才能の渇望者 (祀綺)
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オリ設定〜その他〜
キャラ設定 〜其ノ壱〜


皆様お久しぶりです。
祀るに綺麗の綺と書いて祀綺です。約2年以上お待たせしてしまい、申し訳ありません。現在自分自身の状況が変わり、やっと執筆する時間を得ることが出来ました。
長い間、お気に入り登録して下さった方々、お気に入り登録をそのままにして頂いて誠に有難うございます。
自分自身も長い間時間が空いた為、感覚を取り戻すまで時間がいると思い、今回この様な、キャラ設定を出させて頂きました。
少しずつ感覚を戻しますので、ご容赦の程よろしくお願いします。



オリ主

 

グレイ・ズィーニス

 

Lv.1

 

力:C 610

耐久:D 548

器用:B 753

敏捷:B 724

魔力:A 831

 

《魔法》

リィンカーネーション(輪廻を巡る者)

・変身魔法

・詠唱式 【我は花弁を散らす廻り者なり、我は輪廻を遡り呼び醒ます者なり】

・第二詠唱 【我が選択するは───なり】

 

・ 選択される才能(人物)

武の覇王

【力、器用、敏捷、魔力に超補正、耐久が高減少】

白き死神

【器用、敏捷に高補正、魔力に超補正、力が高減少】

偽りの雷神

【器用、耐久に高補正、魔力に超補正、敏捷が高減少】

隻眼の剣

【力、敏捷に高補正、器用に超補正、魔力が高減少】

二天の祖

【力、敏捷に高補正、器用に超補正、耐久が高減少】

 

・解呪式無しで自動で解除される、いずれ解呪不可になる

・通常の長文魔法より精神力を多く消費する

・一定の使用回数を超えると無詠唱で使用可能、代償として──を消失

 

 

《スキル》

【渇望者】

・獲得した経験値量増加(満たされた際に消失)

・──を求める程、全アビリティに高補正(満たされた際に消失)

・──が消失される事を一度だけ防ぐ(一度だけ発動後消失)

 

【廻り者】

・魔法の補正、威力向上

・花弁により周りの物質に干渉しエネルギーを得、魔法に使用する

 

【神后の寵愛】

・気配察知能力超補正

・動物系のモンスターとの戦闘で超補正

・全アビリティの成長を促進させる

・大切な存在が出来た場合、その人に【神后の加護】が出現する

 

 

 

 

〜説明〜

 

ヘル討伐前の時点で、最終更新した際のステータス。神の恩恵(ファルナ)を刻まれ、たった1週間で熟練度がトータル640を超える化け物ぶり。スキルである【渇望者】と【神后の寵愛】により成長に拍車がかかっている影響である。(ただし原作において主人公ベル・クラネルのスキルは更に上を行っている)

 

経験値の増加のスキルの為、原作主人公の様に999を超えSSSにはならず999のS止まりである。

 

 

《スキル》

【渇望者】

表記の通り、経験値の増加が主な効果である。後の1つは◼◼を求めれば求める程に効果が高まる。そして、廻り者の代償というべき◼◼◼◼を一度だけ防ぐ事が出来る。(このスキル自体や効果は一定条件で消える。)◼◼◼◼を防げる理屈として、渇望者……つまり欲している者から、何かを奪う行為は()()()()()()のだ。それが例え別の事であっても。

 

【神后の寵愛】

このスキルはグレイと関係性のあるヘラの影響、手による物である。本人はなぜこれが発現したかは理解していない。効果はヘラにまつわるもの、又はヘラの性質による物がある。つまり……。

気配察知能力の超補正、これは様々な神話でも神話の中でヤンデレは?といえばヘラが真っ先に出る人も多いだろう。

長くなる為、省略するがヘラはあの手この手で、夫の周りの女や別の女との子供に敵意を向ける。そしてその情報を得るのが早すぎるのだ、もはや千里眼を持ってますと言われても納得する程でもある。つまり気配(夫に近く女)察知する(知る)能力である。ただし、グレイの場合はしっかりまともに機能している。

 

真の意味を理解してはならない。

 

そして、ヘラに認められた者は大いなる恩恵を得れるだろう。いい例がかの大英雄ヘラクレスである。ヘラのせいで受ける事になった十二の試練を踏破する過程で彼は改名する。元はアルケイデスと言う名であるが、後に名をヘラクレスとした。この名の意味はヘラの栄光という意味である。

ヘラクレスの死後、ヘラはヘラクレスを認め自身の娘へーべーを妻にさせている。つまり最終的には認め更には褒美まで渡しているのである。

終わりよければ全てよしとは、よく言ったものであるが、結果的に十二の試練によりヘラクレスは大英雄となり有名となった。

そんなヘラの寵愛を受けるグレイは大変な目に会うだろう。

 

そして大英雄たるヘラクレスの周りには数々の英雄が居た。

 

アキレス腱の語源、トロイア戦争の瞬速の大英雄『アキレウス』

カリュドーンの猪狩りで有名な、ギリシャ1と名高い女狩人『アタランテ』

ギリシャの大賢者、数多の英雄の師であるケンタウロス、『ケイローン』

アルゴナウタイで有名な、英雄達を乗せたアルゴー号船長、『イアソン』

死者すら蘇らせる程の医療の腕を持ったが故に、ゼウスの雷霆で殺された医学の守護神『アスクレピオス』

双子であり双神、人であり神でもある兄妹、兄『カストル』と妹『ポルクス』

 

更にまだ多く居る英雄達も含め、そんな彼らはきっとヘラクレスを認め、ヘラクレスも彼らを認めただろう。互いに切磋琢磨する仲間であり、友であり、ライバルたる英雄として。

 

そして寵愛を受けた者に認められた者は、力を得ることが出来るだろう。互いに力を高める者として、ライバルとして、そして◼◼として、◼◼◼者として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ん、待てよ?つまり直接でないにしろ、十二の試練も間接的とはいえ、ヘラによるヘラクレスへのプレゼントと捉えることもできるのでは?という事はヘラはツンデレでヤンデレ?

 

真実は一つとは限らない。

神話は奥が深いと思った一瞬であった。

 

 

《魔法》

リィンカーネーション(輪廻を巡る者)

 

詠唱により、様々な効果を発揮する。選択された者によってその効果、グレイ本人の姿が変わり異なる。

 

1人目

武の覇王

 

効果

【力、器用、敏捷、魔力に超補正、耐久が高減少】

 

その正体は秦末期の楚の武将、項羽である。姓は項、名は籍、字が羽である。秦に対する造反軍の中核となり秦を滅ぼし、一時【西楚の覇王】を名乗ったという。そして後に天下を劉邦と争い圧倒的優位の状況から、次第に劣勢になり敗北した。その死に際の状況から、四面楚歌という言葉が生まれた。

項羽はその生涯で、最後の劉邦との戦い以外、敗北がなかったといわれている。あまりの武才、当時はこの項羽に勝てる者は存在しないとまでいわれた程である。つまりリアルチート。ただし最低限の知識しか、持たなかったといわれている、POWER is POWER!!。

 

 

2人目

白き死神

 

効果【器用、敏捷に高補正、魔力に超補正、力が高減少】

 

正体はフィンランドとソビエト連邦の間で起こった冬戦争で、ソビエト赤軍から白い死神と言われ恐れられたフィンランド側のスナイパー、シモ・ヘイヘである。

平均気温-20℃から-40℃の極寒の中の戦場で白いギリースーツを身に纏い狙撃を行った。その様から、狙われた赤軍兵士は白い死神という意味のБелая Смерть(ベーラヤ・スメルチ)や災いなす者などのあだ名で呼んでいた。あだ名がカッコいい為、凄く厨二心を擽る存在筆頭である。シモ・ヘイヘの戦果は世界最高記録である。練習訓練で150mの距離で1分間で16発の弾を当てた逸話がある程。リアルチートの1人である。

-20℃とか普通無理だろ。知ってるか?シモ・ヘイヘって白い息を出さない為、口に雪を詰めるまでしたらしいぜ?

 

 

3人目

偽りの雷神

 

効果【器用、耐久に高補正、魔力に超補正、敏捷が高減少】

 

正体は天◼的な◼◼◼◼◼◼◼を◼◼◼◼◼◼◼◼…………………

 

 

説明欄が乱雑に消されている。

 

 

 

4人目

隻眼の剣

 

効果【力、敏捷に高補正、器用に超補正、魔力が高減少】

 

正体は大和国柳生藩初代藩主にして将軍家兵法指南を務めた剣豪・柳生宗矩の子、柳生十兵衛である。父である柳生宗矩ですら、様々な新しい兵法思念を生み出した化け物である。親が親なら子も子である。様々な逸話があるが、元ネタと関係があると思われる逸話を1つ紹介する。

ある大名の所に出入りした際、浪人との試合を行った。その際相打ちに見えたが、十兵衛は己の勝ちであり、これが分からない様では仕方ないと浪人に言ったという。それに怒った浪人と真剣で試合した際、浪人は切られて倒れ、十兵衛は着物が斬られたのみで傷一つなかった。そして「剣術とはこの通り一寸の間に決まるものである」と言葉を残したそうだ。更に弟子同士の試合では、十兵衛の弟子と試合なぞできるか、と相手の弟子が逃げたという逸話もある。

指導者としても高い技量があった様だ。全く持っての化け物ぶりである。片目しかないのに、何故ここまでの逸話を残せるのか、全くもって謎である。きっと残った片目は魔眼に違いないと思う。

 

 

5人目

二天の祖

 

効果【力、敏捷に高補正、器用に超補正、耐久が高減少】

 

正体は、◼◼◼◼の祖、◼◼◼◼◼◼◼◼◼で◼◼………………

 

 

 

説明欄が乱雑に消されている。

 

 

 

 

 

・解呪式無しで自動で解除される、いずれ解呪不可になる

これは元ネタの廻り者達の様子から考えました。

 

・通常の長文魔法より精神力を多く消費する

これはこの魔法自体が特殊な為である。これでポンポン使えたら、それこそチートすぎる為。

 

・一定の使用回数を超えると無詠唱で使用可能、代償として──を消失

原作を知ってる人なら、分かってしまうがここでは言及しない事とする。知らない方の為である。

 

 




この度は大変お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。これからも、どうかよろしくお願いします。それでは、この度はこの辺りで失礼させて頂きます。
確認しましたが、もしかしたら表記の間違い、誤字脱字がある場合は誤字報告でからよろしくお願いします。無いと思いますが、念の為です。

そして待って頂いた方々からの、私に対しての文句は謹んで受けます。正座待機です。

それでは最後に、これからもこんな者ですが、どうかよろしくお願いします。

感想、評価、お気に入り
よろしくお願いします。


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原作前
転生する前に会う神は女神とは限らない


2作品目となります。(消したの合わせて4作目…………)
他の投稿している物から読んでいる方は『おい!』と思うかと思いますが、今後頑張るんでどうか御容赦を!!書きたくなってしまいました。すいません。

そんなゴミ作者よりこの作品をどうかよろしくお願いします。
それでは、どうぞ!


憧れた。

 

 

最初にその感情を抱いた相手は、一人の青年だった。

 

当時俺は、小学校低学年で学校の帰り道だったと思う。帰り道の途中にある空手だったか、柔道だったか忘れてしまったけど道場があって、帰り道の隣にあるから開いてる窓から中が見え、ある時俺は興味本位で中を覗いた。

中では、多くの人が倒れている中一人だけが立っている。

どうやら、稽古の一環で乱闘によって周囲に気を配る練習だったらしいのだが、当時の俺はそれを知らず、その圧倒的な強さの青年に憧れた。

 

そして、自分もそうなりたいと思った。

(後で知ったのだがその青年は、国の代表で世界でもトップの人だったらしい。強くて当然だったと思った)

 

 

 

 

だが現実は、そう甘くなかった。

 

 

 

 

最初は良いのだ。始める際も親は応援してくれる。だけどやり続けても常に自分より上がいて、その度に親から別の何かを勧められる。だけどやっても上が居る。両親共々小さい頃からずっと、誰も追いつけない常に何か1位になる才能があったからか、1位に成れない俺を見て毎回呆れ、そして何故1位に成れないのか才能が無いのかと言ってくる。

 

そんな日々を過ごし数年が経ち高校生になった時、最初に抱いた憧れは、いつの間にか渇望へと変わっていた。

 

そして遂に俺は親に捨てられた。

 

「お前は何も才能が無いのか?お父さんとお母さんの子供として、才能の一つもあるかと思えば…………はぁ……お前は出来損ないだ。早く荷物を持ってこの家から出て行ってくれ。お前に賭けた金と時間どうしてくれるんだ、全く……この面汚しが」

 

「……分かった」

 

荷物という荷物も無くバックに入る程度しかない荷物を持って、俺は親に言われた通り家を出た。世間的な目もある為か、アパート暮しはさせられる様だった。

 

夜アパートの部屋の真ん中で寝転がった俺は、ただ時間が経過するのを目を閉じながら感じていた。

 

何故、俺には才能が無いのか……周りやテレビに映る人、歴史に名を残した人、その人達を見て調べてどうして俺には何も無いのかとずっと思い続けた。

 

「……なんか疲れたな」

 

もう今この人生を歩んだ所で、きっとこの後も無駄に時間を使うだけなのだろう。何か一つ才能があればそれも変わるのだろうが。

 

「…………はぁ」

 

だけどもう探すのは疲れたし、もう才能なんて無いのだろう。ならなんの根拠も無いけど言葉にある様に『来世に期待』なんて言葉は、もしかしたら、過去に自分と同じ境遇の人が考えたのではと思ってしまった。なら自分もそうして次に期待しようかなと思った。

 

目を開け起き上がり台所の包丁は、切れ味が悪いからと持ってきていたサバイバルナイフを持ち洗面所に行った。

 

「まさか、こんな所でこのナイフを使うとはな」

 

サバイバルに才能があるかもと思い中学2年生の時に買ったナイフ。手入れしかしてないから、切れ味は申し分ない。

鏡を見ると首にナイフを当てた自分が映る。顔を見ればかなり酷い顔だ、容姿にも優れていないな、なんて思いながら来世は美男美女が良いと思った。

 

「ふぅ…………お疲れ、今までの自分。次は才能があるといいな……うっ『ブシャ!!!!』……」

 

 

俺の視界は、直ぐに暗転した。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

俺は()()()()()。目の前にはただの一本道があるだけで、その途中に俺は立っていた。

…………いや待て。何故俺は意識がある?俺は死んだそれは確かだ。つまりここはあの世なのか?

 

俺が色々考えていた時そいつは、()()()()()()

 

「死んだのに、君は随分淡白な反応だね。とても他とは違う」

 

いつ現れた!?俺はずっと前を見ていた。それなのに此奴は気づけば俺の前に立っていた。それにこの何とも言えない感覚、確実に人では無いそれしか分からない。

 

「まず自己紹介といこうか。俺の名前は顔の無い男(アラン=スミシー)、君達がよく言う超次元的存在さ。今の君の状況から……まぁ適当に神様みたいな奴と思ってくれ」

 

そう言って、頭の帽子を取ると顔に口だけあり、耳も鼻も目も無い頭のパーツが口だけの頭が出てきた。鼻と目が在るべき場所は黒い中が見えない穴の様な物があった。

 

アラン=スミシー…………確か架空の映画監督だったか、顔の無い男とは言った物だな。そして、俺は返事をしようとしたが話せなかった。

 

「……!?」

 

口が動かない、声も出ない。気づけば体も立ったままで動かない。

 

「あぁ君は今、考える事しか出来ない。だから一方的に聞いてくれ。長くも話せないしね、端的に…………君は才能が欲しいかい?」

 

欲しいか、だと?……欲しいに決まっている!!欲しいからこそ首を切って死んだんだ!。

 

「そうか……欲しいか、良いね。もし君が他の手段で死んでいたら、俺は君に合わなかったし、こんな事もしないだろう。首を掻っ切る……それに意味がありその覚悟がいい」

 

何を言っているこの男は、首を掻っ切る事に意味がある?訳が分からない。

 

「何……簡単な事だよ。君にはこれからこの『輪廻の枝』で首を切ってもらう。当然自分でだ。そしたら君は晴れて才能を得る。君は既に死んでるから特別だ。俺は君の様な、才能を欲しがり首を切った人を始めて見た。大抵は飛び降りや首吊りだからさ。その感謝に、こちらから異世界転生と言う物をしてやろう。才能もこちらで強く最高の物を選ぶ」

 

そう言って、アランは此方に近ずき小型の変わったナイフを俺の手に持たせた。

 

異世界転生?馬鹿みたいな話だ……。

 

(刃の部分を幾重の枝が掴み、その枝を持ち手にし、後ろがリングの様に丸くなっている変わった、いやかなり変な形のナイフだ。でも……)

 

こんな変な物で首を切れば才能をくれる?最高じゃないか!今更首を切る事に恐怖は無い。転生って話もどうでもいい、好きにしろ。それより寄越せ、それを早く!才能を早く。

 

そうして、俺は2度目となる自身の首を掻っ切った。当然の様に俺の視界は、暗転したが一度目と違い謎の浮遊感を感じた。

 

 

 

 

 

「まさか、渡して直ぐに切るとは……んん〜さて彼の行く世界は、彼の持っているラノベとやらから決めているし。…………さてどうしたものか、そうだこの際多くの才能を上げよう……楽しませてくれた、お返しにね」

 

 

そうして、選ばれた才能(人物)は…………

 

世界システムを提唱した技師

 

白い死神と謳われた狙撃兵

 

隻眼の剣豪

 

二天一流兵法の開祖

 

西楚の覇王

 

 

 

「やばいなぁ〜ちょっとこれ強くなり過ぎかな?そうだ!……これを……こうして…………よし、さぁ才能の渇望者。俺に君の才能を見せてくれ」

 

 

 

 

渇望の物語は幕を上げる

 

 




よりにもよって、この大事な時期に出すっていうね。
何故出したか?衝動に負けたんだよ。
すみません。今後頑張るんで許して下さい。
え?許さない?oh……

Twitterやってるので質問あったらどうぞ!
詳しくは作者名をタッチ!感想からでも大丈夫です。

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託された思い──輪廻は巡る──

適度な感覚とか、適度な温度、適度ってだいたいどれくらいなのでしょうか?ちょっと今気になりました。

それでは、どうぞ!



◆北の某所に存在する村◆

 

一つの巨大な影が村を横切る。

多くの叫声が響き渡り、その声に乗るかのように激しい無数の金属音と何かが焼かれた様な、とてもいい匂いと言えない異臭が広がる。その中において、村の外れの家屋の裏に灰髪の男性が、小さい金髪の少女を背負っている、大人びた灰髪の少年に話しかけていた。

 

「グレイ……おいで」

 

「…………」

 

グレイと呼ばれた少年は、少女を背負いながら男性に近づいた。

 

「グレイ、お前はアイズを連れて逃げろ。お前の()()ならそれが可能だ。オラリオに行ってロキ様かフレイヤ様に会え、その後はお前達が決めるんだ」

 

「父さんは、どうするんだ?……行くのか?」

 

グレイがそう言うと、グレイと同じ髪色の父親……レオは微笑みグレイの頭に手を置いた。

 

「あぁ行くさ、今は団員達が抑えているけどどうなるか分からない。多くの第一級冒険者が必要だ。それ程に『隻眼の竜』は強い。まさか本当に片目の復讐に来るとはね…………巨大な割に心は小さいみたいだ」

 

レオは軽く微笑みながらグレイの頭を撫で、巫山戯る様に……又自分に言い聞かせる様に話していた。

 

「…………アイズは任せろ。これでも俺、アイズの兄みたいな物だから……だから……っ………」

 

グレイは泣くのを我慢していた。それは当然と言えるものだろう。まだグレイは12歳の子供なのだ。大人びているとはいえ、今から自分の親が、死ぬ確率が高い戦いに身を投じるのだ。泣かないという方が無理難題だろう。

 

「お前は小さい頃から、大人びていたけどやっぱ子供だな。心配するな…………それより、もう行け。……最後にこれを…………誰にも渡すな。必要になったらお前が、自分のすべき事の為に使え」

 

そう言ってレオは、厳重に封がされている3つの素材をグレイに渡した。グレイはその素材を見て即座に悟っただろう。その素材の本来の持ち主を……その素材は、3つとも元は巨大な何かの素材だろうか、大きく鋭く、尚且つ素材であっても放つ存在感、そして素材なのに()()()()()()()()()()()を感じる、並のモンスターのドロップ品では無いことは即分かる程だ。

グレイには、小さい頃から教えられ話され続けたからこそ、素材であっても戦慄した。この()()()()()()()()()()()()()()。その素材を手に持ちながら見上げれば、父親は既に背を向けていた。まるで表情を見られないように、そしてもう顔を合わせたくない様に。

 

「こ、これって…………もしかして……」

 

「グレイ……お前が思った通りだ。それは、ゼウス・ファミリアと俺達ヘラ・ファミリアが総力を持って成した偉業。その喜ばしくも、忌まわしき断片……持っていけ、それは主神含めた皆からの贈り物(願い)だ。…………約束だ、その子を頼んだ……グレイ」

 

(頼んだぞグレイ……きっとこの先……どんな困難が訪れようともアイズとお前なら大丈夫。それにグレイ……お前は、この俺()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の息子……この先何があっても諦めるな)

 

「さぁ!!!!クソッたれな英雄共の尻拭いといくか!!!!……元気でな」

 

レオは、最後に一言言うと、直ぐに村の中心に向かって走って行ってしまった。

 

勝てるかも分からない。だけれども挑まなくてはいけない。

 

何故なら、自分の後ろには自分も含めた多くの願いを託した存在が居るのだから。

 

「……分かった、アイズは任せてくれ…………俺が必ず守る」

 

『グォオオオオオ───!!!!』

 

グレイは、後ろから聞こえる多くの人達の叫びと『隻眼の竜』の叫びを背に、託された思いと共に頂点に到れる(グレイだけが扱える)魔法を使った。

それはグレイが産まれた数ヶ月後、突如グレイの手に現れた刃物を使った魔法。そしてその後、気づけば刃物の名や魔法名、詠唱も違和感も感じず頭に入っていた。

 

 

 

 

「『(われ)は花弁を散らす(まわ)り者なり、(われ)輪廻(りんね)(さかのぼ)り呼び醒ます者なり』

 

─────リィンカーネーション(輪廻を巡る者)───

 

この詠唱で手元に《輪廻の枝》が出現する。この魔法は、少々特殊な魔法だ。短文詠唱の後に超短文詠唱を唱えるのだが、その詠唱によって5つの才能……形態に変化する。姿形は勿論、その場で武器が出る物もある。その中で、()()()()()()()()()()()

 

 

「『(われ)が選択するは武の覇王なり』」

 

詠唱と同時に輪廻の枝で首を掻っ切る。

 

選んだのは

 

 

 

 

 

 

 

───自らを覇王と称した武の頂点

 

 

 

 

『項羽』

 

──才能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万象儀(ばんしょうぎ)

 

 

 

 

 

 

 

 

万象(ありとあらゆるもの)を闘気で支配し、武器にする才能》

 

それが項羽の才能『万象儀』の能力。

更に、能力に合わせ姿が変わる。

 

両目とも瞳が赤く強膜は黒、右眼にもう一つの瞳が出現し重瞳とかす。服は黒くハイネックで腕の部分が肘まで袖が捲られ、肋骨の下までしか無い裾の服を前を開け着ている、その下は自身の能力で覆っている為、何も着ておらず、肌は目の下まで黒くなっている。

 

両手首に包帯、腰に赤い布を巻き上と同じく色は黒、左右側面が空き、前後に黒の布を腰から足首の上まで垂らしている。

黒のズボンの様な物を履き、膝下から足首まで黒の布を巻いていて黒の靴を履いている。上下共々服が殆ど黒く、白の部分は裾や袖位しか無い。

 

それが、項羽の才能を使う際の姿だ。この魔法は、一つの力を使ってる間は他が使えないが、今は使う必要が無い為大丈夫だろう。

 

「……ん……お……父さん…………お……母……さん……」

 

「……アイズ、大丈夫だからな」

 

次の瞬間グレイ達の体が、黒い瘴気の様な物で包まれた。瘴気が晴れた時には既に二人の姿は無くなっていた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

──オラリオの北門手前──

 

ドサッ…………

 

「はぁ……はぁ……着い………た……」

 

項羽の『万象儀』の応用の転移の連続使用により、冒険者で言う所の精神疲弊(マインドダウン)になりかけている俺は、門手前で近くに居た虫を、()()()()()魔法を解いた。この魔法は、凄まじく燃費が悪く特に項羽ともう一人は長く持たない。

それでも、ここまで来れれば充分だ。後は、背中のアイズをロキファミリアに預けるだけ…………後少しだけ持ってくれよ、そう思いながら俺はアイズを背負い歩を進めた。

 

門を通り北のメインストリートを歩いているが、他の人にすれ違う度に様々な目線を向けられる。確かに小さい子供が更に小さい子供を、ボロボロで背負っていれば気になるのも仕方ないだろう、だが今の俺にはそんな事を気にする余裕は無かった。

 

北のメインストリートから道を一つ外れると、街路の脇にその面妖な建物は現れる。その建物は、多くの塔が集まった様な形をしている。中心の塔を囲む様に建てられたそれは、横に増築出来ないなら縦にすればいいという考えの元、増築がされた結果、新人は必ず迷う場所となっている。

そんなロキ・ファミリアの本拠地(ホーム)の入り口にある門に一人のエルフが立っていた。俺はその人を見た途端、緊張が解けたせいか急激に意識が薄れ始めた。途切れ途切れだが名前を呼ぶと、その人はしっかり反応してくれた。

 

「………リ……リヴェ……リ……ア」

 

「ん?誰……グレイ!?アイズ!?どうした!!」

 

リヴェリアが此方に何か言いながら走ってくるのを最後に、俺は意識を手放しゆっくりと暗闇に沈んでいった。

 

「お…!……しっか……ろ!…………か!居………!」

 

(………約束………ま……ず……一つは……守れた……な………)

 

 




はい、主人公の名前と魔法が分かりました。リリの変身魔法の様な物ですね(こんな変身魔法……実際あったらやばいわ)
主人公のグレイ君、前世の記憶はございません。あるのはこの世界での記憶のみです。なのでどうして、こんな事知ってるんだ?てかこの魔法の選択時の人誰?みたいな事はありましたが、もういいやっと片付けてます。

(すいません!本当にすいません!文が雑で本当にすいません!頑張ってますが上手くいきません!すいません!今後頑張ります!もう一つの作品も頑張ります!すいません!そして、投稿予定時間15分も過ぎてすいません!調整してたら過ぎました、すいません!)
これが今の作者の心の声です…………

感想、評価、お気に入り、指摘
お願いします。作者のモチベーションが上がります。

それでは、読んで頂きありがとうございます!
次回もお願いします!


