略に合った武器を持っていないと怪しまれてしまう。

 

実際に第八層ボス攻略の際、レベルに見合わないダメージを出ていたことでダメージボーナスを貰ってしまい不必要に周囲に目立ってしまっていた。

 

その為、ドロップ率が低いと言われるアイテムを採取しそれを武器屋の店主であるNPCに渡すと攻撃力がそこそこ高い武器を入手できるという依頼を受けていた。

 

「ここか…」

 

蒼兎がゲーム内で使用している武器は刀である。ソードアート・オンラインでは魔法が無い代わりにソードスキルというものが存在し、ゲーム内で武器を構えればシステムがそれを汲み取り、システムがアシストして様々な光跡を描いて自動的に剣戟を放つ。

 

体が勝手に動いて攻撃動作を行うため、その速度や威力は、通常時に武器を振るったときのものを上回り、その上、派手なライトエフェクトやサウンドエフェクトも発生し、使用者を大いに満足させてくれるものである。

 

蒼兎の場合は今までの戦闘経験からスキル無しでも十分であり、スキル使用直後の硬直時間やクールタイムが自身にとっては痛手なため、使用頻度は少ない。

 

ソードスキルにはエクストラスキルというものが存在し、その中には曲刀を振り続けていると入手できる刀スキルというものがある。単純に武器の好みが刀であった蒼兎は広場での一件のあとずっと曲刀を振って刀スキルを入手した。

 

依頼の物をドロップするモンスターを見つけ、刀を構える蒼兎。モンスターは短い角を持つ狼の群れ。プレイヤーを見つけたことで戦闘態勢になった狼達は蒼兎に1匹ずつ向かってくる。

 

「(一斉に向かってくるならともかく1匹ずつならまぁ……一斉でも纏めて切れるからいいが……)」

 

深く考えることも無く刀を舞うように振るい狼達を切っていく。レベル的に一撃で倒せるのも多くはないため切られたことで激昂する数匹の狼達。

 

「レベル制度ってやっぱり面倒だな……」

 

そんなことを呟きながら何事もなく狼のモンスターを全滅させた。それから約30分。無事に目的のアイテムをドロップし依頼主のNPCに届けに行く間、1人の青年が狼の群れに襲われていた。体力ゲージが残り六割になっており危なさを感じて逃げているようであった。

 

「………」

 

原作の流れに逆らわないと考えている蒼兎であるがやはり人死にはそれなりに少ない方がいいだろうとは思っている。すこし逡巡するもため息をつきながら青年の方へ向かった。

 

 

 

 

 

「あ、ありがとうございました!本当に死ぬかと思いました……!!」

 

青年を追いかけていた狼を5分足らずで全滅させた蒼兎。助けた青年は黒髪と黒い目をしており顔立ちもそこそこ整っていた。青年から礼を言われ曖昧に返す蒼兎。

 

「いえ、まぁ……危なそうだったので。」

 

用も済んだのでその場から離れようとする蒼兎。しかしそれを呼び止める青年。

 

「あっ!待って!お名前を伺ってもよろしいですか!?」

 

何も答えずに去れば付いてきそうな雰囲気を醸し出す青年。そんな青年の様子を見てついて来られるのも面倒だと思った蒼兎は自身のプレイヤーネームを答えた。

 

「……アオトです」

 

「アオトさんですね!覚えておきます!!」

 

「俺はトウマって言います!」

 

「この恩は忘れません!お礼は必ず!約束ですよ!!」

 

「………一応覚えておきます、機会があればまた。」

 

とりあえず名を告げて去る蒼兎。

 

「またお会いしましょうね!!」

 

トウマはそう言って蒼兎に手を振り続けた。

 

 

 

 

 

依頼を完了させ宿泊する宿にたどり着いた蒼兎。ゲーム内でも食事を摂れるが食に関心のない蒼兎はそのまま宿で睡眠をとることにした。

 

