ギレンの野望(笑) (itou01)
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1話 UC0068年2月

ジオン共和国中央病院VIPルーム

 

「知らない天井だ……」

 

などとお約束のセリフを言いながら寝ていたベッドから身を起こしてみる。

自分に繋がっている点滴や検査機器を見る限り病室のようなのだが…ここはいったい何処だ?

 

俺の記憶では今日は久しぶりの休日で映画館へオリジンの5話を観に行った帰りに戦場の絆で馴染みの連中と連邦を蹴散らして電車で帰る途中だったはずなのだが…。いや、そういえば電車の中で何かもの凄い衝撃を受けたような気もするが、どうも上手く思い出せない。

 

「あいててて・・・? ん?なんだ?」

 

見れば体じゅうに包帯が巻かれておりあちこち怪我をしているようだがそれを差し引いてもまるで自分の体ではないような違和感がある。そのあまりの違和感の大きさが気になり鏡を探して覗きこんでみればそこには自分ではない人物の姿があった。

 

「・・・え?」

 

そう。ジオン公国の総帥にして人類史上最大の虐殺者となるギレン・ザビの顔が。

 

「まさか……俺がギレンになったとでもいうのか?!」

 

ギレンの野望を史上最高のゲームと思っており、かつジオニストである俺にとってギレンは大好きなキャラではあるが、自分がギレンになってやっていけるかと言われれば無理だという自信がある。

何故なら30倍の国力を持つ国を相手に喧嘩を売り、それに勝つためにコロニーを地球に落とすなど豆腐メンタルなガンオタである俺には不可能だからだ。

 

鏡に映った自分の姿に呆然としていると、突然頭の中に膨大な記憶が流れ込んできた。

どうやらその記憶は本来の体の持ち主である『ギレン・ザビ』のもののようであり、その記憶が正しいとすれば今はUC0068年でジオン・ズム・ダイクンが死亡した直後のようだ。

あまりの事態に呆然としていると突然部屋のドアが開き、そこから嵐のような勢いで大男が入ってきた。

 

「意識が戻ったのか?!兄貴!!」

 

顔に傷はないがあのゴリラのような顔はガンダム好きなら間違えようがない。

 

「貴様は…ドズルか?」

 

「そうだ!兄貴。兄貴は議事堂から帰る時に爆弾テロにあい意識を失っていたんだ。医者は頭部に強い衝撃を受けているので脳に異常があるかもしれないと言っていたんだが…。傷は大丈夫か?」

 

…どうやらサスロが死亡した爆弾テロに代わりに巻き込まれたようだ…。

確かに痛みはあるが動けない程ではない。が…

 

「ウム…。傷の痛みはそれほどでもないが記憶が一部欠落しているようだ。

上手く思い出せないことがいくつかある。それ以外は特に大丈夫のようだな。」

 

せっかくなので記憶に欠落ができたことにしてボロ隠しできるようにしておこう。

 

「そうか…。今はサスロ兄が爆弾テロの主犯がラル家に見えるよう動いてくれている。だから兄貴はここでゆっくりと傷を癒してくれ!何か必要なものはあるか?」

 

「そうだな…自由に動けないので誰か身の回りの世話をしてくれる人を寄越して貰えると助かる。」

 

「身の回りの世話をする使用人の手配だな!わかった!任せてくれ!」

 

本当に欲しいのは安心して色々と相談できる相手だがこのままでは日常生活すら難しいのでまずは身の回りの世話をしてくれる人をお願いしてみた。…て言うかギレンの愛人のセシリアさんに来てもらえばよくね?

 

「そういえばセシリアの姿が見えないがどうした?」

 

「…セシリアは…爆発から兄貴を守って死んだ。医者曰く今兄貴の命があるのはセシリアのお陰だそうだ…。」

 

【悲報】

ギレンの野望のヒロイン?セシリアさん原作開始前に死亡

 

まあ、好きなキャラではあるがアイナ様には及ばないからまぁいいか。…って…そうだ!

 

「そうか…セシリアには感謝せねばなるまいな…。そうだドズル。前にセシリアからサハリン家にアイナという才媛がいると聞いた覚えがある。私の世話を頼めないか聞いてみてくれ。」

 

「サハリン家の令嬢だな。わかった。ではゆっくり休んでくれ!兄貴!」

 

ドズルが去り静けさを取り戻した部屋の中で

 

やった!これでアイナ様に看病して貰える。それでそのまま仲良くなって一緒に夜明けのコーヒー飲んだりしたいなー。

 

などと呑気な事を考えながらベッドの上でゴロゴロするギレン?なのであった…。

 

大丈夫か?ジオン…

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ドズル・ザビ

 

「おう。俺だ。サスロ兄。今ギレンの兄貴の見舞いにいってきたんだが兄貴が意識を取り戻したぞ!

ああ、一部記憶に障害があるようだが意識ははっきりとしていた。ベッドから動けないので身の回りの世話をして貰う為にサハリン家のアイナという娘を寄越して欲しいと言っていた。

何?名前に間違いないのかだと?サハリン家の娘はまだ14歳?だが、ギレンの兄貴は間違いなくサハリン家のアイナと言っていたぞ?そうだ。だから何とかサハリン家から寄越して貰えるように頼んでくれサスロ兄。ああ、じゃあ任務に戻る。ではな。」

 

ふぅ これでギレンの兄貴の世話をする人は大丈夫だな。

兄貴が俺がトイレに行っている間に俺が乗るハズの車に乗って爆弾テロにあった時はどうしようかと思ったが無事意識が戻って良かった。

しかし、兄貴が年下好きだったとは。いつもセシリアといるからてっきり年上好きだと思っていたんだが。まあ俺も年下の方が好きだから悪い事ではないな!さてそれでは軍務に戻るとするかな。



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2話 UC0068年4月

ジオン共和国中央病院VIPルーム

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

前回ドズルにアイナ様を身の回りの世話に寄越して欲しいと頼んでみたところ二つ返事で来てくれる事になったのだが…一つ大事な事を私は忘れていた。

 

MS08小隊でこそ妙齢の美少女であるアイナ様だが現在は原作開始の10年以上前である。つまり…

 

「ア、アイナ・サハリン14歳です。この度、閣下のお側で働かせて頂く事になりました。どうかよろしくお願い致します。」

 

アイナ様はまだ14歳だったよ!史実と違って一桁とかではなかったものの、それでも見舞いにきたデギン公に

 

「お前はいつからロリコンになったのだ?」

 

とか言われてしまったよ!

流石に自分から指名しておきながらやっぱり無しでとは言えないので

 

「セシリアが優秀そうだと言っていたのを思い出しましてな。もとより子供に手など出しはしませんよ。」

 

としか言えなかったよ…。死人に口なし。ごめんよ。セシリア…。

 

幸いアイナ様…様だと今は何か違和感があるので、サハリン嬢は一生懸命俺の世話をしてくれている。

おかげで快適に日常を過ごせるようになってきた。

 

さて、俺がロリコン疑惑を必死に収めている間に時間は進み気がつけばダイクン一家はラル家からローゼルシア邸に移っていた。このままだとランバ・ラルがダイクンの遺児をローゼルシア邸から逃がしてアストライアと離れ離れにした事を盛大に逆恨みされてしまう。そうなると後々ダイクン派ともめて面倒な事になりそうなので見舞いに来たドズルにランバ・ラルを呼んで貰う事にした。

 

「失礼します。」

 

「よく来たな。ランバ・ラル。今日は貴様に頼みがあってな。」

 

「は…自分に、でありますか?」

 

「そうだ。お前以外には頼めない事だからな。」

 

怪訝そうな顔で此方を見てくるランバ・ラルに対し、とっておきの爆弾をぶつけてみた。

 

「何、それほど難しい事ではない。お前がダイクンの遺児を連れ出す時にアストライアも一緒に連れて行って欲しいというだけだ。」

 

「!!!!!」

 

歴戦の武人であるランバ・ラルが絶句し、後ずさった事からその言葉で受けた衝撃の大きさが読み取れた。

 

「な、何の事でありましょうか?閣下」

 

「ふん。隠しとおす気ならこの程度の事で動揺をみせるな。貴様がダイクンの遺児とジンバ・ラルを地球へ逃がす為に動いている件についてだ。アストライアまでいなくなれば騒動が大きくなり逃げ切れないと踏んでキャスバル達だけ逃がす事にしたのだろうがそちらの対処は私の方でしておく。故に遠慮なくアストライアも連れて逃げるが良い。」

 

「…」

 

「受け取れ。これが貴様が私の特命で動いている事を証明する命令書だ。これがあれば厳戒態勢下でも問題なく検問を突破することができるだろう。」

 

半信半疑といった顔で命令書を受け取ったランバ・ラルだが命令書の中身を確認すると重い口を開いた。

 

「お考えを…お聞かせ頂けないでしょうか?ザビ家であるあなたが何故ダイクン一家を逃がす事に力を貸そうというのですか?」

 

「今のザビ家の繁栄はダイクンがあったからこそだ。故にザビ家はダイクンに借りがある。その借りをダイクン一家に返す事は特段おかしな事ではあるまい。ああ、ジンバ・ラルを見逃すのはダイクン一家を見逃すついでだ。ランバ・ラル貴様に貸し一つだぞ。」

 

三日間かけて考えた理由をランバ・ラルに説明すると腑に落ちない態度ながらも一礼して退室していった…。

 

いやぁ頑張って何度も練習した甲斐があったね。もともとギレンの体だという事もあってかポーカーフェイスも上手くいった。これならキャスバルのザビ家への恨みも多少は軽くなるだろう。

 

同時にサスロにジンバ・ラルとダイクン一家を見逃すよう指示し、代わりに逃げ出したタイミングを逃さず議会を掌握するよう命じた。

 

ふふふ…何か今日の俺ギレンっぽくね?

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

アイナ・サハリン

 

ある日、学校から私が帰ると興奮した様子で兄が話しかけてきました。

 

「アイナ喜べ!ギレン閣下がお前を側仕えとして使いたいそうだ。サハリン家を復興させるチャンスだぞ!」

 

「ギレン閣下…。ですか?」

 

「ああ。閣下は先日の爆弾テロで傷を負われ、日常生活にも支障をきたしておられるそうでな。そこで身の回りの世話をしてくれる人間としてお前に白羽の矢が立ったそうだ。

なのでお前には明日からギレン閣下の元に行き閣下の身の回りの世話をしてもらう。」

 

「そうですか…。わかりました…。」

 

兄はそう自分の言いたい事だけ伝えその場を立ち去って行きました…。

 

学校の噂ではギレン閣下はとても気難しい方だと聞きましたが本当に私などがお仕えして大丈夫なのでしょうか…?

しかしサハリン家のため、私がギレン閣下の元へ行く事をお兄様が望まれるのならそれを断る事はできませんでした。

 

不安に包まれた一夜を過ごしてその翌日、私はノリスとともにギレン閣下の元へ向かいました。

病室に入り初めて見たギレン閣下は私の目には噂通りとても気難しい人のように見えました。

緊張し、詰まりながら私が挨拶すると

 

「体が上手く動かなくてな。色々迷惑をかける事もあるかもしれないがどうかよろしく頼む。」

 

と思っていたよりも普通のお言葉を頂きました。その後、ノリスが退室し、閣下の病室のソファーに緊張しながら私が座っていると閣下がとても苦しそうな顔をされ始めました。思わず閣下にお加減を伺った所、

 

「ああ…。若い娘さんと一緒にいるのに慣れていなくてな…。緊張しすぎて腹が痛くなってきた…。」

 

と真面目な顔でおっしゃられ、私は思わず笑ってしまいました。勝手に恐ろしい人と思い込んでいたギレン閣下も私と同じように緊張し、そして緊張のあまり腹痛になったりする事を知り、肩の力が抜けた瞬間でした。

その後トイレまでお連れしてからは色々と二人でお話しさせて頂くようになりました。

 

この病室は1人では広すぎて落ち着かなかった事。

タブレット端末の使い方を上手く思い出せなくて困っていた事。

食事は洋食よりも和食派なのに入院してからは洋食ばかりだという事。

等々…。

 

特に、お食事の時にニンジンは苦手なので抜いて欲しいなどと真顔で言われた時はその人間味ある姿を見て思わずまた笑ってしまいました。

そしてそれをご覧になったギレン閣下から

 

「普段の人形のような美しい姿も良いが、やはりそのように笑っている姿が一番だな。」

 

とのお言葉を頂き、私の中にあったギレン閣下のイメージが「気難しそう」から「気難しそうだが、実は優しい」に変化していくのでした…。



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3話 UC0068年5月

ジオン共和国中央病院VIPルーム

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

最近のマイブームはサハリン嬢にあーんをしてもらって食事をとる事なのだがロリコン疑惑のせいでだらしない顔をできないのが悩みの種である。

今日もサハリン嬢の手で昼食をとってからのんびりしていると、サスロが見舞いついでに議会の掌握状況について報告に来た。なので昔ギレンの野望をやりながら考えていたプランをサスロに相談してみる事にした。

 

「調子はどうだ?ギレン兄。」

 

「ああ、傷もだいぶ治ってきたしもう少しで公務に復帰することも可能だろう。それよりも少し提案したい事があるのだが良いかサスロ?」

 

「何だ?連邦への対応についてか?」

「違う。そんなものではない。私の提案はジオニック、ツィマッド、MIPの3社を経営統合させ一つの会社にする事ができないかという事だ。」

 

「ジオンを代表する3社を経営統合させるだと?!」

 

「そうだ。これからジオンには必ず高い技術力と生産力が求められる事になるだろう。確かに競合する三社がそれぞれ技を競いあう事も大事だが、今はそれ以上に3社が持つ技術情報と生産基盤を共有化し効率化していく事の方が重要だ。」

 

「しかし…。」

 

「ジオニックは基礎研究で、ツィマッド社は推進機で、MIPはエネルギー運用でそれぞれ高い技術を持っている。今後ジオンが連邦と事を構える可能性を考えれば我々に優れた技術を持つ3社を個別に競い合わせているような余裕はない。ジオンの持てる力全てを結集しなければ30倍以上の国力を持つ連邦には挑む事さえ難しいだろう。」

 

「…ギレン兄は連邦と戦争になると考えているのか?」

 

「必ずなる。というよりならざるを得ないのだ。仮に連邦が戦争無しでサイド3の自治権を認めてしまえば残る5つのサイドにも同様の自治権を認めざるを得なくなる。もしそうなった場合、コロニーからの税収を前提としてバランスをとっている連邦の財政は破綻してしまう。故に戦争無しでの自治権獲得などありはしないのだ。」

 

「…わかった。どうなるかわからないが3社の経営統合を働きかけてみよう。」

 

よしよし上手くいった。これで上手くいけば実質的に統合整備計画と同じ効果があるハズだ。ついでに技術開発の速度も上がるだろうからMSの性能アップも期待できるかもしれないし。そう言えば技術と言えばミノフスキー博士はどうなっているんだ?

 

「頼む。そういえば、サイド3にいるミノフスキー博士という研究者を知っているか?」

 

「ミノフスキー博士?いや、聞いた事がないが…」

 

「諜報活動はキシリアの仕事とは言え不勉強だぞ。サスロ。彼の博士が研究している新粒子は戦争の在り方を一変させる可能性がある。今後の繋がりを作るためザビ家から研究資金の援助をしておいてくれ。」

 

「わかった。流石だな。ギレン兄。」

 

ふふふガンオタの知識チートの面目躍如だぜ。サスロの兄を尊敬する眼差しが気持ち良い。

 

良い気分だったのでサスロが帰った後に、宇宙世紀の紙粘土のようなものを持ってきてもらいガンプラ?を作る事にした。いやあ不思議な物質だね。紙粘土のように簡単に形状は変わるが触っている感覚としてはプラスチックに近い。

今回は記憶を頼りに一から全部作る事になるので比較的作るのが簡単そうなプチモビを作って見る事にした。作りやすそうな形状なのですぐにできるかと思ったが一からガンプラを作るのは想像以上に大変だった。今後何かしらの対策を考えねば。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

サスロ・ザビ

 

ドズルからギレンの兄貴が14歳の娘を側仕えに欲しがっていると聞いた時は爆弾テロで頭がおかしくなってしまったのではないかと心配したがそんな心配は不要なものだった。

ジオン有数の大企業であるジオニック、ツィマッド、MIPの3社の経営統合。会社統合計画とでも呼ぶべきか。以前のザビ家では実施する事は難しかっただろうがラル家が逃げ出した事を利用して議会の大半を掌握した今のザビ家の力なら十分可能だ。

爆弾テロにあって意識を失ったと思えばラル家の逃亡を利用しての議会の掌握や、今回の会社統合計画などさすがギレン兄という他ない。

 

ミノフスキー博士とやらの件については正直よくわからないが兄貴が必要だというのなら多少の資金援助など問題ないだろう。

それよりも兄貴が実はロリコンだったという噂をもみ消す方がよほど手がかかった。以前はセシリアと関係を持っていたというのに兄貴の女性の好みがよくわからなくなってしまったよ…。まあ為政者としての能力に問題なければ多少の性癖などどうでも良いのだが。



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4話 UC0068年9月

ジオン共和国中央病院VIPルーム

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

この前思いつきで言ったジオニック、ツィマッド、MIPの3社の経営統合がめでたく決まったそうだ。新しい会社名は、ジオ・マッド社。果たしてMIP社は何処にいってしまったのだろうか?

3社の経営統合に伴う協議の中でジオン共和国政府としても支援をするべきだという話が出たようで、その結果軍から技術者を派遣する事になったらしい。

派遣される技術者の代表としてアイナの兄であるギニアス・サハリンが挨拶にきたのでお近づきの印にこないだ作ったプチモビのガンプラをプレゼントしてみた。

プチモビについてよく知らないようだったのでプチモビについて色々と説明してあげると何故かとても感動して尊敬の眼差しで見られた。気分が良かったのでまた何か作ったらプレゼントしてあげようと思う。

 

ついでにミノフスキー博士も資金援助のお陰でミノフスキー粒子の実証試験に成功したらしい。まあ実証できなかったら今後の展開が全て変わってしまうので無事発見されて良かった。

ミノフスキー博士から資金援助のお礼のメッセージがきていたのでジオ・マッド社への勧誘とミノフスキー粒子を使った小型核融合炉の開発依頼を出しておいた。受けてくれるかはわからないが追加の資金援助をすれば何とかなるだろう。

 

まあそんなどうでもいい話は置いておいてついにこの日がやってきてしまった。そう。俺が退院する日である。ここが痛い。あそこも痛い等と仮病を使い今日まで引き延ばしてきたのだが、これ以上引き延ばすとギレンとしての立場が危なくなるような気がしてついに退院する事を決意した。

決して見舞いにきたガルマに

 

「兄上はテロで傷を負われ病院に入院されているのに次々と色々な計画を立案されて凄いです!」

 

などと尊敬の眼差しで見られ後ろめたくなったとかではないのだ。

幸いサハリン嬢が退院後も身の回りの世話をしてくれる事になったので前世?で生活力に問題があった俺でも安心である。

 

退院に伴いサハリン嬢に「入院中は世話になった。これからもよろしく頼むぞ。サハリン嬢。」と言ってみたところ、

 

「少しでもギレン閣下のお役にたてていたのなら嬉しいです。私の方こそ至らない所ばかりですがどうかよろしくお願いします。後、よろしければこれからはサハリン嬢ではなくアイナとお呼びください。」

 

と、キラキラした瞳で微笑みながら呼び捨ての許可を貰ってしまった。これは知らない間に何かフラグをたててたのか?!

まあ冗談はさておき、病院から退院すればもうあーんはして貰えないのが退院に伴う唯一の心残りだ。

 

後、退院に伴いザビ家親衛隊がキシリアの下から俺の下に配置替えになった。今回爆弾テロの標的にされた事から俺の警備を強化する意味も兼ねてそうする事になったらしい。説明するキシリアの矢のように鋭い視線を受けながら俺は思った。

 

もう一度入院したいぜ…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

アイナ・サハリン

 

ギレン閣下の側にお仕えさせて頂くようになって5ヶ月の時間が過ぎました。

誰かの身の回りのお世話をさせて貰うのは私に向いていたようで日々充実した時間を過ごさせて頂いています。

なので先日閣下に抜擢して頂いたお礼を言いに来た兄に、退院後も閣下のお側で働いてみる気はないかと聞かれた時には是非働かせて貰いたいです!とすぐに答える事が出来ました。

兄もギレン閣下から技術者として興味深いアイディアを聞かせて頂いたようで興奮した面持ちで閣下へ尊敬の眼差しを向けているようでした。

 

ギレン閣下のお側にお仕えさせて頂く中で閣下についてわかった事があります。それはギレン閣下が普段されている気難しそうな顔は為政者としての対外的な顔であり、実はそれとは別のギレン・ザビとしてのお茶目な一面をもった顔があるという事です。

先日も腕の傷が痛んで食事を食べにくそうにされていた閣下に冗談のつもりで

 

「よろしければ私が食べさせて差し上げましょうか?」とお聞きした所、

「頼む!」と真顔で返されてしまい赤面しながら「あーん」と食事の手伝いをさせて頂く事になってしまいました。

 

その私が恥ずかしがる姿が余程お気に召されたようでそれからずっと、閣下の腕の傷が治ってからも食べさせて差し上げています。

これはきっと私にだけお見せになっている部分であり、私への信頼の証のように感じて私にとってとても幸せな気持ちになる一時でした。

 

さすがに退院してしまえば食事の手伝いをさせて頂く機会はないと思いますが閣下がご病気にでもなられた時にはまた「あーん」をさせて頂きたいと思います。



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5話 UC0068年11月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

初めて自宅から挨拶するがこの宇宙世紀に何で貴族風の邸宅なんだろうね?正直非経済的だと思うのだが…。

まあアイナが甲斐甲斐しく働いてくれるので快適な環境を満喫できるのは良いことだ。メイド服も似合っているぞアイナ。

 

さて退院して公務に復帰したものの特段することがなかった。半年以上病院でゴロゴロしていたので基本的にどのプロジェクトも俺がいなくても問題なく回るようになってしまっていたのだ。

できたばかりのジオ・マッド社についてもミノフスキー博士が技術顧問に就任しミノフスキー効果の実証実験に成功するなど順調な滑り出しを見せている。

このままでは本当に立場がなくなってしまいそうなので仕方なく新しいプロジェクトを立ち上げる事にした。

 

その名も木星圏開発計画である!

 

基本的に資源獲得競争は早い者勝ちなので連邦が出てくる前にさっさとジオンの勢力下においておこうという計画である。只、木星圏迄進出できる艦艇がほとんどない状況なのでジオ・マッド社に木星圏まで余裕をもって進出可能な超大型戦艦の開発を命じると共にグワダン級のイメージ図を送っておいた。

まあ、ないものは仕方ないので当面はグワジン級の試験艦として建造されていたグワシズを旗艦として使い火星と木星の間にあるアステロイドベルトの調査をおこなう事になった。

前人未到の領域の探索という言葉に一瞬心引かれたものの、高速艦で艦隊を揃えても片道8ヵ月はかかるという現実に衝撃を受けて大人しくサイド3に残る事にした。

ま、まあ総帥ともあろう者が一年以上本国をあける訳にはいかないから仕方ないね。

 

代わりに親衛隊から調査艦隊司令に抜擢したハゲのテンションがメッチャ高かったのできっと良い仕事をしてくれるだろう。

一応俺の記憶にあるアクシズ、ソロモン、ア・バオア・クーの形状を教え、そのような形の衛星があれば優先的に調べるように指示したので成果も上がりやすいだろう。

なお、ハゲとの会話はとても熱苦しかったので省略する。

 

あ、アイナ。何か冷たい飲み物をくれるかな。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

エギーユ・デラーズ

 

ギレン閣下の特命を受けて地球圏を立ち早くも1ヶ月が過ぎようとしている。我らジオンの魂の故郷であるサイド3のコロニーの大地はもはや肉眼ではどこにあるかわからなくなっていた。

 

「デラーズ閣下!」

 

「む…ガトーか?」

 

「は!先程予定していた宙域に到達した為、まもなく第三次加速に入ります。そろそろブリッジへお戻りください。」

 

「ウム。ギレン閣下が艦隊を大型の高速艦で揃えて下さったお陰でわずか八ヶ月でアステロイドベルトまで到達できるとはな。」

 

「全くです。当初の計画では一年以上かかる計画だったとか。」

 

「ウム。今開発されている新型艦を使えば今後は半年まで短縮する事も可能になるそうだ。すでに有力な資源衛星の候補を絞られていた事といい閣下の先見の明には恐れいる。」

 

「全くです。」

 

「ではゆくぞ。ガトー。新たなる栄光を我らが祖国にもたらす為に!」

 

「はっ!お供させて頂きます。閣下!」




誤字を指摘して頂いた方ありがとうございました。只、操作を誤りご指摘頂いたデータを消してしまったので反映できていません…。申し訳ありません。


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6話 UC0069年2月

サイド3 ジオ・マッド社研究所

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

ハゲをアステロイドベルト送りにして寝正月も一段落したので今日はジオ・マッド社の視察に来ていた。

ミノフスキー博士はミノフスキー粒子を使った小型核融合炉の開発で忙しいようなので代わりにアイナの兄であるギニアス・サハリンが案内してくれる事になった。

 

案内してくれているギニアス曰く、まだ3社が経営統合されてそれほど日がたっていないものの、今までそれぞれの会社が秘匿してきた技術情報を共有する事で次々と新しい技術が産まれているという。

今日はその中で産まれたジオ・マッド社の新製品第一号を見せてくれるという事だった。

 

…ってこれプチモビじゃね??思わず

 

「ギニアス。これは先日私が貴様に話したプチモビのように見えるが?」

 

と聞いてみれば、

 

「はっ。ギレン閣下よりお聞かせ頂いたアイデアがあまりに素晴らしかったため今回ジオ・マッド社の製品第一号として使わせて頂きました。閣下のアイデアを無断で使用させて頂いた事、どうかお許しを…。」

 

と神妙な顔で深々と頭を下げてきた。なので

 

「私のアイデアが今後ジオンの柱石を担っていくジオ・マッド社の役にたったというなら許すも何もない。MS-01 の形式番号とモビリティ・スーツの名称を与えその量産と販売を許可する。」

 

と言ってみた。まあそもそも俺のアイデアという訳ではないしね!そして視界の端にアイナを捉え

 

「それにギニアス、貴様の妹には色々と世話になっている。故に今後より一層職務に励む事を貴様への罰として命じる。」

 

とか言ってみた。やべ何か今の俺ちょっと格好よくね?

 

ついでに他に何か良いアイデアがないか聞かれたので今度はメガ粒子砲とモビルワーカー01型について簡単にスケッチして説明してみた。ミノフスキー粒子の兵器転用と人形の大型汎用作業機械という概念は斬新だったようでどうやら次はこれらを開発する気になったようだ。

 

ククク…これは上手くやれば大好きなガンプラをこいつらに造らせる事ができるかもしれん。

試作モデルを造った時に送ってくれるのなら他にも色々とアイデアを出せるかもしれないと提案した所、試作モデルができ次第送ってくれる事になった。

今後俺が欲しいガンプラのイメージを送ってあげる事にしよう。

 

俺に上手く利用されているとも知らず喜んでいる愚かなジオ・マッド社の研究員どもを尻目に研究所を後にするのであった。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ギニアス・サハリン

 

私はギレン閣下に初めてお会いした日の事を生涯忘れる事はないだろう。

ジオ・マッド社への技術顧問に抜擢して頂いたお礼に伺ったあの日の事を。

 

「この度、技術顧問としてジオ・マッド社に派遣される事になりました。閣下のお力添え誠にありがとうございました。」

 

「ウム。技術顧問への就任おめでとう。先ずは祝いの言葉を述べさせて貰おう。しかし貴様はひとつ思い違いをしているようだ。」

 

「思い違い…でありますか?」

 

「そうだ。私は貴様が技術顧問として相応しい人材であるから推薦しただけで便宜など何一つ図っていない。仮にアイナ嬢が私の元で働いていなかったとしても、私は同じように貴様を推薦しただろう。」

 

その言葉は妹を、アイナを差し出した対価として技術顧問に選ばれたと思っていた私に、とてつもない衝撃をもたらした。

 

「それは…身に余るお言葉をいただきありがとうございます…。」

 

「ふん、貴様の才能には期待しているのだ。そうだな…。その証としてこれをやろう。」

 

その言葉の後、閣下より何やら手製の人形のようなものを受け取り私が困惑していると、

 

「それはな、宇宙空間での作業やジャンクの回収などに使う作業用自走マニピュレーター・ポッドで、私が考えた「プチモビ」という物だ。コクピットは360度回転式で良好な視界を確保でき、小型スラスターによりコロニー内でもジャンプや飛行が可能。また、作業用にレーザー・トーチを装備している。先日宇宙服ひとつでコロニーの外壁作業を行っている作業員を見てこのような物があれば楽だろうと思い作ってみたのがその模型だ。貴様にくれてやろう。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「アイデアだけならこのように私のような素人でも出すことはできる。しかしそれを実現するには貴様のような優れた技術者の力が必要不可欠なのだ。故に貴様の今後の活躍を期待する。」

 

「はっ!粉骨砕身の覚悟で努めてまいります!」

 

「ふん。貴様の体の事は聞いている。無理をして倒れては今後に支障をきたす。粉骨砕身も良いが体に影響が出ない程度にしておけ。以上だ。」

 

「はっ!ありがとうございます!それでは失礼させて頂きます。」

 

閣下の部屋より退室すると部屋の前で控えていたアイナが微笑みながら話しかけてきた。

 

「お兄様。ギレン閣下へのご挨拶は無事に終わりましたか?」

「ああ。過分なお褒めの言葉を頂いてしまったよ。お前も元気そうで何よりだ。」

「はい。閣下のお陰で充実した日々を送らせて頂いております。この間などは閣下に…うふふ。やっぱりこれは内緒です。」

 

家では人形のように俯いている事が多かった妹が楽しそうに閣下について話している事が衝撃的だった。なので試しに

 

「それは良かった。…アイナ。今日のご様子から見るにまもなく閣下も退院される事になるだろう。お前が退院後もお側で働かせて頂けるよう私からお願いしてみようか?」

 

と聞いてみた所、

 

「是非お願いします!お兄様!」

 

と今まで見たことのない勢いでお願いされ、閣下との間に何があったのか問い詰めるべきか悩むギニアスなのであった。




誤字、脱字の修正
文の加筆修正(細かな描写の追加、文脈の修正)等色々と募集しています。


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7話 UC0069年8月①

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

今月は色々あったのでひとつずつ振り返ってみたいと思う。

 

以前から議会の大多数を掌握しジオン共和国の実質的な支配者となっていた我々ザビ家であるが、我らが父デギンはそれだけでは連邦に対抗できないと判断してUC0069年8月15日に共和制を廃止し、公王制(君主制)への移行を宣言した。

 

この行為に反発した一部のダイクン派が爆弾テロを計画し、それをキシリア配下の治安部隊が制圧した事で只でさえ少ないダイクン派は更に窮地に追い込まれる事になったのである。

このままだとキシリアがダイクン派を更に弾圧して後々禍根を残しそうだったので穏健派のマハラジャにダイクン派への対応策を相談する事にした。

 

「マハラジャ・カーン入ります。」

 

「うむ。よくきたな。マハラジャ。アイナ、飲み物を出したら少し席を外してくれ。」

 

飲み物を出してから一礼して退室していくアイナを見てマハラジャが口を開く。

 

「よく躾られている娘ですな。」

 

「うむ。よくやってくれている。しかしダイクン派の中にも同様に優れた能力を持つ者はいるだろう。今日はそれらダイクン派の者への対応について貴様に相談したくてな。」

 

「何と…。」

 

「フフフ。私がダイクン派に配慮するような話をすると何故か皆同じような反応をするな。」

 

「これは失礼致しました。予想外のお言葉でしたので思わず…。」

 

「構わんよ。それよりもダイクン派の今後についてだ。このままサイド3にダイクン派が留まればザビ派との衝突は避けられまい。なので貴様にはダイクン派の人間をまとめアステロイドベルト開発に行って貰いたくてな。」

 

まあ本音はアステロイドベルト派遣艦隊から良さそうな衛星を発見したとの報告があったけど、アステロイドベルト開発に行ってくれそうな人材がなかなか見つからなかったからだけどね!

 

「アステロイドベルト開発…でありますか…?」

 

「これを見ろ。」

 

そう言いながら部屋のスクリーンにデラーズから送られてきたアクシズの映像を映し出す。

 

「これは…。」

 

「先日アステロイドベルトに派遣した艦隊から送られてきた映像だ。先遣艦隊の旗艦からとってアクシズと名付けた。膨大な鉱物資源の存在が確認された衛星で今後のアステロイドベルト開発の重要拠点となるだろう。ここを開発する人員にダイクン派の人間を使う事でザビ家派の人間との不要な衝突を避けられると思ってな。」

 

「それは確かにジオン本国とアステロイドベルト程の距離があれば衝突する事はないのでしょうが…」

 

理解を示しつつも何か言いたげなマハラジャの顔を見て、此方からマハラジャが懸念しているだろう事について切りだしてみる。

 

「貴様の懸念については予想できる。地球連邦がスペースノイドを宇宙に捨てたように我々ザビ家がダイクン派をアステロイドベルトに捨てようとしている。そう考えたのではないか?」

 

「…はい。少なくともそう受けとる者が現れるのは間違いないと思われます。」

 

「そうだろうな。なのでアクシズ開発には明確な期限をもうける。早期にアクシズに大型の核パルスエンジンを設置し、10年以内にアクシズごと地球圏へ帰還させる事を約束しよう。」

 

「成る程…確かにそれだけの期間があればダイクン派とザビ家派の確執も収まっているでしょうな。」

 

まあ実際は1年戦争開始までに地球圏にアクシズを移動させた方がジオンに有利になるからだが。

 

「後、お前には私がお前を裏切れない個人的な保証もつけよう。」

 

「個人的な保証…?でありますか?」

 

「そうだ。」

 

そしてそれがマハラジャをアクシズ開発の責任者にしようとしている本当の理由だ。フハハハ…恨むなら貴様の次女と仲良くなりたい俺を恨むが良い。

 

「確か貴様には三人の娘がいたな。その中の…そうだな次女のハマーンを私の側仕えとしておく。もし私が貴様らを裏切ったと思えばハマーンに私を殺すよう命じれば良い。その事を私が認めたと、公文書として作成し渡しておこう。」

 

「…それは…。」

 

「貴様らが遥か遠方に行くリスクを抱えるのならば私もアステロイドベルト開発の責任者としてその程度のリスクは負わねばな。」

 

まあ俺はダイクン派を切り捨てる気なんて全くないのでどんな約束でも気軽にできるねw

 

「…そこまでの覚悟を示して頂けるのであれば最早私からは何も申すことはありません。家族と相談してから改めてお返事させて頂こうと思います。」

 

「うむ。よく家族と話し合って決めるが良い。」

 

「はっ。」

 

一礼し退席していくマハラジャを見送りながらダイクン派のもうひとつの問題への対応について頭を悩ますのであった…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

マハラジャ・カーン

 

私はギレン閣下について思い違いをしていたのかも知れぬ。デギン公王の側近として長らくザビ家を見てきたが、私の中でギレン閣下は沈着冷静ではあるが非情かつ高慢な性格で目的を果たす為なら手段を選ばない理想主義者だとずっと思っていた。

それ故に今回のダイクン派への対応は予想外のものだった。

以前ラル家の縁者からダイクン一家やジンバ・ラルがサイド3を脱出するのにギレン閣下の支援があったという噂を聞いた時はそんな訳あるまいと一笑に付したものだったがひょっとしたら真実だったのやもしれん…。

 

しかし、長女のマレーネならともかく次女のハマーンをお召しになるとは…。以前14の少女を側仕えにされた時デギン公がギレンがロリコンになってしまったと嘆いておられたがどうやら間違いではなかったようだ…。ハマーンには悪いが国の為、犠牲になって貰うしかないのだろうか…。



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8話 UC0069年8月②

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。前回からの続きである。

 

前回、ジオン公国宣言に反発した一部のダイクン派が爆弾テロを計画し、それをキシリア配下の治安部隊が制圧した事については説明したと思う。だがその爆弾テロを計画した事になっているのが数少ないダイクン派の議員であるカーウィン議員であり、治安部隊による拘留中に死亡した事は伝えていなかったと思う。

 

治安部隊の捜査によりカーウィン議員が議会に持ち込もうとしていたカバンから時限爆弾が発見され、その後の調査でカーウィン議員の自宅で押収されたパソコンから爆弾テロを計画したデータが出て来たことで犯人と特定された。

まあ、最初から最後まで本人は関与を否定していたらしいので正直俺はキシリアによる自作自演の逮捕劇ではないかと思っているのだが…。

それよりも今重要なのは、死亡したカーウィン議員が無実かどうかでなく彼の娘であるメイ・カーウィンについてである。

 

メイ嬢は登場したゲームの中で弱冠14歳でありながらエンジニアとして天才的な才能を持っており、10歳のころからジオニック社の一員としてザクの開発に携わっていたとされている才媛である。 

元々彼女のファンだった事もあり何とか彼女を味方にしたいと考えていたのだが、俺がアクションを起こす前に今回の事件がおきてしまった。そして父子家庭であった彼女は父を失い、親戚からも拒絶され、全ての身内を失ってしまったのである。

ダイクン派の中には彼女を引き取りたいと考えている者がいるかもしれないが、表向きとはいえ爆弾テロを起こした者の身内を引き取るのは二の足を踏むのだろう。今彼女は国の施設に入っており、どうやらその中で凄絶な苛めを受けているようであった。

あきらかにザビ家の被害者なので出来れば俺が引き取って助けてあげたいのだが、彼女から見れば俺は父親の敵のようなものだ。果たしてそれが助けになるのかどうか…。

 

「うーん…。どうしたものかな…。」

 

書斎でメイ嬢の資料を読みながら悩んでいるとアイナ嬢がメイド服姿で入ってきた。

 

「失礼します。閣下。コーヒーをお持ち致しました。」

 

「うむ。ご苦労。」

 

いやぁやっぱりメイド服は良いね!