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『閉ざす者』『終わらせる者』そして──

step-by-step

良い言葉ですよね〜日々前進!の心構えですね。

気づいたら評価されてた!ありがとうございます!そして、お気に入りして下さった皆様誠にありがとうございます!!

それでは、どうぞ!



──コンコン

 

「入ってもいいかい?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

扉をノックして、入って来たのは金髪の小人族(パルゥム)。小人族でありながら迷宮都市(オラリオ)現2トップの一つロキ・ファミリアの団長を務めるフィン・ディムナだ。そんな彼がベッドの横に置いてあるイスに座り、ベッドで上体だけ起こした俺に話しかけてきた。

 

「こうして話すのは、君が5歳の時以来だからもう4年も経つのか。前に比べれば当たり前だけど、随分身長が伸びた様だね」

 

「………………ああ」

 

「…………本題に入るよ。君がここまで来た経緯を詳しく教えてくれ、此方の情報と照らし合わせたい」

 

そこから俺は、フィンにこれまでの経緯を細かく話した。村に『黒竜(隻眼の竜)』が襲撃に来たこと、それをアイズの両親と俺の両親含めた元冒険者達が立ち向かったこと、自分がアイズを頼まれここまで連れて来たこと、そして門の前で気を失った所まで俺は話した。所々フィンの相槌が入り聴きながら、自身の知り得る情報と合わせ考えているのが分かる。

 

「ありがとう。今はまず体を休めてくれ、また後「……フィン」ん?何だい?グレイ」

 

「アイズは……大丈……夫なのか?」

 

フィンは手を顎に当て、僅かに考えた後グレイに正直に話した。

 

「アイズは今、精神的に危ない状態だ。リヴェリアが見てはいるが、時折、暴れて気絶を繰り返している」

 

予想以上にアイズの状態は酷かった。逃げる時、俺が預かった時は既にアイズは気絶していた。確かアイズは両親と一緒に居たはず、もしかしたら、目の前で何かが起きたのかも知れない。

 

「ありがとう、それとフィン…………一つ頼みが……」

 

「何だい?言ってごらん」

 

「ああ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「へぇ〜それでうちに用って何なん?グレイ?言ってみ」

 

グレイに対して、イスを前後逆に座り背もたれに手と頭を置く朱色の髪を持つ女性が居た。

人とはまた違う存在感を放つその存在は、天界よりこの下界に降り立った不変不滅の超越存在(デウスギア)、神である。そして、この神物(じんぶつ)こそが此処のファミリアの主神。悪神、トリックスター、狡知の神……など多くの呼び名を持ち神々の黄昏(ラグナロク)を引き起こし多くの神に恐れられる神、『ロキ』である。

 

「俺を、ロキ・ファミリアに入れてくれ……頼む」

 

「ふ〜ん、うちのファミリアに入りたいと……確かにうちとしては嬉しいで?だけどなんでなん?まだグレイは幼いやのに、何をそこまで焦っとるん。神に嘘は通じへん……素直に言ってみ」

 

見抜かれている、俺はそう確信した。神に嘘は通じないのは分かっている。だからバレないように悟られないように、したつもりなんだが、高々、9歳の子供である俺にはまだまだだったらしい。俺は諦め素直に言う事にした。

 

「俺は強くならなくちゃいけない。両親やファミリアの皆が託してくれた想いを……アイズを護れる力が欲しい!だから神ロキ……どうか俺に力を!…………力を与えてください!」

 

ベッドで上体だけ起こしている俺は、ロキに対して頭を下げた。どうしても強くなりたい。強くないとこの先アイズを守るどころか、自分もヘラ・ファミリアの皆の想いも守れない。

 

「…………分かった。ええで、まぁ入りたいって言ったら入れるってフィン達ともう話しとったんよ。よろしくなグレイ!……堅苦しいのは、今後無しや!家族になるんやからな!……さぁって早う『神の恩恵(ファルナ)』を刻むで!」

 

「ありがとう………ロキ」

 

ロキに感謝を述べ、服を脱ぎベッドに俯せになるやいなやロキが腰に乗ってきた。まだ9歳とはいえ、男である。ロキ程度の人が乗っても平気である。

 

「ぐへへ……グレイの肌はきめ細かくて、触り心地抜群やな〜あぁ良い柔肌や〜ぐふふふふ」

 

「……ロキ?早くしてくれ」

 

「す、すまんすまん、だからそんな怒らんといてぇな……ほんじゃ始めるで」

 

ロキは自身の指に針を刺し、滲み出たその血を俺の背中に滴り落とした。皮膚に落ちたその血は波紋を広げ背中に染み込んでいく。それは光を伴い始めた。

今俺の背中には、ロキによって神の恩恵が刻まれている。『神聖文字(ヒエログリフ)』と呼ばれる神の扱う文字を、神血(イコル)を媒介にし刻むのだ。これにより、ステイタスが現れる。今後は同じ事をする事でステイタスの更新がされる。神のみが扱え許された力。

 

「…………何やこれ……何なんや、ほんま……グレイお前ほんまに、恩恵刻むの今回が初めてなんやろな!?!あのヘラ(ヤンデレ恐怖女)に何もされてへんよな!?な!」

 

「……何を言ってるんだ?」

 

そんな慌てた様子のロキを尻目に渡された、羊皮紙を読んで固まってしまった。

 

 

グレイ・ズィーニス

 

Lv.1

 

力:I 0

耐久:I 0

器用:I 0

敏捷:I 0

魔力:I 0

 

《魔法》

リィンカーネーション(輪廻を巡る者)

・変身魔法

・詠唱式 【我は花弁を散らす廻り者なり、我は輪廻を遡り呼び醒ます者なり】

・第二詠唱 【我が選択するは───なり】

 

・ 選択される才能(人物)

武の覇王

【力、器用、敏捷、魔力に超補正、耐久が高減少】

白き死神

【器用、敏捷に高補正、魔力に超補正、力が高減少】

偽りの雷神

【器用、耐久に高補正、魔力に超補正、敏捷が高減少】

隻眼の剣

【力、敏捷に高補正、器用に超補正、魔力が高減少】

二天の祖

【力、敏捷に高補正、器用に超補正、耐久が高減少】

 

・解呪式無し自動で解除される、いずれ解呪不可になる

・通常の長文魔法より精神力を多く消費する

・花弁が散る

・一定の使用回数を超えると無詠唱で使用可能、代償として──を消失

 

 

《スキル》

【渇望者】

・獲得した経験値量増加(満たされた際に消失)

・──を求める程、全アビリティに高補正(満たされた際に消失)

・──が消失される事を一度だけ防ぐ(一度だけ発動後消失)

 

【廻り者】

・魔法の補正、威力向上

・花弁により周りの物質に干渉しエネルギーを得、魔法に使用する

 

【神后の寵愛】

・気配察知能力超補正

・動物系のモンスターとの戦闘で超補正

・全アビリティの成長を促進させる

・大切な存在が出来た場合、その人に【神后の加護】が出現する

 

 

魔法は分かっていた。だけど他は知らなかった、選択する才能によってアビリティ補正が入るのは凄い事だが、精神力の異常消費はスキルで少しカバー出来そうだった。

これで、アイズを……皆の思いを守る事が出来る。ロキがヘラがどうこう言っていたが、【神后の寵愛】の事以外にヘラの要素は無い。

何をされたんだろう俺は…………本当に何もされて無い……よね?あまりの事に口調が敬語になってしまう。

 

「アビリティ以外異常ですね…………あ、あはは……はぁ」

 

「……ま、まぁ、ええわ。これで晴れて、グレイはうちの子供や!よろしゅうな!ほな、フィン達の所行こか〜」

 

「あ、はい」

 

俺はステイタスの書かれた羊皮紙を持って、主神であるロキと一緒に部屋を出てフィン達最古参の居る部屋に向かった。

 

「………………所で、ヘラとはどんな関係なん?」

 

「…………もう一人の母親みたいな人」

 

「え、まじで…………」

 

「ああ」

 

「マジかー……」

 

───そんな会話をしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────それじゃあ、グレイ今後ともよろしく頼むよ」

 

「此方こそ、頼む。……それとフィンやリヴェリア、ガレスやロキに一つ頼みがある、もしアイズが冒険者になると言ったらせめて後2年待ってくれ。アイズは今5歳、7歳になるまでに俺はLv.を上げてアイズを守りたい」

 

アイズはきっと両親と自分を離れ離れにしたモンスターを恨み、冒険者になろうとするだろう。なった後もきっと一人でダンジョンに潜る。その時せめて俺が危険から守れるようになりたい。

フィン達は、顔を見合わせ会話もしていないのに意見を纏めた様だった。

 

「……分かった。なら僕達も全力で君を強くしよう、途中で諦めないようにねグレイ?」

 

勇者(ブレイバー)】は勇気と視野の広さ、観察力を

 

「私はグレイに、魔法と心構え、私の持てる全ての知恵を授けよう……アイズについては私が見る。2年間アイズには知恵を育んでもらう」

 

九魔姫(ナインヘル)】は知恵と魔法、心構えを

 

「なら儂は、戦闘について教えてやろう!ビシバシ行くから覚悟せぇい!」

 

重傑(エルガルム)】は戦い、武についてを

 

「な、なら、うちは!……えーと何しよう……グレイが無事な様に祈っとるわ!神の祈りなんて贅沢やからな!頑張りぃ!」

 

心優しい悪神(トリックスター)】は……うん、祈りを……

 

「フィン、リヴェリア、ガレス、後ロキ、よろしく頼む!」

 

今此処に、後に迷宮都市(オラリオ)を大いに騒がせる冒険者が誕生した。

 




ステイタス書く時意外と楽しかったです。
グレイがタメ口なのは、ヘラファミリア繋がりで知り合いだからです。フィンが5歳以来って言ってますしね!

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それでは、次回もお願いします!


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名の謎、未だ未熟な単眼の巨師

お気に入りが着々と増えて嬉しい限りです!ありがとうございます!




「グレイ、今からギルドに行って冒険者登録をするから、儂について来い。ついでに装備も見て来るかの」

 

「分かった、ガレス」

 

そう言って、ガレスの後を追ってグレイは部屋を出ていった。それを見送ったフィン、リヴェリア、ロキはグレイのステイタスの書かれた羊皮紙を見て頭を悩ませた。

 

「どないするフィン?これは魔法とスキルどっちも、今の迷宮都市(オラリオ)のご時世じゃバレたら()()神々(アホ共)が黙ってない。確実に手に入れようとするやろ。それにヘラの寵愛まで受けとる、確実に厄介な代物や」

 

ロキがグレイのステイタスを見ながら、大まかな問題点を上げていく。それに対してフィンは、今ガレスがグレイを連れ出してくれて感謝していた。ガレスも分かってグレイを連れ出したのだろう。この問題は自分達に任せると、そう感じた。

 

「ロキの言う通り厄介な代物だ。だからこそ僕達、先駆者が見ていなければならない。魔法に関しては、当然リヴェリアに任せる。歳も三人の中じゃ一番若いし近いから良かったらアイズと合わせて見てやってくれ。グレイにとって姉の様な感じだろうしね。他は、僕とガレスが担当する」

 

「分かった、魔法や生活面はアイズと合わせて私に任せろ、しかしフィン、スキルはどうする。明らかに、並ならぬ速度で成長するだろう。だが迷宮(ダンジョン)では何が起こるか分からんぞ」

 

「そこは、考えがある僕に任せてくれ…………」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

ホームを出て、北のメインストリートを南に歩き、一度バベルに向かいそこから、北西のメインストリートを通ってギルドに向かった。

北西のメインストリート……通称『冒険者通り』オラリオでも最も冒険者の従来が激しく、ギルドを始め、道具、武器、酒場等の店が多く並ぶ通りだ。

その中で最も冒険者が入る場所……白い柱で造られ外観が綺麗な万神殿(パンテオン)が『ギルド』だ。オラリオの運営を一手に引き受け、迷宮から冒険者が回収した利益を都市に反映、ダンジョンの諸知識、情報を冒険者に公開しサポートを行っている。そして、何故かスタッフは美男美女が多い。

 

「じゃあグレイ、冒険者登録が済んだらすぐ来い。装備を見繕ってやるから、登録なんぞさっさと終わらして来い!」

 

そう言うとガレスは共有スペースのソファーにドッ!と座ってしまった。そして、何処から出したか知らないがその場で何か飲んでいた。

 

(水だよな……水……み……まぁいいか)

 

「すいません、冒険者登録をしに来ました」

 

そう言うと受付嬢だろうエルフの人が紙を置いた。

 

「此処に名前、年齢、所属ファミリア等、ご記入下さい」

 

そう言われるままに、名前と年齢、所属ファミリアを書き進めて、ある項目で書き進めた手を止めた。そこには…………

 

(家族構成…………出身地…………)

 

確かに、過去に何か無ければ簡単に書けるだろう。しかし、過去に何かある奴は困るだろう。そこから己の知られたくない事を知られるのだから…………しかしそこは迷宮都市(オラリオ)()()()()()()()()()()()

 

「書きました、空欄でもいいですか?」

 

空欄でも大丈夫なのは、来る途中ガレスから聴いた。どんな事があった奴でも此処は、受け入れると言っていた。受付嬢の様子からして、空白があるのはどうやら日常茶飯事らしい。

 

「はい、大丈夫です。それでは、グレイ・ズィーニス……『ズィーニス』!?え…………何で、ズィーニスって…………」

 

受付嬢の発言で俺は、他のスタッフ、周りの冒険者に見られた。それはまるで、恐怖の対象(バケモノ)を見るように…………

 

「おい、ズィーニスってあのズィーニスか」

「マジかよ……勘弁してくれ」

「子供だから彼奴の子か?髪の色がそっくりじゃねぇか……」

「この暗黒期に更に厄介事を増やすなよ……冒険者やるならダンジョンで早く、くたばってくれよ本当」

「最悪……彼奴とそっくり、あれは絶対呪いよ呪い」

「まさかこんな所で()()()()()()()()()クリムゾンアッシュ(鮮血を生む灰)』の子供に出くわすとは…………ついてねぇ」

 

何故だ……どうして……そんな罵詈雑言を言ってくる……こっちは子供でお前達とは初対面だ、俺は何もしていないのに……どうして、お前達のその目は何だ……何故俺を見ている……何なんだ…………お前達に俺は何をしたって言うんだ…………俺はただ、冒険者になって強くなって守りたい者を守ろうと………………

 

「……イ……レイ、グレイ!」

 

「!?…………ガレス」

 

気づけば、ガレスが俺の後ろに立っていた。ガレスは周りのスタッフや冒険者に睨みを効かせ黙らせた。その途端、周りの連中はガレスを見てから視線を俺から外し、自分の作業に戻って行ったが場の雰囲気が出てけと言っているのが分かった。

 

「冒険者登録は済んだな。よし、グレイ!次は装備じゃな!ついて来い!…………大丈夫じゃ、心配せんで良い今は儂が居る」

 

「……あぁ」

 

そうして俺は頭の中がグチャグチャの状態で、ガレスに手を引かれながらバベルに向かった。何故俺がこんなに言われるのか、鮮血を生む灰(クリムゾンアッシュ)とは何なのかそんな事ばかりが頭の中で回る。

 

「着いたぞ、おぉい椿居るか!」

 

「誰だ?手前の名を呼んだのは」

 

どうやら、もう既に目的地について居たらしい。そこは、装備の山だった。小さい武器の短剣、ナイフを初め大きい、戦斧や斧など様々な大中小の武器や、これまた様々な鎧がそこらじゅうに置いてあった。というか無造作に放り投げられていた。これで良いのか鍛冶師よ……

 

「おぉ椿、急にすまんな。今日はこやつの装備を見繕ってやってくれんか」

 

「ん〜何だ、新入りか?手前は椿・コルブランドと言う、ヘファイストス・ファミリアの鍛冶師だ、よろしくな小僧」

 

そこには、黒髪に赤眼、左目に眼帯、服は晒に赤の袴の格好の女性のハーフドワーフが居た。

 

「…………どうも……グレイ……グレイ・ズィーニス……です」

 

「グレイか!うん?ズィーニス……あのズィーニスか!?」

 

「正式には息子に当たるがの、余り言ってやるな椿」

 

またこれか、またこの反応か、また俺に罵詈雑言の嵐が来るかと思いを俺は後ろを向こうとしたが椿の発言で逆に椿の方を見てしまった。

 

「ズィーニス……()()()()()()()!ちょっと待っておれ!グレイ!」

 

「え……どうして……」

 

椿は罵詈雑言どころか、逆に喜び良かったと言った。俺は、それがとても不思議だった。

 

「のう?言っておったろ?大丈夫じゃと……所で椿、例の件考え直してくれたか?」

 

ガレスが適当に置いてある武器を見ながら、椿に話しかけていた。例の件とは何なのだろうか?

 

「何度も言っておるが、専属契約は断る。お主の様な第一級冒険者に持たせる武器はまだ手前には作れん。……とあったあった、グレイ!来てくれ」

 

ガレスの方を見ると駄目か……と呟いてやや落ちこみながら、俺の方を向き行ってやれと言われた。そうして、椿の所に行ったら一本の刀を渡された。そして、椿は刀を俺に渡した途端言ってきた。

 

「のう?グレイ?手前はお主が一目で気に入った。どうだ手前と専属契約を結ばんか?」

 

「なんじゃと!?儂を断っておいて直ぐにか!?」

 

全く話について行けないまま、刀を渡されグレイは頭に?を浮かべ突っ立ってるだけだった。

 




読んで頂き、ありがとうございます!今回は、ガレスと専属契約を結んだ椿をオリ主と結びました。

原作よりかなり前という事で彼女はまだ未熟です、なので第一級冒険者のガレスの誘いを断わった。という設定です。後は椿にむさ苦しいおっさんは似合わない。(重要)

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それでは、次回もよろしくお願いします!


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互いの目標

「デリャャャ!」
(訳)書く事が思いつかなかった。
(度々、投降済みの話直していたり、もうちょっとこう書いた方がいいなとか、ここ付け足しだなとかそう言う作業してます。……あっ)
↑の……あっ(訳)書く事あるやん……

それでは、どうぞ



「専属契約って…………ガレス」

 

俺はガレスに連れられ装備を見繕いに来た所、急にハーフドワーフの女性……ヘファイストス・ファミリアの椿・コルブランドという鍛冶師に専属契約を結ばないかと言われてしまった。その前に、専属契約とは何だ?

