けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。 (ヒトアマゾン)
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第0章「始まりの事件」
Ep.0「プロローグ」


-パークセントラル内管理室-

 

 

職員A「…連絡は有ったか?」

 

職員B「いや、まだだ。…一体、何処に居るんだ?」

 

?「失礼します…」

 

職員A「あ、ミライさん…お疲れ様です。」

 

職員B「密猟者騒ぎで忙しい時に、内の職員が行方不明になってしまい…私らの指導不足で…」

 

ミライ「いえ、密猟者は国家の問題です。それに、彼…光太郎さんはきっと帰って来ます。」

 

職員B「光太郎…あいつが居なくなってから2週間経ちます。」

 

ミライ「…捜索班を増員しましょう。密猟者関係の情報は…丁度2週間前から有りません。 彼の捜索を優先しましょう。」

 

職員A「ありがとうございます。私達にも、何か出来る事があれば…」

 

職員C「ミライさん‼︎ 少しだけお時間、頂けますか…」

 

ミライ「は、はい…」

 

 

-別室-

 

 

ミライ「どうしたんですか?…まさか、見つかりましたか⁉︎」

 

職員C「…見つかるには見つかりましたが…」

 

ミライ「どう…したんですか?」

 

職員C「遺体で見つかりました。」

 

ミライ「えっ…」

 

職員C「光太郎さんの捜索を担当していた職員が、銃声を聞いたらしく、周辺に居た職員に召集をかけ、その場に向かったそうなのです。」

 

ミライ「まさか、密猟者…」

 

職員C「はい、現場だと思われる場所には密猟者の姿はありませんでした。…その…遺体の一部は、欠損していました。」

 

ミライ「欠損…?」

 

職員C「はい。身体の殆どは残っていました。が、右腕だけが欠損していました。 奥の茂みに血痕が続いていたので、職員が向かったそうで、茂みの奥では、彼の右腕を咥えたニホンオオカミと思われる個体がいたそうです。」

 

ミライ「ニホンオオカミ…恐らく、1ヶ月前にセルリアンに襲われ、フレンズ化が解除された個体ですかね…」

 

職員C「それと、遺体には弾丸で穿たれた跡と、啄ばまれた跡があったそうです。近くでグアダルーペカラカラと思しき個体を見たとの報告がありました。恐らくは…」

 

ミライ「グアダルーペカラカラまで…」

 

職員C「2匹共、捕獲は出来ませんでした。」

 

ミライ「発見次第…捕獲して下さい。麻酔銃使用の許可を得て来ます。」

 

職員C「了解です。…ご協力、ありがとうございます。」

 

ミライ「あなた方には、辛い経験をさせてしまいました……二人を呼んで来て下さい。」

 

職員C「…はい。」

 

 

-再度、別室-

 

 

 

職員A「そんな、あいつが…」

 

職員B「何であいつが、死ななければならなかったんだ…」

 

ミライ「…皆さんも、密猟者には気をつけて下さい。それと成る可く、けものさん達を恨まないで下さい。 けものさん達には悪意はありません。自然の摂理に従った上での行動です…」

 

職員A「ミライさん、光太郎の遺体は…」

 

ミライ「彼の生前の願いを叶えてあげたいですね… パーク内の合同慰霊塔へ行かせてあげられるか、相談して来ます…」

 

 

 



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第1章「記憶」
Ep.1「目覚め」


-森林内廃墟-

 

此処は、何処だ? 俺は確か…

 

?「……森?」

 

取り敢えず、立ち止まっていても仕方がない。

 

?「歩こう…」

 

俺は、誰かに逢える期待を胸に、歩き出した。

 

…が

 

?「宛が無い…」

 

幾ら歩いても、誰にも逢え無い。このままだと、疲労で倒れ、最悪そのまま死ぬ。

 

?「あのまま、誰かが来るのを待った方が良かったか?」

 

少し前の自分に会いたい。会って、歩く選択をした自分に一発お見舞いしたい。

 

?「後悔していても、仕方ない… 取り敢えず拓けた所まで……ん?」

 

何か物音…具体的に言えば茂みの揺れる音が聞こえた。風の仕業では無い…誰か、居る。

 

?「誰か、居るのか?」

 

茂みから誰か出て来た…が、期待していた者とは全く違う。者というよりは、物だ。無機物だ。なのに、俺に向かって来る。

 

?「味方なのか?違うのか?…答えてくれ…」

 

淡い期待を込め質問を投げかけたが、悪しき予想通り一切返事が無かった。

 

?「やめろ…やめてくれ…」

 

“それ”の持つ眼からは、一切生気を感じなかった。…蛇に睨まれた蛙……正に今の状況だな…

 

?「………」

 

仕方ない。このまま宛も無く彷徨い続けて、不安で精神が押し潰されそうになりながら、野垂れ死ぬよりはマシだ。

 

?「……………?」

 

しかし、いつまで経っても、その時が来ない。焦らしているのか?…意地悪だ……

 

…それの眼が、俺よりも後ろを視ていた。

 

?「…ん?」

 

俺も、それと同じ方向を見た。というよりも、音がしたので半ば反射的に振り向いた。

 

…今度は何だ?

 

?2「危ないから離れて!」

 

?「! え、あ、はい!」

 

今度は生き物だ…しかも大体、俺と同じ姿。そう、“大体”だ。

 

?2「もぉ、セルリアン! 最近多いなぁ!」

 

セルリアン…あの無機物な奴か…

 

セルリアンが…退いていく。

 

?2「残念だけど、逃がさないよっ! えいっ!!」

 

突然現れた、俺と似た姿の人?の一撃を喰らったセルリアンは、正直爽快感のある音を立てながら砕け散った。

 

あれ? 破片がこっちに…

 

?「痛っ!」

 

?2「あっ!大丈夫? 怪我とかしてない?」

 

?「はい…一応……」

 

頭を打たれてしまった。しかし、そのお陰か、何か思い出せそうな気がする。

 

?2「良かった…セルリアンには気をつけてね?」

 

?「は、はい…ありがとうございます…」

 

今は、この様な返事しか返せない。何せ、記憶喪失の様な状況下で急に、色々な事が目の前で繰り広げられていたんだ。それに…

 

?「あの…」

 

?2「ん?どうしたの?」

 

自分と似た姿とは言ったが…茶色の髪、ブレザー、ピンクのネクタイとスカート、そこまでは良いんだ…

 

それに加え、自分には絶対に無い、大きな耳、そして立派な尻尾が生えている者が、今自分の目の前にいる。

 

この状況、動揺するしか無い。

 

?「貴方は、誰なのですか?」



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Ep.2「出逢い」

?2「私? へへっ、ニホンオオカミだよ!」

 

?「ニホン…オオカミ?」

 

…不思議だ。 不思議と身体全体…特に右腕が痛む。

 

ニホンオオカミ「あなたの名前は?」

 

まぁ、そう来るだろう。流石に相手に名乗らせておいて、自分は名乗らない。なんて失礼な事はしない。

 

?「俺は……」

 

失礼な事はしない…が、名前がはっきり思い出せない。もどかしい。

 

ニホ「もしかして、生まれたてかな?」

 

生まれたて? まさか、俺には過去の記憶がある。

 

…一応。

 

?「名前…光太郎……秋月 光太郎。」

 

何とか絞り出せた名前。まぁ、もし本名ならこのままで良いし、本来の名前を思い出せたら訂正するし。

 

ニホ「光太郎…ね。 宜しくね、光太郎!」

 

光太郎「こちらこそ、宜しくお願いします。ニホンオオカミさん。」

 

ん?宜しくお願いします?…まぁ、少なくとも記憶がしっかり甦るまでは一緒にいる事になるだろう。

 

ニホ「住処は何処なの? そこまで送るよ。」

 

光太郎「それが、実は…」

 

俺は、ニホンオオカミさんに今の俺の状態を、お互いが分かる範囲で話した。

 

 

ニホ「そっか…記憶喪失?ってヤツなんだね。それじゃ、大体の事が思い出せるまで、私が案内するよ!」

 

光太郎「良いんですか? いつになるか分かりませんよ。もしかしたら…」

 

そう、もしかしたら永遠に記憶が蘇らないかもしれない。そんな宛の無い旅に、こんな優しい子を巻き込む訳にはいかない。

 

ニホ「…なんか、色々悩んでるみたいだけど、私は大丈夫だよ?」

 

光太郎「えっ…?」

 

ニホ「私、あなたの事が無性に気になるの!」

 

光太郎「…そう…なんですか?」

 

ニホ「不思議とね。だから、何でかを知る為にも、あなたについて行きたい。良いかな?」

 

光太郎「ニホンオオカミさんが良ければ…」

 

意思弱ーい

 

ま、まぁ、本人の意思も尊重すべきだろう。

 

ニホ「やったー! 改めて宜しくね、光太郎!」

 

光太郎「…宜しくお願いします。」

 

ニホ「それじゃ取り敢えず、森から出よっか!」

 

光太郎「はい。お願いします。」

 

ここから旅が始まるのか…

 

なんて、一人で勝手に考え込んでいる内に、ニホンオオカミさんとの距離が開いてしまった。

 

一人は怖い。

 

そう思って、俺は小走りでニホンオオカミさんの所へ向かった。

 

普通に追い付いた。

 

 

-道中-

 

 

ニホンオオカミさん…身体の距離が近い。歩く度に、尻尾が俺の脚に当たる。

 

…悪い気はしないが。

 

ニホ「そういえば、どうして敬語なの?」

 

光太郎「初対面だから…ですかね。」

 

そうだ。初対面だからだ。 初対面でタメ口を聞ける程、俺はヒト付き合いが上手く無い。

 

ニホ「そっか…」

 

あっ…

 

急に距離が開いた。身体的にも、精神的にも。

 

光太郎「…あの! ニホンオオカミさんさえ良ければ、タメ口で話しますよ? 始めはぎこちないですけど…」

 

ニホ「私は良いよ! じゃあじゃあっ、私の事、好きに呼んで良いよ?」

 

光太郎「そうです…そうだね……じゃあ、宜しくね、えと……ニホニホ。」

 

ニホニホ… 急に距離を縮め過ぎたか?

 

ニホ「ニホニホかぁ…ありがと! あ、光太郎、もうすぐ森の出口だよ!」

 

あ、何か気に入ったみたい。

 

無性に嬉しい。

 

光太郎「あ、本当だ。大分明るくなってきた…」

 

 

-森林出口-

 

 

ニホ「やっと出口だ……ん?」

 

光太郎「どうしたの…ニホニホ?」

 

ニホ「あ、あそこ!」

 

光太郎「あー…あれか。」

 

そう言うと、彼女は空に浮かぶ二つの点を指差した。

 

あれ…ヒト型のを……セルリアン?が追いかけている?

 

不味いなぁ…



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Ep.3「トリを見た」

ニホ「助けなきゃ!」

 

光太郎「そうだね…けど、どうやって? 相当離れてるよ。」

 

此処は地上、助けたい相手、そして倒すべき敵は空。

 

…何とか、鳥の子だけでも地上に呼べれば…

 

ニホ「そうだ… 光太郎、耳、塞いどいてよぉ!」

 

光太郎「あぁ、分かったよ。」

 

何をするのか、大体分かった。流石オオカミだ。

 

ニホ「スゥ……トリさぁぁぁぁぁん!!こっちに降りてきてぇぇぇ! こっち!」

 

?「えっ! はいっ!」

 

光太郎「やっぱりな…」

 

鳥の子を追いかけて、セルリアンも地上に迫って来た。 さぁ、どう迎え撃とうか…

 

降りてくるの速いな…

 

ニホ「おーい、こっち! 光太郎に助けてもらって! セルリアンは私に任せて!」

 

光太郎「え、あ、こっち!」

 

?「…はい!」

 

疲労があるのか、どうも飛び方が頼りない。

 

光太郎「…大丈夫ですか?」

 

?「はい……痛っ…」

 

光太郎「あっ、血が…」

 

不味い、止血しないと…

 

幸い、右脚にある傷は浅く、俺でも応急処置できるレベルだった。

 

ニホ「そっちは任せたよ!……さぁ、セルリアン、フレンズを傷つけるのは許さないよ…」

 

…道具が無い。 何とか周りにあるもので対応しなければ。

 

ニホニホは…押してるなぁ…流石。

 

それはそうと、包帯に当たる物が無い。

 

…仕方ない。

 

光太郎「痛かったら言って?」

 

?「はい……良いんですか? 貴方の毛皮ですよ?」

 

光太郎「命の方が大切ですから…」

 

そうだ、上着の腰周りが消えたからと言って、死ぬ訳じゃ無い。

 

今は、目の前にいる子の痛みを取り除く事が優先だ。

 

取り敢えず、心臓に近い方で縛れば…

 

?「うっ…」

 

光太郎「痛かっ…まさか、折れてる…」

 

なるべく動かない様にしなければ…

 

 

 

取り敢えず、脚を固定できる位の木の板を見つける事が出来た。

 

それと、もう一つ…

 

…先に処置だ。

 

 

 

光太郎「一応、応急処置は出来たよ。」

 

?「ありがとうございます… 」

 

光太郎「但し、あくまでも“応急”処置だから、無理はしないでください。…今は動かないで下さい。」

 

その方が、回復が早くなる気がする。

 

 

ニホ「はぁ…はぁ… すばしっこいなぁ…」

 

ニホニホの体力が切れかかってる。何とか手助けしないと…

 

その為に、あれを拾ったんだ。

 

 

ニホ「そろそろ… 不味いなぁ… あっ!?」

 

急がなければ… あのセルリアン、中々に速い。ボーっとしてたら、ニホニホが危ない!

 

光太郎「あぁぁぉぁぁぁぁ! トゥアッ!」

 

セルリアン(トリ型)「!!?」

 

ニホ「光太郎!? えっ、どうして?」

 

光太郎「ニホニホも助けたいからねっ!」

 

俺は、がむしゃらに、ニホニホに近づいていくセルリアンに向かって、約150%の力で、“鉄パイプ”を叩きつけた。

 

火事場の馬鹿力とは、この事を指すのか…

 

ニホ「光太郎…私も負けてられないねっ!」

 

光太郎「その調子だよ!」

 

俺が作り出した隙を、ニホニホが突いていく。

 

確かに、セルリアンが弱っていくのを感じた。

 

?「…凄い連携…」

 

光太郎「ニホニホォ! トドメだぁ!」

 

ニホ「分かった!」

 

光太郎「トゥアッ!!!」ニホ「えぃ!!!」

 

俺の鉄パイプと、ニホニホの爪が、セルリアンを貫いた。

 

 

 

 

 

光太郎「はぁ…はぁ…勝った。」

 

こいつも砕け散った。 破片が痛かった。

 

ニホ「お疲れ! あ、さっきの子、大丈夫?」

 

?「えぇ、光太郎様のお陰で………っ…」

 

光太郎「ごめん、取り急ぎだったから…ちゃんと処置するから待ってて…」

 

今なら落ち着いて道具を探せる。

 

?「すみません、気を遣わせてしまって…」

 

ニホ「いいのいいの。そういえば、なんて名前なの?」

 

?「はい…申し遅れました。グアダルーペカラカラ、ルペラとお呼び下さい。」

 

光太郎「えと…ルペラ、色々持って来たよ。」

 

本当に色々だ。周りにある、ありとあらゆるものを集めた。無論、衛生的に問題無いと思われる物に限る。…が。

 

ルペラ「光太郎様…ありがとうございます。」

 

ニホ「光太郎、手伝うよ。」

 

光太郎「ありがと、ニホニホ。それじゃあ…」

 

 

 

 

光太郎「これで…良いな。 痛みはどぉ?」

 

ルペラ「お陰様で、かなり楽になりました。」

 

ニホ「ルペラ、住処の場所を教えて? そこまで送るよ。」

 

ルペラ「住処…実は、私、本来なら住処が有るのですが、先程のセルリアンによって破壊されてしまい、そこから逃げている所で、光太郎様とニホンオオカミ様に出逢いました。」

 

ルペラ…だからあんな怪我を…

 

光太郎「なら、俺達と来る?」

 

ニホ「そうだよ! 一緒に行こうよ!」

 

ルペラ「光太郎様…ニホンオオカミ様…ありがとうございます………宜しく、お願いします。」

 

光太郎「それじゃ、宜しく、ルペラ。」

 

ルペラ…凄く丁寧な言葉使い。そして敬語。

 

分かる…敬語になる気持ち、分かるよ。

 

ニホ「宜しくね、ルペラ!」

 

ルペラ「…はい♪」

 

なんだかんだで、ルペラが加わり、より賑やかになった。 ただ、ルペラとは若干、心の壁を感じるので時間を掛けて打ち解けようと思う。

 

 

あと、笑顔が可愛い。



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Ep.4「安息を求めて」

光太郎「…あ、近くにルペラの脚を休める場所とか無いかな?」

 

応急処置をしたとはいえ、身体自体を休めなければ、傷は治り切らないから…

 

…俺も休みたいし、少し暗くなってきたし…

 

ニホ「そうだね… もう少し進んだ所にロッジがあるから、そこで休もうか。」

 

ルペラ「…ありがとうございます。」

 

ロッジか…

 

…ダメだ。何か思い出せそうなんだけどな…

 

光太郎「ねぇ、ルペラ?ルペラさえ良ければ、おぶるよ?」

 

ルペラ「…お願いします。」

 

ニホ「あ、荷物持っておくね。」

 

光太郎「ありがと、ニホニホ。 それじゃ、どうぞ、ルペラ。」

 

ニホニホ、気がきくなぁ…

 

ルペラ「失礼します。……重くないですか?」

 

光太郎「大丈夫、安心して?」

 

…乙女だぁ

 

ニホ「傷は痛まない?」

 

ルペラ「はい。光太郎様とニホンオオカミ様のお陰で痛みません。ありがとうございます。」

 

光太郎「良かった…… それにしても、あのセルリアンは強かったな…」

 

鳥?の形をしていたな… 俺が初めて出会った個体は…アメーバと言える様な形だったが、他にもいるのか?

 

ニホ「思ったよりも速くて、始めは追い付けてたんだけど… 体力には自信があるけど、それでもバテちゃったよ…」

 

光太郎「ロッジに着いたら、ゆっくり休めるね。……ん?」

 

ニホ「…寝ちゃったね。」

 

光太郎「ちょっと静かにしておこうか…」

 

ニホ「うん。」

 

小さな吐息が耳にかかる。 やっぱり疲れていたんだろうな…

 

…可愛い。

 

 

 

-ロッジ付近-

 

 

ニホ「あれがロッジだよ。」

 

ルペラ「ん……すみません、寝てしまいました…」

 

光太郎「あ、おはよ。…まぁ、夕方だけどね。」

 

あれがロッジか。 随分と綺麗だな… ロッジ、初めて泊まるなぁ…

 

 

 

-ロッジ-

 

 

光太郎「失礼します…」

 

アリツカゲラ「いらっしゃいませぇ! ロッジアリツカへようこそ。お泊りですか?」

 

光太郎「はい。 一泊でお願いします。」

 

アリツ「3名様でよろしいでしょうか?」

 

光太郎「はい。宜しくお願いします。」

 

対応がかなり丁寧だな…

 

アリツ「それではまず、お部屋をお選びください!」

 

ニホ「なるべく広い部屋が良いよね。」

 

アリツ「それなら、お部屋“みはらし”がオススメですよ!」

 

ルペラ「みはらし…ですか。 良い響きですね。」

 

ニホ「みはらし、何か良さそう!」

 

光太郎「えと、みはらしで、お願いします。」

 

二人共、少し興奮気味だ。

 

…こういう、普段とは違う状況になると、テンションが上がる気持ちは分かるが。

 

 

 

-お部屋「みはらし」-

 

 

アリツ「はい、こちらがオーソドックスなお部屋、みはらしです。 夜には満天の星空が、朝には美しい朝焼けが見られますよ!」

 

光太郎「ありがとうございます。」

 

アリツ「それでは、ごゆっくりどうぞぉ。」

 

ニホ「広い部屋だね。注文通りだよ!」

 

ルペラ「はい、トリ仲間の間でも、アリツカゲラ様はお部屋のプロと呼ばれておりますので。」

 

光太郎「だからか…」

 

アリツカゲラさんは、部屋の話をしている時、心底楽しそうだった。

 

ニホ「二人共、お腹空いてない?」

 

ルペラ「………空きました。」

 

光太郎「あ、そういえば…」

 

そうだ、俺は森の中で目覚めてから、まだ何も口にしていなかった。

 

気付いた途端、急激に、且つ猛烈に…腹が…減ってきた。

 

ニホ「ちょっと待ってて、アリツさんに貰ってくる。」

 

光太郎「あ、俺が行くよ。」

 

ニホ「光太郎は休んでて? 今日は色んな事があったからさ。」

 

光太郎「ありがとう… じゃあ、任せるよ。」

 

ルペラ「すみません、宜しくお願いします。」

 

ニホ「任せて! じゃ、行ってくるね!」

 

 

光太郎「…ルペラ、脚の怪我は大丈夫?」

 

ルペラ「はい、あの時の丁寧な処置のお陰で、傷の治りが速いです。 光太郎様、ありがとうございました。」

 

え、もう効果が出た?

 

回復が速い…

 

光太郎「良かった… で、どうして様付けなの?」

 

初対面の相手に敬語なのは、良く分かる。ただ、様は… 流石に堅苦しい気がする…

 

ルペラ「…どうしてでしょう。私にも、良く分かりません… すみません、ご期待に添える回答では無くて…」

 

光太郎「いや、良いんだよ。 ありがとう。敬語になる気持ち、分かるからさ。」

 

ルペラ「そうなのですか? 今までの会話では、かなり馴染んでいましたが…」

 

光太郎「実はね、ニホニホと逢って、俺の記憶の手掛かりを探す事になって、その時にニホニホとは、当分続く付き合いだから、ちょっとずつでも距離を縮めよ。って思ってさ。」

 

ルペラ「そうだったのですね…」

 

光太郎「けど、ルペラはルペラのままで良いと思う。 それが本当のルペラなら…ね。」

 

…勢いで言ってしまった。

 

大丈夫か?

 

ルペラ「光太郎様……ありがとうございます。私、今凄く嬉しいです。」

 

…大丈夫そうだ。

 

光太郎「そっか。良かったよ。」

 

ルペラは、あまり表情が大きく変化する方では無いと思う。 ニホニホとは、ほぼ真逆だ。 けれど、笑顔が一番似合っている…可愛いという点は、共通している。

 



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Ep.5「ロッジに一泊」

ルペラ「そういえば…」

 

光太郎「どうしたの、ルペラ?」

 

ルペラ「ベッドが2つしか…」

 

あ… 気付かなかった。…俺がベッドに寝て、ニホニホかルペラかを床で寝させる…

 

論外だ。 そんなこと、出来る訳無いだろ。

 

…仕方ない。

 

光太郎「ソファは…あるな。」

 

ルペラ「まさか…ソファで寝るおつもりですか?」

 

光太郎「そうだよ。 どうせ一晩だけだし。」

 

そうだ、一晩だ。

 

…一晩?

 

ま、まぁ、仕方ない。

 

床よりはマシだ。

 

ルペラ「なら、ベッドを動かして繋げる事が出来れば、全員でベッドに眠れますね。」

 

その発想があったか!

 

…ちょっと頑張るか。

 

俺自身の安眠の為にも。

 

光太郎「まぁ、これ位の距離なら動かせるな。 頑張るよ。」

 

ルペラ「お手伝いしましょうか?」

 

光太郎「あ、大丈夫だよ。 ちょっと待ってて…」

 

 

 

 

ルペラ「大丈夫…ですか?」

 

光太郎「大丈夫…だ…よ。」

 

これは…明日、全身が痛くなるヤツだ。

 

ルペラ「その…お疲れ様です。 これでゆっくり休めますね。」

 

光太郎「そうだね。 まぁ、ちょっと狭いけど…」

 

ルペラ「ふふっ、そうですね♪」

 

ルペラ…笑った… 今、確かに笑った。

 

おしとやかに…笑った。

 

…可愛い。

 

ルペラ「? どうかしましたか? 私の顔に、何か付いていますか?」

 

えっと、ホクロが付いてる。

 

光太郎「いや、良い笑顔だな…って思ってさ。………ん?」

 

んー… あ。

 

逆だ。 伝えたい言葉と、胸に秘めておきたい言葉とが逆になってしまった…

 

ルペラ「そう…ですか…? 褒められるのは…嬉しいです…」

 

光太郎「そっか… 良かった。」

 

顔が紅くなってる…ダメだ…可愛い!

 

ルペラ「その… ニホンオオカミ様、大丈夫ですかね。」

 

光太郎「そうだね、ちょっと様子見て来よっか?」

 

確かに、ニホンオオカミが部屋を出てから、大分経った気がする。

 

ルペラ「そうですね。 何か困っているのなら、手助けする事が出来ますからね。」

 

 

光太郎「あ、ルペラは残ってて? 入れ違いは防ぎたいし、怪我がやっと治ってきているから。 無理はしないでね。」

 

 

ルペラ「…はい。 お気遣い、ありg

 

ニホ「ただいま! 遅れてごめん、タイリクオオカミに会っちゃって、話してたら遅れちゃった!」

 

どうやら、何事も無かったようだ…

 

良かった。

 

ルペラ「いえ、わざわざ取りに行ってもらい、ありがとうございました。」

 

光太郎「ニホニホ、ありがと。 さ、座ろ?」

 

タイリクオオカミか…

 

何故だろう、異様に懐かしさを感じる。

 

………菜々…?

 

…菜々ちゃん………

 

ニホ「これが、ルペラの分。で、こっちが光太郎の分。 さ、食べよっ!」

 

ルペラ「はい、それでは、頂きます。」

 

ニホ「いただきます!」

 

光太郎「…いただきます。」

 

ジャパリまんじゅう、通称ジャパまん。 何とか、ある程度の事は思い出せた。

 

菜々という、急に頭に思い浮かんだ名前のお陰で、頭の中の突っかかりが取れ始めた。

 

しかし、菜々とは誰なのだろうか…

 

ニホ「? 光太郎、どうしたの?」

 

光太郎「いや、ちょっと考え事してただけだよ。」

 

菜々…タイリクオオカミ……

 

…何の繋がりだ?

 

 

 

 

 

光太郎「ご馳走さまでした。」

 

凄く美味しかった。

 

…空腹も相まってか?

 

ルペラ「…それでは、そろそろ就寝しましょうか。」

 

ニホ「そうだね。今日は色々あって疲れちゃったよ…」

 

全くだ。 目覚めたら森にいて、セルリアンに襲われ、ニホニホに助けられルペラを助け… 濃い1日だなぁ…

 

光太郎「寝ようか。」

 

 

 

 

 

 

光太郎「それじゃ、お休み。」

 

ニホ「お休み!」ルペラ「お休みなさい、光太郎様。」

 

 

 

 

 

 

とは言ったものの、眠れない。

 

頭の中の突っかかりが取れた事で、ある程度の記憶が甦り始めた。

 

それでも曖昧な状態で…

 

色々な事を考えてしまう。

 

その結果、頭が冴えてしまった…

 

どうしようか… 流石に寝ないと不味いか?

 

 

ニホ「光太郎…眠れないの?」

 

光太郎「あ…ごめん、起こしちゃった?」

 

ニホ「ううん、大丈夫だよ。私、夜でも活動するから。」

 

光太郎「そっか… 実はさ、寝ようと思っても、色々考えちゃって…」

 

ニホ「悩み事があるの? 相談に乗るよ?」

 

光太郎「……目覚めた時、知人が誰も周りに居なくて… すっかり景色も変わって… 記憶も曖昧で……」

 

最悪だ… こんな愚痴を吐いてしまった…

 

ニホ「…寂しいの?」

 

光太郎「……。」

 

バレバレだな…

 

ニホ「…少しでも、私達が光太郎の寂しさを和らげられたら、いいな……なんてね。」

 

光太郎「ニホニホ…泣いてるの?」

 

何故…泣いている?

 

ニホ「光太郎こそ… 私達は、独りぼっちの寂しさは、分かってるつもりだからさ…」

 

….まさか、二人共……

 

ニホ「さ、寝よ。 明日は早いよ。」

 

そう言う彼女の顔には、何処か哀愁……というよりも哀傷が漂っていた。

 

光太郎「…お休み。………ありがと。」

 

 

 

 

 

俺は、二人に挟まれる形で寝たが、二人の寝息を聴いていると、いつのまにか寝ていた。

 

ニホニホとルペラのお陰…だな。

 

 



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Ep.6「来た時よりも、美しく」

遅れてしまい、申し訳ありませんでした。

こんな作者ですが、これからもどうか宜しくお願いします。


光太郎「………ん」

 

…朝だ。

 

朝焼けが見える。

 

 

昨日の夜は、ニホニホに助けられた。

 

そして、俺にとっての英雄は……

 

ニホ「………」

 

寝てる。 ルペラも…寝てる。

 

…暇だ。早く起き過ぎたか?

 

けど、今二度寝したら昼になってしまう気がする。

 

どうしよっかな…………

 

 

 

 

 

ニホ「…きて、起きて…起きて!」

 

光太郎「おぉう、おはよ。ニホニホ。 あれ、ルペラは?」

 

何だかんだで寝落ちしてしまったらしい…

 

ニホ「あぁ、ルペラなら帰る手続き?してるよ?。」

 

光太郎「そっか。 あ、ニホニホ、昨日の夜はありがとね。 お陰で、ぐっすり眠れたよ。」

 

ニホ「えへへ… また悩みが出来たら相談してね?」

 

光太郎「ありがと、助かるよ。」

 

本っ当に助かる… 今度、改めてお礼を言おう…

 

ニホ「あ、ベッドの位置直さないと。」

 

光太郎「そっか… 手伝ってくれる?」

 

ニホ「うん!」

 

 

 

光太郎「あ゛ぁ゛… 昨日の痛みがぁ…」

 

ニホ「大丈夫?」

 

光太郎「あぁ、大丈夫大丈夫。 ついでに、軽く部屋の掃除をしとこっか…」

 

ニホ「うん、私、手伝うからさ、無理…しないでね?」

 

光太郎「善処するよ。」

 

善処するとは言ったが、掃除に夢中になるにつれ、身体を気遣う事を忘れてしまう事は、正直なところ明白だった。

 

 

 

 

ルペラ「お待たせしました。 あっ、お部屋、整えてくださったのですね。 それに、前よりも綺麗になってる…」

 

ニホ「そうなの! 前から綺麗だったけど、もっと綺麗にしようって思って頑張ったよ!」

 

光太郎「掃除してて思ったんだけど、アリツさん、しっかり部屋の手入れしてるな…って。」

 

ルペラ「流石アリツカゲラ様ですね… あ、そういえば、朝食を頂けるそうですよ。」

 

ニホ「やったー!」

 

光太郎「至れり尽くせりだな…。」

 

サービス精神満載だな…

 

 

 

 

アリツ「あ、おはようございます! 良く眠れましたか?」

 

光太郎「はい、お陰様で。」

 

アリツ「朝食が出来てますよ。 こちらです。」

 

 

 

 

 

?1「…ん?」

 

?2「どうかしましたか? 先生。」

 

?1「いや、ちょっと懐かしい匂いがしてね。 昨日来たニホンオオカミって子からも、同じ匂いがしたけれど…」

 

?2「懐かしい匂い?」

 

?1「あぁ… かばんの…ヒトの匂いがしてね。 ん? 匂いがどんどん強く…?」

 

 

光太郎「ここかぁ…… あ、おはようございます。」

 

?1「あ、あぁ。おはよう。私は作家のタイリクオオカミだ。 宜しく、」

 

?2「オオカミ先生の助手、アミメキリンよ。 あなた達は……ライオンとトラとチーターね?」

 

光太郎「…ん?」ニホ「へ…?」ルペラ「え…?」

 

何か………ヤバい。

 

しかも、何故ライオンとトラとチーター?

 

タイリクオオカミ「キリン…そこの茶髪の子がニホンオオカミだよ。」

 

キリン「じゃあ、残りの二人は?」

 

ルペラ「グアダルーペカラカラ、ルペラです。」

 

光太郎「恐らくヒトの、秋月 光太郎です。」

 

キリン「…そうだったのね。だから懐かしい匂い…」

 

光太郎「懐かしい匂い?」

 

二人は前に、彼女に会っているのか?

 

オオカミ「あぁ、少し前… かばんというヒトが居てね。 かばんはサーバルと旅をしていて…… 今は島の外に、旅に出ているんだよ。」

 

アリツ「かばんさんとサーバルさんは、本当に仲が良くて…」

 

キリン「二人のお陰で、先生の助手になれたの。」

 

光太郎「かばんさん……」

 

そんな凄いヒトが…

 

俺は…ヒトなのか?

 

 

アリツ「あ、朝食持ってきますね。」

 

 

 

 

 

 

光太郎「至れり尽くせりで…本当にありがとうございました。」

 

アリツ「いえいえ、私達も、楽しい会話が出来て良かったです!」

 

キリン「あなたはグアダルーペカラカラ…覚えておくわ。」

 

ルペラ「はい、覚えていて下さいね、アミメキリン様。」

 

オオカミ「ニホンオオカミ、良い仲間に囲まれているな。 本当に楽しそうだよ。」

 

ニホ「うん! 凄く楽しいよっ! タイリクオオカミも、良い仲間に囲まれてるね。」

 

アリツ「またいつか、立ち寄って下さいね!」

 

光太郎「はい。 皆さん、お元気で。」

 

キリン「またね〜」オオカミ「またな!」

 

 

 

 

 

 

ロッジ…当分行けないから、ちょっと散策しても良かったかな……

 

 

 

ニホ「楽しかったね!」

 

光太郎「あぁ、特にアミメキリンさんが賑やかだったね。」

 

ルペラ「光太郎様、次はどちらへ向かうのですか?」

 

光太郎「そうだね… かばんさん…は、何処からロッジに来たんだっけ…」

 

ニホ「えっとね…… タイリクオオカミが、ゆきやまちほーからって言ってた気がするよ。」

 

光太郎「そうか… ありがと、ニホニホ。 それじゃ、次は雪山地方だな。」

 

雪山…寒そうだな……

 

 

 

 

 

 




一応、書いておきます。

この作品は、決して、けもフレ2を叩く目的で書いた訳では無いので、そこの所は、宜しくお願いします。


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Ep.7「マイナス40度位の戦い」

-雪山地方道中-

 

 

ニホ「ルペラ、脚は大丈夫?」

 

ルペラ「えぇ、お二人のお陰で万全です。」

 

光太郎「もし、また痛み始めたら言ってね?」

 

そうだ、ルペラはつい昨日、脚を骨折していたんだ。

 

それなのに、もう歩ける位に回復している…

 

ルペラ「はい、そうさせてもらいます。」

 

ニホ「なんか… 肌寒くなって来たね……」

 

光太郎「そう言われると… 寒くなって来たな。」

 

ルペラ「山の天気は変わり易いので、そろそろ寒さを凌げる場所を探した方が良いですね…」

 

光太郎「そうだね… よし、急ごう。 もしかしたら、寒さを凌げる場所が見つかるかもしれない…」

 

寒い…風邪引く……

 

 

-雪山地方-

 

 

ニホ「そういえば…」

 

ルペラ「どうかしましたか?」

 

ニホ「ゆきやまにはね、温泉宿?が有るって聞いた事があるの。」

 

光太郎「今度は温泉宿か…」

 

温泉… やっと頭と身体を洗える………

 

 

-温泉宿付近-

 

 

光太郎「寒い…」

 

ニホ「耳が痛くなってきたよぉ…」

 

…どっちの耳だ?

 

ルペラ「吹雪いてきましたね…」

 

…不味い、凍る…

 

 

?「自分の住処が恋しいだろうね、光太郎! でも、自業自得というものだ。」

 

光太郎「誰だ、お前は?」

 

?「地球を凍らせる為にやって来た、ポ○ル星人だ。」

 

光太郎「…何が目的だ!」

 

○ール星人「この地球に、3度目の氷河期をもたらしに来たのだ。」

 

光太郎「何…そんな事、この俺が許さん………」

 

 

 

 

 

 

 

 

-温泉宿-

 

 

ルペラ「起きて下さい! 起きて下さい! お

 

光太郎「はぁ!!………ん? ここは? ポー○星人は?」

 

ホ○ール星人…何者だ?

 

ニホ「光太郎! 良かったぁ……」

 

?1「やっと気付いたのね。 大丈夫?」

 

?2「ゆきやまで、そのまま寝ると死んじゃうよ。」

 

ニホ「此処は温泉宿。此処に来る途中で光太郎が倒れて、たまたま来た二人に助けられたんだよ!」

 

光太郎「あ、ありがとうございます。…あの、お名前は?」

 

?1「私はギンギツネ。こっちの子は、キタキツネ。」

 

キタキツネ「…よろしく。」

 

光太郎「…助けて頂き、本当にありがとうございました。」

 

キタキツネ「今はコンテニュー出来ないよ….」

 

ギンギツネ「あなたそれ、げぇむの話でしょ…で、どうして無茶して雪山を登ったの?」

 

光太郎「かばんさんというヒトの事が知りたくて、そして自分の記憶を取り戻す為に…」

 

キタキツネ「かばん…」

 

ギンギツネ「かばんはね、本当に優しくてね…」

 

ルペラ「かばん様、素晴らしいお方ですね。」

 

光太郎「…そうだな。」

 

俺は……そんなに素晴らしいヒトなのか?

 

自分が本当にヒトなのか、だんだん不安になってきた…

 

 

 

ギンギツネ「あ、あなた達、冷えてないかしら? お風呂入る?」

 

ニホ「やったー! 入る!」

 

ルペラ「御言葉に甘えて…」

 

 

 

不味い事になった。

 

考えてもいなかった。

 

…どうしよ

 

 

 

 




…好き放題させてもらいました。



すみませんでした。


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Ep.8「湯煙Utopia」

ギンギツネ「あなたは?」

 

光太郎「え、あ…」

 

どうしたら良い?

 

一応、俺は男だ。 凄く抵抗があるぞ…

 

これは…

 

 

 

いや、もしかしたら男女で分かれているかもしれない。

 

……一か八か。

 

光太郎「あの、男湯って有りますか?」

 

ギンギツネ「おとこゆ?……一応、お風呂は二つあるけど、片方はお湯が出ないから…実質お湯は一つだけよ。」

 

…あ、不味い。詰んだ。

 

 

…けど、寒い。風邪引く。

 

 

 

………背に腹は変えられない…か。

 

 

 

 

 

-脱衣所-

 

 

え……

 

ルペラ「…どうしたのですか? 光太郎様。」

 

光太郎「あの… 結構普通に服…その…」

 

ニホ「光太郎、どうしたの? 顔赤いよ?」

 

光太郎「いや、何でもない…よ。うん。」

 

………早く湯船に浸かろう。

 

 

 

 

 

 

見るな見るな股に注目するな……

 

 

-湯船-

 

 

光太郎「あぁ〜…」

 

温い… 温泉なんて何年振りだ?

 

…あれ? なら、今まではどうやって身体を洗っていたんだ?

 

……まぁ、今は良いか。

 

ニホ「光太郎、良い顔してるね…」

 

光太郎「あぁ、お陰様で。」

 

案外、入ってみたら気にならないな…

 

…気にしてないのか。

 

ルペラ「良い雰囲気ですね…」

 

光太郎「そうだねぇ… ぷっ…」

 

ルペラ「どうか…しましたか?」

 

光太郎「いや、何でもぉ…無いよぉ。」

 

ダメだ…言えない。

 

二人共、髪が濡れて…こう…ぺたーんとしてて…

 

かわいい。

 

 

ヌートリア「ねぇ、あなた達、何処から来たの?」

 

ニホ「森林の方からね…」

 

カピバラ「森林…遠い所から来たねねね…」

 

ルペラ「そう言われると、確かに…」

 

光太郎「結構歩いたなぁ…」

 

と、湯に浸りながら、想い出に浸っていた。

 

想い出に浸るきっかけとなった二人……

 

…誰?

 

その場の雰囲気のまま、話していたが…

 

恐るべし、温泉。

 

 

 

-受付付近-

 

 

ギンギツネ「どうだった? お風呂、気持ち良かった?」

 

ルペラ「はい、とても暖まりました。」

 

ニホ「この服、何か良いね。 何ていうの?」

 

キタキツネ「浴衣だよ。 お風呂に入った後に着ると、涼しくて気持ち良いよ。」

 

光太郎「だからか。凄くしっくりくる。」

 

…あれ? 此処、温泉“宿”だな……

 

日帰り出来るのか?

 

……帰る場所は無いけどな。

 

キタキツネ「あ、君、ヒトなんだよね。 …ちょっと来て…」

 

光太郎「あ、はい。あ、引っ張らないで危ない危ない転ぶ危な転ぶ」

 

ニホ「あ、待ってぇ!」

 

 

 

ギンギツネ「んもぅ、ギンギツネったら…」

 

ルペラ「キタキツネ様、とても嬉しそうですね。」

 

ギンギツネ「きっと、誰かと一緒に“げぇむ”が出来るのが嬉しいのかもね。」

 

ルペラ「ギンギツネ様はキタキツネ様と…げぇむ…ですか? げぇむをした事は無いのですか?」

 

ギンギツネ「たまにやるけど、最近はお客さんが多くてね、今は全然居ないけど… 構ってあげたいけどね…」

 

ルペラ「そうですね… 他のフレンズ様を誘って、接客を手伝ってもらうのはどうでしょうか?」

 

ギンギツネ「そうね… 有りかもね。 ありがと、誰か誘ってみるわ。」

 

ルペラ「お役に立てて、光栄です。」

 

ギンギツネ「そういえば、お仲間について行かなくて良いの?」

 

ルペラ「そうですね… ギンギツネ様も、いらしてはどうですか?」

 

ギンギツネ「え、わ、私も?」

 

ルペラ「たまには息抜きも必要ですよ。」

 

ギンギツネ「そう…かもね。 ありがと。」

 

 

 

 



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Ep.9「久し振りのGAME!」

-キタキツネに連れて行かれた場所-

 

 

光太郎「ここは…?」

 

様々な機械から、それぞれの音楽が流れている。

 

混沌としている。と言ってしまえばそれまでだが、妙にしっくりくる。

 

この雰囲気、なんだか懐かしい…

 

キタキツネ「げぇむせんたぁだよ。」

 

ゲームセンター… 何故だろう、凄く良い響きに思える。

 

ん? あれは………

 

ニホ「どうしたの、光太郎?」

 

周りにある、様々な機械よりも、凄く魅力的と言うか…惹かれるものがあると言うか…

 

俺は、一つのゲームに釘付けになっていた。

 

光太郎「あ、いや、何か気になっちゃってね…」

 

キタキツネ「ん? けもんライド、やる? カードあるよ。」

 

ニホ「え、良いの!? やろ、光太郎!」

 

光太郎「あ、あぁ、やろう!」

 

凄く楽しみだ…

 

 

 

 

 

 

ゲーム内容は、とてもシンプルだった。

 

まず、フレンズの描かれたカード2枚を機械で読み込む。

 

次に、スロットを止め、スロットに書かれた数値の合計が多い方が先行を取れる。 ちなみにキタキツネ達は、数字の意味は知らず、数字の形で強弱を覚えたらしい。

 

微笑ましい…

 

その後、相手に攻撃をし、持ち点を削るのだが…

 

攻撃というよりも、「相手に触る」の方が正しいか。

 

…最終的に、相手の持ち点を削りきった方の勝ち。

 

というゲームだ。

 

 

 

第1回戦は手本を兼ねて、俺vsキタキツネとなった。

 

 

始めは手も足も出ない状態だったが、ニホニホの懸命な応援のお陰で勝つ事が出来た。

 

キタキツネ「むぅ〜、光太郎、強い… 次は、僕とニホンオオカミね。」

 

ニホ「頑張るよ!」

 

おぉ…次はニホニホかぁ。

 

俺は、どちらを応援したら良いか分からない状態でいた。

 

…途中でニホニホにアドバイスはしたが。

 

その甲斐もあり、ニホニホの動体視力の凄さもあり、ニホニホはキタキツネを破った。

 

キタキツネ「二人共…強い。……二人で戦ってみて?」

 

ニホ「…手は抜かないよ、光太郎!」

 

光太郎「当たり前だよ… 行くぞ、ニホニホ!」

 

 

 

 

 

 

光太郎「負けた……流石の動体視力だな。ニホニホ。」

 

ニホ「光太郎こそ、最後の最後まで、ほぼ互角だったから結構焦ったよぉ。」

 

キタキツネ「…ありがとう。凄い戦いが観れたよ。」

 

ニホ「こっちこそ、キタキツネが勧めてくれたから、楽しい時間を過ごせたよ。ありがと!」

 

光太郎「俺からも、ありがとう。 懐かしい気持ちになれたよ。」

 

…また、やりたいなぁ。

 

 

 

ルペラ「ニホンオオカミ様、光太郎様、どうですか?」

 

ニホ「あ、ルペラ! 楽しいよっ!」

 

ギンギツネ「キタキツネェ、あの…えっと……」

 

キタキツネ「ギンギツネもやろ?」

 

ギンギツネ「え、あ、や、やりましょ!」

 

ルペラ「良かったですね、ギンギツネ様♪」

 

ギンギツネ「えぇ♪」

 

光太郎「?」

 

あれ? この二人、凄い仲が良くなってる…

 

良いねぇ…

 

 

 

 

-宿受付-

 

 

ギンギツネ「今日はありがとう。 楽しかったわ。」

 

光太郎「こちらこそ、楽しかったです。 それに、命を助けていただき、本当にありがとうございました。」

 

あの時助けが来なかったら、確実に息の根が止まってたな……

 

ギンギツネ「けど、本当に泊まって行かなくて良いの?」

 

光太郎「はい、まだ行きたい所があるので。」

 

本当の所、ルペラからの提案で、二人での時間を作ってあげたい。との事。

 

粋だねぇ…

 

ニホ「キタキツネ、げぇむ楽しかったよ!」

 

キタキツネ「うん、僕も楽しかった。…またやろ? 光太郎も。」

 

ニホ「うん!」

 

光太郎「喜んで。」

 

ルペラ「どうですか? 息抜き、出来ましたか?」

 

ギンギツネ「えぇ、久し振りに出来たわ。 ありがとね。 それで、あなた達、次はどこに行くのかしら?」

 

光太郎「あ…確か、水辺地方だっけ?……だよね?」

 

ニホ「そうだよ?」

 

キタキツネ「みずべちほー… かばん達も、そこから来たよね。」

 

ルペラ「はい、私達は、かばん様達が巡った地方を、逆からですが巡っているので。」

 

ギンギツネ「…最近は、セルリアンが多いから、気を付けないと危ないわよ。」

 

ニホ「でも…何で最近、セルリアンが多いんだろ…」

 

キタキツネ「うるとらぞーんが開いたんだよ…」

 

ウルトラゾーン!?

 

…ウルトラゾーン………

 

 

ギンギツネ「あなた、それげぇむの話でしょ…」

 

光太郎「…まぁ、取り敢えずセルリアンには気を付けます。旅は終わっていないので。」

 

ギンギツネ「その心構えよ。 あ、途中まで送るわよ? 途中で倒れられても困るしね…」

 

ルペラ「ありがとうござます。」

 

ニホ「ありがと!」

 

光太郎「宜しくお願いします…」

 

流石に、二度も倒れるのは勘弁だ。

 

…次、雪山で倒れたら、この世に帰ってこない自信がある。

 



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Ep.10「夢の翼を整えて」

-水辺地方入り口-

 

 

光太郎「大分、暖かくなってきたね。」

 

ニホ「本当だね。 キタキツネとギンギツネは寒くなかったのかな…」

 

ルペラ「そうですね… お二人は慣れているとは思いますが…」

 

あの二人とは、水辺地方の近くで別れた。

 

道中、セルリアンを見つけたが、向こうも気付いていないらしく、下手に手を出して返り討ちに遭うのも嫌なので、スルーさせてもらった。

 

怖かった。

 

光太郎「まぁ、服装も暖かそうだったし、大丈夫だと思うよ。」

 

ニホ「…?」

 

ルペラ「どうしました? ニホンオオカミ様。」

 

ニホ「あっちの方から悲鳴が聞こえた気がして…」

 

ニホニホが指差した先には、何やら大きな建造物が見えた。

 

…が、悲鳴の主は確認出来ない。

 

光太郎「……駄目だ、見えない。」

 

ルペラ「………セルリアンですね。 しかも、かなり大型の…」

 

ルペラの視力…凄いなぁ…

 

…何て感心してる場合じゃない。

 

光太郎「セルリアンが居て、悲鳴が聞こえる…と。 不味いなぁ… ニホニホ、ルペラ! 行こう!」

 

ニホ「うん!」ルペラ「はい!」

 

 

-ライブステージ-

 

 

イワビー「何だよ! 最近、本っ当にセルリアンが多いなぁ!」

 

マーゲイ「今すぐハンターを呼んできます!」

 

コウテイ「任せたよ、マーゲイ。」

 

プリンセス「私達が時間を稼ぐからっ!」

 

ジェーン「しかし…かなり大きいですね。」

 

フルル「怖ーい…」

 

 

セルリアン「………」

 

 

光太郎「ゼェ…ゼェ……待て!」

 

プリンセス「えっ!?」

 

ニホ「みんなは避難して!」

 

ルペラ「ここは私達が。」

 

コウテイ「えっ あ、ありがとう。」

 

 

セルリアン「……」

 

光太郎「…始めようか。」

 

何だあの見た目… 蛸?

 

ルペラ「…石は、目の真下ですが、かなり奥にあります!」

 

ニホ「厳しいなぁ… あ、ルペラ危ない!」

 

セルリアン「!!!」

 

ルペラ「ひゃっ!」

 

光太郎「ルペラ大丈夫か!?」

 

ルペラ「えぇ、何とか。」

 

あの腕を使って攻撃してくるか…

 

それが…8本か。

 

これ…どうする?

 

………仕方ない。

 

 

光太郎「ルペラ! 俺を抱えて、ヤツに突っ込んでくれ! 地面スレスレで!」

 

ルペラ「それは危険です!」

 

光太郎「大丈夫! そこはルペラのさじ加減だからさ。 ニホニホは…」

 

 

 

ニホ「分かった!」

 

セルリアン「……?」

 

この作戦なら、いける。

 

 

光太郎「ルペラ、ニホニホ最高速度で頼む!」

 

ルペラ「はい!」ニホ「分かった!」

 

今、セルリアンと俺を抱えたルペラ、そしてニホニホは一直線上に並んでいる。

 

 

ルペラの最高速度なら、かなり深く“こいつ”が刺さる。

 

ルペラは、本当に地面スレスレで飛んでくれた。

 

そのお陰で、セルリアンの視野から外れたと思われる位置のまま、セルリアンに近づくことが出来た。

 

ルペラ「そろそろです!」

 

光太郎「……トゥァ!!」

 

刺さった。 予想通り、石には届かなかった。が…

 

その為の追撃だ。

 

ルペラは、俺が“鉄パイプ”を刺したのを合図に、真上へ急上昇した。

 

セルリアンは、ルペラと俺を視線に捉える為、その巨体ごと天を仰いだ。

 

…セルリアンに刺さっている鉄パイプの先端は、ニホニホの方を向いていた。

 

光太郎「ニホニホ、今だよ!」

 

ニホ「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! えいっ!!!」

 

期待通りだ。

 

セルリアンに突き立てられた鉄パイプに、ニホニホの渾身の一撃がお見舞いされた。

 

石にギリギリ届かなかった鉄パイプが、ニホニホの一撃で、より深く刺さり石に届いた。

 

セルリアン「!!!?」

 

 

 

 

 

 

セルリアンは、眩い光を放ちながら砕け散った。

 

砕け散った衝撃で、刺さった鉄パイプが俺らの方に飛んで来た時は、本気で死を覚悟した。

 

ルペラが何とか避けてくれたから良かったが、間に合わなかったら………

 

…止めよう。

 

 

ニホニホには、サンドスターで手を保護してもらった。

 

サンドスター…何でも有りだな。

 

 

 

 

プリンセス「助けてくれて、ありがとう。 あなた達、凄いわ!」

 

光太郎「あ、ありがとうございます。 怪我はありませんか?」

 

コウテイ「あなた達のお陰で、みんな無事だよ。本当にありがとう。」

 

ジェーン「先程使っていたのは….どうぐですか?」

 

イワビー「どうぐを使うかぁ…… なぁ、光太郎…だったか?…… ヒトか?」

 

光太郎「…はい。」

 

…近い。顔が近い。

 

……圧が…

 

 

 

ジェーン「光太郎さんも、ヒトですか。」

 

フルル「かばんちゃんと一緒だねぇ。」

 

ルペラ「かばん様も…ここに?」

 

イワビー「あぁ、かばんのお陰で、俺らがPPPでいられたんだよな。」

 

ニホ「かばんさん…か。」

 

 

 

マーゲイ「はぁ…はぁ… セルリアンが弾けたのが見えたので、戻ってきたら…」

 

コウテイ「ありがとう、マーゲイ。 心配かけてごめんね。」

 

マーゲイ「いえ、皆さんの為ならば。……あ、あなた達、ありがとうね。 今日はもう暗いから、泊まっていくと良いわ。」

 

プリンセス「そうよ。、私達を助けてくれたんだもの。」

 

光太郎「…それでは、お言葉に甘えて。」

 

 

 

あ、鉄パイプ拾ってこないと……



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Ep.11「飛び立てない私に、貴女が翼をくれた」

なんやかんやで、PPPの楽屋で一泊させてもらう事となった。

 

これ…本当のファンにとっては最高の幸せなのではないか?

 

…確かに、俺だって泊めてくれるだけでも幸せなのだが。

 

 

-PPP楽屋-

 

 

プリンセス「成る程ねぇ… それでみずべちほーに来たのね?」

 

光太郎「はい、少しでも記憶を取り戻すキッカケを見つけたいので…」

 

イワビー「なぁ、そのどうぐ…何て言うんだ?」

 

この圧が強めの元気っ娘、イワビーが指した物は…

 

あの時、殺意剥き出しで飛んで来た鉄パイプだ。

 

光太郎「これは鉄パイプ。本来の使い方とは違うけど、セルリアンを倒す時には便利なんだよ。」

 

イワビー「へぇ〜、何かスゲェな! 光太郎!」

 

…鉄パイプが褒められてるのに、俺が嬉しい。

 

……今度、鉄パイプも綺麗にしてあげるか。

 

ジェーン「そういえば、ニホンオオカミさんとルペラさんは、どうして光太郎さんにくっついているんですか?」

 

そういえばそうだ。 この楽屋は決して狭くはない。 寧ろ広い。

 

ルペラ「…どうしてでしょう?」

 

ニホ「無意識だったから…よく分かんないけどや。」

 

無意識…か。

 

そう語る二人の顔には、何処か物哀しさを感じた。

 

 

まぁ、その後も雑談が続き、色々と情報が手に入った。

 

まず、各地でセルリアンが大量発生していること。

 

大量といっても、今までと比べて…らしい。

 

次に新たな情報を得る為の手段。

 

どうやら、もう少し移動すると“ジャパリ図書館”という場所があるらしい。

 

そこに居る博士と助手に聞けば、大体の事は解決する…らしい。

 

 

 

翌日には、PPPのライブがあるとの事。

 

どうやら、ライブの準備中にセルリアンが出たらしい。

 

幸い、機材も破壊されず、怪我も無かったので、予定通り開催するそうだ。

 

 

予定では、俺達は明日の早朝に出発する事になっていたが、PPPメンバーやマネージャーであるマーゲイからの誘いで、明日のライブを特等席で見せてもらえる事になった。

 

…何だか申し訳なくなってしまう。

 

 

 

ということで、コンディションを整える為にも早く寝る事になった。

 

 

…まさか、床に厚めのマットを敷いて寝るとは思わなかった。

 

寝るのに支障は無いので、気にしない事にした。

 

 

 

皆が寝静まった頃、俺は……

 

 

…また眠れなくなってる。

 

あの時のニホニホとルペラの顔が、頭から離れない。

 

とりあえず、夜風に当たればマシにはなるか…

 

皆が起きない様、忍足で外へ向かった。

 

まぁ、ステージの端に座るだけだが。

 

 

-ステージ-

 

夜風が気持ちいい。 このまま、気持ちも晴れれば良いのだが…

 

 

二人共…もしかして、絶滅した原因って……

 

イワビー「何やってんだ?」

 

光太郎「!! あぁ、イワビーさん。 起こしてしまいましたか?」

 

イワビー「イワビーだけで良いぜ。……光太郎、悩みがあるんだろ?」

 

光太郎「…バレちゃいましたか。」

 

イワビー「俺で良かったら、悩みを聞くぜ?」

 

光太郎「…ニホニホとルペラは、どんな気持ちで俺について来ているのか…なんて。」

 

イワビー「そうか…」

 

光太郎「二人共、絶滅していて… もしかしたら原因はヒトではないかって… 嫌々ついて来てるんじゃないかって…」

 

イワビー「なぁ、そこそこ長い間、一緒に旅してんだよなぁ。」

 

光太郎「…はい。」

 

イワビー「その間、お前は何を見てきたんだ?」

 

光太郎「えっ…」

 

俺が見たモノ…

 

イワビー「…二人の笑顔、何回見たんだ?」

 

光太郎「…それは…」

 

数えられない。 何度も何度も、二人の笑顔を見た。 その度に元気を貰った。

 

イワビー「お前の事を話してる時の二人、本当に楽しそうだったぞ。」

 

光太郎「二人共…」

 

イワビー「嫌々ついて来てるなら、俺達にも、お前にも、あんな眩しい笑顔は見せないと思うぜ。 …お前が、二人の笑顔を守ってやれよ、な?」

 

光太郎「…はい。」

 

イワビー「分かったんなら、そんな湿気た顔すんなって。」

 

光太郎「そうですね…はい!」

 

…イワビー、力強い。

 

ファンになってしまう……

 

 

 

イワビー「さ、戻…」

 

光太郎「どうしました?」

 

イワビー「…セルリアンだ。」

 

光太郎「えっ…どこですか?」

 

イワビー「多分、あの茂みの中だ。 光太郎、力貸してくれるか?」

 

光太郎「はい、勿論です!」

 

イワビー「今夜は、お前が俺の…俺がお前のフリッパーだからな。」

 

フリッパー…マーゲイさんから聞いたが、PPPのファンの事をフリッパーと呼ぶらしい。

 

…イワビーさん、良いフレンズさんだ。

 

イワビー「来るぜぇ!」

 

セルリアン「!!!」

 

イワビー「うぉぉ…お…?」

 

光太郎「あれ…?」

 

小さい。

 

夕方に出た大型のセルリアンと同じ様な蛸型だが…

 

 

イワビー「ま、まぁ、やるか。」

 

光太郎「…えい。」

 

セルリアン「!」

 

 

 

 

 

イワビー「何か…疲れたな。」

 

光太郎「寝ますか。」

 

イワビー「…だな。」

 

 

 

小さかったなぁ…

 

鉄パイプ無かったから、そこら辺に落ちてた木の棒で叩いたら弾けたし。

 

 

…そんな話をしながら、イワビーと楽屋に戻った。




…はい、内容を見ての通り、イワビー大好きです。


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Ep.12「モノクロの翼で染め上げて」

ニホ「おーい、起きてー! 朝だよー!」

 

光太郎「おぉ、おはよ。」

 

昨日の夜は、かなり良く眠れたらしい。

 

精神面でスッキリしたからだろうか?

 

ルペラ「おはようございます、光太郎様。 PPPの皆様は外ですよ。」

 

光太郎「あ、ありがと。」

 

ニホ「朝ごはん食べよっ!」

 

朝ごはん…? ジャパまんは持ってきていない筈……

 

ルペラ「PPPの皆様が、用意してくださったんですよ。」

 

何て親切なんだ… 何だか申し訳なくなってくるな。

 

イワビー「よっ! 光太郎、元気か?」

 

光太郎「イワビーさん! お陰様で。」

 

ニホ「お陰様で?」

 

ルペラ「昨日の夜、何か有ったのですか?」

 

そうだ、二人には心配をかけたくないから、昨日の夜の事は敢えて言っていないが…

 

今は、かえって二人に言わない方が心配をかけてしまう様だ。

 

光太郎「実は…」

 

 

 

 

 

イワビー「まぁ、昨日の夜にこんな事が有ったんだぜ。」

 

自分では上手くまとめられなかったので、途中でイワビーにバトンタッチした。

 

…自分の事を、他のヒト?が説明しているのを聴いていると、無性に恥ずかしくなってくる。

 

恥じる事では無いが、それでも何となく恥ずかしいというか…照れる?

 

ニホ「私達なら、心配しなくて大丈夫だよ?」

 

ルペラ「そうですよ、もし心配があっても言って頂ければ…」

 

イワビー「な、だから言ったろ?」

 

光太郎「…はい、どうやら要らない心配だった様ですね。」

 

ルペラ「それに、私…私達は嬉しいんです。」

 

光太郎「…えっ?」

 

ニホ「だって、私達の事を思って考えて…悩んでくれたんでしょ? 嬉しいに決まってるよ。」

 

光太郎「ニホニホ…ルペラ……ありがとね。」

 

不味い、目頭が熱く…

 

イワビー「泣いても良いと思うぜ。 その分、後で笑えれば良いんだぜ。」

 

コウテイ「そうだよ、泣かない事だけが強い訳じゃないよ。」

 

光太郎「コウテイさん!?」

 

プリンセス「あなた達の話は聴かせてもらったわ! 悩みなら、私達も聴くのに…」

 

マーゲイ「PPPのお悩み相談… 良いですねぇ…… じゃなくてっ! 情報なら私が集めますからね!」

 

ジェーン「光太郎さんは、仲間想いなんですね!」

 

照れる… そんなに言われると照れる!

 

フルル「光太郎ちゃん、顔赤いねぇ〜」

 

…ん? 光太郎“ちゃん”!? ちゃん付け…

 

ニホ「あ、本当だ。 えへへぇ…光太郎?」

 

光太郎「あ、いや… その……」

 

ルペラ「…光太郎様♪」

 

あれ〜? この状況は喜んで良い…のか?

 

…良いんだな。

 

 

 

 

 

プリンセス「さぁ、そろそろライブが始まるわよっ!」

 

コウテイ「みんな、準備は出来てる?」

 

ジェーン「はい! いつでも行けます!」

 

フルル「フルルも行けるよぉ〜」

 

マーゲイ「光太郎さん達は、あちらの扉から…」

 

 

イワビー「なぁ、光太郎。」

 

光太郎「?」

 

イワビー「……全力で楽しんでくれよなっ!」

 

光太郎「はい!」

 

 

 

 

 

 

まくがあがった



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Ep.13「記憶の足跡辿って」

-ライブステージ-

 

 

ライブ、凄かったなぁ…

 

無論、PPPのメンバーさん達の歌声は凄かった。 感動して涙が出かけた。

 

それに加え、周りからの黄色い声援、手拍子… これらが相まって、彼女達の歌が輝きを増していた気がする。

 

…途中、何度もイワビーと目が合った。

 

カッコよかったなぁ…

 

 

-ライブ終了後、再度楽屋-

 

 

マーゲイ「皆さん、お疲れ様でしたっ!」

 

ニホ「みんな凄かったよ!」

 

ルペラ「私、とても感動しました♪」

 

光太郎「会場の雰囲気との一体感が…最高でした!」

 

上手く言葉に出来ない… 最高だった。

 

プリンセス「光太郎達も、応援ありがとう。 楽しかったわ!」

 

フルル「フルルも楽しかったぁ〜」

 

コウテイ「あなた達も、楽しんでくれた様でなによりだよ。」

 

ジェーン「頑張った甲斐がありましたね!」

 

 

 

 

ルペラ「かばん様達は、何処からこのライブステージに来られたのですか?」

 

プリンセス「確か、図書館からだった筈よ?」

 

光太郎「図書館… そこで、色々と知れるんでしたよね。」

 

もしかしたら、ニホニホ、ルペラとの旅も図書館で終わるのか?

 

…いや、まだ終わらないな。

 

ルペラの新居を探すのも、旅の目的だったしな。

 

マーゲイ「はい、プリンセスさんは、このPPPを結成した時に図書館でアイドルの勉強をしていたんですよ!」

 

勉強熱心だな…

 

 

ニホ「図書館って、本当に色んなことが知れるよねぇ。」

 

イワビー「なぁ…もう行くのか?」

 

光太郎「そうだね… そろそろ行くかな。」

 

イワビー「そっか…」

 

あれ〜… 落ち込んでる?

 

イワビーが落ち込んでる…

 

慰めなきゃ…

 

此処は、今咄嗟に思いついた、誰かの言葉をお借りして…

 

光太郎「…地球は丸いから、またそのうち何処かで会えるよ。」

 

…そう、信じたい。

 

 

イワビー「…だな! じゃ、また会おうな…光太郎!」

 

そう言うと、彼女は俺との距離をひとっ飛びで縮め…

 

 

その腕で俺を包み込んだ。

 

ニホ「おぉ〜」

 

マーゲイ「!!」

 

ルペラ「!!?……」

 

 

 

 

 

 

その後、PPPの皆さんと別れ、図書館への道を歩み始めた。

 

…ルペラが、いつも以上に身体を密着させて来るが、気にしないでおこう。

 

………可愛いなぁ

 

 

-図書館道中-

 

 

ニホ「そろそろ図書館だよ!」

 

光太郎「此処の森、突っ切れないかなぁ…」

 

図書館と思われる大きな建物は見える様になったが、途中で水分補給がてら川に立ち寄ったので、恐らく本来の道から外れたのだろう。

 

まともな道が無い。

 

ルペラ「そうですねぇ… 行けない事は無いですが…」

 

光太郎「よし、行こう。」

 

目的地が見えているんだ。

 

別に急ぐ必要は無いが、それでもなるべく早く行きたい。

 

好奇心故か…

 

 

ニホ「そうと決まれば、早速行こっ!」

 

ルペラ「足元には注意して下さいね。」

 

 

光太郎「痛っ…鉄パイプか…」

 

 

 

-ジャパリ図書館-

 

 

光太郎「ふぅ… やっっと着いた。」

 

ニホ「案外大変だったね… あっ、光太郎、枝が…」

 

そう言うと、ニホニホは俺の頭に付いた枝を取ってくれた。

 

光太郎「お、ありがとね。 さぁてと、博士?に会ってくるかぁ…」

 

俺は期待半分、不安半分で図書館に向かった。

 

 

 

?「ん? 何ですか、何か調べ物ですか?」

 

光太郎「あ、あ……」

 

え、何?

 

何で首が真後ろ向いてるの?