 

「何かお悩みですか?」

 

「ああ一つ難題があってな。先日爆弾テロの主犯とされて亡くなったカーウィン議員の娘が国営の孤児院に入ったのだが、そこで苛めなどで苦しんでいると聞いてな。それで私が引き取ろうかと考えたのだが、はたして彼女がそれを望むかと思ってな。」

 

「…私は閣下がなさりたいようにされるのが宜しいかと思います。メイさんがどうしたいのかは彼女にしかわかりません。もし閣下が引き取られてなお彼女が施設に戻る事を望むのならその時にまたお悩みになったら良いのではないでしょうか?」

 

「フム…。だが、仮に私が引き取った場合、おそらくアイナの仕事が色々増える事になるぞ?」

 

「閣下のお陰でこうして日々充実した日々をすごさせて頂いています。多少仕事が増えるくらい何でもありません。」

 

そう言いながら微笑むアイナ嬢マジ天使。本当は背中から羽とかはえてね?

 

「わかった。ではメイ嬢を引き取る事にしよう。少し席を外してくれ。」

 

こうしてアイナが退室した後、デギンにメイ嬢を引き取る旨を連絡するギレンだが、より一層ロリコン疑惑が深まりそれに伴うトラブルが起きる事をまだ彼は知らないのであった。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

メイ・カーウィン

 

「お父さんがそんな事するハズない!」

 

何度私はそう周囲に訴えた事だろう。だけど周りの返事はどれだけ繰り返しても何もかわらなかった。

 

「でも君のお父さんの荷物から爆弾が発見され、君のお家のパソコンからも爆弾テロを計画したデータが見つかっているんだよ。」

 

前に私が見た時にはそんなデータなんて何処にもなかったと言っても容疑者の身内で子供の私の証言など誰も信用してくれない。

そんなやり取りを繰り返している内に私の所にやって来たのは父が取り調べ中に急病で死亡したと言うさらなる凶報だった。

 

健康だったハズの父が突然急死するハズもないのに急病だと言われ、その亡骸を求めても捜査中を理由に拒否され、結局父が私の元に帰ってきてくれた時にはその姿は骨だけになっていた。

 

その後父の遺骨とともに親戚の所へお世話になる予定だったが、爆弾テロ犯の娘など面倒をみれないと断られてしまい行き先の無くなった私は、国の運営する孤児院に入る事になった。

 

そしてその孤児院の中は私にとって外の世界以上に地獄のような場所だった。世間に流布されている情報しか通じない孤児院の中で私は凶悪な犯罪者の娘であり、それはつまり私が凶悪な犯罪者として扱われるのと同義だった。

孤児院で一番狭く汚い部屋に押し込まれ、僅かな私物も取り上げられた上に私がテロをおこさないようにと自由は極端に制限された。そして、そんな私は孤児院で抑圧されている子供達にとって格好の苛めのまとだった。日々繰り返される苦しみの中で私が父の後を追いかけようかそう思い始めたその時、その人は現れた。

 

「カーウィン!すぐにこの服に着替えて応接室まできなさい!」

 

孤児院の職員が以前に没収した私の服を持って随分慌てた様子で部屋に入ってきた。言われた通り服を着替えて応接室に入ると、そこには思いもよらない人が私を待っていた。

 

「はじめましてカーウィン家の娘よ。ギレン・ザビである。」

 

「は…はじめまして…。メイ・カーウィン10歳です…。」

 

「ウム。先ずはお父上のご冥福をお祈りさせて頂こう。」

 

父を殺したザビ家の人が何を…。事務的な表情で言う目の前の男に、思わずそう思っても今の私にそれを口に出す勇気はなかった。

 

「信じて貰う事は出来ないだろうが、私は君のお父上がテロを起こそうとしていたとは考えていない。故に君が謂れ無き罪で苦しんでいると聞きほうっておけなくてな。君さえ良ければ、私の屋敷にくる気はないかね?」

 

「…。え?…。」

 

「君のお父上の無実を証明する事は私には出来ない。その権限が私にはないからな。だが、君をこの施設から出し不自由のない生活を送らせてあげる事ならばできる。それにザビ家の後ろ盾があれば不要な嫌がらせを受ける事もなくなるだろう。」

 

「…。それは…。そうかもしれないけど…。」

 

「もし屋敷に来て、それでも此処に戻りたいと思うなら直ぐに戻れるように手配しよう。それでどうかね?」

 

「…。本当にお父さんが無実だと思ってくれているの?」

 

「確証はない。しかし、君のお父上がテロを起こす必要はどこにもなかった。だからそう思うだけだ。」

 

…。正直ザビ家の事は憎い。でもこの人は私の知る大人の中で只一人自分から、お父さんが無実だと言ってくれた。そんな人の所ならこんな場所に居るより多少はましかもしれない。そう思った私は、意を決して口を開いた。

 

「…。わかりました。ただ…。ひとつだけお願いしても良いですか?」

 

「何かね?」

 

「もし、もし父が無実だという証拠を私が見つけたら。父の無実を晴らすお手伝いをしてもらえますか?」

 

「…。確約は出来ない。君のお父上の無実を晴らす事でジオンが混乱し、国の大事となるような状況であれば私は協力する事は出来ない。だが、そうでなければ可能な限り協力する事を約束しよう。」

 

100点満点の回答ではなかったけど、それがかえってこの人なりに考えて出してくれた答えなんだと感じる事が出来た。

 

「…。それで十分です。どうかよろしくお願いします。」

 

だから私は歩き始める事にした。新しい明日に向かって。




そら豆さん誤字修正ありがとうございます。
Reppu さんに至っては文脈まで直してもらい助かりました。
年齢設定が原作と異なるキャラクターが出てくると思いますので年齢の部分については多目にみて頂けると助かります。


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9話 UC0069年12月24日

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

もう少しでUC0069年は終わろうとしているが、引き取ったメイ嬢との間に大きな壁を感じる今日この頃である。

アイナ嬢とは姉妹のように仲良く振る舞ってくれているのだがそこに俺が近付くと途端に静かになってしまう。やはり彼女からしてみれば俺は父親の敵のようなものなので距離感が難しいな…。

とりあえず今日はクリスマスなので日頃の感謝も込めてサンタクロースの格好になってみた。え?ギレンのイメージじゃない?まあ身内相手だし良いじゃないか別に。

 

俺はそう思ったのでサンタクロースの格好でリビングに入っていくと談笑していたアイナ嬢とメイ嬢が俺を見て凍りついた。

 

「メリークリスマス。アイナ、メイ。サンタクロースだぞ。」

 

そう俺が言った途端。

 

「アハハハハハハハハッ。」

 

「くすッ。くすくすくす。」

 

めでたく二人が大爆笑してくれた。特にメイ嬢は屋敷に来て初めて私の前で笑ってくれたのだ。頑張った甲斐があったというものだ。

また、クリスマスプレゼントとして用意したアイナへの懐中時計とメイ嬢への最新型ノートパソコンのプレゼントも大好評だった。

その後リビングで二人と共に楽しい一時を過ごした後、部屋に戻った俺を待っていたのは、キシリアからの頭が痛くなる報告であった。

 

「連邦軍の軍備増強計画だと?」

 

「はい。兄上。どうやら先日竣工したパプワ級ミサイル巡洋艦、チベ級航空戦艦を警戒して、コロニー税を財源に大規模な軍備増強計画を立てているようです。」

 

「まさか連邦が30倍以上の国力差があるにも関わらずコロニー税を財源として大規模な連邦軍の増強を図るとはな…。下手をすれば全スペースノイドの反発を受けるというのに…。」

 

「また、どこから情報が流れたのかわかりませんが、連邦軍でもミノフスキー粒子を軍事利用しようという動きがあります。」

 

「なんだと…?」

 

「今のところ連邦軍が注目しているのはメガ粒子砲の威力と艦艇の動力炉としてのようですが。」

 

「そうか…。」

 

まあ従来型の艦艇ならMSの敵ではないので当面は心配ないだろう、けれど近いうちに何か手をうつ必要があるな…。

 

「ご苦労。引き続き情報の収集にあたってくれ。」

 

「はい。ところで兄上。カーウィン家の娘を養女として迎え入れたと聞きましたがまことですか?」

 

うわ…キシリアなら追及してくると思っていたけどやっぱりきたよ。

 

「事実だ。それがどうしたというのだ。」

 

「爆弾テロの主犯の娘をザビ家に迎え入れるなど、兄上は何をお考えなのですか?!」

 

「キシリア。我らザビ家は勝者だ。勝者は敗者に対し寛容でなければならない。何故なら勝者が勝者として存在するには敗者が必要だからだ。ダイクン派という敗者がいるからこそ我らザビ家は勝者足り得るのだ。」

 

「…。しかし…その娘の父親は我らに牙を向けたのです。それをザビ家に迎え入れるのは…。」

 

「父の罪は父の罪であり、娘であるメイとは何の関係もない。

それに、私がダイクン派の娘を引き取った事はザビ家が敗者に対し温情を示す証となり今後の政局に良い影響を及ぼすだろう。故に私は今回の決定を変える気はない。」

 

「わかりました。しかし私が娘を引き取る事に反対している事だけは覚えておいていただきたい。」

 

「無論だ。そしてお前も私がメイを娘として迎え入れる事を変える気はない事を覚えておけ。」

 

「…。それではこれで。」

 

何とかキシリアを抑えれたか…。敗者に寛容なのはデギンやドズル、ガルマには好印象なのに、何であいつだけあんな感じなんだ?まあ兄を思っての忠告だと好意的に解釈しておこう。

 

今日は嫌な事もあったがメイ嬢の笑顔がみれて良い日だった。正に聖夜にふさわしい。明日も笑顔が見れる事を願い今日はそろそろ休むとしよう…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

メイ・カーウィン

 

アハハ。あー可笑しかった。なんか今日は久しぶりに笑った気がする。

クリスマスプレゼントにパソコンを貰った記念に今日から日記をつけようと思う。

 

このお屋敷に来て4ヶ月が過ぎ、最初は慣れなかったこのお屋敷での生活にも少しずつ慣れる事ができてきた。

ギレンさんの眉なし顔はまだ少し恐いけど、アイナさんとは仲良くなれて、お姉ちゃんが出来たみたいでとても嬉しい。

 

私が此処に来る事を承諾したのには二つ理由がある。一つは孤児院よりはマシな生活を送れるだろうと思ったからだけど、もう一つはお父さんの無実を証明するにはザビ家の側にいた方が証拠を集めやすいと思ったから。

だからその証拠集めの為、ギレンさんの部屋にこっそりと私の携帯端末を置いて通話を盗み聞いていた。

でも、今日の似合わないサンタクロースさんを疑うのはなんだか可愛そうなので、明日からはもう止めておこう。そう思った時、その通信は入ってきた。

 

キシリア・ザビ

 

父を逮捕し殺した部門の長だ。

私が緊張しながら話を聞いていると私の話題が出てきて思わず息を飲んだ。

…。私を引き取る事に全員が賛成している訳ではないだろうと思ってはいたけれど、ギレンさんがこんな風に色々と言われ、それでもなお私の味方になろうとしてくれていたのだとは知らなかった。

ショックのあまり気がついたら終わっていた盗聴を切ると似合わないサンタクロースさんに心の中でお詫びをして、そしてサンタさんと出会えた事を神様に感謝してから眠りにつくのだった…。



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10話 UC0070年2月

サイド3 ジオ・マッド社研究所

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

キシリアが五月蝿かったので正月にはメイを連れてデギンの所に挨拶に行ってきた。

初めは難しそうな顔をしていたデギンだったが、メイが

 

「ギレンさん…。いえ。お父さんには施設で苦しんでいる所を助けて貰いました。おじいちゃん。どうかこれからよろしくお願いします!」

 

と呼ぶと、おじいちゃんと呼ばれたデギンはまんざらでもなさそうな顔をしていた。

まあデギンはガルマにはベタ甘だからガルマと同じくらいの歳の女の子にはおじいちゃんと呼ばれれば甘い顔をするだろうと思っていた。

 

ガルマにもデギンと会う前にこっそり話をして、

「ザビ家の男たるもの女性には優しくあらねばならんぞ。」とささやいておいたので

 

「やぁ。メイ。これからは僕とも仲良くしてくれ。」

 

と精一杯紳士的に振る舞っていた。ふっチョロい。

 

さて、今日は前にミノフスキー博士に依頼していた小型核融合炉が完成したとの連絡を受けてメイと一緒にジオ・マッド社の研究所に来ていた。

 

「すごい。すごい。これがモビルワーカー!?」

 

原作と同じように機械関係に興味津々なメイと俺をミノフスキー博士が案内してくれていた。

 

「これはその初期型でYMS-02モビルワーカー01式と言います。主に月面やアステロイドベルトを開発するための人型作業機械として開発されました。」

 

「ねえねえおじさん。これ触っても良い?」

 

「こらメイ。ミノフスキー博士をおじさん呼ばわりするものではない。」

 

「ははは。おじさんで構いませんよ。好きに触って貰って構いませんが動力炉のスイッチだけは入れないよう気をつけてください。」

 

「はーい!」

 

メイが元気にコクピットに潜り込んでいくとミノフスキー博士が現在の開発状況について報告してきた。

 

「現在開発中の後期型では落盤等の事故からパイロットを保護するために、コックピット周りに装甲を配置し安全性を確保できるように改良する他、腕部マニピュレーターをアタッチメント交換によってさまざまな作業パーツに換装できるようにする予定です。」

 

「ふむ。鉱山開発等ではそれなりに使えるようになってきたか。後期型についてはある程度形になったら量産し月面開発に投入してデータ収集に入れ。」

 

「わかりました。…。しかし開発を秘匿しなくてもよろしいのですか?」

 

「まだ、その段階ではない。むしろ大々的に作業用機械を造っている事をアピールするべきだ。」

 

隠せば隠すほど人は知りたがるものだし、連邦の情報部は優秀だ。全てを隠しきれるはずがない。であるなら流して問題ない情報は逆に出来るだけ多く流して混乱させるべきだ。

 

「先日話したYMS-03 ヴァッフの開発についてはどうなっている?」

 

「最大の懸念となる動力用融合炉の小型化については既に完了していますので現在は流体パルスシステムを応用した駆動系の開発に入っています。此方も近いうちに完成する目処がたっていますので試作機が完成する日もそう遠くはないでしょう。」

 

「そうか…。ヴァッフについても同様に目処がつき次第デブリ回収やコロニーの整備等に投入しデータ収集に入れ。只、此方は動力系をバッテリー方式に変えてからテスト運用に入り小型核融合炉の情報が漏れる事はないよう注意せよ。」

 

「はっ。」

 

こちらについてもミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の情報さえ漏れなければ当面は問題はない。

 

「そう言えば、ギニアスはどうしている?」

 

「現在は第3研究室においてメガ粒子砲の研究に専念しております。既にレールガンを遥かに上回る射程と威力の獲得に成功しており、現在は更なる威力の獲得に向けて研究を進めています。よろしければご案内致しましょうか?」

 

さすがギニアス。このまま開発すれば山を撃ち抜く超威力のメガ粒子砲を開発してくれるだろう。だが現時点で急ぐべきは様々なミノフスキー粒子関連技術の開発だ。

 

「いや、それには及ばん。だが、ひとつ言伝を頼む。威力の向上も重要な課題だが、ミノフスキー粒子にはまだまだ他の可能性もある。メガ粒子砲の拡散化や小型化、ミノフスキー・エフェクトを利用した重力下浮遊システム等のな。他にもメガ粒子砲を防ぐための研究なども必要だ。様々な視点をもってひとつの事にこだわる事がないように伝えてくれ。」

 

「…。はっ…。必ずやお伝えいたします。」

 

何故か一瞬難しい顔をした後、ミノフスキー博士は了承の返事をした。

 

「うむ。さて、メイ。そろそろ帰るぞ。」

 

なかなかコクピットから出てこないメイに声をかけると思いもよらない言葉がかえってきた。

 

「ミノフスキー博士!この機体の制御プログラムここの部分がちょっとおかしい気がするんだけど?」

「なんですと?」

 

勝手にコクピット内で自分のノートパソコンを機材に繋いでいたメイがミノフスキー博士に向けて自分のパソコンを指さししている。

 

「ほら。ここの部分二重命令になってるから無駄に処理してるんじゃないかな?」

 

「これは…。確かに…。」

 

「フム…。まあ試作機なら多少のプログラムミスもやむを得まい。」

 

「いえ、これは下手をすると機体が緊急停止する恐れがあります。至急直させましょう。」

 

「そうか…。よくやったぞメイ。」

 

「うん!」

 

流石原作でも有数の技術チート幼女

養女にして良かったぜ…。ダジャレダヨ?

 

そう言えばメイの力を借りたら俺が久しぶりにやりたいアレ…。戦場の絆を作る事が出来るんじゃないか?

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

メイ・カーウィン

 

「私にモビルワーカーの操縦シミュレーターを作って欲しい?」

 

「正確にはモビルスーツの操縦シミュレーターだ。」

 

研究所から家に帰るとギレンさんが突然こんなお願いをしてきた。

 

「今のままだとモビルスーツの操縦訓練は実機で訓練するしかない。だが専用の操縦シミュレーターがあればまだ完成していない機体の操縦訓練さえ可能となる。

今日メイがモビルワーカーのプログラムミスを見つけるところを見ていてメイなら作る事が出来るんじゃないかと思ってな。」

 

うーん…。プログラムを作るのは好きだし

さっきこっそり貰ってきたサンプルデータもあるから作れそうな気もするけど初めての事だからちょっと自信がない。なので正直に「作るのは良いけど初めてだから上手く作れる自信ないよ?」と言ってみた。

 

するとなんとビックリ「なに。当面はそれでかまわん。上手く作れるまで私が使ってテストしてやる。」なんていう返事が返ってきた。

 

「エーッ。ギレンさんがテストするの!?」

 

「ウム。これから多数のパイロットが使う事になる訓練シミュレーターなのだ。ザビ家の長男である私がテストしないで誰がテストするというのだ!」

 

…普通に考えて訓練シミュレーターのテストは政治家の仕事じゃないと思う私は変なのかな?…まあどうやら本人がやりたいみたいだし突っ込まないでいてあげよう。

 

「わかったよ。それじゃ早速今日から作業にかかるね。データとりよろしく。」

 

「任せておけ。必要なものがあればなんでも言うがいい。最優先で揃えさせる。」

 

珍しく楽しげなギレンさんを見て楽しいクリスマスを貰ったお礼にちょっと頑張ってみるかなと思いながらパソコンを立ち上げる私なのでした。




誤字や文脈の修正をして頂いた方ありがとうございます。とても助かっています。


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11話 UC0070年4月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

久しぶりにやったけどやっぱり戦場の絆…じゃないモビルスーツ操縦シミュレーターは良いね!まだまだアルファ版位の出来だがだいぶ形になってきた。さすがはメイ!

ただ、モビルワーカーの操縦訓練に何故連邦の61式戦車と戦うシミュレーションが必要なのかとか答えにくい事を聞かないで欲しい。立場上「趣味だ!」と言えないから答えにくいではないか。

 

さて、アクシズ開発計画が本格的に始動し第一陣がアクシズに向けて出発した。

俺がメイを養女にした事でダイクン派が勝手に俺の事を信用し始めたのが原因の一端である。人生どこで何がどうなるか本当にわからないものだ。

それに伴いハマーン様が我が家に来てくださる事になったのだが使用人としてではなくボディーガードとしてくる事になった。

それもアイナが珍しく家事は自分の仕事なので私一人で大丈夫です。と強硬に主張するのでそれならボディーガードとして…という事で妥協する事になった。しかし14歳のボディーガードとは一体…。いや、あまり深くは気にしないようにしよう。

 

まあ将来MSが開発されたおりにはそれで心ゆくまで守って貰う事にする。だが、1年戦争の開始までにキュベレイの開発はどう考えても無理だよね…。

 

「ハ、ハマーン・カーンです。父より閣下の身をお守りするよう申しつかって参りました。宜しくお願い致します!」

 

うん ハマーン様じゃなくてはにゃーん様が来てしまったよ。ツインテールが可愛いね!

しかしこの可愛らしい子をあのハマーン様にしてしまうのだからシャアはなんと恐るべきヤツだろう。

当初はもし嫌われてもハマーン様に踏んで頂ける素晴らしい計画だったがはにゃーん様も素敵なのでとりあえず嫌われないように努力する事にしよう。

 

「ウム。よくきたな。ハマーン。マハラジャから『約束』について聞いているか?」

 

「は、はい…。」

 

? 何故其処で頬を赤らめて俯く?…。って何故服をはだけ始めるのだ!!?、?

 

「か…閣下が望まれるのであればボディーガードとしてだけでなく愛人としてもお仕えし、アクシズへの支援に支障がでないよう閣下にお願いして欲しいと…そう聞いております。」

 

くぁwせdrftgyふじこlp

落ち着け、落ち着け俺

素数を数えて落ち着くのだ

 

マハラジャの糞野郎原作でドズルにマレーネを差し出したのと同じ感覚でハマーン様を俺の所に寄越しやがった。

 

「フム…。何か誤解があるようだな…。まずは落ち着いて服を整えろ。」

 

「え…。私では閣下のお好みに合いませんでした…か?」

 

「そうではない。」

 

「最初に誤解がないように言っておくが貴様はとても私の好みだ。しかし貴様自身の意思によらないこのような関係は私の望むところではない。」

 

「私の意思…」

 

「そもそも私が聞いた約束とは私がマハラジャを裏切った時、お前が私を粛清するという約束を聞いているかという事だ。このように文書として記録もしてある。」

 

「そんな…。」

 

ハマーン様は大好きだが、こういう形での関係は俺的に望ましくない。

決して元が童貞だったのでビビっているとかではないのだ。

 

「ボディーガードとして来て貰ってはいるが当面は学業に励みながらメイの友達になってやって欲しい。以上だ。」

 

混乱しているのかハマーン様が服をはだけたまま動いてくれなかったので自分から部屋から出つつ、心の中で惜しいことをしたかもしれん…とちょっぴり後悔するのであった。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ハマーン・カーン

 

「すまぬ。ハマーン。ジオンの未来のためギレン閣下の下へ行ってくれ。」

 

初めて父マハラジャにそう言われた時私にはその意味を正確に理解する事が出来なかった。

それがボディーガード兼愛人としてギレン・ザビの所へ行って欲しいと言う内容だと知った時、思わず父を叩き、そして泣いてしまった。

だけど私がそうする事がこれから暗黒の宇宙の先、アステロイドベルトに行く父達の助けになると言うなら…頑張ってみよう。

 

一 一 一 一

 

服をはだけた私を置いたまま閣下が部屋から出て行かれた。その後慌ててやってきたメイドさんが私の服を整えた後に、私の部屋まで案内してくれた。そしてそこで何故か

 

「閣下が甲斐性なしだからよかったものの自分の身体はもっと大切にしないといけませんよ!」

 

と自分の身体を大事にするよう怒られてしまった。私の事を心配してくれての言葉なので嬉しかったけどただのメイドさんがギレン閣下の事をそんな風に言って大丈夫なのかちょっと心配になってしまった。

 

一 一 一 一

 

閣下に仲良くするようお願いされた養女のメイさんと初めてお会いした。

メイさんにメイドさんの事を聞いてみるとどうやらアイナさんと言う方でこのお屋敷の家事を1人でこなされているらしい。なので閣下もお家の中ではアイナさんに頭が上がらないそうだ。

そう言うメイさんもギレン閣下の依頼で操縦シミュレーター作っているそうで、それに関してはあたしも好き放題言っているけど…と、明るく笑う彼女を見て、不安しかなかったこのお屋敷での生活に少しだけ希望の光が見えたような気がするのでした。




毎度誤字の修正ありがとうございます。
文脈や細かな描写の追加も絶賛募集中です。



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12話 UC0070年9月

アナハイム・エレクトロニクス社

フォン・ブラウン工場

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

今日はアナハイム社から連邦軍の最新鋭戦艦であるマゼラン級の進宙式に呼んで貰ったので月のフォン・ブラウンまで来ている。

ハマーン様事件の後、アイナの対応が冷たくて事務的な口調でしか口を聞いてくれず家に居づらいからとかでは決してない。

 

さて我がジオンでもムサイ級(ムサイ後期型の設計仕様)の設計と試作は完了しているものの、現時点で本格的に量産に入ると連邦軍の警戒が強くなるため今はムサイ級に容易に改造できるように設計した輸送船アルカナ級の建造を開始し、新興企業のGNCで運用を始めている。

 

GNC(ギレン・ネットワーク・カンパニー)は早い、安い、うまい…ではなく手続き簡単を売りに俺が立ち上げた私設の物流企業である。本来軽巡洋艦として開発された事に伴うアルカナ級の足の速さと使い勝手の良いモビルワーカーとのセット運用による大幅なコスト削減、職権乱用による簡単手続きが売りで他のサイドからも問い合わせがくる程の人気ぶりとなっていた。

 

それはさておき今日の主役は連邦の戦艦であるマゼランである。まだ連邦ではメガ粒子砲が完成していないため、主砲はレールガンとなっており、そのため主砲の形状は多少違うものの、それ以外は俺が知っているマゼラン級と大差はなかった。今のところ連邦の大艦巨砲主義に変化はないようなのでほっとしていると、アナハイム社のビスト会長が話しかけてきた。

 

「ご招待しておいて何ですがまさかギレン閣下にお越し頂けるとは思いませんでした。どうですかな?このマゼラン級戦艦は?」

 

「素晴らしい艦だな。宇宙海賊に対抗する為に開発されたと聞いたがどんな海賊があれに対抗できるというのやら。私としてはあの強大な砲口が我が国に向くことがないよう祈るばかりだ。」

 

まだ計画段階らしいが将来的にはマゼラン級戦艦だけでも50隻近く、サラミス級巡洋艦やレパント級ミサイルフリゲートを含めれば400隻近い艦艇を建造する計画だという。それをコロニーの税金で造るというのだからサイド3のみならずスペースノイド全体から抗議の声があがっている。

 

「ハハハ。そのような事態にならぬようジオンとは今後は仲良くしていきたいものですな。」

 

く、人事だと思って余裕ぶりやがって…

ん?そういえば確かこいつは…

 

「私もアナハイムとは仲良くやっていければと思っている。そういえばビスト会長のフルネームはサイアム・ビストでよろしかったか?」

 

「?はい。そうですが…それが何か?」

 

間違いない。こいつが「箱」を持っているサイアム・ビストだ。

 

「クク…。やはりそうでしたか…。「箱」の力を持ってすればアナハイム社は今後も安泰。そういう事ですかな?」

 

「!!?!?な…。は、箱とは何の事でしょう?」

 

「ほう。このような人目のある所で「箱」について語っても良いのか?「羊飼い」殿」

 

「!!!!…。いったい何処までお知りに…いえ、よろしければ場所を改めてお話しさせて頂ければと思います。」

 

「そうですな。それでは場所を移すとしましょう。」

 

フフフ。混乱しているな。自分以外に知る人のいないハズの秘密をもっとも知られてはならない人物に知られていたと言うのだからそれも当然というものだが。

 

「ここならば周囲の目を気にしないで話して大丈夫です。」

 

「ウム。」

 

「単刀直入にお伺い致します。ギレン閣下は何処まで「箱」についてお知りになっているのですか?」

 

「ウム。私が知っているのは「箱」を貴方が握っていること。「箱」の正体。そして貴方が羊飼いとして「箱」を入手した経緯位のものだ。」

 

「いったい何処でそれを…?」

 

フム…。脅して従える事もできるだろうがユニコーンでみた限りサイアムは味方にできる可能性がある。ここは一つ賭けに出るとするか。

 

「サイアム会長。貴方は「夢」を見たことはおありかな?」

 

「?夢ですか?」

 

「そうだ。一つ目の巨人が宇宙を飛び回りコロニーが地上に向け落下していく夢だ。」

 

「!!…。まさか…。」

 

「私は見たのだよ。その夢を。夢の中で首相官邸ラプラスが砕けちり貴方が「箱」を入手する姿を。そして我らがコロニーの大地が地上に落下し砕け散っていく瞬間を。

初めは可笑しな夢だと思っていたのだが繰り返し同じ夢を見る事で次第に夢の内容について興味を持つようになり調べ始めた。その中で貴方の存在を知る事で、私は単なる夢を見ていたのではなく過去や未来を覗き見ているのではないかと思い至るようになった。

だがそれはこれから先コロニーが地上に落ちるような大戦争が起きる可能性があるという事だ。」

 

「何と…。まさか…。あれがまさか未来の姿だとお考えなのですか?!」

 

「ラプラス事件が真実であった以上、それ以外の部分も真実として考えるべきであろう。だが、過去と違い未来はまだ変える事が出来る。

少なくとも今の私にはコロニーを地球に落とすような戦いをする気はない。しかし我がジオンが独力で連邦軍に勝とうとするならコロニーを落とす位の事をせねば勝ち目がないのもまた事実だ。故に私に貴方の力を貸してほしい。サイアム・ビスト。」

 

「私の力…ですか?」

 

「そうだ。我らジオンに巨大複合企業アナハイムと連邦すら恐れる「箱」の力が加わればコロニー落としなどせずとも連邦と渡り合う事も可能になるかもしれん。」

 

「…我らアナハイムは連邦と深く関わり過ぎております。閣下の望まれるような全面的な協力をさせて頂くのは困難かと思いますが…。」

 

「当面は陰ながらの支援でかまわない。わがジオンの製品をアナハイムでも積極的に導入する等のな。」

 

「その程度の事なら確かに私の裁量でも可能ですが…。」

 

「それから先はまた互いに誠意を示し、信頼関係を築いてから改めて相談できたらと思う。」

 

「…いいでしょう。ではまずはそのような形で。」

 

ふぅ…。なんとかサイアム・ビストとのファーストコンタクトは無事に終了した。

これでアナハイムがジオン規格の製品を多く使うようになれば開戦後に月を占領してからアナハイムと協力するのが容易になるだろう。

それでは最後にひとつ取引を提案してからボロが出る前に帰る事にしよう…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

サイアム・ビスト

 

宇宙世紀元年、貧困のため報酬目当てでテロに加わった私は、仲間とともに作業艇で逃亡する最中、艇内に仕掛けられていた時限爆弾により船を爆破されてしまう。

たまたま外で作業中だった私はその衝撃で吹き飛ばされ宇宙を漂う中であり得るはずがない幻を見た。

それは、一つ目の巨人の群れが宇宙を飛び回りコロニーが地上に向け落ちていく地獄絵図だった。

幻が去り我に帰った私は爆破されたラプラスの残骸の中に漂う不思議な箱形の物体を発見し、その後民間船に救助され今に至る。

 

その後「箱」の話をした事はあってもそれ以外の事を語った事は一度たりともなく、故にその事を知る者は誰もいないと思っていた。今日までは。

 

「まさか私の過去を知る者が現れ、それがかのギレン・ザビだとは…。だが…。」

 

だがそれ以上に一つ目の巨人とともに地球に向かって落下していくコロニーの姿が幻ではなく未来だというのなら、「箱」はその未来を防ぐ為に私の所に来たのだろうか?

 

そして同じ幻を見たギレン・ザビはその未来を変える為のカギとなるとでもいうのだろうか…?

 

「わからんな…。まあとりあえずジオンと取引を増やす位なら問題なかろう。問題は…。」

 

最後にギレンが提案してきた技術情報の裏取引についてだ。

 

現在連邦が運用している61式戦車とミデア、それに開発中のセイバーフィッシュの設計データと引き換えにチベ級と次世代兵器のメガ粒子砲の設計データをジオンが提供するか…。

 

チベ級のデータはともかく次世代兵器のメガ粒子砲の設計データは喉から手が出るほど欲しい。

それさえあればサラミス級の建造についてもわが社で独占する事が可能になるかもしれん。

 

ここは一つ提案にのってみるとするか…。




とりあえず形になったので投稿します。


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13話 UC0071年2月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

前回のサイアム・ビストとの会談の結果、アナハイム社からジオ・マッド社に大量の受注が入り忙しいようなので今年は自宅からジオンの研究状況についてお知らせしようと思う。

あ、そういえばサイアムから早速手紙が来てたな。最近忙しくてまだ見てなかったので後で確認しなければならないな。

 

さて、去年の始めに試作機の開発が完了していたYMS-02 モビルワーカー01式については去年の夏頃にはMS-02 モビルワーカーとして正式に量産が開始され、現在はコロニーの建設作業や修理、月面やアクシズ、地球での資源開発などで運用され、様々な環境下での運用データを収集している。

また、去年の秋頃に試作第1号機が完成したYMS-03 ヴァッフについては動力用融合炉の小型化と流体パルスシステムを応用した駆動系統の採用によりAMBACを活用した宇宙空間での機動性獲得に成功しており、現在はより実戦的な後継機開発の為のデータ取りの真っ最中である。

 

次に開発する機体にはYMS-03 ヴァッフで集めたデータをもとに、兵器として必要な運用性や整備性、生産性に加えパイロット保護の為に脱出装置を搭載し生存性の強化もおこなう予定である。

本来ならMS用の新型OSも搭載したい所だったが、メイ嬢に相談した所、「モビルスーツ操縦シミュレーターを作るのを中止して良いなら作れるかも!」との返事だったので今回は採用を見合わせた。

 

いやぁ急いで作って何かトラブルがあったら困るからね!!