 

「専属契約というのはの「専属契約というのは、手前の様な鍛冶師が契約した冒険者の武器から防具まで、整備から要望通りの作成まで様々な装備に関する事を専属で行い、代わりに装備の素材等を冒険者に取ってきて貰うという契約だ」…………まぁそんな所じゃ」

 

つまり、契約した冒険者の装備を一手に引き受けるという事。なら何故、この椿・コルブランドはガレスの様な第一級冒険者では無く俺の様な新人冒険者と契約しようとしているのだろう。

契約するのなら第一級冒険者の様に、より深く迷宮に潜れ良い素材を取れる人と契約した方が鍛冶師にとって有益の筈……なのに今まさにその第一級の冒険者であるガレスの頼みを蹴っている……謎でしか無い。

 

「どうして、新人冒険者である俺と契約したいんだ?今ガレスの専属契約の頼みを蹴ってまで……」

 

「ん?簡単だ。今言った通り、手前がお主…………グレイを気に入ったからだ」

 

…………気に入ったという理由だけで、鍛冶師にとって大事に決めるべき専属契約の相手を決めていいのだろうか?俺はガレスに困惑した表情を向けた。

 

「グレイ……受けてやれ。鍛冶師という人種は変わった奴が多い……特にこやつはな。Lv.1しかも冒険者登録したばかりの奴に、専属契約なんぞ結ぼうとする鍛冶師なんぞ居らん。特に此奴は変わっておるからのう。全く人の頼みを蹴った途端に頼むとはな」

 

「あははは!すまんなガレス、しかし手前はこのグレイと専属契約を結びたいと思ってしまった。手前の目標である()()()()()()()()()()()()事を成し遂げる為にもな、新人だろうが関係ない。手前自身が噂の()()()()()()の『クリムゾンアッシュ』の息子と組むと決めたのだ。神を超える為にも、手前は()()()()()()の息子と組みたいのだ」

 

椿のたった一言がその場の空気を変える。

 

「!?……今何て言ったんだ?!父、さんが……神殺し?」

 

「ん?知らなかったのか?……まぁ手前はファミリアに入りたてで鍛冶場に篭ってばかりで、噂程度にしか聞かんかったが……」

 

それは衝撃的だった。確かに父さんは第一級冒険者だった。二つ名も持っていただろう。けど誰も本人の父さえ、自身の二つ名を教えてくれなかった。だがギルドでの反応、椿が言った神殺しの事、この話さえ分かれば今の自分なら分かる。

 

知って欲しくなかったのだ。

 

父さんやファミリアの皆は、この二つ名を…………子供である自分が将来冒険者になった際、その二つ名がつきまとうことが分かっていたから。

だけど、皆や父さんの事を思い出せば、しっかり今なら分かる。

つきまとうことが分かっていながら、それでも敢えて教えず尚且つ、冒険者になれと背中を押したのは、この二つ名を知った時、自分を信じ二つ名に負けないと信じてくれたからだとと思う。

ならする事は変わらない。皆に託されたアイズを強くなって守るため。その過程で自分の強さを証明しその二つ名を正面から消す。ただそれだけだ。

 

「……ガレス、父さんが神殺しと呼ばれたのは本当か?何でそう言われたんだ」

 

「本当じゃ。当時ヘラ・ファミリアが闇派閥(イヴィルス)の拠点を見つけた際、ファミリアの構成員を捕らえようとしたが、抵抗が強く結局は排除になってしもうた。

……血みどろの争いじゃった、その戦いに置いて最も闇派閥を葬ったのがお主の父親、その時ヘラ・ファミリアの副団長になったばかりのレオ・ズィーニスじゃ。彼奴は他の者に人殺しをさせまいと率先して行っておった。そして遂に構成員も殆どが死に、少数が投降した際闇派閥の主神だった神が神の力(アルカナム)を使い、道ずれ覚悟にレオを攻撃した。だがレオはそれすら跳ね除けその神を葬った。

結局、それを見た多くの者はレオを恐れた、もし標的になる様な事があれば、自分が殺されるとそして悪評が広まった」

 

「手前はファミリアに入りたてで鍛冶に熱中して殆ど人伝で聞いた程度だが、なんとも小さい奴らだな、助けて貰いながら、恩人に対して恩を仇で返すとは……」

 

椿の言う通りだ、父さんがどんな覚悟を持っていたか分からないが、凄まじい覚悟だったのは分かる。それを、後ろめたい思いがあったのか知らないが一番の功績者を、恐怖の対象にした。なんとも巫山戯た連中だ。

 

「ガレス……それなら、人が決めた二つ名では無く神達が決めた二つ名は?」

 

きっとある筈、ヘラ・ファミリアの主神がその様な名を許すはずが無い、俺の知ってる限り、ヘラは慈悲深い神だった。それに、話を聞く限り、人の広めた悪評の二つ名だ。なら別に本来の二つ名がある筈。見るとガレスはまるで今まで話した事を吹き飛ばす様に豪快に言ってのけた。

 

「あぁちゃんとした名があるわい!グレイ……しっかり聞け。お主の父、レオに神々が与えた本当の二つ名は『神を越えし人(オーバーロード)』!じゃからこの名を誇りに思え。わしらがお主の成長を見届けてやるわい!それが、当時助けられたロキ・ファミリアの恩返しじゃ」

 

俺は安堵した。今は亡き父が護った人達は、しっかり父の思いを知っている。ガレスの表情を見れば簡単に分かる。確かに、小さい頃良くロキ達は遊んでくれた。それも今の様に見てくれるのも全部父さんが護ったからだ。

なら俺は父を越え強くなる。そしてアイズやファミリアを守れるような力や才能を手に入れる。その為だったら何だってする。しなければいけない。

 

「ガレスありがとう。俺の目標も決まった。俺は強くなって父を超える。その為にも改めて頼む。俺を強くしてくれ、その為なら何だってする」

 

「おおう!任せておれ!しっかり扱いてやるわい!」

 

「グレイ、知らなかったとはいえ済まなかった。軽率だった。だからこそ詫びになるか分からんが、手前と専属契約を結んでくれ。手前が最高の武具を作る。そして互いの目標の為にも………」

 

そう言って、椿は俺に手を差し伸べた。互いが遥か頂きを目指す者同士、なら第一級、新人等とは椿の言った通り関係無い。互いが互いの目標の為に手を取り合う。

 

「あぁ、これからよろしく頼む、椿」

 

「ふむ、手前こそよろしく頼むぞ!グレイ!」

 

 

 

 

後に迷宮都市において、名実共に最高の鍛冶師になる者が、才能に飢え頂きを目指す渇望者に神を超えた武器を与えるのは、まだ先の事。

 

今はまだ単眼の巨師といずれ呼ばれる者は未熟で、渇望者は目標があった。

 

 

この思いをしっかり支えておけばあんな事にならなかった。高い目標であっても、歪まずにいたのではないか。主神としてもっとしっかり見てやればこんな惨事は回避出来たのでは無いかと後悔し、もし過去に戻れるのなら見てやれなかった自分を殴りたいと思う。

 

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ渇望者の主神の日記より

 




ちょっと雑かな……ごめんなさい。次は頑張ります。文才が欲しいです。上手く表せない。

感想、評価、お気に入り、指摘、お願いします。モチベーション上がります。

それでは、次回もよろしくお願いします。


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初迷宮探索

お気に入り110件だ……と?!

ありがたやぁ〜ありがたやぁ〜m(_ _)m

(オリ主強すぎ魔法チーターやチーター!何て言われたので、修正しました。失礼ながら第3話、確認お願いします)

遅れましたが、評価して下さった方々、そして、お気に入りして下さった皆様、ありがとうございます!今後も皆様が楽しめるように、高い評価が貰えるように頑張ります!



「ほぅ、それでダンジョンに置いて来たと……馬鹿か貴様は」

 

ロキ・ファミリアのホーム『黄昏の館』の執務室にて副団長であるハイエルフ、リヴェリア・リヨス・アールヴが屈強なドワーフ、ガレス・ランドロックを睨み呆れていた。

 

「まぁまぁ、大丈夫じゃろ。グレイはLv.1とはいえ十分規格外(チート)じゃし、それに、Lv.4がついておる。安心せぇリヴェリア」

 

そのガレスの発言に眉を顰めるリヴェリア、ソロでは無いのは分かったが問題なのは、ついて行ったヘファイストス・ファミリアのそのLv.4である。

 

「椿か……何も無いと良いのだが……」

 

リヴェリアの心配は杞憂に終わる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──なんて事は無かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ダンジョン上層─第三階層─

 

「良し、次はこれだグレイ!さぁさぁまだまだあるぞ!せっかく専属契約をしたのだ。お主の最もあった武器を見つけねばな!」

 

そう言って椿は、此方に槍を一本投げてきた。

 

「おい!先を向けて投げるな!?」

 

俺はそれを何とか掴みその勢いのまま、目の前のダンジョンリザードを貫く。そして槍を近くに居るヘファイストス・ファミリアの新人だと言う人に渡した。

 

(はぁ……危なかった…………)

 

ダンジョンに潜ってからというもの、最初に渡された刀から様々なナイフ、剣、サーベル、木刀、太刀、大太刀、小太刀、エストック、レイピア、ロングソード、バスタードソード、薙刀、手斧、メイス、大槌、戦斧、両手斧、ハルバード、矛、戟、蛇矛、多節棍、鎖鎌、鎌、銛、槍、十文字槍、トライデント、パイク、ランス、グレイブ、バルディッシュ、パルチザン、弓矢、クロスボウ、ナックル、トンファー……等々形から使い方、中には武器なのか分からない物まで、多くの武器を使わされた。当然全て投げて渡してきた。それもLv.4の力で……確実にそこらに居る、コボルトやゴブリン、ダンジョンリザードより死ぬ確率が高い。というか、根本的に何故嬉々として投げてくるのか、『さぁこれはどうだ!』みたいな表情を向けてくるのか謎である。

戦いながら変な事で死にかける俺の後ろにある謎の肉と、嬉々として「良し!次はこれだ!」とか言ってる俺の専属鍛冶師、何を入れたらそこまで膨らむのか分からない巨大なバックパックが3つ、その近くで地面に転がって魂の抜けている3人のヘファイストス・ファミリアの新人、そして少し離れた位置で毎回武器の回収をしてくれるヘファイストス・ファミリアの新人。

 

(もう、諦めよう……)

 

俺は専属鍛冶師が投げてくる新しい武器を見ながら、椿の暴挙をどうやったら止められるか考えるのを諦めた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ダンジョン上層一階層『始まりの道』

 

迷宮探索を終え、謎の肉の効果が無くなりモンスターをあらかた片付けた俺達(俺)はダンジョンから帰る途中だった。

 

「いや〜すまんすまん、グレイが初めてにしては、様々な武器を扱えるので手前も楽しくなってしまった!あははは!」

 

そうやって、俺と並んで歩く大量の魔石の入ったバックパックを背負う椿は笑っていた、もう清々しい程に。

 

「でも椿、良かったのかファミリアの新人を連れて来て」

 

「あぁ気にするな!此奴等も目的があったからな」

 

「目的?なにかあったのか」

 

後ろを向くと、大量の武器の入ったバックパックを背負う3人と大量のドロップアイテムが入ったバックパックを背負う1人が此方を見て苦笑していた。目が死んだ状態で……。

 

「何簡単な事だ。武器やドロップアイテムを運ぶから、多少探索を手伝ってくれと言っておったので了承したまでの事よ」

 

だから1階層と2階層で探索をしていたのか、まぁ手伝う以前にモンスターの殆どが俺(肉)に来たからお互いが得をした結果になった、と言った所か。

そうして俺達は、ギルドの換金所で魔石のみ換金した。バベルの換金所はかなり待つ事になるからギルドで換金した。何故魔石だけかと言うとドロップアイテムは全て椿にやる約束だった為だ。

そして、魔石のみを換金した結果

 

 

57000ヴァリス

 

 

Lv.1にしてはかなり良かった。およそ、Lv.1の冒険者5人パーティーで1日ダンジョンに潜って25000ヴァリス程と椿が言っていたので半日潜ってこれは、確実に異常だろう。ホームに行ったらきっと怒られる、そんな確信があったがそれだけモンスターを殺せた事を証明した事になる。ただ今は強くなれている事が嬉しかった。

 

「それじゃ椿、後は頼んだ」

 

「おう!手前に任せておけ!要望通りしっかり仕上げてやる」

 

俺は椿達と別れ、ロキ・ファミリアのホーム『黄昏の館』に向かった。大量のヴァリスの入った袋を持っている為か、それとも今のご時世の影響か、はたまた俺の髪色か顔のせいか、周りの冒険者や住人に奇異な目を向けられる。

 

「…………(次から姿も隠れるし燃費も良い()()で外に出るか)………まず今はいいか、今日は疲れた……っ!……何だ……これ」

 

そんな中、後少しでホームに着く所で後ろの上、ちょうどバベルの頂上辺りから目線を感じた。他の周りの奴等とは違う故に気づき反応してしまった。まるで身体の中を覗いてくる様な、全てを見透かしてくる様な感じ……そんな目線だった。だが直ぐにそれは無くなった。

 

「……早く帰ろう」

 

嫌な感覚だった為、俺は直ぐにホームの門を潜り中に入った。そして玄関の先に立っていたのは、俺にとって姉の様な人、翡翠の髪を背中まで伸ばした、神すら嫉妬する美しいハイエルフだった。

 

「…………ただいま……リヴェリア」

 

嫌な予感がした為、直ぐに部屋に行こうとリヴェリアの横を抜けようとしたら、肩を掴まれた。

 

「あぁおかえりグレイ、無事で何よりだ。…………それより、まずその袋に入った物について説明を願おうか?」

 

どうやらまだ俺は、ゆっくり出来ないらしい。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

バベル最上階─プライベートルーム─

 

その部屋の窓際にて1人いや1柱の神がバベルの下を見ていた。現オラリオにおいて最強のファミリアである二大派閥の、ロキ・ファミリアと双璧を成す、多くの第一級冒険者を抱えファミリアとしての規模も最大級、さらに団長を務める者は現オラリオ最強、それらを築き纏め上げるファミリアの主神の名はフレイヤ。多くの老若男女問わず、男神すら魅了する。女性の美徳と悪徳を全て内包する美の女神『フレイヤ』である。

 

「……何よ……あれ………」

 

フレイヤは蹌踉しながらガラスに手をつき、何かに吸い込まれる様に又、何かに飲み込まれる様に、不変である神が感じる事の無い感情に怯えてしまった。

 

「ぁ……あぁぁぁぁ!」

 

「フレイヤ様!どうしたのですか?!」

 

フレイヤの叫びに反応した、フレイヤ・ファミリア新団長の男猪人(ボアズ)の冒険者、身長2メートルを超える、鋼の様な肉体を持つ長身の男オッタルが、慌てた様子で自らの主神の元へ駆け寄った。

 

「ぁ……オ、オッタル?……だ、大丈夫、何でもないわ」

 

フレイヤはオッタルを見た途端、何時もの姿を見せる為か怯えた姿を見せたくない為か横にある豪勢な椅子に腰掛けた。それでも、シミ一つ無い珠の肌に汗が一つ流れた。

 

「何か合ったのですか?」

 

「………オッタル……彼、レオに子供が居るなんて聞いた事あるかしら?」

 

オッタルは、椅子に座るフレイヤの斜め右後ろに立ち質問に対して数秒考え答えた。

 

「いえ……ただ、8年程前()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と噂が……」

 

「そう、灰髪……ね(あの子がどうあれ、この私に『恐怖』何て抱かせる存在……あぁ下界に降りて……いえ、天界に居た時ですら、恐怖と縁の無かった私に恐怖させるなんて…………)……ふふっ」

 

「フレイヤ様?」

 

フレイヤは自身の身を抱きしめ身震いした。その顔は恍惚と怯えの混ざった様な表情を浮かべていた。

 

「ふふふっ……ねぇ?オッタル、彼を私の物にしたいの。手伝ってくれる?まだ手に入れていない物なの……絶対手に入れないとね……ふふっふふふ」

 

それは良く言われる『怖いもの見たさ』と言われるものだった。

 




最後書いてて思った、え?マ(ドゴッ!!)…………
(頭の無い男の死体が転がっている)

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魂に刻まれた物

新しく評価して下さった方々ありがとうございます!!これからもよろしくお願いします!!



俺『グレイ・ズィーニス』が神ロキの率いるファミリア『ロキ・ファミリア』に入り『ヘファイストス・ファミリア』の『椿・コルブランド』と専属契約を行いダンジョンに探索に出た日から、既に1週間が経った。まだ季節は冬で、外はかなりの冷え込みが身体を包む。

そんな中俺は日がまだ昇らない早朝からバベルに向かい、迷宮探索を始める為にホームである黄昏の館を出た。

 

「布団が恋しい…………はぁ」

 

吐く息が白い。俺は手に息を吐き両手を合わせながら北のメインストリートを見渡した。人はそこかしこにちらほら見えるが、まだ多くは居ない。

 

「これなら、姿を隠さなくて良いな。やっぱり早朝が1番良い」

 

俺が寒い中、何故早朝からダンジョンに向かうのか……それは、人目につかないためだ。最初を含めた2日間、初日は帰ってからリヴェリアにとても怒られたが迷宮探索は禁止にならなかった。何でも

 

「今回はガレスの馬鹿の責任だ、初日で良く無事だったな。しかしだな………………」

 

と約1時間、夕食まで色々な小言を言われた。それで次の日も迷宮探索に日が昇ってから行ったのだが、やはりこの髪は目立つようだった。だから3日目から早朝に行く事にしている。

 

「帰りに椿の所に寄るか……ふぅ〜、今日は四階層に行こう」

 

もしリヴェリアが居たらとても怒られるだろうな、何故なら()()()()()()()()()()()()()なのだから。俺は初日から毎日ダンジョンに潜っているが、1度もロキにステイタス更新をしてもっていない。

こまめに更新をする事により、ステイタスは少しずつ良くなる。そして更に深い階層に潜れる訳だが、初日から3階層である程度戦えた俺にとって、ステイタス値は六階層に行かない限り余り関係ない。

何回も更新するのと、1週間程貯めて更新するのとでは、どのみち1週間後のステイタス値は変わらないのだから更新するのは、6階層に行くまで一定間隔にし、更新する時間を他の時間に当てるのが効率が良い。

 

「さて、4階層のどの辺りで狩るか…………決めた」

 

脳内に叩き込んだ地図を頼りに、4階層と5階層を繋ぐ階段がある奥付近で今日はモンスターを狩ることにした。そこでモンスターを軒並み倒し、魔石を回収していると気配を感じ通路奥へ行ってみた。

 

「見つけた…………この距離なら使ってみるか」

 

ちょうど自身から視認出来る程度の距離に居る、大型の犬程ある大きさで顔の中央にある単眼の蛙、フロッグ・シューターが4匹集まっていた。ここから、距離としては大分あるが俺の魔法には余り関係の無い事だ、自分の魔法の多様性には感謝するな。

そして俺は、4匹から目を離さず、自身の持つ唯一の魔法である【リィンカーネーション(輪廻を巡る者)】の詠唱を始めた。

 

「『我は花弁を散らす廻り者なり、我は輪廻を遡り呼び醒ます者なり』」

 

第一詠唱完了…………

 

「『我が選択するは ()()()() なり』」

 

第二詠唱完了…………

 

首を掻っ切り、そこから花弁が散る。

片膝を地面に付き、左手は下から何かを支えるように前に出し右手は何かを掴むように人差し指だけ前に向ける。次の瞬間、腕に収まった状態で

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その銃を構え、スコープを覗く。十字模様に▽の目盛りが付いている。名称として、『光学レンズ式望遠スコープ』と言うがこの世界は猟銃しか存在しないので余り意味は無いだろう。

 

さらにやはりというか、容姿も変わった。

両目の瞳は青くなり、十字模様が入るが十字の線を繋ぐ細線は無く、代わりに中心に瞳孔と重なる様に二重丸がある。髪は灰髪から金髪になり、全身を包む様に白色の無地の防寒着の様な物を着ていて、フードを深く被り目元しか見えない。顔にはマスクの様な物をしているが、服のネックが高く顔の半分を隠しているためその全貌は見えない。腰に服の上から頭より大きい、先の尖った銃弾と呼ぶには長くでかい物が数個紐でぶら下がっている。足は爪先まで包帯の様な物が巻かれている。

 

この世界には銃という物が流通していない。何故なら、モンスターに銃で撃つよりLvを上げ剣等で切った方が効率は良く、火薬などの高価な物を使わないからだ。だからこそ上級貴族や王族など金持ちしか狩りに使う猟銃しか無い。

 

ならば、猟銃を見た事のある鍛冶師にとってこの狙撃銃は異様だろう。何故なら、火薬を使用せず氷の弾丸を形状記憶物質で射出する、特殊機構だからだ。

 

銃の名は『雪娘(スネグーラチカ)

 

それを扱える様になる人物(才能)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───白い死神と恐れられた狙撃兵

 

 

『シモ・ヘイヘ』

 

──才能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『白い地獄』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《超人的な集中力と忍耐力が身につき、狙撃の才能に目覚める》

 

それがシモ・ヘイヘの才能『白い地獄』の能力であるが、このままでは名前負けしていると思う筈だ、確かに超人的な集中力と忍耐力は凄まじい。しかし『白い地獄』と呼ぶには些か無理があると思うだろう、しかし能力はまだあるのだ。

 

 

───カシュッ

 

 

 

ズビャッ───

 

氷の弾丸が撃ち出され、フロッグ・シューターの単眼を貫く。それに伴い残りの3匹が此方に気づき向かってくる。そして、即弾を込めまた撃ち出す。それを2連続行い、残り1匹は既に20Mを切ったそこから舌を伸ばし攻撃しようとした時、フロッグ・シューターとグレイはダンジョンから消えた。

 

「……グェ?」

 

フロッグ・シューターは困惑していた。後少しで舌が当たると思った時、殺すはずの人間は消えていた。それどころか、ここは何処だ?母なるダンジョンの中では無い。辺り一面『冷えきった銀世界』

 

──カシュッ

 

「……ギュエ!」

 

1歩動こうとした途端、フロッグ・シューターは魔石を残し灰になった。そして、気づけば周りは銀世界では無くなり、洞窟の様な迷宮に戻っていた。

 

「やっぱり、狙撃は楽だな」

 

残っているのは、白い死神と化したグレイのみ。

『白い地獄』の本来の能力、相手を才能が最も発揮できる『雪原』に強制的に引きずり込む事が出来る。その雪原は圧縮された精神空間である為、第三者の介入は不可能。これが白い地獄の本来の能力である、超人的な集中力と忍耐力は付属なのだ。

 

俺は魔石を拾いながら、己の今の感情について考えた。

 

「…………やっぱり……物足りない」

 

何か物足りない……ダンジョンに潜って、いや物心ついた時からどこか心の中で思っている事だ。未だに何か分からないが一つ分かる事がある。きっとこれは『俺』という存在、魂そのものに刻まれた物なのだろう。本能的に俺はそれに飢えているのだと実感出来る、何故そんな物があるのか今は分からないが、何れきっと自分で何を得たいのか、何に飢えているのか分かる時が来ると思う。

 

「……椿の所にも行くから、今日はここまでにするか」

 

俺は魔石の入った袋を、持って魔法を発動させたまま帰る事にした。この才能は燃費がそこそこ良いのと、フードとネックで顔が隠れて目立たないため最近よく使うのだ。しかし、『白い地獄』を使うと多くの精神力を持ってかれるが、スキルのおかげでカバー出来るためかなり今は使い勝手が良い、と言っても今は戦闘したら精神疲弊(マインドダウン)しそうな為、モンスターを避けて帰る事になる。

 

「明日は6階層に挑むから、帰ったら更新だな」

 

四階層からモンスターの気配を感じながら、モンスターを避けて移動し、3階層2階層1階層と時間をかけ移動し、外に出た時は太陽が真上から僅かに傾いた地点に合った。

それから、ギルドで換金をして東方の第2区画の中心地にあるヘファイストス・ファミリアの拠点の近くにある工房群の中の一軒家に向かった。工房群は迷宮都市にとって魔石を使った技術の中心地に当たり無くてはならない場所だ。

 

「相変わらず、鉄の匂いが凄い……」

 

場所柄様々な加工場があり、当然鍛冶師も多く居る此処は鉄の匂いがする。俺は別に嫌いという訳では無いが、場所によっては風などの影響で匂いが籠るため気をつける必要があると思う。

 

「……椿居るか?武器を取りに来たんだが……」

 

レンガ造りの建物に入ると、ちょうど椿が武器の研ぎを行っていた。椿は最近どうやら、名が売れてきているらしく専属契約も頼まれたとか……先に専属契約をしていて良かったと思う。

 

「お!来たかグレイ!待っておったぞ。武器なら……ほれ、要望通り刀だ。しかし良かったのか?」

 

「良いんだよ、それより料金おいて置くぞ」

 

椿は研ぎの終わった1本の刀を見ながら、困惑の表情を浮かべていた。俺が頼んだのは、前に椿がLv.2の時に打った刀を、モンスターのドロップアイテムを混ぜ打ち直す事。今の椿なら第二等級武装、素材によっては第一等級武装も作れる程の実力がある。

しかし、それを使って武器の力を自分の力と勘違いしない為に、わざと昔の椿が試作品として作った刀に俺が取った『ゴブリンの牙』『コボルトの爪』を合わせてもらった。

本当は試作品だけで良かったのだが椿が

 

「確かに試作品とはいえ、手前は全て全力で作っておる。だがな、専属契約をした者に試作品だけ渡すのは、鍛冶師として許せん!グレイ!ドロップアイテムを寄越せ、それと合わせて試作品を鍛え直す!」

 

と言うものだから、椿の剣幕に押され了承してしまったのが、つい2日前だ。何でも1日でも出来るが専属契約して、初の渡す武器だから気合いを入れたいと……ガレスの言った通り鍛冶師という人種は頑固というか……何というか変わっている。まぁ嫌いでは無いと思った。

 

「じゃあな椿、武器ありがとう」

 

「次はしっかり最初から、手前に作らせろよグレイ!」

 

手だけ上げ俺は、椿の工房を出た。気づけば後少しで夕暮れだ、僅かに見える建物の間から見える空は微かに紅く染まりかけていた。

 

「こっからなら急がないと……」

 

俺は通路を駆け抜けメインストリートに出て急いで、北にあるロキ・ファミリアのホームである『黄昏の館』に向かった。

この時は慌てていたせいか、最初の頃の影響で目線に慣れていたせいか、裏路地からの目線に気づかなかった。

 

「……へぇ〜」

 

「どうしたんですか?メインストリートなんか見て、取引は終わりました。帰りますよ?」

 

「ん?あぁ……いや、随分面白そうな見るからに、新人の小僧を見つけてな、興味が出た」

 

「珍しいですね、貴方様が弱い新人に興味を持つとは……」

 

「あれは、必ず化けるぜ。おい何人か尾行させろ。しっかり手中に収めねぇとな」

 

「分かりました『()()』様」

 

「さぁて兄貴やホルスの奴より、早く下界に来れたんだ。楽しまなきゃそれこそラーの親父に失礼だしよ…………あぁやっぱり下界は最高に楽しいぜぇ〜」

 

この暗黒期において、現迷宮都市(オラリオ)では彼らの様な存在を『闇派閥(イヴィルス)』と呼ぶ。

 

 




今までで一番長かった、この調子で目指せ8000文字!