ゲーム内では睡眠も必要ないがずっと覚醒状態でも支障が出る。蒼兎は転生者狩りで睡眠を全くとらなずとも問題ないようにしているがやはり眠って起きた方が頭の回転はいい。

 

念の為に眠っている間に問題が起きないか仮面ライダーSCIPの能力で召喚したSCP-131アイポッドにゲーム内の巡回を任せ、蒼兎は眠りについた。

 

 

 

 

 

休息の眠りから目覚めた蒼兎。すでに蒼兎の元へ戻ってきていたアイポッド達から手早く情報を受け取る。その情報の中には次の階層につながるボス部屋を発見したという情報があった。

 

「(まさか見つけてきてくれるとは……)」

 

そんなことを思いながら見つけてきた赤いアイポッドを撫でる蒼兎。その日のうちに攻略組ギルドにボス部屋の位置情報を提供し他の攻略組プレイヤーが募られるのを待つことにした。

 

しかし提供先のギルドの行動は早く、すぐに情報はアインクラッド中に知れ渡り明後日の昼には攻略部屋へ向かうことになっていた。翌日に攻略組プレイヤーが集められボス攻略の作戦会議が始まった。

 

「(こんなに早いとは……まぁ早い方が助かるが……)」

 

作戦会議に参加しながら蒼兎は思った。自身の担当する配置などを理解したあと解散となり、蒼兎は再びアインクラッドを見回るためにその場から少し急いで離れる。しかし蒼兎を呼び止める青年が現れた。

 

「あ!アオトさん!!」

 

「貴方は……トウマさんですか?」

 

呼び止めていたのは昨日助けたトウマであった。昨日の時点では分からなかったがトウマの身長はかなり高いようだった。

 

「なにか用ですか?」

 

「助けてもらったお礼をしたくて……約束したじゃないですか?」

 

「今日のご飯、俺に奢らせてください!」

 

「ああ……」

 

別れ際にそんな話をしていたことを思い出した蒼兎はどうするかと迷う。

 

「(正直転生者がでないかアインクラッドを見回りたいが……ここで無視してもまた話しかけられそうだしな……)」

 

「分かりました、どこに行くんですか?」

 

「おすすめのお店があるんです!こっちです!」

 

宿と併設されたレストランに到着し、トウマが受付のNPCにご飯を注文している間に蒼兎はアイポッドに周辺とアインクラッドの見回りを頼んだ。

 

料理を待つ間トウマが蒼兎に話かける。

 

「アオトさんって攻略組なんですか?」

 

「ええ、一応はそのつもりです。」

 

「俺は最近攻略組に追いついてきまして、初めてのボス討伐なんです」

 

「だからちょっと緊張しちゃって…」

 

「そうだったんですね」

 

「アオトさんはどうして攻略組に?」

 

「そうですね…何もしないよりはなにかした方がいいかなと思ってですね」

 

しばらく話しているうちに料理が運ばれてきた。魚の丸焼きが大きな葉にのせられ皿に盛り付けられている。

 

「ここのご飯は現実の焼いたアジと似た味ですごくいいんですよ!」

 

「そうなんですか…」

 

「苦手でしたか?」

 

「いえ、苦手な食べ物はありません。いただきます。」

 

一口食べてみると確かに現実で食べるアジと同じ美味しさがあり蒼兎は少し驚いた。

 

「(なるほど……VRMMOもバカにできないな。)」

 

「じゃあ俺も、いただきます!」

 

少しの会話を交えつつ完食した2人はレストランから出る。蒼兎はトウマに感謝の意を伝える。

 

「ありがとうございました、紹介されたあのお店、よかったですよ。」

 

「なら安心しました!あの時は助けていただいてありがとうございました!」

 

頭を下げてお礼をするトウマに蒼兎は感心した。

 

「(ここまできっちり誠意を伝えるヤツもいるんだな……)」

 

