落ちこぼれ魔法使い少女が目指すのは魔女〜魔法はみんなを笑顔にさせる〜 (光三)
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第1部 落ちこぼれ魔法使い編
プロローグ


新投稿始めました。よろしくお願いします。


 この世界アムヌネジアは、神族、魔女族、人族、亜人族が存在している。この世界では主に、魔女族に憧れて魔法使いになる人族が多い。この少女、アリス・ネクレリオン12歳もその1人だ。田舎にある魔法使い養成学園に通っている。彼女は、努力を惜しまない。いつか、魔女になれるように……しかし、いまだ魔法を使えない。それでも、彼女は今日も笑顔で魔法の練習をする。いまだに魔法は使えない……そんな生活を1年以上続けていたある時、彼女はイジメを受けた。殴る、蹴るなどの暴行を10分間行われ更に

 

「お前なんかが魔女に憧れてるんじゃねーよ!!魔女が可哀想だろうが。今すぐ、《遊戯の魔女》様に謝れ!!」

 

 などという理不尽な言葉の暴力を受けた。しかし、少女はキョトンとして疑問を呈した。

 

「なんで?いつも思うけど、どうして私が《遊戯の魔女》に謝らなきゃならないの?」

 

 そう、彼女は本気でわからない。何故、私がよりにもよって胡散臭いと思っている魔女に対して謝らなきゃならないのか。とはいえ、「胡散臭いから」と理由をはっきり言ってしまうとまた、暴行が行われるので彼女はいつも「 」という答えを返している。すると

 

「なんだよ、つまらねーなお前。おい、お前らいくぞ」

 

 と言って彼らは去っていくのだ。

 彼女は、《遊戯の魔女》以外の魔女に憧れている。特に《努力の魔女》に憧れて魔女を目指しているのだ。それが、彼女がイジメられる最大の原因だ。これから数年後、彼女は死んだ。絶望の中で(・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、お母さん行ってきます。必ず魔女になって帰ってくるから」

 

「楽しみにしてるわ、アリス(・・・)。あなたが二つ名をもらうとしたら、《笑顔の魔女》ってことになりそうね」

 

 こうして、運命は始まりを告げる。この結末がバッドエンドを迎えるか、ハッピーエンドを迎えるかそれは神すら知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、アリスとか言う女の子の因果書き換えたかお前」

 

「何言ってるんだ?神族会議で因果書き換えないことに決まったじゃねーか」

 

「だったらなんで、あの子の未来が見えないんだ?」

 

「はぁ、お前遂に[神眼]まで腐り果てたか?」

 

「いや、ちげーよ。お前もみてみろよ、信じられねーだろ?」

 

「わかったよ、みればいいんだろ」

 

そう言って、男神はアリスをみた。

 

「………………………は?」

 

「………」

 

「これは、ちとまずくないか?」

 

「アンタもそう思うか?」

 

「…………今すぐ、全神族をここに集結させろ」

 

「了解しました。最高神様」




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第1話 辺境の魔法使い養成学園

今回のお話は、私のもう一つの投稿作品変の軌跡の致命的なネタバレがあります。ネタバレが嫌な方は、ブラウザバックして下さい。お願い致します


 ここは、辺境の村アクレにある魔法使い養成学園だ。この学園は、いくつかの養成コースがある。魔女科、冒険科、サポート科、普通科の4コースだ。

 

 魔女科は、その名の通り魔女を目指す者達の入るコースだ。人間族から魔女族に種族進化する為にはある特殊な条件が必要なのだが、この物語のメイン主人公であるアリス・ネクレリオンは条件を満たしていない。この時点で、魔女になるのは不可能なことだと思うが安心してほしい。まだ、方法はあるのだ。その方法は、異世界に行くということだ。異世界に行く方法は、大きく分けて4方法ある。

 1つ目は、異世界召喚である。異世界召喚魔法を用いて他世界の任意の人物を呼び出す方法で、リスクが大きい。何故なら、世界間を移動するとき次元の壁を越えなければならないからだ。異世界召喚をする場合は、防護魔法も併用しなければならない。

 2つ目は、異世界転生である。この方法は、異世界召喚と違いリスクは存在しない。何故なら、次元の壁を越えた後肉体が再構成されるからだ。

 3つ目、4つ目は、異世界転移とゲートを用いた異世界間移動である。これらの方法は、あるにはあるが今はあまり使われていない。

 

 冒険科は、冒険者になろうとしている魔法使い達のコースである。この世界アムヌネジアには、各大陸ごとに冒険者ギルドの本部があり、それぞれの街、村に冒険者ギルドの支部がある。冒険者とは、基本的に冒険をする者達のことだ。また、冒険者ギルドではランク制が適用されていて、一番下がEで一番上がAである。冒険者ランクを上げる為には、冒険を繰り広げる必要がある。そして、その冒険の成果をレポートにまとめ、ギルドに提出するのだ。冒険者には、もう一つ仕事がある。それは、犯罪者・(・・・・)盗賊の捕縛(・・・・・)だ。この世界アムヌネジアの冒険者は、犯罪者を殺さず捕らえることを鉄則としている。その理由については、今は語る必要がないので割愛する。

 

 サポート科は、支援魔法、魔法具を使い魔法使い達のサポートの仕方を学べるコースだ。

 

 普通科は、魔法の歴史など勉学が主になる。

 

 このアクレ魔法使い養成学園は、全校生徒40名という最早廃校寸前の捨て石学園である。アリスは何故こんな捨て石学園に通っているのだろうか。それは、単純にお金がないからだ。もう少し正確に言うと、王都のグランセリア魔法学園に入学する為のお金がなかったのだ。あそこは、貴族や富裕層の為の学園だ。アリスのような一般市民に通えるような学園ではない。以上でこの学園の説明を終わろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、最高神様。神族を全員連れて参りました」

 

「ご苦労、アムネシアよ」

 

「有難き幸せ」

 

「ところで空の女神(エイドス)煉獄の大悪魔神(アモン)夫妻はどうした」

 

「その方達なら、もう少ししたらきますよ」

 

「お待たせ致しました。エイドス、アモン只今アムヌネジア様の招集に応じ参上致しました」

 

「ああ、久しいな。エイドスにアモンよ……ところで、お主らの子は今どこで何をしている」

 

「私達の世界、ゼムリアで暮らしておりますが……?」

 

「エレボニア帝国にあるトールズ士官学院に入学しました」

 

「ほう、何故かね」

 

「それは、「それよりも早く会議始めようよ」そうだったな……後で聞かせてもらおう、エイドスにアモンよ」

 

「「了解しました」」

 

「それでは、只今より緊急神族会議を始める。議題は、アリス・ネクレリオンの運命についてだ」

 

「「え!!?え!??その名前は、その者の名は………」」

 

「アリス、アリス………なあ、エイちゃんその名前は………」

 

「ええ、アーくん。間違いなく、あの子があの不死者に与えた名前よ」

 

「お主ら一体何故そんなに驚いている?」

 

 最高神の質問に対して、2神が言った言葉はこの場を困惑させるのには十分な威力を持つものだった。

 

「その不死者は、とある秘密結社の最高幹部の一人でアリアンロードと名乗っています」

 

「その者は確か………」

 

「そうです」

 

「その者に我が息子は、惚れたようでな」

 

「私達の子は、度々その方をデートに誘い、そして……」

 

アクロスは、(・・・・・・)アリアンロードに(・・・・・・・・)アリス(・・・)という名を与えた(・・・・・・・・)

 

 神界に大きな動揺が広がった。




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第2話 アリス・ネクレリオンという少女

お待たせしました、お楽しみください。


 この物語のメイン主人公であるアリス・ネクレリオンは、辺境の村アクレに住む12歳の少女だ。彼女は、母親が4歳の時に読み聞かせてくれた絵本の中に登場する魔女たちに憧れている。この世界軸(・・・・・)で魔女といえばこの世界の人々はすぐにそれぞれの魔女の渾名を言える。それ程魔女は、この世界の人々にとって身近でかつ神の様な存在なのだ。しかしながら、魔女たちの中でこの世界でいやこの世界軸で蔑まれている2人の魔女がいる。1人は、《努力の魔女》キャシー・クゥウィンズマリーでアリスが最も憧れている魔女だ。何故アリスがこの魔女に憧れているのかそれは、キャシーが人間族から魔女族に進化した魔女のひとりだからだ。2人目はキャシーの姉である《魅惑の魔女》リサハルト・クゥウィンズマリーだ。この魔女は、母方の血が受け継がれた為に生まれた時から既に魔女であった。しかしながら、この魔女は既に魔女として終わってしまったのだ。その理由については、ほかの物語やこの物語の中で少しずつ明かされていくだろう。

 アリスは、アクレ魔法使い養成学園でイジメを受けている。その原因の一つが《努力の魔女》に憧れているからだ。更に彼女は、入学してからもう1か月経っているにもかかわらず、未だに初級魔法のファイヤーボールが発動出来ないのだ。普通、初級魔法を発動させるのは1か月もあれば誰でも出来ることなのだ。しかしアリスの場合は、1か月かけて漸く魔力循環や魔力操作ができるようになってきたといったところだった。その出来る2つのことも未だ拙さが残るものである。そうアリスは、絶望的に詠唱魔法の才能が(・・・・・・・・)無かったのだ(・・・・・・)。しかし、アリスは諦めない。いつか、自分が魔女になれる日を夢見て、笑顔で今日も学園に通う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、貴女って魔女にプロポーズした二人目の人間族って知ってる?」

 

「はあ!?アイツ(・・・)以外にそんなこと出来る奴いたのかよ」

 

「ねえ、マキノ。気になってることあるんだけど聞いてもいい?」

 

「なんだ、カエデ………もしかして」

 

「そう、何でこの世界軸ではある一定の時期を過ぎると時間が巻き戻されるの?」

 

「…………わからねぇ、だけど何らかの力が働いていることは確かだ」

 

「でも、1万年前。2019年にはそんな現象は起こっていなかった」

 

「ああ、そういえばカエデはいつからこの異変に気付いた?」

 

「5年前からかな?」

 

「俺もそのくらいだな」

 

「「…………」」

 

 2人の仲が良さそうな男女は、余りの難題に揃って黙り込んでしまった。

 

イルバール様(・・・・・・)にはこのこと伝えたのか?」

 

「5年前に伝えたわ………結局何もわからなかったけど」

 

「マジか!?あの方にわからないなら俺らが考えたってわかるわけねーじゃねーか!」

 

「そうなの、どうにかならないかな……」

 

「ヤベーな割とマジで。今回ばかりは、詰んだかもしれん」

 

「ちょっと待って、マキノ」

 

「ん?どうした、カエデ」

 

「イルバールから伝言預かってたんだった……しかもヒントっぽいやつ」

 

「おっ、希望の光が見えてきたぞ。で、なんなんだその伝言っていうのは!」

 

「えっと、地球に行ってくれないか?そして、そこで涅槃、涅槃空間、怨霊についての関係性を調べてくれないか?だって」

 

「涅槃って確か、死者の世界のことだったよな。それで、涅槃空間ってのが涅槃を取り囲む膜の働きを担う概念みたいなものだっけ?」

 

「死んだ人間は、必ず霊体と化す」

 

「そして死後、霊体と化した者たちは………あれ、どうなるんだ?」

 

「涅槃に行く……あれ?違う、そうじゃない」

 

「何のプロセスも無しにいきなり涅槃に行くのはありえねー」

 

「仮に自ら行こうとしても概念が生み出した膜があるから、十中八九弾かれる」

 