 

えっ、怖い…



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Ep.14「有る物は」

?「どうしたのですか? そんなに震えて。」

 

そろそろ、首の向きを戻してくれても良い気がする。

 

この光景が、頭に焼き付いてしまう前に戻してくれ……

 

……もう間に合わないか。

 

?2「博士、恐らく首の向きで怖がっているのです。

 

博士「あ、そういう事ですか。」

 

そう言うと、博士と呼ばれているフレンズは首の向きを正常(だと思われる)向きに直して、俺の方に向かって来た。

 

博士「で、何か知りたいのですか?」

 

光太郎「あっ、その…」

 

本当なら、首の仕組みについて知りたいが、今は置いておこう。

 

ニホ「あのね、光太郎は自分の事を知りたいんだって。」

 

ルペラ「何か、参考になりそうな資料は有りませんか?」

 

二人共、ナイス代弁。

 

?2「そうですね…. まず、光太郎ですか? お前は自分が何のフレンズかは分かっているのですか?」

 

光太郎「恐らくヒトだと思うのですが…」

 

助手「やっぱり… そこまで知っていて、他に何を知りたいのですか?」

 

光太郎「信じてもらえないと思いますが、俺、フレンズ化する前の記憶が有るんです。少しだけですけど…」

 

博士「それに関しては、希に起きるケースなので気にしなくても良いのです。」

 

光太郎「それで、記憶の中にヒトのだと思われる名前があるんです。 そのヒトの事が分かれば、もしかしたら自分の記憶も…」

 

完全に蘇らなくても、大きなキッカケになるに違いない…

 

助手「博士、光太郎を“あの場所"に連れて行ってはどうでしょうか。」

 

あの場所? 何処に連れて行かれるんだ?

 

博士「そうですね… 光太郎、お前は運が良いのです。さぁ、光太郎、行くのですか? 行かないですか?」

 

えぇ… 何処に行くのかも知らされずに、選択させられるとは…

 

まぁ、答えは一つだ。

 

光太郎「はい、行きます!」

 

ルペラ「光太郎様、大丈夫なのですか? 目的地は知らされてませんよ?」

 

光太郎「まぁ、死ななきゃ大丈夫だよ。」

 

ニホ「博士、助手、何処に行くの?」

 

博士「まぁ、行ってからのお楽しみなのですよ。」

 

助手「それでは、ルペラは光太郎を、私はニホンオオカミを抱えます。 ルペラ、博士に着いて行くのですよ。」

 

ルペラ「了解しました。」

 

そう言うと、ルペラは“嬉しそうに”俺を抱えて、先に飛んでいた博士に向かって行った。

 

凄い嬉しそうだったなぁ…

 

 

その後、直ぐに助手とニホニホが追い付いてきた。

 

ニホニホはニホニホで楽しそうだった…

 

 

 

-図書館付近廃墟-

 

 

博士「あそこなのです。」

 

光太郎「……あれは?」

 

助手「まだパークに多くのヒトが居た頃の施設だと思うのです。」

 

光太郎「まだパークに多くのヒトが居た頃…」

 

確かに、俺とかばんさん以外のヒトの話は聞かない… 更に言えば、俺以外のヒトは目覚めてから一度も見ていない…

 

ルペラ「光太郎様、何か分かると良いですね♪」

 

知りたい事だけが分かれば良いんだが…

 

最悪、知りたくない事実も……

 

博士「そろそろ着陸ですよ。」

 

 

 

-廃墟入口-

 

 

博士「ここが、我々がつい最近発見した施設なのです。 ただ、この扉は開かないのです…」

 

光太郎「この扉… もしかして……」

 

この感じ、何か思い出せた感覚だ。

 

確か左胸の内ポケットに……

 

ニホ「何か分かったの?」

 

光太郎「もしかしたら、“これ”を使えば開くんじゃないかな…って。」

 

博士「それは…かーどきーですか? 我々も本でしか見た事無いのです…」

 

やっぱりか… この施設、何かあるぞ。

 

 

俺は、扉の横にある縦長の溝にカードキーを通した。

 

すると、この重く閉ざされていた扉は、軋みながら開いた。

 

扉が開くと、一斉に明かりが灯り、様々な電子音が辺り一面で鳴り響いた。

 

助手「何なのですか…こんな物、初めて見たのです。」

 

ルペラ「……光太郎様、どうしたのですか?」

 

分からない。 脚が自然に進むんだ。

 

 

 

そうか、そう言う事か。やっと分かった。

 

 

 

その後も、無意識に施設の中を一切の迷い無しに歩き続けた。

 

 

 

そして、辿り着いた場所は小さな扉の前だった。

 

光太郎「……………ただいま。」




…平成最後の投稿です。

遅くなってしまい、申し訳無いです。




あばよ平成。

よろしく令和。


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Ep.15「果たされるべき目的」

令和でも、宜しくお願いします。


博士「光太郎… 何か思い出したのですか?」

 

ニホ「光太郎、今ただいまって… まさか…」

 

光太郎「ニホニホ、ルペラ、俺さ…もしかしたら、この扉を開けたら旅は終わるかもしれない。」

 

ルペラ「という事は、ここで光太郎様の記憶が?」

 

光太郎「もしかしたらだけど…ね。 それじゃ、開けるよ。」

 

只の変哲も無い扉だが、無性に重く感じた。

 

それでも、開けなければならないと云う思いに従い、扉を開けた。

 

光太郎「此処が、俺の……うぅ!」

 

あ…痛い……頭がぁ…あ、あ、あ、あ…

 

 

 

 

 

-個室-

 

 

ルペラ「光太郎様… 光太郎様!」

 

ニホ「ねぇ、光太郎…光太郎…」

 

光太郎「うぅん…… あ、ニホニホ、ルペラ。 あれ、博士と助手は?」

 

ルペラ「あの方達は施設内を散策しています。 光太郎様、体調の方は大丈夫ですか?」

 

光太郎「あぁ… なぁ、ニホニホ、ルペラ。 俺さ、もう二人の知ってる光太郎じゃ無くなってるかも。」

 

…唐突に言ってしまったが、大丈夫だろうか。

 

二人に伝わってくれているだろうか。 俺も、正直混乱している。 何せ部屋に入った瞬間、頭の奥の奥から様々な記憶が溢れかえって来る様で…

 

…恐らく、脳の処理が追い付かなくなったんだろう。 頭痛が来たすぐ後に意識が飛んだ。

 

ニホ「えっ… ねぇ、どういう事?」

 

ルペラ「光太郎様は光太郎様ですよ…」

 

光太郎「…記憶が、大体蘇った気がするんだよ。 だから、もしかしたら、前の様に二人に接する事が出来ないかもしれない。だから…」

 

ダメだ。 言葉が纏まらない。

 

伝えなければならないのに…

 

ニホ「…大丈夫だよ。」

 

光太郎「えっ…」

 

予想外の反応だ。 まさか笑顔が返されるとは…

 

ルペラ「光太郎様は光太郎様。 例え、記憶が蘇って全てが変わってしまっても、私達が思い続ける限り、私達にとっての光太郎様は何時もの光太郎様ですよ。」

 

光太郎「…ごめんな。本当にごめんな。本当に…」

 

謝る事しか出来ない。 本当なら俺が落ち着いて説明するべきなのに、二人の方が落ち着いていて、二人に慰められている。

 

ニホ「あぁ〜、泣かないでよ。…ね?」

 

ルペラ「そうですよ。 そんなに謝らないで下さい。今日は、光太郎様の記憶が蘇った祝うべき日ですから。」

 

光太郎「…ありがとうね。けど、完全に蘇った訳じゃないから、あんまり期待しないでね?」

 

二人には助けられてばっかりだなぁ…

 

いつか、しっかりお礼を言わなければ。

 

光太郎「今夜はさ、此処に泊まっていかない?」

 

ルペラ「えっ、良いんですか♪」

 

光太郎「うん、良いよ。……まぁ、少し狭いけどね。」

 

ニホ「やったー! ありがと、光太郎大好きー!」

 

ルペラ「!?」 光太郎「!?」

 

博士「…何ですか、我々はお邪魔だったのですか?」

 

助手「ヒトが年中発情期というのは、本当だったのですね… まさか、自分の部屋を見つけた途端、二人を泊めるとは…」

 

光太郎「えっ、あっ、違います!違いますって! そういうつもりは無いんですって! ねぇ、ルペラ!? ニホニホ!?」

 

ルペラ「……♪」

 

ニホ「うん?」

 

あ、ダメだこれ。 ニホニホは分かってなさそうで良かった。 ただ…

 

ルペラァ… 満更でもない顔と反応をしないでくれぇ…

 

博士「まぁ、こんなギャグは置いておいて、光太郎の記憶が蘇って何よりです。」

 

助手「これからも順調に蘇る事を、我々は祈っているのですよ。」

 

光太郎「あ、ありがとうございます。」

 

 

 

 

その後、博士達が部屋を出て行った後から、ルペラが急に色っぽくなった事は忘れよう。



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Ep.16「目覚めろ、その記憶」

光太郎「えっと… 改めて、一応ここが、俺の家…です! 部屋の中にある物は基本、全部使ってくれて良いよ。」

 

基本とは言ったが、別に触ったらダメな物は部屋に無い。それに、二人の事だ。危ない事はしないだろう。

 

ニホ「ねぇ、このフカフカのに寝て良い!?」

 

光太郎「ん、良いよ。」

 

……随分と綺麗だな。 誰かが掃除していてくれたのか?

 

…プライバシーは亡き者にされたか。

 

 

 

ルペラ「あの… これって何ですか?」

 

光太郎「あ、それ? 冷蔵庫だよ。」

 

あぁ、記憶が有るというのは、何て気持ち良いんだ。

 

物事に直ぐ対応できる…

 

ルペラ「冷蔵庫…… どうやって使うんですか?」

 

光太郎「あぁ、取っ手を引く………」

 

待て、記憶が戻った今だから思える。

 

これって、何年放置してあるんだ? 中身は大丈夫だろうか…

 

……開けた瞬間、この部屋に居る全員が倒れる可能性は無いだろうか?

 

ルペラ「どうしたんですか? 光太郎様。」

 

光太郎「とりあえず、冷蔵庫は後にしよう。 何が起こるか分からない。」

 

…冷蔵庫はパンドラボックスか何かか?

 

ルペラ「冷蔵庫…危ない物なんですね。」

 

光太郎「まぁ…使い方次第だね。」

 

 

ニホ「ねぇねぇ、コレに写ってるのって誰?」

 

そう言うニホニホが指差す先には、小さな写真立てがあった。

 

その写真には、四人のヒトが写っていた。

 

光太郎「えっとね… あぁ、右からミライさん、園長、俺、カコさんで菜々ちゃんだよ。 皆んな良いヒトでね…」

 

……皆んな、今はどうしているんだろうか。

 

ニホ「光太郎、今とあんまり変わってないね。…不思議だねぇ…」

 

光太郎「本当だよ。 多分、サンドスターの影響なんだろうけど…」

 

…サンドスターの影響?

 

じゃあ、何で俺は今、男なんだ?

 

サンドスター…まだまだ解明されていない事だらけだ。

 

博士「それと…」

 

光太郎「!!?」

 

博士「あんまり大きな声を出すななのです! もっと博士を大切に扱うのです…」

 

ルペラ「それで… どういった御用件で?」

 

博士「そうそう… ルペラ、話が有るので、ちょっとこっち来るのです。」

 

ルペラ「はい… 行って来ます。光太郎様、ニホンオオカミ様。」

 

ニホ「行ってらっしゃい!」

 

光太郎「大丈夫、居なくなったりしないから…」

 

ニホニホと俺が言葉をかけると、ルペラの表情が少し和らいだ。

 

和らいだ所で、博士に連れて行かれた。

 

…変な事されなければ良いが。

 

まぁ、この島の長らしいし、不祥事じみた事はしないだろう。

 

 

ニホ「…行っちゃったね。」

 

光太郎「あぁ……なぁ、ニホニホ?」

 

ニホ「ん、どうしたの?」

 

光太郎「部屋の整理…ちょっと手伝ってくれないか?」

 

ニホ「へへっ、お安い御用だよ!」

 

光太郎「ありがとね。…取り敢えず、鼻を塞いでおいて。」

 

部屋の整理の為に、危険物が有るかどうかの確認をしなければならない。

 

その危険物になり得る物は…

 

ニホ「良いけど…何で?」

 

光太郎「これから、冷蔵庫を開ける…」

 

ニホ「あっ、さっき危ないって言ってたの?」

 

光太郎「そう… じゃぁ…開けるよ。……フンッ!」

 

冷蔵庫を開ける為だけに、これだけ気合いを入れるとは…

 

ニホ「……?」

 

冷蔵庫の中には、何も入っていなかった。

 

…これで、俺達の夕飯となる物が無いことが分かった。

 

ジャパまんが有るには有るが…

 

まぁ、これで物が入っていて部屋が異臭で包まれるよりはマシか。

 

光太郎「…特に無いな。 ニホニホ、大丈夫だよ。」

 

ニホ「ぷはぁ! はぁ…はぁ… 良かったぁ…」

 

光太郎「ニホニホ…息も止めてたの?」

 

ニホ「うん…何か怖かったから。」

 

理由がカワイイなぁ…

 

光太郎「それじゃ、床に落ちてる物を…取り敢えず机の上に置いといて?」

 

ニホ「分かった!」

 

光太郎「それじゃあ、俺も…」

 

部屋はあんまり散らかっては居なかったが、三人で居るには少し窮屈に感じたので、ちょっと整理をしていた。

 

光太郎「ん?……これは…」

 

ニホ「何何? 気になるぅ!」

 

光太郎「これはアルバム。そうだね… さっきの写真がまとめられた物で、想い出を振り返るには丁度良いんだよ。」

 

ニホ「…ちょっとだけ見ても良い?」

 

光太郎「部屋も大分片付いたし…一緒に見よっか。」

 

後でルペラにも見せてあげよう。

 

そう思いながら、ページをめくった。

 

そこには、まだ少しだけ若い俺と、二人の中年を少し過ぎた位の男女が笑顔で写っていた。

 

ニホ「このヒト達は?」

 

光太郎「このヒト達は、俺の…両親だよ。」

 

ニホ「リョウシン?」

 

光太郎「あぁ、お父さんとお母さんの事だよ。」

 

ニホ「お父さん…お母さん……私には、居た記憶があんまり無いなぁ…」

 

光太郎「あっ…ごめん、ニホニホ…」

 

ニホ「…気にしなくても良いよ! フレンズになった娘達はみんな、こんな感じだからさ! 次の写真見よっ!」

 

光太郎「あぁ…」

 

…全く、俺にはデリカシーの欠片も無いのか。

 

そう思いながら、次のページをめくった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、俺とニホニホとルペラが写っていた。




今後も、更新ペースが疎らな作者ですが、今後とも宜しくお願いします。


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Ep.17「迷走する本能」

ニホ「あれ? これって、私達? どうして?」

 

光太郎「…分からない。分からないけど、俺達は昔にも逢っていたのかも…なんてね。」

 

…あくまで予想の中でしか言えないが、この写真は俺がパークの職員に正式に認定され、どのフレンズを担当するかを決めた日。 そして、その記念に撮った写真だと思われる。

 

ニホニホを混乱させない為、そして正確な記憶かの確証が持てない為、お茶を濁させてもらった。

 

ニホ「なんだか面白いね! 運命…て言うのかな…」

 

運命…か。 嬉しい事言ってくれるねぇ…

 

光太郎「…さ、部屋の片付けの仕上げ、やっちゃおうか!」

 

ニホ「うん!」

 

 

-その頃、廃墟内会議室跡-

 

 

博士「…で、ルペラ。 お前は光太郎が好きなのですね?」

 

ルペラ「…はい。」

 

助手「その気持ち、本人には伝えたのですか?」

 

ルペラ「いえ… 直接的にはまだ言っていません…」

 

博士「はぁ… 早く伝えないと、ニホンオオカミに取られるかも…ですよ。」

 

ルペラ「それはっ!……それは…ニホンオオカミ様は確かに良いフレンズ様です。 ですけど…」

 

助手「だったら、その気持ちを 思ったままに伝えるのです。…これでも食べて、気合いを入れるのですよ。」

 

ルペラ「ありがとうございます…」

 

博士「…此処から先は独り言なのです。 決してお前に言っている訳では無いのです。」

 

ルペラ「?」

 

博士「ヒトとフレンズが交尾しても、子供は出来ないらしいのです。」

 

ルペラ「きゅ、急に何を!?」

 

博士「かなり昔の資料に載っていたのです。 かなり厳重に保管されていたので、信用に値する情報なのです。」

 

ルペラ「そうなん…ですか…」

 

助手「それと、ヒトは交尾を愛情表現に用いる場合があるのです。」

 

ルペラ「………あの…」

 

博士「それに、この交尾は……ん? どうしたのですか?」

 

ルペラ「身体が…ちょっと熱く…」

 

助手「……気にするなです。」

 

ルペラ「そう…ですか。」

 

博士「…そろそろ戻るのです。光太郎も…“光太郎”も、心配しているのです。」

 

ルペラ「は、はい…」

 

 

-再度個室-

 

 

ニホ「…ん?」

 

光太郎「どうしたの?」

 

ニホニホは、不思議そうな表情を浮かべ、ベッドの下を手で探っていた。

 

ニホ「えっと…あ、あった!」

 

そう言うニホニホは、嬉しそうにベッドの下から出てきた物を掲げた。

 

……!?

 

光太郎「あー…ニホニホ、それ…ちょっと貸して?」

 

ニホ「これさ、さっきのアルバム?みたいな形してるね!」

 

不味い… 純粋なニホニホに、この本の中を見られては不味い。

 

これは…「男なら、これくらい持っとけ!」とか言う雑な字で書かれた手紙付きで先輩が送りつけて来た物だ…

 

ニホ「中、ちょっと見ても良い?」

 

光太郎「あーえと、ちょっと…ちょっとで良いから貸して…」

 

ルペラ「ただ今、戻りまし…た。光太郎様、ニホンオオカミ様……何ですか?それ…」

 

あー…ダメだこれ。

 

博士「待たせたのです。 ちょっと話が長引いて… 光太郎、光太郎! その手に持っている物は何ですかっ!?」

 

助手「早くこっちに渡すのです! でないとルペラが…」

 

ルペラ「あら… 光太郎様、貴方もこの様な行為に興味がお有りですか…♪」

 

光太郎「あ、いや、無い…と言ったら嘘になるけど! あ、あ…」

 

助手「…博士、あの薬が効き過ぎたのでしょうか… 量は加減したのですが…」

 

博士「恐らく、量自体は問題無いのです。 ただ、実際に光太郎に会い、文字は読めないとは言え、あんなヤラシイ本を見てしまったお陰で、ルペラの箍が外れたのでしょう。」

 

ニホ「ねぇねぇ博士と助手、今ってどういう状況なの?」

 

助手「…ニホンオオカミ、ちょっとこっち来るのです。理由を説明するのです。」

 

ニホ「わーい! 気になるなぁ…」

 

博士「それでは助手、頼んだですよ。 光太郎、ルペラ、十分に楽しむと良いです。」

 

光太郎「あ、ちょっと博士!待って下さい!」

 

博士は、俺の言葉を聞き切らない内に扉を閉めてしまった。

 

扉を開けようとするが、開かない。 扉の前に何か置かれたのか…

 

ルペラ「…光太郎様…」

 

光太郎「…ん? どうしたの?」

 

ルペラ「私、貴方の事が…ずっと…」

 

光太郎「ずっと…?」

 

ルペラ「ずっと…好きでした♪」

 

おぉう… 唐突だな。

 

嬉しいけど… けど…

 

光太郎「な、何で服を脱いでるの?」

 

ルペラ「…ふふっ、光太郎様♡」

 

そう言うと、ルペラはベッドに俺を押し倒した。

 

彼女の身体を隠す物は、もう既に、全て脱ぎ捨てられていた。

 

光太郎「ル…ルペラ? 今から何をする気?」

 

なるべく優しく問い掛けた。 彼女…ルペラを傷付けたい訳じゃない。

 

ルペラ「今から…ですか? ふふっ、デートよりも上の段階の事です♪」

 

あー… 完全にアレだ。 目が本気だ。

 

光太郎「けど、こう言うのって、本当に好きな相手とやる事だよ?」

 

ルペラ「先程も言いました… 私は、光太郎様、貴方の事が好きで…」

 

そう言いながら、ルペラは俺のズボンに手を伸ばした。 本当なら抵抗すべきだと思う。 けど、なるべく言葉で説得したい。

 

光太郎「なぁ、もしこれで子供が出来てしまっても、俺は責任を取れない。だから…」

 

ルペラ「博士が言っていました。 フレンズとヒトとの間には、子供が出来ないと。…少し寂しいですけどね。」

 

そう言うルペラの目には、先程とは違う、また別の感情が読み取れた。

 

その気持ちが頭に入って来た瞬間、俺は身を委ねる事にした。

 

……俺も、ルペラが好きだから。

 

無責任なのは分かってる。一線を超えてしまう事も分かってる。 けど、身体が、精神が、ルペラを求めてしまった。

 

さようなら、友達としてのルペラ。

 

光太郎「…良いよ。」

 

ルペラ「……新世界の先を、一緒に見ましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

-個室の外-

 

ー!! ♡♪

 

博士(まったく… 丸聞こえなのです。)

 

 

〜2時間半後〜

 

 

助手「博士、どうでしたか?」

 

博士「なんだかんだで良い感じになってたのです。…ニホンオオカミの方は?」

 

助手「まぁ、こっちも良い感じに言いくるめたのです。」

 

博士「光太郎、ルペラ! 入るですよ。」

 

 

-個室-

 

 

光太郎「……あぁ、博士、助手…」

 

博士「…ルペラはどこです?」

 

光太郎「あぁ…この中ですよ。」

 

そこまで言った所で、ルペラが布団の中から出てきた。

 

ルペラ「…博士様、助手様……ありがとうございました。」

 

光太郎「えっ…やっぱり、二人に何かされたの?」

 

博士「いや、ルペラに食べさせたジャパリまんの中に、まほうのおくすりをちょいちょいと入れただけなのです。」

 

助手「万が一、ここまでヒートアップした時の為に、ちゃんと避妊用の薬も入れといたですよ。」

 

光太郎「そう…ですかぁ…」

 

この鳥…侮れない。

 

ルペラ「光太郎様…私、感情のままに…」

 

光太郎「…泣かないで。 俺も、最初…というよりも終始驚いてたけど、嬉しかった。 俺の説得を物ともせず、ルペラがその気持ちをぶつけてきてくれたのが、本当に嬉しかったよ。」

 

ただ、急に押し倒さなくとも…

 

博士「あ、さっさと服を着た方が良いのです。 あの純粋なニホンオオカミが来るのですよ。」

 

そうだ… あの純粋なニホニホにこの姿を見られてしまったら…

 

俺とルペラは、そこら辺にあったタオルを少し濡らし、身体を拭きあった。

 

ニホ「二人共、楽しかった?」

 

光太郎「あ、あぁ、まぁ…ね。 ニホニホは、楽しかった?」

 

危なかった… ギリギリ服を着れた。

 

博士「それじゃあ、皆んなで夕飯を食べるのです。 また図書館まで行くのですよ。」

 

ニホ「おーっ!」

 

光太郎「お、おー…」

 

ルペラ「…頑張ります。」

 

 

 

 

 

 

図書館まで行く途中、ルペラが何度もアレの感想を耳元で囁いて来たので、色々と危なかった。




……なんだか凄い事になっちゃったぞ…


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Ep.18「永遠に大切に」

-ジャパリ図書館-

 

 

博士「飛ぶのも良い感じに運動になるのです。」

 

光太郎「ここまで送って頂き、ありがとうございました。」

 

先程のアレの疲れも取れ、心も落ち着いてきた…

 

助手「そのかわり、図書館の中での睡眠スペースは我々二人で埋まるのです。 お前らには、さっきの施設まで歩いて帰ってもらうのですよ。」

 

ニホ「食後の運動ってヤツだね!」

 

ルペラ「距離も、そこまで遠くないので丁度良いですね。」

 

博士「さぁ光太郎、料理を作……まぁ、今日は見逃してやるのです。 面白いモノを見させて貰ったので… さ、ジャパリまんでも喰うと良いのです。」

 

ルペラ「………ふふっ」

 

ニホ「くんくん……ルペラ、何か変わった匂いがするね。」

 

光太郎「あー…さぁ! 喰おう! ね!」

 

流石ニホニホ… 嗅覚が鋭い…

 

…これ、風呂にでも入らない限り匂い落ちないな… 多分、まだルペラの身体の中に○○が残ってるだろうし……

 

 

 

博士&助手「いただきますなのです。」

 

ルペラ「いただきます。」

 

ニホ「いただきまぁす!」

 

光太郎「いた…だきま…す」

 

流石に大丈夫だよな。 これにまでアッチの薬が入ってたら、もう、怖いわ…

 

みんな、美味そうに喰うなぁ… 確かに、ここ数日、つまむ程度にしか物を食べていなかったからな…

 

 

〜食後〜

 

 

助手「それで光太郎、お前は此れからも旅を続けるのですか? 一応、記憶は戻ったのですよね?」

 

光太郎「あぁ、その事なんですが、どうせならかばんさんが最初に行った場所まで行ってみようかと。 それに、ルペラの家候補の場所を探すのも旅の目的なので。」

 

まぁ、もし良い所が見つからなければ、あの部屋で暮らして貰おうかな…

 

博士「光太郎、これを渡しておくのです。」

 

光太郎「これは…パークのお土産の…」

 

お守りだ。 確か、園長も同じ物を持っていた筈…

 

ニホ「キラキラしてて綺麗だね!」

 

ルペラ「しかし、貴重な物の筈…本当に良いのですか?」

 

助手「同じヤツを10個位纏めて見つけたのです。 何なら、お前らの分もあげるのですよ。」

 

光太郎「おぉ…本当にありがとうございます! 良かったな、ニホニホ、ルペラ。」

 

ニホ「わーい!」

 

ルペラ「ありがとうございます。……えっと…」

 

…だよね、やっぱり分かんないよね…

 

光太郎「二人共、ちょっと待ってて…」

 

俺は、そう言いながらお守りを首に掛けてあげた。

 

ニホ「えへへ〜、ありがと!」

 

ルペラ「ありがとうございます… お揃いですね♪」

 

光太郎「そうだな… 俺達、家族見たいだな。」

 

ルペラ「もう、十分家族ですよ♪」

 

ニホ「私、幸せだなぁ…」

 

家族…か。 血でなく心で繋がった家族… 嬉しいな。

 

 

-ジャパリ図書館外-

 

 

博士「あの施設の横に、けもの道があるのです。 そこを通れば、かばんが行ったへいげんに辿り着くのです。」

 

光太郎「ありがとうございました。 俺の記憶が戻ったのは、博士達のお陰です。」

 

助手「まぁ、我々は賢いので。 それと…二人を大切にするのですよ。 家族なのですから…」

 

ルペラ「家族…ですね。 光太郎様、ニホンオオカミ様。」

 

ニホ「うん!」

 

博士「さ、そろそろ向かった方が良いのです。 近くにあるとは言え、暗くなってしまったら危ないのですよ。」

 

光太郎「…また、来れたら来ます。 必ず…」

 

 

-道中-

 

 

ニホ「えっと…ここを真っ直ぐに行くと、さっきの建物?だね!」

 

ルペラ「そろそろですよ、光太郎様。」

 

光太郎「あぁ、向こうに着いたら風呂、入るか!」

 

ニホ「フロ?」

 

ルペラ「小さな温泉ですよ。」

 

光太郎「おぉ、風呂を知ってるのか。」

 

ルペラ「えぇ、アリツカゲラ様からお話を聞きましてね。」

 

光太郎「流石、部屋のプロだな…」

 

ニホ「あ、着いたよ!」

 

 

-愛の巣個室-

 

 

光太郎「服は、そこの箱に入れといて。 着替えは用意するから。」

 

ニホ「はーい!」

 

ルペラ「はい。」

 

洗濯した後、直ぐに干せば… その内乾くだろう。

 

何か、主婦見たいな事言ってるな…

 

…家族。

 

俺も、後で入るかな。

 



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Ep.19「Dancin' with the deep Love」

光太郎「さてと、着替えの服でも探すかぁ…」

 

確か、棚の中に何着か有ったはず…

 

……え、何これ。

 

何で作業着とTシャツしか無いの?

 

光太郎「ま、まぁ、別に誰か来る訳でも無いし。 Tシャツで良いな、うん。」

 

で、ズボンは…

 

…作業着、ジーパン、ジャージ。

 

どうして昔の俺は、最低限+@の物しか買ってなかったんだ…

 

それでも、各2着ずつあるのが救いか。

 

 

 

ニホ「光太郎ー! あの泡の出るやつって誰?」

 

光太郎「あー分かった。今行く!」

 

ついでに着替えも置いて行くか。

 

 

-風呂場-

 

 

光太郎「はいはーい、今来たよ!」

 

そう言うと俺は、勢いのままに扉を開けてしまった。中に二人の可憐な娘が居るというのに。

 

……無意識なんです。本当なんです、信じて下さい!

 

ニホ「あ、光太郎!」

 

ルペラ「光太郎様!? まだ心の準備が、それにニホンオオカミ様も居りますし…」

 

光太郎「わぁぁぁ! あ、ぁ、えっとコレだよ!コレ!」

 

ニホ「これね? ありがと!」

 

光太郎「うん、どういたしまして。」

 

あー、焦った… 心臓バックバクだよ。

 

ルペラ「あの、光太郎様も入りますか?」

 

光太郎「ウェ!? あ、え?」

 

まぁ確かに、ここで入れば後が楽だ。多分…

 

ニホ「そうだよ、光太郎も入ろうよ! みんなで入った方が楽しいよ!」

 

あぁニホニホ。君はなんて純粋なんだ。心が洗われる…

 

光太郎「じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

 

 

 

 

…狭い。 大して大きく無い風呂場に3人は…

 

けど、幸せだから。

 

それで十分だ。

 

ルペラ「光太郎様、良い顔してますね。幸せそうです。見ているこちらも、幸せになってきますよ…」

 

ニホ「家族って、きっと、こういうのなのかも…良いね!」

 

…家族か。 あの頃の俺にも、こんな家庭があったんだな…

 

 

 

-個室-

 

 

光太郎「さて…と、寝るか。」

 

若干Tシャツが大きいのか、萌え袖状態になっている。 それでいて、胸回りの方はちょっと張っているのが…

 

…目に悪い。

 

ニホ「体があったまってて、眠くなって来たよ…」

 

ルペラ「私も、今日は少し疲れてしまったので…」

 

…あっ、ベッド一人分しか無い。

 

……考えろ…何か良い方法がある筈だ。

 

そうだ!

 

光太郎「ルペラ、そこの引き戸開けて?」

 

ルペラ「これ…ですか?」

 

…よし、布団だ!

 

 

 

 

 

まぁ、布団2枚でも足りる。布団を繋げれば、3人で寝れる。

 

部屋のスペースギリギリだが。

 

 

光太郎「それじゃ、おやすみ。」

 

ルペラ「おやすみなさい。光太郎様、ニホンオオカミ様。」

 

ニホ「おやすみ!」

 

窓から、薄っすらと月光が流れ込んでくる。

 

二人の寝顔が、その光に照らされていた。

 

……かわいい。護りたい。

 

 

ニヤつきながら、二人の寝顔を眺めているうちに、俺もいつのまにか寝ていた。

 

 

〜翌朝〜

 

 

…暑い…痛い…

 

光太郎「…いてて……ん?」

 

…えっと、ニホニホの顔が凄く近くにある。うん、で、何で俺の耳たぶをしゃぶってるんだ? てか甘噛みじゃないか?

 

ルペラは…

 

ルペラ「こ…たろ…ま……やっ…激しっ…」

 

えーっと、楽しそうで何よりだ。うん。

 

…夢の中の俺は何をやってるんだよ。

 

……昨日のアレを思い出してしまったじゃないか…

 

 

〜1時間後〜

 

 

ニホ「っはぁ… あ、おはよ。」

 

ルペラ「あっ、光太郎様…ふふっ…おはようございます。」

 

光太郎「おはよ、二人共。 そろそろ此処を出るから、支度しておいてね。」

 

さぁてと、次の平原地方。何があるか…楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-火山洞窟-

 

 

??「間も無くだ。間も無く、私の“愛”を皆に。 私達の手で、保存し、再生する事で、永遠の命を。 貴方達は、幸せを運ぶ天使として、もうすぐ羽ばたける。」

 

洞窟の中には、絶えず形を変化させ蠢いている無数のセルリアンと、一つの人影が立っていた。



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第2章「道標」
Ep.20「獣友前線」


ニホ「準備出来たよ!」

 

ルペラ「光太郎様の荷物は、これだけで良いんですか?」

 

光太郎「あぁ、最低限のものだけ詰めといたから。 後はここに置いていける。」

 

鉄パイプ、手当て用の道具一式。これだけで充分。

 

それらを部屋に有った背負いかばんに入れ、部屋を出た。

 

 

-廃墟外-

 

 

ルペラ「確か…あ、この道ですね。」

 

ニホ「楽しそう!」

 

光太郎「これ、本当に…道?」

 

確かに博士達はけもの道と言っていた…

 

言ってたけど、ここまで狭いとは…

 

 

-平原道中けもの道-

 

 

まぁ、縦に並んで歩けば問題無い。

 

時々、枝が脚に刺さるなどのトラブルがあったが、まぁ、楽しいので結果オーライだ。

 

ニホ「結構歩いたけど…そろそろ着くのかな?」

 

ルペラ「そうですね…そろそろ着いても良い頃だと思うのですが…」

 

光太郎「まぁ、取り敢えず進もう。多分平原に行けるでしょ…」

 

行けるよなぁ…

 

 

 

 

-けもの道出口-

 

 

やっとだ…やっと開けた場所に出れた。

 

ルペラ「一気に明るくなりましたね。 恐らく、ここがへいげんかと…」

 

あれは…確か建設途中だった城…

 

ニホ「…あ、あそこにフレンズがいるよ?」

 

あ、こっち見た。

 

……あれ? こっちに向かって来てる…怖い怖い怖い…

 

えっ早くない? ちょっと待って待って待て待て…

 

ヘラジカ「おぉ…珍しく私達以外のフレンズがいると思ったら… 強そうだなぁ!」

 

強そう……まぁ、ルペラとニホニホは強い。いつも助けられてる。

 

ただ、俺は…

 

?「ヘラジカ様、またセルリアンが出たでござる…今、ライオン殿達が応戦してるでござる…」

 

え、何で? 何も無い所から声が聞こえるの?

 

霊的なヤツ…?

 

ヘラジカ「うぅん…よし、みんなでライオン達を助けよう! カメレオン、みんなを向かわせくれ。」

 

パンカメ「了解でござる!」

 

あ、カメレオン…そういう事か。

 

ヘラジカ「最近セルリアンが多くてな…ちょっと待っててくれ。」

 

ルペラ「あの…何か手助け出来る事はありませんか?」

 

ニホ「そうだよ! 私達にも、セルリアンは倒せるよ!」

 

ヘラジカ「しかし…」

 

光太郎「ここで逢ったのも、何かの縁です。 だから、助けさせて下さい。」

 

ヘラジカ「…うむ、分かった。 力を借りるぞ! それで、名前は?」

 

光太郎「秋月 光太郎です。 そして、ニホンオオカミとグアダルーペカラカラ。」

 

ニホ「宜しくね!」

 

ルペラ「ルペラとお呼び下さい。」

 

ヘラジカ「宜しく頼むぞ!」

 

おぉ、頼もしい。頼もしいぞ!

 

しかし、セルリアンが多いというのは、かなり前ニホニホから聞いたが…

 

 

-平原-

 

 

ラビラビ「あぁ、ヘラジカか!」

 

ヘラジカ「大丈夫か!? ライオンは?」

 

ラビラビ「ライオン様は林の中に居る…」

 

ヘラジカ「どうして…こちら側の方が戦い易いではないか。」

 

ラビラビ「…林の中に、私の友達が居るんだ。 彼女がセルリアンに襲われて、ライオン様が助けに行って…私は助けを呼ぶ為に林から出て…」

 

友達…助けなければ…

 

ヘラジカ「…ライオンらしいな。 よし、みんな、ライオン達を助けるぞ!」

 

ヘラジカ軍「「「「おぉーーっ!!!」」」」

 

ニホ「なんだか凄い事になってきたね!」

 

ルペラ「必ず助け出しましょう!」

 

光太郎「よし…行くぞ!」



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Ep.21「群の力」

ここまで遅れてしまい、申し訳ございません!

まぁ、かかった時間の割には何時もと変わらぬ文章で…

失踪は…しませんよ?


-林-

 

 

ヘラジカ「ライオン! 何処だ!?」

 

ライオン「ヘラジカなの!?」

 

ラビラビ「ライオン様! 助っ人を呼んできました!」

 

ライオン「こっちだよ! 気をつけて!」

 

光太郎「ニホニホ、ルペラ…何か感じる?」

 

普段なら、ただ静かな森なんだろう。 だが、今は違う…

 

ニホ「セルリアンの匂いがする…凄い濃いよ…」

 

ルペラ「四方八方から気配がします… 警戒していて下さい…」

 

 

-林、深部-

 

 

ヤマアラシ「助けに来たですぅ!」

 

オルマー「大丈夫だった!?」

 

オーロックス「遅かったなぁ! もう少し早く来て貰いたかったぜ!」

 

そう言う割には、結構嬉しそうだ…

 

ルル「あっ! ラビラビィ! うぇぇ〜…怖かったよぉー!」

 

ラビラビ「怪我は無い? もう大丈夫だからね…」

 

あの子がルルって子か… 無事で何よりだ。

 

ヘラジカ「ライオン、大丈夫か?」

 

ライオン「私だって、そんなヤワじゃないよ… ちょっと疲れちゃっただけ。」

 

ヘラジカ「まだ行けそうか?」

 

ライオン「大丈夫大丈夫… それに、どのみち戦わないと帰れないからね〜」

 

ヘラジカ「…敵は多いな。 だが、私達ならやれる! 助っ人も居るしな!」

 

そう云うと、ヘラジカは俺達の方を見つめた。その眼には、闘志がみなぎっていた。

 

光太郎「宜しくお願いします、ライオンさん。」

 

ライオン「こっちこそ、宜しくね。…来るよ。」

 

どうやら、セルリアン達は襲撃の機会をうかがっていた様だ。 周りの茂みから聞こえる物音が、段々と大きくなってきている、

 

ルペラ「! 光太郎様、危ない!」

 

光太郎「不味いっ!」

 

完全に油断していた… 敵に囲まれている以上、幾ら味方が多くても背後を取られる可能性がある…

 

 

 

あら?

 

俺を襲ったセルリアンが…砕けた?

 

ハシビロコウ「………」

 

光太郎「!? え、あ、ごめんなさいっ!」

 

ハシビロコウ「良かった… 気を付けてね?」

 

光太郎「う、うん。ありがと。」

 

怒って…無い?

 

 

俺を襲ったセルリアンの破壊を皮切りに、他のセルリアン達も茂みから出てき始めた。 どうやら、全員同じ型らしい。

 

セルリアン「…フ………。 あ…を…」

 

ニホ「あのセルリアンだけ、他のと違う…何か怖いよ…」

 

光太郎「言葉…?」

 

今までのセルリアンとは、違う。 いままでのセルリアンは、ただプログラムのままに行動している様だった。 だが、このセルリアンだけは意思が感じられる…

 

セルリアン「……いけ。」

 

そのセルリアンの言葉をキッカケに、周りのセルリアンが一斉に襲いかかってきた。 どうやら、あのセルリアンが司令塔の役割を果たしているらしい。

 

ライオン「あの変わったセルリアンを狙って! そうすればきっと、他のも消える!」

 

シロサイ「それなら…セルリアン達!お退きなさいっ!」

 

ヘラジカ「よぉし…私も!」

 

シロサイとヘラジカが進むと、道が出来る様にセルリアンがどんどん弾けていく… 凄ぉい…

 

ルペラ「光太郎様、ニホンオオカミ様、私達も行きましょう!」

 

ニホ「そうだね、ジーッとしてても、ドーッにもならないもんね!」

 

光太郎「あぁ!」

 

その瞬間、二人の瞳に光が灯った。 野生解放だ。

 

…俺に変化は無いがなっ!

 

ルペラは空高く舞い上がり、急降下しつつ身体の周りに発生させた羽で華麗にセルリアン達を撃ち抜き、ニホニホは荒々しく、正にセルリアンを狩っていた。

 

対する俺は…鉄パイプで応戦だ! 前よりも力が弱くなっているのはご愛嬌だ!

 

ニホンツキノワグマ「数が減らない… まさか…」

 

ライオン「どうしたの!?」

 

ニホンツキノワグマ「もしかしたら、あの変わったセルリアンから分裂して殖えているかもしれません!」

 

光太郎「それって…」

 

ニホンツキノワグマ「元を叩かない限り、セルリアンが殖え続ける…」

 

ヘラジカ「これは…手応えのある戦いだなぁ!」

 

ライオン「けど…そろそろ厳しいよ…」

 

光太郎「増援が欲しい…誰か…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレンズ?「助けが欲しいか…俺が手伝う。」

 

えっ、誰?

 




急に出してしまった…

光太郎を除けば、初めてのオリ…レ…

あ…? 音声…途…れ途切…







また 会いたい 会える 再現 偽りでも それでも…
また 会いたい 会える 再現 偽りでも それでも…
また 会いたい 会える 再現 偽りでも それでも…
また 会いたい 会える 再現 偽りでも それでも…
また 会いたい 会える 剥製 偽りでも それでも…


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Ep.22「裏のハンター」

光太郎「えっと…何方ですか?」

 

?「…オオコウモリ、敵の錯乱を。リンカルス、纏めて片付けてくれ。 俺は司令塔を叩く。」

 

オオコウモリ「はいはーい!」

 

リンカルス「りょーかい…」

 

光太郎「えっとぉ…」

 

あれ? 無視…されちゃった?

 

?「俺の名前なんて、知らなくても良いだろ。 その方が此方としても活動しやすい。」

 

ヘラジカ「どうしてだ?」

 

オオコウモリ「それはねー? ジャックちゃんのやり方が、他のフレンズちゃん達にとっては怖かったらしくて、直ぐにでも忘れて欲しいからーって。」

 

ジャック「オオコウモリ、早くやってくれ。」

 

オオコウモリ「ごめーん! あ、あと、ジャックちゃんは、ジャクソンカメレオンのフレンズちゃんだから!」

 

ジャック「無駄な情報を流すな…」

 

リンカルス「そう照れるなってぇ…」

 

ジャック「…早く…やるぞ…」

 

オオコウモリ「あっ、ジャックちゃんがキレちゃう…早くやんないと!」

 

 

ルペラ「あの方達が…噂の…」

 

ニホ「どうしたの? 何か知ってるの?」

 

ルペラ「噂に聞いていたのですが、裏のハンターというのが居るらしくて… その特徴と、色々一致しているんです。」

 

光太郎「裏って…表も居るの?」

 

流石に裏だけでは無いだろう…

 

ニホ「居るよ? キンシコウちゃんと、リカオンちゃんと、あとヒグマちゃん!」

 

ルペラ「最近、セルリアンが多くて出ずっぱりだそうですよ?」

 

光太郎「大変なんだね…」

 

 

それにしても、裏のハンター…手際が良い。 ちょっと怖いけど…

 

オオコウモリが飛び回り、意識が逸れたセルリアン達に向かってリンカルスが…あれ、毒? を吹いてる…

 

ジャックは…あれ、どこ?

 

ヘラジカ「うむ、私達も負けてられないな!」

 

ライオン「みんな、行こう!」

 

ヘラジカ軍、ライオン軍も気合い入ってる…

 

俺らも…頑張ろ!

 

 

ジャック「どうしたセルリアン…かかって来い…」

 

セルリアン「!? …どこだ…」

 

 

成る程、カメレオンだから姿を消して… 発言が怖いなぁ……敵には回したく無いなぁ…

 

ジャック「…時間切れだ。こっちから行かせてもらおう。」

 

セルリアン「…どこだ…ど…………」

 

えっ…鞭で貫いた…?

 

ジャックが…笑ってる…引き笑いだけど。

 

 

 

司令塔が倒され、周りのセルリアンが一斉に砕けた。

 

ヘラジカ「おぉ…強いなぁ! どうしてそんなに強いんだ?」

 

ジャック「加減しない。 あと、戦う事以外考えない。 これだけ。 だが、オススメはしない。」

 

リンカルス「…俺らは、他のフレンズとは殆ど関係を持たない。 だから、捨て身で戦える。」

 

オオコウモリ「でも、君達には色んなトモダチが居るでしょ? 私達みたいな方法をとったら、悲しませちゃうからねー」

 

ジャック「…それに、俺からして見れば、アンタらの方が強く見える。自分だけで無く、仲間を思って戦える。それも強さだ。」

 

ニホ「えっ、3匹は仲間じゃないの?」

 

ジャック「……」

 

リンカルス「…昔は…仲間だった…4匹で。」

 

オオコウモリ「実は、4匹目の子って、ちょっと変わったフレンズちゃんでね…なんだろ…私達とは根本的に違うって言うか…けど、自分の思う正義の為に戦ってたよ。」

 

ジャック「特殊だったから、サンドスターが安定しなくて、壊れた。辛かった。 仲間だったから… だから、今はただ3匹で集まって狩りをしてるだけ。」

 

ニホ「ごめん…やな事言っちゃった…」

 

特殊なフレンズ…? そういえば、昔ミライさんがUMAで無い、無脊椎動物のフレンズを見たと言っていたが…

 

オオコウモリ「気にしなくて良いよ? 私達、今も一応楽しくやってるし。」

 

ジャック「それと、狩りの協力、感謝する。 お陰で司令塔に集中出来た。」

 

ライオン「こっちこそ、手伝ってくれてありがとう。 どぉ? 城で休んで行かない?」

 

リンカルス「ジャック…どうする?」

 

ジャック「…気持ちだけ受け取っておく。」

 

オオコウモリ「えぇー…疲れたよぉ休もうよぉ…」

 

ジャック「次の狩りの準備がある。…残された時間は少ない。」

 

ルペラ「どう言う事…ですか?」

 

リンカルス「あくまでも予想の域を超えられないが…そこのヒト。」

 

光太郎「えっ…はいっ!」

 

急に呼ばれるのは怖い…

 

リンカルス「…女王を知っているか?」

 

光太郎「女王…ですか?」

 

パーク職員だったのなら、知らない訳が無い。 あの事件…俗に言う女王事件をキッカケに、パークのセルリアン対策がより厳重になり、セルリアンとの遭遇時のマニュアルも一新された。

 

リンカルス「私達も詳しい事は知らないが、少し前に狩りの現場に居たフレンズに女王の事を色々と聞いた。 あの時逃げ切った元女王が、再び力を手に入れようと…」

 

ジャック「或いは既に手に入れた… 現時点では何も言えないがな。」

 

そんな…あの女王が…

 

オオコウモリ「…まぁまぁ、結局は予想だから。」

 

光太郎「その…情報元って、誰ですか?」

 

リンカルス「さばくちほーに居るツチノコだ。」

 

ツチノコ…パーク内で発見された時は大騒ぎ!だったなぁ…

 

ジャック「…私達はそろそろ帰らせてもらう。」

 

ヘラジカ「そうか…色々話しを聞かせてくれてありがとう。」

 

ラビラビ「それと…あの…ありがとう。 お陰でルルを助けられた…」

 

ジャック「……仲間は大切にしろよ。後悔したく無ければ。」

 

オオコウモリ「うぅん… 仕方ないか。 じゃあね、元気でね!」

 

 

 

 

 

大切に…絶対に、何があってもニホニホとルペラを守る。 仮に女王が甦ったとしても…

 

 

 

 

-城、周辺-

 

 

ヘラジカ「みんな、ご苦労だった!」

 

ライオン「えっと…光太郎…だっけ? ありがとう。ニホンオオカミとルペラも。」

 

ルペラ「いえ…目的が達成できて何よりです。」

 

ニホ「ねぇ、かばんさんって、何処からへいげんに来たの?」

 

ハシビロコウ「えっと、こはんから来てたよ。」

 

湖畔…息抜き出来そう…

 

光太郎「情報提供、ありがとうございました。お元気で…」

 

…女王、やっぱり気になるなぁ

 

 

 

 

-湖畔、道中-

 

 

ルペラ「どうしましたか、光太郎様?」

 

光太郎「あぁ…女王の事が気になってね…」

 

どうしても頭から離れない。

 

…少し明るい事を考えるか。

 

光太郎「ニホニホ、そろそろ湖畔に着く?」

 

ニホ「そうだね…もうじきだよ。」

 

光太郎「そっか…」

 

 

こんな会話でも、永遠に続いて欲しい。そう思うと同時に、少し立ち眩みしてしまった。

 

 

…疲れが溜まってるのか?



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Ep.23「湖畔に聳える摩天楼?」

-湖畔付近-

 

 

ニホ「あ、見えてきたよっ!」

 

そう言うニホニホが指差す先に、湖の中に木製の家が建っていた。 その家の中に、2つの人影が見える。

 

ルペラ「あの中に居るのは…アメリカビーバー様と、オグロプレーリードッグ様…ですかね。」

 

光太郎「二人暮らしかなぁ…?」

 

俺、この旅が終わったら何処に住もう…やっぱり、昔の部屋?

 

ニホ「どんな子達なんだろ…気になるなぁ…」

 

光太郎「取り敢えず、行ってみようか。」

 

ビーバーといえば昔、ヨーロッパビーバー担当の職員が、パークの外に出られないヨーロッパビーバーの為に、パーク外のホームセンターの中を一日中ビデオで撮影していた…と言う話を聞いた事があった…無論、パークとホームセンター、両方の許可は得ていたらしい。

 

 

-湖畔-

 

 

プレーリー「んぅ? ビーバー殿、誰か来たでありますよ?」

 

ビーバー「迷子…っすかねぇ…」

 

 

 

光太郎「あのぉ…」

 

ビーバー「どうしたんすか?」

 

ニホ「ここが“こはん”だよね?」

 

ビーバー「そうっす!」

 

ルペラ「この立派な家は…」

 

ビーバー「この家は、かばんさんにお手伝いしてもらいながら、プレーリーさんと一緒に作ったんすよ。」

 

ここまで来ると、かばんさんって多彩すぎて…かばんさんは何人もいるんじゃないか?

 

ニホ「かばんさん…やっぱり凄いねぇ…」

 

プレーリー「かばん殿を知っているでありますかぁ!?」

 

光太郎「おぉぅ…えっと…会った事は無いんですけどねぇ… あの…」

 

プレーリー「あぁ! プレーリードッグでありますっ! ご挨拶をさせていただきたいでありますっ!」

 

ご挨拶とは… これまたご丁寧に…

 

プレーリー「にひぃ…」

 

…ん? 急に顔を掴んで、どうしたのかな?

 

光太郎「あの…顔、近k!?」

 

おぉ…これまた随分とwildなご挨拶ぅ…

 

ルペラ「…光太…郎さ…あ…ぁ…」

 

あっ…ルペラが…ゼットンに倒された初代マンの如く倒れてゆく…

 

ニホ「ルペラァ!? 死んじゃダメ! 立って! ルペラが死んじゃったら、私達はどうなるの!?」

 

ニホニホよ…流石に死ぬ事は無いと思うぞ。 どちらかと言うと、俺の方が酸欠で死にそうだよ。 目眩してきたよ。

 

ビーバー「プ、プレーリーさん、光太郎さん?の顔色がぁ…」

 

プレーリー「…はぁぁ! 申し訳ないであります! 久し振りのご挨拶だったのでつい…」

 

光太郎「はぁ…はぁ… 俺は、まぁ、大丈夫ですよ…」

 

ルペラのケアしないと…

 

光太郎「ルペラァ…大丈夫?」

 

ルペラ「……はっ!…光太郎様…私…どうして…?」

 

光太郎「うーんと…そのぉ、ちょっと衝撃的な光景を見ちゃったのかな。うん。」

 

俺にとっても衝撃的だったけどな。

 

ルペラ「そうでした… 光太郎様、抱きしめてもらっても…良いですか? 私、まだ落ち着かなくて…」

 

ウェッ!? まぁ…そりゃそうか。

 

光太郎「…良いよ。」

 

そう言うと俺は、ルペラをそっと抱きしめた。

 

…周りの視線は気になったけどなっ!

 

ルペラ「…こうしていると、光太郎様の心臓の音が、よく聞こえて…すごく、安心します…」

 

こうしていると、ルペラの体温が、すごく伝わってくる… 温かい…

 

 

 

プレーリー「…なんかすごいであります…」

 

あなたの行動も中々でしたよ。

 

ビーバー「見ててドキドキしてくるっす…」

 

やってるコッチも、愛おしさで心臓がキュンキュンしてますよ。

 

ニホ「後で私もギュッってしてもらお!」

 

さすがニホニホ、何時も通りだ!

 

 

 

 

 

光太郎「…ルペラ。」

 

ルペラ「…はい。」

 

光太郎「…その…腕、疲れた。」

 

ルペラ「…光太郎様らしいですね。 そう言う所も…スキ…」

 

光太郎「ん、なんか言った?」

 

ルペラ「…いえ、何も♪」

 

…まぁ、聞こえてましたけどね。俺も…スキ…

 

ルペラ「プレーリー様、ビーバー様。」

 

ビーバー「はいっ!」

 

プレーリー「はいっでありますっ!」

 

ルペラ「かばん様の事、教えていただけませんか?」

 

おぉ、急に本題に入ったな。 切り替えの速さも…スキ…

 

 

 



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Ep.24「憩いの場」

あの…ここまで遅れてしまい、申し訳ないです…ごめんなさい。

投稿ペースの遅さは何一つ変わりません…が、最後まで書きます。私の思い描いた光太郎達の旅を、最後まで書きます。


ビーバー「かばんさんは、そうッスねぇ…」

 

 

〜約30分後〜

 

 

プレーリー「…とまぁ、ざっと言うとこんな感じであります!」

 

ニホ「そーゆー経緯で、この家が出来たんだねぇ…」

 

ルペラ「話を聞いた後だと、この家が更に輝いて見えますね…」

 

光太郎「やはり、この家を観に色んなフレンズさんが来られるのですか?」

 

湖畔の中に一軒の家…なかなかの存在感を放っているので、観光感覚で観に来るフレンズもいるだろう…

 

ビーバー「それが…普段からこはんに住んでいるフレンズさん達にとっては、もう普段通りの光景で…」

 

プレーリー「わざわざここまで来るフレンズ殿も、そうは居ないもので…」

 

あ、不味い事言っちゃった…?

 

ビーバー「このままでも、良いっスけど…」

 

プレーリー「やっぱり、もう少し賑やかでも良いと思う時は偶にあります…」

 

確かに偶に来る分には良いけれど、ずっと静かだと流石に賑やかな事が恋しくなるな…

 

ニホ「うぅん…何かさ、みんなで集まれる場所を作れば良いんじゃない?」

 

集まれる場所…広場的な?

 

ルペラ「この辺りは景色も良いですし、その様な場所が出来ればフレンズ様も来やすいのではないでしょうか?」

 

もしヒトが居れば、絶好の観光スポットになってただろうな。 良いことばかりでは無いが…

 

光太郎「…ちょっとした家や、腰を掛けれる物を作ってみてはどうでしょう?」

 

フレンズなら、節度ある行動をとれるだろう。 自然を愛する、フレンズ達だから…

 

ビーバー「それなら……こんな感じっスかね?」

 

理解&行動速っ…

 

プレーリー「それじゃあ…どの辺りに作れば良いのでありますか?」

 

よし…俺もノってきたぞ…!

 

光太郎「そうだね…湖の方を向ける様な形で…あんまり数は作らなくて良いよ。」

 

プレーリー「了解でありますっ!」

 

ニホ「私達も、何か手伝うよ!」

 

光太郎「それじゃあ、木の削りカスを運ぶの手伝って。後は…木材運んで?」

 

余りにも二人の作業が速すぎて、削りカスを取っても取っても減った気にならない…

 

ルペラ「材木、この大きさで良いですよね?」

 

ビーバー「丁度良いっス!」

 

プレーリー「ニホンオオカミ殿、ここからの景色、どうでありますか?」

 

ニホ「綺麗……凄く綺麗だよっ!」

 

プレーリー「自分が褒められてる訳じゃ無いのに、何だか凄く嬉しいであります!」

 

分かるよ…その気持ち。 俺も昔、お客さんがパークを褒めているのを聞いてると、自然と笑顔になってたなぁ…

 

 

 

それから俺達は、4時間程作業を続け、遂に湖畔に憩いの場を完成させる事が出来た。

 

 

 

みんな『出来たーーーっ!』

 

おぉ…とてつもない達成感だ。 景観を損ねず、尚且つこの場から美しい景色を観れる……多少のアドバイスはしたものの、殆ど二人で位置決めから製作までこなしていて…相当なセンスの持ち主だな。

 

ニホ「光太郎、すごいよ! 綺麗だよっ!」

 

ルペラ「時間をかけた甲斐がありましたね…」

 

プレーリー「いやぁ…皆さんのご協力のお陰であります。ありがとうであります!」

 

ビーバー「きっと、フレンズさん達も来てくれるっス!」

 

光太郎「他のフレンズさん達に会ったら、ここの事を伝えておくよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーバー「今日は、本当にありがとうございましたっス。 次はどこに行く予定何スか?」

 

光太郎「砂漠地方の予定です。」

 

プレーリー「それなら、コレを持っていくと良いであります!」

 

ニホ「これ…なぁに?」

 

ビーバー「“すいとう”っていう道具っス。この中に水を入れておくと、何処でも水を飲めるっスよ。」

 

ルペラ「わざわざありがとうござます。」

 

ビーバー「俺っち達を手伝ってくれたお礼っスよ!」

 

光太郎「ありがとうござます。 他のフレンズさん達が来てくれる事を祈ってますよ。」

 

プレーリー「我々も、皆さんが良い旅ができるように…祈っているであります!」

 

ニホ「じゃぁね!」

 

ルペラ「お元気で。」

 

ビーバー「健康に気をつけるっスよ!」

 

 

 

-砂漠地方入り口-

 

 

ニホ「だんだん…暑くなってきたね…」

 

ルペラ「ニホンオオカミ様、首周りのモノを取ってみては?」

 

ニホ「コレ?……おぉ…ちょっと涼しくなった気がする!」

 

確かに暑いな…

 

あれ…? 意識が…遠のいて……




今までは一つの地方につき3話(例外有り)でしたが、今回からは少し短縮する予定でいます。

…ウルトラマンネクサスの様に、短縮になった事で物語がよりスムーズになると良いのですが…(と言っていますが、私は姫矢さんのストーリーも好きですよ、確かに重いですけど……ノスフェルも出てきてくれますしね。)


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Ep.25「砂漠の天使は“どこ”に導くのか」

目の前が真っ暗になってから、一体何十分経っただろうか? 身体が凄く重く感じる…

 

……遠くから声が聞こえる。

 

?「光太郎さん…光太郎さんじゃないですか!」

 

その声の主はジャパリパークのパークガイド、ミライさんだった。

 

光太郎「ミライさん…何処に居るんですか?」

 

ミライ「貴方の後ろですよ。」

 

え、ちょっと怖い…

 

そう思いながら振り返った瞬間、雲一つない青空や美しい花畑、一本の橋が通った澄んだ川が視界に入り込んできた。

 

何故だか懐かしさを感じる…

 

光太郎「うわぁ…綺麗…2人にも見せたいなぁ…」

 

ミライ「2人…ニホンオオカミさんとルペラさんですよね。」

光太郎「そうですよ。 ですが、どうしてその事を知っているんですか?」

 

ミライさんなら、俺の過去をもっと知れるヒントをくれるかもしれない…

 

ミライ「貴方がパークガイドだった時、貴方が初めて担当していたフレンズさんがその2人だったんですよ。」

 

あの写真は、やっぱりその時の写真だったのか。

 

光太郎「ミライさん、ここは一体何処なんですか?」

 

ミライ「…2人が少なくとも一度は来たことがある場所。どう言う事か、分かりますか?」

 

2人が一度は来たことがある場所…まさか…

 

光太郎「俺、死んだんですか?」

 

そう言うと、ミライさんは俺から一瞬目を逸らした。 それから、無言の時間が続いた。

 

その沈黙を破ったのはミライさんが先だった。

 

ミライ「確かに、貴方は一度……しかし、今は違います。今ならまだ間に合います。」

 

俺、昔死んだの?

 

光太郎「という事は、完全に死んだ訳では無いんですね。」

 

ミライ「はい。ですが、なるべく早く戻らないと手遅れになるかもしれません。」

 

それは嫌だ…これじゃお荷物のままくたばる事になってしまう。

 

光太郎「ミライさん…ありがとうございました。」

 

ミライ「最後に…2人の事は大切にしてあげてください。あんな事をした以上、2人を見捨てるなんて事は許されませんよ。 もし見捨てたら…あの世から快傑ミライが参上して、貴方をしばきに行きますからね!」

 

そうミライさんは冗談混じりに、それでいて真剣に釘を刺した。

 

アレ見られてたのか…ハズカシッ!

 

ミライ「それと…最後まで諦めないでください。生きてさえいれば、何かしら出来ますから…」

 

光太郎「それは…」

 

ミライ「…最悪の事態を想定して話しますが、ここ最近のセルリアンの多さ。アレは…女王の動きが活発化した時と似ています。もしかしたら…」

 

光太郎「女王が再び…」

 

考えたくない…あの頃は園長達が居て、尚且つ奇跡が起きたから倒せた…しかし、また奇跡が起こるとは限らない。

 

ミライ「あくまで最悪の事態を想定して…ですので、それほど事態が悪化していない可能性もあります。」

 

そうだと良いんだが…

 

ミライ「さ、光太郎さん。そろそろ戻りましょう。2人も心配していますよ!」

 

そうだ…今の俺は、側から見れば死体なんだろうな。

 

光太郎「ミライさん…ありがとうございました。」

 

…帰り方分かんない。

 

ミライ「目、瞑って下さい。」

 

光太郎「ぇ、はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミライ「生きて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-スナネコの巣-

 

 

光太郎「うぅ…」

 

ルペラ「こ…光゛太゛郎゛様゛!゛」

 

ニホ「光太郎ぉぉぉ!!」

 

2人共…そんなに泣いて…

 

ルペラ「もぉ…心配したんですからねっ!」

 

ニホ「生きてて良かった…」

 

スナネコ「あ、起きましたぁ?」

 

涼しいけど…どこ此処?

 

ルペラ「フゥ…光太郎様が倒れてしまい、どこか日陰を探していたらスナネコ様にお会いして、ここまで連れてきてもらったんですよ。」

 

また俺死にかけたのか…次は無いな。

 

ニホ「ビックリしたよ…急に倒れたから…」

 

光太郎「ニホニホ、ルペラ…心配かけて、ごめん。 スナネコさん、わざわざ助けていただき本当にありがとうございました。」

 

スナネコ「はい…」

 

えっ…冷たい。俺何か悪い事言っちゃった?

 

スナネコ「…その首に掛けているモノは何ですかぁ?」

 

光太郎「これは…御守りです。どういうご利益かは分かりませんけどね…」

 

スナネコ「あなたを助けた時、ソレが光ってたんですよ。」

 

ニホ「そうそう、倒れてからずっと光ってて…それどころじゃなかったけどね。」

 

ルペラ「不思議ですよね…輝きが詰まっていたりして…」

 

スナネコ「そういう事は、ツチノコに聞いた方が良いかと思いますよ。」

 

お、ツチノコに会えるのか… 菜々ちゃんが担当したキタキツネがツチノコに会った…と言っていたが。 まさか自分の目で見れるとは…

 

ニホ「どこに行けば会えるの?」

 

スナネコ「案内するので、付いて来てください。」

 

ツチノコ……アオジタトカゲのフレンズじゃないだろうな?



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Ep.26「地下への挑戦」

案内すると言われたが、当分外には出たくない…

 

スナネコ「ちょっと待っててください。」

 

光太郎「えぇ、分かりましたよ。」

 

何をするんだろ… 床を掘ってる…?

 

……鼻歌? 綺麗な鼻歌が聴こえる…

 

ニホ「スナネコ…鼻歌上手だね!」

 

スナネコの鼻歌だったのか!

 

スナネコ「自然と歌ってしまうんですよ。 不思議ですね。」

 

もしかして…前世が歌手だったりして? 流石に無いか。

 

ルペラ「地面の下に…空洞が?」

 

スナネコ「はい、ここを通るとツチノコの住んでる場所に着きますよ。」

 

コレは…バイパスか? となると、この中を通って別の地方へ行けるかも!

 

ニホ「ね、行こ行こ! 私、この先が気になって仕方ないよ!」

 

いつも通りのハイテンション…遊園地に来た子供かな?

 

ルペラ「ニホンオオカミ様、足元にお気を付けて下さいね。」

 

ニホ「大丈夫! 分かってワァァァァァァァァァァァァァ……イテッ」

 

光太郎「ニホニホォォ!?」

 

蟻地獄に落ちたアリの如く、バイパスと思われる場所へと繋がる穴へと滑り落ちていった。

 

スナネコ「あ、別に落ちても問題ないですよ。 みなさんも、そこから入ってってください。」

 

ルペラ「は、はい…」

 

まぁ、大丈夫なんでしょうけど…

 

ニホ「ダイジョーブダヨー!」

 

あ、ならOK

 

 

 

-バイパス内-

 

 

「俺が安全に降りられる様に」との事で、ルペラが先に降りていった。

 

ルペラ「光太郎様、お足元にお気を付けて…」

 

光太郎「大丈夫大丈夫! 今行くyワァァァァァァァァァ!!!」

 

ニホ「光太郎!?」

 

ルペラ「はは… 」

 

油断したよ…

 

スナネコ「満足…」

 

光太郎「えっ」

 

スナネコ「今日は楽しかったです。 この奥に行けば、ツチノコのいる場所に着くので。 また会いましょ?」

 

そう言うと、スナネコは穴の外へと消えていった。

 

ニホ「じゃーねー!」

 

ルペラ「また会いましょう!」

 

光太郎「あ、えと、またね!」

 

聞こえているかどうかは別として、一応スナネコに別れの言葉を伝えた。 また会えると良いなぁ…

 

光太郎「さて…と。 じゃあ行くか。」

 

ニホ「楽しみだなぁ!」

 

ルペラ「ニホンオオカミ様、いつも楽しそうですね♪」

 

ニホ「そりゃそうだよ! だって、見た事無いモノがいっぱいだし…それに、光太郎とルペラとの旅…本当に楽しいもん!」

 

ええ子や…どうしてこんなに良い子なんだ…? お父さん泣いちゃうぞ? 俺…お父さんでは無いけどなっ!