 

また、連邦に対するカモフラージュとしてアナハイムから入手した61式戦車の設計図を基に地上戦用…じゃなかった治安維持用の主力戦車の開発を命じた。色々と注文を付けたからまさかマゼラアタックのようなものになることはないだろう。

 

それでは報告書も読み終わったし部屋で待たせているハマーン様をちょっと鳴かせてくるかな。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ハマーン・カーン

 

「なんだ?もう音を上げるのか?ハマーン。」

 

「あ、閣下。ダメです。またそんなところばかり…あ、ああ、そんな!」

 

「ククク。やはり貴様はここが弱いな。」

 

「あ、ダメ。そんな、また…アーーッ」

 

モニターにクローを振り上げたモビルワーカーの姿が現れ、その一撃によって私の操縦するヴァッフは機能を停止してしまった。

 

「射撃の精度はなかなかのものだが接近戦がまだ弱いな。ハマーン」

 

「すみません…閣下…。」

 

メイさんとギレン閣下が作られているモビルスーツ操縦シミュレーターのテストにお付き合いさせて頂いているのだけれど始めてからずっと私はギレン閣下に負けてばかり…。

今回もまた巧みに遮蔽物を使い近づいてきたモビルワーカーの一撃にやられてしまった。

 

「かまわん。ずっとテストしてきた私とこれだけ戦える事を誇るが良い。」

 

「そうだよハマーンさん。このペースならすぐにギレンさんより上手くなっちゃうと思うよー。」

 

「メイの言う通りだな。私もうかうかしていられん。」

 

そう言ってギレン閣下とメイさんが励ましてくださったものの、閣下に信頼されてこそ護衛として良い働きができるというもの。その為に私が努力を怠る訳にはいかない!

 

「いえ…私の方こそもっと上手くなってみせます!」

 

「ウム。その意気やよし。ではもう一戦するか?」

 

「はい!」

 

そう言って私はまたシミュレーターを起動させ操作に集中していくのでした…。



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14話 UC0071年3月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

昨年サイド3を出発したアクシズ開拓団が小惑星アクシズに到着した。

今後は居住施設の建設、アクシズで採掘された資源を送るためのマスドライバー建設、サイド3から送る物資を受けとるためのマスキャッチャー建設、ア・バオア・クーとなる小惑星への核パルスエンジン設置などやってもらう事が山積みである。精一杯頑張って貰えるように物資など可能な限り支援をしたいと思う。

 

さて、それよりも緊急の案件が発生した。先日サイアム・ビストから届いた手紙には連邦の息のかかった者が地球でジンバ・ラルと接触を試みているという内容が書かれていたからだ。

 

このままだとキシリア機関にダイクン一家が襲われまたキャスバルの反感を買ってしまう。とはいえキシリアにダイクン一家への襲撃を止めろとも言えない。仮にジンバ・ラルが連邦の支援を得てダイクン一家を旗標に反旗を翻したら一大事だからな。

 

ここはアホな親父の尻ぬぐいに息子に行ってもらう事にしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ランバ・ラル

 

ギレン総帥から緊急の呼び出しを受け向かった先で聞かされたのは親父が地球で連邦と接触を試みており、このままではキシリア麾下の秘密警察がダイクン一家もろとも排除に動くかもしれないとの情報だった。故にそうなる前に父親を説得し連邦との接触を断念させるようギレン閣下に命ぜられ地球に向かうことになる。

 

しかしそれは僅かばかり遅かった。

 

サイド3を出てダイクン一家の潜伏先であるテアボロ邸に着いた時、玄関の扉は既に破壊されボディガードらしき男も入り口付近に倒れていた。

警戒しながら屋敷に突入すると館の奥にある尖塔で鎧姿の刺客からキャスバル様とアルテイシア様を守るために刺客の前に立ち塞がったアストライア様の姿があった。

 

「貴様何をしておるかぁー!」

 

アストライア様に刃を向けようとする刺客に向け走り出すと通路の影から別の刺客が姿を現す。

 

「このランバ・ラル!たとえ素手でも任務はやり遂げてみせる!!」

 

刺客の振るうレイピアを素早い足さばきで躱しそのまま強烈な体当たりをぶちかまし弾き飛ばす。

ゴツッっと鈍い音を響かせ倒れた刺客を放置しアストライア様の方を見てみれば刺客の刃が今まさに落ちようとしていたところだった。

 

純白の衣が、真っ赤な血で染まってゆく。 倒れ臥したその姿に、さらなる刃を振り下ろそうとする刺客へ駆けより後ろから羽交い締めにして動きを封じると一気に階下まで投げ飛ばした。

 

「ご無事ですか!アストライア様!!」

 

そう声をかけながら右胸の刺し傷を確認すると思っていたより傷が浅い事に安堵した。

 

「あ…貴方はランバ・ラル?」

 

「はい。お助けするのが遅れ申し訳ありません。」

 

「子供たちは無事ですか?!」

 

アストライア様がそのように問いかけるとその声を聞いたキャスバル様とアルテイシア様が階段の上から駆け寄ってきた。

 

「お母様ご無事ですか?!…血が!」

 

「見た目程傷は深くありません。ですが油断できる程軽いものでもありません。何処かに安静にできる場所はありませんか?アルテイシア様。」

 

「私の部屋のベッドへ!あそこなら簡単な医療用具もあります!」

 

床に倒れたアストライア様を抱え上げるとアルテイシア様の案内で部屋までの道のりを急ぐ。

 

…その間キャスバル様が一言も発せずただひたすらに沈黙を続けていた事に私は気づくことができなかった。




プロットを間違えていてキシリア襲撃を書き忘れていたのでこっそり追加します


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15話 UC0071年8月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ギレン・ザビ…ではない!

今日の俺は現在ジオンで絶賛大ブーム中のアーケードゲーム「ジオンの絆」のエース、ライトニングカウントである!

 

メイと作っていたモビルスーツ操縦シミュレーターがほぼ完成し、ハマーン様と二人でプレイするのにも飽きてきたので(決してハマーン様に勝てなくなってきたのが理由ではない!まさか僅か半年であそこまで腕をあげるとは…)アーケードゲームとして展開し、チームプレイを楽しむ事にした。

サスロが経費云々という小言を適当に言いくるめて無事広める事に成功した。

流石IQ240の頭脳は違うね。

 

ジオンの絆はランキング制のモビルスーツ操縦シミュレーターである。プレイヤーは幾つかの機体(最初はモビルワーカーのみ)の中から自分にあった機体を選び、チームによる対人戦又は難関ミッション攻略を行いその活躍度合いに応じて支給されるポイントの総合値を毎月競いあう。その総合値が上位のプレイヤーには専用のカスタマイズとGNC社から報償金が支払われ、その最大額は何と一般人の平均月収の3倍以上である100万クレジットである。

初期こそ操作が実機とほぼ同じという操作の難しさや有限の弾薬、機体がやられるとその分報酬ポイントが引かれるというリアリティーの追求による難易度の高さが問題となったものの、ワンプレイ50クレジット、自分のゲーム内で貯めた報酬ポイントからでも支払い可能という無茶な料金設定により大人から子どもまで大ブームとなった。

 

その中で私はハマーン様とともにゲーム内有数のエースとして君臨していた。誤解を生む前に言っておくが俺はゲーム内では何一つズルはしていない。全ては俺の実力の賜物である。

まあα版どころか前世?からずっと同じようなゲームをやりこんでいて自宅から自分の専用媒体でゲームをやるのは十分ズルをしていると言えるかも知れないが。

 

さて、ゲームはこれくらいにしてそろそろ仕事に戻るとするか。ランバ・ラルからダイクン一家が襲われアストライアが負傷したとの報告が上がっている。私の意思ではなかった事を示すため腕の良い医者を送ってやらねばな。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

サスロ・ザビ

 

「アーケードゲームを作って国民に格安で提供するだと?!」

 

「そうだ。サスロ。私が自宅でメイに作らせていたモビルスーツ操縦シミュレーターがほぼ完成した。なので今後に備えてこれを普及させようと思ってな。」

 

ある日突然アーケードゲームを国民に普及させたいと相談を受けた俺は思わずギレン兄の正気を疑ってしまった。

 

「そんな事をしていったい何の利益が出るというんだ兄貴!」

 

「わからんのか?サスロ。このモビルスーツ操縦シミュレーターはほぼ実機と同じ操作を必要とし、その上で実機と同じように動く。故にこのシミュレーターで機体を動かせるという事は基本的に実機で同じ動作ができるという事だ。」

 

「…。それがどうしたと言うんだ?」

 

「つまりこのシミュレーターが普及していけば子どもから大人まで誰でもモビルスーツを操縦できるようになるという事だ。」

 

「…。なんだと?!」

 

「むろん機体にかかるGや重力等の要素があるので完璧とはとても言えんがモビルスーツ操縦の基礎を習得するのには十分な効果がある。現にジオ・マッド社では訓練用の資材としての導入がすでに決まっている。」

 

「そんな情報は初めて聞いたぞ。」

 

「貴様は政治経済に集中して貰っているからな。知らないのも無理はない。

それにメリットは他にもまだある。ざっとあげてもモビルスーツ用OSの開発に必要な操縦データの蓄積、対MS戦対艦戦及び拠点攻略戦におけるモビルスーツの運用方法の検証、ジオン公国国民全員の操縦適性の掌握、娯楽を提供する事による国民の支持といった効果が期待できる。

たかがアーケードゲームひとつを普及させるだけでこれだけの効果が得られるのなら安い買い物だとは思わんか?」

 

「それは…そうだな…。わかった。軍部の広報活動の一環として普及させられないか検討してみよう。」

 

「うむ。頼んだぞ。」

 

最近兄貴が自宅でモビルスーツ操縦シミュレーターで遊んでばかりいると聞いて何をしているんだと思っていたのだが…まさかこんな目的があったとは…。

以前ジオ・マッド社を作った時といい兄貴の視野の広さには驚かせられる。

俺も為政者としてもっと柔軟な発想をもたねば…。

 

そう思いながらアーケードゲーム「ジオンの絆」を普及させるため、広報部に連絡を入れるのだった…。




追記:ジオンの絆はジオン公国の後援で提供されているため、原則としてジオン公国の国民証がなければプレイできません。


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16話 UC0072年2月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

え?一年がたつのが早いって?良いんだよ。そうしないといつまでたっても一年戦争にたどり着けないからな。

 

前回ジオンの絆が本格稼働してからはア・バオア・クーがアステロイドベルトから地球に向けて出発した位で比較的平穏な時間が流れていた。

ジオンの絆も順調にプレイヤー数を増やしており、もう少ししたらランキング上位の人材を親衛隊にスカウトしようとかと考えている。…ていうかこのランキング1位のハンス・ウルリッヒ・ルーデルとか言うやつガンダムにいたっけ?

 

さて今日はYMS-03 ヴァッフで得られたデータをもとに開発していたYMS-04 ザクが完成したと聞き、性能確認の為にジオ・マッド社を訪れていた。

 

「あれがザクか?ミノフスキー博士?」

 

「はい。ギレン閣下。YMS-04 ザクはヴァッフに比べて機動性や運動性の面で一部劣っている部分があるものの、生産性や整備性、運用性といった戦場で必要とされる要素を高い水準で備えております。また、閣下から要望のあった脱出装置についても、脱出装置を兼ねた球形コクピットブロックを採用する事で実現しており高い生存性の獲得にも成功しています。」

 

「ふむ。それ以外にも私の出した要望を叶えてくれているようだな。」

 

見上げた機体には本来の機体には機体内に収められていた動力パイプがあちこち姿を覗かせている。

 

「はい。閣下が言われていた通り動力パイプを無理に機体内に詰め込むと廃熱問題により稼働時間に影響が出る事がわかりました。ですので、必要に応じて機体の外に出すようにして再設計致しました。また、ご要望の通り背部のランドセルに火器類の保持と使用も可能なサブアームを装備する事で利便性の向上にも成功しています。」

 

「これならば基地の警備や補給作業に使うには十分な性能だろう。至急量産に向けたテストに入れ。」

「承りました。」

 

ただ俺が組み込みたかったとあるシステムに対応できておらずジェネレーターの出力不足といった問題もあるので満足した出来ばえとは言えない部分もあるが数を揃えるには少しでも早く量産に入った方が良いからな。

 

「今後はこのザクをベースに改良を施し、一般兵向けの一つの機種で様々な局面に対応させる事が出来る汎用機と、エースパイロット向けのピーキーな性能ながら圧倒的な機動力をもつ宇宙専用機の二種類を開発せよ。」

 

「このザクではまだ閣下のご期待に添えませんか?」

 

「そんな事はない。それならそもそも正式に量産を命じたりなどせん。だが強大な連邦軍と事を構える可能性を考えるならばより高い性能を求めるのは当然の事だろう?それにザクにはまだMS用のOSを搭載できていないしな。」

 

「それは…そうかも知れませんが…。」

 

「汎用機については旧ジオニック社のメンバーに、高機動機について旧ツィマッドのメンバーにそれぞれ開発させるのが良いかもしれんな。そう言えば新しい戦闘車両の開発についてはどうなっている?」

 

「…はい。ご案内します。」

 

そう言うミノフスキー博士の後ろについていくと目の前に一つの車両が姿を現した。

 

「こちらがMBT-01 マゼラタンクになります。」

 

前回アナハイムとの裏取引で入手した61式戦車の設計図をベースに開発されのがMBT-01 マゼラタンクである。

 

「ベースとなった61式戦車との大きな違いとして155ミリ滑腔砲を1門にする代わりに高射機関砲を砲塔の左右に一門ずつ搭載しています。」

 

「ウム。例の件についてはどうなっている?」

 

「はい。外観は61式戦車と大分違いますが中の部品は80%以上61式戦車と共通となっております。」

 

よし。これで破壊した連邦の61式戦車から部品取りする事で現地で部品調達が可能となり補給線に優しい兵器になる。

 

「この車体についてはこれ以上性能向上を図る必要はない。次は、セイバーフィッシュの設計をベースにした汎用戦闘機を開発せよ。」

 

「…はい。そう言えばMS用のOSは我々の方で開発を進めてよろしかったですか?」

 

「いや、それについては私の方で手をうっておく。なので博士は機体の開発に集中してくれ。」

「は…。」

 

そういうと私はメイ嬢にOS開発を頼むためその場を立ち去るのであった…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

メイ・カーウィン

 

「えーっ。今度はMS用OSを開発して欲しいーっ!?」

 

「ウム。メイに作って貰ったモビルスーツ操縦シミュレーターは素晴らしい出来ばえだったのでOSについても是非とも頼みたくてな。」

 

プログラマーとして自分の仕事を誉められるのは嬉しかったけど操縦シミュレーターを作る苦労を思い出すと気軽には引き受けられない。

 

「こないだやっと操縦シミュレーター作るのが終わったばかりだよ?ちょっとは休ませてよー。」

 

「それは…そうなんだが…。」

 

思わず私が抗議するとギレンさんは困った顔で眉をひそめてしまう。

あ、眉はなかった。

 

「よし。取引しようメイ。」

 

「取引?」

 

「そうだ。MS用OSがある程度形になったらOSのテストもかねて地球に連れていってやろう。」

 

「!?やる!」

 

思わず引き受けてしまう。それくらい私達スペースコロニーの住人にとって地球に行くことは憧れのひとつなのだ。

まあ操縦シミュレーターのデータを使えば一から作るよりは簡単に作る事ができる…かな?。

 

まだ見ぬ地球への期待に胸を高鳴らせつつ、OSの開発作業にとりかかるのでした…。




難産でした…。


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17話 UC0072年10月

サイド3宙域 ムサイ級巡洋艦「ニャメル」

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

今日はザクをベースとしたMS開発のために設立した実験部隊の視察に来ている。

ジオンの絆の上位ランカーとジオン軍から俺がスカウトしてきた人材で構成されており、将来的には俺の手足となって色々働いて貰う予定だ。

 

今日は視察という事もあり、サイド3近郊の暗礁宙域でザクの運用データを収集に来ていた。

 

「ギレン閣下。準備はよろしいですかい?」

 

「ああ、シーマ大尉か。世話をかけるな。」

 

「いえ。とんでもない。アタシらマハルのごろつきを親衛隊に呼んで頂いたご恩返しが出来るなら足くらいいくらでもさせて貰います。」

 

「ふん。貴様の事は、貴様以上に知っているつもりだが?私が求めているのは腕と度胸のある兵であり貴様らはそれに応える力を持っている。それを誇るが良い。」

 

パイロットの他にも、指揮官として高い能力をもち外交までこなせるであろうシーマ様を紫婆の所で遊ばせておく余裕などないのだ。何気に義理堅い所あるし。

 

「へ?…。そ、それは…。ありがとうございます。」

 

「ウム。それではテストを開始してくれ。」

 

「はい。それでは模擬戦を始めます。テスト機、出撃しな!」

 

「エリック・マンスフィールド、出撃する。」

 

「エーリヒ・ハルトマン。ザク出るぞ!」

 

ムサイのカタパルトが起動し艦の前方に2機のザクが射出されていく。やはり設計を変更させて既存のMSデッキの左右にカタパルトを備えたデッキを増設したのは正解だったようだ。

 

発艦した2機のザクはムサイから距離をとると互いにスラスターを発光させ模擬戦を開始した。

 

「ほう。ザクはヴァッフに比べて機動性や運動性が低下していると聞いたがよく動くな。」

 

「はい。マンスフィールド機には試作されたばかりの木星エンジンを、ハルトマン機にはMS用OSのβ版を搭載していますので。」

 

「木星エンジンだと?強度は大丈夫なのか!?」

 

それって確かヅダを空中分解させたやつだよね??

 

「?はい。初期は問題もあったらしいですがジオニック社側の技術者の協力で現時点ではとくに問題ないと聞いとりますが…?」

 

「ふむ…。今回はあくまでも模擬戦である。両機にあまり機体に無理をさせないよう伝えろ。」

 

「畏まりました。」

 

大丈夫だとは思うが公的飛行試験中に空中分解でもされたらたまらんからな…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

エリック・マンスフィールド

 

ハルトマンの機体から連続して放たれたザク・バズーカの砲弾を俺は自機が構えたザク・マシンガンの弾幕で迎撃する。ばら撒かれた弾丸がザク・バズーカの砲弾をとらえ、宇宙にCGの火の玉が出現し俺の視界を奪う。やがて晴れてきた爆炎の向こうで何かが光ったのを見て咄嗟に突きだしたシールドに爆炎を突き抜けて現れたザク・マシンガンの弾丸が突き刺さる。

 

「先手を許すとはっ…。!」

 

相手に先手を許した事に思わず舌打ちしながら此方もザク・マシンガンを相手に向けて連射する。バズーカとマシンガンを両手に持っており、両手が塞がっているハルトマン機であるが機体後方から伸びてきたサブアームがシールドを掲げ此方の射線を遮ってきた。

 

「くそっ…。」

 

相手の射撃武装はザク・マシンガンとザク・バズーカの両手持ちなのに対して此方の射撃武装は両手持ちしたザク・マシンガンのみ。しかし手持ちのシールドには予備の弾倉を搭載しているため継戦能力では此方が上。

 

「さて、どうしたものか…。っ!!」

 

ザク・マシンガンを撃ちながら浮遊する隕石に身を隠そうとする俺に対して相手はそうさせまいとマシンガンを連射してくる。

 

しかし先ほどは爆炎で相手が見えてない状況で射撃され思わず焦ってしまったが銃口がよく見えている状況であればザク・マシンガンはそこまでの脅威ではない。

機体を貫こうとする弾丸を躱しつつこのまま相手の弾切れを狙うか…そう思ったその時。

 

「何だと…!?」

 

弾の切れたザク・マシンガンを此方に向けて投げ捨ててきたハルトマン機の右手には巨大な棍棒のようなものが握られていた。

 

「シュツルム・ファウストか!!」

 

強いGが体に掛かるのも構わず木星エンジンを吹かし機体を後方へ緊急回避させると俺がいた場所に巨大なCGの火の玉が出現した。

危なかった…。そう思う暇もなく爆炎を突き破り今度は右手にヒートホークを手にしたザクが現れる。

 

「こいつ、あの爆発を突っ切ってきただと!?」

 

咄嗟にかざした左手のシールドにヒートホークが深く食い込み止まったその瞬間を狙って至近距離からザク・マシンガンを相手に向けようと動く。しかし左手に持っていたはずのザク・バズーカをいつの間にか手放していたハルトマン機の左手に右手を押さえられてしまい撃つことはできなかった。

 

「ちぃっ…。一度距離をとれば…。!??…なんだと!?」

 

同じ機体同士、パワーが拮抗しそれに焦れた俺が一度距離をとろうと後退した瞬間、ハルトマン機のサブアームがいつの間にか構えていたバズーカから放たれた砲弾が俺の機体を直撃し、模擬弾命中を認識したコンピューターがその動きを強制停止させるのであった…。




誤字修正ありがとうございます。戦闘シーン書くの難しいですねぇ…。


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18話 UC0073年2月

サイド3 ジオ・マッド社研究所

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。

最近シリアスなシーンが多いのでそろそろアイナ嬢にセクハラのひとつもしてみたいギレン・ザビである。

というか同じ家で暮らしているのに屋敷が大きすぎて一度も着替えシーンに遭遇とかないので家が大きいのも考えものである。

 

昨年アステロイドベルトを出発して地球に向かっていたア・バオア・クーが今月の初めにサイド3宙域に到着した。

ちょうどキシリアから最近連邦軍の情報部がジオ・マッド社周辺をうろついているとの情報が上がっていたため、開発拠点をア・バオア・クーに移す事になり現在その引っ越し作業の真っ最中である。

 

「忙しくしている所にすまんな。ギニアス。」

 

「とんでもありません。ギレン閣下。閣下がお呼びとあればどこへでも喜んで参りましょう。」

 

「アイナといい貴様ら兄妹には世話になってばかりだな。今後とも頼りにさせて貰う。」

 

「過分なお褒めの言葉をいただき、身に余る光栄でございます。全力で努めてまいります。」

 

「ウム。まあ体に無理のない程度にな。さてそれでは現在の状況について説明してくれ。」

 

「はっ。まず此方が今回完成した連邦のセイバーフィッシュのデータを基に開発した全領域型多用途戦闘機「F-1 セイバードップ」です。」

 

そう紹介されたのは上から見れば「山」の字に見えそうなドップとは似ても似つかぬ航空機だった。ていうかあの両翼の端についてる巨大な板状のものは何だ??

 

「装備換装により宇宙、地上問わずあらゆる空域での運用が可能なうえ、防空、対艦、偵察あらゆる任務に対応可能な設計となっており、閣下のアイデアから開発したムーバブル・シールド・バインダーにより地上における垂直離着陸さえ可能となっております。」

 

「ムーバブル・シールド・バインダー?」

 

「はい。セイバードップは機体の両翼端にフレームを介してこのガトリング砲1基とスラスター2基を内装したバインダーが取り付けられており、このバインダーのフレキシブルな可動により、従来の航空機とは比較にならない様々な挙動をとることが可能となっております。」

 

どうやらセイバーフィッシュの設計図を渡す時にギャプランの話をしたのがこうなった原因のようだ。まあギャプラン改と似たような設計なのに強化人間専用機とかにならなくて良かった。

 

「性能はどうなのだ?」

 

「運動性こそモビルスーツには及びませんが機動性ではMS-04を上回る性能となっております。」

 

「フム。それはなかなかのものだな。よし。それでは至急量産体制に入れ。モビルスーツの開発についてはどうなっている?」

 

「ご案内します。」

 

案内された先にあったのはどことなく狼をイメージさせる細身のシルエットのモビルスーツだった。

 

「此方が現在エースパイロット向けに開発中のYMS-05 ヅダになります。MS-04をベースに旧ツイマッド社のチームが開発した新型エンジンを搭載する事でMS-04の2倍程度の機動力の獲得を目指しています。ただ、現時点では機体の耐久力がエンジンの出力においついておらず先日のテストでは危うく自損しそうになってしまったため現在再設計中です。」

 

「ウム。時間をかけても構わないのでヅダる事のない機体に仕上げてくれ。」

 

「?…。ヅダるでありますか?」

 

「ああ、あまりの急加速に耐えられず機体が自壊・爆発したりすることがないようにという意味だ。一般兵用に開発中の汎用機についてはどうなっている?」

 

「YMS-06 ザクⅡについては現在試作機を製作中です。ザクIのジェネレーターを改良する事で大幅な出力の向上に成功しており、それによって生じた余力を性能向上に使う事で2割程度の性能向上が見込まれています。」

 

「汎用性についてはどうなっている?」

 

「汎用性についてはほぼ無改造で宇宙、重力下、短時間なら水中戦にも対応可能となる予定です。試作機が完成次第、アクシズと地上で運用テストを行う予定です。」

 

十分な性能だとは思うがまだザクとして完璧ではない。どうせ「ザク」の名を冠するモビルスーツを開発するのであれば宇宙世紀以外からも良い部分を取り入れねばな。

 

「フム…。それではまだ不十分だな。」

 

「不十分…でありますか?」

 

突然の言葉に戸惑うギニアスに向かい言葉を続ける。

 

「そうだ。環境への適応力という意味では十分な性能だが単一の機体で様々な戦局に対応させるという意味ではまだ不十分だ。」

 

「しかし閣下、モビルスーツは既にマニュピレーターの採用により多種多様な装備に換装可能でありそれにより様々な戦局に対応で可能です。」

 

まあそれはそうなんだけどね。

 

「確かにモビルスーツは人型の兵器だがそれに囚われすぎる必要はない。例えば背中のバックパックに高機動戦や砲撃戦向け等の特化機能を付与し、その任務事に適したバックパックを換装する事であらゆる戦局に柔軟に対応させることが可能になるのではないか?」

 

「確かに技術的には十分可能ではあるとは思いますが…。」

 

間違いなく可能である。正史でもゲルググ高機動型で実用化されているからね。だがどうせバックパック換装で様々な機能を持たせるならばやはり我がジオン軍の主力となるザクⅡに持たせるべきだ。

 

「そうすればバックパックひとつ換装するだけでモビルスーツに機動歩兵や砲兵、工作兵、偵察兵、降下猟兵といった様々な特性を付与する事ができようになる。それは今後様々な戦局に対応せねばならない我が軍の助けに必ずなるだろう。」

 

「…。設計を一からやり直す必要があります。また、開発の為には色々なデータを追加で取得せねばなりません。それ故にかなりお時間を頂く事になると思いますが…よろしいでしょうか?」

 

まだ開戦まで6年近くあるし量産する時間を考えてもまだまだ大丈夫…のハズ

 

「3年を目処に量産に至れるように開発を進めよ。無論途中経過については逐次報告するように。」

「はっ!ジーク・ギレン」

 

 

 

さて…それじゃ家に帰ってリアルモビルスーツを操縦して遊ぶ…じゃなかった。テストパイロットとしてMS用OSの為のデータ収集をするかな。いやぁ忙しいなぁー。?え、どうしたメイ?テストパイロットについて相談がある??

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ギニアス・サハリン

 

「ザクⅡの設計を一からやり直すだと!?」

 

ミノフスキー博士から出た悲鳴はある意味当然のモノであった。私が彼の立場であっても恐らく同様に悲鳴をあげていただろう。ミノフスキー博士が声を上げる程にザクⅡの設計案は高いレベルでバランスがとれており、恐らく名機と呼ばれてもおかしくない程の出来映えであったからだ。

 

「そうです。本日ギレン閣下に設計案をお見せしたところ、基本的な性能は十分だが汎用性が不足しているとの判断を下されました。」

 

「宇宙、地上、短時間なら水中でも稼働できる機体で汎用性が足りないとは次は空でも飛ばせと言うのか!?」

 

「それも悪くないアイデアですがギレン閣下から頂いたアイデアは背中のバックパックを換装する事で様々な戦局に対応できる汎用性をザクⅡに持たせるという事でした。そうする事でザクⅡは単一の機体で白兵戦から砲撃戦まで様々な任務に対応可能な真の万能機となります。」

 

ギレン閣下から伺ったアイデアを説明するとミノフスキー博士と一緒になって抗議の声を上げていた開発スタッフにも理解を示す者が現れはじめた。納得して貰えたか…。私がそう思ったその時、ミノフスキー博士の口から予想だにしない言葉が発せられた。

 

「…。確かに素晴らしいアイデアだ。技術的にも十分に可能であろう。しかしギニアス。我々は研究者だ。いつもギレン閣下が出される「答え」のようなアイデアに頼るのではなく、未知への挑戦を恐れずに、ひとつひとつ問題解決の為の経験を積んでいく事が重要なのではないか?」

 

突然のミノフスキー博士の問いかけは確かにひとつの真実を示していた。

 

ジオ・マッド社の誕生以降完成した、プチモビや小型融合炉、メガ粒子砲、モビルスーツ等は全てギレン閣下から示された具体的なイメージを基に開発が進められてきた。まだ研究中であるものの完成の目処が立ちつつあるメガ粒子砲の拡散化に小型化、ビーム攪乱幕、ミノフスキー・クラフト等についても同様である。

 

それらは本来我等研究者が試行錯誤の上で形にしていくべきものであるにも関わらず、閣下から具体的な形で「アイデア」が示され、それに基づいて進められた研究はどれもが成功を収めてきた。まるで最初からそうなる事が決まっていたかのように。

故にミノフスキー博士の懸念には私も理解できる部分があった。しかし…。

 

「私も研究者として博士の懸念には理解出来る部分もあります。しかし博士。ギレン閣下は博士の言う未知への挑戦を禁止されている訳ではありません。現に私が提案させて頂いたメガ粒子砲とミノフスキークラフトを搭載した地上用大型機動兵器の研究も始まっています。」

 

「それは…そうなのだが…。」

 

「ザクⅡのバックパック換装システムについてもより良い案を提示することができればそちらを採用して頂く事も可能になるでしょう。閣下の案と並行してより良い改良案を検討していくという形で納得して頂く事はできませんか?」

 

「…。そうだな。詮無き事を言ってしまった。忘れてくれ。」

 

未だに多少ひっかかりはあるようだがなんとか納得してくれたようだ。しかし博士があのように思っていたとは…。大丈夫だとは思うが念のため閣下へ連絡を入れておくとしよう。

 

全てはギレン閣下の為に。




誤字の指摘ありがとうございます
とても助かっています
次回は半分くらい書けているので今回よりは早く出せそうです
真面目な話は書くのが難しい…


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19話 UC0073年6月

サイド3宙域 MS-04コクピット内

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

今日はMS用OSの為のデータ収集の為にサイド3宙域に来ている。

しかし宇宙での操縦はやはり着艦が難しいな。発艦はカタパルトで打ち出すだけだし障害物がない宙域なら宇宙での操縦は簡単なのだが。

ガイドビーコンを採用するのも手だが船を沈められても困るしなぁ。

 

「あ、アイナ。着艦はもう少し相対速度を落としてから。減速して減速。」

 

やはりドロスのようなMS用の大型空母を建造するべきだね。よし早速ジオ・マッド社に発注しよう。

固定の主砲は外してGNC用の超大型輸送艦という名目にでもしておけば連邦も文句は言えないだろう。武装は後であれを搭載すれば良い。

 

「そうそう。その調子…と。そこでその着艦フックを持って…。そうそれで良い。

うん。なかなか上手く着艦できたな。

これで発艦から着艦まで一通りできたので少し休憩してからもう一度同じようにやって貰おう。」

 

ふぅ…。さて、そろそろ現実逃避はやめるとしよう。

先日メイからテストパイロットを増やして欲しいとのオーダーがあった。話を聞けば俺やハマーン嬢では操縦技術が高すぎて新兵が操縦する際のデータの参考にならないそうだ。

その為、他のテストパイロットを用意するという話になったのだがどうせなら身近な人の方が良いというメイ嬢の意見で気がつけばアイナがテストパイロットをする事になり、アイナの要望で私が操縦を教える事になっていた。

そして現在νガンダムに二人乗りしたアムロとチェーンのようにザクのコクピットに二人でいる。童貞の俺にこの距離は近すぎる。どうしてこうなった。

 

「ありがとうございました。ギレン閣下。お陰で何とか無事に着艦する事ができました。」

 

「なかなかセンスが良い。このまま上達していけば一人で操縦出来るようになる日もそう遠くないだろう。」

 

流石原作で本職でもないのに高機動型ザクやアプサラスを乗りこなしていただけある。

 

「ありがとうございます。ふぅ…空調の調子が今ひとつなのかしら?…。汗をかきました。」

 

おい。ノーマルスーツの胸元をあけるな。目がそっちにいって訓練にならないではないか。

 

「ドリンクがあるが飲むか?」

 

「頂きます。ふぅ、暑いのは嫌ですが、飲み物が美味しくいただけるのは、嬉しいことですわ。」

 

くそ…。ただストローを咥えているだけでもこの距離で美人が相手だとエロく感じてしまう。このままだと違う意味で危険な気がするのでさっさと訓練にもどる事にした。

 

「それではもう一度出るぞ。ブリッジ、カタパルトの用意を。メイ、データとりは大丈夫か?」

 

「此方ブリッジ、何時でも大丈夫ですぜ閣下。」

 

「データは順調にとれているよー。次はさっき辺りをまわったアステロイドに着地させてみて欲しいな。」

 

「了解。出来るか?アイナ。」

 

「はい。やってみます。アイナ・サハリン、ザク出ます!」

 

アイナの合図とともにカタパルトが起動し機体が急激に加速していく。

 

「くうっ…。」

 

慣れた俺にはたいしたことのない加速だがついこの前までほとんど操縦経験のないアイナにはキツイのだろう。思わず声を上げていた。

 

「大丈夫か。アイナ?」

 

「は…い。大丈夫…です。」

 

「無理をするなよ。力が入りすぎている。」

 

未だに緊張しているのか大きく操縦レバーを動かして激しく機体を動かすアイナの手を操縦レバーごと上から覆い被せるように握り操縦レバーをゆっくりと動かす。

 

「操縦は繊細に。全力でレバーを動かすのは敵の直撃弾から機体を逃す時位のものだ。」

 

すると先程までの右往左往が嘘のように機体が安定した動きをみせはじめた。

 

「ありがとうございます…。ギレン閣下。」

 

「ふん。大したことではない。それよりもう少しでアステロイドだぞ。着地の時も着艦と同じだ。相対速度にさえ気を付ければさほど危険ではない。」

 

「はい。ギレン閣下。」

 

う~ん…。折角二人きりなのにギレン閣下だと他人行儀な感じがするな…。

もうそれなりに長い付き合いだしそろそろ二人きりなら呼び捨てして貰ってもよくね??

