ラージャンを個性にしてヒーロー目指す。 (ますたーそん)
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とある中学の進路希望の出来事

少しでも楽しめる時間になるように。しばらく個性[ラージャン]は大暴れの場面はないので楽しみにしてる方がもしいたらご容赦を。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 とある中学。

「今から進路希望のプリントを配るが、まぁ···だいたいヒーロー科だよね。」

 生徒達が個性を見せる、手がトゲトゲになったり、顔が膨らんだり、様々だ。

 それを見て先生はうんうんと頷き注意する。

 

「皆いい個性だ、だが校内での個性発動は原則禁止だぞ。」

 

 そう注意するとある生徒が声高らかに言う。

「皆って、一緒くたにすんなよ!俺はこんな没個性共と底辺にいかねーーよ。」

 爆発ツンツン頭の生徒、爆豪勝己(ばくごうかつき)だ。

 没個性と言われた生徒達はブーイングする中、先生があることを告げる。

 

「そういや爆豪(ばくごう)は雄英高だったな。」

 それに生徒達はブーイングではなく驚きに包まれる。

「超難関校のあの雄英!」 「今年偏差値79だぞ!」 「オールマイト、エンデヴァーの母校!」

 

 爆豪はニヤリと笑い机の上に立つそして、

「模試じゃA判定、ウチでは唯一雄英圏内!そして俺はあのオールマイトを超え必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!」

 自信満々、堂々高らかに言う。生徒達は「おぉー」と感心するなか先生が「あっ。」と思いだしあることを告げた。

 

「そういえば獅子猿(ししざる)緑谷(みどりや)も雄英だったな。」

 それを聞いた爆豪はピシッと固まった。生徒達は黒髪オールバック、紅い目の高身長の生徒、獅子猿を見る···頷く。今度はモワモワ緑髪、地味な感じの緑谷を見て、

      「「「ブフーー‼」」」

 

 笑った。だがそれも仕方ないかもしれない彼は、

  ボム‼

 瞬間緑谷の机が爆発した見ると爆豪が緑谷の机に手を置いておりその回りが焼けて黒ずんでいる。爆豪の個性:爆破だ。

「こぉらぁー!デク!没個性でもない[無個性]のてめぇがなんで俺と同じ土俵に立てるんだ!!?」

 そう緑谷は無個性:なんの能力のない人なのだ。

 ギラついた目で緑谷を見る爆豪、それに緑谷は震えながら答える。

 

「小さい頃からのっ、目標だったんだ!ヒーローになるのが!だから!」

「なにが目標だ!!」

 爆豪が遮って言う。それに生徒達も続く。「記念受験か?」「無個性で?」馬鹿にするようにクスクスと笑う。

 

(···どうしてそんなこと言うんだよ。)

 無個性だからと馬鹿にされる、いじめられる。いつものことだ、いつもことだけど···。悔しく拳を握る。

 

 

      パーーーン

    「「「···。」」」

 

 

 突然の破裂したような音が響く皆が音の方を向く、そこには眉間に皺のよった不機嫌オーラを出す獅子猿の姿。あの大きな破裂音は手を叩いた音だった。

「···人の夢笑うな。」

 静かに言われた言葉、腹にズシッとくる重みに生徒達は俯く。

 

「···進路希望のプリント配るぞ。」

 重い空気の中、先生が言う。

 爆豪は舌打ちをし席につく、他の生徒も無言で座った。

 

 何とも後味悪い感じになった教室。

 チラリと緑谷は獅子猿を見ると目があう。すると心配そうな顔で(大丈夫か?)とハンドサインで伝えてきた。

 

(大丈夫。)

 緑谷は苦笑いで答える、そしてプリントに進路を書くのだった。

 

 第一希望 [雄英高校]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れさま。


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帰ろうぜ

 書きたいように書いていきます。


 下校、生徒達が帰る時間。

 緑谷も帰ろうと荷物をまとめていると。

 ヒョイ

 

「あっ。」

 大事なノートが取られる。

 

「話すんでねーぞ。」

 ノートを持った爆豪が睨みながら言う、そこに。

「カツキ何そのノート?」

「将来のためのって、く~~っマジか緑谷!」

 

 取り巻き二人が加わる。···嫌な予感がする、早く取り返さないと。

「別にいいだろ!返してよ!」

 ノートを取り返そうと手を伸ばすが。

 

    ボム!!

 

「あーー‼」

 爆豪は緑谷のノートを爆破!哀れノートは黒こげに···。

「あ?」

 

 ならず爆豪の上に浮いていた、獅子猿が爆破前にノートを取り返していたのだ。

「なぁ、出久。このMt.レディについて何か知ってるか?」

 ノートを渡しながら自分のスマホを見せる。そこには今朝の事件のことが書かれていた。

 

「うん、今朝実際に見たから少しは話せるよ。」

「おー、じゃー帰り道で聞いても?」

 途中まで一緒の道の二人だ。緑谷はその提案に頷こうとしたとき後ろの爆豪の威圧にビクッとなる。

 

「いいけど···後ろ。」

 指を後ろに指し視線を後ろにと伝える。

 

「クソ猿ー。」

 チラリと見ると肩にポンと手を置く爆豪、だが身長差があるため手を伸ばしてやっている姿をみると威圧感があるように感じない。

「おー、どした?」

 振り返り爆豪を見る、睨み付ける爆豪、表情変わることなく見る獅子猿、冷や汗を流す取り巻きと緑谷。

 

 ギラついた目で見上げながら言う。

「雄英だってなー。」

「そうだぞ。」

 

 答えるとさらにギラついた目になる。猛獣のような形のオーラを緑谷達は感じたが獅子猿は気にすることなく見ている。

 

「いいか?よく聞けやクソ猿。一線級のトップヒーローは学生の時から逸話残してるんだ。俺はな、この平凡中学から[初めて][唯一]の[雄英進学者]の”箔“を付けてーのさ!まー完璧主義だからな。」

 

 そしてニコリと笑い手を伸ばしポンと肩を叩く。

「だからな雄英受けるなや、クソ猿。」

「···。」

 

「お前もだ!クソナード![無個性]が夢見てんじゃーねーよ。」

「···。」

「···ケッ。」

 

 言いたいことを言い爆豪は出ていく。

「いやいや、何か言うぜ。」

「かわいそうに、まぁ現実見るいい機会と思おうぜ。」

 

 それに取り巻きが続く。教室には二人が立ち尽くしていた。

「ミミッチイ。」

「···ハハハ、かっちゃんの前で言わないでね。」

 

 

 

○○○○○

 

 

 帰り道の二人、獅子猿と緑谷は寄り道しながら帰っていた。

「ねぇ、シシ君。」

「もご?」

「あっ、うん。」

 俯いていた緑谷が顔を上げ声をかけると丁度クレープをもぐもぐしているところだった。ハンドサインで待ってと伝えているので頷き待つ。

 

「もぐ···ごちそうさま。んでどうした?」

「Mt.レディのことだよ。聞きたいって言ってたじゃん。」

 

「そうだったな···けど、大丈夫か?」

「?···あー。」

 何を心配しているのか一瞬わからなかったがさっきの出来事を心配しているんだと分かり笑って見せる。

 

「うん、大丈夫!ヒーローになる為に努力してるんだからあれくらいで折れないよ!」

 無個性だからと馬鹿にされ、いじめられてきた、ヒーローになりたいと思っても無個性の僕は何もできない、諦めようと思ったこともあった。

 

 けど···シシ君が言ってくれたんだ。『かっこいいぞヒーロー』って。その言葉が本当に嬉しかった。だから僕は諦めない無個性でもヒーローになってやる!

 決意と覚悟に満ちた目していることに獅子猿は安堵する。

 

「···なら、よし。けどな、ここでさいならだ。Mt.レディについてまた今度教えてくれ。」

 

 気がつくといつもの分かれ道にきていた。

「あっ、うん。また明日。」

「おー。また明日。」

 互いに手を振り別れる。また明日学校で。

 

△▽△▽△▽△▽

 

 

 

(頑張らないと!シシ君やかっちゃんみたいな個性がない僕は努力!努力するしかないんだ!)