「それになにより、守護霊や地縛霊、怨霊の存在に説明がつかない」

 

「ねえ、もうひとつ説明がつかないことが発生したわ」

 

「マジか、もう勘弁してくれ……」

 

「それは、異世界転生よ(・・・・・・)

 

「………………………………は?」

 

 こうして彼らは、巨大な運命の渦に巻き込まれてしまった。




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第3話 アクレ魔法使い養成学園の教師たち

今回でアクレ魔法使い養成学園の基本的な説明が終わり、本格的に物語が始まります。設定が色々とややこしいので感想欄を使い質問してくれても構いません。考察をして、楽しんでいただくと幸いです。
それでは、お楽しみください。


 アクレ魔法使い養成学園では、それぞれのコースに1人ずつ担任の教師がいる。魔女科の教師の名前は、マリア・サファンディアという。マリアは、元々義務教育学校の教師で魔法とは関係がないところで働いていた。ある理由から、前の職場をクビにされてしまい途方に暮れていたところ、この学園の学園長自らがスカウトして魔女科の担任教師を任されたのだった。

 

 サポート科の教師の名前は、ミネルヴァ・サーボグラスという。彼女は、魔女科の担任教師に自ら立候補したが何故か学園長は魔法とは関係がない一般人を魔女科の担任教師にしてしまった。当然彼女は、すぐに考え直すように直談判したが聞き入れてくれなかった。理由を聞くと、彼は彼女に向かってこう言ったという。

 

「こうすることが一番いい結末を迎えるからだ……本当は、君もわかっているんじゃないかね?」

 

「し、しかし。学園長……マリアは、只の一般人ですよ!何かあってからでは遅い!?」

 

「マリアは、必ず成し遂げるよ。君が、したくても出来なかったことを」

 

「もう嫌だ、あんな絶望的な結末をみるのは……」

 

「ああ、わしも同じ気持ちじゃよ」

 

「この世界軸では、何らかの力によってある一定の時期を過ぎると時間が巻き戻る。今までこの現象に助けられてきたが、次もそうなる可能性は低い」

 

「じゃろうな。ミネルヴァよ、今回で決めるぞ!!(・・・・・・・・・)

 

「当然です!アリスの親友として、師匠として、魔女になれるように『サポート』する。それが、今の私の役目です!」

 

「やはり、お主をサポート科に配属したのは好判断だったようだ」

 

 この日以来、彼女は配属に不満を持つことはなくなった。

 

 冒険科の教師の名前は、アグネス・アーリーバーディスという。冒険科の魔法使いたちは、男が多い為男性の教師を必要としていた学園長は、実際に冒険者ギルドに行き男の魔法使いを探した。そして、見つけたのがアグネスであった。アグネスは、二つ返事でアクレ魔法使い養成学園の冒険科の担任教師を引き受けてくれたのだ。後に理由を学園長が聞いてみると、こういう答えが返ってきた。

 

「へへ、なんだか面白そうなことが起きそうだったから。ご、ごめん。そんな大層な理由じゃなくて」

 

「いやいや、構わんよ、アグネス君。冒険者として、魔法使いとして頼んだぞあいつらのこと」

 

「はい、任せてください!学園長」

 

 普通科の教師の名前は、シーリア・サリハードという。彼女は、プロの魔法研究者で魔法というものの正体、魔力は何処からきているのか、そして、魔女とは一体何なのかという研究をしている。因みに年齢は、20歳である。

 

 以上がアクレ魔法使い養成学園の教師たちである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マリアは、ある問題に直面していた。それは、魔女科の生徒の1人アリス・ネクレリオンが未だに初級魔法を発動出来ないのだ。一度、魔女科の生徒全員で理由を突き詰めるべきかも知れない。

 

「でも、厄介なことに明日は王都の奴らが来る日か……どうしよう」

 

 以前、アリスがアクレ魔法使い養成学園でイジメを受けているという話をしたが、アクレの生徒たちが彼女をイジメているわけではない。アクレに週2日やってくる王都の魔法使いたちにイジメられているのだ。

 憂鬱な気分になり、沈んでいると声を掛けられた。顔を見てみるとアリスだった。

 

「どうしたの?マリア先生。もしかして、私のことで悩んでますか?」

 

「っ!!」

 

 マリアは、そのものズバリ言い当てられて言葉に詰まってしまった。しかし、彼女は笑顔でこう言った。

 

「ほっておけばいいよ、あんな人たち。いつか、魔女になって見返せば良いだけだから」

 

「それってやり返すってこと?」

 

「へ?なんで、やり返さなきゃいけないの?マリア先生」

 

「だって、あなた理不尽な理由でイジメられて悔しくないの?」

 

「うん、悔しいよ。だから、魔女になったら自慢するんだ。あなたたちが無才能と言った私は、『努力』して魔女になれたって」

 

「……ぁ…………」

 

「私絶対に諦めないから。だから、これからもよろしくお願いします。マリア先生」

 

 はちきれんばかりの笑顔を浮かべて、アリスはそう言った。それを聞いたマリアは、ある決心をした。

 

「ねえ、アリスさん。私、明日あなたの為の授業をしようと思う」

 

「へ!?」

 

 あまりの衝撃発言にアリスは、思わず驚きの声を上げてしまった。

 

「何を、そんなに驚く必要があるかな?」

 

「だって、みんなに迷惑かけるから……」

 

「迷惑なんかじゃない!!!」

 

「(びくっ!?)」

 

「ごめんね、突然大きな声出して。でも、本当に迷惑なんかじゃないから」

 

「そうなの?」

 

「そうなの!!もう夜も遅いし、お話はここまで!寮に帰って休みなさい」

 

「わかった。マリア先生」

 

 もう、後戻りは出来ない。ここから、マリアの否、アクレ魔法使い養成学園の戦いが始まる。そしてここからは、バッドエンドかハッピーエンドに向けてただ突き進んでいくだけだ。




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第4話 アリスの為の授業

 グランセリア魔法学園の生徒たちが、魔女科の教室に入ってきた。マリアは、貴族、王族というものは嫌っていない。しかし、こいつらのことは嫌いである。何とかその態度を出さないように努めながら、授業の始まりを告げる号令をかける。

 

「起立、礼」

 

『よろしくお願いします』

 

「着席」

 

 生徒たち全員が席に座るのを見て、マリアは安堵の息をつく。そして、ここからが本題だ。

 

「みなさん、今日は特別授業を行いたいと思います」

 

「特別授業ですか?」

 

「遂に、始める気になったか?(・・・・・・・・・・)マリア先生」

 

 魔女科唯一の男子生徒、アクロス・パーリアートはチラリとアリスの方を見ながら言った。因みにアクロスは、アリスについて行くために魔女科に入った。簡単に言ってしまえば、アクロスはアリスのことが好きなのだ。

 

「ええ、その通りです。アクロス君」

 

「ねえ、アクロス君。どういうことなの?」

 

「なるほど、そういうことか………確かにこのことについては、疑問しかないものね」

 

「ああ、そうだ。そして、今から行うのが恐らく……」

 

「アリスさん、前まで出てきてください」

 

「……はい」

 

 アリスは、返事をして教壇の前に立つ。そして、マリアは特別授業の説明を始める。

 

「今日は、みなさんと一緒にアリスさんが魔法を使えない原因を探したいと思います」

 

「み、みんな。よろしくね?」

 

 少し遠慮がちにアリスは言った。

 

「気にするな、アリス。俺たちは、共に魔法を学ぶ仲間(クラスメイト)だ。迷惑だなんて思う必要ねえぞ。な、みんな?」

 

『ええ/うん/はい』

 

「ありがとう、みんな」

 

「じゃあ、早速始めましょうか。まず、アリスさんは「なんなんだこの下らん茶番は!」………(イラッ)」

 

『(イラッ)』

 

 やはりというか、王都の連中がちょっかいを出してきた。マリアは、あらん限りの理性を怒りを抑え込むために強め、平静を装いながら言った。

 

「下らない茶番とは何のことでしょうか?」

 

「ふん、こんな事すらわからんのか?辺境の捨て石学園の教師は……いくら教えても無駄だと思いますがね。だって、こいつは無才能なんだからな」

 

 少し疑問があったアクロスは、怒りを押さえ込みながら質問した。

 

「無才能とは?」

 

「先生に続いて生徒まで無才能だとは、やれやれ、どうしたものか……」

 

「質問に答えてくれないか?無才能とはなんなんだ?」

 

「はあ、わかった。この僕が直々に教えてあげよう。無才能とは、魔力があるにもかかわらず魔法が一切使えないことを指す言葉さ」

 

「ほう?で、その原因は?」

 

「君たちが一般人だからさ」

 

『…………………………は?』

 

 マリアと生徒たちは、訳が分からなさすぎて『は?』という言葉をハモらせてしまった。

 

「魔法はね、魔女が与えて下さったんだ。我々の様な高貴な血が流れている者たちにね」

 

 この言葉を聞いたとき、アクロスは質問の無意味さを感じた。そして、今度こそ嫌悪感を隠さずにこう言った。

 

「貴様らに質問することの無意味さを改めて感じたよ。なぜなら、貴様らは魔法のことを知ろうとしていないだろ?」

 

「はは、何を言ってるんだい君は?何を根拠にそんなことを?」

 

「根拠ならあるぜ。それは、俺らが魔法を中級魔法まで使えるということだ。因みにアーリアちゃんに至っては上級魔法の練習を始めているようだぜ?」

 

「な、なぜ。なぜ、貴様ら一般人が……」

 

「それはまあ、毎日学園に行って魔法の勉強して、時間あるときに練習してるから?そうとしか言えないんだが……」

 

「普通、上級魔法の習得には最低でも1年はかかる筈だ!?」

 

「ああ、たぶん辺境だからさ時間が有り余るほどあるんだわ。毎日日が沈むまで学園で魔法の練習しまくってるからなあ……俺ら」

 

『……………』

 

 遂に王都の連中は、黙り込んでしまった。

 

「そろそろこの無意味な、言い争いを終わりにして授業を始めたいんだが?」

 

「付き合いきれん、君たち帰るよ」

 

 こうして、王都の連中は教室からぞろぞろと出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、アクリル・イル・グランセリアと申します。王都グランセリア、その他の街や村をまとめる王族の血が流れています。因みに、私は第三王女です。私は、魔法を学びたくてグランセリア魔法学園に通っています。そして明日は、楽しみにしていたアクレ魔法使い養成学園との合同授業の日です。ワクワクしながら王城での仕事を終わらせ、アクレへと向かって出発しました。アクレに着いたのは、9時ちょうどでした。馬車を使い、途中で休憩を入れ1日かけ到着ということだ。すると、何故か王都の学園の制服を着ている貴族たちがイライラとした様子で帰っている姿が見えました。

 

「どうしたのかしら、あの人達。クラウス、まだ授業始まったばかりですよね?」

 

「はい、その筈ですが………」

 

「まあ、いいわ。それよりも私すっごく授業受けるの楽しみ!?」

 

 クラウスは、歳相応にワクワクする第三王女を見ながら同意の言葉を言う。

 

「そうでございますね、アクリル様。いい、ご友人が出来るといいですね」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、邪魔な連中が居なくなったところで授業の続きしようか、マリア先生」

 

「そ、そうですね。そうしましょう」

 

 マリアは、内心焦っていた。アクロス君があそこまで、嫌悪感をあらわにするとは思いもよらず、報復の心配をしなければならなくなった。こうなったら、後から来る特別ゲスト(・・・・・)の力を借りてことの収拾を図ることにしようかという押し付けの考えを何とかなかったことにし、アクロス君の言う通り授業を再開させた。