オリジナルで闇派閥って難しいです、特に神を誰にするかは大変。

感想、評価、お気に入り、指摘、ドンドンお願いします!皆様のお声が反省と共に励みにもなります!!

それでは、次回もよろしくお願いします!


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神すら怖い存在

お気に入りが後少しで、200件……過去最高のスピード……これも全て読んで下さってる方々のおかげです!!



「えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!?!?!」

 

「うるさい」

 

「あべし!」

 

ロキ・ファミリアの拠点(ホーム)に、主神ロキのゲシュタルト崩壊しかけた五月蝿い叫びを、武力を持って鎮圧し主神である筈のロキを沈め、ロキが右手に持っている羊皮紙を取って見た。

 

「お、おぉ…………」

 

 

 

グレイ・ズィーニス

 

Lv.1

 

力:I 0 → H 100

耐久:I 0 → I 36

器用:I 0 → H 133

敏捷:I 0 → H 162

魔力:I 0 → G 214

 

《魔法》

リィンカーネーション(輪廻を巡る者)

・変身魔法

・詠唱式 【我は花弁を散らす廻り者なり、我は輪廻を遡り呼び醒ます者なり】

・第二詠唱 【我が選択するは───なり】

 

・ 選択される才能(人物)

武の覇王

【力、器用、敏捷、魔力に超補正、耐久が高減少】

白き死神

【器用、敏捷に高補正、魔力に超補正、力が高減少】

偽りの雷神

【器用、耐久に高補正、魔力に超補正、敏捷が高減少】

隻眼の剣

【力、敏捷に高補正、器用に超補正、魔力が高減少】

二天の祖

【力、敏捷に高補正、器用に超補正、耐久が高減少】

 

・解呪式無し自動で解除される、いずれ解呪不可になる

・通常の長文魔法より精神力を多く消費する

・花弁が散る

・一定の使用回数を超えると無詠唱で使用可能、代償として──を消失

 

 

《スキル》

【渇望者】

・獲得した経験値量増加(満たされた際に消失)

・──を求める程、全アビリティに高補正(満たされた際に消失)

・──が消失される事を一度だけ防ぐ(一度だけ発動後消失)

 

【廻り者】

・魔法の補正、威力向上

・花弁により周りの物質に干渉しエネルギーを得、魔法に使用する

 

【神后の寵愛】

・気配察知能力超補正

・動物系のモンスターとの戦闘で超補正

・全アビリティの成長を促進させる

・大切な存在が出来た場合、その人に【神后の加護】が出現する

 

 

 

アビリティの成長速度が、凄まじく速いと思われる。他の人のステイタスを見た事は無いが、多分異常だろう。やはりスキルの影響を受けているのかもしれない。

力は筋トレと、絶対初日の椿のせい。耐久は武器で、攻撃を数発ガードしただけだ。器用と敏捷はモンスター相手に攻撃して避けてを繰り返したから、魔力は魔法を殆ど常に発動しているからで、それらにスキル【渇望者】の経験値量増加、【神后の寵愛】の成長促進が発動で説明がつくな。

 

「いっつ〜……何も殴る事ないやないか……ほんま、たんこぶ出来てるし、さてグレイ、()()()()()()()()()()()()()()()や、これをリヴェリアに見せて怒られて来んかい、スキルのおかげ言うても、流石に迷宮探索を禁止せざるをえんで」

 

復活したロキが頭を擦りながら、とても嫌な事を言ってきた。こんな物をリヴェリアに見せたが最後、説教&迷宮探索禁止のダブルコースだ。それだけは、阻止せねばいけない。

 

「断る、リヴェリアにだけは「私にだけは何なんだ?グレイ」………謀ったなロキ」

 

壊れたブリキの人形の如く頭を動かすと、ちょうど扉を開けたリヴェリアがタイミング良くそこに居た。そして、ロキの顔はとてもとてもウザイ程に、笑みを浮かべていた。最初声をあげたのも全て、俺に悟られずリヴェリアを呼ぶためか…………なら此方にも手はある。

 

「リヴェリアにだけは言わないといけないと思って」

 

「私にだけは言わないといけない?何がだグレイ?」

 

さらばロキよ、倍にして返してやる。俺はロキの部屋にある1つの棚の一角を指さして言った。

 

「…………そこの、棚の裏にロキが酒を隠している。注意したらロキが奇声をあげて逆ギレしてきた」

 

それを聞いたロキは、一瞬にして青ざめ冷や汗を流し俺に小声で「グレイ……恨むで……」なんて言ってきた。ふっ……知らん。そしてリヴェリアは溜め息を吐き、ロキの方へ歩き一度此方を向き「グレイ、部屋から出てもらえるか?」そう言うので、俺は素直にそれを聞いて部屋から出た。片手にステイタスの写しの書いてある羊皮紙を握りながら。

 

部屋から出て、扉に耳を着け聞き耳を立てると、

 

「ロキ……貴様何度言えば分かるのだ」

 

「グレイや!うちはグレイに嵌められたんや!!信じてぇリヴェリア!!」

 

「はぁ……遂に落ちる所まで落ちたなロキ……私は少しばかり過大評価していたようだ」

 

「そんなぁ〜リヴェリア許してぇなぁ〜」

 

中ではどうやらロキが逃走を測ったようだが、結局リヴェリアに捕まったらしい。俺は直ぐにその場を去った。俺の今の心はとてもとても清々しい程に、草原に吹くそよ風が過ぎ去る様に気持ちいいです。

 

バン!!パン!バシン!!バン!パン!バン!!バシーーーーン!!!!!

 

 

「ぁうがあぁぁぁぁぁあ!!!!し、尻があぁあ!!う、うぅごべんばばい、リヴェリア……ゆるじでぐだざい………ぐぞ……ぜっだいゆるざべんがらな……グレイ!!!」

 

「ロキ!まだそんな減らず口を言うか!!」

 

「や、やめて…………あっ……アァァァァァ!!!」

 

…………部屋から離れたはずなんだけど、何かを叩く音が凄くしっかり聞こえてくる。それに合わせて何か、怨嗟の様な物も微かに聞こえるが

 

「まぁ〜良いか、俺には関係無い」

 

全くもって俺にとってどうでもいい事だ。

今日もロキ・ファミリアは平和でした。

 

「グレイーーー!!!!」

 

「騒ぐな!己の主神にすべき事では無いのは分かってるが、今回ばかりは分らせておかねばならん!」

 

「ひっ……わ、割れてまう……」

 

「尻は元から割れている」

 





日常回?的な物です。

グレイのアビリティの成長速度は、スキルが最初からあった故です。成長速度に関しては、ベル君に劣ります。それに、最初から3、4階層からですからね。用事ない限り朝から夕方、夜まで潜るし……それを毎日1週間…………死ぬ。
ベル君は1つのスキルで効果増し増しですから、途中からとは言えあの成長速度は凄いと言わざるをえません。

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後少しでお気に入り200件!皆様のおかげです!!ありがとうございます!!!!

それでは、次回もお願いします!!


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砂漠の暴神

お気に入り、200件突破ありがとうございます!!!!これも皆様のおかげです!!!!



ロキがグレイを嵌めようとし、逆に嵌められた日から3日後の早朝。

 

「うぐっ!」

 

「ほら、まだまだ視野が狭い。常に相手から目を離さないのは良いけど、相手ばかりで周りが見えていないよ」

 

朝、日の出頃ロキ・ファミリアの本拠地(ホーム)にある訓練所で武器を使用した打ち合いを行っている影が2つ。

1人は迷宮都市の大手二大派閥の1つ、ロキ・ファミリアの主神を含めた曲者達を束ねる存在、ロキ・ファミリア団長『フィン・ディムナ』。

 

「さぁ立てグレイ、君の覚悟はこんな物かい?」

 

そして片や、最近冒険者になったばかりの新人でありながら、高い目標を掲げ無理な迷宮探索(ダンジョンアタック)を続けた『異常な人間(グレイ・ズィーニス)』。

 

「分かっている……もう1回!」

 

お互いが、自身の武器である木刀と木槍を構える。フィンは左足を前にし腰を僅かに下げ木槍を下段(げだん)に、グレイは左を前にやや前屈み(まえかがみ)の半身になり木刀を自身の横に水平に構え剣先をフィンに向け中段(ちゅうだん)に。

 

「………………ふっ!」

 

「…………踏み込みが足りないし、速さが足りないよ」

 

先に動いたのは、新人であるグレイ・ズィーニスであった。

半身の姿勢故の、右足で地面を強く蹴る様に前に出る事による推進力を持って突きを放つグレイ。それを冷静にフィンは、木槍の穂先を上げる事で木刀を滑らす様に去なし上げ、左右に穂先を動かす事でグレイの踏み込まれた右足を横から強く叩き距離を取る。

 

「がっ?!ぅあ……せぃ!」

 

「武器に振られるな、1つに視界を狭めるな、視野全てを俯瞰する様にするんだ」

 

グレイは痛みに僅かに怯むも、直ぐにフィンを追いかけ横に一閃するも勢い余り、武器を振った方に体を持ってかれた。直ぐに体勢を直し連続で切り込むが、全てフィンが木槍を巧みに使い攻撃を受け流し、空いた脇腹に柄の後ろ部分を当ててくる。

 

「うっ!はぁ……はぁ……ゔぅ」

 

当たり所が良かったのか、グレイは脇腹を抑えて膝を着いてしまった。しかし、目線だけはフィンから外されていなかった。

 

「ふぅ……今日はここまでにしよう。君は技や駆け引きを覚えるといい、当然視野を広く持つ事やフェイントも大事だ。汗の始末をしっかりする様に、朝食の時間に遅れないようにね。朝食後は休憩を挟みガレスとの組手、休憩して昼食、その後リヴェリアとの勉強会だから頑張るんだ」

 

そう言って、フィンは壁際の槍掛けに槍を置き訓練所から出て行った。

グレイは石で出来た地面に寝転がり空を見上げた。吐く息はまだ白く、見上げた空からは僅かに暖かな陽射しが差していた。

 

「……はぁ、結局バレるか……くそっ……ロキの酒……後でリヴェリアに出してやる………………」

 

 

──昨晩、フィンの執務室──

 

 

団長であるフィンを始め、副団長リヴェリア、ガレス、ロキとファミリアの実質トップが、グレイと対面する形で執務室に勢揃いしていた。

 

「グレイ、何故呼ばれたか。君なら分かっているんじゃないか?そして、何を言われるかもね」

 

「………………」

 

主神と最古参の3人に見られる中、グレイはただ正面のフィンを見続けていた。静かに、それこそ自分の返答は分かっているだろうと言っているかの様に、グレイとフィンは目線を合わせていた。

 

「……沈黙は返答と捉えるよ。君には明日からの迷宮探索を禁止する。そして僕やリヴェリア、ガレスからの指導を行う。早速明日の早朝から始める、訓練所に来るんだ」

 

「分かった…………」

 

そしてグレイは後ろを向き、そのまま執務室から出て行ってしまった。

 

「やっぱり、機嫌を損ねたね」

 

「仕方あるまい。このままでは、死ぬのは彼奴だ。どの道、我々からの指導は入る予定だった。それが早まったにすぎん」

 

「何、彼奴も分かっておるし、目標が決まっておるんじゃ。しっかり取り組むに決まっておる」

 

「そうだろうね。さてところでロキ?何で一言も話さないんだい?リヴェリアに見せてもらった、グレイのステイタスが書かれた羊皮紙の()()()()()を見せたのはロキ本人だろう?」

 

ロキはずっと壁に寄りかかり、腕を組んで黙ったままだった。ステイタスの写しを見せたのだって、リヴェリアが最初だったのだ。

 

「……これに関しては、全てフィン達に任せるわ。うちはちょっとやる事があるから、先に部屋戻るわ。おやすみぃ皆」

 

「あ、あぁお疲れロキ…………何か合ったのか?リヴェリア知らないかい?」

 

「知らん。だが珍しく神として、真面目な雰囲気だった」

 

「あぁ、毎日あんな感じだと良いのだけれどね」

 

その後、執務室では明日からの事についてフィン、リヴェリア、ガレスによって話し合いが行われた。

ロキはというと、部屋に戻りベッドにうつ伏せで寝転がっていた。

 

「……うぅ、まだ尻が痛い。リヴェリアのアホォ…………立っていても辛いなんて、どんな力で叩いたんや。ほんま加減っちゅうもんをしれやくそぉ………へへ、けどグレイには一矢報いたで、……うちを嵌めた罰や。ひひっひひひひっい!?うぅ〜痛い…………塗り薬、塗り薬……」

 

フィン達の見た神の威厳は、単なるやせ我慢であった。やはりロキはロキである。

 

「あぁ〜……薬……くす……ん?何やこれ?え〜なになに?」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

朝食を食べ終えたグレイは、ガレスとの組手が行われる訓練所に行く前に、ある部屋に立ち寄っていた。

 

「アイズ……入るぞ…………」

 

扉を開け歩を進めると、部屋の中にあるベッドで金髪の少女が横たわっていた。

少女の名は『アイズ・ヴァレンシュタイン』。グレイと同じ村で育ち、兄妹の様に育ち、最後に両親を目の前で無くした。グレイにとってアイズは、ヘラ・ファミリアの皆が託した守るべき存在であった。

 

「…………アイズ」

 

返事は無い。規則正しい寝息が聞こえるだけ、『黒竜(隻眼の竜)』が村を襲った日から、アイズは目を覚ますと泣きながら暴れるそうだ。俺自身、その場には立ち会った事が無いが抑えに入るリヴェリアからは

 

「グレイ……見ない方が良いし聞かない方が良い。それがお前の為でもある」

 

と言われる。だからロキ・ファミリアに来てから、俺が見るのはいつも寝ている時だけ、会話すらしていない。見た所体に傷は見当たらない、顔には涙の通った後が見えるだけ。村に居た時の太陽の様な優しい明るい笑顔がまた見たい、その為にもアイズが7歳になるまでにランクアップを果たさないといけない。

 

「行ってくる、アイズ」

 

俺はアイズの頭を、撫でてから部屋を出た。そろそろ、ガレスとの組手の時間だ。俺はアップがてら、軽く走りながら訓練所に向かった。

 

「……ぃ……かな………で…………」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ふん!まだまだ軽いわ!もっと力を込めんか!グレイ次じゃ、かかって来い!!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

Lv(レベル)

冒険者はダンジョンに潜り、経験や収入を得て日々の生活を行い神々に認められる程の偉業を成す事により、自身の魂の器とでも言うのだろうか、自身のLvを上げより上位の存在へと自分を昇華させる。Lvを1つ上げるだけで戦闘において圧倒的な差が生まれる。Lv.1とLv.2、『数値的』に見れば大した事は無いが『Lv』として考えた場合、それは天と地の差が現れる。『Lv.1がLv.2に勝つ』それは絶対と言っていい程起こらない事だ。

 

なら更に差が開いた場合はどうなるか。

 

Lv.1(レベルワン)のグレイとLv.5(レベルファイブ)のガレス。その間にあるのは、天と地よりも差がある。ただの蟻が竜に挑む様な物に等しい。

グレイとガレスの組手。グレイの攻撃はガレスにとって、止まるほどにスローに見えるだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。攻撃を受けた所で、Lv.5更に言えば脳筋のガレスには衝撃すら伝わらない。逆にグレイが拳を痛める程の強度だ。

 

「ぅつ〜〜……ふぅ、はあぁ!!」

 

「そうじゃ、諦めるな。打ち続けろ、迷宮の戦闘において痛みなどに怯むのは、命を差し出す様な物……その隙を迷宮は見逃さん。更に、武器に頼りすぎるのもいかん。武器が無くなった際には身体1つでモンスターを倒さなきゃならん。その為の組手、その為の体術じゃ」

 

グレイは果敢にも蹴りや拳打を打ち込むものの、ガレスは難なく受け止め打ち返し会話する余裕すらある程だった。

 

「ぅぐ……ふぅ……ふぅ……」

 

「さぁてと、時間は…………良し!グレイ!組手は終いじゃ着いてこい」

 

「はぁ……はぁ……あ、あぁ?」

 

ガレスは組手を辞め、グレイに着いてくるように言い訓練所から出て行った。グレイは息が乱れているが、タオルで汗を拭きながらガレスの後を追いかけた。着いて行った先は所狭しと様々な武器が置いてある部屋だった。

 

「ガレス……此処は?」

 

「まぁ、お主には椿の武器もあるし此処とは縁が無かろうて。此処は武器庫じゃ、今までファミリアの構成員が使ってきた武器や、まだ使っとらん新団員の為の武器が置いておる…………例えば、あったあったこの槍なんか懐かしいのう」

 

ガレスは飾られている古い1本の槍を手に取り、懐かしそうに昔を思い馳せる様に見ていた。

 

「その槍は?」

 

「これはなぁ、ロキ・ファミリア結成当時間もない頃フィンが使っておった槍じゃ。彼奴度々此処に来て、手入れをしておる様じゃな」

 

その槍は古くなり多くの傷があるが、まだ戦える、まだ貫ける、まだ折れないと言っている様な不思議な輝きを放っていた。

 

「……その様子じゃと、この槍に込められた思いが分かった様じゃな」

 

「思い?武器のか?」

 

ガレスは槍を元の場所に戻し、椅子を2つ出しテーブルのある場所に置いた。

 

「まぁ座れ。……武器の思い、正式にはその使い手の思いじゃ。武器を持ちどんな思いで戦ったのか、何を感じていたのか、そう言った物じゃよ。まだ駆け出しじゃった頃、よくダンジョンで死にかけその度に生還した。フィンも儂もリヴェリアも死にかけそして、その手に持つ武器と共にあった。あの槍には当時のフィンの思いが宿っとる。フィンも昔はよく無茶をしとった。敵を貫き、手傷を負っても槍の様に折れんかった、その挫けぬ持ち主の思いが槍にも宿っとる」

 

「……持ち主の思い」

 

「そうじゃ。武器は持ち主の思いを知り、持ち主を助けてくれる。じゃから今のお主は見ておれんかった。今のお主はさながら、手入れのされない1本の刀じゃ。刀は刃こぼれがしやすい、だがお主は早朝から晩まで迷宮に篭って居る。それこそ、夕食を皆で取ったのは1、2回じゃろ。身体も装備、武器の1つじゃ。それでは、斬れる物も斬れなくなり何時か折れてしまう。自分の身体を見ろ、そのままでは身体は、お主の思い所か命さえ奪ってしまう」

 

自分の身体を見る。外面的に見て傷は少ないだろう、けど内面的に見れば疲労などが溜まっている。確かにこれでは動けなくなってしまう。

 

「身体という武器を労り、日々修練をする。そうすれば必ずその思いに応えてくれるはずじゃ。グレイ、武器は道具では無い身体の一部なんじゃ。でないとお主が槍から感じた様に、周りにはお主の辛い思いしか伝わらん」

 

俺から伝わる思い…………強くなる、強くなって守る、そう良いように思って頑張っても、周りには無茶している様にしか伝わらないって事か……自分を守れてこそ、他を守れるって言うのはこう言う事なのか。だけど……

 

「……ん、分かったよ」

 

「……そうか!なら良いんじゃ。……良し!様々な武器の手入れの仕方を教えてやろう。身体然り、装備然り色々じゃ、此処には道具もあるからのぅ」

 

そうして、身体のケアの仕方、装備品の手入れの仕方などを教えて貰った。ガレスは脳筋かと思ったが、意外と手先がかなり器用だった事に驚いた。それは、昼食の時間ギリギリまで続いた。

 

そしてガレスの言葉は、今のグレイには完全には届かない。

 

(ガレス……言ってる事は正しいと思う。けど強くないと自分の身体すら、守れないじゃないか……自分が守られるんじゃ駄目だ。やっぱり強くないと駄目なんだよ)

 

グレイ自身が自分という物を理解していない為に

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

正直に言う。

 

俺は騒がしいのは嫌いだ。正しくは、騒がしすぎるのが嫌いだ。何事も度が過ぎると嫌いな物だ。騒がしいのは別に良い、楽しい事もあるけど限度があるだろう。

 

「…………はぁ」

 

ロキ・ファミリアは食事を朝、昼、晩と、3回ファミリアの全員で食事を摂る。外出していたり等で一緒に食べない事もあるが、基本此処でホームにいる奴は食べている。結成当時から、ロキや最古参の3人が決めた事の1つらしい。

 

「おぉ!皆!珍しくグレイが此処で飯食ってるぞ!」

「何だと!本当か!?」

「私、朝に団長と訓練してるグレイを見たわ!」

「私はガレスさんとの組手を見かけたよ

「グレイにお、お礼言わなきゃ……」

「私も言わなくちゃ!レオさんには助けてもらったし」

「俺も言うぜ!冒険者になったのだって、レオさんに憧れたからだからよ!」

 

「「「お〜い!グレイ!!少し、話があるんだが(話があるのだけど)今いいか(今いいかしら)!?!??!」」」

 

「ぅ…………」

 

離れた所に居た他の団員が、飯の乗ったトレイを持って数人が他を引き連れて近ずいてくる。何だあの野次馬は…………飯すらまともに食えないなんて、まだ迷宮で食ってた方がマシだ。

 

「どうしたお前達、騒がしいぞ」

 

多くの人の声が響き渡る中、その凛とした声は不思議とその場の騒ぎを沈めてしまった。

 

「り、リヴェリア様……」

 

「リヴェリア副団長、す、すいません」

 

「副団長……」

 

その場の者が各々謝る中、このままだと埒が明かないと判断したのかリヴェリアは手で制止した。

 

「もういい、分かった。グレイが居るとなると……あぁ、そういう事か。お前達、少し静かに出来なかったのか。まぁいい少しグレイを借りるぞ、来てくれグレイ」

 

「あ、あぁ分かった」

 

その場ですぐ飯を平らげ、トレイを片付け一度部屋に戻り歯を磨いた後に部屋の前に居たリヴェリアについて行った。

 

「ロキ、連れてきたぞ」

 

「入ってええでぇ〜」

 

「は?何でロキが……」

 

連れてこられたのは、何故かロキの部屋だった。どうしてだ……リヴェリアの勉強が待っているんじゃないのか。

 

「……ようグレイ、随分フィンとガレスにやられたみたいやなぁ?」

 

「あぁ?……何だ?酔いどれ絶壁」

 

両者の間に火花が散る。それを見てリヴェリアは、溜め息を吐くだけだった。

 

「ロキ……いい加減にしろ。せっかく今日、グレイに勉強を教えるはずだったのだ。この借りはしっかり返させてもらうからな」

 

「すまんな、リヴェリア。じゃあ後任せとき」

 

リヴェリアは、消沈した様子で部屋を出て行ってしまった。部屋に残された俺はどうしたらいいんだ。

 

「グレイ率直に言うで……今日、今夜の神会(デナトゥス)について来い。理由は移動中の馬車で話すさかい、早う支度せぇ」

 

「は?おい!……って何だよ……おい」

 

俺はロキの話に、ついて行けないまま部屋の外に出されてしまった。訳が分からないが、仕方なく部屋に行って着替えと言われても迷宮探索の服しか無かった為、いつもの黒の戦闘装束を着て玄関に出た。そこには既に馬車が手配されていて、いつもと違いドレスを着ているロキが乗っていた。俺はロキの対面に座ったすると、直ぐに馬車は動き出した。

 

「早うせい!グレイ……ってお前、いつもの戦闘服かい!他の無かったんか?」

 

「うるさい。無いものは仕方ないだろうが、それより理由って何だよ」

 

「あぁ……それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神会があったの忘れとったんや。酔っ払って招待状の事すっかり頭から抜けててなぁ〜」

 

「良し帰る。今からでもリヴェリアの勉強会に出る」

 

俺は馬車の扉に手を掛け出ようとしたら、ロキが慌てて止めてきた。

 

「ほんまの理由は、『今一番勢いのある新人をファミリアから連れてくる』それが、今回の神会の参加条件だったんや。最近うちのファミリアでも新人は居ても、勢いがあるかどうか分からんかったから。今回は別に良えかな〜なんて……面白い事もせんようやったから忘れとったんや」

 

俺はもう一度、座席に座り直しロキの話を聞くことにした。その神会に興味があったからだ。

 

「神会は基本、ガネーシャ・ファミリア以外の人は参加出来ないじゃ無いのか」

 

「そうや、だけど今回『新人』を連れて来いっちゅう条件がある。何かあるに決まっとるやろ。だからグレイ、新人の中でも異常(イレギュラー)なお前が少し周りを見とき」

 

「ちっ………貸しだからな。こんな所で、時間を潰す暇は無いのに」

 

「わぁった、わぁった。そんじゃよろしくな……っと着いたみたいやな。行くで、グレイ」

 

どうして俺が…………まぁ新人が集まるという事は、今後の活躍次第で、名前が広まる奴が居ると言う事。顔を覚える位はするか…………

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「俺が!!!ガネーシャだ!!」

「うるせー!あははは!ガネーシャうるせー!」

「お!お〜い皆、極東のあの引き込もりが居るぞ!」

「引き込もりの天照姉様、呼ばれてますよ?」

「うぅ〜!知らない!!私だって、好きで引きこもってなかったもん!ん?今悪口言った!?」

「……どうします?月詠姉様」

「悪口?知りません。素戔嗚尊あんた、母様呼んでよ」

「母上は下界に降りてません。あ〜元気にしてるかな〜」

「オ・レ・が〜〜〜ガネーシャだ!!」

「騒がしすぎる、特にガネーシャ……シヴァが降りてきたらどうなるだろうか……」

「おい!インドラ!それは俺の子供だぞ!!!」

「お〜お〜相変わらず硬いぜ〜阿修羅?な、君どうよ?うちに改宗しない?」

 

多くの様々な神々がガネーシャ・ファミリアが用意した広い会場に、自身のファミリアの、新人を連れ回し騒いでいる。

 

「お〜お〜、こんな多く集まるなんて珍しいな。見た感じ、極東の三姉弟に、中の悪い帝釈天と阿修羅、ん?……げっ!ヘイムダルやん」

 

「ロキ……俺は言われた通りにすればいいか」

 

「おう頼むわ。ほんじゃ終わるまで頼むで…………ごら〜!ヘイムダル!!」

 

「げっ!?崖胸!?やべっ!」

 

我が主人は、知神だろう神ヘイムダルと追いかけっこを始めてしまった。俺は壁際で飲み物を飲みながら、ロキに言われた通り周りを観察し始めた。

 

「……(新人……という事は全員がLv.1。冒険者になったばかりの奴、ランクアップ手前の奴……ロキが言っていた『何かある』どう言う事だ)……この飲み物美味いな」

 

「それは、葡萄を搾った飲み物です。やはりお酒以外も準備していて良かったですね」

 

「ん?……誰ですか」

 

俺と同じ飲み物を持った女が、話しかけて来た。流石に知り合いでも無いから敬語で返事をした。その女は、両腕が見える場所は全て包帯が巻かれていた。服も看護服と冒険者というよりまんま医者の類い、何処かの医療系ファミリアか?

