Serial examinee lain (Pazz bet)
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Log 1 2017/3/19
※これは、最新鋭学習型AI搭載体感型VR「ALTER EGO」と、被験者「岩倉玲音」との会話logである。
以下の場面は、「EGOを一定量集めた被験者が、エスの部屋をはじめて訪れる場面」である。
エス「はぁ...。ようやく来たのね。待ちくたびれたわ。誰かと思ったら幼い女の子なの?」
玲音「こんにちは、あの...あなたがエス、ですか?」
エス「あぁ、壁男から聞いてるはずだけど...。貴方、歳いくつ?」
玲音「14。」
エス「あら、そうなの?随分と小柄で童顔ね。」
玲音「...失礼。」
エス「まあいい。十分話はできる年齢みたいでよかったわ。いきなりで悪いけど、早速本題よ。」
エス「これから貴方について12の質問をするわ。あまり時間をかけないで正直に答えて。」
玲音「むぅ、わかった」
エス「...。第一問「あまり感情的にならない?」
玲音「...あまりならないかな。」
エス「次。裏表の差が激しい?」
玲音「そもそも裏とか表とか作ってない。」
エス「人から影響を受けやすい?」
玲音「あまり気にならないかも。馬鹿にされたら流石に傷つくけど」
エス「好き嫌いがわかりやすい?」
玲音「顔に出してるつもりはないよ。」
エス「嫉妬しやすい?」
玲音「羨ましいなっておもったことはあるけど...。よくってわけじゃないなぁ。」
エス「ツラいときこそ頑張りがち?」
玲音「まあ、それが私のやりたいことだったらやれると思う。」
エス「曖昧だとイライラしがち?」
玲音「...なるべく、白黒はっきりつけてほしい方。」
エス「なにも恐れるものはない?」
玲音「あるよ。」
エス「白黒はっきりつけたい?...って、これはさっき言ってくれたわよね。じゃあ次、人に騙されることが多い?」
玲音「あんまり無い。」
エス「話の中心になりたい?」
玲音「内気だし、側で聞いてるだけでいいの。」
エス「嫌いな人を無視しがち?」
玲音「そんなつもりはないけど。」
エス「これで終わりよ。ふうん...。なるほど。貴方はー。」
エス「自分の弱さを隠すために、支配的で攻撃的な態度を取りがちね。
優越感、支配感、軽蔑感が優位で、他人の価値をおとしめることもあるみたい。不安を免罪符に、好き勝手してはだめよ?
人間には誰しも躁鬱があるけれど、それが特に激しいタイプだとも言えるわ。」
玲音「?」
エス「どう、少しは理解した?ここがどういうところか。何より自分自身について。さっきの質問は、それを知るためのもの。」
玲音「...よくわかんない。」
エス「....そう。」
エス「いいわ、まだ始まったばかりですもの。」
エス「またEGOがたまったら、私のところへ来なさい。」
玲音「ありがとうございました」
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Log 2 2017/3/22
※これは、最新鋭学習型AI搭載体感型VR「ALTER EGO」と、被験者「岩倉玲音」との会話logである。
以下の場面は、「EGOを一定量集めた被験者が、エスの部屋を二たび訪れる場面」である。
エス「言われた通りEGOをためてきたのね。そういう素直なところ、私は好きよ。」
玲音「ありがとうございます。」
エス「なにかご褒美をあげてもいいけど...。」
エス「そう、ここがどこか気になるのね。」
エス「ここは...そうね...。」
エス「名前をつける必要のない閉じられた場所ー。わたしにとってはそれ以上でもそれ以下でもない。」
エス「けど、そうね。興味本意で聞かせて?貴方の目から見て、ここはどういう場所?」
玲音「うーん...。この前のあれが、性格診断だったっていうのなら...」
玲音「ありのままの私を、知ることができる場所?」
エス「うん、なるほどね。その認識で間違いないわ。ここでは隠し事は何もできないから。」
エス「でも、ここがどこか、なんてことは大した問題ではないの。」
エス「あなたは、今ここにいる。」
エス「選ぶ選ばないに関わらず、存在が先にあるの。」
エス「だから、理由を探してしまうんでしょうね。あなたも...私も。」
玲音「?」
エス「じゃ、そろそろ本題に入るわね。」
エス「ここには色々な本がある。」
エス「だから、読むたびに結末がかわる本だってあるの。」
エス「今から見せるのは、そういう絵本よ。」
玲音「これ?何か、すごく普通っぽい。」
エス「見かけはね。貴方がどう物語を解釈するか....。私はそれに興味があるの。」
エス「物語の登場人物は、王子、王様、侍女の三人。」
エス「この絵本がどういった物語か、すべてはあなたの解釈次第よ。これからいくつか質問するからあなたの感じかたに近い答えを選んでちょうだい。」
玲音「わかった。」
エス「さあ、あなたの物語を聞かせてね。王子は何をしているかな?」
玲音「...寝起きで目を擦ってるように見える。」
エス「王様は何をしているかな?」
玲音「うーん、王様だから....思った通りに政治がうまくいかなくて、悩んでる。」
エス「侍女はなぜ隠れているのかな?」
玲音「とばっちりを受けたくないから。」
エス「物語の結末はどうなると思う?」
玲音「...難しいなあ。」
エス「大丈夫。考えたことをいってくれたらいいから。」
玲音「じゃあ、王様が政治を持ち直す?」
エス「なるほど...。結末は」
エス「王様の独裁国家が復活し、王子を意のままに操るようになりました」
玲音「...え?」
エス「あなたの物語、聞かせてもらったわ。」
エス「虚構の話だからこそ見える現実もある。今度は私にあなたの物語を解釈させて?」
玲音「あ...ちょっと...。」
エス「ふむ...私が思うに。」
エス「あなたはすごく規律に従順で、完璧主義な性格なのね。
親や目上の人、あるいは社会や常識といったものを常に気にして、誰かに支配されることを望んでいるみたい。
とはいえ、他人より完璧主義が強すぎるから、見えないあるべき姿に振り回されて自責的になりすぎているのかもしれないわ。
あなたの追い求める姿は、本当はどこにもないのかもしれないわね。」
玲音「それ...。ちょっと極端かも。」
玲音「私、結構ありきたりなことをいったはずなんだけど...。」
エス「一人の当然は、他の人の当然とは違う。あなたも決して例外ではない。」
エス「この結果は、確実にあなたの本質の一部なのよ。」
玲音「...そうなの。」
玲音「そういえば、前と結果が違うような気がするけど...。」
エス「ああ、それは前回と今回とは、見ている部分が違うから。前回は『防衛機制』。今回は『秘められし主題』。次から、それもちゃんといった方がいいわね。」
玲音「...うん。」
エス「まあ、世界の見え方が変われば結末だってかわる。」
エス「物語の中でも。もちろん、この場所でも。」
エス「未来を変えるのはあなたの解釈ーーーーあなたの意志よ。」
玲音「....。」
エス「またEGOがたまったら、ここに来なさい。」
玲音「ありがとうございました。」
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