 

「それでは、特別授業を再開したいと思います。まず、アリスさんは、魔法を発動させることができますか?」

 

できます(・・・・)

 

「そうですか……では、アリスさんは『魔力操作・魔力循環』は出来るということですね?」

 

「はい、それも拙いレベルですが……一応出来ます」

 

「それでは、実際にやってみてもらえる?」

 

「はい、わかりました。マリア先生、順番は?」

 

「魔力循環、魔力操作の順番でお願いできる?」

 

「はい、それではいきます」

 

 アリスは、体内にある魔力を循環させ始めた。

 

「アクロス君、視てくれる?(・・・・・・)

 

「わかりました。異能[魔力探査]発動!」

 

 アクロスは、アリスの体内を循環している魔力を視た。すると、違和感を感じた。何故か、ずっと同じ量の魔力が流れなければならないのに一定の量の魔力がどこかに吸収されていっているのだ。今度は、吸収される魔力を視ると身体の中心付近に集まっている様だった。

 

「今度は、魔力操作を頼む」

 

「うん、わかった」

 

 アクロスは、右手に移動していく魔力を視た。やはり、一定の量の魔力が中心付近に吸収されている。

 

「もういいぞ、アリス。原因がわかった……しかし、新たな謎も増えた」

 

「謎、ですか?」

 

「ああ、何故か身体の中心付近に一定量の魔力が吸収されていってるようだ」

 

「理由は、わからないと……」

 

「ああ、わからない」

 

「とりあえず、アリスさんは席に戻ろうか?」

 

「うん」

 

 詠唱魔法が発動しない理由はわかったが、新たな謎が増えた。ここまでで1限目の授業の半分が終わった。




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第5話 学園の異質さ

「さて、みなさんに特別ゲストを紹介したいと思います。それでは、入って来て下さい」

 

『???』

 

 そして、扉を開けて入って来たのはとんでもない人物だった。

 

「うっそ!あの人もしかして」

 

「アクリル様?」

 

「グランセリア連合国の第三王女!?」

 

「アクリル・イル・グランセリアか………おもしれぇなマリア先生」

 

「ま、まさか。マリア先生が呼んできたのですか!??」

 

「はい、そうですよ。アリスさんのこと話したら直ぐに許可を貰えました」

 

「ふ、普通、一般人は王族には会うことが出来ない筈なのでは?」

 

「まあ、色々あるのよ……それより、自己紹介していきましょうか?」

 

「俺からでいいか?先生」

 

「はい」

 

「俺の名前は、アクロス・パーリアートといいます。よろしくお願いします」

 

「はい、アクロス君よろしくね」

 

 アクロスは、あまりのフランクさに呆気にとられてしまった。先程まで、王都の貴族、富裕層連中の傲岸不遜さに怒りが込み上げていたが、目の前の王族はむしろ俺たちの様な一般人みたいに感じた。

 

 その後順番に自己紹介していき、最後はアクリルが自己紹介を始めた。

 

「私は、アクリル・イル・グランセリアです。みんな、私のことは気軽にリルって呼んでね。これから(・・・・)よろしくね」

 

 少し疑問に感じたことがあったので、アクロスはマリア先生に質問した。

 

「マリア先生、これからと言うのは今日一日の話ですよね?」

 

「いえ、アクロス君。アクリルさんは、今日からここの学園に通うことになったから。よろしくね、アクリルさんのこと」

 

『……………………』

 

 数秒黙り込み、生徒たちは一斉に驚きの声を上げた。

 

『えー!!?』

 

「いやいや、絶対おかしいってマリア先生!?」

 

「そうですね、王族とコンタクトを取ることがすでに一般人である先生には不可能な筈……」

 

「俺よ、前々から考えてたことがあるんだ」

 

「考えていたことですか?」

 

「ここの学園って生徒だけでなく、先生も何か異質なんだ」

 

「異質ですか?」

 

「例えば、アリスは詠唱魔法が発動しない。俺は、何故か常人の5倍の魔力を持っている」

 

「その、異能ももしかして……」

 

「俺3日前までは、自分の能力のことわかってなかったんだ」

 

「そ、そういえば今日は何故?」

 

「3日前のことなんだが、みんな聞いてくれるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日前の夜、アクロスは寮の自室で魔力循環と魔力操作をしていた。魔力循環をすることで体内の魔力量が増え、魔力操作で体内の魔力をコントロールすることが出来る。簡単に言うとアクセルとブレーキの働きをする。アクロスは、毎日1時間これを続けている。そして1時間後、アクロスは3日後のグランセリア魔法学園との合同授業について考え始めた。アリスは、詠唱魔法が発動しない。原因は、全くわからない。そこでアクロスは、先生たちの意見を聞いてみることにした。まずは、普通科の担任に聞いてみよう。

 

 アクロスは、学園の職員室前にいる。

 

「すみません、アクロス・パーリアートです。シーリア先生はいますか?」

 

「はい、なんでしょうか?アクロス君」

 

「アリスさんのことについてご相談があるのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」

 

「ええ、大丈夫よ。………………アリスさんか、あの子詠唱魔法が発動しないらしいわね」

 

「そうなんです、何か原因があると思うのですが……」

 

「いくつかの仮説があるのだけど、聞くかしら?」

 

「はい、お願いします」

 

「わかったわ、じゃあアクロス君は、無詠唱魔法って存在すると思う?」

 

「へ?どういうことですか?無詠唱魔法なんて存在する筈ないじゃないですか」

 

「どうしてそう言いきれるの?アクロス君は、何の根拠を持ってその発言をしたの?」

 

「だって、調べるまでもありませんよ。教科書に書いて(・・・・・・・)あったんだから(・・・・・・・)

 

「そう、そうよね。アクロス君は、まだ子供だから疑うということの大切さを知らないのね」

 

「疑うことが大切ってどういうことですか?信じるなとでも言いたいのですか?」

 

「いえ、信じるなとは言っていないわ。でもねアクロス君、信じるって難しいことなのよ?」

 

「???」

 

「アクロス君は、クラスメイトと先生を信じている?」

 

「ああ、必ずあいつらならアリスを魔女にしてくれるって信じている。この学園の生徒全員が俺たちを支えてくれるから」

 

「そう、アクロス君はどうしてそこまであの子たちを信じられるのかな?」

 

「それは、みんなアリスが詠唱魔法を発動出来るようにさまざまな分野の知識を学んだり、聞いたりしながらサポートしてくれるから」

 

「うん、見ていたらわかるわ。あの子たち必死だもん」

 

「そうなんだよ。でも、いまだに解決の方法が見つからないんだ……だから、お願いします先生。力を貸してください」

 

「うん、最初からそのつもりよ。アクロス君、教科書に書いてあることを信じるなと言っているつもりはないのよ」

 

「さっきも言ってましたがどういうことなんですか?」

 

「物事を疑うってことは、そのことを知ろうとすることなのよ」

 

 その言葉は、アクロスの胸にすんと落ちていった。そして、漸く理解してきた。なぜ、先生があんな発言をしたのか、今まで、魔法のことを学んでいるつもりだっただけで実際には思考が停止していたのだということを。本当に魔法を知りたければ、俺はもっと魔法について興味を持ち、あらゆる疑問を深く掘り下げるべきだったんだ。本当は俺も詠唱魔法があるならその逆の無詠唱魔法もある筈だと疑っていたんだ。なのに、教科書に書いてあるたったそれだけの理由で疑うことをやめてしまったのだ。まさに、思考停止というやつだ。

 

「先生、さっきの無詠唱魔法の質問の回答を変えていいですか?」

 

「ふふっ、いいわよ」

 

「無詠唱魔法が存在することを証明することは、現段階では無理です。しかし、あらゆる物事には『対』という概念があることは証明されています。なので、詠唱魔法の対が無詠唱魔法だと仮定出来ます」

 

「よく出来ました」

 

「しかし、よく考えるとあれも謎なんだよな?」

 

「あれとは、なんでしょうか?」

 

「『魔力循環・魔力操作』のことです。魔法を使うなら誰でも最初に通る道です。しかし、俺はあれこそが無詠唱魔法の原型となる魔法(・・)なんじゃないかって思って……」

 

「………………アクロス君、凄いわ!?今すぐ私の研究の助手をして欲しいぐらいだわ」

 

「け、研究?助手?どういうことですか?」

 

「私はね、魔法について研究しているのよ」

 

「シーリア先生、研究者だったんですか!?」

 

「そう、魔法とはなんなのか、魔女とはどういう存在なのか、そもそも魔法を使う為に必要な魔力はどこから出てくるのか、それを調べているわ」

 

「どうして先生は、魔法を調べようと思ったんですか?」

 

「ごめんなさいね、今は言えないわ。でも、いずれは知る時が来るから」

 

「?よくわからないけど、わかりました。それで話の続きなんですが……」

 

「そうだったわね、アリスさんは魔力循環・魔力操作はできるのかしら?」

 

「出来ると思いますよ。だって、初級魔法の練習をしてますから」

 

「じゃあ、全く魔法が使えないということではないのね……」

 

「やっぱり、シーリア先生も魔力循環・魔力操作は魔法だと思っているんですね?」

 

「そうよ、それよりも今はアリスさんのことよ。と言っても現状では、何の解決策もないけれど………あっ!もしかすると、サポート科の先生が魔法に関して異常に詳しいからその先生に聞いたら何かわかるかもしれないわ」

 

「ありがとうございます、シーリア先生。失礼しました」

 

 こうして、アクロスは職員室を出て行った。寮の部屋に戻ろうとした時、寮の前にサポート科の担任の教師と冒険科の担任の教師が何やら話をしていた。ちょうどいいタイミングだったので、2人の教師に話を聞いてもらうことにした。

 

「すみません、アグネス先生、ミネルヴァ先生。少しお話があるのですが、今大丈夫でしょうか?」

 

「ふふ、来ると思っていたわ。アクロス・パーリアート君」

 

「なんか、面白くなってきそうな気配!せっかくだから、参加させてもらうよ」

 

「アグネス君、また冒険者としての勘?」

 

ミネルヴァ様(・・・・・・)がいる時点でもうある程度……」

 

「だから、言った筈よアグネス君。今の私は、ただのミネルヴァ・サーボグラスだって」

 

「すみません、い、いや。すまん、ミネルヴァ」

 

「(……なんだ?どうして、アグネス先生は今ミネルヴァ先生に対して……)」

 

「さて、要件は何かしら?アクロス君」

 

「え、えっと、そうでした。ミネルヴァ先生、アリスさんのことなんですが………」

 

「もしかして、未だにあの子が詠唱魔法を発動出来ない理由が知りたいの?」

 

「そ、そうです。何かわかりませんか?先生」

 

「ごめんね、それに関してはアクロス君が調べなさい」

 

「へ?調べても現状ではどうにもならないので話を聞きたいのですが………」

 

「ごめん、言い方が悪かったわ。正確には、アクロス君はその理由を知ることができる力を持っている。ね」

 

「力?ですか?」

 

「そうよ、『魔法』でも、『スキル』でもない力。それは、『異能』と呼ばれる力よ」

 

「『スキル』?『異能』?何ですかそれ?」

 

「そう、この世界では『ステータス』という力を数値化できる力が無くなってしまったのね……」

 

「(さっきから、先生の言っていることがひとつも理解出来ない……『スキル』、『異能』に続いて『ステータス』か……俺は、まだまだ何も知らないんだな本当に。でも、だからこそこの学園でやりたいことができた!俺は、わからないことをわかるようになりたい!多分、この先生は色々なことを知っている)」