 

「すいません、名乗り遅れました。私、セト・ファミリア所属の『フローレンス・ナイチンゲール』と申します。長いので、ナイチンと呼んでください。今後もよろしくお願いします」

 

「俺はロキ・ファミリア所属……グレイ」

 

「ロキ・ファミリア!それは凄いですね。ん?」

 

セト・ファミリア?聞いた事が無いので、大手ファミリアでは無いのは分かる。悩んでいたのがバレたのか、ナイチンは神々の居る所の一角を指さした。

 

「彼処でお酒を嗜まれているのが、セト様です」

 

「な!?……あれがセト……」

 

指さした所には、『獰猛な何かが居た』いやそう錯覚しただけだ。

髪は綺麗な黒でオールバック、肩まで伸ばされている。両目は紅く瞳孔は縦になっている。肌は赤銅色で黄金律を思わせる程の肉体、無駄な筋肉はなく全てが実戦において邪魔をしないだろう。

サンダルを履き服は下半身のみに腰布をしている。手首や足首に黄金や水晶の光る腕輪や足輪をし、同じ材質だろうネックレスや腰布の上に黄金の三角形のプレートを提げている。

 

一瞬ただの人が見れば、黄金を携えた青年に見えるだろう。しかし、俺は違う。多分フィンやガレスといった実力者も、同じ事を言うはずだ。

 

 

 

 

『何なんだ、アレは』

 

 

 

 

神は下界に降りる際、神の力等を封じ一般人と変わらない状態で降りてくる。例外として知られるのは『神フレイヤの魂を見る眼』、『ゼウス、オーディンの神の気配を完全に消す』、『多くの神が持つ直感』等を俺はロキから聞いた。最後のは人より少し直感が働く程度らしい。

それらの力を封じている筈なのに、神セトからは直接見られていないのに、威圧感や絶対強者の風格を感じ、背後に巨大な黒狼が幻視する程だ。

 

「……神セト、他の神々と一線を越えている」

 

「そうでしょう?セト様は美しく逞しい……今まで見てきた男神の中でも他を寄り付かせない風格……私は魂ごとセト様の全てに惚れ奪われた思いです。……あっ……ふふっどうやらお呼びの様です。行きましょう」

 

「あ、あぁ分かった」

 

正直気が乗らない。この距離でこの威圧感……もっと近ずいたらどうなる?……これが強さ……力を持った神の姿か………冷や汗が止まらない。………何故か嫌悪感が凄まじい。

 

「セト様、お連れしました。ロキ・ファミリアのグレイさんです。それと少々威圧し過ぎかと……」

 

「ん?あぁすまねぇな。グレイって言ったか、よろしくな。俺はそこに居るナイチンが所属する探索・医療系ファミリアの『セト・ファミリア』主神セトだ」

 

「どうも。グレイ・ズィーニス……です」

 

挨拶をした途端、神セトは不敵な笑みを浮かべた。それを見るだけで震えが増す。

 

「ズィーニス……レオの息子か……」

 

「え?!……父さんを知ってるんですか?」

 

「あぁレオには()()()()()()()()()()()()……っとすまねぇ時間取らせたな。しっかりこの神会を楽しめ。せっかく資金をガネーシャに渡して、開かせたんだからな。このご時世だ、今後互いのファミリアの新人同士の交流や連携も大切だ。……さて時間か、ナイチン帰るぞ。()()()()()()()()()()()()()ロキによろしくな」

 

そう言って、最後に俺の肩を軽く叩いて一人と一神は帰って行った。だんだん動悸が収まる。中にはああいった神も居るのか…………

そこからは、特に何も無く。ロキと合流し他のファミリアの主神や新人に挨拶をして回った。やはり大手なだけあってロキとの挨拶回りは大変だった。

 

「……あぁ……疲れた……うっ飲み過ぎた……グレイ、水取って」

 

「はぁ……ロキ、少しは神セトを見習って欲しいな。全く」

 

「ぶふっ!?!」

 

「うっ!汚ぇぞロキ!」

 

ロキは飲んだ水を吹き出し、咳き込んでしまった。そのお陰で、馬車の中は水浸しである。

 

「はぁ……はぁ………グレイ、お前今セトって言ったんか」

 

「あ、あぁどうしたんだよ」

 

ロキはその閉じた様な目を開き、取り乱して肩を掴んで来た。いつものロキとは正反対の剣呑とした雰囲気だった。

 

「セト言ったら、あの破壊神の野郎やで!?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()やで!?おったんか彼奴!!」

 

神なのに第二級冒険者を殺した。

 

第二級冒険者って言ったらLv.3〜Lv.4だぞ……それを素手で……確実に現在下界に居る神々で最強……規格外過ぎる。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

─ある馬車の中─

 

「どうでした?セト様。グレイ・ズィーニスは」

 

「あぁ最高だった。彼奴の中にはまだ居たしよ、予想以上に育ってたな。てっきりレオが取り出していると思ったんだが、これは好都合だぜ」

 

「何が居るんですか?この無知なナイチンに教えて下さいセト様」

 

「あぁいいぜ。知らなくても無理はねぇ、知ってる奴はレオが研究所事潰したからな。あん時はお前はまだL()v().()()だったしよ。Lv.4からの奴数名がやってた研究だし、おっと話がそれたな。まぁ簡単だよ、

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

それの一環で子供がいる第一級冒険者、第二級冒険者を探したらよぉ〜何とびっくり、あのヘラ・ファミリアの副団長レオ・ズィーニスに子供がいるじゃねぇか。それで攫って飛び切りの奴を埋め込んだのよ!まぁ結果、ダンジョンの中の研究所は破壊、研究所に居た奴は皆殺しだ」

 

「まぁそれはそれは、ですが研究はどうなったんですか?」

 

「あ〜研究所の奴の中にも、モンスター入れててな。現在進行形で飼育、強化中だ」

 

 

 

今まさに、過去と現在の歯車が噛み合い回り出す。

 

 




過去最長であります!

長いからもしかしたら、誤字あったらすいません。

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それでは、次回もお願いします。


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焦燥、先生、神の試練

オクレテ、ゴメンネ……

評価してくださり、ありがとうございます。
お気に入りして下さった方々も、ありがとうございます。
それでは、どうぞ



ダンジョン上層─第十二階層─

 

アルマジロ型のモンスターであるハードアーマードの回転を、刀の側面を転がり上に行く様に去なす事で、空中に飛び腹を見せたハードアーマードを、自身もジャンプし刀で頭を貫き即座に抜いて腹を斬る事で殺す。地面に着地した時には、グレイとハードアーマードの核であった魔石のみが地面にあった。

ハードアーマードの魔石を見ながら、グレイは呟いた。

 

「何で……どうして……レベルが上がらないんだ…………あぁっ!」

 

立ち尽くすグレイの背後から、毛並みが銀に近い白の大猿のモンスターシルバーバックが走りながら接近し、その太い腕から繰り出された拳を振り下ろした。

 

──スパッ

 

しかし、その拳はグレイには届かなかった。振り返りざまに刀を横一閃したグレイによって拳ごと魔石を斬られたからだ。

グレイは刀を鞘に収め、斬られた魔石を拾いバックパックに詰めるとそのまま、出口のある方へ歩いていってしまった。その日、グレイがダンジョンに潜ったのは早朝、そしてダンジョンから出たのは昼前だった。グレイがダンジョンに潜る時間は1年半前に比べ大幅に少なくなっていた。

 

()()()()()()()

 

神会があった日から既に1年半経っていた。既にグレイは9歳、アイズは6歳になっていた。

グレイはステータスの伸びが、1年半前より著しく悪くなっている事に焦っていた。『約束の2年』アイズが7歳になるまで半年しか残ってなかった。

気づいたのは1年前。神会があった日から半年後辺りから、ステータスが伸び難くなった。最初は、ダンジョンに潜る時間がフィン達との訓練で減ったからと思った。しかし、半年前フィン達からの訓練全ての課程を終え、ダンジョンにまた多く潜れる様になってもステータスの伸びは変わらなかった。

 

ロキからは

 

「落ち込む事なんてないで?それでも、普通に比べればかなりいい方や。まぁ確かに前に比べて上がらんくなったな。最初やったからやろ、皆と同じように地道に頑張りグレイ」

 

そして、これが現在のステータスだ。

 

 

 

グレイ・ズィーニス

 

Lv.1

 

力:C 603 →C 610

耐久:D 546 →D 548

器用:B 746 →B 753

敏捷:B 718 →B 724

魔力:A 821 →A 831

 

《魔法》

リィンカーネーション(輪廻を巡る者)

・変身魔法

・詠唱式 【我は花弁を散らす廻り者なり、我は輪廻を遡り呼び醒ます者なり】

・第二詠唱 【我が選択するは───なり】

 

・ 選択される才能(人物)

武の覇王

【力、器用、敏捷、魔力に超補正、耐久が高減少】

白き死神

【器用、敏捷に高補正、魔力に超補正、力が高減少】

偽りの雷神

【器用、耐久に高補正、魔力に超補正、敏捷が高減少】

隻眼の剣

【力、敏捷に高補正、器用に超補正、魔力が高減少】

二天の祖

【力、敏捷に高補正、器用に超補正、耐久が高減少】

 

・解呪式無し自動で解除される、いずれ解呪不可になる

・通常の長文魔法より精神力を多く消費する

・花弁が散る

・一定の使用回数を超えると無詠唱で使用可能、代償として──を消失

 

 

《スキル》

【渇望者】

・獲得した経験値量増加(満たされた際に消失)

・──を求める程、全アビリティに高補正(満たされた際に消失)

・──が消失される事を一度だけ防ぐ(一度だけ発動後消失)

 

【廻り者】

・魔法の補正、威力向上

・花弁により周りの物質に干渉しエネルギーを得、魔法に使用する

 

【神后の寵愛】

・気配察知能力超補正

・動物系のモンスターとの戦闘で超補正

・全アビリティの成長を促進させる

・大切な存在が出来た場合、その人に【神后の加護】が出現する

 

 

 

これは、グレイが昨日更新した際のステータスである。アビリティトータル32の上昇である。確かに、普通に比べればかなり良い方である。だがグレイは異常な成長(イレギュラー)を見せた存在であるのを忘れてはいけない。

グレイが最初の更新で出した数値は、トータル640オーバーこれを見ると、32は初期の成長値の5%の上昇しかないのである。『最初は伸びやすいが、段々伸びにくくなる』これは冒険者なら全ての者に当てはまるが、成長促進のスキルを持つグレイとなると話は変わってしまう。

 

初期の上昇から考えると32の上昇は少なすぎるのである。これはグレイにとっての異常(イレギュラー)であった。それにより、結局集中が続かずダンジョンを早く切り上げてしまう。前なら更に長く潜っていただろうが、終わらして帰るという選択肢がある事にフィンやガレス、リヴェリアの教育が実を結んでいることが知れる。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

黄昏の館

 

ホームに戻ったグレイは、自身の部屋の窓を開け窓枠に腰掛けた。グレイの部屋は、黄昏の館の南東塔の最上階にある。高さがありオラリオを一望出来るそこで最近はよく本を読む。その本はかなり古く内容は極東の英雄譚であった。

グレイの主武装は『刀』である。しかし刀を扱う剣術はフィンでもガレスでもリヴェリアですら、知らず教えて貰えなかった。

 

フィンは

 

「剣術?んん……どうしようか……グレイ、剣術には多くの流派があり、その中で自分にあった物を自分で見つけるしかないだ。それに僕の主武装は槍だからね、生憎教えれそうに無いよ、すまないグレイ」

 

ガレスは

 

「困ったのう……確かに刀を扱うには剣術を知っておかねば、刀が直ぐに壊れてしまう。儂も教えれそうに無いすまんな」

 

リヴェリアは

 

「私は魔法が専門だからな……本?あぁ確か指南書等もあるにはあるが、刀に合うものがあるかどうか……刀自体極東の島国特有の物だ。すまないなグレイ、代わりと言ってはなんだがその類の物を探してみる」

 

ロキ・ファミリア屈指の武術と知恵の持ち主達もお手上げだった。唯一リヴェリアが見つけてきた刀関連の書物は少なく、今読んでいる本含め4冊。残りの3冊は入門編の様な物や、刀の扱いなどで余り役に立ちそうもなかった。

なら何故この英雄譚を読んでいる理由というと、それは気晴らしとこの本の内容にあった。

 

時代背景はきっと神々が下界に降り始める頃の時期だろう。出てくる者達は大まかに分けて二種類。

 

 

【鬼と人】

 

 

人が鬼を倒す、そんな内容だ。そしてその人達は様々な技を使っていた、それも刀で。本自体がかなり古く、絵や字が霞んで読みずらくなっていて、ほぼイメージとして見ているだけだが面白い。特にこの一番出てくるこの左の額に痣がある少年が使う、炎が出る技はかなり惹き付けられる物がある。

ここ数日はダンジョンでの集中が続かない事への気晴らしに、剣術など調べ探した結果の産物で見つけたこの本にハマり、ダンジョンから帰っては読んでいる。

 

ペラ

 

「………………おぉ」

 

ペラ

 

「………………んん」

 

ペラ

 

「………………へぇ」

 

トン

 

「…………結局全て見てしまった。…………極東の物なら椿に聞いて見るか、彼奴の事だから居るとは思うが……」

 

本を読み()終わった頃には、既に夕方になっていた。グレイはそれでも、椿の工房兼家に向かった。相当この本について、知りたがっているのが分かる。

グレイは気づいていないが、本を読んで(見て)いる事をリヴェリアに見られていた。それを見てリヴェリアはいい方向に成長したと思ったらしい。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「……椿、居るか?」

 

夜という事もあって、静かに尚且つ中に居れば気づく位の大きさで声を出した。鉄を打つ音や匂いもしない事から作業に没頭している訳では無い。

 

「椿?…………居ないのか」

 

しかし、扉を開け中に入れば、静寂と灯りのみ椿の姿は無かった。灯りがある事から、外出はして無いと判断し取り敢えず、椅子に座り待つことにした。

 

「……何処行ったん「お?グレイではないか。どうした?こんな夜に珍しい」……居たのか椿、居たのならあぁあ?!」

 

「何だ何だ。急に叫んで騒がしい」

 

そこには、()()()()()()()()()椿()が居た。風呂に入っていたのか、身体からは湯気が昇り、髪は濡れ首にタオルを巻いていた。あまりの事にグレイは、椅子から立ち上がり直ぐに後ろを向いた。

 

「何で、服を着てない!」

 

「ん?……あぁ〜風呂上がりで忘れとった。いつも風呂上がりは上裸でな…………それよりグレイ、もしかして恥ずかしがっておるのか?初々しい奴め」

 

椿は、面白半分で身体を寄せてくる。凄くセクハラ慣れしている様に感じる。

 

「やめろ!……それより、これの事に……ついて知らないか?!」

 

「ほれほれ〜……ん?何だこれは…………ってグレイ、これを何処で手に入れた?」

 

椿は上にやっと着物を着て、渡した本を開き、見ながら聴いてきた。その反応は驚愕と好奇心の様な物だった。

 

「ん?確か古本の中から、見つかったってリヴェリアが……」

 

「ん〜なんとも、まさかオラリオで目にする事になるとはな…………グレイこれはな、『鬼殺伝記』と言ってな、極東の島国ではな『鬼滅物語』、『鬼狩り』何て呼ばれている物だ。伝記、物語と言っても主人公の名前や敵の名前すら分からん物だがな。まぁ老人の中でも知る人ぞ知るといった感じで、もう殆ど知られておらん物だ」

 

椿は椅子に座り、その本を開きながら説明をし始めた。俺も椅子に座り話を聴き始めた。

 

「刀の製法を知った頃に、手前はある話を聞いてな。これを探したが持っている人は居なく、『あぁ〜名前はちょっと聞いた事あるかも』としか聞けなくてな、困ったものよ。……ある話と言うのは、この物語が大昔の本当の話で、この剣士達は特殊な刀を使っていた、と言う物でな。本当ならその製法を知らねば!と躍起になって探したが空振り続きで結局諦めた」

 

本当の話?ならこの剣士達の使う技は流派は、実際に存在するのか?

 

「その話誰から聞いたんだ?」

 

「知り合いの爺様が居ってな、その人が良く話しておった。何でも昔まだ小僧だった時に、特殊な刀を作り鍛える鍛冶師に会ったと話していた、何でもひょっとこ(火男)の面を着けていたとか…………まぁその爺様も手前がオラリオに来る前に、亡くなってしまったが」

 

「…………そうか、ありがとう。夜にすまなかったな、それじゃあまた」

 

「ふむ、グレイも帰り気をつけるのだぞ?最近物騒な話を良く聞くからな。次来た時は刀を持ってこい、研いでやろう」

 

俺は僅かながら心躍らせ、椿の家から帰るのだった。もし本当ならこの流派を継いだ人に会えるかもしれないと……何故なら此処は来る者を拒まない、全てを受け入れる迷宮都市(オラリオ)なのだから。

 

 

 

「ふむ、手前もまた暇な時にでも探してみるか…………とそう言えばあの爺様に何か渡されておった様な……………………あぁ!そう言えば、鉱石を渡されたな………………何処置いたっけ……」

 

椿は山の様に積み上げられた鉱石や、モンスターのドロップアイテムを見て、流石に片付けと整理をするかと思うのだった。

(尚、今までも何度か思ったが結局されずじまいだった)

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「もう少し、この本を見てみるかって…………やばいな、リヴェリアに怒られる…………?誰だ」

 

黄昏の館に帰る途中、ふと上を見上げると、月の光で影になっていて顔は見えないが、屋根の上に全身を外套で隠した大柄な人が居た。外套を着ていても分かる程の筋肉質な肉体……恐らく男だろう、背中には2つの大剣の様な剣を背負っている。それにこのビリビリと肌を刺す威圧感、間違いなく、フィンやガレスと同等かそれ以上の第一級冒険者(実力者)である事を物語っている。その男が音も無く、二階建ての屋根から降りて俺の前に立った。

 

「……お前、何者だ」

 

現在、グレイは腰にある小さなバックパックに、本を入れているだけで装備は一切されていない。然し、第一級冒険者のガレスに仕込まれ、独自のやり方を混ぜた武術がある。

グレイは、直ぐに構えタイミングを見ていた。

 

「…………」

 

ズドンッ!!

 

「ガハッ!!?」

 

何だ今のは!?全く反応出来なかった!?何をされた……俺は吹っ飛び、相手は今俺が居た所で拳を前に出している。ただ、相手は俺を殴っただけだ。だがそのスピードがおかしいだろ…………やばい……相手が近ずいてくる……体が竦んで動けない、呼吸もまともに出来ない……どうする、どうする!どうする!どうする!!どうする!!!落ち着け!考えろ!!思考を止めるな!!何か……何かないか!!

 

その時だった。

 

後ろしか見えないが、知らない着物を着た男が目の前に現れた。その途端、変わった聞いた事の無い音が聴こえた。

 

「……余り見過ごせる様な状況では無いな」

 

───ゴオォォオ

 

──ヒノカミ神楽・炎舞(えんぶ)

 

一瞬だった。

 

男は一瞬で外套の大男の目前に移動し、上段からの縦一閃と下段からの縦一閃を行った。余りの速さにほぼ同時に斬った様に見えた。

なら何故、上段と下段の順に二度斬ったか分かるかというと、斬った軌道が燃えたのだ。それが上からとやや遅れて下から燃えたから分かった。

そして、ここで一つ思い出した。あれは…………

 

(あの本で見た少年が使っていた技の一つだ)

 

「!!…………くっ!」

 

「ほう、今のを防ぐか。加減したとは言え良く反応したものだ」

 

「ふぅ………………」

 

大男は攻撃を背中の大剣で防いだ後、此方を一瞥し夜の路地裏の闇にいなくなった。

 

「大丈夫か、少年」

 

どうやら、出逢いは直ぐに訪れた様だった。

 

正面から見た男には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それを確認した後、グレイの意識は沈んで行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「…………ん……あぁ…………!」

 

此処は…………俺の部屋?あの時、確か……あぁ確か誰か助けてくれた。まさか、その人が俺を運んでくれたのか?