 

ルペラ「私も…この旅は本当に楽しいですし、大好きです。 お二人の事も…」

 

 

 

 

?「おい…そこに居るのは誰だ?」

 

光太郎「…うっ………他人に名前を聞く時は…まず自分から名乗るのが礼儀じゃないか…ん?」

 

ルペラ「こ、光太郎様…?」

 

しまった…急に声を掛けられた所為で、凄く無礼な対応になってしまった… 謝罪しないと…

 

?「わ、悪かったな…俺はツチノコだ。」

 

光太郎「あ、あの…ごめんなさい! 語気が強くなってしまって…」

 

ツチノコ「え、あ、俺も悪かった… こんなところに入ってくるフレンズなんて、そうは居ないからな…それに、最近はセルリアンも賢くなってきてるから…ってお前、フレンズじゃないな?」

 

光太郎「はい…一応ヒトです。」

 

ツ、ツチノコが目の前に居る…

 

ツチノコ「やっぱりな…お前の匂いが、アイツそっくりだったもんでな。」

 

ニホ「アイツって…かばんさんの事?」

 

ツチノコ「かばんを知ってるのか?」

 

ルペラ「旅の途中途中で、様々なフレンズ様達から話を聞いているんです。」

 

ツチノコ「そうか… ん、その…首に掛けている物はまさか!?」

 

今までとは違う反応だな…

 

光太郎「これは、このパークにヒトがいた頃に売られていたお守りです。」

 

ツチノコ「お前…どうして昔のパークの事を?」

 

ニホ「光太郎はね、凄い昔の事も覚えてるんだよ!」

 

光太郎「より詳しく説明すると、俺は元パークの職員なんです。」

 

ツチノコ「…どういう事だ?」

 

光太郎「どう考えても、生身のヒトが何も摂らずに、何十年も生き延びられる筈は無いのですが…俺自身、よく分からないんです…ごめんなさい。」

 

ルペラ「本当に不思議なんです…」

 

ツチノコ「もしかしたら…」

 

ニホ「えっ、何か分かったの!?」

 

もしそうだとしたら、俺としても気が楽だ。 色々と悩まずに済む…様な結果であれば良いのだか…

 

ツチノコ「…いや、やめておく。」

 

光太郎「何故です?」

 

ツチノコ「俺の予想でしか無いからだ。 まだ確証がない…」

 

光太郎「それでも…意見として聞かせて下さい。」

 

何かの助けになるかもしれない…だから、聞きたい…

 

ツチノコ「分かったよ…お前、一度は死んでる。」

 

ルペラ「何を言っているのですか…?」

 

光太郎「ルペラ待った…取り敢えず聞こう。」

 

ルペラ「はい…」

内心、俺もかなり驚いている。 何せ「過去に一度死んだ」なんて言われたら、誰だって驚くだろ…

 

ツチノコ「話しを続けるぞ…その亡骸が何らかの理由で、今まではサンドスターが当たらなかったんだろうな。 で、ある時…つまりお前が目覚める少し前、遂にサンドスターが当たった…」

 

ニホ「それだと、今の光太郎ってフレンズじゃない?」

 

今日のニホニホは冴えてるな…滑り落ちてさえいなければ。そこが可愛いのだけれど!

 

ツチノコ「あぁ、その事何だがな。 サンドスターが当たったとは言ったが、フレンズ化するには足りなかったんだろう。 フレンズとしての身体を維持出来ず、直ぐにフレンズ化が解けた。」

 

ルペラ「ですが、それですと光太郎様は……亡骸に戻ってしまうのでは?」

 

そうだ、フレンズ化が解けたら元の状態に戻る筈…俺の場合は死体に。

 

ツチノコ「その事なんだが、かばんが喰われた時にも似た様な事があってな…」

 

そういえば、かばんさんが巨大なセルリアンに喰われた話は、色々な所で聞いていたが…なんだか親近感が湧いたぞ

 

ツチノコ「かばんの時と同じ様に、お前も動物としてのヒトに戻ったんだろう。 その結果、今のお前に辿り着く…と。 コレが俺の予想だ。」

 

すっごーい…きっと、この予想が真実なんだろうな

 

光太郎「あの…もう一つ聞きたいんですが…」

 

裏のハンター達の情報源であるツチノコなら、現状を把握出来ているかも知れない。

 

光太郎「今のパークで起きている事、教えていただけませんか?」

 

ツチノコ「…女王の事か?」

 

察しがいい…

 

ツチノコ「…状況は思っていたよりも深刻だ。 ここ最近のセルリアンの多さ、そして進化の速さは…光太郎、お前なら分かるよな?」

 

勿論だ。

 

光太郎「はい…裏のハンターの方々から、色々聞いています…」

 

ツチノコ「そうか…何かあったら、先ずは逃げろ。戦う義務は無い、有事の時の為にハンターがいるからな。」

 

光太郎「…はい。」

 

ツチノコ「グアダルーペカラカラ、ニホンオオカミ、ちょっと先に行ってろ。」

 

ニホ「どうして?」

 

ツチノコ「ちょっとだけ、二人で話をさせてくれないか? 直ぐに終わる。」

 

ルペラ「…分かりました。 光太郎様、向こうで待っていますね。」

 

光太郎「ごめんね…」

 

そう言うとルペラとニホニホは、バイパスの奥へ消えていった。

 

ツチノコ「…お前、無理してるだろ。多分、フレンズ化解除の負荷が今になって出てきたのか、或いは今までの皺寄せが…」

 

バレちった… 最近、少しずつではあるが、体調が悪くなっている。

 

光太郎「二人に、心配かけたくないんです。 二人にはずっと…笑顔でいてほしいんです。だから…」

 

だから…例えこの身が朽ちようとも、二人には笑顔で…

 

ツチノコ「心配ねぇ…けど、お前が急にくたばったら、それこそ二人に心配かけるんじゃないのか?」

 

光太郎「それは…」

 

ツチノコ「キツかったら二人に伝えろ。 その方が、互いの為だ。……1人で背負い込むなよ。」

 

分かっている…だけど、二人を守りたい…

 

ツチノコ「さ、話は終わりだ。悪かったな、引き留めて。 二人の所に行ってやれ…」

 

光太郎「ありがとうございました…俺、もうちょっとだけ頑張ります。 それでは…」

 

 

 

 

 

-バイパス出口-

 

 

光太郎「ごめん…」

 

ニホ「全然大丈夫だよ!」

 

ルペラ「さぁ、行きましょう?」

 

光太郎「あぁ、次は高山か…」

 

この平和も、ずっと続いてくれれば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-火山洞窟-

 

 

女王?「時は満ちた…貴方達は、かつて輝きの溢れていた‘ゆうえんち’で、最後の進化を。 私は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………再びヒトの輝きを。」

 



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Ep.27「住処と紅茶とサド気質」

-ロープウェイ乗り場-

 

 

光太郎「おぉ…思ってたよりも高い…」

 

あれぇ? こんなに高かったっけ? 上に行く方法はロープウェイだけ…

 

ニホ「光太郎、これなぁに?」

 

光太郎「これは、ゴンドラって言うんだよ。 これに乗れば、自動で運んでくれ…え?」

 

うそ…何で緊急時用のペダル式のになってるの? 俺疲れちゃうよ?

 

ルペラ「光太郎様、どうしたのですか?」

 

光太郎「ルペラ、これ自動で運んでくれない…コレ、ペダルを足で動かさないと登らないヤツだよ…」

 

ルペラ「高山の上に行きたいのでしたら、私が運びますよ?」

 

そうだ…ルペラ、グアダルーペカラカラはハヤブサ科の中でも大型。 それにサンドスターの力が加わればいける…

 

光太郎「ルペラ…頼める?」

 

ルペラ「勿論ですよ。 あ、一つだけ言っておかなければならない事が…」

 

光太郎「良いけど…どうしたの?」

 

ルペラ「PPP様達のライブステージで戦った時の事、覚えてますか?」

 

光太郎「あぁ、あのタコみたいなセルリアンと戦った時ね。」

 

ルペラ「あの時の低空飛行、あれ程の速度は出ませんが、それなりの速度は出ますけど…大丈夫ですか?」

 

懐かしい…懐かしいけど、大して時間は経って無いんだな。 色々有ったから感覚が狂ってきたよ…

 

光太郎「俺は大丈夫。 ニホニホは?」

 

ニホ「私も大丈夫!」

 

ルペラ「了解です。それでは…」

 

そう言うと、ルペラは俺とニホニホを小脇に抱えた。

 

え? 一度で運ぶの?

 

ルペラ「準備は出来ましたか?」

 

上からキラキラしたものが降ってくる…サンドスター由来の輝きか?

 

ルペラ…重く無いのかな?

 

ルペラ「行きますよ…!」

 

頭部の翼を大きく羽ばたかせると、ルペラの身体が地面を離れ、空へ向かって加速し続けていた。

 

あ、凄い。目開けてたらドライアイ街道を驀進するわ。

 

 

 

-ジャパリカフェ-

 

 

?「アルパカ、今日の紅茶も中々ね。 ねぇ、トキ?」

 

トキ「えぇ、何時も通りの美味しさだわ。 喉の調子も良い感じ…ムフゥ…」

 

アルパカ「ありがとにぇ。 お代わりならいっぱいあるゆぉ!」

 

?「…ん? あれは…」

 

そこには、紅茶片手に窓の向こうに見えるルペラ達の姿を怪しく見つめる、一匹の鳥のフレンズの姿があった。

 

?「なかなか面白そうじゃない…私の“おもちゃ”に相応しい…ふふっ…」

 

 

 

 

-ジャパリカフェ上空-

 

 

光太郎「ル、ルペラ? ここも高山?」

 

高山の山頂にしては、ちと高過ぎる気がする…

 

ルペラ「あ、すみません! 私の住処に似ていたので、つい夢中に…」

 

ニホ「へぇ〜…ルペラの住処ってこんな感じだったんだね…」

 

…あれ? てことは、旅の目的がまた一つ減った?

 

ルペラ「それでは、カフェ付近に着陸します。」

 

降下は、ちょっとゆっくり降りてもらった。 だって怖いんだもん….地面が迫ってくるの怖いよ?

 

 

-ジャパリカフェ入り口-

 

 

光太郎「お邪魔します…」

 

久し振りのジャパリカフェだなぁ…何年振りだろ。

 

トキ「あ、いらっしゃい。」

 

アルパカ「ふわぁぁいらっしゃぁい! ようこそぉジャパリカフェへぇ! お客さんは…初めてかなぁ?」

 

ニホ「うん、初めて来るの!」

 

?「こっちへいらっしゃい…お話ししましょ?」

 

ルペラ「ウッ……あの、ありがとうございます。」

 

あれ、ルペラの様子が…

 

 

-テーブル席、?との相席にて-

 

 

ニホ「ねぇねぇ、名前は何て言うの?」

 

Oh…かーなーり、ラフな感じで聞いたね。

 

?「私の名前はゴマバラワシ…宜しくね、私の可愛いお人形さん…

 

何か聞こえた気がするけど…気にしないでおこ。

 

ゴマバラ「そういえば、さっきの貴女、中々威勢良く飛んでたじゃない。 嫌いじゃないわ。」

 

ルペラ「ありがとうございます…空を飛ぶのは、とても楽しいので。ついノってしまったので…」

 

ニホ「鳥のフレンズの特権だね。」

 

トキ「確かに…この翼はとても便利ね。けど、地面を駆け回るのも、楽しいでしょ?」

 

ニホ「うん、とっても楽しいよ!」

 

アルパカ「はぁい、紅茶だゆぉ。 熱かったら冷ましてにぇ。」

 

光太郎「あ、ありがとうございます。頂きます…」

 

うっはぁ…良い香り。 紅茶の事よく知らないけどね。 砂糖入ってるのかな…?

 

あ、美味しい。

 

トキ「その様子だと、アルパカの紅茶を気に入ったみたいね。」

 

光太郎「はい…とても美味しいです。」

 

アルパカ「えへへぇ…ありがとにぇ! けどぉ、そぉんな褒めたってぇ、紅茶しか出ないゆぉ…?」

 

ニホ「うん、もう一杯!」

 

アルパカ「はいよぉ!」

 

カフェ…カフェというよりかは…居酒屋(紅茶.var)と、その女将…



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Ep.28「除草作戦」

トキ「貴方、ヒトでしょ? 名前は?」

 

最近、バレやすくなってきたな。バレても特に問題は無いけど…記憶が蘇った事でヒトのオーラが色濃くなったかな?

 

光太郎「はい、ヒトの秋月 光太郎。 こっちの二人は、ニホンオオカミとグアダルーペカラカラ。」

 

ニホ「宜しくね!」

 

ルペラ「グアダルーペカラカラのルペラです、以後、お見知り置きを。」

 

トキ「貴女達…私と似たような眼をしてるわね。 けど、凄く幸せそうでもある…最高のパートナーと出逢えた様な…ね。」

 

アルパカ「トキちゃぁん、私達もぉ最高のパートナーだゆぉ!」

 

ニホ「最高のパートナー…だって、光太郎!」

 

ルペラ「見透かされてしまいましたね、光太郎様。」

 

光太郎「出逢ってまだ全然経って無いけど…不思議だね。…いや、昔から逢っていたか。

 

ゴマバラ「へぇ…あなた達って、そう言う関係だったのね。面白い事を聞いたわ……フフッ…」

 

うわぁ…怖い怖い怖い…寒気してきたよ。

 

ルペラ「…そういえばカフェに来る途中で、地面に何か描かれていたのです

が…」

 

アルパカ「あぁ、あれにぇ? 草を抜いて描いたんだけど、かばんちゃんが考えてくれたんだゆぉ!」

 

光太郎「このカップの形…ですかね?」

 

アルパカ「そうなんだゆぉ! そうなんだけどぉ、最近また草が生えてきちゃってぇ、ちょっと分かり難くなっちゃったんだよねぇ…」

 

ニホ「じゃあさ、もっかい抜けばまた分かり易くなるよね!」

 

光太郎「それなら俺、手伝いますよ。 紅茶のお礼もしたいですし。」

 

アルパカ「助かるよぉ! じゃじゃ、手伝ってもらおうかにぇ!」

 

トキ「懐かしいわね、あの時みたい。」

 

トキだけに………プッ

 

ゴマバラ「そうねぇ…じゃ、私も手伝うわよ。 ねぇ、ルペラァ?」

 

ルペラ「は、はい。 光太郎様、頑張りましょうね。」

 

光太郎「あぁ、頑張るよ。」

 

ルペラ、ゴマバラさんに気に入られてる…

 

 

-カフェ外、地上絵跡-

 

 

アルパカ「多分、前まで線のあったトコの草はぁ他よりも短いと思うからぁ、それ通りで大丈夫だゆぉ。」

 

ニホ「はーい!」

 

ルペラ「あの、抜いた草は何処に置いておけば良いですか?」

 

アルパカ「あー、それなら私が食べるからぁ、カフェの中のお皿に乗せといてぇ?」

 

ルペラ「食べるんですか!?」

 

アルパカ「へへぇ、冗談冗談。 げんこう?を描きに来たタイリクオオカミちゃんが教えてくれたのぉ!」

 

ビックリしたぁ…本当に食うのかと思ったから…

 

光太郎「それじゃ、始めようか。」

 

雑草抜きかぁ…久し振りだなぁ…

 

 

〜1時間半後〜

 

 

光太郎「………ツカレタ」

 

山の上だから多少は涼しいと思ったが、ずっとしゃがんでるし、何より日差しがそこそこ良いから…暑さ関係なく疲れるし汗でるよ、これ。

 

アルパカ「みんな〜、お疲れさまぁ! ありがとうにぇ!」

 

ニホ「結構見易くなったね。」

 

ゴマバラ「少し息が上がっているルペラも良いわねぇ…」

 

ルペラ「え、えぇ…そうなんですか、光太郎様?」

 

光太郎「えと……俺は、どんなルペラも好きだけど…やっぱり笑顔のルペラが一番かな。」

 

トキ「あらあらぁ…」

 

もう…慣れたぞ。 いいよ、もう。 イチャつくから。

 

ニホ「笑顔なら、私だって!」

 

そう言うと、ニホニホは俺に向かって笑顔を見せてくれた。

 

うん、採点不能だ。 可愛過ぎて直視出来ん。

 

ゴマバラ「…そういえば、トキ。あなた、歌が上手なんでしょう? 聴いてみたいわ。」

 

…ん? トキに歌……あ、不味い。

 

トキ「あら、私の歌ってそんなに有名なのかしら?」

 

えぇ、俺が現役のパーク職員だった時も有名でしたよ。 マナーの悪い客を歌で撃退…なんて事もやってましたし。

 

…まさか、ルペラの新たな表情を見たいが為に…?

 

トキ「…それじゃあ、一曲…スゥ…」

 

ニホ「楽しみ…」

 

ルペラ「…」

 

あ、ルペラは察してるな。 ニホニホ、純粋な君に、幸あれ。

 

そして俺、耐えるんだ…

 

 

 

 

〜トキ、確かに凄い歌声だ。但し、ニッポニアn…ジャパリパークじゃあ二番目だ…………(トキの単独ライブ、終了)〜

 

 

 

 

…あれ? 思ってたよりも良かったぞ……涙出てきた。

 

アルパカ「トキちゃぁん、いつも通り上手だにぇ〜」

 

ゴマバラ「噂…よりも良かったじゃない。」

 

ニホ「すごいよ!!」

 

ルペラ「お上手ですね!」

 

トキ「みんな、ありがとう。」

 

光太郎「こちらこそ…ありがとう。」

 

歌なんて…何年ぶりに聴いたんだろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

アルパカ「みんなぁ、今日はありがとうにぇ。助かったゆぉ!」

 

トキ「私の歌を聴いてくれてありがとうね。 嬉しかったわ。」

 

ゴマバラ「あなた達、中々面白いわね…また会いたいわ。」

 

光太郎「皆さん、ありがとうござました。 また、会いましょうね。」

 

ニホ「バイバーイ!」

 

ルペラ「お元気で。……ゴマバラワシ様」

 

一通り、いっときの別れの言葉を告げると、ルペラは再び俺とニホニホを脇に抱え、山を降りて行った。

 

 

下りって怖いね。

 

 

 

-再びロープウェイ乗り場-

 

 

光太郎「ルペラ、お疲れ様。」

 

ルペラ「いえ、大丈夫です。 その労いのお言葉も、私にとってはご褒美ですから。」

 

ニホ「歌…私も歌いたいなぁ…」

 

光太郎「何か歌う?」

 

ニホ「うぅん…何歌おうかな…」

 

ルペラ「光太郎様、何か歌ってみてくれませんか?」

 

えっ…歌かぁ…

 

光太郎「俺歌うの…?」

 

ニホ「光太郎の歌、聴いてみたい!」

 

光太郎「そうかぁ…ちょっとだけだよ?」

 

ルペラ「はい!」

 

 

 

 

光太郎「それでは、秋月光太郎で、『オレの青春』…」

 

 

 

 

その頃、ジャパリカフェ

 

 

 

アルパカ「あぁ! さっきの3匹にぃ、お礼の紅茶出すの忘れてたゆぉ!」




いやぁ…いよいよ明日ですね、「けものフレンズ3」(2019.9/23現在)。

ニホニホ…ルペラ…お願い…来て。


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Ep.29「闇に光る目」

-ジャングル地方付近-

 

 

光太郎「あー歌った歌った!!」

 

ニホ「光太郎!? 声カッサカサだよ!」

 

光太郎「えっ、本当?」

 

 …調子に乗って歌い過ぎた…ひっさしぶりに歌ったんだよ!?

 

ルペラ「大丈夫ですか、コレ飲みます?」

 

そう言うとルペラは、あの時ビーバー達から貰った水筒を渡してくれた。

 

光太郎「ありがとう。 けど、中身は何処から? 始めから入ってた水は砂漠で飲み切ったし…」

 

ルペラ「アルパカ様の所で頂きました。 光太郎様、トキ様の歌を聴いた後、ずっと固まっていましたので、その時に。」

 

光太郎「成る程、感動してフリーズしてたんだな、俺。」

 

一人で納得しながら、水筒の中身を少し飲み、残りをルペラに渡した。

 

光太郎「俺はもう大丈夫。後は二人で飲んで良いよ。」

 

ニホ「良いの!? やったー!」

 

そんなに飲みたかったのか…飲んでも良かったのに…

 

ルペラ「光太郎様、もうすぐでジャングルちほーです。」

 

光太郎「そうか…このまま行っちゃうか!」

 

ニホ「おーっ!」

 

ルペラ「大丈夫ですか? 日が暮れると言う事は…」

 

光太郎「大丈夫、死にはしないよ。」

 

ルペラ「…どうして毎回死が基準なんですか…?」

 

光太郎「あー…ほら、生きてれば何とかなるじゃん? 出来ない事だって沢山あるけど、死んじゃったら出来る筈の事も出来ない…だから、生きてさえいれば良いって事。」

 

 あれ、自分でも何言ってるのか分からなくなってきた。

 

ニホ「そっか…じゃあ私達は、出来る事をするチャンスを貰ったって事だね!」

 

 私達…確かに、俺も…

 

ルペラ「そのチャンス…活かしきりますよ。 光太郎様と、ニホンオオカミ様と…」

 

光太郎「みんなで…ね。 えっと…ここがジャングル地方で合ってるんだよね?」

 

 

-ジャングル地方-

 

 

光太郎「流石ジャングル…緑が多いね。」

 

ニホ「光太郎と会ったのも森の中だったよね、こっちの方が湿ってるけど。」

 

ルペラ「確か、光太郎様がセルリアンに襲われていた所をニホンオオカミ様が助けて…」

 

光太郎「あの時、ニホニホが居なかったら俺死んでたよ…ありがと。 それに、あの時助けてくれなかったら、ルペラを助ける事も出来なかった…」

 

ルペラ「ニホンオオカミ様が、私達を巡り逢わせてくれたんですね…ありがとうございます。」

 

ニホ「いいのいいの! フレンズは助け合いでしょ?」

 

ルペラ「ふふっ、そうですね。」

 

光太郎「俺もフレンズか…良いな。」

 

改めて、自分が認められた気がする…

 

ニホ「!?」

 

光太郎「ニホニホ、どうしたの?」

 

ニホ「そこの茂み、何か揺れた…」

 

 新たな刺客か?

 

ルペラ「な、何か光って…」

 

え、ちょっ、怖い怖い…

 

光太郎「…ルペラァ!ニホニホォ!ニゲルルォ!」

 

ニホ「光太郎はぁ!?」

 

光太郎「俺は後から追い付く! だから!」

 

ルペラ「でもっ!」

 

光太郎「いいから! 俺は大丈夫だから!」

 

せめて2人だけでも…

 

?「ソンナニ怖ガラナクテモ良イヨ。」

 

…この声は、確か…

 

?「探シタヨ、光太郎。」

 

茂みから出てきたのは、ジャパリパークのパークガイドロボット、ラッキービーストだった。

 

光太郎「ラッキー…」

 

返してくれよ、俺の精一杯!

 

ルペラ「ボスでしたか…驚きましたよ。」

 

ニホ「…えっ、光太郎とボスって知り合いだったの?」

 

光太郎「まぁね。 ラッキー、ジャングルからサバンナへの案内を頼めるかな?」

 

ボス「分カッタヨ、大体2時間位ノコースダケド、ソレデモ良イカナ?」

 

光太郎「勿論、頼んだよ。」

 

ニホ「ボスゥ、お話し出来るなら早く言ってよ…」

 

ルペラ「そうですよ、ボスは余りにも言葉を発しない所為で、ボスの事を幽霊だと言っているフレンズ様も居るんですよ?」

 

ボス「……」

 

光太郎「ラッキー? 別に少し位なら話しても良いんじゃない?」

 

ボス「ソレハ基本出来ナイヨ。相当ナ事ガ無イ限リ、フレンズトノ干渉ハ、ジャパリマンノ提供以外ハ許可サレテイナインダ。」

 

やっぱりか、徹底してるな。

 

ニホ「そっか…ボスも色々と大変なんだね。」

 

ルペラ「今度、周りのフレンズ様達の誤解を解いていきますね。」

 

光太郎「じゃっ、出発しよっか。」

 

ボス「足元ニハ十分気ヲ付ケテネ。 湿度ガ高イカラ、多少ヌカルンデル所モアルヨ。」

 

 

-ジャングル地方-

 

 

ボス「ジャングルチホーニハ、タクサンノフレンズガ居ルヨ。」

 

ん、この黒いボディの生き物は…まさか!?

 

光太郎「うっはぁぁぁ…」

 

ニホ「光太郎、どうしたの?」

 

光太郎「みて…野生の多湿系サソリだよ! すっごーい!」

 

ルペラ「サソリですか? ジャングルにも居るんですね…」

 

光太郎「そう、サソリには乾燥を好む種と多湿を好む種に分かれてるんだよ。」

 

ボス「コノサソリハ、“ベトナミーズフォレストスコーピオン”ダネ。他ノ似タ様ナサソリモ纏メタ、チャグロサソリ ト呼バレル事モアルンダ。」

 

ニホ「ボス…良く喋るね。」

 

ルペラ「今まで一度も話した所を見ていなかったから、余計に…」

 

?「そのボス、お話ししてるけど…もしかして、他のボスとは違うかも?」

 

何!? いつの間に…

 

ニホ「あ、オセロット! おはよー!」

 

オセロット「ニホンオオカミか、おはよ。もうお昼過ぎだけど。」

 

ルペラ「初めまして、グアダルーペカラカラのルペラと申します。」

 

光太郎「ヒトの秋月 光太郎です。」

 

オセロット「ヒト…初めて見たかも?」

 

あれ? かばんさんも、ジャングル地方に来ていた筈だけど…

 

ニホ「かばんさんは見てなかったの?」

 

オセロット「もしかしたら、オセロットはその時寝てたかも?」

 

光太郎「そうだったんだね。もしかして、今も寝てた?」

 

オセロット「一応寝てたけど…どうして?」

 

光太郎「いや…起こしちゃったのかなぁ…って思って。」

 

オセロット「大丈夫だよ? ねぇ、オセロットも付いてって良い?」

 

ニホ「うん、私は良いよ? 二人は?」

 

ルペラ「私は大丈夫です。」

 

光太郎「俺も大丈夫。 一緒に行こうか。」

 

オセロット「ありがとう、この辺りの事は詳しいよ。 だって、オセロットだもの。」

 

ちょっと不思議な子がガイドになったな…オセロットか。



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Ep.30「導かれた先」

光太郎「それじゃあ宜しくね、オセロットさん。」

 

オセロット「オセロットだけで良いよ。だって、オセロットはニホンオオカミの友達、光太郎はニホンオオカミの…友達? だから、オセロットと光太郎は友達。」

 

ニホ「友達…というか家族だね、光太郎!」

 

ルペラ「私の事、忘れないで下さい…」

 

あーもー…可愛いんだからぁっ!!

 

光太郎「忘れる訳無いよ…ルペラも、ニホニホも大切な家族だよ。」

 

ニホ「そうだよ! 此処まで一緒に旅したじゃん!」

 

ルペラ「…ありがとうございます。 すみません、オセロット様。行きましょうか。」

 

オセロット「そうだね、行こっか。」

 

 

-ジャングル内-

 

 

オセロット「…あれ?」

 

光太郎「どうかしたの?」

 

オセロット「何時もなら、もう少しフレンズがいるんだけど…」

 

ニホ「ちょっと…怖いかも…」

 

ルペラ「何があったのでしょう…」

 

セルリアンでも出たのだろうか…

 

光太郎「ラッキー、何か分からない?」

 

ボス「…半径120km以内、ラッキービースト トノ通信不可。 電波障害ガ発生シテイルネ。 他ノ ラッキービースト カラ、情報ガ得ラレナイヨ。」

 

光太郎「そうか…ありがとう。」

 

…半径120kmって…随分と広いな。

 

オセロット「けど、オセロットならジャングルの外まで案内出来るよ。」

 

茂みの中に、人影が見える。

 

光太郎「オセロット、あそこに居るのはフレンズ?」

 

オセロット「んー? あ、ミナミコアリクイだよ。 おーい。」

 

ミナミコアリクイ「うぁっ!? あ、オセロットかぁ… う、後ろに居るのは…?」

 

あら、怯えられちった?

 

オセロット「この子達は、オセロットの友達。 ねぇ、他のフレンズ見なかった?」

 

ミナミコアリクイ「なんかね、ゆうえんち? に、すっごいセルリアンがいっぱい居て、この辺りとか危ないからみんな逃げてったよ。私もその途中だけど…」

 

オセロット「そうなの? ありがとうね。」

 

何だ、すっごいセルリアンって? まさか、女王と何か関係が…

 

オセロット「どうする? 引き返す?」

 

光太郎「うーん… ミナミコアリクイさん、サバンナも危ないですか?」

 

ミナミコアリクイ「場所にもよるけど、あんまり行かない方が良いよ。」

 

光太郎「…オセロット、この道を真っ直ぐ行けばサバンナ何だよね。」

 

オセロット「そうだけど…行くの?」

 

光太郎「ルペラ、ニホニホ、オセロットと先に引き返してて。」

 

ニホ「何言ってるの? 光太郎はどうするの?」

 

もし、女王が原因なら本当に不味い。 見つけ出さなければ…

 

光太郎「ちょっと様子を見てくるだけだから。危ないと思ったら、直ぐに引き返す。」

 

ルペラ「…その言葉、信じて良いんですね?」

 

光太郎「あぁ、大丈夫。」

 

ニホ「光太郎…」

 

光太郎「大丈夫、絶対に戻るから。」

 

ルペラ「……分かりました。 ですが、直ぐに戻って来て下さいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-サバンナ地方-

 

 

旅の目的最後の一つ、かばんさんの通った道を逆から周る。

これが達成された。

だが、サバンナは雨季なのか雨が降っていた。

 

旅の完結には、あまり嬉しく無い終わりだった。本当なら晴れていて欲しかったが…

 

 

 

 

 

?「ようこそ、秋月 光太郎君。」

 

光太郎「…誰だ?」

 

?「私かい?…君が会いたがっていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女王だ。」




次回、最終章突入。


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最終章「最後ノ審判」
Ep.31「轢き契られた家族」


光太郎「女王、まさか、あの女王か…?」

 

女王「そう、一度は園長率いるフレンズ達…そしてあの失敗作(ミスクリエーション)に倒された女王。しかし、私は甦った…再びヒトの輝きを手に入れたんだよ…カコという女よりも利用しやすいヒトのね。そのおかげで、あの失敗作の中に生まれた感情とやらを私なりに生成する余裕が出来た。」

 

光太郎「その、輝きを奪った相手は誰だ…」

 

光太郎の瞳には、怒りが篭っていた。 フレンズ達を危険に晒した相手への、怒りを込めていた。

 

女王「…君にとっては重要な相手。 君の命を奪った相手…」

 

その瞬間、光太郎は鉄パイプを強く握り締めた。

 

光太郎「つまり…俺の敵か。」

 

女王「それはどうかな…私は、君に協力して欲しいんだよ。」

 

光太郎「…何を言ってる?」

 

女王「君の輝きを、少し分けてくれないか? そうしたら、君は助けるよ。」

 

光太郎は、女王の言葉を聴き終わらないまま、鉄パイプで殴りかかった。

 

が、片手で軽く去なされた。

 

女王「血気盛んなのは良い事だが、少しは話を聞いたらどうだ?」

 

光太郎「話したら…話したら平和に解決出来るのか?」

 

女王は、少し首を傾げた。

 

女王「平和…正しく私は、そんな世界を創る為に協力してもらいたいんだよ…」

 

光太郎「何…?」

 

女王「だから、少し眠っていてくれないかなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニホ「光太郎、大丈夫!?」

 

ルペラ「光太郎様!!」

 

光太郎「…2人共!? 何で…!?」

 

ニホ「どうしても心配だったから、付いてきちゃった…」

 

ルペラ「何かあってからでは、遅いので。」

 

ニホンオオカミとルペラは、光太郎を庇う様に構えた。

 

女王「…野蛮だな。」

 

 

-遊園地-

 

 

博士「…これは…想像以上なのです。」

 

助手「文献でしか見たことないヤツらばっかりなのです…」

 

2匹の視線の先には、かつて園長達の行先を阻んできた巨大なセルリアン達が蠢いていた。

 

ヒグマ「…こんなのが、この場所から出てきたら…」

 

リカオン「それって…相当ヤバいじゃないですか…」

 

キンシコウ「闘えるフレンズさん達に集まってもらいましたが…これは…」

 

カバ「あの時を思い出しますわね…」

 

 

?「何だ…怯えているのか?」

 

ヘラジカ「その声は…」

 

オオコウモリ「やっほー、久し振りだねぇ! 元気してた?」

 

リンカルス「はしゃぐなオオコウモリ、一応はパークの危機なんだ…」

 

ジャック「そう言う事だ。」

 

ライオン「あー、あの時のぉ!」

 

ヘラジカ、ライオン以外のフレンズ達は、頭に?を浮かべていた。

 

博士「誰なのですか?」

 

ジャック「別に何でも良いだろ…」

 

オオコウモリ「えっとね〜、裏のハンターって形で活動してる、私オオコウモリと、リンカルスちゃんと、ジャクソンカメレオンのジャックちゃん!」

 

リンカルス「オオコウモリ、ジャックの顔、見てみろ。」

 

オオコウモリ「んー? ヒェッ

 

ジャックは、殺気全開の眼でオオコウモリを睨んでいた。

 

ヒグマ「…で、何の用だ?」

 

ジャック「ふぅ……このセルリアン共の始末を手伝いに来た。」

 

助手「信用しても良いのでしょうか、博士?」

 

博士「今は仕方ないのです、パークの存続に関わる事なので。」

 

キンシコウ「しかし…何か策は有るのですか?」

 

博士「…取り敢えず、遊園地から外に出さない様にするのです。」

 

ジャック「心が躍るなぁ…」

 

カバ「あの子…少し雰囲気が変わっているわね。」

 

オオカミ「良いネタになりそうだ…私が生きてれば…ね。」

 

博士「それでは……遊園地の柵を最終防衛ラインとして、パークを守るのですっ!!!」

 

みんな「おーっ!!!」

 

 

-サバンナ地方-

 

 

女王「君たちが、力で抵抗しようとするなら…私も。」

 

そう言うと、女王は右手を前へ突き出した。

 

その手の先は、形を変え、筒状に変わっていた。

 

ニホ「…何?」

 

ルペラ「……」

 

…不味い!

 

光太郎「危ないっ!」

 

光太郎は、咄嗟に2人の前に飛び出した。

 

 

その瞬間、女王の右手が火を吹き…

 

…何かが光太郎を撃ち抜いた。

 

光太郎「あ゛ぁ゛!゛…ぁ゛…」

 

ニホ「光太郎ぉ!!?」

 

ルペラ「…光太郎様に、何をしたんですかぁ!?」

 

女王「…少し、静かにしなさい。」

 

女王は左手を払い、液体、セルリウムをニホンオオカミとルペラに浴びせ掛けた。

 

ニホ「何をし…うぅ…」

 

ルペラ「光太郎様……」

 

光太郎「あ゛ぁ゛… 2人に…何をした…」

 

女王「少し、大人しくしてもらったんだよ…少しだけ輝きを貰って…ね。」

 

光太郎「ふざ…けるなぁ…!」

 

女王「2匹を助けたいのなら…明けの明星が輝く前に、あの森へ来い。」

 

そこまで光太郎に伝えると、二人の髪を掴んで引き摺りながら、会話の途中で指差した森へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

弾を受けた傷口は、セルリウムによって汚染されていた。

 

光太郎は、その痛み、2人を庇い切れなかった後悔、そして己の身体の限界に悶え苦しんでいた。



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Ep.32「生きて」

〜4時間後〜

 

 

夕陽が沈み、月の光がサバンナを照らしていた。

 

光太郎「やっと…まともに動け……うぅ…」

 

ボス「……再起動二、成功シマシタ。…光太郎、マダ動イチャダメダヨ。」

 

光太郎「けど…早く2人を助けないと…」

 

光太郎の顔には、焦りの色が見えていた。

 

ボス「光太郎、君ノ身体ハ、サンドスター 二ヨッテ、何トカ動ケテイル状態ナンダ。無闇二サンドスター ヲ消費シタラ…」

 

光太郎「ニホニホとルペラがピンチなんだよ…何があっても護り通すって、約束したんだよ。ごめんね、ラッキー…」

 

ボス「ダメダヨ、僕ノ仕事ハ職員ノ安全確保ヲスル事デモアルンダ。ダカラ…」

 

光太郎「情報管理コード入力、再起動は明日の朝……」

 

ボス「コード入力ヲ確認。情報ノ整理ヲ開始シマス…」

 

光太郎「…ごめん。」

 

ラッキービーストは、その場で動きを止め、メモリ内を整理し始めた。

 

 

-同時刻、遊園地-

 

 

博士「今の所、遊園地から外には一体も出ていないのですが…」

 

ヒグマ「どうする博士、撤退も考えた方が良い…数が減った気がしない。 ただこっちが消耗し続けてるだけだ…」

 

どのフレンズも疲弊しきっていた。 一瞬でも気を抜けばセルリアンの餌食になる。

 

ジャガー「けど、ここで引き下がったら…」

 

リンカルス「セルリアンが、本格的に侵攻を開始する…」

 

オオコウモリ「もーっ…どうすりゃ良いのぉ…」

 

リカオン「群れでの狩は得意ですが、今回ばかりはオーダーがキツ過ぎますよ…」

 

疲労による一瞬の隙を、セルリアンは見逃さなかった。

 

一体のセルリアンが、リカオンに向かって触手を振るった。

 

キンシコウ「リカオンさんっ!」

 

リカオン「うぁ!…あぅ………ん?」

 

振るわれた触手は、リカオンの近くで千切れていた。

 

リカオンの前には、1人のフレンズが立っていた。

 

リカオン「…サーバル…さん?」

 

カバ「かばん達と一緒に旅をしていた筈じゃなくて…?」

 

サーバル?「サーバル……わたしはサーバルだけどサーバルじゃない…」

 

助手「…何か様子がおかしいのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

サーバル?「わたしはセーバルだよ。」

 

 

 

 

 

 

博士「セーバル…あの、セルリアンのフレンズの?」

 

その一言で、フレンズ達が騒ついた。

 

セーバル「このセルリアン達は、女王が過去の記憶を基にして作ったもの。セーバルも含めて。」

 

ツチノコ「女王…やっぱり甦ってたのか…」

 

セーバル「このセルリアン達は、ただ女王の命令のまま動いてる。」

 

博士「お前は、その命令が分かるのですか?」

 

セーバル「分かるよ、"時間を稼げ"それだけ。」

 

助手「仮に、女王を倒せばこのセルリアン達はどうなるのですか?」

 

セーバル「消える。 みんな女王の身体から出来たから。」

 

カバ「それは、あなたも含めて…ですの?」

 

セーバル「そう。 早く、女王を止めないと…」

 

ヒグマ「待て、女王を止めるって…どうやって?」

 

セーバル「セーバル、お話ししてみる。」

 

ジャック「…話しは通じるのか?」

 

セーバル「今の女王、ちょっと心がある。 怖い心ばっかりだけど。 セーバル、がんばる。」

 

博士「分かったのです…それでは、我々も」

 

セーバル「ダメ、この子達を止められるのは、博士達しか出来ないから。 セーバルは大丈夫だよ。 セルリアンだもん。」

 

助手「……女王は任せたのですよ。」

 

セーバル「サーバルが、カラカラが、ガイドさんが…園長さんが守ったパークは、セーバルが守るよ。」

 

 

-森-

 

 

十字架状に固められたセルリウム。 その十字架に架けられたニホンオオカミとルペラ。 

 

女王「少し手荒な真似をしてしまった。すまないな。」

 

ニホ「…ねぇ、お話し…出来るんだよね?」

 

女王「多少は。 私には、感情があるからな。ただ…密猟者の抱えていた感情を基盤とした物…だが。」

 

ルペラ「どうして光太郎様を傷つけたのですか…」

 

女王「あの弾は、セルリアンで出来てるんだよ…完全とは言えないが、彼は私の思いのままに動かす事が出来る…」

 

ルペラ「…何が目的なのですか?」

 

女王「私の目的は、全ての生き物を苦しみから解放する事。」

 

ニホ「どういうこと?」

 

女王「全ての生き物を輝きごと取り込み、セルリアンで管理する。その内に肉体は失うが、その瞬間から痛みや不安からは無縁の存在となる。 私が輝きを奪った、もう1人のヒトは動物を剥製にする事で、ある種の輝きを残そうとした。だが、剥製はいつか朽ちる… だが、セルリアンによって輝きそのものに成れば…」

 

ニホ「それって、本当に輝きって言えるのかな…?」

 

女王「…何?」

 

女王の表情が、一瞬曇った。

 

ニホ「えっと…」

 

ルペラ「…確かに、私達けものは時に苦しみ、痛みを感じる時があります。けれど、それでも生きようとする…その気持ちが、何かを感じた時の気持ちが、輝きなのではないですか…?」

 

女王「…流石絶滅種、生きる事への執着が強い。」

 

ニホ「それに、私達の輝きは私達の中だけにある訳じゃない…」

 

ルペラ「…光太郎様は、私達にとっての輝きです。」

 

女王「………チッ」

 

女王は、右手を高く挙げた。

 

その右手は、前よりも大きく変化し、鎖鋸(チェーンソー)状の器官を生成した。

 

女王「光太郎ねぇ……結局、お前らも人間に飼い慣らされた家畜か…」

 

ニホ「違うよ、私達は…光太郎は家族だよ。」

 

ルペラ「光太郎様は、いつも私達と対等に接してくれます…傲りもせず、見下しもせず…いつも優しくて…」

 

女王「…お前らの惚気話は聞きたく無いんだよぉ! お前達は、あの時感じた筈だ! 光太郎の、ヤツの血を見て、嗅いでぇ! ヤツを喰いたいと…!」

 

女王が生成した数少ない感情の一つ、怒りに身を任せ、鎖鋸をルペラの喉元に突きつけた。

 

ルペラ「…それはそうですよ……」

 

ニホ「ルペラ!?」

 

ルペラ「……食べたい位…愛おしいんです…好きなんです。 例え、貴方の様な独善狂が立ち塞がっても、誰が邪魔をしようと…私は、光太郎様を…私の大切な家族を……誰にも渡しはしません!」

 

ルペラは女王を睨み付け、感情をぶつけた。 女王が生成する事の出来なかった"愛"と共に。

 

女王「随分と余裕があるみたいだな…先ずはお前からだ…慈悲は無い。 苦しみながら俺に輝きを奪われるが良い…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光太郎「待てっ!」

 

女王「来たな…待っていたよ。 あと少し遅かったら、君の大切な家族とやらが死んでいたよ。」

 

ルペラ「光太郎様…」

 

ニホ「大丈夫なの!?」

 

光太郎「何とか…ね。 女王…どうすれば2人を解放する?」

 

女王「そうだな……君の輝き全てと引き換えだ。」

 

光太郎「分かった、俺が輝きを差し出せば、2人は解放されるんだな?」

 

女王「話しが早くて助かるよ…さぁ…」

 

何かに取り憑かれたかの様に、女王の元へ歩いて行く光太郎。

 

ニホ「ダメだよっ! 私達より、パークだよ!」

 

ルペラ「そうですよ! もっと、多くの命を優先すべきです… 女王に輝きを差し出してしまったら…」

 

光太郎「……いかなくては…」

 

女王「いい子だ…」

 

ニホ「来ちゃダメだよ…光太郎!」

 

ルペラ「目を…醒ましてくださいっ!」

 

光太郎の頬を、一枚の羽が掠めた。

 

頬の傷から、液状の小さなセルリアンが流れ落ちた。

 

女王「…」

 

女王は光太郎を撃った際、精神寄生型セルリアンを撃ち込んでいた。

 

ルペラは、ただ泪を流し続けていた。

 

光太郎「ルペラ……」

 

ルペラ「ごめんなさい…ごめんなさい…この方法しか思い付かなくて…」

 

ニホ「ルペラ…泣かないでよ…」

 

 

 

 

女王「……家畜、家禽が……俺の計画を台無しにしてくれたなぁ… あのまま行けば、このヒトの輝きも奪えたものを…!」

 

ルペラを十字架ごと蹴り倒し、その身体を何度も踏み付け、斬り付けた。

 

ニホンオオカミは哭き叫び、光太郎は女王に掴み掛かった。が、その腕は振り払われた。

 

哭き叫ぶニホンオオカミを鬱陶しいと思ったのか、標的をニホンオオカミに移した。

 

鎖鋸で押し倒した。 光太郎に向けて伸ばした手も、女王に踏みにじられた。

 

血が滲み、泪と土埃で顔を汚した2人。

 

その一瞬、痛め付ける事に夢中になっていた女王には隙があった。

 

光太郎は素手で殴り掛かった。 

 

普段なら殆ど効かなかった…が、女王は大きく体勢を崩した。

 

 

 

 

 

 

 

その時、不思議な事が起こった。

 

 

 

 

 

 

光太郎の首元の御守りが、光り輝いていた。

 

その光に応えるかの様にニホンオオカミとルペラの瞳にも光が宿り、身体から光が溢れ出ていた。

 

 

女王「…全員の輝きを奪って…更に進化する……殺してでも、貴様らの輝きを…!」

 

 

光太郎「女王…邪悪な心を持った人間の輝きを奪った事が、お前の不幸だ……だが、ニホニホとルペラを傷付けた事…この俺が許さん!」

 

ルペラ「光太郎様…」

 

女王「所詮3匹…俺に勝てると思うなよ…!」

 

ニホ「私達を舐めないでよ…」

 

 

 

 

 

 

 

〜AM.3:47〜

 

 

両者共に消耗していた。 身体は傷付き、呼吸も乱れていた。 …夜明けは刻一刻と近づいていた。

 

 

女王「何故…そこまで戦い続ける…苦しいだろうに。 パークの為か…正義の味方にでもなったつもりかぁ!?」

 

光太郎「…どうだろうなぁ…けど、俺は2人の…ニホニホとルペラの生きる明日を護りたい。 もし、お前が正義として戦うなら、俺は悪にでもなる… 俺が手を汚す事で、2人を護れるなら…」

 

 

 

女王が鎖鋸状の右手を振り上げ、光太郎に向かって駆け寄ってくる。

 

光太郎は静かに鉄パイプを握り締めた。

 

 

鉄パイプは、青く光り輝いていた。

 

光太郎「ルペラ、女王の石の位置は?」

 

ルペラ「…心臓の位置です。」

 

光太郎は軽く頷いた。

 

光太郎「…これで終わらせる…」

 

 

 

 

女王が右手を振り下ろそうとした瞬間、その手は弾かれていた。

 

そこには、一枚の羽が刺さっていた。

 

ルペラ「光太郎様っ!」

 

女王が怯んだ隙を突く様に、ニホンオオカミが一瞬で女王との距離を詰め、右手を破壊した。

 

ニホ「今だよ、光太郎!」

 

光太郎は最後の力を振り絞り、女王の胸目掛けて鉄パイプを突き立てた。

 

鉄パイプは、女王の石を貫いていた。

 

全身の輝きを流し込むイメージを強く念じると、そのイメージ通り輝きは鉄パイプを通して女王へと流れ込んでいった。

 

 

女王「あ゛っ゛! …何故だ…何故そこまでの輝きを持てる…? 所詮1匹のヒトなのに…」

 

光太郎「確かに、俺1匹ではあり得なかった…けど、俺にはこの御守りが、そして2人が居る…2人への愛が、ここまでの輝きを生み出した…」

 

女王「俺の愛は…輝きを生み出せなかった…何の違いだ…?」

 

光太郎「さぁな…けど、俺の愛には何の目的も無い。ただ愛する…想う…見返りなんて求めない。愛している時間が、想いが…俺の輝きに繋がっている…」

 

女王「…最後に、これからも愛し続けるのか…?」

 

光太郎「当たり前だ…死ぬまで…いや、死んでも愛し続けるさ。女王…もし生まれ変わりがあるなら、本当に愛する事が出来ると良いな…」

 

 

女王「…愛か。」

 

そういう女王の顔は、何処か満足そうだった。

 

 

 

鉄パイプを引き抜くと、光太郎も女王も、力無く倒れ込んだ。

 

 

 

 

ルペラ「光太郎様!」ニホ「光太郎!」

 

躓きながらも光太郎の元へ向かう2匹。

 

 

それとほぼ同時に、セーバルも女王の元へ辿り着いた。

 

 

セーバル「女王…」

 

女王「やっと分かった……お前の抱いた愛…もっと早く知る事が出来れば…」

 

セーバル「セーバルも、女王の気持ちをもっと早く知れたら、止められたかも…」

 

女王「…愛を知れて、私は満足だ…ありがとう。」

 

そう言い遺すと、女王の身体は次第に崩れていった。

 

セーバル「光太郎、女王を止めてくれてありがとう。」

 

光太郎「…セーバル…ごめんね、もしかしたら女王を倒さなくても…」

 

セーバル「いいの、女王はあのままだと誰も止められなくなる… それに、女王がありがとうだって。 セーバルからも、ありがとう。 バイバイ…」

 

光太郎「セーバル…?」

 

セーバルは光太郎に手を振りながら、ゆっくり消えていった。

 

 

-同時刻、遊園地-

 

 

博士「…セルリアン達が、消えていく…」

 

助手「女王を倒したのですね…となると、セーバルも…」

 

ヒグマ「博士、これで終わったのか?」

 

博士「…終わったにしても次があるにしても、取り敢えず休息をとるのです。…解散ッ!」

 

助手「確か、セーバルはサバンナの方へ向かいましたね。」

 

博士「…我々も向かいましょう。」

 

 

-サバンナ地方-

 

 

光太郎は女王との戦いで、体内のサンドスターを大量に消費してしまった。

 

ニホ「ねぇ…光太郎…大丈夫だよね?」

 

光太郎「……ごめん、無理そう。」

 

ルペラ「そんな…そんな事言わないでください。」

 

光太郎「けど、嘘は付けないよ…こういうのって、自分でも分かるんだね…」

 

ニホ「やだよ…せっかく家族になれたのに…」

 

光太郎「ごめんね…泣かないでよ…」

 

ルペラ「光太郎様……光太郎…死んじゃやだよ…ねぇ…」

 

光太郎「…ルペラ、やっと光太郎って呼んでくれた…」

 

ニホ「1人はやだ……もう…やだよ…」

 

ルペラ「光太郎…何で……あぁ…私を食べれば、食べれば治る!? ねぇ!?」

 

ニホ「ルペラ落ち着いて…ね?」

 

光太郎「それは出来ないよ…2人を守る為に戦ったのに…」

 

ルペラ「ハァ…ハァ……ごめんなさい…取り乱してしまいました…」

 

ニホ「光太郎、明日の朝になったら、全部夢になるんだよね? そうだよね…」

 

光太郎「夢…だと良いね。」

 

 

 

 

 

光太郎「ニホニホ…」

 

ニホ「なぁに、光太郎…?」

 

光太郎「初めて会った時の事、今でも覚えてる。あの時助けて貰わなかったら、俺は誰とも会えなかった… 何時も、ニホニホの明るさに支えられてたよ…ありがとう。」

 

ニホ「…私こそ…光太郎がいたから、いろんなことを知れた…光太郎がいたから、私もルペラに会えた…ありがとう。」

 

 

光太郎「ルペラ…」

 

ルペラ「はい…光太郎。」

 

光太郎「俺との出会いは、散々だったよな。セルリアンに家を壊され、そのセルリアンに追われる途中で怪我をして… そして、あの施設での一時…凄く嬉しかった…ありがとう。」

 

ルペラ「助けていただいた時から、貴方に惚れてしまいました…どんな時でも、貴方の温もりが私の生きる糧になっていました……光太郎…」

 

 

光太郎「ニホニホ…ルペラ……大好きだよ…」

 

 

 

 

 

夜更の空に、明けの明星が輝く頃、一粒の涙が光太郎の頬を伝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルペラ「…好き…好き……光太郎…好き………」

 

ニホ「光太郎…」

 

 

博士、助手が光太郎の元へ辿り着いた時、ルペラは何かを呟きながら冷たくなった光太郎へ接吻をし続け、ニホンオオカミは少し固くなった光太郎の腕を強く抱き、愛おしそうに指先を舐めていた。

 

その目に、涙を浮かべながら。



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Ep.finαl「エピローグ」

〜5年後〜

 

 

-ニホンオオカミのにっき-

 

 

はかせたちにおしえてもらった日っきをかき始めてから1ヶ月。

 

今日は、タイリクオオカミたち"オオカミれんめい"のあつまりを休ませてもらったよ。

 

だって、今日は光太郎とさよならをしてから5年たったから。

 

ルペラといっしょに、光太郎のおはかにいくよ。

 

じかんは、いっぱいたったけど、まだ治らないよ。ときどき、むねがすっごく苦しくなっちゃうよ…

 

また、あいたいよ、光太郎。

 

 

 

-ルペラの日記-

 

 

ニホンオオカミ様と一緒に始めた日記、先日ゴマバラワシ様に見つかってしまい、みんなの前で読まれそうになりました…

 

来月、ハクトウワシ様率いるスカイインパルスとレースをする事となりました。 大勢のフレンズ様達が観に来られるそうで…

 

しかし、今日だけは練習を休ませてもらいました。

 

今日は、光太郎様との別れからちょうど5年。

 

私は忘れない、貴方の声、温もり、笑顔……その優しく純粋な心…

 

貴方は、覚えていてくれているでしょうか…

 

また…会いたい。

 

 

 

 

-サバンナ付近、林-

 

 

ルペラ「ニホンオオカミ様、お久しぶりです。」

 

ニホ「久し振り、前よりも大人っぽくなった?」

 

ルペラ「ニホンオオカミ様こそ、少し会わないだけでも凄く変わってみえますね…」

 

ニホ「じゃあ…行こっか。」

 

 

 

 

 

 

ルペラ「オオカミ連盟の方はどうですか?」

 

ニホ「楽しいよ、みんな優しくてさ…そっちは?」

 

ルペラ「あれから、イヌワシ様も加わって正式にスカイダイバーズとして活動を始めました。 スカイインパルス様達とは、互いに磨き合う様な関係で…」

 

 

 

 

 

 

 

-光太郎の墓-

 

 

ニホ「久し振り…光太郎。」

 

ルペラ「見てください、このお花。皆様が持たせてくれたんですよ…」

 

ルペラが、両手で抱えた花束を墓石の前に置いた。

 

ニホ「みんなさ、光太郎に会いたいって。 けど、これだけは言える。一番光太郎に会いたいのは、私達だよ…」

 

ルペラ「光太郎様…貴方は、自分の命と引き換えに私達を救ってくれました。私は、貴方の命に見合った日々を過ごせているのでしょうか…」

 

ニホ「不思議だよね…光太郎との旅って凄く短い間だったのに、もう光太郎のいない毎日が考えられなくてさ…今でも信じられないよ。」

 

ルペラ「貴方の温もりは、今でも鮮明に思い出せます。 ですが、もう一度貴方の温もりを感じたい…」

 

ニホ「あのね、来月ルペラ達がハクトウワシ達とレースをするんだって。 光太郎と一緒に観たかったよ…」

 

ルペラ「5年の月日が経って、周りの風景は少し変わりました。貴方とお揃いの御守りも、少し錆びてしまいました。ですが…手放そうなんて気は、微塵も湧きません。」

 

ニホ「これが、今の光太郎との繋がりに思えてさ。あーあ…これから光太郎の声が聞こえてこないかなぁ…」

 

首から提げた御守りを握りながら呟くニホンオオカミの声は、少し震えていた。

 

 

 

 

ルペラ「光太郎様…最近、私自身を少しだけ許せる様になりました。 皆様が、何時も支えてくれていて…」

 

 

 

 

ニホ「あのねあのね、最近また気になる物ができたんだよ。どうして誰かを好きになるか…なんてね。」

 

 

 

2人は、墓石に向かって…否、光太郎に向かって、近況を語っていた。

 

いつの間にか時は過ぎ、宵の明星が空に輝き始めた。

 

 

ニホ「じゃあ、そろそろ行くね。 また会おうね…光太郎。」

 

ルペラ「いつか、私をお迎えに来てくださいね…」

 

 

 

 

 

 

-林、出口付近-

 

 

ニホ「けど、本当に不思議だよ…今でも光太郎が隣にいる気がしてさ。」

 

ルペラ「もしかしたら、本当に居るのかも……なんて。」

 

ニホ「ルペラ、冗談も言える様になったんだね。」

 

ルペラ「そうですか? 少し社交的になったのでs……」

 

2人は、歩みを止めた。

 

ニホ「……ルペラ、不味いよ。」

 

ルペラ「まさか…この大きさのセルリアンがまだ居たとは…」

 

セルリアン「!!」

 

セルリアンの触手が、木々の枝を断ち切りながら2人へ迫ってくる。

 

 

 

 

 

その時、火山から輝きが放たれた。

 

 

 

 

-墓石-

 

 

 

…此処は何処だ? 

 

 

…悲鳴が聞こえる。 守らなくては…

 

例え、何が相手でも…守るべき、愛した者は守る…

 

 

輝きに照らされた、その人型の何かは金属の棒を持って歩きはじめた。

 

 

 

 

-林、出口付近-

 

 

 

 

ニホ「あれ…サンドスターだよね…」

 

ルペラ「光太郎様のお墓の方に落ちて…」

 

セルリアンは、林の奥の輝きを見つめていた。

 

 

サンドスターの輝きが、夜の林を照らしていた。

 

その中から、人影が一つ。だんだんと大きくなりながら、濃さを増しながら…

 

その動きが止まったと思った瞬間、その影はセルリアンに向かって走りだした。

 

セルリアン「!!!」

 

影「トゥアッ!」

 

セルリアンの仕向けた触手を、金属の棒で弾き返し、一気にセルリアンとの距離を縮め、蹴りを一発。

 

影「今だっ!」

 

ルペラ「は、はい!」ニホ「分かった!」

 

影が作り出した隙を的確に突いていき、セルリアンを追い詰める2人。

 

ニホ「月まで届け…私の声! ダブルムーンエコォォォォォ!!!」

 

その声は木々の葉を揺らし、セルリアンの動きを止めた。

 

ルペラ「空の私は止められませんよ………ダイブ…全方位乱れ撃ちっ! この名前、どうにかなりませんかね…

 

ルペラは空高く舞い、セルリアンが姿を見失った頃、セルリアンに向かって急降下し、身体の周りに作り出したサンドスター製の羽を纏いセルリアンに突っ込んだ。

 

どうやらこの一撃が石に響いたらしく、光を漏らしながらセルリアンは砕け散った。

 

その破片の一部が、影にぶつかった。

 

影「痛っ…」

 

その後、少しの沈黙が続いた。

 

影「…ずっと泣いてたんだよね。 そんなに泣かれちったら、呑気に死んでる場合じゃないよ……」

 

ニホ「泣いてなんか…泣いて…なんか……」

 

ルペラ「あ…ぁ……」

 

涙を堪えようとするニホンオオカミ、泣き崩れるルペラ…

 

影「やっと言える……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光太郎「…ただいま。」

 

 

ニホ「光太郎ぉぉっ!! 会いたかったよぉぉ!!!」

 

ルペラ「光太郎様……光太郎様ァァァァ!! ぁぅ…ぇぅ……」

 

勢いよく、そして力強く光太郎を抱きしめる2人。

 

光太郎「まって…ちょっ…苦しい……」

 

余りにも力強い介抱で逝きかけた光太郎の顔は、どこか嬉しそうだった。

 

ニホ「…光太郎、前よりもさ…」

 

光太郎「うん?」

 

ニホ「可愛くなったよね。」

 

ルペラ「それに、声も可愛く…」

 

 

…あれ、そういえば…

 

俺、何で生き返ったんだ?

 

……あ。

 

光太郎「ちょっ、ちょっと待ってて…」

 

ニホンオオカミとルペラには、その場で少し待ってもらい、俺は林の影に入った。

 

もし仮に、サンドスターの影響で生き返ったとしたら……

 

 

恐る恐る、ズボン及び下着の中を除いて見た。

 

 

 

 

 

無い。オスの印が無い。

 

サンドスター去勢されてしまった。

 

 

 

 

ニホ「どうしたの?」

 

光太郎「うぉぁあぅ……えと…」

 

ルペラ「光太郎様…あの……ブツ、無くなりましたね。」

 

えぇ、ブツが消えましたよ。あたしゃビックリだよ。

 

これではまるで、ブツを犠牲に生き返った様じゃないか。

 

ニホ「…どーゆーこと?」

 

光太郎「まぁ…女の子になっちった。」

 

ルペラ「ですが、光太郎様は光太郎様ですよ…ね♪」

 

光太郎「まぁね。 こんな俺……私?だけど、これからも宜しくね。ルペラ、ニホニホ。」

 

ルペラ「はい!」ニホ「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイリクオオカミ「…という話を、次の漫画で描こうと思ってるんだが、どうかな?」

 

ロッジの一室。 タイリクオオカミが話しかけている先には、二色の羽飾りを付けた帽子を被被り、背中に何かを背負っている中性的なフレンズと、大きな耳を持ったフレンズが居た。

 

 

?1「凄く良いと思います! けど、そんなに話しても大丈夫なんですか?」

 

タイリクオオカミ「そっちの旅のお土産も貰ったし…そのお礼だよ、かばん。」

 

?2「このお話、もっと聴きたい! ねぇタイリクオオカミ、その後はどうなるの?」

 

タイリクオオカミ「サーバル、良い反応だね…こっちまで嬉しくなるよ。 それで、この話の続きは…」

 

?「オオカミさぁん、オオカミ連盟の会合を覗きに来…あれ、まだ始まってない…? それに…お客さん……失礼しましたぁ…」

 

タイリクオオカミ「ちょうど良かった… 紹介するよ、かばん、サーバル。 このヒトが、私が話した新作漫画"軈テ星ガ降ル。"の主人公のモデル…というか主人公の… 秋月 光太郎だよ。」

 

光太郎「えっ…かばんさんが…えっ、ちょっ、ルペラァ! ニホニホォ!来てぇ!」

 

ルペラ「どうしたんですか?」

 

ニホ「なになにぃ?」

 

 

かばん「あなたが、もう一人のヒトのフレンズさん…ですか?」

 

光太郎「はい…その…ずっとお会いしたかったんです! あの、あ、握手…良いですか?」

 

かばん「あ、良いですよ。 それにしても…ぼくたちの行った所を巡っていたんですね。 みなさん、元気そうでしたか?」

 

光太郎「えぇ、とっても… 」

 

 

サーバル「ねぇねぇ、何処から来たの?」

 

ニホ「えっとね、森林の方から来たの!」

 

ルペラ「サーバル様達は、旅でどの様な事があったのですか?」

 

光太郎「え、それ俺も聴きたい!」

 

サーバル「かばんちゃん、一緒にお話ししよっ!」

 

かばん「うん! サーバルちゃん、何処から話そうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光太郎のヒトとしての旅は幕を閉じた。

 

だが、新たにヒトのフレンズとしての旅が始まった。

 

己の愛する者のために命を燃やした彼は、その瞳に再び何を写すのか。




まず、此処まで約8ヵ月の間この作品を見て頂き、本当にありがとうございました。

少しでも楽しんで頂けたでしょうか?

何を血迷ったか書き始め、投稿し始めたこの作品。完結まで漕ぎ着けたのは、皆様が一度でも見て頂いてくれたおかげです。

重ね重ねになりますが、私の稚拙な文で書かれたこの作品を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。


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番外編
Ep.---「諸々」


単刀直入に言うと、裏話的な何かや設定、個人的な気持ち諸々…を纏めた、無法地帯ですよ。
「ヒマだなぁ…」と言う方は、ちょっと覗いてみては…

一応、本編のネタバレも含まれますのでご注意を。


今作の主人公

 

 

・秋月 光太郎

 

元パーク職員で、初めての担当はニホンオオカミとグアダルーペカラカラという中々にハードなお仕事をした。 というのも、どうやら2人が困っていた所を助けた事で、2人が一目惚れしたとの事。羨まし…

 

その後、ダッカーの残党(後述)にムッコロされ、本人の生前の要望でパークの慰霊碑に入れてもらった。 因みに、この慰霊碑はサンドスターによって中でフレンズ化が起きない様に外部からのサンドスターを遮蔽する特殊な素材で出来ていた…らしい。が、経年劣化によりその効果が大きく弱まり、少しずつサンドスターが光太郎のお骨に伝わっていき、Ep.1に繋がる。

 

何故かポール星人と会話を始める。

 

当初の予定では、昭和の特撮ヒーロー(特にライダー)の主人公の様な、爽やかな熱血漢を目指していたが、所々に作者を東e…投影してしまい、今の光太郎になった。 但し、私(作者)には、光太郎の様な真っ直ぐな心は持ち合わせていません。 光太郎は、私の理想でもあるのかもしれません。

 

名前の元ネタとしては、仮面ライダーBLACK・BLACK RXの主人公「南 光太郎」と、光太郎の親友であったが、創世王の魔の手によって宿敵となってしまったシャドームーン「秋月 信彦」から。   又はウルトラマンタロウの主人公「東 光太郎」から。

 

 

・グアダルーペカラカラ、ルペラ

 

My wife(虚言).

 

けもフレ界の黄金水(意味深)担当。そしてドSに囲まれる可愛い子。

泣きぼくろからはエメリウム光線が出ます(出ません)。

 

「○○様とのデート、いつも楽しいです。今日は私のおすすめの空へと行きませんか?」というネクソン版の台詞から、光太郎の彼女ポジションとなったぞん。 あー好き。

 

元ネタの情報が本当に手に入れ辛く、ア゛マ゛ゾ゛ン゛で絶滅鳥類の本を買ったが、全編英語なのでG○ogle翻訳片手に読んでます、はい。

 

ネクソン版けものフレンズのストーリー動画を観ていたら、一目惚れしました。

 

誰か「やぁ、作者! 突然だが、海外に行くなら何処だい?」

 

私「メキシコ」

 

誰か「ナズェ?」

 

私「グアダルーペ島があるから」

 

最近になって、そこそこ名前が広まってくれて嬉しい…

 

ルペラ…好き。

 

 

 

・ニホンオオカミ

 

My wife(不倫).