 家路を急ぐ緑谷、帰ったらトレーニングだ。

 だが。

「Mサイズの隠れ蓑。」

 

 (ヴィラン)が背後から近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こっから先はほぼ原作通りです。
では、お疲れさま。


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商店街の出来事

すごく遅くなり申し訳ありません。
色々あったんだ・・・。

少しでも楽しいと感じる時間になったらいいな。


◇◇◇◇◇◇◇

 

(いい目していたな。)

 帰り道、肉まんを頬張りながら先ほどのことを思い返していた。進路希望の時間のできこと、無個性だから無理だと決めつけ口々に本人に言う。その光景に怒りが沸き上がり強制的に黙らせた。出久は大丈夫だと伝えてきたが下校時に爆豪達に絡まれさらに無個性、無理だと追撃された。

 

(んー?幼なじみなのになんであんなこと言うんだ?、嫌、幼なじみだからか?わかんねぇな。・・・けど。)

 

俯き黙って歩く姿は少し心配だったが、優しく、熱意を感じる目をしていた出久を見てこれは大丈夫だなと感じた、無個性だ、無理だと馬鹿にされているがそれでも折れずに夢を現実にするため努力をしているその姿に尊敬の念を抱く。

(理不尽に負けず頑張る。これでも十分にヒーローだ、・・・ん?)

 

爆音が聞こえる、不思議に思っているとまた爆音がする。

(誰もいないな・・・。)

 

回りを見て人がいないのを確認し、足に力を込め跳び近くの雑居ビルの屋上に着地、音源はどこかと見ると。

 

(商店街?煙も出てる、(ブィラン)か!)

 

黒煙、そして爆発音、炎も見える。ヒーローは何してるんだと焦燥感が沸き上がる。そう思う間も爆音、また別の所が炎上するのが見えた。

 

(どうなってんだ!)

これ以上は見てられない、見ない振りするかと一瞬考えたが両頬を叩き追い出す。何もできないかもしれない、だが何かできるかもしれない。行って何が出来るか考えよう、そう考えを変え商店街に向かうのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 (爆豪!捕まったからヒーローが動けずにいたのか?)

 現場近くの飲食店の屋根から見たのは爆豪を呑み込まんとするヘドロとそれに抵抗する爆豪。離れた所で避難誘導や消火活動をするヒーロー達。

 爆豪は個性の【爆破】で抗っているが徐々にヘドロに呑まれていっている。もう時間がないかもしれない。

 

 (どうする!?ヘドロ、俺の個性、引き剥がす?どうやって?目がある目潰し。コンクリ破片を握り砕いて粉にして投げる。ああっ、よしこれで!?)

 

 どんどん呑まれていく姿に焦り雑な作戦しか思いつかなかったがこれで呑まれる速度が遅くなればよし、離れてくれたら万々歳と行動しようとした時、人混みの中から見覚えのある人物が。ついさっき一緒に帰っていた出久がヘドロ(ブィラン)に向かって駆けだしていた。

 

 「出久!」

 屋根から飛び降り出久と平行して走る。驚く出久だったがすぐに真剣な顔になり。

 「シシ君!『ホールド・ブラインド』。」

 「!応、任せな。」

 

 出久のハンドサインから作戦を理解し出久を追い抜きヘドロ(ブィラン)に突っ込む。

 「馬鹿がきた、爆死だぁ。」

 ヘドロ敵が嘲るように呑まれた爆豪の右手を使い爆破しようと獅子猿に向ける。

 

 「危ない」 「はなれろ」 「逃げるんだ」

 

 危険だとヒーローや見に来た人たちが言うが意にも介さずさらに速度を上げ突っ込み。

 

 BOOM!!

 

 爆破された、爆煙で見えなくなったが誰もがそう思った、が。

 

 「・・・よし。」

 右手を掴んだ獅子猿がそこにいた、爆破前に掴み方向をずらしなんとかなったようだ、だが。

 「馬鹿が、まだ左手がっ!?」

 

 今度は左で爆破しようと向けるが掴まれ別の方向に手のひらを向けられる。なら引き剥がそうとするが動かない。左右に振ったり、引き抜こうとするがピクリとも動かない。がっちりと固定されてしまっている。

 

 (これがこのガキの個性か、すげー力だ・・・だが。)

 爆豪を呑み込もうとしていたヘドロが獅子猿にも向かい、顔を覆っていく。

 (これでお前は終わりだ、っつ!?)

 

 ヘドロに覆われていくのを見て無駄なことだったなと優越感を感じていると、にやりと笑う顔を見た。

 そして違和感を感じる。どうしてかと考える前にその答えが獅子猿の背後から現われる。

 「これで!」

 

 素早く手に持っていた催涙スプレーをヘドロ敵の目に向け噴射。

 「あああぁぁぁっぁぁああ!!!」

 絶叫、強烈な焼けるような痛みにヘドロがのたうつ。それにより獅子猿の顔を覆っていたヘドロも爆豪を呑み込まんとしていたヘドロが緩み。

 

 「おっしやぁぁー!」

 掴んでいた手を思いっきり引っ張り引き剥がし、獅子猿もヘドロの拘束から逃れる。

 「クソがっ!余計なことしやがって!」

 「流石爆豪、すげー元気。出久、次はどうする?」

 

 目をつり上げ大声で怒鳴る爆豪を見ながら隣にきていた出久に聞く。

 「もう、大丈夫。ほら。」

 見ると、ヒーロー達がヘドロ敵を拘束しているところだった。流石ヒーロー。できればもっと速く・・・なんて気持ちは心の中にしまい込む。

 

 「やったな、出久。」

 「うん。シシ君のおかげだよ。」

 「おう、そんで出久のおかげだ。」

 

 互いに笑い合い拳をぶつけ合う。無事・・・商店街は被害があったが、爆豪救出できたので一件落着かと思われたが。

 「あー、学生達ちょっといいかな。」

 

 振り返ると黄色と黒の縞々ラインのヘッドギア、ハンドリングをしている大柄なヒーローが微妙な表情でこちらを見ていた。

((あっ・・・。))

なんとなく次の展開が読めた二人、読み通りに二人は説教されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。


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説教の後の話

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「あー、長かった。」

 「ははは。」

 

 夕日でオレンジ色に輝く帰り道、長い説教を終え二人は家路を歩いていた。

 

「・・・まぁ、良かったんじゃないかな?」

「うん、そうだね。」

 

説教はされた。危険なことするな、ヒーローに任せてほしい、君たちに何かあったら親御さんはどうするんだ?等々。長々と説教されたが。

 

「だが、君たちのおかげで解決できた、ありがとう。」

 

感謝の言葉、その言葉の裏に助けに動けなかったことを悔い、決意と覚悟を改めた感じを受けた。・・・気のせいかもしれないがそう感じた。

 

・・・爆豪に声かけたら、なぜ助けた?!一人でなんとかなったは!!クソが!等、色々言いたいことを言ってさっさと帰ってしまった。

 

「やぁ、少年達。」

 

先ほどのことを思い返していると骨と皮だけの、失礼、細身の男性に声をかけられた。記憶を探るが知らない人物だ。

 

「出久、知り合い?」

「知り合い、知り合いだよ。」

早口で答える出久を見て不思議に思っていると細身の男性も答える。

 

「自己紹介をしよう、八木俊典(やぎ としのり)、オールマイトのサポートをしている。まぁ、相棒(サイドキック)と言えば分かりやすいかな?」

 

「・・・へぇ、オールマイトの・・・えっ、出久!!いつのまに知り合ったんだ!!」

「それは、・・・えーと。」

 

「・・・私から説明しよう。実は商店街のヘドロ敵は最初オールマイトが追っていたんだ。追い付いた時にその敵と対峙している緑谷少年に会ってね、彼が敵の注意を引いてくれたおかげで確保できたんだ。だが・・・。」

