お嬢様と男の子の「恋」 (モンターク)
しおりを挟む

気になるあの子

オリジナル作品なので初投稿です

とにかく尊いのを目指します…
よろしければ、どうぞ


教室にて

 

「はぁ…」

 

彼―――多川聡太はため息を付いていた

もちろん、ため息をつく事自体は誰にでもあるであろう

だがその原因は「恋」であった。

 

そしてその「恋」は厄介なことに

 

「~♪」

 

クラスで…いや学校一綺麗かもしれない少女にしてしまったのだ

 

彼女はミナ・エリザベート・コールソン

その名の通り外国人と呼べるのだが、厳密には母が日本人、父が英国人であるため、日英のハーフである。

どうやら彼女の家は相当裕福なものであり、いつも校門の前まで送迎の高級車が来ているほどだ。

 

そして彼女の容姿はとても綺麗で可愛いと言えるものであった。

まだまだやんちゃな年頃であるはずだが、フランス人形のように整った容姿で、目も大きい。

なお服装は白のワンピース姿で、荷物は一般的なランドセルではなくトートバッグで持ってきている。

髪型はロングで髪色は金髪だ。

なお日本語と英語のバイリンガルでもある。

 

そんな彼女に聡太は恋をしてしまったのである

 

(……)

 

「おい、どうしたんだよ?」

 

「う、うわっ?!……なんだ友井君か…」

 

「全く、お前最近ぼーっとしてることが多いみたいだけど」

 

「べ、別になんでもないよ!……ただ寝不足なだけ…新作ゲームがまだクリアできなくて…」

 

「ふーん、なら良いけどよ」

 

(はぁ……まさかミナちゃんを見てため息しているだけなんて言えないよ…)

 

 

「ん?」

 

「!?」

 

(ミナちゃんがこっちみた!?)

 

「ふふっ……」

 

聡太の方向を見て、彼女は優しく笑いかけてくる。

お嬢様らしく上品であった。

 

(………あ、僕じゃない……よね)

 

だが聡太はその様子で「いつもの」と確信する

彼女はいつでもどこへでも愛嬌をふりまいている

特段に珍しいことではない

 

(…話してみたいけど……ううっ…話す内容が……)

 

恋をしてもまず話さないと話にならない

だが聡太はただでさえ内気な方で社交的ではない

そして男友達とはまだ話すほうだが、女の子達とはあまり話さない

 

余計に距離が遠のいてしまっていた。

 

(……はぁ)

 

またため息を付いた。

 

――――――

別の日

 

「うーん…今日もいまいちだったなぁ…」

 

(カードの攻撃力はアレだし……でも魔法使っても…)

 

聡太はカードショップからの帰り道を歩いていた

月は5月

まだまだ春であるが、桜が散り、葉桜となっているソメイヨシノがある道をそのまま進んでいく

 

(もう桜も終わりか……早いなぁ…)

 

「……あ」

 

そそくさと歩いてたら目の間には大きなお屋敷があった

そう「ミナ」のお屋敷である

 

(そういえばここがミナちゃんのお屋敷なんだっけ…)

 

大きなお庭に、白い壁の洋館がありいかにもお金持ちのお屋敷であることがわかる

ミナの家がお金持ちであると改めて実感する聡太君

 

「ん?……あそこにいるのは…」

 

その庭の真ん中あたりで人影が見えた

 

「紅茶のおかわり、いかがですかなお嬢様」

 

「ええ、よろしくおねがいしますわ」

 

「!」

 

老執事とミナがそこにいた

どうやらお庭で紅茶を飲んでいるようだ

 

(……綺麗だなぁ……)

 

その紅茶を飲んでいる姿もとても綺麗だ

聡太はその姿をマジマジと塀に隠れながらも見ていた

 

(本当に高嶺の花…って言うのかな……やっぱり僕には……)

 

「はぁ……」

 

「ん?」

 

「ん?」

 

ため息をついたその時、ミナも気づいたのか聡太の方向を向く

そして顔を上げていた聡太と目が合う

 

「あなたは……」

 

「あ、あわわ!?」

 

(み、みつかっちゃった!?)