 

「後、そうだな…。二人きりの時はギレンと呼び捨てで良いぞ。アイナ」

 

「え?……。そ…それは?!……。!!!」

 

「!?ちょっと待てそこでそんなにスラスターふかしたら…!あーっ!」

 

【悲報】

ザクの脱出装置使用者第一号 ギレン総帥

 

ま、まあそのうち脱出装置のテストもしなければと思っていたのでよしとする。

やはり、思い付きで行動すると痛い目をみると身をもって知った。

 

その後機体を壊した事をメイに無線でしこたま怒られたものの最後にギレンさんが無事で良かったと言って貰えたので思わずガッツポーズをしてしまったのはメイには内緒だ。

 

そんなやり取りをしていると衝撃で意識を失っていたアイナが目をさました。

 

「大丈夫か?アイナ」

 

「はい…。ギレン…様。機体を壊してしまい申し訳ありません…。」

 

「よい。私の方こそ突然可笑しな事を言ってすまなかった。アイナには呼び捨ては難しかったか?まあ好きに呼んでくれれば良い。それくらいはお前の事を信頼していると言う事だ。」

 

そう言いながら、昔の癖でアイナの頭をぽんぽんとなでてしまう。…しまったな。

 

「……ッ。なッ」

 

「っと、悪い」

 

「あ、いえ、その」

 

「昔ガルマが失敗した時にこうしてやると落ち着いたものでな。思わず撫でてしまった。すまんな。」

 

「あ、その、はい。大丈夫です」

 

まあ実はガルマじゃなくて実家の妹が失敗して落ち込んだ時にこうしてやっていたのだが。

 

そんなことを考えていたせいか、アイナが赤い顔でぼそぼそと何かつぶやいていたのを上手く聞き取れなかった。まぁ特に怒っていないようだしさほど気にする程の事でもないだろう。…とはいえ今後はこの癖は気をつけよう。

 

そうこうしているうちに護衛についていたハマーン嬢のザクが現れその手に抱えられる形でニャメルへと帰還するのだった。

 

…その夜、何故かアイナが寝室に現れ、俺は二人で夜明けのコーヒーを飲むことになる。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

アイナ・サハリン

 

「モビルスーツ用のOS作成の為のテストパイロット?」

 

「うん!アイナお姉ちゃん興味あるんじゃないかと思って。ほら、ギレンさんとジオンの絆を作っている時にお姉ちゃん一人だけ仲間外れみたいな感じになっちゃってちょっと寂しそうにしてたでしょ?それで今度は一緒にどうかなって。」

 

突然のメイちゃんの言葉に思わず胸の奥が温かくなりました。

ジオンの絆を作っている時のギレン閣下はまるで別人のように楽しそうにシミュレーター開発に取り組まれていて、その姿を横目で見ながら一人家事をしていたのが寂しかったのは本当の事でしたので。

 

「ありがとう。メイちゃん。とても嬉しいわ。でも私なんかがテストパイロットなんてできるかしら?」

 

「メイ達は誰でもモビルスーツを操縦出来るようにする為のOSを作るんだから大丈夫に決まっているよ。それにわからない事があればギレンさんに聞いたら喜んで教えてくれると思うな。」

 

ギレン閣下に教わりながらモビルスーツの操縦を覚える。

 

ギレン閣下の事をよく知る前の私なら絶対に嫌だっただろう事が今の私には素敵な事に思えるのがとても不思議でした。

 

それから話はトントン拍子に進んでゆき、閣下やハマーンさんに助けてもらいながらシミュレーターでの訓練は無事終了しいよいよ実機で訓練する日がやってきました。

 

幸いシミュレーターと実機の違いはGの大きさ位と聞いていたのですが実際に乗ってみると全く違いました。いえ、確かに操縦方法は同じなのですが…

 

閣下との距離が近すぎです!真後ろから閣下の息がかかりそうな距離って何ですか!?

 

え?メイ特製の二人羽織コクピットの乗り心地はどう?ですって?

 

近すぎです!メイちゃん!落ち着いて操縦出来ません!

 

二人の関係進展の為に頑張ったんだよー。ご褒美期待してるね!

 

これは…ご褒美にしばらくの間ご飯はメイちゃんが苦手なニンジン尽くしのメニューにしてあげる必要があるみたいです!

 

そんな風に心の中で仕返しの為のメニューを考えている間も時間は進みいよいよ実機での訓練が始まりました。

 

始まる前は閣下とのあまりの距離の近さに戸惑いましたが始まってみれば緊張はしたものの、何とか母艦であるムサイまで操縦する事ができました。

 

ふぅ。緊張のあまりか温度調整されているハズのコクピットがとても暑く感じます。思わずノーマルスーツの胸元をあけるとだいぶ涼しくなり緊張もほぐれてきました。

 

私が一息ついていると閣下がみかねて飲み物を出してくださいました。受け取って飲んでみるとオレンジの甘さが緊張を更に緩めてくれます。

 

ふぅ。一息ついたその時、私が飲んでいたボトルを先程まで閣下がお飲みになっていたのを思い出してしまい、気恥ずかしさからか折角冷えた体がまた暑くなってしまいました。

 

再度カタパルトで宇宙に戻ると先程の事が頭にちらつきなかなか操作に集中出来ません。

そんな私をみかねて閣下が後ろから優しく私を導いてくださいます。

 

お陰で私の緊張も幾分かほぐれ、何とか機体を操縦出来るようになりこのままなら上手くアステロイドに着地できそう。私がそう思ったその時でした。

 

「後、そうだな…。二人きりの時はギレンと呼び捨てで良いぞ。アイナ」

 

「え?……。そ…それは?!……。!!!」

 

突然の閣下のお言葉に混乱してしまった私は思わずザクのスロットルを全開にしてしまい、目の前にあったアステロイドに機体をぶつけその衝撃で意識を失ってしまったのでした…。

 

…。どれだけ時間が流れたのか当時の私にはわかりませんでしたが後で聞いた話によれば意識を失っていたのは30秒ほどだったそうです。

その僅かな間に気がつけば機体は大破し、作動した脱出装置によりコクピットブロックごとギレン閣下と…。いえ、ギレン様と二人で宇宙を漂っていました。

 

私が意識を失っている間もギレン様は母艦と連絡をとられていたようで、すぐに迎えが来るからそれまでゆっくり休んでいるよう指示されました。

私が機体を壊してしまった事の謝罪をすると

 

「よい。私の方こそ突然可笑しな事を言ってすまなかった。呼び捨てはアイナには難しかったか?まあ好きに呼んでくれれば良い。それくらいはお前を信頼していると言う事だ。」

 

そうおっしゃられ、私の頭を優しく優しく撫でてくださいました。その行為がどれだけ私の心に響いたか知らない優しげな顔で。

 

ギニアス兄さんが事故から私を庇い不治の病となり、母がわたくし達兄妹を捨ててサハリン家を出て行ってからというもの私は兄とサハリン家の為だけに生きている人形のようでした。

 

そしてその人形のような日々から私の事を必要とし、人間味のある言葉をかけ、信頼する事で救いだしてくれた人。

 

私はその人に恋をしていました。

 

貴方がいなければこうして温かい言葉をかけられながら頭を撫でてくれる幸せを私は知らなかったでしょう。

 

だから「愛しています」

 

例え貴方がジオン公国の総帥という雲の上のような存在であってもそれは変わりません。

 

だから今夜伝えようと思います。

あなたの力になりたいという私の気持ちを。

今私の胸にあるこの思いを。

 




女性の心理描写難しい…。これ以上書ける自信がないので夜の間に何があったかはご想像にお任せします。


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20話 UC0074年2月

サイド3宙域 グワダン級超大型戦艦「グワダン」

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

今日は先日完成したYMS-05ヅダの評価試験のために同じく完成したばかりのグワダンの試験航海も兼ねてサイド3宙域へ来ている。

 

グワダンは単艦でも艦隊クラスの戦闘能力を有することをコンセプトとした超大型戦艦である。そのサイズは全長700mとガンダム史上でも有数の超大型艦であるがアステロイドベルトへの惑星間航行船として開発された経緯から、航行能力と居住性に性能を割いている部分があるため、火力については連装メガ粒子主砲×2、連装メガ粒子副砲×10、単装メガ粒子砲×4と大きさの割には控えめである。

 

一方MS運用能力については艦体上部にMS2機を同時に射出できるカタパルトが2基、下部にはMSを任意の方向に射出させることのできるMSランチャーを備えており、100機近い搭載可能数と相まって極めて高い。

 

まあ火力が控えめと言っても副砲ですら連邦のマゼラン級を上回る威力を持っているため、地球圏に置いておくと連邦が五月蝿そうなので今回の航行が終わったら早速アステロイドベルトに向け出発する予定である。

 

ククク…この船に刺激されて連邦の大艦巨砲主義が加速するといいのだが。

 

さて、今日の主役はこのグワダンではなくYMS-05 ヅダである。

 

本来の歴史であれば来年行われるコンペティションでジオニック社の「ザクⅠ」と正式採用を賭けて争い、その圧倒的な機動性によりザクⅠを圧倒するもテスト中に機体が空中分解を起こし不採用となった悲運の機体である。

 

まあ今回の機体はそもそもザクⅠをベースに開発しているしジオニック社の技術者も協力しているので耐久性に心配はない。

 

機体のフレームを兼ねるモノコック構造の装甲を大幅に強化し、改良型土星エンジンを両肩部に搭載する事で重装甲と高機動性を両立した。

兵装面は長距離狙撃能力を持つ大型対艦ライフルと円型のシールドそれにマゼラン級の装甲をも破壊可能なヒートソードを採用している。

また、頭部には中世ヨーロッパの騎士をモチーフとしたフェイスカバーが取り付けられており、機体サイズは原型となったザクⅠよりも一回り大型化する事となった。

 

…要するに量産型のトールギスといった感じだ。

 

無論トールギス程の圧倒的な火力と装甲がある訳ではないがそれでもザクⅠの三倍近い機動性を発揮する事ができる。

 

「準備はいいかな?デュバル大尉」

 

「無論です。ギレン閣下。ジオンの栄光をヅダに!」

 

そう言うとヅダは腰を落としてカタパルトの上で射出姿勢をとる。

 

「ジャン・リュック・デュバル。ヅダ。出るぞ!」

 

そう言うとヅダの蒼い機体は真空の宇宙に吸い込まれていった…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ジャン・リュック・デュバル

 

カタパルトで射出されたヅダは漆黒の宇宙を切り裂いて進む。初めて試作機に乗った時に聞こえたあまりの加速により発生する機体の軋み音は全くない。もはや過去のヅダとは違う機体と言っても過言ではないのだ。

 

そのような事を考えていると2個小隊6機のザクⅠが目の前に姿を現す。1対6とは少しばかり数に差があるがこのヅダが相手であればまあ妥当な所だろう。

 

「有効レンジ内!捉えた!」

 

右腕に構えた大型対艦ライフルを敵機に向かい発射する。

 

ザク・バズーカの射程を遥かに超える距離でまさか攻撃されると思っていなかった敵機はろくに回避行動もとれず対艦ライフルの直撃をくらう。艦艇すら沈める威力をもつ対艦ライフルの威力は絶大で一撃でザクⅠに撃破判定を与えていた。

 

「食らえ!」

 

立て続けの射撃で2機のザクⅠが行動不能になったころ、やっとヅダを射程に捉えたザクⅠからの射撃が始まった。

 

「この速度、ついてこられるかな?」

 

ヅダの両肩部に取り付けられた改良型土星エンジンが膨大な推力を生み出す。

ヅダを狙ってザクⅠから放たれた弾丸はその影すら捉える事ができない。

 

一方ヅダの射撃は開発中のMS用OSの効果により高速戦闘中でも正確な射撃を可能としていた。

 

また一機のザクⅠが撃破判定となる。

 

「ヅダの武器はひとつではないのだよ!」

 

大型対艦ライフルによる狙撃を警戒する敵機に対し対艦ライフルのモードを狙撃から連射に切り替える。

すると狙撃した隙を狙って射撃を繰り出そうとしていたザクⅠが1機直撃をくらい撃破となる。

 

4機がやられようやく射撃戦の不利を悟ったのか残った2機のザクⅠがヒートホークを構え捨て身の突撃をかけてきた。

 

「ふん。格闘戦か。いいだろう付き合ってやる。」

 

対艦ライフルを右肩のアタッチメントに戻すと左肩の円型シールドからヒートソードを引き抜く。

 

「ヅダの性能をその目に刻みたまえ!」

 

ザクⅠを遥かに超える推力で瞬く間にヒートソードの間合いにザクⅠを捉え撃破する。

 

その隙を狙って襲いかかってきた最後の一機のヒートホークをシールドで受けそのまま両肩の土星エンジンを全力で吹かす。

そのままシールド越しに体当たりを仕掛けるとあまりの衝撃にザクⅠの脱出装置が作動しコクピットブロックが射出されてしまった。

 

1対6の戦いで示された戦果は最早ヅダがザクⅠを遥かに超えた機体である事を示していた。

そう!最早ヅダはゴーストファイターなどではないのだ!

 

そして評価試験を終えた私は機体をグワダンに向け発進させるのであった。




ノリがよく止まらずに書けました。
因みにネットで見かけた高機動型ヅダがモデルとなっています。

CBさん誤字修正等いつもありがとうございます。


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21話 UC0074年4月

サイド3 士官学校体育館

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

先日評価試験を行ったYMS-05 ヅダは予想以上の性能を発揮したため正式にMS-05 ヅダとして採用し量産を開始する事になった。

しかしあまりの高性能故に連邦に知られた場合間違いなく警戒されるので遥か遠く離れたアクシズに製造拠点を置くことにした。ここならそう簡単に情報が漏れるような事もないだろう。

丁度グワダンが完成し必要な人員や資材の運搬が容易になっていたので良かった。

 

また、一部の軍人からはザクの開発は中止してヅダのみを量産すれば良いのではといった意見も出てきたが、ヅダは地上戦には対応しておらず、またあまりの加速力の高さ故に高い操縦技術を必要とするためエース向けの機体として少数生産していく事で決着した。

…まあヅダの製造コストがザクⅠの三倍近いという事もあるのだが。

 

さて、今日は我らザビ家5兄弟の中で唯一誰からも好かれる可愛いガルマの士官学校入学式である。

珍しくデギンに一緒に参加しないかと誘われたため行ってみればザビ家一同が勢揃いしておりガルマの愛され具合がよくわかった。

キシリアなど俺が怪我で入院している間、一度親衛隊の引継ぎの報告にきただけでそれ以外は見舞いにも来なかったというのに!

 

まあそれは別にいい。いいのだが…何故にキャスバルが此処にいるのだ!

 

最新の報告ではアストライアにアルテイシア、テアボロ等とテキサスコロニーに移住した話は聞いていたがアストライアが生存しているため心配してはいなかったのだが…。

 

これは後で調べさせる必要があるな。

後ドズルにできるだけガルマとキャスバルを接触させないように指示しなければ。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

シャア・アズナブル

 

「はぁー。やっぱり士官学校受ければ良かったかなぁ?」

 

ジオン工業大学に受かりサイド3に向け旅立つエドワゥを見送りながら思わず呟く。

 

最初受けようと思っていた士官学校の受験を俺には向いていないという理由でエドワゥと両親に反対され結局テキサス農業大学に行く事にしたのだがその反対した友人は知らぬ間にサイド3にあるジオン工業大学を受験し合格していた。

その事を知ったアストライアさんやセイラちゃんはエドワゥがサイド3に行く事に激しく反対していたのだがエドワゥの意志が変わる事なく今日サイド3に向け旅立っていった。

俺にもアイツくらい固い意志があれば士官学校に合格したのだろうか?

まあいつまでもたらればの話をしていても仕方ない。

俺は俺でこのテキサスの地で頑張っていくとしよう。

 

…そういえば士官学校を受けるつもりだった頃に書いた願書とか書類一式が気がついたらなくなっていたけど何処にやったんだっけ?…やっぱり反対していたお袋が捨てたのかな?




アストライアが傷を負わされた復讐のために結局キャスバルは仕官学校に行きました。ただ、アストライアがまだ生きているのでちょっと穏健になりシャアさんは命拾いしました。


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22話 UC0075年2月

夢でメイちゃんに怒られたので書き直しました。後編は次回流用するのでご了承ください。


ハワイ ワイキキビーチ

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

今日はやっと完成したYMS-06 ザクⅡの地上運用試験視察のために地上に来ている。

 

え?ハワイでザクⅡの地上運用試験をしているのかって?そんな訳ないだろ。

地上運用試験はここから南に行った所にあるキリスィマスィ島という無人島で行っている。

この島はもともと有人の島だったが連邦の棄民政策で住人は根刮ぎ宇宙にあげられてしまい今はアナハイムの所有する兵器の試験場となっている。

そこにサイアム・ビストの協力でザクⅡを運び込み様々なテストを行っている。

 

今のところ地上での運用を予定している装備の中ではC型、F型装備はほぼ完成しており、M型装備については運用試験中、H型装置についてはまだまだ開発半ばといった所だ。

 

え?それじゃ意味がわからないって?

 

ザクⅡはバックパックの換装と脚部等に追加の装備をする事で10種類の形態をとる事ができる。

 

A型装備 核兵器運用装備

B型装備 高機動戦闘用装備

C型装備 砲撃戦用装備

D型装備 防御用装備 ※機密指定

E型装備 偵察用装備

F型装備 汎用装備

G型装備 降下用装備 ※機密指定

H型装備 地上用高機動装備 ※機密指定

I型装備 近衛師団用装備

M型装備 水中用装備

 

これらの形態を任務や部隊編成に合わせて変更する事で様々な状況に柔軟に対応する事ができる。

 

要は通常のザクⅡがちょっとした換装でC型になったり、高機動型ザクになったり、ザクキャノンになったり、ザクフリッパーになったり、袖つき仕様になったり、ザクマリンタイプになったりするという事だ。

 

なかなか使い勝手がよさそうな機体に仕上がっているだろ?実際にテストを行っている親衛隊のメンバーからも絶賛されており、早速量産に向け準備を進めていく事が決まっていた。

ただ、ザクで空を飛びたいと言われても困るぞルーデル。流石にバックパックを換装した位で空は飛べない。やはりドダイの開発を急がせるしかないか。

 

まあ、他にもザクウォーリアを見習って盾を右肩から左肩に移した上で大型化し、更に半自律可動にする等の地味な改良もしたのだがそちらについては特にコメントは貰えなかった。解せぬ。

 

脱出装置を搭載した事といい、ここまでくると最早違う機体の気もするが元は同じ機体なのであまり気にしない事にする。

 

さて、それでは視察の疲れをゆっくりビーチで癒す事にする。こらこらメイそんなにはしゃぐんじゃない。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

メイ・カーウィン

 

変じゃないかな?

 

首を傾げながら、鏡に映るのは、生まれて初めて着る水色のワンピースの水着を着た自分の姿。

 

一緒に買いにいったアイナお姉ちゃんやハマーンさんは似合っていると誉めてくれたけどこうしていざ着てみるとやっぱりちょっと不安になる。

 

だって水着なんて着たことないから恥ずかしいし、お姉ちゃん達みたいにスタイル良くないし…。

 

「メイちゃん着替え終わった?」

 

やばっ。アイナお姉ちゃんを待たせてた!

外から聞こえてくる声に、私は一気に現実に引き戻される。

 

念願の地球に来ているのに恥ずかしさのあまり思考が変な方向にいってたみたい。

せっかくの地球。それも今や世界有数の高級リゾートとして有名なワイキキビーチに来ているのだから精一杯楽しまなきゃ。

 

メンバーは、私とアイナお姉ちゃんとハマーンさんとおまけのギレンさんの4人。

 

元々は私が頑張ってモビルスーツ用OSを開発したご褒美としてギレンさんに海へ連れていって貰えることになったんだけど、私が「ギレンさんと二人で海に行ってもつまらない!アイナお姉ちゃん達と一緒じゃないなら行かない!」って言ったので、結局このメンバーになった。

 

その時のギレンさんの落ち込み具合いはなんかちょっと可愛かったな。二人で海に行ってもつまらないなんて言ってゴメンね。

 

「メイちゃんどうかした?」

 

「あ。うんっ!!ごめん、今出るね!」

 

また変な方向に思考が飛んでいた私は、大急ぎで着ていた服をスーツケースにしまうとホテルの部屋から外に出た。

するとそこに飛び込んできたのは、白いビキニ姿のアイナさん。

肩紐の部分には手の平ぐらいの大きさの花のコサージュが施されていて、一見するとシンプルな水着なのに、アイナさんが着るととても華やかだ。…というかあの胸は反則だ。私が同じ水着を着ても絶対あんな風にはならないもん。

 

「あら可愛い。やっぱりメイちゃんにはそういう可愛いらしい水着が似合うわね。」

 

「アイナお姉ちゃんもステキだよ!すっごくスタイル良いし羨ましい!」

 

本当にスタイルが良くて羨ましい。アイナさんの水着を見た後に自分の水着姿を見るとなんかちょっとへこんじゃうもん。神さまちょっとこの差は酷くないですか?!

 

「うふふ…ありがとう。とても嬉しいわ。でも準備が出来たならそろそろ行きましょ?きっとロビーでギレン様やハマーンさんが首を長くして待ってるわ。」

 

あ、そうだった。ギレンさん達をロビーで待たせてるんだっけ。

 

このホテルは貸し切りらしいので他に人はいないだろうけどこの格好でギレンさんの前に行くのは何か緊張するなぁー。

 

「ほら、行きましょ。」

 

「あ、うんっ!!」

 

私がアイナさんの後を追いかけてホテルのロビーへと向かうとギレンさんとハマーンさんの二人が水着姿で待っていた。

 

「ギレン様。メイちゃんをお連れしましたわ。」

 

「あ、アイナさん!?」

 

アイナさんの後ろに隠れていた私の肩にアイナさんの手がのせられ、ギレンさんの前へと押し出される。

 

ギレンさんの水着は黒一色の飾り気のないトランクスタイプ。

普段服で隠れているお腹は予想外に鍛えられており綺麗に6つに割れた腹筋が見えちゃっている。

男の人にしては細いなぁ…なんて思ってたけど、脱いでみると筋肉質というか、やっぱ男の人だなぁといった感じで。

うぅ…どこに視線を向けたらいいのかちょっとわからなくなってしまった…。

 

ついさっきは自分の水着姿を見て恥ずかしくなってたけど、今はそれ以上にギレンさんの方を見るのが恥ずかしい。

 

だって、水着だよ!?

うん。そりゃ海に来たんだから水着になるのは当然だけど、でも――

男の人の裸の上半身を見るのなんていつ以来だろう?

たぶん大昔にお父さんと一緒にお風呂に入った時以来だと思う。

そのせいかギレンさんの前にいるだけなのにとても緊張してきた。こんな風に緊張しすぎているのを見られて変に思われちゃったらどうしよう…。

 

「どうですか?ギレン様。メイちゃんの水着姿は?」

 

「フム…良く似合っているぞメイ。なかなかに愛らしくて良い。」

 

そんなこちらの気も知らずギレンさんがいつものまゆ無し顔で無表情を装いながらそんな台詞を言ってくる。でもそれなりに長く一緒に暮らしてきた私にはわかる。あの顔は緊張している時の顔だ。

だってよく見るとちょっと視線が泳いでいるし。

そう思うと一人で変に緊張しているのがなんかバカらしくなってきた。

 

「それでは閣下。そろそろ海に向かわれますか?」

 

そんなやり取りをしているとハマーンさんが私達に声をかけてきてくれる。

 

ハマーンさんは紺色のウェットスーツみたいな感じのスポーティーな水着姿だった。

手足長いし、胸は…そこまでではないけどそれでもなんかとても大人っぽくてとっても格好いい。

 

きっと早くも浮き輪を手にして、海の方をチラチラ見てなければもっとカッコよかっただろう。

 

「ウム。それではビーチに向かうとしよう。」

 

そんなギレンさんに連れられて向かった先の海は、とても言葉ではいいあらわせないくらい広大だった。

 

何処までも広がっている透き通るような青。宇宙から地球に降りる時に一度見たけどこんなに大きな水の塊を間近で見るのは初めてで、そのあまりの広大さに私は不思議な感動を覚えていた。

 

この海の先には、他の島やいろんな大陸が広がっているらしいけど、海を見るのもはじめてな私にはそこがどんな風になっているのか想像さえも出来ない。

サイド3という狭い世界でずっと育っていた私にとって、海という大いなる自然との出会いはとても衝撃的なものだった。

 

いつか、この先にある他の場所にも行ってみたいな。不思議とそんな思いが自然に湧いてくる。

 

「メイ、砂浜に行くぞ。」

 

「うん!」

 

ギレンさんや他の皆と一緒に砂浜に降りてみる。私がおっかなびっくり砂浜を歩いていると

 

「相変わらず海は広いな。」とギレンさんが呟いていた。

 

「ギレンさんは前にも海に来たことあるの?」

 

正直、ギレンさんもコロニーの住人だしどことなくインドア風のイメージなのであまり海のそばに来るようなタイプじゃないような気がして思わず聞いてみる。

 

「まあずいぶん昔にな。特にアジア地方にある日本にはそれなりに思い入れもある。まあ今どうなっているかはよくわからないが。」

 

すると何故かとても懐かしそうにそう言ったギレンさんか何故か一瞬別の誰かのように見えてしまった。まあよく考えればメイよりずっと歳上だし前に海へ来たことがあっても別に不思議じゃないけど。

 

「それじゃ海に入ってみようかな。」

 

私が浜辺でサンダルを脱ぐとざらざらした砂が、足の指の間をすりぬけていく感覚が心地よかった。

泳げるかどうかわからないのでそのままゆっくりと足を波打ち際へと進めていく。

初めて触れる海はひんやりとしていて、これが地球の七割を覆っていると思うと不思議でしょうがない。

 

「世界は広いなー。もっといろんな所に行けたらいいのに。」

 

などとさっき考えていた思いをなんとなく呟くとギレンさんが

 

「行きたい所があれば言ってみろ。可能な限り叶えてやろう。」

 

なんてギレンさんが言ってきた。思わず「本当に?」と聞き返す私に

 

「娘はわがままを言うものであり、父親とはそれを叶えるためにいるのだ。遠慮せず行きたい所があれば私に言うが良い。」

 

などと言ってくれ、とても嬉しくて仕方ない気分になった私が照れ隠しで浅瀬を駆け回っていたら岩につまずいて転んでしまい、しこたま海水を飲んでしまうのでした。



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23話 UC0075年3月

北欧 ルクセンブルク

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

今日は先日海に行った時に珍しくメイがじゃあヨーロッパも行ってみたい!とわがままを言ってくれたのでそのまま職権乱用してヨーロッパ視察に来ている。

 

…だがサスロに無理を言って視察に来て良かった。ハワイからアジア経由でヨーロッパまで来る間にしみじみと感じたのだがやはり地球の大地は広大すぎる。コロニー落としなどで大規模無差別殺戮でもしない限りとてもではないがジオン公国単独で全てを制圧するなど至難の業だろう。

 

やはりここは他のサイドを取り込むなどしてスペースノイドとして団結していく事も視野に入れなければならないな。

幸いプチモビやモビルワーカーなどの販売やGNCによる物流網の活発化により以前より他のサイドとの交流は大幅に増えている。

ここは交換留学等を活発化させてサイド間の親睦を深めるとともに、連邦の軍拡に伴うコロニーの負担増などをネタに他のサイドの市民を煽ったりして反連邦の勢力を増やせないか試してみるとするか。

 

うん?どうした?ララァ。何か用事か?

誰かがこっちに向かって来るだと?

そうか。インドでお前に会えただけでも地上に来た甲斐があったというものだな。

 

そういえばそろそろヨーロッパにくる名目に使わせてもらったゴップ中将との面会の時間だった。

精一杯地球連邦を褒め称えせいぜい無能を演じる事にしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

デン・バザーク

 

「ゴップ閣下、失礼致します。」

 

「うむ、ご苦労様バザーク少佐。頼んでおいた件かね?」

 

「はい。ジオン軍の軍備の現状についてご報告に伺いました。」

 

「うむ。先日ギレン・ザビと面会したのだが連中の現状がよくわからなくてな。報告を聞かせて貰おう。」

 

「はっ。」

 

ゴップ閣下に対しそう短く返事をすると私は調査結果をスクリーンに表示していく。

 

「先ずは現在ジオン軍が公式に主力と位置付けている艦艇の情報からになります。」

 

スクリーンに赤と緑二種類の艦艇が表示される。

 

「赤い方がチベ級航空戦艦、緑の方がパプア級ミサイル巡洋艦で69年頃に正式に竣工した艦艇になります。」

 

「うむ。だがどちらも我が軍のマゼラン級の敵ではないと聞いているが?」

 

「はい。チベ級については72年頃に近代化改修が施され主砲がメガ粒子砲に変更されましたがそれでも門数が少ない為さほどの脅威ではありません。むしろ脅威は別にあります。」

 

そしてまたスクリーンに赤い二種類の艦艇が表示される。

 

「これは?同じような色合いだがずいぶん形が違うようだが。」

 

「はい。左側の赤い方はグワジン級と呼ばれている連中の次期主力戦艦になります。300m級の船体と多数のメガ粒子砲を搭載しており、その火力はマゼランを上回るものと推測されます。」

 

「マゼラン級を超える火力とは大したものだな…。だが連中の国力では大した数を建造できないのではないか?我が軍ですらマゼラン級50隻を建造するだけでコロニー税を増税しあれだけ揉めたのだ。」

 

「はい。情報部の分析でもジオンの国力では建造できても数隻程度でどんなに多くても10隻を超えることはないだろうと判断しています。むしろ脅威と考えているのは右側のグワダン級とよばれている惑星間航行船になります。」

 

「惑星間航行船とはまた大きくでたな。」

 

「無補給でジオン本国とアステロイドベルトの往復を可能にした艦で全長700m近い巨艦です。」

 

「全長700mだと?!そんな艦の存在など聞いた事がないぞ!」

 

「竣工してすぐに木星航路に投入されたためほとんど情報が出てきていませんでした。この写真もたまたま出港に居合わせた船の乗組員が撮ったものです。」

 

「うむむ…マゼラン級で対抗可能なのか?」

 

「相手のデータが少なすぎるため正確な事は申せませんが仮にこの巨体にふさわしい火力を備えているとするとマゼラン級でも相手が難しいかも知れません。この情報を知った宇宙艦隊司令部からは対抗可能な新型艦の開発又は艦隊の増強が提言されています。」

 

「そう簡単にそれが出来れば苦労はせんよ。ジオン側に問い合わせはしたのか?」

 

「は…それが連邦軍が海賊に備えているのを見て感銘を受け我々も惑星間航行船に必要な自衛火器を搭載させた…と。」

 

「く…戯言を…。当面はその艦の情報収集に努めろ。新型艦の開発、艦隊の増強については必要に応じて議会と調整していく。他に懸念はあるか?」

 

次にジオン軍が量産しつつある戦闘車輌と宇宙戦闘機をスクリーンに出す。

 

「車輌の方についてはコロニー内の治安維持用という名目で連中が開発したマゼラタンクという戦車になります。ただ、こちらについては次期主力MBTであるガンタンクの敵ではないのでさほど問題はありません。」

 

「ウム。あれは値は張るが陸上戦艦にすら打撃を与えうる火力を持っているからな。」

 

「問題は此方の宇宙戦闘機セイバードップです。セイバーフィッシュを真似て開発した機体のようですが宇宙戦闘機としての性能はかなりのもののようです。」

 

「だが宇宙戦闘機など宇宙空間ではレーダー誘導ミサイルの良い餌食となり大した役に立つまい。故に我軍は宇宙空母の数を減らし戦艦や巡洋艦を増やす大艦巨砲主義に舵を切ったのだから。」

 

「確かにおっしゃるとおりですがそれでも暗礁宙域などの狭い空間では宇宙戦闘機も大きな脅威となりえます。」

 

「ふむ…それもそうか。多少は宇宙空母を増強する事も視野にいれるべきかもしれんな…。」

 

「後…これは未確認情報なのですが…ジオンはモビルスーツを兵器として転用しようとしているとの噂があります。」

 

「モビルスーツ?あの作業機械のか?」

 

「はい。暗礁宙域でモビルスーツに武装を施し戦闘をさせていたという未確認情報があります。」

 

「バカな。先日モビルスーツがコロニーの外壁修理をしている所を見たがあんな作業用機械が艦隊戦の役に立つハズがないではないか。宇宙戦闘機以上にミサイルの良い的になるに決まっている。」

 

「それはそうなのですが…。」

 

「まあ良い。当面はマゼラン級の脅威となりうる惑星間航行船とやらの情報収集に努めてくれ。」

 

「はっ。」

 

私としてはジオンがあれだけ早いスピードでモビルスーツを普及させているのは怪しい気がするのだがしょせん勘でしかないしな。さて、それでは惑星間航行船の情報収集に努めるとするか。




いつも誤字の修正をしてくださっている方ありがとうございます。しっかり読んでくれる人がいると思うととてもモチベーションになっています。

ふふふ… シャア、聞こえていたら、君の生まれの遅さを呪うがいい


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24話 UC0076年2月

サイド3 ジオ・マッド社研究所

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

遂に1年戦争の開始まで3年を切った。国内ではスペースノイドの独立を求める声が日々高まっているものの連邦がそれに応じる気配は微塵もない。むしろ治安維持を名目にパトロール艦を頻繁に航行させ示威行為を繰り返す有り様である。

 

我が軍でもそれに対抗して軍備の拡大を決定。UC0075年5月に量産に向けた最終テストをクリアしたYMS-06がMS-06 ザクⅡとして制式採用されMS-05から生産ラインを移行して本格的な量産態勢に入った。機体のOSデータをブラックボックス化するのに手間取っていたのだがメイが頑張ってくれてなんとか量産に間に合ったので良かった。

また、同年7月には今まで旅客船アルカナ級の建造に使っていた生産ラインを転用してムサイ級の建造が開始され急速な軍備の拡大が今まさに始まろうとしていた。

 

そんな中、ザクⅡの次に開発する機体について協議するためララァを連れてジオ・マッド社を訪れている。

 

「調子はどうだ?ミノフスキー博士。体調を崩していたと聞いたが。」

 

「ご心配をおかけして申し訳ありません。ギレン総帥。おかげさまでずいぶん良くなりました。」

 

変な研究者魂を出して色々悩んでいたみたいだけどそれなりに落ち着いたみたいで良かった。まあ監視は続けるけどね。

 

「ウム。それは良かった。博士の考案で追加した脚部装備追加システムのお陰でザクⅡの各形態における運用性能は大きく向上した。今後も頼りにさせて貰うぞ。」

 

「…はっ!お褒めに頂り光栄であります。」

 

お陰でバックパック換装システムに加えB型用の脚部追加スラスター、F型用のミサイルポッド等様々な装備をさせる事が可能となったザクⅡはジオンの絆でも大人気である。

 

「今日は連邦との開戦に備え開発を進めて欲しいものがあってな。」

 

「連邦と開戦とは穏やかでないですな…。一体どのようなものでしょう?」

 

そう言いながら博士が深刻そうな顔をする理由が連邦との開戦の話が出たからか、それとも俺から「アイデア」を聞く事についてなのかが気になるところだが構わず話を続けていく。

 

「ひとつは地上での運用に特化したモビルスーツの開発だ。ザクⅡは地上のあらゆる場所で運用可能な優れた機体だが、地上で不用な装備を抱えたまま戦闘するのは非効率だ。

故に空中、高機動、水中の3つの要素にそれぞれ対応した機体を開発して貰いたい。」

 

「それは…なかなかの難事ですな…。特にモビルスーツの形状は飛行には向きません。空中に適応させるのは流石に難しいかと思いますが…。」

 

「なに、モビルスーツに無理に飛行性能を付与しなくても良い。航空機を改良したサブフライトシステムに乗せることで飛行させ、モビルスーツにはそれと連携して空中戦闘を可能となる程度の飛行、滞空能力を付与すれば良い。」

 

「なるほど…。それならばザクをベースに徹底的に軽量化し、試作中のH型装備を装着させれば可能となるかも知れません。」

 

うん。頑張ってサンダーボルトのグフを造ってくれ。以前からフライトユニットは先行的に開発させていたからまあなんとかなるだろう。

 

「細部については全て博士に任せる。地上用高機動型機の開発については同じ高機動型機であるヅダを造り上げたツィマッド社のチームに任せておけば問題ないだろう。」

 

「確かに彼らなら実績もありますし安心して任せられますな。」

 

此方についてはまったく心配していない。出来上がってくるのがドムだろうがドワッジだろうがどれでも大好きで高性能な機体だから問題ない。

 

「水中戦に特化したモビルスーツについてはM型装備の開発で得られたデータを基にして既存の機体に拘らず開発を進めてくれ。特に水の抵抗は宇宙や空気の比ではない。それを軽減する為の工夫が色々と必要になってくるだろう。」

 

「はっ。それでは新しくチームをつくり広く意見をとりいれたいと思います。」

 

こちらも基礎研究自体は前から始めさせているので2年もあれば量産までこぎ着けれるだろう。モビルフォートレス、ゾックから出撃するハイゴッグとかとてもカッコよくね?