 

そう言って、申し訳ない顔になる。

 

「すまない。急いでいたは言い訳にならないな。・・・隙をついて逃げられてしまったんだ。」

「待って下さい。オールマイトは悪くありません!僕が、僕が色々聞きたくてオールマイトを無理矢理引き留めて、その時に、・・・だから、オールマイトは悪くありません、僕です。・・・ごめんなさい。」

「緑谷少年・・・。」

 

深々と頭を下げる出久に八木さんは眩しそうに目を細める。

 

「んー?あー、訳はわかりました。オールマイトは色々忙しいからあなたが来たと言うことでしょうか?」

 

「そうだね。迷惑をかけたお詫びと、緑谷少年に話したいことがあるから来たんだ。」

その言葉に出久は自分を指差す、八木さんは頷く。

 

「・・・じゃ、先帰るよ。」

「えっ、どうして?」

「そりゃ、出久に用があるって言ってるんだから当たり前じゃないか。それにこの人は信用出来るって感じがするし。・・・八木さん、オールマイトにいつもありがとうございますって伝えてもらってもいいでしょうか?」

 

「ああ、必ず伝えるよ。」

「じゃーな、出久。また明日。」

「うん、また明日!」

 

ニコリと笑い頷く八木さん、出久も笑い返事をしてくれる。

そして、少し歩いた時。

「少年!Well done! 」

「?・・・あっ、Thank you goodbye!」

 

そう言って、手を振り家に帰るのだった。

 

 

 

 

 

 



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出久の努力の成果、闘士の修行

◆◆◆◆◆◆◆

 

次の日の学校、出久が話があるということで昼休みに話を聞くことになった。

で、その内容は・・・。

「・・・すげぇ、八木さんが特訓に付き合ってくれるのか。」

 

「そう、だから・・・、いつもの修行は出来なくなるんだ。ごめん。」

 

そう言って謝る出久。

八木さん、オールマイトの相棒(サイドキック)

何でも出久の行動に心打たれ本気でヒーローになりたいなら色々教えるがどうだろうか?と聞かれ、「お願いします!」と即決。

 

だが獅子猿との修行を後になって思い出したそうだ。

 

出久は悩んだ。

ヒーローになると決めた日からかれこれ二年くらい修行を共に頑張ってきた。

 

今年は雄英に向けてさらに厳しくしようと修行のスケジュールを一緒に考えまとめた。

 

そのスケジュールの意味が無くなる。それは嫌だ。けど、八木さんとの特訓もしたい。悩みに悩んだ結果、八木さんとの特訓を受けると決めた。そのことを包み隠さず話し、

 

「ほんとっ、!!」

さらに謝ろうとしたとき背中をバンバンと叩かれ言葉に詰まる。見ると獅子猿が笑っていた。

 

 

「あっははは、気にするな!まぁ、一緒に出来なくなるのは寂しいが、それより出久がプロヒーローに認められたことが嬉しいぞ!・・・頑張れ!だけど無理はするなよ。」

 

そう言って拳を出久の前に向ける。

「うん!」

嬉し泣きしそうなのを我慢して拳を出し合わせる。獅子猿から熱意、応援、信頼、・・・熱い気持ちが伝わる感じがして我慢できず、頑張ぁるからぁぁ!!と泣きながら答えるのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

市営多古場海浜公園。綺麗な砂浜、透き通るような海の青が見える・・・ということはなく、見渡す限りゴミばかりの海浜公園がそこにはあった。

 

 

  海流の流れにより流れ着く漂流物、さらにそれをいいことにゴミの不法投棄が行われており、初めて見る人にはここが海浜公園だと思えないような惨状が広がっていた。

 

  「ふん、ヌオオオオ!」

  そんな中ボロボロの軽トラを押す出久の姿があった。

  なぜこんなことをしているのかそれはこれが八木さんの特訓内容だからだ。ヒーローとしての奉仕の精神の成長や様々なゴミを片付ける方法の考え、行動、それにより肉体の強化。日常生活でも体をさらに強くするための訓練、食事等と八木さんが考え計画を立てた、名付けて【目指せ合格アメリカンドリームプラン】なのだ!!!

 

 

  「はあ、はあ・・・、ヌン!!!」

  (・・・予想以上だった!!!)

  

だがそのスケジュールプランは早くも大幅修正することになる。

  軽トラを回収地点に押し運んだ出久は少しの休憩の後、大きな冷蔵庫をロープで縛り引っ張り運ぶ。その姿にはまだ余裕が感じられた。

 

  (すでに受け入れる器は出来上がっている!一体どれほどの特訓をしてきたのか!・・・このスケジュールだいぶ見直さないといかんな。)

  「緑谷少年、少しいいかな。」

  「はあ、・・・あっ、オー、「ゲフン、ゲフン!」・・・八木さん。」

 

  冷蔵庫を運び終わった出久に声をかける。・・・何か言いかけたが気にしてはならない。

 

  「緑谷少年、君はすでに個性(ワン・フォー・オール)を受け入れるだけの器を持っているようだ!これも君の友人、獅子猿少年との特訓のおかげかな?・・・よければどんな特訓をしてたか聞いてもいいかな?」

 

 

  「はい!」

元気よく答える出久。

話を聞く八木さんが笑顔で固まるまでもう少しだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

出久が八木さんとの特訓を頑張るように獅子猿も修行を頑張っていた。

 

個性の限界超え。

個性を使い続けて成長させる。単純な方法だ。

 

そういう訳で獅子猿は山を駆ける。崖をスイスイっと登っていき、さらに滝をも登る。登り、登り、雲の中を駆け、ついに頂上に立つ黒い物体(獅子猿)

 

太い丸太を思わせる黒毛の剛腕、しなやかさと強靭さを感じる脚、猿のような顔に獅子を思わせる力強い両目は炎のような紅、頭の両側から生える力強さを感じる角・・・。

 

黒い獅子の姿がそこにあった。

 

 

個性【黒獅子】、これが獅子猿の個性だ。

 

「・・・はぁ、はぁ、・・・あ~。」

 

黒獅子の姿から元の人の姿になるとそのまま大の字で倒れる。この個性、エネルギーの消費が激しいのだ。

 

 

最初は一分も保てなかった黒獅子の状態、長い修行のすえ今では半日は全力全開で動き回れるぐらいになった。その過程で色々出来ることが増えたが・・・また後で。

 

(出久は頑張ってるかな・・・)

 

体力の回復を待っている時、ふと頭に浮かぶ優しく芯の強い友。

 

(まぁ、大丈夫か。)

 

何せ自分でもぶっ倒れる修行を弱音吐かずに限界までやったのだ。心の強さは人一倍あるのは確かだ。

 

(・・・だいぶ変わったな出久。)

 

初めて会った時はおどおどとした弱気な奴という印象をうけたが不良に絡まれている子を恐がりながらも助ける姿を見て『違う』と確信した。

 

(そっからだったかな?出久が変わってきたのは。)

 

不良の件から交流が始まり遊び、修行し、ヒーローについて語りあいをしたりしているとだんだんと明るくなり自分の夢を実現するんだ、と努力するようになった。

 

(もう少しで今までの努力の結果が分かるぞ出久、・・・俺もヒーローになるためもうひと踏ん張りだ。)

 

体力が回復し動けるようになったらまた山頂往復に挑戦だ。

 

雄英高校の入試まであと少しだ。

 

 

 



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雄英入試試験

◇◆◇◆◇◆◇

 

雄英高等学校入学試験。

 

この入試で毎年とんでもない倍率を叩き出しているのがヒーロー科だ。

 

『倍率300』日本のヒーロー科試験の中で最難関ではと言われているほどだ。

 

どうしてここまで学生が集まるのか?