 

聡太はその場からすぐに立ち去ろうとするも

 

「あわっ……あ!」

 

ドテッ

 

勢いで躓き、その場で転んでしまった。

 

――――――

 

「いてて……」

 

「はい、これでもう大丈夫ですぞ」

 

執事により、擦り傷の手当をしてもらっていた

 

「あ、ありがとうございます……あ、ええっと…」

 

「申し遅れました。私は執事の中本と申します…以後お見知りおきを…」

 

「は、はあ……」

 

「聡太さん、大丈夫ですの…?」

 

彼女は急にダイナミックに転んでいた聡太のことを心配していた

 

「あ、うん……これくらい平気だよ」

 

「そうですの…よかった…」

 

「………///」

 

(やっぱり綺麗だなぁ……)

 

「……そうですわ!よければお茶していきませんか?」

 

「え?いいの?」

 

「はい、せっかくですもの…ワタクシだけではつまらないと思っていたところですし…」

 

「あ、うん……」

 

そして、聡太はミナとテーブルを挟んで向かいに座る

そう、目の前にミナがいるのである

 

執事が紅茶を聡太の前のところに置く

 

「どうぞ、紅茶を……お砂糖も入れておきましたが、足りなければこちらを…」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

ゴクッと聡太が音を立てて飲んだ瞬間、口の中に茶の風味が広がり、飲み慣れていない聡太でも瞬時に美味しいと感じるほどの紅茶であった。

 

「……お、美味しい……なんというか風味がすごくて…その……甘さもちょうどいいし…」

 

「聡太さんのお口にあったみたいで、大変嬉しいですわ……これはワタクシが考案したブレンドですの」

 

「え!?こ、コールソンさんが?」

 

「はい」

 

「す、凄い……本当に美味しいよ、これ」

 

「本当によかったですわ……」

 

そのままゴクゴクと紅茶を飲んでいく聡太

 

「ふーっ……」

 

「紅茶のおかわりは…」

 

「あ、はい、よろしくおねがいします」

 

「あと聡太さん、わざわざファミリーネームで呼ばなくてもワタクシの事は「ミナ」で良いですわよ?ワタクシも「聡太」さんと呼んでいますし」

 

「そ、そうだね……み、ミナ……ちゃん」

 

(うう、恥ずかしい……///)

 

聡太は赤面してしまった

 

「ところで……聡太さんは何をしていたのですの?」

 

「ええっと……か、カードショップに言っててその帰り道で…」

 

「かーどしょっぷ?」

 

「あーあの……カードゲームってのがあって、それで僕は遊んでて……」

 

「どんなお遊びですの?」

 

「えっと……」

 

聡太はとりあえず自分がやってたゲームのことなどの趣味のことを話してみた

途中お嬢様は「?」を浮かんでいることもあったが、特に飽きもせずに真剣に耳を傾けていた

 

「…かな」

 

「まあ、そのような遊びもあるんですわね…ならワタクシもそれをしてみたいですわ!」

 

「あーうん……」

 

(どうしようかなぁ……カードゲームはきちんとルール説明しないとダメだし…あ、なら)

 

聡太はショルダーバッグより携帯ゲーム機を取り出した

 

「それは?」

 

「ゲーム機だよ、持ち運べるやつの。多分これならミナちゃんでも遊べると思う」

 

聡太はミナに携帯ゲーム機を手渡す

 

「……なるほどですわ、どうやってやるんですの?」

 

「ええっと」

 

聡太は立ち上がり、ミナの横に来た

 

「まず起動して……」

 

そのまま聡太はミナにゲームの操作方法などを教えていく

 

「……!」

 

(ミナちゃんの近くだと……なんかいい匂いが…って!)

 

(いけないいけない!そんなこと考えちゃいけない…!)

 

聡太はなんとか雑念を振り払う

 

「?」

 

「どうしたのですの?」

 

「あ、いや……次のところ行こう、うん」

 

――――――

 

「ふーっ、やっと1面?をクリアしたのですね♪」

 

「うん、まだまだ先もあるけど…あ、でももうこんな時間か……そろそろ帰らないと」

 

「そうですの……ではまた学校でお会いいたしましょう?」

 

「うん、じゃあまたね」

 

「さようならですわー」

 

聡太はミナの手をふるのに応えながら家の方に帰っていく……

 

(は…はぁ……友達になれた…のかな)

 

(一歩前進……なのかな?)