 

後は俺に対しての変な勘違いをなんとかしておきたいところだが…。

よしサイアスと同じ手でいこう。

 

「ウム。もうひとつについては…そうだな…博士はジオン・ズム・ダイクンの唱えたニュータイプ論についてはどう考える?」

 

「ニュータイプ論でありますか?私としては人類の革新と無限の可能性を謳った哲学的なものだと思っておりますが…。」

 

「大半の人にとってはそのようなものであろうな。だが私はそうではなくひとつの特殊能力のようなものとして実在するのではないかと考えている。」

 

「特殊能力…でありますか?」

 

俺の答えを予想だにしていなかったのだろう。ミノフスキー博士が戸惑いながら俺と同じ言葉を繰り返す。

 

「そうだ。博士は不思議に思った事はないか?技術者でもない私が何故ミノフスキー粒子やモビルスーツについて次々とアイデアを出す事ができるのかと。」

 

「!!、それは…確かにそう思った事は一度ならずございます…。」

 

「だろうな。今その答えを教えてやろう。私は限定的ではあるが未来を予知する事ができる。」

 

「まさかそんな!?…にわかに信じがたい話であります。」

 

嘘です。そんな便利な能力はありません。

 

「だろうな。私の予知によればそう遠くない未来に連邦の船がコロニーに激突し反連邦の動きはますます活性化していく事になるだろう。それがひとつの証明になるかもしれん。」

 

「そのような事件がこれからおきるとおっしゃるのですか…。」

 

まあよく考えれば未来の展望を知っているという点からいえばまああながち嘘という訳ではないかも知れないが。

 

「そうだ。私の出したアイデアの大半はその未来で実用化されていたものを博士達に伝えていたに過ぎない。まあ私の予知は制約が多く意図して未来を見れる訳でなければその全てが当たる訳でもないがな。」

 

「それであのように的確なアイデアを出し続ける事ができたというのですか…。」

 

うん。まあ的確かは分からないけど精一杯趣味に走らせて貰いました。

 

「そしてその未来の世界ではサイコミュというニュータイプが発する強い脳波を利用した技術が存在していた。

ミノフスキー通信とニュータイプの感応波を利用する事でミノフスキー粒子散布下でも遠距離での無線誘導攻撃を可能にしたり、思考するだけで機体や武装を稼働させる事が可能なシステムが存在していた。」

 

「まさかそのような事が可能だと!?」

 

「そうだ。そして今のジオンにおいてそれを可能な研究者は博士をおいて他にいないと私は確信している。」

 

本当は他にもフラナガン博士がいるのだがあいつに任せると人体実験ばかりしそうなのであんまり好きになれない。

なので博士、キュベレイ実用化の為に頑張ってサイコミュを開発してください!

 

「…私などにそれが可能でしょうか?」

 

「トレノフ・Y・ミノフスキー博士。貴方にこの言葉を送ろう。

学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる。

西暦の時代のとある賢人の残した言葉だが、博士。ミノフスキー粒子に秘められた新たなる可能性を知った貴方は研究者としてそれを知らないままでいられるのか?」

 

「…閣下も人が悪い。そのような事聞かずともおわかりでしょうに。

未知への挑戦を恐れずに、ひとつひとつ問題解決の為に経験を積み重ねる事こそ我ら研究者の本望。

私に可能かどうかはわかりませんが精一杯頑張らせて頂きます。」

 

そう言って、俺へと視線を向けるミノフスキー博士の目は理知的でありながら、どこか狂気を感じさせるものだった。なんかメチャメチャ気合い入っているけど…大丈夫だよね??

 

「ウム。期待している。では私からひとつ贈り物をさせてもらおう。ララァ。来なさい。」

 

「はい。総帥。」

 

「この少女は?」

 

「彼女は私が知る限りジオンで最高の力を持ったニュータイプだ。故にニュータイプ研究を進める上で彼女は最高の協力者となるだろう。ただ、彼女と彼女の家族は私の保護下にある。苦痛や危険を伴う人体実験を彼女にする事は私が禁止する。」

 

本当だぞ?ララァに何かあったら一発で首だからね?

人体実験がしたかったら死刑囚でも使ってくれ。そっちなら別に好きに使っていいから。

まあララァはうちに住んでるから何かあればすぐにわかるだろう。

 

「かしこまりました。閣下のご期待に応えられるよう努めてまいります。」

 

「ウム。」

 

その会話を最後にして、2人の会談は終わりを告げた。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ララァ・スン

 

「総帥。」

 

「何だ?」

 

「総帥は嘘つきですね。」

 

「はは…やはりララァは誤魔化せないか。」

 

「はい。総帥からは不思議な感じはしますが特別な力のようなものを感じた事はありません。」

 

私がインドでカジノ荒らしの手伝いをしていた時に向かったホテルのカジノをたまたま訪れていたのがこの人だった。

私を見るなり初対面の筈の私の名前を呼び、すぐに一緒にいたカジノ荒らしから私達家族を救い出してくれた不思議な人。

 

「そうだ。確かに私にはニュータイプのような特別な力はない。だがそのような力が存在している事は確信している。そしてその力をララァが持っているということもな。」

 

そう言いながら何故か私の頭に手をおくと昔母がしてくれたようにゆっくりと私の頭を撫でてくれた。髪と手が擦れあっているだけなのに何故かとても心地よかった。

 

「ミノフスキー博士には釘をさしておいたが何か嫌な事をされそうになったら全て拒否して構わないからな。」

 

「はい。総帥。」

 

だからという訳ではないけど彼が私を必要とするなら精一杯やってみよう。貧困の中から私と私の家族を救い出してくれたこの人への恩に報いるために。



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25話 UC0076年7月

サイド3 ギレン邸

 

「遂に来たな。」

 

300隻を超える連邦軍の大艦隊を前にギレンは1人呟いた。連邦との戦力差は理解しているつもりだが、こうして見るとその心理的な圧迫感は思っていたより遥かに大きいものだった。

 

「しかし連中予想より動きが遅いな。何故だと思う?ハマーン。」

 

「ミノフスキー粒子による通信障害の影響が大きいのでしょう。あれほどの大艦隊となれば陣形を維持したまま移動するのもかなりの手間になるでしょうから。」

 

「確かにそうだな。お陰で連中はまだ我々の存在に気がついていないようだ。」

 

「ガルマ様が率いるジオン連合艦隊が正面に展開しております。暗礁宙域に潜んでいる我々の存在に気がつかなくても、仕方無いでしょう。」

 

「うむ。そうだな。だが敵の偵察機に見つからないよう警戒を厳とせよ。」

 

そう命じるとモニターに映る敵影に意識を集中する。すると、連邦軍の動きを見張っていたハマーンから切迫した声で報告が上がった。

 

「連邦の艦載機が発艦を開始しました!」

 

「そうか、規模はどのくらいだ?」

 

「確認できるだけで約600機が艦隊と共にジオン連合艦隊に向かっている模様です!」

 

「そうか、どうやら連中本気で正面から我々とやり合うつもりのようだな。ガルマに焦る事なく当初の作戦どおりに動くように伝えろ。」

 

「かしこまりました。」

 

連邦艦隊とジオン連合艦隊は開戦当初、正面からぶつかり合った。300隻を超える戦闘艦艇を有する連邦艦隊と100隻に満たないジオン連合艦隊とでは数の差が大きすぎるため何も知らない人が見ればあっという間にジオン連合艦隊が駆逐されてしまうように見えた事だろう。

 

連邦艦隊と接敵したジオン連合艦隊はモビルスーツを射出しながら後退し、連邦と距離をとりながら艦砲を撃ち合う長距離砲撃戦を展開しつつあった。

 

戦闘が開始されて30分、ドズル率いる連邦艦隊は後退を続けるジオン連合艦隊に誘いこまれ、ギレン率いる部隊が潜伏する暗礁宙域の前に差し掛かろうとしていた。

 

「何故だ?これだけ叩いているというのにあれほど整然と後退できるとは…。いかん。これは罠だ!全艦誘いに乗るな!」

 

だが、ドズルのその指示が徹底される事は無かった。後退し続けるジオン連合艦隊に触発された何人かの艦長が勝手に暴走し全力で追撃を始めてしまったのだ。

 

ただでさえミノフスキー粒子の影響下でデータリンクに支障をきたしていた連邦艦隊は前進と後退、相反する二つの動きをする僚艦に混乱し大きく艦列を乱した。

 

「今だ。連中は混乱している。この機を逃がさず一気に決めるぞ。全砲門開け。モビルスーツ隊射出準備!」

 

僅か10隻程度の艦隊であったが連邦艦隊側面の暗礁宙域から突如として叩きつけられたミサイルとメガ粒子砲の雨は連邦艦隊の防空網に穴を空けるには十分な威力を持っていた。

 

ギレン率いる艦隊は数こそ10隻と少数であったが搭載可能数を大きく超える数のモビルスーツを搭載しておりギレンの命を受けた機体が次々と射出されていった。

 

「先鋒は任せたぞ。ハマーン。」

 

「はいっ!それでは行ってまいります。」

 

射出されたギレン隊のモビルスーツによりジオン連合艦隊との交戦で大損害を受け僅かに残っていた連邦の艦載機はあっという間に駆逐されていく。

 

だが、艦載機を壊滅させた彼らを待ち受けていたのは連邦艦艇から放たれる視界を埋め尽くすような対空砲火であった。

 

「なんて対空砲火なんだ。これじゃとても近づけない!」

 

「懐に飛びこんでしまえば戦艦は何も出来ません。恐れずに私に続いて!」

 

そう怯む仲間を叱咤すると白を基調にピンクのラインで塗装されたヅダは手に持った大型対艦ライフルを連射しながら連邦艦隊の隙間を蝶のように舞い踊り、瞬く間に三隻のサラミスを宇宙の藻屑に変えていく。

 

これに触発されたのか次々とジオンのモビルスーツ隊が連邦の艦艇に襲いかかり始める。中には対空砲火に捕まり大破する機体もあったが、多くの機体は次々と対空砲火を潜り抜けて艦に取り付き、連邦艦隊に大損害を与えていった。

 

「これで…八隻め!」

 

白とピンクに塗装されたヅダはマゼラン級戦艦の艦橋に取り付くと対艦ライフルでまずブリッジを潰す。次に艦を蹴った反動で距離をとりつつ対艦ライフルを艦の砲塔に次々と叩き込むと、止めの一撃を機関部に撃ちこみ離脱した。

するとこのマゼランはハマーンが離脱するのを待っていたかのようにヅダが離脱した直後に誘爆を繰り返し爆発し四散した。

 

「!あれは連邦の旗艦アナンケ!このままあれを沈める事が出来れば…!」

 

連邦の旗艦を見つけハマーンがそう思った直後、MS用OSが警報を鳴らす。

 

「??しまった!弾薬の残りが後三発!?」

 

初めての大規模戦闘に緊張していたのだろう。敵地のど真ん中での弾切れという失敗に思わず動きを止めてしまったハマーンの機体に側にいたサラミスがメガ粒子砲と対空砲を乱射しながら突っ込んでくる。

 

「弾薬の残りは常に意識せねばならんぞ。ハマーン。」

 

そう呟くとハマーンに向かって襲いかかる連邦のサラミスに向かい、擦れ違う一瞬でブリッジと機関部に対艦ライフルを叩き込み無力化する。

その動きはハマーンほどではないものの、経験豊かなベテランが見せるおもいきりの良い動きだった。

 

「ほら予備の弾倉だ。」

 

「ありがとうございます!ギレン閣下!」

 

「敵軍が統率を取り戻しつつある。そうなる前に旗艦を片付けるぞ。」

 

「はい!」

 

ギレンの操縦する機体が戦場に現れると艦隊の士気は一気に上がった。総帥が自らモビルスーツを駆り、危険を省みず最前線に立っているというだけで兵士たちのやる気も上がるというものだ。

 

黒をベースに金色の装飾を施されたヅダと白にピンクのラインが入ったヅダの二機が土星エンジンを全開にして旗艦アナンケに向け宇宙を切り裂いていく。

 

ドズルの乗ったアナンケが沈み連邦艦隊が撤退を開始したのはそれから僅か数分後の事であった…。

 

 

 

やあ…諸君。前書きがちょっと長くなったな。ギレン・ザビである。

 

今日はジオンの絆を使い俺とガルマ率いるジオン軍とドズル率いる連邦軍で大規模艦隊戦のシミュレーションを行っていた。

 

ジオンの絆は最新型のスーパーコンピューターを使うことで10000人単位での同時接続が可能となっており、様々な対連邦戦術が検討されていた。

 

「いやぁ流石は兄貴とガルマだ!三倍近い戦力差があるのにこうも簡単にやられるとは思わなかった!」

 

「ドズル兄さんも罠に気がついたのは流石です。ただその後の混乱からの建て直しに時間をとられ過ぎましたね。」

 

「おうそうだな。だがガルマよ。あれはギレンの兄貴が防空網に開いた穴をえぐり続けていたからだぞ?それにヅダの動きは船で相手をするには早すぎる。」

 

「ふん。実戦では今日のように直率する事などできんだろうがな。それに勝ったと言ってもジオン連合艦隊の損害が大きすぎる。艦隊の三割近い数を失ってしまっては勝利とは言えんよ。」

 

「三倍の艦隊と正面から撃ち合いをすれば仕方ないだろう兄貴。待ち伏せするにしても囮のひとつもなければ暗礁宙域に連邦が自分から近づいていくとは思えん。」

 

「確かにな。故に私にいくつか策がある。今後はそれを検討していこうと思う。」

 

「わかりました。楽しみにしています。兄さん。」

 

「ウム。ガルマも士官学校で頑張るのはいいが無茶はしないようにな。ドズル。ガルマを頼むぞ。」

 

「おう!それじゃあな兄貴。」

 

そう言うとジオンの絆に表示されていたドズルとガルマのウインドウが消え部屋に静けさが戻ってきた。

 

いやぁやっぱり大規模戦闘は燃えるね。

 

だが原作に近い形でルウム戦役をシミュレーションしてみたのだが結果はやはりジオンの辛勝だった。

やはり一度でも正面から撃ち合いをしてしまえば連邦艦隊の火力は圧倒的だ。損害は避けられない。

かといって遠方からモビルスーツ隊を出すだけでは近づく前に多くの機体がやられてしまうだけだろう。やはりあの手でいくしかないか。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ハマーン・カーン

 

「ふう…疲れた…。」

 

ヘルメットを脱ぎノーマルスーツの胸元を緩め大きく深呼吸する。

 

初めての大規模戦闘に緊張していたのかはたまた媒体ごと動かす事である程度Gの再現が可能になったジオンの絆Gに慣れていないせいなのかは解らないけど今日は大きなミスをしてしまった。

まさか敵のど真ん中で弾切れなんて初歩的なミスをしてしまうなんて…。

 

撃破スコアとしてはアナンケを含めたマゼラン級戦艦4隻、サラミス級巡洋艦8隻の合計12隻で今回の戦いのMVPだったけど閣下からは

 

「貴様が生きて帰ってこれなければどれだけ戦果をあげても意味がない。その事をよく覚えておけ。」

 

とお叱りのお言葉を頂いてしまった。

 

…でも私が弾切れでピンチの時に颯爽と現れた閣下はなんか白馬の王子様みたいでちょっとカッコよかった。

初めて会った時の事を思い出すと今でも顔から火が出そうな位恥ずかしくなってしまうけど、あのとき私の事を好みと言ってくださったのは今もまだ変わらないのかなぁ…?

 

そんな事を考えながらボーッとしているとジオンの絆にララァさんから対戦の申し込みが入った。

先日閣下が地球で「愛人」という名目で家族ごと保護された少女だ。

 

実際はその特異な才能を見抜かれたようで殆ど教えていないのにモビルスーツを手足のように操縦できたり、もの凄く勘がよかったりするのをその先見の明で見出だされたのだろう。この前なんて神経衰弱をしたらいきなり半分位を当ててしまい皆絶句していた。

 

最近はモビルスーツ操縦が面白いみたいなのだが閣下に

 

「貴様らニュータイプにはついていけん。ハマーンに相手になって貰え。」

 

と言われたらしくこうして頻繁に対戦の申込みがくるようになった。

…と言うかニュータイプって何??

 

…まあいいか。ここはモビルスーツ操縦の先輩らしくちょっと相手をしてあげるとしよう。




CBさんいつも誤字等の修正ありがとうございます。


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26話 UC0077年2月

サイド3 ジオ・マッド社研究所

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

昨年から始まったジオン軍の軍備増強の流れは加速の一途をたどっている。

 

昨年4月にはそれまでア・バオア・クーとアクシズの2ヶ所だったMS-06の生産拠点をサイド3とソロモンにも拡大していた。

ただ、ここまで生産規模を拡大すると情報の秘匿が困難になってくるため動力系をバッテリー方式に変更して外装をザクⅡに似せたザクⅠを民間向けに販売したりして情報撹乱をおこなったりしている。

まあ後で生産ラインを転用できるし部品の多くはザクⅡにも使えるからな。

まあMS用OSを搭載していないし色々とリミッターをかけたりしてあるので使いにくくて仕方ないと思うが。

 

6月にはザンジバル級機動巡洋艦の1番艦が就役した。これには史実と違いミノフスキークラフトを搭載しているので地上での運用性が大幅に向上している。

 

また、昨年末から開発を始めた機体についてはグフは試作機がすでに完成し地球上で運用テスト中。

ドムは生産性をできるだけ高めるためザクⅡと可能な限り部品の共通化を図った影響で開発が遅れていたもののなんとか設計が完了し現在試作機を製造中。

一番開発が難航すると俺が思っていた水中用モビルスーツについては旧MIP社のメンバーを中心にザク系ではないモビルスーツを一から造ってみたい変人…じゃなかった技術者が集まり昼夜を問わず開発に励んだ結果まもなく試作機がロールアウトする予定である。

…正直ドムより先にハイゴッグの試作機が完成するとは思わなかった。

 

さて今日は先日の演習で必要性を感じた兵器の開発を依頼するためギニアスの元を訪れていた。

 

「久しぶりだな。ギニアス。地上用MAを開発していると聞いていたが開発状況はどうなっている?」

 

「は。アプサラスは現在試作2号機が地上で運用テスト中です。」

 

ああ、陸ガンのバルカンで暴走して最後は自爆させられたやつね。アプサラスシリーズは攻撃力は十分なんだが耐久力にちょっと難があるよなぁ。

 

「そうか。私が色々と開発を頼んだせいで時間をとらせてしまいすまなかったな。」

 

「とんでもございません。参考となった研究も数多くあり、特に先日開発に参加したモビルフォートレス ゾックの開発の際は頭部の武装に私が試作していた拡散メガ粒子砲が対空兵装として採用され大変興味深い経験となりました。」

 

て言うか原作でゾック開発したやつ頭のフォノンメーザー砲どうやって使う気だったの?

 

「それは良かった。ではまたひとつ頼み事をして良いか?」

 

「何なりとお申し付けください。ギレン閣下。」

 

「ウム。連邦艦隊との決戦に備え連邦軍艦隊の射程外から攻撃可能な核融合プラズマビーム砲を造って欲しくてな。」

 

「核融合プラズマビーム砲…でありますか?」

 

うん。君の好きなメガ粒子砲じゃあないから間違えないでね。

 

「そうだ。我々の仮想敵は言うまでもなく連邦軍である。先日連邦艦隊との決戦に備え戦闘シミュレーションを行ったのだがマゼラン級の長距離砲撃に悩まされてな。

それに対抗する手段としてマゼランの射程外から一撃でマゼランを沈めうる威力をもつ核融合プラズマビーム砲を造って欲しくてな。無論数が揃わなければ話にならないので生産性や運用コストに重点をおいて開発してくれると助かる。」

 

「は…しかし閣下。それほどの威力を出すためにはどうしても大出力のジェネレーターが必要となってくるためどうしてもコストはかかってしまうと思いますが…。」

 

「ああ、その事か。エネルギー供給については他の艦船からおこなうのでジェネレーターは搭載しなくてよい。」

 

「は?」

 

別に艦艇にもジェネレーターついてるんだからエネルギー源が必要な時はそっちから貰えばいいよねw

 

「ついでにアウトレンジ攻撃に使うので装甲は不用だし砲の運搬も他の艦に牽引させるので移動については照準を合わせる為の微調整ができるくらいでいい。」

 

「…。」

 

いっそのこと強度も削って決戦の間だけ使う使い捨てにしても良いかもしれない。

 

「速射性については必要だが冷却の問題もあるだろうから複数の砲身を束ねて使うのが良いかもしれんな。後は…」

 

ガトリングといい多砲身とか燃えるよね。

 

「射程や威力よりも生産性や運用コストを重視せよ。でありましょうか?」

 

「ほぅ。その通りだ。流石だなギニアス。相手は物量に勝る連邦軍。まずは此方も数を揃える事を第一に考えよ。」

 

「は!」

 

戦いは数だよ!兄貴!…って兄貴俺じゃねえか。

でもビグザムって絶対リックドム10機よりも戦果をあげたよね?

あ、そうだ。せっかくだからビグザムも造っておいて貰おう。

コレクションに一機くらいは欲しい。

 

「後もうひとつ、これはプラズマビーム砲が完成してからでかまわないのだが、多数のメガ粒子砲と防御用のIフィールド・ジェネレーターを内蔵したMAを開発して欲しくてな。」

 

「??。それは…エース用の機体という事でしょうか?」

 

「ウム。…。」

 

どうしよう…。ドズルじゃないんだからビグザム量産は流石に悪手だとわかる。あ、そうだ。

 

「ギレン閣下?」

 

「そうだな。お前には真実を話しておこう。戦場で私が乗るための機体だ。」

 

「何ですと!?」

 

「総帥自ら戦場に行くなどあるべきでない事は承知している。

だが、それでも私が自ら戦場に立つことで兵達の士気が上がり我らジオンに勝利が訪れるのならば私は喜んで戦場に赴くだろう。

故にどうせ戦場に赴くなら私が最も信頼する技術者の造った機体に乗っていきたいのだ。」

 

俺専用機という事にしておけば何機も造られたりはしないだろう。

 

「…私の事を最も信頼する技術者だと?」

 

「おかしな事を聞く。私の出した難題にお前は私の期待以上の成果を出してきた。そんなお前を信頼せずに一体誰を信頼するというのだ。」

 

「全身全霊をかけてギレン総帥に相応しい機体を造り上げてご覧にいれます。ジーク・ギレン!」

 

「ウム。期待している。ああそうだ。稼働時間に問題を抱えていたりあまり鈍重すぎる機体は止めてくれよ。後、兵装のコントロール等に問題がありそうならミノフスキー博士に相談してみてくれ。」

 

万が一本当に戦場で乗る事になったら困るので流石にわかっていて避けれる問題は避けておかないとね。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ギニアス・サハリン

 

技術者にとっての喜びとは何だろう?

 

想定外の苦労を乗り越えた瞬間だろうか?

自分の手掛けたものが多くの人に使われているのを見たときだろうか?

 

それは人それぞれ違うものであり以前の私にとっての喜びとは失ったサハリン家の栄光を取り戻す事であった。

 

私が人生の目標としていたその命題はある日突然現れた一人の人物によってあっけなく叶ってしまう。

ジオン公国総帥ギレン・ザビ 我らジオン公国において今や最も権力をもつ人物である。

そんな人物に妹であるアイナ共々見出だされた事により我がサハリン家はすでに過去の繁栄を取り戻していた。

 

こうして過去の繁栄を取り戻してみるとわかる。自分が本当に取り戻したかったのは「繁栄」などというものではなく、自分が尊敬している人から自分への信頼であったという事が。

 

そして今の自分は尊敬する人物から自身の命を預ける機体の製作を依頼するに足る人物という信頼を既に手に入れているのだ。

 

ならばその信頼に応えよう。閣下の御身を預けるに足りる機体を私の持てる全てをかけて造り上げる事で。



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27話 UC0077年8月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

大変な事になった…主に連邦軍が。

 

先日連邦軍とガルマ率いる士官学校生の模擬戦が行われ、劣勢であるハズの士官学校生の勝利に終わったとの報告を受けたと思ったら今度は連邦軍のサラミスが管制無視によりアルカナ級と衝突事故を起こした上にコロニーの農業区画に激突してしまうという大惨事が発生した。

しかもその時農業区画には俺の発案により始めた他のサイドとの交換留学生が多くいたものだからさあ大変。ジオンのみならず全てのサイドで反連邦運動が頻発し連邦軍はその鎮圧に奔走する事態に陥っている。

 

いやぁ偶然って怖いですね。

 

特にズム・シティではこの身勝手な行動から起きた事故により暴動に発展。

暴動を鎮圧にきた連邦軍部隊に市民がプチモビやモビルワーカーで襲いかかる大惨事になっている…連邦軍が。

 

モビルワーカーは作業用なので武装はしてないものの非常に頑丈に作ってあるから自動小銃なんかじゃ歯が立たないし、頼みの61式戦車やガンタンクもプチモビの群れに襲われレーザートーチでハッチを焼き切られたあげく車輛を奪われたりしている。

しょせん駐屯部隊で数が少ないのと連邦軍も相手が市民で全力で攻撃する訳にはいかなかったからだろうが…。

作業効率をあげるために作業機械を少し普及させすぎたか?

 

…まあそれは良い。問題はガルマお前だ。

 

「聞いてらっしゃるのですか!兄上!」

 

勿論聞いているよ!

暁の蜂起が起きるのかと思ってドズルに連絡した矢先にまさかガルマが直通回線で連絡してきて、士官学校の学生でガーディアンバンチの連邦軍を制圧するから支援して欲しい!などと正面から俺を説得してくるとは思っていなかったから混乱しているだけだよ!

て言うかドズル、てめえガルマに説得されて後はよろしく頼む!兄貴!とか言っているんじゃねえ!

戦略や政略について色々と話していた影響かもしれないがガルマの成長が嬉しい半面対応に困る。

さて…どうしたものかな…。

 

連邦軍と開戦を避けるのなら暁の蜂起は何としても避けるべきなのだが、どうせ開戦が避けられない現在の状況ならば国民の戦意高揚効果は極めて大きいし正規軍ならともかく少数の士官学校生相手なら連邦側もそれを理由に開戦まで持っていく事はできないだろう。

 

「勿論聞こえているぞ。ガルマ。貴様の提案について少し考えていただけだ。確かに士官学校生が蜂起すれば油断しきっている連邦軍の駐屯部隊など敵ではないだろう。だが仮に我ら正規軍が影ながら支援したとしてもそれでも少なくない数の士官学校生が命を落とす事になるだろう。貴様はその責任をとる事ができるのか?」

 

「死んだものに対して私がどのように責任をとれるのかはわかりません。ですが死んだ者とともに掲げた道を曲げる事なく進み続ける事を私なりの責任の取り方としたいです。」

 

…。どうやらキャスバルにのせられて…とかではなさそうだな。

 

「…。良いだろう。ガルマ。好きにやってみろ。

ドズル!ランバ・ラルを連邦駐屯地に潜伏させ現地の偵察と重要施設への爆弾設置を行わせろ。

ガルマ!貴様は自走重迫撃砲隊を率いて支援と全体の指揮を担当しろ。自走重迫撃砲は教官連中も動員して可能な限り数を揃えるように。

時限爆弾が爆発すると同時に自走重迫撃砲隊による支援砲撃を開始、同時に8輪装甲車とランドムーバー隊を突入させて駐屯軍司令部を制圧させろ。

突入部隊の指揮はドズル、貴様がとれ。ただし車輛から外に出て正規軍が参加した証拠を残すようなヘマはするなよ。

また、ランバ・ラルの偵察で警備が厳重な場合は作戦を爆弾テロという形に切り替える。

我々の目的は虐殺ではない。捕虜の虐待、不必要な殺戮は絶対におこなわないよう徹底するように。」

 

「おう!任せてくれ!兄貴!」

 

「ウム。ガルマ!立派なザビ家の男になったな。貴様はそのまま正道を進むが良い。ただ、自ら先頭に立って突撃していくような軽はずみな真似はするなよ。」

 

「…。ありがとうございます。兄さん!」

 

「ではな。」

 

そう言って通信を切ると今後の対応を協議するためサスロに連絡をいれるのだった…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ガルマ・ザビ

 

「隣の駐屯地の連邦部隊が翌朝ズム・シティに向けて出発するですって!?」

 

「ああ。その通りだ。ガルマ。先に出撃した部隊が住民相手に苦戦しているためその増援として向かう気らしい。」

 

「そんな…。ジオン軍は一体何をしているんですか!ドズル兄さん!」

 

「正規軍が動けばそれは戦争の引き金になってしまう。戦力の整っていない現時点でそれは自殺行為であり故にジオン軍で阻止する事はできないのだ。ガルマよ。」

 

歯を食い縛りながらドズル兄さんがそんな話をしてくる。

その話を聞きながら頭で何か自分にできる事がないか必死に考えていると以前ギレン兄さんに聞いたとある質問が頭の中をよぎった。

 

ん?今何をしているのかだと?これはな、他のサイドの反体制派に人や物資の支援を指示しているところだ。

今我等が正面から連邦軍と戦っても勝機はない。

故に我等以外に連邦と敵対している人を支援して代わりに連邦軍と戦って貰うのだよ。

 

つまり、今正規軍が戦争になるので動けないなら、まだ正規軍ではない我々士官学校生が代わりに連邦軍と戦えばいい!

 

「だからお前も歯痒いだろうが今は堪え忍び…。」

 

「ドズル兄さん!」

 

「な…なんだ?ガルマよ。」

 

突然話の途中に私が大声を出したのに驚いているドズル兄さんに自分の考えを話す。

 

「確かに士官学校生ならまだ正規の軍人ではないので外交的な影響は小さいだろうが数が違うぞ?連邦軍は2000人近いのに士官学校生は僅か200人程度しかいない。」

 

「戦場で正面から戦うのならともかく、今は自軍の駐屯地にいて油断しているはずです。先日演習でおこなった作戦のようにうまく奇襲をかければ十分に勝機はあります。」

 

「しかしな…、」

 

「それにドズル兄さん!数で負けているから戦えないというなら我等ジオンが連邦と戦える日は何時までたってもこないでしょう!」

 

「…!!。わかった。お前が士官学校生を取り纏め全員の総意をとりつけろ。その上でギレンの兄貴に相談して了解を貰えたら進める。これ以上は退くことはできん。どうだ?」

 

「わかりました!」

 

士官学校生の説得はともかく、ギレン兄さんを上手く説得できる自信はないけど今自分がジオンの為にできる事があるなら精一杯やってみよう。僕もザビ家の男なのだから。



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28話 UC0078年2月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

毎年繰り返していたこの挨拶もこれが最後と思うと感慨深いものがある。

暁の蜂起以来連邦との関係は悪化の一途をたどっており、このまま進むと来年の今頃には連邦と開戦していてこんな呑気な挨拶はできないだろうからね。

幸いルウムを除いた各サイドでは反連邦の動きがだいぶ活発化してきており、展開次第では味方に引き入れる事も可能な情勢になりつつあった。

 

さて、恒例の兵器開発である。昨年ギニアスに開発を依頼した核融合プラズマビーム砲については大型で大出力のジェネレーターによるエネルギー供給を必要とするものの高い速射性をもつ「要塞砲 バハムート」と、小型でムサイの下に曳航して運用する使い捨て方式の「艦隊決戦砲 ヨルムンガルド」の二種類が完成し、現在連邦との決戦に備えてヨルムンガルドの量産を進めている。

 

また、開発の完了した地球侵攻作戦用の機体については小規模ではあるがア・バオア・クーで量産を開始し、その中でも水陸両用機についてはアナハイムの協力を得て秘密裏にキリスィマスィ島に運搬し、そこを拠点に地球侵行作戦に向けたデータ収集をしているところである。

…と言うかモビルフォートレス、ゾックをよく地上に運べたね?

そういえば、この前ゾックを作ったチームがモビルフォートレス、ヒルドルブの企画書を持ってきたが仮に完成した後どうやって地上に運ぶ気なんだろうか?

まあ無能とは程遠い人達なのでちゃんと運搬手段は考えているのだろうけど。

 

まあ問題はそれよりもビグザムだ!

ギニアスにビグザムの開発を依頼したと思っていたが気がついたらノイエ・ジールになっていた。

まだ試作中だし形が微妙に違う部分も多いのだがこのジオンの国章のような独特の形状は間違いない。

ギニアス曰くジオンのシンボルである閣下に相応しい形にしたという事であった。

因みに宇宙専用機なのかと思っていたらアプサラスの技術を流用した地上用ユニットを下半身に装着する事で飛行する事も可能になるらしい。

ノイエ・アッザムかよおい。

 

ただ、ジェネレーターの小型化やミノフスキー博士が開発中のサイコミュの小型化に難航しており、後1年で機体が完成するか微妙なところらしい。

 

…て言うかサイコミュ搭載するの?!