それはこのヒーロー科を卒業し活躍するプロヒーロー達の輝かしい活躍の影響だろう。

 

ベストジーニスト8年連続受章 No.4ベストジーニスト

 

事件解決数史上最多 燃焼系ヒーロー No.2エンデヴァー

 

そして誰もが認めるNo.1ヒーロー 平和の象徴 オールマイト

 

ヒーローランキングトップ5の内この三人が雄英ヒーロー科の卒業生なのだ。ここで学んだら偉大なヒーローになれる。

 

故に目指す、集まる、偉大なヒーローになるために少年、少女達はこの入試に挑むのだ!

 

 

「おー、でけぇ。」

・・・呑気なことを言うこの大柄、オールバックの黒髪の少年獅子猿 闘士もその一人だ。

 

「おっ、出・・・久?」

その獅子猿が悠々と歩いていると目の前にモワモワ緑髪の少年の緑谷 出久を見つける。

声を掛けようとすると・・・。

 

「ん~、誰だ?」

 

なんと他校の女生徒と話しているようだ。

話しはすぐ終わったみたいで女生徒は先に試験場に歩いていった。

 

「彼女か出久?」

「へあぁ!!違うよ!・・・あっ、シシ君、あの、これは僕がこけそうになった所を起こす?・・・浮かしてもらって、お互い頑張ろうねって話をしてたんだ。」

 

「へぇ~。」

「本当だからね。」

「ん?疑ってるわけじゃないぞ、あの子の個性は【浮かす】系何だなぁーと思ってただけだ。」

 

「・・・そうだね。どうやってその個性が発動したんだろう?こけそうだったから見れなかったけど、見たら浮かすかな?否、触られた感覚があったから触って発動ということかな?浮かす時のon、offの切り替えは・・・、ウニィ!?」

 

考察スイッチonになりぶつぶつ早口で呟きだす出久だったが突然両方の頬を挟まれる感覚に何事かと顔を上げる。

 

「出久ストップ、考察聞いていたいんだがまた後で。早く中に入ろうぜ。」

 

「フェイ。」

「よし。」

 

そう言って手を離すと今度は握り拳をつくり出久に向ける。

「!頑張ろう!シシ君。」

「おう、やってやろうぜ!」

 

拳を合わせ互いに鼓舞する。ヒーローになるという熱い思いを秘めて試験会場に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆

 

 

筆記試験が終わり、実技試験の説明のための会場。

 

「エヴィバディセイヘイ!!!」

 

「「YoKoSoー!!!YEAHHHH!!!」」

 

「Nice!!良い返事をありがとう!!BOYS!!」

 

(こいつらぶっ○してぇー・・・)

 

プロヒーロー プレゼントマイクの挨拶に元気よく返事する獅子猿と出久。

 

その元気よく返事する二人に挟まれた爆豪はイライラで爆発しそうになるのを抑えていた。こんなことでキレたら自分の経歴に大きな傷になる。

そう思い、爆発したい思いを抑える。

 

 

「受験生のリスナー!実技試験の説明を始めるぜー!アーユーレディ!?」

 

「「YEAHHHH!!!」」

 

(・・・まだだ、後でこいつらをぶっ○せばいいだけだ。)

 

・・・物騒な思考だが彼なりに抑えているのだ。

 

そして始まる実技試験の説明。

簡単にまとめると。

 

制限時間は10分

a~gに分かれて演習場に行き1~3ポイントの印のついた仮想敵を行動不能にしてポイントを稼ぐ、妨害行為は禁止、といった内容だ。

 

(敵を倒すか・・・、それだけか?)

どうも引っ掛かる感じがする獅子猿。出久を見ると目が合い真剣な表情で頷く。出久も何か違和感があるようだ。

 

考えていると一人の受験生が手を上げる。

どうやらプリントに書かれた四種の敵について説明を求めているようだ。

 

確かに四種の敵が記載されているが説明されたのは三種の仮想敵についてだけだ。

(最後のこの敵は何だろう?)

 

「そこの大柄な君ともじゃもじゃ髪の君!」

「ふぇ!?」

「おっ?」

 

手を上げた受験生、体格の良い眼鏡をかけた男子生徒がこちらを向き声をだす。

 

「大きな声で返事をするのは良い!良いのだが静かに集中してる受験生もいるというのを理解してもらいたい!」

 

なるほど、確かに、一理ある。

スッ、と二人は立ち上がり。

 

「「ごめんなさい。」」

「理解してくれて助かる。」

 

「OK!話しはすんだな!最後の敵について説明するから席に着くように。最後のはお邪魔虫、0P敵だ。各会場に一体!暴れるギミックだ!」

 

暴れるギミック・・・。P稼ぎには邪魔になる敵。

 

(敵を倒す・・・雄英は戦闘系個性を求めてるのか?)

 

 

 

「最後に我が校の校訓を送ろう!『Plus Ultra!!』それでは皆良い受難を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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実技試験【上】

☆★☆★☆★☆

 

g実技試験会場

見上げるほどの壁がぐるりと囲んだ街。この場所が実技試験を行う場所だ。

同校で協力をしないようにということで出久や爆豪とは別々になった。

 

それぞれ試験会場に向かう別れ際に。

「「全力で頑張ろう!!」」

互いに拳をぶつけ、互いを鼓舞しあう獅子猿と出久。

「…チッ。」

「「(チラッ)」」

「何みてんだ!!○★◇ぞ!!」

という、エールを送り合い(?)をし今現在はスタート地点だ。

 

 

周りの受験生はストレッチや瞑想等して実技試験に備えている中、獅子猿は試験会場の街を見ていた。

(街の中央に高い塔、あそこだな。)

「やぁ、説明の時のハイテンションはどうしたんだい?」

声の方を向くと顔立ちの整った少年がにこやかに近ずいてきていた。

 

「今は集中する時だからな、ここで大声で叫んで周りに迷惑かけたら、はい、失格!…ってなるかもしれないだろ?」

そう言いながら笑う獅子猿を見て少年は目を細める。

(浮かれた奴だと思ったけど、違うみたいだ。ちゃんと周りを見てるみたいだし。)

「へー、僕は物間 寧人(ものま ねいと)。」

「俺は獅子猿闘士だ。よろしくな!」

 

握手する二人、だが物間は一瞬怪訝な表情になる。

「大丈夫か?力入れすぎたか?」

無意識に緊張をして力を入れてしまったのではと思いすぐに手を離すと物間は手を握ったり開いたりして大丈夫と見せてくれた。

「何でもないよ、お互い頑張ろう。」

「?…おう!」

 

大丈夫な様子に安心し笑顔になり拳をだす獅子猿。だが物間は不思議そうに拳を見る。

「?何かな。」

「あっ。わりぃ、友達とな頑張ろうぜ!という意味こめて拳ぶつけ合うんだそれをついしちまった。」

そう言って拳を下げ笑う姿に物間もつい笑みになる。

「なるほど、仲良い友達なんだね。じゃ、試験頑張ろう。」

「ああ!頑張ろうぜ!」

 

 

 

 

(コピーできなかったか。)

獅子猿から離れ先ほどのことを振り返る。

 

物間寧人 個性【コピー】

触れた相手の個性をコピーする。触れてから5分間という制限と複数同時使用はできないが個性のストック、時間内なら使いたい放題という良さがある。

(握手した時、あの時感じた違和感。)

色々な個性をコピーしてきた物間、それでわかったことはため込む系の個性はコピーしても使えないということだ。

 

だが、あの時感じた感覚。

あれは初めての経験だった、言い様のない、どう表現するか。言葉で表すとしたら『拒絶』の言葉が近いかもしれない。

(個性に拒絶されたのか?…色々な個性があるからそういう個性もありえるのか?)

そう考えながら受験生の中に入っていくのだった。

 

 

 

 

 

⚫⚫⚫

 

「はい、スタート~。」

その言葉が聞こえた瞬間、獅子猿は駆けた。

まずは街の全容を知るため中央の塔を目指す。

走る獅子猿の目の前に1Pロボヴィランが現れた。

(速攻で片付ける。)

獅子猿の体が膨らみ、さらに速度が加速する。

 

「ヒョ、」

「ハッ!」

頭部パーツをアッパーで打ち上げる。

2Pロボヴィランが現れた。

「ヒョ、」

「よっと。」

頭部パーツを蹴りあげて打ち上げる。

1P、2Pが現れた。

「ヒョ、」

「ヒョ。」

「ヒョッ、」

殴った1Pヴィランロボの頭部パーツを2Pヴィランロボにシュート!