 

「先生、俺の異能は何なのでしょうか?」

 

「それは、[魔力探査]よ」

 

「魔力探査ですか、どういった異能なのでしょうか?」

 

「魔力を視ることができる力ですね」

 

「魔力を視る?そんなことが出来るのですか?普通は、不可能ですよね。………そうか、そうだったのか!?だから、『異能』なのですね先生」

 

「気づいたか……そうよアクロス君。『異能』とは、『スキル』や『魔法』を使っても出来ないことが出来る力よ。『スキル』というのは、いわゆる技能のことで『魔力』を使わないことが特徴ね」

 

「ということは、魔力を使う技は全て『魔法』?」

 

「でも、そんなに単純じゃないのよ。まあ、今は知らなくてもいいけど」

 

「今は、ですか。ということは、いずれは知らなければならないのですね?」

 

「そうよ、だから頼んだわよ。アクロス(・・・・)今度こそ(・・・・)アリスを幸せ(・・・・・・)にしてあげて(・・・・・・)信じてるから(・・・・・・)

 

「やれやれ、ミネルヴァも不器用だな……って俺らもか」

 

「(やっぱり、先生たち何か隠してる……)」

 

「わかりました。任せてください」

 

「頼んだわよ、アクロス君。それから、アリスさんのことだけど……断言するわ。どれだけ練習をしたところで彼女が詠唱魔法を発動させることは出来ない。でも、魔力操作と魔力循環は続けさせなさい」

 

 これが、3日前の出来事である。




お読みいただきありがとうございます。
ご意見ご感想よろしくお願いします。


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第6話 異世界という未知なる領域

令和初の投稿です。
これからもよろしくお願いします。
それでは、お楽しみください。


 アクロスの話を聞いた魔女科の生徒たちは、みんな黙り込んでしまった。

 

「アリス………」

 

「嘘でしょ。アリスちゃん、あんなに頑張ってたのに………」

 

「詠唱魔法を発動することが出来ないって、断言したのよねミネルヴァ先生……」

 

「ああ。でも、まだ諦めるのは早いと思う」

 

「無詠唱魔法ですか?詠唱魔法の『対』であろう魔法体系」

 

「(それに『スキル』、『異能』、『ステータス』というのはもしかして………確かめるしかありませんね)」

 

「あの、みなさん少しよろしいでしょうか?」

 

「はい、アクリルさん。どうぞ」

 

「みなさん、今から『ステータスオープン』と、唱えてみてください。私の考えが当たっている場合、何か起こると思います」

 

「なるほど……やってみるか」

 

「そうですね」

 

「(アクリルさん、確実に何か知ってるな……いや、確信が持てないから確かめてるのか)」

 

「(アクリルさん、ありがとうございます。今は、動けない私たち教師の代わりをしてくれて……)」

 

 アクリル・イル・グランセリアは、別にこの学園の真の目的をそして、学園の教師の隠しごとについて知っているわけではない。ただ、彼女がそれだけの情報を得ていたというだけの話だ。

 

「それでは、みなさんいきますよ」

 

『ステータスオープン』

 

 その時、様々なことが起こった。まず、アクロスはさっき聞こえた機械音声の言った言葉の意味を考察し始め、提案者のアクリルは城の禁書庫で見つけた否見つけてしまった事実が証明されてしまったことに僅かながら焦りを覚え、他の生徒達は突如として聞こえてきた声に呆然としていた。

 

「(みんな完全にのまれてやがる……まずい)」

 

 アクロスが危惧していたのは、この出来事を無かったことにしてしまうのではないかということだった。せっかくの『知る』チャンスを棒にに振ろうとしているのではないかと。しかし、この危惧は提案者であるアクリルが見事に解消した。

 

「みなさん、私から話したいことがあります」

 

「ああ、さっきの声のことか?」

 

「そのこともですけど、みなさん今何を考えてましたか?」

 

「何をって……」

 

「そういえば………ただ、混乱していただけかもしれないわ」

 

「みなさん、私が言いたいことはわかりましたか?」

 

『はい』

 

「ありがとうございます、アクリルさん」

 

「いえいえ」

 

「いや、正直助かったと思うぜ。あのままだったら、みんな思考停止に陥るだけだったよ」

 

「そして、真実に辿りつけないまま……」

 

「なあ、アクリル」

 

「何ですか?」

 

「いい加減に知っていることを話してくれないか。それとも、言えない理由でもあるのか?」

 

「いえ、そういうわけではないのですが……」

 

「『異世界ネットワーク』とは何だ?そもそも、異世界は(・・・・)存在するのか?(・・・・・・・)

 

「仕方ないですね、教えましょう」

 

「頼む、アリスの為だ」

 

「私は、ご存知の通りグランセリア連合国の第三王女です。普段は、王城で過ごしています。そして、王城の中には禁書庫が有ります」

 

「禁書庫?ねえ、リルちゃんって本を読むの好きなの?」

 

「はい。だって本は、たくさんの知らない知識が書かれてあるもの!私ね、知らないことを知るのが好きなの!」

 

「禁書庫………禁書って何?リルちゃん」

 

「はい。禁書とは、表沙汰に出来ない出来事や研究などが記された書物のことです。みなさんが知っている通り王城の図書館は、一般開放されています。その中に禁書庫はあります」

 

「あれ、でもリルちゃん」

 

「何でしょうか?」

 

「今の話だと、一般開放されている図書館の中に禁書庫があるってことだよね?」

 

「そうですが……」

 

「そんなところにあったら、一般人が禁書庫の中に入ってしまう可能性はないの?」

 

「そんなこと、気にするだけ無駄ですよ」

 

「へ?どういうこと?」

 

 思わずアリスは、間抜けた声で疑問を口にしていた。

 

「だって、図書館に入った時点で禁書庫に入っているのですから」

 

「えぇぇぇ、大丈夫なのそれ!!禁書なんだよね!一般人に公開出来ない情報があるんだよね!」

 

「はい、そうですよ」

 

「リルちゃん!?冷静に言葉を返さないでぇ」

 

 アリスは最早オロオロとするばかりだった。

 

「アリスちゃん、心配無いですよ」

 

「どういうこと?」

 

「グランセリアの血をひいている者のみが読めるのですから」

 

「そ、そうだったんだ……良かったぁ」

 

「ゴメンね、心配かけて」

 

「気にしなくていいよ、リルちゃん」

 

「アクリル、少し良いか?」

 

「はい、良いですよ」

 

「異世界とやらの知識は禁書に書かれてあったのか?」

 

 アクロスが疑問を挟んだ。そして、アクリルが言ったことはクラスの全員を驚かせた。

 

「『異世界』、『異空間』、『魔女界』、『神界(神域)』基本的には、この4界が存在している。そして、異世界に行く方法は大きく分けて4つ存在する。『異世界召喚』、『異世界転生』、『異世界転移』、『ゲートを使った異世界間移動』よ。魔女は、《魅惑の魔女》リサハルト・クゥウィンズマリー、アリスちゃんが憧れている《努力の魔女》キャシー・クゥウィンズマリー。この二人だけ名前がわかるけど後の魔女は、渾名だけが広まっているわ。《遊戯の魔女》、《勉学の魔女》、《恋愛の魔女》、《勇気の魔女》、全ての魔女を合わせると6人ね。因みにこれらの情報は、禁書の内容(・・・・・)ではありません(・・・・・・・)

 

『えぇぇぇ』

 

「ね、ねえ。リルちゃん、何でこんなこと知ってるの?」

 

「何言ってるの?アリスちゃん」

 

「へ?」

 

図書館にある本にも(・・・・・・・・・)この教科書(・・・・・)にも書いて(・・・・・)あることでしょ?(・・・・・・・・)




お読みいただきありがとうございます。


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第#&%$¥話 とある禁書の内容

とある禁書には、このようなことが記されている。死者蘇生の研究、その果てに生まれた、死者蘇生の具体的な内容が。

とある禁書には、このようなことが記されている。神族とは、感情を持ったシステムそのものだと。

とある禁書には、このようなことが記されている。神族が死ねば、この神族が創り出した概念世界は消えると。

とある禁書には、このようなことが記されている。神族や魔女族は、大昔戦争をしたと。

とある禁書には、このようなことが記されている。輪廻の輪から外れた霊体(魂)は、廃棄処理されると。

とある禁書には、このようなことが記されている。魔術と超能力と魔法について。

とある禁書には、このようなことが記されている。異世界ネットワークは、ある者の願いから生まれたのだと。

とある禁書には、このようなことが記されている。魔女でも概念世界をある程度改変出来ると。

とある禁書には、このようなことが記されている。人族や魔女族、亜人族は身体の中心に魂の核、即ち魂核があると。

とある禁書には、このようなことが記されている。世界軸が違っても全異世界の人族、異種族は魔力を持っていると。

とある禁書には、このようなことが記されている。異世界ネットワークには、感情を植え付けることが出来る機能があると。

とある禁書には、このようなことが記されている。涅槃には、神がいると。

とある禁書には、このようなことが記されている。運命は、変えることが出来る可能性があると。

とある禁書には、このようなことが記されている。神族同士であれば、概念世界の管理を代わることが出来ると。

とある禁書には、このようなことが記されている。ゼムリアという異世界は、最早消えかかっていると。

ととあるある禁書書には。こようがしるしるれている。神族同士の子供は、神童と呼ばれると。

とああるれれるれる禁書には。。れている。#@&jwmdjtqjzjPpu'qhtkamjtgjmwvと、

とああるれれる、なはほよならはには、記されている。@mwtutmxtjwtrjmytpjj&mwmt't&x#%6842569○

とあある

とあるとあるとあるとあるとあるとある

ザーッ

って言うから!代わることがある、栄機能面サというけど!かアタ会うかもカさになたやらははゆらろゃゆ」ひぬにたになりたなやなゆなみむななゆはなゆぬやなのはゆかなこひにま」やな「みえなこにまやなりにななのやねり」ひかひ「ねはひならにのひなろなにゆなたにてひににのなな「のらるはひなおひりの?なやひはろ「みのなににらりにににはやるは

ザーッ

にならになやななふにかにゆねなやゆねよりななやりにやよら

とあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとあるとある禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書禁書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザーザーッキュルキュルザーッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタのせいだ!!アンタのせいでっ!」

 

「ゴメンね、さようなら。愛していたよ、アリス」

 

「死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!アクロスゥウウゥゥゥ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だ、嘘だ!う、うそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだああぁぁぁぁアァァァァ!!」

 

こうしてアリスは、絶望の中で死んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある禁書には、このようなことが記されている。このままだとこの世界は消えると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上、わたくし#ajtw.vokhjtpgjtjj/#%でした。




お読みいただきありがとうございます


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第7話 改変された事実

「な!?何言ってるんだアクリル。教科書は一通り目を通したが、そんなことは書かれていなかったぞ!?」

 

「そうだよ、リルちゃん。そんなことどこにも書かれてなかったよ」

 

 突然のアクリルの衝撃発言に、アクロスとアリスは驚きの声をあげた。

 

「いいえ、書いてあるはずですよ。もう一度、さっき私が言った言葉を思い返しながら読んでみてください」

 

「わかった。やってみよう」

 

「リルちゃんが言うなら、私やってみるよ」

 

 アクロスとアリスは、アクリルの言った通りに教科書を読んでみた。

 

「…………………………………………………まじかよ」

 