 

そう思い思わず確認したところ、兵装関連、特にアプサラスⅢ用に開発していたメガ粒子砲を小型化した腹部メガ・カノン砲の拡散モードの照準や多数の兵装の同時使用の為にどうしても必要らしい。

 

とりあえずサイコミュなんて動かせる自信がないのでサイコミュを搭載するなら複座にして貰うようにお願いしておいた。

乗るときはハマーンかララァに後ろに座って貰う事にしよう。

 

さて、アクシズが地球に向けて出発し、開戦に向けた準備も後ひとつを残すのみとなった。

詳しい描写をすると一瞬でバレるので控えておくが、Zガンダムからνガンダムまでどれにも出てきて超低コストのわりに効果抜群なアレである。

まあ概念さえ理解してしまえば開発失敗するはずがないのでこの話については省略する事にしよう。

それよりもノイエ・ジールの開発でビーム兵器に関する技術がだいぶ進歩したのでゲルググの開発に向けた基礎研究を進めて貰おうと思う。まあゲルググの完成は一年戦争開始後になるとは思うが。

 

さてそれでは連邦軍の現状について報告を聞くとするか。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

レビル&エルラン

 

「それでは将軍、ジオン軍についてご報告する前に我が軍の現状について改めてご説明させて頂きます。」

 

「うむ。聞かせて貰おうか。」

 

「将軍もご存じの通り現在我が軍はマゼラン級戦艦5隻、サラミス級巡洋艦30隻、コロンブス級空母5隻、レパント級ミサイルフリゲート艦20隻の60隻で1個艦隊を構成しております。」

 

「70年代軍備増強計画に基づいて編成された宇宙軍の主力だな。」

 

「はい将軍。70年代初頭のジオン軍が相手であれば1個艦隊で互角に戦える程の戦力を有しており、我々がいるこのルナツーに6個艦隊が、ジャブローに緊急展開用の2個艦隊が駐留しています。」

 

「その後のジオンの軍備増強を見ると後2個艦隊は欲しかった所なのだがな。」

 

「無茶を仰らないでください将軍。今でもこれらの艦をコロニー税で建造した事でコロニーの住民から叩かれているのですから。」

 

「判っている。だが近年のジオンの軍拡を見るとどうしてもな。続けてくれ。」

 

「また、これらの他にサイド3を除いた各サイド及びグラナダ、フォン・ブラウンに駐留艦隊を配置しており、これらはマゼラン級戦艦2隻、サラミス級巡洋艦10隻、コロンブス級空母3隻、レパント級ミサイルフリゲート艦15隻の合計30隻で半個艦隊を構成しています。

他にもサラミス級とレパント級で構成されたパトロール艦隊が複数ありますが10隻を超える大規模な艦隊は以上になります。」

 

「レパント級ミサイルフリゲートの割合が随分増えたな?」

 

「はい将軍。小型艦で運用コストが安い点とジオン軍がセイバードップやザクⅡ等の宇宙機を増強しているのに対抗してこうなりました。」

 

「セイバードップは以前に報告を受けたがザクは先日からルナツーの拡張工事に使用している作業用宇宙機ではなかったか?」

 

「その通りです。どうやらジオンの連中は戦力の不足を数で補おうと考えているようでザクを武装させて運用している姿が各地で目撃されています。」

 

「愚かな…。多少数がいる位で我が軍のLFCSDS(大規模艦隊統制防宙システム)を突破する事など不可能だというのに。」

 

「全くです。これの他にも急造の大口径砲を量産して砲艦として運用しようとしているとの情報もあります。」

 

「わからんな。そんなものではろくに回避運動もできず艦砲射撃の的にしかならないだろうに。」

 

「はい。当所参謀本部もジオン軍の欺瞞工作を疑ったのですが情報部により間違いなく量産されている事が確認されました。現在は砲撃戦の際の補助戦力として運用を考えているのではないかとの分析になっています。」

 

「そうか…。連中の宇宙艦隊はどうなっている?確かチベとパプワだったか?」

 

「現在はそれらに加えグワダン級大型戦艦、グワジン級戦艦、ムサイ級軽巡洋艦等が確認されています。」

 

「グワダン級か…。例のマゼラン級を超える戦艦だな。」

 

「はい。我が軍でもこれに対抗するためのバーミンガム級の建造予算がやっと議会で承認されました。ただ、相手が一隻しか確認されていないため、マゼラン級を置き換えるのではなく、各艦隊の旗艦をバーミンガム級にする事で決着しました。」

 

「やむを得んな。ムサイ級は確か郵便船の改造艦だったか?」

 

「はい。GNCで使用していた宇宙貨客船アルカナクラスを転用して急造しています。現時点で60隻近い数の建造が確認されています。」

 

「60隻だと?!」

 

「はい将軍。ですがムサイ級は元が宇宙貨客船でかつザクの母艦も兼ねているため耐久性にかなり疑問が残ります。砲撃戦で我が軍の敵ではないと思われますが…。」

 

「とは言え数の力は馬鹿にはできんよ。急造といってもメガ粒子砲は搭載しているのだろう?」

 

「それは…。はい。連装メガ粒子砲を3基搭載しております。」

 

「それはなかなかの火力だな。まあ同数であれば我が軍のマゼランやサラミスの優位は揺るがないだろうが油断はできんな。」

 

「おっしゃる通りです。」

 

「よくわかった。引き続き情報収集に励んでくれ。」

 

「はっ!そういえば将軍。先日ルナツーゴルフ場がオープンしたのですがよろしければ今度ご一緒しませんか?」

 

「エルラン!今はそのような事に時間を使っている場合ではない!情勢は決して油断できる状況ではないぞ。」

 

「申し訳ありませんでした!レビル将軍!」

 

「頼むぞ。エルラン。」

 

「はっ!それでは失礼致します。」



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29話 UC0078年3月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

先日連邦内部の内通者から得た連邦軍の現状についてブリーフィングを受けたが相変わらず圧倒的な物量である。

 

ルナツーとジャブローに駐留している主力艦隊だけで500隻近く、各サイドの駐留艦隊やパトロール艦隊を含めれば700隻を越えるとか物量チートも良いところだ。

我が軍の戦闘艦艇は新旧あわせても140隻に満たないというのに。

 

現在完成している主な艦はグワダン級大型戦艦1隻、グワジン級戦艦6隻、ドロス級戦略空母2隻、チベ級重巡洋艦8隻、ザンジバル級機動巡洋艦14隻、ムサイ級軽巡洋艦108隻の合計139隻でしかない。

地球侵攻作戦の要となるザンジバル級と宇宙艦隊の主力となるムサイ級は現在も建造を進めているのでもう少し増えると思うがそれでも後30隻増えれば良いところだろう。

 

そして今はこれら宇宙艦隊を誰がどのように管理するかで絶賛内輪揉め中である。

というかキシリアよ。なぜ只でさえ少ない艦艇を宇宙攻撃軍と突撃機動軍に分ける必要があるんだ??

少ない戦力をさらに分割したら各個撃破されて終わりだろうに。

まあどうせ自分の手駒を確保しておきたいとかそんなとこだろうがそんな事に戦力を割く余裕などジオンには欠片もないのだ。

 

という事で協議の結果、俺がグワダン一隻、その他のザビ家の面々がそれぞれグワジン級一隻とムサイ級二隻を直属の戦力として指揮権を持ち、残りの宇宙艦艇は全て宇宙攻撃軍の所属となり作戦目標に応じて臨時に部隊を編成するタスクフォースとして運用していく事で決着した。

こうすれば作戦に応じて自由に編成できるし所属している軍の確執など気にしなくていいからな。

 

キシリアがニャーニャー言ってきたのでキシリア直属の組織として戦略諜報軍を編成する事、また、月方面に配置された艦隊の指揮権はキシリアが持つことを条件に同意させた。

まあ俺も直属の組織として技術開発局を設置し、ア・バオア・クー及びアクシズの指揮権を貰う事にしたが。

宇宙攻撃軍についてはドズルを総司令官として置き、ガルマが参謀長として就任する事が決まった。

これには当所デギンが猛反発したが、ガルマ本人に説得され仕方なくデギンが折れる形になった。

 

まあ本当は事前にサスロとドズルとガルマに根回ししておいたのでデギンやキシリアがどれだけ反対してもそのまま進んだんだけどね。

 

これでジオン内部の軍制問題については一段落した。次はスペースノイドがひとつとなって連邦と戦う為のカードを切る事にしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

遊説先のside6におけるギレン・ザビの演説

 

宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を一握りのエリートが支配するようになり50年余り、スペースノイドの心からの希求である自治権確立の要求に対し、連邦がその強大な軍事力をもって自由の芽を摘み取ろうとしている事は先の連邦軍艦艇によるコロニー衝突事件からも明らかである。

 

 宇宙に暮らす我らスペースノイドを旧世紀における植民地のように扱い、あまつさえ自分たちが宇宙の支配者であるかのように振る舞う連邦に我らスペースノイドの未来を任せていく事などできるのであろうか?

否、断じて否である!

 

現在地球が我ら6つのサイドと月からの食糧やエネルギーの搾取により成り立っているのに対し、我らスペースノイドは地球からの支援がなくとも十分に自活することができる。

そう。我々に地球は既に必要ないのだ!

 

にもかかわらずそれを認めず弾圧を繰り返す地球連邦に我らスペースノイドの栄光ある未来を託す事などできるはずもない!

故に私はここに6つのサイドと月の連携を強化し、地球を抜いた経済圏を確立する構想、すなわちサイド共栄圏構想を提唱するものである!




ちょっと短いので後で内容を追加するかもしれません。


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30話 UC0078年8月

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。ゼンラ・ザビである。

…って誰が全裸やねん!

確かに先日もアイナと二人で包み隠さない姿でいたが私は人前で全裸になった事などない!

 

まあそれはさておき先のサイド共栄圏構想の演説は各方面に大きな影響を与えた。

 

連邦からはこれはサイド3による連邦への宣戦布告かと問い詰めてきた程だ。

え?勿論俺個人の考えだと返しましたよ?連邦は言論の自由を認めているのに俺の思想を話す事さえ認められないと?

これをきっかけに連邦から開戦してくれればスペースノイドの支持は貰ったも同然だったのだが流石にそうはならなかった。まあ我々も開戦準備が完全に整っている訳ではなかったのでそれはそれで良かったのだが。

この連邦の動きを脅威とみなしてジオン公国は国家総動員令を発令し開戦に向けた最後の段階に入った。

 

建設中のサイド7以外のサイドでは反連邦の動きが活発化し連邦がそれを鎮圧する事で更に反連邦の運動が盛り上がるという悪循環に陥っている。現在それに便乗してフェンリル隊やサイクロプス隊などの特殊部隊を各サイドに送り込み開戦と同時に奇襲をかけるための準備を進めていた。

 

連邦の駐留艦隊は半数が宙域のパトロールをおこない、その間残りの半数は各サイドのベイで整備と補給をとる形で運用されている。

なのでパトロールしている艦隊を宇宙攻撃軍の分艦隊で襲撃し、潜伏させている特殊部隊でベイの艦隊を制圧する予定だ。

ベイの中にいる艦艇などモビルスーツの敵ではないので少なくとも半数は確実に撃破できる見込みだ。

駐留艦隊とルナツーの艦隊さえ排除すれば今の状況なら各サイドはジオン側についてくれるだろう。

…後者が難題だが。

 

月については各サイド程は反連邦運動は盛り上がっていない。これは連邦による最初の入植地という事もあり社会インフラが整備されている点と、地球圏最大の企業であるアナハイム社など多くの企業が月面に拠点を構えている事が影響している。

まあ自分の待遇に満足していて仕事による結び付きも強ければ保守的になるのも仕方がないのかもしれない。

此方についてはサイアムの協力によりアナハイム社の倉庫に少しずつモビルスーツを搬入しており開戦時にはMS一個師団で奇襲をかける予定だ。

まあここの艦隊は開戦間近な状況だと全て宇宙に上がっていそうだが仮にそうなっても月面の制圧には使えるので問題無いだろう。

連邦側の兵器の設計図の提供や地上での活動の支援などサイアムには本当に頭が上がらない。

お礼に孫が大きくなった際にはもうすぐ産まれてくるミネバとの結婚を認めてあげよう。現時点ではどちらも産まれてさえいないがw

 

さて、後はルナツーとジャブローにいる連邦の主力がどう動くかだ。戦略諜報軍の活動により現時点での連邦の準備計画は入手しているもののあくまで案なので指揮官次第でいくらでも変更の余地があるしさてどうなる事やら。

 

…。コロニー落としをしなかったとしても恐らく俺は人類史上最大規模の戦争を始めた愚か者として歴史に名を残すのだろう。

だが、そうしなければ連邦政府がその植民地たるコロニーの支配権を手放す事などないだろう。かつて地上において大英帝国がそうであったように。で、あるのならば俺は戦おう。この戦いはザビ家と地球との戦争ではない。ジオンが、宇宙に住む人々が地球の支配から独立する為の戦争なのだから。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

アイナ・サハリン

 

家事をしながら部屋の時計に目をやるとその針は21:00時を越えようとしていた。

そろそろお戻りになる時間ね…

そんな事を考えていると公用車が玄関に停車し、その中からギレン様がゆっくりと降りて来られる。

 

「お帰りなさいませ。ギレン閣下」

 

「うむ…。」

 

執務を終え総帥府から戻られたギレン様はひどくお疲れのようだった。

 

「お食事はおとりになられましたか?それともお風呂になさいますか?」

 

「そうだな…食事にしようか。だがその前に少しだけ休ませてくれ。一時間程したら起こして貰えるか?。」

 

「はい閣下。ごゆっくりお休みください。」

 

そう私が答えるとギレン様は少しおぼつかない足取りで寝室へと向かわれた。

閣下を部屋までお送りすると護衛としてギレン閣下と一緒にいたハマーンさんに声をかける。

 

「護衛のお仕事お疲れ様です。疲れてない?」

 

「ありがとうございます。多少疲れはありますがたいしたものではありません。ジオンの、いえ、スペースノイドの未来を背負っておられる閣下の事を思えば…。

アイナさんには黙っているように言われたのですが実は今日執務中に一度お倒れになりました…。」

 

「そんな…。」

 

「お医者様の見たてではどうやら過労のようなのですが閣下は今がジオンにとって最も重大な時だからとおっしゃられそのまま執務を…。」

 

「わかりました。私からもあまりご無理をなさらないようにお願いしてみます。なので貴女も早く休んで。ハマーン。」

 

「はい…。閣下をお願いします。アイナさん。」

 

そう言ってハマーンさんが自室へ帰るのを見送るとお粥を作るためキッチンに向かった。

 

「ギレン様。失礼します。」

 

「ん…アイナか?」

 

「お粥をお持ちしました。ご加減はどうですか?」

 

「ハマーンから聞いたか。まあよい。少し仕事に集中しすぎただけだ。大したことはない。」

 

そう言いながらギレン様は私から受け取ったお粥を美味しそうに食べ始めた。

 

「久しぶりに食べたがこれも食べやすくて良いな。」

 

「ありがとうございます。ギレン様。…私にも何かもう少しお手伝いできる事があれば良いのですが…。」

 

「フム…。そうだな。では少し私の独り言を聞いてくれるか?」

 

「はい。」

 

そうして語られたのはギレン様が総帥として抱えておられる苦悩でした。

連邦政府との駆け引き、連邦軍へのスパイ活動、キシリア様との派閥争い、各サイドへの内部工作など、今日まで政治の裏側や派閥争いにあまり関わってこなかった私には初めて聞く話ばかりでした。

 

「…すまないな。どうにも愚痴が溜まっていたようで、つまらない話をした。」

 

そうギレン様が謝罪される。

確かに愚痴まじりにお聞かせ頂いたお話はどれも衝撃的で、特に暗殺や洗脳などをもギレン様が指示されていたことには、大きなショックを受けました。

しかしお話し頂いた言葉の中にはギレン様が抱えておられる葛藤が滲み出ていました。ですがそれを私にお話し頂けたという事は私を信頼してくださっている証。

そして私はギレン様にお仕えし、その理想の達成のお手伝いをすることを望んだ者。それなら、ギレン様を信じお支えする事が今の私にできるせめてものお手伝い。

そう思い私がギレン様の手を握りしめると驚いた表情を見せるギレン様に、私の思いを伝える。

 

「…ギレン様。私で良ければいつでもお話を聞かせて頂きます。ですので、そんなに一人で抱え込まないでください」

 

「…すまない。開戦間近で少し弱気になっていたようだ。また愚痴が溜まってきたら聞いてもらっていいか?」

 

「はい。何時でもお聞かせください。私やメイちゃん達はどんな事があっても閣下の味方です。なのであまり負の意識に囚われすぎないでくださいね。」

 

私がそう伝えるとギレン様は顔を伏せながら「ウム。」と短く頷かれたのでした。



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31話 UC0079年1月 一週間戦争

過去最長になってしまった…。
実はヨルムンガンドが本当に秘密兵器なのです…。


一週間戦争記

 

1年戦争が始まったのはUC0079年が明けて間もない1月3日である。

開戦に向けた準備を万端に整えていたジオン公国軍は宣戦布告と同時に月と各サイドの駐留艦隊に対して一斉攻撃を開始した。

 

ソロモン近海に集結していたドズルとガルマ率いるジオン連合艦隊への対応に終始していた連邦軍にとってこれは完全な奇襲となり、ジオン艦隊と各地に潜伏していた特殊部隊との間に挟み撃ちにあった駐留艦隊は有効な反撃すら行なえぬままほぼ壊滅した。

ただ、これは連邦の油断というよりはジオン側が一枚上手だったというべきであろう。

連邦軍とてジオン艦隊の戦力をある程度掴んでおり、その戦力の殆どがソロモン近海に集結している事を確認していたが故に生じた隙をついたものであった。

後に公開されたジオン側の情報によると当時ソロモンに集結していたジオン艦隊の約半数はダミーであり、残りの半数は各地に展開し様々な任務にあたっていたのである。

結局、開戦から僅か四十時間でサイド1、2、4の三つのサイドの駐留艦隊が壊滅し、補給・連絡が途絶した状況で最後まで抵抗していたサイド5の駐留艦隊も七十二時間後には全滅した。

 

一方連邦も5日になってようやくルナツーから第四、第六艦隊をティアンム中将を総司令としてソロモン近海に向け発進させた。これは駐留艦隊こそ壊滅したものの、コロニーや月都市への被害がほとんどなかった事から先にジオンの主力を叩くべきとの意見が大勢を占めた為である。

 

8日に入って、宇宙世紀において初の大規模宇宙戦が勃発する。また、この戦いはミノフスキー粒子の登場により連邦のレーダー神話が崩れた戦いであり、同時にモビルスーツが戦いの趨勢を決めた初めての戦いでもあった。

開戦と同時にジオン軍は大量のミノフスキー粒子を散布し、連邦軍のレーダーや通信機器を麻痺させることに成功。続いてビーム攪乱幕を展開し連邦のメガ粒子砲を無力化したジオン艦隊は艦隊決戦砲「バハムート」と「ヨルムンガンド」による一方的な遠距離攻撃を開始した。

これはメガ粒子砲と違い核融合プラズマビームがビーム攪乱幕の影響を受けない事を利用したジオン必勝の策であった。

ミサイルによる攻撃をミノフスキー粒子で、メガ粒子砲による砲撃をビーム攪乱幕で防がれた連邦に遠距離から砲撃を繰り返すジオン艦隊を倒す術はなく、この状況を打破する為にセイバーフィッシュ隊を展開し近距離からの直接砲撃により勝負を決める為の突撃を開始する。

ただ、それはドロスという大型空母とモビルスーツという切り札をもつジオン軍に対しては最悪の選択であった。

 

ドロスやムサイから出撃したジオンのモビルスーツ部隊は数が少ない上に小回りの利かない連邦軍のセイバーフィッシュ隊を圧倒する。僅か十数分の戦闘でこれを壊滅させるとミノフスキー粒子によりLFCSDS(大規模艦隊統制防宙システム)が機能しない連邦艦艇に接近し次々と血祭りにあげていった。結果、開戦より五時間後には連邦艦隊は戦力の80%を消失して撤退する事になる。

 

この戦闘結果を聞いて色めき立つ連邦軍首脳部であったが、諜報部から入った情報により更なる衝撃を受ける事になる。地球圏に向けて移動していたアクシズが当初の予定場所であった月軌道で停止せず地球に向かっている事が判明した為である。

そしてそのままの軌道を継続した場合の最終到達予想地点は連邦軍本部ジャブロー、今自分達がいるその場所であった。

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

開戦から今日迄の流れを戦記風に纏めるとこんな感じだろうか。

 

当初想定していたよりも順調な滑り出しで戦局が推移しているため今はホッと一息いれているところだ。特に8日の大規模戦闘でミノフスキー粒子とビーム攪乱幕の効果を警戒して撤退され、そのままゲリラ戦でもされたらどうしようかと思っていたので正直助かった。接近されたらLFCSDSで迎撃すれば良いと考えていたんだろうが飛んで火に入る夏の虫である。只、艦艇をあれだけ沈めたのにティアンムが乗るバーミンガム級は沈められなかった。流石は0083当時としても有数の戦闘能力を誇る戦艦である。 まあ、第六艦隊の旗艦の方をランバ・ラルが白兵戦で制圧してきたのでとりあえずはよしとしよう。

 

さて、今頃連邦は我々の流したアクシズ落としの情報に色めきたって艦隊を出撃させる準備をしているところだろう。

此方はアクシズの民間人は全てモウサに移してサイド3宙域で切り離したので準備万端である。

後は連邦艦隊が集結してくれるのを待つばかりだ。

一度しか使えない手なのでできるだけ多くの艦が集まってくれると良いのだが。

 

さてそれではジャブローから出撃した第一陣を潰したらアクシズに帰るとするか。

ハマーン、ララァ、ダミーを使った奇襲は頼んだぞ。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

名もなきとある連邦士官

 

ジオンのアクシズ落としに対抗するためジャブローから宇宙に上がった我々第二地球軌道艦隊を待ち構えていたのは単艦で連邦艦隊と戦えるように建造されたジオンの怪物艦であった。

 

赤く塗装された巨艦の放つメガ粒子砲が漆黒の宇宙を切り裂く。我々の射程の遥か外側から放たれたその砲撃は重装甲を誇るマゼラン級戦艦の装甲をいとも容易く貫通しその内部に高温のメガ粒子を撒き散らしその姿を巨大な火球へと替えてしまった。

 

「くそっ。また一隻喰われた!まだ此方の射程に入らないのか?!」

 

「駄目です!大気圏離脱するのにエンジンを限界まで酷使していたためこれ以上酷使するとエンジンが壊れます!」

 

「このまま沈められるよりはマシだ!爆発しても構わん!何とか此方の射程に入るまで敵艦に接近しろ!」

 

「…了解です。どうなっても知りませんよ?!」

 

士官学校を次席で卒業した私であるがこのような戦況での適切な対処法など士官学校では全く教えてくれなかった。

 

「ぐっ!」

 

先程沈んだ僚艦がデブリとなって本艦にぶつかる。最新鋭艦である本艦がこの程度で沈む事などあり得ないが敵艦の主砲が直撃すれば自身もデブリの仲間入りする事は間違いなかった。

 

「これでマゼラン二隻、サラミス八隻だと?!まだ我々は一発も敵艦に当てていないのだぞ?!対艦ミサイル!発射できるか?」

 

「発射はできますが例のミノフスキー粒子とやらのせいでほとんど誘導できません!当たりませんよ?」

 

「構わん!牽制になれば良い。撃て!」

 

艦隊の主力を構成するサラミス級巡洋艦とレパント級ミサイルフリゲート艦から次々と長距離対艦ミサイルが発射される。

40隻近い艦艇から発射されたミサイルの雨は相手がどんな巨艦であってもデブリに変えてしまうだけの破壊力を秘めていた…当たりさえすれば。

 

「駄目です。ミサイルが明後日の方向に!」

 

「くそっ!」

 

ミノフスキー粒子とかいう悪魔の兵器のお陰でレーダーがほとんど機能しないばかりか電子機器も多大な影響を受けろくに機能しない。その存在を否定していたという科学者に会うことができたならきっと俺はそいつを殺して軍法会議行きになるだろう。だがそうするためにはまず生き残らねば。

 

「構わん!弾がある限り撃ち続けろ!」

 

「艦長!間もなく本艦のメガ粒子砲の射程に入ります!」

 

「ようし!我が艦の力を見せてやれ!撃て!」

 

5基の連装メガ粒子砲が宇宙を切り裂いて敵艦に向かうも目視による手動照準に馴れていないせいか敵艦には掠りもしない。

 

「何をやっている!落ち着いてよく狙え!」

 

と思わず言ってみたものの自身が落ち着けていない事に気がつき大きく深呼吸をする。

 

「落ち着け。慌てても当たらん。それに間もなくマゼランやサラミスも敵艦を射程に収めるのだ。そうなれば此方の優位は揺るがない。」

 

そう言った途端敵艦が猛烈な勢いでメガ粒子砲を連射したかと思うと今度は急にモビルスーツを射出し始めた。

 

「サラミス級巡洋艦、アシヤ、クレ轟沈!敵艦モビルスーツを展開し始めました!」

 

射出された緑色のモビルスーツはまるで盾になるかのように敵艦の甲板上に展開し始める。

 

「ふん!この距離でモビルスーツなど何の役に立つというのだ。構うな!そのまま撃ち続けろ!」

 

暫くするとマゼランやサラミスも敵艦を射程に捉え砲撃を開始した。

急速に増えた味方の砲撃と突然敵の砲撃が途絶えたことも手伝って敵艦に対する至近弾が増え始めた次の瞬間それはおきた。

敵艦に直撃した!そう思った矢先メガ粒子砲が拡散し宇宙の霧となって消えたのだ。

 

「バカな!なんだこれは?!」

 

第四艦隊の交戦記録から敵が何らかのメガ粒子砲に対する防御手段をもっている事は聞いていたが正直今まで半信半疑だった。だがモビルスーツ相手の接近戦は無謀な事も分かっている。ここは一度後退してルナツーを目指すべきか…。しかしそれではアクシズの落下を阻止できない。そんな風に考えた次の瞬間だった。

 

「艦隊の左翼を隕石群が通過します。」

 

宇宙世紀においで隕石は特に珍しい存在ではなかったがブリッジ要員のその報告を受けて何気なく私がそちらを見た次の瞬間隕石が弾け中からモビルスーツが姿を現した。

 

「左翼!敵機!」

 

私がそう叫ぶまもなく我が艦隊左翼は白を基調にピンクのラインで塗装された機体と全身緑色に塗装された機体の2機を先頭に突撃してきた敵高機動モビルスーツの群を相手に蹂躙された。

 

本来なら防空識別圏に入ると同時にLFCSDSにより自動的に迎撃されるはずのものがミノフスキー粒子のせいで全く機能せず、個々の艦の対空砲で迎撃するには敵の機体は余りにも速すぎた。

 

敵のモビルスーツは左翼外周部のレパント級を無視して艦隊防空圏の内側に入り込むと手に持った大型ライフルにより次々とサラミスのメインエンジンを撃ち抜きながら艦隊中央部に向け進攻を開始した。

これに対し我が艦隊は味方の艦が邪魔になり火力を集中できず散発的な対空砲火で個々に対応するしかなく、そして敵機はそんなもので落とせるほどなま易しいものではなかった。

 

「左翼艦隊散開!できるだけバラけて逃げろ!中央及び右翼は左翼からできるだけ距離をとる!急げ!」

 

「提督!右翼に敵艦が!」

 

その副官の声に思わず右翼をみれば先程まで艦隊の正面にいた敵大型戦艦がモビルスーツ隊を射出しながら急速に右翼に向かって接近していた。

 

「バカな。一体何機搭載していると言うんだ!」

 

左翼を食いつくし中央部に襲いかかりつつある高機動モビルスーツだけでも20機近く。そして今右翼を崩壊させつつある機体は少なく見積もっても50機はいるだろう。

 

「バカな!!なぜあの白い機体はあんな機動ができるのだ?!モビルスーツがこんなに速いなんて聞いてないぞ!!」

 

「あの緑の機体は未来が見えているとでもいうのか?なぜこれだけの砲火をいとも容易くかわせるのだ?!」

 

「こちらマクドナルト、航行不能。艦を放棄する。繰りか…」

 

「来た!青いやつだ!青い奴らの一つ目の群だ!!」

 

「こっちには緑のやつの群もいるぞ!セイバーフィッシュは何をやって…」

 

「いやだ!死にたくない!いやぁぁぁぁぁぁ…」

 

ミノフスキー粒子散布下でかすかに聞き取れる我が軍の通信は完全なパニックだった。

爆散する連邦軍の艦艇に一刀両断にされる艦載機。

逃げ出す巡洋艦に、情報部に「作業用」と言われていた新たなる兵器の群によって沈められていく戦闘艦。

もう軍隊として機能していない。

 

「提督…。艦隊のほぼ全ての戦闘艦が航行不能になりました。我が艦も砲塔の大半が使用不能です…。」

 

「そうか…。」

 

「提督!ジオン艦隊より通信です!貴君らの勇戦に敬意を表し残余のコロンブスに乗り現宙域より離脱するのならばこれ以上追撃はしない。以上です…。」

 

「…。総員退艦。」

 

「了解です…。ってっ提督?!」

 

こうして連邦軍第二地球軌道艦隊は、ジャブロー上空で、1隻の敵艦に捕捉され壊滅した。




先ずはCBさんいつも誤字修正ありがとうございます。
他にも何名もの方に誤字を修正して頂き私の作っている作品をよく見て貰えているのだなとても励みになっています。

ヨルムンガルドについてはジージェネェでIフィールド無効だったのでビーム撹乱膜も貫通するという設定にさせて頂ました。展開中でもビームサーベルなら使えるみたいですし。
甲板に展開したのはD型装備のザクⅡで小規模のビーム撹乱膜展開能力を持っているという設定です。


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32話 UC0079年1月 アクシズ戦役

長くなりました…。
ご指摘ありがとうございます。修正しました。プラズマテレビ砲って何だよ…。orz


アクシズ宙域

 

一年戦争序盤、宇宙世紀0079年1月15日から16日にかけて連邦・ジオン公国間で行われた宇宙戦である。

 

宇宙世紀0079年1月10日、アクシズを地球軌道に向け移動させるジオン軍に対し連邦軍はレビル将軍率いる第一連合艦隊をルナツーから発進させた。

第一連合艦隊はルナツーに駐留する第一、第二、第三、第五艦隊とジャブローから打ち上げられた第一軌道艦隊の合計5個艦隊とパトロール艦隊などを統合した艦艇総勢324隻で構成されていた。これは連邦の保有していた戦闘艦艇の約半分の数であり、現在動かせる戦闘艦艇のほぼ全てであった。

 

一方ジオンも連邦の動きを指を咥えてただ見守っていたわけではなかった。戦略諜報軍の働きにより連邦の動きを察知するや否や制圧したサイドと月などの警備艦隊を除いた全ての戦闘艦99隻をアクシズ宙域に集結させたのである。

324隻対99隻、図らずとも原作と同じ戦力比3対1の戦いが始まろうとしていた…。

 

 

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

ちょっとモノローグ風に現在の状況をまとめてみた。

 

敵味方合わせて400隻以上の艦艇がにらみ合う光景は壮観であり、特に300隻以上の連邦艦艇が構成する巨大な球形陣はまるでひとつの芸術作品のようですらあった。

 

「しかし連邦軍が球形陣を採るとはな。」

 

伝統的に連邦軍はLFCSDS(大規模艦隊統制防宙システム)による防空が容易な複縦陣に近い陣形をとっていた。

しかし目の前の連邦艦隊は同型艦三隻を一単位としてそれぞれが密集して相互に対空砲火の死角を埋めるとともに、その艦隊を組み合わせることで中央部にマゼラン級戦艦とコロンブス級空母、外周部にサラミス級巡洋艦とレパント級フリゲート艦で構成された巨大な球形陣を形成しLFCSDSに頼らない防空圏を完成させていた。

この陣形では仮に外周部を突破しても直ぐに次の防空網に行く手を阻まれる事になり、モビルスーツによる攻撃を完全に防ぐには至らないものの、その突破力を確実に削ぎ落とすものとなる。

 

「流石はレビル。ティアンム艦隊の敗戦から即座に未知の敵に対して対応してみせるとは。」

 

まあ、小規模の艦隊に分散し、アクシズの全方向から一斉に攻撃されるよりかは幾分マシではあったが。

 

「ギレン閣下。ドズル様とガルマ様から通信が入っております。」

 

「ウム。」

 

ハマーンからの報告に俺が短く応じると艦橋のスクリーンにドズルとガルマの姿が映し出される。

 

「兄貴!左翼艦隊は配置を完了したぞ!間もなく連邦艦隊がドロスの主砲、「要塞砲 バハムート」の射程に入る!」

 

「ギレン兄さん。右翼艦隊も間もなくヨルムンガンドの射撃準備とビーム攪乱幕の展開が完了します。」

 

ジオン艦隊はアクシズ正面に三つに分かれて展開しており、正面を俺が左右はそれぞれドズルとガルマが率いていた。両翼の艦隊はそれぞれドロス級戦略空母1隻、グワジン級戦艦1隻、ザンジバル級機動巡洋艦7隻、ムサイ級軽巡洋艦10隻、ダミー(ムサイ級)50隻で構成されており、プラズマ砲による砲撃と敵艦隊の牽制を主な任務としていた。

 

え?えらいダミーが多いって?どうせ両翼はミノフスキー粒子とビーム攪乱幕の影響でバハムートとヨルムンガンド以外は攻撃出来ないんだからいるのがダミーでも別に良いんだよ。ザンジバルは地球侵攻作戦までに損耗されても困るし。

 

「そうか。では作戦通り連邦艦隊が射程に入り次第バハムートとヨルムンガンドによる砲撃を開始しろ。ドズル、ドロスは足が遅い。間違ってもアクシズの前に出したりするなよ?」

 

「判っている!だが兄貴こそ連邦の正面に位置する事になるが大丈夫か?中央部はビーム攪乱幕を展開せずにメガ粒子砲による砲撃戦を挑むんだろう?」

 

「そうです兄上。今からでも遅くありません。グワダンだけでも後方に下がられては?」

 

確かに俺はグワダン級大型戦艦1隻、グワジン級戦艦2隻、ムサイ級軽巡洋艦58隻、ダミー(ムサイ級)20隻の陣容で連邦艦隊の正面に展開していた。

 

バハムートやヨルムンガンドは連邦艦隊を一方的に攻撃できる優れた兵器であるが弾の単価が高いという大きな問題を抱えていた。旧式となったザクⅠの核融合炉を流用することでコストを大幅に削減してはいるがそれだけで連邦の連合艦隊を相手にするにはとてもではないが数が足りない。そのため中央艦隊は連邦艦隊とメガ粒子砲による砲撃戦を展開する事になっていた。

 

「アステロイドシールド展開!各艦間違っても衝突するなよ!」

 

俺が号令をかけるとアクシズ表面に固定されていた直径100メートルほどの隕石がパプア級に牽引され艦隊の前に次々と運ばれていく。

 

「なに、遮蔽物のない連邦軍と違い此方はわざわざアクシズで牽引してきたアステロイドを盾にしながら戦うのだ。

それにグワダンは、中央部の最後尾に位置してビーム攪乱幕を展開して囮になるだけだ。そうそう危険はないよ。」

 

そんな事を話しているうちに内蔵されたロケットブースターで細かな位置調整を行った100近い数の隕石の展開が完了する。

これで機動戦ならともかく密集した球形陣相手なら十分な遮蔽効果が期待できるだろう。

 

俺がここにいる理由については兵士の士気を上げるためと…自分の判断で兵を死地に送り込む罪悪感への贖罪だろうか。

こう考えていると自分がギレンになりきれていない事をつくづく実感する。

まあ、俺は俺だ。アイナやメイ、ハマーン、ララァなど俺を認めてくれる人達がいるうちは大丈夫だろう。

 

「閣下!まもなく敵艦隊我が方の射程に入ります!」

 

そんなどうでもよい事を考えているとハマーンから敵艦隊接近の報告が入る。

 

「ウム。では抜かるなよ。ドズル、ガルマ。」

 

「おう!兄貴こそ気をつけてな!」

 

「兄上!ご武運を!」

 

そうするとまもなくドロス、ドロワ両艦から展開された「要塞砲 バハムート」による連邦艦隊への砲撃が開始され、一年戦争において戦いの趨勢を決めた三つの大きな戦いの最初のひとつ、いわゆるファースト・インパクトが始まる。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ヨハン・イブラヒム・レビル

 

「アクシズ正面に敵艦隊を確認しました!