(十分対応できるな。)

 

 

次々現れるロボヴィランを楽々と倒しながら進む獅子猿は無事に塔に到着。

「せーの!」

掛け声とともに跳び、塔を登り、天辺に着いた獅子猿は周りを見る。

「商店街、大通りがあってビル街、んー?…あっ!」

 

街の把握のため辺りを見ていると、ビル街のほうで受験生がロボヴィラン達に追われている姿が見えた。

それを見た獅子猿はすぐに跳びビルの屋上に着地、次のビルへ跳び、と、その受験生の所に向かうのだった。

 

 

 

◇★◇★◇

 

 

 

(こうなるだろうと思ってた。)

ロボヴィラン達に追われながら逆立てた紫髪の少年は内心愚痴をこぼす。

ロボだと分かった瞬間、実技はクリアできないと直感した。なぜなら自分の個性ではロボを倒すことも無力化もできないのからだ。事実、一体目が出たとき個性を使ったが結果は今の状態、プログラム通り動くロボに【返事】が返ってくるわけなかった。

 

 

(とにかく、さっさと撒かないと、やばい。)

全力で走るが中々逃げきることができない。

何とか撒こうと路地裏に入り走る。それがいけなかった。

 

「はぁ、はぁ…。くそ。」

右に左にと走り続け進んだ先は高い壁だった。今から戻ろうにもロボの駆動音が近付いてきている。鉢合わせになったら何もできずにやられるだろう。

(使えるものがない。壁は、登れない。)

万事休すか、そう思い壁に背を預けた時。

「大丈夫か?」

「!!」

 

壁の上から声が聞こえた。上を向くと黒のジャージにオールバックの髪の大柄な少年がこちらを見ていた。

「大丈夫だ。助けにきたのか?」

「おう!助けにきたぞ!俺は獅子猿 闘士。」

「…心操 人使(しんそう ひとし)。来てくれたのはいいがお前一人で何とかなるのか?」

「大丈夫。」

そう言って笑った時。

 

 

「「「ヒョウテキカクニン ブッコロス。」」」

ここにくる時に曲がった角からたくさんのロボヴィランが現れた。

後ろを振り返らず必死に走ってきたから分からなかったが心操の予想以上に集まっていたようだ。

「なぁ、本当に大丈、!」

ロボヴィラン達から獅子猿に視線を移しながら話す心操が止まる。

そこには獅子猿がクラウチングスタートの体勢になっていたのだ。

 

「よーい、」

低い声で呟く。その言葉に心操は寒気が走りある程度空いていた距離をさらに空けた。そして。

「ドン!!」

風が轟音をたて震える。

巨大な岩、否、巨大な砲弾が豪速でロボヴィラン達に突っ込んでいく。

ロボヴィラン達も向かってくる獅子猿を標的と定めたのか獅子猿に向かって行く。

 

巨大な砲弾とロボヴィラン達がぶつかる。・・・結果。

ロボヴィラン達が盛大に吹っ飛んだ。

「まじか。」

あの数を吹っ飛ばせるのかと。

目の前のロボヴィラン達が次々とボーリングのピンのように飛ぶ光景を呆然と見る心操だった。

 

 

「よし、終わり。」

一分もかからずロボヴィラン達を倒しきった獅子猿。

「後、6分~。」

そこにプレゼントマイクのアナウンスが聞こえる。

(うーん。…なんかなぁ。)

始まる前から感じてた違和感、敵を倒してP稼いで合格。

それがこの試験の内容なのだが、こうして倒すことができない受験生もいるのにはたしてP稼ぎで合否の判定をするのか?と考えると違和感がさらにました。

 

(敵を倒すヒーロー…、でもプッシーキャッツに白狒々、13号とかの災害救助ヒーローに、ランチラッシュやキッチンアイルーの料理系のヒーローとか色々いるのになー。)

疑問がどんどん沸き上がってくる。本当に戦うヒーローを雄英は求めているのか。だったら戦闘系個性優遇とかなにかしらアピールするんじゃないのか?他にも合否の判定はあるのか?色々考えが浮かんできたが。

(まぁ、どうでもいいか。)

獅子猿は考えるのをやめた。

というかやることを決めたと言っていいだろう。

 

「心操!ちょっといいか?」

「あっ、ああ。何だ?」

「手伝ってくれ。」

「……は?」

 

てっきり「じゃあな!」とか言って別れると思っていた心操は一瞬何を言われたのか分からなくなり呆けてしまう。

そこに獅子猿の両手が肩に乗る。

「時間がないから一度しか言わないぞ、『人助けだ!』…ヒーローどうする?」

 

獅子猿の紅い目と合う。

正直、展開が早すぎて理解が追いついてないがこいつの目を見て言葉を聞いて本気でヒーローになろうとしている覚悟や情熱を感じる。

 

それと。

(ずるいなこいつは、ヒーローになりたいからここにいるのにそんなこと言われたらなぁ…。)

脳裏をよぎる過去の記憶。

自分の個性【洗脳】により周りから『ヴィラン』向きと間接的に言われる日々。

まぁ、そういう世の中。仕方ないことなんだと思っていた…さっきまでは。

 

獅子猿の手をどけ深呼吸をする心操。

そして真っ直ぐと獅子猿を見ると。

「なってやるよヒーローに!」

「ああ!やるぞヒーロー!」

 

笑顔で拳を出す獅子猿、少し戸惑った心操だったが挑戦的な笑みを浮かべ拳をぶつけた。

 

(俺はヒーローになるんだ!)

 



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実技試験【下】

★★★★★

 

 

近付いてくるロボヴィラン、それを見ながら少年はすでに倒したロボヴィランのパーツに触れる。

するとそのパーツが青白く輝き浮いた。

 

「いけ!」

浮いているパーツはその声に反応するようにはロボヴィランに向けて高速で飛び見事命中、無事倒すことができた。

(これで34P、いい個性だったがそろそろ時間切れかな。)

そう思っていると物間の隣でふわふわ青白く輝くパーツは輝きが無くなりガシャンと地面に落ちた。

(さて、後はこの個性を使って稼ぐか。)

 

手の周りに水が集まり野球ボール程の球が複数浮く。

仮名『水球弾』浮いている水球を高速で飛ばす個性だ。

(前のもそうだが、中々良い個性をコピーできた。)

 

そう思いロボヴィランを探そうとした時に影が通った。

どうやら誰かが上を飛んだようだ。なんとなく影を目で追い姿を見た時、思わず目を見開いた。

(あいつは獅子猿!受験生を背負っている?)

 

屋根の上で 周りを見る獅子猿、背負われた紫髪の受験生は指を指している。

そして指した方向にすぐ跳んで行く。

その一部始終を見ていた物間は何故?と疑問を抱いた。

(同じ学校?否、それはない。だったら他校の受験生と協力している?…っ!)

考えていた物間の背後から近付くロボヴィラン。

だが振り返り手をロボヴィランに向け水の球を高速で飛ばし倒す。

 

(今はロボヴィランに集中かな。)

チラリと跳んで行った方を見てからロボヴィランがいそうな所に走っていくのだった。

 

 

 

 

 

◉◉◉◉

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、…ひぃ、…はぁ。」

受験生がロボヴィラン達から逃げる。

今更ながらバカなことをしたと後悔している。

もっとPを稼ぐにはどうしたらいいかと考え、大通りで盛大に暴れて倒していたら集まるのでは?と思いやったらうまくいった、うまくいきすぎた。

 

最初は一体、二体で余裕と稼いでいたがだんだんと増えていくと対処が遅れていき、そして。

「ガッ!!?」

ロボヴィランの弾丸が肩に当たった。

もちろん本物ではないゴム弾なのだがそれでも激痛が走るのは当然だ。

 

その激痛で動きが止まった所に。

「ひぁぃ、!!?」

真横、すぐ近くに弾が通った、もし当たっていたら…それを想像した瞬間走り出していた。

なりふり構わず走る。だがロボヴィラン達はただで逃がす訳はない。逃げる受験生を追いかける。

 

「はぁ、クッ、…ハァ、ハァ。」

たくさんのロボヴィランを相手にしたせいで息が切れかけ体が重い、さらに肩の痛みもありいつものように走れない。

 

(誰か、誰かいないっ!!)