 

「やっと起きたか、この馬鹿者」

 

「うぅ…………リヴェリア」

 

扉の方を見ると、飯の乗ったトレーを持ったリヴェリアが居た。

 

「うぅとは何だ。起きたのなら、これを食べろ。食ったら支度をしろ…………お前をここまで運んでくれた者が、お前を待っている」

 

「え?」

 

運んでくれた者ってあの剣術の?俺は、急いで飯を食った。あの剣術を使った人物と、剣術について早く聞きたい。

 

「……!ごほっ!ごほっ!」

 

「おい!急いで食うからだ。ほら水だ。客人は待ってくれている、そう慌てるな…………」

 

 

─────

────

───

──

 

─フィンの執務室─

 

机に乗って座っているロキ、ソファに座って対面する様に座るフィンと男、壁に寄りかかり男を見るリヴェリア、フィンの後ろで立っているガレス、フィンの隣に座るグレイ。

この空間は今、緊張や探りなど様々な事柄が飛び交っていた。その中で初めに口を開いたのは、団長であるフィンだった。

 

「まず最初に、グレイを助けてくれて感謝するよ。代表として言わせて貰う、ありがとう」

 

グレイもフィンに続いて男に向かって感謝をした。

 

「ありがとう、ございます」

 

「……感謝される様な事では無い、偶然目に入った為助けたにすぎん」

 

男はただ淡々と、目を閉じながら話す。

 

「それに、面白い物も見つかった。ただ私はそれを返しに来たに過ぎない」

 

そう言って、男は目の前に1冊の古本を置いた。それは、グレイの持っていた『鬼殺伝記』だった。グレイはそれを見て驚いた。何故、男が自分の物を持っているのかと。

 

「殴られ、飛ばされた時に落としたものだろう。失礼だが、君の物を物色させてもらった。何分君を届ける場所が分からなかった為、許して欲しい。幸い地図があった為連れてこれた」

 

確かに、あの小さい腰に巻くバックには、念の為印を付けた地図も入れている。だから、届けれたのか。

 

「ありがとうございます。所で名前……教えて貰えませんか?」

 

男はそこで、あっ言ってなかった見たいな表情を出した。

 

「すまない、名を言うのを忘れていた。私の名は……『鬼士神 炎雷(きしがみ えんらい)』極東のあるファミリアの剣士だ、と言っても既に私1人だが」

 

姿から分かる通り、やはり極東の人だった。そして、全滅したのか分からないが既にファミリアには自分1人だと言った。そこには、哀しみと後悔の念を含んでいた。

場が静まった後、直ぐにフィンが話を切り替えた。

 

「自己紹介をありがとう、僕達の紹介はさっきしたから良いね。それと僕の質問に答えて貰っていいかな?」

 

炎雷と名乗った男は静かに頷いた。質問に答える位の事はするらしい、と言うか既に自己紹介終わっていたのか……何時したんだ。

 

「単刀直入に言うよ。君はこのオラリオに何しに来たのかな?直感だけど、君は僕やガレスより強い。それこそLv.5を超えるだろう?オラリオの外でそんな高みに行けた君が何故今更、オラリオに来るのか気になってね。ダンジョンのモンスターとの戦いに来たのかい?それとも改宗(コンバージョン)をしに?まぁ後者だったら是非家に来て欲しいけどね」

 

今更だが確かにそうだ。オラリオの外でLvが高位に行ける存在が……いや待て、どうやってそこまでLvを上げれた?

神が降臨する以前から迷宮からモンスターが地上に出てくる事もあったそうだ。例は三大冒険者依頼(クエスト)として人類の目標になっていた、古代モンスター、既に倒された『陸の王者(ベヒーモス)』『海の覇者(リヴァイアサン)』そして、いずれこの手で倒すと決めた因縁の敵『空の皇帝(隻眼の竜)』がいる。

そして、他にもいる多くの動物型のそうしたモンスターは地上で繁殖して定着したりして、数千年間生存している。繁殖するものは魔石の力を消費するので、地上に出て生き残ったものの子孫は、迷宮のものとは比べ弱体化しダンジョンとは違う。

 

そんな奴らを倒した所で、得られる経験値もたかが知れている。実際オラリオの外ではLv.2なら強者、Lv.3なら英雄として扱われる程のオラリオとの差があるのだ。

ならどうやってLvを上げれたのだろうか。もし上げたとして、1人を残して全滅したファミリアの主神が改宗を許すだろうか?謎が深まるばかりであった。

 

「私が来た理由は改宗では無い。私の目的は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

炎雷は俺の方を見ている。……え?もしかして俺なのか……その継子っていう者は…………そう思っていると、今まで黙っていた主神であるロキが話始めた。

 

「今まで黙っとったけど一つ聞かせえ。お前の主神の名前はもし『火之迦具土神…………私のファミリアはヒノカグツチ・ファミリアだ』……やはりな、彼奴のとこの子かい。フィン……こっからはうちが話す」

 

閉じている様に見える目が開いた途端、ロキの雰囲気が変わった。これは酒の事で切れた時やファミリアに何かした敵に向ける時の顔……フィンとガレス、リヴェリアですら早々観ない闇派閥に向けた眼と同じ物だった。

 

「落ち着いてくれロキ。……分かった。だが一つ聞かせてくれ、神ヒノカグツチはどんな神物なんだい?」

 

「そうじゃロキ、神威が僅かに上がっとるぞ」

 

「落ち着けロキ、相手にも失礼だ」

 

古参の3人が、ロキを落ち着かせようと声を掛ける。それで少し神威が抑えられいつもの雰囲気に戻った。しかし目はそのまま相手を射抜く様に見ている。

 

「すまんすまん、火之迦具土神っちゅう神はな、言ってしまえば身体と精神が真逆なんや、そりゃ性格はええ奴やで、天界でも16の神の親やし、面倒見は意外とええ。だけど身体は言わば呪いや、本神も悔やんどる。常に身体は燃え続け、近づくもの全てを燃やす。それで親に殺されかけたらしいしな」

 

「なら何故彼らは死んでいない?」

 

リヴェリアが根本的な事を質問した。確かに近づくもの全てを燃やすならどうやって更新をするのだろう。

 

「下界に降りて神の力を封じたら、弱まったらしいで。だけど長時間は危ない……きっと下界に降りた神で、カグツチより更新を早く出来る奴はおらんで…………まぁ良い奴ではあるな。カグツチは1000年前に降りて以来、殆ど極東に引きこもってるらしくてこっからは、聞いた情報だけや」

 

ロキが何故か本を片手に持ちながら話し始めた。これからどんな話をされるのか、その場に居た、炎雷以外の者はロキの発言に集中していた。

 

「下界に降りてからカグツチは、ある人間とある生き物を見たらしい。それは、鬼と呼ばれている者とそれを倒す事を生業としている者達や……当然人は食われ、鬼は何処かへ行って消えた。そんな鬼を殺す者達の長を始め、実力者数名に神の恩恵を与えた。そして、ある1人の者と共に実力者数名に各々が合う技を作り上げたらしい……まぁこんなとこやな。結構前にヘルメスの奴が喋っとったから、多分合ってるはずや。まぁ後は……」

 

「あぁ後は任せてくれ。その作られた技の種類は、『水の呼吸』 『雷の呼吸』 『炎の呼吸』 『岩の呼吸』 『風の呼吸』 『日の呼吸』の6種類の呼吸だった。実力者達は長い歳月を使いその技を会得した。

 

水の様に変幻自在に変化する技

雷の様に速く強力な抜刀を行う技

炎の様に激しい烈火の如し技

岩の様に攻守共に弱点の無い技

風の様に荒々しく敵を切り裂く技

 

そして水、雷、炎、岩、風、全ての元になった呼吸『日の呼吸』、他の呼吸はこの劣化にすぎない。他の呼吸を会得した者は多く居たが、この呼吸を扱えたのは1人のみだった。その者が主神と共に技を編み出した者だ。その者は長と主神をトップとし、各々の呼吸の一番の実力者を水柱、雷柱、炎柱、岩柱、風柱と呼ぶ幹部にし自身も日柱とした。ファミリアでありながら、この組織の名を鬼殺隊と呼ぶ。

それらが、私が所属するファミリアの初期の頃だ。既に鬼狩りは500年程前に、ある日の呼吸の使い手によって終わりを迎えた。この『鬼殺伝記』はその時を描いた記録書の様な物だ」

 

なんというか…………かなり複雑です。つまり……え……何?

 

「すまない、無駄話が長かった。その500年前に鬼狩りを終わらせた人が、後世にもしまた鬼が現れた時の為にと、技を受け継がせ続ける事を遺したのだ。故にその時の全ての呼吸や技を含め今まで増えた物を託す継子を探して、ここまで私は来た。そして、君を見つけた。神ロキ、どうか彼を私の私達の継子にさせて欲しい」

 

炎雷がロキに対して頭を下げた。炎雷、ロキ以外が全員ロキを見る中、ロキは発言した。

 

「どうして、そこまで焦ってるんや。確かに今グレイは剣術を知りたがっとる、本人が良かったら別にええで。だけどあんたのその焦りだけが気になるんや」

 

炎雷は顔を上げると、懐から数冊の本を出した。

 

「……確かに私は焦っている。今から5年前、ファミリアが私以外全滅した際から世界を見て回った。良い人材を見つけても、誰も扱えれそうに無かった。私の時間は残り僅か、まだ動けるうちに継子を見つけ、私達の技の集大成を教えなければ死んで行った者達の、ファミリアの先代達の想いも失ってしまう。だからどうか少年に技を継いで欲しい」

 

また炎雷は頭を下げた。それもさっきより深く。

この人はきっと、何回も大切なものを失ったんだ。それでも一つでも多く残そうと頑張ったんだ、なら…………俺は周りを見た。誰も否定的な顔をする人はいなかった。

 

「俺で良ければ、どうか継子にして下さい。俺は強くなりたいんです、だからこちらこそお願いします」

 

「!……よろしく頼む。少年」

 

「こちらこそお願いします、先生。それとグレイって呼んでください」

 

俺は先生と固い握手をした。これからの修行を乗り越えて、強くなりたい為に。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ある空間に、その男は居た。

 

「やはり、元の物語より多く外れている。彼という転生者(イレギュラー)が居る為か、様々な物が寄っていき合成されている。それにより、彼の為に用意した試練や敵も変質してしまった。まぁその分、彼の努力や才能が見れる。…………ふふっ面白くなってきた。だが、この世界の基準でなくても強過ぎるな…………仕方ない。その変質を利用させて貰おうか」

 

男の前には、グレイに才能を与えた時に使ったパネルが出てきた。

 

そこには

 

魔法喰らい(マジック・イーター)

 

能力喰らい(スキル・イーター)

 

と書かれていた。

 

「俺にも、測定不能な君の才能の物語を見せてくれよ?■■■ ■■いやグレイ・ズィーニス君?」

 




読んで頂きありがとうございます。

オクレテスイマセン<(_ _)>

お気に入りや、評価を解除せず待っていてくれて、ありがとうございます。
なんか主人公このまま、良さげに行けー!とは行かせない。何故かって?渇望して貰わなくちゃタイトル詐欺っすから…………ぐへへへっうっ?!(自分で作品のハードル上げる馬鹿者)

感想、評価、お気に入り、
よろしくお願いします!
愚痴は感想欄(他の方の迷惑にならないように)でも、TwitterのDMでもどうぞ

それでは、令和もよろしくお願いします。
そして、次回もお願いします。


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子供への最悪のプレゼント

評価してくださった方々、ありがとうございます!!そして、お気に入りして下さった皆様ありがとうございます!!!感謝してもしきれないです!!

(注)今回、区切りが多くなっています。



先生の弟子(継子)になって既に、2ヶ月が経過していた。最初はとても期待していた。絶対物にしてみせる、強くなってLvを上げると思っていた。約束の2年まで後4ヵ月しか無いから必死にやった。

 

然し未だに、剣術や呼吸を教わってすら無い。

 

「あぁぁぁぁあぁああぁぁあぁああああぁああぁぁぁ!!!!!!」

 

「後、50周追加。頑張れ」

 

現在グレイは、早朝から昼の今までぶっ通しで、オラリオの城壁の上を走っている。

炎雷は、かなりきつい修行をグレイにさせていた。様子見に来たフィン達が、顔を引き攣らせる程の鬼っぷりを見せる程だ。

 

基礎体力の大幅な向上、それと並行して柔軟と筋力強化もさせられていた。グレイは今では開脚は180度よりやや開き、開脚したまま溶ける様に、身体が地面に触れる程になっていた。前までは断末魔の様な叫びをしていたのに、今では地面に触れたまま寝落ち(気絶)する程になっていた。(寝落ち(気絶)がバレると、強制的に起こされる)

筋力強化は、とにかく全身の小さい物から大きい物まで、様々な筋肉をバランス良く強化した。その結果、グレイの全身は細くしなやかに鍛えられていた。

1ヶ月経った後には更に、他の修行が増えた。

 

ここで少し、内容を紹介しよう。

 

最初の1ヶ月が経つまで、1日に城壁の上を100周(段々増えた)走り込みをする、地獄(ほぼ力技)の柔軟、筋力(大量の重り付き)の強化、これらをひたすら行った。

1ヶ月が経った頃それらを速く出来る様になってきたら、刀を持って(ランダムに何かしらの攻撃が飛んでくる)の走り込み、炎雷の攻撃をひたすら避ける(転んだら即起き上がる)、1000回(毎回1000回増やされる)の素振り、打ち込み台が壊れるまで打ち込み。

 

結果、それを今までの2ヶ月行った影響か、グレイの体はかなりの体力向上、身体の可動域の範囲の向上、ぶれる事の無い体幹を確認出来た。今なら2ヶ月前よりも広く、激しく動けると思う程に身体が仕上がっていた。

 

「2ヶ月の走り込みでついた体力と、柔軟による可動域の向上、筋力強化による身体の強化、そして1ヶ月行った物で得た、反応速度や打ち込みはこれからの為の下地だ、刀を取れグレイ。今日よりお前に鬼殺の『呼吸』と『技』を教える」

 

「…………お願い……します」

 

修行を始め2ヶ月、遂にグレイは呼吸を教えられる。だがしかしそれは、柔軟と走り込み、その他様々な事が優しいと思える程に、苛烈さをきわめたのだった。

 

───────

──────

─────

────

───

──

 

─3ヶ月後─

 

〜昼頃〜

 

ロキ・ファミリア本拠地、黄昏の館から出てくる少女が居た。

その小さい両腕で、抱える様に持った袋に入った(ポーション)やパン等の軽食を持ち、白いワンピースを着て金の髪を風に靡かせながら城壁に向かう少女が居た。

 

彼女の名は『アイズ・ヴァレンシュタイン』

グレイの義理の妹にして、両親を自分から奪ったモンスターに、憎悪の炎を燃やす少女である。

彼女は意識を取り戻して以来、昔と違い表情に変化無くまるで人形の様な鉄仮面になってしまった。そのせいか、ファミリアの団員にとって近寄り難い存在になっている。そして、リヴェリアからの座学も殆ど逃げ出す始末だ。何回もロキに神の恩恵(ファルナ)を刻む様に直談判しているが、全て

 

「それは出来ひん、グレイとの約束やからな。ほれアイズたん、リヴェリアのとこ行こな〜」

 

と全て断られ、リヴェリアの所に連れてかれる。そんなアイズが何故城壁に薬や軽食を持って向かうかと言うと

 

『ロキに頼む→恩恵が貰えない→兄さんが止めさせている→兄さんに言う→意味が無い→兄さんに優しくする→許される→意味の無い座学から解放→モンスターを殺せる→ダンジョンで強くなれる』

 

この様な図式が齢6歳のアイズの頭の中に出来上がっていた。そしてここ一週間、アイズは座学を毎日抜けグレイの所に向かっているのだ。

 

長い階段を駆け上がり、城壁の上に出れば直ぐに兄は修行をしている。ここ最近は、呼吸や技を先生に向かって打ち込む事をしているらしい。

やっと階段を登り終わり、グレイに声をかけようとしたアイズの声は、その声をかき消す衝撃音で途切れた。

 

「……兄さん。ご『バンッ!!!』飯……」

 

「グレイ、まだ速さが足りない。言っただろう、雷の呼吸は全ての力を下半身に溜め、爆発させ空気を裂く様にすると…………私の友の(なり)柱は音すら超えたぞ」

 

音の正体は、炎雷によって吹っ飛ばされたグレイだった。グレイは直ぐに立ち上がり、腰の鞘に刀を仕舞い柄を握らず手を添えた。

 

「……はぁぁ……はぁぁ……分かってる!」

 

───シィィィィィイイ

 

──全集中・雷の呼吸ああ壱ノ型

 

霹靂(へきれき)一閃・(いっせん・)六連(ろくれん)!!!!!!

 

ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!

 

雷が落ちた様な音が六回鳴った。

居合いの体制から放たれる技、雷の呼吸の壱の型である霹靂一閃は真っ直ぐに行われる1回の居合いである。そして雷の呼吸と言われる訳は、この壱の型を発動した時、雷が落ちた様な音がする事に由来する。

それが六回……六連……つまりグレイはそれを連続で6回行ったのだ。それにより、6回の方向転換を可能にし、最初の前方を含め炎雷の左右前後、そして上から攻撃をしたのだった。

だが六連全てを、グレイは炎雷に受け止められてしまった。

 

「…………くぅ!これでも駄目か」

 

「良い動きだった。雷の呼吸はあと少しだな」

 

グレイと炎雷は、互いに向き合い刀を収め休憩に入った。その時、グレイはアイズの目線に気がついた。

 

「……居たのかアイズ。また座学を抜け出したのか?」

 

「兄さん……これ」

 

グレイはアイズから袋を受け取り、アイズと共に壁際に座った。

 

「兄さん……『ポン』……ん」

 

グレイはアイズの頭を撫でながら、アイズに優しく言い聞かせた。

 

「…………アイズ……すまないが何度言われても駄目だ。それにあと1ヶ月程だ。我慢してリヴェリアの勉強を受けろ。ダンジョンに潜る為にも知識は要る」

 

「…………私は、早くダンジョンに、行きたい」

 

アイズはグレイより背が低い。座ってもグレイより低い為、話す時グレイを見上げる様になる、アイズ自身狙ってないだろうが、アイズは鉄仮面になってもそこらの女神より美しい、そんなアイズが上目遣いの様にグレイを見ている、グレイにとってそれはかなり困る事であった。

 

「……アイズ(………………可愛いすぎる。……こうやって間近で見るとアイズはアリアさんに本当に似ている)あと少しだけ待ってくれ……頼む」

 

グレイの言葉が、アイズにとっての心の闇に触れてしまった。

 

アイズの心には黄昏の館で目覚めてから、いや村での惨劇から常に弱く泣いていて蹲っている自分と、モンスターに対しての復讐の黒い劫火が巣くっていた。アイズはこの弱い自分に近ずかない様に、そして追いつかれない様に、大切な存在を奪ったモンスターを、一匹でも多く殺す事で強くなりたいと思っているのだ。

 

そんなアイズにとって神の恩恵は、一番今欲しい物であった。手に届く所にありながら、自分にとって兄の様な存在であり一番気の許せる人が、自分の邪魔をする。それは度し難い物であり、待ってくれと何回も言われ、アイズの感情は溢れてしまった。

 

「っ!………兄さんばっかずるい……私は、早く強くなりたい!……それなのに、まてまてまてって、ずっとそればっかり!なのに兄さんは、どんどん強くなって!兄さんなんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大嫌い!

 

アイズは、隣に座っていたグレイを突き飛ばし、そのまま走って行ってしまった。その事にグレイは唖然とし固まってしまった。

 

「…………アイズ」

 

「グレイ、あの少女の闇は深いぞ」

 

グレイは炎雷に鞘で小突かれるまで、アイズが降りていった階段を見続けたのだった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

グレイを突き飛ばしたアイズは、ただただ道をがむしゃらに走った。そして分からない道を走り続け、気づけば周りに誰も居ない、何処か分からない場所に居た。

 

「……ここ、どこ?(……どこだろう、ここ?道が分からない。……私は悪くない。これも兄さんが悪いんだ。私に恩恵を刻むのを許してくれないから)……戻れば、良いかな?」

 

アイズは、自分の居た所から後ろに行こうとした。しかし、()()()()()()にぶつかってしまい、尻もちをついてしまった。アイズがぶつかってた壁を確認しようと顔を上げると、そこには壁ではなく軽装を身にまとった男が立っていた。

 

「大丈夫か?嬢ちゃん?こんな所で1人だと危ねぇぞ」

 

「……すいません……うっ!?」

 

アイズは直ぐに去ろうと、男の横を通ろうとしたが腕を掴まれてしまった。

 

「おいおい、それは無いぜ嬢ちゃん?俺はお前に用があるんだよ」

 

「や、やめ……て………に……さ……」

 

アイズはそのまま、両腕を後ろで拘束され、目隠しを着けられ口元に何か当てられた途端、眠くなってしまった。最後に見たのは、黄金の装飾を身に着けた不思議な男だった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「……アイズが帰ってこない?」

 

夜、今日の修行を終え黄昏の館に帰ったグレイに、リヴェリアから伝えられたのは、衝撃の出来事だった。

 

「あぁ、勉強を抜け出したまま帰ってきていない。部屋にも館の何処にも居ないのだ」

 

あのまま、走って何処かへ行ったのか?既にあれから、4時間近く経っている。今のオラリオでは夜は危ない。それとも……嫌な予感がする。もし闇派閥絡みだった場合、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「分かった。俺は外を見て来る。先生とリヴェリアは此処に居てくれ」

 

「外は任せた。既にフィンとガレスにも伝わっている筈だ……迷子だけだったら良いのだが、如何せん嫌な予感がする」

 

「あぁ気をつけろグレイ……ん?この匂いは何だ?」

 

そうして俺が外に出た時、激しい爆発音がオラリオの空に響いた。

 

 

 

バァァアン!!!!!!