 

八重歯の可愛い、群れ作ろ系フレンズ。 もうね、可愛い。

ファイズギアが使えます(使えません)。

 

=LOVE版の舞台やぱびりおん、けもフェスや2にも出ていて、割と優遇されてる…かも。

 

埼玉の三峯神社に行きたい。

 

結構前、友人が

「ニホンオオカミのフレンズの画像、えっちぃのが多いな。」

とか言ってたので、

「群れ作ろ発言とか…あとは、まみれるならマヨネーズがいいよね!のマヨネーズがアレの隠語みたいだとか…!」

と返したら納得してくれました。

 

それはそうと可愛い。

 

あの尻尾に抱き付きたい。

 

ニホンオオカミ…好き。

 

 

 

・裏のハンター

 

それぞれの元がジャクソンカメレオン、リンカルス(ドクハキコブラとして知られている)、オオコウモリという共通点が見つからない組み合わせ。

 

この組み合わせ、元ネタが…

 

仮面ライダー(1971〜1973年放送)に出てくるショッカーの改造人間達。モチーフを脊椎動物に絞った場合、蝙蝠男・死神カメレオン(カメレオン男)・コブラ男…となっていくんですよ。

 

そこから、裏のハンターのメンバーが決まったんです。

 

ちなみに、全員オリフレ…の筈。

 

 

 

・女王

 

今作のラスボス。見た目はネクソン版の頃と変わらず。

 

当初の予定では、救い様の無いヤツ…だったけれど、頂いた感想や感情を持った相手を全否定する事は出来ない…と考え、あの最期になりました。

 

大型のセルリアンやセーバルの復活方法は、ウルトラマン(1966年放送)第37話「小さな英雄」を参考にさせてもらいました。 つまりセーバルはピグモン…

 

一部の発言や腕の変形は、今作での女王の裏モチーフ"仮面ライダーアマゾンネオアルファ"から。

 

 

 

 

けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。序章〜地獄の渡り鳥、再び〜

 

 

・シモ之平兵衛

 

何とか密猟と結びつけたかった結果、銃使いになった用心棒。

 

快傑ズバット 第8話「哀しみのプロパン爆破」に登場するミッキー蛇山の用心棒、仕込み杖の地獄市の様な雰囲気を目指したかった…

 

名前の元ネタは、冬戦争中、白い死神と呼ばれ恐れられていたスナイパー、シモ・ヘイヘから。

 

 

・御堂 隆顕

 

普段は比較的ドライ、けどキレると本性が顕になっちゃう系。

 

絶滅の拍車をかける要因の一つである、「希少な種の標本=高く売れる」を擬人化したかった。

 

名前の元ネタは、仮面ライダーアマゾンズに登場する、実質的な黒幕の天条 隆顕。 劇場版での黒幕的存在、御堂 英之助より。

 

 

 

 

その他、オマージュ・パロディ、ちょっとした話など

 

・Ep.3のタイトル

 

「トリを見た」は、ウルトラQ(1966年放送)12話「鳥を見た」より。

そのまんまだよ…

 

 

・ロッジ編(私は、それぞれの話にちほーや場所の名前を使って勝手に区分している)のちょっとした話

 

ロッジ編にて、構想では最後にサイガを出す予定でした。

サイガが、角にオオカミ先生の原稿が引っかかっているのを知らずに走り回り、オオカミ先生がそれを追いかけるシーン。

ただ、「仮面ライダー555 パラダイス・ロスト」の仮面ライダーサイガvs仮面ライダーファイズ アクセルフォームのオマージュ…パロディ?をやりたかった…

 

 

・ポール星人

 

ウルトラセブン(1967年放送)第25話「零下140度の対決」に、凍結怪獣ガンダーと共に登場。Ep.7のタイトルの元ネタでもある。

余談だが、ケロロ軍曹でポール星人ネタをやった時はツボにハマってしまった…

 

 

・温泉宿内のゲーム、「けもんライド」

 

名前、内容はガンバライド。ただ、名前の付け方をミスってしまいサモンライドっぽくなってしまった。

このゲームが出る回を書く前に、けもフレ3 プラネットツアーズの概要を見た結果、ゲームの方向性が決まった。

 

 

・雪山ちほー編のタイトル

 

Ep.7はポール星人回。 Ep.8の「湯煙Utopia」のユートピアが、何故英語なのか…まぁ、ガイアメモリのユートピアメモリの影響ですね。 Ep.9は、仮面ライダーエグゼイド最終回「終わりなきGAME」より。

 

 

・Ep.20「獣友前線」

 

中華ゲーム「ドールズフロントライン 」の中国(大陸)版でのタイトル、「少女前線」より。

ドルフロにどハマりした時期に書きましたとです。今もですけど…

 

 

・その後のタイトル

 

仮面ライダーネタやウルトラマンネタがそこそこありんす。

JASRACさんに「ぱっかーん!」されるのが怖いので、そーゆーネタがあってのタイトルなんだなぁ…程度に思っていてください。

 

 

・Q.何故ラッキーさんが殆ど出なかったのか?

 

A.出すタイミングを伺っていたら物語が殆ど終わっていた。

あとは…1期でラッキーさんが初めて出た場所に近い所で出したかった……

などと供述しており…

 

 

・各章の名前

 

完結に言うと、仮面ライダーアマゾンズの劇場版に合わせる為。

始めの二本が二字熟語、そして三本目が「最後ノ審判」だったので…

 

 

・Q.何故、ルペラと光太郎とをヤらせたの?

 

A.……深夜テンション、怖い。

私だってね、色っぽい展開を書きたかったんですよ…そしたら、あんな風に…

書いてる時は元気でしたよ、主に私のお(作者、コレを書いている時も深夜テンションです。何卒、ご容赦ください。)

 

 

・最終章の展開について。

 

序盤の流れは、当初の予定と大した変わりませんでした。

ですが、女王とのケッチャコ…が着いた後。当初の予定では光太郎は2人に喰われる予定でした。勿論、同意の上で。アマゾンズの観過ぎです。

でしたが、流石にキツ過ぎる…と思い、あの様に看取る形になりました。

接吻や舐める動作は、当初の予定の名残です。

 

 

・最終章の、謎の明星推しについて

 

最終回といえばウルトラセブン最終回「史上最大の侵略 後編 」。

 

〜西の空に明けの明星が輝く頃、一つの光が宇宙へ飛んで行く…それが僕なんだよ…!〜

 

アンヌ隊員に別れを告げるモロボシ・ダンの台詞より。

この台詞が、私が明けの明星を知るきっかけになったので…

 

 

・光太郎の墓

 

多分、博士達が教えたんでしょうね。

 

 

・そもそも、どうしてニホンオオカミとグアダルーペカラカラを主役に?

 

単純に、2匹が好きだからですね。別に他のフレンズが嫌いって訳では絶対にありません。ただ、2匹が私の中では大き過ぎる位に存在感を放っていたのです。

 




本編で描けなかった、描くのを忘れていた物なども纏めてしまった…

こんな作品モルグすらも見て頂いた皆様…ありがとうございました。

もしかしたら、続きを気まぐれで書くかも…しれませんし、このままエンドマークを打つ事も…

重ね重ねに、更に重ね重ねになりますが、最後までお付き合い頂き…本当にありがとうございました!


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Season2 第1章「どったんばったんな新婚生活」
Ep.1「結ぶぜ、婚姻!」


光太郎「…ちょっと、作者さん?」

作者「はい?」

光太郎「…ついこの間、最終回を投稿したばかりですよね。」

作者「…はい。」

光太郎「流石に続きが出るの、早くないですか?」

作者「寂しくなっちって…」

光太郎「まぁ…俺達の旅の続きを書いてくれるのは…」

作者「という事で、season 2、始まります!」

光太郎「え、ちょっ、おーい」


-ジャパリ図書館-

 

 

光太郎「…それで、お話と云うのは…」

 

つい先日、博士から直々に呼び出しをくらった。

今の俺の拠点…家は元パーク職員の宿舎としているので、図書館との距離は近い。

ちなみに、ニホニホとルペラとは同居している。そりゃもう…

 

毎 日 が 楽 し い 。

 

博士「光太郎、お前はあの2匹と、正式な家族になりたいと思わないのですか?」

 

正式な…family?

 

光太郎「どういう事…ですか?」

 

博士「お前は、結婚という物は知っているのですか?」

 

光太郎「結婚…え、博士まさか」

 

博士「そう、そのまさかなのです。 我々が式を設定してやるのです。」

 

挙式…しちゃう?

 

光太郎「けど、式を挙げるからには本人にサプライズって訳には…」

 

助手「お前の相手であるルペラには、しっかりと伝えてあるのですよ。」

 

だからか…最近、ルペラが積極的になったのって。

 

博士「安心するのです、図書館でちょいちょいとやるですよ。」

 

光太郎「えぇ…ですが…元パーク職員として、フレンズと結婚は…ちょっと不味い気が…」

 

博士「何を今更…お前はもうフレンズなのです。元パーク職員だろうが何だろうが、そんなの関係無いのです。」

 

…けものだから?

 

助手「こーゆーのは、早いに越した事はないのです。 明日、式を挙げるのですよ。ニホンオオカミには、我々と司会をしてもらうのです。」

 

光太郎「俺が結婚…」

 

 

 

 

 

 

 

-夜、光太郎の家-

 

 

就寝スタイルは、前と変わらず布団を敷いていた。

 

 

 

ぅわっほぉい、寝れない。

 

布団に入ったまでは良かった…が、どうも落ち着かない。

 

遠足前夜のテンションに近いのか?

 

 

ニホニホはぐっすり眠っている。

 

ルペラは…どうやら俺と同じ様に眠れないらしい。何時もよりも動きが多い。

 

 

 

光太郎「…ねぇ、ルペラ。」

 

ルペラ「…どうかしましたか?」

 

光太郎「…博士から話聞いたよ…」

 

ルペラ「……明日、ですよね。」

 

光太郎「ルペラ、何というか…俺でも良いの?」

 

ルペラ「でも…というよりも、貴方だからこそ…ですよ。 明日は、一生の思い出を一緒に作りましょう…」

 

光太郎「…そうだね。………おやすみ。」

 

 

 

 

 

-式場-

 

 

ジャパリ図書館、少し飾り付けされていて、なんだかオシャンティー…なんだが…

 

 

 

おいおいおい…

 

ちょいちょいって言ってたよな…

 

 

…何でこんなにフレンズが来てるん?

 

博士「光太郎、とっとと裏に行くのです。主役はギリギリまで隠れているべきなのですよ。」

 

光太郎「そうですかね…分かりました。」

 

 

 

-テント-

 

 

どうやら、図書館内には個室が無いらしいのでテントで待機する事に…

 

まだ時間はありそうだけど、一応着替えておこう。

 

因みに、これから俺の着るタキシード、そしてルペラが着るドレスは、パーク内の施設で見つけた物らしい。

 

確か、パークで結婚式を挙げるプランが昔あった気が…そこで使われていた物だろうか。

 

 

 

タキシード、特にきつい事も無く丁度良かった。 

 

胸周り含め…… 誰だ、今まな板って言ったヤツ。

 

 

 

助手「光太郎、着替え終わったのですか?」

 

光太郎「はい、サイズも丁度で…ありがとうございます。」

 

助手「もう直ぐ入場ですが、

 

 

 

-式場-

 

 

博士「それでは、新郎の入場なのです。」

 

ニホ「こーたろー!」

 

色んなフレンズの歓声が聞こえる…

 

 

一歩一歩が、凄く重く感じる…

 

途中ニホニホの方を見てみると、凄い笑顔で手を振ってきていた。 余り派手な動きは出来ないので、小さくサムズアップをした。

 

祭壇と思われる台の前まで辿り着くと、この会場に来てくれたフレンズ達と目が合った…今までの旅で出会ったフレンズ達が来てくれていた。

 

 

助手「次に、新婦の入場なのです。」

 

ニホ「ルペラー!」

 

奥のテントから、真っ白なドレスに身を包んだ愛しのルペラが、ゆっくりと出てきた。 その顔には、ベールが掛けられていた。

 

横には、ゴマバラワシが着いていた。新婦の親役だろうか…

 

少しずつ、ルペラの顔が見える様になってきた。

 

恐らく神聖な儀式である最中に、思う事では無いと思うが…

 

ルペラ……もうね、言葉が出ないわ。 可愛いを遥かに超えてる。

 

 

2人が祭壇の前まで来ると、ゴマバラワシからルペラの手をとる様、言われた。

 

ゴマバラ「さぁ、この手をとりなさい…可愛い新郎さん。……ルペラを、宜しくね。」

 

俺は静かに頷き、ルペラと共に祭壇の前へ並んだ。

 

 

博士「本来なら、ここで賛美歌を歌うのですが、練習している時間がなかったので端折るのです。」

 

助手「それでは…」

 

サーバル「頑張って、かばんちゃん!」

 

かばん「ありがとう、サーバルちゃん。えっと…新郎の光太郎さん、そして新婦のルペラさん。病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、互いを愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

 

光太郎「…誓います。」

 

ルペラ「誓います。」

 

かばん「それでは、指輪の交換を…」

 

助手「かばん、指輪は用意出来なかったらのです。カットで。」

 

かばん「あ、はい…それでは…」

 

 

 

ニホ「ちょっと待ったぁぁぁ!!!」

 

えっ、どこで覚えたんだ!?

 

ルペラ「えっ!?」光太郎「ニホォォ!?」

 

 

そういえば、途中でニホニホが会場から出て行ったが…この為か。

 

しっかりドレスも着ている……ニホニホよ、その服で走るのは難しいぞ…多分。

 

 

ニホ「ルペラァ、待った!」

 

ルペラ「ニホンオオカミ様…どうして……」

 

光太郎「ニホニホ…」

 

ニホ「ルペラッ! 私と一緒に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニホ「光太郎と結婚しよっ!!!」

 

 

 

 

光太郎「………え?」

 

ルペラ「今…何と仰りました?」

 

ニホ「私とルペラ、2匹で光太郎と結婚しよって言ったの!」

 

 

うーん…?

 

俗に言う、一夫多妻制…ってヤーツ?

 

 

博士「かばん、続けるのです。」

 

助手「ニホンオオカミ、予定通りなのですよ。」

 

予定通り……だと?  謀ったな…あの鳥達、謀ったな…

 

 

かばん「じゃあ……ニホンオオカミさん、これからも光太郎さんを大事にしますか?」

 

ニホ「うん!」

 

かばん「それでは……その…ち、誓いの…」

 

 

博士「光太郎、グアダルーペカラカラ、ニホンオオカミ。 誓いのセック……接吻をするのです。」

 

 

…とんでもない事、言いかけたよね? 今、とんでもない言い間違いしかけたよね?

 

 

ニホ「せっぷんってなーに?」

 

助手「簡単に言うと、そこにいるプレーリードッグの挨拶みたいなもんです。」

 

プレーリー「はーい、であります!」

 

威勢よく挙手するプレーリードッグ。

 

博士「ルペラ、先にやるのです。 ニホンオオカミは、ルペラのを見て学ぶのです。」

 

ニホ「うん、分かった!」

 

 

かばん「そ、それでは…光太郎さん、ルペラさん…どうぞ。」

 

俺はルペラと向かい合い、彼女の顔に掛かったベールを上げた。

 

 

 

互いの目は、互いの目をしっかり捉えていた。

 

 

そのまま目を瞑り、ゆっくりと抱き合いながら口付けを…

 

 

 

 

……ん? 舌、入ってきてる?

 

うーんと……ルペラの手が頭の方まで上がってきて…

 

ルペラ「………んっ……ん…♡」

 

だんだん息も荒くなって…

 

えっ、ちょっ…音たて始めたよっ!? なんかすっごくクチュクチュいってるよ!?

 

あーヤバい、脳みそ溶けそう。

 

ボス「グアダルーペカラカラ ハ 肉食デ、 グアダルーペ島デ ヤギ ガ放牧サレ始メタ 時ニ、子ヤギ ヲ襲ッテイタ ト サレテイルヨ。」

 

肉食…か。俺……このまま食べられても良いかも…

 

かばん「え、えっと…博士さん、どうすれば…」

 

あー…気持ち良いよ……このまま逝きそ……

 

…待って、マジで逝きそう。

 

助手「ルペラ、光太郎がお陀仏しかけてるのですよ。」

 

 

ルペラ「ッハァ……光太郎様、大丈夫ですか…?」

 

離れた口から、互いの唾液が混ざり合った物が糸を引いていた。

 

……エッッッッッッッッロ

 

光太郎「…………おぉ…ちょっと走馬灯見えたかも…」

 

この身体で良かったと思ったのは初めてだ…

 

前の身体だったら、下半身の友人が感極まって御起立してしまうところだった…アブナイアブナイ……

 

 

ニホ「次…私?」

 

次、ディープなヤツが来たら結婚初日で2人を未亡人にしてしまう…

 

博士「ニホンオオカミ、軽いヤツにしてやるのですよ。」

 

ニホ「やってみるね…」

 

 

 

 

光太郎「ニホニホ…」

 

ニホ「光太郎、好きっ!」

 

ニホニホは爪先立ちをして、軽く接吻をした。

 

 

 

わーお、シンプル。 だが、これでいい。

 

 

博士「まぁ、結婚式はこんなんでいいでしょう…さぁ、とっとと食事にするのです。」

 

それが目的か…

 

 

 

 

 

 

〜食事終了、式場〜

 

 

光太郎「えーっと、本日はわざわざお越し頂き、本当にありがとうございました。」

 

「お似合いだよー!」「ベストカップル…フヘヘヘッ」「どうぞ、ロッジへお越しくださーい!」

 

ルペラ「これからも、私達夫婦を…」

 

ニホ「よろしくねっ!」

 

 

博士「それでは、お前たち新郎新婦に、プレゼントをくれてやるのです…」

 

ニホ「プレゼント? 何々!?」

 

助手「新婚旅行です。」

 

ルペラ「新婚…光太郎様と私は…つがいに……」

 

博士「暑いのと寒いの、どっちが良いか答えるのです。」

 

俺はどっちもいいと思うが…

 

ニホ「うーん…どっちがオススメ?」

 

助手「どっこいどっこいですね。」

 

ルペラ「光太郎様は、どちらに行きたいんですか?」

 

光太郎「そうだねぇ…暑い方かなぁ…寒いのも良いけど…前死にかけたからなぁ…」

 

博士「分かったのです、海獣のフレンズ達に頼んで連れて行かせるのです。」

 

怪獣!? えっ、誰? 凄い楽しみなんだけど…

 

ニホ「光太郎、すっごい楽しそう…」

 

ルペラ「光太郎様、恐らく海の獣と書いた方の海獣かと…」

 

光太郎「…トドさんとか? イルカさん達とか??」

 

助手「まぁそんな所なのです。」

 

博士「出発は明日、とっとと支度するのです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忙しくなってきた…




博士「ちなみに、リアルの結婚式と違う点があると思うのですが、そこは余り気にしない方が良いのです。馬に蹴られるのですよ。」

作者「….要するに、温かい目で見てください……」


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Ep.2「両手に花」

-結婚式同日、光太郎宅-

 

 

明日の出発に備え、荷物の準備をしていた。

 

(恐らく)3泊4日、リウキウエリアに行くらしい。

 

光太郎「えーっとえーっと…ルペラ、新婚旅行って何持ってけば良いの?」

 

ルペラ「うーん…ニホンオオカミ様、何か分かりますか?」

 

ニホ「そうだねぇ…何時も通りで良いんじゃない?」

 

光太郎「やっぱりそうだよね…」

 

ルペラ「それでは…荷物は、そう大した量にはなりませんね。」

 

光太郎「じゃ、パパッと準備して…風呂にしようか! そして寝よ!」

 

ニホ「よーし、もうひと頑張りしちゃお!」

 

 

 

着替え、水筒、救急セット、鉄パイプ…

 

…新婚旅行とは?

 

 

 

-風呂場-

 

 

それにしても…

 

前に比べて服がちょっと大きいな…

 

いや、俺が小さくなったのか。

 

ルペラ「光太郎様、風邪引いてしまいますよ。一緒に入りましょう?」

 

光太郎「あぁ、今行くよ。」

 

 

-湯船-

 

 

やっぱり慣れないなぁ…

 

どーしても、男…雄?の時の気持ちそのままになってしまう。

 

ニホ「ねぇねぇルペラ!」

 

ルペラ「どうしたんですか、ニホンオオカミ様?」

 

ニホ「リウキウエリアって、どんな所なの?」

 

ルペラ「そうですねぇ…昔、リョコウバト様がリウキウエリアへ行った時のお話を聞きましたが、どうやら凄く海が綺麗らしいですよ。」

 

光太郎「ルペラは行った事無いんだ?」

 

ルペラ「えぇ、あまり他のエリアには行かないんです。 私、警戒心が薄い。と、他のフレンズ様から言われる事があるんです。自覚は無いのですが…それで、万が一の事があると困るので他のエリアには行っていないんですよ。」

 

ニホ「でも、私と光太郎が一緒なら大丈夫だよっ!」

 

光太郎「そう、何があっても俺達…私達が守るからさ。」

 

ルペラ「そうですよね…ありがとうございます。 そういえば、光太郎様はどうして一人称を変えようとしているんですか?」

 

光太郎「何かさ…一応性別が変わったから、今の方に合わせた方が良いのかなぁ…なんて思ってさ。」

 

ニホ「光太郎は光太郎のままで良いと思うけどなぁ…」

 

ルペラ「そうですよ。私にも本当の自分で居て良いって、言ってくれたではありませんか。」

 

光太郎「そう…かな。 じゃあ、何時も通りでいいか。」

 

ニホ「…でさ、前に光太郎と温泉とかお風呂とかに入ってた時に気になってたんだけど…」

 

光太郎「ん、何かな?」

 

ニホ「光太郎の股にぶら下がってたヤツ、あれって何だったの?」

 

 

 

…さぁ、遂にこの時がやってきてしまった。

 

 

ルペラ「あればですね…」

 

 

-居間-

 

 

…やってしまった。

 

ブツの解説から脱線して、思い出話に発展して…

 

ルペラの暴走を止められるのはただ1人、俺だったのに…

 

あの時の事、頭に焼き付いてしまっているからなぁ…もう恥ずかしくてね、ぶっ倒れそうだよ。

 

ニホ「ね、ねぇ…光太郎。」

 

光太郎「…ん?」

 

ニホ「光太郎はさ、ルペラの事…好き?」

 

光太郎「勿論だよ、ニホニホも大好きだよ…けど、どうして?」

 

ニホ「何かさ、私だけ友達止まりって言うか…家族だけどさぁ…」

 

光太郎「ごめんね…ニホニホを仲間外れにしたつもりは無かったんだよ…」

 

ニホ「分かってるよ、光太郎は何時も優しいし………」

 

光太郎「ニホニホ…?」

 

ニホ「光太郎、今夜はぁ…寝かせないぞぉ!」

 

光太郎「あっ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルペラ「光太郎様、ニホンオオカミ様、洗濯物干してきまし………た。 ナニ2匹だけで楽しんでいるんですか? 私も…楽しませて下さい♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-新婚旅行当日、光太郎宅-

 

 

博士「光太郎、迎えに来てやったのです! 勝手に入っても文句言うななのです、我々はこの島の長なのでっ!」

 

助手「さぁ、準備は出来てい………」

 

博士と助手が入ると、全裸で倒れた様に寝ている光太郎と、これまた全裸で光太郎の腕の中で眠っている2匹がいた。

 

博士「……お前ら…結婚早々ズッコンバッコンしてんじゃねーのです!」

 

光太郎「ぅぅあぅあぁう!? あぁ、博士と助手ですか…おはようございます。」

 

助手「はやいのは、お前らの進展の方なのです…ルペラは兎も角、ニホンオオカミにまで手を出すとは…お前の欲に限度ってもんは無いのですか…?」

 

光太郎「面目ないです…」

 

ニホ「ん? あ、博士だ。」

 

ルペラ「博士様に…助手様…どうして此処に?」

 

博士「全く…快楽で記憶もぶっ飛んだのですか…今日は新婚旅行当日なので、迎えに来てやったのです。」

 

助手「さぁ、とっとと服を着て出発するのです!」

 

 

あ、そうだよ…そうなんだよ!

 

今日じゃん、当日じゃん!

 

 

 

-海辺-

 

 

案外時間に余裕が無かったので、ルペラにニホニホ共々抱えてもらい、何とか海辺まで飛んでいってもらった。

 

朝っぱらからルペラには負担をかけてしまった…しっかりお礼しなければ…

 

海辺には、多くのフレンズが集まっていた。

 

その奥には、ジャパリバスの後部が浮いていた……は?

 

アライさん「お前が光太郎かぁ! 昨日は道に迷って…何だっけフェネック?」

 

フェネック「結婚式ねー。 昨日行けなかった代わりに、今日来たんだよー。宜しくねー、光太郎さん。そしてニホンオオカミさんとルペラさーん。」

 

アライさん「宜しくなのだ!」

 

ニホ「宜しくね!」ルペラ「宜しくお願いします。」

 

光太郎「宜しく。」

 

博士「光太郎、あのバスが気になってる様ですね。」

 

光太郎「えぇ、図星です。」

 

助手「かばんやサーバル達も、バスを改造して他のエリアに行ったのです。 こいつは、後部しか使えそうな状態で見つからなかったので、移動は海獣のフレンズに手伝ってもらうのです。」

 

マイルカ「あたし達と、おかーさんが手伝うよ!」

 

シロナガスクジラ「宜しくね、ちゃんと送り届けるわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かばん「皆さん、旅の思い出をいっぱい、作ってくださいね!」

 

サーバル「お話、楽しみにしてるね!」

 

 

 

 

光太郎「ありがとうございます。それでは…行ってきます。」

 

 

来てくれたフレンズさん達に挨拶をし、バス製の船に乗り込んだ。

 

 

 

さぁ、何が有るのか知らないが…楽しむぞ。



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Ep.3「新婚さん南へ」

-海-

 

 

キョウシュウエリアを出てから、1時間半ほど経った。

相変わらず景色は綺麗で、潮風も気持ち良い。

 

光太郎「皆さん、少し休みますか?」

 

イッカク「どうする、お母さ……シロナガスクジラ?」

 

あ、今お母さんって言った。俺も呼んでいいかな?

 

シロナガスクジラ「そうね…もう直ぐ着くから、もうひと頑張りしましょ。」

 

マルカ「さんせーい!」

 

ナルカ「…ちょっと待ってください。」

 

ニホ「どうかしたの?」

 

イッカク「…何か来るっ!」

 

ルペラ「えっ…」

 

水中から湧き出す幾つもの気泡。

 

次第に波が大きくなっていく。

 

ドルカ「あ、あれっ!」

 

大きな水柱が立った瞬間、その中から巨大なセルリアンが現れた。

 

セルリアンは、ヒト型をしていた。

 

光太郎「うわっ…えっ…」

 

波で大きく揺れる船体。

 

シロナガスクジラ「船がっ!」

 

少しずつ遠くへ流れていく船を追いかけようとするも、セルリアンがそれを阻む。

 

イッカク「私のスピアーを喰らえ…!」

 

イッカクのスピアーがセルリアンに届く瞬間、セルリアンは四体に分裂した。

 

ニホ「なんでぇ!?」

 

分裂したセルリアンは、縦横無尽に飛び回り、フレンズ達を翻弄した。

 

空中で再び合体したセルリアンは、重力に従い海へ落ちてきた。

 

その時に出来た波に乗せられ、船はより遠くへ流されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-船-

 

 

海獣さん達と迷子になり、現在海の上を漂っております。

 

光太郎「…ニホニホ、ルペラ…起きてる?」

 

ニホ「うん…」

 

ルペラ「何とか…光太郎様…」

 

光太郎「…ん?」

 

ルペラ「お腹…空いてませんか?」

 

光太郎「あぁ…そういえば……」

 

ニホ「持ってきたジャパリまんは…?」

 

光太郎「………さっきので流れたみたい…」

 

ニホ「あー…」

 

光太郎「ルペラァ…」

 

ルペラ「はい…?」

 

光太郎「…母乳とか…出たりしない?」

 

ルペラ「出ませんよ…多分……」

 

光太郎「そっか…」

 

ニホ「…あれ……何?」

 

ニホニホが指差す先には、島が見えていた…

 

光太郎「あれ…島だよ……島じゃん!?」

 

ルペラ「風向きも、島の方へ向いてます… お手柄ですよ、ニホンオオカミ様!」

 

ニホ「えへへ…島に着いたら、食べ物探そっか!」

 

光太郎「っしゃぁっ! 何か元気出てきたぁ!」

 

 

 

 

-島-

 

 

船に積んであったオールを使い、砂浜に乗り上げる形で上陸した。

 

光太郎「…随分と綺麗な砂浜だなぁ…」

 

ニホ「それに、何だかあったかい…」

 

ルペラ「……此処、リウキウエリアではないのでしょうか…?」

 

光太郎「…そうなの?」

 

ニホ「ならさ、ちょっと色々見てみようよっ!」

 

ルペラ「ちょっと待って下さい…」

 

ニホ「ん?」

 

ルペラ「空腹や疲れその他諸々で忘れかけていたのですが、海獣様達とはぐれたままでした…」

 

ニホ「そっか…合流が先だね。」

 

光太郎「随分と遠くまで流されたけど…どうやって戻ろうか…」

 

それに…あのセルリアン、攻撃が全然通じていなかった。

 

海獣さん達が無事だと良いが…

 

?「あの…」

 

光太郎「えっ?」

 

?「な、何か…お困りですか?」

 

ニホ「実はね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然現れた、一人のフレンズ。 イリオモテヤマネコのフレンズらしい。 どうやら、俺達が流れ着くのを遠くから見ていたとのこと。 彼女に、一連の流れを説明した。 自分達の事、目的、そしてセルリアンの事…

 

 

 

 

リオ「少しだけ…来て欲しい所があります。」

 

光太郎「…分かった。 ルペラとニホニホは、ここで待ってて。 海獣さん達が来ても入れ違いになるのは悔しいからね。」

 

ルペラ「…了解です。なるべく、早く帰ってきて下さいね…」

 

ニホ「何かあったら呼んでね。直ぐに行くから!」

 

光太郎「…ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

俺は、リオについて行った。森の中を進んで行くと、開けた場所にでた。そこには、二体の石像と小さな蔵が建っていた。

 

 

 

 

光太郎「ここって…?」

 

リオ「ここには、昔から伝わっている言い伝えがあります…」

 

リオは蔵の前に立ち、扉を開いた。

 

蔵の中は薄暗く、物も殆ど置かれていなかった。唯一置かれていた物は、蔵の奥の台座に乗せられていた。

 

光太郎「これは…」

 

リオ「お塩です。」

 

小さな巾着袋に入れられた塩。

 

光太郎「お塩…?」

 

リオ「昔、ここにはシーサー様が居たとされています。その方々の力が込められている物です。 それと…これを。」

 

リオは、光太郎へ一冊の本を渡した。 大きさは…A4位? かなり古いものらしく、所々虫食いがあった。

 

リオ「何が書いてあるのか、私には分かりませんが…きっと、あなたに渡すべきだと思いました…」

 

光太郎「…ありがとう。」

 

表紙には、「太平風土記」と書かれた本。 その中には、

 

『金色の城の如し巨人、大海に姿を現す。 四つに別れし時、魂もまた四つに別れる。』

 

…とあった。(随分と達筆な字だった為、勘で読んだ所も…)

 

今は、この本にある情報を信じるしか無い。

 

リオ「さぁ、戻りましょう。」

 

光太郎「分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

-砂浜-

 

 

ルペラ「…あそこに居るのは…」

 

ニホ「みんな居た!?」

 

ルペラ「はい!」

 

ニホ「海獣さぁぁぁんっ! ここだよぉ!」

 

 

マルカ「あ、居たぁ! おかーさん、こっちこっち!

 

 

 

 

 

 

マイルカが二人を見つけてくれたお陰で、何とか海獣さん達と合流できた。

 

シロナガスクジラ「あら? 光太郎さんは…」

 

ルペラ「もう少しで帰ってくると思いますが…」

 

光太郎「ルペラァ! ニホニホォ!」

 

ニホ「来たね!」

 

光太郎「ただいま…あ、海獣の皆さん…ご心配をおかけしました。」

 

イッカク「いや、あなた達が無事で良かった。」

 

ルペラ「皆様にも、怪我は無さそうで安心しました…」

 

ドルカ「何とか振り切ったよ…」

 

ナルカ「中々諦めてくれなくて…………皆さん、早く陸へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオ「あれが…」

 

 

リオ、そして光太郎達の目線の先には、島に行く途中で光太郎一行を襲ったセルリアンが居た。

 

光太郎「早いって…まだ、解決策思いついてないのに…!」

 

ルペラ「どういう事ですか?」

 

光太郎「リオに貰った本にさ、このセルリアンを倒すヒントになりそうな事が書いてあったんだよ…」

 

ニホ「どんな事が書いてあったの?」

 

光太郎「あのセルリアンが分裂すると、魂…多分セルリアンの核だと思う…それも分裂するって…」

 

シロナガスクジラ「光太郎ちゃん、危ないっ!」

 

光太郎「…へ?」

 

セルリアンの腕は、光太郎に向かって振り下ろされていた。

 

 




-おまけ-

Ep.■■「いつの間にか今年もクリスマスがやって来た」


〜本編とは、少し違った時間でのお話〜


光太郎「…今日、クリスマスか。」

ニホ「くりすます…?」

ルペラ「昔、ヒトの皆様が行っていた行事の様なものですよ。」

光太郎「という訳で…ニホニホ、ルペラ。何か欲しい物ある?」

これで現金とか言われたら困るなぁ…まぁ、無いか。

ルペラ「唐突ですね…」

ニホ「うーんと…何だろ…」

光太郎「例えば…ジャパまんとか……あ、ジャパリパークは無理だよ。」

ニホ「……今のままで…今のままが良いかな。」

光太郎「…?」

ルペラ「特別なものよりも…光太郎様やニホンオオカミ様と過ごす、この瞬間が続く事…ですよね。」

ニホ「そうそう! 誰かが居なくなっちゃったら…寂しいから。」

ルペラ「…光太郎様の欲しい物、聞いても良いですか?」

光太郎「…今、二人から貰っちゃった…二人からの言葉、凄く嬉しかった…ありがとう。」

…照れくさいなぁ!

ルペラ「ありがとう…ですか。こちらこそですよ。」

ニホ「…ん? 雪降ってきたよ!」

光太郎「おぅおぅ…ホワイトクリスマスかぁ…?」

風邪、引かないようにしないと…



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Ep.EX「新春…新たな年への挑戦」

前回のおまけ以上に、本編とは関係ありません………多分。


-光太郎宅-

 

 

昼下がり、寝起きなのか寝癖を付けたままの三匹がいた。

 

 

光太郎「えー皆さん、開けましておめでとうございます!」

 

ニホ「あ、おめでとう!」ルペラ「おめでとうございます。」

 

ニホ「…で、光太郎?」

 

光太郎「ん?」

 

ニホ「何で窓の外に向かって叫んでるの?」

 

その言葉の通り、光太郎は窓を全開にし、外に向かって叫んでいた。

 

光太郎「あー…その方が、みんなに届くかなぁ…って。」

 

ルペラ「成る程…」

 

ニホ「私もやる!」

 

光太郎「ん、良いよ。」

 

光太郎は数歩後ろに下がり、それとほぼ同時にニホンオオカミは窓の外へ顔を出した。

 

ニホ「みんなぁぁぁっ! いつもありがとぉぉぉ!!」

 

?「僕からも言わせて下さい…」

 

?「私もー!」

 

ルペラ「!?」

 

光太郎・ニホンオオカミ・そしてルペラの背後には、一匹のヒトと、一匹のフレンズが立っていた。

 

ニホ「あっ!」

 

かばん「皆さん、お久し振りです。」

 

サーバル「元気にしてた?」

 

光太郎「本当にお久し振りです…自分達は元気ですよ。そちらも元気そうで何よりです。」

 

ルペラ「今年も宜しくお願いします。」

 

かばん「こちらこそ、宜しくお願いします。あ、良かったら…これ、どうぞ。」

 

そういうと、かばんさんは何かを包んである葉を手渡ししてくれた。何だか柔らかい。

 

光太郎「これは…?」

 

ボス「オ餅ダヨ。今朝、図書館デ作ッタンダ。」

 

久し振りに食べるなぁ…餅米、どこから持ってきた?

 

ルペラ「ご丁寧にありがとうございます。」

 

サーバル「美味しかったよ!」

 

ニホ「本当!?」

 

サーバル「うん! こう白くて、もちーってしてて!」

 

ニホ「うぅーん! 光太郎、食べよ!」

 

ルペラ「良かったら、かばん様達も是非。」

 

光太郎「そうですよ、こういうのって…皆んなで食べた方が美味しいじゃないですか。」

 

かばん「…では、お言葉に甘えて…サーバルちゃん、一緒に光太郎さんのお手伝いしよっか。」

 

サーバル「やるやる! で、かばんちゃん、何すればいいの?」

 

 

…………………………

 

 

-森林-

 

 

日から逃れるかの様に、木陰に佇む影が3体。

 

 

 

 

オオコウモリ「…平和だねぇ……」

 

リンカルス「あぁ、いい事だな。」

 

オオコウモリ「まぁそうだけどさぁ……あーんまりにも、やる事ないじゃぁん?」

 

ジャック「…少しは静かにしろ…」

 

オオコウモリ「………誰?」

 

オオコウモリが視線を向けた先には、ハンターの面々が居た。

 

ヒグマ「久し振りだな、相変わらず元気そうで何よりだ。」

 

ジャック「そっちもそう見えるがな。」

 

オオコウモリ「もぉ…ジャックちゃんは相変わらずだね…」

 

キンシコウ「今日は、新年の挨拶に来ました。」

 

リンカルス「もう新年か。早いな。」

 

リカオン「皆さん…そろそろ、ジャパリまん食べませんか?」

 

ヒグマ「そうだな。…今日位は、お前達も他のフレンズと関わっても良いんじゃないか?」

 

リンカルス「ジャック、どうだ?」

 

オオコウモリ「そうだよぉ! 一年に一度なんだし、もう私達の事も皆んなに知られちゃってるからさ。」

 

ジャック「……仕方ない。取り敢えず、ジャパリまんを食べてから挨拶して周るか…」

 

 

 

…………………………

 

 

 




…はい。本当に何もありません。オチ?ないです…

最後に、コレを読んでくださった皆様、明けましておめでとうございます。 更新ペースは更に落ちる可能性もあり、この一年でseason2を完結させられるかどうか… まぁ、いつの間にか続きが投稿されてるかもしれません。

お暇な時に、ふと、この作品を思い出してチラ見してくれれば幸いです。

今年も、宜しくお願いします。


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Ep.4「金色の城」

光太郎「前回までの、けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。!」

1つ、何故か生き返った俺。記憶を取り戻す為に流離う中で、ニホニホやルペラと出逢う!

2つ、図書館で記憶を記憶を取り戻した。かばんさんの歩んだ道を逆走している内に、かつての自分を殺した相手と出会う。何とか勝利はしたものの、俺は力尽きてしまう。

そして3つ、サンドスターのお陰でまた生き返った俺。旅を共にした二人と…フフッ…婚約を結び、新婚旅行へ行った俺達。そこでは、金色の城とも言えるであろうセルリアンが待ち構えていた! セルリアンの拳が、光太郎に振り下ろされた! どうなる、俺ッ!

ニホ「改めて見てみると、色々と凄い事の連続な気がするよ…」

光太郎「本当だよ…何回逝くんだってHAHAHA…はぁ…」

ルペラ「婚約の所、ちょっと笑ってましたよね?」

ニホ「確かに!」

光太郎「だって…あれ…改めて言うとなると小っ恥ずかしいんだもん! さぁさぁ! 本編行くから、本編行くからぁ!」


振り下ろされたセルリアンの腕。光太郎には、避ける時間は残されていなかった。

 

光太郎(うっそ…まぁた死ぬの……?)

 

光太郎は目を瞑り、最期の恐怖から逃れようとした。

 

…が、一向にその時は訪れない。光太郎が目を開けてみると、イッカクがスピアーでセルリアンの攻撃を受け止めていた。 スピアーはセルリアンの攻撃によって軋み、イッカクの脚は砂地にめり込み始めていた。

 

イッカク「諦めるなっ!!」

 

イッカクは光太郎の方に向かって軽く振り向き、力の限り叫んだ。

 

光太郎(…だよね、折角与えられた命…こんな所で断たれてたまるかよ…!)

 

光太郎はセルリアンから距離をとった。イッカクも、光太郎が離れたのを確認し、セルリアンの攻撃をいなしてシロナガスクジラの元へ向かった。

 

光太郎「ルペラ! セルリアンの石の位置、分かる?」

 

ルペラ「…私達でいう、鳩尾の位置にあります!」

 

光太郎「…シロナガスクジラさん、セルリアンに向かってキツい一撃、頼みますッ!」

 

シロナガスクジラ「…任せてねぇ!」

 

光太郎「ルペラ、セルリアンの石見てて…」

 

ルペラ「…はい。」

 

シロナガスクジラは、大きな尾でセルリアンを攻撃しようとした。が、セルリアンは分裂し、攻撃を躱した。

 

光太郎「ルペラ! 石はどうなった!?」

 

ルペラ「四つに…それぞれの身体に石があります!」

 

光太郎「そうか…やっぱり…」

 

ニホ「光太郎! セルリアンが向かって来るよ!」

 

光太郎「皆さん、一旦避難しましょう!」

 

 

 

-森-

 

 

森の木々に紛れ、何とかセルリアンを巻く事が出来た光太郎達。光太郎は、葉の隙間からセルリアンを見ていた。

 

マルカ「これからどうするの?」

 

光太郎「…あのセルリアンが合体する瞬間、この鉄パイプをセルリアンの身体の真ん中に投げる。」

 

ニホ「それで倒せるの?」

 

光太郎「いや、流石に無理。けど、鉄パイプの周りだけは合体が不完全になる筈。そこに向かって皆んなの攻撃を集中する。 出来れば、遠距離攻撃で。」

 

ルペラ「ですが、また避けられてしまうのでは…?」

 

光太郎「…そっか……」

 

イッカク「いや、ヤツが合体する瞬間に動きは止まる。短い間だが…」

 

光太郎「…もし、その間でセルリアンの身体を削る事が出来たら、この塩でトドメを刺す。」

 

リオ「そのお塩、その様な事が出来るんですか?」

 

光太郎「あぁ、昔の話だけど、前例が無くはないからね……それで、この塩は投げないと危ないと思うから…ニホニホ、俺が合図したら鉄パイプに向かって、この塩を投げてね。」

 

ニホ「うん…ちょっと緊張するけど、頑張るよ。」

 

光太郎「そろそろかな…」

 

 

 

諦めたのか、分裂したセルリアンが砂浜に集まり始めた。

 

 

光太郎「皆さん、準備できてますね?」

 

光太郎がフレンズ達に目線を向けると、各自小さく頷いた。

 

 

 

 

光太郎は、セルリアンに気付かれない様に近づき、セルリアンが合体する瞬間、鉄パイプを投げ込んだ。

 

見事につなぎ目に鉄パイプが刺さった。

 

セルリアンは光太郎の方を見て、その大きな腕を振り上げ再び光太郎を叩き潰そうとした。

 

光太郎「今だよっ!」

 

その声を合図に、森の中からニホンオオカミ以外のフレンズが飛び出し、鉄パイプ目掛けて攻撃を始めた。

 

効いている素振りを見せなかったが、次第にセルリアンの動きが鈍くなっていった。

 

光太郎「(…ここまで削れば…!)ニホニホ!」

 

ニホ「分かった!」

 

片手に塩の入った袋を握り、セルリアンの方へ走り出した。

 

 

セルリアンは、鉄パイプの所持者であるからか光太郎を執拗に攻撃していた…周りのフレンズには一切脇目も振らずに。

 

ニホ「光太郎を傷つけるのは…私が許さないよッ!」

 

今までは如何なる攻撃も弾いてきた身体を、ニホンオオカミの腕が貫いた。

 

セルリアンは全身から火花を噴き出しながら、その場へ倒れ込んだ。

 

 

 

 

光太郎「……皆さん、お疲れ様でした!」

 

光太郎の一言で、皆が緊張から解放された。安堵して座り込む者、親しむ相手と喜びを分かち合う者、母親の様に褒めちぎる者……

 

そして、光太郎の元へ駆け寄るルペラとニホンオオカミ。

 

ニホ「光太郎、大丈夫!?」

 

光太郎「俺は大丈夫…ニホニホは、ルペラは大丈夫?」

 

ニホ「私なら大丈夫だよ、皆んなのお陰で光太郎とリオの作戦が上手くいった…」

 

ルペラ「この勝利、皆様の手で勝ち取った物…そうですよね、光太郎様。」

 

光太郎「そう…皆んなの勝ち。」

 

光太郎は、海獣のフレンズ達やイリオモテヤマネコに向かって手を振った。

 

光太郎「皆さん、お怪我は有りませんかぁ!?」

 

 

 

〜その日の晩、船上にて〜

 

 

 

シロナガスクジラ「あら…もう帰っちゃうの?」

 

光太郎「えぇ、出来る事なら、もう少しゆっくりしたいのですが…やらなければならない事を見つけた様な気がするんです。」

 

シロナガスクジラ「そう……その事、二人には伝えたの?」

 

光太郎「勿論、これは私一人の旅では有りませんしね。」

 

シロナガスクジラ「…分かったわ。 明日の朝、出発するから準備しておいてね。」

 

 

 

 

 

やらなければならない事………博士達に伝えなければ…




…かーなーり、投稿が遅れた気がします。

こんなマイペースな投稿頻度ですが…ふと、思い出した時に読んでいただければ…


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Ep.5「始まりの日」

〜翌朝、砂浜〜

 

 

そこには、海を眺める3匹の影があった。

 

ニホ「ねー、本当に帰るの?」

 

光太郎「一応ね。ちょっと博士達に見せたい物が出来たし…」

 

ルペラ「…随分と早い出発ですが…仕方ないですね。」

 

 

 

 

リオ「み、皆さん! えと…お土産です!」

 

両手に袋を持ったリオが、草むらから出てきた。

 

ルペラ「こんなに沢山…ありがとうございます。」

 

リオ「いえいえ、あのセルリアンは野放しにはしておけません…皆さんのお力があったからこそ勝てました。こちらこそ、ありがとうございました!」

 

?「そうだぞ…俺も、あの戦いは遠くから見てたが…凄かったな! 因みに、そのお土産の中には俺が選んだ物も入ってるからな! ……またとないチャンスだな…」

 

何処からか声が聞こえる…

 

ルペラ「え、誰…ですか?」

 

ニホ「…嗅いだこと無い匂い…」

 

?「折角だから ハ ム ハ ム させろォ!」

 

草むらから誰かが飛び出して来た。怖いわ。

 

ルペラ「え、何をッ…! アッ…ァゥ…んッ……」

 

光太郎「そんな……俺でさえ、尾羽を舐めた事すら無いのに…」

 

ニホ「……ルペラの羽、美味しいの…?」

 

?「噛み心地はまぁまぁだな…ただ、香ばしい香りがする…」

 

ルペラ「ぃゃ…んぅ……」

 

リオ「え、あ、ハブちゃん! 困ってるよ…」

 

ハブ「んー…そっか、悪かった…」

 

ルペラ「いえ…突然だったので驚いてしまって…」

 

ルペラの尾羽は、ハブの唾液でかなり濡れていた。

 

ニホ「ねぇハブ、ルペラの羽って美味しいの?」

 

ハブ「そうだな…結構イケるぞ!」

 

ニホ「へぇ…」

 

…ニホンオオカミの鋭い眼光が、ルペラを貫いた。

 

ニホ「ルペラ、羽食べてもi」

 

ルペラ「ダメですよッ! 別に、光太郎様なら考えますけど…

 

光太郎「ンー何カ言ッタカナー?」

 

ルペラ「んぁ! 特には何も…」

 

 

 \ はい可愛い。 好き。 / 

 

 

シロナガスクジラ「まぁまぁ…流石新婚旅行の初日ね。ラブラブねぇ!」

 

ニホ「でしょ! 光太郎とルペラと一緒にいるの楽しいもん!」

 

光太郎「ニホニホ…(あーもう、何でこんなに可愛いのかなニホニホはねぇ教えてくれよ頼むよ本当に好きだよ健気な所とか元気な所とかetcあの尻尾揉みたいなぁ何なら頭突っ込んで深呼吸も有りだな何だかんだで総評はニホニホ大好き。」

 

ニホ「所々よく分からないけど…光太郎、ありがと! 私も大好き!」

 

光太郎「えっ…あ、うん、ありがと。………俺、何か言った?」

 

ルペラ「…私の事も、少しは触れてくれても良いのでは…

 

 

マイルカ「おかーさん! ずっと気になってたんだけど…しんこん…って何だったの?」

 

シロナガスクジラ「それはね…大切な誰かと、ずっっっっっと一緒に生きる約束をしてすぐの事…みたいな感じかしらぁ?」

 

マイルカ「じゃあ私は、おかーさんとしんこん?になりたーい!」

 

イッカク「ちょっ、マイルカ…」

 

シロナガスクジラ「嬉しいわぁ! けど、新婚になるにはマイルカちゃんは、ちょーっと早いかなぁ。」

 

マイルカ「えぇー…」

 

 

 

-船上-

 

 

 

リオ「もう…行ってしまうんですね…」

 

光太郎「えぇ、突然来てしまってすみませんでした…」

 

リオ「いえ、そんな事無いですよ。とても賑やかで、楽しかったです。 また…来てくださいね、色々と紹介し足りないので…」

 

光太郎「はい、事が済んだら…必ず。」

 

シロナガスクジラ「そろそろ出発するわよぉ!」

 

リオ「あ、あ…さようなら!」

 

光太郎「さよなら!」

 

 

 

〜数時間後、ジャパリ図書館〜

 

 

 

博士「…随分と早いお帰りだったのです。」

 

助手「お前たちもお疲れ様なのです、帰ってヨシ。なのです。」

 

ぞろぞろと帰っていく海獣さん達。マイルカがスッゴイ手ぇ振ってる…

 

 

博士「で、何かあったのですか?」

 

光太郎「そうだそうだ…コレ何ですけど…」

 

光太郎は懐から太平風土記を取り出し、博士達に渡した。

 

助手「これは…」

 

博士「…まさか、原本を見る事が出来るとは…」

 

ニホ「そんなに凄いの?」

 

博士「えぇ、とても。」

 

ルペラ「どの様な物なのですか?」

 

博士「そうですね…ダチョウがやってる予言が、より大規模になった物なのです。 そして、これが貴重な理由は…」

 

光太郎「理由は…?」

 

助手「これが書かれたのは、ヒトが居た時代の中でも、かなり昔に書かれた物なのです。」

 

光太郎「歴史的価値…ってやつですか?」

 

助手「そんなもんなのです。因みに、それは…」

 

博士「助手…?」

 

助手「はい、何か。」

 

博士「良い所を持ってくんじゃネーのです。」

 

助手「……博士、説明の続きを。」

 

博士「…お前たち、旅は好きなのですか?」

 

光太郎はルペラ、ニホンオオカミの方を見て、小さく頷いた。

 

博士「ならお前たち、他のエリアに行って、この太平風土記の残りのページを集めて来るのです。 多分、他のエリアでも似たような感じで保存されていると思うので。」

 

助手「軽く読んでみましたが、やはりページが所々飛んでいるのです…」

 

ルペラ「やはり…という事は、ページが欠けているのは分かっていたのですか?」

 

博士「…今の我々よりも前の世代の博士や助手が、代々引き継ぎ続いていた本があるのです。その中に、パークの各地に予言書が散らばっている。という事も書かれていたのです。」

 

助手「我々は、この島の長なので無闇矢鱈と島を離れる訳にはいかない上、そもそも本当に存在するかも分からないので、探しには行きませんでした。」

 

博士「最近になって、それらしい蔵は見つけたのですが…噴火に巻き込まれていたのでしょう、ぶっ壊れていたのです… 何とか太平風土記のページらしき物は見つけたものの、やはりボロボロだったのです…」

 

光太郎「…予言書と言ってはいましたが、具体的にはどの様な事が書かれているんですか? まさか、全部セルリアン関係…?」

 

博士「…らしいですね。一応、この本の事は色々な物で取り上げられてはいたので、内容の雰囲気は分かるのです。」

 

助手「ただ、全部がこれから起きる事とは限らないのです。 我々が見つけたページに書かれていたのは、読み取れる限りでは黒セルリアンの事が書かれていたのです。」

 

ニホ「黒セルリアンって、かばんちゃん達が戦ったっていうセルリアン?」

 

博士「その通りなのです。…結局、本を書いた時は未来でも、それが我々にとっては過ぎた過去になっている… そーゆー事もあるので、あまり気張らなくても良いと思うのですよ。」

 

助手「とりあえず、はじめにゴコクエリアに行ってもらうのです。その後にアンインエリアからホッカイエリアに向かって…」

 

博士「…そんなとこなのです。出発は…まぁ好きなタイミングにするといいのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、準備しますか。

 

 



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Season2 第2章「太平風土記」
Ep.6「みんなのアイドル訪問記」


博士達曰く、出発のタイミングはいつでも良いらしいが…

 

 

〜2日後、光太郎宅〜

 

ルペラ「…はい、準備完了です。いつでも出発できますよ。」

 

ニホ「いつにする? いつにするっ!?」

 

目を輝かせ、尾を振りながら飛び跳ねるニホンオオカミを眺めつつ…

 

光太郎「そうだね…2人は、何か用事ある?」

 

ルペラ「私なら、当分は何もありませんよ。」

 

光太郎「本当? スカイダイバーズでの活動とか大丈夫なの?」

 

ルペラ「えぇ、昨日確認してきましたが、定期的に自主練すれば良い…との事でした。つい最近、スカイインパルスとの試合があったばかりですしね。」

 

光太郎「そっか、ニホニホは?」

 

ニホ「うん、会合で決まった事とかは後で教えてくれるって。」

 

光太郎「それなら…明日にでも出発する?」

 

ルペラ「了解です。博士達に伝えておきますね。」

 

そこまで言うと、ルペラは部屋を出た。博士達の所へ向かったのだろう。

 

ニホ「明日! 楽しみだなぁ…どんな所なんだろ?」

 

光太郎「それは…着いてのお楽しみかな?」

 

ニホ「いいね……寝れないぃ!」

 

 

 

〜翌朝、ジャパリ図書館〜

 

 

 

3匹が到着すると、少し眠そうにしている博士と助手が居た。

 

博士「…随分とまぁ早い出発なのです…」

 

ニホ「だって楽しみだったんだもん…」

 

助手「日の出港に、とっておきの新婚祝いを用意しておいたのです。」

 

ルペラ「わざわざありがとうございます。」

 

博士「それでは、我々は仮眠をとるのです…賢い我々にも、睡眠は必要なので…」

 

助手「それでは…」

 

光太郎「ありがとうございました…おやすみなさい。」

 

博士「…それと、何か重大な事態に陥った場合は、とっとと帰って来るのですよ。」

 

光太郎「…そんなに危ないんですか?」

 

助手「あくまでも保険ですよ、いつもみたいに気楽にいれば良いのです。」

 

光太郎「そういうモノなんですね…了解です。」

 

 

 

-日の出港-

 

 

光太郎「…海、広いなぁ……」

 

ニホ「ねぇ、アレじゃない?」

 

ニホンオオカミが指差す先には、青い乗り物があった。

 

光太郎「アレって…バス?」

 

?「そうよ…」

 

ルペラ「! ゴマバラワシ様にイヌワシ様…」

 

ニホ「それに…タイリクオオカミと、かばんさん?」

 

サーバル「うみゃー! 私も居るよ!」

 

ゴマバラ「あなた達がリウキウに行っていた時、博士達が散歩中に見つけたらしいの。それを急ピッチで直したって訳。」

 

タイリク「博士から、また旅に出るって聞いてね。 みんなで見送りに来たのさ。」

 

イヌワシ「ルペラ! オレ達との約束、忘れんなよ!」

 

ルペラ「了解です…いつか、スカイインパルスに勝つ為にも。」

 

タイリク「ニホンオオカミ、気になる物に夢中になり過ぎて、周りが見えなくなる…なんて事が無いようにね。」

 

ニホ「大丈夫だよ! 心配してくれてありがとうね。」

 

かばん「光太郎さん、ルペラさん、ニホンオオカミさん…きっと、この旅では色々な出逢いがある筈です。 存分に楽しんで来てください!」

 

サーバル「帰ってきたら、色んなお話聞かせてね!」

 

光太郎「皆さん…ありがとうございます!」

 

車両から、ラッキービーストが飛び出して来た。

 

ボス「此処カラハ、僕ガ案内スルヨ。 バスノ操縦ハ任セテ。」

 

光太郎「よろしく、ラッキー。」

 

ボス「宜シクネ。ソレジャ、出発スルヨ。」

 

 

 

 

-ゴコクエリア付近、海上-

 

 

バスの上は海上でも案外快適で、取り敢えず船酔いの心配は無さそうだった。

 

光太郎「ラッキー、あとどれ位で着きそう?」

 

ボス「アト30分位ダネ。」

 

ニホ「…30分ってどれ位?」

 

ルペラ「光太郎様の家から図書館まで歩くと、大体30分位ですかね。」

 

光太郎「ん、まぁ寝てれば直ぐだよ。今朝も朝早かったし、ちょっとだけ寝てても良いんじゃない?」

 

ニホ「そっか…おやすみ!」

 

ルペラ「それでは、私も失礼します…」

 

光太郎「…俺も寝よっかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「おーい、大丈夫ぅ? おーい!」

 

光太郎「ん、んぅ…んっ!?」

 

?「あ、やっと起きたぁ!」

 

光太郎の目の前、及びバスの前には、灰色のレオタード姿のフレンズが居た。

 

ルペラ「…着きました…か?」

 

ニホ「んふぅ…着いたの!?」

 

?「着いた? どこかに行きたいの?」

 

光太郎「俺達、ゴコクエリアに行きたくて…」

 

?「ゴコクなら、ここだよ!」

 

どうやら、本当に寝ている間にゴコクエリアへ着いていたらしい。

 

…ラッキービーストは何処へ?

 

ニホ「えーと、私はニホンオオカミ! で、こっちがルペラで、こっちが光太郎!」

 

ルペラ「グアダルーペカラカラのルペラです。」

 

光太郎「秋月光太郎です。 あなたは…」

 

そこまで言うと、レオタードのフレンズは腰に手を当て、仁王立ちした。

 

?「私はみんなのアイドル! タマちゃん登場! あ、本名はアゴヒゲアザラシだけど、ちょっとアイドルっぽくないからタマちゃんって呼んでネッ!」

 

ニホ「…アイドルって、PPPみたいな?」

 

タマちゃん「っ! あなた達、PPPを知ってるの!?」

 

ルペラ「えぇ、私達はキョウシュウエリアから来たので。」

 

タマちゃん「キョウシュウ! 行ってみたいなぁ!」

 

光太郎「タマちゃんさんは…ここのフレンズさんですか?」

 

タマちゃん「さんは無くて良いよ! 私は、元々はカントーに居たんだけど…何か、ドカーンッ!ってなってバシャーンッ!ってなったから怖くて、逃げてきちゃった☆」

 

何だドカーンッ!バシャーンッ!って…

 

タマちゃん「あ、でもでも、色んな子と話してるから、ゴコクのフレンズ達とは繋がりはあるよ! それに、お散歩がてらゴコクを歩き周ってたから案内も出来るよ!」

 

ニホ「本当! やったー!」

 

光太郎「そっか、それじゃ宜しくね。タマちゃん。」

 

タマちゃん「任されたよー!」

 

ボス「オマタセ、予備ノ"バッテリー"ヲ充電シテキタヨ。」

 

ルペラ「ボス、お疲れ様でした。」

 

タマちゃん「ボスが喋ってる…えぇ何でェ!?」

 

光太郎「あ、その訳は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

中々、明るいアイドルがガイドさんになったな。

 




不謹慎ジャナイ不謹慎ジャナイ…

それはそうと全然関係ない事ですが、Twitterの方で「あれ、もしかして前話の事言ってるのかな…?」っていう様なツイートがあって…もうね、びっくりしましたよ。 ルペラの尾羽の話ですけどね。


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Ep.7「仲間と泥とに囲まれて。」

あれから、自分の正体や今までの旅の色々を話した。

 

タマちゃん「へぇ…大変な事がいっぱいあったんだね…」

 

ニホ「けど、楽しい事もいっっっぱいあったから、旅をしてて良かった…そう思ってるんだ!」

 

ルペラ「色んなフレンズさん達との出会い、旅先での小さな出来事など…旅をしていると、普段では味わえない事が沢山あるんです。」

 

タマちゃん「いいなぁいいなぁ! 私も誰かと旅したいなぁ… あ、今がそんな感じか!」

 

光太郎「……?」

 

タマちゃん「ん、どうかした?」

 

光太郎「あれって…」

 

光太郎が指差す先には、ひび割れた泥の塊があった。ただし動いている。

 

タマちゃん「あれね…最近になって、出てきたセルリアンなんだけど…」

 

ニホ「…襲ってこないね。」

 

タマちゃん「そうなの、いつも水の中から出て来て、その時はドロドロした変なのなんだけど…フレンズを追いかけてるうちに、アレみたいにカラカラになっちゃうんだよ。その内に…」

 

ニホ「カラカラ…」

 

ルペラ「…私ではありませんよ!?」

 

そんな事を話している内に、セルリアンが崩壊を始めた。

 

光太郎「…あ、崩れた。」

 

タマちゃん「…ね。砂みたいに消えちゃうの。」

 

ルペラ「どの辺りで湧いているのですか?」

 

タマちゃん「えーとね、川とか海とか…水のある所かな。」

 

光太郎「色んな所から湧くな…」

 

タマちゃん「けど、逃げ続ければ大丈夫…かな。」

 

ニホ「…光太郎…建物の事…」

 

光太郎「あ、そっか… ねぇ、ゴマちゃん?」

 

ゴマちゃん「はいはーい?」

 

光太郎「この辺りで、何か建物見たことない?」

 

ゴマちゃん「…タテ…モノ……?」

 

ルペラ「そうですね…木や石の様な物で出来た、大きな箱です。」

 

ゴマちゃん「おー…それなら、林の中にあったよ。」

 

光太郎「案内、お願い出来るかな?」

 

ゴマちゃん「モチのロンだよぉ! さぁさぁ着いて来て!」

 

 

-林-

 

 

この林、さながら防風林といった所か。

 

ゴマちゃん「はい、ここだよ!」

 

そこには、リウキウで見たような蔵が建っていた。

 

光太郎「おぉ…ありがとう。 入ってもいい?」

 

ゴマちゃん「んー、いいんじゃない?」

 

光太郎「それでは、失礼して…」

 

蔵の扉は重く閉ざされていた。押しても押しても開かない。

 

光太郎「えぇ…何でさ…」

 

ニホ「ちょっと貸して?」

 

ニホンオオカミは扉の前に立ち、取手を握った。

 

ニホ「…ふんッ!」

 

ミシッ…ベキッッ

 

…嫌な音がした。

 

ニホ「…えへへ、取れちゃった…」

 

ニホンオオカミの手には、さっきまで固く扉に付いていた取手が握られていた。

 

光太郎「取手を…"とって"しまった…フッ」

 

 

 

ルペラ「……ですが、扉が少し開きましたね。」

 

ゴマちゃん「何か挟めば開けられるかも!」

 

光太郎「無視しないでよぉ!」

 

ニホ「光太郎、あの鉄のやつ!」

 

光太郎「グスッ…コレだね。」

 

ルペラ「少しお借りしますね。」

 

光太郎「うん…いいよ…」

 

半泣きな光太郎の頭を、ニホンオオカミが撫でていた。

 

ルペラ「…光太郎様、後でギュッってしますから、今はもう少し頑張りましょう?」

 

光太郎「っしゃぁ頑張っちゃおうかなぁ!!?」

 

…単純だな…

 

ルペラ「…少し離れていて下さい。」

 

ルペラは鉄パイプを扉の隙間に差し込んだ。

 

ルペラ「…えいっ!」

 

鉄パイプへ向かって蹴りをくらわせたルペラ。

 

てこの原理によって扉は開いた…が、

 

光太郎「ぇ、ぁ、折れたぁ!? 折れたぁ…」

 

鉄パイプが折れた。

 

タマちゃん「うぉっ…折れてる…」

 

ルペラ「すみません光太郎様…」

 

光太郎「…うん……大丈夫…うん…中、入ろ…」

 

ルペラ「光太郎様…」

 

ニホ「大丈夫だよ…おーい、光太郎!」

 

光太郎「んぅ…?」

 

ニホ「ルペラがね、後でチュッってしてくれるって!」

 

ルペラ「エッ」

 

光太郎「ルペラ!ニホニホ!タマちゃん! この中すごいよ! すごいすごい!」

 

タマちゃん「切り替え速いね…」

 

ニホ「光太郎ね、ルペラの事になると凄い必死になるの。」

 

光太郎「んー、どったのー?」

 

ルペラ「今行きますね!」

 

 

-蔵の中-

 

 

やはり暗い。リウキウの蔵と同じ様に、殆ど物が置かれていない。

 

光太郎「ここにもあったな…太平風土記のページ…」

 

『水より出し泥の怪物、異臭を放ち、辺りを黒く染める。」

 

…コレダケ? 異臭…臭いのか?