「う、うそぉぉぉぉぉぉぉ!?な、なんでぇ!」

 

「十中八九、あの機械音声の言っていたことが鍵になるんだろうがな」

 

「うん、そうだね。なんか、ステータスが何かの効果によって見られなくなってるって言ってたね」

 

「そして、その代わりに『異世界ネットワーク』というシステム?に接続された」

 

「でも、そのシステムも突然切れちゃったね。アカウント登録?とか言うのの最中に」

 

「お、アリスもやってたのかアカウント登録」

 

「アクロス君もやってたんだ。私と同じことしてる。えへへ」

 

「と、とにかく。これからどうする?なあ、みんなもどうするか———みんな?」

 

『—————』

 

「………………へ?何でみんな止まってるの?」

 

「ま、まずいです!?今すぐに、教科書を閉じて!」

 

「「わ、わかった」」

 

 アクロスとアリスは、教科書を閉じた。すると、さっきまで止まっていたクラスメイトが一斉に動き始めた。

 

「大丈夫ですか!?アクリルさん、アリス、アクロス君」

 

「私は、大丈夫ですよ」

 

「俺も、大丈夫だ」

 

「私も」

 

「良かったあ〜」

 

「そうですよ。急にぶつぶつ喋り始めたと思ったら、動かなくなったんだから」

 

「…………そうか」

 

「そ、そうなんだ」

 

「…………………」

 

「まあ、これで異世界の存在は証明されたってこと?」

 

「まだ、わからないな」

 

「そう」

 

 その時、カーンカーンカーンという1限の終わりを告げる鐘が鳴る。

 

「特別授業は、一旦ここまでとして15分間の休憩とします」

 

『ありがとうございました』

 

 こうして、特別授業1限目は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリスとアクロスとアクリルは、アリスが何時も使っている誰の目にも付かない秘密の訓練場にいた。

 

「なあ、もう一度アカウント登録ってやつ試してみないか?」

 

「うん。実は凄く気になってる」

 

「そうですね。では、ステータスオープンと言いましょう」

 

「「「ステータスオープン」」」

 

 〈現在、ステータスは《?????》による[???????]の効果により閲覧出来ません。〉

 

「相変わらず、聞き取れねぇな(・・・・・・・)

 

「そうだね」

 

「…………」

 

 〈代替案として、異世界ネットワークに接続します。アカウント情報が無いためアカウント登録をします。〉

 

 こうして、アクロスとアクリルとアリスはアカウント登録を始めた。その後、特にトラブルも無くアッサリと登録が完了した。

 

 〈アカウント登録を確認しました。異世界ネットワークに接続しますか?〉

 

「「「YES」」」

 

 〈IDとパスワードを入力してください〉

 

 アクロスとアクリルとアリスは、IDとパスワードを入力した。

 

 〈異世界ネットワークサービスへようこそ。アリス様。本日は、どのようなご用件でしょうか?〉

 

「へ?何でもいいの質問でもなんでも?」

 

 〈はい。私は、アリス様の異世界ネットワークサービスです。なんなりとご用件を〉

 

「じゃあ、今何時かな?」

 

 〈現在は、10時5分です。後、6、7分ぐらいで教室に向かい始めれば授業までには間に合うと思います。〉

 

「(スゴ!?)」

 

「じ、じゃあ。私は、魔法が使えるようになる?」

 

 〈魔法は、魔力のある者は誰でも使うことが出来ます。即ち、使えるようになります。〉

 

「(あの疑問もついでに聞いとこっと)」

 

「『魔力循環・魔力操作』は、魔法ですか?」

 

 〈はい。無詠唱魔法の基礎となる魔法です。〉

 

「やっぱり、無詠唱魔法は存在するんだね!」

 

 〈無詠唱魔法は、イメージ、即ち妄想を魔力を使い実現化する魔法です。イメージの具体性が高ければ高いほど、威力は増します。〉

 

「それって、下手したら相手を殺しちゃうかも」

 

 〈安心して下さい。『殺そう』などと思わなければ、無詠唱魔法で相手が死ぬことはありません。〉

 

「へ?何で?」

 

「そもそも、無詠唱魔法のイメージとは準備で魔力を使い実現化します。魔力は、アリス様にとっては武器に等しいのです。そして、攻撃行動を取る際は武器を使い、防御や制圧を行う訳です。ここまでは理解出来ましたか?〉

 

「はい。大丈夫です」

 

 〈攻撃には、攻撃者の意志が宿ります。それが、この世界の摂理です。〉

 

「(なるほど)」

 

「じゃあ、無詠唱魔法と詠唱魔法の違いって何?」

 

 〈無詠唱魔法とは、無詠唱でイメージを種とし、魔力でイメージを実現化する所謂『魔法陣』を必要としない魔法形態です。詠唱魔法とは、詠唱により『魔法陣』を空に書き、決まった量の魔力を魔法陣に注ぐことで発動させる魔法形態です。〉

 

「じゃあ、最後の質問いいかな?」

 

 〈もうそんな時間でしたか。現在10時9分、そうですね。良いですよ。〉

 

「じゃあ、クラスメイトのみんなは異世界ネットワークに接続出来るかな?」

 

 〈今のままだと、出来ないです。〉

 

「え、そんな!どうして?」

 

 〈術者《?????》による[???????]の効果ですね。この効果によりステータスの閲覧はもちろん様々な影響が出ています。〉

 

「もう、誰なのその名前聞き取れないクソ!信じらんない」

 

「ア、アリス。一旦落ち着こうか?まあ、気持ちはわからんでもないが……」

 

「ですが、実際クソなのは事実ですね」

 

「でも、何で私たちは接続できたんだろ?」

 

 〈アリス様たちが、[???????]の効果を一部弾いたからです。〉

 

「成る程な」

 

「そうですか……成る程」

 

「そうだったんだ。ってもう授業に間に合わなくなっちゃう。リルちゃんアクロス君、教室に行こ。その前にログアウトしな〈少し待って下さい。〉は、はい」

 

 〈クラスメイトの皆様にも、異世界ネットワークサービスを利用していただきたいので、ログインしたままにしておいてください。安心してくださいとは言いづらいですが、何とか致します。〉

 

「へえ、なんか何とかしそうだなマジで」

 

「うん。任せたよ」

 

 こうして、アリスとアクロスとアクリルは2限目の特別授業に向かっていった。




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第8話 色々な謎増え解き明かしまた謎増える(前編)

 現在、10時15分。これから、特別授業2限目が始まる。マリア先生が授業の始まりを告げる号令をかける。

 

「起立、礼」

 

『お願いします』

 

「着席」

 

全員が席に座っていることを確認して、アクロスは言った。

 

「アーリア、マリア先生、スー、マリル、リナ、ユリアン聞いてくれ」

 

「アリスさんのことについて何かわかったのですか?それとも……」

 

「両方だ」

 

「……………」

 

「これって、あの機械音声のこと〜」

 

「ああ、そうだ」

 

「リルちゃん、聞きたいことある〜」

 

「はい、何でしょう?スーちゃん」

 

「あの時の機械音声って結局何〜?」

 

「異世界ネットワークとか言う奴に付属してる音声何じゃないのか?」

 

アクロスが疑問に思っていることのひとつがスーによりクラスメイトと先生に共有される。

 

「アクリルさん。禁書には、一般人には知られてはいけない知識が記されているのですよね?」

 

「そうですよ。アーリアさん」

 

「その基準は、一体どのように決められているのですか?」

 

「あ……そういえば、そうだね」

 

「成る程な。大方、それを決める組織みたいなものがあるんじゃないか?」

 

「よくわかりましたね。アクロスくん。そう、元々禁書とは只の本のひとつに過ぎないのですよ」

 

「リルちゃん、ひとつ聞いていい?」

 

「いいですよ」

 

「何で、リルちゃんのお城にある図書館が禁書庫なの?」

 

「ん?どういうことだ?アリス」

 

「ああ!マリルわかっちゃったかも!」

 

「そうなんだ。なんなんだろう?ん〜??わかんないや!」

 

リナがわからないと言うと、今度は、ユリアンが言った。

 

「私もわかったかもしんね〜」

 

「アリスは、わかるか?」

 

「もう少ししたら、わかりそう」

 

「………………あ!そういうことか!?それはそれで新たな謎が増えるが、これが一番ありえそうだな」

 

「あ!リルちゃん。わかったよ」

 

「そうですか」

 

「リルちゃんの家、グランセリア王家はその組織の一員なんだよね?」

 

「よくわかりましたね。アリスちゃん」

 

「どうやら、合っていたようですね」

 

「けどよ〜何で、禁書庫に一般人招いて禁書以外の本を読む図書館にしちまったんだ〜?」

 

「それは、禁書の内容を(・・・・・・)一般人(・・・)に知って欲しかっ(・・・・・・・・)たからです(・・・・・)

 

「えぇ!?つまり、それは……」

 

「な!?何言ってるんだ!?アクリル」

 

「なんかよくわからないけど、リルちゃんがヤバイことしてることはわかった〜」

 

「な、何でそんなことしたの!?リルちゃん」

 

すると今までずっと黙っていた先生が言った。

 

「もしかして、それは現王の意思ですか?」

 

「そうです」

 

「もしかして、グランセリア王家そのものがあの組織を?」

 

「はい。今のあの組織は、何者かの傀儡に成り下がっています。確かに禁書には、一般人が知らない方が良い知識もあります。しかし、やり方が許せないです!」

 

「強制的な回収に、禁書指定の厳しさ、従わない者への一家全員死刑、禁書に残る可能性のある研究の強制停止などですね?」

 

「そうです。だからこそ私たちグランセリア王家は、あの組織に楯突くことを選んだのです」

 

「一体、何様のつもりなのでしょうか?その組織の連中は」

 

「まあ、頭のイカれまくった哀れな連中ってことだろ」

 

「明らかに、禁書に指定されるはずがない本も回収されてそうだ」

 

「もしかして〜研究もそうなんじゃね」

 

「マリル気になることがあるんだけど……もしかして、その組織何かの情報?真実?みたいなものを隠蔽しようとしてない?」

 

「マリル、それはどういうことだ?」

 

アクロスのこの質問は、アクロス自身がマリルの言おうとしていることを半ばわかった上での質問である。

 

「マリルね、ずっとモヤモヤしてるんだよ。アーリアちゃん達も一緒じゃない?」

 

「そうね、その感覚はわかるわ。そして、その感覚はあの機械音声を聞いた時からずっとあるわ」

 

「ああ、たしかにモヤモヤしやがる!」

 

「ん〜??そういえば、そうかも〜」

 

「だからマリルはね、いっぱい考えたんだ!いっぱいいっぱい考えたらね、なんだか訳がわからない結論が出ちゃった!てへっ」

 

「てへっ、じゃねーよ!さっさと結論いえ!」

 

「わかったよ。ユリアンちゃん。マリルはね、機械音声とリルちゃんが言ってたことをいっぱい考えてこんな結論を出したの!この世界は、何者かによって操られてるんじゃないか?って!」

 

「はあ?何寝ぼけたこと言ってやがるんだ〜!?」

 

「いえ、ユリアンさん。マリルさんの言うことは、一見突飛な意見だけど一考の余地はあると思うわ」

 

「ああ?どういうことだ〜?」

 

「それぞれの魔女の渾名は、わかるわよね?」

 

「《勇気の魔女》、《恋愛の魔女》、《遊戯の魔女》、《魅惑の魔女》、《勉学の魔女》、《努力の魔女》の6人だろ〜」

 