 

 

 

見れば、オラリオのあちこちから煙が昇り、様々な喧騒が聴こえる。周りの住人もぞろぞろと家から飛び出してきた。そして、ホームからロキ、フィン、ガレス、リヴェリア、先生やホームに他の居た団員も出てきた。

 

「何や、何や!何が起こったんや!」

 

「何じゃ!?今のは」

 

「分からない。だけど今はアイズを探さないと行けない。僕は直ぐにギルドに向かう、リヴェリア、ガレス、グレイはアイズを探してくれ!ロキと炎雷は共に、他の団員を連れ近場の住人の避難を頼む」

 

「分かった。私は大通りを見る」

 

「儂とグレイで、近場の路地裏を探そう」

 

「分かった。ガレス、先に行くぞ(アイズ……無事でいろ)」

 

「ん?……まてグレイ、アイズを探す手間なら必要無いようだ」

 

それはどうしてか……その場に居るフィン、ガレス、リヴェリア、ロキ、グレイが炎雷に目を向けると、炎雷は屋根の上を見ていた。その視線を辿り屋根を見ると、風に吹かれ激しく靡く金髪が見えた。数人の男が居て、1人は縄を持ち、アイズが繋がれていた。目隠しや布を口に噛ませられて身動きを封じられていた。

それを見た、グレイは即戦闘体制に移った。

 

「っ!!アイズを返せ!!」

 

全集中・雷の呼吸ああ壱ノ型

 

霹靂(へきれき)一閃(いっせん)

 

グレイは即、地を蹴りその勢いで壁を蹴り敵に近ずき、最速の一太刀を出した。しかし敵は既に隣の屋根に移動していて空振りになってしまった。

 

「おいおい、急に斬りかかるなんて、子供の躾がなっちゃいねぇなぁロキよぉ〜」

 

敵の中から、1人確実に雰囲気の異なる存在が出てきた。そいつは、過去1度だけ見たが、たった1回視界に入れるだけで姿を覚える程の存在。

赤銅色の肌で黄金律を思わせる程の肉体を持ち、手首や足首に黄金や水晶の光る腕輪や足輪をし、同じ材質だろうネックレスを身に纏う神

 

「……お前は、神セト」

 

あの異様な雰囲気を神会で放っていた神物である、セトだった。

 

「覚えてもらえて光栄だぜ?グレイ・ズィーニス、レオの息子よぉ〜」

 

「……何故アイズを攫った」

 

セトは、アイズの頭を掴みながら話始めた。

 

「何故攫ったか?それはなぁ〜グレイ!お前だよ!ロキ・ファミリアに置いて、今お前は期待の新人何だろう?それにお前をこうやって、()()()()()()()()()()()()()()此奴は良い餌だからな!」

 

「巫山戯るなセト……アイズは関係無い、直ぐに手を離せ。斬り落とすぞ?」

 

セトは俺に用があるのに、わざわざ無関係なアイズを攫った。許せない。……俺の大切な存在に気安く手を出しやがって…………その汚ない手とその首、今此処で斬り落としてやる。

 

グレイは直ぐに、霹靂一閃を放てる様に構えた。

 

「おぉ怖い、良いぜ。おい離してやれ。()()()()()()()()()()()()()()。…………()()()()

 

セトの後ろの奴は、アイズを手放した。アイズはそのまま、倒れる様に下に落ちて行ってしまった。

 

「アイズ!くそっ!『ブチャァアア!!!』ごふっ?!!?……な、な……に」

 

俺はアイズを助けようと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。俺は、自身の腹を確認する。そこには、何も無かった。体制が崩れた俺は、屋根から滑るように落ちた。

幸いアイズはフィンが、俺は先生に受け止められ地面に激突するのは避けられた。しかし、俺の腹には穴が開き、あまりの事に感覚が麻痺して痛みが無い。それに内蔵も無くなっている。とめどなく血が溢れ、何も無い腹に水が溜まるように血が溜まっていく。周りの人が集まってきているのが微かに分かり、意識が朦朧としてきた。

 

「お……グレイしっ……しろ!誰……良い!エ……サ……!!」

 

「気をし……り持……!グ……!」

 

地面に置かれ視線が上を向き、屋根の上に見えるのは、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「プレ……だ…?ひ……はは…………!じ……ぁ……レイ」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

セト・ファミリア率いる闇派閥の暴動から三週間が経った。

俺は一週間程前に目が覚めた。どうやら、リヴェリアの回復魔法やエリクサーを大量に使い何とか一命を取り留めたらしい。直ぐに、セトの所に向かおうとして、ここ一週間は安静にしてろと、リヴェリアに釘を刺されてベッドに拘束されてしまい、結局リハビリしかしていない。

 

あれからオラリオでは、様々な闇派閥が本格的に活動を開始し、ガネーシャ・ファミリアやアストレア・ファミリアといった治安維持ファミリアが、オラリオのあちこちで活動し、ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアも協力しているが一向に収拾がつかない。

それは、オラリオの北と南東、南西に居る三体のモンスターが居るからだ。あの時、俺の中から飛び出してきた物は、モンスターの幼体だった。

 

北で活動を確認されている狼型のモンスター『フェンリル』

 

南東で活動を確認されている人型のモンスター『ヘル』

 

南西で活動を確認されている蛇型のモンスター『ミドガルズオルム』

 

ロキへの当てつけか、嫌がらせか、セトは去る際にこの三体の名前を言って行ったらしい。そしてこの三体によって鎮圧が上手くいっていないのが現状だ。

 

第一級冒険者が居て討伐出来ないのは、それぞれの固有の能力による物だった。

 

『フェンリル』はその強靭な牙と爪で、鎧を裂き冒険者を喰らう。さらに自身の喰らった魔法を冒険者のステータス事喰らう。喰われた冒険者は、その魔法がステータスを更新しても蘇らない事から、ついた異名が

魔法喰らい(マジック・イーター)』。

 

『ヘル』は霧を操り、霧に入った存在を消す。現在霧に入った人との連絡は無し。そして、度々霧の外に出てきた際は、強くなって出てくる為、消した冒険者から経験値を取って吸収していると思われる。ついた異名が

経験値喰らい(エクセリア・イーター)』。

 

『ミドガルズオルム』は強力な毒を吐き、自身に向けられたスキルを冒険者のステータス事喰らう。喰われた冒険者は、そのスキルがステータスを更新しても蘇らない事から、ついた異名が

能力喰らい(スキル・イーター)』。

 

どのモンスターも異常と分かる能力があった。そして、俺が最も憤り悔しいのが()()()()()()()()()()()()()()()()()()。三体が街に放たれた後、ギルドに届けられた手紙には様々な事が書いてあった。

 

それは、他にも冒険者の中にモンスターを入れている事。『ヘル』『ミドガルズオルム』『フェンリル』の三体は俺の経験値を喰らって成長した事。そして、冒険者の中には洗脳されている者が居る事。幸いな事に、ギルドは手紙を読まずに渡してくれた様で、俺の経験値を食って成長した事はギルドは知らない。

 

他の2つは流石に伝えたらしいが……現在、医療系のファミリアが大急ぎで冒険者の身体検査を行っているらしい。

 

「たった3週間でここまで、変わるのか……」

 

「物が変わるなど一瞬だ。一つ波が来れば、それに呑まれ元の形は消え去る。……体調は良いようだなグレイ」

 

「先生…………俺は、責任を取らないといけない。この手でセトを殺して、決着をつける。………その為に、どうか教えてくれませんか。先生が唯一……まだ教えていない事を」

 

先生との修行では、俺は様々な呼吸、様々な技を教えて貰った。しかし、一つだけ……全て教えられたからこそ分かる謎があった。

 

「…………教える気は無かった。だがこの現状、致し方ない。グレイ……今から言うことは、お前が次に技を託す時以外は他言無用だ。それは…………」

 

そこから俺は、ただ黙って先生の話を聴いた。

 

 

 

「………………これが、全てだ。この短時間で、これらの莫大な呼吸や剣術を覚えたのは、歴代の記録を見てもお前ただ1人だろう。私は良い継子を持てた……ありがとう。そして、これは私の最後の頼みだ。私にはもう残された時間が少ない……」

 

相槌を入れる事すらせず、ただ黙って先生の一言一句をしっかり覚える様にした。その一つ一つが先生が俺に伝える最後の教えなのだと理解していたから。

先生は話終えると、先生の持っていた鬼殺関連の数多くある全ての書や、大量にある様々な物を渡してくれた。今までは、別に仕舞っていたらしい。

 

「先生……僅かながら今まで、ありがとうございます。……行ってきます、貴方に教わったこの技で、自分に託されたものを守る為、そして自分自身が強くなる為…………この手でセトの首を獲る」

 

俺は一度先生に頭を下げた後ベッド横に置いてあった、いつの間にか新調されていた黒の戦闘装束の上に、今先生から渡された物の一つ、背中に『滅』と入った黒のロングコートを着て部屋を飛び出した。

 

「皆、御館様、カグツチ様、私達の弟子は我々の意志を正しくついでくれるだろうか。グレイの中には深い闇が渦巻いている。僅かしか、見てない私には変えられん。見てくれてるか『富岡』『不死川』『我妻』『嘴平』『宇髄』『悲鳴嶼』『煉獄』そして先代達よ、どうかあの子が鬼とならぬ様……今後も見守ってくれ」

 

炎雷は部屋の窓から、阿鼻叫喚のオラリオの上に広がる、空を見上げるのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

部屋を出たグレイは、ひとまずアイズの部屋に行った。しかし鍵が掛かっており開ける事が出来ない為、扉の前で扉の向こう側に居るであろうアイズに呼びかけた。

 

「……アイズ、守ってやれずにすまない。あと数日で約束の2年が経つ。…………この事に収束がついたら、ロキに神の恩恵を刻んでもらえ…………行ってくる」

 

「………………うん」

 

たった一言、グレイはそれに、あぁと返事をし黄昏の館の中を、駆け抜け館を飛び出した。

現在、様々なファミリアの人が中央の摩天楼バベルに集結し、会議を行っているとホーム内に居た団員が言っていた。北のメインストリートを通り、バベルに向かう。暗黒期と言われる時であったとしても、メインストリートは笑顔があった。だが今はここまで血と煙の匂いがする。

己の知らなかった事とはいえ、自分の関与した事の巨大さが胸を締め付ける。そして自分が何も出来なかったのが一番イラつく。

 

「!……あれは」

 

前方の民家の住宅に入ろうとしている、闇派閥であろう者が数名居るのが見えた。こんなにも簡単に、闇派閥の連中を見つけれる。闇派閥の数に、治安維持部隊が追いついていない証拠だ。

 

「ガネーシャとアストレアのファミリアは、今ここいらに居ねぇ!今のうちに金を稼ぐぞ!」

 

「うぃーす」

 

「そういや、ここら辺じゃないですか?」

 

「あぁ……確か、ロキ・ファミリアのホームか?」

 

闇派閥の連絡は、直ぐにでも扉を壊し住宅に入る直前だった。

 

「そ〜だな〜……今は第一級冒険者は何奴も居ねぇからなぁ〜……良し!次に行くか!アハハ!!」

 

ロキ・ファミリアのホームに手を出すと言った男まで目視10M、向こうは話や侵入に夢中で此方に気づく事すら無い。ホームに手を出すという事は、父さん達が託してくれたアイズにも危害が及ぶという事。

 

「……させるかクズ」

 

俺の大切な存在に…………手を出す奴は許さない。それが例え神でもだ。

男達の姿が、アイズの頭を掴んでいる憎きセトと重なる。

 

全集中・雷の呼吸ああ肆ノ型

 

遠雷(えんらい)

 

俺を起点に、男達に黒い雷が襲った。

この型は雷の呼吸の技の中で、唯一の遠距離攻撃を可能とする技である。通常、雷の呼吸では黒い雷は出ない。然し、過去の使い手の中に、鬼に堕ち鬼の力と技を合わせた男がいたそうだ。後の鳴柱が、その力を再現させたのがこの黒い雷である。そして、鬼に堕ちた者の力も再現されている。

 

「痛え!!あ、あぁぁあ!!割れる?!体が割れて!!……」

 

「嫌だ……嫌だ!!嫌だ!!!嫌だ!!!た、助けてぇ!」

 

「な、何だよごれ!?だ、だずげ……」

 

「わ、割れてく!俺の体が割れてく!!!」

 

遠雷をくらった男達は、当たった所から身体が割れる様に亀裂が入っていき、最終的に完全に割れ絶命した。これが黒い雷の能力である。当たった所から身体が割れていくのだ。

 

グレイは、その死体達を横目に見てそのまま走り去って行った。初めて人を殺したというのに、顔色一つグレイは変えなかった。それだけ、グレイはキレているのか。否……あの時、村が壊滅した時にアイズが変わった様に、グレイの中にも変化が生じていた。それは人としては狂気に近い物だろう。もしかしたら、グレイの中で育ったモンスターにもその狂気が移ってしまっていたのかもしれない。

 

グレイの瞳に映るのは、自分の大切な存在に手を出し、この街に災いを与えた存在への圧倒的な殺意。そして、簡単に大切な存在に手を出され、それを防げなかった無能な自分への絶望だった。

 




口調が分かんねぇ〜……特にアイズの口調が。
ソード・オラトリアの原作持ってて良かったと思いました。小さいアイズって意外と喋るよね……あれはびっくりしたわ〜

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それでは、次回もよろしくお願いします!


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贖罪、隻眼の領域

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そろそろ夏ですね…………俺は熱さで直ぐに体調崩すので苦手な反面、外で運動出来るから好きです。……矛盾…………悲しみ



オラリオの中央に聳え立つ摩天楼

 

 

『バベル』

 

 

ダンジョンの入口が地下に存在し、そのダンジョンの蓋の役割もこなす50階建ての施設である。

最初は他の建築物と変わらぬ高さだったが、1000年前下界に降りてきた最初の神々によって破壊され、そのお詫びとして再建された結果、巨大な塔になった。

迷宮の監視と管理を行うギルド保有の施設であり、20階までは公共施設や換金所、各ファミリアの商業施設が軒を構えている。さらにその上からはオラリオでも有数のファミリアの神々が住み着いている『神様たちの領域(プライベートルーム)』となっている。そして30階は丸々そのフロア全てを使って神会を行う会場となっている。

 

そのバベル1階は現在、負傷した冒険者やその治療に当たる医療系ファミリアの人達によって溢れていた。

 

「あぁ……うっ!痛え……誰か治療してくれ!」

 

「早く化膿止めと包帯を持ってきて!!」

 

「腕が!ゔぅくそ!くそ!」

 

「急患5名来ます!!あぁ!もう!多すぎる!」

 

「あぁ……死に、たく無い…………」

 

「ママ!パパ!誰か助けて!!」

 

「大丈夫!助かるからね!誰か!サポートに来て!!」

 

「まだ死者が出てないのが奇跡だけど、それがいつまで持つか……」

 

様々な匂い、薬品のツーンと鼻にくる匂いから血や腐敗臭が鼻を刺し、あちこちから聴こえる、呻き声や叫び医者達の様々な専門用語が飛び交い、バベル1階は埋め尽くされていた。

そして2階ではこの惨事を止めるべく、集まった主力たる人達とその主神達が話し合っていた。

 

最大派閥のロキ、フレイヤ・ファミリアより

 

「あかんで……そろそろ、対策せな均衡が崩れる」

 

「分かっている。でもロキ、相手が悪すぎる」

 

「えぇ……『勇者(ブレイバー)』の言う通り、相手は完璧に対冒険者用の能力があるわ。オッタルから逃げれる程の相手よ」

 

「フレイヤ様申し訳ございません。次こそは必ず仕留めて見せます」

 

「オッタル、今は待ちなさい。貴方には、戦闘で得た情報から対策を考えて欲しいわ」

 

主神ロキ、団長『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナ。

主神フレイヤ、団長『猛者(おうじゃ)』オッタル。

 

オラリオの治安維持ファミリアである、ガネーシャ、アストレア・ファミリアより

 

「うむ……子供達の救護も、追いつかなくなってきている。オラリオ全域となると、時間がかかり何より今は危険が伴う」

 

「……分かった、直ぐに戻れ。ガネーシャ、団員が数名負傷したらしい。幸い軽傷で済んだ様だ。更に闇派閥の数名の死体を、北のメインストリートにて団員が発見した。見た事の無い傷跡だったらしい」

 

「……治安維持の為、そしてこの街の人々の為、多くの闇派閥を捕らえましたが、まさかここまで未だ潜んで居たとは…………アリーゼ現状は?」

 

「アストレア様、だいぶやばいです。三方向に行った救援も闇派閥に道を遮られてる。闇派閥を抑えるのに前線に出た部隊の、神ロキの所の『重傑(エルガルム)』の率いる部隊は相手の抵抗が強く拮抗状態、まだ死者は出てないけど、救護に回った『九魔姫(ナインヘル)』率いるエルフ達の回復魔法も限界が近いと思う」

 

主神ガネーシャ、団長『像神の杖(アンクーシャ)』シャクティ・ヴァルマ。

主神アストレア、団長『紅の正花(スカーレット・ハーネル)』アリーゼ・ローベル。

 

この8名からなる()物達が、現在バベル2階にある一室の仮の会議室にて、各ファミリアの構成員が現状の情報や資料を持って、めぐるましくやって来る。その情報を元に8名は話し合いをしている。

 

フィンは全体の部隊の流れから、全部隊の指揮。

 

オッタルは主神の命で情報から相手の対策。

 

シャクティはガネーシャ・ファミリアのその構成員の多さを使い、オラリオ全域の住民の救出、闇派閥の対処、『フェンリル』『ヘル』『ミドガルズオルム』の監視などの命令。

 

アリーゼは、部隊の編成から部隊の現在位置、状況の整理。負傷者の状況から治療の状況。

 

各ファミリアの団長達からの進言を、主神達が纏め、各々の構成員へ伝達し命令する。現在、ファミリアが違うどうこうは言ってられないが、その主神からしか命令を受けない者もいる為、命令は主神が行っていた。

 

「…………ふん。フィン」

 

「ん?どうしたんだい、オッタル」

 

資料を見ていたオッタルが、不意に隣で部隊の情報を見ていたフィンに声をかけた。

 

「早急に『ヘル』を倒すべきだ。居なくなった者の中には、治癒の魔法の使える者や第二級冒険者がいる。そいつらを回収し全体の安定を取るべきだ」

 

「あぁ、分かっている。然し、救出に行った所で今までの二の舞になるだけだ。だから、『ヘル』は監視のみにし他の2体の対策を急いだ方が良い」

 

──バタン

 

急に会議室の扉が開かれ、全員が入ってきた者を見る。その入ってきた者は、フィンに向かい言ってのけた。

 

「ならその討伐、()()()()()()()()

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

─オラリオ南東─

 

そこは現在霧が立ち込めていた。かなり濃い濃霧である為、1M先も見えない程に視界が悪すぎる。そこに、少数からなる1部隊が入ろうとしていた。

 

「分かっていると思いますが、この作戦の成功は貴方の索敵能力に掛かっています。頼みますズィーニスさん」

 

「……分かってる。先行くぞ疾風(しっぷう)

 

「な!待ちなさい!独断専行はいけない!」

 

部隊は霧の中に入っていった。この先に多くの冒険者、そして『ヘル』がいる。全員が気を引き締めた。

 

部隊構成員

 

隊長──アストレア・ファミリア、『疾風(しっぷう)』リュー・リオン

 

隊員──ロキ・ファミリア、グレイ・ズィーニス

あかさたガネーシャ・ファミリア、上級冒険者3人

 

計──上級冒険者4名、下級冒険者1名

 

部隊というよりもパーティの様な人数である。そして、隊員にグレイが居た。会議室に入りフィンに直談判したのは、グレイだった。

 

────

───

──

 

「…………どうして此処に居る、グレイ」

 

「それより、『ヘル』は俺が殺る。人員を少し向かわせてくれ、流石に居なくなった奴ら全員は運べない」

 

「くっ!グレイ!いい加減にせい!お前は黙ってホームで寝とれ!腹に穴が空いたも当然だったんやぞ!うち達がどれだけ心配したと思っとるんや!!」

 

グレイの発言にロキは、主神として親として何より家族として心配し怒鳴った。親が子を心配し叱るのは、人も神も変わらない。然し、常に子は親の心情を知らぬものである。

 

「……ロキ、何で怒る。俺は責任を取るべきだろ。この惨劇は俺が原因だ、俺がケリを付ける」

 

グレイは直ぐに会議室を出て行ってしまった。ロキの顔はそれはそれは、怒りと哀しみが混ざった様な顔をしている。表すなら超不機嫌といった所だ。

 

「ロキ……焦りすぎだ。僕が話す暇すらなかったじゃないか」

 

「うっ……すまんフィン、確かに少し熱くなってしまったわ」

 

「ロキ?少しいいかしら、彼の発言……聞き捨てならない所があったのだけれど……()()()()()()()()()()()?」

 

「…………仕方ない。ロキ、僕から説明してもいいかい?これ以上の蟠りは避けたいからね」

 

「頼むわ、ちっと頭冷やしてくる。後頼むでフィン」

 

ロキは会議室から出ていき、会議室ではフィンによる説明がされ始めた。

 

────

───

──

 

そして急遽作られたのが、ちょうど休息に戻っていたアストレア・ファミリア所属のLv.2の中でもLv.3に近い『疾風(しっぷう)』リュー・リオンと、手の空いていたガネーシャ・ファミリアの上級冒険者3名によって作られた急造の斥候部隊だった。

編成され南東に向かう際、グレイは名前だけの自己紹介と自身の索敵能力による捜索を話していた。よってリオンは事前に主神が『勇者(ブレイバー)』から聞いたと言う作戦とその索敵能力を信じ、行動していた。ガネーシャ・ファミリアの3人も同様だった。

そして、リオンは主神からもう一つ命令が下っていた。

 

『リュー頼みがあります、あのグレイという少年の情報をできるだけ多く持って帰ってください。頼みますよ?無事を祈っています』

 

「(この少年の情報ですか……)ズィーニスさん、何か反応はありましたか?」

 

リューは前方を歩くグレイに話しかけた。グレイは先程から黙ったまま、左手は常に刀の鞘を掴んでいる。

 

「……反応はまだ無い。だけど何か変だ」

 

この時、グレイはスキル『神后の寵愛』にある気配察知能力超補正により強化された自分の索敵能力によって、自身の周辺を広く探っていた。それにより、上級冒険者であるリューですら気づかなかった事に、気づき始めていた。

 

「何が変なんですか?詳しく教えてください」

 

「…………霧に入ってから、俺はずっと周りの気配を探っていた。奇襲に備える為に、だけど入ってから少し経った後から、俺達は同じ場所を回っている。いや()()()()()()()()()()()()()()()、ずっとその場で歩いている様に錯覚している。周りの小動物の気配が動いているのに対し、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な?!それが本当なら何故直ぐに言わない!」

 

「……確証が無かった。それだけだ……っ!おい!避けろ!」

 

グレイが後方にいる3人に対し叫んだ。

 

「ん?うぁぁあ!た、助け……」

 

「ひゃっ……」

 

「おい!くそっ待……」

 

3人が一瞬にして、霧の中に消えて行った。気配や音から推測して()()()()()()()()()()()、奥に連れて行かれた様だった。

 

「皆さん!大丈「おい叫ぶな」……ズィーニスさん、貴方は少々情というものが欠けている。私は隊長として、アストレア様の団員として彼らを助けなくてはいけない」

 

「…………なら走るぞ。唐突に隣に出てきたら対処の仕様がない、それにこの場から離れる必要がある。幸い対処の方法は分かった、疾風は()()()()()()()()()()()()

 

「はい?……分かりました」

 

2人は直ぐにその場から走り始めた。Lv.1のグレイの走りにLv.2のリューは余裕で並走し、速さを合わせつつ周囲に注意していた。

 

「(Lv.1でありながら、走りや身のこなしに、全く無駄の無いどころか精錬されている。彼は本当にLv.1なのだろうか?)ズィーニスさん、私達は動いていますか?」

 

「……動いている。疾風は俺について来ればいい、それでまず大丈夫な筈だ」

 

霧に入り30分更に走り初め20分、既に計50分が経過していた。走り続けた間、腕による攻撃が多数あった。その動きによりグレイとリューはある仮説を立てていた。

 

『殺す気は無く此方の無力化、拘束が目的の為どうしても掴みの攻撃になる』

 

『必ず左右どちら側から腕が現れる。現れる直前、空気の流れを感じる』

 

この仮説を立て頭に置き走り続けていた。

その結果、Lv.2であるリューはそのLv.3に近いポテンシャルを大いに使い避け、Lv.1であるグレイは第一級冒険者達による訓練の成果を発揮、空気の流れを感知し攻撃を避けていた。

そして走り進め、角を曲がる為壁から角を覗いている際突然、リューが何かを確信した様に口を開いた。

 

「……やはり此処は」

 

「此処がどうした?」

 

リューは顔を顰め呟いた。

 

「此処は『ダイダロス通り(第二の迷宮)』、オラリオの東と南東のメインストリートに挟まれる位置にある、主に貧民層の広域住宅街です」

 

「……此処があの奇人ダイダロスの街か、つまり霧に入った奴は必然的にこの場所に誘い込まれる訳か」

 

──ダイダロス通り

 

今は昔、奇人の異名を持つ設計者であるダイダロスによる度重なる区画整理のせいで、一度迷いこめば二度と出て来れないといわれるほど非常に複雑になった設計により、オラリオに住む者からはもう一つの迷宮と称される程の街、その性質状様々な人種が潜み住んでいる。

 

「下手に動いて迷ってしまっては、救出どころか私達が出られない」

 

「…………迷ったとしても屋根から出ればいい、最悪なのは『フフフフ』っ!……聴こえるか」

 

「えぇ、この曲がった先から確かに聴こえる」

 

2人は一度ハンドサインで指示を出し合い、リューは屋根からグレイはそのまま角から声の主を見た。

 

『フフフフ』

 

『キヒヒヒヒ』

 

そこには、3M程の人型の存在が2人佇んでいた。

 

1人は艶やかな黒髪は腰まであり、肌はハリがあり陶器の様に白く、纏う服はアマゾネスの服より露出が多く、ほぼ裸体をさらけ出している。腰に祭具と透けている白の布を巻いていて、魔性の美しさを醸し出し微笑んでいる、見るもの全てを魅了するかの様な美女。

 

もう1人は美女とは反対の老婆だった。所々に祭具が着いたボロボロの黒のコートを纏い、枯れ草の様に乱れた髪は白く肩まで伸び、見える肌の多くは青黒く腐敗し、僅かに見える肌も皺が刻まれ、見るものが嫌悪する醜悪な老婆。

 

美と醜、生と死、その正反対な物を表す存在が、()()()()()()()そこに居た。

 

「……1体じゃなかったのか(どういう事だ?……話と違う。目撃情報と一致しない)……疾風」

 

「はい、分かっています」

 

リューは先制攻撃をする為、詠唱を始めた。

 

「『今は遠き森の空。無窮(むきゅう)の夜天に(ちりば)む無限の星々(ほしぼし)』」

 

まだ2体は此方に気づいていない。疾風の魔法もまだ時間が掛かると見える。

 

「『愚かな我が声に応じ、今一度聖火(せいか)の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を』」

 

俺は疾風の詠唱と2体を確認し、次の行動の為詠唱を始めた。

 

「『我は花弁を散らす廻り者なり、我は輪廻を遡り呼び醒ます者なり』」

 

俺は相手の注意を引く為、角から飛び出した。2体は急に出てきた俺に驚き戦闘態勢になるが、既に俺は目前まで迫っている、今更動いた所で遅い。

 

「『()たれ、さすらう風、流浪(るろう)旅人(ともがら)。空を渡り荒野を駆け、何物(なにもの)よりも()く走れ。星屑の光を宿し敵を討て』」

 

「『ルミノス・ウィンド』!!」

 

疾風の詠唱が終わり、やや遅れて俺の詠唱も終わった。終わった直後俺の頭上には、疾風の魔法が注いだ。そして当たる僅かという所で()()姿()()()()()()()()

 

「『我が選択するは()()()()なり』」

 

緑風を纏った無数の大光玉が一斉放火され、屋根の上から目下の2体に向け星屑の魔法が流星の如く降り注ぎ、俺と2体のモンスターを土煙で覆う。それでも更に追撃の様に魔法は続く、それでも俺には当たらない全て避けれる、いや…………()()()()()()

 

右、左、左、真上、左、右、右、真上、左、

 

上からその順で、俺に光の攻撃が降り注ぐ。俺はそれを体をずらす事で、最小の動きをもって避け2体に迫る。気づけば既に俺は眼前に迫っていたが、相手は俺を見つけていなかった。

それもその筈だ。相手は3Mに対し俺は1.4M、9歳にしては高い身長だが相手の約半分の高さでこの視界の悪さ、相手からは俺は見えない。その隙に高威力の一撃を打ち込む。

 

──(ほのお)の呼吸 伍の型

 

炎虎(えんこ)!!!