 

ニホ「…これ何?」

 

ニホンオオカミが手に持っている物は、蔵の隙間から射す光で青く輝いていた。

 

光太郎「んー…ラッキー、これ何?」

 

ボス「ソレハ"勾玉"ダネ。昔、装飾具トシテ使ワレテイタ物ナンダ。」

 

勾玉を見つめ続けるニホンオオカミ。

 

光太郎「そんなに気に入った?」

 

ニホ「………うん…」

 

光太郎「…それさ、ニホニホが持っててよ。」

 

ニホ「いいの?」

 

光太郎「いいよね、ルペラ、ゴマちゃん?」

 

ゴマちゃん「私は全然大丈夫だよー!」

 

ルペラ「はい、同意見です。」

 

ニホ「やったー!!」

 

 

 

 

-再び、林-

 

 

取り敢えず、蔵からは出てきた。 道中、ニホンオオカミは何度も勾玉に光を当て、それを眺めながら歩いていた。

 

が、ニホンオオカミが急に歩みを止めた。

 

光太郎「ん、ニホニホ?」

 

ニホ「…何か変な匂いしない?」

 

ルペラ「そう…ですか?」

 

匂いについて話をしていると、遠くから走ってくる一人のフレンズがいた。

 

?「うぁぁぁぁぁわぁぁぁぁ! 大変ですよぉー!」

 

タマちゃん「あ、おーい! カリフォルニアラッコ!どうしたのー!?」

 

ラッコ「ハァハァ…大変ですよぉ… あのセルリアンが出たですよぉ…」

 

タマちゃん「あのセルリアンって、水から出てくるやつ?」

 

ラッコ「そうなんですよぉ…けど…」

 

光太郎「けど?」

 

ラッコ「すごい大きいんですよぉ!」

 

ニホ「うぅ…だんだん匂いが強く…」

 

光太郎「ま、まさか…こんな直ぐに出てくる訳…」

 

 

匂い…否、臭いがだんだんと強く、地鳴りが大きくなってきた。

 

林の奥から、並大抵の木よりも大きな黒い塊が姿を現した。

 

常に体表は、気泡が浮かび上がっては弾けてを繰り返していた。その度に、悪臭やヘドロの様な物を撒き散らしながら。

 

 

光太郎「嘘でしょ…」

 

 

セルリアンの目が、光太郎達を捉えた。



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Ep.8「野も山も黙っちまうのか?」

光太郎「…逃げよう。」

 

 

 

-林-

 

異臭で咽せながら逃げ続ける光太郎達。 どれだけ走っても、あのセルリアンの声が聞こえる。

 

光太郎「ルペラ、セルリアンとはどれ位離れてる?」

 

ルペラ「…あまり距離は開けてません。 移動速度は遅くとも、あの巨大です。 一歩…ですかね。 一歩一歩が大きいので…」

 

光太郎「追い付かれるのも時間の問題か…?」

 

 

顔をしかめる光太郎を見兼ねて、ニホンオオカミが…

 

 

ニホ「…ねぇ、光太郎?」

 

光太郎「ん? どうしたの、ニホニホ?」

 

ニホ「どうせなら、あのセルリアンに名前付けない?」

 

タマちゃん「良いね、それ!」

 

ラッコ「セルリアンだけだと、他のセルリアンと混ざっちゃいそうですよ…」

 

光太郎「それなら…俺から挙げて良い?」

 

ルペラ「是非聴かせて下さい。」

 

光太郎「それじゃ…"ヘドリアン"なんてどうかな?」

 

ニホ「ヘドリアン…?」

 

光太郎「あー…ヘドロっていう、泥みたいなのがあるんだけど、あのセルリアンがそれみたいだなぁ…って思ってさ。」

 

タマちゃん「おっ、あのセルリアンらしい名前なのかな?」

 

ラッコ「それなら、あのセルリアン分かり易いし覚え易いし…良いんじゃないんです?」

 

ニホ「私も良いと思うよ!」

 

ルペラ「それでは、あのセルリアンはヘドリアンで決定です。 おめでとうございます、光太郎様。」

 

光太郎「な、何かありがとう…」

 

ラッコ「ヘドリアン…への対策は、何か思いついたんです?」

 

光太郎「それがイマイチ思いつかなくて…」

 

ニホ「…タマちゃん、ヘドリアンってさ、最近ゴコクに出てきてるセルリアンと似てるの?」

 

タマちゃん「うん、泥みたいな所とか臭い所とか…もしかして、ヘドリアンのちっちゃいのが、ゴコクでいっぱい湧いてたの?」

 

ラッコ「もしそうなら、このまま逃げ続ければ倒せるって事ですよ!」

 

ルペラ「ですが…仮に小さなヘドリアンを子ヘドリアンとしましょう。 子ヘドリアンと比べると、ヘドリアンは明らかに大きさが違います。 ヘドリアンを完全に乾燥させるには、かなり時間がかかってしまうのでは…」

 

光太郎「それに、俺達があっちこっちに逃げ回れば、ヘドリアンに汚染される場所が広がる…どうしたら…」

 

ボス「検索中、検索中…」

 

光太郎「…ん!?」

 

ニホ「何か思いついた?」

 

光太郎「もしかしたら…ラッキー! 電池を充電した場所まで案内して、最短ルートで頼む!」

 

ボス「任セテ!」

 

 

-道中-

 

 

光太郎「ルペラ、ヘドリアンは追ってきてる!?」

 

ルペラ「えぇ、こちらへ向かって来ています。」

 

ニホ「大丈夫なの? さっきよりも臭いがキツくなってるよ…」

 

光太郎「ニホニホの方こそ大丈夫?」

 

ニホ「うん…あんまり…大丈夫じゃないかも……」

 

光太郎「ニホニホ、おぶるよ。 おいで?」

 

ニホ「ありがとう…光太郎…」

 

タマちゃん「ねぇ光太郎! あとどれ位で着く?」

 

光太郎「えーと…ラッキー!あとどれ位?」

 

ボス「モウ直グダヨ!」

 

ラッコ「なら頑張るですよ!」

 

尚も迫り来るヘドリアン。恐らく島を真上から見たら、一本の黒い線が引かれているだろう。

 

 

-大型蓄電池付近-

 

 

ボス「ココダヨ! ココダヨ!」

 

光太郎「よし…みんな、ちょっと離れて待機!」

 

光太郎達は近くの草むらへ隠れた。

 

だんだんと近づいてくるヘドリアン。

皆に緊張感が走る。

 

光太郎「ニホニホ、大丈夫?」

 

ニホ「…さっきよりはいいかも。」

 

光太郎「もし、臭いがキツいって思ったらコレ使って。みんなも。」

 

光太郎はハンカチをみんなへ渡した。

 

ニホ「ありがとう…」

 

光太郎「もう少しの辛抱だから…一緒に頑張ろ。」

 

 

 

 

遂に、ヘドリアンが光太郎達の目前に迫った。

 

光太郎「(思ってたよりもキツい…あー…吐きそう……そろそろ行くか。)みんな…ここで待ってて…」

 

光太郎は草むらから飛び出しヘドリアンの方へ向かった。

 

ルペラ「光太郎様…うっ…」

 

 

光太郎「ヘドリアン! こっちだ! 来い!」

 

 

光太郎に誘導され、ヘドリアンはどんどん蓄電池へと近づいていた。

 

 

光太郎は蓄電池と蓄電池との間へ入り込み、ヘドリアンの出方を伺う。

 

ヘドリアンは、光太郎へトドメを刺そうとしたのか、覆い被さる様に光太郎に向かって倒れ込んだ。

 

それと同時に光太郎は蓄電池間を抜け出し、草むらへ駆け込んだ。

 

ヘドリアンが蓄電池へ覆い被さると、その重みで蓄電池が軋み始めた。

 

重みに耐えきれなくなった蓄電池は火花を吹き出し…

 

ヘドリアンの身体に電気が流れた。

 

ヘドリアンの身体がどんどん熱され、乾燥していく。

 

足掻けば足掻く程、身体が崩れ、蓄電池が破壊され、より大量の電気が流れる。

 

火花が飛び散り、閃光が放たれる中…

 

 

ヘドリアンが崩れ去った。

 

 

光太郎「…勝った?」

 

ルペラ「光太郎様!!………ご無事で何よりです。」

 

ニホ「やったね光太郎!」

 

ラッコ「勝ったですよ!!」

 

タマちゃん「やったー!すごいよ!」

 

 

ニホ「けど、どうやって思いついたの?」

 

光太郎「あれねー…昔観た映画で、ヘドロの怪獣を倒す時に電気を流して乾燥させる…っていうのがあってね。ラッキーが電池を充電したって言ってたのを思い出して、もしかしたら映画と同じ方法で倒せるかも…なーんてね。」

 

ニホ「何か良く分かんないけど、光太郎のおかげで倒せたよ!」

 

ルペラ「流石、私の光太郎様です…」

 

タマちゃん「もーこれはね、お祝いしなきゃだよ!」

 

ラッコ「光太郎達も来てですよ!」

 

ニホ「どうする、光太郎?」

 

光太郎「うーん…お言葉に甘えちゃおうかな?」

 

 

 

-砂浜-

 

 

 

砂浜には、多くのフレンズが集まっていた。その多くはアザラシやラッコのフレンズだった。

 

ここまで多くの海獣のフレンズと話す機会は、そうは無い。存分に楽しもうじゃ無いか。

 

とは言ったものの、楽しい時間は直ぐに過ぎてしまうもの。 そろそろ島をたたなければ。

 

 

 

タマちゃん「次はアンインの方に行くんだよね?」

 

光太郎「はい、そこから更にパークを周るつもりです。」

 

タマちゃん「もしまた会えたら、また思い出話を聴かせてね? タマちゃんとの約束だよっ☆」

 

光太郎「えぇ、色んな思い出を作って、沢山話しますよ。」

 

ラッコ「バス?はここで良いですー?」

 

光太郎「あ、ありがとうございます! あの、それではそろそろ行かせてもらいます。」

 

ラッコ「もう行っちゃうですか?」

 

ルペラ「はい…ですが、帰りにもう一度寄りますよ。」

 

ニホ「また会えるね!」

 

光太郎「……それでは、短い間でしたが…ありがとうございました。」

 

ゴマちゃん「バイバーイ!」

 

ラッコ「またねーです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ゴコク-

 

 

?「あー暇だ! なんちゅーか、こう…面白い事ないのかよぉ…」



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Ep.9「酔生夢死」

-海上-

 

 

ニホ「…穏やかだね。」

 

光太郎「良いことじゃん…ね?」

 

ルペラ「えぇ、このまま穏やかな日々が続いてくれると…嬉しいですね。」

 

光太郎「きっと、続くよ。」

 

ボス「…間モ無ク、アンインエリア ニ到着スルヨ。」

 

 

 

-アンインエリア-

 

 

ボス「光太郎、到着シタヨ。」

 

光太郎「んー…森だね。うん、こういうところ大好き。」

 

ニホ「いいよね、森!」

 

ルペラ「空気も澄んでいますし…にしても、静かですね。」

 

辺りに、フレンズの姿は無い。

 

光太郎「とりあえず…フレンズ探そうか。 このままフラついてても、蔵は見つかりそうに無いしね。」

 

 

-森-

 

 

木々が鬱蒼と茂る森の中、光太郎達はフレンズを捜し歩みを進めた。

 

 

光太郎「…フレンズ居ないね。」

 

ニホ「何でぇ…」

 

ルペラ「まさか、セルリアンに…」

 

森の中は、時々動物の鳴き声が聞こえる位で、余りにも静か過ぎた。

 

光太郎「きっと…たまたま見つからないだけだよ…」

 

ニホ「……そこに居るのは誰?」

 

ニホンオオカミは後ろを振り返り、草むらを睨んだ。

 

?「あーあ…バレちゃー仕方ねぇなぁ…」

 

草むらから、面倒くさそうに出てきたのは、フードを被ったフレンズだった。

 

?「このまま追っかけてれば、何か面白い事が起きると思ったんだけどなぁ……ちゅーか、どうやって気付いた?」

 

ニホ「私、鼻は良いから!」

 

ルペラ「あなたは…何のフレンズさんですか? 見たところ、ヘビ系のフレンズさんの様ですが…」

 

?「俺か……フッ…俺様の名前は"アルバニーアダー"! 俺様に逢えた事、感謝しろぉ!」

 

ボス「アルバニーアダー、検索中、検索中…

 

 

アルバニーアダー:南アフリカの乾燥した所に生息する、クサリヘビ科の小型のヘビだよ。

        10年もの間発見されず、絶滅したと思われていたんだ。

        生息数もかなり少ないと考えられ、とても希少なヘビと言われているんだ。

 

 

…コノヨウニ、トテモ希少ナ種デ、生態モ謎ニ包マレテイルンダ。」

 

光太郎「解説ありがとう、ラッキー。」

 

アルバニーアダー「さてと…そっちの名前も名乗って貰おうか…?」

 

ルペラ「申し遅れました、グアダルーペカラカラのルペラです。」

 

光太郎「秋月光太郎です。」

 

ニホ「ニホンオオカミだよ! 宜しくね、アルバニーアダー!」

 

アルバニーアダー「…で、ここらじゃ見ねぇ顔だが…どっから来た?」

 

光太郎「キョウシュウからです。あの…木とか石とかで出来た、大きな箱を見た事ありませんか?」

 

アルバニーアダー「んー…見た事ねぇな。 まぁ…色んなフレンズが集まってる所があるから、案内位はしてやんよ。 そん中になら、多分見た事あるやつ居るんじゃねーか?」

 

光太郎「ありがとうございます、アルバニーアダーさん。」

 

アルバニーアダー「そんな堅っ苦しくすんなって…な? ほら、俺に着いてこい!」

 

ニホ「おー!」

 

 

-森林奥地-

 

 

アルバニーアダーに案内されるまま、森の中を歩いていた。

 

 

ニホ「ねぇ、アルバニーアダー?」

 

アルバニーアダー「お、何だ何だ、俺様に質問か? ドーンと来い!」

 

ニホ「アルバニーアダーは、元々ここに住んでたの?」

 

アルバニーアダー「…元々は色んなエリアを旅して周ってたんだ。ただな、このエリアで旅を続けると理由が消えちまったんだ。だから、今はここに居る。」

 

ルペラ「目的が叶った…って事ですか?」

 

アルバニーアダー「……連れが、俺を庇ってセルリアンに襲われた。 そいつらのお陰で俺は逃げきれたが、様子を見ようと思って戻ってみたら… あいつら動物に戻ってた。 俺を見た途端にどっか行っちまったよ…」

 

光太郎「…」

 

アルバニーアダー「俺が旅してた理由なんて、あいつらが着いてこいって言い出したからなんだよなぁ……全く、あいつらもお人好しだよなぁ。俺なんて、ほっぽりだして逃げればよかったのによ…」

 

ニホ「良い仲間じゃん…」

 

アルバニーアダー「どうせ、旅の始まりが道連れなら…あの時も、俺を道連れにしてくれりゃ…」

 

ニホ「そんな事…」

 

アルバニーアダー「………やーめた、俺様は用事を思い出した。ちゅーか、あんたら馴れ馴れしいんだよ…ここの道を真っ直ぐ行けばフレンズの溜まり場に着くからな。 じゃあな! あー、着いて来んなよ! そうそう、そのままそのまま…

 

ニホ「待ってよ!」

 

ニホンオオカミの言葉を聞き入れず、アルバニーアダーは森の中へ消えていった。

 

ニホ「そんな…」

 

ルペラ「ニホンオオカミ様、行きましょう。」

 

ニホ「けど、追いかけなきゃ…」

 

ルペラ「アルバニーアダー様にも、何かしらの事情がある筈です。 ここは、彼女の意思を尊重しましょう。」

 

ニホ「うん…」

 

 

-フレンズの溜まり場-

 

 

そこは、木漏れ日の射し込む、少し開けた場所だった。

 

しかし、溜まり場という割には木に寄りかかっている、1人のフレンズしか居なかった。

 

 

光太郎「あの…」

 

?「ん、アタイに何か用かな?」

 

光太郎「アルバニーアダーさんから、ここにフレンズが集まってると聞いて。」

 

?「成る程…一応ね、最近は変なセルリアンの噂があって、みんなで集まれば怖くないと思って集まってるの。」

 

ルペラ「その…手に持っている物は?」

 

フレンズが手に持っていた物は、ベネチアンマスクの様だった。

 

?「コレ? ふっふっふっ…アタイの"みすてりあす"さを際立たせる物だよ! さぁ…みすてりあすなアタイの正体を見破れるかな!?」

 

ニホ「うーん…シカ?」

 

ルペラ「ロバ…ですか?」

 

光太郎「…ウシ?」

 

シカ?ロバ?ウシ?「まだまだ…ぜーんぶ、おしいなぁ…うーん…」

 

?「お〜い、シフゾウちゃ〜ん! ご飯持ってきたよ〜!」

 

草むらの奥から、声が聞こえた。

 

シカ?ロバ?ウシ?「はーい! ありがとー!」

 

ルペラ「…シフゾウさん?」

 

シフゾウ「…な、何で分かったの!?」

 

光太郎「え…シフゾウと呼ばれて返事をしたから…ですかね?」

 

シフゾウ「うぁぁぁやっちゃったぁぁ!」

 

?「シフゾウちゃん、どうしたの? あれ…お客さん?」

 

光太郎「お邪魔してます…」

 

シフゾウ「えーっと、紹介するね。 この子はノロジカ、そしてアタイはシフゾウ!」

 

ルペラ「宜しくお願いします。」

 

シフゾウ「それでね、アルバニーアダーから聞いて、ここに来たんだって。」

 

ノロジカ「そうなんだ〜 アルバニーアダーちゃん、元気にしてた〜?」

 

光太郎「それが…」

 

 

ここまでに起きた事やアルバニーアダーの事、ついでに自分達の旅の目的を一通り話した。

 

 

ノロジカ「う〜ん…アルバニーアダーちゃんは優しい子な筈なんだけどな〜…」

 

シフゾウ「…えっと…蔵…だっけ? 多分見た事あるかも。 案内するよ!」

 

 

 

光太郎達は、アルバニーアダーの事が気掛かりだが、旅をする事を決意した。

 




うわぁん、ギスギスし始めたよぉ…


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Ep.10「楽園」

道中、ただ黙々と歩くのも暇なので…

 

光太郎「お二人にお聞きしたいのですが…」

 

ノロジカ「な〜に〜?」

 

光太郎「お二人は武器を持ってますが…俺のも直せますか?」

 

光太郎は、かばんから真っ二つになった鉄パイプを取り出した。

 

シフゾウ「あーあ…綺麗に折れてるね。 そうだね…一回、それしまって?」

 

光太郎「…はい、しまいましたよ。」

 

シフゾウ「そしたら、両手を前に突き出して…"武器出ろ…武器出ろ…"って、頭の中で言ってみて。」

 

光太郎「了解…(武器出ろ…武器出ろ……)」

 

次第に光太郎の手に、輝きが集まり始めた。その輝きが、だんだんと纏まってゆき…

 

光太郎「ん…?」

 

鉄パイプが創られた。

 

光太郎「おぉ…おぉ! 凄いよ…サンドスター凄いなぁ!」

 

シフゾウ「それで、消えろーって思えば消えるし、出ろーって思えば出る。結構便利だよ!」

 

光太郎「シフゾウさん、ありがとうございます!」

 

シフゾウ「まーねー! みすてりあすなアタイに係れば、ざっとこんなもんだよぉえへへぇ…」

 

 

 

 

-蔵-

 

 

シフゾウ「ここだよ!」

 

光太郎「中に入っても…」

 

ノロジカ「全然良いよ〜 ノロも中がどんなのか気になる〜」

 

 

リウキウ、ゴコクにあった蔵とは、やはり似ていた。

 

光太郎「…これ、ちゃんと開くよね?」

 

ルペラ「光太郎様、きっと大丈夫ですよ。」

 

光太郎「それでは…お邪魔しますよー…」

 

普通に開いた。

 

光太郎「えぇ…」

 

ニホ「あの時は、何であんなに固かったんだろ…」

 

光太郎「中にあるのは…いつものページと、勾玉…それと、小刀?」

 

試しに鞘から抜いてみようとしたが、中で錆びているのかビクともしない。

 

光太郎「ルペラ、どっち欲しい?」

 

ルペラ「そうですね…私は、小刀で。」

 

光太郎「了解。 それじゃ、ルペラは小刀を、ニホニホは勾玉を預けるよ。」

 

して、肝心の太平風土記の内容は…

 

『邪な大樹、迷い人を夢へと誘う。 或いは、偽りの楽園。』

 

偽りの楽園…どんな楽園なんだよ…

 

ニホ「今度の勾玉は白いね!」

 

ルペラ「色が何かに関係するのでしょうか?」

 

シフゾウ「………」

 

ノロジカ「シフゾウちゃん、どうしたの〜?」

 

シフゾウ「うん…今になって思ったんだけど…アルバニーアダー、もしかしたら噂のセルリアンを見つけたのかも…」

 

光太郎「セルリアン…?」

 

ニホ「今すぐ捜さなきゃ!」

 

ルペラ「そうですね、セルリアンが関わっている可能性があるのなら、アルバニーアダー様を助けるべきです。」

 

光太郎「…俺達は北側を捜します、シフゾウさん達は南の方を頼みます!」

 

シフゾウ「分かった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-森林?部-

 

 

アルバニーアダー「やっっっと見つけたぜ…よくも俺の連れを殺ってくれたな………今度はな、俺様が直々にテメェをあの世に招待してやんよぉ!!!」

 

アルバニーアダーが飛びかかった先には、大樹の様な何かがあった。

 

大樹の様な何かは、ツタを振り回し、アルバニーアダーの進行を食い止めていた。

 

次第に、ツタはアルバニーアダーの手足に絡んでいった。

 

アルバニーアダー「クソッ…邪魔だ!…離せよ、はーなーせーよー!!」

 

大樹の末端から、黄色い霧がアルバニーアダーに向かって吹き付けられた。

 

アルバニーアダー「ゲホッ…何だよコレェ……ヤベッ、意識が……テメェ…汚ぇぞ…

 

 

 

 

こんな所で……こいつを地獄に送るまでは…

 

 

 

うっ…苦しい……

 

 

 

ふざけんな……死ぬ…

 

 

 

 

このままじゃ、ほんとうに…

 

 

 

 

 

いやだ…まだ……しにたくない…

 

 

 

 

 

 

だれか……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「おーい、起きろー。アルバニー!」

 

アルバニーアダー「ぅうぁぁぁぁぁ! ぁ…あ?」

 

目が覚めると、そこは広い草原だった。

 

アルバニーアダーの周りには、彼女を心配そうに見つめる2人のフレンズがいた。

 

?2「良かった…アルバニーさん、凄くうなされてましたよ?」

 

アルバニーアダー「おいおい…ちゅーか何でお前らが居るんだよ! お前らセルリアンに…」

 

?「悪い夢でも見てたんじゃないかな?」

 

アルバニーアダー「…お前ら、本当にペルシュロンとオグロヅルなのか…?」

 

ペルシュロン「そうだけど…」

 

オグロヅル「はい…アルバニーさん、本当に大丈夫ですか?」

 

アルバニーアダー「うっ…うぅ…お前らぁぁぁ!!! 本当に良かった…あぁ…良かった………」

 

2人に抱きついて叫ぶアルバニーアダー。 その声は震え、かすれていた。

 

オグロヅル「安心して下さい…私達は、あなたの側にいますよ。」

 

ペルシュロン「そんなに悪い夢を見たのか…旅の疲れかもしれない。今日は、ゆっくり休もうか。」

 

 

ペルシュロンは、アルバニーアダーを背負い、木陰へ移動した…



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Ep.11「夢」

-森林北部-

 

 

シフゾウ達と別れてから30分が過ぎた。時間が経つ程に、皆に不安が募る。

 

光太郎「ニホニホ、アルバニーアダーの匂い分かる?」

 

ニホ「………向こうの方! 変な匂いもする…」

 

ルペラ「まさか…光太郎様、急ぎましょう!」

 

 

 

 

ニホンオオカミが先導し、アルバニーアダーの匂いがする方へ向かう。

 

 

 

 

ニホ「この辺りだと思うんだけど…」

 

ルペラ「……まさか、アレですか…?」

 

ルペラが指差す先には、大樹の様な何かが唸っていた。

 

ニホ「アルバニーアダー…今行くからね!」

 

光太郎「ちょっ、ニホニホ!?」

 

 

 

-森林?部-

 

 

 

霧深い森の中、一本の大樹がニホンオオカミ達を待ち構えていた。

 

ニホ「ハァ…ハァ……アルバニーアダー!」

 

光太郎「待って、不用意に近づくのは…」

 

光太郎の言葉を聞き終わる前に、ニホンオオカミはセルリアンに向かって行った。

 

ボス「危険! 危険! コノ辺リニハ、セルリアン由来ノ ガス ガ撒カレテイルヨ。」

 

ルペラ「それはどういう…」

 

 

ニホ「このぉ…アルバニーアダーを返…せ……」

 

 

だんだんと意識が薄れ、助走の勢いを殺しきれずに躓き倒れるニホンオオカミ。

 

 

 

 

 

 

 

 

-?-

 

 

 

 

ニホ「んぅ…ここ…どこ?」

 

ニホンオオカミが辺りを見回すと、さっきまで自分が倒そうとしていたセルリアンも、助けようとしていたアルバニーアダーも、光太郎・ルペラも居なかった。

 

ニホ「みんな…どこなの? 誰か…居ないの?」

 

不安に駆られるニホンオオカミ。

 

ニホ(あの時の光太郎も、こんな気持ちだったのかな…)

 

ふと、光太郎と出会った時の事が頭を過ぎる。

 

そんなニホンオオカミが、背後に何かの気配を感じた。それは、懐かしさを感じるものだった。

 

ニホ「…みんな………居るの?」

 

ニホンオオカミが気配のする方を振り向くと、何匹もの"ニホンオオカミ"が居た。

 

ニホ「……そっか…」

 

ニホンオオカミは、一匹のニホンオオカミへ近付くと、ゆっくりと頭を撫でた。

 

ニホ「…これが太平風土記に載ってた、偽りの楽園ってヤツなんだね…」

 

ニホンオオカミはゆっくり立ち上がると、一匹一匹に目を合わせた。

 

ニホ「……例え幻でも…あなた達に逢えて本当に良かった。 ありがとう。」

 

 

ニホンオオカミはゆっくり目を閉じ、光太郎やルペラの元へ戻りたい。と強く願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ホニ………ニホニ……ニホニホ!」

 

ニホ「…光太郎?」

 

二人は、セルリアンから少し離れた茂みに居た。

 

ニホ「ルペラは?」

 

光太郎「…セルリアンと戦ってる…」

 

ニホ「そうなの!? 早く助けに行こう!」

 

光太郎「…ニホニホ、大丈夫なの?」

 

ニホ「私なら…全然大丈夫だから! さ、行こ!」

 

 

-セルリアン付近-

 

 

セルリアンの根が届かない上空から、光太郎達の方へ攻撃が向かない様、セルリアンを攻撃しつつ誘導するルペラ。しかし、その体力は周囲に漂うセルリアン由来の花粉で、少しずつだが確実に削られていた。

 

ルペラ「……そろそろ…時間切れですかね………ふふっ…ゴマバラワシ様が沢山見えますよ……」

 

光太郎「ルペラ!! お待たせ!!」

 

ルペラ「あぁ…光太郎様………」

 

ニホ「ルペラはちょっと休んでて!」

 

ルペラ「ありがとうございます…二人とも、ご武運を………」

 

何とか体勢を立て直して着地するルペラ、それを確認した瞬間、光太郎・ニホンオオカミは行動を開始した。

 

どうやらセルリアンの花粉は、時間が経つにつれ効果が薄れるらしい。

今のところ、数分間だけなら大丈夫そうだ。

 

ニホ「私はアルバニーアダーを引っ剥がしてくる! もしアルバニーアダーを剥がせたら、アルバニーアダーは光太郎に任せるよ!」

 

光太郎「分かった!」

 

光太郎の返事を書き終える前に、ニホンオオカミはアルバニーアダーの方へ向かった。

 

アルバニーアダーの全身に絡み付いたツタを引き千切り、アルバニーアダーが怪我をしない程度に力尽くで引き剥がした。

 

ニホ「光太郎! アルバニーアダー助けた!」

 

光太郎にアルバニーアダーを引き取ってもらうと、光が溢れ出た眼でセルリアンを捉えた。

 

ニホ「セルリアン…アンタのお陰で良いもの見れたよ……お礼にさ、今ここで…楽にしてあげるよ!」

 

アルバニーアダーを引き剥がした跡に向かって飛び込むニホンオオカミ、どうやら、内部から破壊するらしい。…相当頭に来ていたようだ。

 

 

 

 

始めは内部からの衝撃に耐えられずに暴れていたセルリアンが、次第に動きが悪くなっていった。

 

 

 

 

 

内部から破壊され、セルリアンの体が枯れた植物の様に朽ちていった。

 

 

鈍い光を放ちながら崩れ落ちるセルリアンの中で、ニホンオオカミが満足そうにセルリアンの核を握りしめていた。

 

 

 

 

 

 

-森を抜けて…-

 

 

幸いな事にアルバニーアダーは救出後、すぐに立てるまでに回復した。

 

アンインに夕陽が差し込み、辺りを紅く染めていた。

 

無事、アルバニーアダーを救出出来た割には重い雰囲気が立ち込め、沈黙が続いていた。

 

 

 

アルバニーアダー「………なぁ…何で俺を助けた…? あのままほっといてくれりゃ、俺はあいつらと…」

 

ニホ「それは…アルバニーアダーに生きててほしかったから…」

 

アルバニーアダー「…は? 俺が死のうが何しようが、アンタらには関係無いだろうが…」

 

ニホ「……関係あるよ!」

 

アルバニーアダー「何だよ…仲間だからか? 俺の仲間はあいつらだけなんだよ!」

 

ニホ「…じゃあさ、何で仲間の気持ちを考えてあげないの?」

 

アルバニーアダー「どういう事だよ…」

 

ニホ「あなたの仲間は、あなたに生きててほしかったから…絶対に生きててほしかったから……」

 

アルバニーアダー「…それで、死んだって訳か…? 何でだよ…意味なんてない…結局辛いだけじゃねぇか……」

 

ニホ「意味はあるよ…私は、意味無く死んじゃった人なんて居ないって信じてる…あなたも、色んなフレンズと会って色々と感じて…それだけでも意味があるんじゃ無いかな…」

 

アルバニーアダー「…俺にとっては全部辛いんだよ! こんなに苦しむなら…いっそあいつらにも会わなければ……」

 

 

ニホ「……………バカ…」

 

アルバニーアダー「…今何つった? え?」

 

ニホ「バカバカバカバカバカ!!!」

 

 

 

光太郎「ちょっニホニホ…」

 

ルペラ「光太郎様、ここは彼女に任せましょう。」

 

 

 

ニホ「もっと自分を大事にしてよ! そりゃ大切な人が死んじゃったら悲しいよ、辛いよ! けど、その人達が命を懸けて護ったあなた自身を、自分で傷つけてどうするの!? お願い…………うぅ……みんなで仲良くしてたいよぉぉ!!! あぁ…ぁ……」

 

泣き崩れた。あのニホンオオカミが。泣き続けた。

 

 

アルバニーアダー「……分かったよ…俺が悪かった………だからそんな泣くなって、な?」

 

ニホ「…もう…自分を傷つけない…?」

 

アルバニーアダー「しないしない…まぁ…今思うと、あんなの俺様らしく無いからなぁ…」

 

ニホ「うん……ありがと…」

 

アルバニーアダー「…あそこまで本気で言ってくれたのは、あいつら以来だな…」

 

 

ニホ「そっか……あのさ……お友達になってくれない?」

 

アルバニーアダー「んぁ…唐突だな…でもまぁ、友達…か。 良いかもな。」

 

ニホ「本当? やったー! 光太郎!ルペラ!私、友達が増えたよ!」

 

 

 

 

-アンインアリア、出口付近-

 

 

ルペラ「光太郎様、シフゾウ様にアルバニーアダー様のこと、伝えてきましたよ。 どうやらあの後、シフゾウ様達は他のフレンズにも協力を仰いでいたようで、そのフレンズ達にアルバニーアダー様が見つかったことを報告してまわっているそうですよ。」

 

光太郎「ありがと、ルペラ。ごめんね、わざわざ伝えにいってもらっちゃって…」

 

ルペラ「大丈夫ですよ、この辺りの地形を把握する、良い機会にもなりましたしね。」

 

光太郎「なら良かったよ。」

 

ボス「モウ直グ日ガ暮レルカラ、ソロソロ出発シヨウカ。今夜ハ移動シナガラ夜ヲ過ゴスヨ。」

 

ニホ「そっか…アルバニーアダー、また会えるよね?」

 

アルバニーアダー「どうせ、このパークん中だし。どっかしらで会えるだろ。」

 

 

ニホ「じゃあ……またね。絶対だよ!」

 

 

アルバニーアダー「あぁ…そん時を楽しみにしてるからな!」

 

 

光太郎達はバスに乗り込み、アンインエリアをあとにした。

 

 

 

薄暗い夕闇の中、バスを見送ったアルバニーアダーはただ、空を見ていた。

 

アルバニーアダー「……ったく、こんな湿っぽいのは俺様らしく無いっちゅーの…」

 

 

 

 

?「あの…」

 

?「ここの事、教えてくれないかな…?」

 

 

 

アルバニーアダー「誰だ? まぁ、俺様に任せと……け…?」



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Ep.--78「ご唱和ください、"彼"の名を!」

ウルトラマンZ放送開始記念


ここはサンカイエリア…にある、とある店。といっても今ではただの廃墟。

 

そんな店にある落とし物コーナー。皆さんも一度は覗いた事があるのでは無いでしょうか?

 

今回は、この落とし物コーナーに預けられている、一体の特撮ヒーローの人形が………

 

 

 

-サンカイエリア-

 

 

時は、光太郎達がリウキウへ流れ着いた頃。

 

 

小さな砂丘の上で伸びをしている、一人のフレンズが居た。

 

オグロスナギツネ「んー! 今日も平和だなぁ… 」

 

 

ヒトコブラクダ「あ、オグロスナギツネちゃんおはよぉ。」

 

オグロスナギツネ「おはよ! あれ、フタコブラクダちゃんは?」

 

ヒトコブラクダ「多分、もうすぐ来ると思うよぉ?」

 

オグロスナギツネ「そう? なら良いけど。」

 

 

-地下バイパス-

 

 

暗い地下バイパスの中、点々と点いた電灯に照らされた一人のフレンズが彷徨っていた。

 

サイガ「うーん…迷子になったのなー…」

 

 

サイガの声だけが響く中、次第に地鳴りの様な雑音が聞こえる様になった。

 

サイガ「お、誰かいるのなー!?」

 

サイガの呼びかけに、反応は無かった。

 

サイガ「気のせいなのなー…」

 

流石のサイガも歩き疲れた様で、壁に寄りかかり座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイパス内に、金属が軋む様な音が響いた。

 

サイガ「何なのな!?」

 

サイガが慌てて周囲を見回すと、バイパスの壁が剥がれている場所があった。

そこを覗くと、中は空洞になっていたが、電灯に照らされ、青銅の様な輝きを放つ何かが居た。

 

しかしそれは、アニマルガールとは比べ物にならない程大きく見えた。

 

サイガ「これは何なのな…?」

 

サイガが一歩、また一歩と穴に近付いた。

 

 

その時、甲高い声の様なものと共に、空洞内の何かが動き始めた。

 

 

 

 

 

-再び、地上-

 

 

地が揺れ、砂が巻き上がり、フレンズ達の不安を煽っていた。

 

オグロスナギツネ「ちょっと何これ!? ヒトコブラクダちゃん大丈夫!?」

 

ヒトコブラクダ「私は大丈夫だけど、フタコブラクダがぁ…」

 

ヒトコブラクダが辺りを見回していた。どうやら、フタコブラクダを探しているようだ。

 

オグロスナギツネ「…私、フタコブラクダちゃん捜してくる!」

 

ヒトコブラクダ「私も捜すよぉ!」

 

 

 

2人の視線の先にある大地が、すり鉢状に陥没した。

側面には、何か大きな施設があったらしく、軋みながら崩れていた。

 

だんだんと広がる穴、その中から大きな大顎を持ったクワガタ…否、アリジゴクといった方が正しいか。

 

アリジゴク型の巨大なセルリアンが現れた。

 

 

オグロスナギツネ「この揺れも砂嵐も…全部あのセルリアンの仕業なの…?」

 

ヒトコブラクダ「けど、あの大きさは倒せないよぉ…」

 

 

そんな中、セルリアンの方から走ってくる1人のフレンズが居た。

 

 

サイガ「やっっっっとフレンズが居たのなぁぁぁ!!!」

 

 

オグロスナギツネ「サ、サイガちゃん!?」

 

サイガ「地面の下の暗いところで迷子になってたら、あのセルリアンが居たのなぁ!」

 

ヒトコブラクダ「大丈夫? 怪我してない?」

 

サイガ「サイガは大丈夫なのなー!」

 

 

 

その時、セルリアンが大顎を開き、空へ向かって何かを放った。

 

 

ヒトコブラクダ「アレって…虹?」

 

その"虹"が見えた瞬間、周囲の廃墟が吸い寄せられていった。 廃墟だけでは無い、不運にもセルリアンの近くに居たラッキービーストまで吸い寄せられていた。

 

 

 

サイガ「…あの棒みたいなのに掴まって飛んでるのって、フタコブラクダじゃないのなー?」

 

オグロスナギツネ「…本当だ……と、飛ばなきゃ!」

 

ヒトコブラクダ「どうやってぇ?」

 

オグロスナギツネ「そ、それは…でも早く助けないと!」

 

 

 

-小さな廃墟-

 

 

 

このヒトの遺産も、砂に飲み込まれる瞬間が刻々と近付いていた。

 

その時、空からサンドスターの様な物が降ってきた。

 

 

…その輝きは、とある人形に集まっていた。

 

次第に、赤い光が廃墟を包んでいった。

 

その光は赤く光る、巨大な球となりセルリアンの元へ…フタコブラクダの元へ飛んでいった。

 

 

 

 

光の球はフタコブラクダを優しく包み込み、そのままオグロスナギツネ達の元へ降り立った。

 

オグロスナギツネ「えっ…え?」

 

サイガ「何なのな…」

 

ヒトコブラクダ「フタコブラクダちゃん!」

 

光の球が離れると、地面にフタコブラクダが倒れていた。

 

ヒトコブラクダ「フタコブラクダ、大丈夫?」

 

フタコブラクダ「うぅん…ヒトコブラクダ?」

 

ヒトコブラクダ「良かった…怪我してない?」

 

フタコブラクダ「うん、赤い球が助けてくれたのー」

 

 

 

 

赤い光の球は、セルリアンの前へ浮かんでいた。

 

その時、パッと白い光が広がった。

 

その光が収束すると、セルリアンの前には巨人が仁王立ちしていた。

 

 

体表は美しい銀と、身体を巡る血潮の如き紅。胸には青い宝石の様なものが輝き、その瞳は太陽の温もりを感じる光を放っていた。

 

 

その光の巨人は、独特な掛け声と共に前傾姿勢をとった。

 

セルリアンは穴から這い出て、巨人を絞め殺そうと大顎を大きく開き、巨人へ向かって行った。

 

巨人は一歩踏み込み、セルリアンの大顎を掴んだ。

 

軋む大顎、巨人は大顎を折ろうと捻りを加えるが、中々折れない。

 

セルリアンは作戦を変え、自身ごと巨人を地面に引き摺り込もうとした。

 

巨人はセルリアンの作戦に気付き、セルリアンとの間合いを空けた。

 

 

一瞬の静寂が訪れた。巨人は意識を集中させ、セルリアンの位置を把握しようとしていた。

 

 

巨人の背後から、勢いよく砂が吹き上げられた。

セルリアンが目眩しの為に放ったようだ。

 

巨人の胸にある宝石は赤く点滅を始めた。

 

視界を遮られた巨人の背中に、セルリアンの大顎が迫る。

 

 

オグロスナギツネ「後ろだよっ!」

 

 

巨人は、その言葉通り背後へチョップをくり出した。

 

 

セルリアンの大顎の一部が宙を舞った。

 

 

巨人は間合いを空け、腕を十字に組んだ。

 

その瞬間、青白い光線がセルリアンに向かって放たれる。

 

セルリアンは甲高い声を上げながら耐えていたが、次第に体が崩れ、砂に還っていった。

 

 

オグロスナギツネ「…やった……勝った? 勝った!?」

 

サイガ「凄いのなー!!」

 

 

巨人は空を見上げると、両手を挙げて空へ飛んでいった。

 

フタコブラクダ「助けてくれて、ありがとぉ!」

 

ヒトコブラクダ「名前! 教えてぇ!……行っちゃったぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、その人形は戦いの末に燃え尽きたか、宇宙を彷徨っているのか、はたまた、光の巨人としての使命を果たし、元の持ち主の所へ帰ったのか…

 

それは、誰にも分かりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャパリパークからも、遥か彼方で輝く星が、"故郷"が、よく見えます。

 

一部のヒトは、その星をこう呼びます。

 

「M78星雲 ウルトラの星」と。




…終盤、けもフレ成分薄い……


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Ep.12「砂漠の旅! 時代は遺産をも消し去るのか!!」

アルバニーアダーと別れ、サンカイエリアの中心へ向かうバス。

 

砂漠の夜は寒く、バスの車内も冷え込んでいた。

 

月光に照らされる中、バスの車内では光太郎達が眠りについていた。ただ一人を除いて…

 

 

ニホ「……はぁ……」

 

 

窓枠に肘を突き、ぼんやりと月を眺めていた。

 

いつもの様な明るい表情はそこに無く、むしろどこか悲しげな表情だった。

 

 

ルペラ「…ニホンオオカミ様?」

 

ニホ「ルペラ? …ごめん、起こしちゃったかな…」

 

 

ルペラは、ニホンオオカミに寄り添う様にした。

 

 

ルペラ「いえ、どうせなら夜風も感じていようと思いまして……先程の事が、気掛かりですか?」

 

ニホ「……うん。 あの時は勢いで色々言っちゃったけど、アルバニーアダーを傷つけちゃってないかな… 私、アルバニーアダーに酷い事言っちゃった…」

 

ルペラ「………確かに、責め立てる様な言い方にはなっていましたね…」

 

ニホ「だよね……私がもっと、気持ちを伝えるのがうまければ…」

 

ルペラ「…ですが、あの時ニホンオオカミ様が何も言わなかったら、私もアルバニーアダー様に一言二言、言っていたかもしれません…」

 

ニホ「ルペラも…?」

 

ルペラ「えぇ、折角与えられた命、それを投げ出そうとするのは…私には贅沢に思えてしまうので。」

 

ニホ「…ルペラ……辛い事、思い出させちゃった…?」

 

ルペラ「いえ、私は変えられない過去よりも、今この瞬間に出来る事を考えている…そうしたいんです。 だから今、私に出来るのは…」

 

ルペラは、ニホンオオカミを背から優しく抱いた。

 

ルペラ「今、私に出来るのは、あなたの心の支えになる事…私では不十分だとは思いますが…」

 

ニホ「…そんな事ない…私、嬉しいよ……?」

 

ルペラ「ニホンオオカミ様…あなたはもう、独りではありません…辛い事があったら、私達を頼ってください…」

 

ニホ「…ルペラ…ありがと………んぅ…あったかい…」

 

ルペラ「アルバニーアダー様も、あなたの言葉に…ぬくもりを感じた、と思いますよ。あなたの、心の底からの言葉に…」

 

ニホ「ぬくもり…?」

 

ルペラ「えぇ、優しさや誰かを想う気持ち…一言では言い表し難いのですが、そういった…愛の生み出したもの…ですかね。」

 

ニホ「そっか…じゃあ、今私が感じてるのもルペラからの…ぬくもり…?」

 

ルペラ「…そうかも、しれませんね。」

 

ニホ「ルペラ……居なくならないでね…絶対だよ…?」

 

ルペラ「唐突ですね…もしかして、この感覚が癖になってしまいましたか?」

 

ニホ「それもそうだけど…私、ルペラとずっと一緒に居たい…光太郎と、ルペラと私…みんなで一緒に居たい。」

 

ルペラ「私も、そうしたいです…永遠に……」

 

ニホ「ねぇ…ルペラ?」

 

ルペラ「何でしょう?」

 

ニホ「…月、綺麗だね。」

 

ルペラ「……えぇ、とても…」

 

 

 

 

-サンカイエリア中心部、朝-

 

 

 

朝日が昇り、地上を明るく照らし始めた頃、バスはサンカイエリアの中央付近を通っていた。

 

光太郎「…このエリア、こんなに建物少なかったっけ…?」

 

光太郎が、まだパークの職員だった頃…パークセントラル等に比べたら建物の数は少なかった。だが、少なくとも管理局が点々と建ってはいた筈。

 

ニホ「ねぇ、アレなんだろ?」

 

ニホンオオカミが指差す先には、一本の岩の様なものが刺さっていた。その形は、まるでクワガタの大顎の様だった。

 

ルペラ「セルリアンの一部…でしょうか?」

 

光太郎「うぅん…ラッキー、アレってセルリアン?」

 

ラッキービーストは、何やら電子音を鳴らし始めた。岩の様な何かと、セルリアンの特徴とを照らし合わせているのだろうか。

 

 

 

ボス「…アレハ、セルリアンノ一部ダネ。タダ、カナリ結晶化画進ンデイルカラ、アソコカラ セルリアン ガ生マレル可能性ハ低イヨ。」

 

光太郎「なら、ひとまず安心ってとこかな。」

 

 

 

 

ルペラ「…ニホンオオカミさん、向こうに見えるのはフレンズでしょうか?」

 

ニホ「多分…フレンズだね。うん?」

 

ルペラ「どうかなさいましたか?」

 

ニホ「今…何て呼んだ…?」

 

ルペラ「…ニホンオオカミ"さん"ですよ♪」

 

ニホ「それって…」

 

ルペラ「この様な、距離の縮め方も有りかと思いましてね。」

 

ニホ「ルペラ…やったぁぁっ!!」

 

 

 

 

光太郎「…良いなぁ…俺もそうやって呼んでほしいなぁ…」

 

光太郎は、自身の出せる最大限の甘ったるい声を出した。

 

ルペラ「そうですか?……光太郎…さん?」

 

 

 

 

光太郎「…」

 

 

光太郎は思った。 今、自分の感じている幸せを世界中にばら撒けば、世界がとてつもなく平和になる。

 

そして、ルペラの新しいあだ名を考え始めた。…が、結局はルペラが一番だった。

 

だんだんと、目の前が明るくなって行く。天へ還る時が来たのだ。

 

 

 

 

光太郎「我が生涯に、一片の悔いな……!」

 

 

 

?「なのなー!!!」

 

光太郎は現実に引き戻された。

 

 

ニホ「元気だね! 名前は?」

 

?「サイガ! サイガなのな!」

 

 

ルペラ「サイガ様、この辺りに建物ってありますか?」

 

サイガ「たて…もの……あっ、もしかしたらあるのなー!」

 

 

サイガの案内で、光太郎達は地下施設へたどり着いた。

 

 

 

-地下施設-

 

 

 

サイガ「ここなのなー!」

 

光太郎「………んぁ、ここって…」

 

 

どうやら、地下シェルターらしい。 

 

 

ニホ「ここ…広いねぇ…」

 

ルペラ「…暗いですね……」

 

光太郎「ラッキー、ここの照明ってまだ使える?」

 

ボス「試シテミルネ…」

 

 

 

パァン!!

 

 

 

何かが破裂する様な音が聞こえた。

 

 

ニホ「ボス…大丈夫なの?」

 

 

大体、この様な場合は悪い予感が的中する。いつだってそうだ。期待は外れるのに、嫌な予感ばかり当たる。

 

 

気付いた時には遅かった。

 

 

 

シェルターの扉は殆ど閉まっていた。



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Ep.13「各地に現る小さな友! その魂の仕事が扉を動かす!!」

しまった、閉じ込められた。

 

暗い…誰がどこに居るのかすら分からない…

 

「すみません光太郎様…私があの様な事を言ってしまったせいで…」

 

「ルペラのせいじゃないよ。俺もさ、暗いとは思ってたから、どっちにしろ同じ結果になってたよ。」

 

そう、誰が悪いとかいう問題では無い。

 

まぁ、経年劣化やその他諸々のリスクを考えなかった俺に、責任はある。

 

「ねぇ、サイガはここから出る方法って知ってるの?」

 

「うーん…サイガは知らないのな…頑張れば開くんじゃないのな?」

 

「そうかも! 私頑張ってみる!」

 

どうやら、ニホンオオカミが扉を開けようとしているらしい。

 

 

扉…壁?を叩く音が聞こえる。

 

「…全然ダメ……びくともしないよ!」

 

 

「あっ、そうだ…」

 

「光太郎、何か思いついたの?」

 

「心の目…心の目で見れば、きっと何か分かるかもしれない!」

 

「すごい! で、どうやって見るの?」

 

「……どうやるの、ルペラ?」

 

「えっ、私ですか!? うーん…挑戦してみます…」

 

 

 

俺は、この時気付いた。 とんでもない無茶振りをしてしまった…と。

 

 

「……光太郎様、無理があります。」

 

「だよね…ごめん。」

 

 

 

 

「ふっふっふっ…お困りのようでしゅね…」

 

「ニホニホ、ちょっと声変わった?」

 

「ううん、私じゃないよ?」

 

「サイガでもないのな!」

 

「…ルペラ、キャラ変した?」

 

「してないですよ…」

 

「無視しないでほしいでしゅ…」

 

しまった、声の主が…

 

「あっ…ごめんなさい。あの…お名前は?」

 

「スゥ…自由気ままにパトロールし隊、昼間担当のウサギコウモリでしゅ!」

 

「隊という事は…ここにお仲間も?」

 

「1人でしゅ、迷子でしゅ…」

 

「でも…コウモリだから、この部屋に何があるか分かるんじゃない?」

 

「…私は基本、おめめに頼ってパトロールしてるから、そーゆーのは苦手でしゅ…」

 

「どうして迷子になったのな?」

 

「何だか、凄く大きなセルリアンが出たって聞いて、パトロールしたい欲に駆られたんでしゅ。それで、自気パ隊みんなでここをパトロールしてたら…」

 

「迷子になった…と。 ここから出られたら、俺達も捜すの手伝うよ。」

 

「面目ないでしゅ…私も、この部屋に何があるか、頑張って探してみるでしゅ!」

 

「…ニホンオオカミさん、助けを呼んでみましょう。」

 

「確かに……それなら私、目一杯声出すよ! さぁ、みんな…耳、しっっかり塞いどいてよぉ…」

 

 

 

 

 

 

シェルターの中に、ニホンオオカミの声が響く。

 

 

 

「…うぅ……助けてこうたろぉ…耳痛い…」

 

「よしよし…ニホニホおいでぇ……」

 

ダメだ…ニホンオオカミの場所が分からない…

 

「あっ…そういえば…」

 

「光太郎様、今度は何を思いついたのですか?」

 

光太郎は持ってきた鞄をあさり始めた。

 

「あったあった…」

 

「何? 気になるよぉ!」

 

 

 

 

「へっへっへっ…懐中電灯!」

 

意気揚々と懐中電灯の電源を入れた。

 

「…あれ? 付かない…」

 

「光太郎様…?」

 

「……付かない…どうせ……どうせ俺なんか…」

 

「元気だすのなー…」

 

「大丈夫だよ、たまにはこんな事もあるよ!」

 

 

〜1時間半経過〜

 

 

「…流石に、やる事がなくなってきたな…」

 

「光太郎様、このままですと体内時計が狂いそうです…」

 

「ずっと暗いままだからね…光太郎、他に何か道具ある?」

 

「…あとは全部バスの中。」

 

「なー光太郎、どうして3人で旅してるのなー?」

 

「うーん…楽しいから…?」

 

「楽しい…でしゅか?」

 

「そう、それに、俺一人じゃここまで来れなかった。」

 

「何か大変な事があったんでしゅか?」

 

「あったあった! 大きなセルリアンと戦ったり、雪の中で倒れたり砂漠で倒れたり…」

 

「後半は全部光太郎の事だよ…けど、光太郎に助けられた事もあるよ。」

 

「えぇ、私が光太郎様とニホンオオカミさんと出会ったのは、二人が私を助けてくれたからなんですよ。」

 

「私達を助けようとして、ボロボロになった時も………もう、あんな無茶しないでね?」

 

「あの時は、本当に辛かったんですから…」

 

「ごめんごめん…なるべく無茶しないようにするよ。」

 

 

 

「…完全に三人だけの世界に入ってるでしゅ。」

 

「凄い仲良いのなー…」

 

 

 

 

ピッ

 

 

 

 

「…光太郎、遂に壊れた?」

 

「……多分、まだ大丈夫だよ。」

 

 

何処からか音がした。電子音だ。

 

 

「…光太郎、扉カラ離レテ。」

 

「ん? あぁ…」

 

取り敢えず、ラッキービーストの言葉の通りに扉から離れた。

 

…ドコが扉だか分からないので、みんなで部屋の真ん中へ固まった。

 

 

 

 

何やら重い何かが動く音が、部屋に響く。

 

 

微かに揺れる部屋。

 

 

 

 

 

その時、扉が開いた。

 

 

 

光太郎「あ、開いた…?」 

 

ニホ「うーん、やっと出れたー!!」

 

光太郎「ラッキー、どうやって開けたの…?」

 

ボス「コノ辺リノ ラッキービースト 二、扉ノ修理ヲ依頼シタンダ。」

 

サイガ「早く出るのなー!」

 

ルペラ「さぁ、ウサギコウモリ様のお仲間を探しましょう?」

 

ウサギコウモリ「ルペラしゃん…ありがとうでしゅ!」

 

 

 

-地下バイパス-

 

 

どうやら本来、地下シェルターには、このバイパスから入るべきだったらしい。

 

ウサギコウモリ「ちょっと涼しくて、快適でしゅ!」

 

 

光太郎「さてと…無事に出られた事だし、自気パ隊のみんな捜そうか!」

 

 

先ずは、この辺りを探すか…

 

 

ルペラ「ありがとうございます、ボス。」

 

普段は何も反応しないラッキービースト。

だが、今は尻尾を振っている。喜んでいるのだろうか。



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Ep.14「自気パ隊テング&カグヤ! メンバー捜すは隊の使命!!」

シェルターの中よりは明るい地下バイパス、先ずはバイパス内を探すべきか。

 

 

光太郎「…ラッキー、確か周辺にもラッキービーストはいるんだよね?」

 

ボス「イルヨ、今動ケルノハ5機ダヨ。」

 

光太郎「フレンズを探して欲しいんだけど…」

 

ボス「イイヨ、ドンナ フレンズ カナ?」

 

 

しまった、誰を探してるのかを聞いていなかった…

 

 

光太郎「えーと…ウサギコウモリさん、誰を探してるの?」

 

ウサギコウモリ「テングコウモリと、カグヤコウモリでしゅ。」

 

光太郎「…了解。テングコウモリとカグヤコウモリを探してるんだけど…」

 

ボス「分カッタ、見ツカリ次第報告スルネ。」

 

光太郎「ありがとう、ラッキー。 それじゃ、俺らも探そうか。」

 

 

 

-サンカイエリア ??-

 

 

サンカイエリアのどこか、この涼しさ、暗さ…恐らく地下なのだろう。

 

薄暗い地下道の中に、二つの人影があった。

 

 

テングコウモリ「うー………疲れたぁ。けど、ウサギコウモリ探さなきゃ…………でもなぁ…」

 

カグヤコウモリ「テングコウモリさん、がんばってくださ〜い。」

 

壁に寄り掛かりながら、ウサギコウモリはテングコウモリにエールを送っていた。

 

テングコウモリ「……………あなたも探すの。」

 

カグヤコウモリ「あら、そうでしたそうでしたー。」

 

 

 

?「そこに誰か居るんですかー?」

 

通路の奥から声が聞こえる。

 

 

カグヤコウモリ「誰も居ませんよー。」

 

テングコウモリ「……私達の事じゃない?」

 

 

?「やっぱり居ましたか…」

 

テングコウモリ「まぁ………一応居ますね、はい。」

 

?「この辺りでは見ない顔ですが…どうかなさいましたか?」

 

カグヤコウモリ「えーっとですね………何でしたっけ?」

 

テングコウモリ「私達は……フレンズを探してるの。」

 

?「そうでしたか。なら、私にもお手伝いできるかもしれません!」

 

カグヤコウモリ「本当ですか? 是非お願いしたいですー」

 

?「分かりました! それで、どの様なフレンズですか?」

 

 

 

 

-再び、シェルター周辺-

 

 

ニホ「…そういえば、2人の匂いが付いた物って持ってる?」

 

ウサギコウモリ「そうでしゅね…あ、2人の匂いとはちょっと違うかもでしゅけど……コレ! このジャパリまんと同じもの、2人も持ってるでしゅ!」

 

ニホ「うんうん…頑張ってみるよ!」

 

光太郎「…匂いで辿るの?」

 

ニホ「大正解! もしこの中に居るなら、あんまり匂いも飛ばないでしょ? なら、探しやすいと思って。」

 

ルペラ「成る程…確かに外に比べると、風の影響も少ない…考えましたね。」

 

ニホ「えへへっ…それじゃ、頑張って探すぞーっ!!」

 

サイガ「探すのなー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ニホ「ん? 早速匂いがするよ…」

 

 

 

…殆ど動いていないのに匂いがする…となると、相手側から近づいてきているのか?

 

 

 

「こっちの方行ってみましょう!」

 

「んー…どっちですか?」

 

「…………向こう、あのちょっと明るい方だよ…多分。」

 

 

 

 

ウサギコウモリ「この声…もしかして…!」

 

 

テングコウモリ「…………あ、居た。」

 

カグヤコウモリ「あー…そうでした、ウサギコウモリさんを探していたんでした。」

 

 

?「あれ? 見つけました?」

 

 

サイガ「おーい! オグロスナギツネー!」

 

オグロスナギツネ「ん? サイガちゃん! 久し振りだね!」

 

サイガ「元気そうだなー!」

 

 

 

 

ウサギコウモリ「もう…どこいってたんでしゅか!?」

 

テングコウモリ「…サンカイエリア?」

 

ウサギコウモリ「…正解でしゅ、満点な回答で私もびっくりしてるでしゅ。 まぁ、合流できて良かったでしゅ。 オグロスナギツネしゃん…でしゅか? 2人を案内してくれてありがとうでしゅ!」

 

オグロスナギツネ「いいんです、困った時はお互い様ですから!」

 

 

 

光太郎「お互い様…か。 そういう事を言える…いい時代になったものだ…」

 

ルペラ「光太郎様…?」

 

光太郎「…改めてさ、困った時に支え合えるのって良い事だな…って。俺がまだパークの職員だった頃の世界は…もっと殺伐としてた。 だから、みんなの優しさが溢れるこの時代。それが凄く良いものに思えたんだよ。」

 

ニホ「……そっか。」

 

 

 

-地上-

 

 

サイガ「もう行くのな…?」

 

光太郎「うん、取り敢えずパークを一周したいからね。」

 

オグロスナギツネ「もしサンカイエリアにまた来たら、私に案内させてください! 色んなお話が聞きたいんです。」

 

ニホ「いいよ! 今度、いっぱいお話しよ!」

 

ウサギコウモリ「ルペラしゃん、真っ先に仲間を探そうとしてくれて…ありがとうでしゅ!」

 

ルペラ「仲間は…大切ですからね。 また何処かで会いましょう。」

 

 

 

 

 

光太郎達はバスに乗り、次の目的地であるナカベエリアへ向かった。

何が起こるとも知らずに…



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Ep.15「理性と本能の間に…」

-ナカベエリア-

 

 

ナカベエリアでは、サンカイエリアとは打って変わって雨が降っていた。

しかし、幸いにも小雨程度で旅の支障にはならない程度だった。

 

光太郎「涼しい…ちょうどいい気温で良かったよ。」

 

ニホ「雨、久し振りに見た気がするよ…」

 

ルペラ「この所、ずっと晴れた場所にいましたからね。」

 

 

 

光太郎「…あ、太平風土記のページ探してなかった…」

 

ニホ「そういえば…」

 

そうだ…すっかり忘れていた。仕方ない…帰りに改めて探すか…

 

 

ルペラ「…光太郎様、あれは…?」

 

ルペラの視線の先には、辺り一面に撒き散らされた黄色い液体があった。

 

光太郎「何…あれ?」

 

ルペラ「調べてみましょうか?」

 

ニホ「…やめた方が良いと思う……何か…イヤな臭いがする…」

 

 

 

光太郎「何か、さっきよりも暗くない?」

 

ルペラ「えぇ…雨の様子は、先ほどと余り変わらない様ですが…」

 

ニホ「まさか……上!?」

 

 

バスの上には、真っ赤な触手をうねらせた何かが居た。

 

触手をゆっくりと降ろし、バスを包もうとしている様だ。

 

ルペラ「…逃げましょう!」

 

光太郎達は、ラッキービーストを連れてバスから降りた。

 

せめて、そのままバスに釘付けになってくれる事を願っていたが、世の中そんなに上手く行く事も無く、その触手は光太郎達の方へ伸びていた。

 

 

ある程度離れたからこそ分かる。この触手の持ち主は、巨大なクラゲの様な姿をしていた。触手以外は半透明な乳白色をしていた。

 

 

ニホ「なにあれ! ずっと追いかけてくるよ!」

 

光太郎「随分としつこいセルリアンだな……林で撒こう!」

 

 

幸いにも、近くに鬱蒼とした森があり、そこで何とかやり過ごそうと…

 

しかし、セルリアンの動きは予想以上に速く、瞬く間に道を塞いだ。

 

 

光太郎「まずいな…ルペラ、ニホニホ! ラッキーを連れて先に逃げて!」

 

ニホ「けど、それじゃ光太郎が…!」

 

光太郎「みんなが逃げ切って、誰か助けを呼んで! そうすれば…」

 

 

尚も迫る触手、その触手は、ルペラの背後まで来ていた。

 

 

光太郎「ルペラ、危ないっ!」

 

 

ルペラの背中を押し、ルペラを少しでも触手から遠ざけようとした。

 

願い通り、触手から遠ざける事はできた気はする…が、余りにも咄嗟の判断で、自分の事まで気にする事は出来ていなかったようだ。

 

触手は、すぐさま狙いをルペラから光太郎へ移した。 光太郎の胴へ巻きつき、黄色い液体の滴るセルリアンの本体へと近づける。

 

光太郎「やめっ…! 離っ…ちょっ……苦し…」

 

ニホ「光太郎!!」

 

ニホンオオカミが飛びかかり、光太郎に巻き付いた触手を斬り裂こうとする。

 

しかし、セルリアンも食事の邪魔はされたくないらしく、他の触手でニホンオオカミを弾き飛ばした。

 

それでも体勢を立て直そうとするが、弾かれた勢いを殺しきれぬまま木にぶつかってしまった。

 

 

 

光太郎を助けるべく、触手による攻撃を回避しながら光太郎の元へ飛ぶルペラ。

 

その間にも、少しずつ光太郎は飲み込まれていく。

 

ルペラがセルリアンの本体に辿り着いた頃には、片腕を除いた全てが飲み込まれていた。

 

必死に腕を伸ばし、光太郎の手を掴もうとする。 苦しそうに力み、もがいている光太郎の手を。 光太郎を助ける為に。

 

 

 

 

 

 

 

光太郎の手が、力無くうなだれた。

 

それでもなお光太郎の手を掴もうとするルペラを、セルリアンは触手で突き飛ばした。

 

 

 

ルペラの目に、哀しみや後悔の涙が滲む。

 

その涙に共鳴するかのように、雨も強くなってゆく。

 

 

ルペラ「…………貴様だけは……絶対に…」

 

 

雨音にかき消されそうな程小さく、それでいて怒りに震えるその声は、次第に大きく、激しい咆哮へと変わっていった。

 

ルペラの身体を、赤黒い輝きのような物が包み込んだ。

 

 

ニホ「ルペ…ラ……?」

 

 

輝きが止むと、その中には変わらずルペラが居た。だが、脚はブーツを突き破り、鋭利な爪の生えた、まさしく猛禽類の脚に。服の一部も羽毛状に変わり、頭部の翼は更に大きく広げられていた。

 

 

セルリアンは、身の危険を感じたのか触手で先手を打とうとするも、回し蹴りで防がれ、それを引き裂かれた。

 

一歩一歩、着実にセルリアンとの距離を詰めるルペラ。

 

セルリアンは、何本もの触手を纏めてルペラを叩き殺そうとした。

 

 

しかし、それが愚策だった。

 

 

ルペラは触手を掴み、セルリアンを手繰り寄せた。

逃げようと必死にもがくセルリアン。

 

 

ニホ「ルペラ! その戦い方は危ないよ! 私も手伝っ…うぅ……」

 

どうやら右脚を痛めたらしい。右脚を引きずりながらルペラの元へ向かおうとするも、足元が泥濘にはまって思うようには動けない。

 

その間にも戦いは続き、辺りには引き千切られたと思われる触手が散らばり、その中央には、脚でセルリアンを押さえつけているルペラの姿があった。

それなりにセルリアンも抵抗はしたのか、ルペラの服や顔に、血が滲んでいた。

 

 

 

セルリアンの本体を、啄むようにして削る。その傷口からは黄色い液体が噴き出し、返り血のようにルペラの身体を染めていく。

 

 

一度、強くセルリアンを踏み付けると、ルペラは高く飛び上がった。

 

その時、ルペラの口が何か言葉を発したような動きをしたが、そのたった一言を、ニホンオオカミは何を言ったか理解できなかった…否、理解しなかった。したくなかった。

 

 

セルリアンは消耗が激しかったらしく、ただその場でもがく事しか出来なかった。

 

 

セルリアンに向かって急降下するルペラ。その勢いのままセルリアンを踏み付けた。

 

脚が、どんどんセルリアンの身体にめり込んでいく。

 

 

セルリアンの身体は、この衝撃に耐えられずに砕け散った。

 

 

尚も何かを踏み付け、叫び続けるルペラ。

 

 

ニホ「…ルペラ!! お願いだから元に戻って!!」

 

 

やっと、ニホンオオカミの思いが通じたのか、動きを止めるルペラ。

 

各部が再び赤黒い輝きに包まれ、所々ブーツや服が破れてはいるが、いつもと同じ姿に戻った。

 

 

ルペラ「…………私は…何を…」

 

ルペラは、脚先に生温かさを感じた。

 

ルペラが踏み付けていたソレは、さっきまで自分が助けたいと想い続けていたものだった。

 

脚先や服が、ソレから流れる赤いものによって染められていく。

 

ソレは雨によって温もりを奪われ、四肢の先はかなり冷たくなっていた。

 

 

ルペラ「…光太郎…様……? 私が…?」

 

ニホ「…………ルペラ、どうして…?」

 

その言葉、かすかに残った戦いの記憶、そして返り血を浴びた自身の身体…

これらの事から、ソレを傷付けたのは自身だと気付いた。

 

動揺し錯乱するルペラを、何とか宥めようとするニホンオオカミ。

 

だが、今のルペラには何も響かない。ただ、目の前にある大切な人だったものの事と、それを傷付けた自身への形容し難い感情しか頭にない。

 

 

 

ルペラはニホンオオカミの制止を振り切って飛び去り、森の中へ姿を眩ませた。

 

 

ニホンオオカミは、光太郎に寄り添い、ただ助けを呼ぶ事しか出来なかった。



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Ep.16「忘れられないもの」

ニホ「誰か! 誰か助けて!! このままじゃ…」

 

雨が強くなり、どんどん二人の体温を奪っていく。

 

ニホ「やっぱり、私が何とかするしか…」

 

 

 

?「随分と酷い傷ですね。直ぐに私の屋敷に連れてきて下さい。 そこでなら、ある程度の処置が出来ます。」

 

ニホ「え…いいの?」

 

ニホンオオカミの視線の先には、翼を持った黒いフレンズが立っていた。

 

 

-同時刻、森林内-

 

 

止まない雨の中、血に塗れながら、木に力無く寄りかかり座り込むルペラの姿があった。

 

膝を抱え、嗚咽していた。

 

ルペラ「……こんな事になるなら…始めから光太郎様に会わなければ……あの時、黙ってセルリアンに食べられていたら……」

 

その時、自身をかつてのアルバニーアダーと重ねていた、ただ、自嘲するしかなかった。

 

ルペラ「……もう、いっそのこと…ここで…」

 

 

 

?「その(ほう)、相当思い詰めているようだな。」

 

 

-屋敷-

 

 

ニホンオオカミの居た場所からバスで約15分。

ラッキービーストがいち早く救急箱を持って来たお陰で、バス内で応急処置をする事が出来た。

 

 

 

 

光太郎「んぅ……ん…っ……」

 

ニホ「光太郎!? ねぇ! 光太郎が起きたよ!!」

 

?「そうですか。あぁ、あまり急に起き上がっては…」

 

光太郎「どこっ……痛っ……」

 

?「起き上がってはいけませんよ。 と、言おうとしたんですがね…」

 

光太郎「すみません……えと…あなたは?」

 

?「私はハシブトガラスでございます。」

 

光太郎「ハシブトガラスさん…ですか? この傷を治してくれたの…」

 

ハシブト「私というよりは、ラッキービーストとコアラが主に治療していました。」

 

コアラ「あ、どうもー、私がコアラですー。」

 

光太郎「あの…ありがとうございます。 …ニホニホ、ルペラはどこ?」

 

場の空気が凍りつく。

 

ニホ「それは……あの…」

 

ハシブト「…セルリアンに襲われた貴方を助けようとしたあまり、逆に貴方を傷付けてしまい、自身を追い詰めて…」

 

光太郎「そんな……早く見つけないと。雨も降ってる…きっと寒いよ…風邪引いちゃうよ… 俺、行ってくる。」

 

ニホ「ダメだよ! そんな体じゃ…」

 

光太郎「けど、ルペラを早く見つけないと…後悔したくないんだよ、今、動かなきゃ…失ってからじゃ遅いんだよ…」

 

ニホ「それはそうだけど……私だって…!」

 

ハシブト「お二人とも、落ち着いてください。 今の彼女は、一人ではありません。 あのお方が側にいます。」

 

ニホ「あのお方…?」

 

 

-森林内-

 

 

ルペラの前に立つそのフレンズは、ハシブトガラスの様な姿をしていた。だが、その瞳は紅く、スカートからは3本目の脚が生えていた。

 

?「何故、そこまで自身を責めるのか。余に聞かせてはくれぬか?」

 

そのフレンズはルペラへ近づき、頭の翼でルペラの頭上を覆った。

 

ルペラ「……私は、大切な…本当に大切な人を、この手で傷つけてしまいました… 始めは、ただ助けたい一心でした。しかし……私は、力に溺れました。」

 

ルペラは、拳を握りしめた。ただ、自分に対してしかぶつける事の出来ない怒りを込めて。

 

?「…何故、力に溺れたと考えている?」

 

ルペラ「…分かりません…」

 

?「………始めは、大切な者への思いだったものが、いつしか怒りや怨み、憎しみに変わった…とでも言ったところか?」

 

ルペラ「おそらく……」

 

?「…しかし、どうしてそこまで負の感情が湧き出た?」

 

ルペラ「二度と…あの人を失いたく無かったんです……目の前で奪われたくなかった……それなのに…」

 

?「………その方は、これからどうしたいんだ?」

 

ルペラ「……このまま、ここで消えたいです。」

 

?「…大切な者の元へ帰りたいとは思わぬのか?」

 

ルペラ「…私には……光太郎様の元へ帰る資格はありませんよ…」

 

?「光太郎といったか…その者が、その方の大切な者なのだな。」

 

ルペラ「えぇ、光太郎様は本当に優しくて、時々おかしな事を言いだしますが…ニホンオオカミさんも…」

 

?「…その方、とても楽しそうだな。」

 

ルペラ「えぇ、毎日が楽しかったんですよ。色んな所を冒険して、危ない目に遭いつつも、たくさんの出会いがあって…」

 

?「それでも、その者達の元へ帰らぬ理由は?」

 

ルペラ「…もし、もう一度力に溺れてしまって、ニホンオオカミさんや光太郎様を傷付けるような事があったらと思うと…怖くて……」

 

?「そうか…では、その力の意味…与えられた理由を考えてみてはどうだろう。」

 

ルペラ「…あなたは、私の力の意味を知っているのですか?」

 

?「いや、結論から言うと余にも分からん。考える事で力と向き合う事ができるのではないかと思ってな。 それは、直ぐに出来る事ではないだろう。 だが、真摯に向き合う事ができれば、その方はきっと、大きな成長を遂げる。」

 

ルペラ「力と向き合う……」

 

そのフレンズは、ルペラの首に掛けられた御守りに触れた。

 

すると、その御守りは赤く光り始め、そこから段々と青い光へと変わっていった。

 

ルペラ「…これは?」

 

?「一種のおまじないと考えてよい。……余は、その方の未来が、明るいものであると信じているぞ。」

 

そのフレンズは、その場から立ち去ろうとしていた。

 

ルペラ「あ、あの! お名前は…?」

 

?「余の名はヤタガラス。 かつて人間は、余の事を太陽の化身とも呼んでいた。」

 

ルペラ「ヤタガラス様…ありがとうございました。 私、もう少し考えてみます…」

 

ヤタガラス「そうか……では、さらばだ。」

 

 

眩しい光に包まれ、ヤタガラスは消えてしまった。

 

 

 

いつの間にか、雨が止んでいた。



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Ep.17「瞳の輝き」

さっきまでの雨がウソの様な天気、晴れ。

 

雨上がりの空から射す日の光に照らされる中、ルペラは立ち上がり、涙を拭った。

 

ルペラ「……このままでは…いけませんよね。」

 

ルペラは歩き始めた。光太郎やニホンオオカミの元へ向かうか、そのまま流離いの旅をするのか。とにかく、何かしらの行動を起こしたかった。

 

周囲は木々が多く、風が吹くと枝や葉の揺れる音がするが、場所によっては川のせせらぎが聞こえる。

 

今、ルペラのいる場所では東の方から聞こえる。

 

 

 

?「う〜うぅ〜!