そんなボロボロの状態で全力で走ったら転ぶのも仕方ないことで。

「いっ、うぅ逃げ、逃げないと」

(誰か!)

それを見逃すロボヴィラン達ではない訳で、だんだんと距離が近付く。

(助けて。)

「助けてください!!」

 

ロボヴィラン達の駆動音を近くで聞きながら必死に叫んだ!まぁ、そう都合良く助け

「任せろおぉー!!」

…がきました。

 

受験生の近くに着地する黒髪、黒ジャージの大柄な受験生とその大柄な受験生に担がれている逆立てた紫髪、青のジャージの受験生。

「任せた!」

「ああ。」

 

短いやり取りをして黒ジャージの方はロボヴィランに突っ込んでいき青のジャージの方はこちらに近付いてくる。

「怪我はないか?」

「あっ、はい。…大丈夫です。」

「そうか…もう少し離れた方がいいな、あいつが動きやすくなる。歩けるか?」

 

その言葉にもう一人は大丈夫なのかと見ると。

「ヌオォォー!!!」

「「!?!!!?」」

二体のロボヴィランの脚を掴み独楽(こま)のように回りロボヴィラン達を倒していた。

正直大丈夫なんじゃないかと思っていると。

 

「早く立て、あいつが注意を引いてくれてるが他のロボヴィランがこっちを標的(ターゲット)にするかもしれない。」

確かにそうだと思い立ち上がろうとするが。

「あ…嘘、早く、立って!」

立ち上がろうとするが立てない、足に力がはいらないのだ。

「腰を抜かしたか……。なぁ。」

「えっ、はい。」

「…俺についてこい。」

(けど足が!えっ。)

そんなこといっても力が入らず立ち上がれないと伝えようとした瞬間、立ち上がった。そして走る彼についていく。

(何で?)

訳がわからないと思いながらもついていく受験生。

 

「獅子猿!こっちは大丈夫だ!」

「おう!」

掴んでいた二体をロボがまとまっている所に投げるが、

「「「「ヒョウテキカクニンブッコロス」」」」

「スゲェ数だな、よく大怪我せずにすんだなあの子。」

まだまだロボヴィランはいる。

 

 

「あの、大丈夫なんですか?」

「大丈夫。なにせロボヴィラン達を簡単に吹っ飛ばせるパワー系の個性だ。それにもしもの時の作戦もある。」

心配になり声をかけると即答され、それに安心感を感じる受験生。

「あの、その作戦とは?」

ピンチを助けるヒーローのように自分を助けてくれた彼らの作戦、一体どんな作戦なのかと目を輝かせる。

それに苦笑いしながら見る心操は一言。

「逃げる。」

「えっ。」

「無理ならあいつが合図するから危険が少なそうな所に逃げるぞ。」

「は、はぁ?」

「まぁ、P稼ぎたいっていうなら別にいいが。あの数相手するのか?」

そう言って指差す先には車の渋滞を思わせるロボヴィラン達がいる。

「…、無理です、逃げます。」

「あいつが無理そうならな。」

 

 

目の前にはたくさんのロボヴィラン。

それを見てニヤリと笑う獅子猿。

「心操が頑張ったんだ俺も、トオォ!!」

かっこよく言いきる前にゴム弾が飛んでくるが、キャッチ。

「…手早く倒すか。」

ゴム弾を撃ってきたロボに向けて投げ。

「いくぜ。」

クラウチングスタートからの砲弾突撃。

何体かのロボヴィランがゴム弾を撃つが。

キャッチ、キャッチ、キャッチ。

すべて掴まれ、投げ返され倒される。

そして。

「吹っ飛べ!!」

「「「「?!??!!」」」」

盛大に吹っ飛び宙を舞うロボヴィラン達。

その舞っているロボヴィランを掴むと、

「フン!!」

こっちを狙っていたロボヴィランに投げた。

「まだまだ!!」

掴み投げ、掴み投げ、ボールを投げるように楽々とロボヴィランをロボヴィランにぶつける。

だがそれでも量がある。背後から他のロボヴィランが攻撃してくる。

「なんだ、また回りたいのか?」

が掴まれ先ほどと同じようにブン回されて他のロボヴィラン達が倒れていく。

 

 

「大丈夫そうだな。?!」

その様子を見てそう判断した心操だったが足に伝わる振動に気付き周りを見る。

 

ズン ズン ズン!

 

(…、なんだ?近づいてる?)

「獅子猿!!」

その声を聞き即席の倒したロボヴィランの壁を作りこっちに跳んでくる。

「この振動わかるか?」

「ああ、待ってろ。」

すぐに近くのビルに跳び周りを見た獅子猿は。

「マジか。」

近くを通る巨大なロボヴィランを見つけた。

(あれは0Pのロボヴィラン、こっちにはこないみたいだな…だが。)

巨大ロボヴィランの進行方向に何人かの受験生の姿が見える。それを確認すると心操達の所に降りる。

「ここにはこないが巨大なロボヴィランが近くを通ってるな。」

「巨大ロボヴィラン、…0Pのやつか?」

「ああ、俺は0Pの方に行ってくるがどうする?」

「俺も行くぞ。」

(へー、即答か。それに良い顔するようになったな。)

 

「わかった、で。あー、どうする?」

「あっ、私?…えっ!巨大ロボヴィランの所に行くの!?」

「ああ。」

「そうだぞ。」

「ムリ、無理です。普通のよりデカイんでしょう!!無理ですから!!」

高速首振り、手もブンブンと振って拒否を全力でアピールする。大量のロボヴィランによって肉体的にも精神的にもダメージを受けているだろうから当然だろう。

 

「大丈夫だ。」

その一言にアピールが止まり。

「あれは俺がなんとかする。」

「えっ?」

呆けた声が出てしまう。

「任せろ!それよりやってもらいたいことがあるんだが……」

自分の胸をドンと叩き、説明を始める。それを心操は聞き受験生は。

(あれ?これ行く流れじゃない?)

と心で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

◈◈◈◈◈◈◈

 

 

 

 

「なんだよあれ!?」

「逃げろー!!」

「アレのろいぞ!早く逃げろ!!」

突如現れた巨大ロボヴィラン。Pを稼いでいた受験生達は蜘蛛の子を散らすように逃げる。

(さて……、Pは稼いだしいいか。)

物間も他と同様に逃げようした時。

「アァアァァーーー!!」

声が聞こえる。その声はだんだんと大きくなり。

空から二人の受験生を担いだ獅子猿が降ってきた。

「頼んだ。」

「ああ。」

「……アイ。」

巨大ロボヴィランに突っ込む獅子猿と巨大ロボヴィランの近くの受験生達の所に行く逆立てた紫髪の少年とふらふらしてるショートヘアーの少女。

(何をしてるかと思ったら、救助活動か。…なんでまた増えたんだ?)

 

先ほどの見かけた時の疑問が解けたがまた別の疑問が沸き上がる。

ロボヴィラン倒してPを稼ぐこれが試験の内容だ。それをせずになんで救助するのか?

「こっちだ!しっかりついてこい!蜜頼む!」

「ハイハイ、任して。」

誘導する紫髪の少年、近づくロボヴィランはショートヘアーの少女が刺のある腕甲を振り回し倒している。

(他校同士でチームができてる…。いや、それよりあいつは…)

 

獅子猿の方を見ると巨大ロボヴィランの目の前に立ち腕を回していた。

(まさか、あのロボを相手にするのか!?)