 

(でもクリアした時のミナちゃんの笑顔……よかったなぁ……)

 

手応えがあったかなかったかはわからないが、とりあえずはよかったと思える聡太であった。

 

――――――

ミナの部屋

 

「ふーっ…」

 

ミナはルームウェアを着て、ベッドに座っていた

 

(やっぱり…聡太さんの笑顔…遠くで見るより……)

 

「……」

 

そのままミナはベッドに横たわる

 

 

(もっと話してみたい……ですわね)

 

窓の外を見ながら―――「彼」のことを思い出しながら

ミナはそう思った



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

隣の席になったあの子

こんな感じでいいのかなぁ…と思ったけど
まあとりあえず……




教室

 

(……はぁ)

 

あの事以降、ミナとは挨拶などで軽く話す頻度は増えたものの

前より前進している……とは言える状況ではなかった

 

(まあ僕は所詮ただのクラスメイトだから…当然だよね……)

 

(ってそれじゃいけないんだ!なんとかしないと……もっと話せるように…)

 

「…あら、そうですの?知りませんでしたわ」

 

「この辺じゃ有名だよ、ミナはお嬢様だから知らないんだねー」

 

「そうですわね……でもとっても面白そうですわ…」

 

クラスの女子がミナと話している様子をそっと見つめる

やはり女の子同士だと会話は弾むのだろうか

 

(……やっぱり無理かなぁ…)

 

「……はぁ」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「あ」

 

聡太が色々と考えている間に始まりのチャイムがなってしまった

 

――――――

 

「さて、一時間目の授業を始める前に……いつまでも出席番号順というのも味気ないからな…席替えするぞー」

 

「やったー!」

「うお、マジか!」

「皆本さんの隣が良いなぁ…」

 

「なお席は先生が作ってきたくじで決めるぞ!」

 

「えー!」

「なんでー!」

「これじゃ完全にランダムじゃん!」

 

案の定クラス中から先生にブーイングが来ていた

 

(元気だなぁ…)

 

だが聡太はそういうタイプではないからか、特に声は出していなかった

 

「………」

 

ミナのほうも同じく

 

「恨みっこなしだぞー!出席番号順に引きに来い」

 

「ふーん…」

 

(どんな席になるかなぁ……できれば先生より遠いところがいいなぁ……)

 

(…もしかしてミナちゃんの……ってそんなわけないよね…)

 

そんな事を考えながら聡太はくじ引きの列に並ぶ

 

「6?どの席なんだよ、これ」

 

「あとで先生が貼る表を見ればすぐわかるぞー!次!」

 

「はぁ……」

 

ガサゴソ

 

聡太は箱の中を適当に混ぜ

 

(これでいいかな…)

 

ヒョイッ

 

適当に紙をとった

それを開いてみると24という数字があった

 

(……24か)

 

「よし引いたな。はい、次!」

 

――――――

 

「よし、みんな引いたな。では表を貼っていくぞ…」

 

先生は席の表を貼っていく

 

「「おおー!?」」

 

クラスのざわめきが大きくなる

 

「……」

 

表が張り出され、聡太は自分の番号を探す

 

「24…24……お、良いところだ」

 

24は一番最後の列の窓際のところだった

 

「ちくしょー先生の目の前かよ!」

「うわー微妙なところだなぁ……」

「トホホ…こんなに遠くなるなんて…」

 

「はいはい、さっさと席を移動させろー!」

 

ガタガタガタガタ

 

先生の合図で皆は一斉に席を移動させる

 

「……」

 

(どんな人が隣なんだろう…あんまり話したことない人だとやりづらいだろうなぁ…)

 

(でもこんな後ろの窓際なら先生からもあんまり見えないし、当てられることも少ないし……楽だなぁ…)

 

「うんしょ…とよし」

 

聡太は席を移動させて、すぐに座り

そのまま窓の外のグラウンドを見る

体育をしている様子もなく、グラウンドには誰も居ない

ただ日差しが眩しい

 

 

「お隣、よろしいですか?」

 

「あーうん……え?」

 

聞き覚えのある声

振り向いてみると

 

「あら、聡太さん」

 

「天使」…ではなくてミナが居た

 

「…ふぇ!?…ミナ…ちゃん?」

 

「はい、そうですわよ?」

 

「あ……となりの席なんだ」

 

「はい、「12」でしたので…」

 

聡太が表に目線を向けてみると確かに24の隣の12と書いてある

どうやら間違いではなさそうだ。

 

「よろしくおねがいしますわ、聡太さん」

 

「よ、よろしく……///」

 

「よし、皆席ついたな。早速授業やるぞぉー!」

 

こうして授業に移っていった

 

――――――

授業は聡太があまり得意ではない算数であった。

しかもその中で苦手な割り算の問題が出ていたのだ。

他の皆が静かに問題を解いていく中――

 

「う……うむむ…」

 

聡太は躓いてしまっている。

途中で窓の外を見ても解決するはずもなく、ただ時間だけが過ぎていく

 

「あの……聡太さん?」

 

そんな様子を見たミナが聡太に声をかけた。

 

「ふぇ!?……ど、どうしたのミナちゃん…」

 