 

 

何か聞こえた。せせらぎと同じく東の方からだ。

 

 

?「う〜う〜…うぅ…誰か……誰かぁ!!」

 

 

今度ははっきり聴こえた。悲鳴だ。

 

 

 

-小川の辺-

 

 

そこには、黒い円盤の様なセルリアンににじり寄られる、両生類系のフレンズが居た。腰が抜けているのか、動こうにも動けなくなっていた。

 

恐怖に顔を歪め、涙を流している。

 

 

セルリアンの体から鋏のような器官が生え、フレンズの首筋に迫る。

 

?「誰か……あぅ……あ…」

 

 

迫るセルリアンの恐怖から死を覚悟したのか、強く目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

…いつまで経っても、その瞬間は訪れない。

 

ただ一度だけ、何かが砕ける音がした。

 

 

恐る恐る目を開けると、さっきまで自分を殺めようとしていたセルリアンが、翼を持ったフレンズの貫手で貫かれていた。

 

 

 

?「……ぇ…???」

 

 

 

セルリアンの体は次第に崩れ、セルリアンを倒したフレンズは深く息を吐いた。

 

 

 

ルペラ「…お怪我はありませんか?」

 

?「あぅ……ひゃぃ……」

 

ルペラ「立てますか?」

 

ルペラは少し屈んで、その両生類のフレンズの手を取った。

 

?「あ……ありがとうございまちゅ……」

 

ルペラ「…それでは、私はこれで……」

 

?「あ、お姉ちゃん…血が出てるでちゅよ!」

 

ルペラ「血…これなら大丈夫で……えっ、お姉ちゃっ…!?」

 

?「それに…ちょっと元気ない感じでちゅ…サイレンを助けてくれたお礼をしたいでちゅ!」

 

自らのことをサイレンと呼ぶフレンズは、ルペラの手を引いて駆け出した。

 

 

 

-小川-

 

 

ルペラ「…ここは?」

 

?「サイレンのお気に入りの場所でちゅよ。お水がとっても綺麗で、水草もいっぱいで…」

 

ルペラ「確かに…景色も良いですし……とても素敵な場所ですね。…そういえば、自己紹介がまだでしたね。 グアダルーペカラカラのルペラです。」

 

?「あっ! ドワーフサイレンでちゅ!」

 

ルペラ「宜しくお願いします、ドワーフサイレン様。」

 

サイレン「…様!? ついに…サイレンを大人として見てくれるフレンズと逢えたでちゅ…」

 

ルペラ(…私の事をお姉さんと呼んだフレンズも、あなたが初ですよ…)

 

サイレン「…あっ、血を拭いておいた方が良いでちゅね。」

 

ドワーフサイレンは川の水で手を濡らし、ルペラの顔に付いた血を指で拭った。なお、爪先立ちに加え腕を目一杯伸ばして、やっと届いた模様。

 

サイレン「んーっ! あっ…! 伸びちゃった…」

 

指で拭おうとするも、水気を取り戻した血が指の動きに沿ってうっすらと伸びていた。

 

サイレン「ご、ごめんなしゃい…!」

 

ルペラ「……ふっ…ふふっ…」

 

サイレン「ど、どうしたんでちゅか?」

 

ルペラ「すみません、忙しない様子が何だか……私の家族みたいで…」

 

サイレン「家族……」

 

 

-屋敷-

 

 

ハシブト「…成る程、みなさん、とても仲が良かったんですね…」

 

ニホ「そうなの! だから…心配なの……」

 

光太郎「ルペラ……」

 

コアラ「…泣かないでくださいー…ほら、パップ食べてくださいー…」

 

光太郎「…ありがとうございます、コアラさん……ん? パップ…?」

 

 

 

 

?「ハシブトガラスちゃぁん! 大変なのぉ!」

 

屋敷の扉から、一人のフレンズが飛び込んできた。

 

ハシブト「あら、オオサンショウウオさん。どうかしたのですか?」

 

ショウ「ドワーフサイレンちゃんが、何処にも見当たらないの…」

 

ハシブト「そうでしたか…取り敢えず落ち着いてください。まずはいつ頃から…」

 

 

外から岩が砕ける様な音が聞こえた。

 

 

ハシブト「一体何が!?」

 

ハシブトガラスが慌てて外へ出ると、粉々に砕け散った岩、そして空にはクラゲの様な見た目をしたセルリアンがいた。

 

ニホンオオカミが、ハシブトガラスの後を追って外に出たが、その表情からは恐怖が強く感じ取れた。

 

ニホ「どうして……なんでこのセルリアンが居るの…? ルペラが倒したはずなのに!!」

 

 

セルリアンの本体から滴る液体が、岩の破片に垂れた。すると、白い煙を上げながらみるみる内に岩が溶けていった。

 

 

ボス「注意!注意! アノ液体カラ、ペプシン等ノ成分ガ検出!」

 

 

ハシブト「ぺぷし…? と、取り敢えず危険なんですね…」

 

ハシブトガラスとニホンオオカミは、光太郎達の居る屋敷を背に、セルリアンと対峙した。

 

セルリアンの触手の内の二本が、形を変えて鋏状になった。

 

ニホ「…どうするの? このままじゃ光太郎達があぶないよ…」

 

ハシブト「そうですね…私は空から攻めます。ニホンオオカミさんは触手と液体に注意しつつ、セルリアンを攻撃してください。そのまま屋敷から少しでも引き離しましょう。」

 

ニホ「…………わかった!」

 

 

 

セルリアンの誘導作戦が始まった。

始めは、狙い通り屋敷から離れた場所へ少しずつだが移動させる事が出来た。

しかし、その作戦内容に気づいたのか気まぐれか、セルリアンは再び屋敷の方へ向かった。

 

 

ニホ「なんでぇ! 折角ここまでやったのにぃ!!」

 

ハシブト「…まずいです、あの速さでは直ぐに屋敷に着いてしまいます!」

 

ニホ「それだけは絶対ダメッ! もぉぉ! 止まれェェセルリアンァァァァッ!!!」

 

 

セルリアンは止まる訳も無く、屋敷に向かって触手を伸ばしていた。

 

 

その触手が屋敷に辿り着く瞬間、触手が千切れ、宙を舞っていた。

 

 

 

「…嫌な気配がしたと思えば、またアナタですか……」

 

 

一人のフレンズが、セルリアンの目の前に立っていた。

 

 

ニホ「……あれって…」

 

 

そのフレンズは、ニホンオオカミの良く知る相手だった。

 

 

「…光太郎様には、絶対に触れさせませんよ…」

 

 

 

ニホ「…ルペラ!!」

 

 

 

ルペラ「…ニホンオオカミさん……お久し振りですね。数時間振りですけど…」

 

ニホ「ルペラ! 怪我は大丈夫なの? 風邪引いてない!?」

 

ルペラ「えぇ、私は何とか。 それよりも、今はこのセルリアンを…!」

 

ニホ「そうだよね…ルペラ、また一緒に戦えて嬉しいよ!」

 

ルペラ「……今、この瞬間の喜びを噛み締めましょう?」

 

 

 

 

 

 

ハシブト「私も居るんですが…」

 

ニホ「あっ…ごめん……」

 

ハシブト「あ、いえ……あっ、来ますよ…!」

 

 

岩を砕き、木をなぎ倒し、三人のフレンズに迫るセルリアン。

 

 

ルペラ「…今の私に、後退はありません…あるのはただ、制圧前進のみ…!」

 

ニホ「今度こそ守りきろう、今のルペラなら…きっと大丈夫だから!」

 

ハシブト「セルリアン…これ以上は誰も傷つけさせませんよ!」

 

 

 

野生解放。今この場で決着をつけるべく、全身に力を込めた。

 

ルペラの胸元の御守りが、青く輝く。

 

 

ルペラとハシブトガラスは触手を躱しつつ、その触手に向かって羽を撃っていた。

 

触手を使ってフレンズ達に対抗していたセルリアンだったが、次第に動きが鈍っていく。

 

セルリアンの触手は、ルペラ達の放った羽によって地面へ打ち付けられていた。

 

 

あと少しで、トドメをさせる。そう思っていた。しかし、さっきまで青く輝いていた御守りが、赤く点滅し始めた。

 

ニホ「ルペラ、大丈夫!? 何かピコピコなってるよ!?」

 

ルペラ「…そろそろ、決着をつけないとなりませんね……」

 

ルペラの身体から、輝きがより一層強く放たれた。

 

ハシブト「あまり無茶はしないでくださいね…」

 

 

 

ニホンオオカミが先陣を切った。

 

一気にセルリアンとの間合いを詰め、渾身の力で腕を振り上げた。

セルリアンの体を抉り、その勢いのままセルリアンの石を空高く弾き出した。

 

それを追うかの様に、セルリアンの体からは触手が生え、石を取り戻そうとしている。

 

 

ハシブト「させませんよぉ…! 行きましょう、ルペラさん!」

 

ルペラ「えぇ、これで終わらせましょう!」

 

 

ハシブトガラスとルペラは石に向かって飛び立ち、同時に石を蹴り上げた。

 

 

その瞬間、セルリアンの触手がしなやかさを失い、そのまま砕けていった。

 

 

 

 

 

-屋敷-

 

 

戦いを終えた三人が帰ると、そこにはソワソワしているドワーフサイレンと側で疑問符を浮かべるオオサンショウウオ、そして半ベソの光太郎とそれを宥めるコアラが待っていた。

 

 

光太郎「ぁぅ……る…るぺら…? るぺ…」

 

ふらつきながらもルペラに駆け寄り、倒れ込むかの様にルペラに抱き付いた。

感極まったのか、それ以降何を言っていたのかはさっぱりだった。

 

ルペラ「光太郎様……ごめんなさい…私…」

 

光太郎「……………俺ぁ大丈夫だから…またさ、一緒に旅しよ…」

 

ニホ「そうだよ! ルペラが居なくなったら寂しいよ…」

 

 

ルペラ「…こんな私でも…受け入れてくれるのですか…?」

 

光太郎「受け入れるも何も…初めて逢ったあの日から、ルペラを見捨てるつもりは無い。これからも……」

 

 

ルペラは、力強く光太郎を抱きしめ返した。必死に涙を堪えているのか、震えていた。微かに「ありがとう」、そう言った気がした。

 

 

 

 

 

 

-屋敷外、バス付近-

 

 

サイレン「…あ、あの…お姉ちゃん! これ…あげるでちゅ!」

 

ドワーフサイレンはルペラに、小さな赤い石を渡した。

 

ルペラ「綺麗……本当に良いのですか?」

 

サイレン「その石、なんだかあったかくて…きっとすごい力を持ってるでちゅ! だから、お姉ちゃんのことも守ってくれるでちゅよ! お礼でちゅ!」

 

ルペラ「…ありがとうございます、大切にしますね。」

 

 

ハシブト「もう行ってしまうのですね…」

 

光太郎「はい、まだ行きたい場所があるんです。」

 

コアラ「あ、そうでしたー…カントーエリアは最近、セルリアンが大量発生してるそうでー、立ち入らない方が良いらしいですよー」

 

ニホ「そうなんだ…教えてくれてありがと!」

 

 

ショウ「そういえば、ドワーフサイレンちゃんは何処にいたのー?」

 

サイレン「サイレンはね、あの川にお散歩に行ってたんでちゅ。そしたら、セルリアンに襲われて…そこをお姉ちゃんに助けて貰ったんでちゅ! それで、お姉ちゃんどっか行っちゃったから捜してたら、ここに…」

 

ショウ「そうだったの…ルペラちゃん、ありがとなのー。」

 

ルペラ「いえ、私も彼女に助けられたので…それでは。」

 

 

 

 

ルペラ達はバスに乗り込み、ナカベエリアを後にした。

 

 

光太郎「また一緒に旅できて嬉しいよ、ルペラお姉ちゃん♡」

 

ルペラ「ッ!!!?」

 

ニホ「ルペラー? 顔、紅くなってるよ?」

 

ルペラ「それはッ…あの……」

 

光太郎「…アッアッ可愛いなぁぁもぉぉぉ!!!」

 

 

 

こんな会話も、思い出になる。

きっと、この日々が支えになる時が来る。




おまけ
〜何か光ったお守り〜

ボス「解説を始めるヨ。

あの御守りが青く光った時、ルペラは野生解放状態になっていたヨ。そこから更二、経過時間に比例してサンドスターの使用量も増加しているヨ。

ある程度の使用量を超えるト、御守りが赤く点滅し始めるヨ。そのまま放っておくと、また暴走してしまうんダ。

そこまでの時間はおよそ2分40秒、多く見積もっても3分だヨ。

…けれド、今のルペラなら暴走の心配は無いかもしれないネ。」


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Ep.18「小さな願い」

本来ならカントーエリアに寄って、パークセントラルで色々と調べるつもりだったが、セルリアンが大量に湧いているのなら仕方がない…

 

俺達は、ホートクエリアへ向かった。

 

 

道中、ハシブトガラスから貰った太平風土記の1ページを読んでみた。

 

…あのセルリアンの事を、"銀の華"と書いていた…

 

 

 

-ホートクエリア-

 

 

今日の天気…特に風が穏やかで、ふらつくにはとても良い気候だった。

 

ただ一つ、足元にさえ気を付ければの話だが…

 

ニホ「んーっ! 風が気持ち良いね!」

 

ルペラ「分かります…この風を直に感じられるので、私は空が大好きなんです……ニホンオオカミさん、今度スカイダイビングに挑戦してみませんか?」

 

ニホ「えっ、良いの!? やりたい!」

 

ルペラ「是非。イヌワシ様も喜んで下さりますよ。(ゴマバラワシ様は…別の方向性で喜んで下さりそうですけど…)」

 

光太郎「いいなぁ…俺も一緒にやりたいなぁ…」

 

ルペラ「光太郎様もですか? 喜んで。その時は、ぜひ私と…」

 

 

 

…バスが停まった。

 

光太郎「ん、ラッキー?」

 

ボス「デ、デンパ…ショ…ア…ガッ…」

 

ニホ「…ボス?」

 

ボス「…ヤプー……スト…チョウジュウ…ナズ……アワワワワ…」

 

…しまった、ラッキーが壊れた…?

定期的にメンテナンスしないとダメか…俺、機械は苦手なんだけどなァ…

 

?「んー? 何か困ってるぅ?」

 

光太郎「そう、ラッキーがこんな調子で……って、んんっ!?」

 

バスの窓から、こちらを覗き込んでいるフレンズが一人…

 

余りにもさりげなく話しかけてきたものだから、つい普通に返事をしてしまったが…誰?

 

?「えへぇ、そんなに警戒しないでも大丈夫だよぉ。」

 

ルペラ「その声は…もしかしてドードーさんですか?」

 

ドードー「そうだよー。んー…あっ、ルペラちゃん? この間のスカイレース、凄かったねぇ!」

 

ルペラ「ありがとうございます。確かあの時は、リョコウバトさんと一緒でしたね。」

 

ドードー「そうそう、リョコウバトちゃんと一緒に行った甲斐があったよぉ。それで、その二人が光太郎ちゃんとニホンオオカミちゃん?」

 

ニホ「宜しくね! そっか、ドードーちゃんはルペラと知り合いだったんだね。」

 

ドードー「そうなのぉ、でもまさかココで会えるなんて思わなかったよぉ。 けど、随分と遠くから来たねぇ?」

 

光太郎「はい、探し物をしていて…」

 

 

久し振りに太平風土記探しに専念できる…

何せここ最近は閉じ込められたり死にかけたり…散々な目に遭っていた。

 

…今回は今回で、ラッキーが不調だが…

 

それと、ドードーさんは最近、変なセルリアンに襲われたらしい。特に体調に異変は無いらしいが…

 

 

ドードー「その蔵?なら、この山を下った所にあったと思うよぉ。」

 

光太郎「本当ですか!? けど…」

 

少しでも足を滑らせたら真っ逆さまよ…

ルペラなら飛べるから良いけど…

 

光太郎「……ちょっと下見してくる。」

 

ニホ「大丈夫?」

 

光太郎「大丈夫大丈夫、こんなんでも昔は虫捕りとかよく行ったかr」

 

…最初に言っておく、フラグを立てると大抵の場合、酷い目にあう。

 

 

俺の脚が、何者かに引っ張られた気がした。

 

足元は崖…まぁ、つまりアレだよ。俺、真っ逆さまよ。

 

真っ直ぐ下に落ちるかと思ったけど、どちらかというと急な坂を転がる感じ。

それはそれで痛いけどさ。

 

 

ニホ「光太郎ぉぉぉ!!?!?」

 

ルペラ「様子を見てきます!」

 

 

 

-崖下-

 

 

…あっ、俺まだ生きてる。

フレンズの身体ってスゲー…

 

 

 

…あ、上から誰か降りてくる…飛んでるし…

 

…もしかして天使? お迎え来ちゃった?

 

 

ルペラ「光太郎様ァ!?」

 

 

光太郎「…天使だ……」

 

 

えっ何この天使、頬赤らめてる…めっちゃカワイイ…

 

 

ルペラ「な、何を言っているのですか……それよりも、お怪我はありませんか?」

 

光太郎「うん、無い。……けどね、全身ボッコボコに殴られた気分。」

 

ルペラ「…立てますか?」

 

光太郎「…むり、応援して…?」

 

ルペラ「えぇ… が、がんばれ、がんばれ…?」

 

光太郎「うん、がんばる…」

 

立った。俺、立ったよ。

 

 

 

ニホ「こーたろー! 大丈夫ー!?」

 

ニホンオオカミが崖の上から顔を覗かせている。

 

俺は手を振って応えた。

 

 

ルペラ「光太郎様、もしかして…」

 

ルペラが指差す先には、蔵…の様なモノがあった。

 

光太郎「早速行ってみよ!」

 

ルペラ「光太郎様、先に私が様子見をしてきます。」

 

光太郎「うぇー…俺も行きたぁい…」

 

ルペラ「一応、戦える人が先に見ておかないと…」

 

光太郎「そっか…なら仕方無いね…ん?」

 

 

ルペラが蔵に向かって歩いて行った。

 

 

 

…蔵の上部から、アンテナの様な物が生えた。 その辺りの機器はまだ生きてるのか…? 

 

アンテナの先から、青白い光線がルペラに向かって放たれた。

 

…は?

 

光太郎「ルペラ!?」

 

何アレ、絶対蔵じゃないじゃん!

むしろセルリアンだよアレ!

 

ルペラの元へ駆け寄ってみた。

 

光太郎「ルペラ…!」

 

 

ルペラ「こうたろう…さま…?」

 

ルペラは無事らしい…

 

…らしいんだけどさ…

 

 

 

光太郎「ルペラ、身体縮んだ?」

 

 

 

 

何か幼くなってた。




オマケ

Ep.--「トラック アンド トリートメント」


〜キョウシュウエリア、森林〜


オオコウモリ「ジャックちゃぁん!」

ジャック「…なんだ、騒がしいな…」

オオコウモリ「トリックオアトリートォォ! お菓子ちょーだい!!」

ジャック「…カツアゲか?」

リンカルス「ジャック、これはハロウィンと言ってな。その起源は…」

ジャック「待て、長くなるか?」

リンカルス「…そこそこ。」

オオコウモリ「ジャックちゃんジャックちゃん! お友達連れてきたよ!」

リンカルス「続き、話していいか?」

オオコウモリ「この子なんだけど、きっとイエイヌのフレンズだよ!」

リンカルス「話を…」

オオコウモリ「それでは紹介します! イエイヌのフレンズです!」

?「ボク、イエイヌじゃないけど?」

オオコウモリ「えっ、本当?」

?「本当。ボク、ケルベロスだよ?」

オオコウモリ「けるべろす…?」

ジャック「なっ…まさか、オオコウモリがバカなのも、リンカルスの影が薄いのも、全部お前の見せる幻影の所為…?」

オオコウモリ「そんなバナナ…って誰がヴァカなのさ!?」

ジャック「お前の背後には、溝呂木が居るな…?」





リンカルス・ケルベロス 「「それはガルベロス」」

ジャック「…………」

オオコウモリ「…プッ…ジャックちゃん、その顔なら仮装しないでも充分通用するよ…w」

ジャック「…その口、縫い合わせてやろうか…?」

オオコウモリ「ギャーァッ⁉︎」



ケルベロス「キミたちの友達、とっても賑やかだね。」

リンカルス「あぁ、騒がしいが、なんだかんだで楽しんでいる…」

ケルベロス 「そういえば、ボクの友達にもジャックって呼ばれてる子がいるよ?」

リンカルス「…ジャック・オー・ランタンか?」

ケルベロス「おぉ、詳しいね。」

リンカルス「あぁ、ケルベロスの後ろに隠れてるからな。」

ケルベロス「えっ?」

ジャック・オー・ランタン「キャハーー!!? まさか気付かれてたとは…」

リンカルス「それなりに経験は積んでいるからな。」

ジャック・オー・ランタン「…でも、あの二人は気付いてないみたい…」

リンカルス「…驚かせたみたらどうだ? きっと良い反応だぞ?」

ジャック・オー・ランタン「本当!? じゃあ早速…」







\\\\\ハッピーハロウィン!!/////


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Ep.19「蒼星」

るぺら「こうたろうさま、すみません…」

 

光太郎「いや大丈夫…うん、取り敢えず一旦退こう。」

 

正直、今の状態でセルリアンと戦うのは無理がある。

体勢を立て直す事さえできれば、或いはニホニホ達と合流出来れば…

 

 

ニホ「待ってて、今行くから!!」

 

ドードー「どうやって行くの?」

 

ニホ「それは! えっと…」

 

 

セルリアンが、アンテナから天に向かって光線を放つ。

 

 

光太郎「…へ?」

 

 

放たれた光線は、光太郎達の頭上で破裂、拡散した。

 

その破片は、紫色のカーテンの様なモノを張り巡らせながら落ちて行った。

 

 

ニホ「なにこれ…?」

 

 

崖の下が、紫色のドームで覆われた。

 

 

-ドーム内-

 

 

しまった、何か囲まれた…

 

るぺら「セ、セルリアンは!?」

 

セルリアンの姿が見えない…

 

光太郎「ルペラ、取り敢えずここから離れよう。」

 

ルペラの手を引いて、その場から離れた。

 

…不思議と、不安感や恐怖が湧かなかった。

 

 

-ドーム外-

 

 

ニホ「んぅ…どうしよ…」

 

ドードー「どうしたの?」

 

ニホ「何だろ、何にも思いつかないの…あんまり力も入らないし…」

 

ドードー「そっか…協力してくれそうな子、捜す?」

 

ニホ「うん…そうしよっか。」

 

二人は、とぼとぼと歩き始めた。

 

 

-ドーム内-

 

 

あのセルリアン、何がしたかったんだ…?

 

ルペラが幼女になるし、何か隔離されるし…

 

るぺら「こうたろうさま?」

 

光太郎「ん、どうしたの?」

 

るぺら「…おなか、空きませんか?」

 

…空いた。この訳の分からない安心感の所為で余計に。

 

俺はかばんからジャパまんを取り出し、ルペラに渡した。

 

るぺら「ありがとうございます! その辺りで食べましょうか。」

 

近くの倒木へ腰を掛けた。

 

光太郎「どう、美味しい?」

 

るぺら「はい! とっても…」

 

光太郎「…ルペラ?」

 

ルペラ「…また、こうして…ニホンオオカミさんは居ませんけど、それでも…こうして、こうたろうさまといっしょに居られる事が…わたくし、うれしくて…」

 

光太郎「…そっか。俺も、ルペラが側に居てくれて嬉しい。」

 

るぺら「…ありがとうございます。」

 

 

 

-ドーム外-

 

 

ニホ「うぬぅ…この辺り、全然フレンズが居ないよぉ!?」

 

ドードー「…あ、もしかして…」

 

ニホ「? 思い当たる事があるの?」

 

ドードー「もしかしたら、もうちょっと歩いた所にリョコウバトちゃんが居るかも。」

 

ニホ「本当!? 今は誰の手でも借りたいよ!!! 早速行こ!」

 

ドードー「おぉ、気合入ってるねぇ!」

 

 

-ドーム内-

 

 

ジャパまんを食べ終え、寝床を探し始めた。

 

一緒に歩いてみて改めて思ったんだが、本当にルペラの背が縮んでる。

頭の翼を含めても、俺の肩位の高さだ。

…パっと見、誘拐に見えないか、これ?

 

光太郎「だいぶ暗くなってきたね…」

 

るぺら「はい…」

 

光太郎「…もしかして、寒い?」

 

暗くなってきたので、迷子にならない様、手を繋いで歩いていたが…

俺の手を握る、ルペラの力が少し強くなった気がした。

 

光太郎「…はい、これで少しは寒くなくなったんじゃない?」

 

俺の着ているジャケットを羽織らせてみた。

 

勿論、丈が合う訳もなく、相当ぶかぶかではあるが…

 

るぺら「ありがとうございます。ですが…こうたろうさまは、お寒く無いのですか?」

 

光太郎「あぁ、俺なら大丈夫。……ルペラ、歩き疲れたでしょ? おんぶしよっか?」

 

るぺら「…おねがいします。」

 

 

俺はルペラを背負い、改めて寝床を探した。

 

小さな吐息が耳にかかる。やっぱり疲れていたんだろうな…

 

 

るぺら「…おもくないですか?」

 

光太郎「全然。 ……なんか懐かしいなぁ…」

 

るぺら「?」

 

光太郎「ほら、ルペラとはじめて逢った日の事だよ。あの時はルペラがすぐ寝ちゃってさぁ…」

 

るぺら「…お恥ずかしながら…」

 

光太郎「いいんだよ、あの時は色々あったからさ。 …たまにはさ、こうして甘えてくれて良いんだよ…」

 

るぺら「…えっ?」

 

光太郎「…ルペラはさ、強いんだよ。それに、俺なんかよりも大人なんだよ。だから、何でも背負おうとする…使命も、責任も。」

 

るぺら「……」

 

光太郎「けど、背負う事に耐え続ける事だけが強さじゃない…たまには俺やニホニホを頼っても良いんだよ? まぁ、俺じゃ頼りないかもしれないけど…」

 

るぺら「…確かに。」

 

光太郎「そうそう…えっ…」

 

るぺら「確かに、あなたは直ぐにケガはするし直ぐ泣くし、おまけにドジをしてはほぼ必ずと言っていいほどトラブルに巻き込まれる…」

 

光太郎「うぅ…」

 

ルペラ「ですが、私やニホンオオカミさんの為に文字通り命を懸けて、こうして私を支えてくれる、そんな優しい貴方に恩を返したいんです。それに、心配させたくなかったんですよ。貴方は優しいので…」

 

光太郎「優しいだなんて…照れるな……でも、いつもルペラに頼ってばかりじゃ何か…ねぇ? 何か、頼られたいって言うか何というか…」

 

るぺら「………ありがとうございます。…それでは、もう少しだけ、甘えさせてください…」

 

光太郎「お安い御用で…」

 

 

-ドーム外-

 

 

二人は、協力者を捜すべく、小さな洞穴に来ていた。

 

ドードー「多分、ここにいると思うけど…」

 

ニホ「…居そう?」

 

ドードー「多分、最近はセルリアンが多いから、ここに避難してると思うんだよぉ」

 

ニホ「リョコウバトさぁん! 居ますかぁ!?」

 

洞穴の中から足音が聞こえる。

 

リョコウバト「は、はい! 何でしょう?」

 

ニホ「あなたがリョコウバトさんだね? よろしく!」

 

リョコウバト「よ、宜しくお願いします……ドードーさんの知り合いですか?」

 

ニホ「そう! 会ってからまだ数時間だけどね!」

 

ドードー「リョコウバトちゃん、ちょっと手伝った欲しい事があるのぉ」

 

リョコウバト「???」

 

 

-ドーム内-

 

 

るぺら「こうたろうさま、アレが北斗七星ですか?」

 

光太郎「…多分そうだね、綺麗…」

 

るぺら「本当に……それに、北斗七星の傍で輝く蒼い星も…」

 

光太郎「……俺には見えないなぁ…流石ルペラ、目が良いね。」

 

るぺら「そうですか? ありがとうございます。」

 

光太郎「………あっ、あそことか良さそうじゃない? もし雨が降ってきても大丈夫そうだし。」

 

ちょっとした洞穴を見つけた。

 

るぺら「いいですね、あそこにしましょう。」

 

 

〜洞穴内〜

 

 

地面にブルーシートを敷いてみた。

 

…俺の部屋から持ってきておいて良かった…

 

光太郎「さ、おいで、ルペラ。」

 

るぺら「…はい♪」

 

枕が無いのもアレなので、ルペラには腕枕、俺には…丸めたタオルを。

 

ジャケットを掛け布団代わりに使い、完成。本日の寝床。

 

るぺら「…顔、ちかいですね。」

 

光太郎「うん、想定外だったわ。」

 

るぺら「…あたたかいですね。」

 

光太郎「……これが、温もりだね。」

 

るぺら「………おやすみなさい、こうたろうさま。」

 

光太郎「…おやすみ。」

 

 

 

 

-ドーム内-

 

 

月光が射す崖の下、セルリアンが再び天に向けて光線を放った。




おまけ

ボス「今日ハ、星の話をするヨ。

"北斗七星"。聞いたことがあるフレンズは多いんジャないかナ?

北斗七星ハ、おおぐま座を構成する星の中デ、腰から尾の先までを構成する恒星で作られているヨ。

その形が柄杓の形をしているかラ、名前に"斗"と付いているんダ。

他に"斗"と付く星の集まりと言えバ、"南斗六星"も有名なんジャないかナ。

…南斗乱れる時、北斗現る………コレはまた別の話だネ。

…因みに、北斗七星の傍で輝く蒼い星ハ、"死兆星"と呼ばれているヨ。

死兆星には、この星が見えなくなると死ヌと言う言い伝えがあるんダ。これには理由があっテ、老化による視力の低下の影響デ、死兆星が見えなくなるという説があるヨ。

また、世界によっては、死兆星が見えた者には、その年の内に死が訪れると言われたリしているネ。

…この世界でハ、どちらの言い伝えが当てはまるのカナ?

星に関しては、ヤマバクのフレンズの方が詳しいネ。」


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Ep.20「果たしたい約束」

-ドーム外-

 

 

作戦会議は朝まで続いた。…というのも、夜に実行しようと試みたが、何せ周りが暗く、崖の下の様子がよく見えない為、結局は朝に作戦を行う事となった。

 

ニホ「…って作戦で行こう!」

 

リョコウバト「ですね。…ですが、どうしてドームに近付くと戦う気が削がれるのでしょうか?」

 

ドードー「…その事なんだけどね、私なんか分かった気がするんだぁ」

 

ニホ「なになに? 教えて?」

 

ドードー「あのセルリアン、私を襲ったセルリアンだと思うんだけど、多分私の願いを真似したのかなぁ…って思って。」

 

ニホ「願い…?」

 

ドードー「ラブ&ピース、だよ♪」

 

リョコウバト「成る程、それをセルリアンにとって都合良く利用したんですね…」

 

ニホ「そうなの? 何か許せないね…だから、絶対倒す!」

 

 

-ドーム内-

 

 

るぺら「…おはようございます、こうたろうさま。」

 

光太郎「んぅ? あ、おはよ。」

 

るぺら「今日もいい天気で……えっ…?」

 

光太郎「どうした? …は?」

 

空が、赤い。

 

朝焼けの様な、綺麗なものでは無い。それこそ、血の様な色。

 

光太郎「なんなの…?」

 

るぺら「こうたろうさま…」

 

ルペラが震えている。

 

光太郎「ルペラ、大丈夫…」

 

大丈夫…とは言ったものの、自分とて状況が把握出来ていない。

 

光太郎「…まさか…あのセルリアンが…?」

 

るぺら「もしそうだとしたら、あのセルリアンを狩らないかぎり…?」

 

光太郎「多分、ここから出られない。」

 

るぺら「そんな…わたくし、空から様子を見てきます!」

 

光太郎「た、頼んだ!」

 

ルペラは赤い空へ向かって飛び立った。

 

 

-ドーム内、上空-

 

 

るぺら(どうして…? 飛び続けている筈なのに、全然進まない…?)

 

全速力で飛ぶルペラ。しかし、ルペラの目に映る風景は何一つ変わらない。

 

足元を見てみると、既に光太郎の姿は疎か、地面すら見えない。

 

るぺら(これではまるで、ただ赤いだけの世界に放り込まれた様ではありませんか…)

 

 

 

…空が割れた。

 

 

 

あまりにも突然の出来事に動揺を隠せないルペラ。

 

 

そんなルペラの横を、ニホンオオカミが通り過ぎた。

 

 

 

-夜明け前、ドーム外-

 

 

ニホ「…これじゃァ埒が開かないよ…」

 

リョコウバト「近付けば、戦う気が失せますし…」

 

ドードー「内側からは壊せないのかな…」

 

ニホ「うぅ……折角、みんなでスカイダイビングしよって約束したのに………」

 

リョコウバト「スカイダイビングですか?」

 

ニホ「そう、あのギューンって下に落ちるの、アレやってみたかったの…」

 

ドードー「…それって、どれくらいの勢いなの?」

 

ニホ「うーん…すごい、すごい速いの。 …ん?」

 

リョコウバト「どうかしましたか?」

 

ニホ「……もしさ、私が空から落ちながら攻撃したら、あの壁壊せないかなァ…って。 だってほら、あの丸い壁の上辺り、ちょっと色が薄いし…」

 

ドードー「なるほど…確かに薄い…」

 

リョコウバト「…危険では有りませんか?」

 

ニホ「…でも、このまま光太郎とルペラを助けられないまま終わるなんて嫌だもん…」

 

リョコウバト「うぅ……それでは…やってみますか…?」

 

ニホ「いいの!?」

 

リョコウバト「えぇ、仲間を大切にしたい気持ちは分かりますから…その代わり、作戦は練りに練りますよ?」

 

ドードー「ありがとうリョコウバトちゃん!」

 

 

…………

 

 

-作戦開始直前、ドーム外上空-

 

 

 

朝日が差し込み、ニホンオオカミを抱えて飛んでいるリョコウバトを照らす。

 

 

ニホ「…うん、ちょうどこの丸い壁の真ん中に、あのセルリアンがいるね…」

 

リョコウバト「…すこしズラした場所から落としましょうか?」

 

ニホ「ううん、むしろ好都合だよ…」

 

ドードー「ニホンオオカミちゃぁん! 頑張ってねぇ!」

 

崖で待機しているドードーが手を振る。

 

ニホ「うん! 頑張る!」

 

 

 

 

 

ニホ「さ、リョコウバトちゃん、宜しくね。」

 

 

リョコウバトが、手を離した。

 

 

 

次第に速度を上げてドームに近付くニホンオオカミ。

 

 

ニホ「これが、スカイダイビング……か…」

 

 

ニホンオオカミの右手に輝きが集まる。

 

 

ニホ「けど、この風を切る感じを楽しむのは、ルペラと一緒の時って………」

 

 

右手に力が入る。

 

 

ニホ「…決めてるからァァァッ!!!」

 

 

思い切り振り下ろした右手が、ドームに刺さる。

 

ドームの上辺は砕け、ニホンオオカミはドームの中へ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

るぺら「……ニホンオオカミさん!?」

 

ニホ「ルペラ! 今すぐあのセルリアンを倒してくるからァ…

 

 

るぺら「……え?」

 

 

 

 

セルリアンに向けて、真っ直ぐ落ちていくニホンオオカミ。

 

 

セルリアンがそれに気付き、アンテナをニホンオオカミに向けた頃には、ニホンオオカミはセルリアンの間際に来ていた。

 

 

ニホ「こンのぉ邪魔だよぉォ!!!」

 

 

アンテナに向かって、渾身の蹴りを喰らわせるニホンオオカミ。

 

アンテナはへし折れ、岩に突き刺さった。

 

 

ドームが崩れ、光太郎やルペラの目に、青空が映る。

 

 

光太郎「……ニホニホ!?」

 

ニホ「へへっ、お待たせ!」

 

光太郎「どうして空から…?」

 

ニホ「まぁまぁ、細かい事はいいから、まずは目の前のセルリアンに集中だよ!」

 

ニホニホは俺に向かってサムズアップをして、セルリアンに向かっていった。

 

 

光太郎「…ニホニホは元気だなぁ…」

 

 

 

ニホ「光太郎! そっちにセルリアン行った!」

 

セルリアンは転がり、光太郎に迫った。

 

光太郎「ウッソ…」

 

 

 

 

それに気付き、動き始めた時には、セルリアンは目の前に迫っていた。

 

 

 

ルペラ「させませんよッ!!」

 

光太郎を抱え、セルリアンから距離をとるルペラ。

 

 

ニホ「ありがとう、ルペラ!!」

 

 

狙いを光太郎からニホンオオカミへ変えたセルリアン、だが、行動へ移そうとした時には、既にニホンオオカミが目の前まで迫っていた。

 

 

ニホ「随分と面倒なことをしてくれたねェ!!?」

 

 

ニホンオオカミが攻撃するたび、削れて小さくなるセルリアン。

 

 

ニホ「…あっ! 石!!」

 

 

ニホンオオカミの攻撃によって石が顕になった。

 

 

ニホ「これで…終わりだよッ!!!」

 

 

 

 

ニホンオオカミか最後の一撃を繰り出そうとした瞬間…

 

 

 

ニホ「へぇっ!?」

 

 

空から、巨大なカメが落ちてきた。

 

そのカメに押しつぶされたセルリアンは粉々に砕け散り、その破片の中から、一枚の紙が出てきた。

 

ニホ「あっ……太平風土記…」

 

 

そのカメは、ニホンオオカミを見つめていた。

 

 

ニホ「えっ……なんで私…?」

 

 

その時は気付いていなかった。

 

勾玉達が、光り始めていた事に…




Ep.EX「遺された翼」

ある日の夜、私は何故か寝付けなかった。
普段なら私の隣にいる筈の者がいないからだろう。

その者はというと、外で夜空を見上げていた。
私は空を見上げている彼女の元へ、駆け寄った。


「あっ…すみません、起こしてしまいましたか?」


正直なところ、間違ってはないのだが、あくまで私が勝手に起きただけだ。
たまたま目が覚めただけと伝えると、彼女は2,3度小さく頷き、話し始めた。


「…私、毎年この日になると、こうして遠くにいる仲間の事を考えるんです。」


私は、今日の日付を確認した。
12月1日。

彼女の言う"遠くにいる仲間"。
聞いて直ぐは理解出来なかったが、今日の日付を見て、誰の事を言っていたのかが分かった。


「何年も前のこの日…私の目からは輝きが消え失せました…」


「…たまに夢を見るんです。仲間が命を奪われる夢。ある時は銃で、ある時は毒で。」


「あの生き物が来るまでは、あの島で私達を脅かす者は殆ど居ませんでした。」


「普段は思い出せないのに、この日になると、ふとかつての事を思い出す…変ですよね。」


確かに不思議だが、変ではない。そう伝えると、彼女は少しだけ微笑んだ。


「ありがとうございます……」


私は、一つの疑問が浮かんだ。
…というよりかは、今まで抱えていた疑問をぶつける時が来た。


ルペラはヒトが嫌い?


私の問いに、彼女は戸惑っていた。
私は謝り、この質問を取り下げようとした。
しかし、彼女はゆっくり、私に答えを伝えた。


「…正直、私にも分かりません。なにせヒトといっても、あまりにも振れ幅があるので…あなたの様なヒトから、私を殺したようなヒトまで…」


「ですが、私はあなたが好きです。それに、かばんさんのことも…お友達だと思っています。」


「……きっと、このパークに多くのヒトがいた頃。その時の私も、周りのヒトを好いていたのでしょう。」


私は少し言葉に詰まった。


「……ごめんなさい、これが私の出せる、精一杯の答えなんです。」


私は何も言えなかった。
ただ、彼女の側に居る事しか出来なかった。

それから、どれだけの時間が経ったのだろうか。
…実際には、大して時間は経ってないだろうが、そんな短い時間ですら、とても長く感じる。


「………もし、私がこの世からいなくなったら……あなたはどうしますか?」


何か言わなければ、伝えなければ。私はそう思った。しかし、言葉にしようとするが、何故か言う事に抵抗がある。

口にしてしまったら、本当にその時が来てしまう。そんな気がした。


「……いつか、その時は来るんですよ。」

「私は、あなたには長生きしてもらいたい、私よりも、長生きしてもらいたいんです…」


彼女の口から告げられる現実、そして願望。
いつか、この日々に終わりが来る。
その事を考えただけで、心が不安で包まれる。

いつか、彼女を看取る瞬間が…


「………安心してください、確かにいつか訪れる事ですが、今はまだその時ではありません。まだまだやり残した事がありますし、それに…」



彼女は私の目を真っ直ぐに見つめ、微笑んだ。




「…最後の一羽である以上、そう簡単には死ねませんよ。」


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Ep.21「旅の果てに」

こんばんは、グアダルーペカラカラ、ルペラです。

リウキウエリアを訪れた事から始まった、ジャパリパーク完全制覇の旅。今夜はその第……何夜でしたっけ…? そもそも、完全制覇が目的でしたっけ…?

…前回は、巨大なカメが降ってきました。黒色をしていました。えぇ、私でも何を言っているのか分かりません。ですが、本当に降ってきたんですよ。

大きいカメといえば先月の27日に、ガメラが55周年を迎えましたね。嬉しい事です。

次の目的地はホッカイエリア、旅の終わりが見えてきました。




-ホートクエリア-

 

 

ニホンオオカミの目の前に降ってきた、巨大な黒いカメ。

 

そのカメは、ニホンオオカミを見つめていた。

 

ニホ「えっ、えっ…私なにかした…?」

 

 

光太郎「ニホニ……ふっ…」

 

ルペラ「光太郎様!?」

 

 

光太郎『………ケガは無いか?』

 

ニホ「えっ…うん……」

 

光太郎の様子がおかしい、喋り方も普段よりも大人しく、眼差しもより鋭くなっている。

 

ルペラ「…光太郎様……ですよね…?」

 

光太郎?『……光太郎…そうか、この者の名か。』

 

ニホ「光太郎、大丈夫?」

 

光太郎?『すまない、わしは光太郎であって光太郎でない。』

 

ルペラ「…どういう事ですか…?」

 

光太郎?『それはな…』

 

リョコウバト「皆さん、大丈夫ですか!?」

 

リョコウバトが、空から声をかける。

 

ドードー「作戦、成功したみたいだねぇ!」

 

リョコウバトに抱えられたドードーが手を振っていた。

 

ニホ「そうなの! 協力してくれてありがと!」

 

光太郎?『すまない、話を…』

 

ニホ「とりあえず、上に行ってから話を聞かせて? ここだと落ち着かないよ。」

 

光太郎?『あ、あぁ…』

 

 

-ホートクエリア、出口付近-

 

 

取り敢えず、ドードー達の元へ向かった。

 

まさかあのカメが、崖をよじ登るとは思わなかった…

 

ドードー「もー行っちゃうのぉ?」

 

ニホ「うん、明るい内にホッカイエリアに行きたいからね。」

 

ドードー「でも、また会えるよね?」

 

ニホ「会えるよ! だって、私達はお友達だから!」

 

光太郎?『トモダチ…か』

 

リョコウバト「また今度、旅の話を聞かせてくださいね?」

 

ルペラ「その時は是非とも。」

 

 

別れの挨拶を済ませ、いざホッカイエリアへ。

 

 

-ホッカイエリア道中、海上-

 

 

正直、バイパスを使っても行けるが、巨大なカメの背にバスごと乗せてもらい、海を渡っている。

 

 

光太郎?『…そろそろ、話を始めても良いか?』

 

ニホ「うん、お願い。」

 

光太郎?『今、わしはこの者の体を借りて、お主らと会話している。』

 

ルペラ「…光太郎様の身体に悪影響はありませんよね? もしあるとしたら…」

 

光太郎?『安心してくれ、その辺りはわしの方で加減している。』

 

ルペラ「そうでしたか。疑ってしまってごめんなさい。」

 

ルペラは胸を撫で下ろした。

 

光太郎?『いや、わしが乗っ取った様に見えても仕方あるまい。そういえば、自己紹介をしていなかったな。わしの名はゲ……ゲ…』

 

ニホ「? どうしたの?」

 

光太郎?『いや、すまななななな、あ…』

 

ニホ「……大丈夫?」

 

光太郎「何かね、頭ン中に何か居るの! てか何か聞こえる!怖いんだけど!……どこ此処?」

 

ルペラ「光太郎様、少しお静かに。」

 

光太郎「えっ、あっ、ごめん…」

 

光太郎?『……聴こえておるか?』

 

ニホ「うん、バッチリだよ!」

 

光太郎?『では、改めて……わしの名はゲンブ。ジャパリパークの北方を守護する者なり。』

 

ルペラ「ゲンブ…四神獣のゲンブさんですか?」

 

ゲンブ『いかにも。ただ、過去に色々あってな…ヒトの姿を保つ事が難しいのだ。』

 

ニホ「そんな凄い人が、どうして私達の所に?」

 

ゲンブ『…今、お主らが集めている太平風土記には、今後このパークで起きる事が書かれている事は知っているな? 各地に現れる今までとは異なったセルリアン、女王の復活、そしてその勾玉…』

 

ニホ「…コレの事?」

 

ニホンオオカミは、懐から勾玉を取り出した。

 

ゲンブ『…これらの物事は、全てが繋がっている。これから訪れる、大きな厄災に。』

 

ルペラ「大きな厄災…?」

 

ゲンブ『…お主らに問う。もし仮に、何万年も前に生まれた、最初のセルリアンが輝きを蓄え続け、今この世に現れたらとしたら… 更に、外界の邪な力を手に入れている可能性があるとしたら…お主らはどう戦う?』

 

その場の空気が固まる。

 

ルペラ「……外界の力とは…?」

 

ゲンブ『…人々の負の心(マイナスエネルギー)を糧にする悪魔、異次元人ヤプールの残留思念…』

 

ニホ「…どんな人なの…?」

 

ゲンブ『生命を弄び兵器(超獣)に仕立て上げ、海から、空から、別次元の地球侵略を目論んだ卑劣な者共だ…』

 

ゲンブ…及び光太郎の手に力が入る。

 

ルペラ「……もし私が、戦わなければいけない状況となったら…光太郎様やニホンオオカミさんの命に危機が迫るのならば、私はこの命と引き換えにでも守ります。たとえ勝てなくとも、せめてこの2人の命だけは…」

 

ゲンブ『そうか………もうじきホッカイエリアに着く。準備をしておこう。」

 

 

緊張感が抜けないまま、上陸の準備を進めていた。




…如何でしょうか?

いよいよ別次元の存在まで見え隠れしてきました。もう手がつけられません。

ヤプール……相当厄介な存在らしいのですが、もしその力を兼ね備えたセルリアンが現れたとしたら……

出来る事なら、このまま何も起こらずに旅を終えたいですね。


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Ep.22「激闘!ホッカイエリア」

-ホッカイエリア-

 

 

激しい吹雪の中、2人の拳が交わる。

 

 

ニホ「…始めて戦うけど、結構強いね…!」

 

ルペラ「ニホンオオカミさんこそ、その全力な姿勢…私は好きですよ…!」

 

ルペラは薄らと笑みを浮かべ、頭の翼を羽ばたかせた。

 

すると辺りの雪が舞い、ニホンオオカミの視界を白く染め上げた。

 

ニホ「うぅっ…」

 

視界が鮮明になると、そこには既にルペラの姿が無い。

その代わりに、数百もの羽根がニホンオオカミを囲むように空中に静止し、その鋭利な軸の先をニホンオオカミに向けていた。

 

ニホ「何これ!?」

 

それにニホンオオカミが気づいた途端、羽根は一斉にニホンオオカミへ向かっていった。

 

ニホ「スゥ…」

 

次の瞬間、ニホンオオカミの咆哮が轟いた。

その衝撃で羽根は砕け散り、眩しいくらいに輝きを発していた。

更にその輝きは積もった雪や降り注ぐ雪に反射し、またしてもニホンオオカミの視界を奪う。

 

そんな中、空から一つの影がニホンオオカミへ向かって雷の様に落ちていった。

 

間一髪のところで腕を交差し防御姿勢をとったニホンオオカミ。

その腕の先には勢いよく突き出されたルペラの右脚があった。

命中の衝撃で降り積もった雪は吹き飛び、雪の下に眠っていた土を露にした。

 

ルペラ「…まさか防がれるとは思いませんでしたよ…」

 

ニホ「そりゃルペラとの付き合いは長いからね…!」

 

ニホンオオカミは思い切り腕を広げ、ルペラの足を弾いた。

 

ルペラは再び羽ばたき、ニホンオオカミとの距離をとろうとした。

しかし

 

ルペラ(しまった、翼が悴んで…!)

 

慣れない寒さのために翼が悴み体勢が崩れたルペラ。

 

ニホ「勝機!!」

 

大地を蹴って飛び跳ね、素早くルペラとの間合いを詰めるニホンオオカミ。

羽ばたけぬまま、空中へ投げ出されたルペラは、ニホンオオカミに向かって羽根を放った。

 

その羽根を薙ぎ払い、ルペラの懐に入り込み、その勢いのまま拳を浴びせかけた。

渾身の一撃を喰らったルペラは吹き飛び、岩壁に叩きつけられた。

 

ルペラ「うっ……」

 

岩壁にヒビが入り、岩壁の一部が崩れ、岩となってルペラの頭上へ落ちてきた。

 

ニホ「!? それはダメッ!!」

 

ニホンオオカミはルペラの元へ駆け寄り、全霊の拳を振るい岩を粉砕した。

 

ニホ「……大丈夫…? ケガしてない?」

 

ルペラ「すみません…ありがとうございます。」

 

ゲンブ『お主ら、大丈夫か!?』

 

光太郎の姿をしたゲンブが駆け寄る。

 

ルペラ「えぇ、ニホンオオカミさんが助けてくれたんですよ。」

 

ニホ「ごめんね、つい力んじゃって…」

 

ルペラ「いえ、全力で戦ってこそ、意味があるんですよ。」

 

ニホ「うん…ありがとね?」

 

 

〜数時間前〜

 

 

ホッカイエリアに到着した一行。

 

ゲンブの案内でホッカイエリアの中心部へ向かった。

 

ゲンブ『…お主らは、拳を交えた事はあるのか?』

 

ニホ「…なかったと思うけど…どうして?」

 

ゲンブ『実はな、これからお主らの戦いを見たいと思ってな…』

 

ルペラ「そんな…どうして…?」

 

ゲンブ『本当なら、わしが直々に手合せしたいのだが、あまり時間が無い上に満足に戦える力があるかも微妙な所。それ故に、お主らが手合せしている姿を見て、これからの戦いに送り出すべきが否かを判断したいのだ。』

 

ニホ「そっか……ルペラ、どうする?」

 

ルペラ「確かに、四神獣の方に判断していただけるのは確実でいいと思いますが…うぅん…」

 

光太郎「ゲンブさん、絶対に2人にケガをさせないでください…もしさせようものなら、例え四神の1人が相手だとしても…」

 

ゲンブ『…安心せい、力が損なわれた今でも、お主らの体に簡易的な結界を張る事など容易い事よ。 絶対にお主の大切な者を、傷つけはせん。』

 

ニホ「光太郎…ありがとう……」

 

ゲンブ『それでは、それぞれ準備をしてくれ。』

 

 

 

〜数時間後〜

 

 

 

ゲンブ『……わしは、とんだ思い違いをしていたようだ…』

 

ニホ「そんな…」

 

ゲンブ『…まさか、強さと優しさを、ここまで兼ね備えているとは…』

 

ルペラ「………えっ?」

 

ゲンブ『…相手の実力が計り知れない以上、不安は拭いきれないが、その強く優しい心があれば…きっとどんな壁をも乗り越えられるだろう。』

 

ニホ「それって……合格!?」

 

ゲンブ『あぁ…だが、決して楽な戦いでは無い。きっと辛い思いもするだろう。それでも、この戦争(戦い)に身を投じるのか? 身を引いても、誰もお主らを責めはしない。』

 

ルペラ「それでも……戦って、勝って、またみんなで同じ朝を迎えられるなら…私は戦います。」

 

ゲンブ『そうか…お主はどうだ、ニホンオオカミ?』

 

ニホ「私は……守りたい、みんなを守りたいの。みんなと過ごしたこの場所を、みんなの命を…」

 

ゲンブ『守りたい…か。わしも四方を守護する四神の1人、その願いを見過ごす事は出来無いな…』

 

 

ゲンブは、空を見上げていた。

その横顔は、何処か切なさを感じた。



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Ep.23「柳星張の輝き、時のゆりかごへ」

-ホッカイエリア、奥地-

 

ゲンブに連れられて、一行は巨大な洞窟を訪れた。

 

 

ゲンブ『ニホンオオカミ、お主にはこれを授けよう。』

 

ゲンブは、巨大なカメの体内から小さな何かを取り出し、それをニホンオオカミへ渡した。

 

ニホ「これは…勾玉?」

 

その勾玉は銅色をしていて、所々紅く光っていた。

 

ゲンブ『それには、ゲンブの力…そして微々たる物だが、スザクの力も込められている。』

 

ルペラ「スザクさんの?」

 

ゲンブ『あぁ…かつて、起こった異変の後処理によって、我々四神は殆どの力を失った。特にスザクはかなり消耗が激しく、その隙にあのセルリアン…今このパークで起きている異変の元凶、仮に"邪神セルリアン"と呼称しよう。邪神セルリアンがスザクの輝きを奪った。』

 

ルペラ「そんな…スザクさん…」

 

ゲンブ『だが、スザクの輝きの一部をわしが取り込み、匿う事でスザクの輝き全てが奪われるのを防いでいたのだ。その一部の輝きが、その勾玉に込められている訳だ。』

 

ニホ「…あったかい……」

 

ゲンブ『そうであろう、それはスザクの命の炎、あの者がフレンズの姿を保てなくなり、力の殆どを失った今でも、生きるのを諦めぬ限り、その勾玉からは太陽の様な温もりが放たれ続けるであろう。』

 

ニホ「…スザクさんの命……大切にしないと…」

 

ゲンブ『…そうだ、お主らにはコレも渡しておこう。』

 

ゲンブは洞窟の奥から一枚の紙を持ってきた。

 

ゲンブ『お主らの集めている太平風土記だ。』

 

ニホ「えっと…"柳星張の輝き、時のゆりかご・玄武に託す"…?」

 

ゲンブ『うむ……柳星張ときたか、珍しい呼び方だな。それに、わしが時のゆりかご……』

 

光太郎「ゆりかご…うん、そんな感じの雰囲気だね。」

 

ゲンブ『…身体を借りている身ではあるが、それはどう言う意味であろうか?』

 

光太郎「何か…包み込んでくれそうな雰囲気…?」

 

ゲンブ『包み込む…守護する者としては当然だろう。それにしても、随分と軽い口調で話しかけるな。』

 

光太郎「あっ…ごめんなさい…つい、自分と話してるみたいで……というよりも、何だか馴染んでしまって…」

 

ゲンブ『謝る事はない…ただ、久しくその様な口調で話しかけられた事が無くてな。』

 

ニホ「ねぇ…ルペラ…」

 

ルペラ「? どうかしましたか?」

 

ニホ「…何かさ、あの2人が話してる姿を見てると…光太郎が心配になってくるね。」

 

ルペラ「……確かに、側から見れば独り言が暴発してる様に見えますしね…」

 

ゲンブ『…何か言ったか?』

 

ルペラ「いえ!何も…!」

 

ニホ「……えっと、それにしても、柳星張って誰の事? スザクさん?」

 

ゲンブ『あぁ、殆どの場合は呼ばれない名ではあるがな。』

 

少し間を置き、ゲンブはニホンオオカミを見つめた。

 

ニホ「…?」

 

ゲンブ『ニホンオオカミ、お主は守る為に戦う…そう言っていたな。』

 

ニホ「うん、誰も傷つけられて欲しくないの…」

 

ゲンブ「例え、己が身を挺して守らなければならないとしても…同じか?』

 

ニホ「……うん、痛いのは嫌だけど、皆んなが傷つくのはもっと嫌だから…」

 

ゲンブ『そうか……もし、邪神セルリアンの力により、皆が傷つきそうになった時、それらの勾玉と……』

 

ニホ「勾玉と…?」

 

ゲンブ『……お主の命を使い、強力な結界を張る事が出来る。』

 

ルペラ「それって…!」

 

ゲンブ『ニホンオオカミ、お主が人柱となるのだ。』

 

ニホ「っ…!?」

 

ゲンブ『本来なら、その勾玉に込められたわしら四神の力でも充分な結界を張る事が出来るのだが、今回の場合はスザクの力が欠けている故、勾玉だけで結界を張る事は難しいのだ…』

 

ニホ「そっか……なら、仕方ないよね。」

 

光太郎「仕方なくないよ…!」

 

さっきまでの少し哀しげな表情から一転し、光太郎の顔はより複雑な心境…怒りと悲しみを混ぜ合わせた様な表情となった。

 

光太郎「そんなの……だったら、俺が代わる。他のフレンズに比べたら、俺は無力だから…せめて、その時だけでも…ッ!」

 

ゲンブ『…それは叶わぬ願いだ。』

 

光太郎「どうして…俺が弱いから!?」

 

ゲンブ『それは違う。お主には、お主にしか出来ない事がある。』

 

光太郎「だったらどうして…!」

 

ゲンブ『ニホンオオカミは、かつて信仰の対象とされていたからだ。』

 

ボス「狼信仰ダネ。かつて日本デハ、魔除けや獣害除けトシテ狼信仰が行われテイタヨ。」

 

ゲンブ『信仰されていた故、大神とされていた故に、よりわしらに近い力を持つ事が出来るのだ。』

 

ニホ「うん……言葉の意味はよく分からないけど、私にしか出来ない事なら、私はやるよ。」

 

光太郎「ニホニホ……」

 

ニホンオオカミは光太郎に駆け寄り、そっと肩を掴んだ。

 

ニホ「光太郎、安心して? 私、あんまり無理はしないから!」

 

そう言うと、ニホンオオカミは笑ってみせた。

 

ニホ「それに! 私達ならきっと大丈夫だよ! なんだかんだで勝ってきたし。」

 

ルペラ「ですが…今回も同じようにいくかは…」

 

ニホ「んーッ! どっちにしろこれから戦わなきゃならないなら、クヨクヨするよりも、勝つ事を考えよ! それに良く言うじゃん、戦いはノリの良い方が勝つッて!」

 

そういうニホンオオカミの手は、微かに震えていた。

 

 

-ホッカイエリア出口付近、ホートクエリア側-

 

 

ゲンブ『…………そうか。』

 

ニホ「どうしたの…?」

 

ゲンブ『…流石に力を使い過ぎたらしい。そろそ…頃合いだ……もっていたが…』

 

ルペラ「そんな…ですが、今までずっとスザクさんの輝きを護り続けていたんですもんね…」

 

ゲンブ『……!?』

 

大地が轟き、一本の触手が巨大なカメ…ゲンブの本体を貫いた。

 

ニホ「ゲンブさんッ!?」

 

ゲンブ『…そうか………貴様が…貴様が邪神なんだな…!』

 

ゲンブは力を込めると、力を振り絞って叫んだ。

 

ゲンブ『例えこの身が砕かれようと…! 貴様の野望は必ず叩き伏せる!』

 

その声と共に、ゲンブの本体から熱が発せられ、触手を焼き切った。

 

ゲンブ『行け!! スザクの輝きを繋いでくれぇッ!!!』

 

光太郎達はバスへ乗り込んだ。

 

ニホ「どこへ!?」

 

ゲンブ『…この地の中心………パークセントラル…!!』

 

ルペラ「了解です!」

 

ボス「ココからハ、バイパスを通ろウ!」

 

バスが地を駆け、バイパス内を走る。

 

いつの間にか、ゲンブの声は聞こえなくなっていた。

 

 

-カントーエリア-

 

 

バイパスを抜けた光太郎一行。

 

 

その瞬間、3人の身体に悪寒が走る。

 

 

 

ニホ「………空が…」

 

 

空が、大量のセルリアンによって覆い隠されていた。



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Season2 最終章「わたしは、あなたを」
Ep.24「邪神降臨」


光太郎「何だよコレ……!」

 

ルペラ「取り敢えず、何処か身を隠せる場所へ避難しましょう!」

 

ボス「それなラ、地下駐車場に行こウ」

 

 

ニホ「……?」

 

ニホンオオカミの挙動が、さっきからおかしい。

 

光太郎「ニホニホ?」

 

ニホ「…あっちの方……行かなきゃ…」

 

ニホンオオカミが指差す先には、小さな山があった。

 

光太郎「何かあるの?」

 

ニホ「…呼んでるの……誰かが私を…」

 

ルペラ「…行ってみましょう。」

 

ボス「それジャ、コースを変更するヨ。道が荒れているかラ、しっかり掴まっていてネ」

 

バスを走らせていると、次第に海が見えてくる。

 

晴れていたら、さぞ綺麗な海景色だっただろう。しかし、今ではまともに太陽の光も差し込まない。そこにあるのは、薄暗い海。そして…

 

ルペラ「光太郎様、アレは一体…」

 

海に浮かぶ大きな影。

 

バスに備え付けてあった双眼鏡で見てみると、3つの巻貝を横に並べ、両端の穴からは無数の触手と鋏が、真ん中の貝の穴からは頭…強いて言えば鳥に似た頭が、単眼を赤く光らせながら生えていた。

しかし、様子を見るに、他の部位は海に沈んでいるようだ。

 

光太郎「…あれが邪神……」

 

ニホ「……大きいね…」

 

ボス「あの辺りの海ノ深さヲ考慮するト、あのセルリアンの全高は約150mダヨ…」

 

光太郎「だとすると、全長もそれなりか…?」

 

ルペラ「……ッ!?」

 

光太郎「ルペラ…?」

 

ルペラ「目が…合いました……」

 

ニホ「勘違い…じゃないよね。ルペラの眼なら、そんな間違い起きないだろうし…」

 

光太郎「…もうコッチの存在はお見通しって訳だ……多分、ゲンブさんと接触した時点で、俺達の存在は悟られていたんでしょ…」

 

ニホ「……だとしても! …ここで退く訳にはいかない…でしょ?」

 

ルペラ「…ですね。 決して楽観視はできませんが、それでも全力で立ち向かうだけです。」

 

 

-山腹-

 

 

ボス「光太郎、通信が入っているヨ」

 

光太郎「分かった、繋げて?」

 

 

ボス『……おーい、聴こえてるか? …あら、聴こえてない?』

 

光太郎「聞こえてますよ。…どなたでしょうか?」

 

ボス『…あっ、繋がった……俺だよ、俺! アルバn』

 

ニホ「アルバニーアダーちゃん!?」

 

ボス『そうそう、アルバニーアダー様だ…ッて違ァう! 何かよォ、急に空がブワァって暗くなったと思ったらよ、スゲェ数のセルリアンが空飛んでんだよ。ンでもって、お前らがくたばって無いかを確認した訳だ!』

 

ボス『そんな言い方は無いよ、アルバニーアダー。」

 

ボス『そうですよアルバニーさん。 ごめんなさい…アルバニーさん、正直になれなくて。本当は通信が繋がるまで、ずっとソワソワしていたんですよ。』

 

ボス『だぁゥるっせぇ! 俺は別に心配してネェからな!」

 

ニホ「ちょっちょっと待って!? アルバニーアダーはともかくさ、あとの2人は…?」

 

ボス『ともかくって何だよともかくってよぉ! まぁ…コイツらは……』

 

ボス『あっ…ごめん、俺はペルシュロン。宜しく。』

 

ボス『オグロヅルです。 みなさんは、お怪我はありませんか?』

 

ルペラ「えぇ、私達は無事です。」

 

ボス『俺達ャ今、このボスに連れられてバイパス?に避難してんだ。お前らも逃げるなら早く逃げろよ。』

 

ニホ「ううん、私達、やらなきゃならない事があるの。」

 

ボス『は? 何言ってんだ、早く逃げろっつってんの! ちゅーかお前ら、戦い過ぎだっちゅーの。休め!」

 

ニホ「そーゆー訳にもいかないの…まぁ、この戦いが終わったら、ゆっくり休むよ。」

 

ボス『この戦いって……これから何と戦うつもりなんだよ…!』

 

ニホ「…正直、なんか強そう…でも安心して! 絶対勝つから!」

 

ボス『どっから湧き出たその自信…でもまぁ…お前が言うんだから……取り敢えず、生きて帰れよ。あん時の借り、まだ返せてねぇからなァ! 切るぞ!』

 

ニホ「うん! そっちも気をつけて!」

 

 

通信が切れた。

 

 

どうやらラッキービースト達は、フレンズをバイパスへ避難させているらしい。確かに、空中にセルリアンが蔓延っている以上、地上よりかは安全だろう。

 

そんな事を考えていると、急にニホンオオカミが立ち上がった。

 

ニホ「………あっ、あそこ!」

 

ニホンオオカミの視線の先には、祠があった。

 

俺達はバスを降り、その祠へ向かった。

 

ニホ「ここ……うっ…ッ!(何これ…! 頭に何かが入ってきて…!? 割れそう…頭……!!)」

 

ニホンオオカミはしゃがみ込み、うめき声をあげていた。

 

光太郎「ニホニホ!?」

 

ニホ「ぅあ……ぁ……はぁ……はぁ……平気(へっちゃら)……だから…」

 

ルペラは屈み、ニホンオオカミの背中をさすっていた。

 

ニホ「ルペラ……ありがとう…」

 

ルペラ「…無理はしないでくださいね。」

 

ニホ「うん……」

 

ニホンオオカミはゆっくり立ち上がると、祠へ向かった。

 

ニホ「……………」

 

光太郎「何か…聞こえるの?」

 

ニホ「うん…ちょっと怖いけど……でも、それだけ必死な声。」

 

ルペラ「貴女を必要としているのは、私達だけでは無いのですね。」

 

ニホ「えへへ、そうみたい。 けど、声の主がどこに居るのかが分かんないけどね…」

 

光太郎「…きっと、昔のヒト達が遺した願いが、ニホンオオカミに声として届いてるんじゃないかな…?」

 

ニホ「…そっか。これが信仰されるって事なのかな?」

 

光太郎「どんな感じ?」

 

ニホンオオカミは悩んでいた。言葉選びに悩んでいるのか、はたまた言葉に出来ない感情だったのだろうか?