「よし、いくぞ。」

獅子猿の体が変化する。

猛獣のような獰猛さを感じる顔、鋭い牙も見える。髪はライオンの(たてがみ)のように伸び、抑えていた力が少し解放されたかのように体が一回り大きく漆黒の体毛が腕から見える。あと腰から尻尾が生えた。

 

黒闘士(ブラックファイター)

全解放状態【黒獅子】の猛獣のような姿ではなく人に近い姿。力、速さは黒獅子に劣るがそれでも超人的フィジカル、燃費の良さ、人である動きやすさの良さがある。

 

 

その変化した獅子猿に巨大ロボヴィランがその大きな脚を一歩圧し潰すように踏みつけた!

ズン!!

踏み潰された。

一瞬だがそう思ったが踏んだ脚がグラグラ揺れ出す。

そして抑えていた激流が氾濫するが如く脚が高々と上がりバランスを崩した巨大ロボヴィランは仰向けに倒れた。

「ふぅー。さて。」

何事もなく立っている獅子猿は倒れたロボヴィランの頭までいき。

「暴れられると困るからな、悪ぃがしまいだ。」

一撃。

重厚な音が響き起き上がろうとしていたロボヴィランは動かなくなる。

 

「「「「……。」」」」

静寂。

さっきまでの騒々しさはなく、今、目の前で起こったことに受験生達は呆然としてしまうが心操と蒼熊はきにすることなく怪我した受験生の手当てをしていた。

 

(パワー系個性、変化系個性の複合型なのか?…特殊な条件があってコピー出来なかったのか?まぁ、どっちにしろ…)

物間の手の周りに浮いていた水球が落ちる。そして。

 

『終ーー了ーー!!』

(時間切れ、実技試験終了だ。)

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっとした楽しみになれたら満足です。


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ざっくりと会議内容切り抜き

まだ俺は生きてた





◯☆◯☆◯☆◯☆

 

広い会議室。

そこには様々な衣装をきた人々が集まっていた。

極薄タイツを着た女性、カウボーイ風の男性、宇宙服姿にピンクの作業着風の人等、仮装大会かと思われる人々が集まっているが別にそういう演者の方という訳ではない。

 

 

彼らはヒーローだ、そしてヒーロー科最難関と言われる雄英高校の教師の方々だ。

「今年は豊作だな。」

赤のヒーロースーツを着た男性、ブラドキングが話す。

「アア、素晴ラシイ原石達ダ。……、コノ原石達カラ選バナイトイケナイノカ……。」

黒のマスクと体を覆うロングコート、片言の喋り方をするエクトプラズムは最初は感嘆を最後の方は悔やむ感じで話す。

 

会話から察するとおり彼らは合否の会議を始めようとしている所だ。

「そうだね、けど僕達は選ばないといけない。そのために試験をして彼らの実力を見たんだ。しっかり見極めていこう!」

この中で誰よりも小さい人、ヒト?

…喋る小さい動物が場をまとめているがこの方雄英高校の校長である。

 

根津

個性【ハイスペック】

世界で唯一、個性が発現した動物だ!

 

「努力の成果、しっかり見極めましょう。」

極薄タイツの女性、ミッドナイトはそう言うと各々モニターに受験生のデータが出てヒーロー達はそれに目を通していく。

 

 

 

◈◈◈

「筆記はこれでいいとして、次は実技をやっていこうか。」

 

中央の巨大モニターにそれぞれの実技試験の映像とPのデータが出てくる。

 

「いや、本当に驚いた。」

カウボーイ風の男性、スナイプはある三つの映像を出す。

「巨大ロボヴィラン…。まさか倒すとは、それも三人。」

 

それぞれの映像には頭部を破壊された巨大ロボヴィラン、同じく頭部で、ベコッと凹んだ巨大ロボヴィラン。最後は電池が切れたように倒れている巨大ロボヴィランの三つが流れる。

「そうコレだ!コイツらだ!最高だった!」

声高々に興奮冷めやらぬ感じに話すのはプレゼントマイクだ。

「他が逃げる中、コイツらは立ち向かった!雄英初じゃないか!一度の実技試験で三人も巨大ロボヴィランを倒したのは!」

 

映し出す成績

爆豪 勝己 88P

 

獅子猿 闘士 61P

 

緑谷 出久 42P

とある。

 

「爆豪 勝己。彼は圧倒的だったな。」

ブラドキングは映像を出す。

「最初からロボヴィランの対処が速く後半になるにつれてさらに速くなったな。巨大ロボヴィランに対しても迅速に処理。その後も時間切れまでPを稼いでいた。」

「ロボヴィランを絶対殲滅するホーミングミサイルのようだった……。」

「彼が動き回ることで助かった受験生もいるんだよな。」

 

「彼もすごいがこの子も中々だ。」

コンクリートの塊を人型にしたような姿のセメントスは獅子猿の映像を出す。

「強化技でロボヴィランを倒したりしたが、何より救助だ。周りの索敵、他校の受験生を助け協力を願いともに行動している。役割もしっかり決めて行動。ヒーロー活動として意識しているようだった。」

「爆豪君同様彼も最後までスタミナ切れをせず動き回ってたな。」

「心操、蒼熊…、この二人も協力して救助にあたったことを評価する。」

 

「ふむ、緑谷少年も同じく意識していたようだったな。」

細身の男性、八木さんが映像を出す。

「索敵、救助を素早く、的確に行い。ロボヴィランに対しては弱点を見つけそれを他の受験生達に伝え被害がでないよう尽力し、巨大ロボヴィランに対しても停止ボタンを見つけ停止させる。うん、彼は観察力があり、機転が利くと感じたな。」

「彼の手当ての仕方、的確で素晴らしかったわ。」

「救助の時の優しい笑顔、あれは安心する。」

 

「では。」

根津校長があるデータを追加していく。

「これで実技のPは出揃った。」

 

 

爆豪 勝己 88P LP12合計100P

 

獅子猿 闘士 61P LP39合計100P

 

緑谷 出久 42P LP58合計100P

 

LP、レスキューポイント。教師達による救助活動の評価をポイントで表す。それがLPだ。

そしてこの結果に教師達は感心と困惑が合わさった奇妙な気持ちになる。

 

「100Pが三人そろうのか…。」

「何かの間違いかと思って確認したけど合っていたわ。」

「100P達成は過去にいたが、三人が100Pはこれが初だな。」

「ほう…、同じ中学なのか。切磋琢磨していたのかな?」

教師達が三人について話している時にスッと小さい手が上がる。根津校長だ。

それにより教師達は静かになる。

 

「皆に聞くまでもないけど一応ね、この三人の合否は?」

「合格。」

「合格だな。」

「立派なヒーローになれるよう支え成長させよう!」

教師達からの判定を聞いた根津校長は頷き。

「よし、では合格だ!クラス分けは受験生の合否を終わらせてから行うよ。」

 

その言葉に頷き受験生達の映像、成績を出していく。

会議はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ラーメン屋で集まり食べる話し

 ◌○◎◑◐◎○◌

 

 

試験から一週間ぐらい過ぎたとある休日。

出久はラーメン一楽という店に来ていた。

「いらっしゃい!」

「どうも。」

暖簾をくぐり中に入ると笑顔のおっちゃんが挨拶してくる。それにペコッと頭を下げ中を見回すと目的の人物、獅子猿がカウンター席の奥で手を上げていた。

 

「出久こっちだ。」

「うん。」

獅子猿の隣のカウンター席に座る出久。

獅子猿はグラスに水を注ぎ出久の前に置く。

「ありがとう。」

「おう、きにすんな。店長、後二人くるからその時に注文でもいいかな?」

「ああ、かまわないぞ。」

その返事に礼をし、出久を見る。

 

「まだ来るけど先に…、まぁ、もう言ってるけどもう一度な。試験お疲れー。」

「お、お疲れ。」

グラスを出す獅子猿、出久もオドオドしながらグラスを出し鳴らす。

 