意識がどこかに飛んでいた聡太はミナに声をかけられて不意に驚いてしまった。

 

「その……どこかわからないところとかありますの?」

 

「あ、うん……。割り算の……ほとんどがわからないや…」

 

「まあ、それは大変ですの…」

 

「うん。僕、そんなに算数とか得意じゃないし…」

 

恥ずかしいからか、少し顔を下に向く

指でなにやらゴニョゴニョともしていた。

 

「……でしたら、ワタクシが教えて差し上げましょうか…?」

 

「え?……いいの?」

 

「はい、ワタクシはすでに解き終えましたので……」

 

(さ、流石ミナちゃん……そういえばこの前の小テストでも100点とか取ってたんだっけ…)

 

「あ、ありがとう…ミナちゃん」

 

「でしたら早速……」

 

こうして聡太はミナに割り算を教えてもらうことになった。

ミナの教え方はとてもわかり易く、いつの間にかかなりの問題を解いてしまっていた

 

……だが

 

「ですので、この数は…」

 

「あ、う…うん……///」

 

ミナは聡太のほうに体を寄せているため

かなり近い距離になっている。

 

ミナのほうからは高級な洗剤や柔軟剤のような匂いが微かにしたりで

聡太のほうの顔は真っ赤になってしまっていた。

 

「はい、これでどうでしょうか……?」

 

「あ、うん……///」

 

「……顔が赤いですわね、大丈夫ですの?」

 

「だ、大丈夫!ちょっと今日は暑いから!」

 

「まあ確かにそうですわね……ここは日差しがよくあたりますし…」

 

「だ、だからだよ!」

 

(せ、せーふ……)

 

なんとかその顔を誤魔化した。

 

(うう……隣になれたことは嬉しいけど……///)

 

――――――

 

「はぁ……」

 

1時間目の算数と2時間目の国語の授業を終えて中休みの時間、聡太はそのまま机に顔を伏せた

 

(なんかいつもよりどっと疲れた気がする…)

 

ミナが隣に来たことで、聡太はいつもよりすり減ってしまったようだ

 

(ミナちゃんは……多分また他の女子と話かな……)

 

伏せたままミナの席の方向を向くと

 

「……」ジーッ

 

「!?」

 

ミナがなんと聡太のほうを顔を机に載せながらじっと見つめていた

 

「み、ミナちゃん!?」

 

聡太は思わずガバっと起きる

 

「ど、どうしたの?」

 

「いえ、聡太さんが先程から伏せたままでしたから、どこか調子が悪いのかと気になりまして……」

 

「あ、まあ……ちょっと勉強に疲れちゃっただけだから……。い、今はもう平気だよ!」

 

「そうでしたの……よかったですわ」

 

とくに何もなかったとわかって安心するミナ

 

それを見て再び赤面する聡太

 

「……///」

 

(ううっ…///)

 

嬉しいやら恥ずかしいやらの気持ちが混じって更によくわからなくなった聡太

だが、嫌というわけではないようだ

 

「改めてですが……これから隣同士…よろしくお願いいたしますわ。聡太さん」

 

「う、うん……よろしくミナちゃん……」

 

聡太は少し目をそらしながら返していた

 

(ああ、初っ端からこんな感じじゃ変に思われたかな……でも、慣れないと…慣れないと……!)

 

聡太は決意(?)する中

ミナは――

 

(……やっぱり、あまり目を合わせてくれませんわね……もっとお話したいのですけど……)

 

彼が何故目を合わせてくれないのか、少し不思議に思っていた




メインで書いているやつとかなり格差あるよね
これ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

帰り道の二人

久しぶりの二人です



今回は自分だけだとかなりしっくりこなかったので校正をお願いいたしました。

校正協力 
紗月ゆき様
(https://yuki-satsuki.amebaownd.com/)


日直がさようなら、と挨拶をすると、クラス全員がその後に続いて復唱した。ミナと聡太がいる四年一組の教室では帰りの会が終わり、生徒達は一斉に帰る支度をし始める。一緒に帰ろうと声を掛け合っている生徒達もいれば、一人でいつの間にか教室を後にしている子、まだまだ体力が余っていて友達と早速校庭に行こうとするグループなど、様々だ。

 

「あの、聡太さん……」

「わ、ミナちゃん、どうしたの?」

 

帰り支度をしていた聡太にミナが話し掛けてきた。ミナはしっかりと帰る準備が終わっており、トートバッグを片手に落ち着かない様子で聡太を見つめている。彼女はランドセルを使わない。

 

「今日、一緒に帰ることってできます……?」

「一緒に?僕と?」

 