「そうよ。そして、ひとつ質問なんだけど……ユリアンさんは、アクリルさんから話を聞く前と後で何か変わったことはなかったですか?」

 

「ああ?そんなもんある訳ねぇじゃね〜か!アクリルの話は————は?なんじゃこりゃ!頭の中に2つの記憶?がありやがる!」

 

「ユリアンさん、アクリルさんから話を聞く前までは魔女は何人いましたか?」

 

「3人だ!《努力の魔女》、《魅惑の魔女》、《遊戯の魔女》の3人だけだ!畜生!誰が私の頭の中弄りやがった!くそがっ!」

 

「アクリルさんの話では、魔女、異世界、異界、神界等の情報は、どれも禁書指定の本の情報ではないということでした。そして、機械音声の言っていたことですが、《?????》という人物とその組織は繋がっているのではないでしょうか。これが、マリルさんが言いたかったことですよね?」

 

「うん!そうだよ。マリルね、《?????》ていう人がその組織と協力して世界の在り方を変えてしまったんじゃないかって思ったの!流石にこれ以上は、わからないや」

 

「そうか」

 

「そういえば、スーさん機械音声のことを聞いていましたよね?」

 

「リルちゃん。あの機械音声について何か知ってる〜?」

 

「はい。禁書指定の知識なのでみんなに聞かせるのをためらったのですが、もういいです。教えましょうあの機械音声について」

 

「やった〜」

 

「ふふ、それでは話します。まずはみなさんこの世界は、どのように出来たと思いますか?」

 

「神界の人達が創った〜」

 

「はい。正解です。ですが、少し違います。この世界は、アムネシアという神族1柱で創造されました」

 

「成る程な、その神族が死んだらこの世界はどうなるんだ?」

 

「この世界を創造した神が死ねば、この世界は消えます(・・・・・・・・・)

 

「文字通りか?」

 

「そうです。文字通り、消えます。人族、亜人族は」

 

「あれ?リルちゃん。魔女族は?」

 

「魔女族は、本来、下界には居ないの」

 

「あっ!もしかして!魔女界って、魔女が住んでる世界?」

 

「そうよ。でも、そんな魔女達でも世界の消滅には抗うことは出来ない。そもそも、魔女達は余程のことが無い限り下界には来ない。魔女界から下界の様子を眺められるから」

 

「まじか!神族みたいだな」

 

「ええ、そうね。そもそも魔女族と神族の違いって、システムかシステムじゃないか、世界を創造できるか、出来ないかの違いしかないです」

 

「ちょっとまて、今システムって言ったか?もしかしてアレは……」

 

「違いますよ。アクロスさん、アリスちゃんも」

 

「そうなのか?」

 

「そうなの?」

 

「ん〜?一体何の話〜?」

 

「急にどうしやがった?」

 

「何か知ってるのですか?」

 

「ああ、知ってる。でも先に話を聞いてしまおうか」

 

「そうですね」

 

「では、話を続けますね。神族が死んだらこの世界は消えると言いましたが、ひとつだけそうならない為の方法があります。それは、他の神族に世界管理権限を全て移譲するというものです」

 

「なぁ、何で神族が死んだらこの世界は消えるんだ?」

 

「どういうこと?アクロス」

 

「確かに管理者がいなくなれば、滅びに向かうことは理解出来る。でも、アクリルの言い方だと神族が死んだ瞬間に世界が消えてしまうって聞こえるぞ?」

 

「そういえば、そうだね」

 

「そもそも、世界世界と言いますが、世界とは何だと思いますか?」

 

「世界とは何か?ですか?」

 

「ああ?わっかんね〜………ああ?もしかして、そういうことじゃね〜よな?」

 

「何かわかったのか?ユリアン」

 

「確証はね〜けどな、神族はシステムなんだろ。教科書に書いてある内容だからわかるだろうけど、システムでプログラミングされた計算式とかそういうもんは、その元のシステムが消えれば、消えちまうってよ。んで、神族というシステムが消えればその神族が創造、プログラミングした世界は消えちまうってことにならね〜か?」

 

「成る程な」

 

「大体正解ですね。因みにその創造作業を『概念創造』といいます。そして、こうして出来た世界は『概念世界』といいます」

 

「今までの話をまとめると、神族が創造した概念世界はその元になる神族が死ぬと消えるってことだな」

 

「はい、そうです」

 

「ん〜??……………アレ?……んん〜??」

 

「突然唸りだすなよ!?何なんだ、何か引っかかることがあるんじゃね〜のか?マリル」

 

「マリルね、疑問に思うことがあるんだ!神族ってううん、それよりももっともっと前?そもそも、世界を作る空間をどこの神族?んん?神族よりも、上?そんなのがいるのかわからないけど、創造したの?」

 

「へ?ちょっとわからなかったな。どういうことだ?」

 

「う〜説明難しい!」

 

「ゴメンマリルちゃん。私もよくわからないや」

 

「(やはり、賢い人達が揃っていますね……マリルさんの疑問はもしかして……)」

 

「マリルさん。それは、もしかして世界を創造するシステムを作り出し、魔女と人族、その他の種族の概念を生み出した者のことを知りたいのですか?」

 

「ううん、違うの!マリル、この話も気になるけどそういうことじゃないの!」

 

「それでは、こちらの方がマリルさんが言いたかったことですか。おそらくマリルさんは、神族が世界を創造する為の『空間』は一体どこの誰が創造したの?ということが言いたかったのでしょう」

 

「そう、それが言いたかったの!」




お読みいただきありがとうございます


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第9話 色々な謎増え解き明かしまた謎増える(後編)

「マリルさん、みなさんも………ここからの話は、禁書でも御伽話や伝承などといった、曖昧で実際あったことなのかわからない話になりますがそれでも聞きますか?」

 

「ああ、頼む。聞かせてくれ」

 

「わかりました」

 

「マリルさんが言った人物ですが、その方は、『外なる神』と呼ばれています」

 

「マリル、気になることがあるの。あのね、異世界があるこの『空間の外』があるの?」

 

「ああ、だから『外なる神』なのね」

 

「沢山ある異世界が存在する為には、神族というシステム、『空間』という概念が必要というのはみなさんわかりますね?」

 

「空間が無いところに物質は存在出来ないってことだよね?」

 

「はい。そういうことです。空間を創造し、そして、その神はある人物を創造しました。その者は、イルバールという名前を与えられ、不老の存在となりました」

 

「ちょっとまて!アクリル、それは外なる神が人族を創造したってことか?」

 

「そういうことです。そして、神により名前を与えられた人族は不老の存在となり、更には神族のように概念世界を創造することもできます。つまり、人族でありながら神族でもある存在ということです」

 

「でも、その神は何でそんなことしたの?」

 

「それは、寂しかったからですよ」

 

「寂しかったから、ですか?」

 

「はい。この空間の外には、外なる神しか存在していませんでした。だから、イルバールを創造したのです。そして、そのイルバールは、神界という概念世界を創造しました。イルバールもまた、外なる神しかいないというこの状況に寂しさを募らせていきました。なので、イルバールは、自分以外の7人の人族を創造しました。残念ながら名前までは、禁書に書かれていないのでわかりませんが、イルバールはそれぞれに名前を与え、人族でありながら神族でもある自分と同じ存在を得たのです。それから何万年か後、突如として7人は姿を消してしまいます」

 

「また、一人きりじゃね〜かよ。イルバールってやつ」

 

「そうですね。そして、その更に何万年か後、イルバールは概念世界を創造することを決意しました。イルバールは、神界から自らの手で創造した世界を楽しんで欲しいと思い、観察を続けていきました。始めは、自分が創造した世界を眺めているだけで寂しさが紛れていましたが、所詮はその場しのぎの行動だった為、寂しさと同時に虚しさがイルバールの『心』を蝕んでいきました。しかし何億年か後、神界で様々な世界を見るだけの概念上の存在になりかけていたイルバールは、ふとある人族の存在に気付きました。その人族の名前は、『垣畑 楓』というらしいです。イルバールは、一人で寂しそうに見えた楓さんを神界に呼ぶことを決意しました」

 

「神界に、人族が入れたんだな」

 

「普通は、入ることは出来ません。神族に許可を得た人族でなければならないのです」

 

「成る程」

 

「そして、神界に入った楓さんは神界という概念、異世界という概念世界が存在するということを知り、大いに驚きましたが直ぐに適応し、イルバールと友達になりました。楓さんは、地球という天体がある概念世界の住人の為、戦う力がありません。そのためイルバールは、『加護』を与えました。その行為により、楓さんは不老の存在となりました」

 

「それって、人族であり神族でもある存在になったということですか?」

 

「いえ、一部のイルバールの力を使うことができる人族になりました」

 

「ああ、どうちげ〜んだ?」

 

「まず、楓さんは概念世界を創造することが出来ません」

 

「そうなんだ」

 

「そもそも、人族を神族にする為には神族が人族に名前を与えるしか方法がありません」

 

「成る程な。楓さんに与えられたのは『加護』であり、『名前』ではない。だから、神族の力を一部使用出来る人族ってことか?」

 

「そうです。そして、神族の力を一部使用出来る人族のことを『神の使徒』といいます」

 

「マリル気になることある〜」

 

「神族同士、神族と他種族って子供産めるの〜?」

 

「へ?」

 

「何で、そんなこと聞くんだ?」

 

「あ〜なるほどな。マリルは多分、イルバールは神族と結婚して子を産んだのか、それとも、人と結婚して子を産んだのかってことを聞きたかったんじゃね〜か」

 

「その頃神界には、イルバール以外の神族はいないはずだから人族との子を産んだのね」

 

「ところで、外なる神が世界を創造する為の空間を創造したということでいいんだよな?」

 

「はい、そういうことです」

 

「イルバールが創造した概念世界の名前を仮にイルバールとしようか。マリルの疑問については話を聞いて成る程と感じた」

 

「それは、何故ですか?」

 

「今のままだと神界という概念とイルバールと地球という天体がある概念世界しかないことになる。本当にそれだけしか概念世界はないのか?イルバールは、寂しさと虚しさで心が蝕まれてそのままだと人としての部分がなくなって本当にただ概念世界を管理するだけのシステムに成り下がってしまうはずだ。だが、アクリルの言い方だとその一歩手前のところで踏みとどまっていたとも取れる。何故そんなことが可能だったのかそれは、わからないが推測いやもはや妄想と言った方がいいかな?俺は、こう考えた。イルバールと地球という天体がある概念世界しか無いはずなのに突然概念世界が創造されたらアクリルだったらどうする?」

 

「とりあえず、観察します……成る程、そういうことですか」

 

「その謎の神族仮にAとしておこう。Aが創造した概念世界を観察することにしたイルバールは、とりあえず心の崩壊を免れ、何億年か後『垣畑 楓』という人族と出会い友人となったことで心は救われた。神族は心を持ったシステムであることを考えると、心をなくすというのは、神族にとっての『死』と同義なのかと思った。だが、ここで矛盾が生じる。Aは、一体いつからいた?つまり、Aは神族同士か神族と他種族の子であるという仮説を立てた」

 

「その神族って…………まさか!」

 

「イルバールが創造した7人の人族の中の一人が人族と結婚し、生まれた子こそAだと思う」

 

「成る程、アクロス君の言いたいことはわかりました。だいぶ粗が目立つ話でしたが、面白いと思いました。そして、ここからが本題です。外なる神が人族という概念を創り出し神族という概念を創り出しました。イルバールが神界という概念世界を創造し、神族の世界を創り出しました。外なる神によって創り出されたイルバールは7人の人族を創り出し、それぞれに名前を与え、神族になりました。7人は概念世界を創造し、しかし、姿を消してしまいます。マリルさん、質問です。イルバールが創造した7人はどのような性格をしてるとおもいますか?」