艦隊正面にグワダン級1、グワジン級2、ムサイ級70前後が隕石に隠れながら展開しています。

またその左右に大型空母1、グワジン級1、重巡クラス7、ムサイ級60と例のプラズマ砲がそれぞれ展開しつつあります。」

 

「ムサイだけで200隻近いだと!?」

 

情報部の報告ではジオン艦隊は100隻前後と見られていたため、そのあまりの数の差に報告してきた次席幕僚のワッケイン准将に思わず聞き返す。

 

「はい。将軍。私も再度確認しましたが目視でそれだけの数が確認されています。」

 

「信じられん。我々の二十分の一の国力しかないジオンが僅かな期間であれだけの艦艇を建造できるとは…。」

 

「はい。また、各地に偵察に出た艦からここの他にも月や各サイドでジオン艦隊が確認されており前面の艦隊が全てではないようです。」

 

「あれが全てではないだと!?」

 

驚きのあまり思わず声をあげるものの、流石に怪しさを感じ後で諜報部に再度調査させる事を心に決める。

 

「まあいい。今は前面の敵に集中するのみだ。例の件はどうなっている?」

 

「はい。レパント級のミサイルは全て近接防空用の拡散弾頭に変更しました。また、本艦や中央部の戦艦には例のA弾頭を搭載しております。」

 

「そうか…。ジオンが使っていない現状で我々から使う事は何とか避けたいところだがな…。」

 

「ジャブローからは阻止限界点までの到達時間を考慮し16日00:00を越えた時点でA弾頭を無制限使用し何としてもアクシズを止めるようにとの厳命が出ています。」

 

「後4時間で方をつけろとは連中はあいかわらず無茶を言う。」

 

「しかしジャブローも自分の頭の上にアクシズが落ちてこようとしているのです。多少の無茶はやむを得ないと思いますが。」

 

「確かにな。今頃はジャブローから避難する高官の山でてんてこ舞いだろう。」

 

「そうですな。それではその避難が無駄になるようせいぜい頑張るとしましょう。」

 

「ウム。全艦回避運動をとりつつ前進せよ。目標正面ジオン艦隊!」

 

球形陣をとりながら連邦艦隊がアクシズに向け移動を開始する。

 

「ジオンのプラズマ砲の配置は?」

 

「両翼の空母の付近に大型砲が3門、巡洋艦の付近に小型砲が12門ほど確認できます……!!敵大型砲発砲!」

 

艦隊中央部を狙った6発の砲撃は回避運動の効果か4発は虚空に消えたものの、残りの2発はそれぞれサラミスとマゼランに直撃し宇宙の藻屑と変えた。

 

「く…。敵の砲撃は威力と射程こそかなりのものだが連射がきかず数も少ない。各艦恐れずに落ち着いて行動せよ!」

 

私がそう言うと艦隊は粛々と前進を続ける。時折両翼からプラズマ砲による砲撃があるものの散発的なものであり、そこまでの脅威ではなかった。

 

「どうやら敵は両翼を温存し中央部の艦隊で砲撃戦を挑んでくるつもりのようですな。」

 

「ウム。わざわざ隕石を盾にする位だ。間違いないだろう。しかし近づきすぎると両翼が急速に前進し包囲される可能性もある。気をつけねば。」

 

「将軍!まもなくメガ粒子砲の有効射程に入ります!」

 

「よし!目標、敵艦隊旗艦グワダン!全砲門射撃用意!撃てー!」

 

虚空を無数のメガ粒子が光の帯をひきながらその先に鎮座する赤い巨艦を目指し宇宙を切り裂いていく。馴れない目視による手動照準のため上手く狙いがつけられず周囲の隕石やムサイに当たったものも多いがそれでも三百隻近い艦から放たれたメガ粒子砲は高い密度で赤い巨艦へと降り注ぐ…かに見えた。

 

が、グワダンの周囲まで近づくとまるでそれ以上近づく事を許されていないかのように消えていく。すると今度はお返しとばかりに隕石の陰から顔を出した敵艦の放つメガ粒子砲により味方の艦が次々と火球へと姿を変えた。

 

「駄目です!例の対メガ粒子砲防御幕が展開されています!」

 

「いや、どうやら旗艦の周囲だけ展開されており他の艦の周りには展開されていないようだ。暫く砲撃戦に徹して敵の数を減らす。敵艦が頭を出した瞬間を狙え!」

 

その後敵艦隊との砲撃戦は三時間近くに渡って続き、50隻を超える味方艦の犠牲と引き換えに二十隻近いムサイを大破させた。その間何度か敵陣に突入を試みたものの、その都度突入艦隊が両翼のプラズマ砲と敵艦隊の集中砲火を浴び敵陣への突入は果たせないでいた。

 

「閣下!まもなく例の時刻となります。」

 

「く…。ああも徹底的に遮蔽物に隠れながら砲撃されてはな。このまま砲撃戦で決めるのはやはり無理か…。」

 

「無念ではありますが地球にアクシズを落とす訳には参りません。どうかご決断を。」

 

「…。判っている。直衛艦隊全艦核ミサイル発射用意!…。ああ、無駄だと思うが降伏勧告を出しておけ。」

 

「はい…。ジオン側からの応答なし。」

 

「…撃て。」

 

空を切り裂き無数のミサイルが発射される。その中の何十数発かは核弾頭を搭載しており、例え無誘導であってもその広大な効力圏により盾にする隕石ごと敵艦を消し飛ばすだろう。

 

「?…!!ジオン艦隊が盾にしているアステロイドが急速に接近!ミサイル群と衝突します!」

 

「なんだと?く…。」

 

目の前で無数の巨大な火球が無数に誕生しあらゆるセンサーが一時的にブラックアウトする。

そしてその火球が収まった時に見えたものは予想だにしない光景であった。

 

「敵艦が撤退を開始したというのか…?」

 

アクシズの前面に展開していたジオン艦隊は上下に別れ、次々とアクシズの前から離脱しようとしていた。

 

「どういう事だ?一体何を考えている?」

 

「閣下!アクシズが…。」

 

「何!?」

 

見ればいつの間にかアクシズが核パルスエンジンを点火しジオン艦隊のいた宙域を越えて我々に向かって近づきつつあった。

 

「全艦散開!急げ!」

 

「閣下!核でアクシズを破壊した方が良いのでは!?」

 

「馬鹿者!多少破壊した位であれだけの質量が止まるはずないだろう!?早く艦隊を散開させろ!」

 

「は、はい!了解しました!」

 

激しく艦が揺れ、艦が上方に向け全力で移動を開始する。

 

あちこちで混乱した味方の艦同士の衝突が次々と発生するものの、それに構う余裕などあるハズもない。

また、先にアクシズの進路からの退避を完了させたジオン艦隊からメガ粒子砲の雨が降り注ぎ味方艦隊の混乱が更に拡大していった。

 

「将軍!ジオンの砲撃です!」

 

「構うな!今はアクシズの前から離脱する事にのみ集中しろ!」

 

その後ジオン艦隊の妨害はあったものの、退避に全力を尽くしたため多くの連邦艦艇がアクシズの進路から離脱する事に成功していた。

 

「…。損害は?」

 

「…。正確な被害は不明ですが50隻以上がアクシズに衝突した模様です…。特に中央部にいて足の遅いマゼランとコロンブスが多く喰われました…。」

 

「そうか…。一時後退して艦隊を再編する。発光信号を…」

 

「!?将軍!アクシズの内部から敵モビルスーツが?!」

 

「しまった!これが狙いか!」

 

今だに艦隊の至近距離にあるアクシズ後部のハッチが開き内部から次々とモビルスーツが出撃してくる。これに対して味方艦隊はアクシズを回避するため散り散りとなっており組織的な防戦を行えない状況となっていた。

 

更に出撃してきたモビルスーツ隊の多くは280㎜バズーカに核弾頭を装填しており、これで攻撃されてはいかに堅固な装甲を誇る戦艦とはいえひとたまりもなく次々と沈んでいった。

 

「モビルスーツが核弾頭を使っているだと?!くっ…。ここまでだ。全艦に撤退信号を送れ。残存するコロンブスは全てのセイバーフイッシュを発艦、少しの時間で良い。モビルスーツの進攻を食い止めてくれ。」

 

そんな命令を出している間にも敵は我が軍を蹂躙しつつあり、モニターには黒い三機の高機動型モビルスーツが見事な連携によりマゼランを撃沈する光景が映っていた。

 

「敵機接近!護衛艦隊が迎撃に向かいます!」

 

モニターが切り替わり一機の赤い高機動型モビルスーツが映し出されていた。

 

「一機で艦隊に仕掛けてくるだと? 正気か?」

 

いくら連邦艦隊が混乱しているとはいえ司令部直属の護衛艦隊は精鋭揃いで今だに健在である。

ところが赤い機体はそんな事を気にする素振りも見せずにマゼラン級1隻とそれに随伴するサラミス4隻に突っ込んでくる。

 

「…っ!なんだと!?」

 

赤い機体は正面から突撃したかと思えば、急旋回、急上昇、急降下を繰り返して艦隊の混乱を誘い、防空網に乱れが出るや最も左側にいたサラミスの砲塔部などに6発もの対艦ライフルを叩きこむ。

そしてサラミスが爆散する前に機体を加速させると隣のサラミスへと一気に接近する。

この機動でもう一隻のサラミスのミサイル発射管の辺りに着艦したかと思えば足元に向け対艦ライフルを連射する。すると弾薬庫に直撃したサラミスが轟沈し、その爆風を利用して一気に加速し弾幕を張るマゼランに接近、軌道が交差した瞬間ブリッジとエンジンにシュツルム・ファウストを撃ち込みあっという間にマゼランを戦闘不能に追い込む。

そのままマゼランの上を通りすぎた赤い機体は今度はマゼランの反対側にいたサラミスの艦橋上部に着艦し今度は艦橋を真上からから撃ちぬく。

ただの一発で航行不能になったサラミスの甲板を人間がジャンプする要領で甲板を蹴り初速をつけると最後に残ったサラミスに接近、正面から射撃を集中し撃沈した。

この間わずかに5分。

たった一機のモビルスーツに一分間に一隻の戦闘艦が撃沈された事になる。

 

「あ、あり得ない……。あれでは…ま、まるで…赤い…彗星……。」

 

同じ光景を見ていた旗艦アナンケの艦長であるパオロ中佐が思わず呟く。

この会戦後、赤い彗星と呼ばれる事になるシャア・アズナブルの働きであった。

この働きにより、連邦艦隊は完全に浮き足立ち潰走を始めた。

 

だが、そんな状況下でもバーミンガム級戦艦のアナンケの守りは強固であった。

侵入してきたザク1個中隊9機を撃墜した上、射線上に入ったムサイ2隻を中破に追いこみ、攻撃を試みた4機のヅダに突入を断念させた。

ワイアット中将が提唱した世界最強の宇宙戦艦バーミンガム級戦艦の真価を発揮していた。

 

だがそんな奮戦もしょせん蟷螂の斧でしかなかった。或いは線香花火が見せる最後の輝きとでも言うべきだろうか。

バーミンガム級の戦闘力を警戒したジオン軍は戦術を変更し、周囲の艦隊を次々と排除していく。

 

「この辺りの残存艦はついに本艦のみか…。」

 

レビルが独語した頃、アナンケに三機のヅダが接近する。

カラーリングは黒。開発初期からモビルスーツに乗っており、あらゆる戦いで戦果を上げ続けているエース・オブ・エースで構成される小隊である。

 

「先程マゼランを苦もなく沈めた連中だ!何としても近づけるな!」

 

アナンケからの必死の対空砲火も空しく見事な連携攻撃によりバーミンガム級の弱点である後方下部から攻撃してくる。しかも一過性では無く、直ぐに反転して艦橋が、主砲が、副砲が、ミサイル発射管が、対空砲が、エンジンが次々と撃ちぬかれた。

艦が断末魔の悲鳴を上げるのは時間の問題だろう。

 

「レビル将軍!本艦はもうもちません!退艦を!」

 

ワッケインに促され連絡挺に移乗し、アナンケから連絡挺が離脱した直後、連邦軍の誇った最新鋭のバーミンガム級戦艦「アナンケ」は轟沈した。

そしてそれは総旗艦の沈没と指揮系統の完全なる消滅を意味していた…。



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33話 UC0079年2月 キシリアの策謀

サイド3 ギレン邸

 

人類史上最大規模の宇宙艦隊決戦となったアクシズ戦役が終わって、二週間が過ぎようとしていた。

ジャブローを目指し宇宙を進んでいたアクシズは連邦宇宙艦隊の主力を壊滅させた事により地球の衛星軌道でその動きを停止し、地球軌道の支配権は連邦軍からジオンへと移った。

 

ジオン政府はアクシズ戦役での華々しい戦果を武器に、連邦軍に対し、休戦条約の締結を申し入れた。

敗北を喫し、疲弊した連邦にとって、それを断る気力はもうなかったかに見えた…。

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

一晩にして宇宙軍の大半を失い指揮官であるレビル将軍も捕虜になるという誰もが想定していない状況に陥った地球連邦は、混乱の極みにあった。

艦隊の主力と衛星軌道の支配権を失った連邦宇宙軍はジオンとの即時休戦を主張し、一方今だに無傷の戦力を保有する連邦地上軍はジオンとの徹底抗戦を主張していた。

そして肝心の連邦政府首脳部は月と各サイドの支配権を失った責任をとることを誰もが嫌がり、責任者を決める事すらできずただ右往左往するのみであった。

 

…大丈夫か?連邦政府…。

 

そう言いたい所だが我がジオンも連邦軍を笑えない状況となっていた。そう。レビル将軍が脱走したのである。

 

原作の知識の事もありデギン公にも場所を知らせず秘密裏にズム・シティの某所にレビル将軍を収監していたのだが、そこを連邦の特殊部隊により襲撃され将軍を奪還されてしまったのである。

情報の秘匿を最優先にして少数で警備していた事が裏目に出てしまい警備にあたっていた人員は特殊部隊により全滅。

そのため将軍の脱走に気がつくのが遅れてしまい気付いた時にはすでにサイド3から脱出した後だった。

 

そのままルナツーへと入ったレビル将軍はかの有名な「ジオンに兵なし」の演説を行う。

原作とは違い月とサイドの大半を掌握して9割近い戦力を保全しているジオン軍に対して何が兵なしだよとか思っていたらその証拠として示されたのが我が軍で使っているダミーの事だった。

どうやら我等ジオンはこのような偽物を使い数を誤魔化さねばならないほど疲弊しているらしい。

 

いや…確かにダミーに兵は乗っていないし連邦軍を誤魔化す為に用意したものだけどさ…。その気になればアクシズをジャブローに落とす事もすぐ出来るんだよ?いや、悪影響の方が大きそうだからしないけど。

それに地球軌道に宇宙要塞があれば地上攻略も容易になるからね。

 

結局宇宙軍の有力者であったレビルが徹底抗戦派にまわり、連邦首脳部も宇宙植民地を失った責任を取りたくないため条約交渉は決裂。

休戦条約は調印されず、戦争での大質量兵器とNBC兵器の使用禁止と捕虜への待遇や大都市への無差別攻撃禁止を定めた軍事条約の調印のみにとどまった。

 

…極秘であったはずのレビルの収監場所を連邦が知り、厳重な警備をすり抜けてルナツーまで逃げおおせた事といいやはりキシリアが暗躍したのであろうか。だが流石と言うべきか何一つ証拠がない。

現段階でキシリアを罪に問うのは難しいだろう。

メイの父親の時といい秘密工作には高い能力を発揮するな。

しかし…まさか自分の私欲のために休戦交渉の妨害までしてくるとは思わなかったが。

今後に備え何らかの手を打たねばならないな。

少なくとも地球侵攻作戦の全権を任せる事などできん。

 

まあ、休戦が成らなかったのは残念だが過ぎたことを嘆いても何も変わらない。我等スペースノイドの未来の為にできる事をしていくとしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

キシリア・ザビ

 

グラナダの自室でギレンから直接入った連絡を受け、キシリアは顔がにやけるのを我慢しなければならなかった。

彼女を悩ませ続けた懸案事項である南極での休戦交渉が無事失敗に終わった事を告げる連絡であったからだ。

 

「レビルが逃げ出しましたか。我等戦略諜報軍に預けて頂ければそのような事にはならなかったでしょうに。

 

「よくもヌケヌケという。レビルを奪還した連邦部隊は月の軌道を通過してルナツーへと逃げおおせたのだぞ?」

 

「それは仕方がありません。宇宙攻撃軍に戦力を集中していて最低限の戦力しか配備されていない現在の状況では警備するのも限界があります。完璧を求めるのであればもう少し戦力をまわして頂かねば。」

 

我らジオン軍は、月と各サイドの大半を制圧下におき、アクシズにおける勝利により連邦の宇宙戦力の大半を壊滅させた。

そんな今の状況で休戦条約が締結されてしまえば戦略諜報軍を率いて裏方に回っていて目立った戦果のない私の立場は大きく低下し代わりにアクシズ戦役の勝利や休戦条約を締結に導いたギレンがこれからのジオンを導いていく事になるだろう。

 

フラナガン機関の設立を却下した事からギレンがニュータイプの存在を信じているようには思えず、そんなギレンではジオン・ダイクンの目指した人の革新「ニュータイプ」が導いていく世界を造る事など到底出来はしないだろう。

 

そしてそれは私にとって許容できるものでなく、戦争を継続させるために私はありとあらゆる手を打った。

 

連邦のスパイに秘密裏にレビルの居場所と警備情報を伝え、ジオン軍が戦力を水増しして見せるのに使っている「ダミー」の情報も流した。お陰で連邦首脳部は戦争の継続を決意し、スパイの連邦内部での発言力も強化されまさに一石二鳥の成果となった。

 

そう思いキシリアが心の中でほくそ笑んだ次の瞬間ギレンの発した言葉によりキシリアの表情が凍りつく。

 

「ふん。良かろう。貴様には暫くの間月の防備を固めて貰う。」

 

「な…!私はまもなく地球侵攻作戦を指揮せねばなりません!そのような些事に構っている場合では!!」

 

「ア・バオア・クーとともに我等ジオンの最終防衛ラインであるグラナダを易々と抜かれ、そのせいでレビルを取り逃がしておいてよくも言ったものだ。言っておくがこれはお前以外の全てのザビ家の同意を取り付けた決定事項であり、貴様が何と言おうとこの決定は覆らない。これに嘆くのならばせいぜい月の防備を固める事だな。もう一度ジオン本国への直撃を許せば貴様のジオンでの立場はないぞ?」

 

「しかしそれでは誰が地球侵攻作戦の指揮をとると言うのです!?ドズルはソロモンの守備とルナツーの牽制に、ガルマは各サイドの掌握で手一杯のはず!」

 

「ここにいるではないか。予定していた連邦艦隊の殲滅を完了させ、担当していた休戦交渉もレビル脱走により破局に終わり手の空いている指揮官が。」

 

「な…ま、まさか兄上が地球侵攻作戦を?!」

 

「貴様よりは地球に詳しく地球侵攻作戦の概要も理解している。何の問題もなかろう。」

 

「そんな…地球侵攻作戦は私が準備を進めてきた作戦であり私が指揮をとるのが最適なのです!どうか再考を!」

 

「ふん。貴様と話していても時間の無駄のようだ。サスロやドズル、父上を説得できたらまた連絡してくるがいい。ではな。」

 

そう言うと一方的に通信が打ち切られ部屋に静寂が戻る。…まさか兄上がこのような強行手段に出るとは。このままでは折角休戦交渉を妨害した事が裏目に出てしまう。何とか父上達を説得し地球侵攻作戦の指揮をとらなけらば。



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34話 UC0079年2月 第一次降下作戦

オデッサ上空 旗艦グワダン

 

南極条約が締結された翌日のUC0079年2月1日、ジオン公国は南極条約に盛り込まれた大都市への無差別攻撃禁止条項を理由に、ベルファスト、ニューヤーク、キャリフォルニア、ハワイ、ペキン等の大都市近郊に存在する連邦軍基地からの連邦軍の退去を要求する。

同時にこの要求が認められない場合、マスドライバーによる連邦軍基地への直接攻撃を実施するとの警告を発するとともにソロモンやジオン本国から大量のHLVを地球軌道に向けて発進させた。

 

一方ジオンの要求を飲むことなど不可能な連邦はそれぞれの基地に地対宙ミサイルや地対宙レールガンを集中配備しマスドライバーによる攻撃に備えるとともに、ジオン軍の降下を警戒し各地から軍を集結させ迎撃の準備を急いだ。

 

ただ、これらジオンの動きは全てオデッサ攻略に向けた壮大な陽動作戦であった。

コロニー落としによる被害の無い連邦には膨大な地上戦力が無傷で残っておりそこに降下する事はかなりの抵抗が予想されていた。

そのためジオン側はマスドライバー攻撃の宣言とHLVを集結させる事で連邦の戦力を大都市圏に集結させ、それ以外の場所の戦力を低下させる事に成功した。

特に人口密度の高くない鉱工業地帯などは駐屯していた兵力のかなりの数が大都市の防衛に移動させられたため大幅に戦力が低下していた。

 

UC0079年2月14日2200

ジオン軍は月面のマスドライバーにより連邦基地への直接攻撃を開始する。ミノフスキー粒子の濃度が高くなかった事や事前に準備を整えていた事もあり連邦軍はマスドライバーにより発射された質量弾の迎撃に成功する。

だがこの攻撃も陽動作戦の一部であり、月面のマスドライバーとアクシズ宙域に集結したHLV群に意識を集中させていた連邦軍は秘密裏にオデッサへの降下軌道に集結していたジオン艦隊に全く気がついていなかった。

 

UC0079年2月15日0400

グワダンとザンジバル級12隻で構成された降下部隊の第一陣はオデッサに向け降下を開始する。

いわゆる地球侵攻作戦の始まりであった…。

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

南極での休戦条約交渉に失敗した以上、地上での戦いは避けられないものとなっていた。

 

延々とマスドライバーで隕石の雨を降らして連邦軍を撃破する案もあったが、その作戦ではどうしても民間人にも大量の死傷者が発生してしまい、また地球環境にも絶大な悪影響が出る事で休戦に向けた道筋が完全に消えてしまう可能性がある事から原作同様に地球侵攻作戦の準備を進めていた。

 

狙うのは大量の鉱物資源を埋蔵する中央アジアの要オデッサである。

 

「ギレン閣下!」

 

「どうした。デラーズ」

 

「本艦を含め作戦に参加する全ての艦艇が予定していたポイントに到達致しました!」

 

「よかろう…。全軍に戦闘開始命令を出せ。」

 

「はっ!」

 

グワダンがバリュートを展開し地球に向けて降下を開始する。

原作とは違いミノフスキークラフトを搭載しているので理論上は地上でも問題なく飛行できるハズだがもし機能しなければこれで宇宙も見納めだな…。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

ハンス=ウルリッヒ・ルーデル

 

子供の頃に母からパラシュート降下する男のショーの話を聞いて私は「飛行機の操縦士になろう!」と決意した。

しかしコロニー国家であるジオンに宇宙戦闘機ならともかく飛行機があるハズもなく、仕方なしに私はモビルスーツのパイロットになる事にした。

幸い私にはパイロットとしての素質があったようでジオンの絆で高いスコアを出した私は親衛隊にスカウトされ、モビルスーツ開発チームのテストパイロットとしての道を歩き始める事になった。

最初は宇宙でモビルスーツ「ザクⅡ」のテストをしていたが、ギレン閣下が「我々は地球侵攻に備えた機体の開発を進めなければならない。」と演説されていたのを聞き、それならばと地上で空戦用モビルスーツ「グフ」のテストに志願した。

 

グフはザクⅡから空間戦闘用の装備を排除して代わりにスラスター等を強化し、2基のファンを搭載したバックパックをフライトユニットとして装備する事でド・ダイとの連携により空中での戦闘にも対応にした傑作機である。

ジャイアント・バズによる上空からの砲撃やド・ダイから急降下してのガトリング・シールドでの攻撃など高い戦闘力を持つ。

私としてはヅダ用の大型対艦ライフルを使った上空からの狙撃を推していたのだがそんな事が出来るのは私だけだと言われてしまった。なぜだ。

 

まあ、そんな感じにド・ダイを操縦する相棒のヘンシェルと地上で毎朝牛乳を飲みながら運用データの収集を行っていたのだが、グフの量産が正式に決定しサイド3に戻った私は今度は量産に向けたグフのテストに明け暮れる事になる。

 

UC0079年1月3日我々ジオン公国は地球連邦政府に対して独立戦争を挑んだ。

私も祖国のため戦いへの参加を望んだのだが「お前のグフは陸戦用だから宇宙戦はムリだ。」と至極当然の事を言われてしまい、アクシズでモビルスーツ隊が歴史を作っている時に何も出来なかった私は口惜しさのあまり男泣きしてしまった程である。

私はノーマルスーツさえあれば宇宙でもグフで戦えると思うのだが。

 

まあ、そうこうしている間に宇宙での戦いはジオンの勝利に終わり戦いの場所は今から地上へと移ろうとしている。

間もなく母艦グワダンのハッチが開き我等ジオンの鷲は地上へと舞い降りる事になるだろう。

 

そしてこの飛翔はスペースノイドにとって、そして何よりも私にとって大きな飛翔となるであろう。

 

 

 

オデッサ降下作戦におけるルーデル少佐の戦果

 

ビッグトレー級陸上戦艦マラート 撃沈

ビッグトレー級陸上戦艦ガングート 共同撃沈

巡洋艦キーロフ 撃沈

61式戦車 2個中隊(32両)撃破

セイバーフィッシュ2機 撃墜



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35話 UC0079年3月 第二次降下作戦

ルーデル閣下が大人気なのでちょっとしたアンケートを行っています。続きを書く際の参考にさせて頂きますので良かったら参加してみてください。


ポーランド上空 旗艦グワダン

 

UC0079年2月15日に始まった第一次降下作戦は順調に推移していた。

 

オデッサ直上に降下したグワダンから出撃したルーデル大隊のグフ27機の活躍によりオデッサに駐留していた連邦軍部隊は壊滅、またグワダンと一緒にルーマニアやハンガリー、ベラルーシ等に降下したザンジバルから出撃したドムの威力により、連邦軍は各地で敗退を続けていた。

 

オデッサ一帯がジオンの制圧下に置かれた事に焦った連邦軍ヨーロッパ方面軍はドイツやフランスに配備されていた機甲師団を集結させポーランドの地にて反攻作戦を展開する。

犬猿の仲であった連邦軍ロシア方面軍をも巻き込んだ大規模な反攻作戦であったが、増援としてオデッサに降下したユーリ・ケラーネ少将率いる第一地上機動師団と睨み合いをしているところに衛星軌道上のジオン艦隊からミサイル攻撃を受け軍の主力が混乱、その隙を黒い三連星率いるドム連隊に襲撃されドムの重装甲と機動性に全く歯がたたない連邦の61式戦車は次々と撃破され連邦軍は敗走した。

また、敗走した連邦軍ロシア方面軍は空からルーデル大隊による追撃を受け、投入された二個師団512両の61式戦車のうち、無事モスクワまで撤退出来たのはわずか25両余りであったという…。

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

連邦軍ヨーロッパ方面軍の追撃も一段落し、現在は戦線の整理をしている真っ最中である。

旧ドイツ領内に入った頃から機甲師団によるモビルスーツの迎撃を諦めた連邦軍は建物の影に隠れた歩兵による対MS用重誘導弾による攻撃や市街地で擬装した61式による待ち伏せなどのゲリラ戦に切り替えてきた。

このためドムによる急速な進撃が難しくなったことから降下したジオン艦隊は前線を第一地上機動師団と交代し次の作戦に向けた準備を進めていた。

 

「流石は兄上です!こうも容易くオデッサを制圧して見せるとは!」

 

「油断は禁物だぞ。ガルマ。工業地帯であったオデッサ周辺とは違い北米は連邦軍の庭のようなものだ。オデッサのように容易くはいかないだろう。」

 

「もちろん承知しております。ですが私もザビ家の男。親の七光りではない事を証明して見せねば。」

 

「フン。アクシズ戦役を見事に指揮してみせた貴様を親の七光りなどと思うジオンの兵など何処にもおるまいよ。まあ良い。間もなく第二次降下作戦が始まる。貴様の補佐につけたランバ・ラルの助言にはよく耳を傾けろよ。」

 

「はい。兄上。お任せください。」

 

「それではな。」

 

間もなく月面からのマスドライバー攻撃が開始され、それを陽動に水中用モビルスーツによる地上の港湾施設やレーダー設備への奇襲が始まる。

連邦は宇宙にばかり目を向けている状況なのでハイゴッグによる海からの奇襲はほぼ間違いなく成功するだろう。

その後、北米大陸の静止衛星軌道に位置するアクシズからのマスドライバーによる攻撃で地上の連邦軍主力に打撃を与え、混乱している所にMS特殊部隊のバリュート降下による襲撃で橋頭堡を築き上げあげた上で第二、第三地上機動師団の本隊を乗せたHLVを降下させる作戦は高い確率で成功が見込まれている。

 

しかし北米大陸の防空網はジャブローに次ぐ規模を誇っており、配備されている連邦軍も錬度はともかく兵器の質は高く決して油断出来る相手ではない。

如何に成功率が高かろうと賽の目は振ってみるまで何が出るかは誰にもわからないのだ。

 

そんな事を俺がグワダンの中の寝室で考えていると突然隣で寝ていたララァがむくりと起きあがり話しかけてきた。

 

「大丈夫です。総帥。」

 

「どうした?ララァ?」

 

突然話しかけられた事に驚いた俺がそう問い返すとララァから返ってきたのは今悩んでいる事に対する答えであった。

 

「ガルマ様が勝ちますわ。」

 

「…。私の考えている事が解るのか?」

 

「総帥は解りやすいですから。」

 

「そうか…。ララァは賢いな。だがララァにそう言って貰えると助かる。なかなか自らの決定に自信が持てなくてな。」

 

「そういう言い方、嫌いです。でもお役に立てたのなら良かった。」

 

そう言って微笑むララァの頭を軽く撫でると作戦の推移を確認するためブリッジへ向かう準備をはじめるのであった。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

連邦軍キャリフォルニアベース 防空指揮所

 

「状況は?!」

 

「月面のマスドライバーから質量弾の射出を確認!現在地対宙ミサイルにより迎撃を実施中です!」

 

「きおったな宇宙人どもめ!この北米大陸への降下軌道付近に連中のHLVが数多く確認されている。この攻撃に合わせて降下してくる可能性が大きいため、全軍に対空監視を徹底させろ!」

 

「はっ!そう言えば近海で水色の潜水艦らしきものを目撃したとの情報が入っておりますが巡洋艦を確認に向かわせますか?」

 

「バカ者!今は対空戦闘に全戦力を集中させろ。連中のミノフスキー粒子とかいう悪魔の兵器のせいでレーダーによる対空監視に支障が出ているのだ。」

 

「は!申し訳ありません!地対宙ミサイル一番から八番、目標の質量弾に着弾…いえ!三番と五番が目標物から外れました!発射された質量弾のうち二発が依然として接近中です!」

 

「くそっ!ミノフスキー粒子の影響か!地対宙レールガン全門発射用意!」

 

「レールガンと射撃統制システムとの連動よし。何時でも発射可能です!」

 

「ようし。撃…!?!今の音は何だ?」

 

「地上のレーダー設備が何者かの攻撃を受けたもようです!」

 

「何だと!?」

 

「バスク大佐!港の艦隊が正体不明の敵からの攻撃を受けています!」

 

「何だ?この水色の機体は?!くそっ!全軍に非常警報を発令!港の艦隊及び周辺の警備部隊は正体不明機の迎撃に当たれ!…!?そう言えば質量弾はどうなった!」

 

「レーダー損傷により目標物ロスト!現在地不明です!」

 

「予測データを地対宙レールガンに送り目測で迎撃を開始させろ!港の艦隊のレーダー情報は送れないのか?!」

 

「艦隊は正体不明機への防戦に手いっぱいでそれどころではありません!既に戦艦ドナルドとカーネルが撃沈!他にも巡洋艦や駆逐艦に多数の損害が発生しています!」

 

「この短時間にそれだけの損害だと?!」

 

「敵機はメガ粒子砲を乱射しており手がつけられません!!一部の敵機は上陸し地上の防空施設にも攻撃を開始しました!」

 

「出港可能な艦は全て港の外に出港させろ!港に止まっている状況では単なる的になってしまう!」

 

「!!質量弾二発のうち一発は迎撃に成功しましたがもう一発が中央格納庫に直撃!出撃準備中だった第201師団司令部との連絡が途絶しました!」

 

「近郊に駐屯している第204、205、208師団に応援を要請しろ!今攻められたら一溜まりもないぞ!」

 

「大佐!地下ドックの入口を敵機に破壊されました!このままでは潜水艦隊が出港できません!」

 

「地下ドックなどほうっておけ!基地を守り抜けば後で修理すれば良い!」

 

「た、大佐!」

 

「ええぃ!今度は何だ?!」

 

「近郊に駐屯している各師団がマスドライバーによる攻撃を受けています!」

 

「何だと!?もう月から次のマスドライバー攻撃がおこなわれたというのか?」

 

「いえ!報告によれば月ではなくアクシズから発射されたものによるようです!」

 

「おのれジオンめ……!!いかん!これだけ攻撃を集中させてくるということは連中は間違いなくここに降下してくる気だぞ!防空部隊はどうなっている!?」

 

「敵の攻撃で滑走路に甚大な被害が発生したため、大半の戦闘機が離陸出来ません!地対空ミサイル部隊については各個に迎撃準備を完…いえ!現在降下してきた敵モビルスーツ隊と交戦している模様!」

 

「HLVの降下を許したのか?!」

 

「違います!どうやらモビルスーツが直接大気圏を突破してきた模様!第201師団の残存している61式戦車とファンファン、それに歩兵大隊がそれぞれ必死の抵抗を続けていますが増援がなければ支えられそうにありません!」

 

「く…近郊の師団は!?」

 

「…。同様に敵のモビルスーツ隊による奇襲を受けている模様でむしろ向こうからも此方に増援要請を出してきています。」

 

「何としても敵を突破し増援に来るよう伝えろ!!」

 

「敵のHLV群の降下が始まりました!基地の東30キロの地点に向け多数のHLVが軌道上を降下中!」

 

「誰でも何でもいい!迎撃しろ!」

 

「大佐…今のこの基地に敵部隊を迎撃する事が可能な戦力は残されておりません…。」

 

「まだだ!まだここに私がいる!私がいる限りこの基地を落とさせたりはせんぞ!残存する部隊で一番規模が大きいのはどれだ?」

 

「最早この防空司令部警備大隊が最大の部隊であります…。」

 

「フン。それは部隊を探す手間が省けた。各員ワタシに続け!」

 

UC0079年3月11日2300

キャリフォルニアベースは衛星軌道から降下してきたジオン公国軍第三地球機動師団により制圧された。この後キャリフォルニアベースはジオン地上軍の重要拠点として運用されていく事になる。




良い10連休をお過ごしください。

ギレン一家の配置

アイナ、サイド3でギレン邸を守る
メイ、ア・バオア・クーでギレン専用機の開発
ハマーン、グワダンに護衛として乗船
ララァ、グワダンに愛人兼護衛として乗船

となっています。
愛人扱いで乗っていたので寝室がギレンと一緒になりました。


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36話 UC0079年3月 第三次降下作戦

シドニー上空 旗艦グワダン

 

第二次降下作戦から一週間が経過したUC0079年3月18日ジオン公国軍はオセアニア大陸の攻略を目的とした第三次降下作戦を開始した。

 

当初はオセアニア大陸と合わせて東南アジア一帯にも同時侵攻を予定していたが、ギレン総帥の急速な戦線拡大に伴う補給線への負担増大を懸念する声によりモビルスーツの運用に向かない東南アジア一帯の侵攻を一時断念し、オセアニア大陸攻略に専念する事になったものである。

 

オデッサから宇宙に上がっていたグワダンとザンジバルで構成されたジオン地上艦隊と第四地上機動師団は連邦の防空網が薄かったエアーズロック周辺に降下するとオーストラリア各地に向け分散して進軍する動きを見せた。

 

これはジオンの奇襲戦法に苦しめられてきた連邦軍が部隊を大隊単位で各地に分散配置し、待ち伏せ戦法をとるようになった事から平野部を大々的に進軍する事で敵の主力部隊を釣りだし纏めて排除する事を目的としていた。

しかし連邦軍主力はシドニーやメルボルン、ケアンズ、パースなどの都市部に立て籠ったまま全く動く事がなかったため結果としてこの目的は果たせずに終わる。

 

これに対してジオン軍は連邦軍が動かないのを良いことにシドニー近郊に全軍を再集結しシドニーを全方位から包囲する動きを見せる。

動くに動けない連邦軍を尻目に包囲網を完成させたジオン軍は全方位から同時に侵攻を開始。連邦軍の幾重にも及ぶ防衛線をモビルスーツの性能と数により力ずくで粉砕したジオン軍は瞬く間にシドニー全域を制圧下においた。

これは背の高い建物がそれほど多くなく、また地形の大半が見通しの良い地形であり待ち伏せに向いていなかったからこそできた力技であった。

 

その後、キャンベラ、メルボルン、パースと次々味方が各個撃破されるのを見た連邦軍オーストラリア方面軍は待ち伏せに向かないオーストラリアの地を守る事を諦めニュージーランドやアジア太平洋地域に向け撤退を開始した。

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

第三次降下作戦は予想以上に順調に進んでいる。最初は連邦軍が待ち伏せ戦術に徹していたためどう対応するべきか迷ったものの、幸いオーストラリアの地形は高い建物や植物が少なく待ち伏せに向いていなかったため、味方の戦力を集中する事で数の力でゴリ押しする事にした。

各個撃破って響きが良いね。

 

原作同様に東南アジア一帯にも同時侵攻していたら森林や山岳だらけで危ない所だった。

東南アジアの攻略を独断で中止した事についてはキシリアから批判されたりもしたがあんなモビルスーツの運用に向かない地形に自分から攻め込むなど正気の沙汰ではないので強引に中止させた。

やはり地図しかみていない状況で考えられた作戦には限度があるね。

 

それに東南アジア一帯という人口密集地帯を連邦の勢力下に置いておくメリットを誰も考えていないのが不思議でならなかった。

考えてみて欲しい。自らの勢力下に置いておくという事は最低でも衣食住は支配する者が面倒をみなければならない。

開戦前ですら地球だけで食料やエネルギーを自前でどうにかできなかった連邦が北米とオーストラリアという地球上で有数の穀倉地帯を失った状態で東南アジア一帯という人口密集地帯をどうやったら食べさせていく事ができるというのだろうか?