 

ニホ「うぅん…何だろ……正直、ちょっとプレッシャー。けど、みんなの期待に応えたいって気持ちもある。」

 

ルペラ「なんだか…ニホンオオカミさんらしいですね。」

 

ニホ「そうなの…かもね。」

 

 

ニホンオオカミは祠の前に立ち、深呼吸をした。

 

 

ニホ「それじゃ…始めようか。」

 

懐から紐で繋がれた3つの勾玉を取り出し、首に掛けた。

 

ニホ(…ちょっと重い…けど、これが託された想いの重みなら…!)

 

 

 

ニホ「纏うは願い、信仰の衣…!」



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Ep.25「1905.願いを背負って」

ニホ「纏うは願い、信仰の衣…!」

 

ニホンオオカミは白い光に包まれた。

 

光太郎「ウォッ眩しッ…!」

 

ルペラ「!? 光太郎様!」

 

光に引き寄せられるように、空から数匹のセルリアンが光太郎達へ向かっていった。

 

光太郎「ッ!速い!!」

 

ルペラが羽根で撃ち落とそうとするも、攻撃されながらも一直線に向かってくるセルリアン。

 

ルペラ「速いだけでなく硬い!? このままじゃ間に合わないッ…!」

 

セルリアンが目の前まで迫った瞬間、その侵攻が何かに妨げられた。

 

光太郎「……壁…?」

 

ハニカム模様が刻まれたそれは、橙色の光を放っていた。

 

 

 

ニホ「…させないよ…私達の戦いは、まだ終わってないからァ!」

 

 

その声に応えるかのように、壁はより強く光り、セルリアンを弾き飛ばした。

 

弾かれたセルリアン達はそれ以上襲おうとせず、空へ戻っていった。

 

 

光太郎「ニホニホ…」

 

 

白い光が次第に消え、赤と白の衣を纏ったニホンオオカミが中から現れた。

 

 

ニホ「ふぅ……間に合って良かったよ…」

 

 

光太郎「ありがとう……ん…巫女装束…?」

 

ニホ「…これのこと?」

 

ニホンオオカミは袖を掴み、その場で回ってみせた。

 

厳密に言えば巫女装束とは異なる箇所があるだろうが、イメージはそんな感じだろう。

 

光太郎「それそれ……似合ってるよ」

 

ニホ「本当!? やったぁ!」

 

 

 

 

ルペラ「……?」

 

ニホ「ルペラ、どうしたの?」

 

ルペラ「そっちの草むらから、誰かの気配が…」

 

 

?「…流石ですね、ルペラさん…」

 

 

草むらから、3人の見知ったフレンズが出て来た。

 

光太郎「ハシブトガラスさん!? どうしてここに…」

 

ハシブトガラス「あなた方の様子が、ボスから映し出されていたので。何かお手伝い出来る事がないかと思いましてね。」

 

ルペラ「そうでしたか……映し出され…え…?」

 

?「ナカベの皆さんが避難しているバイパス内でー、ボスさんがあなた達の事を映してたんですよー。もう上映会ですー」

 

光太郎「えぇ…ってコアラさん!?」

 

コアラ「どうもー、私も来ちゃってますー。 そうそう、あなた達の映像…今は私達もですが、きっとパーク中で映されてますよー」

 

ルペラ「ですが一体何のために……」

 

ニホ「ボス…盗撮はダメだよッ!」

 

ボス「盗撮はしてないヨ!」

 

 

ハシブト「…それにしても、あのセルリアンを相手取るのですか…」

 

ニホ「うん…けど、戦い方は分かってるの」

 

光太郎「…そうなの?」

 

ニホ「うん、この服に変わった時に…こう……バァーッていうか…ブワァーッていうか……とにかく何をしたら良いかわかったの!」

 

ルペラ「因みに、何をするのですか?」

 

ニホ「えっとね…私がセルリアンの動きを止めるから、その間に光太郎とルペラがスザクさんの輝きを取り戻す」

 

ハシブト「色々と待ってください…ニホンオオカミさん1人では、あのセルリアンの動きを封じるのは困難です…それに、スザクさんの輝きを取り戻すって、一体どうやって…」

 

ニホ「それはね…ルペラ、あの小刀、鞘から抜いてみて?」

 

ルペラ「良いですけど…確か前に抜こうとした時は、錆び付いてて抜けなかった筈でしたが…」

 

ニホ「そう、あの時は抜けなかった…けどね…」

 

ルペラが鞘から小刀を引き抜いた。あの時とは違い、錆が剥がれながら、その刃は鞘から抜けた。

 

ルペラ「これは…!」

 

鞘から抜けて、初めて知った。

 

刃の付け根に、薄く赤みがかった勾玉が埋め込まれていた。

 

ニホ「…これを使えば、あのセルリアンからスザクさんの力を取り返す事が出来る。」

 

光太郎「凄い…けど、どうして今になった抜けるように?」

 

ニホ「多分、使うべき時が来たから…かな。」

 

ルペラ「……そういえば、先程セルリアンの動きを封じると言っていましたが…一体どうやって?」

 

ニホ「何かね、結界の応用?みたいなので、あのセルリアンを抑え込めるみたい。」

 

光太郎「結界!? それじゃニホニホが…」

 

ニホ「…大丈夫! 危なくなる前に、光太郎達がズバッと解決してくれる…そうでしょ?」

 

光太郎「けど……もし間に合わなかったら…」

 

ニホ「…もし、あのセルリアンが"ここ"を支配したら、私達は生きていけない。 どっちにしろ命に関わるなら、私は少しでもみんなの被害を抑えたい。守りたいの。」

 

ルペラ「………光太郎様、応えましょう。ニホンオオカミさんの期待に。」

 

光太郎「…そうだね。 折角の期待と覚悟を、無視なんて出来ないよね。」

 

ニホ「ありがとう、ルペラ、光太郎。 私もできる限りサポートするから!」

 

ハシブト「…私が光太郎さんを、セルリアンの元へ送り届ける事は…」

 

ボス「ソレは難しいネ。あのセルリアンの周囲にハ、高濃度のセルリウムが空気中に漂ってイテ、恐らく何の対策もしていないフレンズが触れるト、即刻フレンズ化が解除、元の動物の姿に戻ってしまうヨ。」

 

ハシブト「ならどうして、光太郎さん達はセルリアンの元へ…?」

 

ボス「光太郎、ニホンオオカミ、グアダルーペカラカラは、ゲンブと接触した事、御守りに輝きガ込められている事、コレらの事が重なっテ、ある種のセルリウムに対する抗体が出来ているんダ。 それでも、有害な事に変わりはないかラ、長時間セルリウムに晒される事は命の危機に繋がるヨ。」

 

光太郎「なんだ…ニホニホと俺達、危険はトントンって訳か。 ニホニホだけに危険を背負わせる訳じゃないなら…安心したよ。」

 

ボス「ハシブトガラスとコアラは、ニホンオオカミの護衛にあたってくれるかナ? もし何か危ない事が起きたら、山の麓に建物があるかラ、そこに避難しよう。 光太郎達も、スザクの輝きを取り戻し次第、すぐに戻って来てネ。」

 

 

 

作戦が始まった。俺はルペラに抱えられ邪神セルリアンの元へ、ニホニホは祠で邪神セルリアンの動きを封じる準備を進めていた。

 

 

 

-上空-

 

 

ルペラ「光太郎様、怖いですか?」

 

光太郎「…唐突だね。 でもまぁ…正直怖いよ。」

 

ルペラ「奇遇ですね、私もです。」

 

その言葉に嘘偽りは無い。ルペラの手が小さく震えていることが、それを物語っている。

 

ルペラ「まさか、あなたがヒトだからこそ出来る作戦だったとは思いませんでしたよ……出来る事なら、私があなたの代わりになりたいですよ…」

 

 ヒトだから出来る作戦…かつてかばんさんが黒セルリアンから救出された際、フレンズ化が殆ど解けていたにも関わらず、記憶を保っていた。

 この事から、ヒトである自分なら、ルペラよりも長い時間セルリアンの体表に居ても影響は少ないと考えた。 少なくとも、フレンズ化が解けたらとしても自分は自分でいられる。

 

ルペラ「…! 来ます!」

 

邪神セルリアンが動き始めた。

 

 

-山腹、祠-

 

 

ニホ「セルリアンが…!」

 

ハシブト「始めますか?」

 

ニホ「勿論! 少しの間、私の体は頼んだよ。」

 

コアラ「任せてくださいー、頑張って守りますよー!」

 

 邪神セルリアンの動きを封じている間、ニホンオオカミは無防備になる。少しでも心が乱れれば、邪神セルリアンを抑える力が弱まってしまうからだ。

 

 ニホンオオカミは両腕を胸の前で交差させ、呼吸を整えた。

 

 勾玉が光りはじめ、辺りを明るく照らし始めた。

 

 

-邪神セルリアン付近、上空-

 

 

 触手に追われる光太郎とルペラ、羽根で牽制しようとするも、いまいち効果が見られない。

 

ルペラ「このままじゃ埒が明かない…!」

 

 しかし、だんだんと触手の動きが鈍くなっていった。

 

光太郎「…ニホニホか…!」

 

 突然邪神セルリアンは視線を光太郎達に向けた。

 

ルペラ「…あとは頼みましたよ、光太郎様!! 必ず迎えに行きますから!」

 

 ルペラは光太郎を邪神セルリアンの身体に取り付かせ、邪神セルリアンの気を引くべく、その周りを飛び回った。

 

 

 光太郎は、ルペラから託された小刀を、邪神セルリアンの身体に突き立てた。

 

光太郎「ニホニホの言葉通りなら、これで…!」

 

 次第に小刀は赤い光りを纏いはじめ、勾玉が色付く。

 

 …邪神セルリアンの顔の先端が紫色に光り始めた。

 

光太郎「何…あの光…」

 

 すると、邪神セルリアンは唐突にその視線をニホンオオカミに向けた。

 

ルペラ「しまっ…!」

 

 本能的に感じた、その紫色の光への恐怖。

 

 一筋の光が、邪神セルリアンから放たれた。

 

 

-山腹、祠-

 

 

ニホ「!?」

 

 ニホンオオカミは両腕を突き出し、目の前に結界を張った。 光の筋が結界に当たり、その衝撃が伝わる。

 

 弾かれた一部の光が辺りに飛び散る。辺りの草木は枯れ、灰の様に崩れていった。

 

ニホ(こんなのがここ(パーク)に直撃したら…みんなが……みんなの住む場所が…!)

 

ニホ「ハシブトガラス!コアラ! 早くどこかに隠れて!」

 

ハシブト「ですが、それではニホンオオカミさんが!」

 

ニホ「私は…大丈夫!! それに……」

 

 結界はより大きく、分厚く、強い光を放っていた。 それを支えるかのように、勾玉もまた、より強く光り輝いていた。

 

ニホ「私は……みんなを守りたいからぁぁァァァッ!!!!」

 

 尚も途切れない紫の光。

 

 次第に結界に亀裂が入り、欠ける。 その影響がニホンオオカミに現れ、頬が傷つき、血が滲む。

 

 地は抉れ、砂塵が舞う。

 

ニホ「こんなところで…諦めてたまるかァ…!!」

 

 結界を穿つ一部の紫の光が、ニホンオオカミを掠める。 掠めた場所は血すら流れず、石化していった。

 

 邪神セルリアンの放つ光が、より一層強く、太くなった。

 

 

 ニホンオオカミの元へ、一体のラッキービーストが近寄る。液晶部分は赤黒く変色し、挙動もおかしい。

 

 

 光の威力に耐えきれなくなった結界は砕け、ニホンオオカミは紫の光に包まれた。

 

 

-アンインエリア、バイパス兼シェルター内-

 

 

アルバニーアダー「……おい…ウソ……だよな…?」

 

膝から崩れ落ちるアルバニーアダー。 視線の先には、ニホンオオカミが紫の光に包まれる映像が映し出された壁があった。




Ep.EX「送り、送られる狼」


 作戦決行前、彼女が私と2人きりで話したいと言った。

 他のフレンズたちには一体この場を離れてもらい、少しの時間だが、2人だけの時間を作った。

「…まさか、こんなことになるとは思わなかったよ…」

 私は彼女へ、旅に出た事を後悔しているか。そう聞いてみた。

「そんな事ないよ。沢山の気になるものを見つけられたし、こうして昔のヒト達の想いにも触れられた。」

「ただ、最初の出逢いから、こんな大きな規模の戦いに挑む事になるなんて、全く想像できなかったからさ。」

「…光太郎と、ルペラと、ボス…みんなに会えて、本当に良かった。」

 彼女は、本当に楽しそうに話す。 話が途切れないように、沢山話す。

「あっ…ごめん、つい一方的に話しちゃった…」

 特に問題は無いが、いつにも増して良く話すのは何故か。少し聞いてみた。

「……もしかしたら、これが最後のお話になるかもしれないと思うと…話が終わったら、戦いに行くと思うと…」

「…こんなワガママ、良くないよね。 けど、ここで別れたら、ずっとそのままになる気がしちゃって…」

 今回ばかりは、相手が相手だ。 正直、前向きで居続けろだなんて言える状況ではない。 私とて、いつも以上に、この戦いに恐怖を感じている。 恐らく、ルペラも…

「…ねぇ、もう少しだけ、私のワガママに付き合ってくれない…?」

 そう言うと彼女は私へ抱きついた。

「………やっぱり……怖いよ…」

 その声は震え、息遣いは荒くなっていた。

「今更こんな事言ってる場合じゃないのは分かってる……だけど…!」

「…だけど……」

 私は、彼女の頭を撫でた。 今の私には、それくらいしか出来ない。

「…やっぱり……光太郎は優しいなぁ……」

「………私、覚悟決めたよ…」

「私は守る…光太郎も、ルペラも…このパークも……」

「だから約束して? 絶対、無事に帰ってきて。」

 私は頷いた。 その姿をみて、彼女は安堵の表情を見せた。

「…よし…光太郎、一緒に頑張ろッ!」

 彼女は私に、サムズアップをしてみせた。


〜数十分後、邪神セルリアン体表〜


ニホンオオカミは、紫色の光に包まれた。


 私は、恨んだ。 彼女が背負わされたもの、彼女に背負わせてしまったものを。

 私は、憎んだ。 正義、悪など関係無い。 今、目の前に居る悪魔を、直ぐにでも殺めたい。

 私は、後悔した。 彼女を送り出した事を。

 私は…


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Ep.26「生態系消滅」

 アンインエリアのバイパス内に、アルバニーアダーの慟哭が響き渡った。

 

 

ペルシュロン「アルバニー…」

 

アルバニーアダー「何が大丈夫だ………何が……クソォッ!!」

 

 アルバニーアダーは、ラッキービーストを掴み上げた。

 

アルバニーアダー「お前ェ…デマ流してねぇだろうなぁ…」

 

オグロヅル「アルバニーさん、落ち着いてください…」

 

アルバニーアダー「落ち着いてられっか! こんなの見せられてよ…」

 

 不意にアルバニーアダーは、バイパスの中を小走りし始めた。

 

ペルシュロン「どこに行くんだ、アルバニー…?」

 

アルバニーアダー「……そんなの…決まってんだろ…」

 

 

-同時刻、カントーエリア-

 

 

ルペラ「ニホンオオカミさん!!?」

 

 

 遠くからではあったが、ルペラは確かにその瞬間を見てしまった。

 

 

ルペラ「………光太郎様! …頼みましたよ…!」

 

 

 光太郎は大きく頷き、セルリアンに刺さっている小刀を、より深く力強くねじ込んだ。

 

光太郎「…スザクさん…! どうか…どうか帰ってきてください!!」

 

 苦しみ始める邪神セルリアン、触手の動きも更に鈍くなり、力を失っているのが目に見えた。

 

 

 

-同エリア、祠-

 

 

 

 砂塵が渦巻く中、祠の前に立ち尽くす、1人のフレンズがいた。

 

 フレンズは血の涙を流し、服の一部は灰の様に散り、その右腕は赤黒く血塗られていた。

 

 震える拳を交差させ、必死な形相で何かを念じていた。

 

 

ハシブト「…ニホンオオカミさん!?」

 

 

 ニホンオオカミの元へ駆け寄るハシブトガラスとコアラ。 

 

 

ボス「危険ダヨ! 離れテ!」

 

 

 その警告の意味が分かったのは、それから数秒後の事だった。

 

 

ハシブト「痛ッ…!」

 

 

 ハシブトガラスの差し伸べた手に、痺れるような痛みが走った。

 

 ニホンオオカミの周りには、結界が張られていた。

 

ハシブト「……まさか…」

 

コアラ「…ハシブトガラスさん、大丈夫ですかー!?」

 

ハシブト「はい…私の方は。ただ、ニホンオオカミさんが…」

 

コアラ「ニホンオオカミさん…どうして…」

 

ハシブト「…今、ニホンオオカミさんは…あのセルリアンの動きを封じているんです… 恐らくこの場から離れれば、この集中を解いたら、あのセルリアンは…また本格的に活動を始めてしまいます。」

 

コアラ「ですが、今のままだと危ないですよ…」

 

ハシブト「えぇ、その事は彼女が一番分かっている筈です。 …彼女は、命懸けでパークを守っているんです。」

 

 ハシブトガラスは、邪神セルリアンへ視線を向けた。

 

ハシブト「コアラさんも見ましたよね、あの光線… あくまでも憶測に過ぎませんが、あの光線は命を…命という輝きを奪うものだと思うんです…」

 

コアラ「…だから、周りの木とか草が灰みたいに…」

 

ハシブト「もし、あの光線がパークに直撃していたら……」

 

 

 最悪の結末が、ハシブトガラスの頭を過った。

 

 

 その頃、光太郎は、もがく邪神セルリアンの揺れに耐えながら、勾玉が満たされる刻を待ち続けていた。

 

 

光太郎「………!?」

 

 

 小刀に埋め込まれた勾玉が、一際強い光を放った。 それと同時に、邪神セルリアンの体表が崩れ始めた。

 

光太郎「ルペラ!!」

 

ルペラ「今行きます!!」

 

 小型のセルリアンの群や邪神セルリアンの触手を掻い潜り、光太郎の元へ向かう。

 

 伸ばしたその手が、光太郎の手を取ろうとした瞬間、光太郎の腕に何かが巻き付いた。

 

ルペラ「光太郎様!?」

 

 邪神セルリアンの身体から生えた触手は、光太郎を掲げ上げた。

 

光太郎「…ルペラ、コレは頼んだよ…!」

 

 光太郎は鞘に収めた小刀を、ルペラへ投げ渡した。

 

 小刀を受け取りながらも、尚も光太郎の元へ向かうルペラ。

 

ルペラ「私は…あなたの事を諦めたくありません! もう二度と…あなたを失いたくない……だか…うッ…!」

 

 ルペラの首には、一本の触手が巻き付いていた。 その触手はルペラを、パーク本土に向けて投げ捨てると、邪神セルリアンの身体の中へ消えていった。

 

 

 

 パーク中に戦いの様子が映し出される中、見せしめの如く掲げられた光太郎。

 

 邪神セルリアンの頭頂部に亀裂が走り、砕ける。 砕けて空いた孔からは、無数の細い触手が溢れるように蠢き這い出る。

 

 その触手は、一斉に光太郎に向かって伸びていった。 腕に、脚に、首に。あらゆる箇所に巻き付き、締め付け、包み込んでいく。

 

 光太郎を拘束していた太い触手は離れ、次第に光太郎を包み込む細長い触手は、光太郎ごと邪神セルリアンの頭頂部へ入り込んでいった。

 

 

 邪神セルリアンは、唸りを上げた。

 

 

-キョウシュウエリア、バイパス内-

 

 

 この地でも、前線の様子が映し出されていた。

 

 

博士「…………あんなの……あんなの、デタラメなのです……」

 

助手「……今までの、どのセルリアンにも当て嵌まらない特徴……あの目……」

 

 

ヒグマ「まるで、俺たちを見下してるみたいだな。」

 

 

博士「……ヒグマ、来ていたんですか。」

 

ヒグマ「まぁ……こんな狭い場所でなら、嫌でも会話は聞こえるからな。」

 

博士「すみません……取り乱しました…」

 

ヒグマ「別に咎めたい訳じゃない。 今回は相手が相手だ……誰だって怖いさ。」

 

ジャック「だからって、逃げる訳にはいかない。」

 

ヒグマ「ジャック……」

 

ジャック「少なくとも、俺たちはな。 戦いに自信の無いフレンズは別だが……」

 

 

 バイパスの奥から、足音が聞こえる。 2人だろうか。 足音だけで分かるほど、その足音の主は焦っていた。

 

 

かばん「皆さん! バリケードになりそうな物、ありますか!?」

 

博士「かばん!? 一体何が……」

 

サーバル「空のセルリアンが降りてきたんだよ! しかも…」

 

 

助手「しかも……?」

 

 

サーバル「私たちみたいな形になってるんだよ……!!」



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Ep.27「1900.想いを抱いて」

 かばん、サーバルの言葉に、その場が凍り付く。

 

ヒグマ「……ジャック……」

 

ジャック「分かってる……ハンターとして、戦えないやつらを守る。 戦えないやつらの分まで戦う。 そうだろ?」

 

ヒグマ「…博士達はバリケードの手伝いを頼む。」

 

ジャック「バリケードさえ組んでおけば、ある程度は気が楽だろ。」

 

オオコウモリ「何だったら、セルリアン共壊滅させちゃう?」

 

リカオン「確かに、私たちでセルリアンを壊滅させることに越したことはないですが…」

 

リンカルス「そう易々とはいかないだろ……」

 

キンシコウ「ですが、私たちに出来る事はやりましょう?」

 

 

 いつの間にか、オオコウモリ達も来ていた。

 

 

ジャック「お前ら……」

 

オオコウモリ「さっ、善は急げってね! とっとと行って、とっとと片付けよッ!」

 

 オオコウモリに手を引かれ、ジャックはその場から消えた。 その後を追うように、ヒグマ達も現場へ向かった。

 

博士「……バリケードになる物なら、ありますよ。」

 

かばん「本当ですか!?」

 

博士「えぇ、少し前に見つけたバス……の残骸。 アレなら、バリケードにはなるはずなのです。」

 

サーバル「じゃあ、それは私が持ってくから、かばんちゃん達はここで待っ……」

 

かばん「サーバルちゃん、僕も行くよ。」

 

サーバル「ダメだよかばんちゃん! 本当に危ないよ!」

 

かばん「……でも、僕は…僕に出来る事をしたい。 その気持ちは、あの時と変わらないよ。 サーバルちゃんに心配をかけるのは嫌だけど……サーバルちゃんだけが危ない目に遭うのは、もっと嫌。 僕だって、援護くらいは出来るから……だから……」

 

サーバル「かばんちゃん……」

 

ボス「サーバル、かばん、バリケードを作ったラ、ハンターのみんなト一緒に避難しよウ。 それデ良いかナ?」

 

サーバル「ボス……分かった。 かばんちゃん、危なくなったら、すぐに避難してね。」

 

かばん「うん、サーバルちゃんもね。」

 

 

 

-同エリア同バイパス内-

 

 

 

 対セルリアン用バリケード作戦、決行。

 

 

バリケードを背に、二つのハンターは構えていた。

 

 

オオコウモリ「さて……と、ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張るぞぉぉ!!」

 

リンカルス「最後の力が枯れるまで…?」

 

ジャック「……ここからは、一歩も下がらん。」

 

キンシコウ「……セルリアン、来ます!」

 

 

 空から降って来る、ヒト型のセルリアン。

 地に落ちた瞬間の音は、決して気持ちの良いものではない。

 

 

リカオン「……相手がヒト型ってだけで、こんなに戦いにくいものなんですね…」

 

ヒグマ「……だが、やらなきゃ、殺られる。 気合い入れていけ…」

 

 

 武器を握る拳に、力が籠る。

 

 

-カントーエリア-

 

 

 邪神セルリアンの中心の外骨格が砕け、その両側の巻貝状の巨大な器官は、外骨格からの抑圧から解放され溢れる肉塊に押し広げられた。 肉塊と繋がった頭部はせり出し、その頭部はより有機的で生物的な……蛇に似た顔になっていた。 2対の黄色い目を光らせ、弾かれたルペラを見つめる。

 

 触手を振るい、辺りの岩礁や船着場を粉砕していた。

 

 

ルペラ「………そんな……」

 

 

 ルペラの目線の先には、邪神セルリアンの額…更には、そこに磔にされている光太郎の姿があった。

 

 彼の日の出来事が頭を過ぎる。

 

 痛む身体に鞭打ち、まだ自分が羽ばたけるかを確認する。

 

 

 飛べる。 まだ飛べる。 私は……

 

 

ルペラ「私は……まだ、堕ちる訳にはいかないんです…!」

 

 

 力を振り絞り、羽ばたく。

 

 その様は、天使と呼ぶには程遠く、むしろ悪魔と呼ぶに相応しい。 己の血に塗れ、傷を負い、執念に満ちた眼光と共にセルリアンへ向かって行く様は。

 

 

ルペラ「悪魔には……悪魔だ。」

 

 

 ルペラの胸元の御守りが赤く点滅する。

 

 羽ばたく度に点滅の速度は加速し、ルペラの肉体が"あの時"の様に変わっていく。

 

 ルペラに向かって振われる触手。 その先端は、刃物の様に鋭利になっていた。

 

 

 触手の先端が、ルペラの脚を掠める。

 

 

 ルペラは、自身の身体が少し軽くなるのを感じた。

 

 その次の瞬間に訪れる、左脚の痛み。

 

 痛みに反応し、脚を見てみると、そこに左脚は無い。 ただ、鮮血が溢れかえるのみ。

 

 

 その痛みすらも二の次にするほど、ルペラは追い詰められていた。

 

 

 ただ、想い人を救う為に。

 

 

 そう強く思うと、胸元が赤く光り始めた。 御守りとは別の光だ。

 

 

 

 ふと、左脚の痛みが消える。 それと同時に、左脚の感覚が戻る。 左脚が生えていた。

 

 

ルペラ「これなら……」

 

 

 その瞬間から、ルペラは触手を避けるのをやめた。

 

 光太郎の元へ、真っ直ぐに向かうルペラ。

 

 腕が欠け、脚が折られ、羽が捥げ…その度に痛みを伴う再生を繰り返す。

 

 ヒトよりも、フレンズよりも、更には並のセルリアンをも凌駕する再生速度。

 

 光太郎の目の前に来る頃には、痛みの感覚すら麻痺していた。

 

 ルペラは、邪神セルリアンの額に降り立ち、触手に覆われた光太郎に寄り添った。

 

 

ルペラ「光太郎様……ごめんなさい、遅れてしまいました……さぁ、一緒に帰りましょう…」

 

 

 光太郎を覆う触手を裂くルペラ。 しかし、触手は再生し、更に強度を増す。

 

 

ルペラ「……今…助けますね……」

 

 

 黙々と触手を千切るルペラ。 声をかけ続けるも、一向に反応が無い。

 

 

ルペラ「……返事………してくださいよ。 いつもみたいに……」

 

 

 段々とか細くなる声、潤む目。 ルペラにとっての最悪の結末が、頭から離れない。

 

 

ルペラ「…………まだ、あなたとやりたい事が沢山あるんです……こんな所で終わりになんてしたくありません……だから…!」

 

 

「…ルペ…ラ……?」

 

 

 ほんの数分前に聞いたばかりのはずなのに、その声はどうしようもなく懐かしく、暖かく思える。

 

 

ルペラ「光太郎様…!?」

 

光太郎「ルペラ……! そこに居るの?」

 

ルペラ「えぇ、今ここに…! 良かった……本当に……今、助けますからね!」

 

 地獄の様な状況下で感じた妙な安心感。 だが、その違和感すら消え失せるほど、この再会は心底求めていたものだった。

 

 涙で視界が霞み、出会えた喜びで指先が震えながらも、一秒でも早くあの温もりを感じたい。 ただその一心で、限界の近い身体を動かしていた。

 

 次第に触手の再生速度が落ち、少しずつだが光太郎の顔が見えてくる。

 

ルペラ「光太郎様……やっと……」

 

 急に手の動きが止まる。

 

 

ルペラ「………光太郎様、ごめんなさい。」

 

 

 背後から強い衝撃を受け、腹部に鈍い痛みを感じる。 視線を腹部へ向けると、背を貫き赤黒い液体に塗れた触手が、腹を突き抜けうねっていた。 呼吸する度に、痛みが増す。 

 

 触手を伝い、まだ生暖かい血が、光太郎へ滴り落ちる。

 

光太郎「ルペラ……?」

 

ルペラ「………お怪我は……ありませんか……?」

 

光太郎「……まさか、分かってて避けなかったのか…?」

 

ルペラ「……だって、私が避けたら……あなたに刺さってしまうでしょう…?」

 

光太郎「だけど……!」

 

ルペラ「そんな…泣かないでくださいよ。 もし私が生き残っても、あなたがこの世にいなければ何の意味もない……」

 

光太郎「……もっと…自分を大切にしてよ……」

 

ルペラ「私はあくまでも、私自身の想いを大切にしたまでですよ……もう二度とあなたを失いたくない、この想いを…」

 

光太郎「嫌だよ……ルペラがいなくなるなんて……」

 

ルペラ「……私は、幸せ者ですね。 友に恵まれ、家族に恵まれ……こんなにも死を悲しんでもらえるなんて。 ……安心してください……必ず、迎えに行きますから……」

 

 

 彼女の顔は、終始穏やかな笑顔だった。

 

 

ルペラ「……あなたが私を憶えている限り、私はいつもあなたの側に…」

 

 

 触手が引き抜かれた。 それに伴い、ルペラの身体が宙へ投げ出される。

 

 投げ出されたルペラを、触手が弾き飛ばす。

 

 

-同エリア、海岸付近瓦礫群-

 

 

…傷が痛む。 貫かれた傷以外にも、この瓦礫に叩きつけられた事での傷も痛む。 何が原因なのか、さっきまでの回復力が無かったことの様に思えるくらい、傷が癒えない。

 

 

 

 

 …寒くなってきた。 ただでさえ流血が治らないのに、海風や波の飛沫が体温を奪う。

 

 

 

 …視界が暗くなってきた。 ただぼんやりと、きいろい光が見える。 それ以上に、頭上に見えないはずの北斗七星が見える……むしろ、そのとなりに輝く蒼星が、北斗七星すらかすむほどに……

 

 

 

 …四肢の先がしびれてきた。 そろそろ限界か?

 

 

 

 

 ……治らない。 キズも。 今、まぶたが開いているのかすら分からない。

 

 

 

 

 

 

 …………こえが、きこえる。 ダレかが、よんでいる。 ダレのコエ?

 

 

 

 

 

 ………………せめテ、モうイちど、アのヒトと……



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Ep.Final「輝ける"けもの"たちへ」

〜十数分前、山腹部〜

 

 

 ルペラが堕ちる数分前、1人のフレンズが限界を迎えていた。

 

 震える足で無理矢理立ち、痩せ細った腕は交差させる事で精一杯。

 

 自身を覆う結界も崩れ去った。

 

 

ハシブト「ニホンオオカミ……さん……?」

 

 

 膝から崩れ落ちるニホンオオカミ、その目には涙を浮かべていた。

 

 ハシブトガラスはニホンオオカミの元へ駆け寄り、何とか支える事が出来た。

 

 

ニホ「……ごめん………私は…大丈夫だから……」

 

コアラ「大丈夫じゃないですよー! 早く避難しましょー!」

 

ニホ「でも……私が頑張らなきゃ……ルペラが…! だって…光太郎は……」

 

 あの光景が、網膜に焼き付いている。

 

ボス「ニホンオオカミ、今は退いた方が良いヨ。」

 

ニホ「ボスまで……」

 

ボス「……今のセルリアンは、ニホンオオカミの力ではどうにも出来ないんダ。」

 

ニホ「どうして!? だって、四神のみんなの力が……」

 

 ニホンオオカミが首元から提げた勾玉を見ると、どれも灰色に変色していた。

 

ニホ「……何で…?」

 

ボス「……あのセルリアンが撃った光線、アレからニホンオオカミを守る為に力を使い果たしたんダ。」

 

ニホ「そんな……私のために……」

 

 

 ニホンオオカミの嗅覚が、嫌な匂いを捉えた。

 

 

ハシブト「……ニホンオオカミさん?」

 

ニホ「…………ルペラ…?」

 

 ニホンオオカミの視線の遥か先には、背を貫かれたルペラの姿があった。

 

 おぼつかない脚で走り出すニホンオオカミ。 その目はただ一心に、ルペラを捉えていた。

 

 

-同エリア、海岸付近瓦礫群-

 

 

 ニホンオオカミがその場へ辿り着く数分前、ルペラが堕ちた。

 

 

ニホ「ルペラ……ルペラどこ…!?」

 

 漂う血と潮の香り、感覚を研ぎ澄ませ、ルペラを捜す。

 

 後を追って駆けつけたハシブトガラス達も、ルペラを捜していた。

 

 

ニホ「……ルペラいた!!」

 

 ルペラを見つけ、躓きながらも駆け寄るニホンオオカミ。

 

 紅く染まった瓦礫に埋まる姿は、戦いの過酷さや痛みを表している様だった。

 

 その手には、小刀が硬く握られていた。

 

 瓦礫の中からルペラを出し、比較的平坦な場所で寝かせる。

 

 出血量を抑える為、胴に布を巻く。

 

 呼吸が無い。

 

 コアラの指示で、気道確保の体制をとらせた。

 

ニホ「ルペラ…! ねぇ…起きてよ…」

 

 ルペラの顔に付いた血を拭い、声を掛け続ける。

 

ニホ「ルペラ…? 手が冷たい……そっか、寒いんだね。 ちょっと待ってて…」

 

 自分の着ている衣を脱ぎ、ルペラへ掛ける。

 

ボス「ニホンオオカミ、ボクにもグアダルーペカラカラを見せてくれないかナ?」

 

ニホ「うん…」

 

 ニホンオオカミはラッキービーストを抱えた。

 

 ラッキービーストからは、微かに機械音が聞こえる。

 

ボス「…………ニホンオオカミ、ハシブトガラス、コアラ。 落ち着いて聞いテ。」

 

 ただでさえ重かった空気が、更に空気が重くなる。

 

 それぞれが、次に続く言葉を予想する。

 

ボス「グアダルーペカラカラ、ルペラは……」

 

 

-キョウシュウエリア、バイパス内-

 

 

「……行きましょ。」

 

 1人の鳥のフレンズが、バイパスの出口へ向かった。

 

イヌワシ「待てよ、行くって言ったって……」

 

ゴマバラワシ「……私は、あの子の悲鳴を聴くのは好き。 だけど、あんなに痛めつけられる姿には反吐が出る。」

 

イヌワシ「外は危ないって言われてるだろ?」

 

ゴマバラワシ「えぇ、十分分かっているつもりよ。 だけど、今のあの子を放っておく訳にもいかない。」

 

イヌワシ「……それもそうだな。」

 

 

 

「今日はずいぶんとクールじゃ無いのね、気持ちは分かるけど…」

 

 ゴマバラワシ達の背後に、3人のフレンズが立っていた。 よく見知った相手、スカイインパルスの3人だ。

 

ハクトウワシ「あなた達はどうしたいのかしら?」

 

ハヤブサ「もし行動に移すなら、速い方が良い。」

 

ゴマバラワシ「……当然、あの子の仇を討つのよ。」

 

オオタカ「あなた達2人で行くつもり?」

 

イヌワシ「……当たり前だ。 ルペラは、オレ達の仲間だからな。」

 

オオタカ「なら……私達も着いて行くわ。」

 

ゴマバラワシ「……危険だと思うけど、それでも?」

 

 巻き込みたくないが故か、高圧的な口になる。

 

ハクトウワシ「オフコース! 私達だって、ルペラの友達だもの。」

 

ハヤブサ「私の速さなら、少しは状況を有利に出来るかもしれない。」

 

ゴマバラワシ「……全く……とんだ変わり者の集団ね、そこのあなた達も。」

 

 ゴマバラワシが、バイパス内に置かれた荷物を指さした。

 

ゴマバラワシ「あなた達は……ニホンオオカミを助けたい。 ……でしょう?」

 

「成る程、私達の考えはお見通しって訳か……」

 

 荷物の陰からは、タイリクオオカミが、そしてその後を追う様にしてオオカミ連盟の面々が現れた。

 

タイリクオオカミ「まぁ、これだけの人数が集まってれば、それなりの気配にはなるのかな?」

 

ゴマバラワシ「えぇ。 それに、フレンズになった今でも野生の感覚は衰えてないつもりよ。」

 

タイリクオオカミ「……それで、その野生の感覚もルペラを助けたいと言っているのかい?」

 

ゴマバラワシ「……あの子を助けたい気持ちは、単にフレンズとしての私の感情よ。」

 

タイリクオオカミ「……フレンズとなった事で、今までは繋ぐ事が出来なかった手を繋ぐ事が出来る。 ……私達オオカミと、君達猛禽類も。」

 

ゴマバラワシ「つまりは、協力してくれるって訳ね?」

 

タイリクオオカミ「そういう事。 それじゃ、行動を始めようか……」

 

 

-ナカベエリア、バイパス内-

 

 

ショウ 「……ドワーフサイレンちゃん、怖くないの…?」

 

サイレン「怖くないでちゅよ。 だって、ルペラお姉ちゃんがいるから…」

 

ショウ「ルペラさん……」

 

サイレン「……きっと……大丈夫でちゅよ……サイレンは、お姉ちゃんを信じてまちゅ……」

 

 

-カントーエリア、邪神セルリアン頭部内-

 

 

 あれから、どれだけの時間が経ったのだろうか。

 

 視界は再び塞がれ、闇が広がる。

 

 ……背後に、何者かの気配を感じた。

 

『秋月光太郎……』

 

 声が響く。 聞いた事の無い声だった。

 

『どうだ……何も出来ずに、ただただ守りたいものが壊されていく感覚は……』

 

 お前は誰だ?

 

『今更名乗る必要も無かろう……』

 

 まさか……

 

『……お前には感謝しているぞ。』

 

 感謝……? そんなことをされる覚えは無い。

 

『そうか、ならば教えてやろう……』

 

『今こうしてお前を取り込んでいる事で、俺はより強く、強靭になる……』

 

『お前らや、あの一族が言う"愛"や"絆"は輝きとして、セルリアンであるこの肉体の力となる。 そしてお前の抱いた怒りや憎しみ、悲しみはマイナスエネルギーとして、俺自身の力となる……』

 

『お前の如何なる感情も、俺の力となり、お前の大切なものを破壊する!!』

 

 そんな、そんなバカな話があってたまるか……!

 

 それじゃ、ルペラが傷付いたのも……

 

『そうだ。 お前があの女を想ったことで俺の肉体は力を付け、あの女を殺した! お前が、あの女を殺したんだよ……!』

 

 嘲笑うかの様に語りかける声。

 

『悔しいか。 その感情すらも、俺の力になる…… 直に、セルリアンとしての肉体は用済みとなる。』

 

『それに、お前達が今まで倒してきた各エリアの巨大セルリアン…… アイツらはな、輝きやマイナスエネルギーを溜め込み、倒された時にその全てを俺に送る様に改造してあったのだよ…… お前達は初めから、俺に利用されていたのだ……』

 

『再び、我らヤプール人のための肉体を作り上げ、あの憎き一族に復讐をする……! お前も、お前の守りたいものも、この星も……全ては俺の復讐の踏み台に過ぎない!!」

 

『……安心しろ。 いかにお前が死のうとも、俺の力で無理矢理にでも生かしてやる……』

 

『復讐が終わるまで、俺の道具として使わせてもらおう……』

 

 その後、高笑いと共に声の主の気配は消えた。

 

 自分が生きている限り、感情がある限り、この悪魔に力を与える事になる。

 

 ただ利用される為に生かされ続ける……

 

 俺はもう、何も……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、私を殺した相手がこんな所で折れるとはな……」

 

 また声が聞こえる……

 

「これでは、"女王"と言う名も丸潰れだな。 ……まぁ、"元"女王と言った方が正しいか。」

 

 女王……確かに倒した筈……

 

「……その感じだと、私が生きている事に疑問を持っているようだな。」

 

「あの時、お前に打ち込んだセルリアン。 アレはお前を洗脳するのと同時に、私のバックアップとしての機能も備えていた。 私の命令次第では、お前の身体を乗っ取り、私の代わりに働いてもらう事だって出来た。」

 

 だけど、ルペラが付けてくれた傷からセルリアンは流れ出ていた……

 

「……はぁ……撃ち込んだセルリアンが、たかが一体だと思っていたのか? 戦っている最中にも、何度も撃ち込んでいた……」

 

「……お前が完全に死んで、それでも尚完全に記憶を保ち続けていたのは、お前の身体の中に残っていたセルリアンがお前の記憶を輝きとして保存し、それがバックアップとして働いていたからだ。」

 

「今回の場合、そのセルリアンが周りのセルリウムによって活性化し、私のバックアップとしての役割を果たしてくれた。 ちなみに今は、お前の脳の一部を乗っ取って話をしている。」

 

 ……そこまでして、俺を嗤いに来たのか……?

 

「そう捉えてくれても構わない。 ただ、嗤いついでに文句も垂れに来た。」

 

 文句……?

 

「お前の言う愛は、この程度の事で絶たれる物なのか? ただ利用されて、それで終わりなのか?」

 

 そんな事言われたって、今の俺にはどうする事も出来ない……

 

「そうだろうな。 今のお前には…… 抵抗する事を諦めたお前には、何一つできやしない。」

 

「お前の事を信じて戦ったヤツらも浮かばれないなぁ。 今だって、必死にお前を助けようとするヤツだって居るのに…… 肝心なお前がその調子じゃあ、助けようとするヤツも死ぬ。 お前が生きようと足掻かない限り、お前は助からないし、誰もお前を助けられない。」

 

 足掻けって……もう、身体も動かないよ……

 

「何も、身体で足掻く事だけが抵抗じゃない。 お前は、まんまとあの悪魔の口車に乗せられて、心で戦う選択肢を見失った。 お前は、"自分が殺した"、自分のせいで死んだ"と、自分を責める事しかしなかった。」

 

「自分を責めるだけじゃ何も変わらない……むしろ、悪魔の思う壺だ。 ……今、この化け物の身体はどんどんセルリアンという存在から離れていっている。 つまり、輝きは大してヤツの力にはならない。 逆に、マイナスエネルギーはより強力な力を、この化け物にもたらす。」

 

「あの悪魔が、パーク中のラッキービーストをクラッキングして前線の映像を流させているのも、フレンズ達に恐怖心を植え付けマイナスエネルギーを発生させる為なんだ。」

 

「だからこそ……お前は、信じていろ。 お前を助けようとするヤツらを、お前を信じるヤツらを。 そして願え、生きたいと。また、あの2人と旅をしたいと。」

 

 ……どうしてそこまで、俺を支えてくれるんだ……?

 

「……あの悪魔は、私達セルリアンをも利用した。 せめて元女王として、一矢報いてやりたくてな。」

 

「……それに、お前の言う愛は……この程度の物じゃないと…………俺も信じている。」

 

 女王……

 

「…………迎えが来たぞ。 我らの……」

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に光が広がる。 その光の中から、か細くも力強い手が差し伸べられた。

 

 その手を握ると、温もりを感じた。 それは、命ある者の温もりだった。

 

 その手は、俺を力強く引き抜いた。

 

 俺がその瞬間に観た物。 それは、白銀の天使だった。

 

 

〜十数分前、同エリア内海岸付近〜

 

 

ボス「ルペラは今、仮死状態ダヨ。」

 

ニホ「仮死状態……?」

 

ボス「ソウ。 普通ならコノ傷だと命は助からないはずんだ。 ダケド……ルペラの胸元を見てみテ。」

 

ニホ「ルペラの胸元……?」

 

 ニホンオオカミは、ルペラが首から下げているお守りを見つめた。

 

ボス「お守りの下、素肌を見てみテ。」

 

 ニホンオオカミは恐る恐る、ルペラのネクタイを外し、シャツのボタンを外していった。

 

ニホ「……!? これって……」

 

ハシブト「これは確か……」

 

 ルペラの胸には、あの赤い石が埋め込まれているかの様に付いていた。

 

ボス「……今はこの赤い石と、お守りに込められたスザクの力がルペラを生かしている状態ナンダ。」

 

ニホ「この石って一体なんなの……?」

 

ボス「……分からないんダ。 この星に存在する、どんな物質とも異なるモノ。 ただ、1番近いモノを挙げるとするなら……サンドスターかナ。」

 

コアラ「そんな凄い物がルペラさんの身体に……」

 

 

 突然、ニホンオオカミのお守りとルペラのお守りが光り始めた。

 

 

ニホ「えっ……?」

 

ボス「……ニホンオオカミ。 今、キミのお守りに込められたゲンブの力と、ルペラのお守りに込められたスザクの力が互いに引きつけ合っているんダ。」

 

ニホ「もし、2人の力が合わさったら……何が起こるの?」

 

ボス「……ボクにも分からないんダ。 タダ、何か起こるとするなラ……ア……」

 

ニホ「ボス……?」

 

ボス「注意! 注意! 大量のセルリアンがココに向かって来ているヨ!!」

 

ハシブト「そんな……こんな時に!」

 

ニホ「まさか……」

 

コアラ「ニホンオオカミさん!? 何か分かったんですかー!?」

 

ニホ「今になってセルリアンが向かってくる……それってもしかして、ゲンブさんとスザクさんの力が合わさるのを恐れてるって事じゃない!?」

 

ハシブト「なら、お二方の力が合わされば、きっと打開策に……ここは私達が足止めします!! ニホンオオカミさんは……奇跡を起こしてください!!」

 

ニホ「奇跡……分かった、やるだけやってみるよ!」

 

 ニホンオオカミ達を背に、ハシブトガラスとコアラはセルリアンへ向かっていった。

 

コアラ「私だって、戦えるんですよー!!!」

 

ハシブト「ヤタガラス様……どうか見ていてください。 私の戦いを……!」

 

 

 

 

 

 

 

ニホ「スザクさん、ゲンブさん……」

 

 ニホンオオカミは、ルペラの手を握った。

 

ニホ「ルペラ……!?」

 

 ……ルペラの手が、ニホンオオカミの手を握り返した。

 

ニホ「ルペラ!? ルペラなんだよね!!」

 

ルペラ「…………ニホンオオカミさん……」

 

ボス「!? 周囲一帯のサンドスター濃度が上昇!!」

 

ルペラ「…………また、戻ってきてしまいました……」

 

ニホ「……もう……ほんとに心配したんだよ……!」

 

ルペラ「ごめんなさい……逝きかけた所を、スザクさんともう1人……銀色の巨人が、引き止めてくれたんです。 だからこうして……」

 

 

 

ハシブト「ルペラさん!? 目覚めたんですね!!」

 

コアラ「け、怪我は大丈夫ですかぁー!?」

 

 

 

ルペラ「…………話の続きは、後で…… さぁ、ニホンオオカミさん。 私と……私達と一緒に、光太郎様を取り戻しましょう……!」

 

ニホ「うん……"一緒に"……取り戻そう。 光太郎も……あの日々も……!!」

 

 

 その瞬間、2人は光に包まれた。

 

 

ハシブト「……!? セルリアンが……」

 

 光に照らされたセルリアンが次々と消滅してゆく。

 

 光が収まると、さっきまで2人の居た場所には、1人のフレンズだけが立っていた。

 

 ニホンオオカミから生えていた様な尾と、ルペラから生えていた様な翼をもったそのフレンズは、邪神セルリアンを睨みつけた。

 

?「……行こう。」

 

 そのフレンズは光を放ちながら、邪神セルリアンの元へ飛んでいった。

 

ボス「……ニホンオオカミ、ルペラ……必ず、生きて帰ってきてネ……」

 

 

-同エリア、上空-

 

 

 邪神セルリアンへ向かう光のフレンズ。

 

 その光は、空を覆うセルリアンを少しずつ消滅させ、文字通り闇を切り裂き、光をもたらしていった。

 

 邪神セルリアンから生えた、無数の触手が振われる。

 

光「こんなもので足止め出来ると思わないでッ!!」

 

 頭部の翼の間に光が集まり、そこに手をかざすと、無数の回転する羽根が生成された。

 

 回転する羽根は、見方によっては光輪の様にも見える。

 

 その手を振るうと、羽根は触手に向かって一直線に向かっていった。

 

 羽根が火花を散らしながら触手を掠める。 すると触手は掠めた場所から真っ二つに切断された。

 

 触手の残骸をかわし、邪神セルリアンの頭部に取り付いた光のフレンズ。

 

光「今度こそ……!」

 

 右手を、邪神セルリアンの頭部に押し当てる。

 

 次第にめり込む様にして頭部に入る右手。

 

光「光太郎……!」

 

 誰かが右手を掴む感覚があった。 暖かい。 命ある者の温もりだ。

 

光「……掴んだッ!!」

 

 踏ん張りを効かせ、右手を一気に引き抜く。

 

 力を込める程、身体から放たれる光はより強くなる。

 

 右手を伝い、光太郎の腕が見え始めた。

 

光「あと少し……」

 

 力を振り絞り、力尽くで光太郎を引き摺り出した。

 

光「光太郎!!」

 

 光太郎を抱き寄せる光のフレンズ。

 

光太郎「この感じ……ルペラ? ニホニホ……?」

 

光「うーん……両方ですかね。」

 

光太郎「2人とも……ありがとう……」

 

光「私達だけじゃない。 ゲンブさんとスザクさん、そして不思議な赤い石。 さらにはハシブトガラスさんとコアラさんのお陰で、光太郎様を助ける事が出来ました。」

 

光太郎「みんなが……」

 

光「さぁ、取り敢えずこの場から離れましょう!」

 

 光太郎を抱え、邪神セルリアンの頭部から飛び立つ光のフレンズ。

 

 しかし、その飛び方もだんだんと弱々しくなり……

 

光太郎「……どうしたの……?」

 

光「ごめん……この姿、かなり燃費が悪いみたい……」

 

 

『……馬鹿なヤツらめ。』

 

 

光太郎「この声は……!!? 逃げて!!」

 

光「何を……!?」

 

 

 触手で打ち落とされる光太郎と光のフレンズ。

 

 力無く、海へと落ちていった。

 

 

『所詮、人間に毛が生えた程度の相手……』

 

 

 満足そうに触手をうねらせ、視線をパークに向ける。

 

 邪神セルリアンが、パーク本土へ向かおうとしたその時。

 

 

『……うぬぅ!? この光は……まさか……!!』

 

 

 光太郎達の落ちた場所から、一本の光の柱が立っていた。

 

 

?「……セイリュウの力よ……!!」

 

 

 つい先刻まで荒れていた海が静まる。

 

 それとほぼ同時に、海の中でうねる触手が次々に粉砕されていった。

 

 

『貴様ら……!゛!゛』

 

 

 海の底から、光の塊が浮かび上がってくる。

 

 その金色の光は、海を明るく照らしていた。

 

 

?「……これ以上、みんなの未来を壊させはしない……!」

 

 

-キョウシュウエリア内、バイパス-

 

 

かばん「……僕にも……何か出来る事は……」

 

 考えれば考える程、現状の中で自分が出来る事がわからなくなる。

 

サーバル「かばんちゃん……」

 

かばん「! ごめん、サーバルちゃん……心配かけちゃったよね……」

 

サーバル「ううん、大丈夫。 かばんちゃんなら、きっと何か良いこと思いつくから! よぉし、私はかばんちゃんの応援、頑張るぞぉ!」

 

かばん「ありがとう、サーバルちゃん。 ……ん? 応援…………そうだ……!」

 

サーバル「かばんちゃん?」

 

かばん「もしかしたら、僕たちに出来る事があるかもしれないんだ!」

 

サーバル「本当!? やっぱりかばんちゃんは凄いよ!」

 

かばん「サーバルちゃんのおかげだよ、ありがとう! ラッキーさん……」

 

ボス「どうしたの、かばん?」

 

かばん「ラッキーさん、パーク中のラッキーさんと音声を共有することは出来ますか?」

 

ボス「……出来る限りやってみるヨ。」

 

かばん「ありがとうございます。 それじゃ……」

 

 

 各エリアのバイパス中に、かばんの声が響く。

 

 

かばん「皆さん! 僕の声は聴こえていますか? 僕は今まで、前線に立てない自分に何が出来るか考えていました…… そして、一つの答えに辿り着きました。 それは前線の皆さんを信じ、全力で応援する事です!」

 

 

タマちゃん「応援……?」

 

 

かばん「大きくなくてもいい、小さい声でもいいんです……! 心から叫べば、きっと想いは届きます……だから……みなさんも……」

 

 

 バイパス中がざわつく。

 

 

かばん「……やっぱり……難しいですよね……急にこんな事言われても……」

 

 

 尚もざわつくバイパス内。 だが、そのざわめきの中で目立って聞こえるもの、それは"応援なら出来る……"、"小さくてもいいなら、私も……"等々、前向きなものだった。

 

 

サーバル「みんな、かばんちゃんの事も信じてるよ。 勿論、私もね!」

 

 

かばん「ありがとう、サーバルちゃん…………それでは皆さん、いきますよ……せぇーーのっ!!!」

 

 

 バイパスに轟く声援。 その声援一つ一つが輝きとなる……

 

 

-カントーエリア、海上-

 

 

?「……きこえる……みんなの声が……みんなの"がんばれ"が……!!!!」

 

 

 パーク中から届く輝きが、光の柱へと集まってゆく。

 

 次第に光の柱は形を変え、ヒト型になる。

 

 身体から生える尾や翼、角は常に姿形を変えている。

 

 ただ一つだけ言えること……それは、"けもの"であるということ。

 

 そのフレンズは海の上に立ち、じっと邪神セルリアンを見ていた。

 

 

『……お前独りで何が出来る……!』

 

 

けもの「独りじゃない……独りなんかじゃない!! ニホンオオカミがいる、ルペラがいる、そしてフレンズ(みんな)(ここ)にいる!!」

 

『何を馬鹿な事を……! 死ねェ!!!』

 

 ヤプールの叫びと共に、海中から巨大な鋏が飛びかかって来た。

 

 けものは、大きく開いた鋏を両手で受け止める。

 

 軋む鋏、その節からは火花が飛び散っていた。

 

けもの「死ねる訳ない……私には守るもの、託されたものがあるんだから……!」

 

 より一層、挟む力は強くなる。

 

けもの「ビャッコの力よ……!」

 

 風が吹き荒れ、刃となり触手を切り裂く。

 

 鋏は粉々に千切れ、ゆっくりと海の底へ沈んでゆく。

 

『まさか……』

 

 邪神セルリアンは試すように、無数の触手をけものに差し向けた。

 

けもの「流石の再生力……だけど!」

 

 けものは海に沈み、何かを唱える。

 

 海中を凄まじい速度で泳ぎ、次々に触手を躱す。

 

 その勢いのまま、陸地へ飛び出すけもの。

 

けもの「スザクの力よ……!」

 

 けものを追いかけ、地面からも生える触手。

 

 けものの頭部には翼が生え、その背後にはスザクの尾羽の様な紋章が浮かび上がっている。

 

けもの「最初に言っておく……私達の羽根は全発命中ですよ!」

 

 宙に舞い、両腕を大きく振るうと、紋章から大量の羽根が撃ち出され、その全てが触手に当たり無力化した。

 

『……この力、やはり……やはりな……!』

 

 大地が揺らぎ、瓦礫が地面に飲まれる。

 

けもの「今度は何を……!?」

 

 邪神セルリアンの表皮が金色の鎧に覆われ、外骨格の孔からは無数の鋭利な棘が生える。 頭部からは巨大な角が生え、眼は青く光っていた。

 

『かくなる上は、超獣となりてお前を葬ってやろう!』

 

 全身の棘が黒煙を吹き出しながら、けものに向かって飛んでゆく。

 

 けものは翼を広げ、一気に邪神セルリアンとの距離を詰める。 その後を執拗に追う棘。

 

 その内の一つが、けものに着弾する。 その爆発と熱量は凄まじく、海水が蒸発し発生した水蒸気が辺りを白く染め上げた。

 

けもの「けほっけほっ……煙たいし痛いし! まったく、何て危ないものを……ッ!?」

 

 奪われた視界に戸惑っているうちに、小型のセルリアンに取り囲まれていた。

 

『死ねッ!!』

 

 大量の棘が小型のセルリアンごと、けものを爆破した。

 

 爆炎に呑まれるけもの。

 

『この俺に楯突くからだ……』

 

 邪神セルリアンがパーク本土へ迫る。

 

 それでもなお、けものへ贈られる応援の声は止まない。 恐怖に竦む事もなく、一心に伝えられる想い。

 

 それを打ち消すかのように咆哮する邪神セルリアン。

 

 止まない咆哮を唯一妨げた物……それは

 

けもの「させるかっ!!」

 

 黒煙の中から放たれた光線。

 

けもの「……勝手に殺さないでください……まだ、生きているんですからね!」

 

『小賢しいマネを……だが、その傷ではまともに動けまい……』

 

けもの「おかげさまでね……けど、まだ動けなきゃだめなんだよね……!」

 

 邪神セルリアンは大きく口を開けると、赤黒い光が口の中に溜まる。

 

 視線は、パーク本土に向けられていた。

 

『ならば、お前の力の源を絶ってやる! 二度と立ち上がれないようになァ!』

 

 けものは力を振り絞り、邪神セルリアンの視線の先に降り立った。

 

 大地を踏み締め、全身に力を込める。

 

けもの「………………この地に生きる、全ての命の力よ……!!!」

 

 光が、けものに集中する。

 

 けものが拳を突き合わせる。 その両腕は橙色に光り、熱を発する。

 

 けものが腕を広げる。 その刹那、邪神セルリアンの口から血反吐のような光線が吐き出された。

 

 それと同時に、けものは左腕を腰に添え、右腕を邪神セルリアンに向けて伸ばす。 そして放たれる虹色の光線。

 

 双方の光線がぶつかり合う。 その衝撃で周囲の霧は吹き飛ばされ、空気が震える。

 

『どこまでもどこまでも……忌々しい奴らだ…………ッ!!』

 

 先程までとは比べ物にならない位の凄み。 怨念が全身から溢れ返り、光線の威力が増す。

 

『滅びるがいい……光と共に!!』

 

けもの「そんな事はさせない……!」

 

『死に体が……』

 

けもの「確かに私の身体は、私の種族は滅びました…… だけど、今背負っているものは今を生きる命達の想い! そして、これまで命を繋いできた者達の築いた歴史! その命の系譜を……お前なんかに断たれて……なるものかァ!!!」

 

『所詮、今しか生きられない命、その為に戦おうというのか……だが、お前如きが滅びる事のない俺を超える事はできない!』

 

けもの「俺が戦うのは、今を生きる命の為だけじゃ無い! 何百年、何千年後にこの地で……この星で生きる命の為にも! だから負けられない! 絶対に、お前を超える!!」

 

 その叫びと共に、虹色の光線は輝きを増す。

 

 より一層、応援の声は高鳴り、響く。

 

 天高く轟くその声達は、セルリアンを圧倒する。

 

 次第に虹色の光線は、赤黒い光線をかき消して……

 

『う゛ぅ゛ッ゛!゛』

 

 ついに、邪神セルリアンを貫いた。

 

 光線が止むのとほぼ同時に風穴の空いた身体は崩れ落ち、この戦いに終止符が打たれようとしていた……が。

 

 不敵な嗤い声が響く。

 

『…………これで終わりか……? この程度で……』

 

 崩れ落ちる肉体の中から、一つの結晶が浮かび上がる。

 

 怪しく光るその結晶からは、悪寒が走るほど不快な気配が発せられていた。

 

けもの「それが貴様の本体か……! ならば……」

 

 小刀を握る。 すると、その小刀は紅い輝きとなり、けものの右手を包む。

 

けもの「最後に最高の……全霊の"一撃"で……想いを乗せた、この拳で……!」

 

 眼を閉じ、精神を集中させる。

 

 小型のセルリアンが、羽音を轟かせ群れなしながら、けものへ向かう。

 

けもの(!? まずい……ここで雑魚相手に力を使ってしまったら……)

 

『お前に俺は止められない……お前達は俺の道具にしか過ぎん!!』

 

 結晶に、瓦礫が引き寄せられる。 新たな肉体の形成が始まっていた。

 

 

 

 

 

 

ボス「4番ゲート、開くヨ!(4th gate open!) 4番ゲート、開くヨ!(4th gate open!)