 

「ん〜、わからない。けど、それぞれ違った『個性』があって、でも根本のところでは『同じ』みたいな感じにマリルは思うかな」

 

「はい、その通りです。8人が創造した概念世界は根本のところでは『同じ』でした。そして、8人が創造した世界と似た世界が創造されることもありました。しかし、8人が創造した世界とは真逆の命が軽く扱われる世界も創造されます。これを見ていた『外なる神』は『カテゴリー分け』をすることに決めました。8人が創造した『命というものを重く見る世界』と『命が軽く扱われる世界』というふうに分けました。外なる神が決めたカテゴリー分けによって両者は互いに干渉出来なくなりました。世界の『軸』が定まった状態です。因みに前者を『α世界軸』、後者を『β世界軸』と名付けたようです」

 

「マリル、気になることがある。命を重く見る?命を軽く見る?どういうこと?」

 

「本当に聞きたいですか?マリルさん、みなさんも」

 

「ああ、聞かせてくれるか」

 

「先生も聞きたい………かな」

 

「うん。聞きたいよ」

 

「あ〜、とりあえずききてぇ」

 

「マリル、気になるから聞く」

 

「わかりました。覚悟はしてくださいね?」

 

『???』

 

「命を重く見る世界というのは、この世界アムヌネジアを考えてみるとわかりやすいと思います」

 

「つ〜か、わたしら、この世界のことしかしらね〜」

 

「確かに」

 

「…………」

 

「…………」

 

「??」

 

「そうだね」

 

「さて、聞かせてくれ」

 

「はい、この世界であなた方が盗賊にあった時どうしますか?」

 

「ああ?捕縛するに決まってるじゃね〜か」

 

「捕縛する〜」

 

「はい、捕縛します」

 

「うん、わたしの場合捕縛出来る自信無いけど………」

 

「アリス……まあ、捕縛するが」

 

「何故ですか?盗賊は、あなた方の命を奪おうとしています。あなた方に殺されたとしても文句は言えないと思いますが?」

 

「?なんで向こうが命を奪おうとしたらこっちが命を奪わなきゃならないの?マリルわからない」

 

「人は、殺してはいけないですよね?」

 

「リルちゃん、人は殺しちゃいけないよ?」

 

「(そういう話か………思った以上にきついなぁ)」

 

「??」

 

「あー、わかっちまった〜。…………胸糞悪りぃ、クソが!」

 

「そういうことか、だとしたらユリアンの言う通り胸糞悪いな」

 

「はい、私もそう思いますよ。いかに自衛の為とはいえ(・・・・・・・・)人を殺すというのは(・・・・・・・・・)死罪にあたります(・・・・・・・・)

 

「そうだな。でも命が軽く扱われる世界っていうのは、自衛の為に人を殺すことが出来てしまうってことか?」

 

「はい、むしろ、『抑止力』として盗賊殺しを推奨している世界もあります。残念なことですが………」

 

『………………』

 

「外なる神も両者の世界軸は、決して相入れることは無いと考えたからカテゴリー分けを行ったのだと思います。余りに違いすぎる『価値観』は軋轢の種になりますから」

 

「そう考えると、外なる神というのはそれぞれの世界軸を守ったということね」

 

「そうなります。イルバールもまた神界に対しカテゴリー分けを行いました」

 

「なるほどな。あくまで外なる神が行ったカテゴリー分けは、数多ある世界の空間だけに作用した。だから神界もカテゴリー分けを、しないといけないということか?」

 

「はい、そういうことです。禁書によるとイルバールは、カテゴリー分けをしたその何万年か後『垣畑 楓』さんと出会い友人となりました」

 

「成る程な」

 

「また少し時間を遡りますが、外なる神は空間を『魔素』で満たしました。いずれ創造されるであろう概念世界に『魔法』という『抑止力』を概念化させる為に。しかし、デメリットも存在しました。動植物が魔素を吸収すると『魔物化』してしまったのです。幸いにして、人族には余り影響はありませんでした。しかし、人族の中には種族が『変化』してしまう者が現れたのです。その結果、他種族という概念が創造されました」

 

「ところでスーさんの疑問である機械音声のことだけど、それも外なる神が創造した概念?」

 

「いえ、イルバールと『7人の使徒』が創造しました。と言っても『神の使徒』は概念創造出来ませんから7人の使徒が提案し、イルバールがその提案を受け入れたということでしょう」

 

「リルちゃんありがとう。教えてくれて〜」

 

「いえいえ」

 

 ここまでで、2限の特別授業は終わりを迎えた。




今回の話で私が投稿している小説が『不殺』の世界観であるということがわかったと思います。
もしこの考え方が理解出来ない場合は、私の投稿する小説は見ないほうが得策だと思います。


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第10話 無詠唱魔法教練

 これから、3時限目の特別授業が始まる。

 

「みなさん、突然ですが無詠唱魔法を習得するつもりはありませんか?」

 

「ああ?そういや、アクロスなんかわかったって言ってなかったか?」

 

「ああ、異世界ネットワークに接続したら異世界ネットワークサービスっていうのを受けられるようになった」

 

「それってもしかして………」

 

「ああ、あのときの機械音声が言っていたことだ」

 

「マリル、疑問に思うことがある。あのね、異世界ネットワークってそもそも何?」

 

「異世界ネットワークは、何者かが全異世界中に配布したネットワークです。これ以上のことは、禁書にも書かれていません」

 

「機械音声と異世界ネットワークサービスの音声の違いわかったかも!」

 

「ああ、感情が無いか、有るかということだな?」

 

「うん。でも、リルちゃんはさっきの神族の話の流れで関係ないって言ってたけど………」

 

「すみませんみなさん。異世界ネットワークについては、本当に何もわからない状態なんです。昔は、禁書専門家がいて、禁書の記述の正しさを確かめる実験などが行われていたのですが………」

 

「例の組織のせいで、いなくなってしまったのね……」

 

「あ〜!むしゃくしゃしてきた!無詠唱魔法を教えてくれないか?」

 

「はい、わかりました。異世界ネットワークサービス曰く、無詠唱魔法はイメージ即ち妄想を魔力を使い実現化する魔法です」

 

「イメージ……頭で思い浮かべた事柄を魔力を使って魔法という形で発動させる魔法?」

 

「具体性を持つほど、威力は高まるそうです」

 

「具体性?」

 

「恐らくですが、イメージというものは大きく分けて2つあると思います。1つ目は、言葉です」

 

「言葉、ですか?」

 

「はい、言葉というのは大切でポジティブな言葉、ネガティブな言葉というものが有ります。ポジティブな言葉をイメージするとポジティブな気分になり、ネガティブな言葉をイメージするとネガティブな気分になることが有りませんか?」

 

「そういや、そうかもしんね〜」

 

「うん、私もそう思う」

 

「はい。言葉というのは大切であり武器でもあります。2つ目は、頭で思い浮かべるということです」

 

「それって、妄想のこと〜?」

 

「そうですよ。スーちゃん」

 

「その、妄想を具体的に形に出来るかというのが無詠唱魔法を成功させる鍵ということなのね……」

 

「無詠唱魔法でファイアボールを発動できるようにしましょうか?」

 

『はい!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………なぁ、この話は本当のことなのか?空の女神に煉獄の大悪魔神よ」

 

「はい。確かに私たちの子供アクロスは、不死者アリアンロードにアリスという名前を与えました」

 

「はぁ!それがどういうことかわかって言ってんのあなたたち!?」

 

「はい。つまりアリアンロードはアリスという名前の神族に新生したということです」

 

「そもそもの疑問なんだけど、不死者って何?」

 

「わしも気になっていたことだ、空の女神がゼムリアという概念世界を創造したことは知っている。だが、なぜかゼムリアだけが神界、魔女界から観測が出来ない」

 

「「……………」」

 

「故に、我々はゼムリアに関する情報を何一つ得ることが出来ない……教えてもらえないだろうか?」

 

「………はい、わかりました。お話致します。はっきり言います。ゼムリアという概念世界は、数年後100%の確率で消えます」

 

『………………は?』

 

「………………は?は私たちの台詞ですね。私たちも原因が、わからないのです」

 

七の至宝(セプトテリオン)の所為じゃないの?それか、煉獄の大悪魔神か……」

 

「違う!!適当なこと言わないで!!!」

 

「エイちゃん………」

 

「じゃあなんでこの神族から『β世界軸』の気配が漂ってんの!答えなさい!?」

 

「簡単な話ですよ。『β世界軸の神族』だからですよアーくんが」

 

「あり得ないわ、そんなこと」

 

「どうしてですか?アーくんがその証明だと思いますが?」

 

「あの〜みなさん、少し意見があるのですがいいでしょうか?」

 

「良かろう、意見を述べなさい。イルバール(・・・・・)

 

「まず、疑問なんですが……みなさんは何故そんなに『β世界軸』を敵視しているのでしょうか?」

 

「『価値観』が合わない!!自衛の為に人を殺す……ふざけんな!人殺しは、私たちが最も忌み嫌う『原罪』だ!!」

 

「はい。理解出来ますし納得出来ます。もう一つ質問です。『β世界軸』の全ての方々がそのような気質を持っているのですか?」

 

「当たり前だろ!だから、あんたを創造した『原初の神』は空間を分けて『α世界軸』『β世界軸』に分けたんだ!?」

 

「当たり前ですか………」

 

「あんたも、神界を2つの軸に分けただろ?」

 

「はい、分けましたが?」

 

「それは、なんでだ?」

 

「その方がわかりやすいからですが?」

 

『????』

 

 神族全員がその言い回しに疑問を覚えた。

 

「??そもそも、私もあの方も『α世界軸』と『β世界軸』の交流を望んでいます」

 

『!?!?!!』

 

「やっぱり…………」

「やはりか…………」

 

 空の女神と煉獄の大悪魔神以外の神族が驚いた。

 

「その反応だとわかってたんですね?あなたたちは」

 

「おまえ、めっちゃ几帳面なところがあるだろ?」

 

「まあ、そうですね。ぐちゃぐちゃになったものを整理整頓することが好きで………」

 

 イルバールは、少し照れながらそう言った。

 

「みなさん、何を勘違いしていたのかわかりませんがこれだけは言えます。『β世界軸』のみなさん全員がそういう気質を持っているわけではありません。勿論、その逆も然りです。みなさん、神界からそれぞれの異世界を観測することが出来るんですよね?それで、この体たらくですか………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけんじゃねーよ!!この思考停止集団が!!!!」



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第11話 落ちこぼれの魔法使い『無詠唱魔法』を発動させる

「みなさん、何を勘違いしていたのか知りませんがこれだけは言えます。『β世界軸』のみなさん全員がそういう気質を持っているわけではありません。勿論、その逆も然りです。みなさん、『神界』からそれぞれの『概念世界』を観測することが出来るんですよね。それでこの体たらくですか……………ふざけんじゃねぇぞ!!この思考停止集団が!!」

 

『っ!!』

 

 イルバールが放った叫びは、『神界』にいた『神族』全員の『心』を震わせた。

 

「私は、みんな仲良く過ごしていきたいだけなのに!なんで、こんな不和を招くようなことになるのよ!」

 

「すまない………イルバール」

 

「っ!!」

 

 イルバールは、逃げるようにその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった〜!やっと、やっと『魔法』使えたよ!みんな、ありがとう」

 