日々悪意に染った転生者ばかりを見ていた蒼兎にとってそれは新鮮であった。

 

「明日はボス戦ですし、早く寝た方がいいですよ」

 

「はい!アオトさんもお気を付けて!」

 

走って去っていくトウマを見届けて蒼兎も自分の宿へ戻った。アイポッド達が蒼兎のもとへ集まり何も異常は無かったことを伝えられた。

 

「(もしかして物語の越境にさしかからないと出てこないのか?)」

 

 

 

 

 

翌日、階層ボス攻略のために集められたプレイヤー達はボス部屋の前の扉に集合していた。プレイヤー達を募ったギルドのリーダーである男が周囲にいるプレイヤー達に最後の確認を取る。

 

「これからボス部屋に入る、全員危ないと思ったらすぐに転移結晶を使うんだ」

 

転移結晶、使用して転移先の街の名前を言うとそこへ転移できる優れ物でクエストなどで死にかけた時に使える救済措置である。転移結晶のアイテムを持っていることを確認し、ギルドリーダーの男は扉を開けた。

 

そこに佇んでいたのは甲冑を着込んだ侍の風貌をした普通の人間よりも一回り大きい怪物だった。手に持っている刀を構えて突進してくるそれのウィンドウに表示されている名は『カガチ・ザ・サムライロード』

 

アインクラッド第10層フロアボスの討伐が開始された。

 

 

 

 

 

一番最初に前に出たのは黒いコートを着た剣士だった。

 

「あのビーター野郎また!!」

 

その様子に避難の声を上げ、次々と彼の後に続くプレイヤー達。黒いコートを着た剣士の名は『キリト』。この世界の主人公であり、ソードアート・オンラインのベータテスターであるため広場にいた他の誰よりも先に攻略に乗り出していた青年であった。

 

通常のプレイヤーよりも知識量があるため成長速度も違い、そのことを妬むプレイヤーの矛先の他のベータテスターに向かないように第1層のボス攻略の時点でベータテスターのチーターの略称であり蔑称、ビーターを名乗って今まで活動してきた。

 

ベータテストを経験しているため他のプレイヤーよりも動きのキレは鋭く階層ボスのサムライロードの振り下ろしを防いでからその胴体に一撃を入れようとする。

 

しかしサムライロードは後ろにジャンプしてそれを防ぐ。しかしその背後にはキリトと同じタイミングで飛び出していた蒼兎がサムライロードを切り上げた。

 

すぐに振り下ろされる刀を回避して後からやってきたプレイヤー達も追いついてサムライロードの攻撃をタンクであり盾持ちが受け止める。片手剣やハンマー、槍などを持ったプレイヤーは攻撃を連携して行い、少しずつサムライロードの体力を削っていった。

 

攻防が続き、大きく飛んで剣を振り下ろしたキリトの一撃で約半分まで体力が削れてサムライロードは第2形態に移行したようにもう一本の刀を取り出す。少し後ろに飛んで構えをとって攻略組プレイヤー達がいる場所へ一気に突撃する。

 

回避や防御が遅れたプレイヤーはふっ飛ばされ体力ゲージが危険域の赤になる。プレイヤー達はすぐに回復しようとするもその隙にサムライロードは左腕を突き出す。腕からは白い蛇が現れ、プレイヤー達を襲い出す。その攻撃で3名のプレイヤーの体力ゲージがゼロになり消えていった。

 

「そんな!!」

 

その様子を見て絶望の顔を浮かべていたのはトウマだった。蒼兎はその様子を見るも仕方なく無視してサムライロードへ向かう。

 

プレイヤーが倒されたことで他のプレイヤーも激昂し、サムライロードへ突っ込む。しかしサムライロードの不意打ちの横なぎの攻撃で全員が体力ゲージが危険域に到達してしまう。

 

蒼兎も咄嗟の防御に関わらず半分近くまで削れてしまっていた。

 