「それと合格おめでとう!」

「!うん、シシ君もおめでとう!」

獅子猿の言葉に笑顔になり再びグラスを鳴らす。

二人共無事合格できたことは結果かでた後すぐに連絡して知っている。

その時の連絡で食べに行こうぜ!と言う話しになりここラーメン一楽で食べようということになったのだが、次の日の学校で、

 

「後二人誘う?」

「ああ、実技試験の時に知り合った三人に連絡したんだ。一人はいけないって言われたけど二人がそっちが良かったらって言ってくれてな。どうかな?」

「良いよ!皆で食べよう!」

ということがあって四人で食べることになったのだ。

 

 

「いらっしゃい!」

少しすると店長の元気な声が響いた。その声につられ入り口を見ると二人の少年が入ってきている所だった。

 

「お!こっちだ!」

軽く手を振ると気づいたのか二人がこっちに来る。

一人は紫髪を逆立てたような感じの少年、もう一人は整った顔立ちの少年が来る。

 

「出久、紹介するよ。心操と物間だ。」

「心操 人使だ。」

「僕は物間 寧人、よろしく。」

「はじめまして!緑谷 出久です!」

心操には礼をし、物間は握手をしようと手をだしたので握手をする出久。

 

挨拶の後は出久の隣に物間、その隣に心操と座った。

「店長を待たせてるから先に注文を頼む。店長、盛りだくさんラーメン山で。」

「僕は味噌ラーメン。」

「うーん、僕は塩バターラーメンかな。」

「…、醤油ラーメン。」

獅子猿、出久、物間、心操と順に注文する。それに笑顔で「あいよ!」と元気な返事の後すぐに調理が始まる。

 

「心操、物間。来てくれてありがとうな。」

「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。」

「そうだな、誘ってくれて丁度良かった…。」

「…何か聞きたいこととかあるのか?」

 

グラスに水を注ぎ渡していると心操が迷っているような感じで獅子猿を見てくるので聞いてみる。

すると少しして話し始めた。

「獅子猿、緑谷はヒーロー科合格しているんだよな……物間は?」

「僕も合格してるよ。」

「ッ…!そうか…。だったらなおさらだな。獅子猿、電話で言っていた修行。俺も参加したいんだ。」

「…ふむ。」

心操を誘う時、修行について話したがまさか修行に参加したいと思っていたとは。

どうしようかと悩んでいると心操が続きを話す。

 

「俺…、ヒーロー科の試験不合格だったんだ。その後あった普通科の試験は受かったんだけど。それよりあの実技試験だ。…正直、あの実技は出る意味あるのかって、俺の個性では無理だろうって、諦めの気持ちがあった。

だけど獅子猿。倒すだけがヒーローじゃない。俺の個性では敵は倒せない。だが誰かの助けになった。あの時確信したんだ。【倒すだけがヒーローじゃないって。】今思うと笑えるぜ、敵を倒すって思い込んでいたんだからな。」

 

苦笑を浮かべる心操を静かに見る三人、それに照れたのか首の後ろに手を回す。

 

「あー…。オールマイトの映像ディスクは見たか?」

 

「もちろん!オールマイトが今回の試験についての評価を話してくれるけど、ただ言っているんじゃなくて、僕に向けて真剣に語りかけてくれる!もう泣いたよ嬉しくて!シシ君もオールマイトからのメッセージをもらったって言っていたし!あっ!物間君は?「えっ?僕の所にもきたよ。」やっぱり!心操君、物間君も、もらったなら受験生全員に向けて真剣にメッセージを送っていたんだ!二千?三千?いやもっとたくさんいたな。…とにかく受験生全員ムュッ!」

 

何気なく話した内容がマシンガントークのきっかけだった。

オールマイトを熱く語る出久。それに心操、物間は目が点で聞いていると獅子猿が出久をひょっとこ顔にして止める。

 

「はい、ストップ。今は心操の話を聞くのが先だろ?すまんな。オールマイト、まぁヒーロー達の話になると止まらなくなるんだ。続き話してくれ。」

「ごめん。」

 

ハッと我に返った出久は申し訳なく謝る。

それに驚いたが気にしてないと言い続きを話す。

 

「まぁ、その映像ディスクでオールマイトが言ってくれたんだ。『誰かを救った君はヒーローだ。』普通科に受かっているが実力が認められたらヒーロー科編入も出来る!心操少年、ヒーローになりたいか?ってな。…」

 

「へー。つまり修行がしたいということは、」

「ああ、ヒーロー科編入のため…でもあるんだが。単純に強くなりたいからだな。それなりのトレーニングはしてきたつもりだったんだが、獅子猿の修行の話を聞くとまだまだだなって感じたんだ。だから頼む!」

頭を下げる心操。

「…。」

けっこうハードな修行内容を話したと思ってたんだがどうするか。

チラリと出久を見ると笑顔で頷いてるのが見えた。

 

「そうだな、いいぞ。…まぁ、どう修行するかはまた後でもいいか?先にラーメンだ。」

「!ああ、そうだな。よろしく頼む。」

 

「はい!味噌、醤油、塩バターお待ち!シシはもう少し待ってな。」

 

丁度その時にドン、ドン、ドン、と出久、物間、心操の前に置かれるできあがったラーメン。

 

大量の葱、もやし。半分に割った茹で卵。そして肉厚チャーシューでできた具の山。下にあるだろう麺は見えないほど具だくさんの山だ。

それに圧倒される三人に嗅覚が反応する。香りだ。味噌、醤油、塩バターの香りが合わさり四人の胃に食欲という刺激を与える。

 

圧倒されたがこんどは空腹感が沸き上がってきた。

「先に食べてていいぞ。俺のはもう少しだろうからな。」

 

三人が止まっているのは待ってくれていると思った獅子猿がそう言うとじゃあと一言。

 

「「「いただきます。」」」

そしてそれぞれ食べ始める、すると。

「うん!美味しぃ。」

「へぇ~。」

「美味い。」

 

この量を食べれるかと思ったが、食べていく程美味しささが増しドンドン食欲が沸いてきて箸が止まらない。

「気持ちいい食べッぷりだな、嬉しいねぇ!あいよ、シシ!お待ち!」

 

三人が黙々と食べる中、獅子猿のラーメンがきたが…、、

「「!!」」

心操、物間はそのラーメンを見て驚愕した。

 

デカイ。

 

今自分が食べてるラーメンより遥かにデカイし、量が多い。多すぎる。

大食いチャレンジで見たことある特大の器に自分達の食べてる具の山が可愛く思えるほどの超量の具の山。

その具の山の下には大量の麺が沈んでいるだろうことは見ればわかる。

盛りだくさんラーメン(山)と言われる訳が分かる一品だ。

 

((食べれるのか?))

二人がその量に驚愕してる中、獅子猿は両手を合わせ、

「いただきます。」

黙々と食べ始める。口に入れ、噛み、呑み込む。何事もなくその繰り返しをして、変わらないペースで食べていく。

そして…

 

「「「「ご馳走様でした。」」」」

 

他三人と変わらないぐらいに食べ終わった。

((マジか…。))

満足な笑顔を浮かべる獅子猿と空の器を見る。

あの量を本当に食べたのかと実感がわかないでいる二人を見ながら。

(初めては驚くよね。)

 

二人の反応を見て自分もこんなだったな~と遠い目をする出久。

「店長ありがとう!うまかった!」

「おう!ありがとな!」

 

「さて、どうする?飯食ったしどっか行くか?」

「そうだね…、良かったら修行ってどんなのか教えてもらいたいな。」

物間の提案に獅子猿は他二人を見る。

「いいと思う。」

「俺も。」

「よし!じゃ、行くか。」

 

「えっ、どこ行くんだ?」

席を立ち会計を済ます獅子猿に物間は声をかける。

「どこって…。ヒーロー事務所だが?」

 

 

「「…は?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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