原作でさえ食料危機にならなかったのはジオンのコロニー落としで人口が半減したからこそと言われていたのだ。

全く人口が減っていない東南アジア一帯をどうやって食べさせていくのかハイゴッグを増産して海路を寸断しながらせいぜい見物させて貰う事にしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

キシリア・ザビ

 

「何のようだキシリア。何度言われようと当面は東南アジア一帯を攻める気などないぞ。」

 

モニターに我が兄ギレンの姿が浮かびあがる。第三次降下作戦を失敗に追い込むため、当初の作戦案をそのまま連邦に流したにも関わらず柔軟な対応であっさりと作戦を完了させた怪物だ。

 

「いえ、本日連絡させて頂いたのは先日指示されたハイゴッグの量産についてです。なぜこのグラナダに地上専用機の量産を命じられたのですか?」

 

「なんだそんな事か。ザクⅡならともかく、最新型機であり軍事機密の塊である機体をどこにスパイがいるか分からない地上で量産する事などできるはずがないだろう?」

 

「それはそうですがグラナダは兄上の命により防衛網の強化を開始したばかり。とても戦力として使えない地上専用機を量産している余裕はありません。」

 

「ふん。一応筋は通っているな。よかろう。サイド3とソロモンからある程度艦隊を回す。ハイゴッグの量産を行っている間はその艦隊で防備を固めるが良い。」

 

「ありがとうございます。あとひとつ兄上にお願いがあります。」

 

「貴様が俺に頼み事とは珍しいな。言ってみろ。」

 

「現在我がジオン軍で運用している機体は全てジオンの絆で長い年月をかけて開発したモビルスーツ用OSを特殊なブラックボックス化したパーツに搭載して稼働しています。」

 

「そうだ。機体の構造は鹵獲した機体を調べればわかってしまうだろうが全ての機体の鹵獲を防ぐ事など不可能だ。だがモビルスーツ用OSのデータ流出を防ぐだけならデータを吸い出そうとした瞬間に自爆する特殊なパーツに入れてブラックボックス化してしまえば良い。」

 

「ですがそのOSデータは味方であるはずの我々にも公開されておりません。」

 

「仕方なかろう。あのモビルスーツ用OSは我が軍の強さを支える機密のひとつであるのだ。レビルの情報が漏れていた事といいどこから情報が漏れているのかわからない現状で容易に渡す事などできんよ。」

 

「兄上の懸念はごもっともです。しかしOSデータが開示されていないためパイロット特性に応じたカスタマイズや新たな機体の開発が一切できない状況に陥っております。そしてこれは私だけでなくドズルや地上のガルマからも同様の話を聞いております。」

 

「…。新たな機体の開発を各拠点で独自に行う必要などないのだがな。だがドズルとガルマも同意見であるというなら無視する訳にもいくまい…。よかろう。コピーができないように特殊なプロテクトをしたデータを何本かそれぞれに送ろう。それを機体の開発やカスタマイズに使うが良い。」

 

「しかしそれでは開発した機体を量産する事ができません。」

 

「その場合は開発した機体のデータを送れ。テスト結果が良好であれば量産に向けた対応を約束しよう。」

 

「…。わかりました。ではそれで結構です。艦隊の派遣の件もよしなに。」

 

そう言うとギレンとの通信を切る。

 

何とかOSデータを入手する事ができそうだが完全なものが手に入らないのは痛いな。

 

モビルスーツ本体の生産数を秘密裏に増やしても機体をコントロールするのに必須なブラックボックスユニットはア・バオア・クーとアクシズの機密区画でしか製造しておらずギレンに黙って戦力を増やす事ができない仕組みとなっているので何とか今回の件でOSのマスターデータを手にいれたかったがこれ以上粘ると反意を疑われかねん。

 

当面はサイド6に秘密裏に作らせた研究所にニュータイプ研究と合わせてモビルスーツ以外の兵器についても研究させる事にしよう。




良い10連休をと言いましたが更新しないとは言っていない。

ルーデル閣下のアンケートを見て一瞬数が間違いではないかと思ってしまいましたw
何時までも続けるのはあれなので明日で一端打ち切らせて頂こうと思います。


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37話 UC0079年4月 V作戦

オデッサ基地

 

開戦から僅か3ヶ月で地上の約三割はジオン軍の支配下となっていた。ジオン軍の地球降下作戦の勢いは凄まじくモビルスーツを持たない連邦にジオンの侵攻を止める手立てはなかった。

 

一方ジオン軍も急速な占領地域の拡大に対応するためニューヤーク攻略完了を機に進軍を一時停止し、また、連邦も度重なる敗戦で疲弊した部隊の建て直しに力を注いでおり思うように動けず両軍とも大規模な動きが無いまま時が流れていた。

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

諸君が誰かとお楽しみ中のところに

 

「ギレン閣下!ドズル様とガルマ様から緊急の通信が入っています!」

 

こんな通信が入ったら君達はどう思うだろうか?

 

てっきり私はソロモンかキャリフォルニアが連邦軍にでも急襲されたのかと思い慌てて通信に出てみればそこで聞いたのは予想だにしない内容であった。

 

「聞いてくれ兄貴!」

「聞いてください。ギレン兄さん!」

 

「二人して急に連絡してくるとは何事だ?連邦の二点同時襲撃か!?」

 

「いや、そういった事じゃない。兄貴にモビルスーツ用OSのデータを貰ったので自分専用機を作ろうと思いガルマと話していたのだが俺の作ろうとしている機体について猛反対されてな。」

 

「当たり前です!聞いてくださいよギレン兄さん。ドズル兄さんは自分の専用機を格闘戦専用機にするとか言っているんですよ?!指揮官が危険な格闘戦を積極的にしてどうするんですか!」

 

「ガルマよ。お前の言いたい事はわかるが戦場に危険ではない場所などない。であるならば俺が先陣を切って突入して味方の士気を上げた方が良いではないか!」

 

「戦場が危険なのはわかっています!ですが我々ザビ家の者が同じ戦場にいるだけで十分士気高揚は望めます。であるならば多少なりとも安全な後方から支援に徹するべきです!」

 

「とまあこんな感じで二人で話していては全く話が進まなくてな。それでモビルスーツ開発の第一人者である兄貴に決めて貰おうと思い連絡した訳だ。」

 

「……。緊急の連絡だというから何事かと思えば…。あと別に私はモビルスーツ開発の第一人者という訳ではないのだが…まあ用件はわかった。専用機くらい好きに作れば良いだろう。ではな。」

 

「ま、待ってくれ兄貴。何をそんなに怒っているんだ?」

 

「時差があるので気がつかないかもしれないが此方は深夜だ。そこを緊急連絡という事だったので慌てて出てみればこれだ。私の気持ちがわかるか?」

 

「そ、それは申し訳ありません兄上…。」

 

「サイド3とは違い地球は広い。その事を忘れるなよ。ガルマ。」

 

「はい!肝に命じます。」

 

「ふん。ならばよい。要は格闘戦専用機と射撃専用機のどちらが優れているかという話だろう。ジオ・マッド社がゲルググを開発するためのテスト機として開発したギャンという試作機が丁度二機ある。一機づつくれてやるから好きに改良するがいい。そして改良した機体同士で戦わせ勝った方の意見を採用すればよかろう。」

 

「なるほど!勝者が正しいという事だな!」

 

「何か少し違う気もしますが良いでしょう。私の実力をご覧にいれて見せましょう。」

 

全く人がこれからお楽しみだったというのに…。まあ良い。丁度次期主力機開発の為に格闘戦専用機と射撃専用機のデータが欲しかったところだ。せいぜい利用させて貰おう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

とある政府高官と連邦軍大将

 

「将軍どうなっているのだ!君が地の利がある地上でならジオンに勝てると言うからルウムで惨敗した君を連邦軍の総司令官にまで抜擢したのだ。それにも関わらず地上でもジオンに押されてばかりではないか!」

 

「前にもお話しした通り我が軍の劣勢はジオンのモビルスーツの威力によるものです。対MS用重誘導弾の投入や61式戦車による伏撃により一定の戦果は上がってきておりますがジオンに勝利するには我々も相手と同じ土俵に立つ必要があります。」

 

「なんだね?その資料は?」

 

「ジオンのモビルスーツに対抗する為の唯一の手段、我々がV作戦と呼んでいる新型モビルスーツの開発計画です。」

 

「モビルスーツのあるなしが大局に影響すると?今の我々の苦戦はジオンの奇襲戦法によるものではないのかね?現にオーストラリアでの戦い以外は全て敵の奇襲が最大の敗因となっているではないか。一からモビルスーツを作るより現行の兵器の性能を向上させるなどして対抗した方が良いのではないかね?」

 

「戦場を地上に限定出来るのであればそれで対応する事も可能でしょう。しかし宇宙空間でのモビルスーツの優位は圧倒的で多少既存の兵器を改良した程度で埋まるものではありません。」

 

「…。それほどのものかね?」

 

「ミノフスキー粒子散布下の戦闘で、厚い装甲と高い機動性をもつザクに勝つにはセイバーフィッシュが5機は必要となります。」

 

「それほど性能に差があるのならば確かにモビルスーツを開発する必要があるかもしれんな…。だがそう簡単に開発出来るものなのか?」

 

「既にアクシズ戦役で鹵獲したザクの研究を開始しており基本構造については既に解析が完了しております。またジオンは各サイドやオデッサ、オーストラリア等でザクの量産を開始しており現在そこに情報部の人間を潜入させ製造方法についての情報収集も行わせております。」

 

「おお、それならば直ぐにザクの量産が開始できるではないか!」

 

「いえ、ただ同じザクを量産するだけではパイロットの技量が違うため我々に勝機はありません。無論コピーした機体の製造も始めますが当面は我が軍に合わせた機体の開発に努める予定です。

最初は次期主力戦車として開発中だったRTX-44をベースにザクから得られた技術を反映した機体を開発する予定です。ただ…。」

 

「何か問題があるのかね?」

 

「鹵獲したザクを解析してわかったのですが、機体を動かすOSデータがブラックボックス化されておりデータを取り出せない構造になっていました。このままでは機体は量産できても動かすOSがないという事態に陥ります。」

 

「それでは機体を製造しても意味がないではないか!」

 

「はい。ですので現在ジオンの内通者にOSのデータを入手できないか交渉中です。向こうでも大変貴重なものらしく幾つかの条件を飲めるのならば渡しても良いとの返答が来ました。」

 

「その条件とは?」

 

「技術情報や鉱物資源の提供といったものもありますが最も大きいのは連邦軍が戦争に勝利した場合における一部のジオン高官の助命です。」

 

「ジオンの高官とはザビ家の人間か?」

 

「はい。ただ、全員という訳ではなくザビ家の中の一名のみです。」

 

「フム。まあ一人ぐらいなら見逃してもよかろう。戦後のジオンを纏めさせる人間も必要だしな。」

 

「では至急内通者と連絡をとってデータの入手に努めます。コピーできないように強力なプロテクトがかかっているそうですが我が軍の技術部であれば一月もあればプロテクトの解除も可能でしょう。また、ジオンよりOSが手に入らなかった場合に備えて学習型コンピュータを用いたOS開発も並行して行っております。ご安心ください。」

 

「うむ。わかった。V作戦が通るよう私からも根回しをしておこう。だが将軍、これが最後のチャンスだと思いたまえ。この計画に失敗するようであれば君には責任をとってもらう事になる。」

 

「…承知しております。ではビンソン計画の方と合わせてV作戦の根回しもよろしくお願い致します。」




アンケート結果
■質問文※200文字以内
ルーデル閣下はニュータイプだと思いますか?

■回答※20字以内。2件以上入力必須
(344) ニュータイプっぽくないがニュータイプ
(927) とてもそうは見えないが一応オールドタイプ
(523) 神
(500) なろうの世界から来た転生者

投票結果を加味して、本作ではルーデル閣下はオールドタイプとさせて頂きます。

というかネタのつもりで入れた神と転生者がニュータイプを上回るとはw

これに魔王が入っていたらどうなっていたんでしょうかね…。


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38話 UC0079年4月 補給戦線

色々な方からご指摘のあった通り余りにも簡単にOSを渡したように見えたので前話の最後を修正しました。良かったらラストをもう一度読んでみてください。


オデッサ基地

 

UC0079年4月4日地球上に展開するジオン軍に対してジオン本国から大規模な増援部隊の降下作戦が実施された。

特に三つの連邦方面軍に囲まれていたオデッサに対しては当初アフリカ方面に展開する予定であった部隊を第5地上機動師団として派遣したため一気にその戦力を増強させる事になった。

 

また、増援部隊の降下に合わせて軌道上に展開したジオン艦隊から地上に向け宙対地ミサイルによる対地攻撃が実施された。

 

この攻撃は地上の連邦軍や工場等ではなく橋やトンネル、ダム等を狙って実施されたため、当初ジオン側の意図が解らず首をかしげていた連邦軍首脳部であったがすぐに目的が判明し戦慄する事になる。

軍民問わずありとあらゆる物資の流れに障害が出始めたからである。

 

農場も、鉱山も、工場も全てのインフラは物流網が機能しているからこそ意味があるものであり、物流網が停止してしまえばそれらインフラが無傷でも全く意味がないものになる。

 

例えば農場にどれだけ農産物があっても、物流網が止まれば都市には届かず市民は飢えるしかない。

 

例えば鉱山でどれだけ資源を掘り出したとしても、物流網が止まればそれは無意味に穴を掘っているのと違いはない。

 

例えば工場が無傷であっても、物流網が止まれば製品を作るための資源が入らず何も作れないし、完成した製品を輸送することもできない。

 

都市部や工場に対して無差別攻撃を実施する事で連邦市民から怨みを買うような事はせず、国家の大動脈である物流網を締め上げる事で連邦経済に大きな打撃を与えると同時に補給線に過大な負荷を与える事を狙ったジオン軍の攻撃であった。

その後も定期的に実施されたこの交通インフラに対する宇宙からの攻撃によりただでさえ不足気味であった連邦の食料不足は更に深刻さを増していく事となる。

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

今回の増援でオデッサ方面軍は、第5地上機動師団が増援として到着し、2個地上機動師団編成となった。

 

今までは第1地上機動師団を分散して各地に派遣する事で戦線を構築していたのだが、オデッサは連邦軍のヨーロッパ方面軍、ロシア方面軍、アフリカ方面軍の3つの方面軍と同時に交戦している為、初期の奇襲効果が薄れてくるとモビルスーツの威力をもってしてもなかなか進軍する事が出来なかった。

 

特に連邦軍ロシア方面軍とアフリカ方面軍はモビルスーツが戦場に現れると同時に後退し、モビルスーツがいなくなった途端に反撃に転じるという戦術に徹していた。

この戦術を繰り返されていい加減頭にきたので「おら、橋を落としてやったぞ。逃げれるものなら逃げてみろよ作戦(正式名称:水天の涙作戦)」を増援部隊の降下にあわせて実施した。

ジオン軍のモビルスーツにとって川は大した障害にならないが連邦軍の主力となっている戦闘車両の多くにとってはそうではなかった。

増援部隊の降下を察知したロシア方面軍は急いで後退しようとしたものの、あらゆる架橋を宇宙からの攻撃により破壊され立ち往生している所を上空から飛来したルーデル率いるグフ大隊により襲撃され大損害を受けた。

 

また、アフリカ方面軍も今回増援として降下してきた第5地上機動師団が丸々アフリカ方面軍ヘの対処に向けられたため、その圧倒的な戦力により各地で敗走を続けオデッサからアラビア半島を越えスエズ運河までの一帯を一気に失う事になった。

この敗北によりスエズ運河を失陥した連邦軍はアジアと欧州を結ぶ海の大動脈をも失う事になったのである。ざまぁ。

 

と、まあそれは良かったんだが……。

 

「ちょっと!ちゃんとメイの話を聞いてるんですか?ギレンさん!」

 

「あ、ああ。もちろんだ。メイ」

 

「メイがギレンさんの為に一生懸命新型機を作ってるのに今年に入ってからちっとも連絡もしてきてくれないし、先月になってやっと連絡してきたと思えばモビルスーツ用OSをちょっと弄ってプロテクトをかけてくれとか仕事の話だし……。全くメイの事を何だと思っているの?!」

 

「す、すまない……。色々と忙しくてな。ところで何故メイが地球に?」

 

「ギレンさんの専用機の開発が一段落したからこっちにきたの。まだサイコミュの小型化が完了していないから完全ではないけどモビルアーマーとしてはある程度運用できるようになってきたみたい。今はアクシズでガトーさんが機体のテストをしてるよ。」

 

「そうか。だがそれならアクシズにいた方が良いのではないか?」

 

「それで宇宙での稼働には問題なさそうだったから私は地上で運用するためのフライトユニットのテストをするために降りてきたの。それと……。」

 

「それと?」

 

「アイナお姉ちゃんに地球上でギレンさんが困ってないか見てきてってお願いされたの。何か困ったりしてる事はない?」

 

「三つの連邦方面軍に同時に対処するのに苦戦していたがメイと一緒に地上に降りてきたノイエン・ビッターの第5地上機動師団の戦力があれば問題なく対処できる。もうすぐオデッサの工業地帯を使ったザクⅡの量産も軌道に乗るだろうから当面は困るような事は特にないな。」

 

「そっか。ハマーンさんやララァさんに迷惑かけてないかアイナお姉ちゃんが心配してたから何事もなかったなら良かった。」

 

「……。も、勿論だとも。」

 

「……?さてそれじゃフライトユニットのテストに行ってくるね!」

 

おかしい。開戦から続いた戦闘のストレスで愛人として同室にいたララァの言葉に甘えてしまったが何故それをアイナが知っている?まさか原作とは違ってアイナもニュータイプになった?!

い、いや。以前に念のためテストをしたがそんな素養は全くなかったハズ……。

ま、まあ仕方ない。どうせハワイの連邦艦隊をかたづけるまでは安心して宇宙には上がれないのだ。それまでに何とかアイナの機嫌をとる方法を考えておくようにしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

メイ・カーウィン

 

ふぅ……。去年の10月位からずっと開戦に向けてバタバタしていて暫くギレンさんと何も話せてなかったから強く言い過ぎちゃったかな?

まあ義理とはいえ娘の私に寂しい思いをさせたんだからあれくらいは言ってもきっと許してくれるよね?

 

さてとそれじゃもってきた機材をテストするために格納庫へ……!あ!

 

「ハマーンさーん。」

 

「メイちゃん!元気そうで良かった。いつ地球へ?」

 

「ついさっきだよ。ハマーンさんも元気そうで良かった。」

 

「ええ。アクシズ戦役やオデッサ、シドニーの攻略戦の時はモビルスーツに乗って戦場に出たりもしたけれどそれ以外はずっと閣下のお側で身辺警護をしていただけですもの。元気に決まっているわ。」

 

「それでも戦場に出たりしたんでしょ?すごいなぁー」

 

「メイちゃんの方がずっとすごいわ。ジオンのモビルスーツは全てメイちゃんが作ったOSで動いているのよ?」

 

「えへへ?そうかな?でもまあ私一人で作った訳じゃないしね。あ、そうだ。最新型のサイコミュの試作品を持ってきたから後でテストに付き合ってくれる?」

 

「勿論いいわよ。ララァさんにも手伝って貰えるようにお願いしておくわね。」

 

「あれ?そう言えばララァちゃんは?」

 

「ララァさんなら多分ギレン総帥のお部屋にいるんじゃないかしら。」

 

「???何でギレンさんの部屋にララァちゃんが?」

 

「言いにくいのだけれどララァさんはギレン総帥の愛人という名目で地上に降りて来ているから。実際は私と同じでモビルスーツのパイロットとして戦場に出ているのだけれど……。」

 

「ララァちゃんがギレンさんの愛人……。」

 

「あら?知らなかった?以前に地球視察の時にララァさん一家が生活に困っているのをギレン総帥がお知りになってそれを助ける時に愛人として迎える契約をしたの。地上で困っている沢山の人達の中からララァさん一家だけを助けるには何か理由が必要だったから。」

 

「そうだったんだ……。」

 

「あ、もしかしたら何かお考えがあって伝えていなかったのかもしれないから私から聞いた事は内緒にしておいてね。」

 

「うん。わかった……。」

 

「それじゃまた後でね。」

 

ララァちゃんが愛人かぁ……。

 

最初紹介された時は「メイ、お前の新しい友達だ、仲良くするように。」と言われただけで愛人の事はギレンさんもララァちゃんも何も言わなかったので私よりも年下のララァちゃんが愛人としてギレンさんのところに来ていた事を私は知らなかった。

無論愛人というのはララァちゃんの一家を助ける建前だったんだろうけど私の身近な二人がそういう契約だった事を知り心の中がもやもやして仕方なかった。

 

私も娘じゃなくて愛人として助けて貰っていたら今頃どうなっていたのだろう?

今のギレンさんとの関係に不満がある訳じゃないのに、何故かそんな疑問が頭に浮かんできたのが不思議で仕方なかった。




備考
UC0079年4月4日現在での地上における主な戦力配置

第1地上機動師団(ヨーロッパ方面軍)
指揮官 ユーリ・ケラーネ少将

第2地上機動師団(ジャブロー方面軍)
指揮官 ガルマ・ザビ少将
(アクシズ戦役の功績で昇進)

第3地上機動師団(カナダ方面軍)
指揮官 ガルシア・ロメオ少将
(当初ジャブロー方面軍を任せられる予定だったがランバ・ラルが反対したため北米大陸の連邦軍残党の対処に当てられる。)

第4地上機動師団 (オーストラリア方面軍)
指揮官 ウォルター・カーティス准将
(オーストラリア攻略戦の功績で昇進)

第5地上機動師団(アフリカ方面軍)
指揮官 ノイエン・ビッター大佐

ルーデル大隊(ロシア方面軍)
指揮官 ハンス=ウルリッヒ・ルーデル少佐
(オデッサ攻略戦の功績で昇進、今後連隊に改編される予定)

ガイア連隊(ドムのみで構成された戦略予備)
指揮官 ガイア・ギャレット少佐

オデッサ防衛連隊
指揮官 ミハエル・ヴィットマン少佐

戦略海洋軍
指揮官 オットー・クレッチマー大佐
(キャリフォルニアベースを根拠地として編成中、主にユーコン級とハイゴック、ゾッグで構成)

規模
地上機動師団
MS師団、機甲師団、歩兵師団及び航空艦隊の統合部隊
細かな編成は各師団によって異なる。

MS師団(4大隊)MS108機
MS連隊(2大隊)MS54機
MS大隊(3中隊)MS27機
MS中隊(3小隊)MS9機
MS小隊 MS3機


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39話 UC0079年5月 ジャベリン・トライデント作戦

ハワイ上空

 

ハワイ諸島は小さいながらも、広大な太平洋の中心に位置している事から長らく連邦軍太平洋艦隊の拠点として使用されており、現在も200隻近い連邦軍艦艇が駐留していた。

それを守る為の防空網と哨戒ラインは、大西洋に位置するベルファストと同様にジャブローに匹敵するほどの規模であり、ジオン軍の侵攻を頑強に阻んでいた。

 

新たに新設された戦略海洋軍の支援によりオーストラリアに続きニュージーランドをはじめとしたオセアニア一帯を完全に支配下においたジオン公国軍は、北米大陸のジオン軍領域とオセアニア一帯のジオン軍領域とを海路で繋げることを目的としたジャベリン・トライデント作戦を展開する事になる。

 

UC0079年5月21日

ジャベリン・トライデント作戦の第1段階「ジャベリン」作戦が開始された。

 

これは東南アジア各地の連邦海軍基地へアクシズからのマスドライバー攻撃と軌道上の艦隊からの対地ミサイル攻撃を同時に行い飽和攻撃により基地の防空網を破壊。

これに乗じて降下したザンジバルと搭載モビルスーツによる攻撃で駐留部隊と基地施設を破壊した後そのままジオンの勢力圏まで離脱するというものであった。

 

ただ、このジャベリン作戦は想定以上に苦戦する事になる。

ジオン軍の軌道上からの攻撃を警戒していた連邦軍は放たれたマスドライバーのほぼ全てと対地ミサイルの50%の迎撃に成功。

また、連邦は滑走路や格納庫を増設して航空機を分散配置したり、あえて基地外に退避壕を作りそこに部隊を避難させる事でかなりの戦力の保持に成功していた。そのため、各地に降下したジオン軍は想定外の連邦軍の数によって苦しめられる事になる。

 

特にシンガポール基地では連邦軍が試作型のガンタンクを配備していたことから降下したリリー・マルレーンの右舷第3エンジンにガンタンクの砲弾が直撃、一時不時着する事態に陥ってしまう。

幸いリリー・マルレーンに搭乗していたのはシーマ中佐率いる親衛隊の精鋭であったため、不時着したリリー・マルレーンの追撃に出てきた連邦軍部隊を逆に粉砕、無事にジオンの勢力圏まで離脱する事に成功した。

 

UC0079年5月22日

このジャベリン作戦によってジオン軍の次の攻撃目標が東南アジアにあると判断した連邦軍首脳部はハワイに駐留していた連邦海軍第7艦隊を増援として派遣する事を決定する。

 

第7艦隊はヒマラヤ級大型戦闘空母エベレストを旗艦とし、ヒマラヤ級大型戦闘空母7隻、ジュッドランド級戦艦2隻、アルバータ級ミサイル巡洋艦18隻、モンブラン級ミサイル駆逐艦36隻、U型潜水艦18隻で構成される連邦海軍有数の戦闘集団であり、その戦力は実にハワイに駐留する連邦艦隊の実に四割にも及んだ。

 

UC0079年5月24日

オアフ島の沖合いで第7艦隊が出撃するのを待ちわびていた戦略海洋軍は第7艦隊が出撃するのを見届けると戦力が大幅に低下したハワイ基地の攻略に向け静かに部隊を展開させる。

8隻のユーコンと2機のモビルフォートレスから出撃した54機のハイゴッグは連邦の哨戒ラインにかからないよう警戒しながら静かに開戦の時をまった。

 

ハイゴッグ隊に先んじてユーコンから特殊潜航挺で出撃したランバ・ラル率いる特殊工作隊は、苦もなくオアフ島に上陸すると連邦軍基地へと潜入し、レーダーサイトを始めとした指揮通信施設に爆弾を設置し速やかにオアフ島を後にした。

 

UC0079年5月25日 0000

ランバ・ラル率いる特殊工作員が仕掛けた爆弾が連邦軍のレーダーサイトや指揮通信施設を吹き飛ばすと同時に「トライデント」作戦が開始された。深夜の敵襲により大混乱に陥るハワイ基地に対してユーコンから無数の対地ミサイルが発射され連邦軍の混乱に更に拍車をかける事になった。

 

同時に展開を完了していたハイゴッグ隊が一斉に行動を開始。

フラナガン・ブーン大尉率いる戦略海洋軍 第1大隊はオアフ島南の海上で哨戒に出ていた連邦軍警備艦隊に襲いかかった。

 

ヒマラヤ級空母3隻、アルバータ級巡洋艦6隻、モンブラン級駆逐艦12隻、U型潜水艦6隻で構成された警備艦隊は決して油断していた訳ではなかったが至近距離から突然27機ものハイゴッグに襲われてはどうしようもなかった。

 

最初のハイゴッグからのハンドミサイルによる一斉攻撃でヒマラヤ級空母2隻とアルバータ級巡洋艦3隻、モンブラン級駆逐艦5隻が沈められ、いきなり過半数を失った連邦艦隊はすぐさまドン・エスカルゴ対潜哨戒機や対潜ヘリを離陸させ残存艦艇による対潜ミサイルや短距離魚雷による反撃を試みるもハイゴッグの水中性能は圧倒的であり、態勢を建て直せないまま次々と沈んでいった。

 

また、ギュンター・プリーン大尉率いる戦略海洋軍 第2大隊はオアフ島北の海上に姿を現すと、背中に装着したジェットパックを用いてオアフ島の内陸部を一気に飛び越え陸地側から港に停泊する連邦艦隊を襲撃した。

戦時下という事もあり、どの船も最低限運航に必要な乗組員は乗船していたものの、突然の襲撃にすぐに対応できた船はほとんどなく、全く想定されていなかった内陸部からのモビルスーツによる攻撃により湾内の連邦艦隊は次々と撃破されていった。

 

それでもオアフ島に駐留していた連邦軍海兵隊員が対MS重誘導弾「リジーナ」や試作型ガンタンクを用いた反撃で数機のハイゴッグを撃破したものの、本来対地、対潜攻撃の要となるべき航空隊が拠点としているヒッカム空軍基地がユーコンから発射された対地ミサイルにより破壊されてしまっていてはこれ以上の逆転は望めなかった。

 

その後、密かに衛星軌道上に展開していたグワダンが降下してきた事を契機として連邦軍残存部隊はハワイからの撤退を決定。

 

海兵隊残存部隊が各所で抵抗を続けつつ、離脱可能な航空隊や残存艦艇は次々とハワイからアジアに向けて離脱していった。

 

 

 

やあ…諸君。この戦いが終わったら一度本国に帰ろうと思っていたのだが、アイナに怒られそうな予感がするので帰るのを延期しようか迷っているギレン・ザビである。

 

というかララァに手を出してからというものララァが二人きりになるとメッチャ甘えてきたり、メイが最近向けてくる視線が何かいいたげなのに、こっちから声をかけると何故かそのまま走って行ってしまったりでハワイ攻略戦の指揮をとっている間も気になって仕方なかった。

 

お陰でハワイから脱出した連邦艦艇を追撃させるのを忘れていた位である。

ま、まあ下手に追撃していたら連邦の第7艦隊と正面からぶつかる事になっただろうから良かったと言えば良かったのだが。

 

当初そのままハワイの奪還に向かってくるかと思われた連邦軍第7艦隊だったが、予想に反してオアフ島から脱出した残存艦艇を守りながら日本に向けて撤退していった。

正直万全な状態の第7艦隊と正面からぶつかった場合、かなりの損害を覚悟しなければならないところだったので助かった。恐らく離脱した艦艇からの情報でハイゴッグの性能をかなり高く評価して警戒しているのだろう。

 

さてこれでハワイの制圧も概ね完了し、地上の戦況も一段落したのでデギン公王への報告やグワダンの乗組員の休養も兼ねて一度本国に帰る予定なのだが……まあ帰るのを延期したところで何時かは帰らなければならないのだからここは大人しく帰るとしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

連邦宇宙軍

ヘリオン作戦参加艦隊旗艦

 

「艦長!全艦、暗礁宙域内の所定の位置へ配置完了しました。」

 

「ウム。ご苦労。」

 

「しかし艦長本当にこれだけの艦であの怪物艦に仕掛ける気ですか?味方は本艦を入れてもマゼラン3隻とサラミス12隻それに4隻のコロンブスに乗せてきたパブリクが32機ばかりあるだけです。相手は1隻みたいですから少ないとは言いませんが、あの船には以前第2地球軌道艦隊がまるごと壊滅させられているんですよ?」

 

「仕方なかろう。情報が入った時点でこの宙域に到達可能だったのが我々だけだったのだ。それにどんな相手でも油断している所を襲撃できれば充分に勝機はある。あの怪物艦とギレン・ザビを同時に始末できる可能性があるのならば多少のリスクはやむを得ん。」

 

「それはそうですが……。」

 

「それに申し訳ないがこれは上層部からの特命でもある。残念ながら我々に拒否権はない。すまんな。」

 

「いえ、艦長の下であれば別に私は構いません。良い年ですし守るべき家族もいませんから。ただ、できれば若い家族もち位は何とかしてやりたいのですが……。」

 

「……。あまり大きな声では言えんが、艦隊主力が壊滅した後は後方のコロンブスにはその時点で降伏するよう指示してある。開戦までの準備は副長に一任するので人も好きに動かすと良い。但し最低限戦闘に必要な人員は残すようにな。」

 

「了解しました!……やはり貴方の部下で良かった。」

 

「その台詞は是非とも目標を沈めてから改めて聞きたいものだな。」

 

「はは、最もですね。」



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