「(くっ…思ったより面倒だな……)」

 

全員が回復行動を取ろうとする中でトウマだけが片手剣を持って突撃する。

 

「なにやってんだ!死ぬぞ!!」

 

「うぉぉぉあぁぁ!!」

 

他のプレイヤーの警告を無視してトウマは突撃する。しかしサムライロードの振り下ろしの一撃でトウマは吹っ飛ばされてしまい体力ゲージも赤くなる。

 

「ぐっ……」

 

「早く回復しろ!!」

 

しかしトウマは体力ゲージが赤いにも関わらずサムライロードへ向かおうとする。

 

「(アイツ正気か?どうする……ここでSCPの力を使うのは今後に影響を受けそうだが……。)」

 

蒼兎が回復すらしようとしないトウマを見かねて仮面ライダーSCIPの力を使うか悩む。

 

「俺はもう!誰かが悲しむ姿は見たくない……!」

 

「もう誰にも死んで欲しくない……!」

 

トウマが自身を鼓舞するために叫んだ言葉が他のプレイヤーに響く。しかしトウマが命の危機であることに代わりはなかった。

 

「俺がみんなを守るんだ!!」

 

サムライロードの刀がトウマに向けて振り下ろされる。蒼兎がSCIPに変身し助けようとした瞬間、サムライロードとトウマの間に炎が割り込んで広がる。

 

「なんだ……?」

 

トウマの手には赤い本型のアイテムが握られ、目の前には炎に燃える剣が突き刺さっていた。

 

「なんだアレ……」

「ゲームの特殊イベントか?」

「アイツプレイヤーじゃないのか?」

 

他のプレイヤーが口々に言う中、トウマは炎の熱に耐えながらその剣に近づいていく。

 

「あれ熱くねぇのか!?」

「普通の奴じゃ抜けねぇよあんなの!!」

 

「(アレは……!?)」

 

偶然であろうSAOプレイヤーが発した発言、そしてトウマが握っている本型アイテムと炎の剣。蒼兎はこの光景を見て驚愕と同時に確信した。

 

「(間違いない、これは……)」

 

「グゥ……!」

 

トウマが熱に悶えながらも剣を掴み取る。そして雄叫びと同時に剣を引き抜いた。

 

「はぁあ!!」

 

引き抜かれた剣が周囲に広がっていた炎を吸収するよう集め、そして形状が変わった。

 

3つの窪みがあるバックルに収められた炎のエンブレムが輝く剣。

 

「これは……!」

 

サムライロードが刀を構えて突進しようとする。トウマは使い方を教わった訳でもなかったが、それでも当然のようにどう使えばいいのかが分かっていた。

 

剣が収められたバックル『聖剣ソードライバー』を腰にあててバックルからベルトが伸びる。腰に巻き付けられたベルトにSAOプレイヤー達が驚愕の声を上げる中、トウマは持っていた本型アイテム『ブレイブドラゴンワンダーライドブック』を開き、本の力を解放した。

 

『ブレイブドラゴン!』

『かつて全てを滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた…』

 

本を閉じてソードライバーの一番左にセットする。壮大な音楽が流れる間にサムライロードは突進を開始した。トウマは焦らずバックルの剣を引き抜き、覚悟と共に叫んだ。

 

『烈火抜刀!』

「変身!」

 

空間を斜め十字に切って、その斬撃はサムライロードの突進と激突、拮抗しトウマへ跳ね返った。トウマの後ろから本に記されていたドラゴンが飛翔しトウマの身に纏うように周囲を周り、その姿を変えた。

 

跳ね返った十字の斬撃はトウマの顔に吸い込まれるように飛んできて仮面を形成した。

 

『ブレイブドラゴン!』

『烈火一冊!』

 

『勇気の龍と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!』

 

サムライロードの止まらない突進をトウマは変身した姿で受け止めた。自身が握る剣を炎を纏わせて下に向けて受け止めたトウマは思い切り剣を振り抜く。

 