 

 

ゴォォオォオオオォ!!

 

 

首めがけて降った刀から、炎が立ち昇り巨大な炎の虎になり2体を飲み込んだ。

2体を巻き込む様に一気に殺す為、持ちうる呼吸法の中でも範囲、威力、共に高い呼吸を選んだ。

 

『炎の呼吸』

 

呼吸法の中で、基本的な型と称される『炎』『水』『風』『雷』『岩』の五種の型、そのうちの一つ『炎』は始まりの呼吸である『日の呼吸』に最も近い呼吸だ。

特徴として、その火力と殲滅力は地面に強く踏み込まれた事により、他の呼吸には無い、凄まじい火力を誇る。

結果2体共に上半身が無くなり、消滅し灰になった。

 

「なっ!?(彼は本当にLv.1なのか?あの威力と範囲……屋根の上に居なければ巻き添いをくらっていた)ズィーニスさん……ズィーニスさん?」

 

リューは屋根から降りグレイと合流した。しかし、グレイの姿を見て困惑していた。グレイは魔法の効果で姿が変わっており、それは初めて見る者にとって十分謎が多いだろう。

 

「……何だ、あぁこれか?俺の魔法だ。検索するな、マナーだろ?」

 

茶髪になった長髪を後ろで結び、瞳も茶色で左目を刀の鍔の眼帯で隠している。服装は黒の着物と黒の袴、その上に裾が脛辺りまである長い白い羽織を、黒い帯で襷掛(たすきが)けをしている。そして羽織の背には『滅』の一文字。

これが、【リィンカーネーション(輪廻を巡る者)】の中で、最も呼吸法と合い、尚且つ人型との戦闘で力を発揮する人物(才能)

 

──隻眼でありながら己の流派を、一代にして昇華させたと云われる剣豪

 

『柳生十兵衛』

 

──才能

 

 

 

 

『一寸の極み』

 

 

 

 

剣の立ち合いは一寸で決まる。間合いを極限まで把握、認識できる才能。それ故に世界は遅くなる。

それが『一寸の極み』

 

「え、えぇ分かっています。分かりました、検索は止めます。……今倒したのがヘルでしょうか?」

 

「分からない。聞いた情報と姿形が違う、確認してみるか……!離れろ!疾風!!」

 

「くっ!……一体どうなっているんですか?!」

 

グレイが灰を確認しようと近ずいた瞬間、灰が一箇所に集まり1つの形を成して行った。

 

腐った肉の塊で形成された巨大な肉体、頭は無く身体には空洞がありそこに黒いドレスを纏った、胸に魔石の見える妖艶な美女が拘束されていた。肉体には肩、腰、脚、腕に鎧があり身体に祭具があった。

腕は4本、それぞれ武器を持っている。右の上の腕は大剣、左の上の腕は戦斧、右の下の腕は弓、左の下の腕は矢、どれも装飾が施され淡く光っている。だが確実にどれも生命を断つと、見て分かる程の凄みがある。

 

「これが『ヘル』の本来の姿………あぁ……分かった、そうかよ。お前ら3体共、()()()()()()()()()()()()()()。はは……なら都合が良い、直ぐに殺してやるよ」

 

情報では、腐った肉の身体しか見せてない様だった。直感が言っている、此奴らは産みの親である俺にしか、本当の姿を見せないつもりだ。それに、周りの霧が薄くなってきた。そのおかげで此奴の特徴も分かった。

 

霧が濃いのは、最初の2体を見つけさせない為。多分あの形態は攫った冒険者の経験値を、己に取り込む状態なのだろう。纏っていた光は経験値か……更にあの4本の腕、霧の中で襲ってきた腕と同じだ。

 

「疾風……今なら攫われた連中の確保もできるだろう、この奥に反応がある、先に行って待ってろ」

 

「な、何を?!貴方は何を言っているのですか!?この圧に情報通りなら『ヘル』は推定Lv.4!私にも貴方にも勝ち目が無い!!霧が晴れた今、ひとまず逃げるべきだ!!」

 

疾風は、俺を心配しているのだと分かっている。確かに勝ち目はないのかもしれない。だが然し、俺は責任を果たさないといけないし、何よりこの教わった剣術は、常に格上との戦いで使われてきた。なら己が出来ない通りは無い、ただ相手を殺すのみ。

 

「……疾風……なら救援を呼んで来い。時間稼ぎくらいなら、俺でもできる」

 

「…………分かりました。直ぐに戻ります、危なくなったら直ぐに引いてください。それと、いい加減名前で呼んでください」

 

「分かったから、早く行け……リュー・リオン」

 

「まぁ良いでしょう。必ず生きて会いましょう」

 

リューは直ぐにその場から居なくなった。流石『疾風』と云われるだけはある、凄まじい速さだ。

 

「行くぞ…………直ぐにでもその首、地に落としてやる」

 

「アハ!……アハアハアハアハアハアハアハアハアハ!!!!!」

 

律儀に待っていてくれた分、こっちも律儀に惨たらしく殺してやるよ。

 




遅れてすみません。
テスト期間だった為、大幅に遅れました。まだ少し期間が続く為、次も遅れるかもしれません。大事な将来を決めるテストなんです。申し訳ございません。

お気に入りが270件突破!!今後も遅れたりして不定期更新ですが、頑張りますのでよろしくお願いします!

感想、評価、お気に入り、よろしくお願いします!!

それでは、次回もよろしくお願いします!


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偽りの死者の女王VS隻眼の小さき剣士

お久しぶりです。お待たせしました!!就職も無事決まり、一段落しましたので投稿です。短いですが許して下さい、お願いします。
それと、評価、お気に入りありがとうございます!!!!!!!こんなに投稿期間空いたのに、評価、お気に入りしたり、キープして頂きありがとうございます!感謝です。正直減ると覚悟していましたから…………
それでは、どうぞ!!!!!!!



─オラリオ東南東ダイダロス通り─

 

現在そこでは、腐った肉体に装備を纏った巨体『ヘル』と1人の少年『グレイ』が対峙していた。先に動いたのはグレイ、ヘルに対し斜めに進み横から斬りこんだ。

 

「ハァ!」

 

ガキーン!!

 

「アハアハアハ!!!!」

 

「くっ!」

 

だがヘルはそれを大剣の腹で止め、そのまま振るいグレイを飛ばした。

 

「はぁぁあ、っ!……くっ、はぁ!」

 

「アハ!!」

 

ヘルはグレイに向け矢を放った。その矢は寸分違わず、上から弧を描く様に、グレイの頭部を射抜こうとした。その矢に反応し、辛うじて避けたグレイだが、その矢の威力の高さにより、刺さった地面が破壊されそのインパクトを僅かに食らってしまった。

 

「ふぅぅ……しっ!」

 

グレイは僅かに体制を崩したが、直ぐにヘルに向かい、走り刀を下に構えた。

 

──炎の呼吸 弐ノ型

 

─昇り炎天!

 

グレイの刀は炎を纏い、下から上へ円を描きながらヘルを斬る。然しそれは簡単に右の大剣によって防がれ、ヘルは上体を捻って左の戦斧を振り落としてきた。グレイはそれを辛うじて避け距離を取った。

 

「はぁ……はぁ……(くそ……圧倒的に手数が違う。それに、攻撃をまともに食らったら最後。推定Lv.4の一撃に今の俺は耐えられない)くそ……攻めきれねぇ」

 

たった最初の攻防。

たった一度でグレイは、ヘルとの戦闘に対して、苦戦を強いると判断した。

 

グレイは修業の多くの日々を常に、Lv.5の第一級冒険者達に相手してもらった事で、相手と自分の力量差や気配、動体視力などはスキルの補正も入り、もはやそれはLv.3に届く可能性があるかもしれない程高い。だからこそ、この先どう攻めればいいか、己と相手の差を感じ、攻めに集中出来ずにいた。

もし全力で攻めればいけるかもしれない、だが相手の攻撃を一度でも食らえば待つのは『死』のみ。グレイは一撃離脱をしながら、ヘルの周りを回る様に攻め、思考は様々な攻め手を考えていた。

 

(炎の呼吸で攻め続ける?だが戦斧で足場に高低差が出来て、上手く踏み込めない。なら水の呼吸……いや決定的な威力が無い。風?雷?岩?あぁどれもダメだ。今の俺では体が成長しきってない。どれも攻めか守り、片方しか出来ない!()()()()いや、あれはそもそも……なっ!?しまっ)

 

「アハ!!」

 

余りに思考する事に集中しすぎて、グレイは大剣の横薙ぎを受けて、壁を貫き家の中に吹き飛ばされてしまった。幸い刀で受けたもののそれは不十分であり、壁や家具などに体中を打ち付け、三軒先の壁にぶつかり止まった。

 

「はぁ……はぁっ!ゴフッ!……ちっ、今ので……肋に……罅が入ったな……あぁダメ……だ。視界が、ぼやけ…………る」

 

一撃を防いだとはいえ、グレイは全身を打ち付け壁に頭も強打していた。それ故に、視界はぼやけ壁に背をつけ、座り込むので精一杯だった。ヘルは着々と此方に歩を進めている。更にヘルは四腕から霧の様な物まで出し始めていた。

 

「アハアハアハアハ!!!!」

 

ヘルの腕から出ている霧の様な物は、流れる様にグレイの周りを囲み広がり始めた。広がると同時に、ヘルはグレイから一件半離れた位置で停止し、何かを()()すると再度進み始めた。

 

「うる、さい……耳障り、だ(……もう後がない……まさか、時間稼ぎも出来ないとは。あぁ、後始末すら出来ないのか……俺は、何も出来ないガキのまま……死ぬのか?)くそ、が……うざい、霧だ……な。……あ?そこに、誰か、居る……のか?」

 

霧に囲まれたグレイの傍に、1つの人影が現れていた。霧の影響で誰かは分からないが高さは1.7M程だろうか、線の細さから女性だと分かる程度だった。

その女性は唐突にグレイに話し始めた。

 

 

──どうした、死ぬのか?お前は何も残せていないだろう

 

あぁ死にたくない。まだ何も残せてもない。だがもう体が動かない

 

──お前は諦めるのか……その程度で

 

諦めたくない。だがあいつを殺す力が今の俺には無い

 

──分かっていて挑み、そして死ぬのか、滑稽だな

 

あぁ確かに滑稽だ。自分の後始末すら出来ない

 

──あの日決めたのではないのか、覚悟を……自身の宿命を

 

決めた。黒龍を殺す。アイズを守る。例え己の全てが消えても

 

──なら何故、今立ち上がりあの()()()()()を消さない

 

立ち上がろうにも、頭を強打し肋骨に罅が入って力が入らない

 

──お前の覚悟は、その程度の理由で消える代物だったのか

 

違う、覚悟はある。しかしそれを示す力が俺には無い

 

──示す力か、なら問う。お前にとって、力とは何だ

 

俺にとって力は、俺の進む道を邪魔する奴を消し去る技、そして大切なものを守りきれる技

 

──ならば、それを示して見ろ。力を望むのなら与えてやろう、後はお前次第だ。……死ぬなよ()()()()()()()()()()

 

 

「あ?おい……それはどういうことだ!っ?!傷が……治ってる ?ちっ!」

 

「アハ!!……?アッ?!!??!」

 

グレイはヘルが近づいているのに気づき、咄嗟に距離を取った。そして先程まで居た場所にヘルは斧で攻撃したのだった。本当であれば、ここでグレイの命運は尽きていた。しかし問題が生じたのである。

 

ヘルの腕から出ている霧。これには、包まれた者に強力は幻覚作用をもたらす力が備わっている。これを使うことで、ヘルは街に入った冒険者の方向感覚など狂わし捕らえていた。更に視点によっても、方向感覚を狂わす力も僅かに持っていた。

そして、ヘルは生みの親であるグレイに、幻覚を見せたまま葬ろうとしたのだ。だが実際はグレイは幻覚に囚われず攻撃を避けた。それにヘルは困惑したのだ。

 

なぜ避けれる?なぜ幻覚を見ていない?なぜ傷も治ってる?訳が分からない。何なのだこの生みの親(不可解な存在)は?

 

ヘルにとって問題とは、グレイが見た幻覚が()()()()()()()()()()()()()だったという事。

そしてグレイにとっての奇跡は、見せられたものにより傷が癒え攻撃にすぐ反応出来た事だ。

 

これにより、グレイの体力は元に戻り体制も建て直した。

 

「……示せ、か。……なら示してやる、この()()()()()()でな(後の事は今はいい、後で考えろ!。今此奴をこの場で、5()()で始末する!)行くぞヘル、残りの5分……今までの俺だと思うなよ」

 

グレイは、左眼を今まで隠していた眼帯を、駆け出すと同時に掴み捨てた。

 

そして開かれた瞳は、右と同じ茶色

 

 

 

 

 

 

 

 

眼帯により隠されていたその瞳の色は()()()。所々が切れた白輪が浮かぶ紅赫色の瞳だった。その瞳が赤く紅く煌めき、グレイの走った後の空中に線を残す。

 

「ふっ!」

 

グレイはヘルの間合いに入る。ヘルは右上の腕に持つ大剣を、自身の身体能力を存分に使い振り下ろす。確実にその一撃は、グレイを頭から分断するのは時間の問題だった。

 

「アハ!!」

 

しかし大剣が地面を割った時、大剣や周りの地面には血は一滴も付いておらず、更にグレイは何も無かったかの様に、大剣の真横に僅かに体勢をずらし、しゃがめていた。

 

「アァ?ッ!」

 

「凄いな。()()は始めから使うべきだった……っ!」

 

───シィイィィイ

 

──全集中・雷の呼吸 伍ノ型

 

─熱界雷!!

 

グレイは下から上へ、黒い雷と共にヘルの2本の右腕を斬り上げた。グレイが斬った場所は脇の下。

人体の構造上、関節や脇の下は他に比べ曲げが入る為柔らかくなっている。故にグレイの攻撃が直にヒットしたが為に、ヘルの2つの右腕が共に切断された。

 

「アァア!!」

 

「騒がしい奴だな。次行くぞ!(あと、4分20秒……行ける!)」

 

ヘルが初めて、グレイ…いや、人に対して距離を取った。それは腕を切断されたからでも、次の攻撃をされそうだったからでも無い。

ただ純粋にグレイに対して、下に見ていた生みの親に対して()()したからである。確実に上である自分が、下であるグレイに対して抱くはずの無い感情であった。

 

ヘルが後ろに飛んだ事で開いた距離を、グレイはすかさず詰めた。ヘルは残った左腕に持つ、戦斧を振り回し、矢を槍の如く乱れ突き始めた。だがグレイはそれを紙一重で躱し続け、ヘルとの距離を近ずける。それに対し、ヘルが後ろに引き距離を保とうとする。

 

グレイとヘルの戦闘は、圧倒的にグレイが形勢を逆転し、ヘルを追い詰めていた。しかしヘルもただでは殺られない、推定Lv.4の全力の能力で、徹底して攻撃と距離を取る事に力を注いでいた。

 

「でかい図体で小賢しい!(あと2分30秒も無い!急げ!何時までも後ろに引きやがって、上手く距離を掴めない。……あぁくそ、やるしかないか)……けど、示せと言われたからな。おい、何処の誰かは知らないが、示せと言ったんだしっかり見とけ」

 

そう言いながら、離れた距離を詰める事を止めたグレイは、何度も深呼吸し始めた。その間、ヘルは微動だにせずただグレイの動きを見ていた。攻め続けられヘル自身も、グレイに対し完全に勝ちではなく、この場から逃げ切る事に優先事項を変えていた。

数回の深呼吸を終えたグレイはゆっくりと、変化の起きた()()()()開いた。

 

「これが……俺の今出せる覚悟だ」

 

グレイは、凄まじい速さでヘルに走り始めた。それに対しヘルは残った戦斧を振りかぶった。

両者の獲物がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決着はついた。

 

グレイとヘル、両者が接触する瞬間、グレイは身を捻り余りの速さに姿は一瞬消え、次の瞬間にはヘルは縦一文字に切り裂かれ、地につくと同時に灰とかした。

グレイは縦に裂けたヘルだった物の間に、刀を振り上げた状態で制止していた。

 

「ふぅ……うっ!あぁぁあ!痛っ!はぁ…はぁぁ……何とか、5分以内で決着がついた……(脳と眼球に対する負担が想像以上だった。あとちょっとで、悪くて失明…良くて視力の大幅な低下……危なかった)体が出来上がってないから、負担が高いな」

 

『一寸の極み』は、間合いを極限まで把握、認識が可能となる。

 

更にこれらは、ゾーンと呼ばれる事もあるタキサイキア現象を強制的に発動させる事によって、世界がスローモーション、つまりゆっくりに見えるからこその技でもある。

リュー・リオンの魔法を避けた際には、これを一瞬のみ使用し避けた。何故一瞬なのかというと、これの長期間使用は脳と眼球に多大な負担を掛ける。

今の成長が終わってない体では、一瞬とはいえ油断出来ないのだ。

そして一寸とは3.03センチメートルの事。この世界の表記では0.3M、この短い距離を極限まで把握出来る事は、凄まじい事である。そしてタキサイキア現象とは一瞬の事でもある。これを自分の意思で、ましてや長時間発動させる事は、説明の通り負担が並ではないのだ。

 

更にグレイは最後、片目を閉じ多大な負担を更に増やし、能力を自身の限界まで出した為、凄まじい負担が襲った。代わりに、ヘルの行動は更に遅く見え的確に対処出来たのである。

 

グレイは魔法が解除されたのを確認した後、左目を閉じたまま上から水を掛け、更に上から包帯を巻き応急処置をした。奥へ移動しようとしたが、灰の山に埋まる様に地面で光る物が視界に入った。

 

「これはヘルの魔石か、……何だ?!」

 

ヘルの魔石をグレイは拾い、奥へ移動をしようとした瞬間、魔石が強く光りグレイを包んだ。その光は直ぐに収まったが、グレイの表情は曇っていた。

 

「………………ちっ、巫山戯るなよ」

 

グレイは魔石を仕舞うと、奥へ移動する為歩きだした。

奥は他より僅かに開けた場所、広場の様になっていた。そこには、数多くの冒険者が倒れていた。よく見たら、一緒に来たガネーシャ・ファミリアの冒険者も倒れている。

 

「さて……冒険者の救出は完了。ひとまず、周りを把握するか」

 

グレイは、壁を蹴りそのまま屋根まで登った。屋根から周りを見渡すと、街のあちこちから煙が上っているのが確認出来た。更に屋根の上を走りながら、此方に走ってくる団体が見えた。

先頭は『疾風』リュー・リオン、ロキ・ファミリア団長『勇者』フィン・ディムナ。その2人の後ろに続く様に、20人程の冒険者が此方に走って来ていた。

先頭のリューが、屋根の上に居るグレイに気づき声を掛けた。

 

「ズィーニスさん!良くご無事で…って、その目は大丈夫何ですか?!」

 

「あぁ大丈夫だ。それより、早く運ぶぞ。時間が惜しい」

 

リューを初め他の冒険者が下に降り、倒れた冒険者の救助を始めた。フィンはグレイの横に並び、指示を飛ばしている。ふとフィンがグレイに話しかけた。

 

「……随分、無茶をしたみたいだねグレイ」

 

「見た目程、怪我はしていない。それより、良いのかフィン。部隊の指揮は……」

 

「あぁ、大丈夫だよそこは、オッタルが繋いでいる。まぁ戦闘を見越して来たのだけど、杞憂だったみたいだ」

 

「…………」

 

グレイは一瞬下のリュー達を見てから、その場を離れようとした。それをフィンは呼び止めた。

 

「グレイ……その感じだと、()()()()()、いいや()()()()()()かな?……まぁ何にせよ、無事で良かったよ。一度バベルに戻って休むといい。此処は、任せてくれ」

 

それじゃ、と言ってフィンは下に降りてしまった。グレイは少しその場に立ち止まると、バベルに向け屋根の上を駆け出した。

 

「急げ、時間が無い。……全く、嫌になる」

 

グレイの心の闇は更に広がり、蠢き出した。それが何を示すかは分からないが、グレイが真に自分が求める物を知るのは近い。

 

 

 

 

そして離れた場所から、走り去るグレイの後ろ姿を目で追う、屋根の影に隠れた人影があった。

 

「頼まれた事はしたぜ。全く……何とも無理難題を押し付けられたものだ。まぁ彼がこのまま、この先どうなるのか。俺としては彼には相応しい()()()を、あげたいからな」

 

その人影は、右手で目を隠し笑った。

 

「さぁ次代の役を揃えようじゃないか!」

 

指の隙間から覗くその目は、何を観るのか。今は誰も…………いやこれからも誰にも分からない。

 

 

 

─オラリオ南西、城壁の外─

 

多くのガタイのいい冒険者が、大盾を構え壁の様になり構えていた。

 

ゴゴゴゴゴ

 

「盾構えろ!!防御魔法展開!!来るぞ!」

 

ギュウゥグァアアアァアアアァアァァアアオォオオォォオ!!!!』

 

ドオォォオン!!

 

凄まじい衝撃音、そして数多くの冒険者達が吹き飛ばされていた。倒れた冒険者達の先に見えるのは、()いや()と表現すべき巨体を誇るモンスターが、とぐろを巻き居座っていた。

 

全身を黒く鈍く光る鱗に覆われ、鼻頭から尾の先に向け背に鋭い棘が生えている。頭には天に向かい伸びる、根元が捻れた角が2本、その後ろから地に向かい伸びる、根元が捻れた角が2本の計4本。瞳孔が縦に伸びる、血の様に赤い目が両サイドに横に並ぶ様に2つ。鋭い牙が生え並び、先の割れた細い舌がある巨大な口。

 

能力喰い(スキルイーター)

ミドガルズオルム

 

巨蛇竜(ミドガルズオルム)は、ふと南東を見つめた。それは何かを悟った様だった。

 

そして、ミドガルズオルムは天に向かい吠えた。

 

グウゥウウゥオオォオォオオォオォォオオ!!!!!!!!!!!』

 

それは、何を感じ取った為の咆哮なのだろうか。人類には知る由もない。

 




皆様の優しさに感謝感激雨あられですーー!!!!

これからも、不定期ですが、よろしくお願い致します!!

感想、評価、お気に入り、よろしくお願いします!!

それでは皆様、良い年越しを


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