 

 ラッキービーストの声と共に、ある施設の扉が開く。

 

 扉が開いた途端、複数の影が扉の中から駆け出す。

 

 その足音の次に、けものが聞いたもの。 それは数々の遠吠えだった。

 

けもの「……この声は……!」

 

 小型のセルリアンは、その遠吠えのする方へ吸い寄せられてゆく。

 

タイリクオオカミ「……ニホンオオカミ!! ここは私達が引き受ける!」

 

けもの「タイリクオオカミ……ありがとう!」

 

 オオカミ達に襲いかかるセルリアン。 だが、その猛攻もあるフレンズたちに防がれていた。

 

アルバニーアダー「ったく、何だっけ、タイリクオオカミだっけ? 随分と無茶な作戦をやるよなぁ!!」

 

ペルシュロン「失礼だよ、アルバニー……」

 

オグロヅル「ごめんなさい。 アルバニーさん、普段はもう少し正直なんですが……」

 

アルバニーアダー「ぅるっさいなぁ……! 取り敢えず、ニホンオオカミ! ここは任せとけ!!」

 

けもの「アルバニーアダーまで……」

 

 

 

 

 

ハシブトガラス「光太郎さん! ニホンオオカミさん! ルペラさん! みんな、あなた達を信じています! ……だから……」

 

 けものの元へ駆け寄るハシブトガラスとコアラ。

 

 かなり息が切れていたが、それ以上に、その目には闘志が宿っていた。

 

けもの「そうか……そうだよね…………みなさんの力、もう少しだけ……お借りします!!!!」

 

 大地を蹴って、空へ飛び立つけもの。

 

 そして、その後を追うように、扉から飛び立つフレンズが5人。

 

 

 

けもの「……にしても、このまま避け続けてたら間に合わない……!」

 

 けものの前方に立ち塞がる数多のセルリアン。

 

 その間にも、絶えず再生を続ける邪神。 この期を逃す事は、ヤプールへの服従へと繋がる。

 

 ……その時、目の前のセルリアンが砕けた。

 

 

イヌワシ「ルペラ!!」

 

けもの「イヌワシ様にゴマバラワシ様!? それにスカイインパルスの皆様まで……」

 

 けものの周りを飛ぶ、5人のフレンズ。

 

ゴマバラワシ「みんな、あなたの苦しむ様が見てられなくて来たのよ……」

 

けもの「うっ……ごめんなさい……」

 

ゴマバラワシ「……だから、今度はこの場でアイツに打ち勝って。」

 

けもの「! ……はい!」

 

イヌワシ「ここはオレ達に任せてくれ。 ルペラの道は、オレ達が切り拓く。」

 

 互いに競い、磨き上げたその速さで、小型のセルリアンを圧倒してゆく。

 

ハクトウワシ「ライバルとの共闘、燃えるわねっ!」

 

ゴマバラワシ「ならどぉ? 偶にはリレー形式で飛んでみるのは。」

 

ハヤブサ「戦いが終わってから考えてみます。 それよりもまず、目の前の敵を!」

 

オオタカ「そうね、今はまず彼女の道を作る事に専念しましょ。」

 

 

 次々にセルリアンが撃ち落とされ、一歩の道が作られる。

 

 

けもの「みんな……ありがとう……」

 

 

 大きく羽ばたき、光の矢の如く邪神に向かうけもの。

 

 

『遅い……遅い! この程度か!!』

 

 急激に再生が進む。

 

『滅ぶ事の無い俺を葬るなど不可能! ましてやそのちっぽけな体で…………何ィッ!?』

 

 先刻まで進んでいた再生が止まった。 むしろ、新たに崩壊が進んでいた。

 

『どういう事だ……!?』

 

--セルリアンを散々利用した報いを、受けるがいい……--

 

 声が、想いが伝わる。 同胞を利用され続けられた者の怒りが。

 

--進め、光太郎。 この星の希望となれ……--

 

 想いが、願いが伝わる。 宿敵の遺す、最期の呪い。

 

けもの「届け……ゲンブ、スザクの力よ……!!」

 

 燃え盛る拳がより一層、輝きを増す。

 

けもの「これが、この星に生きる命の……力だぁッ!!!!!」

 

 全霊の拳が、禍々しい結晶にねじ込まれる。

 

 激流の様に打ち付けられる凄まじい怨念をも突き返す、希望に満ちた声、想い。

 

 けものの叫びが、全ての"けもの"の声と繋がる、重なる。

 

 結晶に一つ、また一つと亀裂がはしる。 

 

 悪魔の断末魔の叫びは、結晶の砕け散る音と共にパーク中へ轟いた。

 

 それに共鳴するかの様に、空を覆っていたセルリアンが消滅する。 

 

 そして……

 

 

-ジャパリパーク-

 

 

 ……戦いが終わり、いつもと変わらぬ夜明けが訪れた。

 

 海岸に、朝焼けの光の中に立つ1人のフレンズ。 眩い光を放ち始め、再び3人の姿へと戻った。

 

 

ニホ「…………終わったね。」

 

ルペラ「えぇ……私達は、勝ったんですよ。」

 

光太郎「……長かった……けど……」

 

 

 朝日に向かって、勝利の味を噛み締める3人。 自然と、涙が込み上げてくる。

 

 

ニホ「ん? 光太郎、ルペラ!」

 

 ニホンオオカミが、背後を振り返り指差す。

 

 その先には、3人の帰りを待つフレンズ達がいた。

 

ルペラ「……帰りましょう? 私達みんなで守り抜いた場所に……」

 

 

 

〜数ヶ月後、パークセントラル〜

 

 

 

 邪神セルリアンの遺した傷跡は凄まじく、かつて人々が築いた遺産は深く傷つき、戦いの熾烈さを痛々しいほどにまで刻み込んでいた。

 

 それでも……

 

ニホ「光太郎ー!!」

 

ルペラ「……光太郎様。」

 

 私には、2人がいる。 2人がいるから、今の私がある。

 

 

 ……あの日、ルペラの胸元に埋まっていた赤い石は、戦いの後に散っていった。

 

 それが、力を使い果たしたからなのか。はたまた使命を完うしたからなのか。 私には分からない……だが、私達の命を繋いでくれた事だけは確かだった。

 

 それともう一つ、ニホンオオカミの身に付けていた勾玉は色を取り戻した。 その後、元の場所にいて欲しいと思ったニホンオオカミからの提案で、再び各地の蔵へ納められた。

 

 ラッキービーストの事だが、結晶の消滅とともにヤプールの支配から解放されたらしく、普段通りの挙動をし始めた。 どこか、嬉しそうではあったが……

 

 

 正直な所、相変わらずセルリアンはどこからともなく湧いてくるし、完璧に平和になったとは言い難い。

 

 それでも、あの頃の日常を取り戻せたのは確かだ。

 

 そして今、私達はパークセントラルの復興を目指している。 一体、いつ終わりを迎えるのかは分からない。目処もたっていない。

 

 ただ、それでも、私達の生きた証を、復興という形で新たに刻み込もうとしていた。

 

 この星に生きた、3つの命の歩んだ軌跡を……

 

 

 

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

 私の瞳に写ったものは、愛すべき存在と、共に生きる明日だった。




 ……遂に来ました最終回。

 ここまで読んでくださった方々へ、本当にありがとうございました。

 これにて、「けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。」は完結です。

 ……とは言っても、資料集的なのはこの後に出ますが……

 一旦は、これでおしまいです。 書かないだけで、きっと旅は続いていますよ。きっと。

 ありがとうございました。


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Season2 番外編
Ep.---「諸々の名をかりて」


注意! 注意! 例の如くこの諸々はネタバレを含みます。 最終話をご覧になっていない方は、最終話を先に見る事をオススメしますよ。


〜もくじ〜

1.ようこそキャラ紹介へ

2.盛ってけ!小ネタ等々

3.お・ま・け・だ・も・の

4.終わりに。

 ……もう少しだけ、私の話にお付き合いくださいまし。


1.ようこそキャラ紹介へ

 

〜フレンズ編〜

 

・秋月 光太郎

 

 説明不要の主役の1人。

 

 ちょくちょく死にかける。 なんか女の子になっちゃった。 

 

 身体は、始めの頃は3人の中では1番高かったが、復活後はニホンオオカミより高く、ルペラよりも低い位の背丈に落ち着いた。

 S1では9割人間1割フレンズのような状態だったが、S2では10割フレンズ。つまり、純粋なフレンズとなったので鉄パイプを生成できるようになった。

 

 一度、ルペラにより瀕死の重症を負わされてしまった。が、光太郎本人は全くと言っていいほど気にしていない。

 

 

・ニホンオオカミ

 

 説明不要の主役の1人。

 

 S2では、S1以上に厳しい状況に立たされる事もしばしば。 ある意味、いろんな狭間に立ってしまう苦労人でもあった。

 アルバニーアダーと衝突したり、文字通り命を燃やしてパークを護ったりと、なんか書いてて可哀想になってきちゃって……

 

 普段の荒々しい戦闘スタイルから一変、巫女服を纏った姿では護る事に特化した、静の戦い方に。

 

 S2の少し前、つまり光太郎の部屋にいた頃は、そこそこ寝相が悪く、ベッドから落ちて目が覚める事も少なくなかった。

 

 

・グアダルーペカラカラ(ルペラ)

 

 説明不要の主役の1人。

 

 ニホンオオカミもそうだが、S2は本当に辛い境遇に立たせる事が多かった…… 某夕陽の風来坊の様な傷つき方をしてしまった……

 

 暴走状態は、戦闘に特化した姿で、特に肉弾戦を得意とする。ただし本人曰く、この姿に変身する感覚は決して気持ちの良いものでは無く、加えてあの日の事を思い出してしまうので二度と変身したくないらしい。

 

 光太郎やニホンオオカミと共にパークセントラルの復興を進めるのと同時に、カントーエリアで他の鳥フレンズとスカイレースを行っていた。

 

 

・アルバニーアダー

 

 性格は、自由気ままである意味自分勝手。 ただ根は優しく、人一倍傷つきやすい。 言ってしまえば性格は大体、海堂直也。

 

 髪型はポニーテールで、かなりの頻度で結った髪を弄っている。

 自身が貴重な存在である事に自信と誇りを感じており、初対面の相手には、必ず自分が貴重な存在であることを伝える。

 

 ニホンオオカミと再会を果たした時は、ボロ泣きして喜んでいた。

 

 

・ペルシュロン

 

 性格は、基本穏やかで優しい。 しかし、友を傷つける相手には容赦しない。 言ってしまえば木場勇治。

 

 セルリアンからアルバニーアダーを庇い、一度命を落とした。 その後、再びフレンズ化。アルバニーアダーと再会を果たす。

 

 どちらかと言えば仲間の暴走を止める役を果たしているので、ルペラと話が合う。

 

 

・オグロヅル

 

 アルバニーアダーが好き。 アルバニーアダーを傷つけようとする相手は真顔で抹殺する。 言ってしまえば長田結花。

 

 ペルシュロンと同じく、一度はアルバニーアダーをセルリアンから庇い死亡。再びフレンズ化、最愛のアルバニーアダーとの再会を果たした。

 

 光太郎やサーバルと、嫁自慢大会のようなことを不定期で行う(その後、大体アルバニーアダーに色々言われる)。

 

 

・光

 

 肉体が限界を迎えたルペラ、命の灯火が消えかけたニホンオオカミとが、後述する赤い石の力とそれぞれに宿ったスザク、ゲンブの力を借りて合体した姿。

 戦闘能力が高く、並のセルリアンなら即刻粉砕できる。ただし、即興で合体した上に実質4人のフレンズの人格や肉体が混在している状態なので、存在自体が非常に不安定。それ故に、形状を保つだけでも輝きを消耗するなど、燃費が悪い。

 

 翼の間から放つ高速回転する羽「ツバサギロチン」は、厚さ2mの鉄板を真っ二つにする程の切断力をもつ。

 

 

・けもの

 

 "光"を基盤とし、そこにヒトである光太郎が加わる事で安定して人型を保つ事に成功。 さらにパーク中のフレンズ達から送られた輝きによって、"けもの"という概念がフレンズ化した姿。

 常に全身から微弱ながらサンドスターとスペシウムを放っている。 翼や尾、ヒレなどが常に形を変えながら生えている。

 

 幻獣や四神のフレンズを筆頭に、理論上は全てのフレンズの能力を使う事も可能。

 

 主な技は、全てのフレンズの能力を束にし、光線として放つ「ケモノミラクル光線」。 そして、全身に溜め込んだ輝きとスペシウムを、小刀を器として拳に集中させ、相手に全霊の拳を浴びせる最後の切り札「燃え盛る拳(バニシング・フィスト)」。

 

 ……所謂、"ぼくのかんがえたサイキョーのフレンズ"。

 

 

〜それ以外のキャラ編〜

 

 

・光の巨人

 

 身長:40m

 体重:3万5000t

 

 パークのとある施設にある忘れ物コーナーに置いてあった、とある特撮ヒーローの人形にサンドスターが当たった姿。

 

 銀色の体に赤い模様があり、胸には青く光る機械の様なものが付いている。 エネルギーが尽きそうになると青く光る機械は赤く点滅し始める。

 

 必殺技は、腕を十字に組んで放つ光線。

 

 赤い石は、この巨人の遺したものである可能性が高い。

 

 

・ロボリアン(金色の城)

 

 身長:27m

 体重:2万4000t

 

 リウキウエリア周辺の海に現れた人型のセルリアン。 強靭な肉体と、他者を圧倒する怪力の持ち主。

 4体に分裂する事ができ、その姿では巨体に見合わぬ程の速度で飛ぶ事ができる。 その4体が合体する事で、体表に結界紛いのものを張る事ができる。

 

 本編では、光太郎の鉄パイプという不純物が合体の際に加わった事で、完全な合体に失敗。 結界を張る事が出来なくなった為に撃破された。

 

 

・ヘドリアン(泥の怪物)

 

 身長:30m

 体重:3万2000t

 

 ゴコクエリアに現れた不定形のセルリアン。 全身がセルリウムと有害物質で構成されている。

 水分を多く含み、歩く度に有害物質とセルリウムをばら撒く。ただし乾燥に弱く、長時間の陸上での活動は困難。

 

 本編では、ばら撒いたセルリウムから更に小型のヘドリアンが作られた。

 

 

・ソリチュリアン(邪な大樹)

 

 身長:20m(根を含めると全長2.5km)

 体重:7万8000t(推定)

 

 アンインエリアに現れた大木のようなセルリアン。 花粉の様な超小型のセルリアンを放出し、フレンズを昏睡状態にする。

 昏睡状態にしたフレンズには、そのフレンズの理想の夢を見せ、その時に発生した輝きを吸収する。

 

 本体はその場から動く事が出来ないが、根を使って攻撃する事が出来る。

 

 

・アントリアン(大地穿つ牙)

 

 身長:40m

 体重:2万t

 

 サンカイエリアに現れたアリジゴク型のセルリアン。 ヤプールの傀儡となったセルリアンの中では割と早期に活動を開始した。

 大顎を震わせ周囲の砂を舞わせ、気門から空気を一気に吐き出す事で砂嵐を起こす。 その他にも、大顎の間から虹色の光線を放ち、鉄を吸い寄せる事も出来る。

 

 強固な外骨格を持ち、生半可な攻撃は完全に無効化する。

 

 

・ジルバリアン(銀の華)

 

 身長(本体):6m

 体重:250t

 

 ナカベエリアに現れたクラゲ型のセルリアン。 比較的小型ではあるが、触手は1km近くまで伸ばす事が可能。 また、口からは黄色い液体が滴っている。

 触手を使った攻撃は勿論のこと、本体の下部にある口を使い、相手を飲み込むこともできる。

 

 

・再生ジルバリアン

 

 身長(本体):8m

 体重:300t

 

 撃破された筈のジルバリアンが蘇った姿。 2本の触手が、イカの触腕の様に発達、更にその先端が鋏となっている。 また、再生前までは無害であった黄色い液体が、タンパク質を分解する酵素を含んだものに変化。

 

 

・ブルトリアン(四次元への片道切符)

 

 身長:20m

 体重:2万t

 

 ホートクエリアに現れたサンゴともフジツボとも言える様な形をしたセルリアン。 直接的な攻撃は、自身の体重で押し潰す程度だが、このセルリアンの本領が発揮されるのは生成した半球内。 主に、アンテナから放つ光線でそれぞれのフレンズが心の奥底で願っている事を実現化する能力を持つ。

 

 半球内にあるものは、次第にブルトリアンの身体に取り込まれる。

 

 

・ゲンブ(時の揺り籠)

 

 体高:80m

 体重:120t

 

 厳密に言えば、ゲンブの遣い兼依代。 体重が非常に軽いが、これは完全な実体がある訳ではないから。

 

 一部スザクの力も持っているので、口から火球を吐く事も可能ではあったが、主な役目はあくまでも光太郎達に力を託す事であった為、未使用に終わった。

 

 

・小型のセルリアン(厄災の蝗)

 

 身長:1.5m

 体重:6.8kg

 

 邪神セルリアンが直々に生み出したセルリアン。 一匹一匹の強さは大した事無いが、群れると厄介。 イナゴとガを足して2で割ったような見た目をしており、基本は常に空を飛んでいる。

 

 ただし、更に進化し光線を使い始める可能性も秘めていた。

 

 

・邪神セルリアン(邪神態)

 

 全高:150m

 全長:200m

 体重:20万t

 

 元は、この星に生まれた最初のセルリアン。そのセルリアンが海底で長い年月をかけて成長、巨大化。それ故に、巻貝や甲殻類などの生物の特徴もみられる。

 ある日、銀河に散ったヤプールの怨念が、ジャパリパークの存在する時空へ流れ着いた。 その時、ヤプールはセルリアンの存在に目をつけ、その時点で最も力を持つセルリアンに取り憑いた。その姿こそ、邪神セルリアンである。

 

 主に触手や、発達した鋏を使って攻撃をする他、外骨格の孔から霧状のセルリウムを噴射したり、ラッキービーストなどの機器をクラッキングするなど、ヤプールの陰湿さが見え隠れしている。

 

 顔の先端から放つ紫色の光線は、相手の"命という輝き"を根こそぎ奪う。そのため、元の形は保つものの石化した様な見た目となる。

 

 

・邪神セルリアン(闇黒魔超獣態)

 

 全高:140m

 全長:230m

 体重:23万t

 

 邪神セルリアンが、光太郎を取り込んだ事で変異した姿。 触手の先端が鎌の様になっている他、首の可動域が広がった事など、より戦闘に特化した姿になっている。

 光太郎というエネルギー源を保持している為、より多彩な光線技を使う事も可能。

 

 

・邪神セルリアン(究極超獣態)

 

 全高:130m

 全長:220m

 体重:28万t

 

 光太郎を奪還された際に、周囲の瓦礫を取り込んで穴埋めを図った姿。 穴埋めとは言え、実力は闇黒魔超獣態に引けを取らず、単純な破壊を目的とするならば、こちらの形態の方が優れている。 また、肉体を構成するセルリウムの割合がどの形態よりも低く、逆にヤプールの関与している部分、いわば"超獣"の割合が最も多い。

 

 全身の棘をミサイルのようにして飛ばす「セル・スティンガー」や、口から発射される破壊光線「テリブルフラッシャー」など、超獣らしい武器を備えている。

 

 

・異次元人 ヤプール

 

 身長:--

 体重:--

 

 かつて、別の時空に存在する地球を征服しようとした知的生命体。 地球産の生物と宇宙生物とを合体させ超獣を造り出し、地球侵略の手駒としていた。 全てのヤプールが合体した巨大ヤプールとして、ウルトラマンエースに挑むも敗北。 だが、その後もヤプールの残党やヤプールの残留思念が生み出した超獣が地球を襲っていた。

 

 

2.盛ってけ!小ネタ等々

 

 

・フォーメーション・ヤマト

 S1のEp.10で、水辺地方に現れた大型セルリアンを葬った作戦。実は、ウルトラマン80に登場したフォーメーション・ヤマトがモチーフになっている。

 

 

・十字架に架けられた……

 S1のEp.32で、ニホンオオカミとルペラが十字架に架けられていたシーン。 元ネタはウルトラマンAで、ゴルゴダ星にて十字架に架けられるウルトラマン達が元。 ……あの女王復活すら、ヤプールの作戦の一部だと考えるならば……

 

 

・太平風土記

 S2で割と重要そうな雰囲気を醸していたアイテム。 ウルトラシリーズに登場した同名のアイテムが元。

 初登場がウルトラマンX。それ以降のニュージェネレーションヒーローズにも度々登場している。 特にウルトラマンオーブの序盤では太平風土記が毎回のように登場している。また、ウルトラマンオーブのラスボスであるマガタノオロチの打開策が秘められているなど、本来のウルトラシリーズではかなり重要なアイテムとなっている。

 

 

・勾玉

 四神の力が込められていた勾玉。 今作のラスボスを邪神セルリアンと決めた時に、「それに対抗する為のアイテムは……」と考えた結果、邪神セルリアンのモチーフの一つである邪神イリスの登場する、平成ガメラ3部作で鍵となっていた勾玉を使用した。

 

 

・小刀

 結構重要そうなアイテムだった小刀。 ガメラ3に登場した宝具「十握剣」がモチーフ。登場したシーンはそう多くは無いが、邪神イリスの目論見を封じるというとんでもない活躍を見せた。

 

 

金色(キン)(ジョー)

 リウキウエリアに現れたセルリアン。モチーフは……この項目のタイトル通り、ウルトラセブンに登場した宇宙ロボット キングジョー。 その撃破の手順は、大怪獣ラッシュ『KING JOE h Hunting』→ウルトラセブン1999→ウルトラセブンの順。詳しくは……各自調べてください……

 そして、リウキウエリアに現れた理由は……キングジョーの名前の由来とされる、とある方の出身地が沖縄である事に由来してますよ。

 

 

・ヘドリアン対策……?

 ヘドリアンを葬った作戦。 これは「ゴジラ対ヘドラ」にて、ヘドラを葬った作戦が元。 因みに、この世界ではゴジラはあくまでもスクリーン上の存在、即ち空想の存在である。 ……その割には、ズバットは現実の存在……

 

 

・How do you like wednesday?

 S2の構想(といっても、実質ただの妄想)を練っている時に思いついた事が一つ。「サイコロの旅、アリじゃない?」……ナシでした。最たる理由は、サイコロはリアルタイムで振われるから面白いのであって、ただ文字で起こすものでは、その面白さはでない(少なくとも、私には出せない)と思い却下。

 他にも、ゴコクで怪奇現象を起こそうとしたり、バスの中で尻の肉がボロボロ取れる夢を見たり……色々と却下になったモノが多いんですよ。

 

 

・夢のかけら

 感想でも頂きましたが、アルバニーアダー、ペルシュロン、オグロヅルの3人は、それぞれ仮面ライダー555に登場した海堂、木場、長田の3人がモチーフ。 オオカミであるニホンオオカミがアルバニーアダーと衝突するのも、仮面ライダー4号のオマージュ……パロディ?

 

 

・いつも心に、太陽を。

 ナカベエリアで深い心の傷を負ったルペラに語りかける、ヤタガラス様。 実は、書く寸前までその役割をヤタガラス様に任せるかどうするかで悩んでいました。

 それは、"ウルトラマンという概念"がルペラを説得する。という流れも視野に入れていたからです。 ウルトラマンという作品の持つメッセージが、ルペラ復活の鍵になれるんじゃないかと思いまして……

 ただ、フレンズ間での問題(細かく言えば、ヤプールが関与しているためウルトラマンが全く関係ないとは言えない……)に、ウルトラマンが介入するのも如何なものかと思い、せめてその残り香を残すべく、太陽と関わりの深いヤタガラス様に役目を任せたのです。

 

 

・ヒーローが必要なんだ。ヒーローが……

 ドワーフサイレンから授けられた赤い石。奇跡を起こした赤い石。 作中では明かしていなかったが、その名は「ウルトラの星」。

 赤い石、そして名がウルトラの星。ピンと来た方がいるのではないでしょうか? そうです、ウルトラマンティガに出てきたウルトラの星がモチーフです。

 今作では、ティガの時の様にウルトラマンを出す事はありませんでしたが、その分奇跡を起こしましたよ。

 仮の設定では、「特別な想いを写し撮る輝き」、略して「特撮の輝き」の結晶という色々と無理矢理感のあるものでした。

 

 

・邪神覚醒

 今作のラスボスである邪神セルリアンのモチーフ。それはガタノゾーアとイリスです。どちらも邪神と呼ばれる存在で、どちらもかなりの強敵だった。 さらに、闇黒魔超獣態ではデモンゾーアとイリス(幼体)が、究極超獣態はUキラーザウルスがモチーフ。

 

 

・ヤプールの目論見

 セルリアンの輝きを奪う力を利用して、ウルトラマンの無力化を図ろうとしていた可能性が……光太郎は人質として利用されていたでしょう。

 

 

・今だ、変身!

 "北"の守護けものであるゲンブと、"南"の守護けものであるスザクとが、互いに引き合ったことで合体したニホンオオカミとルペラ。 ……はい。 相手がヤプールなら、こっちはAだ。今日のエースは私たちだ。という事で、北斗と南の合体変身がモチーフでした。 だから、技に"ギロチン"と付いていたんですねぇ……

 

 

・奇跡の合体

 "けもの"の姿。 始めは……というよりも、最終回を書くギリギリまでこの姿を出すかどうか迷っていたんです。 というのも、姿形が十人十色のフレンズを、一体に纏めるというが多様性の否定とも捉えられかねないと思ったんですよ……

 ですが、何せ相手が相手なので、これくらいの無茶と奇跡をやらないと勝てない気がして……(そこは私の塩梅でしょうに……)

 

 ウルトラマンで例えるならば、それこそグリッタースーパーウルトラマンタロウ……

 

 

・ケモノミラクル光線!!

 ……コスモミラクル光線です。 せっかく名前が"光太郎"なら、せっかく合体光線が使える上記なら、コスモミラクル光線モチーフの技を使いましょう。という流れで決まったケモノミラクル光線。 コスモミラクル光線は、かなりオレンジ色の強い光線でしたが、どうせならスペースQの要素も入れたいと思い、虹色の光線に。

 

 

・あったかもしれない展開.1「きたぞ、われらの……」

 TDGが出ます。 確か、ダイナとガイアは超獣に会っていたはず。

 ウルトラ6兄弟も出ます。 なんならニュージェネヒーローズも出ます。……もう、祭りですね。フェスティバルですよ。

 パークの各地に、ウルトラ怪獣を模したセルリアンが湧いて、ウルトラマン達がそれに立ち向かうという流れです。

 

 ……その名残が、かばんちゃんの応援ですね。

 

 

・あったかもしれない展開.2「破壊神と守護神」

 ここで出ました特撮の輝き。

 邪神セルリアンに追い詰められる光太郎一行。そんな中、海中に強力な熱源反応が……海中から放たれた一筋の青白い光。邪神セルリアンに命中すると、その外骨格を溶解させる。

 そして海中から現れたのは破壊神(ゴジラ)。 その咆哮が、特撮の輝きを生み出し、ゲンブの勾玉へ……

 勾玉が光り、巨大なけものに姿を変える……その姿こそ、守護神(ガメラ)

 

 ゴジラvsガメラも観たいけど、ゴジラとガメラの共闘も見てみたい……

 

 

・あったかもしれない展開.3「失踪」

 最悪の結末です。 この結末に辿り着かなかったのは、ここまで見てくださった方々のおかげです。 ……そんなここまで読んでくださった方々へ、ささやかながらお礼を……

 

 

3.お・ま・け・だ・も・の

 

 ここまで、この作品を読んでくださった方々へ贈る、本編から少し先のお話……

 

 

Ep.EX「Eternal Traveler」

 

 

 ……あれから、十数年が経った。

 確かに長い時間ではあるが、体感時間ではその半分か、それ以下だ。 あの日の戦いが、まだ数日前の事の様に思い出せる。

 

 多くのフレンズに手伝ってもらい、パークセントラルの復興はかなり進んでいた。 完全な復活は技術的に困難だが、それでも初期の頃に比べたら圧倒的に景観や安全性が確保された。 

 

 最近では、パークセントラル付近でスカイレースを行う様になった。 無論、私は全力でルペラを応援したが。

 

 そうそう、ついこの間タイリクオオカミさんが取材に来たんだった。 ……まぁ、ニホニホがもの凄く楽しそうに話すものだから、終始にこやかにニホニホとオオカミ先生の対談を眺めていましたよ。

 

 ……とにかく、あの旅からかなりの時間が経った今でも、みんながぴんしゃんしているという事だ。 これも、フレンズならでは……

 

 かく言う私は……

 

 作業もひと段落し、今まさに昼寝をしようとしているところだ。 この地に留まる事にした日から、ずっと暮らしていた施設の屋上……とは言っても、2階建の建物だが。それでもかなり、気持ちが良い。 何なら、夢と現実との境目を行ったり来たりしているレベルだ。 遠くから聴こえる、波の音。

 

 …………それと、足音?

 

 だんだんと足音が大きくなってゆく。

 

「光太郎!!」

 

 この声は……

 

「光太郎様ー?」

 

 下の方から聴こえる……

 

 私は、屋上から顔を覗かせ、声の主達に手を振った。 すると……

 

「……あっ、光太郎そこにいたんだ!」

 

 どうやら見つけてもらえたようだ。

 

 タンッ、タンッ、タンッ、とリズムよく階段を駆け登る音が聞こえる。

 

 そして……

 

「光太郎様、もしかして起こしてしまいましたか?」

 

 階段に繋がる扉から……ではなく、私の頭上から一足早くルペラが声をかけてきた。

 

 私は「大丈夫、寝れそうになかったから」と返事をすると、彼女は安堵の表情を浮かべ、私の目の前に降り立った。

 

「光太郎! これ見て!!」

 

 今度は、扉の方からニホニホが勢いよく飛び出してきた。 その手には、何やら手紙の様なモノが握られていた。

 

 今朝から2人が居なかったのは、これを取りに行くためだったのか。

 

「えへへ……気になる? 気になる!?」

 

 私は大きく頷いた。 すると、彼女は手紙の封を開け、その中身を私に渡してきた。

 

『お前たちを、アクシマへ招待してやるのです。 久しぶりの旅、楽しんでくると良いですよ。』

 

 ……そう、手紙には書いてあった。 差出人の名前こそ書いてはなかったが、粗方想像はつく。

 

 だが、どうして今……?

 

「どうやら、たまには息抜きも必要だから……という理由らしいですよ。」

 

「ここまで、私たち頑張ってきたもんね……」

 

 ……そういえば、この十数年間、ほとんどパークセントラルの外には出ていなかった。 旅という形では尚更……

 

 ……そうか、私はもう一度、旅ができるのか。

 

 私が物思いにふけていると……

 

 

 

ルペラ「さぁ、共に新しい景色に向かって行きましょう?」

 

 

ニホ「まだまだ、この世界には気になる事がいっぱいだよ! それを一緒に見つけに行こう!」

 

 

 ……私の目の前には、どれだけの時間が経とうとも色褪せる事の無い、2人の笑顔が広がっていた。




4.終わりに。

 約2年続いたこの物語も、遂に終止符が打たれます。
 ここまで続けられたのは、一度でもこの作品を見た方や、ずっと見続けてくれた方が居たからです。 本当に、ありがとうございました。

 思えば、ウルトラマン、仮面ライダー、ゴジラ、ガメラ、快傑ズバット、戦姫絶唱シンフォギア、ドールズフロントライン、すごいよ!!マサルさん、北斗の拳、水曜どうでしょう etc……本当に色々な作品のパロディをやってきたんだな……と、勝手に思い出に浸っています。

 そもそも、けもフレに出会えていなかったら。ニホンオオカミに出会えていなければ、ルペラに出会えていなければ……そう考えるだけでも、けものフレンズとの出会いというのは正に"奇跡"だったと思っています。

 途中途中で、更新が途切れたまま2ヶ月が経つことがあったり、S1では一つのチホーにつき3話から2話に減ったり……色々とわがままな進め方をしてきました。 それでも根気強く、最後まで読んでくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

 繰り返しにはなりますが、改めて……

 ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

 ありがとう、ニホンオオカミ。 ありがとう、グアダルーペカラカラ。 ありがとう、秋月 光太郎。 ありがとう、全てのフレンズ。 ありがとう、けものフレンズ。 ありがとう、特撮ヒーロー……


 ……もし叶うならば、誰かの心のどこかに、3人の生き様が刻まれています様に……


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外伝「耀きの飛蝗」
Splendor


「けものフレンズ 軈テ星ガ降ル。」3周年記念作品


 勇敢に戦った者がいた。ただ、美しいものを護るために。

 命を燃やして戦った者がいた。ただ、自由を護るために。

 己が結末を知りながら、その悲しみを噛み締めて、されど仲間と共に戦う者が……

 

 

〜光太郎の目覚める、数ヶ月前。キョウシュウエリア〜

 

 

 満月の下、それは穏やかな時間が過ぎていた森林。ある者は眠りにつき、またある者は暗闇をものともせずに活動を開始していた。

 

 ……そんな中、か細い叫びが響き渡った。

 

 息を切らし、今にも躓きそうな足取りで何かから逃げる一人のフレンズ。その表情は怯えきり、今にも泣き出しそうであった。

 

 その背後には、4対の細い脚を持つ黒い塊が、その巨体に見合わぬ程の小さな足音を上げながらフレンズを追っていた。月光に照らされた8つの目は、真っ直ぐにフレンズを見据えている。

 

 急に、その足が何かに躓き倒れ込んでしまった。……地面を見ると、そこには薄く広く、糸が張り巡らされていた。足掻けば足掻くほど糸は絡まり身体の自由を奪う。

 

 木や地面を伝い、そのフレンズに迫る黒い影。

 

 震え怖じ、がむしゃらに腕を振るうフレンズ。しかし、その抵抗を踏み躙り、影はフレンズに覆い被さろうとした。目前には、鈍く光る毒牙。フレンズは自身の最期を覚悟した。

 

 不意に、影の動きが止まる。

 

?「最近多いんだよな……お前みたいなセルリアン……」

 

 影……セルリアンの頭上から聞こえた声は、妙な落ち着きの中に深い怒りを感じさせるものであった。

 

 頭上の木から、誰かが飛び降りて来た。ボロ布を纏ったその者は、前脚を挙げて威嚇するセルリアンに動じる素振りを見せず、むしろセルリアンに向かって歩みを進めていた。

 

 足元の糸を鞭のような物で蹴散らしながらセルリアンに迫る。

 

?「俺の縄張りで好き勝手しやがってよぉ……」

 

 遂にセルリアンは、ボロ布の者に飛び掛かった。……しかし、そのセルリアンの牙が貫いたのは、ただのボロ布一枚だけであった。

 

 セルリアンが獲物の方を振り向くと、そこには獲物の姿が無い。そればかりか、敷き詰めていた筈の糸が細切れにされていた。

 

?「次は、お前の番だ。」

 

 声のする方を向くセルリアン。その視線の先には、糸から助け出されたフレンズを庇うようにして立つ、赤い姿をしたもう一人のフレンズがいた。3本の角を戴いたそのフレンズは、深紅の瞳でセルリアンの姿を捉えていた。

 

 再び飛び掛かるセルリアン。そのおっ立てられた牙は赤いフレンズは鷲掴みにされた。その手に力が加えられるほど、牙は軋み、次第に小さなヒビが入る。

 

 赤いフレンズの前蹴りが、セルリアンの胴へ突き刺さる。その勢いにより、限界を迎えた牙は粉々に砕け散った。セルリアンは身の危険を感じ取り、闇夜に消えた。

 

?「……逃げられたか。次こそは必ず息の根を……」

 

 そう呟く赤いフレンズの体色は、見る見るうちに緑色へと変わっていった。

 

「……J……?」

 

?「……は?」

 

「あなたがJなのね! フレンズ刑事J!!」

 

 助けられたフレンズは、安堵の涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、輝く眼差しでJ?を見つめていた。

 

J「……まぁ……何でもいいか。 取り敢えず、今日のところはフレンズの集まる所で過ごしな。最近は変わったセルリアンが多い。気を付けろ。」

 

 そう言い残すと、Jはボロ布の砂埃をはたき落とし、それを被りながらそそくさと立ち去った。

 

 その日を境に、あっという間にフレンズ刑事Jの噂は広まった。そもそも、フレンズ刑事Jはタイリクオオカミの描くマンガに登場した、新しいキャラクター……らしい。感情が表情に出ないが、その代わりに体色で感情を表すのだとか。

 その色が変わる様と、ボロ布……本家はトレンチコートを戦闘時に脱ぐところから、俺とJとを重ねたらしい。それに、どうやら向こう"も"カメレオンのフレンズらしいが……

 

 人違いも甚だしいと思う一方、情報収集にもってこいの状況であると思ってしまった。

 

 そんな時だ。アイツと出会ったのは……

 

-キョウシュウエリア、ジャパリ図書館付近、林-

 

 それは、あの腹立たしいセルリアンを屠るべく、その情報収集のために図書館へ向かっている時の話だった。

 

 あのセルリアンを含め、最近のセルリアンは妙に厄介であった。やり口が普段以上に計画的、或いは卑怯なのだ。それ故に、ハンターが定期的に見回っている。何がキッカケなのかは知らないが、セルリアンが厄介な知恵を持ってしまった以上、こちらも知識を蓄えるしかない……

 

 図書館への道中は、いつも以上に静かで何だか不気味だった。

 ただそれ以上に、誰かから付け回されている気がしてならなかった。

 

 いつも歩く道を逸れ、入り組んだ場所を進むも執拗に追われる気配が。鞭を握り、臨戦態勢を整える。狭い場所では戦いにくく、更に死角を突かれやすいと思い、開けた場所へ移動した。

 

 しかし……

 

J「……しまった……誰かいるな……?」

 

 そこには人影が。面倒な事になる前に、また別の場所へ移動しようとした刹那、背後から何かに突き飛ばされ、その広場に投げ出されてしまった。

 

J「クソ……そこのお前! 早く逃げろ!!」

 

 人影に向かって叫ぶJ。その影は慌てた様子で立ち去った。

 

 その一方、林の中から出てきたのは、この間退けたクモ型のセルリアンであった。

 

 態勢を立て直そうとするも、立ち上がれない。辺りを見回すと、あの時のように糸が張り巡らされていた。

 

J「始めからこれが狙いか!」

 

 ゆっくりとJに覆い被さるセルリアン。目の前には折り砕いた筈の牙が。

 

 咄嗟の判断で貼りついたボロ布を脱ぎ捨て、何とか脱出はできたものの……

 

J「……面倒な事を……!」

 

 より強度の増した糸により、両足は未だ拘束されたままであった。

 

 セルリアンは、Jへの興味を失ったかの様にマフラーのフレンズが逃げた方へ向かった。

 

J「俺はもう無力ってか……舐めたマネしてくれる!」

 

 セルリアンの胴へ、思い切り鞭を振るう。その鞭は胴へ巻きつき、セルリアンの進行を阻む。

 

J「せっかくだ、もう少し遊んでいこうぜ……ん……?」

 

 正面、裏、背後……そして、あの時樹上から見た背。その何処にも"石"が見当たらない。

 

 弱点が見当たらない以上、今は足止めが最善策であろう。少しでも時間を稼ごうと鞭に込める力を強めたその時、セルリアンは後脚を素早く動かした。次の瞬間、Jの目に激痛が走る。

 

 痛みに悶えながらも、鞭を掴んで離さないJ。

 

 ふと、鞭を引く力が消える。力尽くで目を見開くと、セルリアンが自身に飛びかかっていた。しかし、回避するにはあまりにも距離が詰められ過ぎていた。

 

J「……度し難い。」

 

 牙が肩を掠めた。鈍い痛みを感じる……が、それだけであった。

 

 緑の一閃が視界を染め上げ、身体か何かに包まれる。

 

 気付いた時には、広場の真ん中で寝かされていた……

 

J「お前……どうして戻ってきた!」

 

 Jを庇うようにして立つ、マフラーのフレンズ。

 

 若草色の肘当てや膝当て、そしてボディアーマーを着込んだその姿は、まるで戦場(いくさば)に立つ武士(もののふ)のようでもあった。

 

?「……ごめんなさい。どうしても……」

 

 葉擦れが聞こえる。マフラーが靡き、頭部に携えた黒いゴーグルが光る。

 

?「どうしても、助けたいんです。」




〜次回予告〜

 我らのJ達を狙う、セルリアンが送った次の使者は……怪奇クモセルリアン。

 恐るべき毒牙を光らせて迫るクモセルリアン。森林に火花を散らすマフラーのフレンズの活躍は。

 次回、耀きの飛蝗。「Hero」にご期待ください。


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Hero

 ジワジワとJ達に迫るセルリアン。マフラーのフレンズはゴーグルを装着し、臨戦態勢をとった。

 

J「お前に助けられる筋合いなんか……」

 

 立ち上がろうとするJ。しかし、思うように手足が動かない。

 

J(クソ、これがヤツの毒か……だが、牙が掠った程度だぞ……?)

 

 動揺するJを背に、マフラーのフレンズは呟く。

 

?「それは……僕の所為でケガをさせてしまった償い……」

 

 遂にセルリアンがマフラーのフレンズへ飛び掛かる。

 

?「次に、僕を助けてくれた事への恩返し! そして……」

 

 セルリアンを迎え撃つように、彼女は拳を振るう。

 

 彼女の拳がセルリアンにめり込み、鈍い音が響く。弾き飛ばされた勢いのまま後退したセルリアン。柔い肉体にとってその一撃は重く、それに加えて思わぬ威力の反撃に、あからさまに動揺していた。

 

 セルリアンの身体から、黒い液体が滴る。

 

 駆けるマフラーのフレンズ。追撃がセルリアンに刺さる寸前、彼女に向かって黒い影が飛んできた。その正体は所々に赤と緑のマーブル模様のある黒い不定形のセルリアンであった。

 

?「まさか、さっきの……!?」

 

 寸前で身を翻し、黒いセルリアンの攻撃を躱す。咄嗟の動きで体勢は崩れ、隙が生じる。

 

 その隙を、セルリアン達は見逃さなかった。

 

 マフラーのフレンズが体勢を立て直す間に、彼女を囲うような陣形をとった。躙り寄るセルリアンを蹴散らすマフラーのフレンズ。しかし、絶え間なく襲い掛かるセルリアンを前に、マフラーのフレンズの体力は尽きかけていた。

 

 彼女の背後に、毒牙が迫る。

 

J「どけぇっ!!」

 

 おぼつかない足取りでクモセルリアンに突撃するJ。その一撃にたじろぐクモセルリアン。

 

?「無茶を!! その身体で……」

 

J「むちゃしてんのら、おまぇだおぉ……!」

 

 Jの身体には、既に毒が回っていた。感覚の薄れた手足の中で放った一撃はクモセルリアンの指揮を乱し、マフラーのフレンズの包囲網を打開した。

 

J「……いけぇ!」

 

 小さく頷くマフラーのフレンズ。その瞳に光が宿る。大地を蹴ると、その身体はクモセルリアンに向かって跳び上がった。

 

?「やぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!゛!゛」

 

 彼女の右脚が、クモセルリアンを貫く。クモセルリアンの肉体は瞬く間に溶け、それに共鳴するかの様に周りのセルリアンも溶けていった。それらは泡立ち、徐々に消えていった。その中心……クモセルリアンの居た場所には、赤茶色の何かが泡に塗れていた。

 

 マフラーのフレンズがへたり込むJに駆け寄ろうとした時、林の方から声がした。……博士と助手だった。どうやら、戦闘の騒動を聞き付けたらしい。

 

博士「……なんなのですか……これは……」

 

 目を見開いて、周囲を見回す博士。想像以上の荒れ具合であったのだろうか。

 

助手「そこのへたばってるお前、立てますか?」

 

J「……わりぃ、むり……」

 

 弱々しく答えるJの声色には、先程までの威勢が全く感じられない。その体色は、どこか薄く感じられた。

 

博士「そうですか……助手、ソイツを図書館へ。セルリアン由来の毒ならば、直にその効果も失せるはずです。」

 

 マフラーのフレンズへ視線を移す博士。その目は、好奇に満ちていた。

 

博士「緑のお前も、我々と一緒に来るのです。」

 

?「僕……ですか? 分かりました……」

 

 博士の言うままに図書館へ向かうマフラーのフレンズ。その手の中には、先程の赤茶色の何かがあった。

 

-図書館-

 

 Jの横たわるベッドを心配そうに眺めつつ、マフラーのフレンズは二人にこれまでの経緯を説明していた。 気がつくと自分がフレンズになっていたこと、その直後にJとセルリアンに会ったこと……

 

博士「なるほど……その雰囲気だと、自分が何のフレンズかは分かっていないのですね?」

 

?「はい……」

 

 俯き加減にそう答える彼女に、博士は語りかけた。

 

博士「元は何の動物だったか分からないことは、決して珍しいことでは無いのです。そう落ち込むななのです。」

 

助手「しかし、フレンズ化以前の記憶は全く無いのですか?」

 

?「ごめんなさい、本当に何も……」

 

 その一言以降、沈黙が続いた。時折、博士や助手の唸り声が聞こえる程度であった。

 

J「……なんだ、博士でも分からないことがあるんだな。」

 

 沈黙を破ったのは、横たわりながら吐いたJの呟きだった。

 

?「大丈夫ですか!? まだ寝てた方が……」

 

J「大した怪我じゃない。……それよりも、俺は最近のセルリアンについて調べに来たんだ。博士、助手。何か知らないか?」

 

博士「そのことですか……残念ながら、お前の欲しているようなモノは無いのです。むしろ、交戦したお前の方が詳しいかもですよ。 ですよね、助手。……助手?」

 

 その頃、助手は本棚へ向かっていた。

 

助手「最近のセルリアンについてはさっぱりですが、そこのフレンズの正体なら、今の我々でも掴めるはずです。なので、その手掛かりを……」

 

 助手が手に取った本……それは、昆虫図鑑であった。

 

博士「……成る程。確かに、"例外"を視野に入れるべきでしたね。」

 

 その時より始まったマフラーのフレンズの正体探し。その様子は、まさに同定と呼ぶに相応しいものであった。

 

 して、その正体は……

 

博士「お前の正体は…………恐らく、ヤマトフキバッタ……なのです。」

 

助手「これは……お前の身体に表れた特徴、お前が目覚めた場所、その他諸々を鑑みて下した決断なのですよ。」

 

 張り詰めた緊張が一気に解ける。

 

J「そうか……お前、バッタだったのか。珍しいな。」

 

ヤマトフキバッタ「そうなんですか……?」

 

助手「えぇ、お前の様な昆虫のフレンズは殆ど発見されていないのです。」

 

博士「……さて、ヤマトフキバッタ……お前はこれから、どうするのですか? 我々としては是非ともここに残って、日々の様子を観察させてほしいのですが……」

 

J「随分と気に入られてんだな、お前。」

 

博士「……いや、少し違うのです。昆虫のフレンズという例外的な存在ゆえ、何が起きても不思議ではないのです。」

 

 緩んだ筈の緊張感が、再び強張る。

 

ヤマトフキバッタ「例えば、何が起こると予想されるんですか……?」

 

博士「可能性を挙げるとすれば、暴走、部分的なフレンズ化の解除……或いは、完全なフレンズ化の解除。つまり元の動物……お前の場合は昆虫に戻るのです。」

 

助手「その上で、今後お前はどうするのですか?」

 

 暫しの沈黙が続く。ヤマトフキバッタは天を仰ぎ、静かに息を吐いた。

 

ヤマトフキバッタ「それでも僕は、戦います。」

 

 彼女は、赤茶色の何か……その半分が結晶となったクモの亡骸を手に、そう答えた。

 

J「そいつは……確かあのセルリアンを砕いた時に……」

 

ヤマトフキバッタ「恐らく、取り込まれた時からセルリアンに侵されていたんでしょう。あのセルリアンの体内から、微かに思いが伝わってきたんです。辛く、苦しく、もがく様な思いが……」

 

 目にうっすらと涙を浮かべ、絞り出す様に吐露する。

 

ヤマトフキバッタ「僕には、殺すことしかできませんでした……もし、今回のようなセルリアンが出ても、こうして誰かを殺すのは僕一人でいい。だから……!」

 

J「……お前が行くってんなら、俺も付いて行く。」

 

ヤマトフキバッタ「どうして……ですか?」

 

J「そんなの……あんなセルリアンが彷徨いてたら安心して寝てられないだろ。それに……俺だって、そのクモを殺したようなもんだ。お前に手を貸した時点で……だから。」

 

 Jが彼女の涙を拭う。その手は暖かく、そして震えていた。

 

J「……お前だけに背負わせはしない。」

 

 先程とは違った空気の沈黙が、2人を中心に広がる。拭った筈の涙がまた一つ、二つと頬を伝う。

 

ヤマトフキバッタ「…………ありがとう。」

 

 ヤマトフキバッタが、微笑んだ。

 

-図書館周辺の林、出口-

 

 出口まで見送りに来た、博士と助手。

 

博士「……気が変わったり何か不調があれば、いつでも戻ってくるといいですよ。」

 

 いつにも増して物腰の柔らかい2人に若干の違和感を覚えつつ、Jは先陣を切って歩き始めた。ヤマトフキバッタは律儀に一礼をしてから、Jの後を追った。

 

 去り際、彼女は図書館敷地の隅を見つめた……その先には、あのクモが埋葬された小さな墓が。

 

 歩くこと数分。初めに口を開いたのはJの方だった。

 

J「……なぁ、お前のこと……なんて呼べばいい?」

 

 きょとんとした表情を浮かべるも、すぐに微笑むヤマトフキバッタ。

 

ヤマトフキバッタ「好きに呼んでください。その代わり、あなたの名前も教えてくださいね。」

 

J「…………仕方ないか。俺はジャクソンカメレオン、好きに呼べ。」

 

 赤面するJを眺めながら、じっくりと呼び名を考える。色々な案が浮かんでは消え、気付けば林の終わりが見えていた。

 

ヤマトフキバッタ「……そうですね。よし。それでは、ジャックと呼ばせてください。」

 

ジャック「……悪くない。これからよろしくな、ヤマト。」

 

 満更でもない様子のJ……もといジャックは、軽くヤマトの方を振り返って呟いた。




〜次回予告〜

 我らのヤマト達を狙う、セルリアンの送った次なる使者は……神出鬼没のカマキリセルリアン。

 ある方法で生計を立てるオオコウモリを狙う、その理由は。小さな木箱を巡るセルリアンとの争奪戦。

次回、耀きの飛蝗。「Overture」にご期待ください。


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Overture

-じゃんぐるちほー-

 

 そよ風が吹き、木漏れ日が煌めく。その深緑の中で妖しく煌る、人ならざる者の鋭利な腕が……

 

 危機が迫っている事など露知らず、1人の白と黒のフレンズ……マレーバクが茂みの中を進む。それもその筈。追跡者がいるのにも関わらず、その場に響く足音はただの1人分なのだから。

 その細くも巨大な身体を揺らし、祈る様にして折り曲げられた腕がマレーバクに向かって静かに、だが確実に延びていった。

 

 音も無く迫る死。その影に気付いた時には……

 

?「ケケーッ!!」

 

 何処からか飛んできた別の影が、マレーバクを攫う。追跡者の腕はマレーバクを掠めるに留まり、彼女を捕らえることは叶わなかった。その視線は、飛び去った影に向けられていた……

 

 それからしばらく経った頃、じゃんぐるちほーの端ではマレーバクが木にもたれ掛かり、誰かと話をしていた。

 

マレーバク「あ、ありがとう……?」

 

?「いいのいいの。たまたま通りすがっただけだから。」

 

 その相手は、あのセルリアンから救い出してくれたフレンズだった。

 

マレーバク「け、けど、どうして助けてくれたの? ……もしかして、何か見返りとか……?」

 

 その言葉を聞いた彼女の表情は、先程までの和やかな雰囲気からガラリと変わり、マレーバクの眼をジッと見つめていた。

 

?「……おぉ、中々鋭いねェ。早い話、そういう事。」

 

 そこまで言うと、彼女はマレーバクに向かって手を差し出した。マレーバクは彼女の目と手を交互に見つめ、何を求められているのか必死に考えていた。

 

マレーバク「……もしかして、食べもの……?」

 

 彼女の口角が上がった。どうやら正解のようだ。だが、マレーバクは非常に申し訳無さそうに俯いた。

 

マレーバク「ご、ごめんなさい! 今は持ってなくて……」

 

 今度は、彼女の口角が下がった。それに加え、その眼差しは心なしか先程よりも鋭いものに……

 

?「う〜ん、そっかぁ……なら、仕方ないか。」

 

 懐から小さな木箱を取り出しながら、ゆっくりとマレーバクに歩み寄る。

 

マレーバク「ごめんなさい! 今度は絶対用意するから……! お願い……」

 

 目を瞑り、震えながら謝るマレーバク。だが、尚も歩みを止めない。逃げ出そうとするも、脚が痛む。恐らく、先程セルリアンから逃げた際に負った傷が原因だろう。……何かがマレーバクの脚に触れた。

 

マレーバク「嫌っ……!」

 

?「えっ、ごめん! 痛かった……?」

 

 マレーバクがゆっくり目を開けると、脚の傷に何かが塗られていた。

 

?「直ぐに良くなるとは思うけど、念のため暫くは弄らないでおいてね。」

 

 キョトンとするマレーバク。

 

?「……多分、君はさっきのセルリアンに目ェ付けられてると思うから、一旦他のちほーにでも避難しておくといいよ。なんなら私が負ぶっていこうか?」

 

マレーバク「う、うん……ありがとう……けど大丈夫。」

 

?「あら、そう? そンじゃ、私は行くよ。脚が良くなってからでいいから避難しなよ?」

 

マレーバク「……分かった。本当に、ありがとう……あの、その、私はマレーバク。あなたの名前は……?」

 

 飛び立とうとするそのフレンズに向かって問いかけるマレーバク。すると、そのフレンズは振り返り、笑顔でこう答えた。

 

?「あぁ、自己紹介がまだだったね。私はオガサワラオオコウモリ! どうとでも呼んでよ。」

 

 そこまで言うと、オガサワラオオコウモリはそそくさと飛び立った。

 

-同時刻、同ちほー-

 

ジャック「……本当にこの辺りなんだろうな?」

 

 若干の疑いの色を孕んだジャックの視線を尻目に、ヤマトは森の中を進む。遡ること2日前、図書館を出た2人は新たなセルリアンの情報を聞きつけ、じゃんぐるちほーへ向かっていた。しかし、収穫は無し。仕方なく周辺の捜索へ移ろうとしていた。

 ……が、ヤマトがセルリアンの体内から発せられた微かな苦しみを察知、そして今に至る。

 

ジャック「……ヤマト、止まれ。」

 

 疑問符を浮かべながらも立ち止まり、振り返るヤマト。理由を尋ねようと口を開いたが、それはジャックの手によりすぐさま封じられた。2人の足音も消え、辺りに静寂が訪れた。その時、初めて2人は気付いた。

 

 静か過ぎる。

 

 それは、ジャングルには不似合いな程に。

 

 様々な考えが、各々の頭を浮かんだり消えたりしている。しかし、2人の中では共通して1つの原因が確固たるものとして存在していた。その思考の中に、1つの雑音が入り込んだ。2人は咄嗟にその発信源の方を見た。空を飛ぶ影が、羽撃きによる微かな音を起こしながら2人へ迫っていた。

 

 臨戦体制をとる2人へ、その影は叫んだ。

 

?「そこから離れて!!」

 

 その声とほぼ同時に、ジャックはいち早く背後からの殺気に気付いた。

 

ジャック「クソっ!」

 

 続いて気配に気付いたヤマトはジャックを抱え、その背後の気配から距離をとる様に跳ねた。いつから居たのか、初めから付け回されていたのか……咄嗟の出来事に動揺ながらも、僅かに残された冷静さでなんとか周囲の状況を確認する。目を凝らすと、そこには木々の深緑に紛れて佇むセルリアンが居た。

 

ジャック「ヤマト! ここは一旦退くぞ!」

 

ヤマト「けど、ここで倒さなきゃ誰かが!」

 

 セルリアンを一点に見据えながら叫ぶヤマト。

 

ジャック「不意を突かれた今、圧倒的にこっちが不利だ! 俺達はここでくたばる訳にはいかない!」

 

 2人を追って、空から影が降りてきた。

 

オガサワラオオコウモリ「その嬢ちゃんの言う通りだよ! それに、この辺りのフレンズなら殆どみんな避難しちまってる!」

 

 2人の中で合点がいった。何故、この場所がこれほどまでに静かだったのか。

 

ヤマト「……分かった。どこの誰かは知らないけれど、あなたを信じる!」

 

 体力の限り様々な方向へ跳ねるヤマト。辿り着いたのは、開けた場所に流れる、穏やかな小川だった。

 

-小川-

 

ジャック「……ここまで来れば一息つく余裕ができるだろ……」

 

 倒木に腰をかける3人。始めからこの旅に加わっているかの様に振る舞う1人のフレンズに、ジャックが問いかけた。

 

ジャック「……助けてくれた事には感謝している。だが、ここまで着いてこなくとも……」

 

オガサワラオオコウモリ「まぁ、ほら……旅は道連れってヤツ? それに君たち、ただのフレンズじゃないでしょ? その目付き……あまりにも覚悟が決まりすぎてるからさ。」

 

ジャック「……何が言いたい?」

 

 そのフレンズは改まった姿勢で、ジャックを見つめた。

 

オガサワラオオコウモリ「……私と協力して、あのデカブツを倒してほしい。」

 

ヤマト「それはできない。これ以上、あなたを巻き込む訳にはいかな……ッ……!」

 

 立ち上がろうとするヤマトだが、不意な痛みが彼女の足首を襲う。よろめく彼女を慌ててジャックが支えた。

 

ジャック「まさか、逃げる時に……?」

 

 よく見ると、彼女の額には脂汗が滲んでいた。

 

ヤマト「ジャック、大丈夫だよ。これくらいの怪我なら……」

 

 そう意気込む彼女とは裏腹に、その痛みは酷くなる一方であった。

 

オガサワラオオコウモリ「少し待ってな。すぐにでも治して……あら……無い……!?」

 

 懐を弄るが、彼女の探し物が見つからない。

 

ジャック「何を探しているんだ、オオコウモリ……」

 

オオコウモリ「実は、大体の怪我なら治せる薬があるんだけど……って、あれ? 自己紹介してあったっけ……」

 

ジャック「これでも、色々と情報は集めているんでな。オガサワラオオコウモリ、お前の噂も少しは耳に入っていたが……それで、そんな薬があるのか?」

 

 少々驚きつつも、オオコウモリは説明を続けた。

 

オオコウモリ「えっと……これくらいの小さな木箱に入ってる塗り薬で、やたらと効くんだよ! まぁ、手元に無いんだけどね、ははっ、はぁ……どこかに落としたかな……」

 

 不意に、ヤマトの体が強張る。

 

ジャック「ヤマト!? どうした、別の場所が痛むのか!?」

 

ヤマト「来る……! さっきのが……」

 

 その声に呼応するように、茂の中から先程のカマキリセルリアンが現れた。そしてその光る鎌状の腕には小さな木箱が突き刺さっていた。

 

オオコウモリ「お前か!? ソイツを返せってんだ!!」

 

 咄嗟に走り出すオオコウモリ。しかし、カマキリセルリアンは鎌を振り上げ、翅に刻まれた極彩色の模様を見せつけるかのように威嚇した。その圧にたじろぎ、オオコウモリは堪らず後退りした。

 

ジャック「ヤマト、お前は休んでいろ。ここは俺が……」

 

 鞭を引き抜き、オオコウモリの元へ歩みを進めるジャック。

 

オオコウモリ「……私はあの木箱を取り戻したい。君たちはあのセルリアンを倒したい。目的が似たようなものなら、一緒に戦ってくれる?」

 

ジャック「……あの木箱に入った薬を使えば、本当にヤマトの足も治るんだよな?」

 

 オオコウモリはニヤリと笑い、大きく頷いた。

 

ジャック「なら、手を貸さない道理などないな。……来るぞ!」

 

 カマキリセルリアンの腹部から、無数の黒い針金のような何かが吐き出される。それらが絡まり合い、無数のセルリアンとなってオオコウモリ達へ飛び掛かった。

 

ジャック「またこいつらかよ!」

 

 鞭を振り回し、そのセルリアン達を蹴散らすジャック。一方、オオコウモリはかなり苦戦していた。

 

ジャック「お前、まさか戦えねぇのか!?」

 

オオコウモリ「だぁかぁらぁ!! 手伝ってほしかったのぉ!!」

 

 始めは善戦していたジャックだが、その数に押され、次第に苦境へと立たされていた。討ち漏らしたセルリアンの1体が、ヤマトへ向かう。

 

ヤマト「たとえ脚は使えなくとも!」

 

 ヤマトの拳がセルリアンを砕く。だが、その抵抗もいつまで続くかどうか。そんな不安に、ヤマトは襲われていた。

 

オオコウモリ「このままじゃジリ貧だ……ジャックちゃん! セルリアンを頼んだ!」

 

ヤマト「はぁ!? お前、何を!?」

 

 セルリアンの間を縫って、オオコウモリはカマキリセルリアンの元へ駆けた。

 

オオコウモリ「私の商売道具、返してもらうよ!!」

 

 その勢いのまま飛び立ち、鎌の先にある木箱を取り戻したオオコウモリであったが、セルリアンも徒では済まさない。オオコウモリを捕らえようと、その鎌を振るう。鎌の先がオオコウモリの背を掻っ切った。

 

オオコウモリ「ッア゛ぁ!」

 

 衝撃と痛みで体制を崩し、ヤマトの方へ投げ出されるオオコウモリ。

 

ヤマト「オオコウモリさん!?」

 

オオコウモリ「……ん、ヤマトちゃん……? カカッ……運は我にあり……ってねェ……」

 

 這いずりながら木箱を開け、薬をヤマトの足首へ塗りたくる。

 

オオコウモリ「君は要だ……さぁ、存分に暴れてきな……!」

 

 スっと立ち上がり、オオコウモリへ小さく頷くヤマト。ゴーグルを掛け、カマキリセルリアンへ真っ直ぐ向かっていった。

 

ジャック「お前……待ってろ、今すぐその薬を!」

 

 オオコウモリに駆け寄り、木箱を開ける……が、その中身は使い切られていた。

 

オオコウモリ「へへっ……さっきので使い切っちゃった……」

 

 薄れ行く意識のなか、オオコウモリは微笑みかけた。オオコウモリを倒木へ寝かせるとジャックは彼女を背に立ち上がり、再び鞭を構えた。

 

ジャック「もう少しだけ、耐えてくれよ……」

 

 そう呟くジャックの視線の先には無数のセルリアンが、更にその先にはカマキリセルリアンと対峙するヤマトの姿があった。

 

 カマキリセルリアンが振り下ろした鎌を左手で受け止め、胴へ思い切り蹴りを見舞う。その一撃で本当に脚が治っていることを実感したヤマトは、更に二度、三度と蹴りを打ち込む。もがくカマキリセルリアンに振り払われたヤマト。すぐさま体制を立て直し、反撃の構えをとる。……しかし、そこにカマキリセルリアンの姿はなく、気付けば森の中へ誘い込まれていた。

 

 呼吸を整えたヤマトは目を閉じた。彼女の髪留めに付いている、3つの小さな宝石が輝く。

 

 ……それは一瞬の出来事であった。ヤマトが背後に向かって繰り出した手刀が、カマキリセルリアンの石を砕いた。セルリアンの鎌が彼女の首を刈り取るよりも先に、彼女の手刀がセルリアンに致命の一撃を加えたのだ。また1つ、誰かの命が己が拳に刻まれたことを、その痛みと共に実感したヤマト。

 

 主の死により、先程までジャックと死斗を繰り広げていたセルリアンも消滅。辺りは、川の流れる音、そして各々の吐息のみが響いた。

 

-じゃんぐるちほー、出口-

 

 日が沈み、星々が輝き始めた頃、ヤマト達はじゃんぐるちほーを旅立った。再び、この地に賑やかさが帰ってくることを祈って……

 

ジャック「…………で、何でお前も着いてきてんだ?」

 

オオコウモリ「だってぇ!……君たちに着いていけば食いっ逸れることも無さそうだし……」

 

 平然と並んで歩くオオコウモリに、ジャックが再び問いかける。

 

ジャック「結局は食いもんの為か……情報通りだな。」

 

オオコウモリ「食べ物は大事だよ!! 食わなきゃ生きていけないからね! ……けど、それだけじゃないからね。私が着いていく理由……」

 

 急にしおらしくなったオオコウモリ。

 

オオコウモリ「これでも感謝してるんだよ? あのセルリアン倒したおかげで少しは平和になったし。それに、今こうしてピンシャンしてるのだってヤマトちゃんのおかげだもの。」

 

 そう、オオコウモリを治療したのはヤマトであった。勿論、オオコウモリ自身の豪運としぶとさもあってのことだが、それに加えてヤマトが必死にになって集めた薬草が回復を早めたのだ。

 

ジャック「それもそうだし、俺だって感謝くらいはしているが……おい、ヤマト……お前からも何か言って……何食ってんだ?」

 

 ジャックが振り返ると、ヤマトが黙々とバナナを食べていた。

 

ヤマト「……これ? 実はさっき、オオコウモリさんから貰ったんだけれど……柔くて、とても美味しいんだ……!」

 

 呆れた表情でヤマトからオオコウモリへ視線を移すジャック。

 

ヤマト「お前……ウチのヤマトを買収したな?」

 

 本能で身の危険を察知したオオコウモリが、慌てふためいていた。

 

オオコウモリ「ご、誤解だよ! ほら、お礼だから! あくまで感謝の気持ちなだけだから!!」

 

 賑やか過ぎるほどに賑やかな3人……そして、その3人を遠くから眺める2つの影が。その内の1つの手には、今では骨董品とも言えるであろうカメラが握られていた。

 

?「……よし、綺麗に撮れてる……流石だね、俺。」

 

 カメラの液晶を眺め、ニヤニヤとする彼女。

 

?「ここ数日、観察を続けてはいるが……どうする? 接触する準備は整っているが。」

 

 もう1つの影が問いかける。長くしなやかな尾をうねらせ、まるで獲物を見定めるかのように、彼方の3人を見つめていた。

 

?「その辺りのタイミングやら手段やらは任せるよ。あの仲良し組から、バッタちゃんを引き剥がすことさえできればいいからねェ……」

 

 彼女の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。夜風に靡くマフラーが地面に蠢く影を作り出し、月光が射し始めたことを告げる。月光に照らされた彼女の姿、首から下げられたゴーグルに、各所を覆う防具、その姿はまるで、もう1人のヤマトが立っているかのようであった。




〜次回予告〜

 我らのヤマト達を狙う、セルリアンが送った次なる使者は……ムカデセルリアン。

 熱風渦巻く砂漠の中、不気味に繰り広げられる魔のハンティング。リンカルスが命を懸けたヤマト強奪作戦に、敢然と立ち向かうジャックとオオコウモリ。

 次回、「Chasm」にご期待ください。


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