火炎を纏って振り上げられたその剣は強化された肉体の力も相まってサムライロードを大きく吹っ飛ばした。

 

「すげぇ……」

「なんだあれ……」

 

プレイヤー達が口々に言う中、1番驚いていたのはキリトだった。

 

「(なんだあれは……あんなのベータテストには絶対になかった……新しく追加された仕様にしてもあんな魔法地味たものをあの茅場晶彦が追加するとは思えない……!)」

 

トウマは自身の体と握る剣を交互に見て興奮する。

 

「これならみんなを守れる……俺がみんなを救える!!」

 

『火炎剣烈火!』

 

トウマの喜びに呼応するように握っていた剣から名乗りの声を上げた。

 

「火炎剣烈火かぁ……よろしくな!」

 

サムライロードに火炎剣烈火を向けてトウマは宣言した。

 

「このゲームの結末は、俺が決める!」

 




SCP紹介
SCP-131アイポッド
勾玉のような形に1つの目がついたおもちゃのような姿をしているがれっきとした生き物。人間にとても友好的でそれどころか人懐っこい。財団世界では2体のアイポッドが確認されているが仮面ライダーSCIPでは合計10体のアイポッドが現れる。赤、青、水色、緑、黄緑、黄、オレンジ、紫、ピンク、白の色に別れている。


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報告書4-3 共闘

あらすじ
転生者の特典と魂を回収すべくSAOの世界に降り立った蒼兎。しかし転生者はいつまでたっても行動を起こす様子はなく、蒼兎は常に気を張っていた。そんな中で第十層ボスの討伐が始まり、攻略組が危機的状況に陥る。しかし蒼兎がゲーム内で助けた少年トウマが仮面ライダーセイバーに変身し、自体は急展開を迎えた。


「このゲームの結末は、俺が決める!」

 

決意と共に宣言したトウマはサムライロードへ肉薄する。上から烈火を振り下ろしサムライロードは刀でそれを受け止める。火花を散らしながら剣と刀がぶつかり合う。

 

互いに武器を引き下げ再度激突。サムライロードの方が巨体にも関わらず力で負けていないトウマ。周囲のプレイヤーは呆然と眺めていた。

 

しかしその中から2人の人影がトウマの元へ向かう。1人は黒の剣士キリト、もう1人は蒼兎だった。

 

蒼兎が先に滑り込むようにサムライロードの左足を刀で切り付け体制を崩させる。続いてやってきたキリトが片手剣でサムライロードの脇を切る。2人によるダメージで体勢を崩したサムライロードはトウマに押し込まれダンジョンの壁に激突する。並んでサムライロードを見据える3人。

 

巻き上げられた土煙の中から白い蛇とも龍にも見える首が飛んできた。並んでいた三人は一斉に飛び退く。それは土煙の中へ引き戻され風圧でその煙が晴れるとサムライロードの左腕に巻き付いていた。

 

サムライロードが左腕を振り上げてムチのように三人を襲う。一番最初に蒼兎の元へ向かっていく白い首を蒼兎は上へ飛んで体を捻り、ギリギリでかわす。

 

続いてトウマの元へ向かっていく白い首をトウマは烈火に炎を纏わせた上で受け流す。

 

1番最後に向かっていったキリトは避けようと意識を向けたがキリトと向かってくる白い首を遮るように盾とハンマーを持ったプレイヤーが攻撃を防いだ。

 

「お前らばっかに任せっきりでたまるかよ!」

 

この声に賛同するように他のプレイヤーもサムライロードへ向かっていく。劇的ではないもののどんどんとサムライロードのHPを削っていった。

 

「みんな……!」

 

トウマはそんなプレイヤー達を見て強く想った。

 

「俺が、みんなを救う!!」

 

ドライバーに烈火を納め、引き金を引く。

 

『必殺読破!』

 