聡太は不思議そうにする。いつもは校門前に明らかに高級そうな車が停まり、それに乗ってミナは帰宅する。今日も当然そうだと聡太は思ったのだ。

 

「いつもならじいやが迎えに来るの。でも今日はじいや風邪を引いてしまっていて……」

「そうなんだ……それは心配だね」

 

ミナはなかなかない事態に戸惑っているようで、不安げに瞳を揺らした。表情は暗く、今にも泣きだしそうに見えた。歩きで帰る事、友達を帰りに誘う事……普通の子にとって簡単なことでも、ミナにはハードルが高いのだろう。

 

「帰り道はわかりますの……でも、一人で歩くのが……」

「いいよ、一緒に帰ろう」

「……!ありがとう存じます……!」

 

花が咲いたかのように、一気にミナの表情が明るくなり、頬がほんのりと染まる。その様子を見て、引き受けてよかった、と聡太は思ったのだった。

 

 

 (って、引き受けたのは良いんだけど……)

 

  昇降口で靴を履き替える時に、靴を靴箱に入れるミナを見て聡太はどきりとする。よくよく考えてみれば、“二人っきり”で“一緒に帰る”ということは、かなりすごいことなのではないだろうか……?

 それに気づいた瞬間、聡太の顔はみるみる間に火照っていく。

 

「聡太さん?」

「ふっ……?!ど、どうしたのミナちゃん」

「いえ……聡太さんのお顔が赤くなっているので……どうしましたの?」

 

 ミナに言われ聡太は壁にある鏡を横目に見ると、耳まで赤くなっている自分の姿が映った。

 

「あ、ちょっと……な、夏になってきたから暑いからだよ!うん!」

「そうですわね、今日も汗ばみますものね」

 

 にっこりと笑いかけてきたミナにまた動悸が速くなったが、何とか誤魔化すことには成功したらしい。靴の左右を間違えそうになりながらも、外に出ることが出来た。

 

 

「この道はこんな景色だったのですね……」

 

 ミナと聡太は桜の木が道の両脇に植わっている通りを歩いている。春には満開の桜がまるでトンネルのように見える道だ。もちろん既に時期ではないため、今は枝先に緑が生い茂っている。心地よい風が吹いて、葉が揺れている。

 

「いつもは車から見ているので……新鮮ですわ」

「そうなんだ……結構違うものなんだね」

「はい……あ、これもいいですわ……」

 

 ミナは辺りを注意深く、興味津々に見渡しながら歩いている。その様子はやはり“同い年の女の子”らしい姿であり、いつも自分が考える遠い存在ではなかった。

 

(……やっぱり、……うん、かわいい)

 

 聡太はそのミナの様子を見て胸がぐっと締め付けられる。こんな風に毎日一緒に帰れたら……もっと話が出来たら……聡太の気持ちは落ち着かない。

 

「聡太さん?もっとこちらに寄ってはいかが?」

「う、うん……」

 

 ミナをじっと風景と一体として見るあまり、段々と遠のいてしまっていたようだ。気になったミナは聡太に声を掛ける。聡太は慌ててミナに近くに寄り、隣を歩く。ミナは背筋をぴんと伸ばして長い髪をふわりとなびかせながら歩みを進める。聡太はその可憐な姿に見惚れる。

 

(絵本の中のお姫様みたい……)

 

改めて二人っきりであることを意識してしまい、結局聡太はあまり喋ることが出来なかった。

 

 

 時間が過ぎるのは早く、気付くともうミナのお屋敷の門前だった。ミナは門の前に止まると、聡太の正面に回り込んだ。目の前にミナが立ったことで聡太は心臓が跳ね上がる。

 

「もう大丈夫ですわ、聡太さん」

「そ、それはよかった……じゃあ、また!」

「あ……!」

 

 ミナの脇をすり抜けて、聡太は門前をそそくさと後にする。後ろにミナの視線を感じてはいたが、今は振り返って手を振る余裕など持ち合わせていなかった。

 

(まだ、心臓が……ドクドクしてる……!)

 

 聡太はランドセルの肩ベルトをぎゅっと掴むと、歩く速度を速めた。その背中を見つめながら、ミナは残念そうにつぶやく。

 

「……もう少しゆっくりお話したかったのですけど……お急ぎのようでしたし、仕方がありませんわね……」

 

 小さくなっていく聡太を見送って、ミナは柔らかく微笑んだ。

 

「また、明日」

 




尊い…尊い……!

引き続き子供同士研究中で
そのせいか同人誌が段々積まれていくが気にしない気にしない


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。