 クラスのみんなに涙を見せながら感謝するこの少女の名前は、アリス・ネクレリオンという。彼女は、アクレ魔法使い養成学園の1年である。クラスは、魔女科だ。『魔女』というのは、《魅惑の魔女》、《努力の魔女》、《遊戯の魔女》、《勉学の魔女》、《恋愛の魔女》、《勇気の魔女》のことだと一般的には言われている。否、今のこの世界では言われていたという表現が適切かもしれない。『魔女族』は、普段『魔女界』という『概念世界(・・・・)』にて過ごしている。そして、たまに『概念世界』に降り立ち、『人間』という『感情』に従う生物の生き様を楽しむのだ。

 

「よかったな、アリス。おめでとう」

 

「努力で本当にどうにかしてしまったわね……すごいわ!」

 

「ええ、あなたたちの担当教官になれて本当によかったわ。私も、いい加減に過去と向き合う必要がありそうね……」

 

「?何か、あったのですか?マリア先生」

 

「そうね、あなたたちにはその時が来たら話すつもりよ。それまで少し待っててね」

 

「わかりました」

 

「わかった〜」

 

 その時、教室にいたマリア先生、スー、ユリアン、マリル、アーリア、リナが驚いたような声を発した。

 

「どうした?」

 

「どうかしました?」

 

「どうしたの?みんな」

 

「声が聞こえてきた〜」

 

「どういう声だ?」

 

「感情が無い無機質な声で、〈異世界ネットワークに接続します。アカウント情報が無いので、アカウント登録して下さい〉って」

 

「「「あ〜、ごめん」」」

 

「どういうこと?」

 

「そういうことですか……」

 

「はい。実は———ということです。すみません、驚かせて。みんなもごめんな」

 

「構いませんよ」

 

「いいよ〜」

 

「いいんじゃね〜」

 

「マリル、早速アカウント登録したよ〜」

 

「早いな、マリルは相変わらず……」

 

「そうね」

 

「そういえば、どうやって私の異世界ネットワークサービスは、みんなに異世界ネットワークを接続出来るようにしたんだろうね?」

 

「そうだな」

 

「もしかして……『ハッキング』したのかもしれません」

 

「『ハッキング』って確か、ネットワークに侵入する技法ですよね?アクリル」

 

「そうです」

 

「『ハッキング』で無理矢理、接続出来るようにしたってところか?」

 

 〈ええ、今はその認識で構いません。かなりの『バグ』があったので、苦労しました〉

 

「お疲れ様」

 

「お疲れ様です」

 

「ありがとう」

 

 〈ところでアリス様、何か質問等ありませんか?〉

 

「じゃあ、『魔女』になる為にはどうすればいいですか?」

 

 〈方法としては、2つあります。1つ目は、全ての『ステータス』を『人間』の最大値にまで上げることです。この方法は、今この状況なので非常に厳しいと思います〉

 

「そうだよな……」

 

「ですよね」

 

「むぅ〜」

 

 〈2つ目は、『異世界』に行くことです〉

 

「それって、もしかして……」

 

「他の『概念世界』に行くってことか?」

 

「確か異世界に行く方法は、『異世界召喚』、『異世界転移』、『ゲートを使った異世界移動』、『異世界転生』だったよね?」

 

 〈はい、そうです。『異世界』ですが、必ずしも『概念世界』である必要はないですよ〉

 

「そうなの?」

 

「そうなのか?」

 

「もしかして、『並行世界』のことですか?」

 

 〈!!驚きました。今のこの状況でそこまで把握しているのですか?そうですよ。アクリル様〉

 

「『並行世界』ってなんですか?」



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第12話 『並行世界』と『概念世界』の関係性

「『並行世界』とは、『概念世界』の別の可能性を内包した世界のことです」

 

「別の可能性?」

 

「例えば、この『概念世界』におけるアリスさんが『詠唱魔法』を使える世界とかです。『概念世界』で廃棄された『運命』を『並行世界』は持っています」

 

「『並行世界』ってなんのために存在してるんだろ?」

 

「それは……」

 

〈申し訳ありませんが、お答え出来ません〉

 

「え?」

 

「もしかして、そのことに関する知識が無いのか?それとも……」

 

〈第一級特殊情報の為お答え出来ません〉

 

「第一級特殊情報?」

 

〈『禁書』の情報は第二級特殊情報、『神書』の情報は第一級特殊情報といいます。因みに、『神書』とはなんですか?という問にも答えかねます〉

 

「『禁書』それに『神書』か……凄えことになってきたな」

 

「はい、私も聞いていないです」

 

「あの、1つ質問いいですか?」

 

「どうぞ」

 

「アクリルさん、さっき廃棄された運命と言いましたが、運命は捨てられるものなのですか?」

 

「………ただの比喩表現ですよ。しかしながら、運命は変えることが出来ます」

 

「そうですか……ありがとう、アクリルさん」

 

「いえいえ。『並行世界』は、その性質上『無限』に存在します。『概念世界』をオリジナルとした時、『並行世界』はその『概念世界』のコピーであるといえます。『並行世界』には大きく分けて2つあります。『概念世界』のコピーであること、『知性種族』が語る世界であることです」

 

「リルちゃん、どういうこと?」

 

「つまり、『小説』や『童話』『神話』などの内容がそのまま『世界』として存在しているということです」

 

「へー。そんなことがあるんだ」

 

「そうか、今わかった。だから、『並行世界』は無限に存在するか」

 

「?アクロス君、どういうこと?」

 

「知性のある種族の(さが)だ。『心』があるということは、同時に『欲求』があるということなんだ。今の話からいくと、『創作欲求』というところかな?」

 

「流石は、アクロス君ですね」

 

「アクリルさん。ところで、『並行世界』は『概念世界』の性質を持つ物なのか?」

 

「ええ、『概念世界』の法則を基本として、その中に『並行世界』特有の法則も混じっているといったところです……ところでアクロスさん何故そんなことを?」

 

「俺たちは、いずれ『並行世界』に行かなければならないからだ」

 

アクロスがそう言うと、みんなも気付いたようだ。

 

「『魔女』に『種族進化』する為の条件か……」

 

「『魔女』って結局どういう存在なのかな?確か、シーリア先生も調べてるんだよね?」

 

「ああ、『魔法』というのが鍵になるみたいだけど……」

 

〈申し訳ありませんが、一部第一級特殊情報の為全てにおいて教えることは出来ません。〉

 

「まじか〜…………ん?ちょっとまて〜『神』が関わってるのか?」

 

「そうですね。『神書』の内容が一部あるようなので……」



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第13話 『覚悟』と『理由』(前編)

大変お待たせしました。久々の更新です



『魔女』とはなんなのだろうか?ふと、疑問に思ったある1人の人物がいた。遥か昔の人物で『異世界』からやってきた来訪者だった。その人物は、男である。1人の女の魔法使いと話をしている。

 

「ねぇ、———あなたは、これからどうするの?」

 

「これからもずっとお前のそばに居たい。だが………」

 

「えぇ、残念だけどそれはもう無理ね」

 

彼女は、『不老』の存在となってしまった。何故なら、『魔法』を極め過ぎてしまったからだ。今も、全身から大量の『魔力』を放出している。決して暴走状態というわけではない。これで通常状態なのだ。しかしながら、只人には影響が大きい。彼女に近づく人間はことごとく気絶や嘔吐し、次第に『魔女』と恐れられるようになっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「授業は、ここまでです」

 

「起立、礼。ありがとうございました」

 

『ありがとうございました』

 

アクレ魔法使い養成学園は、アクリル・イル・グランセリアという人物が入ってきたことにより、大きな一歩を踏み出すことになった。

 

「アクリルさん、少しいいですか?」

 

アーリアは、気になっていたことを聞いた。

 

「アクリルさん、あなたは先生たちの隠し事について何か知っていることはありますか?」

 

「やはり、アーリアも知ってたんですね?」

 

「いえ、知っていたというより疑問なんですよね。そもそもどうして、あの先生がたはこんな辺境の何も無いようなところに魔法使い養成学園をつくったのかなと」

 

「ああ、疑問からですか?成る程、つまりアーリアはこう思っているわけですか?」

 

「………」

 

「この学園も先生も私たちすらもアリスの為に存在していると………」

 

「………そうです」

 

「不安ですか?」

 

「はい………なんだかアリスがアリスじゃなくなる気がして……」

 

「α世界軸とβ世界軸の話ですか?」

 

「ええ、この世界でさえ人を殺すような人がいるのに『異世界』に行かなきゃ憧れの存在にすらなれないなんて!αだからって全員が全員そんな気持ちじゃないのはわかってるわかってるけど!!」

 

「アーリアさん、よく聞いて下さい。あなたは『魔女』になりたいですか?ちなみに私はなりたいです。なって、『魔女』のことをもっと知りたいんです」

 

「アクリルさん………でも、不安なんです。私だって、ひっぐ……私だってなりたいですよ『魔女』に!!でも、でもぉ!」

 

〈申し訳ありませんアーリア様、『魔女』に関する情報があなたに不安を植え付けるとは思いもよらず………〉

 

「ううん、気にしないでください」

 

「アーリアさん………あなたはなんの為に『魔女』になろうとしているのですか?もし、アリスの為にというのであれば、今すぐに『魔女』を目指すのをやめなさい迷惑ですから。みんなにも、アリスにも。『覚悟』を見せてください。そして、あなたが『魔女』にどうしてもなりたいその根源たる『理由』を見つけてください!」

 

「………」

 

結局すぐには答えが出せなかったアーリアは、逃げるように話を打ち切り1人で帰っていった。

 

 

 

 

 

今の話を少し離れた場所で、聞いていた2人の人物がいた。

 

「アグネス、あの子たちを頼んだわよ」

 

「わかった。とりあえず、魔物を討伐させるとしますか。冒険科と魔女科合同で!」

 

「ふふ、それにしてもあの子たちも青春してるわね〜。凄く昔のことを思い出しちゃった」

 

「『魔女』になりたい『理由』に『覚悟』か…………流石王族って感じだなへへ」

 

「ふふ、自己満足とも言い換えることが出来るわね。自己を満足させない限り他人を助けることは出来ないし、善を謳うだけでは悪よ。真に善たり得るのは、お人好しや偽善者と称される者たちだけ。道化とも言えるわね。『異世界』ではこんな言葉もあるそうよ。『やらない善よりやる偽善』てね」

 

「『やらない善よりやる偽善』かぁ、はは、いい言葉だな」

 

「それじゃ頼んだわよ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーリアは、昔のことを思い出していた。

 

「シクラ、来てください。『魔法』って詠唱で発動するものですよね」

 

「じゃあ、どうしてここに書かれている『魔導書』には詠唱文がのってないの?」

 

「書き損じ?それにしては、随分と具体的にどういう『魔法』か書かれているわね」

 

頭で(・・)思い描けるよ(・・・・・・)読み過ぎて………」

 

「ふふ、それじゃあここまでにして晩御飯にしよっか」

 

「うん、アーリア姉」

 

そう、アーリアとシクラは姉と兄の関係だった。父親のアグニは、冒険者で、母親のシールは魔法使いだった。彼女の頭脳明晰さや若くして『詠唱魔法』で、上級の魔法を打てる才能は血筋の影響だった。無論、彼女の努力の賜物でもあるだろう。しかし、魔法使いにとって血筋というものは重要な要素になり得る。

 

「シクラ兄………私どうしたらいいのかなぁ。もう、わからないよお父さんお母さん」

 

アーリアは、再び過去を思いかえす。




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