腰を落として烈火を更に力を込めて握る。

 

『烈火抜刀!』

『ドラゴン!一冊斬り!』

『ファイヤー!』

 

烈火に一際炎を纏わせてサムライロードへ向かっていく。

キリトもそれに合わせるようにソードスキルの構えをとる。

 

「「ハァア!!」」

 

2人同時に斬られたサムライロードは雄叫びを上げ、光となって消滅した。ゲームクリアを告げるアナウンスが空中に現れ、ダンジョンにいたSAOプレイヤー達は歓喜の声を上げた。

 

「やったぞぉぉ!!」

 

その中で1番大きな声を上げて喜んでいるのはトウマであった。

 

 

 

 

 

第十層が攻略され、新たなる街が解放された。街の解放を行ったトウマは感動しながら周りを見渡す。

 

「うぉ〜すごいなぁ!!」

 

「おい、アンタ!」

 

後ろから声をかけられ振り向くトウマ。声をかけてきたのは先程一緒に戦ったプレイヤー達だった。

 

「礼を言うよ、アンタのおかげで俺達は今日も生き残れた、ありがとう」

 

「いいんです、俺はみんなを助けたかっただけだから!」

 

「随分お人好しな奴だな?」

 

彼らの会話を遠目で見ながら蒼兎は考える。

 

「(彼が今回の転生者……?しかしアレはどう考えても()()()()()()()()()()()()()()()()立ち振る舞いじゃなかった……。)」

 

「(危機的状況に発現するのが条件?いやそれなら狼に襲われている時点で発動してるハズ…それに彼は転生者というには余りに年相応だしな……)」

 

「(何かが引っかかる……)」

 

「アオトさん!」

 

声をかけられた方を向く蒼兎。トウマが走りよって頭を下げた。

 

「また助けて頂いてありがとうございます!!」

 

「ああ、いえ。ダンジョンの攻略をしただけですから」

 

「でも俺だけじゃみんなは助けられなかったと思うんです」

 

「それを言うならあそこにいる黒の剣士さんにもお礼を言った方がいいですよ」

 

「あっ!そうですね!じゃちょっといってきます!」

 

慌ただしくキリトの方へ向かっていくトウマ。それを見送りながら蒼兎は開放された方とは逆方向の第十層へ戻る。。

 

「(トウマが転生者なら色々おかしい点がある、これはもう少し調べないと……)」

 

 

 

 

 

SAOプレイヤーが第十層ボスを攻略している最中、第七層の宿に2人の男が机に向かい合って座っていた。1人は白髪で髪を1本前に垂らした男、もう1人はボサボサな黒い髪をそのままにした暗い印象を与える男。

 

白髪の男は神妙な面持ちで、もう1人は気味の悪い笑みを浮かべて話し合っている。

 

「つまり、互いに手出しをしないと?」

 

「ええ、あなたは自分の世界をめちゃめちゃにされたくない、私は聖剣を取り戻したい。お互い無干渉であればこれは上手く行きます。」

 

「既に台無しなのだがね」

 

「それについては謝罪します、兆候があったとはいえまさか私の手から抜け出すとは…いやはやこの世界は侮れませんね?」

 

「……こうなってしまっては仕方が無い。なるべく早めにしてくれると嬉しいが駄目ならばそれはそれで構わない」

 

「それは何故です?」

 

「それはそれでゲームは楽しそうだ」

 

「フム……ではまぁとりあえずは」

 

そういって黒い髪の男は立ち上がり部屋から出る。出たあとで白髪の男はふかく嘆息する。

 

「しかし現実も捨てたものではないな…… ()()()か……」

 

黒い髪の男は壮絶な笑みを浮かべながら言う。

 

「なにもかも思い通りになるのもいいですが、想定外があるのもまぁいいでしょう……いやはや中々楽しいですねぇ……!」

 




更新がだいぶ遅れてしまいました……すみません……


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